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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

ピックアップ対象

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成28(ワ)32742  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月19日  東京地方裁判所(47部)

 いろいろ争点はありますが、写真について、著作物性が否定されました。ただ、文章について複製権・翻案権侵害が認められました。損害額は、販売不可事情を考慮して、114条1項(原告単価利益*被告販売数)の7割と認定されました。
 制作工程写真は,別紙「制作工程写真目録」記載のとおり,故一竹によ る「辻が花染」の制作工程の各場面を撮影したものであるところ,これら 制作工程写真の目的は,その性質上,いずれも制作工程の一場面を忠実に 撮影することにあり,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光 線との関係等といった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとな らざるを得ず,誰が撮影しても同じように撮影されるべきものであって, 撮影者の個性が表れないものというべきである。したがって,制作工程写 真は,いずれも著作物とは認められない。これに反する原告らの主張は採 用できない。
イ 美術館写真について
美術館写真は,別紙「美術館写真目録」記載のとおり,一竹美術館の外 観又は内部を撮影したものであるところ,これら美術館写真の目的は,そ の性質上,いずれも一竹美術館の外観又は内部を忠実に撮影することにあ り,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光線との関係等とい った写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとならざるを得ず,誰 が撮影しても同じように撮影されるべきものであって,撮影者の個性が表 れないものである。したがって,美術館写真は,いずれも著作物とは認め られない。これに反する原告らの主張は採用できない。
(2) 制作工程文章の著作物性について
制作工程文章は,別紙「制作工程文章目録」記載のとおり,「辻が花染」 の各制作工程を説明したものである。その目的は,各制作工程を説明するこ とにあるため,表現上一定の制約はあるものの,制作工程文章が,同様に「辻 が花染」の制作工程について説明した故一竹作成の文章(甲41)とも異な っていることに照らしても,各制作工程文章の具体的表現は,その作成者の 経験を踏まえた独自のものとなっており,作成者の個性が表現されていると いえるから,制作工程文章は全体として創作性があり,著作物と認められる。 これに反する被告の主張は採用できない。
(3) 旧HPコンテンツの著作物性について
旧HPコンテンツは,別紙「旧HPコンテンツ目録」記載のとおりであり, 旧HPコンテンツ1は「辻が花染」の歴史的説明,旧HPコンテンツ2は故 一竹と「辻が花染」との関わり,旧HPコンテンツ3はフランス芸術文化勲 章シュヴァリエ章勲章メッセージの和訳,旧HPコンテンツ4はスミソニア ン国立自然史博物館からの感謝状の和訳である。旧HPコンテンツ1及び2 はいずれも歴史的事実に関する記述ではあるものの,その事実の取捨選択, 表現の仕方には様々なものがあり得,その具体的表現には筆者の個性が表れ ているといえるから,創作性があり,著作物と認められる。また,旧HPコ ンテンツ3及び4はいずれも仏語ないし英語の翻訳であるが,翻訳の表現に は幅があり,用語の選択や訳し方等その具体的表現に翻訳者の個性が表れて いるといえるから,創作性があり,著作物と認められる。これに反する被告 の主張は採用できない。
複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再 製することをいうところ(著作権法2条1項15号参照),著作物の複製と は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現 に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現する ことなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が 既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作 成する行為をいうものと解すべきである。また,翻案とは,既存の著作物に 依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表 現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現する ことにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接 感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解すべきであ る(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷 判決・民集55巻4号837頁参照)。 被告作品集130−131頁(甲9)と制作工程文章を別紙「原被告作品 対比表」記載1のとおり比較対照すると,被告作品集130−131頁の制 作工程に関する各文章は,制作工程文章1ないし7及び9の各文章と全く同 一か,又はほとんど同一であり,一部改変され,相違点はあるものの,全体 として制作工程文章の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。 よって,被告は被告作品集130−131頁において制作工程文章1ないし 7及び9を複製ないし翻案したものと認められ,複製権ないし翻案権を侵害 する。そして,上記改変は著作者の意に反する改変といえるから,同一性保 持権を侵害する。 これに対して,被告は,両各文章は創作性のない部分について同一性を有 するにすぎず,複製にも翻案にも当たらないと主張するが,上記のとおり, 制作工程文章の創作的部分において同一性が認められるから,被告の主張は 採用できない。
原告らは,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集の利益額 に基づき114条1項の適用があると主張するのに対し,被告はこれを争 うため,以下検討する。
(ア) 原告作品集の販売主体及び原告らの販売能力
原告作品集の奥付には「(C)1998 (株)一竹辻が花」と記載され,原告作 品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおいて販売されていることが認 められる(甲8,29)ところ,訴外一竹辻が花(昭和59年5月8日 に「株式会社オピューレンス」から商号変更)は平成22年まで原告A が代表者を務めていた会社であり(甲50の1及び2),原告工房も含 めて実質的には原告Aらの経営によるものと認められ,その販売主体は 実質的には原告らとみることができる。また,原告作品集の制作には, 故一竹を引き継いで「辻が花染」を制作する原告Aの関与が大きいもの と考えられることも併せ考慮すれば,原告らには原告作品集の販売能力 があると認められる。 これに対し,被告は,そもそも原告らが原告作品集を販売しておらず, 販売能力がないから,被告作品集への114条1項の適用の基礎を欠く と主張するが,上記説示に照らして採用できない(なお,被告は,原告 作品集の奥付に「制作(株)便利堂」と記載されていること(甲8)も 指摘するが,この点は販売能力とは関係がない。)。
(イ) 原告作品集と被告作品集の代替性
原告作品集と被告作品集は,その大部分において,着物作品(部分を 含む。)を1頁に大きく配置して紹介するとともに,観賞の対象とする ものであり,そのほかの部分においても,故一竹の略歴,制作工程の説 明,美術館の紹介が記載されており,内容は類似するものと認められる (甲9,51)。また,上記内容の共通性に照らして,着物作品の観賞 を主としつつ,故一竹と「辻が花染」について理解を深めるという利用 目的・利用態様も基本的には同一であると認められる。そうすると,後 記のとおり,販売ルートの違いはあるものの,両作品集には代替性が認 められる。被告は,内容,利用目的・利用態様及び販売ルートの相違か ら,原告作品集と被告作品集には代替性がないと主張するが,上記説示 に照らして採用できない。
(ウ) 以上からすれば,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集 の利益額に基づき著作権法114条1項の適用があるというべきである。
イ 原告らが販売することができないとする事情(推定覆滅事情)
被告は,販売市場の相違,被告の営業努力,被告作品集の顧客吸引力に より,被告作品集の譲渡数量の全数について販売することができないとす る事情があると主張する。 そこで検討するに,原告作品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおい てインターネット上で販売されている(甲29)のに対し,被告作品集は 一竹美術館のショップ内で販売されており(前記前提事実(4)ア),顧客層 に一定の違いがあると考えられること,また,被告作品集は,美術館のシ ョップにおいてまさに一竹作品等を観賞した者に対して販売されているこ とにより,販売態様の異なる原告作品集とは顧客誘引力に違いがあると考 えられること,以上の事情を踏まえると,被告作品集の30%については, 原告らが販売することができないとする事情があったと認めるのが相当で ある。

◆判決本文

問題となった著作物は以下です。

◆別紙1

◆別紙2

◆別紙3

◆別紙4

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平成29(ワ)12058  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年6月28日  東京地方裁判所

 商標権侵害事件です。4条1項19号(海外の著名商標を不正目的で登録した)違反の無効理由があるので権利行使不能と判断されました。
 ア 周知性について
上記アの各事実によれば,KCP社は,平成14年5月15日の 設立以来,14年程度の比較的長期間にわたり,同社の商号の一部と もいえるKCP社商標を同社の製品に付すなどして継続的に使用する とともに,同社製品の販売台数及び売上げを徐々に伸ばし,平成24 年以降,コンクリートポンプ車の韓国国内の市場において,同社の製 品の占有率は3割5分から4割を維持し,1位であったと認められる。そ うすると,KCP社商標は,本件商標の商標登録出願日(平成27年 2月18日)当時において,韓国のコンクリート圧送業者等の需要者 の間において,KCP社の商品を示すものとして広く認識されていた と認められる。 これに対し,原告は,KCP社の売上げ等の根拠となった資料(乙 15ないし18)は同社の社内データにすぎず,信用性は低い旨主張 するが,同資料記載の平成27年の総売上高(1169億8230万 8109ウォン,乙18)は韓国金融監督院の売上公開情報における 売上高(乙99)と一致しており,その他の数字についても,この信 用性を覆すに足りる証拠はない。 したがって,KCP社商標は,「外国における需要者の間に広く認識 されている商標」に当たる。
イ 本件商標とKCP社商標の同一性
本件商標は「KCP」とのアルファベットを標準文字で横書きしたも のであるのに対し,KCP社商標もまた「KCP」とのアルファベット を横書きしたものであるから,両商標は同一または類似の商標といえる。
ウ 不正の目的
上記で認定した各事実によれば,原告代表者は,1)平成24年1 2月から平成27年1月頃まで,日本国内においてKCP社の製品で あるコンクリートポンプ車等を宣伝・販売していたこと(上記イ), 2)平成27年1月頃,KCP社が日本への進出を計画し,被告Yが日 本国内のコンクリート圧送業者への営業活動を行っていることを知る と,直ちにKCP社商標と同一又は類似の本件商標につき登録出願を 行ったこと(同エ及びオ),3)同登録出願後,本件商標につき登録 査定がされる以前である同年4月頃,KCP社に対し,本件商標を無 償で譲渡等することはできない旨述べたこと(同,4)同様に同登 録出願後,登録査定以前である同年5月28日,被告Yに対し,日本 における営業活動をしないように求めるとともに,これをKCP社に 報告するように求め,本件商標の使用には原告の日本におけるこれま での営業活動に対する見返りが必要である旨の発言をしたこと(同オ ,5)同様に同登録出願後,登録査定以前である同年5月29日頃, 原告以外の販売店等がKCP社商標の付されたコンクリートポンプ車 を販売することが商標権侵害に当たることを警告するパンフレットを 作成・配布したこと(同オ(エ),6)本件商標の登録後間もない同年8月 12日,KCPジャパン社及び被告会社に対し,KCP社商標の使用 停止と削除を求める文書を送付したこと(同オ(オ))が認められる。 これらの事実からすれば,原告代表者は,KCP社が日本に進出し\nようとしていることを知ると,未だKCP社商標が商標登録されてい ないことを奇貨として,同社の日本国内参入を阻止・困難にするとと もに,同社に対し本件商標を買い取らせ,あるいは原告との販売代理 店契約の締結を強制するなどの不正の目的のために,KCP社商標と 同一又は類似する本件商標を登録出願し,設定登録を受けたものと推 認せざるを得ない。 したがって,原告は,「不正の目的」をもって本件商標を使用するも のと認めることができる。
これに対し,原告は,KCP社の国内参入を阻止または困難にする 目的等の存在を否定し,原告代表者も,KCP社の日本進出前である\n平成26年秋頃には本件商標の登録を弁理士に依頼した等と述べて, 上記主張に沿う供述をする(原告代表者〔15及び16頁〕)。\nしかしながら,原告代表者が平成26年秋頃に本件商標の登録を計\n画していたことを裏付ける客観的証拠は存在しない上,同人の供述は, 本件商標出願の理由については「別にありません」と述べ,「KCP」 との文字の組み合わせを出願しようと決定した理由については,「コン クリートポンプ車か,コンストラクションプロダクツか,韓国のコン ストラクションプロダクツか,コンクリートポンプ車か,複雑な意味 を持っていますが,はっきりは,表向きには言わなかったです。」と述\nべるなど(原告代表者〔15及び16頁〕),KCP社商標と同一又は\n類似の商標を登録出願した理由を合理的に説明するものではなく,信 用性は低い。 加えて,原告代表者は,本件商標出願以前にKCP社の商品に係る\n営業活動を行っていた2年超の間は,「KCP」との文字を含む商号を 使用することはあったとしても((1)イ(ウ)),「KCP」について排他的 効力を有する商標権を得ようとまではしていなかったにもかかわらず, KCP社の日本進出と同時期にこれを取得したことにつき,正当な理 由は見いだしがたい。 したがって,原告の上記主張は採用できない。
エ 以上によれば,本件商標は,他人の業務に係る商品を表示するものと\nして韓国国内における需要者の間に広く認識されているKCP社商標と 同一または類似の商標であって,不正の目的をもって使用するものであ るから,商標法4条1項19号に該当する。 したがって,本件商標は,商標登録無効審判により無効とされるべきものと認められ,原告は,被告らに対し,その権利を行使することができない(商標法39条,特許法104条の3)。

◆判決本文

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平成30(行ケ)10011  商標登録維持決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年7月10日  知的財産高等裁判所

 件のベストライセンス株式会社vs特許庁の裁判です。異議申立を認めなかったのを取り消せ&商標法43条の3第5項の規定が違憲と主張しましたが、認められませんでした。
 商標法43条の3第4項は,審判官は,登録異議の申立てに係る商標登録が同法\n43条の2各号所定の登録異議事由のいずれかに該当すると認めないときは,その 商標登録を維持すべき旨の決定をしなければならない旨を規定し,また,同法43 条の3第5項は,同決定に対しては不服を申し立てることができないと規定する。\nこのように,本件決定に対しては不服を申し立てることができないのであるから,\n請求の趣旨1項に係る本件決定の取消しを求める訴えは,そもそも同法43条の3 第5項の規定に違反するものであって,不適法なものである。
2 請求の趣旨2項に係る訴えの適法性について
請求の趣旨2項に係る訴えは,原告が,本件登録異議事件について商標登録取消 決定をすべき旨を被告特許庁長官に命ずることを求めるものであり,行政事件訴訟 法(以下「行訴法」という。)3条6項2号所定のいわゆる申請型の義務付けの訴\nえとして提起するものと解される。 しかしながら,同号所定の義務付けの訴えは,当該法令に基づく申請又は審査請\n求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決に係る取消訴訟又は無効等確認の訴えと 併合して提起しなければならないところ(行訴法37条の3第3項2号),上記取 消訴訟又は無効等確認の訴えが不適法なものであれば,上記処分又は裁決はもとよ り取り消されるべきものとはいえない。よって,上記義務付けの訴えは,行訴法3 7条の3第1項2号所定の訴訟要件を欠くものであって,不適法なものとなる。 そうすると,本件決定が行訴法37条の3第1項2号所定の「当該法令に基づく 申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決」に該当するとしても,\n請求の趣旨1項に係る本件決定の取消しを求める訴えが前記1のとおり不適法であ る以上,請求の趣旨2項に係る義務付けの訴えは,同号所定の訴訟要件を欠くもの であって,不適法なものである。
3 その余の各訴えの適法性について
(1) 裁判所法3条1項の規定にいう「法律上の争訟」として裁判所の審判の対 象となるのは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争に 限られるところ,このような具体的な紛争を離れて,裁判所に対し抽象的に法令等 が憲法に適合するかしないかの判断を求めることはできないと解するのが相当であ る(最高裁昭和27年(マ)第23号同年10月8日大法廷判決・民集6巻9号7 83頁,最高裁平成2年(行ツ)第192号同3年4月19日第二小法廷判決・民 集45巻4号518頁参照)。
(2) 請求の趣旨3項に係る訴えの適法性について
請求の趣旨3項に係る訴えは,具体的な紛争を離れて,抽象的に商標法43条の 3第5項の規定が違憲無効であることの確認を求めるものにすぎない。 したがって,上記訴えは,前記(1)にいう「法律上の争訟」として裁判所の審判 の対象となるものとはいえず,不適法なものである。
(3) 請求の趣旨4項及び5項について
請求の趣旨4項に係る訴えは,具体的な紛争を離れて,抽象的に一つの法令解釈 が違憲無効であることの確認,請求の趣旨5項に係る訴えは,具体的な紛争を離れ て,抽象的に商標登録異議事件における一つの審理方法が違憲無効であることの確 認を,それぞれ求めるものにすぎない。 したがって,上記各訴えは,前記(1)にいう「法律上の争訟」として裁判所の審 判の対象となるものとはいえず,いずれも不適法なものである。 仮に,上記各訴えが本件登録異議事件において審判体がした法令解釈や審理方法 の違憲無効をいうものであったとしても,これらの訴えは,本件決定に関する具体 的な紛争を解決するものにはならないから,確認の利益を欠き,いずれも不適法な ものである。

◆判決本文

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平成29(行ケ)10143  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年7月5日  知的財産高等裁判所

 実施可能要件およびサポート要件に違反するとした無効審決が維持されました。\n
 ところで,本件訂正発明のような有機アンモニウム化合物を含有するレジ スト除去・洗浄剤では,レジスト除去は塩基の作用によるものであって,塩 基の濃度が高い,あるいは,pHが高いほど,その除去作用が強いという傾向 にあることは当業者における技術常識である(弁論の全趣旨)。また,回路 に用いられる代表的な導電性金属である銅やアルミニウムの腐食性が,接触\nする組成物・溶液の種類とそのpHに依存することも,当業者における技術常 識であり,例えば,アルミニウムは,接触する溶液の種類によるものの, pH が12以上で不安定化する傾向にあることは周知の技術常識である(甲48)。
これらの技術常識に照らせば,当業者は,一般論として,塩基の濃度とpH を調整することにより,レジスト除去に代表されるポリマー,エッチング・\nアッシング残渣の除去作用の強弱と,回路材料である金属の腐食作用の強弱 とを変化させることが可能であると一応理解できるというべきである。さら\nに,当業者は,本件明細書の段落【0089】の記載から,レジスト除去を より高温で,より長時間行うと,より完全となる傾向があることも理解する ことができる。 しかし,本件明細書の発明の詳細な説明には,実際のpHが明らかにされた 具体的な組成物の記載は一切存在しないし(例えば,W3,W11〜W13 はpH<7,W5及びW6はpH>12であることが記載されているものの,具体的に pHがいかなる値であったのかは明らかでない。),上記(3)において説示した とおり,訂正後発明1に係る成分を含有し,基板からのポリマー,エッチン グ・アッシング残渣除去と金属で形成された回路の損傷量を許容し得る範囲 に抑えることが両立している具体的な組成物の例も記載されていない。 また,本件明細書に記載されているその余の組成物についても,基板から のポリマー,エッチング・アッシング残渣の除去作用と回路材料である金属 の腐食作用の各程度を,同一の組成物について具体的に評価した例は発明の 詳細な説明に記載されておらず,実際のpHの値が具体的に明らかにされた組 成物すら記載されていない。
(5) 以上検討したところによれば,本件明細書に接した当業者は,塩基の濃度 及びpHと,基板からのポリマー,エッチング・アッシング残渣の除去作用, 及び回路材料である金属の腐食作用との間に関係性があるとの技術常識を考 慮して,pHを調整することにより,ポリマー,エッチング・アッシング残渣 の除去と金属で形成された回路の損傷量を許容し得る範囲に抑えることの両 立が可能であることを一応理解できるとはいえるものの,反面,本件明細書\nの発明の詳細な説明においては,当該調整の出発点となるべき具体的組成物 の実際のpHの値が一切明らかにされていない上,基板からのポリマー,エッ チング・アッシング残渣の除去作用と回路材料である金属の腐食作用との関 係において,どの程度のpHの調整が必要であるのかについての具体的な情報 が余りにも不足しているといわざるを得ない。そのため,当業者が,本件明 細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて,本件訂正発明に係る組成物を生 産しようとする場合,具体的に使用するレジストや回路材料等を念頭に置い て,基板からのポリマー,エッチング・アッシング残渣の除去と回路の損傷 量を許容し得る範囲に抑えることとが両立した適切な組成物を得るためには, 的確な手掛かりもないまま,試行錯誤によって各成分の配合量を探索せざる を得ないところ,このような試行錯誤は過度の負担を強いるものというべき である。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,訂正後発明1〜7 の組成物を生産でき,かつ,使用することができるように具体的に記載され ているものとはいえない。
・・・
しかし,上記2において説示したとおり,本件明細書の発明の詳細な説明 には,上記2つの性質が両立していると具体的に評価された実施例に関する 記載はなく,技術常識を併せ考慮したとしても,当業者が本件訂正発明に係 る組成物を生産しようとする場合,過度の試行錯誤によって各成分の配合量 を探索せざるを得ない。 したがって,本件訂正発明1〜7に係る特許請求の範囲の記載は,技術常 識を考慮しても,当業者が,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,集 積回路基板等から,ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれ らの組合せの除去と回路の損傷量を許容し得る範囲に抑えることとを両立さ せることのできる組成物と認識できる範囲内のものであるとはいえない。

◆判決本文

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平成29(ネ)10103等  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ラダー図による表記したプログラムについて創作性無しと判断されました。
 ア 著作権法2条1項1号所定の「創作的に表現したもの」というためには,\n作成者の何らかの個性が表れている必要があり,表\現方法がありふれている場合な ど,作成者の個性が何ら表れていない場合は,「創作的に表\現したもの」というこ とはできないと解するのが相当である。
ラダー図は,電機の配線図を模式化したシーケンス図をさらに模式化したもので あるから,ラダー図は配線図に対応し,配線図が決まれば,ラダー図の内容も決ま ることとなり(乙ロ1),したがって,その表現方法の制約は大きい。ラダー図に\nおいては,接点等の順番やリレー回路の使用の仕方を変更することにより,理論的 には,同一の内容のものを無数の方法により表現できるが,作成者自身にとってそ\nの内容を把握しやすいものとし,また,作成者以外の者もその内容を容易に把握で きるようにするには,ラダー図全体を簡潔なものとし,また,接点等の順番やリレ ー回路の使用方法について一定の規則性を持たせる必要があり,実際のラダー図の 作成においては,ラダー図がいたずらに冗長なものとならないようにし,また,接 点等の順番やリレー回路の使用方法も規則性を持たせているのが通常である(乙ロ 1,3)。
イ 控訴人プログラム1)は,控訴人19年車両の車両制御を行うためのラダ ー図であるが,共通ブロックの各ブロックは,いずれも,各接点や回路等の記号を 規則に従って使用して,当該命令に係る条件と出力とを簡潔に記載しているもので あり,また,接点の順番やリレー回路の使用方法も一般的なものであると考えられ る。
すなわち,例えば,ブロックY09は,リモコンモード,タッチパネルモード及 びメンテナンスモードという三つのモードのモジュールを開始する条件を規定した ブロックであるところ,同ブロックでは,一つのスイッチに上記三つのモードが対 応し,モードごとの動作を実行するため,上記各モードに応じて二つの接点からな るAND回路を設け,スイッチに係るa接点と各AND回路をAND回路で接続し ているが,このような回路の描き方は一般的であると考えられる。また,同ブロッ クでは,上段にリモコンモード,中段にタッチパネルモード,下段にメンテナンス モードを記載しているが,控訴人プログラム1)の他のブロック(Y11,Y23, Y24,Y25,Y26)の記載から明らかなように,控訴人プログラム1)では, リモコンモード(RM),タッチパネルモード(TP),メンテナンスモード(M M)の順番で記載されている(なお,これらにリモコンオンリーモード(RO)が 加わる場合は,同モードが一番先に記載される。)から,ブロックY09において も,それらの順番と同じ順番にしたものであり,また,メンテナンスモードを最後 に配置した点も,同モードがメンテナンス時に使用される特殊なモードであること を考慮すると,一般的なものであると評価できる。さらに,「これだけ!シーケン ス制御」との題名の書籍に,「動作条件は一番左側」と記載されている(乙ロ3) ように,ラダー図においては,通常,動作条件となる接点は左側に記載されるもの と認められるところ,ブロックY09の上記各段の左側の接点は,各モードを開始 するための接点であり,同接点がONとなることを動作条件とするものであるから, 通常,上記左側の各接点は左側に記載され,これと右側の接点とを入れ替えるとい うことはしないというべきであり,したがって,上記各段における接点の順番も一 般的なものである。したがって,同ブロックの表現方法に作成者の個性が表\れてい るということはできない。
また,ブロックY17は,拡幅待機中であることを規定するブロックであるとこ ろ,拡幅待機中をONにする条件として,10個のb接点をすべてAND回路で接 続しているが,上記条件を表現する回路として,関係する接点を全てAND回路で\n接続することは一般的なものであると考えられる。また,上記各接点の順番も,リ モコンオンリーモード,リモコンモード,タッチパネルモード及びメンテナンスモ ードの順番にし,各モードごとに開の動作条件と閉の動作条件の順番としたもので あるところ,前記のとおり,上記各モードの順番は,他のブロックの順番と同じに したものであり,開の動作条件と閉の動作条件の順番も一般的なものである。した がって,同ブロックの表現方法に作成者の個性が表\れているということはできない。 さらに,ブロックY25は,ポップアップフロアを上昇させる動作を実行するた めのブロックであるが,拡幅フロアの上昇又は下降に関しては,拡幅フロア上昇に 関する接点及び拡幅フロア下降に関する接点がそれぞれ四つずつ存在するという状 況下において,同ブロックでは,拡幅フロア上昇に関する接点をa接点,拡幅フロ ア下降に関する接点をb接点とした上で,四つのa接点及び四つのb接点をそれぞ れOR回路とし,これら二つのOR回路をAND回路で接続している。拡幅フロア の上昇と下降という相反する動作に関する接点が存在する場合において,目的とす る動作のスイッチが入り,目的に反する動作のスイッチが入っていないときに,目 的とする動作が実行されるために,目的とする動作の接点をa接点,これと反する 動作の接点をb接点としてAND回路で接続し,命令をONとする回路で表現する\nことは,a接点及びb接点の役割に照らすと,ありふれたものといえる。また,同 一の動作に関する接点が複数あり,目的とする動作の接点であるa接点のいずれか がONとなったときに目的とする動作が実行されるようにするため,それらの接点 をOR回路で表現することもありふれたものといえる。さらに,OR回路で接続さ\nれた四つの段においては,リモコンオンリーモード,リモコンモード,タッチパネ ルモード及びメンテナンスモードの順番としているが,前記のとおり,この順番は, 他のブロックの順番と同じにしたものである。ブロックY26は,ポップアップフ ロアを下降させる動作を実行するためのブロックであり,上記のブロックY25で 述べたのと同様のことをいうことができる。加えて,ブロックY25及びブロック Y26のAND回路で接続された各二つの列においては,上昇又は下降のa接点, 下降又は上昇のb接点の順番としているが,前記のとおり,ラダー図においては動 作条件となる接点は左側に記載されるところ,ブロックY25及びブロックY26 の各1列目は,「拡幅フロア上昇」又は「拡幅フロア下降」の動作条件となる接点 であると認められるから,通常,同ブロックのとおりの順番で接続され,1列目と 2列目を入れ替えるということはしないものということができる。したがって,こ れらのブロックの表現方法に作成者の個性が表\れているということはできない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成28(ワ)19080

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平成29(ワ)39658  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月7日  東京地方裁判所

 イラストについて公衆送信権侵害の損害額として30万円が認められました。ただ、侵害と指摘されても、そのタイミングで通常のライセンス料を払えばすむなら、誰も最初からまじめに契約しようとは考えないですよね。損害賠償が得べかりし利益の補償という考え方は分かりますが、著作権侵害が故意の場合には、懲罰的賠償を可能とするとかできないんでしょうか。
 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,1)原告は,平成29年6月頃,ウェ ブサイト上に掲載する漫画の制作依頼を受けたところ,この依頼において, 掲載期間を1年間(2年目以降も掲載する場合には契約更新を行う。)とし, 原稿料は,漫画本編は1頁当たり2万円,カラー扉絵は4万円との条件を示 されたこと(甲12),2)原告は,平成28年頃,書籍の表紙用のカラーイラ\nスト(スーツを着て,ペンとメモ帳を持った女性のイラスト)及び当該書籍 中の扉絵4点を制作したところ,原稿料は,表紙のイラストについて3万円,\n扉絵について3000円であったこと(甲14の1・2),3)原告は,平成2 9年の年賀状用のカラーイラスト(餅と鳥を組み合わせたイラスト)を制作 したところ,原稿料は2万4000円であったこと(甲15の1・2),以上 の事実が認められる。 これらの事実に加え,本件各イラストの内容(前提事実 ),本件サイトは インターネットメディア事業を行うことなどを目的とする被告が運営し,そ の閲覧数に応じて被告が収入を得るものであること(弁論の全趣旨),その 他本件における諸事情を総合すると,本件各イラストの使用に対し受けるべ き金額は1年当たり3万円とするのが相当である。 そして,弁論の全趣旨によれば,被告が本件サイト上に本件各イラストを 掲載していた期間は,平成26年7月31日から平成29年6月8日までで あると認められるから,原告が,本件各イラストの使用に対し受けるべき金 銭の額は合計27万円(1年当たりの使用料3万円×3点×3年分)となる。 イ これに対し,原告は,原告が制作するイラストの使用料は1年当たり10 万円を下らないと主張し,原告本人の陳述書中にも同旨の記載がある(甲1) が,上記アの認定事実に照らし,原告の主張は採用することはできない。
ウ 他方,被告は,ツイッターのサービス利用規約上,ツイート自体を埋め 込む方法によって他のウェブサイトに掲載することが認められている点 を損害額の算定において考慮すべきであると主張するが,被告の主張を前 提としても,本件における被告の掲載行為が適法となる余地はなく,上記 に述べた本件サイトの性質等に照らしても,被告の上記主張は採用するこ とができない。 また,被告は,本件各イラストが掲載されていた本件サイトのPV数は 公開後約2か月間に集中しており,その後はほとんど閲覧されていないか ら,掲載期間全部を損害額算定の根拠することは不当であると主張する。 しかしながら,本件において原告が受けるべき金員の額は,被告による本 件各イラストの掲載行為の内容等を踏まえて算定すべきであるから,被告 の上記主張は採用することができない。
さらに,被告は,原告が本件訴訟提起前に被告に対し本件各イラストの 著作権侵害による損害賠償金として9万円(1点3万円×3点)を請求し ていたこと,上記ア1)について,漫画の原稿料にはストーリー制作作業に 対する対価も含まれると考えられること,同2)について,書籍の表紙とな\nるイラストと本件各イラストでは完成度が異なることから,いずれも本件 各イラストの使用料相当額の算定資料としては適切ではなく,むしろ,本 件各イラストの性質上,同2)の書籍の扉絵の原稿料(1点3000円)が 算定資料になり得る事例であり,本件各イラストは3点(描かれた場面の 数は合計14枚)であり,構図も3種類程度しかないこと等を踏まえると,\n本件各イラストの使用料は高くても1回2〜3万円程度であると主張す る。
しかしながら,本件訴訟提訴前に一定の金額を提示したとしてもその金 額が直ちに本件各イラストの使用料相当額であるとはいえない。また,本 件各イラストにおいては,複数の場面が多色カラーで描かれ,各場面に合 わせた説明文も記載されており,これらの場面設定や説明文についても原 告が創作していることを踏まえると,本件各イラストの使用料相当額が, 漫画や書籍の表紙の原稿料と比べて低額になるとはいえず,被告の主張は\n採用することができない。被告は,被告が本件各イラストの掲載によって得た利益は2500円程度に過ぎないとも主張するが,本件サイトの性質等を踏まえても,上記ア で認定した本件各イラストの使用に対し受けるべき金銭の額が不相当で あるとはいえない。

◆判決本文

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平成29(行ケ)10178  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年6月27日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反、サポート要件違反、明確性違反の無効主張について、「無効理由無し」とした審決が維持されました。
(1) サポート要件の適合性について
ア 本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明1に関し,「医薬品や食品 のような経口投与用組成物等の品質を損なわずに優れた識別性を有する経 口投与用組成物を得ることができ,かつ,生産性にも優れたマーキング方 法を開発するという課題」を解決するための手段として,「本発明」は,酸 化チタン,黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される少な くとも1種の変色誘起酸化物を分散させた経口投与用組成物の表面に,所\n定のレーザー光を走査することにより,変色誘起酸化物を凝集させること に起因した変色が生じるようにした構成を採用したことの記載があること\nは,前記1(1)イ認定のとおりである。
イ 次に,本件明細書の発明の詳細な説明には,1)実施例1ないし16にお いて,表1のレーザー装置及び照射条件(波長355nm,平均出力8W),\n表3のレーザー装置及び照射条件(波長266nm,平均出力3W)又は表\ 4のレーザー装置及び照射条件(波長532nm,平均出力12W)で,酸 化チタン,黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄錠剤を配合した,フィルムコー ト錠等に対し,文字又は中心線をマーキングしたこと(【0038】〜【0 056】,表1,表\3及び表4),2)表1のレーザー装置及び照射条件かつ\n走査速度1000mm/secで,実施例13のフィルム錠にレーザー照 射を行い,レーザー照射前後の二酸化チタンの粒子の状態を透過型電子顕 微鏡(TEM)により観測した結果,レーザー照射後に二酸化チタンの粒子 が凝集していることが確認されたこと(【0057】〜【0059】,図3, 図4),3)レーザー波長に関し,レーザーは,その波長が200〜1100 nmを有するものを用いることができ,好ましくは1060〜1064n m,527〜532nm,351〜355nm,263〜266nm又は2 10〜216nmの波長であり,より好ましくは527〜532nm,3 51〜355nm又は263〜266nmの波長であること(【0022】), 4)レーザー出力に関し,レーザーを走査する際の平均出力は,対象とする 経口投与用組成物の表面がほとんど食刻されない範囲で使用することがで\nき,例えば,その平均出力は,0.1W〜50Wであり,好ましくは1W〜 35Wであり,より好ましくは5W〜25Wであるが,単位時間あたりの レーザー照射エネルギーが強すぎると,アブレーションにより錠剤表面で\n食刻が発生し,変色部分まで剥がれてしまい,また,出力が弱いと変色が十\n分ではないこと(【0023】),5)レーザーの走査速度(スキャニング速 度)に関し,スキャニング速度は,特に限定されるものではないが,20m m/sec〜20000mm/secであり,また,スキャニング速度は, 高いほどマークの識別性に影響を与えることなく生産性を上げることがで きることから,例えば,レーザー出力5Wでは,スキャニング速度は,80 mm/sec〜10000mm/sec,好ましくは90mm/sec〜 10000mm/sec,より好ましくは100mm/sec〜1000 0mm/secであり,レーザー出力が8Wの場合には,スキャニング速 度は,250mm/sec〜20000mm/sec,好ましくは500 mm/sec〜15000mm/sec,より好ましくは1000mm/ sec〜10000mm/secであること(【0024】),6)単位面積 当たりのエネルギーに関し,単位面積当たりのレーザーのエネルギーは, マーキングの可否及び経口投与用組成物の食刻の有無の観点から,390 〜21000mJ/cm2であり,好ましくは400〜20000mJ/c m2,より好ましくは450〜18000mJ/cm2であり,また,390 mJ/cm2より低い場合には,マークを施すことができないのに対し,2 1000mJ/cm2より大きい場合には,食刻が生じるため,好ましくな いこと(【0025】)の記載がある。 上記1)ないし6)の記載を総合すると,本件明細書に接した当業者は,請 求項1記載の波長(200nm〜1100nm),平均出力(0.1W〜5 0W)及び走査工程の走査速度(80mm/sec〜8000mm/se c)の各数値範囲内で,波長,平均出力及び走査速度を適宜設定したレーザ ー光で,酸化チタン,黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択 される少なくとも1種の変色誘起酸化物を分散させた経口投与用組成物の 表面を走査することにより,変色誘起酸化物の粒子を凝集させて変色させ\nてマーキングを行い,「医薬品や食品のような経口投与用組成物等の品質 を損なわずに優れた識別性を有する経口投与用組成物を得ることができ, かつ,生産性にも優れたマーキング方法を開発する」という本件発明1の 課題を解決できることを認識できるものと認められる。 したがって,本件発明1は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載され たものといえるから,請求項1の記載は,サポート要件に適合するものと 認められる。同様に,請求項2ないし22の記載も,サポート要件に適合す るものと認められる。

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平成30(行ケ)10021  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成30年6月27日  知的財産高等裁判所

 部分意匠について、先行意匠に類似するので無効と主張しましたが、知財高裁4部は、「無効理由無し」とした審決を維持しました。判決の最後に、図面があります。
 本件登録意匠と甲1意匠とは,本件審決が認定するとおり,意匠に係る 物品が「検査用照明器具」である点で共通し,共に検査用照明器具の放熱 に係る用途及び機能を有し,正面視全幅の約1/3以上の横幅を占める大\nきさ及び範囲を占め,正面視右上に位置する点で,物品の部分の用途及び 機能並びに位置,大きさ及び範囲の点で共通する(争いがない。)。\nそこで,本件登録意匠と甲1意匠との類否について検討するに,甲18 の2(各図面は別紙5参照)及び弁論の全趣旨によれば,「横向き円柱状 の軸体に,それよりも径が大きい複数のフィン部を等間隔に設けて,最後 部のフィン部の形状について,中間フィン部とほぼ同形として幅(厚み) を中間フィン部に比べて大きくし,後端面の外周角部を面取りした」構成\n態様(共通点Aに係る構成態様)は,検査用照明機器の物品分野の意匠に\nおいて,本件登録意匠の意匠登録出願前に広く知られた形態であることが 認められる。
そうすると,共通点Aに係る構成態様(全体の構\成態様)は,需要者の 注意を強く惹くものとはいえず,本件登録意匠と甲1意匠との類否判断に 及ぼす影響は小さいものといえる。また,共通点Bに係る構成態様(フィ\nン部の数が6つであること)についても,需要者が特に注目するとは認め られず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものといえる。
一方で,本件登録意匠と甲1意匠とは,各フィン部の形状について,本 件登録意匠では,各フィン部の右側面形状が「下部を切り欠いた円形状」 であって,その切り欠き部は底面から見た最大縦幅が各フィン部の最大縦 幅の約2分の1を占める大きさであり,かつ,平面から見た各フィン部の 左側面側外周寄りに傾斜面が形成されているのに対し,甲1意匠では,各 フィン部の右側面形状が「円形状」であって,切り欠き部が存在せず,平 面から見た各フィン部に傾斜面が形成されていないという差異(差異点a 及びb)があるところ,各フィン部の形状の上記差異は,需要者が一見し て気付く差異であって,本件登録意匠は甲1意匠と比べて別異の視覚的印 象を与えるものと認められる。
以上のとおり,本件登録意匠と甲1意匠は,共通点Aに係る構成態様(全\n体の構成態様)及び共通点Bに係る構\成態様(フィン部の数)は,需要者 の注意を強く惹くものとはいえないのに対し,差異点a及びbに係る各フ ィン部の形状の差異は,需要者が一見して気付く差異であって,本件登録 意匠と甲1意匠を別異のものと印象付けるものであること,本件登録意匠 と甲1意匠には,上記差異のほかに,差異点cないしeに係る差異もある ことを総合すると,本件登録意匠と甲1意匠は,視覚を通じて起こさせる 美観が異なるものと認められるから,本件登録意匠は甲1意匠に類似する ということはできない。

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◆平成30(行ケ)10020

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不服2017-012293

判決ではなりませんが、ちょっと違和感あるのでアップします。 称呼同じ、観念比較できず、しかし、外観が全く違うので非類似との判断。 この判断基準なら外観がかなり違うのは全て非類似となってしまいます。

◆審決本文

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平成28(ネ)10104  販売差し止め等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成30年2月7日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 これも漏れていましたの、アップします。独占代理店は本国権利者の許可を得て日本で商標登録していました。被告は本国から真正商品を輸入しました。並行輸入に該当するかが争われました。1審は真正商品の並行輸入ではないと判断しましたが、知財高裁は並行輸入であると判断しました。
 商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品に つき,その登録商標と同一の商標を付されたものを輸入する行為は,許諾を受けな い限り,商標権を侵害する(商標法2条3項,25条)。しかし,そのような商品の 輸入であっても,1)当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許 諾を受けた者により適法に付されたものであり,2)当該外国における商標権者と我 が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得 るような関係があることにより,当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示\nするものであって(以下,「第2要件」という。),3)我が国の商標権者が直接的に又 は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該商品と我が国 の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質 的に差異がないと評価される(以下,「第3要件」という。)場合には,商標権侵害 としての実質的違法性を欠くものと解するのが相当である。(最高裁第一小法廷平成 15年2月27日判決民集57巻2号125頁) そして,商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品に つき,その登録商標と同一の商標を広告に付する行為は,許諾を受けない限り,商 標権を侵害する(商標法2条3項,25条)。しかし,そのような行為であっても, 登録商標と同一の商標を付されたものを輸入する行為と同様に,商標権侵害として の実質的違法性を欠く場合があり,その場合の上記1)の要件は,当該商品に当該商 標を使用することが外国における商標権者との関係で適法であること(以下,「第1 要件」という。)とすべきである。
イ 第1要件について
(ア) 前記1(1)のとおり,PVZ社は,本件商標2と同一の標章を用いて その商品を販売している。PVZ社商標は,別紙PVZ社商標目録のとおり,デザ イン化した「NEONERO」の欧文字の下部に左から右にかけて緩やかにカーブ しながら下がる曲線を配し,その曲線の下に小さく「FORME PREZIOS E」の欧文字を記したものである。「NEONERO」の文字が「FORME PR EZIOSE」の文字より格段に大きいこと,前記1(1)のとおり,PVZ社は「N EONERO」の本件ブランド名を用いて身飾品を製造及び販売してきたことから すると,PVZ社商標の要部はデザイン化された「NEONERO」の文字部分で あるものと認められる。 控訴人標章2は,別紙控訴人標章目録のとおり,「PIZZO D’ORO」の欧 文字を上段に小さく,「NEONERO」の欧文字を下段に大きく配してなるもので あり,その文字の大小に各段の差があることから,要部は「NEONERO」部分 であるものと認められる。したがって,控訴人標章2の要部は,PVZ社商標の要 部とその外観が類似し,称呼を同一にする。以上より,PVZ社商標と控訴人標章 2とは,類似する。 控訴人標章1は,別紙控訴人標章目録のとおり,「NEONERO」の欧文字を書 してなるものであるから,PVZ社商標の要部とその外観が類似し,称呼を同一に するものであって,PVZ社商標と控訴人標章1は類似する。 そうすると,控訴人標章1及び2は,欧州においては,PVZ社の許諾なくして 適法に使用することはできないものであると認められる。
(イ) 上記のとおり,控訴人標章1及び2は,PVZ社商標と類似するもの であるが,前記(1)のとおり,控訴人商品は,いずれもPVZ社から輸入されたもの である上,控訴人がこれに手を加えて販売したとも認められないから,控訴人が控 訴人商品の広告に控訴人標章1及び2を付する行為は,PVZ社の商標権の出所識 別機能や品質保持機能\を害するものではなく,PVZ社との関係で適法なものとい うことができる。
(ウ) したがって,本件被疑侵害行為は,第1要件を充足する。
ウ 第2要件について
第2要件は,内外権利者の実質的同一性をいうものであって,「法律的に同一人と 同視し得るような関係がある」とは,外国における商標権者と我が国の商標権者が 親子会社の関係や総販売代理店である場合をいい,「経済的に同一人と同視し得るよ うな関係がある」とは,外国における商標権者と我が国の商標権者が同一の企業グ ループを構成している等の密接な関係が存在することをいうものである。\n前記1(6)のとおり,被控訴人はPVZ社と本件ブランド商品について日本におけ る本件販売代理店契約を締結し,被控訴人はPVZ社の日本における独占的な販売 代理店となったものであるから,PVZ社と被控訴人とは,法律的に同一人と同視 し得るような関係にあるといえ,本件被疑侵害行為は,第2要件を充足する。
エ 第3要件について
(ア) 第3要件は,我が国の商標権者の品質管理可能性についていうもので\nあるところ,外国の商標権者と我が国の商標権者とが法律的又は経済的に同一視で きる場合には,原則として,外国の商標権者の品質管理可能性と我が国の商標権者\nの品質管理可能性は同一に帰すべきものであるといえる。ただし,外国の商標権者\nと我が国の商標権者とが法律的又は経済的に同一視できる場合であっても,我が国 の商標権の独占権能を活用して,自己の出所に係る商品独自の品質又は信用の維持\nを図ってきたという実績があるにもかかわらず,外国における商標権者の出所に係 る商品が輸入されることによって,そのような品質又は信用を害する結果が生じた といえるような場合には,この利益は保護に値するということができる。
(イ) 前記1の認定事実によると,PVZ社は,本件商標登録以前から本件 ブランドを付した商品を控訴人及び被控訴人に対して販売し,日本において流通さ せていたところ,被控訴人が本件商標権を登録したのは,PVZ社の商品を独占的 に輸入し販売するためであり,その登録は,PVZ社の許諾を得て行ったものであ り,本件商標1は本件ブランド名そのものであり,本件商標2は,PVZ社が本件 ブランドのために使用していた標章を用いたものであると認められる。本件におい て,被控訴人商品は身飾品であり,使用者が他人から見えるように装用して,商品 の美しさでもって使用者を飾るという機能を有するところ,前記1(16)のとおり, 被控訴人が,PVZ社パーツの組合せや鎖の長さなどを指定し,引き輪やイヤリン グのパーツを取り付けたことは認められるものの,引き輪やイヤリングのパーツは 身体を飾るという被控訴人商品の主たる機能からみて付随的な部分にすぎない。被\n控訴人のウェブサイトには,PVZ社作成の画像及びPVZ社が使用するのと同じ 本件ブランドのロゴが用いられ,PVZ社パーツのレース状の模様は明確に認識で きるが,被控訴人が独自に付したパーツが強調されている部分はなく,また,PV Z社パーツのレース状の細工以外のデザインが良いことや,引き輪やイヤリングの パーツが使用しやすいといったことは,上記ウェブサイトには記載されておらず, このような事項が需要者に認識されていたとは認められない。さらに,被控訴人は, 被控訴人商品について保証書を発行していたものの,その内容は,「品番」「仕様」 のみであり(甲23),保証内容から被控訴人独自のパーツが付されていることを購 入者が認識できるものとは認められない。 これらの事情を総合考慮すると,被控訴人が,PVZ社とは独自に,被控訴人の 商品の品質又は信用の維持を図ってきたという実績があるとまで認めることはでき ず,控訴人商品の輸入や本件被疑侵害行為によって,被控訴人の商品の品質又は信 用を害する結果が生じたということはできない。したがって,被控訴人に保護に値 する利益があるということはできない。 なお,被控訴人は,独自の検査体制によって商品の品質維持を図り,販売した商 品の無償での部品交換に応じて商品の信用維持に努めているなどと主張するが,被 控訴人が身飾品の輸入販売業者が通常行っている品質や信用を維持するための行為 を超えてこれらの行為を行っているとまで認めるに足りる証拠はなく,上記判断を 左右するものではない。
(ウ) 以上より,控訴人商品と被控訴人商品とは,本件商標の保証する品質 において実質的に差異がないと評価すべきであり,本件被疑侵害行為は,第3要件 を充足する。
(3) 以上より,本件被疑侵害行為は,第1要件〜第3要件をいずれも充足し, 実質的違法性を欠く。

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◆平成28(ワ)10643

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平成29(ワ)123  差止請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年2月14日  東京地方裁判所(29部)

 これも漏れていましたの、アップします。商品「みかんシロップ」と役務「加工食料品についての小売」が類似するかが争われました。裁判所は、審査基準には拘束されない、非類似との判断を示しました。
 そこで,まず,本件指定役務と被告商品1(緑みかんシロップ)の類否につ いて検討すると,本件指定役務は「加工食料品」という特定された取扱商品につい ての小売等役務であるのに対して,前記前提事実(3),(4)のとおり,被告商品1は, 「シロップ」であって,第32類の「清涼飲料」に属する商品であると認められる (被告商品1が第29類の「加工野菜及び加工果実」に含まれる旨の原告の主張は 採用することができない。)ところ,「清涼飲料」と「加工食料品」は,いずれも 一般消費者の飲食の用に供される商品であるとはいえ,取引の実情として,「清涼 飲料」の製造・販売と「加工食料品」を対象とする小売等役務の提供とが同一事業 者によって行われているのが通常であると認めるに足る証拠はない。 そうすると,被告商品1に本件商標と同一又は類似の商標を使用する場合に,需 要者において,被告商品1が「加工食料品」を対象とする小売等役務を提供する事 業者の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるとは認められる関係には なく,被告商品1が本件指定役務に類似するとはいえないというべきである。
(3)ア 他方で,前記前提事実(3),(4)のとおり,被告商品2(梅ジャム)及び3 (ブルーベリージャム)については,いずれも「ジャム」であって,第29類の 「加工野菜及び加工果実」に属する商品であり,本件指定役務において小売等役務 の対象とされている「加工食料品」と関連する商品であると認められる。
イ しかしながら,一般に,ジャム等の加工食料品の取引において,製造者は小 売業者又は卸売業者に商品を販売し,小売業者等によって一般消費者に商品が販売 される業態は見られるところであり,本件の証拠上も,被告は,その製造に係る梅 ジャム等の商品をパルシステム,生協,ケンコーコム等に販売し,これらの事業者 によって一般消費者に商品が販売されていると認められるほか(上記1(2)),原告 も,商品を自ら一般消費者に販売する以外に,らでぃっしゅぼーや,生協,デパー トに販売し,これらの事業者によって一般消費者に商品が販売されていたと認めら れる(上記1(1))。 そうすると,他方で,ジャム等を製造して直接一般消費者に販売する事業者が存 在するとして原告が提出する証拠(甲40の1・2)の内容を踏まえたとしても, ジャム等の加工食料品の取引の実情として,製造・販売と小売等役務の提供が同一 事業者によって行われているのが通常であるとまでは認めることができないという べきである。
ウ また,商品又は役務の類否を検討するに当たっては,実際の取引態様を前提 にすべきところ,被告標章2を包装に付した被告商品2及び3の取引態様は,上記 1(2)イで認定したとおり,被告と継続的な取引関係があるケンコーコムにおいて, 被告から商品を購入して自社が運営する通販サイトを通じて一般消費者に販売する というものであり,その通販サイトには,ケンコーコムの名称及びロゴが表示され\nていると共に,商品ごとに製造・販売者が表示されている。\nそうすると,ケンコーコムにおいて,被告商品2及び3が小売等役務を提供する 事業者の製造又は販売に係る商品であると誤認するおそれがあるとは認め難く,ま た,通販サイトで被告商品2及び3を購入する一般消費者においても,製造・販売 者とインターネット販売業者を区別して認識すると考えられるから,小売等役務を 提供するインターネット販売業者の製造又は販売に係る商品であると誤認するおそ れがあるとは認め難い。 なお,原告は,将来,原告がケンコーコムと取引を開始した場合には,同社にお いて誤認混同のおそれが生じる旨主張するが,上記1(1)で認定した原告の取引態様 を前提とする限り,同社において小売等役務を提供する事業者の製造又は販売に係 る商品と誤認するおそれを生じるとは認め難い。
エ 以上のとおり,本件の証拠上,ジャム等の加工食料品の取引の実情として, 製造・販売と小売等役務の提供が同一事業者によって行われているのが通常である とまでは認めることができないというべきであり,被告商品2及び3の実際の取引 態様を踏まえて検討しても,被告商品2及び3に本件商標と同一又は類似の商標を 使用する場合に,需要者において,被告商品2及び3が本件小売等役務を提供する 事業者の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係には ないというべきである。

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平成28(ワ)10736  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年2月27日  東京地方裁判所(46部)

 ポケフラットという折りたたみ傘について、周知と認定され、差止と140万円の損害賠償が認められました。
 一般的な折り畳み傘は,折り畳んで包袋に入れた状態において円筒形の形 態をしているのに対し,原告商品の形態は,折り畳んで包袋に入れた状態に おいて,原告商品形態を有しているところ,当該形態によって,原告商品は, 全体的に薄く扁平な板のような形状を有することが認められ,円筒形でない だけでなく,それが全体的に薄く,扁平な板のような形状である点で,一般 的な折り畳み傘の形状とは明らかに異なる特徴を有しているといえる。 そして,上記 のとおり,原告商品の広告では原告商品が薄いことが強調 されたこと(上記 ウ ),発売から間もない平成17年1月頃に日本経済 新聞社が主催する2004年日経優秀製品・サービス賞の優秀賞及び日経産 業新聞賞を受賞し,原告商品の形態が説明された上で「新しい時代に先駆け た独創的な新製品」との評価を受けたこと(上記 カ),新聞,雑誌,テレビ 番組等の多数のメディアにおいて原告商品が取り上げられたところ,そこで は原告商品が薄いことが強調されていること(上記 エ),そもそも原告商 品の形態がそれまでの商品の形態とは明らかに異なる原告商品形態である ことから上記のような多数の媒体で取り上げられたと考えられること,一般 消費者もインターネット上の商品販売サイト等に原告商品が薄いとの原告 商品形態を強調する感想を多く書き込んでいること(上記 オ)などからす ると,原告商品は需要者に対し,全体的に薄く扁平な板のような形状を有す る商品であるという強い印象を与えるものといえる。そうすると,原告商品形態は,客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していたといえ,原告商品形態には特別顕著性があるといえる。
イ これに対し,被告は,原告商品の他にも折り畳んで包袋に入れた状態が薄 く扁平な板のような形状となる折り畳み傘(乙5(乙15〜17は乙5の折 り畳み傘の写真である。),7,18〜21)や折り畳んだときの形状が薄く 扁平な板のような形状になる折り畳み傘の骨組み(乙10,11,13)が 存在し,このうち,乙第5号証及び乙第7号証の商品は原告商品が販売され るより前から販売されていたこと,折り畳んだときの傘の骨組みが直方体と なる形状の実用新案登録及び特許出願もされていた(乙1〜4)ことから, 薄く扁平な板のような形状を有する折り畳み傘はありふれた形態であって 原告商品形態に特別顕著性はない旨主張する。
しかし,原告商品が販売される前から,一定の形状の折り畳み傘の骨組み が存在し,また,骨組みの形状に関する実用新案登録等がされていたとして も,それは骨組みに関するものであって,それを利用した折り畳み傘の形態 は不明であり,折り畳み傘の形態としての原告商品形態の特別顕著性の有無 を直ちに左右するものとはいえない。また,被告が指摘する商品(乙5,7, 18〜21)には,折り畳んで包袋に入れた状態が円筒形ではなく,直方体 に似た形状を有するものもある。しかし,被告が指摘する商品はいずれも販 売数量及び売上高は明らかになっておらず,市場において広く流通している 商品であると認めるに足りる証拠はないこと,乙第5号証及び乙第7号証の 商品は既に販売が終了していること(乙6,8,41)などからすると,上 記各商品によって,原告商品形態がありふれており,他の商品と識別し得る 特徴を有しないとはいえない。

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平成29(ワ)5423  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年3月26日  東京地方裁判所(29部)

 少し前の判決ですが漏れていたのでアップします。中古購入した原告商品の一部を組み込んだ別の商品を製作しました。裁判所は、不競法の著名商品等表示であるとして、約170万円の存在賠償を認めました。判決文の最後に、被告商品が掲載されています。
 被告は,被告は被告各商品に原告標章の一部を使用したが,それは飽くまでデザイ ンとしての使用であり,原告標章と同一又は類似のものを商品等表示として使用した\n商品を販売等していない旨主張するので検討する。
不正競争防止法2条1項2号の趣旨は,著名な商品等表示について,その顧客吸引\n力を利用するただ乗りを防止するとともに,その出所表示機能\及び品質表示機能\が稀 釈化により害されることを防止するところにあると解されるから,同号の不正競争行 為というためには,単に他人の著名な商品等表示と同一又は類似の表\示を商品に付し ているというだけでは足りず,それが商品の出所を表示し,自他商品を識別する機能\ を果たす態様で用いられていることを要するというべきである。 これを本件についてみるに,前記認定のとおり,原告はバッグ類,袋物及び被服等 で知られる世界的に著名な高級ブランドを擁するフランス法人であるところ,原告標 章は,1896年から現在まで原告商品に使用されて世界的に広く知られる標章であ り,原告商品にのみ付され,大規模かつ継続的な宣伝広告により,著名性を有するも のであることからすれば,高い出所識別機能を有する商品等表\示として使用されてい るものである。そして,その使用態様は,商品に応じて原告モノグラム表示の一部を\n切り取って商品に付されて使用されるという特徴を有しており,必ずしも「LOUI S VUITTON」との文字商標を必要とはしていない。
被告標章1ないし7は,原告標章を構成する原告記号aないしdと同一の記号によ\nり構成され,その配置も原告標章と同一なものの一部分であり,被告標章8は,被告\n記号eや,被告記号aないしdをカラーにした点が異なるが,それらの記号が原告標 章と同一の配置とされたものの一部分であり,被告各商品に応じて被告各標章の一部 を切り取って商品に付されて使用されている。 このような被告各標章の使用態様からすると,被告各標章は出所識別機能を有する\n態様で用いられているものと認められ,デザインとしての使用であり商品等表示とし\nて使用ではない旨の被告の主張は採用できない。

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平成30(行ケ)10001  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月21日  知的財産高等裁判所

 商標「ありがとう」(標準文字)が、招き猫の下部に文字「ありがとう」が混在した図形商標を引例(判決文の最後に引用商標あり)として拒絶されました。
 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,対比される商標が同一又は類 似の商品又は役務に使用された場合に,その商品等の出所につき誤認混同を 生ずるおそれがあるか否かによって決すべきところ,その際には,使用され た商標がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記 憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,しかもその商品等の取引 の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するの が相当である(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2 号399頁参照)。 また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについては,\n商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思\nわれるほど不可分的に結合していると認められる場合は,その構成部分を抽\n出し,当該部分だけを他人 色で縁取りされた白色無地の扇形とで構成される図形と,当該扇形の内側\nに黒色の明朝体風の書体で横一列に「ありがとう」の文字が記載されたも ので,結合商標と解される。
イ 引用商標の構成中,「ありがとう」の文字部分は,図形の内部に記載さ\nれているものの,引用商標の中央下部に位置し,商標の横幅いっぱいの大 きさがある白色無地の扇形の中というひときわ目立つ場所に,当該扇形の 横幅全体を使うほどの大きさで,黒色の読み取りやすい書体で明瞭に記載 されているから,外観上,主として招き猫とそれが支持する扇形とからな る図形部分(招き猫の図形部分)と一見して明確に区別して認識できる。 そして,「ありがとう」の語は,平仮名5文字からなる極めて平易なもの であって,称呼しやすく,感謝の意を表す際に日常的に多用される馴染み\nのある言葉であることを考え合わせると,「ありがとう」の文字部分は, 引用商標を見る者に強い印象を与えるとともに,その注意を強く引くもの であると認めるのが相当である。 これに対し,招き猫の図形部分と「ありがとう」の語とが,観念的に密 接な関連性を有しているとは考え難いし,一連一体となった何かしらの称 呼が生じるともいえない。また,招き猫の図形部分及び「ありがとう」の 文字部分は,指定役務との関係で,当該役務の質等を表すものともいえな\nい上,このほかに各部分が単独では出所識別機能を有しないと認めるに足\nりる的確な証拠も見当たらない。 これらの事情を総合すると,招き猫の図形部分と「ありがとう」の文字 部分とが,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不 可分的に結合していると認めることはできないから,当該図形部分と当該 文字部分は,それぞれが独立して出所識別機能を有する要部であるという\nべきである。
ウ 以上によれば,引用商標においては,その全体から「アリガトウ」の称 呼及び「感謝の意を表す招き猫」といった程度の観念がそれぞれ生じると\n認められる。 そして,招き猫の図形部分からは特定の称呼を生じないものの,「招き 猫」との観念が生じ,また,「ありがとう」の文字部分から,「アリガト ウ」の称呼及び「感謝の意をあらわす挨拶語」といった程度の観念がそれ ぞれ生じると認められる。
(4) 本願商標と引用商標の類否
本願商標と,引用商標の要部である「ありがとう」の文字部分とは,外観 上,書体の相違以外は同一であり,さらに,上記(2)及び(3)において説示し たとおり,両者は称呼上も観念上も同一である。 したがって,本願商標と引用商標とは,出所について誤認混合を生ずるお それがあり,両商標は類似するものというべきである。

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◆平成30(行ケ)10002

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平成29(行ケ)10151  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年6月26日  知的財産高等裁判所

 優先権書類の提出がなかったとして、優先権の主張が認められず拒絶されました。なぜ出願人は、JPOから求められたのに、優先権証明書(米国の基礎出願)を出さなかったのでしょうか?
 本願について,特許協力条約規則17.1(a),(b)及び(bの2)の要件 のいずれも満たされないこと,並びに,JPOが,事情に応じて相当の期間内に原 告らに優先権書類を提出する機会を与えたことは,当事者間に争いがない。 原告らは,JPOが,本願について,特許協力条約実施細則715(a)の定め るところにより本件基礎出願に基づく優先権書類を電子図書館から入手可能である\nとみなされることをもって,特許協力条約規則17.1(d)にいう,指定官庁が 実施細則に定めるところにより優先権書類を電子図書館から入手可能な場合に当た\nるから,JPOは,同規則17.1(d)により,本件基礎出願に基づく優先権の 主張を無視することができない旨主張する。
ア 特許協力条約実施細則の定め しかし,まず,本件基礎出願の出願日(優先日)から16か月後の平成21年1 2月1日時点において効力を有する特許協力条約実施細則には,電子図書館に関す る規定は存在しない(乙11)。したがって,本願について,JPOは,「実施細 則に定めるところにより優先権書類を電子図書館から入手可能」ではないから,特\n許協力条約規則17.1(d)により,本件基礎出願に基づく優先権の主張を無視 することができないということはできない。そうすると,JPOは,同規則17. 1(c)により,相当の期間内に原告らに優先権書類を提出する機会を与えた上で, 優先権の主張を無視することができるところ,原告らが,特許法施行規則38条の 14に規定する期間内に,優先権書類を提出していないことは当事者間に争いがな い。よって,JPOは,特許協力条約規則17.1(c)により,本件基礎出願に基 づく優先権の主張を無視することができる。
イ 特許協力条約実施細則715(a)の事後的な充足 特許協力条約実施細則715は,本件基礎出願の出願日の16か月後である平成 21年12月1日時点においては存在しなかったものであるが,本願についてJP Oが出願人に優先権書類を提出する機会を与えた相当の期間(特許法施行規則38 条の14に規定する期間)が経過する前である平成22年1月1日に効力が生じた ものである。 仮に,特許協力条約規則17.1(c)及び(d)の規定について,出願人に優 先権書類を提出する機会を与えた相当の期間内に,JPOが特許協力条約実施細則 715(a)(i)の「通知」をするなどすれば,JPOは優先権の主張を無視で きないと解釈したとしても,後記ウのとおり,JPOが,同実施細則715(a) (i)の「通知」をしたとの事実は認められない。 したがって,JPOが特許協力条約実施細則715(a)に定めるところにより 本件基礎出願の優先権書類を電子図書館から入手可能であるとはみなされないから,\nJPOは,特許協力条約規則17.1(d)の規定の適用上,優先権書類を電子図 書館から入手可能な場合に当たらない。JPOは,同規則17.1(d)により,\n本件基礎出願に基づく優先権の主張を無視することができないということはできな い。 よって,仮に,特許協力条約規則17.1(c)及び(d)の規定について,上 記のとおり解釈したとしても,本願は,同規則17.1(d)にいう,指定官庁が 実施細則に定めるところにより優先権書類を電子図書館から入手可能な場合に当た\nらないから,JPOは,同規則17.1(c)により,本件基礎出願に基づく優先 権の主張を無視することができる。

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平成30(ネ)10001  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年6月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 会社役員Aに対して、悪意又は少なくとも重大な過失があった(会社法429条1項)として、約350万円の損害賠償が認められました。
 証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (a) 1審被告Aは,1審被告白石の代表取締役であり,1審被告白\n石の事業全般を統括していたが,平成22年6月4日,1審被告白 石宛ての1審原告の通知書(親和製作所の装置の販売が本件特許権 侵害である旨を指摘するもの)を受領し,本件特許権の存在を知る に至った。さらに,1審被告Aは,平成24年1月12日,1審被 告白石宛ての1審原告の通知書(親和製作所と1審原告の和解に関 するもの)を受領した。(甲15の資料5,資料9,乙73)
(b) 東京地方裁判所は,本件仮処分申立事件についての平成26年\n10月8日の審尋期日において,被告装置(WK型)が本件特許権 に係る発明の技術的範囲に属する旨の心証開示をした。(甲18)
(c) 1審被告白石は,平成26年10月24日から同月28日まで の間に,渡邊機開から,被告装置(WK型)を合計14台,本件板 状部材153個及び本件固定リング123個を購入した。1審被告 白石の平成23年から平成25年にかけての本件固定リングの購入 数は合計20個未満であり,平成26年10月24日から同月28 日までの本件固定リングの購入量はこれまでの取引状況に比して突 出して多い。(甲17の1,2)
(d) 東京地方裁判所は,平成26年10月31日,渡邊機開による 被告製品(WK型),本件固定リング及び本件板状部材の販売等を 差し止める旨の本件仮処分決定をし,1審原告は,同年11月4日 付け通知により1審被告白石に対しその旨を通知した。(甲15の 資料10)
(e) 1審被告白石は,本件仮処分決定後は,平成26年11月14 日頃から平成27年4月1日にかけて被告装置を販売した。
(f) 1審被告白石は,平成27年2月26日,鶴商に型式名を「L S−S」とする被告装置(実質は「WK−550」)を販売し,ま た,同年5月までには,渡邊機開からWK型として仕入れた被告装 置(「WK−600」)に,構成の変更がないのに「LS−G」型\nの表示を付したものを取り扱っていた。(上記2(1),甲22)
c 1審被告Aは,1審被告白石の事業全般を統括していたのであるか ら,1審被告白石の取引実施に当たっては,第三者の特許権を侵害し ないよう配慮すべき義務を負っていたというべきである。この観点か ら1審被告Aの責任について検討してみると,まず,平成22年6月 4日及び平成24年1月12日の時点で,1審被告Aにおいて,被告 装置が本件特許権に係る発明の技術的範囲に属することを知っていた ことを認めるに足りる証拠はない。なお,平成24年1月12日頃に 1審被告白石が1審原告から通知書を受領したことは上記b(a)のと おりであるが,その通知書の内容は親和製作所の装置に関するもので あり,渡邊機開製の被告装置とは直接関わるものではなかったのであ るから,1審被告Aが上記時点において被告装置につき専門家に問い 合わせるなどの調査等をせず,被告装置の販売を中止しなかったから といって,1審被告Aに重過失があったとすることはできない。 これに対し,上記b(d)によれば,1審被告Aは平成26年11月 初旬には本件仮処分決定について知ったものと認められるから,これ によって被告装置が本件特許権を侵害するおそれが高いことを十分に\n認識することができたと認められる。ところが,1審被告Aは,本件 仮処分決定を踏まえて,中立的な専門家の意見を聴取するなどの検討 をした形跡もないまま,取引を継続し,さらに被告装置の型式名につ いて工作をするなどしているのであり,これら上記bに認定した本件 仮処分決定前後の経過に照らせば,同月以降の1審被告白石による被 告装置の販売を中止するなどの措置をとらなかった1審被告Aには, 1審被告白石による本件特許権侵害について悪意又は少なくとも重大 な過失があったというべきである。 よって1審被告Aは,1審被告白石による被告装置の販売に係る 同月以降の本件特許権侵害について,会社法429条1項の責任を負 う。

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平成29(ネ)10029  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年6月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審における訂正の再抗弁の主張について、時期に後れたとは判断されませんでした。ただ、訂正後のクレームについても進歩性無しと判断されました。
 被控訴人は,本件再訂正に係る訂正審判請求等がされていないし,今後, このような手続が可能であるとはいえないから,本件再訂正がされたこと\nを前提とする本件再訂正発明3に基づく権利主張はできないと主張する。 この点について検討するに,特許権者が,事実審の口頭弁論終結時まで に訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず,その後に訂正審決等が 確定したことを理由に事実審の判断を争うことは,訂正の再抗弁を主張し なかったことについてやむを得ないといえるだけの特段の事情がない限り, 特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させるものとして,特許法1 04条の3及び104条の4の各規定の趣旨に照らして許されない。すな わち,特許権侵害訴訟において,特許権者は,原則として,事実審の口頭 弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなければならない。(最高裁平成 29年7月10日第二小法廷判決・民集71巻6号861頁参照)。 本件についてみると,被控訴人は,平成29年8月7日の当審第2回口 頭弁論期日において,甲26(参考資料3)発明に周知技術である基板ア ライナーを直接適用することによっても,相違点4に係る構成が容易に想\n到できるという,新たな組合せに基づく無効の抗弁を主張し,控訴人は, これを踏まえて,同年10月11日の当審第3回口頭弁論期日において, 本件再訂正に係る訂正の再抗弁の主張をした(裁判所に顕著な事実)。そ して,本件審決に係る審決取消訴訟は当裁判所に係属しており,控訴人は, 当審の口頭弁論終結時までに,本件再訂正に係る訂正審判請求等を法律上 することができなかった(特許法126条2項,134条の2第1項)。 そうすると,特許権の侵害に係る紛争をできる限り特許権侵害訴訟の手 続内で迅速にかつ一回的に解決することを図るという特許法104条の3 及び104条の4の各規定の趣旨に照らすと,本件の事実関係及び審理経 過の下では,被控訴人による新たな無効の抗弁に対する本件再訂正に係る 訂正の再抗弁を主張するために,現に本件再訂正に係る訂正審判請求等を している必要はないというべきである。 また,仮に,本件審決に係る審決取消訴訟において,本件審決を取り消 す旨の判決がされ,これが確定した場合には,本件無効審判手続が再開さ れるところ,この再開された審判手続等において,控訴人が本件再訂正に 係る訂正請求をすることができないとは直ちにいえない。

◆判決本文

対応する審取です。

◆平成28(行ケ)10250

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平成29(行ケ)10153  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年6月19日  知的財産高等裁判所

 「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」の明確性、本件発明の課題が解決できるのかについてサポート要件違反が争われました。
 上記記載事項によれば,めっき処理を行った亜鉛又は亜鉛系め っき鋼板において,酸化性雰囲気中で加熱を行うことによって,亜鉛の蒸 発を阻止するバリア層として酸化皮膜層が形成されるが,亜鉛又は亜鉛系 めっきの共通成分は亜鉛であり,亜鉛又は亜鉛系めっき鋼板がいずれも均 一な酸化皮膜を形成し,塗膜密着性,耐食性が良好という共通の性質を有 することが理解できる。そうだとすれば,当業者であれば,当然,本件発 明1の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」は「亜鉛の酸化皮膜」 であると理解すると認められる。 してみると,本件発明1の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」 が,亜鉛系めっきに由来する亜鉛の酸化皮膜を意味することは明確である といえる。このことは,本件発明1を引用する本件発明2ないし6及び(同 様の文言を有する)本件発明7についても同様である。
ウ 原告の主張について
原告は,本件訂正によって,特許請求の範囲の記載にあった「亜鉛また は亜鉛系合金のめっき層」に代えて,「スズ−亜鉛合金めっき層」などの 具体的な合金めっき層が記載されたこと,本件明細書においては,「スズ −亜鉛合金めっき」の具体例としては,「スズ−8%亜鉛合金めっき」の みが記載されている(【0038】)こと,「スズ−8%亜鉛合金めっき」 を加熱した場合に生ずる変化については本件明細書に全く記載がないこと などを挙げて,「亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」が亜鉛の酸化皮膜でな ければならないと当然に解釈できるとはいえないから,金属酸化物の種類 が不明確であると主張する。 しかしながら,本件明細書の記載から,亜鉛又は亜鉛系めっき鋼板がい ずれも均一な酸化皮膜を形成し,塗膜密着性,耐食性が良好という共通の 性質を有することが理解でき,当業者であれば,本件発明1の「加熱時の 亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」は「亜鉛の酸化皮膜」であると理解する と認められることは,前記ア,イのとおりである。他方,「スズ−8%亜 鉛合金めっき」についてのみ,これと異なる理解をすると認めるべき合理 的事情はない。
したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(2) 酸化皮膜の形成時期について
ア 原告は,本件訴訟におけるのと同様に,先行事件訴訟においても,「亜 鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」の形成時期が明らかでないと主張して明確 性要件を争っており,その結果,原告の主張を排斥する先行事件判決がな され,同判決は既に確定しているものである(当裁判所に顕著な事実)。 そうすると,原告が本件訴訟において再びこの点を争うことは,実質的 に前訴の蒸し返しに当たり,訴訟上の信義則に反するものとして許されな いというべきである。
よって,この点に関する原告の主張も採用できない。
イ 念のため,中身について検討してみても,この点に関しては,先行事件 判決が示すとおり,本件明細書の【0018】には,酸化皮膜は熱間プレ スに先立つ加熱前にある程度形成されることが必要で,その後熱間プレス 加工のための700〜1000℃の加熱によっても形成が進むと推測され ることが記載され,【0042】及び【0043】には,酸化皮膜は,熱 間プレス加工のため700〜1000℃に加熱する前に,予め形成されて\nいる場合と形成されていない場合があることを前提として,予め酸化皮膜\nが形成されている材料の場合には,酸化皮膜の維持に悪影響がない限り熱 間プレスのための加熱方法については特に制限がないことが記載され,さ らに,【0064】及び【表5】には,実施例No.2,3として,電気\nめっきを施した後,熱間プレスに先立つ加熱を大気炉で850℃,3分間 行ったものについて均一な酸化皮膜が形成されたことが記載されていると ころ,電気めっきにおいては,めっき層は加熱されないことから,上記実 施例はいずれも熱間プレスに先立つ加熱前に予め酸化皮膜が形成されてい\nない場合であって,この場合の酸化皮膜は,熱間プレスのための加熱(大 気炉で850℃,3分間)により形成されたものと理解することができる。 そうすると,本件発明の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」は, 熱間プレスの加熱前に,予め形成されている場合,ある程度形成されてい\nてその後熱間プレスの加熱時に形成が進む場合,予め形成されていないが\n熱間プレスの加熱により形成される場合のいずれでもよいことから,その 形成時期は熱間プレスの直前までであればよいと解するのが相当である。 したがって,本件発明1及びこれを引用する本件発明2ないし6並びに 本件発明7の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」の形成時期は, 本件明細書の発明の詳細な説明を参照すれば明確というべきであるから, 原告の主張はいずれにしても失当である。
(3) 「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れされる熱間プレス 用」について
ア 本件明細書の【0016】ないし【0018】,【0029】,【00 34】,【0042】,【0044】,【0048】,【0050】及び 【0064】には,熱間プレスは700〜1000℃という温度で加熱す ることを意味すること,熱間プレス成形の特徴として成形と同時に焼き入 れを行うことから,そのような焼き入れを可能とする鋼種を用いること,\n熱間成形後に急冷して高強度,高硬度となる焼き入れ鋼,例えば表1にあ\nるような鋼化学成分(鋼種A等)の高張力鋼板が実用上は特に好ましいこ と,700〜1000℃の温度で加熱してから熱間プレスを行い,めっき 層表面に亜鉛の酸化皮膜が,下層の亜鉛の蒸発を防止する一種のバリア層\nとして全面的に形成されていること,具体的には,表1に示す鋼種Aを,\n大気雰囲気の加熱炉内で950℃×5分加熱して,加熱炉より取り出し, このままの高温状態で円筒絞りの熱間プレス成形を行うこと,また,熱間 プレスに先立つ加熱を,大気炉で850℃,3分間行うことが記載されて いる。 そして,これらの記載によれば,本件発明1の「700〜1000℃に 加熱されてプレスされ焼き入れされる熱間プレス用」という文言において, 1)「700〜1000℃に加熱されて」は,熱間プレスの加熱条件であり, 2)「プレスされ焼き入れされる」は,成形と同時に焼き入れを行う熱間プ レス成形の特徴であり,3)「用」という文言の意味は,「(接尾語的に) …に使うためのものの意を表す」(広辞苑第六版)であることからすると,\n「熱間プレス用」は,後に続く,本件発明1の「鋼板」を修飾し,鋼板が 熱間プレスに使うためのものであることを意味するものと理解できる。 してみれば,「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れさ れる」は,「熱間プレス」の加熱条件及び特徴を表現するものと理解でき\nるから,本件発明1の「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き 入れされる熱間プレス用」という文言は明確である。このことは,本件発 明1を引用する本件発明2〜6及び(同様の文言を有する)本件発明7に ついても同様である。
イ 原告の主張について
原告は,本件発明は用途発明であるとした上で,種々理由を述べて,「7 00〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れされる熱間プレス用」 という記載の意味が不明確であると主張する。 しかしながら,前記アのとおり,「700〜1000℃に加熱されてプ レスされ焼き入れされる」は,「熱間プレス」の加熱条件及び特徴を表現\nするものと認められるから,その余の点について判断するまでもなく,本 件発明1の「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れされる 熱間プレス用」という文言の意味は明確である。 また,本件発明1が用途発明であるか否かは,その結論を左右するもの ではない。

◆判決本文

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◆平成26(行ケ)10201

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平成29(ネ)10096  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年6月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 均等侵害が成立するかが争われました。出願人は、拒絶理由通知に対して、拒絶理由のない従属請求項に限定する補正をおこないました。知財高裁4部は、1審と同様に、均等の第1、第5要件から、均等成立を否定しました。
本質的部分について、上位概念化できるかについての判断基準について言及しています。
 特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なか った技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想 に基づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にある。したがって,\n特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち, 従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきで\nある。
そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許 発明の課題及び解決手段とその作用効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範 囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が\n何であるかを確定することによって認定されるべきである。すなわち,特許発明の 実質的価値は,その技術分野における従来技術と比較した貢献の程度に応じて定め られることからすれば,特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記 載,特に明細書記載の従来技術との比較から認定されるべきである。そして,従来 技術と比較して特許発明の貢献の程度が大きいと評価される場合には,特許請求の 範囲の記載の一部について,これを上位概念化したものとして認定され,従来技術 と比較して特許発明の貢献の程度がそれ程大きくないと評価される場合には,特許 請求の範囲の記載とほぼ同義のものとして認定されると解される。
ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載されているところ が,出願時の従来技術に照らして客観的に見て不十分な場合には,明細書に記載さ\nれていない従来技術も参酌して,当該特許発明の従来技術に見られない特有の技術 的思想を構成する特徴的部分が認定されるべきである。そのような場合には,特許\n発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載のみから認定される場合に 比べ,より特許請求の範囲の記載に近接したものとなり,均等が認められる範囲が より狭いものとなると解される。
・・・・
 本件特許出願日以前に,キャラクター画像情報に対する課金方法として,携帯端 末自体を改めて販売する態様ではないもの,すなわち,毎月100円を支払うこと により携帯電話機へ毎日異なるキャラクタ画面データを配信するiモード上での上 記サービス「いつでもキャラっぱ!」が公知であったこと(乙6),及びiモード においてはコンテンツプロバイダー(情報提供者)がコンテンツの情報料をNTT ドコモから携帯電話の通信料と合わせて課金し得るシステムが採用されていたこと (乙9)が認められる。このことに鑑みれば,本件特許出願日において,「サービ ス提供者にとっても,…キャラクター画像情報を更新するには,携帯端末自体を改 めて販売するしかない」ため「キャラクター画像情報により効率良く利益を得るの は困難であった。」(本件明細書【0003】)との課題が未解決のままであった とは認められない。
d しかるに,本件明細書には,乙6,8及び9記載の上記技術についての記載 はない。したがって,本件明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載さ れているところは,本件特許出願日における従来技術に照らして客観的に見て不十分なものと認められる。\nそうすると,本件発明の本質的部分は,本件明細書の記載に加えて,乙6,8及 び9記載の前記技術も参酌して認定されるべきである。
(オ) そして,本件明細書の記載並びに乙6,8及び9記載の前記技術によれば, キャラクター選択・変更等の態様に関する構成(前記1)並びに2)及び3)の組合せ) について,本件明細書は,複数のパーツを組み合わせて気に入ったキャラクターを 創作決定すること(前記2)及び3))を携帯端末サービスシステムで提供する(前記 1))という発想自体を開示するにとどまり,このようなシステムの実装における未 解決の技術的困難性を具体的に指摘し,かつ,その困難性を克服するための具体的 手段を開示するものではないので,従来技術に対する本件発明の貢献の程度は小さ いというべきである。 キャラクターの選択等に対する課金に関する構成(前記2)及び3)並びに4)の組合 せ)についても,本件明細書は,複数のパーツを組み合わせて気に入ったキャラク ターを創作決定し(前記2)及び3)),当該決定したキャラクターに応じた情報提供 料を通信料に加算する(前記4))という発想自体を開示するにとどまり,このよう な課金方法の実装における未解決の技術的困難性を具体的に指摘し,かつ,その困 難性を克服するための具体的手段を開示するものではないので,従来技術に対する 本件発明の貢献の程度は小さいというべきである。 そうすると,本件発明の本質的部分については,特許請求の範囲の記載とほぼ同 義のものとして認定するのが相当である。
・・・・
 前記認定の出願経過によれば,控訴人は,構成要件A〜C及びHからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項1に係る発明)及び構\成要件A〜E及びHからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項2に係る発明)については,特許 を受けることを諦め,これらに代えて構成要件A〜Hからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項1に同2及び5を統合した発明,すなわち本件発明)に限定\nして,特許を受けたものということができる。 そうすると,控訴人は,構成要件F及びGの全部又は一部を備えない発明について,本件発明の技術的範囲に属しないことを承認したか,少なくとも外形的にその\nように解されるような行動をとったものと理解することができる。 したがって,均等の成立を妨げる特段の事情があるというべきであり,均等の第 5要件を充足しない。
ウ 控訴人の主張について
この点につき,控訴人は,被告システムは「仮想モール」に相当する構成を有しているから,本件特許の出願経過を参酌したとしても,均等の成立を妨げる特段の\n事情があるとはいえない旨主張する。 しかし,前記のとおり,本件発明の「仮想モール」は「ショップ」というカテゴ リーを選択することによってアイテムを購入する仕組みを包含するものではなく, また,本件明細書【0045】は本件発明の「仮想モール」を説明するものと見る ことができない以上,当該段落が当初から残存していたという本件特許の出願経過 も,本件発明の「仮想モール」の技術的意義を左右するものではない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成28年(ワ)第35182

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平成30(行ケ)10015  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月13日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判において使用が争われました。知財高裁は「使用として認める」とした審決を維持しました。
   原告は,1)本件商品が平成29年3月15日に被告のオンラインショップ でタオルとして販売開始されていること,2)「TL」という品番からして本件商品 は当初から「タオル」であって「ふきん」ではないと考えられること,3)アシスト 社への販売価格がライフブリッジ社からの仕入価格と同一であって不自然であるこ となどからすると,甲30〜33,36の信用性には重大な疑いがあると主張する。 まず,上記1)の主張は,被告のオンラインショップで発売されたタオル(甲2) が,本件商品と全く同一のものであることを前提としていると解されるが,被告代 表者は,当審において,オンラインショップで発売されたタオル(甲2)は,素材\nやデザイン等は本件商品と同一であるものの,本件商品とは別に,当初から「タオ ル」として,本件使用商標を付すことなく生産した本件商品とは異なる物であると 述べている。そして,この供述は,オンラインショップで発売されたタオル(甲2) には本件下げ札が付けられていないことと整合している上,内容的に明らかに不自 然な点も見当たらない。そうすると,本件商品と同じ素材やデザイン等からなる「タ オル」が被告のオンラインショップで平成29年3月から発売されたとしても,不 自然ではなく,前記2の認定を左右するものということはできない。 また,上記2)の主張について,「TL」という品番から直ちに本件商品が実際には 「タオル」であったとまで断ずることはできず,また,被告においては,オンライ ンショップでの販売は主たる事業ではなく,卸売が主たる事業であって,オンライ ンショップで販売される商品は,全取扱商品の20パーセントに満たない程度の商 品であり,オンラインショップの担当者がその判断で品名と発売時期を決定してい るものと認められる(被告代表者[当審])から,ふきんがオンラインショップで販\n売されていないとしても不自然ではない。 さらに,上記3)の主張について,証拠(甲18,19,被告代表者[当審])及び\n弁論の全趣旨によると,被告とアシスト社は代表者を同じくするグループ会社であ\nると認められることや被告がその他の商品と合わせて単価を決定した旨主張してい ることからすると,仕入価格と販売価格が同一であるとしても,直ちに不自然であ るとはいえない。
(2) 原告は,1)一緒に写りこんでいる商品のオンラインショップにおける発売 時期からすると,商品写真(甲29)は実際には平成29年2月末又は3月初めに 撮影されたものである,2)被告とアシスト社との関係やその内容からすると,証明 書2(甲37)は信用できない,3)請求書(甲35)は宛名がなく不自然である, 4)出荷伝票(甲34)は品番に誤りや不自然な点があって信用できないなどと主張 する。 まず,上記1)の主張について,上記(1)記載のとおり,被告においてはオンライン ショップでの販売は主たる事業ではなく,卸売が主たる事業であって,オンライン ショップの担当者がその判断で品名と発売時期を決定していることを踏まえると, 一緒に写りこんでいる他の商品が平成29年になって被告のオンラインショップで 発売されたからといって,商品写真(甲29)が,原告の主張するとおり,平成2 9年になってから撮影されたものと断ずることまではできない。 また,上記2)の主張について,証明書2(甲37)は,被告のグループ会社であ るアシスト社の従業員によって作成されたものであるが,他の証拠(甲34,35, 被告代表者[当審])と符合しており(前記2(2)),その限度では信用することがで きるものである。特許庁に提出された回答書(甲25)の内容に言及している点は, 自らが経験していない事実についての言及を含むものであるが,そうであるからと いって,その他の点まで信用することができないということにはならない。 さらに,上記3)の主張について,請求書(甲35)には宛名が記載されていない が,代表者を同じくするグループ会社間の取引について発行されたものであること\nを踏まえると,不自然で,請求書そのものの信用性が失われるとまではいえない。 そして,上記4)の主張について,出荷伝票(甲34)に記載された品名がオンラ インショップや被告のウェブサイトに記載された品名と異なっているからといって, 直ちに誤りであるとか不自然であるとか捏造されたということはできない。
(3) 原告は,1)口頭審理を拒否するなどの審判における被告の対応,2)4500 枚の本件商品のうち本件店舗に引き渡されたわずかのもの以外の行方が明らかとさ れていないこと及び3)第三者が作成した客観的な書類が提出されていないことなど からも,被告による本件商標の使用事実は存しないと主張する。 しかし,被告は,本件商標のブランド化がうまく進まない中で,本件商標を維持 するために費用や時間を費やすのに消極的な姿勢を見せているのであり(被告代表\n者[当審],弁論の全趣旨),そのような被告が,弁理士に要する費用や本件に対応 するための時間を節約しようと考えて,口頭審理を拒否するなど必要最小限の主張 立証しかしなかったとしても,直ちに不自然,不合理であるとはいえない。 また,本件では第三者たるライフブリッジ社の納品責任者が作成した客観的な取 引書類といえる納品書(甲31)が提出されているのであって,その他の第三者が 作成した書類が提出されていないからといって,前記2の認定が左右されるもので はない。

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平成30(ネ)10009  損害賠償等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成30年6月7日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 不競法の商品形態模倣、著作権侵害などが争われました。知財高裁は、不競法については特徴部分は異なる形状であり、また、著作物性なしとして、1審の判断を維持しました。
 控訴人は,原告商品は,直針状の出口ノズルがフィーダ本体部の先端か ら突き出た形状で,配線チューブ等がフィーダ本体上部後端からまっすぐ に伸びている上,小型かつ軽量である点に特徴があるところ,被告各製品 もこの点において共通する形態及び構成を有していると主張する。\n この点につき検討するに,半田フィーダは,径の小さい半田(直径が1 ミリメートルに満たないものもある)を,半田付けしようとする位置に案 内するために用いられるものであるから,正確に位置決めをしたり,他の 機器との干渉を防いだりするために,供給する半田の出口に当たる出口ノ ズルを細長い直針状の形態とすることは,半田フィーダとしての機能を確\n保するために不可欠な形態というべきである。このことは,他社の半田フ ィーダが同様の形態を採用していることからも明らかである(乙11,1 2)。 また,出口ノズルに向けて半田を供給する際には,チューブ等の供給・ 支持部材と半田とが接触して,半田が曲がったり,摩擦による抵抗が生じ たりすることをできるだけ抑制し,安定して半田を供給する必要があると 考えられるところ,そのために,半田フィーダにおいて,半田の供給口に 当たる部材を出口ノズルの反対側の位置に出口ノズルに対してまっすぐに 取り付ける構成を採用することは,ごく自然な着想といえる。このことは,\n同様の構成を有する他社の半田フィーダが存在することによっても裏付け\nられているというべきである(乙12,15〜17)。 さらに,配線チューブがフィーダ本体上部後端からまっすぐに伸びてい る点についても,ある機器に何らかのチューブが取り付けられている場合 に,取り回し等の観点から複数のチューブをまとめて同方向に取り出すこ とは,他社の半田フィーダにおいても同様の構成が採用されていることが\n認められるように(乙15〜17),極めて容易に着想し得る一般的な構\n成というべきである。 なお,商品の重量そのものは,不競法2条4項が定める「商品の形態」 に当たるとはいえない。 以上によれば,控訴人が原告商品の特徴的形状であると主張する形態は, いずれも半田フィーダという商品が通常有する形態にすぎないというべき である。
・・・
著作権法上の美術の著作物として保護される ためには,仮にそれが産業用の利用を目的とするものであったとしても, 美的観点を全く捨象してしまうことは相当でなく,何らかの形で美的鑑賞 の対象となり得るような創作的特性を備えていなければならないというべ きである。 控訴人が主張するように,原告商品は,ステッピングモータの一部分が 飛び出している点を除き,出口ノズルから配線チューブ等に至るまで,各 構成が概ね直線状にコンパクトにまとめられた形態を有していることが認\nめられる。しかし,原告商品の外観からは,社会通念上,この機器を動作 させるために必要な部材を機能的観点に基づいて組み合わせたもの,すな\nわち技術的思想が表現されたものであるということ以上に,端整とか鋭敏,\n優雅といったような何かしらの審美的要素を見て取ることは困難であると いわざるを得ず,原告商品が美的鑑賞の対象となり得るような創作的特性 を備えているということはできない。

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原審はこちら。

◆平成27(ワ)33412

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平成29(行ケ)10228  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月13日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判において、「使用していた」との審決が維持されました。知財高裁は、本件ベルトの販売,納品は,売買取引の実体を伴うと判断しました。
 この点に関し原告は,フィールドハウスのヴァンヂャケットに対する本件 ベルトの譲渡行為は,関連会社間の単なる商品の移動であって,本件商標の 登録の不使用取消しを免れる目的で,名目的に本件使用商標を使用する外観 を呈する行為にすぎないから,商標法2条3項2号の使用に該当しない旨主 張する。 そこで検討するに,原告が主張するように,被告の代表取締役のAは,フ\nィールドハウス及びヴァンヂャケットの筆頭株主であること,被告の取締役 のBは,ヴァンヂャケットの社長であること,フィールドハウスの代表者の\nCは,ヴァンヂャケットの取締役であることが認められ(甲3ないし5,弁 論の全趣旨),被告,フィールドハウス及びヴァンヂャケットは,役員の一 部が共通し,相互に資本関係のある関連会社であるといえる。 しかしながら,被告,フィールドハウス及びヴァンヂャケットは,別個の 法人であって,前記1(1)認定のとおり,フィールドハウスのヴァンヂャケッ トに対する本件使用商標を付した本件ベルトの販売,納品は,売買取引の実 体を伴うものであり,関連会社間の単なる商品の移動ということはできない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。

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平成29(行ケ)10214  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月12日  知的財産高等裁判所

 デザイン化された「GUZZILLA」が、引用商標「GODZILLA」から混同生ずるか?(4条1項15号)が争われました。審判では無効理由無しと判断されましたが、知財高裁はかかる審決を取り消しました。両者は、商品・役務がかなり異なりますが、一部の商品について一般消費者によって使用されるとして、混同が認められました。
 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,称呼において相紛らわしいものであっ て,外観においても相紛らわしい点を含むものということができる。
(3) 引用商標の周知著名性及び独創性の程度
ア 怪獣映画に登場する怪獣である「ゴジラ」は,原告によって創作されたもの であり(甲4),「ゴジラ」が著名であることは当事者間に争いがない。 イ 怪獣映画に登場する怪獣である「ゴジラ」には,昭和30年,欧文字表記と\nして引用商標が当てられ,その後,引用商標が「ゴジラ」を示すものとして使用さ れるようになったものである(甲7,8)。欧文字表記の引用商標は,我が国にお\nいて,遅くとも昭和32年以降,映画の広告や当該映画中に頻繁に使用され(甲7, 8,21,39〜43,46〜50,55,79,80,81の1〜3,82,8 4),遅くとも昭和58年以降,怪獣である「ゴジラ」を紹介する書籍や,これを 基にした物品に多数使用されていること(甲17,18,21,22,26,45, 52〜54,56〜61,63〜73,77,78,86の1,92,101の3, 102の4,162),さらに,怪獣である「ゴジラ」の英語表記として多くの辞\n書にも掲載されていること(甲125〜129,143〜153)からすれば,引 用商標は著名であるということができる。
ウ 語頭が「G」で始まり,語尾が「ZILLA」で終わる登録商標は,引用商 標の他には,本件商標を除き見当たらない。架空の怪獣の名称において,語頭が濁 音で始まり,語尾が「ラ」で終わる3文字のものが多いとしても,これらは怪獣「ゴ ジラ」が著名であることの影響によるものと認められ(甲173,174),さら に,欧文字表記において,引用商標と類似するものも見当たらない。\nエ 以上によれば,引用商標は周知著名であって,その独創性の程度も高いとい うべきである。
(4) 商品の関連性の程度,取引者及び需要者の共通性
ア 商品の関連性の程度
本件指定商品は,第7類「鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,農業用 機械器具,廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置」である。本件指定商品には,専門的・ 職業的な分野において使用される機械器具が含まれる。また,これに加えて,本件 指定商品のうち,「荷役機械器具」には,油圧式ジャッキ,電動ジャッキ,チェー ンブロック,ウインチが,「農業用機械器具」には,刈払機,電動式高枝ハサミ, ヘッジトリマ,草刈機が,含まれる(甲225,226,231〜234,243, 253,乙18)。
これに対し,原告の主な業務は,映画の制作・配給,演劇の制作・興行,不動産 経営等のほか,キャラクター商品等の企画・制作・販売・賃貸,著作権・商品化権・ 商標権その他の知的財産権の取得・使用・利用許諾その他の管理であり(甲135), 多角化している。原告は,百社近くの企業に対し,引用商標の使用を許諾している ところ,その対象商品は,人形やぬいぐるみなどの玩具,文房具,衣料品,食料品, 雑貨等であるなど,多岐にわたる(甲12,83〜96,98〜102,199〜 211(枝番を含む。))。
本件指定商品のうち専門的・職業的な分野において使用される機械器具と,原告 が引用商標の使用を許諾した玩具,文房具,衣料品,食料品,雑貨等とは,前者が, 工場や事業所などの産業現場で,人間の業務を補助する機械であって,専らその性 能や品質などが商品選択の基準とされるのに対し,後者は,日常生活で,一般消費\n者によって使用される物であって,同種製品との差別化が難しいものであるから, 性質,用途及び目的における関連性の程度は高くない。 一方,本件指定商品に含まれる油圧式ジャッキ,電動ジャッキ,チェーンブロッ ク,ウインチ,刈払機,電動式高枝ハサミ,ヘッジトリマ,草刈機等の商品は,ホ ームセンター等の店舗やオンラインショッピング,テレビショッピングにおいて, 一般消費者に比較的安価で販売され得るものである(甲235〜242,244〜 252,254(枝番を含む。))。そうすると,これらの商品は,日常生活で, 一般消費者によって使用される物であって,同種製品との差別化が難しいものとい うことができる。これらの商品は,一般的な玩具等とは異なり,使用方法によって は,身体・財産に危険が生じるものではあるが,比較的小型の機械器具であって, その操作方法も比較的単純であるから,専門的な業務用途に限られるものではなく, 特別な知識,能力を有する者のみにその使用が限定されるものでもない。したがっ\nて,本件指定商品に含まれる油圧式ジャッキ,電動ジャッキ,チェーンブロック, ウインチ,刈払機,電動式高枝ハサミ,ヘッジトリマ,草刈機等と,原告が引用商 標の使用を許諾した玩具,雑貨等とは,ホームセンター等の店舗やオンラインショ ッピング,テレビショッピングにおいて,一般消費者に比較的安価で販売され得る ものであり,日常生活で,一般消費者によって使用されるなど,性質,用途又は目 的において一定の関連性を有しているといわざるを得ない。 よって,本件指定商品に含まれる商品の中には,原告の業務に係る商品と比較し た場合,性質,用途又は目的において一定の関連性を有するものが含まれていると いうべきである。
イ 取引者及び需要者の共通性
本件指定商品に含まれる前記油圧式ジャッキ等の,比較的小型で,操作方法も比 較的単純な荷役機械器具及び農業用機械器具の需要者は一般消費者であり,その取 引者は,これらの器具の製造販売や小売り等を行う者である。また,原告が引用商 標の使用を許諾した玩具,雑貨等の需要者は一般消費者であり,その取引者は,こ れらの商品の製造販売や小売り等を行う者である。本件指定商品の取引者及び需要 者の中には,原告の業務に係る商品の取引者及び需要者と共通する者が含まれる。 そして,商品の性質,用途又は目的からすれば,これら共通する取引者及び需要者 は,商品の性能や品質のみを重視するということはできず,商品に付された商標に\n表れる業務上の信用をも考慮して取引を行うというべきである。\n(5) 出所混同のおそれ 以上のとおり,「混同を生じるおそれ」の有無を判断するに当たっての各事情に ついて,取引の実情などに照らして考慮すれば,本件指定商品に含まれる専門的・ 職業的な分野において使用される機械器具と,原告の業務にかかる商品との関連性 の程度は高くない。
しかし,本件商標と引用商標とは,称呼において相紛らわしいものであって,外 観においても相紛らわしい点を含む。また,引用商標は周知著名であって,その独 創性の程度も高い。さらに,原告の業務は多角化しており,本件指定商品に含まれ る商品の中には,原告の業務に係る商品と比較した場合,性質,用途又は目的にお いて一定の関連性を有するものが含まれる。加えて,これらの商品の取引者及び需 要者と,原告の業務に係る商品の取引者及び需要者とは共通し,これらの取引者及 び需要者は,取引の際に,商品の性能や品質のみではなく,商品に付された商標に\n表れる業務上の信用をも考慮して取引を行うものということができる。\nそうすると,本件指定商品に含まれる商品の中には,本件商標を使用したときに, 当該商品が原告又は原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の 関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の\n業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるものが含まれるといわざるを得な い。
ウ 被告は,本件商標は引用商標にただ乗りするものではないし,本件商標を使 用しても引用商標の希釈化は生じないと主張する。 しかし,前記イのとおり,本件指定商品に含まれる油圧式ジャッキ等の取引者及 び需要者は,引用商標が有する力強いイメージに誘引されて,取引を行うことが十\n分に考えられるから,本件指定商品に本件商標が使用されれば,引用商標の持つ顧 客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリュ ージョン)を招く結果を生じかねない。
また,被告は,平成8年頃から,コンクリート等を圧搾する機能を有する被告ア\nタッチメントに本件商標を付して使用していることからすれば(甲130,167 〜170),被告は,引用商標が有する力強いイメージを想起させることを企図し て,被告アタッチメントに,引用商標と称呼において相紛らわしく,外観において も相紛らわしい点を含む本件商標を付していたものといわざるを得ない。さらに, 被告は,本件商標の商標出願日である平成23年11月21日以降ではあるものの, 原告が使用していた「SUPER GODZILLA」「SPACE GOZIL LA」と相紛らわしい「SUPER GUZZILLA」「SPACE GUZZ ILLA」を使用している(甲30,55,62,131,132,136〜13 8,155〜158,161〜165,198)。また,被告は,本件商標の商標 出願日以降ではあるものの,本件商標をタオル,腕時計,手袋,帽子,Tシャツ, パーカー等に付して,広く無償配布及び販売している(甲178〜188,218, 228,229)。加えて,被告は,本件商標の商標登録日以降ではあるものの, 我が国における周知著名な商標と相紛らわしい「ガリガリ君」や「STUDIO G ABULLI」との文字から成る商標につき商標登録出願もしている(甲139〜 142)。これらの被告の行為は,本件商標の商標登録出願時において,本件指定 商品に本件商標が使用されれば,引用商標の持つ顧客吸引力へのただ乗りやその希 釈化を招く結果を生じかねなかったことを間接的に裏付けるものといえる。 このように,本件指定商品に本件商標が使用されれば,引用商標の持つ顧客吸引 力へのただ乗りやその希釈化を招く結果を生じかねないから,被告の主張は採用で きない。

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平成29(ネ)10033等  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年5月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審は一部侵害を認めましたが、知財高裁は、本件発明の技術的範囲に属さないとこれを取り消しました。
 特許請求の範囲の記載によれば,構成要件Eの「前記背後壁」は,「既\n設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる」(構成要件B)ものであり,\n改修の前後でその「高さ」が変わるものではない。他方,同「改修用下 枠」は,その「室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接 して支持されると共に,」その「室内寄りが,前記取付け補助部材で支 持され」(構成要件D)るものである。このため,構\成要件Eの「前記 背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さ」であることに寄与し ているのは,主ということができる。 この「取付け補助部材」について,本件明細書等の記載を見ると, 「既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用い る」(【0018】),「その取付用補助部材106の高さ寸法を変え ることで,異なる形状の既設下枠56にも同一形状の改修用下枠56 (裁判所注,改修用下枠69の誤記であると認める。)を,その支持壁 89と背後壁104を同一高さに取付けることが可能である。」(【0\n091】)との記載がある。しかも,段落【0018】には,上記記載 に先行して,「既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去したので, 改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,有効開 口面積が減少することがなく,広い開口面積が確保できる。」との記載 もある。 これらの事情を総合すると,構成要件Eの「同じ高さ」とは,「取付\nけ補助部材」で「改修用下枠」を支持することにより,「背後壁の上端」 と「改修用下枠の上端」とを,その間に高さの差が全くないという意味 での「同じ高さ」とした場合を意味するものと理解するのが最も自然で ある。 他方,「ほぼ同じ高さ」について,定義その他その意味内容を明確に 説明する記載は,本件明細書等には見当たらないが,以上に検討した点 を併せ考えると,ここでいう「ほぼ同じ高さ」とは,「取付け補助部材」 の高さ寸法を既設下枠の寸法,形状に合わせたものとすることにより, 「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とを,その間に高さの差が全 くないという意味での「同じ高さ」とする構成を念頭に,しかし,その\nような構成にしようとしても寸法誤差,設計誤差等により両者が完全に\nは「同じ高さ」とならない場合もあり得ることから,そのような場合を も含めることを含意した表現と理解することが適当である。\n
イ(ア) このように解することは,本件明細書等の図1に示された実施の形 態につき「前壁102の上端部から室内68に向かって上方へ傾斜する …底壁103の最も室内68側の端部に連な」る「背後壁104」が, 「室内側案内レール67と同一高さまで立ち上がる」ものとされ(【0 027】),また,同図6に示された実施の形態につき「既設下枠56 の背後壁104の上端部に室内68側に向かう横向片104aを有し, この横向片104aと改修用下枠69の支持壁89の上端が同一高さで ある」と記載されている(【0069】)一方で,図1及び6の実施の 形態と比較すると「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」の「高さ」 に図面上明らかに差が認められる図10及び11の実施の形態について は,「例えば,図10に示すように取付け補助部材106の高さ寸法を 大きくして室内側壁部108を底壁103に当接し,かつ室内側案内レ ール115にビス110で取付ける。…この場合には,支持壁89が背 後壁104より若干上方に突出する。」(【0092】)と記載され, 「同一高さ」等の表現が用いられていないこととも整合する。\n
(イ) 本件特許の出願経過に鑑みても,構成要件Eについては上記のよう\nに解釈することが適当というべきである。 すなわち,被控訴人らが構成要件E「前記背後壁の上端と改修用下枠\nの上端がほぼ同じ高さであり」を追加したのは,拒絶査定不服審判の請 求と同時にされた手続補正書による補正後の請求項1〜6に係る発明に 対する進歩性欠如の拒絶理由通知,これを受けての被控訴人らによる補 正案の作成と特許庁審判官によるその了承,サポート要件違反の拒絶理 由通知という経過を経た後の手続補正においてである。そうすると,構\n成要件Eの追加は,上記サポート要件違反の拒絶理由を解消するために のみなされたか,これと同時に上記進歩性欠如の拒絶理由も解消するた めになされたかのいずれかの意図によるものと理解される。 そして,サポート要件違反の拒絶理由通知には「本願の請求項1〜6 には,広い開口面積を確保する本願の課題に対応した構成が記載されて\nいない。」と記載されている。本件明細書等の記載によれば,この「広 い開口面積を確保する本願の課題」については,1)既設下枠に存在した 室外側案内レールを切断撤去してできたスペースを利用することで広い 開口面積を確保し,「有効開口面積が減少することが少ない」(本件明 細書等【0060】)ようにすることを意味するものと理解することが できる一方で,2)「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とを「ほぼ 同じ高さ」とすることで「有効開口面積が減少することがな」い(【0 018】)ようにすることを意味するものと理解することも可能である。\nしかし,「広い開口面積を確保する本願の課題」を1)の意味に理解す る場合,このような課題は本件明細書等の記載から見て本件発明により 当然に解決されるべきものであるから,本件特許に係る出願の審査段階 の当初から拒絶理由として通知されてしかるべきものである。ところが, 実際には,サポート要件違反の拒絶理由は,審査段階のみならず審判段 階でも1度目の拒絶理由通知では指摘されず,審判段階での2度目の拒 絶理由通知で指摘されたのであり,このような経緯に鑑みると,「広い 開口面積を確保する本願の課題」の意味を1)の趣旨でサポート要件違反 の拒絶理由通知がされたものと理解することは不自然というべきである。 他方,上記経過につき,審判合議体が,進歩性欠如の拒絶理由は「前 記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり」(構成要件\nE)との構成が追加されることで解消されると判断し,被控訴人らに更\nに補正の機会を与えるために,「広い開口面積を確保する本願の課題」 につき2)の意味を念頭にサポート要件違反の拒絶理由を通知したものと 理解するならば,2度目の拒絶理由通知の段階において敢えてサポート 要件違反の拒絶理由のみを通知したことも合理的かつ自然なこととして 把握し得る。現に,審判合議体は,「既設引戸を改修用引戸に改修する 際に有効開口面積が減少してしまうとういう課題を解決するものあっ て」,「当該構成は引用文献や他の文献から容易になし得たものである\nとはいえず」との審決書の記載から明らかなとおり,サポート要件違反 の拒絶理由通知を契機として「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端が ほぼ同じ高さであり」という構成要件Eが追加されたことによりサポー\nト要件違反及び進歩性欠如の拒絶理由がいずれも解消されたものとして 判断しており,このことは上記理解と整合的である。
ウ 被控訴人らの主張について
(ア) 被控訴人らは,本件発明において,改修用下枠の上端と背後壁の上 端との高さの差に一定の制限を設けないと,室外側案内レールを切断 撤去することにより従来技術に比べ開口面積の減少を少なくし,広い 開口面積を確保することが可能になったにもかかわらず,その取付け\nスペースを利用しないことにより改修用下枠が取付けスペース内に沈 み込まないために,本件発明の効果を達成し得ない構成も文言上包含\nされてしまうことから,本件発明の効果を達成できる範囲内において, 既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの関係を規定した のが構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」であると主張する。\nしかし,取付けスペースを利用することを規定したいのであれば,例 えば,改修用下枠の一部が,既設下枠の室外側案内レール(切断して撤 去されている。)が存在した高さよりも低い位置に挿入されることを規 定するなど,端的に取付けスペースを利用することを明確にする補正を すればよいのであって,取付けスペースを利用しない構成を除外する目\n的で既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの関係を請求項 に記載することの合理性は乏しいというべきである。
(イ) また,被控訴人らは,改修用引戸枠を既設引戸枠にかぶせて取り付 けるものである以上,有効開口面積は必ず減少するのであるから,本 件発明の課題(作用効果)を既設引戸を改修用引戸に改修する際に有 効開口面積を減少することがないようにすること(本件明細書等【0 018】)と理解するのは誤りであるとする。 しかし,本件明細書等には「有効開口面積が減少することが少ない」 (【0060】)と「有効開口面積が減少することがな」い(【001 8】)という異なる表現が用いられているのであるから,両者を区別し\nた上で,「有効開口面積が減少することがない」ことの意味を探求しよ うとするのはむしろ当然である。そして,本件明細書等の記載からは, 本件発明は改修引戸装置の下枠の態様に重点が置かれたものと考えられ るのであるから,その作用効果の説明を理解するに当たり下枠に着目し, 改修用引戸の取付けにより客観的には有効開口面積が減少していても, 「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」を文字通り「ほぼ同じ高さ」 とすることにより下枠に関しては「有効開口面積を減少することがない」 という作用効果が得られることが表現されていると解することには十\分 な合理性があるといえる。

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平成29(ネ)10033等  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年5月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審は一部侵害を認めましたが、知財高裁は、本件発明の技術的範囲に属さないとこれを取り消しました。
 特許請求の範囲の記載によれば,構成要件Eの「前記背後壁」は,「既\n設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる」(構成要件B)ものであり,\n改修の前後でその「高さ」が変わるものではない。他方,同「改修用下 枠」は,その「室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接 して支持されると共に,」その「室内寄りが,前記取付け補助部材で支 持され」(構成要件D)るものである。このため,構\成要件Eの「前記 背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さ」であることに寄与し ているのは,主ということができる。 この「取付け補助部材」について,本件明細書等の記載を見ると, 「既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用い る」(【0018】),「その取付用補助部材106の高さ寸法を変え ることで,異なる形状の既設下枠56にも同一形状の改修用下枠56 (裁判所注,改修用下枠69の誤記であると認める。)を,その支持壁 89と背後壁104を同一高さに取付けることが可能である。」(【0\n091】)との記載がある。しかも,段落【0018】には,上記記載 に先行して,「既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去したので, 改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,有効開 口面積が減少することがなく,広い開口面積が確保できる。」との記載 もある。 これらの事情を総合すると,構成要件Eの「同じ高さ」とは,「取付\nけ補助部材」で「改修用下枠」を支持することにより,「背後壁の上端」 と「改修用下枠の上端」とを,その間に高さの差が全くないという意味 での「同じ高さ」とした場合を意味するものと理解するのが最も自然で ある。 他方,「ほぼ同じ高さ」について,定義その他その意味内容を明確に 説明する記載は,本件明細書等には見当たらないが,以上に検討した点 を併せ考えると,ここでいう「ほぼ同じ高さ」とは,「取付け補助部材」 の高さ寸法を既設下枠の寸法,形状に合わせたものとすることにより, 「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とを,その間に高さの差が全 くないという意味での「同じ高さ」とする構成を念頭に,しかし,その\nような構成にしようとしても寸法誤差,設計誤差等により両者が完全に\nは「同じ高さ」とならない場合もあり得ることから,そのような場合を も含めることを含意した表現と理解することが適当である。\n
イ(ア) このように解することは,本件明細書等の図1に示された実施の形 態につき「前壁102の上端部から室内68に向かって上方へ傾斜する …底壁103の最も室内68側の端部に連な」る「背後壁104」が, 「室内側案内レール67と同一高さまで立ち上がる」ものとされ(【0 027】),また,同図6に示された実施の形態につき「既設下枠56 の背後壁104の上端部に室内68側に向かう横向片104aを有し, この横向片104aと改修用下枠69の支持壁89の上端が同一高さで ある」と記載されている(【0069】)一方で,図1及び6の実施の 形態と比較すると「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」の「高さ」 に図面上明らかに差が認められる図10及び11の実施の形態について は,「例えば,図10に示すように取付け補助部材106の高さ寸法を 大きくして室内側壁部108を底壁103に当接し,かつ室内側案内レ ール115にビス110で取付ける。…この場合には,支持壁89が背 後壁104より若干上方に突出する。」(【0092】)と記載され, 「同一高さ」等の表現が用いられていないこととも整合する。\n
(イ) 本件特許の出願経過に鑑みても,構成要件Eについては上記のよう\nに解釈することが適当というべきである。 すなわち,被控訴人らが構成要件E「前記背後壁の上端と改修用下枠\nの上端がほぼ同じ高さであり」を追加したのは,拒絶査定不服審判の請 求と同時にされた手続補正書による補正後の請求項1〜6に係る発明に 対する進歩性欠如の拒絶理由通知,これを受けての被控訴人らによる補 正案の作成と特許庁審判官によるその了承,サポート要件違反の拒絶理 由通知という経過を経た後の手続補正においてである。そうすると,構\n成要件Eの追加は,上記サポート要件違反の拒絶理由を解消するために のみなされたか,これと同時に上記進歩性欠如の拒絶理由も解消するた めになされたかのいずれかの意図によるものと理解される。 そして,サポート要件違反の拒絶理由通知には「本願の請求項1〜6 には,広い開口面積を確保する本願の課題に対応した構成が記載されて\nいない。」と記載されている。本件明細書等の記載によれば,この「広 い開口面積を確保する本願の課題」については,1)既設下枠に存在した 室外側案内レールを切断撤去してできたスペースを利用することで広い 開口面積を確保し,「有効開口面積が減少することが少ない」(本件明 細書等【0060】)ようにすることを意味するものと理解することが できる一方で,2)「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とを「ほぼ 同じ高さ」とすることで「有効開口面積が減少することがな」い(【0 018】)ようにすることを意味するものと理解することも可能である。\nしかし,「広い開口面積を確保する本願の課題」を1)の意味に理解す る場合,このような課題は本件明細書等の記載から見て本件発明により 当然に解決されるべきものであるから,本件特許に係る出願の審査段階 の当初から拒絶理由として通知されてしかるべきものである。ところが, 実際には,サポート要件違反の拒絶理由は,審査段階のみならず審判段 階でも1度目の拒絶理由通知では指摘されず,審判段階での2度目の拒 絶理由通知で指摘されたのであり,このような経緯に鑑みると,「広い 開口面積を確保する本願の課題」の意味を1)の趣旨でサポート要件違反 の拒絶理由通知がされたものと理解することは不自然というべきである。 他方,上記経過につき,審判合議体が,進歩性欠如の拒絶理由は「前 記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり」(構成要件\nE)との構成が追加されることで解消されると判断し,被控訴人らに更\nに補正の機会を与えるために,「広い開口面積を確保する本願の課題」 につき2)の意味を念頭にサポート要件違反の拒絶理由を通知したものと 理解するならば,2度目の拒絶理由通知の段階において敢えてサポート 要件違反の拒絶理由のみを通知したことも合理的かつ自然なこととして 把握し得る。現に,審判合議体は,「既設引戸を改修用引戸に改修する 際に有効開口面積が減少してしまうとういう課題を解決するものあっ て」,「当該構成は引用文献や他の文献から容易になし得たものである\nとはいえず」との審決書の記載から明らかなとおり,サポート要件違反 の拒絶理由通知を契機として「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端が ほぼ同じ高さであり」という構成要件Eが追加されたことによりサポー\nト要件違反及び進歩性欠如の拒絶理由がいずれも解消されたものとして 判断しており,このことは上記理解と整合的である。
ウ 被控訴人らの主張について
(ア) 被控訴人らは,本件発明において,改修用下枠の上端と背後壁の上 端との高さの差に一定の制限を設けないと,室外側案内レールを切断 撤去することにより従来技術に比べ開口面積の減少を少なくし,広い 開口面積を確保することが可能になったにもかかわらず,その取付け\nスペースを利用しないことにより改修用下枠が取付けスペース内に沈 み込まないために,本件発明の効果を達成し得ない構成も文言上包含\nされてしまうことから,本件発明の効果を達成できる範囲内において, 既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの関係を規定した のが構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」であると主張する。\nしかし,取付けスペースを利用することを規定したいのであれば,例 えば,改修用下枠の一部が,既設下枠の室外側案内レール(切断して撤 去されている。)が存在した高さよりも低い位置に挿入されることを規 定するなど,端的に取付けスペースを利用することを明確にする補正を すればよいのであって,取付けスペースを利用しない構成を除外する目\n的で既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの関係を請求項 に記載することの合理性は乏しいというべきである。
(イ) また,被控訴人らは,改修用引戸枠を既設引戸枠にかぶせて取り付 けるものである以上,有効開口面積は必ず減少するのであるから,本 件発明の課題(作用効果)を既設引戸を改修用引戸に改修する際に有 効開口面積を減少することがないようにすること(本件明細書等【0 018】)と理解するのは誤りであるとする。 しかし,本件明細書等には「有効開口面積が減少することが少ない」 (【0060】)と「有効開口面積が減少することがな」い(【001 8】)という異なる表現が用いられているのであるから,両者を区別し\nた上で,「有効開口面積が減少することがない」ことの意味を探求しよ うとするのはむしろ当然である。そして,本件明細書等の記載からは, 本件発明は改修引戸装置の下枠の態様に重点が置かれたものと考えられ るのであるから,その作用効果の説明を理解するに当たり下枠に着目し, 改修用引戸の取付けにより客観的には有効開口面積が減少していても, 「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」を文字通り「ほぼ同じ高さ」 とすることにより下枠に関しては「有効開口面積を減少することがない」 という作用効果が得られることが表現されていると解することには十\分 な合理性があるといえる。

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平成28(ワ)41720  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年5月31日  東京地方裁判所(47部)

 国が被告の特許権侵害事件です。気象庁の緊急地震速報が特許侵害かが争われました。裁判所は、「地震の到来方向」を演算したり,これを警報・通報することを想定していないとして、請求が棄却されました。
 緊急地震速報で発表する内容は以下のとおりである。
(ア) 緊急地震速報(警報)
・地震の発生時刻,震源の位置
・強い揺れ(震度5弱以上)及び震度4の地域の名称
(イ) 緊急地震速報(予報)
・地震の発生時刻,震源の位置,地震の規模(マグニチュード)
・強い揺れ(震度5弱以上)及び震度4の地域の名称
・予想される震度
・主要動の到達予想時刻
ウ 緊急地震速報の処理の流れは,以下のとおりである。
(ア) 観測点における震源推定処理
地震波を検知した観測点において地震波形を解析し,P波初動の時刻, 震央距離(B−Δ法による),震央方向(主成分分析法による),最大振幅, リアルタイム震度等を求める。この処理は地震検知を契機に実施され,そ の後毎秒,処理中枢(気象庁本庁・大阪管区気象台の処理中枢:EPOS) に送信される。
(イ) EPOS中枢処理における震源推定処理
EPOSにおいて震源を推定する処理では,最初にどこかの観測点で地 震波を検知してから,時間が経過して「地震波を検知する観測点が増える」 のに合わせ,様々な手法により震源計算を繰り返す。震源計算の手法には, IPF法,着未着法,EPOSによる自動震源決定処理があり,概ね時間 とともに精度が高くなる。
(ウ) マグニチュードの計算
前記の処理で推定した震源と観測した地震波の最大振幅を用いて,地震 の規模(マグニチュード)を毎秒推定する。
(エ) 震度等の予想
震源とマグニチュードを元に,地予想震度の精度も時間の経過とともに向上することが期待できる。
(オ) 情報の発表
震度等の計算結果が,発表条件・更新条件を満たすと,人手を介するこ\nとなく直ちに緊急地震速報を発表する。
(7) 上記(5),(6)のとおり,被告(気象庁)が行う緊急地震速報では,地震の観 測,データ処理,情報の発表を行うにすぎず,「受信」行為を行っていない(緊\n急地震速報を受信するのは,被告(気象庁)以外の第三者である。)。 また,仮に上記第三者の受信行為まで考慮に入れたとしても,被告の緊急地 震速報では,本件発明の「検出センタ」に相当する処理装置から「予想震度」\nや「到達予想時刻」が出力されており,受信機側で「予\想震度」や「到達時刻」 の演算が行われることは想定されておらず,したがって,個々の受信位置ごと に異なる個別の情報が提供されることもない。 さらに,被告の緊急地震速報で発表される情報は,上記(6)イのとおりであ り,その中に「地震の到来方向」は含まれていない。なお,インターネット検 索サイト Yahoo!JAPAN のニュースサイトに掲載された,高度利用者向け受信端 末の緊急地震速報に係る画像(甲5)上も,各地の予想震度を1つの地図内に\n図示しているにすぎず,地震データをそのまま告知に利用しており,個々の受 信機の受信位置ごとに異なる個別の情報である「地震の到来方向」を提供して いない。したがって,上記地図をみた者は,自らの所在地と震源地とを比較す ることで「地震の到来方向」を判断できるとしても,同地図上,「地震の到来方 向」自体が「警報・通報」されているものとはいえない。 このように,被告が行う緊急地震速報は,1)「受信」行為が含まれていない ほか,仮に第三者の受信行為まで考慮に入れたとしても,2)受信機側で「予想\n震度」や「到達時刻」の演算が行われることが想定されておらず,3)地震デー タをそのまま告知に利用しており,「地震の到来方向」を演算したり,これを警 報・通報することを想定していないから,いずれにしても,本件発明の構成要\n件(4)及び(5)を充足しない。これに反する原告の主張は,上記説示に照らして 採用できない。

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平成30(行ケ)10010  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成30年5月30日  知的財産高等裁判所

 特許公報(実案公報)に記載された形状が、意匠法の創作容易性の基礎となる「公然知られた意匠」に該当するのかが争われました。知財高裁は、特許庁発行の公報の目的、および公表の期間、不特定又は多数の者に知られた事実を優に推認できると判断しました。
 意匠法3条2項は,公然知られた形状等に基づいて容易に意匠の創作をする ことができたときは,意匠登録を受けることができない旨を規定している。公然「知 られた」との文言や,同条1項が,刊行物に記載された意匠(同条1項2号)と区別 して「公然知られた意匠」(同条1項1号)を規定していることと対比すれば,「公然 知られた」というためには,意匠登録出願前に,日本国内又は外国において,現実に 不特定又は多数の者に知られたという事実が必要であると解すべきである。
イ 引用意匠1は,昭和54年に公開された公開実用新案公報に記載された意匠 であり,引用意匠2は,昭和61年に公開された公開実用新案公報に記載された意 匠である。したがって,引用意匠1の記載された公報は,本願意匠の登録出願時ま でに37年が,引用意匠2の記載された公報は,同じく30年が,それぞれ経過し ている。 特許庁発行の公報は,閲覧・頒布等によりその内容を周知する目的のものであり, 多数の公共機関に対し交付され,これらの機関の多くにおいて一般の閲覧に供され ている。引用意匠1の記載された公報が発行された翌年の昭和55年当初における 交付先施設数は225か所で,このうち,一般の公開に供している地方閲覧所は1 15か所であり,昭和54年の一般地方閲覧所の公報類の閲覧者数は23万387 9人である(乙1の1・2)。引用意匠2の記載された公報が発行された昭和61年 当初における交付先施設数は211か所で,このうち,一般の公開に供している地 方閲覧所は109か所であり,同年の一般地方閲覧所の公報類の閲覧者数は17万 1665人である(乙2)。 さらに,特許庁では,平成11年3月にインターネットを通じて産業財産権情報 を無料で提供する「特許電子図書館(IPDL)」サービスを開始した。また,その 後,その運営の移管を受けた独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)に おいて,平成27年3月から「特許情報プラットフォーム(J−PlatPat)」 の提供を開始している。J−PlatPatでは,明治以降発行された1億件を超 える公報類や諸外国で発行された公報を蓄積しており,文献番号,各種分類,キー ワード等により検索することが可能である(乙3)。\n
ウ 以上の事実を総合すると,引用意匠1及び引用意匠2の記載された公報が, いずれも,本願意匠の登録出願時まで長期にわたって公然知られ得る状態にあって, 現実に不特定又は多数の者の閲覧に供されたことが認められる。そして,これらの 事実によれば,これら公報に記載された引用意匠1及び引用意匠2に係る形状が, 現実に不特定又は多数の者に知られた事実を,優に推認することができる。
(2) 創作容易性について
本願意匠は,意匠に係る物品を「中空鋼管材におけるボルト被套具」とし,その形 状は,正面視をハット状,平面視を縦長長方形の板状としたものである。 引用意匠1は,建築構成材や建築構\造材に固定される横長長方形板状の支持具の 表面に現れるボルトの頭部を,支持具全体を被覆して保護するボルトカバーに係る\n意匠であり,横長長方形板の左側端部を内側にコ字状に屈曲させ,右側端部をL字 状に屈曲させた形状のものである(甲1)。 引用意匠2は,建築用の支持材に係る意匠であり,全体形状を,長手方向に垂直 な断面をハット状に形成した板状の長尺材としたものである(甲2)。 引用例1によれば,引用意匠1のボルトカバー(7)は,固定板(1)の係止リブ (8a)(8b)に形合するように,その端部の形状が形成されているものであり, 端部の形状は,ボルトカバーを取り付ける箇所等に応じて,当業者が任意に選択で きるものと解される。また,ボルトカバーの幅や長さも,当業者が適宜選択できる ものである。そうすると,建築部材の分野における当業者であれば,引用意匠1の ボルトカバーに,引用意匠2の形状を適用して,ボルトカバーの端部の形状を変更 するとともに,その幅及び長さを変更して,正面視をハット状,平面視を縦長長方 形の板状とすることは,容易になし得ることであるから,本願意匠は,当業者が,引 用意匠1に,引用意匠2を適用して,容易に創作することができたものと認められ る。

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◆平成30(行ケ)10009

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平成29(行ケ)10197  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年5月30日  知的財産高等裁判所

 代理人を追加選任し、もとの代理人を解任した場合、すでに元の代理人宛に送られていた拒絶査定の送達の有効性が争われました。知財高裁(2部)は、条文に基づいて有効であると判断しました。
 原告は,特許出願手続においては,代理人の追加選任がされた場合には, 新たな代理人(新たな代理人が複数の場合は,その筆頭代理人)に対し,書類の送 付を行う実務運用がされてきたのであって,その実務運用には法規範性が認められ, 特許庁長官が,その実務運用に反する名宛人及び場所に送達をした場合,当該送達 には方式の瑕疵があり,適法な送達と認められない旨主張する。 日本弁理士会の対庁協議事項集(甲12)には,特許庁が,昭和54年4月1日 以前において,特許出願につき,「代理人が追加受任された場合は,新たな代理人を 筆頭の代理人とし,特許庁からの手続は,新たな代理人に対して行うが,筆頭代理 人の変更を希望しない旨の申出があったときは,この限りでない。」との取扱いを行\nっていた旨記載されており,日本弁理士会の対庁協議事項集(甲13)には,平成 28年3月17日においても,同様の取扱いを行っていたことが記載されている。 しかし,特許法12条は,前記のとおり,代理人の個別代理を定めているから, 特許庁が上記のような取扱いをしており,それが対庁協議事項集に記載されている からといって,新たな代理人以外の代理人に対する送達の効力を否定することはで きないものと解される。特許庁の上記取扱いに法規範性を認めることはできず,原 告の上記主張を採用することはできない。 そして,上記の結論は,A弁理士に任務懈怠があったとしても,左右されるもの ではない。
(5) なお,本件においては,前記1のとおり,特許庁は,本件拒絶査定の謄本 を,平成27年2月17日,発送し,当該謄本は,A弁理士に対して送達されたと ころ,同月25日には,A弁理士の代理人解任届が提出されている。原告の代理人 であった米国の法律事務所のパートナーは,平成26年10月頃以降,それより前 には定期的に連絡してきていたA弁理士から,連絡がなくなり,同年11月,A弁 理士が出願を行った別件の日本特許出願につき,拒絶査定があり,A弁理士がこれ に対して応答しなかったため,当該特許出願が失効していたことが判明したことを 契機に,A弁理士を解任し,別の代理人に業務を引き継がせることにしたというの であるから(甲3),原告は,遅くとも代理人解任届が提出された平成27年2月2 5日には,上記特許出願以外の特許出願(本願を含む。)についても,A弁理士に対 し,拒絶査定が送達され,同弁理士が応答していない可能性があることを認識し得\nたといえる。しかし,原告は,平成27年2月25日当時は,拒絶査定不服審判請 求が可能である期間中であったにもかかわらず,当該請求を行わず,当該期間を徒\n過したのであるから,実質的にみても,前記の結論を覆すに足りる事情はない。

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平成29(行ケ)10129  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年5月24日  知的財産高等裁判所

 知財高裁(3部)は、サポート要件の判断の前提となる課題の認定自体を誤ったとして、サポート要件違反の異議理由ありとした審決を取り消しました。
 前記のとおり,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否か は,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請 求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発 明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決 できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がな くとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると 認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 また,発明の詳細な説明は,「発明が解決しようとする課題及びその解 決手段」その他当業者が発明の意義を理解するために必要な事項の記載が 義務付けられているものである(特許法施行規則24条の2)。 以上を踏まえれば,サポート要件の適否を判断する前提としての当該発 明の課題についても,原則として,技術常識を参酌しつつ,発明の詳細な 説明の記載に基づいてこれを認定するのが相当である。
かかる観点から本件発明について検討するに,本件明細書の発明の詳細 な説明には,米糖化物含有食品であるライスミルクの製造時に各種酵素を 制御することなく加えると,プロテアーゼによりアミノ酸,オリゴペプチ ドが生成し,うまみ調味料様の雑味がついてしまい,用途が限られたこと (【0002】),食感が滑らかで雑味がなくすっきりした味を持つ米糖 化液としてアミノ酸濃度が一定範囲である米糖化液が開発されたが,甘味, コク(ミルク感)等の風味は十分に改善されておらず,必ずしも満足できるものではなかったこと,さらに,グラノーラ,パンケーキ等が流行する一方,牛乳アレルギー,大豆アレルギーの人口は増加傾向にあり,風味が改善された牛乳や豆乳の代用品が求められていたこと(【0003】)などが背景技術として記載されている。その上で,発明の詳細な説明には,発明が解決しようとする課題として,「本発明は,米糖化物含有食品のコ\nク,甘味,美味しさ等を改善するという課題を解決すべく鋭意研究を重ね た結果見出されたものである。すなわち,本発明は,コク,甘味,美味し さ等を有する米糖化物含有食品を提供することを目的とする。さらに,従 来牛乳や大豆を用いて製造又は調理されていた多数の食品を作ることを可 能にする食品を提供することも目的とする。」との記載がある(【000\n6】)。
これらの記載からすれば,本件発明は,「コク,甘味,美味しさ等を有 する米糖化物含有食品を提供すること」それ自体を課題とするものである ことが明確に読み取れるといえる。
イ これに対し,異議決定は,「本件発明1の課題は,本件特許明細書の『コ ク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供すること』(【0 006】)との記載及び実施例(【0031】〜【0043】)において, 『コク(ミルク感)』,『甘み』及び『美味しさ』の各評価項目について 評価を行っていることから,『コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物 含有食品を提供すること』と認められる。」と,一旦は上記アと同様に本 件発明1の課題を認定しながら,最終的なサポート要件の適否判断に際し ては,「本件発明1の課題は,上記aのとおり,具体的には,実施例1− 1のライスミルクに比べてコク(ミルク感),甘味及び美味しさについて 優位な差を有するものを提供することであ(る)」とその課題を認定し直 し,課題の解決手段についても,「本件発明1が課題を解決できると認識 できるためには,…実施例1−1のライスミルクに比べてコク(ミルク感), 甘味及び美味しさについて優位な差を有することを認識できることが必要 である。」としている(異議決定12頁16〜25行)。
この点について,被告は,発明が解決しようとする課題とは,出願時の 技術水準に照らして未解決であった課題であるから,本件発明1の「コク, 甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供すること」という課題 は,本件出願時の技術水準を構成する米糖化物含有食品(具体的には,実\n施例1−1のライスミルク)に比べて,コク,甘味,美味しさ等を有する 米糖化物含有食品を提供することであり, したがって,異議決定において は,本件発明1の課題について,「具体的には,実施例1−1のライスミ ルクに比べてコク(ミルク感),甘味及び美味しさについて優位な差を有 するものを提供すること」としたものである(したがって,異議決定の課 題の認定に誤りはない)と主張する。 確かに,発明が解決しようとする課題は,一般的には,出願時の技術水 準に照らして未解決であった課題であるから,発明の詳細な説明に,課題 に関する記載が全くないといった例外的な事情がある場合においては,技 術水準から課題を認定するなどしてこれを補うことも全く許されないでは ないと考えられる。
しかしながら,記載要件の適否は,特許請求の範囲と発明の詳細な説明 の記載に関する問題であるから,その判断は,第一次的にはこれらの記載 に基づいてなされるべきであり,課題の認定,抽出に関しても,上記のよ うな例外的な事情がある場合でない限りは同様であるといえる。 したがって,出願時の技術水準等は,飽くまでその記載内容を理解する ために補助的に参酌されるべき事項にすぎず,本来的には,課題を抽出す るための事項として扱われるべきものではない(換言すれば,サポート要 件の適否に関しては,発明の詳細な説明から当該発明の課題が読み取れる 以上は,これに従って判断すれば十分なのであって,出願時の技術水準を\n考慮するなどという名目で,あえて周知技術や公知技術を取り込み,発明 の詳細な説明に記載された課題とは異なる課題を認定することは必要でな いし,相当でもない。出願時の技術水準等との比較は,行うとすれば進歩 性の問題として行うべきものである。)。
これを本件発明に関していえば,異議決定も一旦は発明の詳細な説明の 記載から,その課題を「コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食 品を提供すること」と認定したように,発明の詳細な説明から課題が明確 に把握できるのであるから,あえて,「出願時の技術水準」に基づいて, 課題を認定し直す(更に限定する)必要性は全くない(さらにいえば,異 議決定が技術水準であるとした実施例1−1は,そもそも公知の組成物で はない。)。 したがって,異議決定が課題を「実施例1−1のライスミルクに比べて コク(ミルク感),甘味及び美味しさについて有意な差を有するものを提 供すること」と認定し直したことは,発明の詳細な説明から発明の課題が 明確に読み取れるにもかかわらず,その記載を離れて(解決すべき水準を 上げて)課題を再設定するものであり,相当でない。 以上によれば,異議決定における課題の認定は妥当なものとはいえず, 被告の主張は採用できない。
(2) 課題を解決できると認識できる範囲について
ア 上記のとおり,本件発明の課題は,コク,甘味,美味しさ等を有する米 糖化物含有食品を提供することであると認められるので,本件発明が,発 明の詳細な説明の記載から,「コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物 含有食品を提供する」という課題を解決することができると認識可能な範\n囲のものであるか否かについて検討する。
・・・
(エ) そして,上記試験例1,2及び4の結果を総合すれば,本件発明4に ついても,課題が解決できる範囲のものであることが裏付けられている といえる。
エ 以上によれば,本件発明は,いずれも,発明の詳細な説明の記載から, 「コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供する」という 課題を解決することができると認識可能な範囲のものであるといえる。\n

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平成30(行ケ)10003  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年5月28日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判の取消訴訟です。知財高裁は、「本件セールにおいて,本件商品に本件タグが付されて展示,販売された事実を推認させるものではなく・・・」と、不使用とした審決を維持しました。
 原告の提出する証拠(甲5,7,9〜12,25)から認められるのは,せいぜい,本件商品が本件セールの際に倉庫からセール会場に移動され,各500円(消費税別)で販売されたという事実にすぎず,本件セールにおいて,本件商品に本件タグが付されて展示,販売された事実を推認させるものではなく,そのほかに,原告の主張を認めるに足りる証拠はない。原告の主張は,客観的な裏付けを欠くものであり,以下のアないしウの事実に照らしても,不自然,不合理であって,採用できない。
ア 本件タグは,その表面に本件商標が表\示され,その裏面に,原告の名称のほ か,当該商品の品番,サイズ,素材,生産国,バーコード情報,本体価格,税込価 格等が表示されているところ,この税込価格は,消費税率を5%として計算したも\nのである(甲3,4の1・2)。しかし,我が国の消費税率は,本件セールの開催 日より2年半以上前の平成26年4月1日に,5%から現行の8%に改定されてい る(乙3)。この点について,原告は,特価であることの理由を示すために発売当 時の下げ札をそのまま付けておいた旨主張するが,消費税改定後に展示販売する商 品に消費税改定前の税込価格を表示したタグを付すことは,商品の購入者を混乱さ\nせたり,当該商品が古い物であるという印象を与えたりしかねないことから,通常 は,そのような取扱いはされないものと考えられる。
イ 本件タグに表示された前記アの情報は,購入者にとって重要な情報であり,\nかかる情報が表示されたタグは,それが付された商品とともに購入者に引き渡すの\nが通常であると考えられる。また,タグは,紐や結束バンドによって被服に取り付 けられるのが通常であるところ,本件タグは,タグの上部に結束バンドがくくり付 けられており,結束バンドは切断されていない(甲3,4の1・2)。かかる事実 は,本件タグが,本件商品を顧客に引き渡した際に本件商品から取り外されたもの ではないことを推認させるものである。なお,原告は,本件タグは結束バンドでは なく下げ紐により本件商品にくくり付けられていた旨主張するが,下げ紐を取り外 す際に,ハサミなどで切断せずに,その都度紐をほどくという煩瑣な方法をとって いたというのは,不自然である。また,原告は,上記のとおり購入者にとって重要 な情報が表示された本件タグを本件商品の購入者に引き渡さなかった理由について,\n何ら合理的な説明をしていない。
ウ 原告は,平成30年3月11日に,本件セールと同じ会場において,本件セ ールと同様のファミリーセールを開催し,そこで展示された原告商品の中には,本 件商品と同じ500円均一の価格(消費税別)と表示されたものも存在するが,「本\n体価格 ¥500」等の価格表示以外のタグは付されていない(乙1,2)。そう\nすると,仮に,本件セールにおいて本件商品が販売された事実があるとしても,本 件商品を展示して販売する際に,本件タグが付されていなかった可能性は高い。な\nお,原告は,上記平成30年のセールにおいて展示販売された原告の在庫資産であ る商品には,本件タグと同様の下げ札が付されていた旨主張するが,これを裏付け る的確な証拠はない。
(3)以上のとおり,原告が本件セールにおいて本件商品に本件タグを付して展示 販売することにより,本件商標を使用したとの事実を認めることはできない。また, 原告は,そのほかに,指定商品のうち第25類「被服」について,本件商標を要証 期間内に使用したことの主張立証をしない。
(4) 小括
よって,本件商標が要証期間内に指定商品のうち第25類「被服」について使用 されたとの事実は認められないというべきであり,本件商標の指定商品のうち第2 5類「被服」についての商標登録は,商標法50条の規定により取り消されるべき ものである。

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平成29(ネ)10102  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年5月21日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 知財高裁でも、均等侵害が否定されました。
 本件各発明の意義は,充填された液体に臭いが移ることがな く,自立的に形状を維持でき,内部に空気を送り込むことなく,充填された液体の ほぼ全量を排出可能なウォーターサーバー用ボトルを提供するという課題を達成す\nるために,本件各発明の構成を採用することにある。すなわち,本件各発明は,全\n体をPET樹脂によって形成することで,液体を充填した際でも自立的に形状を維 持でき,液体に臭いが移ることがないようにし,胴部に上下方向に伸縮自在な蛇腹 部を設けることで,潰れやすさを向上させ,さらに,蛇腹部と底部との間に裾絞り 部を形成することで,ボトルが大気圧で押し潰れていく際に,裾絞り部が蛇腹部の 方に引き込まれていき,蛇腹部の内部の容積を削減する機能を有するようにしたも\nのである。 このような,本件明細書に記載された,蛇腹部と底部との間に裾絞り部を形成す ることの技術的意義に鑑みると,構成要件Hの「内部の液体の排出に伴って,前記\n裾絞り部がボトル内部に引き込まれること」とは,ウォーターサーバー用ボトル内 部の液体の排出に伴って,裾絞り部が蛇腹部の内部に引き込まれることを意味する ものと解される。 また,かかる解釈は,本件各発明の実施の形態として本件明細書に記載されてい る唯一の実施例において,内部の液体の排出に伴って【図4】(B),【図5】(A), 【図5】(B)と変化することが記載され,【図5】(B)において,裾絞り部が 蛇腹部の内部に引き込まれていることとも整合する。 ウ 以上のとおり,特許請求の範囲の記載,本件明細書の記載及び本件発明1に おける裾絞り部の技術的意義を総合すれば,構成要件Hの「内部の液体の排出に伴\nって,前記裾絞り部がボトル内部に引き込まれること」とは,ウォーターサーバー 用ボトル内部の液体の排出に伴って,裾絞り部が蛇腹部の内部に引き込まれること を意味するものと解される。
エ 控訴人の主張について
控訴人は,裾絞り部がボトル内部に引き込まれることの効果は,ボトル内の残水 を減らすことにあり,これを達するには,裾絞り部がボトル内部の方向に引き込ま れれば足り,蛇腹内部に裾絞り部が引き込まれることまで要求されるものではない から,構成要件Hの「裾絞り部がボトル内部に引き込まれる」とは,裾絞り部が蛇\n腹部の方向,つまり裾絞り部から見てボトル内部の方向に引き込まれることを意味 すると解される旨主張する。 しかし,前記イのとおり,蛇腹部と底部との間に裾絞り部を形成することの技術 的意義は,ボトルが大気圧で押し潰れていく際に,裾絞り部が蛇腹部の内部に引き 込まれていき,蛇腹部の内部の容積を削減する機能を有するようにしたことにある\nところ,単に裾絞り部がボトル内部の方向に引き込まれるというだけでは,本件明 細書に記載された本件各発明の上記効果を奏するものではなく,裾絞り部が蛇腹部 の内部まで引き込まれることによって,上記効果を奏するものである。 また,控訴人は,本件特許の出願時の請求項1を特許請求の範囲から削除し,出 願時の請求項2に構成要件Hを追加して請求項1とするなどの補正をした際に(乙\n6),審査官に対し,本件発明1は構成要件FないしHの構\成を備えることにより, 「ボトルが大気圧で押し潰れていく際,裾絞り部が蛇腹部の方に引き込まれていき, 蛇腹部の内部の容積を削減する機能があり(本件明細書【0020】),ボトル内\nの残水を減らす効果がある。」旨の意見を述べていたものであり(乙7),控訴人 の前記主張は,本件特許の出願経過における控訴人の主張とも異なるものである。 したがって,控訴人の上記主張は採用できない。

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原審はこちら。

◆平成28(ワ)7649

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平成28(ネ)10101  発信者情報開示請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成30年4月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 発信者情報開示事件です。1審では、リツイートはインラインリンクであるので、著作権侵害に該当しないと判断され、請求は棄却されました。知財高裁(2部)は、著作者人格権侵害があったとして、一部の発信者情報について開示を認めました。
 前記(1)のとおり,本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている\n画像は,流通情報2(2)の画像とは異なるものである。この表示されている画像は,\n表示するに際して,本件リツイート行為の結果として送信された HTML プログラム や CSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,上記のとおり 画像が異なっているものであり,流通情報2(2)の画像データ自体に改変が加えら れているものではない。 しかし,表示される画像は,思想又は感情を創作的に表\現したものであって,文 芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号にいう 著作物ということができるところ,上記のとおり,表示するに際して,HTML プロ グラムや CSS プログラム等により,位置や大きさなどを指定されたために,本件ア カウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3〜5のよ\nうな画像となったものと認められるから,本件リツイート者らによって改変された もので,同一性保持権が侵害されているということができる。 この点について,被控訴人らは,仮に改変されたとしても,その改変の主体は, インターネットユーザーであると主張するが,上記のとおり,本件リツイート行為 の結果として送信された HTML プログラムや CSS プログラム等により位置や大きさ などが指定されたために,改変されたということができるから,改変の主体は本件 リツイート者らであると評価することができるのであって,インターネットユーザ ーを改変の主体と評価することはできない(著作権法47条の8は,電子計算機に おける著作物の利用に伴う複製に関する規定であって,同規定によってこの判断が 左右されることはない。)。
また,被控訴人らは,本件アカウント3〜5のタイム ラインにおいて表示されている画像は,流通情報2(1)の画像と同じ画像であるから, 改変を行ったのは,本件アカウント2の保有者であると主張するが,本件アカウン ト3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は,控訴人の著作物である本\n件写真と比較して改変されたものであって,上記のとおり本件リツイート者らによ って改変されたと評価することができるから,本件リツイート者らによって同一性 保持権が侵害されたということができる。さらに,被控訴人らは,著作権法20条 4項の「やむを得ない」改変に当たると主張するが,本件リツイート行為は,本件 アカウント2において控訴人に無断で本件写真の画像ファイルを含むツイートが行 われたもののリツイート行為であるから,そのような行為に伴う改変が「やむを得 ない」改変に当たると認めることはできない。
イ 氏名表示権(著作権法19条1項)侵害
本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像には,控訴人\nの氏名は表示されていない。そして,前記(1)のとおり,表示するに際して HTML プ ログラムや CSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,本件 アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3〜5の\nような画像となり,控訴人の氏名が表示されなくなったものと認められるから,控\n訴人は,本件リツイート者らによって,本件リツイート行為により,著作物の公衆 への提供又は提示に際し,著作者名を表示する権利を侵害されたということができ\nる。
・・・
(7) 「侵害情報の流通によって」(プロバイダ責任制限法4条1項1号)及び 「発信者」(同法2条4号について
前記(5)ア,イのとおり,本件リツイート行為は,控訴人の著作者人格権を侵害す る行為であるところ,前記(5)ア,イ認定の侵害態様に照らすと,この場合には,本 件写真の画像データのみならず,HTML プログラムや CSS プログラム等のデータを 含めて,プロバイダ責任制限法上の「侵害情報」ということができ,本件リツイー ト行為は,その侵害情報の流通によって控訴人の権利を侵害したことが明らかであ る。そして,この場合の「発信者」は,本件リツイート者らであるということがで きる。

◆判決本文

一審はこちらです。

◆平成27(ワ)17928

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平成28(ワ)30183  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年5月11日  東京地方裁判所(40部)

 「SAPIX 8月マンスリー」「SAPIX生のための復習用教材」「SAPIX今週の戦略ポイント Daily Support」)等と使用することは、自他商品等を識別する機能を果たす態様で用いられていないので、不競法2条1項1号の「使用」には該当しないと判断されました。
 原告は,不競法2条1項1号にいう「使用」の意義について,自他識別力 のある使用といえるかどうかは独立の要件ではなく,営業主体の混同のおそ れの有無の判断において考慮すべき要素にすぎないと主張する。しかし,同 号は,人の業務に係る商品又は営業(以下「商品等」という。)の表示につ\nいて,その商品等の出所を表示して自他商品等を識別する機能\,その品質を 保証する機能及びその顧客吸引力を保護し,事業者間の公正な競争を確保す\nることを趣旨とするものであるから,同号にいう「使用」というためには, 単に他人の周知の商品等表示と同一又は類似の表\示を商品等に付しているの みならず,その表示が商品等の出所を表\示し,自他商品等を識別する機能を\n果たす態様で用いられていることを要するというべきである。
ア 本件表示1〜3
これを前提として,被告のホームページ上の本件表示1〜3について検\n討するに,前記認定のとおり,被告のホームページには,そのヘッダー部 に被告学習塾の名称が表示され,またメインコンテンツ部には「中学受験\nドクターのプロ講師による」との記載があるのであるから,同ホームペー ジに掲載されたサービスの提供主体が被告であることは明らかである。 また,メインコンテンツ部の最上部の囲み枠に「塾別!今週の戦略ポイ ント」「SAPIX・日能研・四谷早稲アカの授業の要点を毎週解説!」\nなどと記載されていることによれば,被告が原告学習塾のみならず他の大 手学習塾の授業の解説を行っていることは容易に理解し得る。 その上で,本件表示1〜3をみると,本件表\示1(「SAPIX 8月 マンスリー」)は,その表示がされたバナー内の他の記載と併せ考慮する\nと,被告の行うライブ解説の対象が原告学習塾のマンスリーテストである と理解し得るのであり,その解説の主体が原告又はその子会社等であるこ とを表示するものではなく,またそのように誤認されるおそれがあるとは\n認められない。
次に,本件表示2(「SAPIX生のための復習用教材」)についても,\n原告学習塾に通う生徒のための復習教材を被告が販売していると理解し得 るのであり,その教材の販売主体が原告又はその子会社等であることを表\n示するものではなく,またそのように誤認されるおそれがあるとは認めら れない。 さらに,本件表示3(「SAPIX今週の戦略ポイント Daily Support」) についても,解説等の対象が原告学習塾の教材であることを意味するにす ぎず,その教材の販売主体が原告又はその子会社等であることを表示する\nものではなく,またそのように誤認されるおそれがあるとは認められない。  以上によれば,本件表示1〜3は,いずれも,商品等の出所を表\示し, 自他商品等を識別する機能を果たす態様で用いられているものということ\nはできない。

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平成29(ワ)1443  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年4月24日  大阪地方裁判所

 秘密管理のための工場見学の制限としては不十分として、不競法の営業秘密には該当しないと判断されました。
 原告が主張する営業秘密は,訴訟提起段階から変遷しているが,最終的に確 定したところよると,生春巻きを大量に安定的に生産するために,ライン上で全工 程を行うとともに,通常は水で戻すライスペーパーを,状況に応じた適切な温度の 湯で戻すという生春巻きの製造方法であり,ラインの長さ,作業時間,ライスペー パーの質,ラインを流す速度,工場の状況などを踏まえて,温度を管理するもので あって,ライスペーパーを戻す湯の温度は,製造する本数に応じて,ラインの速度 を変え,それに応じて40度から80度までの幅で変えることに特徴があり,具体 的には,温度を40度から50度程度に設定する場合は,ラインの人数を10名程 度にし,一つのラインでの1時間の製造本数を400本から500本程度とし,温 度を60度から80度に設定する場合は,ラインの人数を12名程度に増やし,一 つのラインでの1時間の製造本数を600本から800本程度とするというもので ある。
(2)ア そこで,まず上記主張に係る製造方法が「秘密として管理されている」(不 正競争防止法2条6項)といえるか検討するに,原告は,1)原告工場の立ち入りを 厳重に管理し,食品関係者の工場見学は,紹介により協力工場となる会社の場合な どに限られていること,2)従業員は競業他社の関係者が入社しないよう注意し,退 社時に秘密保持誓約書を作成させ徴求していることを主張している。
イ しかし,前者については,原告の主張する第三者の出入りの管理は,それ自 体は,証拠(乙8,乙9)により認められる食品工場の場合における衛生管理のた めにする人の出入りの管理と何ら変わらないものであるし,食品関係者の工場見学 は紹介により協力工場となる会社に限られるとの点も,現に被告の場合は,前日か 当日かの争いはあるとしても,短い電話による依頼だけで工場見学を許されており, 原告主張のような厳格な扱いがされていたとは認められない。 この点,原告は,被告が協力工場となることを見学の条件とし,被告がこれを承 諾したように主張するが,協力工場となる以上,事業者間で継続的契約が締結され る必要があるから,短時間の電話のやり取りだけで取引条件の詳細を詰めずに確定 的な合意に至ったとはおよそ考えられず,むしろ原告代表者の陳述書(甲6)は,\n工場見学前に協力工場になることの条件を承諾した旨の記載がないだけでなく,か えって工場見学後の被告代表者の話し振りから「私はもうすっかり協力工場になっ\nてくれるものと信じていました。」との記載があり,結局,協力工場になることが 確定的でない状態で原告工場の見学をさせたことを自認する内容になっている。な お,その後,原告担当者が被告の九州工場を視察していることからすると,被告代 表者は,協力工場となることに対して積極的方向で回答をしたことは優に認められ\nるが,そうであったとしても,それをもって事業者間での法的拘束力のある合意と 評価できないことはいうまでもない。 したがって,原告主張の工場見学の条件は,結局,その実質は,当面の競業会社 ではなく協力関係となることが十分期待できるということと変わりがないことにな\nるのであって,秘密管理のための工場見学の制限としては不十分といわなければな\nらない。
ウ また後者の従業員に対する管理の点についても,入社時の選別を実際になし ている点の証拠はないし,退職時の秘密保持誓約書(甲5)が実際に用いられてい るか否かをさておき,少なくとも,入社時に同趣旨の誓約書が徴求されているわけ ではなく,また在職中の守秘義務について定めたものは認められないから,これで は従業員に対する関係でも秘密管理が十分なされていたとはいえない。\nそのほか,証拠(甲6,乙10,乙19)及び弁論の全趣旨によれば,1)被告代 表者は,平成25年7月3日,原告工場を原告代表\者の案内で見学するとともに, 工場内施設の撮影もし,また原告代表者からは,生春巻きの製造方法の説明も受け\nたが,それに先立ち,見学で得られる技術情報について秘密管理に関する合意は原 告と被告間でなされなかったばかりか,原告代表者からその旨の求めもなされなか\nったこと,2)原告のウェブサイトには,原告工場内で商品を生産している状況を説 明している写真が掲載されており,その中には生春巻きをラインで製造している様 子が分かる写真も含まれていることが認められ,これらの事実からも,原告におい て,その主張に係る営業秘密の管理が十分なされていなかったことが推認できる。\n
エ したがって,原告主張の製造方法は,不正競争防止法2条6項の要件にいう 「秘密として管理」されていたとは認められないから,原告主張の製造方法をもっ て同法の「営業秘密」として認められず,「営業秘密」であることを前提とする損 害賠償請求は,その余の点の判断に及ぶまでもなく理由がない。 なお,原告は,被告代表者が工場訪問のお礼のメールに「ノウハウ」を教えても\nらったことを感謝する記載があることを指摘するが,そのメールをした真意はさて おき,ここで問題にしているのは,原告自身が営業秘密の要件を満たす秘密管理を していたか否かであって,被告代表者が「ノウハウ」としての価値を認め,すなわ\nち非公知で有用なノウハウであると評価していたからといって,秘密管理性の欠如 が補えるわけではない。

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平成29(行ケ)10096  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年5月15日  知的財産高等裁判所

 数値限定の範囲を変えることについて動機付けありとして、進歩性違反無しとした審決が、取り消されました。
 本件訂正発明1と甲1発明との相違点である,甲1発明におけるSiO2粒 子(非磁性材)の含有量を「3重量%」(3.2mol%)から「6mol%以上」とする ことについて,当業者が容易に想到できるといえるか否かを検討する。
イ 動機付けの有無について
(ア) 上記3(1)において認定したとおり,本件特許の優先日当時,垂直磁 気記録媒体において,非磁性材であるSiO2を11mol%あるいは15〜40vol% 含有する磁性膜は,粒子の孤立化が促進され,磁気特性やノイズ特性に 優れていることが知られており,非磁性材を6mol%以上含有するスパッタ リングターゲットは技術常識であった。 そして,本件特許の優先日前に公開されていた甲4(特開2004− 339586号公報)において,従来技術として甲2が引用され,甲2 に開示されている従来のターゲットは「十分にシリカ相がCo基焼結合金 相中に十分に分散されないために,低透磁率にならず,そのために異常\n放電したり,スパッタ初期に安定した放電が得られない,という問題点 があった」(段落【0004】)と記載されていることからも,優れた スパッタリングターゲットを得るために,材料やその含有割合,混合条 件,焼結条件等に関し,日々検討が加えられている状況にあったと認め られる。 そうすると,甲1発明に係るスパッタリングターゲットにおいても, 酸化物の含有量を増加させる動機付けがあったというべきである(磁気 記録方式の違いが判断に影響を及ぼさないことについては,後記オ(ア) に説示するとおりである。)。
(イ) 次に,具体的な含有量の点についてみると,被告も,非磁性材の含有 量を「6mol%以上」と特定することで何らかの作用効果を狙ったものでは ないと主張している上,証拠に照らしても,6mol%という境界値に技術的 意義があることは何らうかがわれない。 さらに,本件明細書の段落【0016】及び【0017】に記載され ているスパッタリングターゲットの作製方法は,本件特許の優先日当時, 一般的に使用・利用可能であった通常の強磁性材及び非磁性材を用い,\n様々な原料粉の形状,粉砕・混合方法,混合時間,焼結方法,焼結温度 を選択することにより,本件訂正発明に係る形状及び寸法を備えるよう にできるというものであるから,甲1発明に基づいて非磁性材である酸 化物の含有量が6mol%以上であるターゲットを製造することに技術的困難 性が伴うものであったともいえない。 そうすると,磁気特性やノイズ特性に優れたスパッタリングターゲッ トの作製を目的として,甲1発明に基づいて,その酸化物の含有量を6mol% 以上に増加させる動機付けがあったと認めるのが相当である。
ウ 阻害要因の有無について
(ア) 審決は,ターゲットの組成を変化させるとターゲット中のセラミック 相の分散状態も変化することが推測され,例えば,当該セラミック相を 増加させようとすれば,均一に分散させることが相対的に困難になり, ターゲット中のセラミック相粒子の大きさは大きくなる等,分散の均一 性は低下する方向に変化すると考えるのが自然であって,実施例1の「3 重量%」(3.2mol%)から本件訂正発明1の「6mol%以上」という2倍近い値 まで増加させた場合に,ターゲットの断面組織写真が甲1の図1と同様 のものになるとはいえず,本件訂正発明1における非磁性材の粒子の分 散の形態を変わらず満たすものとなるか不明であると判断した。 被告も,甲1発明において酸化物含有量を「3重量%」(3.2mol%)から 「6mol%以上」に増加させた場合に,組織が維持されると当業者は認識し ない,すなわち,組織が維持されるかどうか不明であることは,甲1発 明において酸化物含有量を増やすことの阻害要因になると主張する。
(イ) この点について,上記2(2)オにおいて認定したとおり,甲1には, 実施例4(酸化物の含有量は1.46mol%)について,「このターゲットの 組織は,図1に示した酸化物(SiO2)が分散した微細混合相とほぼ同様 であった。」(段落【0022】),実施例5(同1.85mol%)及び同6 (同3.19mol%)についても「このターゲットの組織は,図1に示した組 織とほぼ同様であった。」(段落【0024】及び【0026】)との 各記載があるように,非磁性材である酸化物の含有量が1.46mol%(実施 例4)から3.19mol%(実施例6)まで2倍以上変化しても,ターゲット の断面組織写真が甲1の図1と同様のものになることが示されている。 さらに,上記3(2)において認定したとおり,メカニカルアロイングに おける混合条件の調整,例えば,十分な混合時間の確保等によってナノ\nスケールの微細な分散状態が得られることも,本件特許の優先日当時の 技術常識であった。 そうすると,甲1に接した当業者は,甲1発明において酸化物の含有 量を増加させた場合,凝集等によって図1に示されている以上に粒子の 肥大化等が生じる傾向が強まるとしても,金属材料(強磁性材)及び酸 化物(非磁性材)の粒径,性状,含有量などに応じてメカニカルアロイ ングにおける混合条件等を調整することによって,甲1発明と同程度の 微細な分散状態を得られることが理解できるというべきである。 また,上記イのとおり,甲1発明に基づいて非磁性材である酸化物の 含有量が6mol%以上であるターゲットを製造することが,何かしらの技術 的困難性を伴うものであると認めることはできない。 したがって,甲1発明において酸化物の含有量を「3重量%」(3.2 mol%) から「6mol%以上」に増加した場合に,分散状態が変化する可能性がある\nとか,上記本件組織が維持されるかどうかが不明であることが,直ちに 非磁性材の含有量を増やすことの阻害要因になるとはいえない。

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平成29(ワ)9779  商標権侵害行為差止請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年4月27日  東京地方裁判所

 日本酒の商標「白砂青松」の商標権侵害事件です。被告は「大観 白砂青松」ですが、書体も文字の大きさも異なり、2段表記されていることから、要部が2つあると判断されました。
 前記認定のとおり,被告商品に貼付されたラベルには,その中央上方に\n「白砂青松」の各文字が,上部左側に「大観」の各文字が配されているが, 「白砂青松」と「大観」は同じ毛筆体でも異なる字体であり,文字の大き さは明らかに「白砂青松」の各文字の方が大きく,文字間の間隔について も「白砂青松」の文字の方が広い。そして,同ラベルの下方には横山大観 の日本画の絵柄が付されている。 上記ラベルの下部に配された絵柄については,被告製品を収める外箱に は付されておらず(乙11,41),被告商品の商品名も「大観 白砂青 松」として販売されていること(乙3〜7)に照らすと,商品に貼付され\nたラベルのデザインというべきものであり,自他識別標識としての機能を\n有するものではないというべきである。また,同絵柄が上記各文字部分と 一体となって被告商品の出所を示すものとして需要者に認識されていた ことをうかがわせる証拠もない。そうすると,上記ラベルのうち,被告標 章として自他商品の識別標識としての機能を有するのは「大観」及び「白\n砂青松」の各文字部分であると認められる。
ウ 対比
そこで,原告商標と,被告標章として自他商品の識別標識としての機能\nを有する「大観」及び「白砂青松」の各文字部分を対比する。 前記のとおり,被告商品に貼付されたラベルにおいて,「白砂青松」と\n「大観」の各文字部分は,文字の大きさ,字体などが異なり,視覚上,両 部分は一体不可分のものではなく,分離して看取することができる。そし て,「白砂青松」と「大観」の各文字部分を比較すると,「白砂青松」を 構成する各文字の方が大きく,中央に記載されており,各文字間の間隔も\n「白砂青松」の方が広いことは明らかである。 また,被告商品を納める外箱においても,「白砂青松」と「大観」の各 文字部分は容易に分離して看取することができ,「白砂青松」を構成する\n各文字の方が相当程度大きく,中央に記載されており,各文字間の間隔も 「白砂青松」の方が広い。 そうすると,被告標章において,需要者に対して商品の出所識別標識と して強く支配的な印象を与えるのは,「白砂青松」の文字部分であるとい そこで,原告商標と被告標章の「白砂青松」との文字部分を対比すると, いずれもその称呼は「ハクサセイショウ」であり,「白い砂と青い松」と の観念が生じる。また,その文字の字体は異なるが,構成される文字は同\n一であることから,その外観も類似する。

◆判決本文

被告の商品は下記ですが、削除される可能性があります。\n

◆大観 白砂青松

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平成29(ワ)5274  特許権に基づく損害賠償請求権不存在確認等請求事件 特許権 民事訴訟 平成30年4月26日 東京地方裁判所

 不存在確認の訴訟について、訴えの利益無しと請求が却下されました。 原告はAppleです。
 確認の訴えは,現に,原告の有する権利又は法律的地位に危険又は不安が 存在し,これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが必要かつ適切 な場合に限り許されるものである(最高裁判所昭和27年(オ)第683号 同30年12月26日第三小法廷判決・民集9巻14号2082頁参照)。
・・・
本件において,原告らは,CM4社から全ての原告製品の供給を受けて いるところ,被告クアルコムとCM4社との間にはCMライセンスが存在 し,本件特許権もその対象である(認定事実 )。 被告らは,これらの事実を認めた上で,このことを理由として,本件訴 訟において,一貫して被告らは原告らによる原告製品の生産,譲渡等に つき,本件特許権侵害に基づく損害賠償請求権及び本件特許権に基づく 実施料請求権を有しないことを表明している。\nそして,上記アないしエのとおり,原告アップルと被告クアルコムとの 従前の交渉において,原告製品が本件特許権を侵害していると被告クア ルコムが主張したことがあるとは認められないし,他の訴訟等において も,被告クアルコムにおいて,被告らによる上記表明を矛盾する行動を\nとったことがあるとは認められない。その他,被告クアルコムにおいて, 原告アップルの有する権利又はその法律上の地位に危険,不安を生じさ せる行動をとったことを認めるに足りる証拠はない。 これらを総合すれば,被告クアルコムとの関係において,原告アップル の有する権利又はその法律上の地位に危険又は不安があるとは認められ ない。

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平成29(行ケ)10217  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年4月26日  知的財産高等裁判所

 「咲蔵(さくら)」と標準文字の先願「咲蔵」が類似するかが争われました。知財高裁は類似するとした審決を維持しました。判決文の最後に両商標が記載されています。
 引用商標は,別紙記載2のとおり,「咲蔵」の文字を標準文字で表して成る\nものであるところ,引用商標のように「サククラ」などと二つの音が重なる場合,一文字分を省略して「サクラ」と読むことなどは,経験則上,よくあるこ とであって特段珍しいことではない上に,商品名や店舗名などにおいて,「咲」 の文字の訓読みである「サ(ク)」から,「サ」の文字の当て字として「咲」 の漢字を利用することも,取引上よくみられることであって(乙10〜14は, その一例を示すものといえる。),やはり特段珍しいことではない。したがっ て,本願商標のように振り仮名が振られていなくても,「咲蔵」の文字から「サ クラ」の称呼が生じるものということができる。 よって,引用商標からも,本願商標と同様に,「サクラ」の称呼と,「花が 咲く蔵」,あるいは「桜の花」といった観念が生じるものと認められる。
・・・
原告は,国語辞典(甲21:広辞苑第二版補訂版874頁)には,「咲蔵」 と同様に「咲」を語頭に含む漢字2字から成る熟語が「咲分(サキワケ)」 しか記載されておらず,このような熟語において「咲」を「サ」と訓読みす る慣行はないし,「咲蔵」は造語であって常用されている言葉ではないから, 送り仮名が省略されることもないとして,「咲蔵」なる文字部分からは,基 本となる訓読みと訓読みの組合せで「サキクラ」又は「サキグラ」という称 呼しか生じず,「サクラ」という称呼は生じないと主張する。 しかしながら,本願商標のように振り仮名が振られていなくても,「咲蔵」 の文字から「サクラ」の称呼が生じるものということができることは,前記 3のとおりである。したがって,原告の主張は失当である。
(3) 「咲蔵」の文字から生じる観念に関し
原告は,「咲く蔵(クラ)」又は「蔵(クラ)が咲く」なる表現は常識的\nに思い付くような状態を示しておらず,その意味を全く想起することができ ないと主張する。 しかしながら,「咲く」という言葉が,花のつぼみが開くこと,すなわち, 花が咲くことを意味することは,常識に属することであって,かかる意味を 有する「咲」という文字と「蔵」という文字の組合せからは,前記2のとお り,「花が咲く蔵」といった華やか(にぎやか)なイメージを想起すること ができ,その意味するところも十分認識できる。\nしたがって,少なくとも「咲く蔵(クラ)」なる表現は,「花が咲く蔵」\nとして常識的に思い付くような状態を示しており,その意味を想起すること ができるといえるから,原告の主張は失当である。

◆判決本文

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平成28(ワ)6074  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年4月17日  大阪地方裁判所

 周知標章「堂島ロール」に基づく不競法2条1項1号に基づいて、約3400万円の損害賠償が認められました。被告標章は「堂島プレミアムロール」です。損害額は被告の1つあたりの利益*箱数から判断されました。被告は冷凍としてスーパーなど販売していましたが、混同すると判断されました。
 被告標章1及び4である「堂島プレミアムロール」は,「堂島」,「プレミアム」,「ロール」の3語で構成されているが,この\nうち,「プレミアム」との語は,優れたあるいは高品質なものを意味する語であり, 商品が優れたり,高品質なものであったりすることを表現するため商品名に「プレ\nミアム」という文字が付加される例も多い(乙C7の1,2,乙C8の1参照)こ とが一般的に認められるから,「プレミアム」の部分は,これと結合する他の単語 で表示される商品の品質を表\すものと理解され,商品の出所識別機能があるものと\nは認められない。他方,「堂島」は地名,「ロール」は「ロールケーキ」の普通名 詞の略称を表す語であるが,「プレミアム」が上記のとおり,品質を示す意味しか\n有しないことからすると,「プレミアム」を挟んで分離されているものの,被告標 章1及び4からは,プレミアムな,すなわち高品質な「堂島ロール」との観念が生 じ,これは原告の商品等表示として周知である「堂島ロール」の観念と類似してい\nるといえるし,また称呼も同様に類似しているといえる。 そうすると,被告標章1及び4と原告標章とは,被告標章4のみならず字体に特 徴のある被告標章1を含め,取引者,需要者が外観,称呼又は観念の同一性に基づ く印象,記憶,連想等から,両者を全体として類似のものとして受け取るおそれが あるというべきである。
ウ また被告標章2については,「(株)堂島プレミアム」と「プレミアムロー ル」との語を2段重ねで一体的に表示したものであるが,「(株)」というのは会\n社の種類を示す株式会社の略語にすぎないから,これ自体に出所識別機能は認めら\nれない。そこで,これを除くと,被告標章2は,「堂島プレミアム」と「プレミア ムロール」が2段重ねで一体化している表示であるが,上段,下段で重複して使用\nされている「プレミアム」という語は,上記で判示したとおり,独自の出所識別機 能を有しない語であるし,また取引の現場では長い名称の商品名は略して称呼され,\n観念されることが多いと考えられるから,繰り返される「プレミアム」の部分は一 単語に省略され,さらにそれ自体の出所識別機能がないことも合わさって,「堂島\nプレミアム,プレミアムロール」から,「堂島」と「ロール」という2語が需要者 に強く印象付けられると考えられる。したがって,被告標章2からは被告標章1及 び4についてみたのと同様,プレミアムな,すなわち高品質な「堂島ロール」とい う観念が生じるということができ,これは原告の商品等表示として周知である「堂\n島ロール」の観念と類似しているといえる。 また,称呼の点も,同様に「ドウジマプレミアムロール」との称呼が生じるとい えるから,原告標章の「ドウジマロール」との称呼と類似しているといえる。 そうすると,被告標章2と原告標章とは,取引者,需要者が外観,称呼又は観念 の同一性に基づく印象,記憶,連想等から,両者を全体として類似のものとして受 け取るおそれがあるというべきである。
エ さらに被告標章3は,被告標章2の上段部分の「(株)堂島プレミアム」部分 を,下段の「プレミアムロール」より小さな文字で表示しているものであるが,上\n下段の一体性を損なうほど,文字の大きさに差はないから,被告標章2と同様の理 由から,取引者,需要者は被告標章3と原告標章を類似のものと受け取るおそれが あるということができる。
オ 被告標章5は,被告標章2及び3の「(株)」の部分を「株式会社」,「(株)」 又は同部分に相当する部分がないものとしている標章であるが(ただし,2段重ね という限定はない。),「(株)」については既に説示したとおりであり,「株式会 社」についても,単なる会社の種類を表示する語にすぎないから,これが全くない\n場合も含め,被告標章5と原告標章が類似しているといってよいことは,上記ウ, エで説示したところと同じである。
カ 以上のとおり,被告標章は,いずれも原告標章と類似しているものと認めら れる。
・・・
P1は,被告会社設立時のただ一人の取締役として代表取締役を務め,平成\n26年8月1日まで,その職にあったが,その間,被告標章1を使用した被告商品 をP3に委託して製造し,P4に販売していた(甲3)。
イ P1が代表取締役を務めている間に,被告会社は,原告から平成24年11\n月14日付け及び同年12月13日付けの内容証明郵便で,被告標章1の使用が不 正競争行為に当たる旨の警告を受け,被告会社は被告標章1の使用を平成25年4 月頃に止め,その後,被告標章2を使用した被告商品を販売するようになった。な お,被告標章2を使用した被告商品の一括表示には,被告商品の箱記載の商品名で\nある被告標章2とは異なる被告標章4が記載されていた(甲24)。
ウ P2は,平成26年8月1日付けで被告会社の取締役に就任するともに代表\n取締役に就任し,同日,P1は,被告会社の代表取締役及び取締役を辞任した。ま\nた,被告会社は,同日付けで本件所在地をリーガロイヤルホテル大阪の住所地に移 転する旨の登記をした(甲3,甲23)。
エ 原告は,同年9月29日付けで,被告会社宛てに変更後の被告標章2の使用 も不正競争行為に当たる旨警告する内容証明郵便を送付したが,リーガロイヤルホ テル大阪の住所地へは郵送できなかった(甲22,甲24)。
オ 被告会社は,平成27年4月頃,被告標章2の使用を止め,同月頃から被告 商品に被告標章3を使用するようになった。
・・・
(2) 以上よりP1及びP2の会社法429条1項の損害賠償責任の有無について 検討するに,P1は,原告標章が周知となった後に設立された被告会社の唯一の取 締役であり,代表取締役として原告標章に類似する被告標章1を使用して,その唯\n一の事業である被告商品の販売事業を遂行していたものであり,その間,原告から 不正競争である旨の警告を受けるも,使用標章を類似の範囲にある被告標章2に変 更するに留めて同事業を継続させていたものである。 そしてP2は,平成26年8月1日にP1に替わって取締役に就任すると同時に 代表取締役に就任し,上記事業の遂行責任者となった者であるが,就任と同時に,\nその本店所在地を,リーガロイヤルホテル大阪の所在地に移転登記するなど,被告 商品の販売事業者を対外的に不明な状態にし,また原告が仮処分命令を申し立てた\n後も,これを争って,その販売を継続して事業を遂行し,本件仮処分命令が発令さ れた後も,販売先であるP4においては被告商品の販売を継続していた。 したがって,以上によれば,P1及びP2は,ともに被告会社が違法行為となる 不正競争行為に該当する事業を取締役として積極的に遂行したものとして,その職 務を行うことについて悪意とまで断ずることができなくとも,少なくとも重大な過 失があったことが認められるから,会社法429条1項に基づき,その在任期間に 上記不正競争により原告に生じた損害を賠償する責任があるものというべきである。
・・・
以上より,被告会社が,被告商品を販売したことにより受けた利益の額は,上記 ア認定の被告商品1個当たりの利益の額145円に上記イ認定の販売数量23万6 280個乗じて認定される3426万0600円であると認められる。

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平成29(ワ)29099  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年4月26日  東京地方裁判所(46部)

 法人格なき社団である「・・高等学校応援団山紫会」を著作権の譲受人として、差止および損害賠償が認められました。著作権法では、社団・財団も「法人」に含まれるとされています(2条6項)。
 上記1のとおり,本件写真の撮影者はAであるから,Aが本件写真の著作者であり,著作権者であったと認められる。そして,証拠(甲3の1,甲4)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成29年4月19日,Aから本件写真に係る著作権及び被告に対する本件不法行為に基づく損害賠償請求権(同日までに発生した請求権)を譲り受けたと認められる。

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平成27(ワ)21684  特許権  民事訴訟 平成30年4月20日  東京地方裁判所(40部)

 特許権侵害事件です。争点は、本件発明「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法」は製造方法の発明か、サポート要件違反、実施可能要件違反などです。製造会社だけでなく、商社、コンビニが被告とされています。裁判所は、製造方法の発明かについては判断することなく、サポート要件違反・実施可能\要件違反として無効と判断しました。
 ところで,耐食コーティングに用いる材料の種類や成分の違いにより, 缶内の飲料に与える影響に大きな差があることは,本件特許の出願日当時, 当業者に周知であるということができる(乙34〜36)。例えば,特開平 7−232737号公開特許公報(乙36)には,「エポキシ系樹脂組成物 を被覆した場合,ワイン系飲料に含まれる亜硫酸ガス(SO2)をはじめと するガスに対するガスバリヤー性が劣っており,かつフレーバー成分の収 着性が高い。例えば,ワイン系飲料等を充填した場合,含有する亜硫酸ガ ス(SO2)が塗膜を通過して下地の金属面を腐食する虞があり,場合によ っては内容物が漏洩することもある。この亜硫酸ガスは下地の金属と反応 して硫化水素(H2S)を発生させるが,この硫化水素(H2S)は悪臭の 主要因となるばかりでなく,飲料の品質保持のため必要な亜硫酸ガス(S O2)を消費するため飲料の品質を劣化させフレーバーを損なうこととな る。また,この樹脂組成物は飲料中のフレーバーを特徴付ける成分を収着 しやすく,飲料用金属容器の内面に被覆するには官能的に充分満足のでき\nるものではない。」(段落【0004】),「一方,ビニル系樹脂組成物を被覆 した場合,…エポキシ系樹脂組成物と同様に亜硫酸ガス(SO2)等に対す るガスバリヤー性に乏しく,やはり腐食や漏洩の危険性及び官能的な問題\nがある。」(段落【0005】)との記載がある。これによれば,耐食コーテ ィングに用いる材料や成分が,ワイン中の成分と反応してワインの味質等 に大きな影響を及ぼすことは,本件特許の出願日当時の技術常識であった ということができる。
上記のとおり,耐食コーティングに用いる材料の成分が,ワイン中の成 分と反応してワインの味質等に大きな影響を及ぼし得ることに照らすと, 本件明細書に記載された「エポキシ樹脂」以外の組成の耐食コーティング についても本件発明の効果を実現できることを具体例等に基づいて当業 者が認識し得るように記載することを要するというべきである。 この点,原告は,本件発明の課題は,ワイン中の遊離SO2,塩化物及び スルフェートの含有量を所定値以下にすることにより達成されるのであ り,耐食コーティングの種類によりその効果は左右されない旨主張する。 しかし,塗膜組成物の組成を変えることにより塗膜の物性が大きく変動し, 缶内の飲料に大きな影響を及ぼすことは周知であり(乙34の第1表,乙\n35の第2,3表等),ワイン中の遊離SO2,塩化物及びスルフェートの\n含有量を所定値以下にすれば,コーティングの種類にかかわらず同様の効 果を奏すると認めるに足りる証拠はない。
(4) 以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,具体例の開示がなく とも当業者が本件発明の課題が解決できると認識するに十分な記載があると\nいうことはできない。そこで,本件明細書に記載された具体例(試験)によ り当業者が本件発明の課題を解決できると認識し得たかについて,以下検討 する。
ア 本件明細書には,「パッケージングされたワインを,周囲条件下で6ヶ 月間,30℃で6ヶ月間保存する。50%の缶を直立状態で,50%の缶 を倒立状態で保存する。」(段落【0038】)との方法で試験が行われ た旨の記載がある。しかし,本件明細書には,当該「パッケージングされ たワイン」の「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の濃度,そ の他の成分の濃度,耐食コーティングに用いる材料や成分等については何 ら記載がなく,その記載からは,当該「パッケージングされたワイン」が 本件発明に係るワインであることも確認できない。
イ また,本件明細書には,試験方法について,「製品を2ヶ月の間隔を置 いて,Al,pH,°ブリックス(Brix),頭隙酸素及び缶の目視検査に関 してチェックする。…目視検査は,ラッカー状態,ラッカーの汚染,シー ム状態を含む。…官能試験は,味覚パネルによる認識客観システムを用い\nる。」(段落【0039】)との記載がある。「頭隙酸素」については, 乙29文献(4頁下から2行〜末行)に「ヘッドスペースの酸素は,アル ミニウムの放出に関して非常に重大である」との記載があるとおり,ワイ ンの品質に大きな影響を与え得る因子であり,「官能試験」はワインの味\n質の検査であるから,いずれもその方法や結果は効果の有無を認識する上 で重要である。しかし,本件明細書には,「頭隙酸素」のチェック結果や 「目視検査」の結果についての記載はなく,「官能試験」についても「味\n覚パネルによる認識客観システム」についての説明や試験結果についての 記載は存在しない。
ウ さらに,本件発明に係る特許請求の範囲はワイン中の三つの成分を特定 した上でその濃度の範囲を規定するものであるから,比較試験を行わない と本件発明に係る方法により所望の効果が生じることが確認できないが, 本件明細書の発明の詳細な説明には比較試験についての記載は存在しな い。このため,当業者は,本件発明で特定されている「遊離SO2」,「塩 化物」及び「スルフェート」以外の成分や条件を同程度としつつ,「遊離 SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の濃度を特許請求の範囲に記載 された数値の範囲外とした場合には所望の効果を得ることができないか どうかを認識することができない。 加えて,耐食コーティングについては,試験で用いられたものが本件明 細書に記載されている「エポキシ樹脂」かどうかも明らかではなく,まし て,エポキシ樹脂以外の材料や成分においても同様の効果を奏することを 具体的に示す試験結果は開示されていない。
エ 以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された「試験」は, ワインの組成や耐食コーティングの種類や成分など,基本的な数値,条件 等が開示されていないなど不十分のものであり,比較試験に関する記載も\n一切存在しない。また,当該試験の結果,所定の効果が得られるとしても, それが本件発明に係る「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の 濃度によるのか,それ以外の成分の影響によるのか,耐食コーティングの 成分の影響によるのかなどの点について,当業者が認識することはできな い。 そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明に実施例として記載された 「試験」に関する記載は,本件発明の課題を解決できると認識するに足り る具体性,客観性を有するものではなく,その記載を参酌したとしても, 当業者は本件発明の課題を解決できるとは認識し得ないというべきであ る。
オ この点,原告は,本件発明の特徴的な部分は,従来存在しなかった技術 思想であり,「塩化物」等の濃度には臨界的な意義もないので,その裏付 けとなる実験結果等の記載がないとしてもサポート要件には違反しない と主張する。 しかし,前記判示のとおり,特許請求の範囲に記載された構成の技術的\nな意義に関する本件明細書の記載は不十分であり,具体例の開示がなくて\nも技術常識から所望の効果が生じることが当業者に明らかであるという ことはできない。また,「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」 に係る濃度については,その範囲が数値により限定されている以上,その 範囲内において所望の効果が生じ,その範囲外の場合には同様の効果が得 られないことを比較試験等に基づいて具体的に示す必要があるというべ きである。
・・・
(5) 以上のとおり,本件発明に係るワインを製造することは困難ではないが, 本件発明の効果に影響を及ぼし得る耐食コーティングの種類やワインの組成 成分について,本件明細書の発明の詳細な説明には十分な開示がされている\nとはいい難いことに照らすと,本件明細書の発明の詳細の記載は,当業者が 実施できる程度に明確かつ十分に記載されているということはできず,特許\n法36条4項1号に違反するというべきである。

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平成27(ワ)21897等  著作権侵害行為差止等請求事件,損害賠償請求反訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月28日  東京地方裁判所

 データが入れられる前のデータベースシステムは、著作権法で保護されるデータベースではないと判断されました。
 原告は,原告が平成16年8月10日に完成させた同日版「eBASEserv er」は,1)合計22個の辞書がそれぞれ様々な辞書情報を備えており,データベ ースの体系的な構成の中で各データ項目と紐付けられて辞書網を構\成している点に 創作性が認められ,2)個々の辞書が,それ単独でも,体系的構成及び情報の選択に\nおいて創作性が認められるから,それ自体が,データベースの著作物と認められる べき旨主張する。 原告の主張によれば,「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事 業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデ\nータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることに\nよりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,この\nような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアであ\nる「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著 作権法2条1項10号の3)とは認められない。 原告は,「eBASEserver」に搭載されている辞書情報を「情報」と捉 え,この集合物をもって「データベース」と主張するものとも解されるが,原告の 主張によっても,これらの辞書ファイルは,商品情報の登録に際して,当該商品情 報のうち特定のデータ項目を入力する際に参照されるものにすぎないのであって, 辞書ファイルが備える個々の項目が,「電子計算機を用いて検索することができる ように体系的に構成」(著作権法2条1項10号の3)されていると認めることは\n困難である。 したがって,「eBASEserver」は,著作権法上の「データベース」に 当たるものとは認められないから,その創作性につき検討するまでもなく,データ ベースの著作物ということはできない。

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北京市高等裁判所(2017)京民終454 号、判決日:2018 年3月28日

中国で興味深い判決がなされました。 北京市高等裁判所は、複数の実行主体を含む方法クレームにおいて、当該方法を使用する装置を販売しているメーカの幇助責任を認めました(判決番号:(2017)京民終454 号、判決日:2018 年3月28日)。 中国では、寄与侵害の規定が制限的に運用されていましたが、今後は、当該判決のような幇助責任ありと認定されることも想定されます。
事件の概要など、詳しくは、林達劉グループ 北京林達劉知識産権代理事務所の

◆西電捷通VS ソニーのWAPI 特許侵害事件に関する検討
を参照ください。

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平成29(ネ)10087  専用実施権設定登録抹消登録等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年4月18日  知的財産高等裁判所(4部)  大阪地方裁判所

 1審は原告の主張を認めませんでしたが、知財高裁(4部)は、250万円の支払いを命じました。
他方,甲4契約の締結された当時,本件特許発明は実用化されたとはいえない段 階にあって事業の将来見込みが不確実であったところ,被控訴人は,控訴人に合計 2500万円の契約金を支払った。さらに,被控訴人は,少なくとも約1300万 円を支出して,本件特許発明に係る方法の実施に適するよう,汎用電子レンジを改 造して本件機械を開発した。本件機械の導入によって,歯科医院において本件特許 発明に係る方法を容易に実施できるようになり,被控訴人が歯科医院から義歯を預 かって本件特許発明を実施していたときよりも,顧客層が大きく拡大することに なった。このことは,本件特許発明を実施する上で必要な本件液の販売数が,平成 27年初めは月約700本であったところ,平成27年後半には月少なくとも約1 300本に増加していること(乙44)からも裏付けられる。 また,控訴人は,本件訴訟提起前の平成27年4月24日,被控訴人に対し,本 件機械と本件液の売上高の各3%の実施料の支払を求め,被控訴人は,暫定的支払 としつつも現在まで上記額の支払を継続し,控訴人はこれを受領している。 これらの事情のほか,本件訴訟に現れた事情を総合考慮すれば,本件機械の販売 に係る実施料は,売上高の6%をもって相当と認める。
(ウ) 控訴人の主張について
控訴人は,社会通念上相当な実施料は,本件機械の売上高から製造原価を控除し た額(粗利)の25%,そうでないとしても,本件機械の売上高の10%であると 主張する。 しかし,まず,粗利の額は,被控訴人の営業秘密である製造原価を明らかにしな ければ算定不能であること,売上高は双方にとって簡便かつ明確な算定基準となる\nこと,甲4契約においても販売価格と通常価格の差額(2条7項。具体的には加工 単価を基に算定している。)や第三者からの実施許諾料(同条8項)を算定基準と していることに照らせば,粗利ではなく売上高を算定基準とするのが当事者の意思 に合致するものと解される。そして,控訴人主張の利益三分法ないし四分法は,ラ イセンス料を定めるに際しての一つの指針にすぎず,売上高ないし粗利の25%を 原則的なライセンス料と考えることは相当でない。本件においても,前記(イ)のと おり,被控訴人自身が実施していた当時の実施料,被控訴人が契約締結時に支払っ た実施料や本件機械の開発費用等の先行投資額,本件機械の導入による顧客層の拡 大,従前の交渉経緯等を総合考慮すれば,売上高の6%をもって相当と認める。

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平成29(行ケ)10138  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年4月18日  知的財産高等裁判所

 サポート要件、実施可能要件について、無効理由なしとした審決が維持されました。\n
 原告は,図1に示された気体溶解装置は,加圧型気体溶解手段3によって生成さ れ,溶存槽4に貯留された水素水を気体溶解装置の内部で循環させるようには構成\nされておらず,図3に示された気体溶解装置は,その内部に,「溶存槽4(41,4 2)」に貯留された水素水を「加圧型気体溶解手段3」に送出する「加圧送水通路」 を備えてはいないから,本件発明1は,図1に示された気体溶解装置,図3に示さ れた気体溶解装置のいずれによってもサポートされていない旨主張する。 しかし,本件明細書には,図1に示された気体溶解装置について,「溶存槽4に保 存された液体は,降圧移送手段5である細管5a内で層流状態を維持して流れるこ とで降圧され(S6),水素水吐出口10から外部へ吐出される(S7)。」(【003 4】)との記載がある一方で,「本発明の気体溶解装置1は,加圧型気体溶解手段3 で加圧して気体を溶解した液体を,排出せずに循環して加圧型気体溶解手段3に送 り,循環した後に,降圧移送手段5に送る」(【0037】)との記載がある。したが って,図1に示された気体溶解装置は,加圧型気体溶解手段3によって生成され, 溶存槽4に貯留された水素水を気体溶解装置の内部で循環させるように構成されて\nいると認められる。 また,本件明細書には,前記イのとおり,本件発明1の「溶存槽」と「加圧型気体 溶解手段」との間に水素水を循環させる経路として,ウォーターサーバーを用いる 場合,水槽を用いる場合,加圧型気体溶解手段で加圧して気体を溶解した液体を, 排出せずに循環して加圧型気体溶解手段に送る経路を用いる場合の開示がある一方, これらの場合に循環の経路が限定されるとの記載や示唆はない。したがって,当業 者であれば,本件発明1においては,水素水が,これらの場合を含む何らかの経路 で循環すればよく,図3に示された気体溶解装置は,水素水を「送出し加圧送水し て循環させ」る経路の例示にすぎないことを理解できる。 よって,原告の主張は採用することができない。
・・・
原告は,請求項1及び8はウォーターサーバーを発明特定事項としていないが, 実施例1,3ないし13には,図3に示すウォーターサーバーに気体溶解装置を接 続した場合の実験条件しか記載されていない,また,実施例2は,図1に示す気体 溶解装置を用いたものであるが,どのように水素水を生成,循環させたのか不明で あるから,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件発明1及び8を実施できる程度 に明確かつ十分に記載されているとはいえない旨主張する。\nしかしながら,本件発明1及び8は,本件明細書に例示された,ウォーターサー バーを用いる場合,水槽を用いる場合,加圧型気体溶解手段で加圧して気体を溶解 した液体を,排出せずに循環して加圧型気体溶解手段に送る場合を含む,何らかの 経路により水素水を循環させるものであることは,前記2(3),(4)で検討したとおり である。そして,本件明細書には,ウォーターサーバーを用いた実施例1,3ないし 13の実験条件が,他の経路により循環させる構成について当てはまらないと解す\nべき根拠となる記載はない。 また,実施例2についても,加圧型気体溶解手段で加圧して気体を溶解した液体 を,排出せずに循環して加圧型気体溶解手段に送る場合を含む,何らかの経路によ り水素水を循環させるものであると理解することができる。 そうすると,当業者は,本件明細書の発明の詳細な説明を参考にして,本件発明 1及び8を実施することができるといえるから,原告の主張は採用できない。

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平成29(行ケ)10078  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年4月17日  知的財産高等裁判所

 4条8,10、15、19号違反とした審決について、理由に誤りはあるが結論において妥当として審決が維持されました。商標は「戸田派武甲流薙刀術」(標準文字)です。
 前記認定の諸事実及び本件商標の登録出願の経緯によれば,本件商標が,その登 録出願時及び登録査定時に出所として表示するのは,古武道の一流派である本件流\n派そのものであって,原告及び被告もこれに属するものであると認められる(なお, 原告が被告に対し本件流派から破門する旨を通知したことは,上記認定を左右する ものではない。)。 そして,本件商標は,その表記に応じて,本件流派(戸田派武甲流薙刀術)を,\n取引者,需要者に想起させるものであるから,客観的表記に基づく需要者の認識と\n登録出願の経緯等に基づく出所の主体の間にも齟齬はないものと認められる。 他方,審判における原告主張の無効理由のうち,商標法4条1項8号に関して主 張する「他人」とは,「遅くとも昭和10年以降,代表者として宗家を置き,「戸田\n派武甲流薙刀術」との名称で薙刀術の教授等をしている社団」であるから,本件流 派そのものである。同条1項10号に関して主張する「他人」の商標とは,「「戸田 派武甲流薙刀術」の教授等の役務を示すものとして需要者の間で広く認識されてい る商標」であって,本件流派を出所とする商標である。同条1項15号に関して主 張する「他人」とは,「原告が宗家代理を務める本件流派」と記載されるが,実質的 には,原告が宗家代理を務める本件流派に限定されるものではなく,遅くとも昭和 10年以降,代表者として宗家を置き「戸田派武甲流薙刀術」の教授等を行ってき\nた本件流派を「他人」として主張するものと善解される。同条1項19号に関して 主張する「他人」とは,「需要者の間で著名な「戸田派武甲流薙刀術」」であるから, 本件流派そのものである。 以上のとおり,原告が無効理由として主張する商標法4条1項8号,10号,1 5号及び19号における「他人」とは,いずれも本件流派を指すものであるところ, 本件商標がその出所として表示するのも,本件流派そのものであるから,両者は同\n一であるといえる。そうすると,前記各号に関して原告が主張する「他人」が,本 件商標が出所を表示する主体と異なる者とは認められないから,前記(1)のとおり, 商標法4条1項8号,10号,15号及び19号に基づいて,本件商標が商標登録 を受けることができない商標と認めることはできず,原告の主張は,理由がないも のといわざるを得ない。 この点,審決は,先代宗家から,本件流派の運営及び管理等を原告と共に依頼さ れた被告が流儀代表手続をしたことが不当なものとまでいうことができないとした\n上で,被告が,振興会の常任理事会において,本件流派の流儀代表者として了承さ\nれた後,古武道大会等に本件流派の代表者として参加しており,各種新聞,雑誌に\nおいて,本件流派の代表者として掲載されているといった事情を考慮して,被告は,\n本件商標の登録出願時及び登録査定時に本件流派との関係において,商標法4条1 項8号,10号,15号及び19号に規定する「他人」に該当するということはで きないと判断した。 しかしながら,本件商標がその出所として表示するのは,古武道の一流派である\n本件流派そのものであることは前記のとおりであり,被告個人が,本件商標につい て,本件流派との関係において,上記「他人」に該当するか否かは,商標法4条1 項8号,10号,15号及び19号該当性の判断に,直ちに影響を及ぼすものでは ない(原告は,被告が商標登録した本件商標が,「他人」である本件流派との関係で 無効理由があると主張するものと解される。)。 したがって,審決が,本件商標の出所等を検討することなく,被告個人が,本件 流派との関係において,上記「他人」に該当しないことを理由に,商標法4条1項 8号,10号,15号及び19号該当性の判断をした点には誤りがあるといわざる を得ない。しかしながら,本件商標について,商標法4条1項8号,10号,15 号及び19号に該当しないとの審決の判断は,結論において誤りはないといえる。
(3) 原告の主張について
原告は,本件流派の宗家代理の地位にあり次期宗家の決定権限を有する原告が承 認しないにもかかわらず,被告が,本件流派の宗家であると名乗った上で,振興会 等に登録手続を行い,演武大会に出場し,また,原告に無断で本件商標の登録出願 手続をしたなどと主張する。 しかしながら,本件商標がその出所の主体として表示するのは,古武道の一流派\nである本件流派そのものであって,原告が他人として主張する団体と同一のもので あることは前記のとおりであり,本件商標の登録出願の経緯や本件流派の代表者が\n原告であるのか否かなどの点については,本件商標について原告が無効理由として 主張する商標法4条1項8号,10号,15号及び19号該当性に関する前記判断 を左右するものではない。

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平成28(ワ)27057  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年4月13日  東京地方裁判所

 特許侵害訴訟において、進歩性無しとして、請求棄却されました。
 以上のとおり,乙9〜12によれば,光学的センサの周辺部に位置す る受光素子に入射する光束の光量が減少するのを防止するため,「読み 取り対象からの反射光が絞りを通過した後に結像レンズに入射するよう, 絞りを配置することによって,光学的センサから射出瞳位置までの距離 を相対的に長く設定」するという構成とすることは,本件特許出願当時,ビデオカメラ等の分野において周知であったと認めることができる。
(イ) 原告は,ビデオカメラ等と2次元バーコードリーダーの技術的意義は 異なるので,当業者がビデオカメラ分野の技術(乙9〜12)を当然の こととして2次元コードリーダの読取装置に適用することを考えるもの ではないと主張する。 しかし,その主たる目的が色彩等の再現性にあるか2次元バーコード の読取りにあるかという点で異なる面があるとしても,集光レンズ付き CCDエリアセンサを通常の目的で使用する限りは,光学的センサの周 辺部に位置する受光素子に入射する光束の光量が減少することにより光 学素子に入射する光束の光量が低下して検出感度が低下するという課題 は共通しており,当業者であれば,2次元バーコードリーダーにおける 同課題の解決のため,光学系の近接した技術分野であるスチルカメラ, デジタルカメラ,ビデオカメラ等の技術を適用することについての動機 付けを得ることは容易であるというべきである。 そして,前記(1)ウのとおり,ICX084ALデータシート(乙39) には,ICX084ALが2次元バーコードリーダー,PCインプット カメラに適している旨の記載が,1995年9月25日付けの日経エレ クトロニクス(乙64の3)には,ICX084ALを含むソニーの全画素読出し方式CCDが電子スチルカメラ,2次元バーコードリーダー\n等に適している旨の記載があり,また,平成9年7月13日付け日経産 業新聞(乙57)には,「バーコード読み取り手持ち型機器を発売・・・ デジタルカメラの技術を応用し」との記載があることも,バーコードリ ーダーとデジタルカメラとが技術を共通にする関係にあることを裏付け るものということができる。

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平成29(行ケ)10051  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年4月12日  知的財産高等裁判所(3部)

 暗号化回路について、実施可能要件違反とした審決が維持されました。\n
 そうすると,本願発明の目的である「サイドチャネルを利用した攻撃 から回路を保護すること」は,段落【0009】,【0010】及び 【0041】で言及されているサイドチャネルを利用した攻撃から関数 鍵 kc を保護することを意味し,この保護は関数鍵 kc を第2の鍵(又は 非機能の鍵)ki でマスクする,すなわち kc と ki を XOR 演算することに よって達成されるものと理解される。換言すれば,本願発明の暗号回路 においてサイドチャネルを利用した攻撃の目標として想定されているの は関数鍵 kc であり,この関数鍵 kc をそのような攻撃から保護するため に第2の鍵 ki を必要とし,関数鍵 kc を第2の鍵 ki と XOR 演算すること によってマスクする(マスク鍵 kc(+)ki とする)という方法によって,関 数鍵 kc の保護が達成されるものと把握される。 さらに,本願明細書等には,サイドチャネルを利用した攻撃の具体的 な目標として関数鍵 kc 以外のものは記載されていない。 このように,本願発明が想定している攻撃目標は関数鍵 kc であり, それ以外の攻撃目標を想定しない以上,本願発明の暗号回路が出力する 暗号文 y の秘密性は関数鍵 kcに依拠し,暗号文の計算手順(すなわち本 願発明の「暗号化アルゴリズム」)に依拠するものではないと認められ る。そうであれば,関数鍵 kc が判明すれば,本願発明により出力され る暗号文 y を解読し得ることになる。これは,本願発明の暗号回路が出 力する暗号文 y の暗号鍵が関数鍵 kcであることを意味する。すなわち, 本願発明は,秘密情報である関数鍵 kcを用いて平文 x から暗号文 y を計 算する関数を F で表したとき,y=F(x,kc)を満たす暗号文 y を出力す る暗号回路であると認められる(以下,この技術思想を「本願技術思想 1)」という。)。 このように理解することは,本願明細書等の「関数鍵 kc が回路21 の暗号化を実施する役割を果たす。この暗号化は例えばレジスタ22の 内部で入力変数 x を暗号化された変数 y=DES(x,kc)に変換する DES アルゴリズム23である。」(【0040】)との記載とも整合する。
・・・
上記本願技術思想1)及び2)によれば,本願発明の暗号回路を具現化 するためには,暗号回路によって実際に計算された暗号文と,暗号化ア ルゴリズム F に基づいて計算された暗号文とが等しいこと,すなわち G(x,kc(+)ki)=F(x,kc) を満たすことが要求される(以下,この要求を「本願発明の技術的要求」 という。)。 しかし,本願発明の技術的要求を満たす関数 G を構成する計算方法\nが,当業者の技術常識に鑑みて自明であると認めるに足りる証拠はない。 そこで,G(x,kc(+)ki)の具体的な計算方法が本願明細書等に示されて いるかについて,以下検討する。
・・・
以上のとおり,本願明細書等の図1及び2に示される回路において は,そもそもマスク鍵 kc(+)ki が計算されているとは認められないこと から,両図の回路をもって関数 G(x,kc(+)ki)の具体的態様を開示し たものということはできない。 d また,段落【0028】記載の「【数2】K(+)M」は,2つの値が XOR 演算されているという点で本願発明のマスク鍵と共通するもの の,記号が異なることから,本願発明を説明したものとは認められな い。

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平成29(行ケ)10180  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月28日  知的財産高等裁判所

 審決では動機付け無しとして進歩性違反なしと判断されていました。知財高裁(2部)は動機付けありとして、審決を取り消しました。
 登記識別情報保護シールを登記識別情報通知書に何度も貼り付け,剥離すること\nを繰り返すと,粘着剤層が多数積層して,登記識別情報を読み取りにくくなるとい う登記識別情報保護シールにおける本件課題は,登記識別情報保護シールを登記識 別情報通知書に何度も貼り付け,剥離することを繰り返すと必然的に生じるもので\nあって,登記識別情報保護シールの需要者には当然に認識されていたと考えられる (甲15)。現に,本件原出願日の5年以上前である平成21年9月30日には, 登記識別情報保護シールの需要者である司法書士に認識されていたものと認められ る(甲26の3)。そして,登記識別情報保護シールの製造・販売業者は,需要者 の要求に応じた製品を開発しようとするから,本件課題は,本件原出願日前に,当 業者において周知の課題であったといえる。 そうすると,本件課題に直面した登記識別情報保護シールの技術分野における当 業者は,粘着剤層の下の文字(登記識別情報)が見えにくくならないようにするた めに,粘着剤層が登記識別情報の上に付着することがないように工夫するものと認 められる。甲3発明は,秘密情報に対応する部分には実質的に粘着剤が設けられて いないものであり,甲3発明と甲1発明は,秘密情報保護シールであるという技術 分野が共通し,一度剥がすと再度貼ることはできないようにして,秘密情報の漏洩\nがあったことを感知するという点でも共通する。したがって,甲1発明に甲3発明 を適用する動機付けがあるといえる。 甲1発明に甲3発明を適用すると,粘着剤層が登記識別情報の上に付着すること がなくなり,本件課題が解決される。したがって,甲1発明において,甲3発明を 適用し,相違点に係る構成とすることは,当業者が容易に想到するものと認められ\nる。
ウ 被告の主張について
(ア) 被告は,甲3発明には,シールを何度も貼り付け,剥離することを繰\nり返すという課題は存在せず,その使用目的から容器又はシールを使い回すことは 倫理上許されないから本件課題とは矛盾し,阻害要因がある,と主張する。 しかし,甲3発明のシールは何度も貼り付け,剥離することを予\定されていない としても,一度剥がした後に新たなシールを貼付することは可能\である。また,甲 3発明が,医療,保健衛生分野において使用される検体用容器等に使用される場合 には,何度も貼り付け,剥離することはないのは,検体用容器等の用途がそのよう\nなものであるからであって,甲3発明自体の作用,機能に基づくものではなく,甲\n3発明は保健,衛生分野に限って使用されるものではないから,甲1発明と組み合 わせるのに阻害要因があるとはいえない。したがって,被告の主張には,理由がな い。

◆判決本文

同じ特許発明に関する別の無効審判の取消事件です。 こちらも進歩性無しと判断されました。

◆平成29(行ケ)10176

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平成29(行ケ)10139  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年4月16日  知的財産高等裁判所

 条件判断を入れ替えると、技術的意義に変動が生じるので単なる設計事項ではないとして、進歩性なしとした拒絶審決を知財高裁は取り消しました。
 引用発明の衝突対応車両制御は,衝突対応制御プログラムが実行されることによ って行われる。同プログラムは,S1の自車線上存在物特定ルーチン及びS2のA CC・PCS対象特定ルーチンにおいて,自車線上の存在物であるか否かという条 件の充足性が判断され,その後に処理されるS5のACC・PCS作動ルーチンに おいて,自車両の速度,ブレーキ操作部材の操作の有無,自車両と直前存在物との 衝突時間や車間時間等の条件に応じて,特定のACC制御やPCS制御が開始され, 又は開始されないというものである。
(イ) 条件判断の順序の入替えについて
本願補正発明では,ターゲット物体との相対移動の検知に応答してアクションを 始動するように構成された後に,自車線上にある存在物を特定し,アクションの始\n動を無効にするという構成が採用されている。したがって,引用発明を,相違点に\n係る本願補正発明の構成に至らしめるためには,少なくとも,まず,自車線上の存\n在物であるか否かという条件の充足性判断を行い,続いて,特定のACC制御やP CS制御を開始するために自車両の速度等の条件判断を行うという引用発明の条件 判断の順序を入れ替える必要がある。 しかし,引用発明では,S1及びS2において,自車線上の存在物であるか否か という条件の充足性が判断される。この条件は,ACC制御,PCS制御の対象と なる前方存在物を特定するためのものである(引用例【0091】)。そして,引 用発明は,これにより,多数の特定存在物の中から,自車線上にある存在物を特定 し,ACC制御,PCS制御の対象となる存在物を絞り込み,ACC制御,PCS 制御のための処理負担を軽減することができる。一方,ACC制御,PCS制御の 対象となる存在物を絞り込まずに,ACC制御,PCS制御のための処理を行うと, その処理負担が大きくなる。このように,引用発明において,自車線上の存在物で あるか否かという条件の充足性判断を,ACC制御,PCS制御のための処理の前 に行うか,後に行うかによって,その技術的意義に変動が生じる。 したがって,複数の条件が成立したときに特定のアクションを始動する装置にお いて,複数の条件の成立判断の順序を入れ替えることが通常行い得る設計変更であ ったとしても,引用発明において,まず,特定のACC制御やPCS制御を開始す るために自車両の速度等の条件判断を行い,続いて,自車線上の存在物であるか否 かという条件の充足性判断を行うという構成を採用することはできない。\nよって,引用発明における条件判断の順序を入れ替えることが,単なる設計変更 であるということはできないから,相違点に係る本願補正発明の構成は,容易に想\n到することができるものではない。
(ウ) 本件周知技術の適用
a 引用発明における条件判断の順序を入れ替えることが単なる設計変更であっ たとしても,条件判断の順序を入れ替えた引用発明は,まず,自車両の速度等の条 件判断がされ,続いて,自車線上の存在物であるか否かという条件の充足性が判断 され,その後,特定のACC制御やPCS制御が開始され,又は開始されないもの になる。そして,これに本件周知技術を適用できたとしても,本件周知技術を適用 した引用発明は,まず,自車両の速度等の条件判断がされ,続いて,自車線上の存 在物であるか否かという条件の充足性が判断され,その後,特定のACC制御やP CS制御が開始され,又は開始されないものになり,加えて,特定の条件を満たし た場合には,当該ACC制御やPCS制御の始動が無効になるにとどまる。 ここで,本件周知技術を適用した引用発明は,特定の条件を満たした場合に,P CS制御等の始動を無効にするものである。そして,本件周知技術を適用した引用 発明においては,PCS制御等の開始に当たり,既に,自車線上の存在物であるか 否かという条件の充足性が判断されているから,自車線上の存在物であるか否かと いう条件を,再度,PCS制御等の始動を無効にするに当たり判断される条件とす ることはない。 これに対し,相違点に係る本願補正発明の構成は,「横方向オフセット値に基づ\nいて」,すなわち,自車線上の存在物であるか否かという条件の充足性判断に基づ いて,少なくとも1のアクションの始動を無効にするものである。 したがって,引用発明に本件周知技術を適用しても,相違点に係る本願補正発明 の構成には至らないというべきである。
b なお,本件周知技術を適用した引用発明は,自車両の速度等の条件判断と, それに続く,自車線上の存在物であるか否かという条件の充足性判断をもって,P CS制御等を開始するものである。PCS制御等の開始を,自車線上の存在物であ るか否かという条件の充足性判断よりも前に行うことについて,引用例には記載も 示唆もされておらず,このことが周知慣用技術であることを示す証拠もない。 したがって,引用発明に本件周知技術を適用しても,その発明は相違点に係る本 願補正発明の構成には至らないところ,さらに,PCS制御等の開始を,自車線上\nの存在物であるか否かという条件の充足性判断よりも前に行うことにより,当該発 明を,相違点に係る本願補正発明の構成に至らしめることができるものではない。
c そもそも,本願補正発明では,ターゲット物体との相対移動の検知に応答し てアクションを始動するように構成された後に,自車線上にある存在物を特定し,\nアクションの始動を無効にするという構成が採用されている。本願補正発明は,タ\nーゲット物体との相対移動の検知に応答してアクションを始動するという既存の構\n成に,当該構成を変更することなく,単に,自車線上の存在物であるか否かという\n条件の充足性判断を付加することによって,アクションの始動を無効にするという ものであり,引用発明とは技術的思想を異にするものである。
(エ) 以上のとおり,引用発明における条件判断の順序を入れ替えることが単な る設計変更ということはできず,また,引用発明に本件周知技術を適用しても,相 違点に係る本願補正発明の構成には至らないというべきであるから,相違点に係る\n本願補正発明の構成は,引用発明に基づき,容易に想到できたものとはいえない。\n

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平成29(行ケ)10208  審決取消請求事件  行政訴訟 平成30年4月11日  知的財産高等裁判所(4部)

 商標「マイナンバー実務検定」が商標法4条1項6号、11号違反とした審決が維持されました。先願既登録商標として、「マイナンバー」(標準文字)(第5756402号)がありました。
 イ 本願商標の「マイナンバー」の構成部分を類否判断の対象とすることの可否\n本願商標は,「マイナンバー実務検定」というものであり,その全体の構成から,\n「マイナンバージツムケンテイ」との称呼を生じ,「マイナンバーについての実務検 定」との観念を生じる。 また,本願商標の「マイナンバー」の構成部分は,著名な標章である「マイナンバ\nー」とその構成文字を同じくするものであるから,当該構\成部分は,役務の出所識 別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。 他方,本願商標の指定役務には,「検定試験の企画・運営又は実施及びこれらに関 する情報の提供」,「検定試験受験者へのセミナーの開催及びこれらに関する情報の 提供」が含まれるところ,本願商標の「実務検定」の構成部分は,上記指定役務との\n関係では,「実務」の「検定」であることを一般的に表示するものにすぎず,当該構\ 成部分から役務の出所識別標識としての称呼,観念は生じないというべきである。 以上によれば,本願商標からは,「マイナンバージツムケンテイ」との称呼及び「マ イナンバーについての実務検定」との観念のみならず,「マイナンバー」との称呼及 び著名な標章である「マイナンバー」と同一の観念,すなわち,「マイナンバー法に 基づく社会保障・税番号又は個人番号,社会保障・税番号制度であるマイナンバー 制度」との観念も生じ得る。 よって,本願商標のうち,「マイナンバー」という構成部分を抽出し,当該構\成部 分のみを引用商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきであ る。
・・・・
 原告は,本願商標からは,「マイナンバー実務検定」としての一連の称呼,観念の みを生じると主張する。
1)原告が,文部科学大臣の許可法人,文部科学省生涯学習政策局の所管の団体と して,平成11年10月15日に設立が認可された一般財団法人であり(甲67, 129),情報教育に関する技能検定試験を実施し,また,情報教育に関する講習会\nを開催するとともに,情報学習に関する調査研究及び出版物の刊行を行うことによ り,情報に係る生涯学習を推進していること(甲68),2)原告が,産経新聞社,角 川アスキー総合研究所の後援を得て,平成27年8月2日から平成29年12月1 7日までの間に,全国の主要都市の合計138会場において,12回にわたり,「マ イナンバー実務検定」との名称の検定試験を実施しており,その受験申込者は,合\n計4万5968名に達していること(甲69〜71,82〜95,112,133, 134),3)原告が,ウェブサイト「マイナンバー実務検定」を紹介するほか(甲7 0,71),「マイナンバー実務検定」の広告動画を大手動画サイトであるYouT ubeにアップロードし(甲72,74,123〜126),テレビでコマーシャル 映像を合計502回放映し(甲73,116,117の1〜6,127,128,1 35,136の1〜4,137〜143,144の1・2),新聞にも広告記事を掲 載し(甲75,76,133,134),いずれにおいても,「マイナンバー実務検 定」の文字が表示されていること,4)原告が,「マイナンバー実務検定」に関するパ ンフレット,案内ビラ,ポスター等を作成の上,配布又は展示しており(甲77〜9 4,118),これらにおいても,「マイナンバー実務検定」の文字が表示されている\nこと,5)原告が,マイナンバー実務検定のテキストや過去問題集等を発行しており (甲97〜102,131,132),その印刷部数は,平成29年5月の時点で, Web販売のみの7000部を含めて3万部に達し(甲119,120),その全て に「マイナンバー実務検定」の文字が表示されていること等の取引の実情に照らす\nなら,本願商標に,一定の周知性はあるものと認められる。 しかし,本願商標の「マイナンバー」の構成部分が,役務の出所識別標識として強\nい印象を与えるのに対して,「実務検定」の構成部分は,役務の出所識別標識として\nの呼称,観念を生じるものではないことから,「マイナンバー」の構成部分を抽出し,\nこの部分だけを引用商標と比較して商標の類否を判断することが許されることは, 前記イのとおりである。そうすると,本願商標から「マイナンバー実務検定」として の一連の称呼及び観念を生じるほか,「マイナンバー」の構成部分のみを抽出した場\n合には,「マイナンバー」との称呼や,「マイナンバー法に基づく社会保障・税番号又 は個人番号,社会保障・税番号制度であるマイナンバー制度」との観念も生じるか ら,本願商標から,「マイナンバー実務検定」としての一連の称呼,観念のみを生じ るとはいえない。

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平成28年(行ケ)第10182号 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成30年4月13日 知的財産高等裁判所(特別部)

 知財高裁大合議の判断です。「無効審判不成立の審決に対する取消の訴えの利益は,特許権消滅後であっても,損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり,刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情がない限り,失なれない。」および「刊行物に化合物が一般式の形式で記載され,当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合には,特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り,当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず,これを引用発明と認定できない。」と判断しました。
 本件審判請求が行われたのは平成27年3月31日であるから,審判 請求に関しては同日当時の特許法(平成26年法律第36号による改正前の特許法) が適用されるところ,当時の特許法123条2項は,「特許無効審判は,何人も請求 することができる(以下略)」として,利害関係の存否にかかわらず,特許無効審判 請求をすることができる旨を規定していた(なお,冒認や共同出願違反に関しては 別個の定めが置かれているが,本件には関係しないので,触れないこととする。こ の点は,以下の判断においても同様である。)。 このような規定が置かれた趣旨は,特許権が独占権であり,何人に対しても特許 権者の許諾なく特許権に係る技術を使用することを禁ずるものであるところから, 誤って登録された特許を無効にすることは,全ての人の利益となる公益的な行為で あるという性格を有することに鑑み,その請求権者を,当該特許を無効にすること について私的な利害関係を有している者に限定せず,広く一般人に広げたところに あると解される。 そして,特許無効審判請求は,当該特許権の存続期間満了後も行うことができる のであるから(特許法123条3項),特許権の存続期間が満了したからといって, 特許無効審判請求を行う利益,したがって,特許無効審判請求を不成立とした審決 に対する取消しの訴えの利益が消滅するものではないことも明らかである。
イ 被告は,特許無効審判請求を不成立とした審決に対する特許権の存続期 間満了後の取消しの訴えについて,東京高裁平成2年12月26日判決を引用して, 訴えの利益が認められるのは当該特許権の存在による審判請求人の法的不利益が具 体的なものとして存在すると評価できる場合のみに限られる旨主張する。 しかし,特許権消滅後に特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの 訴えの利益が認められる場合が,特許権の存続期間が経過したとしても,特許権者 と審判請求人との間に,当該特許の有効か無効かが前提問題となる損害賠償請求等 の紛争が生じていたり,今後そのような紛争に発展する原因となる可能性がある事実関係があることが認められ,当該特許権の存在による審判請求人の法的不利益が\n具体的なものとして存在すると評価できる場合のみに限られるとすると,訴えの利 益は,職権調査事項であることから,裁判所は,特許権消滅後,当該特許の有効・ 無効が前提問題となる紛争やそのような紛争に発展する可能性の事実関係の有無を調査・判断しなければならない。そして,そのためには,裁判所は,当事者に対し\nて,例えば,自己の製造した製品が特定の特許の侵害品であるか否かにつき,現に 紛争が生じていることや,今後そのような紛争に発展する原因となる可能性がある事実関係が存在すること等を主張することを求めることとなるが,このような主張\nには,自己の製造した製品が当該特許発明の実施品であると評価され得る可能性がある構\成を有していること等,自己に不利益になる可能\性がある事実の主張が含ま\nれ得る。 このような事実の主張を当事者に強いる結果となるのは,相当ではない。
ウ もっとも,特許権の存続期間が満了し,かつ,特許権の存続期間中にさ れた行為について,何人に対しても,損害賠償又は不当利得返還の請求が行われた り,刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情が存する場合,例えば,特許権の存続期間が満了してから既に20年が経過した場合等\nには,もはや当該特許権の存在によって不利益を受けるおそれがある者が全くいな くなったことになるから,特許を無効にすることは意味がないものというべきであ る。したがって,このような場合には,特許無効審判請求を不成立とした審決に対す る取消しの訴えの利益も失われるものと解される。
エ 以上によると,平成26年法律第36号による改正前の特許法の下にお いて,特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益は,特許 権消滅後であっても,特許権の存続期間中にされた行為について,何人に対しても, 損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり,刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情がない限り,失われることはない。\nオ 以上を踏まえて本件を検討してみると,本件において上記のような特段 の事情が存するとは認められないから,本件訴訟の訴えの利益は失われていない。
(2) なお,平成26年法律第36号による改正によって,特許無効審判は,「利 害関係人」のみが行うことができるものとされ,代わりに,「何人も」行うことがで きるところの特許異議申立制度が導入されたことにより,現在においては,特許無効審判請求をすることができるのは,特許を無効にすることについて私的な利害関\n係を有する者のみに限定されたものと解さざるを得ない。 しかし,特許権侵害を問題にされる可能性が少しでも残っている限り,そのような問題を提起されるおそれのある者は,当該特許を無効にすることについて私的な\n利害関係を有し,特許無効審判請求を行う利益(したがって,特許無効審判請求を 不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益)を有することは明らかであるから, 訴えの利益が消滅したというためには,客観的に見て,原告に対し特許権侵害を問 題にされる可能性が全くなくなったと認められることが必要であり,特許権の存続期間が満了し,かつ,特許権の存続期間中にされた行為について,原告に対し,損\n害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり,刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情が存することが必要であると解すべきである。\n
・・・
特許法29条1項は,「産業上利用することができる発明をした者は,次に掲げる 発明を除き,その発明について特許を受けることができる。」と定め,同項3号とし て,「特許出願前に日本国内又は外国において」「頒布された刊行物に記載された発 明」を挙げている。同条2項は,特許出願前に当業者が同条1項各号に定める発明 に基づいて容易に発明をすることができたときは,その発明については,特許を受 けることができない旨を規定し,いわゆる進歩性を有していない発明は特許を受け ることができないことを定めている。
上記進歩性に係る要件が認められるかどうかは,特許請求の範囲に基づいて特許 出願に係る発明(以下「本願発明」という。)を認定した上で,同条1項各号所定の 発明と対比し,一致する点及び相違する点を認定し,相違する点が存する場合には, 当業者が,出願時(又は優先権主張日。以下「3 取消事由1について」において 同じ。)の技術水準に基づいて,当該相違点に対応する本願発明を容易に想到するこ とができたかどうかを判断することとなる。
このような進歩性の判断に際し,本願発明と対比すべき同条1項各号所定の発明 (以下「主引用発明」といい,後記「副引用発明」と併せて「引用発明」という。) は,通常,本願発明と技術分野が関連し,当該技術分野における当業者が検討対象 とする範囲内のものから選択されるところ,同条1項3号の「刊行物に記載された 発明」については,当業者が,出願時の技術水準に基づいて本願発明を容易に発明 をすることができたかどうかを判断する基礎となるべきものであるから,当該刊行 物の記載から抽出し得る具体的な技術的思想でなければならない。そして,当該刊 行物に化合物が一般式の形式で記載され,当該一般式が膨大な数の選択肢を有する 場合には,当業者は,特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を積極的あるいは優 先的に選択すべき事情がない限り,当該刊行物の記載から当該特定の選択肢に係る 具体的な技術的思想を抽出することはできない。 したがって,引用発明として主張された発明が「刊行物に記載された発明」であ って,当該刊行物に化合物が一般式の形式で記載され,当該一般式が膨大な数の選 択肢を有する場合には,特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に 選択すべき事情がない限り,当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出す ることはできず,これを引用発明と認定することはできないと認めるのが相当であ る。
この理は,本願発明と主引用発明との間の相違点に対応する他の同条 1 項3号所 定の「刊行物に記載された発明」(以下「副引用発明」という。)があり,主引用発 明に副引用発明を適用することにより本願発明を容易に発明をすることができたか どうかを判断する場合において,刊行物から副引用発明を認定するときも,同様で ある。したがって,副引用発明が「刊行物に記載された発明」であって,当該刊行 物に化合物が一般式の形式で記載され,当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場 合には,特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を積極的あるいは優先的に選択す べき事情がない限り,当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出すること はできず,これを副引用発明と認定することはできないと認めるのが相当である。 そして,上記のとおり,主引用発明に副引用発明を適用することにより本願発明 を容易に発明をすることができたかどうかを判断する場合には,1)主引用発明又は 副引用発明の内容中の示唆,技術分野の関連性,課題や作用・機能の共通性等を総\n合的に考慮して,主引用発明に副引用発明を適用して本願発明に至る動機付けがあ るかどうかを判断するとともに,2)適用を阻害する要因の有無,予測できない顕著\nな効果の有無等を併せ考慮して判断することとなる。特許無効審判の審決に対する 取消訴訟においては,上記1)については,特許の無効を主張する者(特許拒絶査定 不服審判の審決に対する取消訴訟及び特許異議の申立てに係る取消決定に対する取\n消訴訟においては,特許庁長官)が,上記2)については,特許権者(特許拒絶査定 不服審判の審決に対する取消訴訟においては,特許出願人)が,それぞれそれらが あることを基礎付ける事実を主張,立証する必要があるものということができる。

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平成28(ワ)29320  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月29日  東京地方裁判所(46部)

 技術的範囲に属すると判断されました。損害額として102条2項を主張しましたが、売上げに寄与する程度が小さいとして、減額されました。
 上記(1)の記載によれば,本件発明1及び2は,熱可塑性樹脂発泡シートに 非発泡の熱可塑性樹脂フィルムを積層した発泡積層シートを成形してなる容 器について,熱可塑性樹脂発泡シートと熱可塑性樹脂フィルムとの硬さの差 により,容器に触れた際に,硬いフィルムで指等を裂傷するおそれがあるが, 突出部の上下面に凹凸を形成すると,蓋体を外嵌させる際に突起部が係合さ れる突出部の下面側にも凹凸形状が形成されることとなって強固な係合状態 を形成させることが困難となり,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体などを強 固に止着させることが困難であるという課題を,本件発明1の構成,特に上\n記端縁部の上面に凹凸形状を形成する一方で下面は平坦とする形状とするこ とによって解決することとしたものということができる。 また,上記(2)の記載を参酌すると,本件発明1及び2は,上記端縁部を, 厚みが圧縮されて薄肉化されたもので,かつ,上面に凹凸形状が存在するも のとすることにより,その強度を強め,これによって蓋体を強固に止着させ るという課題を解決するものということができる。 以上によれば,本件発明1及び2は,容器の突出部の端縁部の形状につい て,上面に他の部分との厚みの差を付けて凹凸形状を形成するという形状と することで端縁部での怪我を防止するとの課題を解決し,端縁部につき上記 の端縁部の形状とすることに加えて下面を平坦にすることで,蓋の強固な止 着を実現するという課題を解決し,これによって上記各課題の双方を解決す ることを技術的意義とする発明である。

・・・・
 以上によれば,本件明細書においても,発明の構成につき特許請求の範\n囲の記載と同様の記載がされ,その実施例においても,側周壁部の上端縁 であり,被収容物が収容される収容凹部のへりといえる開口縁から外側に 張り出して形成されているものが突出部とされている。実施例を示す図面 には突出部が水平で平坦な容器が示されているが,発明の詳細な説明欄に は,突出部が平坦であることについての説明はなく,本件発明1及び2の 突出部を突出部が平坦なものに限る趣旨の記載は見当たらない。これらに よれば,「開口縁」及び「突出部」については,上記アのように解するの が相当であり,「突出部」は水平で平坦なものには限られない。
ウ これに対して,被告は,出願経過に照らし,本件発明1及び2は突出部 が水平で平坦である容器に関する発明であると主張する。 原告は,前記1(2)のとおり,「前記突出部の端縁部の…且つ該端縁部の」 と補正をしたものであるところ,証拠(乙12〔2〕)によれば,審判請 求書において,上記補正の根拠として,突出部の端縁部において熱可塑性 樹脂発泡シートが圧縮されて薄肉とされたものであることを明確にしたも のであり,この点が本件明細書の例えば段落【0019】や【図3】b) に記載されているもので,願書に添付した明細書及び図面に記載された事 項の範囲内のものである旨記載したことが認められる。 上記認定事実によれば,補正の前後に係る特許請求の範囲をみても,補 正された部分は「端縁部の上面」と「収容凹部の開口縁近傍の突出部の上 面」の位置関係と端縁部における形状についてであって,突出部の形状が 水平で平坦である旨の明示的な記載も示唆も見当たらないし,原告が主張 したのは本件明細書において発明の実施の形態として記載(段落【001 9】や【図3】b))があることから補正の要件を満たすということであ るから,突出部の形状が水平で平坦なものに限定する趣旨を読み取ること ができない。したがって,本件発明1及び2の容器の突出部が水平で平坦 であると解することはできず,被告の主張は採用できない。
・・・・
上記記載によれば,本件発明1及び2は前記1(3)のとおりの技術的意義 を持つもので,端縁部の下面が平坦であることとその厚みが薄いことの双 方が備わることで,それぞれの効果が生じ,蓋の強固な止着が実現するの であって,端縁部が圧縮されて薄くなっていることと上面の位置との関係 に何らかの技術的意義があるものでないし,実施例においても何らの効果 も示されていない。そうすると,物の態様として「ように」の語が特段の 意味を有すると解することはできず,前記ア1)及び2)の各構成が両立して\nいれば足りると解するのが相当である。
ウ これに対し,被告は,「突出部の端縁部において…薄くなっており」と いう構成によってのみ「前記突出部の…下位となる」構\成が実現しなけれ ばならないと解釈すべき旨を主張し,その根拠として本件明細書の記載 (段落【0019】),審判請求書(乙12)において上記部分に係る補正 の根拠を本件明細書の「例えば段落0019や図3(b)」と主張したと いう出願経過を挙げる。 しかし,上記の本件明細書の記載(段落【0019】)は実施例の記載 であり,こうした実施例があることから上記のとおり解釈することは相当 でないし,当該記載が引用する【図3】b)によれば端縁部の下面も端縁 部以外の突出部の下面に比して下位となっており,端縁部を圧縮して薄く しなくても端縁部の上面が端縁部以外の突出部の上面に比して下位となっ ているとみる余地がある。補正の根拠に関する主張は,補正に係る部分が 本件明細書の記載の範囲内であることを指摘したものであって,説明した 部分に補正に係る部分の解釈を限定する趣旨を読み取ることはできない。 被告の主張は採用できない。
・・・
上記 1)によれば,プラスチック製品や容器についての一般的な実施 料率は2〜4%程度ということができる。また,上記 及び によれば, 本件発明1及び2の技術的意義が現れているのは容器の一部である端縁 部の形状に限定されるところ,一般的には端縁部における手指の切創を 防止することは顧客吸引力を持ち得るといえるものの,原告の製品にお いて行われている上記「セーフティエッジ」加工は,蓋の端縁部の加工 であって本件発明1及び2の包装用容器に係る加工であるとは認め難く, 原告においても平成27年以降はこの加工の存在をカタログ等において 顧客に告知していない。被告においても,端縁部において手指の怪我が 生じ得るという課題を認識して顧客に告知する一方で,その部分の怪我 防止の措置について顧客に告知をしていない。そうすると,本件発明1 及び2の技術的意義が容器の売上げに寄与する程度は相当程度小さいも のとならざるを得ないから,上記の一般的な実施料率よりも相当程度低 くすべきである。 以上によれば,本件発明1及び2の実施によって受けるべき相当な実 施料率は●(省略)●と認めるのが相当である。
ウ 損害の額
上記ア及びイによれば,本件発明1及び2の実施に対し受けるべき金銭 の額に相当するのは,1694万4217円であると認められる。

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平成29(行ケ)10127  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所

 明確性違反および実施可能要件違反の無効を主張しましたが、審決、知財高裁とも無効理由無しと判断しました。
 原告は,平成13年(2001年)以降でさえ,先行技術(甲20)と 技術常識に基づいて,外部から侵入した水分による劣化を防止しているとはいえ ない程度に蛍光体の沈降が抑えられた濃度分布の実現は不可能であったのであり,\n本件明細書の「フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材,形成温度,粘度やフ ォトルミネセンス蛍光体の形状,粒度分布などを調整することによって種々の分 布を実現することができ」(【0047】)との記載は,本件構成に対応する技\n術的手段が単に抽象的に記載されているだけで,当業者が発明の実施をすること ができない記載にすぎないことを意味するものに他ならないから,実施可能要件\nを欠くというべきであって,審決の結論には明らかな違法がある旨主張する。 明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者がその実施をすることができ る程度に明確かつ十分に記載したものであることを要する(特許法36条4項1号)。\n本件発明は,「発光装置と表示装置」(発光ダイオード)という物の発明であるとこ\nろ,物の発明における発明の「実施」とは,その物の生産,使用等をする行為をい うから(特許法2条3項1号),物の発明について実施をすることができるとは,そ の物を生産することができ,かつ,その物を使用することができることであると解 される。 本件明細書には,「蛍光体の分布は,フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材, 形成温度,粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状,粒度分布などを調整すること によって種々の分布を実現することができ,発光ダイオードの使用条件などを考慮 して分布状態が設定される。」(【0047】)との記載があることから,蛍光体の濃 度分布を適宜調整することにより,本件発明の「コーティング樹脂中のガーネット 系蛍光体の濃度が,コーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に向かって高く\nなっている」発光ダイオードを生産することができ,かつ,使用することができる ことは,本件明細書に接した当業者にとって明らかであると認められる。 したがって,発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明を実施することがで きる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められるから,その旨の審決の\n判断に誤りはない。 これに対し,原告が主張する,外部から侵入した水分による劣化を防止している とはいえない程度に蛍光体の沈降が抑えられた濃度分布とは,本件構成に係る「コ\nーティング樹脂中のガーネット系蛍光体の濃度が,コーティング樹脂の表面側から\nLEDチップ側に向かって高くなっている」ものではない状態を示すものである。 そうすると,仮に,このような濃度分布について,発明の詳細な説明や出願時の 技術常識を考慮しても実現することができない,又は,その実現に過度の試行錯誤 を要するとしても,このことは,本件明細書の発明の詳細な説明が,当業者が本件 発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとの前記認定を左右するも\nのではない(発光ダイオードの製造工程において,蛍光体がコーティング樹脂中を 沈降することによって,本件構成を満足するものを製造することができることにつ\nいては,当事者間に争いがないものと解される。)

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平成29(行ケ)10130  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤りを理由に、異議理由ありとした審決が取り消されました。異議理由ありとの審決自体が珍しいですが、さらにそれが取り消されたので珍しいケースです。
イ 上記アによれば,本件訂正明細書には,アナターゼ型酸化チタンは光触 媒作用が強いため,熱可塑性樹脂等の高分子化合物に添加されるとそれを分解等し てしまうことから,SiO2などで表面処理を行うのが好ましいこと,すなわち,\n本件訂正発明1の表面処理に用いられるSiO2は,光触媒作用が強いアナターゼ\n型酸化チタンが,熱可塑性樹脂等の高分子化合物を分解等しないようにするための ものであることが記載されているものと認められる。
・・・
上記イによれば,SiO2(シリカ)とシロキサンは,共に酸化チタン を被覆するものであること,SiO2(シリカ)は,Si−O−Si結合を有して いるものの,テトラアルコキシシランが加水分解及び重合し,反応すべきものが全 て反応したときの反応物であるのに対して,シロキサンは,Si−O−Si結合を 含むものの総称であって,化学式SiO2で表されるものではないこと,したがっ\nて,SiO2(シリカ)とシロキサンは,化学物質として区別されるものであるこ とが認められる。
エ 前記認定のとおり,本件訂正発明1の「SiO2で表面処理された・・・\n酸化チタン粒子」とは,文言上,「酸化チタン粒子」が,「SiO2(シリカ)」で表\n面処理されているものであることは明らかである。 これに対し,甲1文献には,酸化チタン粉末の表面処理のいずれの方法によって\nも,甲1発明の酸化チタン粉末の表面にシロキサンの被膜が形成されたことが記載\nされていることが認められるものの,甲1文献の上記記載は,甲1発明の酸化チタ ン粉末の表面に「Si−O−Si結合」を含有する被膜が形成されていることを示\nすにとどまるものであって,「SiO2(シリカ)」の被膜が形成されていることを 推認させるものではない(前記認定のとおり,シロキサンは,Si−O−Si結合 を含むものの総称であって,SiO2(シリカ)とは化学物質として区別されるも のである。)。また,その他,甲1発明の酸化チタン粉末の表面に「SiO2(シリ\nカ)」が生成されていることを認めるに足りる証拠はない。 さらに,甲1文献には,テトラアルコキシシラン及び/又はテトラアルコキシシ ランの部分加水分解縮合物について反応すべきものが全て反応したことについては, 記載も示唆もされていないのであるから,この点においても,甲1発明の酸化チタ ン粉末の表面に「SiO2(シリカ)」が生成されていると認めることはできない。\nしたがって,甲1発明において,酸化チタン粉末の表面に,「SiO2(シリカ)」\nが生成されているとは認めることができず,甲1発明の酸化チタン粉末が「SiO 2(シリカ)」で表面処理されているということはできない。\n

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平成29(行ケ)10211  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所

 「AMG」を図案化した商標が「AMG」と認識されるかが争われました。知財高裁は認識できるとした審決を維持しました。原告の法人名が「(株)エイエムジー」なので、「AMG」を前提として、本件商標を図案化したものと推測されると裁判所に言及されています。
 本願商標は,前記第2,1 のとおりの構成であり,オレンジ色で,3つの図形\nを横に並べて表記されているものである。本願商標中,左部分は,左下から右斜め\n上に向かって伸びる斜線と,それに比べ2倍程度太い縦線とが,上部で接した図形 (デザイン部分1),中央部分は,アルファベットのM字状の図形(右端の縦線は, 他の直線より2倍程度太い線で表されている。デザイン部分3),右部分は,右中程\nから,上部及び左側に向けて円弧を描き,その円弧の右途中から円の中心に向けて 直線を描くことで,円弧の右側中程の一部を開口した図形(左側曲線部分は一部2 倍程度太く表されている。デザイン部分2)である。そして,本願商標の上記各部\n分は,それぞれ同じ大きさ,同色であり,構成の一部分を他の部分のより2倍程度\n太く表しているなど,デザイン化の手法も類似して,まとまりよく表\されているも のと認められる。 本願商標の構成中,デザイン部分3は,アルファベットの「M」の語とその形状\nを同じくし,「M」をデザイン化した図形であり,これを連想させるものとして表記\nしたものと理解するのが自然である。 また,証拠(乙4〜7)及び弁論の全趣旨によれば,アルファベットの「G」が デザイン部分2のような構成にデザイン化されて表\される事例があることが認めら れる。そうすると,本願商標の構成中,デザイン部分2及び3は,両者相まって,\nデザイン部分3は「M」を,デザイン部分2は「G」をデザイン化して表したもの\nと容易に理解し,認識されるものと認められる。 デザイン部分1は,その右部分に,デザイン化された「M」,「G」のアルファベ ットとともに,均等に配置され,同色で,しかも,構成の一部分を他の部分より2\n倍程度太く表しているなど同じ手法でデザイン化されて表\されていることが認めら れる。そして,デザイン部分1は,三角形の形状であるから,アルファベットの「A」 が想起されるものであり,「A」がデザイン部分1のような構成にデザイン化されて\n表される事例が多数あること(乙8〜18)を考慮すると,デザイン部分1は,「A」\nをデザイン化して表したものと容易に理解し,認識されるものと認められる。\n以上によれば,本願商標は,「AMG」をデザイン化して表したものと認められる\nから,本願商標からは,「エイエムジイ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないもの である。

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平成29(行ケ)10097  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所

 ゲームプログラムについて、進歩性ありとした審決が維持されました。
 前記1(1)の認定事実によれば,本件発明は,ユーザがシリーズ化された一連のゲ ームソフトを買い揃えるだけで,標準のゲーム内容に加え,拡張されたゲーム内容\nを楽しむことを可能とすることによって,シリーズ化された後作のゲームの購入を\n促すという技術思想を有するものと認められる。 これに対し,前記1(2)の認定事実によれば,公知発明は,前作と後作との間でス トーリーに連続性を持たせた上,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラ クタでプレイをしたり,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイ を有利にすることによって,前作のゲームをプレイしたユーザに対し,続編である 後作のゲームもプレイしたいという欲求を喚起することにより,後作のゲームの購 入を促すという技術思想を有するものと認められる。 そうすると,公知発明は,少なくとも,前作において実際にプレイしたキャラク タをセーブするとともに,前作のゲームにおいてキャラクタのレベルが16以上と なるまでプレイしたという実績(以下「プレイ実績」という。)をセーブすることが, その技術思想を実現するための必須条件となる。そのため,前作において実際にプ レイしたキャラクタ及びプレイ実績に係る情報をセーブできない記憶媒体を採用し た場合には,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラクタでプレイをした り,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイを有利にすることが できなくなる。このことは,前作のゲームをプレイしたユーザに対し,続編のゲー ムをプレイしたいという欲求を喚起することにより,後作のゲームの購入を促すと いう公知発明の技術思想に反することになる。 したがって,当業者は,公知発明1のディスクについて,前作において実際にプ レイしたゲームのキャラクタ及びプレイ実績をセーブできない記憶媒体,すなわち, 「記憶媒体(ただし,セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)」に変更しよう\nとする動機付けはなく,かえって,このような記憶媒体を採用することには,公知 発明の技術思想に照らし,阻害要因があるというべきである。 仮に,先行技術発明A等(甲20の1及び2,甲21の1及びの2,甲91,甲 92のゲーム等を含む。以下同じ。)のように,2本のゲームのROMカセットを所 有し,ゲーム機のスロットに挿入するのみで拡張されたゲーム内容を楽しめるゲー ムが周知技術であったとしても,これを公知発明1に対して適用するに当たり,公 知発明1のディスクを,ゲームのプレイ実績をセーブできない記憶媒体,すなわち, 「記憶媒体(ただし,セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)」に変更すると,\n上記のとおり,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラクタでプレイをし たり,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイを有利にすること ができなくなるから,前作のゲームをプレイしたユーザに対し,後作のゲームの購 入を促すという公知発明の技術思想に反することになる。 また,仮に,ゲームに登場するキャラクタをゲームプログラムにプリセットして おき,プレイヤーがキャラクタを適宜選択できるようにすることが,本件特許の出 願当時において,技術常識であったとしても,公知発明1の「キャラクタのレベル が16以上である」というゲームのプレイ実績を,プリセットされたキャラクタに 係る情報に変えると,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラクタでプレ イをしたり,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイを有利にす ることができなくなるから,上記と同様に,公知発明の技術思想に反することにな る。 以上によれば,公知発明1において,所定のゲーム装置の作動中に入れ換え可能\nな記憶媒体,一の記憶媒体及び二の記憶媒体を,ディスクから「記憶媒体(ただし, セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)」に変更して相違点1ないし3に係る\n構成とすることは,当業者が容易になし得たことであるとはいえないとした審決の\n判断に誤りはなく,取消事由1は,理由がない。
(3) 原告の主張について
原告は,公知発明1の技術思想について,魔洞戦紀DDI(前作ゲーム)に記憶 された切換キーがゲーム装置で読み込まれている場合に,勇士の紋章DDII(後作 ゲーム)で,標準ゲームプログラムに加えて,拡張ゲームプログラムでもゲーム装 置を作動させるものであり,これによりゲーム内容を豊富化してユーザに前作の購 入を促すというものであるから,本件発明の技術思想と同じであると主張する。そ して,原告は,上記主張を前提とした上で,上記切換キーには,「魔洞戦紀DDIが 装填された」という条件1に係る情報と「キャラクタのレベルが16以上である」 という条件2に係る情報とが含まれているところ,公知発明1の技術思想である「ユ ーザに前作の購入を促す」ことは,切換キーのうち「魔洞戦紀DDI」が装填され たという条件1に係る情報のみで達成できるのであるから,当業者であれば,その 目的を達成するために,「キャラクタのレベルが16以上である」という条件2に係 る情報を切換キーから除くなどして,記憶媒体についてもセーブデータが記憶可能\nな記憶媒体としないことは容易であり,かえって,このような場合には,よりユー ザの負担なく拡張ゲームプログラムが楽しめるようになるのであるから,前作の購 入を促すことが可能であるともいえ,公知発明1の切換キーに「キャラクタのレベ\nルが16以上である」という条件2に係る情報であるセーブデータを含ませるか否 かは,当業者が適宜選択できる設計事項であると主張する。 しかしながら,上記(2)のとおり,公知発明は,前作と後作との間でストーリーに 連続性を持たせた上,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラクタでプレ イをしたり,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイを有利にす ることによって,前作のゲームをプレイしたユーザに対し,続編である後作のゲー ムもプレイしたいという欲求を喚起することにより,後作のゲームの購入を促すと いう技術思想を有するものと認められる。 そうすると,公知発明は,少なくとも,前作のキャラクタをセーブするとともに, キャラクタのプレイ実績をセーブすることが,その技術思想を実現するための必須 条件となるから,キャラクタ及びプレイ実績に係る情報をセーブできない記憶媒体 を採用した場合には,公知発明の技術思想に反することになる。 したがって,「キャラクタのレベルが16以上である」という条件2に係る情報を 切換キーから除くなどして,記憶媒体についてセーブデータが記憶可能な記憶媒体\nとしないことは,公知発明を都合よく分割してその必須条件を省略しようとするも のであるから,上記のとおり,公知発明の技術思想に反することは明らかである。 以上によれば,原告の主張は,その余の点を含め,公知発明の技術思想を正解し ないものに帰し,採用することができない。

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平成29(ネ)10082等  損害賠償請求控訴事件,同附帯控訴事件  商標権  民事訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所  長野地方裁判所

 1審は、マイクロソフト社のWindows や Office 等のプロダクトキーを違法販売していた被告に対して550万円の損害賠償を認めました。被告は控訴しましたが、知財高裁(1部)は控訴を棄却しました。原審はアップされていません。なお、被告は商標権侵害を理由に、懲役1年(執行猶予付き)、罰金100万円に処せられています。
 1審被告は,当審においても,1審被告商品はいずれも適法に購入さ れた真正商品であり,1審被告商品がマニアの集めたプロダクトキーを拾ってきた ものであると記載された1審被告の供述調書(甲16)の信用性は低いなどと主張 する。 しかしながら,前記引用に係る原判決の認定事実によれば,1審被告は,平成2 6年5月27日,1審被告商品をインストールしても認証エラーとなった購入者に 対し,同人が1審被告から送信されたクラックツールのダウンロードURLではク ラックツールが既に削除されていたことから,再度,上記と異なるクラックツール のダウンロードURLを送信したことが認められる。 上記認定事実によれば,1審被告は,1審被告商品の購入者に対し,1審被告商 品と併せてクラックツールのダウンロードURLを送信していたのであるから,こ のような行為は,1審被告商品がいずれも適法に購入された真正商品であるという 上記主張と矛盾するものである。かえって,上記捜査段階における1審被告の供述 内容は,マイクロソフトの業務用パッケージであるMSDNに係るDVDの販売につき,マイクロソ\フトからID停止を受け,その後,MSDN関係の販売に使用していたヤフーIDも,ソフトウェア保護団体からの警告で頻繁に停止されるようになったことから,ID停止に関係のない独自のショッピングサイトを設立し,クラ\nックツールのURLに関する情報の販売をメインとして生計を立てていた当時の実 情を述べるものであって,その内容は,具体的かつ詳細なものである上,上記認定 事実にも沿うものである。しかも,1審被告は,顧客に送信したプロダクトキーを 記載したメールを全て削除したとして,プロダクトキーの内容及び入手ルートさえ 明らかにしていないのであり,上記主張を客観的に裏付ける証拠を何ら提出するも のではない。 以上のとおり,上記捜査段階における1審被告の供述は,具体的かつ詳細なもの であって,客観的事実に沿うものである上,これに反すると認めるに足りる客観的 証拠が存在しないことからすると,その信用性が十分に高いというべきである。したがって,1審被告の上記主張は,採用することができない。
(イ) その他の当審における1審被告の主張は,独自の見解をいうもの,又 は証拠の裏付けを欠くものにすぎず,これに対する判断は,前記引用に係る原判決 が説示するとおりであり,上記主張を採用することはできない。

◆判決本文

原審(平27(ワ)36号)における商品に関する判断は以下の通り。
〔原告の主張〕
商標法上の「商品」には,無体物も含まれる。そして,原告商標の指定商品である第9類の「その他の電子応用機械器具及びその部品」には,ダウンロード可能なプログラムが含まれるところ,プロダクトキーは,プログラムをコンピュータで利用するために必要不可欠な部品であり,電子応用機械器具の部品に当たる。したがって,被告商品は,原告商標の指定商品である「その他の電子応用機械器具及びその部品」に含まれる。また,被告商品が原告商標の指定商品である第9類の「その他の電子応用機械器具及びその部品」と同一でないとしても,ソ\フトウェアとプロダクトキーは,用途において密接な関係があり,通常,同一店舗において同一需要者に販売されるものであるから,プログラム利用のために必要となるプロダクトキーの販売に関する広告を内容とする情報に登録商標に類似する商標を付して使用するときは,同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがある。したがって,被告商品は原告商標の指定商品である「その他の電子応用機械器具及びその部品」と類似する商品に当たる。
〔被告の主張〕
原告商標の指定商品である「電子応用機械器具」は有体物であるから,「その部品」も当然に有体物である。これに対して,プロダクトキーは,ソフトウェアの部品と考えることができるところ,ソ\フトウェアは有体物ではなく,プロダクトキーもアルファベットや数字を組み合わせた情報であり,有体物ではない。また,「電子応用機械器具及びその部品」にダウンロード可能なプログラムが含まれるとしても,「プログラム」とは,電子計算機を機能\させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものである。これに対して,プロダクトキーは「指令を組み合わせたもの」ではないから「プログラム」には該当しない。そして,プログラムが電子計算機の機械とは独立して取引されるという近時の取引形態を考慮すれば,電子計算機とプログラムは類似しない。さらに,原告は,原告商標の商標登録出願の際に商品区分から意識的に「電子計算機用プログラム」を除外している。それにもかかわらず,本件の侵害訴訟の段階で,被告商品が原告商標の指定商品である「電子計算機用プログラム」ないしその「部品」と類似する旨主張することは禁反言の原則に反する。したがって,被告商品は,原告商標の指定商品である「その他の電子応用機械器具及びその部品」に含まれず,またこれと類似するものではない。
・・・
(1) 弁論の全趣旨によれば,原告製品のプロダクトキーは,英・数字が組み合わされた製品毎に固有の25桁のコードからなる情報鍵であって,1)ユーザーがアプリケーションプログラムをパソコンにインストールする際に,プロダクトキーの入力が求められ,これが入力されなければ,インストール作業を続行できず,2)アプリケーションプログラムをパソコンにインストールする過程で,プロダクトキーに対応する(未認証の)プロダクトIDがパソ\コン内に生成され,これが,ハッシュ値化されたパソコンのハードウェア情報とともに,原告の認証センターにインターネットを通じて送信され,3)原告の認証センターは,送信された情報をデーターベースと照合し,適法なインストールであると認めた場合は,ライセンス認証済みのプロダクトIDをユーザーパソコンに送信し,4)ユーザーパソコン(プログラム)は,原告から受信した認証済みプロダクトIDを記憶装置に記録し,それを検知することでプログラムのインストール作業が終了し,ユーザーは制限のないプログラムの使用が可能\となるものであることが認められる。このように,プロダクトキーは,ユーザーが原告製品をコンピュータ記憶装置内に物理的にインストールするために必要なものである上,原告製品として制限のないプログラムの使用を可能とする認証済みプロダクトIDの発行を原告から得るためにその入力が不可欠とされるものである。\n
(2) ところで,商標法上の「商品」には,無体物も含まれると解され,商標法施行規則別表第9類十\五は「電子応用機械器具及びその部品」として「電子計算機用プログラム」を挙げているが,当該規定は例示であって,それ以外の無体物を含む部品を除外するものではない。そして,前記(1)のとおり,プロダクトキーは,原告製品をコンピュータ記憶装置内に物理的にインストールするために必要なものである上,原告製品として制限のないプログラムの使用を可能とするライセンス認証を得るために不可欠な情報鍵である。そうすると,プロダクトキーは,「電子応用機械器具」(「電子計算機用プログラム」)に相当する原告製品をコンピュータで利用するために必要不可欠な部品であり,電子応用機械器具の部品に該当する。したがって,原告商標の指定商品である「電子応用機械器具及びその部品」には,原告が著作権を有するOS又はアプリケーションプログラムのソ\フトウェア製品である原告製品のみならず,プロダクトキーが含まれるというべきであるから,被告商品は,原告商標の指定商品と同一のものということができる。
(3) 被告の主張について
ア 被告は,原告商標の指定商品である「電子応用機械器具及びその部品」は有体物であるのに対し,ソフトウェア及びプロダクトキーは有体物ではなく,また,「電子計算機」とプログラムは類似しない旨主張するが,同主張に理由がないことは,前記(2)のとおりである。
イ 被告は,原告商標の商標登録出願の際に商品区分から意識的に「電子計算機用プログラム」を除外しているにもかかわらず,本件の侵害訴訟の段階で,被告商品が,原告商標の指定商品である「電子計算機用プログラム」ないしその「部品」と類似する旨主張することは禁反言の原則に反する旨主張するが,本件全証拠によっても,原告が原告商標の商標登録出願の際に,商品の区分及び指定商品から意識的に「電子計算機用プログラム」を除外した事実を認めることはできない。

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平成29(ネ)10083  不正競争行為差止請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴人は、無印良品のユニット棚について、他人の意匠権侵害となる商品であるので、権利濫用であると追加主張しましたが、否定されました。なお、時期に後れたかの論点については、時期に後れているが、訴訟の簡潔を遅延させるものではないと判断されました。
1 時機に後れた攻撃防御方法について 被控訴人は,控訴人の当審における各主張及び各証拠の提出が時機に後れた攻撃 防御方法であるとして,当該攻撃防御方法の却下の申立てをした。\nそこで検討するに,控訴人の上記各主張及び各証拠は,原審口頭弁論終結時まで に容易に提出し得たものと認められるから,時機に後れたものというほかない。し かしながら,当該攻撃防御方法の内容に照らすと,実質的には,控訴人の原審にお ける従前の主張を補充的に繰り返すものにすぎず,これにより訴訟の完結を遅延さ せることになるものとは認められない。 したがって,被控訴人の上記申立ては,却下するのが相当である。\n
・・・・
控訴人は,被控訴人の請求は公正な競争秩序の維持を目的とする不正競争防止法 の趣旨に反するものであって,明らかにクリーンハンズ原則に反する請求であり, 権利の濫用であると主張する。 そこで検討するに,現行法上,物の無体物としての面の利用に関しては,商標法, 著作権法,不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律が,一定の範囲の者に対し, 一定の要件の下に排他的な使用権を付与し,その権利の保護を図っているが,その 反面として,その使用権の付与が国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約 することのないようにするため,各法律は,それぞれの知的財産権の発生原因,内 容,範囲,消滅原因等を定め,その排他的な使用権の及ぶ範囲,限界を明確にして いる(最高裁平成13年(受)第866号,第867号同16年2月13日第二小 法廷判決・民集58巻2号311頁)。 上記各法律の趣旨,目的に鑑みると,不正競争防止法2条にいう不正競争によっ て利益を侵害された者が他人の意匠権を侵害する事実が認められる場合であっても 当該意匠権の侵害行為は意匠法が規律の対象とするものであるから,当該事実のみ によっては,直ちに被控訴人が不正競争によって利益を害された者による不正競争 防止法に規定する請求権の行使を制限する理由とはならないと解するのが相当であ る。 これを本件についてみると,仮に,被控訴人商品が訴外株式会社ヤマグチの意匠 権を侵害していたとしても(なお,控訴人は,侵害の有無について,被控訴人商品 の形態が要部において上記意匠権と類似している点のみを主張する。),上記のとお り,このような事実のみによっては,直ちに不正競争防止法に規定する請求権の行 使を制限する理由とはならないというべきである。かえって,前記引用に係る原判 決の認定事実によれば,控訴人商品は,被控訴人商品形態の形態的特徴1)ないし6) を全て模倣するものであって,控訴人商品を販売する行為は,被控訴人商品の出所 について混同を明らかに生じさせることからすれば,事業者間の公正な競争を確保 するという不正競争防止法の趣旨,目的に鑑みると,競争秩序を著しく乱すもので あって,これを規制する必要性が高いものといえる。 そうすると,被控訴人による差止請求及び廃棄請求は,権利の濫用に当たらない と認めるのが相当である。

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◆原審はこちら。平成28(ワ)25472

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平成29(ワ)36543  債務不存在確認請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月27日  東京地方裁判所(46部)

 変わった判決なので、アップします。ライセンス料の支払い請求権の不存在確認訴訟です。
 本件は,原告が被告に対し,原告は被告との間で本件各特許のライセンス契 約を締結したことはないにもかかわらず,被告から本件各特許に係るライセン ス料の支払を請求されたとして,本件各特許のライセンス契約に基づくライセ ンス料支払債務を負わないことの確認を求める事案である。   被告は,原告が被告との間で本件各特許のライセンス契約を締結した事実を 主張立証しない。むしろ,本件における被告の主張は,原告が被告とライセン ス契約を締結せずに本件各特許に係る特許技術を使用していることを問題とす るものであって,原告と被告との間で本件各特許のライセンス契約が締結され ていないことを前提としているものといえる。 以上によれば,原告と被告との間で本件各特許のライセンス契約が締結され たとは認められず,被告が原告に対して本件各特許のライセンス契約に基づく 特許権者から「ライセンス契約していないのにライセンス料を支払えとの請求を受けました」。ありました。債務が存在しないことを確認する」との主文です。

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平成29(行ケ)10120等  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年4月4日  知的財産高等裁判所

 引用発明の認定誤りを理由として、進歩性なしとした審決を取り消しました。
 イ 前記アのとおり,甲4には,ブロックパターンの改良に関し,耐摩耗性能を\n向上せしめるとともに,乾燥路走行性能,湿潤路走行性能\及び乗心地性能をも向上\nせしめた乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする発明が記載 されている(前記ア(イ)b)。 そして,タイヤ踏面の幅方向センター部に踏面幅の50%以内の領域において3 本のストレート溝をタイヤ周方向に環状に設けるとともに,これらのストレート溝 からタイヤ幅方向に延びる複数の副溝を配置したブロックパターンにおいて,1)全 溝面積比率を25%とし,かつ,領域W(タイヤ踏面の幅方向(タイヤ径方向)F F’のセンター部における踏面幅Tの50%以内)の全溝面積比率を残りの領域の 全溝面積比率の3倍とすること,2)ストレート溝aと副溝bとにより区画されたブ ロック1の表面に独立カーフcをタイヤ幅方向FF’に形成すること,3)ブロック 1の各辺とカーフcの各辺のタイヤ幅方向FF’全投影長さ(LG)とタイヤ周方 向EE’全投影長さ(CG)との比を「LG/CG=2.5」とすることにより, 良好な耐摩耗性及び乗心地性能を享受し,かつ,湿潤路運動性能\も低下しないよう にしたものである(前記ア(イ)c)。 したがって,甲4には,「センター領域を含めた全ての領域が溝により複数のブ ロックに区画されたブロックパターンについて,1)全溝面積比率を25%とし,か つ,前記領域(タイヤ踏面の幅方向(タイヤ径方向)FF’のセンター部における トレッド踏面幅Tの50%以内の領域)の全溝面積比率を残りの領域の全溝面積比 率の3倍となし,2)前記ストレート溝と前記副溝とにより区画されたブロックに独 立カーフをタイヤ幅方向に形成し,3)前記ブロックの各辺と前記カーフの各辺のタ イヤ幅方向全投影長さLGとタイヤ周方向の全投影長さCGとの比LG/CG=2. 5とする。」との技術的事項,すなわち,甲4技術Aが記載されていると認められ る。
ウ 本件審決の認定について
本件審決は,甲4に甲4技術が記載されていると認定した。 しかし,前記アのとおり,甲4には,特許請求の範囲にも,発明の詳細な説明に も,一貫して,ブロックパターンであることを前提とした課題や解決手段が記載さ れている。また,前記イのとおり,甲4には,前記イ1)ないし3)の技術的事項,す なわち,溝面積比率,独立カーフ,タイヤ幅方向全投影長さとタイヤ周方向全投影 長さの比に関する甲4技術Aが記載されている。 そこで,これらの記載に鑑みると,上記イ1)ないし3)の技術的事項は,甲4に記 載された課題を解決するための構成として不可分のものであり,これらの構\成全て を備えることにより,耐摩耗性能を向上せしめるとともに,乾燥路走行性能\,湿潤 路走行性能及び乗心地性能\をも向上せしめた乗用車用空気入りラジアルタイヤを提 供するという,甲4記載の発明の課題を解決したものと理解することが自然である。 したがって,甲4技術Aから,ブロックパターンを前提とした技術であることを 捨象し,さらに,溝面積比率に係る技術的事項のみを抜き出して,甲4に甲4技術 が開示されていると認めることはできない。よって,本件審決における甲4記載の 技術的事項の認定には,上記の点において問題がある。

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平成29(ネ)10091  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月14日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 控訴審でも技術的範囲外と認定されました。
 イ号製品の構造上,「フック部」に相当し得るのは,先端部2及び曲折部1であり,\n「ボディ部」に相当し得るのは,2枚の樹脂板からなる,本体部3であり,「腹部」 に相当し得るのは,それぞれの樹脂板の,眼瞼縁又は医療用ドレープと対向する矩 形状の底面部分である。 証拠(甲18〜20,甲24の1,乙5,9)及び弁論の全趣旨によると,イ号 製品において,フック部に導かれた液体のうち,それぞれの樹脂板の矩形状の底面 部分を伝うものもあるが,その大部分は,2枚の樹脂板が対向する側面の間を伝っ て排出されるものと認められる。したがって,それぞれの樹脂板の矩形状の底面部 分は,フック部により導かれた液体の大部分を伝わせて排出するものではないから, イ号製品は,構成要件Gを充足しない。
ウ 控訴人の主張について
(ア) 控訴人は,本件特許明細書における「腹部」とは,ボディ部の「腹側」 にあり,排液器と眼瞼縁との間で排液のための動力を生み出す「隙間」を形成する 部分を指し,「腹部」以外の「腹側」とは,上記「隙間」から離れたボディ部の側面 にあって,その形状によって大きな表面積を確保し,流路を拡大する機能\を営む部 分である,と主張する。 しかし,本件特許明細書の【図5】に係る実施例においては,腹部103aは, 丸みをもたせ,断面が略円形状であって,液体が表面を伝うに適した形状であると\n特定され(【0028】),【図11】に係る実施例においては,断面略V字形状に形 成されている箇所が腹部1103aと特定されている(【0041】)のであるから, これらの箇所は,控訴人が主張するところの「濡れ性を利用して流路を拡大する部 分」も含んでいると認められる。また,【図5】に係る実施例において,液体の流量 が増え液面が上昇すると,液面と腹部の表面との「接点」が上昇する(【0028】)\nとされていることから,本件特許明細書においては,液体の流量が少ないときに液 面が接していなかった,「濡れ性を利用して流路を拡大する部分」も「腹部の表面」\nの一部とされていると認められる。 さらに,上記【0028】,【0041】の記載に鑑みると,控訴人が指摘する「ボ ディ部103の腹部103aの表面と医療用ドレープ240とで形成された隙間が\n毛細管として機能し」(【0029】)及び「腹部1103aと眼瞼縁233との間に\n形成された隙間が毛細管として機能し」(【0042】)との記載は,腹部のうち眼瞼\n縁又は医療用ドレープに近接する部分が,眼瞼縁又は医療用ドレープとの間で毛細 管として機能していることを述べていると解すべきであって,これらの記載から,\n毛細管として機能する部分のみが腹部であるということはできない。【図5】の「1\n03a」の文字から出た線及び【図11】の「1103a」文字から出た線が指し 示す位置は,腹部の範囲(上限位置)を示すものとは解されない。 本件特許明細書の【図13】及び【図15】に係る実施例においては,控訴人が 主張するところの「毛細管現象を引き起こす部分」と「濡れ性を利用して流路を拡 大する部分」からなる凹凸の位置を説明するために「腹側」との表現が用いられて\nいるにすぎず,そのうちの「毛細管現象を引き起こす部分」を「腹部」であると解 する根拠とすることはできない。 したがって,毛細管として機能するか否かによって「腹部」が特定されていると\nも,「毛細管現象を引き起こす部分」か「濡れ性を利用して流路を拡大する部分」か で,「腹部」と「腹側」との表現を使い分けているともいえない。控訴人の主張には,\n理由がない。

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原審はこちら。平成28(ワ)6357  

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平成27(ワ)6555等  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年3月15日  大阪地方裁判所

 秘密管理性がなしとして、営業秘密としては認められませんでした。
 原告は,上記のうち秘密管理性の点につき,本件技術情報は,電子データと 電子データを印刷した紙ベースで保管され,それらの情報にアクセスできる者を福 島工場の従業員18人と役員ほかの限られた原告の従業員に限り,また就業規則に 従業員の秘密保持義務を定めるほか,秘密保持の誓約書の提出を受けていた旨主張 するとともに,それらの従業員は,それらの本件技術情報が原告にとって重要な技 術情報であり,持ち出したり,漏洩したりしてはいけない秘密の情報であることは 十分に認識できていたから,営業秘密として管理されていたと主張する。\nこの点,証拠(甲31の1ないし18,甲32,甲33,甲36)によれば,原 告主張の情報の管理状況や,就業規則の定めや,従業員から誓約書を徴求している 事実が認められ,またその対象の情報が,原告において重要な技術情報であると認 識できるとの点も,そのとおりということができる。
(3) しかしながら,原告の取締役であったP1及び原告の代理店としてその販売 のみならず海外でのメンテナンスを担当していた被告銀座吉田は,原告が,何ら秘 密保持義務を負わせることなく,また後日の返還を求めることもなく,原告製品の 図面等,製品に関わる情報を,取引先,製造下請業者,メンテナンスを担当する業 者にも交付していたことを主張しているところ,ゴミ貯溜機の設計図面等の管理に 関して以下のような事実が認められる。 ア 原告が営業秘密と主張する図面の中には,発行者を「日本クリーンシステム (株)福島工場」として,日付け入りの「発行」とするスタンプと「製作用」とのス タンプが押されているもの(別紙営業秘密目録記載1の機械図面中,2の八角部分 の図面に含まれる甲24の2,4のドラム内の分割羽根部分の図面に含まれる甲2 6の1ないし11,甲27の2ないし4,5の蓋ジョイント部分の図面に含まれる 甲28の3,4,5,7)が存し,これら図面が部品を製造する業者に交付されて いたことがうかがわれる。
イ 被告らが本件製品1の製造に関わっていたことを示すものとして原告が証拠 として提出したメール(甲73)の記載内容によれば,原告製品のメンテナンスの ためには,メンテナンス業者において,必要な部品を図面で第三者に請け負わせて 作成させる場合もあることが認められる。そうすると原告は,過去に被告銀座吉田 に対して海外での原告製品の設置やメンテナンスをさせていたというのであるか ら,メンテナンスを担当していた被告銀座吉田に対し,それらの作業に必要な図面 等を交付していたはずと考えられる(なお,被告銀座吉田は,第11回弁論準備手 続期日において陳述した被告銀座吉田準備書面(8)において,本件製品1,2の 製造に関与したことを推認させる事情となり得る過去販売した原告製品の図面等を 保有していることを自認している。)。また,同メールによれば,中国成都におけるゴミ貯溜機の購入設置者は,メンテナンス業者を競争入札により選ぼうとしていることがうかがえるが,このことからは,ゴミ貯溜機を購入した者は,業者を任意に選んで,上記内容のメンテナンスを実施することが可能であるということ,すなわち,ゴミ貯溜機を購入した者は,メンテナンスに必要な図面類等を原告から交付されていたことを推認することができる。
ウ 原告は,過去に被告サン・ブリッドに対して原告製品の部品の一部を供給さ せていた(甲21)というのであるから,それに伴い被告サン・ブリッドに対し, 少なくとも当該部品を製造するに必要な設計図を交付していたことが認められる。
(4) このように,原告が本件において営業秘密として主張する本件技術情報と同 種の技術情報であると考えられる原告製品の図面等が被告銀座吉田はもとより,原 告製品購入者,あるいは部品製造委託先に交付されていた事実が認められることに 加え,そもそも原告は,P1及び被告銀座吉田による秘密管理性を否定する事実関 係の主張について全く沈黙しており,その指摘に係る図面等の技術情報の外部提供 について,営業秘密の管理上,いかなる配慮をしていたか一切明らかにしていない ことも併せ考慮すると,原告のゴミ貯溜機を製造するに必要な設計図面等の多くは, P1及び被告銀座吉田が主張するように,特段の留保もなく購入者はもとより取引 関係者に交付されていたことを認めるのが相当である。 そうすると,別紙営業秘密目録記載1,3の技術情報そのものが,上記図面等に 含まれていると的確に認めるに足りる証拠はないものの,かといって,これら技術 情報についてのみ他の同種技術情報と異なる特別の管理がされていたと認めるに足 りる証拠もない以上,同様の管理状況であったと推認するほかなく,したがって, これでは,上記技術情報が不競法にいう「秘密として管理されていた」ということ はできないということになる。

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平成29(ワ)25465  著作者人格権確認等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年3月26日  東京地方裁判所

 「かっぱえびせん」の「やめられない,とまらない」のキャッチフレーズを考えたのは自分であるとの確認を求めましたが、訴えの利益がないとして却下されました。
 原告は,本件訴えにおいて,原告が本件CMを制作した事実の確認を求めている。 しかし,確認の訴えは,原則として,現在の権利又は法律関係の存在又は不存在 の確認を求める限りにおいて許容され,特定の事実の確認を求める訴えは,民訴法 134条のような別段の定めがある場合を除き,確認の対象としての適格を欠くも のとして,不適法になるものと解される(最高裁昭和29年(オ)第772号同3 6年5月2日第三小法廷判決・集民51号1頁,最高裁昭和37年(オ)第618 号同39年3月24日第三小法廷判決・集民72号597頁等参照)。 したがって,本件訴えのうち,原告が本件CMを制作した事実の確認を求める訴 えは不適法である。 なお,事案に鑑み付言するに,仮に,原告が,本件CMを制作した事実ではなく, 原告が本件CMにつき著作権ないし著作者人格権を有することの確認を求めたとし ても,確認の訴えは,現に,原告の有する権利又はその法律上の地位に危険又は不 安が存在し,これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが必要かつ適切で ある場合に,その確認の利益が認められるところ(最高裁昭和27年(オ)第68 3号同30年12月26日第三小法廷判決・民集9巻14号2082頁参照),前 記前提事実(第2,2),証拠(甲18ないし20,23ないし25,19,乙1, 2)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,アストロミュージックから許諾を受けて 本件キャッチフレーズを使用しているにとどまり,本件CMについて被告が著作権 ないし著作者人格権を有するなどとは主張していないから,原告が有する権利又は 法律上の地位に存する危険又は不安を除去するために,本件CMの著作権ないし著 作者人格権の存否につき被告との間で確認判決を得ることが必要かつ適切であると は認め難く,結局,確認の利益を欠くものとして不適法というほかない。
2 争点3(被告は,原告に対し,原告が本件キャッチフレーズを考えた本人で あるとの事実を被告の社内報に掲載する旨を約したか)について
原告は,被告が原告に対し,原告が本件キャッチフレーズを考えた本人であると の事実を被告の社内報に掲載する旨を約したと主張し,同事実を被告の社内報に掲 載するよう請求するところ,同主張は,原告と被告との間で,被告が同掲載義務を 負うことを内容とする契約が成立した旨を主張するものと解される。 そこで検討するに,原告と被告代表者が平成23年6月頃面会したこと,その後\n程なくして,原告と被告の宣伝課長が面会し,原告の写真を撮影したことは,当事 者間に争いがない。 しかし,原告本人尋問の結果によっても,原告と被告の宣伝課長との面会の場に おいては,被告の社内報に,誰がどのような内容の記事を作成し,いつまでに掲載 するのかなど,記事の掲載をどのように実現させていくかについては,何ら明確に 合意しなかったというのである。そうすると,仮に,原告本人が供述する事実関係 が認められたとしても,それのみをもっては,被告が行うべき給付義務の内容が具 体的に定まっていたとはいえず,原告と被告との間に,法的拘束力を有する契約と して,被告に履行を強制し得るまでの合意があったと評価することは困難である。 また,原告本人尋問の結果によっても,被告のホームページへの掲載が話題とな った形跡はおよそうかがえないから,原告と被告との間に,この点に関する契約が あったとみる余地はない。 したがって,被告の社内報及びホームページに,原告が本件キャッチフレーズを 考えた本人であるとの事実を掲載することを求める原告の請求には理由がない。

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平成27(ワ)21897等  著作権侵害行為差止等請求事件,損害賠償請求反訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月28日  東京地方裁判所

 データが蓄積される前のプログラムについては、データベースの著作物とは認められませんでした。
 原告は,原告が平成16年8月10日に完成させた同日版「eBASEserv er」は,1)合計22個の辞書がそれぞれ様々な辞書情報を備えており,データベ ースの体系的な構成の中で各データ項目と紐付けられて辞書網を構\成している点に 創作性が認められ,2)個々の辞書が,それ単独でも,体系的構成及び情報の選択に\nおいて創作性が認められるから,それ自体が,データベースの著作物と認められる べき旨主張する。 原告の主張によれば,「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事 業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデ\nータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることに\nよりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,この\nような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアであ\nる「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著 作権法2条1項10号の3)とは認められない。 原告は,「eBASEserver」に搭載されている辞書情報を「情報」と捉 え,この集合物をもって「データベース」と主張するものとも解されるが,原告の 主張によっても,これらの辞書ファイルは,商品情報の登録に際して,当該商品情 報のうち特定のデータ項目を入力する際に参照されるものにすぎないのであって, 辞書ファイルが備える個々の項目が,「電子計算機を用いて検索することができる ように体系的に構成」(著作権法2条1項10号の3)されていると認めることは\n困難である。 したがって,「eBASEserver」は,著作権法上の「データベース」に 当たるものとは認められないから,その創作性につき検討するまでもなく,データ ベースの著作物ということはできない。

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平成29(行ケ)10170  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年3月22日  知的財産高等裁判所

 3文字アルファベットの商標「PPF」が識別力あるかが争われました。審決では無効理由無しでしたが知財高裁はこれを取り消しました。審決は、”「PPF」の文字からなる本件商標は、上記2のとおり、本件商標の登録出願日前の使用に係る情報は、わずかに3件のみであり、多くの者が品質等を表示する語として取引に使用しているということはできないものであるから、本件商標は、自他商品の識別標識としての機能\を十分に果たし得るものというべきである。”と判断していました。結論が変わったのは、追加の証拠を出したんでしょうね。審決では証拠が甲22までしかないようですが、取消訴訟では甲55まであります。
 上記(2)ア及びオによれば,外国における本件商品の主要メーカーのウェ ブサイトでは,本件商品を指す用語として「paint protection film」及び 「PPF」の語が特段の注記もなく使用されており,自社商品を識別する ために,3M社は「Scotchgard」,Avery Dennison社は「AWF 1500シリーズ」,XPEL社は「XPEL ULTIMATE」等といった独自の商標を 用いていることが認められる。さらに,インターネット上の百科事典とい えるウィキペディア(英語版)には,「Paint protection film」の項目に, 「PPF」の語と共に本件商品の説明が記載されている(なお,ウィキペ ディアは,誰もが自由に記事を執筆できるものであるが,正確性を担保す るための一定の仕組みが構築されているし(甲45の2から45の4),\n本件において問題となっている項目の記載内容は,本件商品の主要メーカ ー等のウェブサイトにおける記載と整合しているから,信用するに足りる ものというべきである。)。これらの事実によれば,英語圏においては, 本件商標の登録査定当時,「paint protection film」の語は本件商品の一 般的名称として,「PPF」の語はその略称(「paint protection film」 の各単語の頭文字を組み合わせたものであることは明らかである。)とし て,それぞれ使用されていたと認めるのが相当である。
ウ そして,上記(2)イからエにおいて認定したとおり,本件商品の国内メー カーや施工業者のウェブサイト,雑誌の記事及び広告,ブログの投稿記事 において,本件商品が,アメリカ発の先端的商品としてしばしば紹介され, かつ,その記事の中で,本件商品を指す用語として,「ペイントプロテク ションフィルム」,「PPF」,「ペイント・プロテクション・フィルム (PPF)」の各語が繰り返し使用されていたことも明らかである。 そうすると,本件商品の取引者や需要者は,本件商標登録査定当時,(2) イからエに認定したような国内の記事を通じて,あるいは,(2)アに認定し た国外の商品紹介記事等に直接接することによって(アにおいて認定した とおり,本件商品の需要者は,高級車や外国車を保有する消費者であるか ら,車やその美観の維持等について関心や意識が高いことが予想され,ま\nた,取引者は,そのような需要者を相手とする業者であることを考えると, 国内の記事に関心を持った需要者や取引者が,国外の情報をも得ようとす ることは十分に考えられるところであるし,現に,そのようなことが起こ\nっていたことがうかがわれる。),「ペイントプロテクションフィルム」 は,車の保護フィルムである本件商品一般を指す言葉であり,「PPF」 はその略称であると認識していたものと認められる。
エ この点,ゲンロク平成27年9月号から平成28年3月号にかけて掲載 された被告の広告には,いわゆるチェックマークと「Yes!PPF P AINT PROTECTION FILM」を組み合わせて意匠化した ロゴと,「ペイント・プロテクション・フィルム(PPF:ピーピーエフ)」 の語が記載されているところ(甲57の10から57の12),これらの 広告のみを見る限りにおいては,「PPF」の語が,被告の販売・施工す る自動車用車体・ガラス保護フィルムの出所識別標識として使用されてい るとみる余地もある。 しかし,これらの広告は,本件商標の登録査定日の約半年前からされた ものにすぎず,それ以前からされている他者による「PPF」の語の使用 状況に鑑みると,本件商品の取引者及び需要者においては,「PPF」の 語が本件商品の一般的な略称として用いられていたとの判断を左右するに 足りないというべきである。 オ 以上によれば,本件商品の取引者及び需要者は,本件商標の登録査定時 において,「PPF」の語を本件商品の一般的な略称と認識していたと認 めるのが相当である。

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平成29(ネ)10007  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成30年3月26日  知的財産高等裁判所(4部) 東京地方裁判所  立川支部

 原告の営業秘密を基にしてできたソフトウェアであるとして、差止および170万円の損害賠償が認められました。原告は、被告のソースコードを別会社経由で入手していました。1審はアップされていません。
   原告製品1のPCソースコード(甲19),原告製品2のPCソ\ースコード (甲21),原告製品3及び4のPCソースコード(甲23)を,それぞれ,被控訴\n人が被告製品1のPCソースコードの一部として提出するもの(甲20),被告製品\n2のPCソースコードの一部として提出するもの(甲22),被告製品3及び4 の PCソースコードの一部として提出するもの(甲24)と対比すると,一致する表\ 現が多数認められる。 そして,被告製品1ないし4のPCソースコードには,以下のとおり,原告製品\n1ないし4のPCソースコードに依拠して作成されたことをうかがわせる記載がある。
1) 原告製品1と被告製品1の対比
a 甲19の1頁3行ないし6行の冒頭には,いずれも,「Private」との 記載があるところ,甲20の1頁3行ないし6行の冒頭は,いずれも「'」を付した 「'Private」との記載であり,甲19の命令文を非実行化するものである。
b 甲19の1頁59行には,「lblCh.Caption=txtRecCh.Text&“ch" '20101016 Ver2.2.3」との記載があるところ,甲20の2頁4行には,「'」を付した「'lblCh.Caption=txtRecCh.Text&“ch" '20101016 Ver2.2.3」との記載であり,甲19の命令文を非実行化するものである。
c 甲19の3頁24行から25行に,「'2010/03/11 メールにて変 更要求−−−−−'『測定停止』の例外処理追加'D」との記載があるところ, 同記載は,2010年3月11日にDが修正を行ったことを示すものである。甲2 0の3頁36行から37行には,これと全く同一の記載があり,Dが被告製品1の PCソフト作成を依頼された日以前に行われた修正の記載が残っている。\n
a 甲23の1頁10行に,「Dim flgExceotion1 As Boolean 'PICバグ対策フラグ 一時使用 2012/10/16追加」との記載があるところ,同記載は,2012年10月16日に追加修正を行ったことを示すものである。甲24の1頁10行には,これと全く同一の記載があり,Dが被告製品3及び4のPCソフト作成を依頼された日以前に行われた修正の記載が残っている。\n
b 甲23の1頁13行に,「'2012/3/6追加」との記載があり,同記載 は,2012年3月6日に追加修正を行ったことを示すものである。甲24の1頁 13行には,これと全く同一の記載があり,Dが被告製品3及び4のPCソフト作\n成を依頼された日以前に行われた修正の記載が残っている。
c 甲23の1頁32行に,「'MRS-23RWTLのPICバグがありPIC 修正まで一時的に補正する2012/10/16」との記載があるところ,同記 載は,2012年10月16日に「MRS-23RWTL」,すなわち原告製品3の バグの一時的補正を行ったことを示すものである。甲24の1頁32行には,これ と全く同一の記載があり,Dが被告製品3及び4のPCソフト作成を依頼された日\n以前に,原告製品3の修正をしたとの記載が残っている。
d このほか,甲23の1頁37行の「'−−−−−64QAM用アプリにする場 合−−−−−'2012/12/26」との記載は,甲24の1頁33行と,甲23 の1頁41行の「'コマンドライン引数を取得しデバッグモード確認 2012/ 3/7追加」との記載は,甲24の1頁38行と,甲23の2頁44行の「'64 QAMで10H Endlessに変更する 2013/1/23」との記載は, 甲24の2頁39行と,甲23の3頁10行の「'64QAMモードのみ〔外部接 点制御〕インジケータを表示する 2013/1/23」との記載は,甲24の3 頁1行と,甲23の3頁56行の「pid=1 'ポート番号は1に固定する 2013/2/14」との記載は,甲24の3頁37行と,それぞれ同一の記載であ り,甲23において,Dが被告製品3及び4のPCソフト作成を依頼された日以前\nに行われた修正等の記載が,そのまま甲24に記載されている。 以上によれば,Dは,被告製品1ないし4のPCソースコードを作成するに当た\nって,原告製品1ないし4のPCソースコードに依拠したことが推認される。\n
1)原告製品1と被告製品1の対比
a 甲19の1頁3行ないし6行の冒頭には,いずれも,「Private」との 記載があるところ,甲20の1頁3行ないし6行の冒頭は,いずれも「'」を付した 「'Private」との記載であり,甲19の命令文を非実行化するものである。

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平成29(行ケ)10062  取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月26日  知的財産高等裁判所(4部)

 異議理由ありとした審決が取り消されました。進歩性なしとの審決について、動機付けがないとの理由です。異議申立が認められる割合が低いのですが、それが取り消される事件は、さらに低いですね。
 引用発明Aでは,第1のワイヤが接続されるpn接合ダイオードの一の電 極及びショットキーバリアダイオードの一方の電極は,いずれもカソード電極とな\nる。 そして,引用例には,IGBT4とダイオード5との組合せを,SiCMOSF ETとショットキーバリアダイオードとの組合せに置き換える場合,置換えの前後 で動作を異ならせる旨の記載や示唆はない。 また,引用発明Aは,「トランスファーモールド樹脂で封止した電力用半導体装 置には,主端子に大電流を流すことができるブスバーの外部配線が,ねじ止めやは んだ付けで固定されるため,電力用半導体装置の組み立て時において,主端子部に おおきな応力が働き,この応力により,主端子の外側面とトランスファーモールド 樹脂との接着面に隙間が発生したり,トランスファーモールド樹脂本体に微細なク ラックが発生する等の不具合を主端子部に生じ,電力用半導体装置の歩留まりが低 くなり生産性が低下するとともに,信頼性も低下する」ことを課題とし,「トラン スファーモールド樹脂により封止された電力用半導体装置であって,主回路に接続 される主端子に大電流を流すことのできる外部配線を接続しても,外部配線の接続 により主端子部に発生する不良を低減でき,歩留まりが高く生産性に優れるととも に,信頼性の高い電力用半導体装置を提供すること」を目的とする発明であって(【0 007】,【0008】),この目的を達成することと,SiCMOSFETの型 や並列接続するショットキーバリアダイオードの接続方向を変更することは,無関 係である。 したがって,当業者が,引用発明Aにおいて,上記目的を達成するために,「前 記PN接合ダイオードの一の電極」及び「前記ショットキーバリアダイオードの一 方の電極」をカソード電極からアノード電極に変更する動機付けがあるとはいえな\nいから,相違点1’に係る本件発明1の構成を当事者が容易に想到できたものであ\nるとは認められない。
(イ) さらに,本件発明は,MOSFETに寄生しているpn接合ダイオードに 電流が流れると,MOSFETの結晶欠陥が拡大してデバイス特性が劣化し,特に, SiCMOSFETでは,寄生pn接合ダイオードに電流が流れると,オン抵抗が 増大するという課題があったが,ショットキーバリアダイオードを並列接続しても pn接合ダイオードに電流が流れてしまう現象が生じていることから(【0002】 〜【0004】,【0006】),本件発明1の構成を採用し,第2のワイヤに寄\n生するインダクタンスによって,pn接合ダイオードの順方向立ち上がり電圧以上 の逆起電力が発生しても,pn接合ダイオードに電流が流れないようにする(【0 014】)との作用効果を奏するものである。 しかし,引用発明Aの課題及び目的は,前記(ア)のとおりであり,引用例には, ダイオード5やワイヤーボンド7にインダクタンスが寄生することについての記載 や示唆はないことから,引用例に接した当業者が,引用発明Aに本件発明の作用効 果が期待されることを予想できたとはいえない。\n

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平成29(行ケ)10085  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月26日  知的財産高等裁判所(4部)

 異議理由ありとした審決が取り消されました。訂正は新規事項であるとした審決の判断は維持されましたが、訂正前の発明について、明確性違反および進歩性違反との判断は取り消されました。
 本件決定は,本件発明1の特許請求の範囲のうち「寄生ダイオード(131)の 立ち上がり電圧」は「上記ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高」いとの記載が, いかなる電流が流れる場合のことを表したものであるか不明であるから,明確性要\n件に適合しないと判断した。
(2) 前記2(3)イのとおり,請求項1において,寄生ダイオード(131)の「立 ち上がり電圧は,上記ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高く」と特定されてい るのは,本件発明1の構成として,同期整流を行う際,寄生ダイオード(131)\nの立ち上がり電圧を,ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高くするという技術的 事項を採用する旨特定するものである。 そして,本件発明1に係る電力変換装置において使用される還流電流の程度が限 定されていないことと,同期整流を行う際には,常に,寄生ダイオード(131) の立ち上がり電圧を,ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高くすることとは,関 係がない。
(3) したがって,「寄生ダイオード(131)の立ち上がり電圧」は「上記ユニ ポーラ素子本体のオン電圧よりも高」いとの本件発明1の特許請求の範囲の記載が, 第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。同記載 が明確ではないから,本件各発明の特許請求の範囲の記載は,明確性要件に適合し ないとする本件決定の判断は誤りである。
・・・・
引用発明は,モータの回生モードにおいて,回生電力の消費能力を高めると\nいう課題に対して,順方向電圧降下が高いボディダイオードに電流を流し,回生電 力を消費させるというものである。 このように,引用発明は,モータの回生モードにおいて,ボディダイオードに電 流を流し,ボディダイオードにおいて回生電力を損失させるという課題解決手段を 採用したものである。一方,本件周知技術は,寄生ダイオード側に電流を流さず, 発熱損失を低減させるというものであるから,引用発明の課題解決手段と正反対の 技術思想を有するものである。したがって,当業者は,引用発明におけるモータの 回生モードにおいて,正反対の技術思想を有する本件周知技術を適用することはな い。 そして,引用例には,引用発明の電力変換装置において,力行モードを回生モー ドから切り離し,力行モードの動作のみを変更することを示唆するような記載はな いから,当業者は,力行モードにおける動作のみを変更することを容易に想到する ことはない。 したがって,引用発明に本件周知技術を適用する動機付けはないというべきであ る。

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平成29(行ケ)10148  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月26日  知的財産高等裁判所(4部)

 CS関連発明の進歩性なしとした審決について、引用発明の認定に誤りはあるが、結論としては妥当として審決が維持されました。
 本件審決は,引用発明の「仮情報」は「固定情報」であることが示唆され ている旨判断した。
a この点について,被告は,本願発明の「固定情報」は,複数の取引ごとに変 化しない情報であればよく,取引のたびごとに生成削除されたとしても,生成のた びに同じ値の「仮情報」が生成されていれば「固定情報」であるといえる,実際, 引用発明において,仮情報は,口座取引の内容と無関係に生成される値であり,口 座取引内容に応じて値を変化させる必要がない旨主張する。 しかし,引用例1の【図3】のステップS310〜S311には,「仮情報」を 口座情報に基づいて生成することの記載はないし,「仮情報」はセキュリティの観 点から取引ごとに異なるものとすることが通常であるところ,引用例1にこれを同 じにすることを示唆する記載もない。したがって,引用発明において,生成のたび に同じ値の「仮情報」が生成されることが示唆されているとはいえない い。
b 被告は,引用例1の「ホストコンピュータ30においては,事前に仮情報デ ータと顧客口座情報の対応を検証し,ホスト側データ保管部302に保管しておい ても構わない。」(【0045】)との記載は,「仮情報」を複数の取引にまたが\nって用い得ることを示唆している旨主張する。 しかし,前記イ(イ)のとおり,事前に仮情報データと顧客口座の対応が検証され る場合であっても,「仮情報」は取引終了時に削除されることからすれば,「仮情 報」が複数の取引にまたがって用い得ることが示唆されているとはいえない。
c 被告は,引用例1の「仮情報使用の有効期限と有効回数を設けることも可能\nである。」(【0086】),「仮情報に有効期限と有効回数を設けることにより, 第3者等による不正利用防止のセキュリティを向上させることができる。」(【0 087】)との記載によれば,引用発明の「仮情報」を有効期限や有効回数が設け られた情報のような固定情報として生成することが示唆されている旨主張する。 しかし,「有効期限」(【0086】【0087】)は,携帯端末装置が仮情報 を受け取ってから,現金自動取引装置に仮情報を入力するまでの期限のことと解さ れ,「有効期限」の定めがあるからといって,1回の取引を超えて「仮情報」が使 用されることを示唆するとはいい難い。そして,「有効回数」(【0086】【0 087】)は,仮情報の使用回数を,1回限りではなく,数回としたものと解され るが,前記イ(イ)のとおり,引用発明は,課題解決手段として,顧客口座情報を用 いない手段を採用しているのであるから,「有効回数」の定めがあるからといって, 「固定情報」であることが示唆されているとはいい難い。
d したがって,引用発明の「仮情報」は「固定情報」であることが示唆されて いる旨の本件審決の判断には誤りがあるが,相違点2を容易に想到することができ た旨の本件審決の判断は,結論において正当である。

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平成29(ネ)10092  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 一審(東地46部)は、技術的範囲に属しないと判断しましたが、知財高裁(4部)は属する、無効理由無しと判断しました。
 前記1(2)のとおり,本件発明1の意義は,熱放散ブリッジに軸方向空気通 路を貫設せずに電力電子回路を冷却することにより,電子構成部品の配置に利用可\n能な空間を十\分に確保するという課題を達成するために,熱放散ブリッジの底面を 冷却流体通路の一方の壁とする構成を採用したことなどにある。すなわち,本件発\n明1は,冷却流体が,横方向に吸い込まれて,後部軸受けの中央スロット4b及び 4cの方に流れ,熱放散ブリッジの下方で冷却流体通路内を循環し,熱放散ブリッ ジの底面及び冷却フィンを,それらの全長にわたって掃引した後,後部軸受けの側 部スロット4a及び4dを通って排出される構成とすることにより,熱放散ブリッ\nジの上面に搭載された電力電子回路が,冷却フィン及び熱放散ブリッジを介して, 伝導によって冷却されるという効果を奏するようにしたものである。 そして,このように構成要件1Gの冷却流体通路が,熱放散ブリッジを冷却する\nための構成であり,同通路を流れる冷却流体が,熱放散ブリッジの底面をその全長\nにわたって掃引するものであることからすると,冷却流体通路の長手方向壁のうち, 少なくとも熱放散ブリッジの底面により形成される壁は,冷却効率の観点から,冷 却流体通路の全長にわたっている必要がある。
(イ) 一方,本件明細書1には,構成要件1Gの冷却流体通路が,同通路の他方\nの長手方向壁を形成している後部軸受けを冷却するための構成であることは何ら記\n載されていない。そして,前記1(2)のとおり,本件発明1は,軸方向を流れる冷却 流体によって,機械内の冷却流体全体の流量が増加し,オルタネータの内部部品を はるかに良好に冷却することができるという効果を奏するものであることからする と,後部軸受けの冷却は,冷却流体通路を通る空気によってではなく,主に,空間 22を通る軸方向空気流により機械内の空気流量全体が増加することによって達成 されるものであると認められる。 そうすると,後部軸受けをもって冷却流体通路の壁を形成する構成とすることは,\n空気の流れを冷却流体通路に沿わせる目的を持つのみということになるため,必ず しも,冷却通路全体にわたる必要はない。例えば,本件発明1の実施形態において, 後部軸受けの中央スロット4b及び4cの直上にある空気は,ファンによって後部 軸受け内部に流入し,絶えず側方からの空気と入れ替わるので,その直上の熱放散 ブリッジを冷却する空気流を形成することは,【図2】に示される構造から明らか\nであり,熱放散ブリッジを冷却するという機能に鑑みれば,中央スロット4b及び\n4cの部分には後部軸受けにより形成される壁はないものの,冷却流体通路に該当 するといえる。
(ウ) 以上のとおり,本件明細書1に記載された冷却流体通路の技術的意義に鑑 みると,構成要件1Gの冷却流体通路は,熱放散ブリッジの底面により形成される\n長手方向壁が全長にわたって設けられることを必要とする一方,後部軸受けにより 形成される長手方向壁が全長にわたって設けられることは,必ずしも必要ではない と解される。 また,かかる解釈は,冷却流体通路と冷却フィンとの関係とも整合する。すなわ ち,本件明細書1には,「この冷却手段は,通路17内に配置されて,選択された 通路に冷却流体を流す。」(【0054】)との記載があり,かつ,【図2】によ れば,冷却フィンが熱放散ブリッジの底面の半径方向全長にわたって配置され,後 部軸受けが対向しない箇所にも存在していることが読み取れるのであるから,熱放 散ブリッジと中央スロット4b及び4cとが対向する箇所は,冷却フィンが配置さ れる箇所という観点からも,熱放散ブリッジと後部軸受けとが対向する箇所と同様, 通路17の内部といえる。 加えて,仮に,熱放散ブリッジの底面及び後部軸受けの双方が壁をなしている部 分のみが冷却流体通路に該当すると解するならば,冷却流体通路の半径方向外側の 端部は,熱放散ブリッジの外周か後部軸受けの外周のうち軸側の部分となるところ, 【図2】を参照すると,後部軸受けの外周が保護カバー11に到達しておらず,後 部軸受けと保護カバーとの間に隙間が存在することは明らかであるから,冷却流体 通路は保護カバーと連通していないと理解される。しかし,本件明細書1には,「本 発明によれば,保護カバーは,流体通路17と向き合う位置に開口19を有する。 この開口は,通路17の外周と連通している。」(【0049】)として,通路1 7が保護カバーの開口と連通していることが記載されており,前記理解と整合しな い。
ウ 以上のとおり,特許請求の範囲の記載,本件明細書1の記載及び本件発明1 における冷却流体通路の技術的意義を総合すれば,冷却流体通路は,熱放散ブリッ ジの底面が冷却流体通路の全長にわたり長手方向壁を形成していることを要する一 方,後部軸受けにより形成される長手方向壁は冷却流体通路の全長にわたる必要は ないと解される。

◆判決本文

◆一審はこちらです。平成28(ワ)13239

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平成29(ワ)21107  不正競争行為差止等請求事件 平成30年3月19日  東京地方裁判所

 不競法2条1項3号の商品形態模倣には該当しないと判断されました。なお、争点の1つとして、旧製品を変更した新製品について、販売開始時期は新製品の販売時期かが争われました。裁判所は新製品の販売時期と判断しました。新旧でどの程度違うのかについては、判決文の後ろに写真があります。
 原告商品と旧原告商品のV型プレートは,中央下部の幅,4個の穴の位置,そ れぞれの穴の距離,中央下部の窪みの位置・角度,両翼下部の角度,両翼の長さ,両 翼の穴の位置が共通するが,両翼の上部が削られてその形状及び幅が両翼にかけて細 長く変更されている。上記変更により,原告商品のV型プレートの美観から受ける印 象は旧原告商品のV型プレートとは相当に異なるものといえる。そうすると,上記変 更は,V型プレートの形態としてはその美観において実質的に変更されたと評価し得 る変更であって,しかも,V型プレートはサックス用ストラップの美観における特徴 的部分であり需要者が着目する部分であるといえるから,V型プレートの変更後の形 態は,美観の点において保護されるべき形態であると認められる。もっとも,V型プ レートを有するサックス用ストラップは,旧原告商品はもとより他にも同種商品が存 在し(乙1,2),細長形状の形態も公開されているところであるから(乙4),ここ で保護されるのは,V型プレートの中央部の形状や両翼の角度・形状等を総合した特 有の形状に限られるというべきである。
・・・
以上のとおり,原告商品のV型プレートの変更部分は,商品の形態において実 質的に変更されたものであり,その特有の形状が美観の点において保護されるべき形 態であると認められるから,原告商品が「日本国内において最初に販売された日」は, 旧原告商品が最初に販売された日ではなく,原告商品が最初に販売された日である平 成28年3月頃であると認められる。

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平成29(行ケ)10188  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成30年3月12日  知的財産高等裁判所

 創作容易であるとした審決が維持されました。
 前記(1)によれば,意匠の創作非容易性は,その意匠の属する分野における通 常の知識を有する者(当業者)を基準に,公然知られた形状,模様若しくは色彩又 はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたか否かを判断して 決するのが相当である(意匠法3条2項)。 本願意匠の「アクセサリーケース型カメラ」は,アクセサリーケースとしての用 途と機能を有し,併せて相手に分からないように撮影し,録画するという隠しカメ\nラとしての用途と機能を有するものである。アクセサリーケースに隠しカメラを設\n置する場合,多種多様な隠しカメラの撮像部の配置を参考にして,適切な設置場所 を決定すると考えられるから,本願意匠に係る当業者は,アクセサリーケースの分 野における通常の知識と,隠しカメラの分野における通常の知識を併せて有する者 である。 前記1(4)のとおり,引用意匠3は,ガム等の収納容器の内部に撮影機能を組み込\nんだ「撮影機能付ボトルケース」であり,引用意匠4は,ティッシュボックスの収\n納容器の内部に撮影機能を組み込んだ「撮影機能\付ティッシュボックス」である。 したがって,「アクセサリーケース型カメラ」の当業者にとって,隠しカメラで ある引用意匠3及び4は,出願前に公然知られた形態といえるから,本願意匠にお ける撮像部の設置場所を決定するに当たり,引用意匠3及び4を参考にすることが できる。
イ 原告は,1)本件審決の認定と異なり,本願意匠と引用意匠3及び4は同じ分 野に属さない,2)本願意匠に係る当業者には,防犯用隠しカメラの分野に関する意 匠を転用する習慣などなく,防犯用隠しカメラの形態が広く知られていたとはいえ ない,などとして,引用意匠3及び4を相違点Aの創作容易性の根拠とすることは, 誤りであると主張する。 しかし,1)本件審決は,本願意匠に係る当業者が,アクセサリーケースと隠しカ メラの双方について,通常の知識を有するものと判断しているのであって,本願意 匠と引用意匠3及び4が同一の分野に属すると判断しているのではないから,原告 の上記主張は前提を異にするものである。また,2)アクセサリーケースに隠しカメ ラを設置する場合,隠しカメラの分野においていかなる形態で撮像部が設置されて いるかを参考にすると考えられるから,本願意匠に係る物品の当業者にとって,公 然知られた隠しカメラの形態は,公知というべきである。 したがって,本件審決が,引用意匠3及び4を相違点Aの創作容易性の根拠とし たことに誤りはない。
(3) 相違点AないしCの創作容易性
ア 引用意匠3(別紙4。甲4)及び4(別紙5。甲5)の形状からすれば,こ れに接した当業者は,隠しカメラの撮像部を収納部とすることを示唆されている。 引用意匠1は,アクセサリーケースを開いて指輪を見せ,ひざまずいた状態でプ ロポーズを行うというアメリカの風習(甲13)に適するよう,撮像部を上蓋部に 設けたものである(甲2)。そこで,これと異なる形で,アクセサリーケースを使 用する場合にも適するよう,撮像部の位置を変更する動機付けが認められる。した がって,撮像部を収納部に設置した引用意匠3及び4を参考にしつつ,引用意匠1 の撮像部を上蓋部から収納部に変更することは,当業者が,容易に創作することが できたものである。 また,一つの要素をある箇所に設ける際に,その箇所の上下左右対称の中心部分 に配置する造形処理は,工業デザイン一般において通常行われていることであるか ら,撮像部を収納部の中央部分に配置することは,特段困難なことではない。そし て,カメラの撮像部の形態を円形とすることはごく普通にみられる広く知られた形 状であり,撮像部の直径を13%から15%に大きくすることは,多少の改変にす ぎない。 したがって,相違点Aに係る本願意匠の形態には着想の新しさ・独創性があると はいえず,引用意匠1に引用意匠3及び4を組み合わせることによって,当業者が 容易に創作することができたものである。
イ 相違点Bについて,引用意匠1の上蓋部の形態を,引用意匠2(甲3。別紙 3)の上蓋部のように,上蓋上面が平坦な略直方体状とすることに,着想の新し さ・独創性があるとはいえず,当業者が,容易に創作することができたものである。
ウ そして,相違点Cについて,スイッチ等の操作部を大きくするような変更は, 操作性の向上等のために行われる特段特徴のない変更である。そうすると,引用意 匠1のスイッチの形態を,特段特徴のない変更をして広く知られた形態である略円 柱状にすることに,着想の新しさ・独創性があるとはいえず,当業者が容易に創作 することができたものである。

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◆本件意匠はこちら。意願2015−24653号

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平成29(行ケ)10036  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年2月27日  知的財産高等裁判所

 審判請求書の補正の要旨の変更の可否を争う機会を実質的に失わせる手続き違背があったが、結論に影響しないとして、取消理由にはなりませんでした。
 特許法131条の2第1項本文は,請求書の補正は,その要旨を変更し てはならない旨規定するのに対し,同条2項は,審判長は,請求書に係る請求の理 由の補正がその要旨を変更するものであっても,当該補正が審理を不当に遅延させ るおそれがないことが明らかなものであり,かつ,被請求人も同意したことその他 の同項各号のいずれかに該当する事由があるときは,決定をもって,当該補正を許 可することができる旨を規定し,同条4項は,同条2項の決定に対しては,不服を 申し立てることができない旨を規定する。\n上記各規定は,請求の理由の要旨を変更する補正については,審理対象を変動さ せるものであるから,審理の遅延を防止する観点から,これを許可することができ ないとする一方,要旨を変更する補正であったとしても,審理の遅延という観点か ら不当なものではなく,被請求人も同意するなど特段の事情が認められる場合には, 審判長の裁量的判断として当該補正を許可することができるものとし,このような 場合において,仮に不許可の決定がされたとしても,審判請求人はいつでも別途の 無効審判請求をすることが可能であるから,審判請求人は,当該不許可決定に対し\nては不服を申し立てることができないとしたものである。\nそうすると,審判請求人が,請求書の補正が要旨を変更するものではない旨争っている場合において,審判合議体において当該補正が要旨を変更するものであるこ とを前提として,これを許可することができないと判断するときは,審判合議体は, 同条1項に基づき,当該補正を許可しない旨の判断を示すのが相当である。それに もかかわらず,審判長が,同条1項に基づく不許可の判断を示さず,同条2項に基 づき,裁量的判断として補正の不許可決定をする場合には,審判請求人は,同条4 項の規定により,審判手続において,当該決定に対しては不服を申し立てることが\nできず,審決取消訴訟においても,上記決定が裁量権の範囲を逸脱又は濫用するも のでない限り,上記決定を争うことができなくなるものと解される。このような結 果は,審判請求人に対し,要旨の変更の可否を争う機会を実質的に失わせることに なり,手続保障の観点から是認することができない。
イ これを本件についてみると,証拠(甲26,甲27及び甲30)及び弁 論の全趣旨によれば,原告は,平成27年12月24日付け上申書及び平成28年\n2月25日付け審判事件弁駁書を提出したこと,原告は,これらの書面において, 請求の理由を補正して,結晶方位差が所定角以内の結晶子どうしの配置状況を制御 できなければ,同一結晶方位領域の平均円相当径を目標値に制御することは不可能\nであり,また,同一結晶方位領域を解析する際に,粉末充填密度をどのような値に 設定するのかが何ら記載されていないため,本件明細書における発明の詳細な説明 の記載は,実施可能要件を充足するものではないと主張したこと,原告は,審判手\n続においても,当該補正は,無効理由1における間接事実をいうものであり,要旨 を変更するものではないと主張したものの,審判長は,平成28年5月20日付け で,格別理由を付することなく,上記補正については許可しない旨の決定をしたこ と,審決は,上記主張について,平成28年5月20日付け補正許否の決定により, 無効理由に追加することは許可しないとの決定を行ったから,本件の審理範囲内の 主張ではないと判断したこと(審決50頁),原告は,本件訴訟においても,上記決 定の違法を主張するに当たり,上記補正が要旨を変更するものではないことを一貫 して主張していること,以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば,原告は,審判手続において,上記補正が要旨を変更する ものではない旨争っていたにもかかわらず,審判長は,当該補正が要旨を変更する ものであることを前提として,特許法131条の2第1項ではなく,同条2項に基 づき,格別理由を付することなく,上記補正を許可することができないと決定した ものと認められる。 そうすると,審決には,同条についての法令の解釈適用を誤った結果,要旨変更 の存否についての審理不尽の違法があるといわざるを得ない。原告の主張は,上記 の趣旨をいうものとして理由がある。
ウ もっとも,審決は,無効理由1’’の主張が請求書に記載されていたと仮 定した場合であっても,本件発明1の空気極材料及び本件発明2の固体酸化物型燃 料電池は,無効理由1と同旨の理由により,本件明細書及び図面の記載並びに本件 出願当時の技術常識に基づき,当業者が製造することができるといえるから,当該 主張は,合理性が認められず,採用することができないとしている。 そこで検討するに,無効理由1’’に係る主張は,結晶方位差が所定角以内の結晶 子どうしの配置状態の制御及び同一結晶方位領域の解析時の粉体充填密度の不明を いうものであって,前者については,本件発明に係る「同一結晶方位領域」の定義 に関する事項をいうものであり,既に審理の対象とされている事項につき補充主張 するものにすぎず,後者については,無効理由1において主張した6つの不明な製 造方法に係る制御因子のほかに,製造方法に密接に関連する解析条件に係る問題点 を補充的に指摘するものにすぎないから,要旨を変更するものではないと解するの が相当である。 そして,無効理由1’’に係る主張の内容を検討するに,前者については,本件発 明にいう「同一結晶方位領域」は,「結晶方位差が5度以上の境界によって規定され る領域」と一義的に定義されているのであるから,当該定義を前提とすれば,原告 の主張にかかわらず,EBSD法によって「同一結晶方位領域」を計測することが できることは明らかである。また,後者については,前記(1)のとおり,粉体充填密 度が同一結晶方位領域の大きさを左右することを立証し得る証拠及び技術常識を認 めることができない。 したがって,原告の主張は,いずれも実施可能要件に係る前記3の判断を左右す\nるものとはいえない。
エ 以上によれば,審決の判断は,結論において取り消すべき違法はなく, 原告の主張は,審決の結論に影響を及ぼさない事項についての違法をいうものにす ぎず,採用することができない。

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平成27(ワ)8736  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年2月15日  大阪地方裁判所

 5%の推定覆滅事由が認められましたが、特102条2項により約4100万円の損害賠償が認められました。
 以上より,乙43発明は,同公報において,本件発明の課題として,開閉操作 部がチャック部を跨ぐように配置されていることから,保持の仕方によっては容器を 保持する手は充填部の一部に重なって充填物の量を確認しにくいという課題がある ことを前提に,開閉操作部とチャック部の位置関係につき,チャック部を開閉操作部 の下側になるよう特定したものと理解できる。 そして確かに,本件発明の実施例は,すべて開閉操作部がチャック部を跨ぐように なっているものの,本件発明の特許請求の範囲において,チャックの位置関係は何ら 特定されているわけではない。そうすると,乙43発明に,本件発明において特定さ れていないチャック部と開閉操作部の位置関係を特定することで進歩性があるとし ても,結局,片手操作で栄養剤注入するという本件発明の改良形にすぎないことは明 らかであって,本件発明1を実施している以上に技術的に積極的な意味はなく,被告 製品の販売拡大に貢献している程度はさほど大きいものとは認められない。
e 乙44ないし乙46意匠
乙44意匠ないし乙46意匠は,被告製品そのものを対象として出願し登録された 意匠といえるが,乙45意匠,乙46意匠は乙44意匠の部分についての部分意匠と して登録されているにすぎないから,結局,本件で問題とすべきは,被告製品が乙4 4意匠を実施していることということになる。 しかし,その意匠は,乙41発明,乙42発明の実施例と同じものにすぎないし, 栄養供給バッグという商品の性質上,登録意匠のもたらす美観が需要を喚起すること は考えにくいから,登録意匠を実施していることをもって,本件特許権侵害を理由と する法102条2項の推定を覆滅する事由となるものとは認め難い。
f まとめ
以上を総合すると,被告製品は,確かに乙40発明ないし乙43発明及び乙44意 匠ないし乙46意匠を実施しているが,本件発明に技術的に付与するものは乙43発 明のみであり,その付与の程度がさほど大きくないことは上記のとおりである。 したがって,その事情が,法102条2項の推定覆滅事由となるにしても,5%を 減じるにとどまるというべきである。
ウ 被告製品の売上げについての被告の営業力,ブランド力の貢献
被告は,被告製品の売上げは被告の営業力,ブランド力よるものであり,技術面の 寄与度はせいぜい30%であると主張する。 確かに証拠(甲18,乙57)及び弁論の全趣旨によれば,連結売上高で原告は5 76億3600万円であるのに対し,被告は3596億9900万円であり,従業員 数でも原告はグループ総数で6777名にとどまるのに対し,被告のそれは2万74 15名であって,企業規模としては被告の方が圧倒的に大きく,したがって原告が全 国に支社,営業所を有していることを考慮しても,営業力,ブランド力とも被告の方 が強いことは否定できない。 しかし,証拠(乙47)によれば,本件で問題とすべき経腸栄養バッグ(空バッグ) の分野に限れば,当該市場は,●(省略)●のシェアを占め,その余を他社が占める というのであり,とりわけ「片手の指を挿入するためのシート状の1対の開閉操作部」 を有する経腸栄養バッグに限れば,市場には原告と被告の製品以外は存しないから, 市場を●(省略)●を占めるという関係にあり,当該分野に限れば,限られた需要者 の間において原告がブランド力を確立していることは容易に推認され,原告との間で, 営業力,ブランド力の差が生じているものとは認められない。 したがって,原告と被告の営業力,ブランド力の差をもって,法102条2項によ る推定が覆滅されるとする被告の主張は採用できない。
(5) 総括
以上を総合すると,法102条2項の規定により原告の損害として認定されるべき 額は,上記(3)で認定した被告製品の販売により受けた利益の額●(省略)●に,上 記(4)で認定した減額事由を考慮し,以下の計算式のとおり3718万0364円と 認定するのが相当である。
(計算式)
●(省略)●=37,180,364 円
また,上記損害額に本件に現れた一切の事情を斟酌すると,本件と因果関係のある 弁護士及び弁理士費用相当の損害額は380万円と認定するのが相当である。

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平成27(ワ)31774等  特許権侵害差止等請求事件  特許権 平成30年3月2日  東京地方裁判所(40部)

 冒認者が真の発明者に対して権利行使したことが不法行為に該当するとして550万円の損害賠償が認められました。
 まず,原告代表者自身の陳述書(甲11)によれば,原告代表\者は普 通高校を卒業後,本件特許の出願当時まで螺旋状コイルインサートの販 売事業に従事した経験を有するのみであって,螺旋状コイルインサート の設計や製造に関わった経験はないものと認められ,螺旋状コイルイン サートに関して原告代表者を発明者とする特許出願や原告が執筆した論\n文等も存在しない(乙25の1及び2,乙26)。 また,原告代表者自身,本人尋問において,タングレス螺旋状コイル\nインサートの技術については「素人なので一切知らない」旨の供述をし ているとおり(原告代表者〔本人調書8頁〕。以下,同様に本人調書の\n該当頁を併記する。),原告代表者がタングレス螺旋状コイルインサー\nトに関して専門的な知識を有していたことはうかがわれない。 さらに,前記(2)イのとおり,原告は,平成11年当時,被告の製造す る製品の販売会社にすぎず,螺旋状コイルインサートの製造設備や実験 設備を有していたとは認められない。 したがって,そもそも,原告代表者に本件発明を着想し,これを具体\n化するだけの知識,経験及び環境が備わっていたといえるのか,疑問が ある。
イ 発明の動機について
原告は,原告代表者が被告の製造するタングレス螺旋状コイルインサ\nートについてどうしたら生産性を上げられるか考え悩んでいたことが本 件発明の動機であると主張する。 しかし,原告代表者の供述によれば,被告の製造するタングレス螺旋\n状コイルインサートの生産性が低いという認識を持ったのは,被告の営 業担当者と飲食を共にしたときに聞いたというのみであり,原告代表者\nは,上記営業担当者の氏名は供述せず,そのような話を聞いた際の具体 的な状況についても明らかにしない。 しかも,原告代表者は,生産効率の低さを聞いたのは本件特許の出願\n後だと思うとも供述し(原告代表者〔16,17頁〕),また,生産効\n率の低さを聞いていたとしながらも,これを改善する方策を検討するに 当たり,被告にどのような問題があって,実際にどのように生産してい たかという点を「調べてない」と供述している(原告代表者〔20\n頁〕)。 以上のとおり,本件発明の動機に関する原告代表者の供述は抽象的で\n不自然な点が多く,被告のタングレス螺旋状コイルインサートの生産性 の向上が本件発明の動機であったと認めることはできない。
・・・・
訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において 提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである 上,提訴者が,そのことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのこと を知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度 の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるもの と解するのが相当である(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月 26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁,最高裁平成7年(オ)第16 0号同11年4月22日第一小法廷判決・裁判集民事193号85頁参照)。 本件においてこれをみるに,原告の本訴請求は理由がないところ,前記2 (5)に説示したとおり,原告代表者は福島工場において本件発明を知得した\n上,本件特許を出願したものといわざるを得ないのであって,原告による本 件特許の出願は冒認出願であったというべきである。 そして,本件特許の出願をD弁理士に依頼したのは原告代表者自身であり,\n被告の福島工場を訪れたのも原告代表者自身であって,本件特許の出願につ\nいては原告代表者が主体的に関わったものと認められることなどによれば,\n原告代表者が記憶違いや通常人にもあり得る思い違いをして本件特許出願に\n及んだということもできない。 加えて,原告が本訴提起前に被告から本件特許の出願が冒認出願であると の指摘を受けながらあえて本訴提起に及んだと認められることは,前記2 (2)シ(イ)及び(ウ)記載のとおりである。
そうすると,本訴請求において原告の主張した権利又は法律関係が事実的, 法律的根拠を欠くものであることはもちろん,原告が,そのことを知りなが ら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴え を提起したというべきであるから,本訴の提起は裁判制度の趣旨目的に照ら して著しく相当性を欠くものと認められるといわざるを得ない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告による本訴の 提起は被告に対する違法な行為というべきである。
(2) 被告の損害発生の有無及びその額
ア 本訴の防御のための弁護士・弁理士費用その他の費用
証拠(乙58〜68,101〜107,122〜125,134〜1 37,142〜143,152〜154(いずれも枝番を含む。))によれば,被告は,本訴事件に応訴するため,弁護士との間で訴訟代理の委任契約を締結するとともに,特許業務法人との間で補佐人の委任契約を締結し,相当額の報酬額を負担したほか,郵送料,謄写費用その他各種手続費用を負担したことが認められるところ,本訴の事案の内容,訴額,審理の経過及び期間,立証の難易度その他本件に現れた諸般の事情に照らすと,このうち原告の不法行為と相当因果関係のある費用は500万円と認めるのが相当である。 イ 反訴のための弁護士費用
反訴の事案の内容,経過,認容額その他本件に現れた諸般の事情に照らすと,反訴提起のための弁護士費用のうち50万円を原告に負担させるのが相当である。

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平成29(行ケ)10169  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年3月7日  知的財産高等裁判所(2部)

 知財高裁は、商標「ゲンコツコロッケ」について、先願商標「ゲンコツ」(5100230号)と類似するとして、11号違反無しとした審決を取り消しました。
 本件商標は,前記第2,1のとおり,「ゲンコツコロッケ」の片仮名を, 毛筆で書したかのような字体で,「ゲ」「コ」「ケ」をやや大きく,その余の文字をや や小さく一連に書してなり,「ゲンコツコロッケ」の称呼を生じるものである。そし て,本件商標のうち「ゲンコツ」は,「にぎりこぶし。げんこ。」を意味する(甲6)。 証拠(甲54〜58,60,61,63,乙3)及び弁論の全趣旨によると,本件 登録審決日当時,「ゲンコツ」は,食品分野において,ゴツゴツした形状や大きさが にぎりこぶし程度であることを意味する語として用いられることがあったものと認 められる。「コロッケ」は,「揚げ物料理の一つ。あらかじめ調理した挽肉・魚介・ 野菜などを,ゆでてつぶしたジャガイモやベシャメル・ソースと混ぜ合わせて小判\n形などにまとめ,パン粉の衣をつけて油で揚げたもの。」を意味する(甲5)。 本件商標は,「ゲンコツ」と「コロッケ」の結合商標と認められるところ,その全 体は8字8音とやや冗長であること,上記のとおり「コ」の字がやや大きいこと, 「ゲンコツ」も「コロッケ」も上記の意味において一般に広く知られていることか らすると,本件商標は,「ゲンコツ」と「コロッケ」を分離して観察することが取引 上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえないものである。 また,本件商標の指定商品のうち本件訴訟において争われている指定商品は,い ずれも,「コロッケ入り」の食品であるから,本件商標の構成のうち「コロッケ」の\n部分は,指定商品の原材料を意味するものと捉えられ,識別力がかなり低いもので ある。これに対し,上記のとおり,「ゲンコツ」は,食品分野において,ゴツゴツし た形状や大きさがにぎりこぶし程度であることを意味する語として用いられること があることから,「ゲンコツコロッケ」は,「ゴツゴツした,にぎりこぶし大のコロ ッケ」との観念も生じ得るが,常にそのような観念が生ずるとまではいえず,また, 本件商標の指定商品の原材料である「コロッケ」は,ゴツゴツしたものやにぎりこ ぶし大のものに限定されていないのであるから,「ゲンコツ」は,「コロッケ」より も識別力が高く,需要者に対して強く支配的な印象を与えるというべきである。 さらに,証拠(甲51,66〜72)及び弁論の全趣旨によると,被告が,本件 商標を使用して,「ゲンコツコロッケ」の販売を開始したのは,平成26年6月3日 であり,販売開始は新聞の電子版で報道され,「ゲンコツコロッケ」は,人気商品と なって,販売開始から短期間で多数個が販売されたことが認められる。しかし,本 件登録審決日は上記の販売開始から約3か月間経過後であること,コロッケのよう な食品の需要者はきわめて多数にのぼると考えられることからすると,上記のよう な被告による販売の事実があるとしても,「ゲンコツコロッケ」が不可分一体と認識 されると認めることはできない。 以上より,本件商標の要部は「ゲンコツ」の部分であると解すべきである。
イ 本件商標の要部「ゲンコツ」と引用商標とは,外観において類似し,称 呼を共通にし,観念を共通にする。したがって,両者は,類似しているものと認め られる。
(2) 被告の主張について
ア 被告は,1)本件商標は外観上全体として統一感ある印象を与え,2)称呼 も短く,一連に称呼できるから,全体で一体不可分の語として認識,理解されるべ きである,と主張する。 しかし,本件商標が全体として不可分なものであって,「ゲンコツ」と「コロッケ」 を分離して観察することができないといえないことは,前記(1)のとおりである。
イ 被告は,1)本件商標の指定商品は「コロッケ」ではなく,2)「コロッケ」 が商品の原材料を表すものと認識される場合であっても,需要者は「にぎりこぶし\nのような大きさや形状のコロッケ」が入った「パン,サンドイッチ,ハンバーガー, 弁当」等であると認識するから,「ゲンコツコロッケ」を一体的に理解する,と主張 する。 しかし,本件商標の構成のうち「ゲンコツ」の部分が,需要者に対して強く支配\n的な印象を与えることは,前記(1)のとおりであり,需要者が,「ゲンコツコロッケ」 を一体的に理解するとは認められない。
ウ 被告は,本件商標は周知であるから,「ゲンコツコロッケ」は常に一体不 可分のものとして認識される,と主張する。 しかし,この主張を採用することができないことは,前記(1)のとおりである。 2 指定商品の類否について
本件商標の指定商品のうち,第30類「コロッケ入りパン,コロッケ入りサンド イッチ,コロッケ入りハンバーガー,コロッケ入り弁当,コロッケ入りの調理済み 丼物,コロッケ入りの調理済みのカレーライス,コロッケ入りのチャーハン」は, 引用商標の指定商品である第30類「おにぎり,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅう まい,すし,たこ焼き,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパ イ,ラビオリ」に同一又は類似することについて,当事者間に争いはない。
3 以上より,本件商標は,指定商品「コロッケ入りパン,コロッケ入りサンド イッチ,コロッケ入りハンバーガー,コロッケ入り弁当,コロッケ入りの調理済み 丼物,コロッケ入りの調理済みのカレーライス,コロッケ入りのチャーハン」につ き,商標法4条1項11号に該当するから,原告の取消事由の主張には,理由があ る。

◆判決本文

類似事件はこちら。

◆平成28(行ケ)10164
この事件では、商標「ゲンコツメンチ」は商標「ゲンコツ」(5100230号)と非類似と判断されています。

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平成29(ワ)5074  特許権に基づく差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年1月30日  東京地方裁判所

 自動麻雀卓の特許について、文言を充足しないとして、技術的範囲に属しないと判断されました。問題の文言は「牌の横幅ほどの幅をもつ吸着面」です。
 本件発明に係る特許請求の範囲の記載に加え, 上記(1)の本件明細書の各記載, 特に【課題を解決するための手段】として「該円筒回転体の周面部位には前記 円筒回転体の一側端から牌の横幅ほどの幅をもつ吸着面を配設し,」,「前記円 筒回転体に吸い上げられた牌の方向を揃えるため前記吸着面の外側の軌道に 沿って配設した案内部材」「を設け,前記円筒回転体によって下方位置にて取 り上げられた牌は,前記案内部材にそって牌の向きを揃えながら上方に移動す る」(段落【0008】)との記載を勘案すると,本件発明の構成要件I及びK\nは,それぞれ円筒回転体の周面部位に配設された「円筒回転体の一側端から牌 の横幅ほどの幅をもつ吸着面」上で,吸着面からはみ出た牌の部分に「前記吸 着面の外側の軌道に沿って配設した案内部材」を当接させることによって,牌 の向きを揃えるという技術的意義を有するものと認められる(なお,本件明細 書の「図10及び図11を参照して、吸着面401Bに様々な角度にて吸着し た牌10が、整列機構500により縦長方向に整列する動作について説明する。\n案内部材501の入り口付近で吸着面401Bからはみ出た側面が、案内部材 先端502に接触して抵抗を受けるが、牌10に埋設されている磁石11の中 心が、円筒回転体401に埋設されている磁石401Cの中心に吸引されて回 転しながら向きを変え、当該側面が案内部材501の内壁面501Aと並行状 態になって整列機構500の内部に進入する。」との実施例の記載(段落【00\n33】)も上記認定を裏付けるものといえる。)。 そうすると,本件発明の構成要件Iの「円筒回転体の一側端から牌の横幅ほ\nどの幅をもつ吸着面」は,吸着面の幅が,牌の横幅(短辺)と同一か,牌の吸 着面からはみ出た部分に案内部材を接触させることによって牌の方向を揃え ることができる程度に狭くなっていることを意味し,少なくとも牌の縦幅に近 似した幅を有する吸着面はこれに含まれないと解するのが相当である。また, 構成要件Kの「前記吸着面の外側の軌道に沿って配設した案内部材」は,吸着\n面の幅が上記のようなものであることを前提として,吸着面からはみ出した牌 の部分に当接して牌の向きを揃えることができる位置に案内部材を配設する ことを意味し,少なくとも吸着面の外側の軌道に近似する線よりも内側に配設 された案内部材はこれに含まれないと解するのが相当である。 そこで,まず,構成要件Iの充足性について検討するに,各被告製品の吸着\n面の幅(円筒回転体の一側端からの幅)が32.6mmであるのに対し,牌の横 幅は24.0mm,牌の縦幅は32.9mmであって(乙4及び当事者間に争い がない事実),各被告製品の吸着面の幅はむしろ牌の縦幅に近似するものと認 められるから,構成要件Iの「円筒回転体の一側端から牌の横幅ほどの幅をも\nつ吸着面」を充足しない。 これに対し,原告は,1)吸着面の幅は牌の横幅より9mmほど長めであるに すぎない,2)本件明細書の段落【0009】の記載からすると,円筒回転体の 幅が牌の縦幅と略等しい場合にも構成要件Iを充足することが強く示唆され ているなどと主張する。 しかしながら,まず,上記1)について,各被告製品は,吸着面の幅が牌の横 幅より9mmも長い一方で牌の縦幅よりわずかに0.3mm短いにすぎないの であるから,円筒回転体の周面部位に配設された「円筒回転体の一側端から牌 の横幅ほどの幅をもつ吸着面」上で,吸着面からはみ出た牌の部分に「前記吸 着面の外側の軌道に沿って配設した案内部材」を当接させることによって,牌 の向きを揃えるという本件発明の技術的意義(上記(2))を発揮させることができ ない。また,上記2)について,被告が指摘する本件明細書の段落【0009】 の記載は,「円筒回転体の幅は牌の縦幅と略等しい寸法でよく」としているに すぎず,吸着面の幅が牌の縦幅とほぼ等しい場合に構成要件Iを充足すること\nの根拠となるものとは認め難い(なお,本件明細書の段落【0021】及び図 7には,円筒回転体の幅が牌の縦幅と略等しい長さ(lL )であるのに対し, 吸着面の幅が牌の横幅分の長さ(ls )である実施例が開示されている。)。し たがって,原告の主張はいずれも採用の限りでない。 次に,構成要件Kの充足性について検討するに,乙2の写真3及び4並びに\n弁論の全趣旨によれば,各被告製品の案内部材は吸着面の外側の軌道から約5. 6mmも内側に配設されていると認められるから,前記(2)に説示したところに よれば,各被告製品は,構成要件Kの「前記吸着面の外側の軌道に沿って配設\nした案内部材」も充足しない。

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平成29(行ケ)10168  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年2月20日  知的財産高等裁判所

 商標法4条1項11号に該当するとした審決が維持されました。
 本件商標と引用商標1及び2とでは,外観を異にするものと認められるものの, 称呼としては,本件商標が少なくとも「ミソヤ」との称呼を生じるのに対し,引用\n商標1及び2も「ミソヤ」との称呼を生じるものであると認められる。また,観念\nについても,本件商標からは,全体として「味噌を売る店」との観念を生じるとと もに,本件指定役務との関係においては,味噌味の飲食物を提供する店との観念も 生じ得るものといえるのに対し,引用商標1からは,「味噌を売る店」の観念を生 じるとともに,引用商標1の指定役務との関係においては,味噌味の中華料理を主 とする飲食物を提供する店との観念も生じ得るものといえる。さらに,引用商標2 からも,「味噌を売る店」の観念を生じるとともに,引用商標2の指定役務との関 係においては,味噌味のラーメンを提供する店との観念も生じ得るものといえる。 したがって,本件商標と引用商標1及び2とは,称呼と観念とは共通するものと いうことができる。
オ 取引の実情について
引用商標の指定役務「中華料理を主とする飲食物の提供」及び「ラーメンの提 供」は,前記のとおり,本件指定役務「飲食物の提供」に含まれるものであるとこ ろ,本件指定役務及び引用商標の指定役務は,いずれも基本的には,さほど高価と はいえないものを含む日常的に消費される性質の商品(飲食物)の提供であり,そ の需要者は,高度の注意力をもって役務の提供を受けるとは限らないから,本件指 定役務については,引用商標と同一営業主の提供に係る役務と誤認され,役務の出 所について誤認混同を生じるおそれが否定し難いといえる。また,本件指定役務は 引用商標の指定役務を包含する役務であり,その取引者,需要者には,広く一般の 消費者が含まれるから,役務の同一性を識別するに際して,その名称,称呼の果た す役割は大きく,重要な要素となるというべきである。なお,一般の消費者として は,商標の外観を見て役務の出所を判断することも少なくないと考えられるもの の,我が国において,外来語以外でも同一語の漢字表記と平仮名(又は片仮名)表\ 記又はローマ字表記が併用されることが多く見られる事情があることなどを考慮す\nると,本件指定役務及び引用商標の指定役務の需要者にとって,図形等がほとんど 使用されず,文字のみが主体となる商標において,文字種が異なることは,本件商 標と引用商標が別異のものであることを認識させるほどの強い印象を与えるもので はないといえる(しかも,本件商標が,平仮名,漢字又はローマ字を書してなるも のであるのに対し,引用商標は,漢字を書してなるもの(引用商標2では平仮名を 含む。)であって,「味噌屋」の文字部分については,本件商標と引用商標に共通す るものといえる。)。 そうすると,本件商標と引用商標の類否を判断するに当たっては,上記のような 取引の実情をも考慮すると,外観をさほど重視することはできず,外観及び観念に 比して,称呼を重視すべきであるといえる。
カ まとめ
以上によれば,本件商標と引用商標は,称呼において同一であり,両商標からは 同一又は類似の観念を生じるものといえるから,本件指定役務の需要者にとって, 引用商標と同一の称呼を生じる本件商標を付した役務を,引用商標を付した役務と 誤認混同するおそれがあるものと認められる。

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平成29(行ケ)10063  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年2月20日  知的財産高等裁判所

 進歩性ありとした審決が、顕著な効果が見いだせないとして取り消されました。
 本件明細書の記載(【0003】,【0004】,【001 8】)のほか,証拠(甲9,14,76,77,乙3,8,15)及び 弁論の全趣旨によれば,リフロープロセスにおいては,プリヒート時の 熱によりはんだ粉末の表面に酸化物が生成されると,その酸化物に覆わ\nれたはんだ粉末は,ぬれ性が悪く,溶融した部分と一体化せず,また, はんだ粉末を構成する金属の酸化物は融点が1000℃に近く,はんだ\n粉末の融点付近の温度では溶融しないため,未溶融物を生じ,はんだ付 け不良を起こすことは,本件特許出願当時の技術常識であったことが認 められる。 この技術常識によれば,本件発明1,甲1発明いずれにおいても,は んだ付け性が低下する原因は加熱に伴うはんだの再酸化にあるというこ とができるところ,甲1文献記載のはんだ広がり試験は,プリヒートを 行うものではなく,また,共晶はんだも対象とされているためそれほど 高い温度に加熱する必要はない点において,本件明細書におけるはんだ 付け性試験とは異なるとしても,両試験は,はんだの再酸化が防止され ているかどうかを確認したものである点で共通するものということがで きる。
(イ) 前記のとおり,甲1文献には分子内に第3ブチル基のついたフェノ ール骨格を含む酸化防止剤がはんだ粉末の再酸化を防止することが記 載されているところ,本件発明1におけるヒンダードフェノール系化 合物からなる酸化防止剤は,分子内に第3ブチル基のついたフェノー ル骨格を含む酸化防止剤に該当するものである。このため,分子内に 第3ブチル基のついたフェノール骨格を含む酸化防止剤を含みさえす れば,はんだ粉末の再酸化が防止され,はんだ付け性が向上すること は,甲1文献及び技術常識から,当業者が予測し得たことといってよ\nい。
(ウ) また,本件発明1においては,酸化防止剤の分子量が少なくとも5 00であるとの限定を有するが,以下のとおり,このような限定を付 すことによって格別の効果が得られたことを裏付けるに足りる証拠は ないから,本件発明1の効果は,甲1文献及び本件特許出願当時の技 術常識から当業者にとって予測し得ない格別顕著なものであるとは認\nめられない。

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平成29(ネ)10089  虚偽事実の告知・流布差止等本訴請求,特許権侵害差止等反訴請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年2月22日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 プロバイダー宛ての特許侵害であるとの通知書の送付が、営業誹謗行為かが争われました。知財高裁(3部)は公然実施の無効理由があるとして、営業誹謗行為であると判断しました。
 控訴人は,縷々理由を述べて,控訴人による本件ニフティ宛文書の送付は, 社会通念上必要と認められる範囲のものであり,正当な権利行使の一環とし て違法性が阻却されるべき行為であるとか,これについて控訴人に過失はな いなどと主張する。 しかしながら,控訴人が本件ニフティ宛文書の送付に当たり無効理由の有 無について何ら調査検討を行っていないことは,控訴人自身が認めていると ころ,本件特許権1等の出願の経緯や,NTTコムのプロジェクト(本件サ ービスの開発に係る本件プロジェクト)に控訴人自身が参画していた経緯に 照らせば,本件発明1については,本件サービスや甲11発明等の関係で拡 大先願(特許法29条の2)や公然実施(特許法29条1項2号)などの無 効理由が主張され得ることは容易に予測できることであって,たまたま被控\n訴人との間の事前交渉において,かかる無効主張がなされなかったとしても, そのことだけで直ちにかかる無効理由についての調査検討を全く行わなくて もよいということにはならないというべきである。 また,証拠(甲12の1,15の1,16の1,18等)及び弁論の全趣 旨によれば,控訴人は,本件ニフティ宛文書の送付に先立つ平成22年11 月頃から平成23年5月頃にかけて,数か月にわたり,被控訴人との間で, 弁護士・弁理士等の専門家を交えて,被控訴人製品の使用等が本件特許1等 に抵触するものであるか否かについて交渉を行っており,その後,抵触を否 定する被控訴人との間で交渉が暗礁に乗り上げていたにもかかわらず,被控 訴人に対して再度交渉を求めたり,あるいは,訴訟提起を行ったりすること なく,平成26年3月頃から,被控訴人の顧客等に対して控訴人とのライセ ンスを持ちかける文書を送付するようになり,被控訴人から同文書の送付を 直ちに中止するよう求められても,これを中止するどころか,ニフティに対 し,明示的な侵害警告文書である本件ニフティ宛文書を送付するに至ったも のと認められる。 上記のような事情に照らせば,本件ニフティ宛文書の送付は,特許権侵害 の有無について十分な法的検討を行った上でしたものとは認められず,その\n経過も,要するに,被控訴人との交渉では埒が明かないことから,その取引 先に対し警告文書を送ることによって,事態の打開を図ろうとした(すなわ ち,侵害の成否について公権的な判断を経ることなく,いわば既成事実化す ることによって,競争上優位に立とうとした)ものであるといえる(なお, 控訴人は,本件書状3を送った時点では,ニフティが被控訴人の取引先であ るとは知らなかったとも主張するが,事実経過に照らして直ちに信用するこ とはできないし,少なくとも,本件書状4及び本件メールを送った時点では, 既にこれを明確に認識していた〔甲16〕のであるから,かかる事由をもっ て,違法性がないとか,過失がないということもできない。)。 このような控訴人の行為が,社会通念上必要と認められる範囲のものであ り,正当な権利行使の一環として違法性が阻却されるべき行為であるといえ ないことは明らかであり,また,これについて控訴人に過失が認められるこ とも明らかである。 したがって,本件ニフティ宛文書の送付は違法であり,かつ,控訴人には 少なくとも過失が認められるというべきであるから,これに反する控訴人の 主張は採用できない。

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平成29(行ケ)10121  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年2月14日  知的財産高等裁判所(2部)

 進歩性ありとした審決が取り消されました。理由は、引用文献に記載の数値を本件の範囲とする動機付けありというものです。
 引用文献の【0027】には,はんだ合金に,Biを添加することで,さらに温 度サイクル特性を向上させることができ,添加するBiの量は,1.5〜5.5質 量%が好ましいことが記載されている。したがって,引用発明1〜3のビスマスの 量を,上記好ましい量の範囲内である,4.8質量%を超過し,5.5質量%まで の範囲とする動機付けがあるといえる。 そして,本件発明2〜8においてビスマスの含有割合が所定の範囲内であること の効果は,「優れた耐衝撃性を得ることができ,また,比較的厳しい温度サイクル条 件下に曝露した場合においても,優れた耐衝撃性を維持することができる」(本件明 細書【0031】)ことにある。引用発明1〜3においてビスマスの含有割合を上記 好ましい範囲内とすることの効果は,温度サイクル特性を向上させること(引用文 献【0027】)であるが,ここにいう温度サイクル特性とは,「−40℃から+1 25℃の温度サイクル試験を3000サイクル近く繰り返しても,微量なはんだ量 のはんだ接合部にもクラックが発生せず,また,クラックが発生した場合において も,クラックがはんだ中を伝播することを抑制」する(引用文献【0021】)とい う性質である。温度サイクル試験後のはんだ接合部にクラックが発生せず,クラッ クが発生してもその伝播を抑制する効果が高まれば,厳しい温度サイクル条件下の 耐衝撃性も高まるものといえる。そして,厳しい温度サイクル条件下の耐衝撃性が 高ければ,そのような厳しい条件下にない場合の耐衝撃性も高いことが予想される。\nしたがって,本件発明2〜8におけるビスマスの含有割合を所定の範囲内とするこ との上記効果は,引用発明1〜3のビスマスの量を4.8質量%を超過し,5.5 質量%までの範囲とする上記効果と比較して,格別顕著な効果であるとはいえない。 以上より,引用発明1〜3において,Bi:3.2質量%の数値を,相違点2に 係る,「4.8質量%を超過し,5.5質量%まで」の範囲の本件発明2〜8の構成\nとすることは,当業者が容易になし得たものである。 イ 相違点4について 引用文献の【0028】には,はんだ合金に,Coを添加することで,Niの効 果を高めることができ,添加する量は,0.001〜0.1質量%が好ましいこと が記載されている。したがって,引用発明4〜6にコバルトを添加し,その量を0. 001質量%〜0.1質量%とする動機付けがあるといえる。 本件発明2〜8においてコバルトの含有割合が所定の範囲内であることの効果は, 「優れた耐衝撃性を得ることができ,また,比較的厳しい温度サイクル条件下に曝 露した場合においても,優れた耐衝撃性を維持することができる」(本件明細書【0 037】)ことにある。そして,引用発明4〜6においてコバルトの含有割合を上記 好ましい範囲内とすることの効果は,Niの効果を高めること,すなわち,はんだ 付け界面付近に発生する金属間化合物層の金属管化合物を微細化して,クラックの 発生を抑制するとともに,一旦発生したクラックの伝播を抑制する働きをする(引 用文献【0024】,【0028】)という効果を高めることである。クラックの発生 を抑制し,一旦発生したクラックの伝播を抑制すれば,耐衝撃性がより優れ,これ が維持されるといえる。したがって,本件発明2〜8におけるコバルトの含有割合 が所定の範囲内であることの効果は,引用発明4〜6においてコバルトを添加し, その含有割合を0.001質量%〜0.1質量%とすることの効果と比較して,格 別顕著なものであるとはいえない。 以上より,引用発明4〜6にコバルトを添加し,その量を0.001質量%〜0. 1質量%として,相違点4に係る,「コバルトの含有割合が,0.001質量%以上 0.1質量%以下(本件発明6については0.003質量%以上0.01質量%以 下)」の本件発明2〜8の構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。\n ウ 被告の主張について 被告は,本件発明2〜8と,引用発明1〜6との間には,ビスマスの含有量又は コバルトの含有量について明確な相違点があり,これを容易想到とする理由はない, と主張する。 しかし,前記ア及びイのとおり,引用発明1〜3において相違点2に係る構成を\n採用すること,及び引用発明4〜6において相違点4に係る構成を採用することの\n動機付けがあり,本件発明2〜8のビスマスの含有量及びコバルトの含有量につい て格別顕著な効果があるともいえないから,引用発明1〜6に相違点2及び4の構\n成を採用することは,容易想到である。

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平成29(ワ)39594  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年2月28日  東京地方裁判所

 論点としては、特にありませんが、レアな防護標章に関する侵害事件なので、あげておきます。被告は代理人無しです。
 被告は,本件登録防護標章と同一の標章が付され,本件防護標章登録の指定商品に該当するステッカーである被告各商品をネット通販サイトから入手した上で,平成29年6月19日,「ヤフオク!」に,被告各商品合計4枚が一枚の台紙に付されたものを1800円で出品し,同月21日,これを落札した原告従業員に対して売り渡したとの事実が認められる。被告の上記行為は,商標法67条1号及び2号に該当し,本件商標権を侵害する。

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平成28(行ケ)10218  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年1月30日  知的財産高等裁判所

 実施可能要件、サポート要件違反とした拒絶審決が取り消されました。なお、意見を述べる機会を与えなかった点について、手続違背もありと認定されています。
 本願明細書の上記記載によれば,同配列アンタゴニスト化合物は, アゴニスト作用を示していたIMOについて,「GACG」部分に化学修飾を導入し て同部分をN2N1CGモチーフにすることにより,アンタゴニスト作用を示すに至 ったことが認められる(以下,当該作用変化を「本件反転作用」という。)。 このような記載に接した当業者は,本件反転作用を生じさせた原因となる部分は, その他の配列が同一である以上,化学修飾を導入したN2N1CGモチーフに存在す るものと理解するのが自然である。のみならず,本願明細書の前記a(c)の記載に接 した当業者は,細菌性及び合成DNAの塩基配列には様々なものがあるにもかかわ らず,TLR9がそれらに存在する非メチル化CpGモチーフを認識するのである から,IMOの「GACG」部分にある非メチル化CpGモチーフがTLR9に結 合するものと理解するといえる。そのため,本件反転作用の原因は,TLR9に結 合する「GACG」部分に化学修飾を導入し,これをN2N1CGモチーフとするこ とによって,上記の結合部分に何らかの変化が生じたことによるものと理解するの が自然である。 そうすると,12種類化合物の配列は,N2N1CGモチーフの5’末端側に隣接 するオリゴヌクレオチド部分配列(以下「5’末端側隣接配列」という。)が全て「C TATCT」という一つの配列のみであり,かつ,N2N1CGモチーフの3’末端 側に隣接するオリゴヌクレオチド部分配列(以下「3’末端側隣接配列」という。) が「TTCTCTGT」又は「TTCTCUGU」という類似する二つの配列のみ であるものの,当業者は,本件反転作用を生じさせた部分は,N2N1CGモチーフ 自体であって,5’末端側隣接配列又は3’末端側隣接配列ではないと理解するの であるから,N2N1CGモチーフを有する本願IRO化合物も,12種類化合物と 同様に,アンタゴニスト作用を奏する蓋然性が高いものと論理的に理解するのが自 然である。そして,当業者は,TLR9のアンタゴニストとして作用し得る本願I RO化合物が,少なくともTLR9のアゴニスト作用が原因となる癌,自己免疫疾 患,気道炎症,炎症性疾患,感染症,皮膚疾患,アレルギー,ぜんそく又は病原体 により引き起こされる疾患を有する脊椎動物を治療的に処置し得ることを十分に理\n解することができるといえる。 したがって,本願明細書に接した当業者は,本願IRO化合物が高い蓋然性をも ってTLR9のアンタゴニスト作用を奏し,かつ,TLR9のアンタゴニストとし て作用し得る本願IRO化合物がTLR9のアゴニスト作用を原因とする上記各疾 患を治療的に処置し得ることを理解することができるのであるから,本願明細書中 の発明の詳細な説明の記載は,当業者によって本願出願当時に通常有する技術常識 に基づき本願発明の実施をすることができる程度の記載であると認めるのが相当で ある。
以上によれば,本願明細書の記載により,本願IRO化合物が全て,TLR9の アンタゴニスト作用を有するものであることを当業者が認識できるとはいえないな どとして,本願発明が実施可能要件に適合するものではないとした審決の判断には\n誤りがあり,TLR9についての原告の取消事由3は,理由がある。
c これに対し,被告は,実施例11に示されている同配列アンタゴニス ト化合物につき,5’末端側隣接配列が「CTATCT」であり,かつ,「N1N2N 3−Nm」が「TTCTCTGT」である化合物が示されるのみであって,それ以外 の本願IRO化合物は示されていないことからすると,アンタゴニスト作用が「C pGジヌクレオチド」に結合した結果であるのか,あるいは,それ以外の共通する 部分に結合した結果であるのかは定かでなく,また,本願明細書の発明の詳細な説 明には,本願IRO化合物のうち,実施例11に示された化合物以外のものが,実 施例11に示された化合物と同様にアンタゴニスト作用を有することを示唆する記 載もなく,この点が技術常識であるともいえないなどと主張する。 しかしながら,同配列アンタゴニスト化合物は,上記bにおいて説示するとおり, アゴニスト作用を示していたIMOについて,「GACG」部分についてのみ化学修 飾を導入して同部分をN2N1CGモチーフにすることにより,本件反転作用を奏す るに至ったのであるから,このような記載に接した当業者は,本件反転作用を生じ させた部分は,化学修飾を導入したN2N1CGモチーフに存在するものと論理的に 理解するのが自然であるといえる。そうすると,当業者は,実施例11に示された 化合物以外のものであっても,少なくともTLR9については,N2N1CGモチー フが存在すれば,高い蓋然性をもってアンタゴニスト作用を示すものと理解すると 認めるのが相当である。 したがって,被告の主張は,その他の主張を含め,本件反転作用の技術的意義を 正解しないものに帰し,採用することができない。
このような適正な審判の実現と特許発明の保護との調和は,複数の発明が同時に 出願されている場合の拒絶査定不服審判において,従前の拒絶査定の理由が解消さ れている一方,複数の発明に対する上記拒絶査定の理由とは異なる拒絶理由につい て,一方の発明に対してはこれを通知したものの,他方の発明に対しては実質的に これを通知しなかったため,審判請求人が補正により特許要件を欠く上記他方の発 明を削除する可能性が認められたのにこれを削除することができず,特許要件を充\n足する上記一方の発明についてまで拒絶査定不服審判の不成立審決を最終的に免れ る機会を失ったといえるときにも,当然妥当するものであって,このようなときに は,当該審決に,特許法50条を準用する同法159条2項に規定する手続違背の 違法があるというべきである。 イ これを本件についてみると,前提となる事実に後掲各証拠及び弁論の全 趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
・・・
(ウ) 原告は,本件拒絶査定不服審判において,平成27年9月16日付け の拒絶理由通知(甲16)を受けた(以下,当該拒絶理由通知を「本件拒絶理由通 知」といい,本件拒絶理由通知に係る拒絶理由を「本件拒絶理由」という。)。請求 項1,請求項8及び請求項13に対する本件拒絶理由は,大要次のとおりである。 a 請求項1,3,4及び7ないし17(請求項3を追加する前のもの) 証拠(甲16)及び弁論の全趣旨によれば,本件拒絶理由通知では,実施例にお いてアンタゴニスト作用を有することが証明された化合物のうち,本願IRO化合 物に含まれるものは,IRO5,10,17,25,26,33,34,37,3 9,41,43及び98であるとして,これらの12種類化合物に限定して検討を 加えていること,12種類化合物は,いずれもTLR9に対してアンタゴニスト作 用を有するものであるが,IRO5に限り,TLR9のほか,TLR7及び8に対 してもアンタゴニスト作用を有するものであること,本件拒絶理由通知では,12 種類化合物を全体として比較して,N2N1CGモチーフの5’末端側に隣接する部分 の塩基配列及びN2N1CGモチーフの3’末端側に隣接する部分の塩基配列が,それ ぞれ類似の二通りのみであることを根拠として,請求項1,3,4及び7ないし1 7に係る各発明の実施可能要件及びサポート要件違反を示していること,そのため,\n本件拒絶理由通知では,IRO5に固有の問題を検討するものではなく,TLR9 に対するアンタゴニスト作用を有する12種類化合物のみの問題を検討しているこ と,以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば,本件拒絶理由通知は,TLR9に対してアンタゴニスト 作用を有する12種類化合物のみの問題を検討するにとどまり,TLR7及び8に 対してもアンタゴニスト作用を有するIRO5に固有の問題を検討した上で拒絶理 由を通知するものではないから,実質的にはTLR7及び8に対する拒絶理由を示 すものではないと認めるのが相当である。
b 請求項8,13,16及び17(請求項3を追加する前のもの) 証拠(甲16)及び弁論の全趣旨によれば,本件拒絶理由通知は,請求項8に係 る発明につき,「本願明細書ではTLRとして「TLR7」,「TLR8」及び「TL R9」に対する各種IROのアンタゴニスト作用を確認しただけであって,他のT LRに対してもアンタゴニスト作用を有することは確認されていない。」,「請求項 8の「TLR媒介免疫反応」のうち,「TLR7」,「TLR8」又は「TLR9」の 媒介免疫反応以外の免疫反応については,本願発明のIRO化合物が阻害効果を示 すことが確認できない。」と記載し,また,請求項13に係る発明につき,「請求項 13の「TLRにより媒介される疾患」のうち,「TLR7」,「TLR8」又は「T LR9」によって媒介される疾患以外の疾患については,本願発明のIRO化合物 が治療効果を示すことが確認できない。」と,それぞれ記載していることが認められ る。 上記認定事実によれば,本件拒絶理由通知は,文言上,少なくとも,TLR7な いし9については,アンタゴニスト作用及びその治療効果を有することが確認され たことをいうものと理解するのが自然である。
・・・
(オ) その後,特許庁は,原告に対し,改めて拒絶理由を通知することなく, 平成28年5月20日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした。 ウ 前記イ(ウ)aによれば,本件拒絶理由通知は,TLR9に対してアンタゴ ニスト作用を有する12種類化合物のみの問題を検討するにとどまり,TLR7及 び8に対してアンタゴニスト作用を有するIRO5に固有の問題を検討した上で拒 絶理由を通知するものではないから,実質的にはTLR7及び8に対する拒絶理由 を示すものではないことが認められる。のみならず,TLR7及び8については, 本件反転作用を裏付ける実施例はない上,そもそも認識するアゴニストの対象が, TLR9とは異なり,一本鎖RNAウイルスであると認められるのであるから,T LR7及び8の拒絶理由には,TLR9の拒絶理由とは異なる固有の理由が存在す ることは明らかであるにもかかわらず,本件拒絶理由通知は,これを通知していな いことが認められる。
そして,前記イ(エ)によれば,原告は,本件拒絶理由を受けて,その理由を解消す るために,TLR1ないし6に係る発明部分を削除しているのであり,このような 経緯に鑑みると,原告は,TLR7及び8についても拒絶理由を実質的に通知され ていた場合には,TLR7及び8に係る発明部分についても,TLR1ないし6に 係る発明部分と併せて補正によって削除した可能性が高いものと認められる。\nのみならず,前記イ(ウ)bによれば,請求項8,13,16及び17に係る各発明 に対する本件拒絶理由通知は,文言上,少なくとも,TLR7ないし9については, アンタゴニスト作用及びその治療効果を有することが確認されたことをいうものと 理解するのが自然であるから,このような記載に接した原告が,少なくともTLR 7ないし9については,アンタゴニスト作用を有することが確認されたため,実施 可能要件及びサポート要件違反はないものと理解したのもやむを得ないところであ\nる。現に,原告は,前記イ(エ)によれば,本件拒絶理由通知を踏まえ,請求項9及び 14においては,TLR1ないし6を削除して,TLR7ないし9に限定する補正 をしている事実が認められるのであるから,このような事実からも,上記の原告の 理解が十分に裏付けられるといえる。そうすると,TLR7ないし9についてもア\nンタゴニスト作用を有するものであるとすることはできないとして,本願発明が実 施可能要件及びサポート要件に適合しないとした審決の判断は,実質的にみれば,\n上記の経過に照らし,原告にとっては,不意打ちというほかなく,不当であるとい うほかない。
これらの事情の下においては,本件拒絶査定不服審判において,従前の拒絶査定 の理由とは異なる拒絶理由について,TLR9に係る発明に対してはこれを通知し たものの,TLR7及び8に係る各発明に対しては実質的にこれを通知しなかった ため,原告が補正により特許要件を欠くTLR7及び8に係る各発明を削除する可 能性が認められたのにこれを削除することができず,特許要件を充足するTLR9\nに係る発明についてまで本件拒絶査定不服審判の不成立審決を最終的に免れる機会 を失ったものと認められる。 したがって,審決には,特許法50条を準用する同法159条2項に規定する手 続違背の違法があるというべきであり,当該手続違背の違法は,審決の結論に影響 を及ぼすというべきであるから,取消事由1は,理由があるものと認められる。
エ これに対し,被告は,前記イ(ウ)aのとおり,サポート要件違反と実施可能\n要件違反をいう請求項1に係る本件拒絶理由は,旧請求項3及び4,7なしい17 についても存在する旨通知されているのであるから,審決が本件拒絶理由とは異な る新たな拒絶理由に基づき実施可能要件及びサポート要件に適合しないと判断した\nとする原告の主張は,前提を欠くものであるなどと主張する。 しかしながら,上記ウで説示したとおり,本件拒絶査定不服審判において,本件 拒絶理由通知では,TLR9に関する拒絶理由のみを通知し,実質的にはTLR7 及び8に関する拒絶理由を通知しなかったため,原告はTLR7及び8に係る各発 明を削除するなどの補正をする機会を失うことになり,実施可能要件及びサポート\n要件をいずれも充足するTLR9に係る発明まで最終的に特許を受けることができ ないことになったものと認められる。このような結果は,原告にとって,不意打ち となるため,原告に過酷というほかなく,審判請求人の手続保障を規定する特許法 159条2項の趣旨に照らし,相当ではないというべきである。 かえって,被告は,本件訴訟に至っては,そもそもTLR7及び8が認識するも のと,TLR9が認識するものが異なるという技術常識に基づけば,TLR9に対 して本願IRO化合物がアンタゴニスト作用を奏するとする原告の作用機序の説明 が,TLR7及び8には妥当し得ないことは明らかであるなどとして,現にTLR 7及び8に固有の拒絶理由を具体的に主張しているのであるから(準備書面(第1 回)13頁),実質的にみても,上記のように,本件拒絶査定不服審判においてTL R7及び8に固有の拒絶理由を通知することが,審判合議体にとって困難なもので あったとは認められない。 したがって,被告の主張は,審判請求人の手続保障を規定する特許法159条2 項の意義を正解しないものに帰し,採用することができない。
なお付言するに,本願IRO化合物が治療効果を有するかどうかの点につき,本 件拒絶理由では,TLR7ないし9によって媒介される疾患以外の疾患については 治療効果を示すことが確認できないとしているところ,原告は,本件拒絶査定不服 審判においては,TLR7ないし9によって媒介される疾患については治療効果を 示すことが確認されたものと理解した上,本件拒絶理由を踏まえてTLR1ないし 6を削除する補正をし,さらに,その後の意見書において,この点に係る拒絶理由 が解消されたとまで述べているのであるから,審決においてTLR7ないし9によ って媒介される疾患についても治療的に処置することができるといえる根拠がない と判断するのであれば,審判請求人の手続保障を規定する特許法159条2項の法 意に照らすと,本件拒絶査定不服審判において,この点についても改めて拒絶理由 を通知することが相当であったものと認められる。

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平成27(ワ)7855  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年1月26日  東京地方裁判所

 非公知性を満たさないとして営業秘密でないと判断されました。
 原告は,本件原告製品の1)胴板の板厚,2)内鏡板の形状,3)入口チューブ の直径,4)入口チューブの長さ,5)入口チューブの穴の配置,6)入口チュー ブの穴径,7)入口チューブの穴の個数,8)出口チューブの直径,9出口チュ ーブの穴径,10)出口チューブの穴の個数,11)本体と鏡板の接合部,12)出口チ ューブの穴の配置方法,13)出口チューブの長さ,14)出口チューブの穴の配置 及びこれらの組合せ並びにこれに基づく減音量,圧力損失及び製造コストに 係る本件情報が,原告の営業秘密であると主張する。 (2) しかし,証拠(乙25〜27)によれば,本件原告製品に係る本件情報のう ち上記1)ないし14)は,本件原告製品を構成する部品等の形状,寸法,個数又はその相互の配置に関する情報であり,いずれも本件原告製品の寸法等を測定\nすることにより市場で同製品を購入した者が容易に知り得る情報であるから, 公然と知られていない情報であるということはできない。 また,本件原告製品の減音量及び圧力損失は,本件原告製品が備えるべき 性能として被告が指定し(甲6の2,20の2〜5),そのような性能\を有す るものとして被告の顧客に販売されるものであるから,原告の保有する営業 秘密ということはできず,また,原告製品が注文されたとおりの減音量及び 圧力損失を備えているかどうかは容易に測定し得るものである(甲31の2, 乙33)。 さらに,原告が営業秘密として主張する「製造コスト」(甲35の1の@以 下の数字,甲40の1の「見積金額」,甲41の1〜3)は,製造原価等に関 する情報ではなく,被告に提示される本件原告製品の見積金額又は販売価格 であり,非公知の情報であるということはできない。
上記の点について,原告は,1)本件原告製品は不特定多数の購入者が存在 する市場で販売される最終製品とは異なる特注品である,2)本件原告製品は 被告のブロワに組み込まれるので,被告の顧客はその内部構造等を知り得ない,3)本件原告製品の減音量,圧力損失及び製造コストは製品自体から直接 感得される情報ではない等と主張する。 しかし,被告のブロワが不特定多数の消費者に広く販売されるものではな いとしても,ブロワに関する市場において不特定の需要者を対象とし,国内 外の顧客に販売されているものであり(乙5,23),その需要者が特定少数 者に限定されると認めるに足る証拠はない。また,本件原告製品が被告の製 品に組み込まれているとしても,被告のブロワの購入者がリバースエンジニ アリングにより本件原告製品に係る本件情報を取得することが困難であると 認めるに足りる証拠もない。さらに,本件原告製品の減音量,圧力損失及び製 造コストが非公知といえないことは前記判示のとおりである。
(3) 原告は,本件情報に関し,被告との間において黙示の秘密保持契約を締結 し,又は,本件原告製品の性質上,被告は当然に秘密保持義務を負うと主張 する。 しかし,原告と被告との間で黙示の秘密保持契約が締結されたことをうか がわせる事情は認められない。また,本件情報は,いずれも本件原告製品の寸 法等を測定することにより同製品の購入者等が容易に知り得る情報又は本件 原告製品が備えるべき性能として被告が指定した情報であり,かつ,本件原告製品は被告のブロワに組み込んで第三者であるユーザに売却することを前\n提としたものであるから,その性質上当然に被告及びその顧客が秘密保持義 務を負うべきものということもできない。

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平成29(ワ)14909    不正競争  民事訴訟 平成30年1月23日  東京地方裁判所

 WDSCという権利能力なき社団が原告という珍しいケースです。WDSCについて不競法2条1項1号の周知性は認められませんでした。
 前提事実に加え,証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告は昭和54年に発足 したこと(甲1),学研プラスが平成26年6月に発行した平成26年雑誌に おいて本件原告広告記事と概ね同一内容の原告の広告記事が掲載されたこと, 平成26年雑誌は発行予定部数が10万部であったこと,平成26年12月3\n1日時点での歯科医師の数は10万3972人であること(乙A1),本件雑 誌発行時点における原告の会員は63名であること(甲1)が認められる。 原告は,「WDSC」の表示は原告の商品等表\示であって需要者の間で広く 認識されており,本件雑誌に掲載された本件各記事において被告Aが「WDS C」の表示を自己の広告に使用したことが原告の商品等表\示を使用した不正競 争行為に該当する旨主張する。
本件雑誌は,「本気で探す 頼りになるいい歯医者さん 2016」という 題名の雑誌であって,表紙には「歯科治療の悩み&不安を解消!」という記載\nもあり,多くの歯科医師の紹介欄があり(甲1),歯科治療を受けることを考え ている者を主たる読者とするものである。本件各記事は,いずれも歯科医師で ある被告Aや被告Aが経営する歯科医院を紹介する記事である。これらからす ると,本件における需要者は,歯科治療を受けることを考えている者といえる。 原告は,平成26年雑誌及び本件雑誌を購読した全国の読者が需要者である旨 主張するが,上記に照らし採用することができない。
そこで,歯科治療を受けることを考えている者の間で「WDSC」の表示が\n周知であったかについて検討すると,原告は,昭和54年の発足後,会員であ る歯科医師らによる歯科医療に係る自主学習グループとして,定期的に勉強会 等を開催していたことがうかがわれる(甲1)。しかし,原告の会員数は全国の 歯科医師数の約0.06パーセントにすぎず,原告の会員を通じて「WDSC」 の表示が広く認識されていたとは認めることはできない。また,本件証拠上,\n本件雑誌が発行されるまで,原告が全国誌に取り上げられるなどして「WDS C」の表示が歯科治療を受けることを考えている者に対して広く使用されたの\nは,平成26年雑誌において前記のとおりの記事が掲載されたのみであり(原 告は,「WDSC」の表示の周知性の根拠として本件雑誌のほか平成26年雑\n誌における原告に関する記事の存在のみを主張し,平成29年10月2日の弁 論準備手続期日において「WDSC」の表示の周知性について追加の主張を行\nう予定はない旨述べた。),同雑誌の現実の発行部数も明らかではない。原告は\n平成26年雑誌の発行予定部数10万部が発行されたと主張するが,これを認\nめるに足りる証拠はない。これによれば,平成26年雑誌によって「WDSC」 の表示に接した者は,本件の需要者のうちの限られた者である。\nこれらのことからすると,本件雑誌が発行された平成27年10月29日の 時点までに「WDSC」の表示が,原告の商品等表\示として全国の歯科治療を 受けることを考えている者の間で広く認識されていたと認めることはできな い。

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平成29(行ケ)10107  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年1月15日  知的財産高等裁判所(4部)

 不使用による商標取消訴訟について、共有商標権者の一部が提訴しました。被告は固有必要的共同訴訟として訴えは不適切と主張しましたが、裁判所はかかる主張は認めませんでした。ただ、最終的に使用が証明できず、取消審決は維持されました。これは、登録商標を使用しているとはいえないというものです。登録商標は、漢字、かたかな、ひらがな、ローマ字表記を4段で書しており、使用していたのは、漢字のみを書したものでした。
 被告は,原告といきいき緑健は,本件商標に係る商標権を共有するところ,原告 は,単独で本件審決の取消しを請求するから,本件訴えは不適法であると主張する。 しかし,いったん登録された商標権について,登録商標の使用をしていないこと を理由に商標登録の取消審決がされた場合に,これに対する取消訴訟を提起するこ となく出訴期間を経過したときは,商標権は審判請求の登録日に消滅したものとみ なされることとなり,登録商標を排他的に使用する権利が消滅するものとされてい る(商標法54条2項)。したがって,上記取消訴訟の提起は,商標権の消滅を防 ぐ保存行為に当たるから,商標権の共有者の1人が単独でもすることができるもの と解される。そして,商標権の共有者の1人が単独で上記取消訴訟を提起すること ができるとしても,訴え提起をしなかった共有者の権利を害することはない。 また,商標権の設定登録から長期間経過した後に他の共有者が所在不明等の事態 に陥る場合や,訴訟提起について他の共有者の協力が得られない場合なども考えら れるところ,このような場合に,共有に係る商標登録の取消審決に対する取消訴訟 が固有必要的共同訴訟であると解して,共有者の1人が単独で提起した訴えは不適 法であるとすると,出訴期間の満了と同時に取消審決が確定し,商標権は審判請求 の登録日に消滅したものとみなされることとなり,不当な結果となりかねない。 さらに,商標権の共有者の1人が単独で取消審決の取消訴訟を提起することがで きると解しても,その訴訟で請求認容の判決が確定した場合には,その取消しの効 力は他の共有者にも及び(行政事件訴訟法32条1項),再度,特許庁で共有者全 員との関係で審判手続が行われることになる(商標法63条2項の準用する特許法 181条2項)。他方,その訴訟で請求棄却の判決が確定した場合には,他の共有 者の出訴期間の満了により,取消審決が確定し,商標権は審判請求の登録日に消滅 したものとみなされることになる(商標法54条2項)。いずれの場合にも,合一 確定の要請に反する事態は生じない。なお,各共有者が共同して又は各別に取消訴 訟を提起した場合には,これらの訴訟は,類似必要的共同訴訟に当たると解すべき であるから,併合の上審理判断されることになり,合一確定の要請は充たされる。 以上によれば,商標権の共有者の1人は,共有に係る商標登録の取消審決がされ たときは,単独で取消審決の取消訴訟を提起することができると解するのが相当で ある(最高裁平成13年(行ヒ)第142号同14年2月22日第二小法廷判決・ 民集56巻2号348頁参照)。 よって,原告は,単独で本件審決の取消しを請求することができる。被告の本案 前の抗弁は,理由がない。
・・・・
以上のとおり,甲1カタログ,甲2カタログ及び甲3雑誌は,いずれも要証期間 内に頒布されたものとは認められない。また,そもそも,本件商標は,「緑健青汁」, 「りょくけん青汁」,「リョクケン青汁」及び「RYOKUKEN AOJIRU」 の文字を4段に書して成るものであるのに対し,甲1カタログ,甲2カタログ及び 甲3雑誌に記載された商標は,「緑健青汁」の文字のみを書して成るものである。 このような本件商標と使用商標とは,商標法50条1項にいう「平仮名,片仮名及 びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ず\nる商標…その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」であると,直 ちに認めることはできない。

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平成29(行ケ)10155  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年1月15日  知的財産高等裁判所

 立体商標について、識別力無し(3条1項3号)とした審決が維持されました。また、3条2項の主張も認められませんでした。
 商品等の形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果的に発揮\nさせたり,商品等の美観をより優れたものとする等の目的で選択されるものであっ て,直ちに商品の出所を表示し,自他商品を識別する標識として用いられるもので\nはない。このように,商品等の製造者,供給者の観点からすれば,商品等の形状は, 多くの場合,それ自体において出所表示機能\ないし自他商品識別機能を有するもの,\nすなわち,商標としての機能を果たすものとして採用するものとはいえない。また,\n商品等の形状を見る需要者の観点からしても,商品等の形状は,文字,図形,記号等 により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能\や美観を際立たせるために 選択されたものと認識するのであって,商品等の出所を表示し,自他商品を識別す\nるために選択されたものと認識する場合は多くない。 そうすると,客観的に見て,商品等の機能又は美観に資することを目的として採\n用されると認められる商品等の形状は,特段の事情のない限り,商品等の形状を普 通に用いられる方法で使用する標章のみから成る商標として,商標法3条1項3号 に該当することになる。 また,商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状は,同種の商品等に\n関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標出願した ことのみを理由として当該形状を特定人に独占使用を認めることは,公益上適当で ない。 よって,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,同種の商品等について,機 能又は美観に資することを目的とする形状の選択であると予\測し得る範囲のもので あれば,当該形状が特徴を有していたとしても,同号に該当するものというべきで ある。
・・・・
イ 一般的な杭の形状との対比
本願の指定商品である杭については,先端を円錐状に尖らせ,頭部の先端(打込 部)を円盤状に平らにした,長い棒状の形状から成る商品が市販されていることが 認められる(甲1,123,乙4,5,9〜19)。 この点,原告は,一般的な杭は,頭部から先端までが同一径の円管で,鉄パイプを 切断しただけの状態のものである「単管杭」であり,本願商標をこれと対比すべき 旨主張するが,かかる「単管杭」のみならず,先端を円錐状に尖らせ,頭部の先端を 円盤状に平らにした長い棒状の杭も市販されているから,原告の主張は採用できな い。
・・・・
(ウ) そうすると,本願商標に係る立体的形状は,杭の形状として,機能又は美観\nに資することを目的として採用されたものと認められ,また,需要者において,機 能又は美観に資することを目的とする形状と予\測し得る範囲のものであるから,商 品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみから成る商標として,商標 法3条1項3号に該当するというべきである。
・・・・
前記1のとおり,商標法3条2項は,商品等の形状を普通に用いられる方法で表\n示する標章のみから成る商標として同条1項3号に該当する商標であっても,使用 により自他商品識別力を獲得するに至った場合には,商標登録を受けることができ ることを規定している。 そして,立体的形状から成る商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどう かは,1)当該商標の形状及び当該形状に類似した他の商品等の存否,2)当該商標が 使用された期間,商品の販売数量,広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情 を総合考慮して判断すべきである。 なお,使用に係る商標ないし商品等の形状は,原則として,出願に係る商標と実 質的に同一であり,指定商品に属する商品であることを要するが,機能を維持する\nため又は新商品の販売のため,商品等の形状を変更することもあり得ることに照ら すと,使用に係る商品等の立体的形状が,出願に係る商標の形状と僅かな相違が存 在しても,なお,立体的形状が需要者の目につきやすく,強い印象を与えるもので あったか等を総合勘案した上で,立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得する に至っているか否かを判断すべきである。
(2) 本願商標に係る商品の形状及び当該形状に類似した他の商品の存在
本願商標は,指定商品である杭の立体的形状に係るものであり,その形状は,(ア) 円柱状の中央部分から頭部と先端部に向けて,円錐状の絞り加工部分があり,(イ)頭 部側,先端部側ともに,絞り加工部分の途中に1本の外周線があり,(ウ)頭部側につ いては,外周線を越えた後も絞りは続くが,絞り切る前に,絞り加工部分より大径 のリング部分及びリング部分より小径の台形部分があり,これが頭部の末端となり, (エ)先端部についても,外周線を越えた後も絞りが続くが,絞り切る前に,絞り加工 部分より大径のリング部分及び絞りの線よりも鋭角の線による円錐部分があり,こ れが先端部の末端となるというものであるところ,前記1のとおり,円柱状の中央 部分(上記(ア)),頭部の末端の台形部分(上記(ウ)),先端部の末端の円錐部分(上 記(エ))から成る杭は,他にも市販されている。また,上記(ア),(ウ),(エ)の頭部と 先端部に向けた絞り加工や,上記(エ)の絞り加工より大径のリング部分,上記(イ)の 外周線も,機能又は美観に資することを目的とする形状と予\測し得る範囲のもので あって,本願商標は,杭の形状として通常採用されている範囲を大きく超えるもの とまではいえない。 さらに,本願商標と実質的に同一の形状から成る複数の杭が,第三者の取扱いに 係る商品として販売されていること,原告は,これに対して何らの権利行使も行っ ていないことも認められる(乙20〜22,弁論の全趣旨)。 したがって,原告商品の立体的形状自体が他の商品にない特徴的なものであると はいえない。
・・・・
以上のとおり,1)原告商品の立体的形状は,他の同種商品にはない特徴的なもの とはいえないこと,2)一定の販売実績を挙げてきたものの,そのシェアは不明であ り,実用新案権や意匠権が存在していたこと,原告商品の広告宣伝展示が継続して 行われたとしても,取引者,需要者は,併せ使用された「くい丸」の文字商標に注目 して自他商品の識別を行ってきたと認められること,これらの事情を総合すると, 原告商品の立体的形状が,文字商標から独立して,その形状のみにより自他商品識 別力を獲得するには至っていないというべきである。 したがって,本願商標は,使用をされた結果自他商品識別力を獲得し,商標法3 条2項により商標登録が認められるべきものということはできない。

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平成28(行ケ)10278  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年1月15日  知的財産高等裁判所(4部)

 異議理由ありとした審決が取り消されました。理由は、新規事項か、サポート要件違反か、実施可能要件違反かです。知財高裁は、当初明細書の範囲内と判断しました。\n
ア 本件出願当初明細書等の記載
結晶多形Aについて,本件出願当初明細書等には,おおむね,次のとおり記載が ある。
・・・・
イ 本件出願当初明細書等に開示された結晶多形Aに関する技術的事項
(ア) 本件出願当初明細書等にいう結晶多形Aは,本件出願当初明細書等におい て名付けられたものである(【0007】)。
(イ) そして,本件出願当初明細書等【0008】には,結晶多形Aに該当する具体的な結晶多形として,【0008】(1)は,本件出願時の特許請求の範囲【請求 項1】で特定される結晶多形を挙げるほか,【0008】(5)は,2θで表して,構\ 成要件Eで特定されるのと同様の26個の角度において,ピークを有する特徴的な X線回析図形を示し,FT−IR分光法と結合した熱重量法により測定した含水量 が3〜15%であるピタバスタチンカルシウムの結晶多形を挙げており,後者の結 晶多形は,構成要件Eで特定される結晶多形を含むものである。このように,本件\n出願当初明細書等【0008】の記載は,結晶多形Aには,構成要件Eで特定され\nる結晶多形だけではなく,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特定される 結晶多形も,該当する旨説明するものである。
(ウ) また,本件出願当初明細書等【0009】は,「結晶多形Aの一つの具体 的形態」として,2θで表して,構\成要件Eで特定されるのと同様の26個無偏差 相対強度図形を示す結晶多形を例示しており,この結晶多形は,構成要件Eで特定\nされる結晶多形を含むものである。そうすると,本件出願当初明細書等【0009】 の記載は,構成要件Eで特定される結晶多形は,結晶多形Aの具体的な態様の一つ\nである旨説明するものである。
(エ) さらに,本願出願当初明細書等【0047】には,【0047】に記載さ れた製造方法によって,結晶多形Aが得られること,当該結晶多形AのX線粉末回 析図形は,構成要件Eと同様の26個無偏差相対強度図形を示したことが記載され\nている。本件出願当初明細書等【0047】の記載は,特定の製造方法によって生 成された結晶多形AのX線粉末回析図形を説明するにとどまり,構成要件Eで特定\nされる結晶多形のみが結晶多形Aである旨説明するものではない。
(オ) したがって,本件出願当初明細書等の記載を総合すれば,構成要件Eで特\n定される結晶多形Aだけではなく,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特 定される結晶多形Aも,導くことができる。
(4) 新規事項の追加の有無
本件出願当初明細書等の記載を総合すれば,構成要件Eで特定される結晶多形A\nだけではなく,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特定される結晶多形A も,導くことができるから,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特定され る結晶多形Aから,構成要件Eで特定される結晶多形Aを除くものを,本件出願当\n初明細書等の全ての記載を総合することにより導くことができるというべきである。 したがって,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】に,構成要件Eを追加す\nる本件補正は,新たな技術的事項を導入するものではなく,本件出願当初明細書等 に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。
(5) 被告の主張について
被告は,本件出願当初明細書等に記載された結晶多形Aを,26個のピークの回 折角2θ及びその相対強度で特定しなくても,6個のピークの回析角2θ等によっ て特定し得るということは技術常識ではないと主張する。 しかし,本件出願当初明細書等の記載を総合すれば,26個のピークの回折角2 θ及びその相対強度で特定される結晶多形Aだけではなく,6個のピークの回析角 2θ等によって特定される結晶多形Aも導くことができる。本件補正は,26個の ピークの回折角2θ及びその相対強度で特定される結晶多形を,6個のピークの回 析角2θ等によって特定することを前提としてなされたものではないから,被告の 上記主張は,前提を欠く。
(6) 小括
以上のとおり,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】に,構成要件Eを追加\nする本件補正は,新たな技術的事項を導入するものではない。そして,本件補正の その余の部分について,被告は,新たな技術的事項を導入するものではなく,本件 出願当初明細書等に記載した範囲内においてしたものであることを争わない。した がって,本件補正は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たす。

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平成29(ネ)233等  損害賠償 著作権使用料請求控訴事件,同附帯控訴事件  著作権  民事訴訟  平成29年12月28日  大阪高等裁判所(8部)

 コンサートの企画運営会社に対して、損害賠償が認められました。被告は実はゴーストライターがいたというS氏です。請求原因は、全ろうの作曲者といううたい文句が虚偽だったというものです。 控訴審では、損害賠償額は、1審よりも、減額されました。理由は、「実施していれば通常得られたであろう利益であれば,不法行為に基づく損害賠償における損害として請求することができる」というものです。
 被控訴人は,この損害項目について,中止された本件公演を実施して いれば被控訴人が得られたであろう利益であるとの趣旨の主張をするが, それは,契約上の履行利益の賠償を求めるものであるから,控訴人が主 張するとおり,不法行為による損害賠償における損害としては請求する ことができない。しかし,同じ逸失利益であっても,前記のとおり,被 控訴人が同時期に他の公演を企画・実施していれば通常得られたであろ う利益であれば,不法行為に基づく損害賠償における損害として請求す ることができると解され,被控訴人の主張はこの趣旨を含むものと解さ れる。
・・・・
以上のとおりであるが,被控訴人が,実施された本件公演から算定し たと主張する,中止した公演の公演利益(4か月分の逸失利益)が42 84万0846円であることからすると,被控訴人の平成21年9月か ら平成24年8月までの間の各年度の4か月分の公演利益と同程度以下 であるということができる(後述するとおり,当裁判所の算定結果に よっても,中止した公演の公演利益は3003万4702円に過ぎな い。)。したがって,中止された本件公演を実施していれば得られたで あろう公演利益をもって,被控訴人が同時期に他の公演を企画・実施し ていれば通常得られる利益として損害を算定することとする。

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平成29(ネ)10053  商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成29年12月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 本件各商標を含む極真関連標章は,Eが死亡した平成6年4月の時点で 既に,Eが主宰する極真会館にとってその活動に密接に関連する重要な財 産及び象徴であり,少なくとも空手及び格闘技に興味を有する者の間では, 極真会館というまとまった一つの団体を出所として表示する標章として広\nく知られていた。また,これらの極真関連標章は,被控訴人らが本件各商 標の登録出願(本件各出願)を行った平成15年から平成24年にかけて の時点でもなお,空手の教授等の活動を行う上で強い顧客吸引力を有する ものであった。
イ Eが主宰する極真会館は,Eの死後,いずれもEの生前の極真会館と同 一性を有しない複数の団体に分裂しており,被控訴人らもその一団体と代 表者にすぎない。この点,被控訴人Yは,自身が極真関連標章の主体たる\n地位,すなわちEが主宰する極真会館の事業を承継した旨主張するが,極 真会館とE個人とが同一であるとはいえない以上,Eの相続人である被控 訴人Yが極真会館の事業を当然に相続したとはいえないし,E死亡当時, 被控訴人Yは極真会館の事業活動に全く関与していなかったこと,Eが後 継者を公式に指定しなかったこと,極真会館において世襲制が採用されて いなかったこと等の事情に鑑みると,被控訴人Yは相続以外の原因で極真 会館の事業を承継した者であるとも認められず,この点を覆すに足る証拠 はない。したがって,被控訴人らを含むいずれの団体とその代表者も,他\nの団体に対し,極真会館の事業承継や極真関連標章の自己への正当な帰属 を直ちに主張し得る立場にはなかった。
ウ 極真関連標章については,従前,Bが複数の標章について商標登録出願 をし,自己名義の商標登録を受けたことがあったが,これに対し,被控訴 人Y自身が商標法4条1項7号違反を理由に商標登録の無効審判を請求し, 商標登録を無効とする審決がなされ,同無効審決はBが提起した審決取消 訴訟を経て確定していた。
なお,前記認定のとおり,上記審決取消訴訟の判決は,Bによる商標登 録が公序良俗等に反する理由として,極真会館にとって極めて重要な財産 である極真関連標章についての商標登録出願を行うに当たっては,(当時 の代表者として)極真会館内部の適正な手続を経る必要があるのに,それ\nを怠った出願が行われ,その後,極真会館が複数の団体に分裂し,極真空 手の道場を運営する各団体が対立競合している状況において,上記の出願 に基づき,極真会館とは同一性を有しない一団体の代表者に商標権が付与\nされるのは,商標法の予定する秩序に反するという点を指摘しているが,\n極真会館内部での適正な手続(分裂後にあっては,他の団体との協議等) を経ないまま商標登録出願が行われている点や,その出願に基づき商標権 が付与されるのが,極真会館とは同一性を有しない一団体の代表者(又は,\n当該代表者が経営する会社)である点では,本件各商標も,上記判決が指\n摘したのと同様の問題点を抱えているものといわざるを得ない。 エ また,被控訴人らは,本件各商標の登録を受ける中で,1審被告Aに対 しては,権利侵害ないし規約違反を理由に極真関連標章の使用禁止と違約 金名目で高額の金員の支払を求める通知を行い,Fらに対しては,極真関 連標章の使用を禁止する旨の警告を行ったばかりか,Bが代表を務める団\n体に対しては,本件各商標権に基づき標章使用の差止めと損害賠償の支払 を求める訴訟を提起し,総極真に対しては,極真関連標章の使用差止めを 求める訴訟を提起するなど,本件各出願を行った後,極真会館の他の団体 やその代表者に対し自らの影響力を強めようとする姿勢が顕著であるとこ\nろ,このような行為は,客観的に見れば,極真会館にとって重要な財産で ある極真関連標章に係る権利を盾に取って,自己の利益を図ろうとするも のと評されてもやむを得ないものといわざるを得ない。
(2) 以上のとおり,本件各出願を行った時点で,被控訴人らは,極真会館関係 者にとって極真関連標章が重要な財産及び象徴であることを当然認識し得る 立場にあり,また,分裂した各団体の中で極真会館の事業の承継を正当に主 張し得る者がない状況にあることも明確に認識し得る立場にあったものと認 められる。そして,被控訴人らによる本件各商標権の取得は,極真会館とは 同一性を持たない分派が多数併存する中で,その一分派にすぎない一団体(そ の代表者や当該代表\者が経営する会社)が,極真会館にとって極めて重要な 財産であり象徴である極真関連標章について,いわば抜け駆け的に商標登録 出願を行い,その権利を独占しようとするという,前記審決取消訴訟判決が, 商標法の予定する秩序に反する旨を指摘したのと同様の状況で行われたもの\nなのであるから,やはり,商標法の予定する秩序に反するものといわなけれ\nばならない。特に,被控訴人らの場合,Bの出願に係る商標登録を公序良俗 等に反するとして無効にする一方で,自らの利益のために,客観的に見れば Bと同様の手法により商標権を取得しているのであるから,その不当性は更 に強度だといわざるを得ないのであって,この点からしても,その商標登録 は認められるべきものではない。 してみると,本件各出願に係る本件各商標は,本件各出願の目的及び経緯 に照らし,商標法4条1項7号所定の「公の秩序又は善良の風俗を害するお それがある商標」に該当するものといえる。

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平成29(ネ)10027  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年12月21日  知的財産高等裁判所(2部)  東京地方裁判所

CS関連発明について、控訴審で差止請求が認められました。無効理由については「時機に後れた」として採用されませんでした。1審は、均等侵害も第1、第2、第3要件を満たさない、分割要件違反、および一部のクレームについてサポート要件違反があると判断していました。
 引用発明1は,前記ア(イ)のとおり,「毎度の自動売買では自動売買テーブルでの 約定価より真下の安値の買取り及び約定価より真上の高値の売込みが同時に発注さ れるよう設定されたものであって,それにより,先に約定した注文と同種の注文を 含む売込み注文と買取り注文を同時に発注することで,株価が最初の売買価の値段 の範囲から上下に変動する場合に,所定の収益を発生させることに加え,口座の残 高及び持ち株の範囲において,株の現在価を無視して株の値段への変動を一向に予\n測することなく,従前の株の買取り値より株価が下落すると所定量を買い取り,買 取り値より株価が上がると所定量を売り込むこと」を特徴とするものである。 このように,引用発明1において,従前の株の買取り値より株価が下落すると所 定量を買い取り,買取り値より株価が上がると所定量を売り込む,という,連続し た買取り又は売込みによる口座の残高又は持ち株の増大をも目的とするものである から,このような設定に係る構成を,約定価と同じ価格の注文を含む注文を発注対\n象に含めるようにし,それを「繰り返し行わせる」設定に変更することは,「約定価 より真下の安値の買取り」及び「約定価より真上の高値の売込み」を同時に発注す ることにより,「従前の株の買取り値より株価が下落すると所定量を買取り,買取り 値より株価が上がると所定量を売込む」という,引用発明1の特徴を損なわせるこ とになる。 そうすると,引用発明1を本件発明の構成1Hに係る構\成の如く変更する動機付 けあるといえないから,構成1Hに相当する構\成は,引用発明1から当業者が容易 に想到し得たものとはいえない。
エ 被控訴人の主張について
被控訴人は,本件発明1と引用発明1との相違点は,引用発明1が本件発明1の 構成1Fのうち「前記一の注文価格を一の最高価格として設定し」ていない点であ\nり,その余の点では一致していることを前提に,本件発明1は,引用発明1から容 易想到である,と主張する。 しかし,前記イのとおり,本件発明1と引用発明1とは,引用発明1が本件発明 1の構成1Hの構\成を有していない点について相違している。被控訴人の主張は, その前提を欠き,理由がない。
・・・・
4 なお,被控訴人は,口頭弁論終結後に,本件発明1が無効とされるべきであ ることが明白である事由があるとして,口頭弁論再開を申し立てるが,無効事由の\n根拠となるべき資料は10年以上前に作成されていたものであり,上記無効事由は, 被控訴人が重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法であって, これによって訴訟の完結を遅延させることとなるから,却下されるべきものである から,口頭弁論を再開しない。

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平成29(行ケ)10029  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年12月26日  知的財産高等裁判所

 無効理由無しとした審決が取り消されました。理由は、サポート要件違反・委任省令違反、進歩性違反です。委任省令違反である以上、サポート要件違反でもあるという理由です。
   前記アのとおり,本件明細書には,「EVOH層の界面での乱れに起因す るゲル」は,ロングラン成形により発生するゲルとは異なる原因で発生するゲルで あると記載されているものの,本件明細書には,「EVOH層の界面での乱れに起因 するゲル」が,乙15における「ゲル状ブツ」の原因となるゲルと,その形状,構\n造等がどのように異なるのかを明らかにする記載は見当たらない。 また,本件明細書においては,前記イのとおり,「EVOH層の界面での乱れに起 因するゲル」は,目視観察できるものであるとされ,乙15における「ゲル状ブツ」 は,前記ウのとおり,肉眼で見ることができるものとされているところ,本件明細 書には,「目視観察」の定義は見当たらず,後者は肉眼で見分けられ,前者は肉眼で 見分けられないものを含む旨の特段の記載はないから,本件発明における「EVO H層の界面での乱れに起因するゲル」と背景技術(乙15)における「ゲル」を, 観察方法において区別することができるとは,理解できない。 このように,本件明細書には,本件発明における「EVOH層の界面での乱れに 起因するゲル」は,本件特許出願前の技術により抑制することができるとされてい るロングラン成形により発生するゲルとは異なる原因で発生する旨の記載があるも のの,その記載のみでは,ロングラン成形により発生するゲルと区別できるかどう かは,明らかでないというほかない。 この点について,被告は,「不完全溶融EVOH」が発生する機序について主張し, これは,従来から知られていた「熱架橋ゲル」とは異なる旨主張する。しかし,本 件明細書には,被告が本訴において主張するようなことは何ら記載されておらず, 被告が本訴において主張するような技術常識が存したとも認められないから,本件 発明における「EVOH層の界面での乱れに起因するゲル」が被告が本訴において 主張するようなものと認めることはできない。 そうすると,本件発明における「EVOH層の界面での乱れに起因するゲル」の 意義は明らかでないというほかなく,本件特許出願時の技術常識を考慮しても,「成 形物に溶融成形したときにEVOH層の界面での乱れに起因するゲルの発生がなく, 良好な成形物が得られ」るという本件発明の課題は,理解できないというほかない。 オ したがって,本件明細書の記載には,本件発明の課題について,当業者 が理解できるように記載されていないから,「特許法第三十六条第四項第一号の経\n済産業省令で定めるところによる記載は,発明が解決しようとする課題及びその解 決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明 の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければなら ない。」と定める特許法施行規則24条の2の規定に適合するものではない。
(2) 以上のとおり,本件発明についての本件明細書の発明の詳細の説明の記 載は,特許法36条4項1号の規定に適合しないから,審決のこの点に係る判断に は誤りがあり,取消事由3には理由がある。
・・・
前記2(1)オのとおり,本件明細書には,本件発明の課題について,当業者が理解 できるように記載されていないから,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の 詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲の ものであると認めることはできないし,発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも, 当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲 のものであるとも認められない。 この点について,被告は,「本件発明は,粒径500μm(0.5mm)未満の微 粉の含有量を0.1重量%以下に制御すること(新規な解決手段)により,『不完全 溶融EVOH』に起因する界面での乱れによるゲル(点状に分布する透明な粒状の 不完全溶融ゲルであり,EVOHの一部が極端な場合には他の樹脂層に突出するよ うな形態)の発生(斬新な課題)を抑制することができる(新規課題解決効果の奏 効)という特別な効果を得る」ものであると主張するが,前記2(1)のとおり,この 課題は,本件明細書及び技術常識から理解することができない。

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平成29(行ケ)10025  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年12月21日  知的財産高等裁判所

 外為オンラインVSマネースクウェアの侵害訴訟の対象となった特許(特5650776号)についての無効審判の審決取消訴訟です。マネースクウェアの保有する特許について無効理由無しとした審決が維持されました。
 本件発明1と引用発明とを対比すると,少なくとも,1)「金融商品の売 買取引を管理する金融商品取引管理装置であること,2)前記金融商品の売買注文を 行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力手段を備えること,3)該注文入 力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生\n成する注文情報生成手段を備えること,及び,4)一の前記売買注文申込情報に基づ\nいて,所定の前記金融商品の売り注文又は買い注文の一方を成行又は指値で行う第 一注文情報と,該金融商品の売り注文又は買い注文の他方を指値で行う第二注文情 報と,を含む注文情報群を複数回生成することで共通し,5)引用発明が,「前記金融 商品の売り注文又は買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報」を生成し ていない点で相違している。
イ 本件発明1の構成1Gは,「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定\nされたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記 第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効に」(1 G前段)するとともに,「以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と, 前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に 基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行 われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」(1G後段)という ものである。構成1G前段は,売買取引開始時において,同じ注文情報群に含まれ\nる第一注文情報に基づく成行注文が約定した後で,第二注文情報に基づく該指値注 文が約定されたときに,次の注文情報群の前記第一注文情報に基づく注文が,上記 売買取引開始時に約定された成行注文の価格と同じ価格の「指値注文」として有効 に生成されることとを意味するものである。 これに対し,引用発明は,前記2(2)のとおり,代替実施形態においては,パート 1注文とパート2注文とで形成されるLOCK注文を再度自動的に繰り返すもので ある。このことは,引用文献の図6では,代替実施形態において情報を入力する際 に「指値注文」と「成行注文」を選択する欄しかない上,引用文献の[0085] には,「『サイクル数44』の追加によって,投資家は,より多くの利益を得ること を望んで,LOCK処理に自動的に再入力できるようになるであろう。」と記載され ており,図7には,サイクル数選択「44」を経て同じ注文が繰り返される旨の矢 印が記載されていることからしても,明らかであるということができる。したがっ て,1回目のLOCK注文の第一注文が成行注文である場合には,繰り返されるL OCK注文の第一注文も成行注文であり,1回目のLOCK注文の第一注文が指値 注文である場合には,繰り返されるLOCK注文の第一注文も指値注文であるとい うことができる。
ウ 以上より,本件発明1と引用発明とは,本件発明の構成1Gの点におい\nて相違している。

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◆関連発明(特5525082号)についての審決取消訴訟です。こちらも権利有効維持です。

平成29(行ケ)10024

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平成29(行ケ)10072  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年12月21日  知的財産高等裁判所

 異議理由あり(進歩性)との審決が、引用文献の認定誤りを理由に取り消されました。異議の成立自体が低く、かつそれが取り消されるのはかなりレアな事例です。
 以上より,甲5文献記載の発明は,ポリメチルシルセスキオキサンの製 造方法に関するものであり(前記ア2)),塩素原子の含有量が少なく,アルカリ土類 金属やアルカリ金属を含有せず,自由流動性の優れた粉末状のポリメチルシルセス キオキサンの製造方法を提供することを目的とし(前記ア3)),アンモニアまたはア ミン類を,原料であるメチルトリアルコキシシラン中に残存する塩素原子の中和剤, 並びに,メチルトリアルコキシシランの加水分解及び縮合反応の触媒として用いる という製造方法を採用したものである(前記ア4))と認められる。
(2) 引用発明の粉末のシラノール基量及び撥水性を甲4実験に基づき認定し た点について
ア 甲1文献の実施例1において用いたポリメチルシルセスキオキサン粉末 は,「甲5文献記載の方法により得た平均粒子径5μm」のものである。決定は,甲 4実験は,甲1文献の実施例1を追試したものであり,甲4実験のポリメチルシル セスキオキサン粒子は,シラノール基量が0.08%であること,及び,撥水性の 程度が「水及び10%(v/v)メタノール水溶液に対して300rpmで1分間 攪拌後において,粒子が分散しない程度」であることを示していると認定した上で, 引用発明のポリメチルシルセスキオキサン粒子のシラノール基量及び撥水性を認定 した。 しかし,甲1文献の実施例1にいう,甲5文献記載の方法によることが,甲5文 献の実施例1によることで足りるとしても,以下のとおり,甲4実験は甲1文献の 実施例1を再現したものとは認められない。
イ 甲5文献の実施例1を含む甲1文献の実施例1の方法と,甲4実験とを 比較すると,少なくとも,1)攪拌条件,及び,2)原料メチルトリメトキシシランの 塩素含有量において,甲4実験は,甲1文献の実施例1の方法を再現したとは認め られない。
(ア) 攪拌条件について
真球状ポリメチルシルセスキオキサンの粒子径をコントロールするために,反応 温度,攪拌速度,触媒量などの反応条件を選定すること(乙2 489頁左欄6行 〜11行),ポリアルキルシルセスキオキサン粒子の製造方法として,オルガノトリ アルコキシシランを有機酸条件下で加水分解し,水/アルコール溶液,アルカリ性 水溶液を添加した後,静止状態で縮合する方法において,弱攪拌又は攪拌せずに縮 合反応させることによって,低濃度触媒量でも凝集物を生成しない粒子を得ること ができるが,粒径が1μm以上の粒子を製造するのに不適切であることが本件発明 の従来技術であったこと(本件明細書【0006】)からすると,ポリメチルシルセ スキオキサン粒子の製造においては,攪拌条件により,粒子径の異なるものが得ら れるものといえる。 甲5文献の実施例1には,攪拌速度は記載されておらず,甲4実験においても, 攪拌速度が明らかにされていない。したがって,実験条件から,得られたポリメチ ルシルセスキオキサン粒子の平均粒径を推測することはできない。加えて,甲4実 験においては,甲5文献の実施例1で追試して得られたとするポリメチルシルセス キオキサン粒子の粒径は計測されていない。したがって,甲4実験において甲5文 献の実施例1を追試して得られたとするポリメチルシルセスキオキサン粒子の平均 粒子径が,甲1文献の実施例1で用いられたポリメチルシルセスキオキサン粉末と 同じ5μmのものであると認めることはできない。
(イ) 原料メチルトリメトキシシランの塩素含有量について
甲5文献記載の発明は,前記(1)イのとおり,塩素原子の含有量が少ないポリメチ ルシルセスキオキサンの製造方法を提供するものであり,塩素原子を中和するため にアンモニア又はアミン類を用いるものである。そして,アンモニア及びアミン類 の使用量は,アルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物中に存在する塩素原子 を中和するのに十分な量に触媒量を加えた量であるが,除去等の点で必要最小限に\nとどめるべきであり,アンモニア及びアミン類の使用量が少なすぎると,アルコキ シシラン類の加水分解,さらには縮合反応が進行せず,目的物が得られない(前記 (1)ア4))。実施例1〜5及び比較例1〜3においては,原料に含まれる塩素原子濃 度並びに使用したアンモニア水溶液の量及びアンモニア濃度が記載されている(前 記(1)ア5)6))。以上の点からすると,塩素原子の中和に必要な量でありかつ除去等 の点で最小限である量のアンモニア及びアミン類を使用するために,塩素原子の量 とアンモニア及びアミン類の量を確認する必要があり,そのために,甲5文献の実 施例1においては,用いたメチルトリメトキシシランのメチルトリクロロシランの 含有量が塩素原子換算で5ppmであることを示したものと理解される。 ところが,甲4実験で甲5文献の実施例1の追試のために原料として用いたメチ ルトリメトキシシランの塩素原子含有量は計測されていない。したがって,甲4実 験で用いられたメチルトリメトキシシランに含有される塩素原子含有量と甲5文献 の実施例1で用いられたメチルトリメトキシシランに含有される塩素原子含有量と が同一であると認めることはできない。そうすると,甲4実験において,甲5文献 の実施例1と同様にアルコキシシラン類の加水分解,縮合反応が進行したと認める ことはできず,その結果,得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子が,甲5文 献の実施例1で得られたものと同一と認めることはできない。
ウ 以上より,甲4実験で用いたポリメチルシルセスキオキサン粒子は,甲 1文献の実施例1で用いられたものと同一とはいえないから,甲4実験で得られた ポリメチルシルセスキオキサン粒子のシラノール基量及び撥水性を,甲1文献の実 施例1のそれと同視して,引用発明の内容と認定することはできない。

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平成29(行ケ)10080  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年12月25日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、レッドブルの図形商標と図柄的に似ている商標について、混同生ずるとして4条1項15号に違反するとして、無効理由なしとした審決を取り消しました。両商標は判決文中にあります。
 本件商標と引用商標は,全体的な構図として,黄色系暖色調の無地の背景図形の\n前に,左向きに描かれて角を突き出した赤色の躍動感のある姿勢をした雄牛の図形 が配置されるなどの基本的構成を共通にするものであり,本件商標が使用される商\n品である自動車用品関連商品等の商品の主たる需要者が,商標やブランドについて 正確又は詳細な知識を持たない者を含む一般の消費者を含み,商品の購入に際して 払われる注意力はさほど高いものとはいえないことなどの実情や,引用商標が高度 の独創性を有するとまではいえないものの我が国において高い周知著名性を有して いることなどを考慮すると,本件商標が,指定商品に使用された場合には,これに 接した需要者(一般消費者)は,それが引用商標と基本的構成が類似する図形であ\nることに着目し,本件商標における細部の形状などの差異に気付かないおそれがあ るといい得る。 また,引用商標は,自動車関連の分野においても,レッドブル社の商品等を表示\nするものとして,取引者,需要者の間において著名であり,引用商標をその構成と\nする使用商標について,多数のライセンスが付与され,自動車関連商品等の多様な 商品について引用商標を含む使用商標が付されて販売されているところ,本件商標 の指定商品には,引用商標の著名性が取引者,需要者に認識されている自動車関連 の商品を含むものといえるのであるから,本件商標をその指定商品に使用した場合 には,これに接する取引者,需要者は,著名商標である引用商標を連想,想起して, 当該商品がレッドブル社又は同社との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示によ\nる商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信 するおそれがあるものというべきである。 したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するものとして商標登録 を受けることができないというべきであるから,これと異なり,本件商標が同号に 該当しないとした審決の判断には誤りがあるといわざるを得ない。
(8) 被告の主張について
ア 被告は,本件商標と引用商標とは,牛の体勢,色彩の差異及び牛以外の 構成物の差異により,その印象が明らかに異なるから,外観において容易に区別し\n得るものであり,いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから,相紛れ ることのない非類似の商標である旨主張する。 確かに,本件商標と引用商標とを直接対比すると,前記(2)イのとおり,具体的な 構成においていくつかの相違点が認められるものである。しかしながら,引用商標\nが高い著名性を有していたことや,本件商標と引用商標からはほぼ同一の観念が生 じることなどに照らせば,被告が指摘するような具体的構成における外観上の差異\nが存在するとしても,引用商標と基本的構成が共通すると認められる本件商標を自\n動車用品関連の商品を含む本件商標の指定商品に付して使用した場合には,これに 接する取引者,需要者において,当該商品がレッドブル社又は同社との間に緊密な 営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある\n者の業務に係る商品であると誤信するおそれがあるものというべきである。 また,本件商標には,外観上,具体的な構成において引用商標と相違する点があ\nるとしても,その基本的構成が引用商標と比較的類似性の高いものであるから,一\n般の消費者の注意力などを考慮すると,出所の混同を生ずるおそれがあることは前 記(6)のとおりである。 なお,商標法4条1項15号該当性の判断は,当該商標をその指定商品等に使用 したときに,当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営 業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営\n業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれが存するかどうかを問題とする ものであって,当該商標が他人の商標等に類似するかどうかは,上記判断における 考慮要素の一つにすぎないものである。被告が主張するような外観上の差異が存在 するとしても,それらの点が,本件商標の構成において格別の出所識別機能\を発揮 するとはいえないし,単に本件商標と引用商標の外観上の類否のみによって,混同 を生じるおそれがあるか否かを判断することはできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。

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平成28(行ケ)10254  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年12月25日  知的財産高等裁判所(1部)

 共謀して原告の権利を害する目的をもって原審決を確定させたとして、再審請求が認められました。事案としては、原告は、被告に対して商標権を譲渡しましたが、その後、譲渡を解除したとして移転登録の抹消手続きを求める訴えを提起しました。その際、被告らは共謀して本件商標権は不使用であるので登録を取り消したというものです。
 (1) 原告は,平成29年5月31日,被告Yの本人尋問の申立てをしたところ,\n尋問事項に関する原告の主張は,被告らが共謀して原告の利益を害する目的をもっ て原審決をさせたことである(第3回口頭弁論調書参照)。
(2) 当裁判所は,同年6月14日,第2回口頭弁論期日において,被告らの共 謀の存否を明らかにするには,当審において被告Yの本人尋問を行う必要があると して,上記(1)の申立てを採用するとともに,本人尋問期日を同年10月11日に指\n定した。なお,被告Yは,同年8月31日までに陳述書を提出することとされた。 (第2回口頭弁論調書参照)
(3) 被告Yは,同年8月25日付けで,被告Shapesの代表者や関係者と\n共謀したことはない旨を記載した陳述書を提出した(乙ア34)。
(4) 被告Yは,適式の呼出しを受けたにもかかわらず,当裁判所に対し事前の 連絡なく,本人尋問期日に出頭しなかった。なお,被告Yは,当裁判所に対し,診 断書その他出頭できない理由を証明する書類を一切提出していない。
(5) 被告Yの代理人は,本人尋問期日において,被告Yには民訴法208条の 不出頭の効果を説明して出頭しないと不利益になる旨を告げて出頭を促したものの, 本人からはそのことを承知の上で出頭しないと告げられた旨述べた(第3回口頭弁 論調書)。
(6) 当裁判所は,上記の経過を踏まえ,弁論を終結した。なお,被告Shap es及び被告Yの各代理人は,弁論を終結することにつき,異議を述べなかった。 2 民訴法208条該当性
上記認定事実によれば,被告Yが当事者本人の尋問期日に正当な理由なく出頭し なかったものと認められるから,民訴法208条に基づき,被告らが共謀して本件 商標権を害する目的をもって本件商標に係る登録商標を取り消す旨の原審決をさせ たという原告の主張は,真実と認めることができる。 したがって,被告らが共謀して原告の権利を害する目的をもって原審決をさせた とは認められないとした審決の判断には誤りがあるから,原告の取消事由は理由が ある。

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平成29(行ケ)10126  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年12月25日  知的財産高等裁判所(1部)

 使用していたとした審決が取り消されました。知財高裁は、登録商標「ベガス」ではなく「ベガスベガス」の使用であると判断しました。
  上記認定事実によれば,本件折込チラシ1には,「ベガス発寒店ファンのお 客様へ」と記載されている部分が認められ,この部分には本件文字部分(ベガス) が使用されており,本件文字部分は本件商標と同一のものと認められる。他方,本 件折込チラシ1の下部には,登録商標であることを示す○R の文字を付した「ベガス ベガス(R)」という文字が大きく付されているほか,「VEGAS VEGAS」,「ベ ガスベガス発寒店」という文字も併せて記載されている。 これらの事実関係によれば,本件折込チラシ1に接した需要者は,同チラシにお いて,パチンコ,スロットマシンなどの娯楽施設の提供という役務に係る出所を示 す文字は,同チラシにおいて多用されている「ベガスベガス」又は「VEGAS V EGAS」であって,一箇所だけで用いられた本件文字部分は,店内改装のため一 時休業する店舗の名称を一部省略した略称を表示したものにすぎず,本件折込チラ\nシ1に係る上記役務の出所自体を示すものではないと理解するのが自然である。 そうすると,本件折込チラシ1に本件文字部分を付する行為は,本件商標につい て商標法2条3項にいう「使用」をするものであると認めることはできない。 したがって,本件文字部分が出所識別機能を果たし得るものと認定した上,本件\n折込チラシ1に本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付されていると認定 した審決の各判断には,いずれも誤りがあるから,取消事由4及び5は,理由があ る。
(2) これに対し,被告は,本件文字部分が「ベガスベガス発寒店」の略称表示\n又は愛称表示として解釈できるのであるから,本件折込チラシ1には本件商標と社\n会通念上同一と認められる商標が付されたといえるなどと主張する。 しかしながら,被告が本件文字部分を「ベガスベガス」又は「VEGAS VEG AS」の略称表示であると認めるとおり,本件折込チラシ1に係る役務の出所を示\nす表示は,多用された「ベガスベガス」又は「VEGAS VEGAS」の標章であ ると認めるのが相当であるから,これらと異なる標章である本件文字部分が出所識 別機能を果たし得るとは認められない。かえって,「ベガス」という略称表\示の使用 をもって,本件商標についての使用であると認めることは,実質的には商標として は異なる略称表示に係る信用までを保護することを意味するから,商標法50条1\n項の不使用取消制度の趣旨に照らしても,相当ではない。のみならず,実質的にみ ても,前記認定事実によれば,被告が「ベガス発寒店」という文字を使用したチラ シは,同文字を一箇所でのみ使用した本件折込チラシ1のほかは一切提出されてい ないのであるから,そもそも「ベガス発寒店」という文字に係る標章の信用を保護 すべき特段の事情もうかがわれず,被告の上記主張は,前記認定を左右するもので はない。

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平成29(行ケ)10058  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年12月21日  知的財産高等裁判所(4部)

 審決は、進歩性違反無しとしましたが、知財高裁はこれを取り消しました。理由は、「当業者は,引用例に記載された凹部のピッチと凹部の深さ及び直径Dについて,放熱効果を向上させるという観点からその関係を理解する」というものです。
 引用発明と甲2技術は,いずれも空気入りタイヤに関するものであり,技術分野 が共通する。 また,引用発明は,ランフラットタイヤのサイドウォール部の補強ゴムから発生 した熱をより早く表面部に移動させて放熱効果を高め,カーカスやサイド補強ゴム\nの破壊を防止することを課題とする。甲2技術は,空気入りタイヤのブレーカ端部 の熱を逃がし,ブレーカ端部に亀裂が生じるのを防止することを課題とする。した がって,引用発明と甲2技術の課題は,空気入りタイヤの内部に発生した熱を迅速 に逃すことにより当該部位の破壊を防止するという点で共通する。 さらに,引用発明は,タイヤの外側表面の一定部位を,適当な表\面パターン形状 にすることによって,タイヤの回転軸方向の投影面積の表面積を大きくし,サイド\n補強層ゴムから発生した熱をより早く外部表面に移動させ,外気により効果的に拡\n散させるものである。甲2技術は,タイヤの外側表面の一定の領域に,多数の凹部\nを形成することによって,その領域で広い放熱面積を形成して,温度低下作用を果 たさせるものである。したがって,引用発明と甲2技術の作用効果は共通する。 加えて,甲2技術は,多数の凹部を形成することによって温度低下作用を果たさ せるに当たり,引用発明のように表面積の拡大だけではなく,乱流の発生も考慮す\nるものである。 よって,引用発明に甲2技術を適用する動機付けは十分に存在するというべきで\nある。
イ 引用発明における凹凸のパターン12の具体的な構造として,甲2技術を適\n用した場合,その凹凸部の構造は,「5≦p/h≦20,かつ,1≦(p−w)/\nw≦99の関係を満足する」ことになり,これは,相違点2に係る本件発明1の構\n成,すなわち「10.0≦p/h≦20.0,かつ,4.0≦(p−w)/w≦3 9.0の関係を満足する」という構成を包含する。\nそして,本件明細書(【0078】【0079】)には,「乱流発生用凹凸部で は,1.0≦p/h≦50.0の範囲が良く,好ましくは2.0≦p/h≦24. 0の範囲,更に好ましくは10.0≦p/h≦20.0の範囲がよい」「1.0≦ (p−w)/w≦100.0,好ましくは4.0≦(p−w)/w≦39.0の関 係を満足することが熱伝達率を高めている」との記載があり,「1.0≦p/h≦ 50.0」「1.0≦(p−w)/w≦100.0」というパラメータを満たす場 合においても放熱効果が高まる旨説明されている。「10.0≦p/h≦20.0」 「4.0≦(p−w)/w≦39.0」という数値範囲に特定する根拠は,「好ま しくは」と,単に好適化である旨説明するにとどまる。 また,本件明細書の【表1】【表\2】には,p/h及び(p−w)/wと耐久性 の関係についての実験結果が記載されているところ,本件発明1の数値範囲のうち p/hのみを満たさない実施例3(p/h=8)の耐久性は,本件発明1の数値範 囲を全て満たす実施例8,11,12,18,19の耐久性よりも高く,本件発明 1の数値範囲のうち(p−w)/wのみを満たさない実施例13,15,16((p −w)/w=44,99,59)の耐久性は,本件発明1の数値範囲を全て満たす 実施例8,11,12,18,19の耐久性よりも高いという結果が出ている。 加えて,本件明細書の【図29】には,p/hと熱伝達率の関係についてのグラ フが記載され,【図30】には,(p−w)/wと熱伝達率の関係についてのグラ フが記載されているところ,これらのグラフは,p/h又は(p−w)/wの各パ ラメータと熱伝達率の関係を示すにとどまり,両パラメータの充足と熱伝達率の関 係を示すものではない。そして,タイヤ表面の凹凸部によって発生する乱流により,\n流体の再付着点部分の放熱効果の向上に至るという機序によれば,凹凸部のピッチ (p),高さ(h)及び幅(w)の3者の相関関係によって放熱効果が左右される というべきであって,本件発明1において特定されたピッチと高さ,ピッチと幅と いう2つの相関関係のみを充足する凹凸部の放熱効果が,これらを充足しない凹凸 部の放熱効果と比較して,向上するといえるものではない。そうすると,p/h又 は(p−w)/wの各パラメータと熱伝達率の相関関係を示すグラフ(【図29】 【図30】)から,「10.0≦p/h≦20.0,かつ,4.0≦(p−w)/ w≦39.0の関係を満足する」凹凸部の構造が,これを満足しない凹凸部の構\造 に比して,熱伝達率を向上させるということはできない。 そうすると,本件発明1は,凹凸部の構造を,「10.0≦p/h≦20.0,\nかつ,4.0≦(p−w)/w≦39.0」の数値範囲に限定するものの,当該数 値範囲に限定する技術的意義は認められないといわざるを得ない。 よって,引用発明に甲2技術を適用した構成における凹凸部の構\造について,パ ラメータp/hを,「10.0≦p/h≦20.0」の数値範囲に特定し,かつ, パラメータ(p−w)/wを,「4.0≦(p−w)/w≦39.0」の数値範囲 に特定することは,数値を好適化したものにすぎず,当業者が適宜調整する設計事 項というべきである。
・・・
(ア) 被告は,引用例2は,放熱効果を向上させるための凹部のピッチと凹部の 深さ及び直径Dとの関係について全く開示しないと主張する。 しかし,引用例2には,多数の凹部によって生じる乱流によって温度低下作用が 果たされる旨記載があり(【0007】【0014】),また,引用例2はそのよ うな凹部について,ピッチ(p),深さ(d)及び直径(D)のサイズの範囲が具 体的に記載されている(【0009】【0010】【0012】)。そして,前記 (3)ウ(ア)のとおり,本件特許の優先日当時,当業者は,乱流による放熱効果の観点 から,タイヤ表面の凹凸部における,突部のピッチ(p)と突部の高さ(h)との\n関係及び溝部の幅(p−w)と突部の幅(w)との関係について,当然に着目する ものである。したがって,当業者は,引用例2に記載された凹部のピッチと凹部の 深さ及び直径Dについて,放熱効果を向上させるという観点からその関係を理解す るというべきである。

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平成29(行ケ)10083  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年12月21日  知的財産高等裁判所

 「摩擦式精米機により搗精され」という用語について、クレームが明確でない(36条6項2号)とした審決が取り消されました。
 以上のような特許請求の範囲及び本件明細書の記載によれば,本件訂正後の 特許請求の範囲請求項1の「摩擦式精米機により搗精され」という記載は,本件発 明に係る無洗米の前段階である前記ウ(a)(b)の構造又は特性を有する精白米を製造す\nる際に摩擦式精米機を用いることを意味するものであり,「無洗米機(21)にて」 という記載は,上記精白米から前記ウ(c)の構造又は特性を有する無洗米を製造する\n際に無洗米機を用いることを意味するものであって,前記ウ(a)ないし(c)のほかに本 件発明に係る無洗米の構造又は特性を表\すものではないと解するのが相当である。 そして,本件発明に係る無洗米とは,玄米粒の表層部から糊粉細胞層までが除去さ\nれ,亜糊粉細胞層が米粒の表面に露出し,米粒の50%以上に「胚芽の表\面部を削 りとられた胚芽」又は「胚盤」が残っており,糊粉細胞層の中の糊粉顆粒が米肌に 粘り付けられた状態で米粒の表面に付着している「肌ヌカ」が分離除去された米で\nあるといえる。 そうすると,請求項1に「摩擦式精米機により搗精され」及び「無洗米機(21) にて」という製造方法が記載されているとしても,本件発明に係る無洗米のどのよ うな構造又は特性を表\しているのかは,特許請求の範囲及び本件明細書の記載から 一義的に明らかである。よって,請求項1の上記記載が明確性要件に違反するとい うことはできない。

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平成29(行ケ)10110  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年11月27日  知的財産高等裁判所

 商3条の識別力無しとした審決が維持されました。争点は、「MORI」の下に「MOTO」とローマ字表記することが、『森本』という氏を普通に用いられている方法で表\示しているかどうかでした。裁判所は「格別特徴的であるとまではいえない」と判断しました。
 次に,本願商標の表示方法について検討するに,本願商標は,前記のと\nおりありふれた氏である「森本」と同一の称呼観念を有する語をローマ字 表記にした上,「mori」と「moto」を上下二段に分けて配置した\nものであり,その字体も,文字の角を丸めたやや太めの書体を採用したに すぎないものである(Fontworks社のスーラEBという特定の書 体を採用した点についても,同社のウェブサイト〔乙35,36〕におい て,同書体がDTP〔デスクトップパブリッシング〕の代表的な書体であ\nり,近年多くの場所で使用されている旨謳われていることからすれば,格 別特徴的であるとはいえない。)。 商取引において,氏や名称をローマ字で表記することは,一般的に行わ\nれていることであるし,標章の構成文字を複数の段に分けることや,構\成 文字の書体をある程度デザイン化することも特段珍しいことではなく,表\n示上格別の工夫を凝らしたものであるとはいえない(これらのことは逐一 立証するまでもない公知な事実であり,被告提出の乙6ないし34からも 明らかといえる。なお,これらの書証の中には,必ずしも原告と同じ業界 でないものの例も含まれているが,複数の業界を跨いで同じような例があ るということは,それだけ一般的に行われていることを示すものといえる から,これらの証拠を総合して取引の実情を認定したとしても何ら差し支 えない。)。 したがって,上記の程度の表示態様(外観)では,いまだ「森本」の氏\nとは別の称呼観念が生じ得るほどに(すなわち,独占の弊害を生ずるおそ れがないといい得るほどに)特徴的であるということはできず,本願商標 は,外観上も,ありふれた氏を「普通に用いられる方法」で表示する域を\n出ないものと評価するのが相当である。 よって,この点に関する審決の認定判断に誤りはない。

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平成29(行ケ)10071  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年11月29日  知的財産高等裁判所

 不使用であるとして取り消した審決を、知財高裁は取り消しました。争点は、本件ウェブサイトが日本の需要者を対象とした注文サイトまたは広告として機能しているか否かです(1部)。
 前記第2の1記載の事実に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実 が認められる。
(1) 原告は,平成23年11月23日,冒頭に「Coverderm Product Order Form」 と付した本件ウェブサイトにおいて,本件商標及び日本語でこれを仮名書きした「カ バーダーム」という名称を表題に付して,「カバーダームは最先端のスキンケア化粧\n品の専門ブランドです。」,「輝かしい歴史を誇り,さらに成長を続ける製品ラインナ ップを,長年にわたり80ヶ国以上の国々にお届けしています。」,「顔や体の気にな る箇所をカバーしてくれる,理想的なアイテムを多数揃えています!」,「世界中の 皮膚科医やメイクアップアーティストにも長年支持されています!」という文章を 掲載した。 そして,原告は,その下に「下記の空欄に必要事項をご記入のうえ,ご注文くだ さい。」という文章を掲載した上,名,姓,住所,製品名,数量,メールアドレス, コメントの記入欄と送信ボタンを設けるなどして,原告の商品をインターネットで 注文できるように設定するとともに,その下に「弊社製品に関する詳しい説明はこ ちらをクリックしてください。」という文章を掲載し,COVERDERMの商品の 紹介ページにリンクさせていた。 なお,本件ウェブサイトの末尾には,「Copyright Farmeco S.A. Dermocosmetics All rights reserved.」と表記され,本件ウェブサイトの著作権者が原告である\nことが明記されている。(甲14の1)
(2) 原告の代表者は,平成20年10月30日から少なくとも本件口頭弁論終\n結時まで,本件ウェブサイトに係る「coverderm.jp」という日本のドメイン名を個 人名で取得し,これを原告に使用させていた(甲14の2,甲20の1ないし3, 甲44の1及び2)。
(3) 本件ウェブサイトは,本件商標が付された原告のCOVERDERMの商 品につき,日本における販売促進及び日本の消費者から直接注文を受けることを目 的として,平成20年に作成されたものである。また,原告のインターネット経由 での売上げは,平成23年が7863.49ユーロ,平成24年が8129.44 ユーロ,平成25年が7555.50ユーロ,平成26年上半期が4289.94 ユーロであることがそれぞれ認められる(甲15)。
2 商標法50条1項該当性
上記認定事実によれば,原告は,少なくとも本件要証期間内である平成23年1 1月23日に,本件ウェブサイトにおいて,日本の需要者に向けて原告の「COV ERDERM」の商品に関する広告及び当該商品の注文フォームに本件商標を付し て電磁的方法により提供していたことが認められる。 したがって,原告は,本件商標について,少なくとも本件要証期間内に日本国内 で商標法2条3項8号にいう使用をしたものといえるから,同法50条1項に該当 するものとは認められず,原告の前記第3の3の取消事由は,理由がある。
3 被告の主張について
被告は,本件ウェブサイトは日本語で作成されているものの,リンク先とされる COVERDERMの商品の紹介ページは原告の英語ウェブサイトであり,商品の 発送方法や代金の支払等について何ら記載がないのであるから,本件ウェブサイト が日本の需要者を対象とした注文サイトとして機能しているかどうかは疑わしく,\n仮に,本件ウェブサイトにおける本件商標が広告として機能されることがあるとし\nても,日本の需要者の目に触れることのない状況において,本件ウェブサイトは形 式的にインターネット上にアップされているにすぎず,正当な商標の使用とはいえ ないなどと主張する。
しかしながら,前記1の認定事実によれば,本件ウェブサイトは,日本語で本件 商標に関するブランドの歴史,実績等を紹介するとともに,注文フォーム及び送信 ボタンまで日本語で記載されているのであるから,リンク先の商品の紹介が英語で 記載されているという事情を考慮しても,本件ウェブサイトが日本の需要者を対象 とした注文サイトであることは明らかである。そうすると,審決が認定するとおり, 本件商標を付した商品が日本の需要者に引き渡されたことまで認めるに足りないか 否かはさておき,少なくとも,原告は,本件商標について本件要証期間内に日本国 内で商標法2条3項8号にいう使用をしたものと認められる。 また,証拠(甲63の1ないし3)によれば,グーグルで検索する場合において, 検索キーワードを「カバーダーム」,「COVERDERM 化粧品」としたとき及び日本語の ページを検索するように設定した上で検索キーワードを「COVERDERM」としたときは, 本件ウェブサイトのリンク及び本件ウェブサイトの説明が表示されるものと認めら\nれるから,本件ウェブサイトは形式的にインターネット上にアップされているとは いえず,被告の主張は,その前提を欠くものである。

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平成29(ワ)393  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年11月30日  東京地方裁判所(46部)

 構成要件Aを充足しないとして非侵害と判断しました。被告は桐灰で、被告商品はサイト上では、生産中止扱いとなっています。
 被告製品の不織布が構成要件Aの「不織布シート」に当たることは当事者\n間に争いがないところ,原告は,その表面にシリカ(SiO2)が付着して\nいるから,構成要件Aの「表\面に吸着・乾燥剤を付着させた」を充足すると 主張する。
(2)本件発明の特許請求の範囲にはいかなる物が「吸着・乾燥剤」に当たるか は記載されていないが,本件明細書(甲2)には,「吸着・乾燥剤としては, 二酸化珪素(SiO2)等の吸水性,吸着性を有する無機粉体を採用するの が好ましい。」と記載されている(段落【0020】)から,吸水性,吸着性 を有するシリカ(SiO2。証拠(乙11)及び弁論の全趣旨によれば, 「シリカ」は二酸化ケイ素の通称であると認められる。)の無機粉体は「吸 着・乾燥剤」に当たり得ると解される。
・・・
イ 上記ア の認定事実によれば,剥離紙を除く被告製品に一定量のシリカ が含まれているということができる。 しかし,前記前提事実(3)のとおり,剥離紙を除く被告製品には不織布以 外の層があるところ,上記ア の計量においては,剥離紙を除く被告製品 全体を試料としているから,不織布の表面以外の部分に含まれるシリカが\n検出された可能性を否定することができない。加えて,同 の試験におい ては,被告製品から剥離紙,粘着剤及び粘着剤のついたフィルムを除いた 試料からシリカが検出されることはなかったこと,同 のとおり被告製品 の不織布層の表面において乾燥剤に該当し得ない物体以外のものが検出さ\nれなかったことにも鑑みると,被告製品の不織布の表面にシリカが付着し\nていると認めることはできない。また,被告製品に一定量のシリカ(Si O2)が含まれているとしても,それが吸収性,吸着性を有するものとし て被告製品に存在することを認めるに足りる証拠もない。

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平成28(ワ)23604  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成29年11月30日  東京地方裁判所

 お菓子などの商品パッケージデザインについて、改変については承諾があったと判断されました。
 上記(1)ア及びウの認定事実によれば,被告が原告に依頼したのは食品製造 会社等が商品の包装において使用するデザインであること,そのような包装 デザインについては,原告が被告に提出した後に被告が顧客である食品製造 会社等にデザインを提案するが,その後,顧客が被告に対して修正等の指示 を出すことがあり,その場合,被告は顧客の承諾等を得るまでデザインを修 正し,複数回の修正がされることも多いこと,原告は被告から包装デザイン の依頼を受けるようになる前から,デザイン会社から顧客に包装デザインが 提出された後に顧客の指示によりデザインの修正が必要となることがあるこ とやこうした場合に原告に連絡がなければ,原告以外の者が修正を行うこと になることを認識していたことを認めることができる。また,前記(1) 認定事実によれば,原告が被告に提出したデザインはその後被告が修正する ことができた。そうすると,原告が作成し被告に提出していた包装デザイン については,その提出後に顧客の指示等により修正が必要となることが当然 にあり得るというものであったのであり,かつ,原告は,このことを認識し, また,原告以外の者が上記デザインの修正をすることができることも認識し ていたといえる。他方,原告と被告間で,原告が被告にデザインを提出した 後の顧客の指示等による上記修正について,何らかの話がされたり,合意が されたりしたことを認めるに足りる証拠はない。 そして,前記(1)オの認定事実によれば,原告は,写真の使用権につき意識 していて,一般に著作権に関する権利関係が生じ得ることを理解していたこ とがうかがわれるところ,前記(1)エ,カ〜コの認定事実のとおり,原告は, 原告以外の者によって原告デザインに何らかの改変がされたことを認識して いながら,被告から依頼されて継続的に包装デザインを作成して被告に提出 し,更には被告に対して新たな仕事を依頼し,デザイン料の改定を求めるな どの要求はしたものの,改変について何らの異議を唱えず,又は,被告にお いてデザインを改変したことを明示的に承諾するなどしていた。原告が改変 を承諾していなかったにもかかわらず原告デザインの改変に対して被告に異 議を唱えることができなかった事情やデザインの改変を真意に反して承諾し なければならなかった事情を認めるに足りる証拠はない。 以上によれば,原告は,被告からの依頼に基づいて作成された原告デザイ ンにつき,被告による使用及び改変を当初から包括的に承諾していたと認め ることが相当である。
(3) これに対し,原告は,1)原告と被告の間で契約書を作成しておらず,注文 書,請求書等においても著作権に関する記載がないこと,2)デザイン料は1 点当たり1万5000円程度であって改変の許諾を前提とするものと考え難 いこと,3)原告はデザイン作成のたびに修正等がある場合は依頼をするよう に伝えていたこと,4)被告が原告の著作権を侵害した包装デザインを見つけ る都度,原告がこれを購入して写真撮影して証拠化していたこと,5)原告が 異議を述べなかったのは,早く納品するため,仕事の依頼を減らされた状況 において原告が被告との関係を悪化させないようにするためという事情によ ることを主張し,また,6)デザインの作成等の仕事を多数依頼することを条 件に承諾していたとの趣旨を供述し(原告本人〔22〜24〕),包括的な改 変の承諾を否定する。 上記1)については,著作権に関する承諾等は必ずしも文書によりされるも のとは限らないから,そうした記載がされた文書がなければ改変の承諾がな いと解することはできない。上記2)については,本件の証拠上,改変を前提 とする場合の通常のデザイン料が明らかでなく,原告の主張する評価を採用 し難い。上記3)については,前記(1)イ及びウの認定事実によれば,原告は, 被告にデザインの原案を提出した段階で修正等があれば連絡するよう伝えて いたものであって,顧客に対する提示案が固まるまでの間に修正等がある場 合にその作業を原告に依頼するよう求めていたにすぎないから,上記提示案 が固まった後の改変についても原告の承諾が必要であったと直ちに認めるこ とはできない。上記4)については,仮にそのとおりであるとしても,前記(1) エの認定事実によれば,原告以外の者による改変を平成25年8月〜9月頃 までに把握したのであるから,原告が改変を問題と考えていたのであれば, その証拠化後に何らかの異議を唱えるのが通常であるというべきであるとこ ろ,前記(1)エ〜コの認定事実のとおり,本件訴訟の提起に至るまで,原告は 改変について何らの異議を唱えていない。上記5)及び6)については,前記(1) エの認定事実によれば,平成25年8〜9月頃から仕事量が激減してその状 況が好転しなかったものであり,また,証拠(乙106の1及び2)によれ ば,遅くとも平成28年1月頃からは仕事量とデザイン料の不均衡を理由に 被告からの依頼を断るようになったと認められ,異議を述べる障害となる事 由が解消ないし軽減したということができるにもかかわらず,原告は,デザ イン料の改定を求めるなど被告に対して書面をもって一定の要求をする一方 で,原告デザインの改変について本件訴訟の提起に至るまで何らの異議も唱 えていない。

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平成29(ネ)10038  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年11月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について、1審と同じ理由で、技術的範囲に属しない、均等侵害も否定されました。
 前記イを踏まえて,構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を\n移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示する」を検討\nすると,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」とは,タ ッチパネルを含む入力手段から,画面上におけるポインタの座標位置を移動させる 命令(電気信号)を処理手段が受信することである。そして,利用者がマウスにお ける左ボタンや右ボタンを押す操作に対応する電気信号ではなく,マウスにおける 左ボタンや右ボタンを押したままマウスを移動させる操作(ドラッグ操作)に対応 する電気信号を,入力手段から処理手段が受信することを含むものである。また, 本件発明1は,利用者が入力手段を使用してデータ入力を行う際に実行される入力 支援コンピュータプログラムであり,利用者が間違ってマウスの右クリックを押し てしまった場合等に利用者の意に反して画面上に操作コマンドのメニューが表示さ\nれてしまう等の従来技術の課題を踏まえて,システム利用者の入力を支援するため, 利用者が必要になった場合にすぐに操作コマンドのメニューを画面上に表示させる\n手段を提供することを目的とするものである。 そうすると,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」と は,タッチパネルを含む入力手段から,画面上におけるポインタの座標位置を,入 力支援が必要なデータ入力に係る座標位置(例えば,ドラッグ操作を開始する座標 位置)からこれとは異なる座標位置に移動させる操作に対応する電気信号を,処理 手段が受信することを意味すると解するのが相当である。 そして,前記第2の1(3)イのとおり,本件ホームアプリにおいて,控訴人が「操 作メニュー情報」に当たると主張する左右スクロールメニュー表示は,利用者がシ\nョートカットアイコンをロングタッチすることにより表示されるものであるが,ロ\nングタッチは,ドラッグ操作などとは異なり,画面上におけるポインタの座標位置 を移動させる操作ではないから,入力手段であるタッチパネルからロングタッチに 対応する電気信号を処理手段が受信することは,「入力手段を介してポインタの位置 を移動させる命令を受信する」とはいえない。 したがって,ロングタッチにより左右スクロールメニュー表示が表\示されるとい う本件ホームアプリの構成は,構\成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を 移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示する」という\n構成を充足するとは認められない。\n
エ 控訴人は,本件ホームアプリでは,タッチパネルに指等が触れると,「ポ インタの座標位置」の値が変化し,「カーソル画像」もこの位置を指し示すように移\n動するところ,ロングタッチは,タッチパネルに指等が触れるといった動作を含む から,被控訴人製品の処理手段はロングタッチにより「『ポインティングデバイスに よって最後に指示された画面上の座標』を移動させる命令」を受信するといえ,本 件ホームアプリは,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」 という構成を有していると主張する。\nしかし,本件ホームアプリにおいて,ロングタッチに含まれるタッチパネルに指 等が触れることに対応して,ポインタの座標位置を,「ポインティングデバイスによ って最後に指示された画面上の座標」位置から,指等がタッチパネルに触れた箇所 の座標位置に移動させることを内容とする電気信号が生じる(甲7の1・2)とし ても,前記ウのとおり,ロングタッチは,画面上におけるポインタの座標位置を移 動させる操作ではないから,上記電気信号は,画面上におけるポインタの座標位置 を移動させる操作に対応する電気信号とはいえない。また,「ポインティングデバイ スによって最後に指示された画面上の座標位置」は,ロングタッチの直前に行って いた別の操作に係るものであり,入力支援が必要なデータ入力に係る座標位置では ないから,上記電気信号は,画面上におけるポインタの座標位置を,入力支援が必 要なデータ入力に係る座標位置からこれとは異なる座標位置に移動させることを内 容とするものでもない。 そうすると,本件ホームアプリのロングタッチ又はこれに含まれるタッチパネル に指等が触れることに対応して,ポインタの座標位置を,「ポインティングデバイス によって最後に指示された画面上の座標」位置から,指等がタッチパネルに触れた 箇所の座標位置に移動させることを内容とする電気信号が生じることをもって,構\n成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」とい う構成を充足するとはいえない。\n オ 控訴人は,タッチパネルでは,指等が触れていれば継続的に「ポインタ の位置を移動させる命令」である「ポインタの位置を算出するためのデータ」を受 信し,「ポインタの位置」が一定時間,一定の範囲内に収まっている場合にはロング タッチであると判断されるから,ロングタッチを識別するために入力されるデータ 群には「ポインタの位置を移動させる命令」が含まれると主張する。 しかし,前記第2の1(3)イのとおり,本件ホームアプリは,ロングタッチにより 左右スクロールメニュー表示がされる構\成であるところ,ロングタッチは,継続的 に複数回受信するデータにより算出された「ポインタの位置」が一定の範囲内で移 動している場合だけでなく,当初の「ポインタの位置」から全く移動しない場合を 含むことは明らかであり(甲8),ロングタッチであることを識別するまでの間に「ポ インタの位置」を一定の範囲内で移動させることを内容とする電気信号は,前者に おいては発生しても,後者においては発生しないのであるから,そのような電気信 号をもって,構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を\n受信する」という構成を充足するとはいえない。\n カ 以上によると,本件ホームアプリが構成要件Eを充足すると認めること\nはできない。
(2) 均等侵害の成否
ア 控訴人は,本件ホームアプリにおける「利用者がタッチパネル上のショ ートカットアイコンを指等でロングタッチする操作を行うことによって操作メニュ ー情報が表示される」という構\成は,「利用者がタッチパネル上の指等の位置を動か して当該ショートカットアイコンを移動させる操作を行うことによって操作メニュ ー情報が表示される」という本件発明1の構\成と均等であると主張する。 そこで検討すると,前記(1)ア及びイによると,本件発明1は,コンピュータシス テムにおけるシステム利用者の入力行為を支援する従来技術である「コンテキスト メニュー」には,マウスの左クリックを行う等するまではずっとメニューが画面に 表示され続けたり,利用者が間違って右クリックを押してしまった場合等は,利用\n者の意に反して画面上に表示されてしまうので不便であるという課題があり,従来\n技術である「ドラッグ&ドロップ」には,例えば,移動させる位置を決めないで徐々 に画面をスクロールさせていくような継続的な動作には適用が困難であるという課 題があったことから,システム利用者の入力を支援するための,コンピュータシス テムにおける簡易かつ便利な入力の手段を提供すること,特に,1)利用者が必要に なった場合にすぐに操作コマンドのメニューを画面上に表示させ,2)必要である間 についてはコマンドのメニューを表示させ続けられる手段の提供を目的とするもの\nである。 そして,本件発明1は,上記課題を解決するために,本件特許の特許請求の範囲 請求項1の構成,すなわち,本件発明1の構\成としたものであるが,特に,上記1) を達成するために,「入力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことに よる開始動作命令を受信した後…において」(構成要件D),「入力手段を介してポイ\nンタの位置を移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示\nする」(同E)という構成を採用し,上記2)を達成するために,「利用者によって当 該押されていた命令ボタンが離されたことによる終了動作命令を受信するまで」(同 D),「操作メニュー情報を…出力手段に表示すること」(同E,F)を「行う」(同\nD)という構成を採用した点に特徴を有するものと認められる。\nそうすると,入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すること によってではなく,タッチパネル上のショートカットアイコンをロングタッチする ことによって操作メニュー情報を表示するという,本件ホームアプリの構\成は,本 件発明1と本質的部分において相違すると認められる。
イ 控訴人は,利用者がドラッグ&ドロップ操作を所望している場合に操作 メニュー情報を表示することが本質的部分であると主張する。\nしかし,前記(1)ア及びイのとおり,マウスが指し示している画面上のポインタ位 置に応じた操作コマンドのメニューを画面上に表示すること自体は,本件発明1以\n前から「コンテキストメニュー」という従来技術として知られていたところ,前記 (2)アのとおり,本件発明1は,この「コンテキストメニュー」がマウスを右クリッ クすることにより上記メニューを表示することに伴う課題を解決することをも目的\nとして,利用者が必要になった場合にすぐに操作コマンドのメニューを画面上に表\n示させるために,「入力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことによ る開始動作命令を受信した後…において」(構成要件D),「入力手段を介してポイン\nタの位置を移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示す\nる」(同E)という構成を採用した点に特徴を有するものと認められる。したがって,\n本件発明1において,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部\n分は,利用者がドラッグ&ドロップ操作といった特定のデータ入力を所望している 場合にその入力を支援するための操作メニュー情報を表示すること自体ではなく,\n従来技術として知られていた操作コマンドのメニューを画面に表示することを,「入\n力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことによる開始動作命令を受 信した後…において」(構成要件D),「入力手段を介してポインタの位置を移動させ\nる命令を受信する」(同E)ことに基づいて行うことにあるというべきである。 そうすると,入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すること によってではなく,タッチパネル上のショートカットアイコンをロングタッチする ことによって操作メニュー情報を表示するという,本件ホームアプリの構\成は,既 に判示したとおり,本件発明1と本質的部分において相違するというべきである。

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◆1審はこちら。平成28(ワ)10834


 

◆関連事件はこちら。平成29(ネ)10037

◆1審はこちら。平成28(ワ)13033

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平成27(ワ)23087  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年12月6日  東京地方裁判所

 医薬品について、薬理データが記載されていないとして、実施可能性違反、サポート要件違反で無効と判断されました。\n
 特許法36条4項1号は,明細書の発明の詳細な説明の記載は「その発明 の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることが できる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定めると\nころ,この規定にいう「実施」とは,物の発明においては,当該発明にかか る物の生産,使用等をいうものであるから,実施可能要件を満たすためには,\n明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が当該発明に係る物を生産し, 使用することができる程度のものでなければならない。 そして,医薬の用途発明においては,一般に,物質名,化学構造等が示さ\nれることのみによっては,当該用途の有用性及びそのための当該医薬の有効 量を予測することは困難であり,当該医薬を当該用途に使用することができ\nないから,医薬の用途発明において実施可能要件を満たすためには,明細書\nの発明の詳細な説明は,その医薬を製造することができるだけでなく,出願 時の技術常識に照らして,医薬としての有用性を当業者が理解できるように 記載される必要がある。
(2) 本件の検討
本件についてこれをみるに,本件発明1では,式(I)のRAが−NHC O−(アミド結合)を有する構成(構\成要件B)を有するものであるところ, そのようなRAを有する化合物で本件明細書に記載されているものは,「化 合物C−71」(本件明細書214頁)のみである。そして,本件発明1は インテグラーゼ阻害剤(構成要件H)としてインテグラーゼ阻害活性を有す\nるものとされているところ,「化合物C−71」がインテグラーゼ阻害活性 を有することを示す具体的な薬理データ等は本件明細書に存在しないことに ついては,当事者間に争いがない。 したがって,本件明細書の記載は,医薬としての有用性を当業者が理解で きるように記載されたものではなく,その実施をすることができる程度に明 確かつ十分に記載されたものではないというべきであり,以下に判示すると\nおり,本件出願(平成14年(2002年)8月8日。なお,特許法41条 2項は同法36条を引用していない。)当時の技術常識及び本件明細書の記 載を参酌しても,本件特許化合物がインテグラーゼ阻害活性を有したと当業 者が理解し得たということもできない。
・・・
すなわち,上記各文献からうかがわれる本件優先日当時の技術常識と しては,ある種の化合物(ヒドロキシル化芳香族化合物等)がインテグ ラーゼ阻害活性を示すのは,同化合物がキレーター構造を有しているこ\nとが理由となっている可能性があるという程度の認識にとどまり,具体\n的にどのようなキレーター構造を備えた化合物がインテグラーゼ阻害活\n性を有するのか,また当該化合物がどのように作用してインテグラーゼ 活性が阻害されるのかについての技術常識が存在したと認めるに足りる 証拠はない。
・・・
以上の認定は本件優先日当時の技術常識に係るものであるが,その ほぼ1年後の本件出願時にこれと異なる技術常識が存在したことを認め るに足りる証拠はなく,本件出願当時における技術常識はこれと同様と 認められる。このことに加え,そもそも本件明細書には,本件特許化合 物を含めた本件発明化合物がインテグラーゼの活性部位に存在する二つ の金属イオンに配位結合することによりインテグラーゼ活性を阻害する 2核架橋型3座配位子(2メタルキレーター)タイプの阻害剤であると の記載はないことや,本件特許化合物がキレート構造を有していたとし\nても,本件出願当時インテグラーゼ阻害活性を有するとされていたヒド ロキシル化芳香族化合物等とは異なる化合物であることなどに照らすと, 本件明細書に接した当業者が,本件明細書に開示された種々の本件発明 化合物が,背面の環状構造により配位原子が同方向に連立した2核架橋\n型3座配位子構造(2メタルキレーター構\造)と末端に環構造を有する\n置換基とを特徴として,インテグラーゼの活性中心に存在する二つの金 属イオンに配位結合する化合物であると認識したと認めることはできな い。 以上によれば,本件出願当時の技術常識及び本件明細書の記載を参酌して も,本件特許化合物がインテグラーゼ阻害活性を有したと当業者が理解し得 たということもできない。 したがって,本件明細書の記載は本件発明1を当業者が実施できる程度に 明確かつ十分に記載したものではなく,本件発明1に係る特許は特許法36\n条4項1号の規定に違反してされたものであるので,本件発明1に係る特許 は特許法123条1項4号に基づき特許無効審判により無効にされるべきも のである。
3 争点(1)イ(イ)(サポート要件違反)について
上記2で説示したところに照らせば,本件明細書の発明の詳細な説明に本件 発明1が記載されているとはいえず,本件発明1に係る特許は特許法36条6 項1号の規定に違反してされたものというべきである。

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平成28(行ケ)10279  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年11月30日  知的財産高等裁判所

 基礎出願Xでは新規性喪失の例外主張および証明書提出をしていましたが、これを基礎出願とする国内優先権主張出願では、かかる手続きをせず、その分割出願にて、新規性喪失の例外の利益を受けられるのかについて争われました。裁判所は、規定がそうなっている以上できないと判断しました。法改正でかかる証明書は、国内優先・分割いずれも省略できます。
 1 平成23年改正前特許法30条4項は,同条1項の適用を受けるための手続 的要件として,1)特許出願と同時に,同条1項の適用を受けようとする旨を記載し た書面(4項書面)を特許庁長官に提出するとともに,2)特許出願の日から30日 以内に,特許法29条1項各号の一に該当するに至った発明が平成23年改正前特 許法30条1項の適用を受けることができる発明であることを証明する書面(4項 証明書)を特許庁長官に提出すべきことを定めているが,同条4項には,その適用 対象となる「特許出願」について,特定の種類の特許出願をその適用対象から除外 するなどの格別の定めはない。 また,平成16年改正前特許法41条に基づく優先権主張を伴う特許出願(以下, 「国内優先権主張出願」という。)は,同条2項に「前項の規定による優先権の主張 を伴う特許出願」と規定されるとおり,基礎出願とは別個独立の特許出願であるこ とが明らかである。 そうすると,国内優先権主張出願について,平成23年改正前特許法30条4項 の適用を除外するか,同項所定の手続的要件を履践することを免除する格別の規定 がない限り,国内優先権主張出願に係る発明について同条1項の適用を受けるため には,同条4項所定の手続的要件として,所定期間内に4項書面及び4項証明書を 提出することが必要である。
2 そこで,国内優先権主張出願について,平成23年改正前特許法30条4項 の適用を除外するか,同項所定の手続的要件を履践することを免除する格別の規定 があるかどうかについて検討すると,まず,分割出願については,平成18年改正 前特許法44条4項が原出願について提出された4項書面及び4項証明書は分割出 願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす旨を定めているが,国内優先権主 張出願については,これに相当する規定はない。 また,平成16年改正前特許法41条2項は,国内優先権主張出願に係る発明の うち基礎出願の当初明細書等に記載された発明についての平成23年改正前特許法 30条1項の適用については,国内優先権主張出願に係る出願は基礎出願の時にさ れたものとみなす旨を定めているが,これは,同項が適用される場合には,同項中 の「その該当するに至った日から6月以内にその者がした特許出願」にいう「特許 出願」については,国内優先権主張出願の出願日ではなく,基礎出願の出願日を基 準とする旨を規定するに止まるものである。平成16年改正前特許法41条2項の 文理に照らし,同項を根拠として,基礎出願において平成23年改正前特許法30 条4項所定の手続を履践している場合には,国内優先権主張出願において同項所定 の手続を履践したか否かにかかわらず,基礎出願の当初明細書等に記載された発明 については同条1項が適用されると解釈することはできない。 特許法のその他の規定を検討しても,国内優先権主張出願について,平成23年 改正前特許法30条4項の適用を除外するか,同項所定の手続的要件を履践するこ とを免除する格別の規定は,見当たらない。
3 平成16年改正前特許法41条2項は,基本的にパリ条約による優先権の主 張の効果(パリ条約4条B)と同等の効果を生じさせる趣旨で定められたものであ り,国内優先権主張出願に係る発明のうち基礎出願の当初明細書等に記載された発 明について,その発明に関する特許要件(先後願,新規性,進歩性等)の判断の時 点については国内優先権主張出願の時ではなく基礎出願の時にされたものとして扱 うことにより,基礎出願の日と国内優先権主張出願の日の間にされた他人の出願等 を排除し,あるいはその間に公知となった情報によっては特許性を失わないという 優先的な取扱いを出願人に認めたものである(甲19)。 そして,平成16年改正前特許法41条2項が,国内優先権主張出願に係る発明 のうち,基礎出願の当初明細書等に記載された発明の平成23年改正前特許法30 条1項の規定の適用については,上記国内優先権主張出願は,上記基礎出願の時に されたものとみなす旨を規定していることは,上記趣旨(国内優先権主張出願が, 基礎出願の日から国内優先権主張出願の日までにされた他人の出願等やその間に公 知となった情報によって不利な取扱いを受けないものとすること)を超えるものと いえるが,その趣旨は,同条1項が「第29条第1項各号の一に該当するに至った 発明は,その該当するに至った日から6月以内にその者がした特許出願に係る発明 についての同条第1項及び第2項の規定の適用については,」と規定して,特許出願 の日を基準として新規性喪失の例外の範囲を定めていることから,国内優先権主張 出願の日を基準としたのでは,上記趣旨により基礎出願の日を基準とすることにな る新規性の判断に対する例外として認められる範囲が通常の出願に比べて極めて限 定されるという不都合が生じることに鑑み,国内優先権主張出願の日ではなく基礎 出願の日を基準とすることを定めたものと解するのが相当である。 そうすると,平成16年改正前特許法41条2項が平成23年改正前特許法30 条1項の適用について規定していることは,その趣旨に照らしても,上記規定が適 用された場合には,国内優先権主張出願の日ではなく基礎出願の日を基準とする旨 を規定するに止まり,これをもって,同条1項の適用について,基礎出願の当初明 細書等に記載された発明については,基礎出願において手続的要件を具備していれ ば,国内優先権主張出願において改めて手続的要件を具備しなくても,上記規定の 適用が受けられるとすることはできない。
4 以上によると,国内優先権主張出願に係る発明(基礎出願の当初明細書等に 記載された発明を含む。)について,平成23年改正前特許法30条1項の適用を受 けるためには,同条4項所定の手続的要件として,所定期間内に4項書面及び4項 証明書を提出することが必要であり,基礎出願において提出した4項書面及び4項 証明書を提出したことをもって,これに代えることはできないというべきである。
5 本願は,出願Aの分割出願である本願の原出願をさらに分割出願したもので あるところ,分割出願については,原出願について提出された4項書面及び4項証 明書は分割出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす旨の定めがあるが, 原告は,出願Aにおいて,その出願と同時に,4項書面を特許庁長官に提出しなか ったのであるから,本願は,平成23年改正前特許法30条1項の適用を受けるこ とはできない。 そして,同条1項が適用されないときには,審決の刊行物A発明の認定並びに本 願発明との一致点及び相違点の認定及び判断に争いはないから,本願発明は,刊行 物A発明であるか,同発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもの である。 そうすると,本願は,その余の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきも のであるから,これと同旨の審決の判断に誤りはない。
6 これに対して,原告は,国内優先権制度における優先権の発生時期は,パリ 条約4条Bに規定される優先権の発生時期から類推して,先の出願がされた時であ る,基礎出願において平成23年改正前特許法30条4項所定の手続をした場合の 国内優先権主張出願については,国内優先権の本質からみて,基礎出願の当初明細 書等に記載された発明について優先権が発生し,平成16年改正前特許法41条4 項の手続をすることにより,上記発明に係る特許法29条,平成23年改正前特許 法30条1項〜3項等の適用については基礎出願の時にされたものとみなされる効 果が発生するが,新規性・進歩性についての規定(特許法29条)の適用に係る前 記効果については,基礎出願において平成23年改正前特許法30条4項所定の手 続をしている場合には,新規性喪失の例外規定(同法30条1項〜3項)に係る前 記効果についても発生しているから,この効果をも含む上記発明の新規性について の優先権の主張の効果が発生するというべきであるなどと主張する。 しかし,平成16年改正前特許法41条1項の「優先権」(国内優先権)の主張の 効果は,同条2項に規定されたものであり,パリ条約の規定を類推することによっ て定まると解することはできない。 また,既に判示した平成16年改正前特許法41条2項の文言及び同項の趣旨に 照らすと,同項は,国内優先権主張出願に係る発明のうち,基礎出願の当初明細書 等に記載された発明について,特許法29条を適用する際には,同条中の「特許出 願前に」にいう「特許出願」は基礎出願時にされたものとみなし,平成23年改正 前特許法30条1項を適用する際には,同項中の「その該当するに至った日から6 月以内にその者がした出願」にいう「特許出願」は基礎出願時にされたものとみな すことを規定するものであり,新規性喪失の例外規定(同法30条1項)と新規性・ 進歩性についての規定(同法29条)とを一体として取り扱うべきことは,平成1 6年改正前特許法41条2項の文理上はもとより,その趣旨からも導くことはでき ない。
7 原告は,平成16年改正前特許法41条には,同条2項に列挙される各条項 が適用されるための手続として,平成23年改正前特許法30条4項のような手続 は規定されていないから,そのような手続は不要であり,例えば,特許法29条の 適用について基礎出願の時にされたものとみなされるための手続として,平成16 年改正前特許法41条4項の手続をすれば十分であるなどと主張する。\nしかし,国内優先権主張の効果である平成16年改正前特許法41条2項が,基 礎出願において平成23年改正前特許法30条4項所定の手続を履践している場合 には,国内優先権主張出願において同項所定の手続を履践したか否かにかかわらず, 同条1項が適用されることを定めるものではないことは,前記2,3のとおりであ る。平成16年改正前特許法41条4項に平成23年改正前特許法30条4項のよ うな手続が定められていないからといって,国内優先権主張出願に係る発明のうち 基礎出願の当初明細書等に記載された発明について,平成23年改正前特許法30 条1項が適用される手続的要件として,国内優先権主張出願において同条4項所定 の手続を履践することを不要とする理由にはならない。 また,特許法29条の適用には格別の手続的要件はないから,平成23年改正前 特許法30条4項所定の手続の履践を手続的要件とする同条1項の適用と同列に論 じることはできない。
8 原告は,平成23年改正前特許法30条4項が,基礎出願の際に既に同項所 定の手続を履践した国内優先権主張出願に際し,同主張出願における平成16年改 正前特許法41条2項に規定の発明について同項で列挙された所定の条項の規定の 適用につき,改めてその手続を履践させるための規定でもあるとすると,それは単 なる重複手続のための規定であって,法がそのようなことを求めていると解するこ とはできないなどと主張する。 しかし,平成23年改正前特許法30条4項がその対象となる「特許出願」から, 基礎出願において同項所定の手続を履践している国内優先権主張出願において,基 礎出願の当初明細書等に記載された発明について同条1項の適用を求める場合の当 該国内優先権主張出願を除外していると解することができないことは,前記1〜4 のとおりであって,原告の主張は,法令上の根拠がなく,理由がない。
9 原告は,平成23年改正前特許法30条4項は,国内優先権主張を伴わない 通常の出願,あるいは,国内優先権主張出願であって,基礎出願において同条1項 又は3項の新規性喪失の例外適用を求めた発明以外の発明について,同条1項又は 3項の適用を求めようとする場合に適用されるものであり,基礎出願において同条 4項所定の手続により同条1項又は3項の適用を求めた発明について優先権を主張 する出願には,適用されないと主張する。 しかし,同条4項が,基礎出願において同項所定の手続を履践している国内優先 権主張出願について,その対象となる「特許出願」から除外しているとは解釈でき ないことは,前記1〜4のとおりであって,原告の主張は,理由がない。
10 原告は,平成23年改正前特許法施行規則31条1項は,基礎出願におい て平成23年改正前特許法30条1項又は3項の新規性喪失の例外適用を求めた発 明以外の発明について,同条1項又は3項の適用を求める出願に適用される規定で あると主張する。 しかし,同条4項が,基礎出願において同項所定の手続を履践している国内優先 権主張出願について,その対象となる「特許出願」から除外しているとは解釈でき ないことは,前記1〜4のとおりであるから,平成23年改正前特許法施行規則3 1条1項を原告が主張するように解することはできず,原告の主張は,理由がない。
11 原告は,基礎出願において新規性喪失の例外規定が適用された発明に基づ いて国内優先権を主張する場合,出願人が敢えて,国内優先権主張出願では上記発 明について新規性喪失の例外規定の適用を受けないことは通常考えにくいから,国 内優先権主張出願の際に改めて新規性喪失の例外適用申請の意思を確認する必要は\nないし,また,国内優先権主張出願の願書には必ず基礎出願の番号を記載している ことなどの事情から,出願人にとっても第三者にとっても,国内優先権主張出願に おいて新規性喪失の例外適用のための書面等を再度提出する必要性は何ら存在しな いなどと主張する。 しかし,基礎出願において平成23年改正前特許法30条4項所定の手続を履践 している国内優先権主張出願において,基礎出願の当初明細書等に記載された発明 について同条1項又は3項の適用を求める場合の同条4項所定の手続の履践の必要 性について,仮に原告主張のような見方が成り立つとしても,立法論としてはとも かく,同項の解釈として,同項がその対象となる「特許出願」から,基礎出願にお いて同項所定の手続を履践している国内優先権主張出願を除外していると解するこ とは,法令上の根拠がなく,できないことは,前記1〜4のとおりである。
12 原告は,平成11年法律第41号による特許法の改正において,平成11 年改正前特許法44条の分割出願制度については,手続簡素化のための規定が新た に検討され,同条4項が新設されたが,国内優先権制度については,出願人の手続 の簡素化を図る趣旨は同様にあてはまるはずであるにもかかわらず,手続規定の見 直しも,手続簡素化のための新たな規定の導入などの検討もされなかったという事 実は,国内優先権制度については,法改正をするまでもなく,既に手続が簡略化さ れた規定となっていることの証左であると主張する。 しかし,平成23年改正前特許法30条4項が,基礎出願において同項所定の手 続を履践している国内優先権主張出願について,その対象となる「特許出願」から 除外しているとは解釈できないことは,前記1〜4のとおりであって,そのことは, 平成11年改正において国内優先権制度について改正がされなかったとの原告上記 主張事実により左右されるものではない。
13 原告は,国内優先権主張出願に係る発明のうち,基礎出願において平成2 3年改正前特許法30条4項所定の手続を履践することにより同条1項の適用を受 けた発明について,国内優先権主張出願において同項の適用を受けるために同条4 項の手続を求めている特許庁の運用は違法であると主張する。 しかし,特許庁の上記運用が違法でないことは,既に説示したところから明らか である。
14 原告は,平成16年改正前特許法41条2項が平成23年改正前特許法3 0条4項を対象としていない趣旨は,平成18年改正前特許法44条2項が平成2 3年改正前特許法30条4項を適用除外している趣旨とは異なるなどと主張する。 しかし,同項が,基礎出願において同項所定の手続を履践している国内優先権主 張出願について,その対象となる「特許出願」から除外しているとは解釈できない ことは,前記1〜4のとおりであって,平成16年改正前特許法41条2項が平成 23年改正前特許法30条4項を対象としていない趣旨により左右されるものでは ない。
15 原告は,被告が国内優先権主張出願において,新たな事項を追加すること が想定されること,出願後に通常出願に戻り得ることが,なぜ平成11年法律第4 1号により導入された分割出願に係る手続の簡素化を,国内優先権主張出願にも導 入することを困難にするのかについての理由は,不明であるなどと主張する。 しかし,平成23年改正前特許法30条4項が,基礎出願において同項所定の手 続を履践している国内優先権主張出願について,その対象となる「特許出願」から 除外しているとは解釈できないことは,前記1〜4のとおりであって,平成11年 法律第41号により導入された分割出願に係る手続の簡素化の趣旨が国内優先権主 張出願に妥当するかどうかによって上記解釈が左右されるものではない。
16 原告は,第三者は,基礎出願において新規性喪失の例外規定が適用された 発明について,国内優先権主張出願において敢えてその適用を受けないことなど予\n測する必要はないから,その適用の有無は基礎出願において表示されていれば十\分 であり,国内優先権主張出願においてその表示がないことによる不測の不利益は生\nじないなどと主張する。 しかし,平成23年改正前特許法30条4項が,基礎出願において同項所定の手 続を履践している国内優先権主張出願について,その対象となる「特許出願」から 除外しているとは解釈できないことは,前記1〜4のとおりであって,仮に第三者 に不測の不利益を与えることがないとしても,それによって上記解釈が左右される ものではない。

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平成28(行ケ)10078  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年11月30日  知的財産高等裁判所

 補正が新規事項とした審決を、知財高裁は取り消しました。
(1) 新規事項追加禁止要件違反について
ア 前記1(1)のとおり,本件補正前の請求項6の命令スレッドのタイプは, いずれも,単に「タイプ」と記載されており,「(S,C)」の記号を伴わないもので あったところ,前記第2の1のとおり,原告は,平成26年8月26日付けで,甲 1発明等を引用例とする進歩性の欠如を理由とする拒絶査定を受けた(甲7,10) 後,本件補正をした。
イ 本件補正後の請求項6の,「(S,C)」は,それ自体のみからその技術的 な意義を読み取れず,また,本件補正後の請求項6の記載中に,その技術的な意義 を明確にする定義等の記載は見当たらない。 本件補正後の請求項6の従属項である同請求項7〜10にも,本件補正後の請求 項6の「(S,C)」の技術的な意義を明確にする記載はない。
ウ(ア) 当初明細書等には,命令スレッドのタイプについては,二つ以上ある こと(【0013】,【0014】,【0017】,【0020】),【0039】,【0042】,【0046】),三つ以上ある場合もあること(【0062】)が記載されており,命令スレッドのタイプが第1のタイプと第2のタイプである場合において,命令スレットの第1のタイプが計算タイプであり,第2のタイプがサービスタイプである 場合があることが記載されている(【0039】,【0042】,【0043】,【0044】,【0046】,【0047】,【0050】)。 また,当初明細書等には,命令スレッドのタイプは,1)アプリケーションプログ ラミングインターフェースの関数でタイプを識別するパラメータ(計算タイプ:H TCALCUL,サービスタイプ:HT_SERVICE)に基づく場合(【002 1】,【0042】,【0050】),2)プログラムの実行コマンドでタイプを識別するパラメータ(CALCUL,SERVICE)に基づく場合(【0022】,【004 3】,【0050】),3)命令スレッドの起動元のアプリケーションを自動的に認識す ることによって決定される場合(【0045】)があることが記載されている。 さらに,命令スレッドと仮想プロセッサの関係については,仮想プロセッサのタ イプは,パラメータC及びパラメータSによって識別され,パラメータCは計算タ イプに,パラメータSはサービスタイプに関連付けられ,仮想プロセッサ24C及 び26Cは計算タイプであり,仮想プロセッサ24S及び26Sはサービスタイプ である場合(【0046】〜【0048】)があることが記載されている。
 (イ) 以上によると,当初明細書等においては,「S」及び「C」は,仮想プ ロセッサのタイプとして記載されていること,命令スレッドのタイプとしては,「計 算タイプ」及び「サービスタイプ」という文言が用いられていることが認められる。 しかし,前記(ア)のとおり,仮想プロセッサのタイプは,パラメータC及びパラメ ータSによって識別され,パラメータCは計算タイプに,パラメータSはサービス タイプに関連付けられ,仮想プロセッサの24C及び26Cは「計算タイプ」,同2 4S及び26Sは「サービスタイプ」とされている。また,命令スレッドのタイプ がアプリケーションプログラミングインターフェースの関数でタイプを識別するパ ラメータ(計算タイプ:HTCALCUL,サービスタイプ:HT_SERVIC E)や,プログラムの実行コマンドでタイプを識別するパラメータ(CALCUL, SERVICE)に基づく場合があることが記載されているところ,C が計算(c alculation),Sがサービス(service)の頭文字に由来すること も明らかである。
エ そうすると,当初明細書等の記載を考慮して,特許請求の範囲に記載さ れた用語の意義を解釈すると,本件補正後の請求項6〜8で命令スレッドのタイプ とされている記載「タイプ(S,C)」は,「サービスタイプ」,「計算タイプ」の意 味であると解することができる。
オ 以上によると,本件補正は,本件補正前の請求項6において,命令スレ ッドの「タイプ」は,どのような種類のタイプが存在するのかについて,記載がな かったのを,「タイプ(S,C)」とし,当初明細書等に記載されていた「タイプ(サ ービスタイプ,計算タイプ)」としたものであり,当初明細書等に記載された事項の 範囲内を超えるものではない。

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平成29(ネ)10066  特許権侵害行為の差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年12月5日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁も、第1要件を満たさないとして均等侵害が否定されました。原審維持です。
 ア 第1要件について
(ア) 控訴人は,本件発明1の本質的部分は,本件各作用効果を奏する上で重要 な部分であるピンの前方部が後方部から斜め前方向に方向づけられ,第2壁面の前 方部に向かって延在している点にあるところ,ピンの前方部7aが第2壁面9の前 方部9aに接触することの有無は,本件各作用効果を奏するための必須の構成では\nないから,ピンの前方部7aが第2壁面9の前方部9aに接触している否かという, 本件発明1と被告製品の相違点は,本件発明1の本質的部分ではなく,被告製品は 均等の第1要件を充足する旨主張する。
(イ) 特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載 のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解\nすべきであり,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明の課題及び 解決手段とその効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従 来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定す\nることによって認定されるべきである。 ・・・のとおり,本件発明1は,従来の固定手段では, ピンが作動可能位置から移動してしまうことで側面開口部を通る出口を見つけられ\nずにスリーブ内部で変形する危険性や,周囲の骨物質に移動するピンの前端部の部 分が有利に曲がった状態へ変形しない危険性があったことを従来技術における課題 とし,これを解決することを目的として,特許請求の範囲請求項1記載の構成,具\n体的には,ピン7の前方部7aが,ピンの後方部7eから第2壁面9に向かって斜 め前方向に延びて湾曲前端部7fに至り,案内面12に近接する第2壁面9の前方 部9aに至るようにすることを定めており,この点は,従来技術には見られない特 有の技術的思想を有する本件発明1の特徴的部分であるといえる。
(エ) 被告製品は,前記2(2)のとおり,構成要件Fの「(前方部(7a)は,)\nピンの後方部(7e)から斜め前方向に方向づけられて前記湾曲前端部(7f)に 至り,前記案内面(12)に近接する前記第2壁面(9)の前方部(9a)まで延 在する」との文言を充足しないから,本件発明1とは,その本質的部分において相 違するものであり,均等の第1要件を充足しない。
(オ) 控訴人の主張について
控訴人は,本件発明1の本質的部分は,本件各作用効果を奏する上で重要な部分 であるピン7の前方部7aが後方部7eから斜め前方向に方向づけられ,第2壁面 9の前方部9aに向かって延在している点にあり,ピン7の前方部7aの第2壁面 9の前方部9aへの接触の有無は本件各作用効果を奏するための必須の構成ではな\nく,上記相違点は本件発明1の本質的部分ではないと主張する。 しかし,本件発明1において,本件各作用効果を奏するのは,ピン7の前方部7 aが,ピンの後方部7eから第2壁面9に向かって斜め前方向に延びて湾曲前端部 7fに至り,案内面12に近接する第2壁面9の前方部9aに至ることで,ピン7 の前方部7aと第2壁面9との間の遊びがなくなり,ピン7の第2壁面に向かう方 向の移動が抑制されることによるものであり,ピン7の前方部7aが前方部9aの 付近に位置しているだけでは,本件各作用効果を奏するものとは認められないこと については,前記2(1)イ(イ)のとおりである。よって,ピン7の前方部7aが第2 壁面9の前方部9aに接触していることは,本件発明1の本質的部分であると解さ れる。したがって,控訴人の上記主張は採用できない。

◆判決本文

◆原審はこちら。H27(ワ)11434号

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平成28(ワ)7649  特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成29年11月21日  大阪地方裁判所

 発明特定事項「裾絞り部」について、明細書の記載および出願経過から、限定解釈されました。
 「裾絞り部」の形状については,構成要件Gで特定されているとおり「底部に近\nづくに連れて先細りとなる」ものであり,本件明細書において,「裾絞り部」につ き,「垂直に延在するのではなく,裾絞り状に傾斜している」(【0015】)と 説明されている上,構成要件G及びHを含まない出願当初の特許請求の範囲の請求\n項 1 を削除した上記(2)認定の本件特許の出願経過に照らしても,裾絞り部は,それ が直線であっても,曲線であっても,少なくとも,垂直の部分を含むことなく,蛇 腹部から底部にかけて,徐々に先細りになっていくものに限定されていると解され る。
(5) まとめ
したがって,構成要件Gにいう「裾絞り部」とは,胴部において「蛇腹部」と「底\n部」の間にあって,それぞれに接続部で連続して存在するものであり,また「蛇腹 部」との接続部において「垂直に延在」する部分があっても許容されるが,それは 極く限られた幅のものにすぎないのであり,またその形状は,「蛇腹部」方向から 「底部」方向に向けて,徐々に先細りになっているものということになる。
(6) 以上の「裾絞り部」の解釈を踏まえ,被告容器が裾絞り部を備え,構成要件\nGを充足しているかを検討する。
ア 原告は,別紙「被告容器の構成(原告の主張)」記載の図面で「湾曲部」と\n指示した部分が「裾絞り部」に相当し,同部分の存在により構成要件Gを充足する\nと主張し,併せて,その上部にある垂直部分は,本件明細書の【0015】にいう 「接続部」にすぎないとしている。 しかしながら,上記検討したとおり,「裾絞り部」は,「蛇腹部」から接続部で 連続しているものであるが,この接続部は,極く限られた幅の範囲であるべきであ って,上記図面に明らかなように,被告容器における原告主張に係る「裾絞り部」 に相当する湾曲部と蛇腹部の間に存する,湾曲部と高さ方向の幅がほぼ一緒である 垂直に延在する部分をもって「接続部」にすぎないということはできない。 したがって,被告容器は,上記定義した「裾絞り部」で構成されるべき「蛇腹部」\nから「底部」にかけて胴部の大半が,「裾絞り部」に該当しない部分で構成されて\nいるということになるから,被告容器は,「裾絞り部」を備えているものというこ とはできない。

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平成28(行ケ)10222  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年11月29日  知的財産高等裁判所(3部)

 サポート要件違反とした無効審決が取り消されました。
 前記(2(1)〜(3))のとおり,本件各発明は,焼鈍分離剤用の酸化マグネ シウム及び方向性電磁鋼板に関するものであるところ,方向性電磁鋼板の磁 気特性及び絶縁特性,並びに市場価値は,脱炭焼鈍により鋼板表面に SiO2被 膜を形成し,その表面に焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを含むスラリーを塗\n布して乾燥させ,コイル状に巻き取った後に仕上げ焼鈍することにより, SiO2 と MgO が反応して形成されるフォルステライト(MgSiO4)被膜の性能,\n具体的には,その生成しやすさ(フォルステライト被膜生成率),被膜の外 観及びその密着性並びに未反応酸化マグネシウムの酸除去性の4点に左右さ れるものであり,このフォルステライト被膜の性能は,これを形成する焼鈍\n分離剤用酸化マグネシウムの性能に依存するものということができる。\nそこで,焼鈍分離剤用酸化マグネシウム及びこれに含有される微量成分 についての研究が行われ,複数の物性値を制御し,フォルステライト被膜の 形成促進効果を一定化させ,かつフォルステライト被膜の品質を改善する試 みが多く行われてきたが,焼鈍分離剤用酸化マグネシウムに課せられた要求 を完全に満たす結果は得られていない。 このような状況の下,本件各発明は,磁気特性及び絶縁特性,更にフォ ルステライト被膜生成率,被膜の外観及びその密着性並びに未反応酸化マグ ネシウムの酸除去性に優れたフォルステライト被膜を形成でき,かつ性能が\n一定な酸化マグネシウム焼鈍分離剤を提供すること,更に本件各発明の方向 性電磁鋼板用焼鈍分離剤を用いて得られる方向性電磁鋼板を提供することを 目的としたものである。
(3) 検討
ア 本件各発明は,上記のとおり,方向性電磁鋼板に適用される焼鈍分離剤 用酸化マグネシウム粉末粒子を提供するものであるところ,本件課題を 解決するための手段として,焼鈍分離剤用酸化マグネシウム中に含まれ る微量元素の量を,Ca,P 及び B の成分の量で定義し,更に Ca,Si,P 及 び S のモル含有比率により定義して(前記2(4)イ),本件特許の特許請求 の範囲請求項1に記載された本件微量成分含有量及び本件モル比の範囲 内に制御するものである。 そして,焼鈍分離剤用酸化マグネシウムに含有される上記各微量元素 の量を本件微量成分含有量及び本件モル比の範囲内に制御することによ り,本件課題を解決し得ることは,本件明細書記載の実施例(1〜19) 及び比較例(1〜17)の実験データ(前記2(5)〜(11))により裏付けら れているということができる。 そうすると,当業者であれば,本件明細書の発明の詳細な説明の記載 に基づき,焼鈍分離剤用酸化マグネシウムにおいて,本件特許の特許請 求の範囲請求項1に記載のとおり Ca,P,B,Si 及び S の含有量等を制御 することによって本件課題を解決できると認識し得るものということが できる。
・・・
これらの記載によれば,焼 鈍分離剤用酸化マグネシウムの CAA とサブスケールの活性度とのバラ ンスが取れていない場合,フォルステライト被膜は良好に形成されない こととなるのは事実であるといえる。
(イ) しかし,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から把握し得る発明 は,焼鈍分離剤用酸化マグネシウムに含有される Ca,Si,B,P,S の含 有量に注目し,それらの含有量を増減させて実験(実施例1〜19及 び比較例1〜17)を行うことにより,最適範囲を本件特許の特許請 求の範囲請求項1に規定されるもの(本件微量成分含有量及び本件モ ル比)に定めたというものである。その理論的根拠は,Ca,Si,B,P 及び S の含有量を所定の数値範囲内とすることにより,ホウ素が MgO に侵入可能な条件を整えたことにあると理解される(本件明細書の\n【0016】。前記2(4)カ)。
他方,本件明細書の発明の詳細な説明の記載を見ても,CAA 値を調 整することにより本件課題の解決を図る発明を読み取ることはできない。 むしろ,これらの記載によれば,本件明細書の発明の詳細な説明中に CAA 値に関する記載があるのは,第1の系統及び第2の系統それぞれ において,実施例及び比較例に係る実験条件が CAA 値の点で同一であ ることを示すためであって,フォルステライト被膜を良好にするために CAA 値をコントロールしたものではないことが理解される。 そして,CAA の調整は,最終焼成工程の焼成条件により可能である\n(特開平9−71811号公報(甲7)「この発明の MgO では40% クエン酸活性度を30〜90秒の範囲とする。…かかる水和量,活性度 のコントロールは最終焼成の焼成時間を調整することにより行う。」 (【0026】)との記載参照。)から,焼鈍分離剤用酸化マグネシウ ムにおいて,本件微量成分含有量及び本件モル比のとおりに Ca,P,B, Si 及び S の含有量等を制御し,かつ,焼成条件を調整することによって, 本件各発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムにおいても,実施例におけ る110〜140秒以外の CAA 値を取り得ることは,技術常識から明 らかといってよい。 したがって,本件審決は,本件各発明の課題が解決されているのは CAA40%が前記数値の範囲内にされた場合でしかないと判断した点に おいて,その前提に誤りがある。
(ウ) そもそも,本件明細書によれば,本件特許の出願当時,焼鈍分離剤 用酸化マグネシウムについては,被膜不良の発生を完全には防止でき ていないことなど,十分な性能\を有するものはいまだ見出されておら ず,焼鈍分離剤用酸化マグネシウム及び含有される微量成分について 研究が行われ,制御が検討されている微量成分として CaO,B,SO3,F, Cl等が挙げられ,また,微量成分の含有量だけでなく,微量成分元素を 含む化合物の構造を検討する試みも行われていたことがうかがわれる\n(前記2(2))。
・・・・
そうすると,本件特許の出願当時,フォルステライト被膜の性能改善\nという課題の解決を図るに当たり,焼鈍分離剤用酸化マグネシウムに含 有される微量元素の含有量に着目することと,CAA 値に着目すること とが考えられるところ,当業者にとって,いずれか一方を選択すること も,両者を重畳的に選択することも可能であったと見るのが相当である\n(なお,微量元素の含有量に着目する発明にあっても,焼鈍分離剤用酸 化マグネシウムの CAA 値とサブスケールの活性度とのバランスが取れ ていない場合には,その実施に支障が生じる可能性があることは前示の\nとおりであるが,この点の調整は,甲1,5〜7,67,乙4等によっ て認められる技術常識に基づいて,当業者が十分に行うことができるも\nのと認められる。)。
(エ) 以上を総合的に考慮すると,当業者であれば,本件明細書の発明の 詳細な説明には,本件微量成分含有量及び本件モル比を有する焼鈍分 離剤用酸化マグネシウムにより本件課題を解決し得る旨が開示されて いるものと理解し得ると見るのが相当である。
ウ 以上によれば,CAA 値について何ら特定がない酸化マグネシウムにお いて,本件微量成分含有量及び本件モル比のみの特定をもってしては, 直ちに本件課題を解決し得るとは認められないとした本件審決には誤り があるというべきである。

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平成28(行ケ)10225  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年11月29日  知的財産高等裁判所

 特許異議が申し立てられ、取消決定の審決がなされましたが、知財高裁はこれを取り消しました。理由は公知文献に記載されているとは認められないというものです。異議が認められる率が低く(15%程度)、かつ、それが取り消されるというレアなケースです。
 前記(2)イのとおり,乙1,乙2及び甲1の各記載から,ジヨード化合物 と固体硫黄と,更に「重合停止剤」とを含む混合物を溶融重合させること によって製造されるPAS樹脂について,ヨウ素含有量が1,200pp m以下のものが得られること,上記のいずれの例においても重合禁止剤(重 合停止剤)が添加されていることが理解でき,このような,ヨウ素含有量 が少ないPAS樹脂を製造することができること自体は,優先日において 周知の技術的事項であったといえる。 しかしながら,上記各文献からは,このような,1,200ppm以下 の低ヨウ素量のPAS樹脂を製造するために必要な条件,すなわち,重合 時の温度や圧力,重合時間等は必ずしも明らかでない。また,前記(2)ウの 技術常識からは,重合禁止剤の種類や添加の割合のみならず,添加の時期 (タイミング)によっても,得られる樹脂の重合度や不純物としてのヨウ 素含有量が異なることが予測されるところ,それらとの関係についても一\n切明らかにされていない。してみると,これらの各文献に記載された事項 から,直ちに先願明細書(甲5)にヨウ素含有量が1,200ppm以下 であるPAS樹脂組成物が記載されているとの結論を導くことはできない というべきである。 この点,被告は,1)先願明細書発明Bも本件発明4と同様の目的・問題 意識の下で,ジヨード芳香族化合物と硫黄元素とを含む反応物を溶融重合 する方法を改良するものであり,重合禁止剤を添加してポリマー鎖末端の ヨウ素量を減じることで低ヨウ素含有量を達成していること,2)重合禁止 剤の添加時期はヨウ素含有量と無関係であること(本件発明4において特 定されているヨウ素含有量の範囲が,重合開始直後から重合禁止剤を添加 する製造方法により得られるとの原告主張は誤りであること),3)先願明 細書発明Bでは,重合禁止剤(実施例においては,4−ヨード安息香酸, 2,2’−ジチオビス安息香酸など)に加えて,(重合鎖の成長を止める という点において重合禁止剤と同じ機能を有する)重合中止剤(ベンゾチ\nアゾール類など。実施例においては,2,2’−ジチオビスベンゾトリア ゾール。ただし,被告は,「2,2’−ジチオビスベンゾチアゾール」の 誤記であると主張する。)を併用したことによってヨウ素量がより減少し ていると考えられること等を挙げて,先願明細書発明Bに係るPAS樹脂 のヨウ素含有量は,本件発明4と同程度に少ないものであると主張する。 しかしながら,上記1)については,例えば,上記各文献(乙1,乙2及 び甲1)から,ジヨード芳香族化合物と硫黄元素を含む反応物を溶融重合 するPAS樹脂の製造方法において,重合禁止剤を添加することのみによ って必ず相違点1に係る低ヨウ素含有量を実現できることが導き出せると はいえず,ほかにこれを認めるに足る証拠もない。したがって,先願明細 書発明Bと本件発明4は,必ずしも,同じ方法で,同じ程度に低ヨウ素含 有量を実現しているとはいえず,その前提自体に誤りがある。 上記2)についても,被告自身,「本件明細書の記載からは,本件発明4 のヨウ素含有量が得られるのは,重合禁止剤の添加時期によらないと理解 される」と述べているように,飽くまで,本件明細書の記載からは関係が 読み取れないというだけで,およそ重合禁止剤の添加時期がヨウ素含有量 に影響を与えないことについての主張立証まではなされていない。むしろ, 前記のとおり,技術常識を踏まえると,重合禁止剤の種類や添加の割合の みならず,添加の時期(タイミング)によっても,得られる樹脂の重合度 や不純物としてのヨウ素含有量が異なることが予測されるのであって,こ\nれによれば,重合禁止剤の添加時期と本件発明4のヨウ素含有量が無関係 であるとは,直ちに断定できない(本件発明の製造方法で起こる化合物等 の反応工程として原告が説明する工程が本件明細書に記載されている反応 工程とは異なるとの被告の主張も,この点を左右するものではない。)。 上記3)についても,被告の主張は,本件明細書の実施例1ないし4で重 合禁止剤(4,4’−ジチオビス安息香酸)の使用量(添加量)が増えれ ばPAS樹脂中の残留ヨウ素量が減るとの関係があることを前提とするも のであると解されるが,先願明細書発明Bと本件明細書の実施例とでは, (重合禁止剤に関する誤記の点は措くとしても)少なくとも重合禁止剤の 添加時期が異なることから,先願明細書発明Bにおいても重合禁止剤の添 加量とヨウ素含有量との間に(本件発明4におけるそれと)同様の関係が 導き出せるとは限らない。 結局のところ,先願明細書発明Bに記載されたPAS樹脂のヨウ素含有 量を具体的に推測できるだけの根拠は,先願明細書の記載や本件特許の出 願時における技術常識を参酌しても導き出すことができず,ほかに先願明 細書発明Bに係るPAS樹脂のヨウ素含有量が本件発明4と同程度に少な いことを認めるに足りる証拠はない。 イ 実験報告書(甲9実験)について 決定は,甲9の実験報告書によれば,甲5の実施例5と同様に製造した PAS樹脂のヨウ素含有量が850ppmであると認められることから, 本件発明4で特定するPAS樹脂組成物のヨウ素含有量は,先願明細書発 明BにおけるPAS樹脂のヨウ素原子含有量と重複一致する蓋然性が高い と判断している。 しかしながら,まず,異議申立人による上記実験報告書では,重合反応\nが80%程度進んだ段階で,「重合禁止剤2,2’−ジチオビスベンゾト リアゾル」を25g添加したとされているが,異議申立人自身が,先願の\n国内移行出願において,かかる物質名で定義される化合物は存在せず,誤 記である旨を主張(自認)して,当初明細書である甲5の記載を正しい記 載に訂正する手続補正を行っており(甲30),それにもかかわらず,な ぜ追試である上記実験報告書にあえて存在しない化合物名がそのまま記載 されているのか,疑問がないとはいえない(この点は,上記実験報告書を 作成するに当たり,当初明細書の誤記をそのまま引き写してしまっただけ の単純ミスである可能性も否定できないが,重合禁止剤として実在しない\n化合物名が記載されているということは,その内容の杜撰さを示す一例と みざるを得ないのであって,実験報告書全体の信用性を疑わせる一つの事 情となることは否定できない。)。 また,この点は措くとしても,上記実験報告書の「1.実験方法」の欄 には,「「5)Chip cutting:反応完了した樹脂をN2加圧して,小型スト ランドカッターを使用したpellet形態に製造。」との記載があり,かかる 記載が,甲5の実施例5における,「反応が完了した樹脂を,小型ストラ ンドカッター機を用いてペレット形態で製造した。」との記載に対応する ものであって,同実施例と同様に,反応が完了した樹脂を小型ストランド カッターによってペレット形態とすることを示すものであることは理解で きるが,「N2加圧」処理を行うことの技術的な意味は明らかではないし (すなわち,いかなる状態の樹脂に対して,何のために行うのか,例えば, 溶融状態の樹脂に対して加圧処理を行うのか,ストランド〔細い棒状〕に 形成するための押し出しをN2による加圧で行うのか,形成されたストラ ンドに対して行うのかなどの点が不明である。),少なくともカッティン グの前に樹脂を「N2加圧」することが当該技術分野における技術常識で あるとはいえない。また,高温の樹脂に対しN2加圧を行うことによって, 樹脂中のヨウ素が抜ける可能性がないとはいえず(少なくともその可能\性 が全くないことを示す証拠はない。),かかる「N2加圧」がヨウ素含有 量に対してどのような影響を及ぼすのかも不明である。 この点,被告は,上記ストランド押し出しを窒素加圧下で行うことが記 載されている乙9ないし12を引用して,N2加圧が周知の技術的事項で ある旨反論するが,仮にストランドを形成するための押し出しをN2加圧 によって行うことが周知の手段であっても,上記実験報告書における「N 2加圧」がこれらの乙号証に記載された工程と同じものを意味するものと は限らないし,結局,かかる「N2加圧」がヨウ素含有量に対してどのよ うな影響を及ぼすのかが不明であることに変わりはない。 以上によれば,実験報告書(甲9)は,必ずしも甲5の実施例5を忠実 に追試したものであるとはいえず,かかる実験報告書(甲9実験)に基づ いて,甲5の実施例5と同様に製造したPAS樹脂のヨウ素含有量が85 0ppmであるとか,本件発明4で特定するPAS樹脂組成物のヨウ素含 有量は,先願明細書発明BにおけるPAS樹脂のヨウ素原子含有量と重複 一致する蓋然性が高いなどと認めることはできないというべきである。

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平成29(行ケ)10003  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年11月21日  知的財産高等裁判所

 審決は顕著な効果があると判断しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。なお、先の取消訴訟の拘束力に反するような主張を許すことは訴訟経済で、最後に、不言がなされています。
 本件審決は,確定した前訴判決の拘束力(行政事件訴訟法33条1項)により, 相違点1及び相違点2については,いずれも引用例1及び引用例2に接した当業者 が容易に想到することができたものであるとされ,相違点3については,単なる設 計事項にすぎないとしつつ,化合物Aは「ヒト結膜肥満細胞」に対して優れた安定 化効果(高いヒスタミン放出阻害率)を有すること,また,AL−4943A(化 合物Aのシス異性体)は最大値のヒスタミン放出阻害率を奏する濃度の範囲が非常 に広いことは,いずれも引用例1,引用例3及び本件特許の優先日当時の技術常識 から当業者が予測し得ない格別顕著な効果であり,進歩性を判断するにあたり,引\n用発明1と比較した有利な効果として参酌すべきものであるとして,本件各発明は 当業者が容易に発明できたものとはいえないと判断したものである。
・・・
以上のとおり,本件特許の優先日において,化合物A以外に,ヒト結膜肥満細胞 からのヒスタミン放出に対する高い抑制効果を示す化合物が存在することが知られ ていたことなどの諸事情を考慮すると,本件明細書に記載された,本件発明1に係 る化合物Aを含むヒト結膜肥満細胞安定化剤のヒスタミン遊離抑制効果が,当業者 にとって当時の技術水準を参酌した上で予測することができる範囲を超えた顕著な\nものであるということはできない。なお,本件発明1の顕著な効果の有無を判断す る際に,甲39の内容を参酌することができないことについては,前記イのとおり であるが,仮にその内容を参酌したとしても,上記のとおり,本件特許の優先日に おいて,化合物A以外に,高いヒスタミン放出阻害率を示す化合物が複数存在し, その中には2.5倍から10倍程度の濃度範囲にわたって高いヒスタミン放出阻害 効果を維持する化合物も存在したことを考慮すると,甲39に記載された,本件発 明1に係る化合物Aを含むヒト結膜肥満細胞安定化剤のヒスタミン遊離抑制効果が, 当業者にとって当時の技術水準を参酌した上で予測することができる範囲を超えた\n顕著なものであるということもできない。 したがって,本件発明1の効果は,当業者において,引用発明1及び引用発明2 から容易に想到する本件発明1の構成を前提として,予\測し難い顕著なものである ということはできず,本件審決における本件発明1の効果に係る判断には誤りがあ る。
・・・・
なお,本件審判の審理について付言する。 特許無効審判事件についての審決の取消訴訟において審決取消しの判決が確定し たときは,審判官は特許法181条2項の規定に従い当該審判事件について更に審 理,審決をするが,再度の審理,審決には,行政事件訴訟法33条1項の規定によ り,取消判決の拘束力が及ぶ。そして,この拘束力は,判決主文が導き出されるの に必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから,審判官は取消判決の認定 判断に抵触する認定判断をすることは許されない。したがって,再度の審判手続に おいて,審判官は,取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断につきこれを誤 りであるとして従前と同様の主張を繰り返すこと,あるいは上記主張を裏付けるた めの新たな立証をすることを許すべきではない。また,特定の引用例から当該発明 を特許出願前に当業者が容易に発明することができたとの理由により,容易に発明 することができたとはいえないとする審決の認定判断を誤りであるとしてこれが取 り消されて確定した場合には,再度の審判手続に当該判決の拘束力が及ぶ結果,審 判官は同一の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明することがで きたとはいえないと認定判断することは許されない(最高裁昭和63年(行ツ)第 10号平成4年4月28日第三小法廷判決・民集46巻4号245頁参照)。 前訴判決は,「取消事由3(甲1を主引例とする進歩性の判断の誤り)」と題す る項目において,引用例1及び引用例2に接した当業者は,KW−4679につい てヒト結膜の肥満細胞からのヒスタミンの遊離抑制作用(ヒト結膜肥満細胞安定化 作用)を有することを確認し,ヒト結膜肥満安定化剤の用途に適用することを容易 に想到することができたものと認められるとして,引用例1を主引用例とする進歩 性欠如の無効理由は理由がないとした第2次審決を取り消したものである。特に, 第2次審決及び前訴判決が審理の対象とした第2次訂正後の発明1は,本件審決が 審理の対象とした本件発明1と同一であり,引用例も同一であるにもかかわらず, 本件審決は,本件発明1は引用例1及び引用例2に基づき当業者が容易に発明でき たものとはいえないとして,本件各発明の進歩性を認めたものである。 発明の容易想到性については,主引用発明に副引用発明を適用する動機付けや阻 害要因の有無のほか,当該発明における予測し難い顕著な効果の有無等も考慮して\n判断されるべきものであり,当事者は,第2次審判及びその審決取消訴訟において, 特定の引用例に基づく容易想到性を肯定する事実の主張立証も,これを否定する事 実の主張立証も,行うことができたものである。これを主張立証することなく前訴 判決を確定させた後,再び開始された本件審判手続に至って,当事者に,前訴と同 一の引用例である引用例1及び引用例2から,前訴と同一で訂正されていない本件 発明1を,当業者が容易に発明することができなかったとの主張立証を許すことは, 特許庁と裁判所の間で事件が際限なく往復することになりかねず,訴訟経済に反す るもので,行政事件訴訟法33条1項の規定の趣旨に照らし,問題があったといわ ざるを得ない。

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平成28(ワ)10147  職務発明対価等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年11月15日  東京地方裁判所

 職務発明に基づく報奨金の請求が棄却されました。
(イ) 原告は,平成27年3月31日,被告を定年退職した。Bは,同日,原告に 対し,職務発明に関する規程は半年をめどに作成すること,本件特許権についても それまでは現状のままとさせて欲しいとの内容を含む電子メールを送信した(甲3)。
(ウ) 原告は,平成27年9月18日,Bに対し,経過を報告するよう促したとこ ろ,Bは,同月28日,原告に対し,「特許に関する規定の件ですが,職務発明等 褒賞金規定と知的財産取扱い規定の制定を行いました。…両規定とも27年9月以 降の適用となっておりますが,当社の過去の特許においても該当する案件には今回 の規定を適用することといたしました。/よって,Aさんに対しましても,出願報 奨金10,000円と登録報奨金50,000円が該当いたします。手続きを進め たいと存じますので,振込口座をお教えください。」との記載のある本件メールを 送信した。
これに対し,原告は,ひとまず本件各規程を送付するよう求めたが,Bは,同年 10月13日,原告に対し,「今回制定した社内規定については退職者に対しては 開示できませんのでご了承ください。弊社としては,今回特別にお支払する6万円 でAさんの特許に対する対応は完了とさせていただきます。」との電子メールを送 信した。 原告は,本件各発明に係る対価の支払を被告が拒絶したと解釈し,同日,Bに対 し,法的根拠に基づく手続を始める旨の電子メールを送信した。 (以上につき,甲3,5,6,原告本人,証人B)
(エ) 原告は,平成27年10月30日,被告を相手方とし,本件各発明に係る特 許権を移転した対価5115万1430円の支払を求める民事調停を申し立てたが,\n同調停は平成28年3月17日,不成立により終了した。原告は,同月30日,本 件訴えを提起した。
イ 上記認定事実に関し,事実認定の理由を次に補足説明する。
被告は,Bが,平成27年2月2日に原告と面談した際,本件回答書を原告に交 付し,本件対価請求権については時効が完成している旨説明したと主張し,Bも証 人尋問において同旨の証言をする。 被告は,平成26年12月12日に,原告から本件各発明についての対価の請求 を受け,弁護士に依頼して対応を検討しているところ,弁護士から被告の従業員に 宛てた電子メールが証拠として提出されており(乙4),その記載内容と本件回答 書(乙2)の記載内容が概ね符合していることからすれば,弁護士において本件回 答書を作成して被告に交付したことは認められる。他方,原告は,平成27年2月 2日に本件回答書をBから受け取った事実及び時効の完成について説明を受けたと の事実を否認し,本人尋問においてもその旨供述するところ,原告が本件回答書を 受領したことを示す客観的な証拠はなく,また,Bの証言によっても,Bが原告に 説明した内容については判然としないところがあるから,同日の面談において,B が本件回答書を原告に交付し,また時効の完成について明確に説明したとの事実を 認定するには至らない。もっとも,本件回答書は,原告からの対価の請求への対応 として,弁護士が被告の立場に沿って作成したものであることからすれば,少なく とも,Bは,同日,原告に対し,本件回答書に基づき,被告としては対価の支払に は応じられない旨を説明したとの事実は認めることができる。
(3)上記認定事実に基づき検討する。
本件対価請求権は,原告が本件各発明についての特許を受ける権利を被告に承継 させたことに伴い,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条3項に基 づき発生する相当の対価の支払請求権である。原告が被告に上記特許を受ける権利 を承継させた平成14年当時,被告には,特許を受ける権利の承継に関する「勤務 規則その他の定」は存在しなかったのであるから,上記承継は,原被告間の契約に 基づくものであって,本件対価請求権も,平成27年に被告が策定した本件各規程 に基づき発生したものではない。したがって,Bが,同年9月28日,原告に対し, 本件各規程に基づき6万円を原告に支払う用意がある旨が記載された本件メールを 送付したことのみをもって,被告が本件対価請求権の支払債務を承認したものと評 価することは困難である。 また,前記認定事実((2)ア(ウ))によれば,被告は,原告から本件各発明の対価の 請求を受けた平成26年12月12日以降,被告には対価の支払義務がないとの立 場を示していたのであって,Bが本件メールを送付して原告に6万円の支払をする 用意があると伝えたのは,その後の電子メールに「今回特別にお支払する6万円で Aさんの特許に対する対応は完了とさせて頂きます。」との記載にあるように,本 件各発明に関する原被告間の紛争を全て収束させるための解決金との趣旨で提案さ れたものとみるのが相当である。 この点について,原告は,本件メールに「両規定とも27年9月以降の適用とな っておりますが,当社の過去の特許においても該当する案件には今回の規定を適用 することといたしました。」(判決注:下線を付した。)と記載されていることを 捉えて,被告が支払を提案した6万円は本件対価請求権の一部であることが明白で あるから,被告は本件対価請求権の支払債務を承認したと主張する。しかし,本件 各規程に基づく褒賞金と本件対価請求権とはその発生原因が異なるのであるから, 本件各規程に基づく褒賞金の支払を提案したからといって,当然には本件対価請求 権の支払債務を承認したものとみることはできない。また,前記認定事実((2)ア(ウ), (エ))によれば,原告は,Bから本件各規程に基づく6万円の支払を提案された際も, ひとまず本件各規程を送付するよう求め,Bからこれを拒絶されると直ちに法的手 段を執る旨の電子メールを送信し,現実に法的手続に移行しているのであるから, 原告と被告との間で,本件各規程に基づく6万円の支払をもって,本件対価請求権 に充当する旨の合意等が成立していたとみる余地もないというべきである(なお, 原告本人も,本件メールにより提案された6万円について,対価ではないと理解し た旨供述しているところである。)。
(4)以上のとおり,Bが原告に対して本件メールを送付したことをもって,被告 が本件対価請求権の支払債務を承認したと評価することはできないから,被告が本 件対価請求権に係る消滅時効の時効援用権を放棄したとか,消滅時効の援用が信義 則に反して許されないということはできない。
3 結論
以上によれば,本件対価請求権の消滅時効は,その権利を行使することができる 時である平成14年9月3日から進行するところ,平成16年法律第79号による 改正前の特許法35条3項の規定による相当の対価の支払を求める請求権は,従業 者等と使用者等との衡平を図るために法が特に設けた債権であるから,その消滅時 効期間は10年と解すべきところ(民法167条1項),原告が被告を相手方とし て民事調停を申し立てた平成27年10月30日には,本件対価請求権について1\n0年の消滅時効期間が経過していたことが明らかである。したがって,被告が平成 28年5月18日にした時効援用の意思表示により,本件対価請求権は消滅したと\nいうべきである。

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平成28(ワ)8468  特許権移転登録手続等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年11月9日  大阪地方裁判所

 特許権の移転請求が認められませんでした。理由は、「原告発明と本件発明とは,解決しようとしている抽象的な課題は共通していても,その課題の生ずる具体的な原因の捉え方が異なっており,そのために,具体的な課題の捉え方や,課題解決の方向性や主たる手段も異なる」というものです。
 (1) 特許法74条1項の特許権の移転請求制度は,真の発明者又は共同発明者 がした発明について,他人が冒認又は共同出願違反により特許出願して特許権を取得した場合に,当該特許権又はその持分権を真の発明者又は共同発明者に取り戻さ せる趣旨によるものである。したがって,同項に基づく移転登録請求をする者は, 相手方の特許権に係る特許発明について,自己が真の発明者又は共同発明者である ことを主張立証する責任がある。ところで,異なる者が独立に同一内容の発明をし た場合には,それぞれの者が,それぞれがした発明について特許を受ける権利を個 別に有することになる。このことを考慮すると,相手方の特許権に係る特許発明に ついて,自己が真の発明者又は共同発明者であることを主張立証するためには,単 に自己が当該特許発明と同一内容の発明をしたことを主張立証するだけでは足りず, 当該特許発明は自己が単独又は共同で発明したもので,相手方が発明したものでな いことを主張立証する必要があり,これを裏返せば,相手方の当該特許発明に係る 特許出願は自己のした発明に基づいてされたものであることを主張立証する必要が あると解するのが相当である。そして,このように解することは,特許法74条1 項が,当該特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者であることと並ん で,特許が123条1項2号に規定する要件に違反するときのうちその特許が38 条の規定に違反してされたこと(すなわち,特許を受ける権利が共有に係るときの 共同出願違反)又は同項6号に規定する要件に該当するとき(すなわち,その特許 がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたこと) を積極的要件として定める法文の体裁にも沿うものである。
(2) そこで,まず本件特許発明1の内容等について検討する。
・・・・
ウ 以上のことを踏まえると,本件特許発明1は,便座昇降機を不要とする 課題を解決するために,使用時に便座を上昇させるのではなく,予め便座と便器の\n間に嵩上げ部を設けて便座の位置自体を高くしておき,その嵩上げ部にくり抜き部 を形成し,そこから拭き取りアームを挿入して臀部を拭き取るようにすることによ\nって,使用時の便座昇降機による便座の上昇を不要としたものと認められる。そし て,このような課題解決方法に照らせば,本件特許発明1は,便座昇降機が必要と されていた理由を,便座の位置が低く,便座と便器の間に拭き取りアームを挿入す る隙間がない点に求め,便座の位置を高くして,便器との隙間を生み出すことによ って,課題を解決しようとしたものであると認めるのが相当であり,そのために, 次に述べる原告第1出願の明細書の記載に見られるような便座と便器の間の隙間を 小さくしたり,拭き取りアームの厚さを薄くしたりすることについて特段の記載は されていない。 そして,以上の本件特許発明1について,本件優先権出願の明細書及び図面には, 本件基礎出願の明細書図面と同一の内容が記載されていると認められる。 (3) 以上を踏まえ,本件特許発明1の発明者について検討する。原告は,平成 24年9月初旬に完成したという原告第1発明と本件特許発明1は同一の発明であ り,原告第1発明について特許を受けるために原告第1出願を行ったと主張し,こ れに沿う陳述をしていることから,まず,原告第1出願に係る発明について検討す る。
・・・
そして,上記の原告の発明に係る臀部拭き取り装置では,紙を取り付けることが\nできる紙つかみヘッド(3)が本件特許発明1の「拭き取りアーム」に該当し,紙 つかみヘッドを移動させる4軸型可動型装置が本件特許発明1の「拭き取りアーム 駆動部」に該当すると認められる。 他方,本件特許明細書によれば,本件特許発明1の「嵩上げ部」は,便器と便座 との間に設けられ,便座全体を上げて便器との間に間隙を設ける部材を意味すると 解され,補高便座のほか複数の支柱状の器具も想定されているところ,原告第1出 願に係る装置は,「水洗式洗浄型便座と便器の間において使用する」(【0009】) もので,その図2の左側面図及び正面図によれば,便座の下部に薄いガイド板ない し保護ガイド(6)が設けられ,「実際の取り付けは,標準でついている便座の1c mのゴム足を除去して,取り付けるため便座の高さは2cmの高くなるだけ」(【0 010】)であるから,少なくともガイド板ないし保護ガイドの部分においては図示 されない便器と便座の間に3cmの隙間が設けられることになる。しかし,それだ けでは便座全体がどのように上げられるのかが明らかでないから,原告第1出願に 係る明細書や図面において「嵩上げ部」に該当する部材が記載されていると認める ことは困難である。 もっとも,原告第1出願に係る発明においては,便座全体を3cm持ち上げるこ とを想定していると解するのが合理的であるから,原告においては,ガイド板ない し保護ガイド単体又はそれと組み合わせて何らかの形で便座全体を上げることを想 定していた可能性があり,その場合には,その構\造が「嵩上げ部」に該当し,ガイ ド板ないし保護ガイド内の紙つかみヘッドの移動空間が「嵩上げ部に設けられたく り抜き部分」に該当する可能性もあり得るところである。\nそうすると,原告は,原告第1出願がされた平成24年9月25日の時点で,原 告第1出願に係る発明により,本件特許発明1を完成させていた可能性があるとい\nうべきである。
ウ もっとも,原告第1出願に係る発明は,同時に,臀部拭き取り装置にあ\nるトイレットペーパーの紙つかみヘッドを限りなく薄くし,3cm程の隙間でも, 容易に臀部の下に差し入れることができるようにすることにより,トイレ使用者が\n一般のトイレの使用時と変わることのない着座位置となるようにして,便座昇降機 の除去を可能としたものとされている。また,併せて,トイレットペーパーを掴ん\nだ紙つかみヘッドを臀部のふき取り位置あたりで80度ほど回転させることで,臀\ 部にフィットさせるものとされている。 以上のことを踏まえると,原告第1出願に係る発明は,ヘッドを限りなく薄くし て,ヘッドを臀部の下に差し入れるのに要する隙間を少なくするとともに,ヘッド\nを回転させることでヘッドが薄くても臀部にフィットするようにし,使用時の便座\n昇降機による便座の上昇を不要としたものと認められる。そして,このような課題 解決方法に照らせば,原告第1出願に係る発明は,便座昇降機が必要とされていた 理由を,ヘッドの形状やその動作の仕方に求め,それらを工夫することによって, 課題を解決しようとしたものであると認めるのが相当である。そうすると,原告第 1出願に係る発明と本件特許発明1とは,解決しようとしている抽象的な課題は共 通していても,その課題の生ずる具体的な原因の捉え方が異なっており,そのため に,具体的な課題の捉え方や,課題解決の方向性や主たる手段も異なることになっ たと認められる。
(4) そこで次に,原告が原告第1出願に係る発明により本件特許発明1を完成 させていた可能性があることに鑑み,被告が,原告第1出願に係る発明に基づいて,\n本件特許に係る特許出願をしたと認められるかについて検討する。この点について, 被告は,被告代表者が本件特許発明1を完成したと主張し,被告代表\者はこれに沿 う陳述をしている。
ア 前記1での認定事実によれば,被告代表者は,平成24年9月25日午\n前中に,P4と打合せをしている。この打合せの内容を直接に示す証拠はないが, 同日の午後1時に被告代表者がP4に「先ほどは有難うございました。参考までに,\nかさ上げ便座部品の記載されたカタログを送付させて頂きます。」として,補高便座 のカタログを送信していることからすると,被告代表者は,同日午前の打合せにお\nいて,補高便座を用いた発明の説明をしたと推認される。また,翌26日の午後4 時48分にP4が被告代表者にアームがどこから出てくるのか明確にしたいとのメ\nールを送信しており,前日のカタログの送信から本メールまでの間に被告代表者と\nP4が打合せをしたことは何らうかがわれないことからすると,本メールは,前日 25日午前の打合せの際に,被告代表者が補高便座からアームが出る構\造の臀部拭\nき取り装置の発明を説明したのに対して,P4が質問をしたものであると推認され る。そして,本メールの直後の同日午後5時07分に被告代表者がP4に「補高な\nのでその一部を切り取るか,構造によっては中をくりぬいて,最大6センチメート\nルのすき間でアームを出入りさせたらと,考えています。」と返信していることから すると,被告代表者は,同月25日午前にP4に対して補高便座からアームが出る\n構造を説明した時点で,既に補高便座を「かさ上げ便座部品」として利用し,補高\n便座を切り取り,又はくり抜いてアームを出すことで便座昇降機を利用しない臀部\n拭き取り装置の着想を得て,本件特許発明1を完成していたと推認するのが相当で あり,このことは,被告代表者の陳述(乙24)は以上の経緯と整合的である。\nイ この点について,原告は,被告代表者が,同月25日午後6時の原告か\nらのメールを受け取るまでは,本件特許発明1の着想を得ていなかったと主張する。 しかし,前記の被告代表者とP4のやりとりの流れからすると,被告代表\者が当 初にP4に補高便座のカタログを送信したことが,臀部拭き取り装置の開発と関係\nのないものであったとは考え難いから,被告代表者は,同日午前にP4と打合せを\nした時点で,便座をかさ上げしてアームを通すものとして補高便座に着目していた と認めるのが相当であり,そうである以上,前記のとおり,同日午前の時点で被告 代表者は本件特許発明1の着想を得ていたと推認するのが相当である。\n

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平成29(行ケ)10132  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年11月14日  知的財産高等裁判所

 商4条1項11号違反についての拒絶査定不服の審決取消事件です。特許庁審査基準では異なる類似群である理化学装置(10A01)用のソフトと限定して、商品非類似であると争いましたが、特許庁・裁判所とも、類似する商品と判断しました。\n
ウ 前記イの認定事実によると,本願商標の指定商品である「コンピュータソフ\nトウェア」と,引用商標1の指定商品である「半導体チップ,半導体素子」とは, 1)いずれも電子の作用を応用したものであり,コンピュータ等の電子機器を稼働す るために構成上不可欠なものであって,その用途及び機能\において密接な関連を有 するものであること,2)両商品を生産している事業者が相当数存在すること,3)様々 な商品を取り扱っている総合ショッピングサイトや家電量販店だけでなく,半導体 素子等を含む電子部品を専門に扱う相当数の販売店においても,両商品が販売され ていること,4)両商品の需要者は,一般の個人需要者や電子機器等の製造メーカー において共通する場合があることなどの事情に照らすと,両商品の原材料及び品質 が異なること,完成品と部品の関係にないことなどを考慮したとしても,両商品に 同一又は類似の商標が使用されるときは,同一営業主の製造又は販売に係る商品と 誤認混同するおそれがあると認められる関係にあり,商標法4条1項11号にいう 「類似する商品」に当たると解するのが相当である。
エ 原告の主張について
(ア) 原告は,本願商標の指定商品のうち,理化学装置の制御用コンピュータソ\nフトウェア等は,その機能・用途によれば,むしろ第9類の「理化学機械器具」に\n属する商品(専用ソフトウェア)であり,10A01の類似群コードが付される商\n品の範疇であるともいえ,その場合,引用商標1の指定商品である半導体素子等が 含まれる「電子応用機械器具」とは類似群コードが異なり,両商品は,明らかに異 なるものである旨主張する。 しかし,本願商標の指定商品は,理化学装置の制御用コンピュータソフトウェア\n等に限られるものではなく,コンピュータソフトウェア全般を指定商品とするもの\nであり,コンピュータソフトウェアと半導体素子等とが,商標法4条1項11号に\nいう「類似する商品」に当たると解するのが相当であることについては,前記ウの とおりである。
(イ) 原告は,ソフトウェア業界は,巨大企業数社と無数の零細メーカーの二極\n構造であるのに対し,半導体業界は,その製造に大規模かつ最新の設備を必要とす\nる代表的な装置産業であることから,両商品は業界自体が異なるだけでなく,生産\n部門において一致しない旨主張する。 しかし,コンピュータソフトウェアと半導体素子等との両商品を製造する事業者\nが相当数存在することについては,前記イ(イ)のとおりである。また,一般社団法 人電子情報技術産業協会(JEITA)における,コンピュータソフトウェアに関\n連するソフトウェア事業委員会を構\成する8社のうち6社は,半導体事業に関連す る半導体部会の構成企業でもあり,同協会の半導体部会と一般社団法人コンピュー\nタソフトウェア協会の両方の登録会員である企業も存在すること(甲3,7,乙3\n9の1・2)に鑑みても,両商品の生産部門は一致しないものではない。
(ウ) 原告は,コンピュータソフトウェアは,一般消費者向けに取引を展開する\nウェブサイトにおいても,「パソコンソ\フト」のジャンル名で多数取引されている のに対し,半導体素子等は,半導体を専門的に取り扱う商社等を通じて主に販売さ れるものであり,自作パソコンの製作を試みるパソ\コンマニア向けに,一部のパソ\nコンショップやネットショップで半導体素子等が販売されている事実があるとして も,半導体素子等の販売取引市場全体を見れば,ごく僅かな一部の事情を示すにす ぎない旨主張する。 しかし,様々な商品を取り扱っている総合ショッピングサイトや家電量販店だけ でなく,半導体素子等を含む電子部品を専門に扱う相当数の販売店においても,コ ンピュータソフトウェアと半導体素子等の両商品が販売されていることについては,\n前記イ(ウ)のとおりである。また,前記イ(エ)のとおり,一般の個人需要者の中に は,パソコンを自作する者のほか,所有するパソ\コンの性能を向上させること等を\n目的として,半導体素子等に含まれるCPUなどの電子部品及びコンピュータソフ\nトウェア等を購入し使用する者もいるのであって,両商品を購入する者は,自作パ ソコンを製作する一部のパソ\コンマニアに限られるものではない。さらに,一般消 費者向けに取引を展開するウェブサイトである楽天市場の「全てのカテゴリー」に おいて,引用商標1の指定商品に包含される「CPU」,「サーミスタ」,「トラ ンジスタ」及び「ダイオード」を検索すると,それぞれ,17万1333件,1万 1865件,2万1603件及び7万0232件が検出されること(乙41〜44) に鑑みても,両商品の販売部門は一致しないものではない。
(エ) 原告は,コンピュータソフトウェアは,あらゆるビジネス分野の事業者だ\nけでなく,幅広い年齢の個人利用者をその需要者とするのに対し,半導体素子等は, 半導体を組み込んだ各種産業製品を生産する事業者がその主たる需要者であり,ソ\nフトウェア独自のビジネス構造においても顕著な差異を有しており,両商品は需要\n者の範囲において比較し得ない旨主張する。 しかし,両商品の需要者は,一般の個人需要者や電子機器等の製造メーカーにお いて共通する場合があることについては,前記イ(エ)のとおりである。
(オ) 原告は,コンピュータソフトウェアはバージョンアップやアンインストー\nルを容易に行うことができ,半導体素子等にはないソフトウェア特有の特徴を備え\nていることを考慮すると,両商品は用途において顕著に異なる旨主張する。 しかし,両商品は,いずれも電子の作用を応用したものであり,コンピュータ等 の電子機器を稼働するために構成上不可欠なものであって,その用途及び機能\にお いて密接な関連を有するものであることについては,前記イ(ア)のとおりである。 コンピュータソフトウェアのインストール,バーションアップ等は,当該商品の利\n用方法における一つの特徴を述べたものにすぎない。

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平成29(行ケ)10109  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年11月14日  知的財産高等裁判所

 商標登録の無効が争われました。審決は無効理由無し、知財高裁は4条1項15号違反と判断しました。争点は「化粧品」と「男性ファッション誌」との間で、混同を生ずるおそれがあるか否かです。
(ア) 前記(1)ウのとおり,本件雑誌には,少なくとも最近約10年間にわたり, ほぼ毎号,化粧品についての記事が掲載されている。男性ファッション誌の主な対 象は服飾品であるものの,化粧品はファッション全般に関するものとして,男性フ ァッション誌の対象とされているというべきである。 したがって,男性化粧品と男性ファッション誌は,共にファッションに関するも のとして少なからぬ関連性を有するというべきである。
(イ) 男性化粧品と男性ファッション誌の需要者は,いずれも男性向けファッシ ョンに関心のある者と考えられ,共通するというべきである。男性化粧品と男性フ ァッション誌の取引者が異なるからといって,需要者の共通性は何ら否定されない。 したがって,男性化粧品と男性ファッション誌については,需要者が共通する。
(ウ) 本件商標の指定商品は,日常的に消費される性質の商品であり,その需要 者は特別の専門的知識経験を有する者ではないことからすると,これを購入するに 際して払われる注意力は,さほど高いものでないというべきである。
(3) 商標法4条1項15号該当性
以上のとおり,1)本件商標は,引用商標と外観において極めて類似し,観念及び 称呼において共通するのであって,本件商標と引用商標は,極めて類似したもので あること,2)引用商標は,独創性が高いとはいえないものの,数十年にわたり,需\n要者の間に広く認識されていること,3)本件商標の指定商品(男性用化粧品)は, 原告の業務に係る本件雑誌(男性ファッション誌)の対象として,少なからぬ関連 性を有するもので,本件雑誌と需要者が共通することその他需要者の注意力等を総 合的に考慮すれば,本件商標を指定商品に使用した場合は,これに接した需要者に 対し,引用商標を連想させて,当該商品が原告あるいは原告との間に緊密な営業上 の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主\nの業務に係る商品であると誤信され,商品の出所につき誤認を生じさせるおそれが あるものと認められる。 そうすると,本件商標は,商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれが ある商標」に当たると解するのが相当である。
・・・
イ 被告は,本件雑誌の一部に掲載されているにすぎない化粧品について雑誌と の強い関連性を認めるのは,本件雑誌で紹介される全ての商品について雑誌との強 い関連性を認めることとなり,ひいては指定商品「雑誌」について不当に広い権利 範囲を認めることとなり,不合理であると主張する。 しかし,前記(2)ウのとおり,本件雑誌にはほぼ毎号化粧品に関する記事が掲載さ れ,化粧品自体,本件雑誌の対象であることが明らかな服飾品と少なからぬ関連性 を有するものである。そして,引用商標は長期間にわたって周知のものであること に加え,原告がコラボレーション企画等を行っていることをも併せ考慮すれば,い わゆる広義の混同が生じるおそれが認められる。 したがって,指定商品を男性用化粧品とする本件商標を15号該当とすることが 不合理であるとはいえない。

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平成29(行ケ)10118  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年10月26日  知的財産高等裁判所(2部)

 不使用請求を認めなかった審決が維持されました。争点は商標の同一性および使用の評価です。
 ア 本件チラシ1の下段に記載されている「ピーアールタイムズ」の片仮名 は,本件商標の下段の片仮名と同一であるから,本件商標と社会通念上同一の標章 であると認められる。
イ 本件チラシ2の下段に記載されている「PRTIMES」の欧文字は, 本件商標の上段の欧文字と同一であるから,本件商標と社会通念上同一の標章であ ると認められる。
(3) 使用役務等について
上記1(2)のとおり,本件チラシ1には,「広告をご検討の事業主の皆様!まずは お気軽にご相談ください」,「広告のプロが広告主様と一緒に,売上・集客に繋がる 広告戦略を練らせていただきます。広告の事なら何でもご相談ください。」と記載さ れており,被告が広告の役務を提供することを広告しているものと認められる。 上記1(3)のとおり,本件チラシ2には,「広告をご検討の事業主の皆様!まずは お気軽にご相談ください」,「広告出稿や広告に関するコンサルティングの事なら」 と記載されており,被告が広告の役務を提供することを広告しているものと認めら れる。 そして,上記1(2)及び(3)のとおり,本件チラシには被告の会社名及び連絡先が 記載されており,本件チラシは,合計3000部作成され,頒布されたのであるか ら,被告は,本件チラシを見た者が被告に広告依頼などの連絡をしてくればこれに 応じ,業として広告の役務を提供する意思であったと認められる。 したがって,被告は,広告の役務に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商 標を付して頒布し,これを使用したものと認められる。
ア 本件チラシの頒布に関する証拠である,本件チラシ(甲6,12),並び に,ニューアシストから被告に対する領収書(甲7,13)及び納品書(甲8,1 4)は,いずれも,当法廷において被告から原本が提示されており,その作成日当 時作成され,授受されたものであることに合理的な疑いを差し挟むべき不自然な点 はない。
イ ニューアシストのホームページに記載されているのは,「事業概要」であ って(甲21の2),その余の業務を行っていないという趣旨とは解されないから, ニューアシストがチラシの作成やポスティングの業務を行っていないとまではいえ ない。 被告の本店所在地と池尻大橋駅が遠く離れているとはいい難い上,チラシの配布 地域や配布部数などは,広告を行う者がその広告戦略などを考慮して決定するもの であるから,本件チラシの配布場所が池尻大橋駅周辺であり,配布部数が合計30 00部であることなどは,本件チラシの頒布を否定すべき事情とはいえない。広告 業務はその態様によって価格が異なるものと考えられる上,個別に連絡してきた者 に対して説明することもできるから,本件チラシに価格が記載されていないことは, 本件チラシの頒布を否定すべき事情とはいえない。 上記1(2)(3)のとおり,本件チラシ,領収書及び納品書によって,本件チラシの 頒布の事実が認定できるから,その他の取引に関する契約書,Eメールのやりとり, 報告書等が証拠として提出されていないことは,本件チラシの頒布を認定すること を妨げる事情とはならない。各2通の領収書(甲7,13)と納品書(甲8,14) の内容が同一であることは,同一の取引を2回行ったことを示すものにすぎず,ま た,被告の住所の誤りは,同一のデータを使いまわしたことによるものであると推 認されるから,これらの書証の信用性を疑わせる事情とはならない。

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平成28(ワ)35182 特許権 平成29年10月30日  東京地方裁判所(29部)

 サイバーエージェントに対するCS関連特許侵害事件です。裁判所は文言・均等侵害を否定しました。均等の第1、第5要件を満たさないと判断されています。
 これを本件について見ると,前記2で詳述したとおり,本件発明は,「その決定 したキャラクターに応じた情報提供料を通信料に加算する課金手段を備え」(構成\n要件C)ており,また,「表示部に仮想モールと,基本パーツを組み合わせてなる\n基本キャラクターとを表示させ」(構\成要件F),「基本キャラクターが,前記仮 想モール中に設けられた店にて前記パーツを購入する」(構成要件G)構\成を有し ているのに対し(なお,「仮想モール」は,内部に複数の仮想店舗と遊歩のための 空間とが表示されるものをいい,「基本キャラクター」と同時に表\示される必要が あると解すべきこと,「仮想モール中に設けられた店」で「パーツ」を購入する際 にも「基本キャラクター」が表示される必要があると解すべきことも,前記2のと\nおりである。),被告システムは,少なくとも,「キャラクターに応じた情報提供 料」を「通信料」に「加算」する構成を備えていない点,「仮想モール」に対応す\nる構成を有していない点において,それぞれ本件発明と相違するところ,以下のと\nおり,これらの相違部分は,本件発明の本質的部分に当たるというべきであるから, 被告システムは,均等の第1要件(非本質的部分)を満たさない。
イ 本件明細書の前記1(2)アないしエの各記載によれば,本件発明は,携帯端末 の表示部に気に入ったキャラクターを表\示させることができる携帯端末サービスシ ステムに関するものであって(【0001】),あらかじめ携帯端末自体のメモリ ーに保存してある複数のキャラクター画像情報から,気に入ったものを選択して, その携帯端末の表示部に表\示するなどの従来技術では,携帯端末自体のメモリーに 保存できる情報量には限りがあるため,キャラクター選択にあまり選択の幅がなく, ユーザーに十分な満足感を与え得るものではなく,サービス提供者にとっても,キ\nャラクター画像情報により効率良く利益を得るのは困難であったことから(【00 02】,【0003】),同問題点を解決し,「ユーザーが十分な満足感を得るこ\nとができ,且つ,サービス提供者は利益を得ることができる携帯端末サービスシス テムを提供する」ため(【0004】),本件特許請求の範囲の請求項1記載の構\n成(構成要件Aないし同Hの構\成)を備えることにより,ユーザーにとっては,キ ャラクター選択をより楽しむことができ,また,サービス提供者にとっては,キャ ラクター画像情報の提供により効率良く利益を得ることができ(【0005】), さらに,ユーザーは,種々のパーツを組み合わせてキャラクターを創作するという ゲーム感覚の遊びをすることができ,十分な満足感を得ることができ,また,「仮\n想モールと,基本キャラクターとが表示された表\示部を見ながら,基本キャラクタ ーを自分に見立て,さながら自分が仮想モール内を歩いているようなゲーム感覚で, その仮想モール内に出店された店に入り,パーツという商品を購入することで,基 本キャラクターを気に入ったキャラクターに着せ替えて,楽しむことができ,新た な楽しみ方ができて十分な満足感を得ることができる」(【0006】)というも\nのとされていることが理解できる。 そうすると,本件明細書では,本件発明は,サービス提供者がキャラクター画像 情報により効率良く利益を得るのは困難であったという従来技術の問題点を解決し て,サービス提供者が画像情報の提供により効率良く利益を得ることができる携帯 端末サービスシステムを提供することを目的の一つとするものであって,構成要件\nCの「その決定したキャラクターに応じた情報提供料を通信料に加算する課金手段 を備え」るとの構成は,まさに,従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決\n(サービス提供者がキャラクター画像情報により効率良く利益を得ることができる 携帯端末サービスシステムを提供すること)を実現するための,従来技術に見られ ない特有の技術的思想に基づく解決手段(課金手段)としての具体的な構成として\n開示されているものいうべきである。また,本件発明は,ユーザーに十分な満足感\nを与え得るものではなかったという従来技術の問題点を解決して,ユーザーが十分\nな満足感を得ることができる携帯端末サービスシステムを提供することを他の目的 とするものであって,「表示部に仮想モールと,基本パーツを組み合わせてなる基\n本キャラクターとを表示させ」るとの構\成を含む構成要件F及び「基本キャラクタ\nーが,前記仮想モール中に設けられた店にて前記パーツを購入する」との構成を含\nむ構成要件Gは,さながら自分が仮想モール内を歩いているようなゲーム感覚で商\n品を購入するなどして十分な満足感を得ることができるという本件発明に特有な作\n用効果に係るものであって,構成要件A,同B,同D及び同Eとともに,まさに,\n従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決(ユーザーが十分な満足感を得る\nことができる携帯端末サービスシステムを提供すること)を実現するための,従来 技術に見られない特有の技術的思想に基づく解決手段(ゲーム感覚の実現)として の具体的な構成として開示されているものというべきである。\n他方で,後述する引用例1(乙6)の開示(iモード上に用意された複数のキャ ラクタ画像を受信し,これを待受画面として利用することができる携帯電話機)及 び引用例2(乙7)の開示(画像情報の提供に係る対価の課金を通話料金に含ませ るもの)に照らすと,本件明細書において従来技術が解決できなかった課題として 記載されているところは,客観的に見て不十分であるといい得るが,本件明細書の\n従来技術の記載に加えて,引用例1及び同2の開示を参酌したとしても,本件発明 は,ユーザーが十分な満足感を得ることができ,かつ,サービス提供者が利益を得\nることができる携帯端末サービスシステムを提供するものであり,従来技術では達 成し得なかった技術的課題の解決を実現するための具体的な構成として,構\成要件 AないしHを全て備えた構成を開示するものであるから,これら全てが従来技術に\n見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分に当たるというほかない。\n以上によれば,本件発明と被告システムとの相違部分は,いずれも本件発明の本 質的部分に係るものと認めるのが相当である(なお,上記認定判断は,後述する本 件特許の出願経過とも整合するところである。)。
・・・・
上記アの出願経過に照らせば,原告は,構成要件A,同B,同C及び同Hからな\nる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項1に係る発明)及び構成要件A,同B,\n同C,同D,同E及び同Hからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項2に 係る発明)については,特許を受けることを諦め,これらに代えて,構成要件A,\n同B,同C,同D,同E,同F,同G及び同Hからなる発明(出願当初の特許請求 の範囲の請求項1に同2及び同5を統合した発明,すなわち本件発明)に限定して, 特許を受けたものといえる。 そうすると,原告は,構成要件F(「表\示部に仮想モールと,基本パーツを組み 合わせてなる基本キャラクターとを表示させ」)及び同G(「基本キャラクターが,\n前記仮想モール中に設けられた店にて前記パーツを購入する」)の全部又は一部を 備えない発明については,本件発明の技術的範囲に属しないことを承認したか,少 なくともそのように解されるような外形的行動をとったものといえる。 したがって,「仮想モール」に対応する構成を有していない被告システムについ\nては,均等の成立を妨げる特段の事情があるというべきであり,同システムは,均 等の第5要件(特段の事情)を充足しない。

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平成28(行ケ)10215  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年10月26日  知的財産高等裁判所(2部)

 審決は、36条違反の無効理由無しと判断しましたが、知財高裁はサポート要件違反として審決を取り消しました。
 前記第2の2の認定事実及び前記(1)の本件明細書の記載によると,本件 発明について,以下のとおり認められる。 高速連続鋳造において,鋳造速度が大きくなると,凝固シェル厚みが薄くなり, これに伴って,バルジングが大きくなることから,バルジング性湯面変動が発生し, モールドパウダーの巻き込みが発生する原因となっている。鋳片表面にモールドパ\nウダーが付着していない方が二次冷却における冷却効率が良く,凝固シェル厚みが 厚くなるので,バルジング性湯面変動を抑制するには,鋳片からの剥離性の良いモ ールドパウダーが望ましい。 そこで,本件発明は,二次冷却帯における鋳片の冷却能を高めることを可能\とす る,鋳片表面からの剥離性に優れる,鋼の連続鋳造用モールドパウダーを提供する\nことを,その目的とするものである。
2 取消事由1(サポート要件についての判断の誤り)について
・・・・ (2) 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比すると,前記 1(1)ウの【0010】及び【0011】における第1の発明についての記載は,請 求項1の記載と一致する。 また,同【0012】の記載のうち,「前記モールドパウダー・・・特徴とする」 という部分は,請求項2において,本件発明1をさらに特定する事項の記載と一致 する。
(3)ア 前記1(1)イのとおり,本件発明の課題は,二次冷却帯における鋳片の 冷却能を高めることを可能\とする,鋳片表面からの剥離性に優れる,鋼の連続鋳造\n用モールドパウダーを提供することである(【0009】)。 イ そして,前記(2)のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明【0010】, 【0011】及び【0012】には,課題を解決する手段として,「第1の発明」及 び「第2の発明」のモールドパウダー,すなわち,本件発明が記載され,また,前 記1(1)オのとおり,剥離性の試験結果を示した図1及び図2に基づき,請求項1に 記載された式(1)及び(2)を満たすモールドパウダーが,剥離性に優れること が分かったとされている(同【0018】〜【0024】)。
具体的には,
・・・・
この記載は,モデル実験の結果を示す図1及び図2から導かれ た式(1)及び(2)を満たすモールドパウダーは,連続鋳造に用いた場合に,実 際に鋳片からの剥離性に優れ,二次冷却帯における鋳片の冷却能を高めることを可\n能とするものであるかどうかを,バルジング湯面変動の抑制効果によって評価する\nことを意図したものであると認められる。
ウ 実施例について
(ア) 証拠(甲3,5,7,8,10,19)及び弁論の全趣旨によると, 次の技術常識が認められる。
a バルジング性湯面変動は凝固シェルの厚みが薄くなることに起因し て激しくなる。凝固シェルは溶鋼が鋳型内で冷却されて形成されるものであり,鋳 型内抜熱強度が低い場合(鋳型に抜けていく熱が少なく,鋳型内が冷却されにくい 場合)には凝固シェルの厚みが薄くなる。
b 鋳型内における冷却強度の指標としてモールドパウダーの凝固温度 が用いられる。このパウダーの凝固温度は,一定温度に保持した坩堝中において円 筒を回転するなどして粘性を求め,測定温度に対し粘性をプロットした図において, 温度の低下に伴って急激に粘性が高くなる温度とされている。この急激な粘性の変 化は温度の低下に伴いパウダーが結晶化し,見掛けの粘性が高くなるためであると 考えられており,この凝固温度が高い場合はパウダーフィルム内の結晶相(固着相) 厚みが厚いため鋳型−凝固シェル間の熱抵抗が大きくなり,緩冷却が実現されると されている。
c モールドパウダーの凝固温度は,その組成によって変化する。
(イ) これらの技術常識を考え合わせると,凝固シェルの厚みは,鋳型直下 でのモールドパウダーの鋳片表面からの剥離性及びそれに伴う二次冷却帯での冷却\n効率のみによって決まるものではなく,モールドパウダーの組成によって異なる凝 固温度にも影響されると認められる。
(ウ) 本件明細書記載の実施例において,モールドパウダーBとモールド パウダーAについて,鋳型内における冷却強度の指標となる凝固シェルの厚みに影 響を与え得る凝固温度は記載されていない。また,モールドパウダーAとモールド パウダーBの組成が記載された表1には,化学成分として,SiO2,Al2O3,C\naO,MgO,Na2Oのみが挙げられ,それらの量を合計しても,モールドパウダ ーAで80.6%,モールドパウダーBで78.7%であり,残りの成分が何であ ったのか不明であるから,その組成から凝固温度を推測することもできない。 また,本件明細書記載の実施例において,(1)式及び(2)式を満たすものと満 たさないものについての連続鋳造の際のバルジング性湯面変動の測定は,それぞれ, モールドパウダーBとモールドパウダーAの一つずつで行われたにとどまる。 これらのことから,本件明細書の発明の詳細な説明において,モールドパウダー BがモールドパウダーAよりもバルジング性湯面変動を抑制できたことが示されて いても,モールドパウダーBがモールドパウダーAと比較してバルジング性湯面変 動を抑制することができたのは,モールドパウダーが(1)式及び(2)式を満た す組成であることによるのか否かは,本件明細書の発明の詳細な説明からは,不明 であるといわざるを得ない。

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平成29(行ケ)10128  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年10月26日  知的財産高等裁判所(2部)

 商標「軽スタ」と「軽スタジオ」が非類似とした拒絶審決が維持されました。
 「・・・他方,「スタ」という片仮名部分は,それ自体に特定の意味がないところ,これと結合する「軽」という漢字部分からは指定役務との関係で「軽自動車」が想起され ること,本件商標の査定日である平成27年11月16日以前から,「新しいまちづ くりをスタートさせるスタッフ」を意味するものとして4音の「まちスタ」が使用 されていたほか(乙9),「おはようスタジオ」というテレビ番組を「おはスタ」と 略称する(甲5の1・2)など,「スタ」が略称として用いられることが少なからず あったこと(弁論の全趣旨)からすると,本件商標の指定役務の需要者には,「スタ」 という片仮名部分も特定の単語の略称であると想起されることがあり得るというこ とができる。 しかし,「スタ」という片仮名部分が特定の単語の略称であると想起されるとして も,冒頭2字を略称にするとは限らないし,「スタ」から始まる片仮名の単語につい ては,広辞苑(第6版)掲載のものに限っても,「スター」,「スタート」,「スタイリッシュ」,「スタイル」,「スタジアム」,「スタジオ」,「スタッフ」,「スタディー」のほか(甲4),「スタミナ」,「スタメン」,「スタンダード」,「スタンド」,「スタンバイ」などがあり,いずれも「スタ」と略称される可能性があるということができる(甲5の1・2,甲6〜9,乙6〜9)。そして,本件商標の指定役務との関係や,\n「軽自動車」の略称と考えられる「軽」という漢字部分との組み合わせを考えても, 本件商標の指定役務の需要者において,これらの「スタ」から始まる多数の単語の うち,いずれかのみを強く想起するということはできない。 そうすると,本件商標に接した本件商標の指定役務の需要者は,本件商標が軽自 動車と「スタ」から始まる何らかの単語を組み合わせたものの略称と考えられるこ とまでを想起するとしても,本件商標全体から特定の観念を想起することはできな いというべきである。
3 引用商標は,前記第2の3(2)のとおり,「軽スタジオ」という漢字1字と片 仮名4字を横書きした構成からなるが,これらの文字は,同一の書体,同一の大き\nさ,同一の間隔で表されており,外観上,一体的に看取,把握されるものである。\nまた,引用商標からは,その構成文字に応じて,「ケイスタジオ」の称呼を生じ,\nこの称呼は6音であることから,一気に称呼し得るものである。 さらに,引用商標は,「軽」という漢字と「スタジオ」という片仮名から構成され\nるものであるところ,その指定役務が「自動車及びその部品の小売又は卸売の業務 において行われる顧客に対する便益の提供,自動車リース事業の運営及び管理,自 動車の売買契約の媒介」であること,「軽」が「軽自動車」の略称として用いられて いることからすると,「軽」という漢字部分からは「軽自動車」が想起される。他方, 「スタジオ」は,1)画家,彫刻家,写真家,デザイナーなど芸術家の仕事場,2)映 画や写真の撮影所,3)音楽の録音室・練習室,4)放送局の放送室などといった意味 を有する単語であり(甲4,乙1〜5),引用商標の指定役務と直ちに結びつくもの ではないが,「軽自動車」の略称である「軽」と結合して用いられていることから, 引用商標全体からは,「軽自動車に関する役務の提供が受けられる場所」といった観 念を想起するものと認められる。
4 前記1〜3によると,本件商標と引用商標の外観は,「軽スタ」という文字部 分が共通であるものの,本件商標が3字であるのに対し,引用商標は5字であり, 離隔的観察においても,外観上の相違を十分認識することができる。\nまた,本件商標と引用商標の称呼は,「ケイスタ」が共通であるものの,本件商標 が4音であるのに対し,引用商標は6音である上,差異音である「ジオ」は,濁音 を含む明瞭に発音されるものであるから,離隔的観察においても,称呼上の相違を 十分認識することができる。\nさらに,引用商標からは,「軽自動車に関する役務の提供が受けられる場所」とい った観念が生じるが,本件商標からは,特定の観念を想起することはできないから, 本件商標と引用商標とは,観念が共通するものではない。 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観及び称呼において相紛れるおそれ はなく,観念が共通するものでもないから,これらを総合して判断すると,本件商 標は,引用商標に類似する商標に当たらない。
・・・・
なお,原告は,被告の商号が「軽スタジオ茅ヶ崎株式会社」であること,被告が 「軽スタジオ」に代えて「軽スタ」という本件商標の使用を開始したこと,その後 も被告が「軽スタ」と表記した自己のウェブサイトに誘導するために「軽スタジオ」\nというキーワードメタタグを用いていること,被告は,被告の店舗において,「軽ス タ」と「軽スタジオ」を混在して継続使用することを表明していることなどを指摘\nするが,これらは,いずれも商標権者である被告に係る個別具体的な事情であって, 本件商標の指定役務全般に係る一般的,恒常的な取引の実情ではないから,上記判 断を左右するものではない。また,被告が,「軽スタジオ」と「軽スタ」のいずれの 標章も使用してきたとしても,被告の認識が,本件商標と引用商標を離隔的に(場 所と時間を異にして)観察する需要者の認識と一致するものとする根拠はないから, この点からしても上記判断を左右するものではない。

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平成29(行ケ)10032  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年11月7日  知的財産高等裁判所(4部)

 無効審判における訂正を認めなかった審決が取り消されました。審決は、実質上の変更に該当すると判断しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
 本件審決は,本件発明10は,値段が高い銀ナノ粒子を使用することなく導 電性材料を得ることを目的とした発明であるのに対し,本件訂正発明10は,大量 の酸素ガスや大量の還元性有機化合物の分解ガスを発生させることなく,導電性材 料を得ることを目的とするものであり,本件訂正発明10が達成しようとする目的 及び効果は,訂正事項10−1による訂正で変更されたと認められるから,訂正の 前後における発明の同一性は失われており,訂正事項10−1は,実質上特許請求 の範囲を変更するものであると判断した。 イ しかし,本件明細書には,従来技術において,酸化銀等の銀化合物の微粒子 を還元性有機溶剤へ分散したペースト状導電性組成物を基板上に塗布して加熱し配 線を製造する方法が知られていたが,ミクロンオーダーの銀粒子を使用した場合, 高い反応熱によりガスが大量発生し,不規則なボイドが形成されて導電性組成物が 破壊されやすくなったり,取扱上の危険性があるという問題点があり(【0004】 〜【0007】,【0010】),銀ナノ粒子を含む導電性組成物を用いると,銀ナノ 粒子の値段が高いという問題点があったこと(【0009】,【0010】)が記載さ れており,本件発明は,安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて得られる導電 性材料を製造する方法を提供することを目的とするとの記載があるのであるから (【0012】),本件発明の目的は,従来技術においてミクロンオーダーの銀粒子を 使用する際にガスが大量発生することによる問題を解消するとともに,値段が高い 銀ナノ粒子を使用することなく,導電性材料を製造することにあると認められる。 そして,本件発明10においては,その目的を,「銀の粒子が,0.1μm〜15 μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる」という構成,及び「第\n2導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃〜320℃の 範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し」とい う構成を備えることによって達成している。\n他方,本件訂正発明10は,大量のガスを発生させることなく導電性材料を得る という目的を達成するため,「前記銀の粒子の一部を局部的に酸化させることにより, 前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し」という構成を備えている上,\n銀の粒子が,0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有するものから, 2.0μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有するものに訂正されたことに より,訂正前に比べて銀の粒子径がより大となっており,値段が高い銀ナノ粒子を 使用することなく導電性材料を得るという目的及び効果について,より限定された ものとなっている。
ウ したがって,訂正事項10−1による訂正は,本件発明10が達成しようと する目的及び効果を変更するものではない。

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平成28(ワ)7143  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年10月25日  東京地方裁判所(40部)

 秘密管理性を満たしていないとして、営業秘密とは認定されませんでした。
 本件得意先・粗利管理表(甲9)につき,原告は,原告代表\者のパソコ\nン内に入れられており,他の従業員はアクセスできない状態であったので, 秘密として管理されていたと主張する。 しかし,被告・被告会社代表者甲は,本件得意先・粗利管理表\について も従業員のパソコンからアクセスすることができたと供述しており,従業\n員全てがアクセスすることができないような形で同管理表が保管されてい\nたことを客観的に示す証拠はないから,上記原告の主張は採用できない。 また,原告は,本件得意先・粗利管理表を印刷したものを定例会議の際\nの資料として配布していたが,その際には「社外持出し禁」と表示した書\n面(甲16の1枚目)とともに配布したと主張する。 しかし,被告・被告会社代表者甲は,本件得意先・粗利管理表\につき打 ち合わせの際などに紙媒体で渡されたことはあるが,「社外持出し禁」と 表示した書面とともに本件得意先・粗利管理表\が配布されたことはないと 供述しており,定例会議が開催された際に本件得意先・粗利管理表が「社\n外持出し禁」などの表示が付された甲16の1枚目と同様の書面とともに\n従業員に配布されていたことを裏付ける証拠はないから,上記原告の主張 は採用できない。かえって,本件得意先・粗利管理表(甲9)自体には\n「社外持出し禁」などの表示が一切付されていないことからすると,本件\n得意先・粗利管理表は,定例会議などの打ち合わせの際に,「社外持出し\n禁」という表示を付すことなく,配布されていたと認めるのが相当である。
ウ 以上によれば,本件機密情報が記載された本件得意先・粗利管理表,本\n件規格書,本件工程表,本件原価計算書は,いずれも,原告において,そ\nの従業員が秘密と明確に認識し得る形で管理されていたということはでき ない。 これに対し,原告は,原告のような小規模な会社においては,その事業遂 行のために取引に関する情報を共有する必要があるから,従業員全てが機密 情報に接することができたとしても,秘密管理性が失われるわけではないと 主張する。しかし,原告における本件機密情報の上記管理状況によれば,原 告の会社の規模を考慮しても,同情報が秘密として管理されていたというこ とはできない。 また,原告は,従業員全員から入社時において業務上知り得た情報を漏え い,開示しない旨の誓約書兼同意書を徴求していた上,原告代表者は,会議\nの際などに本件機密情報を漏えい,開示してはならないことを従業員に伝え ていたと主張する。しかし,従業員全員から秘密保持を誓約する書面の提出 を求めていたとの事実は,本件機密情報が秘密として管理されていなかった との上記認定を左右するものではなく,また,原告代表者が定例会議等の際\nに本件機密情報を漏えい,開示してはならないと従業員に伝えていたとの主 張を客観的に裏付けるに足る証拠はない。 エ したがって,本件得意先・粗利管理表,本件規格書,本件工程表\,本件 原価計算書に記載された情報は,被告甲が秘密保持義務を負う機密情報に は当たらない。

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平成29(行ケ)10053  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年10月25日  知的財産高等裁判所(1部)

 商標登録無効審決の取消事件です。特許庁は、先願既登録商標1,2とは類似でないと判断しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。本件商標の登録日には前記先願既登録商標1,2(「チドリヤ」、「CHIDORIYA」)は存在しましたが、本件商標(漢字で「千鳥屋」)の登録日の2年後くらいに、存続期間満了で消滅していました。
 そして,本件商標が,漢字を書してなるものであるのに対し,引用商標は,片仮 名又はローマ字を書してなるものであるから,本件商標と引用商標の外観は同一で あるとはいえない。もっとも,本件商標と引用商標は,いずれも格別の特徴を有し ない文字からなる商標であり,我が国において,外来語以外でも同一語の漢字表記\nと片仮名表記又はローマ字表\記が併用されることが多く見られる事情があること, 証拠(甲34〜36)及び弁論の全趣旨によれば,「千鳥屋」をローマ字で表記する\nことも一般的に行われていることが認められることなどを考慮すると,本件指定商 品及び引用商標の指定商品の需要者にとって,文字種が異なることは,本件商標と 引用商標が別異のものであることを認識させるほどの強い印象を与えるものではな いというべきである。 次に,本件商標から,「千鳥屋」という菓子屋の屋号又は商号との観念が生じるこ とについては当事者間に争いがなく,本件商標からは,「千鳥屋」という菓子屋の屋 号又は商号との観念が生じるものと認められる。 また,証拠(甲39)及び弁論の全趣旨によれば,「チドリヤ」という語は,広辞 苑等の辞書に掲載されていないものの,広辞苑第6版には,「チドリ」に関して「千 鳥」の語が掲載され,「1)多くの鳥。2)チドリ目チドリ科の鳥の総称。」などの意味 の記載と共に,「ちどり−あし【千鳥足】」,「ちどり−やき【千鳥焼】」などの例が挙げられていること,「屋」という語が,屋号又は商号を表す際に用いられるものであ\nることなどが認められる。そして,本件商標の登録査定時において,「千鳥屋」が, 九州地区,関西地区,関東地区では著名な菓子屋の屋号及び商号であり,「千鳥屋」 という屋号及び商号が全国的にその名を知られているものであることについては当 事者間に争いがなく,引用商標は,「千鳥屋」の称呼を片仮名又はローマ字で表記し\nたものといえることからすると,本件商標と同様に,引用商標から「千鳥屋」とい う菓子屋の屋号又は商号との観念が生じるものと認めるのが相当である。このこと は,検索サイトの検索結果(甲24)において,「チドリヤ」及び「CHIDOR IYA」の検索結果として,「千鳥屋」が多数検索されることや,「チドリヤ」の 文字を検索した際に,「千鳥屋」の検索の誤りであることを指摘する検索サイトが複 数あることからも裏付けられる。
ウ 本件指定商品及び引用商標の指定商品は,いずれも基本的には,さほど 高価とはいえない日常的に消費される性質の商品(食品)であり,これらは同一の 営業主により製造又は販売されることがあり,同一店舗で取り扱われることも多い ことからすると,本件指定商品については,同一営業主の製造又は販売に係る商品 と誤認され,商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあるといえる。このよ うに,本件指定商品と引用商標の指定商品は類似の商品であり,その取引者,需要 者には,広く一般の消費者が含まれるから,商品の同一性を識別するに際して,そ の名称,称呼の果たす役割は大きく,重要な要素となるというべきである。なお, 一般の消費者としては,商標の外観を見て商品の出所を判断することも少なくない と考えられるものの,前記認定のとおり,本件商標と引用商標の外観については別 異のものであることを認識させるほどの強い印象を与えるものではない。そうする と,本件商標と引用商標の類否を判断するに当たっては,上記のような取引の実情 をも考慮すると,外観及び観念に比して,称呼を重視すべきであるといえる。 以上によれば,本件商標と引用商標は,称呼において同一であり,両商標からは 同一の観念を生じるものといえるから,本件指定商品の需要者にとって,引用商標 と同一の称呼を生じる本件商標を付した商品を,引用商標を付した商品と誤認混同 するおそれがあるものと認められる。

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平成28(行ケ)10185  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年10月23日  知的財産高等裁判所(3部)

 特許庁では、無効審判について利害関係なしとして審決却下されました。知財高裁はこれを取り消しました。
(1) 原告は,特許権取得のための支援活動等を行う個人事業主であり,自らも 特許技術製品の開発等を行っている。
(2) 特許願(甲54)の請求項に記載されている発明(原告発明)は,自分(原 告)の発明である。
(3) 原告発明に係るおむつの開発に着手した理由は,日頃から医療分野に興味 を持っていたこと,特に子供の頃から●●(省略)●●ことや,●●(省略) ●●,排せつの問題に関する知識があったこと,さらには,災害の発生,外 国人の需要などにより,商品開発をして市場に提供するチャンスがあると考 えたことによる。
(4) 原告発明は,紙おむつの外層シートに新たな構造を付加することを特徴と\nするものであり,弾性構造のない部分を有し,かつ,(テープ型でなく)パ\nンツ型のおむつが最も適する。
(5) 原告としては,自ら発明を実施する能力がないので,ライセンスや他の業\n者に委託して製造してもらうことなどを考えており,製品化の準備として, 市販品のおむつ(被告製品など)に手を加えて試作品(サンプル)を製作し ていた。
(6) 実際に上記試作品をおむつの製造業者等に持ち込んだことはまだないが, インターネット上で特許発明の実施の仲介を行う業者や不織布を取り扱う業 者に対し,原告発明の実施の可能性について尋ねたことはある。
(7) その際,原告としては,原告発明を製品化する場合,被告の本件特許に抵 触する可能性があると考えていたので,率直にその旨を上記の業者らに伝え\nたところ,いずれも,その問題(特許権侵害の可能性)をクリアしてからで\nないと,依頼を受けたり,検討したりすることはできないといわれ,それ以 上話が進められなかった。
(8) 原告としては,設計変更等による回避も考えたが,原告発明を最も生かせ る構造(実施例)は,被告の本件特許発明の技術的範囲にあると思われたた\nめ,原告発明を実施する(事業化する)には,本件特許に抵触する可能性を\n解消する必要性があると判断し,また,専門家から本件特許に無効理由があ るとの意見をもらったことから,本件無効審判請求を行った。
3 検討
以上のとおり,原告は,単なる思い付きで本件無効審判請求を行っているわ けではなく,現実に本件特許発明と同じ技術分野に属する原告発明について特 許出願を行い,かつ,後に出願審査の請求をも行っているところ,原告として は,将来的にライセンスや製造委託による原告発明の実施(事業化)を考えて おり,そのためには,あらかじめ被告の本件特許に抵触する可能性(特許権侵\n害の可能性)を解消しておく必要性があると考えて,本件無効審判請求を\n害の可能性)を解消しておく必要性があると考えて,本件無効審判請求を行っ\nたというのであり,その動機や経緯について,あえて虚偽の主張や陳述を行っ ていることを疑わせるに足りる証拠や事情は存しない。 以上によれば,原告は,製造委託等の方法により,原告発明の実施を計画し ているものであって,その事業化に向けて特許出願(出願審査の請求を含む。) をしたり,試作品(サンプル)を製作したり,インターネットを通じて業者と 接触をするなど計画の実現に向けた行為を行っているものであると認められる ところ,原告発明の実施に当たって本件特許との抵触があり得るというのであ るから,本件特許の無効を求めることについて十分な利害関係を有するものと\nいうべきである。

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平成28(行ケ)10189  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年10月25日  知的財産高等裁判所(3部)

 サポート要件違反とした審決が取り消されました。
 ・・・以上のような発明の詳細な説明の記載を総合してみれば, 本願発明における本願組成要件と本願物性要件との関係に関して,次のよ うな理解が可能といえる。すなわち,まず,Nb2O5成分は,屈折率を高\nめ,分散を大きくしつつ部分分散比を小さくし,化学的耐久性及び耐失透性 を改善するのに有効な必須の成分であること(段落【0033】)から,本 願組成要件において,その含有量が40%超65%以下とされ,組成物中で 最も含有量の多い成分とされていることが理解できる。また,ZrO2成分 は,屈折率を高め,部分分散比を小さくする効果があり(段落【0031】), 他方,TiO2成分は,屈折率を高め,分散を大きくする効果がある反面, その量が多すぎると部分分散比が大きくなること(段落【0029】)から, 「部分分散比が小さい光学ガラス」を得るためには,ZrO2及びNb2O5 の含有量に対してTiO2の含有量が多くなりすぎることを避ける必要が あり,そのために,TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値を一定以下とす るものであること(段落【0073】)が理解でき,これが,本願組成要件 において,各成分の含有量とともに規定される「TiO2/(ZrO2+N b2O5)が0.2以下であり」との特定に反映され,本願発明の課題の解決 (高屈折率高分散であって,かつ,部分分散比が小さい光学ガラスを提供す ること)にとって重要な構成となっていることが理解できる。
ウ 他方,本願明細書の発明の詳細な説明における実施例の記載をみると,本 願組成要件を満たす実施例(No.8,9,21,24〜38,41,44, 45,48〜57,60〜66)に係る組成物が,本願物性要件の全てを満 たすことが示されているが,これらの組成物の組成は,本願組成要件に規定 された各成分の含有比率,「TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値」及び 「SiO2,B2O3,TiO2,ZrO2,Nb2O5,WO3,ZnO,Sr O,Li2O,Na2Oの合計含有量」の各数値範囲の一部のもの(具体的に は,別紙審決書4頁23行目から5頁8行目までに記載のとおりである。) でしかなく,上限から下限までの数値範囲を網羅するというものではない。 すなわち,本願組成要件に規定された各数値範囲は,実施例によって本願物 性要件を満たすことが具体的に確認された組成の数値範囲に比して広い数 値範囲となっており,そのため,本願組成要件で特定される光学ガラスのう ち,実施例に示された数値範囲を超える組成に係る光学ガラスについても, 本願物性要件を満たし得るものであることを当業者が認識できるか否かが 問題となる。
そこで検討するに,まず,光学ガラスの製造に関しては,ガラスの物性が 多くの成分の総合的な作用により決定されるものであるため,個々の成分 の含有量の範囲等と物性との因果関係を明確にして,所望の物性のための 必要十分な配合組成を明らかにすることは現実には不可能\であり,そのた め,ターゲットとされる物性を有する光学ガラスを製造するに当たり,当該 物性を有する光学ガラスの配合組成を明らかにするためには,既知の光学 ガラスの配合組成を基本にして,その成分の一部を,当該物性に寄与するこ とが知られている成分に置き換える作業を行い,ターゲットではない他の 物性に支障が出ないよう複数の成分の混合比を変更するなどして試行錯誤 を繰り返すことで当該配合組成を見出すのが通常行われる手順であること が認められ,このことは,本願出願時において,光学ガラスの技術分野の技 術常識であったものと認められる(甲5,6,17,18,21,22。以 上のような技術常識の存在については,当事者間に争いがない。)。 そして,上記のような技術常識からすれば,光学ガラスの製造に当たっ て,基本となる既知の光学ガラスの成分の一部を,物性の変化を調整しなが ら,他の成分に置き換えるなどの作業を試行錯誤的に行うことは,当業者が 通常行うことということができるから,光学ガラス分野の当業者であれば, 本願明細書の実施例に示された組成物を基本にして,特定の成分の含有量 をある程度変化させた場合であっても,これに応じて他の成分を適宜増減 させることにより,当該特定の成分の増減による物性の変化を調整して,も との組成物と同様に本願物性要件を満たす光学ガラスを得ることも可能で\nあることを理解できるものといえる。そして,前記イのとおり,当業者は, 本願明細書の発明の詳細な説明の記載から,本願物性要件を満たす光学ガ ラスを得るには,「Nb2O5成分を40%超65%以下の範囲で含有し, かつ,TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を0.2以下とする」ことが特に 重要であることを理解するものといえるから,これらの条件を維持しなが ら,光学ガラスの製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で上記のよ うな成分調整を行うことにより,高い蓋然性をもって本願物性要件を満た す光学ガラスを得ることが可能であることも理解し得るというべきであ\nる。なお,これを具体的な成分に即して説明するに,例えば,本願発明の最 多含有成分であるNb2O5についてみると,当業者であれば,実施例中最 多の含有量(53.61%)を有する実施例50において,TiO2/(Z rO2+Nb2O5)を0.2以下とする条件を維持しながら,必須成分であ るTiO2(6.48%),ZrO2(1.85%)又は任意成分であるNa 2O(9.26%)から適宜置換することによって,本願物性要件を満たし つつ,Nb2O5を増やす調整を行うことも可能であることを理解するもの\nと考えられ,同様に,実施例中Nb2O5の含有量が最少(43.71%)で ある実施例24において,TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を0.2以下 とする条件を維持しながら,もう1つの主成分であるSiO2(24.76 %),必須成分であるZrO2(10.48%)又は任意成分であるLi2O (4.76%)への置換により,本願物性要件を満たしつつ,Nb2O5を減 らす調整を行うことも可能であることを理解するものと考えられる(以上\nのことは,本願組成要件に係るNb2O5以外の成分についても,同様にい えることであり,この点については,原告の前記第3の2⑵記載の主張が参 考となる。)。 してみると,本願明細書の実施例に係る組成物の組成が,本願組成要件に 規定された各成分の含有比率,「TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値」 及び「SiO2,B2O3,TiO2,ZrO2,Nb2O5,WO3,ZnO, SrO,Li2O,Na2Oの合計含有量」の各数値範囲の一部のものにす ぎないとしても,本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願出願時に おける光学ガラス分野の技術常識に鑑みれば,当業者は,本願組成要件に規 定された各数値範囲のうち,実施例として具体的に示された組成物に係る 数値範囲を超える組成を有するものであっても,高い蓋然性をもって本願 物性要件を満たす光学ガラスを得ることができることを認識し得るという べきであり,更に,そのように認識し得る範囲が,本願組成要件に規定され た各成分の各数値範囲の全体(上限値や下限値)にまで及ぶものといえるか 否かについては,成分ごとに,その効果や特性を踏まえた具体的な検討を行 うことによって判断される必要があるものといえる。
エ これに対し,本件審決は,本願明細書の実施例に記載されたガラス組成の 数値範囲については,本願物性要件を満たす光学ガラスが得られることを 確認することができるが,実施例に記載されたガラス組成の数値範囲を超 える部分については,本願物性要件を満たす光学ガラスが得られることが, 実施例の記載により裏付けられているとはいえないとし,また,その他の発 明の詳細な説明のうち,部分分散比に影響を与える成分であるTiO2,Z rO2,Nb2O5,WO3及びLi2Oの記載(段落【0029】等)につい ても,好ましい範囲等として記載される数値範囲が実施例に記載されたガ ラス組成の数値範囲より広い範囲となっていることから,実施例の数値範 囲を超える部分について,本願物性要件を満たす光学ガラスが得られるこ とを裏付けるとはいえないとし,更に,本願出願時の技術常識(光学ガラス の物性は,ガラスの組成に依存するが,構成成分と物性との因果関係が明確\nに導かれない場合の方が多いことなど)に照らしても,本願組成要件の数値 範囲にわたって,本願物性要件を満たす光学ガラスが得られることを当業 者が認識し得るとはいえないと判断したものである。 このように,本件審決の判断は,本願組成要件に規定された各成分の含有 比率,「TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値」及び「SiO2,B2O3, TiO2,ZrO2,Nb2O5,WO3,ZnO,SrO,Li2O,Na2O の合計含有量」の各数値範囲のうち,当業者が本願物性要件を満たす光学ガ ラスが得られるものと認識できる範囲を,実施例として具体的に示された ガラス組成の各数値範囲に限定するものにほかならないところ,上記ウで 述べたところからすれば,このような判断は誤りというべきである。本件審 決は,上記ウのとおり,本願のサポート要件充足性を判断するに当たって必 要とされる,本願物性要件を満たす光学ガラスを得ることができることを 認識し得る範囲が本願組成要件に規定された各成分における数値範囲の全 体に及ぶものといえるか否かについての具体的な検討を行うことなく,実 施例として示された各数値範囲が本願組成要件に規定された各数値範囲の 一部にとどまることをもって,直ちに本願のサポート要件充足性を否定し たものであるから,そのような判断は誤りといわざるを得ず(更に言えば, 上記のような具体的な検討の結果に基づく拒絶理由通知がされるべきであ ったともいえる。),また,その誤りは審決の結論に影響を及ぼすものとい える。

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平成29(行ケ)10094  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年10月24日  知的財産高等裁判所

 地域団体商標を観念させるとして、15号違反に基づく無効を主張しました。審決は理由無し、知財高裁は理由ありと判断しました。本件商標は「豊岡柳(2段併記)」で、地域団体商標は「豊岡杞柳細工」です。
 原告は,平成6年に,伝統的工芸品産業振興協会の伝統工芸士認定事業に 参加し,構成員10名が伝統工芸士の認定を受け,伝統的工芸品表\示事業を開始し て,伝統証紙(経済産業大臣が指定した技術・技法,原材料で製作され,産地検査 に合格した製品に貼られる,「伝統マーク」をデザインした証紙)の表\示を始めた。 そして,原告は,その頃から,原告の商標として「豊岡杞柳細工」の使用を開始し, 平成13年には,更に構成員5名が伝統工芸士の認定を受けた。(甲6の9,7,\n8,9の4)
(ウ) 平成18年4月1日,地域団体商標制度が導入されたことから,原告は, 別紙引用商標目録記載のとおり,「豊岡杞柳細工」の文字からなる引用商標を出願 し,平成19年3月9日,指定商品を兵庫県豊岡市及び周辺地域で生産された杞柳 細工を施したこうり,柳・籐製のかご及び柳・籐製の買い物かごとする地域団体商 標として,設定登録を受けた。(甲2) なお,地域団体商標の制度は,従前,地域の名称と商品(役務)の名称等からな る文字商標について登録を受けるには,使用により識別力を取得して商標法3条2 項の要件を満たす必要があったため,事業者の商標が全国的に相当程度知られるよ うになるまでの間は他人の便乗使用を排除できず,また,他人により使用されるこ とによって事業者の商標としての識別力の獲得がますます困難になるという問題が あったことから,地域の産品等についての事業者の信用の維持を図り,地域ブラン ドの保護による我が国の産業競争力の強化と地域経済の活性化を目的として,いわ ゆる「地域ブランド」として用いられることが多い上記文字商標について,その商 標が使用された結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表\示するもの として需要者の間に広く認識されているときは,商標登録を受けることができると するものである。また,地域団体商標は,事業者を構成員に有する団体がその構\成 員に使用をさせる商標であり,商品又は役務の出所が当該団体又はその構成員であ\nることを明らかにするものである。
・・・・
(オ) 前記(イ)のとおり,「豊岡杞柳細工」は,伝統的工芸品に指定されている ため,通商産業省伝統的工芸品産業室が監修し伝統的工芸品産業振興協会が編集し て年1回発行される冊子「伝統的工芸品の本」に毎回掲載され,豊岡杞柳細工の歴 史,特徴,製法等について,原告商品の写真と一緒に紹介されている。また,前記(ウ) のとおり,引用商標は,地域団体商標として設定登録されているため,経済産業省・ 特許庁が年1回発行する冊子「地域団体商標」に毎回掲載され,引用商標の構成,\n権利者,指定商品,原告商品の写真,連絡先及び関連ホームページのアドレスなど が紹介されている。(甲6の9,21,22)
・・・
イ 前記アの認定事実によれば,豊岡杞柳細工は,豊岡地方において古くから製 作されてきたものであり,経済産業大臣により伝統的工芸品に指定され,「豊岡杞 柳細工」という引用商標が,地域団体商標として設定登録されているものである。 また,引用商標を付した原告商品は,豊岡地方に所在する店舗やミュージアム等の 施設で展示・販売されるほか,東京都内の百貨店等で展示会を開催し,インターネ ットを介した通信販売をするなどして,豊岡地方以外でも販売されている。さらに, 原告商品は,伝統的工芸品に指定され,地域団体商標の登録を受けていることから, 経済産業省がそれぞれ年1回発行する冊子に毎年掲載されているほか,多数の書籍, 雑誌,テレビ等において,豊岡地方の伝統的工芸品であることや,その歴史,製法, 特徴等が紹介されている。これらの事情を考慮すると,引用商標を付した原告商品 は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告又はその構成員の業務を\n示すものとして,需要者の間に広く認識されており,一定の周知性を有していたも のと認められる。 なお,引用商標は,地域の名称である「豊岡」と商品の普通名称である「杞柳細 工」を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる地域団体商標であるから,\nその構成自体は,独創的なものとはいえない。
(4) 商品の関連性その他取引の実情
ア 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 被告は,京都府に在住し,「拓心」の屋号で,かばんの企画,製造,販売 等の事業を営む者である。被告は,平成20年に,伝統的工芸品の作り手とデザイ ナーやプロデューサーなど様々な分野の専門家が交流を図り,パートナーを選択し て新商品開発研究を行って試作品を作り,発表し意見を求める展示会に参加する本\n件事業に加わり,原告のパートナーとなったが,新商品の開発には至らず,同事業 は終了した。(甲13の1〜5,23の2) しかし,被告は,杞柳細工に商品価値を見出したことから,平成22年に本件商 標を出願し,平成23年に本件商標の設定登録を受けた。そして,被告は,本件商 標を付した柳細工のかばん(バッグ,アタッシュケース等。以下,被告の販売する 上記かばんを総称して「被告商品」ということがある。)の製造を開始した。(甲 1,12,23の2・5)
(イ) 被告商品は,豊岡地方のほか,京都府に所在する被告の店舗や百貨店等で 販売されている。また,平成25年及び平成26年に,社団法人京都国際工芸セン ターにおいて,「豊岡柳KAGO展」などと題する展示会が1週間開催されるなど した。(甲23の3・4) さらに,被告商品は,被告が開設したウェブページや他のインターネットのサイ トを介するなどして,通信販売も行われている。(甲23の1)
(ウ) 被告が作成した被告商品のパンフレットや,被告商品の展示会を紹介する ウェブページには,本件商標及び被告商品の写真が掲載されている。そして,上記 パンフレット等に掲載された被告商品の写真は,原告のパンフレット等に掲載され た,原告商品である杞柳細工のかばん類や籠類と外観が類似するものも少なくない。 (甲9の1〜5,10の1〜3,23の1,23の3〜6) イ 本件商標の指定商品は,第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具 入れ,かばん金具」である。一方,前記(3)のとおり,原告商品は,引用商標の指定 商品であるこうり(第18類),かご及び買い物かご(第20類)のほかに,ハン ドバッグ,アタッシュケース等のかばん類も含むものである。 したがって,本件商標の指定商品と原告商品とは,商品の用途や目的,原材料, 販売場所等において共通し,同一又は密接な関連性を有するものであり,取引者及 び需要者が共通する。 また,前記アのとおり,被告商品のパンフレット等に掲載されている被告商品の 写真は,原告商品と外観が類似するものも少なくない。そして,本件商標の指定商 品である「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具」が日常的に 使用される性質の商品であることや,その需要者が特別の専門的知識経験を有する 者ではないことからすると,これを購入するに際して払われる注意力は,さほど高 いものではない。 このような被告の本件商標の使用態様及び需要者の注意力の程度に照らすと,被 告が本件商標を指定商品に使用した場合,これに接した需要者は,前記(2)のとおり 周知性を有する「豊岡杞柳細工」の表示を連想する可能\性がある。
(5) 小括
以上のとおり,1)本件商標は,外観や称呼において引用商標と相違するものの, 本件商標からは,豊岡市で生産された柳細工を施した製品という観念も生じ得るも のであり,かかる観念は,引用商標の観念と類似すること,2)引用商標の表示は,\n独創性が高いとはいえないものの,引用商標を付した原告商品は,原告の業務を示 すものとして周知性を有しており,伝統的工芸品の指定を受け,引用商標が地域団 体商標として登録されていること,3)本件商標の指定商品は,原告商品と同一又は 密接な関連性を有するもので,原告商品と取引者及び需要者が共通することその他 被告の本件商標の使用態様及び需要者の注意力等を総合的に考慮すれば,本件商標 を指定商品に使用した場合は,これに接した取引者及び需要者に対し,原告の業務 に係る「豊岡杞柳細工」の表示を連想させて,当該商品が原告の構\成員又は原告と の間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属す\nる関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され,商品の出所につき誤認を 生じさせるとともに,地域団体商標を取得し通商産業大臣から伝統的工芸品に指定 された原告の表示の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその\n希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を生じかねない。 そうすると,本件商標は,商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれが ある商標」に当たると解するのが相当である。

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平成29(ネ)10061  著作者人格権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成29年10月13日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 建築の著作物について、共同著作者とは認定できないとした1審判断が維持されました。
 控訴人は,原判決が,本件建物外観(外装スクリーン部分に限られない。 以下同じ。)の設計に関し,控訴人代表者の創作的関与並びに共同創作の意\n思及び事実を認めず,また,本件建物外観を控訴人外観設計の二次的著作物 とも認めなかったのは誤りであるとして,要旨,次のとおり主張する。 ア 控訴人設計資料(甲7,7の2)及び控訴人模型(甲8)から成る控訴 人外観設計(外装スクリーン部分に限られない。以下同じ。)は,控訴人 設計資料により平面上で具体的に表現され,かつ,控訴人模型により立体\n物として具体的に表現されており,二次元での平面表\現としても,当該平 面及び模型から観念される立体表現としても,単なるアイデアではなく,\n具体的な表現である。
イ そして,控訴人外観設計は,具体的な立体形状の組亀甲柄を建築物の外 観に適用したことその他多くの点(本質的特徴部分)において,表現上の\n個性が発揮されているから,創作性を有するものであり,表現としてあり\nふれているとはいえない。
ウ したがって,控訴人外観設計は,それ自体,「建築の著作物」(著作権 法10条1項5号)であるとともに,形状,色彩,線及び明暗で思想又は 感情を表現したものであるから,「美術の著作物」(同項4号)又は単な\nる「美術」(同法2条1項1号)の範囲に属する「著作物」にも該当する。 エ 本件建物外観は,控訴人外観設計に表現された建物の本質的特徴を感得\nすることができるものであって,控訴人外観設計に基づいて制作されたも のであるところ,控訴人と被控訴人竹中工務店は,控訴人の設計を被控訴 人竹中工務店が引き継ぐ形において,共同で本件建物の外観を設計したと いえるので,本件建物外観は共同著作物である。万が一,共同著作物では ないとしても,被控訴人竹中工務店は,控訴人外観設計の本質的特徴を複 製又は翻案する形で本件建物外観を設計したから,本件建物外観は控訴人 外観設計を原著作物とする二次的著作物に当たる。
(2) しかしながら,控訴人の主張は採用できない。理由は次のとおりである。 ア まず,控訴人(控訴人代表者)は,控訴人設計資料を作成するに当たり,\n外装スクリーン部分以外は全て被控訴人竹中工務店作成に係る資料を流用 しており,手を加えていない事実を自認している。したがって,控訴人外 観設計のうち外装スクリーンを除くその余の部分については,そもそも控 訴人代表者の創作的関与を認める余地がない。\nイ 次に,外装スクリーン部分について,控訴人設計資料及び控訴人模型に 基づく控訴人代表者の提案内容が「建築の著作物」の創作に関与したと認\nめ得るだけの具体性ある表現といえないことは,原判決が指摘するとおり\nであって,控訴理由を踏まえてもその認定判断は覆らない。 控訴人は,控訴人代表者の上記提案が「実際建築される建物に用いられ\nる組亀甲柄より大きいイメージ」として作成されていた点に関し,たとえ そうであったとしても,「具体的な建物の外観が視覚的に,一般人にとっ て看取可能な形で図面上表\現されていれば,それは具体的な表現である(か\nら,上記提案がアイデアにすぎないことの根拠にはならない)」などとも 主張するが,格子の大きさ一つ取っても,その大きさ次第で,いくらでも 集合体としての外観デザインが変わり得ることは後記のとおりであるから, 控訴人が想定していた現実の外観は,控訴人設計資料及び控訴人模型をも ってしては,いまだ「視覚的に,一般人にとって看取可能な形で図面上表\ 現されていた」といえず,その主張はやはり採用できないといわざるを得 ない。
ウ また,仮に,控訴人設計資料及び控訴人模型に現れた外装スクリーン部 分の表現そのもの(図案)に関して,「建築の著作物」に限らず,何らか\nの著作物性(創作性)を認め得るとしても,(外装スクリーンに関する) 控訴人代表者の提案と現実に完成した本件建物の外観とでは,2層3方向\nの連続的な立体格子構造(組亀甲柄)が採用されている点と,せいぜい色\n(白色)が共通するのみであり,少なくとも立体格子の柄や向き,ピッチ, 幅,隙間,方向が相違することは原判決が認定するとおりであるところ, 実際に本件建物の外観を撮影した写真(甲5の1・2)と控訴人設計資料 及び控訴人模型とを見比べてみても(あるいは,乙2の比較図面を参照し ても),例えば,個々の格子を意識させるものであるかどうか(本件建物 は全体として細かい編み込み模様になっており,遠目に見ると個々の格子 をそれほど意識させない態様であるのに対し,控訴人代表者の提案は,個々\nの格子が大きく,格子を構成する直線も際立っており,遠目に見てもその\n存在を意識させるとともに,六角形のデザインがより強調される態様とな っている。),編み込み模様の編み目の向き(本件建物は横方向を意識さ せるのに対し,控訴人代表者の提案は縦方向を意識させる。),外装スク\nリーンの裏側にある建物自体の骨格を意識させるかどうか(本件建物の外 装スクリーンは編み目が細かく,裏側にある建物自体の骨格を意識させな いのに対し,控訴人代表者の提案のそれは編み目が粗く,裏側にある建物\n自体の骨格が透けて見えてその存在を意識させる。)などの点において大 きく異なっており,全体としての表現や見る者に与える印象が全く異なる\nことは明らかといえる。 この点,控訴人は,控訴理由書等において,立体格子のピッチ,幅,隙 間や,向き,方向などの相違は,いずれも本件建物の外観(見た目)に特 段の違いをもたらすとはいえず,表現の本質的特徴を違えるほどの違いと\nはいえない旨主張するが,同じ組亀甲柄を採用したデザインでも,上記の 諸要素等の違い(格子自体のデザインはもちろん,その大きさや配置,組 み合わせ方等の違い)により,様々な表現があり得ることは,本件で提出\nされている関係各証拠(甲30〜34,乙12,13など。乙号証は枝番 号を含む。)からも明らかといえるし,実際に本件建物外観と控訴人代表\n者の提案とで表現が大きく異なることは前記のとおりであるから,採用で\nきない。
エ そうすると,結局のところ,外装スクリーン部分に関し本件建物外観と 控訴人代表者の提案とで共通するのは,ほぼ2層3方向の連続的な立体格\n子構造(組亀甲柄)を採用した点に尽きるのであって,それ自体はアイデ\nアにすぎない(前記のとおり,建物の外観デザインに組亀甲柄を採用する としても,その具体的表現は様々なものがあり得るのであるから,組亀甲\n柄を採用するということ自体は,抽象的なアイデアにすぎない。)という べきであるから,控訴人代表者が本件建物外観について創作的に関与した\nとは認められないし,控訴人代表者の提案が本件建物の原著作物に当たる\nとも認められない。
(3) 以上によれば,原判決が,本件建物外観の設計に関し,控訴人代表者の創\n作的関与並びに共同創作の意思及び事実を認めず,かつ,本件建物外観を控 訴人外観設計の二次的著作物とも認めなかったことは相当であり,その認定 判断に誤りはない。

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◆原審はこちら。平成27(ワ)23694

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平成29(ネ)10042  損害賠償請求控訴事件(本訴),著作権侵害差止等請求控訴事件(反訴)  著作権  民事訴訟 平成29年10月5日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審でも、アンケート項目について、著作物性(編集著作物を含む)が否定されました。
 著作権法は思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(著作\n権法2条1項1号),複製に該当するためには,既存の著作物とこれに依拠して作 成された物の共通する部分が著作権法によって保護される思想又は感情の創作的な 表現に当たることが必要である。
1審原告追加部分は,本件1審被告ファイルに対し,1)「ご希望時間」欄 を新設して同欄内に午前10時から午後5時30分までの30分刻みの表示をし,\n2)「住所・TEL」欄を「住所」欄と「電話番号」欄に分け,住所欄に「〒」の表\n示をし,3)「事故発生状況」欄の空白部分の代わりに「□その他」を新設し,4)「 あなた」欄の「□自動車運転」「□自動車同乗」を併せて「□自動車(□運転,□ 同乗)」とするとともに,「□バイク運転」「□バイク同乗」を併せて「□バイク (□運転,□同乗)」とし,5)「初診治療先」「治療先2」「治療先3」欄をそれ ぞれ「治療先1/通院回数」「治療先2/通院回数」「治療先3/通院回数」とした 上で,それぞれの欄内に「病院名: /通院回数: 回」の表示をし,6)「自賠責 後遺障害等級」「簡単な事故状況図をお書きください。」「受傷部位に印をつけて ください。」の各欄を設けた上,「受傷部位に印をつけてください。」欄に人体の 正面視図及び後面視図を設け,7)相談者の「保険会社・共済名」欄内のチェックボ ックス及び選択肢を削除し,「加害者の保険」「保険会社名」の各欄を「加害者の 保険会社名」欄にするとともに同欄内のチェックボックス及び選択肢を削除したも のである。これに対し,1審被告アンケート1及び2は,いずれも上記6)の人体の 正面視図及び後面視図のデザインが1審原告追加部分と異なるが,その他の点は上 記1)から7)の点において1審原告追加部分と同一の記載がされている。 まず,1審原告追加部分と1審被告アンケート1及び2に共通する上記1) の点については,相談希望者から必要な情報を聴取するという本件1審原告ファイ ルの目的上,相談の希望時間を聴取することは一般的に行われることで,そのため に「ご希望時間」欄を設けて欄内に一定の時間を30分ごとに区切った時刻を掲記 することは一般的にみられるありふれた表現であるから,著作者の思想又は感情が\n創作的に表現されているということはできない。\nまた,1審原告追加部分と1審被告アンケート1及び2に共通する上記2)〜5)及 び7)の点は,いずれも,本件1審被告ファイルの質問事項欄を統合又は分割し,あ るいは,各質問事項欄内の選択肢やチェックボックスなどを相談者が記載しやすい ように追加又は変更したものであり,いずれも一般的にみられるありふれた表現で\nあるから,著作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。\nさらに,1審原告追加部分と1審被告アンケート1及び2に共通する上記6)の点 については,相談希望者から必要な情報を聴取するという本件1審原告ファイルの 目的に照らすと,事故状況や被害状況を聴取するために,自賠責後遺障害等級を質 問事項に設け,事故状況図や受傷部位を質問事項に入れ,受傷部位について正面視 及び後面視の各人体図を設けて印を付けるよう求めたことは,いずれも一般的に見 られるありふれた表現であるから,著作者の思想又は感情が創作的に表\現されてい るということはできない。 以上によると,1審原告追加部分と1審被告アンケート1及び2の共通する部分 は,いずれも著作権法によって保護される思想又は感情の創作的な表現には当たら\nないから,1審被告アンケート1及び2は1審原告追加部分の複製には該当しない というべきである。なお,1審原告追加部分と1審被告アンケート1及び2では, 正面視及び後面視の各人体図のデザインが異なるから,人体図について1審被告ア ンケート1及び2が1審原告追加部分の複製に該当することはない。 1審原告は,1審被告において1審原告追加部分に著作物性があることを認めて いるから,この点について裁判上の自白が成立し,裁判所を拘束すると主張するが, 本件訴訟において,1審被告が1審原告追加部分の著作物性を自認したものとは認 めることができないから,1審原告の上記主張は失当である。
5 争点8(本件1審被告ファイルの編集著作物性の有無)について
ある編集物が編集著作物として著作権法上の保護を受けるためには,素材 の選択又は配列によって創作性を有することが必要である(著作権法12条1項)。
(2) 本件1審被告ファイルには,「氏名・フリガナ」,「年齢・性別・職業」, 「住所・TEL」,「メールアドレス」,「事故日」,「事故発生状況」,「あな た」(判決注:相談希望者),「加害者」,「受傷部位」,「傷病名」,「症状」, 「治療経過」,「初診治療先」,「治療先2」,「治療先3」,「あなたの保険」, 「保険会社・共済名」,「加害者の保険」,「保険会社名」の欄が順に設けられ, それぞれ左欄には上記の各項目タイトルが,右欄には各項目に対応する情報を記載 する体裁となっていること,これらの各欄に引き続いて,「相談内容・お問い合わ せ」欄が設けられ,その下に情報を記載するための空白が設けられていることが認 められる。また,本件1審被告ファイルの「事故発生状況」,「あなた」,「加害 者」,「受傷部位」,「傷病名」,「治療経過」,「あなたの保険」,「保険会社 ・共済名」,「加害者の保険」,「保険会社名」の右欄には,複数の選択肢とそれ に対応したチェックボックスが設けられていることが認められる。
(3) まず,相談者から相談に先立ち交通事故に関する必要な情報を把握すると いう本件1審被告ファイルの性質上,1)相談者個人特定情報,2)交通事故の具体的 状況,3)相談者の受傷及び治療の状況並びに4)事故関係者の保険加入状況に関する 情報のほか,5)具体的な相談希望内容についての情報を収集する必要があることは, 当然のことであると考えられる。本件1審被告ファイルは,「氏名・フリガナ」, 「年齢・性別・職業」,「住所・TEL」,「メールアドレス」,「事故日」,「 事故発生状況」,「あなた」,「加害者」,「受傷部位」,「傷病名」,「症状」, 「治療経過」,「初診治療先」,「治療先2」,「治療先3」,「あなたの保険」, 「保険会社・共済名」,「加害者の保険」,「保険会社名」の欄を順に設け,これ らの各欄に引き続いて,「相談内容・お問い合わせ」欄を設け,その下に情報を記 載するための空白を設けているが,これらの事項は,上記の本件1審被告ファイル の性質上,当然に設けられるべき項目であって,その順番も,上記1)から5)の順に, それぞれの必要項目を適宜並べたに過ぎないというほかないから,これらの項目を 上記のとおり設けたことによって,素材の選択又は配列による創作性があるという ことはできない。 また,上記のような本件1審被告ファイルの性質上,これらの事項に関連する具 体的な項目の選択についても自ずと限定されるところ,本件1審被告ファイルのチ ェックボックスを付した各項目は,いずれもありふれたものというほかなく,その ような項目を適宜並べたものというほかないから,素材の選択又は配列による創作 性があるということはできない。この点について,1審被告は,特に,「事故発生 状況」及び「傷病名」の項目の選択について主張するが,「事故発生状況」につい ての「□追突」,「□正面衝突」,「□出合い頭衝突」,「□信号無視」,「□無 免許」,「□飲酒」という項目及び「傷病名」についての「□脳挫傷」,「□捻挫 挫傷」,「□打撲」,「□脱臼」,「□骨折」,「□靱帯損傷」,「□醜状痕」, 「□偽関節変形」,「□神経症状」,「□CRPS」,「□機能障害」,「□神経\n麻痺」,「□筋損傷,「□その他( )」という項目は,交通事故において は通常見られる事故態様及び傷病名であって,素材の選択又は配列による創作性が あるということはできない。なお,1審被告が主張するように,事故現場の図面や 「事故当日の天候」,「道路の見とおしの状況」,「道路状況」,「標識や信号機 の有無や場所」,「交通量」などを記載させることも考えられるが,これらの項目 は,事故態様そのものである「□追突」,「□正面衝突」,「□出合い頭衝突」, 「□信号無視」,「□無免許」,「□飲酒」といった項目に比べて必要性が高いと はいえず,上記の事故現場の図面や「事故当日の天候」等の項目がないことは,素 材の選択又は配列による創作性があることを基礎づけるということはできない。 さらに,チェックボックスを,上記のような項目と組み合わせて配置したからと いって,素材の選択又は配列による創作性が認められるものではない。 そして,他に本件1審被告ファイルにおいて素材の選択又は配列による創作性が あると認めるに足りる証拠はないから,本件1審被告ファイルが編集著作物に当た るとは認められない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成28(ワ)12608、平成28(ワ)27280

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平成28(ネ)10074等  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年10月5日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 一審では本件特許2についても特許権侵害と認定されましたが、知財高裁はこれについては、被告製品は技術的範囲に属しないと判断しました。
 一審被告製品は,本件発明2の構成要件2Fを充足しないので,その技術的範囲\nに属するとは認められない。その理由は,以下のとおり原判決を補正するほかは, 原判決の第3の3記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決51頁6行目〜52頁6行目を,以下のとおり改める。
「ア 一審原告は,乙1のSIMS分析結果によると,一審被告製品において, 活性層のp型窒化物半導体層側の障壁層B11〜障壁層BLの領域に含まれる複数の 障壁層のSi濃度は,5×1016/cm3未満であると合理的に推認される旨主張する。 そこで,検討すると,乙1のSIMSチャート図では,Si濃度は,n型窒化物 半導体層側からp型窒化物半導体層側に向かって下降し,いったん5×1016/cm3 付近まで落ちた後,p型窒化物半導体層側に向かって上昇していることが観察され る。 この点について,一審原告は,Si濃度の上昇は試料の表面汚染の影響を受けた\nものであり,この表面汚染の影響を除外して考えれば,Siをアンドープにした後,\np側に向けて再びSiをそれよりも高い濃度でドープすることは考えられないから, Si濃度は,5×1016/cm3未満であると考えられると主張する。しかし,一審被告 製品における表面汚染の有無及び程度は明らかでなく,一審被告製品における表\面 汚染について定量的な主張立証がされているわけでもない。また,証拠(甲37, 39,乙44,45)と弁論の全趣旨によると,井戸層にはSiがドープされてい ないから,そのためにSIMSチャートでは障壁層のSi濃度が低く現れることが あること,Si濃度のプロファイルには,ノイズによる「ゆれ」があることが認め られるから,Si濃度がいったん5×1016/cm3付近まで落ちていることから,直ち に,一審被告製品において障壁層のSi濃度が5×1016/cm3を下回っていたと認 めることは困難である。 そうすると,乙1のSIMSチャート図から,p型窒化物半導体層側の障壁層B Lを含む複数の障壁層のSi濃度は,5×1016/cm3未満であると合理的に推認され ると認めることはできない。・・・」

◆判決本文

◆原審はこちら。平成26(ワ)8905

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平成29(ネ)10020等  競業行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成29年9月13日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 会社とプログラマーとの関係が雇用契約なのか、請負契約なのかが争われました。 概括的な記載しかない発注書では請負としての実質を備えたものとはいえないと判断されました。今回は問題になってませんが、職務発明かどうかも同様にもめそうですね。
 上記認定事実を踏まえて,控訴人と被控訴人の間の契約の性質が,請負 契約であるのか,雇用契約等であるのかについて検討するに,控訴人と被 控訴人との間で締結された本件基本契約の各条項(甲1)をみる限りは, その内容が請負を内容とするものであることは否定できないところであ る。 しかしながら,使用者と労働者との間における労働契約の存否について は,明示された契約の形式のみによることなく,その労務供給形態の具体 的実態に照らし事実上の使用従属関係があり,当該使用従属関係を基盤と する契約を締結する旨の当事者間に客観的に推認される黙示の意思の合致 があるか否かにより判断されるべきものといえる。特に,本件では,被控 訴人が控訴人に現に雇用されていた状況の下で,控訴人代表者からの提案\nにより,当該雇用関係が解消され,本件基本契約の締結に至ったという経 過があるところ,一般に,労働者の立場にある者が使用者から上記のよう な提案を受けた場合,これを容易に拒絶し難いであろうことは,推察し得 るところである。また,この時点において,被控訴人が,労働関係法令に よって保護される労働者としての地位をあえて放棄し,リスクの高い個人 事業者の地位を選択し,控訴人との契約を請負契約に切り替えようとする 積極的な理由は認め難いのであり,これらの事情を勘案すれば,被控訴人 が真にその自由意思によって控訴人との雇用契約関係を解消し,請負を内 容とする本件基本契約を締結したと断ずることには疑問がある。してみる と,本件においては,控訴人と被控訴人の間で本件基本契約が締結された 事実があるからといって,当該契約に規定された各条項どおりの契約が成 立したものと直ちに断ずることはできないのであり,本件基本契約の各条 項に従った請負契約の成立が認められるためには,本件基本契約締結以後 の被控訴人による労務提供の実態や報酬の労務対価性等が,それ以前の雇 用関係の下におけるものと異なっており,真に請負契約としての実質を備 えたものであることが認められる必要があるのであって,そうでない限り は,従前と同様の雇用契約関係が継続しているものと解するのが,客観的 事実から推認される当事者間の黙示の意思に適合するものというべきであ る。
イ そこで,上記認定事実に基づき考察するに,まず,被控訴人による労務 提供の実態をみると,業務の内容,勤務場所,勤務時間,業務遂行上の指 揮監督の状況において,本件基本契約締結の前後で格別の相違は見られな い。また,本件基本契約締結以後の業務においては,その勤務時間からし て,被控訴人が控訴人以外の業務を受注し得る状況にはなく,現に,その 実績もないのであり,業務の専属性は高いものといえるし,そのような状 況もあって,被控訴人が控訴人から求められた業務を断る自由(諾否の自 由)があったとは考えにくい。そのほか,本件基本契約締結以後の業務に おいても,被控訴人が使用する主要な機材(パソコン)は控訴人所有のも\nのであり,業務上使用する名刺も控訴人の社員用のものであって,いずれ も本件基本契約締結以前と異ならない。 他方,報酬の労務対価性に関しては,報酬の決め方や支払方法が,前記 (1) 本件基本契約締結の前後で相違していることが認められる。しかしながら,控訴人発行の発注書の記載には,「業務の内容」として,「開発業務」との概括的な記載しかなく,その対価である「委託料」についても総額が記載されるのみである。一般に,請負契約において発注書等で請け負うべき業務の内容やその対価の額を定める場合に は,業務内容の詳細やそれに対応した対価の額の内訳を記載し,当事者間 の認識を明確化し,後の紛争防止を図るのが通常といえるのであり,これ からすれば,上記のような概括的な記載しかない発注書によって報酬の額 を定める方法は,業務の成果と報酬との具体的な対応関係が明らかではな く,真に請負としての実質を備えたものと評価することは困難である。む しろ,上記発注書の記載は,「本契約の発効日」から「業務の完了期日」 まで,控訴人における「開発業務」に従事すること全般に対する対価を定 めたもの(すなわち,雇用契約上の報酬額を,それが,労働基準法の定め に合致するかどうかはともかくとして,月々の給与としてではなく,不定 期の期間ごとに区切って,その都度定めたもの)と理解することが可能で\nあるといえる。 以上によれば,本件基本契約締結以後の被控訴人による労務提供の実態 や報酬の労務対価性等をみても,それ以前の雇用関係の下におけるものと 異なるものではなく,真に請負契約としての実質を備えたものであること が認められるとはいえないから,控訴人と被控訴人の間の契約の性質は, 本件基本契約締結以後においても,それ以前と同様の雇用契約のままで あったと解するのが相当である。そして,そうである以上,本件基本契約 のうち,雇用契約の性質に反する条項は,その効力を有しないものという べきである。
ウ 他方,控訴人は,控訴人と被控訴人の間では,本件案件に係る成果物が 特定されており,被控訴人は控訴人に対し特定の成果物提出義務を負って いた旨(すなわち,控訴人と被控訴人の間の契約は請負契約である旨)を 主張し,これを示す事情として,A社ス案件及びC社ア案件について,被 控訴人が,甲10及び11工数見積表,その前提となる詳細見積書(甲6\n6の2,67の2),それらをスケジュール化した甲12開発計画及び顧 客向けの見積試算表(甲70の2)や見積資料(甲72の2)を作成して\nいた事実を挙げる。 しかし,被控訴人が,控訴人の受注したA社ス案件及びC社ア案件につ いて,開発責任者又はプログラマーとして開発業務に当たっていた以上, これらの案件において想定される最終的な成果物を把握し,この点につい て控訴人との共通認識があったことは当然のことであり,このことは,控 訴人と被控訴人の間の契約が,請負であるか,雇用であるかに関わらない ことである。また,控訴人の要求に応じて,これらの案件に係る工数見積 表等の資料を作成することは,開発責任者等としての業務の範囲内のこと\nと考えられるのであり,このことも,控訴人と被控訴人の間の契約が,請 負であるか,雇用であるかに関わらないことといえる。 したがって,控訴人の上記主張は,控訴人と被控訴人の間の契約の性質 いかんに関わる事情を指摘するものではないから,これによって上記イの 判断が左右されるものではない。

◆判決本文

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平成28(ワ)14131  特許権侵害行為差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年9月28日  東京地方裁判所(47部)

 薬品について、無効理由ありとして権利行使不能と判断されました。争点は無効かどうかのみです。\n
 上記各記載によれば,乙15には,「ヒトにおいて乾癬を処置するために皮 膚に塗布するための混合物であって,1α,24-dihydroxycholecalciferol(タ カルシトール),及びBMV(ベタメタゾン吉草酸エステル),並びにワセリ ンとを含有する非水性混合物であり,皮膚に1日2回塗布するもの」が記載さ れていると認められる。 そして,本件発明12と上記の乙15発明とを対比すると,両発明は,「ヒ トの乾癬を処置するための皮膚用の医薬組成物であって,ビタミンD3の類似 体からなる第1の薬理学的活性成分A,及びベタメタゾンまたは薬学的に受容 可能なそのエステルからなる第2の薬理学的活性成分B,並びに少なくとも1\nつの薬学的に受容可能なキャリア,溶媒または希釈剤を含む,非水性医薬組成\n物であり,医学的有効量で局所適用されるもの」で一致し,前記第2,1(7)記 載の相違点1及び3において相違すると認められる(なお,相違点1及び3の 存在については,当事者間に争いがない。)。 なお,原告は,相違点2(本件発明12は非水性医薬組成物であるのに対し, 乙15発明は非水性組成物であるか定かではない点。)の存在を主張するが, 以下の理由により,相違点2の存在は認められない。 すなわち,乙15にはTV−02軟膏についてはワセリン基剤であることが 記載されている。軟膏は基剤に活性成分を混合分散させたものといえるが,ワ セリンは油脂性基剤であって,混和性の点から,ワセリンと水が併用されるこ とは考えにくい。また,乙15では,TV−02軟膏塗布と白色ワセリン塗布 とが比較され(432頁),D3+BMV混合物塗布とBMV+ワセリン混合 物塗布とが比較されており(431頁,433頁),通常,比較においては, 活性成分以外の条件は揃えるから,TV−02の基剤はワセリンであると考え られる。そうすると,TV−02軟膏に,水は基剤として添加されていないと 考えるのが自然であるし,TV−02軟膏と混合するBMV軟膏についても, 混和性の点から,油脂性基剤が使用され,水は基剤として添加されてはいない と考えるのが妥当である。したがって,乙15発明に係るTV−02軟膏とB MV軟膏の混合物(D3+BMV混合物)についても,水が基剤として添加さ れていないものと理解される(なお,仮に,相違点2を一応認定するとしても, それは実質的なものとはいえないから,当業者であれば,相違点2に係る構成\nは容易に想到できるものといえる。)。

◆判決本文

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平成28(ワ)39582  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年9月28日  東京地方裁判所

 業務用ハカリの形状について、不競法2条1項1号にいう「商品等表示」ではないと判断されました。理由は、一部の形状については、独占性を認めてくれましたが、周知まではとはいえない、そして、原告主張の部分は、ありふれている、というものです。
 不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」とは,「人の業務に係る\n氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を 表示するもの」をいうところ,商品の形態は,商標等と異なり,本来的には\n商品の出所を表示する目的を有するものではないが,商品の形態自体が特定\nの出所を表示する二次的意味を有するに至る場合がある。そして,商品の形\n態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有し,不正競争防止法2条1項\n1号にいう「商品等表示」に該当するためには,1)商品の形態が客観的に他 の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,2)その 形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣 伝広告や爆発的な販売実績等により,需要者においてその形態を有する商品 が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)\nを要すると解するのが相当である。
・・・
以上のとおり,被告商品の販売が開始された平成27年2月時点ま でに,奥側から手前側に向かって下方向に緩やかに傾斜した計量台とい う構成を備えている重量検品ピッキングカートや,奥側から手前側に向\nかって下方向に緩やかに傾斜した台を備えているピッキングカートが相 当数存在し,その他にも,ショッピングカート等において,被収容物を 収容するためのかご等を載置する部分を奥側から手前側に向かって下方 向に緩やかに傾斜させる構造も従来から多数存在したものである。これ\nらの事実によれば,重量検品ピッキングカートにおいて,「上下段にピ ッキングされた商品を入れるコンテナ,段ボール,トレイ等を置く計量 台が作業者の奥側から手前側に向かって下方向に緩やかに前傾し,」と いう構成(本件特徴1)’)は,ごくありふれた構成というべきであり,\nそれが,客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴であるとは到底認 められない。
・・・
以上のとおり,被告商品の販売が開始された平成27年2月時点ま でに,先端を略半円状ないしそれに近い形状に上向きに湾曲させた2本 の(独立した)把持部という構成を備えている重量検品ピッキングカー\nトやピッキングカートが相当数存在し,その他にも,ベビーカーにおい て,把持部の先端が上向きの略半円状ないしそれに近い形状となってい る構成も多数存在するものである。これらの事実によれば,重量検品ピ\nッキングカートにおいて,「カート上段の左右端に設置された2本の把 持部の先端が略半円状に上向きに湾曲している」という構成(本件特徴\n2))も,ごくありふれた構成というべきであり,それが,客観的に他の\n同種商品とは異なる顕著な特徴であるとは到底認められない。
エ 特別顕著性についての小括
上記イ及びウのとおり,本件特徴1)’及び2)は,いずれもありふれた形 態というべきであり,客観的に他の同種商品と異なる顕著な特徴とはいえ ない。なお,ありふれた形態を併せただけでは,顕著な特徴とはいえない し,そもそも,上記イ及びウのとおり,本件特徴1)’及び2)の両方を備え る他の同種製品も,被告製品の販売開始時までに存在している(株式会社 イシダの「さいまるカート」(乙4及び乙5),株式会社IHIエスキュ ーブの「計量検品ピッキングカート(4ハカリ)」(乙6),株式会社椿 本チエインの「つばきクイックカート」(乙11))。 したがって,原告の主張を善解してもなお,原告商品の形態は,客観的 に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しているということはできず, 不正競争防止法2条1項1号の商品等表示には当たらない。\n(なお,上記認定のとおり,本件特徴1)’及び2)は,原告により独占的に 使用されてきたとは認められないし,また,原告の製造販売する重量検品 ピッキングカートに係るカタログ(甲1〜4)及び広告記事等(甲5の1 ないし12,6,17〜50)においても,本件特徴1)’及び2)が商品の 特徴として強調されているとは認められないから,これらの事情によれば, 本件特徴1)’及び2)が原告の商品等表示として周知になっているとも認め\nられない。)

◆判決本文

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平成29(ネ)245  商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成29年9月21日  大阪高等裁判所

 高級絨毯の並行輸入品について、国内商標権を持っている代理店が商標権侵害で訴えた事件です。大阪高裁は、1審と同じく、商標権侵害としての実質的違法性を欠くと判断しました。
 イ 商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品に つき,その登録商標と同一の商標を付したものを輸入する行為は,許諾を 受けない限り,商標権を侵害するが,そのような商品の輸入であっても, 1) 当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受 けた者により適法に付されたものであり,2) 当該外国における商標権者 と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一 人と同視し得るような関係があることにより,当該商標が我が国の登録商 標と同一の出所を表示するものであって,3) 我が国の商標権者が直接的 に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該 商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証 する品質において実質的に差異がないと評価される場合には,いわゆる真 正商品の並行輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠くものと 解される(フレッドペリー事件最高裁判決)。
(2) 被控訴人標章1が付された被控訴人商品の販売等について
ア 前記2のとおり,被控訴人標章1が記載された被控訴人タグは,ゾ社に よって被控訴人商品に付されたと認められる。 他方,証拠(甲53)及び弁論の全趣旨によれば,ゾ社は,イランにお いて,「ZOLLANVARI」をペルシア文字で表記した商標の登録を出願し\nたが拒絶され,「ZOLLANVARI」に関する商標について商標権を取得し ていないことが認められる。しかし,証拠(甲33)によれば,ゾ社は世 界各地に直営店を設けている中で,日本においては,控訴人が,ゾ社の総 代理店として,直営店と同じ扱いと待遇を受けていると認められる。それ に加えて,控訴人は,前記第2の2(3)のとおり,ゾ社から権限を授与さ れて初めて控訴人商標の登録を受けることができたのであるから,ゾ社が イランにおいて商標権を有している場合と実質的には変わるところがない といえる。 そうすると,被控訴人が,被控訴人標章1が付された被控訴人商品を輸 入した上,これを販売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した 行為は,控訴人商標の出所表示機能\を害することがないといえる。
イ 本件の証拠上,ゾ社と控訴人との間の総代理店契約において,控訴人が 控訴人商品の品質管理に直接関与していることを示すものはなく,控訴人 商品の品質管理は,基本的にはゾ社において行われているものと認められ る。 これに対し,被控訴人商品については,前記2のとおり,ゾ社から,被 控訴人が日本国内で販売することを前提として販売されたものであると認 められるから,被控訴人商品の品質については,これが日本において販売 されることを前提としてゾ社において管理しているものと認められる。 そうすると,ゾ社が外国における商標権者でなくても,控訴人商品につ き,控訴人商標の保証する品質は,控訴人がゾ社を通じて間接的に管理を していて,そのゾ社が,控訴人商品と同じく日本に輸出して日本において 販売される商品として被控訴人商品の品質を管理しているのであるから, 被控訴人商品と控訴人商品とは,控訴人商標の保証する品質において実質 的に差異がないといえる(本件は,被控訴人商品と控訴人商品のいずれも, ゾ社の下で製造されているという点において,フレッドペリー事件最高裁 判決の事案と異なるということがいえる。)。 この点に関し,控訴人は,被控訴人商品がゾ社の製品であるとしても, それはイラン国内のバザールで販売していた製品であり,ゾ社が日本輸出 向けとして選別し控訴人タグを付した控訴人商品とは品質の点で異なる旨 主張し,A及びBの説明(甲34,52)には,被控訴人商品に付されて いる別紙3のタグ(前記1(9))は,国内市場でのみ使用し,輸出向け商 品には使用しないとの趣旨の部分がある。 証拠(乙22の3)及び弁論の全趣旨によれば,ゾ社の取り扱うじゅう たんは,工場で生産されるものではなく,イラン国内において複数の織子 から仕入れる手織りのものをゾ社において仕上げていると認められる。そ うすると,製品ごとにその品質には相当のばらつきがあることが推認され るから,控訴人が主張するように,輸出向けと国内販売向けの製品を選別 するという取扱いも十分考えられるところである。\nまた,証拠(甲48の1,甲49の1,甲50の1,乙27の2,乙2 9の1,乙30の1,乙34の1,乙35の1,乙36の4)によれば, 控訴人商品のゾ社からの購入代金は1m2当たり224ないし715米ドル であるのに対し,被控訴人商品のゾ社からの購入代金は1m2当たり40な いし70米ドルであると認められ,明らかに控訴人商品の方が高いといえ る。 しかし,被控訴人代表者及びCが作成した,CとBとの間の会話を反訳\n及び翻訳した文書(乙49)の注記には,控訴人が取り扱っている商品が 主にルリバフなどの高級品であるのに対し,被控訴人はギャッベなどの比 較的安価な商品を取り扱っており,控訴人と被控訴人とでは同じゾ社の製 品でも取り扱っている商品が違う,顧客層が違うとの記載があるが,直ち に,両者の品質が異なるということにはならない。 また,証拠(乙25)によれば,別紙3のタグが付された被控訴人商品 の中には,当該タグを収納しているビニール袋の内側に,当該タグに記載 されたのと同じ寸法及び控訴人代表者の姓である「D」との文字が,おそ らく意図せずに転写されているものが複数あったことが認められる。この ことは,ゾ社において,控訴人向けとなる商品と,被控訴人向けとなる商 品とが重なり合っていることを示すものといえる。 そして,上記のとおり,控訴人商品についても,その品質管理を実質的 に行っていると認められるゾ社自身が,控訴人商品と同じく日本に輸出し て日本において販売される商品として被控訴人商品を被控訴人に販売して いる以上は,被控訴人商品と控訴人商品とは,控訴人商標の保証する品質 において実質的に差異がないとの評価は左右されず,被控訴人商品と控訴 人商品の品質が同一とまではいえなくても,控訴人商標の品質保証機能を\n害することはないというべきである。 そうすると,被控訴人が,被控訴人標章1が付された被控訴人商品を販 売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した行為は,控訴人商標 の品質保証機能を害することがないといえる。
ウ 前記ア及びイのとおり,被控訴人が,被控訴人標章1が付された被控訴 人商品を販売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した行為(前 記(1)ア2)の行為)は,控訴人商標の出所表示機能\及び品質保証機能を害\nすることがなく,また,以上に述べたところによれば,商標を使用する者 の業務上の信用及び需要者の利益を損なうものでもないから,商標権侵害 としての実質的違法性を欠くというべきである。
(3) 被控訴人ウェブサイトにおける被控訴人各標章の使用について
ア 被控訴人商品の広告に被控訴人各標章を付して被控訴人ウェブサイトに 掲載する行為(前記(1)ア3)の行為)については,これまでの認定及び判 断に基づくと,次のとおり指摘することができる。 まず,被控訴人各標章が付された広告において宣伝された被控訴人商品 は,被控訴人が,控訴人商標の外国における商標権者と同視できるゾ社か ら,日本国内で販売することを前提として,購入して輸入したものである。 そして,控訴人は,ゾ社の日本における総代理店であって,ゾ社の直営店 と同じ扱いと待遇を受けており,控訴人商標の出所表示機能\を検討する際 には,控訴人とゾ社とは同視することができる。そうであれば,被控訴人 商品の広告に,控訴人商標と類似する被控訴人各標章を付して被控訴人 ウェブサイトに掲載しても,控訴人商標の出所表示機能\を害することがな いといえる。 また,被控訴人商品と控訴人商品とは,控訴人商標の保証する品質にお いて実質的に差異がないといえるから,被控訴人商品の広告に,控訴人商 標と類似する被控訴人各標章を付して被控訴人ウェブサイトに掲載しても, 控訴人商標の品質保証機能を害することがないといえる。
イ そうすると,被控訴人商品の広告に被控訴人各標章を付して被控訴人 ウェブサイトに掲載する行為は,控訴人商標の出所表示機能\及び品質保証 機能を害することがなく,また,以上に述べたところによれば,商標の使\n用をする者の業務上の信用及び需要者の利益を損なうこともないから,商 標権侵害行為としての実質的違法性を欠くというべきである。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成27(ワ)5578

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平成28(ワ)24175  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年9月21日  東京地方裁判所(46部)

 技術的範囲に属しないと判断されました。均等侵害も否定されました。
 前記1(2)で述べたとおり,本件明細書の記載によれば,従来技術には, 気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,過飽和の状態を安定に維持して外 部に提供することが難しく,ウォーターサーバー等へ容易に取付けること ができないという課題があった。本件発明1は,このような課題を解決す るために,水に水素を溶解させる気体溶解装置において,水素水を循環さ せるとともに,水素水にかかる圧力を調整することにより,水素を飽和状 態で水素水に溶解させ,その状態を安定的に維持し,水素水から水素を離 脱させずに外部に提供することを目的とするものである。 本件発明1では,水素を飽和状態で水に溶解させ,その状態を安定的に 維持するために,加圧型気体溶解手段で生成された水素水を循環させて, 加圧型気体溶解手段に繰り返し導いて水素を溶解させることとし,「前記 溶存槽に貯留された水素を飽和状態で含む前記水素水を加圧型気体溶解 手段に送出し加圧送水して循環させ」る(構成要件F)という構\成を採用 している。また,気体溶解装置において,気体が飽和状態で溶解した状態 を安定的に維持し,水素水から水素を離脱させずに外部に提供するために は,水素を溶解させた状態の水素水が気体溶解装置の外部に排出されるま での間に,水素水にかかる圧力の調整ができなくなることを避ける必要が ある。このため,本件発明1では「前記溶存槽及び前記取出口を接続する 管状路」(構成要件E)という構\成を採用し,水素を溶解させた水素水が 導かれる溶存槽と水素水を気体溶解装置外に吐出する取出口との間を管 状路で直接接続し,水素水にかかる圧力の調整ができなくなることを避け ているものと解される。 以上のような本件発明1の課題,解決方法及びその効果に照らすと,生 成した水素水を循環させるという構成のほか,管状路が溶存槽と取出口を\n直接接続するという構成も,本件発明1の本質的部分,すなわち従来技術\nに見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分に該当するというべ\nきである。 被告製品は,管状路が溶存槽と取出口を接続するという構成を採用して\nいないことは前記4のとおりであるから,被告製品の構成は,本件発明1\nと本質的部分において相違するものと認められる。
イ これに対し,原告は,本件発明1の本質的部分は,生成された水素水が 大気圧に急峻に戻るのを防ぐため,管状路を加圧状態から大気圧状態まで の圧力変動があり得る構成と構\成の間に接続することであり,被告製品で は,冷水タンクにおいて水素水にかかる圧力が大気圧となるから,カーボ ンフィルタと冷水タンクを細管で接続する構成は本件発明1と本質的部分\nにおいて相違しない旨主張する。 しかし,被告製品のように,溶存槽から取出口までの間に水素水にかか る圧力が大気圧となる構成を設けた場合には,被告製品の取出口から水素\n水が取り出される前に,生成された水素水に対する圧力の調整ができなく なって水素が離脱し得ることになってしまい,「水素水から水素を離脱させ ずに外部に提供する」という効果を奏することができない。したがって, 本件発明1において,溶存槽と大気圧状態までの圧力変動があり得る構成\nの間に管状路を接続することが本質的部分であると解することはできず, 原告の主張は採用することができない。
エ したがって,被告製品は,均等侵害の第一要件を満たさない。
第二要件及び第三要件
ア 原告は,第二要件につき,被告製品と本件発明1とは,管状路を通して 徐々に生成した水素水を大気圧に降圧することにより,水素濃度を維持す る点が共通するから,「管状路に当たる細管が,カーボンフィルタの出口と 気体溶解装置内に設けられた冷水タンクの入口を接続する」という被告製 品の構成を,管状路が溶存槽と取出口を接続するという本件発明1の構\成 に置換することができると主張する。 しかし,前記 で判示したとおり,被告製品の上記構成では,装置の内\n部において水素水にかかる圧力の調整ができなくなり,「水素水から水素を 離脱させずに外部に提供する」という効果を奏することができず,被告製 品の構成と本件発明1の構\成は作用効果が同一であるとはいえない。した がって,被告製品は,均等侵害の第二要件も満たさない。
イ 原告は,第三要件につき,取出口の前に冷水タンクを設け,この冷水タ ンクに管状路を接続することは容易であると主張する。しかし,取出口の 前に大気圧となる冷水タンクを設けることは,「水素水から水素を離脱させ ずに外部に提供する」という本件発明1の課題解決原理に反するものであ るから,当業者としては,本件発明1に被告製品の上記構成を採用するこ\nとの動機付けを欠くものといえる。したがって,被告製品は,均等侵害の 第三要件も満たさない。 以上で述べたとおり,「管状路に当たる細管が,カーボンフィルタの出口と 気体溶解装置内に設けられた冷水タンクの入口を接続する」という被告製品 の構成は,均等侵害の第一要件,第二要件及び第三要件を満たさないから,\n被告製品の上記構成が本件発明1の構\成要件Eと均等であるとは認められ ない。

◆判決本文

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平成28(行ケ)10265  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年10月3日  知的財産高等裁判所(4部)

 特許庁では、無効審判における訂正請求が独立特許要件違反として否定されました。 知財高裁は、引用文献どおしを組み合わせる動機付けはあるが、本件発明には想到しないとして、審決を取り消しました。
 引用発明Aが検知の対象とするタグと引用例3事項の付け札とは,いずれ も盗難防止装置に使用されるタグ(付け札)の技術分野に関するものである。 また,引用発明Aと引用例3事項の付け札が使用される電子物品管理システムは, いずれも,タグ(付け札)が警報動作を開始する際には,電波送出パネル22(出 口送信機ユニット)が信号を発信し,タグ1(付け札)がこれを受信するものであ って,警報動作を終了する際には,コード信号出力ユニット(勘定所送信機ユニッ ト又は携帯送信機ユニット)が信号を発信し,タグ1(付け札)がこれを受信する ものである。このように,引用発明Aと引用例3事項の付け札が使用される電子物 品管理システムとは,タグ(付け札)が警報動作を開始する際及び終了する際の作 用機序において共通する。 さらに,引用発明Aは,警報動作を開始させる所定の周波数の電波及び警報動作 を終了させるコード信号のみを使用するものであるが,引用例3事項の付け札が使 用される電子物品管理システムは,これらに相当する信号(出口メッセージ及び終 了メッセージ)に加えて,能動的包装メッセージ,オーディオ包装メッセージ,受\n動的包装メッセージ及び保管メッセージを含む信号を使用し,電子物品監視システ ムの作動能力を拡張するものである。このように,引用例3事項の付け札は,引用\n発明Aが検知の対象とするタグと比較して,その作動能力が拡張されたものである。
(イ) 以上によれば,当業者は,引用発明Aが検知の対象とするタグに,盗難防 止装置に使用されるものであって,警報動作の開始及び終了の作用機序が共通し, さらに作動能力が拡張された引用例3事項の付け札を適用する動機付けがあるとい\nうべきである。
エ 引用例3事項を適用した引用発明Aの構成
(ア) 本件訂正発明8において,盗難防止タグは,警報出力手段が作動可能であ\nる状態及び警報出力状態を解除するに当たり,「一致判定手段が「前記識別手段が 識別した解除指示信号に含まれる」暗号コードが一致するか否かを判定する」もの である。一致判定手段は,前記識別手段が解除指示信号を識別した後に,その解除 指示信号に含まれる暗号コードと,暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致する か否かを判定するから,識別手段による解除指示信号の識別に用いられるコードと, 一致判定手段による暗号コードの一致判定に用いられるコードとは無関係なものと いうことができる。
・・・
(ウ) そうすると,警報動作を終了させるに当たり,本件訂正発明8の盗難防止 タグは,解除信号の一部に含まれる,解除指示信号の識別とは無関係な「暗号コー ド」と,記憶された暗号コードとの一致判定を行うのに対し,引用例3事項を適用 した引用発明Aのタグは,解除信号である「コード信号」と,記憶された「それぞ れ異なるメッセージを含む信号」中の「コード信号」との一致判定を行うものであ る。したがって,引用発明Aに引用例3事項を適用しても,相違点2に係る本件訂正 発明8の構成に至らないというべきである。
オ 本件審決の判断について
(ア) 本件審決は,引用例3事項の「終了メッセージを含む信号」は,警報オフ とする点において,「解除指示信号」と共通するとした上で,引用例3,甲5(米 国特許第5148159号明細書。平成4年公開)及び甲6(「NEC MOS集 積回路 μPD6121,6122データシート」NEC株式会社。平成7年公開) から,「信号が設定可能なコードを一部に含み,一致判定手段が前記信号に含まれ\nる前記コードが一致するか否かを判定する」という周知技術(以下「審決認定周知 技術」という。)が認められるから,引用例3事項を適用するに当たって,引用例 3事項の「終了メッセージを含む信号」を,設定機能によって所望に設定できるコ\nードを一部に含み,引用発明Aの一致判定手段において信号に含まれるコードが一 致するか否かを判定するように構成することは,当業者にとって格別困難ではない\nと判断した。
(イ) 本件審決は,引用発明Aに引用例3事項を適用するに当たり,周知技術を 考慮して変更した引用例3事項を適用することによって,本件訂正発明8を容易に 想到することができるとするものである。 しかしながら,前記エのとおり,引用発明Aに引用例3事項を適用しても,相違 点2に係る本件訂正発明8の構成に至らないところ,さらに周知技術を考慮して引\n用例3事項を変更することには格別の努力が必要であるし,後記(ウ)のとおり,引 用例3事項を適用するに当たり,これを変更する動機付けも認められない。主引用 発明に副引用発明を適用するに当たり,当該副引用発明の構成を変更することは,\n通常容易なものではなく,仮にそのように容易想到性を判断する際には,副引用発 明の構成を変更することの動機付けについて慎重に検討すべきであるから,本件審\n決の上記判断は,直ちに採用できるものではない。

◆判決本文

本件特許の侵害事件の控訴審です。こちらは技術的範囲に属しないと判断されています。

◆平成29(ネ)10022

◆原審はこちら。平成26(ワ)20319

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平成28(行ケ)10266  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年9月27日  知的財産高等裁判所(1部)

 カジノで用いるトランプ繰り出し装置の形状を立体形状とした商標出願が、識別力無し(3条1項3号違反)と判断された審決が、維持されました。3条2項の主張もなされましたが、我が国では使用されていないので否定されました。判決文の最後に形状が掲載されています。
 前記(1)によれば,本願商標の形状と一般的なカードシューの形状とは,横長の箱 状であり,上面をなだらかに傾斜させるとともに,前面を傾斜させ,半円状の開口 部が設けられているという点において共通するものであり,その共通する形状は, トランプを格納して,上から一枚ずつ取り出せるカード容器の基本的な形状であっ て,トランプ繰り出し装置という機能を効果的に発揮させるために通常採用されて\nいる形状であることが認められる。 そして,本願商標の立体的形状は,全体として曲線を輪郭として用いていること など,一定の特徴的形態を有するものであるけれども,このような曲線を輪郭とす るカードシューは,他にも存在するのであって(乙4,11),通常採用されてい る形状の範囲を超えるものとまでは認められず,本願商標に接した需要者が,商品 の美感に資することを目的とした形状であると予測し得る範囲内のものであると認\nめられる。 また,本願指定商品は,「トランプに内蔵印刷されたトランプ識別コード識別認 識機能及び識別認識結果によりトランプの真偽又はゲームの勝敗を判定するプログ\nラムを内蔵してなる」ものであるところ,前記認定のとおり,ランプやボタン等 は,電子的にトランプカードを識別認識してゲームの結果を表示する,又は電子機\n器を制御するために設けられたものであると認められる。このような電子的な機能\nを有する商品には,その機能を発揮させるために,ランプやボタン,スイッチ等を\n搭載することが通例であるといえ,本願商標のランプやボタン,スイッチ等の特徴 的形態については,本願商標に接した需要者が,商品の機能を効果的に発揮させる\nことを目的とした形状であると予測し得る範囲内のものであると認められる。\n以上によれば,本願商標の立体的形状は,客観的に見れば,機能又は美感に資す\nることを目的として採用されたものと認められ,また,需要者において,機能又は\n美感に資することを目的とした形状であると予測し得る範囲内のものであるから,\n商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として,商\n標法3条1項3号に該当するものと認められる。
・・・
商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは,こ のような商標は,商品の産地,販売地その他の特性を表示記述する標章,あるい\nは,商品等の形状を表示する標章であって,取引に際し必要適切な表\示として何人 もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのを公益 上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場 合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであることによる\nものである。また,商標法3条2項は,同条1項3号に該当する商標のように,本 来は,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとと もに,自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであっても,\nその使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識 することができるものについては,自他商品識別力を獲得したものとして,例外的 に商標登録を受けることができる旨を定めたものである。そして,商標法は全国一 律に適用されるものであって,商標権が全国に効力の及ぶ更新登録可能な排他的な\n権利であることからすると,商標法3条2項により商標登録が認められるために は,同条1項3号に該当する商標が,現実に使用された結果,指定商品又は指定役 務の需要者の間で,特定の者の出所表示として我が国において全国的に認識される\nに至ったことが必要であると解される(そうである以上,指定商品又は指定役務の 需要者は,通常,全国的に存在していることが前提となるものである。)。上記の理 は,商標法3条1項4号及び5号に該当する商標について,同条2項により商標登 録を受けることができる場合においても異なるところはないといえる。
本願商標及び使用に係る商品の構成態様
本願商標は,前記1 に認定したとおりの構成からなるものであるのに対し,証\n拠(甲1〜4,6,18,22,37,49)及び弁論の全趣旨によれば,原告 は,本願商標と類似する形状の商品「バカラ電子シュー」(本件使用商品)を製造 及び販売しているところ,本件使用商品は,「トランプに内蔵印刷されたトランプ 識別コード識別認識機能及び識別認識結果によりトランプの真偽又はゲームの勝敗\nを判定するプログラムを内蔵してなるトランプ繰り出し装置」であり,本願指定商 品に属するものであること,本件使用商品と本願商標の立体的形状は,ランプの数 や曲面の形状,カード繰り出し口の形状等において若干相違するものもあり,完全 に同一の形状からなるものということはできないものの,実質的に同一性を有する ものであるといえることなどが認められる。なお,証拠(甲1,2,18,24, 37,41)及び弁論の全趣旨によれば,本件使用商品は,その上面に,看者の注 意を惹くように書された「ANGEL EYE」等の文字が記載されていることが 認められるが,商品等は,その販売等に当たって,その出所たる企業等の名称や記 号・文字等からなる標章などが付されるのが通例であることに照らすと,使用に係 る立体形状にこれらが付されているということのみで,直ちに本願商標の立体的形 状について,商標法3条2項の適用を否定することは適切ではなく,上記文字商標 等を捨象して残された立体的形状に注目して,独自の自他商品識別力を獲得するに 至っているか否かを判断するのが相当である。  以上を前提に,本願商標について検討するに,本願商標の立体的形状と実 質的に同一の形状を有する本件使用商品が,輸出専用の商品であって我が国におい て流通していないことは,当事者間に争いがない。そして,原告が主張するよう に,本件使用商品が輸出され,又は輸出を前提としてのみ譲渡若しくはそのための 展示がされることにより,本願商標が使用されているとしても,本件使用商品の取 引に関係する者は国内の販売代理店に限定されており,本願商標を原告の出所表示\nとして認識し得る需要者は限られた範囲にとどまるから,本願指定商品の需要者が 全国的に存在していると認められない。のみならず,本件使用商品が輸出されるこ とにより,諸外国で使用されており,諸外国のカジノ関係者に知られているとして も,その周知性が我が国に及んでいると認めるに足りる証拠はないから,本願商標 が,現実に使用された結果,本願指定商品の需要者の間で,原告の出所表示として\n我が国において全国的に認識されるに至ったものと認めることはできない。 したがって,本願商標は,商標法3条2項により商標登録を受けることができる ものということはできない

◆判決本文

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平成28(行ケ)10183  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年10月3日  知的財産高等裁判所(4部)

 進歩性違反なしとした審決が維持されました。興味深いのは、引用文献に記載の発明の認定は誤りであるが、いずれにしても容易ではないとして、審決維持です。
 引用例1には,黒鉛粉末とリチウム金属粒子とを混合粉砕することにより,リチ ウム粒子が微粉末になると同時に,その一部が微粉末化された黒鉛の層間にインタ ーカレートし,リチウム元素微粒子をゲストとする層間化合物を形成すること,実 施例3で形成された層間化合物の層間距離が3.71Å(0.371nm)であり, これはリチウムが黒鉛の層間に入って形成された層間化合物の公知の層間距離3. 72Å(0.372nm)にほぼ一致するものであることが記載されている(【0 026】〜【0028】)。また,証拠(甲22)によれば,リチウムをゲストと するステージ1の黒鉛層間化合物における層間距離は3.706Åであることが認 められる。 そうすると,本件引用発明1における「層間化合物」は,ホストである黒鉛の層 間に,リチウム元素微粒子からなる金属層がゲストとしてインターカレートされた, 黒鉛層間化合物であるといえる。 したがって,本件審決が,引用例1には金属の元素微粒子が金属層となっている ことは記載も示唆もされていないとして,相違点1は実質的な相違点であると認定 したことについては,誤りがある。
・・・・
ア 本件各発明は,高容量と長いサイクル寿命とを共に実現することを可能にす\nる負極及びこの負極を用いた二次電池を提供することを目的とし,構成として,負\n極活物質が,ホストである黒鉛の層間に,リチウムと合金化可能なSn,Si,P\nb,Al又はGaから選択される金属の微粒子がゲストとしてインターカレートさ れた,黒鉛層間化合物から成ることにより,リチウムと合金化可能な金属が黒鉛の\n層間という導電性マトリックス内にあるようにし,これにより,金属と黒鉛との電 気的な接触が充分になされ電気伝導性を確保することができ,また金属を微粒子化 しても,導電性マトリックス内に囲われているので,金属の微粒子によって電解液 が分解しないように抑制することができ,そして,負極活物質がリチウムと合金化 可能な金属を有するので,負極を備えた電池の容量を高めることが可能\になる,と いうものである。 これに対し,本件引用発明1は,従来技術である,金属を加熱して気相で黒鉛と 接触反応させる方法や電気化学的な方法を用いて製造された黒鉛複合物には,黒鉛 中に層間化合物と金属とが十分に微細分散されておらず,リチウム二次電池の負極\n材料として使用した場合に,充放電を繰り返すうちに上記金属が剥離して負極活物 質として作用しなくなるという不具合があったことから,粉砕法によって,黒鉛粒 子,金属微粒子及び層間化合物とが微細に分散した黒鉛複合物を形成し,それによ り,層間に多量のリチウムイオンをインターカレート可能な黒鉛粒子を使用可能\と したり,微細化により導電性を高めようとしたりするものである。 このように,本件引用発明1においては,粉砕法によって黒鉛複合物を形成する ことが中核を成す技術的思想ということができる。また,引用例1には,リチウム と合金化可能な金属が黒鉛の層間という導電性マトリックス内にあるようにするこ\nとにより,電気伝導性を確保し,金属を微粒子化しても電解液が分解しないように 抑制することができ,負極を備えた電池の容量を高めるという,本件各発明の技術 思想は開示されていない。 したがって,引用例1に接した当業者が,本件引用発明1におけるゲストとして インターカレートされる「リチウム金属の微粒子」を「リチウムと合金化可能なS\nn,Si,Pb,Al又はGaから選択される金属の微粒子」に置き換えた上で, さらに,黒鉛層間化合物の製造方法について,本件引用発明1において中核を成す 粉砕法に換えて,微細分散工程のない塩化物還元法や気体法その他の方法を採用す ることを容易に想到できたということはできない。
イ また, 前記2(2)のとおり,Si及びAlは,単体金属原子として黒鉛の層間 にインターカレートすることはできないことから,これらの元素微粒子と黒鉛粒子 とを粉砕法により混合粉砕しても,黒鉛層間化合物を製造することはできないもの と認められ,証拠(甲6)によれば,Gaについても,Si及びAlと同様に,こ の元素微粒子と黒鉛粒子とを粉砕法により混合粉砕しても,黒鉛層間化合物を製造 することはできないものと認められる。そして,Sn及びPbについても,本件特 許の出願当時,これらを単体金属原子として黒鉛の層間にインターカレートするこ とができるなど,これらの元素微粒子と黒鉛粒子とを粉砕法により混合粉砕するこ とにより,黒鉛層間化合物を製造することができるとの知見が存在したとは認めら れない。 したがって,引用例1に接した当業者が,本件引用発明1におけるゲストとして インターカレートされる「リチウム金属の微粒子」を「リチウムと合金化可能なS\nn,Si,Pb,Al又はGaから選択される金属の微粒子」に置き換えて,これ らの金属の微粒子と黒鉛粒子とを粉砕法により混合粉砕することにより,これらの 金属をゲストとする黒鉛層間化合物を製造することを容易に想到できたということ もできない。

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平成28(行ケ)10236  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年9月21日  知的財産高等裁判所(第2部)

   「無洗米の製造装置」の発明について、審決は明瞭、知財高裁はこれを取消しました。請求項のほとんどの部分が精米方法あるいは装置の使用方法若しくは精米装置の製造方法で表されているので、不明瞭というものです。
 以上の記載事項A〜Iについての検討を総合すると,本件発明1の無洗米 の製造装置は,少なくとも,摩擦式精米機(記載事項F)と無洗米機(記載事項C) をその構成の一部とするものであり,その摩擦式精米機は,全精白構\成の終末寄り から少なくとも3分の2以上の工程に用いられているものである(記載事項E)上, 精白除糠網筒(記載事項F)と精白ロール(記載事項G)をその構成の一部とする\nものであり,その精白除糠網筒の内面は,ほぼ滑面状であって(記載事項F),精白ロ ールの回転数は毎分900回以上の高速回転とするものである(記載事項 G)と認 められる。 したがって,上記の無洗米の製造装置の構造又は特性は,記載事項A〜Iから理\n解することができる。
しかしながら,請求項1の無洗米の製造装置の特定は,上記の装置の構造又は特\n性にとどまるものではなく,精米機により,亜糊粉細胞層を米粒表面に露出させ,\n米粒の50%以上について胚盤又は表面部を削り取られた胚芽を残し,白度37前\n後に仕上がるように搗精し(記載事項B),白米の表面に付着する肌ヌカを無洗米機\nにより分離除去する無洗米処理を行う(記載事項C)ものであり,旨味成分と栄養 成分を保持した無洗米を製造するもの(記載事項D,I)である。 このうち,亜糊粉細胞層を米粒表面に露出させ,米粒の50%以上について胚盤\n又は表面部を削り取られた胚芽を残し,白度37前後に仕上がるように搗精する(記\n載事項B)ことについては,本件明細書の発明の詳細な説明において,本件発明に 係る無洗米の製造装置のミニチュア機で,白度37前後の各白度に搗精した精米を, 洗米するか,公知の無洗米機によって通常の無洗化処理を行い,炊飯器によって炊 飯し,その黄色度を黄色度計で計り,黄色度11〜18の内の好みの供試米の白度 に合わせて搗精を終わらせる時を調整して,本格搗精をすることにより行うこと (【0035】),このようにして仕上がった精白米は,亜糊粉細胞層が米粒表面をほ\nとんど覆っていて,かつ,全米粒のうち,表面が除去された胚芽と胚盤が残った米\n粒の合計数が,少なくとも50%以上を占めていること(【0036】)が記載され ており,結局のところ,ミニチュア機で実際に搗精を行うことにより,本格搗精を 終わらせる時を調整することにより実現されるものであることが記載されている。 したがって,本件明細書には,本件発明1の無洗米の製造装置につき,その特定の 構造又は特性のみによって,玄米を前記のような精白米に精米することができるこ\nとは記載されておらず,その運転条件を調整することにより,そのような精米がで きるものとされている。そして,その運転条件は,本件明細書において,毎分90 0回以上の高速回転で精白ロールを回転させること以外の特定はなく,実際に上記 のような精米ができる精白ロールの回転数や,精米機に供給される玄米の供給速度, 精米機の運転時間などの運転条件の特定はなく,本件出願時の技術常識からして, これが明らかであると認めることもできない。
ところで,本件明細書の発明の詳細な説明において,亜糊粉細胞層(5)につい ては,「糊粉細胞層4に接して,糊粉細胞層4より一段深層に位置して僅かに薄黄色 をした」,「厚みも薄く1層しかない」ものであり(【0015】),「亜糊粉細胞5は・・・整然と目立って並んでいる個所は少なく,ほとんどは顕微鏡でも確認しにくいほど糊粉細胞層4に複雑に貼り付いた微細な細胞であり,それも平均厚さが約5ミクロ\nン程度の極薄のものである」(【0018】)と記載され,胚芽(8)及び胚盤(9) については,「胚芽7の表面部を除去された」ものが胚芽(8)であり,それを更に\n削り取ると胚盤(9)になる(【0023】)と記載されている。しかるところ,本 件明細書の発明の詳細な説明には,米粒に亜糊粉細胞層(5)と胚芽(8)及び胚 盤(9)を残し,それより外側の部分を除去することをもって,米粒に「旨み成分 と栄養成分を保持」させることができる旨が記載されており(【0017】〜【00 23】),玄米をこのような精白米に精米する方法については,「従来から,飯米用の 精米手段は摩擦式精米機にて行うことが常識とされている」が,その搗精方法では, 必然的に,米粒から亜糊粉細胞層(5)や胚芽(8)及び胚盤(9)も除去されて しまうこと(【0024】,【0025】)が記載されている。また,本件明細書の発 明の詳細な説明には,「摩擦式精米機では米粒に高圧がかかり,胚芽は根こそぎ脱落 する」から,胚芽を残存させるには,研削式精米機による精米が不可欠とされてい た(【0029】)ところ,研削式精米機により精米すると,むらが生じ,高白度に なると,亜糊粉細胞層(5)の内側の澱粉細胞層(6)も削ぎ落とされている個所 もあれば,糊粉細胞層(4)だけでなく,それより表層の糠層が残ったままの部分\nもあるという状態になること(【0027】)が記載されている。 そうすると,精米機により,亜糊粉細胞層を米粒表面に露出させ,米粒の50%\n以上において胚盤又は表面を削り取られた胚芽を残し,白度37前後に仕上がるよ\nうに搗精することは,従来の技術では容易ではなかったことがうかがわれ,上記の とおり,本件明細書に具体的な記載がない場合に,これを実現することが当業者に とって明らかであると認めることはできない。 本件発明1は,無洗米の製造装置の発明であるが,このような物の発明にあって は,特許請求の範囲において,当該物の構造又は特性を明記して,直接物を特定す\nることが原則であるところ(最高裁判所平成27年6月5日第二小法廷判決・民集 69巻4号904頁参照),上記のとおり,本件発明1は,物の構造又は特性から当\n該物を特定することができず,本件明細書の記載や技術常識を考慮しても,当該物 を特定することができないから,特許を受けようとする発明が明確であるというこ とはできない。

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平成28(行ケ)10262  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年9月13日  知的財産高等裁判所(1部)

 ワンポイントの図形商標について、知財高裁は「著名であるので混同する」と判断し(15号違反)、混同しないとした審決を取り消しました。
 このように,本件商標がワンポイントマークとして表示される場合などを考える\nと,ワンポイントマークは,比較的小さいものであるから,そもそも,そのような 態様で付された商標の構成は視認しにくい場合があるといえる。また,マーク自体\nに詳細な図柄を表現することは容易であるとはいえないから,スポーツシャツ等に\n刺繍やプリントなどを施すときは,むしろその図形の輪郭全体が見る者の注意を惹 き,内側における差異が目立たなくなることが十分に考えられるのであって,その\n全体的な配置や輪郭等が引用商標と比較的類似していることから,ワンポイントマ ークとして使用された場合などに,本件商標は,引用商標とより類似して認識され るとみるのが相当である(本件商標と引用商標の差異のうち,比較的特徴的である といえる白抜きの逆三角形部分についても,外観において紛れる場合が見受けられ る。)。さらに,多数の商品が掲載されたカタログ等や,スポーツの試合観戦の場合 などにおいては,その視認状況等を考慮すると,特に,外観において紛れる可能性\nが高くなるものといえる。 また,本件商標の指定商品は,「被服」を始め「帽子,メリヤス靴下,スカーフ, サンダル靴,ティーシャツ」等であり,日常的に消費される性質の商品が含まれ, スポーツ用品(運動用具)関連商品を含む本件商標が使用される商品の主たる需要 者は,スポーツの愛好家を始めとして,広く一般の消費者を含むものということが できる。そして,このような一般の消費者には,必ずしも商標やブランドについて 正確又は詳細な知識を持たない者も多数含まれているといえ,商品の購入に際し, メーカー名やハウスマークなどについて常に注意深く確認するとは限らず,小売店 の店頭などで短時間のうちに購入商品を決定するということも少なくないと考えら れる。
(6) 混同を生ずるおそれについて
本件商標と引用商標は,全体的な構図として,配置や輪郭等の基本的構\成を共通 にするものであり,本件商標が使用される商品である被服等の商品の主たる需要者 が,商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない者を含む一般の消費者 であり,商品の購入に際して払われる注意力はさほど高いものとはいえないことな どの実情や,引用商標が我が国において高い周知著名性を有していることなどを考 慮すると,本件商標が,特にその指定商品にワンポイントマークとして使用された 場合などには,これに接した需要者(一般消費者)は,それが引用商標と全体的な 配置や輪郭等が類似する図形であることに着目し,本件商標における細部の形状(内 側における差異等)などの差異に気付かないおそれがあるといい得る。 また,引用商標は,スポーツ用品(運動用具)関連の商品分野において,原告の 商品を表示するものとして,需要者の間において著名であるところ,本件商標の指\n定商品には,引用商標の著名性が需要者に認識されているスポーツ用品(運動用具) 関連の商品を含むものであるから,本件商標をその指定商品に使用した場合には, これに接する需要者は,著名商標である引用商標を連想,想起して,当該商品が原 告又は原告との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグ\nループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれがあるもの というべきである。 したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するものとして商標登録 を受けることができないというべきであるから,これと異なり,本件商標が同号に 該当しないとした審決の判断には誤りがあるといわざるを得ない。
(7) 被告の主張について
ア 被告は,本件商標と引用商標とは,審決が認定した差異以外に,商標の 縦横比の相違,左端頂部の高さの相違,左上部の左傾斜直線の長さの相違を有する ものであり,看者に与える印象が大きく異なるというのが相当であるから,外観に おいて混同を生ずるおそれはない旨主張する。 確かに,本件商標と引用商標とを対比すると,前記のとおり,具体的な構成にお\nいていくつかの相違点が認められるものである。しかしながら,前記認定のとおり, 引用商標は,前記のような図柄であって,原告の商品を表示するものとして,いわ\nゆるスポーツ用品関連の商品分野において,高い著名性を有していたことに照らせ ば,被告が指摘するような具体的構成における差異が存在するとしても,引用商標\nと全体的な輪郭等の構成が共通していると認められる本件商標をスポーツ用品関連\nの商品を含む本件商標の指定商品に付して使用した場合には,これに接する需要者 において,当該商品が原告又は原告との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示に\nよる商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤 信するおそれがあるものというべきである。 また,具体的な構成において引用商標と相違する点があるとしても,その全体的\nな輪郭等の構成が引用商標と客観的に類似性の高いものとなっており,これをワン\nポイントマークとして使用した場合などには,一般の消費者の注意力などをも考慮 すると,出所の混同を生ずるおそれがあることは前記のとおりである。 なお,商標法4条1項15号該当性の判断は,当該商標をその指定商品等に使用 したときに,当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営 業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営\n業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれが存するかどうかを問題とする ものであって,当該商標が他人の商標等に類似するかどうかは,上記判断における 考慮要素の一つにすぎないものである。被告が主張するような差異が存在するとし ても,その点については,本件商標の構成において格別の出所識別機能\を発揮する ものとまではいえないし,単に本件商標と引用商標の外観上の類否のみによって, 混同を生じるおそれがあるか否かを判断することはできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。

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平成28(行ケ)10230  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年9月14日  知的財産高等裁判所

 不使用取消請求(50条)に対して、アルファベットの「X」状のマークを付したスニーカーを販売していたと争いましたが、靴の図形商標の使用とは認められませんでした。
 本件商標は,前記第2の1のとおり,平成16年6月22日に国際登録が され,同年12月13日に日本国が事後指定がされたもの(同日に商標登録出願が されたものとみなされる[商標法68条の9第1項])であって,平成18年1月 24日に登録査定がされ,同年7月21日に登録されたものである。 平成26年法律第36号による商標法の一部改正(平成27年4月1日施行)に よって,位置商標について,その出願の手続が定められた(商標法5条2項5号, 同条4項,5項,商標法施行規則4条の6〜8)が,それより前には,我が国にお いて,位置商標の出願についての規定はなく,本件商標についても,位置商標では なく,通常の平面図形の商標であると解するほかない(本件商標が位置商標ではな いことは,原告も認めている。)。 そうすると,本件商標と社会通念上同一の商標が使用されているというためには, 黒い実線で囲まれたX字状の部分のみならず,靴の形状をした点線部分も,平面図 形の商標として使用されていなければ,本件商標と社会通念上同一の商標が使用さ れているということはできない。 原告各製品には,X字状の標章が付されているものの,靴の形状をした点線部分 の標章が平面図形の商標として使用されているということはできないから,本件商 標と社会通念上同一の商標が使用されているとは認められない。
(3) この点について,原告は,原告各製品には,X字状の標章が付されている 上,スニーカー自体の形状もほぼ同じであると主張するが,スニーカー自体の形状 がどうであれ,平面図形の商標として点線部分の標章が使用されているということ はできないから,原告の主張を採用することはできない。 また,原告は,本件商標の基礎登録商標に基づく主張や欧州共同体商標意匠庁な ど各国における本件商標についての判断に基づく主張をするが,商標の出願及び登 録の要件は各国において定められるべきものである(パリ条約6条1項及び3項) から,他国における本件商標についての判断と同じ判断をしなければならない理由 はないし,本件商標の基礎登録商標に関する前記1(2)の事実は,スペイン国の商標 についてのものであって,直ちに我が国の商標について判断を左右するものではな い。 さらに,原告は,商標法50条の趣旨から本件商標は取り消されるべきではない と主張するが,商標法50条の趣旨が原告主張のとおりであるとしても,本件商標 と社会通念上同一の商標の使用が認められない以上,本件商標は取消しを免れない のであって,商標法50条の趣旨によって左右されるものではない。

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平成29(行ケ)10001  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年9月19日  知的財産高等裁判所

 引用発明の認定誤りを理由として、進歩性なしとした拒絶審決が取り消されました。
 引用発明の「柱状物」「柱先端部」「柱状物構造」は,それぞれ,本件補正発明\nの「支柱」「先端部分」「鋼管ポール」に相当する。また,引用発明の「炭素鋼を 使用し」「柱状物を支持する支持基礎」は,本件補正発明の「前記支柱の下端部を 固定する鋼製基礎」に相当する。 そして,前記検討によれば,引用発明の「ベース」及び「平板状の羽根」は,別 の部材により「支柱」を固定し,支柱の荷重を地盤に伝え,地盤から抵抗を受ける ことにより,「支柱の下端部を固定する」部材であって,引用発明の,「ベースの パイプの取付部に貫通穴を設けることにより,柱状物は,柱先端部が」「ベースを 貫通して土中に突出している」構成は,本件補正発明の「前記支柱は前記基礎体を\n貫通して先端部分が地中に突出していること」に相当し,引用発明の「土中に埋込 んで」は,本件補正発明の「地中に埋設され」に相当し,さらに,これらによれば, 引用発明の「ベース」及び「平板状の羽根」は,本件補正発明の「基礎体」に相当 する。一方,「パイプ」が,本件補正発明の「基礎体」に相当するということはで きない。 したがって,本件補正発明と引用発明とは,「支柱と,前記支柱の下端部を固定 する鋼製基礎とを有する鋼管ポールであって,前記鋼製基礎は基礎体から構成され,\n前記基礎体は地中に埋設され,前記支柱は前記基礎体を貫通して先端部分が地中に 突出している鋼管ポール」である点で一致し,相違点1及び2(前記第2の3(2) イ(イ)及び(ウ))のほか,以下の点で相違する(原告主張に係る相違点3に同じ)。 「基礎体」に関して,本件補正発明は「上下に貫通した筒状」であるのに対し, 引用発明は「中央部にパイプを溶接で強固に突設し」た「ベース」と当該「ベース のパイプ取付面の四隅に配設し」た「平板状の羽根」とからなる点。

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平成29(行ケ)10049  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年9月14日  知的財産高等裁判所

 4条1項7号(公序良俗)違反とした審決が取り消されました。争点は、本件商標が「上級の助産師」の意味を有しており、これを登録すると、国家資格である「助産師」の制度に対する社会的信頼を失わせるか否かです。
 本願商標のうち「Advanced Midwife」の文字部分の「A dvanced」,「Midwife」の各欧文字は,「上級の」,「助産師」をそれぞれ意味する英語である(乙3,4)から,「Advanced Midwife」の 欧文字部分からは,「上級の助産師」の意味が生じるものと認められる。また,本願 商標のうち,「アドバンス助産師」の文字部分からは,「上級の助産師」という意味 が生じるものと認められる。 そうすると,本願商標は,「上級の助産師」の意味が生じる語を日本語表記及び英\n語表記で表\示したものであって,本願商標全体としても,「上級の助産師」の意味を 生じるということができる。 ところで,1)前記1(3)のとおり,「アドバンス助産師」制度は,助産関連5団体 によって創設されたもので,「アドバンス助産師」を認証するための指標は,公益社 団法人日本看護協会が開発したものであるから,その専門的知見が反映されている ものと推認されること,2)前記1(1),(2)のとおり,原告は,専門職大学院の評価 事業のほか,助産師養成機関や助産所の第三者評価事業を行っており,助産分野の 評価を適切に行えるものと推認されること,3)前記1(6)のとおり,「アドバンス助 産師数」は,厚生労働省により周産期医療体制の現状把握のための指標例とされて いること,以上の事実からすると,「アドバンス助産師」認証制度は,一定程度の高 い助産実践能力を有する者を適切に認証する制度であると評価されるべきものと認\nめられる。また,前記1(3),(5)のとおり,「アドバンス助産師」認証制度は,平成 27年から実施され,既に1万人を超える「アドバンス助産師」が存在すること, 前記1(7)のとおり,各病院において,ウェブサイトに「アドバンス助産師」の認証 を受けた助産師が存在することを記載し,充実した周産期医療を提供できることを 広報していることからすると,「アドバンス助産師」は,国家資格である助産師資格 を有する者のうち,一定程度の高い助産実践能力を持つ者を示すものであることが,\n相当程度認知されているものと認められる。 そうすると,本願商標に接する取引者,需要者は,「アドバンス助産師」を,助産 師のうち,一定程度の高い助産実践能力を持つ者であると認識するということがで\nきるところ,その認識自体は,決して誤ったものであるということはない。
(3) 国家資格の中には,知識や技能の難易度等に応じて,同種の資格の中で段\n階的にレベル分けされているものがあることが認められる(乙21〜28)が,上 級の資格を「アドバンス」と称する国家資格があるとは認められないこと(甲28 参照)や前記のとおり「アドバンス助産師」制度が相当程度認知されていることか らすると,「アドバンス助産師」が「助産師」とは異なる国家資格であると認識され るとは認められないし,仮に,そのように認識されることがあったとしても,以上 の(1),(2)で述べたところからすると,本願商標が国家資格等の制度に対する社会 的信用を失わせる「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」というこ とはできない。

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平成27(ワ)36981等  虚偽事実の告知・流布差止等本訴請求事件特許権侵害差止等反訴請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年8月31日  東京地方裁判所(47部)

 CS関連発明について、29条の2違反の無効理由あり、技術的範囲に属しないので、訴外ニフティへのライセンス契約の申し出通知は、不競法の営業誹謗に該当すると判断されました。29条の2の無効については発明者の例外適用も関係しています。
 上記(ア)の認定事実によれば,本件プロジェクトには,NTTコム のプロジェクトチームメンバーの他,Cをはじめとするベース社のメン バーやAをはじめとする被告のメンバーが関与し,A以外の者(例えば, C)からも新たなパスワード登録方法に関するアイデアが出される中で, 同プロジェクトの成果物として甲11発明が完成し,発明者をBとする 特許出願がされたことが認められる。 そして,甲11発明のパスワードの初期登録に係る部分は,1)認証サ ーバがウェブサーバを介してアクセス元の端末装置に初期ワンタイムパ スワード情報登録URLを通知する電子メールを送信し,2)端末装置の ユーザは,上記URLにおいて,認証サーバからウェブサーバを介して 送られたウェブページを見て,縦4個×横12個のランダムパスワード の中から選択し,選択したパスワードを入力し,3)認証サーバから送ら れた2回目のランダムパスワードに対し,端末装置のユーザがランダム パスワードを入力し,4)認証サーバが,2回の入力によりユーザにより 選択されて確定されたランダムパスワードの位置情報をユーザ情報とし てデータベースに登録し,5)認証サーバが,URLを通知する電子メー ルをウェブサーバを介してアクセス元の端末装置に送信する,というも のであると認められる(甲11発明に係る明細書の段落【0018】な いし【0021】参照)ところ,上記部分を具体的に着想,提示した主 体(甲11発明のパスワードの発明者)がAのみであると認めるに足り る証拠はないから,本件発明1と甲11発明の発明者が同一であるとは 認められない。
(ウ) これに対し,被告は,甲11発明の特徴的部分は「位置情報が確定 されるまで,縦4個×横12個の新たなランダムパスワードを端末装置 1が表示する処理を繰り返し行い,これにより,縦4個×横12個の新\nたなランダムパスワードについての特定の座標位置に配置されているパ スワード(すなわち数字)の入力を促す処理を繰り返すこと」にあると ころ,これと同一の特徴的部分を有する方式Cの記載された本件手順案 をAが作成し,NTTコムに送付したことに照らせば,甲11発明の発 明者はAである旨主張する。 この点,本件手順案のデータに係るプロパティには作成者として 「(省略)」と記載されている(乙31の3)が,これをもって直ちにA のみが本件手順案の内容を着想したと推認することはできず,かえって, 本件手順案より前にCにより作成された本件C文書にも,「3)認証後, OFFICのワンタイムパスワードを登録する画面において,自分のパ スワード位置と順序を指定し,確認後,登録する。4)ワンタイムパスワ ード登録完了したことを,URLと共にe−mailで利用者の携帯端 末へ通知する。(このURLは本番用)」といった記載があることによれ ば,本件手順案の内容の一部は,Aが本件手順案を作成するよりも前に 既に本件プロジェクト内において着想されていたものと認められる。し たがって,被告の上記主張を採用することはできない。
ウ 小括
以上によれば,本件発明1は特許法29条の2によって特許を受けられ ないから,本件特許1には無効理由が認められる。

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平成28(ワ)13239  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年8月31日  東京地方裁判所(46部)

 文言侵害、均等侵害とも否定されました。
 以上によれば,従来のオルタネータにおいてはブリッジ整流器が備える正 ダイオードを冷却するためにこれを熱放散ブリッジに取り付け,同ブリッジ にスロット(開口部)を設けることでその内部を冷却空気が循環するように し,同ブリッジの上面にフィンを設けることで同ブリッジの冷却を助けるこ ととしていたのに対し,電力用トランジスタ及びかさ高の制御装置を備える ブリッジ整流器があるオルタネータ/スタータにおいては,同ブリッジにス ロットを設けるための空間を確保できない問題に対応するため,同ブリッジ が外側後面に冷却フィンを有する後部軸受けに押し当てられる構成が知られ\nていた。しかし,この構成においては,後部軸受けに熱放散ブリッジ又は基\n部をしっかりと押し当てる必要があり,また,後部軸受けが非常に高温にな ると対流で冷却できなくなるという課題があった。本件発明1は,冷却流体 が機械の後部に横方向に導入され,熱放散ブリッジ及びオルタネータの後部 軸受け間に形成された流体流通路内を循環する目的のために熱放散ブリッジ の後部軸受け側の面を通路の長手方向壁,後部軸受けを上記通路の別の長手 方向壁とし,冷却手段としてフィンを上記通路内に配置する構成を採用した\n点に技術的意義があるということができる。
・・・・
原告は,被告製品のフィンが「前記流体通路(17)内に配置」されて いないという相違点があるとしても,被告製品は本件発明1の構成と均等\nなものとして,本件発明1の技術的範囲に属するというべきであると主張 する。被告製品が本件発明1の構成と均等であるというためには,特許請\n求の範囲に記載された構成中被告製品と異なる部分が特許発明の本質的部\n分でないことが必要である。 イ そこで本件発明1の本質的部分につき検討する。 本件明細書1における背景技術,発明が解決しようとする課題及び課題 を解決するための手段の記載(前記1(2))を参酌すると,前記1(3)のとお り,本件発明1は,熱放散ブリッジにフィンを設け,これに冷却空気を触 れさせて電気部品の冷却を図る構成につき,熱放散ブリッジと後部軸受け\nの間に冷却流体通路を設けて冷却空気を循環させることとし,当該通路内 に冷却フィンを設けるオルタネータ/スタータの構成とすることによって,\n熱放散ブリッジにスロットが設けられない場合であっても十分に熱放散ブ\nリッジを冷却させることができる効果を生じさせることとしたというもの である。このことに照らすと,冷却流体の通路及び冷却フィンの配置につ いて上記構成を採用したことに本件発明1の意義があるということができ\nるから,冷却フィンがどこに配置されるかを含めたその配置は,本件発明 1の本質的要素に含まれると解するのが相当である。 そうすると,被告製品において冷却フィンが冷却流体通路でなく,熱放 散部材の底面であって上側ベアリングの開口部と対応する部分に配置され ている構成は,本件発明1と本質的部分において相違するというべきであ\nる。したがって,被告製品が本件発明1の構成と均等であるということは\nできない。
ウ これに対し,原告は,本件発明1の本質的部分は後部軸受けと熱放散ブ リッジの間に長手方向の,回転シャフトと熱放散ブリッジの間に軸方向の 各冷却流体通路を備えた点にあると主張する。 しかし,上記イのとおり,本件明細書1は熱放散ブリッジにフィンを設 け,これに冷却空気を触れさせて電気部品の冷却を図る構成を従来技術と\nして明示しており,フィンによって熱放散ブリッジと冷却空気が触れる表\n面積を増やし,これによって冷却効果を図る構成を採用することが前提と\nされていること,フィンの配置は冷却効果の程度に影響すると解されるこ とに照らすと,当該配置も本件発明1の意義に含まれるというべきである。

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平成29(ネ)10041  特許権侵害に基づく損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年8月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁4部は、均等の第1要件を満たさないとして、技術的範囲に属しないと判断しました。1審では均等主張はされていませんでした。
 本件発明では,近用アイポイントから近用中心までの距離を小さくしているため, 近用アイポイントから近用部にかけて発生する収差が比較的小さく,良好な視覚特 性が得られ,視線を大きく下げることなく中間視から近用視へ移行することができ るとともに,近用部において広い明視域を確保することができる。 また,特定中心を基準とした近用アイポイントでの屈折力増加量(KE−KA)を 加入度(KB−KA)の60%〜90%に設定すると,近用アイポイントから近用部 に至る領域の側方領域における非点収差の集中が軽減され,像の揺れや歪みなどが 抑えられ,近用部及び中間部において広い明視域を実現することができ,さらに, 近用アイポイントから特定視部にかけて加入度の60%〜90%だけ屈折力を低下 させるとの構成により,近用アイポイントから特定視部にかけて視覚特性が改良さ\nれ,主子午線曲線の側方領域における収差集中が緩和される結果,像の揺れや歪み を軽減することができ,広い明視域を確保することができ,また,屈折力の変化の 度合いが比較的小さいため,近用アイポイントと特定視部との接続が連続的で滑ら かになるように構成することができ,特定視部の明視域を大きく確保することがで\nきる(【0018】【0019】)。
(エ) 以上によれば,本件発明は,「近用視矯正領域」と,「特定視距離矯正領 域」と,「近用視矯正領域と特定視距離矯正領域との間において両領域の面屈折力 を連続的に接続する累進領域」とを備えた累進多焦点レンズを前提に,目の調節力 の衰退が大きい人が長い時間にわたって快適に近方視を継続することを目的として, 近用アイポイントから近用中心までの距離を2mmから8mmと設定するとともに, 条件式(1)(2)の条件を満足することを特徴とする累進多焦点レンズを提供し た結果,視線を大きく下げることなく中間視から近用視へ移行することができ,近 用部において広い明視域を確保するとともに,特定視部の明視域を大きく確保する ことを実現したものであるから,本件発明の本質的部分は,近用アイポイントから 近用中心までの距離を2mmから8mmと設定したことと,条件式(1)(2)を 設定したことにあると認められる。 そして,条件式(1)(2)では,「近用視矯正領域の中心での屈折力」である KBと「特定視距離矯正領域の中心での屈折力」であるKAとの差(KB−KA)が用 いられているところ,「特定視距離矯正領域」の範囲を特定できなくては,「特定 視距離矯正領域の中心」が特定できず,その屈折力KA を求めることができない上, 条件式(2)では,前記(2)イのとおり,「特定視距離矯正領域」の範囲を特定する ことができなければ,「特定視距離矯正領域」の明視域の最大幅WFを特定すること ができない。したがって,条件式(1)(2)を満足させるためには,「特定視距 離矯正領域」の範囲を特定できることが必要であるから,「特定視距離矯正領域」 が,屈折力が一定ないしほぼ一定の領域を有する,ある程度広がりを持った領域で あることも,本件発明の技術的思想を構成する特徴的部分であり,本質に係る部分\nである。したがって,控訴人の主張は,採用できない。
(オ) 被告製品は,前記(1)(2)のとおり,いずれも「特定視距離矯正領域」,「特 定視距離矯正領域の中心」を充足せず,条件式(1)(2)を満足させるものでは ないから,本件発明とは,その本質的部分において相違することが明らかであり, 均等の第1条件を充足しない。

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◆1審はこちらです。平成26(ワ)8134

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平成28(ワ)25472  不正競争行為差止請求事件  不正競争 平成29年8月31日  東京地方裁判所(46部)

 無印良品の棚について、不競法2条1項1号の商品等表示であると認定されました。判決文の最後に、原告・被告の商品が記載されています。
 原告商品は,外観が別紙原告商品目録記載の各図のとおりのものであ り,原告商品形態1)〜6)を有する。すなわち,原告商品は,組立て式の 棚として,側面の帆立(原告商品形態1)),棚板の配置(原告商品形態 3)),背側のクロスバー(原告商品形態4))が特定の形態を有するほか, 帆立の支柱が直径の細い棒材を2本束ねたものであるという特徴的な形 態(原告商品形態2))を有し,また直径の細い棒材からなる帆立の横桟 及びクロスバー(原告商品形態5))も特定の形態を有するもので,それ らを全て組合せ,かつ,全体として,上記の要素のみから構成される骨\n組み様の外観を有するもの(原告商品形態6))である。このような原告 商品形態は原告商品全体にわたり,商品を見た際に原告商品形態1)〜6) の全てが視覚的に認識されるものであるところ,原告は,原告商品の形 態的特徴として原告商品形態1)〜6)が組み合わされた原告商品形態を主 張するので,以下,上記原告商品形態が他の同種商品と識別し得る顕著 な特徴を有するか否かを検討する。
ここで,原告商品及び同種の棚の構成要素として,帆立,棚板,クロ\nスバー,支柱等があるところ,これらの要素について,それぞれ複数の 構成があり得て(前記(1)ケ),また,それらの組合せも様々なものがあ り,さらに,上記要素以外にどのような要素を付加するかについても選 択の余地がある。原告商品は,原告商品と同種の棚を構成する各要素に\nついて,上記のとおりそれぞれ内容が特定された形態(原告商品形態1) 〜5))が組み合わされ,かつ,これに付加する要素がない(原告商品形 態6))ものであるから,原告商品形態は多くの選択肢から選択された形 態である。そして,原告商品形態を有する原告商品は,帆立の支柱が直 径の細い棒材を2本束ねたという特徴的な形態に加えクロスバーも特定 の形態を有し,細い棒材を構成要素に用いる一方で棚板を平滑なものと\nし,他の要素を排したことにより骨組み様の外観を有する。原告商品は, このような形態であることにより特にシンプルですっきりしたという印 象を与える外観を有するとの特徴を有するもので,全体的なまとまり感 があると評されることもあったものであり(同キ),原告商品全体とし て,原告商品形態を有することによって需要者に強い印象を与えるもの といえる。このことに平成20年頃まで原告商品形態を有する同種の製 品があったとは認められないこと(同ク)を併せ考えると,平成16年 頃の時点において,原告商品形態は客観的に明らかに他の同種商品と識 別し得る顕著な特徴を有していたと認めることが相当である。 イ 被告は,原告商品形態1)〜6)のうちの各個別の形態を取り上げ,それら がありふれた形態であり,原告商品が他の同種の商品と識別し得る特徴を 有しない旨主張する。
しかし,前記アに述べたところに照らし,原告商品形態が他の同種の商 品と識別し得る特徴を有するといえるか否かを検討する際は,原告商品形 態1)〜6)のうちの個別の各形態がありふれている形態であるか否かではな く,原告商品形態1)〜6)の形態を組み合わせた原告商品形態がありふれた 形態であるかを検討すべきである。したがって,原告商品形態1)〜6)のう ちの各個別の形態にありふれたものがあることを理由として原告商品形態 が商品等表示とならなくなるものではない。\nまた,被告は,原告商品形態1)〜6)のうちの各個別の形態について,特 有の機能等を得るために不可避的に採用せざるを得ない形態である旨主張\nする。しかし,上記各個別の形態について,原告商品形態とは異なる構成\nを採ることができ(前記(1)ケ),かつ,原告商品形態が上記各個別の形態 の組合せからなることに照らせば,原告商品形態が特定の機能等を得るた\nめに不可避的に採用せざるを得ない構成であるとの被告の主張は採用する\nことができない。
ウ 原告商品は平成9年1月頃から販売されたところ,被告は,原告商品形 態を備えた商品が平成元年頃から日本国内で販売されていたことを主張す る。 前記(1)クのとおり,平成元年頃から,少なくとも原告商品形態2),3)及 び5)を備えた「ETAGAIR」という名称の商品が販売された。しかし, 当該商品は,少なくとも,帆立について一方向に斜めの棒が含まれ,背面 にクロスバーがなく,原告商品形態1),4)を備えず,原告商品形態を備え ているとはいえない。そして,このことから上記商品と原告商品の外観上 の特徴は異なるといえるのであって,上記商品の販売の事実によって,原 告商品形態がありふれたものであるとか,他の商品と識別し得る特徴とは ならないということはできない。
 エ 被告は,原告商品のほかにも原告商品形態を有する商品が販売されてい ると主張して,原告商品形態には,識別力がない旨主張する。 しかし,上記で被告が主張する商品について認められる事実は前記(1)ク のとおりであり,その商品の販売が開始された時期は早くても平成20年 頃である。したがって,平成20年より前に原告商品形態がありふれたも のであったことを認めるに足りない。そして,後記(4)のとおり,原告商品 形態は,平成16年頃には,原告の商品であることを示す識別力を有した と認められる。また,被告が指摘する商品は,年間の売上高も原告商品と 比べて多くなく,製造販売期間も長いとはいえず,現在では販売を終了し たものもある。そうすると,原告商品形態が平成16年頃に原告の商品を 示すものとしての識別力を有した後,上記商品によって,原告商品形態が ありふれたものになり,他の商品と識別し得る特徴を有することがなくな ったとはいえない。

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平成28(行ケ)10170  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年8月30日  知的財産高等裁判所(1部)

 訂正要件満たしていないとした審決が取り消されました。
 審決は,「x2+y2=r2」の式は,原点を中心とする半径rの円周上 の各点の座標(x,y)の方程式とみることもできるが,斜辺の長さがrとなる直 角三角形における直角をはさむ2辺の長さx,yの方程式とみることもでき,この 場合,本件条件式(|(x2+y2)1/2|≦2.50)のx,yは,それぞれ,測 定基準点から水平線を延ばしたときに所定領域の外縁と交差する位置(水平方向外 縁位置)までの距離,及び,測定基準点から鉛直線を延ばしたときに所定領域の外 縁と交差する位置(鉛直方向外縁位置)までの距離を示すと解するのが自然である とする(第1解釈)。 しかしながら,審決の上記認定に従って,本件条件式のx,yを理解すると,本 件条件式は,「水平方向外縁位置と鉛直方向外縁位置の距離」が2.5mm以下であ ればよく,水平方向と鉛直方向以外については何ら規定していないのであるから, 本件条件式によっては,「所定領域」の形状が定まらないことになる。また,水平方 向外縁位置と鉛直方向外縁位置の距離が2.5mm「以下」であればよいことにな るので,水平方向外縁位置及び鉛直方向外縁位置が0のもの,すなわち,所定領域 として大きさをもたないものも含むことになる。  前記(ア)のとおり,所定領域は面非点隔差成分の平均値(ΔASav)を決めるた めの基準となる範囲を示すものであって,本件条件式は,この所定領域が満足すべ き範囲を定めるものであることからすれば,本件条件式について,上記のように, 形状が定まらず,また,大きさを持たないものも含むように解することは,不自然 であるといわざるを得ない。
また,本件明細書には,「実質的に球面形状またはトーリック面形状である測定基 準点を含む近傍の領域は,…|(x2+y2)1/2|≦1.75(mm)の条件を満 足する領域であることが望ましい。また,処方度数と測定度数とをさらに良好に一 致させるには,実質的に球面形状またはトーリック面形状である測定基準点を含む 近傍の領域は,|(x2+y2)1/2|≦2.50(mm)の条件を満足する領域で あることが望ましく」(前記1(1) と記載されていることからすると,本件条件 式は,少なくとも,|(x2+y2)1/2|≦1.75(mm)の場合と比較して, 度数測定がより容易になる条件を規定しているものと認められる。 しかしながら,審決の上記解釈によれば,本件条件式は,所定領域の形状が特定 されるものではなく,しかも,所定領域として大きさを持たないものも含むことに なるものであるから,度数測定がより容易になる条件を規定したものとはいい難く, 上記のとおり,|(x2+y2)1/2|≦1.75(mm)の条件式と対比して,本 件条件式を規定している本件明細書の記載と整合するものとはいえない。 したがって,審決の上記解釈は,不自然であるといわざるを得ない。 なお,審決は,「所定領域」は,測定基準点を中心としてどの方向にも大きさが略 一定の領域(すなわち,測定基準点を中心とする略円形の領域)として設ければよ いのであり,水平方向及び鉛直方向の大きさとそれ以外の方向の大きさとが大きく 異なるような不定形の形状の領域にすることは,必要がないばかりか,光学性能の\n低下という観点から有害であることが当業者に自明であるとして,本件条件式は, 測定基準点を中心としてどの方向にも「所定領域」の大きさが略一定であることを 前提として,その大きさを規定したものである,とも認定している。むしろ,この ように,所定領域の大きさが略一定であることが当業者にとって当然の前提となる のであれば,本件明細書の記載に接した当業者は,本件条件式が円を規定するもの, すなわち,x,yを座標であると理解するというのが自然かつ合理的である。 以上によれば,本件明細書において,本件条件式とともに面非点隔差成分の平均 値を求める基礎となる面非点隔差成分ΔASについて,x,yが座標として用いら れていること,本件条件式のx,yを測定基準点から水平方向外縁位置及び鉛直方 向外縁位置までの距離であると解することが本件明細書の全体の記載に照らして不 自然であることなどから,本件条件式のx,yは,座標として用いられていると解 するのが相当である。そして,このように解しても,本件訂正後の本件訂正発明は, 処方面の非球面化により装用状態における光学性能を補正する構\\成を採用している にもかかわらず,レンズの度数測定を容易に行うことができるとの効果を奏するも のであると認められる。 したがって,訂正事項1−4は,もとより座標を示すものであると解される本件 条件式のx,yが座標であることを明記したにすぎないものであり,訂正事項1− 4に係る本件訂正発明3の第2発明特定事項は,本件明細書の全ての記載を総合す ることにより導かれる技術的事項であり,新たな技術的事項を導入しないものであ るから,本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものということができる。

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平成28(行ケ)10187  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年8月30日  知的財産高等裁判所(第1部)

 明確性違反として無効とされた審決が維持されました。問題となった記載は「平均粒子径は,0.5〜2.0μmの範囲にあり」というものです。
 しかし,仮に「イリュージョン」については測定誤差の範囲内といえるとしても, それは,実際に製造販売された製品である「イリュージョン」のマイクロカプセル 顔料の形状が比較的球形に近かったという一事例を示すにとどまるものであり,本 件発明におけるマイクロカプセル顔料一般の形状が比較的球形に近いことを裏付け るに足りない(なお,前記「第4 被告の反論」の1(1)のとおり,他の原告ら製品 (「フリクション」)には球形とは相当異なった粒子が一定数含まれていたと認めら れる。)。現に,本件発明の想定する技術的範囲には,甲24の図1〜3に示される ような形状のマイクロカプセル顔料も含まれることは前記(1)アのとおりであり,例 えば全てが甲24文献の図3のような形状のマイクロカプセル顔料の場合には,粒 子径(代表径)の規定のし方による差が相当大きくなるものと推認される。\n
・・・・
本件特許請求の範囲及び本件明細書には,粒子径(代表径)の定義に関す\nる明示の記載はない。 当業者の技術常識を検討すると,平成11年11月1日から平成14年10月3 1日までの間に,筆記具用インクの平均粒子径の測定方法が記載された特許出願の 公開特許公報58件のうち,レーザ回折法で測定したものが23件,遠心沈降法で 測定したものが6件,画像解析法で測定したものが8件,動的光散乱法で測定した ものが22件(うち1件は遠心沈降法と動的光散乱法を併用)であった一方,等体 積球相当径を求めることができる電気的検知帯法で測定しているものはなかったこ と(甲20),平成14年6月1日から平成17年5月31日までの間の特許出願に ついて,審判官が職権により甲20と同様の調査したところ,原告ら及び被告以外 の当業者では,電子顕微鏡法,レーザ回折・散乱法,遠心沈降法により平均粒子径 を測定している例があった一方,電気的検知帯法が用いられた例は発見されていな いこと(弁論の全趣旨)が認められる。また,種々の測定方法で得た値から,再度 計算して,等体積球相当径を粒子径(代表径)とする平均粒子径に換算していると\nも考え難い。そうすると,粒子径(代表径)について,等体積球相当径又はそれ以\n外の特定の定義によることが技術常識となっていたとは認められない。 以上のとおり,技術常識を踏まえて本件特許請求の範囲及び本件明細書の記載を 検討しても,粒子径(代表径)を特定することはできない。\n
(3) 原告らは,本件発明が粒度分布を体積基準で表していること,測定方法の\n記載がないこと,マイクロカプセル顔料の大きさに着目するという本件発明の特徴, 測定の難易から,本件発明の粒子径(代表径)として,光散乱相当径やストークス\n径は不適当である一方,等体積球相当径は適当である旨主張する。 しかし,粒度分布の表し方を体積基準又はそれと等価である質量基準とするのが\n通常である粒子径(代表径)には,審決が指摘するとおり,等体積球相当径の他に\nも,光散乱法による光散乱相当径,光回折法による光の回折相当径,沈降法による ストークス径があると認められる。そして,前記(2)のとおり,筆記具用インキの粒 子の大きさの測定に関する公知発明において,これらの粒子径(代表径)又は測定\n方法が相当程度採用されていたことに照らせば,これらの粒子径(代表径)又は測\n定方法も,マイクロカプセル顔料の大きさに着目する技術分野において,当業者が 採用を検討し得る有用な測定基準であると推認される。なお,原告パイロットイン キによる特許出願でも,インキの吐出性を考慮して粒子の大きさを限定するため, 遠心沈降式の測定装置を用いて体積基準の粒度分布を求めている例がみられる(乙 11【0016】【0040】)。 また,測定方法の記載がない場合に,特定の測定方法に対応しない粒子径(代表\n径)の定義を採用したものと考えるという技術常識を認めるに足りる証拠はない。

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平成27(ネ)10122  不当利得返還請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年8月9日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁3部は、特許権侵害について、特許無効と判断した1審判断を維持し、請求棄却しました。侵害事件と並行して、無効審判が請求されており、特許庁は審理の結果、無効予告をしました。特許権者は訂正をしましたが、訂正要件を満たしていないとして、最終的に無効と判断されました。これに対して、特許権者は、審取を提起しました。\n原審(侵害訴訟)でも、訂正要件を満たしていないと判断されてます。
 訂正前の「…前記第1の位相から調節できるように固定された第1 の量だけ転位させた第2の位相を有する第3のクロック信号…」の記載 によれば,「第2の位相」の「第1の位相」からの変位量(転位の量) は,第3のクロックが調節されたとしても,第1のクロックが同じ量 だけ調節されれば,変位量に変化がなく,このような調節も「固定」 に含まれると解される。 これに対し,訂正後の「…第2の位相の前記第1の値をもつ第1の位 相を基準とした変位量は,第1の位相が前記第1の値をもっている状態 において第3のクロック信号の調整がなされるまでの間,固定された第 1の量であり,前記変位量は,第3のクロック信号が調節されたときは 調節される…」との記載によれば,変位量は,第1のクロックの調節に よらず専ら第3のクロックの調節により調節され,第3のクロック信号 が調節されれば,仮に第1のクロックが同じ量だけ調節されたとしても 変化するように,「固定」の技術的意味を変更するものと理解される。
(エ) 以上より,訂正事項2は,特許請求の範囲の減縮を目的とするもの に当たらないとともに,不明瞭な記載の釈明又は誤記の訂正を目的と する訂正であるということもできない。 また,訂正事項2が,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当 該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものでな いことは明らかである。

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◆1審はこちらです。平成25(ワ)33706

◆対応の無効事件はこちらです。平成28(行ケ)10111

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平成29(行ケ)10006等  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年8月22日  知的財産高等裁判所

 一部のクレームについては無効とした審決について、双方がその取消を求めました。審判では、請求項6〜13については、サポート要件違反、進歩性違反等は無し、請求項1〜4は明確性違反で無効と判断されていました。前者について無効審判請求人がその部分の取消しを求める訴訟(甲事件)を提起し、後者について、特許権者がその取消しを求める訴訟(乙事件)を提起しました。裁判所は、後者については取り消すと判断しました。
 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だ けではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願 当時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者の利益が不 当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 原告は,本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載のうち,「急激な降下」, 「急激な降下部分の外挿線」及び「ほぼ直線的な変化を示す部分の外挿線」との各 記載が不明確であると主張するから,以下検討する。
(2) 「急激な降下」,「急激な降下部分の外挿線」との記載
ア 請求項1及び2の記載のうち「急激な降下」部分とは,動的貯蔵弾性率の温 度による変化を示す図において,左から右に向かって降下の傾きの最も大きい部分 を意味することは明らかである(【図2】)。また,傾きの最も大きい部分の傾き の程度は一義的に定まるから,「急激な降下部分の外挿線」の引き方も明確に定ま るものである。
イ これに対し,原告は,動的貯蔵弾性率の傾きが具体的にどのような値以上に なったときに「急激な降下」と判断すればよいか分からない旨主張する。しかし, 「急激な降下」とは,相対的に定まるものであって,傾きの程度の絶対値をもって 特定されるものではないから,同主張は失当である。
(3) 「ほぼ直線的な変化を示す部分の外挿線」との記載
ア ASTM規格(乙31)は,世界最大規模の標準化団体である米国試験材料 協会が策定・発行する規格であるところ,ASTM規格においては,温度上昇に伴 って変化する物性値のグラフから,ポリマーのガラス転移温度を算出するに当たり, ほぼ直線的に変化する部分を特段定義しないまま,同部分の外挿線を引いている。 また,JIS規格(乙13)は,温度上昇に伴って変化する物性値のグラフから, プラスチックのガラス転移温度を算出するに当たり,「狭い温度領域では直線とみ なせる場合もある」「ベースライン」を延長した直線を,外挿線としている。 そうすると,ポリマーやプラスチックのガラス転移温度の算出に当たり,温度上 昇に伴って変化する物性値のグラフから,特定の温度範囲における傾きの変化の条 件を規定せずに,ほぼ直線的な変化を示す部分を把握することは,技術常識であっ たというべきである。 そして,ポリマー,プラスチック及びゴムは,いずれも高分子に関連するもので あるから,ゴム組成物の耐熱性に関する技術分野における当業者は,その主成分で ある高分子に関する上記技術常識を当然有している。 したがって,ゴム組成物の耐熱性に関する技術分野における当業者は,上記技術 常識をもとに,昇温条件で測定したときの動的貯蔵弾性率の温度による変化を示す 図において,特定の温度範囲における傾きの変化の条件が規定されていなくても, 「ほぼ直線的な変化を示す部分」を把握した上で,同部分の外挿線を引くことがで きる。
・・・
このように,外挿線Aと外挿線Bの交点温度として特定された170℃という温 度は,補強用ゴム組成物の180℃から200℃までの動的貯蔵弾性率の変動に着 目したことから導かれたものであって,かかる交点温度は,その引き方によっても 1℃の差が生ずるにとどまる。そうすると,外挿線Aと外挿線Bの交点温度によっ て,ゴム組成物の構成を特定するという特許請求の範囲の記載は,第三者の利益が\n不当に害されるほどに不明確なものとはいえない。
(4) 小括
したがって,本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載のうち,「急激な降 下」,「急激な降下部分の外挿線」及び「ほぼ直線的な変化を示す部分の外挿線」 との各記載は明確であって,本件特許の特許請求の範囲請求項1及び2の記載が明 確性要件に違反するということはできない。請求項3及び4の各記載も同様である から,明確性要件に違反するということはできない。 よって,取消事由1は理由がある。

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平成28(行ケ)10119  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年8月3日  知的財産高等裁判所

 審決(無効)は進歩性ありと判断しましたが、知財高裁は、当業者なら公報記載事項から相違点に関する技術が読み取れるとして、これを取り消しました。
 甲2には,上記のようにブラシを減らすことができる原理を説明する明示的な記 載はないが,甲2の【0033】における「従来の電動モータ1では,第1のブラ シ11a及び第3のブラシ11cを介して電流が流れるが,この実施の形態では第 1のブラシ89aを介して電流が流れ,ブラシ89aを通じて流れる電流量が従来 のものと比較して2倍となる。」との記載からすると,甲2においてブラシを減らす ことができるのは,均圧線を設けたことの結果として,1個のブラシから供給され た電流が,そのブラシに当接する整流子片に供給されるとともに,均圧線を通じて 同電位となるべき整流子片にも供給されることによって,対となる他方のブラシが なくとも従来モータと同様の電流供給が実現できるためであることが理解できる。 この点について,被告は,甲2には,均圧線の使用とブラシ数の削減とを結び付け る記載がないことを理由に,接続線を使用してブラシの数を半減する技術が開示さ れていない旨主張するが,そのような明示的な記載がなくとも,甲2の記載から上 記のとおりの理解は可能というべきである。また,被告は,甲2の4ブラシモータの電気回路図(図16)と2ブラシモータの電気回路図(図2)を対比すると,そ\nの配線が完全に一致すると主張するが,4ブラシモータの電気回路図(図16)に おいても,2ブラシモータの電気回路図(図2)においても,整流子片1,2,1 2及び13が+電位となり,整流子片6〜8及び17〜19が−電位になっており, その結果,ブラシ以外の電気回路(巻線及び均圧線の接続関係)に変化を加えなく とも両者がモータとして同じ電気的特性を持つことが理解できるところ,2ブラシ モータの電気回路図においては,前記の整流子片が同電位となるために均圧線の存 在が必須であることが理解できるから,甲2の4ブラシモータの電気回路図と2ブ ラシモータの電気回路図との配線が一致することは,均圧線の存在によってブラシ 数の削減が可能になることを示すものであって,このことが,甲2には接続線を使用してブラシの数を半減する技術が開示されていないことの根拠となり得るもので\nはない。
イ そうすると,甲2の記載に接した当業者は,甲2には,4極重巻モータ において,同電位となるべき整流子間を均圧線で接続することにより,同電位に接 続されている2個のブラシを1個に削減し,もって,ブラシ数の多さから生じるロ ストルク,ブラシ音及びトルクリップルが大きくなるという問題を解決する技術が 開示されていることを理解するものといえる。

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平成28(行ケ)10038  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年7月26日  知的財産高等裁判所(3部)

 無効審判に対して、訂正請求を行いました。審決は訂正は認める、特許は無効とすると判断しました。これに対して、知財高裁は、引用発明の認定誤りによる一致点の認定誤りを理由に、進歩性無しとした審決を取り消しました。
 本件発明1についての一致点の認定の誤り・相違点の看過について
原告は,本件審決が,甲11発明1は,「第一成分」と「第二成分」とを総和 として液晶組成物の全重量に基づき「10重量%から100重量%」含有する ものであるとした上で,「成分として,一般式(II−1)及び(II−2)・・・ で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有し,その含\n有量が20から80質量%であり」との構成を本件発明1と甲1発明1の一致\n点と認定したのは誤りであり,その結果,本件審決は相違点を看過している旨 主張するので,以下検討する(ただし,本件審決の「甲1発明1」の認定に不 備があることは上記2のとおりであるから,以下の判断においては,甲1発明 1が上記2(2)ア(ウ)のとおりのものであることを前提に検討を進める。)。 (1) 本件審決は,甲1発明1における「第一成分として式(1−1)及び式(1 −2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物」が,\n本件発明1における「第二成分として,・・・一般式(II−1)・・・で表される\n化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物」を包含すること,及び甲 1発明1における「第二成分として式(2−1)で表される化合物の群から\n選択された少なくとも1つの化合物」が,本件発明1における「第二成分と して,・・・一般式・・・(II−2)・・・で表される化合物群から選ばれる1種又は\n2種以上の化合物」を包含することを前提として,甲1発明1において,液 晶組成物の全重量に基づいて,第一成分の重量が「5重量%から60重量%」 であり,第二成分の重量が「5重量%から40重量%」であることは,第一 成分と第二成分の総和としての重量が「10重量%から100重量%」であ ることを意味するから,本件発明1と甲1発明1は,「一般式(II−1) 及び(II−2)・・・で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化\n合物を含有し,その含有量が20から80質量%であり」との点において一 致する旨認定する(別紙審決書48,49頁)。 しかしながら,1)甲1発明1における「式(1−1)及び式(1−2)で 表される化合物」と2)本件発明1における「一般式(II−1)で表される\n化合物」とを対比すると,2)のR1及びR2は,「それぞれ独立的に炭素原子 数1から10のアルキル基,炭素原子数1から10のアルコキシル基,炭素 原子数2から10のアルケニル基又は炭素原子数2から10のアルケニルオ キシ基」であるのに対し,1)のR6及びR5は,「R5は,炭素数1から12を 有する直鎖のアルキルまたは炭素数1から12を有する直鎖のアルコキシで あり,R6は,炭素数1から12を有する直鎖のアルキルまたは炭素数2から 12を有する直鎖のアルケニルである」ことから明らかなとおり,両者の関 係は,本件審決がいうように1)の化合物が2)の化合物を包含するという関係 にあるものではなく,1)の化合物の一部と2)の化合物の一部が一致するとい う関係にあるものにすぎない(例えば,式(1−1)又は式(1−2)にお いてR6が炭素数11を有する直鎖のアルキルである1)の化合物は,2)の化合 物には含まれないし,他方,一般式(II−1)においてR1がアルコキシル 基である2)の化合物は,1)の化合物には含まれない。)。そして,このこと は,甲1発明1における「式(2−1)で表される化合物」と,本件発明1\nにおける「一般式(II−2)で表される化合物」の関係にも同様に当ては\nまることである。 してみると,甲1発明1が,「式(1−1)及び式(1−2)で表される\n化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物」及び「式(2−1)で 表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物」を含有するこ\nとをもって,本件発明1における「一般式(II−1)及び(II−2)… で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有」するこ\nとと一致するということはできないのであって,この点について,本件審決 が本件発明1と甲1発明1の一致点と認定したことは誤りである。

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平成29(行ケ)10030  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年7月27日  知的財産高等裁判所

 商標「オルガノサイエンス」が商標「オルガノ」と類似する(11号違反)and混同する(15号違反)と判断されました。、争点は、商標「オルガノ」が著名かです。特許庁・裁判所とも著名であると判断しました。
 以上によると,1)被告は,我が国における総合水処理エンジニアリング分野にお ける最大手企業の一つであり,その設立以来,「オルガノ」及びその英語表記である\n「ORGANO」をハウスマークとして使用していること,2)被告の事業の主力は 水処理装置事業であるが,薬品事業を含む機能商品事業の規模も大きく,被告の主\nな商品の市場占有率は高いこと,3)被告の薬品事業は,水処理薬品を中心にするも ので,水処理装置事業とは密接な関連性を有するということができること,4)被告 は20社以上からなるグループ企業を構成し,その子会社の多くは「オルガノ」の\n文字を冠する社名を用いているほか,幅広い分野で事業を営み,国際的な事業展開 も行っていること,5)被告は,たびたびメディアに取り上げられ,その事業内容が 一般に広く紹介されていること,6)被告は,新聞や雑誌において,「オルガノ」の文 字や使用商標1を使用して継続的に宣伝広告を行い,特に,新聞広告については, 長期間にわたり全国紙に題字広告を掲載するという目立つ態様のものであったこと, 以上の各事実を認めることができる。 これらの事実によると,「オルガノ」及びその英語表記である「ORGANO」の\n表示は,被告の略称又はハウスマークを表\示するものとして,本件商標の登録出願 日前から,取引者,需要者に広く知られるようになっており,それに伴い,「オルガ ノ」又はその英語表記である「ORGANO」を含む使用商標についても,同時点\nまでの間に,取引者,需要者に広く知られて周知,著名となっていたと認めるのが 相当である。 そして,使用商標は,ほぼ同大の図形部分及び「ORGANO」又は「オルガノ」 の文字部分から構成されているところ,このうち図形部分からは特段の観念や称呼\nが生じないのに対し,「ORGANO」及び「オルガノ」という文字部分は,その称 呼が被告の略称及びハウスマークと同一であり,商品及び役務の出所を取引者,需 要者に強く印象付ける部分であると考えられる。そうすると,使用商標のうち,「O RGANO」又は「オルガノ」の文字部分は,図形部分とは独立して出所識別標識 としての機能を果たすものということができる。\nしたがって,使用商標の文字部分からなる被告商標についても,被告の水処理装 置事業及びこれと密接に関係する薬品事業を表示するものとして,本件商標の登録\n出願日前から,周知,著名であり,本件商標の登録査定日においても同様であった と認められる。 原告の告の主張について これに対し,原告は,1)被告商標は,水処理装置事業の分野では周知であるとし ても,薬品の分野においては,周知,著名ではない,2)被告が行ってきた宣伝広告 は一般的な企業活動の一環にすぎず,新聞紙上に掲載した題字広告には「ORGA NO」の表示はなく,被告の取り扱う薬品類を表\示しているものもない,3)取引者, 需要者は,使用商標の「ORGANO」又は「オルガノ」の文字部分よりも水玉模 様の図形に注意をひかれる,4)被告商標は,特許情報プラットフォームの「日本国 周知,著名商標」に掲載されておらず,「ORGANO」又は「オルガノ」について の登録防護標章も存在しないなどと主張し,被告商標が周知,著名であることを争 う。
ア しかし,上記1)については,前記認定のとおり,薬品事業を含む機能商\n品事業は,その事業規模が大きく,水処理装置事業と並ぶ被告の主力事業であると いうことができる上,被告の水処理装置事業と薬品事業は密接な関連性を有してい るのであるから,被告の水処理エンジニアリング事業が広告宣伝等により取引者, 需要者に広く知られるようになるとともに,薬品事業についても,本件商標の登録 出願日前から広く取引者,需要者に知られるようになっていたと認めるのが相当で ある。
イ 上記2)については,一般的に,長期間にわたり継続的に行われる宣伝広 告は,商標が一般に広く知られる上で効果的な方法であり,特に,新聞広告は,全 国紙に題字広告を掲載するという目立つ態様の広告が長期間にわたり行われたもの であって,その間に「ORGANO」又は「オルガノ」という被告商標の表示も一\n般に広く知られるようになったものと認めるのが相当である。 原告は,上記の題字広告には「ORGANO」の表示はなく,薬品類も表\示され ていないと主張するが,前記認定のとおり,被告は,新聞広告に加えて,雑誌にお いて,「ORGANO」の文字を含む使用商標1を表示して広告宣伝を行うとともに,\nその事業内容はメディアにたびたび取り上げられて一般に広く紹介されているので あるから,題字広告に係る「オルガノ」という表示のみならず,「ORGANO」と\nいう表示についても一般に広く知られるようになったと認めるのが相当である。ま\nた,薬品事業については,上記ア判示のとおりであって,題字広告に薬品類の表示\nがないからといってこの認定が左右されることはない。
ウ 上記3)については,前記判示のとおり,使用商標のうち「ORGANO」 又は「オルガノ」の文字は,図形部分とは独立して出所識別標識としての機能を果\nたすものと認めるのが相当である。
エ 上記4)については,特許情報プラットフォームの「日本国周知,著名商 標」に被告商標が掲載されていないこと,及び,「ORGANO」又は「オルガノ」 が防護標章登録されていないことのみをもって,被告商標の周知著名性を認定する 妨げとはなるものではない。

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◆平成28(行ケ)10181

◆平成26(行ケ)10268

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平成28(行ケ)10275  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年7月27日  知的財産高等裁判所(2部)

 商標「ISD個性心理学協会」について、 商標「個性心理学」、商標「個性心理學研究所」から4条1項10号などで無効と主張しました。審決・判決とも無効理由無しと判断しました。
 上記(1)の認定事実によると,「個性心理学」は,「差異心理学」ともい われるもので,心理学のうち個人差の問題を扱う領域として古くから知られており, 国内外でこれを研究対象とする研究者や研究室があったこと,国語に関する辞書や 辞典においても,「個性心理学」についての説明が掲載されていることが認められ る。 そして,これらの事実によると,「個性心理学」という語は,心理学という学問 の一分野を示す普通名称であると認めるのが相当であり,原告の創作した創造標章 であるとは認められない。
(3) これに対し,原告は,本件審決が挙げた証拠は相当過去の事情を示すもの にすぎず,比較的最近の文献で「個性心理学」について言及しているものは甲27 3のみであること,心理学の分野で用いられる用語を説明する一般的な辞典では, 「個性心理学」を説明する項目がないことなどを指摘して,「個性心理学」は普通 名称ではない旨主張し,また,仮に「個性心理学」が普通名称であったとしても, 学問や研究対象としての心理学という極めて限られた範囲のことである旨主張す る。 確かに,近時の心理学の専門的な辞典(事典)では「個性心理学」という語は取 り上げられておらず(甲213〜229),また,近時,「個性心理学」が心理学 の学会等で取り上げられ,議論されていることを示す証拠はない。 しかし,前記のとおり,「個性心理学」が,個人差の問題を扱う心理学として存 在していたことが認められ,現時点でも,国語に関する辞書や辞典にその説明が記 載されている。また,最近の心理学の専門的な辞典には,アドラーが,独自の「個 人心理学」と呼ぶ理論体系を発展させたとして,当該理論体系を心理学の一分野と して紹介するものがあり(甲220),心理学については,一個人が提唱した理論 体系を,心理学の一分野として取り扱う例があることが認められるのであって,「個 性心理学」が,近時,心理学の学会等で取り上げられ,議論されることがなかった としても,心理学の歴史における一つの理論体系としての存在が揺らぐものではな く,それだけでいわゆる死語と化したと認めることはできない。 以上によると,「個性心理学」は,現在においても心理学の一分野を示す普通名 称というべきであり,また,極めて限られた範囲内でしか通用しない用語というこ ともできない。 また,原告は,仮に,「個性心理学」が普通名称であるとすれば,「〇〇心理学」 という語は普通名称として商標登録を受けられないことになるが,実際には,「〇 〇心理学」という語は,多数の商標登録がされていると主張するが,このような他 の商標登録例は,「個性心理学」が普通名称であるとの上記認定を何ら左右するも のではない。

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平成28(ワ)35763  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月27日  東京地方裁判所(47部)

 CS関連発明の特許侵害事件です。当事者は、FREEとマネーフォワードです。均等の主張もしましたが、第1、第5要件を満たさないと判断されました。
 本件明細書の従来技術として上記ウの公知文献は記載されておらず,同記 載は不十分であるため,上記公知文献に記載された発明も踏まえて本件発明\nの本質的部分を検討すべきである。 そして,上記公知文献の内容を検討すると,上記ウ1),2)から,取引明細 情報は,取引ごとにマッチング処理が行われることからすれば,乙4に記載 されたSaaS型汎用会計処理システムにおいても,当該取引明細情報を取 引ごとに識別することは当然のことである。 また,上記ウ3)の「取得明細一覧画面上」の「各明細情報」は,マッチン グ処理済みのデータであるから,「取得明細一覧画面」は「仕訳処理画面」 といえる。 さらに,上記ウ3)の「仕訳情報入力画面」は,従来から知られているデー タ入力のための支援機能の一つに過ぎず(段落【0002】,【0057】),表示され\nた取引一覧画面上で各取引に係る情報を当該画面から直接入力を行うこと及 び該入力の際プルダウンメニューを使用することも普通に行われていること (特開2004-326300号公報(乙5)段落【0066】-【0081】)から すれば,「取引明細一覧画面」に仕訳情報である「相手勘定科目」等を表示\nし変更用のプルダウンメニューを配置することは当業者が適宜設計し得る程 度のことである。 以上によれば,本件発明1,13及び14のうち構成要件1E,13E及\nび14Eを除く部分の構成は,上記公知文献に記載された発明に基づき当業\n者が容易に発明をすることができたものと認められるから,本件発明1,1 3及び14のうち少なくとも構成要件1E,13E及び14Eの構\成は,い ずれも本件発明の進歩性を基礎づける本質的部分であるというべきである。 このことは,上記イの本件特許に係る出願経過からも裏付けられる。 原告は,構成要件1E,13E及び14Eの構\成について均等侵害を主張 していないようにも見えるが,仮に上記各構成要件について均等侵害を主張\nしていると善解しても,これらの構成は本件発明1,13及び14の本質的\n部分に該当するから,上記各構成要件を充足しない被告製品1,2並びに被\n告方法については,均等侵害の第1要件を欠くものというべきである。
・・・
(なお,本件においては,原告から「被告が本件機能につき行った特許出願にか\nかる提出書類一式」を対象文書とする平成29年4月14日付け文書提出命令の 申立てがあったため,当裁判所は,被告に対し上記対象文書の提示を命じた上で,\n特許法105条1項但書所定の「正当な理由」の有無についてインカメラ手続を 行ったところ,上記対象文書には,被告製品及び被告方法が構成要件1C,1E,\n13C,13E,14C又は14Eに相当又は関連する構成を備えていることを\n窺わせる記載はなかったため,秘密としての保護の程度が証拠としての有用性を 上回るから上記「正当な理由」が認められるとして,上記文書提出命令の申立て\nを却下したものである。原告は,上記対象文書には重大な疑義があるなどとして, 口頭弁論再開申立書を提出したが,そのような疑義を窺わせる事情は見当たらな\nいから,当裁判所は,口頭弁論を再開しないこととした。)

◆判決本文
 

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平成29(行ケ)10017  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年7月24日  知的財産高等裁判所

 8区分の指定商品・役務の商標権について、9件の不使用取消審判を請求するのは取消権の濫用だと主張しましたが、裁判所は認めませんでした。
 以上指摘した点も踏まえて検討すると,まず,原告が依拠する法50 条2項及び56条の規定は,複数の指定商品等を対象とした1つの不使 用取消審判請求がされた場合,その対象となった指定商品等のいずれか について使用事実の立証がされれば,当該請求全部について不使用取消 しを免れることと,1つの不使用取消審判請求の一部について請求を取 り下げることはできないことを定めるにとどまり,不使用取消審判請求 をする場合に,審判請求の仕方に制約があるのかどうか(すなわち,原 告が主張するとおり,審判請求をする場合には,1つにまとめて請求を しなければならないのかどうか)については,何ら触れていない。そも そも,仮に請求の仕方(すなわち審判請求権の行使の仕方)に制約があ るのであれば,その旨が明示的に定められるべきであることを考慮する と,そのような明示的な定めがされているわけではない以上,上記各規 定により,原告主張のような制約が課されたと解することは困難である。 実質論として考えてみても,前記のとおり,3年以上使用されていない 商標登録は取り消されるべきであり,また,不使用取消審判手続におい ては,商標の使用について一番よく知り得る立場にある被請求人が商標 使用の事実について証明責任を負うべきであるというのが不使用取消審 判制度に関する法の趣旨である以上,多数の指定商品等について商標登 録を得た商標権者は,不使用取消審判請求を受けた場合に相応の立証の 負担等を負うことを予期すべきものである。これに対し,原告の主張を\n敷衍すると,不使用取消審判請求をされた被請求人の立証の負担や経済 的負担への配慮を優先し,多数の指定商品等のうち1つでも使用の事実 を立証すれば,全ての指定商品等について不使用取消しを免れるという のが法の趣旨であることになるが,そのような解釈は本末転倒であって, 到底成り立たないものであるといわざるを得ない。

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◆平成29(行ケ)10016等

◆平成29(行ケ)10027

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平成28(ワ)25969  債務不存在確認請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月27日  東京地方裁判所

 日本の裁判所に対する米国特許に基づく損害賠償請求不存在の確認訴訟です。東京地裁(47部)は、訴えの管轄が日本の裁判所にないと請求を却下しました。
 また,別件米国訴訟の訴状の記載を検討しても,被告の上記主張が裏付 けられる。すなわち,上記(1)アのとおり,別件米国訴訟の訴状の「管轄区 域および裁判地」欄には,「オリオン電機は米国内および本地区内で過去 に事業を営んでおり現在も日常的に事業を営んでいる。」とか,「特許侵害 に関する原告の訴因は本地区でのオリオン電機の活動に直接起因してい る。」として,不法行為地を本地区(デラウェア地区)に限定するものと 解される記載がある。また,上記(1)イのとおり,「B.被告の侵害行為」 欄には,「被告は訴訟対象の特許が取り扱う基盤技術を組み込んでいるデ ィスプレイ製品を米国内で製造し,使用し,使用されるようにし,売り出 し,販売しており,米国に輸入している(またはいずれか1つ)。」とか, 「被告は本地区を含めて米国でオリオン電機ならびに第三者の製造業者, 販売店,および輸入業者(またはいずれか1つ)により製造される,使用 される,使用されるようにしている,売り出される,販売される,または 米国に輸入される特許を侵害しているディスプレイ製品を購入している。」 として,「本地区を含めて米国で」の行為を侵害行為として整理している。 そうすると,別件米国訴訟で不法行為として主張されている対象行為は, 米国内における原告の行為であると認められる。
ウ この点につき,原告は,別件米国訴訟の訴状の「管轄区域および裁判地」 欄における「オリオン電機は本地区で特許侵害の不法行為をして本地区で 他の人が特許侵害を行うよう仕向けている(またはいずれか一方)。」との 記載等を指摘するが,上記イ説示の記載など別件米国訴訟の訴状全体の記 載を総合すれば,上記イのように認めるのが相当である。 エ したがって,民訴法3条の3第8号に基づき,本件訴えの管轄が日本の 裁判所にあると認めることはできない。 (なお,念のため付言すると,この点を措いても,被告が「別件米国訴訟に おいて本件米国特許権の侵害行為として日本国内における原告の行為は対象 としていない」旨主張している以上,本件訴えのうち,当該行為に基づく損 害賠償請求権の不存在確認を求める部分は,訴えの利益を欠くことになる。)

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平成28(ワ)21346  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月20日  東京地方裁判所(46部)

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないと判断されました。
 原告は,上記2)の売りの指値注文が約定した時点が構成要件Eの「検出\nされた前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定された値以上となった」\nに該当すると主張し,それによって,高値側の「新たな一の価格」及び 「新たな他の価格」の注文情報群が生成されているとする(原告第3準備 書面17,18頁等)。 そこで,このことを前提として検討すると,被告サービスにおいては, 上記のとおり,上記2)の時点の直後に高値側に買いの成行注文及び売りの 指値注文(上記4)の各注文)の注文情報が生成,発注された。 もっとも,上記4)の各注文のうち,売り注文は指値注文であるが買い注 文は成行注文であるところ,前記(2)のとおり構成要件Eの「注文情報」は\n指値注文に係る注文情報をいい,成行注文に係る注文情報を含まないと解 される。そうすると,4)の買い注文に係る注文情報は,構成要件Eの新た\nな「第一注文情報」に該当しないというべきである。 他方,上記6)の注文はいずれも指値注文であり,これらの注文に係る注 文情報は構成要件Eの「第一注文情報」及び「第二注文情報」に該当し得\nるものといえる。しかし,6)の各注文は,2)の時点の直後に3)の各注文が された後,3)の成行の買い注文の約定価格よりも高値側に価格が変動し, 3)の売りの指値注文が約定した5)の時点の後にされるものである。そうす ると,6)の各注文に係る注文情報は,「検出された前記相場価格の高値側 への変動幅が予め設定された値以上となった」時点である2)の時点におい て,成就の有無が判断できる他の条件の付加なく,また,直ちに生成され たものということはできない。別表1の取引においても,6)の注文は,2) の時点から約35時間50分後にされ,また,その間に5)の売りの指値注 文の約定等がされた後にされている。 そうすると,「検出された前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定\nされた値以上となった場合」に,上記6)の注文に係る「第一注文情報」及 び「第二注文情報」が「設定」されたということはできない。 ウ 以上によれば,被告サービスは構成要件Eの「検出された前記相場価格\nの高値側への変動幅が予め設定された値以上となった場合,・・・高値側\nに・・・新たな前記第一注文情報と・・・新たな前記第二注文情報とを設 定」を充足しない。
(6) これに対し,原告は,1)「注文情報」につき,ア)本件発明の特許請求の範 囲上,指値注文か成行注文を区別していない,イ)本件発明の効果に照らすと 注文が指値注文か成行注文かを区別する必要がない,ウ)発明の実施に形態に おける注文に成行注文が含まれる旨の記載がある,以上のことから成行注文 が含まれると解すべきであると,2)「場合」につき上記条件以外の条件を付 加することを排除する趣旨でないと,3)「設定」につき実際に注文情報を生 成するものでなく,情報を生成し得るものとして記録しておけば足りると, 4)被告サービスは指値注文のイフダンオーダーの中に本件発明を構成しない\n買いの成行注文を付加したものにすぎないと各主張する。 しかし,上記1)につき,ア)は,本件明細書において,「注文情報」の語そ れ自体は指値注文と成行注文の区別を明示していない一方で,前記(2)アのと おり,特許請求の範囲の記載全体をみれば,構成要件Eを含む特許請求の範\n囲の記載における「注文情報」は指値注文をいうと解されるのであり,イ)は 背景技術,発明が解決しようとする課題の各記載(前記1(1)ア,イ)の趣旨 を併せて考慮するとむしろ指値注文のイフダンオーダーに関する発明である ことが示唆される。ウ)は,本件明細書の発明の実施の形態の記載(前記1(2)) によれば,当該形態においては成行注文も生成され得る(段落【0031】) 一方で通常の成行注文につきイフダンオーダーの手順(ステップS21〜2 8)を行わないとされている(段落【0101】,【図3】,【図4】)から, 生成された成行注文はイフダンオーダーに関する注文を構成しないことが明\nらかである。そうすると,原告が指摘する上記ア)〜ウ)はいずれも構成要件E\nの「注文情報」に成行注文が含まれると解すべき根拠とならない。 上記2)及び3)については,前記(3)及び(4)において説示したところ 上記4)につき,前記?に説示したとおり,被告サービスにおける買いの成 行注文(注文番号97)は売りの指値注文(同96)と同時に注文されてい るから,当該成行注文がイフダンオーダーの一部を構成していると認められ\nるところ,前記の「注文情報」,「場合」,「設定」の各解釈に加え,本件発明 の意義が指値注文のイフダンオーダーを相場価格の変動にかかわらず自動的 に繰り返し行うことにあることを前提とすれば,イフダンオーダーにおいて 成行注文を介在させる構成は,本件発明において解決すべき課題と異なるこ\nと,成行注文によって直ちに金融商品のポジションを得る効果が得られるこ とにおいて本件発明の構成と異なるものであるから,これを本件発明外の付\n加的構成とみることはできない。\n

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平成28(ワ)1777  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月14日  東京地方裁判所

 海苔の異物除去に関する事件です。同原告の事件もたくさんあります。争点はいろいろありますが、裁判所は寄与率による減額も否定しました。
 イ 寄与率について
被告九研は,本件各発明が本件製品1及び2の販売に寄与した割合は 10%を超えるものではないなどと主張する。 しかし,本件各発明は,共回り現象の発生を回避してクリアランスの 目詰まりをなくし,効率的・連続的な異物分離を実現するものであって, 生海苔異物除去装置の構造の中心的部分に関するものというべきである。\nすなわち,生海苔異物除去装置として,選別ケーシング(固定リング) と回転円板との間に設けられたクリアランスに生海苔混合液を通過させ ることによりクリアランスを通過できない異物を分離除去する装置が従 来用いられていたとしても,本件各発明の解決課題を従来の装置が抱え ていることは明らかであり,この点は需要者の購買行動に強い影響を及 ぼすものと推察される。このことと,従来の装置の現在における販売実 績等の主張立証もないことを考えると,本件各発明の実施は生海苔異物 除去装置の需要者にとって必須のものであることがうかがわれる。 他方,本件各発明が本件製品1及び2に寄与する割合を減ずべきであ るとする被告九研の主張の根拠は,いずれも具体性を欠くものにとどま る。 したがって,本件各発明が本件製品1及び2の販売に寄与する割合を 減ずることは相当でない。

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◆関連事件です。平成28(ワ)4529

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平成28(ワ)14868  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟  平成29年7月12日  東京地方裁判所(40部)

 CS関連発明についての特許権侵害事件です。文言「送信したとき」が論点となりました。「送信したことを条件として」という意義として、非侵害と判断しました。
イ ところで,広辞苑第六版(甲9)によれば,「とき」とは,「(連体修飾 語をうけ,接続助詞的に)次に述べることの条件を示すのに使う。…の場 合。」を意味するものであり,また,大辞林第三版(甲10)においても 「(連体修飾句を受けて)仮定的・一般的にある状況を表す。(...する) 場合。」とされており,用字用語新表記辞典(乙22)では「『とき』は条\n件・原因・理由・その他,『場合』よりも小さい条件のときに用いること がある。」,最新法令用語の基礎知識改訂版(乙23)では「『時』は時点 や時刻が特に強調される場合に使われるのに対して,『とき』は一般的な 仮定的条件を表す場合に使われる。」と記載されている。これらからすれ\nば,構成要件1D及び1Fにおける「送信したとき」の「とき」は,条件\nを示すものであると解するのが相当である。
ウ この点に関して原告は,「送信したとき」の「とき」は「同じころ」と いう意義を有するものであり,「ある程度の幅をもった時間」を意味する と主張する。 たしかに,広辞苑第六版及び大辞林第三版には,上記イで指摘した意義 の他に,原告が主張するような意義も掲載されている(甲9,10)。し かし,広辞苑第六版(甲9)には「おり。ころ。」を意味する「とき」の用 例として「ときが解決してくれる」「しあわせなときを過ごす」といった ものが掲載されており,「送信したとき」のような具体的な行為を示す連 体修飾語を受けた用例は記載されていない。また,大辞林第三版(甲10) をみると「ある幅をもって考えられた時間」を意味する「とき」の用例と して,「将軍綱吉のとき」「ときの首相」「ときは春」などというものが 掲載されており,やはり「送信したとき」のような具体的な行為を示す連 体修飾語を受けた用例は記載されていない。 そして,抽象的で,空間的及び時間的に広い概念を表現した上記各用例\nと比べると,「送信したとき」という表現は,その指し示す行為が相当程\n度に具体的かつ直接的であることから,およそ用いられる場面が異なると いうべきである。 また,原告が指摘する審決(甲11)には,「とき」という用語につい て「ある程度の幅を持った時間の概念を意味する」旨の判断がされている が,当該審決は,「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始されるときに, 前記転送手段によって前記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用\n数値情報を読み出して判定する」という記載における「前記9個の可変表\n示部の可変表示が開始されるときに」という文言について,「前記9個の\n可変表示部の可変表\示が開始されると『同時』又は『間をおかずに』」と いう意味ではなく,「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始され」た後, 「前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判定する」までの間に他\nの処理がされるとしても,「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始され るときに」に当たると判断したものであって,「前記転送手段によって前 記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判\n定」した後に「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始され」たとしても, 上記文言を充足するなどと判断したものではないから,本件における「送 信したとき」の解釈において参酌することは相当ではない。 そうすると,構成要件1D及び1Fの「送信したとき」における「とき」\nが「ある程度の幅をもった時間」を意味するものということはできない。 また,本件明細書等1をみても,「送信したとき」の「とき」について, 「条件」ではなく「時間」を意味することをうかがわせる記載はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
エ 以上から,構成要件1D及び1Fの「送信したとき」とは,「送信した\nことを条件として」という意義であると認めることが相当である。
・・・・
以上からすると,被告サーバは,第二のメッセージを受信したことを条件 として「マイミク」であることを記憶し,「マイミク」である旨の記憶をし たことを条件として「第二のメッセージ」を送信するという構成を有してい\nるものであって,第二のメッセージを送信したことを条件として「マイミク」 であることを記憶するという構成を有するものではないと認められる。\nしたがって,被告サーバは,「第二のメッセージを送信したとき」に「上 記第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて上記記 憶手段に記憶する手段」を有しているということはできないから,その余の 点について判断するまでもなく,構成要件1D及び1Fを充足しない。\n

◆判決本文

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平成29(ネ)10014  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 本件発明の「緩衝剤」は,添加したものに限られると判断して、技術的範囲に属しないと判断されました。  
 確かに,本件明細書の段落【0050】には「実施例18」との記載はあ るが,他方で,本件明細書における実施例18(b)に関する記載をみると,「比較 のために,例えば豪州国特許出願第29896/95号(1996年3月7日公開) に記載されているような水性オキサリプラチン組成物を,以下のように調製した」 (段落【0050】前段)と記載され,また,実施例18の安定性試験の結果を 示すに当たっては,「比較例18の安定性」との表題が付された上で,実施例1\n8(b)については「非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物」と表現されている\n(段落【0073】)。そして,豪州国特許出願第29896/95号(1996 年3月7日公開)は,乙4発明に対応する豪州国特許であり,同特許は水性オキサ リプラチン組成物に係る発明であって,本件明細書で従来技術として挙げられる もの(段落【0010】)にほかならない。 上記各記載を総合すると,実施例18(b)は,「実施例」という用語が用いら れているものの,その実質は本件発明の実施例ではなく,本件発明と比較するため に,「非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物」,すなわち,緩衝剤が用いられていな い従来既知の水性オキサリプラチン組成物を調製したものであると認めるのが相当

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成27(ワ)28467

以下は類似案件です。

◆平成27(ワ)12412号

◆被告の異なる事件です。

◆これの原審はこちらです。平成27(ワ)28698

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)29001

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)29158

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)28467

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)28698

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)29159

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)12412

◆被告の異なる控訴審事件です。平成28(ネ)10046

こちらは、結論は非侵害で同じですが、1審では技術的範囲に属すると判断されましたので、それが取り消されています。また、控訴審における追加主張は時期に後れた抗弁として、却下されてます。

◆平成28(ネ)10031

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平成28(行ケ)10157  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年7月19日  知的財産高等裁判所

 訂正要件を満たさない(新規事項)とした無効審決が取り消されました。
 前記1の認定事実によれば,実施例2においては,醸造酢(酸度10%)15部, スクラロース0.0028部等を含有する調味液と塩抜きしたきゅうりを4対6 の割合で合わせて瓶詰めをしてピクルスを得た結果,当該ピクルスは,スクラロー スを添加していないものに比べて,酸味がマイルドで嗜好性の高いものに仕上が り,ピクルスに対する酸味のマスキング効果が確認されたことが認められる。そう すると,醸造酢を含有する製品として,酸味のマスキング効果を確認した対象は, 調味液ではなくピクルスであるから,当該効果を奏するものと確認されたスクラ ロース濃度は,上記調味液におけるスクラロース濃度ではなく,これに水分等を含 むきゅうりを4対6の割合で合わせた後のピクルスのスクラロース濃度であると 認めるのが相当である。 これに対し,本件明細書に記載された0.0028重量%は,調味液に含まれる スクラロース濃度であるから,当該濃度は,酸味のマスキング効果が確認されたピ クルス自体のスクラロース濃度であると認めることはできない。 他方,ピクルスにおけるスクラロース濃度は,実施例2において調味液のスクラ ロース濃度を0.0028重量%とし,この調味液と塩抜きしたきゅうりを4対6 の割合で合わせ,瓶詰めされて製造されるものであるから,きゅうりに由来する水 分により0.0028重量%よりも低い濃度となることが技術上明らかである(き ゅうりにスクラロースが含まれないことは,当事者間に争いがない。)。そして,0. 0028重量%よりも低いスクラロース濃度においてピクルスに対する酸味のマ スキング効果が確認されたのであれば,ピクルスにおけるスクラロース濃度が0. 0028重量%であったとしても酸味のマスキング効果を奏することは,本件明 細書の記載及び本件出願時の技術常識から当業者に明らかである。そのため,スク ラロースを0.0028重量%で「醸造酢及び/又はリンゴ酢を含有する製品」に 添加すれば,酸味のマスキング効果が生ずることは当業者にとって自明であり(実 施例3の「おろしポン酢ソース」では,スクラロース0.0035重量%で酸味の\nマスキング効果が生じ,実施例4の「青じそタイプノンオイルドレッシング」では, スクラロース0.0042重量%で酸味のマスキング効果が生じることがそれぞ れ開示されている。),このことは本件明細書において開示されていたものと認め られる。 そうすると,製品に添加するスクラロースの下限値を「製品の0.000013 重量%」から「0.0028重量%」にする訂正は,特許請求の範囲を減縮するも のである上,本件訂正後の「0.0028重量%」という下限値も,本件明細書に おいて酸味のマスキング効果を奏することが開示されていたのであるから,本件 明細書に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。 したがって,訂正事項1は,当業者によって本件明細書,特許請求の範囲又は図 面(以下「本件当初明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導か れる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものといえる から(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10563号同20年5月30日 特別部判決参照),特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項の規定 に適合するものと認めるのが相当である。

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平成28(ワ)35978  営業秘密使用差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年7月12日  東京地方裁判所

 準拠法なども争点となりましたが、そもそも不競法2条6項の営業秘密には該当しないと判断されました。
 前記前提事実等のとおり,本件文書1は,原告製品の製品概要, 仕様等が記載された16丁の書面であり,また,本件文書2は,表紙はなく,原告\n製品の露光に関する内容(光源の配置,露光量に関するシミュレーション等)が記 載された4丁の書面であって,いずれも原告が中国企業に対して原告製品を販売す る目的で台湾の代理店及び中国企業に提供したものと認められる。また,その内容 も,被告が自社の製品に取り入れるなどした場合に原告に深刻な不利益を生じさせ るようなものであるとは認められない。そして,被告は,原告の競合企業であり, 同様の営業活動を行っていたものであるから,被告が営業活動の中で原告が営業し ている製品の情報を得ることは当然に考えられるのであり,その一環として,本件 各文書を取得することは不自然とはいえず,被告が通常の営業活動の中で取得する ことは十分に考えられるものである(なお,原告は,競合他社の情報について開示\nを受けること自体が異常事態であり,競争者が少ない光配向装置メーカーの業界で は殊更異常と認識すべきであるとも主張するが,競争者が少ないからこそ,他社の 製品に関する情報に接する機会が多いという側面も考えられるのであるから,原告 の上記主張は,直ちには採用することができない。)。 (2)また,原告と被告が競業関係にあるとしても,原告が取引先との間で本件各 文書に関する秘密保持契約を締結したか否か,本件各文書に記載された内容が取引 先の守秘義務の対象に含まれるか否かについて,被告が直ちに認識できたとは認め られないし,本件各文書のConfidentialの記載をもって,直ちに契約 上の守秘義務の対象文書であることが示されているものともいえない。 (3)したがって,被告が本件各文書を取得した時点で,守秘義務違反による不正 開示行為であること又は不正開示行為が介在したことを疑うべき状況にあったと認 めることはできず,被告に不競法2条1項8号所定の重大な過失は認められない。

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平成28(行ケ)10272    商標権  行政訴訟 平成29年7月19日  知的財産高等裁判所(1部)

 商標「極肉.com」が「極」と非類似とした審決が維持されました。指定商品には肉製品が含まれています。
商標法4条1項11号に係る商標の類否判断に当たり,複数の構成部分を\n組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察するこ\nとが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる 場合において,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較し\nて商標そのものの類否を判断することは,原則として許されない。他方,商標の構\n成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配 的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識とし ての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけ\nを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるものであ る(最一小判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁,最二小判平成5 年9月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8日集民228 号561頁参照)。 (2) これを本件についてみると,原告が登録無効を主張する本件指定商品等と の関係では,本件商標の構成のうち「肉」の文字部分は,本件指定商品等に関する\n物又は役務の提供の用に供する物をいうものであるから,原告の主張するとおり, それ自体を単独でみれば出所識別標識としての機能は弱いものといえる。\nしかしながら,本件商標は「極肉.com」という文字で構成されるところ,こ\nのうち「極肉」という文字部分は,「.com」という文字部分の前に位置すること から,取引者又は需要者は,これをドメイン名を表示する一体のものとして理解す\nるものと認めるのが相当である。しかも,本件商標の構成のうち「極」は「肉」を\n修飾する形容詞であるから,「極肉」という文字自体,文法構造上分離するのは相当\nではなく,一体のものとして理解するのが自然である。のみならず,「極肉」という 文字は,これ自体から特定の定着した観念を生じさせるものではなく,いわば一体 となって造語を形成するものであるから,その一部のみが強く支配的な印象を与え るものとはいえない。 これらの事情の下においては,本件商標の構成のうち「極」の文字部分を抽出し,\nこの部分だけを引用商標と比較して類否を判断することは,許されないというべき である。
・・・
原告は,本件商標の構成のうち「極」の文字部分を抽出して引用商標と類否判断\nをしなかった審決の判断には,違法があると主張する。 しかしながら,結合商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標\nと比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対 し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる 場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認めら れる場合などに限り,許されるべきである。本件商標は,上記1において説示した とおり,ドメイン名としての役割上も,形容詞と名詞が結合する文法構造上も,特\n定の観念を必ずしも生じさせない造語としての性質上も,一体として理解されると いうべきであるから,上記場合などに該当しないというべきである。その他に原告 が第1準備書面及び第2準備書面で縷々主張するところを改めて検討しても,上記 判断を左右するに至らない。原告の上記主張は,上記1(1)の判例の趣旨を正解しな いものに帰し,採用することができない。

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平成28(行ケ)10160  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年7月12日  知的財産高等裁判所

 使用態様を特定した製剤に限定する訂正が、訂正要件違反と判断されました。
 訂正事項5は,本件訂正前の特許請求の範囲の請求項 1に「針状又は糸状の形状を有すると共に」とあるのを「針状又は糸状の形 状を有し,シート状支持体の片面に保持されると共に」に訂正する,という ものであり,これを請求項の記載全体でみると,「…尖った先端部を備えた 針状又は糸状の形状を有すると共に前記先端部が皮膚に接触した状態で押圧 されることにより皮膚に挿入される,経皮吸収製剤」とあるのを「…尖った 先端部を備えた針状又は糸状の形状を有し,シート状支持体の片面に保持さ れると共に前記先端部が皮膚に接触した状態で押圧されることにより皮膚に 挿入される,経皮吸収製剤」に訂正するものである。 ここで,「経皮吸収製剤」にかかる「前記先端部が皮膚に接触した状態で 押圧されることにより皮膚に挿入される」との文言は,経皮吸収製剤の使用 態様を特定するものと解されるから,その直前に挿入された「シート状支持 体の片面に保持されると共に」の文言も,前記文言と併せて経皮吸収製剤の 使用態様を特定するものと解することが可能である。すなわち,訂正事項5\nは,経皮吸収製剤のうち,「シート状支持体の片面に保持される」という使 用態様を採らない経皮吸収製剤を除外し,かかる使用態様を採る経皮吸収製 剤に限定したものといえる。 ところで,本件発明は「経皮吸収製剤」という物の発明であるから,本件 訂正発明も「経皮吸収製剤」という物の発明として技術的に明確であること が必要であり,そのためには,訂正事項5によって限定される「シート状支 持体の片面に保持される…経皮吸収製剤」も,「経皮吸収製剤」という物と して技術的に明確であること,言い換えれば,「シート状支持体の片面に保 持される」との使用態様が,経皮吸収製剤の形状,構造,組成,物性等によ\nり経皮吸収製剤自体を特定するものであることが必要である。 しかしながら,「シート状支持体の片面に保持される」との使用態様によ っても,シート状支持体の構造が変われば,それに応じて経皮吸収製剤の形\n状や構造(特にシート状支持体に保持される部分の形状や構\造)も変わり得 ることは自明であるし,かかる使用態様によるか否かによって,経皮吸収製 剤自体の組成や物性が決まるという関係にあるとも認められない。 したがって,上記の「シート状支持体の片面に保持される」との使用態様 は,必ずしも,経皮吸収製剤の形状,構造,組成,物性等により経皮吸収製\n剤自体を特定するものとはいえず,訂正事項5によって限定される「シート 状支持体の片面に保持される…経皮吸収製剤」も,「経皮吸収製剤」という 物として技術的に明確であるとはいえない(なお,「シート状支持体の片面 に保持される」との用途にどのような技術的意義があるのかは不明確といわ ざるを得ないから,本件訂正発明をいわゆる「用途発明」に当たるものとし て理解することも困難である。)。 そうすると,訂正事項5による訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 は,技術的に明確であるとはいえないから,訂正事項5は,特許請求の範囲 の減縮を目的とするものとは認められない。 なお,仮に,「シート状支持体の片面に保持されると共に」の文言が経皮 吸収製剤の使用態様を特定するものではなく,「尖った先端部を備えた針状 又は糸状の形状を有し」との文言と同様に経皮吸収製剤の構成を特定するも\nのであるとすれば,本件訂正発明は,「シート状支持体の片面に保持された 状態にある経皮吸収製剤」になり,構成としては「片面に経皮吸収製剤を保\n持した状態にあるシート状支持体」と同一になるから,訂正事項5は,本件 訂正前の請求項1の「経皮吸収製剤」という物の発明を,「経皮吸収製剤保 持シート」という物の発明に変更するものであり,実質上特許請求の範囲を 変更するものとして許されないというべきである(特許法134条の2第9 項,126条6項)。
・・・
被告は,訂正事項5は,請求項1の経皮吸収製剤に対して,本件明細書中 に記載され,請求項19においても記載されているシート状支持体の構成を\n追加したものであり,両者の構成及び関係は本件明細書の記載上明確である\nから,物としての態様(構成)が明確でないとの批判も当たらないし,特許\n法上,物の発明において使途の構成を規定してはいけないというような制限\nはなく,本件訂正発明が飽くまで経皮吸収製剤の発明であって,経皮吸収製 剤保持シートの発明でないことは,訂正後の請求項1の文言から明らかであ る,などと主張する。
しかしながら,訂正事項5は,経皮吸収製剤のうち,「シート状支持体の 片面に保持される」という使用態様を採らない経皮吸収製剤を除外し,かか る使用態様を採る経皮吸収製剤に限定したものとみるべきであり,「経皮吸 収製剤」自体の構成を更に限定するものとみるのは相当でないこと,そして,\n訂正事項5が,使用態様の限定であるとしても,かかる限定によって,経皮 吸収製剤自体の形状,構造,組成,物性等が決まるという関係にあるとは認\nめられず,本件訂正後の経皮吸収製剤も技術的に明確であるといえないこと は,いずれも前記のとおりである。

◆判決本文

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平成29(ネ)10009等  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月12日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(3部)は、1審の判断(「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まない)を維持し、控訴棄却しました。
 本件発明1の構成要件1C(オキサリプラティヌムの水溶液からなり)\nが,オキサリプラティヌムと水のみからなる水溶液であることを意味するの か,オキサリプラティヌムと水からなる水溶液であれば足り,他の添加剤等 の成分が含まれる場合をも包含するのかについては,特許請求の範囲の記載 自体からは,いずれの解釈も可能である。そこで,この点については,本件\n明細書1の記載及び本件特許1の出願経過を参酌して判断することとする。
・・・
前記アの本件明細書1の記載によれば,オキサリプラティヌムは,種々 の型の癌の治療に使用し得る公知の細胞増殖抑制性抗新生物薬であり,本 件発明1は,オキサリプラティヌムの凍結乾燥物と同等な化学的純度及び 治療活性を示すオキサリプラティヌム水溶液を得ることを目的とする発明 である。そして,本件明細書1には,オキサリプラティヌム水溶液におい て,有効成分の濃度とpHを限定された範囲内に特定することと併せて, 「酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくはその他の添加剤を含まない オキサリプラティヌム水溶液」を用いることにより,本件発明1の目的を 達成できることが記載され,「この製剤は他の成分を含まず,原則とし て,約2%を超える不純物を含んではならない」との記載も認められる。 他方で,本件明細書1には,「該水溶液が,酸性またはアルカリ性薬剤, 緩衝剤もしくはその他の添加剤」を含有する場合に生じる不都合について の記載はなく,実施例においても,添加剤の有無についての具体的条件は 示されておらず,これらの添加剤を入れた比較例についての記載もない。
しかしながら,前記イの出願経過において控訴人が提出した本件意見書 には,本件発明1の目的が,「オキサリプラティヌム水溶液を安定な製剤 で得ること」及び「該製剤のpHが4.5〜6であること」に加えて, 「該水溶液が,酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくはその他の添加 剤を含まないこと」にあること,さらに,水溶液のpHが該溶液に固有の ものであって,オキサリプラティヌムの水溶液の濃度にのみ依存するこ と,オキサリプラティヌムの性質上,本件発明1の構成においてのみ,\n「安定な水溶液」を得られることがわざわざ明記され,これらの記載を受 けて,審査官が拒絶理由通知の根拠とする引用文献1ないし3では,その ような「安定な水溶液」は得られないこと,すなわち,緩衝剤を含む凍結 乾燥物やクエン酸を含む水溶液では,「オキサリプラティヌムの安定な水 溶液」を得ることは困難である旨が具体的に説明されている。 その上で,本件意見書は,本件発明1が特許法29条2項に該当しない との結論を導いて審査官に再考を求めているのであり,その結果として控 訴人は,本件特許1の特許査定を受けているのである。 以上のような本件明細書1の記載及び本件特許1の出願経過を総合的に みれば,本件発明1は,公知の有効成分である「オキサリプラティヌム」 について,直ぐ使用でき,承認された基準に従って許容可能な期間医薬的\nに安定であり,凍結乾燥物を再構成して得られる物と同等の化学的純度及\nび治療活性を示す,オキサリプラティヌム注射液を得ることを課題とし, その解決手段として,オキサリプラティヌムを1〜5mg/mlの範囲の 濃度と4.5〜6の範囲のpHで水に溶解することを示すものであるが, 更に加えて,「該水溶液が,酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくは その他の添加剤を含まない」ことをも同等の解決手段として示すものであ ると認めることができる。 してみると,本件発明1の特許請求の範囲における「オキサリプラティ ヌムの水溶液からなり」(構成要件1C)とは,本件発明1がオキサリプ\nラティヌムと水のみからなる水溶液であって,他の添加剤等の成分を含ま ないものであることを意味すると解するのが相当である。

◆判決本文

◆1審はこちらです。

関連事件(同一特許、異被告)です。

◆平成27(ワ)28699等

◆平成27(ワ)29001

◆平成27(ワ)29158

同一特許の別訴事件で、1審(平成27(ワ)12416号)では技術的範囲内と判断されましたが、知財高裁はこれを取り消しました。

◆平成28(ネ)10031

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平成28(ワ)37610  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 平成29年7月20日  東京地方裁判所(46部)

 著作権侵害を理由として発信者情報の開示が認められました。被告は、動画の引用であると反論しましたが、裁判所はこれを否定しました。
 被告は,本件発信者動画は本件楽曲の著作権を本件原告動画が侵害して いることを示して批評する目的で本件原告動画の一部を引用したもので あり,その引用は公正な慣行に合致し,正当な範囲内で行われたから,本 件投稿行為は著作権法32条1項の適法な引用であると主張する。 イ そこで,まず,本件発信者動画における本件原告動画の利用が被告の主 張する上記批評目的との関係で「正当な範囲内」(著作権法32条1項) の利用であるという余地があるか否かにつき検討する。 前提事実 ア,イのとおり,1)本件発信者動画は冒頭から順に本件冒頭 部分(約3分38秒),本件楽曲使用部分(約2分18秒)及び本件楽曲 動画(約4分4秒)から構成され,2)本件楽曲使用部分以外に本件原告動 画において本件楽曲が使用された部分がない。ここで,本件原告動画にお いて本件楽曲が使用されている事実を摘示するためには,本件楽曲使用部 分又はその一部を利用すれば足り に照らしても,本件原告動画において本件楽曲が使用されている事実を摘 示するために本件冒頭部分を利用する必要はないし,上記の事実の摘示と の関係で本件楽曲部分の背景等を理解するために本件冒頭部分が必要で あるとも認められない。そうすると,仮に本件発信者に被告主張の批評目 的があったと認められるとしても,本件発信者動画における本件冒頭部分 も含む本件原告動画の上記利用は目的との関係において「正当な範囲内」 の利用であるという余地はない。 この点につき,被告は,本件楽曲使用部分が本件原告動画に含まれるこ とを示すために本件冒頭部分を利用したと主張する。しかし,上記各部分 の内容(前提事実 ア)に照らせば,本件楽曲使用部分が本件原告動画に 含まれると判断するために本件冒頭部分の利用が必要であると認めるこ とはできない。

◆判決本文

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平成27(ワ)24688  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年6月28日  東京地方裁判所

 不規則充填物(化学工場等の充填塔と呼ばれる装置の内部に充填され塔内でのガス吸収操作などを行うための部材)について、周知商品等表示に該当すると認定されました。
 不競法2条1項1号の趣旨は,周知な商品等表示の有する出所表\示機能\nを保護するため,周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自\n己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止することにより,同 法の目的である事業者間の公正な競争を確保することにある。 商品の形態は,商標等と異なり,本来的には商品の出所を表示する目的\nを有するものではないが,商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的\n意味を有するに至る場合がある。そして,このように商品の形態自体が特 定の出所を表示する二次的意味を有し,不競法2条1項1号にいう「商品\n等表示」に該当するためには,1)商品の形態が客観的に他の同種商品とは 異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,2)その形態が特定 の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や 爆発的な販売実績等により(周知性),需要者においてその形態を有する 商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていることを\n要すると解するのが相当である。
イ これを本件について検討するに,前記第2の2(2)及び上記第4の1(1) アないしオによれば,原告製品は,原告主張に係る原告製品の形態的特徴 のうち,1)中央リングと中央リングの周囲から外側に向かって放射状に延 伸する多数の周辺リングからなり,これら周辺リングと中央リングとは略 直交するように一体化されている形状について共通した特徴を有している 点,2)原告商品のうちL型,M型,S型については,上記1)に加えて,周 辺リングの外側を外周リングで囲繞する構成を付加した形状を有する点,\n3)原告商品のうちS−II型,LL型,L−II型については,上記1)及び2) に加えて,隣接する周辺リング同士を連結部材で連結するとともに,周辺 リングの一部には外環リングと直交する半径方向に縦棒を付加した構造を\n有する点がそれぞれ認められ,当該形態は,上記(1)カの他の充填物とは明 らかに異なる特徴を有していることからすれば,上記に掲げた点において, 特別顕著性が認められる。 さらに,上記(1)アないしオによれば,原告製品はいずれも,日本国内に おいて,1)販売開始当初の頃から,その形状を撮影した写真等と共に,全 国的に宣伝広告され,文献や業界誌にも多数掲載されていたことが認めら れ,2)また,需要者である不規則充填物の購入者間において需要が高く, 直接の販売あるいは代理店を通じて,相当多数が販売されてきたものと推 認できる。したがって,周知性が認められる。
 ウ この点に関し被告は,不規則充填物は,商品の陳列棚に陳列される物と は異なり,技術評価も経た上で採用に至るものであることからすれば,原 告商品の形態が商品等表示として需要者に認識されるような取引形態では\nない旨主張する。 しかし,原告商品の形態が多数の広告,文献,雑誌等に写真や図付きで 紹介されているものが多いこと,実際の注文においても,不規則充填物の 形状に基づいて見積り依頼がされる場合があること(甲108)からすれ ば,不規則充填物の取引形態が被告の主張のとおりの取引形態であると認 めることはできず,原告商品について,需要者がその形態を認識していな いとみることはできない。

◆判決本文

◆原告製品です

◆被告製品です

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平成28(行ケ)10238  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年7月18日  知的財産高等裁判所

 審決における「請求項1・・・」は「請求項2・・・・」の誤記であることは明らかで取り消すべき程度のものではないと主張しましたが、裁判所は誤記とはいえないとして、拒絶審決を取り消しました。判決文の最後に補正の履歴が掲載されています。
   エ 以上のとおり,本件審決が,独立特許要件の検討に当たって認定・判断した 相違点2は,本件補正後の請求項2に係る発明の構成のみによる相違点であり,本\n願発明について認定・判断した相違点2も,平成26年補正後の請求項2に係る発 明のみによるもので,本件補正後の請求項1の発明,平成26年補正後の請求項1 の発明と対応するものではない。 しかしながら,本件審決では,「本件補正発明」を「平成27年7月23日に提 出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明」,「本願発明」 を「平成26年7月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載され た発明」と定義した上で,各請求項1の記載を摘記しているのであって,本件補正 後の請求項1に係る発明を本件補正発明,平成26年補正後の請求項1に係る発明 を本願発明と認定していることが明らかである。 そうすると,本件審決は,本件補正後の請求項1に係る発明を本件補正発明,平 成26年補正後の請求項1に係る発明を本願発明と,それぞれ認定した上で,認定 した発明と対応しない相違点2を認定しているのであり,相違点2の認定を誤った ことになるが,かかる誤った相違点2の認定ないし判断を根拠に,本件補正発明及 び本願発明についての「請求項1」の記載を「請求項2」の誤記と解することはで きない。 被告は,本件における審査の経緯も,上記「請求項1」の記載が「請求項2」の 誤記であるとの理解を促すものであると主張し,前記(2)イのとおり,本件拒絶査定 においては,平成26年補正後の請求項2に係る発明は,本件拒絶理由通知書で提 示した引用例1及び引用例2から当業者が容易に発明をすることができたものであ る旨が記載されている一方で,平成26年補正後の請求項1に係る発明については 拒絶の理由を発見しないと記載されていることが認められるが,かかる審査の経緯 を参酌しても,上記判断が左右されるものではない。 よって,被告の主張は採用できない。

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平成28(ワ)37209  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年6月22日  東京地方裁判所

 不競法2条1項1号の不正競争に該当するとして、差止などを請求しましたが、原告の商品等表示は一地方であり、被告が当該地域で店舗をやる予\定もないので、周知か否かを検討することなく、請求棄却されました。
 原告らは,アロマテラピーサロンの需要者の間では原告ら表示が全国的に\n周知である旨主張する。 しかし,前記前提となる事実 及び 並びに前記 の各認定事実によれば, 原告ら営業が行われている範囲は帯広市及び帯広市に隣接するA町にとどま り,原告第一ホテルによるアロマテラピーに関する施術等の提供先やセミナ ーの実施先も帯広市内に所在するものであること,原告らサロン甲ホテル店 の開業に関する記事は十勝地方の地方紙に掲載されたのみであること,原告\nらサロンに関する広告が掲載された媒体は十勝地方,その中でも帯広市及び\nA町に多く配布されている生活情報誌であり,全国的に配布されているもの でないこと,原告らサロンに関する記事が全国誌に掲載されたのは1誌に1 回であること,上記全国誌や旅行会社のウェブサイトにおける原告らサロン についての記載は付随的なものにすぎないことが明らかである。なお,原告 らは,原告ら表示の周知性を基礎付ける事実として,原告らサロンのプロデ\nューサーが著名であることや乙が多くの取材を受けたことなども主張してい るが,これらは原告らサロンや原告ら表示の周知性に直ちに結びつくもので\nはないから,この点に関する原告らの主張は失当である。 これらの事情に照らせば,原告ら表示は,十\勝地方以外の地域のアロマテ ラピーサロンの利用者に広く知られていたとは認められない。そして,被告 は全国に店舗を展開して営業を行っているものの,十勝地方においては営業\nを行っておらず(前記前提となる事実 イ),十勝地方に店舗を設ける具体\n的な予定があるといった事情もうかがわれない。そうすると,原告ら表\示が 十勝地方において周知であるかについて検討するまでもなく,被告が原告ら\nとの関係において不正競争防止法2条1項1号に該当する不正競争を行って いるとは認められない。

◆判決本文

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平成28(行ケ)10252  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年6月28日  知的財産高等裁判所

 審決は「AKA」が「関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach)」の略であって,整形外科等の役務との関係において「関節運動学を基礎にして開発された治療法,治療技術」を表すものとして、識別力無し、と判断しました。また、それ以外の役務については、識別力および品質誤認の問題なしと判断しました。知財高裁は審決を維持しました。
 原告は,本件指定役務中,「医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業, 調剤」が同一の類似群コードを付されていることを根拠に,同一類似群コー ド中の一つの役務で普通名称となっている「AKA」(本件商標)は,同一 類似群コードの他の類似の役務との関係でも質表示となるものと扱われるべ\nきであるから,本件商標は,本件指定役務中,「医業,医療情報の提供」の みならず,「健康診断,歯科医業,調剤」についても,法3条1項3号に該 当し,同項6号,4条1項16号にも該当すると主張する。 しかしながら,そもそも類似群コードを定める「類似商品・役務審査基準」 は,特許庁における商標登録出願の審査事務等の便宜と統一のために作られ た内規にすぎず,法規としての効力を有するものではない。したがって,同 一の類似群コードに属するとの形式的事実のみから,直ちに,本件商標が「医 業,医療情報の提供」と同様に「健康診断,歯科医業,調剤」の各役務との 関係においても,質表示に当たるとか,自他役務識別力がないとの結論を導\nくことはできず,かかる結論を導くには,本件商標が上記の各役務との関係 で質表示に当たることその他自他役務識別力がないことを認めるに足りる具\n体的事由の主張立証が必要となるというべきである。 しかるところ,原告は,上記のとおり,同一の類似群コードに属するとの 事実を主張するのみで,上記の具体的事由について何ら主張立証しないので あるから,これでは,本件商標が上記の各役務との関係で質表示に当たるこ\nとその他の事由により自他役務識別力がないと認めることはできないし,同 様に役務の質の誤認を生ずるおそれがあるということもできない。 よって,理由aは採用できない。

◆判決本文

◆関連事件です。平成28(行ケ)10253

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平成28(受)632  特許権侵害差止等請求事件 平成29年7月10日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  知的財産高等裁判所

 最高裁(第2小法廷)判決です。特許権者が,事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず,その後に特許法104条の4第3号所定の特許請求の範囲の訂正をすべき旨の審決等が確定したことを理由に事実審の判断を争うことはできないと判断されました。本件については、別途無効審判が継続(審取中を含む)しており、法上、訂正審判の請求ができなかったという特殊事情があります。この点については、訂正審判を請求しなくても、訂正の抗弁まで禁止されていたわけではないと判断されました。
 特許権侵害訴訟の終局判決の確定前であっても,特許権者が,事実審の 口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず,その後に訂 正審決等の確定を理由として事実審の判断を争うことを許すことは,終局判決に対 する再審の訴えにおいて訂正審決等が確定したことを主張することを認める場合と 同様に,事実審における審理及び判断を全てやり直すことを認めるに等しいといえ る。 そうすると,特許権者が,事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張し なかったにもかかわらず,その後に訂正審決等が確定したことを理由に事実審の判 断を争うことは,訂正の再抗弁を主張しなかったことについてやむを得ないといえ るだけの特段の事情がない限り,特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させ るものとして,特許法104条の3及び104条の4の各規定の趣旨に照らして許 されないものというべきである。
(2) これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,上告人は,原審の 口頭弁論終結時までに,原審において主張された本件無効の抗弁に対する訂正の再 抗弁を主張しなかったものである。そして,上告人は,その時までに,本件無効の 抗弁に係る無効理由を解消するための訂正についての訂正審判の請求又は訂正の請 求をすることが法律上できなかったものである。しかしながら,それが,原審で新 たに主張された本件無効の抗弁に係る無効理由とは別の無効理由に係る別件審決に 対する審決取消訴訟が既に係属中であることから別件審決が確定していなかったた めであるなどの前記1(5)の事情の下では,本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁 を主張するために現にこれらの請求をしている必要はないというべきであるから, これをもって,上告人が原審において本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張 することができなかったとはいえず,その他上告人において訂正の再抗弁を主張し なかったことについてやむを得ないといえるだけの特段の事情はうかがわれない。

◆判決本文

◆1審はこちら。平成25(ワ)32665

◆2審はこちら。平成26(ネ)10124

◆無効審判の取消訴訟はこちら。平成26(行ケ)10198

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平成28(行ケ)10276  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年6月28日  知的財産高等裁判所

 商標「Crest」(16類「印刷物」)について、不使用取消請求がなされ、審決は、「新潮クレスト・ブック」による使用で請求棄却しました。知財高裁(3部)もこれを維持しました。
商標法50条1項においては,使用の対象となる商標について,「登録商標 (書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びロー マ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる\n商標,外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会 通念上同一と認められる商標を含む。…)」と規定されており,「登録商標と 社会通念上同一と認められる商標」も含むものとされている。 そこで,使用商標B−1が,本件商標と「社会通念上同一と認められる商標」 といえるか否かについて検討する。
(1) 本件商標は,「Crest」の欧文字を標準文字で横書きしてなる商標で あるところ,「crest」の語は,「(ものの)頂上,山頂,波頭」などの 意味を有する英語として認識されるものであるから,本件商標からは,通常 の英語読みに従った「クレスト」の称呼が生じるとともに,その英語の意味に 従った「(ものの)頂上,山頂,波頭」などの観念が生じるものといえる。
(2) 他方,使用商標B−1は,「新潮クレスト・ブックス」の漢字及び片仮名 を横書きで一連表記してなるものであるところ,「新潮」の文字と「クレスト\n・ブックス」の文字は,漢字と片仮名という文字種の違いから,明確に区別し て認識されるものである。また,「クレスト」の文字と「ブックス」の文字に ついても,その間が「・」によって区切られていることに加え,後述のとおり, 「ブックス」の語が「書籍」を表す英語の片仮名表\記として明確に認識される ことからすると,同様に区別して認識されるものといえる。してみると,使用 商標B−1は,「新潮」,「クレスト」及び「ブックス」の3つの独立した語 が組み合わされて表記された商標として認識されるものといえる。\n そこで,以上を前提に,使用商標B−1を「書籍」についての商品識別標識 として見てみると,まず,「新潮」の漢字部分は,我が国における著名な出版 社である被告の略称として広く知られているものであり,「書籍」に使用され た使用商標B−1に接した取引者・需要者は,「新潮」の漢字部分を,当該書 籍を発行する出版社が被告であることを表示するものにすぎないと認識する\nから,この「新潮」の漢字部分は,商標の同一性という観点からは重要性を持 たない部分といえる。 次に,使用商標B−1のうち,「ブックス」の片仮名部分は,「本,書籍」 を意味する英語「book」の複数形を片仮名表記したものであることが明\nらかである。また,「書籍」の出版の分野においては,特定のシリーズに属す る書籍群に,特定のブランド名と「ブックス(books)」の語を合わせた, 「○○ブックス(books)」の名称を付けて出版,販売することが一般的 に行われていることが認められる(甲10,12,14,16,18,20, 22,23,80〜82,84〜87,89,91,92,94〜99,10 1〜104(枝番を含む。))。してみると,「書籍」に使用された使用商標B −1に接した取引者・需要者は,「ブックス」の片仮名部分を,これが付され た商品が「書籍」であること,あるいは,その商品が「特定のシリーズに属す る書籍」であることを表示するものとして認識するといえるから,これも商\n標の同一性という観点からは重要性を持たない部分であるといえる。 他方,「クレスト」の片仮名部分は,「(ものの)頂上,山頂,波頭」など の意味を有する英語「crest」を片仮名表記したものとして認識され,そ\nの意味に従った観念を生じるものといえるところ,このような「クレスト」の 語は,「書籍」との関係で特段の結びつきを有するものではないから,「書籍」 に係る商品識別標識としての機能を果たし得るものであり,商標の同一性を\n基礎づける中核的部分といえる。 この点,原告は,被告自らがそのホームページ等で「クレスト・ブックス」 を一体として使用していることを理由に挙げ,取引者・需要者からは,「クレ スト・ブックス」で一つの商標として理解され認識される旨主張する。しか し,「書籍」に関する広告等において,「クレスト・ブックス」が一連表記さ\nれていたとしても,これに接した取引者・需要者からは,「クレスト」と「ブ ックス」が独立した語として認識され,そのうち,特に「クレスト」の部分が 独立して自他商品の識別標識の機能を発揮する部分として認識されることは\n上記で述べたとおりであるから,原告の主張は採用できない。
(3) 以上のとおり,使用商標B−1のうち,商標の同一性を基礎づける中核的 部分として把握される「クレスト」の片仮名部分を,本件商標と比較すると, 両者は,片仮名と欧文字という文字種の違いからくる外観上の相違はあるも のの,「クレスト」の称呼及び「(ものの)頂上,山頂,波頭」などの観念を いずれも共通にするものであることからすると,使用商標B−1は,本件商 標と社会通念上同一の商標であると認めるのが相当である。

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平成28(行ケ)10270  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年6月28日  知的財産高等裁判所

 「SeaGull−LC」が「SeaGull」と類似するとした拒絶審決が維持されました。理由は、「LC」部分に識別力がないので、「SeaGull」を抽出できるというものです。
 前記のとおり,本願商標は,「SeaGull−LC」の欧文字及び記 号を標準文字で表してなる商標である。\nこのうち,記号「−」(ハイフン)は,一語が二行にまたがるときのつ なぎとして使用される場合を除き「英文等で,二語を連結して一語相当の語 と」する場合(甲29)ないし「英文などで,合成度の浅い複合語の連結, …または一語内の形態素の区切りを明確にする」(乙23)場合に使用され るものである。したがって,それ自体,本願商標の構成において,商品の出\n所識別標識としての機能を有するものでないことは明らかである。\nまた,同記号を基準とした場合の前半部分である「SeaGull」の 欧文字部分は,一般に,「海カモメ」の意味を有し,「シーガル」と発音さ れる英語「sea gull」を表したものと認識されるものといってよい。\nそうすると,当該部分につき,本願商標の指定商品「業務用電子計算機用プ ログラム」との関係で,その商品の普通名称や品質等を表示するものである\nなど,商品の出所識別標識としての機能を果たし得ないと見るべき事情は見\n当たらないというべきである。
 他方,後半部分である「LC」の欧文字部分は,それ自体独立の意味を 持った英語その他の外国語の単語ないし略語として認識されるものと見るべ き事情は見当たらない。また,証拠(乙8の1〜乙22)によれば,欧文字 2字が,商品の管理又は取引の便宜性等の事情から,商品の規格,型式又は 種別等を表示する記号又は符号として使用される例が少なからずあること,\n本願商標の指定商品を含む「電子応用機械器具及びその部品」を取り扱う分 野に特に着目しても,同じブランド名の商品につき,ブランド名に欧文字2 字を付して,当該ブランドのシリーズ商品における型式,種別等を表すもの\nとして使用される取引の実情があることが認められる。そうすると,上記 「LC」の欧文字部分は,本願商標に接した取引者,需要者にとって,独立 の意味を持つものではなく,商品の規格,型式又は種別等を表示する記号又\nは符号として認識されるものと見るのが相当である。そうである以上,当該 部分が,本願商標の指定商品との関係で,商品の出所識別標識としての機能\nを発揮するものと見ることはできない。 さらに,本願商標を構成する「SeaGull」と「LC」の各欧文字\n部分は,上記のとおり前者は英語を表したもの,後者は記号又は符号と認識\nされることから,相互に関連性を有する語ではなく,しかも,両者の間に存 する記号「−」(ハイフン)の上記機能ないし役割を踏まえるとなおさらに,\nこれらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分 的に結合しているとはいえない。 以上を総合すると,本願商標は「SeaGull」の欧文字と「LC」 の欧文字とを記号「−」(ハイフン)を介して結合してなるものであるとこ ろ,本願商標を構成する各部分が分離して観察することが取引上不自然であ\nると思われるほど不可分的に結合しているものとはいい難く,むしろ,本願 商標の前半を構成する「SeaGull」と後半を構\成する「LC」の各欧 文字部分は,記号「−」(ハイフン)を介して視覚上明確に分離して観察さ れるとともに,「SeaGull」の欧文字部分は,取引者,需要者に対し, 商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきであり, 他方,「LC」の欧文字部分からは出所識別標識としての称呼,観念が生じ ないと認められる。 したがって,本願商標については,その構成部分の一部である「Sea\nGull」の欧文字部分を要部として抽出し,この部分のみを他人の商標と 比較して商標そのものの類否を判断することも許されるということができる。 そうすると,本願商標は,その構成全体から生じる「シーガルエルシー」\nの称呼のほか,要部である「SeaGull」の欧文字部分より,「シーガ ル」の称呼及び「海カモメ」の観念を生じるものというべきである。 (

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平成14年(ワ)8765号 意匠権  民事訴訟 平成16年3月22日  東京地方裁判所

 古い事件ですが、研修で取り上げられていたのでアップします。東京地裁は、類似と判断しました。なお、高裁では先使用権が認められて非侵害となりました。
(1)ア(ア)本件登録意匠の意匠に係る物品は輸液バッグであり、側面視にお いて、全体が薄型の形状をしているから、通常、看者の目に多く触れるのは、正面 及び背面であると認められる。そして、製剤収納側の袋体と溶解液収納側の袋体の 境界部は、正面及び背面のほぼ中央にあり、また、輸液バッグの使用時には、同境 界部の弱シール部を連通させて使用することから、同境界部付近は、看者の注意を 引く位置にあるものと認められる。
  (イ)同境界部付近の構成をみると、その基本的構\成は、同境界部の中 央に帯状の弱シール部が形成されており、その弱シール部の両側に、弱シール部よ り幅の広い強シール部が形成されている(基本的構成態様(5))というものである。 そして、その具体的構成は、製剤収納部の下端左右コーナー部の外側のシール部\nは、弱シール部より幅が広く、弱シール部の左右両側の強シール部の上半分を形成 しており(具体的構成態様(11))、溶解液収納側の袋体の上端左右コーナー部のシー ル部は、弱シール部より幅が広く、弱シール部の左右両側の強シール部の下半分を 形成している(具体的構成態様(18))というものである。 このような同境界部付近の構成において、同境界部の中央に帯状の弱\nシール部が形成されており、その弱シール部の両側に、弱シール部より幅の広い強 シール部が形成されているという基本的構成態様(5)は、同境界部付近の構成の骨格\nを特徴づけており、看者の注意を引くものと認められる。
  (ウ)基本的構成態様(5)は、その全体の構成が、本件登録意匠の意匠公\n報の必要図中、背面図にのみ表れている。しかし、本件登録意匠に係る輸液バッグ\nは、前記のとおり、側面視において全体が薄型の形状をしているから、正面と背面 が、通常、看者の目に触れるものと認められ、また、イ号意匠において、溶解液収 納側の袋体の目盛り及び数字が背面側のみに記載されていることも合わせ考える と、本件登録意匠及びイ号意匠に係る輸液バッグにおいては、アルミカバーシート が付された正面のみならず、背面も、看者の目に多く触れることが認められる。し たがって、基本的構成態様(5)の全体の構成が必要図中の背面図にしか表\れていない としても、それによって、基本的構成態様(5)を要部と認定することが妨げられるこ とはないというべきである。なお、本件登録意匠の意匠公報の【アルミラミネート シートをはがした状態の参考正面図】においては、アルミラミネートシートをはが した状態で、正面にも基本的構成態様(5)の構成が表\れることが示されている。もと より、登録意匠の権利範囲を確定する上で、参考図はあくまでも参考にとどまる が、同参考図によれば、基本的構成態様(5)が、本件登録意匠の構成中において、少\nなくとも無視されるべき構成でないことは認められるといえる。\n イ 本件登録意匠の出願前の公知意匠と比較すると、基本的構成態様(5)は、 出願前の公知意匠である甲第12ないし第16号証(オーツカCEZ注−MCのパ ンフレット)、第24号証(特許第3060132号公報)、第25号証(特許第 3060133号公報)、甲第33号証(「カルバペネム系抗生物質メロペネム (メロペン)キット製剤の有用性に関する実験的研究」新薬と臨床Vol.47 No.6)、第46号証(「ホスホマイシンナトリウムダブルバッグ製剤(溶解液付き 固形注射剤)の有用性に関する実験的研究」新薬と臨床Vol.47No.2)、乙第1号 証(意匠登録第1016887号公報)、第3号証(甲第12号証と同一)、第4 号証(「溶解液付き注射用固形抗生物質キット製剤のキット有用性に関する実験的 研究」日本包装学会誌Vol.4No.1)、第37、第38号証(味の素ファルマ株式会 社ピーエヌツインのパンフレット)、第39号証(本件登録意匠の出願前に発行さ れた公開特許公報に記載されたダブルバッグタイプの輸液バッグの図面)、第44 号証(特開2000−72925号公開特許公報)、第45号証(特開平7−15 5361号公開特許公報)、第46号証(特開平5−68702号公開特許公報) 各記載の輸液バッグには見られず、本件登録意匠の創作的な部分であると認められ る。
ウ 本件登録意匠の関連意匠である意匠登録第1107512号(甲第42 号証の1、2)、意匠登録第1108821号(甲第43号証の1、2)、意匠登 録第1108822号(甲第44号証の1、2)、意匠登録第1108823号 (甲第35号証の1、2)、意匠登録第1108824号(甲第45号証の1、 2)の各登録意匠には、いずれも基本的構成態様(5)が見られる。
エ 以上によれば、製剤収納側の袋体と溶解液収納側の袋体の境界部の中央 に帯状の弱シール部が形成されており、その弱シール部の両側に、弱シール部より 幅の広い強シール部が形成されているという基本的構成態様(5)は、本件登録意匠の 中で需要者の注意を最も引きやすい意匠の要部に該当するというべきである。
(2)ア(ア) 原告は、ダブルバッグタイプの輸液バッグにおいて、アルミカ バーシートの視認性が重要であり、上方の製剤収納袋の吊下部を残して全面を覆 う、貼着部のシール線が表\れていない方形状のアルミカバーシートの周辺部のいず れかに、一つの小さな半円形ないしそれに近い形状の引き剥がし用突片を設けた点 が本件意匠の要部であると主張する。
   (イ) しかし、本件登録意匠のアルミカバーシートに貼着部のシール\n線が表れていない点は、それ自体、外観上、目立つところではない。また、製剤収\n納側の袋体の吊下部を残して全面を覆うアルミカバーシートは、原告公知意匠に見 られ、そのアルミカバーシートには、貼着部のシール線が表\れているが、そのシー ル線は、製剤収納側の袋体の縁に沿って幅狭に存在するにすぎず、それほど目立つ ものではないから、それとの対比からしても、本件登録意匠においてアルミカバー シートに貼着部のシール線が表\れていない点は、看者の注意を引くとは認められな い。 また、本件登録意匠のアルミカバーシートの周辺部に設けられた一つ の小さな半円形ないしそれに近い形状の引き剥がし用突片は、その大きさ、形状に 鑑み、目立つものではなく、本件登録意匠の関連意匠5件の各正面図においても、 引き剥がし用突片は、位置は様々であるが、いずれもそれ程目立つものではないこ とを併せ考えると、本件登録意匠のアルミカバーシートの周辺部に設けられた引き 剥がし用突片は、看者の注意を引くとは認められない。 したがって、原告の主張に係る、上方の製剤収納袋の吊下部を残して 全面を覆う、貼着部のシール線が表\れていない方形状のアルミカバーシートの周辺 部のいずれかに、一つの小さな半円形ないしそれに近い形状の引き剥がし用突片を 設けた点は、看者の注意を引くものではなく、本件登録意匠の要部であるとは認め られない。  

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平成23(ワ)247  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 平成24年6月29日  東京地方裁判所

 少し前の事件ですが、漏れていたのでアップします。ACアダプターについて意匠権侵害が認められました。類似すると認定されたものの、損害額としては、販売不可事情として90%の減額が認定されました。
前記ア認定のエーシーアダプタの性質,用途及び使用態様によれ ば,エーシーアダプタは,携帯用の周辺機器の充電に用いる実用品であ ると同時に,身の回りに置き,あるいは,外出時に携帯するなど,日常 生活において目に触れる機会の多い製品であるといえる。 そして,前記イの認定事実によれば,エーシーアダプタの意匠におい ては,本件登録意匠の構成態様に係る「箱状の本体の背面に折り畳み自\n在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタ を設ける」構成(前記(1)ア(1)),「本体は,縦横の寸法が同一の正四 角形で扁平な箱状であり」(前記(1)ア(2)),「本体の全周囲は面取り がされている」構成及び「縦(横)の寸法の約0.15倍の長さを半径\nとする面取りをする」構成,「差込みプラグが本体の平面部(上面部)\nから背面部に設けられ,プラグのピンは背面の凹部に折り畳まれた状態 から,後方又は上方に起立させて使用され,プラグピンの支持部の外周 は弧状をなしている」構成(前記(1)ア(4)),本体の「正面下部にラン プを設ける」構成(前記(1)ア(5)),「USBコネクタは,底部に設け られている」構成(前記(1)ア(6))は,本件出願時にいずれも公知であ ったものといえる。
他方で,本件登録意匠の構成態様のうち,「本体の全周囲は,厚さ方\n向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四 角隅部は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする 四半球状となっている」点(前記(1)ア(3))は,公知意匠には認められ ない構成態様であり,この構\成態様により,需要者に対し,本体全体が 丸みを帯びた柔らかな印象を与えると同時に,本体正面視の四角隅部が 四半球状となっていることにより整った印象も与えるものとなってお り,上記構成態様は,他の公知意匠にはみられない新規な創作部分であ\nるといえる。 すなわち,前記イ(イ)のとおり,乙3には,充電器に係る意匠におい て,縦横の寸法が同一の正四角形の箱状の本体において,「縦(横)の 寸法の約0.15倍の長さを半径とする面取りをしている」構成が示さ\nれているが,厚さが縦(横)寸法の約0.6倍であって,これは本件登 録意匠の2倍に当たり,縦(横)の長さと厚さとの比が異なり,さらに は厚さに対する面取り径の比が本件登録意匠よりも小さく,本件登録意 匠のような全周囲が厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取り をしておらず,また,本体の四角隅部が,正面視において,いずれも, 厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっているものともいえず, 本件登録意匠のような本体全体が丸みを帯びた柔らかな印象を与える ものとはいえない。他に本件登録意匠の上記構成態様が本件出願前に公\n然知られた形状であったことを認めるに足りる証拠はない。 以上を総合考慮すると,本件登録意匠において,需要者の注意を引き やすい特徴的部分は,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1 を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,正面視にお いて,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」 点を含む,本体部全体の形態であると認められる。
(イ) これに対し被告は,通常の販売・流通形態(店頭,ウェブサイト) では,需要者は,エーシーアダプタを正面又は正面やや斜めから見るの が普通であり,需要者としては正面の形態に最も注目するから,本件登 録意匠においては,携帯電話等の周辺機器との接続部分,本体の正面の 形状及びランプの位置の正面形態全体がひとまとまりとして要部とな り,特に接続部分が最重要の要部である旨主張する。 しかしながら,意匠の特徴的部分の把握に際しては,意匠に係る物品 の販売・流通時において視認し得る形状のみを前提にするのではなく, 意匠に係る物品の性質,用途,使用態様等も考慮すべきであるところ, 前記(ア)認定のとおり,エーシーアダプタは,需要者が実際に手にとっ て携帯用の周辺機器の充電に用いる実用品であると同時に,身の回りに 置き,あるいは,外出時に携帯するなどされるものであることからする と,需要者が本件登録意匠の正面の形態にのみ注目するとはいえない。 また,被告が主張する携帯電話等の周辺機器との接続部分,本体の正面 の形状及びランプの位置は,前記イのとおり,いずれも本件出願前に公 知の形状であることからすると,本件登録意匠においては,携帯電話等 の周辺機器との接続部分,本体の正面の形状及びランプの位置の正面形 態全体がひとまとまりとして需要者の注意を引きやすい特徴的部分(要 部)を形成しているとはいえないし,ましてや接続部分が最重要の要部 であるとはいえない。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
(3) 被告意匠の類似性
前記(2)ウ(ア)認定のとおり,本件登録意匠において,需要者の注意を引 きやすい特徴的部分は,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を 半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,正面視において, いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」点を含む, 本体部の形態全体である。
そこで,この特徴的部分を中心に本件登録意匠と被告意匠を対比した上 で,両意匠が全体的な美感を共通にするか否かについて判断するに,前記(1) ウ(ア)(1)ないし(6)認定のとおり,両意匠は,この特徴的部分において共通す るのみならず,それ以外の基本的構成態様及び具体的構\成態様の多くの部分 においても共通しており,需要者に対し,全体として共通の美感を生じさせ るものと認められる。 他方で,前記(1)ウ(イ)認定のとおり,両意匠には,(1)本件登録意匠では, 本体底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタが設けられているが,被告 意匠では,周辺機器に接続されるコードが断線防止部材を介在して,本体内 部の回路に接続されている点,(2)本件登録意匠では,本体の正面の形状が平 坦であるが,被告意匠では,中央部で周縁部よりも厚さの約0.03倍(約 0.5mm)程度膨出している点,(3)本件登録意匠では,ランプの中心が本 体右側面と底面からそれぞれ約17mmの均等な位置にあるのに対し,被告 意匠では,ランプの中心が本体底面から約12mmで,かつ,本体右側面か ら約16mmの位置にあり,本件登録意匠に比べて底面に寄った位置に設け られている点において差異があるが,これらの差異点は,需要者の注意をひ きやすい部分とはいえない上,差異点から受ける印象は,両意匠の共通点か ら受ける印象を凌駕するものではない。 したがって,本件登録意匠と被告意匠は,上記差異点を考慮しても,需要 者の視覚を通じて起こさせる全体的な美感を共通にしているものと認めら れるから,被告意匠は,本件登録意匠に類似している。これに反する被告の主張は,採用することができない。
以上を前提に検討するに,被告製品は,Docomo,SoftBank等の携帯 電話用のエーシーアダプタであり,一方,原告製品は,USBコネク タ(USBポート)を有するエーシーアダプタであり,上記携帯電話 の充電に使用する際には,上記携帯電話の接続口に対応したUSBケ ーブルが別途必要とされるものである。 ところで,エーシーアダプタが,携帯用の周辺機器の充電に用いる 実用品であると同時に,身の回りに置き,あるいは,外出時に携帯す るなど,日常生活において目に触れる機会の多い製品であること(前 記1(2)ウ(ア))に照らすならば,需要者は,エーシーアダプタの選 択に当たっては,充電可能な製品の種類,その他の性能\,価格,大き さ,重さのほか,デザイン,色などの諸要素を考慮するものと考えら れる。 しかるところ,原告製品と被告製品は,いずれもDocomo,SoftBank 等の携帯電話の充電に利用することができ,寸法,出力も概ね同じで あり,また,重さは原告製品の方が軽いが,ケーブルの有無が異なる から,ほぼ同程度と評価することができる。 さらに,原告製品とDocomo,SoftBank等の携帯電話用の接続ケーブ ルを合わせた価格(1360円から1753円)と被告製品の価格(1 279円から1453円)は,同じ価格帯に属するといえる。 そして,原告製品の本体の独特の丸みを帯びた印象を与えるデザイ ンは,このようなデザインを好む需要者が原告製品を選択する動機付 けになるものといえる。 他方で,(1)Docomo,SoftBank等の携帯電話のみを充電することがで きればよいと考える需要者にあっては,価格面でより安価であり,ケ ーブルが一体であって使い勝手のよい,被告製品の代替品を選択する 可能性が高いこと,(2)被告製品は,本体と一体となった接続ケーブル が本体と同色であるのに対し(甲50,乙7の1,弁論の全趣旨), 原告製品の本体の色によっては,市販されている接続用のUSBケー ブルと同色とはならないことから,この点を美観上好まず原告製品を 選択しない可能性があることが認められる。
b 次に,被告製品には,ピンク,レッド,ホワイト,ブルー,ブラッ ク等の色のバリエーションがあり(甲41ないし45,乙7の1), 原告製品にも,ホワイト,ブラック,シアンブルー,ピンク,バイオ レットの色のバリエーションがある(甲34)。 しかるところ,被告製品を購入した者が記載したインターネットの ショッピングサイト上のレビュー(利用者の感想)においては,「と にかくピンクがかわいいです。」(甲41),「見た目は真っ赤でお しゃれです。」,「赤なら自分の充電器かどうかわかりやすいのでは ないかという点にひかれて購入し」(以上,甲42)との記載がある ように,色が購入動機になっていることがうかがわれる。
c 前記a及びbの認定事実を総合すると,仮に被告による被告製品の 販売がされなかった場合には,被告製品の購入者の多くは,Docomo, SoftBank等の携帯電話用の被告製品と同種の接続ケーブルが一体と なった代替品を選択した可能性が高いものと認められる。\n また,本件登録意匠と類似する被告意匠は,被告製品の購入動機の 形成に寄与していることが認められるものの,その購入動機の形成に は,被告意匠のほか,被告製品がDocomo,SoftBank等の携帯電話用の 専用品であることが大きく寄与し,被告製品の色彩等(本体と接続ケ ーブルが同一色である点を含む。)も相当程度寄与しているものとう かがわれるから,被告意匠の購入動機の形成に対する寄与は,一定の 割合にとどまるものと認められる。 以上によれば,原告製品と被告製品の形態の違い,被告製品と同種 の代替品の存在,被告製品の購入動機の形成に対する被告意匠の寄与 が一定の割合にとどまることは,被告製品の譲渡数量の一部に相当す る原告製品を原告において「販売することができないとする事 情」(意匠法39条1項ただし書)に該当するものと認められる。 そして,上記認定の諸点を総合考慮すると,意匠法39条1項ただ し書の規定により控除すべき上記「販売することができないとする事 情」に相当する数量は,被告製品の販売数量(前記ア)の9割と認め るのが相当である。
(オ) 被告の主張について
a 被告は,Docomo,SoftBankの携帯電話用のエーシーアダプタが必要 な需要者は,当該機器が充電できればよいから,被告製品のようなエ ーシーアダプタと接続ケーブルとが一体となっている製品を選択し, 仮に被告製品が販売されなかったとした場合には,被告製品と同種の 廉価の代替品を購入するはずであり,あえて,別途上記携帯電話用の USBケーブルを必要とする原告製品を選択することはないのに対 し,他方で,多種の周辺機器の充電に用いるエーシーアダプタが必要 な需要者は,原告製品を選択することになるから,原告製品と被告製 品とでは,そもそも購入対象者が異なり,明確に棲み分けがされてい る旨主張する。 しかしながら,前記(エ)aに説示したとおり,両製品に共通する需 要者は,原告製品の丸みを帯びたデザインを重視するなどして,原告 製品を購入する可能性があるものと認められるから,被告の上記主張\nは,採用することができない。
b 次に,被告は,被告製品は,主にインターネットのショッピングサ イトで販売され,一体に接続されているケーブルを含めた全体につい て,正面から撮影された写真が掲載されているのみであり,また,被 告製品は,ほとんどその正面形状しか見えない状態でパッケージに梱 包されており,その意匠が需要者の購入動機に寄与することはなく, むしろ,インターネットのショッピングサイトにおける被告製品のレ ビューに照らしても,被告製品の購入動機となっているのは,被告意 匠ではなく,色である旨主張する。 しかしながら,被告製品が主にインターネットのショッピングサイ トで販売されていることを認めるに足りる証拠はないのみならず,被 告製品の梱包の態様(甲5,検甲1)やインターネットのショッピン グサイトの表示の態様(甲43ないし45)に照らすならば,需要者\nは,被告製品を購入するに当たり,被告製品の丸みを帯びたデザイン を看取することができるものと認められ,その意匠が需要者の購入動 機に寄与することがないとはいえない。 また,原告製品のレビューにおいて,「デザインが個人的に好きで すね。丸みがあり,艶々しています。」,「丸みを帯びたデザイン, 他機種と比較してかなり質感が高いです。」(以上,甲46),「そ のデザインと小ささ,軽さに大変満足しています。」,「iPodにマッ チしたデザインも気に入っている。」(以上,甲47)との記載があ り,これらの記載は,原告製品において,デザイン(意匠)が購入動 機となっていることを示すものといえる。加えて,被告意匠と本件登 録意匠と類似していることに照らすならば,被告意匠においても,色 のみならず,デザイン(意匠)も購入動機に寄与しているものと認め られる。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
オ 小括
以上によれば,意匠法39条1項により算出される原告の損害額は,被 告製品の販売数量(前記ア)に単位数量当たりの原告製品の利益額(前記 ウ(ウ))を乗じて得られた額である722万9506円から,「販売する ことができないとする事情」に相当する数量(上記販売数量の9割)に応 じた額を控除した後の72万2950円となる。
(2) 弁護士費用
本件事案の性質,審理の経過等諸般の事情を総合考慮すると,被告による 本件意匠権の侵害行為と相当因果関係のある原告の弁護士費用相当額の損 害は,20万円と認めるのが相当である。

◆判決本文

◆本件意匠および被告製品です

◆公知意匠です

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平成28(行ケ)10220  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年7月4日  知的財産高等裁判所(4部)

 CS関連発明について、認定については誤っていないとしたものの、 引用例には、本願発明の具体的な課題の示唆がなく、相違点5について、容易に想到するものではないとして、進歩性無しとした審決が取り消されました。  確かに,引用例には,発明の目的は,複数の事業者と,税理士や社会保険労務士 のような専門知識を持った複数の専門家が,給与計算やその他の処理を円滑に行う ことができるようにするものであり(【0005】),同発明の給与計算システム及び 給与計算サーバ装置によれば,複数の事業者と,税理士や社会保険労務士のような 専門知識を持った複数の専門家を,情報ネットワークを通じて相互に接続すること によって,給与計算やその他の処理を円滑に行うことができること(【0011】), 発明の実施の形態として,複数の事業者端末と,複数の専門家端末と,給与データ ベースを有するサーバ装置とが情報ネットワークを通じて接続された給与システム であり,専門家端末で給与計算サーバ装置にアクセスし,給与計算を行うための固 定項目や変動項目のデータを登録するマスター登録を行い(【0018】〜【002 1】),マスター登録された情報とタイムレコーダ5から取得した勤怠データとに基 づき,給与計算サーバ装置で給与計算を行い,給与担当者が,事業者端末で給与明 細書を確認した上で,給与振り込みデータを金融機関サーバに送信する(【0022】 〜【0025】,【0041】〜【0043】,図7のS11〜S20)ほか,専門家 が専門家端末を介して給与データベースを閲覧し(【0031】〜【0033】),社 会保険手続や年末調整の処理を行うことができる(【0026】〜【0030】,【0 044】,【0045】,図7のS21〜S28)とする構成が記載されていることが\n認められる。 しかし,引用文献が公開公報等の特許文献である場合,当該文献から認定される 発明は,特許請求の範囲に記載された発明に限られるものではなく,発明の詳細な 説明に記載された技術的内容全体が引用の対象となり得るものである。よって,引 用文献の「発明が解決しようとする課題」や「課題を解決するための手段」の欄に 記載された事項と一致しない発明を引用発明として認定したとしても,直ちに違法 とはいえない。 そして,引用例において,社労士端末や税理士端末に係る事項を含まない,給与 計算に係る発明が記載されていることについては,上記(2)のとおりであるから,こ の発明を引用発明として認定することが誤りとはいえない。 ・・・・ ウ 以上のとおり,周知例2,甲7,乙9及び乙10には,「従業員の給与支払 機能を提供するアプリケーションサーバを有するシステムにおいて,企業の給与締\nめ日や給与支給日等を含む企業情報及び従業員情報を入力可能な利用企業端末のほ\nかに,1)従業員の取引金融機関,口座,メールアドレス及び支給日前希望日払いの 要求情報(周知例2),2)従業員の勤怠データ(甲7),3)従業員の出勤時間及び退 勤時間の情報(乙9)及び4)従業員の勤怠情報(例えば,出社の時間,退社の時間, 有給休暇等)(乙10)の入力及び変更が可能な従業者の携帯端末機を備えること」\nが開示されていることは認められるが,これらを上位概念化した「上記利用企業端 末のほかに,およそ従業員に関連する情報(従業員情報)全般の入力及び変更が可 能な従業者の携帯端末機を備えること」や,「上記利用企業端末のほかに,従業員\n入力情報(扶養者情報)の入力及び変更が可能な従業者の携帯端末機を備えること」\nが開示されているものではなく,それを示唆するものもない。 したがって,周知例2,甲7,乙9及び乙10から,本件審決が認定した周知技 術を認めることはできない。また,かかる周知技術の存在を前提として,本件審決 が認定判断するように,「従業員にどの従業員情報を従業員端末を用いて入力させ るかは,当業者が適宜選択すべき設計的事項である」とも認められない。 (3)動機付けについて 本願発明は,従業員を雇用する企業では,総務部,経理部等において給与計算ソ\nフトを用いて給与計算事務を行っていることが多いところ,市販の給与計算ソフト\nには,各種設定が複雑である,作業工程が多いなど,汎用ソフトに起因する欠点も\nあることから,中小企業等では給与計算事務を経営者が行わざるを得ないケースも 多々あり,大きな負担となっていることに鑑み,中小企業等に対し,給与計算事務 を大幅に簡便にするための給与計算方法及び給与計算プログラムを提供することを 目的とするものである(本願明細書【0002】〜【0006】)。 そして,本願発明において,各従業員が入力を行うためのウェブページを各従業 員の従業員端末のウェブブラウザ上に表示させて,同端末から扶養者情報等の給与\n計算を変動させる従業員情報を入力させることにしたのは,扶養者数等の従業員固 有の情報(扶養者数のほか,生年月日,入社日,勤怠情報)に基づき変動する給与 計算を自動化し,給与計算担当者を煩雑な作業から解放するためである(同【00 35】)。 一方,引用例には,発明の目的,効果及び実施の形態について,前記2(1)のとお り記載されており,引用例に記載された発明は,複数の事業者端末と,複数の専門 家端末と,給与データベースを有するサーバ装置とが情報ネットワークを通じて接 続された給与システムとし,専門家端末で給与計算サーバ装置にアクセスし,給与 計算を行うための固定項目や変動項目のデータを登録するマスター登録を行うこと などにより,複数の事業者と,税理士や社会保険労務士のような専門知識を持った 複数の専門家が,給与計算やその他の処理を円滑に行うことができるようにしたも のである。 したがって,引用例に接した当業者は,本願発明の具体的な課題を示唆されるこ とはなく,専門家端末から従業員の扶養者情報を入力する構成に代えて,各従業員\nの従業員端末から当該従業員の扶養者情報を入力する構成とすることにより,相違\n点5に係る本願発明の構成を想到するものとは認め難い。\nなお,引用発明においては,事業者端末にタイムレコーダが接続されて従業員の 勤怠データの収集が行われ,このデータが給与計算サーバ装置に送信されて給与計 算が行われるという構成を有するから,給与担当者における給与計算の負担を削減\nし,これを円滑に行うということが,被告の主張するように自明の課題であったと しても,その課題を解決するために,上記構成に代えて,勤怠データを従業員端末\nのウェブブラウザ上に表示させて入力させる構\成とすることにより,相違点5に係 る本願発明の構成を採用する動機付けもない。\n

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平成29(ラ)10002  文書提出命令申立却下決定に対する即時抗告事件  不正競争 平成29年6月12日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(4部)は、文書提出命令の申立てに係る文書について「識別することができる事項」を明らかにしていないとして、提出命令を認めることができないとした原決定を維持しました。\n
 文書提出命令の申立ては,申\立てに係る文書の表示及び趣旨を明らかにしてしな\nければならない(民訴法221条1項)。 本件申立てに係る文書は,別紙文書目録記載のとおりであり,高性能\ALPSの 設計書のほかは,高性能ALPSの設計のための試験の内容を記載した文書,高性\n能ALPSで使用されている放射能\廃棄物量削減,核種除去性能に関する技術情報\nが記載されている文書,その他高性能ALPSの設計・製造・運用に関して作成さ\nれた文書というものであって,これらの表示は,文書の記載内容を類型的に示すも\nのではない。本件各文書は,個人名や組織名などで,その作成名義者は特定されて いるものではなく,作成日付や作成期間も特定されておらず,相手方における管理 態様などでも特定されていない。 また,抗告人は,本件申立てに係る文書の趣旨について,設計書には,抗告人が\n相手方に開示した抗告人の営業秘密を用いて,それ以前には相手方が有しなかった 核種除去性能に関する知見,放射能\廃棄物量削減に関する知見を前提とした設計が されており,その他高性能ALPSの設計・製造・運用に関して作成された文書等\nには,上記の各知見を前提とした記載がされているとする。しかし,核種除去性能\nに関する知見,放射能廃棄物量削減に関する知見の内容は,極めて広範囲に及ぶ抽\n象的なものである。各知見を,抗告人の営業秘密であって,相手方に開示した知見 と限定したり,相手方が有しなかった知見と限定したりするだけでは,各知見の内 容が客観的に具体化されるものではない。したがって,本件各文書に上記の記載等 があるとするだけでは,本件申立てに係る文書に記載されている内容の概略や要点\nは明らかではない。 さらに,後記で検討するとおり,本件申立てに係る文書を識別することができ\nる事項も明らかではない。 よって,本件申立ては,本件申\立てに係る文書の表示及び趣旨を明らかにしてな\nされたものということはできない。
(2)識別性について
ア 文書提出命令の申立ては,申\立てに係る文書の表示及び趣旨を明らかにして\nなされなくても,これらの事項に代えて,文書の所持者がその申立てに係る文書を\n「識別することができる事項」を明らかにしてなされれば,当該申立ては適法にな\nり得る(民訴法222条1項)。 そして,「識別することができる事項」とは,文書の所持者において,その事項 が明らかにされていれば,不相当な時間や労力を要しないで当該申立てに係る文書\nあるいはそれを含む文書グループを他の文書あるいは他の文書グループから区別す ることができるような事項を意味し,申立人側の具体的な事情と所持者側の具体的\nな事情を総合的に考慮して判断されるべきものである。
イ 相手方の事情
(ア) 高性能ALPSは,損傷した福島第一原発から発生する放射能\汚染水を処 理するための設備であって,既存ALPSよりも高性能な多核種除去設備であり,\n国が巨額を投じて行う高性能多核種除去設備整備実証事業において採用されたもの\nである。(前記1(2)キ) また,同事業の補助事業者は相手方のほか,東京電力及び東芝であり,相手方だ けでも,高性能ALPSの技術開発を推進するに当たり,設計・施工・材料の納入\n等を行う業者として,少なくとも延べ25社を採択し,相手方の多数の内部部署が, 高性能ALPSに関する業務に関わっている。(前記1(2)キ,(3)ウ) さらに,高性能多核種除去設備タスクフォースに報告された前記各報告内容(前\n記1(3)ア,イ)によれば,高性能ALPSは,フィルタ処理装置及び核種吸着装置\nのほか,様々な装置を統合した設備であって,高性能ALPSの設置・稼働に当た\nっては,吸着材の選定,吸着塔の構成,pH調整などに関して,ラボ試験,検証試\n験,実証試験が並行して行われ,課題に応じて多数の変更が加えられていったこと が認められる。 加えて,これらの事実によれば,相手方は,東京電力及び東芝とともに,高性能\n多核種除去設備整備実証事業において高性能ALPSを共同提案するに際し,多数\nの試験を繰り返し,複数の業者と事前に共同提案内容を協議したことも認められる。 (イ) 本件各文書は,1)高性能ALPSの設計書,2)高性能ALPS設計のため\nの疑似水試験,模擬液試験や実液試験の内容を記載した文書,3)高性能ALPSで\n使用されている放射能廃棄物量削減に関する技術情報が記載されている文書,4)高 性能ALPSで使用されている核種除去性能\に関する技術情報が記載されている文 書,5)その他高性能ALPSの設計・製造・運用に関して作成された文書の5つに\n区分することができる。 そして,前記1)の文書については,その対象とする高性能ALPSが最先端の技\n術が用いられた大規模な設備であること,高性能ALPSを構\成する様々な装置の 設計書を含んでいること,高性能ALPSの設計書の作成に多数の業者及び相手方\nの内部部署が関与していること,高性能ALPSの提案・設置・稼働に当たって複\n数の変更が加えられていること,管理態様も様々であることからすれば,相手方に おいて,1)の文書を区別するに当たり,相当な時間と労力を要するというべきであ る。 前記2)の文書については,そもそも,文書の表示を,「試験の内容を記載した文\n書」とするところ,試験の内容には,実際に行われた試験方法や試験結果のほか, 当該試験方法を設定するに至った経緯,当該試験結果に対する考察など多様なもの が含まれる。また,高性能ALPSの設置・稼働に当たっては,吸着材の選定,吸\n着塔の構成,pH調整などに関して,ラボ試験,検証試験,実証試験が並行して行\nわれており,さらに,各試験の前後には,多数の業者及び相手方の内部部署が関与 したものと認められる。そうすると,相手方において,2)の文書を区別するに当た り,相当な時間と労力を要するというべきである。 前記3)及び4)の文書については,文書の表示を,「高性能\ALPSで使用されて いる放射能廃棄物量削減,核種除去性能\に関する技術情報が記載されている文書」 とするところ,高性能ALPSの開発コンセプトは,フィルタ・吸着材を主体とし\nた除去プロセスの採用により,廃棄物発生量を約95%削減するとともに,フィル タ・吸着材処理技術の開発により処理対象とする62核種に対して,高い除去性能\n(NDレベル)を達成するなどというものである。そうすると,前記3)及び4)の文 書は,高性能ALPSで使用されている技術情報が記載されている文書というもの\nでしかなく,おおよそ高性能ALPSに関する文書が全て含まれるから,相手方に\nおいて,3)及び4)の文書を区別するに当たり,相当な時間と労力を要するというべ きである。 前記5)の文書についても,おおよそ高性能ALPSに関する文書が全て含まれる\nから,相手方において,5)の文書を区別するに当たり,相当な時間と労力を要する というべきである。 また,そもそも,本件各文書の相互の関係は明らかではなく,抗告人は,相手方 からの示唆があるにもかかわらず,それを明らかにしていない。本件各文書の中に は,本件仕様書にいう「重要情報」に当たる情報が記載され,相手方において厳格 に管理されている文書が含まれると認められるものの,本件各文書は,このような 文書に限定されているものでもない。 よって,相手方において,本件各文書を,相手方が所持する他の文書あるいは文 書グループから区別するに当たり,相当な時間と労力を要するというべきである。
・・・
以上のとおり,相手方は,本件各文書を,相手方が所持する他の文書あるいは文 書グループから区別するに当たり,相当な時間と労力を要する。一方,抗告人は, 申立てに係る文書の種別,作成期間,内容の概略や要点等をさらに特定することや,\n申立てに係る文書のおおよその作成部署や管理態様等をさらに特定することは困難\nではない。また,抗告人は,相手方が申立てに係る文書を区別するに当たり,不相\n当な時間や労力を要しないよう,申立てに係る文書群を特定する努力をしていない\nといわざるを得ない。 そうすると,本件申立てにおいて,相手方が,不相当な時間や労力を要しないで\n本件申立てに係る文書あるいはそれを含む文書グループを他の文書あるいは他の文\n書グループから区別することができるような事項は明らかではないというべきであ る。 よって,本件申立ては,相手方がその申\立てに係る文書を「識別することができ る事項」を明らかにしてなされたものということはできない。

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平成28(ネ)10047  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年10月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 少し前の事件ですが、漏れていたのでアップします。特許侵害事件において、無効理由無かつ技術的範囲に属するとした1審判断を維持しました。同一特許に係る審決取消請求事件の判決の理由中の判断は,侵害訴訟における技術的範囲の確定に対して拘束力を持たないとも言及しました。
 ところで,特許発明の技術的範囲の確定の場面におけるクレーム解釈と,当該特 許の新規性,進歩性等を判断する前提としての発明の要旨認定の場面におけるクレ ーム解釈とは整合するのが望ましいところ,確かに,本件特許2に係る審決取消請 求事件の判決(甲12)には,控訴人が指摘するとおり,「本件特許発明2は,ケ ーブルコネクタの回転のみによって,すなわち,ケーブルコネクタとレセプタクル コネクタ間のスライドなどによる相対位置の変化なしに,ロック突部の最後方位置 が突出部に対して位置変化を起こす構成に限定されていると解される。」旨の記載\nがある(39頁)。しかし,上記判決は,主引用例(本件における乙3)の嵌合過 程について,「…肩部56で形成される溝部49の底面に回転中心突起53が当た り,ここで停止する状態となる。…この状態で相手コネクタ33を回転させるので はなく,回転中心突起53を肩部56に沿って動かすことで,相手コネクタ33を コネクタ31に対してコネクタ突合方向のケーブル44側にずらした状態にして, 相手コネクタ33をコネクタ突合方向に直交する溝部方向に動かすことができない ようにし,その後,回転中心突起53を中心に相手コネクタ33を回転させている」 (36〜37頁)との認定を前提に,本件特許発明2と乙3発明とを対比するに当 たり,乙3発明には,「回転によって,回転中心突起53の最後方位置が回転前に 比較して後方に位置するという技術思想が記載されているとはいえない」,「回転 中心突起53の上方に肩部56の上面が位置するように,相手コネクタ33が傾斜 している状態で肩部56の前側から後側(ケーブル側)へ回転中心突起53を移動 させているものであって,相手コネクタ33の回転により回転中心突起56の最後 方位置が後方(ケーブル側)へ移動するものではない」(38頁)として,乙3発 明は,「コネクタ嵌合過程にて上記ケーブルコネクタの前端がもち上がって該ケー ブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるとき,上記ロック突部の突部後縁の最後方位 置が,上記ケーブルコネクタがコネクタ嵌合終了姿勢にあるときと比較して前方に 位置するものではないという点において,本件特許発明2と相違する。」旨認定し ている(38頁)。上記のように,乙3発明においては,ロック突部の突部後縁の 最後方位置の変化に,ケーブルコネクタの上向き傾斜姿勢からコネクタ嵌合終了姿 勢への回転を伴う姿勢の変化が関係していないこと(「回転によって,回転中心突 起53の最後方位置が回転前に比較して後方に位置するという技術思想が記載され ているとはいえない」こと)に照らせば,本件特許発明2と乙3発明とが相違する ことを認定するについては,本件特許発明2におけるロック突部の突部後縁の最後 方位置の変化が,ケーブルコネクタの上向き傾斜姿勢からコネクタ嵌合終了姿勢へ の回転を伴う姿勢の変化によって生じるものであれば足り,「回転のみによって」 生じること,言い換えれば,ケーブルコネクタを上向き傾斜姿勢からコネクタ嵌合 終了姿勢へと変化させる際に,姿勢方向を回転させることに伴って生じる「ケーブ ルコネクタとレセプタクルコネクタ間のスライドなどによる相対位置の変位」が一 切あってはならないことを要するものではないというべきである。なお,同一特許 に係る審決取消請求事件の判決の理由中の判断は,侵害訴訟における技術的範囲の 確定に対して拘束力を持つものではない。 したがって,控訴人の上記限定解釈に係る主張は,理由がない。
(イ) 控訴人は,被控訴人が,特許の無効を回避するために,自ら,「本件特許 発明2は,「ロック突部の突部後縁の最後方位置」が,「ケーブルコネクタが上向 き傾斜姿勢にあるとき」はロック溝部の溝部後縁から溝内方に突出する突出部の最 前方位置よりも前方に位置し,また,「ケーブルコネクタがコネクタ嵌合終了姿勢 にあるとき」は上記突出部の最前方位置よりも後方に位置することを規定している」 旨構成要件e及びfを限定解釈すべきことを主張しているのであるから,その技術\n的範囲の解釈に際しては,被控訴人の上記主張が前提にされるべきである旨主張す る。 しかし,特許発明の技術的範囲を解釈するについて,相手方の無効主張に対する 反論として述べた当事者の主張は,必ずしも裁判所の判断を拘束するものではない。 そして,本件特許発明2に係る特許請求の範囲には,控訴人が主張するような限 定は規定されていないし,前記(1)イ記載の本件特許発明2の課題及び作用効果は, ロック突部の突部後縁の最後方位置が,ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にある とき,すなわち,コネクタ嵌合終了姿勢に至る前は,常にロック溝部の溝部後縁か ら溝内方に突出する突出部の最前方位置よりも前方に位置しているのでなければ奏 し得ないというものではない。また,そもそも,本件明細書2には,本件特許発明 2に係る実施例の嵌合動作について,「ロック突部21’の下部傾斜部21’B− 2が,ロック溝部57’の後縁突出部59’Bの位置まで達すると,該後縁突出部 59’Bに対して下部傾斜部21’B−2が該後縁突出部59’Bの下方に向けて 滑動しながらケーブルコネクタ10はその前端が時計方向に回転して水平姿勢とな って嵌合終了の姿勢に至る。」(【0053】)と記載されているように,ケーブ ルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるときであっても,嵌合終了姿勢(水平姿勢)に 近づくと,ロック突部の突部後縁の最後方位置が,ロック溝部の溝部後縁から溝内 方に突出する突出部の最前方位置よりも後方に位置することが開示されているとい えるから,構成要件eを,「ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるときは,ロ\nック突部の突部後縁の最後方位置が,ロック溝部の溝部後縁から溝内方に突出する 突出部の最前方位置よりも前方に位置する」ことを規定したものと解釈することは, 誤りである。
・・・・・
 ア 控訴人の明確性要件違反並びに新規性及び進歩性欠如に係る主張は,控訴人 が請求した無効審判請求(無効2014−800015)と同一の事実及び同一の 証拠に基づくものであるところ,上記無効審判請求については,請求不成立審決が, 既に確定した(甲8,12)。したがって,控訴人において,本件特許2が,上記 明確性要件違反並びに新規性及び進歩性の欠如を理由として,特許無効審判により 無効にされるべきものと主張することは,紛争の蒸し返しに当たり,訴訟上の信義 則によって,許されない(同法167条,104条の3第1項)。
イ なお,控訴人は,本件特許発明2が「ケーブルコネクタの回転のみによって, すなわち,ケーブルコネクタとレセプタクルコネクタ間のスライドなどによる相対 位置の変化なしに,ロック突部の最後方位置が突出部に対して位置変化を起こす構\n成に限定されている」ものと解釈されないとすれば,本件特許発明2は進歩性を欠 く旨主張する。 しかし,本件特許発明2の要旨を上記のように限定的に認定しない場合であって も,乙3発明における嵌合動作は,相手コネクタ33の回転中心突起53をコネク タ31の溝部49に肩部56で停止する深さまで挿入し,次いで,回転中心突起5 3を肩部56に沿って動かし,回転中心突起53が溝部49に形成された肩部56 のケーブル44側に当接している状態にして,その後,回転中心突起53を中心に 相手コネクタ33を回転させ,嵌合終了姿勢に至るというものであり,本件特許発 明2と乙3発明とは,本件特許発明2では,「コネクタ嵌合過程にて上記ケーブル コネクタの前端がもち上がって該ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるとき, 上記ロック突部の突部後縁の最後方位置が,上記ケーブルコネクタがコネクタ嵌合 終了姿勢にあるときと比較して前方に位置し」ているのに対し,乙3発明では,コ ネクタ嵌合過程にて相手コネクタ33の前端がもち上がって該相手コネクタ33が 上向き傾斜姿勢にあるときのうち,少なくとも,コネクタ突合方向のケーブル44 側の端までずらした状態で回転中心突起53を中心に相手コネクタ33を回転させ るとき,回転中心突起の突部後縁の最後方位置が,相手コネクタ33がコネクタ嵌 合終了姿勢にあるときと同一の地点に位置している点,すなわち構成要件eの点で\n相違する。そして,乙3には,乙3発明の上記嵌合動作に関し,回転によって,回 転中心突起53の最後方位置が回転前に比較して後方に位置するという技術的思想 が記載されているとはいえず(甲12・38頁),また,乙3発明と乙7ないし1 0に記載された各コネクタとでは,その構造や形状が大きく異なるから,乙3発明\nにおいて,上記各コネクタの嵌合過程における突起部と突出部との位置関係を適用 しようとする動機付けがあるということはできないし,仮に適用を試みたとしても, 乙3発明において,上記相違点に係る本件特許発明2の構成を備えることが容易に\n想到できたとは認められない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成26(ワ)14006

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平成28(行ケ)10227  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年6月14日  知的財産高等裁判所

 商標「JIS」が4条1項6号に該当するとして拒絶審決がなされたので、出願人は取消訴訟を提起しました。裁判所は審決を維持しました。指定役務は「飲食サービスの提供」でした。同号についての審決は珍しいです。
 後掲の各証拠によれば,日本工業規格(JIS)に関して,次の事実が認 められる。
ア 日本工業規格(JIS)は,昭和24年に制定された工業標準化法に基 づき制定される国家規格であり,平成27年3月末現在で,1万0599 件の規格が制定されている(乙3)。
イ 日本工業規格(JIS)の対象は,家電製品や文房具などの生活用品か ら,化学製品や産業機械まで,あらゆる技術分野(土木及び建築,一般機 械など19分野に分類)の製品に及ぶほか,文字コードやプログラムコー ド等の情報処理に関する規格,漢字の規格(JIS漢字水準),商業施設 などで利用される案内用図記号,公共施設等向けの「ピクトグラム」(絵 文字)など,多岐にわたっている(甲1の3,乙9〜23,38,4 3)。
ウ 経済産業省等は,全国の小・中・高校生等を対象に,平成18年度から 「標準化教室」と題する出前授業を実施しており,そのテキストにおい て,日本工業規格(JIS)やその身近な活用事例等を紹介している(乙 24〜27)。 また,同省は,広く一般向けに,日本工業規格(JIS)に関する各種 のパンフレットやリーフレット等を作成し,ウェブサイトに掲載して広告 を行っている(乙24,28〜31)。 エ そのほかにも,「JIS」の語は,「ジス」と称される国家規格である 日本工業規格を表す文字として,広辞苑を含む多くの辞書や書籍(乙\n1,2,20,32〜37),ウェブサイト(乙38〜40),新聞記事 (乙41〜43)に掲載され,更に,中学校の技術・家庭の教科書等にも 掲載されている(乙44〜46)。 オ 最近においても,2020年の東京五輪の開催に向け,海外からの観光 客の受入れに備え,日本工業規格(JIS)が規定する「ピクトグラム」を 国際標準に合わせて見直すことが話題となり,新聞報道されている(乙4 7〜49)。
(2)以上のとおり,「JIS」の文字は,国家規格である日本工業規格を表す\nものとして我が国において長年にわたって利用され,その対象も多数かつ多 岐にわたり,国民生活全般に密接に関わるものであり,加えて,様々な媒体 で広く取り上げられ,広告や報道がされてきたものといえる。 してみると,「JIS」の文字(引用標章)が,日本工業規格を表す標章\nとして我が国の国民一般に広く認識されており,著名な標章といえるもので あることは明らかというべきである。
(3) 原告の主張について
ア 原告は,本願商標の指定役務である「飲食サービスの提供」に当たり,そ の役務を提供する事業者やその提供を受ける需要者が,引用標章を一般に 目にするとは認められず,日本工業規格について注意を払っているという 取引の実情もないから,引用標章が当該分野に係る取引者,需要者に広く 認識されているとは認められない旨主張する。 しかし,引用標章が,我が国の国民生活全般に密接に関わるものであ り,国民一般に広く認識される標章であることは上記(2)で述べたとおりで あり,「飲食サービスの提供」の分野に係る取引者,需要者のみがその例 外とされるべき理由は何ら認められない。原告は,本願商標の指定役務で ある「飲食サービスの提供」の場面において,取引者,需要者が引用標章 を目にし,これに注意を払うという取引の実情がなければ,当該取引者,需 要者が引用標章を広く認識することはないかのごとく主張するが,当該取 引者,需要者が引用標章を認識する機会は,何も「飲食サービスの提供」の 場面に限られるものではないから,原告の上記主張は理由がない。
イ 原告は,1)需要者が日本工業規格を認識する標章は「JISマーク」で あり,「JIS」の文字は定着していない,2)「JIS」の文字が,他の ものを表す略称として使用されている例があり,需要者は,「JIS」の\n文字から直ちに日本工業規格を認識するとはいえないとして,引用標章は 日本工業規格を表す標章として著名ではない旨主張する。\n しかし,「JISマーク」が日本工業規格を表す標章として国民に広く\n知られている事実があるとしても,そのことが,「JIS」の文字が日本 工業規格を表す標章として著名であることを否定する理由となるものでは\nない(両者が共に日本工業規格を表す標章として広く認識されることもあ\nり得る。)。むしろ,「JISマーク」が,「JIS」の文字をデザイン 化したマークであって(乙4の10頁,乙6参照),そこから「JIS」の 文字を読み取ることができることからすれば,「JISマーク」が日本工 業規格を表す標章として広く知られているとの事実は,「JIS」の文字\nも同様に日本工業規格を表す標章として広く知られていることを示すもの\nということができる。 また,原告が,「JIS」の文字が略称として使用されている例として 挙げるのは,「株式会社ジャパンインバウンドソリューションズ(Japan Inbound Solutions)の略称」(甲20),「JIS 香港日本人学校大 埔校」(甲21),「地震情報サイト JIS」(甲22)の3例であ り,いずれも一般に知られた「JIS」の使用例ではなく,引用標章に 接した国民一般がこれらの使用例を想起することは通常考え難いこと であるから,これらの使用例の存在が,引用標章の著名性を否定する理 由となるものではない。

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平成28(ワ)5104  不正競争行為差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 平成29年6月15日  大阪地方裁判所(21部)

 意匠権侵害に基づいて販売店への警告したところ、販売店が販売を中止しました。製造メーカが意匠権侵害に該当しないので、営業誹謗行為であるとして、不競法違反(2条1項15号)として意匠権者を提訴しました。大阪地裁は、原告の主張を認め、約55万円の損害賠償を認めました。
 ア 登録意匠と対比すべき相手方の意匠とが類似であるか否かの判断は,需要者 の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行う(意匠法24条2項)ものとされてお り,意匠を全体として観察することを要するが,その際には,意匠に係る物品の性 質,用途及び使用態様,さらには公知意匠にはない新規な創作部分の存否その他の 事情を参酌して,取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として 把握し,登録意匠と相手方意匠が,意匠の要部において構成態様を共通にしている\nか否かを観察すべきものである。
イ 本件意匠の要部について検討すると,本件意匠に係る物品は,その物品の説 明によれば,柔軟性を有する合成樹脂製のシートであり,裏面を湿らせて手洗器付 トイレタンクのボウルに密着させて取り付け,ボウルの表面への埃,水垢等の付着\nを防止することができる使い捨てシートであると認められる。そして,これに別紙 意匠図面中の【使用状態を示す参考図】を参考にすると,その形状は,取り付ける 先の一般的な長方形の手洗器付トイレタンクのボウルの形状に規定されているもの ということができるから,取引者・需要者は,その規定された形状を前提として, 本件意匠につき,その形状がボウルの表面の埃,水垢等の付着し易い部分を十\分カ バーしているものであるか,その形状がボウルに密着して取り付け易いものである か,さらには取り付け易くなるよう工夫が施されるかなどの点に注目するものと考 えられる。 したがって,取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分,すなわち要部は,基 本的構成態様ではなく,具体的構\成態様のうちでも,ボウルに装着した場合の使用 状態を決めることになる,本件意匠の外周の形状,すなわち「シート」の四隅の丸 みの半径の大きさの点や,ボウルの孔に対応する「シート」に設けられた貫通孔と 湾曲部の形状及びその位置関係などの点であると認められる。 この点,被告は,本件意匠の実施品は,手洗器付トイレタンクのボウルの表面へ\nの埃,水垢等の付着を防止するという課題を解決するアイデア商品であって,その 当時,市場に同種の用途,機能を有する物品はなかったことから,本件意匠はパイ\nオニア意匠であるとして,意匠に係る物品全体の形態,すなわち基本的構成態様そ\nのものが要部であるように主張する。 しかし,本件意匠の実施品が新品種の商品であって,その基本的構成態様が新規\nなものであったとしても,意匠に係る物品の説明に明らかなように,その物品の使 用目的から,取引者・需要者は,その基本的構成態様が,取り付ける先のボウルの\n形状に規定されているものにすぎないことは容易に理解できるところであるから, 本件意匠の基本的構成態様そのものをもって,最も注意を惹きやすい部分というこ\nとはできず,その点に要部があると認めることはできないから,被告の上記主張は 採用できない。
(3) 本件意匠と原告意匠の類否
以上により本件意匠と原告意匠の類否について検討すると,本件意匠と原告意匠 の共通点は,いずれも本件意匠の要部にかかわらないものであるといえる。 他方,シートの四隅の丸みの半径の大きさが異なること,本件意匠では貫通孔が 湾曲部と離間して設けられているのに対し,原告意匠では湾曲部の中央部と細いス リットによって接続されるように設けられているという具体的構成態様における差\n異点は,いずれも本件意匠の要部にかかわるものであり,とりわけ後者のスリット を設けられている点は,本件意匠に類似する要素はなく,シートをボウルに取り付 ける際に,シートをボウルの湾曲形状に密着させるための微調整を容易にさせる工 夫として取引者・需要者の注意を強く惹くものということができる。 そうすると,本件意匠が無模様であり原告意匠に模様が施されているという差異 点を捨象したとしても,両意匠を全体として観察した場合,看者に対して異なる美 感を起こさせるものと認められるから,原告意匠は本件意匠に類似していないとい うことができる。
(4) 利用関係について
被告は,原告意匠は本件意匠と利用関係にあり,原告商品の販売等は本件意匠権 を侵害するものと主張する。 しかし,上記(3)に説示したとおり,原告意匠は,要部に係る具体的構成態様にお\nいて本件意匠と大きく異なる構成となっており,それによって全体として本件意匠\nとは異なる美感を起こさせているものであるから,原告意匠が本件意匠に係る構成\n態様全てをその特徴を破壊することなく包含しているとは認められない。 したがって,原告意匠は本件意匠と利用関係にあるとして,利用による侵害をい う被告の主張は失当である。
・・・・
なお被告は,知 的財産権の権利行使の一環として行われた侵害警告を不正競争とすることが,知的 財産権の権利行使を委縮させかねない点も指摘するが,侵害警告の段階に留まるの であれば,これを知的財産権に基づく訴訟提起と同様に扱うことはできないし,ま た他方で,客観的には権利行使とはいえない侵害警告により営業上の信用を害され た競業者の事後的救済の観点も十分に考慮されるべきである。\nしたがって,被告の上記主張を採用することはできず,このような知的財産権の 権利行使の一環であったとの主観的事情を含む被告が違法性阻却事由として主張す る事実関係については,不正競争であることを肯定した上で,指摘に係る権利行使 を委縮させるおそれに留意しつつ,そもそもの知的財産権侵害事案における侵害判 断の困難性という点も考慮に入れて,同法4条所定の過失の判断に解消できる限度 で考慮されるべきである。
・・・・
(2) 知的財産権を有する者が,侵害行為を発見した場合に,その侵害行為の差止 を求めて侵害警告をすることは,基本的に正当な権利行使であり,その侵害者が侵 害品を製造者から仕入れて販売するだけの第2次侵害者の場合であっても同様であ る。しかし,侵害品を事業として自ら製造する第1次侵害者と異なり,これを仕入 れて販売するだけの第2次侵害者は,当該侵害品の販売を中止することによる事業 に及ぼす影響が大きくなければ,侵害警告を不当なものと考えても,紛争回避のた めに当該侵害品の仕入れをとりあえず中止する対応を採ることもあり,その場合, 侵害警告が誤りであっても,第1次侵害者に対する販売の差止めが実現されたと同 じ結果が生じてしまうから,こと第2次侵害者に対して侵害警告をする場合には, 権利侵害であると判断し,さらに侵害警告することについてより一層の慎重さが求 められるべきである。したがって,正当な権利行使の意図,目的であったとしても, 権利侵害であることについて,十分な調査検討を行うことなく権利侵害と判断して\n侵害警告に及んだ場合には,必要な注意義務を怠ったものとして過失があるといわ なければならない。 以上により本件についてみるに,本件通知書の記載内容(上記第2の1(4)イ)か らすると,被告は,コープPが本件意匠権の侵害者であるとしても,製造者ではな く仕入れて販売する第2次侵害者にすぎないことを認識していたと認められる。 しかし,本件告知行為に至る経緯をみると,被告は,原告商品を本件カタログで 発見するや実物を確認することなく本件意匠権の侵害品であると断定し,僅か2日 後には,第1次侵害者である製造者を探索しようともせずに,製造者の取引先とも なるコープPに対し,権利侵害であることを断定した上で侵害警告に及んだという のである。 すなわち,上記認定した本件告知行為に至る経緯において,被告が,警告内容が 誤りであった場合に,製造者に及ぼす影響について配慮した様子は全く見受けられ ず,不用意に本件告知行為に及んだものといわなければならない。 また,そもそも原告商品が本件意匠権の侵害品であるとの判断自体についてみて も,本件については,本件告知行為を受けたコープPの代理人弁理士が,当裁判所 と同様の判断内容で原告意匠と本件意匠が非類似である旨を短期間のうちに回答し ているように,両意匠が意匠法的観点からは類似していないというべきことは比較 的明らかなことといえるが(被告は,本件意匠の実施品が同種商品の存しない新種 のアイデア商品であり,先行意匠が存しないことから,意匠権で保護されるべき範 囲を過大に考えていたように思われる。),そうであるのに被告は,原告商品を発 見して極く短期間のうちに意匠権侵害であると断定して侵害警告に及んだというの であるから,この点でも,侵害判断が誤りであった場合に製造者である原告の営業 上の信用を害することになるおそれについて留意した様子が全くうかがえず,不用 意に本件告知行為に及んだものといえる。 以上のとおり,被告は原告商品の販売が本件意匠権の侵害であるとの事実を原告 の取引先であるコープPに対して警告するに当たり,原告商品の販売が本件意匠権 の侵害との判断が誤りであった場合,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告 知となって,製造者である原告の営業上の信用を害することになることなどを留意 することなく本件告知行為をしたものと推認すべきであり,意匠権の権利行使を目 的として上記行為に及んだことを考慮しても,以上の事実関係のもとでは,そのよ うな誤信がやむを得なかったとはいえないから,被告は,本件告知行為をするに当 たって必要な注意義務を尽くしたとはいえず過失があったというべきである。 したがって,被告は,本件告知行為により原告が受けた損害を賠償する責任があ る。

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平成28(行ケ)10071  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年6月14日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は、相違点の認定誤りです。
 ア 本件審決は,「保護方法データベース」に記憶された「入力元のアプ リケーション」が保護対象データである「ファイル」を処理するのは自明 であり,機密事項を保護対象データとして扱うことは当該技術分野の技術 常識であることから,引用発明の「入力元のアプリケーション」,「識別 子」はそれぞれ,本願発明の「機密事項を扱うアプリケーション」,「機 密識別子」に相当し,また,引用発明の「保護方法データベース」に「入 力元のアプリケーション」の「識別子」が記憶されていることは明らかで あるから,引用発明の「保護方法データベース」は本願発明の「機密事項 を扱うアプリケーションを識別する機密識別子が記憶される機密識別子記 憶部」に相当する旨認定・判断した。 イ(ア) しかし,前記認定に係る本願明細書及び引用例1の記載によれば, 本願発明における「機密識別子」は「機密事項を扱うアプリケーション を識別する」ものとして定義されている(本願明細書【0006】等) のに対し,引用発明におけるアプリケーションの「識別子」は,アプリ ケーションを特定する要素(アプリケーション名,プロセス名等)とし て位置付けられるものであって(引用例1【0037】等),必ずしも 直接的ないし一次的に機密事項を扱うアプリケーションを識別するもの とはされていない。
(イ) また,本願発明は,「すべてのアプリケーションに関して同じ保護 を行うと,安全性は高くなるが,利便性が低下するという問題が生じ る」(本願明細書【0004】)という課題を解決するために,「当 該アプリケーションが,前記機密識別子記憶部で記憶されている機密 識別子で識別されるアプリケーションであり,送信先がローカル以外 である場合に」「送信を阻止」するという構成を採用したものである。\nこのような構成を採用することによって,「機密事項を含むファイル\n等が送信によって漏洩することを防止することができ」,かつ,「機 密識別子で識別されるアプリケーション以外のアプリケーションにつ いては,自由に送信をすることができ,ユーザの利便性も確保するこ とができる」という効果が奏せられ(本願明細書【0007】),前 記課題が解決され得る。このことに鑑みると,本願発明の根幹をなす 技術的思想は,アプリケーションが機密事項を扱うか否かによって送 信の可否を異にすることにあるといってよい。 他方,引用発明において,アプリケーションは,機密事項を扱うか否 かによって区別されていない。すなわち,そもそも,引用例1には機密 事項の保護という観点からの記載が存在しない。また,引用発明は,柔 軟なデータ保護をその解決すべき課題とするところ(【0008】), 保護対象とされるデータの保護されるべき理由は機密性のほかにも考え 得る。このため,機密事項を保護対象データとして取り扱うことは技術 常識であったとしても,引用発明における保護対象データが必ず機密事 項であるとは限らない。しかも,引用発明は,入力元のアプリケーショ ンと出力先の記憶領域とにそれぞれ安全性を設定し,それらの安全性を 比較してファイルに保護を施すか否かの判断を行うものである。このた め,同じファイルであっても,入力元と出力先との安全性に応じて,保 護される場合と保護されない場合とがあり得る。 これらの点に鑑みると,引用発明の技術的思想は,入力元のアプリケ ーションと出力先の記憶領域とにそれぞれ設定された安全性を比較する ことにより,ファイルを保護対象とすべきか否かの判断を相対的かつ柔 軟に行うことにあると思われる。かつ,ここで,「入力元のアプリケー ションの識別子」は,それ自体として直接的ないし一次的に「機密事項 を扱うアプリケーション」を識別する作用ないし機能は有しておらず,\n上記のようにファイルの保護方法を求める上で比較のため必要となる 「入力元のアプリケーション」の安全性の程度(例えば,その程度を示 す数値)を得る前提として,入力元のアプリケーションを識別するもの として作用ないし機能するものと理解される。\nそうすると,本願発明と引用発明とは,その技術的思想を異にするも のというべきであり,また,本願発明の「機密識別子」は「機密事項を 扱うアプリケーションを識別する」ものであるのに対し,引用発明の 「アプリケーションの識別子」は必ずしも機密事項を扱うアプリケーシ ョンを識別するものではなく,ファイルの保護方法を求める上で必要と なる安全性の程度(例えば,数値)を得る前提として,入力元のアプリ ケーションを識別するものであり,両者はその作用ないし機能を異にす\nるものと理解するのが適当である。
(ウ) このように,本願発明の「機密識別子」と引用発明の「識別子」が 相違するものであるならば,それぞれを記憶した本願発明の「機密識 別子記憶部」と引用発明の「保護方法データベース」も相違すること になる。
ウ 以上より,この点に関する本件審決の前記認定・判断は,上記各相違点 を看過したものというべきであり,誤りがある。
エ これに対し,被告は,相違点AないしBの看過を争うとともに,仮に相 違点Bが存在するとしても,その点については,本件審決の相違点1に 関する判断において事実上判断されている旨主張する。 このうち,相違点AないしBの看過については,上記ア及びイのとお りである。 また,本件審決の判断は,1)引用例2に記載されるように,ファイル を含むパケットについて,内部ネットワークから外部ネットワークへの 持ち出しを判断し,送信先に応じて許可/不許可を判定すること,すな わち,内部ネットワーク(ローカル)以外への送信の安全性が低いとし てセキュリティ対策を施すことは,本願出願前には当該技術分野の周知 の事項であったこと,2)参考文献に記載されるように,機密ファイルを あるアプリケーションプログラムが開いた後は,電子メール等によって 当該アプリケーションプログラムにより当該ファイルが機密情報保存用 フォルダ(ローカル)以外に出力されることがないようにすることも, 本願出願前には当該技術分野の周知技術であったことをそれぞれ踏まえ て行われたものである。 しかし,1)に関しては,本件審決の引用する引用例2には,送信の許 可/禁止の判定は送信元及び送信先の各IPアドレスに基づいて行われ ることが記載されており(【0030】),アプリケーションの識別子 に関する記載は見当たらない。また,前記のとおり,引用発明における 識別子は,アプリケーションが機密事項を扱うものか否かを識別する作 用ないし機能を有するものではない。\n2)に関しては,参考文献記載の技術は,機密情報保存用フォルダ内の ファイルが当該フォルダの外部に移動されることを禁止するものである ところ(【0011】),その実施の形態として,機密情報保存用フォ ルダ(機密フォルダ15A)の設定につき,「システム管理者は,各ユ ーザが使用するコンピュータ10内の補助記憶装置15内に特定の機密 ファイルを保存するための機密フォルダ15Aを設定し,ユーザが業務 で使用する複数の機密ファイルを機密フォルダ15A内に保存する。」 (同【0018】)との記載はあるものの,起動されたアプリケーショ ンプログラムが機密事項を扱うものであるか否かという点に直接的に着 目し,これを識別する標識として本願発明の機密識別子に相当するもの を用いることをうかがわせる記載は見当たらない(本件審決は,参考文 献の記載(【0008】,【0009】,【0064】)に言及するも のの,そこでの着目点は機密ファイルをあるアプリケーションプログラ ムが開いた後の取扱いであって,その前段階として機密ファイルを定め る要素ないし方法に言及するものではない。)。このように,当該周知 技術においては,アプリケーションが機密事項を扱うものであるか否か を識別する機密識別子に相当するものが用いられているとはいえない。 なお,参考文献の記載(【0032】等)によれば,アプリケーショ ンプログラムのハンドル名がアプリケーションの識別子として作用する ことがうかがわれるが,参考文献記載の技術は,アプリケーションが実 際に機密ファイルをオープンしたか否かによって当該アプリケーション によるファイルの外部への格納の可否が判断されるものであり,入力元 と出力先との安全性の比較により処理の可否を判断する引用発明とは処 理の可否の判断の原理を異にする。また,扱うファイルそのものの機密 性に着目して機密ファイルを外部に出すことを阻止することを目的とす る点で,扱うファイルそのものの機密性には着目していない引用発明と は目的をも異にする。このため,引用発明に対し参考文献記載の技術を 適用することには,動機付けが存在しないというべきである。 そうすると,相違点Bにつき,引用発明に,引用例2に記載の上記周 知の事項を適用しても,本願発明の「機密識別子」には容易に想到し得 ないというべきであるし,参考文献記載の周知技術はそもそも引用発明 に適用し得ないものであり,また,仮に適用し得たとしても,本願発明 の「機密識別子」に想到し得るものではない。そうである以上,相違点 Bにつき,本件審決における相違点1の判断において事実上判断されて いるとはいえない。

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平成18(ワ)16899  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成20年7月4日  東京地方裁判所

 かなり前の事件ですが、漏れていたのでアップします。  イラストに著作物性は認めました。しかし、両者の関係について、似ているのはアイデアレベルだと判断しました。判決文の後ろに原告と被告のイラストが対比されています。
 被告は,原告博士絵柄は(被告博士絵柄とともに),博士をイメージした 人物としての一般的要素を取り入れ,顔の表情や色調に工夫を加えて作成さ\nれているものの,著作物としての創作性が認められないありふれた表現であ\nる旨主張する。 そこで,この点についてみるに,証拠(乙1〜8)及び弁論の全趣旨によ れば,原告博士絵柄及び被告博士絵柄以外の博士をイメージした人物として, 法務省の商業登記Q&Aに用いられている博士(乙第1号証),中央出版株 式会社のさんすうおまかせビデオに用いられている博士(乙第2号証),独 立行政法人水資源機構のホームページに用いられているものしり博士(乙第\n3号証),株式会社新学社の社会科資料集6年に用いられている歴史博士 (乙第4号証),証券クエストのホームページに用いられている博士(乙第 5号証),DEX WEBのイラスト・クリップアートに表示されている3\nDCGの博士(乙第6号証),株式会社パルスのおもしろ実験室のパッケー ジに用いられている博士(乙第7号証,ただし,乙第6号証の博士と同一の もの)及び株式会社UYEKIの防虫ダニ用スプレーの宣伝に用いられてい る博士(乙第8号証)の絵柄があること,これらの絵柄の共通の要素として, 角帽を被り,丸い鼻から髭を生やし,比較的ふくよかな体型の年配の男性で あることなどを挙げることができること,が認められる。しかしながら,こ れらの博士のそれぞれの絵柄を見れば,共通の要素としての角帽,鼻,髭, 体型等の描き方にしても様々であり,まして,色づかいやタッチなどの全体 の印象を含めれば,博士をイメージさせる要素が類似するとしても,これら の博士の絵柄相互間において,表現物としての共通性があって,いずれもが\nありふれていると言い切ることはできないものというべきである。そして, 原告博士絵柄については,上記の各博士のそれぞれの絵柄と対比して,なお 博士絵柄の表現としてありふれているとまでは言えないものと認められる。
(3)したがって,原告博士絵柄は,全体としてみたとき,前記(1)のような 特徴を備えた博士の絵柄の一つの表現であって,そこに作成者の個性の反映\nされた創作性があるというべきであり,原告商品の一部を構成する原告博士\n絵柄の登場する画像の著作物として,創作的な表現とみることができるもの\nと認められる。
・・・・
原告博士絵柄と被告博士絵柄とを対比すると,原告博士絵柄と被告博士絵 柄とは,前記(1)アのとおりの共通点があり,また,同ウの由来を考慮す れば,元来,被告博士絵柄は,原告博士絵柄に似せて製作されたものという ことができるものの,同イの相違点に照らすと,絵柄として酷似していると は,言い難いものと認められる。
そして,原告博士絵柄のような博士の絵柄については,前記1(2)の乙 第1ないし第8号証でみた博士の絵柄のように,角帽やガウンをまとい髭な どを生やしたふっくらとした年配の男性とするという点はアイデアにすぎず, 前記(1)アの原告博士絵柄と被告博士絵柄との共通点として挙げられてい るその余の具体的表現(ほぼ2頭身で,頭部を含む上半身が強調されて,下\n半身がガウンの裾から見える大きな靴で描かれていること,顔のつくりが下 ぶくれの台形状であって,両頬が丸く,中央部に鼻が位置し,そこからカイ ゼル髭が伸びていること,目が鼻と横幅がほぼ同じで縦方向に長い楕円であ って,その両目の真上に眉があり,首と耳は描かれず,左右の側頭部にふく らんだ髪が生えていること)は,きわめてありふれたもので表現上の創作性\nがあるということはできず,両者は表現でないアイデアあるいは表\現上の創 作性が認められない部分において同一性を有するにすぎない。また,被告博 士絵柄全体をみても,前記(1)イの相違点に照らすと,これに接する者が 原告博士絵柄を表現する固有の本質的特徴を看取することはできないものと\nいうべきである(なお,原告商品に登場する原告博士絵柄と被告各商品に登 場する被告博士絵柄は,ともにそれぞれの商品の一部を構成する画像として\n存在するところ,動きのある映像として見たとき,原告博士絵柄と被告博士 絵柄との違いは明白である。)。 したがって,被告各商品の一部を構成する被告博士絵柄の登場する画像が\n原告商品の一部を構成する原告博士絵柄の登場する画像の複製権や翻案権を\n侵害していると認めることはできない

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平成28(ワ)7185  意匠権侵害差止請求事件  意匠権  民事訴訟 平成29年5月18日  大阪地方裁判所

 部分意匠の侵害事件において、非類似と判断されました。部分意匠については、少し違うだけでも非類似となりやすいですね。
 ア 以上を踏まえて検討すると,上記のとおり,本件意匠と被告意匠は,基本的 構成態様が共通しているところ,土入れ部背面部自体は要部ではないが,植木鉢の背面上方に円形孔部が形成された枠体部は本件意匠の要部であることからすれば,\n円形孔部が形成された枠体部が植木鉢背部の内側に侵入して形成された枠体部を有 する本件意匠と被告意匠とは,一定の美感の共通性が生じているといえる。 しかし,本件意匠の要部である枠体部の具体的形状において,両意匠は多くの点 で異なっている。すなわち,本件意匠と被告意匠は,内側枠体部,外側枠体部があ る点については共通するものの,本件意匠においては内側枠体部も外側枠体部も円 形孔部の円弧に沿うようにほぼ円形であるのに対し,被告意匠は,平面視において, 内側枠体部は略台形状で直線的な形状であり,外側枠体部についてもなだらかな山 状の形で,その稜線部分が直線状であることから,その印象は異なっている。また, 本件意匠においては,内側枠体部の上面が外側枠体部の上面に比して低い段差状に 形成されているのに対し,被告意匠においては,内側枠体部の上面が外側枠体部の 上面より高く,しかも,両者の間に中央枠体部が構成され,中央枠体部の上面が内側枠体部の上面から外側枠体部の上面を連結する外側に凸の円弧状に形成されてい\nることから,両者の枠体部の上面の凹凸は異なっており,上から見た印象を異なる ものとしている。
イ 以上の点をふまえ,本件意匠と被告意匠を全体としてみると,両意匠はいず れも植木鉢背面内側に入り込む給水ボトル挿入用の円形孔部を形成する枠体部が存 在することによって一定の印象の共通性は生じるものの,その枠体部の構成,枠体部を構\成する各部の高さやその形状が異なることにより,本件意匠は,枠体部が円形孔部に沿ってほぼ円形で,背部から見た場合,奥まった内側枠体部が手前に見え る外側枠体部の上面より低い形状になっていたとしてもさほどの段差感を受けるこ とがないから,全体的に丸くシンプルな印象を受けるのに対し,被告意匠は,内側 枠体部が略台形,外側枠体部が山形といった直線的な形状をしており,さらに,外 側枠体部が内側枠体部の上面より低くなっていることから,内側枠体部の形状がよ り看取しやすく,また,枠体部の上部において内側,中央,外側部分が凸凹になっ ていることとも相まって,直線的でごつごつした印象を受けるものであるから,そ れぞれの意匠を全体として観察したときに,本件意匠と被告意匠とが類似の美感を 生じるとまでは認められず,両意匠が類似しているということはできない。

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本件意匠・被告意匠などはこちらです。

◆別紙1

◆別紙2

◆別紙3

◆別紙4

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平成28(行ケ)10147  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年6月8日  知的財産高等裁判所

 伊藤園のトマトジュース製造方法に関する特許に対して、カゴメが無効と争いました。審決は、全ての請求項について無効理由なしと判断しましたが、知財高裁は全ての請求項について、サポート要件違反の無効理由ありとして、審決を取り消しました。
 前記(3)で検討したとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,濃 厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制された, 新規なトマト含有飲料及びその製造方法,並びに,トマト含有飲料の酸味抑制方法 を提供するための手段として,本件発明1,8及び11に記載された糖度,糖酸比 及びグルタミン酸等含有量の数値範囲,すなわち,糖度について「9.4〜10. 0」,糖酸比について「19.0〜30.0」,及びグルタミン酸等含有量について 「0.36〜0.42重量%」とすることを採用したことが記載されている。 そして,本件明細書の発明の詳細な説明に開示された具体例というべき実施例1 〜3,比較例1及び2並びに参考例1〜10(【0088】〜【0090】,【表1】)には,各実施例,比較例及び参考例のトマト含有飲料のpH,Brix,酸度,糖\n酸比,酸度/総アミノ酸,粘度,総アミノ酸量,グルタミン酸量,アスパラギン酸 量,及びクエン酸量という成分及び物性の全て又は一部を測定したこと,及び該ト マト含有飲料の「甘み」,「酸味」及び「濃厚」という風味の評価試験をしたことが 記載されている。
(イ) 一般に,飲食品の風味には,甘味,酸味以外に,塩味,苦味,うま 味,辛味,渋味,こく,香り等,様々な要素が関与し,粘性(粘度)などの物理的 な感覚も風味に影響を及ぼすといえる(甲3,4,62)から,飲食品の風味は, 飲食品中における上記要素に影響を及ぼす様々な成分及び飲食品の物性によって左 右されることが本件出願日当時の技術常識であるといえる。また,トマト含有飲料 中には,様々な成分が含有されていることも本件出願日当時の技術常識であるとい える(甲25の193頁の表−5−196参照)から,本件明細書の発明の詳細な\n説明に記載された風味の評価試験で測定された成分及び物性以外の成分及び物性も, 本件発明のトマト含有飲料の風味に影響を及ぼすと当業者は考えるのが通常という ことができる。したがって,「甘み」,「酸味」及び「濃厚」という風味の評価試験を するに当たり,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量を変化させて,これら三つ の要素の数値範囲と風味との関連を測定するに当たっては,少なくとも,1)「甘み」, 「酸味」及び「濃厚」の風味に見るべき影響を与えるのが,これら三つの要素のみ である場合や,影響を与える要素はあるが,その条件をそろえる必要がない場合に は,そのことを技術的に説明した上で上記三要素を変化させて風味評価試験をする か,2)「甘み」,「酸味」及び「濃厚」の風味に見るべき影響を与える要素は上記三 つ以外にも存在し,その条件をそろえる必要がないとはいえない場合には,当該他 の要素を一定にした上で上記三要素の含有量を変化させて風味評価試験をするとい う方法がとられるべきである。 前記(3)のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,糖度及び糖酸比を規定す ることにより,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みを有しつつも,トマト の酸味が抑制されたものになるが,この効果が奏される作用機構の詳細は未だ明ら\nかではなく,グルタミン酸等含有量を規定することにより,トマト含有飲料の旨味 (コク)を過度に損なうことなくトマトの酸味が抑制されて,トマト本来の甘味が より一層際立つ傾向となることが記載されているものの,「甘み」,「酸味」及び「濃 厚」の風味に見るべき影響を与えるのが,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量 のみであることは記載されていない。また,実施例に対して,比較例及び参考例が, 糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量以外の成分や物性の条件をそろえたものと して記載されておらず,それらの各種成分や各種物性が,「甘み」,「酸味」及び「濃 厚」の風味に見るべき影響を与えるものではないことや,影響を与えるがその条件 をそろえる必要がないことが記載されているわけでもない。そうすると,濃厚な味 わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制されたとの風味 を得るために,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量の範囲を特定すれば足り, 他の成分及び物性の特定は要しないことを,当業者が理解できるとはいえず,本件 明細書の発明の詳細な説明に記載された風味評価試験の結果から,直ちに,糖度, 糖酸比及びグルタミン酸等含有量について規定される範囲と,得られる効果という べき,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制 されたという風味との関係の技術的な意味を,当業者が理解できるとはいえない。
(ウ) また,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された風味の評価試験の 方法は,前記(3)のとおりであるところ,評価の基準となる0点である「感じない又 はどちらでもない」については,基準となるトマトジュースを示すことによって揃 えるとしても,「甘み」,「酸味」又は「濃厚」という風味を1点上げるにはどの程度 その風味が強くなればよいのかをパネラー間で共通にするなどの手順が踏まれたこ とや,各パネラーの個別の評点が記載されていない。したがって,少しの風味変化 で加点又は減点の幅を大きくとらえるパネラーや,大きな風味変化でも加点又は減 点の幅を小さくとらえるパネラーが存在する可能性が否定できず,各飲料の風味の\n評点を全パネラーの平均値でのみ示すことで当該風味を客観的に正確に評価したも のととらえることも困難である。また,「甘み」,「酸味」及び「濃厚」は異なる風味 であるから,各風味の変化と加点又は減点の幅を等しくとらえるためには何らかの 評価基準が示される必要があるものと考えられるところ,そのような手順が踏まれ たことも記載されていない。そうすると,「甘み」,「酸味」及び「濃厚」の各風味が 本件発明の課題を解決するために奏功する程度を等しくとらえて,各風味について の全パネラーの評点の平均を単純に足し合わせて総合評価する,前記(3)の風味を評 価する際の方法が合理的であったと当業者が推認することもできないといえる。 以上述べたところからすると,この風味の評価試験からでは,実施例1〜3のト マト含有飲料が,実際に,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつ トマトの酸味が抑制されたという風味が得られたことを当業者が理解できるとはい えない。

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平成28(行ケ)10037  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年6月14日  知的財産高等裁判所

 審決は、新規性無し(29条1項3号違反)で無効と判断しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
 1 本件審決の判断構造と原告の主張の理解
本件審決が認定した本件発明と引用発明(甲1発明)は,いずれも多数の選 択肢から成る化合物に係る発明であるところ,本件審決は,両発明の間に一応 の相違点を認めながら,いずれの相違点も実質的な相違点ではないとして,本 件発明と甲1発明が実質的に同一であると認定判断し,その結果,本件発明に は新規性が認められないとの結論を採用した。 その理由とするところは,本件発明1に関していえば,相違点に係る構成は\nいずれも単なる選択を行ったにすぎず,相違点に係る化合物の選択使用に格別 の技術的意義が存するものとはいえない(相違点1ないし3),あるいは,引 用発明(甲1発明A)が相違点に係る構成態様を包含していることは明らかで\nあり,かつ,その構成態様を選択した点に格別な技術的意義が存するものとは\n認められない(相違点4)というものであり,本件発明1を引用する本件発明 2ないし14,本件発明14を引用する本件発明15ないし17についても, それぞれ,引用発明(甲1発明A又はB)との間に新たな相違点が認められな いか,新たな相違点が認められるとしても,各相違点に係る構成が甲1に記載\nされているか,その構成に格別な技術的意義が存するものとは認められないか\nら,いずれも実質的な相違点であるとはいえないというものである。 要するに,本件審決は,引用発明である甲1発明と本件発明との間に包含関 係(甲1発明を本件発明の上位概念として位置付けるもの)を認めた上,甲1 発明において相違点に係る構成を選択したことに格別の技術的意義が存するか\nどうかを問題にしており,その結果,本件発明が甲1発明と実質的に同一であ るとして新規性を認めなかったのであるから,本件審決がいわゆる選択発明の 判断枠組みに従って本件発明の特許性(新規性)の判断を行っていることは明 らかである。 これに対し,原告は,取消事由として,引用発明認定の誤り(取消事由A) や一致点認定の誤り(取消事由1)を主張するものの,本件審決が認定した各 相違点(相違点1ないし4)それ自体は争わずに,本件審決には,「特許発明 と刊行物に記載された発明との相違点に選択による格別な技術的意義がなけれ ば,当該相違点は実質的な相違点ではない」との前提自体に誤りがあり(取消 事由2),また,仮にその前提に従ったとしても,相違点1ないし4には格別 な技術的意義が認められるから,特許性の有無に関する相違点の評価を誤った 違法があると主張している(取消事由3)。 これによれば,原告は,本件審決が採用した特許性に関する前記の判断枠組 みとその結論の妥当性を争っていることが明らかであり,取消事由2及び3も そのような趣旨の主張として理解することができる。 また,本件発明2ないし17はいずれも本件発明1を更に限定したものと認 められるから,本件発明1の特許性について判断の誤りがあれば,本件発明2 ないし17についても同様に,結論に重大な影響を及ぼす判断の誤りがあると いえる。 以上の観点から,まず,本件発明1に関し,本件審決が認定した各相違点(相 違点1ないし4)を前提に,各相違点が実質的な相違点ではないとして特許性 を否定した本件審決の判断の当否について検討することとする。
・・・・
本件訂正後の特許請求の範囲の記載(前記第2の2)及び本件明細書の記 載(前記(1))によれば,本件発明は,次の特徴を有すると認められる。
・・・
(1) 特許に係る発明が,先行の公知文献に記載された発明にその下位概念とし て包含されるときは,当該発明は,先行の公知となった文献に具体的に開示 されておらず,かつ,先行の公知文献に記載された発明と比較して顕著な特 有の効果,すなわち先行の公知文献に記載された発明によって奏される効果 とは異質の効果,又は同質の効果であるが際立って優れた効果を奏する場合 を除き,特許性を有しないものと解するのが相当である 。 ここで,本件発明1が甲1発明Aの下位概念として包含される関係にある ことは前記3のとおりであるから,本件発明1は,甲1に具体的に開示され ておらず,かつ,甲1に記載された発明すなわち甲1発明Aと比較して顕著 な特有の効果を奏する場合を除き,特許性を有しないというべきである。 そして,甲1に本件発明1に該当する態様が具体的に開示されているとま では認められない(被告もこの点は特に争うものではない。)から,本件発 明1に特許性が認められるのは,甲1発明Aと比較して顕著な特有の効果を 奏する場合(本件審決がいう「格別な技術的意義」が存するものと認められ る場合)に限られるというべきである。
(2) この点に関し,本件審決は次のとおり判断した。
・・・・
エ 以上によれば,本件審決は, (1) 甲1発明Aの「第三成分」として,甲1の「式(3−3−1)」及び 「式(3−4−1)」で表される重合性化合物を選択すること,\n(2) 甲1発明Aの「第一成分」として,甲1の「式(1−3−1)」及び「式 (1−6−1)」で表される化合物を選択すること,\n(3) 甲1発明Aの「第二成分」として,甲1の「式(2−1−1)」で表さ\nれる化合物を選択すること, (4) 甲1発明Aにおいて,「塩素原子で置換された液晶化合物を含有しない」 態様を選択すること, の各技術的意義について,上記(1)の選択と,同(2)及び(3)の選択と,同(4)の 選択とをそれぞれ別個に検討した上,それぞれについて,格別な技術的意 義が存するものとは認められないとして,相違点1ないし4を実質的な相 違点であるとはいえないと判断し,本件発明1の特許性(新規性)を否定 したものといえる。
(3) 本件審決の判断の妥当性
本件発明1は,甲1発明Aにおいて,3種類の化合物に係る前記(1)ないし (3)の選択及び「塩素原子で置換された液晶化合物」の有無に係る前記(4)の選 択がなされたものというべきであるところ,証拠(甲42)及び弁論の全趣 旨によれば,液晶組成物について,いくつかの分子を混ぜ合わせること(ブ レンド技術)により,1種類の分子では出せないような特性を生み出すこと ができることは,本件優先日の時点で当業者の技術常識であったと認められ るから,前記(1)ないし(4)の選択についても,選択された化合物を混合するこ とが予定されている以上,本件発明の目的との関係において,相互に関連す\nるものと認めるのが相当である。 そして,本件発明1は,これらの選択を併せて行うこと,すなわち,これ らの選択を組み合わせることによって,広い温度範囲において析出すること なく,高速応答に対応した低い粘度であり,焼き付き等の表示不良を生じな\nい重合性化合物含有液晶組成物を提供するという本件発明の課題を解決する ものであり,正にこの点において技術的意義があるとするものであるから, 本件発明1の特許性を判断するに当たっても,本件発明1の技術的意義,す なわち,甲1発明Aにおいて,前記(1)ないし(4)の選択を併せて行った際に奏 される効果等から認定される技術的意義を具体的に検討する必要があるとい うべきである。 ところが,本件審決は,前記のとおり,前記(1)の選択と,同(2)及び(3)の選 択と,同(4)の選択とをそれぞれ別個に検討しているのみであり,これらの選 択を併せて行った際に奏される効果等について何ら検討していない。このよ うな個別的な検討を行うのみでは,本件発明1の技術的意義を正しく検討し たとはいえず,かかる検討結果に基づいて本件発明1の特許性を判断するこ とはできないというべきである。 以上のとおり,本件審決は,必要な検討を欠いたまま本件発明1の特許性 を否定しているものであるから,上記の個別的検討の当否について判断する までもなく,審理不尽の誹りを免れないのであって,本件発明1の特許性の 判断において結論に影響を及ぼすおそれのある重大な誤りを含むものという べきである。

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平成28(行ケ)10205  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年6月14日  知的財産高等裁判所

 実施可能要件を満たしていないとして、異議理由ありとした審決が維持されました。
 明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者がその実施をすることができる程度 に明確かつ十分に記載したものであることを要する(特許法36条4項1号)。本件\n発明は,「加工飲食品」という物の発明であるところ,物の発明における発明の「実 施」とは,その物の生産,使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号),物 の発明について実施をすることができるとは,その物を生産することができ,かつ, その物を使用することができることであると解される。 したがって,本件において,当業者が,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及 び出願当時の技術常識に基づいて,本件発明に係る加工飲食品を生産し,使用する ことができるのであれば,特許法36条4項1号に規定する要件を満たすというこ とができるところ,本件発明に係る加工飲食品は,不溶性固形分の割合が本件条件 (6.5メッシュの篩を通過し,かつ16メッシュの篩を通過しない前記不溶性固 形分の割合が10重量%以上であり,16メッシュの篩を通過し,かつ35メッシ ュの篩を通過しない前記不溶性固形分の割合が5重量%以上25重量%以下である) を満たす加工飲食品であるから,当業者が,本件明細書の発明の詳細な説明の記載 及び出願当時の技術常識に基づいて,このような加工飲食品を生産することができ るか否かが問題となる。
前記認定のとおり,本件明細書には,不溶性固形分の割合が本件条件を満たすか どうかを判断する際の測定について,「日本農林規格のえのきたけ缶詰又はえのきた け瓶詰の固形分の測定方法に準じて,サンプル100グラムを水200グラムで希 釈し,16メッシュの篩等の各メッシュサイズの篩に均等に広げて,10分間放置 後の各篩上の残分重量」を測定すること(段落【0036】。以下「本件測定方法」 ということがある。)が記載されている。さらに,「篩上の残存物は,基本的には不 溶性固形分であるが,サンプルを上述のように水で3倍希釈してもなお粘度を有し ている場合は,たとえメッシュ目開きよりも細かい不溶性固形分であっても篩上に 残存する場合があり,その場合は適宜水洗しメッシュ目開きに相当する大きさの不 溶性固形分を正しく測定する必要がある。」(段落【0038】)とも記載されている。
本件明細書の上記記載によれば,本件明細書には,測定対象のサンプルが水で3 倍希釈しても「なお粘度を有している場合」であって,メッシュ目開きよりも細か い不溶性固形分が篩上に塊となって残存している場合には,適宜,水洗することに よって塊をほぐし,メッシュ目開きに相当する大きさの不溶性固形分の重量,すな わち「日本農林規格のえのきたけ缶詰又はえのきたけ瓶詰の固形分の測定方法に準 じて,サンプル100グラムを水200グラムで希釈し,各メッシュサイズの篩に 均等に広げて,10分間放置後の篩上の残分重量」(段落【0036】)に相当する 重量を正しく測定する必要があることが開示されているものと解される。 そして,本件明細書の「より一層,粗ごしした野菜感,果実感,または濃厚な食 感を呈する。」(段落【0009】),「加工飲食品は,ペースト状の食品,又は飲料の形態を有する。」(段落【0030】)との記載によれば,本件発明に係る加工飲食品 は一定程度の粘度を有するものと認められるから,段落【0036】に記載された 本件測定方法によると,実際に,各篩のメッシュ目開きよりも細かい不溶性固形分 により形成される塊が篩上に残存する場合も想定されるところである。 しかしながら,メッシュ目開きよりも細かい不溶性固形分が篩上に塊となって残 存している場合に追加的に水洗をすると(段落【0038】),本件明細書の段落【0 036】に記載された本件測定方法(測定対象サンプル100グラムを水200グ ラムで希釈し,各メッシュサイズの篩に均等に広げて,10分間放置するという測 定手順のもの)とは全く異なる手順が追加されることになるのであるから,このよ うな水洗を追加的に行った場合の測定結果は,本件測定方法による測定結果と有意 に異なるものになることは容易に推認される。このように,本件明細書に記載され た各測定方法によって測定結果が異なることなどに照らすと,少なくとも,水洗を 要する「なお粘度を有する場合」であって,「メッシュ目開きよりも細かい不溶性固 形分が篩上に塊となって残存している場合」であるか否か,すなわち,仮に,篩上 に何らかの固形分が残存する場合に,その固形物にメッシュ目開きよりも細かい不 溶性固形分が含まれているのか,メッシュ目開きよりも大きな不溶性固形分である のかについて,本件明細書の記載及び本件特許の出願時の技術常識に基づいて判別 することができる必要があるといえる(本件条件を満たす本件発明に係る加工飲食 品を生産することができるといえるためには,各篩のメッシュ目開きよりも細かい 不溶性固形分により形成される塊が篩上に残存する場合であるか否かを判別するこ とができることを要する。)。 しかしながら,本件測定方法によって不溶性固形分を測定した際に,篩上に残存 しているものについて,メッシュ目開きよりも細かい不溶性固形分が含まれている のか否かを判別する方法は,本件明細書には開示されておらず,また,当業者であ っても,本件明細書の記載及び本件特許の出願時の技術常識に照らし,特定の方法 によって判別することが理解できるともいえない(篩上に残存しているものが,メ ッシュ目開きよりも細かい不溶性固形分を含むものであるのか否かについて,一般 的な判別方法があるわけではなく,証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば,測定 に使用される篩は,目開きが16メッシュ(1.00mm)又は35メッシュ(0. 425mm)のものと認められるから,篩上に残った微小な不溶性固形分について, 単に目視しただけでは明らかではないといわざるを得ない。)。 そうすると,当業者であっても,本件明細書の記載及び本件特許の出願時の技術 常識に基づいて,その後の水洗の要否を判断することができないことになる。 したがって,本件発明の態様として想定される,「測定したいサンプル100グラ ムを水200グラムで希釈」しても「なお粘度を有している場合」(段落【0038】)も含めて,当業者が,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願時 の技術常識に基づいて,本件条件を満たす本件発明に係る加工飲食品を生産するこ とができると認めることはできない。 以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件発明を当業者が実施でき るように明確かつ十分に記載されているものと認めることはできない。\n

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平成29(ネ)10005  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年6月13日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 被告製品が構成要件「加熱前のメラミン系樹脂発泡体よりも柔軟な」を充足するかが争われました。知財高裁(4部)は、1審同様、充足しないと判断しました。
本件各発明は,メラミン系樹脂発泡体からなる清掃具における「折り畳み可能な\n清掃具の変形能や,清掃対象面の形態に応じて変形可能\な清掃具の柔軟性等」が乏 しいという課題(【0006】)を解決することを目的とするものであり,その効 果は,「捩じり又は絞ったり,或いは,手指の動きに応じて多様な清掃対象物の汚 れを拭き取るといった布雑巾的な用法で使用可能な」ものを提供する(【0011】)\nというものであることからも,本件各発明における圧縮・加熱の工程を経たメラミ ン系樹脂発泡体が,加熱前のメラミン系樹脂発泡体「よりも柔軟な」ものになった ということは,圧縮・加熱前よりも,容易に折り畳みが可能で,清掃対象面の形態\nに応じて変形することができるようになったことを意味するということができる。 よって,本件各発明における「柔軟な」とは,容易に折り畳んだり,変形させた りできることを意味するものと認めることが相当である。
・・・
圧縮前後のメラミン系樹脂発泡体のサンプル平均を比較すると,甲45試験では, 圧縮前後の荷重の差は2.3Nであり,圧縮後のメラミン系樹脂発泡体の方が圧縮 前のものよりも,約5分の1の力で10mmたわんだとの結果になっている。しか しながら,乙11試験では,メラミン系樹脂発泡体の10mmたわみ時の荷重の圧 縮前後の差は0.06Nで,圧縮後の方がより弱い力でたわんだとの結果になって いるものの,約15%弱い力にすぎず,乙34試験では,その差は0.03Nとさ らに小さく,圧縮後の方が約5%弱い力でたわんだとの結果にとどまる。甲45試 験と,乙11試験,乙34試験の試験結果は,同一の試験機関によるものであると ころ,各試験で用いられた試料の圧縮の程度に差があることを考慮したとしても, 大きく異なるといわざるを得ないが,甲45,乙11,乙34の各報告書中には, これら試験結果に大きな差が生じ得たと考えられるような条件の記載はない。 圧縮後のメラミン系樹脂発泡体における10mmたわみ時荷重の平均値は,甲4 5試験において0.60N,乙11試験において0.41N,乙34試験において 0.62Nで,特に,甲45試験と乙34試験の数値は極めて近い。ところが,圧 縮前のものについての同数値は,乙11試験では0.47N,乙34試験では0. 65Nなのに対し,甲45試験では,2.90Nとされており,乙11,乙34の 各試験結果とは2.0N以上,約4倍の差となっているのであって,圧縮の条件等 による差が考えられない圧縮前の数値についてのみ,このような顕著な差があるこ とについて,合理的に理解することは困難といわざるを得ない。乙34報告書によ れば,厚さ40mmのメラミン系樹脂発泡体を10mmに圧縮したものについての 10mmたわみ時荷重は平均2.8N(サンプル数5)で,甲45試験と極めて近 接した数値となっていることも勘案すると,甲45試験の結果をもって,圧縮後の 方が「柔軟」になったと認定することはできない。

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◆1審はこちらです。平成27年(ワ)第9891号

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平成28(行ケ)10168  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年6月12日  知的財産高等裁判所(3部)

 進歩性なしとした審決が取り消されました。なお、相違点3については認定は誤りであるが、他の争点で審決の判断は取り消されるべきものとして、取消理由にはならないと判断されています。
 以上のとおり,本件審決には,本件特許発明1と甲1発明の相違点3の一 内容として相違点3−1を認定した点に誤りがあるものといえる。 しかしながら,後記4で述べるとおり,本件審決認定の相違点3のうち, 相違点3-1以外の部分に係る本件特許発明1の構成についての容易想到性\nは否定されるべきであり,そうすると,本件審決の相違点3−1に係る認定 の誤りは,本件特許発明1の進歩性欠如を否定した本件審決の結論に影響を 及ぼすものではない。
・・・・
原告は,相違点3に係る本件特許発明1の構成のうち,「第1(あるいは\n第2)の係止片が枠体の後端より後ろ向きに突設し枠体の上辺(あるいは 下辺)よりも内側に設けられ」るとの構成についての容易想到性を否定し\nた本件審決の判断は誤りである旨主張する。しかるところ,上記構成のう\nち,「係止片が枠体の後端より後ろ向きに突設」する構成が本件特許発明1\nと甲1発明の相違点といえないことは,上記3(2)で述べたとおりであるか ら,以下では,上記構成のうち,「第1(あるいは第2)の係止片が枠体の\n上辺(あるいは下辺)よりも内側に設けられ」るとの構成(以下「相違点\n3−2に係る構成」という。)についての容易想到性を否定した本件審決の\n判断の適否について検討することとする。 ア 原告は,部材を取り付けるための係止片を当該部材の最外周面よりも 少し内側に設ける構成は,甲1(図39(a)及び図49),16,17及 び63に記載され,審判検甲1及び2が現に有するとおり,スロットマ シンの技術分野において周知な構成であるとした上で,甲1発明に上記\n周知な構成を適用し,相違点3−2に係る構\成とすることは,当業者が 容易に想到し得たことである旨主張するので,以下検討する。 (ア) 甲1の図39(a)及び図49について
甲1の図39(a)(別紙2参照)は,スロットマシンの飾り枠本体に 取り付けられる第4ランプカバーの斜視図であるところ,同図に示さ れた第4ランプカバー423は,側方形状L字状に形成され,その一 辺の両サイドから後方に係止爪424が突設されている(甲1の段落 【0158】)。また,甲1の図49(別紙2参照)は,スロットマシ ンのメダル受皿の分解斜視図であるところ,同図に示されたメダル受 皿12の両サイドには,係止爪620が後方に向かって突設されてい る(甲1の段落【0205】)。 しかしながら,上記係止爪424と第4ランプカバー423の最外周 面との位置関係及び上記係止爪620とメダル受皿12の最外周面との 位置関係については,甲1には記載されておらず,何らの示唆もされて いない。 この点,原告は,これらの図面において,係止片に相当する部分とそ の取付け端の境界に実線が記載されていることから,当業者は,係止片 が部材の最外周面よりも少し内側に設けられていると理解する旨主張す る。しかし,甲1の上記図面は,特許出願の願書に添付された図面であ り,明細書を補完し,特許を受けようとする発明に係る技術内容を当業 者に理解させるための説明図であるから,当該発明の技術内容を理解す るために必要な程度の正確さを備えていれば足り,設計図面に要求され るような正確性をもって描かれているとは限らない。そして,甲1は, 遊技部品を収容する収容箱と収容箱に固定される連結部材を介して収容 箱の前面に開閉自在に設けられる前面扉とから構成されるスロットマシ\nンについての発明を開示するものであり(段落【0001】),特に,連 結部材を前面扉に取り付ける取付部に載置部及び被載置部を形成するこ とによって前面扉を連結部材に組付ける際の作業性を向上させたスロッ トマシンに係る発明を開示するものであるから(段落【0002】〜 【0008】),甲1の図面において,上記取付部に関係しない部材であ る第4ランプカバー423の係止爪424やメダル受皿12の係止爪6 20の詳細な構造についてまで正確に図示されているものと断ずること\nはできない。してみると,甲1の明細書中に何らの記載がないにもかか わらず,上記図面中の実線の記載のみから,係止片が部材の最外周面よ りも少し内側に設けられている構成の存在を読み取ることはできないと\nいうべきであり,原告の上記主張は採用できない。 したがって,甲1の図39(a)及び図49には,そもそも,部材を取 り付けるための係止片を当該部材の最外周面よりも少し内側に設ける構\n成が記載されているとはいえない。
・・・
以上によれば,原告が,「部材を取り付けるための係止片を当該部材 の最外周面よりも少し内側に設ける構成」が記載されているものとして\n挙げる文献のうち,甲1及び63については,そもそもそのような構成\nが記載されているとはいえない(なお,仮に,原告主張のとおり,甲1 及び63に上記構成が記載されていることを認めたとしても,これらの\n文献には,甲16及び17と同様に当該構成が採用される理由について\nの記載や示唆はないから,後記の結論に変わりはない。)。 他方,甲16及び17には,上記構成が記載され,また,審判検甲1\n及び2のパチスロ機も上記構成を有することが認められる。しかしなが\nら,これらの文献の記載や本件審判における審判検甲1及び2の検証の 結果によっても,これらの装置等において上記構成が採用されている理\n由は明らかではなく,結局のところ,当該構成の目的,これを採用する\nことで解決される技術的課題及びこれが奏する作用効果など,当該構成\nに係る技術的意義は不明であるというほかはない。 してみると,甲16及び17の記載や審判検甲1及び2の存在から, 上記構成がスロットマシンの分野において周知な構\成であるとはいえる としても,その技術的意義が不明である以上,当業者がこのような構成\nをあえて甲1発明に設けようと試みる理由はないのであって,甲1発明 に当該周知な構成を適用すべき動機付けの存在を認めることはできない。\nしたがって,甲1発明に上記周知な構成を適用し,相違点3−2に係\nる構成とすることは,当業者が容易に想到し得たこととはいえない。\n

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平成29(行ケ)10033  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年6月8日  知的財産高等裁判所

 不使用であるとして審決が取消されました。多機能物品(十\徳ナイフ)について、一部の機能の商品に関しても使用がなされていたと判断されました。また、使用形態として別の文字とともに使用していましたが、社会通念上同一の商標と判断されました。\n
 前記1(5)のとおり,本件商品1〜3は,革製のケースであって,スイスアーミー ナイフに適合するものとして販売されているものの,その形状は略直方体であって スイスアーミーナイフ以外の物を収納することも可能であること,その販売形態は,\n収納物を伴うことなく本件商品1〜3のみで購入することが可能であること,スイ\nスアーミーナイフには,刃物であるナイフ等以外に,栓抜きやつまようじなど,他 の物も組み込まれていることからすると,第18類「small persona l leather goods」(革製の小さな身の回りの物)に該当するという ことができる。
・・・・
(2) 被告は,ビクトリノックス日本支社が使用していた標章には,いずれも「W ENGER」の文字の右上にRマークが付されているから,同標章は図形単体では なく,図形と文字を組み合わせた一体の標章として使用していたものであり,本件 商標と社会的同一性はない,と主張する。 しかし,前記1(2)(5)のとおり,本件商標と「WENGER」の欧文字とは左右 に配されており分離可能であること,ビクトリノックス日本支社のウェブサイトに\n表示されたものは,本件商標が赤で「WENGER」の欧文字は黒であることから\nすると,本件商標と「WENGER」の欧文字とは分離して観察することができる。 また,Rマークについても,登録商標を示すものとして分離して観察する ことができる。これらのことからすると,本件商標と社会通念上同一の商標が使用 されていたと認めることができる。したがって,被告の主張は,採用することがで きない。

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平成28(行ケ)10154  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年5月30日  知的財産高等裁判所

 訂正について、「誤記とはいえない、かつ、新規事項である」とした審決が取り消されました。
  (1) 特許法126条1項2号は,「誤記・・・の訂正」を目的とする場合には, 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面の訂正をすることを認めているが, ここで「誤記」というためには,訂正前の記載が誤りで訂正後の記載が正しいこと が,当該明細書,特許請求の範囲若しくは図面の記載又は当業者(その発明の属す る技術の分野における通常の知識を有する者)の技術常識などから明らかで,当業 者であればそのことに気付いて訂正後の趣旨に理解するのが当然であるという場合 でなければならないものと解される。
(2)ア そこで,まず,本件明細書に接した当業者が,明細書の記載は原則とし て正しい記載であることを前提として,本件訂正前の本件明細書の記載に何らかの 誤記があることに気付くかどうかを検討する。 (ア) 本件明細書の【0034】の【化14】には,以下に示す化合物(3) から,「EAC」が添加された反応条件下で,以下に示す化合物(4)を得る工程【化 14】が示されており(下図は,【化14】の記載を簡略化し,反応により構造が変\n化した部分に丸印を付したもの。),本件明細書の【0034】の[合成例4]の本 文には,化合物(3)に「EAC(酢酸エチル,804ml,7.28mol)」を 添加し,反応させて,化合物(4)を得たと記載されているから,明細書は原則と して正しい記載であることを前提として読む当業者は,本件明細書には,化合物(3) に酢酸エチルを作用させて化合物(4)を得たことが記載されていると理解する。
(イ) しかし,当業者であれば,以下に示す理由で,「化合物(3)に酢酸エ チルを作用させて化合物(4)を得た」とする記載内容にもかかわらず,化合物(3) に以下に示す酢酸エチルを作用させても化合物(4)が得られない,つまり,【化1 4】に係る原料(出発物質;化合物(3))と,反応剤(EAC)と,生成物(化合 物(4))のいずれかに誤記が存在することに気付くものと考えられる。 すなわち,本件明細書の【0034】の【化14】に接した当業者は,(1)ヒドロ キシ基を有する不斉炭素(20位の炭素原子)の立体化学が維持されていることか ら,【化14】の反応は,酸素原子が反応剤の炭素原子を求核攻撃することによる, 20位の炭素原子に結合した−OH基の酸素原子と反応剤の炭素原子との反応であ ること(20位の炭素原子と酸素原子間のC−O結合が切れる反応が起こるのでは なく,アルコール性水酸基の酸素原子と水素原子の間のO−H結合が切れることに よって不斉炭素の立体構造が維持されることになる反応であること。甲2,23〜\n25),(2)上記−OH基の酸素原子が酢酸エチルの炭素原子を求核攻撃しても,化合 物(4)の側鎖である,−OCH2CH2COOC2H5の構造とはならないこと(炭\n素数が1つ足りないこと)に気付き,これらを考え合わせると,【0034】の「化 合物(3)に酢酸エチルを作用させて化合物(4)を得た」という反応には矛盾が あることに気付くものということができる。 (ウ) したがって,本件明細書に接した当業者は,【0034】の【化14】 (化合物(3)から化合物(4)を製造する工程)において,側鎖を構成する炭素\n原子数の不整合によって,【0034】に何らかの誤記があることに気付くものと認 められる。
・・・・
前記3の取消事由1で判断したとおり,本件明細書に接した当業者であれば,本 件訂正事項に係る【0034】の「EAC(酢酸エチル,804ml,7.28m ol)」という記載が誤りであり,これを「EAC(アクリル酸エチル,804ml, 7.28mol)」の趣旨に理解するのが当然であるということができるから,本件 訂正後の記載である「アクリル酸エチル」は,本件訂正前の当初明細書等の記載か ら自明な事項として定まるものであるということができ,本件訂正によって新たな 技術的事項が導入されたとは認められない。

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平成28(行ケ)10239  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成29年5月30日  知的財産高等裁判所

 画面の意匠について、法上の意匠でないとして、拒絶審決が維持されました。 意2条2項で、画面でも操作するような場合には、法上の意匠として扱われますが、知財高裁も審決と同様に、本件画面はこれに該当しないと判断しました。本件は秘密意匠(意14条)として出願されてますが、内容が公開されています。非開示請求したら認められたのでしょうか?
 意匠法2条2項は,「物品の操作(当該物品がその機能を発揮できる状態にす\nるために行われるものに限る。)の用に供される画像であって,当該物品又はこれと 一体として用いられる物品に表示されるもの」は,同条1項の「物品の部分の形状,\n模様若しくは色彩又はこれらの結合」に含まれ,意匠法上の意匠に当たる旨を規定 する。同条2項は,平成18年法律第55号による意匠法の改正(以下「平成18 年改正」という。)によって設けられたものである。 ところで,平成18年改正前から,家電機器や情報機器に用いられてきた操作ボ タン等の物理的な部品を電子的な画面に置き換え,この画面上に表示された図形等\nからなる,いわゆる「画面デザイン」を利用して操作をする機器が増加してきてい た。このような画面デザインは,機器の使用状態を考慮して使いやすさ,分かりや すさ,美しさ等の工夫がされ,家電機器等の品質や需要者の選択にとって大きな要 素となってきており,企業においても画面デザインへの投資の重要性が増大してい る状況にあった。 しかしながら,平成18年改正前においては,特許庁の運用として,意匠法2条 1項に規定されている物品について,画面デザインの一部のみしか保護対象としな い解釈が行われ,液晶時計の時計表示部のようにそれがなければ物品自体が成り立\nたない画面デザインや,携帯電話の初期画面のように機器の初動操作に必要不可欠 な画面デザインについては,その機器の意匠の構成要素として意匠法によって保護\nされるとの解釈が行われていたが,それら以外の画面デザインや,機器からの信号 や操作によってその機器とは別のディスプレイ等に表示される画面デザインについ\nては,意匠法では保護されないとの解釈が行われていた(意匠登録出願の願書及び 図面の記載に関するガイドライン−基本編−液晶表示等に関するガイドライン[部\n分意匠対応版])。 そこで,画面デザインを意匠権により保護できるようにするために,平成18年 改正により,意匠法2条2項が設けられた。 このような立法経緯を踏まえて解釈すると,同項の「物品の操作…の用に供され る画像」とは,家電機器や情報機器に用いられてきた操作ボタン等の物理的な部品 に代わって,画面上に表示された図形等を利用して物品の操作を行うことができる\nものを指すというべきであるから,特段の事情がない限り,物品の操作に使用され る図形等が選択又は指定可能に表\示されるものをいうものと解される。 これを本願部分についてみると,本願部分の画像は,別紙第1のとおりのもので あって,「意匠に係る物品の説明」欄の記載(補正後のもの,別紙第1)を併せて考 慮すると,画像の変化により運転者の操作が促され,運転者の操作により更なる画 像の変化が引き起こされるというものであると認められ,本願部分の画像は,自動 車の開錠から発進前(又は後退前)までの自動車の各作動状態を表示することによ\nり,運転者に対してエンジンキー,シフトレバー,ブレーキペダル,アクセルペダ ル等の物理的な部品による操作を促すものにすぎず,運転者は,本願部分の画像に 表示された図形等を選択又は指定することにより,物品(映像装置付き自動車)の\n操作をするものではないというべきである(甲1,5)。 そうすると,本願部分の画像は,物品の操作に使用される図形等が選択又は指定 可能に表\示されるものということはできない。また,本願部分の画像について,特 段の事情も認められない。 したがって,本願部分の画像は,意匠法2条2項所定の「物品の操作…の用に供 される画像」には当たらないから,本願意匠は,意匠法3条1項柱書所定の「工業 上利用することができる意匠」に当たらない。
2 原告は,平成18年改正により意匠法2条2項が設けられた趣旨は,形態が, 物品と一体として用いられる範囲において,「物品の操作…の用に供される画像」に 関するデザインを広く保護しようとすることにあり,それ以上に保護対象を限定す る意図は読み取れず,本願部分の画像は,「映像装置付き自動車」という物品におけ る「走る」という機能を発揮できる状態にするための,シフトレバー等の操作の用\nに供されるものということができるから,同項の要件に適合すると主張する。 しかしながら,同項が設けられた趣旨,これを踏まえた同項の「物品の操作…の 用に供される画像」の意義は,前記1のとおりであり,これによると,本願部分の 画像が「物品の操作…の用に供される画像」に当たらないことも,前記1のとおり である。原告は,本願意匠に係る物品の「操作」は,「機械など」に相当するシフト レバーをあやつって働かせることであり,「一定の作用効果や結果」に相当する「走 る」機能を得るために,「物品の内部機構\等」に相当するトランスミッション等に指 示を与えるものであると主張するが,ここでいう「映像装置付き自動車」という「物 品の操作」とは,「走る」という機能を発揮できる状態にするための「一定の作用効\n果や結果」を得るために「物品の内部機構等」であるトランスミッション等に対し\n指示を与えることをいうのであるから,シフトレバー等は,あやつって働かせる対 象である「機械など」に相当するものではなく,「物品の操作の用に供される」もの であって,このシフトレバー等「の操作の用に供される画像」であるか否かを検討 しても,意匠法2条2項所定の画像であることが認められるものではない。

◆判決本文

◆関連判決はこちらです。平成28(行ケ)10240

◆関連判決はこちらです。平成28(行ケ)10241

◆関連判決はこちらです。平成28(行ケ)10242

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平成28(ネ)10083  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年5月18日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審は特許権侵害を認め、無効理由無しと判断しましたが、知財高裁(2部)はこれを取り消しました。結論が変わったのは、引用文献の認定により進歩性欠如です。
(1) 相違点の認定について
被控訴人らは,乙1公報には「治療用マーカー」について何らの記載も示唆もな いから,本件発明が「治療用マーカー」であるのに対し,乙1発明は「治療用マー カー」ではない点も相違点として認定すべきである,と主張する。 しかし,前記1(2)ウのとおり,乙1発明は,皮膚用の入れ墨転写シールを含めた 各種用途の転写シールである。乙1公報には,乙1発明の転写シールが治療用マー カーに用いられることは明示されていないものの,皮膚用の入れ墨転写シールの用 途については限定を設けていないから,乙1発明が治療用マーカーではないとはい えない。本件発明と乙1発明との相違点4として,「本件発明が治療用マーカーであ るのに対し,乙1発明では皮膚用の入れ墨転写シールを含めた各種用途の転写シー ルである点」と認定するのが相当である。
(2) 相違点1,2及び4の判断について
被控訴人らは,乙9発明の「台紙」は「基材」と訳されるべきものであり,患者 の皮膚に接触したままにされるから,治療用の目印となるインク層を皮膚に接着さ せた後すぐに皮膚から剥がされることになる本件発明の「基台紙」とは,構造を全\nく異にし,乙1発明に乙9発明を組み合わせたとしても,本件発明との相違点4に 係る構成に想到するのは容易ではなく,また,乙9発明には「基台紙」がないから,\n乙1発明に乙9発明を組み合わせても,インク層と同一のマークを基台紙に印刷す ることを容易に想到できない,と主張する。 しかし,前記1(4)イ,ウのとおり,乙9発明の装置は,被控訴人ら主張のとおり, 「台紙」を患者の皮膚に接触したままにしておく使用方法もあるが,「台紙」が剥が れた場合のことをも想定しており,「台紙」が剥がれた場合には,「台紙」は,本件 発明において同じく皮膚から剥がされる「基台紙」と同様の機能を有するというこ\nとができる。したがって,乙9発明の「substrate」を「台紙」と訳すこ とは誤りとはいえず,また,本件発明との相違点1,2及び4についての容易想到 性についての被控訴人らの上記主張を採用することはできない。 (3) 相違点3の判断について
ア 被控訴人らは,乙1発明は,「水転写タイプ」を含む従来の入れ墨転写シ ールの課題を解決するために,「粘着転写タイプ」のシールを記載したものであって, 「水転写タイプ」を動機付けるものではなく,むしろ「水転写タイプ」を不具合あ るものとして排除している,と主張する。 しかし,乙1文献に明示的に記載されている実施例は「粘着転写タイプ」である ものの,「粘着転写タイプ」と「水転写タイプ」との違いは,セパレーターを取り除 いた後に,転写シールの粘着層をそのまま皮膚に貼り付けるか,転写シールを水で\n湿してから皮膚に押さえ付けるかの点にある(乙3)にすぎないから,乙1文献記 載の従来技術の問題点である「絵柄がひび割れる,剥離が困難」といった点は,水 転写タイプに特有のものとは認められない。また,乙1発明が課題解決の方法とし て採用した特性を持つ透明弾性層が,転写シールの粘着層を皮膚に貼り付ける前に\n水で湿すことによってその効果を発揮しないとか,その他乙1発明を水転写タイプ とすることが技術的に困難である事情は認められない。したがって,乙1発明が水 転写タイプを排除しているとはいえず,被控訴人らの上記主張を採用することはで きない。
イ 被控訴人らは,乙9発明は「基材」そのものが治療用の目印として皮膚 に転写されるから,水転写タイプを想起させるものではない,と主張する。 しかし,前記(2)のとおり,乙9発明の装置は,「台紙」が剥がれた場合のことを 想定しており,「台紙」が剥がれる場合には,「台紙」の皮膚に接着する側に配置さ れた第1インク層が皮膚に転写され,「台紙」は治療用の目印ではなくなり,インク 層のみが皮膚に転写されることとなるところ,水転写タイプもこのような構成を採\n用するものである(乙3)から,被控訴人らの主張を採用することはできない。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成26年(ワ)第21436号

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平成28(ワ)12608  損害賠償請求事件,著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟平成29年2月28日  東京地方裁判所

 交通事故被害者相談会の広告チラシについて、著作権侵害か争われました。裁判所は、著作物性を否定しました。少し前の事件ですが、もれていたのでアップします。
 著作権法は思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(著\n作権法2条1項1号),複製に該当するためには,既存の著作物とこれに依 拠して作成された対象物件の共通する部分が著作権法によって保護される 思想又は感情の創作的な表現に当たることが必要というべきであり,被告\nアンケート1又は2が原告追加部分に依拠して作成されたものであるとし ても,思想,感情若しくはアイディア,事実,学術的知見など表現それ自\n体でない部分や,表現上の創作性がない部分において原告追加部分の表\現 と共通するにすぎない場合には,複製に当たらないと解するのが相当であ る。
(2) 原告追加部分は,本件被告ファイルに対し,(1)「ご希望時間」欄を新設 して同欄内に午前10時から午後5時30分までの30分刻みの表示をし,\n(2)「住所・TEL」欄を「住所」欄と「電話番号」欄に分け,住所欄に「〒」 の表示をし,(3)「事故発生状況」欄の空白部分の代わりに「□その他」を 新設し,(4)「あなた」欄の「□自動車運転」「□自動車同乗」を併せて「□ 自動車(□運転,□同乗)」とするとともに,「□バイク運転」「□バイク同 乗」を併せて「□バイク(□運転,□同乗)」とし,(5)「初診治療先」「治 療先 2」「治療先 3」欄をそれぞれ「治療先 1/通院回数」「治療先 2/通院回 数」「治療先 3/通院回数」とした上で,それぞれの欄内に「病院名: /通 院回数: 回」の表示をし,(6)「自賠責後遺障害等級」「簡単な事故状況図 をお書きください。」「受傷部位に印をつけてください。」の各欄を設けた上, 「受傷部位に印をつけてください。」欄に人体の正面視図及び後面視図を設 け,(7)相談者の「保険会社・共済名」欄内のチェックボックス及び選択肢 を削除し,「加害者の保険」「保険会社名」の各欄を「加害者の保険会社名」 欄にするとともに同欄内のチェックボックス及び選択肢を削除したもので ある。これに対し,被告アンケート1及び2は,いずれも上記(6)の人体の 正面視図及び後面視図が原告追加部分とやや異なるが,その他の点は上記 (1)から(7)の点において原告追加部分と同一の記載がされている。
(3) そこで検討するに,まず,原告追加部分と被告アンケート1及び2に共 通する上記(1)の点については,相談希望者から必要な情報を聴取するとい うファイルの目的上,相談の希望時間を聴取することは一般的に行われる ことで,そのために「ご希望時間」欄を設けて欄内に一定の時間を30分 ごとに区切った時刻を掲記することは一般的にみられるありふれた表現で\nあるから,著作者の思想又は感情が創作的に表現されているということは\nできない。 また,原告追加部分と被告アンケート1及び2に共通する上記(2)〜(5)及 び(7)の点は,いずれも,本件被告ファイルの質問事項欄を前提にそれを統 合又は分割し,あるいは,各質問事項欄内の選択肢やチェックボックスを 相談者が記載しやすいように追加又は変更したものであり,いずれもアイ ディアに属する事柄にすぎないから、著作権法上の保護の対象となるもの とはいえない。 次に,原告追加部分と被告アンケート1及び2に共通する上記(6)の点(な お,原告追加部分と本件各アンケートでは,正面視及び後面視の各人体図 の具体的なデザインが異なる。)については,相談希望者から必要な情報を 聴取するという本件原告ファイルの目的に照らせば,事故状況や被害状況 を聴取するために,自賠責後遺障害等級を質問事項に設け,事故状況図や 受傷部位を質問事項に入れること,受傷部位を聴取するために,正面視及 び後面視の各人体図を設けて印を付けるよう求めたことは,いずれもアイ ディアにとどまり,あるいは一般的に見られるありふれた表現形式であっ\nて,著作者の思想又は感情が創作的に表現されていると見ることはできな\nい。
以上によれば,原告追加部分と被告アンケート1及び2の共通する部分 は,いずれも著作権法によって保護される思想又は感情の創作的な表現に\nは当たらないから,被告アンケート1及び2は原告追加部分の複製には該 当しないというべきである。 なお,原告は,被告において原告追加部分に著作物性があることを認め ているから,この点について裁判上の自白が成立し,裁判所を拘束するな どとも主張するが,本件全記録によっても被告が原告追加部分の著作物性 を自認したものとは認めることができないから,原告の上記主張は失当と いうほかない。

◆判決本文

◆こちらに、問題となったチラシがあります。

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平成28(行ケ)10089  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年5月15日  知的財産高等裁判所

 商標法4条1項11号違反ではなく、商標法8条1項違反が争われた事例です。知財高裁は登録無効とした審決を維持しました。優先権を使った国際登録が同時期くらいになされると、このようなことはが起きるんですね。
  複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構\成部分が それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的 に結合しているものと認められる場合には,その構成部分の一部を抽出し,\nこの部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは, 原則として許されないが,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商\n品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ 13 る場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じない と認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較\nして商標そのものの類否を判断することも許されるものと解される(最一小 判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁,最二小判平成5年9 月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8日集民22 8号561頁参照)。
(2) これを本件についてみるに,本件商標は,「FINESSENCE」とい うアルファベット10文字を横文字にして成る文字部分(本件文字部分)と, アヤメの花のような図が白抜きされた円形の図形(本件図形)を,上下二段 に組み合わせて構成されるものであるところ,その構\成態様からして,各構\n成部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分 的に結合しているものとは認められない。また,上記のとおり,本件文字部 分はアルファベット10文字を横書きにして成るのに対し,本件図形部分の 横幅は本件文字の3文字分(左から2文字目ないし4文字目)程度しかなく, その大きさの比からして,本件文字部分が本件商標の中心的構成部分に当た\nることは明らかである。加えて,原告も認めるとおり,本件文字部分は,そ れ自体造語であって一般的な用語ではないから,出所識別標識として強く支 配的な印象を与える部分であると認められる。 そうすると,本件商標のうち本件文字部分を要部として抽出し,同部分の みを引用商標と比較して商標の類否を判断することは許されるというべきで あり,この点において,本件審決の認定に誤りがあるとは認められない。

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平成28(行ケ)10151 特許権 行政訴訟 平成29年5月31日  知的財産高等裁判所(3部)

 審決は、進歩性無しを理由として訂正を認めませんでした。知財高裁はこれを取り消しれました。理由は、刊行物1に刊行物2を適用した場合に、あえて、当該構成の技術的意義との関係で凹部を残す理由がないというものです。\n
 本件審決は,刊行物1発明と刊行物2発明が多接点端子を有する電気コネ クタとしての構造を共通にすることから,刊行物1発明に刊行物2発明を適\n用する動機付けがあることを認めた上で,刊行物1発明の側方突出部26, 28に刊行物2発明を適用して,「第一接触部及び第二接触部それぞれの斜 縁の直線部分との接触を通じて相手端子に嵌合側から順次弾性接触するよう になっており,第一弾性腕の第一接触部は,該第一弾性腕の嵌合側端部から 嵌合側と反対側へ延びて相手端子との接触側に向かう斜縁を有し且つ該斜縁 よりも嵌合側と反対側に位置する下縁に凹部が形成され」るようにすること は当業者が容易になし得たことである旨判断し,この判断を前提として,刊 行物1発明と刊行物2発明,周知の技術事項(電気コネクタの技術分野にお いて有効嵌合長を長くすること)及び周知技術(相手コネクタと接触する接 点から接触部の突出基部に向けた直線と,斜縁を通る直線とでなす角度を鋭 角とすること)に基づいて相違点2に係る本件訂正発明の構成とすることは,\n当業者が容易に想到し得たことである旨判断する。 しかしながら,以下に述べるとおり,刊行物1発明に刊行物2記載のコネ クタの弾性舌部に係る構成を適用したとしても,第一弾性腕の第一接触部の\n斜縁よりも嵌合側と反対側に位置する下縁に凹部が形成される構成とするこ\nとを当業者が容易に想到し得たものということはできない。 すなわち,まず,刊行物2記載のコネクタの第一弾性舌部と第二弾性舌部 にそれぞれ形成された突状の第一接触部と第二接触部は,「それぞれの斜縁 の直線部分との接触を通じてプリント回路基板23の電気コンタクトに嵌合 側から順次弾性接触するようになっており,第一弾性舌部と第二弾性舌部 は,プリント回路基板23の電気コンタクトとの接触位置を通り嵌合方向に 延びる接触線に対して一方の側に位置しており,第一弾性舌部の第一接触部 は,該第一弾性舌部の嵌合側端部から嵌合側と反対側へ延びてプリント回路 基板23の電気コンタクトとの接触側に向かう斜縁を有し且つ該斜縁よりも 嵌合側と反対側に位置する下縁を有して」いるものの,当該下縁には「凹 部」が形成されていないから(図9及び18参照),刊行物1発明の側方突 出部26の構成を,刊行物2記載のコネクタの第一接触部に係る構\成に単に 置き換えたとしても,その下縁に「凹部」が形成される構成とならないこと\nは明らかである。
 そこで,刊行物1発明の側方突出部26に刊行物2記載のコネクタの第一 接触部に係る構成を適用することによりその下縁に「凹部」を形成する構\成 とするためには,刊行物1発明の側方突出部26の構成のうち,「下縁に凹\n部が形成され」た構成のみを残した上で,それ以外の構\成を刊行物2記載の コネクタの第一接触部に係る構成と置き換えることが必要となる(本件審決\nも,このような置換えを前提として,その容易性を認めたものと理解され る。)。しかしながら,刊行物1発明の側方突出部26に刊行物2記載のコ ネクタの第一接触部に係る構成を適用するに際し,上記側方突出部26が備\nえる一体的構成の一部である下縁の「凹部」の構\成のみを分離し,これを残 すこととすべき合理的な理由は認められない。そもそも,刊行物1発明の側 方突出部26の下縁に凹部が形成されている理由については,刊行物1に何 ら記載されておらず,技術常識等に照らして明らかなことともいえないか ら,当該構成の技術的意義との関係でこれを残すべき理由があると認められ\nるものではない。したがって,当業者が,刊行物1発明の側方突出部26に 刊行物2記載のコネクタの第一接触部に係る構成を適用するに当たり,刊行\n物1発明の側方突出部26における下縁の「凹部」の構成のみをあえて残そ\nうとすることは,考え難いことというほかない。 してみると,刊行物1発明に刊行物2記載のコネクタの第一接触部に係る 構成を適用したとしても,相違点2に係る本件訂正発明の構\成のうち,第一 接触部の斜縁よりも嵌合側と反対側に位置する下縁に凹部が形成される構成\nとすることを当業者が容易に想到し得たとはいえないから,相違点2に係る 本件審決の上記判断は誤りである。 なお,被告は,刊行物1発明に刊行物2発明を適用すべき動機付けが存在 することについて前記第4の2のとおり主張するが,上記で述べたとおり, 当該動機付けの存在を前提に,刊行物1発明に刊行物2記載のコネクタの第 一接触部に係る構成を適用したとしても,相違点2に係る本件訂正発明の構\ 成とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえないのであるから,被告 の主張は,上記判断を左右するものではない。

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平成29(行ケ)10103  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年6月6日  知的財産高等裁判所(4部)

 出訴期間を経過後の提起として訴えが却下されました。出訴期間の起算日は4/4で、そこから30日だと、5/3が出訴期間の末日です。ただ、その日は、裁判所は休みなので、休み明けの5/8まで延長されます。ただ、裁判所は特許庁と違い、到達主義なので、郵送の場合でも、5/8までに到着しないと、出訴期間経過後として却下されます。
1 本件記録によれば,本件審決の謄本が原告に送達された日は,平成29年4月 3日であり,原告が本件審決取消訴訟の訴状を当裁判所に宛てて郵送し,これが当裁 判所に到達した日は,同年5月9日であることが明らかである。
2 審決取消しの訴えは,審決の謄本の送達があった日から30日を経過した後は 提起することができない(特許法178条3項)ところ,上記1認定の事実によれば, 本件訴えは,本件審決の謄本が原告に送達された平成29年4月3日から既に30日 を経過した同年5月9日(上記期間の満了日は同月8日)に提起されたものと認めら れるから,出訴期間を経過して提起されたものといわざるを得ない。
3 以上によれば,本件訴えは不適法であり,その不備を補正することができない ものであるから,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法140条を適用して,却下するこ ととし,主文のとおり判決する。

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平成28(行ケ)10120  審決取消請求事件  特許権 平成29年5月17日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が取り消されました。技術常識を判断するための証拠の追加についても当然認められるべきであると判断されました。
 そして,以上のような甲2の記載に接した当業者であれば,次のよう な技術的事項を当然に理解するものといえる。
a 均圧線の技術的意義
まず,甲2には,+電位に接続される2個のブラシ及び−電位に接続 される2個のブラシを備える4極重巻モータにおいて,同電位となる べき整流子間を均圧線で接続することによって循環電流の発生を防止 し,それによってブラシ整流作用の悪化等の問題点を解決する技術が, 従来から知られた技術として記載されている(以下,当該技術を「甲2 従来技術」という。)。加えて,電気機器分野に係る教科書と解される 甲11(昭和42年発行の「電気機器各論I(直流機)」)にも,4極 重巻の直流機において,循環電流を防止して整流を容易にするために 均圧結線を用いて巻線中常に等電位である点を導体で接続すること, このような均圧結線は重巻には欠くことのできない重要な結線である こと,均圧結線の好ましい取付け場所は整流子側であることが記載さ れており(87頁19行〜88頁8行),これからすると,甲2従来技 術は,本件原出願前からの電気機器分野における技術常識として当業 者に理解されていたものと認められる(なお,本件の審判手続では,原 告(請求人)による甲11の追加提出が許可されなかった経過がある (甲28の9)。しかし,本件訴訟において,本件審判手続で審理判断 された甲1発明と甲2記載の事項に基づく進歩性欠如の有無について 判断するに当たり,上記甲11に基づいて,判断に必要となる技術常識 を認定することが許されることは明らかである。)。
b ブラシ数削減の原理
甲2記載の発明は,甲2従来技術に係る4極重巻モータ(以下「従来 モータ」という。)において,ブラシの数が4個と多いことに起因して, ロストルク,ブラシ音及びトルクリップルが大きくなるという問題点 があることに鑑み,+側及び−側のブラシをそれぞれ1個のブラシ(合 計2個のブラシ)とすることによって前記問題点を解決したものであ る。
他方,甲2には,上記のようにブラシを減らすことができる原理を説 明する明示的な記載はない。しかし,甲2の段落【0033】における 「従来の電動モータ1では,第1のブラシ11a及び第3のブラシ1 1cを介して電流が流れるが,この実施の形態では第1のブラシ89 aを介して電流が流れ,ブラシ89aを通じて流れる電流量が従来の ものと比較して2倍となる。」との記載からすれば,甲2記載の発明に おいてブラシを減らすことができるのは,均圧線を設けたことの結果 として,1個のブラシから供給された電流が,そのブラシに当接する整 流子片に供給されるとともに,均圧線を通じて同電位となるべき整流 子片にも供給されることによって,対となる他方のブラシがなくとも 従来モータと同様の電流供給が実現できるためであることが理解でき る(この点,被告は,甲2には,均圧線の使用とブラシ数の削減とを結 び付ける記載がないことを理由に,「均圧線を使用してブラシの数を減 らす」技術が記載されているとはいえない旨主張するが,そのような明 示的な記載がなくとも,甲2の記載から上記のとおりの理解は可能と\nいうべきであるから,被告の上記主張には理由がない。)。 してみると,甲2の記載に接した当業者は,甲2には,4極重巻モー タにおいて,同電位となるべき整流子間を均圧線で接続することによ り,同電位に接続されている2個のブラシを1個に削減し,もって,ブ ラシ数の多さから生じるロストルク,ブラシ音及びトルクリップルが 大きくなるという問題を解決する技術が開示されていることを理解す るものといえる。
イ 検討
以上を踏まえて,甲1発明及び甲2の開示事項に基づいて相違点3及び 4に係る本件発明1の構成とすることの容易想到性について検討する。\n(ア) 直流モータが回転力を維持し続けるには,整流子とブラシによって 得られる整流作用が不可欠であることは,直流モータの原理から自明の ことであるから,直流モータにおいて,ブラシ整流作用を良好に保つこと は,当然に達成しなければならない課題である。したがって,当該課題 は,同じく直流モータである甲1発明においても,当然に内在する課題と いうことができる。 しかるところ,前記ア(ウ)aのとおり,+電位に接続される2個のブラ シ及び−電位に接続される2個のブラシを備える4極重巻モータにおい て,ブラシ整流作用の悪化等の問題点を解決するために均圧線を設ける 甲2従来技術が技術常識であることからすれば,同じく同電位に接続さ れた2個のブラシを複数組備える4極重巻モータであり,ブラシの整流 作用を良好に保つという課題が内在する甲1発明においても,甲2従来 技術と同様の均圧線を設けることは,当業者が当然に想到し得ることと いえる。 なお,甲2の記載では,同電位となるべき整流子間を均圧線で接続する ものとされ,本件発明1の均圧部材のように「等電位となるべきコイル間 を接続する」ことが明記されてはいない。しかし,整流子とコイルが接続 されている以上,同電位となるべき整流子間を均圧線で接続することは, 電気的にみて,「等電位となるべきコイル間を均圧線で接続する」ことに ほかならないものといえる。 以上によれば,甲1発明において相違点3に係る本件発明1の構成(コ\nイルのうち等電位となるべきコイル間を接続する均圧部材を備えるこ と)とすることは,甲1発明に甲2の開示事項(甲2従来技術)を適用す ることにより当業者が容易に想到し得たことと認められる。
・・・・
本件審決は,本件発明2について無効理由1の成否の判断を明示しておら ず,この点において判断の遺脱があるとも評価し得るところである。他方,本件発明2が本件発明1に係る請求項1を引用する請求項2に係る発明であり,本件発明1について無効理由1が成り立たない以上,本件発明2 についても当然に無効理由1が成り立たないといえる関係にあることからす ると,本件審決の上記判断には,本件発明1と同様の理由により本件発明2に ついても無効理由1が成り立たないとする趣旨の判断が含まれるものと善解 する余地もある。しかしながら,仮にそうであるとして,上記(4)のとおり, 本件発明1について無効理由1が成り立たないとした本件審決の判断が誤り である以上,本件発明2に係る本件審決の上記判断も誤りであることは明ら かである。したがって,いずれにしても,本件発明2についての無効理由1に係る本 件審決の判断には違法がある。

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平成28(行ケ)10191  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年5月17日  知的財産高等裁判所

 商標「音楽マンション」は、商標としての識別力ありとした審決(無効請求棄却)が維持されました。
(1) 本件商標は,「音楽マンション」という文字から構成されているところ,音楽という文字とマンションという文字をそれぞれ分離してみれば,前者が「音によ\nる芸術」を意味し,後者が「中高層の集合住宅」を意味するところ,両者を一体と してみた場合には,その文字に即応して,音楽に何らかの関連を有する集合住宅と いう程度の極めて抽象的な観念が生じるものの,これには,音楽が聴取できる集合 住宅,音楽が演奏できる集合住宅,音楽家や音楽愛好家たちが居住する集合住宅な どの様々な意味合いが含まれるから,特定の観念を生じさせるものではない。そう すると,「音楽マンション」という文字は,原告が使用する「ミュージション」と同 様に,需要者はこれを造語として理解するというのが自然であり,本件商標の指定 役務において,特定の役務を示すものとは認められない。したがって,「音楽マンシ ョン」という文字は,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識 することができないものとはいえない。 もっとも,原告は,「音楽マンション」という文字がマンションの一定の質,特徴 等を表す用語として使用されていると主張するため,「音楽マンション」という文字が使用されている実情等を踏まえ,以下検討する。
(2) 前記認定事実によれば,原告は,平成12年3月,「音楽マンション川越」, 「ミュージション川越」などと称して,遮音性に優れたマンションを建設し,同マ ンションは,同年10月13日,「川越の音楽マンション」としてグッドデザイン賞 を受賞したこと,上記マンションは,「新建築」という雑誌,日経産業新聞,日本経 済新聞において「川越の音楽マンション」,「ミュージション川越」として紹介され たこと,原告は,平成15年2月に「ミュージション志木」という名称で遮音性に 優れたマンション(以下,「上記マンション」と併せて単に「原告マンション」とい う。)を建設したこと,その後も,「Forbes」,「PIPERS」,「音響技術」,「DIME」,「Home Theater」という各雑誌,全国賃貸住宅新聞,原告代表者執筆に係る「満室賃貸革命」という書籍が,原告マンションを「音楽マンション」として紹介したこと,原告マンションを紹介する以外に,「音楽マンション」という文字を使用したものは,平成元年4月10日の朝日新聞夕刊(大阪)の見出し(「女子学生に音楽マンション」,\n「女子学生用の音楽マンション」としたもの),又は平成16年4月13日の住宅新 報のコラム欄の文章にとどまること,上記住宅新報のコラム欄には,マンションの コンセプト化が進んでいるという例示として「音楽マンション」という文字が使用 されたにとどまり,これを具体的に説明する文章がなく,上記「音楽マンション」 という文字が特定の意味で使用されたとはいえないこと,以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば,「音楽マンション」という文字が「音楽の演奏が可能なマンション」というマンションの特定の質を表\す意味で使用された事例は,平成元年4月10日の朝日新聞夕刊(大阪)の見出しに「女子学生に音楽マンション」,「女子学生用の音楽マンション」と使用された一例(甲1の1及び2)にとどまり,そのほかは,いずれも原告が建設した特定のマンションを示すもの,又は上記住宅新報において使用され,特定の質を意味するか不明なものにすぎず,「音楽マンション」という文字が,個別具体的なマンションの意味を超えて,マンションの一定の質,特徴等を表すものとして一般に使用されていたものとは認められない。かえって,原告自身も,前記第2の3によれば,平成14年8月30日,「音楽マ\nンション」につき商標登録出願をしたものの,平成15年5月6日付けで拒絶理由 通知を受けたことから(甲7の1),同年6月23日,意見書を提出しているところ, 同意見書において,「音楽」と「マンション」を並べても「音楽の演奏が可能なマンション」という意味合いが生ずることはなく,上記朝日新聞夕刊(大阪)に掲載さ\nれた「女子学生に音楽マンション」という見出しについても,「音楽」には防音,演 奏という意味を含まないため,上記見出しはどのようなマンションであるかを理解 することができず,「音楽マンション」という文字がマンションの品質に係る役務で あると認識されることはない旨主張していたことが認められる(甲7の4)。 そうすると,「音楽マンション」という文字は,これが使用されている実情等を踏 まえても,特定の観念を生じさせるものとは認められず,本件商標の指定役務にお いて,特定の役務を示すものとはいえないから,需要者が何人かの業務に係る商品 又は役務であることを認識することができないものとはいえない。 したがって,本件商標は,商標法3条1項6号に該当するものとは認められない。

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平成28(ネ)10076  商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成29年5月17日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審と同様に、極真などの複数の商標について、子供である相続人は極真会館の事業を承継した者ではないと判断されました。なお、極真関連については、商標だけでもかなりの関連する事件があります。
 「(2)ア 前記事実関係によれば,被控訴人の代表取締役を務めるBは,昭和51\n年,極真会館に入門し,平成4年5月,極真会館浅草道場を開設してその支部長に 就任し,極真会館の許可を得て極真会館を示す被控訴人各標章を継続的に使用して いたのであり,Aが平成6年4月26日に死亡した後も,平成6年5月,その後継 者であると自称して極真会館の館長に就任し,同年10月3日,被控訴人を設立し, 被控訴人各標章の使用を継続したことが認められる。その後,極真会館は極真空手 を教授する複数の団体に分裂するに至ったものの,極真会館を示す被控訴人各標章 は,本件各商標の商標登録出願当時はもとより,Aの死亡後にあっては,極真会館 又はその活動を表すものとして広く一般に知られていたことが認められる。\n他方,控訴人Xは,Aの子であり,相続により同人の権利義務を単独で承継した ものの,A死亡当時,極真会館の事業活動に全く関与せず,Aが後継者を公式に指 定せず又は極真会館において世襲制が採用されていなかったことからすると,極真 会館の事業を承継した者ではないことが認められる。 そうすると,控訴人Xは,平成11年2月17日に成立した裁判上の和解に基づ き,同年3月31日,Bらから極真会館総本部の建物の引渡しを受け,その後当該 建物を利用して極真空手に関する事業を行うようになったものの,控訴人らの活動 は,A死亡後に分裂して発生した極真会館の複数団体のうちの一つにとどまるもの と認められる。
これらの事情の下においては,本件各商標は,Bも相当な寄与をして形成された 極真会館という団体の著名性を無償で利用しているものに外ならないというべきで あり,客観的に公正な競業秩序を維持することが商標法の法目的の一つとなってい ることに照らすと,控訴人らが,極真会館の許諾を得て被控訴人各標章を使用して 極真会館としての活動を継続する者に対して本件各商標権侵害を主張するのは,客 観的に公正な競業秩序を乱すものとして,権利の濫用であると認めるのが相当であ る(最高裁昭和60年(オ)第1576号平成2年7月20日第二小法廷判決・民集 44巻5号876頁参照)。 現に,Bは,平成6年ないし平成7年までの間,複数の極真関連標章について商 標登録出願をし,自己名義の商標登録を受けたものの,Aの生前に極真会館に属し ていた者らが,平成14年,Bを被告として,空手の教授等に際して極真関連標章 を使用することにつき,Bの商標権に基づく差止請求権が存在しないことの確認等 を求める訴訟を大阪地方裁判所に提起し(同庁同年(ワ)第1018号),同裁判所は, 平成15年9月30日,極真関連標章はAの死亡後も極真会館を表すものとして需\n要者の間に広く知られており,極真会館内部の構成員に対する関係では,Bが極真\n関連標章の商標登録を取得して商標権者として行動できる正当な根拠はないなどと して,Bの上記商標権の行使が権利濫用であるとして上記不存在確認請求を認容し, その控訴審である大阪高等裁判所(同庁同年(ネ)第3283号)も,平成16年9 月29日,極真関連標章に関し自己名義で商標登録を受けたとしても,極真会館の 外部の者に対する関係ではともかく,極真関連標章の周知性・著名性の形成に共に 寄与してきた団体内部の者に対する関係では,少なくとも極真関連標章の使用に関 する従来の規制の範囲を超えて権限を行使することは不当であるというべきであり, Bによる上記商標登録に係る商標権の行使は権利の濫用に当たり許されないなどと して,Bの控訴を棄却している。上記の理は,本件についても当てはまるものとい える。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成27(ワ)20338

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平成28(ワ)6268  商標権侵害差止請求事件  商標権  民事訴訟 平成29年5月11日  大阪地方裁判所

会社名をロゴ化したについては商標については侵害、その他については、自己の名称を「普通に用いられる方法」により表示したものと判断されました。
 (ア) 被告標章4は,まず,被告の事務所の正面玄関口の看板として表示さ\nれているところ,通常,企業の事務所においては当該企業の商品又は役務に関する 需要者向けの業務が,あるいは,そのための広告宣伝がなされるのであり,現に「AD EBiS」と「EC-CUBE」の広告物が陳列されている。そうすると,被告の事務所の正面 玄関口における被告標章4の使用は,少なくとも「AD EBiS」と「EC-CUBE」につい ての使用であると認められる。 また,被告標章4は,セッションの壁面においても表示されているところ,そこ\nには同時に,「AD EBiS」及び「THREe」の広告の表示があるから,被告は,セッショ\nンにおいて,「AD EBiS」及び「THREe」について被告標章4を表示して使用している\nと認められる。(争点2) また,これらからすると,被告4サービス中の他のものについても被告標章4を 使用するおそれがあるというべきである。
(イ) そして,被告の商号の英訳は「LOCKON CO.,LTD.」であり(甲32の1 頁,乙2の1頁,乙8),「LOCKON」との被告標章4はその略称であるから,被告標 章4が「自己の名称」を表示するものとはいえない。なお,この略称が著名である\nことを認めるに足りる証拠はないから,被告標章4が「著名な略称」を普通に用い られる方法で表示する場合に当たるものともいえない。(争点3)\n

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◆原告と被告が逆の事件です。平成28(ワ)5249 こちらは、原告の請求は全て棄却されています。

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平成28(ワ)5249  商標権侵害差止請求事件  商標権  民事訴訟 平成29年5月11日  大阪地方裁判所

 ウェブサイトにおける使用が35類の広告サービスとしての側面があるかが争われました。裁判所は、42類のプログラムの提供としての使用であり、35類の広告サービスではないと判断しました。
(1) 前記のとおり,被告のホームページにおいて,被告サービスは,「スマート フォン対応のケイータイサイト作成ASP」,「華やかなケータイサイトが専門知識 なしで簡単に作成できる」として総括的に紹介されており,被告サービスの17の 機能の多くはホームページの作成支援に関わる機能\であることからすると,被告サ ービスは,ホームページ作成支援を主たる機能とするものであると認められる。そ\nして,前記のとおり,被告サービスは,「ASP」とされ,ASPとは,ソフトウェ\nアをインターネットを介して利用させるサービスをいうこと(弁論の全趣旨)から すると,被告標章が使用されている被告サービスは,全体として,インターネット を介してスマートフォン等の携帯電話用のホームページの作成・運用を支援するた めのアプリケーションソフトの提供を行うものであり,第42類の「電子計算機用\nプログラムの提供」に該当すると認められ,本件商標の指定役務第35類の「広告」 には該当せず,また,これに類似する役務とも認められない。
(2) これに対し,原告は,被告サービスのうちのプッシュ通知機能及びメール\nマーケティング機能に着目し,これらの機能\のうち,メールサーバによる電子メー ルの配信を提供するインターネット役務部分は広告業に当たるから,広告及び操作 画面に被告標章を表示する行為が「広告業」について被告標章を使用するものであ\nる旨主張する。
しかし,まず,被告サービスの内容は上記のとおりであり,これらの機能は,被\n告サービスの機能として広告されてはいるものの,それぞれ,被告サービスに付随\nする17種類の機能のうちの1つにすぎず,価格面でもこれらの機能\の有無によっ て区分されておらず,これら機能が独立して提供されているわけではないから,被\n告標章がそれらの機能について独立して使用されていると認めることはできない。\nそして,前記のとおり,被告サービスは全体としてインターネットを介してスマー トフォン等の携帯電話用のホームページの作成・運用を支援するためのアプリケー ションソフトの提供を行うものであると認められ,被告標章はそのような被告サー\nビスの全体について使用されているのであるから,被告サービスのうちのプッシュ 通知機能及びメールマーケティング機能\のみに着目して,被告標章が「広告業」に 使用されているとする原告の上記主張は採用できない。 また,被告サービスのプッシュ通知機能及びメールマーケティング機能\が,メー ルサーバによる電子メールの配信を提供する要素を含んでおり,それが広告機能を\n営むものであるとしても,それは,被告サービスによって提供されるアプリケーシ ョンソフトを被告の顧客が使用することにより自動的に行われるものであるから,\n被告の提供する役務は,そのような配信機能を有するプログラムを提供するものと\nいうべきであり,被告自身が広告配信サービスを提供していると捉えることはでき ない。

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◆原告と被告が逆の事件です。平成28(ワ)6268 こちらは、原告の請求が一部認められています。

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平成25(ワ)10958  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年5月17日  東京地方裁判所(40部)

 特許権侵害について、一部の被告装置について、差止と損害賠償(約1400万円)が認められました。102条2項について寄与率による減額を主張しましたが否定されました。
 本件訂正発明1の1及び1の2の意義
上記各記載によれば,本件訂正発明1の1及び1の2は,基礎杭等の造 成にあたって地盤を掘削する掘削装置に関するものであって,この種の掘 削装置として一般に使用されるアースオーガ装置では,オーガマシンの駆 動時の回転反力を受支するために必ずリーダが必要となるが,リーダの長 さが長くなると,施工現場内でのリーダの移動作業や,現場へのリーダの 搬入及び現場からの搬出作業に非常な手間と時間を要するという課題及び 傾斜地での地盤掘削にあっては,クローラクレーンの接地面とリーダの接 地面との段差が大きい場合にリーダの長さを長くとれず,掘削深さが制限 されるという課題があることから,本件訂正発明1の1及び1の2は,こ れらの課題を解決するために,掘削装置について,掘削すべき地盤上の所 定箇所に水平に設置し,固定ケーシングを上下方向に自由に挿通させるが, 当該固定ケーシングの回転を阻止するケーシング挿通孔を形成してなるケ ーシング回り止め部材を備えるものとして,リーダではなく,ケーシング 回り止め部材によって回転駆動装置の回転反力を受支するものとした発明 である,と認められる。
・・・・
原告は,本件訂正発明1の1の実施による被告の利益を算定するに当 たっては,本件発訂正明1の1を実施した工程の代金のみならず,請負 代金額の全額を基礎とすべきと主張する。 しかし,本件訂正発明1の1は,掘削装置に関する発明であり,掘削 工事以外の工程には使用されない。そして,前記「内訳明細書」(乙1 05)によれば,被告は,現場(1)について,本件訂正発明1の1を実施 した掘削工事である「先行削孔砂置換工」のみを受注したものではなく, 「道路改良工事」を受注し,上記掘削工事の他,本件訂正発明1の1を 実施していない工事である「場所打杭工」,「鋼矢板工」及び「桟橋盛 替工」の各工事を行っており,これらの工事の代金(直接工事費)につ いては,本件訂正発明1の1を実施していないのであるから,本件訂正 発明1の1の実施があったためにその余の工事の受注ができたなどの特 段の事情がない限り,本件訂正発明1の1を実施したことにより被告が 受けた利益に当たるということはできない。そして,本件において,上 記事情を認めるに足りる証拠はない。
また,被告は,現場(1)の工事について,上記直接工事費のほかに,間 接工事費として「重機組解回送費」,「重機回送費」及び「経費」の支 払を受けているが,これらについても本件訂正発明1の1の実施により 受けた利益に当たると認めるべき証拠がない。 したがって,被告が,本件訂正発明1の1を実施したことにより受領 した額は,本件訂正発明1の1の実施による先行削孔砂置換工(DH削 孔費)の14本分の代金140万円である。
イ 利益率
被告の利益率が18%であることについて当事者間に争いがない。 したがって,本件訂正発明1の1を実施したことにより被告が得た利益 額は,25万2000円(=140万円×0.18)である。
ウ 寄与率
被告は,本件訂正発明1の1の売上に対する寄与率は低いなどと主張す るので検討するに,特許法102条2項は,損害が発生している場合でも, その損害額を立証することが極めて困難であることに鑑みて定められた推 定規定であるから,当該特許権の対象製品に占める技術的価値,市場にお ける競合品・代替品の存在,被疑侵害者の営業努力,被疑侵害品の付加的 性能の存在,特許権者の特許実施品と被疑侵害品との市場の非同一性など\nに関し,その推定を覆滅させる事由が立証された場合には,それらの事情 に応じた一定の割合(寄与率)を乗じて損害額を算定することができると いうべきである。
本件では,たしかに,前記アのとおり,現場(1)において,15本のうち 1本のケーシングについては,本件訂正発明1の1を実施しない形態(下 部/1本のH形鋼)が用いられていることが認められるものの,これは, 被告の主張によれば,山(崖)側に位置するケーシングでは,下部で井桁 状を組むことが困難であることから「下部/2本のH形鋼」ではなく「下 部/1本のH形鋼」の構成が用いられているというのであって,「下部2本のH形鋼」の構\成により,「下部/1本のH形鋼」の構\成と同等ない\nしより優れた効果が得られるためではない。また,上記イで算出した利益 の額は,本件訂正発明1の1の技術的範囲に属する被告装置1を用いて行 った工事である先行削孔砂置換工(DH削孔費)により被告が得た利益額 そのものであり,それ以外の工事による利益の額は含まれていない。 さらに,被告は,各杭の「掘削長×掘削基本時間」の単価計算から求め られたものに(「掘削時間」/〔「掘削時間」+「準備時間」+「排土埋 戻し時間」〕)を乗じたものが,掘削に対しての時間の割り出し単価とな るなどと主張しており,工事費用について時間当たりの単価を算出して, 現実に掘削に要した時間に相当する分についてのみ本件訂正発明1の1が 寄与しているかのような主張をしているが,被告が「先行削孔砂置換工」 のうちの掘削作業のみを受注しているものではなく,また,一般に掘削作 業のみを受注する形態が考えにくいこと,掘削作業が「先行削孔砂置換工」 の重要部分を占めると考えられること,発注者は準備時間や排土埋戻しの ために被告に工事を発注しているものでなく,準備や排土埋戻しの作業が 利益をあげているとはいえないことなどからすると,被告の上記主張は採 用することができない。 そうすると,代替技術の存在を考慮に入れたとしても,上記額が原告の 損害であるという推定を覆滅させるに足りる証拠がないというほかないか ら,被告の寄与率に係る主張は理由がない。

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平成29(行ケ)10061  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年4月12日  知的財産高等裁判所(3部)

 無効理由なしとした審決が取り消されました。取消理由は、引用文献の認定誤りです。
 そして,上記のように相違点1´を認定した場合,仮に同相違点に係る構\n成(移動体の位置検出を行うために複数の起動信号発信器を出入口の一方側 と他方側に設置する構成)が本件特許の出願時において周知であったとすれ\nば,引用発明Aとかかる周知技術とは,移動体の位置検出を目的とする点に おいて,関連した技術分野に属し,かつ,共通の課題を有するものと認めら れ,また,引用発明Aは,複数の固定無線機の設置位置を特定(限定)しな いものである以上,前記の周知技術を適用する上で阻害要因となるべき事情 も特に存しないことになる(前記のとおり,第1図に関連する「施設の所定 の部屋」を固定無線機の設置位置とする実施例の記載は,飽くまで発明の一 実施態様を示したものにすぎず,そのことにより刊行物1から「施設の各部 屋」を設置位置とする以外の他の態様による実施が読み取れないとはいえな い。)。 したがって,以上の相違点の認定(相違点1´)を前提とすれば,上記技 術分野の関連性及び課題の共通性を動機付けとして,引用発明Aに対し前記 の周知技術を適用し,相違点1´に係る本件訂正発明1の構成を採ることは,\n当業者であれば容易に想到し得るとの結論に至ることも十分にあり得ること\nというべきである。
(3) ところが,本件審決は,かかる相違点を,前記第2の3(3)イ(ア)のとおり, 「第1起動信号発信器が設けられる『第1の位置』及び第2起動信号発信器 が設けられる『第2の位置』に関し,本件訂正発明1では,『第1の位置』 が『出入口の一方側である第1の位置』であり,また,『第2の位置』が『 出入口の他方側である第2の位置』であるのに対し,引用発明Aでは,『第 1の位置』,『第2の位置』の各位置が施設の各部屋に対応する位置である 点」(相違点1。なお,下線は相違点1´との対比のために便宜上付したも のである。)と認定した上,「引用発明Aによる移動体の位置の把握は,ビ ルの各部屋単位での把握に留まる」と断定し,「刊行物1には,移動体の位 置の把握を各部屋の出入口単位で行うこと,即ち,相違点1における本件訂 正発明1に係る事項である,第1起動信号発信器が設けられる第1の位置を 『出入口の一方側』とし,第2起動信号発信器が設けられる第2の位置を『 出入口の他方側』とする点については,記載も示唆もない」から,他の相違 点について検討するまでもなく,本件訂正発明1が刊行物1発明(引用発明 A)から想到容易ではないと結論付けたものである。 これは,本来,複数の固定無線機の設置位置を特定(限定)しない(「施 設の各部屋」は飽くまで例示にすぎない)ものとして認定したはずの引用発 明Aを,本件訂正発明1との対比においては,その設置位置が「施設の各部 屋」に限定されるものと解した上で相違点1を認定したものであるから,そ の認定に誤りがあることは明らかである。 また,本件審決は,上記のように相違点1の認定を誤った結果,引用発明 Aによる移動体の位置の把握が「ビルの各部屋単位での把握に留まる」など と断定的に誤った解釈を採用した上(刊行物1にはそのような記載も示唆も ない。),刊行物1には相違点1に係る構成を適用する動機付けについて記\n載も示唆もない(から想到容易とはいえない)との結論に至ったのであるか ら,かかる相違点の認定の誤りが本件審決の結論に影響を及ぼしていること も明らかである。
(4) 以上によれば,原告が主張する取消事由2は理由がある。
(5) 被告の主張について
これに対し,被告は,刊行物1発明によって実現される作用効果からすれ ば,同発明が実現を意図しているのは,移動体がどの「部屋」(あるいは固 定無線機の設置箇所を含む一定領域)に所在するのかを把握することであり, 言い換えれば,同発明は,「固定無線機からの電波受信可能領域」(検知エ\nリア)と「その固定無線機が置かれた部屋の領域」とが,ほぼイコールであ るという認識を前提とした発明である(取消事由2に関し)とか,刊行物1 発明は大まかな範囲で対象者(物)の所在を把握することを目的とするもの である(取消事由3に関し)などと指摘して,本件訂正発明と刊行物1発明 の違いを強調し,本件審決の認定判断に誤りがない旨を主張する。 しかし,いずれの指摘も刊行物1の記載に基づかないものであり,その前 提が誤っていることは,これまで説示したところに照らして明らかであるか ら,上記被告の主張はその前提を欠くものであって採用できない。
3 以上のとおり,本件審決は,本件訂正発明1に係る相違点1の認定を誤って 同発明が想到容易ではないとの結論を導いているところ,本件審決は,本件訂 正発明2ないし7についても,実質的に同じ理由に基づいて(すなわち,本件 訂正発明2ないし5については,本件訂正発明1の発明特定事項を全て含むこ とを理由に,本件訂正発明6及び7については,相違点1と実質的に差異がな い相違点が認定できることを理由に),本件訂正発明1におけるのと同じ結論 を導いているのであるから,結局のところ,本件訂正発明全部について本件審 決の判断に取り消すべき違法が認められることは明らかである。

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平成28(行ケ)10059  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年4月12日  知的財産高等裁判所(3部)

 原審は、一部の請求項のみ無効と判断しましたが、知財高裁は無効理由なしとした請求項についても無効(明確性・サポート要件違反)と判断しました。
このような一部認容・一部非認容の場合に、双方が不服がある場合、実際の提訴はどうやるのでしょうか?、第1、第2事件みたいにはなってないし。。。
 以上の検討結果を併せ考えれば,文言解釈のみによるのでは,構成要件\nC−2の「ファンの径方向外側」なる記載は多義的に解釈し得るもので あるというべきである。
(2) 特許発明1の構成要件C−2の技術的意義に基づく解釈
ア 上記(1)のとおり,文言解釈のみによるのでは,構成要件C−2の「フ\nァンの径方向外側」なる記載は多義的に解釈し得るものであるとすれば, 当該構成要件の技術的意義に基づきその解釈を検討すべきこととなる。
イ 本件特許発明は,小型軽量化,高効率化を目的としてブラシレスモータ を使用した携帯用電気切断機において,その回路基板の配置スペースの 確保及び冷却が問題となっていること,また,操作性を妨げないハウジ ング形状である必要があることを背景に,モータを収容するハウジング の形状を大きく変更せず,かつ,操作性を損なわずに,モータ駆動用の 回路基板の配置スペースを確保するとともにその冷却を良好に行うこと を目的とするものである(前記1(3)イ,ウ)。 このような目的を達成するために,本件特許発明は,本件実施例にお いて,ハンドルを把持する作業者による作業の妨げとならないように, 回路基板収容部をハンドルとベースとの間の高さ位置に設け,かつ,フ ァンの回転によりファンガイド内側が負圧になることを利用して回路基 板冷却用窓からファンガイド内側に至る冷却風を発生させるために,回 路基板収容部をファンの径方向外側に配置している(前記1(3)エ,オ)。 このうち前者が小型化の目的を達成するための手段,後者が冷却の目的 を達成するための手段として把握される。
ウ(ア) しかし,これらの手段のみによって実際に上記各目的が達成される か否かは,以下のとおり,本件明細書等の記載からは必ずしも明らかで ない。
(イ) 小型化の目的に関しては,本件明細書には従来の携帯用電気丸鋸の 具体的な構造についての言及がないため,本件実施例の構\造との比較 において目的達成の有無ないし程度を評価することはできない。本件 実施例の構造それ自体から,これらが小型化の目的を達成しているか\n否かを客観的に評価することもできない。 また,仮に本件実施例の構造が小型化の目的を達成しているとしても,\n回路基板収容部をハンドルとベースとの間の高さ位置に設けさえすれば 自ずと目的が達成されるものではなく,前提として当該スペースを有効 活用し得るような合理的な構造を有することが必要と思われるが,本件\n明細書にはこの点に関する説明はない。
(ウ) 冷却の目的に関しては,上記手段により当該目的を達成する上で, 回路基板が冷却風の通路に配置されることは必須と思われるけれども, その具体的方法として回路基板をファンの径方向外側に配置すること は,ファンの径方向外側が冷却風の通路となるような構造を一体的に\n伴わない限り,回路基板の冷却とは直接関係しない。このことは,回 路基板がファンの径方向外側である真横にあったとしても,隔壁その 他により回路基板とファンとの間の冷却風の移動が遮断されているよ うな場合を考えれば明らかである。 ここで,本件実施例においては,回路基板収容部の4側面のうち,そ の2側面に回路基板冷却用風窓が多数形成され,これらとは別の側面に 風通路となる間隔が1つ設けられ,それら以外の側面は隔壁により囲ま れる構造となっている。このうち,上記間隔は,ファンガイドの背面と\nハウジングの外壁部との間に設けられ,これによってモータ収容部と回 路基板収容部とが連通している。このような構造とともに,モータ収容\n部とファンの位置とがファンガイドによって連通する構造が採用されて\nいるからこそ,回路基板収容部内に設置された回路基板がファン風の通 路に位置して冷却の目的が達成されることとなっている。このような回 路基板収容部からファンに至る連通構造が,回路基板の一部が(a)領域 に位置することと無関係に実現し得ることは明らかといってよい。
(エ) これらの点を踏まえると,本件特許発明の目的を達成するための手 段は,本件実施例においてすら合理的に説明されているとはいえない。 そうすると,本件実施例を上位概念化したものである本件特許発明に おいてはなおさら,その目的を達成し得るとは認められないことにな る。したがって,構成要件C−2が本件特許発明の目的を達成するた\nめの構成であるとして,その技術的意義から同構\成要件の示す意味内 容を把握することはできない。 そもそも,小型化の目的に関し,本件実施例における小型化の目的達 成手段である「回路基板収容部をハンドルとベースとの間の高さ位置に 設けること」は,特許発明3及び4並びにその従属発明である特許発明 5にしか具体的には表れておらず,また,構\成要件C−2とは無関係で ある。冷却の目的に関しても,上記(ウ)を踏まえると,その目的を達成 する構成としては,端的に構\成要件C−3「前記回路基板の少なくとも 一部は,前記ファン風の通路内に配置されており,」が設けられている 以上,構成要件C−2は無関係と見られる。
(3) 以上によれば,構成要件C−2の「ファンの径方向外側」は,特許請求\nの範囲の文言によれば(a)領域又は(b)領域のいずれとも解釈し得るものであ り,また,その技術的意義に鑑みてもいずれの解釈が正しいのか判断し得な いものということができる。 したがって,構成要件C−2は不明確というべきである。そうである以\n上,この点に関する本件審決の認定・判断には誤りがあり,取消事由2には 理由がある。
3 取消事由1(記載要件(特許発明6〜8及び10に関するサポート要件)に関する認定,判断の誤り(無効理由1の2))について
更に進んで,取消事由1についても検討する。
(1) 特許発明6は,「モータの側方位置において,前記モータの回転軸と平 行に延びるように配置されている」回路基板(構成要件I)のみを有したも\nのであり,当該回路基板は,さらに,「前記回路基板の少なくとも一部は, 前記ファンの回転軸に直交する方向を径方向としたとき,前記ファンの径方 向外側に配置され」る(構成要件C−2)ものである。\n本件明細書の発明の詳細な説明において,「モータの側方位置」に配置 された回路基板(縦置き基板)としては,第2の実施の形態の第2の回路基 板60B及び第3の実施の形態の第1の回路基板60C(いずれも,モータ 収容部2aの内壁面とモータ1の固定子1B間の隙間に配置されたもの)が 記載されているが(前記1(2)カ),縦置き基板のみを有する発明は明示的 に記載されていない。そこで,縦置き基板のみを有する構成が,本件特許発\n明の課題(前記2(2)イ)を解決できると当業者が認識し得る程度に,本件 明細書の発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討する。
(2) 第2の実施の形態について
ア 第2の実施の形態の縦置き基板(第2の回路基板60B)による効果は, 以下の3点に集約される(前記1(3)キ)。
1) 制御回路30を別基板(縦置き基板)としたことで,駆動回路20 及び整流平滑回路40を搭載した第1の回路基板60Aの面積を小さ くし,ハウジング2のソーカバー5側への突出量を少なくでき,操作\n性の面で有利となる。
2)制御回路30を別基板(縦置き基板)としたことで,駆動回路20 や整流平滑回路40の発熱部品の影響を受けないようにできる。
3) 制御回路30を搭載した第2の回路基板60B(縦置き基板)をセ ンサ基板51の近くに配置することで,回転位置検出素子52と制御 回路30との電気接続を短縮して,ノイズ等の影響を受けにくい構造\nにできる。
イ(ア) このうち,前記1)の効果は,ハウジング2に設けられた凸部69A (ソーカバー5側へ突出)が小さくなることをいうものである。しかし,\nこのとき,一方で縦置き基板を収容するためにモータ収容部2aが大き くならざるを得ないことを考えると,前記1)の効果は,一概に小型化に 寄与するといってよいか定かではない。また,凸部69A及びモータ収 容部2aの形状のこのような変化が,それぞれ携帯用電気切断機の操作 性に及ぼす影響については,本件明細書の発明の詳細な説明に記載され ていない。 したがって,第2の実施の形態においては,縦置き基板を設けること により小型化の目的を達成できるとは必ずしも認識し得ないし,まして, 縦置き基板のみとした場合に,携帯用電気切断機の操作性の面で有利で あることないし操作性が損なわれないことを認識することもできない。
(イ) 前記2)の効果は,冷却の目的に関わるものである。この目的の観点 から見ると,制御回路30を別基板である縦置き基板とすることで, 前記2)の効果を期待できるとしても,ブラシレスモータの固定子が熱 源となることは技術常識であるところ,そのモータの側方に縦置き基 板を設置することにより,かえってモータの固定子の発熱の影響を受 けやすくなることも予想される。そうすると,制御回路30を縦置き\n基板としたとしても,必ずしも冷却の目的を達成できるとは認識し得 ない。まして,駆動回路と制御回路の両者を搭載した縦置き基板のみ とした場合に,基板の冷却を効果的に実現し得ると認識することもで きない。
(ウ) 前記3)の効果は,小型化の目的とも冷却の目的とも独立したもので あり,本件特許発明の課題解決に寄与しないことは明らかである。
・・・
(4) そうすると,特許発明6〜8及び10は,本件明細書の発明の詳細な説 明に記載されたものではなく,また,特許発明6〜8及び10が,その課題 を解決できると当業者が認識し得る程度に,本件明細書の発明の詳細な説明 に記載されているともいえない(なお,この点は,本件特許発明において横 置き基板が必須であるか否かとは関わりない。)。 したがって,特許発明6〜8及び10は,いわゆるサポート要件を満た しているとはいえない。

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平成28(ネ)10098  不当利得返還等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年4月12日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 実施契約は取締役会の決議無しとして無効と判断されました。なお、原審はアップされていません。
 当裁判所も,原審と同様に,本件各契約は,これを締結するに当たって被 控訴人において必要とされる取締役会の決議を経ておらず,控訴人はそのこと について知り得べきであったものといえるから,本件各契約はいずれも無効で あり,控訴人の被控訴人に対する反訴請求はいずれも理由がないものと判断す る。その理由は,以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」の第 4の1ないし3(原判決20頁7行目冒頭から36頁22行目末尾まで)に記 載のとおりであるから,これを引用する。

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平成28(行ケ)10190  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年5月30日  知的財産高等裁判所(4部)

 特36条、29条2項の無効理由はそれぞれ無効理由無しと判断されました。なお、「明確性を満たしているかについても、クレームだけでなく明細書を考慮する」との判断基準を示しています。かかる判断基準は、平成21(行ケ)10434(3部)、平成25(行ケ)10335(4部) でも言及されてます。
 (1) 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だ けではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願 当時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者の利益が不 当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 原告は,本件特許の特許請求の範囲請求項1の記載のうち,「当該分離して使用 するもの(4)の上部,下部,左側部(右側部)の内側及び外側に該当する部分(5, 6)((7,8))」の各部分が明確ではない旨主張する。
(2)「内側及び外側に該当する部分」の明確性
ア 「内側及び外側」の範囲
(ア) 請求項1には,分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部(右側 部)の「内側及び外側」に該当する部分との記載がある。 請求項1の記載によれば,印刷物の中央面部(1)の所定の箇所に,所定の大き さを有する分離して使用するもの(4)が印刷されており,分離して使用するもの (4)は,周囲に切り込みが入っているものである。そして,請求項1には,「内 側及び外側」の範囲を直接特定する記載はない。 したがって,分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部(右側部)の「内 側及び外側」に該当する部分とは,印刷物の中央面部(1)における,分離して使 用するものの周囲に設けられた切り込みの「内側及び外側」に該当する部分と特定 され,その範囲は特定されていないものである。 (イ) なお,本件明細書の【0014】ないし【0017】の記載によれば,本 件発明1を実施する際には,一過性の粘着剤が塗布されている部分となる「内側及 び外側」の範囲について,分離して使用するものが欠落することなく,また左側面 部と右側面部を中央面部からはがして開いた場合には左側面部又は右側面部の一方 に分離して使用するものが貼着されるなどして,これを自動的に手にすることがで\nきる程度の範囲に限定されることになる。しかし,当該範囲は,中央面部(1), 左側面部(2),右側面部(3)及び分離して使用するもの(4)の形状や材質, 分離して使用するもの(4)の周囲の切り込みの程度,粘着剤の強度等に応じて, 適宜決定されるにすぎないから,特許を受けようとする発明において,「内側及び 外側」の範囲を特定していないからといって,それが明確性を欠くことにはならな い。
・・・
(4) 小括
以上によれば,本件特許の特許請求の範囲請求項1の記載のうち,「当該分離し て使用するもの(4)の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分(5, 6)」とは,印刷物の中央面部の所定の箇所に印刷された所定の大きさを有する, その外形は特定されない分離して使用するもの(4)の,上部,下部又は左側部の いずれかのうち,その周囲に設けられた切り込みの内側及び外側であって,その範 囲は具体的には特定されない部分に該当する部分であって,請求項1の記載のうち, 「当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当す る部分(7,8)」も同様であって,これらの記載が,第三者の利益が不当に害さ れるほどに不明確であるということはできない。 したがって,「当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部(右側部) の内側及び外側に該当する部分(5,6)((7,8))」との各記載は明確であ るから,本件特許の特許請求の範囲請求項1の記載が明確性要件に違反するという ことはできない。請求項2及び請求項3の各記載も同様であるから,明確性要件に 違反するということはできない。 よって,取消事由1は理由がない。
(1) 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲 の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が, 発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当 該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,発明の詳 細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課 題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと 解される。 そして,原告は,一過性の粘着剤が塗布される位置について,分離して使用する ものの上部,下部,左(右)側部の内側及び外側に該当する部分のいずれかでよい とすると,サポート要件に違反すると主張する。
(2) 前記2(4)のとおり,特許請求の範囲請求項1に記載された発明において,左 側面部(2)の裏面の「一過性の粘着剤が塗布されている」部分は,分離して使用 するものの,上部,下部又は左側部のいずれかのうち,その周囲に設けられた切り 込みの内側及び外側であって,その範囲は特定されない部分に該当する部分であっ て,右側面部(3)の裏面についても同様である。 そして,前記1(2)イのとおり,本件発明1は,分離して使用するものについて, その周囲に切り込みが入っているにもかかわらず,広告等の印刷物に付いていて紛 失させることなく,しかも,広告等の印刷物より切り取る手間をかけずに利用する ことができる印刷物を提供することを課題とするものである。そして,前記2(2)イ のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明の記載(【0014】〜【0017】) により,当業者は,一過性の粘着剤の塗布が,左側面部2の裏側のうち,分離して 使用するものの上部,下部,左側部の少なくともいずれかに該当する部分であって, 分離して使用するものの内側及び外側のいずれにも該当する部分にされれば,本件 発明1の上記課題を解決できると認識できるものといえ,右側面部3についても同 様である。 そうすると,一過性の粘着剤が塗布される位置において,本件発明1は,発明の 詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明 1の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。

◆判決本文

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平成28(ネ)2932  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成29年4月6日  大阪高等裁判所

ドメインzenshin.gr.jpについて不正競争行為として、約2200万円の損害賠償が認められました。不競法5条2項により推定が一部覆滅された部分について,同条3項を適用した使用料相当額の損害賠償請求は1審と同様、認められませんでした。
一審原告は,不正競争防止法5条2項により推定が一部覆滅された部 分について,同条3項を適用して使用料相当額の損害賠償請求をするこ とができると主張する。しかし,補正して引用した原判決「事実及び理 由」中の第4の7 及び において算定した同条2項により推定される 損害額は,平成23年12月17日から平成26年8月8日までの一審 被告の前記不正競争行為の全体によって生じた一審原告の損害(逸失利 益)額を算定したものであり,推定が覆滅された一部について改めて同 項3項による損害額を算定し,その合算額を損害額とすることは,同一 の侵害行為を二重に評価して損害額を算定することを意味するものであ り,許されないといわなければならない。一審原告の上記主張は,採用 することができない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成27(ワ)2504

その他、当該ドメインを巡っては下記事件があります。

◆平成28(ネ)2241

◆この事件の原審はこちら。平成27(ワ)2505等

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平成28(ネ)10096  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年5月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

知財高裁(4部)も、1審と同じく均等侵害を否定しました(第1、第4要件不備)。
 ア 均等の第1要件における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の 記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であり,\n上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明の課題 及び解決手段(特許法36条4項,特許法施行規則24条の2参照)とその効果(目 的及び構成とその効果。平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項\n参照)を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見ら れない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによっ\nて認定されるべきである。ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題とし て記載されているところが,出願時(又は優先権主張日)の従来技術に照らして客 観的に見て不十分な場合には,明細書に記載されていない従来技術も参酌して,当\n該特許発明の従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が認定\nされるべきである。
イ 本件明細書によれば,本件発明は,従来技術では経路探索の終了時にいくつ かの経由地を既に通過した場合であっても,最初に通過すべき経由予定地点を目標\n経由地点としてメッセージが出力されること(【0008】)を課題とし,このよ うな事態を解決するために,通過すべき経由予定地点の設定中に既に経由予\定地点 のいずれかを通過した場合でも,正しい経路誘導を行えるようなナビゲーション装 置及び方法を提供することを目的とし(【0011】),具体的には,車両が動く ことにより,探索開始地点と誘導開始地点のずれが生じ,車両が,設定された経路 上にあるものの,経由予定地点を超えた地点にある場合に,正しく次の経由予\定地 点を表示する方法を提供するものである(【0018】【0038】)。また,前\n記2(1)エ(ア)のとおり,本件特許出願当時において,ナビゲーション装置が,距離 センサー,方位センサー及びGPSなどを使って現在位置を検出し,それを電子地 図データに含まれるリンクに対してマップマッチングさせ,出発地点に最も近い ノード又はリンクを始点とし,目的地に最も近いノード又はリンクを終点とし,ダ イクストラ法等を用いて経路を探索し,得られた経路に基づいて,マップマッチン グによって特定されたリンク上の現在地から目的地まで経路誘導するものであった ことは,技術常識であったと認められる。 このように,本件発明は,上記技術常識に基づく経路誘導において,車両が動く ことにより探索開始地点と誘導開始地点の「ずれ」が生じ,車両等が経由予定地点\nを通過してしまうことを従来技術における課題とし,これを解決することを目的と して,上記「ずれ」の有無を判断するために,探索開始地点と誘導開始地点とを比 較して両地点の異同を判断し,探索開始地点と誘導開始地点とが異なる場合には, 誘導開始地点から誘導を開始することを定めており,この点は,従来技術には見ら れない特有の技術的思想を有する本件発明の特徴的部分であるといえる。 したがって,探索開始地点と誘導開始地点とを比較して両地点の異同を判断する 構成を有しない被控訴人装置が本件発明と本質的部分を異にすることは明らかであ\nる。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成26(ワ)25928

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平成28(行ケ)10114  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年5月10日  知的財産高等裁判所(1部)

 分割要件を満たしていないとした審決を維持しました。また手続違背についても審決を取り消すようなものではないと判断されました。
 前記(1)によれば,本件原出願当初明細書に記載された事項は,内歯揺動型 内接噛合遊星歯車装置に関するものであって,本件原出願当初明細書には外歯揺動 型遊星歯車装置に関する記載は全くないのに対し,本件出願における本件訂正発明 1は,「揺動型遊星歯車装置」に関するものとすることで,揺動体の揺動歯車を内歯 とする限定はないものであるから,揺動体の揺動歯車が外歯であるもの(外歯揺動 型遊星歯車装置)を含ませるものであると認められる。もっとも,本件原出願の出 願前に刊行された各特許公報(甲25〜27)によれば,内歯揺動型遊星歯車装置 と外歯揺動型遊星歯車装置とに共通する技術(以下「共通技術」という。),すなわ ち,偏心体を介して揺動回転する歯車が内歯であるか外歯であるかには依存しない 技術があることは周知の事項であると認められ,当業者であれば,揺動型遊星歯車 装置の個々の形式に依存する技術と,形式には依存しない共通技術があることを, 知識として有しているものといえる。 そこで,本件原出願当初明細書に揺動体の揺動歯車を内歯とする以外の歯車装置 へ適用することなどについての記載がないとしても,本件訂正発明1が,本件原出 願当初明細書に記載された事項の範囲内といえるか,すなわち本件原出願当初明細 書の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において,新たな技術 的事項を導入しないものであるかについて,以下,検討する。
・・・
本件原出願当初明細書に記載された技術的課題のうち,前記(2)に関しては,偏心 体軸が円周方向において非等間隔に配置されることにより生じるものであり,内歯 揺動体が外歯歯車の周りで円滑に揺動駆動することにより解決されるものであるか ら,課題を解決する手段として,外歯歯車とその周りで揺動する内歯歯車を備える こと,すなわち内歯揺動型遊星歯車装置であることが,本件原出願当初明細書に記 載された発明の前提であるといえる。なお,外歯揺動型遊星歯車装置では,揺動体 は,その外周面に外歯が設けられるものであることから必然的にその外形は円形と ならざるを得ないものであり,偏心体軸を非等間隔にしても揺動体の外周の形状は 円形のままで変わらず,装置全体の形状や他の軸の配置等には何ら影響を及ぼすも のではないから,偏心体軸を非等間隔とする技術的意義はない(本件原出願当初明 細書に記載された課題は,偏心体軸を非等間隔に配置することにも技術的意義を有 する内歯揺動型遊星歯車装置に特有のものであり,外歯揺動型遊星歯車装置におい てはそもそも課題とならないものである。)。 このように,本件原出願当初明細書の全体の記載からすると,同明細書に開示さ れた技術は,従来の内歯揺動型遊星歯車装置における問題を解決すべく改良を加え たものであって,その対象は内歯揺動型遊星歯車に関するものであると解するのが 相当であり,外歯揺動型遊星歯車装置を含むように一般化された共通の技術的事項 を導くことは困難であるといわざるを得ない。 また,本件原出願当初明細書の特許請求の範囲,発明の詳細な説明(実施例を含 む。)及び図面には,外歯歯車118を出力軸とする内歯揺動型遊星歯車装置のみが 記載され,内歯揺動型遊星歯車装置について終始説明されているのに対し,本件原 出願当初明細書に記載された技術が,揺動体の形態に関わらない共通技術であるこ と,外歯揺動型遊星歯車装置に適用することが可能であることやその際の具体的な\n実施形態,その他の周知技術の適用が可能であること等についての記載や示唆は全\nくないのであるから,本件原出願当初明細書の記載に接した当業者であっても,同 明細書に記載された発明の技術的課題及び解決方法の趣旨に照らし,内歯揺動型遊 星歯車装置と外歯揺動型遊星歯車装置に共通した課題及びその解決方法が開示され ていると認識するものではないと解される。
(4) さらに,本件訂正発明1について検討するに,証拠(甲5,24,30) 及び弁論の全趣旨によれば,揺動型遊星歯車装置には,外歯揺動型と内歯揺動型が あること,それぞれの型において,出力部材と固定部材とは相対関係にあり,入れ 替え自在であること自体は,周知技術であると認められるところ,外歯揺動型遊星 歯車装置については,外側の内歯歯車を出力歯車とする1型(外側に出力軸を,内 側に固定部材を配置するもの)と外側の内歯歯車を固定部材とする2型(内側に出 力軸を,外側に固定部材を配置するもの)の2つの型が想定されるものと認められ る。本件訂正発明1は,「前記ケーシングの内側で,該ケーシングに回転自在に支持 され,当該揺動型遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸と,を備 え,」とされており,上記ケーシングは固定部材であるといえるから,本件訂正発明 1には,外歯揺動型遊星歯車装置については2型のもののみが含まれ,1型は含ま れないものと認められる(下図参照)。 1型(外側に出力軸,内側に固定部材) 2型(内側に出力軸,外側に固定部材) もっとも,本件原出願当初明細書には,「出力軸としての機能を兼用する外歯歯車\n118によって」(【0026】),「内歯揺動体116A,116Bには,ホローシャフトタイプの出力軸兼用の外歯歯車118が内接している。」(【0034】),「内歯揺動体116A,116Bは,その自転が拘束されているため,該内歯揺動体11 6A,116Bの1回の揺動回転によって,該内歯揺動体116A,116Bと噛 合する外歯歯車118はその歯数差だけ位相がずれ,その位相差に相当する自転成 分が外歯歯車110(判決注:「118」の誤記と認められる。)の回転となり,出 力が外部へ取り出される。」(【0038】)などの記載があり,これらの記載によれ ば,本件原出願当初明細書に記載された実施例については揺動体の内歯歯車に噛合 する外歯歯車118が出力軸として機能する内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置が記\n載されている一方で,本件原出願当初明細書には固定部材と出力歯車が入れ替え可 能であり,出力軸を固定部材に変更することができる旨の記載はないのであるから,\n同実施例を前提として外歯揺動型遊星歯車装置とする場合には,揺動体に設けられ る外歯歯車に噛合する内歯歯車が出力軸となるのであって,出力軸が外側になり, 内側に固定部材が配置される型を想定することが自然であるといえる。したがって, 本件原出願当初明細書に記載された事項から,固定部材と出力軸を入れ替えた2型 の外歯揺動型遊星歯車装置を想起することは考え難い。 また,本件原出願当初明細書に記載された内歯揺動型遊星歯車装置においては, 内歯揺動体は内周面に内歯歯車を設けることから,その内周の形状は,必然的に円 形となる。しかしながら,外周面については,複数の偏心体軸を支持することがで きる限りにおいて,自由な形状を採り得るものであるから,本件訂正発明1の中間 軸を設けるに際して,内歯揺動体との干渉を考慮する必要はないものであり,実施 例においても,揺動体の外周を非円形の形状として,その外側に中間軸を配置する 構成を採用している。さらに,中間軸への入力は,中間軸の外側に入力軸を配置し\nて行うことで装置全体の軸方向長さを短縮していることが認められる。これに対し, 外歯揺動体は,その外周の全周にわたって連続的に外歯を有するものであって,必 然的にその外形は円形となるものであるから,2型の外歯揺動型遊星歯車装置に適 用する形態では,「該伝動外歯歯車の回転中心軸と異なる位置に平行に配置される と共に,該駆動源側のピニオンが組込まれた中間軸」を備え,「前記中間軸を回転駆 動することにより前記駆動源側のピニオンを回転させ,前記伝動外歯歯車を介して 該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達され,前記駆 動源側のピニオン,前記伝動外歯歯車および前記複数の偏心体軸歯車が,同一平面 上で噛み合う」構成を,その外形が円形である外歯揺動体を構\\成要素とする外歯揺 動型遊星歯車装置において実現することを要するものである。 しかしながら,本件原出願当初明細書に記載された実施例である内歯揺動型遊星 歯車装置を前提として,さらに,固定部材と出力軸を入れ替えた2型の外歯揺動型 遊星歯車装置とする場合には,必然的にその外形が円形となる外歯揺動体と中間軸 との間に干渉を生じることとなるから,そのままでは中間軸を配置することはでき ないことになる。本件訂正発明1を2型の外歯揺動型遊星歯車装置に適用するには, 揺動体と中間軸との干渉を避けるための設計変更(揺動体に中間軸を通すための孔 を形成すること)や,中間軸への入力を他の部材との干渉を避けつつ行うための設 計変更等を要することとなるのに対し,本件原出願当初明細書には,外歯揺動型遊 星歯車装置に適用する場合の具体的な実施形態,その他の周知技術の適用が可能で\nあることなどについての記載や示唆は全くない。 したがって,偏心体を介して揺動回転する歯車が内歯であるか外歯であるかには 依存しない共通技術があることが周知の事項であるとしても,当業者は,本件原出 願当初明細書の記載から,2型の外歯揺動型遊星歯車装置を含む本件訂正発明1を 想起することはないものと解される。
(5) 以上によれば,本件訂正発明1は,本件原出願当初明細書の全ての記載を 総合することにより導かれる事項との関係において,新たな技術的事項を導入する ことに当たらないということはできず,本件原出願当初明細書に記載した事項の範 囲内であるとはいえないから,本件原出願に包含された発明であると認めることは できない。
・・・
 原告は,審決が判断した無効理由は,本件無効理由通知書及び審決の予告\nとは大きく異なるものであったにもかかわらず(審決は,本件無効理由通知書(甲 40)及び審決の予告(甲41)で判断されていない事項(「相応の工夫が必要」か\n否か,「必須の構成」を備えているか否か)について判断をした。),「相応の工夫が\n必要」か否か,「必須の構成」を備えているか否かについて,原告の意見は全く求め\nられず,原告(被請求人)に不利な審理結果を招来したことは,実質的に,特許法 153条2項の規定に違反する旨主張する。 そこで,検討するに,特許法153条2項は,審判において当事者が申し立てな\nい理由について審理したときは,審判長は,その審理の結果を当事者に通知し,相 当の期間を指定して,意見を申し立てる機会を与えなければならないと規定してい\nる。これは,当事者の知らない間に不利な資料が集められて,何ら弁明の機会も与 えられないうちに心証が形成されるという不利益から当事者を救済するための手続 を定めたものであると解される。このような特許法153条2項の趣旨に照らすと, 審判長が当事者に対し意見を申し立てる機会を与えなければならない「当事者が申\\ し立てない理由」とは,新たな無効理由の根拠法条の追加,主要事実の差し替えや 追加等,不利な結論を受ける当事者にとって不意打ちとなり予め告知を受けて意見\nを述べる機会を与えなければ手続上著しく不公平となるような重大な理由がある場 合のことを指し,当事者が本来熟知している周知技術の指摘や間接事実及び補助事 実の追加等の軽微な理由はこれに含まれないと解される。 本件において,本件無効理由通知及び審決の予告の判断内容と審決の判断内容を\n比較すると,審決には,「相応の工夫」や「必須の構成」といった,本件無効理由通\n知及び審決の予告には記載されていなかった判断が追加されていることが認められ\nる。しかしながら,審決の上記判断事項は,根拠法条や主要事実の変更ではなく, それまで審判手続の中で当事者双方の争点となっていた,本件出願が分割要件を満 たすものであるか否か(本件訂正発明1が本件原出願当初明細書に記載した範囲内 のものであり,本件原出願に包含された発明であるか)を判断する際に,その理由 付けの一つとして判断された事項であり,審決は,上記争点を判断の過程における 理由について審決の予告を補足したにすぎないものと解される。\nそして,審決の予告及び審決において,本件特許を無効とする理由は,本件訂正\n発明に係る特許についての出願が,分割の要件を満たすものではなく,出願日は本 件原出願の出願日に遡及しないものであるところ,本件訂正発明は,本件出願前に 頒布された刊行物である本件原出願の特許公開公報に記載された発明であるから, 特許法29条1項3号の規定に違反するものであり,特許法123条1項2号に該 当し,無効とされるべきものである,というものであって,両者に異なるところは なく,この無効理由は,本件無効理由通知により当事者に対し通知されたものと同 一のものである。 このように,審決の理由中に,本件無効理由通知及び審決の予告にはなかった新\nたな判断内容が追加されるなどしたとしても,審決の上記判断内容は,本件出願の ような分割出願が分割の要件を満たすものであるかの判断の過程における理由を補 足するものであり,「当事者の申し立てない理由」には当たらないと解されるから,\n改めて無効理由が通知されなかったことをもって,特許法153条2項の規定に違 反する違法があったということはできない。 したがって,原告の上記主張は採用する

◆判決本文

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平成27(ワ)23694  著作者人格権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成29年4月27日  東京地方裁判所(47民)

 建物の著作物の創作者が争われました。原告は共同著作者ではないと判断され、また、原告模型の創作性も否定されました。
「建築の著作物」(同法10条1項5号)とは,現に存在する 建築物又はその設計図に表現される観念的な建物であるから,当該設計\n図には,当該建築の著作物が観念的に現れているといえる程度の表現が\n記載されている必要があると解すべきである。 (イ) 上記1(認定事実)(2)のとおり,原告代表者は,乙から本件建物の\n外観に関する設計の依頼を受け,日本の伝統柄をデザインの源泉とし, 一見洗練された現代的なデザインのように見えるが「日本」を暗喩でき るものとするとの設計思想に基づいて,原告設計資料及び原告模型を作 成し,平成25年9月6日,乙に対し,本件建物の外装スクリーンの上 部部分(2階及びR階部分)を立体形状の組亀甲とすることを含めた設 計案を提示している。そして,この時点において,被告竹中工務店は, 上記部分を立体形状の組亀甲とすることに着想していなかった(争いの ない事実)。 しかしながら,上記1(認定事実)(2)のとおり,原告設計資料及び原 告模型に基づく原告代表者の上記提案は,上記1(認定事実)(1)イの内 容が記載された被告竹中工務店設計資料を前提に,当該資料のうちの外 装スクリーンの上部部分のみを変更したものであり,上記提案には,伝 統的な和柄である組亀甲柄を立体形状とし,同一サイズの白色として等 間隔で同一方向に配置,配列することは示されているが,実際建築され る建物に用いられる組亀甲柄より大きいイメージとして作成されたもの であるため,実際建築される建物に用いられる具体的な配置や配列は示 されておらず,他に,具体的なピッチや密度,幅,厚さ,断面形状も示 されていない。一方で,上記1(認定事実)(6)のとおり,組亀甲柄は, 伝統的な和柄であり,平面形状のみならず,建築物を含めて立体形状と して用いられている例が複数存在し,建築物の図案集にも掲載されてい る。 そうすると,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提案は,\n被告竹中工務店設計資料を前提として,その外装スクリーンの上部部分 に,白色の同一形状の立体的な組亀甲柄を等間隔で同一方向に配置,配 列するとのアイデアを提供したものにすぎないというべきであり,仮に, 表現であるとしても,その表\現はありふれた表現の域を出るものとはい\nえず,要するに,建築の著作物に必要な創作性の程度に係る見解の如何 にかかわらず,創作的な表現であると認めることはできない。更に付言\nすると,原告代表者の上記提案は,実際建築される建物に用いられる組\n亀甲柄の具体的な配置や配列は示されていないから,観念的な建築物が 現されていると認めるに足りる程度の表現であるともいえない。\n以上によれば,本件建物の外観設計について原告代表者の共同著作者\nとしての創作的関与があるとは認められない。 (ウ) これに対し,原告は,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表\n者の上記提案は,建物の外観に用いられることが多くない組亀甲柄を選 択し,組亀甲柄を用いるというアイデアから想定される複数の表現から\n特定の表現を選択して決定するものであることや,組亀甲柄部分の光の\n表現についても具体的に決定されているものであることをもって,創作\n的な表現である旨主張する。\n しかしながら,組亀甲柄は,建築物の図案集にも掲載され,実際に建 築物に用いられている例が複数存在することは上記(イ)のとおりであり, 建物の外観に組亀甲柄を用いること自体がありふれていないということ はできない。また,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提\n案は,上記(イ)のとおり,組亀甲柄の大まかな色,形状,配置,配列が 決定されているにすぎず,一般的な組亀甲柄として紹介されている例 (乙11の1ないし4,12の1)と比較しても,個性の発露があると 認めるに足りる程度の創作性のある表現であるということはできない。\nさらに,原告の主張する光の表現は,具体的に明らかではなく,この点\nをもって創作性を認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用できない。 イ 「共同して創作した」といえるかについて 仮に,本件建物の外観設計における原告代表者の創作的関与の有無の\n点を措いても,前記第2の1(前提事実)(2)エ及び上記1(認定事実) (3)・(4)のとおり,被告竹中工務店の設計担当者は,本件打合せで原告代 表者から原告設計資料及び原告模型に基づく提案内容の説明を聞いたこ\nとはあるが,原告との共同設計の提案を断り,その後,原告代表者と接\n触ないし協議したことはない。 また,上記1(認定事実)(2)・(4)のとおり,原告代表者の設計思想は,\n本件建物のファサードを,日本の伝統柄をデザインの源泉とし,一見洗 練された現代的なデザインのように見えるが「日本」を暗喩できるもの とするなどというものであるのに対し,被告竹中工務店の設計思想は, 組亀甲柄のもつ2層3方向の幾何学構造に着目した編込み様のデザイン\nなどというものであって,原告代表者と被告竹中工務店の設計思想は異\nなる上,上記1(認定事実)(2)・(5)のとおり,原告代表者の提案内容と\n完成後の本件建物は,外装スクリーンの上部部分に2層3方向の立体格 子構造が採用されている点は共通するが,少なくとも立体格子の柄や向\nき,ピッチ,幅,隙間,方向が相違しており(具体的には,原告設計資 料及び原告模型には,本件建物の外装の上部に同じ形状及びサイズの白 色の組亀甲柄を等間隔で同一方向に配置,配列することとすること,ピ ッチを「@≒500mm」,巾を「≒150mm」,向きを鉛直,隙間 を「△辺≒200mm」とする格子が記載されており,この他に,外装 スクリーンの寸法や,格子のピッチ,密度,隙間,幅,厚さ,断面形状, 表面処理に関する具体的な記載はないのに対し,本件建物においては,\nその2階以上の外装部分は,アルミキャストを素材とする白色の三次元 曲面による2層3方向の立体格子構造とされ,ピッチは「@250m\nm」,巾は「90mm」,向きは斜光,隙間は「△辺94mm」の格子 が用いられ,横方向が強調された配列とされている。),建物の外観に 関する表現上の重要な部分,すなわち本質的特徴といえる点において多\nくの相違点がある。 これらの事情に照らせば,原告と被告竹中工務店の間に共同創作の意 思や事実があったとは認められず,両者が本件建物の外観設計を「共同 して創作」したと認めることはできない。
・・・・
ア 原著作物性について
上記(1)アのとおり,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提\n案は創作的な表現であるとはいえないから,これに著作物性を認めること\nはできない(更に付言すると,建物の著作物性を認めることもできない。)。
イ 被告竹中工務店による翻案について
また,仮に,原