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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

補正・訂正

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成29(行ケ)10216  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年8月22日  知的財産高等裁判所

 審決は、羽の寸法を追加する補正が新規事項であるとしましたが、知財高裁(第2部)は、これを取り消しました。理由は、その商品に用いることが記載されていることなどから、特定事項aは新たな技術的事項を導入するものとはいえないというものです。
 前記で認定したような本願発明において,撹拌羽根 の形状,寸法等の撹拌条件は発明特定事項として重要な要素といえるところ,当初 明細書等に本件撹拌羽根を用いることは明示されていない。しかし,当初明細書の 【0012】には,1)撹拌にET−3Aを用いること,2)「撹拌羽」は,回転中心 となる支軸の下端から漢字の「山」の字を構成する形態で対の羽部を延設した「撹\n拌羽」であること,3)「撹拌羽」の回転半径は,内容量が200mlで内径約6c mのビーカー等の円筒形容器の半径(約3cm)より僅かに小さいことが記載され ているところ,前記(1)イの事実によると,当初明細書に記載されている上記「撹拌 羽」の形状,寸法は,ET−3Aの付属品である200mlビーカー用の本件撹拌 羽根のそれと一致するものである。また,前記(1)イの事実によると,ET−3Aは, 昭和60年頃から長年にわたって販売されており,多数の当業者によって使用され てきたと推認される実験用の機械であるところ,販売開始以来,付属品である本件 撹拌羽根の形状,寸法に変更が加えられたことは一度もなく,しかも,遅くとも平 成17年7月頃には,本件撹拌羽根は,ET−3Aとともに日光ケミカルズのカタ ログに掲載されていた。さらに,当初明細書の記載に適合するような形状,寸法の ET−3A用の撹拌羽根が,ET−3A本体とは別に市販されていたことは証拠上 認められない。
以上の事実を考え併せると,当業者が,当初明細書等に接した場合,そこに記載 されている撹拌羽が,ET−3Aに付属品として添付されている200mlビーカ ー用の本件撹拌羽根を指していると理解することができるものと認められる。そし て,特定事項aは,200mlビーカー用の本件撹拌羽根の実寸法を追加するもの であるから,特定事項aを本願の請求項1に記載することが,明細書又は図面の全 ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を 導入するものとはいえず,新規事項追加の判断の誤りをいう原告の主張は理由があ る。

◆判決本文

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平成29(行ケ)10114  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年7月18日  知的財産高等裁判所(4部)

 明確性違反、進歩性違反などいくつかの無効主張について、無効でないとした審決が維持されました。数値範囲を限定した記載が原文新規事項には該当しないとも判断されました。
 原告らは,本件審決は,本件特許の請求項3の「1〜2ng/mlプラズ マ濃度」の記載について,本件国際出願明細書には,「1〜2ng/mlプ ラズマ濃度」との文言の記載はないが,「0.1〜2ng/mlプラズマ濃 度」との記載があり,「1〜2ng/mlプラズマ濃度」の数値範囲は,「0. 1〜2ng/mlプラズマ濃度」の数値範囲の約半分ほどの範囲を占める部 分であり,当該範囲は,他の数値範囲からは予測できない特段の意味を有す\nる数値範囲でもなく,新たな技術的事項を導入するものでもないから,本件 発明3及び請求項3を発明特定事項として引用する本件発明4ないし12は, 本件国際出願明細書に記載した事項の範囲内にあり,原文新規事項に該当し ない旨判断したが,1)「1〜2ng/ml」のプラズマ濃度におけるデクス メデトミジンの作用は,「0.1〜1ng/ml」のプラズマ濃度における デクスメデトミジンの作用とは,明らかに異質なものであり(甲9x,9y, 10),「1ng/mlプラズマ濃度」を数値範囲の境界値として本件特許 の請求項3に記載することは,新たな技術的事項を導入するものであるから, 原文新規事項に該当する,2)本件国際出願明細書と本件国内書面によれば, 国際出願時の請求項3で「0.1〜2ng/mlプラズマ濃度」とされてい たものが,本件国内書面の請求項3で「1〜2ng/mlプラズマ濃度」と なったようであるが,既に特許登録されている請求項3を「0.1〜2ng /mlプラズマ濃度」に訂正する手段はないから,原文新規事項に該当する というほかないとして,本件審決の上記判断は誤りである旨主張する。 そこで検討するに,本件国内書面(甲77の2)には,プラズマ濃度に関 し,「デクスメデトミジンの投与量の範囲は,標的プラズマ濃度として記載 することができる。ICUにおける患者の人々に鎮静を提供することを期待 されるプラズマ濃度範囲は,鎮静の目的レベルおよび患者の全体的な状態に 依存して0.1〜2ng/mlの間で変わる。これらのプラズマ濃度は,瞬 時投与(bolus dose)および規則的な維持注入(steady maintenance infusion) による継続投与を用いて静脈内投与によってなされることができる。たとえ ば,ヒトにおいて前記プラズマ濃度範囲に到達するための瞬時の投与量範囲 は,約10分間またはそれよりゆっくり投与されるため,約0.1〜2.0 μg/kg,好ましくは約0.5〜2μg/kg,より好ましくは1.0μ g/kgであり,ついで,約0.1〜2.0μg/kg/h,好ましくは約 0.2〜0.7μg/kg/h,より好ましくは0.4〜0.7μg/kg /hが維持投与される。デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る 塩の投与期間は,目的の使用持続期間に依存している。」(【0028】) との記載がある。上記記載によれば,【0028】には,ICUにおける患 者の人々に鎮静を提供することを期待されるプラズマ濃度範囲は,「鎮静の 目的レベルおよび患者の全体的な状態に依存して0.1〜2ng/mlの間 で変わる」ことが開示されていることが認められるが,一方で,本件国内書 面の発明の詳細な説明及び図面には,【0028】以外に,「0.1〜2n g/mlプラズマ濃度」に関して言及した記載はない。また,この点につい ては,本件国際出願明細書も,本件国内書面と同様であることが認められる。 そして,本件特許の請求項3の「1〜2ng/mlプラズマ濃度」は,【0 028】記載の「0.1〜2ng/ml」の数値範囲内にあるから,ICU における患者の人々に鎮静を提供することを期待されるプラズマ濃度範囲に あることは明らかである。 そうすると,本件特許の請求項3の「1〜2ng/mlプラズマ濃度」の 記載が,本件国際出願明細書のすべての記載を総合することにより導かれる 技術事項との関係において新たな技術的事項の導入に当たるということはで きない。
(2) この点に関し,原告らは,甲9x,9y,10を根拠として挙げて,デク スメデトミジンのプラズマ濃度が「1〜2ng/ml」に達すると,患者は 深く眠ってしまって覚醒できなくなるが,プラズマ濃度が「0.1〜1ng /ml」であれば,音声指示によって容易に目を覚ますことが可能であるか\nら,「1〜2ng/ml」のプラズマ濃度におけるデクスメデトミジンの作 用は,「0.1〜1ng/ml」のプラズマ濃度におけるデクスメデトミジ ンの作用とは,明らかに異質なものである旨主張(上記1)の主張)する。 しかし,原文新規事項に該当するかどうかは,本件国際出願明細書の全て の記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術 的事項の導入に当たるかどうかを判断すべきであるところ,甲9x,9y, 10は,本件国際出願明細書とは別の文献であり,しかも,原告らが根拠と して挙げる上記各文献の具体的な記載内容が,本件優先日当時技術常識であ ったとまで認められないから,原告らの上記1)の主張は,採用することがで きない。 また,原告らは,本件特許の請求項3の「1〜2ng/mlプラズマ濃度」 の記載が原文新規事項に該当することの根拠として,請求項3の「1〜2n g/mlプラズマ濃度」の記載を「0.1〜2ng/mlプラズマ濃度」に 訂正する手段がないことを挙げるが(上記2)の主張),そのように訂正する 手段があるかどうかの問題と請求項3の「1〜2ng/mlプラズマ濃度」 の記載が原文新規事項に該当するかどうかの問題とは別個の問題であるとい うべきであるから,原告らの上記2)の主張は失当である。
(3) 以上によれば,本件発明3及び請求項3を発明特定事項として引用する本 件発明4ないし12は,本件国際出願明細書に記載した事項の範囲内にあり, 原文新規事項に該当しないとした本件審決の判断に誤りがあるとの原告らの 上記主張(取消事由5)は,理由がない。

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平成29(行ケ)10085  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月26日  知的財産高等裁判所(4部)

 異議理由ありとした審決が取り消されました。訂正は新規事項であるとした審決の判断は維持されましたが、訂正前の発明について、明確性違反および進歩性違反との判断は取り消されました。
 本件決定は,本件発明1の特許請求の範囲のうち「寄生ダイオード(131)の 立ち上がり電圧」は「上記ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高」いとの記載が, いかなる電流が流れる場合のことを表したものであるか不明であるから,明確性要\n件に適合しないと判断した。
(2) 前記2(3)イのとおり,請求項1において,寄生ダイオード(131)の「立 ち上がり電圧は,上記ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高く」と特定されてい るのは,本件発明1の構成として,同期整流を行う際,寄生ダイオード(131)\nの立ち上がり電圧を,ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高くするという技術的 事項を採用する旨特定するものである。 そして,本件発明1に係る電力変換装置において使用される還流電流の程度が限 定されていないことと,同期整流を行う際には,常に,寄生ダイオード(131) の立ち上がり電圧を,ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高くすることとは,関 係がない。
(3) したがって,「寄生ダイオード(131)の立ち上がり電圧」は「上記ユニ ポーラ素子本体のオン電圧よりも高」いとの本件発明1の特許請求の範囲の記載が, 第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。同記載 が明確ではないから,本件各発明の特許請求の範囲の記載は,明確性要件に適合し ないとする本件決定の判断は誤りである。
・・・・
引用発明は,モータの回生モードにおいて,回生電力の消費能力を高めると\nいう課題に対して,順方向電圧降下が高いボディダイオードに電流を流し,回生電 力を消費させるというものである。 このように,引用発明は,モータの回生モードにおいて,ボディダイオードに電 流を流し,ボディダイオードにおいて回生電力を損失させるという課題解決手段を 採用したものである。一方,本件周知技術は,寄生ダイオード側に電流を流さず, 発熱損失を低減させるというものであるから,引用発明の課題解決手段と正反対の 技術思想を有するものである。したがって,当業者は,引用発明におけるモータの 回生モードにおいて,正反対の技術思想を有する本件周知技術を適用することはな い。 そして,引用例には,引用発明の電力変換装置において,力行モードを回生モー ドから切り離し,力行モードの動作のみを変更することを示唆するような記載はな いから,当業者は,力行モードにおける動作のみを変更することを容易に想到する ことはない。 したがって,引用発明に本件周知技術を適用する動機付けはないというべきであ る。

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平成28(行ケ)10278  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年1月15日  知的財産高等裁判所(4部)

 異議理由ありとした審決が取り消されました。理由は、新規事項か、サポート要件違反か、実施可能要件違反かです。知財高裁は、当初明細書の範囲内と判断しました。\n
ア 本件出願当初明細書等の記載
結晶多形Aについて,本件出願当初明細書等には,おおむね,次のとおり記載が ある。
・・・・
イ 本件出願当初明細書等に開示された結晶多形Aに関する技術的事項
(ア) 本件出願当初明細書等にいう結晶多形Aは,本件出願当初明細書等におい て名付けられたものである(【0007】)。
(イ) そして,本件出願当初明細書等【0008】には,結晶多形Aに該当する具体的な結晶多形として,【0008】(1)は,本件出願時の特許請求の範囲【請求 項1】で特定される結晶多形を挙げるほか,【0008】(5)は,2θで表して,構\ 成要件Eで特定されるのと同様の26個の角度において,ピークを有する特徴的な X線回析図形を示し,FT−IR分光法と結合した熱重量法により測定した含水量 が3〜15%であるピタバスタチンカルシウムの結晶多形を挙げており,後者の結 晶多形は,構成要件Eで特定される結晶多形を含むものである。このように,本件\n出願当初明細書等【0008】の記載は,結晶多形Aには,構成要件Eで特定され\nる結晶多形だけではなく,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特定される 結晶多形も,該当する旨説明するものである。
(ウ) また,本件出願当初明細書等【0009】は,「結晶多形Aの一つの具体 的形態」として,2θで表して,構\成要件Eで特定されるのと同様の26個無偏差 相対強度図形を示す結晶多形を例示しており,この結晶多形は,構成要件Eで特定\nされる結晶多形を含むものである。そうすると,本件出願当初明細書等【0009】 の記載は,構成要件Eで特定される結晶多形は,結晶多形Aの具体的な態様の一つ\nである旨説明するものである。
(エ) さらに,本願出願当初明細書等【0047】には,【0047】に記載さ れた製造方法によって,結晶多形Aが得られること,当該結晶多形AのX線粉末回 析図形は,構成要件Eと同様の26個無偏差相対強度図形を示したことが記載され\nている。本件出願当初明細書等【0047】の記載は,特定の製造方法によって生 成された結晶多形AのX線粉末回析図形を説明するにとどまり,構成要件Eで特定\nされる結晶多形のみが結晶多形Aである旨説明するものではない。
(オ) したがって,本件出願当初明細書等の記載を総合すれば,構成要件Eで特\n定される結晶多形Aだけではなく,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特 定される結晶多形Aも,導くことができる。
(4) 新規事項の追加の有無
本件出願当初明細書等の記載を総合すれば,構成要件Eで特定される結晶多形A\nだけではなく,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特定される結晶多形A も,導くことができるから,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特定され る結晶多形Aから,構成要件Eで特定される結晶多形Aを除くものを,本件出願当\n初明細書等の全ての記載を総合することにより導くことができるというべきである。 したがって,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】に,構成要件Eを追加す\nる本件補正は,新たな技術的事項を導入するものではなく,本件出願当初明細書等 に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。
(5) 被告の主張について
被告は,本件出願当初明細書等に記載された結晶多形Aを,26個のピークの回 折角2θ及びその相対強度で特定しなくても,6個のピークの回析角2θ等によっ て特定し得るということは技術常識ではないと主張する。 しかし,本件出願当初明細書等の記載を総合すれば,26個のピークの回折角2 θ及びその相対強度で特定される結晶多形Aだけではなく,6個のピークの回析角 2θ等によって特定される結晶多形Aも導くことができる。本件補正は,26個の ピークの回折角2θ及びその相対強度で特定される結晶多形を,6個のピークの回 析角2θ等によって特定することを前提としてなされたものではないから,被告の 上記主張は,前提を欠く。
(6) 小括
以上のとおり,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】に,構成要件Eを追加\nする本件補正は,新たな技術的事項を導入するものではない。そして,本件補正の その余の部分について,被告は,新たな技術的事項を導入するものではなく,本件 出願当初明細書等に記載した範囲内においてしたものであることを争わない。した がって,本件補正は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たす。

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平成28(行ケ)10078  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年11月30日  知的財産高等裁判所

 補正が新規事項とした審決を、知財高裁は取り消しました。
(1) 新規事項追加禁止要件違反について
ア 前記1(1)のとおり,本件補正前の請求項6の命令スレッドのタイプは, いずれも,単に「タイプ」と記載されており,「(S,C)」の記号を伴わないもので あったところ,前記第2の1のとおり,原告は,平成26年8月26日付けで,甲 1発明等を引用例とする進歩性の欠如を理由とする拒絶査定を受けた(甲7,10) 後,本件補正をした。
イ 本件補正後の請求項6の,「(S,C)」は,それ自体のみからその技術的 な意義を読み取れず,また,本件補正後の請求項6の記載中に,その技術的な意義 を明確にする定義等の記載は見当たらない。 本件補正後の請求項6の従属項である同請求項7〜10にも,本件補正後の請求 項6の「(S,C)」の技術的な意義を明確にする記載はない。
ウ(ア) 当初明細書等には,命令スレッドのタイプについては,二つ以上ある こと(【0013】,【0014】,【0017】,【0020】),【0039】,【0042】,【0046】),三つ以上ある場合もあること(【0062】)が記載されており,命令スレッドのタイプが第1のタイプと第2のタイプである場合において,命令スレットの第1のタイプが計算タイプであり,第2のタイプがサービスタイプである 場合があることが記載されている(【0039】,【0042】,【0043】,【0044】,【0046】,【0047】,【0050】)。 また,当初明細書等には,命令スレッドのタイプは,1)アプリケーションプログ ラミングインターフェースの関数でタイプを識別するパラメータ(計算タイプ:H TCALCUL,サービスタイプ:HT_SERVICE)に基づく場合(【002 1】,【0042】,【0050】),2)プログラムの実行コマンドでタイプを識別するパラメータ(CALCUL,SERVICE)に基づく場合(【0022】,【004 3】,【0050】),3)命令スレッドの起動元のアプリケーションを自動的に認識す ることによって決定される場合(【0045】)があることが記載されている。 さらに,命令スレッドと仮想プロセッサの関係については,仮想プロセッサのタ イプは,パラメータC及びパラメータSによって識別され,パラメータCは計算タ イプに,パラメータSはサービスタイプに関連付けられ,仮想プロセッサ24C及 び26Cは計算タイプであり,仮想プロセッサ24S及び26Sはサービスタイプ である場合(【0046】〜【0048】)があることが記載されている。
 (イ) 以上によると,当初明細書等においては,「S」及び「C」は,仮想プ ロセッサのタイプとして記載されていること,命令スレッドのタイプとしては,「計 算タイプ」及び「サービスタイプ」という文言が用いられていることが認められる。 しかし,前記(ア)のとおり,仮想プロセッサのタイプは,パラメータC及びパラメ ータSによって識別され,パラメータCは計算タイプに,パラメータSはサービス タイプに関連付けられ,仮想プロセッサの24C及び26Cは「計算タイプ」,同2 4S及び26Sは「サービスタイプ」とされている。また,命令スレッドのタイプ がアプリケーションプログラミングインターフェースの関数でタイプを識別するパ ラメータ(計算タイプ:HTCALCUL,サービスタイプ:HT_SERVIC E)や,プログラムの実行コマンドでタイプを識別するパラメータ(CALCUL, SERVICE)に基づく場合があることが記載されているところ,C が計算(c alculation),Sがサービス(service)の頭文字に由来すること も明らかである。
エ そうすると,当初明細書等の記載を考慮して,特許請求の範囲に記載さ れた用語の意義を解釈すると,本件補正後の請求項6〜8で命令スレッドのタイプ とされている記載「タイプ(S,C)」は,「サービスタイプ」,「計算タイプ」の意 味であると解することができる。
オ 以上によると,本件補正は,本件補正前の請求項6において,命令スレ ッドの「タイプ」は,どのような種類のタイプが存在するのかについて,記載がな かったのを,「タイプ(S,C)」とし,当初明細書等に記載されていた「タイプ(サ ービスタイプ,計算タイプ)」としたものであり,当初明細書等に記載された事項の 範囲内を超えるものではない。

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平成29(行ケ)10032  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年11月7日  知的財産高等裁判所(4部)

 無効審判における訂正を認めなかった審決が取り消されました。審決は、実質上の変更に該当すると判断しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
 本件審決は,本件発明10は,値段が高い銀ナノ粒子を使用することなく導 電性材料を得ることを目的とした発明であるのに対し,本件訂正発明10は,大量 の酸素ガスや大量の還元性有機化合物の分解ガスを発生させることなく,導電性材 料を得ることを目的とするものであり,本件訂正発明10が達成しようとする目的 及び効果は,訂正事項10−1による訂正で変更されたと認められるから,訂正の 前後における発明の同一性は失われており,訂正事項10−1は,実質上特許請求 の範囲を変更するものであると判断した。 イ しかし,本件明細書には,従来技術において,酸化銀等の銀化合物の微粒子 を還元性有機溶剤へ分散したペースト状導電性組成物を基板上に塗布して加熱し配 線を製造する方法が知られていたが,ミクロンオーダーの銀粒子を使用した場合, 高い反応熱によりガスが大量発生し,不規則なボイドが形成されて導電性組成物が 破壊されやすくなったり,取扱上の危険性があるという問題点があり(【0004】 〜【0007】,【0010】),銀ナノ粒子を含む導電性組成物を用いると,銀ナノ 粒子の値段が高いという問題点があったこと(【0009】,【0010】)が記載さ れており,本件発明は,安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて得られる導電 性材料を製造する方法を提供することを目的とするとの記載があるのであるから (【0012】),本件発明の目的は,従来技術においてミクロンオーダーの銀粒子を 使用する際にガスが大量発生することによる問題を解消するとともに,値段が高い 銀ナノ粒子を使用することなく,導電性材料を製造することにあると認められる。 そして,本件発明10においては,その目的を,「銀の粒子が,0.1μm〜15 μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる」という構成,及び「第\n2導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃〜320℃の 範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し」とい う構成を備えることによって達成している。\n他方,本件訂正発明10は,大量のガスを発生させることなく導電性材料を得る という目的を達成するため,「前記銀の粒子の一部を局部的に酸化させることにより, 前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し」という構成を備えている上,\n銀の粒子が,0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有するものから, 2.0μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有するものに訂正されたことに より,訂正前に比べて銀の粒子径がより大となっており,値段が高い銀ナノ粒子を 使用することなく導電性材料を得るという目的及び効果について,より限定された ものとなっている。
ウ したがって,訂正事項10−1による訂正は,本件発明10が達成しようと する目的及び効果を変更するものではない。

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平成28(行ケ)10265  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年10月3日  知的財産高等裁判所(4部)

 特許庁では、無効審判における訂正請求が独立特許要件違反として否定されました。 知財高裁は、引用文献どおしを組み合わせる動機付けはあるが、本件発明には想到しないとして、審決を取り消しました。
 引用発明Aが検知の対象とするタグと引用例3事項の付け札とは,いずれ も盗難防止装置に使用されるタグ(付け札)の技術分野に関するものである。 また,引用発明Aと引用例3事項の付け札が使用される電子物品管理システムは, いずれも,タグ(付け札)が警報動作を開始する際には,電波送出パネル22(出 口送信機ユニット)が信号を発信し,タグ1(付け札)がこれを受信するものであ って,警報動作を終了する際には,コード信号出力ユニット(勘定所送信機ユニッ ト又は携帯送信機ユニット)が信号を発信し,タグ1(付け札)がこれを受信する ものである。このように,引用発明Aと引用例3事項の付け札が使用される電子物 品管理システムとは,タグ(付け札)が警報動作を開始する際及び終了する際の作 用機序において共通する。 さらに,引用発明Aは,警報動作を開始させる所定の周波数の電波及び警報動作 を終了させるコード信号のみを使用するものであるが,引用例3事項の付け札が使 用される電子物品管理システムは,これらに相当する信号(出口メッセージ及び終 了メッセージ)に加えて,能動的包装メッセージ,オーディオ包装メッセージ,受\n動的包装メッセージ及び保管メッセージを含む信号を使用し,電子物品監視システ ムの作動能力を拡張するものである。このように,引用例3事項の付け札は,引用\n発明Aが検知の対象とするタグと比較して,その作動能力が拡張されたものである。
(イ) 以上によれば,当業者は,引用発明Aが検知の対象とするタグに,盗難防 止装置に使用されるものであって,警報動作の開始及び終了の作用機序が共通し, さらに作動能力が拡張された引用例3事項の付け札を適用する動機付けがあるとい\nうべきである。
エ 引用例3事項を適用した引用発明Aの構成
(ア) 本件訂正発明8において,盗難防止タグは,警報出力手段が作動可能であ\nる状態及び警報出力状態を解除するに当たり,「一致判定手段が「前記識別手段が 識別した解除指示信号に含まれる」暗号コードが一致するか否かを判定する」もの である。一致判定手段は,前記識別手段が解除指示信号を識別した後に,その解除 指示信号に含まれる暗号コードと,暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致する か否かを判定するから,識別手段による解除指示信号の識別に用いられるコードと, 一致判定手段による暗号コードの一致判定に用いられるコードとは無関係なものと いうことができる。
・・・
(ウ) そうすると,警報動作を終了させるに当たり,本件訂正発明8の盗難防止 タグは,解除信号の一部に含まれる,解除指示信号の識別とは無関係な「暗号コー ド」と,記憶された暗号コードとの一致判定を行うのに対し,引用例3事項を適用 した引用発明Aのタグは,解除信号である「コード信号」と,記憶された「それぞ れ異なるメッセージを含む信号」中の「コード信号」との一致判定を行うものであ る。したがって,引用発明Aに引用例3事項を適用しても,相違点2に係る本件訂正 発明8の構成に至らないというべきである。
オ 本件審決の判断について
(ア) 本件審決は,引用例3事項の「終了メッセージを含む信号」は,警報オフ とする点において,「解除指示信号」と共通するとした上で,引用例3,甲5(米 国特許第5148159号明細書。平成4年公開)及び甲6(「NEC MOS集 積回路 μPD6121,6122データシート」NEC株式会社。平成7年公開) から,「信号が設定可能なコードを一部に含み,一致判定手段が前記信号に含まれ\nる前記コードが一致するか否かを判定する」という周知技術(以下「審決認定周知 技術」という。)が認められるから,引用例3事項を適用するに当たって,引用例 3事項の「終了メッセージを含む信号」を,設定機能によって所望に設定できるコ\nードを一部に含み,引用発明Aの一致判定手段において信号に含まれるコードが一 致するか否かを判定するように構成することは,当業者にとって格別困難ではない\nと判断した。
(イ) 本件審決は,引用発明Aに引用例3事項を適用するに当たり,周知技術を 考慮して変更した引用例3事項を適用することによって,本件訂正発明8を容易に 想到することができるとするものである。 しかしながら,前記エのとおり,引用発明Aに引用例3事項を適用しても,相違 点2に係る本件訂正発明8の構成に至らないところ,さらに周知技術を考慮して引\n用例3事項を変更することには格別の努力が必要であるし,後記(ウ)のとおり,引 用例3事項を適用するに当たり,これを変更する動機付けも認められない。主引用 発明に副引用発明を適用するに当たり,当該副引用発明の構成を変更することは,\n通常容易なものではなく,仮にそのように容易想到性を判断する際には,副引用発 明の構成を変更することの動機付けについて慎重に検討すべきであるから,本件審\n決の上記判断は,直ちに採用できるものではない。

◆判決本文

本件特許の侵害事件の控訴審です。こちらは技術的範囲に属しないと判断されています。

◆平成29(ネ)10022

◆原審はこちら。平成26(ワ)20319

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平成28(行ケ)10170  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年8月30日  知的財産高等裁判所(1部)

 訂正要件満たしていないとした審決が取り消されました。
 審決は,「x2+y2=r2」の式は,原点を中心とする半径rの円周上 の各点の座標(x,y)の方程式とみることもできるが,斜辺の長さがrとなる直 角三角形における直角をはさむ2辺の長さx,yの方程式とみることもでき,この 場合,本件条件式(|(x2+y2)1/2|≦2.50)のx,yは,それぞれ,測 定基準点から水平線を延ばしたときに所定領域の外縁と交差する位置(水平方向外 縁位置)までの距離,及び,測定基準点から鉛直線を延ばしたときに所定領域の外 縁と交差する位置(鉛直方向外縁位置)までの距離を示すと解するのが自然である とする(第1解釈)。 しかしながら,審決の上記認定に従って,本件条件式のx,yを理解すると,本 件条件式は,「水平方向外縁位置と鉛直方向外縁位置の距離」が2.5mm以下であ ればよく,水平方向と鉛直方向以外については何ら規定していないのであるから, 本件条件式によっては,「所定領域」の形状が定まらないことになる。また,水平方 向外縁位置と鉛直方向外縁位置の距離が2.5mm「以下」であればよいことにな るので,水平方向外縁位置及び鉛直方向外縁位置が0のもの,すなわち,所定領域 として大きさをもたないものも含むことになる。  前記(ア)のとおり,所定領域は面非点隔差成分の平均値(ΔASav)を決めるた めの基準となる範囲を示すものであって,本件条件式は,この所定領域が満足すべ き範囲を定めるものであることからすれば,本件条件式について,上記のように, 形状が定まらず,また,大きさを持たないものも含むように解することは,不自然 であるといわざるを得ない。
また,本件明細書には,「実質的に球面形状またはトーリック面形状である測定基 準点を含む近傍の領域は,…|(x2+y2)1/2|≦1.75(mm)の条件を満 足する領域であることが望ましい。また,処方度数と測定度数とをさらに良好に一 致させるには,実質的に球面形状またはトーリック面形状である測定基準点を含む 近傍の領域は,|(x2+y2)1/2|≦2.50(mm)の条件を満足する領域で あることが望ましく」(前記1(1) と記載されていることからすると,本件条件 式は,少なくとも,|(x2+y2)1/2|≦1.75(mm)の場合と比較して, 度数測定がより容易になる条件を規定しているものと認められる。 しかしながら,審決の上記解釈によれば,本件条件式は,所定領域の形状が特定 されるものではなく,しかも,所定領域として大きさを持たないものも含むことに なるものであるから,度数測定がより容易になる条件を規定したものとはいい難く, 上記のとおり,|(x2+y2)1/2|≦1.75(mm)の条件式と対比して,本 件条件式を規定している本件明細書の記載と整合するものとはいえない。 したがって,審決の上記解釈は,不自然であるといわざるを得ない。 なお,審決は,「所定領域」は,測定基準点を中心としてどの方向にも大きさが略 一定の領域(すなわち,測定基準点を中心とする略円形の領域)として設ければよ いのであり,水平方向及び鉛直方向の大きさとそれ以外の方向の大きさとが大きく 異なるような不定形の形状の領域にすることは,必要がないばかりか,光学性能の\n低下という観点から有害であることが当業者に自明であるとして,本件条件式は, 測定基準点を中心としてどの方向にも「所定領域」の大きさが略一定であることを 前提として,その大きさを規定したものである,とも認定している。むしろ,この ように,所定領域の大きさが略一定であることが当業者にとって当然の前提となる のであれば,本件明細書の記載に接した当業者は,本件条件式が円を規定するもの, すなわち,x,yを座標であると理解するというのが自然かつ合理的である。 以上によれば,本件明細書において,本件条件式とともに面非点隔差成分の平均 値を求める基礎となる面非点隔差成分ΔASについて,x,yが座標として用いら れていること,本件条件式のx,yを測定基準点から水平方向外縁位置及び鉛直方 向外縁位置までの距離であると解することが本件明細書の全体の記載に照らして不 自然であることなどから,本件条件式のx,yは,座標として用いられていると解 するのが相当である。そして,このように解しても,本件訂正後の本件訂正発明は, 処方面の非球面化により装用状態における光学性能を補正する構\\成を採用している にもかかわらず,レンズの度数測定を容易に行うことができるとの効果を奏するも のであると認められる。 したがって,訂正事項1−4は,もとより座標を示すものであると解される本件 条件式のx,yが座標であることを明記したにすぎないものであり,訂正事項1− 4に係る本件訂正発明3の第2発明特定事項は,本件明細書の全ての記載を総合す ることにより導かれる技術的事項であり,新たな技術的事項を導入しないものであ るから,本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものということができる。

◆判決本文

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平成27(ネ)10122  不当利得返還請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年8月9日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁3部は、特許権侵害について、特許無効と判断した1審判断を維持し、請求棄却しました。侵害事件と並行して、無効審判が請求されており、特許庁は審理の結果、無効予告をしました。特許権者は訂正をしましたが、訂正要件を満たしていないとして、最終的に無効と判断されました。これに対して、特許権者は、審取を提起しました。\n原審(侵害訴訟)でも、訂正要件を満たしていないと判断されてます。
 訂正前の「…前記第1の位相から調節できるように固定された第1 の量だけ転位させた第2の位相を有する第3のクロック信号…」の記載 によれば,「第2の位相」の「第1の位相」からの変位量(転位の量) は,第3のクロックが調節されたとしても,第1のクロックが同じ量 だけ調節されれば,変位量に変化がなく,このような調節も「固定」 に含まれると解される。 これに対し,訂正後の「…第2の位相の前記第1の値をもつ第1の位 相を基準とした変位量は,第1の位相が前記第1の値をもっている状態 において第3のクロック信号の調整がなされるまでの間,固定された第 1の量であり,前記変位量は,第3のクロック信号が調節されたときは 調節される…」との記載によれば,変位量は,第1のクロックの調節に よらず専ら第3のクロックの調節により調節され,第3のクロック信号 が調節されれば,仮に第1のクロックが同じ量だけ調節されたとしても 変化するように,「固定」の技術的意味を変更するものと理解される。
(エ) 以上より,訂正事項2は,特許請求の範囲の減縮を目的とするもの に当たらないとともに,不明瞭な記載の釈明又は誤記の訂正を目的と する訂正であるということもできない。 また,訂正事項2が,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当 該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものでな いことは明らかである。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成25(ワ)33706

◆対応の無効事件はこちらです。平成28(行ケ)10111

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平成28(行ケ)10157  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年7月19日  知的財産高等裁判所

 訂正要件を満たさない(新規事項)とした無効審決が取り消されました。
 前記1の認定事実によれば,実施例2においては,醸造酢(酸度10%)15部, スクラロース0.0028部等を含有する調味液と塩抜きしたきゅうりを4対6 の割合で合わせて瓶詰めをしてピクルスを得た結果,当該ピクルスは,スクラロー スを添加していないものに比べて,酸味がマイルドで嗜好性の高いものに仕上が り,ピクルスに対する酸味のマスキング効果が確認されたことが認められる。そう すると,醸造酢を含有する製品として,酸味のマスキング効果を確認した対象は, 調味液ではなくピクルスであるから,当該効果を奏するものと確認されたスクラ ロース濃度は,上記調味液におけるスクラロース濃度ではなく,これに水分等を含 むきゅうりを4対6の割合で合わせた後のピクルスのスクラロース濃度であると 認めるのが相当である。 これに対し,本件明細書に記載された0.0028重量%は,調味液に含まれる スクラロース濃度であるから,当該濃度は,酸味のマスキング効果が確認されたピ クルス自体のスクラロース濃度であると認めることはできない。 他方,ピクルスにおけるスクラロース濃度は,実施例2において調味液のスクラ ロース濃度を0.0028重量%とし,この調味液と塩抜きしたきゅうりを4対6 の割合で合わせ,瓶詰めされて製造されるものであるから,きゅうりに由来する水 分により0.0028重量%よりも低い濃度となることが技術上明らかである(き ゅうりにスクラロースが含まれないことは,当事者間に争いがない。)。そして,0. 0028重量%よりも低いスクラロース濃度においてピクルスに対する酸味のマ スキング効果が確認されたのであれば,ピクルスにおけるスクラロース濃度が0. 0028重量%であったとしても酸味のマスキング効果を奏することは,本件明 細書の記載及び本件出願時の技術常識から当業者に明らかである。そのため,スク ラロースを0.0028重量%で「醸造酢及び/又はリンゴ酢を含有する製品」に 添加すれば,酸味のマスキング効果が生ずることは当業者にとって自明であり(実 施例3の「おろしポン酢ソース」では,スクラロース0.0035重量%で酸味の\nマスキング効果が生じ,実施例4の「青じそタイプノンオイルドレッシング」では, スクラロース0.0042重量%で酸味のマスキング効果が生じることがそれぞ れ開示されている。),このことは本件明細書において開示されていたものと認め られる。 そうすると,製品に添加するスクラロースの下限値を「製品の0.000013 重量%」から「0.0028重量%」にする訂正は,特許請求の範囲を減縮するも のである上,本件訂正後の「0.0028重量%」という下限値も,本件明細書に おいて酸味のマスキング効果を奏することが開示されていたのであるから,本件 明細書に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。 したがって,訂正事項1は,当業者によって本件明細書,特許請求の範囲又は図 面(以下「本件当初明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導か れる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものといえる から(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10563号同20年5月30日 特別部判決参照),特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項の規定 に適合するものと認めるのが相当である。

◆判決本文

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平成28(行ケ)10160  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年7月12日  知的財産高等裁判所

 使用態様を特定した製剤に限定する訂正が、訂正要件違反と判断されました。
 訂正事項5は,本件訂正前の特許請求の範囲の請求項 1に「針状又は糸状の形状を有すると共に」とあるのを「針状又は糸状の形 状を有し,シート状支持体の片面に保持されると共に」に訂正する,という ものであり,これを請求項の記載全体でみると,「…尖った先端部を備えた 針状又は糸状の形状を有すると共に前記先端部が皮膚に接触した状態で押圧 されることにより皮膚に挿入される,経皮吸収製剤」とあるのを「…尖った 先端部を備えた針状又は糸状の形状を有し,シート状支持体の片面に保持さ れると共に前記先端部が皮膚に接触した状態で押圧されることにより皮膚に 挿入される,経皮吸収製剤」に訂正するものである。 ここで,「経皮吸収製剤」にかかる「前記先端部が皮膚に接触した状態で 押圧されることにより皮膚に挿入される」との文言は,経皮吸収製剤の使用 態様を特定するものと解されるから,その直前に挿入された「シート状支持 体の片面に保持されると共に」の文言も,前記文言と併せて経皮吸収製剤の 使用態様を特定するものと解することが可能である。すなわち,訂正事項5\nは,経皮吸収製剤のうち,「シート状支持体の片面に保持される」という使 用態様を採らない経皮吸収製剤を除外し,かかる使用態様を採る経皮吸収製 剤に限定したものといえる。 ところで,本件発明は「経皮吸収製剤」という物の発明であるから,本件 訂正発明も「経皮吸収製剤」という物の発明として技術的に明確であること が必要であり,そのためには,訂正事項5によって限定される「シート状支 持体の片面に保持される…経皮吸収製剤」も,「経皮吸収製剤」という物と して技術的に明確であること,言い換えれば,「シート状支持体の片面に保 持される」との使用態様が,経皮吸収製剤の形状,構造,組成,物性等によ\nり経皮吸収製剤自体を特定するものであることが必要である。 しかしながら,「シート状支持体の片面に保持される」との使用態様によ っても,シート状支持体の構造が変われば,それに応じて経皮吸収製剤の形\n状や構造(特にシート状支持体に保持される部分の形状や構\造)も変わり得 ることは自明であるし,かかる使用態様によるか否かによって,経皮吸収製 剤自体の組成や物性が決まるという関係にあるとも認められない。 したがって,上記の「シート状支持体の片面に保持される」との使用態様 は,必ずしも,経皮吸収製剤の形状,構造,組成,物性等により経皮吸収製\n剤自体を特定するものとはいえず,訂正事項5によって限定される「シート 状支持体の片面に保持される…経皮吸収製剤」も,「経皮吸収製剤」という 物として技術的に明確であるとはいえない(なお,「シート状支持体の片面 に保持される」との用途にどのような技術的意義があるのかは不明確といわ ざるを得ないから,本件訂正発明をいわゆる「用途発明」に当たるものとし て理解することも困難である。)。 そうすると,訂正事項5による訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 は,技術的に明確であるとはいえないから,訂正事項5は,特許請求の範囲 の減縮を目的とするものとは認められない。 なお,仮に,「シート状支持体の片面に保持されると共に」の文言が経皮 吸収製剤の使用態様を特定するものではなく,「尖った先端部を備えた針状 又は糸状の形状を有し」との文言と同様に経皮吸収製剤の構成を特定するも\nのであるとすれば,本件訂正発明は,「シート状支持体の片面に保持された 状態にある経皮吸収製剤」になり,構成としては「片面に経皮吸収製剤を保\n持した状態にあるシート状支持体」と同一になるから,訂正事項5は,本件 訂正前の請求項1の「経皮吸収製剤」という物の発明を,「経皮吸収製剤保 持シート」という物の発明に変更するものであり,実質上特許請求の範囲を 変更するものとして許されないというべきである(特許法134条の2第9 項,126条6項)。
・・・
被告は,訂正事項5は,請求項1の経皮吸収製剤に対して,本件明細書中 に記載され,請求項19においても記載されているシート状支持体の構成を\n追加したものであり,両者の構成及び関係は本件明細書の記載上明確である\nから,物としての態様(構成)が明確でないとの批判も当たらないし,特許\n法上,物の発明において使途の構成を規定してはいけないというような制限\nはなく,本件訂正発明が飽くまで経皮吸収製剤の発明であって,経皮吸収製 剤保持シートの発明でないことは,訂正後の請求項1の文言から明らかであ る,などと主張する。
しかしながら,訂正事項5は,経皮吸収製剤のうち,「シート状支持体の 片面に保持される」という使用態様を採らない経皮吸収製剤を除外し,かか る使用態様を採る経皮吸収製剤に限定したものとみるべきであり,「経皮吸 収製剤」自体の構成を更に限定するものとみるのは相当でないこと,そして,\n訂正事項5が,使用態様の限定であるとしても,かかる限定によって,経皮 吸収製剤自体の形状,構造,組成,物性等が決まるという関係にあるとは認\nめられず,本件訂正後の経皮吸収製剤も技術的に明確であるといえないこと は,いずれも前記のとおりである。

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平成28(受)632  特許権侵害差止等請求事件 平成29年7月10日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  知的財産高等裁判所

 最高裁(第2小法廷)判決です。特許権者が,事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず,その後に特許法104条の4第3号所定の特許請求の範囲の訂正をすべき旨の審決等が確定したことを理由に事実審の判断を争うことはできないと判断されました。本件については、別途無効審判が継続(審取中を含む)しており、法上、訂正審判の請求ができなかったという特殊事情があります。この点については、訂正審判を請求しなくても、訂正の抗弁まで禁止されていたわけではないと判断されました。
 特許権侵害訴訟の終局判決の確定前であっても,特許権者が,事実審の 口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず,その後に訂 正審決等の確定を理由として事実審の判断を争うことを許すことは,終局判決に対 する再審の訴えにおいて訂正審決等が確定したことを主張することを認める場合と 同様に,事実審における審理及び判断を全てやり直すことを認めるに等しいといえ る。 そうすると,特許権者が,事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張し なかったにもかかわらず,その後に訂正審決等が確定したことを理由に事実審の判 断を争うことは,訂正の再抗弁を主張しなかったことについてやむを得ないといえ るだけの特段の事情がない限り,特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させ るものとして,特許法104条の3及び104条の4の各規定の趣旨に照らして許 されないものというべきである。
(2) これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,上告人は,原審の 口頭弁論終結時までに,原審において主張された本件無効の抗弁に対する訂正の再 抗弁を主張しなかったものである。そして,上告人は,その時までに,本件無効の 抗弁に係る無効理由を解消するための訂正についての訂正審判の請求又は訂正の請 求をすることが法律上できなかったものである。しかしながら,それが,原審で新 たに主張された本件無効の抗弁に係る無効理由とは別の無効理由に係る別件審決に 対する審決取消訴訟が既に係属中であることから別件審決が確定していなかったた めであるなどの前記1(5)の事情の下では,本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁 を主張するために現にこれらの請求をしている必要はないというべきであるから, これをもって,上告人が原審において本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張 することができなかったとはいえず,その他上告人において訂正の再抗弁を主張し なかったことについてやむを得ないといえるだけの特段の事情はうかがわれない。

◆判決本文

◆1審はこちら。平成25(ワ)32665

◆2審はこちら。平成26(ネ)10124

◆無効審判の取消訴訟はこちら。平成26(行ケ)10198

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平成28(行ケ)10154  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年5月30日  知的財産高等裁判所

 訂正について、「誤記とはいえない、かつ、新規事項である」とした審決が取り消されました。
  (1) 特許法126条1項2号は,「誤記・・・の訂正」を目的とする場合には, 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面の訂正をすることを認めているが, ここで「誤記」というためには,訂正前の記載が誤りで訂正後の記載が正しいこと が,当該明細書,特許請求の範囲若しくは図面の記載又は当業者(その発明の属す る技術の分野における通常の知識を有する者)の技術常識などから明らかで,当業 者であればそのことに気付いて訂正後の趣旨に理解するのが当然であるという場合 でなければならないものと解される。
(2)ア そこで,まず,本件明細書に接した当業者が,明細書の記載は原則とし て正しい記載であることを前提として,本件訂正前の本件明細書の記載に何らかの 誤記があることに気付くかどうかを検討する。 (ア) 本件明細書の【0034】の【化14】には,以下に示す化合物(3) から,「EAC」が添加された反応条件下で,以下に示す化合物(4)を得る工程【化 14】が示されており(下図は,【化14】の記載を簡略化し,反応により構造が変\n化した部分に丸印を付したもの。),本件明細書の【0034】の[合成例4]の本 文には,化合物(3)に「EAC(酢酸エチル,804ml,7.28mol)」を 添加し,反応させて,化合物(4)を得たと記載されているから,明細書は原則と して正しい記載であることを前提として読む当業者は,本件明細書には,化合物(3) に酢酸エチルを作用させて化合物(4)を得たことが記載されていると理解する。
(イ) しかし,当業者であれば,以下に示す理由で,「化合物(3)に酢酸エ チルを作用させて化合物(4)を得た」とする記載内容にもかかわらず,化合物(3) に以下に示す酢酸エチルを作用させても化合物(4)が得られない,つまり,【化1 4】に係る原料(出発物質;化合物(3))と,反応剤(EAC)と,生成物(化合 物(4))のいずれかに誤記が存在することに気付くものと考えられる。 すなわち,本件明細書の【0034】の【化14】に接した当業者は,(1)ヒドロ キシ基を有する不斉炭素(20位の炭素原子)の立体化学が維持されていることか ら,【化14】の反応は,酸素原子が反応剤の炭素原子を求核攻撃することによる, 20位の炭素原子に結合した−OH基の酸素原子と反応剤の炭素原子との反応であ ること(20位の炭素原子と酸素原子間のC−O結合が切れる反応が起こるのでは なく,アルコール性水酸基の酸素原子と水素原子の間のO−H結合が切れることに よって不斉炭素の立体構造が維持されることになる反応であること。甲2,23〜\n25),(2)上記−OH基の酸素原子が酢酸エチルの炭素原子を求核攻撃しても,化合 物(4)の側鎖である,−OCH2CH2COOC2H5の構造とはならないこと(炭\n素数が1つ足りないこと)に気付き,これらを考え合わせると,【0034】の「化 合物(3)に酢酸エチルを作用させて化合物(4)を得た」という反応には矛盾が あることに気付くものということができる。 (ウ) したがって,本件明細書に接した当業者は,【0034】の【化14】 (化合物(3)から化合物(4)を製造する工程)において,側鎖を構成する炭素\n原子数の不整合によって,【0034】に何らかの誤記があることに気付くものと認 められる。
・・・・
前記3の取消事由1で判断したとおり,本件明細書に接した当業者であれば,本 件訂正事項に係る【0034】の「EAC(酢酸エチル,804ml,7.28m ol)」という記載が誤りであり,これを「EAC(アクリル酸エチル,804ml, 7.28mol)」の趣旨に理解するのが当然であるということができるから,本件 訂正後の記載である「アクリル酸エチル」は,本件訂正前の当初明細書等の記載か ら自明な事項として定まるものであるということができ,本件訂正によって新たな 技術的事項が導入されたとは認められない。

◆判決本文

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平成28(行ケ)10088  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年2月8日  知的財産高等裁判所

 知財高裁(3部)は、第1次判決の拘束力が及ばない、新規事項であるとした審決は妥当と判断しました。
 事情が複雑です。本件特許出願について、第1次審決で補正要件違反(新規事項)と判断され、知財高裁にて、それが取り消されました(第1次判決 平成26年(行ケ)第10242号)。審理が再開されましたが、審判官は、再度補正要件違反(新規事項)として判断しました。理由は、現出願である実案出願に開示がなかった技術的事項を導入しているというものです。
 以上を前提に,本件実用新案登録の当初明細書等と本願明細書等の記載事 項を比較すると,次のとおり,本願明細書等には,本件実用新案登録の当初 明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係に おいて,明らかに新たな技術的事項を導入するものというべき記載が認めら れる。
ア 本願明細書等の請求項1の(3)ないし(15)に関する事項 本願明細書等に記載がある,シュレッダー補助器について,材質がプラ スチック製であること(請求項1の(3)及び(9)),色が透明である こと(同(11)),横幅が約35cmであること(同(8))の各事項 について,本件実用新案登録の当初明細書等には明示の記載がなく,また, 本件実用新案登録の出願時において,これらの記載事項が技術常識であっ たとも認められない。 また,シュレッダー補助器に埋め込まれた金属製爪部分及びこれに関す る記載事項(同(4)ないし(7),(10),(12)ないし(15)) については,本件実用新案登録の当初明細書等において,そのような爪部 分の存在自体が明らかでない。 したがって,これらの事項は,本件実用新案登録の当初明細書等の全て の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,明ら かに新たな技術的事項を導入するものというべきである。
イ 本願明細書等の図1及び図2並びに段落【0010】の図1及び図2に 関する事項
本願明細書等の図1(シュレッダー補助器の横断面図)及び図2(シュ レッダー補助器の正面図)並びに段落【0010】の図1及び図2に関す る寸法については,本件実用新案登録の当初明細書等には記載も示唆も一 切認められない。これらの事項は,本件実用新案登録の当初明細書等の全 ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,明 らかに新たな技術的事項を導入するものというべきである。 ウ 本願明細書等の段落【0010】の図3及び図4に関する事項 本願明細書等の段落【0010】には,図3の寸法に関し,「(ム)シ ュレッダー補助器の下部外幅は6mm,」と記載され,「(ヤ)シュレッダ ー補助器が挿入し易いよう,傾斜角を,シュレッダー機本体の水平面から 測って85度とし,」と記載されている。しかしながら,本件実用新案登録 の当初明細書等の対応する図1においては,シュレッダー補助器の下部外 幅は5mmと異なる数値が記載されており,また,傾斜角については記載 も示唆も認められない。 また,本願明細書等の段落【0010】には,図4の寸法に関し,「( ヨ)シュレッダー補助器の横幅約35cm,」と記載されている。しかし ながら,本件実用新案登録の当初明細書等には,この点についての記載も 示唆も認められない。 したがって,これらの事項は,本件実用新案登録の当初明細書等の全て の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,明ら かに新たな技術的事項を導入するものというべきである。
(5) 以上のとおりであるから,本願明細書等に記載した事項は,本件実用新案 登録の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。 したがって,本願について出願時遡及を認めることはできないから,本願 は,平成18年8月24日(本件実用新案登録に係る実用新案登録出願の時) に出願したものとみなすことはできないとした本件審決の判断に誤りはなく, 本願出願の時は,本願出願の現実の出願日である平成20年10月10日と なる。
(6) これに対し,原告は,本件実用新案登録は,出願時と同一のものであると 認められたからこそ,登録になったのであり,原告は,本願において,その 登録になったものと同一のものを,そのまま(変更せずに)特許出願したに すぎないから,出願時遡及を認めないのは誤りであると主張する。 しかしながら,実用新案登録制度は,考案の早期権利保護を図るため実体 審査を行わずに実用新案権の設定の登録を行うものであるため,補正により 新規事項が追加され,無効理由を胚胎した出願であっても,実用新案権の設 定の登録はされ得る。そして,このような新規事項が追加されて実用新案登 録になった明細書等と同一のものに基づいて特許出願をした場合,特許出願 の当初明細書等も実用新案登録出願の当初明細書等に対して新規事項が追加 されたものになるから,その後の補正により新規事項が解消されない限り, 出願時遡及は認められないことになる。すなわち,実用新案権の設定の登録 は,登録時の明細書等が実用新案登録出願の当初明細書等と同一でなくとも され得るから,実用新案登録になった明細書等と同一のものをそのまま用い て特許出願をしたとしても出願時遡及が直ちに認められるものではない。し たがって,上記原告の主張はその前提を欠くものであって失当である。
また,原告は,本件実用新案登録の出願後,登録になるまでに何度も手続 補正をしているが,それは,いずれも被告側の指示(手続補正指令書)に従 って手続補正書を提出したものであり,被告側の指示に従って手続補正を繰 り返した結果,ようやく登録が認められたにもかかわらず,本件実用新案登 録の出願時のものとは異なるという理由で,出願時遡及を認めないのは理不 尽であるとも主張する。 しかしながら,証拠(甲2の1,4,6,8の1,8の2,11)によれ ば,手続補正指令書による被告の補正命令は,いずれも実用新案法6条の2 第1号又は第4号に関するものであって,補正後の明細書等の具体的内容を 指示したものではない。また,各手続補正指令書において,その都度,補正 した事項が出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であるように十分\n留意する必要がある旨の注意喚起もなされている(更に付け加えれば,出願 手続には専門知識が要求されるので,専門家である弁理士に相談することの 促しもなされている。)。 それにもかかわらず,本件実用新案登録の登録時における明細書等の内容 が,新規事項の追加によって出願時のそれと異なるものとなり,その結果, 特許法46条の2第2項による出願時遡及が認められないこととなったのは, 原告自身の責任によるものというほかない。したがって,上記原告の主張も また失当である。

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平成28(ネ)10046  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年1月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(1部)は、一部の構成を有していないと判断しました。1審の判断は結論において誤っていないので原審維持です。1審は進歩性なしとして非侵害の判断をしていました。なお、特許庁は、屈折率の測定方法に関する訂正事項が訂正要件を見たしていると判断してました。
 前記アによると,本件各明細書には,樹脂組成物の屈折率について「硬化樹 脂層の屈折率測定方法は,JIS K 7142の「プラスチックの屈折率測定方 法」(Determination of the refractive in dex of plastics)に従う。具体的には,ガラス繊維織物が含まれ ていない硬化性樹脂のフィルムを,ガラス繊維織物を含む場合と同じ条件で作成し, アッベ屈折計を用いて測定する。」と記載されていることが認められる。したがって, 樹脂組成物の屈折率については,「JIS K 7142」(甲203)に規定され たA法(板状またはフィルム状試験片に適用)とB法(粉末状,ペレット状,顆粒 状サンプルに適用)のうち,アッベ屈折計を用いるとされるA法により測定される ことが記載されていると認められる。 これに対し,ガラス組成物の屈折率については,いくつかの測定方法があり,測 定方法が相違すると測定値も異なることがあることは前記認定のとおりであるけれ ども,本件各特許の特許請求の範囲の記載では,ガラス組成物の屈折率の測定方法 が特定されていないし,また,本件各明細書における発明の詳細な説明にも,ガラ ス組成物の屈折率の測定方法は明記されていないことが認められる。 もっとも,このような場合であっても,本件各明細書におけるガラス組成物等の 屈折率に関する記載を合理的に解釈し,当業者の技術常識も参酌して,ガラス組成 物の屈折率の測定方法を合理的に推認することができるときには,そのように解釈 すべきである。 まず,前記アの本件各明細書の記載においては,特に,ガラス繊維織物に織られ たガラス繊維の品番ECE225,ECG75,ECG37等が特定されているの に対し,そのガラス繊維であるECE225,ECG75,ECG37等の屈折率 が表示されていないこと,その原料であるEガラスの屈折率が1.558であると\n表示されており,表\1におけるガラス繊維織物の屈折率にもその1.558が用い られていることなどを考慮すると,本件各発明における「ガラス繊維織物中のガラ ス繊維を構成するガラス組成物」の「屈折率」は,ガラス繊維の屈折率を測定して\n得られたものではなく,繊維化する前のガラス組成物(原料)の屈折率であると認 めるのが相当である。なお,Eガラスにも各種品目があり,Eガラスの屈折率につ いては,1.548(乙あ93),1.560(乙あ11)のものもあるところ,本 件各明細書においては,Eガラスの中でも,屈折率が1.558のものが用いられ たものと推認することができる。また,本件各明細書には,硬化樹脂の屈折率の測 定方法についての記載があるのに対し,ガラス組成物の屈折率の測定法についての 記載がないのは,ガラス組成物について,商品データベース(甲26)などから, その屈折率が得られることから,独自に測定する必要性がないことによるというこ とができる。前記のとおり,実測によらないガラス組成物の屈折率は,実際のシー ト状態となったガラス繊維の屈折率とは一致しない可能性はあるけれども,上記で\n認定した「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物」の商品カタロ\nグ等における「屈折率」を採用することで,硬化樹脂に埋め込まれたガラス繊維を 分離して,屈折率を測定する煩雑さを回避することができることを考慮すると,こ のような定め方も不合理であるとはいえないし,本件明細書の表1によれば,ガラ\nス繊維の原料であるEガラス組成物の屈折率である1.558を用いた上で,硬化 樹脂との界面の透明性を確保することが可能となっていることが認められる。\n以上によれば,「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物」の「屈\n折率」は,繊維化する前のガラス組成物の屈折率を指すものと認めるのが相当であ る。また,前記認定のとおり,「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組\n成物の屈折率」は,素材メーカーが製品とともに公表したものであることを前提と\nすると,ガラス組成物の屈折率は「JIS K 7142」(プラスチックの屈折率 の測定方法)で測定されたものと解することはできず,むしろ,ガラス組成物(E ガラス)について素材メーカーが一般に採用する合理的な屈折率の測定方法により 測定されたものと解するのが自然な解釈であるといえる。そして,素材メーカーが Eガラスについて商品データベースにおいて表示している屈折率は,小数点以下第\n3位のものが多いことからすると(甲26,乙あ11,93),少なくとも有効数字 が小数点以下第4位まで測定できる測定方法である必要がある。また,証拠(甲4 5,乙あ27,89,108)及び弁論の全趣旨によれば,小数点以下第4位まで 測定できる測定方法としては,精度の高い最小偏角法(精度は約1×10−5)と,次 に精度が高いVブロック法(精度は約2×10−5)及び臨界角法(精度は1×10− 4)のいずれかであると認められるところ,このうち表示される屈折率が上記のとお\nり小数点以下第3位のものが多く,最も精度の高いものまで要求されないことや, Vブロック法による測定が最も簡便であって,試料の作成も容易であること(乙あ 89)を考慮すると,素材メーカーがEガラスについて一般に採用する合理的な屈 折率の測定方法は,Vブロック法であると推認するのが相当である。現に,本件に おいて,控訴人及び被控訴人ユニチカが,本件シートや本件各発明の実施品のガラ ス組成物の屈折率を,専門機関に依頼した上で,Vブロック法で測定していること (甲24,乙あ74,97の1)も,このことを裏付けるものである。 なお,本件各明細書には,樹脂組成物の屈折率については,「JIS K 714 2」に規定されたA法により測定されることが記載されていること,ガラス組成物 の屈折率の測定方法については明確な記載がないものの,「ガラス繊維織物中のガ ラス繊維を構成するガラス組成物」の「屈折率」としては,繊維化する前のガラス\n組成物の屈折率が記載されており,その測定方法は前記のとおりVブロック法であ ると推認されることからすると,樹脂組成物の屈折率の測定方法については,「JI S K 7142」の「B法」を追加する本件各訂正は新規事項の追加であり,ガ ラス組成物の屈折率の測定方法については,「JIS K 7142」を追加し,あ るいはその「B法」を追加する本件各訂正はいずれも新規事項の追加である。 したがって,本件各訂正請求は,特許法126条1項の訂正要件に反するもので あり,本件各訂正請求を認めた審決は未だ確定していないことからすれば(当裁判 所に顕著な事実である。),本件においては,本件防煙垂壁が本件各発明の技術的範 囲に属するか否かについて,本件各訂正請求の内容を考慮せずに判断すべきである (仮に,本件各訂正請求を認める審決が確定すると,本件各訂正発明は,特許法1 23条1項8号の無効理由を有するものとなる。)。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成26(ワ)10848
対応する審決取消訴訟です。

◆平成27(行ケ)10233

◆平成27(行ケ)10234

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平成27(行ケ)10239  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年12月26日  知的財産高等裁判所(第2部)

 無効審判について請求棄却審決が維持されました。取り消し理由の一つが訂正要件違反(実質上拡張変更)でしたが、否定されました。
 そこで,134条の2第9項で準用する126条6項の規定の趣旨や,平成6年 法律第116号による特許法の改正は,あらゆる発明について目的,構成及び効果\nの記載を求めるのではなく,技術の多様化に対応した記載を可能とし,併せて制度\nの国際的調和を図ることを目的として,同法律による改正前の特許法36条4項が 発明の詳細な説明の記載要件として規定していた「発明の目的,構成及び効果」を\n削除したにとどまり,同法126条2項の実質上特許請求の範囲を拡張・変更する 訂正の禁止の規定は,実質的改正はされていないこと(甲60)を踏まえて,以下, 検討する。
・・・
(3) 前記(2)の記載によれば,本件発明1について,次のとおり,認められる。 すなわち,本件発明1は,バラスト水処理装置については,今後設置が義務付け られるにもかかわらず,船舶にその適当な設置場所を確保することが困難な状況に あり,船体設計の大幅な変更を必要とせず,しかも,新造船に設置する場合にも, 既存の船舶を改造して設置する場合にも容易に適用可能な船舶が望まれていたこと\nに鑑み,多種多様な船舶に対して,多種多様な方式のバラスト水処理装置を船内適 所に容易に設置可能とする船舶を提供することを目的とするものである(【000\n5】〜【0007】)。 そして,本件発明1は,この課題を解決するために,船舶後方で,吃水線よりも 上方に位置する舵取機室内に,バラスト水処理装置を配設するという手段を採用し た(【0008】)。 その結果,バラスト水処理装置を船舶後方の舵取機室内に配設したことから,船 体構造や船型を大きく変更することなく,船舶内の空間を有効利用して種々のバラ\nスト水処理装置を容易に設置することができ,また,バラスト水処理装置を配設し た舵取機室が吃水線よりも上方に位置することから,緊急時にバラスト水を容易に 船外へ排水することができるという効果を奏する(【0009】)。
(4) これに対し,訂正事項1は,1)「バラスト水処理装置」によって「バラス ト水中の微生物類を処理して除去または死滅させる」時期を,「バラスト水の取水時 または排水時」という択一的な記載から「バラスト水の取水時」という限定的な記 載に変更し(構成要件A),2)「バラストタンク」及び「バラスト水配管系統に設け られ,機関室に設置されたバラストポンプ」についての記載を追加し(構成要件A),\n3)構成要件Bないし構\成要件Eについての記載を追加し,さらに,4)「緊急時に前 記バラスト水処理装置からバラスト水を船外に排水できるように構成する」との記\n載を追加する(構成要件G)ものであり,それによって「船舶」の発明である本件\n発明1を限定し,同じく「船舶」の発明である本件訂正発明1とするものである。 これらのうち,1)バラスト水処理装置へのバラスト水の供給時期が択一的であっ たものを1つの時期に限定した点は,本件発明1に新たな構成を付加するものでは\nなく,本件発明1の課題に含まれない新たな課題を解決するものではないことは明 らかである。
2)バラストタンク,バラスト水配管系統及びバラストポンプの記載を追加した点 は,本件発明1に新たな構成を付加するものであるが,本件発明1は,バラスト水\n処理装置を備えた船舶の発明であり,バラスト水処理装置を備えた船舶において, バラスト水を積載するバラストタンク,バラスト水の配管系統,バラスト水の取水 と排水のためのバラストポンプが備えられていることは周知の事項であるから(甲 30〜甲33),これらの記載の追加は,本件発明1の課題に含まれない新たな課題 を解決するものではない。
3)構成要件Bないし構\成要件Eについての記載を追加した点は,本件発明1に新 たな構成を付加するものであるが,本件発明1は,バラスト水処理装置を備えた船\n舶の発明であるところ,構成要件Bないし構\成要件Eは,バラスト水処理装置を備 えた船舶において備えられているバラスト水配管系統の構成について,バラスト水\n処理装置が装置入口側配管及び装置出口側配管を介してバラスト水配管系統と連結 され(構成要件B),装置入口側配管,装置出口側配管,連結点間配管に設けられた\n本件各開閉弁と,取水管路の一部を構成するが排水管路の一部を構\成しない処理装 置配管系統,取水管路も排水管路も構成しない連結点間配管を備え(構\成要件C− 1,C−2,D−1,D−2),バラストポンプと装置入口側連結点との間のバラス ト水配管系統に設けられた,バラストポンプから装置入口側連結点へ向かう方向の 流れのみを許容する逆止弁を備えること(構成要件E)を特定して,本件発明1に\nおいて多種多様に構成することが可能\であったバラスト水配管系統の構成を限定し\nているものであって,本件訂正明細書を踏まえて,構成要件Bないし構\成要件Eの 構成を検討しても,その構\成の追加により本件発明1の課題に含まれない新たな課 題を解決するものとは認められない。
4)「緊急時に前記バラスト水処理装置からバラスト水を船外に排水できるように 構成する」との記載を追加した点は,本件発明1に緊急排水用管路という新たな構\ 成を付加するものであるが,前記(2)のとおり,本件発明1の緊急時にバラスト水を 容易に船外へ排水することができるという効果を,当業者にとって自明な構成によ\nり具体化したものにすぎないから,その構成の追加により本件発明1の課題に含ま\nれない新たな課題を解決するものとまでは認め難い。
(5) また,本件発明1及び本件訂正発明1は,物の発明であるが,訂正事項1 の内容からすれば,特許法101条1号及び3号の間接侵害の成立範囲が訂正事項 1により左右されることはおよそ考え難い。 原告らは,訂正事項1により同条2号の間接侵害の成立範囲が広がる可能性があ\nり,具体的には,訂正事項1により追加された配管構造等に関し,これを生産する\n等の行為について同条2号の間接侵害が成立するおそれがあると主張するが,訂正 事項1により同条2号の間接侵害の成立範囲が広がるものとは認められない。すな わち,同条2号の間接侵害は,発明の対象である「物の生産に用いる物」のうち「そ の発明による課題の解決に不可欠なもの」に限って成立するものであり,その成立 範囲は,その発明の構成要件中の本質的部分を実現するために不可欠な部品に限ら\nれるというべきであるが,前記(4)のとおり,訂正事項1により,本件発明1の課題 に含まれない新たな課題が,本件訂正発明1の課題となったものとは認められない。 したがって,たとえ原告ら主張の本件バラスト水配管系統等を現実的に想定できた としても,訂正事項1が,本件訂正発明1の課題に本件発明1の課題と異なる新た な課題を追加するものではない以上,その課題の解決に不可欠なものの範囲,すな わち,その発明の構成要件中の本質的部分を実現するために不可欠な部品の範囲も,\n本件訂正発明1と本件発明1とで異なるものではないというべきであるから,訂正 事項1により同条2号の間接侵害の成立範囲が広がるものとは認められない。

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平成28(行ケ)10036  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年11月28日  知的財産高等裁判所(2部)

 無効理由なしとした審決が維持されました。分割要件、訂正要件、サポート要件など各種争われていますが、中心争点は明細書における発明の開示です。
 前記(1)によれば,本件明細書には,1)技術分野につき,【0002】に は,「この開示は全体的に,リンクされたアイテムを作成するための方法とデバイス に関する。より特定には,この開示は,リンクされた装着可能なアイテムを弾性バ\nンドから作成するための方法とデバイスに関する。」と記載され,2)背景技術につき, 【0003】には,「独自に色付けされたブレスレットまたはネックレスを作るため の材料を含むキットは,常にいくらかの人気を博してきた。しかしながら,そのよ うなキットは通常,異なる色に色付けされた糸およびビーズのような原材料を含む だけで,使用可能で望ましいアイテムを構\\築することは個人の技量と才能に依存す\n る。従って,独自の装着可能なアイテムを作成するための材料を提供するのみでな\nく,望ましく耐久性のある装着可能なアイテムを成功裡に作成することを多くの技\n量および芸術的レベルの人々にとって容易するする(原文ママ)ように構築を簡略化\nもするキットについての必要と願望がある。」と記載され,そして,これに対応して, 3)発明の概要として,【0004】には,「ブルニアンリンク(Brunnian link)とは,チ ェインを形成するために,別の閉じたループを捕捉するようにそれ自体上で二重化 された閉じたループから形成されたリンクである。そのようなリンクを望ましいや り方で形成するのに,弾性バンドが利用されることができる。例示的キットおよび デバイスは,複雑な構成のブルニアンリンク物品の作成を提供する。しかも,例示\n的キットは,ブルニアンリンク組み立て技術を使って独自の装着可能な物品の成功\nする作成を提供する。」と記載されるとともに,4)発明を実施するための形態の説明 の総括として,【0027】には,「従って,例示的キットおよび方法は,ブレスレ ット,ネックレスおよびその他の装着可能なアイテムの作成のためにブルニアンリ\nンクの多くの異なる組み合わせおよび構成の作成を提供する。しかも,例示的キッ\nトは,潜在的なブルニアンリンク作成の能力を更に作り出して拡張するために拡張\n可能である。更には,例示的キットは,そのようなリンクおよびアイテムの簡単な\nやり方での作成を提供して,様々な技量レベルの人々に独自の装着可能なアイテム\nを成功裡に作成することを許容する。」と記載されている。 これらの記載によれば,本件明細書には,ブレスレットやネックレスなどの「独 自の装着可能なアイテム」を作成するキットは,通常,異なる色に色付けされた糸\n及びビーズのような原材料を含むだけであり,アイテムを構築することは個人の技\n量と才能に依存するため,このように材料を提供するのみでなく,アイテムを成功\n裡に作成することを多くの技量及び芸術的レベルの人々にとって容易にするように 構築を簡略化もするキットについての必要と願望があったことに鑑み,アイテムを\nブルニアンリンクアイテムとし,ブルニアンリンク組み立て技術を使ってブルニア ンリンクアイテムを簡単な方法で作成し,様々な技量レベルの人々にブルニアンリ ンクアイテムを成功裡に作成することを許容するキットを提供することが記載され ていると認められる。
イ また,本件明細書において,発明を実施するための形態として,次の(ア) 〜(エ)といった複数のキットが記載されているととともに,前記アのとおり,いずれ のキットによっても,ブルニアンリンクアイテムを簡単な方法で作成し,様々な技 量レベルの人々にブルニアンリンクアイテムを成功裡に作成することを許容するこ とが記載されている(【0027】)
(ア) 単一の列に規定された複数のピン26を有し,各ピン26に,リンク の作成中にゴムバンドの誤った開放を防止するために外向きにフレアー状になった フランジ状上部38と,ピン26の間でゴムバンドの端部を動かすために利用され るフックツール16の挿入のための間隙を提供する前方アクセス溝40が形成され たピンバー14を,3つ横並びに揃えてベース12上にサポートさせて一体構造と\nしたキット(【0009】〜【0015】,【0020】〜【0022】)
(イ) (ア)のキットに対しピンバー14を追加して,例えば5つのピンバー1 4を横並びに揃えてベース12上にサポートさせて一体構造としたキット(【001\n9】)
(ウ) 6つのピンバー14を横並びに揃えてベーステンプレート66上にサ ポートさせて一体構造としたキット(【0024】)
(エ) ベーステンプレート66のサイドに形成されたジョイント80,82 を用いて,例えば2つの(ウ)のキットを縦方向あるいは横方向に連結させて一体構造\nとしたキット(【0025】及び【0026】)
ウ そして,いずれのキットも,複数のピンバー14をベース12ないしベ ーステンプレート66上にサポートさせて一体構造としたものは,ピンバー14及\nびベース12ないしベーステンプレート66が一体をなして複数のピン26をサポ ートする構造にほかならず,このことは,段落【0011】に,「ピン26を望まし\nい揃えでサポートするために,・・・1つまたはいくつかのピンバー14がいくつか のベース12に載置されている。」との記載,すなわち,「ピン26」をサポート対 象とする旨の記載があることからも明らかである。そして,ベーステンプレート6 6も「ベース」の概念であると認められることから,いずれのキットも,複数のピ ンバー14をベース12ないしベーステンプレート66上にサポートさせて一体構\n造としたものは,ブルニアンリンクアイテムを簡単な方法で作成し,様々な技量レ ベルの人々にブルニアンリンクアイテムを成功裡に作成するための,複数のピンが (ピンバーの本体部を介して)ベースに(間接的に)サポートされた構造のもので\nあると理解できる。 そうすると,いずれのキットも,特に「ピンバー」の限定がない,本件発明1の 「一連のリンクからなるアイテムを作成するための装置であって,/ベースと,/ ベース上にサポートされた複数のピンと,を備え,/前記複数のピンの各々は,リ ンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,当該複数のピンの各々の前面側 の開口部とを有し,複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ, 前記ベースから上方に伸びている/装置。」,又は,本件発明6の「一連のリンクか らなるアイテムを作成するためのキットであって,/リンクを望ましい向きに保持 するための上部部分と,複数のピンの各々の前面側の開口部を含み,ベースにより お互いに対してサポートされた複数のピンを備え,/前記複数のピンは,複数の列 に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている,/キット。」 の構成を充足するものであり,いずれのキットも本件発明の実施形態であると認め\nられる。
エ 以上によれば,本件発明の課題は,審決が認定するとおり,個人の技量 に依存することなく,様々な技量レベルの人々に,「ブルニアンリンクアイテム」を 簡単に作成するキットを提供することにあると認められる。
オ そして,本件訂正により,本件明細書は訂正されておらず,前記ア〜エ に記載の点は,本件訂正発明についても該当するものと認められる。 したがって,本件訂正によって本件発明の課題が変更されたとは認められないか ら,これを根拠とする原告の主張は理由がない。
カ これに対し,原告は,本件訂正の前後を問わず,本件発明及び本件訂正 発明〔全部〕の本質は,「ベースとピンバーを様々な向きに組み合わせることにより, 無尽のバリエーションの編み物製品を容易に作成することができる編み機を提供す ること」にあるが,仮に,本件訂正後の発明の本質が審決認定のとおり「個人の技 量に依存することのない『ブルニアンリンク』作成方法を『提供』する」ことに発 明の本質があるのであれば,本件訂正により発明の本質が変更され,特許請求の範 囲を実質的に変更するものであると主張する。 しかしながら,前記のとおり,本件明細書の背景技術(【0003】)には,「独自 に色付けされたブレスレットまたはネックレスを作るための材料を含むキット は,・・・原材料を含むだけで,使用可能で望ましいアイテムを構\\築することは個人 の技量と才能に依存する」という課題があり,「望ましく耐久性のある装着可能\\なア イテムを成功裡に作成することを多くの技量および芸術的レベルの人々にとって容 易」となるように,「構築を簡略化もするキットについての必要と願望がある」こと\nのみが記載されており,原告主張の編み物製品のバリエーションに関する課題(バ リエーションに乏しいこと)は記載されていない。また,発明の概要についてみて も,その冒頭(【0004】)には,ブルニアンリンクの説明や,その作成に弾性バ ンドが利用可能であることに続けて,「例示的キットは,ブルニアンリンク組み立て\n技術を使って独自の装着可能な物品の成功する作成を提供する。」として,「原材料\nを含むだけで,使用可能で望ましいアイテムを構\\築することは個人の技量と才能に\n依存する」という前記課題を解決したことが記載され,原告主張の編み物製品のバ リエーションについて記載されているものではない。 そうすると,本件明細書には,発明の概要に「ベースとピンバーは,完成された リンクの向きの無尽のバリエーションを提供するように,様々な組み合わせおよび 向きに組み立てられ得る。」と記載され(【0005】),また,ベース12ないしベ ーステンプレート66とピンバー14との組合せにより,前記イ(ア)〜(エ)のいず れのキットをも構成し得ることが記載されていることを考慮しても,これらは拡張\n的な機能であって,ベース12とピンバー14を様々な向きに組み合わせることに\nより,無尽のバリエーションを提供することは,本件明細書において必須の技術事 項であるとは認められない。

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平成27(行ケ)10262  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年9月29日  知的財産高等裁判所

 無効理由なしとの審決が維持されました。争点として訂正要件を満たしているのかが争われています。「下端部」を「先端部」とする訂正も新規事項ではないと判断されました。
 原告は,訂正事項1について,審決は,「下端部」が「先端部」と同じ意味 であることは明らかであると断定しているが,本件明細書には「先端部」という記 載はなく,「下端部(自由端部)6a」,「下端部6a」という記載しか存在しないの であるから,本件明細書に全く記載のない全く別概念である「先端部」という表現\nを用いた訂正を行うことは,本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるとは いえず,新規事項を追加するものであり,違法である旨主張する。 しかし,本件明細書の「棚板2は,水平状に広がる平面視四角形の基板4と,基 板4の各辺から上向きに立ち上がっている外壁5と,外壁5の上端に連接した内壁 6とから成っており,」(段落【0016】),「図3(B)に示すように,・・・内壁6のうち外壁5に繋がる連接部11は本実施形態では略平坦状の姿勢になっている。 他方,内壁6の下端部(自由端部)6aは,外壁5に向けて傾斜した傾斜部になっ ている。」(段落【0021】)との記載によれば,図3(B)の実施形態において, 内壁6の上端部は,外壁5との連接部11であり,外壁5に繋がる固定端部である のに対し,内壁6の下端部6aは,自由端部であり,下端部6aよりも先には内壁 6の部分が存在しないことから,内壁6の先端部であると認められる。そして,こ のような内壁6の構造は,本件明細書の図5(A),(B)などにも記載されている\nものである。 したがって,訂正事項1の「先端部」との表現を用いた訂正は,本件明細書に記\n載した事項の範囲内のものであるから,原告の上記主張は採用することができない。 また,原告は,「先端部」という用語は,上下方向に限られない先に位置する部分 を指す語であるから,「先端部」は「下端部」よりも広い部分を指すことになるので, 本件発明において,「下端部」の代わりに「先端部」という語を用いると発明の範囲 を広げることになる旨主張する。 しかし,本件明細書には,「なお,本願発明の棚板は基板の周囲に外壁を備えてい るが,棚板は基板から上向きに立ち上がっていても良いし,下向きに垂下していて も良い。」(段落【0010】)と記載されているところ,後者の外壁が下向きに垂下 する構成を採用する場合,内壁の先端部は下端部ではなく,上端部となることは自\n明である。そうすると,本件明細書に明示的に記載があるのは「下端部」との語の みであるとしても,内壁の先端部について,「下端部」のみならず「上端部」も本件 明細書に記載されているに等しいものと認められるから,本件明細書に記載されて いると認められる事項が「下端部」に限定されるものでないことは明らかである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(イ) 原告は,訂正事項1のうち,「内壁の先端部は前記基板に至ることなく前記 外壁に向かっており」との部分について,本件明細書には,「内壁の先端部が外壁に 到達していない」構成は記載も示唆もされていないのであるから,特許請求の範囲\nにおいてもそのように解釈されるべきであり,内壁の先端部が外壁に到達していな い場合を含む表現である「前記内壁の先端部は・・・前記外壁に向かっており」と\n訂正することは,実質上特許請求の範囲を拡張することに該当し,拡張変更に当ら ないとする審決の判断は誤っていると主張する。 審決が認定するとおり,「向かう」とは「ある場所や方向を目指して進む。また, ある状態に近づく。」(広辞苑:甲11)との意味であり,「内壁の先端部は・・・外 壁に向かっており」とは,内壁の先端部が外壁の方向を目指して延びているとの意 味であると解されるから,「内壁の先端部は・・・外壁に向かっており」との構成は,\n内壁の先端部が外壁の方向を目指して延びていれば足り,内壁の先端部が外壁に到 達しているか否かは問わないものであって,内壁の先端部が外壁に到達している場 合と内壁の先端部が外壁に到達していない場合とを含むものであるといえる。 もっとも,本件明細書(図3,図5(A),(B))には,「内壁の先端部が外壁に 到達していない」構成も記載されていることが認められるから,実質上特許請求の\n範囲を拡張することに該当するとは認められない。なお,本件明細書には,「内壁の 先端部が外壁に到達していない」構成も記載されていることが認められる(図5(J)\n(K))。 そして,訂正事項1は,内壁の先端部についての限定がされていなかった本件訂 正前の請求項1について,本件明細書の図5(D)のような,外壁と重なる「重合 部6b」を有する内壁6の構造などの「内壁の先端部は・・・外壁に向かって」い\nるものではない構成を除外することにより,本件訂正前の請求項1に記載された「内\n壁」を限定するものであると認められる。 したがって,訂正事項1は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する ものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから,原告 の上記主張は採用することができない。

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平成27(行ケ)10229  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年9月28日  知的財産高等裁判所

 補正が新規事項であると判断されました。
 ア 本件技術的事項が,当業者によって,本願当初明細書等の全ての記載を総合 することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入し ないものと認められるかについて検討する。
イ まず,本願当初明細書等には,「空気噴射装置11の正面には圧縮空気噴射 口20が設けられており」,「圧縮空気噴射口20の背面には…電磁弁22が設けら れている」,「空気噴射装置11は支持部材23によって固定されており,支持部材 23には振動センサ24が設置されている」と説明され(【0059】),さらに, 本願当初明細書等の【図面1】ないし【図面3】(別紙1本件補正明細書図面目録 の【図面1】ないし【図面3】に同じ。)には,筐体の正面上部に空気噴射口があ り,筐体の背面上部よりも下方に電磁弁があり,空気噴射口の背面側の位置に,振 動センサの設置された支持部材がある空気噴射装置が描かれている。そうすると, 本願当初明細書等には,本件技術的事項のうち,空気噴射口が正面上部となるよう にみたときの縦方向に着目した上で,2)筐体の正面上部に空気噴射口を設け,筐体 の背面上部よりも下方に電磁弁を設けることを可能にし,空気噴射口の背面側の位\n置に,振動センサの設置された支持部材を設けるという技術的事項については説明 されているということができる。 しかし,本件技術的事項には,空気噴射口が正面上部となるようにみたときの縦 方向に着目した上で,1)筐体の形状を横方向よりも縦方向に長いものとするという 技術的事項も含まれるところ,本願当初明細書等の【図面2】には,横方向よりも 縦方向に短い筐体の形状を備える空気噴射装置が描かれており,本願当初明細書等 には,その他に,空気噴射装置の形状について言及されていない。そうすると,本 願当初明細書等には,本件技術的事項のうち,空気噴射口が正面上部になるように みたときに縦方向に着目した上で,1)筐体の形状を横方向よりも縦方向に長いもの とするという技術的事項については説明されていないというべきである。 ウ よって,本件技術的事項は,当業者によって,本願当初明細書等の全ての記 載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内にあるということはできず, 「空気噴射装置」についてなされた本件補正は,新たな技術的事項を導入しないも のということはできない。
(4) 原告の主張
ア 原告は,本件補正は,空気噴射装置のうち,支持部材によって支持されてい る上方部分と支持されていない下方部分とに着目した場合,支持部材によって支持 されていない下方部分が,支持部材によって支持されている上方部分よりも縦方向 に長いことから,「空気噴射装置」について,「正面上部に前記空気噴射口を設けた 縦長の筐体」としたものである旨主張する。 しかし,前記(2)のとおり,「空気噴射装置」について「縦長の筐体」を備えると いう構成を付加することは,空気噴射口が正面上部となるようにみたときの縦方向\nに着目した上で,筐体の形状,並びに,空気噴射口,電磁弁及び振動センサの設置 された支持部材の位置関係を特定するという技術的事項を追加するものであって, 単に,空気噴射装置のうち,支持部材によって支持されている上方部分と支持され ていない下方部分の縦方向の長さを比較するというものにとどまるものではない。 したがって,原告の前記主張は採用できない。
イ 原告は,本件補正において,「横長」の筐体とすべきところを,「縦長」の筐 体と誤記載をしてしまっただけであると主張するが,本件補正により追加された技 術的事項の認定は,客観的になされるべきものであるから,原告の上記主張は失当 である。

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平成27(行ケ)10216  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年8月29日  知的財産高等裁判所

 クレームの用語について、原文に基づく誤訳訂正を求めました。裁判所は、実質上変更となるとした審決を維持しました。
 (3) 本件公報に接した当業者の認識について
ア 前記(2)イのとおり,本件訂正前の明細書には,燐酸を示す化学式として, ホスホン酸の化学式が6か所にわたり記載されているというのであるから,「スルホ ン酸,燐酸及びカルボン酸からなる群」に含まれない「オクタデシルホスホン酸」 が作用成分として記載されていることとも相まって,本件公報に接した当業者は, 「燐酸」又は「リン酸」という記載か,ホスホン酸の化学式及び「オクタデシルホ スホン酸」という記載のいずれかが誤っており,請求項1の「燐酸」という記載に は「ホスホン酸」の誤訳である可能性があることを認識するものということができ\nる。
イ しかし,更に進んで,本件公報に接した当業者であれば,請求項1の「燐 酸」という記載が「ホスホン酸」の誤訳であることに気付いて,請求項1の「燐酸」 という記載を「ホスホン酸」の趣旨に理解することが当然であるといえるかを検討 すると,前記(1)イのとおり,請求項1の「燐酸」という記載は,それ自体明瞭であ り,技術的見地を踏まえても,「ホスホン酸」の誤訳であることを窺わせるような不 自然な点は見当たらないし,前記(2)アのとおり,本件訂正前の明細書において,「燐 酸」又は「リン酸」という記載は11か所にものぼる上,請求項1の第2の処理溶 液の作用成分を形成するアニオン界面活性剤としてスルホン酸,カルボン酸と並ん で「燐酸」を選択し,その最適な実施形態を確認するための4つの比較実験におい て,燐酸や燐酸基が使用されたことが一貫して記載されている。 そうすると,化学式の記載が万国共通であり,その転記の誤りはあり得ても誤訳 が生じる可能性はないことを考慮しても,本件公報に接した当業者であれば,請求\n項1の「燐酸」という記載が「ホスホン酸」の誤訳であることに気付いて,請求項 1の「燐酸」という記載を「ホスホン酸」の趣旨に理解することが当然であるとい うことはできない。 以上によれば,本件訂正事項(燐酸→ホスホン酸)を訂正することは,本件公報 に記載された特許請求の範囲の表示を信頼する当業者その他不特定多数の一般第三\n者の利益を害することになるものであって,実質上特許請求の範囲を変更するもの であり,126条6項により許されない。

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平成27(行ケ)10245  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年8月24日  知的財産高等裁判所

 新規事項違反なし、サポート要件違反なしとした審決が取り消されました。
 当初明細書等の記載には,前記1(1)のとおり,便器と便座との間隙を形成する手 段としては便座昇降装置が記載されているが,他の手段は,何の記載も示唆もない。 すなわち,補正前発明は,便器と便座との間隙を形成する手段として,便座昇降 装置のみをその技術的要素として特定するものである。 そうすると,便座と便器との間に間隙を設けるための手段として便座昇降装置以 外の手段を導入することは,新たな技術的事項を追加することにほかならず,しか も,上記のとおり,その手段は当初明細書等には記載されていないのであるから, 本件補正は,新規事項を追加するものと認められる。
(3) 被告の主張について
1) 被告は,当初明細書等に接した当業者にとって,便器と便座との間に拭き取 りアームを移動させるための間隙さえ形成されていればよく,その手段が当初明細 書等に例示されたもの限られないということは,自明の事項であると主張する。 しかしながら,便器と便座との間の間隙を形成する手段が自明な事項というには, その手段が明細書に記載されているに等しいと認められるものでなければならず, 単に,他にも手段があり得るという程度では足りない。上記のとおり,当初明細書 等には,便座昇降装置以外の手段については何らの記載も示唆もないのであり,他 の手段が,当業者であれば一義的に導けるほど明らかであるとする根拠も見当たら ない。
2) また,被告は,公開特許公報には,便座昇降装置以外の手段で便器と便座と の間に間隙を設ける技術が開示されているから,当初明細書等に便座昇降装置以外 の手段で便器と便座との間に間隙を設けることは,当初明細書等に実質的に記載さ れていると主張する。 しかしながら,上記の自明な事項の解釈からいって,他に公知技術があるからと いって当該公知技術が明細書に実質的に記載されていることになるものでないこと は,明らかである。のみならず,上記公報に記載された技術は,容器6と座部3と の間に介護者が手を入れられる隙間を設けることを開示しているだけであり,便器 と便座との間に機械的な拭き取りアームが通過する間隙を設けることとは,全く技 術的意義を異にしている。
3) 被告の上記各主張は,いずれも採用することはできない。
・・・
3 取消事由2(サポート要件充足の有無に対する判断の誤り)について
上記2に説示のとおり,当初明細書等には,便座昇降装置により便座が上昇され た際に生じる便器と便座との間の間隙以外の間隙を設ける手段の記載はないところ, 本件発明に係る本件補正後の明細書及び図面(以下「本件明細書」という。甲4。) は,当初明細書等の発明の詳細な説明及び図面と同旨であり,本件明細書にも,便 座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間の間隙以外の間隙 を設ける手段の記載はない。そして,本件発明15のような機械式拭き取り装置の 設置を前提として,便器と便座との間の間隙をどのように形成するかに関して何ら かの技術常識があるとは認められない。 そうすると,便器と便座との間の間隙を形成するに際して,便座昇降装置を用い るものに限定されない本件発明15は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載した ものではなく,サポート要件を充足しないものである。したがって,本件発明15 の発明特定事項を全て含む本件発明23,本件発明25ないし本件発明29,及び 本件発明30(15)もまた,サポート要件を充足しないものである。 以上から,審決のサポート要件充足の有無に対する判断には,誤りがある。

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平成28(ネ)10006  債務不存在確認請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年7月13日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 iPhoneなどのタッチパネルの制御発明について、1審と同じく104条の3で権利公使不能と判断されました。無効審判において訂正を行いましたが、その補正も要旨変更と判断されました。登録時の構\成D、訂正請求時の構成D’および訂正請求を補正した後の構\成要件D”については下記の通りです。
登録時の構成D
「前記カウント手段によりカウントされる指示部位の数に加えて,前記距離算出手段により算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化に応じて前記情報処理装置が所定の動作を行うようにする制御手段と,」

訂正請求時の構成D’(削除された部分を< >で,付加された部分を[ ]で示す。)
「<前記カウント手段によりカウントされる指示部位の数に加えて,>前前記距離算出手段により算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化[,及び前記カウント手段により前記一定の時間においてカウントされる指示部位の数又は該数の過渡的な変化]に応じて[,特定の時間において算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化,及び前記特定の時間においてカウントされる指示部位の数又は該数の過渡的な変化に対応した所定の動作から選ばれる所定の動作を,]前記情報処理装置が行うようにする制御手段と,」

訂正請求を補正した後の構成要件D”(削除された部分を< >で示す。)
「前記距離算出手段により算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化,及び前記カウント手段により前記一定の時間においてカウントされる指示部位の数<又は該数の過渡的な変化>に応じて,特定の時間において算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化,及び前記特定の時間においてカウントされる指示部位の数<又は該数の過渡的な変化>に対応した所定の動作から選ばれる所定の動作を,前記情報処理装置が行うようにする制御手段と」


 マルチタッチパネルシステムにおいて,位置検出手段により検出される2個所の 指示部位の指示位置の間の距離を算出し,算出される指示位置の間の距離又は該距 離の過渡的な変化に応じて所定の動作を行うことは,本件特許の出願前周知の技術 と認められる(甲12の58頁4〜10行目,73頁2〜12行目,甲22の【0 015】〜【0017】【0046】,甲23の【0036】【0037】【図10】 【図11】参照)である。 上記ア(ア)のとおり,甲13発明も2箇所の指示位置の間の距離の相対比又はその 過渡的変化に着目しているものであり,指示位置間の距離又はその過渡的変化を基 礎としているから,甲13発明において,上記周知技術を適用し,その距離算定方 法を構成要件B及Cの距離算定方法に置換することは,当業者が適宜なす程度のことであり,容易に想到できる。
(イ) 控訴人の主張について
控訴人は,相違点1は容易に想到できないと主張するが,相違点B及び相違点C の存在を前提とする主張であり,本件発明1と甲13発明とが,相違点B及び相違 点 C の点で相違するものでないことは,上記アに認定のとおりであるから,その主 張を採用することはできない。
ウ 小括 以上からすれば,本件発明1は,甲13発明及び周知技術に基いて,当業者が容 易に発明することができる。そうすると,本件発明1に係る特許は,特許無効審判 により無効にされるべきものと認められる。

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◆原審はこちら。平成26年(ワ)第371号

◆関連の無効審判事件です。平成27(行ケ)10185

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平成26(ネ)10080等  特許権侵害行為差止等請求控訴事件,同附帯控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年3月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 訂正要件を満たしているのかが争われました。裁判所は、新規事項であると判断しました。
 被控訴人は,本件特許について本件訂正を行ったことに伴い,従前の特許発明に 基づく請求を維持したまま,限定的減縮を行った訂正後の発明に基づいて予備的請\n求を行うところ,特許権者が自らの意思に基づいて訂正請求等を行う以上,特許権 に基づく侵害訴訟においても,これを訂正の再抗弁として位置付けて,訂正後の発 明に基づく請求のみを審理判断すべきものと解されるが,本件では,後記のとおり 訂正発明1に係る訂正自体が不適法であることから,予備的請求1だけでなく主位\n的請求についても審理判断することとする。なお,予備的請求2については,被控\n訴人の主張のとおり,訂正後の請求項4に基づく請求を,訂正の再抗弁として位置 付けて審理判断する。 そして,当裁判所は,主位的請求については,控訴人は本件発明1の技術的範囲 に属する控訴人方法1を使用していると認められる(争点(1)及び(6))が,本件発 明1に係る特許には新規性欠如の無効理由はない(争点(2))ものの,進歩性欠如 の無効理由がある(争点(3))と判断する。また,予備的請求1については,訂正\n発明1に係る本件訂正は不適法であり許容されない(争点(8))上,控訴人が控訴 人方法2を使用しているとは認め難い(争点(9))と判断する。さらに,予備的請\n求2については,控訴人方法3は訂正発明4の技術的範囲に属すると認められる (争点(13))ものの,訂正発明4に係る特許にも進歩性欠如の無効理由がある(争 点(14))と判断する。
・・・
しかしながら,本件明細書には,スピネル型マンガン酸リチウムの製造過程にお いて用いられる電解二酸化マンガンにおけるナトリウム又はカリウムの存在形態, あるいは,「本発明」における製造方法により得られるスピネル型マンガン酸リチ ウムにおけるナトリウム又はカリウムの存在形態を具体的に特定する記載や,これ を示唆する記載は一切見当たらない。 したがって,本件明細書には,「結晶構造中にナトリウムもしくはカリウムを実\n質的に含む」形態を除くスピネル型マンガン酸リチウムについて,少なくとも明示 的な記載はないと認められる。
ウ 「(結晶構造中にナトリウムもしくはカリウムを実質的に含むものを除\nく。)」との事項が,本件明細書の記載から自明な事項であるか否か 次に,「(結晶構造中にナトリウムもしくはカリウムを実質的に含むものを除\nく。)」との事項が,本件明細書の記載から自明な事項であるか,すなわち,本件 出願時の技術常識に照らして,本件明細書に記載されているも同然であると理解す ることができるか否かについて検討する。 (ア) 本件発明1は,電析した二酸化マンガンをナトリウム化合物又はカ リウム化合物で中和し,所定のpH及びナトリウム又はカリウムの含有量とした電 解二酸化マンガンに,リチウム原料と,アルミニウムその他特定の元素のうち少な くとも1種以上の元素で置換されるように当該元素を含む化合物とを加えて混合し, 所定の温度で焼成して作製することを特徴とするスピネル型マンガン酸リチウムの 製造方法であるところ,このような製造方法で製造したスピネル型マンガン酸リチ ウムにおいて,原料として用いられた電解二酸化マンガンの中和に用いられたナト リウム又はカリウムがどのような形態で存在するかについては,本件出願当時,少 なくともこれがLiMn2O4の結晶構造中ではなく,その外側に存在するとの技\n術常識が存在することを認めるに足りる証拠はない。
(イ) 一方,前記5(2)イ(ウ)及び同ウのとおり,乙18文献の記載に照ら して,リチウム二次電池の正極活物質として用いられるLiMn2O4を作製する 際に,ナトリウム,ナトリウム化合物,アンモニウム化合物などの添加剤を混合し て焼成することにより,LiMn2O4の結晶構造中にナトリウムが取り込まれ,\nそれによりマンガンの溶出が抑制されることが知られていたと認められ,また,乙 15文献の記載に照らして,電解二酸化マンガンを水酸化ナトリウムで中和するこ とにより得られた二酸化マンガンは,ナトリウムを含有すること,このような二酸 化マンガンを原料にしてリチウムマンガン複合酸化物を作製すると,二酸化マンガ ン中のナトリウムは,リチウムマンガン複合酸化物中のリチウムイオンの吸蔵放出 サイトに取り込まれることが,広く知られていたと認められる。 そして,本件出願当時,中和剤あるいは添加剤として用いられたナトリウムが, 焼成後のリチウムマンガン複合酸化物やスピネル型マンガン酸リチウムの結晶構造\n中に取り込まれることなく存在する場合があることや,その場合のナトリウムの具 体的な存在形態を示す知見を認めるに足りる証拠はない。
(ウ) これらの事情に加え,ナトリウムを添加剤として添加する場合と, 電解二酸化マンガンの中和に用いる場合とで,焼成時のナトリウムの挙動に差異が あることを示す技術常識が存在すると認めるに足りる証拠はないことに照らせば, スピネル型マンガン酸リチウムの製造工程において用いられる電解二酸化マンガン をナトリウム又はカリウムで中和処理するとの本件明細書の記載に接した当業者は, 中和処理に用いられたナトリウムやカリウムが,焼成後に得られるスピネル型マン ガン酸リチウムの結晶構造中に取り込まれることをごく自然に理解するというべき\nである。これに対し,本件明細書の記載から,本件発明1の製造方法により製造さ れたスピネル型マンガン酸リチウムにおいて,ナトリウムやカリウムがLiMn2 O4の結晶構造中ではなくその外側に存在することを,本件明細書に記載されてい\nるのも同然の事項として理解することは,到底できないというべきである。 さらに,「本発明」におけるスピネル型マンガン酸リチウムの製造の際に用いら れる原料や製造工程の具体的な内容を含む本件明細書の記載を見ても,上記の理解 を否定すべき事情は見当たらない。

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平成27(行ケ)10015  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年3月10日  知的財産高等裁判所

 H5年出願における補正が要件を具備しているのかについて審判では、新規事項でないと判断しました。裁判所は、法令の適用を誤ったが、旧41条と現行の17条の2第3項は判断基準は同じなので、取り消すまでもないと判断しました。
 上記(2)によれば,本件当初明細書には,第一の割り溝をエッチングにより 形成する際に,所定の形状のマスクを形成すること(段落【0008】,【0018】 【0019】),図4は図1に示すウエハーを窒化物半導体層側からみた平面図であ り,図1及び図4では,第一の割り溝は,p型層3をエッチングして,n型層2を 露出するように形成されていること(段落【0012】,【0018】,【0019】),さらに,図4では,p型層3の隅部は半弧状に切り欠いた形状となっており,この 切り欠いた部分にn層の電極を形成できること(段落【0016】)が記載されてい る。上記の切り欠いた部分はn層の電極を形成するためのものであるから,n型層 2が露出していることも技術的に明らかであるといえるものの,本件当初明細書に は,第一の割り溝と切り欠いた部分を同時に形成するのか否かについては,明示的 には記載されていないことが認められる。 しかし,当業者であれば,半導体素子の形成に際して,工程数を削減することは当然に考慮すべき事項であるところ,第一の割り溝と切り欠いた部分はともにエッ チングによりp型層3を除去してn型層2を露出させることにより形成されるもの であるから,同時に形成することが可能であり,本件当初明細書の記載に照らして\nも,p型層3表面を基準とした両者の深さを異なるものにする必要性,すなわち,\n両者を別工程で形成する必要性があるとは認められない。 そして,本件当初明細書の「図1に示すように第一の割り溝を形成すれば,第一 の割り溝の表面に電極を形成することもできる」(【0027】)との記載も併せ考慮\nすれば,本件当初明細書には,p型層3のエッチングにより第一の割り溝を形成す る際に,p型層3上に形成するマスクの形状を矩形の隅部が半弧状に切り欠いた形 状として,第一の割り溝と切り欠いた部分を同時に形成することも当業者にとって 自明な事項であり記載されているに等しいものと認められる。 なお,本件当初明細書には「図4・・・では,p型層3を予めn層の電極が形成\nできる線幅でエッチングして,第一の割り溝11を形成し,さらにp型層3の隅部 を半弧状に切り欠いた形状としており,」(【0016】)との記載があり,「さらに という文言から,第一の割り溝を形成した後に切り欠いた部分を形成するという解 釈の余地もないわけではない。しかし,本件当初明細書の前記記載に照らせば,上 記の「さらに」は,経時的な順序を意味するのではないと解されるから,上記「さ らに」との記載があることは,第一の割り溝と切り欠いた部分を同時に形成するこ とが自明な事項であるとの認定判断を左右するものではないといえる。 したがって,本件特許の請求項1及び請求項1を引用する請求項2ないし4に「前 記ウエハーの窒化ガリウム系化合物半導体層側から第一の割り溝を所望のチップ形 状で線状にエッチングにより形成すると共に,第一の割り溝の一部に電極が形成で きる平面を形成する工程と,」という記載を追加する本件補正は,願書に最初に添付 した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものと認められる。 なお,審決は,本件補正が本件当初明細書に記載した事項の範囲内のものである としたものの,これが旧法53条1項及び同法41条ではなく,現行特許法17条 の2第3項の規定する要件を満たすとの判断をしていると解され,法令の適用を誤 ったものといわざるを得ない。 しかし,同項は,「第一項の規定により明細書,特許請求の範囲又は図面について 補正するときは,・・・願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・ に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」と規定するところ,出願当 初の明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより,補正 が当業者によって,導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導 入しないものであるときは,当該補正は,明細書等に記載した事項の範囲内におい てするものということができ,補正事項が明細書等に明示的に記載されている場合 や,その記載から自明である事項である場合には,そのような補正は,特段の事情 のない限り,新たな技術的事項を導入しないものであると認められ,明細書等に記 載された範囲内においてするものであるということができると解される。 これに対し,旧法41条における明細書等に記載した事項の範囲内についても, 同記載の範囲及び出願時において当業者が当初明細書の記載からみて自明な事項を 含むものと解されるから,現行特許法17条の2第3項の解釈ともこの点において 実質的に異なるものではないということができる。 そして,本件補正が本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものと 認められることは前記認定のとおりである。 以上によれば,審決は,法令の適用を誤ったものの,旧法を適用したとしても判 断内容自体には誤りはないから,本件補正が補正の規定の要件を満たすとの結論に おいても誤りはないといえる。 したがって,審決は,その結論に影響を及ぼす違法があるとまではいえないから, これを取り消すべきものということはできない。

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平成27(行ケ)10115  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年2月24日  知的財産高等裁判所

 補正が限定的減縮でないとした判断は取り消されるべきと判断されました。ただ、補正後のクレームについて独立特許要件なしの判断は誤りはないとして全体としては拒絶審決が維持されています。
 補正前発明は,請求項において「前記光方向変換素子に設けられるホルダ片とを 有し」と特定され,「光方向変換素子」に「ホルダ片」を設けることが記載されると ともに,「前記発光素子から放射される光を入射する入射面と,前記入射面から入射 した光を反射する反射面と,前記反射面で反射した光を屈折して側面方向へ出射す る出射面」を「有する」ことが記載されているところ,この「前記発光素子から放 射される光を入射する入射面と,前記入射面から入射した光を反射する反射面と, 前記反射面で反射した光を屈折して側面方向へ出射する出射面」は,本願明細書の 記載によれば,「光方向変換部」と呼ばれるものである。そうすると,「光方向変換 素子」中には,「光方向変換部」と「ホルダ片」を設ける部分が記載されているもの の,その「ホルダ片」を設ける部分の具体的形状が特定されていないものと解され る。一方,補正発明は,「光方向変換部」を明示するとともに,「光方向変換素子」 の具体的形状,ホルダ片を設ける態様などについて,請求項に記載のとおり「嵌合 部が形成されたケース部」に限定したものである。 そうすると,本件補正は,補正発明の「光方向変換素子」を前記のとおり規定す ることによって,補正発明を特定するために必要な事項を限定するものと認められ る。
イ 産業上の利用分野及び解決課題について
補正発明及び補正前発明は,いずれも,「光源モジュール」であり,両者の産業上 の利用分野は同一である。 また,前記1のとおり,補正発明及び補正前発明の解決しようとする課題は,光 方向の厳密な調整を不要とし,輝度ムラのない光源モジュールを提供することであ る。 したがって,補正発明及び補正前発明の解決しようとする課題は,同一であると 認められる。
ウ よって,本件補正は,補正前発明を特定するために必要な事項を限定す るものであって,補正前発明と補正発明の産業上の利用分野及び解決しようとする 課題は同一であるから,特許法17条の2第5項2号にいう「特許請求の範囲の減 縮」に該当し,これを目的要件違反とした審決の判断は,誤りである。
・・
被告は,本件補正によれば,補正発明は,「光方向変換部」(光学的機能を有する\nもの)により特定されることに加え,「ホルダ片」を嵌合するための手段である「嵌 合部が形成されたケース部」(機械的機能を有するもの)によっても新たに特定され\nることになり,「光方向変換部」により特定される補正前の「光方向変換素子」(光 学的機能を有するもの)を限定するものでないと主張する。\nしかし,前記のとおり,補正前発明の「光方向変換素子」は,請求項1にあると おり,「『入射面』と,・・・『反射面』と,・・・『出射面』とを有する『透明材料』 からなる」もの,すなわち,「光方向変換部」を「有する」,「透明材料」からなるも のであるとともに,「前記光方向変換素子に設けられるホルダ片とを有し」と特定さ れ,「光方向変換素子」に「ホルダ片」を設けるものである(被告は,これを機械的 機能と称する。)から,本件補正は,発明特定事項を新たに追加するものではなく,\n上記主張を採用することはできない。 また,被告は,発明が解決しようとする課題が,補正前発明では,光方向の厳密 な調整を不要とし,輝度ムラのない光源モジュールを提供することであったのに対 し,補正発明では,嵌合部を持つ光方向変換素子を有する光源モジュールを提供す ることを追加しており,本件補正は,発明が解決しようとする課題を追加して変更 するものである旨主張する。 しかし,前記のとおり,補正発明は,補正前発明と同様の課題を有しているが, それに加えて,光方向変換素子がケース部と円形の光方向変換部からなり,ホルダ 片が光変換素子の嵌合凹部11aに内嵌固定されるということが,補正前発明又は 補正発明の課題であることを示す記載は存在せず,ケース部の形状やホルダ片の固 着態様に格別の意義があるとは認められないから,光方変換素子の「光方向変換部」 以外の形状を限定したからといって,新たな課題を追加したものとはいえない。

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平成26(ネ)10109  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年10月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 訂正主張は時機に後れたとはないと判断されたものの、実質上変更に該当すると判断されました。
 被控訴人らは,控訴人による本件訂正に係る訂正の対抗主張は時機 に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)に当たり,却下されるべきで ある旨主張するが,控訴人が,無効2012−800073号の無効審判請 求事件において,本件訂正に係る訂正請求を行うに至った経過(前記第2の 2の「前提事実」(3))及び原判決の判断内容等に鑑みれば,控訴人が,当審 で提出した平成27年3月20日付け控訴人第2準備書面において初めて本 件訂正に係る訂正の対抗主張を行ったことが,時機に後れたものということ はできないから,被控訴人らの上記主張は理由がない。
・・・
そこで,以上を踏まえて検討するに,本件訂正における訂正事項1)は,本件訂正前の請求項1について,同請求項の「水溶性かつ生体 内溶解性の高分子物質」の前に「シート状の支持体の少なくとも一方 の面に経皮吸収製剤が1又は2個以上保持され,皮膚に押し当てられ ることにより前記皮膚吸収製剤が皮膚に挿入される経皮吸収製剤保持 シートであって,」(構成要件O)を新たに加え,同請求項の「経皮\n吸収剤。」(構成要件G)を「である,経皮吸収製剤保持シート。」\n(構成要件H’)に訂正するというものであり,発明の対象を「経皮\n吸収製剤」という物の発明から「経皮吸収製剤保持シート」という物 の発明に変更するものといえる。 そして,1)本件訂正前の特許請求の範囲中には,請求項19として, 「シート状の支持体の少なくとも一方の面に請求項1〜17のいずれ かに記載の経皮吸収製剤が1又は2個以上保持され,皮膚に押し当て られることにより前記皮膚吸収製剤が皮膚に挿入される経皮吸収製剤 保持シート」との記載があり,「経皮吸収製剤」の発明とは別に, 「経皮吸収製剤保持シート」の発明の記載があること,2)本件明細書 には,「経皮吸収製剤」の発明は,「難経皮吸収性の薬物等であって も高い効率で皮膚から目的物質を吸収させることができる」という効 果(段落【0059】)を奏することが,「経皮吸収製剤保持シート」 の発明は,「本発明の経皮吸収製剤を簡便かつ効率的に投与すること ができる」という効果(段落【0060】)を奏することが記載され るなど,「経皮吸収製剤」の発明と「経皮吸収製剤保持シート」の発 明とは,構成及び効果を異にする別個の発明として開示されているこ\nとを併せ考慮すると,本件訂正前の請求項1の「経皮吸収製剤」とい う物の発明を「経皮吸収製剤保持シート」という物の発明に変更する 訂正事項1)に係る訂正は,実質上特許請求の範囲を変更するものとし て,特許法134条の2第9項において準用する同法126条6項に 違反するものと認められる。仮にこのような物の発明の対象を変更す る訂正が許されるとすれば,「その物の生産にのみ用いる物」又は 「その物の生産に用いる物」の生産等の行為による間接侵害(同法1 01条1号ないし3号)が成立する範囲も異なるものとなり,特許請 求の範囲の記載を信頼する一般第三者の利益を害するおそれがあると いえるから,前記(イ)で述べた同法126条6項の規定の趣旨に反す るといわざるを得ない。他方で,本件においては,請求項19の「経 皮吸収製剤保持シート」の発明について,発明の対象を変更すること なく必要な訂正を行い,当該請求項に基づいて特許権を行使すること も可能であるから,請求項1について,発明の対象の変更となるよう\nな訂正をあえて認めなければ,特許権者である控訴人の権利保護に欠 けるという特段の事情もない。

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平成26(行ケ)10227  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年7月29日  知的財産高等裁判所

 補正が新規事項であるとした審決が維持されました
 これに対し原告は,1)当初明細書等の段落【0041】には,ミキサの 「混合信号」が,「m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)) (3)」の式( 式(3)」)で示されており,式(3)中の「cos(2πfct)」は送信信号,「cos (2πfct+φ(t))」は受信信号(甲15の1,2),「φ(t)」は,「送信お よび受信信号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合)」で あること(段落【0041】),2)当初明細書等の段落【0039】には, 「パルス波形」の「無線周波数信号」である送信信号が「s(t)=u(t)cos(2 πfct+θ) (1)」の式(式(1))で示されており,式(1)(送信信号s(t)) と式(3)(混合信号m(t))とを対比すると,式(1)中の位相角θと式(3)中の 経路差φ(t)が形式的に同等であることは明確であるから,位相角θと経路 差φ(t)は,いずれも,余弦関数の引数の中の瞬時位相として現れており, 信号の位相に関する情報を伝えるものであること,3)「φ(t)」は,一般に 「位相シフト」,「位相オフセット」,「位相差」(甲17の1,2)と呼 ばれていることからすると,「φ(t)」は,「位相シフト」,すなわち,「 位相差信号」を意味すること,4)送信された信号が反射して帰ってくると, その経路距離,すなわち経路差に応じて位相がずれており,「経路差」と「 位相差」は同じものを別の表現で表\したものであることは,当業者にとって 自明であり(甲20の1,2),「経路差(path difference)」と「位相差 (phase difference)」が密接に関連していることは,本願の優先権主張日 当時,一般的な技術常識であったこと,5)当初明細書等の段落【0072】 には,「反射信号に送信信号を乗じ,それより呼吸,心活動,および身体 機能または動作を示すベースバンド信号を出力するように乗算回路を設け\nてもよい。」との記載があること,及び6)当初明細書等の段落【0041 】及び図1(別紙明細書図面参照)の記載によれば,当初明細書等には, 式(3)中の「φ(t)」は,「送信および受信信号の経路差(単一の反射体に より反射が決定される場合)」を表すものであるが,「ベースバンド信号」\nから得ることのできる「位相差信号」でもあり,また,ローパスフィルタ のフィルタリングにより混合信号から2fcを中心とする成分が除去された 後の出力信号は,位相差信号である「φ(t)」となり,この位相差信号に「 動作,呼吸,および心活動に関する情報」を含んでいることが開示されて いるといえるから,位相差信号である「φ(t)」から,「動作,呼吸,およ び心活動に関する情報」を導出できることが記載されているなどとして, 当初明細書等に,補正発明の本件構成に係る技術が記載されている旨主張\nする。 しかしながら,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
(ア) 当初明細書等の段落【0041】中には, 「受信信号と送信信号は,ミキサと呼ばれる一般的な電子機器(アナロ グあるいはデジタル方式)により混合することができる。たとえばCW の場合,混合信号は以下に等しい。 【数3】 m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)) (3) ここでφ(t)は送信および受信信号の経路差(単一の反射体により反射が 決定される場合),γは反射信号の減衰量である。反射体が一定の場合 φ(t)およびm(t)は一定となる。我々に該当する例では,反射体(胸部な ど)が動作しており,m(t)が時間とともに変化する。簡単な例として, 呼吸により胸部が正弦動作している場合, 【数4】 resp(t)=cos(2πfmt) (4) 混合信号は,fm成分(およびフィルタリングにより簡単に除去可能な2f cを中心とする成分)を含んでいる。混合後のローパスフィルタの出力側 の信号を未処理センサ信号と称し,動作,呼吸,および心活動に関する 情報を含んでいる。」との記載があり,「φ(t)」は「送信および受信信 号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合)」であること が示されている。 しかるところ,「位相差」とは,同じ周波数を有し,同じ時点に属す るとされる二つの波の位相の差を意味し,0°〜360°の角度に相当 する値で示されるのに対し(甲17の1(訳文甲17の2),乙2), 「経路差」とは,二つの波の間における波の源と干渉が起きる点との間 の経路の長さの違いを意味するものであり,「経路差」は「位相差」が 生じる一般的な要因となるが(甲22の1(訳文甲22の2)),「位 相差」と「経路差」は,概念的に異なるものである。 また,当初明細書等には,補正発明の特許請求の範囲(本件補正後の 請求項1)の「位相差信号」が「経路差」と同義であることについての 記載はなく,「φ(t)」が本件補正後の請求項1の「位相差信号」あるい は「前記生体対象から反射された前記反射信号と前記生体対象に向けて 送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相 差信号」に相当することについての記載も示唆もない。もっとも,原告 が主張するように,式(1)(送信信号s(t))(当初明細書等の段落【00 39】)と式(3)(混合信号m(t))(同段落【0041】)とを対比する と,式(1)中の位相角θと式(3)中の経路差φ(t)が形式的に同等のもので あり,いずれも,余弦関数の引数の中の瞬時位相として信号の位相に関 する情報を伝えるという点で共通するといえるとしても,このことから 直ちに「φ(t)」が本件補正後の請求項1の「位相差信号」に相当するこ とを認めることはできない。
(イ) 仮に「φ(t)」が送信信号及び受信信号の「経路差」を表すとともに,\nその位相差を示す「位相差信号」を表したものと解する余地があるとし\nても,式(3)(m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)))は,ミキサから 出力された混合信号m(t)に位相差信号としての「φ(t)」の成分が含まれ ていることを示したものにすぎず,プロセッサが「ベースバンド信号」 を分析し,「φ(t)」を決定したことを示したものとはいえないし,当初 明細書等の記載事項全体をみても,プロセッサが「ベースバンド信号」 を分析し,「φ(t)」を決定し,又は決定することができることを示す記 載はない。 また,当初明細書等には,プロセッサが,「φ(t)」又は「位相差信号」 から「呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上の測定\n結果を導出」し,又は導出することができることについての記載はない。 (ウ) 以上によれば,当初明細書等には,式(3)中の「φ(t)」が,本件補 正後の請求項1の「位相差信号」あるいは「前記生体対象から反射され た前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(R F)のパルス信号との位相差を示す位相差信号」に相当することについ ての開示があるものとはいえないし,また,プロセッサが「ベースバン ド信号」を分析し,「φ(t)」を決定し,「φ(t)」から「呼吸,心活動, および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出」すること\nについての開示があるものともいえないから,当初明細書等に補正発明 の本件構成に係る技術が記載されているとの原告の主張は,理由がない。\n

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平成26(行ケ)10158  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年7月16日  知的財産高等裁判所

 審判請求時にした補正書に該当するか否かが争われました。裁判所は実質的に判断して補正書に該当すると認定し、拒絶審決を取り消しました。
 特許法17条の2第1項4号は,特許出願人は,拒絶査定不服審判を請 求する場合には,その審判請求と同時に願書に添付した明細書,特許請求 の範囲又は図面について補正をすることができる旨規定し,同法17条4 項は,手続の補正(手数料の納付を除く。)をするには,手続補正書を提 出しなければならない旨規定し,また,特許法施行規則11条1項は,手 続補正書の様式に関し,手続の補正は,「様式13」によりしなければな らない旨規定している。 そこで,本件書面1が様式13に適合するかどうかについて検討するに, 様式13は,「【書類名】」欄に「手続補正書」,「【あて先】」欄に「特 許長官 殿」とそれぞれ記載し,「【事件の表示】」の「【出願番号】」\n欄,【補正をする者】の「【識別番号】」欄,「【住所又は居所】」欄及 び【氏名又は名称】」欄,【代理人】の「【識別番号】」欄,「【住所又 は居所】」欄及び「【氏名又は名称】」欄,「【発送番号】」欄」,「【手 続補正1】」の「【補正対象書類名】」欄,「【補正対象項目名】」欄, 「【補正方法】」欄及び「【補正の内容】」欄を設け,その各欄に具体的 に記載すべき旨定めているところ,前記ア(ウ)によれば,本件書面1は, 「【補正対象項目名】」欄と記載すべきところを「【補正対象項目】」欄 と記載し,「【代理人】」の「【識別番号】」欄の記載がないほかは,様 式13の定めに従った記載がされているものと認められる。 しかるところ,「【補正対象項目名】」欄の欄名を「【補正対象項目】」 と記載したことは,単なる誤記にすぎず,職権訂正の対象となる事柄であ るものと認められる。 次に,様式13の「[備考]」の「2」に「識別ラベルをはり付けるこ とにより印を省略するときは,識別ラベルは「「【氏名又は名称】」(法 人にあつては「【代表?】」)の横にはるものとする。」との記載がある ことからすると,【代理人】の「【識別番号】」欄は識別ラベルを貼付す\nる方法によって記載することができ,また,代理人がその押印をすること により「【識別番号】」欄の記載を要しないものと認められる。本件書面 1には,【代理人】の「【氏名又は名称】」欄に記載されたCの押印はな く,「【識別番号】」欄の記載も,識別ラベルの貼付もないが,前記ア(ア )のとおり,Cは特許庁の窓口(出願支援課窓口)に訪れて,本件審判請求 書とともに,本件書面1を含む書類を提出していること,本件審判請求書 の【代理人】の「【氏名又は名称】」欄には,Cの氏名が記載され,その 押印がされていること(乙6の1枚目)に鑑みると,上記の点は,窓口の 担当者がCに本件書面1への押印を求めることなどにより補正可能な軽微\nな瑕疵にすぎないものと認められる。 さらに,様式13には,「【提出日】」について,括弧書きで「(【提 出日】 平成 年 月 日)」と記載され,それが任意的記載事項であっ て,必要的記載事項に当たらないことが示されている。この点に関し,本 件書面1には,「【提出日】」欄に「平成22年12月 日」との記載が あるが,この記載は具体的な日を特定するものではなく,「【提出日】」 の記載に当たらないといえるから,本件書面1には,具体的な「【提出日 】」の記載がないものとして取り扱うべきものといえる。 以上によれば,本件書面1は,本願の特許請求の範囲の補正を内容とす る書面であって,様式13に適合する手続補正書と認めるのが相当である。
ウ そして,本件審判請求書の「3・立証の趣旨」に,「拒絶されるべきで ない理由」として記載されている主たる理由は,平成20年10月10日 付け手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし16につい て補正をすることで拒絶理由を解消するという内容のものであり(乙6の 5頁ないし9頁記載の「(拒絶理由1)」ないし「(拒絶理由4)」に対 する反論部分を参照),しかも,本件審判請求書の「4・むすび」には, 「したがって,本願発明は引用文献1〜10に記載された発明の内容に関 項を2つにまとめ, よって原査定を取り消す,この出願の発明はこれを特許すべきものとする, との審決をもとめる.」(乙6の10頁〜11頁)との記載がある。これ らの記載は,本願の特許請求の範囲が平成20年10月10日付け手続補 正による補正後の請求項1ないし16から本件書面1記載の請求項1及び 2に補正されたことを前提としたものであることは明らかである。 もっとも,本件審判請求書の「【提出物件の目録】」欄には,「【物件 名】」として,「1・手続補正書 1」及び「7・手続補正書 1」との 記載があり,「1・手続補正書 1」に対応するものとして本件書面1が, 「1・手続補正書 7」に対応するものとして本件書面2が提出されてい るが(前記第2の1(2)ウ),本件書面2(甲45,乙6)には,「【提出 日】」欄に平成22年10月5日,「【補正の内容】」欄に請求項1ない し3がそれぞれ記載され,「22.10.6」と刻印された特許庁国際出 願課名義の日付印が押印されていることに照らすと,本件書面2は,本件 審判請求書の提出日(平成23年12月26日)より前に提出された手続 補正書であり,本件審判請求書の前提とする「請求項を2つにまとめ」る 手続補正に係る手続補正書に当たらないことは明らかである。 さらに,本件においては,拒絶査定不服審判請求書の「【提出物件の目 録】」欄に,拒絶査定不服審判請求と同時にする「手続補正書」を記載し てはならないことを定めた法令が存在することや特許庁がそのような運用 基準を定めて公表していることについての主張立証はない。
エ 前記イ及びウによれば,本件書面1は,本件審判請求書と同時に特許庁 に提出された,本願の特許請求の範囲の補正を内容とする様式13に適合 する手続補正書であるから,特許法17条の2第1項4号に基づく補正に 係る手続補正書に該当するものと認められる。 そうすると,本件審判手続においては,本件書面による補正が特許法1 7条の2第3項ないし5項所定の補正の要件に適合するかどうかについて 審理判断を行い,適法であれば,本件書面による補正後の特許請求の範囲 (請求項1及び2)の記載に基づいて発明の要旨認定を行い,その特許要 件について審理判断を行うべきであったものであるが,本件審決には,本 件書面1による補正がされたことを看過し,上記審理判断を行うことなく, 本件書面による補正前の特許請求の範囲の記載に基づいて発明の要旨認定 を行った誤りがあり,この誤りは,審決の結論に影響を及ぼすべきものと 認められる。

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平成26(行ケ)10242  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月10日  知的財産高等裁判所

 補正が新規事項とした審決が取り消されました。争点となった文言は、「(8) シュレッダ−補助器の横幅は,約35cmであるが,これはメ−カ−や機種により,シュレッダ−機本体の刃部分の横幅が異なる為,約35cmとしたが,A3用紙が余裕を持って縦に入る位の横幅であり,」を「(8) シュレッダ−補助器の横幅は,メ−カ−や機種により,シュレッダ−機本体の刃部分の横幅が異なる為,各メ−カ−の各機種の刃部分の横幅に入る様に対応させた横幅の長さとする。」とした補正です。
 公報を見ると、実案を基礎とした特許出願ですが、代理人無しの本人出願です。
 前記第2の2(1)のとおりの当初請求項1の内容及び前記1のとおりの明細 書及び図面の内容によれば,当初明細書等には,シュレッダー機本体の刃部分 による幼児の指切断等の怪我を未然に防ぐために,シュレッダー機本体の刃部 分の上方に取り付けて,幼児の指がシュレッダー機本体の刃部分に届かないよ うにするシュレッダー補助器が開示されており,その具体的な構成は,シュレ\nッダー補助器本体,ストッパー及び金属製爪部分から成り,シュレッダー機本 体紙差込口を金属製爪部分で挟み込むことによって,シュレッダー補助器本体 がストッパーによって同差込口を覆うように取り付けられ,これによって,シ ュレッダー機本体の刃部分に幼児の指が届かなくなるというものであると認め られる。 そして,当初請求項1の(8)にも「メ−カ−や機種により,シュレッダ−機 本体の刃部分の横幅が異なる」と記載されているとおり,シュレッダーは,処 理する紙の大きさ,メーカーや機種により,刃部分の横幅が異なることは明ら かであるが,仮に,本願に係るシュレッダー補助器の横幅がシュレッダー機本 体の紙差込口の横幅に満たないものであるとすれば,シュレッダー補助器によ ってシュレッダー機本体の紙差込口を覆うことのできない領域が生じることと なり,同領域において,幼児の指がシュレッダー機本体の当該刃部分に届くこ とを許し,幼児の指切断等の怪我が生じ得ることとなる。 他方,上記のとおりのシュレッダー補助器の具体的な構成や,図1及び2に\n開示されたその具体的な形状,さらに図4に開示されたシュレッダー機本体へ の装着状況に照らすと,本願に係るシュレッダー補助器は,シュレッダー機本 体の紙差込口が凹んだ溝状となっているものを対象とし,その凹んだ溝状の部 分にストッパーを配置し,ストッパー底部と金属製爪部分とで紙差込口の凹み を形成する壁状の部分を挟み込むように装着するものであると認められるが, 仮に,シュレッダー補助器の横幅がシュレッダー機本体の紙差込口の横幅を超 えた長さであるとすれば,シュレッダー機本体の紙差込口の横幅に合わせて伸 縮可能であるような構\造とするなど,補助器の横幅とシュレッダー機本体の紙 差込口の横幅に違いがあっても(場合によっては大きな違いが生じても),補 助器の装着が可能なように調整する工夫が当然に要求されるはずであるにもか\nかわらず,その点に関する示唆は何らされていないことから,ストッパーが引 っ掛かるなどして凹んだ溝状の部分に配置することができなくなり,シュレッ ダー補助器を装着することができず,発明の技術的課題を解決することができ ないこととなる。 このような当初明細書等に開示された発明の技術的課題及び作用効果,さら にはこれらに開示されたシュレッダー補助器の具体的な形状等に照らすと,当 初明細書等に開示されたシュレッダー補助器の横幅が1つのものに固定されて いたと理解するのは困難であり,むしろ,シュレッダー機本体の紙差込口の横 幅,すなわち,これに相応する刃部分の横幅に対応するものとすることが想定 されていたものと理解すべきことは明らかであるから,本件補正2における補 正事項,すなわち,請求項1の「(8) シュレッダ−補助器の横幅は,メ−カ −や機種により,シュレッダ−機本体の刃部分の横幅が異なる為,各メ−カ− の各機種の刃部分の横幅に入る様に対応させた横幅の長さとする。」との事項, 並びに,明細書【0010】の「「(ネ) シュレッダ−補助器の横幅は,各メ −カ−の各機種の刃部分の横幅に,入るように対応した横幅の長さとし,」及 び「(ヨ) シュレッダ−補助器の横幅は,各メ−カ−の,各機種の刃部分の横 幅に入るように対応した横幅の長さとし,」との事項は,いずれも,当初明細 書等の記載から自明な事項であるというべきである。

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平成26(行ケ)10105等  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年4月23日  知的財産高等裁判所

 判決文が全部で230頁あります。争点の一つが訂正要件違反(「映像番組を代表する情報を出力するカメラ」が「番組情報を出力するカメラ」への訂正)が、実質上の拡張に当たるかです。知財高裁は、実質上の拡張であると判断しました。
 上記記載によれば,本件発明22の「デジタル映像記録装置」は,「映像番組を代表する情報を出力するカメラ」を備えることを理解することができる。\nしかるところ,本件訂正前の請求項22には,「映像番組を代表する情\n報」について,その具体的構成を特に規定する記載はなく,また,本件明細書(甲33)の発明の詳細な説明においても,「映像番組を代表\する情報」の具体的構成について述べた記載はない。\n一方で,本件訂正により削除された本件訂正前の請求項34は,・・・というものであり(甲24,33),その記載中には,「映像番組を代表する情報」と「前記映像番組の情報」の用語が区別して用いられている。\n以上によれば,本件訂正前の請求項22の「映像番組を代表する情報」は,その文理上,「映像番組」の情報あるいは「映像番組」に係る情報のうちの「代表\する」情報を意味するものと解される。 次に,本件訂正前の請求項22には,「番組情報をデジタル圧縮する手段」,「前記パーソナルコンピューターを使用したオフライン編集に合った番組情報」,「オンライン編集に合った番組情報」,「前記番組情報」\nとの記載があり,「番組情報」の用語が用いられている。 しかるところ,本件訂正前の請求項22には,「番組情報」について,その具体的構成を特に規定する記載はなく,また,本件明細書の発明の詳細な説明においても,「番組情報」の具体的構\成について述べた記載はない。 本件訂正前の請求項22の記載を全体としてみると,「番組情報」にいう「番組」とは,「映像番組」を意味するものであり,「番組情報」は,「映像番組」の情報あるいは「映像番組」に係る情報をいうものと解される。 そうすると,本件訂正前の請求項22の「映像番組を代表する情報」は,「番組情報」に含まれる情報であって,「番組情報」と上位概念・下位概念の関係にあるものと解される。
イ ・・・上記請求項22の記載によれば,訂正事項2に係る本件訂正により,「映 像番組を代表する情報を出力するカメラ」が「番組情報を出力するカメラ」と訂正されたものであり,この訂正により,「カメラ」が出力する対象が「映像番組を代表\する情報」から「番組情報」に変更されたことを理解することができる。 しかるところ,前記アのとおり,「映像番組を代表する情報」は,「番組情報」に含まれる情報であって,「番組情報」と上位概念・下位概念の関係にあるものと解されるから,本件訂正前の請求項22の「カメラ」が出力する対象は,「映像番組を代表\する情報」であったのが,本件訂正後の請求項22の「カメラ」が出力する対象は,「映像番組を代表する情報」以外の「番組情報」に含まれる情報をも含むものとなり,この点において,本件訂正は,本件訂正前の請求項22について,実質上特許請求の範囲を拡張するものであると認められる。\n

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平成25(行ケ)10131  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年2月5日  知的財産高等裁判所

 審判請求時の補正が独立特許要件を欠く場合には,拒絶理由通知をしなくとも常に補正を却下することができるとする主張は採用できないと判断されました。ただ本件における補正却下は問題なしと判断されました。
 そこで検討するに,平成18年法律第55号による改正前の特許法50条本文は,拒絶査定をしようとする場合は,出願人に対し拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと規定し,同法17条の2第1項1号に基づき,出願人には指定された期間内に補正をする機会が与えられ,これらの規定は,同法159条2項により,拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合にも準用される。この準用の趣旨は,審査段階で示されなかった拒絶理由に基づいて直ちに請求不成立の審決を行うことは,審査段階と異なりその後の補正の機会も設けられていない(もとより審決取消訴訟においては補正をする余地はない。)以上,出願人である審判請求人にとって不意打ちとなり,過酷であるからである。そこで,手続保障の観点から,出願人に意見書の提出の機会を与えて適正な審判の実現を図るとともに,補正の機会を与えることにより,出願された特許発明の保護を図ったものと理解される。この適正な審判の実現と特許発明の保護との調和は,拒絶査定不服審判において審判請求時の補正が行われ,補正後の特許請求の範囲の記載について拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合にも当然妥当するものであって,その後の補正の機会のない審判請求人の手続保障は,同様に重視されるべきものといえる。
以上の点を考慮すると,拒絶査定不服審判において,本件のように審判請求時の補正として限定的減縮がなされ独立特許要件が判断される場合に,仮に査定の理由と全く異なる拒絶の理由を発見したときには,審判請求人に対し拒絶の理由を通知し,意見書の提出及び補正をする機会を与えなければならないと解される。これに対し,当該補正が他の補正の要件を欠いているような場合は,当然,補正を却下すべきであるし,当該補正が限定的減縮に該当するような場合であっても,当業者にとっての周知の技術や技術常識を適用したような限定である場合には,査定の理由と全く異なる拒絶の理由とはいえず,その周知技術や技術常識に関して改めて意見書の提出及び補正をする機会を与えることなく進歩性を否定して補正を却下しても,当業者である審判請求人に過酷とはいえず,手続保障の面で欠けることはないといえよう。そうすると,審判請求時の補正が独立特許要件を欠く場合には,拒絶理由通知をしなくとも常に補正を却下することができるとする被告の主位的主張は,上記の説示に反する限度で採用することができない。
(2) 以上の点を踏まえて更に検討するに,本件において,拒絶査定の理由は,「補正前発明は,当業者が,引用文献1に記載された発明に対して,引用文献2に開示された技術及び周知技術を適用して容易に発明をすることができた」というものであるのに対し,審決の補正却下の理由は,「補正発明は,当業者が,引用文献1に記載された発明に対して周知技術を適用して容易に発明することができた」というものである。そうすると,両者の相違は,引用文献2に開示された技術について,拒絶査定ではこれを公知技術としたのに対し,審決ではこれを周知技術と評価して例示したのであって,審判請求人である原告にとって不意打ちとはいえないから,審判段階の独立特許要件の判断において改めてこの点について意見書の提出及び補正をする機会を与えなくとも,手続保障の面から審決に違背はないといえる。この点について原告は,審決が,拒絶理由通知書及び拒絶査定において引用されなかった参考文献1ないし3を引用しており,これらに対して補正できないことにかんがみれば十分な反論を行うことは困難であり,審理手続を尽くすことができたとはいえないと主張する。しかし,参考文献1ないし3は,審決において周知技術や常套手段を示すものとして引用されたものであり,後記3(2)及び(3)のとおり,いずれも実際に当業者にとっての周知の技術や常套手段を示したものと認められるのであるから,これに対する補正の機会が与えられなくとも(参考文献1及び2は,審判の審尋において示されたものであり,原告からこれらに対する反論として回答書(甲14)が提出されている。),当業者である審査請求人にとって格別の不利益はないものと解され,原告の主張には理由がない。また,原告は,審決が,引用文献1及び2の記載の中から拒絶理由通知書及び拒絶査定で引用した箇所とは異なる箇所を引用しており,審理手続を尽くすことができなかったと主張する。しかし,拒絶理由通知書(甲7)及び拒絶査定(甲10)では,引用文献1の一部を適示して,引用発明の本質的部分である「Internet Explorerのツールバーのボタンからワンクリックで表示中のWebページのサーバのWhois情報を表\\示させるシステム」という技術事項が開示されていることを示したのに対し,審決では,当該摘示箇所を示した上で,引用発明の背景や目的効果等を示すために別途の箇所を摘記したもの認められるから,原告にとって不利益がないことは明らかであり,原告の主張には理由がない。したがって,審決が,補正発明は独立特許要件を満たさないことを理由として,審判段階で改めて拒絶理由通知をすることなく本件補正を却下したことに誤りはなく,原告の主張する取消事由1は理由がない。

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平成26(行ケ)10204  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年3月11日  知的財産高等裁判所

 訂正を認めた審決が取り消されました。理由ですが、使用態様の限定は、経皮吸収製剤という物の発明を減縮するものではないというものです。本件は、無効理由なしとした第1次審決について、知財高裁で取り消され、審判に係属した後、訂正がなされ、訂正を認める、無効理由なしとした審決についての取消訴訟でした。
 原告は,本件発明は「経皮吸収製剤」という物の発明であるから,訂正事項3が特許請求の範囲の減縮に該当するというためには,訂正前の特許請求の範囲から,一定の構成・態様の経皮吸収製剤を除外するものでなければならないのに,訂正事項3は,経皮吸収製剤という医療用針の使用方法を限定したものにすぎず,一定の構\成・態様の経皮吸収製剤を除外するものではないから,特許請求の範囲の減縮には該当しないと主張する(前記第3の1)ので,以下,検討する。 特許法134条の2第1項ただし書は,特許無効審判における訂正は,特許請求の範囲の減縮(1号),誤記又は誤訳の訂正(2号),明瞭でない記載の釈明(3号),他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること(4号)を目的とする場合に限って許容される旨を定めているところ,訂正が特許請求の範囲の減縮(1号)を目的とするものということができるためには,訂正前後の特許請求の範囲の広狭を論じる前提として,訂正前後の特許請求の範囲の記載がそれぞれ技術的に明確であることが必要であるというべきである。 これを訂正事項3について見ると,訂正事項3は,訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「皮膚に挿入される,経皮吸収製剤」とあるのを,「皮膚に挿入される,経皮吸収製剤(但し,・・・及び経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能\に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される経皮吸収製剤を除く)」に訂正するものである。 そうすると,本件発明は,「経皮吸収製剤」という物の発明であるから,本件訂正発明も,「経皮吸収製剤」という物の発明として技術的に明確であることが必要であり,そのためには,訂正事項3によって除かれる「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能\に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される経皮吸収製剤」も,「経皮吸収製剤」という物として技術的に明確であること,言い換えれば,「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能\に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される」という使用態様が,経皮吸収製剤の形状,構造,組成,物性等により経皮吸収製剤自体を特定するものであることが必要というべきである。\nしかし,「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能\に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される」という使用態様によっても,経皮吸収製剤保持用具の構造が変われば,それに応じて経皮吸収製剤の形状や構\造も変わり得るものである。また,「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能\に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される」という使用態様によるか否かによって,経皮吸収製剤自体の組成や物性が決まるというものでもない。 したがって,上記の「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能\に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される」という使用態様は,経皮吸収製剤の形状,構造,組成,物性等により経皮吸収製剤自体を特定するものとはいえない。\n以上のとおり,訂正事項3によって除かれる「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能\に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される経皮吸収製剤」は,「経皮吸収製剤」という物として技術的に明確であるとはいえない。 そうすると,訂正事項3による訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,技術的に明確であるとはいえないから,訂正事項3は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められない。

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平成25(行ケ)10330  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年3月11日  知的財産高等裁判所

 無効理由なしとした審決が取り消されました。理由は新規事項違反の無効理由ありというものです。
 そこで,本件技術を前記1)型及び2)型に適用できるか否かについて検討すると,本件補正前発明は,伝動歯車が「外歯」に限定されているのであるから,伝動外歯歯車は,偏心歯車との噛み合わせの位置関係から各偏心体軸歯車の内側に位置することとなる。ここで,本件当初明細書には,本件発明の構成要件である「伝動外歯歯車は単一の歯車からなり,出力軸(出力部材)に軸受を介して支持され」る構\成が開示されており,伝動外歯歯車と出力軸との関係についてその余の構成は開示されていないところ,伝動外歯歯車と出力軸との上記位置関係を前提とすると,2)型においては,出力部材が内側となることから,「伝動外歯歯車は単一の歯車からなり,出力軸(出力部材)に軸受を介して支持され」る構成を想定できるとしても,1)型においては,下記模式図のとおり,伝動外歯歯車は,減速機の一番外側に位置する出力軸とはかけ離れた位置に存在することとなる。 そうすると,このようなかけ離れた位置にある伝動外歯歯車を出力軸に軸受を介して支持する構成については,当業者であっても明らかではないから,本件技術を外歯揺動型遊星歯車装置に直ちに適用できるということはできない。\nしたがって,本件補正は,新たな技術的事項を導入するものであると認められることから特許法17条の2第3項に違反するものであって,これを適法とした審決の判断には誤りがある。
・・・・
(ア) 被告は,駆動源側のピニオンの回転を複数の偏心体軸に振り分けて伝達する構造に着目すると,本件当初明細書には,駆動源側のピニオンと伝動外歯歯車と偏心体軸歯車との関係が特定された発明が記載されており,「使用用途に応じて装置の中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保することができると共に,動力伝達の更なる円滑化を図ることができる」装置として,「内歯揺動型」の構\成は不可欠ではない「揺動型遊星歯車装置」が記載されているといえる旨主張する。 確かに,本件当初明細書を抽象化して読めば,駆動源側のピニオンと伝動外歯歯車と偏心体軸歯車との関係が特定された発明が記載され,「使用用途に応じて装置の中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保することができると共に,動力伝達の更なる円滑化を図ることができる」装置として,「揺動型遊星歯車装置」が記載されていると解することはできる。 しかし,前記イで判示したとおり,本件当初明細書において開示されている本件 技術は,「複数の偏心体軸の各々に配置された偏心体を介して揺動歯車を揺動回転させる揺動型遊星歯車装置において,前記複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と,該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と,該伝動外歯歯車の回転中心軸と異なる位置に平行に配置されると共に該駆動源側のピニオンが組込まれた中間軸と,を備え,前記中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを回転させ,前記伝動外歯歯車を介して該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達されるように構成する」ものであるところ,これを外歯揺動型遊星歯車装置について適用しようとすると,当業者であっても1)型で実現する方法が不明であって,外歯揺動型遊星歯車装置を含めた技術が本件当初明細書に実質的に記載されているということはできない。

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平成26(行ケ)10057  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年2月18日  知的財産高等裁判所

 いわゆる限定的減縮について、補正前後で1対1対応である必要はなく、「,1)特許請求の範囲の減縮であること,2)補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであること,3)補正前の当該請求項に記載された発明と補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であること」を満たせばよいとの判断基準が示されました。本件では、「請求項1の補正は,補正前の請求項には存在しなかった構成を付加するものというべきである」として、審決が維持されました。\n
 ア 原告は,いわゆる増項補正が特許法17条の2第5項2号所定の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するか否かについては,請求項の数から外形的,抽象的に判断すべきではなく,補正前後の請求項の内容に基づいて,新たに審査すべき必要を生じさせるものであるか否かを個別的,具体的に検討して判断すべきであると主張する(前記第3の1。これに対し,被告は,同項の趣旨が,出願人の便宜と迅速,的確かつ公平な審査との調整の趣旨に基づき,例外的に一定の範囲に限って補正を認めたものであることに照らすと,同項2号は,補正前の請求項と補正後の請求項とが一対一の対応関係にあることを前提としているというべきであり,一対一の対応関係にないような請求項を増加させる補正は,同号かっこ書の規定に該当しないと主張する。そこで,まず,この点について検討する。
イ 特許法17条の2第5項は,「前2項に規定するもののほか,第1項第1号,第3号及び第4号に掲げる場合(同項第1号に掲げる場合にあっては,拒絶理由通知と併せて第50条の2の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は,次に掲げる事項を目的とするものに限る。」と規定し,同項2号は,「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために 必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」と規定している。 特許法17条の2第5項の趣旨は,特許請求の範囲について補正が行われると,審査官は補正後の特許請求の範囲について再度審査を行う必要があるところ,審査の長期化防止及び円滑化のため,最後の拒絶理由通知以降に行う特許請求の範囲の補正について,既に審査においてなされた先行技術文献の調査などの審査結果を有効に活用することができる範囲内に限り補正を認めることにあるものと解される。 そして,同項2号は,単に「特許請求の範囲の減縮」とのみ規定するのではなく,「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの・・・に限る。)」と規定している。その趣旨は,単に「特許請求の範囲の減縮」とのみ規定したのでは,出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内において,請求項に新たな構成要素を付加することにより,特許請求の範囲の減縮を行う補正も「特許請求の範囲の減縮」に含まれることとなることから,このような補正を許容すると,既に審査においてなされた先行技術文献の調査などの審査結果を有効に活用することができなくなり,再度審査を行う必要が生じ,上記17条の2第5項の趣旨に反することになるため,同法36条5項が,「特許請求の範囲には,請求項に区分して,特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。」と規定していることを受けて,請求項に記載したすべての事項のうちの個々の事項を上記規定の趣旨で限定する補正に限る旨を明確化することにあると解される。
ウ 以上のような特許法17条の2第5項2号の規定振り及びその趣旨に照らすと,同号に該当する補正は,多くの場合,補正前の請求項の発明特定事項を限定して減縮補正することにより,補正前の請求項と補正後の請求項とが一対一の対応関係にあるようなものになることが考えられる。しかし,同号が,補正により,単に形式的に請求項の数が増加することがないという意味を含めて,補正前の請求項と補正後の請求項が一対一の対応関係にあることを定めていると解すべき根拠はない。 したがって,被告の前記主張の趣旨が,補正により請求項の数が増加するものはすべからく同号かっこ書の規定に該当しないというのであれば,そのような主張には法的根拠がなく,採用の限りではない。 同号は,かっこ書を含めてその要件を明確に規定しているのであるから,問題となる補正が同号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するといえるためには,それがいわゆる増項補正であるかどうかではなく,1)特許請求の範囲の減縮であること,2)補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであること,3)補正前の当該請求項に記載された発明と補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であること,という要件(以下,上記各要件を単に「1)の要件」のようにいう。)を満たすことが必要であり,かつそれで十分であるというべきである。\nしたがって,原告の前記主張中,これと異なり,補正前後の請求項の内容に基づいて,新たに審査すべき必要を生じさせるものであるか否かを個別的,具体的に判断すべきであるとする部分も採用することができない。
エ ところで,審決は,請求項2を新たに追加する補正は,特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項も目的とするものではない旨を述べるのみであり,上記1)から3)のいずれの要件を欠くことをその判断の理由としたのかは明らかではない。仮に,審決が,請求項2を新たに追加する補正は当然に同項2号所定の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しないと判断したのであるとすれば,判断の手法として,不適当なも のといわざるを得ない。 そこで,項を改めて,請求項1の補正及び請求項2を追加する補正が,原告の主張する特許法17条の2第5項2号所定の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するか否かについて,更に検討する。

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平成26(行ケ)10087  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年1月28日  知的財産高等裁判所

 訂正要件(新規事項)を満たしていないとした審決が取り消されました。
 以上のような本件明細書の記載,特に本件発明7に関する記載とその技術的意義からすれば,本件明細書の記載を見た当業者であれば,可動アームに測定ユニットをどのように取り付けるかは本件発明における本質的な事項ではなく,測定ユニットは,その機能を発揮できるような態様で可動アームに保持されていれば十\分であると理解するものであり,そして,本件特許の出願時における上記技術常識を考慮すれば,可動アームに測定ユニットを取り付ける態様を,「懸下」以外の「埋設」等の態様とすることについても,本件明細書から自明のものであったと認められる。 したがって,本件明細書の記載を総合すれば,測定ユニットを「保持」する可動アームを含む本件訂正は新たな技術的事項を導入するものではなく,本件明細書に記載された事項から自明のものであると認められる。
(2) 審決の判断及び被告の主張について 審決は,測定ユニットを可動アームに取り付ける態様として,「保持」が上位概念,「懸下」,「埋設」及び「立設」がその下位概念であり,本件訂正は,「懸下」に加えて「埋設」や「立設」等の取付態様を含むものであり,本件明細書には「保持」について直接の記載はなく,「保持」が本件明細書における「懸下」の記載から自明な事項でもない理由として,次のアないしウのとおり述べている。しかし,審決のアないしウにおいて述べることは,次のとおり,理由がない。
ア 審決は,測定ユニットを可動アームに埋設した場合,「懸下」に比して「埋設」の態様によって,より速度の速い移動に対応できるとともに,懸下部材が不要となり,部品点数が少なくなるなどの一応の作用効果が生じることについて当事者間に争いがないから,「懸下」に比して「埋設」の態様が自明な事項,すなわち新たな技術的事項を導入しないものとまでいうことができない旨判断した(被告も同旨の主張をする。)。 しかし,審尋(甲32)に対する原告の平成26年1月23日付け回答書(甲34)の記載をみても,原告が上記作用効果が生じることを争っていないと認めることはできない。また,測定ユニットの可動アームへの「懸下」や「埋設」は,その具体的態様によって作用効果が異なるのであるから,測定ユニットの「懸下」を「埋設」にしたからといって,直ちに,より速度の速い移動に対応できるとともに,懸下部材が不要となり,部品点数が少なくなるなどの一応の作用効果が生じると認めることもできない。さらに,測定ユニットの「懸下」と「埋設」に関して,その作用効果において具体的な差異が生じるとしても,そのことは,本件明細書に記載された本件発明7の前記技術的意義とは直接関係のないことであり,また,本件特許の出願時における前記技術常識を考慮すれば,本件訂正発明2が本件明細書に記載された事項から自明であるとの前記認定判断を左右するものではない。 したがって,審決の上記理由から,本件訂正は新たな技術的事項を導入するものであるということはできない。
イ(ア) 審決は,測定ユニットが光照射によるものであれば,通常の構成では「埋設」した場合は原理的には測定ができないことになるが,特別の「配置,構\成」を用いるか,「撮像素子」等の手法を用いて測定することにより,測定が必ずしも不可能ではないということができるから,「測定可能\」な「埋設」の態様は,限定的なものであり,自明な事項であるとはいいきれず,新たな技術的事項を導入しないものとまでいうことはできない旨判断した(被告も同旨の主張をする。)。 しかし,前記(1)で判示したとおり,甲42文献ないし甲45文献によれば,バー コードラベルを斜め方向から読み取ったり,撮像素子で読み取ったりすることは,本件特許の出願当時,技術常識であったと認められる。 そうすると,当業者であれば,可動アームに測定ユニットを「埋設」した場合であっても,測定ユニットの機能が発揮することができるよう,光照射部がバーコードラベルの方向に向くように設置するものと認められ,このような「埋設」の態様は,本件明細書の記載と前記技術常識から自明であるから,「懸下」を「埋設」の態様にしたとしても,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。\n

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平成26(行ケ)10114  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年1月28日  知的財産高等裁判所

 構成要件の一部のみ取り出して特定事項とし,当該特定事項を含む補正発明が発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内にあるかを検討することは、間違いであるとして、拒絶審決が取り消されました。
 審決は,「当該最終レンズの射出側の一部に,前記射出面が他の部分に対して突出して形成される突出部を有し」との特定事項を含む補正発明は,発明の詳細な説明に記載された事項を超えた事項を含むと判断した。 これに対し,原告は,審決が突出部に関する要件の一部を看過したと主張する(前記第3の1)。そこで,当該突出部の構成要件の内容について,以下,検討する。 補正発明は,「前記最終レンズは,前記液体と接する面であって前記照明光が通過する射出領域を一部に含む射出面と,当該最終レンズの射出側の一部に,前記射出面が他の部分に対して突出して形成される突出部を有し,前記第1方向の幅に基づいて規定される,前記突出部の中心は,前記第1方向に関して前記光軸から離れており,前記光軸に対して前記投影領域の中心と同じ側にある」との構成要件(以下「突出部の構\成要件」という。)を備えている。 ここで,「最終レンズ」に形成される「前記突出部の中心は,前記第1方向に関して前記光軸から離れており,前記光軸に対して前記投影領域の中心と同じ側にある」から,その突出部(射出面)は,その形状がどのようなものであれ,光軸から第1方向に関して投影領域の中心と同じ側に離れた位置に中心を有する。さらに,「第1方向」とは,「投影領域の中心は,前記光軸と直交する第1方向に関して前記光軸から離れて」いるという補正発明の構成要件における「第1方向」であり,投影領域の中心が光軸から離れる方向のことである。したがって,光軸から第1方向に関して投影領域の中心と同じ側に離れた位置とは,要するに,光軸から投影領域の中心に向かって離れた位置のことである。\n そうすると,突出部の構成要件は,全体として,最終レンズの突出部(射出面)が,それ自体の形状を問わず,光軸から投影領域の中心に向かって離れた位置に中心を有するという一つの事項を特定するものであるということができる。\n補正発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか否かを判断するに当たっては,突出部の構成要件が全体として特定する上記の一つの事項が発明の詳細な説明に記載されているかどうかを検討すべきである。\nこれに対して,審決は,前記のとおり,突出部の構成要件の一部のみ取り出して特定事項とし,当該特定事項を含む補正発明が発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内にあるかを検討している。したがって,その判断手法には誤りがあるといわざるを得ない。\n

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平成26(行ケ)10124  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年11月19日  知的財産高等裁判所

 訂正事項は新規事項である、および、動機付けがあるとした審決が、取り消されました。
 審決は,図15と図12とは,シート(110)の形状が同様であり,図15の断面図では,永久接着手段(80)が製品の主要面の両面にあることが示されていることからすれば,図12の斜視図には,主要面の下面の接着手段が図示されていないとしても,製品とシートの上下両面とが永久接着手段で接着していると解するのが自然であるとし,これと同様に,図17及び18においても,実際の実施例では製品の主要面の両面が永久接着手段で接着しているのに,下面の接着手段が図示されなかったにすぎないと判断する。 しかし,図12と図15は,シート(110)を有する点で共通するものの,図12と図15の対応関係は明らかではなく,図12の断面図が図15であるとする根拠はないから,図15で示された主要面の両面に配置された永久接着手段が,図12では下面のものが省略されていると断定することはできない。そうすると,透視図である図18の図面において上記のように上面にのみ接着手段が施されている構成が記載されているにもかかわらず,これを無視して,図12の下面に接着手段が記載されていないことを理由として,図17及び18の構\成について,推し量るのは合理的でなく,採用できない。 イ また,審決は,「主要面の一方においてのみ」永久接着手段(80)を設ける構成それ自体は,本件明細書の記載から,当業者にとって自明であるといえるとしても,「切離し部分の中で主要面の一方のみが永久接着手段によりパケットに固定されていることにより,比較的小さな力Fでもって,容易にかつ確実に,切離し部分の切り離しが可能\になり,また,消費者が引っ張っている途中で急に切れたりせずに,安定した形で切り離しを行うことができるという作用効果を奏する構成」という技術的思想が,当業者にとって自明であるとまではいえないとする。そして,\nこの点につき,被告は,「参考図」及び「展開して示した力の作用を示す参考図」において,「上面側において,永久接着手段80から切取線171までの距離ℓ1は短く,下面側において,永久接着手段80から切取線171までの距離ℓ2は長いが,距離ℓ1,ℓ2の長短は,切取線171に加わる引張力fの大小には無関係である。」と主張する。 しかし,前記「参考図」において,個包装製品10をFの力で水平方向に引っ張った場合,永久接着手段80に接着された上面側の包装紙の切取線171部分と接着されていない下面側の包装紙の切取線171部分には,同じ引張力fが働くが,包装紙は,紙,パラフィン紙,金属フォイル,プラスチックフォイル又はこれらの材料の種々の組合せから形成される(【0017】参照)ことから,引張力fにより包装紙に伸びが生じることは自明である。そして,永久接着手段80で接着された部分から切取線171までの上面側の包装紙の距離ℓ1は,永久接着手段80で接着された部分から下面側の切取線171までの包装紙の距離ℓ2より短く,上面側の包装紙と下面側の包装紙は,同じ材質であり,伸びの割合は同じであることから,破断に至るまでに包装紙が伸び得る長さは,前記ℓ1の長さに係る包装紙の方が,前記ℓ2の長さに係る包装紙より短くなる。 したがって,切取線部分171に同じ引張力fが加わった場合,切取線部分において破断まで許容される伸びを超えた場合に,他の部分より弱い切取線部分において破断が生じることから,前記ℓ2の長さに係る包装紙の切取線部分(下面側)より早く前記ℓ1の長さに係る包装紙の切取線部分(上面側)が破断することとなる,すなわち,永久接着手段80により接着されている上面側の包装紙の切取線部分の方が下面側のそれより切り離れやすくなるものと認められる。 以上によれば,永久接着手段(80)が,主要面の一方のみにあれば,原告主張の作用効果を奏することはその構成自体から,当業者にとって自明であると認められ,当該作用効果によって新たな技術的事項が導入されたとすることはできない。
(4) 以上のとおりであるから,請求項1を訂正する事項である訂正事項2は, いわゆる新規事項とは認められず,訂正事項2が,特許法134条の2第9項で準用する同法126条第5項又は6項の規定に違反するということはできない。
・・・・
審決は,甲2発明Aに,甲1の技術を適用すると,適用後の発明は,甲1に記載された上記の消費者にとって有用な作用効果を奏することが,当業者に明らかであるから,甲2発明Aに甲1の技術を適用する動機付けは存在するとした。 しかし,これは,両発明を組み合わせることについての動機付けの判断に当たり,具体的な動機や示唆の有無について検討することなく,単に,組合せ後の発明が消費者にとって有用な作用効果を奏するとの理由で動機付けを肯定しているものであり,事後分析的な不適切な判断といわざるを得ない。
イ そこで,甲2発明Aに甲1発明の技術を適用する動機付けについて検討すると,以下のとおりである。
すなわち,両発明とも,ガムなどの製品(包装体)を箱(収納容器)に収納するパッケージ(容器入り包装体)であり,同じ技術分野に属するものであって,製品(包装体)が取り外された後においても箱(収納容器)内で製品(包装体)を保持することができるようにするという点で課題(効果)を同じくする部分があるものと認められる。 しかし,甲2発明Aは,前記2(2)のとおり,消費者が製品をシート及びハウジングから掴んで容易に取り出すことができ,かつ,多数の製品が取り外された後でも 製品を保持することができることを目的とし,そのために,製品とシートの間の結合(接着)は,製品をシートから容易に取り外すことのできる「剥離可能な」結合(接着)との構\成をとったものである。 これに対し,甲1発明は,容器に収納されている形態の被包装物を,片手で簡便に取り出すことを可能とする容器入り包装体を提供することを目的として,包装体下方部を収納容器に永久的に固着すること,及び包装体の適宜位置に収納容器底面と略平行な切目線を設けること,の2つの要件により,包装体を収納容器から取り出す際,包装体を引っ張るだけで,包装体が切目線の部分で切り離され,包装体を被包装物の一部が露出した状態で取り出すことができるとの構\成をとったものである。 そうすると,当業者は,製品をシートから容易に取り外すことのできる「剥離可能な」結合(接着)との構\成をとった甲2発明Aにおいて,製品とシート間及びシートと箱間の「接着」を「永久的」なものとすることによって,包装体が切目線の部分で切り離されるように構成した甲1発明を組み合わせることはないというべきである。\nよって,甲1の技術を,甲2発明Aに適用して,相違点1に係る本件発明12の構成とすることは,当業者が容易に推考し得たことである,との審決の認定は誤りである。\n

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平成25(行ケ)10292 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年04月23日 知的財産高等裁判所

 補正が限定的減縮には該当しないと審決が維持されました。
 そこで,検討するに,本件補正は,補正前の請求項1(甲1)の末尾の「発光装置」を「光源」と補正するとともに,「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する光源であって」を追加する補正をして,補正後の請求項1(甲7)とする補正事項を含むものであるから,補正前発明における「発光装置」を「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する光源」とするものである。補正前発明における「発光装置」は,本願明細書に示されるように,長尺状の基板と,前記基板上に当該基板の長手方向に沿って一直線状に配列された複数の半導体発光素子と,光波長変換体を含み,前記複数の半導体発光素子を封止する封止部材と,を備え,前記封止部材は,前記複数の半導体発光素子を一括封止するとともに,前記複数の半導体発光素子の配列方向に沿って直線状に前記基板の長手方向の両端縁まで形成され,前記封止部材を平面視した場合,前記封止部材の端部の輪郭線は曲率を有するもの(請求項1,段落【0010】,【0022】,【0027】,【0042】,【0100】,【0105】)である。そして,実施例において,発光装置100につき,以下の図1が示され,さらに,「本発明1の第1の実施形態に係る発光装置を複数個並べる場合」(段落【0095】)として,「発光装置100A」と「発光装置100B」を隣接配置する,以下の図6が示されている。これに対して,補正後の請求項1の「光源」は,「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する光源」であり,補正前発明の「発光装置」を一の方向に隣接して複数配置するものである。そうすると,補正前の請求項1の「発光装置」を補正後の請求項1の「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する光源」とすることは,特許請求の範囲を減縮することにはなるものの,補正前の「発光装置」を,より下位の発明の構成に限定するものではないから,本件補正は,補正前の請求項1における,発明を特定するために必要な事項を限定するものであるということはできない。よって,本件補正に係る請求項1の補正事項は,特許法17条の2第5項2号にいう,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとはいえない。したがって,本件補正は,特許法17条の2第5項2号の要件を満たしておらず,その他同項に定める要件に該当しないことは明らかであるから,本件補正を却下した審決に誤りはない。\n

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平成25(行ケ)10206 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年02月26日 知的財産高等裁判所

 特許庁は、訂正された事項が新規事項でないと判断しましたが、裁判所はこれを否定しました。
 本件訂正は,訂正前の「前記本体ハウジングの開口部を覆う樹脂製のカバー」なる事項を訂正し,訂正後の「前記本体ハウジングの開口部を覆い前記本体ハウジングとは熱膨張率が異なる樹脂製で縦長形状のカバー」とするもので,減縮を目的として,カバーの構成をより具体的に特定したものと認められる。そして,上記訂正後の記載を見れば,「熱膨張率が異なる」とは,本体ハウジングに対してカバーの「熱膨張率が大きい」場合と「熱膨張率が小さい」場合が含まれることになることは,文言上明らかである。イ そこで,本体ハウジングに対して,「熱膨張率が大きい」カバーと「熱膨張率が小さい」カバーの双方が,本件明細書等に記載した範囲のものといえるか否かについて検討する。本件明細書等には,前記(1)アのとおり,「上記従来の回転角検出装置では,ホールIC52を固定するステータコア10をモールド成形した樹脂製のカバー9は,これを取り付ける金属製のスロットルボディー1に比べて熱膨張率が大きい。しかも,このカバー9は,スロットルボディー1の下側部に配置されたモータ4や減速機構5を一括して覆うように縦長の形状に形成されているため,その長手方向の熱変形量が大きくなる。」(段落【0004】),「以上説明した本実施形態(1)では,ホールIC25を固定するステータコア26をモールド成形した樹脂製のカバー24は,これを取り付ける金属製のスロットルボディー15に比べて熱膨張率が大きい。しかも,このカバー24は,スロットルボディー15の下側部に配置されたモータ16や減速機構\\20を一括して覆うように縦長の形状に形成されているため,その長手方向の熱変形量が大きくなる。」(段落【0026】)との記載があり,樹脂製のカバーが金属製のスロットルボディーに比べて「熱膨張率が大きい」ことは明確に記載されていると認められる。一方,樹脂製のカバーが(金属製の)スロットルボディーに比べて「熱膨張率が小さい」ことは明示的に記載されておらず,これを示唆する記載もない。また,本件発明は,前記(1)で認定説示したように,従来の回転角検出装置においては,ホールICを固定するステータコアをモールド成形した樹脂製のカバーは,これを取り付ける金属製のスロットルボディーに比べて熱膨張率が大きく,また,縦長の形状に形成されているため,その長手方向の熱変形量が大きく,しかも,ホールICの磁気検出方向とカバーの長手方向が平行になっていたため,カバーの熱変形によって,磁気検出ギャップ部のギャップやステータコアと磁石とのギャップが変化して,回転角の検出精度が低下するという欠点があったことから,カバーの熱変形による磁気検出素子の出力変動を小さく抑えて,回転角の検出精度を向上することを目的としている。すなわち,本件発明は,樹脂製のカバーが金属製のスロットルボディー(本体ハウジング)に比べて熱膨張率が大きいことを前提とする課題を解決しようとするものであって,樹脂製のカバーがスロットルボディー(本体ハウジング)に比べて熱膨張率が小さいことは想定していない。そして,本件明細書等に記載されたスロットルバルブの回転角検出装置は,自動車のスロットルバルブの回転角検出装置において,エンジンルームからスロットルバルブに到達する熱により,本体ハウジングに相当の熱量が加わることを前提としていることはその構造上自明であるから,そのような熱量の加わる本体ハウジングにカバーよりも熱膨張率の大きい材質を用いることは技術的に想定し難い。なお,段落【0039】に「スロットルバルブの回転角検出装置以外の回転角検出装置に適用しても良い。」との記載があるところ,その実施例や具体的な構\\成が示されているものでなく,これは,回転角の被検出物がスロットルバルブに限定されないものである旨を記載したものにすぎない。スロットルバルブ以外の被検出物を想定したとしても,前記に述べた本件発明の課題及びその解決原理に照らせば,樹脂製のカバーの側が縦長形状で長手方向に膨張することを前提としているのであって,本体ハウジングの側の熱膨張率が,樹脂製のカバーよりも大きいという例は,スロットルバルブの回転角検出装置以外の装置においても,想定されていないというべきである。そうすると,樹脂製のカバーの熱膨張率が本体ハウジングの熱膨張率よりも小さいことは,出願の当初から想定されていたものということはできず,本件訂正により導かれる技術的事項が本件明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項であると認めることはできない。
ウ 被告の主張について
被告は,本件発明1において,「熱膨張率」の限定がなかったのを,訂正によって熱膨張率の限定を加えた減縮訂正であるから,「カバーの熱膨張率が本体ハウジングの熱膨張率よりも小さい」は,本件訂正によって新たに含まれることになったのではなく,本件訂正前から含まれていた事項であると主張する。しかし,前記のとおり,本件訂正が減縮を目的とするものであることはそのとおりであるとしても,新規事項の追加に当たるか否かは,本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものといえるか否かによって決せられる,次元の異なる問題であって,上記主張は採用できない。また,被告は,樹脂製カバーの熱膨張率が本体ハウジングの熱膨張率より大きい例は,熱変形が生じる典型的な事例であって,熱膨張率が小さい例も含まれる旨主張する。本件明細書の段落【0001】,【発明の属する技術分野】においては,自動車の電子スロットルシステムにおけるスロットルバルブの回転軸の回転角検出装置である旨の記載はないが,これ以外の具体的な装置に関する記載や示唆もない。そして,本件発明は,上記イにおいて述べたとおり,スロットルバルブの回転角検出装置以外に用いられるとしても,本体ハウジングが樹脂製カバーよりも熱膨張率が大きい場合は想定されていないと解され,本体ハウジングに比べて樹脂製カバーの熱膨張率が大きい例が,単なる典型例であって,熱膨張率が本体ハウジングより小さい例も含むものであると解することはできない(なお,被告の主張を前提とすると,本件訂正は,スロットルバルブ以外の具体的な被検出物を明らかにすることもないままに,本体ハウジングと樹脂製のカバーの熱膨張率が同一という特定の場合のみを除外するために,特許請求の範囲の「減縮」が行われたことになり,不自然な訂正というほかない。)。よって,被告の上記主張は採用できない。
(3) 審決の判断について
審決は,本件明細書等には,熱膨張率に関して,カバーの熱膨張率が,本体ハウジングの熱膨張率より大きい場合のみが記載されており,小さい場合は記載されているとはいえないことを前提とした上で,本件訂正による「前記本体ハウジングとは熱膨張率が異なる樹脂製のカバー」との事項は,実質的には,「前記本体ハウジングより熱膨張率が大きい樹脂製のカバー」との事項にほかならないとして,本件訂正は新規事項の追加に当たらないと判断した。しかし,「前記本体ハウジングとは熱膨張率が異なる樹脂製のカバー」との文言からすれば,通常,カバーが本体ハウジングより,熱膨張率が大きい場合と小さい場合の両方を含むと明確に理解することができ(現に,本訴において,特許権者である被告は,その両方を含む旨を主張している。),明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しなければ特定できないような事情はないのに,「前記本体ハウジングとは熱膨張率が異なる樹脂製のカバー」の意義を「前記本体ハウジングより熱膨張率が大きい樹脂製のカバー」に限定的に解釈することは相当ではない。したがって,上記のように訂正発明1の技術的内容を限定的に理解した上で,新規事項の追加に当たらないとした審決の認定は誤りであるといわざるを得ない。

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◆関連事件です。平成25(行ケ)10174

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平成25(行ケ)10201 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年02月24日 知的財産高等裁判所

 新規事項であるとした無効審決の取り消しを求めましたが、裁判所は特許庁の判断を維持しました。
 以上を前提に,本件補正により新たな技術的事項が導入されるか否かについて検討するに,前記(1)のとおり,本件補正によると,育苗ポットの側面の全周に段差部が形成されたものや,一つの側壁の全幅に渡って段差部が形成されたものまでが「段差部」に含まれることとなる(技術事項A)が,この場合,段差部において差込み口が形成されている領域と差込み口が形成されていない領域とが区別できなくなり,差込み口の位置を側壁の外面から把握できない結果となる。上記のとおり,差込み口のある側壁部分と他の側壁部分とを区別させる第1凹部の構成は,側壁の外面から差込み口を容易に把握できるという本件発明の技術課題の解決手段として設けられたものであることからすれば,本件補正により第1凹部を設けない場合には,当初発明の技術課題を解決することにはならないから,技術事項Aは,新たに導入した技術的事項に該当するというべきである。
(3) 原告らの主張について
原告らは,第1凹部を,差込み口を設ける部位(段差部(横壁A))と,根巻き防止機能を果たす部位(縦壁B,C)とに,分解して解釈することができるところ,段落【0082】の「第1凹部7には,苗Nの根を底壁3側に導く機能\を持たせず,差込み口9を設けるための部位としての機能だけを持たせるようにしても良い。」との記載から,「横壁Aを,縦壁B,Cを伴わずに形成すること」は,当業者であれば自明であると主張する。確かに,当初明細書の段落【0049】,【0028】,【0029】,【0050】〜【0051】の記載からすれば,「第1凹部7」は,底壁3側に向かって帯状に延びることで,苗の根を底壁側に導き,苗の根が根巻き状態となるのを防止する機能\を有するものと認められ,段落【0082】にあるとおり,この根巻き防止機能を持たせず,差込み口9を設けるための部位としての機能\だけを持たせるようにすることができ,第1凹部は帯状でなくとも,例えば,えくぼ的に窪む構成とし,左右の縦壁が底壁3まで到達しないものであってもよいことが示唆されているといえる。しかし,上記根巻き防止機能\が本件発明7の必須の効果でないとしても,上記(2)で述べたように,側壁の一部が他の側壁の外面よりも収納空間5側に窪むことで,育苗ポットに収納された培土に埋もれて開口面から把握できない差込み口の位置を,側壁の外面から把握することができるという本件発明7の本来的効果からすれば,育苗ポットの側面の全周に段差部が形成されたものや一つの側壁の全幅に渡って段差部が形成されたものまでを含むような構成(技術事項A)は除外されているというべきである。この点,原告らは,側壁を平面視多角形状に形成し,差込み口を,その多角形状に形成された側壁の1の面における周方向の略中央部に形成するとの構\成を備えているから,「育苗ポットの全周に段差部が形成されたもの」であっても,差込み口の水平方向の位置を外部から把握できると主張する。しかし,第1凹部の目印機能については,前記のとおり,側壁の外面から容易に差込み口を認識させるというものであり,略中央に配置することで差込み口を認識できるというのは,当該位置についての別途の情報伝達や経験的認識を前提とするものであり,視覚的に側壁の「外部から容易に」差込み口を把握することとは異なる解決原理に基づく構\成である。また,本件補正によれば,差込み口を有しない部分に「段差」を設けることもでき,その場合には,「段差」が目印機能を有しないことは明らかである。加えて,段落【0085】には,「育苗ポット1の形状や大きさは,かかるものに限定されるものではなく,形状は円筒状や多角形状のものであっても良く」と記載されていることからすれば,当初明細書等の中に,多角形の1の面の略中央に差込み口を配置させる図面等の記載があるとしても,そのような差込み口の配置は,上記の目印機能\を果たすことを意図して設けられたものでないことが明らかである。したがって,原告らの上記主張は採用できない。
3 請求項7に係る本件訂正について
以上のとおり,本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものではないから,平成20年法律第16号改正前の特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。そして,訂正発明7は,前記のとおり,本件発明7に「前記段差部は,少なくともその差込み口が開口されている部分に形成されている」との構成を付加するものであるが,この構\成は,本件発明7の「その段差部の前記開口面を臨む部分に開口され,…表示板を差込む差込み口を有し,」にも実質的に記載されている事項であり,上記の技術事項Aをそのまま残すものであるから,本件訂正によって上記補正の瑕疵がなくなるものではない。したがって,訂正発明7は,平成20年法律第16号改正前の特許法17条の2第3項の規定に違反してなされたものであり,特許法123条1項1号に該当し無効にすべきものである。\n

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平成24(ワ)5664 特許権侵害差止等請求事件 特許権 平成26年02月06日 東京地方裁判所 

 技術的範囲には属するものの、新規事項違反があるとして特104条の3により、権利行使不能と判断されました。\n
 ところで,証拠(甲4)によれば,当初明細書等には「段差部」という語は用いられていないことが認められるほか,当初明細書の発明の詳細な説明には,「この目的を達成するために発明項1記載の育苗ポットは,底壁と,その底壁の縁部から上方に向かって立設する側壁と,その側壁と前記底壁とで囲まれる空間であって苗や培土を収納する収納空間と,その収納空間に培土や苗を入れるために前記側壁の上縁部により形成される開口面と,前記側壁の一部であって,前記側壁の上縁部との間に所定間隔を開けた部分に他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪む第1凹部と,その第1凹部の前記開口面を臨む部分に開口され,前記収納空間に収納される苗に関する情報が表示された表\示板を差込む差込み口とを備えていることを特徴とする育苗ポット。」(段落【0011】),「この発明項1に記載の育苗ポットによれば,苗に関する情報が表示された表\示板は差込み口に差込まれることで育苗ポットに取付けられる。ここで,この差込み口は第1凹部の開口面を臨む部分に開口されているので,収納空間に培土を収納した後に,開口面からは差込み口を把握することはできない。一方,差込み口が開口されている第1凹部は,側壁の一部であって他の側壁の外面よりも収納空間側に窪んだ部分であるので,その第1凹部を目印とすることで,差込み口の位置は,育苗ポットの側壁側から把握される。また,第1凹部は,側壁の上縁部との間に所定間隔を開けた部分に設けられているので,その所定間隔を開けた部分では,差込み口に差込まれた表示板は,側壁の内面と培土とによって挟まれた状態とされる。」(段落【0012】),「発明項1記載の育苗ポットによれば,差込み口が開口されている第1凹部は,側壁の上縁部との間に所定間隔を開けた部分に設けられているので,その所定間隔を開けた部分では,差込み口に差込まれた表\示板は,側壁の内面と培土とによって挟まれた状態とされる。よって,表示板を育苗ポットに対して略直立した状態で固定することができるという効果がある。」(段落【0026】),「通常,表\示板2は,育苗ポット1に培土Bを収納した後に差込み口9に差込まれ,育苗ポット1に取付けられる。また,培土Bは第1凹部7よりも高い位置になるまで収納される。よって,育苗ポット1に培土Bを収納した後には,差込み口9は,培土Bに埋まり,開口面6からは,差込み口9の位置を把握することができない。」(段落【0068】),「また,第1実施例の育苗ポット1のように,側面4に形成された凹部が第1凹部7であるか第2凹部8であるかを判断する必要はなく,側面4に形成された凹部は全て第1凹部7であり,その第1凹部7には差込み口9が開口されているので,収納空間5に培土Bによって差込み口9が埋もれ,差込み口9の位置を外部から把握できなくても,第1凹部7の窪みを目印とすることで,表示板2を差込む位置を外部から容易に判断することができる。」(段落【0079】)との記載があることが認められ,これらによれば,当初明細書における第1凹部は,側壁の一部であって,側壁の上縁部との間に所定間隔を開けた部分に他の側壁の外面よりも収納空間側に窪んでいて,収納空間に培土を収納した場合にその培土によって埋没し,開口面を臨む部分に収納空間に収納される苗に関する情報が表\示された表示板を差込む差込み口を有するものであることが認められる。そして,証拠(甲4)によれば,当初図面には,第1凹部7について,【図1】及び【図6】のような内容が図示されていることが認められる。そうすると,当初明細書等の「第1凹部」(第1凹部7を含\nむ。)が本件発明の「段差部」に対応し,これ以外に,本件発明の「段差部」に対応するものは,当初明細書等において見出すことができない。イ そこで,第1凹部がどのような技術的意義を有するかについて検討するに,証拠(甲4)によれば,当初特許請求の範囲に記載された発明は,苗に関する情報が表示された表\示板を育苗ポットに対して略直立した状態で固定することができると共に,育苗ポット内に培土が収納されている状態であっても,その表示板を取付けるための位置を外部から容易に把握することができる育苗ポット及び表\示板付育苗ポットを提供することを目的とするものであり・・・このうち,目印としての機能は,「育苗ポット内に培土が収納されている状態であっても,その表\示板を取付けるための位置を外部から容易に把握することができる」という発明の目的を実現するための重要な機能であると解されるが,証拠(甲4)によれば,当初明細書の発明の詳細な説明の段落【0027】に,「また,差込み口が開口されている第1凹部は,側壁の一部であって他の側壁の外面よりも収納空間側に窪んだ部分であるので,収納空間に培土を収納し,差込み口が培土に埋もれ,開口面から差込み口の位置を把握することができなくなったとしても,第1凹部を目印とすることで,育苗ポットの側壁側から差込み口の位置を把握することができるという効果がある。」と記載され,実施例では他の側壁4の外面よりも収納空間5側に窪み,側壁4の上縁部との間に所定間隔を空けた位置から底壁3まで帯状に延びる形状とされる(段落【0049】,【0073】,【図1】ないし【図6】)ほか,例えば,えくぼ的に収納空間5側に窪むように形成していてもよいなどとされていること(段落【0082】)が認められるから,これらに照らすと,差込み口が開口される第1凹部は,垂直方向(高さ方向)においても水平方向においても目印としての機能\を果たすべきものであり,かつ,かかる目印としての機能を果たすための第1凹部は,側壁側から差込み口の位置を把握することができる程度の一定の水平方向の幅を有する,側壁の一部分の窪みである必要があると考えられる。\nウ 本件発明の「段差部」が水平方向の一定の幅を有するものに限定されないことは,前記1イのとおりであり,本件発明の「段差部」は,第1凹部と異なるものであって,当初明細書等に記載のない事項であるといわざるを得ない。なお,証拠(甲4)によれば,当初明細書の発明の詳細な説明には,「また,上記実施例では,第1凹部7と第2凹部8とは,側壁4の外面から収納空間5側に窪むように形成する場合について説明した。しかしながら,第1凹部7と第2凹部8とは,側壁4の内面から収納空間5側に突出するように形成しても良い。但し,かかる場合には,側壁4の外面には,差込み口9の位置を示すような目印を設ける必要がある。」(段落【0083】)との記載があることが認められるが,この記載は,第1凹部7が側壁4の内面から収納空間5側に突出するように形成されることにより,側壁4の外面側から第1凹部7の位置を把握することができない場合に限定してのものであって,これを把握することができる場合についてのものではない。そして,上記段落は,その記載内容からして,第1凹部7と第2凹部8を有し,第1凹部が差込み口設置機能,目印としての機能\及び根巻き防止機能を有する実施例の改変例として記載されているものであり,このような実施例における第1凹部7は,他の側壁4の外面よりも収納空間5側に窪み,側壁4の上縁部との間に所定間隔を空けた位置から底壁3まで帯状に延びる形状のものであるから,この記載を根拠として,当初明細書等に段差部についての記載があるということはできない。\nア 原告らは,当初明細書の発明の詳細な説明の段落【0049】及び当初図面の【図2】及び【図5】には,側壁4に形成された他の側壁4の外面よりも収納空間5側に窪んだ段差部が記載,図示されていると主張する。これは,側壁4の1つの面全体に段差部を設けることが記載,図示されているとの趣旨を主張するものと解されるが,証拠(甲4)によれば,同段落は,「また,側壁4には,他の側壁4の外面よりも収納空間5側に窪み,側壁4の上縁部との間に所定間隔を開けた位置から底壁3まで帯状に延びる1つの第1凹部7と3つの第2凹部8とが形成されている。」というもので,これは,【図1】ないし【図4】に基づく実施例の説明としてであって,側壁4の1つの面の上縁部との間に所定間隔を開けた位置から底壁3まで延びる帯状の第1凹部についての記載であり,また,当初図面の【図2】及び【図5】は,上記のとおりの第1凹部を有する実施例の断面図を示すに過ぎないものであると認められるから,当初明細書等の上記の箇所に,側壁4の1の面全体に段差部を設けることが記載,図示されていると認めることはできない。

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平成24(ネ)10049 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年01月27日 知的財産高等裁判所 

 出願中の補正が要旨変更であるとして出願日が繰り下がり、これにより、新規性無しとして無効理由ありとした1審の判断が維持されました。
 上記(3)アのとおり,本件発明と乙54発明とは,X枠の長さを変えずに,かつ,左右側枠に対するX枠上端部の上下位置を変えずに車椅子の巾を調節可能にするための構\成として,下側杆(軸受パイプ41)に軸を挿通しこれを支持するための軸穴を下側杆取付部(軸受ブロック42)に相対して設けるとともに,下側杆の支持部を複数設けるとの点で一致している。また,上記(3)イによれば,乙54発明の軸受パイプ41の支持構造は,本件発明に相当する構\成でいえば,下側杆に挿通され左右側枠に沿う方向に配設されている枢軸が,左右側枠に沿う方向を向く下側杆取付部の軸穴に支持され,下側杆取付部が左右側枠に複数個上下に配列して設けられたねじ穴に支持されるとの一連の技術的機構を備えていたものと理解できる。上記の点にかんがみると,結局,相違点2)´に係る本件発明の構成とは,本件発明の技術課題と直接的な関連を有するものではなく,軸,軸受ブロック,ねじなどを用いた軸受支持構\造に代えて,部材の数を低減させ,軸と両端取付部を用いた軸受支持構造を採用したものであるといえる。しかるに,上記アの認定によれば,乙63文献及び乙5文献には,両端部に縦貫する穴を有する部材を穴を有する対向二片部間に配置するとともに,対向二片部の穴に軸を通してナット等で着脱可能\に接続することで,対向二片部の穴がその間に挿入された穴を有する部材を回動可能に支持する構\造が開示されている。このことからも明らかなように,穴のある軸受部材に着脱可能な軸を接続して軸受部材間に配置された別部材を回動可能\に支持する構造は,本件特許の出願当時,広く一般的に用いられている周知技術であると認められる。そうすると,乙54発明における軸受支持構\造に代えて,部材数を低減させて同等の構成を実現した上記周知技術の軸受支持構\造を採用し,相違点2)´に係る本件発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものといえる。ウ 控訴人の主張に対して控訴人は,本件発明は車椅子の巾調節に当たって工具が不要である効果を有する旨を主張するが,本件発明は,その特許請求の範囲の記載において枢軸の抜止め手段を限定しておらず,ナット等で枢軸の抜止めをする構成も排除されていない。なお,枢軸に抜止め手段を施さないことは,車椅子が通常有すべき安全性の観点からみて,技術上想定し難い(本件発明は枢軸の構\造も限定しておらず,単なる棒状のものとする構成も排除されていない。)。そのほか控訴人がるる主張するところも,本件明細書に記載のない効果をいうものか,乙54発明に前記周知技術を適用して得られた結果から当業者が予\測可能な範囲内のものである。\n

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平成25(ネ)10055 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成26年01月29日 知的財産高等裁判所

 特許権侵害事件です。1審では、審査中に行った補正が特許後に要旨変更と認定され、出願日が繰り下がり、特許無効と判断されました。知財高裁もこれを維持しました。
 控訴人は,発明の要旨認定において,明細書の発明の詳細な説明や図面に記載された発明の技術内容を理解した上で,当該技術分野の技術常識に照らし,出願当時の当業者が特許請求の範囲の記載をどのように理解するかを考慮することが当然の前提となるところ,当業者は,「交換システム」が「送信」の主体として記載されている場合,「交換システムの出口」のような頭脳を有しない,出線の一点が送信の具体的な主体であるとは考えないから,「交換システムが送信する」「交換システムから送信される」「交換システムで受信」との文言について,「交換システムの出口(外部との境界点)から送信する」「交換システムの入口(外部との境界点)で受信」することを意味すると,当業者が第一義的に理解することはあり得ないし,「受信」についても,当業者が「受信」の厳密な意味を理解しようとする場合,受信が望まれる「所定のウィンドウ時間」がいかなるものかについての検討が不可避となるから,「交換システムで受信」という文言に接した当業者が,「交換システムの入口」が受信場所になるなどと第一義的に理解することはあり得ないなどと主張する。しかしながら,引用にかかる原判決第4の1アないしオのとおり,本件発明の特許請求の範囲の記載の「交換システム」という文言は,これらの機能を担う手段が一定の形状や構\造を有する実体を伴う意義を有すること,本件発明における「送信」及び「受信」という文言も,「外へ(送信)」及び「外から(受信)」という意義を当然に含んでいるということができることなどからすると,「交換システム」による「送信」及び「受信」とは,「交換システム」の内部手段と区別された外への出口及び外からの入口において行われることを示すことは明らかであって,本件特許の出願人が,「送信」及び「受信」の主体を,あえて「交換システム」であるとした以上,上記解釈が技術常識を無視したものということはできない。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
イ 控訴人は,当業者はトラヒックが「決定論的」に送られるボコーダ以降の場所のような,全く本件発明の課題が生じ得ないような場所での制御を構成要件F2が規定するものではないことを自然に理解すること,バッファは常に交換システムの内部に設置されるものであること,「個々の呼のトラヒック」についてされる送信時刻の制御は,「複数の呼のトラヒック」が既に多重化されている交換システムの出口では行うことができないし,エコー・キャンセラーの後の「出口」においても同様に制御を行うことはできないことから,当業者は構\成要件F2が規定する制御が「出口」における制御を含むと理解するとは考え難いなどと主張する。しかしながら,控訴人の上記主張は,本件発明の特許請求の範囲の記載が,送信時刻について,交換システムのいずれの部分における送信時刻であるかについて限定していないことを前提とするものであるが,本件発明では,「交換システム」が備える「第2の手段」において,入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御するものであると認められること,本件発明の特許請求の範囲の記載において,バッファ,エコー・キャンセラー及びマルチプレクサが必須の構成であるとはされていないことからすると,控訴人の主張はその前提を欠き理由がないというべきである。\n

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平成24(行ケ)10425 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年09月10日 知的財産高等裁判所

 新規事項であるとした審決が取り消されました。
(3) 【0030】の記載事項
本件発明6の構成である「非防爆エリア」について,前記のとおり,当初明細書の【0030】に,「また,舵取機室9は非防爆エリアであるから,各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点もある。」と記載されている。ここに記載された利点は,文理上,舵取機室の副次的な効果として述べられている。しかし,当該記載に接した当業者は,この効果は舵取機室に限定されるものではなく,舵取機室とは別次元の「非防爆エリア」の一般的な効果として理解するというべきである。その理由は,以下のとおりである。まず,「非防爆エリア」の意味およびその具体的な場所が当業者の技術常識であることは,上述したとおりである。「非防爆エリア」は,「電気機器の構\造,設置及び使用について特に考慮しなければならないほどの爆発性混合気が存在しない区画又は区域」を意味するから,「非防爆エリア」であれば,そこに配置される電気機器の構造,設置及び使用について特に考慮する必要がないことは当然で,その結果として,「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点」があることも明白である。すなわち,「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点」は,「非防爆エリア」の裏返しであって,「非防爆エリア」が備える当然の効果を述べているものである。そうすると,当初明細書の趣旨が全体として舵取機室に主眼を置かれており,【0030】の記載が操舵機室の効果を文理上述べているとしても,【0030】の記載に接した当業者は,「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点」が舵取機室特有の効果であると理解することはなく,舵取機室には限定されない,より広義の「非防爆エリア」に着目した効果であると即座に理解するものと認めることができる。そして,かかる理解の下,「非防爆エリア」についても,舵取機室とはほとんど無関係な単独の構\成として理解するというというべきである。よって,【0030】の記載から,バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設する構成によって,「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむ」という効果を奏する,ひとまとまりの技術的思想を読み取ることができ,本件発明6の「非防爆エリア」は,【0030】において実質的に記載されているというべきである。「非防爆エリア」の構\成について特許法17条の2第3項の要件を満たさないとすることはできない。
(4) 【0025】との関係 当初明細書の趣旨は,全体として,バラスト水処理装置を舵取機室に配設することに主眼を置いており,特に,【0025】には,舵取機室の優位性が機関室(「非防爆エリア」の一つ)との対比において述べられている。当初明細書で全体として述べられている,バラスト水処理装置を舵取機室に配設するという技術的思想は,【0023】に記載されているように,舵取機室固有の特性,すなわち,操舵機室は,プロペラ及び舵の直上に位置しており,振動の問題があるため,通常機器類の設置に適さない場所(空間)として残されていることに着目したものである。これに対して,バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設するという技術的思想は,【0030】に記載されているように,「非防爆エリア」が「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点」を有することに着目したものである。したがって,バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設するという技術的思想は,バラスト水処理装置を舵取機室に配設する技術的思想と着目点の次元が異なっている。バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設するという技術的思想は当初明細書の【0030】によってサポートされている以上,当初明細書において,舵取機室に関する特有の技術的思想が開示されているとしても,そして,バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設することに関連する記載が【0030】においてだけであるとしても,「非防爆エリア」に関する本件発明6が特許法17条の2第3項の規定を満たすことについての判断を左右するものではない。また,バラスト水処理装置を舵取機室に配設することと,これを「非防爆エリア」に配設することとは,次元を異にする技術的思想であるから,前者の優位性を後者との関係で述べた【0025】の記載が存在するとしても,後者を無視することはできない。そして,両者が別次元の技術的思想である以上,「非防爆エリア」が舵取機室以外の場所(機関室を含む)を包含するとしても,そのことをもって,新たな技術事項を導入したものとすることはできない。

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◆関連事件です。平成24(行ケ)10424

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平成24(行ケ)10307 審決取消請求事件  特許権 行政訴訟 平成25年08月08日 知的財産高等裁判所

 審決は、第1のアンテナからの無線信号を第1の無線周波数復調器で復調するステップが「最初に」実行される際に,必ず「ダイバーシチ」が「オフ」状態になっていて「第2のプロセッサ422」(第2の無線周波数復調器)が無効化された状態になっているということは,新規事項であると判断しました。これに対して、裁判所は、新規事項ではないと判断しました。最終的には進歩性なしとして拒絶審決が維持されました。
 2 取消事由1(新規事項の追加禁止の要件に係る判断の誤り)について
前記1のとおり,補正発明は,ダイバーシチ処理がなくても十分な性能\が与えられるような場合においても常にダイバーシチ処理を行うことは,電力消費の観点から移動局の動作時間が短縮するという課題があったので,必要な場合にのみダイバーシチ処理を行うようにしたものである。そうすると,移動局の動作を開始させた当初,ダイバーシチ処理の必要性が不明な状態において,ダイバーシチ処理を行わせるように,第2の無線周波数復調器を有効化するとは考え難い。また,段落【0032】には,「最初のステップ510において,無線周波数信号が第1のアンテナ410で受信される。2番目のステップ512において,この無線周波数信号は処理のため第1のRFプロセッサ420へ入力される。…ステップ520でベースバンドプロセッサ430がダイバーシチをオンすべきか否かを判定する。」との記載があり,また,【図5】のフローチャートにおいても,動作開始当初の地点を示す上方の矢印の始点が,ステップ510の「第1のアンテナでRF信号を受信」するところから始まっているところ,これらのことに,段落【0040】において「ダイバーシチが不要な場合,第2のRFプロセッサ422は使用されない。」,段落【0019】に「ダイバーシチを用いることによる性能向上がダイバーシチを用いることによる電力消費を上回る場合を判断でき,後者の状況においてのみダイバーシチ処理へ切り替える」と明記されていることを考慮すると,動作開始時において,ダイバーシチがオンであることを前提として第1のアンテナでの受信及び第1のRFプロセッサへの入力と第2のアンテナでの受信及び第2のRFプロセッサへの入力とが,同時並行的あるいは順次行われるとは解しがたく,動作開始当初はダイバーシチがオフ(第2の無線周波数復調器が無効)とされていると理解するのが自然である。このように考えた場合,【図5】のフローチャートは,動作開始当初,ステップ512で受信したRF信号を第1のRFプロセッサ(第1の無線周波数復調器)で処理し,ステップ514においてダイバーシチはオンではないこととなるから,そのままステップ517に進んで,第1のRFプロセッサ(第1の無線周波数復調器)からの処理信号を復調することとなり,ステップ520において初めて,ダイバーシチが必要か否かを判定し,必要でなければ,当初の流れを継続(すなわち,【図5】の左側欄のサイクル〈ステップ510,512,514,517,520,521〉を継続)し,ステップ520においてダイバーシチが必要であると判定された場合にのみ,第2のアンテナにおけるRF信号受信から復調・合成処理に至るステップ515,516,518に進むものと理解でき,上記に示した明細書の他の記載とも整合的である。そうすると,本件補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,新規事項が追加されたものとはいえない。本件補正を新規事項の追加に当たるとした審決の判断は誤りである。
もっとも,審決は,本件補正却下の理由として補正発明が独立特許要件(特許法29条2項)を満たしていないことも挙げているから,進んで,本件補正が平成18年法律第55号による改正前の特許法17条の2第5項,126条4項に違反するか否かについて検討する。

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平成20(ワ)38602  特許権 民事訴訟 平成25年04月19日 東京地方裁判所

 特許権侵害事件です。審査中に行った補正が特許後に要旨変更と認定され、出願日が繰り下がり、特許無効と判断されました。
 旧特許法41条の規定中,「願書に最初に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」とは,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内」においてするものということができるというべきところ,上記明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項は,必ずしも明細書又は図面に直接表現されていなくとも,明細書又は図面の記載から自明である技術的事項であれば,特段の事情がない限り,「新たな技術的事項を導入しないものである」と認めるのが相当である。そして,そのような「自明である技術的事項」には,その技術的事項自体が,その発明の属する技術分野において周知の技術的事項であって,かつ,当業者であれば,その発明の目的からみて当然にその発明において用いることができるものと容易に判断することができ,その技術的事項が明細書に記載されているのと同視できるものである場合も含むと解するのが相当である。これを本件においてみるに,前記のとおり,本件発明は,「交換システム」が備える「第2の手段」において,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する」構\成(本件構成)を有するものである。そして,前記(1)のとおり,本件発明の要旨の認定に関しては,本件構成における「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信されるように入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段」にいう「交換システムから送信される」,「交換システムで受信される」,「交換システムが送信する」の各文言は,交換システムの出入口における送受信の制御のみならず,交換システムの内部における送受信の制御という動作をも含んでいると解されるものの,その文言解釈上,第一義的には,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する手段」と解釈される。これに対し,本件当初発明にはこのような記載はもともと存せず,本件構\成のうち上記解釈される部分は本件補正によって新たに追加された構成である。・・・したがって,プロセッサからボコーダに送信される時刻を制御する技術的事項を開示するにすぎない本件当初明細書等には,本件構\成のうち,交換システムの出口から送信する時刻を制御する技術的事項については何ら記載されておらず,また,本件当初明細書の記載から自明である技術的事項であるということできない。以上によると,本件補正は,本件当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるとは認められないから,本件補正は,旧特許法41条所定の「明細書又は図面に記載した事項の範囲内」においてするものということはできず,要旨変更に該当するものというほかない。
・・・・
 これを本件についてみるに,前記3のとおり,本件当初明細書等の発明の詳細な説明と,本件明細書等の発明の詳細な説明の記載は,その技術内容に係る記載において異なるものではなく,したがって,本件発明における構成要件F2(本件構\成)のうち,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する手段」と解釈される部分は,本件明細書等の発明の詳細な説明に記載のない事項であり,入トラヒックを交換システムの出口が送信する時刻を制御する技術的事項につき,出願当時の技術常識からみても,当業者がそれを正確に理解でき,かつ過度の試行錯誤を経ることなく発明を再現することができるだけの記載があるとはいえないから,本件発明は,平成6年法律第116号附則6条でなお従前の例によるとされる特許法36条4項の実施可能要件を満たしておらず,本件発明1及び2に係る特許はいずれも特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。\n

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平成24(行ケ)10299 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年04月11日 知的財産高等裁判所

 無効理由無しとした審決が、サポート要件違反ありとして取り消されました。
 被告は,本件明細書には液体調味料に対するACE阻害ペプチドの配合量について,「血圧降下作用及び風味の点から液体調味料中0.5〜20%,更に1〜10%,特に2〜5%が好ましい。」との具体的な数値の記載があり(【0030】),これがACE阻害ペプチドを配合した場合に風味変化が改善されることを確認した結果に基づくものであると主張する。しかしながら,本件明細書の発明の詳細な説明によれば,前記1オに記載のとおり,本件発明1ないし5及び9に利用可能なACE阻害ペプチドは,乳,穀物又は魚肉等の食品原料由来のものであり,かつ,その種類も多岐にわたるところ,これらの多種類の原料に由来するACE阻害ペプチドの風味が共通し,かつ,加熱処理によって同等の風味変化を生じ,あるいは生じないという技術常識が存在することを認めるに足りる証拠はない。しかも,ACE阻害ペプチドの配合量の数値に関する上記記載も,概括的なものであるから,仮にこれがACE阻害ペプチドを配合した場合の風味変化の改善を確認した結果に基づくものであるとしても,上記多種類の原料に由来するACE阻害ペプチドのいずれについて風味がどの程度改善されたのかを明らかにするものとは到底いえない。したがって,上記配合量の数値の記載があるからといって,本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者は,血圧降下作用を有する物質としてACE阻害ペプチドを液体調味料に混合して加熱処理した場合に,風味変化の改善という本件発明の課題を解決できると認識することはできず,サポート要件を満たすことになるものではない。\n
・・・・
以上によれば,血圧降下作用を有する物質として専らコーヒー豆抽出物を使用した本件発明6ないし8は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者がその課題を解決できると認識できるものであるから,サポート要件を満たすものといえる一方,血圧降下作用を有する物質として,コーヒー豆抽出物に加えてACE阻害ペプチドを使用する場合を包含する本件発明1ないし5及び9は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるといえるが,発明の詳細な説明の記載により当業者がその課題を解決できると認識できるものではなく,また,当業者が本件出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できるものであるともいえないから,サポート要件を満たすものとはいえない。

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平成24(行ケ)10162 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月25日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反および新規事項であると無効主張しましたが、無効でないとした審決が維持されました。
(3) 上記記載によれば,当初明細書等においては,「番組表を利用した視聴や録画がどの程度行われているのか」を知るために調査された「視聴率」及び「録画率」を番組表\に記載する旨,及び番組表に記載されるものとして,これらは「例示」であって,これら以外に「番組を視聴した平均人数など」が記載されるように構\成してもよい旨が明示されている。したがって,【0079】に記載された「平均人数など」が,視聴率及び録画率と併記されるか又は単独で記載されるかにかかわらず,「視聴率」及び「録画率」のみならず,「番組表を利用した視聴や録画がどの程度行われているのか」を知るための情報を記載し得ることは,当初明細書等に記載されていると認められる。そして,「どの程度行われているのか」を「多少を把握可能\な」と表現すること,及び番組表\に記載される情報を「指標」と表現することは,普通に行われているところであって,このように表\現することによって何らかの技術的な意義が追加されるものではないから,「視聴者数の多少を把握可能な」「指標」及び「録画予\約数の多少を把握可能な」「指標」という表\現が用いられたことによって,当初明細書等に記載された事項に対して新たな技術的事項が導入されたものでもない。したがって,補正事項1,2について,いずれも新規事項ということはできず,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないということはできないとした本件審決の判断に誤りはなく,取消事由2,3は理由がない。
・・・・
(3) 上記記載によれば,当初明細書等においては,番組表の提供を受けた利用者が番組表\を利用した視聴や録画がどの程度行われているのかを知りたいという課題について,利用者側端末20から番組表の要求を受けた調査者側装置10が視聴率及び録画率が記載された番組表\を作成して利用者側端末20に送信し,この番組表を受信した利用者側端末20において視聴率及び録画率が記載された番組表\を表示することによって解決することが記載されている。以上を踏まえれば,「前記利用者装置によって表\示される番組表上の番組に対応づけられて表\示されるための前記視聴指標と前記録画予約指標とであって,現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予\約指標とを送信する指標送信手段」(補正事項7)は,当初明細書等に記載された課題に対応するものとして当初明細書等に記載された解決手段を特定する記載であって,当初明細書等に記載された事項に対して新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。

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平成24(行ケ)10152 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月14日 知的財産高等裁判所

 訂正を認めた審決が、新規事項であるとして、取り消されました。
 本件訂正発明2は,本件発明2に,「搬送経路の上方において前記搬送経路の一方側から他方側へ伸長するアーム」に係る本件構成を付加するものである。これに対し,本件発明7は,「搬送経路の一方側から他方側へ前記搬送経路をまたいで伸長し」と規定しているところ,「またがる」とは,「一方から他方へかかる。わたる。」ことを意味する語句(甲9)であるから,本件発明7は,本件明細書の【図1】のように,搬送装置のガイドレールが設置された一方側から搬送経路上方を通り,ガイドレールが設置されていない他方側に測定ユニットを懸下するものである。そうすると,本件発明7とは異なり,「またいで」という語句が用いられていない本件訂正発明2は,本件明細書の特許請求の範囲請求項7(本件発明7)及び第1の実施の形態(【0020】〜【0049】【図1】〜【図5】)に記載されている,搬送経路の一方側近傍に搬送経路に沿ってガイドレールが設けられ,搬送経路の一方側から他方側へ搬送経路をまたいで伸長し,搬送経路の他方側に測定ユニットを懸下する可動アームがガイドレールに沿って移動する構\成(別紙図面目録記載3の本件明細書【図1】参照)のみならず,搬送経路のいずれか一方側に搬送経路に直交する方向(容器ラック長手方向)に沿って設置されたガイドレールと,搬送経路の一方側から他方側へ搬送経路の上方において伸長する可動アームとが設けられ,搬送経路に直交する方向(直交方向)に並ぶ複数の容器を順次測定するために,測定ユニットを搬送経路に直交する方向に移動させる構成(別紙図面目録記載7の本件参考図D参照。以下「本件参考図Dの構\成」という。)をも含むものということができる。被告も,当該構成が本件訂正発明2に含まれると主張するものである。
ウ 被告は,本件発明2に本件構成を付加する訂正に係る訂正原因について,本件明細書における特許請求の範囲請求項7並びに【0016】【0027】及び【図1】ないし【図5】であるとする。前記1(2),(3)及び(4)アによれば,本件発明2は,従来,容器を並べた容器ラックを搬送するラック搬送装置において,容器ラックの長手方向を搬送方向に合わせて搬送する方式(長手方向搬送方式)の搬送経路に沿って容器に貼付されたラベルを読み取るラベル読取器が固定して配置され,容器の識別コードが読み取られていたところ,一方向にしか進められない搬送機構\を利用して容器ラックを移動させていた従来技術では後戻り搬送ができず,ラベル読取りミスが生じた際にリトライが不可能であるという課題を解決するために,容器ラックを搬送経路に沿って搬送する搬送機構\と,容器ラックに保持される各容器についての測定を行う測定ユニットと,搬送経路上の容器ラックの長手方向に沿って,各容器ごとに測定を順次行わせつつ測定ユニットを移動させる移動機構とを備えることにより,搬送経路の所定の測定位置に位置決めされた容器ラックに保持された各容器の測定を行うようにした発明である。
本件発明2は,ラベル読取りミスが生じた際のリトライを可能とするために,搬送経路上の容器ラックの長手方向に沿って,各容器ごとに測定を順次行わせつつ測定ユニットを移動させる移動機構\を備えるものであって,搬送経路の一方側から他方側へ搬送経路の上方において伸長する可動アームの構成を有するものではない。また,本件発明2の課題は,複数の容器が搬送方向に並んだ状態で容器ラックの長手方向を搬送方向に合わせて搬送すること,すなわち,測定ユニットが搬送経路の長手方向に沿って移動することを前提とするものであるから,測定ユニットが搬送経路に直交する方向に移動することは想定されていないというべきである。エ 前記1(4)イによれば,本件発明7は,測定ユニットを搬送経路の一方側近傍に配置し,搬送経路に沿って移動させる際,測定ユニット近傍である搬送経路の一方側に測定ユニットの移動機構を設けることが望まれるが,装置の設計上の制約等で搬送経路の一方側近傍に測定ユニットを移動させる移動機構\を固定して設けることができない場合にも測定ユニットの配置を変更することなく測定を行うことができるように,搬送経路の一方側近傍に,搬送経路に沿ってガイドレールを設け,さらに,測定ユニットを支持(保持)するとともに,測定ユニットを移動させるため,搬送経路の一方側から他方側へ搬送経路をまたいで伸長し,搬送経路の他方側に測定ユニットを懸下する可動アームがガイドレールに沿って移動するようにした発明である。
また,本件発明7は,装置の設計上の制約等で,測定ユニット近傍である搬送経路の一方側近傍に測定ユニットを移動させる移動機構を固定して設ける本件発明2のような構\成が採用できないという上記課題を解決することを前提とする発明であるから,本件発明2と同様に,複数の容器が搬送方向に並んだ状態で容器ラックの長手方向を搬送方向に合わせて搬送すること,すなわち,測定ユニットが搬送経路に沿って移動することを前提とするものであって,測定ユニットが搬送経路に直交する方向に移動することは想定されていないというべきである。さらに,本件発明7のガイドレールは,測定ユニットを移動させるための移動機構を構\成する部材であって,搬送経路に沿って設けられるものである。したがって,本件発明7は,本件参考図Dの構成を有するものではない。オ 前記ウ及びエのとおり,測定ユニットが搬送経路に直交する方向に移動すること,そのような測定ユニットを支持(保持)して搬送経路に直交する方向に移動する可動アームを設置すること,搬送経路に直交する方向に沿ってガイドレールを設けることは,本件明細書における特許請求の範囲請求項7並びに【0016】【0027】及び【図1】ないし【図5】に開示されているものではなく,その他,本件明細書には,上記各構成に係る記載はない。したがって,本件参考図Dの構\成に係る測定ユニットの移動方向,可動アーム及びガイドレールの設置方向は,出願の当初から想定されていたものということはできず,測定ユニットが搬送経路に沿って移動することを前提とする本件発明に係る本件明細書の記載を総合することにより導かれる技術的事項であるということはできない。
カ この点について,被告は,本件訂正発明2では可動アームの長さ(到達点)が非本質的なものであること及び「またいで」いない可動アームも当業者に自明であることから,本件訂正発明2において「またいで」という事項が規定されていないとしても,新規事項の追加には該当しないと主張する。しかしながら,前記のとおり,本件訂正の訂正原因とされる本件発明7における可動アームは課題解決手段として設けられた構成であり,課題を解決するためには測定ユニットを搬送経路の他方側に懸下することが必要である以上,本件訂正発明2について,可動アームの長さ(到達点)が非本質的なものということはでない。また,被告は,本件明細書には,短手方向搬送方式及び長手方向搬送方式が開示されており,第1の実施形態においては長手方向搬送方式を前提とした課題及び解決手段が具体的に記載され,当業者にとって,短手方向搬送方式においても同じ課題が生じること及び同じ解決手段を適用できることは自明であるから,短手方向搬送方式に本件訂正発明2の解決手段を適用した場合,可動アームを搬送経路の他方側まで伸長させなくても全ての容器について測定を行い得るから,搬送経路を「またいで」伸長する必要はないし,短手方向搬送方式では可動アームを案内するガイドレールが直交方向に沿って設けられるのは当然であると主張する。しかしながら,前記のとおり,本件発明は,複数の容器が搬送方向に並んだ状態で容器ラックの長手方向を搬送方向に合わせて搬送すること,すなわち,測定ユニットが搬送経路に沿って移動すること(長手方向搬送方式)を前提とするものであり,本件明細書には,短手方向搬送方式(搬送方向に直交する方向に容器が並んだ状態で搬送する方式)を示唆する旨の記載もないから,測定ユニットを支持(保持)して搬送経路に直交する方向に移動する可動アームが本件明細書に記載されているということはできない。本件明細書の【図1】は,投入搬送経路では短手方向搬送方式が用いられているが,投入搬送経路とメイン搬送経路とが接続する位置に定められた測定位置において,メイン搬送経路上に位置決めされた容器に対して測定を行うものであって,投入搬送経路の途中で測定を行う旨の記載はないから,測定自体は長手方向搬送方式を前提とするものである。そうすると,短手方向搬送方式を採用し,可動アームが搬送経路に直交する方向に移動する構\成は,本件明細書に記載されているということができない以上,可動アームを搬送経路の他方側まで伸長させる必要がないということはできないし,可動アームを案内するガイドレールが直交方向に沿って設けられるのが当然であるということもできない。
さらに,被告は,新規事項の追加に該当するか否かは,技術的思想としての本件訂正発明2が本件明細書に記載されているか否かの観点から検討されるべきであって,短手方向搬送方式に本件訂正発明2の解決手段を適用した場合の具体例が本件明細書において明示されているか否かは問題とはならないと主張する。しかしながら,本件明細書には短手方向搬送方式自体が記載されておらず,当該方式及び当該方式を採用した場合の課題が本件明細書の全ての記載を総合することによっても導くことができない以上,被告の当該主張はその前提自体を欠くものというほかない。

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平成24(行ケ)10119 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年11月29日 知的財産高等裁判所

 訂正が認められ無効理由無しの審決に対して審判請求人が出訴し、その後、特許権者は再訂正をする訂正審判(2次訂正)を請求しました。裁判所は、特181条2項の差し戻しをすることなく、審理を進めていましたが、二次訂正が確定したことから、対象が異なるとして本件無効審決を取り消して、差し戻しました。
,本件審決は,無効審判請求を成り立たないものとした審決である。その後,被告から特許請求の範囲を減縮する訂正審判請求がなされたが,当裁判所は,平成23年改正前の特許法181条2項の差戻決定をすることなく審理を継続していたところ,本件訂正審決が確定したことにより,訂正前の特許請求の範囲に基づいてなされた審決は,結果的に発明の要旨認定を誤ったこととなった。もっとも,特許庁は,本件訂正審決において,本件審決において第1訂正発明と対比された引用例と同一の引用例との対比において独立特許要件が認められると判断している。そうすると,第2訂正発明と上記引用例記載の発明との同一性ないし容易想到性判断についての特許庁の判断は,本件訂正審決により示されており,この点につき特許庁の判断が先行しているものと解する余地がある。しかし,本件審決と本件訂正審決においては,本件特許に係る発明と引用例との一致点及び相違点の認定,新規性ないし進歩性に係る判断の対象が実質的にも変更されている(別紙1ないし4参照)。すなわち,本件審決においては,第1訂正発明における「前記目標値が変化したときに」の意義について,原被告いずれの主張も排斥した上で,「前記目標値」が「ある状態から他の状態に変わったときに」を意味するもの,すなわち「前回の目標値」と「今回の目標値」を比較し,変化したときと理解できるとして,引用例1,2との対比を行った上,これを相違点として挙げて,第1訂正発明は,引用発明1と同一の発明ではなく,引用発明2,及び引用例1,甲3ないし5に記載された周知技術に基づき容易に想到できたものとはいえないとして,無効請求は成り立たないとしたものである。他方,本件訂正審決では,第2訂正発明において,「今回の目標値」と比較される「比較対象」は,引用発明1における「現在表示中の表\示データ」や引用発明2における「旧データ」に相当するもの,すなわち「前回の出力値」であるとして,この点を引用例1,2との相違点とはせず,新たに付加された構成要件について相違点を挙げて,第2訂正発明は,引用発明1と同一の発明ではなく,引用発明1ないし2に基づき容易に想到できたものでもなく,独立特許要件を充足するとして,第2訂正を認めたものである。そうすると,本件訂正審決において,本件審決における引用例と同一の引用例との対比において独立特許要件が認められるとの判断がされているとしても,本件無効審判請求について,新たに付加された構\成要件も含めて,再度,特許庁の審理を先行させるのが相当であるから,本件審決は取り消されるべきである。

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平成24(行ケ)10135 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年12月03日 知的財産高等裁判所

 訂正要件を満たさないとした審決が維持されました。
 原告らは,実施形態【図7】と実施形態【図3】とは,パーツの形態が大きく相違するにもかかわらず,実施形態【図3】の前身頃及び後身頃の各パーツの実線を強引に実施形態【図7】のパーツの実線に引きずり込んで,実施形態【図7】の前身頃及び後身頃の各位置を解釈しているにほかならず,実施形態【図7】のパーツの本来の前身頃及び後身頃の各位置を正しく解釈していることにはならないから,審決の訂正要点aの認定手法は誤りであると主張する。しかし,実施形態【図3】については,各パーツの図面符号「12」,「14」,「16」,「18」は,図面上のそれぞれ実線で区劃された範囲のものを指していることが見て取れるから,「前身頃」や「後身頃」は,「股部パーツ」や「大腿部パーツ」と同じく下肢用衣料を構成するパーツであって,「前身頃」は図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲のもので,「後身頃」も同様に,図面符号「14」で指示された実線で区劃された範囲のものと解することができる。そして,実施形態【図3】と実施形態【図7】とは,下肢用衣料が「前身頃12」,「後身頃14」,「股部パーツ16」及び「大腿部パーツ18」で構\成されていることには変わりがないので,実施形態【図7】においても実施形態【図3】と同様に,前身頃と後身頃は,図面符号「12」と「14」で指示された実線で区劃された範囲のもの(パーツ)と解するのが自然であり,このように解することに,格別,不都合な点は見当たらない。よって,審決における「前身頃」及び「後身頃」の認定及びその手法に誤りはない。
イ 原告らは,実施形態【図7】のパーツの前身頃及び後身頃の各位置を正しく判断するには,実施形態【図7】の各パーツを縫製して下肢用衣料とした場合に,実施形態【図7】のパーツはどこが前身頃及び後身頃に位置するか正しく判断することが必要であり,また,前身頃と後身頃の意味はそれぞれ「衣類の身頃のうち,胴体の前の部分をおおうもの」と「衣類の身頃で胴体の後ろの部分をおおうもの」であって(甲1),その意味を下肢用衣料(ショーツ)に当てはめると,前身頃とは,下肢用衣料(ショーツ)の身頃のうち,下半身の前の部分を覆うものとなり,後身頃とは,下肢用衣料(ショーツ)の身頃で下半身の後ろの部分を覆うものとなり,さらに,1つのパーツにおいて,前の部分を覆うものを前身頃とし,この前の部分を覆う境界の箇所から後側に直ちに回り込む箇所(本件帯状部分)を後身頃とすることは,例えば甲13〜甲18に示されるように,当業者において周知であるから,審決における「前身頃」及び「後身頃」の認定には誤りがあると主張する。しかし,本件明細書において,【図7】の左右において下方に垂下する2つの本件帯状部分が「後身頃」の構成部分である旨の記載や示唆は存在せず,本件帯状部分が「後身頃」の構\成部分であるとは,窺えない。また,「前身頃」の意味が「衣類の身頃のうち,胴体の前の部分をおおうもの」であり,「後身頃」の意味が「衣類の身頃で胴体の後ろの部分をおおうもの」であって(甲1),1つのパーツにおいて,前の部分を覆うものを「前身頃」といい,この前の部分を覆う境界の箇所から後側に直ちに回り込む箇所を「後身頃」ということがあるとしても(甲13〜甲18),乙1及び乙2によれば,下肢用衣料において,下半身の前の部分の延長となる後ろの部分の一部をも覆うパーツも加えて「前身頃」ということもあるのであり,この場合には訂正前の実施形態【図7】と同様のものとなる。したがって,前身頃及び後身頃という用語の解釈として,原告らが主張するような解釈において当該技術分野の常識となっているということはできない。よって,「前身頃」及び「後身頃」という用語の意味は,明細書及び図面の記載全体から把握する必要があり,そのようにして理解される意味は上記のとおりであって,審決の「前身頃」及び「後身頃」の認定及びその手法に誤りはない。
・・・
2 取消事由3(審決の訂正目的に対する判断の誤り)について
上記1で判示したとおり,本件明細書の段落【0030】及び【図7】には,実施形態【図7】が記載され,この実施形態における「前身頃」が図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲のものを指していること,そして,「後身頃」が,図面符号「14」で指示されたものを指していることは,自然に理解できるもので,不明瞭な記載や誤記の存在は見当たらず,逆に,【図7】において図面符号「12」で指示される前身頃の本件帯状部分が後身頃の構成部分であることは,窺えない。そうである以上,訂正要点aが,誤記の訂正,或いは,明瞭でない記載の釈明を目的にしているということはできない。
・・・
3 取消事由4(審決の実質変更・拡張に対する判断の誤り)について
 本件明細書の請求項1は,本件訂正によって訂正されていないから,本件発明は,本件訂正の前後において,「後身頃」を,「足刳り形成部を有した」と限定されたものとして発明特定事項としている。次に,上記1で認定したところを踏まえ,本件訂正前の本件発明についてみると,本件明細書の記載全体からして,先に(上記1で)説示したように,本件発明の「前身頃」は,実施形態【図3】,実施形態【図7】及び実施形態【図8】の,いずれも図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲のもの,「後身頃」も同様に「14」で指示された範囲のものと解することができる。これに対し,本件訂正の,特に訂正要点aにより,【図7】の図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲内にある本件帯状部分が,「後身頃」の構成部分となり,本件訂正後の本件発明の「前身頃」は,【図7】を参照した実施形態でいえば,図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲から上記本件帯状部分を除いた範囲のものということになり,本件発明の発明特定事項である「前身頃」の技術的内容が変更されており,併せて,「後身頃」の技術的内容も実質的に変更されている。また,実施形態【図7】が,図面符号「14」で指示された実線で区劃された範囲のものである「後身頃」に足刳り形成部を有していないため,本件発明の発明特定事項を満たしておらず,本件発明の構\成に含まれないものであったが,本件訂正後では,実施形態【図7】は,本件発明の構成に取り込まれており,特許請求の範囲は,拡張又は変更されている。以上のとおりの判断を示した審決に誤りはない。\n

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平成23(行ケ)10415 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年11月29日 知的財産高等裁判所

 新規事項およびサポート要件違反でないとした審決が維持されました。
 本件補正によって当初明細書の請求項1(請求項1を引用するその他の請求項も同様である)に「Ag3Sn金属間化合物を有する無鉛ハンダ合金であって」,「前記Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成して相互に連結されている」との事項が追加された(前記第2,2(1)で下線を付した部分のとおり。)。
イ 当裁判所の判断
 当初明細書の【0017】には,「Sn−Ag系合金においては,凝固組織の中にAg3Sn金属間化合物のネットワークが生成し」ていること,Sn−Ag系ハンダ合金にCuを0.3質量%以上添加したハンダ合金においても同様に,「Ag3Sn金属間化合物のリング状ネットワーク」が存し,これが「密にな(る)」ことが記載されている(前記1(1)イ)。また,Sn−Ag系ハンダ合金において,Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成すること,そのネットワークがリング状であること,その他合金元素が数%添加された場合でも基本的にAg3Snの組織は維持されることは,いずれも技術常識と認められるものでもある(前記1(3)アないしウ)。このような当初明細書の【0017】の記載及び技術常識によれば,当初明細書の請求項1に係る合金が「Ag3Sn金属間化合物を有する無鉛ハンダ合金であ(る)」こと,「前記Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成して相互に連結されている」ことは,いずれも自明な事項として把握できる。また,Sn−Ag合金に,他の元素を添加した場合にも,Ag3Snの微細分散組織が維持されることは技術常識(前記1(3)アないしウ)と認められるから,請求項1の合金に,Ni,Sb及びZnをさらに添加する請求項2,3に係る合金についても,「Ag3Sn金属間化合物を有する無鉛ハンダ合金であ(る)」こと,「前記Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成して相互に連結されている」ことは自明である。以上よりすると,本件補正は,当初明細書の【0017】に記載した事項の範囲内においてしたものといえるのであって,この点に関する審決の判断に誤りはない。
ウ 原告の主張について
原告は,当初明細書には,「Ag3Sn金属間化合物を有する無鉛ハンダ合金であって」という明示的な記載はなく,当該補正は,「Ag3Sn金属間化合物」を「有する」として,上位概念化をしたものであるから,当初明細書の記載から自明ではない新たな技術的事項を導入するものであると主張する。しかし,上記イのとおり,Sn−Ag合金においては,Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成するのであって,「Ag3Sn金属間化合物」を「有する」との補正は,その前提として,当該合金にAg3Sn金属間化合物が存することを確認的に示したにすぎないと解される。また,原告は,「前記Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成して相互に連結されている」との補正は,当初明細書の【0017】の「Ag3Sn金属間化合物のリング状ネットワークが密になり」との記載から,「リング状」という形状の規定を削除して上位概念化するものであると主張する。しかし,上記イのとおり,Sn−Ag系ハンダ合金において,Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成すること,そのネットワークがリング状であることは,技術常識と認められるから,請求項1に「リング状」という形状の規定が存在しないからといって,上位概念化されているということはできない。さらに,原告は,当初明細書には本件発明2,3について合金の組織がどのようなものであるかについては一切開示がないとも主張するが,上記イのとおり,Sn−Ag合金に,他の元素を添加した場合にも,基本的にはAg3Snの微細分散組織が維持されることは技術常識であるから,原告の主張は採用の限りではない。

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平成23(行ケ)10383 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月10日 知的財産高等裁判所

 補正が新規事項であるとした審決が取り消されました。
 上記記載によれば,引用例の図2及び図3には,図1に示すダイヤフラム式ポペット弁体とは異なるロールダイヤフラム式ポペット弁体122が示されていること,ロールダイヤフラム式ポペット弁体122は,ポペット弁体の頭部126と一体で頭部からポペット弁体フランジ128へ軸線方向に延在するスリーブ124を具備すること,スリーブ124は「ロール及び非ロール動作」をすること,ピストンの頭部82の壁表面はスリーブ124の内側表\面を支持することが理解できる。ダイヤフラム式ポペット弁体とは異なるロールダイヤフラム式ポペット弁体の存在は引用発明の前提とされており,ロールダイヤフラム式ポペット弁体自体は詳細に説明されていないことからすると,ダイヤフラム弁の技術領域において,通常のダイヤフラム弁と,それとは異なり「ロール及び非ロール動作」を伴うローリングダイヤフラム弁とが存在することは,引用例が公開された平成13年6月29日時点において,特段の説明を要しない技術常識であったことが理解できる。
3 上記の「反転」の一般的意味及び技術常識に照らし,また,審判請求書における原告の主張を合わせると,本件補正によって追加された「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」の構成は,「膜部の一部が天地を逆転することがなく,具体的には,ロールダイアフラム式ポペット弁のような開閉時に薄膜のロール・非ロール動作を伴うことなく」との意味であることが明らかである。
4 以上によれば,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」とは,ロールダイアフラム式ポペット弁のような開閉時に薄膜のロール・非ロール動作を伴うものではないものである,という程度の意味で膜部の一部で天地が逆転しないものであることと理解すべきであり,係る事項を加えることは,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものといえる。
・・・
被告は,ダイアフラム弁の技術分野において「反転」の用語は,非ローリングダイアフラム弁においても通常用いられており(乙1〜3),それは当業者にとって技術常識といえるものであるから,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」という補正事項は,原告が限定したとする通常型をも除く意味を有することとなるから,「ローリングダイアフラム弁を除く」ことと同義とはいえない,と主張する。しかしながら,乙1〜3に記載された「反転」の意味は,乙1においては,図3に示されるように,膜体6の周囲の支持部と凸球面状の弁体3の下端との位置関係が逆になることをいい,乙2においては,ダイアフラムの外周部の湾曲方向が上向きの凸形状と下向きの凸形状に変化することをいい,乙3においても乙2と同様のことをいうと理解でき,本件補正における「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」とは次元が異なるから,乙1〜3の記載をもって,本件補正を不適法とすることはできない。

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平成24(行ケ)10018 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月10日 知的財産高等裁判所

 新規事項であるとした審決が取り消されました。
   当初明細書等の段落【0027】,【0028】,図3及び図4の記載によれば,本件特許にかかる発明の第2の実施形態として,赤,緑,青の三原色によるカラー表示を行うアクティブマトリクス型カラー液晶表\示装置であって,各画素領域12が,列単位で赤,緑,青のいずれかの色を表示するストライプ状配列となっており,赤,緑,青の各色が3列おきに繰り返し配置されているものが記載されていることが認められる。次に,段落【0029】及び図3には,第2の実施形態は,各列に補助容量連結ライン16を配置した第1の実施形態の変形例であって,ドレインライン10の3本につき1本の補助容量連結ライン16を配置するものであることが記載され,また,段落【0030】には,第2の実施形態は,第1の実施形態より補助容量連結ラインの本数が少なくても,近くに配置された補助容量連結ラインを介して他の補助容量ラインから電荷を補い,信号電圧を矯正することができ,さらに,第1の実施形態よりも補助容量連結ラインが少ないため,補助容量連結ラインによる開口率の低下を抑えることができるという効果を奏するものであることが記載されているといえる。そうすると,第2の実施形態は,赤,緑,青の各色が3列おきに繰り返し配置されている画素領域の3列につき1列に補助容量連結ラインを設けることによって,上記効果が得られるものであって,その効果は,補助容量連結ラインを赤,緑,青のいずれの画素領域の列に設けても得られるものであるということができる。そして,補助容量連結ラインによる開口率の低下が問題となっていることから,透過型の表\示装置について記載したものであると認めることができる。以上より,当初明細書等には,補助容量連結ラインが,赤,緑,青の三原色のうちの緑に限定されない特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成される,カラー表\示を行う透過型のアクティブマトリクス型表示装置,すなわち,技術的事項Aが記載されているものと認められる。したがって,本件補正によって導入された技術的事項Aは,当初明細書等の記載から把握できる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。よって,本件発明1,3〜6に係る特許は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであるとの審決の判断は誤りであり,取消事由1は理由がある。
なお,審決は,「本件発明1の『ストライプ状に配列』することは,RGBが一定の周期で出現する配列のみを意味するものではなく,例えば,特開平10−54959号公報(甲16)の【0116】及び図67に記載されているような『RGB/BGR/RGB・・・』の配置のように,画素の色が異なる周期で現れるものもストライプ状配列としてよく知られているから,当初明細書等にストライプ状配列が記載され,かつ,補助容量連結ラインが3本につき1本配置されることが記載されていることのみをもって,画素領域の色の配列パターンと補助容量連結ラインの配列パターンとを関連付けて,補助容量連結ラインを緑以外の赤や青を含む特定の色の画素領域にのみ選択的に配置する,という技術的事項を把握することはできない。」(25頁13行〜27行)とした。しかし,前記のとおり,当初明細書等(甲2)の【0027】,【0028】,図3及び図4には,第2の実施形態は,赤,緑,青の三原色によるカラー表示を行うアクティブマトリクス型カラー液晶表\示装置であって,各画素領域12が,列単位で赤,緑,青のいずれかの色を表示するストライプ状配列となっており,このストライプ状配列は赤,緑,青の各色が3列おきに繰り返し配置されていることが記載されており,このような配列の記載を受けて,段落【0029】では,「ドレインライン10の3本につき1本の隣に補助容量連結ライン16が配置され,」と記載されているのであるから,これらによって技術的事項Aを把握することができる。「ストライプ状配列」という用語に,図3の具体的配列と異なる意味に用いる例があるからといって,補助容量連結ラインを緑以外の赤や青を含む特定の色の画素領域にのみ選択的に配置する技術的事項を段落【0028】,【0029】の記載から把握することはできないとの審決の判断は誤りである。
・・・上記のとおり,・・・第2の実施形態では,赤,緑,青の各色が3列おきに繰り返し配置されている画素領域の3列につき1列に補助容量連結ラインを設けることによって,第1の実施形態より補助容量連結ラインの本数が少なくても,信号電圧を矯正することができ,また,第1の実施形態よりも補助容量連結ラインによる開口率の低下を抑えることができるという効果(以下「任意の色の効果」という。)を奏するものであり,その効果は,補助容量連結ラインを赤,緑,青のいずれの画素領域の列に設けても得られることは明らかである・・

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平成23(行ケ)10351 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年09月26日 知的財産高等裁判所

 補正が新規事項と認定されました。
 本件補正は,請求項1の特許請求の範囲に,一対の冷蔵室扉のうちのいずれか一方の後面(背面)に製氷室を取り付けるとの限定を加えるものであるが,願書に添付された当初明細書(甲1)の発明の詳細な説明には,冷蔵室扉よりも後方(内側)に位置する冷蔵室の内部に製氷室を設けることが記載されているのみで,扉自体に製氷室を内蔵させることは記載も示唆もない。また,当初明細書に添付の図面を見ても,扉自体に製氷室を内蔵させる構成を見て取ることができない。この点,原告は,当初明細書の段落【0019】,【0020】中で,かかる技術的事項(限定事項)が開示されていると主張するが,段落【0019】には,「前記製氷室は,前記冷蔵室の内部に着脱可能\に設けられる。」と記載されているのみで,冷蔵室扉自体に製氷室を内蔵させる構成が含意されていると見るのは困難である。段落【0020】にも,「前記扉の一側には,前記製氷室が備えられる。」との記載があるが,この1文に引き続いて,「前記冷蔵室を開閉する扉は,それぞれ異なる幅を有する。前記冷蔵室を開閉する複数の扉の先端には,それぞれガスケットが備えられ,扉が閉まった時,相互密着される。」との記載があることにかんがみると,上記「前記扉の一側」との文言も,冷蔵室の一対(複数)の扉相互間で構\造に違いがあることに着目した表現であるとみるのが合理的であって,単に一対の扉のうちの片方の側(より正確にはこの片方の扉の後方(内側))に製氷室が位置することを意味するものにすぎないというべきである。したがって,上記「前記扉の一側」が冷蔵室の扉の後面(内側の面)を指すとか,上記段落が冷蔵室扉自体に製氷室を内蔵させる構\成を意味するということはできない。さらに,当初明細書の発明の詳細な説明に係る段落【0026】,【0031】,【0056】,【0060】,【0074】には,給水タンクが冷蔵室内部における冷蔵庫本体の一側又は扉の一側に設けられることが記載されているものの,これらの段落では製氷室の設置箇所は特定されていないし,段落【0082】でも,給水タンクを冷蔵室内部又は冷蔵室扉裏面に設ける場合のメリットが記載されているだけで,製氷室を冷蔵室扉に内蔵させる場合の作用効果が記載も示唆もされていない。これら発明の詳細な説明の記載に照らしても,扉自体に製氷室を内蔵させる構成が新たな技術的事項の導入でないと認めることはできない。\n

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平成23(行ケ)10279 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年08月30日 知的財産高等裁判所

 裁判所は、新規事項であるとした審決を維持しました。
 上記記載事項によれば,段落【0012】及び【図18】には,複数個の誘導表皮電流発熱管を押さえ金具に溶接し,該押さえ金具を戸当板に溶接することによってなる,複数個の誘導表\皮電流発熱管の戸当板への取付方法が記載されているものということができる。
 イ しかし,本件構成,すなわち,「並列の前記複数個の誘導発熱鋼管単体が,同一の押さえ金具に溶接されており,さらに,該押さえ金具が前記戸当板のコンクリート充填側に溶接されている」という構\成を付加したことが,段落【0012】及び【図18】に記載された範囲内のものであるというためには,以下に述べるとおり,段落【0012】及び【図18】に,複数個の誘導表皮電流発熱管の戸当板への取付方法が記載されているだけでは足りず,「複数個の誘導発熱鋼管単体」の戸当板への取付方法が記載されていることが必要である。当初明細書の段落【0020】の「複数個の前記柱状の強磁性鋼材は,相互に電気的に絶縁されている。」との記載,段落【0029】の「複数個の前記柱状の強磁性鋼材は,相互に電気的に絶縁されている。」との記載によれば,「複数個の誘導発熱鋼管単体」には,相互に電気的に絶縁されている態様のものが含まれるのであるから,「複数個の誘導発熱鋼管単体」の戸当板への取付方法が記載されているといえるためには,鋼管どおしが電気的に接続されている態様のものの取付方法だけでなく,鋼管どおしが電気的に絶縁されている態様のものの取付方法も記載されているといえることが必要である。しかるに,【図18】は,従来の誘導表皮電流発熱管を水門鋼板製戸当板及び溝形成板に設置した断面拡大図であり(【0072】),また,明細書には【0012】以外に取付方法に関する記載がないところ,複数個の誘導発熱鋼管単体を,段落【0012】及び【図18】に記載された取付方法,すなわち,押さえ金具に溶接し,該押さえ金具を戸当板に溶接する方法によって取り付ければ,押さえ金具を用いて溶接により固定される複数個の誘導発熱鋼管単体を電気的に接続してしまうことになるため,電気的に絶縁されている複数個の誘導発熱鋼管単体の取付方法としてこのような取付方法を採用することができないことは,当業者にとって自明である。したがって,段落【0012】及び【図18】には,鋼管どおしが電気的に絶縁されている態様のものの取付方法が記載されているとは認められず,段落【0012】及び【図18】に記載された取付方法は,飽くまでも,従来技術として段落【0006】ないし【0010】に記載された鋼管どおしが電気的に接続された誘導表\皮電流発熱管の取付方法として開示されたものとみるべきである。以上によれば,段落【0012】及び【図18】には,複数の誘導発熱鋼管単体が電気的に絶縁されているものに対して,上記「並列の複数個の誘導発熱鋼管単体が,同一の押さえ金具に溶接されており,さらに,該押さえ金具が前記戸当板のコンクリート充填側に溶接されている」という構成を付加したものが開示されているとは認められない。また,特許請求の範囲にも,そのようなものは記載されていない。
 ウ したがって,訂正事項aによって,本件構成,すなわち「並列の前記複数個の誘導発熱鋼管単体が,同一の押さえ金具に溶接されており,さらに,該押さえ金具が前記戸当板のコンクリート充填側に溶接されている」という構\成を付加したことは,願書に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面の範囲内においてしたものであるとはいえない。

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平成23(行ケ)10317 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年08月30日 知的財産高等裁判所

 裁判所は、訂正要件を満たしているとした審決を維持しました。明細書には、「前後左右に回動」と記載されているが、「前後左右に揺動」との記載は有りませんでしたが、図面から明らかであると認定されました。
 原告は,願書に添付した明細書及び図面には「揺動」という文言に関する説明が一切なく,本件発明において「揺動」という動きの意味が確定しない以上,訂正事項1−クが新たな技術的事項を導入するものであるのか否か自体の判断ができないし,被告自身が「回動」と「揺動」を異なる概念として用いていると説明している以上,訂正事項1−クは,回動を根拠としての訂正では別の技術的事項を導入することになるのは明らかであって,特許法134条の2第5項において準用する同法126条3項の規定に違反すると主張する。しかしながら,「揺動」とは,文字どおり「揺れ動くこと。揺り動かすこと。」(「広辞苑」第五版)を意味する。そして,本件訂正に際して基準とすべき本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の段落【0019】の「……図8(a)(b)に示す腹骨格部C1は,両端に設けた夫々の第一玉部(図面上で下側)52と第二玉部(図面上で上側)53を,夫々回動可能に嵌め込んだ断面視略U字状の腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56からなり……本実施形態では,胴部骨格Cを,腹骨格部C1と胸骨格部C2の二部構\成とし,かつ腰部骨格Bと腹骨格部C1との連結部およびこの腹骨格部C1と胸骨格部C2との連結部を夫々玉52,53を介して回動可能な構\造とした……本実施形態において,第一玉部52と第二玉部53を嵌め込む夫々の嵌め込み部51a・51aと56a・56aは,各第一玉部52と第二玉部53を嵌め込んだ時に,腰部骨格連結部51および胸部骨格連結部56が所望位置でその状態(例えば,左右いずれかの方向に所望角度をもって傾斜している状態)を維持できるように,各第一玉部52と第二玉部53が夫々緊密に摺接するよう構成するのが好ましい。このとき,嵌め込み部51a・51aと56a・56aは,夫々の曲面の曲率が各第一玉部52と第二玉部53の曲率と同一若しくは近似するものとする。……腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56は,夫々が前後左右に回動可能\(図8中,矢印Y1乃至Y4 で示す前後方向,矢印Y5 乃至Y8 で示す左右方向)……」との記載,及び【図2】,【図8】(本件特許の願書に添付した図面については,別紙参照)に記載されている「腰部骨格連結部51」,「胸部骨格連結部56」の構造からすると,それぞれの連結部が,前後にも左右にも揺れ動くことが可能\であること,すなわち,前後・左右に揺動可能であることは明らかである。したがって,本件発明の「揺動」の意味は明確であり,また,訂正事項1−クは,上記特許明細書等に記載した事項から自明な事項の範囲内において訂正したものと認められるから,新たな技術事項を導入するものとはいえない。\n

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平成23(行ケ)10319 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年06月20日 知的財産高等裁判所

 いわゆる限定的減縮でないとした審決が維持されました。
 この点について,原告らは,本件補正発明は,「通信イベントの発呼者」と明記されているとおり,通信イベントを発信するのは発呼者であるし,本件明細書【0044】の記載からしても,本件補正発明の「変更」の主体は「発呼者」というべきであるなどと主張する。しかしながら,本件補正発明の特許請求の範囲には,「通信イベントの発呼者」と,「前記の情報信号を受信した後のトランシーバユーザの入力に応じて,前記サーバにコマンド信号を送信する手段であって,該コマンド信号は,前記通信イベントのメディア・フォーマットが,前記複数のメディア・フォーマットの内の別のものに変更されるべきことを示す,手段」との関係を示す発明特定事項は存在しないことは,先に述べたとおりである。そして,「通信イベントを発信する」ことと,「通信イベントのメディア・フォーマットを変更する」こととは,機能や処理内容が異なるから,両者の主体が同一とは限らないことはむしろ当然である。そうすると,原告らが指摘するとおり,本件明細書に「発呼者に,…通信イベントをオーディオまたはビジュアル・フォーマットで選択させる」との記載があるとしても,本件補正発明の特許請求の範囲の記載からすると,「通信イベントのメディア・フォーマット」の「変更」の主体が,本願発明と同様に,通信イベントを発信する者である「通信イベントの発呼者」に限定されているということはできない。(4) 以上からすると,本件補正が特許請求の範囲の減縮に該当しないとして,本件補正を却下した本件審決の判断に誤りはない。
 (5) なお,本件補正を却下した本件審決の判断に誤りがない以上,本件補正発明が独立特許要件を欠くとした判断の誤りに係る原告らの主張は,その前提自体を欠き,失当である。

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平成23(行ケ)10327 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年06月13日 知的財産高等裁判所

 新規事項であるとした審決が維持されました。
 当初明細書等(甲4)には,「ばね13を配設した弁体11及び弁体支持体11eにかけて形成したばね収容室11cと流体流路14とを,弁体11に形成した流体通路11dにより連通することにより,弁体11に差圧が作用しないようにしている。」(段落【0010】)と記載されているが,弁体の流体の流れに対して上流側を向く面と下流側を向く面の双方に,減圧前の流体の静圧のみがかかること,及び弁体に流体の静圧による差圧が作用しないように構成されることは,当初明細書等には,記載も示唆もない。かえって,当初明細書の【図1】において,弁体の上流側領域と弁体の外周部領域とでは,弁体の外周部領域において弁体の存在により流路断面積が小さくなるため,弁体の外周部領域における流速が弁体上流側領域における流速に比べて速くなるから,弁体の外周部領域における流体の静圧は弁体の上流側領域における流体の静圧より小さくなる。そうすると,流体通路11dを介して弁体の11の下流側面にかかる流体の静圧は,弁体の上流側面にかかる流体の静圧よりも小さくなるのであって,「弁体に流体の静圧による差圧が作用しないように構\成される」ことはない。したがって,本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものと認めることはできない。

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平成23(行ケ)10296 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年05月23日 知的財産高等裁判所

 新規事項であるとした判断については、誤りであるとしたものの、進歩性なしとして拒絶審決が維持されました。
 当初明細書(甲8)の段落【0008】には,「容器の仮想外周線及び仮想分離線に沿って,円弧又は楕円弧が互いに接して略V字形状となる切り込み線をトムソン刃によって貫設する第1工程と,・・・第2工程とから打ち抜き方法を構\成するという手段を採用した。」との記載が,段落【0016】にも,「この切り込み部4は,分離線3を挟んだ両側の外周縁5と中間の分離線3をそれぞれ円弧状又は楕円弧状の連続曲線で結んだ形状に形成する。即ち,円弧(楕円弧)が互いに向かい合って対称形に接する略V字の形状となる。」との記載があるし,当初明細書添付の図1,2には,小分け容器外縁部の分離線の両端付近に,円弧状又は楕円孤状の曲線で構成された平面視略V字状の切り込み部を設け,この切り込み部の曲線の分離線側端部が分離線と滑らかに繋がって連続曲線を成すようにし,上記切り込み部の曲線の分離線側端部における接線を想定した場合にこの接線が分離線と互いに重なり合うようにされている状況が図示されており,また分離線を挟んで両側の小分け容器が対称になる構\造を有しているため,両側の小分け容器外縁部の切り込み部の曲線の分離線側端部における接線が,分離線において共通のものになり,したがって小分け容器外縁部の切り込み部の曲線と分離線とが成す連続曲線が接線を共通にして「互いに向かい合って対称形に漸近して接する」状況が図示されている。そうすると,本件補正で改められた「分離線の始端(終端)に,分離線を挟んだ両側の容器の外周線と分離線とをそれぞれ円弧状又は楕円弧状の連続曲線で結び,その円弧状又は楕円弧状の曲線が前記分離線を共通する接線として互いに向かい合って対称形に漸近して接する平面視略V字の形状」との発明特定事項は,当初明細書及び図面に記載された範囲内のものであるということができる。したがって,「円弧状又は楕円弧状の曲線が前記分離線を共通する接線として互いに向かい合って対称形に漸近して接する平面略V字の形状」は当初明細書及び図面に記載された事項とは認められず,本件補正は改正前の特許法17条の2第3項の規定に違反するとした審決の判断には誤りがある。
(2) 被告は,本件補正によって,例えば小分け容器を分離させる力が接合部に無理なく効率的に集中し,割れることなくスムーズに切り離すことが可能になるとか,切り込みが深く,分離線が短くなって,短時間で切り離すことができるなどの,取扱いや切り離し作業に関する新たな技術的意義を新たに導入するものであると主張する。しかしながら,かかる効果ないし技術的意義は本件補正後においても本願明細書中に記載されているわけではないし,小分け容器外縁部の切り込みを「円弧状又は楕円弧状の曲線が前記分離線を共通する接線として互いに向かい合って対称形に漸近して接する平面略V字の形状」として,切り込みと分離線が滑らかに繋がるようにすれば,容器の切り離しがよりスムーズになる等の効果を奏することができることは当業者に自明であるから,被告の上記主張は前記(1)の結論を左右するものではない。

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平成23(行ケ)10226 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年03月28日 知的財産高等裁判所

 審判請求時の補正(限定的減縮要件)について争われました。補正要件違反とした審決が維持されました。
 本件補正のうち,本願発明の特許請求の範囲の記載から,本願発明の各吸収性物品形体に関する「着用者の発達の第一段階」と「着用者の発達の第二段階」との相違についての「発達の種々の段階」に「対応するように設計されたシャーシを含む」ものであるという限定を削除し,本件補正発明における「第一」及び「第二」の各吸収性物品形体の相違について,単に「異なる形体を有している」とするにとどめた点についてみると,これは,本願発明における「着用者の発達の第一段階」と「着用者の発達の第二段階」との相違に関する上記限定を削除するものであって,本願発明の特許請求の範囲を拡大するものというほかない。したがって,本件補正のうち上記の点は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえず,本件補正は,法17条の2第4項2号に違反するものというべきである。
 オ さらに,法17条の2第4項2号は,同条1項4号に基づく場合において特許請求の範囲についてする補正について,「特許請求の範囲の縮減(第36条5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明その補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものと規定しているところ,これは,審判請求に伴ってする補正について,出願人の便宜と迅速,的確かつ公平な審査の実現等との調整という観点から,既にされた審査結果を有効に活用できる範囲内に限って認めることとしたものである。そして,同号かっこ書が,補正前の「当該請求項」に記載された発明と補正後の「当該請求項」に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る旨を規定していることも併せ考えると,同号は,補正前の請求項と補正後の請求項とが,請求項の数の増減はともかく,対応したものとなっていることを前提としているものと解され,構成要件を択一的に記載している補正前の請求項についてその択一的な構\成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とする場合あるいはその反対の場合などのように,請求項の数に増減はあっても,既にされた審査結果を有効に活用できる範囲内で補正が行われたといえるような事情のない限り,補正によって新たな発明に関する請求項を追加することを許容するものではないというべきである。
 しかしながら,本件補正は,請求項の数を22から56に増加させるものであるところ,例えば,第一の吸収性物品の形体が「臍の緒のくぼみを有している」(本件補正後の請求項2),「第一の吸収性物品の毛布のような感触を提供する特徴を有している」(同3),「第一の吸収性物品を第一の装着者により良く適合させる」(同4),「第一の装着者の自由な動きを可能にする」(同5),「狭い股領域を有している」(同6),「可撓性ファスナーを有している」(同7),「高拡張側部を有している」(同8)又は「第一の吸収性物品の湿り度を示す」(同9)など,いずれも本件補正前の各請求項には全く存在しない構\成を付加することで,新たな発明に関する請求項を多数追加しているから,既にされた審査結果を有効に活用できる範囲内で補正を行っているといえるような事情が見当たらない。したがって,本件補正のうち,以上のとおり請求項2以下に請求項を多数追加している点は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえず,本件補正は,法17条の2第4項2号に違反するものというべきである。

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 平成23(行ケ)10133 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年01月17日 知的財産高等裁判所 

 携帯電話端末のUI(CS関連発明?)について、限定的減縮違反、および新規事項であるとした審決が維持されました。
 甲6補正発明と本願補正発明とを対比すると,甲6補正発明では,通信機能の停止を維持しながら「時計機能\」,「電話帳機能」,「マイクによる音声を電気信号に変換する機能\」及び「スピーカによる電気信号を音声に変換する機能」を含む複数の機能\それぞれを選択可能としているのに対し,本願補正発明では,通信機能\の停止を維持しながら,上記「複数の機能」のうち「時計機能\」及び「電話帳機能」のみをそれぞれ選択可能\としたものであるから,本件補正により,通信機能の停止を維持しながら選択可能\な機能の一部が削除されていると認められる。そして,その結果,本願補正発明では,「時計機能\」及び「電話帳機能」以外の機能\について,どの機能を通信機能\の停止を維持しながら選択可能とするかは任意の事項とされることに補正されたといえる。そうすると,本件補正により,直列的に記載された発明特定事項の一部が削除され,特許請求の範囲の請求項1の記載が拡張されていることは明らかであるから,本件補正は特許請求の範囲を減縮するものとはいえず,「特許請求の範囲の限定的減縮」を目的とするものに該当するとは認められない。また,本件補正は,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことは明らかである。以上によれば,本件補正について,「平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。」とした審決の判断に誤りはない。
・・・・
 この点,確かに,本願の当初明細書等の上記各段落の記載からすれば,通信機能を停止させた際にも「制御部10」は「電源線22」から電力供給されて動作可能\な状態となっていることから,通信機能停止処理中であっても,「制御部10」が,電源が供給されている「中央処理装置4」,「記憶部5」,「入力部6」,「表\示部7」及び「停止認識部13」と協働して適宜必要な動作を実行することは自明であり,また,図1を参照すると,「マイク8」及び「スピーカ9」は「制御部10」に接続されているから,通信機能停止処理中であっても接続先の本体部(「制御部10」)に電源が供給されている限り使用可能\となり,協働して音声入力及び出力動作を実行し得ることは自明であると認められる。しかし,それは,通信機能停止時,「マイク8」及び「スピーカ9」には電源が供給され,「マイク8」及び「スピーカ9」も協働して音声入力及び出力動作を実行し得ることが自明であるというにとどまり,使用者が,「通信機能\の停止を維持しながら」,「マイクによる音声を電気信号に変換する機能」及び「スピーカによる電気信号を音声に変換する機能\」を適宜選択し,これらの機能を動作させることが本願の当初明細書等の記載から自明な事項であることを意味するものではない。そうすると,甲6補正は,本願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものとはいえないから,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものとは認められない。\n

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平成22(行ケ)10402 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月26日 知的財産高等裁判所

 新規事項、且つ、サポート要件違反ありとした審決が維持されました。
 原告は,「1,2−ジヒドロキノン」や「1,4−ジヒドロキノン」などの「ヒドロキノン」は容易に酸化されて「1,2−ベンゾキノン(オルソベンゾキノン)」や「1,4−ベンゾキノン(パラベンゾキノン)」などの「ベンゾキノン」に変化し,「ベンゾキノン」が還元されると「ヒドロキノン」に変化するという関係に鑑みれば,「ヒドロキノン」,すなわち「1,2−ジヒドロキノン」や「1,4−ジヒドロキノン」はキノン類に属することは明らかであるとも主張する。しかし,特許法17条の2第3項の「明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項」とは,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができるというべきところ,当初明細書等の全ての記載を総合しても,本願補正発明の抗菌,抗ウイルス及び抗真菌組成物において,酸化能\力を有する試剤である過酸化水素やアズレンキノン等のキノンが,さらに酸化を受けた後に組成物中でその作用を発揮するということはできないので,当初明細書等に,酸化を受けて酸化能力を有する試剤に変換される物質を酸化能\力を有する試剤に含めることが記載されているということはできない。
・・・
 本願の当初明細書には,「抗菌,抗ウィルス,及び抗真菌組成物に用いられる(A)は,触媒機能を有する金属イオン化合物で,一般式は,M+aX−bで,Mは,ニッケル(Ni),コバルト(Co),・・・クロム(Cr),・・・鉄(Fe),銅(Cu),チタン(Ti),・・・白金(Pt),バラジウム(Pd),…からなる群から選択された金属元素・・・である・・・」(段落【0005】)と記載されているものの,M+aX−bで表\される成分(A)のMとして「銅」以外の金属を使用する組成物については,発明の詳細な説明に具体的データの記載がなく,また,本願の組成物が脂肪酸やDNAを分解するメカニズムを説明する記載もなく,脂肪酸やDNAの分解において組成物中の各成分が果たす役割を実証する記載もない。他方,本件補正後の請求項1の記載によって特定される3つの成分を組み合わせることにより,脂肪酸やDNAが分解でき,その結果,バクテリア,ウイルス及び真菌類を破壊,殺菌できることについて,具体例をもって示さなくとも当業者が理解できると認めるに足りる技術常識はない。そうすると,本願の組成物の成分(A)のMとして「銅」以外の金属を使用するものが,脂肪酸やDNAを分解でき,バクテリア等を破壊,殺菌するという課題を解決できるということはできないので,本願における発明の詳細な説明は,本件補正の請求項1の記載によって特定される成分(A)のMの全ての範囲において所期の効果が得られると当業者において認識できる程度に記載されているということができない。したがって,本件補正後の請求項1(本願補正発明)の記載は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである」(サポート要件充足)ということはできない。

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平成23(行ケ)10030 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月26日 知的財産高等裁判所

 新規事項でないとして訂正を認めた審決が取り消されました。
 以上によれば,当業者は,本件明細書の全ての記載を総合することにより,「共通フラグ」について,設定値についての1ビット(賭け数についての1ビットのフラグを設定する場合は併せて2ビット)のデータであるとの技術的事項を導くことが認められる。イ 他方,本件訂正に基づく「区別データ」は,「複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別する」ためのデータであって,「フラグ」であるとの限定や1ビットであるとの限定もないから,1ビットを超えるデータを含むと理解される。また,1ビットを超えてビット数を増大させることができるならば,判定値データの分類を限りなく細かく設定することができるので,上記解決課題に沿わないような記憶態様を作出することが可能となる。すなわち,本件訂正に基づき請求項1に「区別データ」を加入することは,単に,1ビットを超えるデータを含むことになるのみならず,願書に添付された本件明細書に開示された発明の技術思想,解決課題とは異質の技術的事項を導入するものというべきである。ウ そうすると,本件訂正に基づき請求項1に「区別データ」を加入することは,本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入することになる。したがって,「前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための区別データ」が,「共通フラグ」について記載した段落【0091】から自明な事項であるとして,本件訂正が,本件訂正前の本件明細書に記載された事項の範囲内においてしたものとした審決の判断は誤りというべきである。

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平成23(行ケ)10139 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月08日 知的財産高等裁判所

 補正が新規事項であると判断した審決が取り消されました。
 以上によれば,当初明細書の前記(2)オ及びキに認定の部分に記載された,本願発明1の最内熱可塑性材料層に狭い分子量分布を有する線形低密度ポリエチレンをメタロセン触媒を用いて重合するとの技術的事項(前記(1)ii)及び当初明細書の前記(2)オないしキに認定の部分に記載された,本願発明1及び5の最内熱可塑性材料層を前記線形低密度ポリエチレン及びマルチサイト触媒で重合して得られた低密度ポリエチレンとの特定の配合割合によるブレンドポリマーであるとする技術的事項(前記(1)iii)は,いずれも,同じく狭い分子量分布を有する線形低密度ポリエチレンからなる樹脂層を有する本願発明2ないし4についても妥当するものと解するのが相当である。このように,当初明細書の上記記載部分は,本願発明1の最内熱可塑性材料層を例示しているものの,当初明細書の全ての記載を総合するとき,本願発明2ないし4において狭い分子量分布を有する線形低密度ポリエチレンからなる各樹脂層についても,「メタロセン触媒で重合して得られた」ものであるとの技術的事項(前記(1)ii)及び上記線形低密度ポリエチレン及びマルチサイト触媒で重合して得られた低密度ポリエチレンとの特定の配合割合によるブレンドポリマーであるとする技術的事項(前記(1)iii)を,いずれも容易に導くことができるものというべきである。エ したがって,本願発明1ないし4の最内熱可塑性材料層等の樹脂層を構成する狭い分子量分布を有する線形低密度ポリエチレンをその製造方法により特定し(前記(1)ii),かつ,本願発明1ないし4の最内熱可塑性材料層等の樹脂層の構成を上記線形低密度ポリエチレン及びマルチサイト触媒で重合して得られた低密度ポリエチレンとの特定の配合割合によるブレンドポリマーであると特定した(前記(1)iii)本件補正は,いずれの点においても,当初明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
・・・
 また,被告は,当初明細書には本件補正発明1が「15〜17のメルトフローインデックス」を有する旨が記載されていない旨を主張する。しかしながら,当初明細書には,前記(2)エに認定のとおり,本願発明1ないし4及び本件補正発明1ないし4の最内熱可塑性材料層等の樹脂層が「5〜20のメルトフローインデックス」を有する旨の記載がある。そして,メルトフローインデックスとは,前記のとおり,樹脂材料の熱溶融時の流動性に関する指標であるところ,本願発明1及び本件補正発明1の特許請求の範囲の記載にある「15〜17のメルトフローインデックス」は,当初明細書の上記記載をより限定するものであり,当初明細書の記載を総合しても,この限定によって何らかの新たな技術的事項を導入するものとは認められないから,メルトフローインデックスを上記のように限定する補正は,明細書の範囲内においてされたものであって,当初明細書には,本件補正発明1ないし4の有するメルトフローインデックスについての記載があるとみて差し支えない。

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平成23(行ケ)10018 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年11月30日 知的財産高等裁判所

 進歩性要件を満たさないとして訂正要件違反とした審決が、取り消されました。 
 当該発明が引用発明から容易想到であったか否かを判断するに当たっては,当該発明と引用発明とを対比して,当該発明の引用発明との相違点に係る構成を確定した上で,当業者において,引用発明及び他の公知発明とを組み合わせることによって,当該発明の引用発明との相違点に係る構\成に到達することが容易であったか否かによって判断する。相違点に係る構成に到達することが容易であったと判断するに当たっては,当該発明と引用発明それぞれにおいて,解決しようとした課題内容,課題解決方法など技術的特徴における共通性等の観点から検討されることが一般であり,共通性等が認められるような場合には,当該発明の容易想到性が肯定される場合が多いといえる。他方,引用発明と対比して,当該発明の作用・効果が,顕著である(同性質の効果が著しい)場合とか,特異である(異なる性質の効果が認められる)場合には,そのような作用・効果が顕著又は特異である点は,当該発明が容易想到ではなかったとの結論を導く重要な判断要素となり得ると解するのが相当である。
・・・・
エ 以上のとおり,訂正発明1の構成を採用したことによる効果(死亡率を減少させるとの効果)は,訂正発明1の顕著な効果であると解することができる。訂正発明1は,カルベジロールを虚血性心不全患者に投与することにより,死亡率の危険性を67%減少させる効果を得ることができる発明であり,訂正発明1における死亡率の危険性を67%減少させるとの上記効果は,「カルベジロールを『非虚血性心不全患者』に少なくとも3か月間投与し,左心室収縮機能\等を改善するという効果を奏する」との刊行物A発明からは,容易に想到することはできないと解すべきである。
・・・
この点,被告は,訂正発明1に係る特許請求の範囲において,「死亡率の減少」という効果に係る臨界的意義と関連する構成が記載されておらず,訂正発明1は,薬剤の使用態様としては,この分野で従来行われてきた治療のための使用態様と差異がなく,カルベジロールをうっ血性心不全患者に対して「治療」のために投与することと明確には区別できないことから,死亡率の減少は単なる発見にすぎないことを理由に,訂正発明1が容易想到であるとした審決の判断に,違法はない旨主張する。しかし,被告の主張は,以下のとおり採用の限りでない。すなわち,特許法29条2項の容易想到性の有無の判断に当たって,特許請求の範囲に記載されていない限り,発明の作用,効果の顕著性等を考慮要素とすることが許されないものではない(この点は,例えば,遺伝子配列に係る発明の容易想到性の有無を判断するに当たって,特許請求の範囲には記載されず,発明の詳細な説明欄にのみ記載されている効果等を総合考慮することは,一般的に合理的な判断手法として許容されているところである。)。また,カルベジロールをうっ血性心不全患者に対して「治療」のために投与する例が従来から存在すること,及び「治療」目的と「死亡率減少」目的との間には,相互に共通する要素があり得ることは,原告主張に係る取消理由2の4に対する反論としては,成り立ち得ないではない。すなわち,「『死亡率の減少』との効果が存在することのみによって,直ちに当該発明が容易想到でないとはいえない」という限りにおいては,合理的な反論になり得るといえよう。しかし,被告の論旨は,原告主張に係る取消事由4(「死亡率の減少が予\測を超えた顕著性を有する」)に対しては,有効な反論と評価することはできず,その点は,既に述べたとおりである。

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平成22(ワ)24818 特許権差止等請求事件 平成23年11月25日 東京地方裁判所

 訂正要件を満たさないため無効理由を解消できず、104条の3の規定により、権利行使不能と判断されました。
 本件特許発明は「鍵」発明であり,ロータリーディスクタンブラー錠の構成に関する上記限定を加えたからといって,「鍵」自体の構\成が限定されるとは認められないのであるから,上記限定によって,本件特許発明に係る特許請求の範囲を減縮するものということはできず,また,本件特許発明の「鍵」の構成が明瞭になるとも,誤記又は誤訳が訂正されることになるということもできない。したがって,本件訂正請求は,特許法134条の2第1項ただし書各号所定の事項を目的とするものとは認められないから,不適法なものであり,これによって,本件特許が有する前示1の無効理由を解消することはできない。\n

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平成23(ワ)22310 特許料請求事件 平成23年10月28日 東京地方裁判所

無審査の実用新案権による侵害事件です。裁判所は、本件発明にいう可変スイッチの技術的意義から、被告製品はその技術的範囲外と認定しました。
 請求の範囲ですが、出願後の補正で「可変スイッチを有する電気炊飯器」として登録されています。
 平成18年3月14日付け手続補正書により補正された【図4】には,「可変スイッチ」に関して,「スイッチ1のタイマースイッチは1分から10分までの可変スイッチとする。これでもって,おこげごはんは自由に作れる。又水分を補給することによって,おかゆごはんも作れる。タイマースイッチは,普通ごはんの出来たあとに作動させるものである。タイマースイッチは,ONを1回おすと1分である。10回おすと10分である。」と説明されており,この記載を考慮すれば,「可変スイッチ」とは,「通常炊飯が完了した後に更に作動させる加熱(追い炊き加熱)を行う時間を可変とすることができるスイッチ」を意味するものと解するのが相当である。すなわち,本件考案は,i)通常炊飯による普通ごはん,ii)通常炊飯完了後に可変スイッチによって決定された任意の時間追い炊き加熱を行うことによるおこげごはん,iii)通常炊飯完了後に水分を補給して追い炊き加熱を行うことによるおかゆごはんの3種類のごはんを作ることを特徴とするものと認められる。
(3) 被告製品の構成について
 被告製品取扱説明書(乙2)によれば,被告製品は,「芳潤炊き」,「エコ炊飯」,「炊込み」,「おかゆ」,「お急ぎ」,「やわらか」,「かため」,「ふつう」という炊飯メニューを有しており,被告製品上部の「操作・表示部」に設けられた「メニュー」ボタン(スイッチ)又は「芳潤炊き」ボタン(スイッチ)を操作することにより,上記各モードを設定するものであることが認められる。しかしながら,被告製品は,炊き上げに要する時間,消費電力等を上記各モードの設定に応じて変更することによって,上記のような様々な炊飯メニューを実現しているのであって(乙2,弁論の全趣旨),本件全証拠を検討しても,被告製品について,通常炊飯が完了した後に追い炊き加熱を行うような動作をしている事実は認められない。すなわち,被告製品における「メニュー」ボタン(スイッチ)や「芳潤炊き」ボタン(スイッチ)は,いずれも炊き始めから炊き上がりまでの条件を設定するもので,通常炊飯が完了した後の追い炊き加熱の時間を設定するものとは認められない。(4) したがって,被告製品に備えられているスイッチは,本件考案における「可変スイッチ」に該当するものではないから,被告製品は本件考案の技術的範囲に属するということはできない。

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平成23(行ケ)10072 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月29日 知的財産高等裁判所

 新規事項による補正による無効理由ありとした審決が、新たな技術的事項を導入するものではないとして、取り消されました。
 以上のとおり,当初明細書等の全ての記載を総合的に判断すると,当初明細書等には,そこに記載の発明の形状に関する説明に当たり,本件補正事項中のi)「当てがう」こと,ii)「挿入」すること,iii)「吊り持ちさせる」こと及びiv)「展示させる」ことの4つの動作の同時並行関係又は時間的な順序関係については,これを同時動作を意味すると解する特段の記載がない一方で,これらの動作の間に同時並行関係又は時間的な順序関係があること,すなわち同時動作を意味すると解することを否定しているものでもないから,本件補正事項は,その中に2回用いられている「ながら」との文言が,動作の同時並行関係を含意しない「…のままで。」との同時状態の意味のほかに,「同時にあれとこれとをする意。」との動作の同時並行関係,すなわち同時動作の意味を有するからといって,当初明細書等の記載から導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいい難い。したがって,本件補正事項を追加する本件補正は,当初明細書等の記載から導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとまではいえず,そこに記載した事項の範囲内においてされたものであるということができるから,特許法17条の2第3項に違反するとはいえない。そして,本件特許に係る【請求項2】ないし【請求項7】は,いずれも本件発明に関する【請求項1】を引用しているから,本件発明についての本件補正に関する上記判断は,本件特許に係る【請求項2】ないし【請求項7】にも同じく妥当することになる。そして,本件補正事項中の「ながら」が「同時にあれとこれとをする意。」という動作の同時並行関係(同時動作)のみを意味するものと限定的に解釈する本件審決の判断は,その根拠を欠くばかりか,当初明細書等にはこのような上記i)ないしiv)の4つの動作の同時並行関係又は時間的な順序関係についての記載がないから新たな技術的事項を導入しないものとはいえないとすることは,当初明細書等の記載の字句等を形式的に判断するものであって,当初明細書等の全ての記載を総合的に判断しているものとはいえないから,本件審決による本件特許に係る各発明に関する本件補正の適否の判断には誤りがある。

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平成23(行ケ)10014 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月05日 知的財産高等裁判所

 補正要件違反は違法と認定されました。ただし、独立特許要件を満足していないので、審決の結果に影響がないとして拒絶審決が維持されました。
 ところで,本件補正は,特許請求の範囲の記載を前記第3,1(2)アから同第3,1(2)イに変更するものであって,補正前の「第1のデフォルトモード」,「第2のデフォルトモード」及び「無線電話」を,それぞれ「通常モード」,「簡易操作モード」及び「携帯型無線電話」に変更する補正事項,及び請求項1に「通常モードにおいて前記ソフトキーに割り当てられる機能\は,使用可能な他の機能\を選択することに関し,前記簡易操作モードおいて前記ソフトキーに割り当てられる機能\は,特定の機能を実行することに関し,」との記載を追加する補正事項を含むものである。ア これにつき審決は,本件補正により,「無線電話」の一部が「携帯型無線電話」に変更された結果,請求項1に記載された発明には「無線電話」と「携帯型無線電話」の2種類が存在することになるところ,明細書の記載を参酌しても「無線電話」と「携帯型無線電話」の使い分け及び技術的意味の違いが不明であるから,本件補正により,発明の内容はかえって不明りょうとなったと判断している。しかし,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には,「無線電話が所定の条件の下で復帰するところのユーザ選択可能な少なくとも通常モード及び簡易操作モードを有する携帯型無線電話であって」と記載されていることから,「無線電話」は,「所定の条件の下で復帰するところのユーザ選択可能\な少なくとも通常モード及び簡易操作モードを有する携帯型無線電話」であることが特定されており,「無線電話」が,上記「携帯型無線電話」を意味することは,本願明細書の記載を参酌するまでもなく,文理解釈上自明というべきである。そして,特許請求の範囲の記載から,「無線電話」と「携帯型無線電話」とが別異のものを意味すると解釈する余地はない。イ また,審決は,本件補正により,補正前の請求項1の「第1(のデフォルトモード)」は「通常モード」と変更されたにもかかわらず,請求項1を引用する請求項4には「前記第1」との記載がそのまま残っており,この結果,補正後の請求項4は意味不明となった旨判断している。しかし,本件補正前の特許請求の範囲の記載において,請求項4の「前記第1及び第2のデフォルトモード」が請求項1の「第1のデフォルトモード」及び「第2のデフォルトモード」を指すことは明らかであり,本件補正が,請求項1の「第1のデフォルトモード」及び「第2のデフォルトモード」を,それぞれ「通常モード」及び「簡易操作モード」に補正する補正事項を含むことに鑑みれば,本件補正後の請求項4における「前記第1及び簡易操作モード」が「前記通常モード及び簡易操作モード」を意味し,「前記第1」との記載が誤記であることは,本件補正の全趣旨から明らかというべきである。また,上記のとおり,補正後の請求項4における「第1」との記載が「通常モード」を意味するものと正しく解釈することができるのであるから,本件補正によって,請求項4が意味不明になったということもできない。

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平成21(行ケ)10107 審決取消請求事件 特許権 平成23年10月11日 知的財産高等裁判所

 訂正後の発明が進歩性がないとして訂正を認めた審決を取り消しました。
 これによれば,同一のプライマー上にある特定の塩基配列を持つ領域と相補的な塩基配列を持つ領域とが,自己アニールを優先的に行うためには,両者の距離が不必要に離れないほうが望ましく,また,両者があまりにも接近している場合には望ましい状態のループの形成を行うのが不利になるという技術的知見に基づき,プライマーの領域Yの塩基を10〜70とすることによって,新たなプライマーのアニールと,それを合成起点とする鎖置換を伴う相補鎖合成反応が円滑に開始できることが開示されている。すなわち,プライマーの領域Yに着目し,この塩基を10〜70とすると,効率的に核酸を合成できることが開示されており,引用例3の実施例に具体的に記載される,Y=16やY=23のプライマーは,上記のような効率的な核酸の合成ができるプライマーとして開示されているといえる。一方,引用例1に記載された核酸の増幅方法も,鋳型の核酸にアニールし,プライマー伸長反応をすると自己アニールによってループを形成するようなプライマーを使用する方法であり,引用例1の実施例において使用されているプライマーは,特定の配列を有するものであって,配列に含まれる塩基数の観点からみると,X=20,Y=0のものである。そうすると,引用発明1及び引用発明3は,いずれもループを形成するプライマーを使用する核酸の増幅方法であって,核酸の増幅方法において効率的な反応を行うことは,当業者にとって自明の技術課題であるから,より効率的な反応を行うこと目的として,引用発明1に開示されたプライマーの構成である,X=20,Y=0のものに替えて,引用発明3に開示された効率的な反応が可能\\なプライマーの要件,すなわち,「10≦X≦50」,「10≦Y≦70」であるプライマーや,Y=16(このときX=23,Y′=2),Y=23(このときX=19,Y′=2)という要件を満足するプライマーの構成を採用することは,当業者が容易になし得ることである。なお,引用例1には,引用例3に記載されるような要件を満足するプライマーの使用を阻害するような記載は認められない。したがって,訂正発明1は,引用発明1及び引用発明3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。\n

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平成22(行ケ)10373 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年07月21日 知的財産高等裁判所

 補正は新規事項であるとした審決の判断が維持されました。
 このことから,特許請求の範囲の文言上は,商品カタログの基準色画像部分以外の他の部分が基準色画像部分と同一条件でかつ同時に色補正されるように,商品カタログの受信者が基準色画像の色補正を「自己のシステムにおける選択機能」を機能\させずに行うことは特定されているものの,この「自己のシステムにおける選択機能」の意義は明らかでない。
イ 発明の詳細な説明の記載
 この点について,発明の詳細な説明(【0024】)には,「最近コンピューター画像処理技術が急速に発展し,自己の所有するパソコンのモニタに表\示されたデジタル画像色の単純な補正が一般家庭でも容易に出来るようになった。従って,本願発明の場合でも,自己の所有するパソコンのモニタに表\示された基準色のデジタル画像の色を自己が所有するこの基準色画像の色(印刷された基準色画像の色)と比較して目視で両者間の相違が明瞭に認識された場合に,例えば公知のコンピューター画像処理手法(例えばAdobe 社 Photoshop LE-J(登録商標))を用いた色補正処理によって,モニタ表示のデジタル基準色画像の色を自己が保有する印刷基準色画像の色と実質的に合致するように補正すれば,前記デジタル基準色画像と共に表\示されている商品のデジタル画像の色も補正されるので,色品質を重視した商品の選択が効率的に高い精度で可能となる。」と記載されている。
ウ 「自己のシステムにおける選択機能」の意義
 発明の詳細な説明に「公知のコンピューター画像処理手法」として記載された「Adobe Photoshop LE-J」のユーザガイド(以下「本件ユーザガイド」という。)の「第3章:選択範囲の操作」には,選択ツールにより,i)「画像の一部を補正する具体的方法」とii)「画像全体を補正する具体的方法」とが記載されている(甲8の2)。なお,「公知のコンピューター画像処理手法を用いた色補正処理」として,本件ユーザガイドに記載された上記以外の技術的事項があると認めるに足りない。そうすると,「自己のシステムにおける選択機能」とは,受信者所有のパソ\コンのような「自己のシステム」に含まれる,本件ユーザガイドにおけるi)「画像の一部を補正する具体的方法」とii)「画像全体を処理する具体的方法」のことであり,いわゆる「選択ツール」により編集操作の対象として画像の一部又は全部を選択する機能のことをいうものと解される。\n

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平成22(行ケ)10024 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月28日 知的財産高等裁判所 

 新規事項でないとした審決の判断は維持されましたが、進歩性ありとした判断は取り消されました。
 前記(4),(5)によれば,本件基準明細書又は図面に記載された発明は,回路基板改造による不正行為の防止を課題とし,上記不正行為を効果的に防止して不正行為を受けにくくする遊技機を提供することを目的としており(前記段落【0006】【0007】),遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とする信号伝達方向規制手段を表\示制御基板に設けるとともに,表示制御基板への信号の出力のみを可能\とする信号伝達方向規制手段を遊技制御基板に搭載する構成とし(図16),更に信号伝達方向規制手段をバッファIC回路で構\成していることが認められる(前記段落【0060】)。これにより,本件基準明細書又は図面に記載された発明は,表示制御基板側から遊技制御基板側に信号が伝わることなく,確実に信号の不可逆性を達成することができるようにしており,表\示制御基板改造による不正行為を効果的に防止するものである(前記段落【0094】【0095】【0096】)。そうすると,本件基準明細書又は図面のすべての記載を総合すると,本件基準明細書又は図面に記載された遊技機は,当業者において,不正行為を防止するため,遊技制御基板から表示制御基板への信号の伝達のみを可能\とし,表示制御基板側から遊技制御基板側に信号が伝わる余地がないよう,確実に信号の不可逆性を達成することができるように構\成していること,すなわち,信号の不可逆性に例外を設けないとの技術的事項が記載されていると認定するのが合理的である。そうすると同技術的事項との関係において,「遊技制御基板と表示制御基板との間のすべての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記表\示制御基板への一方向に規制する」ことは,新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。これに対し,原告は,甲3記載の発明について,メイン制御部からサブ制御部へのすべての信号を規制の対象としていないと解釈するならば,本件基準明細書についても同様に解釈するべきであり,本件訂正は,新たな技術的事項を導入するものに当たると主張する。しかし,前記のとおり,訂正の適否の判断において,「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内」であるか否かは,当業者において,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべてを総合することによって,認識できる技術的事項との関係で,新たな技術的事項を導入するものであるか否かを基準に判断すべきものであり,他の公知文献等の解釈により判断が左右されるものではないから,上記原告の主張は採用することができない。したがって,遊技制御基板と表示制御基板との間の「信号」を「全ての信号」と限定する本件訂正は,「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内」においてするものということができるので,審決が本件訂正を認めた点に違法はない。
・・・ 以上によれば,審決が認定する技術事項Cが前記段落【0071】の記載に基づくものであるとしても,同段落の記載は,甲9の他の部分の記載や甲9記載の発明が解決しようとする課題及びその解決手段と整合しないか,又は,技術的に解決不可能な内容を含むものであって,誤った記載と解される。したがって,前記段落【0071】の記載のみから,甲9には技術事項Cが実質的に開示されていると認めることはできない。審決が,技術事項Cを根拠に,甲9において,「遊技制御基板199」から「払出制御回路基板152」へ伝達される信号は賞球個数信号D0〜D3がすべてであるとは認定できないと判断したことは誤りである。
・・・ 前記(2)のとおり,甲3には,サブ制御部6からメイン制御部1へのデータ信号入力を禁止し,サブ制御部6からメイン制御部1への不正信号の入力を防止するため,メイン制御部1とサブ制御部6との間のすべての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記表示制御基板への一方向に規制するための信号伝達方向規制手段を設けることが実質的に記載されているものと認められる。そうすると,本件訂正発明1と甲3記載の発明との相違点は,本件訂正発明1は表\示制御基板内及び遊技制御基板内の各々に信号伝達方向規制手段が実装されているのに対し,甲3記載の発明は,メイン制御部1(「遊技制御基板」に相当)及びサブ制御部6(「表示制御基板」に相当)の各々に信号伝達方向規制手段が実装されていないこととなる。また,前記(3)のとおり,甲9には,遊技機に関し,メイン制御部からサブ制御部への一方向通信とした構\成を採用することにより,サブ制御部からメイン制御部へ入力される情報の入力部を利用した不正なデータの入力による不正改造等を防止することが記載されており,その具体的手段として,信号の伝達方向を遊技制御基板(メイン基板)からサブ基板への一方向に規制するために,前記遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とし,前記遊技制御基板への信号の出力を不能\とする信号伝達方向規制手段である信号回路209を遊技制御基板199(メイン基板)に設けるとともに,信号の伝達方向を前記遊技制御基板(メイン基板)からサブ基板への一方向に規制するために,前記サブ基板への信号の出力のみを可能とし,前記サブ基板からの信号の入力を不能\とする信号伝達方向規制手段である信号回路217を払出制御回路基板152(サブ基板)に設けることが開示されていると認められる。さらに,甲9に記載された技術事項は,甲3記載の発明と同様に遊技機に関する技術分野において,不正信号の入力を防止するという目的を達成するためのものであり,甲3記載の発明においては1つであった一方向データ転送手段を,甲9のように入力側基板と出力側基板のそれぞれに設けることにより,より高い効果が期待できることは当然のことであるから,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用することは,当業者において容易であるといえる。なお,前記(3)のとおり,審決が技術事項Cとして認定した事項は,甲9記載の技術的思想に基づく適切な開示事項とは認められず,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用する際の阻害要因とはならない。したがって,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用することにより,本件訂正発明1の構成(ε)及び構\成(ζ)を得ることは当業者が容易に想到し得ることといえる。以上によれば,本件訂正発明1は,甲3に記載された発明に甲9記載の技術事項及び周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到することができるものであるから,本件訂正発明1の進歩性を肯定した審決の判断は誤りであり,取消事由2は理由がある

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平成22(行ケ)10064 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月28日 知的財産高等裁判所

 補正について新規事項であるした点は誤りであるが、進歩性なしとの判断については誤りでないと判断しました。ただ、進歩性の判断手法については一言述べられています。
 当裁判所は本件補正2について,新たな技術的事項を導入したとした審決の判断に誤りがあるとする取消事由1に係る主張は,理由があるが,本件補正2について,本願補正発明につき独立特許要件を欠くとした審決の判断に誤りがあるとする取消事由2に係る主張は,原告の主張を前提とする限りにおいては理由がないと解する。したがって,本件補正2を却下した上,本願を拒絶すべきものとした審決には,結果として,誤りはないものと判断する。
・・・ 審決は,本件補正2に関し,「『第一高分子樹脂材料及び第二高分子樹脂材料は,互いに異なるポリウレタン樹脂である』との明示的な記載を当初明細書等に見つけることはできない。」として,「第一高分子樹脂材料及び第二高分子樹脂材料の選択として,両者が『同一』であるか『互いに異なる』かに大別されるものであったとしても,そのうちの一方である『互いに異なるポリウレタン樹脂』を選択することは,新たな技術的事項を導入したものと認めざるを得ない。」と判断する。しかし,審決の判断は誤りである。当初明細書(甲1)の段落【0033】には,「基布50を被覆する第二高分子樹脂材料58は(中略)ステープルファイバーバット56を被覆する第一高分子樹脂材料に対して親和性を示す。実際,そのような親和性により,第一高分子樹脂材料および第二高分子樹脂材料をして使用される材料の選択が決定される。(中略)前記二つの材料はポリウレタン樹脂材料であってもよい。いずれにしても,その親和性により,第二高分子樹脂材料と(中略)第一高分子樹脂材料とが化学的に結合するようになり,硬化した第二高分子樹脂材料と基布の糸の間における機械的な結合が補強される。」旨の記載があり,第一高分子樹脂材料と第二高分子樹脂材料は,ともにポリウレタン樹脂材料である場合があって,両者は親和性を示し,化学的に結合するものであるから(この点は,当事者間に争いがない。),当初明細書には,両ポリウレタン樹脂が化学的に結合するものであること(両者が化学的に結合する反応性基をそれぞれの分子内に有すること)を前提として,両者が同一である場合と,互いに異なる場合の双方の技術が開示されている。そうすると,本件補正2は,「互いに異なる」ポリウレタン樹脂材料に限定したものであり,そのことにより,新たな技術を導入したものと解することは到底できない。以上のとおり,本件補正2について,新たな技術的事項を導入したとした審決の判断は誤りである。
・・・ なお,本願補正発明の進歩性の有無を判断するに当たり,審決は,本願補正発明と引用発明との相違点を認定したが,その認定の方法は,著しく適切を欠く。すなわち,審決は,発明の解決課題に係る技術的観点を考慮することなく,相違点を,ことさらに細かく分けて(本件では6個),認定した上で,それぞれの相違点が,他の先行技術を組み合わせることによって,容易であると判断した。このような判断手法を用いると,本来であれば,進歩性が肯定されるべき発明に対しても,正当に判断されることなく,進歩性が否定される結果を生じることがあり得る。相違点の認定は,発明の技術的課題の解決の観点から,まとまりのある構成を単位として認定されるべきであり,この点を逸脱した審決における相違点の認定手法は,適切を欠く。しかし,本件では,原告において,このような問題点を指摘することなく,また,平成22年4月15付けの第1準備書面において,審決のした本願補正発明の相違点1ないし5に係る認定及び容易想到性の判断に誤りがないことを自認している以上,審決の上記の不適切な点を,当裁判所の審理の対象とすることはしない。\n

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平成21(行ケ)10400 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月13日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、新規事項か否かが争われました。知財高裁は新規事項とした審決を維持しました。
 ところで,前記1で判示したとおり,当初明細書及び図面には,ダウンロードページの細部項目メニュ画面中の使用案内ボタンをクリックした場合,使用案内ページのどの画面に移動するかについて,明確な記載が認められず,当初明細書及び図面の記載を総合すると,使用案内ページのモデルメニュ画面に移動すると解するのが,最も自然な画面移動であって,選択したパソコンモデルに対応した,細部項目のメニュ画面やグラフィック情報及びテキスト情報を提供する画面などに直接移動することを示唆する記載は,当初明細書及び図面には見当たらない。また,ダウンロードボタンをクリックした場合も,ダウンロードページのモデルメニュ画面に移動すると解するのが,最も自然な画面移動であって,当初明細書及び図面には,選択したパソ\コンモデルに対応した他の画面に直接移動することを示唆する記載も見当たらない。したがって,上記の補正事項を実現するために,前記のような直接的な画面移動を実現することは,各種のサービスページに共通して,選択されたパソコンモデルの種類を認識・保存するとの技術的事項を導入するものであり,また,移動メニュの同じサービスページのボタンであっても,そのボタンが設けられている画面(又はその表示内容)によって,ボタンをクリックした場合の移動する先の画面又はその表示内容が異なるという技術的事項を導入するものであるから,当初明細書及び図面に記載された事項ではなく,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるということはできない。\n

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平成21(行ケ)10283 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年09月30日 知的財産高等裁判所

 パチスロ機発明(CS関連発明?)について、訂正要件違反無し、無効理由無しとした審決が維持されました。
 原告は,訂正事項6(A)について,審決のようにエリア4からエリア1までを順次チェックして最初にハズレとなる回をリーチ目に変更するものと解釈すると訂正事項6(B)の記載と重複し,訂正事項6(A)が無意味な記載となるから訂正目的違反に当たる旨主張する。しかし,訂正事項6(A)と訂正事項6(B)の記載に一部重複する部分があるとしても,これらはいずれも事前報知を行う場合を限定するものであり,重複記載により特許請求の範囲を不明確にするものでもないから,訂正事項6(A)が訂正目的違反に当たるということもできない。なお,原告は,審決引用部分Aの記載はエリア4が当たり(特定の識別情報に対応する表示結果)の場合について説明したものであるのに対し,訂正事項6(A)はエリア4が当たりでない(特定の識別情報に対応するものでない表\示結果)場合の記載であること,審決引用部分Aの記載は,明細書の記載からはほとんど想定できない実施例であること,審決引用部分Aの記載に従うと,エリア3ないしエリア1のデータは,打玉の始動入賞領域への入賞により生成された表示結果決定用データではない場合にも,再度リーチ目表\示用データに変更されることになり,打玉の始動入賞領域への入賞により生成された表示結果決定用データがハズレか否かを判定するという訂正事項6(A)の構\成となっていないことから,審決引用部分Aの記載に基づき訂正事項6(A)が新たな技術事項の導入に当たるか否かを判断することは誤りである旨主張する。しかし,審決引用部分Aには,常にエリア4の停止図柄データをリーチ目表示用の停止図柄データに変更するように構\成することに代えて,エリア4に記憶されている停止図柄データが当たりであった場合にはエリア4をリーチ目表示用の図柄データに変更することなくエリア3からエリア1を順次チェックすることが記載されているのであって,エリア4が当たりでない場合はエリア4により事前報知を行うことも記載されているから,審決引用部分Aの記載を根拠として,訂正事項6(A)が新たな技術事項の導入に当たらないとした判断に誤りはない。また,エリア4に記憶されている停止図柄データが大当たり又は中当たりの値であった場合には,エリア3にはハズレのデータではなく,既にリーチ目表\示用の図柄データに変更されたデータが入っている可能性が少なくない(エリア2及びエリア1についても同様)としても,そのことと新たな技術事項の導入に当たるか否かとは無関係であり,これをもって審決引用部分Aの記載から訂正事項6(A)が新たな技術事項の導入に当たらないとした判断が誤りであるということもできない。\n

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◆関連事件です。平成21(行ケ)10282

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平成21(行ケ)10344 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年09月28日 知的財産高等裁判所

 無効審決後の訂正審判請求により、第4次審決まで知財高裁と往復しましたが、最終的には無効審決維持となりました。
 特許庁は,平成21年5月21日付けで,本件第4訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る特許は特許法29条2項に違反する旨の無効理由通知を原告にするとともに,同旨の職権審理結果通知を被告にした。その後,原告は,平成21年6月24日付けで意見書を提出するとともに,訂正請求をした(以下「本件第5訂正」という。)。特許庁は,平成21年9月18日,「訂正を認める。特許第2842215号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし・・・当裁判所は,原告が主張する取消事由には理由がなく,本件審決を取り消すべき違法は認められないから,原告の請求を棄却すべきものと判断する。その理由は,以下のとおりである。

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平成22(行ケ)10019 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年07月15日 知的財産高等裁判所

 審決は新規事項であるとして訂正を認めませんでしたが、裁判所は、当初明細書の範囲内であるとしてこれを取り消されました。
 旧特許法126条1項は,訂正が許されるためには,いわゆる訂正の目的要件(本件では特許請求の範囲の減縮)を充足するだけでは足りず,「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」であることを要するものと定めている。法が,いわゆる目的要件以外に,そのような要件を定めた理由は,訂正により特許権者の利益を確保することは,発明を保護する上で重要ではあるが,他方,新たな技術的事項が付加されることによって,第三者に対する不測の不利益が生じることを避けるべきであるという要請を考慮したものであって,特許権者と第三者との衡平を確保するためのものといえる。このように,訂正が許されるためには,いわゆる目的要件を充足することの外に,「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」であることを要するとした趣旨が,第三者に対する不測の損害の発生を防止し,特許権者と第三者との衡平を確保する点にあることに照らすならば,「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」であるか否かは,訂正に係る事項が,願書に添付された明細書又は図面の特定の箇所に直接的又は明示的な記載があるか否かを基準に判断するのではなく,当業者において,明細書又は図面のすべてを総合することによって導かれる技術的事項(すなわち,当業者において,明細書又は図面のすべてを総合することによって,認識できる技術的事項)との関係で,新たな技術的事項を導入するものであるか否かを基準に判断するのが相当である(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10563号平成20年5月30日判決参照)。・・・・本件訂正前の本件特許明細書の上記記載中の本件発明の作用・効果等の記載に照らすならば,i)本件発明を特徴づけている技術的構成は,特許請求の範囲の記載(請求項1)中の「継鉄部と,外周側が開放され内周側が連結された歯部とに分割されるとともに,前記歯部にコイルが巻装され,かつ,前記継鉄部と歯部とが,プレス抜きの後積層されて,一体的に構\成されるステータコアと,前記ステータコアをインサート成形した絶縁性樹脂からなるフレームと,前記フレームに嵌合固定するブラケットとを有するモールドモータにおいて」までの部分にあるのではなく,むしろ,これに続いて記載されている「前記コイルの巻装形状を,コイルエンドの軸方向端面の外周側を平坦面にするとともに,コイルエンドの軸方向端面の内周側にテーパを形成した台形状とし,かつ,前記フレームのコイルエンドの軸方向端部の平坦面と接する部分の厚みを薄くし,前記コイルエンドと前記ブラケットとを,肉厚のきわめて薄い樹脂製のフレームからなる細隙を介して対向させたことを特徴とするモールドモータ。」との部分にあると解されるところ,本件特許明細書の「内周側が連結された歯部」との構成は,前段部分に記載されていること,ii)そして,「歯部」は,「内周側が絶縁性樹脂を介して連結された歯部」のみに限定された範囲のものであったとしても,「内周側が絶縁性樹脂を介さないで連結された歯部」を含む範囲のものであったとしても,本件発明の上記作用効果,すなわち,歯部間におけるコイルのスペースファクタを高くし,コイルの冷却を良好にすることにより,モータ特性を向上させ,モータの全長を短くするとの作用効果との関係においては,何らかの影響を及ぼすものとはいえないことが,それぞれ認められる。
イ 被告は,本件特許明細書の【図2】及び【図4】には,「歯部の内周側が絶縁性樹脂を介して連結されること」が明確に示されているとはいえない点を,本件訂正が「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」の訂正であることを否定する根拠としている。しかし,訂正が,上記要件を充足するか否かは,明細書の実施例に図示されているか否かという形式的な観点から判断すべきではなく,当該明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で,第三者に不測の損害を生じる可能性があると推測できるような,新たな技術的事項を導入したか否かを実質的に判断すべきであるから,被告の主張は採用の限りでない。この点,被告は,本件において,「絶縁性樹脂を介して連結された歯部」とする訂正を認めると,本件特許明細書の記載から予\測できない範囲に特許権の効力が及ぶことになり,第三者に不測の損害を与えかねないと主張する。しかし,被告は,第三者に不測の損害を与えかねないような新たな技術的事項の内容を,何ら明らかにしていないので,被告の主張は採用できない。また,審決では,本件訂正が「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当すると判断しており,「内周側が絶縁性樹脂を介して連結された歯部」も本件訂正前の請求項1記載の発明に含まれることを認めているのであって,本件においては,本件訂正がされたからといって,第三者に不測の損害を与える可能性のある新たな技術的事項が付加されたことを,想定することは困難である。
ウ したがって,「内周側が連結された歯部」(本件において,同構成が「内周側が絶縁性樹脂を介さないで連結された歯部」及び「内周側が絶縁性樹脂を介して連結された歯部」を含むことについては,争いがない。)を「内周側が絶縁性樹脂を介して連結された歯部」とした本件訂正は,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないというべきである。\n

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平成21(行ケ)10303 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年06月22日 知的財産高等裁判所

   補正事項は新規事項であるとした審決が取り消されました。
 審決は,本件補正が特許法17条の2第3項の規定に違反するというものであるところ,同条の「明細書又は図面に記載した事項」とは,技術的思想の高度の創作である発明について,特許権による独占を得る前提として,第三者に対して開示されるものであるから,ここでいう「事項」とは明細書又は図面によって開示された発明に関する技術的事項であることが前提となるところ,「明細書又は図面に記載した事項」とは,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができると解すべきである。そこで,以下,本件補正が,上記の新たな技術的事項を導入しないものであるか否かを各補正事項ごとに検討する。・・・・前記1の段落【0002】及び図7を参照すると,従来の携帯電話端末は,「音響信号(音声)を音声電気信号に変換するマイク8」と,「音声電気信号を音響信号に変換するスピーカ9」を備えており,また,本願発明の携帯電話端末に関して,「本装置の基本的な構成は,図7に示した従来の携帯電話端末とほぼ同様であり,従来と同様の部分としてアンテナ1と,無線部2と,ベースバンド処理部3と,表\示部7と,マイク8と,スピーカ9と,バッテリ11と,電源制御部12とを備え,」(段落【0016】参照)と記載されているとともに,発明の実施の形態を示す図1には,マイク8及びスピーカ9が制御部10と矢印線により結ばれている様子が示されている。すると,当初明細書等に記載された本願発明の実施例としての携帯電話端末は,「マイク8」と「スピーカ9」とを備え,従来の携帯電話端末と同様に,「マイク8」は「音響信号(音声)を音声電気信号に変換する」ものであり,「スピーカ9」は「音声電気信号を音響信号に変換する」ものであると認められる。・・・以上のように,当初明細書等に記載された本願発明の課題とその解決手段及び周知技術を総合して考慮すると,本願発明の携帯電話端末において通信機能を停止した場合にそのまま使える機能\としては,少なくとも時計機能,電話帳機能\,マイクによる音声を電気信号に変換する機能,及びスピーカによる電気信号を音声に変換する機能\が含まれるものと解される。(5) 以上のとおり,補正事項イ)ないしハ)は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであると認められるから,本件補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができると解される。

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平成21(行ケ)10213 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月27日 知的財産高等裁判所

 新規事項なし、冒認違反無しとした審決が維持されました。
 本件発明は,「有精卵の生死およびその発育状態を,非破壊にて,検査員の判断基準により近く,かつ,確実に判定することを目的としている」(本件明細書【0004】)ものであり,甲10の2の「7.謝辞」欄に,「本研究をすすめるにあたり,評価サンプルや実験場所をご提供頂き,また,目視検査の内容についてご指導を頂きました(財)阪大微生物病研究会観音寺研究所殿の皆様に厚くお礼を申し上げます。」との記載があることに照らすと,甲10の2の記載によって,E及びFが本件発明の発明者でないということはできず,むしろ,微研に所属していたE及びFも本件発明に関与したことが推認される。(2) そして,前記第2,1(2)のとおり,本件特許の願書の発明者の氏名,住所又は居所を変更する手続補正に伴って,被告から,E及びF作成名義の,「本願発明は同人らとA,B,C及びD6名の共同発明であることに相違ない」旨を記載した宣誓書,及びA,B,C及びD作成名義の,「本願発明は同人らとE及びF6名の共同発明であることに相違ない」旨を記載した宣誓書が提出されていることからすると(これらの宣誓書の存在及び内容は,審決第4,5.(2)においても認定されている。甲12の3),本件発明の発明者は,A,B,C,D,E及びFの6名であり,これらの発明者から被告に本件特許の特許を受ける権利が承継されたものと推認される。(3) そうすると,審判において,本件特許の特許権者である被告は,「特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」について主張立証責任を尽くしていたものと認められ,本件特許は冒認出願に対してされたものではないとの審決の判断に誤りはない。

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平成21(行ケ)10321 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について新規事項、不明瞭であるとした審決が取り消されました。
 前記当初明細書の記載によれば,サーバ及び端末がそのハードウエア構成として中央処理装置(CPU)を有すること,CPU312は,データの処理又は演算を行うと共に,バス311を介して接続された各種構\成要素を制御するものであること,サーバ又は端末のCPUの処理や制御により図37(A)〜(D)の処理を行うことが示されている。このように,当初明細書においては,サーバ及びその端末の構成が共通性を有するものとして記載されており,補正明細書の各請求項の冒頭に記載された「コンピュータを用いたゲーム情報供給装置であって」との部分は,サーバと端末を含んだ全体の構\成を意味するものと解するのが合理的である。・・・そうすると,当初明細書には,「ゲーム情報供給装置」において,サーバが,「ネットワークを介して端末装置からのアクセスを受信すると,前記記憶手段からクイズ形式の広告情報を読み出して前記端末装置に送信し表示させる表\示手段」を有するとの技術事項が記載されていると解すべきである。本件補正が,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないとした本審決の判断は,誤りである。

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平成21(行ケ)10213 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月27日 知的財産高等裁判所

 新規事項でない&冒認出願ではないとした審決が維持されました。
,本件当初明細書の【0029】には,「一次判定は,4画像の総血管長と検査領域総面積との兼ね合いによって,正常卵を判定する。」と記載されているところ,「兼合い」とは,「かねあうこと。つりあい。均衡。標準。」(広辞苑第4版(岩波書店))を意味するから,「総血管長と検査領域総面積との兼ね合いによって,正常卵を判定する」とは,総血管長と検査領域総面積とのつりあいがとれているかどうか,又は総血管長と検査領域総面積との均衡がとれているかどうかによって正常卵を判定するという意味と解釈し得る。そして,総血管長と検査領域総面積の「つりあい」又は「均衡」とは,総血管長と検査領域総面積のバランスを意味し,総血管長と検査領域総面積のバランスとは,総血管長と検査領域総面積の「割合」を意味することといえる。そうすると,本件当初明細書には,「前記検査領域面積に占める総血管長の割合」に基づいて正常卵を判定することが記載されていたということができる。ウ したがって,本件発明2に係る本件補正は,本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてされたものである。・・・・冒認出願による無効事由の成否に関し,「特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」についての主張立証責任は,特許権者が負うと解すべきである。そこで,特許権者である被告がその主張立証責任を尽くしたかについて検討する。ア原告は,「有精卵の検卵装置に関する経過説明」(甲9の1),「設備見積仕様書」(甲21),「検卵機開発経過報告書」(甲24の2)によれば,本件発明の発明者が原告であることは明らかであると主張する。そして,甲9の1,甲21,甲24の2によれば,平成13年9月15日,株式会社T 種鶏孵化場(以下「T 種鶏孵化場」という。)の代表取締役である原告が,熊本アイディーエムの代表\取締役であるGと検卵機の開発について打合せをし,熊本アイディーエムに検卵機の試作品や設計図の作成を依頼し,その後の交渉を経て,平成14年10月8日,熊本アイディーエムがT 種鶏孵化場に対して設備見積仕様書(甲21)を提出したことが認められる。しかし,上記の書証によっても,原告らが開発していた検卵の方法や検卵機が本件発明に該当するものかどうか明らかではなく,本件発明の発明者が原告であるとは認められない。イまた,原告は,D,C,A及びB作成名義の「有精卵の検査手法」と題する書面(甲10の2)の「6.まとめ」欄及び「7.謝辞」欄の記載から,E及びFは本件発明の発明者ではないと主張する。しかし,本件発明は,「有精卵の生死およびその発育状態を,非破壊にて,検査員の判断基準により近く,かつ,確実に判定することを目的としている」(本件明細書【0004】)ものであり,甲10の2の「7.謝辞」欄に,「本研究をすすめるにあたり,評価サンプルや実験場所をご提供頂き,また,目視検査の内容についてご指導を頂きました(財)阪大微生物病研究会観音寺研究所殿の皆様に厚くお礼を申し上げます。」との記載があることに照らすと,甲10の2の記載によって,E及びFが本件発明の発明者でないということはできず,むしろ,微研に所属していたE及びFも本件発明に関与したことが推認される。そして,前記第2,1 のとおり,本件特許の願書の発明者の氏名,住所又は居所を変更する手続補正に伴って,被告から,E及びF作成名義の,「本願発明は同人らとA,B,C及びD6名の共同発明であることに相違ない」旨を記載した宣誓書,及びA,B,C及びD作成名義の,「本願発明は同人らとE及びF6名の共同発明であることに相違ない」旨を記載した宣誓書が提出されていることからすると(これらの宣誓書の存在及び内容は,審決第4,5. においても認定されている。甲12の3),本件発明の発明者は,A,B,C,D,E及びFの6名であり,これらの発明者から被告に本件特許の特許を受ける権利が承継されたものと推認される。そうすると,審判において,本件特許の特許権者である被告は,「特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」について主張立証責任を尽くしていたものと認められ,本件特許は冒認出願に対してされたものではないとの審決の判断に誤りはない。

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平成21(行ケ)10326 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月27日 知的財産高等裁判所

 減縮に当たらないとした(訂正要件違反)審決が取り消されました。
 本件訂正前発明2及び本件訂正後発明2は,いずれも,マッサージ機において,より正確に肩位置を設定できるようにするために,マッサージ機本体と,使用者にマッサージを施すように当該マッサージ機本体に設けられていると共に使用者の身長方向に移動自在な施療子と,当該施療子を操作して任意の位置に位置決めすることができる位置操作部とを備え,前記位置操作部の操作によって決められた施療子の位置を基準位置(肩位置)として記憶する記憶部を備えていることを特徴とするマッサージ機である。そして,本件訂正後発明2は,本件訂正前発明2に対して,「施療子(14)を移動させた後,前記操作装置(40)への所定の操作を施すと,その所定の操作が行われたときの前記施療子(14)の位置を基準位置として検出する,マッサージ機において,」(本件訂正後発明2のウ)との構成が付加されたものである。ところで,特許請求の範囲の記載において「構\成」が付加された場合,付加された後の発明の技術的範囲は,付加される前の発明の技術的範囲と比較して縮小するか又は明りょうになることは,説明を要するまでもない。本件において,本件訂正後発明2記載の特許請求の範囲に属するマッサージ機は,構成アないし構\成オのすべてを具備するものに限定される。本件訂正前発明2では,何らの限定がされていなかったものに対して,本件訂正後発明2では,「施療子(14)を移動させた後,前記操作装置(40)への所定の操作を施すと,その所定の操作が行われたときの前記施療子(14)の位置を基準位置として検出する,マッサージ機において,」との構成を有するものに限定されたのであるから,これに伴って,その技術的範囲が縮小するか又は明りょうになることは,当然である。(2) この点,被告は,本件訂正後発明2は,「所定操作による基準位置検出に基づく制御」を行うと,もはや「一定時間経過による基準位置検出に基づく制御」を行わないから,本件訂正前発明2と比較して択一的記載であり,特許請求の範囲の減縮に当たらないと主張する。被告の主張は,発明の技術範囲の解釈についての誤りに由来するものであって,到底採用できるものではない。確かに,マッサージ機の使用者(ユーザ)は,本件訂正後発明2の構成ウに係る操作方法を選択することによって,構\成エ〔前記施療子(14)を移動させて位置決めを行うために予め設定された一定の時間が経過すると,前記施療子(14)の位置を検出する構\成〕に係る機能を選択することなく,位置決めをすることができる。しかし,ユーザが,そのような位置決め方法を選択することが可能\であることは,本件訂正後発明2において,はじめて可能となるものではなく,本件訂正前発明2においても同様であり,本件訂正後発明2と本件訂正前発明2とは,その点に関する相違はない(任意の位置に基準位置を決定することのできる位置操作部が存在することは,本件訂正前発明2においても同様である。)。使用者(ユーザ)にとって,本件訂正後発明2の構\成ウを選択することによって,構成エで示す機能\を選択しないことがあり得ることは,本件訂正後発明2において,構成エを具備しないマッサージ機が,発明の技術的範囲に含まれること,すなわち,技術範囲が拡大することを意味するものではない。\n

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平成21(行ケ)10065 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月14日 知的財産高等裁判所

 事案が複雑です。分割出願するに当たって要旨変更となるような事項を追加し、それが看過されて登録され、その後、侵害訴訟にて「分割要件満たさないので出願日繰り下がり」の主張がなされました。特許権者は分割出願に追加した事項を取り除く訂正審判を請求しました。 審判では、親出願と訂正後を比較して、訂正後の発明が記載されていないとして請求棄却審決がなされました。この審決の取消訴訟で、裁判所は、訂正審判には独立特許要件(この場合進歩性)を判断しなければならず、そのためには、まず、分割が適法であるかを判断しなければならない。分割が適法であるかは、親出願と訂正前発明とを比較する必要があると判断しました。裁判所の考え方自体は現行法上、正しいのですが、これだと、分割要件満たさない特許を訂正で救うことはできないことになりますね。
 「本件審決は,本件訂正の適否について判断するに当たり,本件訂正は本件訂正前発明を本件訂正後発明に訂正するものであるが,本件訂正前発明が原出願発明の分割出願に係る発明であるため,本件訂正後発明における技術的事項,すなわち,本件訂正後事項と原出願事項とを比較検討して,本件訂正後事項が原出願事項の範囲内のものではないとし,その結果,本件出願は分割出願として適法なものではないから,本件出願の出願日が原出願日に遡ることはなく,本件出願の現実の出願日を基準にすると,本件訂正後発明は進歩性がなく,本件訂正は独立特許要件を欠くとしたが,本件審決のその判断を前提に,原告は,本件訂正後事項は原出願事項の範囲内であるとし,他方,被告は,その範囲外であるとして,本件審決の判断の当否を争っている。しかしながら,本件訂正の適否について本件訂正後発明が独立特許要件を具備するか否かを判断する必要がある場合には,その進歩性の判断の基準時として,本件出願の出願日を確定する必要があるところ,本件出願は分割出願であるから,本件出願が適法な分割出願であれば,原出願の出願日である昭和55年3月14日に遡って出願したとみなされる(改正前44条2項)ので,原出願日が基準時となるのに対し,適法な分割出願でなければ,本件出願の現実の出願日が基準時となるのであって,その基準時を確定するためには,まずもって本件出願が分割出願として適法なものであったか否かを検討する必要がある。しかるところ,本件出願が適法な分割出願であったというためには,分割出願の発明の構成に欠くことができない技術的事項,すなわち,本件訂正前の請求項1に係る発明(以下「本件訂正前発明」という。)の構\\成に欠くことができない技術的事項(以下「本件訂正前事項」という。)が原出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された事項であること,すなわち,原出願事項の範囲内であることが必要であって,原出願事項の範囲内であるか否かを検討する対象となるのは,本件訂正後事項ではなく,本件訂正前事項でなくてはならない。けだし,本件訂正後発明の進歩性について判断するのは,本件訂正の適否を検討するためであるところ,原出願日を基準にその判断をすることが可能であるのは,本件出願が適法な分割出願であった場合であることを前提とするが,本件においては,その分割出願の適否もまた問題となっているからである。そこで,以下,本件訂正後事項を専ら対象として本件審決の判断の当否に言及する原・被告の主張もその見地から善解し得るものは善解して,本件訂正前事項が原出願事項の範囲内であるか否かについて検討することとする。」\n

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◆関連はこちらです。平成20(ネ)10083 平成22年04月14日 知的財産高等裁判所
 

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平成20(ワ)8086 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年02月24日 東京地方裁判所

 特許権侵害に対して、要旨変更による出願繰り下げにより新規性無しとして、特104条の3の規定により、権利行使不能と判断されました。
 以上のとおり,本件当初明細書の特許請求の範囲の(1)や,〔課題を解決するための手段〕欄には,格子定数関係式2が記載され,これらには,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくするとの限定はない。(イ) しかしながら,格子定数関係式2に係る発明につき,本件当初明細書の〔作用〕欄には,「なお,a(CB)<a(InP)<a(CW)の場合には,量子井戸層とバリア層の厚さを調整して,活性層全体としての平均的な格子定数をInPの格子定数に等しくする。」と記載されている。また,格子定数関係式2に係る発明の実施例は,第2の実施例のみであると認められるところ,これには,「平均の格子定数がInPに格子整合する活性層(17)を有」すること,「活性層(17)の平均格子定数は,量子井戸層(20)とバリア層(21)の厚みと組成を調整することによってInPの格子定数と等しくすることができる」ことが記載されている。他方で,格子定数関係式2に係る発明について,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくすることを前提としない場合の構成及び作用に関する記載はなく,実施例の記載もない。また,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくすることを前提としない格子定数関係式2に係る発明を採用した場合に,歪を緩和するという作用効果が生ずることをうかがわせる記載はないのみならず,そもそも,転位の発生の防止という本件発明の課題との関係において,具体的にどのような効果が生ずるかについての記載もない。(ウ) また,証拠(乙6)によれば,本件特許出願前である1986年(昭和61年)に公刊されたと認められる乙6刊行物には,・・・・ことが記載されている。他方で,本件各証拠に照らしても,本件特許出願当時,歪超格子において,InP基板に格子整合させずに,単に格子定数関係式2に係る発明を採用することにより,歪を緩和して,転位の発生を防止することを記載した刊行物が存在したとは認められない。(エ) このような本件特許出願当時の技術水準に照らして,本件当初明細書の〔作用〕欄の記載及び第2の実施例の記載(特に,「平均の格子定数がInPに格子整合する活性層(17)を有」すること,「活性層(17)の平均格子定数は,量子井戸層(20)とバリア層(21)の厚みと組成を調整することによってInPの格子定数に等しくすることができる」との記載)に接した当業者は,これらの記載につき,乙6刊行物に記載された知見(歪超格子の平均的な格子定数,すなわち,全体的な平衡値を,適切な組成と厚さを選択することにより,InP基板に格子整合させ,歪エネルギーを最小化すること)を,量子井戸半導体レーザ素子に適用したものと理解するものと認められる。(オ) 以上のことからすれば,本件当初明細書の記載に接した当業者は,格子定数関係式2に係る発明が,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくすることを前提とした発明であると理解するものと認められる。したがって,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくすることを前提としない,格子定数関係式2に係る発明は,本件当初明細書には記載されていなかったものと認められる。・・・以上のことからすれば,第2回補正は,本件当初明細書には記載されていなかった,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくせずに,量子井戸層の格子定数をInPの格子定数より大きくし,バリア層の格子定数をInPの格子定数よりも小さいものとすることにより,歪による転位の発生を緩和するという技術的事項を新たに追加するものであるから,本件当初明細書の要旨を変更するものと認められる。

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平成21(行ケ)10133 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月03日 知的財産高等裁判所

 訂正要件違反かが争われました。新規事項でないとした判断は維持しましたが、当該構成要件を採用することは容易と判断して、無効理由なしとした審決を取り消しました。\n 本件明細書における「台板」の構成は,埋込用アタッチメントの一部を構\成する四角形の板状部材であって,その上部にフレーム及び振動装置を固定し,その下面中央部には杭の上部に嵌め込むための円筒状の嵌合部が設けてあるものとして記載されているということができるが,本件図面における振動装置の油圧モーターの油圧式ショベル系掘削機側の端は,台板とは別の部材である三角柱の3つの側面のうちの1つの面を開放状態としたような形状の部材によってカバーされており,同図面上は同油圧モーターの端がどこに位置するのかを確認することはできないから,台板の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機側の辺が,油圧式ショベル系掘削機側にある振動装置の油圧モーターの端よりも油圧式ショベル系掘削機側にあることについて,本件明細書又は本件図面に直接的に記載されているとまで認めることはできない。もっとも,訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものということができるので,本件訂正のうち特許請求の範囲に「上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり,」との記載を付加する部分が,本件明細書及び図面の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものかどうかを判断するに当たっては,この種の杭埋込装置における前記説示した意味での台板の存在及び形状についての当業者の認識を踏まえる必要がある。・・・・ 以上によると,本件特許出願時における当業者にとって,油圧式ショベル系掘削機のアーム先端部に取り付ける埋込用アタッチメントとして,四角形の台板の上部に振動装置を備えるとともに,その下部略中央部に杭との嵌合部を備えるものはよく知られており,振動装置,四角形の台板及び嵌合部相互の関係については,四角形の台板を油圧モーターを含む振動装置が納まる程度の大きさとし,振動装置が隠れるように配置する構成のものが知られ,作業現場において長年にわたって使用されてきたものとして周知であったということができる。そうすると,本件訂正のうち,特許請求の範囲の【請求項1】及び【請求項2】について「上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり,」との限定を加える部分は,本件特許出願時において既に存在した「台板の上部に振動装置を設けるとともに,下面中央部に嵌合部を設ける」という基本的な構成を前提として,「振動装置の油圧モーターが油圧式ショベル系掘削機側にある」という当業者に周知の構\成のうちの1つを特定するとともに,「台板」と「振動装置」の関係について,同様に当業者に周知の構成のうちの1つである「四角形の台板の上に油圧モーターが隠れるように振動装置を配置するという構\成」に限定するものである。そして,上記イ(ア)ないし(ク)で認定した技術状況に照らすと,上記周知の各構成はいずれも設計的事項に類するものであるということができる。したがって,本件明細書及び図面に接した当業者は,当該図面の記載が必ずしも明確でないとしても,そのような周知の構\成を備えた台板が記載されていると認識することができたものというべきであるから,本件訂正は,特許請求の範囲に記載された発明の特定の部材の構成について,設計的事項に類する当業者に周知のいくつかの構\成のうちの1つに限定するにすぎないものであり,この程度の限定を加えることについて,新たな技術的事項を導入するものとまで評価することはできないから,本件訂正は本件明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてするものとした本件審決の判断に誤りはない。・・・・そして,上記1(3)ウにおいて認定した本件特許出願時における当業者の認識を踏まえると,この種の杭打込装置において,「台板の上部に振動装置を設けるとともに,下面中央部に嵌合部を設ける」という構成は基本的な構\成のうちの1つであると認められるから,引用例1に接した当業者は,同記載の図面から台板の存在を認識することができるというべきである。したがって,台板の有無及びその構成について,本件発明1と引用発明1との相違点2を認定した本件審決には,原告主張の誤りがあるといわなければならない。(2) しかしながら,本件審決は,引用発明1には台板の上部にあるものを保護するという技術思想を認めることができないとの理由により,引用発明1と本件発明1との相違点2に係る構成を導き出すことは当業者にとって容易であるということはできないと判断しているのであって,引用例1における台板の存在を認定したとしても,その判断が異なる結果となったとは解されず,本件審決による相違点2の認定の前記誤りは,結局,本件審決の結論に影響を及ぼすものということはできないから,原告主張の取消事由2も採用することができない。\n

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平成21(行ケ)10157等 審決取消当事者参加事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月19日 知的財産高等裁判所

少し前の判決ですが、アップしておきます。訂正審判の部分確定に関する判断です。
特許に関する審決の取消訴訟において審決取消判決が確定したときは,審判官は特許法181条5項の規定に従い当該審判事件について更に審理・審決をすることになるが,審決取消訴訟は行政事件訴訟法の適用を受けるから,再度の審理・審決には,同法33条1項の規定により,上記取消判決の拘束力が及ぶ。そして,この拘束力は,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるから,審判官は取消判決のなした事実認定及び法律判断に抵触する認定判断をすることは許されないことは明らかである(最高裁平成4年4月28日第三小法廷判決・昭和63年(行ツ)第10号民集46巻4号245頁)。そして,前記のとおり,平成19年2月16日になされた第1次審決は,平成20年5月28日に言い渡された第1次判決により取り消され,その理由は第3,1(1)エのとおりであり,同判決は確定したのであるから,本件審決を担当する審判官は,第1次判決の有する拘束力の下で認定判断しなければならないこととなる。ところで,第1次判決は,前記のとおり,「原告からなされた平成18年9月13日付けの本件訂正審判請求(甲4)は,旧請求項1〜7を新請求項1〜7等に訂正しようとしたものであるところ,その後原告から平成19年1月15日付けでなされた上記訂正審判請求書の補正(甲7)の内容は新請求項3・5・7を削除しようとするものであり,同じく原告の平成19年1月15日付け意見書(甲6)にも新請求項1・2・4・6の訂正は認容し新請求項3・5・7の訂正は棄却するとの判断を示すべきであるとの記載もあることから,審判請求書の補正として適法かどうかはともかく,原告は,残部である新請求項1・2・4・6についての訂正を求める趣旨を特に明示したときに該当すると認めるのが相当である。本件における上記のような扱いは,原告が削除を求めた新請求項3・5・7は,その他の請求項とは異なる実施例(『本発明の異なる形態』,『実施例2』)に基づく一群の発明であり,発明の詳細な説明も他の請求項に関する記載とは截然と区別されており,仮に原告が上記手続補正書で削除を求めた部分を削除したとしても,残余の部分は訂正後の請求項1・2・4・6とその説明,実施例の記載として欠けるところがないことからも裏付けられるというべきである。そうすると,本件訂正に関しては,請求人(原告)が先願との関係でこれを除く意思を明示しかつ発明の内容として一体として把握でき判断することが可能な新請求項3・5・7に関する訂正事項と,新請求項1・2・4・6に係わるものとでは,少なくともこれを分けて判断すべきであったものであり,これをせず,原告が削除しようとした新請求項3・5・7についてだけ独立特許要件の有無を判断して,新請求項1・2・4・6について何らの判断を示さなかった審決の手続は誤りで,その誤りは審決の結論に影響を及ぼす違法なものというほかない。」(甲9,64頁下9行〜65頁15行)等とするものであり,一方,本件審決(第2次審決)は,「以上のとおり,本件訂正請求は,複数の請求項について訂正を求めるものであり,訂正発明3,5及び7に係る発明は,訂正要件を満たさないものであり,訂正発明1,2,4及び6に係る発明は,訂正要件を満たすものである。ここで,平成20年7月10日言渡の最高裁判所判決(平成19年(行ヒ)318号)を参照するに,該判決では,『複数の請求項について訂正を求める訂正審判請求は,複数の請求項に係る特許出願の手続と同様,その全体を一体不可分のものとして取り扱うことが予\定されているといえる。』(判決5頁)と判示されていることから,訂正事項の一部にでも訂正要件を満たさない部分があれば,訂正審判請求は,一体として棄却されることとなる。これを本件訂正審判請求に当てはめてみると,本件訂正審判請求が一部訂正要件を満たす部分があるとしても,訂正審判請求は,その全体を一体不可分のものとして取り扱われなければならず,結局,一体として棄却すべきものである。」(33頁9行〜22行)等としたものである。そうすると,第1次判決が請求項1・2・4・6項と請求項3・5・7項とは分けて判断すべきであるとして第1次審決を取り消しているのに,本件審決(第2次審決)が請求項1〜7項の全体を一体不可分のものとして取扱うべしとして訂正審判請求を不成立としていることは,被告主張の最高裁平成20年7月10日第一小法廷判決(平成19年(行ヒ)第318号民集62巻7号1905頁,前述した「平成20年最高裁判決」)を考慮しないとすれば,第1次判決の拘束力に反する判断をしていることになる。(2)ア これに関して被告は,行訴法33条1項に基づく拘束力は処分時以降に事情変更が生じた場合には及ばないところ,平成20年最高裁判決は第1次判決が依拠した昭和55年最高裁判決の射程を限定し,また訂正審判請求について一体として判断すべきことを判示しているから,これは処分時以降の事情変更に当たり本件審決に拘束力違反はない等と主張し,一方,これに対し当事者参加人は,被告の主張は取消判決の拘束力が法的拘束力であるのに対し判例の効力が事実上の効力であるという差異を看過するものである,平成20年最高裁判決は特許異議申立てにおいて訂正請求がなされた場合について訂正の許否を請求項ごとに判断すべきことを判示したもので,訂正審判請求に関する見解部分は傍論にすぎず,判例としての効力を生じない,等と反論する。イ 被告が事情変更に当たるとする最高裁平成20年7月10日第一小法廷判決(平成19年(行ヒ)第318号民集62巻7号1905頁)は,特許庁がなした特許取消決定の取消しを求める訴訟についての判示であり,最高裁判所民事判例集62巻7号1905頁以下に記載された判決要旨は「特許異議申立事件の係属中に複数の請求項に係る訂正請求がされた場合,特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正は,訂正の対象となっている請求項ごとに個別にその許否を判断すべきであり,一部の請求項に係る訂正事項が訂正の要件に適合しないことのみを理由として,他の請求項に係る訂正事項を含む訂正の全部を認めないとすることは許されない。」とするものであり,判決の原文は「(1) 特許法は,一つの特許出願に対し,一つの行政処分としての特許査定又は特許審決がされ,これに基づいて一つの特許が付与され,一つの特許権が発生するという基本構造を前提としており,請求項ごとに個別に特許が付与されるものではない。このような構\造に基づき,複数の請求項に係る特許出願であっても,特許出願の分割をしない限り,当該特許出願の全体を一体不可分のものとして特許査定又は拒絶査定をするほかなく,一部の請求項に係る特許出願について特許査定をし,他の請求項に係る特許出願について拒絶査定をするというような可分的な取扱いは予定されていない。このことは,特許法49条,51条の文言のほか,特許出願の分割という制度の存在自体に照らしても明らかである。一方で,特許法は,複数の請求項に係る特許ないし特許権の一体不可分の取扱いを貫徹することが不適当と考えられる一定の場合には,特に明文の規定をもって,請求項ごとに可分的な取扱いを認める旨の例外規定を置いており,特許法185条のみなし規定のほか,特許法旧113条柱書き後段が『二以上の請求項に係る特許については,請求項ごとに特許異議の申\立てをすることができる。』と規定するのは,そのような例外規定の一つにほかならない(特許無効審判の請求について規定した特許法123条1項柱書き後段も同趣旨)。(2) このような特許法の基本構造を前提として,訂正についての関係規定をみると,訂正審判に関しては,特許法旧113条柱書き後段,特許法123条1項柱書き後段に相当するような請求項ごとに可分的な取扱いを定める明文の規定が存しない上,訂正審判請求は一種の新規出願としての実質を有すること(特許法126条5項,128条参照)にも照らすと,複数の請求項について訂正を求める訂正審判請求は,複数の請求項に係る特許出願の手続と同様,その全体を一体不可分のものとして取り扱うことが予\定されているといえる。これに対し,特許法旧120条の4第2項の規定に基づく訂正の請求(以下『訂正請求』という。)は,特許異議申立事件における付随的手続であり,独立した審判手続である訂正審判の請求とは,特許法上の位置付けを異にするものである。訂正請求の中でも,本件訂正のように特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とするものについては,いわゆる独立特許要件が要求されない(特許法旧120条の4第3項,旧126条4項)など,訂正審判手続とは異なる取扱いが予定されており,訂正審判請求のように新規出願に準ずる実質を有するということはできない。そして,特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正請求は,請求項ごとに申立てをすることができる特許異議に対する防御手段としての実質を有するものであるから,このような訂正請求をする特許権者は,各請求項ごとに個別に訂正を求めるものと理解するのが相当であり,また,このような各請求項ごとの個別の訂正が認められないと,特許異議事件における攻撃防御の均衡を著しく欠くことになる。以上の諸点にかんがみると,特許異議の申\立てについては,各請求項ごとに個別に特許異議の申立てをすることが許されており,各請求項ごとに特許取消しの当否が個別に判断されることに対応して,特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正請求についても,各請求項ごとに個別に訂正請求をすることが許容され,その許否も各請求項ごとに個別に判断されるものと考えるのが合理的である。被上告人は,発明を表現する明細書は常にその全体が一体不可分のものとして把握されるべきであると主張するが,昭和62年法律第27号による特許法の改正により,いわゆる一発明一出願の原則を定めていた規定が削除され,しかも一発明に複数の請求項の記載をすることが認められるようになったことを考えると,同改正後の特許法の下で,上記のように解すべき根拠を見いだすことはできない。前掲最高裁昭和55年5月1日第一小法廷判決は,いわゆる一部訂正を原則として否定したものであるが,複数の請求項を観念することができない実用新案登録請求の範囲中に複数の訂正事項が含まれていた訂正審判の請求に関する判断であり,その趣旨は,特許請求の範囲の特定の請求項につき複数の訂正事項を含む訂正請求がされている場合には妥当するものと解されるが,本件のように,複数の請求項のそれぞれにつき訂正事項が存在する訂正請求において,請求項ごとに訂正の許否を個別に判断すべきかどうかという場面にまでその趣旨が及ぶものではない。(3) 以上の点からすると,特許異議申立事件の係属中に複数の請求項に係る訂正請求がされた場合,特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正については,訂正の対象となっている請求項ごとに個別にその許否を判断すべきであり,一部の請求項に係る訂正事項が訂正の要件に適合しないことのみを理由として,他の請求項に係る訂正事項を含む訂正の全部を認めないとすることは許されないというべきである。(4) これを本件についてみると,上告人は,訂正事項aは特許請求の範囲の減縮を目的とする旨主張して,これを含む本件訂正の請求をしているところ,訂正事項aは,特許異議の申立てがされている請求項1に係る訂正であるから,他の請求項に係る訂正事項とは可分のものとして,個別にその許否を判断すべきものである。ところが,本件決定は,請求項2に係る訂正事項bが訂正の要件に適合しないことのみを理由として,請求項1に係る訂正事項aについて何ら検討することなく,訂正事項aを含む本件訂正の全部を認めないと判断したものである。これを前提として本件訂正前の特許請求の範囲の記載に基づいて特許発明の認定をし,請求項1に係る部分を含む本件特許を取り消した本件決定には,取り消されるべき瑕疵があり,この瑕疵を看過した原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」等とするものである。一方,上記判決が引用する最高裁昭和55年5月1日第一小法廷判決(昭和53年(行ツ)第27号・28号民集34巻3号431頁,前述の「昭和55年最高裁判決」)は,実用新案権者のなした明細書の訂正審判請求の事案に関し,「…実用新案登録を受けることができる考案は,一個のまとまった技術思想であって,実用新案法39条の規定に基づき実用新案権者が請求人となってする訂正審判の請求は,実用新案登録出願の願書に添付した明細書又は図面(以下「原明細書等」という。)の記載を訂正審判請求書添付の訂正した明細書又は図面(以下「訂正明細書等」という。)の記載のとおりに訂正することについての審判を求めるものにほかならないから,右訂正が誤記の訂正のような形式的なものであるときは事の性質上別として,本件のように実用新案登録請求の範囲に実質的影響を及ぼすものであるときには,訂正明細書等の記載がたまたま原明細書等の記載を複数箇所にわたつて訂正するものであるとしても,これを一体不可分の一個の訂正事項として訂正審判の請求をしているものと解すべく,これを形式的にみて請求人において右複数箇所の訂正を各訂正箇所ごとの独立した複数の訂正事項として訂正審判の請求をしているものであると解するのは相当でない。それ故,このような訂正審判の請求に対しては,請求人において訂正審判請求書の補正をしたうえ右複数の訂正箇所のうちの一部の箇所についての訂正を求める趣旨を特に明示したときは格別,これがされていない限り,複数の訂正箇所の全部につき一体として訂正を許すか許さないかの審決をすることができるだけであり,たとえ客観的には複数の訂正箇所のうちの一部が他の部分と技術的にみて一体不可分の関係にはないと認められ,かつ,右の一部の訂正を許すことが請求人にとって実益のないことではないときであつても,その箇所についてのみ訂正を許す審決をすることはできないと解するのが相当である。」とするものであり,確定判決たる第1次判決は,訂正審判請求において可分的取扱いが許されるとした「一部の箇所についての訂正を求める趣旨を特に明示したとき」に該当するとしたものである。ウ 思うに,行訴法33条1項の定める拘束力を有する確定判決(第1次判決)がなされた後に別事件に関する最高裁の新たな法的見解が示されたからといって,当然に上記拘束力に影響を及ぼすと解することは困難であるのみならず,仮にこれを肯定する見解を採ったとしても,平成20年最高裁判決を被告主張のように解することもできない。すなわち,被告が事情変更の論拠とする平成20年最高裁判決は,前記のとおり,第三者申立てに係る特許取消事件の審理中に特許権者側から対抗的になされた訂正請求に関する事案についてのものであり,その判示も,訂正不可分を主張する特許庁の見解を否定し,改善多項制の法改正がなされた後においてはこれを可分と解するとしたものである。そして,訂正審判請求の場合はこれを不可分と解するとした部分は,訂正審判請求については,その全体を一体不可分のものとして取り扱うことが予\定されているとの原則的な取扱いについて判示したものであり,昭和55年最高裁判決に依ってなされた第1次判決の例外的な取扱いを認めるべき場合についての判示,すなわち,請求人において複数の訂正箇所のうちの一部の箇所についての訂正を求める趣旨を特に明示したときは,それぞれ可分的内容の訂正審判請求があるとして審理判断する必要がある,との判示を否定するものとは解されない。このことは,平成20年最高裁判決が訂正審判請求に関する昭和55年最高裁判決を変更する趣旨を含まないことから明らかというべきである。エそうすると,平成20年最高裁判決は,昭和55年最高裁判決に依ってなされた第1次判決(取消判決)の拘束力に何らの法的影響を及ぼすものではないことになるから,被告の上記主張は採用することができない。

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平成21(行ケ)10175 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月28日 知的財産高等裁判所

 新規事項追加とした審決が、新たな技術的事項を導入したものでないとして取り消されました。
 発明とは,自然法則を利用した技術的思想であり,課題を解決するための技術的事項の組合せによって成り立つものであることからすれば,同条3項所定の出願当初明細書等に「記載した事項」とは,出願当初明細書等によって開示された発明に関する技術的事項であることが前提になる。したがって,当該補正が,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入したものと解されない場合であれば,当該補正は,明細書,特許請求の範囲の記載又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものというべきであって,同条3項に違反しないと解すべきである。ところで,特許法36条5項は,特許請求の範囲には,「・・・特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない」と規定する。同規定は,特許請求の範囲には,「・・・特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載」すべきとされていた同項2号の規定を改正したものである(平成6年法律第116号)。従来,特許請求の範囲には,発明の構\成に不可欠な事項以外の記載はおよそ許されなかったのに対して,同改正によって,発明を特定するのに必要な事項を補足したり,説明したりする事項を記載することも許容されることとされた。そこで,これに応じて,特許請求の範囲に係る補正においても,発明の構成に不可欠な技術的事項を付加する補正のみならず,それを補足したり,説明したりする文言を付加するだけの補正も想定されることになる。したがって,補正が,特許法17条の2第3項所定の出願当初明細書等に記載した「事項の範囲内」であるか否かを判断するに際しても,補正により特許請求の範囲に付加された文言と出願当初明細書等の記載とを形式的に対比するのではなく,補正により付加された事項が,発明の課題解決に寄与する技術的な意義を有する事項に該当するか否かを吟味して,新たな技術的事項を導入したものと解されない場合であるかを判断すべきことになる。上記の観点から,本件補正の適否を判断する。・・・・(ア) 本件当初出願に係る特許請求の範囲(請求項1)においては,「高断熱・高気密住宅において」(構成A)と記載されていた。前記アの認定によれば,同構\成は,本件発明の解決課題及び解決機序と関係する技術的事項とはいい難く,むしろ,本件発明における課題解決の対象を漠然と提示したものと理解するのが合理的である。そして,本件補正によって,「高断熱・高気密住宅」については「熱損失係数が1.0〜2.5kcal/m ・h・℃」との事項が付加され,「熱損失係数が1.0〜2.5kcal/m ・h・℃の高断熱・高気密住宅」との構成とされた。ところで,「熱損失係数が1.0〜2.5kcal/m ・h・℃の高断熱・高気密住宅」との構成について,本件発明全体における意義を検討すると,形式的には,数値を含む事項によって限定されてはいるものの,熱損失係数の計算精度は高いものとはいえないと指摘されていること等に照らすならば,同構\成は,補正前と同様に,本件発明の解決課題及び解決機序に関係する技術的事項を含むとはいいがたく,むしろ,本件発明における課題解決の対象を漠然と提示したものと理解するのが合理的である。本件補正の適否についてみてみると,仮に本件補正を許したとしても,先に述べた特許法17条の2第3項の趣旨,すなわち,i)出願当初から発明の開示を十分ならしめ,発明の開示が不十\分にしかされていない出願と出願当初から発明の開示が十分にされている出願との間の取扱いの公平性の確保,ii)出願時に開示された発明の範囲を前提として行動した第三者が被る不測の不利益の防止,という趣旨に反するということはできない。そうすると,本件補正は,本件発明の解決課題及び解決手段に寄与する技術的事項には当たらない事項について,その範囲を明らかにするために補足した程度にすぎない場合というべきであるから,結局のところ,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入していない場合とみるべきであり,本件補正は不適法とはいえない。・・・・そうすると,仮に,本件補正によって付加された事項が技術的内容を含んでいると解したとしても,本件出願当初明細書には「熱損失係数が1.0〜2.5kcal/m ・h・℃」における数値が明示されているわけではないが,本件発明の課題解決の対象である「高断熱・高気密住宅」をある程度明りょうにしたにすぎないという意味を超えて,当該数値に本件発明の解決課題及び解決手段との関係で格別な意味を見いだせない本件においては,その付加された事項の内容は,本件出願当初明細書において既に開示されていると同視して差し支えないといえる。したがって,本件補正は,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入した場合であるとはいえない。

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平成21(行ケ)10134 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月20日 知的財産高等裁判所

 審決は、補正が新規事項、サポート要件違反、進歩性なしとしました。これに対して裁判所は、いずれも否定して上記審決を取り消しました。
 以上によると,当初明細書に記載される抗酸化作用を有する組成物は,単なる焼酎蒸留廃液からなる抗酸化物質と比べて,優れたヒドロキシラジカル消去活性を有するものであること,同組成物は,それ故,老化や動脈硬化等の種々の生活習慣病の予防に極めて良好であることが記載されているものであって,そうすると,本件補正による新請求項1に係る組成物が,補正事項(b)「活性酸素によって誘発される生活習慣病に対して有効である」ものであって,また,同(c)「ヒドロキシラジカル消去剤」との用途に用い得るものであることは,当初明細書に記載された事項の範囲内のものというべきである。エもっとも,被告は,当初明細書には,「ヒドロキシラジカル消去剤」との文言は存在せず,単に「抗酸化剤」又は「抗酸化作用」と「活性酸素によって誘発される生活習慣病」との関係に係る従来技術が示されたものにすぎないから,当初明細書の記載では,本願補正発明に係る「組成物」からなる「ヒドロキシラジカル消去剤」について実体的に記載されたものではないと主張する。しかしながら,上記イのとおり,当初明細書の【0040】には,ヒドロキシラジカル消去活性を有する抗酸化作用を有する組成物及びこれが活性酸素によって誘発される種々の生活習慣病の予防に有効であることが記載されているのであって,被告の主張は採用することができない。また,被告は,当初明細書の記載においては,本願補正発明に係る「組成物」の「活性酸素によって誘発される生活習慣病」に対する有効性についても全く確認されておらず,有効性が不明であるとして,新請求項1には新規事項の追加があると主張するが,これは,記載不備や進歩性の判断における発明の効果の問題であって,新規事項の追加の有無の問題ではないから,被告の主張は採用し得ない。オしたがって,新請求項1に係る本件補正について,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものということができないとした本件審決の判断は誤りである。\n・・・,特許請求の範囲が,特許法36条6項1号に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。・・・オ 以上によると,上記ウのとおり,当業者が,ヒドロキシラジカル消去活性の大小や本願発明の抗酸化作用を有する組成物が強力なヒドロキシラジカル消去活性からなる抗酸化作用を有して種々の生活習慣病の予防に好適であること等を記載する本願明細書に接し,上記エの公知の知見をも加味すると,本件補正発明の組成物が,活性酸素によって誘発される生活習慣病の予\防に対して効果を有することを認識することができるものであって,本件補正発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,その記載によって,生活習慣病などの疾患に対して有効である抗酸化物質を提供しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであるということができる。カ この点に関し,本件審決は,本願明細書の発明の詳細な説明には,(活性酸素によって誘発される)生活習慣病(の予防)に対する効果の有無及び当該効果とヒドロキシラジカル消去活性などの抗酸化作用の大小との対応関係(例えば,どの程度の抗酸化作用を有していれば,生活習慣病(の予\防)に対する効果を有するとするのかなど)に係る記載又はそれらを示唆する記載はないと説示する。しかしながら,本願明細書には,本件補正発明の組成物が活性酸素によって誘発される生活習慣病の予防に対して効果を有することを当業者が認識することができる記載があることは上記のとおりであり,また,新請求項1には,どの程度の抗酸化作用を有していれば生活習慣病(の予\防)に対する効果を有するかなどの生活習慣病の予防に対する効果とヒドロキシラジカル消去活性などの抗酸化作用の大小との対応関係についてまで記載されておらず,このような対応関係について発明の詳細な説明中に記載されている必要があると解されるものでもない。\n

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平成21(行ケ)10131 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年12月25日 知的財産高等裁判所

 補正により追加された事項が当初明細書の範囲を超えるか否かが争われました。当時の特許法では、審査段階における補正が要件違反の場合は、出願日が繰り下がると規定されていました。知財高裁は、当初明細書の範囲内でないとした審決を取り消しました。
 明細書の要旨の変更については,平成5年法律第26号による改正前の特許法41条に「出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前に,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更する補正は,明細書の要旨を変更しないものとみなす。」と規定されていた。上記規定中,「願書に最初に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」とは,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内」においてするものということができるというべきところ,上記明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項は,必ずしも明細書又は図面に直接表現されていなくとも,明細書又は図面の記載から自明である技術的事項であれば,特段の事情がない限り,「新たな技術的事項を導入しないものである」と認めるのが相当である。そして,そのような「自明である技術的事項」には,その技術的事項自体が,その発明の属する技術分野において周知の技術的事項であって,かつ,当業者であれば,その発明の目的からみて当然にその発明において用いることができるものと容易に判断することができ,その技術的事項が明細書に記載されているのと同視できるものである場合も含むと解するのが相当である。したがって,本件において,仮に,当初明細書等には,「押圧部材と装置本体との螺合されていない態様」あるいは「螺合以外の手段によって移動可能\」とすることが直接表現されていなかったとしても,それが,出願時に当業者にとって自明である技術的事項であったならば,より具体的には,その技術的事項自体が,その発明の属する技術分野において周知の技術的事項であって,かつ,当業者であれば,その発明の目的からみて当然にその発明において用いることができるものと容易に判断することができるものであったならば,本件発明3を追加した本件補正は,要旨変更には該当しないというべきである。そこで,以下,本件補正が上記要件に該当するか否かを検討する。\n・・・オ 以上のとおり,周知例1ないし4を考慮すれば,本件出願当時,「螺合以外 の手段によって移動可能」とすることが周知の技術的事項であったと認められる。
・・・
(3) 周知の技術的事項が,当業者であれば,その発明の目的からみて当然にその発明において用いることができるものと容易に判断することができるものか否かについて
ア 前記1の段落【0004】,【0005】,【0006】,【0007】及び【0032】の各記載によれば,当初明細書等から把握される本件発明の目的は,従来技術では位置決め部材が装置本体から外れてしまうことがあり,押圧部材が不用意に移動することがあったことを踏まえ,その課題を解決するために,所定の大きさ以下の力では押圧部材の移動を阻止する係止機構を設け,押圧部材が不用意に移動するのを阻止するものであることが認められる。これに対して,周知例1ないし4に示される,「押圧部材を螺合以外の手段によって移動可能\」とする周知の技術的事項を,本件発明3の「押圧部材」に用いた場合には,押圧部材の移動手段について「螺合」以外の手段を含むものであるものの,上記の本件発明の目的を変更するものではなく,まして,その目的に反するものとも解されない。したがって,上記周知の技術的事項を本件発明3において用いることに障害はないというべきである。イ そこで,次に,本件発明3の蛇腹管用接続装置に,周知例1ないし4で示されるところの,「螺合」以外の押圧部材の移動手段を用いることが特別な工夫を要することなく当然にできるかどうかを検討する(なお,当事者は,本件補正が要旨変更に該当するか否かを判断するために,専ら本件発明3の発明特定事項である「係止機構」を周知例1ないし4に適用し得るか否かを問題としているが,前記(1) に示した要旨変更に関する判断基準からすれば,誤りである。)。前記(2) エのとおり,周知例4では,本件発明の押圧部材に相当する進退筒(60)が,螺合以外の手段である「基端部方向への押し込み」によって軸方向に移動することが認められる。そして,本件発明3において,上記「基端部方向への押し込み」という手段によって押圧部材を移動することは,例えば,当初明細書等の図1において,装置本体2が押圧部材6と螺合している部分の螺合をなくすることで,特別な工夫を要することなく達成することができると認められる。(オ) このように,周知例1ないし4の螺合に代わる各手段によって,本件発明3の押圧部材を移動させることは,特別な工夫を要することなく当然にできるものであり,また,それら各手段は,本件発明の目的を変更するものでもないことが認められる。
 ウ 前記ア及びイのとおり,本件発明3について,「螺合以外の手段によって移動可能」とすることが,明細書又は図面の記載からみて出願時に当業者にとって「自明である技術的事項」に当たるといえるから,本件補正は,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,「新たな技術的事項を導入しないもの」であると認められる。したがって,本件補正は,「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」の補正と認めるのが相当である。\n

◆判決本文

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平成20(行ケ)10464 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月29日 知的財産高等裁判所

 経過のうち問題となる部分のみ説明します。H20/10/24に無効審決がなされ、特許権者は本件取消訴訟を提起すると共に、クレームを減縮する訂正審判を別途請求しました(H21/2/24)。この訂正審判は、(H21/9/16)に確定しました。知財高裁は、クレーム減縮する訂正が確定したので、H20/10/24の無効審決を取り消しました。
 「第1次無効審決に対して審取請求するとともに、第1次訂正審判を請求した第2次訂正は,請求項1に係る特許請求の範囲の記載を別紙1から別紙3のとおりとする訂正であって,その訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とすることは,明らかである(甲21,22,30)。また,本件審決が対象とした,請求項1に係る特許請求の範囲の記載を別紙2のとおりとする発明と比較しても,第2次訂正は,打抜加工が可能であることを特許請求の範囲に記載することにより,成形加工及び打抜加工の両方を行うパンチプレス機に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものといわざるを得ない。したがって,無効審決である本件審決の取消訴訟の係属中に本件特許権について特許請求の減縮を目的とする本件訂正審決が確定したのであるから,本件審決は,取り消されなければならない(最高裁平成7年(行ツ)第204号平成11年3月9日第三小法廷判決・民集53巻3号303頁)。」\n

◆平成20(行ケ)10464 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月29日 知的財産高等裁判所

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平成19(ワ)3494 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月27日 東京地方裁判所

 侵害訴訟で、除くクレームが新規事項かが争われました。

 特許法17条の2第3項は,第1項の規定により明細書等について補正をするときは,願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしなければならないと規定している。そして,「明細書等に記載した事項」とは,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するもの(当業者)を基準として,明細書・特許請求の範囲・図面のすべての記載を総合して理解することができる技術的事項のことであり,補正が,上記のようにして導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は「明細書等に記載した事項の範囲内」であると解すべきである。したがって,特許請求の範囲の減縮を目的として特許請求の範囲に限定を付加する補正を行う場合,付加される補正事項が当該明細書等に明示されているときのみならず,明示されていないときでも新たな技術的事項を導入するものではないときは,「明細書等に記載した事項の範囲内」の減縮であるというべきであり,このことは除くクレームを付加する補正においても妥当する。・・・別件特許は,球状活性炭に関し,本件特許とは異なり,フェノール樹脂又はイオン交換樹脂を出発原料として特定せず,また,本件特許では従来技術に属するものとされるピッチ類を用いても調整が可能であるとして,このR値の観点から球状活性炭を特定したものである。そうすると,球状活性炭のうちフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として用いた場合において,そのR値が1.4以上であるときには,本件特許に係る発明と別件特許に係る発明は同一であるということができる。そして,本件補正は,このR値が1.4以上である球状活性炭を特許請求の範囲から除くことを目的とするものであり,特許請求の範囲の記載に技術的観点から限定を加えるものではなく,新たな技術的事項を導入するものではないと認めるのが相当である。・したがって,本件補正は,「明細書等に記載した事項の範囲内」の減縮であるので,特許法17条の2第3項に違反するものではなく,本件特許は,無効とされるべきものとは認められない。なお,本件特許の審決取消請求訴訟において,同様の判断がされている(知的財産高等裁判所平成21年3月31日判決・甲77)。」\n

◆平成19(ワ)3494 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月27日 東京地方裁判所
 

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平成20(行ケ)10420 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

 補正された事項が新規事項であるとした審決を取り消しました。
 上記の認定事実によれば,本件補正事項である「マンガン化合物のみに機械的な力と熱エネルギーを同時に加え」るとの事項が,本願当初明細書等の実施例1に開示されていることは明らかである。すなわち,実施例1では,原料マンガン化合物のMH処理の段階において,マンガン化合物である二酸化マンガンには機械的な力(剪断応力と圧縮応力)と熱エネルギー(100℃の熱の加熱)が加えられている。その後のスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物の製造において,マンガン化合物以外のリチウム化合物である水酸化リチウム一水和物が添加・混合され,混合後に400〜500℃の炉で大気中7時間熱処理が行われ,その後冷却された再度混合されて均一化された粉末が750℃の空気雰囲気下で2次熱処理を受けてリチウムマンガンスピネル粉末とされるが,その間は熱エネルギーが加えられるものの,リチウム化合物には機械的な力が同時に加えられるものではない。したがって,本件補正事項は,本願当初明細書等の実施例1に基づくものであるから,本願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との対比において,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。また,本件補正により,本件補正前発明に関する技術的事項に何らかの変更を生じさせているものということはできない。イ 被告は,本願当初明細書等の実施例1では,MH処理の対象にマンガン化合物以外にも水素イオン及びその他の揮発可能\なイオンや結晶水を含み,これらがMH処理を受けるから,マンガン化合物のみに機械的な力と熱エネルギーを同時に加えることは新規事項の追加に当たると主張する。しかし,被告の上記主張は失当である。すなわち,前記認定の本願当初明細書等の記載によれば,本願発明において,MH処理を実施する目的は,原料の2次粒子内部に存在する吸着水,結晶水,水素イオン及びその他の揮発可能なイオンを揮発させることにあり,当業者であれば,このような不純物の除去を当然の前提としていると解するのが相当である。そうすると,当業者は,本件補正における「マンガン化合物のみ」を,このような不純物をも含んだMH処理前の「マンガン化合物のみ」との意味であると理解するといえる。」\n

◆平成20(行ケ)10420 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

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平成21(行ケ)10004 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月03日 知的財産高等裁判所

 一部の請求項に関する訂正が訂正要件を満たしていないという理由で、全体として訂正は認めないとした判断が取り消されました。
 昭和62年法律第27号による特許法の改正によりいわゆる改善多項制が,そして,平成5年法律第26号による特許法の改正により無効審判における訂正請求の制度がそれぞれ導入され,特許無効審判の請求については,2以上の請求項に係るものについては請求項ごとにその請求をすることができ(特許法123条1項柱書き後段),請求項ごとに可分的な取扱いが認められているところ,特許無効審判の申立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正請求は,この請求項ごとに請求をすることができる特許無効審判請求に対する防御手段としての実質を有するものであるから,このような訂正請求をする特許権者は,請求項ごとに個別に訂正を求めるものと理解するのが相当であり,また,このような請求項ごとの個別の訂正が認められないと,特許無効審判事件における攻撃防御の均衡を著しく欠くことになることに照らすと,特許無効審判請求がされている請求項についての特許無効の範囲の減縮を目的とする訂正請求は,請求項ごとに個別に行うことが許容され,その許否も請求項ごとに個別に判断されることになる(前掲最高裁平成20年7月10日判決参照)。そして,特許無効審判の請求がされている請求項についての訂正請求は,請求書に請求人が記載する訂正の目的が,特許請求の範囲の減縮ではなく,明りょうでない記載の釈明であったとしても,その実質が,特許無効審判請求に対する防御手段としてのものであるならば,このような訂正請求をする特許権者は,請求項ごとに個別に訂正を求めるものと理解するのが相当であり,また,このような請求項ごとの個別の訂正が認められないと,特許無効審判事件における攻撃防御の均衡を著しく欠くことになることからして,請求項ごとに個別に訂正請求をすることが許容され,その許否も請求項ごとに個別に判断されるべきものである。(2) これを本件についてみるに,特許無効審判請求に係る本件審判において,請求人である被告は,本件発明に係る特許請求の範囲の記載が不明確であるなどとの無効理由を主張したこと(甲20),これに対し,被請求人である原告は,被告主張の無効理由を回避するために,特許無効審判における訂正の請求として,本件特許の請求項1ないし3,5,9ないし13,18,19,21ないし25につき本件訂正請求を行ったこと(甲18,22)が認められ,本件訂正請求は,特許無効審判請求に対する防御手段としてされたものであることが明らかである。(3) そうすると,本件訂正請求は,請求項ごとに個別に行われたものであった以上,その許否も請求項ごとに個別に判断されるべきものといわなければならない。そして,本件訂正請求は,直接的には本件特許に係る請求項のうち1ないし3,5,9ないし13,18,19,21ないし25の訂正を求めるものであるが,前記第2の2のとおり,本件特許は,請求項1ないし26から成り,請求項2ないし26はいずれも請求項1を直接的又は間接的に引用する従属項であるから,請求項1について訂正を求める本件訂正は,請求項1を介してその余の請求項2ないし26についても訂正を求めるものと解さなければならない。しかるところ,本件審決は,本件訂正につき,請求項19及び23についてのみ判断をし,その訂正が求められないことをもって,他の請求項1ないし18,20ないし22及び24ないし26に係る訂正の判断をしないまま,これらの請求項に係る訂正も認められないとしたものであるから,これらの請求項に係る各訂正事項につき判断をすることなく,本件発明1ないし18,20ないし22及び24ないし26の各要旨認定をしてしまったものであって,この点において,本件審決には違法があることになる。(4) また,本件訂正のうち請求項19についても,本件審決は,同請求項が直接的又は間接的に引用する請求項1ないし3,5,9ないし13及び18に係る各訂正事項につき判断をすることなく,本件発明19の要旨認定をしてしまったものであって,この点において,本件審決には違法があることになる。」  

◆平成21(行ケ)10004 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月03日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10432 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年08月20日 知的財産高等裁判所

 補正要件(限定的減縮)違反として補正前のクレームについて拒絶審決がなされました。裁判所は、かかる補正要件違反の判断は誤りであるとして、拒絶審決を取り消しました。
「本件審決は,本件補正のうち特許請求の範囲の補正部分について,「補正後の特許請求の範囲には,各新請求項の記載からして,自動装着機の作動方法,自動装着機,及びシステムに係る発明が記載され,新請求項5及び新請求項6に係る発明は,前記自動装着機に係るものと認められる。一方,補正前の特許請求の範囲にも,各旧請求項の記載からして,自動装着機の作動方法,自動装着機,自動装着機用の交換可能なコンポーネント,及びシステムに係る発明が記載され,旧請求項5に係る発明のみが,前記自動装着機に係るものと認められる。そこで,検討すると,補正事項a(判決注:特許請求の範囲の補正部分)は,自動装着機に係る発明が記載されていた請求項の数を,旧請求項5の1つから,新請求項5及び新請求項6の2つとするもので,請求項の数を増やすものといえ,このような補正は,請求項の削除,限定的減縮,誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明のいずれかを目的にしているということはできない。」として,本件補正を却下する決定をした。これに対して,原告は,本件補正の請求項の対応関係をみると,旧請求項5が新請求項5,旧請求項7が新請求項6と対応することが明らかであって,本件審決のいうように請求項の数を増やすものではなく,当該補正に係る部分は,法17条の2第4項2号にいう「特許請求の範囲の減縮」を目的とする場合に該当するから,当該部分がその場合に該当しないとて本件補正を却下した本件審決は誤りであると主張する。以上,要するに,本件審決は,本件補正が自動装着機の発明についての旧請求項5を同じく自動装着機についての新請求項5及び6とするものであることを前提としているのに対して,原告は,新請求項6は,旧請求項5を補正したものではなく,旧請求項7を補正したものであると主張していて,ここに本件補正についてのとらえ方の相違がある。そうすると,仮に,本件補正に係る新請求項6が,原告の主張するとおり,旧請求項7を補正したものであれば,旧請求項7と新請求項6との対応関係を前提に,その補正が法17条の2第4項各号(本件では,原告が主張している同項2号)を充足するか否かを判断することが求められることになるから,本件補正を却下するに当たっても,これを前提として判断される必要があるところ,本件審決は,原告の主張するような請求項の対応関係を前提とする補正について判断を示していないことは明らかであるから,本件補正を却下した本件審決は,その前提を誤った違法なものということになる。・・・上記記載から本件補正の内容についてみると,補正前には,「交換可能\\なコンポーネント(3,5,17)」とされていたものが,本件補正に係る手続補正書においては,「装着ヘッド(5)」に改められていることが明らかである。その結果として,旧請求項の「交換可能なコンポーネント」の記載が新請求項の「装着ヘッド」の記載に補正されているものと容易に理解することができる。また,それは「交換可能\\なコンポーネントは,装着ヘッドとして構成されていることを特徴とする交換可能\\なコンポーネント」として記載されていた旧請求項8が,本件補正に係る新請求項中において当該事項を発明特定事項として加える必要がなく,本件補正に際して削除された理由であると認められるのである。また,旧請求項6は,「幾何学的特性データに対する所属の記憶装置」であることを特定事項としていたが,当該事項は,新請求項の記載中にこれを見出すことができない。ここに,前記認定のとおり,旧請求項6が本件補正に際して削除された理由もある。さらに,新請求項5についてみると,上記のほか,旧請求項5の「定置の基準点」を「定置の基準点としての一つの保持装置(4)」とし,同「求められた」を「,自動装着機(7)内へのマウント前に求められた」とし,同「幾何学的特性データ」を「他の保持装置(4)の幾何学的特性データ」とするとともに,「結合された記憶装置(15,16,18)」を「割り当てられた記憶装置(15)」としたものであると理解することができる。また,旧請求項7の発明特定事項である「記憶装置(15,16,18)は,無接触式に書き込み可能及び,読出し可能\\なメモリとして構成され」ることは,新請求項6に含まれている。ウそうすると,本件補正は,その内容からみても,旧請求項6及び8を削除し,旧請求項7を新請求項6に補正したものと解するほかない。」

◆平成20(行ケ)10432 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年08月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10237 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月29日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした無効審決に対して、i)手続き違背、ii)新規事項ではない、iii)実施可能要件違反なし等を理由として審決が取り消されました。
  「審判手続等の経緯のアないしウによれば,請求項2に係る特許発明について,請求人(被告)から,甲1を引用例とした進歩性欠如を理由による無効審判が請求され,その後,請求人(被告)により,口頭審理手続において甲6を主引用例とした無効理由が主張された。これに対して,審決は,甲1及び甲6に基づいて進歩性を欠くとの理由により無効とすべきであると判断した。そうすると,審決の判断の基礎となった無効理由について,被請求人である原告には,意見を申し述べる機会(特許法134条2項,153条2項)及び訂正請求をする機会(同法134条の2第1項)が付与されていなかったものというべきである。」
「上記によれば,メインCPU31が実行した内部抽選処理の結果に基づいて内部抽選データISDの当選フラグがセットされ,また,サブCPU55に開始情報Aが入力されてから停止操作情報Bが入力されるまでの期間T1(すなわち,メインリールの回転中の期間)において,第1処理を選択するか第2処理を選択するかを,サブCPU55が制御プログラムに従って決定することが記載されているということができる。また,このサブCPU55が第1処理を選択するか第2処理を選択するかを決定する処理の例示として,メインCPU31から送信される内部抽選データISDに含まれる所定の当選フラグがセットされている場合に第2処理を選択して実行してもよいことが記載されているということができる。イそして,「メインCPU31が実行した内部抽選処理の結果に基づいて当選フラグがセットされた内部抽選データISD」が「抽選手段の抽選結果」に相当するといえることに照らせば,本件特許明細書(甲18,段落【0216】)の「内部抽選データISDに含まれる所定の当選フラグがセットされている場合に第2処理を選択して実行してもよい」との記載部分に,「抽選手段の抽選結果に基づいて第2処理を選択的に実行する」との事項が明確に示されていると解される。そして,本件特許明細書(甲18)には,第1処理を選択して実行することを妨げる記載はないのであるから,「第2処理を選択して実行してもよい」との記載部分を見た当業者は,第1処理の選択と第2処理の選択を決定する処理に関して,「第1処理を選択して実行してもよい」と理解するのが自然である。そうすると,「抽選手段の抽選結果基づいて第1処理を選択的に実行する」ことが,本件特許明細書(甲18)に,実質的に記載されているということができる。」
「特許法36条4項は,「発明の詳細な説明の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」と定め,同条同項1号において,「一経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と定めている。そして,上記の「経済産業省令」に当たる特許法施行規則24条の2は,「特許法第三十\六条第四項第一号の経済産業省令で定めるところによる記載は,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と定めている。特許法36条4項1号において,「通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること」(いわゆる「実施可能\要件」)を規定した趣旨は,通常の知識を有する者(当業者)がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したといえない発明に対して,独占権を付与することになるならば,発明を公開したことの代償として独占権を付与するという特許制度の趣旨に反する結果を生ずるからである。ところで,そのような,いわゆる実施可能\要件を定めた特許法36条4項1号の下において,特許法施行規則24条の2が,(明細書には)「発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を記載すべきとしたのは,特許法が,いわゆる実施可能要件を設けた前記の趣旨の実効性を,実質的に確保するためであるということができる。そのような趣旨に照らすならば,特許法施行規則24条の2の規定した「技術上の意義を理解するために必要な事項」は,実施可能\要件の有無を判断するに当たっての間接的な判断要素として活用されるよう解釈適用されるべきであって,実施可能要件と別個の独立した要件として,形式的に解釈適用されるべきではない。」

◆平成20(行ケ)10237 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10394 特許権 行政訴訟 平成21年05月26日 知的財産高等裁判所

 不明瞭な記載の釈明、および限定的減縮違反については取り消したものの、独立特許要件違反は存在するとして、拒絶審決が維持されました。
 「・・・本件補正前の特許請求の範囲の請求項2の記載は,前記したとおりであって,同記載において,押しピンについては,「…構造である押しピンを内部に収容しうる…」,「…により押しピンを押圧する…」と記載されているにとどまることから,本件審決が判断し,また,被告も主張するように,押しピンは,本願発明2における発明の対象ではなく,発明の対象であるカートリッシが備える構\成の1つとして記載されているにすぎないと理解する余地もないわけではない。他方,請求項2の記載において,押しピンは「筒状部と,筒状部に収容された弾性部材及びピン部とを有し,非使用時にピン部は弾性部材によって筒状部内に収容され,使用時に筒状部の上部に設けられた押入部材が挿入される孔部を通じて押入部材により押圧され,下部に設けられた孔部からピン部先端が外部に突出する構造である」ことが特定されており,本願発明2は,このような押しピンと,「筒状部の上部に設けられた押入部材が挿入される孔部を通じて押入部材により押しピンを押圧する押圧部」を有するものであることによって特定されるカートリッジとによって構\成されるものであると理解する余地もないわけではない。そして,そのような理解を前提にすると,本件補正前の請求項2は,これとは反対に,押しピンを発明の対象とせず,その対象であることが記載上明らかなカートリッジの備える構成の1つとして記載されているにすぎないと理解されなくもない記載となっていたということができるのであって,その意味で,当該記載は法17条の2第4項にいう「明りようでない記載」に当たるといわなければならない。・・・これに対し,補正事項2は,本件補正前の請求項2における「押しピンを内部に収納しうる空洞部と」及び「押しピンのカートリッジ。」の記載を,補正後の請求項1においては,「押しピンと,該押しピンを内部に…収納しうる空洞部と」及び「押しピンおよびそのカートリッジ。」の記載に改めるものであり,その記載内容から,本願発明2が「カートリッジ」だけでなく,「押しピン」も発明の対象とするものであることを明示しようとするものであることが明らかである。そして,上記(ア)のとおり,本件補正前の請求項2の記載からは,「押しピン」と「カートリッジ」と,その両者を本願発明2の対象とするものであったと解することが可能であったところ,その反面,「押しピン」を当該発明の対象とするものではなく,「カートリッジ」のみを対象とするものであったと解する余地もないわけではなく,明りょうでない記載といわざるを得ないものであったのであるから,補正事項2は正にその明りょうでない記載を釈明するものであるということができる。実際,補正事項2による補正前後の記載を比較してみれば,本件補正前の請求項2のように,本願発明2の対象である「押しピン」がもう1つの発明の対象である「カートリッジ」が備える構\成の1つにとどまるかのように記載されていることを前提として,両者の構造を認識し,これらを対比して両者が発明の対象であると理解する場合に比較して,本件補正後の請求項2の記載のように「押しピン」と「カートリッジ」とを並列的に記載したほうが,その趣旨がより明りょうとなっているということができる。この点について,被告は,本件審決の判断と同様に,本件補正前の請求項2に係る発明が「カートリッジ」の発明であって,「押しピン」の発明ではないなどとるる主張するが,本件補正前の請求項2が「カートリッジ」のみを対象とする発明として明りょうに記載されていた場合であれば格別,既に説示したとおり,当該記載が「明りようでない記載」であった以上,被告の主張を採用することはできない。・・・法17条の2第4項4号は,「明りようでない記載の釈明」として補正が許されるのは,「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る」と規定するところ,被告は,本件においては,「押しピンのカートリッジ」が「明りようでない」との拒絶の理由は示されていないから,補正事項2は「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするもの」ではないと主張するので,この点についても検討する。甲11によると,平成18年3月22日付け拒絶査定には,本件特許出願は平成17年8月22日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶されるべきことが記載されていることが認められ,甲7によると,平成17年8月22日付け拒絶理由通知書には,拒絶の理由として,請求項1及び同2に係る発明(本願発明1及び同2)が特許法29条1項3号又は同条2項の規定により特許を受けることができない旨記載されるとともに,請求項2に係る発明(本願発明2)については,引用発明1の画鋲刺入装置において,引用発明2の画鋲を収容することによって,本願発明2のように構\成することは容易である旨記載されていることが認められる。これに対し,補正事項2は,前記認定の経緯からして,本願発明2が「押しピン」と「カートリッジ」と,その両者を当該発明の対象とするものであることを明示することにより,上記拒絶理由通知書において指摘された本願発明2に係る拒絶の理由を回避しようとするものであると認められるから,補正事項2が「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするもの」であるということが妨げられるものではなく,被告の主張を採用することはできない。・・・原告は,補正事項3に係る補正が本願発明2の「押しピン」を限定する補正であるとして,この補正が法17条の2第4項2号にいう「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではないとした本件審決の判断に誤りがあると主張するので,以下,検討する。・・・これに対し,補正事項3は,補正前の請求項2においては,「押しピン」の構造が「使用時に…下部に設けられた孔部からピン部先端が外部に突出する」と記載されていたところ,補正後の請求項1においては,その構\造に「使用しないときには手でどの部分に触れてもピン部が動くことはなく,」という限定を付加して記載されているのであって,その記載内容を比較すると,本願発明2における「押しピン」の構造に上記限定を付加するものであると認められる。そして,本願発明2の「押しピン」が特定の構\造を有するものであることは前記で説示したところであるから,このような「押しピン」に上記限定が加えられることにより,使用しないときに手でいずれかの部分を触れればピン部が動く可能性があった本件補正前の「押しピン」が,本件補正後においては「使用しないときには手でどの部分に触れてもピン部が動くことはな(い)」ものに限定されたということができ,本願発明2においては,「押しピン」も当該発明の対象となるものであることも前記ア(ア)で説示したとおりであるから,その構成が限定されることによって,特許請求の範囲は減縮されるものと認めることができる。この点について,被告は,本願明細書の発明の詳細な説明に「使用しない時には…手にとってどの部分に触れてもピン部3が動くことはない」(段落【0006】)との記載があることから,本件補正前の請求項2に記載されていた「押しピン」はそのようなもの(補正事項3による補正後のもの)と理解されるから,補正事項3は本願発明2の「押しピン」を具体的に限定するものではないと主張するが,本件補正前の請求項2には,「押しピン」が「使用しないときには手でどの部分に触れてもピン部が動くことはな(い)」ものであることを示す記載は存在しないから,被告の主張は失当である。なお,被告は,本願発明2の対象は「カートリッジ」のみであって,「押しピン」それ自体は本願発明2の対象ではないから,「押しピン」の構\造に上記制限が加えられたとしても,特許請求の範囲の減縮にはならないとも主張するが,「押しピン」も「カートリッジ」と並んで本願発明2の対象となることは前記アで説示したとおりであるから,この点に関する被告の主張は,その前提において,失当といわなければならない。」

◆平成20(行ケ)10394 特許権 行政訴訟 平成21年05月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10358 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月31日 知的財産高等裁判所

    除くクレームについて新規事項か否かが争われました。先の大合議判決と同様の考え方が示されました。
  「本件補正は,上記アのとおり,球状活性炭につき,X線回折法による回折角(2θ)が15°,24°,35°における回折強度の比(R値)が1.4以上であるものを除くとするものである。一方,前記記載のとおり,本件当初明細書に記載された発明は,経口投与用吸着剤に用いられる球状活性炭について,熱硬化性樹脂,実質的にはフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として用い,これにより,ピッチ類を用いる従来の球状活性炭に比べて,有益物質に対する吸着が少なく尿毒症性物質の吸着性に優れるという選択吸着性が向上するという効果を奏するとするものである。そして,上記(3)ウのとおり,別件特許は,球状活性炭からなる経口投与剤につき,その細孔構造に注目して,直径,比表\面積のほか,最も優れた選択吸着性を示すX線回折強度を示す回折角の観点からこれをR値として規定し,このR値が1.4以上であることを特徴としたものである。別件特許は,球状活性炭に関し,本件特許とは異なりフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を出発原料として特定せず,また本件特許では従来技術に属するものとされるピッチ類を用いても調整が可能であるとして,このR値の観点から球状活性炭を特定したものである。そうすると,球状活性炭のうちフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として用いた場合において,そのR値が1.4以上であるときには,本件特許に係る発明と別件特許に係る発明は同一であるということができる。そして,本件補正は,このR値が1.4以上である球状活性炭を特許請求の範囲の記載から除くことを目的とするものであるところ,上記本件当初明細書の記載内容によれば,本件補正は,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)によって,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないと認めるのが相当である。そうすると,本件補正は,特許法17条の2第3項に違反するものではないから,補正要件違反の無効理由は認められない。」

同一特許に関する別の審取です。同様の判断をしています。
    ◆平成20(行ケ)10065 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月31日 知的財産高等裁判所 
    ◆平成20(行ケ)10358 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月31日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10159 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月26日 知的財産高等裁判所

  要旨変更に基づく出願日繰り下げがあるのか(旧特40条)について争われました。裁判所は要旨変更ではないとした審決を維持しました。
  「上記記載によると,本件当初明細書には,本件特許出願に係る発明の実施例として,アナログ信号である音声による交通情報をデジタル信号に変換したものをアンテナから受信し,これをアナログ信号に変換して音声による交通情報としてスピーカから出力する構成が記載されていると認められる。(3) 上記(2)において,アナログ信号に変換される信号は,音声による交通情報信号がデジタル信号化されたものであるが,上記(1)及び(2)のとおり,本件当初明細書において「交通情報」とされるものには,画面上に表示される渋滞情報のようなものも含まれ,文字信号のような音声以外のデジタル信号による交通情報を変換して音声信号とする技術は本件特許出願前において周知であったと認められることも考慮すると,本件当初明細書に接した当業者は,本件当初明細書にいう「交通情報」には音声信号以外の信号によるものが含まれると理解するものというべきであり,上記の実施例の記載における「交通情報」が「音声による交通情報」であるからといって,本件当初明細書において開示された技術的事項を実施例の記載に限定して解すべきものではない。(4) なお,原告は,「音声信号以外の信号形態(例えば文字列信号)において受信した信号を音声化するためには,音声合成装置を備え,受信信号をその装置を介して音声化することが必須となることは当業者にとって技術常識であるところ,本件当初明細書においては,上記のとおり,ディジタル音声信号の復調,抽出及びD/A変換により音声報知する態様のみを記載しており,音声合成装置を配置することなどは全く記載も示唆もされていない」とも主張するが,上記のとおり,音声信号以外の交通情報信号についての記載があると考えられる以上,当業者は,これを可聴信号に変換するために必要となる技術常識を踏まえて開示内容を理解するのであるから,原告のこの主張は,上記認定に影響を与えるものではない。」

◆平成20(行ケ)10159 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10216 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月25日 知的財産高等裁判所

  誤記訂正を目的とする訂正を認めたことは誤りであるとして、審決を一部取り消しました。
   「上記検討したところによれば,訂正前明細書の請求項17における「スペーサによって互いの間隔を保持され」という記載を削除する訂正事項e−2は,誤記の訂正を目的とするものとは認められず,また,同訂正事項より,請求項17に係る発明は「スペーサによって互いの間隔を保持され」ていないものを含むことになるから,実質上,特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものというべきである。そして,訂正事項e−2は,単に形式的なものではなく,請求項17に係る発明の技術的範囲に実質的影響を及ぼすものであるから,審決が,請求項17についての訂正(訂正事項e)を認めたこと,また,請求項17についての訂正と不可分の関係にあることが明らかな段落【0023】についての訂正(訂正事項j)を認めたことは,誤りというべきであるが,特許無効審判の請求がされている請求項に係る特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正は,各請求項ごとに個別に請求することが許容され,その許否も各請求項ごとに個別に判断されるべきであり,また,訂正が誤記の訂正のような形式的なものであって,特許請求の範囲に実質的影響を及ぼさないものであるときも,同様と解されるから,本件訂正におけるその余の訂正事項の適否の判断には影響しないものというべきである(最高裁判所平成19年(行ヒ)第318号平成20年7月10日第一小法廷判決・裁判所時報1463号262頁,最高裁判所昭和53年(行ツ)第27号,第28号昭和55年5月1日第一小法廷判決・民集34巻3号431頁参照)。なお,訂正請求書(甲21)によれば,訂正事項eに係る訂正請求は,請求項17についてのみでなく,同請求項を引用する請求項18ないし20(いずれも特許無効審判の請求がされている請求項である。)との関係でも請求されていると認められる。そうすると,審決は,訂正事項eに係る訂正を誤って認めたことにより,本件発明17ないし20の各発明の要旨認定を誤ったものであり,この誤りが,審決中,請求項17ないし20に係る審判請求を成り立たないとした部分の結論に影響することは明らかである。」

◆平成20(行ケ)10216 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10339 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月24日 知的財産高等裁判所

  訂正が実質上特許請求の範囲を変更するものでないとした審決が維持されました。
   「ところで,「刻々の動作変化」という文言は,平成8年12月24日付けの補正(甲19)において初めて特許請求の範囲で用いられたものであるが,上記イ(カ)bの第1表及びそれに関する説明は,出願当初の本件特許明細書(甲3)から記載されていたのであり,本件特許明細書に,上記イ(カ)bの第1表記載の「i」毎の変化が本件発明における「刻々の動作変化」に当たると解することを妨げる記載があったとも認められない。したがって,「i」毎の変化は本件発明における「刻々の動作変化」に当たると解することが,本件特許の出願経過(特許請求の範囲及び特許明細書の記載の変遷)に照らして許されないというべき理由はない。」

◆平成20(行ケ)10339 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月24日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10270 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月26日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、新規事項であるとして補正を認めなかった審決を取り消しました。
  「上記のとおり,位置移動情報はユーザー側が送信し,サーバーシステムが受信するものであり,上記の「前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ」は,上記アのとおり,ユーザー側からの(他の仮想店舗B内において)「更に同店内の商品bに近づく」という内容の位置移動情報をサーバーシステムが受信したことを前提として記載されているものであることからすると,試着アバターを商品bに近づく位置へ移動させるという内容の位置移動情報に基づいて,そのように試着アバターを移動させる(そのようなデータを生成し,送信する)というサーバーシステムの処理が記載されていると理解する以外にないというべきである。このように理解することについて,被告は,既に受信したユーザー側からの位置移動情報と全く同じ内容の操作指示を再度ユーザーが行うことになり,不自然であり,合理的でない旨主張するが,上記アのとおりユーザー側からの位置移動情報を受信したことに基づいて,その受信内容に応じた処理を行うことに,何ら不自然な点はないから,被告の主張を採用することはできない。仮に,「前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ」との記載について被告の主張するように理解するとするならば,この記載は,請求項1のどこにも記載されていない「ユーザーの操作指示によらずにサーバーシステムが実行する処理」を何の説明を加えることなく記載したものということになってしまい,かえって不自然であるといわざるを得ない。」

◆平成20(行ケ)10270 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(ワ)21408 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年12月24日 東京地方裁判所

  一つの争点が、要旨変更に該当するか否かでした。裁判所は、「変換器の出力電流」を「変換器の出力量」とした補正は要旨変更に当たると判断しました。
 「以上からすると,当初明細書には,制御装置の制御対象を「変換器の出力電流」とするものだけが記載されていたものであり,「変換器の出力電圧」を制御対象とするものは記載も示唆もされておらず,当業者に自明でもなかったものと認めるべきであり,第2回補正は,制御装置の制御対象を,当初明細書に記載された「変換器の出力電流」から,「変換器の出力量」すなわち「変換器の出力電流」又は「変換器の出力電圧」に補正するものであり,演算の基礎を,「電流指令信号と出力電圧検出値」から,「電圧指令信号と出力電流検出値」も含むものに補正するものであり,明細書の要旨を変更するものであると認められる。」

◆平成17(ワ)21408 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年12月24日 東京地方裁判所

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◆平成20(行ケ)10254 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年12月25日 知的財産高等裁判所

 訂正要件について新規事項か否かが一つの争点でしたが、知財高裁は、審決を維持しました。
   「特定図柄の半透明に形成された部分以外の部分は,種類ごとに異なる色に着色されると共に,遮光性が付された」との訂正事項(訂正事項2)が新規事項の追加に当たるかについて判断する。(1) まず,特許法126条3項にいう「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内において」との文言について,「明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項」とは,当業者によって,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,訂正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内において」するものということができる。もっとも,明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項は,通常,当該明細書,特許請求の範囲又は図面によって開示された技術的思想に関するものであるから,例えば,特許請求の範囲の減縮を目的として,特許請求の範囲に限定を付加する訂正を行う場合において,付加される訂正事項が当該明細書,特許請求の範囲又は図面に明示的に記載されている場合や,その記載から自明である事項である場合には,そのような訂正は,特段の事情のない限り,新たな技術的事項を導入しないものであると認められ,「明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内において」するものであるということができる。・・・・訂正前明細書(甲13)の段落【0025】には,「各シンボルは上記実施形態と同様にリール帯31を形成する透明フィルム材の裏面に光透過性有色インキが印刷されて描かれているが,各半透明部分32aおよび33aにはこの有色インキが印刷されていない。その後の光透過性白色インキによる背景印刷は全面に対して行われ,最後の遮光性銀色インキによるマスク処理は各半透明部分32aおよび33aを除く領域に対して行われている。」との記載があるが,これも,各シンボルがリール帯31を形成する透明フィルム材の裏面に光透過性有色インキが印刷されて描かれていることを示すものにすぎない。したがって,訂正前明細書,特許請求の範囲又は図面(甲13)の記載を総合しても,当業者が,本件訂正発明のように,異なる種類の複数の特定図柄の一部分に半透明部分を形成するという構成において,「種類ごとに異なる色に着色」するという構\成を採用することの技術的意義について導くことができるとはいえず,本件訂正発明のように,異なる種類の複数の特定図柄の一部分に半透明部分を形成するという構成において,「種類ごとに異なる色に着色」するという構\成を採用することの技術的意義は不明というほかない。そうすると,たとえ属性ごとに各図柄を色で塗り分けること自体は周知の事項であるとしても,そのような技術的意義が不明である構成を新たに導入することについてまで,同様に周知の事項であるということはできない。」

◆平成20(行ケ)10254 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年12月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10350 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年12月10日 知的財産高等裁判所

  補正が限定的減縮でないとした審決が取り消されました。
   「被告は,特許法旧17条の2第4項2号「特許請求の範囲の減縮」にいう「減縮」とは,発明を特定するために必要な事項を「限定する」ことであり,これに該当するといえるためには,補正後の一つ以上の発明を特定するための事項が補正前の発明を特定するための事項に対して,概念的に下位になっていることを要するものであると主張するところ,同主張は,補正が「特許請求の範囲の減縮」(特許法旧17条の2第4項2号)に該当するためには,これに該当する個々の補正事項のすべてにおいて下位概念に変更されることを要するとの趣旨を含むものと解される。しかし,特許請求の範囲の減縮は当該請求項の解釈において減縮の有無を判断すべきものであって,当該請求項の範囲内における各補正事項のみを個別にみて決すべきものではないのであるから,被告の上記主張が減縮の場合を後者の場合に限定する趣旨であれば,その主張は前提において誤りであるといわざるを得ない。また,特許請求の範囲の一部を減縮する場合に,当該部分とそれ以外の部分との整合性を担保するため,当該減縮部分以外の事項について字句の変更を行う必要性が生じる場合のあることは明らかであって,このような趣旨に基づく変更は,これにより特許請求の範囲を拡大ないし不明瞭にする等,補正の他の要件に抵触するものでない限り排除されるべきものではなく,この場合に当該補正部分の文言自体には減縮が存しなかったとしても,これが特許法旧17条の2第4項2号と矛盾するものではない。

◆平成19(行ケ)10350 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年12月10日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10168 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

  補正要件を満たしているかが争われました。知財高裁は、限定的減縮でない、新規事項であるとした審決を維持しました。
  「前記本件出願当初明細書の記載,とりわけその記載中に円形,四角形,三角形等のシンボル等が例示されていること(【0014】)に照らすならば,本願発明における「ケース(12)上の目印(32,36,40)に一致する目印(34,38,42)を備えること」との事項の「目印を備える」とは,ケースそのものを目印として用いることを含むものではなく,ケース上に,ケースとは別個のシンボル等を目印として用いることを指すものと理解するのが相当である。これに対し,本願補正発明における「異なる注射器の目印として異なる目印あるいはケースが設けられ(る)」との事項は,「ケース」と記載されていることに照らすと,目印として,すなわち視覚を通じて区別する手段として使用されるものが,「異なる目印」ばかりでなく「異なるケース」(「異なる」との語が「目印」のみならず「ケース」をも修飾していることは当然である。)をも含み,ケースそのものを目印として使用する場合を含んでいることは明らかである。そうすると,本件補正は,本願発明における,ケースそのものを「目印」として使用しない態様から,本願補正発明における,ケースそのものを「目印」として使用する態様に,その範囲を拡張したものといえる。・・・前記(1),(2)で認定判断したとおり,本件出願当初明細書には,ケースそのものを目印として使用することの記載ないし開示はない。すなわち,ケースは,本来的には,物品などを収容するためのものであるのに対し,目印は,外部から視覚を通じて区別するための手段であるから,両者はその意義及び機能において相違するところ,本件出願当初明細書及び図面のいずれにおいても,ケースの形状や色彩等を,視覚を通じて区別する機能\を有するものとして使用することを記載,示唆する記載はない。」

◆平成20(行ケ)10168 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年11月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10335 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月30日 知的財産高等裁判所

 請求項を追加する補正が限定的減縮には該当しないと判断されました。
   なお、面接審査をして、補正案について拒絶理由解消と見解したにもかかわらず、意見を述べる機会を与えることなく、補正要件を満たしていないとして補正却下したことは手続き違反として取り消しました。

◆平成19(行ケ)10335 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10283 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月29日 知的財産高等裁判所

   最高裁第一小法廷判決(平成19年(行ヒ)第318号)を受けた知財高裁の判断です。
  「平成6年法律第116号附則6条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下「平成6年改正前」という。)の特許法126条3項は「第一項ただし書第一号の場合は,訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。」と規定し,同条1項ただし書第1号は「特許請求の範囲の減縮」を掲記するところ,同条3項の上記「訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構\成される発明」とは,「特許請求の範囲の減縮をした後の発明」であって,「減縮されていない発明」を含むものではないというべきである。もっとも,上記文言は,文理上,「訂正後における特許請求の範囲に記載されている全ての事項により構成される全ての発明」と解釈する余地があるが,特許法における訂正の審判の位置付けに照らすと,このように解釈することはできないというべきである。すなわち,平成6年改正前の特許法126条が定める訂正の審判は,主として特許の一部に瑕疵がある場合に,その瑕疵のあることを理由に全部について無効審判請求されるおそれがあるので,そうした攻撃に対して備える意味において瑕疵のある部分を自発的に事前に取り除いておくための制度である。他方,特許法153条3項は「審判においては,請求人が申\し立てない請求の趣旨については,審理することができない。」と規定しており,訂正の審判においては,訂正を許すべきか否かが判断の対象となり,(その限度で同条1項及び2項に基づいて職権で広範囲に審理できるものの,)求められた訂正の可否を超えて判断することは許されないのである。仮に,特許権者が,複数の請求項の一部の請求項について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を求めて訂正審判を請求した場合において,その訂正の可否を,一旦査定・登録された,訂正を求めていない他の請求項に係る発明についての独立特許要件の具備の有無にも係らしめるというのであれば,訂正審判請求がされるたびに,特許庁は,全請求項について審査を繰り返すことになってしまうほか,特許権者が権利行使の準備等のために必要と考えている訂正について,適時に判断を得ることができない結果ともなり得るし,制度についてのこのような理解は,ひいては,特許権者が訂正したいと考えている請求項のみについて,第三者をして形式的な無効審判を請求させた上,当該審判手続において訂正請求をすることによって実質的に必要な訂正の効果を確保しようとするなど,制度の不健全な利用を招来するおそれすらある。したがって,平成6年改正前の特許法126条3項において,独立特許要件の存在が求められる発明は,「特許請求の範囲の減縮をした後の発明」であるというべきであり,審決の判断中,本件訂正において訂正の対象とされていない請求項3,4に記載された発明について独立特許要件の有無を検討した部分は,審決の結論を導くために必要なものではなく,そもそも本訴における審理の対象となり得ないものであったというべきである。  なお,平成20年7月10日最高裁第一小法廷判決(平成19年(行ヒ)第318号)は「特許異議申立事件の係属中に複数の請求項に係る訂正請求がされた場合,特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正については,訂正の対象となっている請求項ごとに個別にその許否を判断すべきであり,一部の請求項に係る訂正事項が訂正の要件に適合しないことのみを理由として,他の請求項に係る訂正事項を含む訂正の全部を認めないとすることは許されない。」と判断したものであるが,その前提として,特許査定及び訂正審判請求と訂正請求の法的性質が異なることを示すために,「訂正審判に関しては,特許法旧113条柱書き後段,特許法123条1項柱書き後段に相当するような請求項ごとに可分的な取扱いを定める明文の規定が存しない上,訂正審判請求は一種の新規出願としての実質を有すること(特許法126条5項,128条参照)にも照らすと,複数の請求項について訂正を求める訂正審判請求は,複数の請求項に係る特許出願の手続と同様,その全体を一体不可分のものとして取り扱うことが予定されているといえる。」と説示するほか,「訂正請求の中でも,本件訂正のように特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とするものについては,いわゆる独立特許要件が要求されない(特許法旧120条の4第3項,旧126条4項)など,訂正審判手続とは異なる取扱いが予定されており,訂正審判請求のように新規出願に準ずる実質を有するということはできない。」と判示している。しかしながら,上記判示中において「一体不可分」とされているのは,あくまでも「複数の請求項について訂正を求める訂正審判請求」であり,「新規出願に準ずる実質を有する」との判示も,訂正が求められている請求項については,訂正後の特許請求の範囲の記載に基づく新たな特許出願があったのと同様に考えることができることを述べていると理解すべきものであって,訂正が求められていない請求項を含む全ての請求項について特許性の有無を再審査することまで求められるものでないことは明らかである。」

取り消された判決はこちらです
    ◆平成18(行ケ)10314 特許取消決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年06月29日 知的財産高等裁判所
  知財高裁は、「願書に添付した明細書又は図面の記載を複数箇所にわたって訂正することを求める訂正審判の請求又は訂正請求において,その訂正が特許請求の範囲に実質的影響を及ぼすものである場合(すなわち訂正が単なる誤記の訂正であるような形式的なものでない場合)には,請求人において訂正(審判)請求書の訂正事項を補正する等して複数の訂正箇所のうち一部の箇所について訂正を求める趣旨を特定して明示しない限り,複数の訂正箇所の全部につき一体として訂正を許すか許さないかの審決又は決定をしなければならず,たとえ客観的には複数の訂正箇所のうちの一部が他の部分と技術的にみて一体不可分の関係になく,かつ,一部の訂正を許すことが請求人にとって実益のあるときであっても,その箇所についてのみ訂正を許す審決又は決定をすることはできないと解するのが相当である(前記最高裁昭和55年判決参照)。そしてこの理は,原告のいう改善多項制の下でも同様に妥当するというべきである。」と判断しました。
◆平成19(行ケ)10283 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成16(行ケ)4 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成16年06月28日 東京高等裁判所

 古い判決ですが、新規事項に関する判断ですのでアップしました。 東京高裁は、”クレームの用語を削除する補正は新規事項である”とした審決を取り消しました。
 「しかしながら,【0005】【作用】には,「上方階のベランダの下面と下方階 のベランダの立上がり壁部の上端部との間にサポート部材を設置する場合には、そ のサポート部材の下端部を前記横部材の上面に形成した係止部に係合することによ り極めて容易に設置することができる」との記載があり,この記載からみると,横 部材の上部にサポート部材を係止することは,本願発明にとって付加的な要素にす ぎないものと認められる。上記【0004】,【0010】の記載もこの付加的な 要素についての手段及び効果について触れたものと認めることができる。  当初明細書には,実施例の説明においてもサポート部材に関する記載があるが, あくまでも実施例に関するものにすぎず,上記認定を妨げるものではない。  3 そして,立上がり壁部の開口部を塞ぐ防護用のパイプを設置するに当たり, 壁部の側面を締め付けるために,横部材の上部にサポート部材を上方から係止する 構成が,技術的視点から見て必然的に伴うものと認めることはできないから,「出願当初の明細書の記載によれば,「横部材」は,その上面にサポート部材を係合さ\nせるための「係止部」を形成したものについてしか記載されておらず,そのような 「係止部」を有しない「横部材」については何らの記載も示唆もない。」とした審 決の認定は誤りである。」

◆平成16(行ケ)4 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成16年06月28日 東京高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10431 補正却下決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月30日 知的財産高等裁判所

出願当初の明細書に記載されていた事項が、ある装置が当然の前提であるとして、その前提を削除する補正は要旨変更であるとした補正却下不服審決を維持しました。
 「以上によれば,本願の出願当初明細書における本願発明は,遊技球の通過を検出し,これに基づく特典の付与を可能とする始動ゲート装置を備えた遊技機に関するものであり,遊技機の遊技盤に形成された遊技領域に設けられる始動ゲート装置(これは,従来,遊技球の通過に基づき可変表\示ゲームの始動条件を付与可能な通過チャッカとして多用されていたものである。)について,従来技術においては単に球検出部を遊技盤面に突出させ,その球検出部の周りをシンプルなゲート部材で囲った程度の構\成であり,球が一瞬の間に球検出部を通り抜け,後は遊技盤面にごく普通に落下していくという単調さであったものを,球の通過を検知し,これに基づいて可変表示ゲームの始動等の特典を付与することを可能\としつつ,通過した球の挙動を変化させて遊技者の興趣を増大させるという意義を有するものである。そして,本願の出願当初明細書には,ここでの「特別可変表示装置」につき,可変表\示ゲーム,すなわち,始動口にパチンコ玉が入賞すると3箇所の特別図柄表示部における図柄が所定時間変動表\示された後に停止表示され,その際3箇所の図柄が揃うと特賞遊技状態(大当たり)となるゲームの表\示を可能とするため遊技領域に設けられた表\示装置である旨,また,「特別変動入賞装置」につき,このようにして特賞遊技状態となった場合に開閉扉が所定時間ずつ開放されるという特別遊技を可能とするための装置である旨の記載があると認められるものの,「特別可変表\示装置」が上記のように特別変動入賞装置の作動を決定する特別可変表示ゲームを実施する以外,他の目的があるとの記載はない。そうすると,本件出願当初の明細書に記載された特別可変表\示装置は,特別変動入賞装置の作動を決定する目的を有する装置であって,特別入賞装置とともに存在することに技術的意義を有する装置であると認められる。(4) これに対し,本件補正後の請求項1の記載は前記第3,1,(2)ウのとおりであるところ,これによると,「特別可変表示装置」については,「普通変動入賞装置への遊技球の入賞に基づき特別可変表\示ゲームを表示可能\な特別可変表示装置」と特定されているものの,「特別変動入賞装置」については規定するところがないから,本願補正発明は,特別可変表\示装置を有しつつ特別変動入賞装置を有しない遊技機,換言すれば,特別変動入賞装置の作動を決定する目的を持たず特別入賞装置とともに存在することを要しない特別可変表示装置をも,その請求の範囲に含むものである。そして,本願の出願当時におけるパチンコに代表\される遊技機の技術分野において,特別変動入賞装置と無関係な特別可変表示装置が遊技機に単体で存在することが自明であったとは認め難いから,このような遊技機(特別変動装置の作動との関係から切り離された「特別可変表\示装置」が単体で存在する遊技機)を出願当初の明細書から把握することは自明のことではないというべきである。そうすると,本件補正は,明細書の中に新たに遊技機に単体で存在する特別可変表示装置という技術的事項を導入するものであるから,明細書の要旨を変更するものといわなければならない。」
◆平成19(行ケ)10431 補正却下決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10432 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月17日 知的財産高等裁判所

   争点の一つが新規事項か否かです。裁判所は、新規事項であるとした審決を維持しました。
 「以上のとおり,本願において,「ばね掛けに係合されたラッチばねの端部を耐摩部片に掛け止める」との構成における「掛け止められる」は,「引っ掛けて離れないようにする,固定する」との意味に理解するのが相当であるが,そのような構\成が付加されることは,例えば,ラッチばねの横ずれ防止効果や「はずれにくくする」との効果やラッチとラッチばねの設置の位置関係の自由度の拡大効果など技術的な観点から新たな事項が付加されるものと解される余地が生ずる。ところで,上記のとおり,本件出願当初明細書には,ラッチばねで付勢させた平板状のラッチを備えたダイヤル錠において,「『高分子材料から成る耐摩部片』を用いること」,及び「『金属材料製のラッチ本体』と『高分子材料から成る耐摩部片』との固着方法」についての記載はあるものの,専らその点の開示に尽きるのであって,「ラッチばねの端部」と「耐摩部片」との位置関係について開示又は示唆する記載がないことはもとより,図3においても,「ラッチばね」のラッチ本体側の端部が「ばね掛け」(ばね止め)の周囲に位置することが示されているが,「ラッチばね」のラッチ本体側の端部と「ばね掛け」(ばね止め)との位置関係,係合の有無,態様は何ら示されていない。そうすると,「ばね掛けに係合させたラッチばねの端部を耐摩部片に掛け止める」との構成は,本件出願当初明細書及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との対比において,新たに導入された技術的事項であるというべきである。この点について,原告は,本件出願当初明細書添付の図4及び図5(同各図から原告が描いた斜視図である甲14の図を含む。)によれば,「ラッチばねの端部を耐摩部片に掛け止めするようにしている」ことが示されていると主張する。しかし,上記各図のいずれによるも,ばね掛けに係合されたラッチばねの端部が耐摩部片に引っ掛けて離れないようにする,固定するとの技術的事項が示されているとはいえない。以上のとおり,本件補正は,本件出願当初明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてされたものではないとした審決の判断に誤りはない。」

◆平成19(行ケ)10432 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月17日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ヒ)318 特許取消決定取消請求事件 平成20年07月10日 最高裁判所第一小法廷

   最高裁は、訂正請求の一部が訂正要件を満たさないという理由で、当該訂正全体を認めなかった審決を取り消しました。
 「特許法旧120条の4第2項の規定に基づく訂正の請求(以下「訂正請求」という。)は,特許異議申立事件における付随的手続であり,独立した審判手続である訂正審判の請求とは,特許法上の位置付けを異にするものである。訂正請求の中でも,本件訂正のように特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とするものについては,いわゆる独立特許要件が要求されない(特許法旧120条の4第3項,旧126条4項)など,訂正審判手続とは異なる取扱いが予定されており,訂正審判請求のように新規出願に準ずる実質を有するということはできない。そして,特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正請求は,請求項ごとに申立てをすることができる特許異議に対する防御手段としての実質を有するものであるから,このような訂正請求をする特許権者は,各請求項ごとに個別に訂正を求めるものと理解するのが相当であり,また,このような各請求項ごとの個別の訂正が認められないと,特許異議事件における攻撃防御の均衡を著しく欠くことになる。以上の諸点にかんがみると,特許異議の申\立てについては,各請求項ごとに個別に特許異議の申立てをすることが許されており,各請求項ごとに特許取消しの当否が個別に判断されることに対応して,特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正請求についても,各請求項ごとに個別に訂正請求をすることが許容され,その許否も各請求項ごとに個別に判断されるものと考えるのが合理的である。」

原審はこちらです
    ◆平成18(行ケ)10314 特許取消決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年06月29日 知的財産高等裁判所
  知財高裁は、「願書に添付した明細書又は図面の記載を複数箇所にわたって訂正することを求める訂正審判の請求又は訂正請求において,その訂正が特許請求の範囲に実質的影響を及ぼすものである場合(すなわち訂正が単なる誤記の訂正であるような形式的なものでない場合)には,請求人において訂正(審判)請求書の訂正事項を補正する等して複数の訂正箇所のうち一部の箇所について訂正を求める趣旨を特定して明示しない限り,複数の訂正箇所の全部につき一体として訂正を許すか許さないかの審決又は決定をしなければならず,たとえ客観的には複数の訂正箇所のうちの一部が他の部分と技術的にみて一体不可分の関係になく,かつ,一部の訂正を許すことが請求人にとって実益のあるときであっても,その箇所についてのみ訂正を許す審決又は決定をすることはできないと解するのが相当である(前記最高裁昭和55年判決参照)。そしてこの理は,原告のいう改善多項制の下でも同様に妥当するというべきである。」と判断しました。
◆平成19(行ヒ)318 特許取消決定取消請求事件 平成20年07月10日 最高裁判所第一小法廷

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◆平成19(行ケ)10409 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月23日 知的財産高等裁判所

 請求項1に『ダイオキシン類の含有量を飲料水レベルにまで浄化する』という事項を追加したことが新規事項か否かが争われました。裁判所は、新規事項であるとした審決を取り消しました。
 「以上の各記載によれば,本願補正発明による汚水の高度水処理方法は,オゾン処理を基本とした高度水処理技術の提供であり,処理対象水の汚染の程度に応じて,オゾン処理に加えて,過酸化水素水処理,電気分解処理,紫外線照射処理,炭化濾材処理等の各種の浄化工程を予定しているものであることは明らかというべきである。そうすると,これらの記載を総合すると,本願補正発明は連続処理方式の高度水処理方法の技術分野における基本工程としてのオゾン処理に関する発明であると認めるのが相当であり,同補正発明に係る特許請求の範囲の請求項1の前段の記載があるからといって,オゾン処理のみで前段の浄化レベルを達成する発明を包含することになったものでないことは明らかというべきである。もとより,上記認定の記載中にもあるとおり,浄化の対象となる処理対象水によって汚染レベルは様々であり,汚染レベルの低い処理対象水については,オゾン処理を行うことによって,「所望の浄化レベル」に到達することもあり得るところである。しかしながら,このことは,本願補正発明のように「飲料水レベルまで浄化」する場合だけでなく,本願発明のように「浄化」する場合においても起こり得ることであり,前者の場合において,「所望の浄化レベル」の内容が若干具体的に記載されているにすぎないものである。」

◆平成19(行ケ)10409 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月23日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10053 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月12日 知的財産高等裁判所

 訂正要件を満たしていないとした審決を取り消しました。
  「特許法134条の2第5項で準用する同法126条3項該当性についてア訂正が,当業者によって,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができ,特許請求の範囲の減縮を目的として,特許請求の範囲に限定を付加する訂正を行う場合において,付加される訂正事項が当該明細書又は図面に明示的に記載されている場合や,その記載から自明である事項である場合には,そのような訂正は,特段の事情のない限り,新たな技術的事項を導入しないものであると認められ,「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された範囲内において」するものであるということができる(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10563号事件・平成20年5月30日判決参照)。以上を前提として,訂正事項1及び5について,「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」するものであるか否かを検討する。・・・・・ウ 本件明細書の前記イの各記載によれば,【請求項1】には,衣服の身頃,襟,襟口,ポケット又はポケットフラップの周縁に沿って袋を形成することが記載されており(前記イ(ア)),段落【0017】には,ワイヤの取付位置として,襟,襟口(襟の開き部分),袖の下部,身頃の下部,ポケットの縁,ポケットフラップの縁が記載されており(前記イ(イ)),段落【0019】には,ワイヤの取付構造(方法)として,衣服の表\側を構成する主布の裏側に,別布を縫合して袋を形成し,この袋の内部にワイヤを挿通させることが記載されており(前記イ(ウ)),段落【0021】には,ワイヤの取付位置として,襟の周縁,襟口の周縁が記載されており(前記イ(エ)),段落【0022】には,ワイヤの取付位置として,ポケットの開口の周縁,ポケットフラップの周縁が,それぞれ記載されている(前記イ(オ))と認められる。すなわち,本件明細書には,?@「衣服の襟,ポケット又はポケットフラップの周縁に沿って袋を形成」することが記載され(【請求項1】),?Aワイヤの取付位置として,「衣服の襟,ポケット又はポケットフラップの周縁」が記載され(段落【0017】,【0021】及び【0022】),?Bワイヤの取付構造(方法)として,「衣服の表\側を構成する主布の裏側に別布を縫合して,袋を形成」すること,この袋の内部にワイヤを挿通させることが記載されている(段落【0019】)といえる。そうすると,「衣服の襟,ポケット又はポケットフラップの周縁に沿って袋を形成」して,「衣服の襟,ポケット又はポケットフラップの周縁」にワイヤを取り付けるに当たり,「衣服の表\側を構成する主布の裏側に別布を縫合して,袋を形成」し,この袋の内部にワイヤを挿通させるようにすることは,本件明細書の記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,当業者であれば,本件明細書の記載から自明である事項として,認識することができるというべきである。」

◆平成20(行ケ)10053 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月12日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10110 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月11日 知的財産高等裁判所

 『仙骨上又は仙骨に沿って力を集中させる』を『骨盤内の腰骨稜間の仙骨の上方部分上又は上部分に沿って力を集中させる』とする補正が、限定的減縮に該当するかが1つの争点でした。裁判所は、限定的減縮要件違反とした審決を取り消しました。
  「しかしながら,上記部分の補正に係る,「それらが骨盤内の腰骨稜間の仙骨の上 方部分上又は上部分に沿って力を集中させる」との記載は,「上方部分」に付加された「上」との文言と「上部分」に付加された「に沿って」との文言とが対応して用いられていると考えられるから,「『それらが骨盤内の腰骨稜間の仙骨の上方部分上に力を集中させる』又は『それらが骨盤内の腰骨稜間の仙骨の上部分に沿って力を集中させる』」という趣旨であると考えることができ,そうであれば,「上方部分」及び「上部分」が,それ自体は同じ部分(仙骨そのものの一部であって,その上下方向の中央よりも上の部分)を意味するとしても,力を集中させる対象である部位としては,前者は,仙骨自体を,後者は,仙骨の近傍をそれぞれ意味するものと理解することができるから,上記両表現が意味するところは異なることとなって,格別不自然ということはできない(なお,原告は,「上部分」が「上方部分」の誤記であると主張するところ,そうであれば,このことはより明確であるが,仮に,「上部分」が「上方部分」の誤記であるとは認められないとしても,上記のように考えることの妨げとはならない。)。したがって,「上部分」との文言が,「仙骨上の何れかの部分」ないし「仙骨の上下方向の中央よりも上の部分」を意味するとすれば,「上方部分」との文言が同じ部分を意味するのは不自然であるとして,「仙骨の上方部分」との文言が,仙骨を含まない,それよりも上方の部分であるとする審決の判断は,直ちに是認できるものではない。
    (3) そこで,発明の詳細な説明の記載を参酌するに,本件特許出願に係る公表特許公報(甲第1号証。なお,平成16年3月16日付け手続補正(甲第4号証)及び本件補正(甲第2号証)ともに,発明の詳細な説明の部分に係る補正はない。)によれば,発明の詳細な説明には,本願発明の支持部材が力を及ぼす作用に関連して,以下の各記載がある。・・・(4) 上記(3)の各記載によれば,発明の詳細な説明においては,本願発明は,特定の仙骨圧を創造することによって所望の姿勢位置を確立する背骨支持システムであり,本願発明の支持部材ないしブロック部材44は,仙骨に対し,とりわけ仙骨の上方3分の1の領域である仙骨基部に対し,圧力を加えるものとされており,また,上記(3)のクには,当該圧力を仙骨上に,又は仙骨に沿って,集中させるようにすることも記載されている。これに対し,仙骨そのものではなく,仙骨よりも上方に存在する他の部位に圧力を加える旨の記載は,発明の詳細な説明中に,見当たらない。そうすると,かかる発明の詳細な説明の記載を参酌すれば,請求項1についての上記(2)の部分の補正に係る「それらが骨盤内の腰骨稜間の仙骨の上方部分上又は上部分に沿って力を集中させる」との記載は,「『それらが骨盤内の腰骨稜間の仙骨の上方領域(仙骨自体の一部であって,その上下方向の中央よりも上の部分)に力を集中させる』又は『それらが骨盤内の腰骨稜間の上記仙骨の上方領域に沿って力を集中させる』」という趣旨であるものと,すなわち,「仙骨の上方部分」も仙骨の「上部分」も,ともに仙骨自体の一部であって,その上下方向の中央よりも上の部分を意味するものと理解されることは明らかである。」

◆平成19(行ケ)10110 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月11日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10300 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年05月30日 知的財産高等裁判所

  「"磁束一定条件を満たすように"という要件を追加することが新規事項であるので訂正要件を満たさない」とした審決が取り消されました。
   (3)ア 審決は,本件明細書(甲1の1,2)の段落【0042】及び【0055】の記載は「電圧指令と周波数指令を所定値に設定するにあたって,磁束一定条件を満たすように設定することを開示するものではない。」(6頁14行〜16行)とし,段落【0055】には,「上記所定値を,誘導電動機の磁束一定条件を満たすように設定するものとは記載されていない。」(6頁20行〜21行)と認定した。しかし,訂正発明は,その特許請求の範囲の記載全体からすれば,ステップ(a’)の「前記誘導電動機の磁束一定条件を満たすように」との記載は,続くステップ(b’)の「無負荷状態において,前記所定値に基づいて前記インバータから出力される交流電圧を前記誘導電動機に印加することにより,前記誘導電動機を回転させるステップ」及びステップ(c’)の「前記回転している誘導電動機に流れる電流を検出するステップ」における運転条件を限定していることは明らかといえる。訂正発明は,ステップ(b’)及び(c’)における誘導電動機の回転が,「前記誘導電動機の磁束一定条件を満たすように」運転され,その後のステップ(d’)の「前記所定値に設定された電圧指令,前記所定値に設定された周波数指令,及び前記検出された電流に基づいて,前記コンピュータにより,前記誘導電動機の1次インダクタンスと関係する,前記制御装置の制御定数を設定するステップ」において,所望の制御定数を得ることができるように,「前記電圧指令および前記誘導電動機の周波数指令を所定値に設定」する〔ステップ(a’)〕ものであると理解することができる。そして,磁束一定条件を満たすように誘導電動機を運転し,所望の制御定数を得ることができるように,「前記電圧指令および前記誘導電動機の周波数指令を所定値に設定」することは,上記(2)において説示したとおり,明細書又は図面に記載されているから,本件訂正は,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。そうすると,審決が「電圧指令と周波数指令を所定値に設定するにあたって,磁束一定条件を満たすように設定することを開示するものではない」(6頁14行〜16行)として本件訂正を明細書又は図面に記載された事項の範囲内でなされたものではないと判断したことは誤りである。」

◆平成19(行ケ)10300 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年05月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10563 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年05月30日 知的財産高等裁判所

  大合議判決です。除くクレームによる消極的限定について、訂正要件を満たしているかが争われました。裁判所は、「願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」の意義について一般論を述べた上、本件は上記範囲内の訂正であると認めました。
  「このような特許法の趣旨を踏まえると,平成6年改正前の特許法17条2項にいう「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」との文言については,次のように解するべきである。すなわち,「明細書又は図面に記載した事項」とは,技術的思想の高度の創作である発明について,特許権による独占を得る前提として,第三者に対して開示されるものであるから,ここでいう「事項」とは明細書又は図面によって開示された発明に関する技術的事項であることが前提となるところ,「明細書又は図面に記載した事項」とは,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。そして,同法134条2項ただし書における同様の文言についても,同様に解するべきであり,訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。もっとも,明細書又は図面に記載された事項は,通常,当該明細書又は図面によって開示された技術的思想に関するものであるから,例えば,特許請求の範囲の減縮を目的として,特許請求の範囲に限定を付加する訂正を行う場合において,付加される訂正事項が当該明細書又は図面に明示的に記載されている場合や,その記載から自明である事項である場合には,そのような訂正は,特段の事情のない限り,新たな技術的事項を導入しないものであると認められ,「明細書又は図面に記載された範囲内において」するものであるということができるのであり,実務上このような判断手法が妥当する事例が多いものと考えられる。
・・・・上記アのとおり,訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができるというべきところ,上記イによると,本件各訂正による訂正後の発明についても,成分(A)〜(D)及び同(A)〜(E)の組合せのうち,引用発明の内容となっている特定の組合せを除いたすべての組合せに係る構成において,使用する希釈剤に難溶性で微粒状のエポキシ樹脂を熱硬化性成分として用いたことを最大の特徴とし,このようなエポキシ樹脂の粒子を感光性プレポリマーが包み込む状態となるため,感光性プレポリマーの溶解性を低下させず,エポキシ樹脂と硬化剤との反応性も低いので現像性を低下させず,露光部も現像液に侵されにくくなるとともに組成物の保存寿命も長くなるという効果を奏するものと認められ,引用発明の内容となっている特定の組合せを除外することによって,本件明細書に記載された本件訂正前の各発明に関する技術的事項に何らかの変更を生じさせているものとはいえないから,本件各訂正が本件明細書に開示された技術的事項に新たな技術的事項を付加したものでないことは明らかであり,本件各訂正は,当業者によって,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかであるということができる。したがって,本件各訂正は,平成6年改正前の特許法134条2項ただし書にいう「願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものであると認められる」

◆平成18(行ケ)10563 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年05月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10163 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年05月28日 知的財産高等裁判所

 訂正審判について、一部の請求項の削除を行う補正をしたところ、審判官は、このような補正は、審判請求書の要旨変更に当たるから許されないとし、その削除しようとした請求項についてだけ独立特許要件の有無を判断して訂正を否定しました。知財高裁は、この審決を取り消しました。
 「上記(1)及び(2)によれば,原告からなされた平成18年9月13日付けの本件訂正審判請求(甲4)は,旧請求項1〜7を新請求項1〜7等に訂正しようとしたものであるところ,その後原告から平成19年1月15日付けでなされた上記訂正審判請求書の補正(甲7)の内容は新請求項3・5・7を削除しようとするものであり,同じく原告の平成19年1月15日付け意見書(甲6)にも新請求項1・2・4・6の訂正は認容し新請求項3・5・7の訂正は棄却するとの判断を示すべきであるとの記載もあることから,審判請求書の補正として適法かどうかはともかく,原告は,残部である新請求項1・2・4・6についての訂正を求める趣旨を特に明示したときに該当すると認めるのが相当である。本件における上記のような扱いは,原告が削除を求めた新請求項3・5・7は,その他の請求項とは異なる実施例(「本発明の異なる形態」,「実施例2」)に基づく一群の発明であり,発明の詳細な説明も他の請求項に関する記載とは截然と区別されており,仮に原告が上記手続補正書で削除を求めた部分を削除したとしても,残余の部分は訂正後の請求項1・2・4・6とその説明,実施例の記載として欠けるところがないことからも裏付けられるというべきである。そうすると,本件訂正に関しては,請求人(原告)が先願との関係でこれを除く意思を明示しかつ発明の内容として一体として把握でき判断することが可能な新請求項3・5・7に関する訂正事項と,新請求項1・2・4・6に係わるものとでは,少なくともこれを分けて判断すべきであったものであり,これをせず,原告が削除しようとした新請求項3・5・7についてだけ独立特許要件の有無を判断して,新請求項1・2・4・6について何らの判断を示さなかった審決の手続は誤りで,その誤りは審決の結論に影響を及ぼす違法なものというほかない。」

◆平成19(行ケ)10163 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年05月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10333 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年04月24日 知的財産高等裁判所

 新規事項であるとして訂正を認めないことを要因とする無効判断が取り消されました。
 「そうすると,本件特許明細書に接した当業者であれば,「膨縮袋群の内側 他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起さ せ」ることにより,「肘掛部上に人体手部を安定的に保持させ」ることがで きることが容易に把握できるものというべきであるから,本件特許明細書 には,「膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内 側の先端部を隆起させ」ることと「肘掛部上に人体手部を安定的に保持さ せ」ることの因果関係が示されているというべきである。」

◆平成19(行ケ)10333 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年04月24日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10237 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年03月25日 知的財産高等裁判所

  訂正要件を満たさないとして訂正を認めなかった審決が取り消されました。
 「本件訂正が,平成6年法律第116号による改正前の特許法126条1項ただし書きの「ただし,その訂正は,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならず,・・・」との規定に違反していると判断しており,その理由は,転記した訂正拒絶理由と示したものと同じとしている。そして,審決は,前記1(2)エ(ア)ないし(ウ)を転記しているので,訂正発明が,「文章が日本語として明確でなく,かつ意味不明である。」から,「それ自体意味不明な訂正発明は,特許明細書に記載がなく,また,特許明細書の記載から自明なものとは認められない。」として,本件訂正が,明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないと判断したものと認められる。そして,そのように認定判断した理由は,訂正拒絶理由通知書に記載した(1)ないし(7)の理由であると認められる。そこで,(1)ないし(7)の理由について検討する。・・・したがって,上記(7)の理由も失当である。(5) 以上によれば,本件訂正が,明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないと判断した審決の判断は誤りであり,原告主張の取消事由2は理由がある。」

◆平成19(行ケ)10237 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年03月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10055 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月27日 知的財産高等裁判所

  特許法17条の2第4項2号限定的減縮の要件について、本件補正を却下した審決の判断に誤りはないと判断しました。
    「(1) 本件出願の請求項19は,前記第2の2のとおりであるところ,アノードの「ホスト材料の中にリチウム金属を分散する」こと及び「ホスト材料中とその中に分散された前記リチウム金属」は記載されているが,「アノード内のリチウム金属の量」については,全く記載されていない。原告は,特許請求の範囲中の記載に「(アノード内の)リチウム金属」に関する言及がある場合には,その量に関する事項は,「(アノード内の)リチウム金属」という概念に内在する特定事項であると主張する。しかし,「リチウム金属」という記載では,物質の種類を特定したにすぎず,その「量」については,何らの言及がないのであるから,上記の「(アノード内の)リチウム金属」なる記載が「リチウム金属の量」についての特定を含むものではないことは一般的な用語法に照らして明らかであるというべきであって,原告の主張を採用することはできない。そうすると,本願発明19の特定事項として,「アノード内のリチウム金属の量」が含まれていない以上,請求項19に係る本件補正は,発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。」

◆平成19(行ケ)10055 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10439 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月21日 知的財産高等裁判所 

 訂正要件適合とした審決を取り消しました。
  「確かに,訂正明細書に記載された実施例には,ラッチレバー32aを内側に押し込み,ラッチ爪32eとラッチ爪係合穴60jとの係合を解除することによって,インクタンクが持ち上がることが記載されている(原告の主張に合わせ「ポップアップ機能」との語を用いる場合がある。)。しかし,同記載に係る「ポップアップ機能\」は,あくまでも,ホルダの内壁が,その下端部から外側上方に向かって傾斜した側断面形状を有し,ラッチレバー32aの傾斜はホルダの壁よりも大きくなっていること等,ラッチ爪を含むラッチレバーの具体的形状やホルダの内壁の具体的形状等の相互関係に依存するものであって,インクタンクとして規定された構成のみによって,常に実現するというものではなく,インクタンクとホルダとの間に一定の条件が成立することによってはじめて実現するものにすぎない。以上のとおり,訂正事項hは,記載自体が明確でないのみならず,発明の詳細な説明欄における実施例に関する記載及び図面を参照してみてもなお,ポップアップ機能\を実現する事項に係る構成を明確に示したものと解することはできない。したがって,訂正事項hにおいて,ホルダとの相互関係ないし協働関係を不明確なまま要素として含んだことによって,本件訂正は全体として,インクタンクの発明であるにもかかわらず,特許請求の範囲の記載(請求項1)を不明確にするものとなったから,特許請求の範囲の減縮に当たるか否かを判断することすらできないものであって,結局,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正ということはできない。」

◆平成18(行ケ)10439 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月21日 知的財産高等裁判所 

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◆平成18(行ケ)10455 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月12日 知的財産高等裁判所

 改善多項制下における訂正請求の確定時期について、判断されました。
  「イ 特許無効審判の手続において,無効審判請求の対象とされていない請求項について訂正請求がされ(特許法134条の2第5項後段参照),当該訂正請求につき「訂正を認める」との審決がされた場合は,審決のうち,当該請求項について「訂正を認める」とした部分は,無効審判請求の双方当事者の提起する取消訴訟の対象となるものではないから,審決の送達により効力を生じ,当該請求項は,審決送達時に,当該訂正された内容のものとして確定すると解するのが相当である。特許無効審判の手続において,無効審判請求の対象とされている請求項及び無効審判請求の対象とされていない請求項の双方について訂正請求がされた場合においては,審判合議体は,無効審判請求の対象とされていない請求項についての訂正請求が独立特許要件を欠く等の理由により許されないことを理由として,無効審判請求の対象とされている請求項についての訂正請求の許否に対する判断を行わずに,訂正請求を一体として許されないと判断することは,特段の事情のない限り,特許法上許されないというべきである。また,この場合において,無効審判請求の対象とされている請求項についての訂正請求が許されないことを理由として,無効審判請求の対象とされていない請求項についての訂正請求の許否に対する判断を行わずに,訂正請求を一体として許されないと判断することも,特段の事情のない限り,特許法上許されないものである。」

◆平成18(行ケ)10455 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月12日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10177 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年01月17日 知的財産高等裁判所

 補正は新規事項であると判断した審決が維持されました。
 「原告は,当初明細書の段落【0018】,【0020】及び【0036】に,ネガは顧客に返却されるものであることが記載されており,段落【0019】には,ネガ返却後に行うサービスが記載されているとし,結局,当初明細書に記載されている一連の技術の中から,ネガを返却した後,画像ファイルを保存しておいた場合に行うサービスに関する部分,すなわち,「低解像度の画像ファイルをデータ転送の対象とし,高解像度の画像ファイルから印画を行うという発明」を取り出して,画像ファイルの由来によらない発明であると主張しているものということができる。ところで,発明は,技術的思想の創作であるが(特許法2条),ここに「技術」とは,一般に,「?@物事を巧みにしとげるわざ。技芸。?A自然に人為を加えて人間の生活に役立てるようにする手段。また,そのために開発された科学を実際に応用する手段。科学技術。」(大辞林第3版),「?@物事をたくみに行うわざ。技巧。技芸。?A(technique)科学を実地に応用して自然の事物を改変・加工し,人間生活に役立てるわざ。」(広辞苑第5版)などとされているとおり,科学を現実に応用して人間生活に役立てるという目的を達成するための具体的手段であるから,発明における創作は,所期の目的すなわち技術課題を達成するための手段としての技術的思想でなければならないものと解すべきである。本件についてみると,ネガ又はスライドを返却した後の,画像ファイルを保存しておいた場合に行うサービスに関する部分,すなわち,原告が「低解像度の画像ファイルをデータ転送の対象とし,高解像度の画像ファイルから印画を行うという発明」と主張するものは,前記のとおり,当初明細書中に,従来技術との関係で技術課題が設定されているわけではないから,単に,そのサービスに関する部分のみを取り出しても,そこに出願人による技術的思想の創作である発明が存在すると認めることはできない。当初明細書の上記記載からいえることは,ネガを返却した後の,画像ファイルを保存しておいた場合に行うサービスに関する技術が当業者に開示されているというのみであって,それ以上のものではない。」

◆平成19(行ケ)10177 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年01月17日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10268 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年11月28日 知的財産高等裁判所

   誤記訂正が、実質上の拡張または変更に当たるとして、訂正を認めなかった審決が取り消されました。
  「0.5重量%以下」との記載は,確かに,被告が主張するように,その記載自体を独立したものとして見る限り,数値及びその範囲として明確であり,疑問が生じることはない。しかしながら,特許請求の範囲の意味内容を確定する場合には,当該記載の前後の単語・文章,文脈,当該請求項の全体の意味内容との関係で検討すべきであり,被告が主張するように,問題となった記載を前後から切り離して取り上げて意味内容を把握し,その単純な総和として,確定すべきものではない。確かに,発明の詳細な説明に記載した発明のすべてを特許請求の範囲に記載して権利化しなければならないわけではないものの,発明の詳細な説明に登場するいくつかの実施例のうち,請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」に対応するのは,実施例8のみであり,出願人は,本件補正によって大部分の権利範囲を失うことになる。しかも,特許出願に係る発明が境界域である「0.5重量%の水酸化カリウム」の場合に限定されることになるというだけではなく,特許請求の範囲に提示された「0.5重量%未満」の範囲は特許法36条4項の定める要件を欠如することになりかねない。仮に,出願人が真意に基づきそのような補正をしたというのであれば,権利化の際に通常選択する合理的な経済行為からは,大きく乖離するものであったといわざるを得ない。・・・これらの記載によれば,本件発明は,水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの双方又はいずれか一方を含むものとして記載されており,その双方とも含まないことを前提とした記載は一切なく,請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」との記載は,「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であると容易に理解するに至ることは明らかである。」

 また、実質上拡張変更については、下記のように述べました。
 「請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」の記載は,「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であるとする場合,この2つの文言のみに即して形式的に考察すると,「0.5重量%以下の水酸化カリウム」の範囲は,「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の範囲と明らかに異なるから,その限りでは特許請求の範囲が変更となるのではないかという問題があるかのようであるが,請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」とある記載は,上述のとおり,特許請求の範囲の記載からだけでは不明確であり,そこで,発明の詳細な説明を参酌すると,「0.5重量%以下の水酸化カリウム」は,「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であることが明らかであるというのであるから,その実質を捉えて考察すると,特許請求の範囲の拡張や変更はされていないということができ,同法126条4項違反の問題は生じないものというべきである。」

◆平成18(行ケ)10268 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年11月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10174 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年09月26日 知的財産高等裁判所

 新たなステップを追加することは、限定的減縮に該当しないとの考え方についてはこれを維持しましたが、相違点を看過しているとして、拒絶審決が取り消されました。
 「・・?Dのステップの後に,新たに「前記安定した基板を上記物体に付属させるステップ」を追加するものである。ところで,上記追加に係る「前記安定した基板を上記物体に付属させるステップ」は,?@ないし?Dのステップとは無関係であり,請求項11の全体を減縮するものではあるが,?@ないし?Dのいずれかのステップを減縮するものではない。そうすると,本件補正は,平成18年法律第55号による改正前の特許法17条の2第4項2号に規定する「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」にいう「第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定する」場合には当たらないと解するのが相当である。したがって,本件補正を却下すべきものとした審決の判断に誤りはない。」 
  「結局,審決は,刊行物1記載の発明を基本としつつ,被告が自ら認めるとおり,刊行物1,3記載の発明が「光硬化性流動物質」又は「液体,粉末等の材料」を使用するものであるとすることによって,「光硬化性流動物質」と「液体,粉末等の材料」とを一つのまとまりとして取り扱い,「材料」の上位概念をもって一致点とした際に,その「材料」の中に,「光硬化性流動物質」のみならず「材料粉末」をも含めてしまったため,本願発明について,進歩性の有無を判断すべき相違点を看過する結果となったものといわざるを得ない。」 

◆平成18(行ケ)10174 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年09月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10494 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年09月20日 知的財産高等裁判所

   最後の拒絶理由通知に対して、プロダクトバイプロセスで特定した物の発明を方法に変更することが、補正要件違反となるかについて争われました。裁判所は、プロダクトバイプロセスクレームは物の発明であるので、補正により方法クレームに変更することは補正要件を満たしていないとして、特許庁における補正却下処分を維持しました。
   「プロダクト・バイ・プロセス・クレームとは,東京高裁平成14年判決にあるとおり,「物(プロダクト)に係るものでありながら,その中に当該物に関する製法(プロセス)を包含する」形式で記載された特許請求の範囲であり,「発明の対象となる物の構成を,製造方法と無関係に,直接的に特定することが,不可能\,困難,あるいは何らかの意味で不適切(例えば,不可能でも困難でもないものの,理解しにくくなる度合が大きい場合などが考えられる。)であるとき」などに認められる特許請求の範囲の記載方法でであるということができる。上記の意義からも明らかなように,プロダクト・バイ・プロセス・クレームにあっては,特許請求の範囲に物の製造方法(プロセス)が記載されていても,その記載は発明の対象となる物(プロダクト)を特定するためであり,物の製造方法についての特許を請求するものではない。したがって,プロダクト・バイ・プロセス・クレームの形式で書かれた発明のカテゴリーは,あくまで「物の発明」であって,「方法の発明」ではないし,「物の発明」かつ「方法の発明」ということもできない。原告の主張は,東京高裁平成平成14年判決を正解するものとはいえず,採用することはできない。」

◆平成18(行ケ)10494 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年09月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10485 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年07月10日 知的財産高等裁判所

  無効審判の対象となっていなかった従属請求項について、多数項従属形式から一方を削除した上、これを独立形式にのみ訂正したについて、減縮にあたるので独立特許要件をみずに訂正を認めたのは違法として審決を取り消しました。
 「上記イの検討によると,本件訂正の訂正事項4,5,7及び8については「特許請求の範囲の減縮」に該当するところ,審決は,前記のとおり「明りょうでない記載の釈明」に当たるとして,独立特許要件の判断をしないで本件訂正を認容したものであるから,違法というほかない。エ もっとも,訂正に係る新請求項5ないし11について独立特許要件が具備されていると判断されるのであれば,上記判断の遺脱は審決の結論に影響を及ぼさないと解する余地がある。しかし,新請求項5ないし11が引用するのが新請求項1(訂正発明)であれば後記のとおり独立特許要件を具備していると解されるものの,前記のとおり新請求項5ないし11が引用しているのは実質的には旧請求項1であって,同請求項は,第1次審決(甲11)が指摘するように,特許要件を欠くと解されるから,結局,上記判断の遺脱は審決の結論に影響を及ぼすというべきである。」

◆平成18(行ケ)10485 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年07月10日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10436 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年06月27日 知的財産高等裁判所

 最終的には、進歩性無しとの審決は維持されましたが、新規事項であるとの取消理由1については、誤りであると認定しました。
 「上記アの認定事実及び各図を総合すると,図6は,支持部材40が取り外された状態,又は支持部材40のスライド部を基礎部材30のスライド部に取り付ける前の状態のいずれかを図示したものであることは自明であり,また,図6aのようにスライド係合させ,支持部材40を基礎部材の下方に移動させると,「しるし38」は支持部材により覆われ,支持部材40の下部は,基礎部材30の下部の突出部(図5参照)に接触して係止することも自明である。そうすると,「引き伸ばすための手段が『スライド手段をスライドさせて支持部材を基礎部材から取り外す際に露出する』ことについては,本件特許に係る願書に添付した明細書又は図面(すなわち,本件明細書)に記載されている事項から自明であると解される。
 ウ これに対し被告は,「支持部材が基礎部材に完全に取り付けられた状態では,支持部材40の下部がつかみ手段22なる引き伸ばすための手段に重なっている」ことは読み取ることができないなどと主張する。しかし,前記ア?@のとおり本件明細書には「そのようなしるしは,支持部材が基礎部材に取り付けられているときは見えないように隠れており,支持部材が取り外されたときは見えるような場所に置かれているのが特に好ましい。」と記載されていることに照らすならば,図6は,支持部材40が取り外された状態,又は,支持部材40のスライド部を基礎部材30のスライド部に取り付ける前の状態のいずれかを図示したものと理解できる。また,図5及び図6からは,支持部材の下部が,基礎部材の下部の突出部に接触して係止した際には,支持部材の下部は,引き延ばすための手段22を隠す寸法になっているかどうかは,必ずしも明確ではないが,本件明細書の上記記載を併せ考慮すると,支持部材の下部が,基礎部材の下部の突出部に接触して係止した際には,引き延ばすための手段22が支持部材の下部に隠れ,図6のように,支持部材が上方に移動すれば,引き延ばすための手段22が露出し,しるしも見えるようになると理解するのが合理的である。」

◆平成18(行ケ)10436 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年06月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10081 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年06月20日 知的財産高等裁判所

 事情は、以下の通りです。
  1)請求項1,2,4について第1次無効審判請求
  2)特許権者は請求項4のみ訂正請求
  3)訂正は認める、請求項4は無効理由無し、請求項1,2は無効とするとの第1次審決
  4)特許権者は、請求項1,2を無効とする部分のみ不服として、審決取消訴訟提起
  5)特許権者は、訂正審判を請求
  6)無効審判請求人は、請求項4についての判断は争わず、請求項4について別途、第2次無効審判を請求
 5)を理由に知財高裁が、決定による差し戻しをした場合(181条2項)に、5)の訂正審判はその内容でよければ訂正請求として無効審判における組み込まれます。この場合、134条の2第4項の規定により、後で訂正請求があった場合、先の訂正請求は取り下げ擬製されます。一方、第1次無効審判における請求項4に関する判断は不服申し立てがなされていないため、既に確定しているとも判断できます。
 この点について、裁判所は今回については請求項4に関する審決は確定していると判断しましたが、下記のように付言しました。
  「本件に関する判断は以上のとおりであるが,この機会に,特許法134条の2第4項の規定によるみなし取下げの効果は,請求項ごとに生じると解すべきことについて,当裁判所の見解を示しておく。(1) 特許法は,昭和62年法律第27号による改正により,いわゆる改善多項制を導入するとともに,2以上の請求項に係る特許については請求項ごとに無効審判請求をすることができることとしたが(特許法123条1項柱書),その後,平成5年法律第26号による改正により,無効審判の手続において訂正請求をすることができることとし,さらに,平成11年法律第41号による改正(以下「平成11年改正」という。)により,訂正請求の当否に関し,訂正後の請求項に係る発明(ただし,無効審判請求がされていない請求項に係る発明を除く。)について,いわゆる独立特許要件の判断を行わないこととした。なお,2以上の請求項に係る発明についての特許を無効にすることを求める特許無効審判において,特許権者による訂正請求を認めた上で,一部の請求項に係る発明についての特許を無効とし,残りの請求項に係る発明についての特許の無効請求を不成立とする審決は,平成11年改正において,上記のとおり,訂正請求の当否に関し独立特許要件の判断を行わないこととされたことに伴い,現れるに至ったものである(平成11年改正前の特許法の下では,このような場合,独立特許要件を欠くとして訂正請求が全体として認められず,訂正前の特許請求の範囲の記載に基づいて,各請求項の無効理由の存否が判断されていた。)。このように,2以上の請求項に係る無効審判請求においては,無効理由の存否は請求項ごとに独立して判断されるのであり,個々の請求項ごとの審判が同時に進行しているものとして考えるのが,無効審判制度の趣旨に沿うものである。そうすると,無効審判の審決において認められた訂正の効力についても,個々の請求項ごとに生ずると解するのが相当である。そして,特許法134条の2第4項のいわゆるみなし取下げの規定は,平成15年法律第47号による改正により導入されたものであるが,上記のような無効審判制度を前提としていることは明らかであるから,その効果も請求項ごとに生じると解するのが相当である。(2) なお,いわゆる改善多項制が導入され,請求項ごとに無効審判請求についての判断を行う制度が採用されたため,上記のとおり,2以上の請求項に係る発明についての特許に関して,一部の請求項につき無効審判請求の審決が確定し,あるいは特許請求の範囲等の記載が訂正されることが生ずるが,このような結果が,必ずしも特許登録原簿の記載に反映されていないようにも見受けられる。仮に,特許庁において,無効審決による特許無効ないし訂正の効力が請求項ごとに生ずるとの実務運用がされていないとするならば,それは法の趣旨に反するものといわざるを得ない。」 

◆平成19(行ケ)10081 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年06月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成15(ワ)16924 損害賠償等請求事件 特許権民事訴訟 平成19年02月27日 東京地方裁判所

  本件侵害訴訟では、訂正が認められることを前提にして、約3000万円の損害賠償が認められました。
   争点はいくつかありますが、興味深いのは、併存する無効審判との関係です。本件訴訟の対象である特許権は、無効審決がなされたので、特許権者は取消訴訟を提起するとともに、別途訂正審判を請求をしました。知財高裁は、差し戻し決定をしました。無効審判では、訂正を認めた上で、再度、無効審決がなされました。特許権者は、取消訴訟を提起し、現在、知財高裁に継続中です。
  「本件特許については,その無効審判事件において,本件訂正の請求がなされており,特許庁は,その審決において,本件訂正を認め,本件訂正特許1を無効と判断したものの,原告が同審決に対し審決取消訴訟を提起したために,未だ本件訂正が確定していない状況にある。特許法104条の3第1項における「当該特許が無効審判により無効とされるべきものと認められるとき」とは,当該特許について訂正審判請求あるいは訂正請求がなされたときは,将来その訂正が認められ,訂正の効力が確定したときにおいても,当該特許が無効審判により無効とされるべきものと認められるかどうかにより判断すべきである。したがって,原告は,訂正前の特許請求の範囲の請求項について容易想到性の無効理由がある場合においては,?@当該請求項について訂正審判請求ないし訂正請求をしたこと,?A当該訂正が特許法126条の訂正要件を充たすこと,?B当該訂正により,当該請求項について無効の抗弁で主張された無効理由が解消すること(特許法29条の新規性,容易想到性,同36条の明細書の記載要件等の無効理由が典型例として考えられる,)?C被告製品が訂正後の請求項の技術的範囲に属することを,主張立証すべきである。
 また、間接侵害についても、輸出向け専用品については間接侵害を構成しないと判断しました。
 「特許法101条は,特許権の効力の不当な拡張とならない範囲でその実効性を確保するという観点から,特許権侵害とする対象を,それが生産,譲渡される等の場合には当該特許発明の侵害行為(実施行為)を誘発する蓋然性が極めて高い物の生産,譲渡等に限定して拡張する趣旨の規定であると解される。そうすると,「その物の生産にのみ使用する物」(1号)という要件が予定する「生産」は,日本国内における生産を意味するものと解釈すべきである。外国におけるイ号物件の生産に使用される物を日本国内で生産する行為についてまで特許権の効力を拡張する場合には,日本の特許権者が,属地主義の原則から,本来当該特許権によっておよそ享受し得ないはずの,外国での実施による市場機会の獲得という利益まで享受し得ることになり,不当に当該特許権の効力を拡張することになるというべきである。」
 また、新規事項であるとの主張についても、これを否定しました。
 「本件訂正前明細書には,搬送部(15,16)を伸縮する際に共通駆動部(13)を回動させる構成及び当該共通駆動部の回動の際,他方の搬送部(16,15)が駆動制御手段における制御により見かけ上静止状態を保持し,共通駆動部(13)上に取り込まれた状態で共通駆動アームと同様に旋回する構\成が記載されていることが認められる。そうすると,本件訂正にかかる本件訂正特許発明1は,本件訂正前明細書に記載されていたといえるから,本件訂正は,願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内の訂正である。被告は,前記b)?@の記載を根拠に本件各特許発明の駆動制御手段は,前記b)?@に記載された構成に限定して解釈すべきであると主張し,かかる限定解釈を前提とすれば,本件訂正は本件各特許発明における駆動制御手段に含まれない構\成を含むことになるから特許法126条3項に違反する旨主張する。しかし,本件訂正前の本件各特許発明の特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載から被告が主張するような限定解釈をすべき理由はない。」

◆平成15(ワ)16924 損害賠償等請求事件 特許権民事訴訟 平成19年02月27日 東京地方裁判所

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◆平成18(行ケ)10070 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年01月25日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について実質上変更の判断です。裁判所は、実質上の変更に当たるとした審決を取り消しました。
  「被告は,当初明細書には,特許査定時の請求項3に係る発明の目的について,「所望の番組の放送チャンネルおよび放映開始時刻を確実に知ることができ,且つサーチした番組を自動的に受信すること」,「当該番組サーチ装置の操作者などが所望の番組を見逃す危険性を低くする」と示されているだけであり,このような極めて一般的な目的から,請求項1における,番組を表形式でその一部を出力するという具体的な目的,該番組表\を更新させるという具体的な目的及び「毎週キーという一種の専用キーで,一旦,ある番組をサーチすると,翌週以降に放映される同じ番組を簡単にサーチすることができる」という具体的な目的が直ちに導出されるということはできないから,訂正事項bは,特許査定時の請求項3に記載された発明の具体的な目的の範囲を逸脱すると主張する。しかしながら,発明の目的は特許請求の範囲の請求項において規定された構成によって達せられるものであり,新たに構\成が付加されたり構成が限定されれば,目的も,それに応じて,より具体的なものになることは当然であって,訂正後の発明の構\成により達せられる目的が訂正前の発明の構成により達せされる上位の目的から直ちに導かれるものでなければ,発明の目的の範囲を逸脱するというのであれば,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正は事実上不可能\になってしまうから,相当でない。そうであれば,訂正事項により付加,限定された構成により達成される内容が,訂正前の発明の目的に含まれるものであれば足りると解するのが相当であり,本件においては,上記(2)のとおり,訂正事項bの具体的内容は,いずれも,特許査定時の請求項3に係る発明の目的に含まれる。・・・ さらに,被告は,請求項1において新たに付加された「番組表出力手段」,「更新手段」という構\成要件については,その用語自体,当初明細書には何ら記載されていなかったものであって,訂正明細書の段落【0014】,【0015】において,上記ステップ110から120に至る処理を「番組表出力手段」,上記ステップ120から150に至る処理を「更新手段」として,それぞれ新たに定義し直し,明細書に初めて出現させたものであるところ,明細書に記載されているからといって,必ずしもその全てが訂正可能\であるとは限らないと主張する。しかしながら,特許請求の範囲を減縮する場合には,新たな構成要件を付加したり,構\成を新たに具体的に限定するのが通常であるから,新たな構成要素を付加したり,構\成要素を新たに具体的に限定することが,直ちに,実質上特許請求の範囲を変更することに当たるものでないことは明らかである。訂正事項bに係る「番組表出力手段」,「更新手段」の内容は,いずれも,当初明細書に記載されているものであって,訂正事項bの「番組表\出力手段」と「指定手段」は,特許査定時の請求項3における「記憶手段」と「指定手段」により実現される内容をより具体的に規定したものであり,「更新手段」と「サーチ手段」は,特許査定時の請求項3の「記憶手段に記憶されているテレビ放送の中から,上記指定手段により指定された内容と同一の番組を,異なる時間帯の番組よりサーチするサーチ手段」により実現される内容をより具体的に規定したものであるから,明細書に接した第三者であれば,訂正が可能であることを予\測することができるのであって,訂正事項bによる訂正が一般第三者の利益を損なうものとはいえない。」

  こちらは本件の分割出願、その分割出願に関する判断です。
◆平成18(行ケ)10071 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年01月25日 知的財産高等裁判所
◆平成18(行ケ)10072 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年01月25日 知的財産高等裁判所  

◆平成18(行ケ)10070 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年01月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10835 審決取消請求事件 平成18年08月31日 知的財産高等裁判所

  審決取消訴訟提起後、90日以内に訂正審判を請求しましたが、訂正後の内容を検討しても審決を取り消す必要はないと判断されました。
  「原告らは,本訴提起の日から90日以内である平成17年12月20日,本件特許の特許請求の範囲の記載における「アルカリ系現像原液」及び「現像原液」を「テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド現像原液」と,「現像液」を「テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド現像液」と,それぞれ訂正すること等を要旨とする訂正審判を請求し,平成18年1月17日,当裁判所に対し,事件を審判官に差し戻すため特許法181条2項の規定により審決を取り消すよう求めた。当裁判所は,被告の意見を聴いた上,上記訂正審判請求の内容を検討したが,テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液はホトレジスト現像液として多用されるものであり,現像液の希釈装置の発明である本件発明の構成を実質的に限定するものとは認められないから,前記説示したところに照らし,本件特許を無効とすることについて特許無効審判においてさらに審理させることが相当であるということはできない。」

◆平成17(行ケ)10835 審決取消請求事件 平成18年08月31日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10767 審決取消請求事件 平成18年08月31日 知的財産高等裁判所

  新規事項であることを前提とした拒絶査定が取り消されました。
   「本願当初明細書には,ニッケルの濃度の上限値が1×10 cm を超える場合にはその上限値の範囲内とするためニッケル除去工程が必要であることや,ニッケル除去工程を経ていない薄膜トランジスタの実施例の記載があることによれば,「前記結晶性半導体膜中のニッケル濃度の上限値は,前記ニッケルを除去することにより前記濃度1×10 cm を上回らな」いことを補正事項とする本件第2補正は本願当初明細書に記載した事項の範囲内のものであり,また,本件第2補正は,審決も認定するとおり,明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから(審決書3頁7行〜12行),本件第2補正は適法である。したがって,本件第2補正が新規事項の追加に該当し,不適法であるとした審決の判断は誤りである。」

◆平成17(行ケ)10767 審決取消請求事件 平成18年08月31日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10035 審決取消請求事件 平成18年07月19日 知的財産高等裁判所

  「明細書全体の記載をみても,訂正後の発明である「織物上の油剤量を織物重量に対し0.06重量%以上5重量%以下」の範囲が結局は不明であり,特許法36条5項及び6項に規定する要件を満たしていないから,独立特許要件を欠くとして、訂正は認められない」とした審決が維持されました。
  36条違反で訂正が認められないとの判断は珍しいと思います。

◆平成18(行ケ)10035 審決取消請求事件 平成18年07月19日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10803 審決取消請求事件 平成18年07月20日 知的財産高等裁判所

 無効とすべきとの審決に対して訂正審判が請求されましたが、裁判所は差し戻しの必要無しとして請求棄却の判決をしました。
  「本訴提起の日から起算して90日以内である平成18年2月13日,本件特許の請求項1を削除し,請求項2を減縮して新たな請求項1とすること等を要旨とする訂正審判を請求し,当裁判所に対し,事件を審判官に差し戻すため,特許法181条2項の規定により,審決を取り消すよう求めた。しかしながら,上記訂正審判請求の主たる内容は,要するに,本件発明2において,下階に配置された複数の室の床高が同一であることを、新たに規定する趣旨と解されるところ,建物においてごく一般的な上記構成を付加したことによって,蔵型収納空間の構\成や作用効果に差異が生じるものではないことは明らかであり,また,引用発明においてそのように構成することに格別の困難も認められないから,前記説示したところに照らせば,本件特許を無効とすることについて特許無効審判においてさらに審理させることが相当であるとは認められない。」

◆平成17(行ケ)10803 審決取消請求事件 平成18年07月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10520 審決取消請求事件 平成18年07月03日 知的財産高等裁判所

    訂正を認めた上、無効とすることはできないとした審決が維持されました。裁判所は訂正に関して以下のように述べました。
 「訂正前明細書には,当該「支持部」が円形孔からなるものであることを明記する記載はない。しかしながら,訂正前発明の実施例の図面である訂正前明細書添付の図1(甲2)には,固定棚3の外管2aが挿通される部分の下側にも壁面が存在することが見てとれる。上記図1は「固定棚の先端部に円形の孔が設けられ」ていることを明確に示すものではないとの原告の主張は採用できない。そして,「固定棚の先端の支持部」が「円形孔」からなるのであれば「該固定棚は棚受用横桟から分離することはできず,着脱自在ではない」ことになることは,明らかであるから,「該固定棚は棚受用横桟から分離することはできず,着脱自在ではない」ことは,すでに,訂正前明細書及び上記図1に開示されていたということができる。したがって,本件訂正のうち特許請求の範囲請求項1につき「固定棚の先端の円形孔からなる支持部」とする訂正は,「該固定棚は棚受用横桟から分離することはできず,着脱自在ではない。」という発明的特徴を有することを含めて,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるということができる」

◆平成17(行ケ)10520 審決取消請求事件 平成18年07月03日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10608 特許取消決定取消請求事件 平成18年06月20日 知的財産高等裁判所

 本件特許明細書に記載されていない事項に訂正するものであるので訂正要件を満たしていないとした審決が、維持されました。
 「要するに,本件特許明細書において,これに接した当業者が,「アルミニウム」として,いいかえると「不可避的不純物として含まれる量のアルミニウムを含まない」ものとして,個別具体的に明示されているに等しいと認識し得るようなものではなく,存在する一群の不可避的不純物の中に含まれているかもしれないし,含まれていないかもしれないというにとどまるものである。したがって,本件特許明細書には,鉄系材料におけるアルミニウムの含有量が「不可避的不純物として含まれる量を超える量」であるかについての記載は,一切存在しないというほかない。 以上によれば,鉄系材料におけるアルミニウムの含有について,本件訂正事項のように限定することは,本件特許明細書に記載していない事項であるし,本件特許明細書の記載に接した当業者であれば,本件出願時の技術常識に照らして,そのような限定が記載されているのと同然であると理解する自明な事項であるともいえない。」

◆平成17(行ケ)10608 特許取消決定取消請求事件 平成18年06月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成17年(行ケ)第10771号 審決取消請求事件 平成18年04月17日 知的財産高等裁判所

 訂正審判請求中に、無効審決が確定したことにより、無効審判が対象物のない不適法な請求になったとして棄却審決がなされたことを不服として、取消を求めましたが、裁判所はこれを認めませんでした。
 

◆平成17年(行ケ)第10771号 審決取消請求事件 平成18年04月17日 知的財産高等裁判所

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◆H18. 1.30 知財高裁 平成17(行ケ)10842等 特許権 行政訴訟事件

  一部無効審決(クレーム1−7は無効、クレーム8は審判請求は成り立たない)について、双方が不服として取消訴訟を行い、併合されましたが、再度訂正審判がなされたので、特許庁に差し戻しました。裁判所は、本件の判断には影響がないとしつつも、訂正審判の扱いについて、問題点として指摘されました。
  「改善多項制が導入されたり,請求項ごとに無効判断がされる制度に変わった後も,訂正の扱い,複数の請求項に係る無効審判の審決の一部について取消訴訟が提起された場合の審決の確定に関する扱い,複数当事者が関与する審決について一部の者が取消訴訟を提起した場合の審決の確定に関する扱いなど,不可分一体的な扱いが根強く,法134条の2第4項の立法過程にも影響した可能性がある。一方,審決取消訴訟は,訴訟手続法によって規律されており,審決の一部を取り消すという裁判所の措置は,当然に許容されることのように思われるが,訂正等に関する特許庁の不可分一体的な扱いとは整合しないおそれがある。今後,法181条2項との関係でも,特許庁における行政手続と裁判所における訴訟手続の整合性が問われることになるものと思われる。」

◆H18. 1.30 知財高裁 平成17(行ケ)10842等 特許権 行政訴訟事件

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◆H17.12.19 知財高裁 平成17(行ケ)10050 特許権 行政訴訟事件

    図面に基づき、CDディスクの厚さとDVDディスクの厚さの割合を「約3対2」と限定した補正が新規事項か否か争われました。裁判所は、新規事項であるとした審決を維持しました。
    「本件明細書(甲2)には,図4の複合ディスクの各層が,正確な縮尺率で,すなわち,複合ディスクを各層の実際の寸法に一定の縮尺率を乗じて得られる数値を用いて作図されていることをうかがわせる記載は存在しない。むしろ,本件明細書には,図1に関し,上記イ(エ)のとおりの記載があるところ,図4の層3及び層9は,図1の該当する層3及び層9とほぼ同一の寸法で図示されていることから,上記イ(エ)の「図面は正確な縮尺率では示されておらず,全高のディスクを概略的に示すためのものである。」との記載は,少なくとも図4及び図1が正確な縮尺率で表記されていないことを明示するものと解される。」

◆H17.12.19 知財高裁 平成17(行ケ)10050 特許権 行政訴訟事件

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◆H17.12. 8 知財高裁 平成17(行ケ)10393 特許権 行政訴訟事件

  CS関連発明について、新規事項か否かが争われました。裁判所は新規事項であるとした審決を取り消しました。
   「当初明細書等には,プログラムの機能として,購入者による購入数量等の入力を受けた演算と,その演算結果(購入金額)の画面への出力が記載されているにすぎない。しかし,本願発明は,商品を桝目で選択するプログラムを用いたものであり,単に,購入者による購入数量等の入力を受けた演算とその結果の出力を行うにとどまるものではない。すなわち,当初明細書等の記載によれば,従来は商品に共通事項があっても,商品の規格やサイズ等が異なれば,販売者において個別に入力し,購入者において個別に閲覧する必要があったところを,商品を桝目で選択するプログラムを用いることによって,販売者の入力を省力し,購入者の閲覧を容易にしたところに本願発明の本旨があるとされているのであるから,このプログラムが共通事項をまとめて表\示する機能を有することは,本願発明において当然の前提とされているものである。このことは,当初明細書等の図面2において,・・・項目が示され,これらを含む全体が「商品を桝目で選択するプログラム」として示されていることからも,裏付けられるものである。以上から,発明特定事項A「プログラムが共通事項をまとめて表\示する。」は,当初明細書等の記載から自明であると認められる。」
 「本願発明は,商品を桝目で選択するプログラムを用いたものであって,同プログラムによって,購入者は,桝目の商品を選択することができるのであるから,単なる販売者の設定行為があるだけでは足りず,プログラムによって各商品が桝目ごとに特定されていることが,本願発明においては当然の前提とされているものである。また,当初明細書等の図面2において,購入者に閲覧させる表示情報として商品一覧表\が示され,同表は「商品を桝目で選択するプログラム」の一部とされていること,図面3において,販売者の入力行為を受けた「商品」という項目が「商品を桝目で選択するプログラム」の一部として示されていることに照らせば,商品一覧表\の表示,ひいては同表\の桝目により特定された商品の表示が,プログラムによるものであることが,これらの図面に示されているものといえる。以上によれば,発明特定事項B「プログラムが桝目の縦軸,横軸の条件に合った商品を商品一覧表\に表示し特定する。」は,当初明細書等の記載から自明であると認められる。」

◆H17.12. 8 知財高裁 平成17(行ケ)10393 特許権 行政訴訟事件

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◆H17.10.13 知財高裁 平成17(行ケ)10348 特許権 行政訴訟事件

 CS関連発明について、詳細な説明に記載されたものではないとして訂正を認めなかった審決が、取り消されました。
 裁判所は、「以上の記載によれば,入力された文字情報を検索キーとして検索をするのは,文字情報記憶部42に登録されている文字情報群であり,管理テーブルは,検索キーが登録されている(登録済みキーと一致する)ときに,これに対応する図形情報を図形情報記憶部41から読み込む際に参照されるものであるということができる。エ そうであれば,請求項1の「(b)・・・記憶する管理テーブルに登録する」,「(c)入力された文字情報を検索キーとして前記管理テーブルに登録された文字情報群」との記載は,それぞれ「(b)・・・文字情報記憶部に登録する」,「(c)入力された文字情報を検索キーとして前記文字情報記憶部に登録された文字情報群」の誤記であると認められる・・・。したがって,訂正事項1は,誤記の訂正を目的とするものであるということができる。」と述べました

◆H17.10.13 知財高裁 平成17(行ケ)10348 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 9.13 知財高裁 平成17(行ケ)10317 特許権 行政訴訟事件

  要旨変更であるのかが争われました。審決では、「突出量α1,α2の合計が対向間隙Yの数値に等しく(α1+α2=Y)なる旨の記載事項は,両突出量α1,α2の合計が対向間隙Yの数値に厳密に等しくなることを意味するものではなく,ほぼ等しいことを意味するものと解すべきものであり,…当初明細書等には,両突出量α1,α2の合計が対向間隙Yの数値より少ない(α1+α2<Y)ことが記載されている」と判断しましたが、裁判所は審決を取り消しました。

◆H17. 9.13 知財高裁 平成17(行ケ)10317 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 4. 8 東京地裁 平成15(ワ)3552 特許権 民事訴訟事件

  技術的範囲に属するかに加えて、要旨変更による出願日繰り下げが争点となりました。
  要旨変更については、以下のように判断しました。「本件特許の願書に最初に添附した明細書(当初明細書)には,次のとおりの記載がある・・・当初明細書の記載及び当初明細書の第4図からすると,突片7A3,7A4ないし連結片75が,保持容器外周面位置決め用片ないし保持容器頂面位置決め用片に相当する。したがって,「アース用外部端子」との文言こそ記載されていないものの,前記イの記載の意味するところは,本件発明の構成要件Eの「前記外周面位置決め用片ないし保持容器頂面位置決め用片を水晶振動子本体アース用外部端子とした」と同一であるということができる。 したがって,平成6年6月8日に提出された手続補正書による「前記外周面位置決め用片ないし保持容器頂面位置決め用片を水晶振動子本体アース用外部端子とした」とする補正は,当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内であると認められるから,明細書の要旨を変更しないものとみなされる(平成6年法律第116号による改正前の特許法41条)。\n 被告らは,更に具体的記載が必要であると主張するが,補正した特許請求の範囲が,当初明細書に記載した事項の範囲内である以上,同法41条は,それ以上に詳しい記載が当初明細書にあることまで必要としているとは解されない。」

◆H17. 4. 8 東京地裁 平成15(ワ)3552 特許権 民事訴訟事件

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◆H17. 5.26 知財高裁 平成17(行ケ)10310 特許権 行政訴訟事件

  平成3年出願の分割出願の補正が要旨変更であるとして、出願日繰り下げの適用につき、要旨変更であるとした特許庁の判断を取り消しました。
 裁判所は、下記のように述べました。
 「決定は,「例えば,「最初の可変表示部が停止した後に,最初の可変表\示部を含めてすべての可変表示部が可変表\示させられる」というような当初明細書に記載のない事項を明らかに含むと認められる手続補正は,明細書の要旨を変更するものである。」と認定判断したが,前記判示のように,【0018】第3文の「最初の回転ドラムを停止させる前に,」とは,「すべての回転ドラムが,大当たり図柄が揃った状態となるように回転」するその時期を限定するための記載ではなく,特別リーチが最初の回転ドラムを停止させることを条件としていることとの対比において,特別リーチとは異なる回転態様を簡潔に表現するための記載であると認められ,すべての回転ドラムが大当たり図柄が揃った状態となるように回転することは当初請求項に含まれている。したがって,「最初の回転ドラムを停止させる前に,」という文言が請求項に反映されなかったことをもって,形式的に,「最初の可変表\示部が停止した後に,」という態様を含むことになるとして明細書の要旨を変更するとした決定の認定判断は,誤りである。」

◆H17. 5.26 知財高裁 平成17(行ケ)10310 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 4.25 知財高裁 平成17(行ケ)10192 特許権 行政訴訟事件

 17条の2第4項における「特許請求の範囲の減縮」で、請求項数が増加が認められるか争われました。
 裁判所は、請求項数が増加することは、審査負担という観点から認められないと判断しました。
 「2号の規定は,補正が認められる特許請求の範囲の減縮といえるためには,補正後の請求項が補正前の請求項に記載された発明を限定する関係にあること,及び,補正前の請求項と補正後の請求項との間において,発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることを必要とするとしたものであり,ここで,上記の「限定する」ものであるかどうか,「同一である」かどうかは,いずれも特許請求の範囲に記載された当該請求項について,その補正の前後を比較して判断すべきものであり,補正前の請求項と補正後の請求項とが対応したものとなっていることを当然の前提としているものと解するのが相当である。また,一般に,特許請求の範囲の補正の態様としては,その量的な面(請求項の数)と内容的な面(技術的内容)とが考えられるが,1号は,そのうち量的な面(請求項の数)に着目して「請求項の削除」の場合のみを規定したものであり,2号の特許請求の範囲の減縮は,特許請求の範囲の内容的な面に着目して,その拡張等以外の「減縮」について定めたものということができる。このような1号と2号の関係や,2号かっこ書きにおいて,その補正前の「当該請求項」に記載された発明とその補正後の「当該請求項」に記載される発明とが対応する関係に立つことが前提とされていることからすると,2号の規定は,請求項の発明特定事項を限定して,これを減縮補正することによって,当該請求項がそのままその補正後の請求項として維持されるという態様による補正を定めたものとみるのが相当であって,当該一つの請求項を削除して新たな請求項をたてるとか,当該一つの請求項に係る発明を複数の請求項に分割して新たな請求項を追加するというような態様による補正を予定しているものではないというべきである。」

 同様の判断がなされた判決として H16. 4.14 東京高裁 平成15(行ケ)230 特許権 行政訴訟事件 があります。

◆H17. 4.25 知財高裁 平成17(行ケ)10192 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 4. 8 東京地裁 平成15(ワ)3552 特許権 民事訴訟事件

  侵害訴訟にて、要旨変更か否か、実施料率、無効理由などいくつかの争点が争われました。
 要旨変更について、裁判所は「前記イのとおりの当初明細書の記載及び当初明細書の第4図からすると,突片7A3,7A4ないし連結片75が,保持容器外周面位置決め用片ないし保持容器頂面位置決め用片に相当する。したがって,「アース用外部端子」との文言こそ記載されていないものの,前記イの記載の意味するところは,本件発明の構成要件Eの「前記外周面位置決め用片ないし保持容器頂面位置決め用片を水晶振動子本体アース用外部端子とした」と同一であるということができる。したがって,・・・とする補正は,当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内であると認められるから,明細書の要旨を変更しないものとみなされる(平成6年法律第116号による改正前の特許法41条)。」と認定しました。

◆H17. 4. 8 東京地裁 平成15(ワ)3552 特許権 民事訴訟事件

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◆H16.12.21 大阪地裁 平成16(ワ)3640 特許権 民事訴訟事件

  1つの争点は、補正による限定が審査基準に合致させるためにしたもので、意識的に限定したものではないかでした。
 裁判所は、以下のように判断しました。  「原告は、・・・改訂前審査基準の下で新規事項の追加とされるのを免れるためには、出願当初明細書に実施例として具体的に記載された、各回路素子の極性をも含めた具体的な接続の仕方、電流の流れ方を記載するしかなかった旨主張する。 イ しかし、出願当初明細書の発明の詳細な説明の段落【0004】には、「すなわち本発明の考え方は、高周波トランスの三次巻線と定電流検出抵抗と直列ドロッパー制御用素子と逆流防止用ダイオードと二次電池とを直列に接続して充電回路を構成し、この充電回路の電流路の外側に、二次電池と三次巻線と三次側スイッチング素子とを直列に配列して放電回路を設け、放電時には、前記定電流検出抵抗と直列ドロッパー制御用素子と逆流防止用ダイオードには電流が流れないようにする、というものである。」と記載され、段落【0009】には、放電時の作用として、「この時は、逆流防止ダイオード18のカソ\ード側が、逆流防止ダイオード9および三次側スイッチング素子11の順電圧降下によって二次電池14の負極に対して逆極性になるため、充電回路3cは自動的に停止し、充電は行われないことになる。」と記載されている。また、特許出願の願書に添付された図面の図2には、前記段落【0004】の記載に対応する回路図が示されている。したがって、放電時に充電回路の充電電流路に電流が流れることを阻止するための逆流防止ダイオードを設けることは、出願当初明細書の発明の詳細な説明に記載されていたと認められる。 そうであるとすれば、改訂前審査基準の下において新規事項の追加とされるのを免れることを前提としても、特許請求の範囲に「放電時には、定電流検出抵抗と直列ドロッパー制御用素子と逆流防止用ダイオードには電流が流れないようにするものである」という作用効果に対応する構成を付け加えようとするならば、出願当初明細書の特許請求の範囲の「逆流防止ダイオード」という構\成要件を、例えば、「放電時に充電回路の充電電流路に電流が流れることを阻止するための逆流防止ダイオード」と補正すれば足りたものと認められ、補正後の特許請求の範囲のように各回路素子の具体的な接続の仕方や具体的な電流の流れ方まで記載しなければならなかったとは認められない。」

◆H16.12.21 大阪地裁 平成16(ワ)3640 特許権 民事訴訟事件

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◆H16.10.29 東京地裁 平成15(ワ)2101 特許権 民事訴訟事件

 変更要件を満たしていないとして出願日が現実の出願日となると判断されました。
  「原出願明細書には,以下のとおり,保護層が「熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等」で一括して被覆されている場合に,テープ状光ファイバユニットの相互を,その側端部間に樹脂を介在させることなく,直接接触させた態様で連結させるという構成が開示されているとは到底いえない。すなわち,樹脂製の保護層により,テープ状光ファイバユニット相互の側端部を互いに接触させた状態で直接連結させたものにおいて,当該保護層をちぎれ易くしたとの構\成は,原出願明細書又は図面に記載されていない。また,樹脂製の保護層を「容易にちぎれる程度にテープ状光ファイバユニットより厚さを薄くして」との構成が,原出願明細書及び図面の記載から自明の事項であるともいえない。・・・変更出願明細書には,保護層が「熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等で一括して被覆されている場合に,テープ状光ファイバユニット相互の側端部を,直接接触させる」構\成を含むことは明白である。そうすると,出願変更については,出願内容の同一性がなく,不適法であると解され,・・」

◆H16.10.29 東京地裁 平成15(ワ)2101 特許権 民事訴訟事件

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◆H16.10.28 東京高裁 平成15(行ケ)404 特許権 行政訴訟事件

 補正は要旨変更であるので出願日を繰り下げ、無効でないとした審決を取り消しました。
 「たしかに、当初明細書に”縦方向、横方向、斜め方向のランクフォード値の差を±0.15以下に設定”すること及び”ランクフォード値の平均が1.2以上”と記載されていることは、前示のとおりである。しかしながら、当初明細書においては、前示のとおり、イヤリングの発生を防止するために、上記の各条件を共に充足する必要があることが開示されているのであり、補正発明2、4及び6(3)のように、いずれか一方の条件を充足するのみで上記目的を達成することができることを開示するものではないから、被告の上記主張は、採用することができない」

◆H16.10.28 東京高裁 平成15(行ケ)404 特許権 行政訴訟事件

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◆H11. 6.3 東京高裁 平成8年 (行ケ)222 特許権 行政訴訟事件

 最近の判決ではありませんが、訂正請求書の要旨を変更するか否かが争われ、この判決以降、特許庁の運用が変更になりました。訂正の補正に関する運用変更のお知らせ(特許庁HP) 判決の射程範囲がどこまでなのかについても議論の余地はあるかと思いますが、取消訴訟提起後90日に訂正審判の請求が制限された現行法の下では、権利者は訂正するにあたっては細心の注意が必要になるかもしれません。

◆H11. 6.3 東京高裁 平成8年 (行ケ)222 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 6.28 東京高裁 平成16(行ケ)4 特許権 行政訴訟事件

補正が新規事項として拒絶査定がなされました。審判も同様の判断をしましたが、裁判所は下記のように述べて、これを取り消しました。
「立上がり壁部の開口部を塞ぐ防護用のパイプを設置するに当たり,壁部の側面を締め付けるために,横部材の上部にサポート部材を上方から係止する構成が,技術的視点から見て必然的に伴うものと認めることはできないから,「出願当初の明細書の記載によれば,「横部材」は,その上面にサポート部材を係合させるための「係止部」を形成したものについてしか記載されておらず,そのような「係止部」を有しない「横部材」については何らの記載も示唆もない。」とした審決の認定は誤りである。」

 

◆H16. 6.28 東京高裁 平成16(行ケ)4 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 6.16 東京高裁 平成14(行ケ)217 特許権 行政訴訟事件

 訂正要件である「明細書に記載された事項の範囲内および独立特許要件」を満たしているかが争われましたが、裁判所は、「新規事項であり、独立特許要件を満たしていない」とした審決を維持しました。
 「本件明細書における上記重心に関する記載は,「重心をはさむ」として,あえて「重心そのもの」にジブホルダを設置することを明確に否定しているのであるから,「重心」と「ジブホルダ」との位置関係に技術的意味があるものとして記載されていると解することは到底できない。よって,実質的内容を検討しても,本件明細書には,ジブホルダを「ジブの重心近傍を保持する」ものとすることが記載されているものとはいえない。」と述べました。

 

◆H16. 6.16 東京高裁 平成14(行ケ)217 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 5.26 東京高裁 平成14(行ケ)124 特許権 行政訴訟事件

 補正却下不服審判にて、「具体的条件を成立条件としていたのを、「所定の条件が成立したとき」と一般化することは要旨変更に該当すると判断され、裁判所もこれを認めました。
  裁判所は、「本件補正に係る特許請求の範囲の補正のうち,単に,確率が変更されたことを検出する条件について,「所定の条件が成立したとき」と補正した点については,当初明細書に記載される条件でないものを含み得るものとなったことは,その文意からして明らかである。「所定の条件が成立したとき」が,当初明細書に明示された条件に比較して広い概念であること自体は,原告自身の自認するところでもある。したがって,本件補正によって,当初明細書に記載のない事項が加わったから,本件補正は,当初明細書の要旨を変更するものであるとした審決の認定判断に誤りはない。」と判断しました。

 

◆H16. 5.26 東京高裁 平成14(行ケ)124 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 5.19 東京高裁 平成15(行ケ)388 実用新案権 行政訴訟事件

 1つの争点として、「棒状の案内レール」が,公告明細書に記載されていたかが争われました。
裁判所は、「公告明細書の実用新案登録請求の範囲1項には,案内レールの形状について特に規定されておらず,上記の考案の詳細な説明の記載及び図面の図示によれば,案内レールは,その形状が断面形状台形状に限定されないことも示唆されている。一般に,「棒状」の語は「棒のような形」を,「棒」の語は「手に持てるほどの細長い木・竹・金属などの称」(広辞苑第五版)を指すから,公告明細書の記載及び図面に接する当業者は,本件考案に係る上記の比較的細長い案内レールは「棒状」のものを意味し,そのことが公告明細書等に記載されているのと同然であると理解するものと認めるのが相当である。したがって,上記訂正事項(あ)における「棒状の案内レール」とする訂正は,公告明細書に記載された事項の範囲内のものであるというべきである」と述べました。

 

◆H16. 5.19 東京高裁 平成15(行ケ)388 実用新案権 行政訴訟事件

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◆H16. 5.14 東京地裁 平成13(ワ)12933 特許権 民事訴訟事件

 出願公告後にした構成要件を追加する補正が、特許請求の範囲を実質上変更するものであり本件特許には無効理由ありとして、損害賠償請求を棄却しました。
「平成6年改正前特許法64条,126条2項が公告決定後の補正につき上記のように補正の要件を規定している趣旨は,特許出願人と第三者との間の利害の調整にあるところ,特許請求の範囲に新たな構成を付加することで表\面的には特許請求の範囲の減縮に当たっても,実質的にはこれによって全く別個の発明になるような場合にまで補正を許容すると,補正後の別個の発明の技術的範囲について補正前の特許発明の出願日に遡って出願公告に伴う仮保護の権利を与えることとなり,特許公報の記載を信頼して行動する第三者に対して不測の不利益を与えることとなるからである。そして,この場合において,補正前の特許請求の範囲に係る発明に新たに付加された構成が,同発明の特許出願当時,当業者にとって周知の技術手段(周知技術)に該当しない場合には,補正前の特許発明と補正後の特許請求の範囲の記載に係る発明は,特段の事情のない限り,別個の発明というべきである。けだし,周知の技術手段を付加するものである限りは,発明はその同一性を失うことがなく,特許請求の範囲も実質上変更されることはないが,周知でない新規な技術手段を付加するときは,特段の事情のない限り,構\成を異にすることになり,別個の発明となってしまうからである。」 と述べました。
実質上の変更に該当するかについては、類型化できるほどの判断例が多くないので、具体的事案について検討してみたいですね。

 

◆H16. 5.14 東京地裁 平成13(ワ)12933 特許権 民事訴訟事件

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◆H16. 5.19 東京高裁 平成14(行ケ)358 特許権 行政訴訟事件

 異議申立では、いわゆる新規事項として訂正が認められませんでしたが、裁判所はこれを取り消しました。
「これら記載を総合考慮すれば,本件明細書に接した当業者は,本件特許出願時の技術常識に照らし,内壁と外壁との空間部に通常の雰囲気空気が存在した状態で充填口をシールしても,一定の吸湿防止及び酸化防止という本件発明1〜3の効果を奏することが可能であり,本件明細書には,「空気」のみを封入することが記載されているのと同然であると理解するものと認めるのが相当である。」

 

◆H16. 5.19 東京高裁 平成14(行ケ)358 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 4.14 東京高裁 平成15(行ケ)230 特許権 行政訴訟事件

 1つの争点は、「いわゆる限定的減縮について、請求項の増加ができるか」でした。
原告(出願人)は「4項には,請求項を増加させてはならないと明記されていないから,請求項の増加が禁止されるわけではなく,請求項の数が増加しても,補正後の特許請求の範囲により特定される発明が全体として補正前の特許請求の範囲により特定される発明に対して減縮されていれば,当該補正は,4項2号に該当するものとして,許されるべきである」と主張しました。
これに対して、裁判所は、「4項2号は,・・・補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって,かつ,補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請されるものというべきであって,補正前の請求項と補正後の請求項とは,一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。そうであってみれば,増項補正は,補正後の各請求項の記載により特定される各発明が,全体として,補正前の請求項の記載により特定される発明よりも限定されたものとなっているとしても,上述したような一対一又はこれに準ずるような対応関係がない限り,同号にいう「特許請求の範囲の減縮」には該当しないというべきである。」とこれを否定しました。
 

◆H16. 4.14 東京高裁 平成15(行ケ)230 特許権 行政訴訟事件

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 >> 限定的減縮

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◆H16. 4. 8 東京高裁 平成13(行ケ)335 特許権 行政訴訟事件

裁判所は、「本件訂正請求は,訂正に係る内容が,本件明細書に記載されておらず,また,本件出願時の技術常識であるとも認められないので,新規事項の追加に該当し,認められない・・」と判断した審決を取り消しました。
ただ、その中で、「もっとも,仮に,本件訂正請求が認められるべきであるとしても(明細書に記載されていない事項を訂正により取り込むことは,たといそれが技術常識であったとしても,当然のこととして許される,というわけではない。),「前記測光手段によって発生される測光領域輝度出力との差に応じて,露出値の算出方法を異ならせる」ことが,当業者の技術常識といえることを根拠としているものであるから,この本件訂正請求に係る訂正は,それ自体により,本件発明1に新規性,進歩性を与えることになるものではない。その意味で,決定の上記誤りは,その結論に影響しない,というべきである。」とも述べ、他の取消理由で取り消しています。
 

◆H16. 4. 8 東京高裁 平成13(行ケ)335 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 3.30 東京高裁 平成14(行ケ)453 特許権 行政訴訟事件

 訂正で追加した事項が新規事項に該当するかが争われました。裁判所は「新規事項である」とした審決を維持しました。

◆H16. 3.30 東京高裁 平成14(行ケ)453 特許権 行政訴訟事件

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◆H15.11.13 東京高裁 平成14(行ケ)194 特許権 行政訴訟事件

出願中にした補正が新規事項であるとして無効審決がなされました。裁判所は審決を維持しました。
 「原告は,・・・段落【0011】のみならず,図3及び図4を考慮して検討すれば,出願当初から,「2枚の網目部材」が示されていることは明白であって,特に図示上,網目部材であることが明瞭であることから,「2枚の網目部材」という構成要素が十\分に,運用指針にいう「直接的かつ一義的に導き出せるもの」であることが明らかであると主張する。・・・しかしながら、・・・このように,出願明細書等においては,「極薄の透光フィルムが小孔径エキスパンドメタルと大孔径エキスパンドメタルの間に挟持された構造」であることが極めて明示的に記載されているのであり,上記以外の構\造をも包含しているものと解する余地のないことが一層明らかである。・・・審決は,出願明細書等には,網目部材として,目(孔)の大きさが同じ構造のものについては,何ら記載されていないし,かつ,出願明細書等を総合して検討したとしても,「網目部材として,目(孔)の大きさが同じ構\造のものをも含む」という事項が直接的かつ一義的に導き出せないとした。  ・・・上記の記載は,・・・という本件発明における組立構造体の基本的な構\造に関する説明又は発明の効果に関するものであって,透光吸音パネル部材の具体的な構成,特に,透光フィルムの支持方法については何ら触れられていない。したがって,上記の記載をもって,「網目の大小」に関する開示がされているということはできないのであって,「網目に大小のあることに限る旨の記載はない」との原告の主張は,採用することができない。」
 特に、以下の判決理由が気になります。
「仮に,使用する素材としては,エキスパンドメタルに限定すべき技術的必然性はないというのであれば,出願明細書等を記載するに際し,そのような工夫をすべきことであった。いずれにしても,本件補正前の特許請求の範囲の記載が前記のとおりであること,本件出願明細書等の発明の詳細な説明の記載や図面の記載をみると,上記のとおり極めて明示的に記載されていることや,極薄透光フィルムなどの部材については限定されないことの記載があるのに,エキスパンドメタルについてはそのような記載はもとより示唆もないことなどからすれば,前記のとおり解釈するほかない。・・・また,原告は,特許第2823182号に関する審決や東京高裁平成10年(行ケ)第298号事件の平成14年2月19日判決を引用して主張するが,いずれも,出願明細書等の記載が極めて明示的であってこれを他の素材等に拡大解釈する余地のない本件とは事案を異にするものであって,原告の主張は,採用の限りでない。」

      

◆H15.11.13 東京高裁 平成14(行ケ)194 特許権 行政訴訟事件

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 >> 新規事項
 >> 直接的かつ一義的

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◆H15.10.16 東京地裁 平成14(ワ)15810 特許権 民事訴訟事件

技術的範囲に属しないと判断した上、さらに、補正が要旨変更として、出願日が繰り下げられる結果、進歩性欠如されるものであり、また、特許出願前に頒布された刊行物から進歩性がないので、明かな無効理由があり、権利濫用であると判断されました。
裁判所は以下のように述べました。「原告は,上記構成要件Dは,出願当初明細書に記載された発明の詳細な説明及び図面の記載から当業者が明らかに理解できると主張するが,大きな空間があれば毛細管現象を防止できることは当業者にとって自明な事項であるといえても,大きな毛細管現象防止用の空間が,本来の軒側成形部が有する空間の略1/3以上の容積を占めることは明らかとはいえないし,特許図面は,設計図面や製造図面とは異なり,発明の理解を助ける概念図に過ぎないのであるから,本件明細書の図面の各部材の寸法等から空間の容積比率を割り出すこともできないのであって,構\成要件Dが出願当初明細書の説明及び図面から明らかであるということはできない。・・・本件発明は,本件リーフレットに記載された発明及び上記実公昭52−10190号公報に記載された発明に基づき,本件特許に関する当初出願時において当業者が容易に発明をすることができたものであるものと認められる。」

      

◆H15.10.16 東京地裁 平成14(ワ)15810 特許権 民事訴訟事件

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 >> 要旨変更
 >> 技術的範囲

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◆H15. 7. 1 東京高裁 平成14(行ケ)3 特許権 行政訴訟事件

補正事項が要旨変更であるとして補正却下され、補正却下不服審判でも同様に判断され、出訴しましたが、裁判所も要旨変更と認定した事例です。
裁判所はこの事案で、「当初明細書に記載されている」とは、「現実には記載がなくとも,現実に記載されたものに接した当業者であれば,だれもが,その事項がそこに記載されているのと同然であると理解するような事項であるといえなければならず,その事項について説明を受ければ簡単に分かる,という程度のものでは,自明ということはできない」と述べています。
この事件は、当初は見過ごしていました。しかし、特許庁の補正に関する審査基準案に対して出されたパブリックコメントに対する事例として説明されているので、取り上げてみました。特許庁は、条文上は「当初明細書に記載された範囲内」というように文言が同じにもかかわらず、平成6年前後で補正の内容的制限が変わったというスタンスをとっています。ですから、本来的には、この判決をあげるのはおかしいわけです。それとも、今回の基準改定で変わったんでしょうか?
裁判所は、「当初明細書に記載された「各家庭内等」とは,前記認定の(1)エ(発明が解決しようとする課題)及びケ(発明の効果)の記載に照らすならば,「屋外」を包含しないと解するのが相当である。上記補正後発明の請求項1に記載された技術的事項(d)のうち,実行したデータ情報を「屋外」に伝送する点については,当初明細書に記載されているということはできない。」、「 (5) 原告は,本件補正書において補正した事項は,当初明細書の請求項1,2中の「等」及び「など」の語によって,すべて記載されていると解すべきである,と主張する。しかしながら,・・・・そこで現実に記載されたものから自明な事項であるというためには,現実には記載がなくとも,現実に記載されたものに接した当業者であれば,だれもが,その事項がそこに記載されているのと同然であると理解するような事項であるといえなければならず,その事項について説明を受ければ簡単に分かる,という程度のものでは,自明ということはできないというべきである。本件補正に係る事項のうち,上記(2)ないし(4)で指摘した事項は,いずれも当初明細書の記載から上記の意味で自明な事項ということはできず,「等」及び「など」の語によって記載されているに等しい事項であるということができないことは明らかである。」と述べました。

      

◆H15. 7. 1 東京高裁 平成14(行ケ)3 特許権 行政訴訟事件

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◆H15.10.16 東京高裁 平成14(行ケ)186 特許権 行政訴訟事件

 訂正事項が新規事項であるので、訂正請求が認められなかった点について、裁判所は、審決を維持しました。
裁判所は、”本件発明が,「成形孔であるから,挿着孔の内周面が滑らかで,光沢面となる」こと,従来の切削孔と対比した場合に,本件発明が,「挿着孔の面粗度は非常に小さい」ことが記載されているにとどまり,訂正発明における「挿着孔の内周面が滑らかで,光沢面状である」ための理由が工具の高温状態の加熱に起因することについては,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であるとはいえない。したがって,審決が,「挿着孔の内周面が滑らかで,光沢面である」ための理由として,加熱温度との関係を述べた本件訂正は新規事項の追加に該当するものと認定判断したことは,正当であって,誤りがあるとはいえず,原告ら主張の審決取消事由1は理由がない”と判示しました。  この事件の無効審判に関する審決取消訴訟は、H15.10.16 東京高裁 平成13(行ケ)356 特許権 行政訴訟事件にあります。 

      

◆H15.10.16 東京高裁 平成14(行ケ)186 特許権 行政訴訟事件

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◆H15.10. 6 東京高裁 平成15(行ケ)120 特許権 行政訴訟事件

 1つの争点として、新規事項に該当するかが争われました。
  裁判所は、本件補正は特許庁と同様に、新規事項と判断しました。特許庁の代理人である指定代理人は、補正できる範囲について、”直接的かつ一義的に導き出せるものだけでなく、当初明細書等の記載に基づいて当業者が自明でないので、本件補正は,当初明細書等の範囲外の事項を含むものして許されない”と03年夏に発表された審査基準案を先取りした形で、本件補正は新規事項だと主張しました。
  裁判所は、これをそのまま認め、「そうすると,本願発明の蒸留装置に回転ドラム等を設けることは,当初明細書等に直接記載されていないばかりでなく,当初明細書等に記載した事項から当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項であるとも,また,当業者に自明な技術事項であるとも認められないから,本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるということはできない。」と判断しました。

      

◆H15.10. 6 東京高裁 平成15(行ケ)120 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 9.29 東京高裁 平成14(行ケ)408 特許権 行政訴訟事件

  「電源投入時にその日の番組表の表\示及び録画予約を行うことの記載に基づき電源投入後の任意の時間にその日の番組表\を取り出す」とする補正が当初明細書等の要旨を変更するか否かが争われました。特許庁では要旨変更と認定されましたが、裁判所はこれを取消しました。
     「当初明細書等における請求項1には、・・・電源の投入と番組表示の時期との関連については、特に開示されていないことが明らかである。また、当初明細書等の、「発明が解決しようとする課題」、「課題を解決するための手段」、「発明の実施の形態」及び「発明の効果」の各項目においても、電源の投入と番組表\示の時期との関連についての記載はなく、発明の効果において、・・・と記載されるように、番組が録画予約のためテレビ受像機に表\形式で表示されることが、本願発明1の重要な特徴と認められるが、電源の投入と番組表\示の時期との関係は、当初明細書等において問題とされていないものと解するのが相当である。   他方、当初明細書等の段落【0008】から【0027】には、本願発明1の実施例が記載されており、・・・・記載されている。これらの記載によれば、本願発明1の実施例では、電源投入を最初の処理ステップとする、あるいは、使用者の行う一連の処理・操作において、電源を投入した日の番組表を表\示し、録画予約を行うことが開示され、電源が投入されると自動的に初期画面表\示としてその日の番組表が表\示されるものと認められるが、電源投入後の任意の時間経過後に番組表を表\示させたり、予約を行うこと、例えば、再生や録画を行った後の処理や操作については記載されていない。
  しかし、上記記載はあくまで本願発明1の実施例に関するものであり、当初明細書等の段落【0028】に「以上本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、・・・本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。」と記載されるように、前記の本願発明1の発明の要旨から逸脱したり、当初明細書等の他の記載に反したりするものでない実施例としての事項は、当初明細書等の要旨に含まれるものと解するのが相当といえるから、電源の投入とテレビ受像機に表形式で番組を表\示する時期との時間的関係については、当初明細書等において限定がなされていないものと認められる。  また、被告は、本件決定における補正後各発明の認定に関して、補正後各請求の特許請求の範囲には、電源を投入した日のテレビの番組内容を取り出して表示することは示されているが、電源投入後のどの時点でテレビの番組内容を取り出して表\示するかについては何ら規定されていないことを理由に、電源投入時を含む電源投入後の任意の時間にその日の番組表を取り出して表\示する構成であると主張するものであるところ、そうであるとすれば、当初明細書等の特許請求の範囲においても、電源の投入とテレビ受像機に表\形式で番組を表示する時期との時間的関係については、全く規定するところがないことが明らかであるから、同様の理由により、電源投入時を含む電源投入後の任意の時間にその日の番組表\を取り出して表示する構\成が開示されているものと認定すべきものといえる。」

 なお、本件については、兄弟出願(同じ親出願から分割された出願)についても同様に判断されています。

◆H15. 9.29 東京高裁 平成14(行ケ)409 特許権 行政訴訟事件

◆H15. 9.29 東京高裁 平成14(行ケ)410 特許権 行政訴訟事件

◆H15. 9.29 東京高裁 平成14(行ケ)411 特許権 行政訴訟事件

◆H15. 9.29 東京高裁 平成14(行ケ)412 特許権 行政訴訟事件

◆H15. 9.29 東京高裁 平成14(行ケ)413 特許権 行政訴訟事件
 

◆H15. 9.29 東京高裁 平成14(行ケ)408 特許権 行政訴訟事件

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◆H13.12.11 東京高裁 平成11(行ケ)311 特許権 行政訴訟事件

 同じく補正に関する審査基準案中にあった判決です。当初明細書の記載された事項か否かが問題となった事例です。
   特許庁、裁判所とも新規事項と判断しました。
 「原告は,当初明細書の実施例に記載された「純白紙」が,・・「純白ロール紙」を指すことは,当業者において,自明であり,このような純白紙の性質に伴う作用効果aないしcも自明である旨主張する。しかしながら,仮に,当初明細書の「純白紙」の語が,上記の性質を有する「純白ロール紙」を意味することが当業者に自明であると認められるとしても,純白紙を本願発明において用いれば,作用効果aないしcが得られる,ということが,当初明細書から自明である,と認めることはできないというべきである。すなわち,前記認定事実によれば,当初明細書には,そこに記載された「薄紙」の性質について,「薄手」であること以外には記載がなく,効果についても,「薄紙」の性質に伴う効果としては,「薄手」であることに伴う効果しか記載されておらず,かつ,そこに記載された発明は,純白紙を用いた実施例に限られず,純白紙に代えて,和紙やワラ半紙を使用することも可能であると記載されている。そして,甲第6号証によれば,薄紙として純白紙を用いた場合と,和紙やワラ半紙など他の紙を用いた場合との相違に係ることは,当初明細書に全く記載されていないことが明らかである。このような当初明細書の記載内容によれば,当初明細書の実施例に記載された「純白紙」は,単に,「薄手」であるという性質を有する紙の一例として挙げられているにすぎないとしか理解できず,このような状況の下で,これが,本願発明において,「一方の表\面がつるつるとした滑らかな面であり,他方の面がざらざらとした凹凸面である」という性質を有するものであることに伴う効果を有するものであることを,当初明細書の記載内容から自明のこととして導き出すことはできないものというべきである。・・・当初明細書の記載から自明な事項であるというためには,当初明細書に記載がなくとも,同明細書に接した当業者であれば,誰もが,その事項がそこに記載されているのと同然であると理解するような事項であるといえるものでなければならず,その事項について説明を受ければ簡単に分かる,という程度のものでは,自明ということはできないというべきである。」
 特許庁発表の補正に関する審査基準において同様の表\現が採用されています。この部分だけを読むと意図が分かりにくいですね。上記記載もあわせて読むことをお勧めします。

 

◆H13.12.11 東京高裁 平成11(行ケ)311 特許権 行政訴訟事件

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◆H13.12.11 東京高裁 平成13(行ケ)89 特許権 行政訴訟事

 補正に関する審査基準案中にあった判決です。数値限定の補正が新規事項かが問題となった事例です。
   審決では、実施例には5ミリジュールが開示されているだけでなので、5ミリジュール以上とする訂正は新規事項と判断されました。これに対して、裁判所は、他の記載からこれは少なくとも5ミリジュールという下限を示したものであるとして審決を取り消しました。

 

◆H13.12.11 東京高裁 平成13(行ケ)89 特許権 行政訴訟事

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◆H15. 7.30 東京高裁 平成14(行ケ)235 特許権 行政訴訟事件

 新規事項でありかつ記載不備とした拒絶審決が維持されました。
「「逸脱の性質」という用語自体は、当初明細書等に記載されていないばかりでなく、「異常動作」という用語に関しても、当初明細書等おいては、前記のとおり、「分析すべきそれぞれの動作ごとに、分析装置は、エレベータの動作を登録し誤動作を検出する信号が動作の中断を必要とする性状のものであるか、もしくは異常動作の場合として記録するだけの誤りであるかに関わりなく、それらの信号を受信する必要がある。」と記載されているのみである。ここにいう「異常動作」とは、警報を発生せず、エレベータの動作を中断しないで記録されていくだけの誤動作を意味していることは明らかである  また、前記のとおり、当初明細書等には、「例えば、2000件の正常動作に対して、警報を必要としない誤動作は5件が許容可能である。正常動作と誤動作の比がこの限度を超えると、保守要求の通知が発せられる。」と記載されているから、異常動作である誤動作がどのようなものであれ、1回生じただけでは保守要求はなされず、正常動作との比が所定の限度を超えたときにはじめて保守要求されることしか開示されていない。 そうすると、当初明細書等において、保守の必要性を表示するメッセージを発するのは、異常動作である誤動作が記録されて所定の回数に達したときであるから、第3の補正事項である、「逸脱の性質に鑑みて異常動作と判定される場合」に保守の必要性を表\示するメッセージを発することは、当初明細書等に記載されていなかったことである。」

 

◆H15. 7.30 東京高裁 平成14(行ケ)235 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 7. 8 東京高裁 平成13(行ケ)461 特許権 行政訴訟事件

補正が要旨変更か否かが争われました。裁判所は、要旨変更とした特許庁の判断を取り消しました。
  「以上によれば,当初明細書には,沈降物と上澄水の全部を合わせた組成のもの,すなわち槽内の生コンスラッジと同じ成分割合のものをセメントの練り水として使用することが記載されていたことが明らかである。  そして,骨材を分離した後の生コンスラッジは,練り混ぜに使用する時まで何らかの槽で保管する必要があるが,骨材を分離した後の生コンスラッジで成分の分離をする必要がないものをセメントの練り水として再使用するとき,そのような生コンスラッジを保管するための槽としては,「必ずしも沈降を目的としない貯めるための槽」であれば足りることは明らかである。  また,本件発明の属する技術分野において,「必ずしも沈降を目的としない(液体を)貯めるための槽」としては,貯留槽はごく普通に用いられている槽であると認められ(乙2,115頁の図-4.2.3「スラッジ水槽」等),当業者であれば,そのような用途に使用する槽として,貯留槽が当初明細書に記載されているのと同視できるものである。したがって,骨材を分離した後の生コンスラッジを次いで「必ずしも沈降を目的としない生コンスラッジを貯めるための槽」すなわち「生コンスラッジ貯留槽」に導くことは,当初明細書に記載した事項の範囲内のものということができる。」

◆H15. 7. 8 東京高裁 平成13(行ケ)461 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 5.29 東京高裁 平成13(行ケ)420 特許権 行政訴訟事件

   当初明細書に記載されてた発明が、第3種パチンコ遊技機(図柄がそろった後,権利が発生して権利発生中に始動口に入賞すると大当たり状態となる)のみなのか、それとも、第1種パチンコ遊技機(図柄がそろうと大当たり状態となるパチンコ遊技機)を含むものなのかが争われました。
  「先願明細書には、乱数情報に基づく配当テーブルのアドレスから「絵柄の組合せ及び配当」を読み取り、読み取った情報に基づいてリールの停止位置を制御することしか記載されておらず、また、作用効果についても、「以上のように、本発明においては絵柄の組合せを乱数によって決定するので、完全に確率に基づく絵柄の組合せをうることができ、しかもその組合せで正確にリールを停止することができる。」(3頁右上欄7〜11行)と記載されるのみである。・・・・先願明細書には、本件発明のように、乱数情報(値)と「絵柄の組合わせ及び配当」との間に「入賞ランク」を決定するための「入賞確率テーブル」を介在させることにより両者の対応関係を可変なものとする技術思想は、何ら開示されていないというべきである。」と判断しました。

 

◆H15. 5.29 東京高裁 平成13(行ケ)420 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 5.22 東京高裁 平成14(行ケ)138 特許権 行政訴訟事件

本件補正後の請求項の記載を機械的に分割して得た各構成要素が出願当初の明細書に記載されている場合に、本件補正後の発明が出願当初の明細書に記載されていることになるかが争われました。裁判所は、特許庁の要旨変更であるとの認定を肯定しました。発明が技術思想であることからすると、当然といえますが,もし、積極的な排除がない場合には同じように認定されたのでしょうか。興味があるところです。
裁判所は、以下のように述べました。
 「上記(?@)の一般論はそのとおりであるが,本件補正後の発明についての認定,並びに,出願当初の明細書及び図面に記載された発明の認定は,前判示のとおりであって,本件補正後の「モジュレータ」の構成は,出願当初の明細書又は図面に開示されているとはいえないことが明らかである(むしろ積極的に排除されているのである。)。・・・・・補正が発明の構\成要素を削除するものであっても,補正後の発明が出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内であれば要旨変更にならないことは当然である。そして,前判示のとおり,本件補正後の発明は,モジュレータへの冷媒の流入量について何らの限定がないので,冷媒のうち一部のみ流入するものも,冷媒の全量が流入するものも包含する発明であると解される。このような冷媒の流入量の限定のないモジュレータが,出願当初の明細書又は図面に開示されていれば要旨変更にはならないのであるが,本件の場合,前判示のとおり,出願当初の明細書には,「冷媒の全量がモジュレータに流入する」という構成が記載されていなかったのみならず,「冷媒の全量が流入するモジュレータ」を積極的に排除するものであるから,冷媒の流入量を限定しない単なるモジュレータを構\成とする発明が記載されていたと認めることはできないのである。したがって,本件の場合には,本件補正は,要旨の変更に当たるものといわざるを得ない。」

 

◆H15. 5.22 東京高裁 平成14(行ケ)138 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 4. 9 東京高裁 平成13(行ケ)369 特許権 行政訴訟事件

 審査中に行った補正が、要旨変更に該当するか否かが争われました。
裁判所は、「当初明細書等には第5図の説明として「電極20にテフロン等のフランジ82を固定し」と記載されていることは上記d.の記載のとおりであり,フランジ82が電極に移動できるように嵌合されたものであるとは認められない。したがって,本件補正後の「一方の電極に移動出来るように嵌合したテフロン等電気絶縁性のフランジ」を当初明細書等の「第5図のフランジ82」に記載した事項の範囲内のものということはできず,原告の上記主張は理由がない。」と認定しました。

 

◆H15. 4. 9 東京高裁 平成13(行ケ)369 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 2.17 東京高裁 平成15(行ケ)39 特許権 行政訴訟事件

  誤記訂正か実質上の変更かが争われました。
裁判所は、「このような本件明細書の記載に接した当業者が,発明の詳細な説明中の参考例,実施例及び試験例の記載が一貫して誤りであり,特許請求の範囲の請求項1,7の記載が正しいと考えることは,特段の事情がない限りあり得ないというべきところ,・・・・本件明細書の特許請求の範囲の請求項1,7の記載が誤記であること,この−CH2−基の数は,正しくは「1」又は「0」であるべきことは,本件明細書の記載全体から明白であり,当業者はたやすくこのことを認識し得たものと認められ・・・  なお,特許請求の範囲の記載の訂正が,明細書中に記載された特許請求の範囲を信頼する一般第三者の利益を害することになるとして,特許法126条2項(注,平成6年法律第116号による改正前のもの)により許されないとした被告引用の最高裁判決は,いずれも事案を異にし,本件に適切ではない。」と訂正を認めなった審決を取り消しました。

 

◆H15. 2.17 東京高裁 平成15(行ケ)39 特許権 行政訴訟事件

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◆H14.10.24 東京高裁 平成13(行ケ)557 特許権 行政訴訟事件

 異議申立にて、特許取消の決定がされ、かかる審決に対して取消訴訟を提起した後、訂正審判を請求し、訂正審判では、出願中における補正が新規事項として訂正が認められないと判断され、これを争った事件です。
 裁判所は、「上記記載箇所や実施例に関する他の記載箇所を参照しても、「風呂水吸水ポンプの設置個所」の提案と、実施例の気水分離室を有する風呂水吸水ポンプの構成とが、相互に関連を有するものであることは記載されておらず、また、両者の関連を示唆する記載も見出すことができない。・・・」と判断しました。

 

◆H14.12.26 東京高裁 平成13(行ケ)127 実用新案権 行政訴訟事件
  クレームに記載のない用語に基づく限定解釈を行い、無効理由なしと判断した審決が取り消されました。
 裁判所は、「本件審判において甲第1号証刊行物に記載されているものとして原告が主張している考案(甲第1号証考案)の中には,実用新案登録請求の範囲に記載された考案も含まれており,これが,甲第1号証刊行物中の考案の詳細な説明及び各図面に記載された実施例に限定されるものでないことは,明らかである。・・・・件考案の実用新案登録請求の範囲の記載は,・・・滑り防止片の「ぎざぎざ」の大きさについて限定はされていない。甲第1号証考案の滑り止め体及びこれに群設された小突起,突設された突条の大きさについても,甲第1号証刊行物中には,これを限定する記載は見当たらない。そうである以上,本件考案の滑り防止片の「ぎざぎざ」の大きさと甲第1号証考案の滑り止め体に群設された「小突起」,突設された「突条」の大きさとが異なるとすることはできない,というべきである。」と判断しました。

 

◆H14.10.24 東京高裁 平成13(行ケ)557 特許権 行政訴訟事件

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◆H14.11.20 東京高裁 平成14(行ケ)62 特許権 行政訴訟事件

   訂正審判における「上記目的乃至効果の外に・・・という新たな目的乃至効果を有するものと解され,訂正事項aの訂正は,実質上特許請求の範囲を変更するものである」との判断が争われました。
  裁判所は、「訂正明細書の特許請求の範囲【請求項1】の記載の技術的意義は,【請求項1】の記載自体によって一義的に明確であり,そこに記載された用語の意義を解釈するために,訂正明細書及び登録明細書の発明の詳細な説明や図面等の他の記載を参酌すべきものとは認められない・・・,被告主張の・・・の記載は,発明の詳細な説明中の単なる【発明の実施の形態】に係るものにすぎず,・・・また,・・・の技術的意義をこれらの記載により特定すべきものでもない。そうすると,これらの記載をもって,訂正明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された・・・を,・・・ための構成であると解釈すべき余地はない。・・訂正事項aが・・するために必要な最初の工程に対応する事項であって,・・・ための構\成であるとする審決の判断は,誤りである」と判断しました。

 

 

◆H14.11.20 東京高裁 平成14(行ケ)62 特許権 行政訴訟事件

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◆H14.11.14 東京高裁 平成13(行ケ)436 特許権 行政訴訟事件

 数値の補正の適否が争われました。
「明細書中に記載されている数値につき,正常な数値との間に,当業者の常識からみて誤記であると判断し得るほどの乖離があるとして,これを誤記と認めることが許されるのは,当業者が,その数値をみて,正常とされる数値に照らし技術常識上絶対にあり得ない,と判断できる乖離がある場合,具体的には,明らかに実施不可能であるか,実用上想定し得ない程度の数値である場合である,と解するのが妥当である。・・・明細書における明白な「誤記」とは,もともと,その字句又は語句が,本来記載されるべき字句又は語句を誤って記載したものであることが一見して明らかであり,誤記であることについて議論の余地がない場合をいうのである。前後関係などから誤記であることが一見して明らかであるとはいうことのできない本件においては,当初明細書中の文言が「誤記」と判断されるためには,少なくとも,補正される前の当初明細書における当該文言と当該文言以外の表\現との間に明らかな矛盾があることが,当然の前提として必要とされることになる。しかし,当初明細書においては,上記認定のとおり,・・・S及びStの定義と当初明細書のその余の記載との間には特段の矛盾はない,と解することが可能であり,同明細書に記載された発明を明確に把握することができる。そうである以上,本件補正前の当初明細書におけるS及びStの定義が上記の意味での明白な誤記であると認めることは到底できないのである。」\n

 

◆H14.11.14 東京高裁 平成13(行ケ)436 特許権 行政訴訟事件

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◆H14.10.29 東京高裁 平成13(行ケ)501 特許権 行政訴訟事件

 図面に基づく訂正事項も記載ありと判断されました。訂正自体は特許庁の判断を認めました。
  「要素a〜dに関する記述は十分に明瞭に図面及び訂正前明細書の実施例の記載から読み取ることができる。・・・端部のみに熱融着されていること」について、本件明細書にこれを支持する具体的な文言はない。しかし、第2図において、・・・よって、訂正は明細書の要旨を変更するものでも、新たな事項を明細書中に導入するものでもなく、訂正をもって適法なものであるとした審決の判断に、原告主張の誤りはない。取消事由1は理由がない。」と述べました 

 

◆H14.10.29 東京高裁 平成13(行ケ)501 特許権 行政訴訟事件

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