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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

翻案

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

令和1(ワ)10940  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和6年1月29日  大阪地方裁判所

プログラムの著作物性は認められましたが、複製・翻案については同意があったと認定されました。一方、氏名表示権侵害として10万円が認められました。\n

ア 本件プログラム1は、マンロック(高圧室作業場所への作業員の出入り用 気密扉)内の気圧、二酸化炭素濃度等を記録するペーパーレスレコーダー(最 大10機)を集中管理(レコーダーで記録された情報を遠隔地のパソコンで\nリアルタイムに表示し、データを蓄積するとともに閾値を超えた場合は警告\nを発することが可能)するシステムプログラムであり、統合管理画面(メイ\nンフォーム画面)、個々のレコーダーの監視画面(レコーダーフォーム画面。 表示形式はレコーダーと同様。)、レコーダーの通信ルーチン、データベース\n(レコーダーの情報を集積する部分)などを構成要素とするものである。(甲\n28、弁論の全趣旨)
この点、画面構成や、レコーダーのデータをどのように扱うかについては、\nプログラムの目的、環境規制の態様、ハードウェアやオペレーティングシス テムなどに由来する制約等により、表現の選択の余地の乏しいものもあると\n考えられるが、データ処理の具体的態様(クラス、サブルーチンの利用等の 構造化処理を含む)、レコーダーとの通信プロトコルの選択及びそれに応じ\nた実装、データベース化の具体的処理手順などについて、各処理の効率化な ども意識してソースコードを記述する過程においては、相応の選択の幅があ\nるものと認められる。
イ 原告は、このような選択の幅の中から、データ処理の態様を設計した上、 A4用紙で約120頁分(1頁あたり60行程度。以下同様)のソースコー\nドを作成したことからすると、ソースコード(甲28)の具体的記述を全体\nとしてみると、本件プログラム1は、原告の個性が反映されたものであって、 創作性があり、著作物であるということができる。
ウ 被告は、本件プログラム1のソースコードの多くの記述が公開されたサン\nプルプログラムであり、単純な作業を行う機能の複数の記述であり、計測上\nの管理基準に対応させた記述の順序や組合せであるから、ソースコードの記\n述に創作性はない旨を主張する。しかし、ソースコードに既存のサンプルが\n含まれることについて的確な立証はない上、仮にそのような記述が含まれる としても、プログラム全体としての創作性を直ちに否定するものともいえな いから、被告の主張は採用できない。
・・・
前提事実及び認定事実によると、本件各プログラムの中には、明示的に 異なる現場で用いることを前提とする仕様が採用されたものがあること、 本件各プログラムはいずれも発注の原因となった現場と異なる現場で用 いることについてプログラムの仕様上の制限はないとうかがわれること、 原告自身、一つの現場が終了したと見込まれる後も、プログラムの修正に 応じるなどしていること、原告自らソースコードを納品したものもあるこ\nとに加え、原告が、平成2年に独立した後、多数回にわたって被告から依 頼されたプログラムを制作、納品し、平成20年12月から平成21年4 月までの間は、被告に採用されてプログラム制作業務に従事していたこと からすれば、計測業務における被告のプログラムの利用実態(プログラム を一つの現場で利用するだけでなく他の現場においても複製、変更又は改 変(カスタマイズ)して利用していたことを含む。)から、自己が制作して 納品したプログラムが被告により複数の現場で利用され得ることを認識 していたものとみられることが認められる。これらの本件においてうかが われる事情からすると、本件各プログラムの開発に係る各請負契約におい て、成果物が、少なくとも被告の内部で使用される限りにおいては、他の 現場における使用や改変を許容する旨の黙示の合意があったものという べきである。
・・・
(1) 氏名表示権が侵害されたか(争点3−3、5−2)及び被告に故意又は過失\nがあったか(争点3−4、5−3)
ア 本件プログラム3(争点3−3、3−4)
前記前提事実のとおり、本件プログラム3を複製、変更した被告プログラ ム3の起動画面やバージョン表示画面においては、被告の社名が表\示され、 原告の氏名は表示されていない(甲9)。そして、本件プログラム3と被告プ\nログラム3を比較すると、ソースコードの大部分において同一であり、被告\nプログラム3には本件プログラム3に時間率評価機能を果たす計算処理や\ndB値の時系列変数の計算処理の機能が追加された点において相違するが\n(甲8の3)、この相違点から被告プログラム3が本件プログラム3と別個 のプログラムであるということはできない。 したがって、被告による上記表記により、本件プログラム3について、原\n告の氏名表示権が侵害され、その態様から、被告に故意があったと認められ\nる。
・・・
(3)損害の有無及び額(争点3−5、5−4)
(1)の被告の行為により原告の被った損害は、本件に顕れた一切の事情を考 慮し、10万円と認め(なお、原告は、本件プログラム5についての氏名表示\n権侵害固有の損害を主張しないが、弁論の全趣旨から、相当の損害賠償を求め る趣旨と解される。)、被告は、相当因果関係のある弁護士費用1万円を加えた 11万円及びこれに対する遅延損害金を支払う義務を負う。

◆判決本文

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令和5(ワ)6100  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和6年1月30日  大阪地方裁判所

X(旧Twitter)にて、アカウントのアイコンを一部変形して、第三者が使用したことが氏名権、著作権などを侵害するとして、15万円の損害賠償が認められました。

(1) 氏名権侵害について
氏名は、個人の人格の象徴であり、人格権の一内容を構成するものというべきで\nあるから、人は、その氏名を他人に冒用されない権利を有する。 前提事実(3)並びに証拠(甲5〜9)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、本件 アカウントを通じて本件各投稿を行っているところ、本件投稿1では、本件アカウ ントにおける名前(原告の氏名である「P1」)及びユーザー名(原告が経営する 法人グループの総称である「(省略)」)が表示されており、本件投稿2ないし4\nでは、「P1」がリツイートした旨が表示されていることに加え、所定の操作によ\nり本件アカウントにおける名前等が表示されることが認められ、本件各投稿に接し\nた閲覧者は、投稿者として原告の氏名を認識するものと認められるから、被告は本 件各投稿において原告の氏名を冒用したといえる。したがって、本件各投稿は、原 告の氏名権を侵害する。 被告は、本件アカウントのプロフィール欄には「フィクションのため実在の人物 とは一切関係がございません」と記載されているから、閲覧者は、実在の人物とは 関係がないとの結論に至り、原告本人ではないと認識をする可能性がある旨を主張\nする。しかし、閲覧者は、アカウントに表示された氏名やユーザー名によって投稿\n者を特定するものと解されるから、被告指摘の記載があったとしても、閲覧者は、 原告がその旨を記載していると理解するにすぎず、前記判示に影響を与えるもので はない。被告の前記主張は採用できない。
(2) 本件著作権の侵害について
著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美\n術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)をいう。 本件イラストは、P3氏が、ツイッター上の交流において原告を表すためにふさ\nわしいイラストとして制作したものであり、腹ばいになるアザラシの様子をイラス トにし、その下部に「(省略)」と記載したものであるところ、全体的に丸みを帯 びた輪郭で、頭部を大きくし、ヒレを頭部付近に小さく描くことにより、親しみや すくかわいらしい印象を与えている点、大きな頭部いっぱいに両目、鼻及び口を描 くことでアザラシの表情に存在感を与えている点、これらに「(省略)」という表\ 記を欧文字で加えることで、その性格(原告の人柄)を示しつつイラストとしての 一体感を感じさせる点において、選択の幅がある中から作成者によってあえて選ば れた表現であるということができる。したがって、本件イラストは、作成者の思想\n又は感情が創作的に表現された、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えたもの\nであると認められ、「著作物」に該当する。 証拠(甲20、21)及び弁論の全趣旨によれば、P3氏は、本件イラストを制 作し、原告に対し、本件イラストに係る著作権を譲渡したことが認められ、原告 は、本件イラストに係る著作権を有していると認められる。 本件黒塗りイラストは、本件イラストの両目部分に黒の横線が入れられ、「(省 略)」という表記が黒塗りされたものであるが、被告がかかる改変を行ったことを\n認めるに足りる証拠はない。一方、前記改変は、前記目線等を加えたことに限られ るから、本件黒塗りイラストは、本件イラストに依拠し、かつ、その表現上の本質\n的な特徴の同一性を維持しつつ、これに接する者が本件イラストの表現上の本質的\nな特徴を直接感得することができるものと認められ、本件黒塗りイラストは本件イ ラストの複製物又は翻案物であって、原告が著作権を有するものといえる。そうで あるところ、被告は、本件各投稿によって、本件黒塗りイラストに改変等を加える ことなくツイッター上に投稿して、少なくとも不特定の者に対して閲覧可能な状態\nにしたことから、本件各投稿は、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害す るといえる。
・・・
(4) 名誉感情侵害について
本件投稿1について検討するに、本件投稿1は、原告の氏名及び原告が経営する 法人グループの名称を表示するとともに、その存在はフィクションであり、実在の\n団体人物とは関係がない旨が記載されたものであるところ、一般閲覧者の普通の注 意と読み方を基準として判断した場合、本件投稿1に接した閲覧者は、原告自身が 原告や(省略)とは関係がない旨を投稿したと認識するものと認められる。したが って、本件投稿1は、閲覧者に対し、原告は趣旨不明な投稿をする人物であるとの 印象を与え、原告の名誉感情を侵害するものといえる。被告は、本件各投稿は司法 書士として品位に欠ける言動をやめさせる公益目的で行った旨主張するが、仮にそ のような目的があったとしても、原告になりすまして本件投稿1を行うことが正当 化される理由にはならない。 本件投稿2ないし4について検討するに、原告は、被告がP4アカウントを作成 したことを前提として、本件投稿2ないし4の閲覧者は、原告があたかもP4氏の 名誉権を侵害したり、プライバシー権を侵害したりする投稿を平気で行う人物であ ると受け止めることから、これらの投稿は原告の名誉感情を侵害する旨を主張す る。しかし、被告がP4アカウントを作成したことを認めるに足りる証拠はない。
また、P4アカウントによる投稿に接した閲覧者は、P4氏が自身のアカウントで 投稿していると認識するものと認められるところ、仮に被告が同氏になりすまして P4アカウントを作成し投稿していたとしても、P4アカウントによる投稿をリツ イートすること自体によって、直ちに同氏の名誉権やプライバシー権が侵害される ことにはならないから、原告の前記主張はその前提を欠く。そして、本件投稿2 は、名前を「P4」、ユーザー名を「(省略)」とするP4アカウントによる「ば ればれだよ。ことP4です。」という投稿を本件アカウントでリツイートしたもの であるところ、一般閲覧者の普通の注意と読み方を基準として判断した場合、本件 投稿2に接した閲覧者は、P4氏が自身のユーザー名及び氏名を紹介した投稿に対 して原告が注目し閲覧者に伝えようとしたと認識するものと認められる。したがっ て、本件投稿2は、原告の名誉感情を侵害するものとはいえない。また、本件投稿 3及び4は、P4アカウントによる「ネコではなくタチのP4です。」及び「バリ タチのP4です。」という投稿を本件アカウントでそれぞれリツイートしたもので あるところ、「ネコ」、「タチ」及び「バリ」が同性愛者を指す用語として用いら れることがあること(甲19)を踏まえ、一般閲覧者の普通の注意と読み方を基準 として判断した場合、本件投稿3及び4に接した閲覧者は、P4氏が自身が同性愛 者であることを摘示した投稿に対して原告が注目し閲覧者に伝えようとしたと認識 するものと認められる。したがって、本件投稿3及び4は、原告の名誉感情を侵害 するものとはいえない。
(5) 以上から、本件各投稿は原告の氏名権及び本件著作権(複製権及び公衆送 信権)を侵害し、本件投稿1は原告の名誉感情を侵害するものとして、不法行為を 構成する。\n
2 争点2(損害の発生及びその額)について
前記1認定の本件各投稿による権利侵害の内容及び態様の一切を考慮すると、本 件各投稿により、原告が被った精神的苦痛を慰藉する金額は、15万円が相当と認 められる。ただし、原告は本件イラストの著作者ではなく、本件著作権(複製権及 び公衆送信権)侵害により原告に精神的苦痛が生じたとは認めるに足りない。

◆判決本文

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令和5(ネ)10059  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和5年10月12日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

Yahoo!地図が原告地図の複製・翻案に該当するか争われました。知財高裁は、1審の東京地裁(29部)と同様に、翻案には該当しないと判断しました。

イ 判断手法(検討手順)について
ところで、控訴人と被控訴人は、複製又は翻案の有無を検討する手法 としての2段階テストと濾過テストの採否についてそれぞれの立場で主 張しているが、要は、創作性のある表現部分について同一性があるとい\nえるかどうかの判断がされれば足りるのであって、その判断に至る過程 で、最初に両著作物の共通部分の抽出を行うか、創作性の認められる表\n現上の特徴にまず着目するかという検討手順に関しては、合理的・効率 的な判断に資するための合目的的な観点から、事案に応じて適切に使い 分ければ足りる。本件では、控訴人の主張する手法(控訴人のいう2段階テスト)に沿 って(部分的に濾過テストの手法を併用する。)、以下、検討すること とする。
(2) 控訴人地図1の表現上の本質的特徴について\n
ア 控訴人は、控訴人地図1の表現上の本質的特徴として、別紙2記載の本\n質的特徴1)〜7)を主張するところ、別紙の各控訴人地図1(甲1)に照 らして、控訴人地図1がその主張する特徴を備えていると認めることは できる。そして、上記(1)アで述べたところに照らすと、上記本質的特徴1)〜7) は、それぞれを個別に取り上げれば、地理情報の取捨選択、その配置等 の具体的な表現につき、上記のような制約の下での狭い幅での選択が示\nされているにとどまるものであり、従来の地図に比して顕著な特徴を有 するといった独創性が含まれているとまでは認められない。
イ この点、控訴人は、特に本質的特徴1)、同3)、同4)、5)について、従来 の常識にとらわれない素材の取捨選択を行うなどしたものであって、そ の一部の組み合わせだけでも独創性のある表現が認められる旨主張する。\nしかし、まず、本質的特徴1)に関していえば、後述するとおり、そもそ も被控訴人各地図と共通するとは認められないものである(この点は濾 過テストの手法を用いた。)。そして、本質的特徴3)については、控訴 人地図1の作成当時、建物及び住宅の真上から見た形状を影なしのポリ ゴンで記載した地図は複数存在したと認められ(乙6,7,11,14, 15、25、32〜38)、本質的特徴4)、5)については、控訴人地図 1の作成当時、建物の名称及び住宅の番地が、建物及び住宅のポリゴン の中央付近に、(番地についてはアラビア数字で)折り返すことなく横 書きされた記載を含む地図は複数存在したと認められ(乙7,14、1 5、25、32〜38)、いずれもありふれた特徴にすぎない。
なお、控訴人は、上記証拠の地図は、新旧番地を対照するという特殊な 背景の下で作成されたものが含まれているなどと主張するところ、確か に、「番地」の取捨選択において、控訴人の主張する事情は重要な意味 を有するといえるが、上記の証拠の中には、住居表示新旧対照図以外の\nものも含まれているし(乙25、32〜34)、「番地」の取捨選択以 外の要素に関しては、従来のありふれた表現を示す証拠としての適格性\nを失うものではない。控訴人の上記主張は採用できない。
ウ 以上に述べたところを踏まえると、控訴人地図1は、別紙2の本質的特 ・徴1)〜7)を備える総体として表現上の創作性を認めることができるもの\nであり、その表現上の本質的部分の特徴を被控訴人各地図から直接感得\nできるかどうかも、これを断片的、部分的に捉えるのではなく、相違点 も含めた総体としての全体的な考察により検討する必要があるというべ きである。
(3) プロアトラス地図との比較検討
ア 各別紙のプロアトラス地図と控訴人地図1とを、控訴人主張の本質的特 徴の項目ごとに比較すると、以下のとおり認められる。
(ア) 控訴人主張の本質的特徴1)(共通要素a)について
まず、地理情報の取捨選択という観点からみるに、プロアトラス地 図では、控訴人地図1と同じく、「道路・河川」、「検索の目安とな る公共施設や著名ビル等の個別建物形」、「一般住宅及び建物の個別 建物形」、「検索の目安となる公共施設や著名ビル等の名称」、及び 「建物番地」を記載することを選択し、一般住宅及び建物に関する 「居住人氏名」、「地類界」(宅地の境等)、「等高線」を記載して いないことは認められる。しかし、その実際の適用(当てはめ)として、「検索の目安となる公共施設や著名ビル等の名称」等の選択は必ずしも一致していない。 また、プロアトラス地図では、控訴人地図1には記載されていない交 差点名の記載がある(別紙プロアトラス地図・Aの「潮平」等)ほか、 「一般住宅及び建物」に関する「建物名称」を記載している点(プロ アトラス地図・Aの「シャトレ喜鶴」「あけぼの」、プロアトラス地 図・Cの「タウン・ハウス」等)でも相違する。
次に、具体的な表現形式という観点からみても、プロアトラス地図\nは、1)ガソリンスタンドであれば「G」、飲食店であれば「R」、駐\n車場であれば「P」、学校であれば「文に〇の記号」など建物の種類 を示す記号が用いられている点、2)緑地部分が緑色、公共性の高い建 物は濃い灰色、商業施設等はオレンジ色、その他の建物及び住宅は薄 い灰色に塗り分けられ、道路が3色に塗り分けられている点で控訴人 地図1と相違しており、これらの点は、地理情報を表現する際の創作\n性に強く影響を及ぼす有意な相違と評価すべきものである。
控訴人は、これら相違点は、いずれも軽微な相違であり、表現の本\n質的特徴の同一性を失わせるものではないと主張する。しかし、地図 の著作物における地理情報の取捨選択、その配置等の具体的な表現方\n法には一定の制約があり、選択の幅が狭いと解されること(前記(1)ア) を踏まえると、上記のような相違点を軽微なものと評価するのは相当 といえない。控訴人の主張は採用できない。
・・・・
(4) ヤフー地図との比較検討
ヤフー地図は、プロアトラス地図と多くの点で共通する特徴を有するもの であり、したがって、控訴人地図1とプロアトラス地図との対比検討の項目 で述べたところは、ほぼそのままヤフー地図との対比検討に関しても妥当す る。なお、プロアトラス地図になく、ヤフー地図に認められる特徴として、 ガソリンスタンド、コンビニエンスストア及びファーストフードショップの\nチェーン店について、名称ではなく各チェーン店の標章が記載されている点、 名称を折り返して表示する例がある点(ヤフー地図・Aの「健孝クリニック\n南部整形外科」等)が挙げられるが、これは、プロアトラス地図以上に控訴 人地図との表現上の違いが大きいことを示すものである。以上によれば、ヤフー地図についても、控訴人地図1の表\現上の本質的部分の特徴を直接感得できるとは認められないというべきである。
(5) 小括
したがって、被控訴人各地図は、いずれも控訴人地図1を複製又は翻案 したものとは認められないから、その余の点を判断するまでもなく、控訴人 地図1に関する著作権侵害は認められない。

◆判決本文

1審はこちら

◆令和3(ワ)17636

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令和3(ワ)31529  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年9月28日  東京地方裁判所

イス「TRIPP TRAPP」について、デッドコピーではない場合に、商品等表示に該当するのか、著作権侵害かが争われました。東京地裁(40部)は、前者については、原告らの主張する本件形態的特徴は、そもそもその外延が極めて曖昧であり、原告製品のうち出所表示機能\を発揮する商品等表示部分を明確に特定するものとはいえないと判断しました。また、後者については、著作権侵害についても翻案ではないと判断されました。
最後に、原告製品と被告製品の写真があります。

ア 商品の形態に係る「商品等表示」の特定について\n
不競法2条1項1号又は2号は、他人の周知又は著名な商品等表示(人の\n業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品 又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)と同一又は類似の商品等表\示 を使用等することをもって、不正競争に該当する旨規定している。この規定 は、周知著名な商品等表示の有する出所表\示機能を保護するという観点から、\n周知著名な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤\n認混同させて顧客を獲得する行為を防止し、事業者間の公正な競争等を確保 するものと解される。そして、商品の形態は、特定の出所を表示する二次的\n意味を有する場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所 表示機能\を有するものではないから、上記規定の趣旨に鑑みると、その形態 が商標等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能\を発揮するよ うな特段の事情がない限り、商品等表示には該当せず、仮にこれに該当した\n場合であっても、商品の形態は本来的には商品の出所表示機能\を有するもの ではないのであるから、商品の形態のうち出所表示機能\を発揮する商品等表\n示部分は、取引の実情等によって時間的にも場所的にも変わり得るものとい える。
そうすると、原告らが商品の形態の商品等表示該当性を主張する場合には、\n商品等表示として権利範囲を画する部分がそれ自体不明確であることに鑑\nみると、商品の形態のうち出所表示機能\を発揮する商品等表示部分を明確に\n特定する必要があるものと解するのが相当である(知的財産高等裁判所平成 17年(ネ)第10068号同17年7月20日判決参照)。
これを本件についてみると、原告らは、主位的に、原告製品全体の形態が 商品等表示に該当する旨主張して、商品の形態のうち出所表\示機能を発揮す\nるという部分を明確に特定していないことからすると、原告らの主位的主張 は、上記において説示したところに照らし、主張自体失当というほかない。 他方、原告らは、予備的に、原告製品の形態のうち、出所表\示機能を発揮す\nるという部分が本件形態的特徴であるという限度で特定して主張している ため、本件形態的特徴が商品等表示に該当するかどうか、以下検討する。\n
イ 本件形態的特徴の「商品等表示」該当性について\n
前記アのとおり、商品の形態は、特定の出所を表示する二次的意味を有す\nる場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所表示機能\を 有するものではないから、不競法2条1項1号又は2号の規定の趣旨に鑑み ると、その形態が商標等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能\ を発揮するような特段の事情がない限り、商品等表示には該当しないという\nべきである。 そうすると、商品の形態は、1)客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特 徴(以下「特別顕著性」という。)を有しており、かつ、2)特定の事業者に よって長期間にわたり独占的に利用され、又は短期間であっても極めて強力 な宣伝広告がされるなど、その形態を有する商品が特定の事業者の出所を表\n示するものとして周知であると認められる特段の事情がない限り、不競法2 条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当であ\nる。
そして、不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当すると主張\nされた表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品の形態が\n商品等表示に該当しないときであっても、上記表\示が全体として商品等表示\nに該当するとして、上記一部の商品を販売等する行為まで不正競争に該当す るとすれば、出所表示機能\を発揮しない商品形態までをも保護することにな るから、上記規定の趣旨に照らし、かえって事業者間の公正な競争を阻害す るというべきである。のみならず、不競法2条1項1号又は2号により使用 等が禁止される商品等表示は、登録商標とは異なり、公報等によって公開さ\nれるものではないから、その要件の該当性が不明確なものとなれば、表現、\n創作活動等の自由を大きく萎縮させるなど、社会経済の健全な発展を損なう おそれがあるというべきである。
そうすると、不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当すると\n主張された表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品形態\nが商品等表示に該当しないときは、上記表\示は、全体として不競法2条1項 1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。\nこれを本件についてみると、前記認定事実、検証の結果(検証調書参照) 及び前記認定に係る子供用椅子の販売状況によれば、原告製品は、1)左右一 対の側木の2本脚であり、かつ、座面板及び足置板が左右一対の側木の間に 床面と平行に固定されている点(特徴1))、2)左右方向から見て、側木が床 面から斜めに立ち上がっており、側木の下端が、脚木の前方先端の斜めに切 断された端面でのみ結合されて直接床面に接していることによって、側木と 脚木が約66度の鋭角による略L字型の形状を形成している点(特徴2))と いう本件形態的特徴のほか、3)座面板と足置板を側木内側にはめ込んで固定 することによって、これらの部材を直接固定し、その余の固定部材を省いた 点(特徴3))、4)前後方向からみて、座面板、足置板、横木及び背板と、側 木が垂直に交わっており、側木内側の小さな略半円形状の溝部分を除き、直 線的要素が強調されている点(特徴4))、5)左右方向からみて、側木につい ては、これを一直線とし、その上端の2隅を直角とし、脚木についても、こ れを一直線とし、その先端側と後端側の各2隅の角度を略左右対称とした点 (特徴5))、6)上下方向からみて、身体に接触する曲線状の背板並びにこれ に対応する座面板及び足置板の後部波状部分を除き、座面板と足置板の前部 を直線状の形状とし、その2隅を直角とした点(特徴6))に特徴があるもの と認められる。
そうすると、原告製品は、これらの各特徴を全て組み合わせることによっ て、身体に接触する背板部分及びこれに対応する座面板及び足置板の後部波 状部分を除き、側木、脚木、横木、座面板、足置板及び背板という椅子を構\n成すべき最小限の要素を直線的に配置し、究極的にシンプルでシャープな印 象を与える直線的構成美を空間上に形成したという限度において、形態とし\nての特徴があるものと認められる。
他方、本件形態的特徴は、図面又は写真で特定されるものではなく(意匠 法6条、24条、意匠法施行規則3条各参照)、上記にいう特徴1)及び特徴 2)を文字で特定されるにとどまるものである。そのため、本件形態的特徴は、 それ自体複数の商品形態を含むところ、本件形態的特徴には、原告らが主張 するとおり被告各製品が含まれるほか、側木が曲線を含む形態、座面板や足 置板が曲線の形態その他の直線的構成美を欠く多種多様な形態を含むもの\nであるから、原告製品が形成する直線的構成美を欠く非類似の商品形態を広\n範かつ多数含むものである。しかも、原告らの主張によれば、本件形態的特 徴(特徴1)及び特徴2))は、本件形態的特徴のみに限るというのではなく、 例えば特徴3)が付加された形態も、本件形態的特徴に含むというものである から、本件形態的特徴は、座面板と足置板を固定するための複雑な部材を採 用する形態その他の究極的にシンプルな構成美を欠く多種多様な形態を含\nむものである。
したがって、本件形態的特徴は、そもそもその外延が極めて曖昧であり、 商品形態が商品等表示として認められる場合を限定する不競法2条1項1\n号又は2号の上記趣旨目的に鑑みると、原告らは、原告製品のうち出所表示\n機能を発揮する商品等表\示部分を明確に特定するものとはいえない。 のみならず、原告らにおいて本件形態的特徴をそのまま具備すると主張す る被告各製品についてみても、被告各製品は、座面板及び足置板を固定する ために、支持部材、丸みを帯びた固定部材及び略円形のネジ部材を設ける構\n成を採用し、特徴3)を有するものではない。そのため、被告各製品は、需要 者に対し、椅子全体として安定して使いやすい印象を与えるものの、複雑な 上記構成によって、究極的にシンプルな印象を与える直線的構\成美を欠くも のといえる。しかも、被告各製品は、前後方向からみると、背板中央に楕円 形の大きな穴が形成されており、かつ、固定部材を側木にネジ止めするため、 側木には円形状の穴が多数形成されていることからすると、被告各製品は、 直線的でシャープな印象を明らかに損なうものである。さらに、被告各製品 は、左右方向からみても、側木上部が床面と略垂直方向に折れ曲がっており、 一直線の側木で構成される原告製品の直線的でシャープな印象とは、全体と\nして大きく異なる印象を与えている。加えて、被告各製品は、上下方向から みても、座面板及び足置板の前部及び後部が端部から緩やかな曲線状に形成 されており、椅子全体として柔らかい印象を与えるものであるから、座面板 及び足置板の前部が直線で構成される原告製品の直線的でシャープな印象\nとは明らかに異なるものである。
これらの印象の相違を踏まえると、被告各製品は、座面板及び足置板の固 定において複数の部材を利用する点において、原告製品のような究極的にシ ンプルな印象を与えるものではなく、かつ、曲線的形状を数多く含む点にお いて、原告製品のような直線的でシャープな印象を与えるものではない。 したがって、直線的構成美を造形表\現する原告製品の高いデザイン性に鑑 みると、少なくとも被告各製品の形態は、究極的にシンプルでシャープな印 象を与える直線的構成美を欠くものであるから、原告らの出所を表\示するも のであると認めることができないことは明らかである。 以上によれば、本件形態的特徴に含まれる被告各製品の形態は、明らかに 原告製品の商品等表示に該当しないことからすると、本件形態的特徴は、全\n体として不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと認\nめるのが相当である。

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令和3(ワ)17636  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和5年4月14日  東京地方裁判所

Yahoo!地図が原告地図の複製・翻案に該当するか争われました。東京地裁(29部)は、「記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して判断すべき」との判断基準を示しました。結論は請求棄却です。原告は個人です。

(1) 複製及び翻案の判断方法
ア 著作物の複製(著作権法2条1項15号)とは、印刷、写真、複写、録 音、録画その他の方法により有形的に再製することをいう。また、著作物 の翻案(同法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表\現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして、著作権法は、思想又は感情の 創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照)、既存の著作物に依拠して創作された著作物が、思想、感情若しくはアイデア、\n事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない 部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、複製 又は翻案には当たらないと解するのが相当である(最高裁平成11年(受) 第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁 参照)。
そうすると、プロアトラスSV及びYahoo!地図が原告地図1を複 製又は翻案したものに当たるというためには、原告地図1とプロアトラス SV及びYahoo!地図が、創作的表現において同一性を有することが必要であるものと解される。したがって、原告地図1とプロアトラスSV\n及びYahoo!地図との間で、アイデアなど表現それ自体でない部分でのみ同一性が認められる場合には、プロアトラスSV及びYahoo!地\n図は原告地図1を複製又は翻案したものに当たらない。また、原告地図1 とプロアトラスSV及びYahoo!地図との間に、表現において同一性が認められる場合であっても、同一性を有する表\現がありふれたものであるなど、その表現に創作性が認められない場合も、プロアトラスSV及びYahoo!地図は原告地図1を複製又は翻案したものに当たらないと解\nすべきである。
ところで、複製又は翻案の成否を判断するに当たっては、著作権を主張 する者が作成したものに着目して創作性を判断し、その上で、被疑侵害者 が作成したものを観察して、著作権の創作的表現と認められる部分が再製されているか否かを判断するとしても、原告地図1における創作的表\現がプロアトラスSV及びYahoo!地図に再製されていると認められるか 否かを検討する必要があるから、原告地図1とプロアトラスSV及びYa hoo!地図の共通部分が創作的表現であるか否かを検討した場合と結論を異にするものではないというべきである。\n
イ この点、地図は、地形や土地の利用状況等の地球上の現象を所定の記号 によって客観的に表現するものであるから、個性的表\現の余地が少なく、 文学、音楽、造形美術上の著作物等に比して、著作権法上の保護を受ける 範囲が狭いのが通例である。しかし、地図において記載すべき情報の取捨 選択及び表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験等が重要な役割を果たし得るものであるから、なおそこに創作性が表\れ得るということができる。そこで、地図の著作物性は、記載すべき情報の取捨選択及 びその表示の方法を総合して判断すべきものであり、前記アの創作的表\現 の同一性についても、このような観点から検討すべきである。
(2) プロアトラスSVが原告地図1を複製又は翻案したものであるか
ア 証拠(甲1、4、63)及び弁論の全趣旨によれば、原告地図1は、沖 縄県糸満市周辺の地図であること、原告地図1及びプロアトラスSVにお ける同市潮平及び阿波根周辺の各記載は、別紙原告地図1・A及びプロア トラスSV・Aのとおりであること、同市照屋周辺の各記載は、別紙原告 地図1・B及びプロアトラスSV・Bのとおりであること、同市兼城周辺 の各記載は、別紙原告地図1・C及びプロアトラスSV・Cのとおりであ ることが認められる。そこで、別紙原告地図1・AないしC及びプロアトラスSV・AないしCを対比し、原告が主張する原告地図1とプロアトラスSVの共通部分 (前記第3の1(原告の主張)(1)ア(ア)a(a)1)ないし5)並びに(b)6)及び 7)。以下、この第4の1(2)アの検討においては、当該(原告の主張)で付 した頭書の番号に従って、「共通部分1)」などという。)が創作的表現と認められるかについて検討する。\n
(ア) 共通部分1)について
a 原告は、原告地図1とプロアトラスSVには住宅地図であるという 共通部分1)が存在すると主張するところ、別紙原告地図1・Aないし C及びプロアトラスSV・AないしCを対比すると、建物や住宅、道 路、河川等が記載されている点で一致するとは認められるものの、こ れらの具体的な記載が一致しているとは認められない。
b 前記aの一致点について検討すると、地図に建物や住宅、道路、河 川等を記載すること自体はアイデアにすぎず、共通部分1)は、表現それ自体でない部分で同一性を有するにすぎないというべきである。\n したがって、共通部分1)について、創作的表現において同一性を有するものと認めることはできない。\n
(イ) 共通部分2)について
a 原告は、原告地図1とプロアトラスSVが、いずれも、検索の目安 となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物について、居住 人氏名や建物名称の記載を省略し、住宅及び建物のポリゴン並びに番 地のみを記載し、当該ポリゴンは影なしのポリゴンであり、番地は当 該ポリゴンのほぼ中央に、紙面又は画面の水平方向に沿って横書きで、 折り返すことなく、必ずしも当該ポリゴンの内部に収まらずに、アラ ビア数字で記載されている点を、共通部分2)として主張する。しかし、別紙原告地図1・AないしC及びプロアトラスSV・Aな いしCを対比すると、原告地図1とプロアトラスSVで、同じ建物に ついて名称が記載されているものもあれば、一方の地図では名称が記 載されているが、他方の地図では記載されていないものもあり、公共 施設やビル等のうち検索の目安となるものや著名なものが異なるとい える。また、原告地図1とプロアトラスSVで、住宅及び建物のポリ ゴンの具体的な記載が全て一致するとは認められない。さらに、原告 地図1では、ほぼ全てのポリゴンにつき番地が記載されているのに対 し、プロアトラスSVでは、番地が記載されていないポリゴンが相当 数ある。
したがって、原告地図1とプロアトラスSVは、一部の住宅及び建 物のポリゴンの具体的な記載の点、一部の建物について建物名称が記 載され、住宅の居住人氏名やその他の建物の建物名称の記載は省略さ れている点、住宅及び建物がポリゴンで表現されており、当該ポリゴンには影が記載されていない点、一部の住宅及び建物の番地が、当該\nポリゴンのほぼ中央に、紙面又は画面の水平方向に沿って横書きで、 折り返すことなく、必ずしも当該ポリゴンの内部に収まらずに、アラ ビア数字で記載されている点でのみ一致すると認めるのが相当である。
b 前記aのとおり、原告地図1とプロアトラスSVで、一部の住宅及 び建物のポリゴンの具体的な記載が一致したとしても、それは、同じ 住宅又は建物を真上から見たときの外枠を記載したことによるもので あるから、住宅及び建物の形状という事実において同一性が認められ るにすぎない。また、原告地図1では、ポリゴンが淡い黄色であるの に対し、プロアトラスSVでは、ポリゴンは薄い灰色、濃い灰色又は オレンジ色であること、原告地図1では、番地は、黒色で、各数字が 鉛直方向に記載されているのに対し、プロアトラスSVでは、番地は、 薄茶色で、各数字が斜体で記載されていることを考慮すると、その他 の一致点は、具体的な表現において同一性を有するものとは認められず、地図の記載方法というアイデアにおいて同一性が認められるにす\nぎないといわざるを得ない。
さらに、共通部分2)が表現において同一性を有するものであるとしても、証拠(乙6、7、11、14、15、25、32ないし38)\nによれば、原告地図1の作成当時、建物及び住宅の真上から見た形状 を影なしのポリゴンで記載した地図は複数存在したと認められる。そ うすると、このような記載方法については、ありふれていたといえる 上、原告地図1の表示範囲である沖縄県糸満市周辺の地図において、建物及び住宅の形状をこのようなポリゴンで記載するとしても、ポリ\nゴンは建物及び住宅の形状に従って記載するものであるため、表現の選択の幅は狭いといわざるを得ないから、創作性は認められないとい\nうべきである。
その上、証拠(乙7、14、15、25、32ないし38)によれ ば、原告地図1の作成当時、建物及び住宅の番地が、建物及び住宅の ポリゴンの中央付近に、アラビア数字で折り返すことなく横書きされ た記載を含む地図は複数存在したと認められる。そうすると、このよ うな記載方法についても、ありふれていたといえる上、原告地図1の 表示範囲である沖縄県糸満市周辺の地図において、建物及び住宅の番地をこのように記載するとしても、番地はあらかじめ指定されている\nものであるため、表現の選択の幅は狭いといわざるを得ないから、創作性は認められないというべきである。したがって、共通部分2)は、表現それ自体でない事実又はアイデアにおける同一性を有するにすぎないか、表\現において同一性を有する としても、その表現に創作性は認められないから、共通部分2)につき、 創作的表現において同一性を有するものと認めることはできない。
c これに対して、原告は、乙第6及び32ないし34号証の各地図は 一般住宅の居住人名が記載された箇所があること、乙第7、14、1 5及び36ないし38号証の各地図は極めて特殊な状況の下で、一部 地域についてのみ作成されたものであること、乙第10号証の地図は そもそもポリゴンの記載がないこと、乙第18号証の地図はポリゴン を記載し、一般住宅の居住人名を記載せず、一部の建物の名称を記載 するという特徴を有しないこと、乙第24及び25号証の各地図は主 に自動車での移動等のために広域の道路情報や地理情報を得ることを 目的としたものであり、そもそも居住人名や番地を記載する必要はな いことからすると、原告地図1の記載がありふれていたことの証拠と ならないと主張する。
しかし、上記各地図は、いずれも、建物及び住宅の真上から見た形 状を影なしのポリゴンで記載したり、建物及び住宅の番地が、建物及 び住宅のポリゴンの中央付近に、アラビア数字で折り返すことなく横 書きされたりする部分を含んでいると認められ、他方で、本件全証拠 によっても、上記各地図が特殊な目的のために作成されたものである といった、ありふれていることを否定するような事情を認めることは できない。そうすると、上記の記載方法はありふれていたものといわ ざるを得ない。

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令和3(ワ)5086  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年12月12日  大阪地方裁判所

原告の「桜のイラスト」の複製・翻案かが争われました。大阪地裁は、著作物性は認めたものの、創作性ある部分が共通しないとして、請求棄却しました。

3 争点2(被告各イラストが、原告各イラストを複製ないし翻案したものであり、 かつ同一性保持権を侵害するものであるかどうか)について(被告イラスト2に 関する判断)
前記2の認定によると、原告イラスト1は、現実の桜にみられる要素を原告な りの手法により適宜デフォルメして表現し、それらを組み合わせた上、認定に係\nる背景を付した所定の用紙上に配置するなどして1個のデザインとして完成さ せたものであって、認定した表現を含む表\現の総体としては原告の個性が現れた ものであって創作性があるといえ、著作物性を一応肯定できる(争点1)。 よって、進んで争点2について判断する。
この点、原告は、原告特徴1)〜9)が原告イラスト1の表現上の本質的な特徴で\nあり、そのうち原告特徴1)及び3)〜9)が被告各イラストと共通し、被告各イラス トに接した者が原告イラスト1の表現上の本質的な特徴を直接感得することが\nできると主張するところ、原告は、主に被告イラスト2との対比において複製な いし翻案を主張したので、まず被告イラスト2について検討する。
(1) 原告特徴1)について
原告主張の原告特徴1)は、前記第3の2(1)に主張のとおりであるところ、 ここでいう「背景全体」とは、花の白いスタンピング(かすれ要素A)が原告 特徴2)として特定されてこれが除かれていることから、原告イラスト1から、 正面視花要素A、側面視花要素A、つぼみ要素A、かすれ要素Aを除いた部分 をいうものと解される。
そして、前記認定によると、同部分の具体的態様は、「色調の異なるピンク色 や一部オレンジ色が、不明瞭にぼかし味をもちながら配色された」ものであっ て、これと対応する被告イラスト2の要素としては、「赤みのある紫、青みのあ る紫、オレンジ色などがグラデーション、ぼかしを伴って全体としてはマーブ ル状に彩色され、前記すかしを伴ったスタンピング要素Bがランダムに散りば められている」背景部分が該当する。
この点、原告イラスト1と被告イラスト2の背景部分は、そもそもの枠の大 きさが異なることに伴う広がりの規模や、背景として認識される部分の形状が 大きく異なって特段の共通点を見出し難い上、被告イラスト2における、赤み のある紫、青みのある紫、オレンジ色などがマーブル状に彩色されている点は、 原告イラスト1にはみられない被告イラスト2の特徴というべきであって、こ れらの相違点の与える影響は大きなものがある。したがって、原告特徴1)で指摘する内容は、被告イラスト2との共通点を構成しないというべきである。\n
(2) 原告特徴3)ないし同4)について
原告は、原告特徴3)及び同4)が被告イラスト2にもみられると主張するとこ ろ、前記認定によると、原告イラスト1には、5または6個の正面視花要素A 等で構成されるまとまりが台紙の略左中央上、略右上及び略右下の3か所にあ\nることが認められる。また、原告特徴4)中の「空きスペース」に描かれた「適 宜桜の花」が具体的に何を指すかは必ずしも明らかではないが、右上上端及び 左中下端に見切れた正面視花要素Aが各1個、台紙略左下のおおむね中央に正 面視花要素A1個をいうものと解され、これらが同位置に配されている。
一方、被告イラスト2においては、3個の正面視花要素B等で構成されるま\nとまり(別紙被告イラスト2分析図でいうγ及びεのまとまり)、4個の正面 視花要素B等で構成されるまとまり(同分析図でいうδのまとまり)、5個の\n正面視花要素B等で構成されるまとまり(同分析図でいうα及びβのまとまり)\nが、袋体正面では15から20個、前記αからεまでのまとまりが回転を加え たうえでやや不規則に被告イラスト2の枠を埋めるように配されている。また、 これらのまとまりが不整形な形状のためにできたまとまりのない部分に正面 視花要素Bが単独で配されている。 そして、原告イラスト1にみられるまとまりと、被告イラスト2におけるま とまりを、それ自体で相互に比較しても、各構成要素(正面視花要素、側面視\n花要素、つぼみ要素)の構成や形態において同一のものは認められない上、被\n告イラスト2においては、まとまりの数自体や、まとまりの繰り返しによって 与えられる印象が強く、後述の各構成要素の相違点と相まって、「5ないし6\n個の桜の花をまとまって描く」というアイデアのレベルを超えた具体的な表現\n上の共通性を認めることはできない。また、桜の花を数個まとめて描くこと自 体は、自然の桜を描写する際に自然に着想することであって、他の桜のイラス トにもみられるありふれたものといわざるを得ない。また、原告特徴4)につい ても、原告イラスト1においては、被告イラスト2との対比において、まとま りとまとまりの間隔というものは観念しづらく、むしろまとまりの配置のない 略左下部に1個の正面視花要素Aを配したとの印象が強く、具体的表現におけ\nる共通性を感得できない。 以上によると、原告特徴3)及び同4)で指摘される内容は、被告イラスト2に みられる特徴とはいえず、共通点は認められない。
(3) 原告特徴5)、同6)及び同7)について
原告は、正面視花要素Aに関して、原告特徴5)、同6)及び同7)が特徴であり、 同特徴が被告イラスト2にも存すると主張する。 この点、まず、正面視花要素Aと同Bの花弁についてみると、前記認定のと おり、原告イラスト1における花弁は、「白色で基部付近はピンクないし淡い ピンク色が不均一の色調でぼかしたように配されている」のであり、花弁の白 と背景のコントラストが強く意識される一方、被告イラスト2における花弁は 「ごく薄い赤みないし青みのかかった紫色の下地に透明感のある白の小さな おおむね丸いドットが重なるように多数配されて前記薄紫の下地が透けて看 取できる」態様で描かれており、花弁それ自体も淡く着色されている上、背景 とのコントラストは弱く、全体として正面視花要素Bは同Aと相当に異なった 印象を受けるものである。したがって、原告特徴5)が被告デザイン2にも備わ っているとは認められない。また、原告特徴6)及び同7)についてみると、完全 に開花した桜を正面視で「5枚の花弁を放射線状に一体に、花弁ごとに区切ら ずに描き、花弁の中央部に略放射線状にランダムな長さ及び角度で8本又は9 本描く」ことや、同様にやや斜方視で、「5枚の花弁を略扇形に一体に、花弁ご とに区切らずに描いた上で、弧の部分にランダムに山を複数描き、花弁の下寄 りの部分に茶色の細い線でおしべ等を略扇形状にランダムな長さ及び角度で 6本又は7本描き、その先端を茶色の小さい丸で描いている点」は、前記認定 に係る自然の桜の態様及び他のイラストの表現に照らすと、桜のイラストにみ\nられるごく一般的な表現であり、ありふれたものであって、そもそもかかる特\n徴は、原告イラスト1の本質的特徴に当たらない。
(4) 原告特徴8)及び同9)について
原告主張の「先端に白色のつぼみがついた茶色の花柄及びがく片を、花から 適宜飛び出して描いている点」(原告特徴8))及び「つぼみには完全に閉じた状 態のものと、半開き状態のものがあり、前者はふっくらとした雫形状で、先端 がやや尖っていて、がく片は3本であり、後者は略扇形で弧の部分にランダム に山を複数描き、がく片は基本的に4本となっている点」についても、前記認 定に係る自然の桜の態様及び他のイラストの表現に照らすと、桜のイラストに\nみられるごく一般的な表現であり、ありふれたものといわざるをえず、原告イ\nラスト1の本質的特徴に当たらない。
・・・
(6) まとめ
以上のとおり、被告イラスト2は、アイデアなど表現それ自体でない部分又\nは表現上創作性がない部分において原告イラスト1と同一性を有するにとど\nまり、これに接する者が、原告イラスト1の表現上の本質的な特徴を感得する\nことはできないから、依拠性を判断するまでもなく、原告イラスト1の複製及 び翻案に当たらない。よって、被告イラスト2を用いた被告製品2を被告が販 売した行為は、原告の原告各イラストに係る複製権及び翻案権を侵害するもの とはいえず、同様に、同一性保持権を侵害するということもない。

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◆当事者のイラストです

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令和4(ワ)12062 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年11月17日 東京地方裁判所

 ファスト映画の配信について総額5億円の損害賠償が認められました。計算は、ライセンス相当額(著作権法114条3項)です。賠償額を含めて被告は原告の主張を全て認めてます。原告は13名であり、合計するとちょうど5億円というのは偶然なのでしょうね。

弁論の全趣旨によれば、YouTubeの利用者がYouTube上でストリーミング形式により映画を視聴するためには所定のレンタル料を支払う必要があることが認められる。再生対象の映画の著作権者は、当該レンタル料から著作権の行使につき受けるべき対価を得ることを予定しているものと理解されることから、本件において、原告らが本件各映画作品に係る著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額は、YouTube上で視聴する場合の本件各映画作品それぞれのレンタル価格等を考慮して定める金額に、本件各動画のYouTube上での再生数を乗じて算定するのが相当である。
(2)YouTubeにおける本件各映画作品の各レンタル価格(HD画質のもの)は、1作品当たり400〜500円程度であり、400円を下らないこと、うち30%がYouTubeに対するプラットフォーム手数料に充当されること、本件各動画は、それぞれ、約2時間の本件各映画作品を10〜15分程度に編集したものであるものの、本件各映画作品全体の内容を把握し得るように編集されたものであることは、いずれも当事者間に争いがない。これらの事情を総合的に考慮すると、被告らが本件侵害行為によって得た広告収益が700万円程度であること(当事者間に争いがない)を併せ考慮しても、「著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」(法114条3項)は、原告らの主張のとおり、本件各動画の再生数1回当たり200円とするのが相当である。

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令和3(ワ)10987  著作権侵害損害賠償請求事件  著作権 令和4年2月24日  東京地方裁判所

 「文章自体がごく短く又は表現上制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合には,筆者の個性が表\現されたものとはいえない」として、著作権侵害ではないと判断されました。

そこで検討すると,著作物の複製(著作権法21条,2条1項15号)と は,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを 再製することをいい(最高裁判所昭和50年(オ)第324号同53年9月 7日第一小法廷判決・民集32巻6号1145頁参照),著作物の翻案(著作 権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特\n徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新た\nに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著\n作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創\n作する行為をいう。しかして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を\n保護するものであるから(著作権法2条1項1号),既存の著作物に依拠して 創作された著作物が思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表\n現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作\n物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらないもの と解される(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第 一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
このように,複製又は翻案に該当するためには,既存の著作物とこれに依 拠して創作された著作物との同一性を有する部分が,著作権法による保護の 対象となる思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要である\n(著作権法2条1項1号)。そして,「創作的」に表現されたというためには,\n厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,筆者の何 らかの個性が表現されたもので足りるというべきであるが,他方,文章自体\nがごく短く又は表現上制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現\nが平凡かつありふれたものである場合には,筆者の個性が表現されたものと\nはいえないから,創作的な表現であるということはできない。\n したがって,被告各記述を含む被告の雑誌記事,書籍等が,被告各記述に 対応する原告各記述との同一性により原告雑誌記事,原告ルポの複製又は翻 案に当たるか否かを判断するに当たっては,両者において共通する部分が, 思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部\n分又は表現上の創作性がない部分でないかどうかを検討する必要がある。\nそこで,以上の見地から,別紙1及び2の各対比表について個別に検討す\nることとする。
(2) 別紙1の対比表について\n
ア 「1−1あ」,「1−5あ」,「1−6あ」,「1−7あ」,「1−10あ」に ついて
この箇所の原告記述と被告記述とでは,1)奨学金の原資を確保するので あれば,元本の回収が何より重要であること,2)日本学生支援機構は20\n04年以降,回収金をまず延滞金と利息に充当するという方針をとってい ること,3)日本学生支援機構の2010年度の利息収入は232億円,延\n滞金収入は37億円に達し,これらの金は経常収益に計上され,原資とは 無関係のところにあること,といった点が共通している。 しかし,上記共通点のうち,1)は,原告雑誌記事が発行,公表される以\n前から既に問題になっていた奨学金の金融事業化についての一般的な考察 (乙5ないし7)であって,思想又はアイデアに属するものというべきで ある。2)と3)は,奨学金の回収方法や日本学生支援機構の収支に関する事\n実であり,3)の後段の,回収された金と奨学金の原資との関係についての 評価は,これもまた1)と同様に奨学金の金融事業化についての一般的考察 として思想又はアイデアに属するものというべきであって,原告記述と被 告記述とは,表現それ自体ではない部分において同一性を有するにすぎな\nい。また,1)ないし3)の記述順序は同一ではあるが,その記述順序自体は 独創的なものとはいえないし,文章の分量も短く簡潔で,表現も特徴のな\nいありふれたものといわざるを得ず,表現上の創作性が認められない部分\nにおいて同一性を有するにすぎない。

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令和4(ネ)10004  不当利得返還請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和4年7月14日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 著作権侵害事件です。社史について、翻案かが争われました。知財高裁は該当部分は事実に過ぎないとして、翻案ではないと判断し、1審判断を維持しました。

(3) 前記(1)のとおり、本件社史部分が原告書籍を翻案したものに該当すると いうためには、原告書籍と本件社史部分とが、創作的表現において同一\n性を有することが必要であるものと解されるところ、前記(2)で検討した ところによれば、原告書籍と本件社史部分とは、番号1ないし20の各 記述において、事実、すなわち、表現それ自体でない部分において同一\n性が認められるにすぎないか、創作性が認められないありふれた表現に\nおいて同一性が認められるにすぎず、創作的表現において同一性を有す\nるものとは認められないから、被告社史中の本件社史部分は原告書籍を 翻案したものに当たらないというべきである。
(4) これに対し、控訴人は、当審において、1)ノンフィクション作品では、 著作者が取材を通じて発掘した事実こそが重要であり、自らの制作意図 にかなった事実をいかにして発掘し、発掘した事実から何を感じ取って、 どういうストーリーを見つけ出すかが、ノンフィクション作家の真骨頂 であるところ、原告書籍はこれまで公表されていなかった「NRプロジ\nェクト」の内実について明らかにしたものである、2)本件社史部分は、 原告書籍と同じテーマを取り上げたもので、原告書籍と同じ事実やエピ ソードが次々に登場していることからすれば、原告書籍と「表\現の本質 的な特徴」が完全に一致する、原告書籍を翻案したものに該当する旨主 張する。
控訴人の上記主張は、ノンフィクション作品においては、事実を見つ け出すこと及び見つけ出されたその事実が重要であって、原告書籍と本 件社史部分とは事実において共通する点が複数みられることを理由に、 本件社史部分は原告書籍を翻案したものに該当する旨を主張するものと 解される。
しかしながら、前記(1)のとおり、本件社史部分が原告書籍を翻案した ものに該当するというためには、その表現上の本質的な特徴である創作\n的表現の同一性が認められる必要があり、原告書籍と本件社史部分との\n間に事実において同一性が認められる部分が複数あるとしても、そのこ とによって両者が創作的表現において同一性を有することになるもので\nはない。控訴人の上記主張は、ノンフィクション作品自体の特徴や本質 についていうものにすぎず、その「具体的表現」における表\現上の本質 的な特徴について主張するものではないから失当である。 そして、前記(3)のとおり、原告書籍と本件社史部分は、創作的表現に\nおいて同一性を有するものとは認められないから、控訴人の上記主張は 理由がない。

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令和2(ワ)32121  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年3月30日  東京地方裁判所

 写真の複製・翻案かが争われました。料理写真なので、構図なども一般的と判断されています。\n

 著作権法が、著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、\n文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(同法2条1項1号)をいい、 複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製 することをいう旨規定していること(同項15号)からすると、著作物の複 製(同法21条)とは、当該著作物に依拠して、その創作的表現を有形的に\n再製する行為をいうものと解される。 また、著作物の翻案(同法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、 その表現上の本質的な特徴である創作的表\現の同一性を維持しつつ、具体的 表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表\現す ることにより、これに接する者が既存の著作物の創作的表現を直接感得する\nことのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される。 そうすると、被告写真3が原告写真を複製又は翻案したものに当たるとい うためには、原告写真と被告写真3との間で表現が共通し、その表\現が創作 性のある表現であること、すなわち、創作的表\現が共通することが必要であ るものと解するのが相当である。
一方で、原告写真と被告写真3において、アイデアなど表現それ自体では\nない部分が共通するにすぎない場合には、被告写真3が原告写真を複製又は 翻案したものに当たらないと解される。そして、共通する表現がありふれた\nものであるような場合には、そのような表現に独占権を認めると、後進の創\n作者の自由かつ多様な表現の妨げとなり、文化の発展に寄与するという著作\n権法の目的(同法1条)に反する結果となりかねないため、当該表現に創作\n性を肯定して保護することは許容されない。したがって、この場合も、複製 又は翻案したものに当たらないと解される。
(2) 原告は、原告写真と被告写真3において共通する部分である共通点aない しfは創作性のある表現であるから、被告写真3は原告写真を複製又は翻案\nしたものに当たる旨主張するので、以下において判断する。
ア 共通点aについて
原告写真と被告写真3とは、被写体であるスティック春巻を2本ない し3本ずつ両側から交差させている点において共通する。 しかし、証拠(乙9)によれば、角度や向きを変えながら料理を順に 重ねて盛る「重ね盛り」という方法が存在することが認められるところ、 原告写真と被告写真3の被写体であるスティック春巻はいずれも細長い 形状を有するから、スティック春巻を盛り付ける場合に、上記の「重ね 盛り」の方法によってスティック春巻を数本ずつ交差させて配置するこ とは、スティック春巻の撮影する場合に一般的に行われるものであると いうことができる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8) によれば、共通点aと同様に、棒状の春巻を配置して撮影された写真が 複数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現は、\nありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点aは創作的表現であるとはいえないから、被告写\n真3の共通点aの部分が、原告写真の共通点aの部分を複製又は翻案した ものに当たると認めることはできない。
イ 共通点bについて
原告写真と被告写真3とは、2本のスティック春巻を斜めにカットして、 断面を視覚的に認識しやすいように見せ、さらに、チーズも主役でない程 度に見えるようにしている点において共通する。 しかし、具が衣に包まれているという春巻の形状に照らすと、春巻の 具を撮影するためには春巻をカットしなければならないし、その際、具 を強調するために、断面積が大きくなるよう、斜めにカットすることは、 スティック春巻を撮影する際に一般的に採用され得る手法ということが できる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8)によれば、 共通点bと同様に春巻を斜めにカットした断面を配置して撮影された写 真が複数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表\n現は、ありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点bは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点bの部分が原告写真の共通点bの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
ウ 共通点cについて
原告写真と被告写真3とは、端に角度がついた、白色で模様がなく、被 写体である複数本のスティック春巻とフィットする大きさの皿を使用して いる点において共通する。 しかし、証拠(乙10、11)によれば、白い器は料理の色を引き立て る効果があり、選択肢として基本的な色であること、料理の写真を撮影す る際には盛り付ける料理にぴったり合う大きさの皿を選択することが重要 であることが認められる。そうすると、白色で模様がなく、黄土色のステ ィック春巻とフィットする大きさの皿を使用することは、スティック春巻 の写真を撮影する上で一般的に行われ得るということができる。加えて、 証拠(甲25、26、乙2、8)によれば、共通点cと同様に、白色で模 様がなく、被写体である複数本のスティック春巻とフィットする大きさの 皿を使用して撮影された写真が複数存在すると認められることに照らすと、 上記の共通点に係る表現はありふれたものといわざるを得ない。\n以上によれば、共通点cは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点cの部分が原告写真の共通点cの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
エ 共通点dについて
原告写真と被告写真3とは、皿に並べた春巻を、正面からでなく、角度 をつけて撮影している点において共通する。 しかし、証拠(乙12)によれば、料理写真の構図として、料理を正面\nから撮影するのではなく、左右に回転させて左右向きに配置して、斜めの 方向から撮影する手法が存在することが認められる。そうすると、皿に並 べた春巻を、角度をつけて撮影することは、一般的に行われ得るというこ とができる。加えて、証拠(甲25、26、乙7、8)によれば、共通点 dと同様に、皿に並べた春巻を、角度をつけて撮影した写真が複数存在す ると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現はありふれたも\nのといわざるを得ない。 以上によれば、共通点dは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点dの部分が原告写真の共通点dの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
オ 共通点eについて
原告写真と被告写真3とは、撮影時に光を真上から当てるのではなく、 斜め上から当てることで、被写体の影を付けている点において共通する。 しかし、証拠(乙13)によれば、料理写真の撮影方法として、料理の 斜め後ろから料理に光を当て、料理上部を明るく照らすとともに手前側を 暗くして立体感を生じさせる斜め逆光という手法が存在すること、斜め逆 光は料理写真で最もよく使われるライティングであることが認められる。 したがって、被写体に影を付け、立体感を醸成するという撮影方法は、春 巻を含む料理の写真を撮影する上で一般的に用いられ得る手法であるとい うことができる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8)によ れば、共通点eと同様に、斜め逆光の手法を用いて撮影された春巻の写真 が多数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現は\nありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点eは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点eの部分が原告写真の共通点eの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
カ 共通点fについて
原告写真と被告写真3とは、葉物を含む野菜を皿の左上のスペースに置 いている点において共通する。 しかし、揚げ物である春巻に、野菜が付け合わせとして盛り付けられ ることは、一般的に行われることであるといえるから、春巻の写真を撮 影する際に野菜が皿の隅のスペースに置かれることもまた、一般的に行 われることということができる。現に、証拠(甲25、26、乙2、6 ないし8)によれば、上記の共通点と同様に配置された春巻の写真が複 数存在することが認められる。そうすると、上記の共通点に係る表現は\nありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点fは創作的表現であるとはいえないから、被告写\n真3の共通点fの部分が原告写真の共通点fの部分を複製又は翻案したも のに当たると認めることはできない。
キ 全体的観察
前記アないしカのとおり、共通点aないしfはいずれも創作的表現であ\nるとは認められないから、これらの共通点を全体として観察しても、原告 写真と被告写真3との間で創作的表現が共通するとは認められない。\n
ク 小括
以上の次第で、原告写真と被告写真3は、ありふれた表現が共通するに\nすぎず、原告写真と被告写真3との間で創作的表現が共通するとは認めら\nれないから、被告写真3が原告写真を複製又は翻案したものに当たるとは 認められない。

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令和2(ワ)19927  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年12月24日  東京地方裁判所

 社史の発行が原告書籍の翻案であるとした不当利得返還請求訴訟です。裁判所は、創作的表現において同一性を有しないとして、請求を棄却しました。\n

(1) 言語の著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,か つ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正, 増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,\nこれに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得すること\nのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして,著作権法は,思想又は 感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照),既\n存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア, 事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない部 分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には 当たらないと解するのが相当である(最高裁平成11年(受)第922号同 13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁)。 そうすると,本件社史部分が原告書籍を翻案したものに当たるというため には,原告書籍と本件社史部分とが,創作的表現において同一性を有するこ\nとが必要であるものと解される。
したがって,原告書籍と本件社史部分との間で,事実など表現それ自体で\nない部分でのみ同一性が認められる場合には,本件社史部分は原告書籍を翻 案したものに当たらない。 また,原告書籍と本件社史部分との間に,表現において同一性が認められ\nる場合であっても,同一性を有する表現がありふれたものである場合には,\nその表現に創作性が認められず,本件社史部分は原告書籍を翻案したものに\n当たらないと解すべきである。すなわち,著作者等の権利の保護を図り,も って文化の発展に寄与するという著作権法の目的(同法1条)に照らせば, 著作物に作成者の何らかの個性が現れており,その権利を保護する必要性が あるといえる場合には,上記の創作性が肯定され得るが,一方で,表現があ\nりふれたものである場合には,そのような表現に独占権を認めると,後進の\n創作者の自由かつ多様な表現の妨げとなり,かえって上記の著作権法の目的\nに反する結果となりかねないため,当該表現に創作性を肯定して保護を与え\nることは許容されないというべきであり,そのため,原告書籍と本件社史部 分との間で同一性を有する表現がありふれたものである場合には,その表\現 に創作性を認めることができない。
(2) まず,別紙2記述対比表の原告書籍及び本件社史部分の各記述について,\nそれぞれの間での創作性を有する表現の同一性が認められるか否かについて\n検討する。
ア 番号1の各記述について
(ア) 原告書籍の番号1の記述は,原告書籍における当該記述の前後の文脈 を踏まえると,被告従業員であったBが被告の二輪世界選手権への再挑 戦の担当者になるとの内示を受ける前日に出身地を尋ねられた際のやり とりを記述したものであり,本件社史部分の番号1の記述は,本件社史 部分における当該記述の前後の文脈を踏まえると,Bが上記内示の際に 出身地を尋ねられたことを記述したものであると認められる。 これらの記述は,Bが上記内示を受ける際に出身地を尋ねられたこと を内容とする点で共通しているが,このようなやりとりがあったことは 事実にすぎないというべきであり,表現それ自体でない部分で同一性が\n認められるに留まる。また,出身地を尋ねるやりとりがあったことにつ いて,原告書籍の番号1の記述では,「おいB,おまえ家は東京だよな」 と記述されているのに対し,本件社史部分の番号1の記述では,「世間話 の中で出身地を聞かれました。『東京です』と答えたのを覚えていますよ」 と記述されており,それらの具体的な記述における描写の手法が異なる ものとなっており,表現それ自体において同一性を有するとは認められ\nない。
(イ) 原告は,原告書籍と本件社史部分に同じ事実が記述されていることに ついて,社史編纂委員会の担当者は原告書籍に記述された事実を原告書 籍に依拠して知ったものであるから,翻案該当性が認められるべき旨を 主張する。 しかしながら,前記(1)のとおり,本件社史部分に記述された事実が原 告書籍に依拠したものであったとしても,原告書籍と本件社史部分の各 記述が事実といった表現それ自体でない部分において同一性を有するに\n留まる場合には,原告書籍の翻案には当たらないと解するのが相当であ るから,原告の上記主張は採用することができない。 (ウ) したがって,番号1の各記述について,創作的表現において同一性を\n有するものと認めることはできない。
・・・
(ウ) 小活 前記(ア)及び(イ)の対比の結果に照らせば,原告書籍の番号20−1及 び20−2の記述と本件社史部分の番号20の記述が創作的表現におい\nて同一性を有するものと認めることはできず,これは,原告書籍の番号 20の記述全体と本件社史部分の番号20の記述とを対比した場合でも 同様である。
(3) 前記(2)のとおり,番号1ないし20の各記述において,本件社史部分が 原告書籍と創作的表現において同一性を有するとは認められないから,依拠\n性について検討するまでもなく,被告社史中の本件社史部分は原告書籍の翻 案に該当するものではない。

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令和3(ワ)2526  発信者情報開示請求事件 令和3年9月6日  大阪地方裁判所

 発信者情報開示の前提として、著作権侵害が争点となりました。動画のテロップ全体からの翻案であると判断されました。

 本件テロップと本件記事の各内容を比較すると,本件記事には本件テロップと完全に一致する表現が多数含まれる。他方,相違する部分は,句読点の有無や助詞の違い,文言の一部省略等の僅かな相違のほか,例えば,次のような相違部分が存在する。これらの相違部分は,表\現の手法等に若干の違いが見られるものの,内容的には,本件テロップの表現を若干修正したり,要約又は省略したり,前後の表\現を入れ替えるなどしているにとどまり,実質的にほぼ同一の内容を表現したものといえる。\n
1) 本件テロップ:「ドイツ出身のヴァレンティンさんは幼い頃からずっと動物 を大切に思ってきました。」
本件記事:「この感動のストーリーは2人の人間から始まります。その1人がヴァ レンティンさん。ヴァレンティンさんはドイツ出身。幼い頃よりずっと動物を大切 に思ってきました。」
2) 本件テロップ:「2人はボツワナで自然保護プロジェクトを立ち上げました。 野生動物の保護を目的とするプロジェクトです。」
本件記事:「2人はボツワナで野生動物の保護を目的とする自然保護プロジェクト を立ち上げました。」
3) 本件テロップ:「メスのライオンで非常に弱っており,瀕死の状態です。」
本件記事:「そのメスの幼いライオンで非常に弱っており,瀕死の状態です。」
4) 本件テロップ:「けれどシルガにとって,人間に慣れてしまう事は危険な事で す。」
本件記事:「しかし,人間に慣れてしまってはいけません。」
5) 本件テロップ:「そう決めた2人は決して他の人間をシルガと交流させたりし ませんでした。」
本件記事:「他の人間とは交流させませんでした。」
6) 本件テロップ:「2人は本当にシルガの為を思い,幸せを願っていたのです。」
本件記事:「2人はシルガの幸せ,野生に戻る事を1番に考えていました。」
7) 本件テロップ:「ヴァレンティンさんとミッケルさんは,シルガの世話をする だけでなく狩りの仕方も教えます。」
本件記事:「2人は世話だけでなく,狩りの仕方も教えます。」
8) 本件テロップ:「何度も何度も練習を重ね,ようやくシルガが獲物を狩る事が 出来るようになった頃,2人は複雑な気持ちに襲われはじめていました。」
本件記事:「狩りの練習を何度も練習を重ね,ようやくシルガは獲物を狩る事が出 来る様になった頃,2人は複雑な気持ちになりました。」
9) 本件テロップ:「そしてシルガは予想を上回る反応を示します。」
本件記事:「そこで予想を超える事に。」
10) 本件テロップ:「ずっとヴァレンティンさんに会えずに寂しく思っていた事が, その表情から伝わります。」
本件記事:「ずっとヴァレンティンさんに会えず,さみしかった事が分かります。」
(2) 複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製 することをいうところ(著作権法2条1項15号),著作物の複製とは,既存の著作 物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表\現することなく,その表現上の本質\n的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうものと解される。また,\n翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴 を直接感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最 高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻 4号837頁参照)。
本件記事は,記事中に本件動画が埋め込まれていること(甲5)や,上記のとお り,本件テロップと完全に一致する表現を多数含み,相違する部分も,句読点の有無等の僅かな形式的な相違のほか,本件テロップの表\現の僅かな修正,要約,前後の入れ替え等にとどまり,実質的にほぼ同一の内容を表現したものであることに鑑みると,本件テロップに依拠したものと認められると共に,著作物である本件テロッ\nプの表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者がその特徴を直接感得できるものと認められる。\n

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令和3(ネ)10036  著作権等の侵害に基づく削除等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年9月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 原告はイラストと文章をTwitterに投稿しました。被告の行為は原告著作物の公衆送信権、翻案権侵害と訴えました。知財高裁は1審判断を維持しました。

 既存の著作物に依拠して創作された著作物が思想,感情若しくはアイデア, 事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない部 分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案に当 たらないことは引用する原判決が説示するとおりである。
本件についてみると,被告イラストは,原告文章と同じく,原作である「O NE PIECE」に登場するキャラクターの設定に依拠して,身長差のあ る同性の2人が,壁に掴まりながら特定の体位で性交渉を行うという描写に おいて,原告文章と同一性を有するにとどまるものであり,こうした描写自 体は,アイデアないし着想にすぎないか,表現上の創作性がない部分である。\nそうすると,原告文章を全体として見た場合に一定の創作性が認められる余 地があるとしても,前述のとおり,被告イラストは,原告文章のうちアイデ アないし着想にすぎないか,表現上の創作性がない部分において同一性を有\nするにすぎないのであるから,原告文章の翻案に当たるものでないことは明 らかというべきである。 控訴人は,原告文章の創作性につき前記第2の3(1)のとおり指摘し,被告 イラストは,これらの創作部分が全て描写されているので,原告文章の翻案 に当たる旨主張するが,控訴人の指摘する部分は,いずれも,アイデアない し表現上の創作性のない部分であるにすぎないし(「ONE PIECE」 に登場するキャラクターの設定については,当然のことながら創作性を認め ることができない。),その具体的な表現ぶりも,性表\現として平凡かつあ りふれたものであり,そもそも被告イラストが当該表現部分に依拠して作成\nされたと特定することもできないものといわざるを得ない。 したがって,控訴人の主張は失当というほかない。
(2) 被告文章が原告イラストの翻案に当たるとの点について
被告文章は,原作である「ONE PIECE」に登場するキャラクター の設定に依拠して,原作に登場する2人の人物が性交渉後に,身長の低く若 い人物(ルフィ)が失禁したと勘違いし,動揺をしている描写設定において, 原告イラストと同一性を有するに止まり,こうした描写設定は,同性間の性 交渉を描写するに当たってのアイデアないし着想にすぎないか,表現上の創\n作性があるとはいえない部分である。そうすると,原告イラストを全体とし て見た場合に一定の創作性が認められる余地があるとしても,前述のとおり, 被告文章は,原告イラストのうちアイデアないし着想にすぎないか,表現上\nの創作性がない部分において同一性を有するにすぎないのであるから,原告 イラストの翻案に当たるものでないことは明らかというべきである。 控訴人は,前記第2の3(2)のとおり,被告文章は,原告イラストの最後の コマの「ルフィ」のセリフを受けて,あたかも連歌のように,直前の状況や 内容を参看し,その背景や情趣,心境を踏まえて,そのポエジーを受け継い で記載されたものである旨主張するが,独自の見解というほかないものであ り,控訴人主張のセリフ自体に表現上の創作性を認めることはできないし,\nましてやそのセリフから連歌性やポエジーの存在を認め,被告文章が原告イ ラストに依拠した翻案に当たるなどと認めることは到底できない。  

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原審はこちら

◆令和1(ワ)30833
以下のように判断されています。
まず,原告文章と被告イラストについては,原告文章が言語の著作物で あるのに対し,被告イラストは基本的には美術の著作物であって,表現の\n形式が異なり,これらを対比すると,両者は,描写対象の設定(身長差の ある設定の2人の登場人物が,一般的には困難と思われている体位で性行 為を行っている点,性器の状態,及び登場人物の一方が壁につかまろうと しているという点)につき同一性を有するにとどまるといえる。しかして, 上記描写対象の設定は,その内容自体や,原告文章の性質・内容に照らし, 内面的思想たるアイデアにすぎず,表現それ自体でない部分であるという\nべきである。また,仮に表現自体と捉えられる部分があったとしても,本\n件各証拠を見ても,上記設定による表現に幅があると認められ制作者の個\n性の表れとして著作物性を肯定することを基礎付けるに足りるものは見当\nたらず,原告文章の性質・内容に照らせば,上記設定を前提とする限り, これを表現したものとしては平凡かつありふれたものであり,表\現上の創 作性がない部分であるといわざるを得ない。
イ 次に,原告イラストと被告文章については,原告イラストが基本的には 美術の著作物であるのに対し,被告文章は言語の著作物であって,表現の\n形式が異なり,これらを対比すると,両者は,描写対象の設定(2人いる 登場人物の一方が性的行為の際に勘違いをした状況で,他方の登場人物に 対する言動・働きかけに及んでいる点)につき同一性を有するにとどまる といえる。しかして,これについても,上記説示が同様に当てはまるもの である。すなわち,上記描写対象の設定は,その内容自体や,原告イラス トの性質・内容に照らし,内面的思想たるアイデアにすぎず,表現それ自\n体でない部分であるというべきである。また,仮に表現自体と捉えられる\n部分があったとしても,本件各証拠を見ても,上記設定による表現に幅が\nあると認められ制作者の個性の表れとして著作物性を肯定できることを基\n礎付けるに足りるものは見当たらず,原告イラストの性質・内容に照らせ ば,上記設定を前提とする限り,これを表現したものとしては平凡かつあ\nりふれたものであり,表現上の創作性がない部分であるといわざるを得な\nい。
ウ 以上によれば,被告イラストは原告文章を翻案したものには当たらず, また,被告文章は原告イラストを翻案したものには当たらないというべき である。

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令和3(ネ)10028  損害賠償等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年9月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ゲームの著作物について複製・翻案であるかについて1審は複製・翻案ではないと判断しました。知財高裁(1部)も同様です。

 また,控訴人は,当審において,原判決は,全体として一つのゲーム を一画面一画面に分断し,分断した画面ごとに共通する部分(アイコン 等の配置等)について,個別に創作性を判断し,その結果として,共通 する部分全体の創作性を否定したものであり,一連の流れのあるゲーム の著作権侵害を判断しているのではなく,画面の著作権侵害を判断して いるにすぎないから,このような原判決の判断手法によると,他社のゲ ームをデッドコピーしても,キャラクターやアイコンのデザイン等を多 少変更さえしてしまえば,著作権侵害を免れることになり,不合理であ るとして,被告ゲームは原告ゲームを複製又は翻案したものに当たらな いとした原判決の判断手法は誤りである旨主張する。 しかしながら,原告ゲーム全体と被告ゲーム全体の共通部分が創作的 表現といえるか否かを判断する際に,その構\成要素を分析し,それぞれ について表現といえるか否か,表\現上の創作性を有するか否かを検討す ることは,有益かつ必要なことであり,その上で,ゲーム全体又は侵害 が主張されている部分全体について表現といえるか否か,表\現上の創作 性を有するか否かを判断することは,合理的な判断手法であると解され る。 そして,前記(イ)のとおり,原判決は,被告ゲームと原告ゲームの共 通点はアイデアや創作性のないものにとどまり,また,具体的表現にお\nいて相違し,デッドコピーであるとは評価できないから,被告ゲーム全 体が,原告ゲーム全体を複製又は翻案したものに当たるということはで きないと判断したものであり,その判断手法に誤りはない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。」
(2) 原判決42頁6行目の「原告は,」を「ア 控訴人は,」と改め,同43頁 20行目から44頁20行目までを次のとおり改める。
「 イ ところで,著作権法上の「プログラム」は,「電子計算機を機能させ\nて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせ たものとして表現したもの」をいい(同法2条1項10号の2),プロ\nグラムをプログラム著作物(同法10条1項9号)として保護するた めには,プログラムの具体的記述に作成者の思想又は感情が創作的に 表現され,その作成者の個性が表\れていることが必要であると解され る。すなわち,プログラムの具体的記述において,指令の表現自体,そ\nの指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選 択の幅があり,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表\れ ていることが必要であると解される。 これを原告ソースコードについてみるに,前記ア認定のとおり,原\n告ソースコードは,原告ゲームの473個のLuaファイルのうちの\n1個である「MissionMainPage.lua」であり,原告 ソースコードに係るプログラムは,「任務(ミッション)」に係る画面\n(メインミッション画面,デイリーミッション画面,功績画面)の切 り替えに関する処理及び表示内容の更新処理を行うプログラムである。\nそして,原告ソースコードの記述は,原判決別紙「ソ\ースコード対比 表」の「原告ソ\ースコード」欄記載のとおりであり,個々の記述の意味 は,同表の「裁判所の認定」欄記載のとおりである。\n原告ソースコードの記述は,いずれも単純な作業を行うfunct\nion(ローカル変数やテーブルの宣言及びモジュールの呼び出し等) が複数記述されたものであり,ソースコードによって記述される機能\ が上記のとおりローカル変数やテーブルの宣言及びモジュールの呼び 出し等の単純な作業を行うことである以上,表現の選択の幅は狭く,\nその具体的記述の表現も,定型的なものであり,ありふれたものであ\nると言わざるを得ない。 また,個々の記述の順序や組合せについても,ゲームの機能に対応\nさせたにすぎないものであり,ありふれたものである。 そうすると,原告ソースコードの具体的記述に控訴人の思想又は感\n情が創作的に表現され,控訴人の個性が表\れていると認めることはで きないから,原告ソースコードに係るプログラムは,プログラムの著\n作物に該当するものと認めることはできない。 したがって,被告ソースコードの大部分が原告ソ\ースコードと共通 しているとしても,原告ソースコードに係るプログラムの著作物性は\n認められないから,被告ソースコードの制作は,原告ソ\ースコードに 係るプログラム著作権(複製権又は翻案権)の侵害に当たらない。
(4) 編集著作権の侵害について 控訴人は,当審において,1)原告ゲームは,素材である個々の画面(8 4画面)の選択,その画面遷移等の配列,素材である各画面内における アイコン,ボタン,キャラクター等の選択又は配列に作成者の個性が発 揮されているから,素材の選択又は配列によって創作性を有する編集著 作物である,2)原告ソースコードも,個々のソ\ースコードの書き方,各 ソースコードの順序,変数の名称等の素材を選択して組み合わせたこと\nに作成者の個性が発揮されているから,素材の選択又は配列によって創 作性を有する編集著作物である,3)被告ゲームは,編集著作物である原 告ゲーム(原告ソースコードを含む。)を複製又は翻案して制作されたも\nのであるから,被告ゲームの制作及び配信行為は,原告ゲームについて 控訴人が有する編集著作権(複製権,翻案権及び公衆送信権)の侵害に 当たる旨主張する。 しかしながら,控訴人の上記主張は,原告ゲーム又は原告ソースコー\nドにおける個々の素材の選択又は配列にいかなる創作的表現がされてい\nるのか,その創作的表現が被告ゲーム又は被告ソ\ースコードにおいてど のように利用されているのかについて具体的に主張するものではないか ら,その主張自体理由がない。

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平成30(ワ)38486  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和3年3月24日  東京地方裁判所

コンピュータプログラムの著作権侵害として約6600万円の損害賠償が認められました。著作権侵害による損害額は,本件プログラムが違法に複製されたパソコンごとに,その使用期間に応じたライセンス料相当額と認定されています。\n

イ 被告会社による著作権侵害について
本件プログラムをパソコンにインストールすることは,本件プログラムを\n有形的に再製するものとして,本件プログラムの複製に該当するところ(著 作権法2条1項15号),前記1(1)ないし(3)によれば,本件平成20年契約 においては,平成20年9月の一時期を除き,パソコン1台分についてのみ\n本件プログラムのインストールすることが許諾されていたと認められるから, 前記アのとおり,被告会社において,本件平成20年契約の締結当初から本 件旧プログラムをインストールしていた1台に加え,平成26年3月以降, 合計10台のパソコンに本件旧プログラムをインストールしたことは,本件\n旧プログラムの著作権(複製権)の侵害に該当する。なお,被告会社は,平 成20年の契約の内容として,1つのライセンスの契約で,インストールす るパソコン台数を問わずに本件プログラムが使用できるとの合意が成立して\nいたと主張するが,前記2(3)イのとおり,当該主張は採用することができな い。 また,被告会社は,自ら複製権侵害行為を行っているから,上記10台に 複製された本件旧プログラムについて,その使用する権原を取得した時に著 作権侵害の事実について知っていたものと認められ,これを使用する行為は, 著作権法113条2項により,本件旧プログラムの著作権を侵害する行為と みなされる。
(2) 争点2−2(著作権侵害による損害額)について
ア 前記(1)の著作権侵害の態様と,本件平成20年契約においてライセンス 数に応じた本件旧プログラムの複製,すなわちライセンス数に応じた台数 のパソコンへのインストールが許諾されていたことからすれば,前記(1)の 著作権侵害による損害額は,本件旧プログラムが違法に複製されたパソコ\nンごとに,その使用期間に応じたライセンス料相当額と認めるのが相当で ある。 本件旧プログラムの平成30年3月までの使用期間は,平成26年3月 にインストールされた2台につき各49か月,平成28年9月にインスト ールされた1台につき19か月,同年10月にインストールされた5台に つき各18か月,平成29年12月にインストールされた1台につき4か 月,平成30年1月にインストールされた1台につき3か月の累計214 か月となる。 そして,このうち,平成26年3月分については,当時の消費税率に基 づいた1台当たり月額4万4100円(4万2000円×1.05)とし て,平成26年4月分ないし平成30年3月分については,当時の消費税 率に基づいた1台当たり月額4万5360円(4万2000円×1.08) として,それぞれ算定すると,次のとおり,損害額合計は970万452 0円と認められる。
4万4100円×2か月+4万5360円×212か月=970万4520円
イ(ア) 原告は,著作権侵害の不法行為に基づく損害額の算定に当たっても, 債務不履行に基づく場合と同様に,本件プログラムが複製されたパソコ\nンの台数ではなく,本件プログラムを使用した医師会数を基準としてラ イセンス料相当額を算定すべきと主張する。 しかしながら,前記1(4)のとおり,被告会社は,本件旧プログラムを 使用するに当たり,医師会ごとにバックアップデータを作成し,作業し たい医師会に合わせて,その都度使用するバックアップデータを切り替 えることにより,本件旧プログラムをインストールした1台のパソコン\nで複数の医師会に係る作業を行っていたところ,このような被告会社の 行為が本件旧プログラムを有形的に再製するもの,すなわち複製とは認 められないし,違法な複製がされたことを前提とする著作権法113条 2項のみなし侵害に該当するともいえない。 そうすると,前記(1)の著作権侵害行為と相当因果関係のある損害とし て,医師会数を基準としたライセンス料相当額の損害が発生したとは認 められないから,原告の上記主張は採用することができない。
(イ) 被告らは,原告のホームページに記載された料金表(乙7)に基づい\nて,前記アのライセンス料相当額を算定すべきと主張する。 しかしながら,前記2(4)イで検討したとおり,本件平成20年契約に おけるライセンス料相当額を算定にするに当たって,原告のホームペー ジに記載された通常の料金表(乙7)が適用されるとは認められないから, 同料金表に基づいて算定するのは相当ではなく,被告らの上記主張は採\n用することができない。

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平成30(ワ)5948  損害賠償請求事件  著作権 令和3年1月21日  大阪地方裁判所

 舟券購入のプログラムについて著作物性、翻案かが争われました。裁判所はこれを認め、約1.4億円の損害額を認めました。ただ請求が一部請求したため1400万の損害賠償額です。

 プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,そ\nの指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があ り,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表\現上の創 作性が表れていることを要するといわなければならない(知財高裁平成21年\n(ネ)第10024号同24年1月25日判決・判例時報2163号88頁)。
イ そこで検討するに,前記1(5)で認定したところによれば,原告プログラム は,市販のプログラム開発支援ソフトウェアである Microsoft Visual Studio を使用 して Microsoft Visual Basic 言語で記述されているから,ソースコードを個別の行\nについてみれば,標準的な構文やありふれた指令の表\現が多用されており,独創的 な関数等は用いられていない。 しかしながら,前記(5)イについては,一定の画面表示を得るために複数の記述\n方法が考えられるところ,一定の意図のもとに特定の指令を組み合わせ,独自のメ ソッドを作成して独自の構\成で記述しており,同ウ及びエについては,一定の処理 方式を選択すること自体はアイデアにすぎないが,やはり,一定の結果を得るため にどのように指令を組み合せ,どの範囲で構造体を設定し,配列・構\造化するかに は様々な選択肢が考えられるところ,その具体的な記述は,一定の意図のもとに特 定の指令を組み合わせ,多数の構造体を設定し,配列・構\造化した独自のものにな っている。
また,同オについては,HTML データから一定の情報を抽出する指令の記述は 選択の幅があるところ,メンテナンス性を考慮して独自の記述をしていることが認 められ,同カについても,人間が情報を入力してログインや舟券購入の操作をする ことを想定して作成されている投票サイトのサーバーに,人間の操作を介さずに必 要なデータを送信してログインや舟券の購入を完了するための指令の表現方法は複\n数考えられるところ,複数の方式を適宜使い分けて記述し,一連の舟券購入動作を 構成していることが認められる。\nそうすると,前記イないしカのソースコードには表\現上の創作性があるといえ, これらを組み合わせて構成されている原告プログラムにも,表\現上の創作性が認め られるというべきである。
ウ 被告ら(被告エーワンを除く。以下同じ。)は,原告プログラムの機能は,\n原告プログラムを利用せずに競艇公式ウェブサイト等により実行できると主張する が,競艇公式ウェブサイト等で人間の動作として情報を得たり舟券の購入をしたり することと,原告プログラムにより情報を得たり自動的に舟券を購入したりするこ とは異なるから,原告プログラムに創作性がないとする理由にはならない。 また,被告らは,原告プログラムが利用しているデータが競艇公式ウェブサイト で公知であると主張するが,プログラムに入力される変数であるレース情報等のデ ータが公知であるか否かはプログラムの著作物性とは関係がなく,失当である。 さらに,被告らは,原告プログラムのうち自動運転機能の部分は,既存のソ\ース コードを単純作業により組み合わせたものであり,「Boat Advisor」等の類似のソ\nフトウェアが多数存在すると主張する。しかしながら,前記のとおり,原告プログ ラムは,独自の指令の組合せ,構造体等の設定,構\成によって記述されており,あ りふれたものとはいえず,証拠(乙2)をみても,「Boat Advisor」はレース予\n想,データ分析を主たる機能とするソ\フトウェアであり,原告プログラムのように 舟券を自動購入するものであるとは認められず,原告プログラムがありふれたソー\nスコードによって構成されているものとはいえない。\n原告プログラムに著作物性がないとの被告らの主張は,採用できない。
(2) 争点2(被告プログラムは,原告プログラムを複製又は翻案したものか) について
ア 前記1(3)で認定したところによれば,被告プログラムは,被告P4がP7 より入手した原告プログラムについて,被告P3において逆コンパイルを行うと共 に難読化を解除し,期待値と称する機能を追加した以外は,逆コンパイルによって\n得られた原告プログラムの機能をそのまま利用したものであるから,少なくともそ\nのまま利用した部分において,被告プログラムは,原告プログラムを複製したもの ということができる。
イ また,前記1(6)で認定したところによれば,被告プログラムは,少なくと も,原告プログラムの BoatRaceCom.DLL 及び Kcommon.DLL を複製して作成され たことが明らかである。 さらに,被告プログラムは,原告プログラムと画面表示やモジュール名がほぼ同\nじであること,マニュアルに記載された機能が原告プログラムとほぼ同一であるこ\nとも,上記アの結論と合致する。
ウ 被告らは,被告プログラムは,被告プログラム独自のアルゴリズムで算出さ れた期待値(人気指数)に基づく予想をユーザーに提供するものであって,その部\n分に創作性があり,原告プログラムとは全く異なるものであると主張する。 被告らが主張する期待値の機能については,本件の証拠によっても判然とはしな\nいが,仮に,より勝率が高くなることが期待される買目を計算して推奨し,舟券を 自動購入する機能を追加した点で,被告プログラムは原告プログラムと異なる旨を\nいう趣旨であるとしても,原告プログラムが元々有する買目設定の機能を強化,発\n展させたものと理解し得るものであると共に,既に認定したとおり,被告プログラ ムは,期待値の機能を追加した以外の部分については,原告プログラムを複製した\nものをそのまま利用しているとされるのであり,全体として,被告プログラムは, 原告プログラムの本質的特徴を直接感得し得るものであるから,少なくとも翻案に あたることは明らかというべきであり,被告プログラムの作成は,原告プログラム についての原告らの著作権を侵害するものである。 なお,被告らは,被告プログラムに「買目切捨」や「保険買目」など,原告プロ グラムにはない機能があると主張するが,被告P3において,期待値の機能\以外は 原告プログラムと異なる機能はないと供述していること,前記のとおり,マニュア\nルや画面が同じであること,原告プログラムにも同一の機能があることから,当該\n主張は上記結論を左右するものではない。
・・・
前記1の(2)ないし(4)によれば,P7は1本20万円を原告らに支払って取 得した原告ソフトウェアを1本50万円から80万円で約30本販売したこと,被\n告P5は,被告エーワンの名義で,被告ソフトウェア約70本を1本60万円から\n100万円で販売し,その中に,平成28年5月2日のP8に対する100万円の 売買が含まれること,以上の事実が認められる。なお,被告ガルヒが被告ソフトウ\nェアを販売するためのセキュリティ認証キーを140個用意したことは前記1の (4)で認定したとおりであるが,これに対応する140本の被告ソフトウェアが販\n売されたと認めるに足りる証拠はない。
イ 以上によれば,被告らは,被告ソフトウェアを少なくとも70本販売し,う\nち少なくとも1本は平成28年5月2日に100万円で販売し,その余は少なくと も1本60万円で販売したと認めるのが相当であり,ここから控除すべき経費等の 主張はないから,被告ソフトウェアの販売により被告らが受けた利益は,少なくと\nも4240万円であると認められる。 そうすると,著作権法114条2項により,原告らの受けた損害額は4240万 円,著作権を共有する原告各人について2120万円ずつと推定される。 また,損害のうち100万円(各50万円)は,平成28年5月2日に被告ソフ\nトウェアが販売されたことによるものであり,被告エーワンを含む被告らは,同日 から遅滞の責を負う。その余については販売時期が不明であり,前記のとおり,被 告ソフトウェアが3から4か月間販売されていたことからすれば,遅くとも同年9\n月2日までには,その余の損害すべてに係る侵害行為が行われたと認められるか ら,原告らのその余の損害について,被告らは,同日から遅滞の責を負うものと認 められる。

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令和1(ネ)1735 著作権に基づく差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年1月14日  大阪高等裁判所

 電話ボックスを金魚鉢にみたてた現代アートについて、1審は著作物性は認めましたが、 複製ではないと判断しました。控訴審は、「受話器がハンガー部から外されて水中に浮いた状態で固定され,その受話部から気泡が発生している」点について、著作物性を認めて、翻案権侵害と認定しました。

同一性又は類似性について
ア 共通点
原告作品と被告作品の共通点は次のとおり(以下「共通点1)」などと いう。)である。
1) 公衆電話ボックス様の造作水槽(側面は4面とも全面がアクリルガ ラス)に水が入れられ(ただし,後記イ6)を参照),水中に主に赤色の 金魚が50匹から150匹程度,泳いでいる。
2) 公衆電話機の受話器がハンガー部から外されて水中に浮いた状態で 固定され,その受話部から気泡が発生している。
・・・・
著作物の複製とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知 させるに足りるものを有形的に再製すること(著作権法2条1項15号) をいい,著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上\nの本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更\n等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これ\nに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得すること\nのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁昭和53年9月7日 第一小法廷判決・民集32巻6号1145頁,最高裁平成13年6月2 8日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。 依拠については後記(3)において検討することとし,ここではそれ以外 の要件について検討する。 共通点1)及び2)は,原告作品のうち表現上の創作性のある部分と重な\nる。なお,被告作品は,平成26年2月22日に展示を開始した当初は, アクリルガラスのうちの1面に,縦長の蝶番を模した部材を貼り付けて\nいた(相違点6))。しかし,前記のとおり,この蝶番は目立つものでは なく,公衆電話を利用する者にとっても,鑑賞者にとっても,注意をひ かれる部位とはいえないから,この点の相違が,共通点1)として表れて\nいる原告作品と被告作品の共通性を減殺するものではない。
一方,他の相違点はいずれも,原告作品のうち表現上の創作性のない\n部分に関係する。原告作品も被告作品も,本物の公衆電話ボックスを模 したものであり,いずれにおいても,公衆電話機の機種と色,屋根の色 (相違点1)〜3))は,本物の公衆電話ボックスにおいても見られるもの である。公衆電話機の下の棚(相違点4))は,公衆電話を利用する者に しても鑑賞者にしても,注意を向ける部位ではなく,水の量(相違点5)) についても同様であることは前記のとおりである。すなわち,これらの 相違点はいずれもありふれた表現であるか,鑑賞者が注意を向けない表\ 現にすぎないというべきである。 そうすると,被告作品は,原告作品のうち表現上の創作性のある部分\nの全てを有形的に再製しているといえる一方で,それ以外の部位や細部 の具体的な表現において相違があるものの,被告作品が新たに思想又は\n感情を創作的に表現した作品であるとはいえない。そして,後記(3)のと おり,被告作品は,原告作品に依拠していると認めるべきであり,被告 作品は原告作品を複製したものということができる。 仮に,公衆電話機の種類と色,屋根の色(相違点1)〜3))の選択に創 作性を認めることができ,被告作品が,原告作品と別の著作物というこ とができるとしても,被告作品は,上記相違点1)から3)について変更を 加えながらも,後記(3)のとおり原告作品に依拠し,かつ,上記共通点1) 及び2)に基づく表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,原告作品にお\nける表現上の本質的な特徴を直接感得することができるから,原告作品\nを翻案したものということができる。

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1審はこちら。

◆平成30年(ワ)466

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令和2(ワ)2403 著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年12月23日  東京地方裁判所

 写真の著作物の複製・公衆送信があったとして、約30万円の損害賠償が認められました。損害の算定根拠は、「fotoQuote」というサイトにおける料金表です。\n

 本件写真は,原告が,天候の良好な平成23年3月2日の日中に,インドの世界遺産であるエローラ石窟群のカイラーサ寺院を被写体として選択し,日陰となる箇所が極力少なくなるように配慮しつつ,同寺院の正面を斜め上方から,同寺院の主要な建物を 中心に据え,その全体がおおむね収まるように撮影したものであることが認め られる。 そうすると,本件写真は,原告が撮影時期及び時間帯,撮影時の天候,撮影 場所等の条件を選択し,被写体の選択及び配置,構図並びに撮影方法を工夫し,\nシャッターチャンスを捉えて撮影したものであるから,原告の個性が表現され\nたものということができる。したがって,本件写真は原告の思想又は感情を創 作的に表現した「著作物」(著作権法2条1項1号)に該当し,本件写真を創\n作した原告は「著作者」(同項2号)に該当するので,本件写真に係る著作権 及び著作者人格権を有する。
・・・
前記2(3),3のとおり,本件画像は,飲食店業等を目的とする会社である 被告がその事業のために本件サイトに掲載したものであり,本件画像の掲載 期間は,約5年に及ぶ。また,証拠(甲6ないし8)によれば,原告は,自 身の写真のライセンスに当たっては,通常,「fotoQuote」の料金 表(甲7)を使用していること,同料金表\によれば,世界市場のウェブ広告 にハーフページ(300×600ピクセル)の大きさの写真を5年間使用さ せる内容のライセンス料は,地域をアジアに限定しても,1989米ドルを 下らないこと,令和2年8月20日(本件の訴え提起の前日)時点における 米ドル・円相場の仲値が1ドル106.10円であることが認められる。さ らに,証拠(甲3の1)によれば,本件画像は,400×300ピクセルの 大きさで使用されていたことが認められる。そうすると,本件写真を営利目 的で使用する場合,原告は,21万1032円でその利用を許諾することと していたものと認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 以上に加え,本件に現れた一切の事情を考慮すると,本件写真に係る原告 の著作権(複製権,自動公衆送信権)の行使につき受けるべき金銭の額に相 当する額(著作権法114条3項)は,21万1032円と認めるのが相当 である。 また,上記の諸事情に鑑みれば,本件写真に係る原告の著作者人格権(氏 名表示権)が侵害されたことにより原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料\nは5万円,弁護士費用相当額の損害は5万円とそれぞれ認めるのが相当であ る。
(2) これに対し,被告は,原告が損害の算定根拠とする「fotoQuote」 の料金表は,あくまで営利目的の広告等として写真が使用された場合に適用\nされるものであり,被告は非営利公益目的で本件写真を使用したものである から,これを算定根拠とすることはできないと主張する。 しかし,前記2(3)のとおり,本件画像は,飲食店業等を目的とする会社で ある被告がその事業のために本件サイトに掲載したものであり,被告が本件 画像を利用したのは営利目的であったというべきであるから,被告の上記主 張は前提を欠く。

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令和1(ワ)26106  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年10月14日  東京地方裁判所

 キャラクターの複製・翻案であるとの主張は認められませんでした。

(2) 原告作品全体の創作性及び被告作品全体との対比について
ア 証拠(甲1,2,5〜7)によれば,原告の原著作物(別紙2)に描かれ た原告キャラクターは,頭部は髪がなく半楕円形であり,目は小さい黒点で 顔の外側に広く離して配され,上下に分かれたくちばし部分はいずれも厚く オレンジ色であり,上下のくちばしから構成される口は横に大きく広がり,\n体は黄色く,顔部分と下半身部分との明確な区別はなく寸胴であり,手足は 先細の棒状であるとの特徴を有しており,原告作品においては,原告キャラ クターのこれらの特徴の全部又は一部が表現されているものと認められる。\n
イ 証拠(乙1)及び別紙6「対比キャラクター」を含む弁論の全趣旨によれ ば,原告作品に描かれた原告キャラクターの上記特徴のうち,キャラクター の髪を描かず,頭部を半楕円形で描く点は同別紙の「エリザベス」及び「タ キシードサム」と,目を小さい黒点のみで描く点は同別紙の「タキシードサ ム」,「アフロ犬」,「ハローキティ」,「にゃんにゃんにゃんこ」及び「ラ イトン」と,口唇部分を全体的に厚く,口を横に大きく描く点は同別紙の「お ばけのQ太郎」と,顔部分と下半身部分とを明確に区別をせずに寸胴に描き, 手足は手首・足首を描かずに先細の棒状に描く点は同別紙の「おばけのQ太 郎」及び「エリザベス」(ただし,いずれも手の部分)と共通し,いずれも, 擬人化したキャラクターの漫画・イラスト等においては,ありふれた表現で\nあると認められる。
ウ そうすると,原告作品は,上記の特徴を組み合わせて表現した点にその創\n作性があるものと認められるものの,原告作品に描かれているような単純化 されたキャラクターが,人が日常的にする表情をし,又はポーズをとる様子\nを描く場合,その表現の幅が限定されることからすると,原告作品が著作物\nとして保護される範囲も,このような原告作品の内容・性質等に照らし,狭 い範囲にとどまるものというべきである。
(3) 被告作品が原告作品の複製又は翻案に当たるか否かについて 上記(2)を踏まえ,被告作品が原告作品の複製又は翻案に当たるか否かにつ いて,作品ごとに以下検討する。
ア 被告作品1について
(ア) 被告作品1−1について
a 原告作品1−1と被告作品1−1との対比
原告作品1−1と被告作品1−1とを対比すると,両作品は,ほぼ正 面を向いて立つキャラクターにつき,目を黒点のみで描いている点,く ちばしと肌の色を明確に区別できるように描いている点,顔部分と下半 身部分とを明確に区別せずに描いている点,胴体部分に比して手足を短 く描いている点のほか,黒色パーマ様の髪が描かれている点において共 通するが,黒色パーマ様の髪型を描くこと自体はアイデアにすぎない上, その余の共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおいてはあり ふれた表現であると認められる。\n 他方,両作品については,原告作品1−1では,キャラクターの体色 が黄色で,両目が小さめの黒点のみで顔の外側付近に広く離して描かれ, 上下のくちばしはオレンジ色で,たらこのように厚く描かれているのに 対し,被告作品1−1では,キャラクターの体色は白色で,両目がより 顔の中心に近い位置に,多少大きめの黒点で描かれ,上下のくちばしは 黄色で原告キャラクターに比べると厚みが薄く,横幅も狭く描かれてい るなどの相違点がある(以下,これを「作品に共通する相違点」という。)。 加えて,原告作品1−1では,キャラクターが,いわゆるおばさんパ ーマ状の髪型(毛量は体の約5分の1程度で,への字型の形状をし,眉 毛も見えている。)をして,口を開け,左手を上下に大きく振りながら, 表情豊かに相手に話しかけているかのような様子が表\現されているの に対し,被告作品1−1では,いわゆるアフロヘアー風のこんもりとし た髪がキャラクターの体全体の半分程度を占めるなど,その髪型が強調 され,キャラクターの表情や手足の描写にはさしたる特徴がないなどの\n相違点があり,その具体的な表現は大きく異なっている。\n 以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通\nするにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があるこ\nとにも照らすと,被告作品1−1から原告作品1−1の本質的特徴を感 得することはできないというべきである。 したがって,被告作品1−1は,原告作品1−1の複製にも翻案にも 当たらない。

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令和1(ネ)10043  著作権に基づく差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年11月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 テキスト本の解説をネット配信する行為が、テキスト本の著作権侵害(翻案権)かが争われました。知財高裁は1審と同様に、著作物性は認めたものの、本件解説と本質的特徴を同一にするとは認められないと判断しました。

 ア 最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決(同平成11年(受)第9 22号,民集55巻4号837頁)は,言語の著作物に関してであるが, 著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な\n特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,\n新たに思想又は感情を表現することにより,これに接する者が既存の著作\n物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作\nする行為であるとしている。そして,翻案の意義は,本件問題のような編 集著作物についても同様であると解されるから,編集著作物の翻案が行わ れたといえるためには,素材の選択又は配列に含まれた既存の編集著作物 の本質的特徴を直接感得することができるような別の著作物が創作された といえる必要があるものと考えられる。
イ これを本件について検討してみるに,本件問題は,控訴人自身も主張す るとおり,題材となる作品の選択や,題材とされる文章のうち設問に取り 上げる文又は箇所の選択,設問の内容,設問の配列・順序に作者の個性が 現れた編集著作物であり,ここでは,このような素材の選択及び配列等に, その本質的特徴が現れているということができる。これに対し,被告ライ ブ解説は,作成された問題(すなわち,素材の選択及び配列等)を所与の ものとして,これに対する解説,すなわち,問いかけられた問題に対する 回答者の思考過程や思想内容を表現する言語の著作物であって,このよう\nな思考過程や思想内容の表現にその本質的特徴が現れているものである。\nこのように,編集著作物である本件問題と,言語の著作物である被告ライ ブ解説とでは,その本質的特徴を異にするといわざるを得ないのであるか ら,仮に,被告ライブ解説が,本件問題が取り上げた文を対象とし,本件 問題が提起したのと同一の問題を,その配列・順序に従って解説している ものであるとしても,それは,あくまでも問題の解説をしているのであっ て,問題を再現ないし変形しているのではなく,したがって,本件問題の 翻案には当たらないものといわざるを得ない。 この点について,控訴人は,本件問題と被告ライブ解説とはその本質的 特徴を同一にするとして種々主張しているけれども,上記に指摘した点に 照らし,採用することはできない。
(3) 被告ライブ解説は本件解説の翻案に当たるかについて
控訴人は,本件解説と被告ライブ解説とは,本件問題の読解対象文章及び 設問・選択肢の文章を前提としているということでは全く共通であるから, 個々の文言にほとんど共通性がないからといって,表現の本質的特徴に同一\n性がないということにはならない旨主張する。しかしながら,読解対象文章 及び設問・選択肢の文章を前提としていること自体からは,表現にわたらな\nい内容の同一性がもたらされるにすぎないから,表現の本質的特徴の同一性\nの有無は,別途,文言等の共通性等を通じて判断されるべきものである。し たがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 また,控訴人は,本件ライブ解説の個々の箇所について,本件解説との間 で表現上の本質的特徴の同一性を有する旨主張する。しかしながら,本件解\n説と被告ライブ解説とがいずれも本件問題に対する解説であることに由来し て内容の類似性・同一性はみられ,被告ライブ解説は,その内容については 部分的に本件解説と本質的特徴を同一にするといえるものの,その表現につ\nいては,控訴人の主張を踏まえて検討しても,本件解説と本質的特徴を同一 にするとは認められない。したがって,控訴人の主張は採用することができ ない。

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◆平成30(ワ)16791

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令和1(ネ)10045  標章使用差止反訴請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年10月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ピクトグラムの使用合意があること、およびその複製又は翻案には該当しないとした1審の判断が維持されました。複製又は翻案には該当しない理由は1審と同じです。

 まず,控訴人が主張する反訴原告主張合意については,これを記載した 契約書等の書面は作成されていない。また,控訴人が主張する平成14年 頃の反訴原告主張合意の成立にかかる事実経過(前記第2の5(控訴人の 主張)ア)も,これを裏付ける客観的な証拠は見当たらない。
ア そこで,控訴人と被控訴人との間の取引経過についてみると,各業態 の第1号店を出店する際の請求書をみても,店舗デザイン設計料とのみ あるだけで,反訴原告標章であるロゴや反訴原告ピクトグラムに係る制 作料,使用料については何ら記載されていない。そして,ロゴやピクト グラムについては,ハードオフ,オフハウス,モードオフ,ガレージオ フ,ホビーオフ,リカーオフといった各業態の第1号店を出店した(ハ ードオフのピクトグラムについては,平成7年頃に使い始めた)後は, コーナーの拡大などの必要に応じて更なるピクトグラムの制作・納品を しつつも,基本的にはそれまでに制作したロゴやピクトグラムを用いて 店舗デザインの設計等を行うのが恒例となっており,各業態によって差 はあるものの,制作したロゴ及びピクトグラムはその後の出店店舗でも 用いられていた。また,平成29年4月26日に請求するまで(前記1 において引用する原判決第3の1(15)),20年以上の長期間にわたっ て,控訴人は,反訴原告標章であるロゴや反訴原告ピクトグラムの使用 料を店舗デザイン設計(監理)料と別に請求したことはなく,制作料に ついても,その請求を裏付ける書面は基本的に存在しない。 ただし,控訴人から被控訴人に対する制作料の請求については,平成 16年3月22日の制作料(基本デザイン料)の請求(前記1⑴におい て改めた原判決引用部分第3の1(10))及び平成28年3月の制作料の請 求(前記1において引用する原判決第3の1(12)エ)が存在する。しか しながら,仮に反訴原告主張合意が存在したのであれば,かかる請求が できないことは控訴人にとって明らかであって,それにもかかわらず請 求したこと自体,それまでに作成・納品した制作料について将来も請求 できないことを認識していたからこそ,新たに作成・納品したロゴ等に ついて,制作料の支払合意を取り付けるべく,このような行為に及んだ と考えられるところである。なお,仮に,かかる2回の請求以外に,控 訴人が被控訴人に対し,口頭で,ロゴ等の制作料の請求をしたことがあ ったとしても同様である。 このような状況に照らすと,将来的に,控訴人,被控訴人の間におい て,店舗デザイン設計(監理)料等の名目で支払われた金員とは別に, 反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの制作料・使用料を請求する権 利が留保されていたとは考えにくく,むしろ,これらの制作料及び使用 料の支払義務を前提とする反訴原告主張合意がなかったことが窺われる。
イ また,契約終了に当たり,控訴人が被控訴人に当初交付した書類の内 容は前記1(2)に記載のとおりであるところ,かかる記載内容からは,無 償使用許諾を前提とする反訴原告主張合意の存在というよりも,むしろ, 使用料は店舗のデザイン設計料に含まれていたとの認識が窺われる。ま た,同書面には,制作料そのものについての言及は存在しない。
ウ 加えて,被控訴人においては,仮に反訴原告標章や反訴原告ピクトグ ラムの使用ができなくなれば,重大な不利益が生じることが明らかであ る。したがって,仮に反訴原告主張合意のような合意が存在するのであ れば,これによって生じる不利益の重大性に鑑み,合意の内容を書面化 することが通常であると考えられるところ,そのような書面が存在しな いことは既に指摘したとおりである。
エ 以上によれば,被控訴人は,店舗デザイン設計料等とは別に,ロゴや ピクトグラムの制作料,使用料を支払う意思はなく,控訴人も,被控訴 人からの店舗デザイン設計の依頼を受ける際に,ロゴや平成7年頃以降 はピクトグラムの制作をも必要に応じて行うことを前提としつつも,こ れらの制作料や使用料については,将来的にも被控訴人から引き続き店 舗設計業務の依頼を受けられることを期待したことから,明示的に制作 料や使用料として請求することはせずに,店舗設計業務を継続して受注 していく中で,これらについて実質的に回収を図っていこうという意向 であったと考えられる。

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◆平成29(ワ)37350

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平成29(ワ)37350  標章使用差止請求反訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年5月21日  東京地方裁判所

 ピクトグラムが表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないとして、著作権侵害が否定されました。ただ、両者の具体例は掲載されていないので詳細は不明ですが、「H君」(「H」の文字を人間に見立て,両足,顔,耳,口,両手を連\n想させる装飾を施した部分をいう。),ボックスボイテル型の瓶のシルエット(反訴原告標章5),エレキギターの黒塗りイラスト等のようです。

 反訴被告標章1,2及び5の作成,使用等によって,反訴原告標章1,2 及び5についての反訴原告の複製権又は翻案権が侵害されるか否かを検討 するため,反訴被告標章1と反訴原告標章1が同一性を有する部分について みると,これらは,深緑色の長方形(横長)の中に白いアルファベット文字 が配置されていること,そのアルファベット文字の書体,大きさ,文字間の 間隔及び配置のバランス,全ての文字が円の構成要素とされていること,「O\nFF」と「USE」のアルファベット文字の上部に三つの白丸で弧を描くよ うな装飾が施されていることなどで共通している。 アルファベット文字について著作物性を肯定するためには,その文字自体 が鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えていなければならないと解 するのが相当である。反訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文 字が反訴被告の店舗で使用等をするために様々な工夫を凝らしたものであ ることは反訴原告が主張するとおりであるとしても,それらの工夫による反 訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文字は,いずれも「オフハ ウス」という名称をよりよく周知,伝達するという実用的な機能を有するも\nのであることを離れて,それらが鑑賞の対象となり得るような美的特性を備 えるに至っているとは認められない。また,その余の共通点については,い ずれもアイデアが共通するにとどまるというべきであり,仮にアイデアの組 合せを新たな表現として評価する余地があるとしても,それらはありふれた\nものであるといわざるを得ないから創作性は認められない。 したがって,反訴原告標章1と反訴被告標章1は,表現それ自体でない部\n分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないから,\n仮に反訴原告標章1が著作物であるとしても,反訴被告標章1を作成等する 行為は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものとはいえない。また,上 記と同様の理由から,反訴被告標章2及び5を作成等する行為についても反 訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものではない。
ウ 反訴被告ピクトグラムの作成,使用等により反訴原告ピクトグラムについ ての反訴原告の著作権が侵害されるか否かを検討するため,反訴原告ピクト グラムと反訴被告ピクトグラムが同一性を有する部分についてみると,反訴 原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは,いずれも,反訴被告で取り扱 う商品である具体的な工業製品の外観を示した図といえるものである。そし て,これらは,Tシャツの前部中央に表示された表\現が異なる反訴原告ピク トグラム4−01ないし4−03及び反訴被告ピクトグラム4−01ない し4−03を除く全てについて,具体的な形状が異なる製品を選択してこれ を表現したものである。したがって,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピク\nトグラムは,基本的に,同じジャンルの製品を選択してその外観を表してい\nる点において共通するにとどまるといえるものである。また,反訴原告ピク トグラムと反訴被告ピクトグラムにおいて,選択された製品の配置の角度, 複数の製品の種類の選択,レイアウトにおいて共通するものはあるが,これ らは,いずれも,アイデアであるか同種の表現を行うに当たり通常考え得る\nありふれた表現といえるものであり,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピク\nトグラムが創作性のある部分において共通するとはいえない。また,反訴原 告ピクトグラム4−01ないし4−03及び反訴被告ピクトグラム4−0 1ないし4−03におけるTシャツの形状は概ね同じであるが,これらは極 めてありふれたTシャツの形状であり,その形状についての表現に創作性が\nあるとは認められない。 これらを考慮すると,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは, 表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない部分において同一性を 有するにすぎないから,仮に反訴原告ピクトグラムの全部又はその一部が著 作物であるとしても,反訴被告ピクトグラムを作成等する行為は反訴原告の 複製権又は翻案権を侵害するものではない。

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平成30(ワ)16791  著作権に基づく差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和元年5月15日  東京地方裁判所

 問題集は、編集著作物に該当する、解説は著作物と判断されましたが、本件解説の本質的特徴の同一性に欠けるとして、著作権侵害ではないと判断されました。 複製については、「被告は,実名は明らかにできないが,原告の経営する塾に在籍する複数の生徒から問題の原本を入手し解説講義を行っており,被告が本件問題を複製した事実は一切なく,生徒から任意に本件問題の原本を入手したものである。」と主張しています。

争点(1)(本件問題及び本件解説の著作物性の有無)について
(1) 証拠(甲4の1,5の1)によれば,本件問題のうち,国語Aの1は物語 文の,同2は論説文の読解問題であり,いずれも問1〜10から構成され,\n国語Bの1は物語文の,同2は説明文の読解問題であり,いずれも問1〜5 から構成されていることが認められる。\n また,証拠(甲4の2,5の2)によれば,本件解説には,解答部分,配 点部分,解説部分から構成され,解説部分には,設問ごとに,問題の出題意図,\n題材とされた文章のうち着目すべき箇所,当該箇所に係る文章の理解方法, 正解を導き出すための留意点等が記載されている。 他方,被告ライブ解説(甲1)は,本件問題について,同問題に係るテス トの終了後に,被告の担当者等がウェブ上の動画において口頭でその解説を するものであり,本件問題及び本件解説が画面上に表示されることはない。\n
(2) 著作権法12条は,「編集物…でその素材の選択又は配列によって創作性 を有するものは,著作物として保護する。」と規定するところ,被告は,本 件問題について,「どの部分を問題とするのか」,「何を問うのか」は問題 作成におけるアイデアにすぎないとして,本件問題は編集著作物に該当しな いと主張する。 しかし,国語の問題を作成する場合において,数多くの作品のうちから問 題の題材となる文章を選択した上で,当該文章から設問を作成するに当たっ ては,題材とされる文章のいずれの部分を取り上げ,どのような内容の設問 として構成し,その設問をどのような順序で配置するかについては,作問者\nが,問題作成に関する原告の基本方針,最新の入試動向等に基づき,様々な 選択肢の中から取捨選択し得るものであり,そこには作問者の個性や思想が 発揮されているということができる。本件問題についても,題材となる作品 の選択,題材とされた文章のうち設問に取り上げる文又は箇所の選択,設問 の内容,設問の配列・順序について,作問者の個性が発揮され,その素材の 選択又は配列に創作性があると認めることができる。 したがって,本件問題は編集著作物に該当する。
(3) 本件解説は,前記のとおり,本件問題の各設問について,問題の出題意図, 正解を導き出すための留意点等について説明するものであり,各設問につい て,一定程度の分量の記載がされているところ,その記載内容は,各設問の 解説としての性質上,表現の独自性は一定程度制約されるものの,同一の設\n問に対して,受験者に理解しやすいように上記の諸点を説明するための表現\n方法や説明の流れ等は様々であり,本件解説についても,受験者に理解しや すいように表現や説明の流れが工夫されるなどしており,そこには作成者の\n個性等が発揮されているということができる。 したがって,本件解説は創作性を有し,言語の著作物に該当するというべ きである。
2 争点(2)(複製又は翻案該当性)について
(1) 複製について
原告は,被告が本件問題及び本件解説の複製を自ら行っているか,仮に, 自ら複製行為を行っていないとしても,保護者又は生徒をいわば手足のよう に利用して複製をさせているのであるから,被告自身が複製を行ったと同視 し得ると主張する。 しかし,被告は,複数の原告学習塾の生徒から問題の原本を入手し解説を 行っている事実は認めるものの,問題を複製した事実は否認するところ,本 件においては,被告が自ら本件問題及び本件解説文を複製したと認めるに足 りる証拠はない。 また,被告が,指導者としての強い立場を利用し,保護者又は生徒に本件 問題等の複製を依頼し,あるいは,複製の費用を負担し,金銭や便宜を供与 するなどの働きかけをして保護者や生徒に本件問題等の複製を依頼したとの 事実を認めるに足りる証拠もない。そうすると,仮に,保護者又は生徒が本 件問題等の複製を行い,複製した本件問題の写しを被告に交付したとしても, そのことから直ちに被告自身が複製を行ったと同視することはできない。 したがって,被告が原告の有する複製権を侵害したとの主張は理由がない。
(2) 翻案について
ア 著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ, その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的な表\現に修正, 増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することによ\nり,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得す\nることのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成11年(受) 第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁 参照)。
イ 被告ライブ解説においては,前記1(1)のとおり,本件問題の全部又は一 部の画像を表示しておらず,また,口頭で本件問題の全部又は一部を読み\n上げるなどの行為もしていない。そうすると,被告ライブ解説は本件問題 の本質的な特徴の同一性を維持しているということはできず,被告ライブ 解説に接する者が本件問題の素材の選択又は配列に係る本質的な特徴を直 接感得することができるということはできない。 したがって,被告ライブ解説が本件問題を翻案したものであるとは認め られない。
ウ 本件解説に関し,原告は,被告ライブ解説と本件解説は同様の問題につ いて,同じ視点から解説したものであり,同じ目的の下,同じ解答に至る 考え方を説明したものであるから,その本質的な特徴は同一であると主張 する。 しかし,原告が翻案権侵害を主張する設問について,本件解説と被告ラ イブ解説の対応する記載を対比しても,表現が共通する部分はほとんどな\nい。例えば,国語Aの1の問5に関する本件解説と被告ライブ解説を比較 しても,共通する表現は「険のある」,「祐介」など,ごくわずかな部分に\nすぎず,被告ライブ解説が本件解説の本質的特徴の同一性を維持している ということはできない。本件解説の他の設問に係る部分についても,本件 解説と被告ライブ解説とで表現が共通する部分はほとんど存在せず,当該\n各設問に係る被告ライブ解説が本件解説の本質的特徴の同一性を維持して いるということはできない。 したがって,本件ライブ解説が本件解説を翻案したものであるとは認め られない。

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平成29(ワ)16958  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年2月28日  東京地方裁判所

 英会話のDVDが複製・翻案が争われた事件です。東京地裁46部は、一部の表現については創作性を認め、36万円の損害賠償を認めました。
 原告DVDと被告DVDの項目アにおける共通点である動画に社名を 表示することは,アイデアである。\n他方,項目イ及びウにおける原告DVDと被告DVDの共通点は,白い 扉を抜け,その先に英会話を学ぶ動機となるフレーズと共に写真が現れる というもので密接に関係するものといえるところ,英会話の宣伝,紹介用 のDVDにおいて,教材を利用することで新しい状況となることについて, 紺色の背景とする白い扉やその奥に広がる宇宙で表現するとともに,教材\nにより達成できる状況について,扉の奥に,その状況を表しているともいえる写真を英会話を学習する動機を示すフレーズとともに複数回示すこ\nとで表現しているものといえ,その表\現は,全体として,個性があり,創 作性があるといえる。 項目エにおける原告DVDと被告DVDの共通点のうち,英会話の宣伝, 紹介用のDVDにおいて,外国人と話している様子を用いる点はアイデア であり,そこにおける問いかけの表現は通常よく使用される,ありふれた\n表現といえる。\n項目オにおける原告DVDと被告DVDの共通点は,教材を学ぶことで 状況が変わることを,二度にわたる太陽の光を含む空の情景で示し,また, 自社の商品を用いることで交流の範囲が広がることなどを人物が写った 多数の写真を自社商品の周りを回転させることなどで表現しているもの\nといえ,その表現は,全体として,個性があり,創作性があるといえる。\n以上によれば,イントロダクションの部分の原告DVDと被告DVDは, 少なくとも,項目イ,ウ及びオにおいて表現上の創作性がある部分におい\nて共通するといえる。そして,上記共通する内容に項目イ,ウ及びオの内 容等を考慮すれば,上記部分の原告DVDの表現上の本質的な特徴を被告\nDVDから直接感得することができると認められる。
イ 受講者インタビュー(その1)(項目カ)
前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVD は,当該部分において,「(商品名)を始めた人の中にはすでに新しいステー ジへと人生を開いていった人たちがたくさんいらっしゃいます」という音声 が流れ,その後,海外で活躍する女性を紹介し,その女性へのインタビュー の様子となる点,「英語を話す原点になったのが(商品名)だったのです」と いう音声が流れるとともに,同趣旨が赤色の文字テキストで表示される点な\nどが共通する。 他方,原告DVDと被告DVDの当該部分において,登場人物やインタビューの内容,表現は異なっている。\n上記共通点のうち,英会話教材の宣伝,紹介用の動画において,海外で活 躍する受講者を紹介した上でその受講者へのインタビューの様子を用いる ことや,その受講者の活躍の契機となったのが自社の教材であるという説明 をすることは,アイデアであるといえるし,また,それらを上記のような順 序で構成することは,通常行われることといえ,これらをもって表\現上の創 作性があるとはいえない。また,「(商品名)を始めた人の中にはすでに新し いステージへと人生を開いていった人たちがたくさんいらっしゃいます」, 「英語を話す原点になったのが(商品名)だったのです」との部分について, 英会話教材を宣伝,紹介する際に,教材による学習によって自らの状況が変 わったことを新たなステージへと人生を開くと表現することや,その契機等\nとなった商品を原点と表現することはありふれたものであるといえ,いずれ\nも創作性があるとは認められない。 したがって,受講者インタビュー(その1)の部分の原告DVDと被告D VDの共通点は,いずれもアイデアなどの表現それ自体でない部分又は表\現 上の創作性が認められない部分に関するものであるといえる。
・・・・
エ その他受講者インタビュー(項目ク)
前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVD は,当該部分において,受講者への複数のインタビューの様子である点,「人 生が変わりました」との文字テキストが表示される点で共通している。\n 他方,原告DVDと被告DVDの当該部分において,登場人物やインタビ ューの内容,表現は異なっている。\n上記共通点のうち,英会話教材の宣伝,紹介用の動画において,受講者と される人物のインタビューの様子を用いることはアイデアであるといえる。 また,「人生が変わりました」という文字テキストは,表現であるということ\nができるとしても,教材を宣伝,紹介する場面で,教材による学習によって 自らの状況が変わったことを人生が変わると表現することは,ありふれた表\ 現であるといえ,創作性があるとは認められない。そして,インタビューの 様子に文字テキストを組み合わせることについても,普通に行われることで あり,このことをもって表現上の創作性があるとはいえない。\nしたがって,その他受講者インタビューの部分の原告DVDと被告DVD の共通点は,いずれもアイデアなどの表現それ自体でない部分又は表\現上の 創作性が認められない部分に関するものであるといえる。
オ 商品紹介(項目ケ)
前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVDは,当該部分において,まず,画面上部が光り,雲が浮かんでいる空の 様子となった後,画面の上方から階段が伸びてきて,階段を下から見上げ る構図となり,その後,空を背景に,最下段の階段の側面に英語学習のス\nテップのフレーズが表示され,そのフレーズの読み上げが終わると一段上\nの階段の側面が拡大されると同時に,その階段の側面に次の英語学習のス テップのフレーズが右からスライドして表示されるとともに,そのフレー\nズがナレーションされ,それを7回繰り返して,7つ目の英語学習のステ ップが表示されると,側面にフレーズが記載された階段が最下段まで表\示 されるという点で共通している。また,各階段の側面に表示されるフレー\nズは,原告DVDでは1)「聞くことを習慣化する」,2)「単語やフレーズの 音がキャッチできるようになる」,3)「言っていることが理解でき短い言 葉で反応できるようになる」,4)「短い言葉で自分の意思を伝えられるよ うになる」,5)「簡単な会話のキャッチボールができるようになる」,6)「言 葉のキャッチボールが長く続くようになる」,7)「意識せずに自然に外国 人との会話が楽しめるようになる」であるのに対し,被告DVDでは1)「流 して聞くことを習慣化する」,2)「単語,フレーズの音が聞き取れるように なる」,3)「言っていることが分かり,短いフレーズで返事ができるように なる」,4)「短いフレーズで自分の言いたいことが伝えられるようになる」, 5)「簡単な会話のキャッチボールができるようになる」,6)「言 葉のキャッチボールが長く続くようになる」,7)「意識せずに自然に外国 人との会話が楽しめるようになる」であるのに対し,被告DVDでは1)「流 して聞くことを習慣化する」,2)「単語,フレーズの音が聞き取れるように なる」,3)「言っていることが分かり,短いフレーズで返事ができるように なる」,4)「短いフレーズで自分の言いたいことが伝えられるようになる」, 5)「簡単な会話のキャッチボールができるようになる」,6)「言葉のキャッ チボールが長く続けられる」,7)「意識せず,自然に外国人との会話が楽し めるようになる」であり,その内容,表現はほぼ共通している。\n 他方,原告DVDでは,階段は側面も含めて青色であり,フレーズが白 色の文字で表示されるのに対し,被告DVDでは,階段は側面を含めて白\n色であり,フレーズが青色の文字で表示される。また,原告DVDと被告\nDVDにおいて,階段の背景はいずれも白色の雲がある青空であるが,具 体的な光景は異なる。
(イ)項目ケの部分の原告DVDと被告DVDの上記 の共通点は,空に浮か んだ階段を下から見上げる構図とすることによって,階段を上っていくイ\nメージを抱かせ,階段と英語学習のステップが結び付くものであり,原告 DVDと被告DVDでほぼ共通するフレーズの内容に照らしても,一定の 段階を踏んで英語学習を進めることができるなどのイメージを与えるも のである。そのようなステップが7段階あり,その内容がほぼ同一である ことをも考慮すると,この共通点は,作成者の個性が現れており,全体と して創作的な表現であると認められる。\nそして,上記共通する内容に項目ケの内容等を考慮すれば,項目ケの原 告DVDの表現上の本質的な特徴を被告DVDから直接感得することが\nできると認められる。
・・・・
原告は,原告DVDと被告DVDが,1)イントロダクション,2)受講者イン タビュー,3)商品紹介,4)商品特徴の説明,5)開発者等のインタビュー,6)商 品特徴の説明,7)エンディングという全体的な構成が類似することも主張する\nので,以下,検討する。
ア 前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVD は,いずれも,1)イントロダクション(項目アないしオ),2)受講者インタビ ュー(項目カないしク),3)商品紹介(項目ケ),4)商品特徴の説明(項目コ ないしシ),5)開発者等のインタビュー(項目ス),6)商品特徴の説明(項目 チ及びツ),7)エンディング(項目テ,ト)という構成を有するということが\nできる。なお,上記各項目においては, 基 本的に,使われている写真,光景,登場人物やインタビューを受けた者が話 す内容などは異なる。
イ 原告DVDと被告DVDは,いずれも英会話教材の宣伝,紹介用のもので あり,このようなDVDにおいて,宣伝の対象である商品の購入等を促すと いう目的のために,商品の内容や特徴,商品を利用した場合の効果,サポー ト体制の説明をすることは,ごく一般的であるといえる。そして,商品の内 容,特徴や商品を利用した場合の効果を説明するために,受講者や開発者に 対するインタビューを用いることも,一般的であるといえる。 原告DVDと被告DVDの全体的な構成は,前記アのとおり,原告が主張\nする7つという少なくない要素において一致するが,その各要素は,上記の とおり,同種の目的を有するDVDにおいては,いずれもごく一般的といえ るものである。また,原告DVD及び被告DVDにおけるそれらの各要素の 順序について,特別の印象を与えるようなものであるとはいえない。これら を考慮すると,原告DVDと被告DVDの原告主張の全体的な構成について,\nそその各要素が共通する点をもって創作的な表現であるとは認められない。\nまた,前記 のとおり,被告DVDは,複数の部分において,原告DVD の表現上の本質的な特徴を感得することができる。しかし,それらの本質的\nな特徴を感得することができる表現について,英会話教材の宣伝,広告用の\n動画における表現としては関連するとはいえるが,それ以上にそれらが表\現 上及び内容上,相互に密接に関連しているものとはいえない。このことに, 全体的な構成の各要素が同種の目的を有するDVDにおいてごく一般的な\nものであること,被告DVDには,原告DVDの表現上の本質的な特徴を感\n得することができるとはいえない部分も多いこと(前記 )を考慮すると, 被告DVDに原告DVDの表現上の本質的な特徴を感得することができる\n部分があるとしても,原告DVD全体についての表現上の本質的な特徴を被\n告DVDから感得することができるとまではいえない。
(4)小括
以上によれば,被告DVDは,少なくとも,項目イ,ウ,オ,ケ,テ及びト において,原告DVDの表現上の本質的特徴を被告DVDから直接感得するこ\nとができる。 そして,対照表」及び「DVDスクリプト内容対照表\」における共通点の内容等及び弁 論の全趣旨に照らし,被告DVDは,原告DVDに依拠して作成されたものと いえる。 これらのことに,前記のとおり,原告DVDと被告DVDでは,画面自体は 異なり,原告DVDの表現に一定の修正,増減,変更等が加えられて別の表\現 となっていることなどから,被告DVDは,少なくとも,上記各項目において, 原告DVDを翻案したものと認められる。
2 争点2(編集著作物としての複製権,翻案権侵害の有無)及び争点3(言語の 著作物としての複製権,翻案権及び譲渡権侵害の有無)について
原告の主位的な主張のうち,編集著作物としての侵害の主張は,別紙「DVD の内容の対照表」の「イントロダクション」などの標題によって区切られた部分\nを一つの素材として,その選択と配列について創作性を有すると主張するもので ある。しかし,この主張は,少なくとも,前記1(3)の全体的な構成に関する類似\nの主張において述べたところと同様の理由により,理由がない。また,原告は, 予備的に,原告DVDに含まれるスクリプト部分の言語の著作物の侵害を主張す\nるところ,共通するスクリプトは,事実を述べるものか,英会話教材の宣伝,紹 介用の動画において,ありふれたものということができ,その順序にも表現上の\n創作性があるとは認められないから,原告の主張は理由がない。

◆判決本文

両当事者は、宣伝のキャッチフレーズについて著作権侵害を争っていましたが、こちらは1審、2審とも著作物性無しと判断しています。

◆平成27(ネ)10049

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平成28(ワ)32742  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月19日  東京地方裁判所(47部)

 いろいろ争点はありますが、写真について、著作物性が否定されました。ただ、文章について複製権・翻案権侵害が認められました。損害額は、販売不可事情を考慮して、114条1項(原告単価利益*被告販売数)の7割と認定されました。
 制作工程写真は,別紙「制作工程写真目録」記載のとおり,故一竹によ る「辻が花染」の制作工程の各場面を撮影したものであるところ,これら 制作工程写真の目的は,その性質上,いずれも制作工程の一場面を忠実に 撮影することにあり,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光\n線との関係等といった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとな\nらざるを得ず,誰が撮影しても同じように撮影されるべきものであって, 撮影者の個性が表れないものというべきである。したがって,制作工程写\n真は,いずれも著作物とは認められない。これに反する原告らの主張は採 用できない。
イ 美術館写真について
美術館写真は,別紙「美術館写真目録」記載のとおり,一竹美術館の外 観又は内部を撮影したものであるところ,これら美術館写真の目的は,そ の性質上,いずれも一竹美術館の外観又は内部を忠実に撮影することにあ り,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光線との関係等とい\nった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとならざるを得ず,誰\nが撮影しても同じように撮影されるべきものであって,撮影者の個性が表\nれないものである。したがって,美術館写真は,いずれも著作物とは認め られない。これに反する原告らの主張は採用できない。
(2) 制作工程文章の著作物性について
制作工程文章は,別紙「制作工程文章目録」記載のとおり,「辻が花染」 の各制作工程を説明したものである。その目的は,各制作工程を説明するこ とにあるため,表現上一定の制約はあるものの,制作工程文章が,同様に「辻\nが花染」の制作工程について説明した故一竹作成の文章(甲41)とも異な っていることに照らしても,各制作工程文章の具体的表現は,その作成者の\n経験を踏まえた独自のものとなっており,作成者の個性が表現されていると\nいえるから,制作工程文章は全体として創作性があり,著作物と認められる。 これに反する被告の主張は採用できない。
(3) 旧HPコンテンツの著作物性について
旧HPコンテンツは,別紙「旧HPコンテンツ目録」記載のとおりであり, 旧HPコンテンツ1は「辻が花染」の歴史的説明,旧HPコンテンツ2は故 一竹と「辻が花染」との関わり,旧HPコンテンツ3はフランス芸術文化勲 章シュヴァリエ章勲章メッセージの和訳,旧HPコンテンツ4はスミソニア\nン国立自然史博物館からの感謝状の和訳である。旧HPコンテンツ1及び2 はいずれも歴史的事実に関する記述ではあるものの,その事実の取捨選択, 表現の仕方には様々なものがあり得,その具体的表\現には筆者の個性が表れ\nているといえるから,創作性があり,著作物と認められる。また,旧HPコ ンテンツ3及び4はいずれも仏語ないし英語の翻訳であるが,翻訳の表現に\nは幅があり,用語の選択や訳し方等その具体的表現に翻訳者の個性が表\れて いるといえるから,創作性があり,著作物と認められる。これに反する被告 の主張は採用できない。
複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再 製することをいうところ(著作権法2条1項15号参照),著作物の複製と は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現\nに修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現する\nことなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が\n既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作\n成する行為をいうものと解すべきである。また,翻案とは,既存の著作物に 依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\ 現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現する\nことにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接\n感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解すべきであ る(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷 判決・民集55巻4号837頁参照)。 被告作品集130−131頁(甲9)と制作工程文章を別紙「原被告作品 対比表」記載1のとおり比較対照すると,被告作品集130−131頁の制\n作工程に関する各文章は,制作工程文章1ないし7及び9の各文章と全く同 一か,又はほとんど同一であり,一部改変され,相違点はあるものの,全体 として制作工程文章の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。\nよって,被告は被告作品集130−131頁において制作工程文章1ないし 7及び9を複製ないし翻案したものと認められ,複製権ないし翻案権を侵害 する。そして,上記改変は著作者の意に反する改変といえるから,同一性保 持権を侵害する。 これに対して,被告は,両各文章は創作性のない部分について同一性を有 するにすぎず,複製にも翻案にも当たらないと主張するが,上記のとおり, 制作工程文章の創作的部分において同一性が認められるから,被告の主張は 採用できない。
原告らは,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集の利益額 に基づき114条1項の適用があると主張するのに対し,被告はこれを争 うため,以下検討する。
(ア) 原告作品集の販売主体及び原告らの販売能力
原告作品集の奥付には「(C)1998 (株)一竹辻が花」と記載され,原告作 品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおいて販売されていることが認 められる(甲8,29)ところ,訴外一竹辻が花(昭和59年5月8日 に「株式会社オピューレンス」から商号変更)は平成22年まで原告A が代表者を務めていた会社であり(甲50の1及び2),原告工房も含\nめて実質的には原告Aらの経営によるものと認められ,その販売主体は 実質的には原告らとみることができる。また,原告作品集の制作には, 故一竹を引き継いで「辻が花染」を制作する原告Aの関与が大きいもの と考えられることも併せ考慮すれば,原告らには原告作品集の販売能力\nがあると認められる。 これに対し,被告は,そもそも原告らが原告作品集を販売しておらず, 販売能力がないから,被告作品集への114条1項の適用の基礎を欠く\nと主張するが,上記説示に照らして採用できない(なお,被告は,原告 作品集の奥付に「制作(株)便利堂」と記載されていること(甲8)も 指摘するが,この点は販売能力とは関係がない。)。
(イ) 原告作品集と被告作品集の代替性
原告作品集と被告作品集は,その大部分において,着物作品(部分を 含む。)を1頁に大きく配置して紹介するとともに,観賞の対象とする ものであり,そのほかの部分においても,故一竹の略歴,制作工程の説 明,美術館の紹介が記載されており,内容は類似するものと認められる (甲9,51)。また,上記内容の共通性に照らして,着物作品の観賞 を主としつつ,故一竹と「辻が花染」について理解を深めるという利用 目的・利用態様も基本的には同一であると認められる。そうすると,後 記のとおり,販売ルートの違いはあるものの,両作品集には代替性が認 められる。被告は,内容,利用目的・利用態様及び販売ルートの相違か ら,原告作品集と被告作品集には代替性がないと主張するが,上記説示 に照らして採用できない。
(ウ) 以上からすれば,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集 の利益額に基づき著作権法114条1項の適用があるというべきである。
イ 原告らが販売することができないとする事情(推定覆滅事情)
被告は,販売市場の相違,被告の営業努力,被告作品集の顧客吸引力に より,被告作品集の譲渡数量の全数について販売することができないとす る事情があると主張する。 そこで検討するに,原告作品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおい てインターネット上で販売されている(甲29)のに対し,被告作品集は 一竹美術館のショップ内で販売されており(前記前提事実(4)ア),顧客層 に一定の違いがあると考えられること,また,被告作品集は,美術館のシ ョップにおいてまさに一竹作品等を観賞した者に対して販売されているこ とにより,販売態様の異なる原告作品集とは顧客誘引力に違いがあると考 えられること,以上の事情を踏まえると,被告作品集の30%については, 原告らが販売することができないとする事情があったと認めるのが相当で ある。

◆判決本文

問題となった著作物は以下です。

◆別紙1

◆別紙2

◆別紙3

◆別紙4

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平成29(ワ)672等  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年3月29日  東京地方裁判所

 イラストが写真の翻案かがあらそわれました。写真の著作物性は認められましたが、翻案ではないと判断されました。
 写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),\n陰影の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合して なる一つの表現であり,そこに撮影者等の個性が何らかの形で表\れていれば 創作性が認められ,著作物に当たるというべきである。 (2) これを本件についてみると,本件写真素材は,別紙1のとおりであるとこ ろ,右手にコーヒーカップを持ち,やや左にうつむきながらコーヒーカップ を口元付近に保持している男性を被写体とし,被写体に左前面上方から光を 当てつつ焦点を合わせ,背景の一部に柱や植物を取り入れながら全体として 白っぽくぼかすことで,赤色基調のシャツを着た被写体人物が自然と強調さ れたカラー写真であり,被写体の配置や構図,被写体と光線の関係,色彩の配合,被写体と背景のコントラスト等の総合的な表\現において撮影者の個性が表れているものといえる。したがって,本件写真素材は上記の総合的表\現 を全体としてみれば創作性が認められ,著作物に当たる。 (3) これに対し,被告は,本件写真素材は,背景,照明・光量,色合いのいず れにおいても多くの類例がみられる平凡かつありふれた表現であり,創作性が存在しないため,著作物とは認められないと主張する。しかし,写真の創\n作性は,写真を構成する諸要素を総合して判断されるべきものであるところ,背景,照明・光量,色合い等の各要素において,それぞれ似たような例が存\n在するとしても,そのことは直ちに創作性を否定する理由とはならない。本 件写真素材の総合的表現を全体としてみればそこに創作性が認められることは前記(2)のとおりであるから,被告の主張は採用できない。 原告は,被告が本件写真素材を原告に無断でトレースし,小説同人誌の裏 表紙のイラストに使用して,当該小説同人誌を販売した行為は,原告の本件写真素材に係る著作権(複製権,翻案権及び譲渡権)を侵害していると主張\nする。
(2) 複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再 製することをいうところ(著作権法2条1項15号参照),著作物の複製と は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表\現することなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうものと解すべきである。また,翻案とは,既存の著作物に 依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\ 現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解すべきであ る(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷 判決・民集55巻4号837頁参照)。
(3) 本件イラストは,別紙2のとおりのものであり,A5版の小説同人誌の裏 表紙にある3つのイラストスペースのうちの一つにおいて,ある人物が持つ雑誌の裏表\紙として,2.6センチメートル四方のスペースに描かれている白黒のイラストであって,背景は無地の白ないし灰色となっており,薄い白 い線(雑誌を開いた際の歪みによって表紙に生じる反射光を表\現したもの) が人物の顔面中央部を縦断して加入され,また,文字も加入されているもの である。
(4) 前記1(2)で説示した本件写真素材の創作性を踏まえれば,本件写真素材 の表現上の本質的特徴は,被写体の配置や構\図,被写体と光線の関係,色彩 の配合,被写体と背景のコントラスト等の総合的な表現に認められる。一方,前記前提事実(3)のとおり,本件イラストは本件写真素材に依拠して作成さ れているものの,本件イラストと本件写真素材を比較対照すると,両者が共 通するのは,右手にコーヒーカップを持って口元付近に保持している被写体 の男性の,右手及びコーヒーカップを含む頭部から胸部までの輪郭の部分の みであり,他方,本件イラストと本件写真素材の相違点としては,1)本件イ ラストはわずか2.6センチメートル四方のスペースに描かれているにすぎ ないこともあって,本件写真素材における被写体と光線の関係(被写体に左 前面上方から光を当てつつ焦点を合わせるなど)は表現されておらず,かえって,本件写真素材にはない薄い白い線(雑誌を開いた際の歪みによって表\紙に生じる反射光を表現したもの)が人物の顔面中央部を縦断して加入されている,2)本件イラストは白黒のイラストであることから,本件写真素材に おける色彩の配合は表現されていない,3)本件イラストはその背景が無地の 白ないし灰色となっており,本件写真素材における被写体と背景のコントラ スト(背景の一部に柱や植物を取り入れながら全体として白っぽくぼかすこ とで,赤色基調のシャツを着た被写体人物が自然と強調されているなど)は 表現されていない,4)本件イラストは上記のとおり小さなスペースに描かれ ていることから,頭髪も全体が黒く塗られ,本件写真素材における被写体の 頭髪の流れやそこへの光の当たり具合は再現されておらず,また,本件イラ ストには上記の薄い白い線が人物の顔面中央部を縦断して加入されているこ とから,鼻が完全に隠れ,口もほとんどが隠れており,本件写真素材におけ る被写体の鼻や口は再現されておらず,さらに,本件イラストでは本件写真 素材における被写体のシャツの柄も異なっていること等が認められる。これ らの事実を踏まえると,本件イラストは,本件写真素材の総合的表現全体における表\現上の本質的特徴(被写体と光線の関係,色彩の配合,被写体と背景のコントラスト等)を備えているとはいえず,本件イラストは,本件写真 素材の表現上の本質的な特徴を直接感得させるものとはいえない。
(5) したがって,本件イラストは,本件写真素材の複製にも翻案にも当たらず, 被告は本件写真素材に係る著作権を侵害したものとは認められない。なお, 原告は,譲渡権侵害も主張するが,本件イラストが本件写真素材の複製及び 翻案には当たらないため,本件イラストを掲載した小説同人誌を頒布しても 譲渡権の侵害とはならない。

◆判決本文

◆本件写真素材

◆本件イラスト

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平成28(ワ)23604  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成29年11月30日  東京地方裁判所

 お菓子などの商品パッケージデザインについて、改変については承諾があったと判断されました。
 上記(1)ア及びウの認定事実によれば,被告が原告に依頼したのは食品製造 会社等が商品の包装において使用するデザインであること,そのような包装 デザインについては,原告が被告に提出した後に被告が顧客である食品製造 会社等にデザインを提案するが,その後,顧客が被告に対して修正等の指示 を出すことがあり,その場合,被告は顧客の承諾等を得るまでデザインを修 正し,複数回の修正がされることも多いこと,原告は被告から包装デザイン の依頼を受けるようになる前から,デザイン会社から顧客に包装デザインが 提出された後に顧客の指示によりデザインの修正が必要となることがあるこ とやこうした場合に原告に連絡がなければ,原告以外の者が修正を行うこと になることを認識していたことを認めることができる。また,前記(1) 認定事実によれば,原告が被告に提出したデザインはその後被告が修正する ことができた。そうすると,原告が作成し被告に提出していた包装デザイン については,その提出後に顧客の指示等により修正が必要となることが当然 にあり得るというものであったのであり,かつ,原告は,このことを認識し, また,原告以外の者が上記デザインの修正をすることができることも認識し ていたといえる。他方,原告と被告間で,原告が被告にデザインを提出した 後の顧客の指示等による上記修正について,何らかの話がされたり,合意が されたりしたことを認めるに足りる証拠はない。 そして,前記(1)オの認定事実によれば,原告は,写真の使用権につき意識 していて,一般に著作権に関する権利関係が生じ得ることを理解していたこ とがうかがわれるところ,前記(1)エ,カ〜コの認定事実のとおり,原告は, 原告以外の者によって原告デザインに何らかの改変がされたことを認識して いながら,被告から依頼されて継続的に包装デザインを作成して被告に提出 し,更には被告に対して新たな仕事を依頼し,デザイン料の改定を求めるな どの要求はしたものの,改変について何らの異議を唱えず,又は,被告にお いてデザインを改変したことを明示的に承諾するなどしていた。原告が改変 を承諾していなかったにもかかわらず原告デザインの改変に対して被告に異 議を唱えることができなかった事情やデザインの改変を真意に反して承諾し なければならなかった事情を認めるに足りる証拠はない。 以上によれば,原告は,被告からの依頼に基づいて作成された原告デザイ ンにつき,被告による使用及び改変を当初から包括的に承諾していたと認め ることが相当である。
(3) これに対し,原告は,1)原告と被告の間で契約書を作成しておらず,注文 書,請求書等においても著作権に関する記載がないこと,2)デザイン料は1 点当たり1万5000円程度であって改変の許諾を前提とするものと考え難 いこと,3)原告はデザイン作成のたびに修正等がある場合は依頼をするよう に伝えていたこと,4)被告が原告の著作権を侵害した包装デザインを見つけ る都度,原告がこれを購入して写真撮影して証拠化していたこと,5)原告が 異議を述べなかったのは,早く納品するため,仕事の依頼を減らされた状況 において原告が被告との関係を悪化させないようにするためという事情によ ることを主張し,また,6)デザインの作成等の仕事を多数依頼することを条 件に承諾していたとの趣旨を供述し(原告本人〔22〜24〕),包括的な改 変の承諾を否定する。 上記1)については,著作権に関する承諾等は必ずしも文書によりされるも のとは限らないから,そうした記載がされた文書がなければ改変の承諾がな いと解することはできない。上記2)については,本件の証拠上,改変を前提 とする場合の通常のデザイン料が明らかでなく,原告の主張する評価を採用 し難い。上記3)については,前記(1)イ及びウの認定事実によれば,原告は, 被告にデザインの原案を提出した段階で修正等があれば連絡するよう伝えて いたものであって,顧客に対する提示案が固まるまでの間に修正等がある場 合にその作業を原告に依頼するよう求めていたにすぎないから,上記提示案 が固まった後の改変についても原告の承諾が必要であったと直ちに認めるこ とはできない。上記4)については,仮にそのとおりであるとしても,前記(1) エの認定事実によれば,原告以外の者による改変を平成25年8月〜9月頃 までに把握したのであるから,原告が改変を問題と考えていたのであれば, その証拠化後に何らかの異議を唱えるのが通常であるというべきであるとこ ろ,前記(1)エ〜コの認定事実のとおり,本件訴訟の提起に至るまで,原告は 改変について何らの異議を唱えていない。上記5)及び6)については,前記(1) エの認定事実によれば,平成25年8〜9月頃から仕事量が激減してその状 況が好転しなかったものであり,また,証拠(乙106の1及び2)によれ ば,遅くとも平成28年1月頃からは仕事量とデザイン料の不均衡を理由に 被告からの依頼を断るようになったと認められ,異議を述べる障害となる事 由が解消ないし軽減したということができるにもかかわらず,原告は,デザ イン料の改定を求めるなど被告に対して書面をもって一定の要求をする一方 で,原告デザインの改変について本件訴訟の提起に至るまで何らの異議も唱 えていない。

◆判決本文

◆パッケージデザインはこちらです。

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平成27(ワ)23694  著作者人格権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成29年4月27日  東京地方裁判所(47民)

 建物の著作物の創作者が争われました。原告は共同著作者ではないと判断され、また、原告模型の創作性も否定されました。
「建築の著作物」(同法10条1項5号)とは,現に存在する 建築物又はその設計図に表現される観念的な建物であるから,当該設計\n図には,当該建築の著作物が観念的に現れているといえる程度の表現が\n記載されている必要があると解すべきである。 (イ) 上記1(認定事実)(2)のとおり,原告代表者は,乙から本件建物の\n外観に関する設計の依頼を受け,日本の伝統柄をデザインの源泉とし, 一見洗練された現代的なデザインのように見えるが「日本」を暗喩でき るものとするとの設計思想に基づいて,原告設計資料及び原告模型を作 成し,平成25年9月6日,乙に対し,本件建物の外装スクリーンの上 部部分(2階及びR階部分)を立体形状の組亀甲とすることを含めた設 計案を提示している。そして,この時点において,被告竹中工務店は, 上記部分を立体形状の組亀甲とすることに着想していなかった(争いの ない事実)。 しかしながら,上記1(認定事実)(2)のとおり,原告設計資料及び原 告模型に基づく原告代表者の上記提案は,上記1(認定事実)(1)イの内 容が記載された被告竹中工務店設計資料を前提に,当該資料のうちの外 装スクリーンの上部部分のみを変更したものであり,上記提案には,伝 統的な和柄である組亀甲柄を立体形状とし,同一サイズの白色として等 間隔で同一方向に配置,配列することは示されているが,実際建築され る建物に用いられる組亀甲柄より大きいイメージとして作成されたもの であるため,実際建築される建物に用いられる具体的な配置や配列は示 されておらず,他に,具体的なピッチや密度,幅,厚さ,断面形状も示 されていない。一方で,上記1(認定事実)(6)のとおり,組亀甲柄は, 伝統的な和柄であり,平面形状のみならず,建築物を含めて立体形状と して用いられている例が複数存在し,建築物の図案集にも掲載されてい る。 そうすると,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提案は,\n被告竹中工務店設計資料を前提として,その外装スクリーンの上部部分 に,白色の同一形状の立体的な組亀甲柄を等間隔で同一方向に配置,配 列するとのアイデアを提供したものにすぎないというべきであり,仮に, 表現であるとしても,その表\現はありふれた表現の域を出るものとはい\nえず,要するに,建築の著作物に必要な創作性の程度に係る見解の如何 にかかわらず,創作的な表現であると認めることはできない。更に付言\nすると,原告代表者の上記提案は,実際建築される建物に用いられる組\n亀甲柄の具体的な配置や配列は示されていないから,観念的な建築物が 現されていると認めるに足りる程度の表現であるともいえない。\n以上によれば,本件建物の外観設計について原告代表者の共同著作者\nとしての創作的関与があるとは認められない。 (ウ) これに対し,原告は,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表\n者の上記提案は,建物の外観に用いられることが多くない組亀甲柄を選 択し,組亀甲柄を用いるというアイデアから想定される複数の表現から\n特定の表現を選択して決定するものであることや,組亀甲柄部分の光の\n表現についても具体的に決定されているものであることをもって,創作\n的な表現である旨主張する。\n しかしながら,組亀甲柄は,建築物の図案集にも掲載され,実際に建 築物に用いられている例が複数存在することは上記(イ)のとおりであり, 建物の外観に組亀甲柄を用いること自体がありふれていないということ はできない。また,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提\n案は,上記(イ)のとおり,組亀甲柄の大まかな色,形状,配置,配列が 決定されているにすぎず,一般的な組亀甲柄として紹介されている例 (乙11の1ないし4,12の1)と比較しても,個性の発露があると 認めるに足りる程度の創作性のある表現であるということはできない。\nさらに,原告の主張する光の表現は,具体的に明らかではなく,この点\nをもって創作性を認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用できない。 イ 「共同して創作した」といえるかについて 仮に,本件建物の外観設計における原告代表者の創作的関与の有無の\n点を措いても,前記第2の1(前提事実)(2)エ及び上記1(認定事実) (3)・(4)のとおり,被告竹中工務店の設計担当者は,本件打合せで原告代 表者から原告設計資料及び原告模型に基づく提案内容の説明を聞いたこ\nとはあるが,原告との共同設計の提案を断り,その後,原告代表者と接\n触ないし協議したことはない。 また,上記1(認定事実)(2)・(4)のとおり,原告代表者の設計思想は,\n本件建物のファサードを,日本の伝統柄をデザインの源泉とし,一見洗 練された現代的なデザインのように見えるが「日本」を暗喩できるもの とするなどというものであるのに対し,被告竹中工務店の設計思想は, 組亀甲柄のもつ2層3方向の幾何学構造に着目した編込み様のデザイン\nなどというものであって,原告代表者と被告竹中工務店の設計思想は異\nなる上,上記1(認定事実)(2)・(5)のとおり,原告代表者の提案内容と\n完成後の本件建物は,外装スクリーンの上部部分に2層3方向の立体格 子構造が採用されている点は共通するが,少なくとも立体格子の柄や向\nき,ピッチ,幅,隙間,方向が相違しており(具体的には,原告設計資 料及び原告模型には,本件建物の外装の上部に同じ形状及びサイズの白 色の組亀甲柄を等間隔で同一方向に配置,配列することとすること,ピ ッチを「@≒500mm」,巾を「≒150mm」,向きを鉛直,隙間 を「△辺≒200mm」とする格子が記載されており,この他に,外装 スクリーンの寸法や,格子のピッチ,密度,隙間,幅,厚さ,断面形状, 表面処理に関する具体的な記載はないのに対し,本件建物においては,\nその2階以上の外装部分は,アルミキャストを素材とする白色の三次元 曲面による2層3方向の立体格子構造とされ,ピッチは「@250m\nm」,巾は「90mm」,向きは斜光,隙間は「△辺94mm」の格子 が用いられ,横方向が強調された配列とされている。),建物の外観に 関する表現上の重要な部分,すなわち本質的特徴といえる点において多\nくの相違点がある。 これらの事情に照らせば,原告と被告竹中工務店の間に共同創作の意 思や事実があったとは認められず,両者が本件建物の外観設計を「共同 して創作」したと認めることはできない。
・・・・
ア 原著作物性について
上記(1)アのとおり,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提\n案は創作的な表現であるとはいえないから,これに著作物性を認めること\nはできない(更に付言すると,建物の著作物性を認めることもできない。)。
イ 被告竹中工務店による翻案について
また,仮に,原告設計資料及び原告模型に係る原告代表者の提案につい\nての著作物性の有無の点を措いても,上記(1)イのとおり,原告設計資料及 び原告模型と本件建物とは,その表現上の重要な部分において多くの相違\n点があり,本件建物から原告設計資料及び原告模型における表現上の本質\n的特徴を感得することはできない。

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平成27(ネ)10123  著作権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成28年12月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 映画の著作物について、書籍の著作物の翻案であると判断されました。原審では、一部の表現について翻案ではないと判断されていましたが、知財高裁(第2部)は、翻案と認めました。判決文も50ページと長いのですが、後ろに対比表が付加されており総ページ数200ページを超えています。
(ア) 別紙対比表4−1のエピソ\ード3において,本件著作物1と本件映画 とは,「翻案該当性」欄記載のとおり,2)公園に駆け付けた元恋人(婚約者)が被控 訴人(主人公)の様子に驚いて,誰かに何かされたのかと聞いたこと,3)被控訴人 (主人公)はうなずくことしかできなかったこと,4)元恋人(婚約者)が,被控訴 人(主人公)が性犯罪被害を受けたことを知ってやり場のない怒りで手近な物に当 たる様子,5)被控訴人(主人公)が元恋人(婚約者)に対して「ごめんなさい」と 謝り続けたこと,及びその著述(描写)の順序が共通し,同一性がある。 なお,被控訴人は,「翻案該当性」欄記載のとおり,1)被控訴人(主人公)が元恋 人(婚約者)に助けを求めたことも,本件著作物1と本件映画とで共通する点とし て主張するが,本件著作物1では,被控訴人が元恋人に電話を掛け,電話越しに異 変を察知した元恋人が被控訴人の状況を確認しようとし,その場にいることを命じ たという,助けを求める具体的な場面が著述されているのに対し,本件映画では, 婚約者が息を切らしながら走っていることの描写と上記2)〜5)のやりとりを通じて, 主人公が元恋人に助けを求めたことが暗に表現されているのであるから,言語の著\n作物と映画の著作物との表現形態の差異を考慮しても,本件著作物1における被控\n訴人が元恋人に助けを求める場面の著述と共通する描写が,本件映画においてなさ れているものと認めることはできない。 (イ) そして,前記(ア)の本件著作物1の著述中の同一性のある部分(以下「本 件著作物1−3の同一性ある著述部分」という。)は,それぞれの著述だけを切り離 してみれば,事実の記載にすぎないようにも見えるものの,本件著作物1−3の同 一性ある著述部分全体としてみれば,自ら助けを求めた元恋人から尋ねられたにも かかわらず,性犯罪被害に遭った事実を告げることができず,うなずくことと「ご めんなさい」を繰り返すことしかできない性犯罪被害直後の被害女性の様子と,助 けを求められて駆け付けたにもかかわらず,何も助けることができなかったという やり場のない怒りを,大声を出すことと物にぶつけるしかない元恋人の様子とを対 置して,短い台詞と文章によって緊迫感やスピード感をもって表現することで,単\nに事実を記載するに止まらず,被害に遭った事実を口に出すことの抵抗感や,被害 に遭ってしまった悔しさ,やるせなさ,被害者であるにもかかわらず込み上げてく る罪悪感をも表現したものと認められる。\nそうすると,本件著作物1−3の同一性ある著述部分は,被控訴人が被害を受け た当事者としての視点から,前記2)〜5)の各事実を選択し,被害直後の被控訴人の 状況や元恋人とのやりとりを格別の修飾をすることなく短文で淡々と記述すること によって,被控訴人の感じた悔しさ,やるせなさ,罪悪感等を表現したものとみる\nことができ,その全体として,被控訴人の個性ないし独自性が表れており,思想又\nは感情を創作的に表現したものと認められる。\n

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平成28(ネ)10054  著作権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成28年12月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ゴルフクラブのシャフトの原画デザインについて1審(46民)と同様に著作物性なしと判断されました(第2部)。
 控訴人は,1)本件シャフトデザイン等の縞模様を含むベース部分は,トルネード (竜巻)をイメージし,人間のパワーの源である赤から,シャフトのカーボンを表\nす黒に昇華していく表現であり,ゴルフ界に嵐を巻き起こすという意味を込めてい\nる,2)ブランドロゴの横字画部の右側を鋭角に伸ばすことでボールの弾道やエネル ギーの伸びと指向性を表現している,3)ブランドロゴをトルネード模様(縞模様) の上に配置することでシャフト縦方向へのパワーを表現する工夫を凝らしているか\nら,本件シャフトデザイン等には創作性が認められるべきである,と主張する。 しかし,1)縞模様は,本件シャフトデザイン及び被告シャフト以外にもシャフト のデザインに用いられた例がある(乙1の添付資料8)上に,様々な物のデザイン として頻繁に用いられ,縞の幅を一定とせずに徐々に変更させていく表現も一般に\n見られるところである。ゴルフシャフトの色として,赤,黒及びグレーの3色を用 いた例は証拠上複数見られる(甲30の3の中央の画像の真ん中のシャフト,甲3 0の4の中央の画像の一番上のシャフト,甲30の5の中央の画像の後ろのシャフ ト)。よって,本件シャフトデザイン等を縞模様とし,縞の幅を変化させ,縞の色と して赤,黒及びグレーを選択したことは,ありふれている。 また,2)いわゆるデザイン書体は,文字の字体を基礎として,これにデザインを 施したものであるところ,文字は,本来的には情報伝達という実用的機能から生じ\nたものであり,社会的に共有されるべき文化的所産でもあるから,文字の字体を基 礎として含むデザイン書体の表現形態に著作権としての保護を与えるべき創作性を\n認めることは,一般的には困難であると考えられる。しかも,本件において,「To ur AD」のブランドロゴは,上記ア(エ)のとおり,既存のフォントを利用した上 で,「T」の横字画部を右に長く鋭角に伸ばしたものであるところ,文字として可読 であるという機能を維持しつつデザインするに当たって,文字の一字画のみを当該\n文字及び他の文字の字画を妨げない範囲で伸ばすことは一般によく行われる表現で\nあること,文字の一字画を伸ばした先を単に鋭角とすることも,平凡であることか らすれば,この表現が個性的なものとは認められない。\nさらに,3)ブランドロゴをトルネード模様の上に配置したことに関しては,シャ フトのデザインに製品等のロゴを目立つように配置することは,他のゴルフクラブ のシャフトにも頻繁に見られる(甲29,甲30の1〜5)表現であり,細長いシ\nャフトに文字を大書して目立たせる配置をすることの選択の幅は狭いから,ブラン ドロゴをトルネード模様の上に配置したことが個性的な表現とはいえない。\nよって,本件シャフトデザイン等に,創作的な表現は認められず,著作物性は認\nめられない。
控訴人は,本件シャフトデザイン等に著作物性が認められる場合であっても,複 製権等の侵害は主張せず,著作権(翻案権,二次的著作物の譲渡権)及び著作者人 格権(同一性保持権)の侵害を主張するので,下記においては,念のため,仮に, 本件シャフトデザイン等に著作物性が認められるとした場合に,被告シャフトが本 件シャフトデザイン等を翻案したものであり,被控訴人が,控訴人の著作権(翻案 権,二次的著作物の譲渡権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害したといえ るか,について判断する。
・・・
上記1(2)アの認定事実に基づけば,仮に,本件シャフトデザイン等に著 作物性が認められるとした場合には,その本質的特徴は,赤と黒を基調にし,グレ ーをリングに用い,グリップ側に血液を象徴する赤,ヘッド側にカーボンを象徴す る黒を用いて,縞模様を構成する赤と黒の幅を徐々に変化させつつ,赤と黒とが馴\n染むぼかし部分を入れて,グリップ側からヘッド側へと人間の血液を象徴する赤色 部分が減少しカーボンを象徴する黒が増加していくことを具体的に表現した点にあ\nるものと認められる。
ウ これに対し,控訴人は,本件シャフトデザイン等の本質的特徴を以下のとおり主張する。 「シャフトのグリップ側の端を占める色を「色A」とし,ヘッド側の端を占める 色を「色B」とする。 シャフトには複数本のリングを等間隔に配置する。等間隔に配置されたリング間 を,色 A と色 B で塗り分け,当該2色の境目がリングと並行になるように色分けす る。リング間においては,シャフト全体で見た色の塗り分けとは逆に,グリップ寄 りに色Bを,ヘッド寄りに色Aが配置される。リング間における各色の割合である が,最もグリップ側に近いリング間は,色Aがその多くを占める。2番目にグリッ プ側に近いリング間は,色Aの占める割合が少し減り,色Bの割合が増える。3番 目にグリップ側に近いリング間は,さらに色Aが占める割合が減り,色Bの割合が 増える。これを繰り返し,最もヘッド側にあるリング間においては,色Bがほとん どの割合を占めることとなり,色Aが占める割合はわずかになる。 また,各リングのグリップ側に接する部分にはぼかし部分を入れる。ぼかし部分 の面積は,各リングそれぞれで異なっており,最もグリップに近いリング脇のぼか し部分が最も面積が大きく,ヘッド側に近いリングほどぼかし部分の面積は小さく なっていく。」 しかし,具体的な配色を捨象した,幅を変えながら縞模様が変化していくという 表現では,本件シャフトデザイン等において,人間の血液を象徴する赤とカーボン\nを象徴する黒をシャフトの地色として選択し,グリップ側からヘッド側にかけて徐々 に赤色部分が減少し黒色部分が増加していくという特徴的な表現が感得できない。\nしかも,配色を問わない上記控訴人の主張は,自身の制作意図とも矛盾しており, いずれにしても採用し得ない。
(2) 被告シャフトとの対比
ア 本件シャフトデザイン等の本質的特徴は上記(1)イのとおりであり,上記 1(2)ア(シ)で認定した被告シャフト対照表に係る色Aが赤,色B及びDが黒,色Cが\nグレーという配色になる。そうすると,1)全く同じ配色の被告シャフトはないから, 被告シャフトは,いずれも,本件シャフトデザイン等の本質的特徴である配色を備 えていない。また,2)本件シャフトデザイン等の色Aが赤であるのは,人間の血液 を象徴したものであるところ,被告シャフト1〜50(42〜46のMJカラーを 除く。),55〜68,73の色Aは白系,被告シャフト51〜54の色Aはシルバ ー系,被告シャフト74〜77,79〜81の色Aはグレー,被告シャフト42〜 46のMJカラー,82,83の色Aは黄色と,いずれも,血液をイメージしにく い色である。さらに,3)本件シャフトデザイン等の色B及びDは共に黒であり,黒 と彩度のみを異にするグレーを用いることによって,グリップ側からヘッド側へ連 続した印象を与える表現となっているものと解されるところ,被告シャフト5〜8,\n13,14,16〜19,61〜64(42〜46のMTカラー),65〜68,6 9〜72(42〜46のMJカラー),83,並びに被告シャフト9,10及び41 のブルーの色B及びD,並びに,被告シャフト5〜31,37〜64,69〜83 の色B及びCは,同系色ですらない異なる色である。 したがって,被告シャフトはいずれも,上記1)の特徴を備えないことに加え,被 告シャフト1〜4は上記2)の特徴を備えず,被告シャフト5〜31は上記2)及び3) の特徴を備えず,被告シャフト32〜36は上記2)の特徴を備えず,被告シャフト 37〜68は上記2)及び3)の特徴を備えず,被告シャフト69〜72は上記3)の特 徴を備えず,被告シャフト73〜77は上記2)及び3)の特徴を備えず,被告シャフ ト78は上記3)の特徴を備えず,被告シャフト79〜83は上記2)及び3)の特徴を 備えない。よって,被告シャフトはいずれも,本件シャフトデザイン等の本質的特 徴を直接感得させるとはいえない。 なお,被告シャフト78は,上記被告シャフト対照表の色Aが赤,色B及びDが\nメタリック黒及び黒であるから,本件シャフトデザイン等の表現上の本質的特徴の\n一部を備えているともいえる。しかし,被告シャフト78の色Cは,はっきりした 白であって,赤と黒の配色部分をくっきりと区切り,濃色である赤と黒を背景にリ ズミカルに配置されている印象があり,被告シャフト78全体の赤から黒へと徐々 に変化していくという動きを阻害しているから,血液を象徴する赤色部分がグリッ プ側からヘッド側へと減少し,カーボンを象徴する黒色部分がグリップ側からヘッ ド側へと増加していくというイメージを想起させる構成ではない。\nよって,被告シャフト78からは,本件シャフトデザイン等の表現上の本質的特\n徴を直接感得することはできない。
イ これに対して,控訴人は,被告シャフトは,色Aが色Bに遷移していく 描写がされているから,その表現には,本件シャフトデザイン等の本質的特徴が維\n持されており,直接感得できる,と主張する。 しかし,控訴人の上記主張は,本件シャフトデザイン等の表現上の本質的特徴を,\n上記第2,2(2)(控訴人の主張)アのとおりとらえることを前提としており,上記 (1)ウのとおり,その前提が誤っているから,控訴人の主張には,理由がない。
(3) 小括
よって,仮に,本件シャフトデザイン等に著作物性が認められるとしても,被告 シャフトは,本件シャフトデザイン等の表現上の本質的特徴を直接感得できるもの\nではないから,仮に,被告シャフトに創作性がある場合には,別個の著作物である こととなる。したがって,被控訴人による被告シャフト製造,頒布が,本件シャフ トデザイン等に係る控訴人の著作権(翻案権,二次的著作物の譲渡権)を侵害した とは認められない。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成27(ワ)21304

◆原画と実際に採用されたデザインはこちら

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平成28(ネ)10067  楽曲演奏禁止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成28年12月8日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審も楽曲の翻案を否定しました。
 これに対し,控訴人は,原告楽曲と被告楽曲のBPM(テンポ)がほぼ同 じである点は,両楽曲のいかなる相違点をも打ち消すほどに,同一性を示す 根拠となる旨主張する。 しかし,楽曲についての複製,翻案の判断に当たっては,楽曲を構成する\n諸要素のうち,まずは旋律の同一性・類似性を中心に考慮し,必要に応じて リズム,テンポ等の他の要素の同一性・類似性をも総合的に考慮して判断す べきものといえるから,原告楽曲と被告楽曲のテンポがほぼ同じであるから といって,直ちに両楽曲の同一性が根拠づけられるものではない。そして, 上記で述べたとおり,両楽曲は,比較に当たっての中心的な要素となるべき 旋律において多くの相違が認められることから,被告楽曲から原告楽曲の表\n現上の特徴を直接感得することができるとは認め難いといえる。他方,両楽 曲のテンポが共通する点は,募集条件により曲の長さや歌詞等が指定されて いたことによるものと理解し得ることから,楽曲の表現上の本質的な特徴を\n基礎づける要素に関わる共通点とはいえないのであって,上記判断を左右す るものではない。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。 また,控訴人は,両楽曲が実質的に同一の楽曲であることは,両楽曲の歌 と伴奏をそれぞれ入れ替えたもの(甲32及び33)が聴感上違和感なく再 生できることから明らかであるとも主張するが,そのようなことが,両楽曲 の同一性を直ちに根拠づけるものでないことは明らかであるから,甲32及 び33によっても,上記判断が左右されるものではない。 その他にも控訴人は,原告楽曲と被告楽曲が実質的に同一の楽曲である旨 をるる主張するが,以上説示したところに照らし,いずれも採用することが できない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成27(ワ)21850

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平成28(ラ)10009  保全異議申立決定に対する保全抗告事件  著作権  民事仮処分 平成28年11月11日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 判例百選について、編集著作物の著作者かが争われました。知財高裁は、著作者であるとした判断を破棄しました。第3部の判断です。
著作者とは著作物を創作する者をいい(法2条1項2号),著作物とは, 思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は\n音楽の範囲に属するものをいう(同項1号)。編集著作物とは,編集物 (データベースに該当するものを除く。)でその素材の選択又は配列に よって創作性を有するものであるところ(法12条1項),著作物とし て保護されるものである以上,その創作性については他の著作物の場合 と同様に理解される。 そうである以上,素材につき上記の意味での創作性のある選択及び配 列を行った者が編集著作物の著作者に当たることは当然である。 また,本件のように共同編集著作物の著作者の認定が問題となる場合, 例えば,素材の選択,配列は一定の編集方針に従って行われるものであ るから,編集方針を決定することは,素材の選択,配列を行うことと密 接不可分の関係にあって素材の選択,配列の創作性に寄与するものとい うことができる。そうである以上,編集方針を決定した者も,当該編集 著作物の著作者となり得るというべきである。 他方,編集に関するそれ以外の行為として,編集方針や素材の選択, 配列について相談を受け,意見を述べることや,他人の行った編集方針 の決定,素材の選択,配列を消極的に容認することは,いずれも直接創 作に携わる行為とはいい難いことから,これらの行為をしたにとどまる 者は当該編集著作物の著作者とはなり得ないというべきである。
イ もっとも,共同編集著作物の作成過程において行われたある者の行為が, 上記のいずれの場合に該当するかは,当該行為を行った者の当該共同編 集著作物の作成過程における地位や権限等を捨象した当該行為の客観的 ないし具体的な側面のみによっては判断し難い例があることは明らかで ある。すなわち,行為そのものは同様のものであったとしても,これを 行った者の地位,権限や当該行為が行われた時期,状況等により当該行 為の意味ないし位置付けが異なることは,世上往々にして経験する事態 である。 そうである以上,創作性のあるもの,ないものを問わず複数の者によ る様々な関与の下で共同編集著作物が作成された場合に,ある者の行為 につき著作者となり得る程度の創作性を認めることができるか否かは, 当該行為の具体的内容を踏まえるべきことは当然として,さらに,当該 行為者の当該著作物作成過程における地位,権限,当該行為のされた時 期,状況等に鑑みて理解,把握される当該行為の当該著作物作成過程に おける意味ないし位置付けをも考慮して判断されるべきである。 これに対し,抗告人は,著作者性の判断に当たっては,当該行為が行 われた状況や立場といった背景事情を捨象し,もっぱら創作的表現のみ\nに着目して判断されなければならない旨主張するけれども,複数人の関 与の下に著作物が作成される場合の実情にそぐわないというべきであり, この点に関する抗告人の主張は採用し得ない。
ウ 以上を踏まえ,前記認定事実に基づき,以下検討する。
・・・
エ このように,少なくとも本件著作物の編集に当たり中心的役割を果たし たB教授,その編集過程で内容面につき意見を述べるにとどまらず,作 業の進め方等についても編集開始当初からE及びB教授にしばしば助言 等を与えることを通じて重要な役割を果たしたというべきA教授及び抗 告人担当者であるEとの間では,相手方につき,本件著作物の編集方針 及び内容を決定する実質的権限を与えず,又は著しく制限することを相 互に了解していた上,相手方も,抗告人から「編者」への就任を求めら れ,これを受諾したものの,実質的には抗告人等のそのような意図を正 しく理解し,少なくとも表向きはこれに異議を唱えなかったことから,\nこの点については,相手方と,本件著作物の編集過程に関与した主要な 関係者との間に共通認識が形成されていたものといえる。しかも,相手 方が本件原案の作成作業には具体的に関与せず,本件原案の提示を受け た後もおおむね受動的な関与にとどまり,また,具体的な意見等を述べ て関与した場面でも,その内容は,仮に創作性を認め得るとしても必ず しも高いとはいえない程度のものであったことに鑑みると,相手方とし ても,上記共通認識を踏まえ,自らの関与を謙抑的な関与にとどめる考 えであったことがうかがわれる。 これらの事情を総合的に考慮すると,本件著作物の編集過程において, 相手方は,その「編者」の一人とされてはいたものの,実質的にはむし ろアイデアの提供や助言を期待されるにとどまるいわばアドバイザーの 地位に置かれ,相手方自身もこれに沿った関与を行ったにとどまるもの と理解するのが,本件著作物の編集過程全体の実態に適すると思われる。
(4) そうである以上,法14条による推定にもかかわらず,相手方をもって 本件著作物の著作者ということはできない。

◆判決本文

◆前審はこちら 平成28年(モ)第40004号

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平成28(ネ)10026  売掛金請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成28年6月23日  知的財産高等裁判所  水戸地方裁判所  龍ケ崎支部

 1審(水戸地裁)では、著作権侵害なしと判断されましたが、知財高裁は、本件電子データの作成および掲載が、複製権および公衆送信権侵害と認定しました。 原審の判決(平成27年(ワ)第24号)はアップされていません。
 被控訴人は,仮に被控訴人の行為が著作権侵害に当たるとしても,被控訴 人は,本件ホームページ掲載行為は何ら制限されていなかったと認識してお り,したがって,被控訴人に故意過失は認められない,また,フリーペーパ ーという本件冊子の性格や,編集者としての被控訴人の立場,被控訴人は, 控訴人自身がプレスリリースした本件冊子と全く同一のものを電子データ化 して本件ホームページに掲載したにすぎないこと,被控訴人は,平成26年 11月に控訴人から著作権料を請求されるや,僅か1週間足らずの同月7日 に本件ホームページから本件電子データを削除していること等の事情からす れば,侵害の程度は著しく小さく,被控訴人の行為に違法性はないと主張す る。 しかし,被控訴人は,本件各写真が控訴人の著作物であることを知りつつ, これを掲載した本件冊子を,その許諾の範囲を超えて,電子データ化した上, インターネット上の本件ホームページに掲載したのであるから,控訴人が有 する本件各写真の著作権(複製権,公衆送信権)を侵害することについて, 少なくとも過失が認められる。 また,本件における被侵害利益(控訴人が有する本件各写真の著作権)や 侵害行為の態様(電子データ化して3か月弱インターネット上の本件ホーム ページに掲載した)を考慮すれば,被控訴人が指摘する点を踏まえたとして も,違法性がないとはいえないことは明らかである。 以上によれば,本件ホームページ掲載行為による著作権侵害について被控 訴人の過失及び行為の違法性が認められるというべきであり,これに反する 被控訴人の主張は理由がない。

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平成27(ワ)21850  楽曲演奏禁止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成28年5月19日  東京地方裁判所

 音楽著作物について、翻案ではないと判断されました。
 上記事実関係によれば,原告楽曲と被告楽曲の旋律(上記(2)ウ)は,旋律 の上昇及び下降など多くの部分が相違しており,一部に共通する箇所がある ものの相違部分に比べればわずかなものであって,被告楽曲において原告楽 曲の表現上の特徴を直接感得することができるとは認め難い。また,両楽曲\nは,全体の構成(同ア),歌詞の各音に対応する音符の長さ(同イ)及びテ\nンポ(同エ)がほぼ同一であり,沖縄民謡風のフレーズを含む点で共通する が,これらは募集条件により歌詞,曲調,長さ,使用目的等が指定されてお り(同オ),作曲に当たってこれに従ったことによるものと認められるから, こうした部分の同一性ないし類似性から被告楽曲が原告楽曲の複製又は翻案 に当たると評価することはできない。 これに対し,原告は前記のとおり原告楽曲と被告楽曲は実質的に同一の楽 曲である旨るる主張するが,以上説示したところに照らし,いずれも採用す ることができない。 (4)さらに,念のため,依拠性について検討すると,原告は,1)実質的に同一 の楽曲を依拠することなく作曲することは不可能であること,2)被告Yに短 期間で被告楽曲を独自に作曲する経験及び能力があるとは考えられないこと,\n3)電子メールの送信日時には改ざんの可能性があることから,被告Zを担当\n者とする被告SMEが被告Yと意思を通じ,原告楽曲に依拠して被告楽曲を 作曲したと主張する。 そこで判断するに,上記(3)のとおり両楽曲が実質的に同一であるとはいえ ないから,原告の上記1)の主張は前提を欠く。また,上記2)の主張を基礎付 けるに足りる証拠はない。さらに,上記3)の主張については,証拠(乙1及 び2の各1,乙20)及び弁論の全趣旨によれば,原告及び被告Yがそれぞ れ被告Zに対し楽曲の完成及びこれが収められたファイルの保存先を電子メ ールにより伝えたのが,被告Yにおいては平成25年1月18日午前11時 10分,原告においては同日午前11時32分であると認められる一方,電 子メールの送信日時については,一般的ないし抽象的な改ざんの可能性があ\nるとしても,本件の関係各証拠上,被告らによる改ざんがあったことは何ら うかがわれない。 (5) 以上によれば,被告楽曲が原告楽曲の複製又は翻案に当たるとはいえない から,原告の著作権が侵害されたとは認められず,これを前提とする著作者 人格権の侵害も認められない。したがって,その余の点について判断するま でもなく,原告の請求は全て理由がない。

◆判決本文

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平成28年(モ)第40004号保全異議申立事件(基本事件・平成27年(ヨ)第22071号仮処分命令申\\立事件)

 編集著作物の翻案が争われました。翻案であるとして仮処分を認めた決定を認可しました。対象は判例百選です。この事件も将来、判例百選に載るんでしょうね。
 そこで,上記イの判断を前提に,本件において,債権者が本件著作物の編集 著作者であるとの推定を覆す事情が疎明されているか否かについて検討する。 前記1(4)で認定した事実によると,1)債権者は,執筆者について,特定の実務家 1名を削除するとともに新たに別の特定の実務家3名を選択することを独自に発案 してその旨の意見を述べ,これがそのまま採用されて,本件著作物に具現されてい ること,2)本件著作物については,当初から債権者ら4名を編者として『著作権判 例百選[第4版]』を創作するとの共同の意思の下に編集作業が進められ,編集協 力者として関わったD教授の原案作成作業も,編者の納得を得られるものとするよ うに行われ,本件原案については,債権者による修正があり得るという前提でその 意見が聴取,確認されたこと,3)このような経緯の下で,債権者は,編者としての 立場に基づき,本件原案やその修正案の内容について検討した上,最終的に,本件 編者会合に出席し,他の編者と共に,判例113件の選択・配列と執筆者113名 の割当てを項目立ても含めて決定,確定する行為をし,その後の修正についても, メールで具体的な意見を述べ,編者が意見を出し合って判例及び執筆者を修正決定, 再確定していくやりとりに参画したことを指摘することができる。そして,執筆者 の執筆する解説は,本件著作物の素材をなしているところ,その執筆者の選定につ いては,とりわけ実務家を含めると選択の幅が小さくないこと,債権者が推挙した 当該3名の人選について,誰が選択しても同じ人選になるようなものとはいえない ことに照らせば,債権者による上記1)の素材の選択には創作性があるというべきで ある。その上,上記3)の確定行為の対象となった判例,執筆者及び両者の組合せの 選択並びにこれらの配列には,もとより創作性のあるものが多く含まれているとこ ろ,債権者が編者としての確定行為によりこれに関与したとみられるのである。そ うすると,上記1)ないし3)を総合しただけでも(その余の債権者主張事実の有無に ついて認定・判断するまでもなく),他の共同著作者の範囲はともかくとして,債 権者が本件著作物の編集著作者の一人であるとの評価を導き得るところ,本件にお いて,前記イの推定を覆す事情が疎明されているということはできない。 したがって,債権者は,編集著作物たる本件著作物の著作者の一人であるという べきである。

エ これに対し,債務者は,前記ウ1)に関し,(ア) 執筆者を推挙しただけでその 執筆者に判例を割り当てていない段階では,編集著作物の素材である解説の特定を していないから,素材の原料の提案にすぎず,素材の選択には当たらない,(イ) 債 権者の推挙した上記3名は,東京地裁知財部の部総括判事,元知財高裁判事の弁護 士及び著作権分野で高い実績を有し第3版においても執筆者になっていた弁護士で あるから,極めて「ありふれた」人選であって,創作性は全くない,(ウ) 仮に3名 の候補者を選択したのみで創作的な表現として著作権が生じるとすると,以後,同\n一の3名を選択することが複製に当たり著作権侵害となってしまう旨,前記ウ2)に 関し,(エ) 共同創作の「意思」があっても,何ら著作者性を基礎付ける事情とはな らない旨,前記ウ3)に関し,(オ) 著作権法においては,自ら物理的に創作的表現を\n表出していない者は,著作者たり得ないところ,著作者の認定においては,あくま\nでそのような客観的な創作的表現行為の有無のみが問題となるのであり,「立場」\nや「肩書」は何の意味も持たないし,「最終的な確定権限を有する者」というよう な行為者の権限を考慮することも許されない(当該権限を要件とするような解釈に 基づいて著作者の認定をすることは,同法2条1項2号,1号に反する。),(カ) 本 件編者会合における決定に参加したことは,他人が世に現出した表現について最終\n的に公表すべき表\\現であることを事後的に承認したにすぎず,本件著作物の作成に 創作的関与をしたとの評価にはつながらない,(キ) 本件編者会合後の修正について は,債権者は他者のした提案を一部事後承認したにすぎず,上記(カ)と同様に,本件 著作物の作成に創作的関与をしたとの評価にはつながらない,(ク) 債権者の前記ウ 3)の行為を債権者が本件著作物の編集著作者の一人であることの根拠とすることは, 「それまで表現されたものとして存在しなかったものを初めてつくり出す行為」を\nしていない者を著作者とすることであるから,同法2条1項2号,1号の文理に反 するし,著作物が創作され公表されるまでの間に関与する多数の者(学術論文の査\n読者から果てはマスコット・キャラクターを採択する会議に至るまでありとあらゆ る「確定者」)にいたずらに著作者の外延が拡大されてしまいかねない,(ケ) 債権 者の本件編者会合における承認及びその後の一部承認を創作的関与に含めて考える ことは,智恵子抄事件最高裁判決に反する旨をそれぞれ主張した上,(コ) 本件著作 物の編集に関し,債権者は,極めて限定的な関与しかしていないから,債権者が本 件著作物の編集著作者の一人であるとの評価は導き得ない,(サ) 債権者の関与して いない部分は,債権者の関与した箇所と分離して利用することができるから,同項 12号の共同著作物の要件(分離利用不可能性の要件)を満たさないなどと主張す\nる。
しかしながら,上記(ア)の点については,本件著作物において,執筆者の執筆する 解説が本件著作物の素材をなしていることは前記ウで説示したとおりであるところ, 本件著作物においてそのような解説を執筆する者を,いずれの判例を割り当てるか とは独立に選定することは可能であり,その場合,執筆者を推挙した段階で,「当\n該執筆者がいずれかの判例について執筆する解説」が観念されるから,これが素材 の選択におよそ当たらないということはできない。また,いずれにせよ,判例と執 筆者の組合せが特定されていなかったからといって,本件著作物における「執筆者 の執筆する解説」という素材の選択に関して債権者が寄与したことが否定されるも のではない。
上記(イ)の点については,本件著作物における解説の執筆者として,学者を選ぶか 実務家を選ぶか,実務家にしても裁判官にするか弁護士にするかについて,選択の 幅は大きく,裁判官や裁判官OBについても知財高裁・地裁知財部経験者の人数は 決して少なくないこと,現に第4版に関するそれまでの執筆者の案(本件原案のほ か,A教授が列挙した候補者の案なども含む。)では当該3名が含まれていなかっ たこと(前記1(4)ウないしカ),第3版や本件雑誌にもa判事とb弁護士は入って いないこと(別紙「著作権判例百選判例変遷表」,甲2の3),B教授は,当初,\nb弁護士を執筆者として追加することに消極の意見を表明していたこと(前記1(4) ク)などに照らすと,当該3名について,誰が選択しても同じ人選になるようなも のとはいえず,「ありふれた」人選などということもできない。
上記(ウ)の点については,ここでの執筆者3名というのは,本件著作物の執筆者と なった113名の中の一部であるところ,前記ウの判断は,当該3名を選択したの みで直ちに創作的な表現として独立の編集著作権が生じるとするものではなく,あ\nくまでも本件著作物全体の表現(素材の選択及び配列)について創作性が認められ\nる場合に,これを構成する一部の創作への関与(換言すれば,債権者が関与した部\n分が上記創作性を有する表現を形成する一部をなしているか)を問題とするもので\nあるし,また,債権者の当該行為時点について見ても,執筆者110名から1名を 削除し3名を加えて112名とする場合の当該3名の選択が問題となっているので ある。さらに,前記ウの判断は,必ずしも同1)の行為のみで編集著作者となり得る と判断しているわけではなく,同1)ないし3)を総合して編集著作者となり得ると判 断しているのであって,債権者が,同3)の行為をしているほかに,自ら同1)の行為 もしていることを,全体として評価すべきところである。
上記(エ)の点については,前記ウ2)の事情は,同3)の債権者の行為の前提となるも のであるから,同1)ないし3)があいまって全体として債権者の編集著作者性を基礎 付ける事情になるということができる。
上記(オ)の点については,本件のように共同編集著作物の著作者の認定が問題となる事案においては,編集著作物の完成に向けられた表現(素材の選択・配列)の創\n作に係る複数の者の一連の行為(一瞬の物理的な行為のみではない。)を全体とし て観察し,そのような一連の編集過程への実質的な関与の有無やその位置付け等を 総合的に検討して,一定の規範的な評価をすることは,避けられないものと解され る。そして,それ自体としては同じように見える行為についても,どのような状況 (コンテクスト)において,どのような立場(一貫して編集の主体とされ,内容に ついて決定権や責任を有する者としての行為なのか,アドバイスを求められた外部 の第三者としての行為なのか,事務的な補助者としての行為なのか等々)でそれを 行ったのかということにより,その行為の社会的な意味合いや位置付けは異なり得 るのであって,そのことが事実認定及び法的評価にも影響するのは当然というべき である。上記のような意味での行為者の立場を全く捨象して単純に裸の作為(「物 理的な」創作的表現表\\出行為)のみを取り出すことは,実態にそぐわない編集著作 者の認定をすることにつながりかねず,相当ではない。既に認定,説示したところ からすれば,本件著作物の編集過程において,債権者が,素材の選択及び配列に関 する実質的な権限を有しそれに基づき実質的な関与をしたことは明らかであって, 単に名義を貸しただけとか,単に名目的な「肩書」のみを有して形だけ関わったと いったケースとは明らかに異なる。なお,編集著作物の素材の選択・配列の確定に 関し行為者がどのような権限を有していたかという点も,編集著作者の認定に当たっ て一つの事情となり得るものであって,これを考慮すること(もとよりこれを「要 件」とするものではない。)が許されないということはない。 上記(カ)ないし(ク)の点については,当該編集著作物の編集過程において,当該者自 身が当該創作的表現を「物理的にこの世に現出させる」独自の提案作成行為をしな\nかった場合においても,当初から当該者を含めた複数の者を編者として当該編集著 作物を創作するとの共同の意思の下に共同作業をしている他の者が先行して「物理 的にこの世に現出させる」提案をした部分について,当該者が,それを修正するこ ともできたのに検討の上修正せずに,当該部分をそのとおり採用する決定に加わっ たという行為は,創作への関与として一概に無視することはできない。前記1(4) で認定した事実経過に照らすと,債権者は,本件著作物の編集過程に客観的・外形 的に関与しているのみならず,素材の選択及び配列について実質的な中身を思考し これに基づき上記行為をしているとみられるものであって,前記ウ3)の債権者の行 為は,著作物の形成ないし創作性の形成への「客観的な事実行為としての実質的な 関与」に当たるということができる。本件著作物の「創作」については,本件著作 物の完成に向けた一連の編集過程が開始される前には「それまで表現されたものと\nして存在しなかったもの」を,同編集過程が完了し本件著作物が完成した時点で「初 めてつくり出す行為」であり,その「創作」の主体が債権者を含めた複数の者とな るとみられるのであって,これが著作権法2条1項2号,1号の文理に反するとい うことにはならない。また,既に認定,説示したところに従って,債権者の同3)の 行為を債権者が本件著作物の編集著作者の一人であることの根拠としたとしても, 著作物が創作され公表されるまでの間に関与する多数の者にいたずらに著作者の外\n延が拡大することにはならない(単に名前を貸して形式的に権威付けをしただけの 者や,債務者が例に挙げる「学術論文の査読者」等,もともと創作する側の主体と は異なる立場から関与したり,表現内容の形成・変更の直接の決定権を有していな\nい者などは,共同著作者の一人とは認められない。)。「認定」ということの性質上, 個々の事案に合致した認定をして「共同編集著作者」の範囲を適切に画するほかは ないし,かえって,常に「最も早く物理的に表出した者が誰か」のみに着目すると\nいうことでは,本件のような事案で実態にそぐわない結論を導いてしまいかねない。 上記(ケ)の点については,智恵子抄事件最高裁判決は,当該個別事案における認定 を示した事例判例であって,本件における債権者のような者を編集著作者と認めて はならないとの判断を何ら含意しているものではないから,前記ウ3)に係る判断が 同最高裁判決に「反する」ということはない。 上記(コ)の点については,前記ウ1)の行為と,同2)を前提とした同3)の行為を総合 した場合に,債権者の関与が「極めて限定的」で編集著作者の一人との評価を導き 得ないものであるということはできない。 上記(サ)の点については,前記ウ3)の債権者の行為は,本件著作物全体に係ってい るし,同1)の債権者による素材の選択も,前示のとおり,他の素材の選択及び組合 せとあいまって全体の編集著作物を構成しているものであるから,債権者の関与部\n分のみを分離して個別に利用することはできない。本件著作物は,著作権法2条1 項12号の「二人以上の者が共同して創作した著作物であって,その各人の寄与を 分離して個別的に利用することができないもの」に当たるというべきである。 以上によると,債務者の上記各主張によって,債権者が本件著作物の編集著作者 であるとの推定を覆すことはできない。
(2) 翻案該当性ないし直接感得性(争点2)について
ア 前記1(5),(6)で認定した事実によると,1)判例の選択については,本件著作 物の収録判例と本件雑誌の収録判例とで97件が一致しており(そのうち94件は 審級も含めて全く同一であり,3件は審級のみ異なり対象事件が同一である。), 割合的には,本件著作物の収録判例113件のうち約86%が本件雑誌にも維持さ れ,かつ,当該一致部分が本件雑誌の収録判例116件のうち約84%を占めてい ること,2)執筆者(執筆者の執筆する解説)の選択については,本件著作物におけ る執筆者と本件雑誌における執筆者とで93名が一致しており,割合的には,本件 著作物の執筆者113名のうち約82%が本件雑誌にも維持され,かつ,当該一致 部分が本件雑誌の執筆者117名のうち約79%を占めていること,3)判例と執筆 者(執筆者の執筆する解説)の組合せの選択については,本件著作物における組合 せと本件雑誌における組合せとで83件が一致しており,割合的には,本件著作物 における判例と執筆者の組合せ113件のうち約73%が本件雑誌にも維持され, かつ,当該一致部分が本件雑誌における判例と執筆者の組合せ117件のうち約7 1%を占めていること,4)判例及びその解説(以下,併せて「判例等」という。) の配列については,本件著作物の判例等と本件雑誌の判例等とで合計83件の配列 (順序)が一致しており,割合的には,本件著作物の判例等113件のうち約73% の判例等の配列(順序)が本件雑誌にも維持され,かつ,当該一致部分が本件雑誌 の判例等117件のうち約71%を占めていること,5)判例等の配列を位置付ける 項目立てについても,本件著作物の大項目及び小項目の立て方と本件雑誌の大項目 及び小項目の立て方とでその大半が一致していることを指摘することができる。そ うすると,本件著作物と本件雑誌とで判例等の選択及び配列が全体として類似して いることは明らかであって,本件著作物の判例等の選択・配列の大部分が本件雑誌 にも維持されていることが確認できるとともに,本件雑誌の判例等の選択・配列を 見たときに本件著作物のそれに由来する上記各一致部分の全部又は一部を優に感得 することができる。 そして,本件著作物及び本件雑誌に掲載される判例と執筆者の執筆する解説が編 集著作物たる本件著作物及び本件雑誌の素材であるところ,その表現(素材の選択\n又は配列)の選択の幅(個性を発揮する余地)を考えると,『判例百選』の性格上, 判例の選択や判例等の配列に係る選択の幅はある程度限られるものの,執筆者の選 択すなわち誰が執筆する解説を載せるかという選択の幅は決して小さくない上,ど の判例の解説の執筆者として誰を選ぶかに係る選択の幅は極めて広いというべきで ある。そうすると,上記1)ないし5)で指摘した,本件著作物と本件雑誌とで表現(素\n材の選択又は配列)上共通する部分には,創作性を有する表現部分が相当程度ある\nものということができる(なお,編集著作物における素材の選択及び配列に係る上 記各一致部分の組合せ全体に創作性を認めることもできると考えられる。)。 以上の事情を総合すれば,本件著作物と本件雑誌とで創作的表現が共通し同一性\nがある部分が相当程度認められる一方,本件雑誌が,新たに付加された創作的な表\n現部分により,本件著作物とは別個独立の著作物になっているとはいい難い。 このように検討したところによると,本件雑誌の表現からは,本件著作物の表\\現 上の本質的特徴を直接感得することができるというべきである。
イ そして,前記1で認定したとおり,本件雑誌が本件著作物の改訂版として作 成されているものであることなどに照らすと,編集著作物たる本件雑誌が本件著作 物に依拠して編集されたことは明らかである。
ウ 以上によれば,編集著作物たる本件雑誌を創作する行為は,本件著作物に依 拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\\現に修正, 増減,変更等を加えて,新たに思想を創作的に表現することにより,これに接する\n者が本件著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を\n創作する行為,すなわち本件著作物の翻案に該当し,本件雑誌は本件著作物を原著 作物とする二次的著作物に該当する。 また,他人の著作物を素材として利用しても,その表現上の本質的な特徴を感得\nさせないような態様においてこれを利用する行為は,原著作物の同一性保持権を侵 害しないと解すべきであるが(最高裁平成6年(オ)第1028号同10年7月1 7日第二小法廷判決・判時1651号56頁等参照),本件雑誌における本件著作 物の利用は,このような同一性保持権侵害の要件をも満たすということができる。 (3) 本件著作物を本件原案の二次的著作物とする主張の当否(争点3)について 債務者は,本件著作物は本件原案を原著作物とする二次的著作物にすぎないとし た上で,二次的著作物の著作権者が権利を主張できるのは新たに付加された創作的 部分に限られるところ,本件著作物において本件原案に新たに付加された創作的表\n現が本件雑誌において再製されているとは認められない旨主張する。 しかしながら,前記1で認定した事実に前記(1)で説示したところを総合すると, 本件原案は,最終的な編集著作物たる雑誌『著作権判例百選[第4版]』の完成に 向けた一連の編集過程の途中段階において準備的に作成された一覧表の一つであり,\nまさしく原案にすぎないものであって,その後編者により修正,確定等がされるこ とを当然に予定していたもの(編者が検討するための叩き台,提案)であったこと\nは明らかであり,実際,本件原案作成後,その予定どおり,債権者を含む編者によ\nりその修正等がされ,最終的に編集著作物の素材の選択・配列が確定されて本件著 作物として完成されるに至ったものである。そうすると,本件においては,その完 成の段階で,債権者を共同著作者の一人に含む共同著作物が成立したとみるのが相 当である一方,途中の段階で本件原案が独立の編集著作物として成立したとみた上 で本件著作物について本件原案を原著作物とする二次的著作物にすぎないとするこ とは相当ではない(なお,債務者は,最終作品の作成過程において準備的に作成さ れたものが,第三者によりコピーされ,最終作品の完成後に無断でネット上で公開 されてしまった場合に,当該準備的に作成されたものも最終作品とは別個の著作物 としての保護を受けることを指摘する。しかし,そのような事例において,第三者 によるコピーの時点で,当該準備的に作成されたものがそれ自体著作物性を肯定し 得るものであったならば,それを著作物とする著作権又は著作者人格権の行使を第 三者との関係で肯認することができるとしても,本件のように,既に完成された最 終作品の翻案が問題となっているケースにおいて,当該最終作品を,同作品の完成 に向けて準備的に作成されていた原案の一つを原著作物とする二次的著作物にすぎ ないとして,最終作品に基づく権利行使を制約することは,相当でないことに変わ りはない。)。 したがって,債務者の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。

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平成27(ワ)21233  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 平成28年1月29日  東京地方裁判所

 著作権侵害を根拠に発信者情報開示が認められました。
 このように,翻案に該当するためには,既存の著作物とこれに依拠して創作された著作物とを対比した場合に同一性を有する部分が,著作権法による保護の対象となる思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要であるところ,「創作的」に表\現されたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,筆者の個性が何らかの形で表れていれば足りるというべきである。そして,個性の表\れが認められるか否かについては,表現の選択の幅がある中で選択された表\現であるか否かを前提として,当該著作物における用語の選択,全体の構成の工夫,特徴的な言い回しの有無等の当該著作物の表\現形式,当該著作物が表現しようとする内容・目的に照らし,それに伴う表\現上の制約の有無や程度,当該表現方法が,同様の内容・目的を記述するため一般的に又は日常的に用いられる表\現であるか否か等の諸事情を総合して判断するのが相当である。
・・・
(3) また,本件記事2は,これまで台湾における「五術」に関わり,その際に不快な思いもしたものの,新たな試験ができたことで時代が変わり始めたなどと表現した文章であって,一つの文(文字数にして143文字)からなるものである。その表\現においては,用語の選択,全体の構成の工夫,特徴的な言い回しなどにおいて,一見して作者の個性が表\れていることは明らかである。これに対し,本件情報14ないし17は三つの文からなる文章であるが,このうち第1文は,やはり,台湾における「五術」に関わり,その際にあきれたこともあったものの,新たな制度ができたことで時代が変わったなどと表現した文章であって,文字数にして123文字からなるものであり,具体的表\現についてみても,本件情報14ないし17の第1文の表現は本件記事2の表\現と相当程度一致しており,その違いは,本件情報14及び15では31文字,本件情報16及び17では32文字でしかなく(別紙対比表2参照),「台湾における五術」,「江湖派理論」,「宗教による術数を利用した」「金儲けを目撃する度に」など,用語の選択,全体の構\成,文字の 配列,特徴的な言い回しにおいて酷似している。そして,その相違部分の内容をみても,本件記事2のうち「五術」の「学術発表にかかわって」という点を,本件情報14ないし17においては「五術」の「詐欺\発表にかかわって」に,「とても不愉快な文化の冒涜・歪曲」という点を「とても愉快な文化の笑い話・小話」に,「胸くそが悪かったのですが」という点を「呆れたのですが」に,「国家規模での認定試験」という点を「国家機関での検閲制度」に置き換えているにすぎない。\nしたがって,本件情報14ないし17は,本件記事2に依拠したうえで,同記事の内容を批判するか揶揄することを意図して上記異なる表現を用いたものといえるのであって,仮に上記相違部分について作成者の何らかの個性が表\れていて創作性が認められるとしても,他に異なる表現があり得るにもかかわらず,本件記事2と同一性を有する表\現が一定以上の分量にわたるものであって,本件記事2の表現の本質的な特徴を直接感得することができるものであるから,翻案権侵害に当たることが明らかであるというべきである。
(4) 以上のとおり,本件情報1ないし17は原告の翻案権を侵害することが明らかである。 また,そうである以上,本件情報1ないし17を本件ウェブサイトに発信する行為は,原告の公衆送信権を侵害するものであることも明らかというべきである。

◆判決本文

◆こちらが対象の表現です。

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平成26(ワ)10089  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年9月30日  東京地方裁判所

 映画の脚本が翻案かが争われました。
 事実それ自体は,人の思想又は感情から離れた客観的な所与の存在であり,精神的活動の所産とはいえず,著作物として保護することはできない。ただし,歴史的事実や客観的事実であっても,これを具体的に表現したものについて,その表\現方法につき表現の選択の幅があり,かつその選択された具体的表\現が平凡かつありふれた表現ではなく,そこに作者の個性が表\れていれば,創作的に表現したものとして著作物性が肯定される場合があり得るし,客観的事実を素材とする場合であっても,種々の素材の中から記載すべき事項を選択し,その配列,構\成や具体的な文章表現に,著作者の思想又は感情が創作的に表\現され,著作物性が認められる場合もあり得る。 したがって,本件各著作物と本件映画との間で表現上の共通性を有するものについては,その共通性(同一性)を有する部分が事実それ自体にすぎないときは,複製にも翻案にも当たらないと解すべきであるし,それが,一見して単なる事実の記述のようにみえても,その表\現方法などからそこに筆者の個性が何らかの形で表現され,思想又は感情の創作的表\現と解することができるときには,複製又は翻案に当たるというべきである(知財高裁平成25年(ネ)第10027号同年9月30日判決・判時2223号98頁参照)。 また,著作権法27条は,著作物を「変形し,又は脚色し,映画化し」たりすることが「翻案」に該当することを明文で規定しているところ,そもそも言語の著作物と映画の著作物とでは,表現方法が異なり,言語の著作物を映画化した映画の著作物においては,登場人物の思考や感情などを表\現するに際し,もとになった言語の著作物の表現をそのまま使用するのではなく,登場人物の行動,仕草,表\情,構図,効果音などといった視覚的・聴覚的要素も加えた表\現が用いられることが,むしろ通常であることをも考慮した上で,本件映画の表現(描写)に接した際に,本件各著作物の表\現(著述)上の本質的な特徴を直接感得することができるか否かを判断すべきである。
・・・
(ア) エピソード3において,本件各著作物と本件映画とは,1)主人公が(元)恋人に助けを求めたこと,2)公園に駆け付けた(元)恋人が主人公の様子に驚いて,誰かに何かされたのかと聞いたこと,3)主人公はうなずくことしかできなかったこと,4)(元)恋人が,主人公が性的暴行を受けたことを知ってやり場のない怒りで物に当たる様子,5)主人公が(元)恋人に対して「ごめんなさい」と謝り続けた点及びその著述(描写)の順序において共通し,同一性がある。
(イ) 本件各著作物のエピソード3における著述中の上記同一性のある部分のうち,1)主人公が(元)恋人に助けを求めたこと,2)公園に駆け付けた(元)恋人が主人公の様子に驚いて,誰かに何かされたのかと聞いたこと,3)主人公はうなずくことしかできなかったことは,いずれも事実の記載にすぎない。一方,(元)恋人がやり場のない怒りを物にぶつける様子に対し,主人公が「ごめんなさい」と謝り続けた著述は,単にその事実を記述しただけでなく,被害に遭ってしまった悔しさ,被害者であるにもかかわらず込み上げてくる罪悪感,やるせなさを表現したものと認められる。そうすると,本件各著作物のうち,上記同一性のある部分は,原告が\n被害を受けた当事者としての視点から上記の各事実を選択し,事件後の原告の状況や原告の元恋人とのやりとりを淡々と記述することによって,原告の悔しさ,罪悪感,やるせなさ等を表現したものとみることができ,上記同一性のある部分全体として,原告の個性ないし独自性が表\れており,思想又は感情を創作的に表現したものと認められる。\n
(ウ) 以上より,本件映画のエピソード3における描写は,上記認定の表\現上の共通性により,本件各著作物の著述の表現上の本質的な特徴の同一性を維持しているものと認められ,本件映画におけるエピソ\ード3部分に接することにより,本件各著作物のエピソード3における著述の表\現上の本質的な特徴を直接感得することができ,本件各著作物を翻案したものといえる。
(エ) 被告は,上記同一性のある部分はいずれも事実の記載である旨主張するが,上記のとおり,事実の著述であっても,原告が,自身の上に実際に起きた自己の認識に基づく事実を選択し,上記のとおり,原告が抱いた悔しさ,罪悪感等を表現したものと認められ,その表\現には,原告の個性が表れているとみるべきであって,原告の思想又は感情を表\現したものではないということはできない。よって,被告の上記主張を採用することはできない。

◆判決本文

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平成25(ワ)1074  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年9月24日  大阪地方裁判所

 ピクトグラムについて著作物性が認められました。ただし、一部変更したものは複製・翻案ではないと判断されました。認められたのは修正費用の22万円です。
 本件ピクトグラムは,実在する施設をグラフィックデザインの技法で描き,これを,四隅を丸めた四角で囲い,下部に施設名を記載したものである。本件ピクトグラムは,これが掲載された観光案内図等を見る者に視覚的に対象施設を認識させることを目的に制作され,実際にも相当数の観光案内図等に記載されて実用に供されているものであるから,いわゆる応用美術の範囲に属するものであるといえる。 応用美術の著作物性については,種々の見解があるが,実用性を兼ねた美的創作物においても,「美術工芸品」は著作物に含むと定められており(著作権法2条2項),印刷用書体についても一定の場合には著作物性が肯定されていること(最高裁判所平成12年9月7日判決・民集54巻7号2481頁参照)からすれば,それが実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えている場合には,美術の著作物として保護の対象となると解するのが相当である。
イ 本件ピクトグラムについてこれをみると(侵害が問題となっている別紙1の19個に限る。),ピクトグラムというものが,指し示す対象の形状を使用して,その概念を理解させる記号(サインシンボル)である(甲15)以上,その実用的目的から,客観的に存在する対象施設の外観に依拠した図柄となることは必然であり,その意味で,創作性の幅は限定されるものである。しかし,それぞれの施設の特徴を拾い上げどこを強調するのか,そのためにもどの角度からみた施設を描くのか,また,どの程度,どのように簡略化して描くのか,どこにどのような色を配するか等の美的表現において,実用的機能\を離れた創作性の幅は十分に認められる。このような図柄としての美的表\現において制作者の思想,個性が表現された結果,それ自体が実用的機能\を離れて美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている場合には,その著作物性を肯定し得るものといえる。 この観点からすると,それぞれの本件ピクトグラムは,以下のとおり,その美的表現において,制作者であるP1の個性が表\現されており,その結果,実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているといえるから,それぞれの本件ピクトグラムは著作物であると認められる(弁論の全趣旨)
・・・・
天保山運河の形状については,別紙4案内図では,港区は八幡屋3丁目と海岸通り3丁目を結ぶ浮島橋の取付部(八幡屋側)の凸部,及び福崎3丁目と海岸通り4丁目を結ぶ新福崎橋が表記されているが,本件地図デザインにおいては,いずれの表\記もなく,すっきりした直線となっている点で異なっている。
エ 判断
以上の事実関係を前提に別紙4案内図が本件地図デザインの複製あるいは翻案かについて検討する。
別紙4案内図は,上記イ(ア)及び(ウ)のとおり,本件地図デザインと,咲州の北側の形状,第二寝屋川から南方向に記載された二本の川の形状において共通し,この点は,被告大阪市が別紙4案内図を作成する際に参考したとする公社図面及び大阪市全図や昭和62年の全体案内図と異なっている。しかし,上記の二本の川の形状についても,一部については上記地図と似ているほか,同イ(イ)及び(エ)のとおり,別紙4案内図と 本件地図デザインとは,淀川や木津川の川筋は似ているものの,これは他の公社地図及び大阪市全図においてもほぼ同様であり,地形的に存在する川筋を客観的に記載したためにすぎず,これを形状において共通すると評価することはできない。むしろ,その余の点については,両者は異なっている。さらに,別紙4案内図は,前記ウの点で,本件地図デザインとは異なっており,かえって公社地図あるいは大阪市全図と似通っている。 このように,原告が主張する共通点のうち,別紙4案内図が本件地図デザインの特徴と共通する部分は咲州及びごく一部の川の形状についてのみであるところ,他に多数の点で相違していること,本件地図デザインが全体的に直線的な線ですっきりと描かれているのに対し,別紙4案内図がある程度地理的な曲線を簡略にせず描いていることからすれば,本件地図デザインの表現において認められるP1の個性が,別紙4案内図においてこれを感得することはできないと言わざるを得ない。\nそうすると,仮に,原告が指摘するように,ジェネシスが別紙4案内図を作成するにあたり,本件地図デザインの一部を参考にした事実があったとしても,別紙4案内図が,本件地図デザインの複製又は翻案ということはできないから,原告の本件地図デザインの著作権及び著作権侵害に基づく請求は理由がない。

◆判決本文

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平成26(ワ)26770  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年7月16日  東京地方裁判所

 資格試験の予備校が発行しているテキストについて、著作権侵害か否かが争われました。東京地裁は、複製や翻案ではないと判断しました。
 原告表現1は,原告書籍1に掲載された平成8年一級建築士本試験の製図問題(設計課題「景勝地に建つ研修所」)中の図面であり,原告書籍1には次の1)ないし3)の点を除いて上記問題がそのまま掲載されている(甲1,18の3,乙1)。 原告は,原告表現1と上記問題の図面とは,1)湖を表す部分,2)等高線の描き方,3)方角表示が異なっており,これらの点については原告が独自の表\現をしたものであるから,原告表現1には創作性が認められると主張する。\nそこで判断するに,1)の湖を表す部分が,上記問題の図面ではまだら状の模様であったのを,一部を切り欠いた横線とし,切り欠き部分が斜め方向に連なるような模様としている点,2)の等高線の描き方が,線の曲がり方が同図面より緩やかになっている点,3)の方角表示が同図面より細い矢印を用いている点で原告表\現1は同図面と異なっているが(別紙侵害部分対照表1参照),これらのうち水面を横線で表\示することはありふれた表現方法であると解される。また,等高線の曲がり方の相違は僅かなものであるし(同上),方角表\示を矢印で表現することは,矢印の太さにかかわらずありふれたことであり,その表\現に作成者の個性が表れているとみることは困難である。これに加え,原告書籍1は過去の本試験問題を掲載したものであり,事柄の性質上,図面を含めて問題を忠実に再現することが求められることを考慮すると,上記の各相違点を総合しても,原告表\現1につき著作権法上保護すべき創作性を認めることはできない。したがって,被告表現1が原告表\現1を機械的に複写したものであるとしても,原告の著作権を侵害することはないと解すべきである。

◆判決本文

◆表現対比資料1

◆表現対比資料2

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平成26(ネ)10004  損害賠償等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成27年6月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 プロ野球のカードゲームについて、2選手の画像は著作権侵害と判断されました。損害賠償については、利益の総額については約1500万円ですが、2選手のカードによって得られた額の立証責任は控訴人(著作権者)にあるとして、8%を控訴人の損害と認めました。また2項侵害について、2選手のカードによる利益額の認定が争われましたが、裁判所は、総額のうち2選手分がいくらかの立証責任は著作権者側にあると判断しました。
 前記イaのとおり,両ゲームの中島選手の選手カードをみると,本体写真のポー ズ及び配置,多色刷りで本体写真を拡大した二重表示部分の存在,部位や位置関\n係,背景の炎及び放射線状の閃光の描き方という具体的な表現が同一であり,これ\nによって中島選手の力強いスイングによる躍動感や迫力が伝わってくるものであっ て,両選手カードは,表現上の本質的特徴を同一にしているものと認められ,ま\nた,その表現上の本質的特徴を同一にしている部分において思想又は感情の創作的\n表現があるものと認められる。\nこれに対し,中島選手の前記相違点のうち,1)及び2)は前記のとおり表現上の本\n質的な特徴とはいえないし(2)のチームカラーは氏名の表記下部のごく一部にすぎ\nず,目も惹かない。),3)二重表示の写真の大きさの程度の違いは,いずれもカー\nドのほぼ中央部分に,本体写真よりも大きく拡大された頭部が選手カードの縁まで はみ出すように配置され,本体写真の頭部の上方にあり,腰よりも上の上半身のみ が本体写真の右上部に配置されるという点では共通していることや,選手カードが 表示されるのは主に携帯電話の画面上であることも考慮すると,全体の印象を左右\nするような大きな違いとはいえない。また,4)の二重写真の色味や5)炎の色味の違 い及び閃光を強調する楕円形状の有無の違いはあるものの,控訴人ゲームの選手 カードの炎も中央部は黄色であり,閃光も一部黄色であり,閃光という表現自体輝\nく印象を与えるものといえるから,金色を基調とした被控訴人ゲームの選手カード と大きく相違する印象を与えるものとはいえず,また,楕円形状の有無も閃光の明 るさの程度の違いを認識させるものにすぎないから,これらの相違点が上記共通点 から受ける印象を凌駕するものとはいえない。なお,被控訴人は,閃光(後光)の 具体的な本数や密度も違うと主張するが,これらも閃光の明るさの程度の違いを認 識させるものにすぎず,視覚的には差異を生じさせるものとはいえない。 したがって,被控訴人ゲームの中島選手の選手カードは,控訴人ゲームの同選手 カードと同一のものとはいえず,別の写真を使用し,全体として金色を基調とした 色味に変更することで,新たな表現を加えたものといえるから,複製に当たるもの\nとは認められないものの,控訴人ゲームの同選手カードを翻案したものと認められ る。 b ダルビッシュ選手の選手カードについて 両ゲームのダルビッシュ選手の選手カードについても,前記イbのとおり,本体 写真のポーズ及び配置,多色刷りで本体写真を拡大した二重表示部分の存在,部位\nや位置関係,背景の炎及び放射線状の閃光の描き方という具体的な表現が共通であ\nり,これによってダルビッシュ選手の力強い投球動作による躍動感や迫力が伝わっ てくるものであって,両選手カードは,表現上の本質的特徴を同一にしているもの\nと認められ,また,その表現上の本質的特徴を同一にしている部分において思想又\nは感情の創作的表現があるものと認められる。\n
・・・
 被控訴人ゲームの配信開始から選手カードの表現が変更される平成23年8月18日から同月26日までの9日間に,被控訴人ゲームにおけるレアパックの販売に\nより被控訴人が得た利益が1541万5312円であることは争いがない。 ところで,著作権法114条2項は,著作権を侵害した者が「その侵害の行為に より」利益を受けているときは,その利益の額を著作権者が受けた損害の額と推定 するものである。レアパックは,開けてみるまでどのカードが入っているか分から ないものであり,したがってレアパックの販売とは,本件2選手カード以外のカー ドの販売にも当たるものであるが,本件では,本件2選手カードの著作権侵害のみ が認められるから,上記レアパックの販売利益のうち,本件2選手カードによって 得られた利益に相当する額のみが当該著作権侵害の行為により被控訴人が受けてい る利益に当たるというべきであり,その点の立証責任は控訴人にあるものとして, 判断する。
この点,乙93,99及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人ゲームの配信開始当 時,レアパックにより入手できる選手カードは,希少性に応じて,キラ,グレー ト,スター,スーパースター,レジェンド,レジェンド+に分類される合計996 枚であったことが認められる。しかし,1)レジェンド及びレジェンド+の存在につ いては,被控訴人のホームページ等では公開されておらず,被控訴人ゲーム上の利 用者のサークルトピックス(利用者同士の質問板)の一部の記載でのみ確認できる 状態であったから(乙99,弁論の全趣旨),利用者の大多数が知っていたとは認 められず,またこれらのカードが当たる確率も相当低いものと認識されていたと考 えられるから,利用者がレジェンド及びレジェンド+を期待してレアパックを購入 した可能性は低いというべきこと,2)レアパックを購入する利用者は,グレードの より高いカード(すなわち,スター,スーパースター)の入手を期待しているのが 通常であること,3)スターカードは143枚,スーパースターカードは61枚の合 計204枚が存在したものであるが(乙93),これに該当する選手として被控訴 人ホームページやプレスリリースにおいて配信時に公開されていたのは各球団1 名,合計12名のみで,そのうち2名が中島選手及びダルビッシュ選手であり(甲 131,弁論の全趣旨),ゲームの利用を開始する者は,他の利用者の口コミや, Mobageの新着表示やゲームランキングなどで被控訴人ゲーム名が表\示される のを見て開始することが多いとしても(乙101),上記のとおりの広報がされて いることからすれば,これを見て被控訴人ゲームの内容を確認した利用者も相当程 度いると推認されること,4)上記2選手は人気の高い選手であり,特にダルビッシ ュ選手の選手カードについては,利用者が被控訴人ゲームを初めて利用する際のチ ュートリアル(ゲームの練習)において必ず一度付与され,チュートリアル終了後 に保有カードから削除されるものであり(乙99),利用者がレアパックを購入し てスーパースターの選手カードを入手したいという気持ちを誘発するために利用さ れていること,5)前記レアパックの販売利益は,配信開始のごく初期の9日間の売 上のみについてのものであること,からすれば,前記レアパックの販売利益のうち 少なくとも8%が,本件2選手カードの販売により被控訴人が受けた利益と認める のが相当である。 したがって,著作権法114条2項により控訴人が受けた損害の額と推定される 額は,123万3225円(1541万5312円×0.08)である。

◆判決本文

◆原審はこちら 平成23(ワ)29184

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平成26(ネ)10003  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成27年5月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 風俗レポート記事と、漫画が翻案と判断されました。1審は一部の記載についての翻案を認めましたが、知財高裁は全体として翻案と認定しています。
 原告記事1(前記イ)と被告漫画1(前記ウ)の記述内容等を対比すると,原告記事1と被告漫画1とは,まず,「乱交ツアー」に参加した者が,そこで体験した風俗サービスの内容を自身の体験談として記述又は描写するという点において共通する。 また,原告記事1と被告漫画1とは,その場面展開,すなわち,i)著者又は主人公が,風俗サービスに関する情報をネット検索し,ツアーに参加を申し込む場面,ii)著者又は主人公が,開催当日に宿に向かい,宿に到着して,部屋に入るまでの場面,iii)著者又は主人公が,部屋で相部屋の男と会話する場面,iv)著者又は主人公が,露天風呂に移動して,参加者の男や女と顔を合わせる場面,v)露天風呂における「乱交」の状況を記述又は描写した場面,vi)宴会場で食事を終えた後の「乱交」の状況を記述又は描写した場面,vii)2日目の朝,ツアーが解散となった場面へと展開していく点において共通する。 さらに,原告記事1の記述には,被告漫画1には記述又は描写されていない部分が存するものの,上記各場面における被告漫画1の記述又は描写の内容はわずかな部分を除き,ほぼ原告記事1の記述に含まれ,しかも,その具体的な記述(描写)及び記述(描写)順序においても,おおむね原告記事1におけるそれと共通すると認められる。すなわち,被告漫画1の記述又は描写が原告記事1と相違するのは,1)被告漫画1がツアーの開催日を申込みから「1週間後」と明記しているのに対し,原告記事1では,申\込みから開催日まで日があることは記述から把握することができるが,どれくらい後の開催であるのかを明記していない点,2)被告漫画1が現地までの交通手段として「愛車」を利用しているのに対し,原告記事1では, 「電車とバス」を利用している点,3)被告漫画1が,宿の玄関の看板を見た主人公の感情を「気分が盛り上がってきた」としているのに対し,原告記事1では,料金の前払いをしていたので,当日まで実際に開催されるのか心配していたことから安心したとしている点,4)被告漫画1が,相部屋の男は主人公よりも先に到着しており,主人公と挨拶を交わす場面を描写しているのに対し,原告記事1では,相部屋の男は後に到着した者とされており,主人公と挨拶を交わすなどの記述はされてない点,5)被告漫画1が,主人公において,露天風呂における「乱交」時に女性の性器に「指マン」をしたと描写しているのに対し,原告記事1では,第三者の別の男性がしたと記述している点など,被告漫画1と原告記事1の全体の対比の中では,ごく一部分に止まる。 以上検討したところによれば,被告漫画1は,原告記事1に依拠し,その記述のうちの一部を省略し,かつ,その表現形式を漫画に変更したものにすぎず,全体として,原告記事1の表\現上の本質的特徴を直接感得することができるから,原告記事1の翻案物に当たるというべきである。
・・・・・
証拠(甲3,4,9,12,甲16の1・2,甲17の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,1審原告は,フリーランスで活動する風俗関係の記事のライターであること,1審原告は,株式会社コアマガジンから平成19年中に33万1000円の,平成20年中に101万3000円の,平成23年中に56万8500円の原稿料の各支払を受けたこと,1審原告は株式会社双葉社から平成19年中に56万円の原稿料(支払回数12回の合計),平成20年中に33万円の原稿料(支払回数11回の合計)の各支払を受けたこと,本訴提起前に1審被告ジップス・ファクトリーが1審原告訴訟代理 人弁護士に対して送信した電子メール中には,1審被告ジップス・ファクトリーの規定する原稿料が1頁当たり5000円である旨の記述があったこと,被告漫画1の総頁数が6頁であり,被告漫画2の総頁数が6頁であること,本件雑誌の販売部数は10万部程度であることが認められる。 上記事実に加え,1審原告が原告記事1及び2を自身が開設する本件ブログにおいて公開していること,原告記事1及び2の内容,侵害行為の態様,その他本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すれば,著作権侵害についての原告記事1の使用料相当額,原告記事2の使用料相当額は各5万円(合計10万円)と認めるのが相当である。
(3) 著作者人格権侵害について 1審原告は,被告漫画1により原告記事1についての同一性保持権及び氏名表示権を,被告漫画2により原告記事2についての同一性保持権及び氏名表\示権を,それぞれ侵害されたものであり,証拠(甲12)によれば,1審原告は,上記著作者人格権の侵害により,精神的苦痛を被ったものと認められる。 そして,1審原告が原告記事1及び2を自身が開設する本件ブログにおいて公開していること,原告記事1及び2の内容,侵害行為の態様(改変箇所の多寡,改変内容,本件雑誌の性質やその発行部数等),その他本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すれば,著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)の侵害により1審原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料は,原告記事1及び2につき各20万円(合計40万円)と認めるのが相当である。
(4) 弁護士費用について 本訴の事案の内容,認容額,訴訟の経過等を総合すると,1審被告らの著作権侵害行為及び著作者人格権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は5万円と認めるのが相当である。
(5) 合計 55万円

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成24(ワ)3677

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平成25(ワ)15362  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年2月25日  東京地方裁判所

 歴史小説から製作した放送番組について著作権侵害が認定され、差止請求および30万円の損害賠償が認められました。
 原告は,別紙作品対照表1ないし3記載のとおり,原告各小説を別紙作品対照表\1ないし3記載の各原告小説1ないし3の表現欄に記載された各部分に分け,それらが個々的に著作物に当たり,また,被告各番組を別紙作品対照表\1ないし3記載の各被告番組1ないし3の表現欄に記載された各部分に分け,別紙主張対照表\1ないし3の「原告の主張」欄記載の理由により,それぞれの各被告番組の表現は,各原告小説の複製若しくは翻案に当たり,したがって,原告の有する複製権若しくは翻案権を侵害する旨主張する。\nそこで,以下,それぞれについて,原告各小説の記述部分にかかる創作性等に関して具体的に陳述する原告の陳述書(甲1,26,27)の内容を斟酌しつつ,個別に複製権若しくは翻案権侵害の成否に関する当裁判所の判断を示すこととするが,その具体的内容は,別紙主張対照表1ないし3の「当裁判所の判断」欄記載のとおりである。\nそうすると,同欄記載のとおり,著作権(複製権,翻案権)侵害が認められるのは,被告番組1については,別紙作品対照表1の「3 エピソードの翻案」の番号1の表\現部分(これを以下「被告番組1−3−1」といい,以下,各作品対照表記載の各番号に従って同様に称することとする。),被告番組2については,被告番組2−5−6,被告番組3については,被告番組3−4−6であり,その余は複製権侵害,翻案権侵害のいずれも成立しないと認めるのが相当である。\nまた,上記被告番組1の内容が語られている被告番組4については,被告番組1−3−1と同じ表現部分(以下「被告番組4侵害認定表\現部分」という。)が,上記被告番組3の内容が語られている被告番組5については,被告番組3−4−6と同じ表現部分(以下「被告番組5侵害認定表\現部分」という。)が,それぞれ原告の保有する著作権(複製権,翻案権)を侵害すると認められ,その余は複製権侵害,翻案権侵害のいずれも成立 しないと認めるのが相当である。

◆判決本文

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平成25(ワ)9673  書籍出版差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成26年12月19日  東京地方裁判所

 歴史教科書の記述が翻案であるとは認定されませんでした。
 したがって,例えば,ある歴史教科書の一単元において選択された複数の事項の組合せが,他の歴史教科書の同じ単元において選択された事項の組合せと異なる場合であっても,当該歴史教科書で取り上げられた個々の事項が,いずれも他の歴史教科書にも記載されているような一般的な歴史上の事実又は歴史認識にすぎないときは,通常,それらの事項の組合せは,歴史教科書に記載され得る一般的な事項の中から,著者が適宜選択をした結果であるといえ,そこに著者独自の創意工夫が表れているということはできないから,その組合せの相違をもって歴史教科書の個性であるということはできないと解される。\nまた,ある歴史教科書に,他の歴史教科書には記載のない事項が取り上げられて記載されている場合でも,その事項が歴史文献等に記載されている一般的な歴史上の事実又は歴史認識にすぎないときは,それを当該歴史教科書の中の関連する単元で取り上げ,一般的に歴史教科書に記載される歴史的事項に関連して,その説明のために,又はそれを敷衍するものとして,付加して記述することは,歴史学習のための教科書としては通常のことであるから,当該歴史教科書にそのような他の歴史教科書に記載のない事項があるというだけでは,そこに歴史教科書としての個性が表れていると解することはできないというべきである。
エ 原告は「表現の順序(論理構\成)」の創作性を主張するところ,事項の選択において取り上げられた複数の事柄をどのような順序で配列して記載するかという点には,著者の創意や工夫が発揮されることがあるから,一般論としては,そこに何らかの表現上の創作性を認める余地はあるということができる。\nもっとも,前記(2)のような歴史教科書の性質上,一つの単元で取り上げることが可能な事項の数は限られており,しかも,それらの事項は,系統的に配列されて,生徒が理解しやすいように記述されることが求められて\n いるといえるから,特に歴史教科書においては,ある単元において取り上げられた複数の歴史的事実をどのような順序で配列するかについての選択の幅は限られており,そこに著者の個性が表れていると認められる場合は少ないものといわざるを得ない。\nこの点,例えば,歴史的事実を単に時系列に沿って配列するような場合は,そこに著者の創意や工夫があるということはできない。また,複数の関連する事項を,通常の歴史教科書において考慮されるような,歴史的な因果関係,相互の関連性,歴史学習における重要性などの観点に従って,生徒の読みやすさや理解のしやすさに配慮しつつ,論理的な文章として,適宜,配列して表現したにすぎないような場合も,それは歴史教科書としてありふれた配列というべきであるから,仮にその配列がたまたま他の歴史教科書の配列と異なっているとしても,そこに著者の個性が表\れているということはできない。それゆえ,そのような場合は,その配列の差異をもって,著作権法によって保護される著作物としての創作性を基礎付けることはできないというべきである。
オ 表現の視点に当たるアイデア,制作意図・編集方針又は歴史観などは,前記イのとおり,それ自体は表\現ではなく,著作権法によって保護されるものではないのであるから,仮にその表現の視点が独自のものといい得るとしても,その表\現の視点に基づいて記述された具体的な表現内容が,単に著者のアイデア,制作意図・編集方針又は歴史観などをそのまま文章にして記述したにすぎない場合や,その表\現の視点に基づけば,誰が書いてもそのような文章としてしか表現できず,あるいは,その文章表\現が平凡なものにとどまるときは,その文章は,表現の視点という著作権法で保護されない点において独自性があるというにすぎず,その具体的な表\現内容において,著作権で保護されるべき表現上の創作性を有するものということはできない。\n また,歴史教科書において取り上げられ,その表現の素材とされている歴史上の事実又は歴史認識も,前記ウのとおり,それ自体は著作権法で保護されるべき表\現には当たらないのであるから,上記と同様に,仮に取り上げられた歴史上の事実あるいは歴史認識がそれ自体として独自性を有するものであるとしても,そのような事実あるいは認識を,ありふれた構文や一般的な言い回しで,生徒が理解しやすいような文章として記述したというだけでは,その具体的な表\現内容において創作性があるというということはできない。 したがって,二つの歴史教科書が,その具体的な記述の内容において共通する部分があるとしても,その共通部分が上記のように表現上の創作性が認められないものである場合には,それを翻案の根拠とすることはできないというべきである。\n

◆判決本文

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平成25(ワ)13369 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成26年05月27日 東京地方裁判所

猫の写真の著作物について著作権侵害と認定されました。興味深いのは目をくりぬく行為について、著作財産権侵害が66万程度に対して、人格権侵害の損害が200万円という認定です。
 原告は,(1) 原告写真の現物又はコピーに猫の目の部分をくり抜く加工を施す行為,(2) これらを並べて本件各パネルを作成し,さらに本件各パネルを組み合わせて本件看板を作成する行為が原告の翻案権を侵害する旨主張するので,以下,検討する。(1) 証拠(甲1〜5,7〜11)及び弁論の全趣旨によれば,原告写真は,いずれも猫そのもの(別表のNo.1〜43等)又は猫を含む風景(同44〜73等)を被写体とした写真であること,被告アンダーカバーは,写真集に掲載された原告写真又はそのコピーに,猫の顔の部分を中心に切り取るか(別紙「訴状別表\の見方」のシール番号1,2,5,7,8,9等),又は猫のほぼ全身部分を切り取った(同3,4,6,10等)上,更にその目の部分をくり抜く加工を施したことが認められる。これらの加工はいずれも定型的で単純な行為であり,これによって新たな思想又は感情が創作的に表現されたということはできない。したがって,この点について原告写真の翻案権侵害をいう原告の主張は失当というべきである。(2) 証拠(甲6〜11)及び弁論の全趣旨によれば,本件看板は,目の部分をくり抜いた猫の写真ないしその複製物を色彩あるいは大きさのグラデーションが生じるように多数(正確な数についての主張はないが,全部で数百枚に及ぶことは明らかである。別紙「訴状別表の見方」の添付写真1)参照)並べてコラージュとしたものであり,全体として一個の創作的な表現となっていると認められる一方,これに使用された原告写真又はそのコピーのそれぞれは本件看板の全体からすればごく一部であるにとどまり,本件看板を構\成する素材の一つとなっているということができる。そうすると,本件看板に接する者が,原告写真の表現上の本質的な特徴(原告が,それぞれの原告写真を撮影するに当たり,被写体の選択,シャッターチャンス,アングル,レンズ・フィルムの選択等を工夫することにより,原告の思想又は感情が写真上に創作的に表\現されたと認められる部分。ただし,原告写真の表現上の本質的な特徴がどこに存在するかについて原告による具体的な主張はない。)を直接感得することができるといえないと解すべきである。したがって,本件各パネル又は本件看板の作成行為が原告の翻案権を侵害すると認めることはできない。\n
2 争点(2)(被告三越伊勢丹の責任の有無)について
(1) 原告は,まず,被告三越伊勢丹が被告アンダーカバーによる著作権及び著作者人格権の侵害行為を幇助したと主張する。そこで判断するに,原告は本件看板の作成行為及び本件売場への設置行為について著作権及び著作者人格権の侵害があると主張するところ,まず,本件看板の作成は被告アンダーカバーにより行われたものであって,作成行為自体に被告三越伊勢丹が関与したことをうかがわせる証拠はない。また,本件看板を本件売場に設置し,これを訪れた買物客らに見える状態に置くことは,それ自体として原告写真についての原告の著作権又は著作者人格権の侵害となるものではない(著作権法25条参照)。なお,原告は,本件各パネルを本件売場において組み立てて本件看板とする行為が著作権又は著作者人格権を侵害するものであって,被告三越伊勢丹はこれを幇助したとも主張するが,上記行為は複数のパネルを順番に並べるという単純な行為であって(甲6〜11参照),これを独立の侵害行為とみることは相当でない。したがって,被告三越伊勢丹が被告アンダーカバーによる著作権等の侵害行為を幇助したと認めることはできない。 (2) 原告は,次に,被告三越伊勢丹には百貨店としてテナントに対して適切な管理監督をする条理上の義務があり,また,本件の状況下において被告アンダーカバーが著作権について明確な処理をしたか否かを精査する義務等があるところ,これらを怠ったことに不法行為責任を負う旨主張する。そこで判断するに,百貨店を経営する会社がテナントに対して著作権法に反する行為をしないよう適切な管理監督をする義務を負い,これに反したときは第三者に対して損害賠償責任を負うと解すべき根拠は見いだし難い。また,本件の関係各証拠上,被告三越伊勢丹が被告アンダーカバーによる著作権及び著作者人格権侵害の事実を知り,又はこれを容易に知り得たとは認められないから,原告の主張するような精査等の義務を負うと解することもできない。(3) したがって,原告の主張はいずれも採用することができず,被告三越伊勢丹に対する原告の請求は理由がない。
3 争点(3)(原告の損害額)について
以上によれば,被告アンダーカバーは,コピー使用分の66枚につき原告の複製権を侵害し,現物使用分及びコピー使用分により本件看板を作成した行為につき原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害したものであり,これらの行為につき被告アンダーカバーには少なくとも過失があると認められる。そこで,これにより原告が被った損害額について,以下,検討する。
(1) 著作権侵害について
ア 原告は,著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(著作権法114条3項)につき,1)ポジフィルムの買取り(紛失)料金相当額として,又は,2)原告写真を看板等に使用する場合の使用料10万円の5倍に当たる額として,1枚当たり50万円が相当であると主張する。イ そこでまず原告の上記1)の主張についてみるに,原告は,同主張の根拠として,原告の意に反するような使用態様はポジフィルムを買い取った場合にのみ許されるからである旨主張している。しかし,原告の意に反する使用態様であることについては後記のとおり著作者人格権の侵害に係る慰謝料額の認定に当たり考慮すべき事柄である上,ポジフィルムを買い取ったとしても意に反した使用が許されることになるわけでない。したがって,原告の上記1)の主張は失当というべきである。ウ 次に原告の上記2)の主張についてみるに,原告は原告写真を看板に使用する場合の使用料は1枚当たり1回につき10万円となるべきであると主張するところ,後掲の証拠(ただし,書証の枝番の記載は省略する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,写真の使用を第三者に許諾している業者又は写真家のインターネットサイトには,ディスプレイや看板に本件と同様の大きさの写真を用いる場合の使用料を,1枚当たり5万円(3か月まで。甲12),4万8000円(3か月まで。甲13),3万5000円(1年間。犬猫の写真を専門とする写真家のもの。乙2),5万円(乙5),3万円(乙6)と設定しているものがあることが認められる。しかし,これらの使用料は,証拠(甲12,13,乙2,5,6)及び弁論の全趣旨によれば,いずれも使用を許諾された写真を一個の作品として,すなわち写真に現れた創作的な表現を直接感得し得る態様で看板等に用いることにより,写真それ自体が有する顧客吸引力を利用することを予\定して定められたものと認められる。これに対し,本件看板においては,多数の猫の顔写真を用いたコラージュ看板を作成するための素材として使用されたものであって,個々の原告写真が一個の作品として使用されるものではない。したがって,上記認定の使用料は,本件における損害額算定の参考になるにとどまり,これを直接の基準とすることは相当でないと解される。そして,上記のような原告写真の使用の態様と,本件看板は,我が国有数の百貨店において多数の買物客らの目を引くように設置されたものであるが,その設置期間が約2か月にとどまったことなど本件に現れた諸事情を総合考慮すると,本件における原告写真の使用料は1枚当たり1回につき1万円と認めるのが相当である。エ 原告は,さらに,本件においては使用料の5倍に相当する額を請求できると主張する。しかし,著作権法114条3項は,著作権の行使につき受けるべき金銭の額を損害額とする旨規定しているのであり,違約金ないし懲罰的損害賠償請求を認めたものではない。したがって,原告の主張を採用することはできない。オ 以上に対し,被告アンダーカバーは,1枚当たりの使用料は5833円とすべきであり,2回使用された原告写真については使用料が逓減されるべきと主張するが,使用料を1万円と解すべきことは上記で判断したとおりである。また,証拠(甲12,13,乙2,5,6)及び弁論の全趣旨によれば,第三者に写真の使用を許諾している業者又は写真家の中には2回目以降の使用料を減額する者がいると認められるものの,減額することが一般的であると認めるに足りる証拠はない。したがって,被告アンダーカバーの上記主張を採用することはできない。カ 以上によれば,被告アンダーカバーが原告の複製権を侵害したことによる原告の損害額は,66万円(1万円×66枚)と認めるのが相当である。
(2) 著作者人格権侵害について
被告アンダーカバーは,原告写真の現物又はコピーを使用して本件看板を作成して原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害したものであるところ,同一性を侵害された原告写真が多数に及ぶ上,その改変行為は猫の目の部分をくり抜くという嗜虐的とも解し得るものであって,その性質上,原告の意に大きく反するということができる。また,証拠(甲1〜5,14,15)及び弁論の全趣旨によれば,原告は専ら猫や犬を被写体として撮影する写真家であり,原告写真が収録された写真集は,原告が長い年月を掛けて,世界各地を旅して作成したものであり,さらに,改変された写真の中には原告自身の飼い猫のものもあることが認められる。これらのことからすれば,被告アンダーカバーの著作者人格権侵害により原告が被った精神的損害は甚大なものであって,本件看板の設置期間が約2か月であること,被告アンダーカバーが原告に対し謝罪の意を表\していることといった事情を考慮しても,本件における慰謝料の額は200万円をもって相当というべきである。

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平成25(ワ)13598 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年11月22日 東京地方裁判所

 ちょっと前の事件ですが、漏れていたのであげておきます。映画は翻案された物と判断されました。
 以上のとおり,本件映画は,登場人物やストーリー展開が本件漫画と同じであり,台詞も本件漫画と多くの部分が同じである。確かに,本件映画と本件漫画は,その設定場面において,本件映画が日本家屋の縁側,本件漫画が主として日本家屋の座敷であるという違いや,本件映画には,本件漫画にはない性転換手術についての会話,父が裕子の顔に杯をかける場面,母が父に対して秘密を話すことを促す場面があるなどの違いがあり,それらの点において,本件漫画と異なる創作性が認められる。しかしながら,本件漫画は,息子(達彦)の彼女(婚約者)である裕子が,達彦を装って性転換を告白したために,達彦の父母が裕子を達彦であると誤解し,達彦(実は裕子)に対し,自分達夫婦が実はともに女性であること及び達彦は父(実は女性)が出産したことを告白するという奇抜なストーリー展開とそれを支える台詞や登場人物の感情の動きについての描写に,その表現上の本質的な特徴があるといえるのであって,その表\現上の本質的特徴部分において,本件映画は本件漫画と同一である。したがって,本件映画を鑑賞した者は,映画と漫画という表現形式の相違や設定場面の若干の相違といった点を超えて,本件映画から本件漫画の表\現上の本質的な特徴を直接感得することができると認められる。ウ そして,本件映画は,上記のとおり,本件漫画と登場人物,ストーリー展開が同じであり,台詞も本件漫画と多くの部分が同じであることなどに照らすと,被告は,本件漫画を読んだ上で,本件映画を製作・監督したと認めるのが相当であるから,本件映画は本件漫画に依拠して製作されたと認められる。これに対し,被告は,劇団の演劇に基づいて本件映画を製作したなどと主張する。しかしながら,被告は,その劇団名,演劇名等を明らかにしていないから,被告の主張は容易に採用できない。

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平成24(ワ)3677等 著作権侵害損害賠償等本訴,ブログ記事抹消等反訴請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年11月28日 東京地方裁判所

 一部の記事について、ブログ記事の翻案であると認定されました。編集業者の故意過失についても言及しました。ただ、信用失墜行為として反訴され、逆に損害賠償が認められています。
 被告漫画1記述11と原告記事1記述11とは,露天風呂での場面を記述している点及びその著述の順序でほぼ共通し,同一性がある。原告記事1記述11は,露天風呂の場面を創作的に表現したものであり,被告漫画1記述11は,原告記事1記述11の表\現上の本質的特徴の同一性を維持し,被告漫画1記述11を一読しただけで,その特徴を直接感得することができる。
・・・・
証拠(甲5)によれば,本件ブログは「Yahoo!検索」,「Google検索」において「三行広告」のキーワードで検索すると検索結果の6番目に表示されることが認められるから,被告らは,Aから被告漫画1及び2の提供を受けるに当たり,その記述をインターネットで検索するなどして調査すれば,被告漫画1及び2の記述の中に原告記事1及び2に似た記述があることを知ることができたと認められる。それにもかかわらず,被告らは調査を怠ったのであるから,被告らには,原告記事の著作権及び著作者人格権を侵害したことについて過失がある。
・・・ 
被告GOTは出版社であるところ,本件記事1には,「無料公開しているブログから盗作を繰り返し,毎月複数誌で著作権侵害を続ける悪質極まりない出版社「ジーオーティー」」との記載があり,本件記事3のタイトル及び本文には「著作権侵害を繰り返す出版社「ジーオーティー」」との記載があり,本件記事4の本文には「出版社「(株)ジーオーティー」が発行する複数の雑誌に於いて著作権侵害されてきた」,「盗作をやめるどころかほぼ毎月のようにブログの記事を盗んで雑誌を作り,利益を貪るという悪行を続けている。」との記載がある。本件記事1,3及び4は,一般の読者の読み方に照らし,被告GOTが著作権侵害行為を繰り返しているとの印象を与えるから,出版社である被告GOTの名誉,信用等の社会的評価を低下させるものである。

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平成24(ワ)10382 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年10月21日 東京地方裁判所

 キャラクターの複製・翻案かが争われました。裁判所は複製・翻案のいずれでもないと判断しました。
,原告作品1と被告商品1を対比すると,別紙原告作品1と被告商品1との対比(判決)記載のとおりの相違点が認められるから,被告商品1は,原告作品1を有形的に再製したものではないし,原告作品1の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものではない。以上のとおり,被告商品1は,原告作品1と同一又は類似であるとは認められないから,被告商品1が原告作品1を複製又は翻案したものである\nとは認められない。

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平成24(ワ)16442 著作権確認等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年10月10日 東京地方裁判所

 翻案権の一部である実写映画化権について原告が取得していることが認められました。
 原告は,本件譲渡担保契約による移転の対象となる著作物は,本件漫画ではなく,本件原作であると主張する。そこで検討すると,本件譲渡担保契約により原告が取得するとされたのは本件オプション契約に定められたオプション権を行使した場合に購入することのできる権利であるところ,本件オプション契約の契約書に契約の対象となるのが「Aが日本で発表した劇画作品」であると記載されていること,本件原作が同契約の締結までに発表\されたことはうかがわれないこと,「劇画」とは言語と絵画が結合されて成るものであることからすると,契約書の文言上は,本件譲渡担保契約の対象は本件漫画であると解する余地がある。しかし,前記事実関係によれば,1)本件オプション契約は,原告が,「子連れ狼」の物語に基づく実写映画を製作するために締結されたものであり,実写映画化するに当たっては時代(現代版とすることもあり得る。乙7参照)や場所(原告は米国法人であり,日本以外を舞台とすることも考えられる。)の設定を異にし得るので,Bによる作画を利用する必要はないこと,2)原告は本件漫画の作画部分を利用する意図は有しておらず,1212エンターテイメント及びAもこれを認識していたこと,3)作画部分をも利用して本件漫画の実写映画を製作するとすれば,Bないしその権利承継人から許諾を得る必要があるが,A及び普及会がBの作画を含む本件漫画の著作権を管理し,処分する権限を有していたとはうかがわれないにもかかわらず,原告及び1212エンターテイメントがBないしその権利承継人とは交渉を行おうとせず,本件原作の著作権者であったA(本件オプション契約当時)及び普及会(本件譲渡担保契約当時)との間でのみ交渉を行ったこと,4)本件譲渡担保契約に基づいて本件原作につき著作権の譲渡の登録がされたことが明らかであり,これらの事情を総合すると,原告,A,普及会及び1212エンターテイメントは,本件漫画の原作,すなわち,本件原作についての実写映画化権等を設定するために本件オプション契約及び本件譲渡担保契約を締結したものと認めるのが相当である。なお,これらの契約書の文言上は,上記のとおり,本件漫画が契約の対象であるとされている。しかし,この点は,本件原作が公表されておらず,他の著作物と区別して契約書に記載し,対象物を特定することが困難であったことから,公表\された本件漫画をもって契約の対象物の記載に代えたものと解することが可能である。そうすると,契約書の記載は上記のとおり解することの妨げにならないと考えられる。以上によれば,本件譲渡担保契約の対象は,本件原作であると認めるのが相当である。\n

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平成24(ネ)10076 出版差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成25年04月18日 知的財産高等裁判所

 編集著作物性について、原審は著作物性無しとしましたが、一部についてこれを認めました。
 エ 認定のとおり,控訴人書籍漢方薬便覧部分においては,148の処方名,1000個以上の商品名の漢方薬から,臨床現場での重要性や使用頻度等を踏まえて,148の処方名,307の商品名の漢方薬を選択するとともに,195の処方名,1900個以上の商品名の生薬並びに生薬及び漢方処方に基づく医薬品の中から1の処方名(「ヨクイニンエキス」),2の商品名の生薬を選択した上で,これを「漢方薬」の大分類の中に含めたものである。控訴人は,「ヨクイニンエキス」について,漢方薬ではなく生薬であるにもかかわらず,これを漢方薬として選択したものである(甲59,69)。そして,生薬である「ヨクイニンエキス」については,「ポケット判治療薬Up-To-Date(2008年版)」(乙2)及び「ポケット医薬品集2008年版」(乙3)では,皮膚科用薬の章に掲載され,「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5)では,「漢方製剤」ではなく「その他の生薬製剤」の章に掲載され,「日本医薬品集 医療薬 2008年版」(乙6)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においては,「漢方製剤」ではなく「その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品」に掲載されているのであって,これを「漢方製剤」の分類に選択した類書は,控訴人書籍の発行後に発行された「ポケット版臨床医薬品集2008」(乙9)以外に見られないところ,同書における漢方薬の選択及び配列については,控訴人書籍と全く同一の148の処方名,307の商品名の漢方製剤に加えて「ヨクイニンエキス」が選択され,控訴人書籍と50音順を崩した4箇所を含め,全く同一の配列がされていること,同書が控訴人書籍の発行後に発行されたこと等に照らし,同書をもってありふれていることの根拠とすることはできない。以上によれば,前記の漢方薬の薬剤の選択,特に「ヨクイニンエキス」を漢方製剤として選択したことには,控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているということができる。
イ 薬剤の配列について
控訴人書籍及び被控訴人書籍の漢方薬便覧部分は,「処方名」(漢方処方名)を原則として50音順とし,例外的に,1)・・・4箇所のみ50音順を崩して配列している点において同一である。このうち,控訴人は,4)の「ヨクイニンエキス」について,漢方薬ではなく生薬であるところから,全く別個に配列し,これを漢方薬の最後に配列したものである。また,上記2)の配列については,「桔梗湯」及び「桔梗石膏」は,いずれも生薬「桔梗」を含む漢方製剤であり,咽喉における症状に用いられる点で共通しているところ,「桔梗湯」は,・・・に記載された漢の時代から伝わる生薬の配合及び分量についての歴史的な処方であり,喉痛等に対して処方する機会が極めて多いのに対し,「桔梗石膏」は,原典を有しない比較的新しい処方であるため,まず「桔梗湯」の処方を考えることが臨床現場においては通常であること,また,「桔梗湯」は,単体で処方されることが多い漢方製剤であるが,「桔梗石膏」は,他の漢方製剤と共に処方されることが多い漢方製剤であるため,まず単体で処方することのできる「桔梗湯」を前にもってくることが臨床現場における使用に資することから,臨床現場の使用実態に即した配列にしたものである(甲76,弁論の全趣旨)。さらに,上記3)の配列も,「桂枝加竜骨牡蛎湯」が,前記のとおり・・・に記載された漢の時代から伝わる歴史的な処方であるのに対し,・・・が,江戸時代に日本で書かれた「方機」という書物に記載された処方であるところ,歴史が深い処方の方が信頼が高く,臨床現場においてより頻繁に用いられているところから,・・を先に配列することとしたものである(甲76,弁論の全趣旨)。このように,控訴人書籍における薬剤の配列は,漢方処方が,歴史的,経験的な実証に基づく薬効,中心的な役割を果たす主薬,基本方剤等,複数の分類基準によって区別される上に,基本方剤に新たな薬効を持つ生薬が加味されることで,多くの漢方処方に派生するという関係にあるところから,そのような歴史的,経験的な実証に基づく生薬の薬効及び基本方剤分類を考慮した配列にしたものである。そして,控訴人書籍の発行後に発行された「ポケット版臨床医薬品集2008」(乙9)以外に,上記1)ないし4)について控訴人書籍と同一の配列をしたものは見当たらない。被控訴人が発行した「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5),「日本医薬品集 医療薬 2008年版」(乙6)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においてすら,「ヨクイニンエキス」は,「漢方製剤」の分類の中には選択されず,それとは別の「その他の生薬製剤」又は「その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品」等に分類されていたものである。また,被控訴人が控訴人書籍の発行より前に発行した「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においては,控訴人書籍及び被控訴人書籍とは異なり,上記1)ないし3)を含め,全て50音順に配列されていたものである。
ウ 以上によれば,控訴人書籍漢方薬便覧部分は,漢方薬の148の処方名を掲載したほか,多数の生薬の中から「ヨクイニンエキス」のみを大分類「漢方薬」に分類するものとして選択した上,漢方3社が製造販売する薬剤がある漢方処方名については,当該漢方処方名に属する漢方3社の薬剤を全て選択し,漢方3社が薬剤を製造販売していない漢方処方名については,臨床現場における重要性や使用頻度等に鑑みて個別に薬剤を選択したというのであるから,薬剤の選択に控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているということができ,上記のような考慮から薬剤を選択した上,歴史的,経験的な実証に基づきあえて50音順の原則を崩して配列をした控訴人書籍漢方薬便覧部分の薬剤の配列には,控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているから,一定の創作性があり,これと完全に同一の選択及び配列を行った被控訴人書籍漢方薬便覧部分の薬剤の選択及び配列は,控訴人書籍のそれの複製に当たるといわざるを得ない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成20(ワ)29705
 

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平成23(ワ)33071 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年03月14日 東京地方裁判所

 題号「風にそよぐ墓標」の一部が、複製権および翻案権侵害と認定されました。ただ、損害額は慰謝料の方が高額でした。
 証拠(甲1,2,6,乙1,2の1及び2,3,4,原告及び被告B各本人)によれば,被告Bは,本件事故が犠牲者の妻や母という女性の視点から語られることが多かったことから,犠牲者の息子という男性の視点から本件事故を著述しようと考えていたところ,原告とCの息子であるGを知り,本件事故に関して原告が著述した「なにか云って」と題する書籍と原告書籍を図書館から借りて閲読した上で,平成22年5月21日,Gに対し,本件事故に関する取材を8時間ほどしたこと,被告Bは,同月24日,取材内容を補強するために,原告に対しても,本件事故に関する取材を3時間ほどしたこと,原告は,本件事故から25年弱が経過するとともに,上記両書籍の著述によって本件事故を自分なりに終結させていたので,当時の状況を思い出せなかったり,上記両書籍や原告に関する放送等を収録したDVD映像の各該当部分を示して説明したりした上,被告Bに対し,上記両書籍とDVD2本を提供したこと,これに対し,被告Bは,原告に対し,原告の説明や上記両書籍や両DVDを基にして正確に著述する旨約束したこと,原告は,同月29日ころ,被告Bに対し,手紙を送り,同月24日の取材で話題になった原告とCが出会った経緯等につき,訂正を申し入れたことが認められる。前記認定の事実によれば,原告が被告Bに対し原告書籍等を用いて事実の正確な著述をするよう求めたことは窺うことができるものの,さらに進んで,原告が被告Bに対し原告各記述の複製又は翻案及び譲渡に係る利用の許諾を黙示にしたということはできず,他に被告Bが原告から原告各記述の複製又は翻案及び譲渡に係る利用の許諾を黙示に得たことを認めるに足りる証拠はない。
(3) 以上によれば,被告Bは,別紙対比表の当裁判所の判断欄に○と記載した被告各記述を不可分的に有する被告書籍の第3章を著述することによって,原告の原告書籍の著作権(複製権又は翻案権)を侵害し,被告集英社は,当該被告各記述を第3章に含む被告書籍を頒布することによって,原告の原告書籍の著作権(譲渡権又は著作権法28条に基づく譲渡権)を侵害するものと認められる。\n

◆判決本文

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平成22(ワ)38003 出版差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年03月01日 東京地方裁判所

 本件著作物の一部については、著作者であるとして、氏名表示権侵害を認めました。\n
 原告は,本件著作物が亡Wと原告X4の共同著作物であり,仮にそうでなくとも,亡Wの原稿を原著作物とする原告X4の二次的著作物であるから,本件著作物を分冊化した分冊Iの著作者名として原告X4の名が表示されていないことは,原告X4の氏名表\示権を侵害すると主張する。この点,前記第2,2(3)のとおり,本件著作物については,亡Wがその執筆を始め,本件著作物のうち第I部「古典物理学」の部分(第5章「相対性理論」を除く。)の大半の原稿を完成間近とし,第II部「量子物理学入門」の原稿構成等のメモを途中まで制作したところで死亡したことから,その後,原告X4が,上記「相対性理論」の章を新たに執筆し,上記「量子物理学入門」の部分は,亡Wの上記原稿構\成等のメモを基に執筆し,その他の部分は,適宜内容の加除訂正を行って,本件著作物を完成させたことが認められるところ,前記第2,2(2)アの事実に,証拠(略)及び弁論の全趣旨を併せ考慮すると,本冊の第I部「古典物理学」(832頁分)のうち,原告X4が新たに執筆した第5章「相対性理論」の部分が24頁分(809頁ないし832頁)であること,第1章から第4章まで(3頁から808頁まで)は,亡Wがその原稿をほぼ仕上げていたものの,その部分に対して,原告X4が用紙24枚分の加除訂正を行ったこと,原告X4による上記加除訂正の中には,新たに図や数式を用いながら微分法とそれに関する関数の性質について解説した「微分法について」と題する記述(第I部・第1章「力学」の「1.2.1 直線運動における速度と加速度」の項の中にあり,本冊の13頁から約3頁分に相当する部分。)を挿入したり,従前の式に微分法の式を付加したり,図の座標軸を加筆して,本文中にその図の説明を書き加えたり,不適切な図を正しい図に修正したり,元の原稿になかった新たな見解や新たな説明を付加したり,いくつかの文章について,その一部を削除し,あるいは加筆して,文章の表現を正確又は分かりやすくしたり,十\数箇所の「長円」との表現を全て「楕円」との表\現に改めるなど,単なる誤字脱字の修正にとどまらず,文章や図などの具体的な表現について加除訂正がなされた部分が多数あること,第II部「量子物理学入門」について,そのうち亡Wの原稿構成等のメモが遺されていたのは,前半部分(第1章「量子力学入門」の始めから第2章「変換理論」の途中までであり,おおむね本冊の833頁から918頁に相当する部分。)だけであり,しかも,そのメモは手書きで,そこに記された文章はなお推敲の途上にあって,原稿として未完成であったこと,そのため,原告X4はそのメモにかなりの加筆修正を加えながら,前半部分の原稿を仕上げたこと,亡Wのメモが存在しなかった後半部分(第2章「変換理論」の途中から第3章「場の量子論から」の終わりまでであり,おおむね本冊の919頁から986頁に相当する部分。)については,全ての原稿を原告X4が新たに執筆したこと,以上の各事実が認められる。これらの事実によれば,本件著作物の創作における原告X4の寄与は,亡Wの創作した著作物を単に監修したという程度にとどまるものではなく,むしろ,原告X4は,亡Wの遺稿に基づきつつ,本件著作物の全体にわたって具体的な表\現の創作に寄与したものと解するのが相当である。したがって,原告X4は,本件著作物について,少なくとも当該創作部分の著作者としての権利を有するものと認めるのが相当である。
 (2) この点に関し原告らは,原告X4の権利が,主位的に,共同著作物に係る著作権であると主張し,予備的に,二次的著作物に係る著作権であると主張する。この点,前記のとおり,原告X4が上記創作を行ったのは,亡Wの死後であるから,上記各部分は,原告X4が単独で創作したものであって,亡Wがその創作に関与したことはない。しかも,原告X4は,亡Wの死後に,本件著作物の執筆を依頼されたものであるから,亡Wの生前に,亡Wと原告X4とが,互いに共同で本件著作物を創作することを合意していたこともない。そして,仮に亡Wが,自己の死後に,その遺稿をもとにして第三者が本件著作物を完成させることを望んでいたとしても,亡Wが,その第三者が原告X4となることを知っていたわけではない以上,亡Wにおいて,原告X4と共同して本件著作物を創作する意思を有していたと認めることはできないというべきである。そうすると,本件著作物が,亡Wと原告X4とが共同して創作した共同著作物であると認めることはできない。しかし,上記のとおり,原告X4は,本件著作物について,少なくとも上記創作部分を新たに執筆しているから,その部分については本件著作物を翻案することにより創作した二次的著作物と認められるものである。したがって,原告X4は,少なくとも本件著作物について二次的著作物の著作者としての権利を有するものと認めるのが相当である。\n

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平成21(ワ)26053 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年12月26日 東京地方裁判所

 一部の仏画について、創作性あり(著作物あり)・翻案されたと認定されました。
 被告仏画2(14)は白黒画であり,構図は原告仏画2(14)とほぼ同一であって,菩薩の姿態,髪や宝冠,装飾品の形状,着衣の流れ,冠帯の流れや翻り方をみても,原告仏画2(14)におけるものとほぼ同一であると認められる。また,菩薩の表情については,眼や鼻にやや丸みが加えられているが,やや視線を下向きにした祈りの表\情という点では同一であるということができ,構図や細部における表\現が上記のとおり原告仏画2(14)とほぼ同一であることとも相俟って,原告仏画2(14)と同様に,柔らかな祈りの雰囲気が伝わってくるものと認められる。他方,被告仏画2(14)は,原告仏画2(14)に比べてやや線が太く,薄墨でぼかしたように着色がされ,胸や腕の飾りの一部,宝冠から肩にかかる飾りの一部が省略されていることにより,原告仏画2(14)に比べて素朴な印象が加えられているものということができ,このような点は,被告によって付加された創作的表現であると認められる。ウ したがって,被告仏画2(14)は,原告仏画2(14)の柔らかな祈りの雰囲気を伝える表現上の本質的特徴を直接感得させるものであるが,新たな創作的要素を加えた別の著作物に該当するものであり,原告仏画2(14)を複製したものとはいえず,これを翻案したものに当たる。
・・・
以上のとおりであって,被告仏画2(1)1),2(5)1),2(7),2(12),2(13)1),2(14)(以下,これらを併せて「被告侵害仏画」という。)は,それぞれ原告仏画2(1),2(5),2(7),2(12)ないし(14)を翻案したものに当たる。

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平成20(ワ)29705 出版差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年08月31日 東京地方裁判所 

 臨床現場で有用な薬剤便覧が編集著作物に該当するのかが争われました。裁判所は、薬剤の選択の方針はありふれたものであるとして、編集著作物性を否定しました。
 前記ア(ウ)a認定のとおり,原告書籍便覧部分に掲載する個々の具体的な薬剤の選択の方針は,「2007年1月現在市販されている医家向け薬剤(一部未発売を含む)のうち,日常よく使用されているもの,使用頻度は少ないが重要なものは全て含み」,一方,「市販されているものであっても,経過措置品,近い将来再評価などにより発売中止になる可能性のあるものは一部省略」するというものであり,要するに,市販されている薬剤の中から,日常よく使用されているもの及び使用頻度は少ないが重要なものと認めた薬剤を全て選択するというものであり,その方針自体は,臨床現場で有用な薬剤便覧を編集することを目的とするものである以上,ありふれたものである。一方で,「日常よく使用されているもの」あるいは「使用頻度は少ないが重要なもの」に該当するかどうかを判定するには,編者によって「重要」の捉え方が必ずしも一様ではないなど選択の幅があり,上記方針に従ってされた個々の具体的な薬剤の選択結果においては,編者の個性が表\れていると認めることができる場合があるものといえる。また,臨床現場で迅速に必要かつ十分な薬剤情報を得られることを目的とし,個々の具体的な薬剤を分類体系に従って分類して掲載する薬剤便覧においては,コンパクト化の要請と薬剤情報の網羅性の要請を踏まえ,分類体系の分類項目を前提に,その項目ごとに該当する薬剤を選択し,それらを配列することになるので,掲載する薬剤を検討することと分類体系とは密接な関係にあるといえる。そのため,薬剤便覧の分類体系自体の独自性は,薬剤の配列のみならず,薬剤の選択においても影響を及ぼし得るものであり,また,その分類体系に従って行われた個々の具体的な薬剤の選択結果において,編者の個性が表\れていると認めることができる場合があるものといえる。もっとも,分類体系の分類項目が定まれば当該分類項目に掲載される薬剤が機械的にあるいは一義的に定まるのであれば格別,当該分類項目を前提に諸要素を考慮して個々の具体的な薬剤が選択されるのであれば,分類体系が同一又は類似するものであっても,その分類体系に従って行われた個々の具体的な薬剤の選択結果が異なるものとなり,その選択結果において薬剤の選択における表現の創作性がそもそも認められない場合や,複数の選択結果同士においてその表\現が類似するものと認められない場合も当然あり得るものといえるものであり,このような意味において,薬剤便覧の分類体系の独自性がその分類体系に従って選択された薬剤の選択の創作性に及ぼし得る影響は,限定的なものといわざるを得ない。
・・・
しかるところ,原告の上記主張によれば,原告書籍一般薬便覧部分においては,本件分類体系を前提としてこれに関連付けて,当該薬剤が本件分類体系のいずれに分類されるかという観点を考慮し,臨床現場での重要性や使用頻度,原告書籍の執筆者の学識や経験等に基づく意向,読者の要望等の基準に従って選択を行い,かつ,選択された薬剤を配列したというものであるから,原告書籍一般薬便覧部分において掲載された個々の具体的な薬剤の選択は,分類項目ごとに機械的にあるいは一義的に定められたものではないといえる。そうすると,仮に原告が主張するように被告書籍一般薬便覧部分に掲載された個々の薬剤が原告書籍一般薬便覧部分の本件分類体系と類似する5層の分類体系に関連付けられて選択されているとしても,そのことから直ちに原告主張の類似性が認められるものではなく,原告書籍一般薬便覧部分に掲載された薬剤の具体的な選択結果と被告書籍一般薬便覧部分に掲載された薬剤の具体的な選択結果とを対比し,原告が主張する原告書籍一般薬便覧部分の個々の具体的な薬剤の選択における創作的表現が被告書籍一般薬便覧部分において利用されているかどうかを検討する必要がある。
・・・
(ウ) 以上のとおり,仮に原告が主張するように原告書籍一般薬便覧部分の個々の具体的な薬剤の選択において創作性が認められるとしても,被告書籍一般薬便覧部分における個々の具体的な薬剤の選択における表現は,原告書籍一般薬便覧部分の創作的表\現と類似しているものと認められないから,その余の点について判断するまでもなく,被告書籍一般薬便覧部分が素材である個々の具体的な薬剤の選択に創作性を有する編集著作物である原告書籍一般薬便覧部分を複製又は翻案したものと認めることはできない。・・・このように原告書籍一般薬便覧部分と被告書籍一般薬便覧部分は,掲載された薬剤の具体的な配列順序(掲載順序)が明らかに相違するものであるから,仮に原告が主張するように原告書籍一般薬便覧部分の個々の具体的な薬剤の配列において創作性が認められるとしても,その創作的表現が被告書籍一般薬便覧部分の薬剤の配列に利用されているものと認めることはできない。
・・・
(ウ) 以上のとおり,仮に原告が主張するように原告書籍一般薬便覧部分の個々の具体的な薬剤の配列において創作性が認められるとしても,被告書籍一般薬便覧部分における個々の具体的な薬剤の配列における表現は,原告書籍一般薬便覧部分の創作的表\現と類似しているものと認められないから,その余の点について判断するまでもなく,被告書籍一般薬便覧部分が素材である個々の具体的な薬剤の配列に創作性を有する編集著作物である原告書籍一般薬便覧部分を複製又は翻案したものと認めることはできない。

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平成24(ネ)10027 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年08月08日 知的財産高等裁判所

 グリー vs DeNAの釣りゲームについて、知財高裁は、釣りゲームの画面は、表現といえるまで具体化されていないとして、著作権侵害ではないと判断しました。
 原告作品と被告作品とは,いずれも携帯電話機向けに配信されるソーシャルネットワークシステムの釣りゲームであり,両作品の魚の引き寄せ画面は,水面より上の様子が画面から捨象され,水中のみが真横から水平方向に描かれている点,水中の画像には,画面のほぼ中央に,中心からほぼ等間隔である三重の同心円と,黒色の魚影及び釣り糸が描かれ,水中の画像の背景は,水の色を含め全体的に青色で,下方に岩陰が描かれている点,釣り針にかかった魚影は,水中全体を動き回るが,背景の画像は静止している点において,共通する。イ しかしながら,そもそも,釣りゲームにおいて,まず,水中のみを描くことや,水中の画像に魚影,釣り糸及び岩陰を描くこと,水中の画像の配色が全体的に青色であることは,前記(2)ウのとおり,他の釣りゲームにも存在するものである上,実際の水中の影像と比較しても,ありふれた表現といわざるを得ない。次に,水中を真横から水平方向に描き,魚影が動き回る際にも背景の画像は静止していることは,原告作品の特徴の1つでもあるが,このような手法で水中の様子を描くこと自体は,アイデアというべきものである。また,三重の同心円を採用することは,従前の釣りゲームにはみられなかったものであるが,弓道,射撃及びダーツ等における同心円を釣りゲームに応用したものというべきものであって,釣りゲームに同心円を採用すること自体は,アイデアの範疇に属するものである。そして,同心円の態様は,いずれも画面のほぼ中央に描かれ,中心からほぼ等間隔の三重の同心円であるという点においては,共通するものの,両者の画面における水中の影像が占める部分が,原告作品では全体の約5分の3にすぎない横長の長方形で,そのために同心円が上下両端にややはみ出して接しており,大きさ等も変化がないのに対し,被告作品においては,水中の影像が画面全体のほぼ全部を占める略正方形で,大きさが変化する同心円が最大になった場合であっても両端に接することはなく,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,配色及び中央の円の部分の画像が変化するといった具体的表\現において,相違する。しかも,原告作品における同心円の配色が,最も外側のドーナツ形状部分及び中心の円の部分には,水中を表現する青色よりも薄い色を用い,上記ドーナツ形状部分と中心の円部分の間の部分には,背景の水中画面がそのまま表\示されているために,同心円が強調されているものではないのに対し,被告作品においては,放射状に仕切られた11個のパネルの,中心の円を除いた部分に,緑色と紫色が配色され,同心円の存在が強調されている点,同心円のパネルの配色部分の数及び場所も,魚の引き寄せ画面ごとに異なり,同一画面内でも変化する点,また,同心円の中心の円の部分は,コインが回転するような動きをし,緑色無地,銀色の背景に金色の釣り針,鮮やかな緑の背景に黄色の星マーク,金色の背景に銀色の銛,黒色の背景に赤字の×印の5種類に変化する点等において,相違する。そのため,原告作品及び被告作品ともに,「三重の同心円」が表示されるといっても,具体的表\現が異なることから,これに接する者の印象は必ずしも同一のものとはいえない。さらに,黒色の魚影と釣り糸を表現している点についても,釣り上げに成功するまでの魚の姿を魚影で描き,釣り糸も描いているゲームは,前記(2)ウのとおり,従前から存在していたものであり,ありふれた表現というべきである。しかも,その具体的表\現も,原告作品の魚影は魚を側面からみたものであるのに対し,被告作品の魚影は前面からみたものである点等において,異なる。
ウ 以上のとおり,抽象的にいえば,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面とは,水面より上の様子が画面から捨象され,水中のみが真横から水平方向に描かれている点,水中の画像には,画面のほぼ中央に,中心からほぼ等間隔である三重の同心円と,黒色の魚影及び釣り糸が描かれ,水中の画像の背景は,水の色を含め全体的に青色で,下方に岩陰が描かれている点,釣り針にかかった魚影は,水中全体を動き回るが,背景の画像は静止している点において共通するとはいうものの,上記共通する部分は,表現それ自体ではない部分又は表\現上の創作性がない部分にすぎず,また,その具体的表現においても異なるものである。そして,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面の全体について,同心円が表\示された以降の画面をみても,被告作品においては,まず,水中が描かれる部分が,画面下の細い部分を除くほぼ全体を占める略正方形であって,横長の長方形である原告作品の水中が描かれた部分とは輪郭が異なり,そのため,同心円が占める大きさや位置関係が異なる。また,被告作品においては,同心円が両端に接することはない上,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,パネルの配色及び中心の円の部分の図柄が変化するため,同心円が画面の上下端に接して大きさ等が変わることもない原告作品のものとは異なる。さらに,被告作品において,引き寄せメーターの位置及び態様,魚影の描き方及び魚影と同心円との前後関係や,中央の円の部分に魚影がある際に決定キーを押すと,円の中心部分の表示に応じてアニメーションが表\示され,その後の表示も異なってくるなどの点において,原告作品と相違するものである。その他,後記エ(カ)のとおり,同心円と魚影の位置関係に応じて決定キーを押した際の具体的表現においても相違する。なお,被告作品においては,同心円が表\示される前に,水中の画面を魚影が移動する場面が存在する。以上のような原告作品の魚の引き寄せ画面との共通部分と相違部分の内容や創作性の有無又は程度に鑑みると,被告作品の魚の引き寄せ画面に接する者が,その全体から受ける印象を異にし,原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得できるということはできない。\n

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◆原審はこちらです。平成23(ワ)13060

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平成23(ワ)13060 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年07月05日 大阪地方裁判所

 同一性を有する部分が,思想又は感情を創作的に表現したものでないとして、翻案権侵害は無しと判断されました。
 著作物の複製(著作権法21条,2条1項15号)とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいう。ここで,再製とは,既存の著作物と同一性のあるものを作成することをいうと解すべきであるが,同一性の程度については,完全に同一である場合のみではなく,多少の修正増減があっても著作物の同一性を損なうことのない,すなわち実質的に同一である場合も含むと解すべきである。また,著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的な表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。もとより,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであって(同法2条1項1号),思想,発想又はアイデア等を直接保護するものではない。そのため,仮に既存の著作物に依拠して創作された著作物であっても,具体的な表\現のレベルでの本質的な特徴の同一性が維持されておらず,具体的な表現から抽出される思想,発想又はアイデアのレベルにおいて既存の著作物と同一又は類似と評価され,あるいは事実又は事件といったレベルにおいて同一又は類似の内容を述べていると評価されるにとどまる場合は,両者は,いずれも表\現それ自体ではない部分において共通性を有するにすぎないから,著作権法上の複製にも翻案にも当たらない。また,具体的な表現に同一又は類似と評価される部分があったとしても,表\現上の創作性がない部分について同一又は類似と評価されるにすぎない場合は,やはり複製にも翻案にも当たらない。イ このように,複製又は翻案に該当するためには,既存の著作物とこれに依拠して創作された著作物との間に,外形的表現としての同一性が認められることが必要で,さらに,同一性を有する部分が,著作権法による保護の対象となる思想又は感情を創作的に表\現したものであることが必要である(著作権法2条1項1号)。そして,「創作的」に表現されたというためには,筆者の何らかの個性が表\現されたものであれば足り,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることまでは必要ないが,文章自体がごく短く又は表現上制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合には,これを創作的な表\現ということはできない。
 ウ 本件において,原告は,被告による被告著作物部分の記述又は発言は,P3の浮世絵についての独自の研究成果を盗用したものであるとして,複製又は翻案に当たる旨主張する。しかしながら,前述のとおり,原告記述部分と被告著作物部分とを対比して同一又は類似するといえる部分があるとしても,それが思想又は感情の創作的表現の同一性の問題ではなく,表\現から抽出される又は表現が前提とする,思想,発想又はアイデアにおける同一性,あるいは事実又は事件における同一性の問題にすぎないときは,当該被告著作物部分の記述又は発言は,複製又は翻案に該当するとはいえない。また,原告記述部分が何らかの歴史的事実に言及し,これに対する見解を述べるものであったとしても,そのような事実,見解自体について,排他的権利が成立するものではなく,これと同じ事実,見解を表\明することが,著作権法上禁止されるいわれはない。

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平成21(ワ)34012 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年02月23日 東京地方裁判所

 (株)グリーが、(株)ディー・エヌ・エーの「釣りゲータウン」についての著作権侵害、不競法違反による差し止め、損害賠償を求めました。東京地裁は、翻案権侵害を認めました。なお、魚の引き寄せ画面を掲載する行為は、不競法の商品等表示には該当せず、また、寄与度を30%と認定して、被告利益の額の3割の2億を損害として認定しました。
 (4) 携帯電話機用釣りゲームにおける魚の引き寄せ画面は,釣り針に掛かった魚をユーザーが釣り糸を巻くなどの操作をして引き寄せる過程を,影像的に表現した部分であり,この画面の描き方については,i)水面より上や水面,水面下のうちどの部分を,どのような視点から描くか,ii)仮に,水面下のみを描くこととした場合,魚の姿や魚の背景をどのように描くか,iii)魚が釣り針に掛かった時から,魚が釣り上げられる又は魚に逃げられるまでの間,魚にどのような動きをさせ,どのような場合に魚を引き寄せやすいようにするか(ユーザーが釣り糸を巻くタイミングをどのように表現するか)などの点において,様々な選択肢が考えられる。原告作品は,この魚の引き寄せ画面について,上記(2)ア(エ)のような具体的表現を採用したものであり,特に,水中に三重の同心円を大きく描き,釣り針に掛かった魚を黒い魚影として水中全体を動き回らせ,魚を引き寄せるタイミングを,魚影が同心円の所定の位置に来たときに引き寄せやすくすることによって表\した点は,原告作品以前に配信された他の釣りゲームには全くみられなかったものであり(甲3),この点に原告作品の製作者の個性が強く表れているものと認められる。他方,被告作品の魚の引き寄せ画面は,上記のとおり原告作品との相違点を有するものの,原告作品の魚の引き寄せ画面の表\現上の本質的な特徴といえる,「水面上を捨象して,水中のみを真横から水平方向の視点で描いている点」,「水中の中央に,三重の同心円を大きく描いている点」,「水中の魚を黒い魚影で表示し,魚影が水中全体を動き回るようにし,水中の背景は全体に薄暗い青系統の色で統一し,水底と岩陰のみを配置した点」,「魚を引き寄せるタイミングを,魚影が同心円の一定の位置に来たときに決定キーを押すと魚を引き寄せやすくするようにした点」についての同一性は,被告作品の中に維持されている。したがって,被告作品の魚の引き寄せ画面は,原告作品の魚の引き寄せ画面との同一性を維持しながら,同心円の配色や,魚影が同心円上のどの位置にある時に魚を引き寄せやすくするかという点等に変更を加えて,新たに被告作品の製作者の思想又は感情を創作的に表\現したものであり,これに接する者が原告作品の魚の引き寄せ画面の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものと認められる。また,これらの事実に加えて,被告作品の製作された時期は原告作品の製作された時期の約2年後であること,被告らは被告作品を製作する際に原告作品の存在及びその内容を知っていたこと(甲1の1,2)を考慮すると,被告作品の魚の引き寄せ画面は,原告作品の魚の引き寄せ画面に依拠して作成されたものといえ,原告作品の魚の引き寄せ画面を翻案したものであると認められる。
 (5) これに対し,被告らは,原告が魚の引き寄せ画面に関して原告作品と被告作品とで同一性を有すると主張する部分は,いずれも,単なるアイデア又は平凡かつありふれた表現にすぎず,創作的表\現とはいえないと主張する。しかしながら,原告作品と被告作品の魚の引き寄せ画面の共通点は,単に,「水面上を捨象して水中のみを表示する」,「水中に三重の同心円を表\示する」,「魚の姿を魚影で表す」などといったアイデアにとどまるものではなく,「どの程度の大きさの同心円を水中のどこに配置し」,「同心円の背景や水中の魚の姿をどのように描き」,「魚にどのような動きをさせ」,「同心円やその背景及び魚との関係で釣り糸を巻くタイミングをどのように表\すか」などの点において多数の選択の幅がある中で,上記の具体的な表現を採用したものであるから,これらの共通点が単なるアイデアにすぎないとはいえない。
・・・
 エ 以上のとおり,原告作品と被告作品の画面における素材の選択と配列について両作品が類似する点は,原告が主張画面であると主張する画面と非主要画面であると主張する画面のいずれも,アイデアないし表現上の創作性のない部分において類似するにすぎない。これに加えて,原告の主張する原告作品の主要画面の遷移には上記のとおり創作性が認められないことなどを併せ考えると,被告作品と原告作品における画面の選択と配列及び画面の素材の選択と配列に上記のような類似点があることは,被告作品が原告作品の翻案物であることを何ら根拠付けるものではないというべきである。\n

◆判決本文

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平成23(ネ)10041等 損害賠償等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年01月31日 知的財産高等裁判所

  元社員が別の会社で作成したプログラムについて複製・翻案権侵害と認定された著作権侵害事件の控訴審です。知財高裁は1審の判断を維持しました。
 上記事実関係によれば,被告プログラムのうち36個のファイルが原告プログラムの35個のファイルとほぼ1対1で対応し,かつ,被告プログラムの上記36個のファイルにおけるソースコードが原告プログラムの35個のファイルにおけるソ\ースコードと,記述内容の大部分において同一又は実質的に同一である。このように,測量業務に必要な機能を抽出・分類し,これをファイル形式に区分して,関連付け,使用する関数を選択し,各ファイルにおいてサブルーチン化する処理機能\を選択し,共通処理のためのソースコードを作成し,また,各ファイルにおいてデータベースに構\造化して格納するデータを選択するなど,原告プログラムのうち作成者の個性が現れている多くの部分において,被告プログラムのソースコードは原告プログラムのソ\ースコードと同一又は実質的に同一であり,被告プログラムは原告プログラムとその表現が同一ないし実質的に同一であるか,又は表\現の本質的な特徴を直接感得できるものといえる。

◆判決本文

◆原審はこちら 平成19(ワ)24698平成23年05月26日東京地裁

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平成23(ネ)10008 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成23年12月22日 知的財産高等裁判所

 折り紙の折り図についての著作物性のある部分を複製していないとした1審判決が維持されました。
 「原告は,本件折り図の「32の折り工程のうち,どの折り工程を選択し,一連の折り図として表現するか,何個の説明図を用いて説明するか」は,アイデアではなく,表\現であるとして,被告折り図と本件折り図とは,上記の点において共通するので,被告が被告折り図を作成する行為は,本件折り図について有する原告の複製権ないし翻案権を侵害すると主張する。しかし,原告の主張は,主張自体失当である。すなわち,著作権法により,保護の対象とされるのは,「思想又は感情」を創作的に表現したものであって,思想や感情そのものではない(著作権法2条1項1号参照)。原告の主張に係る「32の折り工程のうち,10個の図面によって行うとの説明の手法」それ自体は,著作権法による保護の対象とされるものではない。上記アのとおり,被告折り図と本件折り図とを対比すると,i)32の折り工程からなる折り方について,10個の図面(説明図)及び完成形を示した図面(説明図)による説明手法,ii)いくつかの工程をまとめた説明手法及び内容,iii)各説明図は,紙の上下左右の向きを一定方向に固定し,折り筋を付ける箇所を点線で,付けられた折筋を実線で,折り筋を付ける手順を矢印で示しているという説明手法等において共通する。しかし,これらは,読者に対し,わかりやすく説明するための手法上の共通点であって,具体的表現における共通点ではない。そして,具体的表\現態様について対比すると,本件折り図と被告折り図とは,上記アのとおり,数多くの相違点が存在する。被告折り図は本件折り図の有形的な再製には当たらず,また,被告折り図から本件折り図の表現上の本質的特徴が直接感得できるともいえない。したがって,被告が,被告折り図を作成することによって本件折り図を複製ないし翻案した旨の原告の主張は採用できない。\n  

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成22(ワ)18968平成23年05月20日東京地裁

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平成21(ワ)4998 著作権侵害等に基づく損害賠償等請求事件 平成23年09月15日 名古屋地方裁判所

 創作性の認められない部分については著作物性なしと判断しました。
 本件における原告各書籍及び本件各書籍のような法律問題の解説書においては,関連する法令の内容や法律用語の意味を整理して説明したり,法令又は判例,学説によって当然に導かれる一般的な法律解釈や実務の運用等を解説するなどし,それらを踏まえた見解を記述することが不可避である。しかるに,既存の著作物とこれに依拠して創作された著作物との同一性を有する部分が,法令や通達,判決,決定等である場合には,これが著作権の目的とすることができないものである以上(同法13条参照),当該法令等の記述そのものが複製,翻案となることはないのはもちろん,同一性を有する部分が,法令や判決等によって当然に導かれる事柄である場合にも,創作的に表現した部分において同一性を有するとはいえないから,当該部分に係る記述も複製,翻案には当たらないと解すべきである。また,手続の流れや法令の内容等を法令の規定や実務の取扱いに従って図示したり図表\にすること,さらには,手続上通常用いられる書面の書式を掲載することはアイデアの範ちゅうに属することであり,これを独自の観点から分類し,整理要約したなどの個性的表現がされているといった格別の場合でない限り,そのような図示,図表\や書式は,創作的に表現した部分において同一性を有するものとはいえないから,複製,翻案に当たらないと解すべきである。さらに,同一性を有する部分が,ある法律問題に関する筆者の見解又は一般的な見解である場合にも,思想ないしアイデアにおいて同一性を有するにすぎないから,一般の法律書等に記載されていない独自の観点からそれを説明する上で通常用いられる表\現にとらわれず,独自の表現を用いて整理要約したなど表\現上の格別の工夫がある場合でない限り,複製,翻案に当たらないと解される。そして,ある法律問題について,関連する法令等の内容や法律用語の意味を説明し,一般的な法律解釈や実務の運用等を記述する場合には,確立した法律用語をあらかじめ定義された用法で使用し,法令等又は判例等によって当然に導かれる一般的な法律解釈を説明しなければならないという表現上の制約がある。そのため,これらの事項について説明する場合に,条文の順序にとらわれずに,独自の観点から分類し,通常用いられる表\現にとらわれず,独自の表現を用いて整理要約したなど表\現上の格別の工夫がある場合でない限り,筆者の個性が表れているとはいえないから,著作権法によって保護される著作物としての創作性を認めることはできず,複製にも翻案にも当たらないと解すべきである。
・・・
以上のとおり,原告各表現と本件各表\現とは,表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性のない部分において同一性を有するにすぎないから,本件各表現は,いずれも原告各表\現を複製,翻案したものとは認められない。

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平成22(ワ)7213 損害賠償請求事件 平成23年09月05日 東京地方裁判所

 テレビ番組を海外居住者に提供することは、公衆送信に該当すると判断されました。
 前記前提事実(2)イでみた本件サービスにおける配信システムの具体的内容によれば,本件サービスのうち,前記前提事実(2)イ(イ)のテレビ番組の動画ファイル形式による記録及び配信システムにおいては,テレビ放送を,ケーブルテレビ配線を介して受信した上,記録用サーバ機に記録するものであるから,テレビ放送に係る音及び影像を録音,録画するものであり,これを複製するものということができる(最高裁平成23年1月20日第一小法廷判決・裁判所時報2103号128頁参照)。ウ 本件サービスにおいて視聴可能なテレビ番組中に原告の地上波テレビ放送に係る放送番組が含まれていることは前記のとおりであるから,本件サービスのうち,動画ファイル形式により記録及び配信するものは,原告が放送事業者としてその放送について有する複製権を侵害するものである。
(3) この点に関し,被告は,本件サービスでは,利用者に個々の仮想PCが割り当てられ,各利用者による機器の操作が可能であって,各利用者が録画予\約した番組のみをダウンロードできる仕様としていたのであり,各利用者による機器の操作が不可欠であったと主張し,各サーバ機の自動公衆送信装置該当性を否認するが,前記前提事実でみた本件サービスの内容及び利用者数等に照らすと,何人も本件サービス利用契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであるから,本件サービスの利用者は不特定かつ多数の者に当たり,「公衆」(同法2条5項)に該当するものと認められるのであって,本件サービスにおけるストリーミング配信用サーバ機及び動画ファイル配信用サーバ機は自動公衆送信装置に該当する。被告の主張は採用することができない。
(4) 送信可能化権侵害及び複製権侵害の主体について
前記前提事実によれば,本件サービスは,ジェーネット合資会社及びジェーネット社により管理運営され,その利用料金は,上記2社名義の銀行口座に入金されていたものであることが認められるが,上記2社は,いずれも,被告が,本件サービスの管理運営のために設立した会社であって,実質的には被告一人で経営していたものであると認められる上,前記前提事実(6)のとおり,上記2社の銀行口座に入金された利用料金は,ほぼ全額が出金され,被告個人名義口座に入金されていたものであって,本件サービスによる利益は被告個人に帰属していたものであり,後記2のとおり,被告は本件サービスの違法性を認識しながら,本件サービスに係るシステムを構築していたと認められるのであるから,本件サービスに係る送信可能\化権侵害及び複製権侵害行為は,被告個人も独立の侵害行為の主体として関与したものであると認められる。

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平成19(ワ)24698 損害賠償等請求事件 平成23年05月26日 東京地方裁判所

 元社員が別の会社で作成したプログラムについて複製・翻案権侵害と認定されました。114条2項による侵害額の推定も認められました。
 証拠(乙11の1,3〜5)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年8月31日終了事業年度(1期)から平成21年8月31日終了事業年度(4期)までの間における,被告YKSC社の売上高の合計額は4億2 1 4 3 万1 3 8 4 円( 20,138,050 + 121,484,073 + 137,885,662 +141,923,599=421,431,384 円)であり,変動経費として売上高から控除すべき費用(材料費,外注加工費,旅費交通費)の合計額は1億3611万8708円(2,664,896+43,659,701+49,072,556+40,721,555=13,618,708 円)であると認められるから,上記期間における被告YKSC社の限界利益の合計額は2億8531万2676円であり,売上高に占める変動経費の比率は約32%であると認められる。本件では,上記のとおり,別紙売上集計表記載の一般測量,丁張測量,位置郎リース,成果(データ作成,図面・他成果)業務の売上高の一部について,被告ソ\フトを使用したことによる売上高であると認められるところ,上記認定に係るこれらの業務の性質や,被告YKSC社の業務のうち被告ソフトを使用したものと認められなかった業務の性質等を考慮すると,上記限界利益を算定するに当たって売上高から控除すべき変動経費は,売上高の30%と認めるのが相当である。したがって,上記(ア)a,b,同(イ)a,同(ウ)認定の売上高の合計額から3 0 % を控除した2 2 6 4 万5 6 6 5 円( { 6,560,430 +17,942,240+3,535,450+2,319,200+1,993,630}円×0.7=22,645,665円)が,被告YKSC社が被告ソフトを使用したことによる利益であると認められる。\n

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平成22(ワ)18968 損害賠償等請求事件 平成23年05月20日 東京地方裁判所

 折り紙を折り方を説明した折り図の翻案、複製かが争われました。裁判所は著作物性は認めたものの、翻案、複製には該当しないと判断しました。
 以上を前提に,本件折り図の著作物性について判断する。折り紙作品の折り図は,当該折り紙作品の折り方を示した図面であるが,その作図自体に作成者の思想又は感情が創作的に表現されている場合には,当該折り図は,著作物に該当するものと解される。もっとも,折り方そのものは,紙に折り筋を付けるなどして,その折り筋や折り手順に従って折っていく定型的なものであり,紙の形,折り筋を付ける箇所,折り筋に従って折る方向,折り手順は所与のものであること,折り図は,折り方を正確に分かりやすく伝達することを目的とするものであること,折り筋の表\現方法としては,点線又は実線を用いて表現するのが一般的であることなどからすれば,その作図における表\現の幅は,必ずしも大きいものとはいい難い。また,折り図の著作物性を決するのは,あくまで作図における創作的表現の有無であり,折り図の対象とする折り紙作品自体の著作物性如何によって直接影響を受けるものではない。
・・・・(イ) そこで検討するに,i)「へんしんふきごま」の折り方は,32の折り工程からなるところ,本件折り図は,この折り方について,1ないし10の手順に分解した説明図及び完成形を示した説明図を基に説明したものであるが,32の折り工程のうち,どこからどこまでの折り工程を一つの手順にまとめて何個の説明図を用いて説明するかについては選択の幅があること(甲13の1,2),ii)本件折り図は,別紙1のとおり,最初の折り工程から完成形に至るまでの折り工程について,紙の上下左右の向きを一定方向に固定し,紙の表と裏を色分け(赤色と無色)した各説明図において,折り筋を付ける手順を示す矢印,折り筋を付ける箇所及び向きを示す点線(谷折り線・山折り線),付けられた折り筋を示す実線,折った際に紙が重なる部分を予\測させるための仮想線を示す点線によって折り方を示すことを基本とし,これらの折り工程のうち矢印,点線等のみでは読み手が分かりにくいと考えた箇所について説明文及び写真を用いて折り方を補充して説明したものであること,iii)本件折り図に従えば,「へんしんふきごま」の折り紙作品を特段の支障なく作成できることによれば,本件折り図を全体としてみた場合,上記説明図の選択・配置,矢印,点線等と説明文及び写真の組合せ等によって,「へんしんふきごま」の一連の折り工程(折り方)を見やすく,分かりやすく表現したものとして創作性を認めることができるから,本件折り図は,著作物に当たるものと認められる。
・・・・複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により著作物を有形的に再製することをいい(著作権法2条1項15号参照),著作物の再製は,当該著作物に依拠して,その表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成することを意味するものと解され,また,著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表\現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表\現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。以上を前提とすると,被告折り図が本件折り図の複製又は翻案に当たるか否かを判断するに当たっては,被告折り図において,本件折り図の表\現上の本質的特徴を直接感得することができるかどうかを検討する必要がある。・・・(ウ) 以上のとおり,被告折り図と本件折り図は,前記(イ)の相違点が存在することから,折り図としての見やすさの印象が大きく異なり,分かりやすさの程度においても差異があるものであって,前記(ア)の共通点を最大限勘案してもなお,被告折り図から,「へんしんふきごま」の一連の折り工程(折り方)を見やすく,分かりやすく表現した本件折り図の表\現上の本質的特徴を直接感得することができるものとは認められない。したがって,被告折り図は,本件折り図の複製物又は翻案物のいずれにも当たらないというべきである。

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平成20(ワ)11762 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成23年01月28日 東京地方裁判所

 プログラム著作物について、差止、損害賠償が認められました。問題となったプログラムは、被告が原告在職中に作成したものでした。なお、翻案の差止は認められず、実施料相当額は10%と判断されました。
ウ これに対し,被告らは,原告プログラムにおいては,画面上の構成要素を貼\り付け,ボタン等を配置するために必要なプログラムなど,開発ツールであるMicrosoft社の「Visual Studio.net」によって自動生成された部分が相当の分量に及んでおり,これらの部分には創作性がないとした上で,原告プログラムのうちのMainForm.csの原告ソースコードに含まれる各関数を分析すると,別紙5において☆,○又は□の印を記載したものについては,自動生成コードが相当割合を占めることから,創作性が認められない旨を主張する。しかしながら,MainForm.csの原告ソースコードについては,そこに含まれる各関数における自動生成コードの占める割合が被告ら主張のとおりであることを前提にしたとしても,少なくとも別紙5において△の印が記載された合計10の関数については,被告ら自身が汎用的でないコードからなるものであることを認めており,創作性が認められることに実質的な争いはないものといえる。また,別紙5において□の印が記載された合計164の関数についても,被告らは,自動生成コードの割合が1割程度にすぎないこと,すなわち,9割程度が自動生成コードではないことを認めているのであり,これらの関数については,少なくとも自動生成コードが相当割合を占めることを理由として創作性を否定することはできないというべきである。この点,被告らは,これらの関数について,汎用的プログラムの組合せであることを理由として創作性が否定されるかのごとく主張するが,汎用的プログラムの組合せであったとしても,それらの選択と組合せが一義的に定まるものでない以上,このような選択と組合せにはプログラム作成者の個性が発揮されるのが通常というべきであるから,被告らの上記主張は採用できない。してみると,被告らの上記主張を前提としても,MainForm.csの原告ソースコードについては,そこに含まれる298の関数のうちの約6割(174/298)において,自動生成コードが1割以下にとどまっており,それ以外のコードは,その選択と組合せにおいてプログラム作成者の個性が発揮されていることが推認できるというべきであるから,プログラム著作物としての創作性を優に肯定することができる。エさらに,後記(2)イで認定するとおり,原告プログラムは,主として被告A1がその開発及びプログラミング作業を行ったものであるから,原告プログラムの内容等を最も知悉する者は被告A1にほかならないところ,それにもかかわらず,被告らは,原告プログラムの一部であるMainForm.csの原告ソースコードについて,別紙5に記載した印に基づいて前記第3の1(2)ア記載の程度の概括的な主張をしてその創作性を争うにとどまっており,それ以外の原告プログラムの創作性については,具体的理由に基づいてこれを争う旨の主張は行っていない。しかも,被告A1は,その本人尋問において,自らが行った原告プログラムにおけるソースコードの記述方法について,様々な創意工夫がされていることを自認する供述もしている。前記イ及びウで述べたことに加え,上記のような被告らの訴訟対応や被告A1の本人尋問における供述をも総合すれば,原告プログラムが,全体として創作性の認められるプログラム著作物であることは,優にこれを認めることができる。
・・・
原告は,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づき,被告プログラムの翻案の差止めを求めている。そこで,被告らが,被告プログラムの翻案行為を現に行い,又は,これを行うおそれがあると認められるか否かにつき検討するに,まず,被告らが,被告プログラムを改変する行為を現に行っているとの事実を認めるに足りる証拠はない。また,被告プログラムを翻案する行為には,広範かつ多様な態様があり得るものと考えられる。ところが,原告の上記請求は,差止めの対象となる行為を具体的に特定することなく,上記のとおり広範かつ多様な態様を含み得る「翻案」に当たる行為のすべてを差止めの対象とするものであるところ,このように無限定な内容の行為について,被告らがこれを行うおそれがあるものとして差止めの必要性を認めることはできないというべきである。したがって,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づいて被告プログラムの翻案の差止めを求める原告の請求は理由がない。
・・・
そこで,上記会費収入を前提として,原告が原告プログラムについての著作権の行使につき受けるべき金銭の額(使用料相当額)を算定するに,i)社団法人発明協会発行の「実施料率【第5版】」(甲24)に記載されたソフトウェアを含む「電子計算機・その他の電子応用装置」の技術分野における外国技術導入契約において定められた実施料率に関する統計データによれば,平成4年度から平成10年度までのイニシャル・ペイメント条件がない契約における実施料率の平均は33.2パーセントとされ,特にソ\フトウェアにおいて高率契約の割合が高いとされていること,ii)原告プログラムは,原告において,多大な時間と労力をかけて開発されたものであり,かつ,原告の業務の中核となる重要な知的財産であって,競業他社にその使用を許諾することは,通常考え難いものであること,iii)他方,証拠(乙13,被告A1)によれば,被告会社においては,その会員に対し,被告ソフトを公衆送信して使用させることのみならず,被告会社が野村総研から購入した株価や銘柄に関するデータに種々の処理を施したものを提供するサービスや会員に対して電子メールで種々のアドバイスを送信するメールサービスも行っていることから,会員から得られる会費の中には,これらのサービスに対する対価に相当する部分も含まれており,本来,上記会費収入の全額が実施料率算定の基礎となるものではないことといった事情のほか,原告ソ\フト及び被告ソフトの内容,被告らによる侵害行為の態様及びそれに至る経緯,原告と被告らとの関係など本件に現れた一切の事情を総合考慮すれば,被告らによる平成19年1月から平成22年8月までの著作権侵害について,原告が受けるべき使用料相当額は,上記(ア)の会費収入合計額2045万1200円の約10パーセントに当たる200万円と認めるのが相当である(なお,被告らによる著作権侵害について,原告が受けるべき使用料相当額は,原告の原告ソフトの表\示画面に係る著作権侵害の主張が認められる場合でも,上記金額を超えるものとはいえない。)。

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平成22(ネ)10017等 著作権侵害差止等反訴請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年07月14日 知的財産高等裁判所

 神奈川県知事が著者である「破天荒力・・・」について、地裁は著作権侵害を認めましたが、高裁は逆転判断。
 既に説示したとおり,著作権法は,思想又は感情の創作的表現を著作物として保護するものである(著作権法2条1項1号)から,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体ではない部分又は表\\現上の創作性がない部分は,著作権法による保護が及ばない。すなわち,歴史的事実の発見やそれに基づく推論等のアイデアは,それらの発見やアイデア自体に独自性があっても,著作に当たってそれらを事実又は思想として選択することは,それ自体,著作権による保護の対象とはなり得ない。そのようにして選択された事実又は思想の配列は,それ自体としてひとつの表現を構\\成することがあり得るとしても,以上のとおり,原判決添付別紙対比表2記載の各被控訴人書籍記述部分の事実又は思想の選択及び配列自体には,いずれも表\\現上の格別な工夫があるとまでいうことはできないばかりか,上記各被控訴人書籍記述部分とこれに対応する各控訴人書籍記述部分とでは,事実又は思想の選択及び配列が異なっているのである。したがって,上記各控訴人書籍記述部分は,これに対応する各被控訴人書籍記述部分と単に記述されている事実又は思想が共通するにとどまるから,これについて各被控訴人書籍記述部分の複製又は翻案に当たるものと認めることができないことは明らかである。

◆判決本文

◆1審はこちら・東京地裁平成20(ワ)1586

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平成22(ネ)10004 著作権侵害確認等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

 論文の著作権侵害について、原審は複製翻案権侵害と認定しましたが、知財高裁は該当箇所は創作性無しとしてこれを取り消しました。
 第1論文の当該表記部分は,判断を含めた事実について,ごく普通の構\文を用いた英文で表記したものであって,全体として,個性的な表\現であるということはできず創作性はなく,また表現の本質的な特徴部分も認められないから,第2論文該当箇所は,第1論文該当箇所を複製したものということはできず,また翻案ということもできない。この点について,原告は,「Discussion」には,多数の書き方が存在するから,第1論文の当該表記部分は,創作性を有すると主張する。しかし,ある内容を表\現するに当たり,他の表現の選択が可能\であったとしても,そのことから,当然に,当該表記部分に創作性が生じると解すべきではなく,創作性を有するとするためには,表\現に個性が発揮されていることを要する。第1論文該当箇所は,いずれも,語句の選択,順序,配列を含めて格別の個性の発揮された表現であるということはできないから,原告の主張は理由がない。なお,第2論文は,第1論文と対比すると,表\現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において共通する部分が存在するが,「Results」及び「Conclusion」の各章は,記載内容において相違すること,第2論文は,第1論文の全体記述及び個々の記述を総合勘案しても,第1論文の表現の本質的特徴を感得できるものではない点については,既に述べたとおりである。\n

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成18(ワ)2591平成21年11月27日東京地方裁判所

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平成21(ワ)6411 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年02月25日 大阪地方裁判所

 ぬいぐるみの著作物性について争われました。裁判所は、本質的部分が類似しないとして翻案権侵害を認めませんでした。
 「著作物のどの点に本質的特徴があるかは,当該著作物の著作者の創作的意図をも踏まえながらも,それのみならず,創作の対象となったモデル自体との対比や,同一のモデルを対象とした他の著作物との対比等も参考にしながら,法的保護に値する創作的な特徴を客観的な観点から認定するのが相当である。・・・他方,ぬいぐるみを観賞して愛でるにしろ,触れて遊ぶにしろ,その顔の表情はぬいぐるみの印象を決定づける重要な要素の1つであるところ,原告作品I群では,胴体に比べて頭部が横方向にはみ出しており,正面視の顔の輪郭形状は水平方向に扁平な楕円形である(なお,トムキャットでは,正面から見た場合の頭部の横幅は胴体と同じである。)。また,原告作品I群では,両目の間隔が離れており,鼻が両目を結んだ直線上にあって,目鼻が頭部のやや上部に位置することに加え,前脚と後脚の長さがほぼ同じで,前傾姿勢を取っていないことからすると,原告作品I群をそれぞれ全体としてみれば,見る者に優しく,ほのぼのとした印象を与えるものということができる。したがって,これらの形態は原告作品I群の印象を決定付ける本質的特徴というべきである。なお,原告作品I群の耳は,頂角が鋭角をなす二等辺三角形に近く,頭部から大きく突き出ており,この点も,原告作品I群を特徴づける要素といえる。・・・・そうすると,被告各製品は,原告各作品の本質的特徴を備えているとは認められず,また,前脚を短くした前傾姿勢を取ることによって,原告各作品とは異なり,今にも飛びかかってきそうな子猫の無邪気な印象を与えるものであり,原告作品I群の見る者に優しくほのぼのとした印象や,原告作品II群の上目遣いでのんきな印象とも大きく異なるといえる。そうすると,被告各製品からは,原告作品I群及びII群の本質的特徴を直接感得することはできないというべきであり,被告各製品は,原告各作品を翻案したと認められるほどに類似しているとは認められない。」\n

◆判決本文

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平成18(ワ)2591 著作権侵害確認等請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年11月27日 東京地方裁判所

 論文について複製権侵害、翻案権侵害が争われました。裁判所は、複製権侵害であると認定しました。
 以上によれば,第1論文は,原告が,被告が作成した原稿について,原稿への書き込み及び口頭により,英語表現の訂正,付加や,記載の順序,内容等について指示をし,その指示を受けた被告が原稿の修文をしたり,新たに作成した文章を書き入れて,完成するに至ったものであって,第1論文は,原告と被告が共同で創作し,原告と被告の寄与を分離して個別的に利用することができないものというべきであるから,第1論文は原告と被告の共同著作物(著作権法2条1項12号)であると認められる。したがって,原告は,第1論文の共同著作者である。・・・・以上によれば,被告は,第1論文に依拠し,第1論文の「Abstract」の一部(別紙対比表1の2ないし4の各項)及び「Discussion」の一部(別紙対比表2のcないしlの各項)について,その創作的表\現を有形的に再製して第2論文を作成したものであるから,被告による第2論文の作成は,上記の限度において複製に当たるものと認められる。そして,被告は,第1論文の共同著作者である原告の同意を得ずに,第2論文を作成しているから,被告による第2論文の作成は,原告の第1論文の一部についての複製権の侵害に当たる。・・・・・原告は,第2論文は,第1論文に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,「Results」及び「Conclusion」の章のみを書き替えたものであり,両論文の読者は,その余の部分についての酷似を容易に感得できるから,第2論文は,第1論文を全体として翻案したものである旨主張する。ところで,言語の著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。これを本件についてみるに,前記(1)のとおり,第2論文において第1論文の創作的表現が有形的に再製されている部分は,「Abstract」の一部(別紙対比表1の2ないし4の各項)及び「Discussion」の一部(別紙対比表2のcないしlの各項)であって,しかも,両論文の「Results」及び「Conclusion」の各章は,記載内容が異なり,その表現において類似する箇所は存しないことに照らすならば,上記部分から第1論文全体の表\現上の本質的特徴な特徴を直接感得することができるものではないから,第2論文は,第1論文を全体として翻案したものと認めることはできない。

◆判決本文

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◆平成17(ワ)23419 損害賠償等請求事件 著作権民事訴訟 平成19年03月16日 東京地方裁判所

  DLLファイルの有する制限設定機能を排除し,単に,製品設計や開発という1つの目的に利用可能\な多くのモジュールを収載した1つのソフトウェアに変形し,すべてのモジュールが利用可能\となる環境を作り出す行為がプログラムの著作物の翻案であると判断されました。
 「本件ソフトウェアは,三次元な作図等に関する数多くのモジュールと,使用許諾されたモジュールを管理する本件DLLファイルとから成り,本件ソフトウェア中の本件DLLファイルが毎回LUMプログラムで設定されている使用許諾に関する情報を確認し,それを基に,許諾された範囲内でモジュールを使用可能にし,その使用環境を設定する機能\を有していたところ,本件ソフトウェア中の本件DLLファイルにつき別紙改変方法に記載した方法により改変をした本件改変行為により,本件改変行為がされた11台の各コンピュータですべてのモジュールを使用でき,かつ,本件ソフトウェアを同時に使用できるようになったものであるから,本件改変行為は,本件ソ\フトウェア全体に対する翻案権侵害に当たると認められる。」

◆平成17(ワ)23419 損害賠償等請求事件 著作権民事訴訟 平成19年03月16日 東京地方裁判所

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◆H16.12.24 東京地裁 平成15(ワ)25535 著作権 民事訴訟事件

 大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」が、映画「七人の侍」の翻案権及び著作者人格権等を侵害しているかが争われました。
 裁判所は、「原告脚本と被告脚本とを対比すると,前記のとおりいくつかの場面において一定の共通点が認められるが,共通する部分はアイデアの段階にとどまるものであり,登場人物の人物設定についても類似するものとは認められない。また,原告脚本と被告脚本との間には,ストーリー全体の展開やテーマにおいて相違があり,結局,原告脚本の表現上の本質的な特徴を被告脚本から感得することはできないから,被告脚本による原告脚本についての著作権(翻案権)及び亡黒澤の著作者人格権(氏名表\示権及び同一性保持権)の侵害は認められない。」と判断しました。

◆H16.12.24 東京地裁 平成15(ワ)25535 著作権 民事訴訟事件

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◆H16.11.24 東京高裁 平成14(ネ)6311 不正競争 民事訴訟事件

   コンピュータゲームについての翻案か否か等が争われました。裁判所は本質的創作部分を認定して、翻案にあたらないと判断しました。
 「翻案権とは,原著作物を利用して創作性を加え,別個の著作物を創作する権利であるから,二次的な著作物に新たな表現が付加されたからといって,直ちに翻案該当性が否定されるわけではない。しかしながら,新たな表\現が付加されることにより,二次的な著作物が原著作物との同一性を失い,これに接する者が著作物全体から受ける印象を異にすると認められるときは,二次的な著作物から原著作物の創作的特徴を直接感得することはできないから,その二次的著作物はもはや原著作物の複製ないし翻案ということはできないと解すべきである。」

   原審です。H14.11.14 東京地裁 平成13(ワ)15594 不正競争 民事訴訟事件

◆H16.11.24 東京高裁 平成14(ネ)6311 不正競争 民事訴訟事件

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◆H15. 1.31 東京地裁 平成13(ワ)17306 著作権 民事訴訟事件

   プログラムの著作物について、複製ないし翻案したか否かが争われました。裁判所は、判決理由にて、「原告プログラムの創作性を有する本質的な特徴部分を直接感得することもできない」と翻案に対する判断基準に言及しました。

 

◆H15. 1.31 東京地裁 平成13(ワ)17306 著作権 民事訴訟事件

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◆H14.10.31 東京地裁 平成13(ワ)22157 著作権 民事訴訟事件

 プログラムを不正複製して販売していた会社が訴えられましたが、利益としては、LEC事件の判断は採用されませんでした。
  「(1)原告らは,著作権法114条1項にいう「利益」は,侵害品の販売等による積極的利益に限られず,財産の減少を免れたといった消極的利益をも含むものであり,本件において,被告は自ら本件ゲームソフトを無許諾で複製することにより,真正品のゲームソ\フトを市場において正規小売価格で購入することを免れたのであるから,正規小売価格と同額の利益を得たと主張する。なるほど,著作権法114条1項にいう「利益」については,積極的利益に限らず,消極的利益がこれに該当する場合があり得るものであるが,本件のように,著作物を無断で複製した者が当該複製物を販売している場合には,上記の「利益」が,侵害者が当該複製物の販売によって得た現実の利益,すなわち複製物の売上高から製造等に要した費用を控除した金額を意味するものであることは,同項の条文の文言上明らかというべきである。原告らが引用するLEC事件第1審判決は,パーソナルコンピュータ用のビジネスソ\フトウェアを無許諾で複製した者がこれを自ら使用していたという事案についての判断である。同事件においては,侵害者は複製品の販売を行っておらず,専ら自社 における事務処理において使用することにより利益を得ていたものであって,当該複製ソフトウェアを使用して事務処理を行うことにより得た利益を具体的な金額として算定することが困難であることから,仮に当該複製ソ\フトウェアを使用したことにより得た営業上の利益又は免れた人件費の支出の額がこれを上回る額であったとしても,真正品の小売価格をもって「利益」の上限とする趣旨の判断を示したものである。上記のとおり,LEC事件は本件とは全く事案を異にするものであって,LEC事件第1審判決を引用する所論は,独自の見解というほかはなく,採用することができない。」と述べました

 

◆H14.10.31 東京地裁 平成13(ワ)22157 著作権 民事訴訟事件

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