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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

冒認(発明者認定)

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成30(ネ)10019  特許を受ける権利帰属確認本訴請求控訴事件,損害賠償反訴請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年8月8日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 特許を受ける権利の帰属確認を求めましたが、知財高裁(4部)は、1審と同じく請求を棄却しました。
 前記(1)及び(2)の認定事実を総合すれば,1)一審原告は,Aと知り合う前 から本件技術の研究を行っていたが,一審原告自身にはその研究開発を進 めていく資金がなかったため,Aと知り合って以降に,Aに上記事情を説 明し,Aが代表社員を務める一審被告と協力して,携帯電話端末等の民生\n用の技術として本件技術の研究開発を進めていくこととし,その研究成果 である本件発明について本件出願に至っていること,2)本件出願に当たっ ては,一審被告が本件特許事務所に対して出願手続を委任し,本件出願に 係る願書の「特許出願人」欄には一審被告の名称が記載されており,しか も,特許出願料,本件特許事務所に対する手数料等の本件出願に必要な費 用は,一審被告が負担していること,3)一審原告は,一審被告の担当者と して,本件出願に係る願書の作成に関与し,複数回にわたって,本件特許 事務所が作成した願書案の内容を確認してコメントを付したり,本件特許 事務所からの質問に回答するなどし,最終の願書案についても,Aに代わ って確認し,その願書案のとおりの内容で出願することを了承し,その願 書案中の1枚目の願書(「特許願」と題する書面)の「特許出願人」欄に は一審被告の名称が記載されていたことが認められる。 上記認定事実によれば,一審原告は,本件出願に係る願書の「特許出願 人」欄に一審被告の名称が記載されていたことが認められる。 上記認定事実によれば,一審原告は,本件出願に係る願書の「特許出願 人」欄に一審被告の名称が記載されていること及び本件出願に必要な費用 は全て一審被告が負担していることを十分に認識し,本件出願について特\n許査定がされた場合には,特許出願人である一審被告が特許権を取得する ことを理解していたものと認められる。 加えて,一審原告と一審被告との間で本件発明についての特許を受ける 権利の譲渡の対価額について具体的な交渉がされたことはうかがわれな いものの,他方で,一審原告が一審被告に対して無償で上記特許を受ける 権利を譲渡すべき事情も認められないこと,その他本件出願に至る経緯等 (前記(2))に鑑みると,一審原告と一審被告との間では,遅くとも本件出 願時までに,一審原告の有する本件発明についての特許を受ける権利を一 審被告に相当な対価で譲渡する旨の黙示の合意が成立したものと認める のが,当事者の合理的意思に合致するというべきである。
イ これに対し,一審原告は,1)願書案についての一審原告の確認対象は, 請求項の技術的な記載事項に限定されており,その他の記載は十分に確認\nしていないし,また,一審原告においては,特許出願手続や願書案の記載 方法について全く知識を有していなかったため,願書案の「特許出願人」 欄に記載される者が本件出願に係る特許を受ける権利を有している者を も意味する記載であると認識することは,極めて困難であったこと,2)一 審原告は,本件発明についての特許を受ける権利の対価の支払を受けてお らず,一審原告が無償で上記特許を受ける権利を一審被告に譲渡すべき理 由もないことからすると,一審原告が一審被告に対して本件発明について の特許を受ける権利を黙示に譲渡した事実はない旨主張する。 しかしながら,上記1)の点については,前記ア認定のとおり,一審原告 は,本件出願に係る願書の作成に関与し,複数回にわたり,願書案の内容 を確認し,最終の願書案についても,Aに代わって確認し,その願書案の とおりの内容で出願することを了承しているところ,願書案中の1枚目の 願書(「特許願」と題する書面)の「特許出願人」欄に一審被告の名称が 記載されていたのであるから,一審原告が願書案の確認を行うに際し,そ の記載に気付かないはずはないし,また,特許出願について特許査定がさ れた場合には,願書に「特許出願人」と記載された者が特許権を取得する ことは,特許出願手続や願書の記載方法について知識がなくても当然に理 解できる事柄である。 また,上記2)の点については,一審原告と一審被告間の本件発明につい ての特許を受ける権利の黙示の譲渡の合意は,無償ではなく,一審被告が 相当な対価を支払うことを内容とするものであり,仮に一審原告が一審被 告から上記譲渡の対価の支払を未だ受けていないとしても,そのことは上 記合意の成立を妨げるべき事情となるものではない。 したがって,一審原告の上記主張は,採用することができない。
(4) 小括
以上のとおり,一審原告と一審被告との間では,遅くとも本件出願時まで に,一審原告の有する本件発明についての特許を受ける権利を一審被告に相 当な対価で譲渡する旨の黙示の合意が成立したものと認められるから,上記 合意により,上記特許を受ける権利は一審被告に移転したものと認められる。 したがって,一審原告の特許を受ける権利の帰属確認請求は,理由がない。

◆判決本文

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平成27(ワ)31774等  特許権侵害差止等請求事件  特許権 平成30年3月2日  東京地方裁判所(40部)

 冒認者が真の発明者に対して権利行使したことが不法行為に該当するとして550万円の損害賠償が認められました。
 まず,原告代表者自身の陳述書(甲11)によれば,原告代表\者は普 通高校を卒業後,本件特許の出願当時まで螺旋状コイルインサートの販 売事業に従事した経験を有するのみであって,螺旋状コイルインサート の設計や製造に関わった経験はないものと認められ,螺旋状コイルイン サートに関して原告代表者を発明者とする特許出願や原告が執筆した論\n文等も存在しない(乙25の1及び2,乙26)。 また,原告代表者自身,本人尋問において,タングレス螺旋状コイル\nインサートの技術については「素人なので一切知らない」旨の供述をし ているとおり(原告代表者〔本人調書8頁〕。以下,同様に本人調書の\n該当頁を併記する。),原告代表者がタングレス螺旋状コイルインサー\nトに関して専門的な知識を有していたことはうかがわれない。 さらに,前記(2)イのとおり,原告は,平成11年当時,被告の製造す る製品の販売会社にすぎず,螺旋状コイルインサートの製造設備や実験 設備を有していたとは認められない。 したがって,そもそも,原告代表者に本件発明を着想し,これを具体\n化するだけの知識,経験及び環境が備わっていたといえるのか,疑問が ある。
イ 発明の動機について
原告は,原告代表者が被告の製造するタングレス螺旋状コイルインサ\nートについてどうしたら生産性を上げられるか考え悩んでいたことが本 件発明の動機であると主張する。 しかし,原告代表者の供述によれば,被告の製造するタングレス螺旋\n状コイルインサートの生産性が低いという認識を持ったのは,被告の営 業担当者と飲食を共にしたときに聞いたというのみであり,原告代表者\nは,上記営業担当者の氏名は供述せず,そのような話を聞いた際の具体 的な状況についても明らかにしない。 しかも,原告代表者は,生産効率の低さを聞いたのは本件特許の出願\n後だと思うとも供述し(原告代表者〔16,17頁〕),また,生産効\n率の低さを聞いていたとしながらも,これを改善する方策を検討するに 当たり,被告にどのような問題があって,実際にどのように生産してい たかという点を「調べてない」と供述している(原告代表者〔20\n頁〕)。 以上のとおり,本件発明の動機に関する原告代表者の供述は抽象的で\n不自然な点が多く,被告のタングレス螺旋状コイルインサートの生産性 の向上が本件発明の動機であったと認めることはできない。
・・・・
訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において 提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである 上,提訴者が,そのことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのこと を知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度 の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるもの と解するのが相当である(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月 26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁,最高裁平成7年(オ)第16 0号同11年4月22日第一小法廷判決・裁判集民事193号85頁参照)。 本件においてこれをみるに,原告の本訴請求は理由がないところ,前記2 (5)に説示したとおり,原告代表者は福島工場において本件発明を知得した\n上,本件特許を出願したものといわざるを得ないのであって,原告による本 件特許の出願は冒認出願であったというべきである。 そして,本件特許の出願をD弁理士に依頼したのは原告代表者自身であり,\n被告の福島工場を訪れたのも原告代表者自身であって,本件特許の出願につ\nいては原告代表者が主体的に関わったものと認められることなどによれば,\n原告代表者が記憶違いや通常人にもあり得る思い違いをして本件特許出願に\n及んだということもできない。 加えて,原告が本訴提起前に被告から本件特許の出願が冒認出願であると の指摘を受けながらあえて本訴提起に及んだと認められることは,前記2 (2)シ(イ)及び(ウ)記載のとおりである。
そうすると,本訴請求において原告の主張した権利又は法律関係が事実的, 法律的根拠を欠くものであることはもちろん,原告が,そのことを知りなが ら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴え を提起したというべきであるから,本訴の提起は裁判制度の趣旨目的に照ら して著しく相当性を欠くものと認められるといわざるを得ない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告による本訴の 提起は被告に対する違法な行為というべきである。
(2) 被告の損害発生の有無及びその額
ア 本訴の防御のための弁護士・弁理士費用その他の費用
証拠(乙58〜68,101〜107,122〜125,134〜1 37,142〜143,152〜154(いずれも枝番を含む。))によれば,被告は,本訴事件に応訴するため,弁護士との間で訴訟代理の委任契約を締結するとともに,特許業務法人との間で補佐人の委任契約を締結し,相当額の報酬額を負担したほか,郵送料,謄写費用その他各種手続費用を負担したことが認められるところ,本訴の事案の内容,訴額,審理の経過及び期間,立証の難易度その他本件に現れた諸般の事情に照らすと,このうち原告の不法行為と相当因果関係のある費用は500万円と認めるのが相当である。 イ 反訴のための弁護士費用
反訴の事案の内容,経過,認容額その他本件に現れた諸般の事情に照らすと,反訴提起のための弁護士費用のうち50万円を原告に負担させるのが相当である。

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平成28(ワ)8468  特許権移転登録手続等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年11月9日  大阪地方裁判所

 特許権の移転請求が認められませんでした。理由は、「原告発明と本件発明とは,解決しようとしている抽象的な課題は共通していても,その課題の生ずる具体的な原因の捉え方が異なっており,そのために,具体的な課題の捉え方や,課題解決の方向性や主たる手段も異なる」というものです。
 (1) 特許法74条1項の特許権の移転請求制度は,真の発明者又は共同発明者 がした発明について,他人が冒認又は共同出願違反により特許出願して特許権を取得した場合に,当該特許権又はその持分権を真の発明者又は共同発明者に取り戻さ せる趣旨によるものである。したがって,同項に基づく移転登録請求をする者は, 相手方の特許権に係る特許発明について,自己が真の発明者又は共同発明者である ことを主張立証する責任がある。ところで,異なる者が独立に同一内容の発明をし た場合には,それぞれの者が,それぞれがした発明について特許を受ける権利を個 別に有することになる。このことを考慮すると,相手方の特許権に係る特許発明に ついて,自己が真の発明者又は共同発明者であることを主張立証するためには,単 に自己が当該特許発明と同一内容の発明をしたことを主張立証するだけでは足りず, 当該特許発明は自己が単独又は共同で発明したもので,相手方が発明したものでな いことを主張立証する必要があり,これを裏返せば,相手方の当該特許発明に係る 特許出願は自己のした発明に基づいてされたものであることを主張立証する必要が あると解するのが相当である。そして,このように解することは,特許法74条1 項が,当該特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者であることと並ん で,特許が123条1項2号に規定する要件に違反するときのうちその特許が38 条の規定に違反してされたこと(すなわち,特許を受ける権利が共有に係るときの 共同出願違反)又は同項6号に規定する要件に該当するとき(すなわち,その特許 がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたこと) を積極的要件として定める法文の体裁にも沿うものである。
(2) そこで,まず本件特許発明1の内容等について検討する。
・・・・
ウ 以上のことを踏まえると,本件特許発明1は,便座昇降機を不要とする 課題を解決するために,使用時に便座を上昇させるのではなく,予め便座と便器の\n間に嵩上げ部を設けて便座の位置自体を高くしておき,その嵩上げ部にくり抜き部 を形成し,そこから拭き取りアームを挿入して臀部を拭き取るようにすることによ\nって,使用時の便座昇降機による便座の上昇を不要としたものと認められる。そし て,このような課題解決方法に照らせば,本件特許発明1は,便座昇降機が必要と されていた理由を,便座の位置が低く,便座と便器の間に拭き取りアームを挿入す る隙間がない点に求め,便座の位置を高くして,便器との隙間を生み出すことによ って,課題を解決しようとしたものであると認めるのが相当であり,そのために, 次に述べる原告第1出願の明細書の記載に見られるような便座と便器の間の隙間を 小さくしたり,拭き取りアームの厚さを薄くしたりすることについて特段の記載は されていない。 そして,以上の本件特許発明1について,本件優先権出願の明細書及び図面には, 本件基礎出願の明細書図面と同一の内容が記載されていると認められる。 (3) 以上を踏まえ,本件特許発明1の発明者について検討する。原告は,平成 24年9月初旬に完成したという原告第1発明と本件特許発明1は同一の発明であ り,原告第1発明について特許を受けるために原告第1出願を行ったと主張し,こ れに沿う陳述をしていることから,まず,原告第1出願に係る発明について検討す る。
・・・
そして,上記の原告の発明に係る臀部拭き取り装置では,紙を取り付けることが\nできる紙つかみヘッド(3)が本件特許発明1の「拭き取りアーム」に該当し,紙 つかみヘッドを移動させる4軸型可動型装置が本件特許発明1の「拭き取りアーム 駆動部」に該当すると認められる。 他方,本件特許明細書によれば,本件特許発明1の「嵩上げ部」は,便器と便座 との間に設けられ,便座全体を上げて便器との間に間隙を設ける部材を意味すると 解され,補高便座のほか複数の支柱状の器具も想定されているところ,原告第1出 願に係る装置は,「水洗式洗浄型便座と便器の間において使用する」(【0009】) もので,その図2の左側面図及び正面図によれば,便座の下部に薄いガイド板ない し保護ガイド(6)が設けられ,「実際の取り付けは,標準でついている便座の1c mのゴム足を除去して,取り付けるため便座の高さは2cmの高くなるだけ」(【0 010】)であるから,少なくともガイド板ないし保護ガイドの部分においては図示 されない便器と便座の間に3cmの隙間が設けられることになる。しかし,それだ けでは便座全体がどのように上げられるのかが明らかでないから,原告第1出願に 係る明細書や図面において「嵩上げ部」に該当する部材が記載されていると認める ことは困難である。 もっとも,原告第1出願に係る発明においては,便座全体を3cm持ち上げるこ とを想定していると解するのが合理的であるから,原告においては,ガイド板ない し保護ガイド単体又はそれと組み合わせて何らかの形で便座全体を上げることを想 定していた可能性があり,その場合には,その構\造が「嵩上げ部」に該当し,ガイ ド板ないし保護ガイド内の紙つかみヘッドの移動空間が「嵩上げ部に設けられたく り抜き部分」に該当する可能性もあり得るところである。\nそうすると,原告は,原告第1出願がされた平成24年9月25日の時点で,原 告第1出願に係る発明により,本件特許発明1を完成させていた可能性があるとい\nうべきである。
ウ もっとも,原告第1出願に係る発明は,同時に,臀部拭き取り装置にあ\nるトイレットペーパーの紙つかみヘッドを限りなく薄くし,3cm程の隙間でも, 容易に臀部の下に差し入れることができるようにすることにより,トイレ使用者が\n一般のトイレの使用時と変わることのない着座位置となるようにして,便座昇降機 の除去を可能としたものとされている。また,併せて,トイレットペーパーを掴ん\nだ紙つかみヘッドを臀部のふき取り位置あたりで80度ほど回転させることで,臀\ 部にフィットさせるものとされている。 以上のことを踏まえると,原告第1出願に係る発明は,ヘッドを限りなく薄くし て,ヘッドを臀部の下に差し入れるのに要する隙間を少なくするとともに,ヘッド\nを回転させることでヘッドが薄くても臀部にフィットするようにし,使用時の便座\n昇降機による便座の上昇を不要としたものと認められる。そして,このような課題 解決方法に照らせば,原告第1出願に係る発明は,便座昇降機が必要とされていた 理由を,ヘッドの形状やその動作の仕方に求め,それらを工夫することによって, 課題を解決しようとしたものであると認めるのが相当である。そうすると,原告第 1出願に係る発明と本件特許発明1とは,解決しようとしている抽象的な課題は共 通していても,その課題の生ずる具体的な原因の捉え方が異なっており,そのため に,具体的な課題の捉え方や,課題解決の方向性や主たる手段も異なることになっ たと認められる。
(4) そこで次に,原告が原告第1出願に係る発明により本件特許発明1を完成 させていた可能性があることに鑑み,被告が,原告第1出願に係る発明に基づいて,\n本件特許に係る特許出願をしたと認められるかについて検討する。この点について, 被告は,被告代表者が本件特許発明1を完成したと主張し,被告代表\者はこれに沿 う陳述をしている。
ア 前記1での認定事実によれば,被告代表者は,平成24年9月25日午\n前中に,P4と打合せをしている。この打合せの内容を直接に示す証拠はないが, 同日の午後1時に被告代表者がP4に「先ほどは有難うございました。参考までに,\nかさ上げ便座部品の記載されたカタログを送付させて頂きます。」として,補高便座 のカタログを送信していることからすると,被告代表者は,同日午前の打合せにお\nいて,補高便座を用いた発明の説明をしたと推認される。また,翌26日の午後4 時48分にP4が被告代表者にアームがどこから出てくるのか明確にしたいとのメ\nールを送信しており,前日のカタログの送信から本メールまでの間に被告代表者と\nP4が打合せをしたことは何らうかがわれないことからすると,本メールは,前日 25日午前の打合せの際に,被告代表者が補高便座からアームが出る構\造の臀部拭\nき取り装置の発明を説明したのに対して,P4が質問をしたものであると推認され る。そして,本メールの直後の同日午後5時07分に被告代表者がP4に「補高な\nのでその一部を切り取るか,構造によっては中をくりぬいて,最大6センチメート\nルのすき間でアームを出入りさせたらと,考えています。」と返信していることから すると,被告代表者は,同月25日午前にP4に対して補高便座からアームが出る\n構造を説明した時点で,既に補高便座を「かさ上げ便座部品」として利用し,補高\n便座を切り取り,又はくり抜いてアームを出すことで便座昇降機を利用しない臀部\n拭き取り装置の着想を得て,本件特許発明1を完成していたと推認するのが相当で あり,このことは,被告代表者の陳述(乙24)は以上の経緯と整合的である。\nイ この点について,原告は,被告代表者が,同月25日午後6時の原告か\nらのメールを受け取るまでは,本件特許発明1の着想を得ていなかったと主張する。 しかし,前記の被告代表者とP4のやりとりの流れからすると,被告代表\者が当 初にP4に補高便座のカタログを送信したことが,臀部拭き取り装置の開発と関係\nのないものであったとは考え難いから,被告代表者は,同日午前にP4と打合せを\nした時点で,便座をかさ上げしてアームを通すものとして補高便座に着目していた と認めるのが相当であり,そうである以上,前記のとおり,同日午前の時点で被告 代表者は本件特許発明1の着想を得ていたと推認するのが相当である。\n

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平成27(行ケ)10252  審決取消請求事件  特許権 行政訴訟 平成29年3月27日  知的財産高等裁判所(3部)

 冒認でないとした審決が維持されました。
 本件のように,冒認出願(平成23年法律第63号による改正前の特許法 123条1項6号)を理由として請求された特許無効審判において,「特許 出願がその特許に係る発明の発明者又は発明者から特許を受ける権利を承継 した者によりされたこと」についての主張立証責任は,特許権者が負担する ものと解するのが相当である。 もっとも,そのような解釈を採ることが,全ての事案において,特許権者 が発明の経緯等を個別的,具体的,かつ詳細に主張立証しなければならない ことを意味するものではない。むしろ,先に出願したという事実は,出願人 が発明者又は発明者から特許を受ける権利を承継した者であるとの事実を推 認させる上でそれなりに意味のある事実であることをも考え合わせると,特 許権者の行うべき主張立証の内容,程度は,冒認出願を疑わせる具体的な事 情の内容及び無効審判請求人の主張立証活動の内容,程度がどのようなもの かによって左右されるものというべきである。すなわち,仮に無効審判請求 人が冒認を疑わせる具体的な事情を何ら指摘することなく,かつ,その裏付 けとなる証拠を提出していないような場合は,特許権者が行う主張立証の程 度は比較的簡易なもので足りるのに対し,無効審判請求人が冒認を裏付ける 事情を具体的に指摘し,その裏付けとなる証拠を提出するような場合は,特 許権者において,これを凌ぐ主張立証をしない限り,主張立証責任が尽くさ れたと判断されることはないものと考えられる。 以上を踏まえ,本件における取消事由1(発明者の認定の誤り)の成否を 判断するに当たっては,特許権者である被告において,自らが本件発明の発 明者であることの主張立証責任を負うものであることを前提としつつ,まず は,冒認を主張する原告が,どの程度それを疑わせる事情(本件では,被告 ではなく,Mが本件発明の発明者であることを示す事情)を具体的に主張し, かつ,これを裏付ける証拠を提出しているかを検討し,その結果を踏まえて, 被告が発明者であると認めることができるか否かを検討することとする。
ア 原告の主張立証について
甲45図面等及び甲21図面について原告は,平成19年5月を作成日とする甲45図面等及び平成21年8月を作成日とする甲21図面を証拠として提出し,これらの証拠は,Mが,水系の取締役に就任する平成21年10月以前に,本件発明の実施に用いられる浄化槽用コンクリート製品に係る図面を作成していたこと,ひいては,本件発明を着想し,具体化していたことを示すものである旨を主張する。 しかしながら,これらの図面に示されているのは,浄化槽用コンクリ ート枠体を構成する高さ方向に4段に分割された長方形のコンクリート\n枠体の三面図及びベースコンクリートの平面図並びにそれらの寸法等で あり,当該コンクリート枠体の構築方法等を示すような記載はない。他\n本件発明の特徴的部分は,高さ方向に複 数段に分割して製作しておいたコンクリート板を用い,構成CないしI\nの各工程に従って浄化槽保護用コンクリート体の構築を行うこと,すな\nわち浄化槽保護用コンクリート体の具体的な構築方法にあるのであり,\nこの点については,上記各図面から直接読み取れるものではない。 してみると,仮に,Mが,水系の取締役に就任する以前の時期に甲4 5図面等及び甲21図面を作成した事実が認められるとしても,そのこ とは,その当時のMが,浄化槽用コンクリート枠体を高さ方向に4段に 分割して構成するというアイデア,すなわち,浄化槽保護用コンクリー\nト体の具体的な構築方法に係る本件発明の着想の背景となり得るアイデ\nアを有していたことをうかがわせる事実にすぎず,これによって,その 当時のMが,本件発明の上記特徴的部分に係る着想を得ていたことが裏 付けられるということはできない。
その他の主張立証について
そのほかに,原告は,Mが本件発明の発明者であることを示す事情と して,1)M及び原告が中心となって,本件発明の実施に用いられるコン クリート製品の製造に向けた準備を進めたこと,2)本件出願のための戸 島弁理士との打ち合わせにおいて,Mが本件発明についての説明を行っ たことを挙げる。 そこで検討するに,まず,上記1) Mが主体となって,有明コンクリートへの浄化槽用コンクリート枠体の製造の発注を行うなどし,その際,有明コンクリートがMを設計者とする甲21図面に基づいて当該コンクリート枠体の図面(甲22図面)を作成す るなどした経過を指すものであるところ,これらの経過は,本件発明の 完成を前提として,これに用いられる製品の販売等に係る事業を具体化 していく経過として把握すべきものであり,その中で,Mが主体的に活 動していることが,その前提となる本件発明を着想,具体化した者がM であることを直ちに示すものとはいえない。むしろ,その当時(平成2 2年4月ころ)のMは,水系の取締役を務め,被告と協同して水系の事 業を進めるべき立場にあったのであるから,仮に本件発明が被告によっ てされたものであるとしても,それを事業化するための活動にMが主体 的に関与することは格別不自然なこととはいえない。したがって,上記 1)の点は,必ずしもMが本件発明の発明者であることを裏付ける事情と いえるものではない。 また,上記2)の点については,そもそも戸島弁理士に対する本件発明 の説明を行った者がMであることを認めるに足りる証拠がない(被告は, 当該説明を行った者は被告である旨を主張し,戸島弁理士も被告の主張 に沿う供述(丙1)をするのであり,これらを覆して原告の主張を認め るだけの証拠はない。)。 したがって,上記1)及び2)の事情によって,Mが本件発明の発明者で あることが裏付けられるとはいえない。

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平成27(行ケ)10230  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年1月25日  知的財産高等裁判所

 冒認出願の立証責任は出願人側にあるとしつつも、立証の程度は、冒認を主張する側の主張によって変わると判断しました。
 本件のように,冒認出願(平成23年法律第63号による改正前の特許法1 23条1項6号)を理由として請求された特許無効審判において,「特許出願 がその特許に係る発明の発明者又は発明者から特許を受ける権利を承継した者 によりされたこと」についての主張立証責任は,特許権者が負担するものと解 するのが相当である。 もっとも,そのような解釈を採ることが,すべての事案において,特許権者 が発明の経緯等を個別的,具体的,かつ詳細に主張立証しなければならないこ とを意味するものではない。むしろ,先に出願したという事実は,出願人が発 明者又は発明者から特許を受ける権利を承継した者であるとの事実を推認させ る上でそれなりに意味のある事実であることをも考え合わせると,特許権者の 行うべき主張立証の内容,程度は,冒認出願を疑わせる具体的な事情の内容及 び無効審判請求人の主張立証活動の内容,程度がどのようなものかによって左 右されるものというべきである。すなわち,仮に無効審判請求人が冒認を疑わ せる具体的な事情を何ら指摘することなく,かつ,その裏付けとなる証拠を提 出していないような場合は,特許権者が行う主張立証の程度は比較的簡易なも ので足りるのに対し,無効審判請求人が冒認を裏付ける事情を具体的に指摘し, その裏付けとなる証拠を提出するような場合は,特許権者において,これを凌 ぐ主張立証をしない限り,主張立証責任が尽くされたと判断されることはない ものと考えられる。 以上を踏まえ,本件における取消事由(発明者の認定の誤り)の有無を判断 するに当たっては,特許権者である被告において,自らが本件各発明の発明者 であることの主張立証責任を負うものであることを前提としつつ,まずは,冒 認を主張する原告が,どの程度それを疑わせる事情(すなわち,被告ではなく, 原告が本件各発明の発明者であることを示す事情)を具体的に主張し,かつ, これを裏付ける証拠を提出しているかを検討し,次いで,被告が原告の主張立 証を凌ぎ,被告が発明者であることを認定し得るだけの主張立証をしているか 否かを検討することとする。
・・・
以上によれば,原告の上記2)の主張のうち,原告が,平成22年1 1月3日ころまでに,本件発明1の方法の実施に用いられる本件機器 を完成させたこと,ひいては,本件発明1を完成させたことについて は,客観性のある証拠等によって裏付けられているということができ る。 しかしながら,前記a(a)で述べたとおり,本件機器は本件発明2の 方法に用いられるものとはいえないから,原告が本件機器を完成させ たからといって,本件発明2の方法を着想し,完成させたことが認め られるものではなく,他にこれをうかがわせる証拠もない。したがっ て,原告の上記2)の主張のうち,本件発明2に係る部分は,その裏付 けを欠くものというほかない(そもそも,原告は,原告が本件発明2 の方法を着想し,具体化したことを示す具体的な事情を主張していな い。)。 ウ 小括
以上の検討によれば,原告は,本件発明1(及び本件発明3のうち,本 件発明1の方法に係る部分)については,原告がその発明者であることを 示す具体的な事情(すなわち,冒認を疑わせる具体的な事情)を主張し, かつ,これを裏付ける証拠を提出しているものといえる。 他方,原告は,本件発明2(及び本件発明3のうち,本件発明2の方法 に係る部分)については,原告がその発明者であることを示す具体的な事 情を主張しておらず,これを裏付ける証拠も提出していない。そして,原 告が,本件発明1に関しては発明者であることを示す事情を具体的に説明 している(それが可能であった)にもかかわらず,本件発明2については,\nそのような事情を一切説明していないことは,原告が本件発明2を発明し たことを積極的に疑わせる事情であるといわざるを得ない。
 本件発明2について
 前記(1)ウで述べたとおり、原告は、本件発明2について原告がその発明者であることを示す具体的な事情を主張しておらず,これを認めるに足 りる証拠も提出していないから,本件発明1の場合とは異なり,被告が行 うべき発明者性の主張立証の程度は比較的簡易なもので足りるものという べきである。 しかるところ,被告は,本件発明2の方法を着想し,完成させた経緯に ついて,平成22年10月から11月ころに,Bの自宅において,透明 な熱収縮チューブ,針金,ライター及びノズル管を用いて,噴出量の調 整が可能なノズル管の弁構\\造を作り出した旨を主張し,Bも「誓約書」 と題する書面(甲42)において,被告が,平成22年10月から11 月ころにB方を訪れた際に,「宇都宮北道路を運転している途中で,ノ ズルの製法を思いついた」旨を述べ,B方にあった熱収縮チューブ,針 金,ライターと被告が持参していたノズル管を用いてノズル管の弁構造を作り出し,さらに作ったノズル管を用いて野外での噴出実験を行った\n旨を述べ,被告の上記主張に沿う供述をしている。 そして,Bの上記供述は,その内容が具体的で,他の証拠と整合しな い内容が含まれるものでもなく,その信用性を積極的に疑うべき事情は ないから,被告側の関係者による供述証拠としてその証拠価値に限界があ ることを考慮しても,被告の上記主張を裏付ける一応の証拠として評価し 得るものといえる。また,本件発明2は,ノズル管内に弁構造を作るとい\nう点においては本件発明1と基本的発想を同じくしているということがで きるから,たとえ被告が本件発明1を発明していないとしても,原告らと 同様にノズルの改良に取り組み,相応の問題意識を持っていた被告が,原 告から本件発明1の説明を受け,これに触発されて本件発明2の着想を得 るということは十分にあり得る事柄であるということができる。\nしてみると,被告は,被告が本件発明2の方法を着想しこれを具体化し たことについて,その具体的な事情を主張し,これを裏付ける一応の証拠 も提出しているものといえるから,少なくとも上記で述べた程度を満たす だけの主張立証をしているものということができる。
・・・
以上の検討を総合すれば,本件各発明のうち,本件発明2については,そ の発明者が被告であると認めることができるが,本件発明1及び3について は,その発明者が被告であると認めることはできない。 してみると,本件各発明の発明者をいずれも被告であると認定し,本件各 発明に係る特許は,発明者でない者の特許出願に対してされたものとはいえ ないとした本件審決の判断のうち,本件発明1及び3に係る部分は誤りであ り,他方,本件発明2に係る部分は誤りとはいえない。

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平成25(ワ)34182  特許を受ける権利確認等請求事件  特許権 平成28年10月24日  東京地方裁判所

 着想から完成に至る過程への実質的関与していないとして、共同発明者の一人ではないと判断されました。
 特許を受ける権利は,原始的には,発明をした者(発明者)に帰属するところ, 特許出願された発明の発明者とは,特許請求の範囲に記載された発明について,そ の具体的な技術手段を完成させた者をいう。ある技術手段を着想し,完成させるた めの全過程に関与した者が一人だけであれば,その者のみが発明者となるが,その 過程に複数の者が関与した場合には,当該過程において発明の特徴的部分の完成に 技術的に寄与した者が発明者となり,そのような者が複数いる場合にはいずれの者 も発明者(共同発明者)となる。ここで,発明の特徴的部分とは,特許請求の範囲 に記載された発明の構成のうち,従来技術には見られない部分,すなわち,当該発明特有の課題解決手段を基礎付ける部分をいう。なぜなら,特許権は,従来の技術\nでは解決することのできなかった課題を,新規かつ進歩性を備えた構成により解決することに成功した発明に対して付与されるものであり(特許法29条参照),特許\n法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかった技術課 題の解決を実現するための,従来技術には見られない特有の技術的思想に基づく解 決手段を,具体的構成をもって社会に開示した点にあるから,特許請求の範囲に記載された発明の構\成のうち,当該発明特有の課題解決手段を基礎付ける部分の完成に寄与した者でなければ,同保護に値する実質的な価値を創造した者とはいい難い からである(知財高裁平成18年(行ケ)第10048号同19年7月30日判決 参照)。
(2) 原告従業員Aiの情報(知見)について
原告は,原告従業員Aiが本件知見1)ないし4)を有しており,これらを被告従業 員等に提供したことから,同人が本件各発明の共同発明者の一人である旨主張する。 しかし,以下に詳述するとおり,これらの知見は,公知技術にすぎないか,具体 的な技術的裏付けを伴わない単なる願望ないし要望にすぎず,本件各発明の特徴的 部分の着想から完成に至る過程への実質的関与と評価し得るものでないから,同人 が本件各発明の共同発明者の一人であることを根拠付ける理由とはならない。 (3) 本件発明1について
ア 本件発明1の目的及び効果並びに従来技術との関係について
本件明細書1の段落【0004】及び【0008】の記載によれば,本件発明1 は,α−GGよりも優れた保湿性を発揮する材料が求められていたこと,α−GG の従来の製造方法は,手間や時間がかかるなど大量生産に適さず,コストが高くな るという問題があったことに鑑みて,発明されたものであり,α−GG単独の場合 よりも保湿性が向上し,大量生産も容易な糖組成物及びその製造方法を提供するこ とを目的としたものであって,本件発明1によれば,α−GG単独の場合よりも保 湿性が向上し,大量生産も容易な糖組成物及びその製造方法を提供できるとされて いる。 他方,前記1の認定事実のほか,特表2005−532311号公報(乙4)に\nよれば,本件出願1がされた平成22年5月10日より前である平成17年10月 27日の時点において,GGを化学合成法によって製造することができること,化 学合成法によるGGの製造の際,グルコースとグリセリンとを酸性触媒を用いて反 応させること,GGを化学合成法により製造した場合,反応物中にグリセリンが残 留すること,GG組成物を保湿剤として用いることについては,いずれも公知であ ったと認められる。
イ 本件発明1−1について
(ア) 本件発明1−1の特徴的部分について
本件出願1の願書に添付した特許請求の範囲(平成25年12月24日付け手続 補正書〔乙1〕による補正後のもの)の請求項1の記載によれば,本件発明1−1 は,1)α−GGとβ−GGとを45〜75:15〜25の質量比で含むこと(以下 「構成1)」という。),2)当該糖組成物中に含まれる全糖の合計量に対するα−GG の割合が58.4〜65.3質量%で,β−GGの割合が21.6〜24.5質量% であること(以下「構成2)」という。)を発明特定事項とするものである。 そして,上記アで説示した本件発明1の目的及び効果並びに従来技術との関係に 照らすと,本件発明1−1は,糖組成物の一種であるGG組成物を保湿剤とするに 当たり,構成1)及び構成2)をともに充足するところの,α−GGとβ−GGの混合 物からなるGG組成物を用いることによって,α−GG単独の場合よりも保湿性の 向上を図ったことを特徴とするものというべきである(本件明細書1の段落【00 08】,【実施例】〔【0031】以下〕)。 そうすると,本件発明1−1は,構成1)及び2)が同発明特有の課題解決手段を基 礎付ける部分であって,これらの構成が同発明の特徴的部分に当たり,同発明のそ\nの余の発明特定事項は,同発明の特徴的部分とは認めらない。 もっとも,糖組成物中のα−GGとβ−GGの量的関係が構成2)を充足する場合, 当然に構成1)を充足することになるから,本件発明1−1の特徴的部分を画定する のは,結局,構成2)であるということになる。
(イ) 本件発明1−1の発明者について
上記(ア)の本件発明1−1の特徴的部分を前提とし,原告従業員Aiが,当該特徴 的部分における技術手段を着想し,かつ,特徴的部分の完成に至る過程に技術的関 与した者といえるかについて検討する。 そもそも,化学合成法によりGG組成物を製造することや化学合成法により得ら れるGG組成物について,原告従業員Aiが何らかの新規かつ具体的な知見を有し ていたことを裏付ける的確な証拠はない。 むしろ,前記1(1)で認定したとおり,原告が被告に化学合成法によるGG組成物 の製造を依頼したのは,原告は,酵素法によりGG組成物を試作していたものの, コスト面での難点があり,他方で,原告が自ら化学合成法によってGG組成物を製 造することは困難であったため,他社に化学合成法によりGG組成物を低価格で大 量生産することを委託することとし,候補とした2社から被告を選択したという経 緯があることからすると,原告従業員Aiは,化学合成法によりGG組成物を製造 することについて,新規かつ具体的な知見を有していたものではなく,したがって, 化学合成法により得られるGG組成物についても,新規かつ具体的な知見を有して いたものではなかったと推認するのが合理的である。 そして,本件明細書1の記載によれば,本件発明1−1における構成2)の数値範 囲は,実施例1ないし3により導き出されたものであることが認められるところ, 前記1の認定事実によれば,これらの実施例は,いずれも被告従業員Aiiを中心と する被告従業員等が実験的に導出し,その効果を確認したものであって,この過程 に原告従業員Aiが実質的に関与したとみることはできない。 そうすると,本件発明1−1の発明者ないし共同発明者と評価され得る者は,被 告従業員Aiiを中心とする被告従業員等のみであって,原告従業員Aiが同発明の 共同発明者の一人であると認めることはできない。
(ウ) この点,原告は,原告従業員Aiがα−GGとβ−GGを一定比率で含有す る組成物からなる保湿剤を着想したとか,被告従業員等に示したHPLCチャート から導き出されたα−GGとβ−GGとの比率が本件発明1−1の構成1)の数値範 囲に含まれていることなどを理由として,原告従業員Aiが本件発明1−1の共同 発明者の一人である旨主張する。 しかし,そもそも,本件発明1−1は,α−GGとβ−GGを含んでなる組成物 のHPLCによる分析方法や,α−GGとβ−GGとをHPLCにより分離する方 法に関する発明ではない。 上記の点をひとまず措くとしても,HPLCチャートのうち,平成20年5月8 日に被告従業員等に示されたもの(甲29の2)は,α−GGとβ−GGのピーク が分離されているとはいえず,この時点で,原告従業員Aiの技術的関与があった とは認められない。
他方,平成21年5月1日に被告従業員等に示された甲30のHPLC分析結果 では,各ピークの裾野はつながっているものの,α−GGとβ−GGのピーク自体 は区別できるが,HPLCの条件及び結果は,本件明細書1記載の実施例について のHPLCとは異なるものである。また,そのα−GGとβ−GGの比率が示され た分析結果(甲31のHPLC分析結果)は,本件訴訟において初めて被告に示さ れたもので,甲30のHPLC分析結果とともに示していないこと,その後,同年 11月13日の時点においても,原告従業員Aiは,被告従業員Aivに対し,α− GGとβ−GGのHPLCによる分離確認方法を問い合わせていること(乙18) からみても,上記の原告従業員Aiの知見や原告による分析結果(甲30,31) により,原告従業員Aiが本件発明1−1の特徴的部分について技術的な関与をし たものとは認めがたい。 もともと,被告従業員Aiiは,原告からGG製造の委託を受けた平成20年5月 8日の時点においても,GG自体は製造したことはなかったものの,類似の物質の 化学合成法によると,α−GGとβ−GGの比率については,概ね7:3になるで あろうということを,それまでの被告における知見や経験から予想していたもので\nあるし,実際に,その後の平成21年12月7日の打合せにおいて,「GCI見解と して,液クロでは判断し難い。NMRで確認した結果,α:β=65:35となる。」 とし,α−GGとβ−GGの比率については,概ね当初の予想どおりの結果をNM\nRで確認しているのである。 原告は,この時点でも,被告従業員等がHPLCによる分析は難しい旨を発言し ていることから,被告にHPLC分析を行う技術力はなく,原告のHPLCによる 分析結果が本件発明1−1に寄与した旨も主張するが,そもそも,HPLCによっ て分析するという分析方法を単に示唆したというだけでは,本件発明1−1につい て,共同発明者の一人とみることができるような技術的関与があったとはいえない ことは明らかであるし,上記のとおり,原告におけるHPLCによる分析も十分な\n結果とはいえない。 そうすると,被告従業員等において,上記経緯を踏まえ,その後も実験,分析を 繰り返した結果,本件出願1に至る平成22年5月10日までの間に,本件明細書 1に記載の実施例に掲げられたHPLC分析の条件及びその結果を見出し,出願に 至ったものと認めるのが相当である。そして,仮に,その際,原告のHPLCによ る分析を参考にしたとしても,そのことをもって評価試験の実施につきその内容の 策定や具体的な条件や結果を獲得する過程に原告従業員Aiが具体的かつ実効的な 貢献をしたものとは評価し難い。したがって,本件発明1−1の構成1)及び構成2) について,原告従業員Aiが技術的に寄与したものとは認められない。

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平成27(ネ)10075  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年11月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 冒認であるとして無効とした原審の認定について、知財高裁はこれを維持しました。被控訴人はアップルです。
 発明者とは,当該発明の特徴的部分,すなわち,特許請求の範囲に記載 された発明の構成のうち,従来技術には見られない部分の完成に創作的に\n寄与した者であると解すべきところ,本件発明において,従来技術には見 られない部分は構成要件Eのみであり,構\成要件FないしHの構成は本件\n出願前の公知技術にすぎないから(後記イないしエ参照),本件発明の特 徴的部分は,構成要件Eの構\成のみである。

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◆原審はこちらです。平成25(ワ)14849

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平成25(ワ)32394  特許を受ける権利帰属確認請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年10月30日  東京地方裁判所

 コンサルタントが共同発明者かが争われました。裁判所は原告の提案は本件発明とは無関係であるとして発明者ではないと認定しました。
 本件発明1−1の特徴的部分は,「補酵素Qを母豚に投与することを特徴とする,豚の分娩成績の改善または出生以降の子豚の成長・生産性を向上させる方法」という特許請求の範囲に記載された構成のすべてであり,とりわけ,従来技術には見られない当該発明特有の課題解決手段を基礎付ける要素は,1)補酵素Qを母豚に投与する方法を採用したことのほか,2)これにより現実に豚の分娩成績の改善又は出生以降の子豚の成長・生産性を向上させるという効果を挙げ得ることを具体的に見いだしたことにあることは,前記のとおりである。
b まず,1)補酵素Qを母豚に投与する方法を採用したことにつき,原告が創作的に寄与したといえるかについて検討する。 原告は,平成21年1月から同年2月にかけて,被告に対し,ウサギ実験1及び同2に関するデータを紹介するなどして,母豚を対象に補酵素Q10を含有する飼料を投与し,新生児の健康改善(死亡率低減)効果を検証する試験の実施を提案している。被告は,前年(平成20年)には,家畜に対する補酵素Q10を含有した飼料の展開可能性を広範囲にわたって具体的に検討していたが,日本国内における豚の生産性向上については,同年12月期の営業会議(飼料分野)において,これまでの実績や試験計画の進展等を考慮して,優先順位として劣るものと評価されており,平成22年(2010年)上期に展開することが予\定されていたところ,原告による提案を契機に,豚の生産性向上に係る被告内部での検討が高まったこと,また,それまでなかなか実現に至らなかった農場等での豚の評価試験の実施について,原告の存在が梃子となって説得力を増し,おおやファームでの評価試験の実施や,ひいては本件各発明の完成に至った部分があることは否定できないというべきである。 しかしながら,前記アにおいて認定したところによれば,母豚を対象に補酵素Q10を投与することにより繁殖成績の改善や生産性向上等の効果を期待できることは,原告による被告への提案に先立ち,既に被告において検討されており,ここにいう繁殖成績の改善や生産性向上には,新生児の死亡率の低減も含まれているものと認められるほか,「補酵素Q10の投与により胎児の抗酸化能が向上する効果が見込まれるところ,豚の新生児の死亡率が高い原因として抗酸化能\が低いことによる酸化ストレス障害が挙げられ,補酵素Q10の投与により抗酸化能を高めることで,死亡率低減効果が期待できること,母豚に補酵素Q10を投与すれば,胎盤又は母乳を通じて胎児又は新生児へ到達するため,新生児の死亡率の低減へつながるのではないか」との効果発生機序についての原告の仮説も,原告が被告に同提案をした時点で,母豚の妊娠初期と妊娠後期に母豚にかかる酸化ストレスが高いこと,補酵素Q10が胎児に抗酸化効果をもたらすこと,補酵素Q10が哺乳動物において母体から胎児に移行すること,補酵素Q10が,ビタミンEに比して,生体内の酸化ストレスを低減する効果を有することがいずれも公然と知られていたことからすれば,原告の提案自体が,従来技術に見られない格別に創作的な技術的思想であると評価することは困難である。\n前記のとおり,必ずしも被告において優先順位が高くなかった豚の生産性向上に関する評価試験の実現を促進したことは,原告による貢献というべきではあるが,どちらかといえば事業上の戦略や計画を推進・実現していく過程への貢献であって,従来技術には見られない課題解決手段(技術的思想)を創作していく過程への貢献とはいえない。 したがって,1)補酵素Qを母豚に投与する方法を採用したことについて,原告が創作的に寄与したとはいえない。
c 次に,原告が,2)これ(補酵素Qを母豚に投与すること)により現実に豚の分娩成績の改善又は出生以降の子豚の成長・生産性を向上させるという効果を挙げ得ることを具体的に見いだしたことについて,原告が創作的に寄与したといえるかについて検討する。 前記アのとおり,本件明細書1及び同2には,おおやファームでの評価試験の結果が,実施例1及び同2として記載されており,同結果は,産子数の向上,白子・黒子率の低下,子豚の哺乳開始数と離乳頭数の増加,増体重など,要するに分娩成績の改善又は出生以降の子豚の成長・生産性の向上に属する成果と認められることからすれば,少なくとも,おおやファームでの評価試験の実施及びその結果が,本件発明1−1の特徴的部分の完成への創作的寄与の根幹を構成することは明らかである。したがって,原告が,おおやファームでの評価試験の実施につき,その内容の策定や結果を獲得する過程に具体的かつ実効的な貢献をしたといえるのであれば,本件発明1−1の特徴的部分の完成に創作的に寄与した者と認める余地がある。
そこで検討するに,原告は,おおやファームでの評価試験の実施について,補酵素Q10の投与量及び投与時期を絞ることが望ましいこと,試験期間を8か月とすること,試験期間中の一定時期に,飼料を全面的に切り替えること,評価項目として出産数,死産数,離乳数のほか,母乳の分析及び飼料中の補酵素Q10の分析を行うことなどを提案し,結果として,これらの多くは,おおやファームでの評価試験の試験計画の概要と大筋において一致しているといえる。 しかしながら,前記アのとおり,当時,豚の繁殖成績を向上させるためには繁殖豚のステージに合わせた飼料管理を要し,妊娠の各ステージにおいて必要とされる栄養上・管理上のポイントが異なることは公知の事実であったこと,被告は,補酵素Q10を含有する飼料の価格政策について,生産性の向上に関連するキーポイントとしては,価格を落とさず,その範囲で可能な配合量で得られる最大限の生産性追求にあると指摘していたことなどからすれば,評価試験の実施において,補酵素Qの投与量及び投与時期を限定してその効果を確認することは当然に検討されるべきことであるし,対照区を限定できないと指摘されたおおやファームにおいて評価試験を行うためには,試験期間中の一定時期に飼料を全面的に切り替えることも,有力な選択肢として当然に検討されるべき事項である。出産数,死産数,離乳数は,豚の分娩成績と出生後の成長・生産性を評価する項目として当然に選択されるべきである。したがって,仮に,原告がこれらの点について被告やおおやファームに先立って提案していたとしても,そのことをもって評価試験の実施につきその内容の策定や結果を獲得する過程に具体的かつ実効的な貢献をしたとは評価し難い。\nまた,母乳中や飼料中に存する補酵素Q10の含有量を分析することは,それ自体が分娩成績の改善又は出生以降の子豚の成長・生産性の向上に属する成果ではなく,試験結果と補酵素Q10との関連性を基礎付けるための補助的な評価項目というべきであるから,原告がこの点を発案していたとしても,そのことをもって評価試験の実施につきその内容の策定や結果を獲得する過程に具体的かつ実効的な貢献をしたものとは評価し難い。 試験期間を8か月に設定した点については,既に認定したとおり,原告が,試験の終了時期と本件契約の期間満了時期を近接させることにより,同契約の更新に係る交渉が容易になるとの考えから提案したものであり,格別の技術的意義を有するものとは認め難いから,この点も評価試験の実施につきその内容の策定や結果を獲得する過程に具体的かつ実効的な貢献をしたものとは評価し難い。 したがって,2)補酵素Qを母豚に投与することにより現実に豚の分娩成績の改善又は出生以降の子豚の成長・生産性を向上させるという効果を挙げ得ることを具体的に見いだしたことについても,原告が創作的に寄与したとはいえない。
d 以上によれば,原告は,本件発明1−1の特徴的部分の完成に創作的に寄与したとはいえないから,本件発明1−1を単独で発明した者とも,被告の従業員らと共同して発明した者であるとも認められない。
(イ) 原告が本件発明1−1の発明者又は共同発明者と認定できない以上,本件発明1−1の構成に加えて,更に発明特定事項を付加した本件発明1−2ないし本件発明1−10を単独で発明した者であるとも,被告の従業員らと共同して発明した者であるとも認められない。
(ウ) 本件発明1−11の特徴的部分は,「補酵素Qを20ppm以上含有する母豚用飼料」との特許請求の範囲に記載された構成のすべてであるが,その理由は,本件明細書1の記載からして,本件発明1−11は,豚の分娩成績の改善又は出生以降の子豚の成長・生産性を向上させるという効果を現実に挙げ得る母豚用飼料中の補酵素Qの含有量を明らかにしたものと認められるという点にある。そして,本件明細書1の記載によれば,かかる効果を現実に挙げうる補酵素Qの含有量は,おおやファームでの評価試験及び全畜連での評価試験によって明らかにされたものと認められる。したがって,おおやファームでの評価試験,全畜連での評価試験の実施及びこれらの試験の各結果が,本件発明1−11の特徴的部分の完成への創作的寄与の根幹を構\成することが明らかである。 しかしながら,原告が,おおやファームでの評価試験の実施につきその内容の策定や結果を獲得する過程に具体的かつ実効的な貢献をしたといえないことは前記のとおりであるし,全畜連は,被告が独自に開拓した試験実施先であって,その評価試験の概要の策定に原告が関与したことを認めるに足りる的確な証拠もないから,原告は,本件発明1−11の特徴的部分の完成に創作的に寄与したとはいえず,本件発明1−11を単独で発明した者とも,被告の従業員らと共同して発明した者であるとも認められない。
(エ) 前記のとおり,本件発明2は,本件発明1との重複を回避し,差別化するために,その方法,投与期間,補酵素Qの含有量を限定したものと認められる。そして,本件発明1の明細書(本件明細書1)に記載がなく,本件発明2の明細書(本件明細書2)に記載されている部分は,ロッセ農場での評価試験の結果を実施例5及び同6として記載した部分であるから,ロッセ農場での評価試験の実施及びその結果が,本件発明2の特徴的部分の完成への創作的寄与の根幹を構成することが明らかである。\nしかるところ,ロッセ農場は,被告が独自に開拓した試験実施先であって,その評価試験の概要の策定に原告が関与したことを認めるに足りる的確な証拠もない(ロッセ農場での評価試験において,7,8回まで妊娠した場合の給餌効果を確認することが検討された点については,原告の提案が反映されている可能性があるが,本件明細書2の記載をもっても,同提案が本件発明2の特徴的部分の完成に寄与したかは判然としないというほかなく,同提案のみをもって,原告がロッセ農場の評価試験の実施に創作的に寄与したとは認め難い。)から,原告は,本件発明2の特徴的部分の完成に創作的に寄与したとはいえず,本件発明2を単独で発明した者とも,被告の従業員らと共同して発明した者であるとも認められない。
(オ) したがって,原告は,本件各発明のいずれについても,当該発明を単独で発明した者とも,被告の従業員らと共同して発明した者であるとも認められない。

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平成26(行ケ)10206  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月24日  知的財産高等裁判所

 珍しい無効理由です。特38条(共同出願要件違反)を理由に無効とした審決が維持されました。
 原告は,仮に,本件設計図を見た後に,Aが放出孔や薬剤袋との位置関係が 課題解決原理であると着想し,具体化したとしても,本件発明の課題解決原理を着 想したのはAのみということになるから,本件発明の発明者はAであると主張する。 確かに,Bが本件設計図において放出孔を外袋の上方に定めたのは,上方に設け た方が衣服に直接かかる二酸化塩素が少なくなり,衣服が漂白されるおそれが少な くなると考えたからであり(前記2(6)),Bは,CL−40の内袋の量について特 段CL−30の内袋の量から変更する必要があると考えていたものではなく(弁論 の全趣旨),本件設計図作成の際に外袋に薬剤袋を封入した試作品を作成したことも, 外袋の放出孔と薬剤袋の厚み方向の位置関係について特段検討したことがあるとも 認められない。また,審判での証言内容をみても,Bが,本件設計図を送信した当 時,外袋と内袋との間に隙間を設け,放出孔を同隙間部分に設けることの技術的意 義について十分に理解していたとは認められない。\nしかし,CL−40はCL−30の改良品という位置づけであるから,CL−4 0の外袋には不織布入りの薬剤袋(内袋)を封入して完成品とすることは当事者の 間で当然の前提となっていたものである。そして,前記のとおり,当時のCL−3 0の薬剤袋(内袋)の規定分包薬剤量は6.5gというCL−40の薬剤袋の規定 分包薬剤量(7g)よりも少ないものであり,本件設計図の外袋を試作し,CL− 30の薬剤袋と同様の薬剤袋を当該外袋に入れさえすれば,製品の下部においては 薬剤の重みと厚みのため内袋と外袋は接しているが,上部においては内袋と外袋の 間に隙間ができ,その部分に放出孔が位置するという発明特定事項hの構成を備え\nた製品となるのである。なお,被告も,本件設計図の作成に先立ち,平成23年3 月7日及び同月22日にはサンプルとしてCL−30をエンブロイから購入してお り(甲39,75),当時の薬剤袋(内袋)の規定分包薬剤量は6.5gであったと ころ,Bは,CL−40においてCL−30と異なる内袋を使用する必要があると の認識をもっていたものではないから,試作品を作成しなくとも,本件設計図の外 袋にCL−30の内袋を封入すれば,上部においては内袋と外袋の間に隙間ができ, その部分に放出孔が位置するということは当然に推測できたものといえる。 そうすると,完成したCL−40の試作品の外袋と薬剤袋との間に隙間があり, その隙間に放出孔が位置するという構成(発明特定事項h)となることに着目し,\n同構成により二酸化塩素の除放を可能\とするという技術的意義自体に気が付き,本 件発明1を完成させたのがAであるとしても,それはBの創作した外袋により生じ た発明特定事項hの構成についての技術的意義を発見したものであり,Aが単独で\n本件発明1の「創作」をしたものとはいえない。そして,Bは,前記のとおり別な 技術的理由に基づき,上記の外袋に構成に想到したとしても,少なくともそのよう\nな構成を具体化する上ではBの着想し,具体化した放出孔の位置が貢献したことに\nなるから,原告の上記主張は,Bが本件発明の共同発明者であることを否定する理 由とはならないというべきである。

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平成25(ネ)10100  特許を受ける権利確認等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年3月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁は、発明者の認定について、地裁の判断を取り消しました。
 前記(1)の認定事実(以下,単に「認定事実」という。)によれば,本件着想及びその具体化に関するAの関与について,概要,次のとおりの事実を認めることができる。 すなわち,1)Aは,平成21年2月ころ,本件基礎出願発明8及び9の特徴的部分であるビニル基導入・放射線照射の着想を得て,放射線には,人工骨の母材であるコラーゲンを劣化させ,強度を低下させる効果もあるが,高密度化したコラーゲン人工骨であれば,放射線による母材劣化の効果は限定的であろうと予想し,新しい研究テーマとして取り組む価値があるものと考えたこと(認定事実ウ),2)Aは,Bら本件共同研究の研究担当者も参加した平成21年6月2日の本件コラーゲン会議において本件着想を発表し,控訴人,被控訴人及び北大の役割分担を含む研究実施体制案を提案したが,本件共同研究第1期の研究内容としては,Aの提案は採用されなかったこと(同オ),3)Aは,本件着想をまず控訴人におけるポリ乳酸の研究において使おうと考え,平成21年度における控訴人の単独研究のテーマとして提案し,採用され,研究を進めた結果,遅くとも平成22年3月ころまでに,ビニル基を導入したリン酸カルシウムとポリ乳酸の複合体にγ線25kGyを照射して行った3点曲げ試験の結果,γ線を照射したものは,曲げ弾性率が 高いこと,すなわち,歪みにくいという強度特性の効果が認められるという知見を得たこと(同カ,ク),4)そこで,Aは,コラーゲン人工骨においても同様に機械的強度が高められるであろうと予想し,同年4月23日,本件共同研究第2期の研究内容として,本件着想をコラーゲン人工骨において具体化することを被控訴人の研究担当者らに提案し,採用され,放射線照射量の最適値を得るための実験をすることになったこと(同ケ),5)Aは,Bから,本件共同研究は,Bの研究室の学生Sの卒論研究を兼ねるため,積極的に指導しながら実験者として使ってほしいとの依頼を受け,Sに対し,本件共同研究に従事するために必要な基礎的な知識を教え,利用する放射線については,高分子の架橋は25kGy以上が普通であること,架橋反応は線量でほぼ決まり,線量率効果はそれほど大きくないことなどを説明した上,放射線照射量の最適値を得るために必要な作業や実験をSに手伝わせることにしたこと(同コ),6)Sは,平成22年10月17日,AとCに対し,ビニル基を導入したリン酸カルシウム/コラーゲン複合体に50kGyのγ線を照射すると,ビニル基を導入していないものに比べて著しく強度が向上した旨の報告をしたこと(同サ),7)Sは,実験条件をめぐってA及びCと意見交換をしながら実験を進めたこと(同シ),8)Sは,平成23年1月11日,AとCに対し,電子線を用いることで母材の劣化効果が抑えられたが,それ以上に界面強化効果が現れなかったこと,また,50kGy以上の照射は母材劣化が著しく強度が低下したことについて報告をし,意見交換をしたこと(同ス),その後,AとCが中心となって,共同発明を前提とした特許出願の準備が進められたこと(同スないしソ),以上の事実が認められる。\nそして,これらの事実に照らしてみれば,本件着想はAによるものであり,その具体化に当たっても,Aは,Cと共に,Sに対し,個別,具体的に指導をし,作業や実験に当たらせていたものであり,その結果,遅くとも平成23年2月初めころまでには,本件基礎出願発明8及び9の特徴的部分が具体的・客観的なものとして構成され,完成に至ったものと認められる。\n

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◆原審はこちら。平成24(ワ)32450

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平成24(行ケ)10280 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月28日 知的財産高等裁判所

 裁判所は、本件発明が何でそれがどの段階で完成しているか検討して、原告の発明者Bの単独発明と認定しました。
 原告は,本件において, B が発明者であることの主張立証責任は,特許権者である被告にあり,原告は,冒認を疑わせる具体的な事情の内容を十分に主張立証していると主張する。なるほど,冒認又は共同出願違反を理由として請求された特許無効審判において,「特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」についての主張立証責任は,形式的には,特許権者が負担すると解すべきであるとしても,「出願人が発明者であること又は発明者から特許を受ける権利を承継した者であること」は,先に特許出願されたという事実により,他に反証がない限り,推認されるものというべきである。本件においては, B は,遅くとも B メールを作成した平成15年11月14日には,本件発明1,6及び7に相当する技術的思想である甲6発明を実質的に知得していたものと認められるから,本件発明1,6及び7に相当する技術的思想を知得した上で先に被告が特許出願したことにより,被告が発明者であること又は発明者から特許を受ける権利を承継した者であることは,他に反証がない限り,推認されるものというべきである。この点に関し,原告は,本件添付ファイルに記載された発明が本件発明であり,本件添付ファイルに記載された発明は A が着想したものであることをもって, Aが本件発明の発明者である旨を主張するものであるところ,本件添付ファイルに本件発明が記載されているとはいえないことは,前記3のとおりであるから,原告のかかる主張立証が有効な反証といえるものでないことは明らかであるし,他に上記推認を覆すに足りる証拠はない。よって,原告の上記主張は,採用することができない。
イ 原告は,本件発明においては,トリガ信号にIDを含めるという着想さえで きれば,それを具体化することは当業者にとっては自明であったとして,トリガ信号にIDを含めるという着想を行った A が本件発明の発明者又は共同発明者の1人に当たると主張する。しかし,発明とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいうから(特許法2条1項),真の発明者又は共同発明者といえるためには,当該発明における技術的思想の創作行為に現実に加担したことが必要である。これを本件についてみると,前記3(1)のとおり,本件添付ファイルには,受信機に送られる「各トリガのID情報」が,「TAG」(IDタグ)に対する信号である「トリガ信号」と同じものを意味する旨の記載やこれを示唆する記載があるとはいえず,したがって,本件添付ファイルには「トリガ信号にIDを含める」ことが記載されているとはいえない。よって,原告の上記主張は,前提において理由がないものである。
さらに,前記1(2)のとおり,本件発明は,トリガ信号発信器が,それぞれ異なる特性を有するトリガ信号を出力するとともに,トリガ信号を受信したIDタグが,受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力することにより,IDタグが,どのトリガ信号発信位置をどのように通過したかを知ることができるものである。すなわち,本件発明は,「トリガ信号にIDを含める」とともに,それを受信したIDタグが,(リアルタイムで)トリガ信号のID情報と,IDタグ自身のID番号を出力することにより,IDタグの現在位置(すなわちトリガ信号が発信されている場所)の把握を可能にするものであり,「トリガ信号にIDを含める」ことのみが,本件発明における課題を解決するための具体的な着想ということはできないから, A が本件発明における技術的思想の創作行為に現実に加担したとはいえない。なお,前記2(1)のとおり,乙5には,IDタグを起動するためのトリガ信号にブース番号を載せることによりトリガ信号の特性を入場者管理装置(トリガ発信器)ごとに異ならせる構成が開示され,トリガ信号にIDを含めることが記載されており,また,乙6にも,「トリガ信号にブース番号と時刻をのせて発信させ,ID固有番号タグはそれを受信してメモリーに記憶させる」など,トリガ信号にIDを含めることが記載されていることに照らすと,トリガ信号にIDを含めることは,被告の先行技術というべきものである。よって,原告の上記主張は,いずれにせよ,採用することができない。\n

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平成24(行ケ)10059 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月13日 知的財産高等裁判所

 共同発明か否かが争われました。裁判所は共同発明でないとした審決を維持しました。
 ある特許発明の共同発明者であるといえるためには,特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち,従前の技術的課題の解決手段に係る部分,すなわち発明の特徴的部分の完成に現実に関与したことが必要であると解される。ところで,特許法123条1項2号は,特許無効審判を請求することができる場合として,「その特許が・・・第38条・・・の規定に違反してされたとき(省略)。」と規定しているところ,同法38条は,「特許を受ける権利が共有に係るときは,各共有者は,他の共有者と共同でなければ,特許出願をすることができない。」と規定している。このように,特許法38条違反は,特許を受ける権利が共有に係ることが前提となっているから,特許が同条の規定に違反してされたことを理由として特許無効審判を請求する場合は,審判請求人が「特許を受ける権利が共有に係ること」について主張立証責任を負担すると解するのが相当である。これに対し,特許権者が「特許を受ける権利が共有に係るものでないこと」について主張立証責任を負担するとすれば,特許権者に対して,他に共有者が存在しないという消極的事実の立証を強いることになり,不合理である。特許法38条違反を理由として請求された無効審判の審決取消訴訟における主張立証責任の分配についても,上記と同様に解するのが相当であり,審判請求人(審判請求不成立審決の場合は原告,無効審決の場合は被告)が「特許を受ける権利が共有に係ること」,すなわち,自らが共同発明者であることについて主張立証責任を負担すると解すべきである。したがって,本件においては,審判請求人である原告が,自らが共同発明者であること,すなわち,本件発明1〜6の特徴的部分の完成に原告が現実に関与したことについて,主張立証責任を負担するものというべきである。\n
・・・・
イ 本件発明1〜3は,「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」により「二重瞼形成用テープ」を構\成することにより,二重瞼を形成するために従来技術において必要とされた細かい作業や慣れを不要とし,皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡が残したりすることなく,簡単にきれいで自然な二重瞼を安全に形成できるというものであるから,本件発明1〜3の上記特徴的部分が完成したといえるためには,「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」によって構\成した二重瞼形成用テープのテープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだを形成したい部分に押し当ててテープ状部材をそこに貼り付け,両端の把持部を離すことによって,弾性的に縮んだテープ状部材がこれを貼\り付けた瞼にくい込む状態になって二重瞼のひだが形成され,二重瞼形成用テープとして使用できることを確認したことを要するものと解するのが相当である。
(3)本件発明4〜6の特徴的部分の完成を基礎付ける事情
ア前記(1)によれば,本件発明4の特徴的部分は,本件発明1又は2の「テープ状部材の両面または片面に引張りによって破断する破断部を有する剥離シートを貼付した」点であると認められる。本件発明5は,本件発明4の破断部を,剥離シートの長手方向略中央に設けられた切欠溝によって形成したものにすぎず,本件発明6は,本件発明4又は5の剥離シートがシリコンペーパー又はシリコンを施したフィルムであるものにすぎず,いずれも,本件発明4の上記特徴的部分を除いて特段の技術的意義を有するものではない。したがって,本件発明5及び6には,本件発明4の上記特徴的部分を除いて特徴的な部分はない。イ本件発明4〜6は,本件発明1又は2を「テープ状部材の両面または片面に引張りによって破断する破断部を有する剥離シートを貼\付した」構成とすることにより,テープ状部材に把持部や離型紙を設けなくてもテープ状部材の粘着材が指や他の物品に付着することがなく,また,当該二重瞼形成用テープを使用する際には,当該二重瞼形成用テープを左右両側に引っ張るだけでテープ状部材が延びた状態で露出することから,本件発明1〜3に係る二重瞼形成用テープよりもさらに使いやすいという点に技術的意義があるものであるから,本件発明4〜6の上記特徴的部分が完成したといえるためには,この技術的意義を確認したこと,すなわち,本件発明1又は2を「テープ状部材の両面または片面に引張りによって破断する破断部を有する剥離シートを貼\付した」構成とした二重瞼形成用テープを引っ張った時には,その長さ方向への引っ張り力に対して,テープ状部材が二重瞼形成のために必要かつ十\分な程度の長さに至るまで延びたままの状態(切れない程度の強度を有している状態)において,剥離シートが破断部において容易に破断しテープ状部材から剥離して,二重瞼形成用テープとして使用する際の使いやすさが向上することを確認したことを要するものと解するのが相当である。
3 本件発明1〜3に係る原告の共同発明者性について
(1)原告の供述の信用性について
原告は,本件発明1〜3の特徴的部分の完成に原告が現実に関与したことを基礎付ける事実として,本件発明1の着想は,平成12年頃,被告が両面テープ(3M社製#1522)をはさみで細く短冊状に切り引っ張った際に両面テープの伸縮性を発見し,化粧品雑貨等への利用方法を原告と協議する中で得られたものであると主張し,原告の供述はこれに沿う。すなわち,原告は,原告本人尋問において,要旨次のとおり供述している。「原告と被告は,平成12年の春頃,プレオ社の玄関の応接室のところで,両面テープ(3M社製#1522)をアイメイク関係で二重瞼に使えるのではないかという話をした。その時点では既に,原告,被告及びAの3人でプレオ社を辞めて新しい会社を作ることが決まっており,もし商品ができた場合は,新会社で商品にしようということを約束していたので,それ以上の話はしていないし,実際に両面テープを瞼に当てるなどの実験はしていない。その後,原告と被告は,この両面テープをどういう商品にするかについて,喫茶店で何回か打合せをしたことがあり,被告の車の中で1回話をしたことがある。被告の車の中で話をした際には,両面テープをどういう商品にするかという話はしておらず,また,両面テープのサンプルも見ていない。被告の車の中で話したことは,新しい会社をどういう会社にするかということである。」しかし,原告の上記供述は,容易く信用することができない。その理由は次のとおりである。
ア本件発明1に係る商品の開発意図について
上記のとおり,原告は,原告本人尋問では,平成12年春頃に原告と被告が本件発明1の着想を得た時点では既に,新たに開発する商品を新会社の商品とすることが決まっていた旨を述べている。しかし,原告は,甲1(審判において提出された原告の陳述書)では,両面テープを利用した二重瞼形成用テープはプレオ社の新商品として開発する予定であった旨を述べている。すなわち,甲1には,要旨以下の記載がある。「詳しい時期は忘れたが,平成12年頃,被告が何かの拍子に両面テープ(3M社製#1522)をはさみで細く短冊状に切って引っ張ったところ,両面テープが長く伸びた。長く伸びた両面テープを見て,被告から「何か新しい化粧品雑貨等に使えないか」という話が出たので,原告と被告とで話を続けているうちに,「二重瞼形成用素材として使えないか」ということになった。当時,プレオ社では,二重瞼を形成するための「液状のり」を取り扱っていたが,二重瞼を作るのに面倒で手間がかかり,売れ行きも良くなく,新商品を開発できないかと二人で話をしていたこともあり,その両面テープで瞼を貼\り付け,二重瞼形成用素材にできないかという話になった。その後も二人でいろいろ話をして,3M社製の両面テープ素材を前提とした二重瞼形成用テープをシリコンシートで挟み込み,伸ばしやすいようにシリコンゴムに切れ目を入れるなどの発明の基本的な骨格ができあがった。もっとも,その後プレオ社の業績が悪くなり,両面テープの開発が具体的に進展することはなかった。平成12年夏頃,プレオ社から原告に対し,会社の業績も悪いことから退職して27もらえないかという話があった。これを聞いた被告とAが原告に同調し,3人でプレオ社を辞めて新たに事業を立ち上げようということになった。平成12年9月の新会社設立当初は,お金を稼ぐことで手いっぱいであったため,「伸びる両面テープによる二重瞼形成用テープ」の開発にすぐに着手することはできなかったが,原告は,近い将来新会社で製造販売することを考えていた。「伸びる両面テープによる二重瞼形成用テープ」の開発について具体的な協議を始めたのは,平成13年1月に至ってからである。」甲1の上記記載によれば,原告が本件発明1の着想を得たとする時点(原告本人尋問によれば,平成12年の春頃)では,原告と被告は,両面テープを利用した二重瞼形成用テープを,売上げ不調のプレオ社の従来商品に代わる新商品としようという話をしたということになる。これに対して,原告本人尋問では,上記のとおり,平成12年の春頃には既に新会社設立の話が決まっており,両面テープを利用した二重瞼形成用テープを新会社の商品とすることは既定の事実であったというのである。原告と被告が平成12年の春頃に両面テープを利用して二重瞼形成用テープとすることを話したという事実は,本件発明1の着想を得たことを基礎付ける事実として原告が主張している事実であるから,着想を得た当の本人であるにもかかわらず,その着想に係る商品をプレオ社のために開発するか新会社のために開発するかという開発意図について,供述が変遷し,相互に矛盾するということは,極めて不自然である。イ新会社の商品とすることが話し合われたか否かについて上記のとおり,原告は,原告本人尋問では,平成12年春頃に原告と被告が本件発明1の着想を得た時点では,両面テープを利用した二重瞼形成用テープを新会社の商品とすることは既に決まっていた旨を述べている。しかし,原告は,甲39(本訴において提出された原告の陳述書)では,平成12年の春頃に原告と被告が上記の話をした正にその際に,両面テープを利用した二重瞼形成用テープを新会社28の商品として開発することを決めた旨を述べている。すなわち,甲39には,要旨以下の記載がある。「具体的な時期は覚えていないが,平成11年の末頃,原告は,プレオ社の社長から退職勧奨を受け,被告とAに相談した結果,3人でプレオ社を辞めようという話になったが,すぐに辞める必要はない,退職金のこともあるから3人で組合を作って交渉しようという話になった。その後,具体的な時期は覚えていないが,平成12年になってから,3人でプレオ社を退職して新会社を作ろうという話になった。最終的には,平成12年夏頃,プレオ社からの退職が具体化した。具体的な時期は覚えていないが,平成12年の春頃,被告が原告の机のところに(当時,原告の席と被告の席は,プレオ社の同じフロアにあった。),はさみで短冊状に切った両面テープ(3M社の#1522)を持ってやってきた。被告は,短冊状に切った両面テープを原告に見せながら,「このテープは引っ張ると伸びるけど,何か新しい商品に使えないだろうか。」という話をしてきた。被告は,「アイメイク品として何かに使えないか」といった話もしていた。その際に,いろいろな話をしている中で,原告と被告のどちらからともなく「両面テープを瞼に貼り付ければ,二重瞼を作るものに使えるのでは?」「二重瞼テープにしよう」ということになった。退職問題が進展している最中のことだったので,「このアイデアはプレオ社には内緒にしておこう」「新会社の商品としよう。」ということになった。」原告と被告が平成12年の春頃に両面テープを利用して二重瞼形成用テープとすることを話したという事実は,本件発明1の着想を得たことを基礎付ける事実として原告が主張している事実であるから,着想を得た当の本人であるにもかかわらず,その着想を得たとする話の際に,その着想に係る商品を新会社の商品として開発することを決めたのか,それとも既に決めていたのかという点について供述が変遷し,一貫しないということは,不自然である。
ウ 平成12年春頃の話をしたとする場所について
上記のとおり,原告は,原告本人尋問では,平成12年の春頃に原告と被告が両面テープを利用して二重瞼形成用テープとすることを話した場所は,プレオ社の玄関の方と述べているのに対し,甲39では,原告の机のところ(当時,原告の席と被告の席は,プレオ社の同じフロアにあった。)と述べている。原告と被告が平成12年の春頃に両面テープを利用して二重瞼形成用テープとすることを話したという事実は,本件発明1〜3の着想を得たことを基礎付ける事実として原告が主張している事実であるから,着想を得た当の本人であるにもかかわらず,その着想を得たとする話をした場所について,供述が一貫しないというのは不自然である。以上のとおり,原告が平成12年の春頃本件発明1の着想を得たとする原告本人尋問における原告の供述は,重要な点において,それ以前に作成された原告の陳述書(甲1,39)の記載内容から変遷しており,一貫しないものであるから,その供述を容易く信用することはできない。したがって,原告の上記主張(本件発明1の着想は,平成12年頃,被告が両面テープ(3M社製#1522)をはさみで細かく短冊状に切り引っ張った際に両面テープの伸縮性を発見し,化粧品雑貨等への利用方法を原告と協議する中で得られたものであるとの主張)は理由がなく,他に,原告が本件発明1〜3の特徴的部分の完成に現実に関与したことを認めるに足りる証拠はない。
(2)原告の供述を前提としても原告が本件発明1〜の特徴的部分の完成に現実に関与したとはいえないこと
仮に,原告と被告が平成12年の春頃両面テープを利用して二重瞼形成用テープとすることを話したという事実があったとしても,原告の供述によれば,その際には,二重瞼形成用テープにしようという話をしただけで,それ以上の話はしておらず,また,実際に両面テープを二重瞼に当てるなどの実験はしていないというのである。また,その後原告は被告と喫茶店で何回か打合せをした旨供べているものの,打合せの具体的な内容については何ら言及されていない上,被告の車の中で1回話をしたことがあるが,そこでも両面テープをどのような商品にするかについての話はしていないというのである。そうすると,原告の供述を前提としても,本件発明1の着想に係る原告の関与としては,平成12年の春頃,原告と被告との間において,伸縮性のあるテープが二重瞼形成用に使えるのではないかといった極めて漠然とした話がされたという程度のものすぎず,この程度の関与は,仮にあったとしても,単なる思いつきのレベルを超えるものではなく,これをもって,本件発明1の特徴的部分が完成したものと認めることはできない。すなわち,前記2(2)のとおり,本件発明1〜3の特徴的部分が完成したといえるためには,「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」によって構\成した二重瞼形成用テープのテープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだを形成したい部分に押し当ててテープ状部材をそこに貼り付け,両端の把持部を離すことによって,弾性的に縮んだテープ状部材がこれを貼\り付けた瞼にくい込む状態になって二重瞼のひだが形成され,二重瞼形成用テープとして使用できることを確認したことを要し,このような確認をすることなく,単に,「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材」を二重瞼形成用テープとして使用することを着想しただけでは足りないというべきである。これを原告の供述に係る原告の関与についてみると,原告は両面テープを二重瞼に当てるなどの実験もしていないというのであるから,原告が,実際に,両面テープによって二重瞼のひだが形成され,二重瞼形成用テープとして使用できることを確認していないことは明らかである。したがって,原告の供述を前提としても,原告が本件発明1〜3の特徴的部分の完成に現実に関与したとはいえない。

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平成22(ワ)2863 特許を受ける権利の確認等請求事件 平成23年10月28日 東京地方裁判所

 冒認を理由に一部の請求項についての特許を受ける権利の帰属の確認を求めました。裁判所は、一部の請求項についても訴えの利益は認められるとしましたが、発明者でないとして請求を棄却しました。
以上に検討したところによれば,本件訴え1によって,本件各発明の特許を受ける権利の帰属を巡る争いから派生して生じるおそれのある将来の紛争を抜本的に解決することが期待できる一方,特許を受ける権利それ自体について給付の訴えを提起することはできないのであるから,本件訴え1には確認の利益が認められるというべきである。
・・・・
 このことからみて,本件発明2−1及び2−3の特徴的部分は,「前記巻戻機の下流側に配されて前記コイル材から巻き戻された前記マグネシウム合金シートを所定温度に加熱する加熱炉」にあるといえる。(イ) 前記のとおり,かかる特徴的部分は,本件発明2−1及び2−3と本件圧延技術の相違点でもあり,本件仕様書に記載された本件圧延設備と本件発明2−1及び2−3に係る圧延設備とでは,巻取機の下流側に配置された加熱炉を有するか否かの点において明らかに構成が異なっているから,本件仕様書の交付のみでは,原告から被告大野ロールに対し,前記本件発明2−1及び2−3の特徴的部分について開示があったということはできないし,ほかに,原告から被告大野ロールに対し,上記特徴的部分について開示があったことを認めるに足りる証拠はない。\n

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平成21(ワ)297 特許権移転登録手続等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年11月18日 大阪地方裁判所

 特許を受ける権利の移転が認めれるかが争われました。裁判所は承継自体が認められないとしましたが、念のため検討するとして、特許法はそのような手続きを予定していないと判断しました。
 原告の被告に対する本件各特1 許権についての移転登録請求は,主張に係る各発明者から,原告あるいは旧デーロスにその特許を受ける権利を承継した事実が認めらず,したがって上記各請求は,その余の判断に及ぶまでもなく理由がないことは上記1で認定判断したとおりであるが,仮に原告が,本件発明1ないし3について,各発明者から特許を受ける権利を承継した事実が認められたとしても,本件の事実関係のもとでは,その請求をそもそも認める余地はないので,以下において念のためその点について判断を示すこととする。(2) すなわち特許を受ける権利を有する者は,特許法の規定に従って,特許出願をして特許登録を受けることにより,特許権者となることができる。特許を受ける権利は,発明と同時に発生し,発明者に原始的に帰属する。この権利は移転することができるから,特許を受けられるのは,発明者又は発明者から特許を受ける権利を承継した者(以下「発明者等」という。)に限られる(特許法29条1項柱書,33条1項)。そして,特許法は,発明者等でない者による特許出願(以下「冒認出願」という。)については拒絶査定すべきこと(同法49条7号),冒認出願に基づいて特許登録がされた場合には特許が無効とされること(特許法123条1項6号)をそれぞれ規定するとともに,発明者等の救済として,冒認出願を先願から除外する規定(29条の2括弧書き,39条6項)及び新規性喪失の例外とする規定(30条2項)を設け,一定の条件の下で発明者等が特許出願することにより特許を受けられる場合があることを規定しているが,これはいずれも冒認出願による特許の無効を前提に,発明者等に別途に特許を受ける方法を残しているにすぎないものである。以上からすると特許法の規定は,冒認出願に基づいて特許権の設定登録がされた場合には,当然には,発明者等が冒認出願者に対する特許権の移転登録手続を求めることはできない規定構造になっているものと解される。\n

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平成21(行ケ)10379 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年11月30日 知的財産高等裁判所

 冒認の主張について、発明者側にあるとの判決もありましたが、この事件では「個別具体的に判断される」として、立証不充分と判断されました。また、偽造ないし変造した証拠や虚偽の陳述ないし証言がされることのないよう,十分に留意・・」と当事者および代理人に対しても付言がなされています。
 当裁判所は,123条6号所定の「特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」について,原告において,立証を尽くしたとはいえないから,本件特許は,無効とすべきものであると判断する。その理由は,以下のとおりである。1 冒認出願に係る事実の主張立証責任ないし主張立証の程度について特許法は,29条1項に「発明をした者は,‥‥‥特許を受けることができる。」旨,33条1項に「特許を受ける権利は,移転することができる。」旨,及び34条1項に「特許出願前における特許を受ける権利の承継は,その承継人が特許出願をしなければ,第三者に対抗することができない。」旨を,それぞれ規定し,特許権を取得し得る者を発明者及びその承継人に限定する。同規定に照らすならば,特許出願に当たり,同要件に該当する事実が存在する旨の主張,立証は,出願人において負担すると解するのが合理的である。このことは,36条1項2号において,願書の記載事項として「発明者の氏名及び住所又は居所」が掲げられ,特許法施行規則5条2項において,出願人は,特許庁からの求めに応じて譲渡証書等の承継を証明するための書面を提出しなければならないとされていることとも整合する。ところで,123条1項6号は,「その特許が発明者でない者であつてその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたとき。」(冒認出願)を,特許無効事由の一つとして挙げている。同規定によれば,「その特許が発明者でない者・・・に対してされたとき」との事実が存在することの主張,立証は,無効審判請求人が負担すると解する余地もないわけではない。しかし,このような規定振りは,同条の立法技術的な理由に由来するものであることに照らすならば,無効事由の一つを規定した123条1項6号が,29条1項における主張立証責任の原則を変更したものと解することは妥当でない。したがって,123条1項6号を理由として請求された特許無効審判において,「特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」についての主張立証責任は,少なくとも形式的には,特許権者が負担すると解すべきである。もっとも,123条1項6号を理由とする特許無効審判における主張立証責任の分配について,上記のように解したとしても,そのことは,「出願人が発明者であること又は発明者から特許を受ける権利を承継した者である」との事実を,特許権者において,すべての過程を個別的,具体的に主張立証しない限り立証が成功しないことを意味するものではなく,むしろ,特段の事情のない限り,「出願人が発明者であること又は発明者から特許を受ける権利を承継した者である」ことは,先に出願されたことによって,事実上の推定が働くことが少なくないというべきである。無効審判請求において,特許権者が,正当な者によって当該特許出願がされたとの事実をどの程度,具体的に主張立証すべきかは,無効審判請求人のした冒認出願を疑わせる事実に関する主張や立証の内容及び程度に左右されるといえる。以上のとおり,正当な者によって特許出願がされたか否かは,発明の属する技術分野が先端的な技術分野か否か,発明が専門的な技術,知識,経験を有することを前提とするか否か,実施例の検証等に大規模な設備や長い時間を要する性質のものであるか否か,発明者とされている者が発明の属する技術分野についてどの程度の知見を有しているか,発明者と主張する者が複数存在する場合に,その間の具体的実情や相互関係がどのようなものであったか等,事案ごとの個別的な事情を総合考慮して,認定すべきである。・・・以上によれば,原告の主張,すなわち,「Cが,本件発明1のうち二つの分離片を備えたC第1発明,C第2発明を発明し,原告が,Cから,これらの特許を受ける権利を譲り受けたものであり,また,原告が,C第1発明,C第2発明をもとに,本件発明1のうち分離片が2より多数のもの及び本件発明2ないし12を発明した」との主張は,極めて不自然であり,採用の限りでない。そうすると,本件において,特許権者である原告は,「特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」について,合理的な立証を尽くしたとはいえない。したがって,本件特許は,123条1項6号に該当し,無効とすべきものであり,同旨の審決の判断に誤りはない。(なお,仮に被告代表者が原告と共同発明者であるとすれば,原告単独による本件特許の特許出願は,38条の規定に違反するものとして123条1項2号の無効理由を有することになるが,いずれの無効理由に該当するかはさておいて,少なくとも,原告がCの発明の特許を受ける権利を譲り受け,また自ら発明した,との原告の上記主張事実について,立証を尽くしたものとはいえない。)。
5 付言
本件無効審判において,双方から提出された証拠中には,改変されたことが明らかな証拠や,立証事実との関係が吟味されていない証拠が,少なからず存在する。例えば,被告から提出されたセイチョウ工業作成の2005年(平成17年)2月7日付け納品書(甲6)には,セイチョウ工業の住所として,「宮城県大崎市・・・」と記載されていた。しかし,セイチョウ工業作成の同年11月30日付け請求書(甲17)には,セイチョウ工業の住所として「宮城県古川市・・・」と記載されており,甲79の1,2によれば,宮城県において,古川市が周辺の町と正式に合併して大崎市となった日は,平成18年(2006年)3月31日であることが認められることに照らすならば,2005年(平成17年)2月7日付け納品書(甲6)の日付については,改変された疑いを免れない。当事者及びその代理人は,審判手続及び訴訟手続において,偽造ないし変造した証拠や虚偽の陳述ないし証言がされることのないよう,十分に留意して,正当な証拠に基づいて,適正な判断を求めることが要請される。\n

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平成21(ワ)184 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年07月09日 東京地方裁判所

 着想やその具体化の過程へ関与していないとして、発明者でないと判断されました。
 発明者とは,発明(自然法則1 を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの〔特許法2条1項〕)を完成させるための精神的作業を行った者をいい,また,発明は,その技術内容が,当該の技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されたときに完成したと解すべきである(最高裁昭和52年10月13日第一小法廷判決・民集31巻6号805頁参照)から,発明者とは,自然法則を利用した高度な技術的思想の創作に関与した者,すなわち,当該技術的思想を当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構\成する創作活動に関与した者を指すというべきである。そのため,当該発明について,例えば,管理者として,部下の研究者に対して一般的管理をした者,一般的な助言・指導を与えた者,補助者として,研究者の指示に従い,単にデータを取りまとめた者若しくは実験を行った者又は発明が完成した後に関与した者等は,発明者には当たらない。また,発明者となるためには,1人の者がすべての過程に関与することが必要なわけではなく,共同で関与することでも足りるというべきであるが,複数の者が共同発明者となるためには,課題を解決するための着想及びその具体化の過程において,一般的・連続的な協力関係の下に,それぞれが重要な貢献をなすことを要するというべきである。以上の観点から,本願発明の内容及び原告の関与の程度を総合考慮して,原告が本願発明の特許請求の範囲の請求項1及び2の発明(以下「本願発明1及び2」という。)の発明者に当たるか否かについて,検討する(本願発明の特徴的部分が特許請求の範囲の請求項1及び2の発明部分にあることは当事者間に争いがない。)。・・・・したがって,原告は,本願発明1及び2の特徴的部分について着想した者ではなく,また,上記(3)キで認定したように,原告が本願発明に関するSi抽出実験を開始したのは,本願発明が完成した●(省略)●より後の●(省略)●であるから,原告は,着想やその具体化の過程へ関与しているということはできず,本願発明の発明者と認めることはできない。なお,原告は,本願発明の完成の過程において,●(省略)●ことにより,本願発明の特徴的部分につき創造的・主体的に貢献したと主張するが,原告が主張する対策は,いずれも本願発明が完成したと認められる●(省略)●以後の同年●(省略)●に実施された実験におけるものである上,いずれも実験方法や実験器具に関することで本願発明1及び2の特徴的部分とは直接関係のないことであるから(上記(2)イ,で認定したように,反応容器の形態は本願発明の必須の条件ではない。),原告主張の上記事実は前記判断を左右するものではない。

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平成21(行ケ)10213 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月27日 知的財産高等裁判所

 新規事項なし、冒認違反無しとした審決が維持されました。
 本件発明は,「有精卵の生死およびその発育状態を,非破壊にて,検査員の判断基準により近く,かつ,確実に判定することを目的としている」(本件明細書【0004】)ものであり,甲10の2の「7.謝辞」欄に,「本研究をすすめるにあたり,評価サンプルや実験場所をご提供頂き,また,目視検査の内容についてご指導を頂きました(財)阪大微生物病研究会観音寺研究所殿の皆様に厚くお礼を申し上げます。」との記載があることに照らすと,甲10の2の記載によって,E及びFが本件発明の発明者でないということはできず,むしろ,微研に所属していたE及びFも本件発明に関与したことが推認される。(2) そして,前記第2,1(2)のとおり,本件特許の願書の発明者の氏名,住所又は居所を変更する手続補正に伴って,被告から,E及びF作成名義の,「本願発明は同人らとA,B,C及びD6名の共同発明であることに相違ない」旨を記載した宣誓書,及びA,B,C及びD作成名義の,「本願発明は同人らとE及びF6名の共同発明であることに相違ない」旨を記載した宣誓書が提出されていることからすると(これらの宣誓書の存在及び内容は,審決第4,5.(2)においても認定されている。甲12の3),本件発明の発明者は,A,B,C,D,E及びFの6名であり,これらの発明者から被告に本件特許の特許を受ける権利が承継されたものと推認される。(3) そうすると,審判において,本件特許の特許権者である被告は,「特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」について主張立証責任を尽くしていたものと認められ,本件特許は冒認出願に対してされたものではないとの審決の判断に誤りはない。

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平成21(行ケ)10213 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月27日 知的財産高等裁判所

 新規事項でない&冒認出願ではないとした審決が維持されました。
,本件当初明細書の【0029】には,「一次判定は,4画像の総血管長と検査領域総面積との兼ね合いによって,正常卵を判定する。」と記載されているところ,「兼合い」とは,「かねあうこと。つりあい。均衡。標準。」(広辞苑第4版(岩波書店))を意味するから,「総血管長と検査領域総面積との兼ね合いによって,正常卵を判定する」とは,総血管長と検査領域総面積とのつりあいがとれているかどうか,又は総血管長と検査領域総面積との均衡がとれているかどうかによって正常卵を判定するという意味と解釈し得る。そして,総血管長と検査領域総面積の「つりあい」又は「均衡」とは,総血管長と検査領域総面積のバランスを意味し,総血管長と検査領域総面積のバランスとは,総血管長と検査領域総面積の「割合」を意味することといえる。そうすると,本件当初明細書には,「前記検査領域面積に占める総血管長の割合」に基づいて正常卵を判定することが記載されていたということができる。ウ したがって,本件発明2に係る本件補正は,本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてされたものである。・・・・冒認出願による無効事由の成否に関し,「特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」についての主張立証責任は,特許権者が負うと解すべきである。そこで,特許権者である被告がその主張立証責任を尽くしたかについて検討する。ア原告は,「有精卵の検卵装置に関する経過説明」(甲9の1),「設備見積仕様書」(甲21),「検卵機開発経過報告書」(甲24の2)によれば,本件発明の発明者が原告であることは明らかであると主張する。そして,甲9の1,甲21,甲24の2によれば,平成13年9月15日,株式会社T 種鶏孵化場(以下「T 種鶏孵化場」という。)の代表取締役である原告が,熊本アイディーエムの代表\取締役であるGと検卵機の開発について打合せをし,熊本アイディーエムに検卵機の試作品や設計図の作成を依頼し,その後の交渉を経て,平成14年10月8日,熊本アイディーエムがT 種鶏孵化場に対して設備見積仕様書(甲21)を提出したことが認められる。しかし,上記の書証によっても,原告らが開発していた検卵の方法や検卵機が本件発明に該当するものかどうか明らかではなく,本件発明の発明者が原告であるとは認められない。イまた,原告は,D,C,A及びB作成名義の「有精卵の検査手法」と題する書面(甲10の2)の「6.まとめ」欄及び「7.謝辞」欄の記載から,E及びFは本件発明の発明者ではないと主張する。しかし,本件発明は,「有精卵の生死およびその発育状態を,非破壊にて,検査員の判断基準により近く,かつ,確実に判定することを目的としている」(本件明細書【0004】)ものであり,甲10の2の「7.謝辞」欄に,「本研究をすすめるにあたり,評価サンプルや実験場所をご提供頂き,また,目視検査の内容についてご指導を頂きました(財)阪大微生物病研究会観音寺研究所殿の皆様に厚くお礼を申し上げます。」との記載があることに照らすと,甲10の2の記載によって,E及びFが本件発明の発明者でないということはできず,むしろ,微研に所属していたE及びFも本件発明に関与したことが推認される。そして,前記第2,1 のとおり,本件特許の願書の発明者の氏名,住所又は居所を変更する手続補正に伴って,被告から,E及びF作成名義の,「本願発明は同人らとA,B,C及びD6名の共同発明であることに相違ない」旨を記載した宣誓書,及びA,B,C及びD作成名義の,「本願発明は同人らとE及びF6名の共同発明であることに相違ない」旨を記載した宣誓書が提出されていることからすると(これらの宣誓書の存在及び内容は,審決第4,5. においても認定されている。甲12の3),本件発明の発明者は,A,B,C,D,E及びFの6名であり,これらの発明者から被告に本件特許の特許を受ける権利が承継されたものと推認される。そうすると,審判において,本件特許の特許権者である被告は,「特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」について主張立証責任を尽くしていたものと認められ,本件特許は冒認出願に対してされたものではないとの審決の判断に誤りはない。

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平成21(ワ)1652 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年02月18日 大阪地方裁判所

 一部の共同研究者が出願した行為について、不法行為に基づく損害賠償が認められました。  被告各出願に係る明細書に,本件作業の結果が記載されているが,原告らは,被告らが,原告らに無断でこれを盗用したと主張する。しかしながら,前記1(1),(2)のとおり,本件作業は,本件共同研究の中で,その目的達成に向けて,これに携わるメンバーが分担して行った作業のひとつであるところ,通常,共同研究においては,各人の担当した作業に係る個々の研究成果は,原則として,共同研究チーム全体の研究成果であり,共有になると考えるのが相当である。そして,本件において,本件作業の結果を,例外的に原告会社や原告P1個人に単独で帰属する研究成果とすることが相当であるような事情は窺われない。したがって,本件共同研究チームのメンバーである被告P2及び同P3が,本件共同研究に係る特許出願に関し,本件作業の結果を利用すること自体を,盗用であって不法行為としての違法性を有する行為であるとはいえない。前記イ,ウからすれば,本件マウス抗体は,被告出願1に係る発明そのもの,あるいは被告出願2に係る発明の出発点であって,特許請求の範囲の記載から認められる技術的思想の実現に不可欠なものといえるから,本件マウス抗体を取得することは,被告各出願に係る発明の創作行為部分に該当すると認められる。そして,本件マウス抗体は,原告P1が本件作業の中で取得したものであり,同作業においては,本件共同研究における抗体作製の責任者として携わっていることや,最初のキメラ化,ヒト化候補の選択は,公知技術を利用したとはいえ,一定程度の原告P1の裁量が介在していることが窺えること,抗体の絞り込みにはP3法の貢献が大きかったとはいえ,それだけで,最終的な選択を行ったわけではなく,原告P1を含めた共同研究の参加者の意見を集約して選択が行われたことなどの事情(甲7の1〜4,甲8の1〜4,乙8,弁論の全趣旨)も併せ考えると,原告P1は,被告各出願に係る発明の発明者の1人であると認められる。・・・また,P4は,原告P1について,「抗体の作製を担当しているという話しは聞いたが,その立場についてはよく分からなかった,本件共同研究の中心的な立場の方ではなかったという認識であった。」旨供述するが(乙8),この供述をもって,原告P1を単なるテクニシャンであると認定することはできない。むしろ,一方で,原告P1は,開発会議に出席し,重要な意思決定や方針決定に参加し,原告出願にあたり,被告P3らとともに,明細書原稿の送付を受け,意見を求められたりしていたことが認められる(甲10〜12,21,甲23の1〜3,甲24,甲25の1・2,乙8)。これらの情報のやりとりは,原告会社においていろいろな調整役を果たしていたと考えられるP11が送付しているが,その対象者は,原告P1とP4以外には,本件共同研究の中心的メンバーである被告P3,P6に加え,原告会社代表者であるP7,原告会社取締役のP12(記録上明らか),特殊免役研究所の代表\者で,当時,原告会社の代表者に就任が予\定されていたP8(甲21)であった。さらに,原告出願にあたり送付された上記明細書原稿に願書原稿が添付されており,原告P1とP4の氏名が発明者として記載されていたが,そのことについて,これらの資料の送付を受けた共同研究者のメンバーの誰かが異議を述べたような事情は窺えない。これらの事情を総合すると,原告P1は,本件共同研究において,抗体作製に関する責任者として,主体的に関与していたと認めることができる。

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◆平成20(行ケ)10429 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月29日 知的財産高等裁判所

 冒認であることの立証責任は、出願人にあるとして、特許が無効と判断されました。
  「特許法は,29条1項に「発明をした者は,‥‥‥特許を受けることができる。」と,33条1項に「特許を受ける権利は,移転することができる。」と,34条1項に「特許出願前における特許を受ける権利の承継は,その承継人が特許出願をしなければ,第三者に対抗することができない。」と,それぞれ規定していることから明らかなとおり,特許権を取得し得る者を発明者及びその承継人に限定している。このような,いわゆる「発明者主義」を採用する特許制度の下においては,特許出願に当たって,出願人は,この要件を満たしていることを,自ら主張立証する責めを負うものである。このことは,36条1項2号において,願書の記載事項として「発明者の氏名及び住所又は居所」が掲げられ,特許法施行規則5条2項において,出願人は,特許庁からの求めに応じて譲渡証書等の承継を証明するための書面を提出しなければならないとされていることによっても,裏付けられる。ところで,123条1項は特許無効審判を請求できる場合を列挙しており,同項6号は,「その特許が発明者でない者であつてその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたとき。」(冒認出願)と規定する。同規定を形式的にみると,「その特許が発明者でない者・・・に対してされたとき」との事実につき,無効審判請求人において,主張立証責任を負担すると読む余地がないわけではないが,このような規定振りは,あくまでも同条の立法技術的な理由に由来するものであって,同規定から,29条1項等所定の発明者主義の原則を,変更したものと解することは妥当でない。したがって,冒認出願(123条1項6号)を理由として請求された特許無効審判において,「特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」についての主張立証責任は,特許権者が負担すると解すべきである。もっとも,冒認出願(123条1項6号)を理由として請求された特許無効審判において,「特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」についての主張立証責任を,特許権者が負担すると解したとしても,そのような解釈は,すべての事案において,特許権者において,発明の経緯等を個別的,具体的に主張立証しなければならないことを意味するものではない(むしろ,先に出願したという事実は,出願人が発明者又は発明者から特許を受ける権利を承継した者であるとの事実を推認する重要な間接事実である。)。特許権者の行うべき主張,立証の内容,程度は,冒認出願を疑わせる具体的な事情の内容及び無効審判請求人の主張立証活動の内容,程度がどのようなものかによって大きく左右される。仮に無効審判請求人が,冒認を疑わせる具体的な事情を何ら指摘することなく,かつ,その裏付け証拠を提出していないような場合は,特許権者が行う主張立証の程度は比較的簡易なもので足りる。これに対して,無効審判請求人が冒認を裏付ける事情を具体的詳細に指摘し,その裏付け証拠を提出するような場合は,特許権者において,これを凌ぐ主張立証をしない限り,主張立証責任が尽くされたと判断されることはないといえる。そして,冒認を疑わせる具体的な事情の内容は,発明の属する技術分野が先端的な技術分野か否か,発明が専門的な技術,知識,経験を有することを前提とするか否か,実施例の検証等に大規模な設備や長い時間を要する性質のものであるか否か,発明者とされている者が発明の属する技術分野についてどの程度の知見を有しているか,発明者と主張する者が複数存在する場合に,その間の具体的実情や相互関係がどのようなものであったか等,事案ごとの個別的な事情により異なるものと解される。」

◆平成20(行ケ)10429 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月29日 知的財産高等裁判所

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    ◆平成20(行ケ)10428
    ◆平成20(行ケ)10427

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◆平成19(行ケ)10278 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年09月30日 知的財産高等裁判所

   共同出願違反(38条)を理由に無効とした審決を維持しました。
 「発明とは,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいい(特許法2条1項),「産業上利用することができる発明をした者は,・・・その発明について特許を受けることができる」と規定されている(同法29条1項柱書き)。そして,発明は,その技術内容が,当該の技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されたときに,完成したと解すべきである(最高裁昭和52年10月13日第一小法廷判決民集31巻6号805頁参照)。したがって,発明者とは,自然法則を利用した高度な技術的思想の創作に関与した者,すなわち,当該技術的思想を当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構\成するための創作に関与した者を指すというべきである。もとより,発明者となるためには,一人の者がすべての過程に関与することが必要なわけではなく,共同で関与することでも足りるというべきであるが,複数の者が共同発明者となるためには,課題を解決するための着想及びその具体化の過程において,発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したことを要する。そして,発明の特徴的部分とは,特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち,従来技術には見られない部分,すなわち,当該発明特有の課題解決手段を基礎付ける部分を指すものと解すべきである。上記の観点から,「本件各発明の内容」及び「本件各発明に関与した者の関与の程度」を総合考慮して,被告の従業者であるMが本件各発明の共同発明者の一人に該当するか否かを考察する。・・・・以上認定した事実によれば,本多エレクトロンは本件ウエーハエッジ検査装置の開発を行なったが,その過程で,被告に対して,平成12年9月末ころに上記装置の共同開発を,同年10月20日にはノッチ部の検査手法の検討を,それぞれ依頼したこと,これに対して,被告の担当者であるMは,本多エレクトロンに検討結果を報告し,同年12月11日に本件発明1が含まれる仕様書(甲11)をいったん作成,提供したが,その後も仕様変更を行なう等して実験を継続し,その結果仕様変更前の構\成が相当であるとの認識を持ち,平成13年3月26日に本件各発明が記載された仕様書(甲26)を作成して,これを本多エレクトロンに宛てて提示したものであり,本件発明1は,この時点又はそれ以降に完成したというべきである。以上の経緯及び後記(2)における認定判断に照らすならば,本件発明1の発明者にMが含まれることは明らかである。そして,本件発明2ないし35は,いずれも本件発明1を含むものであるから,結局,本件各発明の発明者にMが含まれることも明らかである。」

◆平成19(行ケ)10278 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年09月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(ネ)10037 損害賠償請求控訴事件 特許権民事訴訟 平成20年05月29日 知的財産高等裁判所

 発明者の認定について争われました。知財高裁は、「原告が発明者である」とした認定を取り消しました。
 「しかし,化学分野においては,ある特異な現象が確認されたとしても,そのことのみによって直ちに,当該技術的思想を当業者が実施できる程度に具体的・客観的なものとして利用できることを意味するものではないというべきであり,その再現性,効果の確認等の解明が必要な場合が生ずることに鑑みると,たとえ第3報告書記載の本件多孔化技術が,本件請求項1,2を含むものであったとしても,第3報告書において多孔性現象が確認された段階では,いまだ,当業者が実施できる程度の具体性,客観性をもった技術的思想を確認できる程度に至ったというべきではない。したがって,原告が,Mによる,第3報告書における本件多孔化技術の確認に対して,何らかの寄与・貢献があったからといって,そのことが,直ちに,原告が発明者であると認定する根拠となるものではない。(3) 本願発明の発明者前記1及び2(2)で認定した事実によると,本願発明は,Mが,白金坩堝を使用して750℃まで加熱した際に多孔性現象を発見したことが端緒となったこと,Mは,前記多孔性現象の効果及び有用性などを確認し,検証するために,被告の指導を受けながら,水熱ホットプレスをする条件等を変え,実験を重ねて,有用性に関する条件を見いだし,その結果に基づいて,本件修士論文を作成したことが明らかである。本願発明と前記1で認定した本件修士論文の内容とを対比すると,本件修士論文には本願発明のすべての請求項について,その技術的思想の特徴的部分が含まれているので,遅くともMが本件修士論文を作成した時点において,当業者が反復実施して技術効果を挙げることができる程度に具体的・客観的な構成を得たものということができ,本願発明が完成したものということができる。原告は,Mは原告の研究を補助したにすぎず,本願発明に係る実験を遂行するだけの能\力はなかったと主張し,原告の陳述書(甲20,29,30)にも同旨の記載がある。しかし,前記認定のMの経歴,すなわち,来日前のコロンビアでの講師及び研究員,来日後の研究生及び研修生としての経歴からみて,ガラス,セラミックス等の無機化学だけでなく,有機化学を含む化学全般の専門知識と実験経験を有しており,十分な研究能\力を有していると認められる。そしてたとえ,研究を開始した時点において,水熱分野についての知識は乏しかったとしても,自ら水熱分野の専門知識を取得することは困難ではないといえる。したがって,Mの当時の地位を理由に同人が本願発明の発明者ではないということはできない。なお,Mは当時,自らの修士論文の作成作業と平行して本件実験を行なっていたものであるが,前記1で認定したとおり,修士論文の作成作業はほとんど進んでおらず,被告に相談の上,その課題を変更したものであるから,本件実験に相当の時間と労力を費やしていたことは容易に推認できるところであり,上記をもってMが発明者でないことを何ら基礎付けるものとはいえない。」

◆平成19(ネ)10037 損害賠償請求控訴事件 特許権民事訴訟 平成20年05月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10369 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月07日 知的財産高等裁判所

 共同発明の発明者1名が欠落した出願であるので、「本件特許を無効とすべきものとすることができない」とした審決を取り消しました。
  「本件特許発明は,既存の機器を利用しているのであって,開発の中心は各機器の接続関連のハード面と全体の機能を制御するソ\フト面の開発にあり,この中心的な開発作業を行ったのが【CC】であったから,【CC】が本件特許発明の共同開発者であることは明らかである。被告の主張は,単なる着想が発明に当たるという独自の見解を前提とするものであり,失当である。」

◆平成18(行ケ)10369 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月07日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(ワ)1623 実用新案権確認反訴請求事件 実用新案権民事訴訟 平成19年07月26日 東京地方裁判所

  実用新案登録を受ける権利の共有者が、単独名義で登録したと主張して,共有持分を2分の1とする共有持分権移転登録手続を請求しました。裁判所は、これを認めませんでした。
  「実用新案法は,考案者がその考案について実用新案登録を受ける権利を有するとし(法3条1項柱書),また,冒認出願は先願としては認めず(法7条6項),冒認出願者に対して実用新案登録がされた場合,その冒認出願は無効理由となる(法37条1項5号)と規定している。また,法は,考案者が冒認出願者に対して実用新案権の移転登録手続請求権を有する旨の規定をおいていない。そして,実用新案権は,出願人(登録後は登録名義人となる。)を権利者として,実用新案権の設定登録により発生するものであり(法14条1項),たとえ考案者であったとしても,自己の名義で実用新案登録の出願をしその登録を得なければ,実用新案権を取得することはない。このような法の構造にかんがみれば,法は,実用新案権の登録が冒認出願によるものである場合,実用新案登録出願をしていない考案者に対し実用新案登録をすることを認める結果となること,すなわち,考案者から冒認出願者に対する実用新案権の移転登録手続請求をすることを認めているものではないと解される。」

◆平成19(ワ)1623 実用新案権確認反訴請求事件 実用新案権民事訴訟 平成19年07月26日 東京地方裁判所

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◆平成17(ワ)8359等 損害賠償請求事件 その他民事訴訟 平成19年03月23日 東京地方裁判所

 共同発明者として記載されなかったことを理由に、不法行為に基づく損害賠償請求と、発明者名誉権の侵害に基づく慰謝料が請求された事件です。裁判所は、前者については認めず、後者については、学会発表による名誉も考慮して、計100万円の損害を認定しました。
 「発明者は,発明完成と同時に,特許を受ける権利を取得するとともに,人格権としての発明者名誉権を取得するものと解される。また,上記?A及び?Bのとおり,願書及び公開特許公報に発明者の氏名等を掲載すべきとされていることは,発明者名誉権を具体化した規定であると解されること,出願に係る発明につきたとえ特許がされても,後に無効審判請求等によって無効とされる可能性があることを考慮すると,特許要件ないし無効理由の有無によって発明者名誉権の保護の有無を決することは,同権利の保護を不安定なものにするものというべきことなどを考えると,いまだ登録されず,出願手続が特許庁に係属中のものであっても,又は当該出願に係る発明が特許要件を満たさない可能\性があるとしても,発明者名誉権の法的保護は及ぶと解すべきである。これに反する被告の主張は,採用することができない。」

◆平成17(ワ)8359等 損害賠償請求事件 その他民事訴訟 平成19年03月23日 東京地方裁判所

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◆H18. 1.19 知財高裁 平成17(行ケ)10193 特許権 行政訴訟事件

 冒認を理由とする無効審決が争われました。事情は複雑ですが、知財高裁が、冒認を理由とする無効については特許権者に立証責任があると判断しました。
  「当該特許が特許法29条1項の規定に違反してされたという無効事由(特許法123条1項2号)を例にとれば,特許法29条1項の規定に照らし,同項柱書の発明の完成を含めた産業利用可能性につき特許権者が主張立証責任を負担し,同項各号の該当性,すなわち公知,公用,文献公知につき無効審判請求人が主張立証責任を負担することとなる。また,当該特許が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたという無効事由(特許法123条1項4号)については,特許法36条4項1号の規定に照らせば,願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十\分に記載したものであることを特許権者において主張立証しなければならない。そして,特許法123条1項6号の規定する無効事由については,上記(1)に判示した理由により,特許出願が当該特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたことを,特許権者において主張立証しなければならないものというべきである。」

◆H18. 1.19 知財高裁 平成17(行ケ)10193 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 3.10 東京地裁 平成16(ワ)11289 特許権 民事訴訟事件

 冒認出願を理由に権利行使不能と判断されました。
  「上記アにおいて認定した事実を前提とすると,原告Aは,被告に対し,第1回打合せ時において,小型マンホールでの使用のため装置の大きさを小さくすること,表示パネルを分離して遠隔操作で本体を操作すること,管内での固定方法を検討して欲しいと要望しただけであり,その後,被告において,以前に被告が製造販売していたパイプレーザは電源を外部に求めていたこと,被告の製品である「TP−L2」の小型化に際し,電池収納部を取り外して小型化した経験があったことなどから,被告が既に製造販売していた製品「TP−L3」の電源部を照射機構\部分から別体化する方法で小型化することに想到したものである。また,前記(1)に認定の事実関係に照らせば,本件特許発明1の本質ともいうべき構成は,本件特許権の出願経過にかんがみると,「レーザ照射機構\から少なくともレーザ照射部を分離して小口径マンホールを通過する大きさとして,この分離したレーザ照射部のみを小口径マンホールを介して敷設パイプ類内に設置可能とした」点にあるということができるところ,この点に関しては,原告Aが,第1回打合せ時に提案したものとはいえず,被告従業員が発明者というべきである。そうすると,本件特許発明1は,特許法123条1項6号の「発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してなされたもの」というべきで,無効理由を有することが明らかである。」

◆H17. 3.10 東京地裁 平成16(ワ)11289 特許権 民事訴訟事件

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 >> 104条の3

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◆H14. 8.27 東京地裁 平成13(ワ)7196 特許権 民事訴訟事件

化関係の発明者の認定について判断がなされました。他の分野でも参考になるかもしれません

「仮に本件発明に何らかの特許性を認め得るとすれば,それは,「本発明において,結晶セルロースは,‥‥‥60重量%以上用いることが特に好ましい。」(本件明細書段落【0012】)という点,すなわち,「結晶セルロースの含有量が60重量%以上であることを特徴とする」(特許請求の範囲【請求項2】)という点にあるというべきである。しかるに,この点は,原告が着想したものではない(原告自身も,本人尋問において,結晶セルロース(アビセル)を多量に使用する点はBからサジェスチョンがあったこと,結晶セルロースが多いと細粒収率が劇的に向上するという報告をBから受けていたことを述べている〔原告本人尋問調書59頁〕。)。賦形剤として,このように多量の結晶セルロースを用いるという着想は,深江工業での実験において,賦形剤である結晶セルロース(アビセル)を,69重量%という従来例に比して格段に多量に処方した場合に,真球度の高い細粒核を高収率で造粒できたことによって,得られたものと認められるが,前記認定のとおり,同実験において,結晶セルロース(アビセル)を69%用いたこと,アジテーター及びチョッパーの回転速度を前記認定のように設定したことは,いずれも深江工業の専門技術者であるEの発案に基づくものであった。これらの事情に照らせば,本件発明について,もっとも大きな寄与をしたのはEであって,本件発明については,Eの発明又はEとBの両名による共同発明ということはできても,原告が共同発明者の1人として関与したということはできない。」

 

◆H14. 8.27 東京地裁 平成13(ワ)7196 特許権 民事訴訟事件

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