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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成30(ワ)10130  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年4月24日  東京地方裁判所(29部)

 CS関連発明の侵害事件です。会計ソフトについて非侵害と判断されました。均等も第1要件を満たさないと判断されました。 該当特許の公報は以下です。 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-4831955/B4E648E4A31FB8F27049717998C719922F602DAF55832B56FBCB639C750A8DAC/15/ja 該当特許は無効審判もありますが、審決は見れない状態です(無効2018-800140)

 ア 特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なか った技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想 に基づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にあることに照らすと,特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のう ち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。
イ これを本件についてみると,前記のとおり,本件発明は,従来の現金主義に 基づく公会計では,政策レベルの意思決定に利用することは困難であったことに鑑 みて,国民が将来負担するべき負債や将来利用可能な資源を明確にして,政策レベルの意思決定を支援することができる会計処理方法及び会計処理を行うためのプロ グラムを記録した記憶媒体を提供することを課題とし,その課題を解決するための 手段として,純資産の変動計算書勘定を新たに設定し,当該年度の政策決定による 資産変動を明確にするとともに,将来の国民の負担をシミュレーションすることが できる会計処理方法を提案するものである。 そして,前記のとおり,本件発明の処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘 定)は,国家の政策レベルの意思決定を記録,会計処理するために設定された勘定 であるのに対し,資金収支計算書勘定は,従来の公会計において単式簿記システム で扱ってきた資金(現金及び現金同等物)の受入と払出を記録するものであり,閉 鎖残高勘定(貸借対照表勘定)及び損益勘定(行政コスト計算書勘定)も,企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきたものであるから,本件発 明の課題解決手段である当該年度の政策決定による資産変動の明確化や将来の国民 の負担のシミュレーションは,国家の政策レベルの意思決定を対象とする処分・蓄 積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)によって行われるものと解するのが相当で ある。その上で,本件発明は,資金収支計算書勘定と閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定),損益勘定(行政コスト計算書勘定)と処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計 算書勘定),処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)と閉鎖残高勘定(貸 借対照表勘定)の各勘定連絡を前提として,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に,当該年度における純資産増加(C3,C4)及び純資産減少(C1, C2)並びにこれらの差額(収支尻)である純資産変動額(C5)が表示される構 成を採用しており,将来の国民の負担をシミュレーションするためには資産変動の 内訳も認識される必要があると認められることにも照らせば,本件発明の課題解決 手段である当該年度の政策決定による資産変動の明確化や将来の国民の負担のシミ ュレーションは,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に表示される純資産増加(C3,C4)及び純資産減少(C1,C2)並びにこれらの差額(収支 尻)である純資産変動額(C5)によって行われるものと解するのが相当である。 また,上記のような解釈は,本件発明によるシミュレーションに関する本件明細 書の説明とも整合する。すなわち,本件明細書には,「次に,本発明の特徴である シミュレーションについて説明する。損益外純資産変動計算書には,行政コストと, 当期に費消する財源措置で国民の純資産として将来に残る資産の科目からなる財源 措置とそれ以外の科目からなる財源措置と,当期に調達する財源で国民の純資産と して将来に残る資産の科目からなる財源とそれ以外の科目からなる財源と,国民の 純資産として将来に残る資産の原因別増減額と,再評価による差額と,国民の純資 産として将来に残る資産の原因別増減額充当のために手当てされた財源と,会計処 理により,それらから導き出された現役世代の負担額と,将来世代の負担額,赤字 公債相当額,建設公債相当額などの金額が表の中に表示される。」(【0069】), 「本発明によるシミュレーションは,現役世代の負担額と,将来世代の負担額,赤 字公債相当額,建設公債相当額などの金額に,目標とするべき金額を設定して,行 政コストや財源措置をどのように調整すれば目標とするべき金額が達成できるかを 演算するための手順を予め複数のプログラムとして設定する。」(【0070】)などとして,本件発明によるシミュレーションについて,損益外純資産変動計算書に表示される行政コスト,財源措置,財源及び資産の原因別増減額等から導き出される 現役世代の負担額,将来世代の負担額,赤字公債相当額及び建設公債相当額等によ って行われることが説明されており,本件発明の課題解決手段である当該年度の政 策決定による資産変動の明確化や将来の国民の負担のシミュレーションが処分・蓄 積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に表示される純資産増加(C3,C4)及び純資産減少(C1,C2)並びに純資産変動額(C5)によって行われるという 上記の解釈と整合する。
そうすると,本件発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,国家の政策レベルの 意思決定に係る会計処理を対象とする処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘 定)を採用した上で,同勘定に表示される純資産減少(C1,C2)を構成する勘 定科目の内容を具体的に規定する構成要件Hは,本件発明の課題解決手段を具体化する特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると認めるのが相当である。したがって,本件発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,社会保障給付等の損 益外で財源を費消する取引を「財源措置(C2)」に含める構成(構成要件H)は, 本件発明の本質的部分であると認められる。
ウ この点,原告は,社会保障給付を処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書 勘定)の「財源措置(C2)」に含める構成は,本件発明の非本質的部分であるとし,その理由として,1)本件発明の技術的思想の中核をなす特徴的原理は,純資産 変動計算書勘定の存在,4つの勘定の勘定連絡の設定,自動仕訳と勘定連絡を通じ 政策レベルの意思決定と将来の国民の負担をシミュレーションできる会計処理方法 のプログラミングにあり(本件明細書【0008】,【0010】,【0021】, 【0031】参照),社会保障給付を行政コスト計算書に計上する被告製品の構成は,本件発明の特徴的原理と無関係であること,2)社会保障給付を処分・蓄積勘定 (損益外純資産変動計算書勘定)の借方の財源措置に計上する構成を,損益勘定(行政コスト計算書勘定)に計上する構成に置換したとしても,損益勘定(行政コスト計算書勘定)は処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に振り替えら れるから,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の借方と貸方の差額 (収支尻)に示されている損益外の純資産変動額は同額となり,純資産変動額や将 来償還すべき負担の増減額を財務諸表の中に表示することにより当該年度の政策決 定による資産変動を明確にするとともに,将来の国民の負担をシミュレーションで きるという同一の作用効果を奏することなどを主張する。 しかしながら,前記のとおり,本件発明は,国家の政策レベルの意思決定を対象 とするものとして,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)という新たな 勘定を設定するものであり,当該年度の政策決定による資産変動の明確化や将来の 国民の負担のシミュレーションを通じた政策レベルの意思決定の支援は,処分・蓄 積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)によって実現されるものと解するのが相当 であり,本件明細書においても,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定) 以外の勘定を用いて将来の国民の負担のシミュレーション等が行われることは説明 されていない(原告が指摘する本件明細書【0031】は,適切な勘定連絡を設定 することがシミュレーションをする前提として必要になることを説明するものであ り,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)以外の勘定を用いてシミュレ ーションを行うことを説明するものとは認められない。)。 そうすると,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の借方に計上され る金額の総額及び貸借差額が結果的に同一になるとしても,処分・蓄積勘定(損益 外純資産変動計算書勘定)以外の勘定を参照しなければ,国家の政策レベルの意思 決定に関する勘定科目(社会保障給付を含む)及びその金額が明らかにならないよ うな構成は,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)を通じて国家の政策レベルの意思決定を支援する本件発明とは作用効果が異なるというべきである。
エ また,原告は,従来技術に対する本件発明の貢献の程度は大きいから,本件 発明の本質的部分は,「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の導入に より,将来世代に対して負担が現実的に先送りされた金額や将来利用可能な資源の増加額を可視化する」という構成要件Hを上位概念化したものであって,被告製品は,そのような構成を備えていると主張する。原告の主張は必ずしも明確でないが,従来技術に対する本件発明の貢献の程度に 照らし,本件発明の構成のうち,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の設定以外のものは非本質的部分であると主張する趣旨であれば,本件出願日前に 頒布された刊行物である乙12文献において,資金収支計算書勘定,貸借対照表勘定及び行政コスト計算書勘定に加えて,納税者,すなわち,国民の資産の変動を明 らかにするための勘定として,財源措置・納税者持分増減計算書勘定を設ける構成が示されていることに照らし,少なくとも,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計 算書勘定)の設定のみを従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると認めることはできないから,採用することができない。
オ そこで,被告製品をみると,被告製品では,前記のとおり,社会保障給付が 行政コスト計算書に計上されており,純資産変動計算書には,行政コスト計算書の 収支を基礎付ける勘定科目(社会保障給付を含む)及びその金額が示されていない ことが認められ,「純経常費用(C1)と並んで財源措置(C2)という項目もあ るが,これは具体的に言えば社会保障給付や…を指しており」(構成要件H)を充足するとはいえないから,本件発明と本質的部分において相違する。したがって, 被告製品は,均等の第1要件を満たすとはいえない。

◆判決本文

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平成29(ワ)9201  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年6月20日  大阪地方裁判所

 特許権侵害が認定され、102条3項の実施料率として7%が認定されました。大阪地裁はその理由を詳細に認定しています。H31.3の特許法改正規定の施行を先取りする形で、「通常の実施料率に比べておのずと高額になるであろうことを考慮すべき」と一般論を述べています。

 特許法102条3項は,「特許権者…は,故意又は過失により自己の特許権 …を侵害した者に対し,その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する 額の金銭を,自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。」旨 規定する。そうすると,同項による損害は,原則として,侵害品の売上高を基準と し,そこに,実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。 ここで,特許法102条3項については,「その特許発明の実施に対し通常受け るべき金銭の額に相当する額」では侵害のし得になってしまうとして,平成10年 法律第51号による改正により「通常」の部分が削除された経緯がある。また,特 許発明の実施許諾契約においては,技術的範囲への属否や当該特許の効力が明らか ではない段階で,被許諾者が最低保証額を支払い,当該特許が無効にされた場合で あっても支払済みの実施料の返還を求めることができないなど,様々な契約上の制 約を受けるのが通常である状況の下で,事前に実施料率が決定される。これに対し, 特許権侵害訴訟で特許権侵害に当たるとされた場合,侵害者は,上記のような契約 上の制約を負わない。これらの事情に照らせば,同項に基づく損害の算定に当たっ て用いる実施に対し受けるべき料率は,必ずしも当該特許権についての実施許諾契 約における実施料率に基づかなければならない必然性はなく,むしろ,通常の実施 料率に比べておのずと高額になるであろうことを考慮すべきである。 したがって,特許法102条3項による損害を算定する基礎となる実施に対し受 けるべき料率は,1)当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や,それ が明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ,2)当該特 許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能\n性,3)当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態 様,4)特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情 を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきである。
(イ) 実施料の相場(1))
「実施料率〔第5版〕」(社団法人発明協会研究センター編,平成15年発行。 甲38)によれば,「医薬品・その他の化学製品」(イニシャル無)の技術分野に おける平成4年度〜平成10年度の実施料率の平均値は7.1%であり,昭和63 年度〜平成3年度に比較して上昇しているところ,その要因として,「実施料率全 体の契約件数は減少しているものの,8%以上の契約に限れば件数が増加しており, この結果,…実施料率の平均値が高率にシフトしている。」,「この技術分野が他 の技術分野と比較して実施料率が高率であることと,実施料率の高率へのシフト傾 向は,医薬品が支 れている。また,「バイオ・製薬」の技術分野においては,平均6.0%,最大値 32.5%,最小値0.5%とされている。
(ウ) 本件における実施料率を考えるにあたり考慮すべき事情(2)〜3))
a 原告は,本件各発明の技術的価値は極めて優れたものであり,また,速乾性 手指消毒剤の市場における泡状の製品の占めるシェアの動向から,経済的にもその 価値は高いなどと主張する。 泡状の速乾性手指消毒剤である被告各製品に係る宣伝広告(甲5,7,8),製 品情報(甲6,9)及び医薬品インタビューフォーム(甲10)では,液状の速乾 性手指消毒剤では手に取ったときにこぼれやすく,ジェル状の速乾性手指消毒剤で は増粘剤が配合されているためにポンプのノズルの詰まりや繰り返し塗布したとき の使用感が問題になることがあったところ,被告各製品は,これらの問題点を解決 する製品である旨がうたわれていることが認められる。 また,本件各発明の実施品である泡状の速乾性手指消毒剤(平成23年6月発売。 甲39,41の1〜41の5,弁論の全趣旨)の販売業者が医療関係者向けに開設 したウェブサイト(甲40)には,泡が目に見えるので消毒範囲が確認できるとと もに,泡が消えるまで塗り広げることが消毒時間の目安にもなる点や,増粘剤が入 っていないので,ポンプが詰まらず,手に擦り込んでもヨレ(増粘剤入りの消毒剤 や化粧品を手に擦り込んだ際に出る糊状の剥離物)が出ないことがうたわれている。 さらに,平成30年9月26日付け薬事日報ウェブサイトの新薬・新製品情報に関 する記事(甲44)においては,第三者の販売に係る「医薬品として日本で初めて 承認された低アルコール濃度72vol%の手指殺菌・消毒剤」の出荷開始予定について\n報じる中で,「同品の登場によって,手指消毒剤の課題であったアルコールによる 手肌への刺激が低減され,…このほか,▽きめ細かく弾力のある泡で,手からこぼ れるリスクを軽減する▽泡が目でしっかり見えるため,手指消毒の状態を確認でき る−といった使用感も特徴。」,「現在,医療分野における手指消毒剤市場は約1 60億円とされ,構成比は液状が6割,ジェル状が3割,泡状が1割という状況。\nただ,液状の構成比は年々減少しており,今後はジェル状と共に泡状も伸びていく\nことが見込まれている。」とされている。 加えて,被告サラヤが実施したアンケートによれば,アンケート対象者である医 療従事者の施設で使用されている速乾性手指消毒剤の種類は,平成25年にはジェ ルタイプ67%,液タイプ27%,泡タイプ6%であったものが,平成27年には それぞれ66%,24%,10%となっている(甲42,43)。 以上の事情を総合的に見ると,被告各製品と本件各発明の実施品に加え,第三者 の製品も,本件各発明の奏する作用効果(前記3(2)ア)と同趣旨と見られる効果を 利点としてうたっていることなどに鑑みれば,泡状の手指消毒剤において本件各発 明が持つ技術的価値は高いものと見られる。また,手指消毒剤の市場において,泡 状の製品のシェアが徐々に高まっていることがうかがわれることに鑑みると,本件 各発明の経済的価値も積極的に評価されるべきものといえる。もっとも,後者に関 しては,ジェル状の製品のシェアはなお維持されているといってよいことに鑑みる と,その評価は必ずしも高いものとまではいえない。実施料率の決定要因としては, 当該特許発明の技術的価値よりも経済的価値の方がより影響力が強いと推察される ことに鑑みると,このことは軽視し得ない。 これに対し,被告らは,本件各発明は平均的な発明に比して技術的に優れた発明 ではなく,また,泡状の手指消毒剤のシェアの拡大は直接的には当該製品の販売事 業者の営業努力によるものであり,シェア拡大をもって特許の経済的価値が高いと はいえないなどと主張する。 しかし,進歩性が認められる本件各発明の奏する作用効果と同趣旨と見られる効 果が実際の製品の利点としてうたわれていることなどに鑑みれば,上記のとおり本 件各発明の技術的価値は高いものと評価するのが相当である。また,販売事業者が 営業活動に当たって相応の営業努力を行うことは当然である上,泡状の手指消毒剤 に係る営業方法等が,ジェル状ないし液状のものに係る営業方法等と比較して,格 別のものであると見るべき事情もない。 これらのことから,この点に関する被告らの主張は採用できない。
b 被告各製品は,被告製品1(500mLの泡ポンプ付が定価1760円,3 00mLの泡ポンプ付が1200円,80mLの泡ポンプ付が670円,600m Lのディスペンサー用が2000円。甲5,28,乙13),被告製品2(500 mLの泡ポンプ付が1760円,300mLの泡ポンプ付が1200円,200m Lの泡ポンプ付が930円,80mLのものが670円,600mLのディスペン サー用が2000円。甲8,29,乙14)いずれも比較的低価格である。反面, これを踏まえて被告各製品の売上高を見ると,その販売数量は多いといえるから, 被告各製品はいわゆる量産品であり,利益率は必ずしも高くないと合理的に推認さ れる。この点は,本件各発明を被告各製品に用いた場合の利益への貢献という観点 から見ると,実施料率を低下させる要因といえる。
(エ) 小括
上記(イ)及び(ウ)の各事情を斟酌すると,特許権侵害をした者に対して事後的に定め られるべき,本件での実施に対し受けるべき料率については,7%とするのが相当 である。これに反する原告及び被告らの各主張は,いずれも採用できない。 ウ 「特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」 以上によれば,原告が被告らによる本件各発明の実施に対し受けるべき金銭の額 に相当する額は,売上高に7%を乗じて算定すべきこととなる。

◆判決本文

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平成30(ワ)38579    著作権  民事訴訟 平成31年4月26日  東京地方裁判所

 原告の発言が含まれているDVDを販売したとして著作権侵害と争いましたが、著作物性無しと判断されました。本人訴訟です。

 そこで検討するに,被告株式会社フジテレビジョン作成のDVDに収録されている 音声には,「A」(甲57の1),「ストップ。ははははは。」(甲61の1),「あたた」(甲62の1)と認識される可能性が否定できないものがあるが,これらの音声はいずれもその発言者が上記のように認識される可能\性がある音声を偶々発言したにす ぎないものと認められるから,その意味内容や表現として,原告の名前を発言したも\nのとも,原告の平穏生活権を侵害する発言とも,原告作品を発言したものとも認めら れない。そして,原告が提出する映像(甲1ないし68の各1)には,上記以外に, その反訳書(甲1ないし68の各2)において原告が指摘する発言が収録されている とは認められないから,被告らにおいて,原告の著作権(複製権,翻案権,同一性保 持権又は公表権),名誉権,プライバシー又は平穏生活権を侵害し,又は脅迫若しく\nは侮辱に該当する発言が収録された映像を放送したこと又はそのDVDを販売する などしたことを認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。そうす ると,原告の被告らに対する請求はいずれも理由がない。

◆判決本文

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平成30(ネ)10081等  不正競争行為差止等請求控訴事件等  不正競争  民事訴訟 令和元年5月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(2部)は、マリカー事件について、中間判決をしました。論点は色々ありますが、1審の判断がほぼそのままとなっています。

 一審被告らは,一審被告会社は,「マリカー」の標準文字からなる本件商標を 有しており,「マリカー」という標章を使用する正当な権限を有するから,仮に 被告標章第1の使用行為が不正競争行為に該当するとしても,差止請求や損害賠 償請求は認められない旨主張する。 しかし,本件商標の登録出願がされたのは平成27年5月13日であるところ, 前記4(2)で検討したとおり,その頃までには,原告文字表示マリオカート及び「M ARIO KART」表示は日本国内で著名となっており,かつ原告文字表\示マリカーも, 「マリオカート」を示すものとして,日本国内の本件需要者の間で周知になってい て,かつ後記8のとおり,一審被告会社の代表者である一審被告Yはそのことを知\nっていたものと認められる。
これに加え,1)一審被告会社が設立当初の商号を敢えて「株式会社マリカー」と していたこと,2)平成28年11月15日当時に品川第1号店において配布されて いた本件チラシには,「マリオのコスプレをして乗ればリアルマリオカート状 態!!」と記載されていたこと(甲3,4),3)平成28年8月12日当時に品川 第1号店サイト1には,「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ 倍増」と記載されるとともに,「マリオ」のコスチュームを着用した人物の写真が 同記載に併せて掲載され,また,平成29年2月23日当時に品川第1号店サイト 1に「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ倍増」と記載されて いたこと(甲6の1,甲35),4)平成29年2月23日当時に,河口湖店サイト に「スーパーマリオのコスプレをして乗れば,まさにリアルマリオカート状態!!」 と記載されていたこと(甲6の2),5)後記6認定のとおり,一審原告の著名な商 品等表示である原告表\現物に類似する被告標章第2のコスチュームを用いた宣伝行 為や本件各コスチュームを用いた本件貸与行為が行われ,特に,平成27年11月 2日にアップロードされた本件動画1(甲42の1,甲43の1)の0:05秒時 点には「MARIOKART」という英語の音声が収録され,かつ同音声について,「マリ オカート」の日本語字幕が付けられていたことも考え併せると,一審被告会社は, 周知又は著名な原告文字表示及び「MARIO KART」表示が持つ顧客吸引力を不当に利\n用しようとする意図をもって本件商標に関する権利をゼント社より取得したものと 推認することができる。
したがって,一審被告会社が,一審原告に対し,本件商標に係る権利を有すると 主張することは権利の濫用として許されないというべきであり,一審被告らの上記 主張は理由がない。
なお,一審被告らは,原告文字表示マリカーは本件需要者である訪日外国人の間\nでは周知ではないと主張するが,これまで検討してきたとおり,本件需要者は訪日 外国人に限られないから,一審被告らの主張はその前提を欠いており,採用するこ とができない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)6293

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平成28(ワ)11067  著作権侵害差止請求事件 令和元年5月21日  大阪地方裁判所

 飲食店におけるオーダ管理、および売り上げ管理をおこなうプログラムについて、「原告プログラムの作成日以前から一般的に使用されている指令であり,変数や条件等の文字列の場所が決まっているため独創的な表現形式を採る余地のないものであって,インターネット上に使用例が公開されている」として、著作物性が否定されました。

 プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこ\nれに対する指令を組み合せたものとして表現したもの」(著作権法2条1項10号\nの2)であり,所定のプログラム言語,規約及び解法に制約されつつ,コンピュー ターに対する指令をどのように表現するか,その指令の表\現をどのように組合せ, どのような表現順序とするかなどについて,著作権法により保護されるべき作成者\nの個性が表れることになる。\nしたがって,プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,そ\nの指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり, かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表\現上の創作性 が表れていることを要するといわなければならない(前掲知財高裁平成24年1月\n25日判決)。
(2) 原告プログラムのソースコードの創作性について\n
ア 原告プログラムのソースコードのうち創作性が認められ得る部分\n前記1のとおり,原告プログラムは,原告が作成していたレジアプリケーション ソフトを基に,原告と被告が協議しつつ,原告がソ\ースコードを書くことにより完 成したものであって,顧客の携帯電話端末を注文端末として使用することができる 点や,店舗において入力した情報を店舗(クライアント)側ではなくサーバー側プ ログラムを介してデータベースに保持し,主要な演算処理を行う点等について,従 来の飲食店において使用されていた注文システムとは異なる新規なものであったと 一応推測することができる。また,原告の書いた原告プログラムのソースコード(甲\n3)は,印刷すると1万頁を超える分量であって,相応に複雑なものであると推測 できる(原告本人)。 そして,6)データベースにおける正規化されたデータの格納方法や,注文テーブ ル及び注文明細テーブルに全てのアプリケーションからの注文情報を集約するため の記述(甲18)等に,原告の創作性が認められる可能性もある。\n
イ コンピュータに対する指令の創作性について 前記(1)のとおり,プログラムの著作物性が認められるためには,プログラムによ り特定の機能を実現するための指令の表\現,表現の組合せ,表\現順序等に選択の幅 があり,ありふれた表現ではないことを主張立証することが必要であって,これら\nの主張立証がなされなければ,プログラムにより実現される機能自体は新規なもの\nであったり,複雑なものであったとしても,直ちに,当該プログラムをもって作成 者の個性の発現と認めることはできないといわざるを得ない。
コンピュータに対する指令(命令文)の記述の仕方の中には,コンピュータに特 定の単純な処理をさせるための定型の指令,その定型の指令の組合せ及びその中で の細かい変形,コンピュータに複雑な処理をさせるための上記定型の指令の比較的 複雑な組合せ等があるところ,単純な定型の指令や,特定の処理をさせるために定 型の指令を組合せた記述方法等は,一般書籍やインターネット上の記載に見出すこ とができ,また,ある程度のプログラミングの知識と経験を有する者であれば,特 定の処理をさせるための表現形式として相当程度似通った記述をすることが多くな\nるものと考えられる(乙12,被告代表者)。\nそうすると,ソースコードに創作性が認められるというためには,上記のような,\n定型の指令やありふれた指令の組合せを超えた,独創性のあるプログラム全体の構\n造や処理手順,構成を備える部分があることが必要であり,原告は,原告プログラ\nムの具体的記述の中のどの部分に,これが認められるかを主張立証する必要がある。
ウ 本件における主張立証
被告は,原告プログラムについて,1)レジ,2)キッチンモニター及び3)マスタメ ンテナンスの各プログラムのソースコードは,汎用性のあるソ\ースコードであり創 作性が認められないと主張し,被告代表者の陳述書(乙12)において,上記1)〜 3)の各プログラムのソースコード(甲4〜6)の大部分について,指令の表\現に選 択の幅がなく,一般書籍(乙6)やインターネット上にも記載のあるありふれたも のであることを指摘する。また,被告は,原告プログラムのうち他の構成について\nも,指令の組合せがありふれたものであると主張する。 これに対し,原告は,4)スタッフオーダー等によって入力された情報を,5)サー バー側プログラムを経由して飲食店用に最適化された6)データベースにおいて一括 管理し,レジやキッチンに出力する機能が一体となる点に創作性が認められる旨主\n張するが,これは,プログラムにより実現される機能が新規なもの,複雑なもので\nあることをいうにとどまり,それだけでプログラムに創作性が認められることには ならないことは前述のとおりであるところ,原告は,具体的にどの指令の組合せに 選択の幅があり,いかなる記述がプログラム制作者である原告の個性の発現である のかを,具体的に主張立証しない。 むしろ,乙6,12によれば,原告が開示した原告プログラムの1)レジ,2)キッ チンモニター及び3)マスタメンテナンスのソースコード(甲4〜6)に表\れる指令 の組合せのうちの多くは,原告プログラムの作成日以前から一般的に使用されてい る指令であり,変数や条件等の文字列の場所が決まっているため独創的な表現形式\nを採る余地のないものであって,インターネット上に使用例が公開されているもの も多いことが認められる。
エ まとめ
前記認定したところによれば,原告は,平成23年3月の時点で,一定のレ ジアプリケーションを完成していたが,これは「でんちゅ〜」そのものではなく, 「でんちゅ〜」を事業化しようとする被告代表者と協議しながら,「でんちゅ〜」\nのプログラムを開発したこと,平成24年12月までの原告と被告との法的関係は 不明であるが,「でんちゅ〜」の事業化の主体は被告であり,原告は,被告の依頼 又は内容に関するおおまかな指示を受けてプログラムの開発を行ったこと,「でん ちゅ〜」は平成23年に飲食店に試験導入され,平成24年以降本格導入されたこ と,原告は,少なくとも同年12月から平成27年7月の退社までの2年半余り, 被告の被用者として被告の指示を受け,前記導入の結果を踏まえ,「でんちゅ〜」 の改良,修正等に従事したこと,以上の事実が認められる。 上記事実の中で,平成24年5月22日の時点における原告プログラムの構\n成が,ありふれた指令を組み合わせたものであるには止まらず,原告の個性の発現 としての著作物性を有していたと認めるに足りるものであることの立証がなされて いないことは,既に述べたところから明らかである。 また,平成23年の導入以降,「でんちゅ〜」については,段階的に改良や 修正が施され,原告自身も,少なくとも2年半余り被告の従業員としてその開発, 修正に従事しており,前記認定のとおり,原告プログラムと被告プログラムには相 当程度の差異が認められるのであるから,仮に原告プログラムの一部に,原告の個 性の発現としての創作性が認められる部分が存したとしても,その部分と同一又は 類似の内容が被告プログラムに存すると認めるに足りる証拠はなく,結局のところ, 平成24年5月22日時点の原告プログラムの著作権に基づいて,現在頒布されて いる被告プログラムに対し,権利を行使し得る理由はないといわざるを得ない。

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平成14(ワ)13569等  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成16年4月20日  大阪地方裁判所

 かなり以前の判決ですが、使用しているサービスがなにか?という点が争われた判決なので、アップしておきます。被告は指定役務「求人情報の提供、職業のあっせん」にて商標権を有していましたが、被告の行為は、原告の指定役務「電子計算機通信ネットワークによる広告の代理」と判断されました。

。 ア 被告サイトのトップ頁には、「就職・転職」、「採用」、「株式会社ディスコについて」の項目がある。求職者は、無料の登録手続を採った後、被告サイト上の情報を無料で入手、利用することができる。被用者を募集しようとする企業は、被告に依頼し、被告サイトに自己の情報を掲載することができる。
イ 被告サイトの「就職・転職」の頁には、被用者を募集している企業の「会社名」、「業種」、「ポジション」、「勤務地」及び「オンライン応募」が一覧できる頁がある、また、その頁から、各会社ごとの情報が掲載された頁に移ることができる。そこには、「企業情報」欄の「企業名」「業種」「会社案内」、「グループインフォメーション」欄の「設立年月日」「資本金」「本社、支社所在地」「社員数」等、「募集要項」欄の「職種」「勤務地」「給与」「職務内容」「選考方法」等、「採用基準」欄の「資格内容」「志願者状況」「対象職種」「職歴年数」「専攻」「学位」「言語スキル」等の各項目が設定されており、各会社のそれぞれの情報が掲載されている。
 この中で、「企業情報」欄の「会社案内」には、「今後の事業展開において活躍フィールドはどんどん広がっていきます」、「国内市場・北米市場はもとより、ヨーロッパ・発展途上国を含めて、目標とする世界No.1MT専門メーカーを実現していきます」などといった、採用基準の枠にとらわれない、当該企業の今後の展望、目標、それに伴う採用傾向等が記載されている。
ウ 被告サイトの「採用」の頁においては、「外国人を雇用する」の表題の下、「HR Talk−外国人を雇用している企業のインタビュー」と題して、7社の名称が挙げられている。
 各社ごとの頁には、「東アジアでナンバー1をめざす」等インタビュー記事の中の一節などが冒頭に挙げられ、「化学商品を次々とマーケットに送り出している」等の簡単な会社紹介や、「海外マーケットで一部商品が成熟化するなか、商品の起爆剤となるのは『発展途上の10億人市場』である中国だ。『このマーケットを制する企業こそが21世紀を制する』を標語に、着々と有力な外国人採用に入っている。採用の対象は『ずばりマーケティング』。人事担当者の狙いも理路整然としている。」等の前文を置いて、採用内容、採用実績、会社業績、事業目標、外国人採用についての採用傾向等を、人事担当者と聞き手とのインタビュー形式の記事にして掲載している。
・・・・
オ 効率的に人材を確保するために、特に学生の採用については、企業のイメージ作りや企業に対する理解度をアップさせるような広報の重要性を指摘されることがあり、そのような広報としては、現在の活動目的、将来像、社会への貢献状況、企業理念を明らかにし、求めている人材像を明確に具体的に打ち出すものが想定されていること、そのような広報の作成においては、「アイデアや専門知識で勝負している就職情報会社と上手につきあうことは多くのプラスがある。」、就職情報会社は、「企業を客観的に見ることができ、新鮮な目で自社の魅力を新発見してくれる可能性があ」り、「種々の表\現技術を持っており、現代の学生達の価値観に併せた求人ツールを企画することができる」などとされている(甲第29号証)。 カ 従来より、新聞においては、「人事募集広告」あるいは「求人広告」と称される欄が存在し、この欄には、募集する事業者名、連絡先、募集する職種、労働条件等が記載されており、同一の文字が配置されるだけのものもあれば、強調したい部分の文字の大きさや太さを変えたり、勧誘的文言が付加されたりすることもある(甲第9、第10号証)。 キ 広告ないし広告代理業と求人情報提供業務を同一の事業主が行う例がある(公知の事実)。
・・・・
(4) 被告は、商標法における広告とは、第三者が広告主のために、広告主を明示して、他人を介さずに広告主の商品、サービス、アイデア等について消費者に告知、説得することを目的とするものであるのに対し、求人情報の提供とは、他人である雇用希望主のために、雇用希望主を明示して、雇用希望主が労働者を募集することを求職者層に対し、他人を介さずに告知、勧誘する活動を行うことを目的とするものであると主張し、広告と求人情報の提供とでは、対象とする需要者も全く異なると主張する。 「広告」とは、国語辞典によれば、「広く世間に告げ知らせること。特に、顧客を誘致するために、商品や工業物などについて、多くの人に知られるようにすること。」(広辞苑[第5版])、「1)広く世の中に知らしめること。2)人々に関心を持たせ、購入させるために、有料の媒体を用いて商品の宣伝をすること。また、そのための文書類や記事。」などとされており、特に、商品の購入等を誘引するために宣伝するという意味合いで一般的に用いられることからすれば、「求人情報の提供」との間には、被告が主張するような差異があることも否定できない。被告商標権が、先願である原告商標権の存在にもかかわらず登録になったことは、このような点が考慮されたものと考えられる。
 しかし、商標権侵害の成否に関しての役務の類否の判断に当たっては、具体的な取引の実情を考慮すべきである。
 これを本件についてみると、前記(2)認定の事実によれば、被告は、インターネットという電子計算機通信ネットワークを利用して、採用希望企業の名称、所在地、給与、勤務時間、職務内容等の求人事項、並びに、当該企業の経営理念や活動目的、将来像、それらに適合する採用傾向等の情報を、興味・関心を惹くような構成に整理編集した上で、誰もが閲覧し得る状況に置くことによって、提供しているということができる。\n そして、求人情報の提供、広告、広告代理といった業種を同一企業が営んでいる例があり、被告自身も広告代理をその業務の1つとしている(なお、商標法施行令及び同法施行規則による役務の区分において、「求人情報の提供」は、従前は、気象情報の提供と並べて第42類に分類されていたが、平成13年の改正により、「広告」と同じ第35類に移されていることも、現代では両者が近い関係にあるとされていることを示しているといえる。)。
 したがって、役務の提供の手段、目的又は場所の点においても、提供に関連する物品(本件の場合は情報)においても、需要者の範囲においても、業種の同一性においても、被告が被告サイトにて行っている業務は、広告代理業務と同一ないし類似するということができる。
 なお、前記のとおり、被告は被告商標権の登録を受けているが、その指定役務は「求人情報の提供、職業のあっせん」等であって、「電子計算機通信ネットワークによる広告の代理」まで含んでいるわけではないから、上記登録の事実は、被告が行っている上記業務が原告商標権の指定役務に類似すると判断することの妨げになるものではない。

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平成30(ネ)10063  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年6月7日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 知財高裁特別部、いわゆる大合議判決です。争点は充足論、無効論など、多々ありますが、102条2項の推定覆滅事由、同3項の損害額の判断基準について一般論を述べています。

(3) 推定覆滅事由について
ア 推定覆滅の事情
特許法102条2項における推定の覆滅については,同条1項ただし書の事情 と同様に,侵害者が主張立証責任を負うものであり,侵害者が得た利益と特許権者 が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。例えば, 1)特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在すること(市場の非同一性),2)市 場における競合品の存在,3)侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),4)侵害 品の性能(機能\,デザイン等特許発明以外の特徴)などの事情について,特許法1 02条1項ただし書の事情と同様,同条2項についても,これらの事情を推定覆滅 の事情として考慮することができるものと解される。また,特許発明が侵害品の部 分のみに実施されている場合においても,推定覆滅の事情として考慮することがで きるが,特許発明が侵害品の部分のみに実施されていることから直ちに上記推定の 覆滅が認められるのではなく,特許発明が実施されている部分の侵害品中における 位置付け,当該特許発明の顧客誘引力等の事情を総合的に考慮してこれを決するの が相当である。
イ 控訴人らは,炭酸ガスを利用したパック化粧料全てが競合品であることを 前提に,他の炭酸パック化粧料の存在が推定覆滅事由となると主張する。 しかし,そもそも,競合品といえるためには,市場において侵害品と競合関係 に立つ製品であることを要するものと解される。 被告各製品は,炭酸パックの2剤型のキットの1剤を含水粘性組成物とし,炭 酸塩と酸を含水粘性組成物中で反応させて二酸化炭素を発生させ,得られた二酸化 炭素含有粘性組成物に二酸化炭素を気泡状で保持させる炭酸ガスを利用したパック 化粧料である。そして,化粧料における剤型は,簡便さ,扱いやすさのみならず, 手間をかけることにより得られる満足感等にも影響するものであり,各消費者の必 要や好みに応じて選択されるものであるから,剤型を捨象して広く炭酸ガスを利用 したパック化粧料全てをもって競合品であると解するのは相当ではない。控訴人ら が競合品であると主張する製品は,その販売時期や市場占有率等が不明であり,市 場において被告各製品と競合関係に立つものと認めるには足りない。
ウ 控訴人らは,被告各製品が利便性に優れているとか,被告各製品の販売は 控訴人らの企画力・営業努力によって成し遂げられたものであると主張する。 しかし,事業者は,製品の製造,販売に当たり,製品の利便性について工夫し, 営業努力を行うのが通常であるから,通常の範囲の工夫や営業努力をしたとしても, 推定覆滅事由に当たるとはいえないところ,本件において,控訴人らが通常の範囲 を超える格別の工夫や営業努力をしたことを認めるに足りる的確な証拠はない。
エ 控訴人らは,被告各製品は原告製品に比べて顕著に優れた効能を有すると\n主張する。 侵害品が特許権者の製品に比べて優れた効能を有するとしても,そのことから\n直ちに推定の覆滅が認められるのではなく,当該優れた効能が侵害者の売上げに貢\n献しているといった事情がなければならないというべきである。
・・・
(ウ) 被告各製品及び原告製品は,いずれも本件発明1−1及び本件発明2−1 の実施品であり,炭酸塩と酸を含水粘性組成物中で反応させて二酸化炭素を発生さ せ,得られた二酸化炭素含有粘性組成物に二酸化炭素を気泡状で保持させ,皮膚に 適用して二酸化炭素を皮下組織等に供給することにより,美肌,部分肥満改善等に 効果を有するものであると認められるのであり,上記(ア)及び(イ)に認定した事実に よっても,被告各製品が原告製品に比して顕著に優れた効能を有し,これが控訴人\nらの売上げに貢献しているといった事情を認めるには足りず,ほかにこれを認める に足りる的確な証拠はない。
オ 控訴人らは,被告各製品が控訴人ネオケミアの有する特許発明の実施品で あるなどとして,これらの特許発明の寄与を考慮して損害賠償額が減額されるべき であると主張する。 侵害品が他の特許発明の実施品であるとしても,そのことから直ちに推定の覆 滅が認められるのではなく,他の特許発明を実施したことが侵害品の売上げに貢献 しているといった事情がなければならないというべきである。控訴人ネオケミアが, 二酸化炭素外用剤に関連する特許である,1)特許第4130181号(乙A18), 2)特許第4248878号(乙A19),3)特許第4589432号(乙A20), 4)特許第4756265号(乙B全7)を保有していることは認められるが,被告 各製品が上記各特許に係る発明の技術的範囲に属することを裏付ける的確な証拠は ないから,そもそも,被告各製品が他の特許発明の実施品であるということができ ない。よって,これらの特許発明の寄与による推定の覆滅を認めることはできない。 なお,被告各製品の中には,上記特許権の存在や,特許取得済みであることを 外装箱に表示したり,宣伝広告に表\示したりしているものがあったことが認められ る(甲7,8,17,20)が,特許発明の実施の事実が認められない場合に,そ の特許に関する表示のみをもって推定覆滅事由として考慮することは相当でないか\nら,この点による推定の覆滅を認めることもできない。
カ 控訴人らは,従来技術との比較の観点から,本件発明1−1及び本件発明 2−1の技術的価値が低いことを主張するが,控訴人らが指摘するジェルと粉末を 組み合わせる化粧料の技術(資生堂614及び日清324)は,炭酸ガスを利用し た化粧料に係るものではないし(乙A103,乙E全9,35,36),2剤混合 型の気泡状の二酸化炭素を発生する化粧料(石垣発明1及び2)は,炭酸ガスの気 泡の破裂により皮膚等をマッサージするための発泡性化粧料の技術であって,二酸 化炭素を気泡状で保持する二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのものではない (乙E全4,5,37,38)から,いずれも本件発明1−1及び本件発明2−1 を代替するものではない。そうすると,これらの従来技術の存在は,被控訴人の受 ける損害とは無関係であるから,推定覆滅事由に当たるということはできない。 キ 控訴人らは,乙A3の実験結果によれば,ブチレングリコールが配合され た被告各製品においては,本件発明1−1及び本件発明2−1の寄与は限定的であ ると主張する。しかし,本件発明1−1及び本件発明2−1は二酸化炭素含有粘性 組成物を得るための2剤型の化粧料のキットの発明であるところ,被告各製品は, 炭酸塩を含むジェル剤と酸を含む顆粒剤を混合して使用するパック化粧料のキット であるから,本件発明1−1及び本件発明2−1は被告各製品の全体について実施 されているというべきである。また,被告各製品にブチレングリコールが配合され たことによる効果が控訴人らの売上げに貢献しているといった事情も認められない 本件において,ブチレングリコールが配合されていることは,被控訴人の受ける損 害とは無関係であるから,控訴人らが指摘する乙A3の実験の結果は,控訴人らの 上記主張を基礎付けるものではない。
・・・
6 損害(特許法102条3項)(争点6−2)
(1) 特許法102条3項について
ア 被控訴人は,選択的に,別紙「損害額一覧表」の「被控訴人主張額」「3\n項による損害額」欄記載のとおり,特許法102条3項により算定される損害額も 主張している。特許法102条3項は,特許権侵害の際に特許権者が請求し得る最 低限度の損害額を法定した規定である。
イ 特許法102条3項は,「特許権者…は,故意又は過失により自己の特許 権…を侵害した者に対し,その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当す る額の金銭を,自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。」 旨規定する。そうすると,同項による損害は,原則として,侵害品の売上高を基準 とし,そこに,実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。
(2) その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額
ア 特許法102条3項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の 額に相当する額」については,平成10年法律第51号による改正前は「その特許 発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額」と定められていたところ, 「通常受けるべき金銭の額」では侵害のし得になってしまうとして,同改正により 「通常」の部分が削除された経緯がある。
特許発明の実施許諾契約においては,技術的範囲への属否や当該特許が無効に されるべきものか否かが明らかではない段階で,被許諾者が最低保証額を支払い, 当該特許が無効にされた場合であっても支払済みの実施料の返還を求めることがで きないなどさまざまな契約上の制約を受けるのが通常である状況の下で事前に実施 料率が決定されるのに対し,技術的範囲に属し当該特許が無効にされるべきものと はいえないとして特許権侵害に当たるとされた場合には,侵害者が上記のような契 約上の制約を負わない。そして,上記のような特許法改正の経緯に照らせば,同項 に基づく損害の算定に当たっては,必ずしも当該特許権についての実施許諾契約に おける実施料率に基づかなければならない必然性はなく,特許権侵害をした者に対 して事後的に定められるべき,実施に対し受けるべき料率は,むしろ,通常の実施 料率に比べて自ずと高額になるであろうことを考慮すべきである。
したがって,実施に対し受けるべき料率は,1)当該特許発明の実際の実施許諾 契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界における実施料の相場 等も考慮に入れつつ,2)当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重 要性,他のものによる代替可能性,3)当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上 げ及び利益への貢献や侵害の態様,4)特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の 営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきである。
・・・・
ウ 実施に対し受けるべき金銭の額
上記のとおり,1)本件訴訟において本件各特許の実際の実施許諾契約の実施料 率は現れていないところ,本件各特許の技術分野が属する分野の近年の統計上の平 均的な実施料率が,国内企業のアンケート結果では5.3%で,司法決定では6. 1%であること及び被控訴人の保有する同じ分野の特許の特許権侵害に関する解決 金を売上高の10%とした事例があること,2)本件発明1−1及び本件発明2−1 は相応の重要性を有し,代替技術があるものではないこと,3)本件発明1−1及び 本件発明2−1の実施は被告各製品の売上げ及び利益に貢献するものといえること, 4)被控訴人と控訴人らは競業関係にあることなど,本件訴訟に現れた事情を考慮す ると,特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき,本件での実施に対し 受けるべき料率は10%を下らないものと認めるのが相当である。なお,本件特許 権1及び本件特許権2の内容に照らし,一方のみの場合と双方を合わせた場合でそ の料率は異ならないものと解すべきである。 したがって,本件各特許権侵害について,特許法102条3項により算定され る損害額は,別紙「損害額一覧表」の「裁判所認定額」「3項による損害額」欄記\n載のとおりとなる。
(3) 控訴人らの主張について
控訴人らは,被告各製品における本件各特許の寄与が限定されることを根拠に 実施に対し受けるべき料率を低くすべきであると主張するが,前記5(3)に説示し たところに照らし,本件発明1−1及び本件発明2−1を被告各製品に用いたこと による売上げ及び利益への貢献が限定されるとは認められないから,控訴人らの主 張は前提を欠く。 また,控訴人らは,被控訴人のビジネスモデルが不当に競争を制限するもので あると主張するが,前記5(1)イにおいて認定したとおり,被控訴人は本件各特許 の実施品を製造販売しているのであるから,被控訴人のビジネスモデルが不当に競 争を制限するものであると解する根拠がない。控訴人らの,MLMによる販売手法 に関する主張は具体的な主張を欠き,失当である。 控訴人らの主張するその余の点も,上記判断を左右するものではない。
7 総括
(1) 被控訴人キアラマキアート(被告製品5)については,上記6で認定した 特許法102条3項に係る損害額が,前記5で認定した同条2項に係る損害額より も高いから,同条3項に係る損害額をもって被控訴人の損害額と認めるべきことに なる。 他方,その余の控訴人らについては,いずれも前記5で認定した同条2項に係 る損害額の方が高いから,この金額をもって被控訴人の損害額と認めるべきことに なる。
なお,控訴人コスメプロらは,被告各製品を製造,販売するに至った経緯等に 照らし控訴人コスメプロらには故意又は重大な過失はなかったとして,同条4項に 基づき,このことを控訴人コスメプロらの損害賠償額を定めるについて参酌すべき であると主張する。しかし,控訴人コスメプロ,控訴人アイリカ,控訴人ウインセ ンス,控訴人コスメボーゼ及び控訴人クリアノワールは,化粧品の製造会社であり, 仮に同控訴人らの主張する諸事情があったとしても,同控訴人らにつき,特許権侵 害についての故意又は重大な過失がなかったということはできないから,控訴人ら の上記主張は採用できない。

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◆平成27(ワ)4292

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平成30(ワ)2082  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年3月25日  大阪地方裁判所

 結婚式の記録ビデオは映画の著作物であり、著作権は、実際にビデオ撮影した者が有するのか、プロデュースした者が有するのかが争われました。裁判所は、プロデュースした者であると判断しました。映画の著作物についての著作権は、特別規定があります。「その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物に参加することを約束しているときは、当該映画製作者」に著作権が帰属する(著29条1項)。」 個人的には、このようなケースって、映画の著作物として扱うべきか?を考えると、ちょっと違うのではないかと思います。

  本件記録ビデオは,被告P2らの挙式等の様子を撮影・編集したビデオで あり,そのサムネイル画像(甲38)も参酌すると,挙式等が進行する状況に応じ た撮影対象の選択や構図等に創作的工夫が施されていると認められるから,著作権\n法2条3項に規定する「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせ る方法で表現され,かつ,物に固定されている著作物」であり,同法10条1項7\n号所定の「映画の著作物」に当たると解される。
そして,前記1で認定した事実によれば,挙式等の撮影については基本的には原 告の裁量に委ねられており,原告は様々な工夫をして撮影をしたと認められるから, 原告は,原告撮影ビデオについて,「映画の著作物の全体的形成に創作的に関与した 者」(著作権法16条)としてその著作者であると認められ,本件記録ビデオはその 複製著作物又は二次的著作物である。
(2) そこで,被告らが主張する著作権法29条1項の適用の有無について検討 する。 著作権法29条1項にいう「映画製作者」とは,「映画の著作物の製作に発意と責 任を有する者」をいい(同法2条1項10号),映画の著作物を製作する意思を有し, 同著作物の製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であって,同著作物の製 作に関する経済的な収入・支出の主体となる者のことをいうと解される。 前記1で認定した事実のとおり,本件では,被告Beeは,社内の人間だけでは 撮影業務をこなせないことから複数の外部業者に撮影業務を委託するようになり, 原告はその外部業者の一人であったことからすると,被告Beeは,各婚礼のビデ オ撮影業務の担当を各外部業者に割り振って委託することにより,全体としての婚 礼ビデオの製作業務を統括して行っていたといえる。 また,エフ・ジェイホテルズから委託を受けて,新郎新婦から婚礼ビデオ製作の 申込みを受け,その意向を聴取して打合せをするのは被告Beeであり,婚礼ビデ\nオを完成させて納品するのも被告Beeである。また,被告Beeは,原告による 撮影に不備があった場合の新郎新婦に対する責任も負担している。そうすると,婚 礼ビデオを適切に製作し,納品する義務は,エフ・ジェイホテルズからの委託の下, 被告Beeが負っていたといえる。 加えて,現場での撮影業務自体は基本的には原告の裁量と工夫に委ねられていた が,被告Beeも,新郎新婦に特段の意向がある場合には原告にそれを伝えて撮影 の指示を行っており,原告の裁量等も被告Beeからの指示という制約を受けるも のであったほか,被告Beeは,婚礼ビデオを完成させるに当たり編集作業を行い, その中では,被告Beeが独自に製作した「プロフィールビデオ」等の上映シーン を加工し,そのBGMを音源から採取して差し込むなど,独自の演出的な編集も行 っているから,製作するビデオの内容を最終的に決定していたのは被告Beeであ るといえる。
そして,被告Beeは,原告に対して撮影料と交通費を支払っているほか,それ 以外の製作費用も負担しているから,本件記録ビデオの製作に関する経済的な収 入・支出の主体となっているのは原告ではなく被告Beeである。なお,被告Be eは,本件記録ビデオに収録された楽曲についての著作権使用料等の支払をしてい ないが,原告は,本件記録ビデオに収録された楽曲の著作権使用料は被告Beeが 負担することとなっていたと主張しており,この主張は,上記のとおり本件記録ビ デオの製作に関する経済的な収入・支出の主体が被告Beeであることと符合する (この点については,被告Beeも,別件の福岡地方裁判所小倉支部に提起された 事件で原告の上記主張を争うに当たり,結婚式の様子を撮影したビデオ等に結婚式 の映像とともに式場で流された音楽が収録された場合に,その音楽について日本音 楽著作権協会等に対して著作権使用料を支払うべき義務があるかは法律上確定され ているものではなく,支払義務があるとしても,それを原告が支払った場合には求 償権の問題が発生すると主張するにとどまり〔乙3,7〕,日本音楽著作権協会等に 対する支払義務がある場合にそれを被告Beeが負担すべきことを特段争っていた わけではないと認められる。)。 以上からすると,本件記録ビデオの製作に発意と責任を有する者は,被告Bee であり,被告Beeは「映画製作者」に当たると認めるのが相当である。 そして,原告は,被告Beeから委託を受けて原告撮影ビデオの撮影をしたので あるから,被告Beeに対して本件記録ビデオの製作に参加することを約束したも のといえる。 したがって,著作権法29条1項により,本件記録ビデオの著作権は被告Bee に帰属するから,原告は著作権を有しない。 これに対し,原告は,ビデオ撮影に当たっての自己の負担や工夫をるる主張する が,それらは,原告が著作者であることを基礎付けるものであっても,被告Bee が映画製作者であることを否定するに足りるものではない。
(3) したがって,原告は本件記録ビデオの著作権を有しないから,その著作権に 基づく請求は理由がない。
4 争点5(著作者人格権侵害のおそれの有無)について
(1) 同一性保持権についてみると,本件記録ビデオは原告撮影ビデオを編集し たものであるが,前記1で認定した事実からすると,原告は,被告Beeが原告撮 影ビデオを適宜編集することを承諾していたと認められるから,本件記録ビデオは 原告の同一性保持権を侵害して製作されたものではない。 したがって,仮に被告らが本件記録ビデオを複製,頒布するとしても,意に反す る改変を行うことにはならないから,同一性保持権の侵害は生じない。

◆判決本文

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平成29(ワ)5011  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 平成31年3月28日  大阪地方裁判所

 爪切りについての意匠権侵害と不競法の品質等誤認表示が争われました。裁判所はいずれも認めました。意匠権侵害の損害額は、被告の得た利益のうち、推定覆滅事由として以下の2つを認め、利益のうち28%としました。1)部分意匠であること(70%)、2)爪切りであるので、商品のデザインを重視して商品が購入されることが多いとはいえない(40%)こと。

(5) 推定覆滅事由等
ア 被告製品1関係について
(ア) 意匠権侵害関係について
a 意匠権侵害関係については,原告実施品の販売減少による逸失利益が問題となるところ,前記認定の被告製品1の利益の額がその損害額と推定されるから,この推定に関する覆滅事由等が問題となる。
b 本件登録意匠が部分意匠であることの考慮について 本件登録意匠は部分意匠であり,意匠の対象となっているのは操作レバ ーとカバー部である(別紙「本件登録意匠の構成」参照)のに対し,被告製品1は\n爪切り全体であるから,本件意匠権侵害行為による原告の損害額と推定されるのは, 被告製品1の販売等による利益の額のうち,本件意匠権侵害部分である操作レバー とカバー部に相当する額である。そして,被告は,それらの爪切り全体に占める割 合について,表面積にしてせいぜい40%であるとか,その部分の製造原価は高く\nても20%程度であると主張している。 確かに,本件登録意匠の対象部分が爪切りの一部であり,表面積としてみても,\n爪切りの大半を占めるわけではないことは被告主張のとおりであるし,また爪切り における重要部分が刃であり,爪切り全体に占める操作レバーやカバー部の製造原 価が一部にとどまることも,被告主張のとおりと推測される。 しかし,ここで被告製品1の全体に占める本件意匠権侵害部分の割合を検討する 趣旨は,被告製品1の販売利益に占める本件意匠権侵害部分の割合を明らかにする ためであるから,その割合は,顧客吸引力の観点から,できる限り被告製品1の意 匠全体に対する本件意匠権侵害部分の貢献割合によって決めるべきものであり,被 告が主張する表面積や製造原価,特に製造原価の割合は,それを検討するための出\n発点として分かりやすいものではあっても,一要素であるにすぎない。 そこで,本件登録意匠の特徴を検討すると,本件登録意匠のうち,操作レバーの 末端部側が紡錘状となる形状を備え(別紙「本件登録意匠の構成態様」の構\成C), カバー部も,操作レバーの末端部側よりも一回り大きい紡錘状となる形状を備え (同構成D),操作レバーが先端部側から末端部側に至る中心面から上下に対称な\n湾曲した稜線を介して上下に傾斜して下る形状を備え(同構成E),カバー部が中\nほどの紡錘状の稜線を介して操作レバー側に窪み,その窪みにおける稜線の中央近 傍側でより深く窪んだ形状を備えている(同構成F)点は,爪切りを手に持ち,あ\nるいは置いて見たときに大きく目立つ点であり,本件の証拠に見られる他の爪切り の意匠(甲10,61ないし64,66ないし68,乙17,28ないし31)に は見られない特徴点で,爪切り全体の美感に与える影響が大きいと認められる。こ のことは,原告のホームページで,原告実施品(甲56の写真参照)について,機 能性だけでなく,「やさしさを感じさせる曲面フォルム」に触れられていることや,\nグッドデザイン賞の審査委員から,「バッタの様にも見える有機的な形態が魅力の爪 切りである。その新鮮なデザインを評価したい。」と評価されていることからもうか がわれる。そして,爪切りの先端側の形状は,それ自体には上記の他の爪切りの形 状と比べて顕著な特徴があるとはいえないが,上記の末端側に比べて細くすぼまる 形状や,各部分の大きさ(同別紙の構成H及びI)のバランスは,「バッタの様に\nも見える有機的な形態」との印象を与えるのに寄与しているといえる。 他方,被告製品1でも操作レバー及びカバー部の意匠は,本件登録意匠とほぼ同 一であり,爪切り全体の意匠としても原告実施品とほぼ同一であると認められると ころ,操作レバー及びカバー部以外の部分(別紙「本件登録意匠の構成」の点線部\n分に相当する部分)は,爪切り全体の中で相応に大きな面積割合を占めており,そ の形態も合わさって全体が「バッタの様にも見える有機的な形態」との印象を与え ることにもなっているものの,その部分の形態自体には,他の爪切りとの美感上の 顕著な差は認められない。そして,別紙「被告意匠の構成」の「パッケージ」欄の\nとおり,被告製品1がドン・キホーテの店舗で販売される際には,クリアケースを 通してその平面視の状態を,末端側が若干だけ隠れた形で視認できるように陳列さ れていたから(甲3ないし6),需要者は主として平面視の意匠を認識することにな る。そうすると,被告製品1の意匠全体の美感に対して本件意匠権侵害部分が与え る影響は高いというべきであり,被告が指摘する表面積や製造原価の点を考慮した\nとしても,被告製品1の意匠全体に占める本件意匠権侵害部分の割合は7割と認め るのが相当である。
c 本件意匠権侵害関係で被告が主張する他の推定覆滅事由について
(a) 被告は,本件登録意匠と同一の基本的構成態様を有する爪切りは\n多数存在するとして乙28の1ないし3の各意匠の存在を指摘するところ,この主 張は,本件登録意匠の被告製品1の顧客吸引力への寄与の低さをいうことにより, 被告製品1についての後記(b)以下の事情の重要性をいう趣旨であると解される。 確かに,乙28の1の意匠では,カバー部と操作レバーの末端部側がそれ以外の 部分と比べて若干ふくらんでいるように見える。しかし,本件登録意匠は,操作レ バーの末端部側を丸みを帯びた紡錘状となる形状とすること(構成C)と併せて,\nカバー部の末端部側をそれよりも一回り大きい紡錘状となる形状とすること(同 D)によって,爪切りをたたんだ場合に,その末端部側がふくらんでいることが強 調されている。これと対比すると,乙28の1の意匠では操作レバーの末端部側は カバー部の末端部側とほぼ同じ形態とされているにすぎず,全体として異なる美感 を有するものと認めるほかない。 また,乙28の2及び28の3については,爪切りがたたまれた場合の形態が不 明であるが,乙28の2の意匠はカバー部の末端部側がそれ以外の部分よりもすぼ んでいるように見えるから,本件登録意匠と異なる美感を有するものといわざるを 得ない。さらに,乙28の3の意匠はカバー部が操作レバーよりも末端部側がふく らんだ形態を有しているように見えるが,本件登録意匠の構成Bと異なり,操作レ\nバーがほぼ平坦なように見え,末端部側へ向かって緩やかに湾曲して下る形状を有 しているとは認められない。そして,上述のとおり,本件登録意匠では,爪切りを たたんだ場合に,その末端部側がふくらんでいることが強調されているところ,そ れには本件登録意匠の構成Bも寄与していると認められるから,同構\成を有してい ない乙28の3の意匠と本件登録意匠の美感が共通しているとは認められない。 以上より,乙28の各意匠の存在が,本件登録意匠の被告製品1の顧客吸引力へ の寄与の低さを基礎付けるとはいえないから,これにより推定が覆滅されるとはい えない。むしろ,前記bで述べたところからすると,本件登録意匠は,原告実施品 とほぼ同一の形態である被告製品1について,「バッタの様にも見える有機的な形 態」との印象を与える特徴的な意匠であるというべきである。
(b) 次に,被告は,被告製品1特有のデザインの存在を主張している。 しかし,被告が主張する被告製品1特有のデザインについて,美感に与える影響が 大きいとはいえないから,これを推定覆滅事由として考慮することはできない。
(c) もっとも,爪切りは爪を切るために使用する実用品であり日用品 であるから,需要者が購入するに当たっては,一般にその切れ味等の性能や使いや\nすさ,それらと価格とのバランスを重視するものと考えられ,商品のデザインを重 視して商品を購入することが多いとはいえない。確かに,原告実施品の場合は,複 数の百貨店や東急ハンズ等で販売され,日本製で定価が2000円(税抜)とされ ており,爪切りの市場においては,販売価格が500円を下回る爪切りや,100 0円前後の爪切りが販売されている(乙28,29,弁論の全趣旨)のと比べると, 爪切りの販売価格としては高いから,原告実施品は,価格の高い高級品として販売 されているといえ,そのような原告実施品を購入する需要者には,品質と並んでデ ザインを重視する者も多くいると考えられる。これに対し,被告製品1は,専らド ン・キホーテという総合ディスカウントストアで販売されており,店頭販売価格が 1280円(税抜)と他の爪切りにも見られる価格帯であり,それが専ら売られて いたドン・キホーテにおいても,1000円前後の爪切りやそれよりも安い爪切り が販売されていたことが推認される(乙31は侵害行為があった時期と異なる時期 のものであるが,これによっても推認可能である。)から,このような店舗と価格で\n被告製品1を購入した需要者において,商品のデザインを重視して商品を購入する ことが多いとは考え難い。また,爪切り市場において原告のシェアが高いとも認め られない。 したがって,以上の点は,推定の一部覆滅事由たり得るというべきである(なお, 被告は,自身の営業努力を主張するが,被告製品1をドン・キホーテで販売できる ようにしたという以上に,被告主張の営業努力が通常のものを超えたものであると いうことはできない。)が,前記のとおり本件登録意匠が爪切りのデザインとして特 徴的なものであり,相応の顧客吸引力を有すると考えられること,被告製品1と原 告実施品の価格差が著しいというわけでもないこと,原告実施品の利益率が被告製 品1の利益率に比べて特に低いともうかがわれないこと(なお,被告は,原告がO EM供給している製品については利益率が低いと主張しているが,そのような事実 を認めるに足りる証拠はない。)も考慮すると,推定覆滅率は60%と認めるのが相 当である。
d したがって,被告製品1の意匠権侵害行為に係る損害の額は,被告 製品1の利益の額の28%(0.7×0.4)となる。
・・・
(6) 原告の損害額
ア 以上の認定・判示によれば,意匠法39条2項及び不正競争防止法5条 2項に基づく原告の損害額は,次のとおり,●(省略)●円である。 (計算式) 被告製品1に係る被告の利益●(省略)●円×0.38(意匠 権侵害行為に係る損害と14号の不正競争行為に係る損害分)+被告製品2に係る 被告の利益●(省略)●円+被告製品3に係る被告の利益●(省略)●円×0.1 ≒●(省略)●円
イ また,原告は本件訴訟の追行等を原告訴訟代理人弁護士に委任したとこ ろ,被告の不法行為及び不正競争行為と相当因果関係のある弁護士費用は●(省 略)●万円と認めるのが相当である。 ウ 以上より,被告の不法行為及び不正競争行為による原告の損害額は,合 計76万1265円となる。

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◆本件意匠および被告商品

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平成30(行ケ)10173  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年5月30日  知的財産高等裁判所

 4条1項19号違反とした審決が維持されました。別訴で、侵害訴訟において無効の抗弁がなされて、無効との判断がなされています。

 原告は,平成29年4月11日ころ,D及び国際建機販売を被告として, D及び国際建機販売による被告商標が付された名刺の使用,コンクリート ポンプ車の販売等が本件商標権の侵害に当たるなどと主張して,商標法3 6条等に基づき,被告商標を付したコンクリートポンプ車の販売及び営業 活動の差止め等,謝罪広告の掲載及び不法行為による損害賠償を求める訴 訟(東京地方裁判所平成29年(ワ)第12058号事件。以下「別件訴訟」 という。乙122)を提起した。 被告は,別件訴訟の係属中の同年6月1日,本件審判を請求した。
イ 東京地方裁判所は,平成30年6月28日,別件訴訟について,本件商標 が商標法4条1項19号に該当する旨の無効の抗弁を認め,D及び国際建 機販売に対し,本件商標権に基づく権利行使ができないとして,原告の請 求をいずれも棄却する判決(以下「別件原判決」という。乙142)をした。 原告は,別件原判決のうち,損害賠償請求を棄却した部分のみを不服と して,控訴(知的財産高等裁判所平成30年(ネ)第10057号事件)を提 起した。 その後,特許庁は,同年10月29日,本件商標の商標登録を無効とする 旨の本件審決をした。
ウ 知的財産高等裁判所は,平成31年1月29日,別件原判決と同様の理 由により,原告の損害賠償請求は理由がないと判断し,原告の控訴を棄却 する判決(乙174)をした。その後,同判決は確定した。
・・・
前記1の認定事実を総合すれば,「GSF Inc.」の名称でコンクリ ートポンプ車の輸入,販売等を行っていた原告代表者は,日本国内において,\n原告代表者自らが又は原告が被告からウォンジン産業を通じて仕入れた被告\n製コンクリートポンプ車の販売及びその営業活動を行う中で,本件商標の登 録出願時点までに,被告商標が付された被告製コンクリートポンプ車は,韓 国のトップ商品であること,被告商標が被告製コンクリートポンプ車を表示\nするものとして韓国国内のコンクリート圧送業者の間で広く知られていたこ とを認識していたが,被告が日本に進出してその営業拠点を作り,事業展開 を行うための営業活動に着手したことを知るや,被告商標が商標登録されて いないことを奇貨として,被告の日本国内参入を阻止又は困難にするととも に,本件商標を有償で被告に買い取らせ,あるいは原告が日本における被告 の販売代理店となる販売代理店契約の締結を強制させるなどの不正の目的を もって,原告による本件商標の商標登録出願をしたものと認められる。
(3) 以上によれば,本件商標は,被告の業務に係る被告商品を表示するものと\nして,韓国における需要者の間に広く認識されている被告商標と類似の商標 であって,不正の目的をもって使用をするものといえるから,商標法4条1 項19号に該当するものと認められる。

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平成30(行ケ)10176  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年5月30日  知的財産高等裁判所

 「再起動器を含む電源制御装置」を含む商標(商標「リブーター」)について、審決は無効理由なしと判断しましたが、知財高裁(2部)は、再起動機能有するものは識別力無し、それ以外は品質誤認(4条1項16号違反)と判断しました。
審決は、”「リブーター」は,特定の商品の名称を表すものとして一般に広く使用されているといった事実は認められないから,「リブーター」の文字が,本件商標の指定商品を取り扱う業界において,商品の品質等を具体的に表\すものとして取引上普通に使用されていると認めることはできない”と判断していました。

 前記1のとおり,「リブート」は,「reboot」という英語を片仮名で 表した語であるところ,「reboot」は,再起動するという意味の動詞であり(当\n裁判所に顕著な事実),また,「リブート」は,コンピュータなどを再起動すること を意味する語として,各種の用語辞典(用語事典)に掲載されており,さらに,多 くの雑誌やウェブサイト,さらには公開特許公報にも,上記の意味で使用されてい ることからすると,「リブート」という語は,再起動することを意味する普通名称で あると認められる。そして,前記1(4)で認定した事実からすると,情報・通信の技 術分野では,英語を片仮名で表した言葉が非常に多く存在すること,一般的に,英\n語の動詞の語尾に「er」,「or」等を付することにより,当該動詞が表す動作を\n行う装置等を意味する名詞となり,「エディタ」,「エンコーダ」,「カウンタ」,「デコーダ」,「プリンタ」,「プロセッサ」等,動詞を名詞化した語も多数存在することが認められるから,情報・通信の技術分野に属する者は,「リブーター」から,「re boot」の語尾に「er」を付した語である「rebooter」を容易に思い 浮かべるものと認められる。
さらに,前記1(2),(3)で認定した各事実からすると,コンピュータやルーター 等の機器を再起動する装置の需要があり,実際にそのような装置が販売されている ことが認められるところ,前記1(2)のとおり,このような再起動装置を「リブータ ー」又は「リブータ」と呼ぶ例があることが認められる。これに対し,本件証拠上, 「リブーター」の語が,他の意味を有するものとして使用されているという事実は 認められない。なお,前記1(4)ウ,エで認定したウェブサイトの記載によると,情報・通信の技術分野においては,英語を片仮名表記した場合は,語尾の長音符号を省く慣例があるものと認められるから,語尾の長音符号を有するか否かで別の語になるというこ\nとはできず,上記の「リブータ」も「リブーター」も同一の語であるということが できる。
以上からすると,情報・通信の技術分野においては,通常,「rebooter」 及びこれを片仮名で表した「リブーター」は,再起動をする装置と理解されるもの\nというべきである。 したがって,「リブーター」は,再起動装置の品質,用途を普通に用いられる方法 で表示する語と認められるから,指定商品が再起動装置又は再起動機能\を有する電 源制御装置である場合は,本件商標は,商標法3条1項3号の商標に該当するとい うべきである。 一方,再起動機能を有さない電源制御装置が指定商品である場合は,本件商標は,\n同号の商標には該当しない。
(2)ア これに対し,被告は,「チーター」を,「cheat」に「er」を加え た言葉とはいえず,これと同様に,「リブーター」を,「reboot」に「er」 を加えた言葉と解することはできないと主張する。 しかし,動物である「チーター」の英語は,「cheetah」であるから,語尾 に「er」を加えた言葉ということはできない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。
イ また,被告は,甲4文献及び甲6サイトでは,リブーターの機能等の説\n明もされており,このことは,リブーターという語のみからは,その機能等が理解\nできないことを意味する旨の主張をする。 しかし,前記(1)で判示したとおり,情報・通信の技術分野においては,リブータ ーという語は,再起動する機能を有する装置と理解されるのであり,このことは,\n甲4文献や甲6サイトの記載によって左右されないというべきであるから,被告の 上記主張は理由がない。
 ウ なお,被告は,甲38文献に記載された「リブーター」は何を意味する か理解できないと主張するが,前記1(2)カで認定した甲38文献の記載からすると, 同文献におけるリブーターは,再起動の機能を有する装置であると理解でき,少な\nくとも,再起動の機能を有さない他の装置を意味するものとは認識できないから,\n「リブーター」が再起動装置とは異なる別の物を意味する語として使用されている ということはない。
・・・
(1) 前記2のとおり,情報・通信の技術分野においては,通常,「reboot er」及びこれを片仮名で表した「リブーター」は,再起動をする装置と理解され\nるところ,再起動機能を有さない電源制御装置に,「リブーター」という語を使用す\nると,需要者,取引者は,当該電源制御装置が再起動機能を有しているものと誤解\nするおそれがあるというべきである。 したがって,指定商品が再起動機能を有さない電源制御装置である場合は,本件\n商標は,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあり,商標法4条1項16号の商標に 該当するというべきである。

本件商標は以下の通り
商標 リブーター(標準文字)
登録番号 第5590686号
出願日 平成25年2月8日
登録日 平成25年6月14日
指定商品
第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電気通信機械器具,測定機械器具,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電子応用機械器具及びその部品」

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平成29(ワ)781  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年4月19日  大阪地方裁判所

 漏れていたのでアップします。原告は,訴外P1から取得したマスターテープ1の音源にミキシング等を行って,本件マスターテープ2を制作し,それに基づいて本件CDを制作・販売しており、原告は,上記ミキシング等をしたことにより,自らが本件音源についてのレコード製作者であると主張しました。裁判所は、原始的なレコード製作者であることは否定しましたが、譲渡を受けたと判断しました。

 著作権法2条1項6号は,レコード製作者を「レコードに固定されている音を最初に固定した者」と定義しているところ,「レコードに…音を…固定」とは,音の媒体たる有体物をもって,音を機械的に再生することができるような状態にすること(同項5号も参照),すなわち,テープ等に音を収録することをいう。そうすると,レコード製作者たり得るためには,当該テープ等に収録されている「音」を収録していることはもとより,その「音」を「最初」に収録していることが必要である。
ところで,著作権法96条は,「レコード製作者は,そのレコードを複製する権利を専有する。」と定めているところ,ある固定された音を加工する場合であっても,加工された音が元の音を識別し得るものである限り,なお元の音と同一性を有する音として,元の音の「複製」であるにとどまり,加工後の音が,別個の音として,元の音とは別個のレコード製作者の権利の対象となるものではないと解される。本件では,上記(2)の音楽CDの制作工程からすると,販売される音楽CDに収録されている最終的な音源は,ミキシング等の工程で完成するものの,ミキシング等の工程で用いられる音は,そこで初めて録音されるものではなく,既にレコーディングの工程で録音されているものである。そして,レコーディングの工程により録音された音を素材としてこれを組み合わせ,編集するというミキシング等の工程の性質(上記(2)イ及びウ)からすると,ミキシング等の工程後の楽曲において,レコーディングの工程で録音された音が識別できないほどのものに変容するとは考え難く,現に,本件マスターテープ2に収録されている音が,本件マスターテープ1に収録されている音を識別できないものになっているとは認められない。そうすると,本件音源についてのレコード製作者,すなわち本件音源の音を最初に固定した者は,レコーディングの工程で演奏を録音した者というべきであるから,原告がミキシング等を行ったことによりそのレコード製作者の権利を原始取得したとは認められない。
これに対し,原告は,ミキシング等の工程後の楽曲は,レコーディングの工程で録音された音とは全く別物になり,その楽曲こそが販売されるレコードの音であるから,レコード製作者はミキシング等の工程を行った者であると主張する。確かに,ミキシングの工程は,楽曲の仕上がりやサウンドを大きく左右する重要な工程であって,多額の費用を投下する場合もあると考えられる。しかし,前記のとおりミキシング等は,レコーディングの工程で録音されたマルチチャンネルの音を組み合わせ,編集するものであって,その目的上,元の音を識別できないほどに変容させることは考え難いから,原告の上記主張は採用できない。
(4) 原告によるレコード製作者の権利の承継取得の有無について
ア 前記認定のとおり,本件音源に係る演奏のレコーディングは米国で行われたから,その音源たる本件マスターテープ1の音源は,米国法の下では録音物として著作権により保護される(米国著作権法102条)が,日本法の下では,著作権法8条4号ロにより,保護されるレコードとして,レコード製作者の権利により保護される。本件では,日本国内において被告が本件音源を複製した行為が問題とされていることから,原告が本件マスターテープ1の音源について日本法の下でのレコード製作者の権利を有しているか否かが問題となるところ,原告は,自己がレコード製作者として本件音源の権利を原始取得したものでないとしても,P1から本件マスターテープ1の音源の権利を承継取得したと主張している。
イ そこで,まず,P1が本件マスターテープ1の音源についてのレコード製作者の権利を有していたか否かについて検討すると,確かに,前記認定の「ベースマガジン5月号」の編集部の記事では,P1は録音スタジオのエンジニアであるとされているから,通常はP1自身がレコード製作者であるとは考え難く,また,同記事ではP1がレコード製作者の権利を買い取った旨の消息筋の意見が記載されているものの,明確な裏付けがあるわけではない。また,甲12のKCCスタジオの録音記録も,日付の記載が空欄であるなど,どの時点のものか判然としない。しかし,P1は,本件音源のレコーディング時のマスターテープ(本件マスターテープ1)を所持しているところ,マスターテープは,その商業上の重要性からすると,通常はそれを複製して商業用レコードを製作する権利を有する者が所持するはずのものである。そして,原告は,P1から本件マスターテープ1を取得して本件CDを制作し,20年以上にわたり販売しているところ,ジャコが世界的に著名なベーシストでありながら,それまではスタジオ録音によるソロアルバムが2枚しかなか\nった状況にあって,本件CDが幻のサードアルバムとも位置付けられ(甲8・45頁),本件音源は米国で制作された本件映画にも使用されたことからすると,本件CDはベース業界においては相応に知られていたと推認されるから,本件音源について他に権利を有する者がいれば,原告に対してクレームが寄せられてしかるべきであるが,そのような事実は認められない。もっとも,前記認定のとおり,ジャコの遺族が関係するジャコ社は,本件音源について100%の著作権(米国著作権の趣旨と解される。)を有することを保証した上でスラング社に対してその使用を許諾しているが,本件原盤許諾契約書においても,本件映画に表記するクレジットは「“Birth of Island” Written and Performed by Jaco Pastorius」とされており,これによれば,ジャコは,日本法の下では,著作権と実演家の権利を有する立場にとどまり,レコード製作者の権利を有する立場には通常はない上,ジャコ社が本件マスターテープ1と同様のマスターテープを別途所持しているといった事情もうかがわれないから,ジャコ社がジャコの遺族が関係する会社であるとしても,本件マスターテープ1の音源のレ コード製作者としての権利を有していることの根拠は不明というほかない。
以上に加え,前記の「ベースマガジン5月号」の編集部の記事において,P1が本件音源の権利を取得した経緯がそれなりに記されていることや,本件契約書においてP1がマスターレコーディングの権利を有することを保証していることを併せ考慮すると,本件楽曲に係る本件音源については,P1が日本法の下でのレコード製作者の権利を有していたと認めるのが相当である。
ウ そして,原告は,そのP1から本件契約書によりマスターレコーディングに関する全ての権利を独占的に譲り受けたのであるから,本件マスターテープ1の音源について日本法の下でのレコード製作者の権利を承継取得し,本件音源についての同権利も有すると認められる。

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平成31(ネ)10006  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年5月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 方法に用いる検査キットが間接侵害かが争われました。知財高裁(3部)は、1審の構成要件該当せずとの判断を維持しました。「患者の血清中のプロカルシトニン3−116の量を明らかにしていない」として、イ号キットを用いた検査方法は技術的範囲に属しないと判断されました。
 クレームが凄いですね。「患者の血清中でプロカルシトニン3−116を測定することを含む,敗血症及び敗血症様全身性感染を検出するための方法」です。

 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本件発明 の「プロカルシトニン3−116」は,「患者の血清中」から「測定」 されるものであり,測定結果が「敗血症及び敗血症様全身性感染」の「検 出」のために用いられることを理解できる。 そして,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)には,「プロカルシ トニン3−116を測定すること」の意義について規定する記載はない が,「測定」とは,一般的に,「長さ,重さ,速さなど種々の量を器具 や装置を用いてはかること」(大辞林(第3版))との意味を有する。 したがって,特許請求の範囲の記載によれば,本件発明の「患者の血 清中でプロカルシトニン3−116を測定すること」とは,患者の血清 中のプロカルシトニン3−116の量を明らかにすることを意味するも のと解される。
(イ) また,本件明細書の発明の詳細な説明には,従来技術として,患者 の血清中のプロカルシトニンの測定が,敗血症の検出にとって有益な診 断手段であることが知られていたこと,「本発明」の開始点は,敗血症 等の患者の血清中に比較的高濃度で検出可能なプロカルシトニンが,プ\nロカルシトニン1−116ではなく,プロカルシトニン3−116であ るという発見であり,そこから新規な診断及び治療方法,そこで使用可 能な物質等を導き出したことの開示がある(前記1(1)イ)。一方,本件 明細書の発明の詳細な説明には,「プロカルシトニン3−116を測定 すること」の意義について明示した記載はない。 そして,このような本件明細書の記載に照らしても,本件発明の「患 者の血清中でプロカルシトニン3−116を測定すること」とは,患者 の血清中のプロカルシトニン3−116の量を明らかにすることを意味 し,その測定結果が敗血症等の検出に用いられることを理解できる。
(ウ) 以上の特許請求の範囲及び本件明細書の記載事項を総合すると, 「患者の血清中でプロカルシトニン3−116を測定すること」とは, 患者の血清中のプロカルシトニン3−116の量を明らかにすることを 意味するものと解される。
イ これに対し控訴人は,構成要件Aの「患者の血清中でプロカルシトニン\n3−116を測定すること」とは,敗血症患者の血清中でプロカルシトニ ン3−116を敗血症の検出に必要な精度で測定することをいうと解すべ きであり,プロカルシトニン1−116と区別してプロカルシトニン3− 116を測定することを必須とするものではない旨主張し,その根拠とし て,1)本件明細書の記載事項(【0002】〜【0008】等)から,患 者の血清中でプロカルシトニン1−116等とプロカルシトニン3−11 6を区別することなくプロカルシトニン一般を測定したとしても,敗血症 等の検出に必要な精度でプロカルシトニン3−116を測定できることが 当業者に明らかであること,2)本件明細書には,本件特許に係る「敗血症 及び敗血症様全身性感染を検出するための方法」の具体例として,血中か ら検出されるプロカルシトニンの濃度を一般的なイムノアッセイにより測 定することが記載されているが(【0062】,表3),通常のイムノア\nッセイでは,プロカルシトニン1−116と区別してプロカルシトニン3 −116を測定することは不可能であることを挙げる。\nしかしながら,「患者の血清中でプロカルシトニン3−116を測定す ること」とは,患者の血清中のプロカルシトニン3−116の量を明らか にすることを意味するものと認められることについては,前記アのとおり である。
上記1)の点については,患者の血清中のプロカルシトニン3−116を プロカルシトニン1−116等と区別することなく測定することとは,患 者の血清中のプロカルシトニンを測定することと同義であるところ,本件 明細書には,患者の血清中のプロカルシトニン濃度を測定することにより 敗血症等を検出する技術は,本件出願の優先日前に従来技術として存在し たものであり,「本発明」は,かかる従来技術に対して新規のものである 旨が記載されていること(前記1⑵イ,ウ)からすると,かかる従来技術 が本件発明に係る方法に含まれると解することはできない。 なお,本件明細書には,敗血症等の患者の血清中に含まれるプロカルシ トニンの大部分がプロカルシトニン3−116であることを発見した旨 の記載があるが(【0009】,【0010】),たとえそのような関係 があるとしても,プロカルシトニン3−116を測定することと,プロカ ルシトニン一般を測定することとが同義とはいえないことは明らかであ る。更に付け加えれば,敗血症等の患者の血清中に含まれるプロカルシト ニンの大部分はプロカルシトニン3−116であるとの知見が存在する としても,敗血症等であるかどうかが明らかではない(だからこそ,その 診断を要する)患者については,その血清中のプロカルシトニンの大部分 がプロカルシトニン3−116であるかどうかは明らかではないはずで ある。したがって,敗血症等であるかどうかの診断に当たり,検出された プロカルシトニン一般の大部分がプロカルシトニン3−116であると の前提に立つことはできないというべきであるから,上記知見の存在は, 前記アの判断を左右するものではない。 また,上記2)の点については,本件明細書には,正常者及び敗血症患者 の血清中のプロカルシトニン濃度を測定した旨が記載されているところ (【0062】),【0062】に明示の記載はないが,上記測定は,【0 023】と同様に,市販のプロカルシトニンアッセイを用いて行われたも のと理解することができる。 しかしながら,本件明細書には,かかる測定は,これと同時に行われた これらの者の血清中のプロホルモン濃度の測定結果と対比することによ り,正常者と敗血症患者の間の濃度の差異がプロカルシトニンにおいて際 立っていることを示すものである旨の記載があることからすると(【00 59】,【0062】,【0063】,表3),上記測定が,本件特許に\n係る「敗血症及び敗血症様全身性感染を検出するための方法」の具体例と して記載されたものであるとは認められない。したがって,上記2)の主張 は,その前提を誤るものである。 以上によれば,控訴人の上記主張を採用することはできない。
(2) 被告方法について
前記前提事実のとおり,被告装置及び被告キットを使用すると,患者の 検体中において,プロカルシトニン3−116とプロカルシトニン1−1 16とを区別することなく,いずれをも含み得るプロカルシトニンの濃度 を測定することができ,その測定結果に基づき敗血症の鑑別診断等が行わ れていると認められるものの,本件全証拠によっても,被告装置及び被告 キットを使用して敗血症等を検出する過程で,プロカルシトニン3−11 6の量が明らかにされているとは認められない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告方法は,構\n成要件Aを充足するものとはいえない。

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◆平成29(ワ)28884

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平成29(ワ)27298  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成31年3月19日  東京地方裁判所

 機器を持ち出した人は特定できないが、持ち出されたことは認定できるとして、 当該機器の販売額が損害として認められました。グンマジとは、解錠するための特殊工具です。

 前記オの事実に,本件元従業員らが,平成26年10月以降,原告を順 次退職し,被告会社に転職したこと(前記1)を総合すると,株式会社ジョ ーエイ製機製の製造番号555番及び597番のキーマシン(計2台)は, 本件元従業員らのうちの誰かが,原告内に置かれていたものを持ち出したか, 又は,仕事等のために持ち出し,そのまま返却せずに被告会社に移して,業 務に使用したものと認められる。
イ もっとも,本件元従業員らのうちの誰かが上記キーマシン(2台)を持ち 出したことは認められるものの,その中の誰が上記キーマシン(2台)を持 ち出したかは不明であり,被告B又は被告Cが上記キーマシン(2台)を持 ち出したと認めるに足りる証拠はない。
・・・・
  以上のとおり,原告が主張する各不法行為のうち,本件元従業員らのうちの誰 かがキーマシン及びグンマジを持ち出した行為(前記2(2),(3))は,原告に対す る不法行為を構成するというべきである。また,これらの行為は,遅くとも,本\n件元従業員らのうち,最も遅く原告を退職した被告Cの退職日である平成27年 3月31日までに行われたと認められる。 もっとも,被告B又は被告Cが上記不法行為をしたと認めるに足りず,また, 被告B,被告C及び被告Aが上記不法行為に共謀等によりその不法行為に加担し たとも認めるに足りないから,被告B,被告C及び被告Aが不法行為責任を負う とは認められない。
他方,上記キーマシンやグンマジが原告から持ち出された時期は不明であるも のの,これらの工具等は,原告から持ち出された後,いずれかの時期に,被告所 有の車両や本件倉庫に移され,また,被告会社従業員が使用しているのであるか ら,持ち出した者がその時点で既に被告会社の従業員であったか,又は,少なく とも,持ち出した者と意を通じて,被告会社の管理下に移すことに協力した被告 会社の従業員がいたと推認することができる。 そして,上記工具等は,被告会社が行う開錠業務で使用するために持ち出され たものであると認められるから,工具等を持ち出した者,又は,その協力者は, 被告会社での業務のために,工具等を持ち出し,原告に損害を加えているのであ り,使用者である被告会社は,原告に対し,使用者責任に基づく損害賠償責任を 負うというべきである。 これに対し,被告会社は,本件元従業員らの行動を把握していなかったことな どから使用者責任を負うことはないと主張するが,被告会社が被用者の選定やそ の事業の監督について相当な注意をしたとも,相当な注意をしても損害が生ずべ きであったとも認められず,被告会社は使用者責任に基づく損害賠償責任を免れ ないというべきである。
・・・・
キーマシンを持ち出したことによる損害について 証拠(甲16〜19)及び弁論の全趣旨によれば,被告会社の車両及び本件 倉庫に置かれていた原告所有の株式会社ジョーエイ製機製の製造番号555 番及び597番のキーマシンの販売価格は32万円であると認められ,2台の 販売価格合計64万円が損害額となる。
グンマジを持ち出したことによる損害について
原告は,本件元従業員らがグンマジを持ち出したことによって,原告がグン マジの開錠方法を独占的に使用することで得られていた市場による優位性を 喪失し,得べかりし利益を喪失したと主張する。 しかし,原告は,本件講座において,原告従業員ではなく,また,原告従業 員になるとは限らない本件講座の受講生にもグンマジの解錠技術を教え,原告 に入社せずに,鍵師として自らで開錠業務を行うことを考えている元受講生に 対してもグンマジを販売していたといえるから,原告がグンマジの開錠方法を 市場において独占的に使用していたとは認められない。また,グンマジによっ て開錠することができるというスイッチサムターンの一般家庭における普及 率は明らかではなく,スイッチサムターンでない鍵はグンマジを使用しなくて も開錠することができるのであり,原告においても,開錠依頼があった案件の 全てでグンマジが使用されていたわけではない。また,被告会社が開錠業務を 行っていた規模が原告の業務に影響を及ぼす程度であったことを認めるに足 りる証拠はない。(甲36,K〔18-20頁〕,被告B〔18-19頁〕,前記 4)。
以上によれば,本件元従業員らがグンマジを持ち出したことによって,原告 が市場による優位性を喪失したことによる損害が生じたとは認められない。も っとも,本件倉庫にあった構成部品と併せて,F及び本件元従業員らのうちの\n誰かが,合計少なくとも2台のグンマジを持ち出したと認められ,被告会社は この行為について使用者責任に基づく損害賠償責任を負うところ,グンマジの 販売価格は1台29万8000円であったから,2台の販売価格相当額の合計 59万6000円が損害となるといえる。

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平成30(ワ)11204  商標権侵害差止請求事件  商標権  民事訴訟 平成31年4月10日  東京地方裁判所(40部)

 被告標章は、上段に「ABCカイロプラクティックセンター」,下段に「乙地整体院」です。本件登録商標は,「ABCカイロプラクティック」(標準文字)です。本件登録商標は、先願商標「ABC」と類似するので、4条1項11号違反の無効理由があるので、権利行使不能と判断されました。争点は、「ABCカイロプラクティック」から「ABC」を要部認定できるかです。

 引用商標と原告商標の類否について
ア 商標の類否は,対比される商標が同一又は類似の商品又は役務に使用さ れた場合に,その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあ るか否かによって決すべきであるが,それには,使用された商標がその外 観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して 全体的に考察すべきであり,かつ,その商品又は役務に係る取引の実情を 明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当 である(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号3 99頁,最高裁平成9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号10 55頁参照)。
この点に関し,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるもの\nについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分のみを他人の商標と\n比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されないが, 商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対して商品又は役務の出所識別\n標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外 の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合 などには,その部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判 断することも許されるも 察し得るところ,「ABC」はアルファベットの最初の三文字を並べたも のであり,「初歩。基本。いろは。」などの観念も生じる語として需要者 に馴染みのある上,「ABC」の文字は役務の内容等を具体的に表すもの\nでもないことからすれば,原告商標の指定役務に係る取引者,需要者に対 し,役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ る。そうすると,原告商標の要部は「ABC」の部分であり,この部分の みを抽出して引用商標と比較して商標の類否の判断をすることが許される というべきである。 原告商標の構成部分である「ABC」と引用商標である「ABC」は,\nその外観,観念及び称呼がいずれも同一であり,整体院等の店舗における 役務の提供に当たり使用されるという実情を踏まえても,原告商標と引用 商標とが同一又は類似の役務に使用された場合に,役務の出所につき誤認 混同を生ずるおそれがあるということができる。
ウ これに対し,原告は,「ABC」の文字には英単語としての意味がない ことから,原告商標の「ABC」の部分はそれのみで役務の出所識別標識 としての機能を有するものではないと主張する。\nしかしながら,「ABC」の文字に英単語として特定の意味を有するも のではないとしても,アルファベットの最初の三文字として需要者にとっ て馴染みがあることは前記判示のとおりであり,「カイロプラクティック」 という部分が,原告商標の指定役務との関係において,役務の種類ないし 内容を表示するものにすぎないのに対し,「ABC」という部分は役務の\n内容等を具体的に表すものでもないことも考慮すると,同部分は,それの\nみで役務の出所識別標識としての機能を有するものということができる。\nまた,原告は,原告商標の「ABC」の部分は,役務の内容や役務を提 供する方針等と関連する略語として使用される実情があるため,原告商標 の「ABC」の部分は「カイロプラクティック」という役務の内容と関連 する何らかの略語という印象を与えるのが自然であると主張する。 しかし,「ABC」という語が役務の内容や役務を提供する方針等の略 語として使用されるのが一般的であるということはできず,むしろ,前記 のとおり,アルファベットの最初の三文字として理解されるのが通常であ るというべきである。そうすると,原告商標の「ABC」の部分が「カイ ロプラクティック」という役務の内容と関連する何らかの略語という印象 を需要者に与えるということはできない。 したがって,原告の主張は理由がない。

◆判決本文

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平成28(ワ)8552  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年4月18日  大阪地方裁判所

 猫のイラストについて著作物性ありと認定されました。

ウ 原告イラストの表現上の特徴\n
原告イラストについては,以下の表現上の特徴を看取することができる。\n
(ア) 原告イラストは,丸まって眠っている猫を上方から描くに当たり,円 形状の上部に配された猫の顔のあごの下から片前足を出して,その片前足を片後ろ 足や尻尾とほぼ同じ場所でまとめて描くことによって,ほぼ全体を略円形状の輪郭 の中に収める一方で,輪郭より外の部分等は描いていないため,全体が一個のマー ク(原告は家紋と表現する。)であるかのような印象を与える。\n
(イ) 原告イラストの基本的輪郭は円形状であるが,耳や片後ろ足が円から 若干突出して描かれているほか,猫の後頭部から肩にかけての部位は若干ふくらむ ように描かれ,機械的な真円ではないことから,猫がきれいに丸まっているという 基本的な印象を維持しつつも,柔らかく自然な印象を与える。
(ウ) 略円形状の上半分には,猫の頭部,片前足,片後ろ足及び尻尾が猫と 分かるように描かれているのに対し,略円形状の下半分は,雲を想わせる抽象的な 紋様となっているところ,略円形状の輪郭に沿って右回りにたどると,猫の顔や首 の白黒の模様が徐々に変化して雲を想わせる紋様となり,さらにたどると,猫の片 後ろ足と尻尾になるという形で連続的に変化しており,また,猫の片前足の付け根 は渦巻状になっているが,これを白黒反転させた紋様が下半分の雲を想わせる紋様 の中に三個存在するため,全体として,猫を描いた部分と抽象的な紋様の部分とが, うまく一体化している。
(2) 被告の主張について
被告は,平成23年9月以前から,原告イラストと同種のイラスト又は写真(乙 1ないし4)が存在していたことを理由に,原告イラストはありふれたものであっ て創作性がなく,美術の著作物に該当しないことを主張する趣旨と解される。 しかしながら,乙1及び2は,実物の猫が鍋の中で丸まって眠っている様子を上 方又は横から撮影した写真であるが,原告イラストは,実物の猫をそのまま忠実に デッサンしたものではないから,これらの写真によって原告イラストの創作性が否 定されるとはいえない。 また,乙3及び4は猫が丸まって眠っている様子を上方から描いたイラストであ るが,乙3及び4の絵には原告イラストとは異なる点が相当数みられ,これらによ っても,原告イラストがありふれたものであると認めることはできない。 なお,被告は,被告イラストを作成する過程で乙5を入手し,被告デザイナーに 渡した旨主張しているが,これが原告において原告イラストを作成した平成23年 9月までの時点で存在していたことを認めるに足りる証拠はない(甲31,32参 照)。
(3) 争点1についての判断
原告イラストは,前記(1)ウで述べたとおり,表現上の特徴を有するところ,前\n記(2)で検討したとおり,これらはありふれたものということはできず,創作性が認 められるから,原告イラストは,原告がこれを作成した時点で,美術の著作物とし て創作されたものと認められる。原告は,前記(1)ア及びイで認定した経緯により,原告イラスト作成後,それを広めるために,あるいは商業的に利用するために,Tシャツ販売サイトを介して,原告イラストを付したTシャツを販売したことが認められるが,これは原告が創作した美術の著作物を用いたTシャツを販売したにすぎないから,このことは,原告イラストの著作物性を否定する理由とはならず,原告イラストが応用美術に属するものとして,その著作物性を否定する被告の主張は,採用できない。

◆判決本文
原告表現、被告製品は以下です。

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Amgen Inc. v. Sandoz Inc., Appeal No. 2018-1551 (Fed. Cir. May 8, 2019)

 米国の連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)で、均等侵害について、「均等論は例外的に適用されるべきであり、すべての特許侵害案件で直接侵害の次に行われる分析ではなく、クレームの範囲を容易に拡大するものではない」と示しました。 日本の場合は、均等の第1要件が歯止めとなります。すなわち、技術的思想が同一であることが必要です(マキサカルシトール事件最高裁判決)ので、むやみな拡大はないともいえます。 日本語の解説は下記を参照ください。

◆CAFCが均等論は例外にのみ適用されるべきと発言

◆判決原文

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平成30(行ケ)10061  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年4月25日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反なしとした審決が取り消されました。理由は、『「医療溶液」を「用時混合型急性血液浄化用薬液」にすることを試みる動機付けがあるというものです。』

 甲3には,引用発明2(実施例4記載の用時混合型の医療溶液)が 「急性血液浄化用薬液」であることを明示した記載はない。 一方で,甲3には,前記(1)イ(イ)認定のとおり,「本発明」の目的の1 つは,滅菌されかつ沈殿物を含まず,保存及び使用の間に渡り良好な安 定性を保証する「医療溶液」(血液透析,血液透析濾過,血液濾過及び腹 膜透析用の透析液,腎疾患集中治療室内での透析用の溶液,通常は緩衝 物質を含む置換液又は輸液,並びに栄養目的のための溶液)を提供する ことにあることの開示がある。この「医療溶液」中の「腎疾患集中治療 室内での透析用の溶液」とは,救急・集中治療領域において,急性腎不 全の患者に対して行う持続的な血液浄化のための透析用の溶液を含むこ とは自明である。
また,甲3には,前記(1)イ(ア)及び(イ)認定のとおり,1)急性腎不全に 罹患している患者に適応となる治療法は,数週間を通しての持続的腎機 能代替療法(CRRT)であり,血液濾過が用いられるが,血清リンレ\nベルが正常な患者からリンを効率的に除去してしまう結果,定期的な週 3回の血液透析治療を受けている患者よりも高い頻度で,低リン血症が 起こり得るものであること,2)低リン血症は,リンの投与によって予防,\n治療されるが,医療溶液にリンを導入する場合,沈殿する様々なリン酸 カルシウムの形成の問題があり,生理的pHに等しいpH値を有する生 理溶液では,リン酸カルシウムの沈殿の危険性が高くなるという問題が あること,3)「本発明」の発明者らは,特定のpH範囲等の如き一定の 条件下では,カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを重炭酸塩及び リン酸塩重炭酸塩と共に保持し得ることができ,滅菌の安定なリン酸塩 含有医療溶液を提供できることを見出したことの開示があることからす ると,「本発明」の実施例である引用発明2の「医療溶液」は,急性腎不 全に罹患している患者に適応し得るものと理解できる。 以上の点に照らすと,甲3に接した当業者においては,甲3記載の実 施例4(引用発明2)において,当該「医療溶液」を「用時混合型急性 血液浄化用薬液」にすることを試みる動機付けがあるものと認められる。 したがって,当業者は,引用発明2において,相違点(甲3−1−4’) に係る本件訂正発明1の構成とすることを容易に想到することができた\nものと認められる。 これと異なる本件審決の判断は,誤りである。
(イ) これに対し,被告らは,引用発明2が具体的に「腎疾患集中治療室 内での透析用の溶液」あるいは「急性血液浄化用薬液」である旨示した 記載はないこと,引用発明2が,明示的な記載なくして,当然に「急性 血液浄化用薬液」であると解すべき技術常識はないことからすると,「医 薬溶液」として記載された引用発明2を「急性血液浄化用薬液」にする ことは,当業者が容易に想到し得たことではないから,相違点(甲3− 1−4’)は当業者が容易に想到し得たものではない旨主張する。 しかしながら,前記(ア)のとおり,甲3の記載事項に照らすと,当業 者は,引用発明2において,相違点(甲3−1−4’)に係る本件訂正 発明1の構成とすることを容易に想到することができたものと認めら\nれるから,被告らの上記主張は採用することができない。

◆判決本文

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平成29(ワ)6906  商標権侵害差止等請求事件  商標権 平成30年11月5日  大阪地方裁判所

 漏れていたのでアップします。ミニオン語をミニオンの図柄と一緒に使用した場合に、商標的使用ではないと判断されました。

  被告各商品において,被告各標章は,ミニオンの図柄とともに表示されて\nいるところ,被告各商品のようなTシャツ,下着,帽子,靴下等の服飾品には,一 般に様々な図柄や単語ないしフレーズが装飾的なデザインとして用いられることが 多く見られ,被告各商品に付されたミニオンの図柄と被告各標章も,そのようなデ ザインとしての性質を有すると認められる。他方,服飾品では,被告各商品で被告 各標章が付されている位置には,装飾的なデザインと兼ねてブランド名が表示され\nる場合もある(前記1(6))。このことからすると,被告各商品に接した需要者が, 被告各標章を「需要者が何人かの業務に係る商品…であることを認識できる態様に より使用されていない商標」(商標法26条1項6号)と認識するか否かは,ミニ オンの図柄や被告各標章が服飾品のデザインとしての性質を有することを前提にし つつ,更に被告各標章の使用態様や取引の実情等を総合考慮して検討する必要があ る。
(2) 前記1(1)ア(ア)で認定したとおり,ミニオンは,それが登場する米国の映 画が大ヒットとなり,●(略)●という対象者を限定した被告のアンケートにおい てであるとはいえ高い周知度があったことから,一般的に高い周知性を有している とキャラクターであると推認される。そして,被告各商品はそのようなミニオンの キャラクターグッズであるから,需要者は,ミニオンのキャラクターに関心を有し, 被告各商品がミニオンのキャラクターグッズであるという点に着目してこれを購入 するものと考えられる。
そして,前記1(1)イのとおり,被告各商品は主としてUSJのパーク内及び近隣 の直営店舗で公式グッズとして販売されているところ,USJを訪れる需要者が上 記のような関心を有することに加え,パーク内のキャラクターとしてミニオンが導 入されていることからすると,需要者にとっては,ミニオンが,USJ(被告)が 擁するキャラクターであり,被告各商品は,そのUSJ(被告)がパーク内と近隣 で運営する店舗で販売している公式のキャラクターグッズであるということをもっ て,他の商品との出所の識別としては十分であり,それ以上に被告各商品の出所の\n識別を意識する動機に乏しいと考えられる。 また,前記1(2)のとおり,パーク内及び近隣の直営店舗では,ミニオンのキャラ クターグッズは,服飾品である被告各商品に限らず,服飾品でない文房具,歯ブラ シ,コップ,菓子に至るまで多岐にわたって展開されており,それらに広く被告各 標章ないし「BELLO!」が付されている。また,USJのパーク内でも,具体 的商品を離れて,周知のミニオンのキャラクターに関連して,看板等に「BELL O!」との表示がされている。このように,被告各標章や「BELLO!」が,広\nくミニオンのキャラクターとセットで使用されていることからすると,パーク内及 び近隣の直営店舗を訪れた需要者は,被告各標章や「BELLO!」をもって,少 なくとも周知のミニオンのキャラクターと何かしら関連性を有する語ないしフレー ズとして認識すると考えられる(なお,被告は,「BELLO」という語は,ミニ オンが用いるミニオン語として認識されると主張する。しかし,映画の設定上はそ のようにされているとしても,ミニオン語は18種類以上あり,映画の宣伝等でも ミニオン語〔特にBELLO〕に着目した宣伝がされているとも認められないこと 〔前記1(1)ア(イ)〕からすると,ミニオンというキャラクターが周知であることを 超えて,「BELLO」という語がミニオン語であることまでが被告各商品の需要 者の間で周知となっているとは認められないから,需要者が「BELLO」という 語がミニオン語であるとまで認識するとは認められない。)。 これらの状況からすると,パーク内及び近隣の直営店舗を訪れた需要者が,被告 各標章をミニオンの図柄とは関連のないものと認識し,それによって被告各商品の 出所を識別するとは考え難く,需要者は,被告各標章をもって少なくともミニオン のキャラクターと関連する何らかの語ないしフレーズとして認識し,被告各商品の 出所については,それがUSJ(被告)の直営店舗で販売されるミニオンのキャラ クターの公式グッズであることや,被告各商品にも一般に商品の出所が表示される\n部位である商品のタグやパッケージに本件被告ロゴが表示されていることによって\n識別すると認めるのが相当である。
(3) もっとも,本件各商標が周知なものであれば,需要者は,それを既知の出 所表示として認識しているから,被告各標章が周知のミニオンの図柄と共に表\示さ れ,上記のような状況で販売される場合でも,被告各標章を出所表示として認識す\nることになると考えられる。そして,上記1(5)のとおり,原告が,その創業以来, オリジナルブランドを周知させるべく,「BELLO」の文字ないしその筆記体風 の文字で構成される本件各商標を取り扱う商品に付すなどしてきたことは認められ\nる。
しかし,原告が取り扱う商品が掲載された雑誌は印刷部数が格別多いわけでもな い男性誌に限られ(乙29ないし31,弁論の全趣旨),掲載された頻度も,上記 1(5)ウのとおり短期間に限られている。また,上記1(5)アのとおり百貨店等で原 告が取り扱う商品の販売コーナーが設けられたこと自体は,原告が取り扱う商品の 需要者層に対する訴求力があるとはいえ,販売コーナーはさほど大きなものではな く,コーナーが設けられた期間も短期間にとどまっている。また,原告は,その取 り扱う商品を複数の展示会に出展しているが,いずれも短期のものである上に,回 数も5回にとどまっている。さらに,検索エンジンである「Google」で「BELL O 帽子」等の検索ワードで検索した場合に原告の取り扱う商品に関するウェブペ ージが上位にヒットすること(甲9の1ないし4)は,原告以外にも「BELL O」という文字を含むブランド名を採用する同業者がある程度存在しないのであれ ば,当然のことであって,それをもって本件各商標の周知性を推認することはでき ない。これらからすると,本件各商標が被告各商品の需要者の間で周知性を有する とは認められないから,その既知性に基づいて被告各商品の需要者が被告各標章を 出所表示として認識するとはいえない。\n
(4) 以上に対し,原告は,1)被告各標章が幅広く使用され始めたのは,被告各 商品の販売開始時期の頃ではなく比較的最近のことであり,需要者が,被告各標章 を何らかの出所表示として認識する具体的可能\性が否定される前提を欠く,2)US Jではコラボ商品としてコラボ先の出所が表示された商品が販売されていたり,ウ\nェブサイトではミニオンのキャラクターに係る権利のライセンス先がライセンス商 品を販売したりしていることに照らせば,需要者が,被告各標章を何らかの出所表\n示として認識する可能性は否定されないと主張する。\nまず,1)についてみると,確かに,被告各標章の使用状況が,被告各商品の販売 時期から次第に拡大している可能性は否定できない。しかし,乙54の各写真自体\nには,撮影年月日の表示はないものの,被告において商品販売等を担当する部署の\n者が,新たな店舗展開や装飾展開をするに当たり,これらの履歴を保存しておくた めに店舗状況を写真撮影しておいたという被告の説明に格別不自然な点はない。し たがって,乙54の各写真は,被告が各写真ファイルの作成日から特定したと主張 する各写真の撮影年月日に撮影したものと認められ,この写真から認められる状況 に加え,新規の訪問客を開拓し,リピーターを増やすためにキャラクターを導入し ていると考えられる被告のキャラクターグッズに係るマーケティング戦略としては, 当初からある程度の商品ラインアップを揃えることが合理的に想定されることを考 慮すれば,被告は,ミニオンのキャラクターグッズの販売開始当初から,既に多様 な商品について被告各標章を使用していたと推認するのが合理的である。したがっ て,原告の上記1)の主張は採用できない。 次に,2)についてみると,確かに,上記1(3)のとおり,ミニオンについては,こ れまで複数のコラボレーション商品やライセンス商品が販売されてきたと認められ る。しかし,上記1(3)で認定した事実によれば,コラボレーション商品の場合には, 各商品主体において,それがコラボレーション商品である旨を明示していると認め られるところ,コラボレーション商品は,異なる商品主体同士がコラボレーション することで商品価値の相乗効果を狙う商品であるから,コラボレーション商品であ りながらその旨を明記しないことは通常考え難いことである。そうすると,USJ (被告)の直営店舗で販売されるミニオンのキャラクターの公式グッズであるとい う以上に被告各商品の出所の識別を意識する動機に乏しい需要者において,コラボ レーション商品であることを特に表記していない被告各商品について,他社とのコ\nラボレーション商品であるとの認識が生じる可能性は乏しいと考えられる。また,\nライセンス商品の場合には,一般的にはライセンス先の商標等が表示されることも\n多いと考えられるが,本件では前記のように多岐にわたる商品群や看板等について 被告各商標ないし「BELLO!」が使われていることからすると,上記のような 需要者において,被告各標章が特定のライセンス先の出所を表示するものであると\nの認識が生じる可能性も乏しいというべきである。したがって,原告の上記2)の主 張は採用できない。
(5) また,被告各商品は,USJのオンラインストアでも販売されているが, USJのオンラインストアのトップページには,本件被告ロゴが表示され,USJ\nのオンラインストアであることが明確に認識されるようになっている(乙50)上, 弁論の全趣旨によれば,USJのオンラインストアでは,USJのパーク内及び近 隣の直営店舗で販売されているのと同じ商品が販売されていると認められるから, 同ストアを訪れた需要者は,そこで販売されているキャラクターグッズがUSJの 公式グッズであると認識すると考えられる。 このことからすると,USJのオンラインストアで被告各商品が販売される局面 でも,被告各商品に接した需要者は,それがUSJの公式のキャラクターグッズで あるという以上に商品の出所の識別を意識する動機に乏しいと考えられ,また,同 ストアには多数の公式キャラクターグッズが掲載されているのであるから,やはり, 需要者が,商品の写真に写っている被告各標章をミニオンの図柄とは関連のないも のとして,それによって被告各商品の出所を識別するとは考え難いというべきであ る。
(6) また,被告各商品は,USJのオンラインストア以外のオンラインストア 等で第三者により販売されることもあるが,上記1(4)のとおり,アマゾンでの販売 では,出品者が「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」,商品が「USJ 公式 限定 商品 《ミニオン キッズ キャップ》ミニオン グッズ」と記載され,フ リルでの販売でも,商品が「ハロウィン 子供 ミニオン ミニオンズ ハット キャップ 子供 帽子 USJ」と記載され,いずれも出所がUSJであるミニオ ンのキャラクターグッズであると明記されている一方,それらの商品の写真に写っ ている「BELLO!」ないし「bello!」について言及する記載はない。そ して,被告各商品のような公式グッズは,被告ないしUSJを出所とする公式グッ ズとしての独自の価値があることからすると,第三者が被告各商品を販売するに当 たり,これらと異なり,被告各商品の出所が被告ないしUSJであることを明記し ないとは考え難い。 これらからすると,USJのオンラインストア以外のオンラインストア等で被告 各商品に接した需要者は,USJが自前のミニオンというキャラクターを用いた商 品として,その出所をその表記によって識別すると考えられ,被告各標章をミニオ\nンの図柄とは関連のないものとして,それによって被告各商品の出所を識別すると は考え難いというべきである。
(7) 以上からすると,証拠により示されたこれまでの取引の実情に基づく限り, 被告各商品が販売されているいずれの局面においても,被告各標章が出所表示とし\nて機能していないから,被告各標章は,「需要者が何人かの業務に係る商品…であ\nることを認識することができる態様により使用されていない」(商標法26条1項 6号)と認められる。また,将来の被告各標章の使用についても,取引の実情の変 化の有無やその態様が明らかではないから,将来における取引の実情の変化を前提 とする判断をすることはできない。

◆判決本文

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平成30(ネ)10082  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成31年4月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審でも、訂正後の発明について進歩性ナシとして、差止請求などが棄却されました。控訴審で代理人が変更されています。一審後の訂正の再抗弁が時機に後れているかについて、該当するかはともかくとして,訴訟の完結を遅延させることとなるとまでは認められないと判断されています。

 (3) 相違点1−2’に係る容易想到性の判断について
 ア 公然実施品1のサッシュは,断面形状が複雑であるため,製造コストが 掛かること,サッシュ自体の体積に比べて余分なスペースを大きく取るた めに保管や輸送の際に保管コストや輸送コストも掛かることは,当業者に とって自明なことであり,これらのコスト(製造コスト等)を削減するた めに,公然実施品1のサッシュを複数の部品で構成し,公然実施品1の製\n造時に,当該複数の部品を接合してサッシュとすることは,当業者の通常 の創作能力の発揮にすぎない。\nそして,乙13公報に開示されている「誘導加熱調理器において,サッ シュ(枠体2)とは別部材により構成され,かつサッシュ(枠体2)に当\n接させてねじで接合した,金属板からなる補強板(L字金具9)」(以下 「乙13技術事項」という。)は,公然実施品1のサッシュに相当する部 材を複数の部材で構成する技術であり,乙13技術事項の補強板(L字金\n具9)とサッシュ(枠体2)とを接合したものの方が公然実施品1のサッ シュよりも製造コスト等がかからないのは,当業者にとって自明の事項で あるから,誘導加熱調理器という同一の技術分野に属する公然実施品1と 乙13技術事項に接した当業者であれば,製造コスト等を削減する目的で 公然実施品1に乙13技術事項を適用することに格別の困難性があるとは 認められない。 したがって,公然実施品1に乙13技術事項を適用して,相違点1−2’ に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことで\nあるといえる。
イ 控訴人の主張について
控訴人は,1)乙13公報における「断面凸形状9a」の実質は,調理器 本体ケース5内への浸水を防止するためだけの役割を担った「浸水防止部 材」であるから,かかる「断面凸形状9a」は本件発明(構成要件D)の\n「補強板」には当たらないし,乙13公報に記載の構成によれば,「断面\n凸形状9a」は調理プレート1から離れる方向に相当強い力で引っ張られ るのであり,実質的に見ても「断面凸形状9a」が調理プレート1を補強 しておらず「補強板」とはいえないから,公然実施品1及び乙13公報に, 本件発明の構成要件Dに係る構\成は開示されていない,2)公然実施品1と 乙13公報に記載の技術とは,主引用発明又は副引用発明の内容中の示唆, 技術分野の関連性及び課題や作用・機能の共通性が認められないから,公\n然実施品1に乙13公報に記載の技術を適用する動機付けもない,などと 主張する。
しかしながら,乙13公報において,本件発明の「補強板」に相当する ものは「断面凸形状9a」ではなく「L字金具9」全体であって,あたか もそれが「断面凸形状9a」に限定されるかのような控訴人の主張は,そ もそもその前提において誤解がある。また,たとえ乙13公報における課 題そのものは調理器本体内部の浸水防止を図る点にあったとしても,「L 字金具9」全体の形状を見れば,それが本件発明の「補強板」に相当する 機能を果たし得ることは,当業者であれば容易に想起できるものと認めら\nれる(この点は,「断面凸形状9a」が調理プレート1から離れる方向に 相当強い力で引っ張られるとしても変わりがない。「断面凸形状9a」に どのような方向の力が掛かっているかと,それが補強材としての機能を有\nしているかどうかとは関わりのない事柄だからである。)から,前記1)の 指摘は当を得ているとはいえない。 また,前記アのとおり,公然実施品1のサッシュは,製造コスト等が掛 かるものであるということは,当業者にとって自明のことといえるから, 公然実施品1には,かかる製造コスト等を削減するという自明の課題があ る。そして,誘導加熱調理器という同一の技術分野に属する公然実施品1 と乙13技術事項に接した当業者であれば,公然実施品1に乙13技術事 項を適用すると製造コスト等を削減できるのは明らかであるから,公然実 施品1に乙13技術事項を適用する動機付けはあるといえる。したがって, 前記2)の指摘も当を得ているとはいえない。
(4) 以上によれば,原判決がした,本件発明と公然実施品1との対比(一致点 及び相違点の認定)と認定した相違点(相違点1−2’)に係る容易想到性 の判断はいずれも正当であり,これによれば,本件特許について無効の抗弁 が成立する。 したがって,無効の抗弁の成立を争う控訴人の主張は採用できない。 被控訴人は,本件訂正の再抗弁につき,時機に後れた攻撃防御方法に当たる として,民事訴訟法157条1項に基づく却下を求めている。 しかしながら,本件訴訟の経過に鑑みると,控訴人による本件訂正の再抗弁 の提出が,時機に後れているか否かはともかくとして,訴訟の完結を遅延させ ることとなるとまでは認められないから,同条項に基づきこれを却下するのは 相当でない。 そこで,以下,本件訂正の再抗弁の成否について判断する。
(1) 控訴人は,平成30年12月14日,本件特許の明細書及び特許請求の範 囲を訂正することについて訂正審判を請求した(本件訂正,甲40)。
(2) 本件訂正後の特許請求の範囲請求項1の記載は,次のとおりである(構成\n要件の分説は控訴人に従う。下線部は訂正箇所を示す。)。
A 誘導加熱をする第1及び第2の加熱器を左右に内設した本体ケースと,
この本体ケースの上面に設けられたトッププレートと,
前記トッププレートの周囲に設けられたサッシュとを具備し,
被組込家具に組み込まれる加熱調理器において,
B’ 前記トッププレートの幅を前記本体ケースの幅より大きくし(ただし,トッププレートの幅と本体ケースの幅がほぼ同じものを除く),
C 前記第1及び第2の加熱器の各中心部を,前記本体ケースの左右に等分した両側部の各中心部より外側であって,前記トッププレートの左右に等分した両側部の各中心部より中央側に配置すると共に,
D 前記トッププレートの本体ケース外方に位置する部分の下方であって直下に前記被組込家具が位置する箇所に,前記サッシュとは別部材に構成され,かつ前記サッシュに当接させた,金属板から成る補強板を設け,
E この補強板と前記トッププレートとの間,又は補強板の下方に断熱層を形成したこと
F を特徴とする加熱調理器。
(3) 進歩性の判断
事案に鑑み,本件訂正後の特許請求の範囲請求項1に係る発明(本件訂正 発明)の進歩性から検討する。
ア 本件訂正発明と公然実施品1との対比
(ア) 「トッププレートの幅と本体ケースの幅がほぼ同じもの」の意義 本件訂正事項は,構成要件Bの「前記トッププレートの幅を前記本体\nケースの幅より大きくし,」との構成から「トッププレートの幅と本体\nケースの幅がほぼ同じもの」を除外する,というものである。 控訴人は,本件明細書等の記載や出願時の技術常識等(キッチン設備 のJIS規格等)を踏まえると,本件訂正事項により除外される「トッ ププレートの幅と本体ケースの幅がほぼ同じもの」の意義は,本件特許 の出願当時における従来製品の加熱調理器のことと理解すべきであって, 具体的には,トッププレートの幅が約600mm,本体ケースの幅が5 50mm前後の加熱調理器を指していることは,本件明細書等の記載に 接した当業者にとって明らかである,と主張する。 しかしながら,控訴人が主張するトッププレートの幅が約600mm, 本体ケースの幅が550mm前後の加熱調理器やJIS規格(甲25) について,本件明細書等には何ら記載されておらず,示唆もない(本件 明細書等には,例えば,【背景技術】や【発明を実施するための最良の 形態】の欄においても,加熱調理器の寸法について具体的な数値は一切 記載されておらず,JIS規格等の引用もない。)。また,控訴人が主 張するJIS規格(甲25)も,機器を落とし込んで組み込む場合の「ワ ークトップの開口の呼び寸法」と「ワークトップの開口部の開口寸法」 について一定の数式を示しているだけで,「トッププレートの幅と本体 ケースの幅がほぼ同じもの」といえば,当然にトッププレートの幅が約 600mm,本体ケースの幅が550mm前後の加熱調理器を指すとい うことを認めるに足る具体的な記載はない。控訴人は,主要各社の製品 カタログや刊行物等を示して,従来製品の加熱調理器はトッププレート の幅が約600mm,本体ケースの幅が550mm前後のものであった とも主張するが,たとえ本件特許の出願時においてかかる寸法のものが 主流であったとしても,加熱器の配置との関係でトッププレートの幅と 本体ケースの幅の大小の関係を規定する本件訂正発明において,その技 術的範囲から除外される「トッププレートの幅と本体ケースの幅がほぼ 同じもの」が当然にトッププレートの幅が約600mm,本体ケースの 幅が550mm前後の加熱調理器に限定されると解すべき理由はないと いうべきであるから,控訴人の主張は失当である。
そこで,本件明細書等の【0002】を見ると,「…図7は,そのも のを平面図で具体的に示しており,第1及び第2の加熱器1,2を左右 に内設した本体ケース3と,これの上面に設けたトッププレート4とは, その各幅W3,W4がほゞ同じで,第1及び第2の加熱器1,2の各中 心部O1,O2は,本体ケース3の左右に等分(W3/2)した両側部 の各中心部RO3,LO3(W3/4)とほゞ合致し,且つ,トッププ レート4の左右に等分(W4/2)した両側部の各中心部RO4,LO 4(W4/4)とも合致している。」と記載されている。この記載は, 前段の「…本体ケース3と,…トッププレート4とは,その各幅W3, W4がほゞ同じで,」に続く後段の部分で,「トッププレートの幅と本 体ケースの幅がほぼ同じもの」の意義を規定しており,同部分(後段の 部分)は,第1及び第2の加熱器1,2の各中心部が,それぞれ,「ト ッププレート4の両側部の中心部に合致する」状態で,なおかつ,「本 体ケース3の両側部の中心部とほぼ合致する」状態であることを表すも\nのと認められる。ここで,本体ケース3の両側部の中心部と第1及び第 2の加熱器1,2の中心部との距離をDとすると,D=W4/4−W3 /4となり,トッププレート4の幅W4と本体ケース3の幅W3との差 は,W4−W3=4Dとなる。 このDがどの程度の距離であるかについて,本件明細書等には明示的 な記載がないが,1)第1及び第2の加熱器1,2の中心部は,それぞれ, 本体ケース3の両側部の中心部とほぼ合致するものとする【0002】 の記載や図7の記載からは,O1とRO3やO2とLO3が隣接してい ると理解し得ること,2)従来技術の課題を解決する手段の一部として, トッププレートの幅と本体ケースの幅については,単に,(トッププレ ートの幅)>(本体ケースの幅)としていること等の事情を勘案すると, D≒0であり,Dは,製造上や計測上の誤差程度と解するのが相当であ る。そして,加熱調理器に関するJIS規格(甲25)には,公差とし て,2〜5mmとする例が記載されていることを勘案すれば,Dについ ては,0<D≦5(mm),すなわち,大きく見積もっても5mmを超 えない程度のものと解することができる。 そうすると,トッププレートの幅と本体ケースの幅との差4Dは,0 <4D≦20(mm)となり,構成要件B’の「トッププレートの幅と\n本体ケースの幅がほぼ同じもの」は,トッププレートの幅と本体ケース の幅との差が,大きく見積もっても20mmを超えないものとなる。
(イ) 本件訂正発明と公然実施品1との対比
以上のとおり,本件訂正発明における構成要件B’の「トッププレー\nトの幅と本体ケースの幅がほぼ同じもの」は,トッププレートの幅と本 体ケースの幅との差が,大きく見積もっても20mmを超えないものを 指すと認められる。 これを踏まえると,トッププレートの幅が599mm,本体ケースの 幅が550mmであって,それらの差が49mmである公然実施品1は, 本件訂正発明における構成要件B’の「トッププレートの幅と本体ケー\nスの幅がほぼ同じもの」とはいえないから,構成要件B’は,本件訂正\n発明と公然実施品1との相違点とはならない。 そうすると,本件訂正発明と公然実施品1との一致点及び相違点は, 以下のとおりになると認められる。
(一致点)
本件訂正発明と公然実施品1とは,構成要件A,B’,C,E及びF\nについて一致する。
(相違点)
本件訂正発明は,サッシュとは別部材に構成され,かつサッシュに当\n接させた,金属板から成る補強板を有するのに対し,公然実施品1はサ ッシュ自体が補強板となっており,サッシュとは別部材に構成され,か\nつサッシュに当接させた,金属板から成る補強板は有しない点。
イ 上記相違点についての判断
上記相違点は,本件訂正前の本件発明と公然実施品1との相違点(相違 点1−2’)と実質的に同じであるから,前記1(3)のとおり,本件発明と 同様に,本件訂正発明についても,公然実施品1及び乙13技術事項に基 づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 以上によれば,本件訂正発明は,そもそも特許を受けることができないも のである(特許法29条2項)から,本件訂正は独立特許要件(特許法12 6条7項)を満たすものではなく,また,本件訂正によって本件特許に係る 無効理由が解消するものでもない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件訂正の再抗弁 は理由がない。

◆判決本文

一審はこちらです。

◆平成29(ワ)22884

こちらは関連事件の控訴審判決です。
「構成要件Eを充足しない」として非侵害です。\n原告被告は同じで、対象特許が異なります。

◆平成30(ネ)10078
構成要件Eのうち,「調理容器の外殻」及び「最大径の調理容器」の意義につい\nて検討する。
上記各文言は,調理容器との関係をもって加熱調理器の構成を示すものであり,\n文言のみから一義的にその意義を明らかにすることができないことから,本件明細 書等の発明の詳細な説明の内容を考慮して検討する必要がある。そこで,1⑴にお いてみたとおりの本件明細書等の記載を考慮すると,本件明細書等(【0003】, 【0005】,【0021】,【0028】,【0029】,【0030】,【0 032】)には,リング状枠はトッププレート上に印刷表示され,調理容器を有効\nに加熱できる領域として使用者に示されるものであること(【0003】),リン グ状枠は加熱部の領域を示し,鍋の最大径と同径で,鍋の外殻を表すものであるこ\nと(【0005】,【0021】)及び加熱部は最大の鍋径と同径で,リング状枠 であること(【0028】,【0029】)が示され,これ以外に,上記各文言の 意義の解釈を導くような説明がされていることは認められない。そうすると,「最 大径の調理容器」は,トッププレート上に印刷表示され左右の加熱部の領域を示し,\nまた,リング状枠と同径のものであり,また,「調理容器の外殻」と一致するもの であると解するのが一般的かつ自然である。 この点,被告は,構成要件Eの内容は不特定であるなどと主張するが,同主張は,\n前記認定に照らし採用することができない。
(2) 被告製品関連製品の構成\n
ア 原告は,別紙3被告製品説明書(原告)において,被告各製品は,「左IH ヒーター及び右IHヒーター上で,調理容器の鍋底全体を加熱できる最大径である 直径26cmの領域を示す外殻線11,12」という構成を有し,これが「調理容\n器の外殻」であり「最大径の調理容器」である旨主張する。そして,被告各製品を 除く被告製品関連製品も被告各製品と同様の構成を有する旨主張する。\nイ しかしながら,前記(1)において認定したとおり,「調理容器の外殻」及び「最 大径の調理容器」は,トッププレート上に印刷表示された加熱部及び有効加熱領域\nの領域を示すリング状枠と同径のものであるところ,原告の主張する外殻線11, 12は,原告において付しているものにすぎず,トッププレート上に表示されてい\nるものではないから,これらを「調理容器の外殻」又は「最大径の調理容器」であ るとみることはできない。そして,本件全証拠によっても,被告各製品には,加熱 部及び有効加熱領域を示す直径26cmのリング状枠が表示されているとは認めら\nれず,加熱部及び有効加熱領域を示すリング状枠と同径である「調理容器の外殻」 及び「最大径の調理容器」が直径26cmであると認めることもできない。 原告は,「調理容器の外殻」は,鍋底の最大径であり,被告は被告各製品におい て鍋底が直径26cmまでの鍋を使用することができる旨説明しているから,被告 各製品の「最大径の調理容器」は26cmのものであると主張する。しかしながら, 被告において上記のように説明することが,被告各製品で使用可能な最大径の鍋底\nを示すものといえるか否かについてひとまず措くとしても,前記(1)において認定し たとおり,「調理容器の外径」及び「最大径の調理容器」と同一であるリング状枠 及び有効加熱領域は,トッププレートに表示される必要があるのであって,表\示さ れていない有効加熱領域に基づく原告の主張はその前提を欠き失当である。
(3) 小括
以上のとおり,被告各製品は,原告主張の「調理容器の鍋底全体を加熱できる最 大径である直径26cmの領域を示す外殻線」という構成を有するとは認められな\nいから,この外殻線を前提に被告各製品が構成要件Eを充足するという原告の主張\nは採用できず,ほかにこれを認めるに足りる証拠もない。また,被告各製品を除く 被告製品関連製品が構成要件Eを充足することを認めるに足りる証拠もない。\nしたがって,その余の点について判断するまでもなく,被告製品関連製品は,構\n成要件Eを充足しないから,本件発明の技術的範囲に属すると認めることはできな い。
一審はこちらです。

◆平成29(ワ)10742

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平成24(ワ)33752  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 平成27年2月26日  東京地方裁判所

 4年以上前の事件ですが、漏れていたのでアップします。体組成計の意匠について、一部の被告製品は本件登録意匠と類似するとして、1.3億円の損害賠償が認められました。なお、被告製品のうち50%について販売不可事情が認定されました。
 本件意匠2と被告意匠は,上記第3,2,(1),アのとおり,1)正面視にお いて,板状体の正面ガラス板は隅丸横長四角形形状であり,板状体の正面に は,4つの隅丸縦長四角形形状の電極部分が上下左右に配置されており,上 側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域のほぼ中央には隅丸横長 四角形の液晶表示窓があり,該液晶表\示窓の下側であって,かつ,上側に配 置された2つの電極部分の上辺を結んだ線,左側に配置された2つの電極部 分の左辺を結んだ線,下側に配置された2つの電極部分の下辺を結んだ線, 右側に配置された2つの電極部分の右辺を結んだ線からなる四角形の対角線 の交点を中心として隅丸四角形からなるスイッチ模様を複数配置して構成さ\nれており,2)側面視において,透明ガラス板と本体背面部とを積層一体とし た構造であるという構\成を有する点で共通している。
相違点について検討すると,正面視において,上記第3,2,(1),イのと おり,本件意匠2と被告意匠とでは透明ガラス板の縦横比が異なっている(本 件意匠2が約1:1.4であり,被告意匠が約1:1.43である。)ものの, その差異は極めて小さく,いずれも看者に対し横長長方形であるという印象 を与えるものというべきである。また,被告意匠には,液晶表示窓の周囲に\nある縁取模様があることが認められるが,これは液晶表示窓の大きさと比較\nしてさほど大きいものではなく,正面視において目立つ色彩でもない。さら に,透明ガラス板の隅丸半径,電極部分の幅と長さの比,液晶表示窓の底辺\nと上側の左右に配置された電極の底辺との関係やスイッチ模様の個数に差異 があるが,これらは,透明ガラス板の形状がほぼ同じであることから看者に 対して与える共通の美感を凌駕するものとはいえない。 本件意匠2と被告意匠とでは,背面視において,上記第3,2,(1),イの とおり,本体部の背面の形状に差異があるが,これは要部における差異では ない。 さらに,上記第3,2,(1),イのとおり,被告意匠には側面視において不 透明プロテクタ体があるが,不透明プロテクタ体は本体背面部と同系統の色 彩であり厚みも薄いことから,この点も要部における具体的構成の共通性か\nら看者に与える美感の同一性を凌駕するものとはいえない。 したがって,本件意匠2と被告意匠とは上記のような差異点があることを 考慮しても,看者に対して共通の美感を与えるものと認められるから,本件 意匠2と被告意匠は類似しているというべきである。
・・・
 被告は,被告製品の売上への被告意匠以外の要因が寄与していると 主張する。
証拠(甲30の1,乙23,24,26,28,86)及び弁論の全 趣旨によれば,a 被告は,原告に先んじて体組成計の販売を開始し, 平成15年までは体組成計の年間シェア(数量)の62.9%以上を占 めていたこと,b 平成23年の体組成計の年間シェア(数量)は被告 が38.7%で1位,原告が32.3%で2位あり,3位の企業は14. 5%であること,c 被告が販売する体組成計を購入した者の25.7 7%が被告ブランドを理由に購入していること,d 日経BPコンサル ティングが実施している「ブランドジャパン2011」において消費者 からみた総合力の上昇ランキングで9位とされていること,e 「ブラ ンドジャパン2013」においてコンシューマー市場編総合力と因子指 数において60位とされたこと(原告は同ランキングで183位であっ た。),f 被告が,平成23年7月19日,平成24年6月11日及び 平成25年5月28日にMDBネットサーベイを利用して行ったアンケ ートによれば,体組成計や体脂肪計のメーカーのイメージが強い最も強 い企業を選ぶ問いに対し被告と答えた者が順に68.2%,71.6%, 71.8%であったことが認められる。 以上の事実によれば,被告は体組成計のシェアを長期間にわたり安定 的に有しており,被告が製造する体組成計を購入した者の中には被告の ブランド力を理由とする者も多数おり,被告がブランド力の調査におい て上位にされることがあったのであるから,被告製品の売上に被告のブ ランド力の有する顧客吸引力の貢献もあるというべきである。 しかしながら,一方で,証拠(甲8の2ないし4,27の1・2,3 8)によれば,a 原告製品1又は2を購入した者に対するアンケート 結果では,商品を選択した理由として「デザイン(見た目)が良い」と いう回答をしている者が順に●(省略)●%,●(省略)●%に上って いること,b 一方,同アンケート結果では,「メーカー名」を挙げる 者は各●(省略)●%に過ぎなかったこと,c 体組成計を取り上げた テレビ番組でも,原告製品1について「従来無かったデザイン性の高さ が人気といいます。」,原告製品2について「コンパクトなタイプ。デザ インとカラーで人気を集めています。」などと報道されたこと(平成2 4年12月18日放送・ワールドビジネスサテライト)が認められるか ら,デザインが体組成計の購入動機とならないとはいえない。 なお,前示のとおり,本件意匠2はその出願時点における公知意匠と は異なる構成を有するものであるから,被告が本件意匠2について無効\n審判を請求していることを考慮しても,その創作性の程度が低いという ことはできない(なお,上記無効審判請求については,平成26年12 月24日に請求不成立の審判がされた〔乙99の2〕)。また,本件意匠 2は,部分意匠ではないし,被告意匠は全体として本件意匠2と類似す るのであるから,被告意匠が本件意匠2の一部と類似するに過ぎないと いうこともできない。 したがって,被告製品の売上には被告意匠以外の要因として被告ブラ ンドの顧客吸引力も寄与しているといえるから,このような事情につい ては原告が被告製品の譲渡数量の全部又は一部を譲渡することができ ないとする事情として考慮することができるというべきである。
(イ) 被告は,原告が原告製品1及び2を追加的に販売する際に注文に対 応できない台数の割合があることを考慮すべきと主張する。しかしなが ら,原告は1か月に●(省略)●台の原告製品1及び2を輸入,販売す ることができると認められるところ(甲42),原告が原告製品1及び2 が売れすぎたために品切れを起こし販売を中止した期間があると認める に足りる証拠はない。したがって,原告が原告製品1及び2を追加的に 販売する際に注文に対応できない台数の割合があることを原告が被告製 品の譲渡数量の全部又は一部を譲渡することができないとする事情とし て考慮することはできないというべきである。
(ウ) 被告は,原告製品1及び2には被告製品の他に競合品があると主張 する。確かに,体組成計について,原告製品1及び2の他に原告や被告 の他多数の企業から多数の製品が販売されていることは当事者間に争い がないが,証拠(甲30の1)によれば,平成23年の体組成計の年間 シェアは被告が38.7%で1位,原告が32.3%で2位あり,3位 の企業は14.5%であることが認められ,被告と原告とで体組成計の 年間シェアの71%を占めていることからすると,被告製品がなかった 場合,被告製品の購入者の大部分は被告が販売する製品か原告が販売す る製品を購入するものというのが相当である。そして,前示のとおり被 告製品を購入した者はメーカー名よりもデザインに着目して購入してい るところ,証拠によっても,平成24年10月から平成25年9月30 日までの間に被告が販売する被告製品以外の体組成計にその意匠が本件 意匠2と同一又は類似するものがあるとは認められないのである。そう すると,原告製品1及び2には被告製品の他にも競合品があるという事 情は,被告製品が販売されていた期間において原告製品1及び2か被告 製品しか選択肢がないという状況ではなかったから,被告製品がなかっ たとしても被告製品の譲渡数量の全てについて原告製品1又は2が購入 されたということはできない(しかし,大部分は原告製品1又は2が購 入されたといえる。)という程度において,原告が被告製品の譲渡数量の 全部又は一部を譲渡することができないとする事情として考慮すること ができるにとどまるというべきである。
(エ) 以上によれば,被告製品の売上には被告ブランドの顧客吸引力の寄 与もあるという事情,原告製品1及び2には被告製品の他に競合品があ り,被告製品が販売されていた期間において原告製品1及び2か被告製 品しか選択肢がないという状況ではなかったという事情は,上記説示の 範囲で,原告が被告製品の譲渡数量の全部又は一部を譲渡することがで きないとする事情として考慮することができる。また,前示のとおり, 被告製品の生産等は本件意匠権1を侵害しないという事情があり,これ も原告が被告製品の譲渡数量の全部又は一部を譲渡することができない とする事情として考慮することができる。これらの諸事情を考慮すれば, 被告製品の譲渡数量のうち50%に当たる●(省略)●台(小数点以下 切り捨て。)について原告が譲渡することができない事情があるというべ きである。
オ 前記前提事実のとおり,原告は,1か月に●(省略)●台の原告製品1 及び2を輸入,販売することができたから,平成24年10月から平成2 5年9月までの間,原告製品1及び2を併せて●(省略)●台を輸入,販 売することができた。 カ 以上によれば,意匠法39条1項により損害の額とされる額は1億17 41万3662円である。

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平成30(行ケ)10036  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月19日  知的財産高等裁判所

 漏れていたので、アップします。薬剤としての新効能を限定した発明について、その他の構\成が同じでも新規性ありとした審決が維持されました。
 ア 甲5発明には,T細胞を処理するための組成物の用途が,「T細胞による インターロイキン−17(IL−17)産生を阻害する」ためであるとの特定がな いが,前記(2)アのとおり,甲5発明の「T細胞を処理する」とは,IL−12によ るT細胞の処理,すなわちTh1誘導によるT細胞刺激を阻害することを指すもの であって,甲5には,記載も示唆もされていない「T細胞によるインターロイキン −17(IL−17)産生を阻害する」ことを指すものではないことは明らかであ る。 他方,本件特許発明1におけるIL−23のアンタゴニストを含む組成物の用途 は,「T細胞によるインターロイキン−17(IL−17)産生を阻害するため」で あるが,本件明細書(【0071】〜【0081】,【0083】,【表1】,【図2A】,【図4A】)には,従来から知られていたTh1誘導条件(IL−12+抗IL−4)下及びTh2誘導条件(IL−4+抗IFN−γ)下では,いずれもIL−17産\n生が増加しなかったのに対し,IL−23存在下ではIL−17産生が増加したこ とに加え,Th1誘導条件下に比べIFN−γ産生が著しく低かったこと,IL− 23が介在するIL−17の産生は,IL−23のp40サブユニットの中和抗体 によって遮断されたことが記載されている。 これらの記載によると,本件特許発明1における「T細胞によるインターロイキ ン−17(IL−17)産生を阻害するため」という用途は,IL−23によるT 細胞の処理によってT細胞におけるIL−17の産生が増加するという知見に基づ き,IL−23によるT細胞の処理により引き起こされるIL−17の産生を阻害 することを用途とするものであり,上記知見は,従来から知られていたTh1誘導 やTh2誘導によるT細胞刺激とは異なるものであると認められる。 したがって,本件特許発明1における「T細胞によるインターロイキン−17(I L−17)産生を阻害するため」という用途は,従来から知られていたTh1誘導 によるT細胞刺激とは異なる,IL−23によるT細胞の処理により引き起こされ るIL−17の産生を阻害することを用途とするものであるから,甲5発明の「T 細胞を処理するため」とは明確に異なるものであり,相違点5は,実質的な相違点 であると認められる。
イ 原告は,審決は,甲5発明の抗体含有組成物の用途を「T細胞を処理す るため」と認定したにもかかわらず,本件特許発明1との対比においては,甲5発 明の抗体含有組成物の用途が「Th1誘導によるT細胞刺激の阻害」に限定される ものとして,相違点5を認定しており,そもそも矛盾していると主張する。 しかし,甲5発明の抗体含有組成物の用途を「T細胞を処理するため」と認定し たことにより,甲5発明の「T細胞を処理する」の意義を甲5の記載を離れて解釈 してよいことになるものではないから,審決が,本件特許発明1との対比に当たり, 甲5発明の「T細胞を処理する」の意義を甲5の記載に基づいて解釈することは正 当であって,何らの誤りもない。
ウ 原告は,甲5X発明に係る抗体含有組成物の用途は,「T細胞の処理によ る乾癬治療」であるが,乾癬患者について格別の限定又は選別をすることなく,「T 細胞の処理による乾癬治療」を実施すると,当然に,「T細胞によるインターロイキ ン17(IL−17)産生阻害」も生じるから,甲5X発明の「T細胞の処理によ る乾癬治療」と本件特許発明1の「T細胞によるインターロイキン17(IL−1 7)産生阻害」とは,用途として同一であり,甲5X発明と本件特許発明1との間 に相違点はないなどと主張する。この主張を,甲5発明について,甲5に記載され ている用途も考慮して本件特許発明1の新規性を判断すべき旨の主張と解したとし ても,次のとおり理由がない。
(ア) 前記アのとおり,本件特許発明1は,IL−23によるT細胞の処理に よってT細胞におけるIL−17の産生が増加するという知見に基づいて,「IL −23のアンタゴニストを含む組成物」について「T細胞によるIL−17産生を 阻害するための(インビボ処理方法において使用するための)」という用途の限定を 付したものであると認められるところ,慢性関節リウマチの患者であってもIL− 17濃度の上昇がみられなかった者がいるように(甲17〔審判乙1〕),すべての 炎症性疾患においてIL−17濃度が上昇するものではないし,特定の炎症性疾患 においてもすべての患者のIL−17濃度が上昇するものではないと認められるか ら,本件特許発明1の組成物を医薬品として利用する場合には,特にIL−17を 標的として,その濃度の上昇が見られる患者に対して選択的に利用するものという ことができる。
(イ) 他方,前記(1)のとおり,甲5には,IL−23のアンタゴニストにより T細胞によるIL−17産生の阻害が可能であることは,記載も示唆もされていな\nいから,甲5発明が,「IL−23のアンタゴニストを含む組成物」を,T細胞によ るIL−17産生を阻害するために,IL−17濃度の上昇が見られる患者に対し て選択的に利用するものではないことは,明らかである。このことは,甲5発明の 「IL−23のアンタゴニストを含む組成物」を乾癬治療のために使用することが できるという甲5に記載されている用途を考慮しても,左右されるものではない。
(ウ) そうすると,本件特許発明1の「T細胞によるインターロイキン−17 (IL−17)産生を阻害するため」という用途と,甲5発明の「T細胞を処理す るため」という用途とは,明確に異なるものということができる。そして,このこ とは,本件優先日当時,IL−17の発現レベルを測定することが可能であったこ\nとによって左右されるものではない。
エ 原告は,本件特許発明は,せいぜい,IL−23アンタゴニストに備わ った「T細胞によるIL−17産生を阻害する」という性質又は機序を明らかにし て,これを説明する構成要件を付加したにすぎないから,甲5X発明と異なる新規\nな方法(用途)とはいえないなどと主張する。この主張を,甲5発明について,甲 5に記載されている用途も考慮して本件特許発明1の新規性について判断すべき旨 の主張と解したとしても,前記ウのとおり,本件特許発明1の「T細胞によるイン ターロイキン−17(IL−17)産生を阻害するため」という用途と,甲5発明 の「T細胞を処理するため」という用途とは,明確に異なるのであるから,本件特 許発明1の用途が,甲5発明の用途を新たに発見した作用機序で表現したにすぎな\nいものとはいえないことは,明らかである。

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平成30(行ケ)10122  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年4月22日  知的財産高等裁判所

 審査段階で追加した「直ちに」という用語が新規事項かが争われました。知財高裁(3部)は、新規事項ではないとした審決を取り消しました。本件では、「一斉に」という用語についても新規事項か争われています。こちらについては新規事項でないとした審決の判断を維持しています。
 ここで,構成Eの「直ちに」は,「受信次第」との文言と併せて,海底\n局送受信部の位置を決めるための演算を行う時期を限定するものであるか ら,当該文言を追加する本件補正がいわゆる新規事項の追加に当たるか否 かは,構成Eのうち演算を行う時期について特定する「前記海底局送受信\n部の位置を決めるための演算を受信次第直ちに行うことができるデータ処 理装置」との構成(以下「位置決め演算時期構\成」という。)が,本件当 初明細書等に記載された事項との関係において,新たな技術的事項に当た るか否かにより判断すべきである。
イ 本件当初明細書等の記載について
(ア) 上記1(1)において認定したとおり,本件補正前の特許請求の範囲に は「直ちに」との文言は使用されていないし,その余の文言を斟酌して も位置決め演算時期構成と解し得る構\成が記載されていると認めること はできない。
(イ) また,上記1(2)において認定したとおり,本件当初明細書の段落【0 008】,【0009】,【0013】,【0025】,【0030】, 【0032】,【0035】,【0036】及び【0040】等には, 先願システム及び本件発明の実施の形態において,海底局の位置を決め るための演算(以下「位置決め演算」という。)は,海底局からの音響 信号(又はデータ)及びGPSからの位置信号に対して行われるもので あって,船上局又は地上において実行される(特に段落【0025】, 【0040】)ことが開示されている。しかし,本件当初明細書には, 位置決め演算の時期を限定することに関する記載は見当たらない。
(ウ) この点に関し,審決は,データ処理装置による位置決め演算には,船 上で行う場合と,船上で受信したデータを地上に持ち帰って行う場合と があるところ,後者の場合にはそれなりの時間がかかるから,技術常識 をわきまえた当業者であれば,構成Eの「受信次第直ちに」とは,船上\nで演算を行う場合を指すと理解すると認められると判断した。 しかし,位置決め演算を船上で行うか地上で行うかは,位置決め演算 を実行する場所に関する事柄であって,位置決め演算を実行する時期と は直接関係がない。そして,位置決め演算を船上で行う場合には,海底 局及びGPSの信号を受信した後,観測船が帰港するまでの間で,その 実行時期を自由に決めることができるにもかかわらず,位置決め演算を 「受信次第直ちに」実行しなければならないような特段の事情や,本件 発明の実施の形態において,当該演算が「受信次第直ちに」実行されて いることをうかがわせる事情等は,本件当初明細書に何ら記載されてい ない。 また,本件当初発明では,構成eに「前記船上局受信部において,…\n前記海底局の位置を決める演算を行うデータ処理装置と,」と,位置決 め演算を船上で行うことが特定されていたのであるから,本件補正によ って追加された「受信次第直ちに」との文言を,位置決め演算を船上で 行うことと解すると,当初明確な文言によって特定されていた事項を, 本来の意味と異なる意味を有する文言により特定し直すことになり,明 らかに不自然である。 したがって,「受信次第直ちに」との文言を,船上で位置決め演算を 行う場合を指すと解することはできない。
(エ) よって,本件当初明細書に,位置決め演算時期構成が記載されている\nと認めることはできない。
ウ 以上検討したところによれば,本件当初明細書等に位置決め演算時期構\n成が記載されていると認めることができないから,構成Eに位置決め演算\nを「受信次第直ちに」行うとの限定を追加する本件補正は,本件当初明細 書に記載された事項との関係において,新たな技術的事項を導入するもの というべきである。 したがって,この点についての審決の判断には誤りがあり,その誤りは 結論に影響を及ぼすものである。

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平成30(行ケ)10148  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成31年4月18日  知的財産高等裁判所

 意匠法3条2項が争われました。争点は、慶弔用品の分野における意匠の形態を「卓上敷マット」に転用できるか否かでした。知財高裁(2部)は、「転用できる」とした審決を維持しました。

 本願意匠に係る物品である「卓上敷マット」の物品分野の当業者 が,慶弔用品の分野における意匠1及び意匠2の形態を「卓上敷マット」に転用す ることを容易に想到するかどうかについて検討する。
(ア) 「卓上敷マット」は一般のテーブルや机に敷かれるものを含む日常生 活に用いられる物品である一方,証拠(乙2〜4,17,18)及び弁論の全趣旨 によると,意匠1の「マット」や意匠2の「盆茣蓙」は,現在では主として盆の時 期に精霊棚や仏壇の前に置く経机や小机の上に敷き,上に位牌やお供え物などを置 く慶弔用品の分野の物品であり,その物品分野は「卓上敷マット」とは異なるもの である。 しかし,いずれもテーブルや机という「卓」(乙1によると,「卓」にはテーブル や机が含まれると認められる。)の上に敷かれて使用されるものであるという点で その用途が共通している。また,意匠1の「マット」や意匠2の「盆茣蓙」の形状 は,いずれも「卓上敷マット」と同じマット状であり,上に物を載置することがで きる点においてその機能が共通している。\n
(イ) そして,証拠(乙5〜8,12〜15)及び弁論の全趣旨によると, 本願の出願日前において,「盆茣蓙」のような慶弔用品と「卓上敷マット」を含むテ ーブル掛けなどの物品が,同一の見本市などに出品されることがあり,「卓上敷マッ ト」を含むテーブル掛けなどの物品分野の当業者が,「盆茣蓙」のような慶弔用品の 形態に接する機会は十分あったものと認められる。\n
(ウ) 以上を考え併せると「卓上敷マット」を含むテーブル掛けなどの物品 分野の当業者は,物品分野は異なるものの,意匠1から着想を得て,真菰を並べて 形成された「卓上敷マット」を想到し,更に真菰を並べて形成された慶弔用品の「盆 茣蓙」である意匠2の形態を本願意匠に係る物品である「卓上敷マット」に転用す ることを容易に想到することができたと認められる。 なお,「卓上マット」を含むテーブル掛けなどの物品分野と「盆茣蓙」などの慶弔 用品の物品分野では,常に物が載置されるかどうかや一定の時期にのみ使用される かどうかに違いがあるとしても,これらの違いは,上記認定の用途や機能の共通性\nに比べるとささいな違いというほかなく,上記判断が左右されることはない。
ウ 原告は,1)「盆茣蓙」と「卓上敷マット」とは,用途や機能が異なって\nいて非類似であること,2)意匠1や意匠2のような真菰で形成されたマットは,慶 弔用品で仏具の上に敷かれるものであるところ,日常生活で使用されている机に慶 弔用品を祀ることは,浄・不浄の概念からもあり得ないこと,3)前記ギフトショー についての審決の論理を前提とすると,百貨店などであらゆる商品が同スペースで 展示されていることから,全てのあらゆる物品分野間で創作容易性が肯定されてし まうこと,4)自らの商品デザインにつき異業種商品のデザインを盗用することは信 義に反すること,5)慶弔用品としての真菰で形成された「盆茣蓙」に接した取引者, 需要者は,「盆茣蓙」の上にあるお供え物に注目することなどを理由として,「盆茣 蓙」についての形態を「卓上敷マット」に転用することを考えないと主張する。
(ア) 上記1)について,前記1で説示したとおり,意匠法3条2項は,物品 との関係を離れた抽象的な公然知られたモチーフを基準として,当業者の立場から みた意匠の着想の新しさや独創性を問題とするものであるから,物品が非類似であ ることが直ちに創作が容易でないことに結びつくものではない。そして,本件で転 用を容易に想到できることは前記イのとおりである。
(イ) 上記2)について,原告の主張は,「盆茣蓙」が慶弔用品であって,宗教 的感情によって転用が妨げられるというものであると解されるが,証拠(乙2)に よると,「盆茣蓙」について,かつては,「丁半博打で,壺を伏せる場所へ敷くござ」 という慶弔用品以外の用途もあったと認められる上,前記イ(ア)認定の用途や機能の\n共通性に照らすと,宗教的感情によって当業者における意匠1及び意匠2の形態の 転用が妨げられるとは解されない。
(ウ) 上記3)について,前記イの判断は,見本市などにおいて,慶弔用品と 「卓上敷マット」を含む物品が出品されていることのみを理由とするものではなく, 前記イ(ア)認定の用途や機能の共通性も理由としているから,全てのあらゆる物品分\n野間で形態の創作容易性が認定されてしまうことにはならない。
(エ) 上記4)について,本願意匠に創作容易性を認めたからといって,デザ インの盗用を認めることにはならず,デザインの盗用とは関係がない。
(オ) 上記5)について,創作容易性の基準となるは取引者,需要者ではなく, 「卓上敷マット」を含むテーブル掛けなどの物品分野の当業者であって,その視点 や着眼点が取引者,需要者と同じとはいえず,また,当業者において転用を容易に 想到できることは前記イのとおりである。
(カ) 以上からすると,原告の上記主張は採用することができない。
(2) 相違点1,2についての判断
前記(1)のとおり,意匠2の形態を本願意匠に係る物品である「卓上敷マット」に 転用することは容易であると認められるから,次に,前記4で認定した意匠2と本 願意匠との相違点1,2について,創作が容易であるかについて検討する。
ア 相違点1について,証拠(乙9,10)及び弁論の全趣旨によると,「卓 上敷マット」を含むテーブル掛けなどの物品分野の当業者にとって,「卓上敷マット」 の縦横比を必要に応じて適宜調整することはありふれた手法であると認められる。 したがって,意匠2の平面視略横長長方形の縦横比を本願意匠の縦横比に変更す ることについて,意匠の着想の新しさや独創性があるとはいえない。
イ 相違点2について,本願意匠と意匠2で用いられている編み糸の色彩自 体に違いはなく,本願意匠の構成は,意匠2の構\成から紫色の糸と赤色の糸の配置 を入れ替えたにすぎないものである。また,証拠(乙9)及び弁論の全趣旨による と,「卓上敷マット」を含むテーブル掛けなどの物品分野において,色彩を適宜変更 することはよく見られる手法であると認められる。 そうすると,意匠2の5本の編み糸のうち,紫色の糸と赤色の糸の配置を入れ替 えて本願意匠の構成にすることについて,意匠の着想の新しさや独創性があるとは\nいえない。
ウ 以上からすると,本願意匠は,意匠2の形態に基づいて,当業者におい て容易に創作できたものと認められる。

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◆平成30(行ケ)10147

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平成30(ネ)10068等  損害賠償請求控訴事件同附帯控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成31年4月18日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴人(一審原告)は、米国法人の製造する医薬部外品を日本にネット販売していました。被控訴人(一審被告)は、日本における独占販売代理店でしたが、原告の商品が真正品ではなく,その販売が薬事法に違反しているなどとホームページに掲載しました。 控訴人(一審原告)は、不競法2条1項15号の不正競争行為であるとして、損害賠償を求めました。
一審の東京地裁(40部)は、33万円の請求を認めましたが、双方が控訴しました。知財高裁(2部)は、被控訴人(一審被告)敗訴部分を取り消していますが、損害額は妥当としました。取り消した原因は、被控訴人(一審被告)は原告に対して弁済をしたとので、損害賠償債権は消滅したというものです。

 ア 本件記載1〜3は,平成27年記事中の記載であるところ,平成27年 記事の内容からすると,同記事を閲読した者が,普通の注意と読み方によって本件 記載1,2の部分を理解すると,同部分には,控訴人が,本件サイトにおいてジョ レン本社の商品を販売しているが,同商品はジョレン本社の商品の真正品ではない こと(同事実を,以下「本件事実1)」という。)が摘示されており,本件事実1)と 共に,控訴人の商品の仕入先が不明であること,控訴人は,ジョレン本社と取引が ないこと,控訴人が販売している商品の価格は極端に安価であること,被控訴人は, ジョレン本社に報告し,控訴人は,販売の中止を求められたが,販売を継続してい ること,控訴人の店舗は,本件サイト上に記載された住所にはないこと,ジョレン 本社では控訴人には大変困っていること(これらの事実を併せて,以下「本件事実 2)」という。)が摘示されており,また,控訴人は,厚生労働省の許認可を受けず に上記商品を販売しており,同行為は薬事法に違反すること(以下「本件事実3)」 という。)が摘示されていると理解するものと認められる。 そして,本件事実1),3)は,同記載を閲読した者に対し,控訴人は,ジョレン社 の商品の真正品でない商品を販売しており,また,同販売行為は薬事法に違反して いると認識させるのであるから,本件記載1,2の掲載によって,控訴人の社会的 評価は低下し,控訴人の信用,名誉が毀損されたというべきである。
・・・
本件記載4は,平成26年記事中の記載であるところ,平成26年記 事を閲読した者が,普通の注意と読み方によって,本件記載4を理解すると,同記 載部分には,最近,顧客からの報告で,商品を,香港経由でアメリカに入れ,本件 商品の真正品と告知して,カリフォルニアなどから,発送している業者を発見した ことが摘示されていると理解するものと認められる。そして,本件記載4では,そ のような業者が控訴人であるとは特定されておらず,また,平成26年記事全体の 記載を考慮しても,上記業者が控訴人であると認識することはできない。 したがって,本件記載4が掲載されたことによって,控訴人の社会的評価が低下 するということはできないから,本件記載4の掲載は控訴人の信用,名誉を毀損す るとは認められない。
(イ) 本件記載5は,平成26年記事中の記載であるところ,平成26年記 事を閲読した者が,普通の注意と読み方によって,本件記載5を理解すると,同記 載部分には,パッケージ,説明書,容器が日本語表記であり,国内発送であること\nを確認し,ジョレンジャパン,日本真正品などの表記のある店舗で本件商品の真正\n品を購入すべきことが摘示されていると理解するものと認められる。 ところで,平成26年記事には,「たとえ,アメリカ真正品であってもパッケー ジが英語表記の物は,保証は致しかねます。」との記載もあり,同記載からすると,\n本件商品については,「アメリカ真正品」も販売されており,パッケージや説明書 等が英語表記であったり,また,日本の正規代理店以外の店舗で販売された本件商\n品の中には「アメリカ真正品」も含まれていると理解することができる。そうする と,平成26年記事を閲読した者は,控訴人商品が,パッケージや説明書等が英語 表記であったり,日本の正規代理店で販売されていないとしても,「アメリカ真正\n品」であると認識することが考えられるから,本件記載5から,直ちに控訴人商品 が真正品ではないと認識するとは認められないし,他に,本件記載5について控訴 人の社会的評価を低下させる記載があるとは認められない。 したがって,本件記載5が掲載されたことによって,控訴人の社会的評価が低下 するということはできないから,本件記載5の掲載は控訴人の信用,名誉を毀損す るとは認められない。
・・・・
ア 本件記載6は,薬事法上の許認可を有しない者が,インターネット等で, 本件商品を並行輸入により販売することは薬事法違反となるという内容であり,同 記事を閲読した者も,そのように理解するものと認められる。 そして,本件記載6が含まれる冒頭記事には,控訴人が薬事法上の許認可を有し ていないことについては一切記載されておらず,控訴人が薬事法上の許認可を有し ないことが本件ウェブページの閲読者に知られていると認めるに足りる証拠もない から,冒頭記事を閲読した者に,控訴人が控訴人商品を販売することが薬事法に違 反することになると認識されることはなく,したがって,本件記載6の掲載により, 控訴人の信用,名誉が毀損されたと認めることはできない。
・・・
本件記載1,2を掲載して本件事実3)を摘示した行為によって,控訴人が被った 損害の額は,上記掲載がインターネット上に公開する方法で行われたこと,その公 開された期間(約1年4か月間)等諸般の事情を考慮すると,30万円と認めるの が相当であり,また,上記行為と相当因果関係の認められる弁護士費用は3万円と 認めるのが相当である。

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◆平成28(ワ)15812

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平成29(ワ)7764  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成31年4月11日  大阪地方裁判所

 競合会社から、被告の宣伝行為は、全国の外壁塗装業者の中で最も優良であると誤解されるような表示であるとして、不正競争行為に該当するかが争われました。大阪地裁(26部)は、役務の質,内容について誤認させるような表示であると、認定しました。ただ、損害額は8万円です。

 本件サイトを閲覧する者がまず目にすることになる本件サイトのトッ プページ(本件トップページ)の上部には,本件共通表示のタイトルとして「みん\nなのおすすめ,塗装屋さん」の文字が他の文字よりも大きく表示されている(甲5\nの1等)上,その右部には,本件ランキング表が表\示されている。前記のとおり, 本件サイトを訪問する需要者が,サービスの質,内容に言及した口コミを基にした 評価が掲載されているという先入観を持っており,そのような需要者が,「みんな のおすすめ」のタイトルの下でのランキングに接することからすると,本件トップ ページを閲覧した者は,投稿された口コミを基にして外壁塗装業者やリフォーム業 者の提供するサービスの質,内容に関するランキングが作成されており,そのラン キングにおいて1位にランク付けられている業者の提供するサービスの質,内容は, 掲載業者の中で最も「おすすめ」,つまり最も「優良」であると評価されていると 基本的には認識すると考えられる。そして,本件トップページに表示されている\n「みんなのおすすめ,塗装屋さん」という表示及び本件ランキング表\は,本件サイ トのいずれのページにおいても表示されていることに照らせば,本件サイトの閲覧\nを続けていく限り,上記認識は補強されていくものと考えられる。 これに対し,被告は,本件サイトでのランキングは口コミ件数のみに基づくもの であり,閲覧者もそのように認識すると主張し,1)本件サイト説明ページには, 「ランキングは今の所口コミ件数で で決定されているとは通常想定されないことである。 この観点から見ると,前記のうちの2)の本件口コミランキングページの記載につ いては,その直後に「口コミの内容については,投稿後に一定時間を経過してから ランキングへと自動反映される仕組みになっています。」と,口コミ内容を基にし てランキングを作成しているように理解される内容の表示がされており,口コミ件\n数を基にしてランキングを作成しているという内容の表示を文字通りのものとして\n受け取って良いのかに疑問を抱かせてしまう表示になっている。\nまた,前記のうちの1)の本件サイト説明ページの記載については,文字自体は赤 字という比較的目立つものではあるが,その記載場所は同ページの下部にある「管 理人のつぶやき」欄の末尾という目立ちにくい場所にあり,かえって同ページの上 部にある説明本文欄では,その冒頭で本件サイトを「利用者からの投稿によりおす すめ業者をランク付けしたサイト(口コミサイト)」と説明しており,より目立つ 上部の本文欄の記載によって,口コミを基にして業者をサービスの内容,質により ランク付けをしているとの認識を補強することとなっている。 さらに,前記のうちの3)については,確かに本件サイトにはランキング評価上考 えられる諸要素をどのように考慮してランキングを作成したのかについては,全く 記載されていないが,本件サイトのランキングが「おすすめ」の口コミランキング とされている以上,それに接した需要者は,何らかのやり方で口コミに基づいて業 者が提供するサービスの良・不良を評価していると認識するのが通常であると考え られるから,点数等の表示がないからといって,本件サイトのランキングが,投稿\nされた口コミの件数だけを基にして作成されたものであるとの認識が生じるとは認 められない。 したがって,上記の点によっては,口コミを基にして業者をサービスの内容,質 によりランク付けがされているとの上記認識が払拭されるとは認め難く,被告の上 記主張は採用できない。そうすると,結局のところ,本件サイトを閲覧した者は, 本件ランキング表を始めとする本件サイトにおけるランキングは,外壁塗装業者や\nリフォーム業者の提供するサービスの質,内容に関して,投稿された口コミの件数 だけでなく,その内容をも基にして作成されたものであり,本件ランキング表示に\nついては,そのランキングにおいて1位にランク付けられている被告の提供するサ ービスの質,内容が,掲載業者の中で最も優良であると評価されていると認識する と認められる。
(イ) 他方,本件サイトを閲覧した者は,本件サイトが口コミサイトである と認識している以上,本件サイトのランキングも,所詮は口コミという主観的な評 価を集積したものにすぎないということは当然認識しているはずであるから,本件 サイトのランキングにおいて問題とされているサービスの質,内容に関する評価が, それらの客観的な優劣を問題にするものではないことも認識していると認められる。 そして,前記のとおり,本件サイトにはランキング評価上考えられる諸要素をどの ように考慮してランキングを作成したのかについて全く記載されていないことから すると,本件サイトを閲覧した需要者は,結局のところ,そこに記載されている口 コミの中で,高評価の件数が多く,低評価の件数が少なければ上位にランキングさ れ,逆であれば下位にランキングされるといった程度の認識を生じるにすぎないと 認めるのが相当である。 この点について,原告は,本件サイトを閲覧した者が,本件サイトのランキング を見て,外壁塗装業者やリフォーム業者の提供するサービスの質,内容に関する客 観的な優劣がランク付けされたものであり,そのランキングにおいて1位にランク 付けられている被告の提供するサービスの質,内容が客観的に最も優良であると認 識するかのような主張をする。しかし,上記のとおり,本件サイトを閲覧した者は, 口コミランキングである本件サイトのランキングが,口コミという主観的な評価を 集積したものにすぎないということは当然認識しているはずである。また,外壁塗 装業者やリフォーム業者の提供するサービスの質,内容において重要視される諸要 素は,個々人の価値観によって異なるものであるため,これらに関する客観的な優 劣をランク付けすることなどそもそも不可能であることは,誰にでも容易に認識で\nきることである。以上の諸点に照らせば,本件サイトを閲覧した者は,本件サイト のランキングを見ても,外壁塗装業者やリフォーム業者の提供するサービスの質, 内容に関する客観的な優劣がランク付けされたものであるとは認識せず,口コミを 投稿した者の主観的な評価を基にランク付けしたものであると認識すると認められ るから,原告の主張は採用できない。
(ウ) 次に,原告は,本件サイト説明ページでは,本件サイトが「日本全国 で営業している外壁塗装業者を対象に…おすすめの業者をランク付けしたサイト」 であると説明されていること(甲5の2)から,本件サイトを閲覧した者は,本件 ランキングが全国のあらゆる外壁塗装業者の中でのランキングであって,こうした ランキングにおいて被告が1位とされていることから,被告が全国のあらゆる外壁 塗装業者の中で最も優良な業者であるとの認識が生じると主張する。 しかし,本件掲載業者一覧ページを見れば,本件ランキングの対象とされる掲載 業者の範囲が,一覧表示することが可能\な程度のものにすぎないこと(甲5の4 等)は容易に認識できるから,本件サイトの閲覧者において,本件サイトのランキ ングが全国に存在するありとあらゆる外壁塗装業者やリフォーム業者を対象にする ものであるとの認識が生じるとは認められない。そして,本件掲載業者一覧ページ に掲載されている業者の本店所在地が,関西地方の「大阪府」及び「兵庫県」,関 東地方の「東京都」及び「神奈川県」,中部地方の「愛知県」及び「石川県」並び に九州地方の「福岡県」というように各地方にまたがっており,店舗数も7店舗の ものから155店舗のものが掲載されていること(甲5の4,甲17の1及び2, 甲26の1及び2)に照らせば,「日本全国で営業している外壁塗装業者を対象」 というのは,全国的に営業活動を行う事業者を全国各地からピックアップして対象 としたという程度の意味にすぎず,本件ランキングも,そうしてピックアップした 掲載業者の中でのランキングであると理解すると考えられる。したがって,原告の 主張は採用できない。
(エ) 以上のとおりの本件サイトを閲覧する者の認識を前提とすれば,本件 サイトのランキングは,投稿された口コミの件数及び内容を基に作成された,本件 掲載業者一覧ページに掲載されている業者の提供するサービスの質,内容に関する 評価のランク付けを表示したものであって,被告がランキング1位であることは,\n投稿された口コミの件数及び内容に基づき,被告の提供するサービスの質,内容が, 本件掲載業者一覧ページに掲載されている業者の中で投稿者の主観的評価として最 も優良であると評価されていると表示したものである。\n
(4) 本件サイトにおける被告がランキング1位であるとの表示(本件ランキン\nグ表示)の品質誤認表\示該当性
ア 上記のような本件サイトを閲覧する者の認識からすると,本件ランキン グ表示は,掲載業者の中での,投稿された口コミの件数及び内容に基づく評価との\n間にかい離がないのであれば,品質誤認表示に該当するとはいえない。\nそこでまず,被告への口コミの件数についてみると,本件サイトの表示上,他の\n業者への口コミ件数よりも絶えず多くなっている(甲5の3,甲6の1ないし3, 甲21の1ないし4)。また,被告への口コミの内容についてみると,本件サイト の表示からうかがうことができるものについて,別紙「被告への口コミ内容一覧\n表」記載のとおりの口コミが投稿されている。\nこのように本件サイトの表示からうかがうことができる範囲に限ってみると,被\n告への合計32件の口コミは,一部を除いて基本的に,工事の質や接客態度といっ た被告の提供するサービスの質,内容を高く評価するものであるところ,このこと に,原告も被告への口コミが高評価のものばかりであると主張しているという弁論 の全趣旨を併せ考えると,被告への口コミは,証拠上本件サイトの表示からうかが\nうことができない範囲のものについても,被告の提供するサービスの質,内容を高 く評価するものであると推認される。 このように被告への口コミは,その件数が最も多いだけでなく,その内容も軒並 み高評価のものであることからすると,本件ランキング表示(本件サイトにおける\n被告がランキング1位であるとの表示)と,被告へのく評価との間にかい離はないと認められる。\n
イ もっとも,そもそも被告への口コミが虚偽のものである場合,例えば, 被告が自ら投稿したものであったり,形式的には施主又は元施主(以下「施主等」 という。)からの投稿であったとしても,その意思を反映したものではなかったり などする場合は,本件サイトの表示上の被告への口コミの件数及び内容をそのまま\nのものとして受け取ることが許されなくなり,その結果,本件ランキング表示との\nかい離があるということとなる。そこで,次にこの点を検討する。 (ア) まず,本件サイトの公開日は平成24年3月5日であるところ,被告 への口コミとして表示されている口コミのうち5件の口コミについては,口コミ内\n容とともに表示されている日付が,同日より前のもの(同年2月2日,同月11日,\n同月13日,同月21日及び同月25日付け)になっている(同年6月11日時点 の表示として甲21の1)。このような事態は,それらの投稿が真に施主等による\nものであれば,考え難いものである。 この点について,被告は,サイト公開前にヒューゴが入力したテスト投稿の消し 忘れの可能性を指摘する。しかし,被告が,これら5件の口コミが既に投稿されて\nいたと認められる平成24年6月11日(甲21の1)よりも後の同月28日に, ヒューゴに対してバックデイト機能を要求したり,その要求の際に投稿された口コ\nミが直ぐに反映されずにタイムラグが生じるという問題点も併せて指摘したりして いること(乙10)からすると,被告は,それ以前に本件サイトに投稿された口コ ミを確認していたと考えられ,その場合に公開日前の日付が投稿日として表示され\nている口コミがテスト投稿の消し忘れであれば,これを放置するとは考え難いから, そのまま残されている上記5件の口コミが,ヒューゴによるテスト投稿の消し忘れ であるとは考え難い。
また,被告は,1)平成24年2月14日よりも後になって初めて口コミが投稿で きるようになったと思われるにもかかわらず,上記5件の口コミのうち3件はそれ 以前の日付が投稿日となっていること,2)被告の施主等から本件サイトの公開前に 返送されてきたアンケートの存在(乙14)に照らせば,上記5件の口コミについ てはヒューゴが本件サイトの公開後に施主等の投稿をバックデイトしたものである 可能性が高いと主張する。しかし,ヒューゴは被告からの依頼を受けて本件サイト\nを制作したにすぎず,本件サイトの公開後にヒューゴが被告の依頼を受けて注力し ていたのも各種キーワードによる検索順位の向上にすぎない(乙6ないし12)か ら,そのようなヒューゴが,本件サイトの歴史を少しでも長く見せようなどとして, 本件サイトの公開後に投稿された口コミを独断でバックデイトしようとする動機が そもそも見いだし難い(なお,被告が平成24年6月28日にヒューゴにバックデ イト機能を要求していることからすると,それ以前に表\示されていた上記5件の投 稿が,被告がバックデイトを指示したものであるとも考え難い。)。そして,上記 1)の主張は,本件口コミ投稿フォームが完成するまでの間については,ヒューゴで あっても口コミを投稿できないことを前提とするものであるが,本件サイトの仕組 みに照らせば,制作者であるヒューゴであれば,本件口コミ投稿フォームが完成す る前でも口コミの投稿作業をすることは不可能ではなかったと認められる(甲5,\n28,29,弁論の全趣旨)。また,上記2)の主張については,本件サイトの公開 前に返送されたアンケートは,飽くまで本件サイト外でのアンケートにすぎないか ら,仮に上記5件の投稿内容がアンケート結果に即したものであったとしても,上 記5件の投稿が本件サイトの公開後にされたものをバックデイトしたものであると 推認されるわけではない。また,この点はおくとしても,被告以外の業者に関する 口コミについても,口コミ内容とともに表示されている日付が本件サイトの公開日\nである平成24年3月5日より前になっているものがあること(甲21の2ないし 4。なお,甲21の5については時期が明らかでない。)に照らせば,被告に対す るアンケートの存在から,口コミ内容とともに表示されている日付が本件サイトの\n公開日である平成24年3月5日より前になっている理由を説明できるものではな い。したがって,被告の上記主張は採用できない。 以上からすると,本件サイト公開前の日付となっている5件の投稿は,被告の関 与の下にヒューゴにおいて投稿作業をした架空の投稿であると認められる。そして, 確かに,同様の日付の投稿は他の業者についても存在するが,それらの投稿はいず れも各4件である(甲21の2ないし4。甲21の5でも同様である。)から,被 告については,これらにより,本件サイトの公開時点から,既にランキング1位と 表示されていたと推認され,その表\示は虚偽であったといえる。
(イ) 次に,本件サイト公開後の投稿を見ると,1)掲載業者に対する投稿フ ォームは,(a)平成24年6月11日時点では,「地域」と「口コミ内容」を入力す るものであった(甲33の1)のが,(b)同年12月16日までには,「名前」, 「メールアドレス」,「ウェブサイト」及び「コメント」を入力するものに変更さ れ(甲33の2),その後,(c)セキュリティのための計算式の回答の入力が加わり (甲6),その状態が平成27年5月25日時点でも維持されていた(甲28の 1)こと,2)掲載業者以外の業者に対する投稿フォームは,平成27年5月25日 時点でも(a)と同じであったこと(甲27の1)が認められる。 これによれば,掲載業者に対する投稿については,少なくとも平成24年12月 16日以降は「地域」を入力することがないはずであるが,その後の被告及び他の 1社の情報の掲載ページでは,氏名が表示されるべき欄に地域が表\示されているも のが見られる(被告についての甲6の1では3件,他社についての甲6の3では2 件)。しかも,乙10によれば,本件サイトでの掲載業者への投稿は,平成24年 6月28日以降は投稿内容が即時に反映させる仕様になっていたと認められるから, 上記の投稿もそれによるもののはずである。そうすると,上記の投稿は不可解とい うほかなく,この点について被告から合理的な説明はないから,それらの投稿が真 に施主等がした真正なものであるかについては重大な疑問を抱かざるを得ない。 また,乙10によれば,被告は,平成24年6月当時,コメントを書いた施主等 にプレゼントを進呈していたと認められ,また,甲15によれば,被告は,平成2 9年9月頃,本件サイトに関する新聞社の取材に対し,「顧客の感想を社員が聞き 取って(自社の口コミとして)投稿したことはあったが虚偽は書いていない」と回 答したと認められ,このように被告が施主等から聞き取った内容を自ら口コミとし て投稿したことがあることは,当事者間に争いがないところ,この対応からすると, 何とかして被告への口コミ件数を増やそうとする姿勢が見て取れる。そしてまた, 乙10によれば,被告の担当者は,平成24年6月28日にヒューゴとの間で本件 サイトの改修を打ち合わせるメールの中で,「過去コメント分の編集(入力日時) の変更はできないでしょうか?」と述べていたと認められるところ,このメールか らは,施主等から投稿される口コミをそのまま反映させようとしない作為的な態度 が見て取れる。
以上のような重大な疑問と被告の態度に加え,前記(ア)のとおり,被告は,その関 与の下に本件サイトの公開時点で架空の投稿が表示されるようにしていたことを考\n慮すると,上記の「地域」が表示された投稿も架空のものと認めるのが相当である。\n (ウ) もっとも,上記(ア),(イ)で述べた投稿を除いても,被告への投稿件数 が1位であることに変わりはない。そして,乙10によれば,被告の担当者は,平 成24年6月28日,ヒューゴとの間で本件サイトの改修を打ち合わせるメールの 中で,「あと技術的な部分の確認なのですが,コメント入力後の即反映に変更する ことはできないでしょうか?プレゼントを差し上げるため,お客様に入力確認の連 絡を頂いているのですが,タイムラグが発生してしまい上手く進んでいません。」 と述べていたと認められるところ,このメールからすると,施主等自身が実際に投 稿をすることがあったと認められるから,被告への口コミとして表示されている口\nコミのうち,投稿日が本件サイトの公開日以降となっているもの全てが虚偽のもの であるといえないことは明らかである。しかし,上記のとおり平成24年3月5日 の時点で被告は架空の投稿を表示し,同年12月16日以降も架空の投稿をしてい\nるのであって,施主等への通常の投稿の勧誘により被告への高評価の投稿数が1位 になるのであれば,そのような架空の投稿までする必要はないはずである。このこ とに加え,前記のとおり上記の間の同年6月28日の時点でも被告は施主等からの 投稿日を変更しようとする作為的な態度を示していたことからすると,被告は,架 空の投稿を相当数行うことによって,ランキング1位の表示を作出していたと推認\nするのが相当である。
ウ 以上からすると,本件サイトにおける被告がランキング1位であるとい う本件ランキング表示は,実際の口コミ件数及び内容に基づくものとの間にかい離\nがあると認められる。 そして,本件サイトが表示するようないわゆる口コミランキングは,投稿者の主\n観に基づくものではあるが,実際にサービスの提供を受けた不特定多数の施主等の 意見が集積されるものである点で,需要者の業者選択に一定の影響を及ぼすもので ある。したがって,本件サイトにおけるランキングで1位と表示することは,需要\n者に対し,そのような不特定多数の施主等の意見を集約した結果として,その提供 するサービスの質,内容が掲載業者の中で最も優良であると評価されたことを表示\nする点で,役務の質,内容の表示に当たる。そして,その表\示が投稿の実態とかい 離があるのであるから,本件ランキング表示は,被告の提供する「役務の質,内容\n・・・について誤認させるような表示」に当たると認めるのが相当である。\n

◆判決本文

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平成30(ネ)10053等  育成者権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件  その他  民事訴訟 平成31年3月6日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁は、育成者権侵害について、侵害品の譲渡数量の70%について販売不可事情ありとした一審判決を維持しました。品種調査の費用も1/2認められました。

 控訴人は,1)青果物としてのしいたけ市場において,被控訴人のしい たけには,99.9%の圧倒的なシェアを占める強力な競合品が存在し ていたこと,2)漬物製造・販売メーカーである控訴人(侵害者)が従来 の取引を通じて培ってきた小売店における販路と,小売店,問屋の担当 者に対する営業努力による市場開拓の結果がしいたけの販売実績につな がったこと,3)侵害品は,被控訴人のしいたけに比べて,低価格の個別 包装品であり,一般消費者向けの見た目を備える等品質が良好であった こと,4)業務用の被控訴人のしいたけと,一般消費者向けの控訴人のし いたけ(被告各しいたけ)の市場が非同一であることなどを指摘して, 被控訴人には,譲渡数量の全部又はその99.9%に相当する数量を育 成者権者が「販売することができないとする事情」(法34条1項ただ し書)があったと認めるのが相当であると主張する。 しかしながら,前記1)の市場占有率(非占有率)がそのまま「販売す ることができないとする事情」(その割合)に反映されるとの考え方は 極論であって採用できないというべきであるし,前記2)の控訴人が漬物 の製造・販売によって築いた信用や販売力というものを殊更しいたけの 市場において重要視することも,その関連性が客観的な証拠に裏付けら れているとまではいえない以上,採用できない。また,前記3)及び4)の 点も,原判決が認定した70%という割合を超えて「販売することがで きないとする事情」があったと認めるには足りない。 結局のところ,控訴人が当審で主張する諸点はいずれも原審における 主張の繰り返しにすぎず,採用できないものといわざるを得ない。
(ウ) 被控訴人の主張(当審における主張)について
他方,被控訴人は,正当な権利に基づかない販売(侵害品の販売)を 前提に市場競争力等を論ずること自体失当であるとして,被控訴人は控 訴人による侵害行為がなければ,本件品種に係るしいたけを全部販売し て1kg当たり152円の利益を上げることができたのであるから,法 34条1項ただし書の「販売することができないとする事情」は皆無で あった,などと主張する。 しかしながら,侵害行為の前後で控訴人・被控訴人の市場占有率が大 きく変わっていることなどの事情は具体的に示されておらず,ほかに原 判決が認めるよりも更に「販売することができた」と認めるに足る客観 的事情はない。 したがって,この点に関する被控訴人の主張も採用できない。
キ 小括
以上を前提に,本件で認められるべき逸失利益の額を検討すると,次の とおりとなる。 すなわち,控訴人に本件育成者権侵害の不法行為が成立する期間は平成 24年6月から平成25年1月までの8か月間であり,この間の譲渡数量 (損害額算定の基礎となる譲渡数量)は15万5579.297kgであ って,これに被控訴人のしいたけ1kg当たりの利益額152円を乗じる と,その額は2364万8053円となる。 ただし,このうち70%については被控訴人において「販売することが できないとする事情」があったと認められることから,その7割を減じる こととすると,本件で認められるべき被控訴人の逸失利益の額は,709 万4415円となる。
・・・
(2) 調査費用
証拠(甲19〜21)によれば,被控訴人は,本件育成者権侵害の事実を 調査するため,1)侵害状況記録書等作成費用11万6260円,2)品種調査 資料作成費用143万9778円及び3)DNA解析費用46万7882円(合 計202万3920円)を支出したものと認められる。しかるところ,本件 においては,法2条5項2号に基づく収穫物に対する権利行使が一部制限さ れること等の事情に鑑みれば,前記金額のうち,その2分の1に相当する1 01万1960円に限り,控訴人の侵害行為と相当因果関係のある損害と認 めるのが相当である。
(3) 弁護士費用
本件の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額の損害としては, 81万円を認めるのが相当である。

◆判決本文

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平成29(ワ)849  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権 平成31年3月28日  大阪地方裁判所

 電子たばこケースにかかる意匠権侵害事件です。大阪地裁は先使用権を認めました。 判決文の最後に両意匠が掲載されています。判決文の最後に両意匠が掲載されています。

 また,具体的構成態様については,各収納部の底部と開口部(収納口)の位置関\n係(同イの一部,ウ),大型収容部の左側面窓部の透明のフィルムの有無(同オの一 部),ベルトの金属製の留め具の有無等(同ク),背面部の形態(同ケ)及び表面の\n色や生地(同コ)を除き,共通している。
そして,共通点のうちベルトの形状(具体的構成態様キ)及び各収納部の大きさ\n(具体的構成態様ア)は本件意匠の主たる要部であり,それにより,被告意匠には,\n本件意匠と同様のスマートでシンプルという印象が生じている(なお,被告意匠の ベルトは,本件意匠のベルトよりも数mm程度太いが,それによって以上の判断は左 右されない。)。 他方,本件意匠と被告意匠とは,各収納部の底部と開口部の位置関係(具体的構\n成態様イの一部,ウ)という副次的な要部において相違しており,確かに,被告意 匠では,各収納部の底部の位置がほぼそろえられていることによって,本件意匠と 対比すると,よりまとまりのある印象を与えているということはできる。しかし, 本件意匠の要部の検討で述べたとおり,引用意匠3ないし9と対比した場合の本件 意匠の大きな特徴は,各収納部やベルトの形態(主たる要部)によってスマートで シンプルな印象を与えるという点にあり,被告意匠が各収納部の底部と開口部の位 置の差異によって,よりまとまりのある印象を与えているとの点は,上記のスマー トでシンプルな印象の範囲内での相違にすぎず,それによって本件意匠と被告意匠 の美感が異なるものになったとまでいうことはできない。なお,原告は,原告製品 とは異なり,小型収納部の底部を大型収納部の底部とそろえた製品を販売するに至 ったが,これによって以上の判断は左右されない。 この点について,被告は,原告製品と被告各製品を購入した者がインターネット に書き込んだコメントの内容が異なっている旨主張し,乙37を提出しているが, 意匠に関するコメントは必ずしも多くないし,被告製品1の「おしゃれ」とか「か っこいい」というのが上記のスマート又はシンプルさを排斥するものとまで認める ことはできないから,これによって前記判断が左右されるとはいえない。 また,被告は,被告意匠では両収納部の底部の位置がほぼそろえられ,小型収納 部の開口部が大型収納部の開口部よりも下側にあることから,小型収納部にクリー ナーを収納できることを指摘するが,それは,そのような使い方もできるという程 度のものにすぎず,そのことによって小型収納部の形状自体が新規なものになって いるというわけでもないから,その点によって前記判断が左右されるとはいえない。
(イ) また,本件意匠と被告意匠のその他の差異点は,要部に関するもので はないことなどから,それによって本件意匠と被告意匠の美感が異なるものになる とも認められない。
この点,被告は,被告意匠2ないし6に関し,生地に関する差異点(具体的構成\n態様コ)によって,共通点を凌駕する程度に別異性が認められるとも主張している が,本件意匠は生地の態様に特徴のあるものでなく,被告意匠2ないし6も生地に 顕著な特徴があるとはいえないし,本件意匠に係る物品は電子タバコケースである から,需要者がまず着目するのは製品の形状であり,基本的にはケースの生地や色 が美感に与える影響が大きいとはいえないから,その差異点が上記共通点による美 感を凌駕すると認めることはできない。
ウ したがって,本件意匠と被告意匠とは一致点の印象が差異点の印象を凌 駕し,類似していると認めるのが相当である。
2 争点2(被告による先使用権の成否)について
・・・
上記の被告代表者の陳述及び供述のとおりであるとすると,被告は,本件\n意匠の登録出願日である平成28年6月20日の時点で,原告製品とは関係なく被 告各製品のデザインを決定し,その製造委託の発注までをシャインカラー社に対し て行うとともに,IMP社から被告製品2の販売を受注していたことになるから, 少なくとも日本国内において被告意匠の実施である事業の準備をしていたことにな る。そこで,上記の被告代表者の陳述及び供述の信用性について検討する。\n
・・・
ところで,原告製品は同年5月8日に発売されたから,創作者である被 告代表者が本件意匠を知らないで被告意匠を創作したといえるためには,同日以前\nの被告の開発状況が重要になる。そして,被告代表者の陳述及び供述では,シャイ\nンカラー社と最初に協議したのは同年5月4日であり,そこでデザインを決めてサ ンプル製作を指示した次の協議が上記の同年6月15日とされているから,同年5 月4日の時点での協議内容(前記(1)イ)の信用性が重要となる。
(ア) まず,被告各製品の開発についてのシャインカラー社との協議が平成 28年5月4日に行われたことについては,被告代表者の打合せノートの5月4日\nの記載(乙30の1及び2)がある。そして,同ノートの記載については,前記の とおり同年6月初旬ころないし同月15日の記載(乙30の4ないし6)が信用し 得ると認められることから,被告代表者が日常業務の上で作成していたものとして\n基本的に信用できると考えられる。また,被告代表者が同年4月から5月にかけて\n新規のIQOSケースの開発を考えたということには,被告が同年4月当時,セパレー トタイプのIQOSケースを開発し,同商品が同年5月18日までに販売されていたと 認められること(乙32)から,時期的にもあり得ることである。
(イ) そこで,乙30の1の記載を見ると,「サンプル」として,1)「セパレ ート」,2)「ガラ携のベルトケース」,3)「2段のスマホケース」が記載されている から,これらを見ながら協議したと認められるところ,1)が被告が開発していたセ パレートタイプ(乙12,32)であり,3)が中国で販売されていた2段重ねタイ プ(乙15,16)であると認められる。このうち2)は,「実用NG?」と記載され ているから候補から外れたと認められ,被告代表者も同旨を述べている。次に,1) については,「充のみ」と「充+カートリッヂ(タバコ)」の2通りが検討された記 載となっており,これが特段排除された記載はない。しかし,被告代表者は,セパ\nレートタイプは,金具で無理矢理つなげる点や男性的で客層を狭くする点に難点が あったことや,被告代表者の息子が作った商品であるために真似をしたくないとの\n思いがあったと供述しており,この供述は自然かつ合理的なものである。そうする と,この協議において,1)のタイプは採用されず,3)の2段重ねタイプが採用され たとの被告代表者の陳述及び供述は信用できると考えられ,その場合,乙15及び\n16の例のとおり,大型収納部と小型収納部を同方向に重ね,それらの幅や高さを タバコパッケージや携帯用充電器の大きさとほぼ同じようにするのは自然なことで ある。 そして,乙30の1においては,「別でクリーナーやミニUSBケーブル」との記 載があるから,クリーナーを入れられるようにしたり,ミニUSBケーブルを通す 孔を設けたりすることが検討されたと認められるところ,前者の点からすると,被 告各製品のように両収納部の底部の位置をそろえることにより,小型収納部の上部 に余裕空間を設けるのが合理的であり,そのようにすることが乙15及び16の例 からも自然であるから,このような方針となった旨の被告代表者の陳述及び供述は\n信用し得る。なお,前記のとおり後の同年6月15日の時点で,被告代表者は,サ\nンプルに対して小型収納部の底部を大型収納部の底部と同じ位置まで下げるよう指 示しているが,この点について,被告代表者は,サンプルで底がそろっていなかっ\nたのは,その方が縫製が楽であることから,シャインカラー社が構造的に楽なもの\nを作ったためであると供述しており,この点も被告代表者の同陳述及び供述と整合\n的である。 また,背面部の上端を正面まで伸長させたベルトについても,絞り込まれて幅が 細く,正面まで伸長させるものは乙15及び17にもあり,被告自身が販売し,人 気のあった手帳型の携帯電話のケースでは先端が半楕円形であって,平坦で,その 幅が均一で,細いベルトが備えられていたから(乙18,50),被告代表者が被告\n意匠のベルトの形状等に着想することは自然なことといえる。そして,このことは, 前記の同年6月15日のサンプルのチェック時には,ベルトについて修正指示がな かったこととも整合的である。 また,底部の携帯充電器用の孔や左側面の窓部についても,前者については上記 のとおり同年5月4日の打合せにおいて協議されていたことであり,その発想から すると後者についても協議されていても不合理ではない。 なお,前記のとおり,被告代表者は,同年6月15日のサンプルのチェック時に,\n裏の生地をハイクラス(合成皮革のライチ柄)にするよう修正指示しているが,同 年5月4日の打合せノートでも「ライチ柄(ハイクラス)」とされている(乙30の 1)から,その指示も同日の指示に従うよう求めたにすぎないと認められる。 そして,被告代表者は,このときの訪中時に,シャインカラー社に対してサンプ\nルを発注したことは,乙30の2から認められる。 以上のとおり,被告代表者は被告各製品の開発(被告意匠の創作)過程について\n具体的な供述をしており,その内容は各証拠とも整合していること,同年5月4日 の協議から同年6月15日のサンプル確認まで何らかの連絡協議が行われたともう かがわれず,かえって,被告代表者の月に1回程度訪中しているとの供述は,1回\nの訪中時に数日をかけて数社との打合せをしていること(乙30)と整合している ことを考慮すると,被告意匠を同年5月4日の協議の時点で創作していた旨の被告 代表者の陳述及び供述は,その信用性を認めることができる。\n
ウ 原告の主張について
原告は,原告製品が平成28年5月8日から楽天市場において販売されてお り,楽天市場で1位にランクインしたことがあることや,中国で模倣品が製造され ていること(甲15,16)を指摘し,被告代表者が本件意匠を知っていたと主張\nしている。 しかし,製品の開発過程で他社製品を参照することは一般的に行われることでは あるが,前記のとおり本件では,原告製品が発売されるより前に被告代表者がシャ\nインカラー社に対して被告各製品のサンプル製作を指示していたことにつき相応の 裏付け証拠があることからすると,原告製品とは関係なく被告各製品を開発した旨 の被告代表者の陳述及び供述は信用し得るというべきであり,原告主張の事情は,\n上記認定を左右するに足りるものではない。また,中国の実情(甲15,16)も 一般論にすぎず,被告代表者が本件意匠を知っていたことを直ちに推認させるもの\nとはいえない。
(3) 以上の検討からすると,被告は,本件意匠の登録出願日までに,本件意匠 を知らないで被告意匠を創作し,一部の被告各製品の製造の委託をシャインカラー 社に発注し,これは被告が日本国内で被告各製品の販売を行うためにされたことで あり,またIMP社から被告製品2の販売を受注するに至っていたと認められるか ら,被告は,少なくとも日本国内において被告意匠の実施である事業の準備を行っ ていたというべきである。

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平成30(行ケ)10152    意匠権  行政訴訟 平成31年4月11日  知的財産高等裁判所

 先行意匠と類似するかが争われました。裁判所は、「底面に対して僅かに正面側に偏心した本体把持部の全体形状に係るものであって,本体把持部の握りやすさ及び操作の容易性に及ぼす影響が大きい」として、類似と判断した審決を維持しました。判決文の最後に両意匠が掲載されています。

 両意匠の意匠に係る物品は,電動歯ブラシの本体(把持部)であり,主な需 要者は,電動歯ブラシを使用する一般消費者である。そして,かかる需要者が, 電動歯ブラシを使用するときは,通常,シャフト部にブラシヘッドを装着した 電動歯ブラシの本体を手に取り,歯磨き粉を付けたブラシヘッドを口腔内に 入れてから本体の動作制御釦を押して始動した後,本体を把持しながら,ブラ シヘッドを歯に当てて歯磨きを行うことからすると,本体把持部の握りやす さや操作の容易さを重視し,本体把持部の全体形状に特に注目をするものと 認められる。 しかるところ,両意匠は,「全体は,隅丸長方形状の底部より,僅かに正面 側に偏心しながら,円状の上面部にかけて側面視背面側を窄めた略円柱状の電 動歯ブラシ本体把持部と,該本体把持部上面に設けられた,該上面の略半径を 直径とする略円柱状の基台部とその上に配された縦長板状のシャフト(シャフ ト部)で構成をされている点」(共通点1)及び「シャフトについて,本体把\n持部の偏心にそって正面側に僅かに傾倒し,正面視中央部に横断する段差が設 けられ,背面側には略縦長矩形の凹部が設けられている点」(共通点2)で共 通する。 そして,共通点1は,底面に対して僅かに正面側に偏心した本体把持部の全 体形状に係るものであって,本体把持部の握りやすさ及び操作の容易性に及ぼ す影響が大きいこと,共通点2は,本体把持部の偏心にそって正面側に僅かに 傾倒したシャフト部の形状に係るものであって,本体把持部の偏心した形状と 相まって歯に当たるブラシヘッドの角度に影響を及ぼすことに照らすと,共通 点1及び共通点2は,これを見る需要者に対し,全体として,共通の美感を起 こさせるものと認められる。 他方で,両意匠は,相違点1(本願意匠は,本体把持部の正面に上端より全 長約3分の1の箇所と,約2分の1の箇所に僅かに凹部をなす略円状の電動歯 ブラシ動作制御用釦が縦に2つ配されているのに対して,引用意匠は,上端よ り全長約3分の1の箇所に1つ配されるものとなっている点),相違点2(本 願意匠は,電動歯ブラシ動作制御用釦の外形線が一重の円状であるのに対して, 引用意匠は,該動作制御用釦の外形線が二重の円状となっている点),相違点 3(環状細線の位置),相違点4(本体把持部の下部の形状及び切り替えの有 無)及び相違点5(シャフト部の基台部の形状)において相違するが,これら の相違点から受ける印象は,両意匠の上記共通点から受ける印象を凌駕するも のではない。 したがって,本願意匠と引用意匠は,これらの相違点を考慮しても,需要 者の視覚を通じて起こさせる全体的な美感を共通にしているものと認めら れるから,本願意匠は,引用意匠に類似するものと認められる。
(2)ア これに対し原告は,1)共通点1に係る「全体は,隅丸長方形状の底部よ り円状の上部にかけて側面視背面側を窄めた略円柱状の本体把持部と,略 円柱状の基台部と略縦長板状のシャフトとを有する電動歯ブラシ本体」の 構成態様は特徴的な形状であるとはいえない,2)共通点1のうち,「本体 把持部が僅かに偏心していること」は,需要者に与える印象という観点か らは,従来から存在する上部にかけて側面視背面側をただ窄めただけの形 状と明確な区別のつくものではないため,特徴的な形状とはいえない,3) 共通点2に係る「シャフト部の背面側に略縦長形状の凹部が設けられてい る点」は,その部位があまりに小さく,背面に備えられていることと相ま って,需要者の注意をひく部分とはなり得ないため,特徴的な形状という ことはできないとして,本願意匠の基本的構成態様は,需要者である使用\n者の注意を強くひくものとはいえず,共通点1及び2に係る態様は,需要 者に共通の美感を起こさせるものとはいえない旨主張する。 しかしながら,上記1)の点は,共通点1のうち,一般的な電動歯ブラシ の本体が有する形状と共通する一部の形状のみを取り上げたものであり, 共通点1の有する全ての形状について言及したものとはいえない。 また,上記2)の点は,本体把持部の全体形状に特に着目する需要者(前 記(1))においては,本体把持部が僅かに偏心している本願意匠の形状と 本体把持部の底面に対して軸を垂直にしたまま上部にかけて側面視背面 側を窄めただけの形状とを容易に区別するものと認められる。 さらに,上記3)の点は,共通点2のうち,一部の形状のみを取り上げた ものであり,シャフトが本体把持部の偏心にそって正面側に僅かに傾倒し ている点及びシャフトの正面視中央部に横断する段差が設けられている 点を看過している。
以上のとおり,原告の上記主張は,共通点1及び共通点2の形状の一部 のみに着目したものであって,これらの共通点の全体が与える視覚的効果 を踏まえたものといえないから,採用することができない。
イ 次に,原告は,1)歯を磨くという電動歯ブラシの機能の観点からは,需要\n者が電動歯ブラシを操作する動作制御釦の位置,大きさ及び形態が最も強 く需要者の注意をひく部分であり,要部である,2)需要者は電動歯ブラシ を使用する際に必ず動作制御釦部を観察するから,動作制御釦部が,全体 と比較して僅かな範囲のものであるとしても,需要者に対し,強い印象を 与えること,釦が2つの場合は,それぞれの釦の機能を考慮しながら釦を\n操作するため,2つの釦を注視することとなり,釦が1つの場合と比べて, 釦の形態により注意が向けられることに照らすと,本願意匠の釦が縦に2 つ配されている態様(相違点1に係る本願意匠の態様)は,上の釦の径よ り,下の釦の径がやや小さく形成されているという点と相まって,需要者 の注意を強くひくものであり,釦が1つ配されている態様の引用意匠とは 異なる美感を起こさせるものであるとして,本願意匠の要部である動作制 御釦が需要者に与える印象は引用意匠とは大きく異なるから,両意匠は, 全体として類似しない旨主張する。 しかしながら,前記(1)認定の電動歯ブラシの通常の使用態様に照らすと, 需要者は,本体把持部の握りやすさや操作の容易さを重視し,本体把持部の 全体形状に特に注目をするものと認められ,動作制御釦の位置,大きさ及び 形態は,電動歯ブラシの操作時に需要者の一定の注意をひく部分であると しても,最も強く需要者の注意をひく部分であるとはいえない。 また,甲2(意匠登録第1478109号の意匠公報)記載の「電動歯ブ ラシ本体」の意匠(別紙3)及び甲3(意匠登録第1219080号の意匠 公報)記載の「電動歯ブラシ」の意匠(別紙4)によれば,電動歯ブラシに 動作制御釦を2つ配することは,本願の優先日前に,普通に行われていたも のと認められる。そして,本願意匠の2つの動作制御釦は,1つは,本体把 持部上端より全長約3分の1の箇所に配され,引用意匠の動作制御釦とそ の位置が共通し,他の1つは,上記動作制御釦の垂下にあたる本体把持部上 端より全長約2分の1の箇所に配され,特異な位置にあるとの印象を与え るものではない。
加えて,本体把持部の上部側に配された動作制御釦の直径より,その下部 に配された動作制御釦の直径が僅かに小さく形成されている2つの動作制 御釦を有する電動歯ブラシの本体把持部の形態は,本願の優先日前に公知 であったこと(乙1)に照らすと,本願意匠の動作制御釦が,2つ縦に配さ れ,僅かに凹部をなし,上の釦の径より,下の釦の径がやや小さく形成して いる点は,特徴的なものとはいえず,需要者の注意を特にひくものとはいえ ないから,本願意匠の動作制御釦と引用意匠の動作制御釦の構成態様の違\nいが需要者の視覚を通じて起こさせる両意匠の全体的な美感に影響するも のと認めることはできない。

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平成28(ワ)28925等  損害賠償請求事件(本訴),使用料規程無効確認請求事件(反訴)  著作権  民事訴訟 平成31年2月1日  東京地方裁判所

 有線放送業者が、著作権管理団体に対して、「使用料規程及びこれに基づく本件基本合意は,地域もしくは使用者の立場によって視聴料に大きな価格差をつけるものとして、無効」と主張して争いました。裁判所は「区域内再放送と区域外再放送の使用料の差が不合理とはいえない」と判断しました。

(ウ) 次に,本件使用料規程における使用料の差違が合理性を有するかにつ いて検討する。
a 本件使用料規程は著作権等管理事業法13条に基づいて文化庁長官 に届出のされたものであるが,同法は,著作物の利用の円滑性確保と いう観点から著作物等管理事業者に対して,使用料規程の作成,届 出義務を定めている。そして,同法は,使用料規程作成に当たって の利用者又はその団体から予め意見を聴取する努力義務と,使用料\n規程を届け出た場合における使用料規程の概要の公表義務を定め,\n恣意的な使用料規程の作成を防止するとともに(同法13条),使 用料規程において不相当に高額な使用料の額が設定され著しく利用 者の利益を害する場合などには,文化庁長官が一定の要件の下で, 業務改善命令(同法20条)による是正措置を講じることとされて いる。このように,同法においては,使用料規程の不合理な使用料 の規定の是正を図るための規定が置かれているところ,本件におい ては,文化庁長官による原告に対する業務改善命令がなされた等の 事実はうかがわれない。
b また,日本音楽著作権協会,日本シナリオ作家協会,日本文芸著作 権保護同盟,日本放送作家組合,日本芸能実演家団体協議会の権利者\nの5団体は,昭和50年以降,個々のケーブルテレビ事業者に再放送 の許諾を与えており,その際に用いられた使用料の算定式は,区域外 再放送と区域内再放送の使用料に6倍の差を設けるものであって,上 記団体の一部については,現在も同様の算定式に基づいて使用料の徴 収が行われているとの事実が認められる(弁論の全趣旨)。
c さらに,地上基幹放送事業者は,それぞれの放送対象地域内におい て放送を行っているところ,有線テレビジョン放送事業者の提供する 区域外再放送は,視聴者にとってはその区域においては当然には視聴 することのできない番組の視聴が可能になるものであるため,強い顧\n客吸引力を有していることがうかがわれ(甲25),さらに日本放送 協会の受信料が1波・1世帯当たり年額6800円であること(甲2 0)なども考慮すると,本件使用料規程の定める使用料が不合理に高 額であるということはできず,また区域外再放送と区域内再放送の使 用料及びその間の差(5倍)が不合理であるということはできない。
d これに対し,被告は,放送事業者が区域内再放送に比べて区域外再 放送の場合に多額の費用を投じている事情もなく,有線放送テレビジ ョン事業者は,放送対象地域を越えて飛び出している電波を受信して 再放送を行なっているにすぎず,大阪を中心にすると徳島県は兵庫県 北部や京都府北部と距離的に変わらないなどと主張する。 しかし,総務省が平成25年に行った調査によれば,被告が讀賣テ レビの区域外再放送を行っている徳島県板野郡北島町,松茂町及び上 板町のいずれにおいても,電界強度が放送法関係審査基準の基準値未 満であり,画質についても継続的に良好な受信が可能であるとまでは\nいえない状態であったとの事実が認められる(乙6)。また,毎日放 送等の親局(大阪局)の放送エリアには上記3町は含まれず,その中 継局の放送エリアにも同各町は含まれていない(甲24)。
以上によれば,区域外と区域内で電波の受信状況は必ずしも同一と いうことはできず,放送事業者が区域内再放送に比べて区域外再放送 の場合に多額の費用を投じる必要がないと認めるに足りる証拠もない。
e 被告は,水道事業等の公共事業においては料金について原価主義の 考え方が採られていることに鑑みても,区域内再放送と区域外再放送 とを区別する合理的な理由はないと主張する。 しかし,原告の行う管理事業は水道事業のような公営事業ではなく, また,水道法においては,水道事業者の定める供給規程が「料金が、 能率的な経営の下における適正な原価に照らし公正妥当なものである\nこと。」との要件に適合しなければならないと定められている(同法 14条1項1号)のに対し,著作権等については再放送使用料を原価 に基づいて設定すべきことが義務付けられているものではない。 このように,水道等の公益事業と原告の行う管理事業とは,その根 拠法令,制度趣旨,使用料の算定の方法等が異なっているのであり, 水道事業等の公共事業との対比において本件使用料規程の合理性を判 断することは相当ではない。
f 被告は,徳島県は,関西広域連合の一員であるところ,徳島県鳴門 市の視聴者が隣接する兵庫県南あわじ市の視聴者の5倍から50倍の 視聴料を払わなければならないのは不合理であると主張する。 しかし,前記判示のとおり,放送法は放送対象地域の内と外で明確 に区別をしており,区域内再放送と区域外再放送とで一定の異なる 扱いをすること自体は法が予定している以上,隣接した市町村であ\nったとしても,放送対象地域が異なる場合には視聴料が異なるのは やむを得ないというべきである。そして,本件使用料規程における 使用料の額及び区域内再放送と区域外再放送の使用料の差が不合理 とはいえないことは前記判示のとおりである。 なお,被告は,本件使用料規程の年間の包括的利用許諾契約によ らない場合の区域外再放送の使用料(年間で計算すると1200円) と本件基本合意の区域内再放送の使用料(年間24円)とを対比し て,50倍の格差があると主張するが,本訴の請求は本件使用料規 程の算式によるものであるから,区域内再放送と区域外再放送の使 用料の格差の合理性については,同規程の同一種別についての料金 を比較して判断すべきであり,本件使用料規程と本件基本合意のし かも異なる種別における料金を比較することは相当ではない。
g 被告は,関東広域圏,中京広域圏,近畿広域圏のケーブルテレビの 視聴者は全体の約73%にのぼっていることなどを指摘し,再放送の 同意につき公平・公正な使用料は1世帯1ch当たり年額24円であ り,この金額を超える使用料には合理的な理由がないと主張する。 しかし,後記のとおり,本件基本合意は,本件使用料規程第4条に 基づき減額措置を定めるものであり,しかも年額24円という使用料 はその中でも最も低い金額であるから,同金額を超える使用料が合理 性を欠くということはできない。本件使用料規程における使用料の 額が不合理とはいえないことは前記判示のとおりである。
h 以上のとおり,本件使用料規程における使用料の額及び区域内再 放送と区域外再放送の使用料の差が不合理ということはできない。
(エ) 被告は,年間の包括的利用許諾契約を締結する場合と締結しない場 合を分けて使用料を設定することは不合理であると主張する。
しかし,年間の包括的利用許諾契約を結んだ場合には毎月使用料を 徴収する等の事務処理が軽減されることを考慮すると,年間の包括的 利用許諾契約を締結しない場合の使用料を一定程度高く設定するこ とは合理的であり,また,その使用料が年間の包括的利用許諾契約 を締結する場合と比較して不合理に高額であるということはできな い。
したがって,年間の包括的利用許諾契約を締結する場合と締結し ない場合を分けて使用料を設定することが不合理であるということ はできない。

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平成30(行ケ)10117  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年4月12日  知的財産高等裁判所(1部)

 拒絶審決が取り消されました。理由は、明確性、サポート要件違反ではないというものです。なお、第1回の拒絶理由通知に対してクレームを追加する補正をしたのに、そのクレームには新たな拒絶理由通知がなされなかった点も争いましたが、こちらは理由なしと判断されました。

 原告は,拒絶査定不服審判事件において,本件拒絶理由通知を受けたことか ら,新たに請求項19ないし47を追加する本件補正をしたところ,審判合議体が, 本件補正で追加した請求項について,新たに拒絶理由通知をせず,また本件審決に おいて判断しなかったことが,特許法47条に実質的に違反する旨主張する。 しかし,特許法は,一つの特許出願に対し,一つの行政処分としての特許査定又 は特許審決がされ,これに基づいて一つの特許が付与され,一つの特許権が発生す るという基本構造を前提としており,請求項ごとに個別に特許が付与されるもので\nはない。このような構造に基づき,複数の請求項に係る特許出願であっても,特許\n出願の分割をしない限り,当該特許出願の全体を一体不可分のものとして特許査定 又は拒絶査定をするほかなく,一部の請求項に係る特許出願について特許査定をし, 他の請求項に係る特許出願について拒絶査定をするというような可分的な取扱いは 予定されていない。このことは,特許法49条,51条の文言のほか,特許出願の\n分割という制度の存在自体に照らしても明らかである(最高裁平成19年(行ヒ) 第318号同20年7月10日第一小法廷判決・民集62巻7号1905頁参照)。 そうすると,審判合議体は,拒絶査定不服審判において,一の請求項について拒 絶理由があると判断すれば,それのみで請求不成立審決をすることができ,その余 の補正で追加された請求項について判断しなくても,違法ではないというべきであ る。 なお,特許出願人は,請求項の数を増加する補正をする際には,手続補正書を提 出する際に手数料を納付しなければならない(特許法施行規則11条4項)。そし て,拒絶査定不服審判請求後において請求項の数を増加する補正の場合,手続補正 書の提出によって,審査の続審である審判手続が,その増加した請求項について潜 在的に係属するといえる。そうすると,その際に納付すべき手数料を,出願審査の 請求に当たり必要な手数料及び審判の請求に当たり必要な手数料とすることは,不 合理なものといえず,また,手数料の納付時期を,手続補正書の提出時点とする同 規則の規定は,立法政策の問題というべきである。 本件において,審判合議体は,特許請求の範囲【請求項1】の記載は明確性要件 及びサポート要件に適合しないなどとする本件拒絶理由通知(甲11)をし,本件 補正により補正された同請求項の記載も,明確性要件及びサポート要件に適合しな いとして,本件審決をしたものである。審判合議体が,本件補正で追加した請求項 について,新たに拒絶理由通知をせず,また本件審決について判断しなかったこと をもって,審判手続に違法があるということはできない。
(2) 原告は,審判合議体が本件拒絶査定における理由の一部についてしか判断し ていないこと,審判官が専門とする技術分野が本願発明の技術分野とは異なること などから,本件は実質的に審理されたものということはできず,審理不尽の違法が あると主張する。 しかし,審判合議体は,特許請求の範囲【請求項1】の記載は明確性要件及びサ ポート要件に適合しないなどとする本件拒絶理由通知をし,本件補正により補正さ れた同請求項の記載も,明確性要件及びサポート要件に適合しないとして,本件審 決をしたものである。審判合議体は,拒絶査定不服審判において,拒絶査定に挙げ られた全ての理由について判断することが求められているものではない。また,本 件審決をした審判官につき除斥又は忌避事由があったことを窺わせる証拠はない。 その他,審判合議体が本件を実質的に審理しなかったことを認めるに足りる証拠も ない。 したがって,本件につき審理不尽の違法がある旨の原告の主張は採用できない。
・・・
以上によれば,特定事項Aは,「脂質含有配合物を対象に投与するに当たり,当 該脂質含有配合物を選択するために,当該対象の「要素」のうち,一つ又は複数を 「指標」として使用する方法」と解釈するのが合理的であって,特定事項Aを,こ のように解釈することは,その余の特定事項の解釈とも整合するものということが できる。
キ 被告の主張について
(ア) 被告は,本願発明は「年齢」や「性別」のような属性を,ありふれた油脂 を選択するための指標として使用する方法をいうところ,「指標として」という記 載は抽象的であり,いかなる行為までが「指標」として使用する行為に含まれ得る のか明確ではないから,本願発明の外延は明確ではない,要素を何らかの形で脂質 含有配合物を選択するための指標として用いたか否かについては,明確に判別する ことはできない旨主張する。 しかし,脂質含有配合物を対象に投与するに当たり,年齢,性別等の対象の要素 をメルクマールにして,その脂質含有配合物の構成を決定すれば,要素を「指標と\nして」使用したといえる。また,これにより決定される脂質含有配合物の構成があ\nりふれたものであったとしても,ありふれていることを理由に発明の外延が不明確 であると評価されるものではない。そうすると,「指標として」という記載が,第 三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。 また,対象方法が本願発明の特許発明の技術的範囲に属するか否かは,本願発明 の技術的範囲を画定し,対象方法を認定した上で,これらを比較検討して判断する ものである。そして,脂質含有配合物を選択するための指標として本願発明の要素 をメルクマールとして用いたか否かは,対象方法の認定に係る問題であって,本願 発明の技術的範囲の画定の問題,すなわち,明確性要件とは無関係である。 したがって,被告の上記主張は採用できない。
・・・・
本件審決は,サポート要件について,「ω−6の増加が緩やかおよび/また はω−3の中止が緩やかであり,かつω−6の用量が,40グラム以下であり」と の技術的事項が,本願明細書の発明の詳細な説明には記載されていないから,本願 発明の特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合しないと判断した。 そして,本件審決は,本願発明が,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該 発明の課題を解決できる範囲のものであるか否か,また,発明の詳細な説明に記載 や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる と認識できる範囲のものであるか否かについて,何ら検討判断していない。
(2) しかしながら,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは, 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記 載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載 により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否か,また,発明 の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明 の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきも のである。 そうすると,本願発明が,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課 題を解決できる範囲のものであるか否か,また,発明の詳細な説明に記載や示唆が なくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識で きる範囲のものであるか否かについて,何ら検討することなく,選択関係にある特 定事項EないしHのうち特定事項G「ω−6の増加が緩やかおよび/またはω−3 の中止が緩やかであり,かつω−6の用量が,40グラム以下であり」との技術的 事項が,本願明細書の発明の詳細な説明には記載されていないことの一事をもって, サポート要件に適合しないとした本件審決は,誤りである。
(3) 加えて,以下のとおり,「ω−6の増加が緩やかおよび/またはω−3の中 止が緩やかであり,かつω−6の用量が,40グラム以下であり」との特定事項G の技術的事項は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されている。 すなわち,まず,本願明細書【0042】には,「長鎖ω−3脂肪酸または免疫 抑制性の植物性化学物質/栄養素の習慣的で多量の供給が宿主に対して突然行われ なくなるか,またはω−6脂肪酸が突然増加すると,全身性の炎症応答(毛細血管 漏出,発熱,頻脈,呼吸促迫),多臓器不全(消化器,肺,肝臓,腎臓,心臓)お よび関節の結合組織損傷を含む重篤な結果を伴うサイトカインストームの応答が生 じることがある。」と記載され,「ω−6の増加が緩やかおよび/またはω−3の 中止が緩やかであ」る投与方法を採らない場合だけでも,様々な疾患が生じ得るこ とが記載されている。このように,「ω−6の増加が緩やかおよび/またはω−3 の中止が緩やかであ」る投与方法に関する技術的事項は,本願明細書【0042】 に記載されている。
また,本願明細書には,菜食主義者又は特定の非菜食主義者であって19〜30 歳及び31〜50歳の男性に投与する脂質組成物のω−6脂肪酸の用量を40g以 下とすること(実施例3【表9】),多量のシーフード摂取者であって上記と同年\n齢の男性に投与する脂質組成物のω−6脂肪酸の用量を40g以下とすること(実 施例3【表11】),及び,医学的適応として肥満を有する者に投与する脂質組成\n物のω−6脂肪酸の用量を40g以下とすること(実施例6【表13】)が,それ\nぞれ記載されている。このように,「ω−6の用量が,40グラム以下であ」る投 与方法に関する技術的事項は,本願明細書の実施例3【表9】【表\11】及び実施 例6【表13】のそれぞれ一部の対象に対するものとして記載されている。\nさらに,上記のとおり,本願明細書【0042】には,「ω−6の増加が緩やか および/またはω−3の中止が緩やかであ」る投与方法を採らない場合だけでも, 様々な疾患が生じ得ることが記載されており,これは,「ω−6の増加が緩やかお よび/またはω−3の中止が緩やかであ」る投与方法が,特定の対象に限らず,一 般的に好ましい旨開示するものというべきである。そうすると, このような投与方 法と,実施例3【表9】【表\11】及び実施例6【表13】のそれぞれ一部に記載\nされた「ω−6の用量が,40グラム以下であ」るという投与方法を組み合わせた 投与方法,すなわち,例えば,菜食主義者又は特定の非菜食主義者であって19〜 30歳及び31〜50歳の男性に,40g以下の用量のω−6脂肪酸を投与し,そ の際,ω−6脂肪酸を緩やかに増加させ及び/又はω−3脂肪酸を穏やかに中止す るという,脂質含有組成物の投与方法に関する技術的事項は,本願明細書に記載さ れているということができる。
(4) したがって,本件審決は,サポート要件を形式的に判断した部分について誤 りがあるだけではなく,そもそも同要件を実質的に検討判断しておらず,その判断 枠組み自体に問題がある。よって,取消事由3は,その趣旨をいうものとして理由 がある。

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平成29(行ケ)10236等  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月14日  知的財産高等裁判所

 1次判決(H26年(行ケ)10202号)にて、一部の請求項について新規性無し、他の請求項については進歩性違反無しと判断されました。原告被告ともこれを争いました。双方とも請求棄却されました。

 ア 前訴判決は,前記(1)のとおり,本件発明7は,第6取引を除く本件各取 引によって公然実施されたと判断しているから,この部分に拘束力が及び,審判手 続においてこれに反する主張をすることは許されないものというべきである。した がって,この点についての第二次審決の判断に誤りがあるということはできない。
イ 被告は,前訴判決は,原告又はY社とα社〜ε社との間の信義則上の秘 密保持義務の有無について判断しておらず,前訴判決の拘束力は,信義則上の秘密 保持義務についての主張立証には及ばないと主張する。 しかし,前訴判決の拘束力が及ぶ範囲は,上記アのとおりであって,前訴判決が 信義則上の秘密保持義務について明示的に判断しているかどうかで,この拘束力が 及ぶ範囲が左右されることはない。
(3) なお,念のため,被告の主張する原告又はY社とα社〜ε社との間の共同 開発に基づく信義則上の秘密保持義務の有無についても検討する。 被告は,1)取引量が少量であること,2)本件各取引において供給されたBPEF が「サンプル」とされ,研究開発部門が受入窓口となるなどしていたこと,3)被告 とδ社との取引経緯,4)原告のBPEFの融点の公表時期,5)原告とY社がα社等 とポリマーに係る発明について●●●●をしていたことなどから,共同開発の事実 及び信義則上の秘密保持義務の存在が推認できると主張する。 ア まず,上記1),2)については,取引量が少量で,かつ対象物のBPEF が「サンプル」で,受入先が研究開発部門などとされている場合でもあっても,例 えば,受入先が,BPEFを原料としたポリマーの研究開発を行っているにすぎず, BPEFについては特に共同開発が行われていないといったことが容易に想定され るのであるから,被告主張の上記1),2)は,そもそも共同開発の事実を推認させる ものではないといえる。Aの供述は,この判断を左右するものではないし,ゼオネ ックスという光学用樹脂の例(乙14)については,BPEFとは異なる物質に関 するものである上,乙14の12頁でも,ゼオネックスが,販売開始後も当初はサ ンプルとしての供給が多く,数百キロ程度しか売れなかったとされていることに照 らすと,上記判断を左右するものではない。 イ 上記3)については,被告とδ社が,平成17年1月頃からBPEFを原 料とするポリマーの共同開発をしていたとしても,そこから,原告及びY社とα社 〜ε社との共同開発の事実が直ちに推認されるというものではない。 また,原告がδ社に提供したBPEFの中に,融点が三つある多形体混合物(ロ ット番号0610209)があったことについても,原告が単体でBPEFの製造 方法の改良を試み,その結果生じたものである(甲120)としても不自然とはい えず,やはりそれをもって共同開発の事実を推認させるものとはいえない。
ウ 上記4)については,証拠(甲186〜189,甲190の1・2)及び 弁論の全趣旨からすると,原告が供給するBPEFについて,その融点(162℃) を含む物性情報が,本件優先日前である平成15年12月頃に東京化成工業株式会 社の試薬データベースに登録されることで第三者に広く開示され得る状態になって いた上,同年頃から,東京化成工業株式会社の代理店を通じて,不特定多数の者が, 原告の供給するBPEFを入手できる状態になっていたと認められるから,原告の ホームページにBPEFの物性が記載されていなかったからといって,それが被告 の主張するBPEFの共同開発の事実に結びつくとはいえない。 エ 上記5)については,被告がその論拠とする各発明(乙7の1の1・2, 乙7の2の1・2,乙7の3・4,乙8の1・2,乙9の1〜8,乙10の1・2, 乙48)の中には,BPEFを原料としたポリマーに関する発明があると認められ るものの,原告又はY社が,ポリマー合成会社等とポリマーに関する共同開発をし ていたからといって,そこから直ちに原料であるBPEFについても共同開発をし ていたと推認することはできない。
オ 以上のとおり,被告が主張する上記1)〜5)の事実は,共同開発及びそれ に基づく信義則上の秘密保持義務の存在を推認させるものではなく,他に信義則上 の秘密保持義務の存在を認めるに足りる証拠はない。

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平成30(行ケ)10119  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年2月6日  知的財産高等裁判所

 FC2対ドワンゴが、標章「ブロマガ」が周知か否かを争いました。 知財高裁3部は、周知でないとした審決を維持しました。

 上記1(2)のとおり,4つのウェブメディアにおいて,平成21年1 月に,原告が開始した原告サービスについて「ブロマガ」という名称と 共に紹介する記事が掲載されたことが認められるが,原告が主張する上 記各ウェブメディアの月間PV数(約100万〜2000万PV)から は,上記各記事自体のPV数は明らかではない。また,上記各記事は同 じ日に掲載されたものであり,掲載日から本件出願日までに約3年8か 月以上が経過していることも併せ考えると,上記各記事が掲載された事 実は,本件出願日における引用商標の周知性を裏付けるものとはいえな い。
(イ) 上記1(3)のとおり,複数の書籍に原告サービスに関する記載がある ことが認められるが,各書籍の販売部数は明らかではなく,各書籍が発 行された事実は引用商標の周知性を裏付けるものとはいえない。 また,上記1(3)の1)及び2)からは,平成21年8月から平成22年2 月までの間にFC2ブログの管理画面ないし管理ページの映像面が変更 されたことがうかがわれ,上記書籍の記載のみから,原告が,原告サー ビスの開始時から本件出願日までの期間を通じ,FC2ブログのうちの いかなるウェブサイトにいかなる方法で引用商標を表示していたかは明\nらかではない。したがって,FC2ブログの利用者の間において引用商 標が周知性を獲得したことを認めることは困難である。
(ウ) 上記1(4)のとおり,Qが原告の提供する原告サービスについて言及 したツイートを4回したことが認められる。そのツイッターアカウント のフォロワー数は多いが,多数のユーザーから大量のツイートが投稿さ れ,これらのツイートがタイムラインに順次表示されるというツイッタ\nーの性質上,上記4回のツイートがされたことによって,引用商標が周 知性を獲得したということはできない。また,同人が原告サービスを利 用していたとしても,原告サービスを通じた購読者数は多くないことが 認められるから,購読者を通じて引用商標が周知性を獲得したとはいえ ない。 なお,上記メールマガジンについて報道したITmediaの平成22年11 月30日付け記事(甲21)自体のPV数は不明で,この記事が掲載さ れた事実が周知性を裏付けるものとはいえないのは,上記(ア)に説示した ところと同様である。
(エ) 上記1(5)のとおり,平成24年8月頃の「niconico新サービス発表\n会 in ニコファーレ」において引用商標について質問されたことが認め られるが,発表会における1度の質問が引用商標の周知性を裏付ける事\n実といえないのは明らかである。
(オ) そして,本件出願日までに約3年8か月の間,引用商標が使用されて いたこと,及び本件出願日の属する平成24年9月における原告サービ スの売上げは●●●●●●であったことが認められるものの(上記1(1)), 以上に説示した点や,原告サービスの利用者数や上記売上げに係るブロ グ記事の数量は不明であり,また,原告が提供する原告サービスに関し, 本件出願日までにされた広告の回数,方法及びこれに費消した金額も明 らかではないことからすれば,本件出願日当時,引用商標が原告の業務 に係る役務を表示するものとして需要者の間で周知であったと認めるに\nは足りないというべきである。
ウ したがって,本件商標について商標法4条1項10号に該当する事由が あるとはいえない。
(2) 原告の主張について
原告は,FC2ブログが多数のユーザーが利用する著名なサービスである ことを主張するが,仮にそうであるとしても,直ちに引用商標が周知である ということにはならない。原告は,引用商標がFC2ブログの操作画面等に も表示されるようになったこと,FC2ブログのユーザーが利用する管理画\n面には常に「ブロマガ」の紹介がされ,数百万のユーザーに対して,随時, 「ブロマガ」について周知の措置がとられていたことを主張するが,上記(1) イ(イ)のとおり,このような事実を裏付ける的確な証拠はない。
原告は,原告サービスがインターネット上で大きく取り上げられたこと, 日本有数の発信力を誇るQが原告サービスのユーザーであり,原告サービス についてツイートしていること,「niconico新サービス発表会 in ニコファ ーレ」において引用商標について質問があったことを主張するが,これらの 事実により引用商標が周知性を獲得したといえないのは,上記(1)イに説示し たとおりである。また,原告は,Rの息子として知られ書籍を出版している Sが原告サービスのユーザーであると主張するが,このような事実は引用商 標の周知性を裏付けるものではない。
原告は,平成21年1月から平成25年9月までの原告サービスを利用し たブログの売上げは合計●●●●●●●●●●●●であると主張するが,こ の売上げからは,原告サービスの利用者数も上記売上げに係るブログ記事の 数量も明らかではなく,上記事実があったとしても,引用商標が本件出願日 までに周知性を獲得したことを認めるには足りない。 以上のとおりであるから,原告の主張はいずれも採用できない。
3 商標法4条1項15号該当性について
(1) 商標法4条1項15号の「混同を生ずるおそれがある商標」における「混 同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他\n人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品又は指定役\n務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質,用途又は目的における関 連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実 情などに照らし,当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者にお いて普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである(最 高裁平成10年(行ヒ)第85号平成12年7月11日第三小法廷判決)。 本件においては,引用商標について周知性が認められないのは上記2に説 示したとおりであり,本件商標が,同号にいう「混同を生ずるおそれがある 商標」に当たるということはできない。 よって,本件商標について同号に該当する事由があるとはいえない。
(2) 原告の主張について
原告は,引用商標は相当広範囲で認知されていたものであるところ,周知 性が認められないからといって,商標法4条1項15号「混同を生ずるおそ れがある商標」に当たらないということはできない旨主張する。 しかし,同号の規定は,周知表示又は著名表\示へのただ乗り(いわゆるフ リーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し,\n商標の自他識別機能を保護することにより,商標を使用する者の業務上の信\n用の維持を図り,需要者の利益を保護することを目的とするものであると解 される。また,引用商標が周知でなければ,それが需要者に一般的に認識さ れることはなく,したがって,原告の業務に係る商品又は役務との混同(狭 義の混同,広義の混同のいずれも含む。)のおそれが生じることもないと考 えられるのであって,これらのことを併せ考えれば,引用商標が周知性さえ も備えていないと認められる場合に,商標法4条1項15号が適用される余 地はないというべきであるし,「周知著名性の程度」(したがって,最低限 の周知著名性は備えていることが前提になると解される。)を問題とする上 記最高裁判決も,以上のことを前提にしているものと解される。したがって, 原告の主張は採用できない。

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平成29(ワ)27741  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年2月28日  東京地方裁判所(47部)

 タイプフェイスが著作物性を有するかが争われました。東京地裁47部は著作物ではないと判断しました。

 著作権法2条1項1号は,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,\n文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」を著作物と定めるところ,印 刷用書体がここにいう著作物に該当するというためには,それが従来の印刷用 書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であり, かつ,それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければなら ないと解するのが相当である(最高裁判所平成10年(受)第332号平成1 2年9月7日第一小法廷判決・民集54巻7号2481頁)。
 (2) そこで,本件タイプフェイスにつき検討する。 この点,原告は,本件タイプフェイスが著作物性を有するかどうかの判断を するにあたっては,タイプフェイスがそれぞれの文字相互に統一感を持たせる ように大きさや太さをデザインしているものであるから,個々の文字をそれぞ れ独立に見て判断するべきではない旨を主張する。しかしながら,複製権等の 侵害の成否は,現に複製等がされた部分に係る著作物性の有無によって判断す べきであること,タイプフェイスは各文字が可分なものとして制作されている ことからすれば,被告により現に利用された文字につき著作物性を判断するの が相当である。したがって,以下では本件タイプフェイスのうち,被告により 利用された文字に限って判断する。 ア 対比表記載の本件タイプフェイス以外の各タイプフェイス(以下「対比タ\nイプフェイス」という。)欄の括弧内に記載された各証拠及び弁論の全趣旨 によれば,対比タイプフェイス欄に記載された制作年に対比タイプフェイス がそれぞれ制作されたことが認められるところ,原告の主張に係る本件タイ プフェイスの制作年である平成12年(2000年)までに制作された対比 タイプフェイスに限って対比した場合においても,被告により使用された文 字のうち,「シ」,「ッ」,及び「ギ」「ジ」「デ」「ド」「バ」「ブ」「ベ」「ボ」における濁点「゛」の部分(以下,単に「濁点」という。)以外の文字について は,本件タイプフェイスに類似する対比タイプフェイスの存在が認められ, 本件タイプフェイスの制作時以前から存在する各タイプフェイスのデザイ ンから大きく外れるものとは認めがたい。
イ 他方,本件タイプフェイスにおける「シ」,「ッ」,及び濁点の各文字につい ては,2つの点をアルファベットの「U」の字に繋げた形状にしている点に おいて従来のタイプフェイスにはない特徴を一応有しているということは できる。しかしながら,2つの点が繋げられた形状のタイプフェイス(CL EAR KANATYPE(乙17,97)及び曲水M(乙15))の存在を 考慮すれば,顕著な特徴を有するといった独創性を備えているとまでは認め がたい。
ウ 以上からすれば,本件タイプフェイスが,前記の独創性を備えているとい うことはできないし,また,それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性 を備えているということもできないから,著作物に当たると認めることはで きない。
(3) これに対し,原告は,1)本件タイプフェイスのうち,「シ」「ッ」などの文字 は,2つの点を繋いで1本の曲がったラインで表現することにより文字の流れ\nを演出しているものであること,2)「ス」については,構成するラインを水平\n及び垂直に交わるように組み立てをし,全体を20度傾けることでカタカナの 「ス」であることがよく分かる構造となっていること,3)その他の文字につい ては,線が交わる部分を曲線にする手法,及び横画に細い線,縦画に太い線を 用いるという手法を巧みに組み合わせて全体の統一感を持たせたこと等を主 張する。 しかしながら,1)の点については,前記のとおり,従来のタイプフェイスに 比して,顕著な特徴を有するといった独創性を備えているという評価にまで至 るものではない。また,2)の点については,構成するラインを水平及び垂直に\n交わるように組み立てたものとしてMOULDISM Katakana(乙 14,102),全体を20度傾けたものとしてOVERLOADER(乙1 4,28の2)等の対比フォントが存在し,さらに3)の点については,Tec hnopolish(乙14,57)及びHappy Frame(乙14,7 2)等の対比フォントが存在することを考慮すれば,上記各点をもって本件タ イプフェイスが,従来のタイプフェイスに比して特徴を有するとは認められない。

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平成29(行ケ)10206  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年3月26日  知的財産高等裁判所

 シーサーの図形商標について、プーマが無効審判(11号、15号、7号違反)を請求しました。特許庁は無効理由なしと判断しましたが、知財高裁(2部)はこれを取り消しました。争点は、パロディ図形の混同要件です。周知商標については、混同範囲を広くしようという最近の傾向に合致した判決です。

 被告は,沖縄の伝統的な獅子像である「シーサ」の観念を生じさせようとして本 件商標を創造した旨主張する。 「シーサ」は,「シーサー」を指すものと解されるところ,「シーサー」は,「獅子 さん」の意味であり,沖縄で,瓦屋根等にとりつける素朴な焼き物の唐獅子像であ って,魔除けの一種である(広辞苑第六版。甲5)。「シーサー」の形状には,様々 なものがあり,概ねその特徴とされる点としては,たてがみや首飾り,剥き出した 牙,渦巻くような毛並み,太くふっくらとした尻尾等があり,また,頭部が体全体 に占める割合が相当大きく,目や口も大きく,その姿勢としては,上体を起こした 状態で前足をついたものが多いが,四つん這いになったもの,前かがみのもの,後 足だけで立ち上がったもの等,様々な形態があり,多くの場合には尻尾が上空に向 かって炎のように逆立ち,その先端はすぼんでいる(甲6)。 本件商標を上記の一般的な「シーサー」と比べると,首飾りのような模様,前足・ 後足の関節部分における飾り又は巻き毛のような模様,尻尾の全体的に丸みを帯び て先端が尖った形状等は,いずれも一般的な「シーサー」の特徴とされているとこ ろと一致する。しかし,本件商標は,頭部が体全体に占める割合が相当小さく,口 に当たる位置にギザギザの白線の模様はあるが,目に当たる位置に目に見える記載 はなく,四足動物が跳び上がるように前足と後足を大きく開いている姿勢は,「シー サー」の形態として一般的なものとはいえない。 そうすると,本件商標の図形が,四足動物を表現したものと看取することはでき\nても,「シーサー」を表現したものと看取することは困難である。\nしたがって,本件商標から「シーサー」の観念が生じると認めることはできない。
・・・
 前記アのとおり,本件商標と引用商標は,そのシルエット,内部に白 線による模様があるかなどにおいて異なるが,全体のシルエットは,似通っており, 本件商標において,内部の白い線の歯のような模様,首の回りの飾りのような模様, 前足と後足の関節部分の飾り又は巻き毛のような模様及び概ね輪郭線に沿って配さ れている白い線がシルエット全体に占める面積は,比較的小さく,細い白い線の花 柄のような細かい模様は,それほど目立たないものである。 したがって,本件商標と引用商標との間に外観上の差異は認められるものの,外 観全体の印象は,相当似通ったものであるということができる。 また,前記イ及びウのとおり,本件商標と引用商標は,本件商標からは何らかの 四足動物の観念が生じ,特定の称呼は生じないが,引用商標からは,「PUMA」ブ ランドの観念と「プーマ」の称呼が生じる点で異なっているところ,本件商標から 何らかの四足動物以上に特定された観念や,特定の称呼が生じ,それが引用商標の 観念,称呼と類似していない場合と比較して,その違いがより明確であるというこ とはできない。
(イ) 前記(2)イのとおり,引用商標は,原告の業務に係る「PUMA」ブ ランドの被服,帽子等を表示する商標として,我が国の取引者,需要者の間に広く\n認識されて周知著名な商標となっていたものである。 また,本件商標は,「Tシャツ,帽子」を指定商品とするところ,前記(2)イのと おり,「PUMA」ブランドの商品としても,Tシャツ,帽子が存在し,引用商標と 同様の形の図形を付した商品も存在していたのであるから,本件商標の指定商品は, 原告の業務に係る商品と,その性質,用途,目的において関連するということがで き,取引者,需要者にも共通性が認められる。 さらに,本件商標の指定商品である「Tシャツ,帽子」は,一般消費者によって 購入される商品である。
(ウ) これらの事情を総合考慮すると,本件商標の指定商品たるTシャツ, 帽子の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,本件商標を 指定商品に使用したときに,当該商品が原告又は原告と一定の緊密な営業上の関係 若しくは原告と同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営\n業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあると認められる。 したがって,本件商標には,商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれ」 があるといえる。

◆判決本文

関連事件です。
いずれも無効理由なしとの審決維持です。本件と異なり、文字商標が存在しており、 図形がシーサーであるとの観念が生ずるというものです。

7号、11号、15号違反が争点となってますが、いずれも無効理由なしと判断されています。

◆平成29(行ケ)10205

7号違反のみ争点で無効理由なしと判断されています。

◆平成29(行ケ)10204

7号違反のみ争点で無効理由なしと判断されています。

◆平成29(行ケ)10203

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平成30(行ケ)10156  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月19日  知的財産高等裁判所

 期間徒過後に、拒絶査定不服審判を請求しましたが、この却下処分について取消訴訟を提起しました。知財高裁は、「責めに帰すことのできない事由」ではないと判断しました。経緯はややこしいです。ある出願Aについて拒絶査定がなされたので、分割出願Bをしました。ところが、この出願Aは3代目の分割出願であり、拒絶査定不服審判と同時でないと分割出願ができない旧特許法44条が適用されるものでした。特許庁は、分割出願Bについて、特18条の却下処分を通知しました。出願人は、期間徒過後に、拒絶査定不服審判の請求とともに、分割出願Cをしましたが、拒絶査定不服審判の請求が審決却下されました。

 特許の出願人が在外者である場合,拒絶査定不服審判請求や分割出願を行 うためには,特許法施行令1条1号に定める場合を除いて,特許管理人たる代理人 を選任する必要があるが(特許法8条1項),その場合であっても,同在外者は, 誰を代理人に選任するのかについて,自己の経営上の判断に基づきこれを自由に選 択することができる。そうすると,出願人から委任を受けた代理人に「その責めに 帰することができない理由」があるといえない場合には,出願人本人に何ら落ち度 がない場合であっても,特許法121条2項所定の「その責めに帰することができ ない理由」には当たらないと解すべきである(最高裁昭和31年(オ)第42号同 33年9月30日第三小法廷判決・民集12巻13号3039頁参照)。
(2) 本件においては,前記第2の1のとおり,D弁理士は,本願からの分割出 願について,特許法44条1項3号の適用があり,拒絶査定不服審判請求をする必要はないものと誤信し,拒絶査定不服審判請求についての法定期間を徒過してし まったものである。 弁理士法3条によると,弁理士には,業務に関する法令に精通して,その業務を 行う義務があるところ,通常の注意力を有する弁理士が,通常期待される法令調査 を行えば,本件拒絶査定後,本願から適法に分割出願を行うためには,拒絶査定不 服審判請求を分割出願と同時にする必要があると認識することは十分に可能\であっ たと認められる。したがって,D弁理士が上記のように誤信をしたことは,弁理士 として通常期待される法令調査を怠った結果であるというほかない。D弁理士以外 の他の本件代理人らについても,いずれも原告本人から委任を受けた弁理士である 以上,適宜,必要な処置を講じて,本件のような過誤の発生を防止すべき義務があっ たといえ,D弁理士同様,弁理士として通常期待される注意を尽くしていなかった ものというべきである。 以上のとおり,本件代理人らが通常期待される注意を尽くしていたとはいえない 以上,本件において,特許法121条2項にいう「その責めに帰することができな い理由」があったとすることはできない。
(3)ア 原告は,本件代理人らの過誤は,原告本人にとって思いもかけないこと であり,外国法人である原告本人が,非本質的な手続である本件審判請求について の本件代理人らの過誤を防ぐことは不可能であったことなどから,「その責めに帰\nすることができない理由」があると主張する。 しかし,本件審判請求が,分割の機会を得るためだけにされたものであるとして も,そのことによって「その責めに帰することができない理由」があるとすること ができないのは,前記1(2)エで述べたとおりである。 また,前記(1)のとおり,原告本人は,自らの経営上の判断として,本件代理人ら に委任したのであるから,原告本人には過失がなかったとしても,自己が委任した 本件代理人らに過失がある以上,「その責めに帰することができない理由」はなかっ たと判断されるのもやむを得ないものというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は,本件分割出願1と本件分割出願2が同内容であることからする と,失効した権利の回復を無制限に認めることにはならず,また,第三者の監視負 担が増大することはないと主張するが,そのような本件における個別具体的な事情 を理由に,「その責めに帰することができない理由」があるとすることはできない。

◆判決本文

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平成30(ワ)27253  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年3月13日  東京地方裁判所(29部)

 お菓子のパッケージのイラストについて、著作権の譲渡権侵害について、同一性の程度が高いとして、被告に注意義務違反があったとして過失が認定されました。

 被告らは,いずれも加工食品の製造及び販売等を業とする株式会社であり,業として,被告商品を販売していたのであるから,その製造を第三者に委託していたとしても,補助参加人等に対して被告イラストの作成経過を確認するなどして他人のイラストに依拠していないかを確認すべき注意義務を負っていたと認めるのが相当である。 また,前記認定のとおり,本件イラストと被告イラストの同一性の程度が非常に 高いものであったことからしても,被告らが上記のような確認をしていれば,著作 権及び著作者人格権の侵害を回避することは十分に可能\であったと考えられる。に もかかわらず,被告らは,上記のような確認を怠ったものであるから,上記の注意 義務違反が認められる。

◆判決本文

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平成30(ワ)4954  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 平成31年3月14日  大阪地方裁判所

 図形+「TeaCoffee」の結合商標についての商標権侵害事件です。被告は、TeaCoffeeと文字部分のみ使用していました。大阪地裁は、文字部分だけでは識別力無しとして、非類似と判断しました。

 原告商標の文字部分,すなわち「TeaCoffee」の語は,頭文字の「T」の文字 だけでなく,「C」の文字も大文字で表記されており(甲2),「Tea」は「茶,紅 茶」を,「Coffee」は「コーヒー」を意味する英単語としていずれも日本社会にお いてよく知られていることに照らせば,取引者,需要者は,これを「Tea」と 「Coffee」の2語を接続した語と認識すると認められる。
b ところで,前記(ア)aで認定した別紙「複数の原材料を組み合わせた飲料の 商品名等一覧表」のとおり,複数の原材料を組み合わせた飲料の商品名等について\nは,原材料を構成する物の名前を接続した語とする例が数多く見られる。そして,\nその中には,「ミルクコーヒー」,「Cafe au Lait」,「ミルクティー」,「レモ ンティー」等のように,既に一つの日本語として定着している語がある。また,特 定の業者ではなく缶飲料やペットボトル飲料を販売する大手各社が,紅茶とその他 の原材料を組み合わせた飲料として「アップルティー」,「梅ティー」,「レッド グレープティー」等,抹茶と牛乳を組み合わせた飲料として「抹茶ラテ」,ほうじ 茶と牛乳を組み合わせた飲料として「ほうじ茶ラテ」等,その他として「ゆずはち みつ」,「はちみつレモン」等のように,様々な組合せの語を使用している。また, 飲料の名前から生じる認識を検討するに当たっては,このような大手各社が販売す る飲料だけでなく,「最新アイスドリンク」(乙32,33),「New Arrange Drink」(乙33)などとして,実際に創作的か否かはともかく,創作的な飲料を 提供しようとしていることがうかがわれるカフェのメニューで使用されている例も 参考になり得るところ,同別紙のとおり,「ハニーレモンティーソーダ」,「ピー\nチゼリーティ−」,「アイスマンゴーティー」があるほか,「抹茶ミルク」,「ゆ ず緑茶」,「ほうじ茶ジンジャエール」,「ソイマンゴー」,「バナナ酢ミルク」\n等のように,メニュー名自体は,原材料を構成する物の名前を単に接続した語が使\n用されている。 これらの多数の例において,各原材料の語自体は,食用又は飲用に供される物の 名前として一般に認識されている語であるから,上記の各商品名等に接した取引者, 需要者は,それらの語の間に,「と」,「+」,「×」などといった,ある物にあ る物を加えるとか,ある物とある物を掛け合わせるといった際に用いられる文字や 記号が使用されていなくても,それらの飲料がそれらの原材料を組み合わせた飲料 であると認識すると推認される。
c 以上は,飲料一般についてのものであるが,茶(日本茶,紅茶)とコーヒー を組み合わせた飲料等については,別紙「茶とコーヒーを組み合わせた飲料等の販 売開始時期や商品名等一覧表」記載のとおり,原告商品が販売される以前からその\nような商品やメニューが少なからず存在し,その中には,「お茶コーヒー」(同別 紙の番号1),「抹茶カフェオレ」(同3),「コーヒーほうじ茶」(同6。ティ ーバッグの形で販売されていた〔乙17〕。),「グリーンティーコーヒー」(同 9),「ほうじ茶カプチーノ〜黒蜜添え〜」(同10),「抹茶カプチーノ」(同 13),「ほうじ茶カプチーノ」(同13),「ほうじ茶珈琲」(同18。ティー バッグの形で販売されていた〔乙16〕。)という,茶を意味する語とコーヒー等 を意味する語を接続しただけの商品名等のものがあったほか,料理レシピとしても, 「緑茶コーヒー」(同14,17)という,茶を意味する語とコーヒーを意味する 語を接続しただけの名前のものがあったと認められる。しかも,このような茶とコ ーヒーを組み合わせた飲料等は,1)大手缶コーヒー業者である日本コカ・コーラ社 (同5,8)やJT社(同7),2)大手コンビニエンスストアチェーンであるファ ミリーマート(同9),3)コーヒー等のドリップバッグ商品の通信販売業者である ブルックス(同12),4)カフェ店であるカフェ・ド・クリエ(同10)という, 飲料等の販売形態を細分化して見れば業界を異にする,それぞれの業界において著 名な業者等から,販売されていただけでなく,日本コカ・コーラ社からは第1弾商 品が販売された約6か月後に第2弾商品を販売されるほどのものであった。 これらからすると,「TeaCoffee」との表記に接した需要者,取引者が,それが\n複数の原材料を組み合わせた他の飲料の商品名等と同様に,「Tea」と「Coffee」 を組み合わせた飲料等を意味すると認識することに妨げはなく,そのように認識す ると認めるのが相当である。
(ウ) 原告の主張について
a 原告は,お茶入りコーヒーについて「TeaCoffee」というネーミングはされ ておらず,取引者,需要者に「Tea」のような「Coffee」であるのか,「Tea」と 「Coffee」を融合させたものであるのかなどという想像を膨らませるものであるか ら,自他商品識別力を有すると主張する。 確かに,原告商品が販売される前から存在した茶とコーヒーを組み合わせた飲料 等の販売等に当たっては,茶とコーヒーを組み合わせることが新しい試みであると いう趣旨の宣伝文句が常套文句になっており,被告商品の販売が開始される際にも 「コーヒーと茶葉の新しい組み合わせ!」などという宣伝文句を用いられているこ と(甲5)に照らせば,被告が被告商品の販売を開始するまでの時点(平成30年 4月)においても,茶とコーヒーを組み合わせた飲料等は定番のものになっていな かったと認められる。また,本件において,原告商品が発売されるまでに,茶とコ ーヒーを組み合わせた飲料等について「TeaCoffee」という名前が使用された例が あるとは認められない。したがって,「TeaCoffee」という名前が,茶とコ 料名を接続した商品名等とすることが一般によく見られるものであることからする と,取引者,需要者がそのような商品名等に接した場合には,そのような原材料の 組合せが飲料等として想定し得ないものでない限り,その飲料等がそれらの原材料 を組み合わせたものであると認識することは自然なことである。そして,茶とコー ヒーの組合せが飲料等として想定し得ないものとはいえない上,それらを組み合わ せた飲料等において,その組合せの新規さをうたいつつ,その商品名等として 「茶」を表す語と「コーヒー」を表\す語を接続したものが多数見られてきたのも, その商品名等によってその飲料等がそれらの原材料を組み合わせたものであると認 識されることを多くの業者が前提としてきたことによるものと解される。 したがって,お茶入りコーヒーのネーミングとして「TeaCoffee」が一般的でな いという原告の主張を前提としても,「TeaCoffee」との語は,原告商標の指定商 品について使用するときには,商品の品質(内容)又は原材料を直接的に示すにす ぎないものとして,自他商品識別力を有しないと認めるのが相当である。
・・・・
(d) このように原告商標の文字部分(「TeaCoffee」)は,それと同じ称呼がさ れ得る「teacoffee」,「TEACOFFEE」及び「ティーコーヒー」を含めて見ても,そ もそも使用されている頻度が低い上に,使用されても,自他商品識別標識であると 認識され得る別の表示(京茶珈琲)とともに使用されていたり,記述的表\示である と認識され得ることにつながりかねない表示(TEA×COFFEE)とともに使用されて いたりするなど,自他商品識別標識であるとは認識されにくい形で使用されてきた ことが多いといえる。 以上の点を踏まえると,「TeaCoffee」の語が,原告による原告商品の販売に伴 って原告商品を指すものとして自他商品識別力を獲得するに至ったとは認められな い。
ウ 以上からすると,「TeaCoffee」の語は,被告が使用する標章の使用時点に おいて,原告商標の指定商品である「茶,コーヒー,茶入りコーヒー,コーヒー 豆」に使用されるときには,茶とコーヒーを組み合わせた飲料等の商品の品質(内 容)又はその原材料を記述的に表示しているものとして,取引者,需要者によって\n一般に認識されるものであって,自他商品識別力を欠くものというべきである。し たがって,原告商標の構成中,「TeaCoffee」の文字部分については,原告商標の 要部ということはできないから,原告商標については,「TeaCoffee」の文字部分 と図形部分から成る全体の構成が一体となって,初めて自他商品識別力を有するに\n至っているものというべきである。

◆判決本文

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平成30(行ケ)10090  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月14日  知的財産高等裁判所

 タイヤの発明について、引用文献1および周知技術から、進歩性ナシとした審決が維持されました。

 (6)周知技術の認定 前記(1)〜(5)によると,本願出願日当時,タイヤの技術分野において,クラウン部 の外周にタイヤ周方向に巻き付ける被覆コード部材の断面形状を略四角形状とする こと,また,上記断面形状は略四角形状,円形状又は台形状等から選択可能である\nことが周知技術であったことを認定することができる。
(7) 甲1発明に周知技術を適用することの可否
ア 前記(6)のとおり,本願出願日当時,クラウン部の外周にタイヤ周方向に 巻き付ける被覆コード部材の断面形状は,略四角形状,円形状又は台形状等から選 択可能であることは周知技術であった。\nまた,前記(2),(3)のとおり,周知文献3の【0007】には,「本発明の請求項1 に記載のタイヤでは,タイヤ周方向に螺旋状に巻かれる補強コード部材のタイヤ軸 方向に隣接する部分同士を接合していることから,例えば,補強コード部材のタイ ヤ軸方向に隣接する部分同士を接合しないものと比べて,タイヤ骨格部材に接合さ れる補強コード部材で構成される層(以下,適宜「補強層」と記載する。)の剛性が\n向上する。これにより,上記補強層が接合されるタイヤ骨格部材の剛性を向上させることができる。」と記載され,また,周知文献3の【0049】には,「補強コー ド部材22のタイヤ軸方向に隣接する部分同士の接合は,一部分でも全部でも構わ\nないが,接合面積が広いほど補強コード部材22で構成される補強層28の剛性が\n向上する。」と記載され,周知文献2の【0063】にも,「補強コード部材22の タイヤ軸方向に隣接する部分同士の接合は,一部分でも全部でも構わないが,接合\n面積が広いほど補強コード部材22(補強層28)によるタイヤケース17の補強 効果が向上する。」と記載されている。そうすると,本願出願日当時,タイヤ軸方向 に隣接する補強コード部材同士を接合しないものに比べて,これを接合したものは 補強コード部材で構成される補強層の剛性を向上させることができ,その接合面積\nが広いほど補強層の剛性が向上し,補強層が接合されるタイヤ骨格部材の剛性を向 上させることができることが知られていた。そして,補強コード部材(被覆コード 部材)の断面形状が円形状のものよりも,略四角形状のものの方が,タイヤ軸方向に隣接する補強コード部材同士の接合面積を広くし得ることは,明らかである。
以上によると,タイヤ軸方向に隣接する被覆コード部材同士を溶融接合している 甲1発明において,前記(6)の周知技術を適用して,断面形状が円形状の被覆コード 部材に代えて,これと適宜選択可能な関係にある断面形状が略四角形状の被覆コー\nド部材を採用することは,当業者が容易に想到し得るものと認められる。 イ 前記(2),(3)のとおり,周知文献3には,断面形状が略四角形状であり, タイヤ軸方向に隣接する部分同士が接合(溶着)された補強コード部材22につい て,クラウン部16に一部が埋め込まれても構わないことが記載され(【0046】,\n【0049】,【0050】,【0053】),また,周知文献2には,断面形状が略四角形状であり,タイヤ軸方向に隣接する部分同士が接合(溶着)された補強コード 部材22について,長手方向の両端部22Aがクラウン部16に埋め込まれて長手 方向の中間部22Bよりもクラウン部16の内周面16B側に配置されるのであれ ば,長手方向の中間部22Bがクラウン部16に埋め込まれても構わないことが記\n載されている(【0057】,【0058】,【0061】,【0063】)。 そうすると,タイヤ軸方向に隣接する被覆コード部材同士を溶融接合している甲 1発明において,前記(6)の周知技術を適用して,断面形状が円形状の被覆コード部 材に代えて,これと適宜選択可能な関係にある断面形状が略四角形状の被覆コード\n部材を採用することに,製造上の阻害要因があるものとは認められない。

◆判決本文

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平成29(ネ)10090  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年4月4日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 漏れていたのでアップします。知財高裁も、1審と同様に、数値範囲がその範囲であったとはいえないとして、先使用権を有しないと判断しました。なお、知財高裁は、傍論ですが、仮にその範囲であったとしても、同じ技術思想とはいえないとして、先使用ではないと判断しています。

 実際に用いられていたアルミピロー包材と同じ品番のアルミピロー包材の中に は,底部の折り曲げ部分のアルミが剥がれているものもある(甲18,26)。ま た,防湿性を確保したアルミピローの製造は,医薬品メーカーの管理方法を含めた 製造方法に大きく依存する旨指摘されている(乙48)。実際に用いられていたア ルミピロー包材に対して,専門家による立会いの下,リーク試験が行われ,気密性 が担保されていることが確認された旨報告されているものの(乙49),同リーク 試験は,検体を水没させ,一定の減圧条件(槽内圧力−40kPa,保持時間30 秒間)において,気泡が発生しないことを目視検査するというものである。水没試 験による気泡確認によって医薬包装の完全性を試験する方法は,個人の技量による 判別量の差や水槽内の細菌・水の表面張力による検出限界などの問題を有する旨指\n摘されているほか,−40kPaの圧力下において,直径5μmの孔からは5分経 過後も気泡が確認できず,直径10μmの孔においても,気泡の発生にばらつきが みられるとされている(甲27)。上記リーク試験の結果をもって,実際に用いら れたアルミピロー包材が気密性を有していたと確定することはできない。そうする と,サンプル薬が,長期間にわたって,アルミピロー包装下で保管されている間に, 湿気の影響を受けて水分含量が増加した可能性も,十\分にあり得るものである。 なお,サンプル薬の測定時の水分含量と,実生産品の水分含量(後記ウ(ア))や, 203サンプル薬を再製造したとされる錠剤の水分含量(2.18〜2.26質量%。 乙54〜56)は,ほぼ同じである。しかし,そもそも,サンプル薬と,実生産品 や203サンプル薬の再製造品が同一工程により製造されたものとは認められない から,この事実をもって,サンプル薬の測定時の水分含量が,製造時の水分含量と ほぼ同じであったということはできない。
(ウ) したがって,サンプル薬の測定時の水分含量が本件発明2の範囲内である からといって,4年以上も前の製造時の水分含量も本件発明2の範囲内であったと 推認できるものではない。
・・・
以上のとおり,サンプル薬を製造から4年以上後に測定した時点の水分含量 が本件発明2の範囲内であるからといって,サンプル薬の製造時の水分含量も同様 に本件発明2の範囲内であったということはできない。また,実生産品の水分含量 が本件発明2の範囲内であるからといって,サンプル薬の水分含量も同様に本件発 明2の範囲内であったということはできない。かえって,サンプル薬の顆粒の水分 含量を基に算出すれば,サンプル薬の水分含量は本件発明2の範囲内にはなかった 可能性を否定できない。その他,サンプル薬の水分含量が本件発明2の範囲内にあ\nったことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,控訴人が,本件出願日までに製造し,治験を実施していた本件2m g錠剤のサンプル薬及び本件4mg錠剤のサンプル薬の水分含量は,いずれも本件 発明2の範囲内(1.5〜2.9質量%の範囲内)にあったということはできない。
(3) サンプル薬に具現された技術的思想
ア 仮に,本件2mg錠剤のサンプル薬又は本件4mg錠剤のサンプル薬の水分 含量が1.5〜2.9質量%の範囲内にあったとしても,以下のとおり,サンプル 薬に具現された技術的思想が本件発明2と同じ内容の発明であるということはでき ない。
イ 本件発明2の技術的思想
前記1のとおり,本件発明2は,ピタバスタチン又はその塩の固形製剤の水分含 量に着目し,これを2.9質量%以下にすることによってラクトン体の生成を抑制 し,これを1.5質量%以上にすることによって5−ケト体の生成を抑制し,さら に,固形製剤を気密包装体に収容することにより,水分の侵入を防ぐという技術的 思想を有するものである。
ウ サンプル薬に具現された技術的思想
(ア) 控訴人が,本件出願日前に,サンプル薬の最終的な水分含量を測定したと の事実は認められない。
(イ) また,203サンプル薬及び303サンプル薬の製造工程では,A顆粒及 びB顆粒の水分含量を乾燥減量法による測定において●●●●●●●●にする旨定 められているものの(乙23の1・2,25の1・2),A顆粒及びB顆粒以外の 添加剤の水分含量は不明である。また,サンプル薬には吸湿性の高い崩壊剤や添加 剤が含まれているにもかかわらず,打錠時の周囲の湿度,気密包装がされるまでの 管理湿度などは不明である。 そうすると,サンプル薬に含有されるA顆粒及びB顆粒の水分含量について,● ●●●●にする旨定められているからといって,控訴人が,サンプル薬の水分含量 が一定の範囲内になるよう管理していたということはできない。
(ウ) さらに,012実生産品及び062実生産品の製造工程では,B顆粒の水 分含量を乾燥減量法による測定において●●●●●●●にすると定められており (乙24,26の1・2),サンプル薬と実生産品との間で,B顆粒の水分含量の 管理範囲が●●●●●●●●から●●●●●●●●へと変更されている。控訴人は, サンプル薬の水分含量には着目していなかったというほかない。
(エ) したがって,控訴人は,本件出願日前に本件2mg錠剤のサンプル薬及び 本件4mg錠剤のサンプル薬を製造するに当たり,サンプル薬の水分含量を1.5 〜2.9質量%の範囲内又はこれに包含される範囲内となるように管理していたと も,1.5〜2.9質量%の範囲内における一定の数値となるように管理していた とも認めることはできない。
エ 以上のとおり,本件発明2は,ピタバスタチン又はその塩の固形製剤の水分 含量を1.5〜2.9質量%の範囲内にするという技術的思想を有するものである のに対し,サンプル薬においては,錠剤の水分含量を1.5〜2.9質量%の範囲 内又はこれに包含される範囲内に収めるという技術的思想はなく,また,錠剤の水 分含量を1.5〜2.9質量%の範囲内における一定の数値とする技術的思想も存 在しない。 そうすると,サンプル薬に具現された技術的思想が,本件発明2と同じ内容の発 明であるということはできない。
オ 控訴人の主張について
(ア) 控訴人は,水分含量によってピタバスタチン製剤のラクトン体が生成する ことは技術常識であったから,控訴人は,本件2mg錠剤及び本件4mg錠剤の治 験薬製造前から,錠剤中の水分含量を管理する必要性を認識していたと主張する。 しかし,一般的に,医薬組成物において製剤中の水分が類縁物質生成の原因にな るという技術常識(乙8〜10)や,ピタバスタチンについては水分含量を調整し なければならないという技術常識(乙12〜14,20,57)が認められるとし ても,水分含量の調整方法は様々であるから,このような技術常識のみから,ピタ バスタチン又はその塩と特定の崩壊剤から成る錠剤であるサンプル薬について,錠 剤としての水分含量を一定の範囲内となるように管理することを控訴人が認識して いたといえるものではない。 したがって,本件出願日前の技術常識をもって,控訴人がサンプル薬の水分含量 を管理する必要性を認識していたということはできない。
(イ) 控訴人は,サンプル薬について,水分含量を調整することにより,水分に よる影響を受ける類縁物質が生成しない,長期安定な薬剤を製造する点は,確定し ていた旨主張する。 しかし,控訴人が,サンプル薬について,ラクトン体及び5−ケト体の生成の程 度について測定し,安定な製剤であることを確認していたとしても,前記のとおり, 控訴人が,サンプル薬を製造するに当たり,その水分含量を1.5〜2.9質量% の範囲内又はこれに包含される範囲内となるように管理していたとも,1.5〜2. 9質量%の範囲内における一定の数値となるように管理していたとも認めることは できない。サンプル薬において,5−ケト体の生成を抑制できていたとしても,こ れをもって,控訴人が,サンプル薬の水分含量を1.5質量%以上に管理していた と推認できるものではなく,また,これが,控訴人がサンプル薬の水分含量を1. 5質量%以上に管理するという技術的思想を有していた結果として生じたものと評 価できるものでもない。 したがって,サンプル薬について,何らかの方法を採用することにより,水分に よる影響を受ける類縁物質が生成しない,長期安定な薬剤を製造する点が確定され ていたとしても,これをもって,サンプル薬に具現された技術的思想が,本件発明 2と同じ内容の発明であるということはできない。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成27(ワ)30872 (東京地裁29部)

 本件出願日(平成24年8月8日)までに,被 告の社内において,本件発明2の内容を知らないでこれと同じ内容の発明がされて いた(被告が被告の従業員等から当該発明を知得していた)と認めることは困難で あるし,この点を措くとしても,後記(3)のとおり,本件出願日までに,本件2mg 製品及び被告製品(本件4mg製品)の内容が,本件発明2の構成要件Eを備える\nものとして,一義的に確定していたと認めることはできず,本件発明2を用いた事 業について,被告が即時実施の意図を有し,かつ,その即時実施の意図が客観的に 認識される態様,程度において表明されていたとはいえないから,被告に先使用権\nが成立したということはできない。
・・・
しかし,被告の提出に係る書証からは,実生産品とサンプル薬が同一の工程によ り製造されたものであると直ちに認めることは困難である。すなわち,本件で問題 となるのは,「PTP包装してなる医薬品」を構成する「錠剤」の「水分含量」が\n「1.5〜2.9質量%」の範囲となるよう管理されていたか否かであるところ, 水分は,有効成分でないばかりか,積極的な添加物でもなく,不純物として扱われ るものでもないため,錠剤が製造された後,PTP包装された状態で,錠剤の水分 含量がいかなる値となるかという観点から工程の同一性を論じるためには,被告の 提出に係る全ての書証をもってしても,情報が不足しているというほかはない(少 なくとも,打錠工程の湿度環境や打錠後の保管条件は,PTP包装された錠剤の水 分含量に影響するといわざるを得ないが,被告の提出にかかる書証では,これらの 条件は明らかにされていない。)。
イ 被告は,本件2mg錠剤のサンプル薬(ロット番号:PTVD−203)及 び本件4mg錠剤のサンプル薬(ロット番号:TVD−303)の水分含量につい て,いずれも本件発明2の構成要件Eの数値範囲内にあったと主張し,乙32号証\n(以下「乙32実験報告書」という。)を提出する。 しかし,乙32実験報告書に示される本件2mg錠剤のサンプル薬(ロット番号: PTVD−203)及び本件4mg錠剤のサンプル薬(ロット番号:TVD−30 3)の水分含量の測定値は,これらの錠剤が製造されたとされる日から4年以上が 経過した時点のものである。そして,被告ないし同報告書の説明するところによれ ば,これらの錠剤は,その製造後,PTP包装とアルミピロー包装がされ,その状 態により,被告の中央研究所の検体保管庫に温度20℃,成り行き湿度(実測値: 75%RH)で保存されていたものであり,検体1錠をPTP包装から取り出して, 乳鉢で粉砕してカールフィッシャー法により水分測定を行ったというのであるが, 上記の条件下で4年以上が経過しても,錠剤の水分含量がそのまま保持されること を直接裏付ける証拠はない。 かえって,1)本件2mg製品の使用期限が2年6か月とされ,本件4mg製品(被 告製品)の使用期限が3年とされていること(甲4〔52頁〕)からすれば,4年 以上という期間は,予定されている保存期間を大きく超えるものであって,水分含\n量を含む錠剤の状態に影響を及ぼす可能性を否定できないこと,2)ピタバスタチン からラクトンが生成する反応は,脱水縮合であって,水が脱離することから,水分 含量増加の原因となり得ること,3)アルミピロー包装に使用される材料の防湿性が 高いことがうかがわれる(乙33)としても,PTP包装された上記サンプル薬を 収納したアルミピロー包装には,チャックがついていて(乙32,39),当該材 料のみでは構成されてはおらず,また,湿気等の影響を受けやすい商品の包装には\n充分に注意する必要があるとされていること(甲18),4)PTP包装やアルミピ ロー包装が施された他の医薬品について,所定の保存期間経過後に水分含量が増加 しているとみられる例があること(甲15,19)などからすれば,PTP包装と アルミピロー包装により,直ちに上記サンプル薬の水分含量の増加が完全に抑えら れていたと断ずることは,困難である。
被告は,上記サンプル薬の水分含量がそれぞれ本件2mg錠剤の実生産品(ロッ ト番号:B062)及び本件4mg錠剤の実生産品(ロット番号:B012)とほ ぼ同じ値であることから,保存期間中の吸湿の可能性が否定される旨主張するよう\nであるが,かかる被告の立論は,本件2mg錠剤のサンプル薬が本件2mg錠剤の 実生産品と同一の工程により製造され,また,本件4mg錠剤のサンプル薬が被告 錠剤(本件4mg錠剤の実生産品)と同一の工程により製造されていたことを前提 とするものであるところ,既に説示したとおり,本件2mg錠剤のサンプル薬及び 本件4mg錠剤のサンプル薬が,それぞれ本件2mg錠剤の実生産品や本件4mg 錠剤の実生産品(被告錠剤)と同一の工程により製造されたと認めるに足りる証拠 はないものというべきである。

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平成30(行ケ)10034  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月20日  知的財産高等裁判所

 サポート要件違反として無効とした審決が維持されました。また、「第2予告により,上記無効理由に関しては,実質的に見て原告に訂正の機会が与えられたものといえる。よって,新規性及び進歩性との関係では,第2予\告の後更に審決の予告をすべき場合には当たらない」として、審決の予\告も不要と判断しました。

2 取消事由1(手続違背)について
(1) 審判長は,特許無効審判の事件が審決をするのに熟した場合,審判の請求に 理由があると認めるときその他の経済産業省令で定めるときは,審決の予告を当事\n者等にしなければならない(特許法164条の2第1項)。上記「経済産業省令で 定めるとき」として,特許法施行規則50条の6の2が規定されている。同条3号 は,同条1号又は2号に掲げる審決の予告をした後であって事件が審決をするのに\n熟した場合にあっては,「当該審決の予告をしたときまでに当事者…が申\し立てた 理由又は特許法153条第2項の規定により審理の結果が通知された理由(当該理 由により審判の請求を理由があるとする審決の予告をしていないものに限る。)に\nよって,審判官が審判の請求に理由があると認めるとき」は,審決の予告をしなけ\nればならない旨規定する。 この規定によれば,先に行われた審決の予告までに当事者が申\し立てた理由のう ち,当該予告において判断が留保され又は有効と判断された理由につき特許を無効\nにすべきものと判断する場合のように,「当該理由により審判の請求を理由がある とする審決の予告をしていない」場合は,実質的に訂正の機会が与えられなかった\nものであり,再度の審決の予告をしなければならない。他方,そうでない場合,す\nなわち,先に行われた審決の予告と実質的に同じ内容の理由により特許を無効にす\nべきものと判断する場合のように,実質的に訂正の機会が与えられていた場合は,審判長は,更に審決の予告をする必要はないものと解される。審決予\告の制度は, 特許無効審判の審決に対する審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求につき,それに 起因する特許庁と裁判所との間の事件の往復による審理の遅延ひいては審決の確定 の遅延を解消する一方で,特許無効審判の審判合議体が審決において示した特許の 有効性の判断を踏まえた訂正の機会を得られるという利点を確保するために,審決 取消訴訟提起後の訂正審判の請求を禁止することと併せて設けられたものであると ころ,上記の解釈は,この制度趣旨にかなうものである。
(2)第1予告及び第2予\告の内容等
ア 第1予告\n
第1予告で示された認定判断のうち,サポート要件に係る部分は,以下のとおり\nである。
(ア) 本件特許に係る発明の課題
「補償膜において,広い視野範囲にわたり,例えば輝度の増大といった光学的性 質を改善すること」,及び「補償膜を構成する重合性液晶組成物を製造するにあた\nり,配向,及び重合に高温を要しないものとすること」である。
(イ) 判断
a 「補償膜において,広い視野範囲にわたり,例えば輝度の増大といった光学 的性質を改善する」という課題は,「ホメオトロピック配向または傾斜したホメオ トロピック配向を有する補償膜」とすることにより解決されるものである。
b 当時の請求項1記載の発明は,「補償膜において,広い視野範囲にわたり, 例えば輝度の増大といった光学的性質を改善する」という課題を解決するものであ る。 また,当該発明の発明特定事項は全文訂正明細書に記載されている。 したがって,当該発明は,発明の詳細な説明において,発明の課題が解決できる ことを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとはいえない。
c 当時の請求項4〜14記載の発明についても同様である。
d したがって,当時の請求項1,4〜14記載の発明は,発明の詳細な説明に 記載されたものではないとはいえない。
イ 第2予告\n
第1予告を受け,原告は,平成28年2月8日付け訂正請求を行った。第2予\告 は,これを受けて行われた。
(ア) サポート要件について
a 当時の請求項1,4〜14及び25〜32の解決しようとする課題
上記ア(ア)に同じ。
b 当該課題を解決するための手段
「重合性メソゲン物質の混合物の重合あるいは共重合によって得られる少なくと\nも1つのアニソトロピックポリマー層がホメオトロピックまたは傾斜したホメオト\nロピック分子配向を有する補償膜,および該補償膜を備えた液晶表示デバイスの提\n供」をするものである。
c 判断
(a) 当時の請求項1記載の発明の「式 I」の定義を満たすメソゲンの全てが\n「ホメオトロピック又は傾斜したホメオトロピック分子配向を有する補償膜」を好 適に作製できる範囲にあるとは認められない。 当該発明の「式 I」を満たすメソゲンの中には,置換基における炭素数が1つ違\nうだけでも,その液晶としての物性が大きく異なる場合が存在しており,メソゲン\nの分子量や立体構造や極性基の有無などによっても,その液晶としての物性が大き\nく異なることも当業者の技術常識であるから,当時の全文訂正明細書の例1A〜例 2において試験された化合物(1)〜(6)以外のメソゲンの全てが「ホメオトロピックま\nたは傾斜したホメオトロピック分子配向を有する補償膜」を好適に作製できる範囲 にあるとは認められない。
(b) 当時の請求項4〜14及び25〜32記載の発明についても同様である。
(c)したがって,当時の請求項1,4〜14及び25〜32記載の発明は,発明 の詳細な説明に記載されたものではない。
(イ) 新規性及び進歩性について
a 引用発明の認定
第2予告において認定された甲1記載の発明(以下「甲1の2発明」,「甲1の\n3発明」という。)は,以下のとおりである。
(a) 甲1の2発明
偏光板と液晶セルの間に光学補償板として使用できる光学異方フィルムを配置す る液晶表示素子であって,前記光学異方フィルムは,下記の式(I)の化合物25 重量部,
下記の式(m)の化合物25重量部,
下記の式(a)の化合物50重量部
からなる重合性液晶組成物99重量部と光重合開始材1重量部から成る重合性液晶組成物を光重合させて得られた,ホモジニアス配向の光学異方フィルムである, 前記液晶表示素子(判決注:上記式(I),(m)及び(a)は,別紙2「引用発 明」記載1のものと同一である。)。
(b) 甲1の3発明
重合性液晶組成物を光重合させて得られた,光学補償板として使用することがで きるホメオトロピック配向の光学異方フィルムであって,下記の式(a)の化合物 50重量部, 及び下記の式(d)の化合物50重量部 からなる重合性液晶組成物100重量部と光重合開始剤1重量部からなる重合性 液晶組成物を,2枚のガラス基板の間に挟持させ,ホメオトロピック配向している ことを確認した後,紫外線を照射して光重合させて得られた,前記光学異方フィル ム(判決注:上記式(a)及び(d)は,別紙2「引用発明」記載2のものと同一 である。)。
b 当時の請求項14記載の発明について
当時の請求項14記載の発明は,甲1の2発明であるから,特許法29条1項3 号に該当する。
(ウ) 第2予告を受け,原告は,本件訂正請求を行った。\n
(3) サポート要件について
ア 本件審決と第2予告は,いずれもサポート要件につき,特許請求の範囲の記\n載は,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件訂正発明の課題を解決できると 認識できる範囲のものであるとは認められず,また,その記載や示唆がなくとも当 業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲の ものであるとも認められないとして,サポート要件に適合しないと判断したもので ある。
イ 本件訂正発明の解決しようとする課題
(ア) 本件審決が認定した本件訂正発明の解決しようとする課題は,前記第2の 3(2)アのとおりである。また,第2予告が認定した本件訂正発明の解決しようとす\nる課題は,前記(2)イ(ア)aのとおりである。
(イ) 本件審決と第2予告がそれぞれ認定した本件訂正発明の解決しようとする課題は,表\現こそ異なるものの,実質的には同じ内容を意味するものと理解される。
ウ 以上によれば,サポート要件との関係では,サポート要件違反により審判の 請求を理由があるとする第2予告の後,原告には実質的に訂正の機会が与えられた\nものといえるから,更に審決の予告をすべき場合には当たらない。\n
(4) 新規性及び進歩性について
ア 本件審決及び第2予告において判断の対象とされた新規性・進歩性の判断に\n当たり対比される主引用例は,いずれも甲1(引用例)であり,同一である。
イ 引用発明の認定
(ア) 本件審決の認定した引用発明1A及び1Bは,前記第2の3(3)のとおりで ある。また,第2予告が認定した甲1の2発明及び甲1の3発明は,前記(2)イ(イ) aのとおりである。
(イ) 引用発明1Bと甲1の3発明とを対比すると,本件審決の認定と第2予告\nの認定は同一である。他方,引用発明1Aと甲1の2発明については,本件審決で は式(N−a)の化合物を含むのに対し,第2予告ではこれを含まない点その他の\n点で,液晶表示素子に係る混合物を構\成する重合性液晶組成物の一部が相違する。 しかし,甲1を主引用例として認定された引用発明に基づき,新規性又は進歩性 が欠如するとの無効理由により審判の請求を理由があるとする第2予告により,上\n記無効理由に関しては,実質的に見て原告に訂正の機会が与えられたものといえる。 よって,新規性及び進歩性との関係では,第2予告の後更に審決の予\告をすべき 場合には当たらない。
(5) まとめ
以上のとおり,本件審決は,第2予告をしたときまでに当事者が申\し立てた理由 で,当該理由により審判の請求を理由があるとする審決の予告をしたものを判断の\n対象としたものであり,「当該理由により審判の請求を理由があるとする審決の予\n告をしていないとき」に該当しないから,第2予告の後更に審決の予\告をしなけれ ばならない場合には当たらない。 したがって,再度の審決の予告をしないまま審決をしたことにつき,本件審決に\n違法はない。
(6) 原告の主張について
ア 原告は,本件審決が認定した本件訂正発明の課題は第2予告で認定されたも\nのと異なるなどと主張する。 しかし,本件訂正明細書においては,液晶表示デバイスの補償膜に係る従来技術\n及びそれが抱える欠点等につき前記1(1)ア(イ)のとおり説明し,これを受ける形で, 「本発明の課題の一つは」などとして,前記1(1)ア(ウ)のとおり,解決しようとす る課題及び本件訂正発明がこの課題を解決できる旨が記載されている。本件審決は, これを踏まえ,本件訂正発明の課題を認定したものと理解される。 他方,第2予告においても,これらと同旨の記載が当時の全文訂正明細書にある\nことを根拠に,発明の課題の認定が行われている。 このことと,第2予告の認定において,「補償膜において,・・・光学的性質を改善\nすること」と「補償膜を構成する・・・高温を要しないものとすること」とは「及び」\nにより接続されていることを踏まえると,本件審決と第2予告とがそれぞれ認定した発明の課題が異なるものということはできない。\nなお,原告は,課題の認定につき,第1予告では,第2予\告と同様の認定がされ ながらサポート要件を満たすものとして通知されていたために,それ以降サポート 要件についての議論はさほどされなかったなどといった経緯から,第2予告のサポ\nート要件違反の理由につき,本件審決において変化する理由は推測できないなどと 指摘する。
しかし,上記のとおり,本件審決と第2予告とで認定した発明の課題が異なると\nはいえない上,特許法施行規則50条の6の2第3号に基づく審決の予告と理解さ\nれる第2予告においてサポート要件違反とする理由が明確に示され,原告もこれに\n対する反論を現に行っていること(甲68−1)に鑑みると,第1予告の内容がど\nうであれ,第1予告から第2予\告,その後の本件審決へと至る経緯を考慮しても, 本件審決に先立ち,第3の審決の予告を行って原告に主張立証や訂正の機会を与え\nなければならないとはいえない。
イ 原告は,本件審決が第2予告で指摘していない式Iの例をサポート要件違反\nの根拠とし,また,審尋における質問に対する回答によって一旦解消した問題を不 意打ち的に蒸し返して判断したなどと主張する。 しかし,本件審決が括弧書で示した化合物は,実施例記載の具体的な化合物(1)〜 (6)以外のメソゲンが本件訂正発明の課題を解決しないことを説明するための例示に\nすぎず,その記載の有無が結論に影響を及ぼすものではない。その意味で,これら が第2予告において示されていなかったとしても,再度の審決の予\告を行い訂正の 機会を与える必要性を裏付けるものとはいえない。 また,原告主張に係る審尋における審判合議体の質問で例示された化合物に関し ては,「その「重合性基(P)」がアクリレート基であるとした場合に,その「P −Sp−」の選択肢として,例えば「CH2CHCOO−O−(CH2)m−」や 「CH2CHOO−OCOO−(CH2)m−」のような化学構造のものまでもが本\n件第2訂正発明1の範囲に含まれてしまいます。」とされている。他方,本件審決 で例示されたものは,「Pがプロペニルエーテル基又はエポキシ基であり,Spが −O−CH2−C≡CH2−O−であり,Xが−O−である場合のメソゲン物質」(本件訂正発明1)や「Pがプロペニルエーテル基であり,Spが−O−CH2−C≡C−CH2−O−CH2−O−COO−CH2−CO−S−であり,Xが−O−である場合のメソ\ゲン物質」(本件訂正発明4,5,7,8,10〜14,25〜34),「Pがプロペニルエーテル基であり,Spが−O−CH2−O−であり, Xが−O−である場合のメソゲン物質」(本件訂正発明6)であり,第2予\告で例 示された化合物と一致しない。そうである以上,上記「解決済み」との原告の主張 は,その前提を欠く。
ウ 原告は,本件訂正発明に係る好適なホメオトロピック配向の効果の有無を認 定することがないまま審決に至った点で,本件審決には審理不尽があるなどと主張する。
しかし,本件審決は,本件訂正発明のうち進歩性を欠くとしたものについては, いずれもその判断において,発明の効果につき「当業者が予測し得る範囲内のもの\nである。」旨の判断を示している。そうである以上,本件審決に至る審理において 本件訂正発明の効果に関する検討が行われていないとはいえない。
エ 原告は,第2予告における引用発明が本件審決において別の発明にすり替わ\nっており,その変更の理由も述べられていないことと併せ,本件審決には手続違背 があるなどと主張する。 しかし,本件審決における引用発明1Aと第2予告における甲1の2発明とで相\n違があるとしても,実質的に見て,第2予告により原告には訂正の機会が与えられ\nたものといえることは,前記のとおりである。
オ 原告は,本件訂正発明14につき,第2予告では新規性欠如との理由が示さ\nれていたのに対し,本件審決では新規性及び進歩性欠如の理由が示されており,無 効理由が実質上も形式上も一致していないなどと主張する。 しかし,第2予告においても,その当時の訂正発明14につき新規性欠如及び進\n歩性欠如がいずれも無効理由として主張され,判断の対象とされていた(甲66)。 このこと及び第2予告後に請求項14の訂正を含む本件訂正請求が行われたことに\n鑑みると,審判合議体が審決に当たり新規性についてのみならず進歩性についても 判断を示す必要があると考えたとしても,再度更に審決の予告をして原告に訂正の\n機会を与える必要があるとはいえない。
・・・・
3 取消事由2(サポート要件違反の判断の誤り)について
(1) 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲 の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が, 発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当 該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,発明の詳 細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課 題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもので ある。そして,サポート要件の存在は,特許権者が証明責任を負うものと解される。
・・・・
ア 前記のとおり,特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには, 明細書の発明の詳細な説明に,当該発明の課題が解決できることを当業者において 認識できるように記載しなければならない。そして,本件訂正発明におけるメソゲ\nン化合物a,a1,a2を定義する式 I ないし I’は,請求項によってその具体的 内容を多少異にするものの,いずれも当該式を構成する重合性基P,スペーサー基\nSp,結合基X,メソゲン基MG,末端基Rといった基本骨格部分において非常に\n多くの化合物を含む表現である上,これらに結合する置換基の選択肢も考慮すれば,\nその組合せによって膨大な数の化合物を表現し得るものとなっている。\nこのような場合に,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合する ためには,発明の詳細な説明は,上記式が示す範囲と得られる効果との関係の技術 的な意味が,特許出願時において,具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載するか,又は,特許出願時の技術常識を参酌して,当該式が示す範囲内で あれば,所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に,具体例を開示 して記載することを要するものと解するのが相当である。換言すれば,発明の詳細 な説明に,当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる程度に,具体例を開 示せず,特許出願時の当業者の技術常識を参酌しても,特許請求の範囲に記載され た発明の範囲まで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できる とはいえない場合,サポート要件に適合するとはいえない。
イ 前記のとおり,本件訂正発明におけるメソゲン化合物a,a1,a2を定義\nする式 I ないしI’は,その組合せによって膨大な数の化合物を表現し得るものと\nなっている。 他方,本件訂正発明の実施例である例1A〜例3においてメソゲン化合物として\n用いられている化合物(1)〜(8)は,いずれも式 I において,重合性基Pがアクリレー ト基(CH2=CHCOO−),Sp(スペーサー基)が炭素数3又は6個の直鎖 状アルキレン基,Xが−O−,nが1という,化学構造が類似するごく限られた化\n合物に限られる。 例えば,重合性基Pがメタクリレート基であるモノマーを含むと安定な配向を得 にくくなる場合が生じてくることが知られている(乙4)。また,例えばスペーサ ー基Spを構成する(その一部の置換えも含む。)アルキレン基として炭素数が1\nの場合と20の場合とでは化合物の特性が大きく異なることが予測されることなど配合するメソ\ゲン化合物の化学構造がその配向性や配向膜の特性に影響することは,\n現に引用例において様々な構造の化合物につき検討されていることからもうかがわ\nれるように,本件優先日当時における当業者の認識であったと考えられる。そうす ると,本件訂正明細書の発明の詳細な説明における他の記載を参酌しても,補償膜 の調製に用いる混合物につき,上記具体例として示された化合物とは構造が異なる\n化合物を成分とする混合物に係る本件訂正発明の範囲にまで拡張ないし一般化した 場合,すなわち本件訂正発明に係る式 I で表される広範な重合性メソ\ゲン化合物の いずれかを含む混合物とした場合に,これによって,前記認定に係る本件訂正発明 の課題を解決するような補償膜として好適なフィルムが得られるとはいえない。 したがって,本件訂正明細書の発明の詳細な説明に開示されている内容からは, 本件特許の特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発 明であり,本件訂正発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとはいえない。そのように認識できる範囲のものというべき本件特許出願時の技術常識 を認めるに足りる証拠もない。
ウ 本件訂正発明の解決しようとする課題のうち,「高融点を示し配向および重 合に高温を要するという欠点を有していない」点について,本件訂正明細書の発明 の詳細な説明には,「低融点,好ましくは100℃またはそれ以下,特に60℃ま たはそれ以下の融点を有する重合性混合物を使用すると好ましく,これにより低温 で混合物の液晶相において硬化を行うことができる。…60℃以下の硬化温度は特 に好ましい。」との記載がある。加えて,実施例(例1A)には,基板に塗布し, 50℃で溶剤を蒸発させることによってホメオトロピック配向膜を得られることが 示されている。もっとも,「高温を要するという欠点」を回避し得る融点を具体的 に特定する記載はない。
他方,本件訂正明細書で液晶の配向に高温を要する例として掲げたJP05−1 42531(乙1)の【化2】で表される化合物について,引用例には,「108〜211℃という非常に高い温度範囲でネマチック相を示し,実際にこの化合物を\n含有する重合性組成物を液晶状態で重合して作製した光学異方フィルム(カラー偏 光板)は外観も不均一であり,むらが生じる欠点があった。」と記載されている。 また,本件訂正明細書で同様に「高融点を有し,従って配向および重合に高温を要」 するものとして例示された Heynderickx, Broer 等の刊行物(乙2)に記載されて いる‘Scheme 1’の化合物については,引用例にも,「一般式(R−2)において, R5がメチル基の化合物80重量部及びR5が水素原子の化合物20重量部から成 る液晶組成物は,80〜121℃と室温よりかなり高い温度範囲でネマチック層を 示し,また予期しない熱重合に起因してこのような重合性液晶組成物を用いて作製される光学異方フィルムのメソ\ゲンの配向が不均一となるという欠点があった。」 と記載されている。ところが,これらの化合物はいずれも,本件訂正発明に係る式 I で定義される広範な化合物に含まれるのであって,本件訂正明細書の内部でいわ ば記載内容に矛盾を生じている。
そうすると,本件訂正発明に係る式 I で定義されるメソゲン化合物を含む混合物\nは,その全てが本件訂正発明の課題を解決し得る「高融点を示し配向および重合に 高温を要するという欠点を有していない」ものとはいえない。その点からも,本件 訂正明細書の発明の詳細な説明に開示されている内容からは,本件特許の特許請求 の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明であり,本件訂正 発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとはいえず,また,その ように認識できる範囲のものというべき本件特許出願時の技術常識を認めるに足り る証拠もない。

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平成30(行ケ)10078  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月20日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、「甲1発明の目的を達成できなくなるので、阻害要因あり」として、進歩性違反無しとした審決を維持しました。

 前記2(1)イ〜エ,カの記載によれば,甲1発明は,「発泡作用によりマッ サージ効果を得る化粧料について,最高度に気泡が発生することを色によっ て判断できるようにすること」を課題とし,当該課題を,「炭酸水素ナトリ ウムを含む第1剤と,前記炭酸水素ナトリウムと水の存在下で混合したとき に気泡を発生するクエン酸,酒石酸,乳酸及びアスコルビン酸のうちの1又 は2以上の成分を含む第2剤と,前記第1剤と第2剤に夫々分散された異色 のものからなり,混合により色調を変え,使用可能な状態になったことを知\nらせるための2色の着色剤A,Bと,前記第1剤又は第2剤の一方又は双方 に含まれた,化粧料としての有効成分とからなる組成」を有する「常態では 粉状」の化粧料とし,これにより,「2色の着色剤A,Bを第1剤,第2剤 に夫々混合し,使用前,個有(原文のまま)の色分けを行なうとともに使用 時第1,第2両剤を混合し,一定の色調になったときに良く混合したことが 判断できかつ,最適の反応が行なわれる」ようにすることで,解決しようと したものである。すなわち,甲1発明は,最高度に気泡が発生することを色 によって判断できるようにするために,炭酸塩を含む第1剤と酸を含む第2 剤に分けてあえて異色の構成とし,これらを混合することによって色調が変\nわるようにしたものであると認められる。 そうすると,たとえ,アルギン酸ナトリウムが水に溶けにくい性質を持つ ことや,一般的な用時調製型の化粧料において,ジェルと固体(顆粒や粉末 等)の2剤型のものが周知であったとしても,甲1発明において,炭酸塩と 酸が2剤に分離されてそれぞれが異色のものとされている構成を,甲2記載事項の「粉末パーツ」のようにあえていずれか一方(1剤)に統合して複合\n粉末剤等とすると,そもそも甲1発明の目的(2剤の色分けと混合による色 調の変化を利用して最高の発泡状態か否かを判断する)を達成できなくなる ことは明らかであるから,そのような変更を当業者が容易に想到し得るとは いい難く,その意味で,甲1発明に甲2に記載された技術(甲2記載事項) 等を組み合わせようとすることについては動機付けがなく,むしろ阻害要因 があるといえる。
(3) これに対し,原告は,甲1発明は,気泡状の二酸化炭素(炭酸ガス)を経 皮吸収させることを機能の一つとする化粧剤であるから,拡散問題(炭酸ガ\nスが大気中に拡散すること)は甲1発明に内在する自明の課題であるとした上で,甲1発明に対しアルギン酸ナトリウム慣用技術(甲2記載事項)を適 用することについては,自明の課題である拡散問題を軽減するために,閉じ 込め効果(アルギン酸ナトリウムを事前に水に添加して万遍なく行き渡らせ ることにより,網目状の高分子化合物が形成され,気泡状の二酸化炭素〔炭 酸ガス〕を水溶液中に閉じ込めることが可能となること)を利用するという\n積極的な動機付けがある,などと主張する。
しかしながら,甲1発明は,前記のとおり,発泡作用(炭酸ガスの発泡, 破裂作用)によりマッサージ効果を得る化粧料について,最高度に気泡が発 生することを色によって判断できるようにすることを目的とするものであっ て,そこに炭酸ガスを体内に取り込もうとする技術的思想はない(二酸化炭 素の泡がはじけることによる物理的な刺激を効果的に得ようとしているにす ぎない)から,「気泡状の二酸化炭素(炭酸ガス)を経皮吸収させることを 機能の一つとする化粧料」であるとはいえず,原告の主張はそもそもその前\n提において誤りがある。そうである以上,原告主張の拡散問題が甲1発明に 内在する自明の課題であるとはいえないし,甲1発明におけるアルギン酸ナ トリウムは飽くまで気泡発生を助成するための起泡助長剤として添加されて いるにすぎないから(甲1【0013 】),アルギン酸ナトリウムが含まれ ているからといって,それだけで直ちに事前に水に添加して利用する技術(アルギン酸ナトリウム慣用技術)を適用することについての積極的な動機付け があるともいえない。この点,原告は,アルギン酸ナトリウムが増粘剤とし ても機能するものであることを根拠に甲1発明におけるアルギン酸ナトリウ\nムが気泡の発生とその安定化の双方に寄与するものであることを当業者は当 然に認識するとも主張するが,甲1発明の目的を離れた主張であって,論理 に飛躍があり,採用できないというべきである。
また,原告は,阻害要因に関して,甲1は,技術分野の同一性を理由とし て本件発明の課題を解決するための主引例として選択されたものであり,容 易想到性の判断に際して,甲1に記載された目的に反する方向での変更か否 かは関係がない,などとも主張するが,特定の公知文献(公知技術)からの 容易想到性の問題である以上,当該公知文献に記載された目的を度外視した 判断はできないというべきであり,上記主張は,やはり採用できないという べきである。

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◆平成30(行ケ)10077

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平成30(ネ)10060  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成31年3月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 UI関連の発明について、1審では、新規性無しの無効理由ありとして請求棄却されました。1審では、訂正審判がなされ審決が確定しましたが、時期に後れた主張であるして、口頭弁論は再開しませんでした。知財高裁は、構成要件Fが不明瞭のため要件を具備しないと判断されました。被告はAppleです。

 まず,構成要件Fの「入力」との文言の意味について検討する。
 (ア) 本件明細書には,構成要件Fの「入力」の意味を直接定義していると認めるに足りる記載は見当たらない。\n他方で,本件明細書には,複数の箇所で「入力」との文言が使用され ているところ,例えば,段落【0008】の「摩擦力による入力を,直 接的または間接的に検出する」のように「物理的な力を加えること」と の意味や,段落【0012】の「図14は,…文字を入力する例を示し た図である。」のように「コンピュータに情報を与えること」との意味 など,同一の文言であるにもかかわらず文脈によって異なる意味で使用 されている。 なお,本件訂正審決は,本件明細書の段落【0035】及び【006 2】の記載に基づいて,本件発明の「『当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの(判決注:原文のまま)記憶部に\n記憶させる』とは,(背景の変更などの)変更結果を,(フォルダYに 保存することなどの)表示対象に対する情報として記憶することを意味しているといえる。」と判断しているが,これは構\成要件Fの「入力」 は「コンピュータに情報を与えること」を意味すると解したものといえ る。
(イ) この点について,控訴人は,構成要件Fの「入力」は,「力入力検出手段」により検出された当該表\示対象に対する「力入力」,すなわち「物理的な力を加えること」を意味すると主張する。 しかし,この解釈は,構成要件H,A及びDでは,「物理的な力を加えること」として「力入力」との文言が明示的に使用されているにもか\nかわらず,構成要件Fでは敢えて「入力」のように異なる文言が使用されていることと整合しない。\n
また,構成要件Fの「入力」は,「当該変更結果」,すなわち,「保持された表\示対象以外の表\示態様を変更することにより,当該表\示対象を相対的に変更させた結果」を目的語としていると解し得るところ,こ の場合に「入力」を「物理的な力を加えること」と解釈することは不自 然である。さらに,「として」は,前に置かれた語を受けて,その状態, 資格,立場等であることを表す語であるところ,「入力」を「物理的な力を加えること」と解すると,「入力として・・・記憶させる」との文言が\n意味するところを理解できないというべきである。
(ウ) 控訴人は,本件訂正審決が「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として・・・記憶部に記憶させる」とは,「(背景の変更などの)変更結\n果を,(フォルダYに保存することなどの)表示対象に対する情報として記憶することを意味している」と判断したことを指摘して,当該判断\nは控訴人の上記主張と整合するとも主張する。 しかし,「物理的な力を加えること」と「コンピュータに情報を与え ること」とは別個の概念であるから,構成要件Fの「入力」を「物理的な力を加えること」と解した上で,本件訂正審決の判断のように「コンピュータに情報を与えること」との意味をも有すると直ちに理解することは困難である(物理的な力が加わったことをコンピュータに検出させる場合には,両者の意味が重なっているともいい得るが,本件においては,上記説示のとおり,少なくとも「物理的な力を加えること」と解することは不自然であるから,両者の意味が重なっている場合と断ずることもできない。)。\n
(エ) 以上によれば,控訴人の主張によっては,構成要件Fの「入力」の意味を一義的に理解することは困難であるというほかない。\n
イ 仮に,構成要件Fの「入力」を,本件訂正審決が判断したように,「コンピュータに情報を与えること」と解したとしても,次のとおり,構\成要件Fの意義は依然として不明確であるというべきである。
(ア) 構成要件Fの「当該表\示対象」は,構成要件Cの「前記位置入力手段にて検出された位置の表\示対象」をいうと解される。本件明細書には,この「表示対象」の意味についても,直接定義していると認めるに足りる記載は見当たらないものの,発明の詳細な説明の記載に照らせば,アイコン等(【0021】),アイコンや文字列等(【0029】),アイコンや文字,記号,図形,立体表\示対象など(【0035】)がこれに当たるものと解される。 しかし,表示画面にアイコン等を表\示させ,利用者が当該表示画面に接触した位置を検出し,当該接触位置に応じて処理を行う入出力装置においては,表\示画面に表示するアイコン等のデータそのもの(例えば,スマートフォンの画面に表\示されているカメラ様の画像データ)と,当該アイコン等と紐づけされた実体(例えば,カメラアプリケーション) とは,別個のものとされていることが多いと解されるところ,本件明細 書の記載を精査しても,本件発明における「表示対象」が具体的にどのようなものであるのかは明らかといえない。\n
(イ) また,上記ア(イ)のとおり,構成要件Fの「当該変更結果」は,「保持された表\示対象以外の表示態様を変更することにより,当該表\示対象を相対的に変更させた結果」と解し得るところ,「相対的に変更させた結果」についても,背景として設定されている画像が移動したピクセル数や,保持された表示対象と重なることとなったアイコン等の有無及びその種類など,さまざまなものがあり得る。\n そして,構成要件Fによれば,この「相対的に変更させた結果」は,「当該表\示対象」に対する情報として与えるものであるが,ある対象に与え得る情報は,当該対象がアプリケーションかデータかや,その実装方法によっても大きく異なるものと解される。 そうすると,上記(ア)のとおり,「当該表示対象」が具体的に意味するところが明らかでない上に,「相対的に変更させた結果」の意味内容も特定されていないことを考え合わせると,「当該変更結果を当該表\示対象に対する入力として記憶部に記憶させる」の意義も明らかでないというべきである。
(ウ) この点に関し,本件訂正審決は,本件明細書の段落【0035】及び 【0062】の記載に基づいて,「当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの(判決注:原文のまま)記憶部に記憶させる」とは,「表\示要素『B』のデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存することを意味している」と判断した。しかし,本件訂正審決の説示においても,「表示要素『B』のデータ」がいかなるデータであるのかが具体的に特定されているとはいい難い。\n また,本件明細書の段落【0035】記載の「フォルダX」及び「フォルダY」と段落【0062】記載の「WINDOW1」及び「WINDOW2」の関係も明らかでなく,いかなる情報が「相対的に変更させた結果」に該当し,「フォルダXからフォルダYに移動させ」ると理解することになるのかについても具体的な指摘がされているとはいえない。
ウ 以上検討したところによれば,結局のところ,構成要件Fの意義は不明確というべきである。そして,構\成要件Fの意義が不明確である以上,被告各製品が構成要件Fを充足すると認めることはできない。\n

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1審はこちらです。

◆平成29(ワ)14142

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平成30(行ケ)10086  審決取消請求事件  実用新案権  行政訴訟 平成31年3月20日  知的財産高等裁判所

 実用新案権について、サポート要件、明確性要件が争われました。知財高裁は、無効理由なしとした審決を維持しました。争点は、連結固定の手法が特定されていない「介して」の用語が明確か否かです。

 本件考案1の実用新案登録請求の範囲の分説Bには,「前記底座体の前 部に回動自在に設置された第一駆動ホイールが第一モータに連結され,前 記第一駆動ホイールに第一偏心軸の入力端部が固定されると共に,前記第 一偏心軸の出力端部は第三8字形リンクロッドを介して前記上板の前部に 連結され,」(第一駆動系)と,分説Cには,「前記底座体の後部に回動 自在に設置された第二駆動ホイールが第二モータに連結され,第二駆動ホ イールに第二偏心軸の入力端部が固定されると共に,第二偏心軸の出力端 部はリンクロッドを介して前記中心軸に連結された」(第二駆動系)と記 載されている。そして,「介して」は「間におく。さしはさむ。中に立て る。」といった意味であるが(甲6,7),このような実用新案登録請求 の範囲の記載のみからは,「第一偏心軸の出力端部」と「上板の前部」と が「第三8字形リンクロッド」を「介して」どのように連結固定されるの か,「第二偏心軸の出力端部」と「中心軸」とが「リンクロッド」を「介 して」どのように連結固定されるのかが必ずしも明らかではない。 そこで,本件考案の技術的意義について,本件明細書の記載をみるに, 本件明細書の【0007】〜【0009】,【図1】及び【図2】には, 「底座体4」,「上板1」,「中心軸2」,「第一8字形リンクロッド8 1」,「第二8字形リンクロッド82」,「第一モータ91」,「第一駆 動ホイール61」,「第一偏心軸71」,「第三8字形リンクロッド83」, 「第二モータ92」,「第二駆動ホイール62」,「第二偏心軸72」, 「リンクロッド3」の本件考案の各機械要素の位置関係又は連結固定関係 が記載されている。また,【0010】〜【0012】には,本件考案の 振動器が上記の機械要素を用いて,上板に,1) 上下振動,2) 前後振動, 3) 両者を複合した振動を発生させるものであり,1)は,「第二モータ9 2」は停止させ,「第一モータ91」を作動させて「第一駆動ホイール6 1」を回転させると当該「第一駆動ホイール61」に固定された「第一偏 心軸71」が回転し,当該「第一偏心軸71」が「第三8字形リンクロッド83」を動かすことで「上板1」を上下方向に振動させるものであるこ と(【0010】),2)は,「第一モータ91」は停止させ,「第二モー タ92」を作動させて「第二駆動ホイール62」を回転させると当該「第 二駆動ホイール62」に固定された「第二偏心軸72」が回転し,当該「第 二偏心軸72」が「上板1」に設けた「中心軸2」に連結されている「リ ンクロッド3」を動かすことで,「上板1」に前後方向に振動させるもの であること(【0011】),3)は,「第一モータ91」と「第二モータ 92」を同時に作動させたときに「上板1」を上下方向と前後方向に同時 に移動することで生じる1)と2)を複合した弧形の振動であること(【00 12】)が記載されている。また,これ以外の態様は記載されていない。 以上に照らせば,本件考案の技術的意義は,第一駆動系により上板を上 下方向に振動させ,第二駆動系により上板を前後方向に振動させることで, 複数方向の振動を発生させることにあるといえる。そうすると,本件考案 1の分説B及び分説Cにおける「介する」は,第一駆動系により上板を上 下振動させ,第二駆動系により上板を左右振動させるような連結固定関係 としたものを意味するものであることは,明らかである。
イ 以上によれば,実用新案登録請求の範囲の記載は,その記載それ自体に 加え,本件明細書の記載及び図面並びに当業者の技術常識を基礎にすると,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確なものとは認められないから, 明確性要件関する本件審決の判断の結論に誤りはなく,この点に関する原 告の主張は採用することができない。
(3) 原告の主張について
原告は,分説B及び分説Cは,「介して」という「間におく。さしはさむ。 中に立てる。」という意味の用語を用いているのに止まり,本件考案を特定 するために必要不可欠な技術的事項の記載が欠落しており,原告指摘振動器 1及び原告指摘振動器2を含み得るように広く記載されているから,請求項 1の記載が不明確である旨主張する。 しかし,上記(2)に説示したとおり,分説B及びCの「介して」の用語の意 義を理解できるから,請求項1の記載は,第三者に不測の不利益を及ぼすほ どに不明確なものとは認められない。
3 取消事由1(サポート要件違反についての判断の誤り)について
(1) サポート要件に適合するかどうかは,実用新案登録請求の範囲の記載と考 案の詳細な説明の記載とを対比し,実用新案登録請求の範囲に記載された考 案が,考案の詳細な説明に記載された考案で,考案の詳細な説明の記載によ り当業者が当該考案の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否 か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当 該考案の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきも のである。
(2) 以上を前提に,本件考案1のサポート要件適合性について判断するに,本 件考案の技術的意義については,上記2(2)アのとおりであり,本件考案の採 用する課題解決手段もそのとおりに理解することができる。 そうすると,実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載は,考案の詳細な 説明に記載された考案で,当業者が,技術常識に照らし,考案の詳細な説明 の記載により当該考案の課題(美容あるいは運動用の振動器において,複数 方向の振動を発生させ,様々なニーズに応じた美容効果を得ることができる 振動器を提供すること)を解決できると認識できる範囲のものであるといえ る。 よって,本件考案1は,サポート要件に適合しているから,サポート要件 関する本件審決の判断の結論に誤りはなく,この点に関する原告の主張は採 用することができない。 したがって,取消事由2は理由がない。
(3) 原告の主張について
ア 原告は,本件考案1には,上下方向の振動しかしない原告指摘振動器1 と前後方向の振動しかしない原告指摘振動器2が含まれると主張する。 しかし,上記2(2)アで述べたところに照らせば,原告指摘振動器1及び 原告指摘振動器2は,本件考案1には含まれないというべきであるから, 原告の主張は前提を欠く。

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平成30(行ケ)10118  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月25日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反の無効理由主張について、知財高裁は動機付けなしとして、無効理由なしとした審決を維持しました。
a 引用発明1の課題は,1)背肩近辺の側面側,特に肩ぐうと呼ばれるつぼをマ ッサージすること,2)背面側にマッサージを行う場合に,身体が施療手段により押 されて前方に動くのを防ぐこと,である。 これに対し,引用発明2の課題は,1)下腿の臑の前外側,特に三里,豊隆と呼ば れるつぼをマッサージすること,2)下腿にマッサージを行う場合に,被施療者の下 腿を拘束しないこと,である。
b まず,引用発明1と引用発明2の課題は,1)身体の側面ないし前面に位置す るつぼのマッサージを行うという限度で共通するが,その対象部位及び対象部位に 位置するつぼの種類が異なる。 そして,引用発明1と引用発明2におけるマッサージの対象部位及び対象部位に 位置するつぼの種類を比較するに,背肩と下腿においては,その形状,重量や椅子 型マッサージ機にかかる荷重,可動範囲などが大きく異なるから,それに応じて椅 子型マッサージ機の構成は異なるものとならざるを得ない。また,定型的な動きし\nかできない椅子型マッサージ機においては,背肩近辺の側面側と下腿の臑の前外側 に位置するつぼをどのような強度,角度及び範囲で押圧するかによって,その施療 子部分の構成も異なるものとならざるを得ない。\nそうすると,椅子型マッサージ機である引用発明1と引用発明2において,マッ サージの対象部位及び対象部位に位置するつぼの種類が異なることは,両発明の課 題が有する意義に差異をもたらすものというべきである。
c 加えて,引用発明1と引用発明2の課題は,2)身体の動作を防止してその自 由度を下げようとするか,身体を拘束しないようにしてその動作の自由度を上げよ うとするかという点では正反対のものということができる。
d よって,引用発明1と引用発明2との課題は,マッサージを行おうとする対 象部位及び対象部位に位置するつぼの種類が異なること,身体の動作の自由度を下 げようとするか上げようとするかで異なることから,相違するものというべきであ る。
(ウ) 作用機能\n
引用発明1は,背もたれ部の左右両側に前方に向かって突出した側壁部の内側面 に配設されたエアバッグが膨出し,身体を左右両側から挟圧するという作用機能を\n有する。 これに対し,引用発明2は,後側空気袋の膨張によって,支持部に枢着されてい る左右の受板が前方へ回動し,受板の前側に配された前側空気袋が膨張することに よって,臑の外側部分を押圧するという作用機能を有する。\nしたがって,引用発明1と引用発明2の作用機能は,膨出(膨張)するエアバッ\nグ(前側空気袋)によって身体を押圧するという点で共通するものの,当該エアバ ッグ(前側空気袋)を配設する部材が,側壁部か,支持部に枢着された回動可能な\n受板かという点で相違する。
(エ) 示唆
引用例1又は引用例2の内容中に,引用発明1に引用発明2を適用することにつ いての示唆は見当たらない。
(オ) 動機付け
以上のとおり,引用発明1と引用発明2とは,椅子型マッサージ機という限度で 技術分野が共通するものの,マッサージを行おうとする対象部位及び対象部位に位 置するつぼの種類が異なることなどから課題が相違し,身体を押圧するエアバッグ を配設する部材のそもそもの可動性が異なることから作用機能も相違するほか,引\n用発明1に引用発明2を適用することについて示唆も見当たらない。 したがって,引用発明1に引用発明2を適用する動機付けがあるということはできない。
(カ) 原告の主張について
a 原告は,当業者が通常の創作能力を発揮すれば,引用発明1において相違点\nに係る構成を採用することができる旨主張する。\nしかし,前記のとおり,椅子型マッサージ機においては,身体が着座姿勢で固定 され,また身体の各部位の形状等が異なることから,その構成は,マッサージの対象部位に応じて異なるものになる。また,椅子型マッサージ機は定型的な動きしか\nできないから,椅子型マッサージ機の施療子部分の構成は,対象となるつぼの種類\nによっても異なるものになる。 したがって,引用発明1において,椅子型マッサージ機及びその施療子部分の構\n成に関連する相違点を採用することが,通常の創作能力の発揮であるということは\nできない。
b 原告は,引用例2には,引用発明2と同じ機構が下腿だけではなく,足の甲\nの部分にも適用できることが記載されているから,当業者は,引用発明2が下腿だ けではなく,身体の他の部分にも適応可能な機構\であることを理解し,また,他の 部分に適用することを示唆される旨主張する。 しかし,前記のとおり,椅子型マッサージ機の構成は,マッサージの対象部位に\n応じて異なるものになり,その施療子部分の構成も,対象部位に位置するつぼの種\n類に応じて異なるものになる。引用発明2と同じ機構が,下腿だけではなく,足の\n甲の部分にも適用できたとしても,当業者は,これを,身体の形状等が大きく異な り,施療子部分の構成も変更する必要がある背肩近辺にも適用可能\な機構であると\nは理解しないし,背肩近辺に適用することについて示唆を受けるものでもない。

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平成30(行ケ)10095  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月19日  知的財産高等裁判所

 審決は進歩性違反無しと判断しました。知財高裁も、動機付けなしとして、これを維持しました。

 前記ア認定のとおり,建築部材等の工業製品において,面と面との交わ りのかどに斜面又は丸みをつける「面取り」は,本件出願当時,周知であ ったことが認められる。 また,前記イ及びウのとおり,甲16には基台2の下面の両縁部の角が 斜面になっている構成が,甲17には,プラスチック等非腐蝕体(4)の\n下面の両縁部の角が斜面になっている構成がそれぞれ開示されている。\nしかしながら,甲1には,「面取り」に関する記載や,甲1発明の台座 の基盤1の下面縁部と側壁との間に下面又は側壁に対して傾斜する斜面の 記載はなく,ましてや,そのような斜面を基盤1の「延在方向に沿って設 け」ることについての記載も示唆もない。 かえって,甲1発明の台座においては,基盤1の側壁に突部tと凹部h を有し,隣り合う台座間で突部tと凹部hとを係合して接続するものであ ること(前記(2)ア及びエ)からすると,突部tや凹部hの一部を削って斜 面を設けることは考え難いというべきである。 加えて,甲1には,甲1発明の台座において,基盤1等の稜線に人が接 触して怪我をしないようにする措置を講じる必要があることをうかがわせ る記載はない。
そうすると,甲1,甲16及び17に接した当業者において,甲1発明 の台座に上記周知技術,甲16又は17記載の構成を適用して,基盤1の\n下面縁部と側壁との間に下面又は側壁に対して傾斜する斜面を設け,当該 斜面が基盤1の延在方向に沿って設けられる構成(相違点3に係る本件発\n明1の構成)とする動機付けがあるものと認めることはできない。\nしたがって,当業者が,甲1発明において,相違点3に係る本件発明1 の構成とすることを容易に想到することができたものといえないから,こ\nれと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

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平成30(行ケ)10032  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月26日  知的財産高等裁判所

 異議申立に対して、特許権者は訂正請求をしました。審決は、複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないという事項(事項A)を新規事項であるとして訂正を認めず取消決定をしました。知財高裁は、新規事項ではないと判断しました。\n

 本件明細書には,1)「本発明」の「リボン」は, 1つ又は複数のストランドから成り,1つのストランドから成る場合は, リボンの幅に平行に伸長する長繊維の集合体から成り,複数のストラン ドから成る場合は,「所与の幅の層を製造するために寸法取りされる」 ストランドの集合体(各々が長繊維の集合体から成る)から成ること(【0 027】,【0028】,【0030】,図1及び2),2)「一般に, 炭素ストランドの場合,1,000から80,000本の長繊維を含み, 12,000から24,000本の長繊維を含むのが有利である」こと (【0029】),3)「特に,リボンが複数のストランドの一方向層か ら成る場合,ストランドは,接近して配置」され,「リボン作製の前に, 幅の標準偏差が最小で,一方向層の全幅を一定にするように調整する場 合,層の幅は,材料中のいかなる間隔(英語で「gap」)又は重なり 部分(英語で「overlap」)をも最小にし,さらに回避すること によって調整する」こと(【0028】),4)「ストランド(単数又は 複数)」は,「寸法合わせの段階」の前に拡幅器によって幅が拡幅され (【0030】,図6),「寸法取り段階」(寸法合わせの段階)では, 「所与の幅の開口部,特に,ローラーに切れ込む平底の溝の形状にある 開口部とすることができる寸法取り器」,又は「1つ又は複数のストラ ンドをベースにした単一のリボンの場合における,2個の歯の間の開口 部の寸法取り器」,又は「図7に示すように,並行して複数のリボンを 作製する場合における,複数のストランドに寸法取りをする開口部を規 定する寸法取りコームの寸法取り器」上で,「層又はストランドを通過 させることによって行われ」ること(【0031】,図7),5)「複数 のストランドからなる層を作製する場合,実際,厳密に言えば,層の幅 の寸法取りは外側の2本のストランド上においてのみ行われ,他のスト ランドは拡幅ユニットの前方に配置されたコームにより案内され,その 結果,層の内側のストランド間に緩い空間が存在しない」こと(【00 31】),6)「炭素ストランド又は複数のストランド1は,クリール1 01に装着された炭素スプール100から巻き戻され,コーム102を 通過し,ガイドローラー103によって機械の軸中に誘導」され,「炭 素ストランドは,次に,加熱バー11及び拡幅バー12により拡幅され, 次に,寸法取り器で寸法取りをされ,所望の幅を有する一方向層が得ら れる」こと(【0038】,図5)の記載がある。 これらの記載事項によれば,本件明細書には,「本発明」の実施の形 態として,1つのストランド(長繊維の集合体)又は複数のストランド (各々が長繊維の集合体)から成る「リボン」を作製するに当たり,1 つ又は複数のストランドを,拡幅バーにより幅を拡幅し,次いで,拡幅 したストランドを所与の幅の開口部を規定する寸法取り器(ローラーに 切れ込む平底の溝を有する寸法取り器,寸法取りコーム,又は2個の歯 を有する寸法取り器)上を通過させることによって,所望の幅を有する 一方向層が得られること,これにより一方向層の層の幅は,材料中のいかなる間隔又は重なり部分をも最小にし,さらに回避することによって 調整することができ,その結果,層の内側のストランド間に緩い空間が 存在しないことの開示があることが認められる。 そして,複数のストランドの集合体(各々が長繊維の集合体)が,「接 近して配置され,間隔又は重なり部分をも最小にし,さらに回避する」 とは,「間隔が存在しない」ことと同義であると解されるから,「複数 のストランド又は長繊維間に間隔が存在しない」ようにして,「複数の ストランド又は長繊維」を所望の幅に作製しているものと理解すること ができる。
そうすると,訂正事項2に係る訂正は,本件明細書のすべての記載を 総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術 的事項を導入するものではないものと認められるから,本件特許明細書 等に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。 したがって,これと異なる本件決定の判断は誤りである。
(ウ) これに対し被告は,1)本件明細書には,「拡幅器,次いで寸法取り 器に,複数のストランドを通過させる」ことで「複数のストランド又は 長繊維間に間隔が存在しない」ようにするという事項についての直接的 ないし明示的な記載は存在しない,2)本件明細書において「複数のストランド」を通過させる「寸法取り器」に相当する構成は,【0039】\n及び図7に示されているものにほかならず,これら複数のストランドの 間には間隔が存在する,3)本件明細書の【0028】の記載は,「複数 のストランド又は長繊維」について「間隔が存在しない」ことを記載す るものではないため,本件特許明細書等の記載を総合しても,事項Aを 導くことができるとはいえず,訂正事項2(請求項1)に係る訂正は, 新規事項の追加に当たる旨主張する。 しかしながら,上記1)の点については,本件明細書に直接的な記載は ないが,前記(イ)のとおり,複数のストランドの集合体(各々が長繊維 の集合体)が,「接近して配置され,間隔又は重なり部分をも最小にし, さらに回避する」とは,「間隔が存在しない」ことと同義であると解さ れるから,「複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しない」こと についての開示があるものと認められる。 次に,上記2)の点についてみると,図7は,「単一のストランドをベ ースにして複数のリボンを同時に作製する場合」(【0025】)を示 した図であり,図示されているのは,「単一のストランドから成る複数 のリボン」であって,複数のストランドではないから,複数のストラン ドの間に間隔が存在することを示すものではない。 また,本件明細書の【0039】の「複数のリボンを同時に製造する ことも同様に可能であり,その場合,リボンを構\成する各ストランド又 はストランドの集合体は,必要ならば拡幅され,個々に寸法取りがなさ れ,切断を可能にするために各ストランド間に十\分な間隔を置き,異な るリボンが互いに間隔をあけて配列される。ストランドと間隔を覆う単 一の不織材料が,次に,図8に示すように,リボンの各面上で全てのリ ボンと結合される。次に,図8に示したような機器,及び平行で,リボ ンの幅ごとに間隔をあけられ片寄らされた切断器120の複数(図示し た例では2つ)のラインを用いて,切断間に不織材料の屑を生じることなく各リボンの間で切断を優先的に行うことができる。」との記載中の 「各ストランド間に十分な間隔を置き」とは,複数のリボンを同時に製\n造する場合に,複数のラインを用いて各リボンと結合した不織材料の切 断を可能にするために,各リボンが互いに間隔をあけて配列されること\nを意味するものであり,リボンを構成するストランドそのものについて\n述べたものではない。 さらに,上記3)の点については,前記(イ)のとおり,本件明細書の【0 028】の記載は,リボンが複数のストランドの一方向層から成る場合 に,当該ストランドが接近して配置され,リボン作製の前に,ストラン ド間の間隔が存在しないように調整することが記載されているものと 認められる。

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平成27(ワ)4292  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年6月28日  大阪地方裁判所

 漏れていたのでアップします。大阪地裁は、特許侵害として、差止請求および総計3.3億円の損害賠償請求を認めました。争点は、間接侵害、サポート要件、進歩性違反などたくさんあります。この事件は控訴されており、知財高裁の特別部での審議が発表されています。大合議事件にされた理由は、下記でしょうか?\n

 「共同不法行為が成立するためには,各侵害者に共謀関係があるなど主観的な関連 共同性が認められる場合や,各侵害者の行為に客観的に密接な関連共同性が認めら れる場合など,各侵害者に,他の侵害者による行為によって生じた損害についても 負担させることを是認させるような特定の関連性があることを要すると解すべきで ある。そして,例えば,製造業者が小売業者に製品を販売し,これを小売業者が消 費者に販売するという取引形態は,極めて一般的なものであり,製造業者と小売業 者双方が,このような取引形態を取っていることを認識し容認しているとしても, これだけでは共同不法行為責任を認めるに足りるだけの十分な関連共同性があると\nはいえない。
・・・
被告アンプリーは,被告ネオケミアから被告製品8を仕入れ,これを被告リズ ムに転売していたところ,被告リズムは設立当初から被告アンプリーに対して販売 する商品の相談をしており,その中で被告製品8を仕入れることになり,被告リズ ムにとって被告アンプリーは特別な取引先であるとの認識であった(乙B12の 1)。これに対し,被告アンプリーは,OEMメーカーではあったが,被告リズム の創業を応援しようと決めて被告リズムと取引を開始し,販路として育成していこ うと考え,被告リズムを「販路育成プログラム」対象企業の第一号という位置付け の企業にし,被告リズムと協力して炭酸ガスパックを売り出していたというのであ る(乙B13の1,弁論の全趣旨)。そして,本件訴訟では,被告アンプリーは被 告リズムとの間で顧客や顧客からの注文等に関する情報交換を密にしていたとまで 主張しているのであり,被告アンプリーと被告リズムとはそのような関係性にあっ たと認められる(以上につき弁論の全趣旨)。そして,被告リズムによる売上額は 3億円を超えており,被告アンプリー自身の売上額も1億円を超えており,他の被 告の他の製品の売上額と比較しても,桁違いに売上額が大きい。このような売上げ を上げることができたのは,以上のような被告アンプリーと被告リズムとの間の関 係性があったからであると推認され,両社は相互に利用補充しながら,被告製品8 の製造,販売をしてきたということができる。したがって,両社の行為には,客観 的に密接な関連共同性があったといえ,共同不法行為が成立するというべきである。 これに対し,被告アンプリーらと被告ネオケミアとの関係性についてみると,被 告アンプリーは被告ネオケミアの取引先ではあるものの,被告ネオケミアは他にも 自ら本件各発明の技術的範囲に属する同種製品(被告製品1,3,4及び15)を 製造するなどし,被告アンプリー以外の者に対しても販売していたのである。この ような実態に照らせば,被告アンプリーが被告ネオケミアの総代理店的な立場にあ ったとはいえないし,同被告らの行為に客観的に密接な関連共同性が認められるな どともいえない。 以上より,被告製品8に関し,被告アンプリーと被告リズムとの間に限って共同 不法行為が成立する。」

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平成30(行ケ)10076  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月13日  知的財産高等裁判所

 審決は訂正を認めた上、進歩性なしと判断しました。知財高裁は審決を維持しました。争点は、特有の効果を訂正後発明が奏するかです。知財高裁は、特有の効果は認められないと判断しました。

 被告は,原告の主位的主張につき,審判段階で審理の対象とされたものではなく 本件審決の違法事由として主張できない旨主張する。 特許無効審判の審決に対する取消訴訟においては,審判で審理判断されなかった 公知事実を主張することは許されないが(最高裁昭和42年(行ツ)第28号同5 1年3月10日大法廷判決・民集30巻2号79頁),審判において審理判断され た公知事実に関する限り,審判の対象とされた発明との一致点・相違点について審 決と異なる主張をすることは,それだけで直ちに審判で審理判断された公知事実と の対比の枠を超えるということはできないから,取消訴訟においてこれらを主張す ることが許されないとすることはできない。 本件特許の特許権者である原告は,もとより審判で審理判断されなかった公知事 実を無効原因として主張するものではなく,審判において審理判断された公知事実 と審判の対象とされた発明との相違点について本件審決と異なる主張をするにすぎ ないものであって,これを許されないものとすべき事情はない。 したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
(ウ) 原告の主位的主張について
a 原告は,本件各発明の本質は,豆乳発酵飲料について,pHが4.5未満であり,ペクチンの添加量の割合がペクチン及び大豆多糖類の添加量総量100質 量%に対して20〜60質量%の範囲にあり,かつ,粘度が5.4〜9.0mP a・sの範囲にあるという構成を採用する場合に,タンパク質成分等の凝集の抑制\nと共に,酸味が抑制され,後に残る酸味が少なく後味が優れるという効果が得られ るところにあるから,相違点1−1〜1−4に相当する構成は互いに技術的に関連\nしており,これらを1つの相違点1−Aとして認定すべきであるなどと主張する。 b しかし,本件明細書によれば,本件各発明は,タンパク質成分等の凝集を抑 制するという効果を奏する点では共通するものの,ペクチンの添加量の割合が30 〜60質量%の場合(本件発明6)はこれに加えて「後に残る酸味が低減され,か つ口当たりが滑らかな」ものとなるとの効果を奏し(【0019】),30〜50 質量%とされた場合(本件発明7)は「後に残る酸味が低減されるとともに,酸っ ぱい風味が抑制され,また口当たりがより一層滑らかになる」との効果を奏するこ と(【0020】)が記載されている。また,こうした記載が先行するにもかかわ らず,【発明の効果】としては,「タンパク質成分等の凝集が抑制された豆乳発酵 飲料の提供が可能」,「タンパク質等の凝集が抑制された豆乳発酵飲料の製造が可\n能」といった点が挙げられるにとどまる(【0024】)。これらの記載に照らす\nと,酸味が抑制され,後に残る酸味が少なく後味が優れるという効果は,本件各発 明に共通する効果とは必ずしも位置付けられていないものということができる。 他方,官能評価試験の結果,「ペクチン及び大豆多糖類の混合物中のペクチンの\n割合が60質量%〜0質量%」の範囲では,「酸っぱい風味」及び「後に残る酸味」 の評点がいずれも低く,「酸味が抑制されていた。」,「後味がより優れていた。」 との評価がされている(【0080】,【0081】)。これらの記載によれば, 上記各効果は本件各発明に共通し,そのうち特に優れた効果を奏するものを本件発 明6及び7として取り上げたと理解する余地はあり得る。もっとも,試験結果に係 る上記分析は,本件明細書の記載上,本件各発明の効果の記載(【0024】)に は反映されていない。そして,本件明細書において各評価項目の評価基準,評価手 法等が明らかにされていないことや,試験結果の数値のばらつきを考慮すると,前 記のような理解の合理性ないし客観性には疑問がある。 このように,本件各発明の効果に関しては,本件明細書の内部において不整合が あるといわざるを得ず,原告の上記主張はその前提自体に疑問がある。
c その点を措くとしても,タンパク質成分等の凝集抑制の効果について,本件 明細書によれば,請求項2,【0011】及び【0072】に記載された試験方法 により沈殿量を評価した場合の沈殿量が0cm超かつ11cm未満にある場合,タ ンパク質成分等の凝集がより抑制されると説明されている(【0011】,【00 12】)。また,表4及び図3には,pH4.3及び4.5それぞれの場合におい\nてペクチン添加量の割合を変化させた豆乳発酵飲料の沈殿量を示す実験結果が記載 されているところ,沈殿量が0cm超かつ11cm未満を満たさないものはペクチ ン及び大豆多糖類を共に含まないサンプルNo.1(pH4.3及び4.5),大 豆多糖類のみを含むNo.12(pH4.3及び4.5),ペクチンを10質量% で含むNo.11(pH4.3及び4.5)に止まり,ペクチンを20〜100質 量%で含むNo.2〜No.10は,pHの高低に依拠することなくタンパク質成 分等の凝集の抑制効果を奏することが示されている。 この点に鑑みると,タンパク質成分等の凝集の抑制効果につき,ペクチン添加量 の割合が20〜60質量%の範囲内にあることやpHの高低との関連性を見出すこ とは,必ずしもできない。 また,本件明細書によれば,pH4.5の場合でも,No.2〜No.10ではペクチン及び大豆多糖類の混合物を添加することによりタンパク質成分等の凝集の 抑制効果があるとされているところ(【0076】),このうちペクチンを50〜 20質量%含むNo.7〜No.10は,7℃における粘度が5.4mPa・s未 満である(表3及び図2)。この点に鑑みると,タンパク質成分等の凝集の抑制効\n果と5.4〜9.0mPa・sの粘度範囲との間に何らかの関連性を見出すことは できない。 以上によれば,タンパク質成分等の凝集の抑制効果は,ペクチン添加量,pH及 び粘度の全てが請求項に規定された範囲にある場合に初めて奏する効果であるとは 認められない。
d 酸っぱい風味,後に残る酸味及び口当たりの滑らかさの効果について,pH を4.3で固定した場合である表5及び図4の実験結果によると,酸っぱい風味は,\nペクチンと大豆多糖類を併用したサンプルのうち,おおむね,ペクチンのみを含むNo.2で酸っぱい風味が強く,大豆多糖類の量が増えるに従いこれが低減される 傾向がうかがわれ,No.6〜No.12(ペクチンの割合が60〜0質量%)に つき「酸味が抑制されていた」との評価がされ,中でもNo.7〜No.10(ペ クチンの量が50〜20質量%)で特に抑制されているとの評価がされている (【0080】,図4)。他方,ペクチンを60質量%含むNo.6は,大豆多糖 類のみを含むNo.12やペクチンを10質量%含むNo.11よりも酸っぱい風 味が強いとの評価がされている(【0080】)。 また,後に残る酸味の点では,ペクチンを60〜0質量%で含むNo.6〜No. 12がより優れていると評価され(【0081】,表5,図5),口当たりの滑ら\nかさの点では,ペクチンを60〜30質量%で含むNo.6〜No.9が優れてい ると評価されている(【0082】,表5,図6)。もっとも,ペクチンのみを含\nむNo.2も,後に残る酸味及び口当たりの滑らかさの両面でこれらの範囲内にあ る評点を得ている。また,口当たりの滑らかさの点では,ペクチンを20質量%含 むNo.10は口当たりの滑らかさの評点が低く,逆に,大豆多糖類のみを含むN o.12は口当たりの滑らかさで優れているとされる上記サンプルの数値の範囲内 に含まれる。 このように,pH4.3の場合の官能評価の結果からも,酸味の抑制,後に残る\n酸味の低減,口当たりの滑らかさに係る効果は,ペクチンと大豆多糖類を併用しな い場合やペクチンの添加量が20〜60質量%から外れる場合でも得られることが示されているから,これらの効果は,pH,粘度及びペクチン添加量の全てが請求 項に規定された範囲にある場合に初めて奏する効果であるとは認められない。
e このほか,本件明細書には豆乳発酵飲料以外の豆乳飲料や酸性乳飲料を比較 対象とした実験結果が記載されていないことも考慮すると,本件明細書からは,本 件各発明につき,相違点1−1〜1−4に係る構成を組み合わせ,一体のものとし\nて採用したことで,タンパク質成分等の凝集の抑制と共に,酸味が抑制され,後に 残る酸味が少なく後味が優れるという効果を奏するものと把握することはできない。

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平成30(行ケ)10023  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月14日  知的財産高等裁判所

 異議申立によって取り消された請求項3,4について、取消を求めました。知財高裁は、「本件明細書の記載のとおりの物性値を有していることを確認することができない」として、審決を取り消しました。\n

 被告は,本件決定は,本件出願前に販売されていた日本発条製の商品「ニ ッパレイEXT」と,甲5のカタログ記載のニッパレイEXTの物性値,甲 4及び甲5のカタログ記載のニッパレイEXGの物性値及び日本発条に対す るニッパレイEXTに関する問合せの回答結果に基づいて本件公知発明を認 定したものであり,その認定に誤りはない旨主張するので,以下において判 断する。
ア ニッパレイEXTの構造について\n
被告は,本件決定は,本件明細書の「実施例2」記載のニッパレイEX Tが「非発泡のポリエチレンテレフタレート(PET)シート(厚さ50 μm)上にポリウレタン系樹脂発泡シートが積層一体化されてなる積層シ ート」(【0106】)という構造を有していることを,甲5のカタログ\nを参照し,日本発条に問い合わせて確認して認定したものであり,本件決 定の認定に誤りはない旨主張する。 しかしながら,当業者は,本件出願前に,本件出願後に公開された本件 明細書に接することはできないから,ニッパレイEXTが本件明細書の記 載のとおりの構造を有しているかどうかを確認することはできない。\nまた,本件においては,本件決定の合議体が,本件決定をするに当たり, 日本発条に対してどのような方法で問合せをし,どのような回答が得られ たのか,その問合せ方法が,行政庁等の公的機関とは異なる一般の第三者 でも採り得る通常の方法であることを認めるに足りる証拠はない。もっと も,被告が本件訴訟提起後に日本発条にした問合せに対する同社の回答を 記載した本件回答書(乙2の1)には,ニッパレイEXTは,「PETの 上にEXGを一体発泡させたものがEXTです。(厚さは違いますが)」 との記載がある。この記載によれば,ニッパレイEXTは,上記構造を有\nしているものと認められるが,本件回答書の記載事項は被告が本件出願後 に取得した情報であって,一般の第三者が本件出願前に知り得た情報であ るとは直ちにはいえない。 加えて,前記(1)ウ認定のとおり,甲5のカタログには,ニッパレイEX Tや貼付されたサンプルの具体的な構\造についての記載がないのみならず, 当業者が,貼付されたサンプルを視認し,又は自ら測定することにより,\nニッパレイEXTの上記構造を知り得たことを認めるに足りる証拠はなく,\nましてやニッパレイEXTが,PETフィルム上にニッパレイEXGが積 層一体化されてなる積層シートであることを知り得たことを認めるに足り る証拠はない。 以上によれば,被告主張の本件決定における上記認定手法は相当とはい えず,本件においては,ニッパレイEXTが「非発泡のポリエチレンテレ フタレート(PET)シート(厚さ50μm)上にポリウレタン系樹脂発 泡シートが積層一体化されてなる積層シート」という構造を有しているこ\nとが本件出願前に公然知られ得る状態にあったことを認めるに足りる証拠 はない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。
イ ニッパレイEXTの物性値について
(ア) 被告は,本件決定は,ニッパレイEXTの物性値のうち,「引張強 さ」,「伸び」及び「ショアA硬度」については,甲5のカタログに記 載がないが,ニッパレイEXTは,ニッパレイEXGの片面に50μm 厚のPETフィルムを沿わせて構成しただけのものと認められるので,\n甲5のカタログ記載のニッパレイEXGの「引張強さ」,「伸び」及び 「ショアA硬度」と同じであるとみて差し支えないと考え,ニッパレイ EXGの各数値に基づいて,本件明細書の「表1」記載のとおりである\nことを確認して認定したものであり,本件決定の認定に誤りはない旨主張する。 しかしながら,前記ア認定のとおり,当業者が,本件出願前にニッパ レイEXTが,PETフィルム上にニッパレイEXGが積層一体化され てなる積層シートであることを知り得たことを認めるに足りる証拠は ない。 また,仮に被告が主張するように当業者がニッパレイEXTの上記構\n造を知り得たとしても,前記アのとおり,当業者は,本件出願前に,本 件出願後に公開された本件明細書に接することはできないから,ニッパ レイEXTが本件明細書の記載のとおりの物性値を有していることを 確認することはできない。 かえって,甲5のカタログに接した当業者においては,ニッパレイE XGについては6項目の物性値の全てについて記載があるのに,ニッパ レイEXTについては,6項目のうち,「引張強さ」,「伸び」及び「A 硬度 Shore−A」が空欄となっているのは,これらの物性値は測 定できないか,あるいはニッパレイEXGの物性値とは異なるものであ ると認識するというべきである。また,ニッパレイEXGのようなポリ ウレタン系樹脂発泡シートはスポンジ状で柔軟な性質を有するのに対し,PETフィルムは結晶性樹脂であるため強靭性を有し,各種ベース フィルムとして用いられること,異なる物性の材料を積層した積層体は, その構成部材の性質や状態によって全体としての物性が変化し得るも\nのであることは,本件出願当時の技術常識であったものと認められる (甲26)。かかる技術常識を踏まえると,甲5のカタログに接した当 業者においては,ニッパレイEXTの「引張強さ」,「伸び」及び「シ ョアA硬度」については,ポリウレタン系樹脂発泡シートであるニッパ レイEXGの各数値と同じ値であることを理解するものとはいえない。 以上によれば,本件決定におけるニッパレイEXTの物性値の「引張 強さ」,「伸び」及び「ショアA硬度」の各数値の上記認定手法は相当 とはいえず,これらの各数値が,甲5のカタログ記載のニッパレイEX Gの値と同じ値であることが,本件出願時に公然知られ得る事項であっ たと認めることはできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(イ) 被告は,ニッパレイEXTの物性値のうち,甲5のカタログに記載 のない「引張強さ」,「伸び」及び「ショアA硬度」については,当業 者が,日本発条に問い合わせること,カタログに貼付されたサンプルを\nJIS規格等に従って測定すること,日本発条が顧客に製品の納品の際 に提供する「製品検査成績表」を同社から取得することなどにより,極\nめて容易に確認することができるから,公然知られ得る状態にある事項 であり,現に被告は日本発条に対して再度の問合せを行い,日本発条から本件回答書(乙2の1)及び本件データシート(乙3)を得た旨主張 する。 しかしながら,前記アで説示したとおり,本件回答書の記載事項は被 告が本件出願後に取得した情報であって,一般の第三者が本件出願前に 知り得た情報であるとは直ちにはいえないし,また,その問合せ方法が, 行政庁等の公的機関とは異なる一般の第三者でも採り得る通常の方法 であることについての立証はない。 また,本件回答書(乙2の1)は,甲5のカタログの「引張強さ」, 「伸び」及び「ショアA硬度」の3項目に値が記載されていない理由と して,「PETが一体であるため測定できないからです。」と回答して いること,本件データシート(乙3)には「EXTはペットサポートタ イプの為,引張強さ,伸びの物性は測定不能となります。」との記載があることに鑑みれば,当業者が日本発条に問い合わせたとしても,ニッ\nパレイEXTの「引張強さ」,「伸び」及び「ショアA硬度」を容易に 確認することができたものと認めることはできない。 さらに,甲5のカタログに貼付されたサンプルをJIS規格等に従っ\nて測定した場合に,ニッパレイEXTとニッパレイEXGの「引張強さ」, 「伸び」及び「ショアA硬度」が同じ値となることを認めるに足りる証 拠はない。同様に,日本発条が顧客に製品の納品の際に提供する「製品 検査成績表」(ニッパレイEXGについては,甲38の別紙4))を同社 から取得できたとしても,ニッパレイEXTの物性値の「引張強さ」, 「伸び」及び「ショアA硬度」が,甲5のカタログ記載のニッパレイE XGの値と同じ値であることが本件出願時に公然知られ得る事項であ ったことを認めることはできない。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
ウ まとめ
以上のとおり,ニッパレイEXTが「非発泡のポリエチレンテレフタレ ート(PET)シート(厚さ50μm)上にポリウレタン系樹脂発泡シー トが積層一体化されてなる積層シート」という構造を有していることが本\n件出願前に公然知られ得る状態にあったことを認めることはできない。ま た,仮にニッパレイEXTの上記構造が公然知られ得る状態にあったとし\nても,ニッパレイEXTの物性値のうち,「引張強さ」,「伸び」及び「シ ョアA硬度」が,甲5のカタログ記載のニッパレイEXGの値と同じ値で あることが,本件出願前に公然知られ得る状態にあったものと認めること はできない。 したがって,本件決定認定の本件公知発明のうち,少なくとも「引張強 さ」,「伸び」及び「ショアA硬度」の認定に誤りがあるというべきであるから,本件決定における本件公知発明の認定は誤りである。
(3) 小括
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件決定は,公 知発明の認定を誤り,その結果本件発明3と本件公知発明との一致点の認定 を誤り,相違点を看過したことが認められる。 したがって,本件発明3は,本件公知発明及び甲7(本件決定・引用文献 1)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた とした本件決定の進歩性の判断は誤りである。同様に,本件決定における本 件発明3の特定事項を全て含む本件発明4の進歩性の判断も誤りである。

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平成30(行ケ)10121  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年3月12日  知的財産高等裁判所

 商標「キリンコーン」が、商標「KIRIN」などと類似(4条1項11号違反)すると判断されました。11号違反なので指定商品の類似も争われています。

 (1) 複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについては,商標の\n各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不\n可分的に結合しているものと認められないときには,その構成部分の一部を抽出し,\n当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許される場合が あり,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識\nとして強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出 所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成\n部分の一部だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許される(最 高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻 12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法 廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20 年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。 以下,上記判断枠組みに沿って本件商標について,「キリン」の部分を要部として 抽出することができるかどうかについて検討する。
(2) 本件商標は,前記第2の1のとおり,本件指定商品を第31類「とうもろ こし」とするもので,その構成は,「キリンコーン」の片仮名を茶色で縁取りし,そ\nの内側を黄色で表してなるもので,「キリンコーン」の文字が,同一の書体,色彩で\n横一連に表示されたものである。\nもっとも,1)本件商標の構成中,「コーン」の文字部分が「とうもろこし」の意味\nを有する英語である「corn」 の読みを片仮名で表したものであること(甲9〜\n12,44,45),2)「キリン」の文字部分が,「(a)中国で聖人の出る前に現れ ると称する想像上の動物。(b)最も傑出した人物のたとえ。(c)ウシ目キリン科 の哺乳類。」との意味を有していること(乙24),3)「キリンコーン」が特段の意 味を有しない造語であることからすると,本件商標は,「キリン」と「コーン」とを 結合した結合商標と理解することができるものである。 また,上記のように「コーン」が本件指定商品である「とうもろこし」の意味を 有する英語である「corn」 の読みを片仮名で表したものであることは,わが国\nにおいても広く知られていること(甲44,45,弁論の全趣旨)からすると,本 件指定商品との関係では,本件商標の構成中,「コーン」の文字部分は,本件指定商\n品そのものを意味するものと捉えられ,その識別力は低いものといえる。 他方で,上記のような意味を有する「キリン」は,本件指定商品との関係で,「コーン」よりも識別力が高く,取引者,需要者に対して強く支配的な印象を与えると いうべきである。 そうすると,本件商標の「キリン」の文字部分と「コーン」の文字部分とが,分 離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合している とは認められず,本件商標から「キリン」の文字部分を要部として観察することは 許されるというべきである。
(3) 被告は,1)その構成からして本件商標を「キリン」と「コーン」に区切っ\nて称呼することは明らかに不自然であること,2)「コーン」という用語は,特に食 品業界においては,「スイートコーン」などのように,「○○コーン」,「コーン○○」として商品名や商標に一体的に使用されている実情があることからすると, 本件商標に接した需要者は,これを一体の商標として認識し,称呼すると主張する。 上記1)について, 色彩で横一連に表\n示されたものであるが,「キリン」と「コーン」を統合したものと理解されるので あって,分離して観察することができるものである。 上記2)について,被告が指摘する各例は,いずれも「コーン」と他の語が結合さ れることによって,「○○コーン」や「コーン○○」が,それ自体として,特定の 意味を有する一つの語として機能しているものである。他方,本件商標「キリンコ\nーン」は,前記のように造語であってそれ自体としては一つの語として特段の意味 を有しないものであるから,それらの例をもって本件商標が一体として認識,称呼 されるとはいい難いところである。 以上からすると,被告の上記主張は採用することができず,前記(2)の判断は左右 されない。
2 本件商標と引用商標の類否について
(1) 本件商標から要部である「キリン」の文字部分を抽出した場合,同部分か らは「キリン」との称呼が生じるとともに,「中国で聖人の出る前に現れると称する 想像上の動物」及び「ウシ目キリン科の哺乳類」との観念が生じる。 この点について,本件審決は,本件商標が茶色と黄色で表示されていることから\nすると,「キリン」の文字部分は「ウシ目キリン科の哺乳類」のみを表したものとす\nる。しかし,「中国で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物」の色彩について, これがはっきりと定まっているわけではないことからすると,本件商標の構成中の\n「キリン」の文字部分から「中国で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物」との観念が生じないとはいえない。 (2) 引用商標は,別紙のとおりの構成からなるものであり,いずれからも本件\n商標と同じ「キリン」との称呼が生じる上,引用商標1〜4,6,7からは「中国 で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物」及び「ウシ目キリン科の哺乳類」 との観念が生じ,引用商標5からは「中国で聖人の出る前に現れると称する想像上 の動物」との観念が生じるから,本件商標と引用商標を観念で区別することはでき ない。 また,「キリン」の片仮名を縦又は横に記載した引用商標1,2,6と本件商標と は,「キリン」の文字部分の色彩や書体に違いはあるものの,本件商標の「キリン」 の文字部分とは,「キリン」の文字は同じであるから,外観上,類似するものといえ る。 以上に加え,本件指定商品である第31類「とうもろこし」の需要者に一般消費 者が含まれることも併せて考慮すると,本件商標と引用商標は,出所について誤認 混同を生ずるおそれがある類似する商標というべきである。 3 被告の主張する取引の実情について 被告は,1)実店舗において,「かに太郎」との屋号が表示されており,実店舗にお\nける販売では,近隣にある旭山動物園にちなんで名付けられた本件商標を付した「と うもろこし」が,同様に上記動物園にちなんで名付けられた「ライオンコーン」な どと共に販売されていること,2)インターネットにおける販売でも,同様に「かに 太郎」との屋号が用いられて被告の氏名等がウェブサイトに記載されるなどしてい る上,本件商標を付した「とうもうろこし」が,「ライオンコーン」などと共に販売 されたり,「旭山動物園キリンコーン」などと記載されたりしていて,「とうもろこし」の生産者,販売者が原告であると誤認混同するおそれはないと主張する。 しかし,被告の上記主張は,現在の販売形態について主張するものにすぎず,一 般的,恒常的な事情とまではいい難いものである。 また,「かに太郎」との屋号や被告の氏名等が表示されていたしても,販売されて\nいる商品について,その生産者・製造者と消費者への最終的な販売者が異なること があり得ることからすると,そのことをもって誤認混同のおそれが生じなくなるも のではない。 さらに,「旭山動物園キリンコーン」との表示がされている点や本件商標を付した\n「とうもろこし」が,「ライオンコーン」などと共に販売されている点など被告が主張する点を考慮したとしても,各ウェブサイトにおいて,写真中に「キリンコーン」, 「送料無料」,「10本」とのみ表示した「とうもろこし」の写真が掲載されている\nこと(乙3の1枚目,乙16の2枚目,乙23の2枚目)や本件指定商品の需要者 が一般消費者であって,かつ本件指定商品が比較的安価なものであることからする と,消費者が注意深く観察せずに,本件商標が付された商品を購入することもあり 得るものといえることからすると,被告が主張する点により直ちに誤認混同のおそ れが生じなくなるとはいえないところである。 以上からすると,被告の上記主張は採用することができず,前記2の認定判断を 左右するものではない。 なお,被告は,本件商標登録の出願をした経緯や原告が「とうもろこし」を生産・ 販売していないこと,原告が本件商標と同じ商標を出願して商標登録を得たことを 主張するが,これらは,何ら前記2の認定判断を左右するものではない。
4 商品の類否について
(1) ア 本件指定商品は,「第31類 とうもろこし」であるところ,商標法施 行令別表(以下「政令別表\」という。)は,第31類を「加工していない陸産物,生 きている動植物及び飼料」と定めている。そして,本件商標登録出願時の平成28 年経済産業省令第109号による改正前の商標法施行規則別表(以下「旧省令別表\」 という。)は,第31類に属するものを1から15に分類し,そのうちの1で「1 あ わ きび そば ごま とうもろこし ひえ 麦 籾米 もろこし」として,「とうもろこし」を他の雑穀や穀物と並べて記載していたが,「10 野菜」には,とうも ろこしは記載されていなかった。 また,本件商標登録出願時における特許庁の旧審査基準(甲32)では,「とうも ろこし」は,「あわ きび そば ごま ひえ 麦 籾米 もろこし」,「豆」,「米 脱 穀済みのえん麦 脱穀済みの大麦」と同一の類似群(33A01)に属するとされ ていた。 これらのことからすると,旧省令別表第31類1にいう「とうもろこし」は,「穀\n物」としての「とうもろこし」であったと解するのが相当であり,「第31類 とう もろこし」とする本件指定商品の範囲は,少なくとも「穀物」としての「とうもろこし」に及ぶものである。
イ また,商標法施行規則別表における細分類の表\示は飽くまで例示である ところ,政令別表は,前記のとおり,本件指定商品が含まれる第31類を「加工し\nていない陸産物,生きている動植物及び飼料」と定めており,本件商標の出願後に 施行された平成28年経済産業省令第109号が,商標法施行規則別表の第31類\n1中の「とうもころし」を「とうもろこし(穀物)」とし,同類10「野菜」に「と うもろこし(野菜)」を加えたように,第31類の中には,「穀物」としての「とう もうころし」と「野菜」としての「とうもろこし」の双方が含まれるということが できる。このことに照らすと,本件指定商品「第31類 とうもろこし」は,「穀物」 としての「とうもろこし」だけでなく,「野菜」としての「とうもろこし」も含むと 解することが相当である。本件商標に類似群コードとして「33A01」が付され ていることはこの認定を左右しない。
ウ 以上の検討からすると,本件指定商品の範囲には,「野菜」としての「と うもころし」及び「穀物」としての「とうもろこし」のいずれもが含まれると解さ れるのであり,これを前提にして商品の類否の判断をするのが相当である。
エ 被告は,1)従前から「野菜」である「とうもろこし」を生産,販売して おり,「穀物」である「とうもろこし」は生産,販売したことがないし,今後も生 産,販売するつもりはないこと,2)被告が,「野菜」としての「とうもろこし」に 本件商標を使用する意図で,「野菜」としての「とうもろこし」の資料とともに本件商標の出願をしたこと,3)類似群コードが特許庁により付されたものであることな どから,本件指定商品は,「野菜」としての「とうもろこし」と解すべきであると主 張する。 しかし,本件指定商品は「第31類 とうもろこし」であるから,前記ア〜ウの とおり解されるのであって,上記1)〜3)の事情は,この認定を左右するものではな い。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(2)ア 前記(1)を踏まえて,本件指定商品と引用商標の各指定商品が類似する かどうかを検討するに,指定商品が類似のものであるかどうかは,商品自体が取引 上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判断すべきものではなく,それらの商品 が通常同一営業主により製造・生産又は販売されている等の事情により,それらの 商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一の営業主の製造・生産又は販売に かかる商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にある場合には,たとえ, 商品自体が互いに誤認混同を生ずるおそれがないものであっても,類似の商品に当 たると解するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第1104号同36年6月 27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁参照)。
イ 本件指定商品の範囲に含まれる「穀物」としての「とうもろこし」と, 引用商標1の指定商品中の「米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦」と引用商標 4の指定商品中の「豆」とは,いずれも「穀物」に属するものであって,その生産 者,販売者が一致することが通常あり得るものと認められるし,その需要者にはい ずれも一般消費者が含まれるものである。 したがって,それらの商品に同一又は類似の商標が使用されたときには,同一の営業主の生産又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるということができ,本 件指定商品と,引用商標1の指定商品中の「米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大 麦」及び引用商標4の指定商品中の「豆」は,商標法4条1項11号にいう類似の 商品に当たるというべきである。
ウ 次に,引用商標2の指定商品中の「野菜(「茶の葉」を除く。)」には,「野 菜」としての「とうもろこし」が,引用商標2,4,5の指定商品中の「冷凍野菜」 には「冷凍とうもろこし」が,引用商標4〜7の指定商品中の「加工野菜」には, 「加工済みスイートコーン」のような「加工済みのとうもろこし」が,引用商標3, 5,6の指定商品中の「穀物の加工品」には,「炒ったとうもろこし」がそれぞれ含まれるものと認められる。 本件指定商品には「とうもろこし(野菜)」が含まれているから,本 件指定商品は,この点において,引用商標2の指定商品中の「野菜(「茶の葉」を除 く。)」と同一である。
b また,本件指定商品である「とうもろこし(野菜)」と引用商標2, 4,5の指定商品中の「冷凍野菜」に含まれる「冷凍とうもろこし」とは,同じ「野 菜」としての「とうもろこし」からなるものであって,生産者・製造者,販売者が 同一の場合もあり得るものと認められる。 したがって,本件指定商品である「とうもろこし(野菜)」と引用商標2,4,5 の「冷凍野菜」に同一又は類似の商標が使用されたときには,同一の営業主の生産・ 製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるということができるから,本件 指定商品である「とうもろこし(野菜)」と引用商標2,4,5の指定商品中の「冷 凍野菜」は,商標法4条1項11号にいう類似の商品に当たるというべきである。 本件指定商品である「とうもろこし(穀物)」と引用商標2,4,5の 指定商品中の「冷凍野菜」,引用商標4〜7の指定商品中の「加工野菜」,引用商標 3,5,6の指定商品中の「穀物の加工品」及び引用商標2の指定商品中の「野菜 (「茶の葉」を除く。)」とは,「穀物」か「野菜」か,加工の有無,程度又は方法に ついて差異があるとはいえ,いずれも「とうもろこし」からなるものという点では 変わりがなく,「とうもろこし(穀物)」と引用商標2〜7の上記各指定商品の生産 者・製造者,販売者が一致することもあり得るものと認められる。そして,その需 要者にはいずれも一般消費者が含まれる。したがって,本件指定商品である「とうもろこし(穀物)」と引用商標2〜7の上 記各指定商品に同一又は類似の商標が使用されたときには,同一の営業主の生産・ 製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるということができるから,本件 指定商品である「とうもろこし(穀物)」と引用商標2,4,5の指定商品中の「冷 凍野菜」,引用商標4〜7の指定商品中の「加工野菜」,引用商標3,5,6の指定 商品中の「穀物の加工品」及び引用商標2の指定商品中の「野菜(「茶の葉」を除く。)」は,商標法4条1項11号にいう類似の商品に当たるというべきである。

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平成29(ワ)1752  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年2月28日  大阪地方裁判所(26部)

 専用実施権について、明文がなくても、実施義務を負っているかが争われました。実施義務については認めましたが、報告義務違反はないとして請求を棄却しました。

 原告は被告が実施義務を負っていることを前提として,それに違反した債務不 履行があると主張している。 確かに,本件契約には,被告の実施義務を定めた条項は設けられておらず,被告 が本件特許の実施に努めることさえも規定されていない。 もっとも,本件契約は専用実施権設定契約であり,被告は本件契約に基づき本件 特許の専用実施権を取得し,本件特許を独占的に実施し得る地位を獲得するのに対 し,原告は本件契約を締結することによって,本件特許を実施することや他の者に 実施許諾することができないにもかかわらず,特許維持費用の支払義務は負うとい う立場に立つことになる。また,本件契約では,イニシャルペイメントが「0円」 と明記され,またランニング実施料の金額も,実施の有無にかかわらず一定額が支 払われる条項とはされず,被告が販売した本件特許権に基づく製品の販売価格に所 定の割合(2ないし5%)を乗じた額とするにとどめられていたから,原告は,被 告が本件特許を実施しないことには,実施料の支払を全く受けられないことになる。 本件契約の当事者である原告と被告が置かれる以上のような状況を踏まえると, 専用実施権者である被告は,本件特許の実施が可能であるのに,それを殊更に実施\nしないとか,その実施に向けた努力を怠るなどということは許されず,信義則に基 づき,本件特許を実施する義務を一定の限度で負うと解すべきである。 もっとも,上述したように,本件契約では被告の実施義務に関係する条項は何ら 設けられず,またランニング実施料の金額も販売価格に一定割合を乗じた額とする にとどめられており,被告としては製品が販売できた場合にのみ実施料の支払負担 が発生するにとどまるというリスク負担を前提に本件契約を締結したものであるか ら,本件特許を実施した製品を製造販売するための努力の程度について被告に過大 な義務を負わせることは相当でない。また,被告は本件特許の製造法によって製造 したしらすを製造販売することによって本件特許を実施することになるが,本件特 許は解凍後真空包装し,加圧加熱処理することをも構成として含むものであり,被\n告はそれを行うための機械を有していなかったから,そのための準備期間が不可避 的に生ずるし,結果的に,商品が消費者に十分受け入れられず,思うように商品が\n販売できないなどという事態も生じ得る。 以上のような本件の事情を考慮すると,被告が本件特許の実施義務を負うといっ ても,本件特許を実施するために必要な事項等を踏まえつつ,その時々の状況を踏 まえ,特許の実施に向けた合理的な努力を尽くすことで足りると解するのが相当で ある。
(3) 被告の実施義務違反の有無
ア 上記(2)のような観点から,被告が本件特許の実施のための努力を怠ったといえるかを検討すると,前記(1)で認定した事実によれば,被告は,平成26年3 月28日に本件契約を締結した後,速やかに,自社ではできないパック詰め作業を 委託する業者を探して,同年5月22日までにはその目途をつけた後,パッケージ 等の製造や,そのデザインを別の業者に依頼し,同年10月末までにその目途をつ けて,製造の準備をほぼ整えたと認められる。また,被告は,以上のような製造に 向けた準備と同時並行で,元々取引のあった愛媛県内のスーパーやデパートに本件 特許の製造法によって製造したしらすの販売を持ちかけたり,P4に対してその販 売の取次を依頼したりし,幅広く本件特許の製造法により製造したしらすを販売す るための交渉等を進めたが,成果は芳しくなく,その後,同年12月までには「婦人画報」への掲載が決まり,平成27年3月には商品の製造を開始し,同年4月頃 に販売された「婦人画報」に「オレの惚れたしらす丼セット」が掲載され,実際に その販売が開始されるに至ったのである。以上のように,被告は,本件契約の締結 後,本件特許の実施に向けた準備を進め,実際に,実施にこぎつけたと認めること ができる(なお,被告製品の製造工程が本件発明の製造工程に反すると認められな いことは前記1で判示したとおりである。)。 イ もっとも,本件契約の締結から商品の製造や販売開始まで1年程度要し ていることから,被告が前記(2)で判示した本件特許の実施のための努力を尽くした といえるかを検討する。
(ア) 確かに,被告代表者自身も陳述書(乙40)において,「準備に思った\nより時間…が掛かりました」と述べているように,製造販売の準備行為に相当の時 間を要しており,さらに早期に商品の製造や販売の準備を整えることができた可能\n性も否定はできない。 しかし,被告は,パック詰め作業をする設備機械を保有していなかったのである し,パッケージ等の製造も他の業者に委託しなければならなかったのであるから, 製造準備を整えるまでに前記のような期間を要したことが,本件特許の実施を不当 に遅延したとはいえない。また,前記認定の経過によれば,被告が実際に被告製品 の製造を開始したのが平成27年3月となったのは,当初の地元のスーパーやデパ ートへの営業が販売価格の面で折り合わず,芳しくなかったが,同年4月頃に販売 される「婦人画報」に「オレの惚れたしらす丼セット」が掲載され,それを見た消 費者に対する販売が相当程度見込まれたからと推認される。そして,被告も営利企 業として事業を営んでいる以上,ある程度まとまった販売が見込まれない段階で商品の製造を開始することは現実的ではないし,信義則上も被告にそれを強いること は相当とはいえないから,被告が結果として,ある程度まとまった販売が見込まれ るに至った同年3月から商品の製造を開始したこと(それまでは本件特許の製造法 によるしらすを製造しなかったこと)が,製造販売への努力を不当に怠ったという ことはできない。
以上によれば,製造販売の準備行為に時間を要したことによって製造開始が遅れ たとまで認めることはできないし,平成27年3月からの製造開始となったことが 被告の努力が足りなかったことによるものと認めることもできない。 また,製造販売を開始した後の販売状況も,決して順調とはいえないものではあ るが,被告は,Smile Circle株式会社以外の取引先にも営業を行って少量ながら取 引をしていることからすると,販路拡大のための努力を不当に怠っていたと認める ことはできない。

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平成30(行ケ)10132  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月7日  知的財産高等裁判所

 原告は、株式会社ドクター中松創研です。進歩性なしとした審決の取消訴訟です。裁判所は、審決を維持しました。

以上の(1)ア,イから明らかなように,太陽電池モジュールを構成するに際\nして,略円形状の半導体ウエハを切断せずにそのまま用いた太陽電池セルを用いる ことで,材料ロスを少なくし,低コストのものとすることは,本願出願前において 周知の技術であると認められる。 太陽電池パネルにおいて低コスト化を図ることは,一般的な課題といえるのであ って,甲1発明に係る「太陽電池パネル材」においても,低コストのものとするこ とは,当然に要求されるものであるところ,甲1発明の「円形状の太陽電池セル3 0」を得るにあたり,同じ形状を持つ太陽電池セルである,略円形状の半導体ウエ ハを切断せずにそのまま用いた上記周知技術の太陽電池セルを採用することは,当 業者が容易に想到し得ることである。
・・・
原告は,1)本願発明は,ソーラーパネルのウエハ間の隙間を透過した日光を利用\nして流体加熱を可能とする発明は,本質的には,流体加熱を可能\とすることであり, ソーラーパネルのウエハ間の隙間を透過した日光を利用して野菜の栽培を可能\とす る発明は,本質的には,野菜の栽培を可能とすることであるから,ウエハ間の空白\n部分から日光を透過させる構成を備える本願発明と甲1発明とは,上記構\成におい て異なる,2)屋根に用いた太陽光パネルにより発電する構成と,屋根に用いた温水\nパネルにより流水を加熱する構成とを一体化するシステム構\成を,周知技術と判断 することには無理があるから,上記システム構成が周知技術であることを理由に,\n当該事項が甲1に記載されているに等しい事項であるとすることは誤りである,3) 甲1において,農業施設の屋根に太陽電池パネル材を用いることは示唆されている としても,ウエハ間の隙間を透過した日光を利用して「野菜の栽培」を可能とすることまで示唆されているとはいえない旨主張する。\nしかし,本願発明の「天窓,縦窓,流体加熱,野菜の栽培を成し得る」の解釈は, 前記3(1)イのとおりであるところ,甲1発明においても太陽電池パネル材を流体加 熱や野菜の栽培の用途に用いることが可能であるから,この点において本願発明と\n相違していない。
なお,乙1(特開2013−2709号公報)には,光透過性を有するソーラー\n発電パネルとソーラー温水パネルを組み合わせたソ\ーラーシステムが,乙2(特開 2004−176982号公報)には,太陽電池パネルの裏面側に通水管を備えた 太陽電池組込み集熱ハイブリッドモジュールが,それぞれ開示されているから,当 業者は,甲1から,甲1発明に係る太陽電池パネル材を使用した建物において,流 水加熱も行い得ることを認識することができ,このことは,甲1発明が,太陽電池 パネル材を流体加熱に用いることが可能である点において,本願発明と相違してい\nないとの上記認定を裏付けるものであるといえる。 また,甲1には,農業用施設についての記載(【0010】)がある上,乙3(国 際公開第2012/128244号公報),乙4(国際公開第2012/04338 1号公報)及び乙5(特開2012−216609号公報)には,それぞれ,屋根 に太陽光を施設内に導入し得る太陽電池パネルを設けた施設内で,植物を栽培する ことが記載されているから,これらのことは,甲1発明が,太陽電池パネル材を野 菜の栽培に用いることが可能である点において,本願発明と相違していないとの上記認定を裏付けるものであるといえる。\n

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平成30(行ケ)1007 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月28日  知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が維持されました。新規事項追加の拒絶理由については、判断がされませんでした。

 前記(1)のとおり,甲13には,最適化されたナッツ,種子及びナッ ツ油といった複数の供給源による脂肪酸や抗酸化物質,ポリフェノールなど,それ ぞれの栄養素の量を最適化すること(【請求項3】,【0022】)や,異なる供給源 を使用することにより,過剰の場合は有害な特定の植物性化学物質の高濃度での送 達を回避すること(【0031】)が示唆されている。 そうすると,甲13発明において,植物性化学物質を,複数の異なる供給源に由 来するものとすることは,当業者が適宜採用することができる設計事項であると認 められる。
(イ)a 原告は,甲13の「ω−3脂肪酸に対して比較的高率のω−6脂肪 酸」,「抗酸化剤及び植物性化学物質[原告注:ファイトケミカル]全般を含む組成 物」という教示,又は,「ファイトケミカルの高濃度での送達が回避される」という 教示は,特定の量のω−6脂肪酸及び特定の量のポリフェノールを含む抗酸化剤を まとめて提供する前提で,複数の異なる供給源に由来するファイトケミカルを使用 することを教示するものではない旨主張する。
原告の上記主張は,本願補正後発明1が「特定の量のω−6脂肪酸及び特定の量 のポリフェノールを含む抗酸化剤をまとめて提供する前提で,複数の異なる供給源 に由来するファイトケミカルを使用する」との技術思想に基づくものであることを 前提とするものであると解されるが,その主張を採用することができないことは, 前記(2)のとおりであるから,原告の上記主張は,理由がない。
b なお,原告は,ω-6 脂肪酸,抗酸化剤及びポリフェノールの含有量 は,食品供給源や,作物,産地によって異なり,複数の異なる供給源に由来する, ω-6脂肪酸及びポリフェノールを含む抗酸化剤の特定の量を維持しながら,異なる 供給源に由来するファイトケミカルを利用することは技術的に困難である旨主張す る。 ファイトケミカルの供給源であって,ω-6 脂肪酸の前駆体であるリノール酸を含 有するピーナッツ油,コーン油,ヒマワリ油等(甲21の【0004】【表1】,【0\n033】【表2−1】,【0034】【表\2−2】)や,ポリフェノールを含有するオリーブ油(甲21の【0084】),アーモンド・クルミ・ペカン・クリ・ピーナッツ 等の抗酸化物質を含有するナッツ類(甲21の【0024】〜【0026】)は,い ずれも当業者によく知られたものである。そして,ポリフェノールは,抗酸化剤の 例である(甲15,弁論の全趣旨)。
また,証拠(甲1,2,13,14,21)によると,供給源そのものや複数の 供給源から製造される組成物に含まれる ω-6 脂肪酸,ポリフェノールの含有量は, それぞれ測定可能であることが認められる。\nそうすると,ω-6 脂肪酸,抗酸化剤及びポリフェノールの含有量が,供給源によ って異なるとしても,目的とするω-6 脂肪酸,抗酸化剤の配合量とするために植物 由来の栄養素の供給源を適切に組み合わせて各成分の合計量を調節することは,技 術的に困難であるとはいえない。 また,ω-6 脂肪酸,抗酸化剤及びポリフェノールの含有量が,作物,産地等によ って異なるとしても,それは単一の供給源でも生じ得る問題であって,異なる供給 源を組み合わせる場合に固有の問題ではなく,上記のとおり,供給源のω-6 脂肪酸, ポリフェノールの含有量が測定可能であることからすると,上記認定を左右するも\nのではない。したがって,原告の上記主張は理由がない。
c 原告の相違点 1 に係るその余の主張は,いずれも,本願補正後発明 1が「特定の量のω−6脂肪酸及び特定の量のポリフェノールを含む抗酸化剤をま とめて提供する前提で,複数の異なる供給源に由来するファイトケミカルを使用す る」との技術思想に基づくことを前提とするものであると解されるところ,前記(2) のとおりであって,採用することができない。
イ 相違点2について
(ア) 前記(1)のとおり,甲13には,甲13発明に係る組成物に抗酸化物 質(【0022】,【0023】,【0031】,【0035】),ポリフェノール(【0023】)が含まれることが示唆されており,ポリフェノールが抗酸化剤であることは,本願出願時における技術常識であった(甲15,弁論の全趣旨)から,甲13発明 に係る組成物において,少なくとも一種の処方物をポリフェノールを含む抗酸化剤 を含むものとすることは,当業者が適宜採用することができる設計事項であると認 められる。
(イ) 原告は,「ピーナッツ」は,異なる供給源に由来するファイトケミカ ルを使用した「処方物」ではなく,甲13は,「抗酸化剤」自体を教示しているもの であって,特定の量のω−6脂肪酸及び特定の量のポリフェノールを含む抗酸化剤 をまとめて提供することや,当該提供を維持したまま,複数の異なる供給源に由来 するファイトケミカルを使用することを教示するものではないと主張する。 原告の上記主張は,本願補正後発明1が「特定の量のω−6脂肪酸及び特定の量 のポリフェノールを含む抗酸化剤をまとめて提供する前提で,複数の異なる供給源 に由来するファイトケミカルを使用する」との技術思想に基づくことを前提とする ものであると解されるところ,前記(2)のとおりであって,採用することができない。

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平成30(ワ)19731  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年2月28日  東京地方裁判所

 脚を写した写真について著作物性ありとして、東京地裁47部は発信者情報の開示を認めました。該当写真は、判決文中にあります。

 写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャ\nッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),陰影 の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合してなる一 つの表現であり,そこに撮影者等の個性が何らかの形で表\れていれば創作性が 認められ,著作物に当たるというべきである。 これを本件についてみると,本件写真2は,別紙写真目録2記載のとおりで あるところ,フローリング上にスリッパを履いて真っすぐに伸ばした状態の両 脚とテーブルの一部を主たる被写体とし,大腿部の上方から足先に向けたアン グルで,右斜め前方からの光を取り入れることで陰影を作り出すとともに脚の 一部を白っぽく見せ,また,当該光線の白色と,テーブル,スリッパ及びショ ートパンツの白色とが組み合わさることで,脚全体が白っぽくきれいに映るよ うに撮影されたカラー写真であり,被写体の選択・組合せ,被写体と光線との 関係,陰影の付け方,色彩の配合等の総合的な表現において,撮影者の個性が\n表れているものといえる。したがって,本件写真2は,創作的表\現として,写真の著作物であると認められる。これに反する被告の主張は採用できない。
2 争点2(公衆送信権侵害の成否)
(1) 本質的特徴を感得できるかについて
著作物の公衆送信権侵害が成立するためには,これに接する者が既存の著 作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができることを要する。\nこれを本件についてみると,証拠(甲3の2,9)及び弁論の全趣旨によ れば,本件画像には,本件写真2の下側の一部がほんの僅かに切り落とされ ているほかは,本件写真2がそのまま用いられていることが認められる。そ して,本件画像は,解像度が低く,本件写真と比較して全体的にぼやけたも のとなっているものの,依然として,上記1で説示した,本件写真2の被写 体の選択・組合せ,被写体と光線との関係,陰影の付け方,色彩の配合等の 総合的な表現の同一性が維持されていると認められる。\nしたがって,本件画像は,これに接する者が,本件写真2の表現上の本質\n的な特徴を直接感得することができるものであると認められる。これに反す る被告の主張は採用できない。
(2) 本件画像アップロードと本件投稿の関係について
ア 前記前提事実(3),証拠(甲3,5,6,11ないし13)及び弁論の 全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 「たぬピク」は,「up@vpic(省略)」宛てに画像を添付したメール を送信すると,当該画像がインターネット上にアップロードされたUR Lが,送信元のメールアドレス宛てに返信され,当該URLを第三者に 送るなどして,当該画像を第三者と共有することができるサービスであ る。
(イ) 本件掲示板を含むたぬき掲示板(2ch2(省略))をスマートフォンで 表示する場合には,「たぬピク」により取得した,画像のURLが投稿されると,当該URLが表\示されるのではなく,当該URLにアップロ ードされている画像自体が表示される仕組みとなっている。これにより,\n当該URLをクリックしなくても,たぬき掲示板上において,他の利用 者と画像を共有することが可能となっている。\n
(ウ) 本件画像は,平成30年3月22日午後11時53分41秒に,「up @vpic(省略)」宛てにメール送信され,本件画像URL上にアップロ ードされた(本件画像アップロード)。
(エ) 本件画像URLは,同日午後11時54分46秒に,被告の提供する インターネット接続サービスを利用して,本件掲示板に投稿された(本 件投稿)。
イ 以上の事実関係を前提に,本件投稿によって公衆送信権の侵害が成立す るか検討する。
まず,本件画像は,前記ア(ウ)のとおり,本件投稿に先立って,インター ネット上にアップロードされているが,この段階では,本件画像URLは 「up@vpic(省略)」にメールを送信した者しか知らない状態にあり,いま だ公衆によって受信され得るものとはなっていないため,本件画像を「up @vpic(省略)」宛てにメール送信してアップロードする行為(本件画像ア ップロード)のみでは,公衆送信権の侵害にはならないというべきである。 もっとも,本件においては,前記ア(ウ)及び(エ)のとおり,メール送信に よる本件画像のアップロード行為(本件画像アップロード)と,本件画像 URLを本件掲示板に投稿する行為(本件投稿)が1分05秒のうちに行 われているところ,本件画像URLは本件画像をメール送信によりアップ ロードした者にしか返信されないという仕組み(前記ア(ア))を前提とすれ ば,1分05秒というごく短時間のうちに無関係の第三者が当該URLを 入手してこれを本件掲示板に書き込むといったことは想定し難いから,本 件画像アップロードを行った者と本件投稿を行った者は同一人物であると 認めるのが相当である。そして,前記ア(イ)のとおり,本件画像URLが本 件掲示板に投稿されることにより,本件掲示板をスマートフォンで閲覧し た者は,本件画像URL上にアップロードされている本件画像を本件掲示板上で見ることができるようになる。そうすると,本件投稿自体は,UR Lを書き込む行為にすぎないとしても,本件投稿をした者は,本件画像を アップロードし,そのURLを本件掲示板に書き込むことで,本件画像の データが公衆によって受信され得る状態にしたものであるから,これを全 体としてみれば,本件投稿により,原告の本件写真2に係る公衆送信権が 侵害されたものということができる。以上の認定に反する被告の主張は採 用できない。
3 小括
以上からすれば,本件投稿により,原告の本件写真2に係る著作権(公衆送 信権)が侵害されたことが明らかであると認められる。また,原告がかかる著 作権侵害の不法行為による損害賠償請求権を行使するためには,被告が保有す る別紙発信者情報目録記載の情報が必要であると認められる。

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平成27(ワ)16423    不正競争  民事訴訟 平成30年11月29日  東京地方裁判所(46部)

 漏れてましたのでアップしました。ソフトウェアのソ\ースコードを流用したことが、不正競争行為に該当すると判断されました。問題となったのは、原告ソフトウェアについて、原告外部の技術者としてその開発,制作に携わり,その後,被告から委託を受け,被告ソ\フトウェアの実際の開発,制作を担当したBの行為です。前訴で著作権侵害を争いましたが、1審、2審とも著作権を侵害しないと判断されています。損害認定については、原告の利益*被告の譲渡数量をベースとして95%の滅失事由があると認定されました。

 本件鑑定で用いられたソースコードの分析の手法及びその鑑定結果の概要\nは以下のとおりである。(鑑定の結果〔4頁ないし12頁,17頁,24頁ない し27頁〕)
ア 本件鑑定においては,原告の意見等も踏まえ,本件ソースコードのうち1\n14種類のソースファイルが鑑定対象とされ,本件ソ\ースコードのうち一つ または複数のソースコードに対して被告ソ\フトウェアの複数のソースコー\nドを比較すべき場合があることから,300組のソースコードのペアについ\nて,一致点の有無等が判断された。
イ 前記の300組のソースコードのペアについて,類似性や共通性を判断す\nるため,8種類のコードクローン検出(コードクローンとはソースコード中に相互に一致又は類似したコード断片をいう。)を実施した。\n8種類のコードクローン検出の方法の概要は,1)識別子とリテラルのオー バーラップ係数を用いて名前の包含度合いを確認する,2)識別子とリテラル のコサイン係数を用いて名前の一致度合いを確認する,3)識別子とリテラル の部分文字列のオーバーラップ係数を用いて名前の文字並びの包含度合い を確認する,4)識別子とリテラルの部分文字列のコサイン係数を用いて名前 の文字並びの一致度合いを確認する,5)コメントの部分文字列のオーバーラ ップ係数を用いてコメントの文字並びの包含度合いを確認する,6)コメント の文字列のコサイン係数を用いてコメントの文字並びの一致度合いを確認 する,7)キーワードや記号の系列にSmith−Watermanアルゴリ ズムを適用してソースコードの文字並びの一致度合いを確認する,8)前記ア ルゴリズムをソースコードの長さで正規化してソ\ースコードの構造の一致\n度合いを確認するというものであった。
ウ 前記イの8種類のコードクローン検出を実施し,1種類以上の方法で類似 性についての一定の閾値を超えたものを要注意コード・ペアとして取り扱っ た。この要注意コード・ペアは,300組中57組存在した。
エ 前記ウの結果を参考にしつつ,鑑定人が300組全てのソースコードのペ\nアについて目視確認を行い,共通性や類似性が疑われるソースコードのペア\nを選んだ。その結果,原告ソフトウェアのソ\ースファイルと被告ソフトウェアのソ\ースファイルには,1)「GlobalSettings.h」と「S ourceDefault.h」(順に,原告ソフトウェアのソ\ースファイル と被告ソフトウェアのソ\ースファイル。以下,同じ。),2)「GlobalS ettings.cpp」と「SourceDefault.cpp」,3)「S STDB.cpp」と「Mdb.cpp」,4)「AutoLocker.h」 と「SafeLocker.h」,5)「AutoLocker.cpp」と「S afeLocker.cpp」につき,共通性や類似性が疑われる箇所が発見された(類似箇所1ないし5)。
・・・・
鑑定人は,類似箇所1ないし4について原告と被告のソースコードが不自\n然に類似・共通する箇所が存在すると判断し,類似箇所5については原告と 被告のソースコードに類似性や共通性が見られるがその理由が不自然であ\nるとまではいえないと判断した。
・・・
キ 鑑定人は,類似箇所1ないし5について,原告ソフトウェアを参照せずに\n被告らが独自に作成することが可能であるか否かにつき,以下のとおり判断\nした。
類似箇所1について
原告ソフトウェアのソ\ースコードの一部がサンプルで公開されていた などといった外部要因がないことを前提とすれば,原告ソフトウェアと被\n告ソフトウェアの開発者は必ず同一人物である。被告ソ\フトウェアを開発 する際に原告ソフトウェアを参照した可能\性が高いが,参照せずに開発す ることが全く不可能であるとまでは言い切れない。\nもっとも,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの開発者が同一人物で あり,その人物の記憶を手掛かりとしても,原告ソフトウェアのソ\ースコ ードを参照せずに類似箇所1で見られるような細かい特徴まで一致させ ることは難しいと考えることが自然である。
・・・
類似箇所1ないし3について,本件ソースコードの被告\nらによる使用等があったと認められる。そして,Bが,原告ソフトウェアの開\n発に携わった者の一人であり,被告ソフトウェアについて実際の開発,制作を\n担当したこと(前提事実 )及び弁論の全趣旨から,Bは,被告ソフトウェア\nの開発の際,本件ソースコードの類似箇所1ないし3に対応する部分を使用し\nて被告ソフトウェアを制作等し,もって,類似箇所1ないし3を被告フェイス\nに対して開示し,また,被告フェイスにおいてそれを取得して使用したと認め られる。
類似箇所4について
前記1(1)によれば,類似箇所4については,被告ソフトウェアのデータベー\nスで用いられている52件のフィールドの名前が原告ソフトウェアのデータ\nベースで用いられているものと同じであると指摘されており,被告らもTem plate.mdbの複製について認めていることに照らせば,類似箇所4に ついては,類似箇所1ないし3についてと同様の理由から,Bから被告フェイ スに対する開示及び被告フェイスによるその使用があったと認められる。
・・・
イ 原告ソフトウェアが開発されるに至った経緯や原告ソ\フトウェアの開発 の際のBの勤務の形態等に照らしても,原告ソフトウェアの開発,制作は原\n告の指示に基づきされたといえるものであり,本件ソースコードは原告が保\n有すると認められる。そして,原告ソフトウェアの開発,制作に携わった者\nの一人であるBは,類似箇所1ないし3が本件ソースコードの一部であるこ\nとや,販売用ソフトウェアのソ\ースコードという本件ソースコードの性質や\nその開発等の経緯等から,それが原告が保有する営業秘密であることを認識 できたといえる。 これらを考慮すると,Bが原告ソフトウェアと販売上も競合する被告ソ\フ トウェアを開発,制作するに当たって類似箇所1ないし3を使用したことは原告から示された営業秘密を,図利加害目的をもって被告フェイスに開示し たものと認めることが相当である(不競法2条1項7号)。 被告フェイスは,被告ソフトウェアが原告ソ\フトウェアと同種の製品であ り,字幕データファイル等について互換性を有するという特徴を有するもの であることや,上記のような機能を有する被告ソ\フトウェアの開発を具体的 に行うBが原告ソフトウェアの開発に携わった者の一人であったことは認\n識していたと認められる。これらのことから,被告フェイスは,被告ソフト\nウェアの具体的な開発を委託したBによる被告ソフトウェアの開発過程等\nにおいて違法行為が行われないよう特に注意を払うべき立場にあった。不競 法2条1項8号にいう重過失とは,取引上要求される注意義務を尽くせば容易に不正開示行為等が判明するにもかかわらずその義務に違反した場合を いうところ,被告フェイスにおいて,前記の事情に照らせば,前記の注意義 務を尽くせば被告ソフトウェアの開発過程等においてBの不正開示行為が\n介在したことが容易に判明したといえ,被告フェイスは,少なくとも重過失 により,原告の営業秘密である類似箇所1ないし3をBから取得し,それら を被告ソフトウェアに用いて販売したと認めるのが相当である(不競法2条\n1項8号)。 Aについて,被告ソフトウェアの開発,制作に当たって,具体的な本件ソ\ ースコードを被告フェイスに開示した事実を認めるには足りないし,その他, Aにおいて,不正競争行為となる事実を認めるに足りる証拠はない。したが って,Aについて,不正競争行為は認められない。
イ 被告らは,類似箇所1ないし3が被告ソフトウェアのソ\ースコードと一致 ないし類似するに至った原因は,Bが,原告ソフトウェアを開発するに際し\nてライブラリの選択等のために独自に自らのパソコンで作成し,そのパソ\コ ンに残っていた簡易な評価プログラムやそのプログラムに含まれる変数定 義部分を被告ソフトウェアの開発の際にも参照したことにあり,そのような\n行為は非難されるべきものではないなどと主張する。しかしながら,同事実関係を裏付ける証拠はない。また,前記の評価プロ グラムは,それが作成,使用されたとしても,その評価の対象となる本件ソ\nースコードの存在を前提として作成,使用されたものと考えられ,変数定義 部分が前記評価プログラムの作成又は使用によってBのパソコンに残って\nいたとしても,それが本件ソースコードの一部である以上,前記に述べたと\nころと同様の理由により,原告から示された営業秘密であるとするのが相当 であり,また,Bにおいて,そのことを認識することができたといえる。こ れらに照らせば,被告らの主張は,Bにおいて類似箇所1ないし3を被告ソ\nフトウェアの開発の際に使用する行為が不競法2条1項7号にいう不正競 争に該当するなどの前記結論を左右するものではない。
・・・
前記(1)アのとおり,被告ソフトウェアの販売数は,主として業務用として\n利用されるドングル版が●(省略)● ここで,オンライン版とスクール版の前記個数については同一顧客によっ て更新された回数が含まれているところ,オンライン版とスクール版につい ては,価格(更新の価格も含む。)がドングル版に比較して相当安価に設定さ れていて,同一顧客による同内容のソフトウェアの継続利用とその更新を前\n提としている部分があると認められる。このことに原告ソフトウェアの価格\nから推測されるその利用方法を考慮すると,本件においては,オンライン版 とスクール版については,不競法5条1項にいう「譲渡数量」としては,同 一顧客に対する販売を1個とすることが相当であるというべきである。 したがって,不競法5条1項における被告ソフトウェアの譲渡数量は,ド\nングル版が●(省略)●であると認めるのが相当である。
イ 原告ソフトウェアの単位数量当たりの利益の額\n
前記 ウのとおり,主として業務用に利用される原告ソフトウェアの価格は,基本編集機能\を搭載したもので28万円である。また,前記 オのとお り,主として教育用に利用される原告ソフトウェアの価格は,割引を考慮し\nない場合は2万4800円である。 そして,平成21年から平成23年までの間及び平成27年について,減 価償却費や人件費を控除して算出された原告商品の利益率は,最も利益率が 低い期間の利益率においても53.2パーセントを超えること(甲38の2, 甲133)及び弁論の全趣旨から,原告ソフトウェアの限界利益の利益率は,\n少なくとも40パーセントであると認められる。 以上によれば,主として業務用に利用される原告ソフトウェアの前記利益\nの額は11万2000円(28万円×0.4),主として教育用に利用される 原告ソフトウェアの前記利益の額は9920円(2万4800円×0.4)\nであると認められる。 これに対し,原告は,原告ソフトウェアの価格は90万7200円である\nと主張する。しかしながら,前記 廉価版である「SSTG1 Lite」を14万2000円で販売している。 また,90万7200円という金額は高等機能オプションやデータのインポ\nート/エクスポートオプション等の大部分を搭載した場合における金額で あるところ,前記 のとおり,原告ソフトウェアを利用する顧客の中には\n個人の顧客もかなりの割合で存在しており,そのような個人の顧客が基本編 集機能に加えてそれらのオプションを搭載したものを購入しているか否か\nは証拠上明らかではなく,むしろ,証拠(乙5,42)によれば個人の顧客 の97パーセントは基本編集機能のみを購入していることがうかがわれる。\nしたがって,原告の前記主張は採用できない。
ウ 小括
前記ア及びイによれば,以下の計算式のとおり,主として業務用に利用さ れるソフトウェアの関係では2654万4000円が原告の損害額と推定\nされ,主として教育用に利用されるソフトウェアの関係では1123万93\n60円が原告の損害額と推定される(合計3778万3360円)。
(計算式)
●(省略)●
エ 推定覆滅事由についての検討
前記3のとおり,被告ソフトウェアに関連し,原告の営業秘密である類似\n箇所1ないし3についてB及び被告フェイスの不正競争行為が認められる。 ここで,類似箇所1ないし3はいずれも変数定義部分等であり,ソフトウェ\nアの動作に不可欠な有用な部分ではあるが,ソフトウェアの画面表\示,イン ターフェイスや動作といったソフトウェアの利用者に関係する機能\等の制 御に直接的に関係する部分ではなく,また,類似箇所1ないし3の内容に照 らし,それらが被告ソフトウェアに対して他のソ\フトウェアでは一般的とは いえない特別の動作をもたらすものであるとは認められない。他方,前記1 とおり,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアのソースコードは,類似\n箇所1ないし5以外に類似している箇所があるとは認められず,ソフトウェアの利用者に関係する機能\等の制御に直接的に関係する部分については原 告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの間に共通する部分は存在していない ともいえる。 これらを考慮すると,被告らの不正競争行為が被告ソフトウェアの利用者\nに関係する機能を同種のソ\フトウェアに関する機能と大きく異なるものに\nしたとは直ちにはいえず,被告ソフトウェアの売上げは,基本的には,被告\nソフトウェアの不正競争行為ではない行為により作成された機能\に基づく 商品としての価値や被告フェイスの営業努力等によって実現されていたと するのが相当である。
以上によれば,被告ソフトウェアの譲渡数量のうちの相当程度の数量の原\n告ソフトウェアについて,原告が販売することができなかった事情があると\n認めるのが相当であり,以上のほか,本件にあらわれた一切の事情を総合的 に勘案すれば前記ウの推定は95パーセントの限度で覆滅し,被告フェイス 及びBによる不正競争によって原告に生じた損害は,前記ウ記載の損害の5 パーセントであると認めるのが相当である。また,弁護士費用としては,10万円をもって相当と認める。 なお,被告らは,「おこ助」と称する字幕ソフトウェアがシェアを拡大して\nおり,原告ソフトウェアとの競合品が存在していることが推定覆滅事由に該\n当するなど主張するが,前記「おこ助」の販売台数や機能等の詳細は明らか\nでなく,むしろ,証拠(乙38,39)によれば前記「おこ助」は主として 聴覚障がい者向けの字幕制作のためのソフトウェアであることがうかがわ\nれることに照らせば,前記「おこ助」が原告ソフトウェアの競合品であるこ\nとを理由とした被告らの前記主張は認められない。

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前訴はこちらです。

◆平成25(ワ)181

◆平成27(ネ)10102

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平成30(行ケ)10099  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年3月6日  知的財産高等裁判所

 一次判決の拘束力について「新証拠に基づく判断は拘束されない」と争いましたが、知財高裁は、新たな証拠による新たな主張をするこは、取消判決の拘束力に反するとして、これを認めませんでした。争点は、発明者は誰か?という点です。一次判決では請求項1,3の発明者は、本件被告であると判断されていました。一次判決と本件で原告被告が入れ替わってますのでややこしいです。
 特許無効審判事件についての審決の取消訴訟において審決取消しの判決が確 定したときは,審判官は特許法181条2項の規定に従い当該審判事件につい て更に審理を行い,審決をすることとなるが,審決取消訴訟は行政事件訴訟法 の適用を受けるから,再度の審理ないし審決には,同法33条1項の規定によ り,当該取消判決の拘束力が及ぶ。そして,この拘束力は,判決主文が導き出 されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから,審判官は取 消判決の当該認定判断に抵触する認定判断をすることは許されない。したがっ て,再度の審判手続において,審判官は,当事者が,取消判決の拘束力の及ぶ 判決理由中の認定判断につきこれを誤りであるとして従前と同様の主張を繰り 返すこと,あるいは当該主張を裏付けるための新たな立証をすることを許すべ きではなく,審判官が取消判決の拘束力に従ってした審決は,その限りにおいて適法であり,再度の審決取消訴訟においてこれを違法とすることができない。 このように,再度の審決取消訴訟においては,審判官が当該取消判決の主文の よって来る理由を含めて拘束力を受けるものである以上,その拘束力に従って された再度の審決に対し関係当事者がこれを違法として非難することは,確定 した取消判決の判断自体を違法として非難することにほかならず,再度の審決 の違法(取消)事由たり得ないと解される(平成4年最高裁判決参照)。
2 これを本件についてみると,上記第2,1(3)及び(4)並びに2において認定 したとおり,一次判決は,本件発明1及び3については,その発明者が原告で あると認めることはできないとして,一次審決のうち,本件特許の請求項1及 び3に係る部分を取り消した。そして,一次判決の確定後にされた本件審決は, 一次判決の拘束力に従って,本件発明1及び3については,その発明者が原告 であると認めることはできないものと判断した。 したがって,本件発明1及び3の発明者についての本件審決の判断は,一次 審決の拘束力に従ってされた適法なものであるから,関係当事者である原告は, 当該判断に誤りがあるとして本件審決の取消しを求めることができないという べきである。
3 原告の主張について
(1) 原告は,平成4年最高裁判決は,「拘束力は,判決主文が導き出されるの に必要な事実認定及び法律判断にわたる」と判示しているから,一次判決の 拘束力が及ぶのは,一次判決のうち,本件発明1及び3に係る部分を取り消 すとの判決主文が導き出される根拠とされた事実(証拠)の認定及び当該事 実(証拠)に基づいてされた法律判断のみであって,新たな証拠に基づく事 実認定や法律判断にまで拘束力は及ばないところ,新たな証拠によれば本件 発明1及び3の発明者は原告であると認定されるべきであるから,これに反 する本件審決の判断は誤りであると主張する。 しかし,平成4年最高裁判決によれば,判決主文が導き出されるのに必要 な事実認定及び法律判断に対して拘束力が及ぶのであるから,当事者として は,この事実認定に反する主張をすることは許されないのであり,したがっ て,新たな証拠を提出して,上記事実認定とは異なる事実を立証し,それに 基づく主張をしようとすることも,取消判決の拘束力に反するものであって 許されないといわなければならない。このことは,上記判決自身が,「再度 の審決取消訴訟において,取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決の認定判断を誤りであるとして,これを裏付けるための新たな立証をし,更には 裁判所がこれを採用して,取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決を違 法とすることが許されない。」と明言していることからも明らかである。 そして,本件訴訟における原告の主張は,一次判決において審理の対象と なっていた冒認出願(平成23年法律第63号による改正前の特許法123 条1項6号),すなわち,本件発明1及び3は,被告が発明したものである にもかかわらず,原告がその名義で出願した,という同一の無効理由に関し, 本件発明1及び3の発明者が原告であると認めることはできない,との一次 判決が認定した事実そのものについて,一次判決に係る訴訟における原告の 主張を補強し,又は,原告に不利な認定を誤りであるとして,確定した一次 判決の当該認定判断を覆そうとするものにすぎないから,そのような主張が 許されないことは明らかである。
(2)ア もっとも,原告が指摘するとおり,取消判決に民事訴訟法338条所定 の再審事由がある場合には,当該取消判決は再審の訴えによって取り消さ れるべきものであるから,これに拘束力を認めるのは相当でないと解する 余地がある。 そして,原告は,一次判決の認定判断の基礎となった被告及びAの陳述 (一次審決に係る審判手続において,宣誓の上で実施された被告の当事者 尋問における陳述を含む。)に,民事訴訟法338条1項6号及び7号の再審事由があると主張するものと解されるが,同条1項ただし書の場合に 該当しないこと,及び同条2項の要件を満たすことについては何ら主張立 証がないから,原告の再審事由に関する主張は,既にこの点において理由 がないものといわざるを得ない。また,念のため内容について検討してみ ても,やはり理由がないものといわざるを得ない。
イ すなわち,一次判決は,本件各発明の発明者を認定判断するに当たり, 被告が主張した,1)平成22年10月5日までに,燃焼室クリーナーの流 量調整等の問題を解決するために,ノズル管を加熱・冷却してその管内に ゲート構造を形成するとの着想を得て,これを具体化した甲33に係るノズル(一次判決における甲26ノズル)を製作しその噴出量のテストを行\nった,2)その後,同月28日ころには,本件各発明を完成させ,同年11 月3日ころには,本件各発明を実施することに用いるゲート構造を備えたノズルを製作するための機器を完成させた,との各事実につき,一次審決\nに係る審判手続において,宣誓の上で実施された被告の当事者尋問の録音 反訳書(甲48。一次判決における甲37)を,その認定の基礎としてい ることが認められる(甲8・29頁)。
この点に関し,原告は,被告との打合せの際,「…誰もやってない時に プライヤーで潰して針金入れたやつ見せたじゃないですか。」との原告の 発言に対し,被告が「…プライヤーで潰した針金?」,「…あれが,これ と何が違うんですか。」,「…あれ持って行った時にはすでに僕は…」と 発言したこと(甲60・40頁)を根拠として,被告は原告が甲33に係るノズルを作製したことを認めていたのであるから,上記の審判手続にお ける被告の陳述は虚偽であると主張する。しかし,被告は,上記のやりと りの直後に「あれ持って行った時にはすでに僕はもうつくってあったじゃ ないですか。」と発言している上に,原告がその発言中で指摘する対象物 を示した時期などを特定するに足りる事情も見当たらないことからすると, 原告が指摘するやりとりをもって,被告が甲33に係るノズルの作製者は 原告であると認めていたと断ずることはできない。
また,原告は,Aとの打合せの際,「そのゲートのそれをやるという, アイディア。そしてあと,熱で刺した,ここに差したのを,熱でやるとい うアイディア。全部,私じゃん」との原告の発言に対し,Aは「ええ。」と発言したこと(甲61の2・2頁)を根拠として,Aは原告が本件各発 明を着想したことを認めていたと主張する。確かに,前後の文脈を踏まえ ると,原告の当該発言部分はノズルのゲートに関する事柄であることがう かがわれる。しかし,当該発言部分で触れられている技術的事項は,それ 自体抽象的である上に,本件各発明が備える構成のごく一部にすぎないから,上記のやりとりから直ちに,Aにおいて,原告が本件各発明の着想者\nであることを認めたとまで認定することは困難である。このほか原告が指摘する種々の証拠を考慮しても,上記の審判手続における被告の陳述が虚偽であると断ずることはできない。
ウ 次に,原告は,一次判決が事実認定の基礎としたA及び被告の陳述書(甲 76,77。一次判決における甲62,63)について論難するが,いず れも私文書である当該各陳述書に記載された内容が虚偽であると主張する にとどまるものであって,これらが偽造又は変造されたものであることを 認めるに足りる証拠はない。 また,原告は,甲55が黒塗りされていたことを指摘して,被告及びA が提出した書類について虚偽報告や変造が常態となっていたとも主張する が,一次判決において判断の基礎とされた証拠が偽造又は変造されたもの であることを具体的に指摘するものであるとはいい難い(そもそも,甲5 5は一次判決において判断の基礎とされたものではない。)。
(3) さらに,原告は,一部の証拠について,一次判決に係る訴訟手続において 提出できなかった事情など,種々の主張をするが,いずれも上記1及び2の判断を左右するに足りないというべきである。

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◆平成27(行ケ)10230

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平成30(ワ)6962  不正競争行為差止請求事件  不正競争  民事訴訟 平成31年2月20日  東京地方裁判所(29部)

 原告は、被告からイヤーパッドを購入し、これを含んだセット物を製造・販売しました。被告は、この行為が、当該イヤーパッドの意匠権侵害だと、拡布しました。原告は、かかる拡布は、不正競争行為に該当すると主張しました。東京地裁29部は、権利は消尽しているので、侵害ではないとして不正競争行為に該当すると判断しました。争点は、報告義務に違反して被告製品を販売した場合は、正当行為でないので消尽するのか?という点です。
 特許権者が我が国の国内において特許製品を譲渡した場合には,当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し,もはや特許権の効力は,当該特許製品を使用し,譲渡し,又は貸し渡す行為等には及ばず,特許権者は,当該特許製品がそのままの形態を維持する限りにおいては,当該製品について特許権を行使することは許されないものと解される(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁,最高裁平成18年(受)第826号同19年11月8日第一小法廷判決・民集61巻8号2989頁参照)。そして,このように解するのは,特許製品について譲渡を行う都度特許権者の許諾を要するとすると,市場における特許製品の円滑な流通が妨げられ,かえって特許権者自身の利益を害し,ひいては特許法1条所定の特許法の目的にも反することになる一方,特許権者は,特許発明の公開の代償を確保する機会が既に保障されているものということができ,特許権者から譲渡された特許製品について,特許権者がその流通過程において二重に利得を得ることを認める必要性は存在しないためであり,この趣旨は,意匠権についても当てはまるから,意匠権の消尽についてもこれと同様に解するのが相当である。
(2)前記第2の2の前提事実(3)のとおり,原告は,本件知的財産権を有する被告か ら,本件知的財産権の実施品である被告製品を購入しているところ,証拠(甲12〜 15)によれば,原告は,被告から購入したイヤーパッドである被告製品を,原告製 品であるイヤホン,無線機本体,原告製品を媒介するコネクターケーブル及びPTT スイッチボックスと併せて,それぞれ別個のチャック付ポリ袋に入れ,原告製品の保 証書及び取扱説明書とともに一つの紙箱の中に封かんした上で販売していると認め られ,そうであれば,原告製品に被告製品を付属させて販売していたにすぎないと認 められるのであり,被告による被告製品の譲渡によって被告製品については本件知的 財産権は消尽すると解される。 よって,原告が原告製品を製造等する行為は,被告の有する本件知的財産権を侵害 しない。
(3)この点,被告は,原告は,本件報告義務に違反して被告製品を販売したものであって,当該販売は不適法な拡布に当たるから,本件知的財産権は消尽しないと主張 する。しかしながら,本件報告義務違反によって消尽の効果が直ちに覆されるといえるかについての判断は措くとして,被告の上記の主張は,原告による契約上の義務違反を いうものにすぎず,本件知的財産権を有する被告によって被告製品が拡布,すなわち 適法に流通に置かれた事実を争うものではないから,被告の上記主張は,その前提を 欠き,採用することができない。
(4)そうすると,原告は,本件知的財産権を侵害していないから,本件行為におい て告知され,流布されている原告が本件知的財産権を侵害している旨の事実は,虚偽 であると認められる。

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平成30(行ケ)10141  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年3月7日  知的財産高等裁判所

 本件商標「BULK AAA(標準文字)」(指定商品 3類化粧品など)が、先行商標1「Barque/バルク」(2段併記)」および先行商標2「Bulk HOMME」と類似するかが争われました。審判ではいずれも非類似であると判断されましたが、知財高裁は先行商標2と類似すると判断しました。

 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると,欧文字「AAA」について, 次のとおり,認められる。
a 欧文字「AAA」は,広辞苑第六版(乙3の1)にも,大辞林第三 版(乙3の2)にも収載されていない。 もっとも,広辞苑第六版付録のアルファベット略語において,「AAA;Aaa; aaa(トリプルエー)」は,「格付けでの最高点」を意味するものとされている。 また,「エー【A・a】」は,「1)アルファベットの最初の文字。2)転じて,第一位。」などを意味する語(広辞苑第六版,岩波書店,平成20年1月11日),あるいは, 「1)英語のアルファベットの第一字。エイ。2)第一の,最上の,の意を表す。」などを意味する語(大辞林第三版,三省堂,平成18年10月27日)として,知られ\nている。
b 金融商品又は企業・政府などについて,その信用状態に関する評価 の結果を記号や数字を用いて表示した等級を信用格付けというが,「AAA」又は「Aaa」は,長期格付の最高位を表\す格付記号である(甲35,88〜91)。長期格付の最高位を表す格付記号としての「AAA」又は「Aaa」は,本件商標の査定日(平成29年2月21日)前においても,多くの新聞記事において広く\n用いられており,そこでは,その意味を特に説明することなく,「トリプルA」など と表記することもされていた(甲92,93)。また,生命保険会社であるアリコジャパンにおいては,世界的な二つの格付け会社から保険財務力が最上級の「AAA」\n又は「Aaa」と評価されていることに基づいて,CMやウェブサイトにおいて, 「アリコは,最上級のトリプルA」というキャッチフレーズを用いていた(甲94 〜96,102)。
c 東洋経済新報社は,平成27年11月24日発売の「CSR企業総 覧2016年版」において,上場企業を中心とする有力・先進1325社について, 人材活用,環境,企業統治,社会性の4指標を各企業のCSR評価として,成長性, 収益性,安全性,規模の4指標を財務評価として,それぞれ「AAA」,「AA」,「A」などの記号で格付けを行った(甲98)。
d 三井住友海上は,平成28年12月現在,最長5年間の研修期間を経て保険代理店経営者として独立後の保険代理店に対する評価制度として,「専属 プロ代理店」の上に「プロ新特級代理店」を設け,売上規模,要員体制等に加え, 「業務品質」「組織管理」「販売力・増収力」といった質を重視した基準を高いレベ ルで満たす代理店に対して,「TGA・AAA・AA・A+・A」の5段階の認定を 行っていた(甲97)。
・・・
(イ) 前記(ア)によると,欧文字「AAA」は,金融商品又は企業・政府など の信用状態に関する評価である長期格付の最高位を表す格付記号として,一般に知られていることが認められる。\nまた,欧文字「AAA」は,信用格付けにおける長期格付だけでなく,CSR(企 業の社会的責任)に関する人材活用,環境,企業統治,社会性の指標における格付 けや,保険代理店における売上規模,要員体制,業務品質,組織管理,販売力・増 収力等に基づく格付けにも用いられていたことが認められる。 さらに,欧文字「AAA」は,本件商標の査定日(平成29年2月21日)前に おいて,データセンターのセキュリティー水準の格付け,食の安全を担保する業務 の達成度の評価,カンパニー制における各カンパニーや工場に対する社内格付け制 度,排出量の削減実績などにおいても,最上級の評価として用いられていたほか, 東京都知事選挙の立候補予定者に対する評価や超大型ゲームに対する評価にも用いられていたことが認められる。\n
(ウ) 前記(イ)認定の事実に,我が国の学校の成績や各種評価においても,A を最上位とするABC評価が一般的な評価手法の一つであることをも考え併せると,最上を意味する「A」を重ねた「AAA」は,本件商標の査定日(平成29年2月 21日)において,信用格付けにおける長期格付にとどまらず,一般に,最上位又 は優良な評価を意味する表示であると認識されていたものと認められる。前記(ア)のとおり,本件商標の査定日後には,化粧品の分野においても,欧文字「A AA」を品質の優良性を示す趣旨で使用した,被告の商品を含む商品が複数のメー カーから販売されているが,これも,化粧品の取引者,需要者において,「AAA」 が最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されることを期待したものであるから,上記認定に沿うものということができる。\n
エ 本件商標の構成部分の一部による類否判断の可否
前記イ,ウによると,本件商標の構成部分である欧文字「BULK」は,本件商標の指定商品の取引者,需要者に,出所識別標識として認識されるものである一方,\n欧文字「AAA」は,最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されるものであるから,欧文字「BULK」の部分が取引者,需要者に対し商品の出所識別\n標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。 したがって,本件商標と引用商標2の類否判断に当たり,本件商標の構成部分である欧文字「BULK」の部分を抽出し,この部分だけを引用商標2と比較して商\n標そのものの類否を判断することが許される。
オ 被告の主張について
(ア) 被告は,「BULK」は通常の辞書に載っている一般的な英単語であ り,これ単独で造語とみなされて強い識別力を発揮することはないし,「BULK」 は,化粧品分野では,化粧品の中身を意味する語として広く一般に使用されている から,より一層識別力の弱い語であるなどと主張する。 しかし,前記イのとおり,欧文字「BULK」は,「船舶のばら積みの貨物」など を意味する英単語として知られていたのであり,本件商標の指定商品である「化粧 品,せっけん類,香料,薫料,歯磨き」に付された本件商標に接した取引者,需要 者において,「化粧品の中身」を意味する語として知られていたことを認めるに足りる証拠はないから,本件商標について出所識別標識としての機能を十\分に果たすも のということができる。
(イ) 被告は,本件商標の構成中「AAA」の文字は,それ単体での商標登録が認められる識別力のある語であるし,「AAA」が本件商標の指定商品において\n品質表示として用いられている事実はないなどと主張する。しかし,欧文字「AAA」が,信用格付けにおける長期格付にとどまらず,一般\nに,最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されていることは,前記ウのとおりである。\n前記ウ(ア)iのとおり,欧文字「AAA」についての商標登録例・査定例も認めら れるが,本件商標が欧文字「AAA」の前に欧文字「BULK」を組み合わせて成 る商標であり,「AAA」による最上位又は優良な評価が「BULK」に対し向けら れているものと容易に認識することができるのに対し,上記商標登録例・査定例は, いずれも,欧文字「AAA」のみ又は片仮名「トリプルエー」と組み合わせて成る 商標であって,欧文字「AAA」の前に異なる単語を組み合わせた商標ではないか ら,上記商標登録例・査定例の存在は,前記エの判断を左右するものではない。
(ウ) 被告は,本件商標は,全体としてまとまりよく一体に表されているし,「バルクトリプルエー」の称呼も無理なく一連に称呼し得るから,一体不可分の商標というべきものであるなどと主張する。\nしかし,前記アのとおり,本件商標は,「BULK」と「AAA」との間に1文字 分の空白があるから,「BULK」と「AAA」との複数の構成部分を組み合わせたものと容易に理解されるところ,前記イのとおり,「BULK」は,出所識別標識と\nして認識されるものである一方,前記ウのとおり,「AAA」は,最上位又は優良な 評価を意味する表示であると認識されるものであるから,本件商標全体がまとまりよく一体に表\されていることや,「バルクトリプルエー」の称呼が無理なく一連に称呼し得ることを考慮しても,本件商標に接した取引者,需要者において,本件商標 を一体不可分の商標と認識するものということはできない。
(3) 引用商標2について
ア 引用商標2の構成態様
引用商標2は,前記2の3(1)イのとおり,上段に「BULKHOMME」と横書 きし(以下,この部分を「上段部分」という。),下段左側に「SIMPLE/LU XURY」と二段に横書きし(以下,この部分を「下段左側部分」という。),縦線 を挟んで,下段右側に「TRUE LUXURY IS ABOUT/SIMPL ICITY.THIS IS WHAT/OUR BRAND IS BASED UPON.」と三段に横書きして(以下,この部分を「下段右側部分」という。) 成るものであり,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解される。そして,その構\成文字の書体や大きさ等を見ると,上段部分は,同じ大きさで等間隔に記載されているが,「BULK」は「HOMME」に比し線幅が略2倍の太文 字で記載されている。また,上段部分と下段左側部分,下段右側部分との縦(上下 方向)の幅は略同一であるから,下段左側部分の文字は,上段部分の文字の略2分 の1の大きさであり,下段右側部分の文字は,上段部分の文字の略3分の1の大き さである。 上記認定の構成態様によると,上段部分は,引用商標2に接した取引者,需要者に対し,下段左側部分,下段右側部分に比し,商品の出所識別標識として強く支配\n的な印象を与えるものと認められる。 もっとも,上記認定のとおり,上段部分においても,欧文字「BULK」が欧文 字「HOMME」に比し線幅が略2倍の太字で記載されているから,上段部分が一 体として商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるの か,欧文字「BULK」又は「HOMME」の一方が商品の出所識別標識として強 く支配的な印象を与えるものと認められるのかを,更に検討する。
イ 欧文字「BULK」について
前記(2)イと同様に,欧文字「BULK」は,本件商標の査定日において,本件商 標の指定商品の取引者,需要者に,引用商標2の指定商品(男性用の化粧品,男性用のおしろい,男性用の化粧水,男性用のクリーム,男性用の紅,男性用の頭髪用 化粧品,男性用の香水類,男性用のせっけん類,男性用の歯みがき,男性用の香料, 男性用の薫料,男性用のつけづめ,男性用のつけまつ毛)に関連する用語として知 られていたものではないから,上記指定商品との関係において,出所識別標識とし て認識されるものということができる。
ウ 欧文字「HOMME」について
(ア) 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると,欧文字「HOMME」につい て,次のとおり,認められる。
a 欧文字「HOMME」と綴りを同じくする「homme」は,「人間, 人類,男,男性」などの意味を有するフランス語である(仏和大辞典,白水社,昭 和56年4月25日)。日本語の辞書にも,「オム【homme】」は,「1)男性。人 間。2)ファッションで男性用。」を意味する語として収載されており(大辞林第三版, 三省堂,平成18年10月27日),また,カタカナ語辞典には,「オム【homm e】」として,「男性。転じて衣服が男性用であることを示す。」(カタカナ語・略語 辞典第三版,旺文社,平成12年8月25日),「1)人間。男。2)男物。」(コンサイ スカタカナ語辞典第3版,三省堂,平成17年1月20日)の意味を有する語とし て収載されている。
・・・
(イ) 前記(ア)によると,欧文字「HOMME」は,「男性」の意味を有する フランス語であるところ,我が国においても,本件商標の査定日(平成29年2月 21日)の10年以上前から,日本語の辞書や複数のカタカナ語辞典において,男 性用のものを意味する語として収載されていたことが認められる。また,化粧品業 界の関係者が,男性用化粧品には女性用化粧品と差別化するために「HOMME」 を商品等に表示することが普通に行われており,一般消費者も「HOMME」を男性用の商品を示す語と理解していると思われる旨陳述しているところ,原告の商品\nのみならず,多数のメーカーにおいて,男性用化粧品や衣料品のブランドに「HO MME」を付加していること(本件商標の査定日後の事実については,上記陳述の 信用性を裏付ける限度で考慮する。)も,上記陳述を裏付けるものである。そうすると,欧文字「HOMME」は,本件商標の査定日において,化粧品等の 分野では,男性用のものを意味する語として知られていたものと認められる。
エ 引用商標2の構成部分の一部による類否判断の可否前記ア〜ウによると,引用商品2の構\成部分である「BULK」は,引用商標2の指定商品との関係において,出所識別標識として認識されるものである一方,欧 文字「HOMME」は,引用商標2の指定商品が含まれる分野では,男性用のもの を意味する語として認識される上,引用商標2の指定商品は男性用のものに限られ ていること,「HOMME」は,「BULK」よりも細い字体で記載されていること を併せて考慮すると,欧文字「BULK」の部分が取引者,需要者に対し商品の出 所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。 したがって,本件商標と引用商標2の類否判断に当たり,引用商標2の構成部分である欧文字「BULK」の部分を抽出し,この部分だけを本件商標(前記(2)のと おり,本件商標の構成部分である欧文字「BULK」の部分)と比較して商標そのものの類否を判断することが許される。\n

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平成30(行ケ)10162  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月28日  知的財産高等裁判所

 新規性違反なしとした審決が取り消されました。争点は証拠として提出したチラシの証拠能力です。\n
ア 前記第2の3(1)の本件審判における原告らの主張によると,原告らは, 本件審判において,甲55と同一の内容及び同一の添付物のチラシが複数作成され, 頒布されており,甲41の4は,そのうちの一つの写しである旨主張していたので あるから,写しである甲41の4と甲55の原本に当たるものは,同一であること を前提に主張していたものと解される。 そして,本件審決は,甲41の4につき,原告らが「甲41の4に現れているつ りピンロールは公然に頒布された物品に係るもので,本件特許は公然知られた発明 である」旨主張していることを挙げた上,「甲第41号証の4又は同号証で示された つりピンロールが本件特許の遡及日前に頒布されたものと認めることはできない。」 と判断している。 したがって,本件審決は,結論としては,前記第2の3(2)のとおり,甲2に記載された発明,甲4に記載された発明又は甲55に記載された発明を引用発明とする 新規性違反の有無について判断しているが,甲41の4を引用発明とする新規性判 断の誤りについても判断していると認められる。
イ 証拠(甲41の4・5,甲69)及び弁論の全趣旨によると,被告は, 被告外1名を原告,原告ら外3名を被告とする商標権侵害差止等請求事件において, 当該事件の原告訴訟代理人弁護士C及び同Dが平成19年5月22日に東京地方裁 判所に証拠として提出した甲41の4及び証拠説明書として提出した甲41の5を, その頃受領していること,甲41の5には,甲41の4の説明として,「被告シンワ のチラシ(2006年用)」,「写し」,作成日「2006(平成18)年」,作成者「(有)シンワ」,立証趣旨「被告シンワが原告むつ家電得意先へ営業した事実を立証する。」旨記載されていることが認められるところ,甲41の4には,「2006年販売促進キャンペーン」,「キャンペーン期間 ・予約5月末まで ・納品5月20日〜9月 末」,「有限会社シンワ」,「つりピンロールバラ色 抜落防止対策品」,「サンプル価 格」,「早期出荷用グリーンピン 特別感謝価格48000円」などの記載があり, 複数の種類の「つりピン」が記載されており,その中には,5本のピンが中央付近 においてそれぞれハの字型の1対の突起を有するとともに,そのハの字型の間の部 分を2本の直線状の部分が連通する形で連結された形状のもの(つりピンロールバ ラ色と記載された部分の直近下に写し出されているもの)があることが認められる。 上記「つりピン」の形状は,証拠(甲41の3〜5)及び弁論の全趣旨により, 上記事件の上記原告訴訟代理人が,平成19年5月22日に,甲41の4とともに, 上記商標権侵害差止等請求事件において,東京地方裁判所に証拠として提出したと 認められる甲41の3に「つりピンロール(バラ色)抜落防止対策品」として記載 されているピンク色の「つりピン」と,その形状が一致していると認められる。証 拠(甲41の3〜5)及び弁論の全趣旨によると,甲41の3は,甲41の4と同 じ証拠説明書による説明を付して,提出されたものであると認められ,「2006年 度 取扱いピンサンプル一覧」,「有限会社シンワ」,「早期出荷用」などの記載がある。 また,証拠(甲41の1〜5)及び弁論の全趣旨によると,甲41の4は,上記 商標権侵害差止等請求事件の上記原告訴訟代理人が,平成19年5月22日に,甲 41の4とともに,「被告シンワのチラシ(2005年用)」,「写し」,作成日「2005(平成17)年」,作成者「(有)シンワ」,立証趣旨「被告シンワが原告むつ家 電得意先へ営業した事実を立証する。」旨の証拠説明書による説明を付して,上記商 標権侵害差止等請求事件において,東京地方裁判所に提出したと認められる甲41 の1と,レイアウトが類似しているところ,甲41の1には,「2005年開業キャ ンペーン 下記価格は2005年4月25日現在の価格(税込)です。」,「有限会社 シンワ」,「当社では売れ残り品は販売しておりません。お客様からの注文後製造い たします。」などの記載がある。
以上によると,甲41の3及び4は,いずれも,原告シンワが,被告の顧客であ った者に交付したものを,平成19年5月22日までに,被告が入手し,原告シン ワが,被告の得意先へ営業した事実を裏付ける証拠であるとして,上記商標権侵害 差止等請求事件において,提出したものであると認められる。 そして,甲41の4の上記記載内容,特に「販売促進キャンペーン」,「納品5月 20日〜」と記載されていることからすると,甲41の4と同じ書面が,平成18 年5月20日以前に,原告シンワにより,ホタテ養殖業者等の相当数の見込み客に 配布されていたことを推認することができる。
ウ また,前記イの認定事実及び弁論の全趣旨によると,甲41の4に記載 されている,5本の「つりピン」が中央付近においてそれぞれハの字型の1対の突 起を有するとともに,そのハの字型の間の部分を2本の直線状の部分が連通する形 で連結された形状のものは,原告シンワにより見込み客に配布されていた前記イの 甲41の4と同じ書面にも添付されていたと認められる。
エ 前記の5本の「つりピン」が中央付近においてそれぞれハの字型の1対 の突起を有するとともに,そのハの字型の間の部分を2本の直線状の部分が連通する形で連結された形状のものの形状は,両端部において折り返した部分の端部の形 状が,甲41の4では,下から上へ曲線を描いて跳ね上がっているのに対し,本件 特許に係る図面(甲119)の図8(a)では,釣り針状に下方に曲がっている以 外は,上記図8(a)記載の形状と一致している。 そして,上記図8(a)は,本件発明に係るロール状連続貝係止具の実施の形態 として記載されたものである。
オ そうすると,前記イ,ウ及びエの5本の「つりピン」が中央付近におい てそれぞれハの字型の1対の突起を有するとともに,そのハの字型の間の部分を2 本の直線が連通する形で連結された形状のものは,形状については,本件発明1の 構成要件にある形状をすべて充足する。そして,証拠(甲41の1〜5)及び弁論\nの全趣旨によると,その材質は,樹脂であり,「つりピンロール」とされていること から,ロール状に巻き取られるものであり,その連結材は,ロール状に巻き取られ ることが可能な可撓性を備えているものと認められる。したがって,甲41の4に\n記載されている「つりピン」は,本件発明1の構成要件を全て充足すると認められ\nる。 また,上記の「つりピン」は,ロープ止め突起の先端と連結部材とが極めて近接 した位置にあり,2本のロープ止め突起の先端の間隔よりも一定程度狭い縦ロープ との関係では,2本の可撓性連結材の間隔が,貝係止具が差し込まれる縦ロープの 直径よりも広くなるから,本件発明2の構成要件も全て充足すると認められる。\nさらに,上記の「つりピン」が,ロール状に巻き取られるものであることは,上 記のとおりであるから,上記の「つりピン」は,本件発明3の構成要件も全て充足\nすると認められる。
カ したがって,本件発明1〜3は,本件原出願日である平成18年5月2 4日よりも前に日本国内において公然知られた発明であったということができ,新 規性を欠き,特許を受けることができない。
(2) 被告は,甲41の4から認定できるのは,平成19年5月22日の時点でサンプルシート(甲41の4)が頒布されていたということだけであり,1)甲3及 び5には納品日の記載がないのに,甲41の4に納品日の記載がある点,2)顧客か ら価格が分かるようにしてほしいという要望を受けてサンプルシートを改訂したの であれば,価格だけを追記すれば済むのに,甲41の4には,キャンペーン期間や 納品期間が記載されている点,3)甲5には,価格の記載がない点を挙げて,甲41 の4の記載内容は不自然であるから,甲41の4は,甲41の4のサンプルシート が平成18年5月20日以前に頒布されたことを裏付けるに足りる証拠ではない旨 主張する。 甲3は,「2005年販売ピン一覧」という表題が記載された書面であり,価格の\n記載もキャンペーン期間の記載もない。甲5は,「2009年色が変って新登場 新 色キャンペーン」という表題が記載された書面であり,色の変更についての記載は\nあるが,価格の記載も日や月を区切ったキャンペーン期間の記載もない。そうする と,これらの文書の作成目的は,専ら顧客に原告シンワが取り扱う商品の一覧を示 すことにあると認められる。これに対し,甲41の4は,「2006年販売促進キャ ンペーン」という表題が記載された書面で,「キャンペーン期間」,「早期出荷用グリ\nーンピン 特別感謝価格」という記載もされているのであるから,期間を区切って 特別に有利な価格を提示することを目的に含む,販売促進キャンペーン用のチラシ であると認められる。これらの記載内容,特に表題から認められる文書の目的の違\nいを考えると,1)甲41の4には納品日の記載があり,甲3及び5に納品日の記載がないことは不自然ではないし,また,2)顧客の価格が分かるようにしてほしいと いう要望を受けてサンプルシートを改訂する際に,期間を区切った販売促進キャン ペーンを企画し,そのチラシに価格と共にキャンペーン期間や納品期間を記載して も不自然ではないし,さらに,3)甲5に価格の記載がないことは,不自然ではない。 したがって,被告の上記主張は,前記(1)の認定を左右するものではない。 他に前記(1)の認定判断を覆すに足りる主張,立証はない。

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平成29(ワ)16958  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年2月28日  東京地方裁判所

 英会話のDVDが複製・翻案が争われた事件です。東京地裁46部は、一部の表現については創作性を認め、36万円の損害賠償を認めました。
 原告DVDと被告DVDの項目アにおける共通点である動画に社名を 表示することは,アイデアである。\n他方,項目イ及びウにおける原告DVDと被告DVDの共通点は,白い 扉を抜け,その先に英会話を学ぶ動機となるフレーズと共に写真が現れる というもので密接に関係するものといえるところ,英会話の宣伝,紹介用 のDVDにおいて,教材を利用することで新しい状況となることについて, 紺色の背景とする白い扉やその奥に広がる宇宙で表現するとともに,教材\nにより達成できる状況について,扉の奥に,その状況を表しているともいえる写真を英会話を学習する動機を示すフレーズとともに複数回示すこ\nとで表現しているものといえ,その表\現は,全体として,個性があり,創 作性があるといえる。 項目エにおける原告DVDと被告DVDの共通点のうち,英会話の宣伝, 紹介用のDVDにおいて,外国人と話している様子を用いる点はアイデア であり,そこにおける問いかけの表現は通常よく使用される,ありふれた\n表現といえる。\n項目オにおける原告DVDと被告DVDの共通点は,教材を学ぶことで 状況が変わることを,二度にわたる太陽の光を含む空の情景で示し,また, 自社の商品を用いることで交流の範囲が広がることなどを人物が写った 多数の写真を自社商品の周りを回転させることなどで表現しているもの\nといえ,その表現は,全体として,個性があり,創作性があるといえる。\n以上によれば,イントロダクションの部分の原告DVDと被告DVDは, 少なくとも,項目イ,ウ及びオにおいて表現上の創作性がある部分におい\nて共通するといえる。そして,上記共通する内容に項目イ,ウ及びオの内 容等を考慮すれば,上記部分の原告DVDの表現上の本質的な特徴を被告\nDVDから直接感得することができると認められる。
イ 受講者インタビュー(その1)(項目カ)
前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVD は,当該部分において,「(商品名)を始めた人の中にはすでに新しいステー ジへと人生を開いていった人たちがたくさんいらっしゃいます」という音声 が流れ,その後,海外で活躍する女性を紹介し,その女性へのインタビュー の様子となる点,「英語を話す原点になったのが(商品名)だったのです」と いう音声が流れるとともに,同趣旨が赤色の文字テキストで表示される点な\nどが共通する。 他方,原告DVDと被告DVDの当該部分において,登場人物やインタビューの内容,表現は異なっている。\n上記共通点のうち,英会話教材の宣伝,紹介用の動画において,海外で活 躍する受講者を紹介した上でその受講者へのインタビューの様子を用いる ことや,その受講者の活躍の契機となったのが自社の教材であるという説明 をすることは,アイデアであるといえるし,また,それらを上記のような順 序で構成することは,通常行われることといえ,これらをもって表\現上の創 作性があるとはいえない。また,「(商品名)を始めた人の中にはすでに新し いステージへと人生を開いていった人たちがたくさんいらっしゃいます」, 「英語を話す原点になったのが(商品名)だったのです」との部分について, 英会話教材を宣伝,紹介する際に,教材による学習によって自らの状況が変 わったことを新たなステージへと人生を開くと表現することや,その契機等\nとなった商品を原点と表現することはありふれたものであるといえ,いずれ\nも創作性があるとは認められない。 したがって,受講者インタビュー(その1)の部分の原告DVDと被告D VDの共通点は,いずれもアイデアなどの表現それ自体でない部分又は表\現 上の創作性が認められない部分に関するものであるといえる。
・・・・
エ その他受講者インタビュー(項目ク)
前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVD は,当該部分において,受講者への複数のインタビューの様子である点,「人 生が変わりました」との文字テキストが表示される点で共通している。\n 他方,原告DVDと被告DVDの当該部分において,登場人物やインタビ ューの内容,表現は異なっている。\n上記共通点のうち,英会話教材の宣伝,紹介用の動画において,受講者と される人物のインタビューの様子を用いることはアイデアであるといえる。 また,「人生が変わりました」という文字テキストは,表現であるということ\nができるとしても,教材を宣伝,紹介する場面で,教材による学習によって 自らの状況が変わったことを人生が変わると表現することは,ありふれた表\ 現であるといえ,創作性があるとは認められない。そして,インタビューの 様子に文字テキストを組み合わせることについても,普通に行われることで あり,このことをもって表現上の創作性があるとはいえない。\nしたがって,その他受講者インタビューの部分の原告DVDと被告DVD の共通点は,いずれもアイデアなどの表現それ自体でない部分又は表\現上の 創作性が認められない部分に関するものであるといえる。
オ 商品紹介(項目ケ)
前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVDは,当該部分において,まず,画面上部が光り,雲が浮かんでいる空の 様子となった後,画面の上方から階段が伸びてきて,階段を下から見上げ る構図となり,その後,空を背景に,最下段の階段の側面に英語学習のス\nテップのフレーズが表示され,そのフレーズの読み上げが終わると一段上\nの階段の側面が拡大されると同時に,その階段の側面に次の英語学習のス テップのフレーズが右からスライドして表示されるとともに,そのフレー\nズがナレーションされ,それを7回繰り返して,7つ目の英語学習のステ ップが表示されると,側面にフレーズが記載された階段が最下段まで表\示 されるという点で共通している。また,各階段の側面に表示されるフレー\nズは,原告DVDでは1)「聞くことを習慣化する」,2)「単語やフレーズの 音がキャッチできるようになる」,3)「言っていることが理解でき短い言 葉で反応できるようになる」,4)「短い言葉で自分の意思を伝えられるよ うになる」,5)「簡単な会話のキャッチボールができるようになる」,6)「言 葉のキャッチボールが長く続くようになる」,7)「意識せずに自然に外国 人との会話が楽しめるようになる」であるのに対し,被告DVDでは1)「流 して聞くことを習慣化する」,2)「単語,フレーズの音が聞き取れるように なる」,3)「言っていることが分かり,短いフレーズで返事ができるように なる」,4)「短いフレーズで自分の言いたいことが伝えられるようになる」, 5)「簡単な会話のキャッチボールができるようになる」,6)「言 葉のキャッチボールが長く続くようになる」,7)「意識せずに自然に外国 人との会話が楽しめるようになる」であるのに対し,被告DVDでは1)「流 して聞くことを習慣化する」,2)「単語,フレーズの音が聞き取れるように なる」,3)「言っていることが分かり,短いフレーズで返事ができるように なる」,4)「短いフレーズで自分の言いたいことが伝えられるようになる」, 5)「簡単な会話のキャッチボールができるようになる」,6)「言葉のキャッ チボールが長く続けられる」,7)「意識せず,自然に外国人との会話が楽し めるようになる」であり,その内容,表現はほぼ共通している。\n 他方,原告DVDでは,階段は側面も含めて青色であり,フレーズが白 色の文字で表示されるのに対し,被告DVDでは,階段は側面を含めて白\n色であり,フレーズが青色の文字で表示される。また,原告DVDと被告\nDVDにおいて,階段の背景はいずれも白色の雲がある青空であるが,具 体的な光景は異なる。
(イ)項目ケの部分の原告DVDと被告DVDの上記 の共通点は,空に浮か んだ階段を下から見上げる構図とすることによって,階段を上っていくイ\nメージを抱かせ,階段と英語学習のステップが結び付くものであり,原告 DVDと被告DVDでほぼ共通するフレーズの内容に照らしても,一定の 段階を踏んで英語学習を進めることができるなどのイメージを与えるも のである。そのようなステップが7段階あり,その内容がほぼ同一である ことをも考慮すると,この共通点は,作成者の個性が現れており,全体と して創作的な表現であると認められる。\nそして,上記共通する内容に項目ケの内容等を考慮すれば,項目ケの原 告DVDの表現上の本質的な特徴を被告DVDから直接感得することが\nできると認められる。
・・・・
原告は,原告DVDと被告DVDが,1)イントロダクション,2)受講者イン タビュー,3)商品紹介,4)商品特徴の説明,5)開発者等のインタビュー,6)商 品特徴の説明,7)エンディングという全体的な構成が類似することも主張する\nので,以下,検討する。
ア 前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVD は,いずれも,1)イントロダクション(項目アないしオ),2)受講者インタビ ュー(項目カないしク),3)商品紹介(項目ケ),4)商品特徴の説明(項目コ ないしシ),5)開発者等のインタビュー(項目ス),6)商品特徴の説明(項目 チ及びツ),7)エンディング(項目テ,ト)という構成を有するということが\nできる。なお,上記各項目においては, 基 本的に,使われている写真,光景,登場人物やインタビューを受けた者が話 す内容などは異なる。
イ 原告DVDと被告DVDは,いずれも英会話教材の宣伝,紹介用のもので あり,このようなDVDにおいて,宣伝の対象である商品の購入等を促すと いう目的のために,商品の内容や特徴,商品を利用した場合の効果,サポー ト体制の説明をすることは,ごく一般的であるといえる。そして,商品の内 容,特徴や商品を利用した場合の効果を説明するために,受講者や開発者に 対するインタビューを用いることも,一般的であるといえる。 原告DVDと被告DVDの全体的な構成は,前記アのとおり,原告が主張\nする7つという少なくない要素において一致するが,その各要素は,上記の とおり,同種の目的を有するDVDにおいては,いずれもごく一般的といえ るものである。また,原告DVD及び被告DVDにおけるそれらの各要素の 順序について,特別の印象を与えるようなものであるとはいえない。これら を考慮すると,原告DVDと被告DVDの原告主張の全体的な構成について,\nそその各要素が共通する点をもって創作的な表現であるとは認められない。\nまた,前記 のとおり,被告DVDは,複数の部分において,原告DVD の表現上の本質的な特徴を感得することができる。しかし,それらの本質的\nな特徴を感得することができる表現について,英会話教材の宣伝,広告用の\n動画における表現としては関連するとはいえるが,それ以上にそれらが表\現 上及び内容上,相互に密接に関連しているものとはいえない。このことに, 全体的な構成の各要素が同種の目的を有するDVDにおいてごく一般的な\nものであること,被告DVDには,原告DVDの表現上の本質的な特徴を感\n得することができるとはいえない部分も多いこと(前記 )を考慮すると, 被告DVDに原告DVDの表現上の本質的な特徴を感得することができる\n部分があるとしても,原告DVD全体についての表現上の本質的な特徴を被\n告DVDから感得することができるとまではいえない。
(4)小括
以上によれば,被告DVDは,少なくとも,項目イ,ウ,オ,ケ,テ及びト において,原告DVDの表現上の本質的特徴を被告DVDから直接感得するこ\nとができる。 そして,対照表」及び「DVDスクリプト内容対照表\」における共通点の内容等及び弁 論の全趣旨に照らし,被告DVDは,原告DVDに依拠して作成されたものと いえる。 これらのことに,前記のとおり,原告DVDと被告DVDでは,画面自体は 異なり,原告DVDの表現に一定の修正,増減,変更等が加えられて別の表\現 となっていることなどから,被告DVDは,少なくとも,上記各項目において, 原告DVDを翻案したものと認められる。
2 争点2(編集著作物としての複製権,翻案権侵害の有無)及び争点3(言語の 著作物としての複製権,翻案権及び譲渡権侵害の有無)について
原告の主位的な主張のうち,編集著作物としての侵害の主張は,別紙「DVD の内容の対照表」の「イントロダクション」などの標題によって区切られた部分\nを一つの素材として,その選択と配列について創作性を有すると主張するもので ある。しかし,この主張は,少なくとも,前記1(3)の全体的な構成に関する類似\nの主張において述べたところと同様の理由により,理由がない。また,原告は, 予備的に,原告DVDに含まれるスクリプト部分の言語の著作物の侵害を主張す\nるところ,共通するスクリプトは,事実を述べるものか,英会話教材の宣伝,紹 介用の動画において,ありふれたものということができ,その順序にも表現上の\n創作性があるとは認められないから,原告の主張は理由がない。

◆判決本文

両当事者は、宣伝のキャッチフレーズについて著作権侵害を争っていましたが、こちらは1審、2審とも著作物性無しと判断しています。

◆平成27(ネ)10049

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平成29(行ケ)10200  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月18日  知的財産高等裁判所

 無効理由なしとした審決が取り消されました。理由は、相違点については、技術常識から容易である、さらに、サポート要件を満たしていないことです。

 相違点1に係る,本件発明1の「回転数適応型の動吸振器(5)が, 油影響に関連して,駆動装置の励振の次数qよりも所定の次数オフセッ ト値qFだけ大きい有効次数qeffに設計されている」ことの意義につい てみると,本件発明1の特許請求の範囲には,「所定の次数オフセット qF」をいかに設定するかについて,「油影響に関連して」されるもので あること以上に特定する記載はないから,「油影響」について何らかの 関連を有し,何らかの次数オフセットqFだけ大きい有効次数qeffに設 計されているという程度の意味であると理解できる。 さらに,本件明細書についてみると,1) 図3に関する【0038】 〜【0039】の記載から,同じ設計の動吸振器であれば,回転する油 質量体の下では次数値が低くオフセットされるため,その抑制次数qFに 相当する分だけ高い次数値への次数オフセットをすることが,遠心力に 抵抗する油影響から結果的に生じる作用を考慮することになることが示 されているといえる。また,2) 【0043】によれば,qFは自由に選 択可能な値として規定されていてもよいし,励振の個々の次数に対して,\nそれぞれ固定の値が設定されていてもよいとされているから,次数オフセットqF自体は,任意に設定し得る値であることが読み取れる。
(イ) 以上によれば,qFは,1)のような実験的な測定に基づき設定される ものに限られず,2)のような任意の値も採り得るものであるといえる。 そして,動吸振器の幾何学的次数が,駆動装置の励振の次数(q)より も任意の値(qF)の分だけ大きい数値(qeff)になるように設計され ているということは,オーバーチューニングに当たるといえる。そうす ると,本件発明1の「回転数適応型の動吸振器(5)が,油影響に関連 して,駆動装置の励振の次数qよりも所定の次数オフセット値qFだけ大 きい有効次数qeffに設計されていること」は,「油影響」を受ける状況 下においては,動吸振器の次数が低下することから,任意の値の次数オ フセットにより,動吸振器をオーバーチューニングしたという程度の意 味と解される。
ウ 「油影響に関連して…設計されている」構成の容易想到性\n
上記ア(イ)の技術常識によれば,油中に浸漬され,油という液体の影響を 受ける遠心振り子のような動吸振器にあっても,回転する油中であるか否 かにかかわらず,その固有振動数(又は次数)に何らかの影響,特に,そ の固有振動数(又は次数)が低下するような影響が生じるであろうことは, 当業者にとって当然に予測し得ることといえる。\nそして,回転数適応型の動吸振器において,理論上最も効果的に駆動装 置側の振動を減衰できるのは,遠心振り子の固有振動数が駆動装置の励振 の振動数と一致する場合なのであるから(上記ア(ア)),油の影響を受ける 回転数適応型の動吸振器において,効果的に駆動装置の振動を減衰させる ためには,油の影響によって固有振動数(又は次数)が低下することから, 動吸振器の固有振動数(又は次数)について,任意の値の次数オフセット によりオーバーチューニングするという,相違点1に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことであるといえる。\nよって,相違点1に係る構成は,甲4発明及び技術常識から容易に想到\nすることができたものである。
・・・
(2) 上記を前提に,サポート要件違反について検討する。
ア 上記2(3)イのとおり,本件発明1の特許請求の範囲には,「所定の次数 オフセットqF」について,「油影響に関連して」設定されるものであるこ とのほかに具体的な設定の手法等についての特定はないから,「回転数適 応型の動吸振器(5)が,油影響に関連して,駆動装置の励振の次数qよ りも所定の次数オフセット値qFだけ大きい有効次数qeffに設計されてい る」とは,「油影響」を受ける状況下においては,動吸振器の次数が低下することから,任意の値の次数オフセットにより,動吸振器をオーバーチ ューニングしたという程度の意味に解される。 そして,本件明細書の発明の詳細な説明には,1) 図3に関連する【0 038】,【0039】の記載から,同じ設計の動吸振器であれば,回転 する油質量体の下では,次数値が低くオフセットされるから,その抑制次 数に相当する分だけ高い次数値への次数オフセットをすることが,遠心力 に抵抗する油影響から結果的に生じる作用を考慮することになることが示 され,この記載の対応する限度では,当業者は,本件発明の課題(上記1(3)ウ)を解決できるものと認識できるといえる。 しかし,上記のとおり,特許請求の範囲には,次数オフセットqFについ ての具体的な設定の手法等を特定する記載はなく,2) 本件明細書【00 43】のとおり,任意に設定された次数オフセットqFだけ高い次数値への 次数オフセットをする場合も含まれるというべきであるが,このような任 意に設定した次数オフセットqFをとった場合については,本件明細書の記 載から当業者が本件発明の課題を解決できるものと認識できるとはいえな い。 そうすると,本件発明1は,当業者が発明の課題を解決できると認識で きる範囲のものであるとはいえないから,サポート要件に適合するとはい えない。

◆判決本文

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平成29(ワ)10909等  損害賠償等請求事件(本訴),損害賠償請求反訴事件(反訴)  著作権  民事訴訟 平成31年2月15日  東京地方裁判所

 ポータルサイトの開発,運営の事業を共同で営んでいた被告に対し,原告は、被告が経費を過大に計上するなどして原被告間の契約に基づく収益の分配をしなかったとして、未収益金および損害賠償を求めました。被告は、原告がプログラムを消去したとして反訴請求をしています。東京地裁40部は、原告の主張を認め、約4200万円の支払いを命じました。

 ア 以上のとおり,被告が本件業務契約に基づかずに各経費を算入したこと により,本来分配すべき金員を理由もなく減額し,その分,本来原告が分 配を受けるべき金員を支払わなかったということができるのであるから, 原告は,被告に対して,未払収益分配金の支払を求めることができる。
イ 被告の原告に対する平成28年4月分から平成29年3月分までの未払 収益分配金は(下記4))は,別紙2のとおりである(式:(1)本件事業か らの収益金−2)算入すべき経費)÷2)−3)既払収益分配金)。 なお,平成29年2月及び同年3月における本件事業からの収益金は, グーグルからの売上げについては,平成29年2月が304万1745円, 同年3月が355万2469円であったと認められ(甲9の12,乙12 の1),その他の売上げについては,平成28年2月から平成29年1月 までの月平均売上金額に基づいて計算すると,別紙3のとおりであると認 められる。そして,同各月について計上すべき経費は,別紙1−11及び 1−12記載の各金額に前記第4の1(2)セのとおりマネタイズパート ナーのコンサルティング費用5万4000円をそれぞれ加えた金額である ので,同各月の被告の未払収益分配金は,別紙2のとおりの金額(小数点 一位は切下げ)となる。
(4) したがって,原告は,被告に対し,平成28年4月分から平成29年3 月分までの未払収益分配金として1148万2957円及びこれに対する 遅延損害金の支払を求めることができる。
・・・・
 前記判示のとおり,被告は,原告に対し,本件業務契約に基づく収益分 配金の支払義務を履行しなかったのであるから,原告による債務不履行を 理由とする同契約の解除は有効であるということができる。 債務不履行解除に伴う逸失利益について,原告は,平成28年4月分か ら平成29年3月分までの収益分配金を基礎として5年間は同程度の収益 を上げることができたと主張する。 この点について,逸失利益の算定の基礎については,原告の主張すると おり,本件解除の直前である平成28年4月から平成29年3月までの収 益分配金に基づいて算定することが相当である。他方,逸失利益を認める 期間については,本件事業の売上げが平成27年頃に比べると減少してい ること,本件事業のようなポータルサイトは同様のサービスを提供する事 業者が出現するなどして比較的短期間で事業環境が変化する可能性がある\nことなども考慮し,2年間と認めることが相当である。 したがって,原告の被告に対する債務不履行に伴う逸失利益は3039 万7348円となる。 (計算式)1519万8674円(別紙2の3)及び4)の合計額)×2年 =3039万7348円

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平成30(ネ)10074  営業差止等請求,不正競争行為差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成31年2月27日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 営業譲渡契約により商標権7の移転登録を受けて登録となった商標権3等について、商標権の移転登録を求めましたが、裁判所はこれを否定しました。

 争点(1)(控訴人が本件営業譲渡契約の解除に基づく原状回復としての商標権 1ないし3の移転登録請求権を有するか否か)について
(1) 被控訴人は,平成24年2月1日,商標1ないし3につき,自らの名で商標 登録出願し,これらの商標は,同年7月6日に設定登録されたものである。 そして,被控訴人は,商標1ないし3を自己の業務に係る役務について使用する 限り,商標法所定の要件のもとで,商標登録を受けることができる。このことは, 商標1ないし3が,本件営業譲渡契約の目的物である本件事業,すなわち,Aが開 発・実践することで注目を集めるようになったパーソナルトレーニングに関する業\n務に係る役務について使用するものであったとしても,同様である。 そうすると,商標権1ないし3が本件営業譲渡契約の目的物である本件事業から 発生したものということはできない。 したがって,商標権1ないし3が,本件営業譲渡契約の解除に基づく原状回復の 対象となり得ないことは明らかである。
(2) 控訴人の主張について
ア 控訴人は,商標権1ないし3の移転登録請求権を基礎付ける実体法上の根拠 として本件営業譲渡契約の解除に基づく原状回復請求権が存在すると主張する。 しかし,被控訴人は,本件営業譲渡契約の解除に基づき,控訴人を本件営業譲渡 契約の締結前の原状に復させる義務を負うにとどまるものである。控訴人は,本件 営業譲渡契約の締結前に,商標権1ないし3を有していたものではなく,商標1な いし3の商標登録出願により生じた権利を有していたものでもない。また,本件営 業譲渡契約の目的物である本件営業権等を有する者であれば,社会通念上,商標権 1ないし3を取得するということもできない。 したがって,本件営業譲渡契約の解除に基づく原状回復請求権は,商標権1ないし3の移転登録請求権を基礎付ける実体法上の根拠にはならない。
イ 控訴人は,被控訴人は本件営業譲渡契約により商標権7の移転登録を受けて いたから,それに類似する商標3の商標登録出願について商標法4条1項11号の 不登録事由に該当することなく商標登録を受けることができた,商標1ないし3の おおもとは商標7である,などと主張する。 しかし,仮に,被控訴人が本件営業譲渡契約により商標権7の移転登録を受けて いたから,それに類似する商標3の商標登録を受けることができたものであるとし ても,商標権1ないし3は,被控訴人による商標登録出願を受けた設定の登録によ り発生したものである。被控訴人が商標権7を有していたことは,商標法4条1項 11号の不登録事由の不存在の根拠になったにすぎず,商標1ないし3のおおもと が商標7である,ということはできない。 したがって,商標1ないし3が商標登録されるに至った経緯を考慮しても,これ らの商標権が原状回復義務の対象になるということはできない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成27(ワ)34338等

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平成30(行ケ)10143  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年2月27日  知的財産高等裁判所(1部)

 商標「LOG」について、審決は識別力ありと認定しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。指定役務は「建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介」及び第37類「建設工事,建築工事に関する助言」です。

 商標登録出願に係る商標が商標法3条1項3号にいう「役務の…質,提供の用に 供する物…を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当する\nというためには,需要者又は取引者によって,当該商標が,当該指定役務の質又は 提供の用に供する物を表示するものであろうと一般に認識され得ることをもって足\nりるというべきである。そこで,本件商標の査定時において,本件商標が,本件役務の需要者又は取引者によって,本件役務の質又は提供の用に供する物を表示するものであろうと一般に認識され得るか否かについて検討する。\n
(2) 「LOG」の使用状況
ア 役務の主体を表示するものとしての使用\n
証拠(各項末尾掲載のもの)によれば,本件商標の査定日以前において,次のと おり,役務を提供する主体の名称の一部に,「LOG」が使用されていたことが認 められる。
・・・
イ 役務の客体を表示するものとしての使用\n証拠(各項末尾掲載のもの)によれば,本件商標の査定日以前において,次のと おり,役務の提供の用に供する物の名称の一部に,「LOG」が使用されていたこ とが認められる。
・・・・
オ 以上によれば,本件役務に関する分野では,本件商標の査定日以前において, 役務の提供の用に供する物の内容について,それが丸太で構成される建物等である\nことを表示するために,その役務の主体や客体の名称の一部に,「LOG」と社会\n通念上同一と認められる「Log」「log」が数多く使用されるとともに,丸太 で構成される建物等に関するものであることを表\示するために,「Log」が他の 単語と組み合わさって使用されていたということができる。
・・・・
ウ 「丸太」を想起する過程
被告は,「LOG」が「丸太」の意味を認識させるのは,「ハウス」といった特定 の言葉と結合し,あるいは関連付けられた場合のみであり,「LOG」から「丸太」 の意味が一義的に想起されるものではないなどと主張する。 しかし,本件役務の提供の用に供する物は建物それ自体であり,かつ,前記(2) ないし(4)で認定したとおり,本件役務の分野において,「LOG」,「ログ」などが, 丸太で構成される建物等と関連付けられて使用されている事実は多数に及ぶもので\nある。そうすると,「LOG」が建物に関する単語と結合し,又は建物に関連付けられているか否かにかかわらず,「LOG」自体が,本件役務によって提供される 建物の種別について,丸太で構成される建物等という一定の内容を示しているであ\nろうと需要者又は取引者に明らかに認識させるというべきである。たとえ,「LO G」が,建物に関する単語と結合し,又は建物に関連付けられることで,丸太で構\n成される建物等を想起させることがあったとしても,「LOG」のみからも,本件 役務によって提供される建物の種別について,本件役務の需要者又は取引者に一定 の内容を想起させるものである。 したがって,「LOG」から「丸太」の意味が一義的に想起されないなどの被告 の前記主張は,結論に影響するものではない。
(7)小括
このように,本件商標の査定時において,「LOG」は,本件役務の提供の用に 供する建物の種別について,ログハウス,ログキャビンなどの丸太で構成される建\n物又は丸太風の壁材で構成される建物という一定の内容であることを,本件役務の\n需要者又は取引者に明らかに認識させるものということができる。したがって,本 件商標は,その査定時において,本件役務の需要者又は取引者によって,本件役務 の質又は提供の用に供する物を表示するものであろうと一般に認識され得る。\nよって,「LOG」は本件役務の質又は提供の用に供する物を普通に用いられる 方法で表示するものというべきであるから,「LOG」のみからなる本件商標は,\n本件役務との関係において,商標法3条1項3号に該当するものと認められる。

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平成30(行ケ)10064  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月28日  知的財産高等裁判所

 無効理由なしとした審決が取り消されました。理由は本件発明の認定誤りです。

 訂正発明2の「庫内差圧検出手段」の意義等について
(ア) 訂正発明2の特許請求の範囲(請求項2)の記載によれば,訂正発 明2の「庫内差圧検出手段」は,「上記排気量制御手段により制御され る排気処理手段による上記暴露部の暴\露空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出」する検出手段であり,訂正発明2 においては,「上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内 差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され,上記排気量制御手段により 上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより,上\n記暴露部の庫内差圧を一定にする」ことを理解できる。\nまた,訂正発明2の特許請求の範囲(請求項2)中の「上記排気処理 部により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御するバイオ\nガスの排気量制御手段」との文言によれば,訂正発明2の「排気量制御 手段」は,「上記排気処理部により上記暴露部から排気するバイオガス\nの排気量を制御」する制御手段であることを理解できる。 そして,訂正発明2の特許請求の範囲(請求項2)の記載によれば, 訂正発明2の核酸分解処理装置は,「暴露部」の「バイオガスのホルム\nアルデヒド成分の濃度」の「ガス濃度情報」が「生成ガス量制御手段」 に帰還され,「上記生成ガス量制御手段」及び「上記排気量制御手段」 により「バイオガス発生部」における「生成ガス量」及び「暴露部」か\nら排気する「バイオガスの排気量」を制御することにより,「暴露部」\nの「庫内ガス濃度」を一定にし,かつ,「庫内差圧情報」が「排気量制 御手段」に帰還され,「上記排気量制御手段」により「暴露部から排気\nするバイオガスの排気量」を制御することにより,「暴露部」の「庫内差圧」を一定にすること,すなわち,「暴\露部」の「ガス濃度情報」及 び「庫内差圧情報」を基に,「生成ガス量」及び「バイオガスの排気量」 を制御し,「暴露部」の「庫内ガス濃度」及び「庫内差圧」の両者を一\n定にする制御を行うものであることを理解できる。 しかるところ,訂正発明2の特許請求の範囲(請求項2)には,「庫 内差圧検出手段」及び「排気量制御手段」の具体的な構造や装置構\成に ついて規定した記載はなく,また,「暴露部」の「庫内差圧」をいかな\nる数値又は数値範囲で一定にするのかについて規定した記載もない。
(イ) 次に,本件明細書の発明の詳細な説明には,「本発明」の実施形態 として,核酸分解処理装置100の制御部150が,暴露部120に設\nけられたガス濃度センサ129から供給された暴露空間内のガス濃度\n情報に基づき,バイオガス発生部110へのエア供給量及びメタノール供給量の制御及び排気処理部140の排気ブロア143の吸入量の制 御により,暴露部120の庫内の濃度を一定にする制御を行うとともに,\n暴露部120に設けられた庫内圧力センサ132から供給された暴\露 空間内の圧力情報に基づき,排気処理部140の外気導入バルブ142 の開閉度及び排気ブロア143の回転数の制御により,陰圧範囲内を目 標値とした暴露部120の庫内差圧を一定にする制御を行うことが記\n載されている(【0028】,【0103】,【0111】,【014 0】〜【0148】,【0150】,【0161】〜【0164】,【0 182】,【0183】,図10)。これらの記載は,制御部150に より暴露部120の庫内差圧を陰圧の数値範囲に制御することを開示\nするものと認められる。 他方で,本件明細書の「本発明の実施の形態について,図面を参照し て詳細に説明する。なお,本発明は以下の例に限定されるものではなく, 本発明の要旨を逸脱しない範囲で,任意に変更可能であることは言うま\nでもない。」(【0026】)との記載に照らすと,本件明細書には, 「本発明の要旨を逸脱しない範囲」であれば,「本発明」の実施形態が 上記実施形態に限定されるものではないことの開示がある。 しかるところ,本件明細書には,「庫内差圧検出手段」及び「排気量 制御手段」を特定の構造や装置構\成のものに限定する記載はないし,また,「暴露部」の「庫内差圧を一定にする」にいう「一定」の数値範囲\nを定義した記載もない。
また,訂正発明2の特許請求の範囲(請求項2)の記載から,訂正発 明2の核酸分解処理装置は,「暴露部」の「ガス濃度情報」及び「庫内\n差圧情報」を基に,「生成ガス量」及び「バイオガスの排気量」を制御 し,「暴露部」の「庫内ガス濃度」及び「庫内差圧」の両者を一定にする制御を行うものであることを理解できること(前記(ア)),本件明細 書の発明の詳細な説明には,「本発明」は,訂正発明2の構成を採用し\nたことにより,フィードバック制御により暴露部の暴\露空間内における 温度,湿度,濃度の定量的制御を行うことができ,検体の種類に対応し た短時間で高効能を発揮する条件を定義することができるという効果を\n奏すること(【0021】,【0196】)の開示があること(前記(1) イ(イ))を総合すると,訂正発明2は,フィードバック制御により暴露\n部の暴露空間内の温度,湿度,「庫内ガス濃度」及び「庫内差圧」の定\n量的制御を行うことにより,検体の種類に対応した短時間で高効能を発\n揮する条件を定義することができるようにしたことに技術的意義がある ことが認められる。 そして,訂正発明2の上記技術的意義に照らすと,「庫内差圧」を陰 圧の数値範囲に制御する必然性は見いだし難い。また,本件明細書全体 をみても,「庫内差圧」を陰圧の数値範囲に制御することによって,陽 圧の数値範囲に制御することと比して有利な効果を生じるなどの技術的 意義があることについての記載も示唆もない。
(ウ) 以上の訂正発明2の特許請求の範囲(請求項2)の記載及び本件明 細書の記載に鑑みると,訂正発明2の「庫内差圧検出手段」の検出の対 象となる「庫内差圧」は,「庫内」(暴露部の暴\露空間内)の圧力と暴露空間外の圧力との差圧であれば,特定の数値範囲のものに限定される\nものではなく,陰圧の数値範囲のものに限定されるものでもないと解す べきである。 したがって,訂正発明2の「庫内差圧検出手段」は,「滅菌タンク内 がタンク外よりも陰圧であることを検出する庫内差圧検出手段」であっ て,滅菌タンク内のMRガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出するものであると限定解釈した本件審決の判断は誤りである。
イ 甲2の開示事項について
・・・
このように,甲2における「本発明」の第2の実施の形態は,ホルム アルデヒドガスの給排気状況に依存して生じる被殺菌空間の室内と室外 との圧力差を検出する微差圧検出器56を備え,微差圧検出器56によ り検出された検出値がコントロールユニット58に帰還(フィードバッ ク)され,コントロールユニット58により被殺菌空間内の室内から室 外に排気される空気に含まれるホルムアルデヒドガス等の排気量及び室 内に給気する空気の給気量を制御することにより,被殺菌空間の室内の 圧力を一定にするという構成を備えるものである。\nそうすると,甲2における「本発明」の第2の実施の形態の「微差圧 検出器56」,「コントロールユニット58」及び「排気量調整電磁弁 74及び送風機82」は,それぞれ,訂正発明2における「庫内差圧検 出手段」,「上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差 圧情報が…帰還され」る「上記排気量制御手段」及び「上記排気量制御 手段により制御される排気処理手段」に相当するものと認められる。 したがって,甲2には,相違点2に係る訂正発明2の構成が開示され\nているものと認められる。

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平成30(行ケ)10136  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年2月28日  知的財産高等裁判所

 争点は、商4条1項19号違反です。裁判所は、無効理由なしとした審決を維持しました。

 原告は,Mainmarkグループは,ニュージーランドにおいて,「m ainmark」の欧文字からなる引用商標2を使用して多数の液状化対策 工事を施工し,高い売上高及び市場シェアを得ていること,ニュージーラン ド地震の象徴ともいえる「クライストチャーチ・アート・ギャラリー」の震 災復旧工事を施工したこと,建築関係の専門雑誌においても豊富な経験と高 い技術を持つ企業として紹介されていること,日本の企業からも業務提携の 相手方とされていることなどからすれば,引用商標2は,Mainmark グループの役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時(登録出願日\n平成27年8月25日)及び登録査定時(登録査定日平成28年1月7日) において,ニュージーランドにおいて,需要者である建設業界の関係者又は その工事の注文者の間で,広く認識されていた旨主張するので,以下におい て判断する。
ア ニュージーランドにおける引用商標2の使用態様について
引用商標2が,Mainmarkグループの役務を表示するものとして,\nニュージーランドの需要者の間に広く認識されていたというためには,引 用商標2が,Mainmarkグループの業務に係る役務に使用された結 果,自他役務識別機能ないし自他役務識別力を獲得するに至り,Mainm\narkグループの役務であることを表示するものとして,ニュージーラン\nド国内の需要者の間に広く認識されるに至ったことが必要であり,このこ とは,Mainmarkグループそのものが需要者の間に広く認識されて いたかどうかとは別個の問題である。 しかるところ,本件においては,引用商標2がニュージーランドにおい てMainmarkグループの業務に係る役務について具体的にどのよう に使用されていたのか,その具体的な使用態様を認めるに足りる証拠はな い。
イ ニュージーランドにおける売上高及び市場シェアについて
原告は,Mainmarkグループのニュージーランドにおける売上高 及び市場シェアに照らすと,本件商標の登録出願当時,取引者の間では, 引用商標2はMainmarkグループの業務に係る役務を表示するもの\nとして周知であった旨主張する。 そこで検討するに,原告は,Mainmarkグループのニュージーラ ンドにおける液状化対策事業に係る売上高を記載した書面として,Mainmarkグループのオーストラリア法人のA経理長の作成に係る書面(甲107の1)を提出するところ,同書面には,「Mainmarkの売上高」と題する表に,2003年から2017年までの会計年度ごとに,ニュージーランド及びオーストラリアの売上高とされる数字が記載されている。\nしかしながら,上記書面は,作成日付が記載されていない上に,作成経 緯も明らかではなく,通常業務として作成された会計の資料とは認められ ないものであり,作成に際し依拠した原資料も明らかではなく,記載内容 を裏付けるに足りる資料も提出されていないから,その信用性は低いとい わざるを得ず,同書面がMainmarkグループの売上高を正確に記載 したものであるとは認められない。他にMainmarkグループの売上 高を認めるに足りる証拠はない。 また,仮にMainmarkグループの売上高が上記書面記載のとおり であったとしても,Mainmarkグループによる引用商標2のニュー ジーランドにおける具体的な使用態様を示す証拠はないから,引用商標2 がMainmarkグループの役務であることを表示するものとして需要\n者の間に広く認識されるに至ったことを裏付けることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
・・・・
このほか,ニュージーランドの「Geotech Consulti ng Ltd.」在籍の地盤エンジニア主任B作成の陳述書(甲73・ 訳文甲74)中には,「mainmark」という名称が地盤工学業界 においてよく知られており,この名称は,Mainmarkグループの 同義語として認識されている旨の記載部分があるが,上記記載部分を裏 付ける客観的な証拠はないことに照らすと,上記記載部分を直ちに措信 することはできない。他に引用商標2が本件商標の登録出願時及び登録査定時においてMainmarkグループの業務に係る役務を表示するものとしてニュージーランドの需要者の間に広く認識されていたことを認めるに足りる証拠はない。\n

◆判決本文

関連事件です。

◆平成30(行ケ)10135

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平成30(行ケ)10071  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月26日  知的財産高等裁判所

 前訴で訂正要件とともに、進歩性も判断しており、これに沿ってなされた審決の取消事件です。本件訴訟において、被告は、確定した前訴判決(取消判決)の拘束力が及ぶと主張しましたが、裁判所は、引用発明1に基づく進歩性違反については、本件被告も反論も尽くされているので,甲5を主引用例とする本件訂正発明9の進歩性について判断したことは,裁判所に委ねられている訴訟指揮権の範囲内に属する事柄であると判断しました。
 本件は、経緯が複雑です。前訴では、前件審決が本件訂正のうち,請求項9及び10に係る訂正を認めなかった判断に誤りがあるとした上で,更に本件訂正後の請求項9ないし11に係る発明の容易想到性について審理し,これらの容易想到性を認めることはできない旨の判断をし,前件審決のうち,本件特許の請求項9ないし11に係る部分を取り消すとの判決(以下「前訴判決」という。)をしました。その後,前訴判決は,確定しています。

 被告は,確定した前訴判決(取消判決)の拘束力に従って認定判断した本件 審決の取消しを求める本件訴訟は,前訴判決による紛争の解決を専ら遅延させ る目的で提起されたものであり,本件訴えの提起は,訴権の濫用として評価され るべきものであるから,本件訴えは,不適法であり,却下されるべきである旨主 張する。 そこで検討するに,原告主張の本件審決の取消事由中には,前訴判決が判断し なかった相違点についての本件審決の判断に誤りがあることを理由とするもの (前記第3の3(1)ア)が含まれていることに照らすと,本件訴えの提起が,前訴の蒸し返しであるものと直ちにいうことはできず,訴権の濫用に当たるものと認 めることはできない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。
2 取消事由1−1(甲5を主引用例とする本件訂正発明9の進歩性の判断の誤 り)について
(1) 前訴判決の拘束力等について
確定した前訴判決は,請求項9に係る本件訂正を認めなかった前件審決の 判断に誤りがあるとした上で,1)前訴被告(本件訴訟の原告)は,本件訂正 による請求項9に係る訂正が認められる場合でも,本件訂正発明9は「引用 発明1」(本件審決の引用発明5)に基づき容易に想到できる旨主張し,前 訴原告(本件訴訟の被告)の反論も尽くされているので,進んで,本件訂正 発明9の容易想到性について判断する,2)本件訂正発明9と「引用発明1」 は,前件審決が認定した本件発明9と「引用発明1」との相違点9−2に加 えて,少なくとも相違点9−A及び相違点9−Bの点でさらに相違すること が認められる,3)相違点9−Aに関し,「引用発明1」の製造方法は,本件 訂正発明9の「前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し(但し,銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く),それにより発生す る空隙を有する導電性材料を得る方法」とは異なることが明らかであり,甲 5は,銀フレークを端部でのみ焼結させて,端部を融合させる方法を開示す るにとどまり,焼成の際の雰囲気やその他の条件を選択することによって, 銀の粒子の融着する部位がその端部以外の部分であり,端部でのみ融着する 場合は除外された導電性材料が得られることを当業者に示唆するものではないから,「引用発明1」に基づいて,相違点9−Aに係る構成を想到するこ\nとはできない,4)よって,その余の点について判断するまでもなく,本件訂 正発明9は,当業者が,「引用発明1」に基づき容易に想到できるというこ とはできない旨判断し,前件審決のうち,本件発明9は甲5に記載された発 明と周知技術に基づいて容易に発明をすることができたことを理由に,本件 特許の請求項9に係る発明についての特許を無効とした部分を取り消した。 前訴において,原告は,平成29年5月29日付け準備書面(1)(甲5 6)に基づいて,甲5には,「銀フレークがその端部(銀フレークの周縁部 分)でのみ融着している場合」の記載がないから,甲5に記載された発明は, 銀フレークがその端部(銀フレークの周縁部分)でのみ融着している構成の\nものとはいえず,相違点9−Aは,本件訂正発明9と甲5に記載された発明 の相違点ではない旨主張した。これに対し被告は,同年6月29日付け準備 書面(原告その2)(甲53)に基づいて,甲5には,端部(周縁部分)を 有する銀フレークを用い,該銀フレークの端部(周縁部分)のみで,銀フレ ーク同士を融着させる製造法であり,銀フレークの周縁部分のみ融着した導 電性材料を得られるものであることについて十分にサポートされている旨主\n張し,原告の上記主張を争った。
前訴判決の上記認定判断及び審理経過によれば,前訴判決が前件審決のう ち,本件特許の請求項9に係る発明についての特許を無効とした部分を取り消すとの結論を導いた理由は,本件訂正を認めなかった前件審決の判断に誤 りがあること,本件訂正後の請求項9に係る発明(本件訂正発明9)は,当 業者が甲5に記載された発明に基づいて相違点9−Aに係る本件訂正発明9 の構成を容易に想到することができないから,甲5に記載された発明に基づ\nき容易に発明をすることができたとはいえないとしたことの両者にあるもの と認められ,かかる前訴判決の理由中の判断には取消判決の拘束力(行政事 件訴訟法33条1項)が及ぶものと解するのが相当である。 そして,前訴判決確定後にされた本件審決は,前訴判決と同様の説示をし, 本件訂正発明9は,当業者が甲5に記載された発明(引用発明5)に基づいて相違点9−3(相違点9−Aと同じ)に係る本件訂正発明9の構成を容易\nに想到することができないから,その余の点について判断するまでもなく, 引用発明5に基づき容易に発明をすることができたとはいえないと判断した ものである。 そうすると,本件審決の上記判断は,確定した前訴判決(取消判決)の拘 束力に従ってされたものと認められるから,誤りはないというべきである。
(2) 原告の主張について
原告は,1)前訴判決は,本来,専門的知識経験を有する審判官の審判手続に より審理判断をすべき本件訂正発明9の無効理由について,審判官の審判手続に よる審決を経ずに,技術常識を無視した認定判断をしたものであり,最高裁昭和 51年3月10日大法廷判決の趣旨に反するものであるから,前訴判決の上記 認定判断に拘束力を認めるべきではなく,前訴判決の拘束力に従った本件審決 の相違点9−3の認定及び判断は誤りである,2)甲5の図3,甲40の【0 033】ないし【0035】及び図5の記載事項に照らすと,甲5記載の銀 粒子融着構造は,本件訂正発明9の銀粒子融着構\\\造と一致するから,本件審 決における引用発明5の認定に誤りがあり,その結果,本件審決は,相違点 9−3の認定及び判断を誤ったものである旨で主張する。 しかしながら,上記最高裁大法廷判決は,特許無効の抗告審判で審理判断さ れなかった公知事実との対比における特許無効原因を審決取消訴訟において新たに主張することは許されない旨を判断したものであるところ,前訴判決 は,前件審決で審理判断された甲5を主引用例として,甲5に記載された発 明と本件訂正発明9とを対比し,本件訂正発明9の進歩性について判断した ものであり,上記最高裁大法廷判決は,前訴判決と事案を異にするから,本件 に適切ではない。 次に,前訴判決が,前記(1)のとおり,前訴被告(本件訴訟の原告)は,本件訂正による請求項9に係る訂正が認められる場合でも,本件訂正発明9は 「引用発明1」に基づき容易に想到できる旨主張し,前訴原告(本件訴訟の 被告)の反論も尽くされているので,進んで,本件訂正発明9の容易想到性 について判断するとした上で,甲5を主引用例とする本件訂正発明9の進歩 性について判断したことは,裁判所に委ねられている訴訟指揮権の範囲内に 属する事柄であるといえるから,相当である。 さらに,原告は,本件審決における相違点9−3の認定及び判断に誤りが あることの根拠として,前訴判決と同一の引用例である甲5とともに,甲4 0を挙げるが,甲40は,甲5の記載事項の認定に関する原告の主張を補強 する趣旨で提出されたものであって,新たな公知事実(引用例)を追加する ものではないから,前訴判決の拘束力を揺るがすものとはいえない。 したがって,本件審決における相違点9−3の認定及び判断に誤りがある との原告の上記主張は,理由がない。

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◆平成29(行ケ)10032

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平成30(ネ)10046  承継参加申立控訴事件  特許権  民事訴訟 平成31年2月14日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 冒認による特許の移転登録を求めましたが、知財高裁は1審と同様に、これを棄却しました。
2 本件各発明の内容は前記1のとおりであるが,本件各発明が控訴人の従業員 によって発明されたと認めることができるかについて,以下検討する。
(1) 本件発明1について
ア 本件発明1と控訴人発明とを対比する。
(ア) 本件発明1と対応する控訴人発明は,別紙「控訴人発明と本件特許権 1との構成要件の対比」の対比表\の「控訴人の発明内容」欄記載の発明であるとこ ろ,同記載によると,控訴人発明が共通構成1を具備していないことは明らかであ\nる。 すなわち,共通構成1の構\成は,別紙「控訴人発明と本件特許権1との構成要件\nの対比」の対比表の「請求項の内容」欄のうち,「請求項1」の上から3番目及び\n4番目の欄,「請求項2」の欄,「請求項3,請求項4」の欄,「請求項3」の欄、 「請求項5」の欄、「請求項6」の欄,「請求項7」の上から2番目の欄,「請求項 8」の欄,「請求項9」の上から3番目の欄,「請求項10」の欄,「請求項11」 の上から2番目の欄,「請求項12」の欄,「請求項13」の上から2番目の欄に記 載されているが,同構成に対応する「控訴人の発明内容」欄に記載された構\成は, 共通構成1の「前記画像情報,前記位置情報,前記識別情報の順の変化に応じて,複数の,前記ユーザを誘導するためのコンテンツを前記携帯端末装置に提供する」\nこと(「前記画像情報,前記位置情報,前記識別情報の順の送信に応じて,複数の, 前記ユーザを誘導するためのコンテンツを前記情報処理装置から受信する」こと) と同一でないことは明らかである。また,上記対比表の「控訴人の発明内容」欄の\nその他の欄の記載に係る構成中に,共通構\成1と同一の構成が存在すると認めるこ\nともできない。
(イ) 控訴人は,控訴人発明は,起動情報として,1)画像情報,2)位置情報 及び3)識別情報を用いている旨主張する。 しかし,共通構成1は,起動情報として,上記の三つの情報を含むというだけで\nはなく,これらの三つの情報の順の変化に応じて,複数のコンテンツを提供すると いう構成であるから,控訴人の上記主張を踏まえて控訴人発明の構\成を特定したと しても,控訴人発明の構成は,共通構\成1と同一であるとはいえない。 イ 前記アのとおり,控訴人発明の構成は,本件発明1の構\成と異なるので あるから,その余の点を検討するまでもなく,本件発明1は,控訴人の従業員に よって発明されたと認めることはできない。

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◆平成30(ワ)7906

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平成30(ネ)20 商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成31年2月21日  大阪高等裁判所

 3文字のアルファベットで構成された登録商標「LDR」について、一覧で「LDR−○○」という使用形態については、商標として機能していないと判断されました。1審判決の最後に原告商標、被告標章が掲載されています。  1審でも、「被告標章2は,極めて多数の型式が存する被告商品の中にあって,基本となる型式,発光色,寸法等を間違いなく発注,納品等し得るようにする型式名の一部として用いられていると解するのが相当であって,商品の出所を表示したり,顧客を吸引したりする機能\は,基本的に有しないと考えられる。」と判断されていました。
 控訴人は,被控訴人が,被告標章2を商標として使用していると主張し,当 審においては,その理由として前記第2の5(1)のとおり述べる。しかし,次の とおり,いずれの主張も採用することはできない。
(1) 標章が商品の型式名の一部として使用されることについて
控訴人は,従来の裁判例において商標としての使用が否定され得る使用態 様として,1) 標章が単に商品等の属性・内容・由来等について説明するため の表示として付されていたり,別の商品の名称,種類等を示す表\示として付 されていたりすると認識される場合,2) 標章が商品等の装飾・意匠として付 されていると認識される場合,3) 標章が専ら商品の宣伝のためのキャッチフ レーズや宣伝文句として付されていると認識される場合を挙げ,本件はその どれにも当たらないと主張する。 そこで,本件における被告標章2の使用態様を検討すると,上記2),3)に 当たらないことは明らかである。しかし,引用に係る原判決「事実及び理由」 第3の5(5)イのとおり,被告標章2は,専ら,極めて多数の型式が存する被 告商品の中で,基本となる型式,発光色,寸法等を間違いなく発注,納品等 し得るようにするための型式名の一部として用いられており,それ以外の役 割を果たしていると認めることができないので,上記1)に準じて考えること ができる。また,この点を措くとしても,後記(2)のような使用態様に照らすと,被告標章2は,商品の出所を表示したり,顧客を吸引したりする機能\を 有していないというべきである。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(2) 被告標章2の使用態様について
控訴人は,現在の被控訴人のカタログやウェブサイトに被告標章2が直接 表示されていないからといって,被告標章2が商標として使用されているこ\nとを否定する根拠とはならないと主張する。 しかし,商標としての使用というためには,出所表示機能\を発揮する態様での使用でなければならないので,どのような態様で表示されているかが重\n要であるところ,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の5(5)のとおり, 被控訴人が現在使用する本件カタログに被告標章2が表示されていないだけ\nでなく,被告標章2に相当する記載は,製品の仕様の詳細を示す一覧表にお\nける型式名の一部として,あるいは製品の仕様及び価格を列挙した価格表に\nおける型式名の一部として表示されるにとどまっている。\n以上によると,被告標章2が商標として使用されていると認めることはで きない。
(3) 画像処理用LED照明装置の取引の実情について
控訴人は,画像処理用LED照明装置の分野において,商品名(型式名) のみで商品を特定する取引が少なからず行われていると主張し,証拠(甲2 6,27,29)を提出する。 たしかに,甲26(現品票)及び甲27(請求書)には,同装置の売買に 際し,型式名をもって商品を特定していることが認められる。しかし,これらの文書は,商品の購入が決まり,注文があった後に作成されたものである。 そして,当該商品を注文するに至るまでの間,どのようなやり取りがされた か不明であり,上記各文書に記載された型式名だけで注文が行われたとまで 認めることはできない(これらの文書に記載された型式名は,前記(1)のとお り,基本となる型式,発光色,寸法等を間違いなく発注,納品等し得るよう にするために使用されているものということができる。)。 また,甲29によれば,インターネット通販サイトにおいて,「日進電子 工業 直接照射照明 リング型 DRシリーズ」と「CCS(シーシーエス) リ ング照明 LDR2シリーズ」の表示のもとに,各商品が販売されていること\nが認められる。このようにメーカー名も左上部に表示されていることからも,\n需要者において型式名のみで商品を買い受けているとは認め難い。
(4) 以上のとおりで,被告標章2は,商標としては使用されていないと認められる。
4 本件商標1に係る商標権の損害額について
被控訴人が被告標章1を使用したことによる控訴人の損害額,被控訴人の不 当利得額について検討する。なお,本件商標1登録後の平成23年9月1日か ら平成29年7月31日までの被控訴人の売上を算定の基礎とすることは争 いがない。
(1) 損害の基礎となる金額
ア 被告商品の売上総額
被控訴人における平成24年12月1日から平成25年10月31日 までの被告商品の売上高は3億0191万5347円,同年11月1日か ら平成29年7月31日までの売上高は12億5406万9731円,合 計15億5598万5078円であった(争いがない)。 なお,控訴人は,平成23年9月1日から平成25年10月31日の間 について不当利得の返還を請求するが,被控訴人は,平成24年12月1 日から平成25年10月31日までの間の売上高を開示し,その額は上記 のとおり3億0191万5347円である。控訴人は,同額を平成23年 9月1日から平成25年10月31日までの算定の基礎とすることとし た。
イ 被告標章2を付した商品の売上額 一方,被告商品のうち,被告標章2を付した被告商品1−1−1ないし 6の,平成18年11月1日から平成25年10月31日までの売上高は 4848万1830円,同年11月1日から平成29年7月31日までの 売上高は2012万6460円,合計6860万8290円であった(争 いがない)。
ウ 算定の基礎となる金額
被告標章1は,被告商品に付されているのではなく,カタログに使用されているので,これによる個別の損害額を算定することは困難であるが, 商標の自他識別機能を害する形態で使用されているので,不法行為に基づ\nく損害賠償として使用料相当額の請求が認められる(商標法38条3項)。 また,不当利得返還請求としても使用料相当額を認めることができる。 ところで,前記3に説示したとおり,被告標章2については商標権侵害 が成立しないところ,被告標章1の使用にかかる販売額を算定するに当た り,前記イの額を控除する必要はない。 したがって,控訴人が算定の基礎として主張する,平成23年9月1日 から平成29年7月31日までの「被告標章1固有の販売額」は,前記ア の15億5598万5078円ということになる。
(2) 使用料相当額
被告標章1は,本件カタログの比較的目立つ位置に掲載されているところ, 顧客がこれに目にする可能性は高いが,「照明の解決」という意味内容は,\n被告商品及び役務の特長を直接的に表すものであり,一定の顧客吸引力を有\nすると認められるものの,照明装置のカタログに付すものとしては,常識的 な発想の範囲内の言葉である。 引用に係る原判決「事実及び理由」第3の5(4)のとおり,画像処理用LE D照明装置の需要者・取引者が商品に求めるものは特定の機能や性能\であり, 一定期間の検討を経て購入の決定に至るのが一般的と考えられ,一般家庭用 の商品でもないから,カタログに記載された文言が顧客を強く吸引し,購入 の有無に強く影響するということも考え難い。また,被告標章1は,平成2 7年の本件カタログには使用されているものの,従前のカタログ(平成8年, 11年,15年,16年)には使用されておらず,価格表やウェブサイト,\nあるいは被告商品自体に付された事実もなく,被告標章1が,被告商品に関 する惹句として,あるいは企業としての被控訴人自体を需要者に印象付ける 語句として,継続的に,あるいは広範囲に使用されたとの事実を認めることはできない。よって,上記認定した被告標章1の顧客吸引力の程度,被告標章1使用の 態様を総合すると,被告標章1が被控訴人の取引に影響した程度は極めて低 いというべきであり,支払うべき許諾料相当額は,不法行為及び不当利得に 基づく請求のいずれの期間においても,算定の基礎となる被控訴人の売上高 の0.2%と認めることが相当であるから,その額は311万1970円(不 当利得につき上記3億0191万5347円の0.2%である60万383 1円,不法行為につき上記12億5406万9731円の0.2%である2 50万8139円)となる。

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1審判決はこちらです。

◆平成28(ワ)9753

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平成30(行ケ)10073  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月7日  知的財産高等裁判所

 インクカートリッジICチップの制御に関する本願発明1のうち一部の実施例については課題を解決できると認識できないとして、サポート要件違反とした拒絶審決が維持されました。
 ウ 本願発明1は,インクカートリッジICチップに関し,前記イのような インクカートリッジ位置の検出過程における誤報率を減らすことを課題とする(【0 001】,【0006】)。
(3) 前記1によると,「課題を解決するための手段」欄のインクカートリッジI Cチップに係る記載(【0007】〜【0009】)には,本願発明1に含まれるイ ンクカートリッジICチップの構成が記載されているが,このようなインクカートリッジICチップの構\成とすることにより,前記(2)ウのインクカートリッジ位置の 検出過程における誤報率を減らすことができる理由については何らの記載も示唆も なく,当業者が本願出願日当時の技術常識に照らしても,上記記載のみによって, 本願発明1の課題を解決できると認識できるものとは認められない。 そこで,実施例の記載を見ると,本願明細書には,具体的な実施例として,少な くともインタフェースユニットと制御ユニットを含み,インタフェースユニットは, イメージング装置に電気的に接続され,イメージング装置から送られる光制御指令 の受信に用いられ,前記光制御指令は,インクカートリッジICチップ上の発光ユ ニットを発光させるのに用いられる発光指令を含み(本願発明1とは異なり,消光 指令を含むか否かは明らかでない。),制御ユニットは,前記インタフェースユニッ トが光制御指令を受信したときに,インクカートリッジICチップの状態に応じて その光制御指令を実行するかどうかを制御するのに用いられるインクカートリッジ ICチップにおいて,前記インクカートリッジICチップの状態は,実行可能な状\n態と実行不可能な状態を含み,前記制御ユニットは,前記インタフェースユニット\nが発光指令を受信したときに,前記インクカートリッジICチップが実行可能な状\n態にある場合,前記発光ユニットを発光させるのに用いられる実施例が記載されて いる(【0016】,【0017】)。この実施例は,発光指令を受信したときに, インクカートリッジICチップが実行可能な状態にある場合には,その発光指令を実行\nするものであるが,これを含む上記実施例のように構成することにより,前記(2)ウ のインクカートリッジ位置の検出過程における誤報率を減らすことができる理由に ついては何らの記載も示唆もなく,当業者が本願出願日当時の技術常識に照らして も,上記実施例の記載のみによって,本願発明1の課題を解決できると認識できる ものとは認められない。上記実施例記載のインクカートリッジICチップを用いて も,前記(2)ア・イの従来技術と同じ機会に同じインクカートリッジのみが発光する ように,発光指令が実行可能な状態において受信される構\成では,本願発明1の課 題が解決できないことは明らかである。
 また,本願明細書には,本願発明1に含まれる実施例として,第1種のインクカ ートリッジICチップ(【0021】〜【0033】),第2種のインクカートリッジ ICチップ(【0035】〜【0042】),第5種のインクカートリッジICチップ (【0056】〜【0057】)が記載されており,発光指令を受信したときに,イ ンクカートリッジICチップが実行可能な状態にある場合には,その発光指令を実\n行し,実行不可能な状態にある場合には,その発光指令を実行しないものであるが\n(【0021】,【0026】,【0035】,【0056】),これを含む上記各実施例のように構成することにより,前記(2)ウのインクカートリッジ位置の検出過程におけ る誤報率を減らすことができる理由については何らの記載も示唆もなく,当業者が 本願出願日当時の技術常識に照らしても,上記各実施例の記載のみによって,本願 発明1の課題を解決できると認識できるものとは認められない。なお,第3種のイ ンクカートリッジICチップ(【0044】〜【0050】)及び第4種のインクカ ートリッジICチップ(【0051】〜【0055】)は,インクカートリッジIC チップの状態はインクカートリッジICチップの指令受信状態であり,指令受信統 計ユニットに記録された指令受信状態に応じて,インタフェースユニットが受信し た光制御指令を実行するかどうかを制御するものであるから,本願発明7及びこれを更に限定した本願発明8〜13に係る実施例であって,インクカートリッジIC チップの状態が実行可能な状態と実行不可能\な状態とを含むものではない点におい て,本願発明1に含まれる実施例とは認められない。 さらに,本願明細書には,正対位置検出とそれに引き続く隣接光検出とからなる インクカートリッジ位置検出について,初期状態で発光指令を実行できる状態とさ れているインクカートリッジICチップにおいて,1)インクカートリッジの正対位 置検出のために,そのインクカートリッジを発光させる発光指令を受信した場合に は,発光指令を実行できる状態に応じて,その発光指令を実行して,そのインクカ ートリッジを発光させる(発光指令を実行できる状態のその余のインクカートリッ ジも発光させる。)とともに,そのインクカートリッジを発光させる発光指令を実行不可能な状態とし,2)次いで受信する消光指令を実行してそのインクカートリッジ を消光し(前記1)で発光させたその余のインクカートリッジも消光させる。),3)以 後,隣接光検出等のために,発光指令を受信した場合には,実行不可能な状態に応\nじて,その発光指令を実行しないように制御する実施例が記載されている(【002 0】,【0024】,【0084】〜【0091】)。上記実施例の記載によると,正対位置検出時に比し,隣接光検出時に一部の隣接インクカートリッジの発光をカット することにより,正対位置検出時に受光部に届く光の量が条件を満たすようにしな がら,隣接光検出時には受光部に光が届かない又はわずかな光しか届かないように して,イメージング装置の誤報率を減らすことができ,本願発明1の課題を解決で きると認識することができる。 そして,本願明細書には,「イメージング装置の種類によっては,そのインクカー トリッジの数,インクカートリッジ装着方法,検出順番と検出方法等も異なるため, 上記のインクカートリッジ検出に関する説明はあくまでも参考例に過ぎ」ない旨記 載されているが(【0092】),検出順番や検出方法等が異なるイメージング装置に ついて,適切な制御手順を構築する方法についての記載や示唆はないし,上記実施\n例(【0020】,【0024】,【0084】〜【0091】)以外に,前記(2)ウのインクカートリッジ位置の検出過程における誤報率を減らすことができ,本願発明1 の課題を解決できると認識することができる実施例は見当たらない。
 そうすると,本願明細書に接した当業者は,本願発明1のうち,上記実施例(【0 020】,【0024】,【0084】〜【0091】)に該当するものについては,本願発明1の課題を解決できると認識するが,本願発明1のうち,その余の構成のも\nのについては,本願発明1の課題を解決できると認識することはできないと認めら れる。
(4) 本願発明1は,前記第2の2(1)のとおりであり,「前記制御ユニットは,前 記インタフェースユニットが光制御指令を受信したときに,インクカートリッジI Cチップの状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうかを制御する」について,「インクカートリッジICチップの状態」である「実行可能な状態」と「実行不可\n能な状態」のそれぞれに応じて,「光制御指令を実行するかどうか」をどのように制\n御するのかが特定されておらず,また,「インクカートリッジICチップの状態」の 設定や変更についても特定されていないから,上記実施例(【0020】,【0024】,【0084】〜【0091】)のものに限定されていないことは明らかである。 そうすると,本願発明1は,発明の詳細な説明の記載及び本願出願日当時の技術 常識により発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものであり,本願発 明1に係る特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号(サポート要件)に適 合するものとは認められない。
 (5) 前記1によると,本願明細書の【0084】,【図5】においては,発光指令 を受信したときは,発光標識部の状態に応じて,発光標識部が実行可能な状態にあ\nる場合には,発光指令を実行することにより発光ユニットを発光させ,発光標識部 が実行不可能な状態にある場合には,発光指令を実行しないことにより発光ユニッ\nトを発光させない一方,消光指令を受信したときは,発光標識部の状態にかかわら ず,消光指令を実行することにより発光ユニットを消光させることが記載されてい る。また,本願発明1に含まれる【0095】,【図10】においても,判断の手順 こそ違うものの,同様に,発光指令を受信したときは,発光標識部の状態に応じて, 発光標識部が実行可能な状態にある場合には,発光指令を実行することにより発光\nユニットを発光させ,発光標識部が実行不可能な状態にある場合には,発光指令を\n実行しないことにより発光ユニットを発光させない一方,消光指令を受信したときは,発光標識部の状態にかかわらず,消光指令を実行することにより発光ユニット を消光させることが記載されている。このような実施例の存在を参酌すると,本願 発明1に係る特許請求の範囲請求項1の記載から,インクカートリッジICチップ の状態が実行可能な状態にある場合には,光制御指令(発光指令と消光指令を含む)\nを実行し,インクカートリッジICチップの状態が実行不可能な状態にある場合に\nは,光制御指令(発光指令と消光指令を含む)を実行しないものと一義的に解釈することはできず,この点からしても,インクカートリッジICチップの状態である 実行可能な状態と実行不可能\な状態のそれぞれに応じて,光制御指令を実行するか どうかをどのように制御するのかは特定されていないというべきである。この点に ついて,原告は,本願明細書の【0099】の実施例には,インクカートリッジI Cチップの状態が実行不可能な状態であれば,消光指令を実行しないことが記載さ\nれているなどと主張するが,前記1のとおり,上記実施例は,「発光カウントユニッ トを設置し,発光ユニットが発光したときにカウントを開始し,発光カウントユニ ットがある所定値までカウントすると,自動的に発光ユニットを消光させる」もの であり,発光指令,消光指令の実行の有無の制御という本願発明1の発明特定事項 とは異なる方法を付加して発光ユニットの消光を達成するものである上,上記実施 例を考慮したとしても,本願発明1に係る特許請求の範囲請求項1の記載が多義的 であることが示されるにすぎず,上記判断を左右するものではない。 そうすると,本願発明1は,発明の詳細な説明の記載及び本願出願日当時の技術 常識により発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものであり,本願発 明1に係る特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号(サポート要件)に適合するものとは認められない。
(6) 原告は,本願発明1の制御ユニットは,インクカートリッジICチップが実 行可能状態にある際に,発光指令を含む光制御指令を受け付けた場合,これに応じ\nて発光ユニットを発光させる制御を実行し,実行不可能状態にある際に,発光指令\nを含む光制御指令を受け付けても,発光ユニットの発光を実行しないから,本願明 細書の【図8a】〜【図8c】,【0087】〜【0090】に記載した検出を行う ことができ,ひいては「誤報率を減らす」という課題を解決することができること を当業者であれば理解することができるなどと主張する。 しかし,本願発明1の特許請求の範囲の記載が本願明細書の【図8a】〜【図8 c】,【0087】〜【0090】の実施例のものに限定されていないことは,前記 (4)認定のとおりであるから,本願発明1は,サポート要件に適合しないものである。

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平成30(ネ)960  不正競争行為差止等,損害賠償,損害賠償等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成31年2月14日  大阪高等裁判所

 大阪高裁は、秘密管理性を満足していないとした1審判決を維持しました。
 控訴人は,上記のうち秘密管理性の点につき,本件技術情報は,電子デー タと電子データを印刷した紙ベースで保管され,それらの情報にアクセスで きる者を福島工場の従業員18人と役員等の限られた控訴人の従業員に限り, また,就業規則に従業員の秘密保持義務を定めるほか,秘密保持の誓約書の 提出を受けていた旨主張するとともに,それらの従業員は,本件技術情報が 控訴人にとって重要な技術情報であり,社外に持ち出したり,漏洩したりし てはいけない秘密の情報であることは十分に認識できていたから,営業秘密\nとして管理されていたと主張する。 証拠(甲31の1〜31の18,甲32,33,36)によれば,控訴人 主張の情報の管理状況や,就業規則の定め,従業員から誓約書を徴求してい る事実が認められ,その対象の情報が控訴人において重要な技術情報である と認識できるとの点も,そのとおり認めることができる。
(3) 外注先との関係における管理について
証拠(甲93の1〜93の4)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人が外注 先と製作請負契約を締結するに当たり,控訴人が外注先に対して貸与した物 件等を対象とした秘密保持契約を文書により締結することがあったことが認 められる。しかし,証拠として提出された当該秘密保持契約に係る契約書は, 平成14年の作成日付のもの2通と,平成15年の作成日付のもの及び平成 21年の作成日付のもの各1通にとどまる。 また,控訴人代表者の陳述書(甲21)には,控訴人が被控訴人サン・ブ\nリッドから控訴人製品の部品の一部の供給を受けていた旨の記載がある一方, 控訴人は,被控訴人サン・ブリッドではなく,被控訴人太陽工業から控訴人 製品の部品の一部の供給を受けていたことを認めている。控訴人が部品の供 給を受けていたのが被控訴人太陽工業らのうちいずれであれ,その際には, 控訴人から被控訴人太陽工業らに対して,少なくとも当該部品を製造するの に必要な範囲で,控訴人製品の図面等の情報が交付されていたことを推認で きるが,控訴人と被控訴人太陽工業らとの間で秘密保持契約が締結された形 跡はない。
(4) 被控訴人銀座吉田等との関係における管理について
被控訴人銀座吉田は,前提事実(1)エ,(2)アのとおり,平成6年頃から, 香港,シンガポール及び中国における控訴人の唯一の代理店として,控訴人製品の販売及びメンテナンスサービスを担当していたのであるから,控訴人 は,長年にわたり,被控訴人銀座吉田に対し,それらの業務に必要な,控訴 人製品に関する図面等の情報を数多く交付してきたことが推認される。 そして,被控訴人銀座吉田は,控訴人から交付を受けた控訴人製品に関す る図面等の情報で,本件技術情報を含むものの例として,戊1号証から戊6 4号証までを提出する。これらのうち,控訴人が,自ら交付したことを積極 的に争っておらず,かつ,本件訴訟において,控訴人の営業秘密に関する記 述があるとして,民事訴訟法92条1項2号に基づき,閲覧等の制限を申し\n立てた部分の内容は,次のとおりである。
・・・
上述のとおり,控訴人内部における本件技術情報の管理状況については控 訴人の主張どおり認められるものの,控訴人が外注先に対して控訴人製品の 図面等の情報を交付する際には,必ずしも秘密保持契約を締結しておらず, むしろ締結しなかった方が多かったことがうかがわれる。また,控訴人は, 香港,シンガポール及び中国における控訴人の唯一の代理店として,控訴人 製品の販売及びメンテナンスサービスを担当していた被控訴人銀座吉田に対 しても,長年にわたり,少なくとも本件技術情報の一部を含む多くの技術上 の情報を交付しながら,秘密保持契約を締結することも,交付した情報の取 扱いや用済み後の回収について何らかの要請をすることもなかったと認めら れる。控訴人が,被控訴人銀座吉田に対し,控訴人の交付する技術上の情報 を秘密として管理されるべきものであることを表明した形跡はない。\nまた,控訴人は,長年にわたり,被控訴人銀座吉田に対し,香港等におけ る控訴人製品の販売及びメンテナンスサービスの業務に必要な図面等の情報 を数多く交付してきたことが推認されるので,本件技術情報のうち,PLC プログラム等一部のものについてのみ,被控訴人銀座吉田との関係において, 他の情報と異なる管理がされていたと認めることもできない。 そうすると,本件技術情報は,全て,不競法にいう「秘密として管理され ていた」とは認められないというべきである。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成27(ワ)6555等

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平成30(行ケ)10104  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年1月31日  知的財産高等裁判所

 記載不備(実施可能要件、サポート要件)、新規事項違反などの無効主張をしましたが、知財高裁は、無効理由なしとした審決を維持しました。\n
 ア 本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明が,「断熱性に優れた発泡 積層シートを成形してなる容器において,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体を強固 に止着させうる容器の提供」(【0009】)を「発明が解決しようとする課題」とし ていることが,当該課題に直面するに至った背景(【0002】〜【0007】)と ともに記載され,当該課題を解決するために容器に係る本件発明が備えている「解 決手段」が,【0010】に記載され,これにより,本件発明の容器が,「断熱性に 優れ,上面側に凹凸形状を形成させて熱可塑性樹脂フィルムの端縁を上下にジグザ グとなるように形成させることにより利用者の怪我などを抑制させ,下面側が平坦 に形成されていることから蓋体を外嵌させる際に強固な係合状態を形成できる」 (【0012】)という効果を奏し,上記課題を解決することが記載されているから, 本件明細書の発明の詳細な説明には,発明が解決しようとする課題及びその解決手 段が記載されており,当業者は,その技術上の意義を理解することができる。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法施行規則24条の 2で定めるところにより,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十\n分に記載したものということができ,特許法36条4項1号に規定する要件を満た している。
イ(ア) 原告は,断熱性に優れた発泡積層シートを成形してなる容器におい て,その端縁部で指等を裂傷するといった怪我が生じること自体,本件明細書の発 明の詳細な説明には,客観的・科学的な証明や事実が一切記載されていないし,仮 に怪我が生じ得るとしても,本件発明における凹凸形状によればその怪我を防止で きることが,発明の詳細な説明において,何ら客観的・科学的な証明はされていな い旨主張する。 しかし,「断熱性に優れた発泡積層シートを成形してなる容器において,その端縁 部で指等を裂傷するといった怪我が生じること」については,発泡積層シートの熱 可塑性樹脂発泡シートや熱可塑性樹脂フィルムとしてどのような材料を用いたのか, 発泡積層シートが圧縮前はどの程度の厚みがあり圧縮後にどのような厚みとなった か(圧縮の程度),発泡積層シートの切断面の状態,発泡積層シートに対して指先等 がどのように接触するか(指を押し当てる強さ,指を移動させる方向・早さ等)に 応じて,怪我が生じる可能性があることは,当業者において,客観的・科学的な証明がなくとも容易に理解でき,「凹凸形状によればその怪我を防止できること」も,\n端縁部の上面側に形成する凹凸形状の形状に応じて指と端縁部の端面との接触面積 が異なる結果,怪我を防止することができることも,当業者において,客観的・科 学的な証明がなくとも容易に理解できるから,原告の上記主張には理由がない。
(イ) 原告は,1)「熱可塑性樹脂発泡シートと熱可塑性樹脂フィルムとの硬 さの差により,切断面(外側端面)に於いて硬い熱可塑性樹脂フィルムが柔らかい 熱可塑性樹脂発泡シートよりも外側に突き出た状態となり,且つ熱可塑性樹脂フィ ルムの切断面の形状が鋭利になりやすく,容器に触れた際に,硬いフィルムで指等 を裂傷する虞があり」(【0005】)との記載には根拠がない,2)「フィルム端縁で 指等を裂傷するという課題を解決するために,突出部の上下面にジグザグとなる凹 凸を形成させる」(【0007】)との記載は,特許文献3(甲21)に記載されてい る,それ自体で形状を維持できる程度の厚さ・硬さを有する薄手シートのみで構成\nされた容器に関するもので,本件発明が対象とする積層発泡シートの薄い樹脂フィ ルムとは異なると主張する。 しかし,上記1),2)については,前記(ア)のとおりであって,特許文献3(甲21) に記載されているのが薄手のシートの成形品で,本件発明が熱可塑性樹脂発泡シー トに非発泡の熱可塑性樹脂フィルムを積層した発泡積層シートの成形品であることをもって,前記(ア)の認定は左右されない。

◆判決本文

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平成30(行ケ)10129  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年2月19日  知的財産高等裁判所(4部)

 周知商標と混同する等の無効主張について、知財高裁は、審決と同様に、無効理由なしと判断しました。判決文の最後に原告・被告商標が掲載されています。
 以上のとおり,原告使用商標においては,楕円状リングの図形部分 によって,外側の楕円部分と内側の楕円部分の間の空間に配置された文 字部分と,内側の楕円部分内に配置された文字部分及び図形部分とがま とまりよく配置されており,これらの文字部分及び図形部分はひとまと まりのものとして看取されることに照らすと,原告使用商標に接した需 要者においては,原告使用商標は,ひとまとまりの文字部分及び図形部 分からなる結合商標として認識されるものであって,原告使用商標のう ちの引用商標1の構成に相当する部分(楕円状リングの図形部分,「d\niptyque」の文字部分,「paris5e」の文字部分及び「3 4 boulevard saint germain」の各文字部分) が,独立の商標として認識されるものと認めることはできないい。 したがって,原告による原告使用商標を付した原告商品の販売が引用 商標1の使用に当たるものと認めることはできない。
ウ 以上によれば,原告が原告商品に引用商標1を独立の商標として使用し た事実は認められないから,引用商標1及びその構成中の楕円状リングの\n図形部分が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,使用による 識別力を獲得し,原告の業務に係る原告商品を表示するものとして需要者\nの間に広く認識されていたものと認めることはできない。 エ(ア) これに対し原告は,原告が2008年(平成20年)5月に挙行し た原告商品の新商品発売パーティーに,女性向け雑誌又はファッション 雑誌の編集長や編集者など149名が参加し,これらの雑誌に原告商品 が掲載されたことは,平成20年当時既に原告商品及び引用商標1が周 知であったことを裏付けるものである旨主張する。 しかしながら,上記新商品発売パーティーに女性向け雑誌又はファッ ション雑誌の編集長や編集者が参加した事実から直ちに引用商標1が周 知であったことを裏付けることはできないし,また,原告商品の雑誌へ の掲載についても,引用商標1が単独で付された原告商品が掲載された というものではないから,引用商標1が周知であったことを裏付けるこ とはできない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。
(イ) また,原告は,原告商品の需要者は,原告商品を初めて知り,それ らに接する初期の段階では,原告商品に付された原告使用商標の構成中\nの楕円状リングの図形部分及び「diptyque 34 boule vard saint germain paris5e 34 bo ulevard saint germain」の文字部分(引用商標 1の構成に相当する部分)を見て原告商品と認識するかもしれないが,\n原告使用商標の構成中の上記文字部分の文字は小さく,かつ,楕円状リ\nングの図形部分の内側の文字や図形等は商品ごとにそれぞれ異なること から,やがて上記文字部分又は楕円状リングの図形部分の内側の文字や図形等をいちいち見なくとも,楕円状リングの図形部分を一瞥すること により,原告商品であると認識するといえるから,引用商標1の構成中\nの楕円状リングの図形部分は,本件商標の登録出願時及び登録査定時に おいて,使用による識別力を獲得した旨主張する。 しかしながら,原告使用商標のうちの楕円状リングの図形部分の識別 力は微弱である上(前記イ(イ)),原告が原告商品に引用商標1を独立 の商標として使用した事実は認められないから(前記ウ),ましてや引 用商標1の構成要素である楕円状リングの図形部分のみを独立の商標と\nして使用された事実も認められない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。

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平成29(ワ)6322  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年1月24日  大阪地方裁判所

 販促チラシについて著作物性が争われました。大阪地裁は著作物性を否定しました。
ア 原告は,本件チラシの表現のうち,1)「検査時間 受診代金[注:各文 言の上に『×』の記号あり]」や「検査なし スグ買える!」という宣伝文句(キャ ッチフレーズ)(上記(1)のア及びイ),2)「コンタクトレンズの買い方比較」という 表(同ア)及び3)「なぜ検査なしで購入できるの?」という箇所における説明文言 (同ア)の3点について,創作性があるとして,本件チラシに著作物性が認められ ると主張している。
イ しかし,まず上記1)は,旧大阪駅前店において採用された眼科での受診 (検査)なしでコンタクトレンズを購入することができるという特徴を表現したも\nのであり,眼科での受診(検査)が不要であると,検査時間や受診代金が不要とな り,また検査が不要である結果,コンタクトレンズをすぐ買えることになると認め られる。そして,上記1)の宣伝文句は,以上のビジネスモデルによる顧客の利便性を消費者に分かりやすく表現しようとしたものと認められるが,不要になる事項を\n文字(単語)で抽出し,その文字(単語)の上に「×」を付すことはありふれた表\n現方法であるし,「検査なし スグ買える!」という表現は,眼科での受診(検査)\nなしでコンタクトレンズをすぐ買えるという旧大阪駅前店のビジネスモデルによる 利便性を,文章を若干省略しつつそのまま記載したものにすぎず,そこに個性が現 れているということはできない上に,強調したい部分に着色等したり,「!」を付し たりするなどして強調することもありふれた表現方法にすぎない。以上より,上記\n1)に創作性があるとは認められない。 また,上記2)はマトリックスの表形式にすることによって,旧大阪駅前店と他の\n店舗や他の販売方法との違いを分かりやすく表現したものである。確かに,表\現方 法としては文章で伝えるなどの別の方法が存することは原告主張のとおりであるが, 本件チラシは販売宣伝のために作成されたものであるから,その性質上,表現が記\n載されるスペースは限られ,また見た者が一目で認識,理解し得るような表現をす\nべきことも求められるから,表現方法の選択の幅はそれほど広いとは認められない。\nそして,文字で表現しようと思えばできる事項を表\形式にまとめることは通常行わ れる手法であり(例えば,甲5の1枚目の料金表,甲23の1頁目の略歴の表\,乙 12の表,反訴状と題する書面の15頁の表\,反訴状訂正申立書の1ないし2頁の\n表参照),表\形式で比較するに当たり,縦の欄に旧大阪駅前店と他の店舗や他の販売方法を並べ,横の欄に複数の事項を列記し,マトリックス形式でまとめるというの も,ありふれた手法にすぎない(例えば,甲11,14,乙13及び14の表,反\n訴状と題する書面の12ないし13頁の表2つ参照)。そしてまた,ここで比較の対\n象としている事項の選択も,眼科での受診(検査)を不要とし,店舗に来店して購 入するという旧大阪駅前店でのビジネスモデルから自ずと導き出されるものばかり である。以上より,上記2)に創作性があるとは認められない。 さらに,上記3)の説明文言は,旧大阪駅前店では眼科での受診(検査)なしでコ ンタクトレンズを購入することができる理由を文章で説明したもので,その内容は 法規の内容や運用を説明した上で,旧大阪駅前店では,顧客の経済的・時間的な負 担の観点から,販売時に処方箋の有無を前提としていないことを説明したものにすぎない。これは上記のビジネスモデルの客観的な背景や方針をそのまま文章で記載 したものにすぎず,文章表現自体に特段の工夫があるとはいえない上,その記載方\n法も相当の文字数を使用して,しかも小さな文字で記載したものにすぎないから, その表現方法に何らかの工夫がみられるわけでもない。以上より,上記3)に創作性 があるとは認められない。 以上より,上記1)ないし3)の各記載について,創作性は認められない。
ウ 以上の点につき原告は,提携眼科を設けないでコンタクトレンズ販売店 をオープンさせるというのは,かなり思い切った試みであったとか,検査なしでコ ンタクトレンズを購入できる理由を書いた説明文言は適法性を支える要素となって いるなどと主張しているが,旧大阪駅前店におけるビジネスモデル自体が著作権に よる保護の対象になるわけではなく,そのビジネスモデルを表現した本件チラシに\nおける各表現方法自体がありふれたものにすぎないことなどは,上記認定・判示の\nとおりである。したがって,原告の上記主張によって,上記判断は左右されない。
(3) 本件チラシの各表現の組合せによる著作物性
原告は上記(2)の1)ないし3)等の組合せに著作物性が認められるべきであるとも 主張している。 確かに,上記1)ないし3)は,眼科での受診(検査)を不要とし,コンタクトレン ズをすぐ買えるという旧大阪駅前店でのビジネスモデルを強調するために,それが可能な理由等を小さな文字で説明する(上記3))とともに,当該ビジネスモデルに よって不要となる事項を文字(単語)で抽出し,その上に「×」を付すなどしてキ ャッチフレーズを用いたり(上記1)),マトリックスの表形式で他の店舗や他の販売\n方法と比較したりした(上記2))もので,それらを組み合わせることによって当該 ビジネスモデルを強調し,読み手に分かりやすく説明しようとしたものということ はできる。しかし,何かを強調し,分かりやすく伝えるために,説明文とキャッチ フレーズと表形式のものを組み合わせることそれ自体は,特徴的な手法とは認めら\nれないから,上記(2)で判示したとおり上記1)ないし3)の各表現に創作性が認められ\nないことを踏まえると,これらの組合せ自体にも創作性は認められない。 なお,本件チラシでは,さらに視力検査をしている男の子のイラストが組み合わ されているが,原告はイラスト自体の著作物性を主張するものではない上,広告宣 伝において適宜関連するイラストを配することもありふれた表現方法にすぎないか\nら,このイラストと組み合わせることによって,創作性が基礎付けられるとはいえ ない。 また,原告は当初,被告チラシの各商品の配列等が本件チラシとほとんど同一で あることを主張していた。しかし,本件チラシにおいては商品の写真を掲げつつ, その下側に商品名や値段等を記載し,適宜商品の説明やアピールポイント等を付加 しているところ,そのような各商品の配列等は,コンタクトレンズ販売店の広告と してありふれたものであると認められるから(乙1ないし6),創作性は認められず,原告の上記主張によって本件チラシの著作物性は基礎付けられない。
(4) 以上より,本件チラシに著作物性は認められないから,その余の争点につ いて判断するまでもなく,被告の行為に著作権・著作者人格権侵害が成立するとは いえない。したがって,被告の著作権・著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害 賠償請求には理由がない。

◆判決本文

原告、被告のチラシはこちらです。

◆チラシ

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平成29(ワ)9834  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成31年1月31日  大阪地方裁判所

 ウェブサイトにおける表現が、不正競争行為(営業誹謗)であると判断されました。\n
 ア 本件ウェブページ1及び2の閲覧者について
 本件ウェブページ1及び2が掲載された被告ウェブサイトは,不特定多数の一般 人に対して公開されているが,本件ウェブページ1及び2を含む本件連載が「50 周年記念サイト」内のコンテンツであること,被告代表者の自伝であること,社内\n報における連載記事の再掲であること等から,本件ウェブページ1及び2の閲覧者 の多くは,被告の事業内容,あるいは被告代表者の業績や人柄に関心を抱く者,具\n体的には被告の関係者や取引業者,競争相手,油圧式杭圧入引抜機を使用した工事 を行う工事業者といった当該業界の者が中心になると考えられる。 したがって,これらの者が,本件掲載文1ないし3に接した際,本件連載中の他 の記事と合わせてどのような認識を持つかについて検討すべきことになる。
イ 当該業界の認識について
平成29年当時,油圧式杭圧入引抜機の製造販売事業を行う会社は,高知県 内においては原告及び被告以外には存在しなかったこと,昭和54年から55年頃 まで,土佐機械工業がサイレントパイラーの部品の製造の下請けをしていたこと,P3が垣内商店でサイレントパイラーの図面作成等に関与した後,土佐機械工業を 経て原告に勤務していること,被告が土佐機械工業に対し同社の製品は被告の発明 の技術的範囲に属する旨を通告したことは前記1で認定したとおりであり,原告の 資本金が2300万円であるのに対し,被告の資本金が80億5567万0215 円であること(甲1,5)を考慮すると,被告代表者であるP1が,本件掲載文1\nないし3として,「当社の下請けで加工を任せていた高知の小さな会社」,「この 会社は平然とコピー機を製造している」,「当社の機械のコピー機をせっせとつく っている件の会社」と記載した際に,土佐機械工業又は原告を指す意図でしたこと は明らかである。 そして,上記各事情は,当該業界の者にとっては知り得ることであったと考えら れるし,前記1で認定したところによれば,被告と土佐機械工業及び原告との間に は,長年にわたって特許権等に関する紛争があり,これらの事情は,当該業界の者 にとって周知であったとされるのであるから,当該業界の者は,本件掲載文1ない し3に記載されている会社が土佐機械工業及びその事業を承継した原告を指すとい うことを容易に理解するものと解されるし,現に,原告の取引先は,本件ウェブペ ージ1及び2に接して原告のことを指すものと理解し,原告に連絡しているのであ る。
(イ)被告は,本件掲載文3について,原告ではなく中央自動車興業を指すもので あると主張する。しかし,「件の会社」という表現は,以前に言及された会社を指す表\現であると解するのが当然であるところ,中央自動車興業は本件連載において本件掲載文3以前に一度も言及されておらず(乙35,被告代表者),中央自動車興業が高知県内\nに本店又は支店を有していたことはないことから(甲28),第28回である本件 ウェブページ2の「件の会社」については,直前の第27回である本件ウェブペー ジ1にある「平然とコピー機を製造販売している高知の小さな会社」を受けた表現\nと解するのが相当であり,逆に,これを中央自動車興業と解する余地はないといわ ざるを得ない。
(2)「コピー機」との表現について\n
ア 「コピー」という表現は,一般には,同一性を保ちつつ,転写,複製,演奏\n等を行うことと解され,権利者の許諾を得ずに著作物,商標,意匠あるいは商品形 態についてのコピーをした場合,多くの場合に権利侵害が成立することから,コピ ー品の製造販売や輸入が違法であることは,一般的な警告の対象とされている(甲 21ないし26,33ないし35,乙22)。 特許権との関係でコピーという表現が使われることは多くはないが,上述した同\n一性の保持を前提とすると,相手方の製品が自身の製品のコピーであると表現する\nことができるのは,外観,構造等が同一,あるいは区別し得ない程度に類似してい\nるような場合か,少なくとも,相手方の製品が,自身の有する特許発明の技術的範 囲に属し,特許権侵害が肯定されるような場合に限られると解される。 そうすると,外観等が類似はしていても,全体としては同一とはいえない場合や,機能や基本となる原理が類似していても,特許発明の技術的範囲に属するのではな\nい場合に,これをコピーと表現した場合,本来は特許法その他の法律により違法と\nされる範囲外の行為について,違法との印象を与える内容を告知することになる。
イ 本件について見るに,原告の製品は,被告のサイレントパイラーと同じ圧入 原理を利用する油圧式杭圧入引抜機であるが,この基本原理自体は,サイレントパ イラーの開発以前である昭和35年から公知であったものであるし,原告の製品の 形状は,サイレントパイラーの形状と一部類似することが認められるが,油圧式杭 圧入引抜機という機械の機能を発揮するためにはある程度決まった構\造・形状を採 らざるを得ないと合理的に推測できるのであって,他の会社がかつて製造していた 油圧式杭圧入引抜機も,サイレントパイラーと主要な構造や形状が類似していたこ\nとが認められる。また,サイレントパイラーの図面作成に携わったことのあるP3 らが,その後土佐機械工業へ転職したことが認められるが,同社は油圧式杭圧入引 抜機の開発に際し,被告の有する特許権等の権利を侵害するおそれがないか弁理士 と相談して調査したとされることは前記認定のとおりである。 そして,被告の特許申請については拒絶査定が確定し,土佐機械工業において杭\n打込引抜機についての特許を取得していることは既に認定したとおりであって,本 件において,土佐機械工業または原告が自らの杭打込引抜機を製造販売することが, 特許権を含む被告の何らかの排他的権利を侵害すると認めるに足りる事実の主張, 立証はなされていない。
ウ 以上によれば,被告は,原告の製品が,被告の製品をコピーしたものである と表現し得る場合ではないにもかかわらず,本件掲載文1ないし3において,原告\nの製品を「コピー機」と記載したものであるから,これは,虚偽の事実に当たると いうべきであるし,既に検討したところに照らし,競争関係にある原告の営業上の 信用を害する行為に当たるというべきである。
エ 被告は,本件連載が被告代表者の自伝であるという性質から,主観的であり\n価値判断を含む記載であることが考慮されるべきであって,本件ウェブページ1及 び2の全体の表現ぶりや,本件掲載文2の「当社が発明した機械ではあるが,一社\nで市場を完全に独占するのはやはり罪悪である。」,「業界の小さな“鬼っ子”にむしろ感謝している。」等の表現から,「コピー機」を作っているとする会社を否\n定的に評価するものではないと主張する。 しかし,本件連載を通じ,被告代表者がサイレントパイラーを発明したことが強\n調されており,本件ウェブページ1においても,「世界ではじめて杭圧入機を実用 化し,世の中になかった「圧入業界」をつくり」との記載がある中で,本件掲載文 2及び3においては,「平然とコピー機を製造している」,「当社の機械のコピー 機をせっせとつくっている」との表現がなされているのであるから,「コピー機」\nという表現が,被告の発明品であるサイレントパイラーの技術を,被告の権利を侵\n害し,あるいは,違法な手段で盗用・模倣したという否定的な文脈で用いられてい ることは明らかであり,この表現に接した者は,原告の製品が被告の製品の模造品や模倣品,違法な権利侵害品であるとの印象を受けるものと認められる。\n上記被告の主張を採用することはできない。
(3) 「引き抜かれた」との表現について\n
本件ウェブページ2の前半は,昭和58年頃,被告の取引先の一つが会社更生手 続開始決定を受けたことをきっかけに,被告代表者が被告の営業担当者に対して社\n外への外出を禁止するという措置を執り,これに反発した営業幹部の多くが退職し, その一部は「件の会社」に引き抜かれたというものであり,被告代表者の措置に反\n発した営業幹部の退職が先行し,引抜きにより退職したとするものではない。 しかしながら,本件ウェブページ1の記載を前提に本件ウェブページ2を見た場 合,本件掲載文3の「当社の機械のコピー機をせっせと作っている件の会社」は土 佐機械工業又はその事業を承継した原告と解されることは前記認定のとおりである し,「コピー機をせっせと作っている件の会社」という否定的表現の中で「引き抜\nかれた」という表現が用いられれば,これに接する者は,土佐機械工業又は原告が,\n違法,不当な手段を用いて,被告の従業員を転籍させたとの印象を抱くものと解さ れる。 本件において,昭和58年1月31日付けで退職した被告の従業員が,土佐機械 工業に転職したとの事実は認められないし,土佐機械工業又は原告が被告の従業員 に対して違法・不当なはたらきかけをしたという事実も認められないから,被告が,本件掲載文3に「件の会社に引き抜かれた」と記載したことは,競争関係にある原 告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したことになる。

◆判決本文

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平成30(ネ)10066  損害賠償等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成31年1月31日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ウェブサイトにおいて,書籍を他人の著作物である旨を表示されたことが,氏名表\示権の侵害に当たるかが争われました。原判決は,「氏名表示権は,著作者が原作品に,又は著作物の公衆への提供,提示に際し,著作者名を表\示するか否か,表示するとすれば実名を表\示するか変名を表示するかを決定する権利であるところ,被控訴人のホームページにおいて,本件各書籍の公衆への提供,提示がされているとはいえないから,その余の点を判断するまでもなく,控訴人の請求には理由がない」と判断しました。なお、時期に後れた攻撃防御であるとの申\立ては認められませんでした。
1 時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立てについて
本件は,平成29年12月20日に東京簡易裁判所に訴えが提起され,平成30 年2月9日に東京地方裁判所に移送され,3回の弁論準備手続期日を経て,同年6 月21日の口頭弁論期日において弁論が終結されたところ,弁論の全趣旨によると, 東京地方裁判所は,同年3月30日,控訴人(一審原告)訴訟代理人に対し,被侵 害利益が公表権(著作権法18条),氏名表\示権(著作権法19条),同一性保持 権(同法20条)又は著作権法に定めのない権利利益であるのか,具体的に明らか にすることなどを求めるファックス文書を送付したこと,控訴人(一審原告)訴訟 代理人は,同年4月25日,被侵害利益は「氏名表示権(著作権法19条)」であ\nる旨を記載した同日付け原告第1準備書面を東京地方裁判所に提出し,同書面は同 日の第1回弁論準備手続期日において陳述されたことが認められる。そうすると, 控訴人は,被侵害利益を「インターネット上で自己の書籍著作物について第三者の 著者であると偽られない利益」とする不法行為に基づく損害賠償請求権の主張を, 遅くとも原審の口頭弁論終結日である平成30年6月21日までにすることが可能であったといえるから,これを当審において初めて主張することは「時機に後れて\n提出した攻撃又は防御の方法」(民訴法157条1項)に該当することが認められ る。 しかし,控訴人は,本件の控訴審の第1回口頭弁論期日(平成30年11月21 日)において,被侵害利益を「インターネット上で自己の書籍著作物について第三 者の著者であると偽られない利益」とする不法行為に基づく損害賠償請求権の主張 をしたものであって,本件は,第2回口頭弁論期日において弁論が終結されたこと からすると,上記の時点における上記主張により,訴訟の完結を遅延させることと なると認めるに足りる事情があったとはいえない。 したがって,上記主張に係る時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立ては,認め\nられない。
・・・
証拠(甲1,甲1の2)及び弁論の全趣旨によると,本件書籍1は,D VD付きの書籍であり,書籍には,写真,イラスト,文章等が,DVDには映像が 掲載されていることが認められる。そして,前記アのとおり,本件書籍1の奥付に は,控訴人以外の多くの個人又は団体の名が,様々な立場から本件書籍1の成立に 関与したものとして記載されていること,「監修」が「書籍の著述や編集を監督す ること」(広辞苑第7版)を意味することからすると,本件書籍1が編集著作物で あるとしても,前記アの記載から,その編集著作物の著作者が,控訴人であると推 定すること(著作権法14条)はできず,著作者が控訴人であるとは認められない。 また,その他に,控訴人が,本件書籍1につき,素材の選択又は配列によって創 作性を発揮したものと認めるに足りる主張・立証はない。 この点について,控訴人は,株式会社ビックスとの間における作業過程に照らし てみても,控訴人が実態として編集著作物の著作者となる旨主張する。 しかし,控訴人が主張する本件書籍1への控訴人の関与については,控訴人の陳 述書(甲8)以外の証拠はなく,また,上記陳述書によっても,「明確に覚えてい ない」というのであって,控訴人が,「監修」,すなわち,書籍の著述や編集を監 督することを超えて編集著作物の著作者と評価し得る作業を行ったことを認めるこ とはできないから,控訴人の上記主張は,採用できない。 したがって,控訴人が本件書籍1の編集著作者であるとは認められない。
そうすると,本件書籍1については,控訴人の主張する被侵害利益は,その根拠 を欠くから,その余の点を判断するまでもなく,控訴人の被控訴人に対する被侵害 利益を「インターネット上で自己の書籍著作物について第三者の著者であると偽ら れない利益」とする不法行為に基づく損害賠償請求権が存するとは認められない。

◆判決本文

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平成30(行ケ)10059  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年1月29日  知的財産高等裁判所(2部)

 商標「QRコード」について、使用されていたとした審決が維持されました。争点は、商標的使用か、登録商標との同一か等です。
 (2)ア 前記(1)アで認定した78頁最下部部分の本件太字部分の記載と本件説 明部分の記載を併せて読むと,本件太字部分のうちの「QRコード(R)リーダー”Q”」 又は「”Q”」の部分が商品名を記載したものであり,本件説明部分が上記商品の機 能等を説明した記載であると認められる。\nそして,上記事実に,本件カタログは,被告の総合カタログであり,被告の商品 の紹介等がされていること,78頁最下部部分には,「ダウンロード(無料)はこち らから!」との記載とQRコード規格の2次元コードのラベルの記載があり,上記 商品「QRコード(R)リーダー”Q”」又は「”Q”」のダウンロードの案内がされている ことを併せ考慮すると,78頁最下部部分は,本件商品2に含まれる上記商品「Q Rコード(R)リーダー”Q”」又は「”Q”」の広告であると認められる。 なお,前記(1)アで認定した78頁最下部部分の記載からすると,上記商品「”Q”」 は,QRコード規格の2次元コードの読み取り等の機能を有するプログラムソ\フト ウェアであるから,本件商標の指定商品のうちの「電子応用機械器具及びその部品」 に含まれる。
イ 前記(1)アのとおり,使用商標3は,本件商品2の広告である78頁最下 部部分に記載されているところ,前記(1)イのとおり,78頁最下部部分が掲載され た本件カタログは,要証期間内である平成27年3月6日に本件展示会の会場で頒 布されている。
ウ 次に,使用商標3が、本件商品2についての自他商品等を識別するもの として使用されているかどうかを検討する。
(ア) 後掲証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
a 株式会社技術評論社が発行する「最新パソコン用語事典2006−’\n07」及び「最新パソコン・IT用語事典2010−’11」には,「QRコード」\nの項目に,「株式会社デンソーウェーブが開発した,2次元コード(縦と横の両方\n向に意味を持たせてある符号)の一種。・・・1999年にJIS,2000年に ISOの国際規格として制定されている。」との記載がある(甲24,25)。
b 株式会社秀和システムが発行する「最新標準パソコン用語事典20\n13−2014年版」には,「QRコード」の項目に,「1994年に自動車メー カーでもあるデンソー社が開発した,バーコードに代わる2次元のマトリクス式コ\nードの1つ。・・・1999年にはJIS X0510に,2000年にはISO /IEC18004として標準化された。」との記載がある(甲26)。
c 被告は,「QRコードについては(株)デンソーウェーブの登録商標\nです。」との表示をしているほか,「QRコード」には「○R 」の表示を付している\n(甲81,甲92の1,甲98の1,乙1,27)。また,被告以外の会社の開設 した複数のウェブサイトにおいても「QR Code」又は「QRコード」につい て被告の登録商標である旨の表示がされている(乙23の1〜5)。さらに,原告の\n広告においても,「QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。」との\n記載がある(乙24〜26)。
d スマートフォン用のQRコードリーダー等のアプリのアイコンとして,図形と,その下に「QRコード」,「QR Code」又は「QR code」 と記載されたものが多数存在する(以下,同アイコンを「甲52アイコン」と総称 する。)ところ,甲52アイコンのうちの文字部分は,いずれも,何ら特徴のない白 抜きの文字である(甲52の2)。
e 平成18年8月22日付けの新聞には,「QRコード」は,カメラ付 き携帯電話の普及に伴い,爆発的に普及したものであり,現在は被告の登録商標で あるとの記事がある(甲70)。
(イ) 前記(ア)の事実によると,「QR Code」及び「QRコード」は,2 次元コードの規格の一種であると認識されることがあるものと認められるが,他方, 被告は,本件商標登録を有しており,前記(ア)のとおり,「QRコードについては(株) デンソーウェーブの登録商標です。」との表\示をしたり,「○R 」の表示を付して,\n商標登録を有していることを広く知らせており,また,前記(ア)のとおり,被告以外 の会社も,原告を含め,そのウェブサイトや広告において,「QR Code」又は 「QRコード」が被告の登録商標である旨の表示をしていることを考慮すると,「Q\nR Code」又は「QRコード」が常に2次元コードの規格の一種であるとのみ 認識されると認めることはできず,自他商品等の識別機能を発揮する態様で使用さ\nれることがあり得るというべきである。
(ウ) 使用商標3は,前記(1)ア(ア)のような態様で表示されているもので,\n他の記載とは独立して表示されている。そして,使用商標3は,「Q」の文字の右\n端の部分と「R」の文字の左端の部分が重なっており,僅かではあるが図形化され ており,赤色で表示されているものであって,単に,商品名であると認識される「Q\nRコードリーダー”Q”」又は「”Q”」の説明として記載されているものと認めるこ とはできず,上記商品についての識別標識として記載されているものと認められ, 本件カタログを見た需要者・取引者もそのように認識するものと認められる。 したがって,使用商標3は,本件商品2についての自他商品等の識別機能を有し\nていると認められる。 なお,甲52アイコンの各文字部分は,使用商標3とは表示態様が全く異なるか\nら,甲52アイコンの存在によって,使用商標3が自他商品等の識別機能を有しているという上記の判断が左右されるものではない。\n
(エ) 原告は,「QR コード」及び「QR Code」の文字からは,2 次元コードの規格の一種であるQRコード規格との認識しか生じ得ないことは,特 許庁が15例にも上る拒絶理由通知及び拒絶理由で一貫して認定していると主張す るが,いずれも本件とは異なる事例についての特許庁の判断であり,使用商標3が 自他商品等の識別機能を有しているとの上記の判断が左右されるものではない。\nまた,原告は,「『QR Code』はデンソーウェーブの登録商標です。」との表\ 示は,虚偽表示(商標法74条1号違反)であると主張するが,後記エのとおり,\n本件商標は,「QR Code」と社会通念上同一のものであるから,この表示が虚\n偽表示ということはできない。\n
(オ) 原告は,1)本件カタログに用いられている商標は「DENSO WAV E」又は「デンソーウェーブ」である,2)使用商標3は,本件カタログのうち,Q Rコード規格についての解説等をする頁で使用されており,被告の製品を紹介する場面で使用されていないから,一般の需要者・取引者からは,単に当該2次元コー ドが「QRコード規格に基づいた2次元コード」であると理解されるにすぎず,自 他商品等の識別標識として理解されることはない,3)使用商標3,「ダウンロード (無料)/はこちらから!」という記載及びQRコード規格の2次元コードの配置 からすると,使用商標3が本件商品2のアプリとの具体的関係において使用されて いると理解することは不可能である,4)本件商品2は本件カタログの78頁のQR コード規格等についての技術的な解説,紹介の中で隅に記載されているにすぎない ことからすると,本件カタログが本件商品2を紹介するものではなく,本件商品2 の広告に該当しないと主張する。 しかし,既に認定,判断したとおり,使用商標3は,78頁最下部部分において, 本件商品2についての広告として使用されているものであり,このことは,本件カ タログの商標として「DENSO WAVE」又は「デンソーウェーブ」が使用され\nていることや使用商標3が本件カタログの「基礎知識」の頁に記載されていること によって妨げられるものではなく,また,前記(1)ア(ア)で判示した78頁最下部部分 の記載内容からすると,使用商標3は,本件商品2との具体的な関係において使用 されていることも明らかであるから,原告の上記主張はいずれも理由がない。
エ 次に,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるかどうかについ て検討する。
(ア) まず,本件商標は,別紙1のとおり,「QR コード」及び「QR C ode」を上下二段に配置した商標であり,上段の「コード」の部分は,下段の「C ode」の部分を片仮名にしたものと理解されるから,「キューアールコード」の称 呼が生じ,また,QRコード規格の2次元コードの観念が生じる。 一方,使用商標3からも,「キューアールコード」の称呼と,QRコード規格の2 次元コードの観念が生じる。 このように,本件商標と使用商標3とは,称呼及び観念において共通する。
(イ) 次に,本件商標と使用商標3の外観を比較すると,使用商標3は,本 件商標の下段の「QR Code」とは,同一の文字綴りであり,上段の「QR コード」とは,片仮名及びローマ字の文字表示を相互に変更するものであり,この点で共通性が認められるが,1)本件商標は,「QR コード」及び「QR Code」 の標準文字が上下二段に配置されているのに対し,使用商標3は,「QR Code」 のみから構成されている点,2)使用商標3は,「Q」の文字の右端の部分と「R」の 文字の左端の部分が重なっており,同重なり部分が,両文字の一部を兼ねているよ うに 図形化されている点,3)使用商標3は,赤色で記載されている点で異なって いる。 しかし,前記(ア)のとおり,「QR コード」は,「QR Code」の「Code」 の部分を片仮名にしたものと理解されるのであり,「QR コード」及び「QR C ode」の称呼及び観念は同一であることからすると,上記1)の相違点の存在が, 使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの判断に影響を与えるもの ではないというべきである。 また,「Q」の文字と「R」の文字が重なった部分は僅かであり,双方の文字を独 立した文字として認識できること,図形化の程度も僅かであることからすると,上 記2)の相違点の存在が,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの 判断に影響を与えるものではないというべきである。 さらに,商標に色を付けても,通常,商標の同一性を失わせるような変更とはえ いないから,上記3)の相違点の存在が,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの判断に影響を与えるものではないというべきである。
(ウ) 以上からすると,使用商標3は本件商標と社会通念上同一であると認 められる。
(エ) この点について,原告は,本件商標上段の「QR コード」から下段 の「QR Code」以外のものを想起させるし,下段の「QR Code」から 上段の「QR コード」以外のものを想起させると主張するが,本件商標は,「QR コード」と「QR Code」を上下段に配置した商標であって,前記ウのとお り,「QR コード」及び「QR Code」が2次元コードの規格としても知られ ていることを考慮すると,「QR コード」と「QR Code」からそれら以外の ものを想起することは考え難いというべきである。このことは,被告が「QR コ ード」と「QR Code」について商標登録出願をしていることによって左右さ れるものではない。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
オ 次に,本件商品2が商標法上の「商品」に当たるかどうかについて検討 する。
(ア) 後掲証拠によると,以下の事実が認められる。
a 被告の開設しているウェブサイトには,平成26年11月6日付け で,以下の記載がある(甲61)。
(a) 「デンソーウェーブとレピカが資本・業務提携/QRコード(R)によ るクラウドサービス『Q−revoTM』活用の第一弾として,/食品及び工業製品 の『トレーサビリティ』サービスの提供を開始」
(b) 「レピカは,子会社であるアララ株式会社を通じてスマートフォン 事業を手がけており,コンシューマー向けにQRコードをトリガーとしたAR(A RAPPLI(アラプリ)』を展開しています。両社はこれまでにより精度の高いス マートフォン向けQRコードリーダーアプリの開発において共同でプロジェクトを 行っており,今後更に両者のノウハウを活用してより付加価値の高い事業を展開し ていくため,デンソーウェーブがレピカに出資することにしました。」\n
(c) 「両社は,今後,『Q−revo』および『QR Code Re ader “Q”』を活用し,食品をはじめ,工業製品において,『トレーサビリテ ィ』をキーワードに両社のノウハウを活かしたサービスを展開していきます。」 b payment naviのウェブサイトには,平成26年11月 10日付けで,以下の記載がある(乙16)。
(a) 「デンソーウェーブとレピカがQRコードによるクラウドサービス提供」\n
(b) 「両社では,提携の第一弾として,SQRC,フレームQRなど, 進化したQRコードの生成・配信,読み取り,データ蓄積を行うクラウドサーバと 『QR Code Reader “Q”』を活用した次世代型サービス『Q−re vo』を開発。今後は,食品や工業製品において,『トレーサビリティ』をキーワー ドに両者のノウハウを活かしたサービスを展開していく方針だ。」
(c) 「なお,具体的な売り上げ目標については,トレーサビリティシス テムの検証を進め,サービスとして整った際,発表する方針だ。」\n
(イ) 商標法上の商品というためには,商取引の対象となり得ることが必要 であり,そのためには,必ずしも当該商品が有償で譲渡される必要はなく,当該商 品自体は無償で譲渡されるものであっても,当該商品の譲渡によって利益を得る仕 組みがあり,その仕組みの一環として,当該商品が無償で譲渡されるのであれば, 当該商品は交換価値を有し,商取引の対象となっていると認めることができるとい うべきである。 前記(1)ア(ア)で認定した事実からすると,本件商品2は,無償でダウンロードでき ることが認められるが,前記(ア)で認定したウェブサイトにおける記載からすると, 被告は,アララ社と共同で,本件商品2を活用したサービスを展開していく計画を 有していることが認められるところ,同サービスを利用するためには,本件商品2をスマートフォンにダウンロードしておく必要があるのであるから,本件商品2の 無償配布は,同サービスの展開に大きく寄与するものと考えられ,したがって,本 件商品2の無償配布は,本件商品2を利用したサービスを提供し,同サービスの提 供によって利益を得るというビジネスモデルの一環としてされたものと評価できる。 したがって,本件商品2には交換価値があるものと認められ,本件商品2は,商 取引の対象となり得るというべきである。 なお,このように,本件商品2を無償配布した上で,本件商品2を活用したサー ビスを提供することにより利益を得るというビジネスモデルにおいても,本件商品 2を無償配布する際の商取引の対象は,あくまでも本件商品2であり,使用商標3 は,本件商品2の広告に付されたものであり,上記サービスの商標として使用され たものではない。
カ 以上のとおり,被告は,本件商標と社会通念上同一であると認められる 使用商標3を付した,商標法上の「商品」に当たる本件商品2の広告を,要証期間 内に頒布したことが認められる。
キ 原告は,使用商標3は,197号商標の一部にすぎず,使用商標3のみ が独立して認識されることはない,被告は本件QRアイコンについて商標の登録を 受けているから,本件商品2の識別標識となり得るのは本件QRアイコンのみであ る,197号商標が登録された以降は,本件商品2について197号商標を表示す\nる行為は,専ら197号商標を使用するものであることから,本件パンフレットに 表示されている商標は,197号商標であって,使用商標3ではないなどと主張す\nる。 しかし,使用商標3は,前記(1)ア(ア)のとおり,本件カタログの78頁最下部部分 に記載されており,本件QRアイコンとは完全に独立していることは明らかである から,197号商標が登録されているかどうかや本件QRアイコンについて商標登 録がされているかどうかにかかわらず,独立の商標として認識できるものである。 また,同一の商品の商標として,複数の商標を付することも認められるから,1 97号商標が登録された以降は,その一部である使用商標3を商標として使用でき ないという理由はない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。
ク 原告は,本件商品2に係る無料アプリは,アララ社が提供するものであって,被告が提供するものではないから,被告が,本件カタログにアララ社が提供 する本件商品2を掲載すると共に使用商標3を付して頒布したとしても,商標法5 0条1項の「使用」に該当することはないと主張する。 しかし,本件カタログにおける広告は,被告が,前記オで認定したビジネスモデ ルの一環として行っているものであって,本件商品2はアララ社が提供するもので あったとしても,前記認定の本件商標の「使用」の事実が左右されることはない。

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平成30(ネ)10057  商標権侵害行為差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成31年1月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(2部)は、4条1項19号違反の無効理由ありとして権利行使不能とした1審判決を維持しました。
 また,控訴人は,KCP社の売上げは,平成28年以降はほとんどない旨主 張するが,乙18によると,平成28年の売上げは平成25年及び平成26年より も高いことが認められる上に,そもそも,商標法4条1項19号の周知性の判断の 基準時は,登録出願時及び査定時であるところ(商標法4条3項),本件商標の出 願及び査定は,いずれも平成27年にされている以上,KCP社商標の周知性の判 断は,平成28年における売上高に左右されない。
(ウ) さらに,控訴人は,KCP社の英語表記は,「KCEP HEAVY IN DUSTRIES CO.,LTD.」であると主張するので,同主張について,以下検討する。
a 前記(1)アのとおり,KCP社は,設立後,「KCEP」ではなく,「KC P」の文字からなるKCP社商標を,同社の製品に付して販売し,また,型番の一 部にも使用していることからすると,KCP社及び同社の製品を示す表示として,\nKCP社商標が使用されていることは明らかである。 また,控訴人代表者も,代表\者尋問において,本件商標出願の時点で,KCP社 がKCP社商標を使用していたことを認識していた旨供述していること,KCP社 の理事に送信したメールの韓国語の文書に,KCP社を「KCP」と記載している こと(乙90)からすると,控訴人代表者自身も,KCP社の英語表\記をKCPで あると認識しているものと認められる。
b 控訴人は,KCP社の正式な英語表記は「KCEP」であると主張する。\nしかし,前記のとおり,KCP社は,自社製品に「KCP」との英語の表記を\n付しており,また,証拠(乙107,114)によると,KCP社は,外国企業へ の見積もり送り状や外国企業との契約書において,自社を「KCP HEAVY INDUSTRIES CO.,LTD.」と表記していることが認められる。\n一方で,本件証拠上,KCP社が「KCEP」との英語表記を用いた事実は認\nめられない。なお,証拠(甲63,乙130)によると,KCP社の韓国貿易協会 の会員登録における英語表示が,「KCP」から「KCEP」に変更され,その後,\n「KCP」に戻ったことが認められるが,上記の「KCEP」への変更は控訴人の 働きかけによるものであり(乙129),KCP社が関与していたとは認められな いから,同事実によって,KCP社が,自社の英語表示として「KCEP」を使用していたと認めることはできない。\nしたがって,KCP社は,同社の英語表記として「KCP」を選択して使用し\nたものと認められ,このことは,KCP社の商号を韓国語から英語に訳する際の訳 語いかんによって左右されるものではない。 c 以上より,KCP社及び同社の製品を示す表示として,KCP社商標が使\n用されているのであり,前記(ア)の判断は左右されない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)12058

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平成30(ネ)10067  商号使用禁止等請求控訴事件  その他  民事訴訟 平成31年2月14日  知的財産高等裁判所  さいたま地方裁判所

 業務提携が、解消されたときに本件商号を使用しない旨の黙示の合意があったかが争われました。知財高裁は上記合意はなかったと判断しました。
 加えて,前記認定事実によれば,控訴人が平成24年9月に控訴人の保有する被控訴人の株式全部を被控訴人代表者(A)に譲渡して,控訴人と被控訴人との資本関係及び業務委託関係(業務提携)を解消した際,控訴人は,被控訴人に対し,被控訴人が上記解消後に被告商号を継続して使用することについて異議を述べたり,被控訴人の商号を別の商号に変更するよう求めなかったこと,その後も,控訴人は,平成29年6月17日に本件訴訟を提起するまでの約4年9か月間,被控訴人が被告商号を使用して営業活動を行っていることを認識しながら,被控訴人に対し,被告商号の使用を差し控えるよう求めなかったことが認められる。また,控訴人は,控訴人の保有する被控訴人の株式全部をAに譲渡する前は,被控訴人の発行済株式の過半数を有する株主であったから,Aに株式全部を譲渡する前に,被告商号が株式譲渡後に確実に変更されるための対策を講じようと思えば,講じることが可能な立場にあったにもかかわらず,控訴人がそのような対策を講じることを検討した形跡はうかがわれない。\nこれらの諸事情を勘案すると,被控訴人は,控訴人が新築した建物の顧客に対するアフターケア業務を代行して担当する子会社として設立され,被告商号が,控訴人と被控訴人の間に資本関係及び業務委託関係(業務提携)が存在することを踏まえて決定されたという経緯があったからといって,控訴人及び被控訴人のいずれにおいても,被控訴人の設立の際に,控訴人と被控訴人の資本関係及び業務提携が解消されたときは,被控訴人の商号を被告商号から別の商号へ変更する意思又は意向を有していたものと認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。

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平成30(行ケ)10100  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月6日  知的財産高等裁判所

 請求項1についての無効理由なしとした審決が維持されました。本件は第4次審決の取消訴訟です。第1次審決は無効理由なしであり、審取にて取消されて、審判にて訂正がなされて無効理由なしと審決されました。これを第3次審決まで繰り返しています。また、別途無効審判がありますが、一旦併合されて、その後分離され、中断しています。争点は明確性違反などです。
 本件訂正事項1は,要するに,請求項1における「皮膚」を「皮膚(但し, 皮膚は表皮及び真皮から成る。以下同様)」に訂正するものである。\n原告が指摘するとおり,「皮膚」がどのような組織を意味するのかという点 について,本件明細書中に定義や示唆はない。そこで,証拠として提出されて いる各種辞典類(甲40・広辞苑,甲41・生化学辞典,甲77・化粧品辞典) の記載を総合的に検討すれば,通常,「皮膚」なる用語には,「表皮・真皮」\nを指す場合と,「表皮・真皮・皮下組織」を指す場合の二通りの意味があるも\nのと認められる。 すなわち,甲40(広辞苑)には,「【皮膚】後生動物の体を包む外被。体 の保護,体温・水分蒸発などの調節,各種の感覚の受容のほか,皮膚呼吸も営 む。動物によりさまざまに変形適応する。高等脊椎動物では表皮・真皮・皮下\n組織,および各種の付属器官から成る。」の後に「表皮と真皮のみを指す場合\nもある。」と明記されている。 甲41(生化学辞典)には,「皮膚[cutis,skin] 表層にある上皮性の表\ 皮とその下の結合組織性の真皮から成る.その下は皮下組織で多くの場所で脂 肪組織に変わっている.…」とある。 甲77(化粧品辞典)には,「皮膚は大きく3層(表皮,真皮,皮下組織)\nからなる」という記載がある一方で,「皮膚の厚さ(表皮と真皮を足した厚さ)\nは1.0〜4mmで,一般に女性よりも男性が厚く,幼児よりも成人が厚い.…たんなる物理的な壁ではなく,生体の保護を中心とする絶対不可欠な機能を\nもった組織である.」という記載もある。 以上のとおり,「皮膚」は,広義では,動物(高等脊椎動物)の表皮・真皮\nのみならず皮下組織をも含むものとして観念されるものの,その機能の多様性\nに照らし,表皮・真皮のみを指す場合もあるといえ,文脈を離れて一義的にそ\nの意味するところを決することはできない。 本件訂正事項1は,このうち後者の場合,すなわち,皮下組織を含まないも のと定義することによって技術的に明瞭な記載とすることを意図したものであ り,不明瞭な記載の釈明を目的とするものに該当する。また,かかる訂正によ って本件発明の解釈に支障や混乱を来すとは認められない。 以上に反して,(皮下組織をも含むものとして)皮膚概念は一義的に明確で あるとする原告の主張は,一面的な見方であって,直ちに採用できないというべきである。
・・・
本件訂正事項4は,本件訂正前の請求項1に記載された「経皮吸収製剤」か ら「目的物質が医療用針内に設けられたチャンバに封止されるか,あるいは縦 孔に収容されることによって基剤に保持されている経皮吸収製剤」(除外製剤) を除外するものであるところ,原告の主張は,要するに,この除外製剤が物と して技術的に明確でないとするものである。 そこで検討するに,除外製剤における「医療用針」が,目的物質を注入する ための注射針やランセット,マイクロニードルなどを意味することは,出願時 の技術常識に照らして明らかであるといえる。また,「チャンバ」又は「縦穴」 が当該「医療用針」内に設けられたものであること,及び「目的物質」が「チ ャンバに封止されるか,あるいは縦孔に収容されることによって基剤に保持さ れている」ことは,いずれも除外製剤の構造を特定するものであって,その特\n定に不明確な点があるとは認められない。 そうすると,上記除外製剤が,特定の構造を有する「医療用針」である「経\n皮吸収製剤」を意味していることは明らかであるから,上記除外製剤は物とし て技術的に明確であり,さらには,かかる除外製剤を除く「経皮吸収製剤」に ついても,発明の詳細な説明の記載,例えば,【0070】の「基剤に目的物 質を保持させる方法としては特に限定はなく,種々の方法が適用可能である。\n例えば,目的物質を基剤中に超分子化して含有させることにより,目的物質を 基剤に保持させることができる。その他の例をしては(判決注:「その他の例 としては」の誤記と認める。),溶解した基剤の中に目的物質を加えて懸濁状 態とし,その後に硬化させることによっても目的物質を基剤に保持させること ができる。」に接した当業者であれば,出願時の技術常識を考慮して,物とし て明確に理解することができるといえる。
 そうである以上,本件訂正事項4によって訂正された請求項1の記載は明確 であるというべきであって,これに反する(あるいは前提を異にする)原告の 主張はいずれも採用できない。

◆判決本文

第3次までの取消訴訟は以下です。

◆平成25(行ケ)10134

◆平成26(行ケ)10204

◆平成28(行ケ)10160

侵害訴訟事件です。

◆平成26(ネ)10109

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平成30(行ケ)10138  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年2月6日  知的財産高等裁判所

 オーガスタ ナショナルインコーポレイテッドが、商標「コナミスポーツクラブマスターズ」に対して、4条1項15号違反を主張した事件ですが、知財高裁は、無効理由なしと判断した審決を維持しました。経緯がややこしいです。第1次取消訴訟では、無効理由なしとした審決について、「職権証拠調べをしたにも関わらず意見陳述の機会を与えなかった」として取り消されています。
 再開された審判手続において,原告はその請求に係る役務を,”ゴルフ用ビデオの制作等”と一部を取り下げました。これは、商標法においても指定商品役務毎に無効主張ができますが、15号違反の場合、包括概念の一部についてのみ無効理由がある場合があるから、このような無効対象役務を特定する必要があるのでしょうね。
 本件商標は,「コナミスポーツクラブマスターズ」の片仮名15文字を標準文字で表して成る文字商標であって,外観的には,同一の大きさ・書体の文字により,全体が等間隔で一行にまとまりよく配置されており,一連一体のものとして構\成されていることが明らかである。そして,前記のとおり,我が国においては,「コナミスポーツクラブ」は 被告子会社が運営するスポーツクラブの名称として周知であるということが できる一方で,「マスターズ」は原告主催のゴルフ・トーナメントの略称の みならず,熟練者ないし中高年を含む一定年齢以上の年齢層を対象とした各 種スポーツ競技ないし競技大会をも指す語として,スポーツ愛好者等の間に 広く知られており,現にゴルフはもちろん,ゴルフ以外の競技においても, 大会名において「マスターズ」の語が広く使用されている事実が認められる ことからすると,本件商標を目にした者が直ちに「マスターズ」の部分のみ に着目して原告主催のゴルフ・トーナメントを連想するということはできず, むしろ,語頭の「コナミスポーツクラブ」の部分に着目して「コナミスポー ツクラブが関連する何らかのマスターズ競技ないしその競技大会」と理解す ると考える方が合理的である。したがって,外観(文字構成),称呼及び観\n念に照らしても,本件商標と引用商標の類似性の程度はそれほど高いとはい えない。
また,「マスターズ・トーナメント」という大会それ自体は世界的に周知・ 著名なゴルフ競技会であるとしても,元々「masters」が「名人,達 人」を意味する「master」の複数形にすぎず,原告の造語でないこと は原告自身も認めているところであるし,ゴルフというスポーツの技を競い 合う競技会の名称に,技術に長けた人を表す「名人,達人」の語を用いるこ\nとは,語義に忠実な用法であって,特に奇抜性があるとか斬新であるという こともできないから,当該表示や当該表\示を選択したことについて独創性が あるともいえない。
さらに,商品・役務間の関連性や取引者・需要者の共通性という点につい ても,本件商標の指定役務のうち無効請求役務は,いずれもゴルフに関連す る役務であるから,その限りにおいて,原告の役務との間で関連性や需要者の共通性が認められるというべきであるが,他方で,原告はその主催する「マ スターズ・トーナメント」がよく知られているという以外には,特に日本国 内でゴルフ競技会を開催しておらず,また,日本国内でゴルフ関連事業(商 品の販売や役務の提供)がよく知られているとも認められない。すなわち, 原告提出の証拠(甲56〜76など)によれば,原告は,一応,日本国内に おいても,ライセンス等により引用商標を表示したゴルフ用品の販売を行っ\nていることや,「マスターズ・トーナメント」の開催時期に合わせてグッズ や関連商品の販売を行っていることが認められるが,その売上高や広告宣伝 等(事業規模)の詳細は不明であって,この程度の立証では,引用商標が「マ スターズ・トーナメント」以外に原告の提供する商品それ自体の出所識別を 表示するものとしても我が国で周知著名であると認めるには足りない。\n以上のことからすると,本件において,役務の関連性や需要者の共通性は それほど重視すべき事情であるとはいえない。また,原告は経営多角化の可 能性についても言及するが,何ら具体性のある主張立証はなされておらず,\nこの点についても特にみるべき事情があるとはいえない。
(3) 以上によれば,引用商標が原告主催のゴルフ・トーナメントの略称として も周知著名であることや,引用商標と本件商標との間に「ゴルフ」という共 通項があることを踏まえても,本件商標を指定役務(無効請求役務)に使用 したとき,当該役務が,原告の業務に係る役務であるとか,原告との間にい わゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商\n品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務である(4) 原告の主張について 原告は,本件商標について法4条1項15号該当性を認めなかった本件審 決の認定判断は誤っているとして種々主張するが,その主張は要するに,「マ スターズ」の語に原告主催の「マスターズ・トーナメント」以外の意味が認 められないことや,「コナミスポーツクラブ」の周知性が認められないこと を前提とするものであって,その前提自体が採用できないものであることは, 既に説示したとおりである。 また,原告は,本件審決が本件商標と引用商標の類似性の程度が低いと認 定した点や,「マスターズ」及び「Masters」の独創性が高いとはい えないと認定した点についても誤りであると主張するが,その主張が採用で きないことも既に説示したとおりである。

◆判決本文

第1次取消訴訟はこちらです。

◆平成28(行ケ)10083
関連事件(対象が第5712040号)です。

◆平成30(行ケ)10154

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平成30(行ケ)10054  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月4日  知的財産高等裁判所(3部)

進歩性違反無しとした審決が維持されました。知財高裁は、「甲1文献の記載から,経日安定性の改善のために引用発明1の構成を2剤に変更するという解決手段を読み取れるにもかかわらず,さらに,甲2文献記載の技術事項を組み合わせる動機付けは見当たらない。」と述べました。
 原告は,本件発明1は,引用発明1に甲2文献記載の技術事項を組み合 わせることにより,当業者が容易に想到することができたものであると主 張する。
イ そこで検討するに,甲1文献における「比較例4,8〜10は発泡性, ガス保留性試験においては実施例2同様良好であったが,経日安定性に著 しく劣った。」(上記2(1)ケ)との記載から,引用発明1には経日安定性 に問題があることが理解され,当業者は,経日安定性の改善を課題として 見いだすといえる。 そして,1) 甲1文献に「後記特定組成の発泡性化粧料は,2剤型であ る為経日安定性に優れ,」(同エ)との記載があり,経日安定性試験の結 果が◎又は○である実施例1〜11(第1表)は2剤型の構\成であること (同ク),2) 経日安定性が○である比較例3(第2表)は,同様の第1\n剤と炭酸水素ナトリウムのみをPEGで被覆した粉末の2剤型の構成であ\nること(同ケ)から,炭酸塩と酸とを2剤に分ければ経日安定性が向上す ること,及び酸を水溶液とし,炭酸塩をPEG被覆すればアルギン酸ナト リウムが存在せずとも経日安定性は十分となることが理解できる。そうす\nると,これらの甲1文献に開示された事項に基づき,引用発明1の経日安 定性を改善しようとした場合,炭酸塩と酸との反応で経日安定性が低下す ることを避けるため,引用発明1において,「アルギン酸ナトリウム・炭 酸塩含有PEG被覆粉末1+酸含有PEG被覆粉末2の混合物」という構\n成を,「アルギン酸ナトリウム・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」と「酸含有PEG被覆粉末2」との2剤に分けることは,当業者であれば容易に想 到するといえる。
このように,甲1文献の記載から,経日安定性の改善のために引用発明 1の構成を2剤に変更するという解決手段を読み取れるにもかかわらず,\nさらに,甲2文献記載の技術事項を組み合わせる動機付けは見当たらない。 また,引用発明1は二酸化炭素による血行促進作用によって皮膚を賦活 化させるための化粧料で,アルギン酸ナトリウムは安定な泡を生成し,二 酸化炭素の保留性を高めるために配合されているのに対し,甲2文献には 二酸化炭素の発生についての記載はなく,甲2文献記載の技術事項におけ るアルギン酸ナトリウムは二価以上の金属塩類との反応により皮膜を形成 するためのものであって,化粧料の使用目的もアルギン酸ナトリウムの配 合目的も異なるものである。そして,甲1文献及び甲2文献には,引用発明1に甲2文献記載の技術事項を組み合わせた場合に引用発明1における 発泡性及びガス保留性を維持することができることを示唆する記載もない から,このことからも,引用発明1に甲2文献記載の技術事項を組み合わ せる動機付けがあることは否定される。
ウ 以上によれば,本件発明1について,当業者が,引用文献1に甲2文献 記載の技術事項等を適用することによって容易に想到することができたと いうことはできない。また,以上に述べたところは,本件発明9における相違点Dについても妥当する。これによれば,本件発明2〜8,10〜13についても,同様 に,容易に想到することができたとはいえない。
(3) 原告の主張について
ア 原告は,引用発明1にはダマ形成問題及び攪拌問題が存在するから,こ れらの課題を解決するために,甲2文献記載の技術事項を組み合わせる動 機付けがあると主張する。
(ア) ダマ形成問題について
ダマとは粉末の水和が早いことにより起こり,粉末の回りを水分子が 取り囲んで塊となり,粉末の内部まで水が浸透していかず,粉末が均一 に水に分散しない状態をいうと解され,アルギン酸ナトリウムを水に溶 解する際にダマが生じる問題があることが認められる(甲2,59〜6 2)。 しかし,甲1文献にはこのような問題について記載も示唆もない。そ して,引用発明1のように炭酸塩とアルギン酸ナトリウムの混合物がP EGで被覆された粉末においては,アルギン酸ナトリウムは少しずつ水 に溶解することが容易に理解され,このような炭酸塩とアルギン酸ナト リウムとの混合物がPEGで被覆された粉末と,被覆のないアルギン酸 ナトリウム粉末では水和のし易さが異なるから,引用発明1において, アルギン酸ナトリウムを水に溶解する際の一般的な問題が同等に当ては まるということはできず,当業者が,引用発明1につきダマ形成問題の 課題を見出すとは認められない。 また,原告は,甲44文献の記載によれば,PEGの被覆によりダマ 形成問題は解消しないと主張するが,原告の指摘する「主成分(ママコ を生じ易い糊料)の特性が阻害されたり,糊液粘度も変動する等の問題 点を抱えており,ママコの形成方法ないし消失法として効果的でなかっ た」との記載は,PEGの被膜によりママコが消失したとしても,異な る問題が生じ得ることを示したものと解され,引用発明1においてダマ 形成問題があることの根拠とはならないのは明らかであるから,原告の 主張は採用できない。 以上によれば,当業者は,引用発明1においてダマが形成されるとい う問題が生じるとは理解しないというべきである。
(イ) 攪拌問題について
原告は,引用発明1において,アルギン酸ナトリウムがダマを形成し, また,アルギン酸ナトリウムの水溶液濃度の上昇に伴って粘度が飛躍的 に上昇し,これと並行して炭酸塩と酸の反応が進行するから,少しでも 多くの二酸化炭素を取り込むためには難溶解性のアルギン酸ナトリウム の溶解及び均一化をできる限り短時間で行うことが求められ,そのため の徹底的な攪拌が不便かつ煩わしいという問題があると主張する。 しかし,このような問題は甲1文献に記載も示唆もなく,かえって,発泡性及びガス保留性は◎という引用発明の試験結果に照らせば,引用 発明の構成において,少しでも多くの二酸化炭素を取り込むために,素\n早く徹底的な攪拌操作をする必要があり,これが煩わしいという課題が あるとは解し得ない。
イ 以上のとおり,引用発明1において,当業者が原告の主張する課題を見 いだすとは認められないから,引用発明1に甲2文献記載の技術事項を組 み合わせることの動機付けがあるということはできず,原告の主張は採用 できない。

◆判決本文

こちらは分割出願に関する関連事件(審決取消事件)です。

◆平成30(行ケ)10033

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平成30(行ケ)10124  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年2月6日  知的財産高等裁判所

 商標「envie CHAMPAGNE GRAY」が、公序良俗に反するとした審決が維持されました。理由は、「シャンパン」の称呼及び「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」との観念をも生じるというものです。
 (1)本件商標は,指定商品を「眼鏡,電子出版物,アプリケーションソフトウェ\nア」として,別紙「本件商標」記載のとおり,「envie CHAMPAGNE GLAY」の 欧文字と「アンヴィ シャンパングレイ」の片仮名を上下二段に書してなるもので あ る と こ ろ , こ の 欧 文 字 と 片 仮 名 と は , 「 envie 」 と 「 ア ン ヴ ィ 」 ,「CHAMPAGNE」と「シャンパン」,「GLAY」と「グレイ」が,それぞれ対応 する関係にあることは,取引者及び需要者にとって容易に理解できる。 そして,前記認定に係る辞書,事典,雑誌,新聞等の記載内容及び掲載媒体等に 鑑みれば,本件商標のうち「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の表示は,「フ\nランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味する語であって, 生産地域,製法,生産量など所定の条件を備えたぶどう酒にだけ使用できるフラン スの原産地統制名称であって,本件商標の登録査定時以前から,日本において,シ ャンパーニュ地方産スパークリング・ワインの名称としてにとどまらず,発泡性ぶ どう酒の代名詞のようなイメージを持たれるほどに取引者のみならず消費者に広く 認識され,多大な顧客吸引力を有する極めて著名な表示であったことが認められる。\nしかも,商標法4条1項7号に当たるとされたとはいえ,「CHAMPAGNE(シャ ンパン)」の文字をその構成に含む商標や,これを模した商標が様々な指定商品又\nは指定役務につき出願されたことに鑑みると,日本において,上記表示は,ぶどう\n酒という商品分野に限られることなく,取引者及び需要者に対して高い顧客吸引力 を有するものであることがうかがわれる。 他方,本件商標を構成する他の要素のうち「envie」,「アンヴィ」は,フラン ス語で「羨望」を意味するとしても,一般の取引者及び需要者になじみのある語と はいい難い。また,他の要素である「GLAY」,「グレイ」は,「灰色」を意味する英語ないし外来語として広く認識されているということができるものの,これと 「CHAMPAGNE」,「シャンパン」とを一体的に結合した「CHAMPAGNE GRAY」,「シャンパングレイ」については,原告ないし訴外会社の商品及び他社 の商品において色彩を示す表示として使用された例は認められるものの,色彩を表\ 示する語としても,その他の意味を示す語としても,広く一般的に認識されている 語と認めるに足りる証拠はない。まして,これと「envie」,「アンヴィ」を一体 的に結合した「envie CHAMPAGNE GLAY」,「アンヴィ シャンパングレイ」 の語が広く一般的に認識されていると認めるに足りる証拠はない。 これらの事情を踏まえると,本件商標からは,「アンヴィ シャンパングレイ」 の称呼及び観念を生じるのみでなく,「シャンパン」の称呼及び「フランスのシャ ンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」との観念をも生じるということができ る。
(2) 前記各認定事実によれば,本件商標のうち「CHAMPAGNE」,「シャンパ ン」の部分は,フランスのシャンパーニュ地方で作られるスパークリング・ワイン (発泡性ぶどう酒)を意味する語であるところ,フランスにおいて,1908年 (明治41年)には法律により「CHAMPAGNE」という名称が法律上指定され, その後,原産地統制名称法(1935年7月30日付けデクレ)その他の法令により原産地統制名称として保護されていることが認められる。具体的には,公立行政 機関である原産地名称国立研究所(INAO)が定める生産区域,ぶどうの品種,生 産高,最低天然アルコール純度,栽培方法,醸造方法,蒸留方法に関する諸生産条 件を満たすぶどう酒のみがその名称として「CHAMPAGNE」(シャンパン)を使 用する権利を有することとして,シャンパーニュ地方産ワイン製品の品質につき厳 格な管理・統制が行われる一方でその生産者が保護されており,被告は,その製品 の専門的利益を防禦することをその任務とし,フランス国内及び国外において, 「CHAMPAGNE(シャンパン)」の原産地統制名称を保護する等の活動をしてい る。こうした被告をはじめとするシャンパーニュ地方のワイン生産者等の努力の結果,「CHAMPAGNE」,「シャンパン」の表示及びその対象であるシャンパーニ\nュ地方産のスパークリング・ワインは,周知著名性を獲得,維持し,高い名声,信 用ないし評判が形成されている。 これらの事情に鑑みると,「CHAMPAGNE(シャンパン)」の表示及びその対\n象であるシャンパーニュ地方産のスパークリング・ワインは,フランス及びフラン ス国民の文化的所産というべきものとなっており,重要性が極めて高いものである ことが認められる。 また,日本においても,遅くとも第二次世界大戦後,「CHAMPAGNE」(シャ ンパン)の表示につき,フランス国内法が尊重されている。\n
(3) 以上のような本件商標の文字の構成,指定商品の内容,本件商標のうちの\n「CHAMPAGNE」,「シャンパン」の文字がフランスにおいて有する意義や重要 性,日本における周知著名性等を総合的に考慮すると,本件商標をその指定商品に 使用することは,フランスのシャンパーニュ地方におけるぶどう酒製造業者の利益 を代表する被告のみならず,法令により「CHAMPAGNE(シャンパン)」の名声, 信用ないし評判を保護してきたフランス国民の国民感情を害し,日本とフランスと の友好関係にも好ましくない影響を及ぼしかねないものであり,国際信義に反し, 両国の公益を損なうおそれが高いといわざるを得ない。 したがって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当するというべきである。
(4) 原告の主張について
ア 原告は,「envie CHAMPAGNE GLAY」は原告ないし訴外会社が販売する コンタクトレンズブランド「envie」において「シャンパングレイ色」のカラーコ ンタクトレンズを示すものであり,「CHAMPAGNE」,「シャンパン」は色彩を 表示するものであり,これと色彩を示す「GLAY」,「グレイ」とが一体不可分で あることから,色彩以外の意味合いを想起することはないなどと主張する。 イ しかし,前記のとおり,「CHAMPAGNE GLAY」,「シャンパングレイ」 や「envie CHAMPAGNE GLAY」,「アンヴィ シャンパングレイ」が一体不可分のものと認識されているとはいえない。 また,「シャンパン」の語が色彩を意味する例があるといっても,「シャンパン 色(緑黄又は黄褐色)」(甲17),「シャンパン色,淡黄[緑黄]色」・「シャ ンパン(色)の」(甲18),「シャンパン色(緑黄色又は琥珀(こはく)色)」 (甲19),「シャンパン色(緑黄又は黄褐色)」(甲20),「シャンパン色の (淡い黄色)」(甲21)とされ,色彩としての「シャンパン」に相当する色彩の 表現が「緑黄色」,「黄褐色」,「琥珀色」などと必ずしも一致していないことか\nらもうかがわれるとおり,いずれもスパークリング・ワインとしてのシャンパンを 想起させることによって,いわば比喩的に「シャンパン」の語を用いて色彩を表現\nしているものである。このことは,前記のとおり,本件商標が「シャンパン」の称 呼及び「シャンパーニュ地方産のスパークリング・ワイン」の観念を生じることを むしろ裏付けるものといえる。 その他,原告は他の商標との関係や米国での商標登録の実情などをるる指摘する けれども,いずれも本件と直接関係するものではない。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。

◆判決本文

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平成30(行ケ)10048  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月6日  知的財産高等裁判所

 動機付けがなく、むしろ阻害要因があるとして、無効理由なしとした審決が維持されました。
(4) 相違点3の容易想到性について
ア 前記認定に係る各文献の記載によれば,まず,甲9の軸受保持部材28は, 鍔部及び係止爪と類似する構成であるフランジ34と突起32とを有するものの,\n当該軸受保持部材28は,回転するカッター軸38を回転自在に支持するものでは なく,オイルシール40と,ころがり軸受であるオイルレスベアリング42とを支 持するものであり,軸受け部材に相当するものではない。 他方,甲5〜8,10〜16及び18は,いずれも,軸受け部材に関する技術が 記載されたものと認められるところ,弾性変形可能な係止爪が外周に突出し,基端\n側に鍔部を有し,また,係止爪は先端側に向かうほど当該軸受け部材における軸の 回転中心との距離が短くなる斜面を有している軸受け部材を,固定された板状体に 対して装着し,当該板状体に設けられた穴に軸を回転自在に支承するものである点 で共通するものの,固定された板状体以外の部材に装着することについての記載や 示唆はない。 また,甲17においては,軸受Aが装着されるボス(6)自体は板状体ではないもの の,ボス(6)は板状のベース(5)に固定されたものであり,軸受Aのフランジ板(1)と爪 片(4)の係合突起(4a)との間にのみボス(6)が配置されるものである。そうすると, 甲17と甲5〜8,10〜16及び18とは,直接に装着する対象そのものが板状 体であるか否かという点で違いはあるものの,いずれも装着される部材は板状体又 は板状のものに固定された部材であり,これをフランジと爪片との間で狭持するよ うにして固定する軸受け部材である点で共通するといえる。 以上を踏まえると,甲5〜8及び10〜18により,「固定された板状体の穴に軸を回転自在に支承する,滑り軸受けである軸受け部材において,弾性変形可能な\n係止爪が外周に突出しており,基端側に鍔部を有しており,同係止爪は先端側に向 かうほど軸受け部材における軸の回転中心との距離が短くなる斜面を有している軸 受け部材。」を周知技術として認定することができる。これは,本件審決認定に係 る周知軸受け部材に相当する。なお,甲5〜18の全ての文献から,軸受け部材に 関する周知技術というべき共通の技術事項を認めることはできない。
イ また,その余の文献の記載を見ても,まず,甲2〜4は,いずれもY字形を なし,二股に分かれた部分の先端付近に一対の回転体を設けて構成される美容器に\nおいて,回転体が非貫通状態で軸に支持されることを開示するものの,当該回転体 の支持構造として,本件発明1のような「係止爪」及び「段差部」を用いるものではない。\n次に,甲19の1のマッサージローラーは,その内装面に周囲を巡る凹部を備え, 「段差部」に類似する構成を有するものといい得るものの,マッサージローラー自\n体が弾性材料より構成されることにより,鞘の外装面の周囲を巡る隆起との間でス\nナップ結合をすることができるようにしたものである点で,本件発明1とは異なる。 他方,甲20の1のプラグ200は,フランジ201及びラッチアーム204に 突起205を有する点で,本件発明1の軸受け部材に類似する構成を有するものと\nいい得るものの,プラグ200は,2つのモジュールを固定するものであって,支 持軸に設けられる軸受け部材として機能するものではない。加えて,プラグ200\nは,モジュール140の貫通した孔からロックピン240を挿入することにより, プラグ200のラッチアーム204がモジュールの開口のラッチ凹部から離脱する のを防止するものであるから,非貫通状態の回転体を支持するために用いることを 前提としないことは明らかである。 そうすると,軸受け部材を用いて軸に対して非貫通状態の回転体を支持する際に, 回転体の内面に段差部を設けるとともに,軸受け部材には当該段差部に係止する係 合爪を用いる構成が開示されていることを認めるに足りる証拠はない。\n
ウ そもそも引用発明1は,ベアリング12及びL型ベアリング13という2つ の軸受け部材を用いることによって,ローラー4を回転自在に支承するものであるところ,これを1つの軸受け部材に置き換えることが可能であることを記載ないし\n示唆する証拠は見当たらない。 また,仮に引用発明1のベアリング12及びL型ベアリング13を1つの軸受け 部材に置き換えることが可能であったとしても,引用発明1のローラー4は,顔面\nに接触させて回転させるものであり,その長手方向と直交する方向に荷重がかかる ことは明らかであるところ,1つの軸受け部材に置き換えてしまうと,ローラーを その根元の部分でのみ支承することとなってしまい,ローラーを安定して回転させ ることが困難となることは容易に推察される。 そうすると,引用発明1のベアリング12及びL型ベアリング13を1つの軸受 け部材に置き換える動機付けはなく,むしろ阻害要因が存するといえる。
エ 以上より,引用発明1に甲2〜20の1記載の事項を適用することによって, 相違点3に係る本件発明1の構成を採用することは,当業者にとって容易に想到し\n得ることとはいえない。
オ 原告の主張について
(ア) 原告は,甲5〜18記載の事項を引用発明1に適用することが容易である ことを理由として無効理由の主張を行っているのではなく,これらの文献から共通して抽出される構成が周知の軸受け部材であるとし,これを引用発明1に適用する\nことが容易であったと主張しているにもかかわらず,本件審決は,各文献記載の事 項を個別に判断しており,その判断手法に誤りがあるなどと主張する。 しかし,甲5〜18の全ての文献から軸受け部材に関する周知技術というべき共 通の技術事項を見出すことはできないことは,前記のとおりである。本件審決は, その記載を通じて見れば,そのような理解を前提とした上で,個々の証拠における 軸受け部材を引用発明1に適用できるかを検討したものと理解されるのであり,そ の判断手法に違法があるものとはいえない。
(イ) 原告は,本件審決による周知軸受け部材の認定には誤りがある旨主張する けれども,この点に関する本件審決の判断に誤りがないことは前記のとおりである。
(ウ) 原告は,本件審決につき,実施可能要件適合性の判断においては甲5〜1\n8の記載を参酌し,板状体ではない回転体に使用する軸受け部材に係る係止片を弾 性変形させる場合に所定のクリアランスを設けることは技術常識であると認定する 一方で,進歩性の判断においては,甲5〜18の周知技術の認定として,これが技 術常識でないことを前提として判断しており,その認定・判断に矛盾があるなどと 主張する。 この点に関する原告の主張の趣旨は,やや判然としないが,そもそも,本件審決 は,実施可能要件適合性の判断の際,「係止爪を弾性変形させるために所定のクリ\nアランスを設けること」を技術常識として認定するにあたり,甲5〜18を参酌し たものではない。また,上記技術常識が認められるか否かと,甲5〜18の記載か ら原告主張に係る周知軸受け部材を認定し得るか否かとは,直接的な関係はない。 すなわち,「固定された板状体の穴に軸を回転自在に支承する,滑り軸受けである 軸受け部材において,弾性変形可能な係止爪が外周に突出しており,基端側に鍔部\nを有しており,同係止爪は先端側に向かうほど軸受け部材における軸の回転中心と の距離が短くなる斜面を有している軸受け部材」(本件審決認定に係る周知軸受け 部材)において,「固定された板状体の穴に軸を回転自在に支承する」ことは,係 止爪が弾性変形するためのクリアランスを設けることを前提とするか否かとは直接 的な関係がないことから,仮に係止爪が弾性変形するためのクリアランスを有する ことが技術常識であることを前提としても,その認定が異なることはない。
(エ) その他原告がるる指摘する点を考慮しても,この点に関する原告の主張は 採用できない。
(5)小括
以上のとおり,少なくとも,引用発明1に甲2〜20の1記載の事項を適用する ことによって,相違点3に係る本件発明1の構成を採用することは,当業者にとっ\nて容易に想到し得たものとはいえない。そうである以上,その余の点を論ずるまで もなく,本件発明1を容易に発明することができたとはいえない。

◆判決本文

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◆平成30(行ケ)10049

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平成30(ネ)10033  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成31年1月31日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 大阪高裁は無効理由ありとして、1審の判断を取り消しました。1審では時期に後れた主張とされた無効主張も却下されませんでした。
1 争点3−4(乙64の1を主引用例とする進歩性欠如の無効理由の有無)に ついて
(1) 時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立てについて\n
被控訴人は,控訴人が当審において追加主張した乙64の1を主引用例と する進歩性欠如(争点3−4)を無効理由とする特許法104条の3第1項 の規定に基づく無効の抗弁(以下「本件無効の抗弁」という。)について, 民事訴訟法157条1項に基づき,時機に後れた攻撃防御方法に当たるもの として却下することを求める申立てをしたので,以下において判断する。\n
ア 前記第2の1(前提事実等)の(6)及び一件記録によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 控訴人は,平成27年4月17日の原審第4回弁論準備手続期日に おいて,被告準備書面(2)に基づき,実施可能要件違反の無効理由(争点\n3−1)による無効の抗弁の主張をし,同年9月14日の原審第7回弁 論準備手続期日において,被告準備書面(5)に基づき,明確性要件違反(争 点3−2)の無効理由による無効の抗弁の主張をした。 その後,原審の受命裁判官は,同年10月27日の第8回弁論準備手 続期日において,本件の侵害論の審理を終了し,損害論の審理を進める と述べた上で,控訴人に対し,被控訴人の損害主張に対し具体的に認否 反論し,必要な書面を提出するよう求めた。
(イ) 控訴人は,平成28年5月19日,本件発明1,2,6及び8につ いての本件特許を無効にすることを求める別件無効審判を請求した。 同年12月13日の原審第12回弁論準備手続期日において,控訴人 は,被告準備書面(10)に基づき,別件無効審判と同一の無効理由(サポー ト要件違反(争点3−3)の無効理由及び本件無効の抗弁に係る無効理 由を含む。)による無効の抗弁を追加して主張したのに対し,被控訴人 は,同期日において,上記主張は時機に後れた攻撃防御方法として却下 することを求める申立てをした。原審の受命裁判官は,被控訴人の上記\n申立てを容れて,控訴人の上記無効の抗弁に係る主張及び証拠を却下した。\n
(ウ) 特許庁は,平成29年12月15日,本件訂正後の請求項1,6及 び8に係る発明についての本件特許には,サポート要件違反(争点3− 3)の無効理由及び本件無効の抗弁に係る無効理由が存在するとして, 上記特許を無効とする別件審決をした。 同月20日の原審第18回弁論準備手続期日において,控訴人は,被 告準備書面(15)に基づき,別件審決が認めたサポート要件違反の無効理 由及び本件無効の抗弁に係る無効理由による無効の抗弁を再度追加して 主張したのに対し,被控訴人は,上記主張は時機に後れた攻撃防御方法 として却下することを求める申立てをした。原審の受命裁判官は,被控訴人の上記申\立てを容れて,控訴人の上記無効の抗弁に係る主張及び証拠を却下した。 原審は,同日,原審第2回口頭弁論期日において,本件訴訟の口頭弁 論を終結した後,平成30年3月22日,被控訴人の請求を一部認容す る原判決を言い渡した。 この間の同年1月20日,被控訴人は,別件審決の取消しを求める別 件審決取消訴訟を提起した。
(エ) 控訴人は,平成30年4月9日,本件控訴を提起した。控訴人は, 同年6月5日付けの控訴理由書において,被告準備書面(10)及び(15)を 引用して,サポート要件違反(争点3−3)の無効理由による無効の抗弁 及び本件無効の抗弁を記載した。 同年7月24日の当審第1回弁論準備手続期日において,控訴人は, 控訴理由書に基づき,本件無効の抗弁を主張し,被控訴人は,控訴答弁 書に基づき,上記主張は時機に後れた攻撃防御方法として却下すること を求める申立てをした。\n同年10月15日の当審第2回弁論準備手続期日において,控訴人は, 同年8月31日付けの控訴人準備書面(1)及び同年9月14日付けの控 訴人準備書面(2)に基づき,本件無効の抗弁の主張を補足し,被控訴人は, 同年10月1日付けの被控訴人第1準備書面に基づき,本件無効の抗弁に対する反論及び訂正の再抗弁を主張した。 その後,当裁判所は,同年12月10日の第1回口頭弁論期日におい て,本件口頭弁論を終結した。
イ 前記アの認定事実によれば,控訴人の当審における本件無効の抗弁の主 張は,原審において侵害論の審理を終了し,損害論の審理に入った段階で 提出されたため,時機に後れた攻撃防御方法として却下された主張と同旨 のものであるが,控訴人は,原審口頭弁論終結前に本件無効の抗弁に係る 無効理由の存在等を認めて本件特許を無効とする旨の別件審決がされた のを受けて,当審において再度提出したものであること,控訴人は,控訴 理由書に本件無効の抗弁を記載し,当審の審理の当初から本件無効の抗弁 を主張していたことが認められるから,当審における控訴人による本件無 効の抗弁の主張の提出が時機に後れたものということはできない。また,当審の審理の経過に照らすと,控訴人による本件無効の抗弁の主張の提出 により,訴訟の完結を遅延させることとなるとは認められない。 したがって,当審における控訴人による本件無効の抗弁の主張を時機に 後れた攻撃防御方法として却下することはしない。
(2) 本件明細書の記載事項等について
ア 本件発明1,2及び6の特許請求の範囲(請求項1,2及び6)の記載 は,前記第2の1(前提事実等)の(2)のとおりである。
・・・
前記aの記載事項によれば,乙64の2には,押しボタン式バルブ の下側で不燃性液体の上側の位置に,通気性を有する「連続気泡状パ ッキング」を挿入した,不燃性液化ガスを充填した噴射口を有する「噴 気式清掃機」の記載があり,その「連続気泡状パッキング」は,缶体 を逆さまにして使用しても不燃性液体がバルブ側の空間に漏れて液体 のまま噴出することを防止するためのものであることの記載があるこ とが認められる。 そして,乙64の2記載の「連続気泡状パッキング」は,連続気泡 を有する多孔質体であり,図2(別紙3)から円筒状の缶体内に挿入 された円板状の形状であることを理解できるから,「円板状多孔質 体」として,本件発明1の「通気性蓋状部材」に該当するものと認め るのが相当である。
(イ) 乙64の1には,スプレー缶を倒立状態で使用した場合や缶を倒立 状態で保管する場合に液漏れの原因となり,可燃性液化ガスの液漏れに より火炎が発生するおそれがあるため,吸収性能・保液性に優れた吸収\n体を提供することが課題であること(【0004】,【0054】)の 記載がある。 一方で,乙64の2には,乙64の2記載の「連続気泡状パッキング」 は,缶体を逆さまにして使用しても不燃性液体がバルブ側の空間に漏れ て液体のまま噴出することを防止するためのものであることの記載があ ることは,前記(ア)bのとおりである。 そうすると,乙64の1及び乙64の2に接した当業者は,乙64の 1の第1発明において,スプレー缶を倒立状態で使用した場合の吸収体 に充填された可燃性液化ガスの液漏れの防止を確実にするために,乙6 4の1の第1発明に乙64の2記載の「連続気泡状パッキング」の構成\nを適用する動機付けがあるものと認められる。 また,乙64の1の「具体的には,スプレー缶形状に合わせて,その 内径に適した大きさの円筒状の成形体とすると,充填が容易にできる上, 使用中も安定してスプレー缶内に保持することができる。」(【003 2】)との記載から,スプレー缶の使用中に吸収体を安定して保持する 必要性があることを理解できる。 以上によれば,当業者は,スプレー缶を倒立状態で使用した場合の吸 収体に充填された可燃性液化ガスの液漏れの防止を確実にし,吸収体を 安定して保持するために,乙64の1の第1発明において,乙64の2 の連続気泡状パッキングを適用する際に,乙64の2記載の連続気泡状 パッキングの構成のものを吸収体の表\面に密接に配置し,相違点2に係 る本件発明1の構成を容易に想到することができたものと認められる。\n
(ウ) これに対し被控訴人は,乙64の2記載の「連続気泡状パッキング4」は,バルブ2の下側に空間を形成するため缶体1に固定されている 必要があるため,肩部からバルブ側に押し込むように固定され(図2), バルブ2側に十分大きい空間が形成されないので,倒立状態では,比重\nの重い液体が下側(バルブ2側)へ移動し,バルブ側の空間に容易に液 が漏れることになって,倒立状態のまま噴射を継続することができない こと,乙64の2には,図2以外に,「連続気泡状パッキング4」の充 填状態について具体的に説明する記載はないことからすると,乙64の 1の第1発明に乙64の2記載の「連続気泡状パッキング」を組み合わ せる動機付けはないし,また,乙64の1の第1発明に乙64の2記載 の「連続気泡状パッキング」を組み合わせたとしても,本件発明1の通 気性蓋状部材の構成に至ることはない旨主張する。\nしかしながら,乙64の1の第1発明において,スプレー缶を倒立状 態で使用した場合の吸収体に充填された可燃性液化ガスの液漏れの防 止を確実にするために,乙64の1の第1発明に乙64の2記載の「連 続気泡状パッキング」の構成を適用する動機付けがあることは,前記\n(イ)のとおりである。 また,乙64の2には,連続気泡状パッキングが図2で示された位置 に配置することが不可欠である旨の記載はなく,連続気泡状パッキング の具体的な設置方法及び設置場所は,当業者が適宜決定すべき事項であると認められる。 さらに,乙64の2の【0012】の「連続気泡状パッキング4を挿 入し,たとえ缶体1を逆さまにして使用しても不燃性液体3が液体のま ま噴出することなく,ガスの整流性が良くなる。」との記載に照らすと, 乙64の2の「噴気式清掃機」が連続気泡状パッキングを挿入したため に倒立状態のまま噴射を継続することができないものと理解すること はできない。 したがって,被控訴人の上記主張は,採用することができない。
・・・
(7) まとめ
以上のとおり,本件発明1,2及び6は,乙64の1の第1発明及び乙6 4の2記載の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた ものと認められ,進歩性を欠くものであるから,本件特許には,特許法29 条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)があり,特許無効審判 により無効とされるべきものと認められる。
2 争点3−5(訂正の再抗弁の成否)(本件発明1及び6に関し)について
被控訴人は,本件訂正により,訂正前の請求項1及び6(本件発明1及び6) の無効理由は解消され,かつ,被告製品は,本件訂正発明1及び6の技術的範 囲に属するから,被控訴人は,控訴人に対し,本件特許権を行使することがで きる旨主張する。 そこで検討するに,本件訂正発明1(本件訂正後の請求項1)は,灰分含有 量を「1重量%以上12重量%未満」とするものであり,本件発明2と同一の 構成であるところ,前記1(5)のとおり,本件発明2は,乙64の1の第1発明 及び乙64の2の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることがで きたものと認められるから,本件発明1の無効理由は,本件訂正により解消されるものとはいえない。 また,前記1(6)で説示したのと同様の理由により,本件発明6の無効理由は, 本件訂正により,解消されるものとはいえない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,被控訴人の上記主張 は理由がない。
3 結論
以上によれば,本件発明1,2及び6は,進歩性を欠くものであり,本件特 許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)があ り,特許無効審判により無効とされるべきものと認められるから,被控訴人は, 同法104条の3第1項の規定により,控訴人に対し,本件特許権を行使する ことはできない。

◆判決本文

関連の審決取消し訴訟です。

◆平成30(行ケ)10012

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平成29(ワ)34450  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年1月31日  東京地方裁判所(46部)

 CS関連発明について、構成要件Dを有していないとして、非侵害の認定がされました。被告はヤフー株式会社です。
 前記(1)によれば,本件発明の意義は以下のとおりであると認められる。 従来の住宅地図は,建物表示に住所番地だけでなく居住者氏名も全て併記さ\nれていたため,氏名を記載するためのスペースを確保するために住宅地図の縮 尺を高くすることができず,そのため,地図の大きさも比較的大きくする必要 があるとともに,地図に氏名が記載されることによるプライバシー侵害や利用 者の検索への支障を生じたり,地図の更新作業のための調査に膨大な労力と人 件費がかかったりするという課題があった。また,住宅地図に付されている索 引についても,住所のうち丁目と,それぞれの丁目に該当するページが掲載さ れているだけであったため,同一の丁目の中で番地が異なっている多くの建物 の中から目的とする建物を探し出す必要があった。 本件発明は,居住者氏名を記載しないため,高い縮尺度で地図を作成するこ とにより小判で,薄い,取り扱いの容易な廉価な住宅地図を提供することや, 地図の更新のために氏名調査等の労力を要しないことによって廉価な住宅地 図を提供することを可能にするとともに,地図上に公共施設や著名ビル等以外\nは住宅番地のみを記載し,地図のページを適宜に分割して区画化したうえで建 物の所在する番地と記載ページと記載区画の記号番号を一覧的に対応させた 索引欄を付すことによって,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅地図\nを提供することを可能にするものである。\n
2 争点1−4(構成要件D(「該地図を記載した各ページを適宜に分割して区画\n化し」)についての文言侵害の有無) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告地図プログラムは,ユーザが,インターネット上の「https:/ /以下省略」のURLにアクセスし,所定の操作をするなどすると,ユーザ の端末にインストールされているWebブラウザを介して,ユーザ端末のデ ィスプレイに地図を表示できるようにしたプログラムである。\n被告地図プログラムにより表示される地図では,縮尺レベルが1〜20の\n20段階に分かれており,縮尺レベル20が最も詳細(縮尺率が小さい)な もので,縮尺レベル1が最も広域(縮尺率が大きい)なものである。各縮尺レベルに応じて,地図用のデータが存在する。 りディスプレイの画面に表示さ\nれる地図の画面表示等は,別紙「被告地図プログラムの構\成(分説)」記載の とおりである。(以上につき,甲13ないし19,乙1,22,弁論の全趣旨)
イ 被告地図において,市区町村名,町名,丁目及び番の表示の右側に〔地図〕\nと表示された部分等にはハイパーリンクが設定されており,そのハイパーリ\nンクに係るURLは,冒頭に「https://以下省略」と記載され,そ の後の記載がパラメータであることを示す「?」が記載された後に,「lat =…&lon=…&ac=…&az=…」及び「z=…」という記載を含む ものである。前記のlat,lon,ac,azが示す各値は,それぞれ当 該地点に係る緯度,経度,都道府県及び市区町村の住所コード,町,丁目, 番又は号の番号を示し,zが示す値は縮尺レベルを示す。ユーザがディスプ レイ画面上で当該ハイパーリンクをクリックすると,その緯度経度を含む地点データと縮尺データを含むURLが被告地図の地図提供サーバに送信さ れる。地図提供サーバが,この地点データに係る地点を含み,かつ,縮尺デ ータに係る縮尺のメッシュ地図を地図データベースサーバから読み出し,ユ ーザのパソコンに送信することにより,ユーザのディスプレイ画面上におい\nて当該緯度経度を中心とした所定の縮尺の地図が表示される。(甲4ないし\n19,弁論の全趣旨)
ウ インターネットに接続した状態で被告地図をユーザのディスプレイ画面 に表示し,その後,インターネットの接続を停止した上で地図表\示画面をス クロールさせると,地図が表示されない部分が画面上に表\示される。(甲3 4,弁論の全趣旨)
エ 被告地図プログラムにおける縮尺レベル19の縮尺は,概ね1/1250 から1/2857の範囲であり,被告地図における縮尺レベル20の縮尺は, 概ね1/615程度である。(甲33,乙1,弁論の全趣旨)
(2)本件明細書には、前記1(1)記載のほか、(発明の実施の形態)として以下 の記載がある。なお,以下の図1ないし5は,それぞれ,本判決別紙本件明細 書図1ないし5である。 ア 段落【0017】
・・・
(3)構成要件Dの「適宜に分割して区画化」について\n
構成要件Dの「適宜に分割して区画化」の意義について,特許請求の範囲の\n「各ページを適宜に分割して区画化し,…住宅建物の所在する番地を前記地図 上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対 応させて掲載」という記載(構成要件D,E及びF)に照らせば,構\成要件D の「適宜に分割して区画化」とは,記号番号を付すことや番地と対応する区画 を一覧的に示すことができる区画を作成することが可能となるように,検索す\nべき領域の地図のページを分割し,認識できるようにすることといえる。 そして,本件発明は, 前記1(2)のとおり、地図上に公共施設や著名ビル等以 外は住宅番地のみを記載するなどし,全ての建物が所在する番地について,掲 載ページと当該ページ内で分割された該当区画を一覧的に対応させて掲載し た索引欄を設けることによって,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅\n地図の提供を可能にするというものであり,本件発明の地図の利用者は,索引\n欄を用いて,検索対象の建物が所在する地番に対応する,ページ及び当該ペー ジにおける複数の区画の中の該当の区画を認識した上で,当該ページの該当区 画内において,検索対象の建物を検索することが想定されている。そのために は,当該ページについて,それが線その他の方法によって複数の区画に分割さ れ,利用者が該当の区画を認識することができる必要があるといえる。そうす ると,本件明細書に記載された本件発明の目的や作用効果に照らしても,本件 発明の「区画化」は,ページを見た利用者が,線その他の方法及び記号番号に より,検索対象の建物が所在する区画が,ページ内に複数ある区画の中でどの 区画であるかを認識することができる形でページを区分することをいうとい える。 前記(2)のとおり、本件明細書には、発明の実施の形態において,本件発明を 実施した場合における住宅地図の各ページの一例として別紙「本件明細書図2」 及び「本件明細書図5」が示されているところ,これらの図においては,いず れも道路その他の情報が記載された長方形の地図のページが示されたうえで, そのページが,ページ内にひかれた直線によって仕切られて複数の区画に分割 されており,その複数の区画にそれぞれ区画番号が付されている。また,本件明細書図4の索引欄には,番地に対応する形でページ番号及び区画番号が記載 されており,利用者は,検索対象の建物の番地から,索引欄において当該建物 が掲載されているページ番号及び区画番号を把握し,それらの情報を基に,該 当ページ内の該当区画を認識して,その該当区画内を検索することにより,目 的とする建物を探し出すことが記載されている(段落【0028】)。ここでは, 上記の特許請求の範囲の記載や発明の意義に従った実施の形態が記載されて いるといえる。そして,「区画化」の意義に関係して,他の実施の形態は記載さ れていない。
以上によれば,構成要件Dの「区画化」とは,地図が記載されている各ペー\nジについて,記載されている地図を線その他の方法によって仕切って複数の区画に分割し,その各区画に記号番号を付すことであり,索引欄を利用すること で,利用者が,線その他の方法及び記号番号により,当該ページ内にある複数 の区画の中の当該区画を認識することができる形で複数の区画に分割するこ とを意味すると解するのが相当である。 原告は,被告地図において,縮尺レベル19の住宅地図及び縮尺レベル20 の住宅地図がそれぞれ構成要件Dの「該地図を記載した各ページ」に該当する\nと主張した上で,被告地図のデータは,画面に表示されるときに区分された形\nでその一部が表示されるから構\成要件Dの「適宜に分割して区画化」されると 主張するとともに,「メッシュ化」され,また,複数のデータとして管理されて いるから構成要件Dの「適宜に分割して区画化」することになると主張する。\nしかし,仮に,縮尺レベル19の住宅地図及び縮尺レベル20の住宅地図が それぞれ構成要件Dの「該地図を記載した各ページ」に該当するとしても,利\n用者は,画面に表示されている地図を見ているのであって,線その他の方法及\nび記号番号により,ページにある複数の区画の中で,検索対象の建物が所在す る地番に対応する区画を認識することができるとはいえない。被告地図におい て「メッシュ化」がされていて,また,被告地図に係るデータが複数のデータ として管理されているとしても,被告地図プログラムの構成(分説)及び前記\nアないしウに照らし,利用者は,「メッシュ化」されている範囲や区分された データを通常認識しないだけでなく,それらに対応する記号番号を認識するこ とはない。したがって,被告地図において,線その他の方法及び記号番号によ り,ページにある複数の区画の中で,検索対象の建物が所在する地番に対応す る区画を認識することができるとはいえない。そうすると,前記 に照らし, 被告地図において,「各ページ」が,「適宜に分割して区画化」されているとは いえない。 これらによれば,被告地図について,構成要件Dの「適宜に分割して区画化」\nがされているとは認められない。

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平成30(ワ)3018  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年11月29日  東京地方裁判所(46部)

 サポート要件などの無効理由なし、技術的範囲に属すると判断されました。
 前記(2)のとおり、本件各名作書には、本件参照抗体と競合する,PCSK 9−LDLR結合中和抗体を同定,取得するための,免疫プログラムの手順 及びスケジュールに従った免疫化マウスの作製方法,ハイブリドーマの作製 方法,スクリーニング方法及びエピトープビニングアッセイの方法等が記載 されている。そして,当該方法によれば,本件各明細書で具体的に開示され た以外の本件参照抗体と競合する抗体も得ることができるといえる。 そうすると,本件各明細書の記載から当業者が実施可能な範囲が,本件各\n明細書記載の具体的な抗体又は当該抗体に対して特定の位置のアミノ酸の1 若しくは数個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有する抗体に限られる とはいえない。したがって,本件各明細書の記載から当業者が実施可能な範\n囲が本権各明細書記載の具体的な抗体又は当該抗体に対して特定のアミノ酸 の1もしくは数個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有する抗体に限ら れることを前提として,本件各発明の技術的範囲が本件各明細書記載の具体 的な抗体又は当該抗体に対して特定の位置のアミノ酸の1若しくは数個のア ミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有する抗体に限定されるとの被告の主張 は採用することができない。
(4)また,被告は,1)本件各明細書では,本件参照抗体と競合する抗体であれ ば,PCSK9とLDLRの結合を中和することができるという技術思想を 読み取ることはできない,2)本件各明細書の実施例に記載された3グループ ないし2グループの抗体のみによって,本件参照抗体と競合する膨大な数の 抗体全てがPCSK9−LDLR結合中和抗体であるとはいえず,本件各明 細書には,本件参照抗体と競合する膨大な数の抗体がPCSK9−LDLR 結合中和抗体であることの根拠は全く示されていないと主張する。 しかしながら,前記 のとおり,本件各明細書には,本件参照抗体がP CSK9−LDLR結合中和抗体であること,本件参照抗体がPCSK9に 結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体,又は,本件参照抗体 とPCSK9との結合を立体的に妨害するような上記エピトープに隣接する エピトープに結合する抗体である,本件参照抗体と競合する抗体は,本件参 照抗体と類似した機能的特性を有すると予\想されることが記載されている。 そして,前記 のとおりのスクリーニング等によって得られた本件各明細書の表2記載の30の抗体(21B12参照抗体と31H4参照抗体を除く。)\nのうち,24の抗体はPCSK9−LDLR結合中和抗体であり,かつ,本 件参照抗体と競合する抗体であること,表37.1.のビン1(21B12\n参照抗体と競合し,31H4参照抗体と競合しない抗体)に属する19の抗 体のうち16個,ビン2(21B12参照抗体とも,31H4参照抗体とも 競合する抗体)に属する抗体のうち2個及びビン3(31H4参照抗体と競 合し,21B12参照抗体と競合しない抗体)に属する10の抗体のうちの 7個は,表2に記載された抗体であり,これら16個と2個と7個の抗体の\nうち,27B2抗体並びに21B12参照抗体及び31H4参照抗体を除く 少なくとも20個はPCSK9−LDLR結合中和抗体であることが記載さ れている。そうすると,本件各明細書には,特定のスクリーニング等を経て 得られた抗体のうち,本件参照抗体と競合する複数の抗体がPCSK9−LDLR結合中和抗体であることが示されているといえる。 なお,この点に関係し,被告は,本件参照抗体と競合する膨大な数の抗体 がPCSK9−LDLR結合中和抗体であることの根拠は全く示されていな いと主張するが,本件各明細書に記載された抗体以外に,本件参照抗体と競 合するがPCSK9−LDLR結合中和抗体ではない具体的な抗体が示され ているものではなく,また,本件参照抗体と競合する抗体中,PCSK9− LDLR結合中和抗体でないものの割合が大きいことも明らかではない。 さらに,被告は,本件参照抗体と競合する抗体は,PCSK9−LDLR 結合中和抗体であるとは限らないとも主張する。しかし,本件各発明は,P CSK9−LDLR結合中和抗体であることを構成要件とするものであるか\nら(構成要件1A,2A),上記のような例外的な抗体は本件各発明の技術\n的範囲に含まれない。
(5)証拠(甲5,7の1,2,甲8〜10)及び弁論の全趣旨によれば,本件 各発明について,被告が主張する限定的な解釈を採らない限り,被告モノク ローナル抗体は,本件発明1−1及び本件発明2−1の各構成要件を全て充\n足し,被告製品は,本件発明1−2及び本件発明2−2の各構成要件を全て\n充足すると認められるから,被告モノクローナル抗体は,本件発明1−1及 び本件発明2−1の技術的範囲に属し,被告製品は,本件発明1−2及び本 件発明2−2の技術的範囲に属すると認められる。なお,被告モノクローナ ル抗体は,本件訂正発明1-1及び本件訂正発明2−1の技術的範囲にも属 し,被告製品は,本件訂正発明1−2及び本件訂正発明2−2の技術的範囲 にも属すると認められる。

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平成29(ワ)3572  職務発明対価請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年1月17日  大阪地方裁判所

 職務発明の対価請求について、請求が棄却されました。
 本件発明は,前述のとおり,塩素化塩化ビニル系樹脂の洗浄方法について, 装置の小型化や使用水量の削減といった生産性の向上を図ろうとするものであると ころ,原告らがこれについて特許を受ける権利を被告に承継したことによる相当の 対価を検討するに当たっては,前記イで述べたような,被告において単にこれを実施し得ることによる利益を考えるのではなく,本件発明が特許として登録され,そ の禁止的効力によって,競業者は本件発明を実施することができなくなり,被告が 競争上優位な立場に立つことによって得られる利益をもって,算定の基礎とすべき ことになる。 そして,既に検討したとおり,本件特許の登録後,競業者は,本件発明を実施す ることはできないが,公知濾過方式については実施することができるのであるから, 両者にコストや生産性の面で差があり,競業者が本件発明を実施できないことによ って被告が競争上優位な立場に立つのであれば,これによって得られる利益を,相 当の対価算定の基礎とすることができる。
エ 原告らの主張,立証について
 原告らは,公知濾過方式は実用化されておらず,競業者は,本件発明が実施 できなければデカンタ方式によることを余儀なくされるとして,デカンタ方式から 本件洗浄方式に切り替えたことによるコストの削減が,被告の排他的利益の内容で あると主張する。 しかしながら,公知濾過方式が実用化されていることは既に検討したとおりであ るし,本件発明の排他的利益を検討するに当たっては,前述のとおり,本件発明と 構成として共通する面の多い公知濾過方式と対比するのが相当であるから,原告ら\nの主張は失当である。 また,原告らは,前記ウで述べたような形での,公知濾過方式と対比する形での 本件発明による排他的利益については,予備的にも主張しない旨を明示している。\n以上によれば,特許法35条3項の相当の対価が存すると認めるに足りる主張,立証はないといわざるを得ない。

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平成30(行ケ)10027  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年1月28日  知的財産高等裁判所

 訂正の可否が争われて、知財高裁は特許庁の判断を取り消しました。争点は引用発明の認定誤りです。
 本件発明1における揮発性作業流体は,ストリッピング処理過程に付 す前に海産油に添加される液体であって,当該ストリッピング処理過程 において,海産油中に存在するある量の環境汚染物質が当該揮発性作業 流体と一緒に該海産油から分離されるものである。また,当該揮発性作 業流体はC10〜C22の遊離脂肪酸を含む。さらに,当該揮発性作業 流体はストリッピング処理過程で油から分離されるものであるから,「揮 発性」とはトリグリセリド等の油よりも揮発性が高いことを意味すると 解される(本件明細書の段落【0014】,【0021】,【0057】, 【0059】〜【0061】)。
 これに対し,甲2発明1におけるリノール酸は,ストリッピング処理 過程に付す前にサケ頭油に添加される液体であって,当該ストリッピン グ処理過程において,コレステロールと共に蒸留されるものである(上 記(1)ウ)。そして,リノール酸はC18の不飽和脂肪酸であって,トリ グリセリドと比較すると揮発性が高い(上記(1)ア)。 そうすると,本件発明1における揮発性作業流体と,甲2発明1にお けるリノール酸とは,除去対象物質が環境汚染物質であるかコレステロ ールであるかとの点で違いがあるものの,いずれもトリグリセリドと比 較して揮発性が高く,除去対象物質と共に蒸留される液体であるとの点 で共通する。また,リノール酸は,本件明細書において揮発性作業流体 として例示された「C10〜C22の遊離脂肪酸」に該当する。 したがって,甲2発明1におけるリノール酸は,本件発明1における 揮発性作業流体に当たると認めるのが相当である。 よって,この点についての本件審決の認定には誤りがある。
(オ) 小括
以上によれば,本件審決には,相違点6について,リノール酸が揮発 性作業流体といえるのか否かが明らかではないと認定した点において, 誤りがあるというべきである。

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平成30(ネ)10027  特許権に基づく損害賠償請求権不存在確認等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年12月12日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 アップルがクアルコムに対して求めた確認訴訟について、訴えの利益がないとした1審判決が維持されました。1審判決はアップされていません。
 イ この点に関し,控訴人らは,1)本件特許権がCMライセンス契約の対象 特許となっていることについて,被控訴人らからこれを裏付ける証拠は提 出されていないこと,2)被控訴人クアルコムは,控訴人アップルと被控訴 人クアルコム間のドイツ訴訟において,2016年(平成28年)第4四 半期以降,CMとの間で,新たな特許や訴訟の対象特許を取り込むための 交渉を一切行っていないことを自認しており,CMライセンス契約の有効 性やその許諾対象特許の範囲について疑義があること,3)被控訴人クアル コムは,台湾の公平交易委員会(TFTC)が2017年(平成29年) 10月20日にCMを含む携帯通信端末の製造販売業者との間で締結し ているライセンス契約について,ライセンス条件の再交渉を行うことを命 じる旨の是正命令を受けて,被控訴人クアルコムとCMとの間でCMライ センス契約の再交渉が開始されており,CMライセンス契約の条件は今後 変更される可能性があること,4)被控訴人クアルコムは,控訴人アップル に対し,自社が保有する必須宣言特許をほぼ完全に網羅する約2000頁 に及ぶ特許リスト(本件特許を含む。)(甲7)及び自社の保有する必須 宣言特許(本件特許を含む)のクレームチャート(甲14)を提示するこ とにより,「直接ライセンスなしでは(absent a direct license)」被控訴人クアルコムの必須宣言特許(本件特許を含む。)が控訴人アップルに よって侵害されているとの認識を示したこと,5)被控訴人クアルコムが, 控訴人アップルの求めに応じて提供した一覧表やクレームチャートに本\n件特許の米国対応特許及び中国対応特許が含まれていたことなどに照ら せば,本件特許権はCMライセンス契約の対象特許となっているとはいえ ず,また,控訴人アップルと被控訴人クアルコム間のライセンス交渉の中 で,被控訴人クアルコムが控訴人アップルに対し原告製品が本件特許権を 含む被控訴人クアルコムの保有する数多くの特許権を侵害していると主 張したことは明らかである旨主張する。
(ア) しかしながら,前記1(7)認定のとおり,被控訴人らは,本件弁論を 終結した当審の第1回口頭弁論期日において,被控訴人クアルコムは, CMに対し,本件特許権を含む特許について,原告製品の生産,譲渡等 に係るライセンスを付与しており,控訴人らは,CMから全ての原告製 品の供給を受けているから,被控訴人らは,控訴人らに対し,現在,本 件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を行使する意思は ないし,日本法上行使できるものとも考えていない旨を表明しているこ\nとに照らすと,本件の口頭弁論終結時点において,本件特許権が被控訴 人クアルコムとCM間のCMライセンス契約におけるライセンス対象 とされていることが認められる。 控訴人らが述べるように2016年(平成28年)第4四半期以降, 被控訴人クアルコムとCMとの間で,新たな特許や訴訟の対象特許を取 り込むための交渉を行っていないとしても,そのことは,CMライセン ス契約の内容が変更されたり,又は契約自体の効力が喪失したことを直 ちに意味するものではない。また,被控訴人クアルコムがTFTCの是正命令(処分)を受けてCMとの間でCMライセンス契約の再交渉を開 始したことを認めるに足りる証拠はない。 他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。
(イ) 前記1(2)認定のとおり,控訴人アップルと被控訴人クアルコムのラ イセンス交渉は,CMへの既存のライセンスに依拠することに代えて, 控訴人アップルに直接ライセンスを提供することを目的としていたこ とに照らすと,控訴人アップルが送付した甲9のレター記載の●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●との文中の「absent a license」の語は,「ラ イセンスがない場合に」を意味するものであり,CMに対するライセン スを含め,およそライセンスが存在しない場合を想定したものと認めら れる。 そして,前記1(2)の認定事実によれば,被控訴人クアルコムは,控 訴人アップルから被控訴人クアルコムに対してライセンスがない場合 に原告製品が侵害していると被控訴人クアルコムが考えている特許権 の特定を求められたことを受けて,控訴人アップルに対し,被控訴人ク アルコムがETSI(欧州電気通信標準化機構)に開示した特許の一覧\n表(甲7)及びサンプルクレームチャート(甲14)を提供したことが\n認められることに照らすと,上記一覧表及びクレームチャートに本件特\n許の米国対応特許及び中国対応特許が含まれているからといって,控訴 人アップルと被控訴人クアルコム間のライセンス交渉の中で,被控訴人 クアルコムが控訴人アップルに対し原告製品が本件特許権を侵害して いることを主張したものと認めることはできない。
(ウ) したがって,控訴人らの前記主張は理由がない。
」 (2) 原判決17頁4行目の「(3)」を「(3)ア」と改め,同頁19行目末尾に行 を改めて次のとおり加える。
「イ この点に関し,控訴人らは,被控訴人クアルコムは,本件訴訟では, CMライセンス契約の存在を理由として,本件特許権に基づく損害賠償 請求権及び実施料請求権を有しない又は行使できない旨主張している ものの,米国訴訟においては,CMライセンス契約の存在にかかわらず, 携帯通信SEPポートフォリオに含まれる特許につき,FRAND条件 の適合性やFRAND条件でのロイヤルティの確認を求める申立てを\nするなど,控訴人アップルによる被控訴人クアルコムの保有する特許権 の侵害を前提とする主張を行っており,被控訴人クアルコムの両主張が 矛盾することは明らかであり,このような被控訴人クアルコムの米国訴 訟における本件訴訟と矛盾した主張は本件訴えの確認の利益を基礎付 けるものといえる旨主張する。
しかしながら,前記1(6)認定のとおり,被控訴人クアルコムが,米国 訴訟において,反訴として,被控訴人クアルコムのライセンス提案がF RAND宣言に適合していること及び仮にFRAND宣言に適合しな い場合はFRAND条件によるロイヤルティの確認の申立てを行っていること,被控訴人クアルコムが,同訴訟において,2018年(平成\n30年)6月19日,控訴人アップルが本件特許の米国対応特許を侵害 している旨の専門家意見書を提出したことは,被控訴人クアルコムが, 本件訴訟において,被控訴人クアルコムからライセンスを受けたCMか ら原告製品の供給を受けている控訴人らに対し,本件特許権に基づく損 害賠償請求権及び実施料請求権を行使する意思はないし,日本法上行使 できるものとも考えていない旨主張していることと何ら矛盾するもの ではない。したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。」

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平成29(ワ)27374  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年12月11日  東京地方裁判所(47部)

 歌手の覚せい剤報道において、歌手から送られてきた未発表の楽曲を放送したことが、著41条の時事の事件の報道のための利用に該当するのかが争われました。裁判所は、41条には該当しないとして、110万円の損害を認定しました。
 1 本件楽曲は未公表の著作物であったか(争点(1)ア)について
(1)前記前提事実(3)エのとおり、本件楽曲は、被告Bが本件番組内で本件録音 データを再生した時点より前に,公衆に提供又は提示されていなかったから, 本件楽曲は法18条1項にいう「著作物でまだ公表されていないもの」に当\nたる。 この点,被告らは,原告が芸能リポーターである被告Bに対して本件録音\nデータを提供したことは公衆に提示したものと同視し得るから,本件楽曲は 本件番組内で放送された時点で「著作物でまだ公表されていないもの」には\n当たらない旨主張する。 しかしながら,法にいう「公衆」とは飽くまでも不特定多数の者又は特定 かつ多数の者をいう(法2条5項参照)のであって,被告B個人が公衆に当 たると解する余地はない。したがって,原告が被告Bに対して本件録音デー タを提供したことにより,本件楽曲が公表されたものとは認められない。\n2 公衆送信及び公表につき黙示の許諾があったか(争点(1)イ)について 証拠(甲7,乙A4)及び弁論の全趣旨によると,原告が被告Bに対して 本件録音データを提供した経緯について,次の事実が認められる。 ア 原告は,平成27年12月上旬頃,自らが執筆した自叙伝の原稿につい て芸能リポーターである被告Bの感想等を聞くため,知人を介して被告B\nの連絡先を入手した。そして,原告は,被告Bと電話で連絡を取り,その 感想等を求める趣旨であることを伝えた上,被告Bに対して上記原稿のデ ータをメールで送付した。
イ その後,原告は,被告Bと電話で連絡を取り,被告Bが上記原稿を読ん だ感想等を聞いた。その際,原告が被告Bに自らが音楽活動を行っている ことを伝え,自らが創作した曲を聴いた感想等を聞かせてほしいと頼んだ ところ,被告Bは,この依頼を承諾した。 (なお,原告は,被告Bに感想等を求めた際に,提供する楽曲を公表し\nないように求めた旨主張し,その陳述書(甲7)には,これに沿う部分が あるが,被告Bの陳述書(乙A4)にはこれに反する記載がある上,当該 主張は原告の平成30年3月6日付け準備書面で初めてされたものであっ て,それ以前はかかる明示的な求めはないことを前提とした主張がされて いたという経緯も考慮すると,原告の上記主張及び陳述部分は採用できな い。)
ウ そこで,原告は,平成27年12月22日,被告Bに対し,本件録音デ ターをメールで送信した。 被告らは,原告は音楽活動を再開したことが被告Bによってテレビ放送等 で告知されることを期待して本件録音データを提供したものであるから,本 件楽曲を公衆送信及び公表することを黙示に許諾したというべきであると主\n張する。 しかしながら, 上記(1)の認定事実によれば,原告は,本件楽曲を聴いた 被告Bの感想等を聞くために,被告Bに対して本件録音データを提供したに すぎないから,原告が本件録音データを提供したことをもって,本件楽曲を 公衆送信ないし公表することを黙示に許諾したとは認められない。被告Bが\n芸能リポーターであるからといって,それのみでは上記説示を左右しない。\n
3 被告らによる公衆送信行為は法41条所定の時事の事件の報道のための利用 に当たるか (争点(1)ウ)について 被告らは,本件楽曲は,1)視聴者に対して原告による覚せい剤使用の事実 の真偽を判断するための材料を提供するという点において「警視庁が原告を 覚せい剤使用の疑いで逮捕する方針であること」という時事の事件を構成す\nるものであるし,2)原告が執行猶予期間中に更生に向けて行っていた音楽活\n動の成果物であるという点において「原告が有罪判決後の執行猶予期間中に\n音楽活動を行い更生に向けた活動をしていたこと」という時事の事件を構成\nするものである旨主張する。 上記1)の主張について検討するに,前記前提事実(3)イおよびウによれば,本 件楽曲は,警視庁が原告に対する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求する予\n定であることやこれに関連する報道がされた際に放送されたものであると認 められるところ,警視庁が原告に対する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求 する予定であることが時事の事件に当たることについては,当事者間に争い\nがない。しかしながら,本件楽曲は,警視庁が原告に対する覚せい剤使用の疑いで 逮捕状を請求する予定であるという時事の事件の主題となるものではないし,\nかかる時事の事件と直接の関連性を有するものでもないから,時事の事件を 構成する著作物に当たるとは認められない。これに反する被告らの主張は採\n用できない。
次に,上記2)の主張について検討する。
ア 前記前提事実(3)イおよび乙B第1号証によると,以下の事実が認められる。 警視庁が原告に対する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求する予定で\nあることやこれに関連する報道がされた放送時間は,コマーシャルや他 のニュースが放送された時間を除くと約62分間であった。 このうち,本件録音データの再生に伴って原告の音楽活動に言及があ った時間は,午後3時31分頃から同36分頃までの約5分間であるが, うち約3分間はコマーシャルが放送された時間であった。具体的内容は, 別紙本件楽曲放送部分に記載のとおりである。 すなわち,本件番組の司会者は,「うーん。で,ASKA さんが,来月 ですか,新曲を YouTube で・・・。」「まあ,発表されるってことで,B\nさんが・・・」と切り出し,被告Bは,この発言を受けて,「実は,昨 年送ってきた曲がありますんで,コマーシャルの後にちょっとお伝えし たいと思います。」と発言した。 コマーシャルの放送後,被告Bは,「これ,送られてきたんで。えー, 去年の 12 月 22 日で,まあ,タイトルとしては『20年東京オリンピ ック曲』っていうふうについてたんです。」と説明した上で本件録音データを再生した。本件司会者は,本件楽曲を聴いた感想として,「今ま での曲調とは全然違いますよね。」,「どっちかというと幻想的な。」 と発言し,被告Bも,この感想に同調し,「ちょっと違う感じしますよ ね。まあ,きれいなメロディではあると思いますけど。」と発言した。 また,本件司会者は,「こういうのを作って,来月 YouTube で発表し\nようと。音楽活動に向けて動こうと。」と発言し,被告Bも,「そうで すね,この時点では,ご本人もいろいろブログを自分で書いているん で。」などと発言して,本件録音データの再生を止めた。 そして,本件録音データの再生が終わるとすぐに,本件番組の司会者 その他の出演者は,再び,警視庁が原告を覚せい剤使用の疑いで逮捕す る方針であることを話題にし,それぞれ意見を述べるなどした。 また,上記 以外の部分でも,原告の音楽活動に関する部分がある (14:23頃,14:29頃,14:33頃,15:08頃)ものの, その内容は,上記 と同様に,原告が,2020年のオリンピックのテ ーマソングとして作曲した本件楽曲を被告Bに送付し,来月,YouTube でアルバムを発売したり,友人のライブに出たりといった音楽活動に向 けて動こうとしている,ということを断片的に紹介する程度にとどまっ ている。
イ 上記認定事実によれば,本件番組中における原告の音楽活動に関する 部分は,警視庁が原告を覚せい剤使用の疑いで逮捕する予定であること\nを報道する中で,ごく短時間に,原告が2020年のオリンピックのテ ーマソングとして作曲した本件楽曲を被告Bに送付し,来月,YouTube で 新曲を発表するなど音楽活動に向けて動こうとしている,ということを\n断片的に紹介する程度にとどまっており,本件楽曲の紹介自体も,原告 がそれまでに創作した楽曲とは異なる印象を受けることを指摘するにす ぎないもので,これ以上に原告の音楽活動に係る具体的な事実の紹介は ないものであるから,このような放送内容に照らせば,本件番組中にお ける原告の音楽活動に関する部分が「原告が有罪判決後の執行猶予期間\n中に音楽活動を行い更生に向けた活動をしていたこと」という「時事の 事件の報道」に当たるとは,到底いうことができない。
4 被告らによる公衆送信行為は法32条1項所定の引用に当たるかエ)について
前記1で判示したとおり,原告が被告Bに対して本件録音データを提供した ことにより,本件楽曲が公表されたものとは認められず,本件番組の放送時に\nおいて本件楽曲は未公表の著作物であったと認められるから,被告らによる本\n件楽曲の公衆送信行為は法32条1項所定の引用には当たらない。
5 正当業務行為等により公表権侵害の違法性が阻却されるか(争点(1)オ)につ いて
被告らは,本件楽曲の公表は,原告が逮捕されそうであるという差し迫っ\nた状況において,有罪判決後の原告の音楽活動や更生に向けた活動等を具体 的に報道するとともに,視聴者に対して原告による覚せい剤使用の事実の真 偽を判断するための材料を提供するという目的で行われたものであり,その 具体的事情の下では,法41条の趣旨の準用,正当業務行為その他の事由に より違法性が阻却される旨主張する。 しかしながら,本件番組では原告の音楽活動にごく簡単に触れたに止まり, それに係る具体的な事実の紹介がないことは前記3で説示したとおりである し,本件楽曲が原告による覚せい剤使用の事実の真偽を判断するための的確 な材料であるとも認められないから,被告らの上記主張は,その前提を欠く ものであり採用できない。 また,被告Bは,原告が逮捕見込みであるとの報道に関連して,原告が更 生していることを示すために,本件録音データの一部のみを再生したもので あるから,芸能リポーターとしての正当な業務行為として違法性がない旨主\n張する。 しかしながら,原告の音楽活動に係る具体的な事実の紹介がないまま,本 件録音データの一部を再生したからといって,原告が更生していることを具 体的に示すことにはならないから,被告Bの上記主張も,その前提を欠くも のであり採用できない。
6 被告Bは公衆送信権及び公表権の侵害主体となるか カ)について
前記前提 Bは,本件番組の生放送中に出演者として本件楽曲の録音データ(本件録音データ)の一部を再生し,被告讀賣テレビは本件番組を放送したのであるところ,前記1ないし5の説示を踏まえれば,被告らは共同して原告が本件楽曲につき有する公衆送信権及び公表権を侵害したものと認められる。これに対し,被告Bは,被告讀賣テレビによる放送の履行補助者にすぎなかった旨主張するところ,その趣旨は判然としないものの,上記説示に照らして採用できない。
7 故意・過失の存否
被告Bはいわゆる芸能リポーターを業とし,被告讀賣テレビは基幹放送事\n業を業とするものであるから,被告らは,放送番組中において楽曲を再生し 放送する場合には著作権や著作者人格権の侵害がないように十分注意すべき\n高度の注意義務を負っているというべきところ,原告が本件楽曲を公衆送信 及び公表することを黙示に許諾したとは認められないにもかかわらず,その\n認識を欠いて本件楽曲を公衆送信及び公表することが許されると誤信した点\nなどにおいて,少なくとも過失があったと認められる。これに反する被告ら の主張は採用できない。 なお,原告は,本件楽曲を公表した際の本件番組の司会者と被告Bとのや\nり取りや本件番組の放送終了後の上記両名の言動を見れば,被告らが本件楽 曲を公衆送信及び公表することにつき原告の同意がないことを認識していた\nことは明らかであるから,被告らには故意がある旨主張する。 しかし,本件楽曲を公表した際の本件番組の司会者と被告Bとのやり取り\nは前記3(3)ア(イ) で認定したとおりであるところ,これらのやり取りを見ても, 上記両名が本件楽曲を公表することにつき原告による黙示の許諾がないこと\nを認識していたことはうかがわれない。また,証拠(乙A4)及び弁論の全 趣旨によれば,原告が本件番組の放送翌日に,被告Bに対して電話で本件楽 曲を放送したことを抗議した際,被告Bは,原告が本件楽曲を公表すること\nに同意していると認識していた旨の弁明をしていないものの,原告の抗議は 未発表であった本件楽曲を公表\したことを明示的に指摘したものではなかっ たことが認められるから,被告Bが上記のような弁明をしなかったからとい って,本件楽曲を公表することにつき原告の同意がないことを認識していた\nとは認められない。さらに,弁論の全趣旨によれば,本件番組の司会者と被 告Bは,平成28年12月23日に放送された番組内で,原告に対して謝罪 していることが認められるものの,その謝罪が未発表の本件楽曲を公表\した ことに対するものであったと認めるに足りる証拠はない。 その他,被告らが,本件楽曲を公表することにつき原告の同意がないと認\n識していたことや公衆送信権ないし公表権侵害の故意を有していたことを認\nめるに足りる証拠はないから,被告らの故意に係る原告の主張は採用できな い。
8 損害の有無およびその額(争点(3))について
(1)法114条3項による損害金
ア 証拠(甲3)によると,一般社団法人日本音楽著作権協会が,使用料規 程において,放送及び当該放送の録音に音楽著作物を利用する場合の使用 料について,年間の包括的利用許諾契約を締結する方法と1曲1回当たり の使用料を積算する方法とを定めているところ,著作権侵害による損害額 を算定するに当たっては,音楽著作物の継続的な利用を前提とする前者の 方法を基準とするではなく,1曲1回の利用ごとに使用料が発生すること を前提とする後者の方法を基準とするのが合理的であり,これに反する被 告らの主張は採用できない。 イ 上記使用料規程によれば,全国放送の場合,1曲1回当たりの使用料は, 利用時間が5分までは6万4000円,その後利用時間が5分を超えるご ろ,本件番組において本件楽曲が放送された時間は約1分間であった(前 記前提事実 )から,その相当対価額は6万4000円と認めるのが相 当である。
公表権侵害による慰謝料\n
前記2(1)及び3(3)で認定した各事実並びに証拠(甲7)及び弁論の全趣旨によれば,本件楽曲は平成32年(2020年)に開催される東京オリンピ ックのテーマ曲として応募することを目的として創作されたものであり,原 告としては,本件楽曲を聴いた感想を聞くために,被告Bに対して本件録音 データを提供したにすぎなかったにもかかわらず,本件番組(日本テレビ系 列28社により放送されている。)において本件楽曲が放送されたことによ り,原告は本件楽曲を創作した目的に即した時期に本件楽曲を公表する機会\nを失ったこと,しかも,本件楽曲は,本件番組において,警視庁が原告に対 する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求する予定であるという報道に関連す\nる一つの事情として紹介されたことにより,本件番組の司会者及び被告Bの 発言と相まって,本件番組の視聴者に対して原告が本件楽曲を創作した目的 とは相容れない印象を与えることとなったことが認められる。 なお,原告は,本件番組において,原告が覚せい剤の使用により精神的に 異常を来したかのような報道をされたことにより,原告の音楽家としてのイ メージを毀損され,精神的苦痛を受けた旨主張し,その陳述書(甲7)には これに沿う陳述部分があるが,本件における慰謝料請求は飽くまで本件楽曲 に係る公表権侵害を理由とするものであるから,上記認定のとおり,公表\権 侵害の方法・態様として評価し得る事情の限度で考慮するにとどめるのが相 当である。 これらの事情に加え,本件で顕れた一切の事情を併せ考慮すると,被告ら による公表権侵害に対する慰謝料の額は100万円と認めるのが相当である。\n

◆判決本文

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平成27(ワ)8974  特許権侵害差止等請求事件  特許権 平成30年12月13日  大阪地方裁判所

 論点はいろいろありますが、主観的間接侵害における多用途品に対して差止請求が認められました。
(4) 被告表示器A,被告製品3の製造,販売等の行為についての直接侵害の成否
ア 被告表示器Aはプログラマブル表\示器であり,被告製品3はそれらにイ ンストールするソフトウェアであり,前提事実(前記第2の2(4)エ)のとおり,被 告表示器Aは被告製品3のソ\フトウェアがなければ作動せず,被告製品3のソフトウェアは被告表\示器においてのみ有効に機能する関係にあると認められるから,ユ\nーザがそれらの一方のみを使用することはないといえる。このため,原告は,1)被 告表示器Aと被告製品3は,その販売形態にかかわらず,実質的には常にセット販売されていると評価すべきものであり(セット販売理論),また,2)被告製品3のソフトウェアはユーザの下で必ず被告表\示器にインストールされるのであるから,ユーザは被告の道具としてインストールを行うにすぎない(道具理論)として,被告 表示器Aと被告製品3の各製造,販売等は,同一機会でされるものであるか否かを問わず,被告製品3のOSがインストールされた被告表\示器Aの製造,販売等と同視すべきであると主張する。
イ 被告表示器A,被告製品3は,それらが個別に販売される場合はもとより,同一の機会に販売される場合であっても,被告製品3の基本機能\OS及び拡張/オプション機能OSのうちの回路モニタ機能\等部分のインストールがいまだされ ない状態であるから,それらは直接侵害品(実施品)としての構成を備えるに至っておらず,それを備えるにはユーザによるインストール行為が必要である。\nこのような場合,確かに,ユーザの行為により物の発明に係る特許権の直接侵害 品(すなわち実施品)が完成する場合であっても,そのための全ての構成部材を製造,販売する行為が,直接侵害行為と同視すべき場合があることは否定できない。\nしかし,構成部材を製造,販売する行為を直接侵害行為(すなわち実施品の製造,販売行為)と同視するということは,ユーザが構\成部材から実施品を完成させる行為をもって構成部材の製造,販売とは別個の生産行為と評価せず,構\成部材の製造, 販売による因果の流れとして,構成部材の製造,販売行為の中に実質的に包含されているものと評価するということであるから,そのように評価し得るためには,製\n造,販売された構成部材が,それだけでは特許権の直接侵害品(実施品)として完成してはいないものの,ユーザが当然に予\定された行為をしてそれを組み合わせる などすれば,必ず発明の技術的範囲に属する直接侵害品が完成するものである必要 があると解するのが相当である。換言すれば,ユーザの行為次第によって直接侵害 品が完成するかどうかが左右されるような場合には,構成部材の製造,販売に包含され尽くされない選択行為をユーザが行っているのであるから,構\成部材を製造,販売した者が間接侵害の責任を負うことはあっても,直接侵害の責任を負うことは ないと解すべきである。
ウ このような観点から本件の事実関係について検討すると,前記(2)キ(イ) で認定した事実によれば,被告表示器Aにおいて回路モニタ機能\等を使用するため には,ユーザが,被告製品3をインストールしたパソコンで,動作設定を「回路モニタ」とする拡張機能\スイッチが配置されたプロジェクトデータを作成する必要があり,拡張/オプション機能OSのうちの回路モニタ等部分が転送対象として自動的に選択されるのも,ユーザが上記のようなプロジェクトデータを作成した場合の\nみであると認められる。これを換言すれば,そもそもユーザによって上記のような プロジェクトデータが作成されず,したがってこれが被告表示器Aにインストールされない場合には,ユーザが敢えて拡張/オプション機能\OSのうちの回路モニタ等部分を転送対象として選択しない限り,被告表示器Aに回路モニタ機能\等が備わることはないのである。 また,被告製品1−2については一部の機種では,そもそも回路モニタ機能等を使用できない。また,回路モニタ機能\等が使用可能な機種についても,これを使用\nするためにはオプション機能ボードを購入して設置する必要がある。そして,そもそもこれはオプションの部材であるから,ユーザがこれを購入して設置することが\n当然に予定されていると認めることはできないし,乙17及び18によれば,回路モニタ機能\等に対応している被告製品1−2を購入した者のうち,オプション機能\nボードを購入しなかった者が相当程度存したと認められる(原告は,乙17及び1 8は裏付け証拠がないから信用性を欠く旨主張するが,記載内容は一定の具体性を持っており,その内容が不合理であることをうかがわせる事情も認められず,かえ って,オプション機能ボードがまさにオプション品であることからすると,相当程度の者が購入しないというのは合理的であるから,具体的な割合はともかく,少な\nくともオプション機能ボードを購入しなかった者が相当程度存したと認められるという限度ではその信用性を認めるのが相当である。)。\nなお,被告製品1−1では,回路モニタ機能等が標準装備されているが,前記(2) ア(オ)での認定のとおり,被告製品1−1は他の点でも被告製品1−2にない機能を有しており,特にラダー編集機能\は,甲5のカタログでも回路モニタ機能等と並ん\nで強調されているものであることからすると,被告製品1−1を購入する者が須く 回路モニタ機能等を使用することを当然の前提としてこれを購入するとまで認めることは困難である。そして,これらの事情は,被告表\示器2Aについても妥当すると考えられる。
 以上のことを踏まえると,被告が販売した被告表示器Aや被告製品3だけでは,直ちに本件発明1の直接侵害品(実施品)が完成するわけではないし,ユーザが被\n告表示器Aを被告製のPLCに接続した上で,被告製品3の拡張/オプション機能\ OSのうちの回路モニタ機能等部分をインストールすることが必ず予\定された行為 であると認めることもできない。したがって,ユーザの行為によって直接侵害品が 完成するかどうかが左右されるような場合に該当するといわざるを得ない。
エ 以上に対し原告は,被告が被告製品1や2等のカタログにおいて,回路 モニタ機能等を強調していることや,被告表\示器Aが他の被告製品と比べて高額で あること等からすると,本件発明1を全く実施しないという使用態様が被告表示器Aと被告製品3のユーザの下で経済的,商業的又は実用的な使用形態としてあると\nは認められないと主張している。 しかし,前記ウで述べた事情からすると,カタログで強調されているからといっ て,ユーザが必ず回路モニタ機能等を使用するとまで認めることはできない。原告は,他の回路モニタ機能\等を使用できない被告製品(被告製品1−3等)との価格差も指摘するが,当該他の機種では回路モニタ機能等を使用することはできないものの,前記認定の被告表\示器Aと他の機種との画面サイズや機能の違いを踏まえる\nと,被告表示器Aを購入する者が回路モニタ機能\等を使用することを当然の前提としてこれを購入するものであるとまで認めることもできない。 なお,原告は,他社が回路モニタ機能等を使用できない廉価な製品を販売していること(甲23,24)を指摘しているが,それと被告表\示器Aや被告製品3とでは回路モニタ機能等以外の機能\が異なっており,またハード面での差異や購入後の サポートの内容も異なっていること(甲5,23,乙17)などを踏まえると,原 告のこの指摘によって上記事情が基礎付けられるともいえない。 以上より,本件発明1を全く実施しないという使用態様が,被告表示器Aと被告製品3の経済的,商業的又は実用的な使用形態でないと認めることはできないから,\n原告の上記主張は採用できない。なお,原告は東京地裁平成13年10月31日判 決を引用しているが,本件と事案を異にするから,本件には妥当しないというべき である。
オ 以上より,直接侵害の成立は認められない。したがって,仮に被告表示器Aと被告製品3の販売行為を実質的にセット販売と評価し得るとしても,その販\n売行為をもって本件特許権1の直接侵害行為と評価することはできない。
(5) 以上より,被告による被告表示器Aと被告製品3の製造,販売等の行為は本件特許権1の直接侵害行為に該当しない。\n
カ 主観的要件について
(ア) 特許法101条2号においては,「発明が特許発明であること」(主観 的要件1))及び発明に係る特許権の直接侵害品の生産に用いる「物がその発明の実 施に用いられること」(主観的要件2))を知りながら,その生産,譲渡等をすること が間接侵害の成立要件として規定されている。
(イ) 主観的要件1)について
a 被告は,本件発明1(本件特許1に係る発明)の存在を知った時期 は,本件第1特許の特許請求の範囲を本件発明1に係る構成要件のように訂正することを認めるとの審決(甲20)がされたことを知った平成28年11月16日で\nあると主張している。 そこで,まず,特許発明について特許請求の範囲の訂正があった場合には,訂正後の特許請求の範囲に係る発明を知った時に主観的要件1)を満たすことになるのか, それとも,訂正前の特許請求の範囲に係る発明を知っていれば,特許請求の範囲が 訂正された後の発明との関係でも,主観的要件1)を満たすことになるのかを検討す る。 特許法101条2号が主観的要件1)を間接侵害の要件とした趣旨は,同号の対象 品は適法な用途にも使用することができる物であることから,部品等の販売業者に 対して,部品等の供給先で行われる他人の実施内容についてまで,特許権が存在す るか否かの注意義務を負わせることは酷であり,取引の安全を害するとの点にある。 他方,特許請求の範囲等の訂正は,特許請求の範囲の減縮や誤記等の訂正等を目的 とするものに限られ(特許法126条1項),特許請求の範囲等の訂正は,願書に (最初に)添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にお いてしなければならず(同条5項),かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変 更するものであってはならないとされている(同条6項)。そして,特許請求の範囲 等の訂正をすべき旨の審決が確定したときは,その訂正後における特許請求の範囲 により特許権の設定の登録がされたものとみなされる(同法128条)。 以上のように,特許請求の範囲の訂正が認められる場合が上記のように限定され ていることを踏まえると,訂正前の特許請求の範囲に係る特許発明を知っていれば, 特許請求の範囲が訂正された後の特許発明との関係でも,主観的要件1)を満たすこ とになると解するのが相当である。このように解しても,特許法101条2号が主 観的要件1)を求めた趣旨に反するわけではないし,第三者にとって不意打ちとなる こともないからである。 なお,本件第1特許の特許請求の範囲の訂正も誤記の訂正及び特許請求の範囲の 減縮を目的とするもので,その他の訂正の要件も満たしており(甲19の1ないし 20),被告製品3は本件発明1の技術的範囲に属する以上,上記訂正前の本件発明 1の技術的範囲にも属することは明らかである。
b 本件では,被告は訂正前の本件発明1の存在を知っていたことを自認しているものの,その時期は原告からの警告書を受領した平成25年4月2日で あると主張している。これに対し,原告は被告が訂正前の本件発明1の存在をその 登録時の平成17年7月22日から知っていたと主張していることから,以下,被 告が平成25年4月2日よりも前に訂正前の本件発明1の存在を知っていたかを検 討する。
(a) 証拠(甲1,5,34,乙1ないし3,19,20)及び弁論の 全趣旨によれば,次の事実が認められる。
・・・
確かに,上記(a)の4)と5)の事実だけを見れば,原告の主張は理解し得ないわけで はないが,表示されたラダー回路の接点・コイルの指定による検索機能\\\自体は,被 告自身が平成8年12月以降,販売している「MELSEC QnA」という汎用シーケンサにおいて採用されていたのであり,GOT900で初めて採用された機 能とは認められない。そして,GOT900では,「MELSEC QnA」とは異なり,タッチパネル によって接点・コイルを指定するものとされており,これは変更点であり,訂正前 の本件発明1との共通点ではあるが,このような変更がされたのは,そもそもの操 作方法が「MELSEC QnA」ではキーボードであったのに対し,GOT90 0ではタッチパネルが採用されていたためとみることも可能である。したがって,上記事実から,被告が本件第1特許の出願を知っていたことが推認されるとまでい\nうことはできない。 そして,GOT1000でワンタッチ回路ジャンプ機能が採用されたのは,GOT900においてタッチパネル上で接点・コイルを指定して検索する機能\能\\が採用さ\nれていたことの延長線上にあるものと見ることも決して不合理ではない。 以上のような事実関係に照らせば,被告が本件第1特許の登録時に訂正前の本件 発明1の存在を知っていたとまで推認することはできない。そして,平成25年4 月2日にされた原告から被告への警告書の送付以外に,被告が訂正前の本件発明1 の存在を認識し得たことをうかがわせる事情は認められない。
なお,原告は,被告と原告はトヨタからの受注を獲得すべくしのぎを削っていた こと(甲32)や,原告や被告が他社との契約において,納入品の製作・納入に当 たり,第三者の特許権等を侵害しないよう,万全の注意を払うべき旨が明記されて いること(甲41)を指摘しているが,これらは一般的な事項にすぎず,上記具体 的な事実関係に照らせば,被告が訂正前の本件発明1を知っていたことを推認させ る事実になるとはいえない。 したがって,被告が平成25年4月2日より前に訂正前の本件発明1の存在を知 っていたと認めることはできない。
c 以上より,被告が訂正前の本件発明1の存在を知ったのは平成25年4月2日であると認められる。
(ウ) 主観的要件2)について
a 被告は,被告製品3には本件発明1を実施しない実用的他用途が存 在しており,また基本的に販売代理店に対して被告製品3を販売しているにすぎな いから,被告製品3がユーザの下で本件発明1の実施に用いられることを知らない と主張している。
b まず,どのような場合に主観的要件2)を満たすものと考えるべきか, すなわち,適法な用途にも使用することができる物の生産,譲渡等が特許「発明の 実施に用いられることを知りながら」したといえるのはどのような場合かについて 検討する。 そもそも,特許法101条2号の間接侵害は,適法な用途にも使用することがで きる物(多用途品)の生産,譲渡等を間接侵害と位置付けたものであるが,その成 立要件として,主観的要件2)を必要としたのは,対象品(部品等)が適法な用途に使用されるか,特許権を侵害する用途ないし態様で使用されるかは,個々の使用者 (ユーザ)の判断に委ねられていることから,当該物の生産,譲渡等をしようとす る者にその点についてまで注意義務を負わせることは酷であり,取引の安全を著し く欠くおそれがあることから,いたずらに間接侵害が成立する範囲が拡大しないよ うに配慮する趣旨と解される。 このような趣旨に照らせば,単に当該部品等が特許権を侵害する用途ないし態様 で使用される一般的可能性があり,ある部品等の生産,譲渡等をした者において,そのような一般的可能\性があることを認識,認容していただけで,主観的要件2)を 満たすと解するのでは,主観的要件2)によって多用途品の取引の安全に配慮するこ ととした趣旨を軽視することになり相当でなく,これを満たすためには,一般的可 能性を超えて,当該部品等の譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋然性が高い状況が現実にあり,そのことを当該部品等の生産,譲渡等をした者において認識,認\n容していることを要すると解するべきである。 他方,主観的要件2)について,部品等の生産,譲渡等をする者において,当該部 品等の個々の生産,譲渡等の行為の際に,当該部品等が個々の譲渡先等で現実に特 許発明の実施に用いられることの認識を必要とすると解するのでは,当該部品等の 譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋然性が高い状況が現実にあることを認識, 認容している場合でも,個別の譲渡先等の用途を現実に認識していない限り特許権 の効力が及ばないこととなり,直接侵害につながる蓋然性の高い予備的行為に特許権の効力を及ぼすとの特許法101条2号のそもそもの趣旨に沿わないと解される。\n以上を勘案すると,主観的要件2)が認められるためには,当該部品等の性質,その客観的利用状況,提供方法等に照らし,当該部品等を購入等する者のうち例外的 とはいえない範囲の者が当該製品を特許権侵害に利用する蓋然性が高い状況が現に 存在し,部品等の生産,譲渡等をする者において,そのことを認識,認容している ことを要し,またそれで足りると解するのが相当であり,このように解することは, 「その物がその発明の実施に用いられることを知りながら」との文言に照らしても 不合理な解釈ではない。
ア 本件の間接侵害への特許法102条1項の適用の可否
上記認定事実のとおり,本件では,被告製品3はプログラム(ソフトウェア)\nであるのに対し,原告の製品は表示器(ハードウェア)に予\めプログラム(ソフト\nウェア)がインストールされた完成品であるという相違がある。このことも踏まえ, 被告は,間接侵害には特許法102条1項は適用されないと主張している。 特許法102条1項本文は,侵害者が「侵害の行為を組成した物」を「譲渡した ・・数量」に,特許権者等が「その侵害行為がなければ販売することができた物」の 「単位数量当たりの利益の額」を乗じて得た額を,特許権者等が受けた損害の額と することができる旨を定める。この規定は,侵害行為がなければ特許権者等が利益 を得たであろうという関係があり,そのために特許権者等に損害が発生したと認め られることを前提に,特許権者等の損害額の立証負担を軽減する趣旨に基づくもの であるが,そこに定める損害額の算定方法からすると,これにより算定される損害 の額は,特許権者等の「その侵害行為がなければ販売することができた物」の逸失 販売利益に係る損害の額であることを前提にしており,さらに,侵害者の「侵害の 行為を組成した物」の譲渡行為と特許権者等の「その侵害行為がなければ販売する ことができた物」の販売行為とが同一の市場において競合する関係にあることも前 提としているものと解される。 他方,物の発明に係る間接侵害が対象とするのは,実施品の「生産に用いる物」 の譲渡等であり,実施品を構成する部品だけでなく,実施品を生産するための道具\nや原料等の譲渡等もこれに含まれるから,必ずしも侵害者の間接侵害品の譲渡行為と特許権者等の製品(部品等のこともあれば完成品のこともある)の販売行為とが 同一の市場において競合するとは限らない。そして,本件のように間接侵害品が部 品であり,特許権者等が販売する物が完成品である場合には,前者は部品市場,後 者は完成品市場を対象とするものであるから,両者の譲渡・販売行為が同一の市場 において競合するわけではない。しかし,この場合も,間接侵害品たる部品を用い て生産された直接侵害品たる実施品と,特許権者等が販売する完成品とは同一の完 成品市場の利益をめぐって競合しており,いずれにも同じ機能を担う部品が包含さ\nれている。そうすると,完成品市場における部品相当部分の市場利益に関する限り では,間接侵害品たる部品の譲渡行為は,それを用いた完成品の生産行為又は譲渡 行為を介して,特許権者等の完成品に包含される部品相当部分の販売行為と競合す る関係にあるといえるから,その限りにおいて本件のような間接侵害行為にも特許 法102条1項を適用する素地がある。 したがって,本件では,以上の考え方に基づき各要件の解釈をすることを前提に,特許法102条1項の適用を肯定するのが相当である。
イ 「侵害の行為がなければ販売することができた物」について
(ア) この要件に該当する「物」について,原告は,プログラム(ソフトウ\nェア)を表示器(ハードウェア)にインストールした原告の製品全体であると主張\nするのに対し,被告は,原告がハードウェアとソフトウェアを別個に販売していな\nいことから,原告の製品はソフトウェアである被告製品3と競合関係にないとして,\n原告の製品が「侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たらないと主 張している。 しかし,前記アで述べたところからすると,本件のような間接侵害の場合の「侵 害の行為がなければ販売することができた物」とは,特許権者等が販売する完成品 のうちの,侵害者の間接侵害品相当部分をいうものと解するのが相当である。
(イ) これを本件についてみると,原告の製品では回路モニタ機能や「追い\nかけモニタ機能」及び「ズームアップ検索機能\」が使用可能で,これは被告製品3\nで使用可能な回路モニタ機能\やワンタッチ回路ジャンプ機能(本件発明1の構\成要 件1E及び1Fの構成を充足する機能\)と同様の機能であって,これが原告の製品\nに予めインストールされているプログラム(ソ\フトウェア)による機能であること\nは明らかである。したがって,原告の製品と被告製品3を用いた完成品とは,その ようなソフトウェアが格納又はインストールされているという点で共通していると\nいうことができるから,原告の製品は,被告製品3を用いた完成品と市場で競合する物であるということができる。 そうすると,本件での「侵害の行為がなければ販売することができた物」とは, 原告の製品全体のうちの,被告製品3に対応するプログラム(ソフトウェア)部分\nである。
ウ 「譲渡数量」(侵害者が譲渡したその侵害の行為を組成した物の数量)に ついて
本件では被告による被告製品3の生産,譲渡等の行為について間接侵害の成 立が認められるから,被告製品3が「その侵害の行為を組成した物」に該当する。 なお,原告は被告表示器Aもこれに含まれると主張して,原告の製品(完成品)\nの単位利益に乗じるものとして被告表示器Aの販売数を問題としているが,被告表\ 示器Aの製造,販売について間接侵害が成立しないことは,前記3(1)及び(2)エ(ア) で判示したとおりであり,そうである以上,特許法102条1項の適用に当たって, 被告表示器Aが「その侵害の行為を組成した物」に該当することはないというべき\nである。 そして,原告は,被告製品3を「その侵害の行為を組成した物」とする場合の予\n備的な主張として,被告製品3の販売数を譲渡数量としているところ,平成25年 4月1日から平成29年12月末までの被告製品3の販売数は,合計●(省略)● 台である(前記(2)ウ)。 被告が本件発明1(本件特許1)の存在を知ったのは平成25年4月2日であり, 同日以降の被告製品3の譲渡等について間接侵害が成立することから,上記認定の販売数から同月1日の販売数を控除する必要がある。本件の主張立証から同日の販 売数は明らかでないから,同月の販売数(●(省略)●台)を4月の日数である3 0で除した●(省略)●台(1台未満は四捨五入)を同月1日の販売数と認めるほ かない。したがって,同月2日から平成29年12月末までの被告製品3の販売数 は,合計●(省略)●台と認められる。 なお,被告は,間接侵害が成立するのは主観的要件を具備して行った被告製品3 の生産,譲渡等のみであり,その立証がされていないと主張しているが,被告の行 為が間接侵害の主観的要件を具備していることは,前記3(2)カで判示したとおりで ある。
エ 侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益 額について
(ア) 原告の製品全体の平成25年度の1台当たりの限界利益額が●(省略) ●円であることは,当事者間に争いがなく(前記(2)イ),その他の年度についても同様と推認されるところ,上記イで認定したとおり,「侵害の行為がなければ販売す ることができた物」に当たるのは原告の製品のうちのプログラム(ソフトウェア)\n部分であるから,原告の製品のうちソフトウェア部分の限界利益額をもって「単位\n数量当たりの利益額」に当たるとみるべきことになる。
(イ) この点に関し,被告は,自らの製品のカタログ(甲5)記載の表示器\n(被告製品1−1)とソフトウェア(被告製品3−1)の参考標準価格を参考にし\nて,原告の製品のうちソフトウェア部分の限界利益額を算出すべき旨主張している。\nこれに対し,原告は被告が被告表示器の価格を高く設定し,ソ\フトウェアである被 告製品3の価格を低く設定するビジネスモデルをとっているから,被告の価格設定 を参考とすべきではなく,本件発明1の価値の高さに鑑み,ソフトウェア部分の寄\n与度は9割を下らないと主張する趣旨と解される。 被告製品1−1の参考標準価格は22万円から53万円,被告製品1−2の参考 標準価格は22万円から43万円であるのに対し,被告製品3−1の参考標準価格 は,単体ライセンス品で●(省略)●万円,200ライセンスまで登録可能なサイ\nトライセンス品で4万円である(前記2(2)ア(カ),(キ)参照)。このように,サイト ライセンス品と単体ライセンス品との価格差がわずかであり,被告表示器のような\n生産設備に用いる装置の場合,通常は複数台が購入され,その場合にはサイトライ センス品が購入されると考えられることからすると,通常の場合には,被告表示器\n1台当たりに必要なソフトウェア費用が極めて安価になり,原告が指摘するようなソ\フトウェアで利益を上げないビジネスモデルが存在している可能性もある。その\nため,サイトライセンス価格や実際の被告表示器1台当たりのソ\フトウェア費用 (被告の主張によっても平成26年における被告表示器Aの販売台数は被告製品3\nの販売枚数の約60倍であるから被告主張のとおり単価は500円となる。)を参考 として,被告表示器の参考標準価格と比較する場合には,ソ\フトウェアの価値が不 当に低く算定されることになり,相当でないと考えられる。しかし,単体ライセン ス品の参考標準価格を用いる場合には,被告表示器1台のみを購入する場合が想定\nされるから,この場合にはソフトウェアによる採算も軽視されないはずであるし,\n単体ライセンス品の参考標準価格は●(省略)●万円であるから,被告表示器のよ\nうなハードウェアと被告製品3のようなソフトウェアに要する一般的な原価の差も\n考えると,ハードウェアとソフトウェアの価値が相応に反映されていると考えられ\nる。
他方,原告は,原告の製品における本件発明1の寄与度が9割を下らないと主張 するが,前記1の認定・判示によれば,従来技術を参酌して導かれる本件発明1の 特徴的技術手段は,表示されたラダー回路の出力要素を指定して入力要素を検索す\nるに当たり,出力要素の指定をタッチにより行うという点にすぎないから,製品全 体に対するその寄与度は9割を大きく下回ると考えられる。 以上からすると,本件で原告の製品の利益におけるソフトウェア部分の利益を算\n定するには,被告表示器1Aと被告製品3−1の参考標準価格を参考にして原告の\n製品におけるソフトウェア部分の限界利益額を算定するほかないというべきである。\nこれを参考にして被告表示器1Aと被告製品3−1の合計額に占める被告製品3\n−1の価格割合を算定すると,被告表示器1A(ただし,被告製品1−2のうちそ\nもそも回路モニタ機能等を使用できない機種及び生産を終了した機種は除く。)のカ\nタログ記載の参考標準価格は,平均すると●(省略)●円(税抜)であり(甲5), 被告製品3−1の通常の単体ライセンス品の参考標準価格は●(省略)●万円であ る(税抜)から,被告製品3−1の価格の全体に占める割合は,●(省略)●%(0.1%未満四捨五入)と認められる。 なお,被告は被告製品1−1の参考標準価格の平均値をもとに算定しているが, 被告製品3−1がインストールされて回路モニタ機能等が使用され得る被告製品に\nは被告製品1−2も含まれるから,被告製品1−2の参考標準価格も参考にすべき である。また,被告は1枚の被告製品3が約60台の被告表示器Aにインストール\nされていることを前提に,被告製品3の価格を500円として算定しているが,そ のような場合の価格が被告製品3の価値を反映したものであるのかについては前記 のとおり問題があるから,被告製品3−1の通常の単体ライセンス品の参考標準価 格である●(省略)●万円をもって同製品の価格であると認めるのが相当である。
(ウ) 以上より,原告の製品のうちソフトウェア部分の限界利益額(1台当\nたりの金額)は,上記(ア)記載の金額に●(省略)●%を乗じた4118円と認めら れる。
オ 「販売することができないとする事情」の有無
(ア) まず,被告は被告製品3と原告の製品とが競合することはないから, 原告の譲渡数量の全部について,原告が販売することができない事情が存在すると 主張しているが,この主張に理由がないことは,前記アで認定・判示したとおりで ある。
(イ) 次に,被告は,被告製品3を購入した者の全てが回路モニタ機能を使\n用しているわけではないとか,回路モニタ機能を使用するのにオプション機能\ボー ドの設置が必要な被告製品1−2を購入した者のうちオプション機能ボードを購入\nしたのは約4分の1にとどまり,実際に回路モニタ機能等を使用していないユーザ\nはさらに多く存在すると主張する。 特許法101条2号に係る間接侵害品たる部品等は,特許権を侵害しない用途な いし態様で使用することができるものである。そして,そのような部品等の譲渡は,譲渡先での使用用途ないし態様のいかんを問わず間接侵害行為を構成するが,実際\nに譲渡先で特許権を侵害する用途ないし態様で使用されていない場合には,譲渡先 の顧客は当該特許発明の価値に吸引されて当該部品等を購入したわけではないから, 間接侵害品の売上げに当該特許権が寄与しておらず,そのような譲渡先については, 間接侵害行為がなければ特許権者の製品が販売できたとはいえないことになる。し たがって,特許権者等の損害額の算定に当たっては,そのような事情は,特許法1 02条1項ただし書の事由を構成すると解するのが相当である。\nこれを本件についてみると,先に2(4)イ(イ)で述べたとおり,乙17及び18に よれば,回路モニタ機能等に対応している被告製品1−2を購入した者のうち,オ\nプション機能ボードを購入しなかった者が相当程度存したと認められ,被告製品1\n−1や被告表示器2Aのユーザが須く回路モニタ機能\等を目的にこれらを選ぶとま で認めることは困難である。このように譲渡先が回路モニタ機能等を利用しない場\n合があることは,特許法102条1項ただし書の事由として考慮すべきであるが, その程度が明らかでないから,その考慮は極めて限定的になし得るにとどまるとい うべきである。
(ウ) 次に,被告は,1)原告がPLC用表示器の市場において意味のあるシ\nェアを有していないこと,2)原告の製品のソフトウェアに占める本件発明1の貢献\n度(寄与度)は高くても0.1%を上回ることはないこと,3)原告が宣伝広告活動において「追いかけモニタ機能」や「ズームアップ検索機能\」を重視していなかっ たことを指摘している。
a 特許法102条1項ただし書の「販売することができないとする事 情」は,侵害行為がなければ特許権者等の製品を侵害品と同じ数量だけ販売できた との相当因果関係を阻害する事情を対象とするものである。
b そして,被告の主張1)について,前記(2)エ認定の事実によれば,プ ログラマブル表示器について,原告のシェア(販売数量)と被告のシェア(販売数\n量)との間には,非常に大きな差異があったと認められるところ,シェアの格差に は,製品の魅力以外にも,営業力やブランド力等の差異も多分に影響するものであ るから,原告と被告のシェアに大きな格差があるという事情は,このような営業力 やブランド力等の差異という観点から,「販売することができないとする事情」を基 礎付ける1つの事情にはなるといえる。
c また,原告のシェアが小さいという上記の被告の主張1)は,被告以 外の他社の同種製品(競合品)が市場に多数存在しているから,被告製品3が販売 されなかったとしても,被告の製品が吸収した需要は他社の競合品が吸収し,原告 の製品の売上増加にはつながらないとの趣旨を含み,また,同様に上記の被告の主 張2)は,本件発明1の価値が低いから,被告製品3が販売されなかったとしても原 告の製品の売上増加にはつながらないとの趣旨と解される。 この点については,一般に侵害者の侵害品は特許発明の作用効果を奏するものと して顧客吸引力を有する製品であるから,それと同等の機能ないし効果を奏するも\nのでなければ,特許発明の実施品に対抗して需要を吸収し得る競合品として重視す ることができない。しかし,前記1の認定・判示によれば,従来技術を参酌して導 かれる本件発明1の特徴的技術手段は,表示されたラダー回路の出力要素を指定し\nて入力要素を検索するに当たり,出力要素の指定をタッチにより行うという点にす ぎない。また,前記1で認定したとおり,従来製品として,モニタ上に表示される\n異常種類のうち特定のものをタッチして指定すると,その指定された異常種類に対 応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路が表示され,さらにそのラダー回路\nの接点をタッチしてコイルを検索することができ,1回前に検索されたラダー図と 前回路の検索もできる構成を備える製品(乙11のもの)や,同様の製品において\n異常種類の原因となるコイルの指定や接点の指定をタッチパネル上の入力画面でデ バイス名又はデバイス番号を入力して行う製品(被告のGOT900)も存在して いた。そうすると,本件発明1に係る機能をすべて使用することができる製品が被\n告の製品以外に存在していなかったとしても,上記のような製品は存在しており, そのような製品でも,異常現象の発生時にラダー回路図面集を参照しなくても真の 異常原因を特定したり,原因の特定のために次々にラダー回路を読み出していった りすること自体は可能であり,それほど複雑な操作を要するものではないと認められるから,原告の製品とほぼ同様の機能\を備えたものであるといえる。 また,原告の製品が,上記の本件発明1の特徴的技術手段を備えるか否かも必ず しも明らかでない。 したがって,本件では,競合品の存在により,被告製品3が販売されなかったと きに原告の製品が同じだけ販売されたとの相当因果関係は,かなり大きな程度で阻 害されると認めるのが相当である。
d また,上記被告の主張3)は,原告の製品において本件発明1の機能\nは重要なものではないから,被告製品3が販売されなくとも,需要者が原告の本件 発明1の機能に惹かれて原告の製品を購入することがないとの趣旨と解される。\nしかし,原告は,カタログに甲26の図を掲載することに加え,各製品の主な特 徴の1つとして,「異常発生時,画面操作のみで問題箇所まで追いかけることができ る」ということを記載していたのであるから,実際に重要な機能として位置付けら\nれており,そして,これらの機能を顧客に対してアピールしていたと認められ,こ\nの点については被告の上記主張は採用できない。
(エ) 以上のことを踏まえると,本件では,被告製品3が販売されなかった ときに原告の製品が同じだけ販売されたとの相当因果関係は,かなり大きな程度で 阻害されると認められる。 しかし,本件における被告製品3の譲渡数量は,前記のとおり●(省略)●枚で あるが,被告によれば,平成26年の被告表示器Aの販売台数は被告製品3の約6\n0倍であるというのであるから,少なくとも被告製品3は1枚当たり約60台の被 告表示器Aにインストールされたといえる。これに対し,原告の製品は,表\示器に ソフトウェアがインストールされた完成品であり,前記エで認定したそのソ\フトウ ェア相当部分の単位利益の額は,表示器1台のソ\フトウェア相当部分の利益額であ り,その販売数量も表示器の販売数量と同じになるべきものである。そうすると,\n本件において,「販売することができないとする事情」として,侵害行為がなければ 特許権者等の製品を侵害品と同じ数量だけ販売できたとの相当因果関係を阻害する 事情の程度を判断するに当たっては,このような数量ベースの差を考慮すべきであ り,原告の製品のソフトウェア部分の数量ベースから見ると,いわば被告製品3の\n販売数量が実質的には約60倍ある関係にあることになるから,そのことを踏まえ て,被告製品3の販売行為がなければ原告の製品のソフトウェア部分を被告製品3\nの販売数量と同じ数量だけ販売できたとの相当因果関係がどの程度阻害されるかを 検討すべきである。 そして,このような考慮に基づく場合には,前記(イ)及び(ウ)で述べた諸事情を考 慮するとしても,本件において,被告製品3の譲渡数量●(省略)●枚の全部又は 一部を「販売することができないとする事情」があるとは認められない。
カ 譲渡数量に単位数量当たりの利益を乗じた額
上記ウないしオの判断を踏まえると,特許法102条1項に基づく原告の損 害額は,次のとおり,●(省略)●円と認められる。
(計算式) ●(省略)●台×4118円=●(省略)●円
(4) 原告の特許法102条2項に基づく主張について
ア 特許法102条2項は,侵害者が侵害行為により受けた利益の額を特許 権者等が受けた損害の額と推定すると定めるところ,この規定の趣旨は先に同条1 項について述べたのと同様であると解される。したがって,先に同条1項について 述べたのと同様の考え方の下に,本件において同条2項の適用を肯定するのが相当 である。
イ 侵害者が侵害の行為により受けた利益の額
(ア) これについて,原告は,被告による被告表示器Aの販売利益も含めて\n特許法102条2項の損害推定が働くと解すべきと主張している。 しかし,特許法102条2項は「その者(注:侵害者)がその侵害の行為により 利益を受けているときは,その利益の額」を特許権者等が受けた損害の額と推定す ると規定しているところ,本件で原告の本件特許権1の侵害が認められたのは,被 告による被告製品3の生産,譲渡等であり,被告表示器Aの製造,販売については\n間接侵害の成立は否定されたから,被告による被告表示器Aの販売利益が上記「利\n益の額」に含まれないことは明らかである。これに反する原告の主張は条文の文言 に照らして採用できない。
(イ) 原告は被告製品3について,販売数や平均売価,限界利益率を推計し て主張しているが,これらを認めるに足りる証拠がないことは,前記(2)ウで判示し たとおりである。そこで,被告の利益額は,被告が開示した販売額(売上額)及び 限界利益率をもとに算定するほかない。
a 被告製品3の売上額
前記(2)ウで認定した別紙「被告製品3の販売数量・販売額」記載の販売 額等をもとに,被告が本件発明1(本件特許1)の存在を知った平成25年4月2 日から平成29年12月末までの売上額(販売額)を認定すると,次のとおり,● (省略)●円と認められる(平成25年4月1日の販売数を●(省略)●枚とみる ことにつき,前記(3)ウ参照)。 (計算式) ●(省略)●円−●(省略)●円(平成25年4月1日から同年9 月末までの販売数)×●(省略)●(同年4月2日から同年9月末までの販売数) ÷●(省略)●(同年4月1日の販売数を含んだもの)=●(省略)●円(計算過 程で生ずる1円未満の端数は四捨五入)
b 被告の限界利益率
前記(2)ウで認定した被告の限界利益率は,●(省略)●%である(別紙 「被告の変動費の内訳,加重平均値及び限界利益率」の(3)参照)。
c 被告の利益額
上記a及びbによれば,●(省略)●円と認められる。なお,これによ れば,被告製品3の1枚当たりの利益額は,●(省略)●円である(計算式:● (省略)●円÷●(省略)●台=●(省略)●円)。これは,前記原告の製品のソフ\nトウェア部分の単位利益額の約●(省略)●倍である。
ウ 推定覆滅事由について
(ア) 原告は被告製品3につき本件発明1の寄与度を50%と主張している のに対し,被告はこれを1万分の1と主張するとともに,被告製品3の特徴的技術 手段の顧客への訴求力が極めて低いとか,本件発明1の技術的・商業的な価値は高 くないなどと主張している。 ここで考えるべき寄与度は,製品の顧客吸引力上の寄与度であるから,被告が主 張するようなデータ量などという物理的な側面に着目することは相当でないが,先 に特許法102条1項ただし書について述べたところ((3)オ(ウ)b,c)と同様, 本件発明1の特徴的技術手段は,表示されたラダー回路の出力要素を指定して入力\n要素を検索するに当たり,出力要素の指定をタッチにより行うという点にすぎず, 異常発生時のラダー回路の検索機能を備えた競合品も存在していたことに加え,被\n告製品3は回路モニタ機能等以外の様々な機能\を使用可能とするプログラム(描画\nソフトを含む。)が格納されていることからすると,被告製品3における本件発明1の寄与度は相当程度に低いということはできる。\nしかし,そうであるとしても,原告が原告の製品のソフトウェア部分をどの程度\n販売することができたかについては,先に特許法102条1項について述べたとこ ろ(前記(3)オ(エ))と同様,被告製品3と原告の製品のソフトウェア部分とでは,\n数量ベースが異なり,被告製品3の販売数量が,原告の製品のソフトウェア部分の\n数量ベースから見ると実質的には約60倍ある関係にあることを踏まえる必要があ る。
(イ) 他方,単位数量当たりの限界利益の額の差も推定覆滅に影響するとこ ろ,その点については,被告製品3が原告の製品のソフトウェア部分の約●(省略)\n●倍大きいこと(逆にいえば,原告の製品のソフトウェア相当部分が被告製品3の\n約●(省略)●%にとどまること)も考慮する必要がある。
(ウ) 以上の事情を踏まえると,推定覆滅率は●(省略)●%と認めるのが 相当である。
(エ) 以上より,特許法102条2項に基づく原告の損害額は,次のとおり,●(省略)●円と認められる。ただし,前記(3)で認定した同条1項に基づく原告の 損害額(●(省略)●円)の方が高いことから,その額を認容することとする。 (計算式) ●(省略)●円×●(省略)●=●(省略)●円
(5) 弁護士費用
原告は本件訴訟の追行等を原告訴訟代理人に委任したところ(当裁判所に顕著 な事実),被告の特許権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は,430万円と 認めるのが相当である。
(6) 以上より,原告の損害額は合計4702万8368円と認められる。
9 争点7(本件特許権1又は3の間接侵害を理由とする被告製品3及び4の生 産,譲渡等の差止め及び廃棄を命じることの可否)
(1) 被告による被告製品3の製造,販売及び同製品に係るコンピュータ・プロ グラムの使用許諾について,本件特許権1の間接侵害(特許法101条2号)が成 立するから,被告製品3(被告製品3に係るソフトウェアを記録した媒体と解され\nる。)の生産,譲渡及び同製品に係るコンピュータ・プログラムの使用許諾について の差止めを認容すべきである。 また,被告製品3の製品は本件特許権1の侵害の行為を組成した物に当たり,ま た被告は現在に至るまで被告製品3を生産,譲渡等していることに照らせば,同製 品が同特許権を侵害する用途として使用されるおそれがあるから,その侵害の予防\nのために同製品の廃棄を命じる必要性・相当性が認められる。
(2) なお,被告は,被告製品3には適法な用途があるから,その生産,譲渡等 を全面的に差し止め,廃棄を命じるのは過剰である旨主張する。 しかし,被告製品3に適用な用途があるとしても,被告製品3が本件発明1の特 徴的技術手段を担う不可欠品であり,その譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋 然性が高い状況が現実にあり,そのことを被告において認識,認容していると認め られる以上,その生産,譲渡等を全面的に差し止め,その廃棄を命じるのが,多用途品であっても侵害につながる蓋然性の高い行為に特許権の効力を及ぼすこととし た特許法101条2号の趣旨に沿うものというべきであるし,そのように解しても, 被告は,被告製品3から本件発明1の技術的特徴手段を除去する設計変更をすれば 間接侵害を免れるのであるから,被告製品3の生産,譲渡等の差止め命令及び廃棄 命令が過剰な差止め・廃棄命令であるとは解されない(なお,被告製品3にこのよ うな設計変更をした場合でも,製品名が変わらない場合には,差止判決の対象外と するために請求異議訴訟を経ることが必要になるが,そのような起訴責任を転換す る負担を被告が負うことはやむを得ないというべきである。)。

◆判決本文

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平成28(ワ)6494  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年12月18日  大阪地方裁判所

 被告製品は,特許権者製の使用済み芯管と一体化すると、本件特許の構成要件を充足するので、「のみ要件」を満たすと判断しました。\n
   イ 構成要件Aの「用いられ」の意味
前記アを前提に検討すると,構成要件Aのうち「ロールペーパの回転速度を\n検出するために支持軸に角度センサを設け」との記載は,本件ロールペーパ等の「複 数の磁石」につき,そのような位置に配置されることを特定するものと理解でき, また,構成要件Aのうち「ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその固\n定時に両者を一体に回転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設け」と の記載は,本件ロールペーパ等について,そのような態様で回転させられることを 特定するものと理解できるし,構成要件Cの「測長センサ」も,構\成要件Aの記載 によって特定されると理解できる。 そうすると,本件発明に係る薬剤分包用ロールペーパの技術的範囲は,構成要件\nBないしDと,構成要件Aによる本件ロールペーパ等の上記特定に係る事項とから\n画されるものと解されるから,一体化製品が上記技術的範囲に属すれば本件発明の構成要件を充足するものであって,一体化製品が構\成要件Aを充足する薬剤分包装 置に実際に使用されるか否かは,上記構成要件充足の判断に影響するものではない\nと解される。 被告らは,原告製使用済み芯管に,輪ゴムを介してロールペーパを巻いたプ ラスチック筒部をセットした一体化製品が構成要件Aの「用いられ」を充足するた\nめには,一体化製品に,構成要件Aを充足する薬剤分包装置に用いられる以外の用\n途が存在しないことが必要であると主張し,予備的に,仮にこれが認められないと\nしても,一体化製品は構成要件Aを充足する薬剤分包装置に用いられて初めて作用\n効果を奏するものであるから,現実に構成要件Aを充足する薬剤分包装置に用いら\nれることが必要であると主張する。 しかしながら,構成要件Aを充足する薬剤分包装置に使用可能\な構成を有し,そ\nの他の構成要件をも充足するものとして薬剤分包用ロールペーパが生産,譲渡され\nれば,その時点で本件特許権の侵害は成立するのであって,その後に構成要件Aを\n充足する薬剤分包装置に当該ロールペーパが使用されるか否かは,特許権侵害の成 否を左右するものではない。 被告らは,本件発明の出願経過に照らし,構成要件Aを充足する薬剤分包装置に\n一体化製品が使用されることが本件特許権侵害に係る必須の要証事実であると主張 するが,原告が,手続補正の際に提出した意見書(乙25)において,本件発明は 構成要件Aを充足する薬剤分包装置に現実に用いられることを必須とする旨を述べたものと解することはできない。\nさらに,被告らは,本件無効審判において,本件訂正後の発明に新規性が認めら れるための構成が特定されたところ,その中には薬剤分包装置に関するものがある\nので,一体化製品が本件発明の技術的範囲に属するかの判断のために,どのような 薬剤分包装置に用いられているかを確認する必要があると主張するが,前記検討し た構成要件Aと,構\成要件BないしDとの関係に照らし,採用できないといわざる を得ない。
ウ まとめ
以上検討したところによれば,本件発明においては,構成要件Aの「用いられ」\nは,構成要件Aの記載によって構\成要件B以下の内容が特定されることを意味する ものとして使われているというべきであるから,そのように特定された構成要件を\n一体化製品が充足する場合には,構成要件Aの「用いられ」を充足すると解され,\nこれ以上に,構成要件Aの「用いられ」が,一体化製品が構\成要件Aを充足する薬 剤分包装置以外には使用されないこと,あるいは現実に構成要件Aを充足する薬剤\n分包装置が存在することを,要件として定める趣旨と解することはできない。
(2)争点(1)イ(一体化製品は「2つ折りされたシート」(構成要件A)を充足す\nるか。)について
ア 被告らは,構成要件Aの「2つ折りされたシート」とは,ロールペーパを薬\n剤分包装置内で2つ折りにするシングルタイプのロールペーパの使用を前提として おり,あらかじめ2つ折りにされたダブルタイプのロールペーパは含まれない旨を 主張する。
イ そこで,検討するに,本件明細書【0018】には,「分包部は,三角板4 で2つ折りにされた際にホッパ5から所定量の薬剤が投入された後,ミシン目カッ タを有する加熱ローラ6により所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯状にヒートシー ルするように設けられている。」との記載があるが,本件明細書【0011】の記 載によれば,本件発明は,一定の張力を保ったままシートを分包部に供給すること により,シートに耳ずれや裂傷が生じることなく薬剤を分包することを可能とする\nものであり,この技術的思想に関しては,給紙部から分包部に送られてくるシート があらかじめ2つに折り畳まれたダブルタイプであっても,折り畳まれてい ション現象が生じるため,)張力変動により分包部でシートを2つ折りした際にシ ートの縁部が正確に重ならない,いわゆる耳ずれが生じ」るという問題は,シング ルタイプのロールペーパを分包部において2つ折りにしてできた空隙に薬剤を投入 した後シートの両側縁部と幅方向に加熱融着する場合であっても,ダブルタイプの ロールペーパを分包部において折り目を広げてその空隙に薬剤を投入した後同様に 加熱融着する場合であっても,同様に生じ得る。 さらに,原告は,本件特許につき拒絶理由通知(乙24)を受けて本件補正を行 っているが,本件明細書【0018】の記載に基づくものであり,元の記載がシン グルタイプのロールペーパを分包部において折り畳むことのみを指すと解するのは 相当ではない(乙25)。
ウ 以上によれば,ダブルタイプのロールペーパを使用する一体化製品も,「2 つ折りされたシート」(構成要件A)を充足するというべきである。
(3) 争点(1)全体についての判断
ア 被告らは,一体化製品につき,構成要件Aのうち,「測長センサ」,「シー\nトを送りローラで送り出す給紙部」,「上記支持軸と上記中空軸の固定支持板間で」, 「中空軸のずれを検出する」といった要件を充足しない旨を主張するが,原告製造 の特定の薬剤分包装置の構成についての主張であり,構\成要件Aと構成要件B以下\nとの関係を前述のとおり解する以上,意味のない主張といわざるを得ない。
イ 一体化製品は,前記第2の1(5)のとおりの構成を有するところ,被告らは,\n構成要件Aに関し,争点(1)ア及びイについて争うものの,構成要件B以下の充足性\nについては争うことを明らかにしておらず(当初,構成要件B及びDの充足を争っ\nたが,後に撤回した。),弁論の全趣旨によれば,一体化製品の構成aは本件発明\nの構成要件Bを,構\成bは構成要件Cを,構\成cは構成要件Dを充足すると認めら\nれ,一体化製品は構成要件Aを充足する薬剤分包装置において使用されることが可\n能な構\成を有すると認められる。
ウ 以上によれば,一体化製品は,構成要件AないしEをすべて充足するから,\n本件発明の技術的範囲に属すると認められる。
エ なお,原告は,被告日進が前訴において構成要件Aの充足性を争わなかった\nことから,本訴訟において構成要件Aの充足性を争うことは信義則に反する旨を主\n張するが(争点(1)ウ),被告日進は,前訴とは異なる製品の関係で,構成要件Aの\n充足性を本訴訟で主張したと認められるから,この点を争うことが信義則に反する とまではいえない。
3 争点(2)(特許権侵害が成立するか。)について
(1) 問題の所在
ア 前記2によれば,一体化製品を完成して譲渡すれば,その時点において特許 権侵害が成立することになるが,前記第2の1(4)及び(5)のとおり,被告らは,一体 化製品それ自体を生産,譲渡しておらず,プラスチック筒部の外周に薬剤分包用シ ートを巻き回したロールペーパ,すなわち一体化製品のうち原告使用済み芯管のな い物を被告製品として生産,譲渡し,これを入手した利用者が,輪ゴムを介してロ ールペーパに原告製使用済み芯管を挿入し,これを一体化製品とした上で,薬剤分 包装置に使用している。
イ この点について,原告は,1)被告製品は,一体化製品の生産にのみ用いる物 であるとして,特許法101条1号の間接侵害を主張するほか,2)被告らの行為は, 顧客との共同による特許権の直接侵害に当たること,3)被告らの行為は,顧客の特 許侵害に対する教唆又は幇助に当たることを主張するので,まず間接侵害の成否に ついて検討する。
(2) 争点(2)ア(被告製品は,一体化製品の「生産にのみ用いる物」と認められる か。)について
ア 被告製品の販売方法
証拠(甲4,5,21,36,文中掲記のもの)によれば,以下の事実が認めら れる。
被告日進の販売するロールペーパの製品には,商品名の冒頭に「A」の付く 製品(被告製品。以下「Aタイプ」という。)と「B」の付く製品(以下「Bタイ プ」という。)があり,両タイプは,それぞれ分包紙の材質として「グラシン」紙 又は「セロポリ」紙を選択できるようになっている。 被告日進が平成28年11月に公開していたウェブサイト(甲20)によれ ば,Aタイプの分包紙の芯管内径は67mmであって,「外径65mm前後の分包機用 芯管に装着可能」とされ,Bタイプの分包紙の芯管内径は52mmであって,「外径 50mm前後の分包機用芯管に装着可能」とされた。\n薬剤分包用ロールペーパとして,外径65mm前後の芯管を製造しているのは 原告のみであり,外径50mm前後の芯管を製造しているのは株式会社タカゾノのみ である(弁論の全趣旨)。
前記ウェブサイトの「よくある質問Q&A」の欄には,「Q.他社分包機に 装着するには特別な道具が必要ですか?」という質問に対し,「A.弊社分包紙は, 『使用済み分包機メーカー製芯管』を使用することによって,お客様ご使用の分包 機に装着することができます。つまり,『使用済み分包機メーカー製芯管』が1個 お手元にあれば繰り返し装着することができます。」との回答が記載されていた。 被告日進が平成28年1月頃にユーザである製剤薬局等に配布していた説明 資料(甲9)には,「使用済み分包機メーカー製芯管」に輪ゴム等を取り付け被告 日進が販売する分包紙製品に差し込むことにより,芯管の空回りを防止しながら被 告日進製以外の分包機において使用する方法がイメージ図や注意事項付きで詳細に 説明されている。
まとめ
以上によれば,被告日進が販売する分包紙のうちAタイプ(被告製品)は,原告 製使用済み芯管と一体化して原告製の薬剤分包装置に使用されることを前提として 生産され,原告製の薬剤分包装置を使用し,既に原告製使用済み芯管を保有してい る者に対し,購入の案内がされたものと認められる。
イ 他の用途について
被告日進製の薬剤分包装置
前記被告日進のウェブサイト(甲20)には,「複数メーカー機に装着可能」と\nいう文言と共に,「分包紙は当社分包機の専用分包紙であり,各社分包機メーカー 及び貴社ご使用の分包機メーカーとは無関係で,承認を受けた製品ではありません。」 という記載があり,前記説明資料(甲9)にも同様の記載があることが認められる。 しかし,被告らの主張によっても,被告日進は,経済産業省により「平成25年 度補正中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」に選定され た後,平成26年に被告日進製の薬剤分包装置について営業活動を開始し,平成2 7年にカタログを作成し,平成28年5月12日に1台,同年10月25日に1台 の被告日進製の薬剤分包装置を販売したことが認められるにとどまる(甲17,乙 1,11,36)。 他方,被告製品は平成26年12月から販売されており,原告代理人は,平成2 8年1月頃に,被告らに対し,本件特許権に基づき被告製品の製造販売の中止等を 求める警告書(甲10)を送付し,同年7月4日に本訴を提起したことが認められ る。 前記時系列によれば,被告製品の販売が開始された当初,これを被告日進製 の薬剤分包装置に装着することはおよそ予定されておらず,むしろ,原告との紛争\nが顕在化した後に,わずか2台を製造販売したにとどまる。 エルク製分包装置(甲19,乙2,14〜16) 被告製品を,エルク製分包装置において使用されている芯管(外径約60mm。以 下「エルク製芯管」という。)に挿入してエルク製分包装置に装着し使用するため には,被告製品の空回りを防止するために厚さ3.2mm程度のOリングを2個,エ ルク製芯管に装着することが必要であり,さらに,被告製品の外径(約193mm) が大きすぎるため,そのままではエルク製分包装置に正常に装着できず,使用開始 に当たって長さ330mの分包紙中約88ないし100m分を廃棄する必要がある ことが認められる。 よって,被告製品をエルク製分包装置に装着して使用することは相当の困難と無 駄を伴い,経済的に合理性のある使用とはいえない。
ウエダ製分包装置(甲23,乙17,18)
ウエダ製分包機については,特定の顧客が,その支持軸を独自に製作した支持軸 に取り換えるという改造を施すことにより,被告製品を装着して使用していること が認められる。 しかし,同顧客の保有するウエダ製分包機は20年以上前に販売が終了している 機種であり,ウエダ製分包機を保有する他のユーザが同様の改造を施して被告製品 を使用することは考えにくいし,改造を施さないウエダ製分包装置において,被告 製品を正常に装着して使用できると認めるべき証拠もない。 よって,被告製品をウエダ製分包装置に装着して使用することは,一般的な使用 方法ということはできない。
タカゾノ製分包装置(乙20,21)
株式会社タカゾノ製の薬剤分包装置において使用されている薬剤分包用ロールペ ーパが,被告製品と同様の構成であることを認めるに足りる証拠はない。\n
まとめ
被告日進製の薬剤分包装置については,被告製品の販売が一定期間行われた後に, わずか2台が製造,販売されたにとどまるものであるから,被告製品が使用された としてもごくわずかといわざるを得ないし,被告以外の薬剤分包装置に被告製品を 使用することには困難が伴い,現実的ではないといわざるを得ないから,被告製品 については,原告製薬剤分包装置に使用する以外の用途は,実質的には存在しない といわざるを得ない。
ウ 争点(2)アについての判断
前記ア及びイで検討したところによれば,被告製品は,原告製使用済み芯管と一 体化し,一体化製品として原告製薬剤分包装置に使用することを想定して生産,譲 渡され,これ以外の用途は実質的には存在しないというべきであるから,被告製品 は,一体化製品の生産にのみ用いるものと認めるのが相当である。
(3) 特許権侵害についての判断
被告らが被告製品を生産,譲渡した段階では,回転角度の検出に用いる磁石を配 置した原告製使用済み芯管はこれと共には存在せず,本件特許の構成要件の全部を\n充足するものではないが,前記(2)で検討した通り,被告製品は,原告製使用済み芯 管と一体化して,本件特許の構成要件を充足する状態で使用することが予\定されて おり,他の用途が実質的に存在せず,一体化製品の生産にのみ用いられるものと認 められるのであるから,被告製品の生産,譲渡は,特許権の直接侵害に至る蓋然性 が極めて高いものとして特許法101条 1 号の間接侵害に当たり,本件特許権を侵 害するものとみなすべきものである。

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平成28(ワ)4759  不当利得返還請求事件  特許権 平成30年12月20日  大阪地方裁判所

 特許の均等侵害における第1要件の判断において、先行の29条の2の先行文献を考慮して、本質的部分の判断がなされました。被告製品は、Amazonの「Kindle paperwhite」です。
(エ) 以上によれば,乙8には,「ホログラムの単位幅における格子部幅/非 格子部幅の比が,導光板の前面出射面から出射する光を効率よく,また,面内で均 一に出射されるように,管状光源から離れる側の方が増大せしめられている」構成\nが開示されているといえる。
ウ したがって,乙8発明は,本件発明の構成要件Bと同一の構\成を備える ものであるから,相違検討点2は相違点とはいえない。
エ 原告の主張について
原告は,乙8には,導光板に設けるホログラムの面積密度を増減させる技術思 想が開示されているだけで,回折格子の単位幅における格子部幅/非格子部幅の比を変化させる技術思想は開示されていないと主張する。 しかし,前記アのとおり,本件発明も,格子部の面積の変化を通じて,導光板の 表面における輝度を増大させ,かつ均一化させるものであり,本件発明と乙8発明\nはその解決課題と解決原理を共通にしている。 そして,上記のとおり,乙8には,本件発明の構成要件Bの構\成を備えたホログ ラムの構成が開示されていると認められるから,本件発明の構\成要件Bはこれを別 の表現で記述したものにすぎず,同一の構\成が開示されていることに変わりはない。 したがって,原告の主張は採用できない。
(6) 小括
以上によれば,本件発明と乙8発明とは,前記の相違検討点1において相違す るから,同一の発明とはいえず,乙8による特許法29条の2違反の無効理由が存 するとは認められないが,本件発明と乙8発明とは,その解決課題及び解決原理を 共通にしており,解決手段たる回折格子の種類についてのみ相違するにすぎないと いうことができる。
・・・
(ア) 本件明細書に記載された従来技術及びその課題
前記認定のとおり,本件明細書では,本件発明に関する従来技術として, 導光板の下面に多数の多面プリズムをもつ透明アクリル樹脂からなり,プリズムに よる光の全反射を利用する導光板が記載されており,その具体例として,特開平5 −127157号公報記載の平面照光装置(本件明細書の図6参照)が挙げられて いる。 そして,その従来技術によっても液晶表示パネルを下方から輝度ムラが少なく明るく照らすことができると記載されているが(【0003】),1)導光板の下面にある 多面プリズムの一辺が例えば0.16mmと,光の波長に比べて相当大きいものである うえ,各プリズムが協同することなく個別に光を全反射するものであるため,導光 板の輝度を全体に高めようとすると,各プリズムの間の谷間にあたる箇所で乱反射 が起きて上面に向かう光量が減り,照光面である上面に極端な明暗のコントラスト が生じるという課題,及び2)このような導光板を設けた平行照光装置を電池で駆動 される液晶表示装置に用いると,照光面に向かう上記光量の減少を補って高輝度を\n得るべく,光源を大電流で照らす必要があるため,電池の寿命が短くなって,長期 使用ができなくなるという課題があったことが記載されている(【0004】)。
(イ) 本件発明の課題解決手段
本件発明は,従来技術の上記課題を解決するため,「光の幾何光学的性質を 利用した従来のプリズムによる全反射でなく,・・・光の波動の性質に基づく回折現象 を利用して,従来より遥かに高く,かつ均一な輝度を照光面全体に亘って得ることが でき,ひいては光源の電力消費の低減による電池の長寿命化も図ることができる導 光板を提供すること」を目的として(【0005】),本件発明の構成を採用したもの\nである。その構成は,(a)透明な板状体である導光板の裏面に回折格子を設け,導光 板の少なくとも一端面から入射する光源からの光をその表面側へ回折させるという点(構\成要件A),(b)上記回折格子の断面形状または単位幅における格子部幅/非 格子部幅の比の少なくとも1つを,上記導光板の表面における輝度が増大し,かつ\n均一化されるように変化させる点(構成要件B)である。
(ウ) 本件発明の作用効果
本件発明の導光板は,α 少なくとも一端面から光源からの光が入射する透 明な板状体の裏面に設けられた回折格子の断面形状または単位幅における格子部幅 /非格子部幅の比の少なくとも1つが,上記導光板の表面における輝度が増大し,\nかつ均一化されるように変化せしめられているので,光の波長に比べて寸法が大き く互いに協同することなく個別に光を幾何光学的に全反射する従来の導光板裏面のプリズムと異なり,ミクロン単位の互いに隣接する微細な格子が協同,相乗して波動 としての光を格段に強く回折できるうえ,β 上記一端面から離れて光源から届く光 量が減じるほど,光をより強く回折するように上記断面形状または単位幅における 格子部幅/非格子部幅の比が調整されているので,導光板の表面は高輝度で非常に\n均一に照らされる。 したがって,γ この導光板を電池で駆動される液晶表示装置,液晶テレビ,非常口 を表示する発光誘導板などに適用すれば,従来に比して格段に少ない消費電力で明\nるく均一な照明を得ることができ,光源および電池の寿命を延ばし,長期使用を可 能にすることができる(【0009】,【0023】)
(エ) もっとも,本件の場合,本件明細書に従来技術が解決できなかった課 題として記載されているところは,以下のとおり,出願時の従来技術に照らして客 観的に見て不十分なものと認められる。
a 導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは光量が減るとの課題(上記(ア)1))を,導光板の裏面に回折格子を設け,回折現象を利用して解決する構成(上記(イ)の(a),上記(ウ)α)について
本件明細書では,導光板の従来技術として,プリズムによる全反射を利用したもののみが記載され,回折現象は今まで導光板に用いられることがなかった と記載されている。 しかし,原告は平成6年3月11日に自ら,発明の名称を「回折格子を利用した バックライト導光板」とし,特許請求の範囲(請求項1)を「成形加工及び印刷 (転写を含む)された回折格子を裏面に有する事を特徴とするプラスチック製のバ ックライト導光板。なをここで裏面とは,液晶面と反対側の面と定義する。」とする 特許の出願をし,その明細書では,【課題を解決するための手段】の項において, 「導光板裏面に光と干渉する程度に微細なスリット形状を成形加工ないし印刷(転 写を含む)し,この反射格子により導光板の一端から入射する光を液晶面側に回折 させる。」(【0006】)と記載し,【発明の効果】の項において,この発明によれば蛍光管からの光を回折格子という極小単位の形状(格子スリットのピッチがサブミ クロンから数十ミクロン)の大きさのものの作用により,導光板面を均一に輝らす\n事ができるので,従来からのドット印刷や全反射を利用した導光板裏面加工による 方式に比較して,格段の面輝度とその均一性が可能になる。」(【0017】)と記載\nしていた(特願平6−79172)(乙10,20)。そして,これは本件発明の構\n成要件Aと同じ構成を備えた発明と認められる。\nまた,前記1で技術的意義等を認定した乙8発明も,回折格子の種類は同じとは 認められないものの,導光板の裏面に回折格子を設け,回折現象を利用して光量の 増大を図る発明である(乙8発明のようないわゆる拡大先願発明も参酌すべきこと は後記のとおりである。)。 以上より,導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは光量が減ると の課題は,本件特許の出願日において,本件発明と同じく導光板の裏面に回折格子 を設け,回折現象を利用することによって既に解決されている課題であったと認め られる。
b 導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは照光面に極 端な明暗のコントラストが生じるとの課題(上記(ア)1))を,回折格子の断面形状ま たは単位幅における格子部幅/非格子部幅の比の少なくとも1つを,上記導光板の 表面における輝度が増大し,かつ均一化されるように変化させることにより解決す\nる構成(上記(イ)の(b),上記(ウ)β)について 先に争点2−2(前記1)について述べたとおり,乙8発明も,導光板 の裏面にホログラムの回折格子を設け,回折現象を利用するものであり,かつ,本 件発明の構成要件Bと同一の構\成を備え,それにより,導光板の表面から出射する\n光を効率よく,また,面内で均一に出射されるようにするものである。もっとも, この乙8発明に係る特許の出願日は平成7年10月27日であり,本件特許の出願 よりも前に出願されたものであるが,乙8発明に係る特許について出願公開がされ たのは平成9年5月16日であり(乙8),本件特許の出願後であるから,乙8発明 はいわゆる拡大先願発明に該当するにすぎない。しかし,特許法29条の2は,特 許出願に係る発明が拡大先願発明と同一の発明である場合を特許要件を欠くものとしているところ,その趣旨の中には,先願の明細書等に記載されている発明は,出 願公開等により一般にその内容が公表されるから,たとえ先願が出願公開等をされ\nる前に出願された後願であっても,その内容が先願と同一内容の発明である以上, さらに新しい技術を公開するものではなく,そのような発明に特許権を与えること は,新しい発明の公開の代償として発明を保護しようとする特許制度の趣旨からみ て妥当でないとの点がある。このように特許法が,先願の明細書等に記載された発 明との関係で新しい技術を公開するものでない発明を特許権による保護の対象から 外している法意からすると,均等侵害の成否の判断のために発明の本質的部分とし て従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分を認定するに当た\nっては,拡大先願発明も参酌すべきものと解するのが相当である。 そうすると,導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは照光面に極 端な明暗のコントラストが生じるとの課題は,本件特許の出願日において,回折格 子として刻線溝又はエンボス型のホログラムを用いるか体積・位相型のホログラム を用いるかの違いがあるとはいえ,本件発明と同じく,回折格子の単位幅における 格子部幅/非格子部幅の比を,導光板の表面における輝度が増大し,かつ均一化されるように変化させることによって既に解決されている課題であったと認められる。\n
c そして,本件発明の,少ない消費電力で明るく均一な照明を得るこ とができないとの課題(上記(ア)2))は,上記a及びbで述べた課題が解決されるこ とに伴い解決されるものである(上記(ウ)γ)から,やはり既に解決されている課題 であったと認められる。
d 以上からすると,本件発明が課題とするところは,いずれも本件特 許の出願時の従来技術によって,同様の解決原理によって解決されていたといえる。 本件発明がそれらの従来技術と異なる点は,回折格子の単位幅における格子部幅/ 非格子部幅の比を,導光板の表面における輝度が増大し,かつ均一化されるように変化させることについて,体積・位相型のホログラムではなく,刻線溝又はエンボ\nス型のホログラムを用いた点にあるが,回折格子としては後者の方がむしろ通常で あること(前記1(4)ウ(ア),(エ),(オ))からすると,本件発明の従来技術に対する 貢献の程度は大きくないというべきである。
ウ 以上よりすれば,本件発明の本質的部分については,特許請求の範囲の 記載とほぼ同義のものとして認定するのが相当である。 この点について,原告は,本件発明の本質的部分は,光の波動の性質に基づく回 折現象を利用して,回折格子の断面形状又は単位幅における格子部幅/非格子部幅 の比に着目した点にあると主張するが,これまで述べたことに照らして採用できな い。
エ そうすると,被告製品の導光板では,前記のとおり,微細構造体が回折\nされた光が進行する側に設けられていることから,構成要件Aでいうところの「表\ 面」に微細構造体が設けられ,光源からの光が「表\面」側に回折させられている。 したがって,被告製品の導光板は構成要件Aの「板状体の裏面に設けられた回折格\n子」という部分を充足していない。よって,被告製品が本件発明の本質的部分を備えているということはできず,本件発明と被告製品とは本質的部分において相違すると認められるから,被告製品は,均等の第1要件を充足しない。

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平成29(ワ)33490  営業差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成30年12月20日  東京地方裁判所

 商標権侵害におけるロイヤリティー率として、原告主張の10%は根拠がないとして、3%が認定されました。
 原告は,1)原告商標を被告店舗の看板に掲示して居住用建物清掃業を営んだ 期間が,平成28年3月11日から平成29年9月10日までの18か月であ ること,2)同期間における被告店舗の売上げが月額100万円を下らないこと, 3)原告商標の使用料率は,被告店舗の売上げの10%相当額を下回ることはな いことを前提にして,180万円と算定されるべきである旨を主張する。 そこで検討するに,まず上記1)の期間の点については,証拠(甲8及び9) 及び弁論の全趣旨によって,そのとおり認められる(上記2(2)参照)。 しかしながら,上記2)の被告店舗の売上月額については,原告の主張する金 額を認めるに足りる証拠はなく,かえって,証拠(乙B6ないし乙B26)及 び弁論の全趣旨からすれば,被告らの主張するとおり月額30万0234円で あると認められる。 また,上記3)の使用料率については,原告主張に係る10%という数字につ き的確な根拠は見当らないこと,経済産業省知的財産政策室編「ロイヤルティ 料率データハンドブック〜特許権・商標権・プログラム著作権・技術ノウハウ〜」(平成22年8月。経済産業調査会)の16頁及び509頁においては,国 内アンケートの結果,原告商標の指定役務の属する第37類におけるロイヤル ティ料率の平均値が2.1%で,3%未満が全体の8割超を占めているとされ ていること等からすれば,原告標章である「おそうじ本舗」の知名度等,原告 指摘の諸点を考慮しても,3%とするのが相当である。 以上を前提に,1)18か月の期間につき,2)月額30万0234円の売上げ につき,3)月額3%の使用料率であるとして計算すると,16万2126円(た だし,1円未満は切り捨て。)となる。
(2) 弁護士費用
上記(1)の金額に加え,本件事案の内容,本件訴訟における主張立証の状況等 を総合考慮すると,商標権侵害を内容とする不法行為と相当因果関係の認めら れる弁護士費用の金額は,10万円である。

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平成29(ネ)10049等  損害賠償請求控訴事件,同反訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年12月26日  知的財産高等裁判所(2部)  東京地方裁判所

 共有者の一部による実施が、特許法73条2項の「別段の定」に違反しないかが争われました。裁判所は、事前の協議及び許可を要する制限があったと判断しました。
1 争点(1)ケ(特許権の移転登録の要否及び「別段の定」の有無)について
(1) 事案に鑑み,争点(1)ケから判断する。
特許権の移転は,相続その他の一般承継によるものを除き,登録しなければ,そ の効力を生じないから(特許法98条1項1号),被控訴人は,本件特許権1の特 許権者(共有持分権者)である(甲1)。 控訴人は,被控訴人の特許法98条1項1号を根拠とする主張は,時機に後れた 攻撃防御方法として却下すべきであると主張するが,被控訴人が本件特許権1に係 る特許原簿に特許権者(共有持分権者)として登録されていた事実(甲1)は,既 に訴状において控訴人が主張していたのであり,控訴人において被控訴人は無権利 者である旨の主張をする際にあらかじめ検討しておくべき事項であるから,上記主張は採用できない。 また,控訴人は,特許法98条1項1号は,通常の特許権の移転について登録を 効力発生要件としたものであって,本件のように,移転が解除されたことにより特 許権が譲受人から譲渡人に対し復帰的に物権変動するときには登録は不要であるな どと主張するが,同号は,相続その他の一般承継による移転には適用されない旨を 明示した上で,「特許権の移転」を対象としていること,同法74条2項は,特許 がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたとき (同法123条1項6号)であっても,その特許に係る発明について特許を受ける 権利を有する者の請求に基づく特許権の移転の登録があったことを要件として,そ の特許権が初めからその登録を受けた者に帰属していたものとみなすとしているこ とに照らすと,本件には同法98条1項1号の適用がない旨の主張は採用できな い。 そうすると,特許法73条2項の「別段の定」をした場合を除き,被控訴人は, 他の共有者の同意を得ないで,本件発明1−1の実施をすることができるから,続 いて,本件4者間の「別段の定」の有無を検討する。
(2) 控訴人は,本件共同出願契約書13条は,本件固定的役割分担合意を規定 するものであり,本件固定的役割分担合意の一部が特許法73条2項の「別段の 定」に該当すると主張するところ,前記第2の2(4)のとおり,本件共同出願契約 書には,中国語で記載され,作成日付及び本件4者の署名があるもの(甲6契約書)と,日本語で記載され,作成日付及び本件4者の署名がないもの(甲5契約 書)とがあるが,甲6契約書には作成日付及び署名があることに加え,B及びAが 中国語を理解し日本語を理解しないこと,甲6契約書は被控訴人従業員が中国語に 翻訳したものであり,控訴人も中国語を理解すること(以上の事実につき,証人 E,弁論の全趣旨)を併せ考慮すると,本件4者は,作成日付及び署名がある甲6 契約書をもって,本件共同出願契約を締結したと認めるのが相当である。
(3) 前記第2の2(4)ア(ク)のとおり,甲6契約書13条には,「事前の協議・ 許可なく,本件の各権利(本件特許権)を新たに取得し,又は生産・販売行為を行 った場合,本件の各権利は剥奪される。(甲,乙,丙及び丁の全員が対象である)」と記載されている。 同条の「生産・販売行為」の対象は,その文理に照らし,「本件の各権利(本件 特許権)」の実施品であると合理的に解釈できるから,同条は,契約当事者間にお いて「本件の各権利(本件特許権)」の実施品の生産・販売行為を制限する趣旨の 条項である。そうすると,契約当事者の合理的意思として,同条の「事前の協議・ 許可なく」とは,「事前の協議及び許可なく」の意味であると解釈でき,同条の 「生産・販売行為」とは,「生産又は販売行為」の意味であると解釈できる。前者 では「・」を「及び」と解釈し,後者では「・」を「又は」と解釈することになる が,いずれも契約当事者の合理的意思に沿うものであり,矛盾はない。また,前記 第2の2(4)ア(ア),(イ)によると,本件特許権1は,甲6契約書にいう「本件特許 権」に該当する。
以上によると,同条は,本件特許権1の共有者がその特許発明の実施である生産 又は販売をすることについて,事前の協議及び許可を要するものとして制限するも のであるから,特許法73条2項の「別段の定」に該当する。 そして,前記第2の2(5),(6)のとおり,被控訴人は,平成28年4月以降,日 本において,本件製造会社に本件発明1−1の実施品である被告各商品を製造さ せ,被告各商品を独自に販売しているが,これについて,事前の協議及び許可を経 たことは,本件全証拠によっても認められない。
したがって,被控訴人が,平成28年4月以降,日本において,本件製造会社に 本件発明1−1の実施品である被告各商品を製造させ,被告各商品を独自に販売し たことは,「別段の定」である甲6契約書13条に違反するものである。
(4) 被控訴人は,本件共同出願契約書7条には,本件発明の実施は,協議によ り別途定める旨の規定があるから,本件共同出願契約には,製造,販売等について の何らかの役割分担に関する合意は含まれないことが明らかであり,同契約書13 条は「別段の定」を規定したものではない旨の主張をする。 しかし,前記第2の2(4)ア(オ)のとおり,甲6契約書7条は,「甲,乙,丙及び 丁は,本件発明の実施に対する協議の後,別途に定める。」と規定するものである から,同契約書13条が,本件特許権1の共有者がその特許発明の実施である生産 及び販売をすることについて,事前の協議及び許可を要するものとすることと矛盾 するものではない。 そして,1)Bが中国国内の工場で本件発明1−1の実施品を製造し,2)これをA が梱包し,3)これを控訴人が仕入れ,4)さらに被控訴人がこれを日本に輸入して販 売するという本件販売形態が本件共同出願契約締結後,長年にわたり続けられてき たことは,当事者間に争いがないから,本件販売形態は,同契約書13条の「事前 の協議・許可」を経たものということができる。このように,製造,販売等につい ての役割分担を含む本件販売形態については,同契約書13条の「事前の協議・許 可」を経たものであるから,同契約書13条と矛盾するものではない。 また,前記第2の2(4)ア(カ)のとおり,甲6契約書8条は,「甲,乙,丙及び丁 は,他の全ての当事者の同意を得なければ,本件特許権を乙,丙及び丁が自ら経営 する法人以外の第三者に譲渡し,或いは本件発明の実施を許諾してはならない。」 と規定するものであるから,同契約書13条が,本件特許権1の共有者がその特許 発明の実施である生産及び販売をすることについて,事前の協議及び許可を要する ものとすることと矛盾するものということはできない。本件共同出願契約書を起案した弁護士が,甲6契約書8条と概ね同様の共同出願契約書案8条の「乙,丙及び 丁のいずれかが主体となって事業を営む法人」という文言に添えたコメントには, 「X様やA様,B様が経営している会社については,同意がなくても製造販売等が 可能です。」と記載されているが(甲49),本件4者が合意に達した甲6契約書で\nはなく,契約書作成過程の書面に付されたものにすぎないし,契約当事者のうち被 控訴人を除く控訴人ら3者が自然人であったことから,控訴人ら3者が将来的に法 人化して事業を営む際にも支障が生じない旨を説明したものと理解できるから,上 記コメントにより,甲6契約書13条が,本件特許権1の共有者がその特許発明の 実施である生産及び販売をすることについて,事前の協議及び許可を要することを 定めたものではないということはできない。 さらに,本件共同出願契約には,靴紐の購入単価又はその決定方法についての条 項はなく,被控訴人が控訴人から靴紐を購入しなければならないことを規定する条 項もないからといって,甲6契約書13条についての上記判断が左右されるもので はない。
(5) 被控訴人は,控訴人が,被控訴人との協議・許可なしに,COOLKNO Tという商品名又はブランド名により本件特許権の実施品を販売しているから,こ の控訴人の販売及び被控訴人の製造販売のいずれも,本件共同出願契約書13条に は違反しないとするのが,契約当事者の合理的意思である,本件特許権の持分を剥 奪されるのは控訴人であり,被控訴人ではないと主張するが,前記(3)のとおり, 甲6契約書13条の文理等に照らし,採用できない。
(6) 被控訴人は,本件共同出願契約書13条後段は,同条前段と合わせて読む べきところ,同条前段は,本件特許権と「実質的同一」の範囲について特許権を新 たに取得することを禁止しているから,同条後段は,実質的同一の範囲内で新たに 取得された特許権について,その実施品の生産・販売を禁止しているものと理解で きると主張する。 しかし,甲6契約書13条前段は,その文理に照らすと,事前の協議及び許可な く,「本件の各権利(本件特許権)」を未取得の国において,「本件の各権利(本件 特許権)」を新たに取得することを禁止するものと解すべきであるから,同条前段 が本件特許権と「実質的同一」の範囲について特許権を新たに取得することを禁止 しているとは認められない。また,同条前段は,「本件の各権利(本件特許権)」を 新たに取得したことのみによって「本件の各権利」を剥奪すると定めていることか らすると,同条後段が,その新たに取得された「本件の各権利(本件特許権)」の実施品を生産又は販売したことによって「本件の各権利」を剥奪することのみを定 めたものと解釈するのは不合理である。同条後段は,既に取得されているか,新た に取得されたものであるかを問わず,「本件の各権利(本件特許権)」の実施品の生 産又は販売行為を無断で行うことを禁止したものと解するのが相当である。
(7) 被控訴人は,本件共同出願契約書13条後段は,日本以外の国での販売行 為を定めた同契約書14条に違反した場合の効果を規定した条項であると理解で き,仮に日本での生産・販売行為について規定したものであるとすると,被控訴人 は,既に販売中の靴紐について,日本での販売中止を前提に本件共同出願契約を締 結したこととなり,著しく不合理であると主張する。 しかし,前記(3)のとおり,甲6契約書13条後段の文理に照らし,日本以外の 国での行為に限定されたものとは解釈できないし,被控訴人が本件共同出願契約締 結当時行っていた本件販売形態は,同条の「事前の協議・許可」を経たものとして 禁止されないから,被控訴人が本件共同出願契約締結当時被告各商品を既に販売し ていたことは,同条後段が禁止する対象から日本での行為を除外して解釈すべき理 由とはならない。
(8) 被控訴人は,本件共同出願契約書13条後段の内容は,同契約書16条の 協議を経なければ空文であり,これを法的請求の根拠とすることはできないと主張 するが,同契約書16条は,裁判外における紛争解決の方法を定めたものと合理的に解釈できるのであって,同条の協議を経なければ疑義が生じた契約条項の内容が 空文であり,法的請求の根拠とすることができないものとは認められない。

◆判決本文

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◆平成28(ワ)19633

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平成30(行ケ)10080  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年1月24日  知的財産高等裁判所

 無効理由なしとした審決が維持されました。争点は、明確性、実施可能要件です。経緯が少しややこしいです。被告は本件特許の訂正を求めましたが、特許庁はこれを拒絶しました。被告が知財高裁へ取消を求めたところ、知財高裁はこの審決を取り消し、特許庁は訂正を認める審決をしました。訂正後の発明について、原告が別途無効審判を請求し、請求棄却審決の取消訴訟が本件です。
 イ 前記アの記載事項を総合すると,2次元コード読取装置の技術分野にお いては,本件出願当時(出願日平成9年10月27日),1)「周波数成分 比」とは,2次元コードマトリックスに配置された「位置決め用シンボル」 (パターン)の中心を横切る(通る)走査線における「白(明)」が連続 する長さと「黒(暗)」が連続する長さの比を意味すること,2)「位置決 め用シンボル」は,同心状に相似形の図形が重なり合う形に形成されてお り,その中心をあらゆる角度で通る走査線において同じ比率が得られるた め,「周波数成分比」は「所定」の比率であること,3)「所定の周波数成 分比」の「検出」とは,2次元コード読取装置の2次元画像検出手段から 出力される画像信号(走査線信号)を2値化した後の走査線信号中から, 周波数成分比検出回路によって「所定の周波数成分比」の信号の存在の有 無を検出する処理を意味することは,技術常識であったものと認められる。 ウ これに対し原告は,同一出願人が出願した発明に係る2件の公開特許公 報(甲5,18)のみから,本件出願当時の技術常識を認定することはで きない旨主張する。 しかしながら,甲5(公開日平成8年7月12日)及び甲18(公開日 平成7年10月3日)は,マトリックス型2次元コード(いわゆるQRコ ード)の構成及び読取装置の基本的技術に係る技術文献であるものと認め\nられるから,甲5及び18から,前記イの本件出願当時の技術常識を認定 することは妥当である。したがって,原告の上記主張は理由がない。
(3) 明確性要件の適合性について
ア 構成Dの「所定の周波数成分比」について
(ア) 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言によれば,構成Dの\n「所定の周波数成分比」は,カメラ部制御装置において,読み取り対象 の画像を受光する光学的センサからの出力信号を増幅して,閾値に基づ いて2値化し,2値化された信号の中から検出され,その検出結果が出 力されるものであるが,請求項1には,「所定の周波数成分比」の値を 具体的に規定した記載はない。 次に,本件明細書(甲6,8,乙2の2)には,「所定の周波数成分 比」の語を定義した記載はない。一方で,本件明細書の記載事項(【0 029】ないし【0031】,図4)によれば,本件明細書には,実施 例として,2次元コード読取装置のCCDエリアセンサ41が撮像した 2次元画像を水平方向の走査線信号として出力し,カメラ部制御装置5 0において,これをAGCアンプ52及び補助アンプ56によって増幅 し,増幅された走査線信号は2値化回路57によって閾値に基づいて2 値化され,周波数分析器58は2値化された走査線信号の内から「所定 の周波数成分比」を検出し,その検出結果を画像メモリコントローラ6 1に出力することの開示があることが認められる。 以上の本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言,本件明細書の 開示事項及び2次元コード読取装置の技術分野における本件出願当時の技術常識(前記(2)イ)に鑑みると,本件発明の構成Dの「所定の周波数\n成分比」は,上記技術常識における用語と同義であるものと認められる から,読み取り対象の画像(2次元コードマトリックス)に配置された 「位置決め用シンボル」(パターン)の中心を横切る(通る)走査線に おける「白(明)」が連続する長さと「黒(暗)」が連続する長さの比 (「位置決め用シンボル」の中心を通るあらゆる走査線における同一の 比率)を意味するものと解される。 したがって,本件発明の構成Dの「所定の周波数成分比」の内容は明\n確である。
(イ) これに対し原告は,構成Dの「周波数成分比」との文言は一般的な\n用語ではなく,本件明細書にも,「周波数分析器58は,2値化された 走査線信号の内から所定の周波数成分比を検出し」との記載(【003 1】)があるのみで,いかなるものが「所定の周波数成分比」であるの か何ら説明がないから,構成Dの「所定の周波数成分比」の記載は,明\n確であるとはいえない旨主張する。 しかしながら,前記(ア)認定のとおり,本件出願当時の技術常識を踏 まえると,構成Dの「所定の周波数成分比」の内容は明確であるといえ\nるから,原告の上記主張は理由がない。
イ 構成Fの「相対的に長く設定し」に(ア) 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の構成Fの記載は,「前記\n読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズ に入射するよう,前記絞りを配置することによって,前記光学的センサ から射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定し」というものである。 上記記載から,「光学的センサから射出瞳位置までの距離」を「相対的 に長く設定」することは,「読み取り対象からの反射光が絞りを通過し た後で結像レンズに入射するよう,絞りを配置すること」の結果として 得られるものであることを理解することができる。 また,本件明細書には,光学的センサから射出瞳までの距離(射出瞳 距離)は,光学的センサから絞りまでの光学的距離が長くなれば,それ に伴って長くなるところ,従来の光学情報読取装置では,複数の結像レ ンズ間に絞りが配置されていたものを,「本発明」では,読取り対象か らの反射光が絞りを通過した後で結像レンズに入射するよう絞りを配置 する構成を採用したことにより,光学的センサから射出瞳位置までの距離(射出瞳距離)を相対的に長く設定することができること(【000\n9】,【0040】,【0041】,図6)の開示があることが認めら れる。 以上の本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言及び本件明細書 の開示事項に鑑みると,本件発明の構成Fの「相対的に長く設定し」と\nは,絞りの配置が「前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過し た後で前記結像レンズに入射するよう」配置されたものではないものと 比較して,光学的センサから「射出瞳位置までの距離」を「長く設定」 することを意味するものと解される。 したがって,本件発明の構成Fの「相対的に長く設定し」の内容は明\n確である。
(イ) これに対し原告は,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)におい て,「相対的に」の基準が明確でないため,「相対的に長く設定し」の 記載からは,射出瞳位置までの距離がどのように設定されていることを 意味するのか,どのようなものが本件発明の技術的範囲に含まれるのか を理解することができないから,構成Fの「相対的に長く設定し」の記\n載は,明確であるとはいえない旨主張する。 しかしながら,前記(ア)の認定事実によれば,「相対的に」の基準と なる比較の対象は,絞りの配置が「前記読み取り対象からの反射光が前 記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう」配置されたもの ではない構成のものにおける射出瞳距離を意味することは明らかである\nから,原告の上記主張は,その前提を欠くものであって,理由がない。
ウ 構成Gの「所定値」について
(ア) 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)には,構成Gの「前記光学\n的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光学的 センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上」にお ける「所定値」の値について具体的に規定した記載はない。 一方で,請求項1における「前記読み取り対象からの反射光が前記絞 りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置する ことによって,前記光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に 長く設定し,」(構成F),「前記光学的センサの中心部に位置する受\n光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素 子からの出力の比が所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定し て,露光時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が 可能となるようにしたこと」(構\成G)の記載によれば,本件発明にお いては,「前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前 記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置すること」によって「射 出瞳位置を設定」することが前提とされていることを理解することがで きる。 また,本件明細書には,構成Gの「所定値」に関し,「最終的には適\n切な読み取りを実現することが目的であるので,本発明の光学情報読取 装置においては,光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力 に対する光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所 定値以上となるように,射出瞳位置を設定している。このようにしてお けば,中央部と周辺部の出力差を考慮しながら,例えば照射光の光量や露光時間などを調整することが容易となり,中心部においても周辺部に おいても適切に読取が可能となる。」(【0011】),「適切な読み\n取りを実現するためには,センサ周辺部にある受光素子41aからの出 力レベルが所定レベル以上になる必要がある。そのため,例えば,セン サ中心部に位置する受光素子41aからの出力に対するセンサ周辺部に 位置する受光素子41aからの出力の比が所定値以上となるよう射出瞳 位置を設定することが考えられる。つまり,このような射出瞳位置とな るように絞り34aの位置を設定するのである。このようにしておけば, 中央部と周辺部の出力差を考慮しながら,例えば照射光の光量や露光時間などを調整することが容易となり,中心部においても周辺部において も適切に読取が可能となる。」(【0042】)との記載がある。\n以上の本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言及び本件明細書 の記載に鑑みると,構成Gは,「前記読み取り対象からの反射光が前記\n絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置す ること」によって「射出瞳位置を設定」することを前提とした上で,「露 光時間などの調整」により,「光学的センサの中心部においても周辺部 においても読取が可能となるように」すること,すなわち,光学的セン\nサの中心部に位置する受光素子から得られた信号を2値化するために用 いられる閾値に基づいて,光学的センサの周辺部に位置する受光素子か ら得られた信号を2値化することが可能であるような強さの光を,周辺\n部に位置する受光素子が受光できるように,射出瞳位置を設定すること を特定したものであることが認められる。 そうすると,構成Gの「所定値」とは,「露光時間」の「調整」など\n読取りに際して所与の調整を行うことにより,「光学的センサの中心部 においても周辺部においても適切に読取が可能となる」位置に射出瞳位\n置を設定することによって特定される「前記光学的センサの中心部に位 置する受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比」の値を意味するものと解される。 したがって,本件発明の構成Gの「所定値」の内容は明確である。
(イ) これに対し原告は,構成Gの「所定値」については,本件発明の特\n許請求の範囲(請求項1)に規定がなく,本件明細書にも,それがいか なる値を意味するのかの手掛かりとなる記載がないため,本件明細書に 接した当業者は,「所定値」がいかなる値であれば本件発明の課題が解 決されるのかを理解することができないし,また,中心部に位置する受 光素子からの出力信号を2値化するために用いられる「閾値」は明らか にされておらず,「所定値」の値は,特許請求の範囲の記載から一義的 に定まるものではないから,構成Gの「所定値」の記載は,明確であるとはいえない旨主張する。\nしかしながら,構成Gの「所定値」とは,あらかじめ一律に定められ\nた特定の数値をいうものではなく,「露光時間」の「調整」など読取り に際して所与の調整を行うことにより,「光学的センサの中心部におい ても周辺部においても適切に読取が可能となる」位置に射出瞳位置を設\n定することによって特定される「前記光学的センサの中心部に位置する 受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光 素子からの出力の比」の値を意味するものであることは,前記(ア)認定 のとおりである。 また,「前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前 記結像レンズに入射するよう」絞りの配置をする際に,「露光時間」の 「調整」など読取りに際して所与の調整を行うことにより,「光学的セ ンサの中心部においても周辺部においても適切に読取が可能となる」位\n置に射出瞳位置を設定することは,当業者が適宜考慮して定める設計的 事項であるというべきであるから,請求項1に「所定値」の具体的な値が記載されていないからといって,構成Gの「所定値」の内容が明確で\nないとはいえない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。
・・・
(1) 実施可能要件の適合性について
ア 「所定の周波数成分比」の記載を含む構成Dについて
原告は,構成Dの「所定の周波数成分比」の記載が明確でなく,また,\n本件明細書には,「所定の周波数成分比」の「検出」の実現方法について も何ら記載されていないから,当業者は,本件明細書に基づいて,本件発 明を実施することができない旨主張する。 しかしながら,構成Dの「所定の周波数成分比」の内容が明確であるこ\nと,本件明細書には,実施例として,2次元コード読取装置のCCDエリ アセンサ41が撮像した2次元画像を水平方向の走査線信号として出力し, カメラ部制御装置50において,これをAGCアンプ52及び補助アンプ 56によって増幅し,増幅された走査線信号は2値化回路57によって閾 値に基づいて2値化され,周波数分析器58は2値化された走査線信号の 内から「所定の周波数成分比」を検出し,その検出結果を画像メモリコン トローラ61に出力することの開示があることは,前記1(3)ア(ア)認定の とおりである。 また,2次元コード読取装置の技術分野において,「所定の周波数成分 比」の「検出」とは,2次元コード読取装置の2次元画像検出手段から出 力される画像信号(走査線信号)を2値化した後の走査線信号中から,周 波数成分比検出回路によって「所定の周波数成分比」の信号の存在の有無を検出する処理を意味することが,本件出願当時,技術常識であったこと は,前記1(2)イ認定のとおりである。 そうすると,当業者は,本件明細書の記載及び本件出願当時の技術常識 に基づいて,「所定の周波数成分比」の記載を含む構成Dを実施できたも\nのと認められるから,原告の上記主張は理由がない。
イ 「相対的に長く設定し」の記載を含む構成Fについて
原告は,構成Fの「相対的に長く設定し」との記載が明確でなく,また,\n当業者は,本件明細書から,射出瞳位置をどのように設定すれば「相対的 に長く設定」することができるのかを理解することができないから,本件 明細書に基づいて,本件発明を実施することができない旨主張する。 しかしながら,構成Fの「相対的に長く設定し」の内容が明確であるこ\nと,本件明細書には,光学的センサから射出瞳までの距離(射出瞳距離) は,光学的センサから絞りまでの光学的距離が長くなれば,それに伴って 長くなるところ,従来の光学情報読取装置では,複数の結像レンズ間に絞 りが配置されていたものを,「本発明」では,読取り対象からの反射光が 絞りを通過した後で結像レンズに入射するよう絞りを配置する構成を採用\nしたことにより,光学的センサから射出瞳位置までの距離(射出瞳距離) を相対的に長く設定することができることの開示があることは,前記1(3) イ(ア)認定のとおりである。 そうすると,当業者は,本件明細書の記載に基づいて,「相対的に長く 設定し」の記載を含む構成Fを実施できたものと認められるから,原告の\n上記主張は理由がない。
ウ 「所定値」の記載を含む構成Gについて
原告は,構成Gの「所定値」の記載が明確でなく,また,当業者は,「所\n定値」がどのようなものであるかを理解することができない以上,構成G\nの「所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定」することもできな いから,本件明細書に基づいて,本件発明を実施することができない旨主 張する。しかしながら,構成Gの「所定値」の内容が明確であることは,前記1\n(3)ウ(ア)認定のとおりである。 そして,本件明細書の【0011】及び【0042】の記載に加えて, 「前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レン ズに入射するよう」絞りの配置をする際に,「露光時間」の「調整」など 読取りに際して所与の調整を行うことにより,「光学的センサの中心部に おいても周辺部においても適切に読取が可能となる」位置に射出瞳位置を\n設定することは,当業者が適宜考慮して定める設計的事項であること(前 記1(3)ウ(イ))からすると,当業者は,本件明細書の記載に基づいて,「所 定値」の記載を含む構成Gを実施できたものと認められるから,原告の上\n記主張は理由がない。

◆判決本文

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◆平成25(行ケ)10115

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平成30(ネ)10038  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成31年1月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(4部)は、 不競法2条1項3号の商品形態模倣について、不正競争行為に該当しないとした1審判決を取り消しました。商品はサックス用のストラップです。
 不競法2条1項3号により保護される原告商品の形態について
ア 原告商品(検甲2)は,別紙「原告商品の形態」のとおりのサックス用 ストラップであり,その基本的構成態様(全体的形態)及び具体的構\成態 様は,別紙「原告商品と被告商品の各構成態様」の「原告商品」欄記載の\nとおりである。 すなわち,原告商品は,1)基本的構成態様は,V型プレート,革パッド,\nブレードクリンチ,ブレード(紐)及びフックの5つのパーツにより構成\nされ,5つのパーツは,ブレードクリンチの留めネジ(六角ボルト)を緩 めてブレード(紐)を外すことにより,分解することができる,2)V型プ レートは,中央部の四角形状とその上部から左右に伸びる辺からなり,両 翼の先端(左右の端)のそれぞれに穴が1つずつ,中央部に穴が4つある という基本的形状を有し,V型プレートの厚みは約0.3cm,左右の幅(左 端から右端までの直線距離)は約14cm,中央部の四角形状の底辺の長さ は約2cm,高さは約3cm である,3)革パッドは,2枚の革を張り合わせ, 内部に丸みを帯びた三角形状の2つのクッションを配置し,中央部にクッ ションを入れずに窪みを設け,中央部から左右の端に向けて幅が狭くなっ たテーパー型のパッドであり,左右の端にはブレード(紐)を通すための 金属のハトメがあり,中央部から左右の端までの長さは約22.5cm,中 央部の幅は5.5cmである,4)ブレードクリンチは,革パッドの左右の端 のハトメを通したブレード(紐)を固定するための空洞の円柱状の金具で ある,5)ブレード(紐)は,黒色の編み込みの紐であり,革パッドの左右 の端のハトメからブレードクリンチを経てV型プレートの左右の端の穴を 通り,中央部の四角形状の4つの穴を通ってまとめられ,フックをぶら下 げるための輪を形成している,6)フックは,光沢のある銀色の金属フック であり,ブレード(紐)を通す輪とサックスにかけるフック部分からなる という形態を有している。
イ この点に関し被控訴人は,サックス用ストラップにおいて,V型プレー トによって,ストラップ装着時に首元を圧迫しない構造にすること,革\nパッドにクッションを入れて衝撃を緩和すること,V型プレートに穴を開 けてブレード(紐)を通す構造にすることは,「当該商品の機能\を確保す るために不可欠な形態」(不競法2条1項3号括弧書き)であり,また, 原告商品の基本的構成態様(前記ア1)),V型プレートの形態(前記ア2)) 及び革パッドの形態(前記ア3))は,ありふれた形態であるから,原告商 品の形態は,同号の保護の対象とならない旨主張する。 (ア) しかしながら,サックス用ストラップにおいて,頸部や肩を圧迫し ない構造にするために革パッドにクッションを入れる構\造とし,ブレー ド(紐)の長さを調節するためにブレード(紐)を通す穴を有するアジャ スターを設ける必要はあるものと認められるが(乙1ないし5),革パッ ド及びアジャスターの具体的形態については,様々な選択肢が考えられ, 必然的に原告商品の革パッド及びV型プレート(アジャスターに相当) の形態を選択せざるを得ないものではない。 したがって,原告商品の革パッド及びV型プレートの形態は,「当該 商品の機能を確保するために不可欠な形態」(不競法2条1項3号括弧\n書き)に当たるものとは認められない。
(イ) 次に,不競法2条1項3号は,他人が資金,労力を投下して商品化 した商品の形態を他に選択肢があるにもかかわらず,ことさら模倣した 商品を,自らの商品として市場に提供し,その他人と競争する行為は, 模倣者においては商品化のための資金,労力や投資のリスクを軽減する ことができる一方で,先行者である他人の市場における利益を減少させ るものであるから,事業者間の競争上不正な行為として規制したものと 解される。 このような同号の趣旨に照らすと,同号によって保護される「商品の 形態」とは,商品全体の形態をいい,その形態は必ずしも独創的なもの であることを要しないが,他方で,商品全体の形態が同種の商品と比べ て何の特徴もないありふれた形態である場合には,特段の資金や労力を かけることなく作り出すことができるものであるから,このようなあり ふれた形態は,同号により保護される「商品の形態」に該当しないと解 すべきである。そして,商品の形態が,ありふれた形態であるか否かは, 商品を全体として観察して判断すべきであり,全体としての形態を構成\nする個々の部分的形状を取り出してそれぞれがありふれたものであるか どうかを判断することは相当ではない。 しかるところ,乙1(「オリジナル・ツェブラ・サックス・ストラッ プ ホームページ」)には,アジャスター(調節つまみ),革パッド, ブレード(紐)及びフックのパーツにより構成される「ツェブラ・スト\nラップ」の写真が掲載されているところ,アジャスターは,中央部から 左右斜め上方に伸びる辺(両翼)を有するY字状であり,中央部の形状 が四角形状でない点,両翼の角度が約90度であり,鈍角ではない点, 中央部の穴の位置などにおいて原告商品のV型プレートの形態(別紙「原 告商品の形態」)と明らかに相違し,基本的構成態様においても,ブレー\nドクリンチを有していない点で,原告商品の全体としての形態と相違す る。 また,乙2(「Protec LC305M Neck Strap」) に掲載された「Neck Strap」は,ブレードクリンチを有して いない点で原告商品の形態と相違するほか,アジャスターは,中央部か ら左右に伸びる辺(両翼)を有する形状であるものの,中央部の形状が 四角形状でない点,中央部の穴が3つであり,4つでない点,中央部の 穴の位置などにおいて原告商品のV型プレートの形態と相違し,基本的 構成態様においても,ブレードクリンチを有していない点で,原告商品\nの全体としての形態と相違する。 さらに,乙3(国際公開公報(WO 00/41589)・訳文乙1 1)記載の「キャリングストラップ」の「滑車装置」(図11)(アジャ スターに相当)は,T字状であり,中央部が四角形状でない点,乙4(再 公表特許公報(WO2008/107939))記載の「楽器用ストラッ\nプ」の「楽器連結具」(アジャスターに相当)は,細長い棒状である点, 乙5(「新型説明書公告本」(TWM443110U1)・訳文乙12) 記載の「吊り部品」の「支持ロッド」(図3,4)(アジャスターに相 当)は,細長い棒状であり,4つの穴のある四角形状部と「吊り紐」で 連結している点において,いずれも原告商品のV型プレートの形態と明 らかに相違し,基本的構成態様においても,革パッド部分の形状が原告\n商品の全体としての形態と相違する。 そうすると,乙1ないし5から,原告商品の販売が開始された平成2 8年3月当時,原告商品の形態がありふれた形態であったものと認める ことはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。
・・・
ウ 被控訴人は,旧原告商品からモデルチェンジされた商品である原告商品 の形態と旧原告商品の形態は実質的に同一であるから,原告商品の形態は, 旧原告商品の形態とは別の形態として,不競法2条1項3号により保護さ れるものではない旨主張する。 そこで検討するに,旧原告商品(検甲1)は,別紙「旧原告商品目録」 のとおりのサックス用ストラップであり,基本的構成態様が,V型プレー\nト,革パッド,ブレードクリンチ,ブレード(紐)及びフックの5つのパー ツにより構成され,5つのパーツは,ブレードクリンチの留めネジ(六角\nボルト)を緩めてブレード(紐)を外すことにより,分解することができ る点,V型プレートは,中央部の四角形状とその上部から左右に伸びる辺 からなり,両翼の先端(左右の端)のそれぞれに穴が1つずつ,中央部に 穴が4つあるという基本的形状を有する点,革パッドは,2枚の革を張り 合わせ,内部に丸みを帯びた三角形状の2つのクッションを配置し,中央 部にクッションを入れずに窪みを設け,中央部から左右の端に向けて幅が 狭くなったテーパー型のパッドである点において,原告商品(検甲2)の 形態と共通する。 しかしながら,原告商品のV型プレートと旧原告商品のV型プレートの 形態は,別紙「原告商品と旧原告商品の変更点」記載の図4(a)及び(b) のとおり,原告商品のV型プレートは,旧原告商品のV型プレートと比べ, 中央部の四角形状から左右に伸びる両翼の形状及び幅が大きく変更され, 細長くなっており,両者の形態は一見して明らかに相違することが認めら れる。 加えて,サッククス用ストラップの形態において,V型プレート(アジャ スターに相当)は,需要者が注意を引きやすい特徴的部分であることを踏 まえると,V型プレートの形態の上記相違により,原告商品から受ける商 品全体としての印象と旧原告商品から受ける商品全体としての印象は異な るものといえるから,原告商品の形態は,商品全体の形態としても,旧原 告商品の形態とは実質的に同一のものではなく,別個の形態であるものと 認められる。
・・・
この点に関し原判決は,1)原告商品は,旧原告商品からモデルチェンジ された商品であり,V型プレート,革パッド及びブレード(紐)が旧原告 商品からの変更部分である,2)原告商品の形態が,旧原告商品の形態の保 護期間(不競法19条1項5号イ)が経過した後であっても,同法2条1 項3号の保護を受け得るのは,そのV型プレートの変更部分が商品の形態 において実質的に変更されたものであり,その特有の形状が美観の点にお いて保護されるべき形態であると認められることによるものであるから, 同号による保護を求め得るのは,この変更部分に基礎を置く部分に限られ る旨判断したが,前記イ(イ)で説示したとおり,同号の趣旨に照らすと, 同号によって保護される「商品の形態」とは,商品全体の形態をいうもの であり,また,上記のとおり,原告商品の形態と旧原告商品の形態は,実 質的に同一の形態とは認められないから,原判決の上記2)の判断は妥当で はない。
エ 以上によれば,原告商品の形態は,その商品全体の形態が,不競法2条 1項3号により保護されるべきものと解される。
(2) 形態の実質的同一性について
ア 被告商品(検甲3)は,別紙「被告商品の形態」のとおりのサックス用 ストラップであり,その基本的構成態様(全体的形態)及び具体的構\成態 様は,別紙「原告商品と被告商品の各構成態様」の「被告商品」欄記載の\nとおりである。
 すなわち,被告商品は,1)基本的構成態様は,V型プレート,革パッド,\nブレードクリンチ,ブレード(紐)及びフックの5つのパーツにより構成\nされ,5つのパーツは,ブレードクリンチの留めネジ(六角ボルト)を緩 めてブレード(紐)を外すことにより,分解することができる,2)V型プ レートは,中央部の四角形状とその上部から左右に伸びる辺からなり,両 翼の先端(左右の端)のそれぞれに穴が1つずつ,中央部に穴が4つある という基本的形状を有し,V型プレートの厚みは約0.3cm,左右の幅(左 端から右端までの直線距離)は約14cm,中央部の四角形状の底辺の長さ は約2cm,高さは約2.5cm である,3)革パッドは,2枚の革を張り合わ せ,内部に丸みを帯びた三角形状の2つのクッションを配置し,中央部に クッションを入れずに窪みを設け,中央部から左右の端に向けて幅が狭く なったテーパー型のパッドであり,左右の端にはブレード(紐)を通すた めの金属のハトメがあり,中央部から左右の端までの長さは約21.5cm, 中央部の幅は5cmである,4)ブレードクリンチは,革パッドの左右の端の ハトメを通したブレード(紐)を固定するための空洞の円柱状の金具であ る,5)ブレード(紐)は,黒色の編み込みの紐であり,革パッドの左右の 端のハトメからブレードクリンチを経てV型プレートの左右の端の穴を通 り,中央部の四角形状の4つの穴を通ってまとめられ,フックをぶら下げ るための輪を形成している,6)フックは,光沢のある金色の金属フックで あり,ブレード(紐)を通す輪とサックスにかけるフック部分からなると いう形態を有している。
イ そして,原告商品(検甲2)の形態と被告商品(検甲3)の形態とを対 比すると,1)両者は,基本的構成態様が,V型プレート,革パッド,ブレー\nドクリンチ,ブレード(紐)及びフックの5つのパーツにより構成され,\n5つのパーツは,ブレードクリンチの留めネジ(六角ボルト)を緩めてブ レード(紐)を外すことにより,分解することができる点,V型プレート は,中央部の四角形状とその上部から左右に伸びる辺からなり,両翼の先 端(左右の端)のそれぞれに穴が1つずつ,中央部に穴が4つあるという 基本的形状を有する点,革パッドは,2枚の革を張り合わせ,内部に丸み を帯びた三角形状の2つのクッションを配置し,中央部にクッションを入 れずに窪みを設け,中央部から左右の端に向けて幅が狭くなったテーパー 型のパッドである点において共通し,2)V型プレートをはじめとする各パーツの具体的な構成態様においても,形状,色彩,光沢及び質感におい\nて多数の共通点(別紙「原告商品と被告商品の各構成態様」のC,D,F,\nHないしK,N,P,Q,S,T,VないしX,aないしd,fないしh の各欄のとおり)があり,原告商品と被告商品から受ける商品全体として の印象が共通することによれば,商品全体の形態が酷似し,その形態が実 質的に同一であるものと認められる。 もっとも,原告商品と被告商品とは,V型プレートにおける中央部の側 面及び下面(底辺)の形状,中央部の4つの穴のうち,上部の2つの穴の 位置及び間隔,両翼の角度及びその先端部分の角度,光沢,ロゴの位置, 革パッドの内側の革の色,革パッドの長さ及びクッションの大きさ,ブレー ドクリンチの色彩及び光沢,フックの色彩等において相違するが,次に述 べるとおり,これらの相違は,商品の全体的形態に与える変化に乏しく, 商品全体からみると,ささいな相違にとどまるものと評価すべきものであ るから,原告商品の形態と被告商品の形態が実質的に同一であるとの上記 判断を左右するものではない。

◆判決本文


1審はこちらです。

◆平成29(ワ)21107

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平成30(ワ)6943  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年12月26日  東京地方裁判所(29部)

手書きの文章をデータ入力するソフトウェアのマニュアルについて、個性があらわれておらず、著作物ではないと判断されました。
 著作物は,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又\nは音楽の範囲に属するものをいう(著作権法2条1項1号)ところ,創作的に表現さ\nれたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではな く,作成者の何らかの個性が表現されたもので足りるというべきであるが,他方,文\n章自体がごく短く,又は表現上制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現\nが平凡かつありふれたものである場合には,作成者の個性が表現されたものとはいえ\nないから,創作的な表現であるということはできない。\n
イ これを本件についてみるに,前記第2の2前提事実(2)及び前記(1)に認定したと おり,本件マニュアルは,本件システムの機能や操作方法の説明を目的として作成さ\nれたものであり,その作成目的に従い,本件コメントは,各頁に表示された本件シス\nテムの画面の内容を説明し,同画面に関連する本件システムの機能を説明し,又は同\n画面に関連する本件システムの操作といった客観的事実を説明することを目的とし て作成されており,その性質により,機能や操作方法を分かりやすく,一般的に用い\nられるありふれた表現で示すことが求められることから,表\現の選択の幅は狭いもの である。そして,本件コメントでは,本件システムの機能等を説明するためにコンピ\nュータに関する用語が選択されているものの,当該説明において他の表現を用いるこ\nとは想定し難く,また,その他の表現も操作等を説明するものとして特徴的な言い回\nしが存するともいえない。 そうすると,本件コメントに原告の個性が表現されているとはいえないのであって,\n本件マニュアルに著作物性があるということはできない。これに反する原告の主張は 採用することができない。

◆判決本文

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平成28(ワ)25956等  特許権侵害損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年12月27日  東京地方裁判所(46部)

 SONY VS 富士フイルムの特許侵害事件です。サポート要件違反の無効理由があるとして104条の3の規定により、権利行使不能と判断されました。\n
 以上によれば,式(1)には上限値は定められておらず,下限値である2 30以上の数値の全てにわたり式(1)を満たすことになるにもかかわらず, 本件明細書記載の実施例において課題を解決できることが裏付けられるH c×(1+0.5×SFD)の範囲は,230.1〜245.8(又は24 7.5)に限られることになる。そして,本件明細書にはこの範囲よりも大 きい数値の磁気録媒体の記録電流値の裕度を大きくすることができること に関する記載はない。 これらによれば,式(1)には,Hc×(1+0.5×SFD)の値の上 限値がないところ,実施例で示されているのは前記の範囲であって,その値 が実施例で示されたものよりも大きくなった場合などを含めた,式(1)の 関係が満たされることとなる場合において,当業者が,前記の課題を解決で きると認識できたとはいえないとするのが相当である。
エ 更に,本件発明においては,Hcの上限値やSFDの下限値は定められて いないから,ΔH,ひいてはSFDの値を大きくせず,Hcの値を例えば2 30以上の数値にすると,SFDの値が実施例を大きく下回る場合も式(1) の関係を満たすこととなる。しかし,このように実施例を大きく下回るSF Dの値の場合に当業者が前記課題を解決できると認識できるとはいえない。 原告は,文献(乙9),実施例2及び実施例4の記載に接することで,SFD が実施例の数値を大きく下回るなどの場合でも,式(1)によって課題を解 決できると認識することできると主張するが,式(1)の技術的意義,実施 例が示す範囲や本件明細書の記載は前記のとおりであり,採用することがで きない。
オ したがって,当業者は,本件明細書の記載から,式(1)によって記録電 流値の裕度を確保するという課題を解決できると認識できるとはいえず,ま た,本件出願当時の技術常識から,上記課題を解決できると認識できるとも いえない。 以上によれば,本件発明に係る特許請求の範囲の記載が,本件明細書の記載 により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである とはいえず,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照 らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえな いから,本件発明にはいわゆるサポート要件違反がある。
3 本件訂正発明によるサポート要件違反の解消の有無について(争点 )
原告は,本件訂正によって,いわゆるサポート要件違反が解消したと主張す るので,以下,この点について検討する。
訂正事項1−1は,保持力Hcを210以上,221以下とするものである (構成要件F2)。
前記2 アのとおり,式(1)について,磁気記録媒体の技術分野で広く 知られている式であることを認めるに足りる証拠はなく,本件明細書におい て,式(1)の意義に関する記載はない。また,同イのとおり,原告の主張 は,式(1)の意義に関して,オーバーカレント状態において,磁性粒子自 体のHcのばらつきが大きくなることによって,そのばらつきが大きくない 場合に比べ,再生出力が大きくなり記録電流値の裕度が大きくなることをい うものといえるが,本件明細書にそのことを述べる記載がなく,また,本件 出願当時,当業者にとってそのことが技術常識であったことを認めるに足り る証拠はない。
イ 本件明細書をみると,本件明細書の発明の詳細な説明には,前記2 アの とおり,実施例1ないし4及び比較例1及び2の数値が記載されている。 そして,Hcが210以上という本件訂正事項1−1によって,実施例2 は本件訂正発明の実施例でなくなる。したがって,実施例は,実施例3及び 実施例4のみであり,また,前記2 のとおり,「最適記録電流」の点から 実施例3が実施例とならないとすると,実施例は,実施例4のみとなる。 そうすると,式(1)には上限値は定められておらず,下限値である23 0以上の数値の全てにわたり式(1)を満たすことになるにもかかわらず, 本件明細書記載の実施例において課題を解決できることが裏付けられるH c×(1+0.5×SFD)の数値(範囲)は,245.8(又は245. 8〜247.5)に限られることになる。そして,本件明細書にはこの数値 (範囲)よりも大きい数値の磁気録媒体の記録電流値の裕度を確保すること ができることに関する記載はない。
 これらによれば,式(1)には,Hc×(1+0.5×SFD)の値の上 限値がないところ,実施例で示されているのは前記の数値(範囲)であり, その値が実施例で示されたものよりも大きくなった場合なども含めた,式 (1)の関係が満たされるといえる場合において,当業者が,前記の課題を 解決できると認識することができたとはいえないとするのが相当である。
ウ 更に,本件訂正発明においては,Hcの上限値は定められたが,SFDの 下限値は定められていない。そして,例えば,Hcが上限値である221の 場合,SFDが0.082であっても,式(1)を満たすこととなるが,実 施例4のSFDは0.341であり,実施例よりも大幅に小さいSFDの値 の場合に,当業者が前記の課題を解決できると認識できたとはいえない。被告は,上記のような場合でも,文献(乙9),実施例2及び実施例4の記載に 接することで,式(1)によって課題を解決できると認識することできると 主張するが,式(1)の技術的意義,実施例が示す範囲や本件明細書の記載 は前記のとおりであり,採用することができない。 以上によれば,当業者は,本件訂正後も,本件明細書の記載から,式(1) によって記録電流値の裕度を確保するという課題を解決できると認識できる とはいえず,また,本件出願当時の技術常識から,上記課題を解決できると認 識できるともいえない。
そうすると,本件特許には特許法123条1項4号の事由があり(前記2), 本件訂正によってもその事由が解消したとは認められないから,本件訂正請求 が訂正要件を満たすか(争点 )など,その他の争点を検討するまでもな く,原告は,特許法104条の3第1項により,本件特許権を行使することが できない。

◆判決本文

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平成30(ワ)13381  不正競争行為差止請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年12月26日  東京地方裁判所(29部)

 不競法2条1項1号の不正競争行為について、周知、類似は認めましたが、混同しないとして、不正競争行為に該当しないと判断されました。
 これを本件についてみるに,前記認定のとおり,原告商品は,携帯用ディス ポーザブル低圧持続吸引器であるSBバックのうちの排液ボトル及び吸引ボトルで 構成されるものであるところ,携帯用ディスポーザブル低圧持続吸引器には様々な形\n態のものが存在する中で,SBバックのように主たる構成として2つの透明のボトル\nから構成される形態,取り分け,直方体の排液ボトル,丸みを帯びた略立方体の吸引\nボトル本体及びその上部に取り付けられた球体のゴム球体という形状の異なる3つ のパーツをまとまりよく一体化して構成されている形態は,平成30年1月頃に被告\n商品が販売されるまでは,SBバック以外の製品にはみられない形態であったのであ り,吸引方法が異なる蛇腹(バネ)吸引や握り型吸引に属する吸引器はもととより,同 じくバルーン吸引に分類される吸引器であり,株式会社メディコンが製造し,販売す る「デイボール リリアバック」の形態もSBバックの形態とは,大きく異なってい る(甲11,25,乙4)。そうすると,原告商品の形態は,1)特別顕著性,すなわち,客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していると認められる。 これに対し,被告は,原告商品は,医療従事者を需要者とする医療機器であり,医 療従事者が,患者の生命及び身体の安全に関わる医療機器を選定するに当たって重視 するのは,当該商品の機能であってその形態ではないことなどから,原告商品の形態\nは,自他識別機能及び出所表\示機能をおよそ備えていない旨を主張する。しかしなが\nら,医療機器であっても,その使用に当たっては商品の形態が使用感や使いやすさ, 利便性等に大きな影響を与えるのであるから,医療機関が商品を選定する際に考慮要 素になると考えられるのであり,このことは,被告が行ったアンケート結果において も,利便性(乙6の1),使いやすさ(乙6の2,3,9,乙7の2),使い勝手(乙 6の5,7,9,乙8の3),大きさ・寸法(乙6の2,6)等が挙げられていること から裏付けられている。したがって,原告商品の形態が自他識別機能及び出所表\示機 能をおよそ備えていないということはできない。\nまた,被告は,原告商品の形態は,携帯用ディスポーザブル低圧持続吸引器として の機能及び効用を発揮するために選択されたものであり,同種製品でも採用されてい\nる一般的なありふれた形態を組み合わせたものにすぎない旨を主張する。しかしなが ら,原告商品を構成する直方体の排液ボトルの形状,略立方体の吸引ボトルの本体及\nびその上部に取り付けられた球体のゴム球それぞれの形態が個々の形態としてあり ふれた形状であったとしても,原告商品の形態は,これらを組み合わせて一体化した ものであり,しかも,他の同種製品にはみられない形態であったのであるから,原告 商品の形態がありふれた形態ということはできない。
イ そして,前記認定のとおり,原告は,昭和59年から,SBバックを,その形 態を変更することなく製造し,販売しているところ,SBバックの形態は,平成30 年1月頃に被告商品が販売されるまでは,SBバック以外の製品にはみられない形態 であったこと,平成18年から平成28年までのポータブル低圧持続吸引器国内市場 におけるSBバックの販売数量は同市場において30%程度を占め,業界首位であっ たこと,原告は,SBバックの販売開始以来,平成14年頃から発行している医療機 器の総合カタログを定期的に更新し,医療機関に頒布してきたほか,少なくとも平成 10年から医療機器の展示会等にSBバックを展示するなど,医療機関に対する説明 会や個別の説明を常時実施してきたこと,SBバックの形態が多数の医療従事者向け 書籍等に掲載されてきたことなどからすれば,原告商品の形態は,2)その形態が原告 によって長期間独占的に使用されてきたことにより,少なくとも被告商品が販売され た平成30年1月頃には,原告の出所を示すものとして需要者である医療従事者に広 く認識されるに至ったということができる。 これに対し,被告は,原告商品の形態が掲載されている書籍等において,原告商品 の形態のみならず,常に原告の会社名や商品名も併せて記載されていることなどから, 原告商品の形態自体がその形態のみで出所表示機能\を発揮しているのではない旨主 張するが,上記説示のとおり,原告商品の形態は,その形態が原告によって長期間独 占的に使用されてきたことにより周知性を獲得したと認められるのであるから,個別 の表示の態様が原告商品の形態と原告の会社名や商品名とが併せて表\示されていた としても,上記認定を左右しないというべきである。
ウ さらに,前記認定のとおり,原告商品の形態は,携帯用ディスポーザブル低圧 持続吸引器に様々な形態のものが存在し,排液ボトルや吸引ボトルの形状にも様々な 選択肢がある中で,これらを組み合わせて一体的に構成されたものであるから,商品\nの形態が商品の技術的な機能及び効用を実現するために他の形態を選択する余地の\nない不可避的な構成に由来する場合には該当しないと認められる。\nこれに対し,被告は,原告商品の形態は,単に機能を発揮する観点から選択された\nにすぎず,その機能及び効用を発揮するために必然的,不可避的に採用せざるを得な\nい商品形態である旨を主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,原告商品は,創腔からの滲出液の集液量増加に 伴う吸引圧の変動が小さく,創腔に常に適切な陰圧を負荷できること,採取された滲 出液が逆流する陽圧発生の危険がなく取扱い容易であること,集液ゾーンと陰圧保持 ゾーンが分離され,集液貯留が全て剛性容器で行われるため,使用中は常に集液量測 定を精度良く簡便に行うことができるとともに,途中の吸引再セット時の排液操作が 必要なく,集液を追加できることなどの機能を有しているところ,このような機能\を 有するための構成としては,ボトルの数,形状及び透明性,目盛の形状,排液口の位\n置,大きさ,形状及び色彩,集液ポートの位置及び形状,排液ボトルと吸引ボトルの 連結態様,ゴム球の位置,大きさ,形状及び排気弁の有無等の様々な選択肢があるの であるから,被告の主張は採用できない。
(3) 以上のとおり,原告商品の形態は,少なくとも被告商品が販売された平成30 年1月頃には,不競法2条1項1号にいう商品等表示として需要者の間に広く認識さ\nれたものとなっていたと認められる。
3 争点2(原告商品の形態と被告商品の形態とは類似するか)について
(1) 不競法2条1項1号の「類似」に該当するか否かは,取引の実情の下において, 需要者又は取引者が,両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両 者を全体的に類似のものと受け取るおそれがあるか否かを基準に判断すべきである。
(2)これを本件についてみるに,前記認定のとおり,原告商品の形態と被告商品の 形態とは,外観において,主たる構成として排液ボトル及び吸引ボトルの2つのボト\nルを有している点で共通するほか,排液ボトル及び吸引ボトル自体の形状も多数の点 が共通し,その寸法もほぼ共通する。他方,排液ボトルについては,目盛や文字の色 等が相違し,吸引ボトルについては,「吸引ボトル」の文字や,社名,商品名等の文字 の色,ゴム球の色等が相違し,社名や商品名の称呼も相違する。 以上の共通点及び相違点を総合すると,外観上の共通点が極めて多数に上ることに 比して,相違点はいずれも細部の相違であり,色彩の相違も同系色での相違にすぎず, 社名や商品名の表示の相違も全体的な構\成からは一部分にとどまることからすれば 上記共通点は,上記相違点よりも需要者に強い印象を与えるものであると評価するこ とができる。したがって,原告商品の形態と被告商品の形態については,称呼が相違 するものではあるが,需要者が外観に基づく印象として,両者を全体的に類似のもの と受け取るおそれがあると認められ,不競法2条1項1号の「類似」に該当すると認 められる。
4 争点3(被告商品の製造販売は,原告商品と混同を生じさせるか)について
原告は,被告商品の形態は,原告の商品等表示である原告商品の形態に酷似するも\nのであるから,被告商品に接した需要者において,被告商品を原告商品又は原告のシ リーズ商品,原告のグループ会社の商品又は原告のライセンス商品であるとの誤認混 同が生じるおそれが高い旨を主張する。 不競法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」とは,商品又は役務について出所 が同一であると誤認させ,あるいはその営業につき主体が同一であると誤認させる場 合に限られず,他人の周知の商品等表示と同一又は類似のものを使用する者と当該他\n人との間にいわゆる親会社,子会社の関係や系列関係等の緊密な営業上の関係又は同 一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為も含\nまれると解される。 そこで,これを本件についてみるに,前記認定によれば,原告商品及び被告商品の 取引態様については,専門家である医療従事者が,医療機器の製造販売業者や販売業 者の担当者から,当該医療機器の特色,機能,使用方法等に関する説明を受けて,当\n該医療機器の購入を決め,医療機器専門の販売業者に対して当該医療機器を発注する というプロセスをたどって取引されているのであり,しかも,多くの医療機関におい ては,医療機器の使用について,医療機関が医療機器を採用するにあたっては,同種 の医療機器については,一種類のみを採用するという原則的な取扱いであるいわゆる 一増一減のルールが採用されているというのである。そして,原告商品と被告商品に は商品自体には商品名及び会社名が記載され,それぞれ別々のパンフレット(甲1, 20)が作成されて別々に販売される上,需要者である医療従事者も医療機器に関す る専門知識を有する者なのであるから,被告商品の販売行為によって需要者である医 療従事者において原告商品と被告商品の出所が同一であると誤認するおそれがある とは認められない。また,原告及び被告は,医療機器の分野において,相当程度のシ ェアを有する競合会社であり,ポータブル低圧持続吸引器国内市場における原告のシ ェアは約30ないし40%,被告のシェアは約5ないし15%である。上記の取引形 態等からすると,需要者である医療従事者において原告と被告が競合関係にあること を十分に認識している状況であり,原告商品の形態と被告商品の形態が類似している\nことのみから,原告と被告との間に親会社,子会社の関係や系列関係等の緊密な営業 上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信\nするおそれがあるとは認められない。そうすると,被告による被告商品の製造販売行 為が,不競法2条1項1号にいう「混同を生じさせる行為」に当たると認めることは できず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。

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平成29(ワ)22543  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年12月27日  東京地方裁判所

 ジェネリック・リプロダクト品について、侵害者利益を損害として認めました。商標はランプシェードの立体形状です。
 証拠(甲54,55)及び弁論の全趣旨によれば,原告が入手した中 国国内で製造された原告標章と同一又は類似した形状を有する本件模倣 品の中国国内の販売店の販売価格は約6668円(389.5人民元× 17.12円(平成28年4月25日の人民元の公表仲値))であり,そ\nの日本への輸送手数料が約3766円(220人民元×17.12円) であったと認められる。被告は,被告商品を中国から輸入,販売していること(前提事実 )から,侵害品の販売のために直接要した経費として,少なくとも,被告 商品の仕入れの際の購入費用や輸送手数料があると認められる。そして, 本件模倣品の販売価格や輸送手数料が上記の額であったこと,被告は被 告商品のことを「今までで最も精巧なリプロダクト」と宣伝しており(甲 2の3〔4枚目〕),被告商品は,一定の品質を確保し,同種の商品より も製造コストが高い商品であることがうかがわれないわけではないこと, 他方,本件模倣品の前記価格は販売店における販売価格であり,同販売 店の仕入れ価格はそれよりも低額であると推認されること,その他の諸 事情を考慮し,被告商品について,売上額から控除すべき上記経費の合 計は1台当たり1万2000円を超えることはないと認める。そうする と,被告が被告商品を販売することによって得た利益額を算定するに当 たり控除すべき経費は538万8000円(1万2000円×449個) となり,前記アの売上額の合計930万0586円から538万800 0円を控除した391万2586円が原告の損害額であると推定される。
(イ)これに対し,被告は,被告の平成28年7月1日から平成29年6月 30日までの期間における被告全体の売上高が1億8365万2099 円であること,売上原価が1億3902万6337円であること,人件 費その他の管理費が合計4459万3678円(人件費497万703 8円,荷造運賃763万3167円,インターネット経費2486万7 197円,広告宣伝費295万7335円,その他経費415万894 1円)であり,それを控除した営業利益が3万2084円であることが 記載された公認会計士作成の決算状況説明書(乙15)を提出した上で, 被告が被告商品によって得た利益は,売上高全体の被告商品の売上高の 比率(約5%)に照らし,1403円であると主張し,他に,被告製品 の利益や経費に関する具体的な金額についての証拠を提出しない。 しかし,商標法38条2項に基づく損害額の算定において侵害者の利 益を算定するに当たり,侵害品の売上額から控除すべき経費は侵害品の 販売のために直接要した変動費であると解されるところ,上記決算状況 説明書によっては,被告商品の上記変動費を認定することはできない。

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関連事件です。

◆平成30(行ケ)10004

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平成30(行ケ)10103  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年12月20日  知的財産高等裁判所(3部)

 BlogMagaとブロマガの二段併記の登録商標について、カタカナ表記のみを使用証明として提出しましたが、登録商標と同一ではないとして、特許庁にて取り消されました。知財高裁も同様の判断をしました。FC2が商標権者、ドワンゴが取消審判請求人です。二段併記でもそれしか読めない場合は、一方の使用でも登録商標の使用と認めてもらえますが、BlogMaga=ブロマガとしか読めないとまではいえないとの判断です。
 本件商標は,前記第2の1(1)のとおり,ゴシック体風の「ブロマガ」 の片仮名とセンチュリー体風の「BlogMaga」の欧文字を上下2段 に配置した商標であり,上段と下段の間は文字の高さの半分程度の間隔が あり,上段と下段のフォントの大きさは概ね同じで,上段より下段の方が やや横幅が大きく構成されている。上段の「ブロマガ」部分からは,「ブロマガ」という称呼が生じる。また,下段の「BlogMaga」部分は,「Maga」が大文字の「M」で始まること,「dog」,「frog」のような「og」の語尾を持つ\n一般的な英語で「g」の発音を省略することはないこと,「Blog」は ウェブログの省略語として浸透している「ブログ」を想起させることから, 全体として「ブログマガ」という称呼が生じるものと認められる。そうす ると,本件商標からは,「ブロマガブログマガ」という称呼が生じるとい える。 また,「ブロマガ」及び「BlogMaga」はいずれも造語であり, 特段の観念を生じるとは認め難く,本件商標からは特段の観念を生じない。
イ 他方,本件使用商標は「ブロマガ」の文字のみからなるものであるから, 本件商標とは使用する文字の一部が共通するものの,外観,観念及び称呼 のいずれについても同一とはいえない。
ウ 以上に照らせば,本件使用商標について,本件商標の「書体のみに変更 を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の 表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外\n観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標(本件商標) と社会通念上同一と認められる商標」ということはできない。 エ また,原告は,原告のウェブサイトのURL中の「blomaga」の 文字の使用について,本件商標と「社会通念上同一の商標」の「使用」に 当たると主張するが,仮にURLにおける「blomaga」の使用が商 標法50条1項所定の「商標」の「使用」に当たるとしても,「blom aga」は本件商標と外観,観念及び称呼のいずれにおいても同一とはい えないことは本件使用商標と同様であるから,本件商標と「blomag a」の文字からなる「商標」が「社会通念上同一」であるとは認められな い。
(2) 原告の主張について
ア 原告は,欧文字の称呼については,特定の発音に固執せず,ある程度幅 のある発音を念頭に,日本における一般的な認識や連想等を含めて,総合 的に判断すべきであるとして,「HongKong」,「Ping-Pon g」,「Sign」,「Foreign」のように「g」を発音しない例 がしばしば存在する一方,「KING KONG」では「G」を発音する という風に日本で欧文字を読む際に「g」を発音する場合と発音しない場 合があること,2語からなる外来語や固有名詞等の略語の生成において各 語の冒頭の二拍ずつ取るのが基本であることから,本件商標の下段の「B logMaga」部分は「ブロマガ」の称呼を生じると主張する。 しかし,原告が指摘する「g」を発音しない例は「ng」,「gn」と いう語尾を有するから本件商標の欧文字部分には妥当しないし,造語の欧 文字である「BlogMaga」から原告主張の略語が生じるとも認めら れない。 さらに,原告は,社会一般では「BlogMaga」の表記を「ブロマ\nガ」と記載していることが多いと主張するが,原告がその立証のために提 出した証拠(甲36〜38)から,社会一般において「BlogMaga」 を「ブロマガ」と表記していることは認められない。また,上記(1)アのと おりの本件商標の構成からは「ブロマガ」が「BlogMaga」の表\音 であるとは認め難い。
イ 原告は,「BlogMaga」は,「Weblog」の略語である「B log」と雑誌を意味する「Magazine」の略語である「Maga」 が結合された造語であり,いろいろなブログを配信するサービスという観 念が生じ,「ブログ」と「マガジン」の略語が結合した「ブロマガ」から も,いろいろなブログを配信するサービスという観念が生じるから,「B logMaga」と「ブロマガ」から生じる観念は同一であると主張する。 しかし,本件商標の「ブロマガ」は4文字の造語で,同種同大のフォン トが均等の間隔で配置されていることからすれば,「ブロ」の部分を分離 して観念を想起し得るかは疑問であり,「ブロマガ」からブログとマガジ ンの略語の結合を想起するとはいえない。したがって,「BlogMag a」と「ブロマガ」がブログとマガジンの略語が結合したものとして理解 され,同一の観念を生じさせるとは認められない。

◆判決本文
関連事件です。同一商標権についての別の指定役務についての取消審判の取消訴訟です。

◆平成30(行ケ)10102

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平成30(ネ)10059 特許権侵害による損害賠償債務不存在確認等請求控訴事件 特許権 民事訴訟平成30年12月25日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所

 原審は,確認の利益がないとして本件訴えを却下しました。知財高裁は訴えの利益ありと判断しました。
2 争点(1)
(被控訴人が控訴人に対し,本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権を有しないことの確認を求める利益)について
(1)前提事実(引用に係る原判決第2の1(5))のとおり,被控訴人は,別件米国訴訟において,控訴人補助参加人に対し,控訴人補助参加人が本件各製品を製造販売した行為について,本件米国特許権の侵害を理由として損害賠償請求をしているものである。そして,前提事実(引用に係る原判決第2の1(3)及び(4))のとおり,本件各製品の製造のために用いられた本件各機械装置を製造し,これを控訴人補助参加人に販売したのは控訴人である。また,当審第1回口頭弁論期日において,被控訴人が,被控訴人は控訴人に対し,本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権を有する旨陳述したことは,当裁判所に顕著である。そうすると,控訴人と被控訴人との間に本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権の存否について争いがあり,控訴人は,被控訴人から,上記損害賠償請求権を行使されるおそれが現に存在するというべきである。したがって,被控訴人が控訴人に対し,本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権を有しないことの確認を求める訴えは,即時確定の利益を有する。
(2)被控訴人の主張について
ア 被控訴人は,控訴人による本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権を行使しない旨明確にしているから,上記損害賠償請求権の不存在を確認する訴えは,即時確定の利益を欠くと主張する。しかし,被控訴人が,本件訴訟の提起前に,控訴人に対し,控訴人による本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権を主張し,又はこれを行使したことはなく,さらに,原審第4回弁論準備手続期日において,被控訴人は控訴人に対し,上記損害賠償請求権を将来にわたって主張及び行使しない旨の一部和解に応じられる旨述べていたとしても,控訴人と被控訴人の間では,上記損害賠償請求権の存否については争いが存在するものである。また,被控訴人は,上記のとおり述べたとしても,これにより上記損害賠償請求権を行使しないことについて法的義務を負うに至ったものではなく,将来にわたって確実に権利行使をしないことを保証するものとはいえない。したがって,前記損害賠償請求権の不存在を確認する訴えについて即時確定の利益を欠くとの被控訴人の前記主張は,採用できない。
イ 被控訴人は,控訴人らが,別件大阪訴訟を提起したから,本件訴訟は確認の利益を欠く旨主張する。しかし,別件大阪訴訟は,控訴人らが,被控訴人に対し,被控訴人が控訴人補助参加人による本件米国特許権の侵害を理由として別件米国訴訟を提起したことについて,不法行為又は本件実施許諾契約の債務不履行に当たるとして損害賠償金の支払等を求めるものである(乙4,5)。一方,本件訴訟の争点(1)に係る部分は,控訴人が,被控訴人に対し,控訴人による本件各特許権の侵害を理由とする損害賠償請求権が存在しないことの確認を求めるものである。両訴訟の訴訟物が相違するだけではなく,審理の対象となる不法行為ないし債務不履行行為の内容も,全く異なる。よって,控訴人らが原判決後に別件大阪訴訟を提起したからといって,本件訴訟の確認の利益が失われることはなく,被控訴人の上記主張は,採用できない。
(3)以上によれば,被控訴人が控訴人に対し,本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権を有しないことの確認を求める利益は,存するというべきである。 ​
・・・
よって,被控訴人が控訴人及び控訴人補助参加人に対し,本件各特許権の侵害を 理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権を有しないことを確認するとの訴えに は,確認の利益があるから,原判決のうち,この訴えを却下した部分を取り消し, 当該部分につき本件を東京地方裁判所に差し戻すこととし,また,本件控訴のうち その余の部分は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決す る

◆判決本文

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平成29(ネ)10086  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年12月18日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 1審は無効理由ありとして権利行使を認めませんでした(特104条の3)(口頭弁論終結H29/6/20)。この1審判決の少し前に、併存していた無効審判について請求理由なしとの審決がなされました(H29/4/18)。1審原告は、知財高裁に控訴しました。知財高裁は無効審判での証拠については、一事不再理の証拠なので、採用できないとして、技術的範囲に属するとの判断をしました。
 無効理由1は,本件無効審判請求と同じく,乙24公報に記載の主引 例と乙25〜31の1公報に記載の副引例ないし周知技術に基づいて進 歩性欠如の主張をしたものであるから,無効理由1は本件無効審判請求 と「同一の事実及び同一の証拠」に基づくものといえる。そして,本件 審決は確定したから,被控訴人は無効理由1に基づいて本件特許の特許 無効審判を請求することができない(特許法167条)。 特許法167条が同一当事者間における同一の事実及び同一の証拠に 基づく再度の無効審判請求を許さないものとした趣旨は,同一の当事者 間では紛争の一回的解決を実現させる点にあるものと解されるところ, その趣旨は,無効審判請求手続の内部においてのみ適用されるものでは ない。そうすると,侵害訴訟の被告が無効審判請求を行い,審決取消訴 訟を提起せずに無効不成立の審決を確定させた場合には,同一当事者間 の侵害訴訟において同一の事実及び同一の証拠に基づく無効理由を同法 104条の3第1項による特許無効の抗弁として主張することは,特段 の事情がない限り,訴訟上の信義則に反するものであり,民事訴訟法2 条の趣旨に照らし許されないものと解すべきである。 そして,本件において上記特段の事情があることはうかがわれないか ら,被控訴人が本件訴訟において特許無効の抗弁として無効理由1を主 張することは許されない。
イ 被控訴人は,特許法104条の3第1項の適用がないとしても,本件 特許は無効理由1により無効にされるべきものであるから,本件特許権 の行使は衡平の理念に反するし,いわゆるキルビー判決は,特許権を対 世的に無効にする手続から当事者を解放した上で衡平の理念を実現する というものであるから,控訴人が被控訴人に対し,本件特許権を行使す ることは権利の濫用として許されないと主張する。 しかし,被控訴人は,本件訴訟と同一の当事者間において特許権を対 世的に無効にすべく無効理由1に基づく無効審判請求を行い,それに対 する判断としての本件審決が当事者間で確定し,上記アのとおり,無効 理由1に基づいて特許法104条の3第1項による特許無効の抗弁を主 張することが許されないのであるから,本件において,控訴人が被控訴 人に対して本件特許権を行使することが衡平の理念に反するとはいえず, 権利の濫用であると解する余地はない。
(3) 無効理由2について
 無効理由2は,無効理由1と主引例が共通であり,本件審決にいう相違 点1A及び相違点2Aについて,「生体に印加する直流電源に太陽電池を 用いること」が周知技術である,あるいは,副引例として適用できること を補充するために,新たな証拠(乙44公報及び乙45公報)を追加した ものといえる。 本件審決は,相違点1B及び相違点2Bに係る構成の容易想到性を否定\nし,相違点1A及び相違点2Aについては判断していないのであるから, 被控訴人が相違点1A及び相違点2Aに関する新たな証拠を追加したとし ても,相違点1B及び相違点2Bに関する判断に影響するものではない。 そうすると,無効理由2は,新たな証拠(乙44公報及び乙45公報)が 追加されたものであるものの,相違点1B及び相違点2Bの容易想到性に 関する被控訴人の主張を排斥した本件審決の判断に対し,その判断を蒸し 返す趣旨のものにほかならず,実質的に「同一の事実及び同一の証拠」に 基づく無効主張であるというべきである。したがって,本件審決が確定し た以上,被控訴人は無効理由2に基づく特許無効審判を請求することがで きない。 そうすると,無効理由2についても上記(2)アにおいて説示したところ が妥当するから,被控訴人が本件訴訟において無効理由2に基づき特許無 効の抗弁を主張することは許されないものというべきである。

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1審はこちら。

◆平成28(ワ)4167

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平成30(行ケ)10057  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年12月18日  知的財産高等裁判所

 無効審判の取消訴訟の請求が却下されました。原告は無効審判で無効理由ありとされた特許権者で、被告は共同で無効審判を請求した一部の請求人です。原告は代理人無しの本人訴訟です。
1 訴えの利益について
(1) 本件審決に係る別紙審決書(写し)の記載及び弁論の全趣旨によれば,本件 審決は,被告及び訴外会社が共同審判請求人となり,原告らを被請求人として請求 された特許無効審判事件に係るものである。また,本件において,原告らは,被告 のみを相手方とし,訴外会社については被告としていないことは,当裁判所に顕著 な事実である。なお,訴外会社との関係では,本件審決の送達日である平成30年 3月29日から30日の出訴期間を既に経過している。 そうすると,本件審決(無効審決)は,訴外会社との関係においては,原告らが 訴外会社に対する審決取消訴訟を提起することのないまま出訴期間を経過したこと により,既に確定したこととなる。その結果,本件特許の特許権は初めから存在し なかったものとみなされるから(特許法125条本文),本件訴えは,訴えの利益 を欠く不適法なものとして却下されるべきである。
(2)原告ら及び被告の主張について
ア これに対し,原告らは,特許無効審判の請求人が複数いたとしても,審決取 消訴訟の提起により対象となる審決の確定は遮断されるから,請求人全てをその被 告とする必要はないなどと主張する。 そこで,共同で特許無効審判が請求され,無効審決がされたのに対し,被請求人 が共同審判請求人の一部の者のみを被告として審決取消訴訟を提起した場合の規律 について検討する。 同一の特許権について特許無効審判を請求する者が二人以上あるときは,これら の者は,共同して審判を請求することができる(特許法132条1項)。これは, 本来,各請求人は,単独で特許無効審判請求をし得るところ,同一の目的を達成す るためにこのような共同での審判請求を行い得ることとし,審判手続及び判断の統 一を図ったものである。もっとも,この場合の審決を不服として提起される審決取 消訴訟につき固有必要的共同訴訟であるとする規定はなく,審決の合一的確定を図 るとする規定もない。 また,同一特許について複数人が同時期に特許無効審判請求をしようとする場合 の特許無効審判手続の態様としては,1)上記の共同審判請求の場合のほか,2)別個 独立に請求された審判手続が併合された場合(同法154条1項),3)別個独立に 請求された審判手続が併合されないまま進行する場合の3つが考えられる。しかる ところ,まず,上記3)の場合において無効審決がされたときは,その取消訴訟をも って必要的共同訴訟と解する余地がないことに鑑みると,事実及び証拠が同一であ るか異なるかに関わりなく,複数の特許無効審判請求につき,請求不成立審決と無 効審決とがいずれも確定するという事態は,特許法上当然想定されているものとい うことができる。また,別個独立に請求された審判手続がたまたま併合された上記 2)の場合において無効審決がされたときも,上記3)の場合と取扱いを異にすべき合 理的理由はない。そうすると,上記1)の場合に,被請求人である特許権者の共同審 判請求人に対する対応が異なった結果として上記と同様の事態が生じることも,特 許法上想定されないこととはいえない。1)及び2)の場合にされた請求不成立審決に 対し,その請求人の一部のみが提起した審決取消訴訟がなお適法とされる(最高裁 平成7年(行ツ)第105号同12年1月27日第一小法廷判決・民集54巻1号 69頁,最高裁平成8年(行ツ)第185号同12年2月18日第二小法廷判決・ 判例時報1703号159頁参照)のも,このためと解される。 このように,共同審判請求に対する審決につき合一的確定を図ることは,法文上 の根拠がなく,その必然性も認められないことに鑑みると,その請求人の一部のみ を被告として審決取消訴訟を提起した場合に,被告とされなかった請求人との関係 で審決の確定が妨げられることもないと解される。
イ なお,この点について,被告は,本案前の答弁として,複数の審判請求人が いる場合の無効審決に対する審決取消訴訟は固有必要的共同訴訟であり,被告のみ を相手方として提起した原告らの本件訴えは不適法であるなどと主張する。 しかし,前記のとおり,共同審判請求に対する審決につき合一的確定を図ること は法文上の根拠がなく,その必然性も認められないことから,当該審決に対する取 消訴訟をもって固有必要的共同訴訟ということはできない。
ウ そうすると,共同での特許無効審判請求に対し無効審決がされたところ,被 請求人である特許権者が,共同審判請求人の一部のみを被告として当該審決の取消 訴訟を提起したにとどまり,被告とされなかった共同審判請求人との関係で出訴期 間を経過した場合には,同人との関係で当該無効審決が確定し,当該特許権は対世 的に遡って無効となることから,上記審決取消訴訟は,訴えの利益を欠く不適法な ものとして却下されるべきこととなる。

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平成30(行ケ)1008 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年12月20日  知的財産高等裁判所

 商品と小売サービスが類似するとした審決が維持されました。
 本願商標の指定商品は,第9類「電子出版物」及び第16類「雑誌,書 籍」(本願指定商品)を含むところ,近年,「従来は本や雑誌の形で提供 されていた情報を,デジタル化したソフトの形で,あるいはパソ\コン,タ ブレット端末,スマートホン,電子書籍リーダーなどを使ってアクセスで きる形で提供する出版」である電子出版が盛んになり,現に,紙に印刷さ れた商品「印刷物」の一種である「雑誌」や「書籍」の内容(コンテンツ) が,電子化された「電子出版物」として需要者へ広く配信(販売)される など,両者は相互に密接な関連性を有している。 そして,本願指定商品はいずれも,主に書籍や雑誌,電子出版物などの 出版を行う事業所である出版社により制作,販売される商品であり,多岐 にわたる年代層の個人から各種教育機関等の幅広い需要者に対して,書店 又はオンライン書店を通じて販売されている。 イ 引用商標の指定役務中,第35類「印刷物の小売又は卸売の業務におい て行われる顧客に対する便益の提供」(以下,この役務中,小売と関連す る役務を「引用小売役務」という。)は,雑誌や書籍等の印刷物及び印刷 物と密接な関連性を有する電子出版物を取り扱う小売又は卸売の業務にお いて行われる顧客に対する便益の提供である。 そして,引用小売役務は,主に書籍や雑誌,電子出版物を小売する書店 により提供される役務であり,多岐にわたる年代層の個人から各種教育機 関等の幅広い需要者に対して,主として書店又はオンライン書店において 提供される。
(3) 本願指定商品と引用小売役務との関連性について
本願指定商品と引用小売役務は,いずれも電子出版物又は印刷物を取り扱 う商品又は役務であるところ,その商品の販売場所及び役務の提供場所が一 致し(書店又はオンライン書店),需要者の範囲も一致(幅広い需要者層) する。 さらに,本願指定商品と引用小売役務は,主に出版社又は書店により製造, 販売又は提供されているとはいえ,同一営業主により製造,販売又は提供さ れている実情があり,いわゆる出版社が自己又はそのグループ会社が運営す るウェブサイト又は店舗において,電子出版物,書籍又は雑誌を販売(小売) している事例に加え,書店として小売事業を展開する事業者が,書籍や雑誌 の制作,出版をする事例も複数挙げることができる(乙8〜20)。
(4) 以上のとおり,本願指定商品と引用小売役務は,その商品の販売場所及び 役務の提供場所,並びに需要者の範囲が一致するため,相互に密接な関連性 を有する。さらに,これらは同一の営業主によって製造,販売又は提供され ている実情がある。このような取引の実情を踏まえると,これら商品及び役 務に同一又は類似の商標を使用するときは,同一営業主の製造,販売又は提 供に係る商品又は役務と誤認混同を生じるおそれがあるというべきである。 したがって,本願指定商品は引用小売役務と類似する。

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平成29(ワ)18184  特許権侵害行為差止請求  特許権  民事訴訟 平成30年12月21日  東京地方裁判所

 東京地裁40部は、補正によって追加された事項を充足しない被疑侵害品について、均等を認めました。
 第5要件に関し,被告は,構成要件Eは本件補正によって追加されたも\nのであるところ,本件拒絶理由通知に対する本件意見書における「本発明 25 は,2組の揺動部材を備える点,および,揺動部材の一方に,他方に係合 する係合部を備える点において,引用文献1に記載された発明…と相違し ています。」との記載によれば,原告は,被告製品のように係合部を別部 材とする構成を特許発明の対象から意識的に除外したと理解することが\nできるから,均等侵害は成立しないと主張する。
しかし,本件意見書には,「引用文献1には,端部が回転可能に連結さ\nれることにより開閉可能に5 設けられた一対のジョーを備えた開創器アセ ンブリが開示されています。」,「このような構成(判決注:本件発明に\n係る構成)によれば,2組の揺動部材を同時に開かせることにより,骨に\n形成した切り込みの拡大作業を容易にし,また,切り込みの切断面に局所 的に過大な押圧力が作用することを防ぐことができる」,「2つの開創器 アセンブリを単に着脱可能に組み合わせただけでは本発明の構\成を導く ことはできません。」「引用発明1には,切り込みの切断面に作用する押 圧力を低減するという課題,および,2つの開創器アセンブリを一体で開 動作させるという係合部の作用に対する示唆がありません」などの記載が ある。
上記記載によれば,本件意見書の主旨は,特許庁審査官に対し,引用例 1が一対の揺動部材を開示していることを指摘し,それに対し,本件発明 は,開閉可能な2対の揺動部材を組み合わせ,一方の揺動部材を他方の揺\n動部材に係合するための係合部を設けることにより,両揺動部材が同時に 開くことを可能にするものであることを説明する点にあるというべきで\nある。そして,同意見書には,係合部の構成,すなわち,係合部を揺動部\n材の一部として構成するか,揺動部材とは別の部材により構\成をするかを 意識又は示唆する記載は存在しない。
そうすると,被告の指摘する「2組の揺動部材を備える点,および,揺 動部材の一方に,他方に係合する係合部を備える」との記載は,上記説明 の文脈において本件発明の構成を説明したものにすぎないというべきで\nあり,同記載をもって,同意見書の提出と同時にされた本件補正により構\n成要件Eが追加された際に,原告が,係合部を揺動部材とは別の部材とす る構成を特許請求の範囲から意識的に除外したと認めることはできない。\n

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平成30(行ケ)10101  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年12月19日  知的財産高等裁判所

 ブリジストンがカンパニョロの「POTENZA」に不使用取消審判を請求しました。審決は使用を認めました。裁判所も審決維持です。
カンパニョロの指定商品は、第12類「競技用自転車の部品及び付属品・・・」です。問題の商標は、判決文の最後にあります。原告は、「POTENZA」と同一の標章について,第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」を指定商品とする防護標章登録を受けていました。カンパニョロの登録に対して、異議申し立てをしましたが、当該指定商品については、類似しないとして登録されていました。\n
イ 本件使用商品の柄の部品(クランク)の中央には,横長の白塗りの平行 四辺形内に黒色のデザイン化された文字で表された「POTENZA」の\n欧文字と,「POTENZA」の欧文字の4文字目の「E」が表された箇\n所の背後に重なるように交差する縦長の白塗りの平行四辺形内に黒色で表\nされた「11」の数字とからなる,別紙記載の本件使用商標(甲14の1, 15,16)が付されている。 しかるところ,「POTENZA」の欧文字部分は,横長の白塗りの平 行四辺形内に横書きで表されているのに対し,「11」の数字部分は,縦\n長の白塗りの平行四辺形内に縦書きで表示されていること,「11」の数\n字部分は,上に重なった「POTENZA」の欧文字部分を表する横長の\n平行四辺形によって中央で上下に分断され,数字の一部が隠されているの に対し,「POTENZA」の欧文字部分は,分断された「11」の数字 部分の前面に表されていることからすると,「POTENZA」の欧文字\n部分は,他の構成要素と分離して観察することが取引上不自然と思われる\nほど不可分的に結合しているとはいえない。 そして,「POTENZA」の欧文字部分は,「11」の数字部分の前 面の目につきやすい位置にまとまりよく配置されており,本件使用商標全 体から「ポテンザ」あるいは「ポテンツァ」の称呼が自然に生じることか らすると,「POTENZA」の欧文字部分は,その部分のみから自他商 品識別標識としての機能を発揮しているものと認められる。\n一方で,「11」の数字部分は,上記のとおり,中央で上下に分断され, 数字の一部が隠されており,注視しなければ,数字の「11」と判読でき ないことに照らすと,「11」の数字部分の自他商品識別標識としての機 能は,「POTENZA」の欧文字部分よりも,明らかに低いものと認め\nられる。また,「POTENZA」の欧文字部分が表されている横長の白\n塗りの平行四辺形は,ありふれた形状であって,黒と白のコントラストに より,「POTENZA」の欧文字部分を構成する黒色の7文字を目立つ\nように表示するための背景図形であると認識されるから,それ自体に自他\n商品識別標識としての機能があるものとはいえない。\nそして,本件使用商標の「POTENZA」の欧文字部分と本件商標と を対比すると,「POTENZA」の欧文字部分は,標準文字の本件商標 と字体の違いがあるが,構成する文字は同一であり,その字体の違いも特\nに目立ったものではないこと,両者の称呼は同一であることからすると, 本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であるものと認められ る。
(2) これに対し原告は,1)本件使用商標は,2種の略平行四辺形を前後に重ね て,それぞれの中に「POTENZA」と「11」を配置した,統一感のあ るスタイリッシュなロゴデザインであること,本件使用商標の「11」を含 む部分は,被告の自転車用ギアクランクにおいて11速を暗示させる識別標 識として機能していること,「POTENZA」の部分は,特段特徴的な態\n様で表されているとはいえず,他に比して目立っているような事情もないこ\nとからすると,本件使用商標は,「POTENZA」,「11」,略平行四 辺形の図形等の各構成要素が一体として結合した態様によって識別性が発揮\nされており,本件使用商標から「POTENZA」の部分だけを分離抽出す ることはできない,2)本件使用商品に付された本件使用商標の隣には,「P OTENZA」の部分と同じデザインで,横長の白塗りの「CAMPAGN OLO」の欧文字が表された平行四辺形が配されており,これに接した需要\n者,取引者は,本件使用商標と「CAMPAGNOLO」の欧文字が表され\nた平行四辺形の態様を含めた全体を使用商標と認識することもあるとして, 本件使用商標は,「POTENZA」の標準文字からなる本件商標とは明ら かに異なり,本件商標と社会通念上同一とはいえない旨主張する。 しかしながら,上記1)の点については,前記(1)イ認定のとおり,本件使用 商標の「POTENZA」の欧文字部分は,他の構成要素と分離して観察す\nることが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえず, 「POTENZA」の欧文字部分のみから自他商品識別標識としての機能を\n発揮しているものと認められる。また,原告が述べるように「11」の数字 が,被告の自転車用ギアクランクにおいて11速を暗示させるものであった としても,前記(1)イ認定のとおり,「11」の数字部分は,中央で上下に分 断され,数字の一部が隠されており,注視しなければ,数字の「11」と判 読できないことに照らすと,「11」の数字部分が11速を暗示させる識別 標識として機能しているものと直ちにはいえない。\n
次に,上記2)の点については,本件使用商品の柄の部品(クランク)には, 「POTENZA」の欧文字が表された平行四辺形の右隣に「CAMPAG\nNOLO」の欧文字が表された平行四辺形が付されているが(甲14の1,\n15,16),二つの平行四辺形の間には,スペースがあり,それぞれの平 行四辺形内の「POTENZA」の欧文字部分と「CAMPAGNOLO」 の欧文字部分とは,明瞭に区別される態様で示されている。加えて,前記1 の認定事実によれば,本件商標の指定商品の需要者である自転車競技や競技 用自転車に関心のある者の間では,被告は,競技用自転車の部品メーカーと して広く知られていたものと認められることに照らすと,本件使用商品に接 した需要者は,「CAMPAGNOLO」の欧文字は,被告の名称を外国語 表記したものとして,それ自体を独立の商標として認識するものと認められ\nるから,本件使用商標と「CAMPAGNOLO」の欧文字が表された平行\n四辺形の態様を含めた全体がひとまとまりの商標として認識されるというこ とはできない。
・・・・
3 本件使用商品の本件商標の指定商品該当性について
(1) 前記1の認定事実によれば,本件使用商品は,競技用自転車の部品メーカ ーである被告が製造,販売する自転車用ギアクランク(クランクセット)で あること,本件使用商品について,「新ラインナップに加わったポテンツァ 11は,スーパーレコードに採用されているエンブレイステクノロジーをは じめとした,トップグレードの性能とデザインを継承した機械式アルミグル\nープセット」,「ハードな変速ラインにも対応するレーシングパーツ」など と雑誌(甲15)に紹介されていることが認められる。 上記認定事実によれば,本件使用商品は,自転車競技に使用される自転車 のギアクランクとして用いることができるものと認められる。 そして,本件商標の指定商品「競技用自転車の部品及び付属品(自転車の フレーム・タイヤ・チューブ・車輪・リム・スポークを除く。)」にいう「競 技用自転車」の用語について,「競技」の具体的なレベルを特に限定する記 載はないこと,自転車競技は,プロのロードレーサーなどが参加する世界的 な競技のほかに,趣味として競技を行っている者を含め,様々なレベルの者 が参加できる競技が行われていることは一般に知られていることに照らすと, 自転車競技に使用される自転車に用いることができる部品であれば,本件商 標の指定商品にいう「競技用自転車の部品」に含まれるものと認められる。 そうすると,本件使用商品は,本件商標の指定商品に該当するものと認め られる。
(2) これに対し原告は,1)原告は,原告の著名な登録商標である「POTEN ZA」と同一の標章について,第12類「二輪自動車・自転車並びにそれら の部品及び附属品」を指定商品とする防護標章登録を受けていること,特許 庁は,別件異議申立事件について,「競技用自転車は,競技用としてその用\n途が限られ,かつ,専門性の高い商品」であると認定した上で,本件商標の 商標登録時の指定商品の一部を取り消す旨の別件異議決定をしたことなどの 事情を勘案すると,本件商標の指定商品は,競技専用又はそれに近い商品を 意図するものといえるから,「競技用としてその用途が限られ,かつ,専門 性の高い商品」と理解すべきである,2)被告の最上位機種の「SUPERR ECORD」と本件使用商品とでは,商品の性能が格段に異なり,その用途\n及び需要者の範囲も異なる上,本件使用商品の需要者は一般の自転車愛好家 であることからすると,本件使用商品は,「競技用としてその用途が限られ, かつ,専門性の高い商品」とはいえないとして,本件使用商品は,本件商標 の指定商品に該当しない旨主張する。 しかしながら,上記1)の点については,別件異議決定(甲30)の理由中 に,「被請求人の主張及び職権による調査によれば,競技用自転車は,競技 用としてその用途が限られ,かつ,専門性の高い商品であることから,一般 用自転車に比して高額であり,需要者の範囲も限られ,かつ,販売場所も専 門店やウェブサイトにおける注文販売などが一般的であることが認められる から,需要者が,自己の自転車に装着する商品を申立人又はブリヂストンサ\nイクルの商品であると誤認混同することは考えがたいというのが相当であ る。」との記載部分(6頁)があるが,この記載部分は,一般用自転車と対 比する意味で,「競技用自転車は,競技用としてその用途が限られ,かつ, 専門性の高い商品」であることを示したものにすぎず,自転車競技の具体的 なレベルや商品の具体的な性能についてまで述べたものではないから,本件\n商標の指定商品にいう「競技用自転車」の用語を特定のレベルの競技に限定 する根拠とはならない。また,原告がその登録商標である「POTENZA」 と同一の標章について上記防護標章登録を受けたのは平成24年4月27日 (甲23)であって,別件異議決定日(平成23年10月3日)よりも後で あるから,原告が防護標章登録を受けたことは,別件異議決定の認定及び判 断に影響を及ぼしたものとは認められない。
次に,上記2)の点については,本件使用商品が,被告の最上位機種の「S UPERRECORD」ではなく,ミドルクラスの機種であるからといって, 本件商標の指定商品にいう「競技用自転車の部品」に該当しないということ はできない。

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平成30(行ケ)10067  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年12月10日  知的財産高等裁判所

 ラルフ社の商品との出所混同が生ずるかが争われました。本件商標は「POLO」です。裁判所は、15号違反とした拒絶審決を維持しました。
(4) 混同の有無
 ア 後掲証拠によると,以下の事実が認められる。
(ア) 株式会社高石洋服店のウェブサイトでは,「非常に残念なことですが,多くの方がデパートの主力ブランドのpolo ralph laurenの偽物だと認識しているようです。ブランド名,ロゴマークは似ておりますが,実際は全く別のライセンスをキッチリ取得して生産されたブランドになります。」との記載とともに,原告製の衣服の写真を掲載し,同衣服の広告をしている(乙69の1)。
・・・
「Rakutenラクマ」のウェブサイトの「ポロベビー」という題 名の出品ページに,「ブランド」として「POLO RALPH LAUREN」と 記載された商品が出品され,同商品の写真には,原告使用商標と類似した商標が付 されている(乙74の1)。
イ 前記アの事実によると,原告製の衣服をラルフ社製の衣服と誤認して, その中古品をウェブサイトに出品している事例が少なからずあり,また,原告製の 衣服をラルフ社製の衣服と誤認して購入したり,原告製の衣服をラルフ社製の衣服 と誤認してウェブサイトで紹介したりする事例もあることが認められる。 さらに,原告製の衣服を販売している会社が,その広告において,わざわざ,多 くの人は,原告製の衣服はラルフ社製の偽物であると認識しているようであるが, 実際は,ラルフ社製の偽物ではなく,別のライセンスを取得している旨説明してい る。 以上の事実からすると,多くの者が,原告製の商品をラルフ社製の商品と誤解し て購入等しているものと推認される。 したがって,原告使用商標又は,それに似た商標を付している商品とラルフ社製 の商品との間に,現実に出所の混同が生じていることは明らかであるから,本願商 標についても出所の混同が生じるものと認められる。
ウ 原告の主張について (ア) 原告は,前記アで認定したメルカリへの出品について,買い手を意図 的に誤認させる悪意の出品である旨の主張をしているが,原告の主張は,前記アで 認定した各出品者が詐欺行為をしたことについての具体的な裏付けを伴うものでは\nなく,憶測にすぎないことから,採用できない。また,原告は,メルカリにおいて は,ブランドタグの選択肢に「ラルフローレン」しかない旨の主張をするが,そう であるとしても,前記イ記載の誤認混同が生じていることの理由とは認め難い。
(イ) 原告は,ヤフオクにおいては,原告製の商品とラルフ社製の商品との 間に混同が生じた事例はなく,また,業者と一般消費者間の取引においては,原告 製の商品とラルフ社製の商品との間に混同は生じていないと主張し,その証拠とし て,甲47,甲53の1〜8を提出するが,同証拠から直ちに,原告の上記主張事 実を認めることはできず,前記イの認定を左右するに足りるものではない。
(ウ) 原告は,甲40の1、3から,消費者が,原告製の商品をラルフ社製 の商品と区別して購入する事実がある旨主張する。 しかし,甲40の1の記事は,写真に掲載した原告製の商品がラルフ社製の商品 ではないことを注意喚起するものであり,甲40の3の記事は,一見したところラ ルフ社製の商品であると思ったが,よく確認すると,原告製の商品であることが分 かったというものであるから,原告製の商品をラルフ社製の商品と誤認する可能性\nが高いことを示すものである。したがって,上記記載は,原告製の商品とラルフ社 製の商品との間に混同が生じやすいことを裏付けるものといえる。
(5)以上からすると,引用商標の独創性の程度が造語による商標に比して低い ことを考慮しても,本願商標をその指定商品に使用した場合,当該商品がラルフ社 の業務に係る商品であると誤信され,出所の混同を生ずるおそれがあることは明ら かである。

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平成29(ワ)28884  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年11月28日  東京地方裁判所

 特許権侵害事件です。敗血症を検出するための方法の技術的範囲には属しないと判断されました。争点は、「プロカルシトニン3−116を測定する」との用語の意義でした。
(1)「プロカルシトニン3−116を測定すること」の意義
ア 構成要件Aは「患者の血清中でプロカルシトニン3−116を測定すること\nを含む」というものであるところ,一般に,「測定」に,長さ,重さ,速さといっ た種々の量を器具や装置を用いてはかるという字義があることからすると,「プロ カルシトニン3−116を測定すること」は,プロカルシトニン3−116の濃度 等の量を明らかにすることを意味すると解するのが文言上自然である。 また,前記1(2)認定のとおり,本件発明は,敗血症等の患者の血清中に比較的高 濃度で検出可能なプロカルシトニンがプロカルシトニン1−116ではなく,プロ\nカルシトニン3−116であることが確認されたことを踏まえて新規な敗血症等の 検出方法を提供することを目的とするものであり,このような本件発明の目的に照 らせば,本件発明は,患者の血清中においてプロカルシトニン3−116が比較的 高濃度で検出されるか否かを見ることを可能とすることが求められているというこ\nとができる。 以上から,構成要件Aの「プロカルシトニン3−116を測定すること」は,プ\nロカルシトニン3−116の濃度等の量を明らかにすることを意味すると解するの が相当である。
イ この点につき,原告は,「プロカルシトニン3−116を測定すること」は, プロカルシトニン3−116を敗血症等の検出に必要な精度で測定ないし検出する ことができれば,プロカルシトニン3−116だけを特異的,選択的に測定するこ とに限られず,プロカルシトニン3−116とプロカルシトニン1−116及びそ の他のプロカルシトニン由来の部分ペプチドとを区別することなく測定することも 含むと主張しており,その意味するところは明確でないが,血清中のプロカルシト ニン3−116を検出しさえすれば足りるものである旨の主張であるとすれば,そ れはプロカルシトニン3−116の存在を明らかにすることで足り,その量を明ら かにすることは必要ではないことをいうものであって,前記アでみた「測定」の文 言の解釈に反するものであり,採用することができない。 また,血清中のプロカルシトニン3−116とプロカルシトニン1−116等と を区別することなく測定することがプロカルシトニン3−116を測定することに 該当すると主張するものであると解しても,そのような測定方法では,血清中にプ ロカルシトニン3−116が存在するかも明らかにならず,もとより,血清中のプ ロカルシトニン3−116の量も確認できないから,これを「プロカルシトニン3 −116を測定すること」に該当するというのは文言上困難である。
(2)被告方法
前記第2の2(5)ア認定のとおり,被告装置及び被告キットを使用すると,患者の 検体中において,プロカルシトニン3−116とプロカルシトニン1−116とを 区別することなく,いずれをも含み得るプロカルシトニンの濃度を測定することが でき,その測定結果に基づき敗血症の鑑別診断等が行われていると認められるもの の,本件全証拠によっても,被告装置及び被告キットを使用して敗血症等を検出す る過程で,プロカルシトニン3−116の量が明らかにされているとは認められず, 更にいえば,プロカルシトニン3−116の存在自体も明らかになっているとはい えない。 したがって,被告方法は,構成要件Aの「プロカルシトニン3−116を測定す\nる」を充足するとはいえない。

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平成30(ワ)3018  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年11月29日  東京地方裁判所(46部)

 美容器について、特許権に基づく差止が認められました。争点は、「前記各支持軸の基端側をホルダの両端部で押さえる」の技術的意義の解釈です。
 本件発明は,前記1のとおり,「ホルダ」に該当する部材によって回転体を支 持する支持軸を固定するものであるところ,原告は,被告製品のソーラーパネ\nル取付台が支持軸を固定していると主張するのに対し,被告はこれを否定する。 証拠(甲10,14)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品は,回転体の支 持軸の本体側先端部分にフランジが形成されていること,被告製品の本体内部 のソーラーパネル取付台の支持軸側先端部分には一対の段差及び半円形状の\n凹部が形成され,それらは回転体の支持軸及び支持軸に形成されたフランジの 形状に係合すること,ソーラーパネル取付台の先端部で回転体の支持軸を覆っ\nてソーラーパネル取付台を被告製品本体にネジで固定するとソ\ーラーパネル 取付台に支持軸のフランジが引っかかり,支持軸の先端部分がソーラーパネル\n取付台の段差及び半円形状の凹部に組み付けられること,その組付け後は回転 体を支持する支持軸に接着剤の塗布などはなかった被告製品においても支持 軸が本体から直ちには外れることがなかったことが認められる。これらによれ ば,被告製品のソーラーパネル取付台の先端部分の段差及び半円形状の凹部は,\n回転体の支持軸を固定するための構成であり,同部分が回転体の支持軸を覆い,\n支持軸を押し付けることによって支持軸を固定し,支持軸が抜けないようにし ていると認められる。
そうすると,被告製品のソーラーパネル取付台は構\成要件B及び構成要件C\nの「ホルダ」に該当し,被告製品は構成要件Bの「前記各支持軸の基端側をホ\nルダの両端部で押さえる」及び構成要件Cの「ホルダ」を充足するといえる。\nこれに対し,被告は,ソーラーパネル取付台の半円形状の凹部はリード線の\nハンダ付け部分をカバーするためのものであり,ソーラーパネル取付台をかぶ\nせただけでは支持軸は固定されず,支持軸を接着剤で被告製品本体内部に接着 固定しなければ,支持軸は簡単に抜けることからもソーラーパネル取付台は支\n持軸を固定する機能を有していないなどと主張する。\nしかしながら,ソーラーパネル取付台の段差及び半円形状の凹部の形状は,\n回転体の支持軸に係合する形状に形成されていて,リード線のハンダ付け部分 をカバーするために形成されていると認めるに足りる証拠はない。また,回転 体の支持軸を固定するために接着剤が塗布されている被告製品があるとして も,その塗布がされたことをもってソーラーパネル取付台が回転体の支持軸を\n固定する機能を有していることが直ちに否定されるものではなく,前記のとお\nりのソーラーパネル取付台の先端部の構\造,接着剤の塗布がなかった場合の回 転体の支持軸の被告製品本体からの着脱の状況等からすれば,ソーラーパネル\n取付台は回転体の支持軸を固定する機能を有しているということができ,被告\nの主張は採用することができない。

3 争点 −ア(乙11文献に基づく新規性欠如)
争点を検討するに当たり,まず,本件発明の「前記各支持軸の基端側をホル ダの両端部で押さえる」(構成要件B)の意義について検討する。\nア 「押さえる」とは,物に力を加えて,動かないように固定するという意味 を一般的に有する(乙3の1ないし3)。 そして,本件明細書には,前記1 アないしオの記載のほか,「発明を実施 するための形態」として,「図4及び図5に示すように,前記ベース体13の 両支持筒18には,金属製の一対の支持軸20がシールリング21を介して, 交差軸線L1,L2上に位置するとともに外側に突出した状態で嵌合支持さ れている。このシールリング21は,支持軸20の周りからハンドル12の 内部へ向かう水の侵入を防止している。各支持軸20の基端には,大径状の 抜け止め頭部20aが形成されている。図4及び図9に示すように,両支持 軸20の基端部間においてベース体13上には,ホルダ22が配置されてい る。このホルダ22の両端部には,各支持軸20の基端側を押さえるための ほぼ半円筒状の押さえ部22aが形成されている。ホルダ22の中間部には, 円筒状のネジ止め部22bが形成されている。そして,ホルダ22の両端の 押さえ部22aにより両支持軸20の基端が押さえられた状態で,ホルダ2 2の中間のネジ止め部22bがネジ23によりベース体13に固定される ことによって,各支持軸20がベース体13の支持筒18に対する嵌合支持 状態に抜け止め固定されている。すなわち,支持軸20の組み付け時には, ハンドル12のベース体13に形成された一対の支持筒18に外側(図4の 左側)から支持軸20をそれぞれ嵌挿して,交差軸線L1,L2上に位置す るように配置する。次に,図5及び図9に示すように,両支持軸20の基端 間におけるベース体13上にホルダ22を配置し,そのホルダ22の両端の 押さえ部22aにより両支持軸20の基端側を押さえる。これにより,図4 及び図9に示すように,各支持軸20の基端の抜け止め頭部20aが押さえ 部22aの端縁に係合される。この状態で,ホルダ22の中間のネジ止め部 22bをネジ23によりベース体13に固定すると,一対の支持軸20がベ ース体13に対して同時に抜け止め固定される。」(段落【0013】),「従っ て,この実施形態によれば,以下のような効果を得ることができる。(1)こ の美容器においては,ハンドル12の先端部に交差軸線L1,L2上に位置 する一対の支持軸20が設けられている。各支持軸20の先端側には回転体 27が回転可能に支持され,それらの回転体27により身体に対して美容的\n作用が付与されるようになっている。前記ハンドル12における両支持軸2 0の基端部間の位置には,ホルダ22がその中間部において固定されている。 そして,このホルダ22の両端の押さえ部22aにより,各支持軸20の基 端側がハンドル12に対して押し付け保持されるようになっている。このた め,1つのホルダ22からなる簡単な固定構成により,一対の支持軸20を\nハンドル12に対して容易に固定することができて,製造コストの低減を図 ることができる。」(段落【0019】)との記載がある。
上記のとおり,本件明細書の段落【0013】,【0019】には,ホルダ の両端部に各支持軸の基端側を押さえるためのほぼ半円筒状の押さえ部が 形成され,この押さえ部が支持軸の基端に接し,それをハンドルに押し付け ることによって支持軸を保持し,支持軸が抜けることがないように固定する という実施形態が記載されており,これは,前記のとおりの「押さえる」の 一般的な意味とも整合する。 そうすると,本件発明の「前記各支持軸の基端側をホルダの両端部で押さ える」とは,支持軸の基端部をホルダの両端部に接するようにし,ホルダの 両端部から支持軸の基端部に対して押し付けること,すなわち力を加えるこ とによって,支持軸を抜けることがないように固定することを意味するもの と解するのが相当である。
イ これに対し,被告は,本件明細書の【図4】や段落【0013】の記載か ら,「押さえる」とは,支持軸の基端に設けられた抜け止め頭部や押さえ部, その他支持筒等の部材との勘合・係合によって固定される構成を包含するも\nのであると主張する。 しかし,本件明細書の段落【0013】の記載は前記アのとおりであり, ホルダが支持軸に力を加えずに,部材の勘合・係合のみによって固定する態 様が記載されているとはいえず,本件明細書のその他の記載中にも被告の主 張するような固定態様に関する記載はない。また,本件明細書の【図4】か らもそのような固定態様を看取することはできない。被告の主張は,「押さ える」の一般的な意味と一致するものでは必ずしもなく,かつ,本件明細書 にその主張を裏付ける記載はないといえるのであり,採用することができな い。
(2)。乙11発明と本件発明の対比
ア 本件特許の出願日前に公開されていた乙11文献には,1)ハンドルの先端 部に交差軸上に位置する一対の支持軸が設けられていること(乙11文献の 【図6】〜【図8】),2)腕部の先端側にマッサージを行うためのローラが回 転可能に支持されていること(乙11文献の段落【0001】【0013】),\n3)ローラ取付部材の左右両端部にそれぞれ腕部を含むローラ連結部の一端 を回転軸により軸支固定すること及び当該回転軸をローラ取付部材の穴に 挿通してEリングによって抜け止めすること(乙11文献の段落【0008】 〜【0010】),4)ローラ取付部材の中間部をローラ連結部を介してハンド ルに固定すること(乙11文献の段落【0008】【図1】【図2】),5)以上 の構成を有する美容器である乙11発明が開示されていることは当事者間\nで争いはない。 そこで,本件発明と乙11発明を対比すると,本件発明は,支持軸の基端 部をホルダの両端部で力を加えて支持軸を抜けないように固定する構成で\nあるのに対し(構成要件B),乙11発明の支持軸の固定方法はそのような\n構成を有していない点で相違する。
イ 被告は,本件発明の構成要件Bの「押さえる」とは支持軸の基端に設けら\nれた抜け止め頭部や押さえ部,その他支持筒等の部材との勘合・係合によっ て固定される構成を包含するものであることを前提として,本件発明の構\成 要件Bと乙11発明の構成3)とが同一であると主張する。 しかし,構成要件Bの「押さえる」に関する被告の主張を採用することが\nできないことは とおりであり,乙11発明の構成3)が本件発明の構\n成要件Bと同じであるということはできない。 したがって,乙11文献には構成要件Bの構\成が開示されているとはいえず, 乙11発明と本件発明は同一ではないから,本件発明が新規性を欠くというこ とはできない。

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平成30(行ケ)10041  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年12月6日  知的財産高等裁判所

 サポート要件および進歩性について、いずれも誤りであるとして拒絶審決を取り消しました。
 (1) 審決は,本願発明1は,少なくともセシウム及びストロンチウムを含む放 射性物質を,1382℃未満の温度(例えば1000℃)で焼成する場合を 含むと解され得るが,1382℃未満の温度で焼成をすると,「前記放射性 物質として含まれるセシウム及びストロンチウム」のうちのセシウム(沸点 671℃)が気化するため,本願発明1の効果である「放射性物質の気化温 度未満で焼成」し,「放射性物質や灰分が残渣として残り,放射性物質が気 化されて大気中に放出されないようにする」とともに「有機物を気化若しく は無機化させること」を実現できないとして,特許請求の範囲の記載はサポ ート要件に適合しないと判断した。
(2)ア そこで検討するに,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか 否かについては,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対 比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載され た発明で,発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明 の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記 載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を 解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきも のと解される。
イ 本件についてみると,本願発明1は,焼成汚染材を「測定下限値を超え る放射能濃度で放射性物質を含んだ動植物類,焼却灰,汚泥スラッジ,海\n洋泥砂,河川泥砂,湖泥砂,街路樹木,がれき,汚染水,土砂のうちの何 れか一つ以上を含む汚染材を,前記放射性物質として含まれるセシウム及 び/又はストロンチウムの気化温度未満で焼成した放射性物質を含有する」 ものと特定するものである。 そうすると,本願の請求項1にいう,「汚染材に放射性物質として含ま れるセシウム及び/又はストロンチウム」には,汚染材に放射性物質とし て「セシウム及びストロンチウム」の両者が含まれる場合のみならず,「セ シウム又はストロンチウム」,すなわち「セシウム」,「ストロンチウム」 のいずれか一方のみが含まれる場合も含まれているというべきである。
ウ また,本願明細書には,前記1(1)カのとおり,「前処理工程1001で は,図15に示すように,汚染材を地殻様組成体20の原料として使用す る前に,汚染材の焼成処理を行う。ここでの焼成温度は,放射性物質の気 化温度未満とし,放射性物質や灰分が残渣として残り,放射性物質が気化 されて大気中に放出されないようにする。このように,汚染材は,焼成処 理されることで,有機物を気化若しくは無機化させることが出来る。」(【0 133】),「セシウム−134は,沸点が671℃である。従って,例 えば,焼成温度を671℃未満としたときには,大分部分(判決注:原文 のまま)の放射性物質が気化することを防止することが出来る。」(【0 135】)と,焼成温度を汚染材に含まれる放射性物質の気化温度未満と することにより,放射性物質の気化を防止できることが記載されている。 これに対し,本願明細書には,汚染材に含まれる放射性物質の気化温度以 上の温度で焼成することについての記載はない。 このような本願明細書の記載に鑑みれば,本願発明1の上記特定事項に ついては,セシウム及びストロンチウムを放射性物質として含む,すなわ ち,セシウムとストロンチウムの両者を同時に放射性物質として含む場合 には,セシウム及びストロンチウムの気化温度未満で汚染材を焼成,すな わち,両者の気化温度に共通する部分となる(より低い気化温度である) セシウムの気化温度未満で焼成するものと解するのが自然である。また, セシウム又はストロンチウムのいずれか一方のみを放射性物質として含む 場合には,当該放射性物質の気化温度未満で焼成するものと解される。
エ したがって,請求項1に記載された発明は,発明の詳細な説明に記載さ れた発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解 決できると認識できる範囲のものであるというべきである。
4 取消事由2(引用発明の認定の誤り)について
(1) 審決は,引用文献には引用発明が記載されていると認定し,本願発明1は 引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたと判断した。
(2)ア そこで検討するに,進歩性の判断に際し,本願発明と対比すべき特許法 29条1項各号所定の発明は,通常,本願発明と技術分野が関連し,当該 技術分野における当業者が検討対象とする範囲内のものから選択されると ころ,同条1項3号の「刊行物に記載された発明」は,当業者が,出願時 の技術水準に基づいて本願発明を容易に発明をすることができたかどうか を判断する基礎となるべきものであるから,当該刊行物の記載から抽出し 得る具体的な技術的思想でなければならない。
イ 本件についてみると,引用文献は,その表題から,放射性物質が検出さ\nれた下水汚泥焼却灰等の処分に向けた検討状況を1枚の資料にまとめたも のと認められる。 そして,引用文献の「1 これまでの経緯と今後の予定」の項の記載か\nら,1)平成23年9月から,「放射性物質対策検討特別部会」において下 水汚泥焼却灰等の安全な処分に向けた検討が開始されたこと,2)同年10 月から,下水汚泥焼却灰等の処分に関する安全性評価検討業務委託がされ, 委託先の有識者委員会である汚染焼却灰等処分安全性評価委員会が3回開 催されたこと,3)平成24年3月に東日本大震災対策本部会議が開催又は 予定され,処分に向けた検討の方向性について確認されること,4)同年4 月以降,実現に向けた課題の抽出や整理が行われる予定であることが理解\nできる。
また,「2 第1〜3回汚染焼却灰等処分安全性評価委員会での有識者 からの主な意見」の項の記載は,上記有識者委員会での主な意見をまとめ たものと理解できるところ,「(前提)」の欄に,「今回の安全性評価の 中では,セシウム(Cs134,Cs137)を対象としたことを前提条 件として明示することが望ましい」との記載があることから,放射性物質 としてセシウムが検討対象になっていたことが把握できる。 さらに,「(方針)」の欄に,「再利用(下水汚泥焼却灰のセメント原 料化)の再開を目指すことは望ましい」,「めやす値より低いからそれで 良しとするのではなく,さらに,できる限り影響が小さくなるよう対策す る姿勢が重要」との記載があることから,上記有識者委員会において,放 射性物質としてセシウムを含む下水汚泥焼却灰のセメント原料化の再開を 目指すこと,放射線の影響はできる限り小さくするよう対策すべきことが, 方針に関する有識者の意見として存在したことをそれぞれ理解できる。 その一方で,引用文献には,放射性物質が検出された下水汚泥をどのよ うに焼却するか,下水汚泥焼却灰はどの程度の放射性物質を含むものであ るか,下水汚泥焼却灰をセメント原料化する際,できる限り影響が小さく なるようにどのような対策をするのか等,下水汚泥焼却灰を処分するに当 たっての具体的な方法,手順,条件など,技術的思想として観念するに足 りる事項についての記載は一切存在しない。
そうすると,引用文献には,単に放射性物質が検出された下水汚泥焼却 灰等の処分に向けた方針,及び当該方針に関する有識者の意見が断片的に 記載されているにすぎず,下水汚泥焼却灰等の安全な処分方法というひと まとまりの具体的な技術的思想が記載されているとはいえない。
ウ したがって,その余の点について認定,判断するまでもなく,引用文献 に審決が認定した引用発明が記載されているとはいえない。
(3) 被告の主張について
被告は,引用文献の記載から,「下水汚泥焼却灰のセメント原料化」が再 開されていないことがうかがわれるからといって,引用文献に「下水汚泥焼 却灰のセメント原料化」を行う方法が開示されていないことにはならないし, 「下水汚泥焼却灰のセメント原料化」を行う方法は一般的に確立されていた 技術といえるから,原告の主張は失当であると主張する。 しかし,引用文献中の「再開を目指すことが望ましい」との記載からは, 下水汚泥焼却灰のセメント原料化が引用文献の作成時点において中止されて いたことが明らかであるところ,上記(2)のとおり,引用文献には下水汚泥焼 却灰を処分するに当たっての具体的な方法など,技術的思想として観念する に足りる事項についての記載は一切存在しないのであるから,同文献に「下 水汚泥焼却灰のセメント原料化」を行う方法が開示されているとはいえない。 また,被告が証拠として提出した乙4〜6は,いずれも「下水汚泥焼却灰 のセメント原料化」技術に関する刊行物であるものの,放射性物質を含む下 水汚泥焼却灰のセメント原料化についての記載はないから,これらの証拠を もって,引用文献が対象とする「放射性物質が検出された下水汚泥焼却灰等」 におけるセメント原料化が確立された技術ということはできない。

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平成29(行ケ)10230  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年11月28日  知的財産高等裁判所

 特許異議申立がなされて審決は取消決定をしました。知財高裁は、「モノマーとして,着色の少ないジアミン誘導体を使用することが周知であるとしても,そのことから,本件光透過率が80%〜90%以上となるジアミン誘導体を使用することまでも周知であるということはできない」として、進歩性なしとした審決を取り消しました。\n
 ア 前記(1)で認定した甲3文献の【請求項1】,段落【0006】,【007 2】,甲7文献の段落【0043】,【0061】,乙2文献の【請求項2】,段落【0187】,【0246】の各記載によると,本件特許の出願当時,光透過性に優れた ポリイミドを得るために,波長400nm,光路長1cmの光透過率が80%以上 のテトラカルボン酸誘導体を使用することは,当業者にとって周知であったと認め られる。
イ また,前記(1)で認定した甲3文献の段落【0102】,甲7文献の段落 【0055】,甲8文献の段落【0027】,甲9文献の「1.2.2」,乙3文 献のS93頁の概要(Abstract)の欄の1行〜7行,S94頁29行〜3 4行,S105頁3行〜6行によると,本件特許の出願当時,光透過性に優れたポ リイミドを得るために,モノマーとして,着色の少ないジアミン誘導体を使用する ことは,当業者にとって周知であったと認められる。
ウ しかし,光透過性に優れたポリイミドを得るために,純水又はN,N− ジメチルアセトアミドに10質量%の濃度に溶解して得られた溶液に対する波長4 00nm,光路長1cmの光透過率(以下「本件光透過率」という。)が90%以 上である芳香環を有しないジアミン誘導体又は本件光透過率が80%以上である芳 香環を有するジアミン誘導体を使用することは,当業者にとって周知であったとは いえない。理由は以下のとおりである。
(ア) 確かに,着色の少ないジアミン誘導体を使用するということは,光透 過性の高いジアミン誘導体を使用することを意味するものと理解できる。 しかし,本件証拠上,モノマーとして,本件光透過率が80%〜90%以上のジ アミン誘導体を使用することについて記載した文献は一切ない(なお,被告は,光 透過性に優れたポリイミドの指標として,「フィルムとしたときの波長400nm の光透過率」を用いることは周知であると主張するが,同周知事項は,モノマーの 光透過性の指標として用いられるものではない。)。
(イ) また,前記(1)のとおり,甲9文献には,「モノマーの純度も重要なフ ァクターであり,見た目きれいな結晶をしていても僅かな不純物が光透過性を悪化 する原因となる。図8には用いたジアミンの再結晶前後の光透過性について示した ものである。活性炭を用いて再結晶した後のモノマーを用いた方が光透過性にやや 優れている。光透過性では僅かな差ではあるが,着色の差としてはっきりと表れる。\n」との記載があり,同記載からすると,着色の度合いと光透過性との間の相関の程 度は不明といわざるを得ず,他にこの点を認めるに足りる証拠もない。したがって ,モノマーとして,着色の少ないジアミン誘導体を使用することが周知であるとし ても,そのことから,本件光透過率が80%〜90%以上となるジアミン誘導体を 使用することまでも周知であるということはできないというべきである。
エ このように,光透過性に優れたポリイミドとするために,モノマーとし て,本件光透過率が80%〜90%以上のジアミン誘導体を使用することが周知で あったということはできないから,甲4発明に本件証拠によって認められる周知技 術を適用しても,本件発明1の構成に到らず,したがって,本件発明1は進歩性が\nないということはできない。
オ 被告の主張について
被告は,1)可視光領域(可視域)の吸収をなくして,光透過性に優れたポリイミドを 合成することは,当業界における周知の課題である,2)光透過性に優れたポリイミ ドの指標として,「フィルムとしたときの波長400nmの光透過率」を用いること は周知である,3)光透過性に優れたポリイミドとするためには,可視光を吸収する 要因を排除すればよく,そのためには,光透過性を悪化する原因となる不純物がな いよう,充分に精製した純度の高いモノマーを用いることは周知である,4)ポリイ ミド原料モノマーのうち,少なくともテトラカルボン酸二無水物において,上記の 「光透過性を悪化する原因となる不純物がないよう,充分に生成した純度の高いモ ノマー」であることの指標として,当該モノマーを適当な溶媒に溶解したときに波 長400nmの光透過率(溶媒にモノマーを溶解させた溶液の光路長1cmの光透 過率)がなるべく高いものであることを用いることは周知である,5)ポリイミドの 原料モノマーのうち,ジアミン誘導体についても,再結晶や蒸留等により精製して, 純度が高く,着色の少ないものを用いることは周知であるとした上で,甲4発明に 上記各周知技術を適用することにより,相違点1−1に係る構成を備えた本件発明\n1は容易に想到できる旨主張する。
(ア) しかし,前記ウのとおり,光透過性に優れたポリイミドとするために, モノマーとして,着色の少ないジアミン誘導体を使用することが周知であったとし ても,同周知技術から,本件光透過率が80%〜90%以上のジアミン誘導体を使 用することを導き出すことはできないところ,このことは,被告の指摘する上記の すべての周知技術を考慮しても変わるものではない。
(イ) この点,被告は,ジアミンに含まれる光透過性を悪化する原因となる 不純物が,そのままポリイミドにも含まれることとなり,ポリイミドの光透過性に 影響することから,光透過性に優れたポリイミドとするために,テトラカルボン酸 二無水物を溶媒に溶解した溶液の波長400nmの光透過率が90%以上のものを 用いるのであれば,ポリイミドを構成するもう一方のモノマーであるジアミンにつ\nいても,テトラカルボン酸二無水物と同程度の光透過率のものとすることは,当業 者であれば当然に理解する旨主張する。 a 被告の上記主張は,透明性の優れたポリイミドを製造するためには, ポリイミドの純度を高める必要があり,そのためには,モノマーであるジアミン誘 導体の純度も高める必要がある,そのジアミン誘導体の純度を光透過率に置き換え ると,もう一つのモノマーであるテトラカルボン酸誘導体に要求される光透過率と 同程度であるというものと理解できるが,本件証拠上,ジアミン誘導体及びテトラ カルボン酸誘導体のそれぞれの純度と光透過率との間の相関の程度は明らかではな く,後記bのような実験結果もあるから,透過性に優れたポリイミドの製造のため に,ジアミン誘導体の光透過率をテトラカルボン酸誘導体の光透過率と同程度とす ることが導き出されるということはできず,また,当業者もそのような理解をする とは認められない。

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平成29(行ウ)297  異議申し立て棄却処分取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年11月20日  東京地方裁判所

 特112条の2第1項の「正当な理由」には該当しないと判断されました。
 (1)特許法112条の2第1項は,同法112条4項の規定により消滅したも のとみなされた特許権の原特許権者は,同条1項の規定により特許料を追納 することができる期間内に特許料及び割増特許料を納付することができなか ったことについて「正当な理由」があるときは,経済産業省令で定める期間 内に限り,特許料等を追納することができると規定する。 そして,特許法112条の2の上記文言が,特許法条約(Patent Law Tre aty)において手続期間を徒過した場合に救済を認める要件としての「Du e Care(いわゆる『相当な注意』)」を取り入れて規定されたこと(平 成23年法律第63号による改正,乙12)からすれば,同条の「正当な理 由」があるときとは,原特許権者として,特許料等の追納期間の徒過を回避 するために相当な注意を尽くしていたにもかかわらず,客観的な事情により これを回避することができなかったときをいうものと解するのが相当である。
(2) 本件について,原告は,「正当の理由」として,主に,本件追納期間中は 別件訴訟の対応で心身ともに余裕がなかったこと,同期間中にうつ病等の複 数の疾患を抱えており,特許料等を納付できる状態ではなかったことを主張 する。 しかしながら,一般的に自己を当事者とする訴訟を追行していたとしても, それ以外の事務を行うことができなくなるものではなく,特許料の納付期限 等について注意を払うことは十分に可能\であったといえるから,原告の主張 する別件訴訟に係る事情は,追納期間の徒過を回避することができなかった と認められる客観的な事情とは評価できない。 また,原告は,本件追納期間中にうつ病等の複数の疾患に罹患していたと 主張し,原告について診断日を平成22年3月25日として「遷延性抑うつ 反応」との診断を受けたことが認められる(甲9の1)。しかし,本件追納 期間(平成25年6月12日から同年12月11日まで)中に原告が精神科 に通院するなどしてうつ病の治療を受けていたことを認めるに足りる証拠は ないほか,原告は,1)上記診断において「遷延性抑うつ反応」に罹患したと される平成20年11月10日(本件交通事故による受傷日)以降も複数の 特許出願を行なっていたことがうかがわれること(甲9の1,乙7〔3枚 目〕,2)本件追納期間中もほぼ毎週整形外科に通院していたこと(甲15, 乙7〔平成26年5月15日付け青森県立中央病院医師作成の診断書から始 まる添付資料の2,4,8,13,14枚目,2013/4/02(44)との記載から 始まる添付書類の5ないし16枚目),3)本件追納期間経過後から間もない 平成26年4月に本件特許権が消失していることを知ると,同月17日頃に は特許庁に対して特許料追納手続を問い合わせる電子メールを送信し,同月 23日には,特許庁から送付された電子メールの記載に従った追納分の特許 料相当額の印紙を貼付した本件納付書を提出し,正当な理由に該当する旨を\n記載した回復理由書を提出したこと(乙5の1,2,乙7〔2枚目,「登録 室」から2014年4月17日午前10時24分に送られた電子メールの記 載から始まる【添付資料】の1枚目〕)などからすれば,原告が本件追納期 間中に「遷延性抑うつ反応」あるいは他の疾患により行動等の制限を受ける ことがあったしても,それが特許料納付の妨げになる程度のものであったと 認めるには足りず,原告の疾病に係る事情もまた,追納期間の徒過を回避す ることができなかったと認められる客観的な事情とは評価できない。 更に,原告は,特許庁から特許料納付に係る請求書の送付がなかったとも 主張するが,特許料及びその納付期限については特許法107条以下に定め られるなどしていて,相当な注意を尽くして情報を収集すれば容易に知るこ とができたというべきであるから,上記事情は追納期間の徒過を回避するこ とができなかったと認められる客観的な事情とはいえない。 その他,追納期間の徒過を回避することができなかったと認められる客観 的な事情は認められない。
(3)以上によれば,本件納付書による特許料等の納付のうち,第4年分の特許 料等に係る部分について,本件期間徒過につき正当な理由があるとはいえな いとし,第5年分の特許料に係る部分について,第4年分の特許料等の追納 が認められないために本件特許権は消滅しているとして,本件納付書による 納付手続を却下した本件却下処分には,特許法112条の2第1項の解釈適 用を誤った違法があるとはいえない。 原告は,本件却下処分または本件決定によって本件特許権が回復しないこ とが憲法29条に違反するとも主張するが,特許権は,性質上,法が定める 条件に従って,国家から付与され存続する権利であるから,法が定める特許 料の納付等の手続を経なければこれを失うものであり,前記のとおり追納を 認めなかった本件却下処分に違法があるとはいえないことから,本件特許権 が回復しないことが憲法29条に違反することはない。

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平成29(ネ)10055  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年11月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審で新規性違反の証拠が提出されて、原審の判断が取り消されました。なお、証拠の提出が遅れたことについては、時機に後れた攻撃防御には該当するが、訴訟の完結を遅延させるとはいえないと判断されました。
 争点2−3−1(時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立て)について
ア 証拠(甲4,乙69の4・5)及び弁論の全趣旨によると,控訴人らは, 被控訴人外1名を原告,控訴人ら外3名を被告とする商標権侵害差止等請求事件に おいて,当該事件の原告訴訟代理人弁護士G及び同Hが平成19年5月22日に東 京地方裁判所に証拠として提出した乙69の4及び証拠説明書として提出した乙6 9の5を,その頃受領していること,乙69の5には,乙69の4の説明として, 「被告シンワのチラシ(2006年用)(写し)」,作成日「2006(平成18) 年」,作成者「(有)シンワ」,立証趣旨「被告シンワが原告むつ家電得意先へ営業 した事実を立証する。」旨記載されていることが認められる。 したがって,控訴人らは,平成19年5月22日頃には,乙69の4・5の存在 を知っていたものと認められる。
イ 控訴人らは,控訴人シンワ代表者Aが,平成21年1月13日〜19日,\n控訴人シンワが平成17年7月6日〜8日頃に噴火湾の漁民らにサンプルを示して 本件明細書等の図8(a)と同一形状の製品を販売していたことにつき,陳述書(乙 38の1〜13)を集め,控訴人進和化学工業の代表者であった故Eに送付したと\n主張している。 上記主張によると,控訴人らは,平成21年1月頃には,上記陳述書の存在を 知っていたものと認められる。
ウ 本件は,平成28年6月24日に東京地方裁判所に提訴され,平成29 年1月26日に口頭弁論が終結され,その後和解協議が行われたところ,上記ア, イの事実によると,控訴人らは,無効理由3(新規性欠如)に係る抗弁を,遅くと も平成29年1月26日までに提出することは可能であったといえるから,これは\n「時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法」(民訴法157条1項)に該当する ことが認められる。 しかし,控訴人らは,本件の控訴審の第1回口頭弁論期日(平成29年8月3日) において,控訴人シンワは,本件特許が出願されたとみなされる日より前に,本件 各発明の構成要件を充足する製品を販売したので,本件特許は新規性を欠く旨の主\n張をしたものであって,上記期日において,次回期日が指定され,更なる主張,立 証が予定されたことからすると,この時点における上記主張により,訴訟の完結を\n遅延させることとなると認めるに足りる事情があったとは認められない。
エ したがって,上記主張に係る時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立ては,認められない。\n
(3) 争点2−3−2(新規性欠如)について
ア(ア) 前記(2)アのとおり,控訴人らは,被控訴人外1名を原告,控訴人ら 外3名を被告とする商標権侵害差止等請求事件において,当該事件の原告訴訟代理 人弁護士G及び同Hが平成19年5月22日に東京地方裁判所に証拠として提出し た乙69の4及び証拠説明書として提出した乙69の5を,その頃受領しているこ と,乙69の5には,乙69の4の説明として,「被告シンワのチラシ(2006 年用)(写し)」,作成日「2006(平成18)年」,作成者「(有)シンワ」,立証趣旨「被告シンワが原告むつ家電得意先へ営業した事実を立証する。」旨記載され ていることが認められるところ,乙69の4には,「2006年販売促進キャン ペーン」,「キャンペーン期間 ・予約5月末まで ・納品5月20日〜9月末」, 「有限会社シンワ」,「つりピンロールバラ色 抜落防止対策品」,「サンプル価格」, 「早期出荷用グリーンピン 特別感謝価格48000円」などの記載があり,複数 の種類の「つりピン」が添付されており,その中には,5本のピンが中央付近にお いてそれぞれハの字型の1対の突起を有するとともに,そのハの字型の間の部分を 2本の直線状の部分が連通する形で連結された形状のもの(つりピンロールバラ色 と記載された部分の直近下に写し出されているもの)があることが認められる。 上記「つりピン」の形状は,上記事件の上記原告訴訟代理人が,平成19年5月 22日に,乙69の4とともに,上記商標権侵害差止等請求事件において,東京地 方裁判所に証拠として提出した乙69の3に「つりピンロール(バラ色)抜落防止 対策品」として記載されているピンク色の「つりピン」と,その形状が一致してい ると認められる。乙69の3は,乙69の4と同じ証拠説明書による説明を付して, 提出されたものであり,「2006年度 取扱いピンサンプル一覧」,「有限会社シ ンワ」,「早期出荷用」などの記載がある。 また,乙69の4は,上記事件の上記原告訴訟代理人が,平成19年5月22日 に,乙69の4とともに,「被告シンワのチラシ(2005年用)(写し)」,作成日 「2005(平成17)年」,作成者「(有)シンワ」,立証趣旨「被告シンワが原 告むつ家電得意先へ営業した事実を立証する。」旨の証拠説明書による説明を付し て,上記商標権侵害差止等請求事件において,東京地方裁判所に提出した乙69の 1と,レイアウトが類似しているところ,乙69の1には,「2005年開業キャ ンペーン 下記価格は2005年4月25日現在の価格(税込)です。」,「有限会 社シンワ」,「当社では売れ残り品は販売しておりません。お客様からの注文後製造 いたします。」などの記載がある。 以上によると,乙69の3及び4は,いずれも,控訴人シンワが,被控訴人の顧 客であった者に交付したものを,平成19年5月22日までに,被控訴人が入手し, 控訴人シンワらが,被控訴人の得意先へ営業した事実を裏付ける証拠であるとして, 上記事件において,提出したものであると認められる。 そして,乙69の4の上記記載内容,特に「販売促進キャンペーン」,「納品5月 20日〜」と記載されていることからすると,乙69の4と同じ書面が,平成18 年5月20日以前に,控訴人シンワにより,ホタテ養殖業者等の相当数の見込み客 に配布されていたことを推認することができる。
(イ) また,前記(ア)の認定事実及び弁論の全趣旨によると,乙69の4に 記載されている,5本の「つりピン」が中央付近においてそれぞれハの字型の1対 の突起を有するとともに,そのハの字型の間の部分を2本の直線状の部分が連通す る形で連結された形状のものは,控訴人シンワにより見込み客に配布されていた前 記(ア)の乙69の4と同じ書面にも添付されていたと認められる。
(ウ) 前記の5本の「つりピン」が中央付近においてそれぞれハの字型の 1対の突起を有するとともに,そのハの字型の間の部分を2本の直線状の部分が連 通する形で連結された形状のものの形状は,両端部において折り返した部分の端部 の形状が,乙69の4では,下から上へ曲線を描いて跳ね上がっているのに対し, 本件明細書等の図8(a)では,釣り針状に下方に曲がっている以外は,本件明細 書の図8(a)記載の形状と一致している。 そして,本件明細書等の図8(a)は,本件各発明に係るロール状連続貝係止具 の実施の形態として記載されたものである。
(エ) そうすると,前記(ア)及び(イ)の5本の「つりピン」が中央付近にお いてそれぞれハの字型の1対の突起を有するとともに,そのハの字型の間の部分を 2本の直線が連通する形で連結された形状のものは,形状については,本件発明1 の構成要件1A〜Hにある形状をすべて充足する。そして,証拠(乙69の1〜5)\n及び弁論の全趣旨によると,その材質は,樹脂であり,「つりピンロール」とされ ていることから,ロール状に巻き取られるものであり,その連結材は,ロール状に 巻き取られることが可能な可撓性を備えているものと認められる。したがって,乙\n69の4に記載されている「つりピン」は,本件発明1の構成要件1A〜Hを,す\nべて充足すると認められる。 また,上記の「つりピン」は,ロープ止め突起の先端と連結部材とが極めて近接 した位置にあり,2本のロープ止め突起の先端の間隔よりも一定程度狭い縦ロープ との関係では,2本の可撓性連結材の間隔が,貝係止具が差し込まれる縦ロープの 直径よりも広くなるから,本件発明2の構成要件である2Aも充足すると認められ\nる。 さらに,上記の「つりピン」が,ロール状に巻き取られるものであることは,上 記のとおりであるから,上記の「つりピン」は,本件発明3の構成要件である3A\n及び3Bも充足すると認められる。
(オ) そうすると,本件発明1〜3は,本件特許が出願されたとみなされ る日である平成18年5月24日よりも前に日本国内において公然知られた発明で あったということができ,新規性を欠き,特許を受けることができない。
イ 被控訴人は,乙69の4につき,平成19年5月22日に手元にあった ことを認めつつ,誰が,いつ,どこで入手したのかは記憶がなく,控訴人ら提出の 証拠によって,本件特許が出願されたとみなされる日前にこれが配布されていたこ とが立証されたとはいえないと主張する。 しかし,乙69の5に記載された立証趣旨に鑑みると,平成19年5月22日当 時,被控訴人は,乙69の4が控訴人シンワにより被控訴人の得意先への営業に用 いられたと認識していたことが認められるのであって,被控訴人がそれ以前にその 顧客から原本又は写しを入手したものと認められる。 乙69の4の記載内容に,販売の申出のためのチラシとして不自然なところはな\nく,上記のとおり,その記載内容によって,平成18年5月20日以前にこれが控 訴人シンワにより見込み客に配布されたことが推認される。 被控訴人は,平成18年5月24日以前に乙69の4のピンと同様の形状のピン が見込み客に配布されたことを裏付けるものとして控訴人らが提出した陳述書等の 書証の成立及び信用性について主張するが,乙69の4が上記の東京地方裁判所に おける事件において平成19年5月22日に上記のとおり被控訴人から提出された ことは動かし難い事実であり,被控訴人がその成立又は信用性を争うその他の書証 が存在しなくとも,前記アのとおりの認定をすることができる。また,被控訴人が その成立又は信用性を争う書証は,前記アの認定と矛盾するものではなく,むしろ, 間接的にこれを裏付けるものということができる。そして,これらに記載された供 述内容について,矛盾や曖昧な点があるとしても,それらは記憶の希薄化等により 起こり得ることであって,これらをもって,乙69の4等に基づき認定し得る前記 アの事実の認定を左右するに足りるものではない。さらに,特許庁における控訴人 シンワ代表者A,証人C,証人Iの各供述(乙146)についても,同様に,矛盾\nや曖昧な点や変遷があるとしても,これらをもって,乙69の4等に基づき認定し 得る前記アの事実の認定を左右するに足りるものではない。

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◆平成28(ワ)20818

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平成30(ネ)10045等  商標権侵害行為差止請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成30年11月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 日本酒の商標「白砂青松」の商標権侵害控訴事件です。1審では、要部が2つあるとして侵害と判断されました。知財高裁も「不可分的に結合しているとはいえない」として、1審判断を維持しました。なお、訴えの交換的変更により,差止の対象が変更されています。
 控訴人標章1は,別紙控訴人標章目録記載1のとおり,図形部分と, その上方に毛筆体で横書きした「大観」の文字部分及び「白砂青松」の 文字部分とからなる結合商標である。 図形部分は,長方形の黒色の枠線の中に,背後に白い山が見える,白 い砂浜に松林の続く海岸の風景画を図形化したものであり,図形部分の 大きさは,控訴人標章1全体の約5分の4を占めている。 しかるところ,「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分は, 図形部分と重なっていないこと,「大観」の文字部分は図形部分の長方 形の黒色の枠線からやや離れた上方に配置されていることから,長方形 の黒色の枠線で囲まれた図形部分と「大観」の文字部分及び「白砂青 松」の文字部分は,明瞭に区別して認識することができる。 また,図形部分の左下部には毛筆体で縦書きした「大観」の署名及び 落款印の印影が表記されており,図形部分は,横山大観作の「白砂青\n松」という作品名の絵画を図形化したものであることが認められるが (乙68ないし82),横山大観作の上記絵画が,原告商標の指定商品 「日本酒」の需要者である一般消費者の間に広く認識されるに至ってい るものと認めるに足りる証拠はないことに照らすと,需要者の多くは, 図形部分の風景画は,「白砂青松」の文字部分から連想,想起させる風 景を描いたものと認識することはあっても,横山大観作の上記絵画 景を描いたものと認識することはあっても,横山大観作の上記絵画であ ると認識するものと認めることはできないし,「大観」の文字部分及び 「白砂青松」の文字部分は,図形部分の絵画の作者が横山大観であり, その作品名が「白砂青松」であることを表示するものとして図形部分と\n一体的な関係にあると認識するものと認めることもできない。 そうすると,図形部分と「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字 部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的 に結合しているものとは認められない。 次に,「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分から全体とし て「タイカンハクサセイショウ」又は「タイカンハクシャセイショウ」 の称呼が生じるが,「大観」の文字部分は,控訴人標章1の上方左端に, 「白砂青松」の部分は,「大観」の文字部分よりも大きな文字で控訴人 標章1の上方中央にそれぞれ表示され,「大観」の文字部分は「白砂青\n松」の文字部分よりもやや上方に位置していること,「大観」の文字部 分を構成する文字と「白砂青松」の文字部分を構\成する文字は,字体が 異なり,文字の間隔は「白砂青松」の文字部分の方が広いことに照らす と,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,明瞭に区別して 認識することができるから,分離して観察することが取引上不自然と思 われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。 そして,「白砂青松」の文字部分は,控訴人標章1の上方中央に毛筆 体の大きな文字で表示され,「白砂青松」の文字部分から「ハクサセイ\nショウ」又は「ハクシャセイショウ」の称呼が自然に生じること,「白 砂青松」の文字部分の下方に表示された図形部分は,需要者の多くによ\nって「白砂青松」の文字部分から連想,想起させる風景を描いたものと 認識されることからすると,控訴人標章1が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,控訴人標章1の構成中の「白砂青松」の\n文字部分は,取引者,需要者に対し,被告商品の出所識別標識として強 く支配的な印象を与えるものと認められる。 以上によれば,控訴人標章1から「白砂青松」の文字部分を要部とし て抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断する ことも,許されるというべきである。
(イ) これに対し控訴人は,1)控訴人標章1は,被告商品の瓶のラベルに 使用されているところ,需要者が店頭で日本酒を購入する場合,日本酒 の瓶のラベルにどのような絵柄や文字が記載されているかを確認して商 品を識別するから,ラベルに表示されている文字や絵柄は,全体として\n自他商品識別機能を有しており,しかも,被告商品の瓶のラベルに占め\nる上記絵画部分は,非常に大きいこと,2)「大観 白砂青松」の文字部 分は,横山大観の自筆のものであり,この文字部分から,通常,横山大 観が描いた「白砂青松」という作品名の絵画を連想させるところ,絵画 部分は横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画であることからす れば,上記文字部分と上記絵画部分は,分離して観察することが取引上 不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえるから,控訴人標 章1から「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較し て商標そのものの類否を判断することは許されない旨主張する。 しかしながら,控訴人標章1を構成する図形部分と「大観」の文字部\n分及び「白砂青松」の文字部分とを明瞭に区別して認識することができ ることは,前記(ア)認定のとおりである。 また,上記1)の点については,日本酒を購入する場合,瓶のラベルに どのような絵柄や文字が記載されているかを確認することがあるからと いって,一般に,ラベルに表示されている文字や絵柄が全体としてのみ\n自他商品識別機能を有しているということはできない。\nさらに,上記2)の点については,仮に控訴人標章1の「大観」の文字 部分及び「白砂青松」の文字部分が横山大観の自筆のものであったとし ても,そのことが需要者である一般の消費者の間に広く認識されるに至 っているものと認めるに足りる証拠はない。また,前記(ア)認定のとお り,需要者の多くは,控訴人標章1の図形部分から,その図形部分の風 景画が横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画であると認識する ものと認めることはできない。

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◆原審はこちらです。平成29(ワ)9779

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平成30(行ケ)10060  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年11月28日  知的財産高等裁判所

 パラマウントベッドの形状の立体商標の登録について、識別力無し、3条2項の適用もなしとした審決が維持されました。
(イ) 前記(1)イ(ウ)認定のとおり,マットレス付き原告ベッドは,原告ベ ッドの機能(底板の背部の背上げ機能\及び膝部の膝上げ機能,土台の傾\n斜機能)の組合せにより,本願商標と同一の形状をとることができるこ\nとからすると,マットレス付き原告ベッドの購入者又は利用者は,その 使用時に,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形状を認識する 機会があり得るものといえる。 しかしながら,本願商標は,別紙1記載のとおり,ベッドの土台が, 頭側を上にして傾斜し,ベッドの底板が,頭側を上にして足側にかけて 全体としてS字状に屈曲し,背部が立ち上がり,腰部から足部にかけて の中間の膝部が起伏し,かつ,頭側の端部がヘッドボードの上端部の右 方に近接して位置した形状であり,マットレス付き原告ベッドを本願商 標と同一の形状とするには,原告ベッドの上記機能を組み合わせて,土\n台の傾斜角度,底板の背部の立ち上げ角度及び膝部の起伏の高さなどを 調節して設定する必要があること,マットレス付き原告ベッドの利用者 は,通常は,マットレスの上に布団をかけた状態で原告ベッドを使用す ることに照らすと,マットレス付き原告ベッドの購入者又は利用者は, その使用時に,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形状を認識 する機会は多いものとは認められないし,また,その形状を認識したと しても,それが印象に残ることは少ないものと認められる。 さらに,原告は,本社及び全国8支店のショールームに原告の総合カ タログ(甲1)及び単品カタログ(甲2)を常備し,マットレス付き原 告ベッドを展示して,販売活動を行っていること(甲5,弁論の全趣旨) に照らすと,マットレス付き原告ベッドの購入者は,その購入の際に, 総合カタログ及び単品カタログに接することがあり得るものと認められ るが,総合カタログ及び単品カタログには,別紙1の下部の写真と同様 の構図(斜視図)の写真は掲載されていないため,総合カタログ及び単\n品カタログのみから,本願商標と同一の形状を認識することはできない。 また,上記ショールームにおいてマットレス付き原告ベッドが本願商標 と同一の形状で展示されていたことを認めるに足りる証拠はない。
(ウ) マットレス付き原告ベッドを含む「楽匠Zシリーズ」の商品の新聞 広告及び雑誌広告には,1)人が横たわっている,マットレス,枕及び掛 け布団を設置した,底板及び土台が頭側に傾斜した状態のマットレス付 きベッドを表したB商標,2)マットレス,枕及び掛け布団を設置した, 土台が頭側に傾斜し,底板の背部が立ち上がった状態のマットレス付き ベッドを表したD商標,3)マットレス及び枕を設置した,土台が頭側に 傾斜し,底板の背部が立ち上がった状態のベッドに人が枕に頭をのせ, 背中を付けて座っているマットレス付きベッドを表したE商標の写真が\n掲載されていることは,前記ア(イ)認定のとおりである。 しかしながら,これらのB商標,D商標及びE商標の写真は,人,枕 及び掛け布団が写されている部分を除いても,別紙1記載の本願商標の 形状の写真と一致しないことに照らすと,B商標,D商標及びE商標を 掲載した新聞広告及び雑誌広告から,本願商標と同一の形状又は社会通 念上同一の形状を認識することはできないものと認められる。 また,同様に,マットレスの設置されていない,土台が頭側に傾斜し, 底板の背部が立ち上がった状態のベッドを表したA商標が掲載された新\n聞及び雑誌から,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形状を認識することはできないものと認められる。 次に,マットレス付き原告ベッドを含む「楽匠Zシリーズ」の商品の テレビCMには,マットレスの足元側にカバーをつけたマットレス付き ベッドにおいて,土台が水平で,土台が頭側に傾斜した状態,底板及び 土台が頭側に傾斜した状態,土台が頭側に傾斜し,底板の背部が立ち上 がった状態を表したF商標の画像,土台が頭側に傾斜し,底板の背部が\n立ち上がった状態のマットレス付きベッドを表した標章の画像が表\示さ れていることは,前記ア(ウ)認定のとおりである。 しかしながら,これらのF商標及び上記標章の画像は,マットレスの 足元側のカバーが写されている部分を除いても,別紙1記載の本願商標 の形状の写真と一致しないことに照らすと,F商標及び上記標章が表示\nされたテレビCMから,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形 状を認識することはできないものと認められる。 (エ) 前記ア(エ)のとおり,本件アンケートは,福祉用具レンタル卸業者, 貸与業者及び販売業者,ケアマネージャー(介護支援専門員),福祉用 具鑑定士,福祉用具プランナー等を対象者とするものであり,介護用品 の利用者及びその家族等の一般需要者が対象者に含まれていないから, 本件アンケートの結果は,需要者(前記(ア))の認識を適切に反映した ものとは認められない。
(オ) 以上によれば,原告によるマットレス付き原告ベッドの販売(前記 ア(ア)),新聞広告,雑誌広告及びテレビCMによる広告宣伝(前記ア(イ), (ウ)),本件アンケートの結果(前記ア(エ))を総合考慮しても,本件 審決時(審決日平成30年3月22日)までに,本願商標が,マットレ ス付き原告ベッドを表示するものとして,需要者の間に広く認識される\nに至ったものと認めることはできない。 したがって,本願商標は,マットレス付き原告ベッドについて,「使 用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識する ことができるもの」(商標法3条2項)に該当するものとはいえない。
ウ 原告の主張について
原告は,1)本願商標は,極めて斬新で特徴的な形状(「傾斜ベッド」と 「フットボード」の形状)を有しており,その特徴的な形状は,強く需要 者の目を引くこと,2)本願商標の使用商品(マットレス付き原告ベッド) は,発売後短期間に多数の販売実績を上げていること,3)積極的,集中的 かつ商品形状の露出を前面に押し出した効果的な本願商標の使用商品の宣 伝活動とも相まって,需要者である福祉用具レンタル事業者において,本 願商標の特徴的な形状は,印象的かつ鮮明に記憶され,その特徴的な形状 自体が原告の出所を表示する標識として認識されるに至っており,このこ\nとは,本件アンケート調査の結果によって裏打ちされていることからする と,本願商標は,本願商標の使用商品について,「使用をされた結果需要 者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」 (商標法3条2項)に該当すると主張する。
しかしながら,上記1)のうちの「傾斜ベッド」の形状とは,土台の傾斜 機能により,フットボード側が低くなった形状をいうものであるところ,\n原告が述べるように土台の傾斜機能は従来の介護用ベッドにない機能\であ るとしても,本願商標の構成全体の中で土台が傾斜した形状が強く需要者\nの印象に残るものとは認められない。また,上記1)のうちの「フットボー ド」の形状とは,樹脂製のボードを採用し,全体に丸みをつけて,ボード の上端がつかまりやすいグリップ形状となっている点及び外側に「収納カ バー」が設けられ,木目調のシートが貼ってある点をいうものであるとこ\nろ,グリップできるように,フットボードの上部左右に穴を設けた形状及 びフットボードの一部に木目調の模様がある形状は,他の介護用ベッドに おいても採用されている形状又は装飾であって(乙4ないし6,14,1 5),いずれも独特なものとはいえず,強く需要者の目を引くものとは認 められない。
そして,マットレス付き原告ベッドの販売実績及び広告宣伝,本件アン ケートの結果を総合考慮しても,本件審決時(審決日平成30年3月22 日)までに,本願商標が,マットレス付き原告ベッドを表示するものとし\nて,需要者の間に広く認識されるに至ったものと認めることはできないこ とは,前記イ(オ)で説示したとおりである。したがって,原告の上記主張は,理由がない。

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平成30(行ケ)10024  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年11月14日  知的財産高等裁判所(2部)

 動機付けなしとした審決が維持されました。原告はソニーで、被告(特許権者)は富士フイルムです。
 原告は,甲3発明に甲4技術事項を適用し,さらに甲4技術事項を適用し た甲3発明に原告主張甲2技術事項を適用して,本件発明1を容易に想到すること ができた旨主張するので,同主張について検討する。 ア 前記2(3)のとおり,甲3発明は,テープ・ドライブのサーボ系を安定化 させる目的で(段落【0007】),テープ・カートリッジがテープ・ドライブに挿 入されるたびに,該テープ・ドライブのサーボ制御用低域通過フィルタの係数を, 挿入されたテープ・カートリッジに応じて設定し直すようにした発明(段落【00 09】)であって,甲3文献には,テープに記録されるサーボ・パターン自体はタイ ミング・ベース・サーボの基礎をなす既知のものだとされているが(段落【002 0】),サーボ・パターンによって何等かの情報を符号化して埋め込むことについて の記載はなく,また,そのような符号化が必要であるとの示唆もなく,ましてや, サーボバンド識別情報を同一のサーボバンド内に符号化することの必要性について の示唆はない。
 したがって,甲3発明にサーボバンド上に各種の情報を符号化する技術である甲 4技術事項やサーボバンド識別情報を同一のサーボバンド内に符号化する技術であ る原告主張甲2技術事項を適用する動機付けがあると認めることはできない。 また,甲3発明に甲4技術事項を適用した上で,さらに原告主張甲2技術事項を 適用することは,タイミング・ベース・サーボを前提として,サーボバンド上に情 報の符号化をすることについて何らの開示がない上記の甲3発明に,甲4文献で開 示されているタイミング・ベース・サーボにおける情報の符号化の方法を示した甲 4技術事項と,アンプリチュード・サーボにおいて同一のサーボバンド内にサーボ バンド識別情報を符号化することを示した原告主張甲2技術事項を重ねて適用する ものであるが,甲3文献には,サーボバンド上に情報を符号化することの記載すら ないのであるから,そのような状況で,同一のサーボバンド内にサーボバンド識別 情報を符号化することを示した技術を適用することが容易であったということはで きないというべきである。
イ 原告の主張について
原告は,甲3発明は複数のサーボバンドを有する磁気テープである点で原告主張 甲2技術事項と共通すること及び複数のサーボバンドを有する磁気テープにおいて は,サーボ読取りヘッドが自らが位置するサーボバンドを何らかの方法によって特 定する必要があるという課題が存在し,この課題は周知であることから,上記動機 付けが存在することは認められる旨主張する。 しかし,甲3発明は複数のサーボバンドを有する磁気テープであり,また,複数 のサーボバンドを有する磁気テープにおいて,サーボ読み取りヘッドが自らが位置 するサーボバンドを何らかの方法によって特定する必要があることは周知であると しても,甲3発明は,前記アのようなものであるから,甲3発明に甲4技術事項を 適用した上で,さらに原告主張甲2技術事項を適用することが動機付けられるとい うことはできない。このことは,タイミング・ベース・サーボにおいて,非平行な 縞を構成する線の位置をテープ長手方向にずらすことによりデータを符号化するこ\nとが,当業者にとって周知となっていたとしても,左右されるものではない。

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平成28(ワ)12791  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 平成30年11月6日  大阪地方裁判所(21民)

 部分意匠について、侵害であるとして、差止、損害賠償が認められました。なお、損害額は約300万円です。これは、利益に対する貢献や寄与が低いと認定されたためです。
 登録意匠と対比すべき意匠とが類似であるか否かの判断は,需要者の視 覚を通じて起こさせる美感に基づいて行う(意匠法24条2項)ものとされており, 意匠を全体として観察することを要するが,この場合,意匠に係る物品の性質,用 途及び使用態様,並びに公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して,取 引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として把握し,登録意匠と 対比すべき意匠とが,意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを重視\nして,観察を行うべきである。 そして,本件意匠に係る物品の説明によれば,本件意匠に係る物品である検査用 照明器具は,工場等において製品の傷やマーク等の検出(検査)に用いられるもの であるから,そのような検査を必要とする製品の製造業者等によって購入されるも のであると推認される。したがって,意匠の類否判断における取引者・需要者は, そのような製造業者等である。 そこで,このような需要者の観点から,本件意匠の要部について検討する。
イ 公知意匠
平成15年6月16日に発行された意匠公報(乙12)において,乙 12意匠(別紙「乙12意匠の図面」参照)が開示されていた。そして,乙12意 匠は,前記1(8)イで認定したとおり,本件意匠の基本的構成態様AないしDと同じ\n構成態様を備えているほか,本件意匠の具体的構\成態様E,H,I及びJの一部並 びにF,K及びLと同じ構成態様を備えている。\nそうすると,以上の構成態様は,検査用照明器具の物品分野の意匠において,本\n件意匠の意匠登録出願前に広く知られた形態であったと認められる。 他方で,後端フィン及び中間フィンの各面が,支持軸体の通過部分以 外には貫通孔がなく,平滑であるという構成態様(同M)は,乙12意匠において\nも開示されておらず,前記1(8)で述べたとおり,検査用照明器具においてそのよう な構成態様を備えたものは公知意匠として存在していなかった(甲14で開示され\nている意匠においても,後端フィン及び中間フィンの上側に貫通孔が設けられてい る。)。この点,乙8意匠はタワー型のヒートシンクの意匠であり,その後端面は 平滑であるが,前記1(3)で判示したとおり,これがどのような物品の放熱部として 用いられるものかは明らかでなく,これと他の部材との位置や大きさの関係,ある いはヒートシンクの各部分の具体的な寸法等も明らかでないし,そもそも乙8の文 献はヒートシンクに関する一般的説明をしたものにすぎないから,要部の認定に当 たって参酌すべき公知意匠というべきものとはいえない。 そして,前記1で判示したとおり,本件意匠の具体的構成態様Mは,その意匠登\n録出願前の公然知られた意匠に基づき,容易に創作することができたものとはいえ ないから,公知意匠にない新規な創作部分であると認められる。
ウ 意匠に係る物品の性質,用途,使用態様等
一定の機能及び用途を有する「物品」を離れての意匠はあり得えないから,\n部分意匠においても,部分意匠に係る物品において,意匠登録を受けた部分がどの ような機能及び用途を有するものであるかを,その類否判断やその前提となる要部\n認定の際に参酌すべき場合がある。 このような観点から検討すると,本件意匠に係る物品は検査用照明器具でありL ED等を内蔵するところ,LEDを使用すると熱を発生し,器具内の温度が上昇す ることから,その放熱(設計)の必要性が指摘されている(甲21,22,24な いし25の2)。そして,本件意匠はその放熱部の意匠であり,特にそこに設けら れたフィンは放熱するための部材(放熱フィン)であるから,放熱を必要とする検 査用照明器具の需要者は,放熱効率という観点から,本件意匠の部材の形態や配置 の状況に着目すると考えられ,具体的には,放熱部である後方部材が前方部材の延 伸上にあること,放熱部である後方部材が,前方部材と同程度の大きさ(径)であ ること,複数枚のフィンが間隔を空けて配置されていること,フィンよりも支持軸 体の方が径が小さく,支持軸体の貫通孔以外のフィンの部分が放熱に寄与すること に着目すると思われる。 また,前記1で検討した公知意匠の内容に照らすと,フィンの枚数,間隔及び厚 みを変更したり(中間フィンと後端フィンの厚みの関係も含む。),フィンに面取 りを加えたり,支持軸体の径を変更したりすることは,ありふれた手法というべき であって,需要者がそのわずかな違いに着目するとは考えられないが,需要者が放 熱を重視する場合,少なくとも,フィンの枚数や厚み,支持軸体とフィンの径の関 係,フィンの間隔とフィンの径の関係が大きく変われば,受ける美感は異なってく ると考えられる。 他方,乙12意匠等の公知意匠では,後端面(後端フィンの後面)から電源ケー ブルが引き出されており,そのために後端フィンや中間フィンの上側に貫通孔が設 けられ,又は後端フィンの中心部に孔が設けられていたところ,電源ケーブルの引 き出し位置がどこであるかは,検査用照明器具としての使用態様に関わることであ るから,後端フィン及び中間フィンについて,支持軸体の通過部分以外に貫通孔が なく,その各面が平滑である点は,本件意匠において,公知意匠にはない,需要者 の注意を惹く点であると認められる。
エ 要部の認定
以上によれば,公知意匠との関係や,需要者が着目しその注意を惹くという 観点から,前記基本的構成態様及び具体的構\成態様を総合し,以下の点を本件意匠 の要部とするのが相当である。 前端面に発光部のある検査用照明器具に設けられた後方部材である。 後方部材の中心には,検査用照明器具の前方部材の後端面より後方に 延伸する支持軸体が設けられている。 支持軸体には,薄い円柱状の中間フィン2枚及び後端フィン1枚が設 けられている。 後端フィンは,中間フィンよりも厚くなっている。 支持軸体の径は,フィンの径の5分の1程度である。 中間フィン及び後端フィンの径は,前方部材の最大径とほぼ同じであ る。 フィン相互の間隔は,フィンの径の8分の1程度である。 中間フィン及び後端フィンには,支持軸体の通過部分以外に貫通孔は なく,その各面は平滑である。
(4) 被告製品の構成態様\n
別紙「被告製品の図面」及び弁論の全趣旨によれば,被告製品の構成態様は,\n別紙「裁判所認定の構成態様」の「イ号物件」ないし「ヘ号物件」欄記載のとおり\nと認められる(符号は原告の主張をベースにしているが,構成態様の内容は,原告\nも異論がないとしている別紙「被告主張の構成態様」の内容等も踏まえ,一部変更,\n付加した。)。なお,「共通」とあるのは,「本件意匠」欄記載の構成態様と同じ\n構成態様であるという意味である。\n
(5) 本件意匠とイ号物件ないしハ号物件の意匠との類否
ア 本件意匠の要部(前記(3) いし )と前記(4)で認定した被告製品 の構成態様とを対比すると,イ号物件ないしハ号物件については,中間フィンが3\n枚であること(同 参照),支持軸体の径がフィンの径の3分の1強であること(同 参照),フィン相互の間隔がフィンの径の約10分の1ないし約6分の1である こと(同 参照),イ号物件及びハ号物件については,後端フィンの後面中心にね って,その後面又は各面が平滑でないこと(同 参照)といった差異点があり,そ の余は共通点であると認められる。
イ まず,中間フィンの枚数,支持軸体とフィンの径の関係,フィンの間隔 とフィンの径の関係について,大きく相違すれば異なる美感を生じさせる場合があ ることは前述したところであるが,本件意匠とイ号物件ないしハ号物件の各意匠と の差異はわずかであり,格別異なる美感を生じさせるとまでは認められない。
ウ 本件意匠の要部(ク)については、イ号物件ないしハ号物件の中間フィンに 貫通孔はなく,その各面は平滑であるものの,後端フィンについては,ねじ穴又は 貫通孔があり,その後面又は両面が平滑でない点で相違する。 しかしながら,イ号物件及びハ号物件については,後端フィンの後面中心にねじ 穴が設けられているため,ねじ穴自体は支持軸体の中にあって,中間フィンに貫通 孔はなく,ロ号物件については,後端フィンの左右対称位置にねじ穴があって,後 端フィンは貫通しているものの,中間フィンに貫通孔は存しない(別紙「被告製品 の後端フィンの後面に設けられたねじ穴に関する意匠(構成態様)」参照)。\n需要者が検査用照明器具の商品としての特長を把握しようとする際には,正面, あるいは斜め前方,斜め後方から見て,発光部の構造,放熱部の構\造,両者の構造\n的関係を把握しようとすると考えられ,この場合,後端フィンのみならず中間フィ ンにも貫通孔のある乙12意匠のような製品であれば,容易に貫通孔の存在を認識 するのに対し,イ号物件ないしハ号物件の場合,正面,あるいは斜め前方から観察 した程度では,ねじ穴の存在を認識することはなく,後方から観察した場合に初め て後端フィンのねじ穴の存在を認識すると考えられ,ねじ穴があるという機能の違\nいを認識することはあっても,格別これを美感の違いとして認識することはないと 思われる。
エ アないしウを総合すると,本件意匠の要部である前記(3)エ(ア)ないし(ク) とイ号物件ないしハ号物件の構成態様とを対比すると,差異点は存するものの,い\nずれも細部といえる点であって,需要者に視覚を通じて起こさせる美感が異なると いえるような大きな差異点はなく,基本的な構造としてはむしろ共通点が多いから,\nイ号物件ないしハ号物件の意匠は,いずれもこれを全体として観察した場合,本件 意匠と共通の美感を生じさせるものであって,本件意匠に類似するということがで きる。
・・・

(3) 本件意匠の寄与度ないし推定覆滅事由
ア 被告は,本件意匠の被告製品の売上げ(利益)に対する貢献や寄与は低 く,その寄与率は0.2%にも満たないと主張し,推定覆滅事由の存在についても 主張している。これに対し,原告は本件意匠の寄与度は100%であると主張し, 被告の主張を争っている。
イ そこで本件意匠の寄与度ないし推定覆滅事由について検討する。 まず,本件意匠に係る物品は検査用照明器具で,本件意匠はその後方 部材の意匠であるところ,イ号物件ないしハ号物件全体の中で,上記後方部材に相 当する部分が占める割合は,正面視における面積比において,最大でも4割程度と 考えられる(乙18参照)。そして,各物件には,本件意匠に係る物品と同じく, 前方部材には光導出ポート等が設けられ,LED等が内蔵されていると考えられる から,イ号物件ないしハ号物件全体の製造原価の中で後方部材の製造原価が占める 割合は,かなり低いと考えられる。 また,既に検討したとおり,イ号物件ないしハ号物件の意匠と本件意 匠には種々の共通点がみられるものの,これらの共通点に係る構成態様は,検査用\n照明器具の物品分野の意匠において,本件意匠の意匠登録出願前に広く知られた形 態であり,本件意匠の要部とはされない部分も多い。したがって,イ号物件ないし ハ号物件が部分意匠である本件意匠に類似するとしても,これが需要者の購買動機 に結びつく度合いは低いといわざるを得ない。 原告は,本件意匠の実施品とされる「第2世代HLVシリーズ」の製 品の販売開始に当たって,「従来品に比べ2倍以上明るい」こと,「従来より均一 度3倍アップ,明るさも26%アップした」ことを強調し,その特徴として,「低 消費電力・低発熱で環境にやさしい」ことや,「長寿命でメンテナンスコストを削 減」したこと,「軽量・小型設計で場所を取らず省スペース」であることなど,製 品自体の性能や機能\等を強調する一方で,本件意匠には言及すらしていない(甲1 5,16)。また,原告は同製品が掲載されたカタログにおいて,高輝度スポット 照明に関し,電源ケーブルを検査用照明器具の側周面から引き出した図面を掲載し つつも,その宣伝文句として,「明るさと均一度をアップした」ことや,「軽量・ コンパクト設計,しかも低消費電力で長寿命」であることを記載するとともに,製 品の説明において,「高コントラスト撮影が可能」,「従来比2倍の光量アップを\n実現」などと,製品自体の性能や機能\等を強調しており(甲8,乙6),甲17の 製品のカタログにおいても同様であった(甲17)。 被告も,製品のカタログにおいて,「鏡面ワークに最適 軽量・コンパクト」と いうことや,「パッケージ・液体・印字などの透過検査に最適」であることを強調 しており(甲5),乙23添付の他のカタログにおいても同様である(乙23)。 以上によれば,検査用照明器具の需要者は,検査を必要とする製造業者等である ことから,イ号物件ないしハ号物件を購入するに当たり,主に検査用照明器具それ 自体の性能や機能\等に着目すると認められ,本件意匠との類似性が購買の動機とな る程度は高くないといわざるを得ない。

◆判決本文

下記に、問題の意匠が掲載されています。

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平成30(行ケ)10063  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年11月7日  知的財産高等裁判所

 片仮名「エナジア」を含む結合商標について、アルファベット商標「EnerGia」と類似するかが争われました。知財高裁は、類似しないとした審決を維持しました。
 また,本件商標は「エナジア」の称呼を生じ,引用商標2は「エネルギア」の称 呼を生じるが,中間音における「ナジ」と「ネルギ」の相違が4音と5音という短 い音構成からなる両称呼全体に及ぼす影響は大きいから,離隔的観察においても,\n称呼上の相違を十分認識することができる。\nさらに,本件商標が特定の観念を生じないのに対し,引用商標2は原告のブラン ドという観念を生じるから,本件商標と引用商標2とは観念において相違する。 以上によると,本件商標と引用商標2とは,外観,称呼,観念のいずれにおいて も相紛れるおそれはないから,本件商標は,引用商標2に類似する商標には当たら ないものと認められる。
・・・
イ 原告は,引用商標1及び2の「EnerGia」の欧文字は,一般的な 辞書等に掲載されていない造語であるが,1)辞書等の記載,2)先行商標採択例,3) 商標使用例,4)被告の本件商標の使用等の一般的,恒常的な取引の実情において「エ ナジア」の称呼をもって使用されているから,少なくとも「エネルギア」と「エナ ジア」の二つの称呼が生じると主張する。 しかし,前記(2)ウ,(3)イのとおり,引用商標1及び2は,中国地方のみならず 全国で,その指定役務である「電気の供給」等のエネルギーに関連する役務におい て,「エネルギア」という称呼により,原告の業務に係る役務を表示するものとして\n取引者,需要者の間に広く認識されているものである。そうすると,引用商標1及 び2に接した取引者,需要者は,そのような認識を有するのであるから,引用商標 1及び2を「エネルギア」と称呼するものということができ,引用商標1及び2を 「エナジア」と称呼するものとは認められない。 そして,このことは,「EnerGia」の欧文字が,英語「energy」(エ ナジー)になぞらえて,英語風に「エナジア」と称呼し得ることや,現に「エナジ ア」と称呼させる先行商標採択例や商標使用例があることによって,左右されるも のではない。 また,本件商標の「エナジア」の片仮名文字が「energia」に由来し,被 告ホームページにおいて本件商標が「energia」の文字とともに使用されて いるといった原告主張の事情については,前記アのとおりである。 ウ(ア) 原告は,審決が,引用商標1及び2が「エネルギア」と「エナジア」 の二つの称呼を生じるなど,二つ以上の称呼,観念を生じる場合と認定したにもか かわらず,一つの称呼,観念を生じると認定したことは,商標法4条1項11号該 当性の判断基準に照らし許されないと主張する。 しかし,引用商標1及び2は,いずれも,「エネルギア」の称呼を生じ,原告のブ ランドの観念を生じることは,前記(2),(3)のとおりであり,引用商標1及び2は, 二つ以上の称呼,観念を生じるものではない。
(イ) 原告は,審決のように,対比商標が二つ以上の称呼,観念を生じる場 合でも,一つの称呼,観念のみを生じると認定することは,あたかも禁止権を放棄 し,類似範囲が収縮し消滅したものと取り扱うことになり,商標制度に沿わない結 果を招来するものであって,許されないなどと主張する。 しかし,商標法4条1項11号の類否判断は,商標登録出願された商標に係る査 定時又は審決時において,この商標が引用商標に類似するか否かを判断すべきもの であるから,上記の基準時において,引用商標に接した取引者,需要者において二 つ以上の称呼,観念を生じると認められるときは,その二つ以上の称呼,観念をも って,類否判断すべきである一方,上記の基準時において,引用商標に接した取引 者,需要者において一つの称呼,観念のみを生じると認められるときは,その称呼, 観念をもって,類否判断すべきものである。このように解しても,引用商標に接し た取引者,需要者において一つの称呼,観念のみを生じると認められるときは,こ の称呼,観念をもって類否判断した結果,引用商標と相紛れるおそれのない非類似 である商標については,引用商標との間において出所の混同を生じるおそれはない から,商標制度に沿わないものとはいえない。
(ウ) 原告は,引用商標1及び2が,「エネルギア」と称呼され,中国地方で 周知著名性を獲得しているという事実は,特殊的,限定的な取引の実情であるから, これを考慮することは許されないと主張する。 しかし,引用商標1及び2が,中国地方のみならず全国で,その指定役務である 「電気の供給」等のエネルギーに関連する役務において,「エネルギア」という称呼 により,原告の業務に係る役務を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認\n識されているという事実は,単にその商標が現在使用されている役務についてのみ の特殊的,限定的な取引の実情ということはできないから,本件商標と引用商標1 及び2の類否判断に当たりこれを考慮すべきものである。
(エ) 原告は,審決が,引用商標1及び2が,中国地方を越え,例えば,関 東地方の「電気の供給」の役務の取引者,需要者の間で周知著名性を獲得していた か否かについて,何ら認定していないにもかかわらず,関東地方など周知著名性を 獲得していない地域まで含めて,一つの称呼,観念のみを生じると認定しているこ とは,自己矛盾であるなどと主張する。 しかし,引用商標1及び2が,中国地方のみならず全国で,その指定役務である 「電気の供給」等のエネルギーに関連する役務において,「エネルギア」という称呼 により,原告の業務に係る役務を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認\n識されていることは,前記(2)ウ,(3)イのとおりである。

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◆平成30(行ケ)10062

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平成29(ワ)21145 損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年8月17日  東京地方裁判所

 漏れていたのでアップします。ソフトウェアの表\示画面について、不競法2条1項3号の商品の形態に該当すると判断されました。ただ、同一かという点では否定されています。被告はベネッセです。
 不競法2条1項3号の「商品の形態」とは,「需要者が通常の用法に従った 使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状 並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感」をいうところ(同条4 項),原告ソフトウェアは,タブレットとは別個に経済的価値を有し,独立して取引の対象となるものであることから「商品」ということができ,また,これを起動する際にタブレットに表\示される画面や各機能を使用する際に表\示される画面の形状,模様,色彩等は「形態」に該当し得るというべきである。
(2) 実質的同一性の有無について
そこで,以下,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの形態が実質的に同一 であるかどうかについて検討する。
ア 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,フィールド領域に作成 されたカード及び連結したカードが表示される点で一致し(一致点1)),こ の一致点は原告ソフトウェアの本質的部分に関するものであると主張する。しかし,学校において黒板等に貼\り付けられていたカードをタブレット上で表現し,複数のカードをプレゼンテーションの順序等に応じて連結することは,抽象的な特徴又はアイデアにすぎず,不競法2条1項3号の「商品の形態」に該当するものではない。\n原告ソフトウェア及び被告ソ\フトウェアにおけるカード及び連結された カードの具体的な画面表示を比較すると(別紙(3),乙5の21頁「カード 結合」欄2)),1)原告ソフトウェアには,カード右上に円で囲まれた黄色の矢印が表\示されるのに対し,被告ソフトウェアにはそのような表\示はない,2)連結されたカードは,原告ソフトウェアにおいては,フィールド領域各所に配置されたカードが曲線又は直線の矢印で連結されるのに対し,被告ソ\フトウェアにおいては,フィールド領域に平行かつ一直線の形で各カードが直 線で連結される(相違点4)),3)原告ソフトウェアは,黄色の細い曲線等によりカードを結び,各カードを結んでいる線はそれぞれ独立し同一の線ではないのに対し,被告ソ\フトウェアは黒色の太い一つの直線でカード間を結んでいる,4)原告ソフトウェアは連結されたカードを2行で表\示することもで きるのに対し,被告ソフトウェアでは,複数のカードを複数行で表\示するこ とはできない,5)原告ソフトウェアではプレゼンテーション時に最初に表\示 されるカードの左横に黄色の丸で囲まれた「−」の表示があるのに対し,被告ソ\フトウェアでは黒色の○に白抜きで「start」と表示されている,6)原 告ソフトウェアではプレゼンテーションにおいて最後に表\示されるカード の右上に黄色の丸で囲まれた矢印が表示されているのに対し,被告ソ\フトウ ェアでは黒色の丸に白抜きで「−」の表示がされているなどの点で相違し,全体的な印象も類似していないということができる。以上によれば,原告ソ\フトウェア及び被告ソフトウェアでは,カード及び\n連結されたカードの画面表示が実質的に同一であるということはできず,むしろ相当程度異なると認めるのが相当である。
イ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,フィールド領域にラン チャーメニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域が表\示される点で一致する(一致点2))と主張する。 しかし,フィールド領域にランチャーメニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域を設けることは,アイデア,抽象的な特徴又は機能\面の一致にすぎず,不競法2条1項3号の「商品の形態」に該当するものではない。
 そして,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアのランチャーメニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域の具体的な画面表\示を対比すると(別紙(3),乙5の3頁,4頁),1)ランチャーメニューは, 原告ソフトウェアにおいては,画面右に表\示されるタブをタップすることに より画面右側に縦一列で表示されるのに対し,被告ソ\フトウェアにおいては, 画面左上のボタンをタップすることで画面左側に縦一列で表示される(相違点3)),2)カード作成メニューボタンは,原告ソフトウェアでは画面左上部に縦一列で表\示されるのに対し,被告ソフトウェアではフィールド領域をタップすることにより,リング状の表\示がされる(相違点2)),3)カード送受 信領域については,原告ソフトウェアにおいては,メイン画面の左下に「資料箱」,「提出」,「送る」などの個別の提出先のアイコンが設けられているのに対し,被告ソ\フトウェアにおいては,提出先としてメイン画面の中央下に矢印を付した四角いアイコンが設けられているなどの点で相違している。  以上によれば,原告ソフトウェア及び被告ソ\フトウェアでは,ランチャー メニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域の画面表\示が実質的に同一であるということはできず,むしろ相当程度異なると認めるのが相当である。
ウ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,「カメラ」等の機能を使用すると画面全体に被写体が表\示され,撮影に必要な機能がボタンで表\示される点で一致する(一致点3))と主張する。  しかし,カメラ撮影のための機能を使用すれば,画面全体に被写体が表\示 されるのはその性質上当然であり,カメラ撮影のためにはシャッターボタン など撮影に必要な機能を使用するための表\示が不可欠であるから,一致点3) は機能を使用するために必要な表\示における一致にすぎない。
 エ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,原告ソフトウェアの「テキスト」機能\及び被告ソフトウェアの「文字」機能\において,文字入力画面が表示される点で一致する(一致点4))と主張する。 しかし,一致点4)は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアがいずれもカ ードにテキストを入力する機能を有するという機能\面での一致をいうにす ぎず,また,原告ソフトウェア及び被告ソ\フトウェアのテキスト作成画面の 表示(別紙(5))もありふれたものにすぎない。
 オ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,描画領域及び各種描画 ツールが表示される点で一致する(一致点5))と主張する。  しかし,一致点5)は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアがいずれもカ ードに描画する機能を有するという機能\面での一致をいうにすぎず,また, 原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの描画作成画面の表示(別紙(6))も ありふれたものにすぎない。

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平成29(ワ)24174  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月24日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、特許権(6154978号)侵害が認められました。原告マネースクウェア、被告外為オンラインです。損害賠償は請求されておらず、サーバの差止だけです。事実認定のところで、実際に〜すると、〜〜となるという事実から、構成要件の充足を認定しています。
 イ 被告サーバにおける「注文情報」
(ア) 前記第2の2(4)イ認定のとおり,被告サービスにおいて注文が行われると, 別表のとおり被告サーバの処理が記録されるところ,前記2認定の被告サービスの内容,別表\の各欄の内容及び被告サーバの処理に照らすと,被告サーバにおいて,注文が行われた時点,すなわち,「注文日時」欄記載の日時に,同欄記載の注文を 識別するための注文番号,「注文日時」欄記載の注文日時,「取引」欄記載の新規 注文又は決済注文の別,「通貨P」欄記載の取引対象となる通貨の種類,「売」欄 記載の売り注文であるか否か,「買」欄記載の買い注文であるか否か,「新規注文」 欄記載のイフダンオーダーを構成する新規注文の注文番号,「執行条件」欄記載の成行注文,指値注文,逆指値注文の注文種別,「指定R」欄記載の指定価格,「期\n限」欄記載の注文の有効期限といった個々の注文の内容を規定する情報が生成され ていると推認することができる。 また,被告サーバにおいて,市場に発注された個々の注文が約定等したことが検 知されると,「注文状況」欄に,その注文が「無効」,「約定」,「取消」のいず れの状況にあるかが,「約定R」欄に,約定価格が,「約定等日時」欄に,注文が 約定等した日時が,すなわち,約定等の結果に係る情報が記録されていると推認す ることができる。 そうすると,少なくとも,被告サーバに記録されている注文番号,注文日時,新 規注文又は決済注文の別,取引対象となる通貨の種類,売り注文であるか,買い注 文であるか,イフダンオーダーを構成する新規注文の注文番号,成行注文,指値注文,逆指値注文の注文種別,指定価格,注文の有効期限といった個々の注文の内容\nを規定する情報は,個々の買い注文又は売り注文を行うために必要となる情報であ るということができ,本件発明の「注文情報」に該当する。 (イ) 以上より,被告サーバでは,本件発明の構成要件BないしHの「注文情報」に相当する情報が生成されていると認められる。
ウ 小括
前記のとおり,被告サーバでは,構成要件BないしHの「注文情報」に相当する情報が生成されているところ,これらの構\成要件の充足性について,後記(2),(3)に おいて検討する構成要件G及びHを除いた構\成要件BないしFの充足性については 次のとおりであり,被告サーバは構成要件BないしFをいずれも充足する。すなわち,本件発明の「注文情報」に関する前記判示を踏まえ,被告サーバの構\成を構成要件BないしFと対比すると,被告サーバは,例えば,番号114,111,108,105の買い注文に係る買い注文情報のような複数の買い注文情報を\n生成する買い注文情報生成手段を備えるものであるから,「金融商品の買い注文を 行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段」(構成要件B)を備えており,また,例えば,番号113,110,107,104の売り注文に\n係る売り注文情報のような複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段を 備えるものであるから,「前記買い注文の約定によって保有したポジションを,約 定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文 情報生成手段とを有する注文情報生成手段」(構成要件C及びD)を備えている。さらに,被告サーバは,別表\に「注文状況」欄及び「約定等日時」欄等があることから明らかなように,「前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検 知手段とを備え」(構成要件E)るものであり,また,例えば,番号113,110,107,104の売り注文のように,指定価格が114.90円,114.2\nなるものであるから,「前記複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報は, それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報」(構成要件F)を備えている。
(2) 争点1−2(被告サーバは構成要件Hを充足するか)
ア 構成要件Hは,「前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知する\nと,前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記 複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注 文価格の情報を含む売り注文情報を生成する…」というものであり,文言上,「複 数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文」1個が約定したときに 「複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り 注文価格の情報を含む売り注文情報」1個が生成される構成を含むと解するのが相当である。\nこれを被告サーバについてみると,前記2(2)認定のとおり,被告サーバは,約定 検知手段が,例えば,番号113,110,107,104の売りの指値注文のよ うな複数の売り注文のうち,指定価格を114.90円とする最も高い売り注文価 格の番号113の売り注文が約定されたことを検知すると,注文情報生成手段は, この検知の情報を受けて,指定価格を番号113の指定価格114.90円より0. 62円高い115.52円とし,これを含む売り注文情報である番号96の新たな 売りの指値注文を生成するものであるから,構成要件Hを充足する。
イ 被告は,構成要件Hは,「複数の売り注文」全てが約定したときに,「注文情報生成手段」が新たに「複数の売り注文情報」全て「を生成する」ことを意味す\nると解すべきであるとし,その理由として,1)構成要件Hの「最も高い売り注文価格の売り注文注文が約定されたことを検知」したときは,「最も高い売り注文価格」\nより低い価格の売り注文が既に約定していることが明らかであるから,構成要件Gの「前記複数の売り注文情報」が全て約定したときを意味すること,2)本件明細書 の【0145】ないし【0147】においては,全ての売りの指値注文が約定して 初めて,新たな買いの指値注文(B1ないしB5)及び売りの指値注文(S1ない しS5)の全てが同時に行われていること,3)構成要件Hの「前記注文情報生成手段」が引用している構\成要件C及びDにおいて,「注文情報生成手段」は「複数の売り注文情報」全て「を生成する」ものであるとされていることなどを主張する。 しかしながら,被告が理由として挙げる1)については,構成要件Hの文言にない限定を付すものである上,「注文情報生成手段」が「複数の売り注文情報」を「一\nの注文手続」で生成することを規定しているにすぎない構成要件Gについて,「注文情報生成手段」が常に「複数の売り注文情報」を生成することを規定するとの限\n定を加えた解釈を前提としていることから,採用することはできない。 また,被告が理由として挙げる2)についても,本件明細書の【0145】ないし 【0147】は,構成要件Hに対応する「シフト機能\」に「決済トレール機能」等を組み合わせた実施例にすぎないから採用し得ない。後記4(1)のとおり,全ての売 り注文が約定しなければ「シフト機能」を適用できないとするものでもない。したがって,被告の主張は採用することができない。
ウ また,被告は,被告サーバが「前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文 価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報」に係る「売り注文情報を 生成する」時点は,「前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い 売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知」したときではなく,買いの成行 注文の約定を検知したときであるから,構成要件Hを充足しないと主張し,買いの成行注文が売り注文に先行して行われていることを示す事情として,別表\において,番号96の売りの指値注文が「2014/11/7 22:29」に約定すると, 同一時刻に番号89の買いの成行注文だけが行われ,約定しているのに対し,番号 85の売りの指値注文は「2014/11/7 22:30」に行われていること などを指摘する。 被告の主張の趣旨は必ずしも明確でないが,仮に,個々の注文が有効なものとし て市場に発注された時点で,被告サーバで「注文情報」が生成されると主張するも のであれば,前記2(3),3(1)イ認定のとおり,被告サーバにおいて,市場に発注前 の売りの指値注文及び逆指値注文であっても,他の注文とともに,注文が行われた 時点で,注文番号等の注文情報が生成されていることと整合せず,採用することが できない。

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平成29(ネ)10073  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 マネースクウェアVS外為オンライン事件は、控訴審でも、技術的範囲に属しないと判断されました。成行注文であるNo.97の買い注文またはNo.88に係る注文情報が、構成要件Eの「新たな一の価格の新たな前記第一注文情報」と均等であるとの主張も、置換容易性がないとして、否定されました。
 前記前提事実からすると,被控訴人サービスは,買い注文から入った場 合は,取引開始後の最初の買い注文を成行注文とし,同注文と対をなす売り注文を 指値注文とし,同売りの指値注文が約定することをトリガとして新たな価格帯での 取引として,買いの成行注文に係る注文情報を生成させることとし,その後,同買 いの成行注文と対をなす売りの指値注文が約定することをトリガとして,更に新た な価格帯での取引を行い,以降,これを繰り返すという構成を採用していることが\n認められる。
被控訴人サービスの上記構成を前提として,被控訴人サービスの構\成と本件発 明の構成とを比較すると,まず,本件発明においては,第一注文情報及び第二注文\n情報とも指値注文とする構成であるのに対し,被控訴人サービスにおいては,1)第 一注文情報のうち取引開始後最初の取引の第一注文情報と,相場価格の変動後の新 たな価格帯での最初の取引の第一注文情報のみを成行注文とする構成である点で異\nなり,この点で,被控訴人サービスは構成要件E2)を充足しないが,特定の事項を トリガとして生成する成行注文においては,トリガとなる事項をどのように構成す\nるかの点もその内容となっているものと解されること,被控訴人サービスにおいて は,2)相場変動後の新たな価格帯での最初の成行注文に係る注文情報の生成を,旧 価格帯における成行注文と対をなす指値注文の約定をトリガとして行わせる構成と\nしたことが,上記1)の構成と一体となって技術的な意義を有するものと解されるこ\nとから,上記1)及び2)の構成(以下「本件相違構\成」)を本件発明の構成との相違\n点として把握して検討するのが相当である。 この点,控訴人は,被控訴人サービスと本件発明とは,本件発明が「検出され た前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定された値以上となった場合に」,新\nたな価格の「買いの指値注文」を設定するのに対し,被控訴人サービスは,「検出 された前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定された値以上となり,売りの指\n値注文が約定した場合に」,新たな価格の「買いの成行注文」を設定する点で相違 すると主張して均等侵害の主張をしているが,同主張は,被控訴人サービスにおい ては変動後の価格帯で生成されるすべての買い注文が成行注文であるとして,本件 設定できることからすると,相場価格が指定価格となることをトリガとする構成が\n想到し易いものと考えられる。
また,前記1のとおり,本件発明は,同じ価格帯でイフダンオーダーを自動的 に繰り返すことのできる従来の発明の課題を解決したものであり,同じ価格帯での イフダンオーダーを自動的に繰り返すことを前提としているところ,被控訴人サー ビスのように本件相違構成を採用すると,新たな価格帯における取引を行わせるた\nめに必要な相場価格の変動幅は,取引開始時に設定された第二注文情報の指値注文 と取引開始時の相場価格の差額と一致することになり,その結果,同じ価格帯での イフダンオーダーを継続させるためには,相場価格が変動した場合に,旧価格帯の 成行注文と対をなす売りの指値注文の約定をトリガとして,旧価格帯における指値 注文に係る注文情報群も生成させる構成を採用するなどの工夫をする必要が生じる\n(被控訴人サービスでは,同一の価格帯でのイフダンオーダーを継続させるために は,No.113の売りの指値注文の約定をトリガとして,新たな価格帯の取引で あるNo.97の買いの成行注文に係る注文情報を生成するだけでなく,旧価格帯 の取引であるNo.100及びNo.99の各注文に係る注文情報群をも生成させ る必要がある。なお,本件発明においても,顧客が「予め設定された値」を第二注\n文情報の指値価格と第一注文情報の指値価格の差額以下の値と設定することを可能\nとするのであれば,同じ価格帯でのイフダンオーダーを継続させるためには,相場 価格が変動しても,旧価格帯での取引を継続させる構成としておく必要があるが,\n上記の設定ができないようにすれば,上記の構成とする必要はない。)。このよう\nな理由から,被控訴人サービスは,本件相違構成を採用するためには,相場価格が\n変動した場合に,旧価格帯の成行注文と対をなす指値注文の約定をトリガとして, 旧価格帯における指値注文に係る注文情報群も生成させる必要があり,この点を考 慮すると,本件発明に本件相違構成を適用するに当たっては,相応の検討が必要で\nあったというべきである。 以上のことに,本件全証拠によっても,被控訴人サービスが開始された時点に おいて,本件相違構成を採用した金融商品取引に係るサービスが存在したことや,\n本件相違構成を開示した文献があったとは認められないことを併せ考慮すると,本\n件相違構成に係る置換をすることは当業者が容易に想到することができたとは認め\nられないというべきである。

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◆平成28(ワ)21346

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平成29(行ケ)10117  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年11月6日  知的財産高等裁判所

 引用文献にはそのものが作れるレベルでは記載されていないので、29条1項3号の「記載された発明」には該当しないと判断されました。
 よってまず,引用例1から本件取消決定が認定した引用発明1を認定する ことができるかどうかについて検討する。 特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」は,当業者が,出願 時の技術水準に基づいて本願発明(本件特許発明)を容易に発明することが できたかどうかを判断する基礎となるべきものであるから,当該刊行物の記 載から抽出し得る具体的な技術的思想でなければならない。また,本件特許 発明は物の発明であるから,進歩性を検討するに当たって,刊行物に記載さ れた物の発明との対比を行うことになるが,ここで,刊行物に物の発明が記 載されているといえるためには,刊行物の記載及び本件特許の出願時(以下 「本件出願時」という。)の技術常識に基づいて,当業者がその物を作れる ことが必要である。
かかる観点から本件について検討すると,引用例1の記載及び本件出願時 の技術常識を考慮しても,引用発明1のデバイスを当業者が作れるように記 載されているとはいえない。理由は以下のとおりである。 ア 本件取消決定は,引用発明1をP1タンパク質に対するモノクローナル 抗体を用いて,患者サンプル中のマイコプラズマ・ニューモニエの検出を 行うラテラルフローデバイスに関する発明として認定しているところ,ラ テラルフローデバイスは,イムノクロマトグラフィー法に基づく検出デバ イスであり,イムノクロマトグラフィー法による抗原検出においては,抗 体と抗原がサンドイッチ複合体を形成する必要があると認められ(甲8〜 10,弁論の全趣旨),また,モノクローナル抗体の場合には,抗原を挟 み込む二つの抗体が同じものでは不都合であり,少なくとも,二つの異な る抗体を用いることが必要であると認められる(この点は特に当事者に争 いがない。)。 その一方で,異なる二つのモノクローナル抗体でありさえすれば,抗体 と抗原がサンドイッチ複合体を形成するとの本件出願時の技術常識も見当 たらず,また,サンドイッチ複合体を形成しさえすれば,必ず患者サンプ ル中のマイコプラズマ・ニューモニエを検出できると直ちにいうこともで きない。
たとえば,引用例2の199頁図1には,捕獲抗体として特異性の異な る二つのポリクローナル抗体を用い,ペルオキシダーゼ標識モノクローナ ル抗体(検出抗体)を変えてマイコプラズマ・ニューモニエ抗原の捕獲ア ッセイを行った試験の結果を表す二つのグラフが示されている。捕獲抗体\nが抗Mp−IgG(右)の場合,試験されたペルオキシダーゼ標識抗体で は,いずれも,標識抗体100ngで450nmにおける吸光度が2を超 え,標識抗体1μgにおいて,450nmにおける吸光度が3を超えてい る。これに対し,捕獲抗体が抗P1−IgG(左)の場合には,標識抗体 がP1.25又はM74では,1μgで450nmにおける吸光度が3を 超えていても,標識抗体がM57では,1μgでも吸光度が1に満たない。 このように,同じ捕獲抗体を用いた場合であっても,検出抗体によって検 出感度が異なり,サンドイッチ複合体の形成に基づく検出は,抗体の組合 せによって,検出感度が大きく異なる場合があると理解されるから,モノ クローナル抗体を用いてサンドイッチ複合体の形成に基づく検出を行う場 合には,適切な抗体を組み合わせて用いる必要があると認められる。 本件取消決定が認定した引用発明1のラテラルフローデバイスも,サン ドイッチ複合体の形成に基づく抗原の検出デバイスであるから,P1タン パク質に対するモノクローナル抗体を用いて,患者サンプル中のマイコプ ラズマ・ニューモニエを検出するラテラルフローデバイスを作るためには, 第1のモノクローナル抗体と第2のモノクローナル抗体として適切な組合 せのモノクローナル抗体を用いる必要があると認められる。 そこで,第1のモノクローナル抗体と第2のモノクローナル抗体の組合 せに関して引用例1の記載を検討するに,引用例1には,ラテラルフロー デバイスに用いる二つの抗体について,具体的なモノクローナル抗体の組 合せを示す記載は見当たらない。また,本件出願時において,ラテラルフ ローデバイス等のサンドイッチ複合体を形成できる具体的なモノクローナ ル抗体の組合せが周知であったことを示す証拠もない(引用例2の199 頁図1の左側のグラフに示されている実験において,P1.25とM74 は,それぞれ,抗P1−IgG又は抗Mp−IgGを捕獲抗体とした場合 に,抗原を検出可能としていることから,当該捕獲抗体と抗原とからなる\nサンドイッチ複合体を形成するものと考えられるが,引用例2に記載され ていることをもって,直ちにこれらの抗体が周知であるということはでき ないし,そもそも,当該捕獲抗体はいずれもポリクローナル抗体であるか ら,異なる二つのモノクローナル抗体の組合せが明らかにされているとは いえない。ほかにサンドイッチ複合体を形成できる具体的なモノクローナ ル抗体の組合せを明らかにする証拠はない。)。 次に,引用例1に記載された具体的なイムノクロマトグラフィー(IC T)デバイスについての唯一の実施例である実施例4は,抗rCARDS 抗体を用いたもので,P1タンパク質に対する抗体を用いたものではない。 また,引用例1におけるP1タンパク質に対する抗体に関する具体的な記 載は,実施例3のみであるが,実施例3における抗原の検出は,サンドイ ッチ複合体の形成とは異なる,市販の二次抗体である抗ウサギ又は抗マウ ス抗体を用いた方法によるものである。したがって,これらの実施例の記 載から,サンドイッチ複合体を形成可能なモノクローナル抗体を知ること\nはできない。
さらに,引用例1には,P1タンパク質に対するモノクローナル抗体と して,マウスのモノクローナル抗真正P1タンパク質抗体H136E7(【0 012】)とrP1に対するモノクローナル抗体(【0096】)に関す る記載があるが,P1タンパク質に対する具体的なモノクローナルは,H 136E7が記載されているにとどまり,rP1に対するモノクローナル 抗体については,その当該モノクローナル抗体を生産する細胞株も,モノ クローナル抗体のアミノ酸配列等の情報も,H136E7とのサンドイッ チ複合体の形成の有無に関する手掛かりとなる情報も記載されていない。 このような引用例1の記載に基づいて,ラテラルフローデバイスを作るた めには,モノクローナル抗体として一つはH136E7を用いるとしても, もう一つ,H136E7とサンドイッチ複合体を形成可能な別のモノクロ\nーナル抗体を用いる必要があるが,引用例1には,そのようなモノクロー ナル抗体の構造について手掛かりとなる記載がなく,何らかの方法でモノ\nクローナル抗体を入手し,それらのモノクローナル抗体が,H136E7 とサンドイッチ複合体を形成可能であるかを調べ,試行錯誤によって,H\n136E7と組み合わせて患者サンプル中のマイコプラズマ・ニューモニ エを検出するラテラルフローデバイスを構成できるモノクローナル抗体を\n見つけ出す必要がある。
以上を踏まえれば,たとえ様々なモノクローナル抗体を得る技術自体は 周知技術であるとしても,本件取消決定が認定した引用発明1のラテラル フローデバイスは,引用例1の記載及び本件出願時の技術常識から,直ち に作ることができるものとはいえない。 したがって,引用例1に引用発明が記載されている(あるいは,記載さ れているに等しい)ということはできない。

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平成29(行ケ)10191  審決取消請求事件  特許権 行政訴訟 平成30年10月29日  知的財産高等裁判所

 審決は、記載不備(明確性、サポート要件、実施可能要件)と判断しましたが、知財高裁(2部)は、これを取り消しました。
 イ(ア) 本願明細書には,前記(1)イのとおり,中間水について,少なくとも− 40度付近の温度において,規則化(コールドクリスタリゼーション)する傾向を 強く有するものと推察されること,規則化する強い傾向の存在により,不規則な状 態で凝固した状態からの加熱において,−40度付近で規則化に伴う発熱がみられ ること,規則化に伴う発熱量は,規則化を生じている水の量,すなわち,中間水の 量に比例するものと推察されることが記載されている。 (イ) 前記(1)ウの甲1〜5の記載によると,中間水の量(Wfb)は,次の式 のとおり,低温結晶化した水におけるエンタルピー変化量(ΔHcc)と,水の融解熱 (Cp)から得ることができることが理解される。
Wfb=ΔHcc/Cp
この式を変形すると,ΔHcc=Cp×Wfb となり,低温結晶化した水におけるエン タルピー変化量(ΔHcc),すなわち,コールドクリスタリゼーションに伴う発熱量 は,比例定数を Cp として,中間水の量(Wfb)に比例するといえる。 このことも,前記アと同様の理由により,日本バイオマテリアル学会の構成員や\n関係者には,平成21年の時点において,知られていたと認められるのであって, 本願明細書に記載された内容の「中間水」の量の計算方法は,本願出願時において, 当業者の技術常識になっていたと認められることができるというべきである。 そして,Cp は,純水の融解熱と等しいと考えられ,純水の融解熱が 334J / g であ ることも,前記ウの甲2及び甲4の記載並びに証拠(甲11)及び弁論の全趣旨に よると,当業者の技術常識であったと認められる。 したがって,当業者は,中間水の量の算出方法については,本願明細書の記載及 び本願出願時の技術常識に基づいて明確に理解することができたというべきである。
(3)ア 被告は,本願明細書から,「コールドクリスタリゼーションに伴う発熱量 は,中間水の量に比例するものと推察される。」という認定aだけではなく,「中間 水の量は,コールドクリスタリゼーションに伴う発熱ピークの挙動(コールドクリ スタリゼーションに伴う発熱量は含水量の増加に伴って増加するが,ある含水量以 上では変化しなくなること)と,全含水量とから求めることができる。」という認定 b及び「中間水の量は,各含水量におけるコールドクリスタリゼーションに伴う発 熱量と0度付近の吸熱量の関係から中間水の最大量を求めてW0(試料の乾燥重量) で除することにより求められる。」という認定cも認定できるところ,これらの認定 が共存するため,本願明細書から,当業者が中間水の量をどのように算出したらよ いのか明確に理解することはできない旨主張する。 認定bは,前記(1)イ(イ)b(b)の本願明細書の記載に基づくものであり,認定cは, 前記(1)イ(イ)b(c)の本願明細書の記載に基づくものであるが,いずれも,中間水の量 を求める方法についての具体的な内容の説明はされていない。 一方,認定aは,前記(1)イ(イ)b(a)の本願明細書の記載に基づくものであるが,前 記(2)イのとおり,上記記載を含む本願明細書の記載及び本願出願時の技術常識から, 中間水の量の算出方法を明確に理解することができる。 そうすると,当業者は,本願明細書に前記(1)イ(イ)b(b)及び(c)の記載があるからと いって,本願明細書の記載及び本願出願時の技術常識から明確に理解できる中間水 の算出方法を理解できなくなるというものではないというべきである。 イ 被告は,当業者は,発明の詳細な説明の記載に基づき,中間水のコール ドクリスタリゼーションは通常の水の凍結とは異なる相転移であると理解されるか ら,中間水のコールドクリスタリゼーションの単位潜熱(中間水の量を算出するた めの比例定数)は,通常の水の凍結の場合の単位凝固潜熱334J/gとは異なる 値であると考えるのが自然である旨主張する。 しかし,前記(2)イのとおり,比例定数(Cp)は,純水の融解熱に等しいと考えら れている。本願明細書に記載されたPMEAのコールドクリスタリゼーションに伴 う発熱量の最大値を中間水量で除した値が313J/gであるとしても,純水の融 解熱が334J/gであることは,当業者の技術常識である以上,当業者は,31 3J/gの方が誤差を含む数値であると考えるのか通常であると解されるのであっ て,このことにより,当業者が,中間水のコールドクリスタリゼーションの単位潜 熱(中間水の量を算出するための比例定数)が,純水の単位凝固潜熱334J/g とは異なる値であると考えるとはいい難い。 ウ 被告は,甲1〜5は,本願発明者やその共同研究者による文献であり, 中間水の概念は,本願発明者らの研究グループが独自に提唱したもので,本願発明 者らの研究グループ以外の当業者に,本願出願時までに広く知れ渡り,技術常識に なっていたことを示す証拠はない旨主張する。 「中間水」の概念が本願発明者であるAにより構築されたことは,前記(2)アのと おりであるが,前記(2)ア,イのとおり,「中間水」の概念及びその量の算出方法は当 業者の技術常識となったことが認められる。
エ 被告は,甲5は本願明細書で引用したものではなく,仮に当業者が甲5 を本願明細書の記載から探し当てることができたとしても,その記載内容が実質的 に発明の詳細な説明に記載されたに等しいものであるということはできない旨主張 する。
しかし,本願明細書の【0007】には【先行技術文献】として,「【非特許文献 1】バイオマテリアル 28−1,2010」と記載されているから,当業者であれ ば,これは,バイオマテリアルという雑誌の28巻1号(出版年2010年)とい うものであると理解する。そして,甲5は,その雑誌のその号に掲載されている。 しかも,上記の「非特許文献1」は,本願明細書の【0013】においても,「所定 量の水を含水した水和性組成物を一旦十分に冷却し,その後に比較的ゆっくりした\n速度で加熱した場合に,0℃以下の特定の温度域において所定の発熱を生じると共 に,−10度近辺から0度までの広い温度範囲において吸熱が観察されることが明 らかにされている(例えば,非特許文献1等を参照)。」という形で引用されている。 そうすると,当業者は,本願明細書の記載から,容易に甲5に行き着くものと考え られるから,甲5は本願の発明の詳細な説明【0007】で引用されたものである と認められる。
そして,甲5が,「中間水」の概念及びその量の算出方法が当業者の技術常識とな ったことを裏付け得るものであることは,前記(2)ア,イのとおりである。 オ 被告は,本願発明の「中間水の量が1wt%以上,且つ30wt%以下」 がどの時点の中間水の量を意味するかについて,発明の詳細な説明に,発熱量が最 大値になる含水量の場合と飽和含水になった時点での含水量の場合という,相異な る二通りの記載があるから,本願発明の技術的範囲が定まらない旨主張する。 しかし,前記(2)イのとおり,当業者は,本願明細書の記載及び出願当時の技術常 識に基づいて,中間水の量は,コールドクリスタリゼーションに伴う発熱量と水の 融解熱から得ることができることが理解されるから,当業者が本願補正発明を実施 するに当たり,水和性組成物について,発熱量が最大値の中間水の量と,飽和含水 になった時点の中間水の量の二通りが記載されているとしても,水和性組成物の中 間水の量は,含水量にかかわらず,コールドクリスタリゼーションに伴う発熱量と 水の融解熱から一義的に決まるものであって,本願補正発明の技術的範囲が定まら ないということはできない。
・・・
本件審決は,当業者が本願出願時の技術常識に照らしても本願明細書の記載から 中間水の量の算出方法を理解することができないから,表2に中間水量が記載され\nた具体的な組成物以外のものについては課題が解決できると認識することはできな い旨判断したが,当業者が本願出願時の技術常識に照らして本願明細書の記載から 中間水の量の算出方法を理解することができることは,前記2のとおりであるから, 本件審決のサポート要件の有無の判断は,前提を欠き,誤りがある。
4 取消事由3(実施可能要件違反)について
本件審決は,当業者が本願出願時の技術常識に照らしても本願明細書の記載から 中間水の量の算出方法を理解することができないから,本願補正発明1及び4を当

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平成29(ワ)10038  特許権移転登録手続等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月25日  東京地方裁判所(47部)

 冒認を理由に、発明者に特許権を移転せよとの判断がなされました。
  前記(1)アないしウ及びオの認定事実によれば,原告代表者は,顧客である被\n告代表者から自動洗髪機の開発依頼を受け,先行特許の調査等を経て,エアバ\nッグを利用する方法を着想するに至り,それを踏まえて本件特許発明の構成が\n全て開示されている全体構想計画案等を自ら作成したものであるから,本件特\n許発明の発明者に当たるというべきである。
 他方,被告代表者については,前記(1)イ,エないしカの認定事実からすれば, 自動洗髪機の開発につき原告代表者に依頼し,本件特許発明につき特許出願す\nる段取りを整えたり,事業計画を策定して公的補助を受ける準備をしたりした ことは認められるが,本件特許発明の完成に当たり,発明者と評価するに足る だけの貢献をした具体的事実は認められない。
 これに対し,被告は,かねてから人間の手に近い感覚で頭皮のマッサージが できる自動洗髪装置の開発を志向していた被告代表者が,平成26年2月頃,\n被告手動洗髪用具の指状の突起部と同様の形状の突起部を有する装置で,被洗 髪者の頭を覆い,エアバッグ(袋状体)の振動を利用して頭皮をマッサージし ながら洗う機械を着想し,乙第2号証の図面を作成し,その後の同年3月7日 の打合せで,上記技術内容を被告代表者に対し説明して,具体的に機械の設計\nを依頼したものであって,この時点で本件特許発明は既に完成していたのであ るから,本件特許発明の発明者は被告代表者であって,原告代表\者ではない旨 を主張し,これに沿う証拠としては,被告代表者の陳述書(乙20)及び本人\n尋問における供述(以下,併せて「被告代表者の供述等」という。)がある。\n
 しかしながら,被告代表者の供述等については,乙第2号証の図面につき本\n件特許発明の構成が開示されているとは認め難く,他に上記打合せの時点で本\n件特許発明を被告代表者が完成させていたと認めるに足りる客観的な裏付け\nがないこと,前記(1)サで認定したとおり,乙第3号証に係る被告の主張等が大 きく変遷等していること(被告は当初,原告代表者が作成した全体構\想計画案 は被告代表者が作成した乙第3号証をほぼなぞっただけのものである旨主張\nしていたのに,原告から矛盾点の指摘を受けるや主張を変遷させ,被告代表者\n本人尋問においても,上記の当初の主張内容を訴訟代理人に説明していないな どと不合理な供述をしていること),被告代表者の供述等は,本件特許発明を\n着想するに至った経緯について曖昧かつ抽象的な内容に終始していること等 を併せ考慮すれば,その信用性は低いものといわざるを得ない。また,本件特 許発明の発明者が被告代表者であったと認めるに足りる他の証拠も見当たら\nない。そこで,被告の前記主張は採用できない。
 さらに,被告は,前記(1)カで認定したとおり,原告代表者がAから電子メー\nルに添付された出願関係書類の案の送付を受けた際,被告代表者が発明者とな\nっていること等につき何ら異議を述べず,本件訴訟に至るまで自らが発明者で あるとの主張を一切してこなかった点を指摘するが,前記(1)アで認定した原告 の業態からすれば,前記(1)カで認定したとおり,原告が開発した機械を製造す ることにより経済的利益を得られる限り,特許の取得等についてはこだわらな いという方針をとることも不合理ではないことからすれば,上記の点から直ち に被告代表者が本件特許発明の発明者ないしは共同発明者であったと推認す\nることはできず,原告代表者が本件特許発明の発明者であったという前記認定\nを左右するものではない。以上のとおり,本件特許発明の発明者は原告代表者であって,被告代表\者ではない。そうすると,原告代表者が本件特許発明の特許を受ける権利を有する一方,被告は本件特許発明の特許を受ける権利を有さないから,被告による出願は冒\n認出願であって特許法123条1項6号に該当する。したがって,原告代表者\nから特許を受ける権利を承継した原告は,被告に対し,特許法74条1項に基 づく特許権移転登録手続請求権を有する。

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平成28(ワ)38103  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月17日  東京地方裁判所

 太陽光発電システムの工事について特許権侵害が認められました。東京地裁29部は、特102条3項による損害額として約1000万円を認めました。
 (1)原告は,まず,原告が太陽光発電装置の請負契約を締結する場合の請負代金 額を基に,太陽光発電パネルの出力1kw当たりの請負代金額は32万円であると して,これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じた1億1581万440 0円を民法709条所定の損害であると主張する。 しかしながら,太陽光発電装置の施工について,被告が本件各土地で施工してい なければ,原告がこれらを受注して施工することができたと認めるに足る証拠はな いから,原告の主張する上記の損害は被告の行為と相当因果関係のある損害である と認めることはできない。
(2) 原告は,次いで,本件特許に係る「単位数量当たりの利益の額」(特許法1 02条1項)は太陽光発電パネルの出力1kwを1単位として算定すべきであると して,太陽光発電パネルの出力1kw当たりの利益の額は9万8000円であり, これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じた3546万8160円を特許 法102条1項による損害額であると主張する。
しかしながら,原告の上記の主張は,アルバテック又は原告による太陽光発電装 置の施工に係る見積書(甲22の1,甲23の1)等の書面に基づくものであり, これらが実際の取引金額を反映したものであると認めるに足る証拠はないから,本 件各土地における太陽光発電装置の施工に対応する原告の単位数量当たりの利益の 額を算定する根拠として不十分である。\nその他本件特許に係る単位数量当たりの利益の額を認めるに足る証拠はなく,し たがって,特許法102条1項による損害額として,原告の主張する上記の損害を 認定することはできない。
(3)ア 原告は,さらに,原告が本件特許の実施許諾をする場合の実施料は出力1 kw当たり3万円であるとして,これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗 じた1085万7600円を特許法102条3項による損害額であると主張する。 イ そこで検討すると,証拠(甲24)によれば,原告は,平成25年12月1 5日,他社との間で,本件特許に係る通常実施権を許諾する旨の特許権実施許諾契 約を締結しており,同契約3条(1)において,実施料については,本件特許に係る施 工方法を用いて施工された太陽光発電パネルの出力1kwに対して3万円を乗じた 額とされたことが認められる。そして,本件全証拠によっても,この実施料額が高 額にすぎて不相当であると認めることはできない。 したがって,本件発明の実施に係る実施料率としては,太陽光発電パネルの出力 1kw当たり3万円と認めるのが相当であり,本件における特許法102条3項に よる損害額は,3万円に本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じて算定するの が相当である。 そうすると,本件各土地の太陽光発電パネルの出力は,前記第2の2前提事実(4)のとおりであって,合計361.92kwであるから,本件における特許法102 条3項による損害額は合計1085万7600円(本件土地1につき3万円に84. 24kwを乗じた252万7200円,本件土地2につき3万円に277.68k wを乗じた833万0400円の合計)である。
ウ これに対し,被告は,特許権の実施料率が請負代金の10%強となることは およそ考えられず,請負代金を基準とした場合にはその1%程度の金額にとどまる 旨主張するが,その理由を具体的に主張しておらず,裏付けとなる証拠を提出して いないから,実施料率を基礎付ける事情として採用することができない。

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平成29(ワ)1129 意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 平成30年9月21日  東京地方裁判所

 高気圧酸素補給カプセルに関する意匠権侵害について、非類似であると判断されました。判決文中に両意匠が掲載されてます。
 以上のとおり,高気圧酸素補給カプセルにおいて,その全体形状が胴 部及び側部からなる円筒状をしていること(構成A),胴部の長手方向\nに正面視左端側から略中央まで及び,周方向に略中央からから上端を超 えた位置に及ぶ横長隅丸矩形状の開口部を設けること(構成B),胴部\nの内周側壁側に開口部の長手方向にスライドするスライド式ドアを設 けること(構成C)は,いずれも先行意匠にみられるものであるところ,\nその構成態様はその機能\や使用方法に基づくありふれた態様であり,取 引者,需要者の注意を惹く程度はそれほど大きくないということができ る。
d これに対し,原告は,本件意匠の基本構成態様を個別に開示する公知\nIV意匠が存在していたとしても,本件意匠における胴部における開口部の 配置及び位置並びにドアの構成の組合せを開示する公知意匠は存在し\nないと主張する。 しかし,上記各構成は先行意匠に普通に見られるありふれた態様であ\nり,取引者,需要者の注意を強く惹くものであるとはいえないことは前 記判示のとおりであり,同各構成を組み合わせることにより,取引者,\n需要者に強い印象を与えるような構成となるということもできない。\n また,原告は,上記各先行意匠は本件意匠に係る物品とはその性質を 異にするので,本件意匠の美感を検討するに当たりこれらの意匠を参照 することは相当ではないと主張する。 しかし,上記各先行意匠に係る物品は,いずれも酸素や大気等を充填 させた空間を有し,利用者が同装置内に入り横たわるなどした状態で充 填された酸素や大気等の補給を受ける点で本件意匠に係る物品と用途 及び機能を共通にするものであるから,本件意匠と被告各意匠の類否の\n検討に当たり,これらの意匠を参照することを妨げる理由はないという べきである。
e したがって,構成A〜Cは,基本的構\成態様を構成するものではある\nが,これらの構成が要部であるということはできない。
(イ)a 他方,本件意匠は,前記のとおり,側部がいずれも部分球形状であり, 透明で内部のベッドを覗き見ることを可能にする構\成態様(構成b),\nドアは透明な胴部の円弧に沿う形状であり,閉めた状態でも内部のベッ ドを覗き見ることを可能にする構\成態様(構成c)を備えている。\n この点について,本件公報(甲3)の【意匠の説明】には,以下のと おりの記載がある。 「カプセル両端の部分球形状に突出した部分は透明であり,内部のベ ッドを覗き見ることができる。カプセルの胴部分の出入口に設置されて IVいるドアは透明であり,閉めた状態でも内部のベッドを覗き見ることが できる。ドアを閉じた状態の参考斜視図及びドアを途中まで開けた状態 の参考斜視図において,透明部分には円弧状の平行斜線を施している。」 上記のとおり,本件公報の【意匠の説明】には,カプセル両端の部分 及びドアが透明であり,内部のベッドを覗き見ることができる構成とな\nっていることが強調され,胴部における開口部の配置及び位置やドアの 構成との組合せについての記載は存在しない。そして,上記各参考斜視\n図には,透明な側部部材及びドアの構成態様とともに,これらの透明な\n部分越しに見ることのできる高気圧酸素補給カプセル内部のベッドや 補強リブの構成態様などが示され,透明部分を設けることによって,物\n品外部の構成要素と物品内部の構\成要素が一体となって,本件意匠全体 の美感を形成している様子が示されている。
本件意匠のこのような特徴,特に,胴部のドア部分にとどまらずドア より大きな部分球形状の側部全体が透明となっているという構成態様\nにより,利用者は,外部から同物品を見る場合にはこれらの透明な部分 を通じて内部のベッドや補強リブなどを目にすることのできるととも に,内部に横たわった場合は,同部分を通じて内部の構成要素に加えて\n外部の景観を目にすることができる。かかる特徴を備えることにより, 本件意匠は,透明な部分がない又は少ない同種物品と比較して,利用者 を含む取引者,需要者に対し,開放感があって明るく広々した印象を与 えるとともに,物品外部の構成要素と物品内部の構\成要素の形状が一体 となって本件意匠全体の美感を形成する点において看者に強い印象を 与えると考えられる。
b これに対し,原告は,側部が透明であることは,意匠を構成する形状を\n補足的に特定する素材を示すにすぎないと主張する。 しかし,本件意匠に係る物品の側部が透明であることは,単に意匠を構\n成する素材を特定するにとどまるものではなく,その美感に大きな影響を 与えることは前記判示のとおりである。
また,原告は,筐体の一部を透明,半透明,不透明に変更する程度のこ とは一般的に行われており,本件意匠の透明の側部を半透明,不透明に変 更したとしても,美感に大きな影響を与えないと主張する。 しかし,上記先行意匠においても,胴部のドアを透明にした上で,更に 側部全体を透明にしているものは存在しないので,酸素カプセル等の側部 及び胴部のドアを透明にすることが一般的でありふれたものであるとい うことはできない。そして,側部及びドアを透明にすることにより,外部 の構成と内部の構\成が一体となって本件意匠の美感を形成し,また,本件 意匠に係る物品が明るく開放的な印象を与えることは,前記判示のとおり である。
c したがって,本件意匠の要部は,物品の側部全体及びドアが透明であり, 内部のベッド等を覗き見ることができる構成(構\成b,c)にあるという べきである。
イ 本件意匠と被告各意匠の類否
被告各意匠の基本的構成態様及び具体的構\成態様は前記のとおりである ところ,本件意匠と被告各意匠は,その要部において構成態様が相違するこ\nとは明らかである。これにより,被告各意匠においては,取引者,需要者が 本件意匠のような開放感があって明るく広々とした印象を受けることはな く,また物品外部の構成要素と物品内部の構\成要素が一体となって本件意匠 全体の美感を形成することもない。このように,本件意匠と被告各意匠とは その美感が大きく異なるものである。 したがって,本件意匠と被告各意匠がその構成態様において類似している\nということはできない。

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平成28(ワ)9003  意匠権等侵害差止等請求事件  平成30年9月7日  東京地方裁判所

 意匠権侵害および不競法の商品形態模倣かが争われました。裁判所(40部)は、前者については無効、後者については商品の形態は実質的に同一ではないと判断しました。
 原告は,原告商品の形態と被告商品の形態との間の他の共通点(形態 IV(ア),(オ)及び(コ))も創作的であると主張するが,これらの共通点に係る 形態は,女性用コートとして一般的なものであり,特に特徴的なもので あるということはできない。 また,原告商品と被告商品は,いずれもビジューの付いた装身具が設 けられ,その装着位置,形状において共通すると認められるが,女性用 コートにおいてビジューの付いた装身具を設けること自体が特徴的であ るということはできず,また,原告商品のビジューブローチは取り外し 可能であるのに対し,被告商品のビジューボタンがコートに縫い付けら\nれているという相違点も存在するので,この点をもって原告商品と被告 商品が実質的に同一であるということもできない。 以上によれば,原告商品と被告商品との間の上記各共通点をもって両 商品の実質的に同一であるということはできないというべきである。
ウ 原告商品と被告商品の相違点は,上記(3)イ記載のとおりであると認め られるが,このうち,ポケットは,原告商品においては,コート胴部の 両側に水平状に形成され,略横長長方形状のフラップが取り付けられて おり,コート前面において需要者の目を引くアクセントとなっていると いうことができる。 これに対し,被告商品においては縦の切替え線に沿って布部材がコー ト本体に縫い付けられ,フラップが形成されていないので,ポケットは それほど目立たず,コート前面は比較的シンプルで縦に流れる線が需要 者の目を惹く態様となっているということができる。 以上によれば,原告商品と被告商品の前面については,ポケットの形 状の差異により,需要者が受ける印象が相当程度異なるというべきであ る。
エ また,原告商品と被告商品とは,背面における飾りベルトの有無が相 違することは,前記のとおりである。 原告商品における飾りベルトは,腰部に水平方向に設けられ,その幅 も太い上,原告商品の背面には同ベルトに匹敵する目立つ構成部分は存\n在しないことから,当該飾りベルトは,コート背面において特に需要者 の注目を惹くものであるということができる。そして,この点において は,原告自身も,そのウェブサイトにおいて,「バックスタイルのベル トがポイント!!」(乙6),「バックウエストには飾りベルトを効か せて,後ろ姿にもメリハリをプラス」(甲7の2)などと強調しており, このことは,原告自身も飾りベルトが原告商品のデザイン上の特徴点で あるとの認識を有していたことを示している。 これに対し,被告商品では,飾りベルトが設けられておらず,切替え 線が設けられているにとどまることから,その背面は比較的シンプルで 目立つ構成部分が存在せず,すっきりした印象を与えるということがで\nきる。
以上によると,原告商品は,その胴部のほぼ同じ高さに飾りベルトと ポケットが取り付けられていることから,コートの正面視,側面視,背 面視ともに,横方向に流れる強い印象を与える構成が需要者の目を惹く\nのに対し,被告商品は,その前面及び背面ともに需要者の目を惹く態様 の構成が設けられていないため,全体としてシンプルな印象であり,身\n体のラインに沿った縦の線が需要者の目を惹く態様となっているという ことができる。このため,原告商品と被告商品は,コートの正面視,側 面視,背面視ともに,需要者に異なる印象を与えるというべきである。
オ 原告商品と被告商品のフードとを対比すると,原告商品に取り付けら れたフードは,背面視においてその横幅が肩口に及ばず,側面視におい て膨らみの少ないものであるのに対し,被告商品に取り付けられたフー ドは,背面視においてその横幅がが肩口まで及び,側面視において膨らみ の多い大きさである点で異なると認められる。このようなフードの大き IVさや形状の差違は,コート背面における美感に影響を与えるものであり, 飾りベルトの有無やフードとコート本体の色合いの違い(形態(サ))もあ いまって,需要者に背面におけるデザインが異なるとの印象を与えるも のであるということができる。
カ 以上のとおり,原告商品と被告商品との形態の相違点は,需要者の注 目を集める形態についての差違であり,その美感に対して異なる印象を 与えるものであるから,両者を実質的に同一の形態ということはできな い。
(5) 原告の主張について
これに対し,原告は,被告商品のポケットやベルト等の形態は,女性用 コートとしてありふれたものにすぎず,原告商品の形態をこれに置き換え ることは極めて容易である上,その相違点は,部分的かつ些細なものであ り,全体の形態に影響を与えないと主張する。 しかし,被告商品のポケットやベルト等の形態が特に特徴的なものでな く,置換が容易であるとしても,被告商品において飾りベルトやポケット の形状が需要者の目を惹き,コート全体の美感に影響を及ぼすものである ことは前記判示のとおりであり,その相違点が部分的かつ些細なものであ るということはできない。 また,原告は,平成28年から平成29年にかけて雑誌に掲載された女 性用コートの説明文から着目点を抽出したところ,ベルトやポケット等に 注目した記載は非常に少ないとの結果を得たと主張する。 しかし,上記の結果においてもポケットやベルトが着目点として一定程 度挙げられているように,女性用コートのポケットやベルトはコートの胴 部という目につき易いところに配置され,そのデザインも多様であること から,需要者がコートを選択する際の着目点となることは否定し難い。ま た,商品の形態が実質的に同一かどうかは,事案ごとに個別的に判断すべ IVきところ,本件においては,被告商品における飾りベルトやポケットの形 状が需要者の目を惹き,コート全体の美感に影響を及ぼすものであること は前記判示のとおりである。

◆判決本文

前者の関連事件はこちらです。

◆平成29(行ケ)10234

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平成29(ワ)27980  債務不履行に伴う契約解除により返還請求と,その契約不履行と相当因果関係にある損害の賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月25日  東京地方裁判所

 翻訳業者の翻訳が不適切であったとして、損害賠償を求めましたが、裁判所は棄却しました。該当の日本特許はこれです。

◆特許5926470号

 前記前提事実,各項末尾に記載の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事 実が認められる。
(1) 被告Bは,特許の翻訳を業とする被告会社の代表取締役であり,被告会社\nが設立される以前は,比較的大手の特許事務所に勤務していたが,弁理士で はない。原告も,そのことを認識していた。
(2) 原告は,本件特許発明の米国特許出願のため,平成28年1月,被告会社 に本件明細書等の翻訳を一定の報酬支払を約して依頼し,被告会社はこれを 承諾した(本件契約)。
(3) なお,原告は,本件契約以前,本件明細書の翻訳を翻訳者である訴外Dに も依頼していたため,被告会社は,当初は訴外Dによる翻訳をチェックして いたが,当該翻訳に適切でない部分が多かったため,次第に翻訳を初めから 行うことになっていった。(甲36,乙50,弁論の全趣旨)
(4) 翻訳の対象となる本件明細書等は,それが記載された特許公報が本文だけ で69頁,図も合わせると81頁にも及ぶ非常に大部なものである上,その 内容は,原告自身も自認するように,相当に複雑で難解なものであった。(甲 7,乙17,23,46,47)
(5) 本件契約が締結された同年1月当時,米国特許出願における特許請求の範 囲の記載(日本語)は確定していなかった。原告は,少なくとも同年2月1 5日,翻訳の対象となる特許請求の範囲の記載に修正を加えた。(乙3,4, 弁論の全趣旨)
(6) 同年2月22日には,原告は被告Bに対し,自らが翻訳ソフトを購入し,\n翻訳者が抜けのない翻訳をしているかを自分で確認する旨記載したメールを 送信した。(乙6)
(7) 同年3月3日には,原告は被告Bに対し,被告会社が修正を加えた翻訳を 訴外インド人弁理士に送付し,同人が1か月程度で校正を行い,被告会社が 最終版を作成するとの手順を示すメールを送信した。(乙7)
(8) 同日以降も,原告は,翻訳の対象となる本件明細書等について,断続的に 修正等を行い,その修正等についての翻訳を,被告会社に指示した。その際, まず訴外Dに翻訳をさせ,当該翻訳を被告会社に送付し,それを参考にして 翻訳するよう指示していた。同年4月11日,原告は,被告会社に対して ,「収束に向かってください。拡散した自分が,どんどんと文章を広げました。 D様もその為に,意味不明になりました。自分にも責任があります。」とメ ールした。しかし,同月16日には,「基本請求項を早朝作成します。出来 た後に,再度,B様とC様で打合せをしてください。結果が大丈夫なら,そ の他の従属項を3人で作成します。」などとメールし,同日の後刻には,「大 変迷走させまして,無駄な時間をお掛けしました。」などとメールした。(乙 8ないし21,50)
(9) 同年4月17日,被告会社は,「ご確認いただき,修正すべき点がありま したらご連絡ください。特に問題がないようであればインド代理人への送付 をお願い致します。」,「エンドレスな作業となっておりますので,ここで 一度区切りとさせてください。」などとメールに記載して,翻訳を一旦終了 し,原告に当該翻訳をメールにて送付した。この時点で,本件明細書等の大 部分について翻訳が終了していた。(甲47,弁論の全趣旨(平成30年8 月16日付け原告準備書面23,26頁))
(10) 同日以降も,原告は,累次にわたって,特許請求の範囲の記載の修正等, それに伴う明細書等の修正等を行い,その都度,被告会社にその修正等につ いての翻訳を指示し,このような指示は少なくとも同年5月17日まで続い た。その間,原告は,被告会社が原告に送付した翻訳について修正や変更を 求めたり,翻訳の内容について質問をしたりすることはなかった。(乙23 ないし41,50)
(11) 原告は,同年5月19日(米国時間),被告会社の事務所において,本件 米国出願を行った。被告会社は,本件米国出願までの間に,本件翻訳を原告 に対して引き渡した。
(12) 原告は,同年1月から7月にかけて,被告会社に対し,本件契約の代金と して合計269万2000円を支払い,被告会社はこれを異議なく受領した。 (甲6)
(13) 米国特許商標庁は,平成29年2月7日(米国時間),本件拒絶理由通知 を発出した。本件米国出願から本件拒絶理由通知までの間に,原告から被告 らに対して,本件翻訳の内容について批判が述べられたり,質問等がされた りしたことはなかった。(甲11,弁論の全趣旨)
(14) 原告は,同年4月3日,被告会社に対し,内容証明郵便により,本件翻訳 についての報告を求めた。また,原告は,同年5月18日,被告会社に対し, 内容証明郵便により,被告会社に債務不履行があるとして,本件契約の解除 の意思表示をし,契約代金の返還を求めた。(甲33,34)\n
・・・・
前記認定事実のとおり,本件契約は,原告が被告会社に対し,本件明細書 等の翻訳を一定の報酬支払を約して依頼し,被告会社がこれを承諾したもの であること,その後,原告は,本件契約の対価として,被告会社に対して合 計269万2000円を支払い,被告会社はこれを異議なく受領したことが 認められる。そうすると,本件契約は,被告会社が仕事の完成を約し,原告 がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約したものであるから,その 法的性質は請負契約(民法632条)であると解するのが相当である。 なお,原告は,本件契約における被告の業務内容には米国特許出願事務や PCT国際出願事務も含まれているかのような主張をしており,被告はこれ を争っているところ,本件の全証拠を検討しても,本件契約に米国特許出願 事務及びPCT国際出願事務の委任が含まれているものと認めるに足りる証 拠はない。原告は,被告会社が原告に対してPCT国際出願に関する助言を 行っているメール(甲39)を証拠として提出するが,これは被告会社が原 告の問い合わせに応じて返答しているものにすぎず,このようなやり取りを もって本件契約にPCT国際出願事務の委託が含まれていたものと認めるこ とはできない。また,原告は被告事務所において本件米国出願を行っている が,そのことから本件契約に米国特許出願事務の委任が含まれていたものと 認めることもできない。

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平成28(ワ)3856 特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月19日  東京地方裁判所(29部)

 ドワンゴVSFC2の特許権侵害について、文言侵害および均等侵害が否定されました。第1,第5要件を満たさないというものです。
 以上のとおり,「第1の表示欄」は動画を表\示するために確保された領域(動画表\n示可能領域),「第2の表\示欄」はコメントを表示するために確保された領域(コメン\nト表示可能\領域)であり,「第2の表示欄」は「第1の表\示欄」よりも大きいサイズで いずれも固定された領域であると解されるところ,被告ら各装置においては,動画表\n示可能領域(被告ら装置1における「StageオブジェクトA」,被告ら装置2及\nび3における<iflame>要素又は<video>要素)とコメント表示可能\領 域(被告ら装置1における「CommentDisplayオブジェクトD」,被告 ら装置2及び3における<canvas>要素)は同一のサイズであるから,被告ら 各装置は,「第1の表示欄」及び「第2の表\示欄」に相当する構成を有するとは認め\nられない。したがって,被告ら各装置は,本件発明1−1の「第1の表示欄」(構\成要 件1−1C,1−1E,1−1F)及び「第2の表示欄」(構\成要件1−1D,1−1 E,1−1−1F)を充足するとは認められず,本件発明1−1の技術的範囲に属するとは認められない。 そして,被告ら各装置は,同様に,本件発明1−5の「第1の表示欄」及び「第2\nの表示欄」(構\成要件1−5J)を充足せず,そうである以上,「第2の表示欄」を構\ 成要素とする「コメント表示部」(構\成要件1−1D,1−2H,1−5J,1−6L)も充足しないから,本件発明1−2,1−5及び1−6の技術的範囲に属するとは認 められない。 また,本件発明1−9及び1−10は,発明の対象が「プログラム」であるが,発 明の対象を「表示装置」とする本件発明1−1及び1−2と対応するものである。したがって,被告ら各プログラムは,本件発明1−1及び1−2と同様に,「第1の表\ 示欄」(構成要件1−9B,1−9E)及び「第2の表\示欄」(構成要件1−9E)を\n充足せず,本件発明1−9を引用している本件発明1−10の構成要件1−10Hも\n充足しないから,本件発明1−9及び1−10の技術的範囲に属するとは認められない。以上のとおりであるから,被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件 発明1の技術的範囲に属するとは認められない。
・・・
ア 特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかっ た技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想に基 づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にあるから,特許発明にお\nける本質的部分とは,当該特許発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に 見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。そして,\n上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて, 特許発明の課題及び解決手段とその作用効果を把握した上で,特許発明に係る特許請 求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部\n分が何であるかを確定することによって認定されるべきである(知財高裁平成27年 (ネ)第10014号同28年3月25日特別部判決・判時2306号87頁参照。)。
イ これを本件についてみると,前記2(3)で説示したとおり,本件発明2は,複数 のコメントが書き込まれても,コメントの読みにくさを低減させることができる表示\n装置,コメント表示方法及びプログラムを提供することを目的とするものであって,\nコメント表示部によって表\示されるコメントが他のコメントと重なるか否かを判定 し,コメントが重なると判定した場合に,コメント同士が重ならない位置にコメント を表示させるようにし,複数のコメントが表\示される場合において,コメント同士が 動画上で重なってしまい,各コメントが判読できなくなってしまうことを防止するこ とができるようにするとともに,動画の再生中に他の端末装置から入力されたコメン トをリアルタイムに受信して当該動画上に表示し,そのコメントをダイナミックに変\n動させることにより,リアルタイムな双方向のコミュニケーションを可能にし,大人\n数でコメントを交換する面白みを増加させる発明である。上記の「動画の再生中に他 の端末装置から入力されたコメントをリアルタイムに受信して当該動画上に表示し,\nそのコメントをダイナミックに変動させることにより,リアルタイムな双方向のコミ ュニケーションを可能にする」という作用効果は,コメント配信サーバが端末装置か\nらコメント情報を受信してそれを送信するタイミングがリアルタイムに行われるこ と,すなわち,構成要件2−1Cに規定されているように「前記コメント配信サーバ\nが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信 されるコメント情報を受信」との構成によって実現されているのであり,本件特許2\nの出願経過においても,上記構成は,表\示すべき文字情報があらかじめ決定されてい る従来技術との比較において,「ユーザの端末装置から送信されるコメントを受信し て表示するものであり,コメントを受信する毎に,表\示するコメントがダイナミック に変動する点」が相違すると説明されている。そうすると,構成要件2−1Cは,動\n画の再生中に他の端末装置から入力されたコメントをリアルタイムに受信して当該 動画上に表示し,そのコメントをダイナミックに変動させることにより,リアルタイ\nムな双方向のコミュニケーションを可能にする」という作用効果を奏する構\成を具体 的な構成として特定したものであり,この構\成が従来技術にみられない特有の技術的 思想を構成する特徴的部分であり,本件発明2における本質的部分であるというべき\nである。
ウ 他方,前記のとおり,被告ら各装置は構成要件2−1Cを充足せず,被告ら各\nプログラムは構成要件2−9Bを充足しないから,被告ら各装置及び被告ら各プログ\nラムが本件発明2の本質的部分を備えているということはできず,本件発明2と被告 ら各装置及び被告ら各プログラムは本質的部分において相違すると認められる。
(3) 第5要件(特段の事情)について
前記2(2)において認定したとおり,本件特許2の出願経過として,1)特許庁審査官 は,平成22年11月24日を起案日とする拒絶理由通知書(乙24)において,出 願当初の特許請求の範囲請求項1ないし6及び8ないし12に係る各発明について, 特許法29条2項の規定により特許を受けることができない旨を通知し,2)原告は, 平成23年1月31日付け手続補正書(乙25)において明細書を補正し,請求項1 に「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し,前記コメント情報記憶部に 記憶する受信部と,」との構成を,請求項9に「前記コメント配信サーバが前記端末装\n置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメン ト情報を受信し,」との構成を付加して変更し,3)特許庁審査官はこれに対して特許 査定をしたものである。 上記の出願経過からすれば,原告は,拒絶理由を回避するために構成要件2−1C\n及び構成要件2−9Bを備えた発明に限定して特許を受けたものといえるから,上記\n構成要件の全部又は一部を備えない発明について,本件発明2の技術的範囲に属しな\nいことを承認したか,少なくとも外形的にそのように解される行動をとったものと理 解することができる。 したがって,均等の成立を妨げる特段の事情があるというべきであり,均等の第5 要件を充足しない。

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平成29(行ケ)10129  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年5月24日  知的財産高等裁判所

 少し前の事件ですが漏れていたのでアップします。サポート要件を判断する前提としての課題の認定について誤りがあるとして、知財高裁第3部は、サポート要件違反ありとした審決を取り消しました。注目は「出願時の技術水準等との比較は,行うとすれば進歩性の問題として行うべき」という判断です。
 前記のとおり,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否か は,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請 求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発 明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決 できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がな くとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると 認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 また,発明の詳細な説明は,「発明が解決しようとする課題及びその解 決手段」その他当業者が発明の意義を理解するために必要な事項の記載が 義務付けられているものである(特許法施行規則24条の2)。 以上を踏まえれば,サポート要件の適否を判断する前提としての当該発 明の課題についても,原則として,技術常識を参酌しつつ,発明の詳細な 説明の記載に基づいてこれを認定するのが相当である。 かかる観点から本件発明について検討するに,本件明細書の発明の詳細 な説明には,米糖化物含有食品であるライスミルクの製造時に各種酵素を 制御することなく加えると,プロテアーゼによりアミノ酸,オリゴペプチ ドが生成し,うまみ調味料様の雑味がついてしまい,用途が限られたこと (【0002】),食感が滑らかで雑味がなくすっきりした味を持つ米糖 化液としてアミノ酸濃度が一定範囲である米糖化液が開発されたが,甘味, コク(ミルク感)等の風味は十分に改善されておらず,必ずしも満足でき\nるものではなかったこと,さらに,グラノーラ,パンケーキ等が流行する 一方,牛乳アレルギー,大豆アレルギーの人口は増加傾向にあり,風味が 改善された牛乳や豆乳の代用品が求められていたこと(【0003】)な どが背景技術として記載されている。その上で,発明の詳細な説明には, 発明が解決しようとする課題として,「本発明は,米糖化物含有食品のコ ク,甘味,美味しさ等を改善するという課題を解決すべく鋭意研究を重ね た結果見出されたものである。すなわち,本発明は,コク,甘味,美味し さ等を有する米糖化物含有食品を提供することを目的とする。さらに,従 来牛乳や大豆を用いて製造又は調理されていた多数の食品を作ることを可 能にする食品を提供することも目的とする。」との記載がある(【000\n6】)。
これらの記載からすれば,本件発明は,「コク,甘味,美味しさ等を有 する米糖化物含有食品を提供すること」それ自体を課題とするものである ことが明確に読み取れるといえる。 イ これに対し,異議決定は,「本件発明1の課題は,本件特許明細書の『コ ク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供すること』(【0 006】)との記載及び実施例(【0031】〜【0043】)において, 『コク(ミルク感)』,『甘み』及び『美味しさ』の各評価項目について 評価を行っていることから,『コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物 含有食品を提供すること』と認められる。」と,一旦は上記アと同様に本 件発明1の課題を認定しながら,最終的なサポート要件の適否判断に際し ては,「本件発明1の課題は,上記aのとおり,具体的には,実施例1− 1のライスミルクに比べてコク(ミルク感),甘味及び美味しさについて 優位な差を有するものを提供することであ(る)」とその課題を認定し直 し,課題の解決手段についても,「本件発明1が課題を解決できると認識 できるためには,…実施例1−1のライスミルクに比べてコク(ミルク感), 甘味及び美味しさについて優位な差を有することを認識できることが必要 である。」としている(異議決定12頁16〜25行)。 この点について,被告は,発明が解決しようとする課題とは,出願時の 技術水準に照らして未解決であった課題であるから,本件発明1の「コク, 甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供すること」という課題 は,本件出願時の技術水準を構成する米糖化物含有食品(具体的には,実\n施例1−1のライスミルク)に比べて,コク,甘味,美味しさ等を有する 米糖化物含有食品を提供することであり, したがって,異議決定において は,本件発明1の課題について,「具体的には,実施例1−1のライスミ ルクに比べてコク(ミルク感),甘味及び美味しさについて優位な差を有 するものを提供すること」としたものである(したがって,異議決定の課 題の認定に誤りはない)と主張する。 確かに,発明が解決しようとする課題は,一般的には,出願時の技術水 準に照らして未解決であった課題であるから,発明の詳細な説明に,課題 に関する記載が全くないといった例外的な事情がある場合においては,技 術水準から課題を認定するなどしてこれを補うことも全く許されないでは ないと考えられる。
しかしながら,記載要件の適否は,特許請求の範囲と発明の詳細な説明 の記載に関する問題であるから,その判断は,第一次的にはこれらの記載 に基づいてなされるべきであり,課題の認定,抽出に関しても,上記のよ うな例外的な事情がある場合でない限りは同様であるといえる。 したがって,出願時の技術水準等は,飽くまでその記載内容を理解する ために補助的に参酌されるべき事項にすぎず,本来的には,課題を抽出す るための事項として扱われるべきものではない(換言すれば,サポート要 件の適否に関しては,発明の詳細な説明から当該発明の課題が読み取れる 以上は,これに従って判断すれば十分なのであって,出願時の技術水準を\n考慮するなどという名目で,あえて周知技術や公知技術を取り込み,発明 の詳細な説明に記載された課題とは異なる課題を認定することは必要でな いし,相当でもない。出願時の技術水準等との比較は,行うとすれば進歩 性の問題として行うべきものである。)。 これを本件発明に関していえば,異議決定も一旦は発明の詳細な説明の 記載から,その課題を「コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食 品を提供すること」と認定したように,発明の詳細な説明から課題が明確 に把握できるのであるから,あえて,「出願時の技術水準」に基づいて, 課題を認定し直す(更に限定する)必要性は全くない(さらにいえば,異 議決定が技術水準であるとした実施例1−1は,そもそも公知の組成物で はない。)。 したがって,異議決定が課題を「実施例1−1のライスミルクに比べて コク(ミルク感),甘味及び美味しさについて有意な差を有するものを提 供すること」と認定し直したことは,発明の詳細な説明から発明の課題が 明確に読み取れるにもかかわらず,その記載を離れて(解決すべき水準を 上げて)課題を再設定するものであり,相当でない。 以上によれば,異議決定における課題の認定は妥当なものとはいえず, 被告の主張は採用できない。

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平成28(ワ)6539  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 平成30年10月18日  大阪地方裁判所

 ゴミ箱について、意匠権侵害、著作権侵害、不競法違反、不法行為などを主張しました。裁判所は、意匠権侵害については認め(被告自認)、差止・損害賠償を認めました。ただ、その他に請求は棄却しました。
 被告ごみ箱の意匠は本件意匠に類似する(争いがない)から,被告ごみ箱を販売 する行為については,本件意匠権を侵害する行為である。
・・・
被告ごみ箱の形態が原告ごみ箱のそれと実質的に同一であり(争いがない),こ の形態同一性は依拠の事実も推認させるところ,この推認を覆す事情は認められな いから,被告ごみ箱は原告ごみ箱の形態を模倣した商品であると認められる。した がって,被告が平成27年1月31日までに被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ 箱販売1)については,不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為に当たる。 他方,被告が同年2月1日以降に被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ箱販売2及 び3)については,原告ごみ箱が最初に販売された日から3年が経過しており,同 号所定の不正競争行為に当たらない(同法19条1項5号イ)。
上記(1)イのとおり,被告が平成27年2月1日から同年6月14日まで の間に被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ箱販売2)については,不正競争行為 に当たらないし,本件意匠権侵害について過失があったとは認められないところ, 原告は,被告ごみ箱販売2については公正な自由競争秩序を著しく害するものであ るから,一般不法行為を構成すると主張する。\nしかし,現行法上,創作されたデザインの利用に関しては,著作権法, 意匠法及び不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律がその排他的な使用権等の 及ぶ範囲,限界を明確にしていることに鑑みると,創作されたデザインの利用行為 は,各法律が規律の対象とする創作物の利用による利益とは異なる法的に保護され た利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではない\nと解するのが相当である。 したがって,原告の主張が,被告が原告ごみ箱の商品形態を模倣した被告ごみ箱 を販売したことが不法行為を構成するという趣旨であれば,不正競争防止法で保護\nされた利益と同様の保護利益が侵害された旨を主張しているにすぎないから,採用 することはできない。
ウ また,これと異なり,原告の主張が,被告が被告ごみ箱を販売すること によって原告の原告ごみ箱に係る営業が妨害され,その営業上の利益が侵害された という趣旨であれば,上記の知的財産権関係の各法律が規律の対象とする創作物の 利用による利益とは異なる法的に保護された利益を主張するものであるということ ができる。しかし,我が国では憲法上営業の自由が保障され,各人が自由競争原理 の下で営業活動を行うことが保障されていることからすると,他人の営業上の行為 によって自己の営業上の利益が害されたことをもって,直ちに不法行為上違法と評 価するのは相当ではなく,他人の行為が,殊更に相手方に損害を与えることのみを 目的としてなされた場合のように,自由競争の範囲を逸脱し,営業の自由を濫用し たものといえるような特段の事情が認められる場合に限り,違法性を有するとして 不法行為の成立が認められると解するのが相当である。 そして,本件では,原告の主張を前提としても上記特段の事情があるとは認めら れない。
・・・
被告は,上記(1)アのとおり,平成27年10月8日頃,原告から,被告ごみ箱を 輸入,販売する行為が本件意匠権を侵害するとの指摘を受けたことから,同月22 日付けで,被告に対し,被告ごみ箱を販売する行為は本件意匠権を侵害する可能性\nがあると判断して直ちに販売を中止した旨回答した(甲5)だけでなく,現に販売 を中止し,本件訴訟においても被告ごみ箱を販売する行為が本件意匠権を侵害する ことになることを争っていない(弁論の全趣旨)。したがって,被告がさらに被告 ごみ箱を輸入するおそれは認められず,また,被告は中国の業者から被告ごみ箱を 輸入して販売しているにすぎない(乙19)から,被告ごみ箱を自ら製造するおそ れも認められない。 しかし,被告は,被告ごみ箱を平成26年7月に合計3024個輸入し(乙1 6),それを平成27年10月22日の販売中止までに合計774個販売した(乙 10)と認められるから,多数の在庫を保有していると推認されるところ,被告が それら在庫を廃棄したことをうかがわせる証拠はない。そうすると,被告は,現在 も被告ごみ箱の在庫を保有していると考えざるを得ず,そうである以上,被告が被 告ごみ箱を販売するおそれを否定することはできない。したがって,被告ごみ箱の 差止請求については,その販売及び広告宣伝の差止めを求める限度で理由がある。
・・・
a 被告の過失ある本件意匠権侵害行為の期間は,被告ごみ箱販売1に 係る平成27年6月15日から同年10月21日までと認められるところ,被告ご み箱の単位数量当たりの仕入原価が205.543円であることは当事者間に争い がなく,この期間の被告による被告ごみ箱の合計販売数量は前記のとおり666個 と認められる。そして,被告がこの期間に被告ごみ箱を666個販売して得た売上 高が16万0380円であること(乙11)に照らせば,被告ごみ箱の販売の単位 数量当たりの売上高は240.811円(小数点第4位以下四捨五入)である。した がって,被告が被告ごみ箱を666個販売して得た利益は,2万3488円(1円 未満四捨五入)であると認められる。
(240.811−205.543)×666≒23,488
そうすると,2万3488円が意匠権者である原告の受けた損害の額と推定され るところ,上記推定を覆滅する事由に関する主張,立証はないから,原告の損害額 は,2万3488円であると認められる。
b これに対し,原告は,被告の平成27年7月及び同年10月におけ るインテリア計画メガマックス千葉NT店に対する販売については,販売額が仕入 原価を下回っており,独占禁止法第2条第9項に基づく不公正な取引方法第6項に 規定する不当廉売に当たるから,被告ごみ箱の販売の単位数量当たりの売上高を算 定するに当たっては,上記販売における売上額に基づくべきではなく,平成26年 8月における販売の売上額に基づくべきである(これに従えば,単位数量当たりの 売上高は540円となる。)と主張する。 しかし,販売額が仕入原価を下回るからといって直ちに独占禁止法が禁止する不 当廉売に当たるわけではない上,意匠法39条2項は,侵害者が実際に得た利益の 額をもって意匠権者の損害の額と推定する規定であるから,侵害者が原価以下で販 売した場合でも,それが実質的に見て侵害物の廃棄処分と同視し得るといった事情 のない限り,実際の販売額に基づいて侵害者の利益を算定すべきものである(意匠 権者がそれにとどまらない損害額の賠償を求めるためには,同条1項による損害額 を主張立証する道が用意されている。)。そして,上記で原告が指摘するインテリ ア計画メガマックス千葉NT店に対する販売のうち平成27年7月のものについて は,被告が原告から通知書(甲4)を受領する前の時期であるから,通常の取引行 為によるものと見るべきであり,その販売単価と同年10月の販売単価は同額であ る(甲10)から,それらの販売を実質的に見て侵害物の廃棄処分と同視すること はできない。 また,原告が被告ごみ箱の販売の単位数量当たりの売上高を算定するに当たって 基礎とすべきであるという平成26年10月における被告の販売(被告ごみ箱販売 1における販売)については,上記(1)イのとおり,被告が不法行為(本件意匠権侵 害)に基づく損害賠償責任を負うものではない。

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平成29(行ケ)10113  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年10月25日  知的財産高等裁判所

 記載不備(明確性、サポート要件、実施可能要件)の無効理由無しとした審決が維持されました。
 特許法36条6項2号の趣旨は,特許請求の範囲に記載された発明が明確 でない場合に,特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となることによ り生じ得る第三者の不測の不利益を防止することにある。そこで,特許を受 けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載のみならず, 願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願時にお ける技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不 利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきものと解 される。
(3)ア そこで検討するに,本件明細書には,泡に関し,「本明細書で用いられ る「泡」は,混合されて,可変長の時間持続する構造を有する小さい気泡\nのマスを形成する液体及び気体を意味する。」(【0036】),「気泡 は,液体のフィルムで取り囲まれた気体のセルである。」(【0037】) との定義が記載されている。また,本件発明の発泡性組成物の作用効果に 関し,本件発明の組成物は,発泡性であるために,適用された部分に留ま ることができ(【0015】),表面上に容易に広がる泡として分配でき\nる(【0018】)ものであって,空気と混合されるときに安定な泡を与 え,この泡は,個人的洗浄用又は消毒目的のために使用でき,例えばユー ザーが両手をこすったとき又は表面上に塗布されたときに壊れること(【0\n041】),本発明の重要かつ驚くべき成果は,消毒に適する組成物が40% v/vより多量のアルコールを含有すること,そして低圧容器及びエアゾール 包装容器の両者から化粧品として魅力的な泡として分配され得ること(【0 044】)がそれぞれ記載されている。
イ この点に関連して,泡に関する技術常識についてみると,「入門講座 泡 の化学」と題する論文(オレオサイエンス第1巻第8号。2001年発行。 甲12)には,「深い井戸からくみ上げた水に生ずる泡はきわめて微小な 気泡が多数水中に分散している。このように気体が液体または固体に包ま れた状態を気泡(Bubble)という。泡は各種界面活性物質,または界面活 性剤の気・液界面への吸着によって起こる現象であって,洗濯時の洗濯機 の中の液やビールの泡のようにこれが多数集まって薄膜を隔てて密接に存 在するものを泡沫(Foam)と呼ぶ。気泡と泡沫の区別は形態的であるが前 者はただ一つの界面を有するのに対し,後者は2つの界面を有する。」(8 63頁左欄)との記載がある。 この論文の公開時期に鑑みれば,泡には,形態的に区別される気泡と泡 沫とがあり,気泡(Bubble)は,気体が液体又は固体に包まれた状態を指 し,ただ1つの界面を有するのに対し,泡沫(Foam)は,気泡が多数集ま って薄膜を隔てて密接に存在し,2つの界面を有するものであることは, 親出願の出願日当時における当業者の技術常識であったと認められる。
ウ 以上のとおり,上記アに摘示した本件明細書に記載された定義と,本件 発明における泡の作用効果に関する記載からすると,本件発明における「泡」 との語は,上記イ記載の泡沫を意味するものであることは明らかである。 そして,本件明細書の記載及び親出願の出願日当時における当業者の技 術的常識を基礎とすると,本件発明1に係る特許請求の範囲の記載が,第 三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(4) 原告の主張について
原告は,本件明細書の段落【0036】における1)「可変長の時間持続す る構造」が表\す時間の長さ,2)「構造」とは,気泡と気泡のマスのいずれを\n指すのか,3)「小さい気泡」とは,何と比較して小さいのか,がいずれも不 明であるから,請求項1の記載が不明確であると主張する。 しかし,上記(3)において説示したとおり,当業者は,本件発明における「泡」 との語が泡沫を意味すること,泡沫とは,気泡が多数集まって薄膜を隔てて 密接に存在するものであるから,これはすなわち気泡のマスであること,そ して,本件明細書の段落【0036】における「構造」とは気泡のマスであ\nることをそれぞれ理解できるというべきである。 また,当該段落の「可変長の時間持続する」との語については,本件発明 の組成物が発泡性組成物であることによる作用効果に関する本件明細書の記 載からすると,本件発明の組成物は,適用された部分に留まることができ, かつ,表面上に容易に広がる泡として分配できるものであって,例えばユー\nザーが両手をこすったとき又は表面上に塗布されたときに壊れる程度の安定\n性を有するほどに,泡の持続時間が様々であることと理解できる。 さらに,「小さい」との語についても,上記本件明細書における本件発明 の作用効果に関する記載に照らせば,化粧品として魅力的な泡といえる程度 の大きさをいうものと解するのが相当である。 したがって,この点についての原告の主張を採用することはできない。

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平成29(ワ)22884  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月5日  東京地方裁判所

 特許に無効理由があるとして、104条の3で権利行使不能と判断されました。原告はアイリスオーヤマです。
 相違点1−2’は,単に公然実施品1において,「補強板」であるサッシュを金 属板からなる補強板とサッシュに分けて,補強板をサッシュに当接させるようにす れば実現される構成にすぎない。
また,公知技術である特開2002−270353号(乙13。以下「乙13公 報」という。)や公知技術である特開平7−6869号(乙11。以下「乙11公 報」という。)には,誘導加熱調理器においてサッシュと本体ケース連結金属板と を別部材により構成して両者を当接させてねじで接合することが記載されている。\n製造コストが高い機械加工により製造した部品を,製造コストが安い機械加工であ るプレス加工により製造するために金属板部品に置き換えることは,原告も主張す るとおり,機械加工分野における技術常識であるから,公然実施品1において製造 コストを下げるために乙13公報及び乙11公報に示されたプレス加工可能な金属\n板を採用することは当業者における単なる設計的事項の適用の問題にすぎず,極め て容易になし得ることである。 なお,原告は,相違点1−2は,トッププレートの幅を本体ケースよりも大きく したことに関連して新たに見出した課題に関するものであると主張するが,これは 相違点1−1の存在を前提とした主張であって前提において誤りである。また,原 告は,公然実施品1のサッシュをサッシュと金属板とに分けることに想到し得たと しても,金属板を長くする理由はなかったと主張するが,公然実施品1のガラス板 を長くすれば,それに伴い,サッシュと本体ケースを接続する金属板を長くするこ とは当然であるから,原告の主張は失当である。
c 小括
以上によれば,本件発明は,公然実施品1と同一であるか,本件出願日当時,当 25 業者が公然実施品1に基づいて容易に発明をすることができたものであって,新規 性又は進歩性を欠く。よって,本件特許は特許法29条1項2号又は同条2項に違 反してされたものであって,同法123条1項2号の無効理由があるから,特許無 効審判により無効とされるべきものである。 したがって,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない(特許 法104条の3第1項)。

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平成29(行ケ)10133  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年10月24日  知的財産高等裁判所

 引用発明の認定を争いましたが、引用文献には開示がないとして、無効でないとした審決が維持されました。
 原告は,「個人的に記録されたカセット」においては,オーバーライト の可能性がない場合には記録が可能\とされ,オーバーライトの可能性が発\n見された場合には,3つの態様(1)「記録機能は全く阻止される」,2)「問 い合わせおよび確認の後トリガされ得る」,3)「更に個々の記録に対して 記録機能の全くのブロッキングを付加データに対して設けられたメモリ\nの箇所における相応のエントリにより行なわせることもできる」)のいず れかによって「既に存在している記録の不本意乍らのオーバーライトない し消去の防止」が図られること,そのうちの1)の「記録機能は全く阻止さ\nれる」の態様の場合には,第2バイトの情報によって,カセット全体につ いて「追加記録または再生のみ可能」という用途に応じた記録の制御が行\nわれることが記載されているとして,引用発明1の第2バイトの情報(「x 01」)は,「追加記録または再生のみ可能」という用途を指示する「用\n途識別情報」(構成要件F)に該当する旨主張する。
(ア) そこで検討するに,甲1の記載事項(前記(2)ア(ア),(エ)ないし (キ),図2)によれば,甲1には,1)甲1記載の「磁気テープカセット 用メモリ装置」は「制御データを含んでおり,該制御データによっては 記録および/又は再生機器の動作モードの選択的ブロッキングが可制 御であることを特徴とする」こと(請求の範囲1項),2)「個人的に記 録されたカセット」の場合,「第2のメモリ領域にてカセットが個人的 使用のものであることが当該識別子により指示される場合次のメモリ 領域の分割も規定」され,また,第2バイトの「次のメモリ領域」(第 3バイト以降)には,初期時間及び終了時間と付加的に情報に対する複 数のバイトからなるデータセットが設けられていること,3)個人的に記 録されたカセット」の「2.1記録上の保護」として,「既に存在して いる記録の不本意乍らのオーバーライトないし消去の防止は次のよう にして達成される,即ち実際のテープ位置とメモリにおけるエントリと の比較を記録装置が常に行うようにするのである。当該比較によりオー バーライトの可能性のないことが指示された際のみ記録機能\がトリガ される。但しオーバーライトの可能性が発見されると,記録機能\は全く 阻止されるか,又は問い合わせおよび確認の後トリガされ得る」こと, 4)個人的に記録されたカセット」の「2.2チャイルドプルーフのブロ ック」として,「さらなる機能はそれぞれの個々の記録に対する再生の\nブロックの初期の解放(レリーズ)である。このことは同様に付加デー タに対して設けられた箇所にてエントリにて行われ得る。そのようにし て,正当な権限のないものに対する再生を例えば子どもによる不当な操 作に対する防止保護の形態で阻止することができる」ことが記載されて いるものと認められる。
上記記載を総合すれば,甲1には,「個人的に記録されたカセット」 の「第2バイト」(第2のメモリ領域)に記憶されている識別子により カセットが「個人的使用のもの」であることが指示され,それに対応し た用途として記録及び再生の双方が可能となることを前提として,第2\nバイトの「次のメモリ領域」(第3バイト以降)に設けられた「エント リ」によって「既に存在している記録の不本意乍らのオーバーライトな いし消去の防止」といった記録再生機器の記録動作の制御や「正当な権 限のないもの」に対する「再生のブロック」といった記録再生機器の再 生動作の制御を可能(「可制御」)としたことが開示されているものと\n認められる。
そうすると,引用発明1(「個人的に記録されたカセット」による発 明)の「第2バイト」に記憶されている情報(「x01」)は,記録再 生機器に対して,記録及び再生の双方が可能というカセットの用途に対\n応した記録動作又は再生動作の制御内容を示す情報に相当するものと いえるから,本件発明の「用途識別情報」に該当することが認められる。 また,甲1の記載事項(前記(2)ア(キ),図2)によれば,引用発明 1においては,追加記録のみ可能,すなわち,上書き禁止の制御は,「第\n2バイト」の次のメモリ領域(第3バイト以降)の付加データに対して 「エントリ」(図2記載の第13バイトの「付加データ 本例 オーバ ライト阻止」)を設けることによって行われていることからすると,第 2バイトの「x01」は,「追加記録または再生のみ可能」の用途を示\nすものとはいえない。
さらに,「個人的に記録されたカセット」においては,「既に存在し ている記録の不本意乍らのオーバーライトないし消去の防止」の態様と して,2)及び3)の態様もあり得ることに照らすと,「個人的に記録され たカセット」であることを示す第2バイトの識別子のみによって,1)な いし3)の態様を区別することは困難である。
(イ) 以上によれば,引用発明1の第2バイトの情報(「x01」)は, 「追加記録または再生のみ可能」という用途を指示する情報であるとの\n原告の前記主張は採用することができない。
イ 以上によれば,引用発明1は,構成要件Fの「ユーザが改変することが\nできず,前記磁気テープに対して追加記録または再生のみ可能」とされて\nいる「用途識別情報」に相当する構成を備えていない点において,本件発\n明と相違するから,結論において,本件審決における相違点2の認定に誤 りはない。

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平成30(ネ)10042  損害賠償請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成30年10月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 不競法2条1項2号に該当するとした原審が維持されました。
 控訴人は,被告各商品に被控訴人の著名表示が付されていることは認めつつ,\n需要者がその出所につき控訴人であり被控訴人ではないと認識し得る場合であり, 著名表示は商品のデザインとしてのみ使用されていることから,著名表\示が「商品 等表示」として使用されているとはいえないなどと主張する。\nしかし,不正競争防止法2条1項2号は,同項1号と異なり,「他人の商品又は 営業と混同を生じさせる行為」であることを要件としていない。これは,同項2号 の趣旨が,著名な商品等表示について,その顧客吸引力を利用するただ乗りを防止\nすると共に,その出所表示機能\及び品質表示機能\が希釈化により害されることを防 止するところにあることによるものである。このため,他人の著名な商品等表示と\n同一又は類似の表示が,商品の出所を表\示し,自他商品を識別する機能を果たす態\n様で用いられている場合には,商品等表示としての使用であると認められるのであ\nって,需要者が当該表示により示される出所の混同を生じるか否かが直ちにこの点\nを左右するものではない。 また,原告標章は著名性を有し,高い出所識別機能を有するものであること,原\n告モノグラム表示の使用態様として,商品に応じてその一部分のみを商品に付して\n使用されており,必ずしも「LOUIS VUITTON」との文字商標を必要と はしていないことは,前記のとおりである(引用に係る原判決「事実及び理由」第 4の2(1)及び(2)。他方,被告標章1〜7は,原告標章を構成する原告記号a〜d\nと同一の記号により構成され,その配置も原告標章と同一の規則性に基づくものの\n一部分ということができ,また,被告標章8は,被告記号eの存在や配色において 原告標章と異なるものの,配置の規則性の点では原告標章と同一に配置されたもの の一部分ということができる。このような原告標章の著名性や,原告標章と被告各 標章との構成要素及び使用態様の共通性に鑑みると,被告各標章は,いずれも,こ\nれを見た者の認識において,容易に著名表示である原告標章を想起させるものであ\nることは明らかである。このことは,控訴人が取引の実情として指摘する「REM AKE」,「VINTAGEのLOUIS VUITTONの生地を…落とし込ん だ」,「カスタム」,「CUSTOM」といったウェブ上の記載の存在や「JUN KMANIA」という屋号の表示の存在等を考慮しても異ならない。\n以上より,被告各標章は,それがデザインとして認識されるか否かはさておき, 出所識別機能を有する態様で用いられているものと認められるのであって,この点\nに関し控訴人がるる指摘する事情を考慮しても,控訴人の主張は採用できない。 イ さらに,控訴人は,不正競争防止法2条1項2号に該当するには著名表示の\n主体の営業上の利益が侵害されるような場合でなければならないと主張する。 しかし,後記のとおり,表示希釈及び表\示汚染という観点をも含め,控訴人の行 為により被控訴人に現に損害を生じていると認められることから,仮に控訴人の主 張を前提としても,この点をもって不正競争防止法2条1項2号該当性が否定され ることにはならない。
ウ したがって,控訴人の行為は,不正競争防止法2条1項2号の不正競争行為 に該当する。
(2)損害の額について

ア 控訴人は,需要者は,被告各商品が被控訴人によって販売されていない商品 であることを認識しながら,敢えて控訴人の商品を購入しており,控訴人による被 告各商品の展示販売行為がなければ被控訴人が利益を得られたであろうという関係 にはないなどと主張する。 しかし,原告標章と被告各標章との類似性の程度,原告商品及び被告商品の販路 の共通性並びに需要者層の重なり合いの蓋然性に鑑みると,被控訴人には,控訴人 による侵害行為がなければ利益を得られたであろうという事情が認められることは, 前記のとおりである(引用に係る原判決「事実及び理由」第4の3(1))。
イ 控訴人は,被告各商品の販売により受けた利益は12万3442円であり, かつ,この利益額への原告標章の貢献の程度はその50%にとどまるなどと主張す る。 不正競争防止法5条2項に基づく損害額は,侵害者の売上額から原材料の仕入価 格その他の変動経費を控除した限界利益と解すべきであって,売上高の多寡にかか わらず発生し得る販売費及び一般管理費等は原則として控除されないと解される。 そして,控訴人は,経費の控除につき,その項目を区別することなく,決算書上 「経費」として計上したもの全額の控除を主張するにとどまり,変動経費の額に関 する具体的な主張立証はない。 また,推定覆滅事情は控訴人において主張立証すべきところ,控訴人主張の被告 各商品の売上げに対する原告標章の貢献の程度を裏付けるに足りる証拠はないから, この点に関する控訴人の主張も採用し得ない。
ウ 控訴人は,被告各商品の展示販売により被控訴人の信用が毀損されることは ないなどと主張する。 しかし,前記のとおり(引用に係る原判決「事実及び理由」第4の3(2)),原告 標章は著名性を獲得した商品等表示であり,また,被控訴人は,その商品の品質及\nびブランドイメージを維持管理するために多大な努力を払ってきたことが認められ る。他方,被告各商品の中には,被告商品4のように,品質の点で原告商品と比較 して粗雑というべきものが含まれていると認められることに加え,控訴人自身,被 告各商品は,原告標章(ないし原告モノグラム表示)の著名性に便乗し,被控訴人\nの商品の「高級感を揶揄し風刺する意図」で製作販売された「チープな商品」と主 張しているものであり,客観的にも,その構成等から,そのような意図等で製作販\n売された商品であることが容易にうかがわれる。 このような被告各商品が市場に存在することが,原告商品の品質及びブランドイ メージに悪影響を及ぼし得ることは明らかである。 そうすると,控訴人による不正競争行為は,被控訴人が長年の企業努力により獲 得した原告標章の著名性及びそれにより得られる顧客誘引力を不当に利用して利得 するものであり,被控訴人の企業努力の成果を実質的に減殺するものであって,著 名な原告標章を希釈化するのみならず,これを汚染するものというべきである。こ れにより,需要者の原告商品又は原告標章に対する信用や価値が毀損され,被控訴 人は無形の損害を被ったものと認められる。 エ したがって,この点に関する控訴人の主張はいずれも採用できず,不正競争 防止法5条2項に基づく損害額は108万1490円,信用毀損等の無形損害の額 は50万円及び弁護士費用相当額15万円を,いずれも下回ることはない。

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◆平成29(ワ)5423
 

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平成29(ワ)22041  差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月19日  東京地方裁判所(40部)

 構成要件B,C,Eを充足しないとして、技術的範囲に属しないと認定されました。\n
 原告は,被告製品の把持体外側の外郭部分全体の形状は「逆台形状」である から,構成要件Bを充足すると主張する。\n構成要件Bの「逆台形状」の意義に関し,本件明細書の段落【0008】,\n【0018】,【0023】,【0024】には,本件発明の把持部12が「逆 台形形状」である旨の記載があるが,その形状の定義や意義についての記載 は存在しない。そこで,一般的な用法を参酌すると,広辞苑第六版(乙1)に は,「台形」とは「一組の対辺が平行な四辺形」であると記載され,かつ,上 底が下底より短い四辺形の図が掲載されている。これによれば,「逆台形」と は,「上底が下底より長く一組の対辺が平行な四辺形」をいうと解するのが相 当である。 このような理解に立って本件明細書の図2に図示された把持部をみると, その上部(引き手から遠い部分を「上部」,引き手に近い部分を「下部」とい う。)の直線が下部の直線より長く,その側辺が直線状であるので,本件明細 書における「逆台形状」という語の意義は,上記の一般的用法に沿うものであ ると認められる。 他方,証拠(甲3)によれば,被告製品の把持体(前記第3の1(1)〔被告 の主張〕掲記の「被告製品の把持体」の赤線で囲まれた部分)は,下底は直線 状であるものの,下底から上部に向かう側辺は全体が曲線であり,把持体の 中央部分で最大幅となり,その後,上部に向かい先端部に行くほど幅が狭く なっている上,上底も直線状ではなく,曲線から構成されていることが看取\nされる。そうすると,被告製品の把持体は,平行な対辺もなく四辺形でもない ことから「逆台形状」ということはできず,むしろ「楕円形状」というべきで ある。 これに対し,原告は,「逆台形状」の「状」とは,「…のような形である」 の意味であるから,本件発明の「逆台形状」は必ずしも正確な「逆台形」に限 られないと主張する。しかし,被告の把持体が厳密な意味での「逆台形状」の 定義を満たすことは要しないとしても,少なくとも,逆台形としての基本的 な形状は備えていることを要すると解されるところ,被告製品の把持体は, 側辺及び上部が曲線で「四辺形」ということは到底できず,「楕円形状」とい うべきものであり,逆台形の基本的な形状を備えているということはできな いことは前記判示のとおりである。 したがって,被告製品の把持体は「逆台形状」とは言えず,構成要件Bを充\n足しない。
(2)争点1−2(構成要件Cの充足性)について
原告は,被告製品は,スライダーが10〜50%露出しているので,構成\n要件Cを充足すると主張する。 しかし,被告製品の写真である証拠(乙19の1の4枚目,19の2の5 枚目,19の3の3枚目,19の4の3枚目,19の5の4枚目,19の6 の4枚目,19の7の4枚目,19の8の3枚目,19の9の3枚目)によ れば,被告製品において,スライダーがファスナーカバーに収まった状態に おいて閉口端側に露出することはあるものの,その露出割合は10%を超え ないと認めることが相当である。 また,被告製品1の吊り下げヘッダー裏面にはスライダーをファスナーカ バーに収めた状態が図示されているが(甲3の1の図5),同図においても, スライダーはファスナーカバーから閉口端側に露出していない。これによれ ば,被告製品の通常の用法においては,スライダーがファスナーカバーに収 められた際に閉口端側に露出することは想定されていないものというべき である。
これに対し,原告は,被告製品1の実測値(別紙被告製品説明書の図1を 再度実測したとされるもの。原告第1準備書面11頁の図1)によれば,被 告製品1のファスナーカバーの長手方向の全長は約25mmであり,露出部 分が約3.5mmであるから,被告製品のスライダーは約14%(3.5/ 25×100=0.14)露出していると主張する。 しかし,原告が根拠とする上記の実測値は,被告製品の把持体を弾性のあ るファスナーカバーにどの程度強く押し込んだ上で実測されたかが明らか ではなく,訴状に添付された同製品に係る別紙被告製品説明書の図1(甲3 の1の図3)においては,被告製品1のスライダーの露出部分は約3mm程 度にとどまっている上,前記のとおり,吊り下げヘッダー裏面の図(甲3の 1の図5)においては,スライダーがファスナーカバーから閉口端側に露出 していないことなどに照らすと,上記の再実測図(原告第1準備書面11頁 の図1)は,被告製品1のスライダーを通常使用される態様より強くファス ナーカバーに押し込んで実測されたものであると推認される。 この点,原告は,本件発明の技術的範囲は,被告製品がスライダーをファ スナーカバーから所定の割合で露出させることが可能かどうかで判断され\nるべきであるから,スライダーを強くファスナーカバーに押し込んだ状態で 露出割合が10%を超えるのであれば構成要件Cを充足すると主張するが,\n被告製品におけるスライダーの露出割合は,当該製品が通常使用される状態 において測定されるべきであり,弾性を有するファスナーカバーにスライダ ーを強く押し込んだ状態においてスライダーの露出割合が10%を超える としても,それによって構成要件Cを充足するということはできない。\nしたがって,被告製品は構成要件Cを充足しない。
(3) 争点1−4(構成要件Eの充足性)について
原告は,被告製品は,ファスナーカバーに把持体が「収まった状態」となっ ているので,構成要件Eを充足すると主張する。\n構成要件Eの「収まった状態」との語に関し,本件明細書には,拡大把持体\nがカバー体にどの程度覆われていることを意味するかについての直接的な記 載はないが,本件発明に係る洗濯用ネットの開口部を開口及び閉口する際の 手順を記載した本件明細書の段落【0020】及び段落【0022】の記載に よれば,本件発明は,洗濯ネットの閉口時にはスライダ構成体を「確実にカバ\nー体に収」め,開口時には 閉口端側からスライダ3を押すことにより,拡大 把持体1の「先の部分」を一定量カバー体から露出させ,その部分を指でつか んで引き抜くことにより開口するものであると認められる。 このような,本件発明に係る洗濯ネットの開閉時の手順及び仕組みによれ ば,閉口時において拡大把持体は,その「先の部分」まで「確実に」カバー体 に覆われた状態にあるものと解するのが相当であり,本件明細書の【図4】 (C)にも,開口部を閉じた際に拡大把持体1が完全にカバー体に収められ た状況が図示されている。
そうすると,構成要件Eの「収まった状態」とは,拡大把持体がカバー体に\n完全に覆われた状態をいうものと解すべきであり,このような理解は,「収ま る」という語が,一般的には「ある範囲内に全部が残らず入る」ことなどを意 味すること(乙3)とも整合するというべきである。 また,仮に,原告の主張するように閉口時において拡大把持体がカバー体 に完全に覆われることを要しないと解し得るとしても,上記の開閉時の手順 及び仕組みによれば,少なくとも,拡大把持体は,開口時にその先の部分を指 でつまんでそのまま開口することができない程度までカバー体に覆われてい ることを要するというべきである。 以上に基づき被告製品についてみると,証拠(甲3,乙19)によれば,被 告製品はいずれも開口時に閉口端側からスライダーを押して把持体の先の部 分を露出することを必要とせず,そのまま把持体を指でつまんで開口するも のであり,これを可能にするように,開口部側において把持体のリング部分\nの一部が指でつまむことができる程度にファスナーカバーから露出している ことが認められる。 このように,被告製品は,閉口時に把持体がファスナーカバーに完全に覆 われておらず,少なくとも,把持体が指でつまむことができる程度に露出し ているのであるから,被告製品は構成要件Eの「拡大把持体が収まった状態」\nにあるということはできない。

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平成30(ネ)10020 特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月18日  知的財産高等裁判所(1部)  大阪地方裁判所

1審と同様に、29条1項3号違反の無効理由ありとして、権利行使不能と判断されました。控訴人(1審原告)は、訂正の再抗弁を主張しませんでした。
(エ) 以上より,乙1公報には,以下の乙1発明が記載されていると認められる。
携帯用光学式カード1などの表面の所定領域を白色に形成した情報記録領域2を,一方向に等間隔で複数の単位情報記録領域2−1〜2−nに区分けし,単位情報記\n録領域2−1〜2−nそれぞれを,マトリクス状に2×2の四つの単位領域a〜d に区分けし,各単位情報記録領域は,隣接する四つの単位領域a〜dごとに「マー ク無し」,「マーク有り」の二つの状態を記録するカルラコードにおいて,隣接す る四つの単位領域a〜dに対して,「マーク有り」の状態の単位領域には,赤色の 第1のマークMK1,緑色の第2のマークMK2及び黄色の第3のマークMK3の いずれかを印刷し,上記三色のマークに加え白色の四色で4値の情報を一の単位領 域に対して与えることで,2×2のマトリクスを形成する隣接する四つの単位領域 からなる一の単位情報記録領域2−1では4値の組合せで44=256種類の情報 の記録が可能なコード。
(3) 本件発明と乙1発明との対比
ア 「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され」(構\成要件A)について
(ア) 乙1発明の「単位領域」は,「単位領域a〜dごとに『マーク無し』, 『マーク有り』の二つの状態を記録するものである。ここで,乙1発明の「マーク」 は,「赤色の第1のマークMK1,緑色の第2のマークMK2及び黄色の第3のマ ークMK3のいずれかを印刷し」たものであるから,「マーク有り」の状態の単位 領域は,「赤色,緑色,黄色の三色」のうちいずれかの色を表示するものである。また,乙1発明の「単位領域」は「白地に形成した情報記録領域2」を区分けした\nものであるから,「マーク無し」の状態の単位領域は「白色」を表示するものである。\nしたがって,乙1発明の「単位領域」は,第1のマークMK1,第2のマークM K2及び第3のマークMK3のいずれか又はマークなしを表示する「表\示領域」に 相当する。
(イ) また,乙1公報の「単位領域」に赤色(第1のマークMK1),緑色(第 2のマークMK2),黄色(第3のマークMK3)及びマーク無し(白色)のいず れが表示されているかを判別する手法として,乙1公報には,第1の光源及び第2の光源のそれぞれから波長の異なる放射光を単位領域に照射し,単位領域により反\n射された光のレベルによって,上記放射光に対する吸収率ないし反射率の高いマー クが記録されているものと判定して単位領域の色を判別する手法(【0030】〜 【0033】,【0035】〜【0038】,【0040】,【0041】,【0 043】)が記載されている。この記載に鑑みれば,乙1発明は,色ごとに反射の 波長特性が異なることを利用した技術であることが理解できる。そうすると,乙1 発明の「単位領域」は,反射の波長特性が異なる4種の色のいずれかを表示する領域といえることから,本件発明の「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表\示領域」に相当する。
(ウ) さらに,乙1発明の「単位領域」は,一つの単位情報記録領域を「マトリ クス状に2×2の四つの単位領域a〜dに区分け」したものであるから,乙1発明 の単位情報記録領域は,四つの「単位領域」をマトリクス状に2×2に配列したも のといえる。同様に,乙1発明の単位情報記録領域は,「情報記録領域」を一方向 に等間隔で複数(n個)に区分けしたものであるから,乙1発明の「情報記録領域」 は,単位情報記録領域を一方向に等間隔で複数(n個)配列したものといえる。 そうすると,乙1発明の「情報記録領域」は,「単位領域」をマトリクス状に2 ×2に配列した単位情報記録領域を一方向に等間隔で複数(n個)配列したもの, すなわち,「単位領域」をマトリクス状に2×2nに配列したものといえるところ, 表示領域に相当する「単位領域」をマトリクス状に2×2nに配列することは,「単位領域」を縦方向に2行,横方向に2n列に並べること,すなわち,縦方向及\nび横方向からなる二次元的な配列で並べることにほかならない。
(エ) したがって,乙1発明と本件発明とは,「反射(又は放射)の波長特性が 異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され」ている点で共通する。
イ 「この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表\示の要素とした」 (構成要件B)について
(ア) 乙1発明の「単位情報記録領域」のそれぞれは,「44 =256種類の 情報の記録が可能」であるから,256種類の情報のうち1種類を表\示する「情報 表示の要素」といえる。
(イ) また,乙1発明では「2×2のマトリクスを形成する隣接する四つの単位 領域からなる一の単位情報記録領域では4値の組み合わせで44 =256種類の 情報の記録が可能」となるところ,当該「4値」は,「単位領域」に記録された「第1のマークMK1」,「第2のマークMK2」及び「第3のマークMK3」並\nびに「マーク無し」の状態に対応するそれぞれ異なった反射の波長特性を持つ4色 によって単位領域に与えられたものである。そうすると,乙1発明の「4値の組み 合わせ」は,本件発明の「表示領域の波長特性の組み合せ」に相当する。
(ウ) したがって,乙1発明の反射の波長特性が異なる「三色のマークに加え白 色の四色で4値の情報を一の単位領域に対して与えることで,2×2のマトリクス を形成する隣接する四つの単位領域からなる一の単位情報記録領域2−1では4値 の組合せで44=256種類の情報の記録が可能」であることは,本件発明の「この配列における表\示領域の波長特性の組み合せを情報表\示の要素とした」ことに相\n当する。
ウ 「ことを特徴とする二次元コード」(構成要件C)について
上記アによれば,乙1発明の「コード」は,「反射(又は放射)の波長特性が異 なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され」たものであって,四つの単位領域からなる単位情報記録領域に対して「44 =256種類の情報の記 録が可能」であるから,情報を4色の単位領域の二次元的な配列によって記録したものである。\n「コード」には「情報を表現する記号・符号の体系。また,情報伝達の効率・信頼性・守秘性を向上させるために変換された情報の表\現,また変換の規則。」といった意味があるところ,本件明細書及び乙1公報は,いずれも「コード」につき上 記の意味において使用しているものと理解される。 そうすると,乙1発明の「コード」は,4色のうち1色を取る単位領域を二次元 的に配列したコードであるといえ,本件発明の「二次元コード」に相当する。この ことは,乙1公報に「本発明は,カルラコードなどマーク状に情報が記録された光 学式カードおよびその読取装置に関するものである。」(【0001】)との記載 や,カルラコードが二次元バーコードの一種であること(本件明細書【0048】, 甲25)とも整合する。
エ 小括
以上を総合すると,本件発明と乙1発明とは,「反射又は放射の波長特性が異な る3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され,この配列における表\示 領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素としたことを特徴とする二次元コード。」である点で一致し,相違するところがない。\n(4) 控訴人の主張について
ア 控訴人は,本件発明は,一次元コードでは多くの情報を表示するためにはバーコードラベルが大型化し実用的でなくなるという課題を解決するためのものであ\nり,二次元コードにおける「二次元」とは,単に表示領域が二次元方向に幾何学的に配列されているのみではなく,この組合せにより二方向に情報表\示の要素を有することを意味するなどと主張する。 しかし,そもそも,本件発明の構成要件において二次元的に配列されるとするのは「表\示領域」であって,「情報表\示の要素」を二次元的に配列にすることは規定\nされていない。そして,乙1発明においては,本件発明の「表示領域」に相当する「単位領域」が「2×2nに配列」されていることは,上記のとおりである。\nまた,本件明細書は,「バーの本数を増加したロングバーコードと標準型のバー コードを並べて印刷することにより,情報表示量の不足をカバーしようと」する方法は「根本的な解決策にはなっていない。」(【0005】),「モノクロ…のバ\nーコードで,このような多くの情報を表示しようとすると,表\\示パターンが複雑化 すると共にバーコードラベルが大型化し,実用的でなくなる」(【0006】), 及び「モノクロの情報コードの情報表示量の限界のため実用的なシステムを作ることは困難」(【0008】)との問題点を指摘した上で,「本発明は,表\示パターンを変えなくても表示できる情報量を大幅に増大して,上記問題を解決できる情報コードを提供することを目的とする。」(【0009】)として,本件発明の課題\nを提示している。これらによれば,本件発明はモノクロのバーコードで多くの情報 を表示するためにはバーコードラベルが大型化し実用的でなくなるという課題を解決するためのものであって,必ずしも一次元コードにおける課題を解決するための\nものではないと認められる。そうすると,控訴人の主張は,本件発明の課題につい ての誤った認定に基づいたものというべきである。 その点をおくとしても,情報表示の要素を一次元に並べた場合(乙1発明)と二次元的に並べた場合(控訴人主張に係る本件発明)とで,必要な情報表\示の要素数及び表示領域の数に変化はない。そうである以上,情報表\\示の要素を二次元的に並 べた二次元コードにより控訴人主張に係る本件発明の課題が解決されるとは必ずし も認められない。控訴人の主張は,本件発明の課題解決手段についての誤った前提 に基づいたものである。 さらに,控訴人は,乙1発明におけるコードの読取方法から,乙1発明のコード の情報表示の要素は水平方向のみにしかないと指摘する。しかし,前記のとおり,本件発明が二次元的に配列していると規定するのは「情報表\示の要素」ではなく「表示領域」である。また,乙1発明の読取装置が,光学式カードを長手方向に間欠送りするという動作と,カード送り方向と直交する方向に走査するという動作と\nを共に必要とするということは,当該カードに記録されたコードは,二つの方向で, すなわち二次元的に読み取る必要があることを示すものであり,当該コードの表示領域は二次元的な配列で並べられているものと理解するほかない。
イ 控訴人は,本件発明の「コード」とは,独立コード,すなわち,コード化の 対象となる情報を表すシンボル(有意情報)と,バーコードに記載されているデータを読み取るために必要な取り決め(構\造情報)の二つの要素を含むものを意味するなどと主張する。 しかし,本件発明の特許請求の範囲及び本件明細書のいずれの記載にも,「二次 元コード」ないし「コード」を限定する趣旨の規定はない。また,本件明細書【0 048】においては,本件発明の「二次元コード」の例示としてカルラコードが挙 げられていることからすると,かえって,本件発明にいう「二次元コード」又は 「コード」は,それが構造情報を有するものか否かは問わないものであると解するのが相当である。\nさらに,本件発明が「構造情報」を有しないコードであるカルラコードが普及しなかったことを受けて開発されたものであることは,本件明細書に記載されておら\nず,立証もされていない。有意情報と構造情報とを共に備えない限りコードが発明として成立しないことも,何ら立証されていない。\nその他控訴人がるる指摘する点を考慮しても,この点に関する控訴人の主張は採 用し得ない。
ウ 控訴人は,乙1発明では波長特性の組合せが情報表示の要素とされていないなどと主張する。\nしかし,前記認定のとおり,乙1発明は,反射の波長特性が異なる「三色のマー クに加え白色の四色で4値の情報を一の単位領域に対して与えることで,2×2の マトリクスを形成する隣接する四つの単位領域からなる一の単位情報記録領域2− 1では4値の組合せで44=256種類の情報の記録が可能」なものであり,「この配列における表\示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素とした」ものであ\nるから,この点に関する控訴人の主張は採用し得ない。 エ 控訴人は,本件発明と乙1発明とは技術方式における相違があるなどと主張 する。 しかし,その指摘に係る情報波長特性の組合せ組成方式,情報領域に記録される 情報記録方式,情報領域に記録された情報の読み取り方式のいずれについても,本 件発明に係る特許請求の範囲に記載されたものではなく,また,本件明細書にも, 本件発明につきそのような限定がされていることをうかがわせる記載が見当たらな いことなどから,この点に関する控訴人の主張は採用し得ない。

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◆平成29(ワ)780

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平成29(ワ)6293  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年9月27日  東京地方裁判所

 任天堂のマリカー関連の判決です。原告表現物は周知の商品等表\示であるとして、差止および1000万円の損害賠償が認められました。
 本件動画1ないし16は,インターネット上の動画共有サービスで あるYouTubeにアップロードされたものであり,本件動画1ないし3, 5ないし12及び16については,その冒頭において被告会社が行う本 件レンタル事業に関する動画であることが表示されている。また,本件\n動画4は本件レンタル事業に係る利用者がコスチュームを着用して公道 カートを運転する様子が撮影された動画であり,本件動画13及び14 は本件レンタル事業について紹介するテレビ番組の当該紹介部分を切り 取って作成された動画であり,本件動画15は本件ロゴ等がペイントさ れた公道カートを運転する本番組の当該部分を切り取って作成された動画であり,いずれも被告会社あるいは関係団体が,本件レンタル事業を広く紹介するために動画共有 サービスにアップロードしたものと認められる。 そして,被告がその役務である本件レンタル事業を紹介する動画にお いて,原告の商品等表示といえる原告表\現物と類似の表示がされた場合,\nその表示は,少なくとも被告会社が提供している役務に関する広告にお\nいて営業の出所を示す表示としてされたということができる。\n 本件動画1ないし16においては,いずれも原告表現物の特徴の一部\nを備えたコスチューム(被告標章第2の1ないし10のいずれかのコス チューム)を着用した人物が表示されていること,これらの人物はいず\nれも公道カートに乗車していること,「マリオ」,「ルイージ」,「ヨ ッシー」,「クッパ」がカートの運転手となるゲームシリーズ「マリオ カート」が日本及び全世界において相当の出荷本数を有すること(前記 2(1)イ(ア)),これらの動画の冒頭に「MARICAR」などという表示がさ\nれていたことからすれば,これらのコスチュームを着用した動画上の人 物は,本件レンタル事業の需要者をして,ゲームシリーズ「マリオカー ト」のキャラクターである「マリオ」,「ルイージ」,「ヨッシー」, 「クッパ」を連想させ,上記各人物と,本件レンタル事業の需要者にお いて周知の商品等表示である原告表\現物とを類似のものと受け取らせ, その商品等表示と被告会社が行っている役務に関連性があると誤認させ,\n被告会社と原告との間に同一の営業を営むグループに属する関係又は原 告から使用許諾を受けている関係が存すると誤信させるおそれがある。 (オ) コスチュームを着用した被告従業員

前記(イ)及び(ウ)のとおり,本件マリオコスチューム,本件ルイージコ スチューム,本件ヨッシーコスチューム及び本件クッパコスチューム (被告標章第2の1ないし10の各コスチューム)は原告表現物の特徴\nの一部を備えるところ,これらを着用し,カートツアーの先導者として 「MARICAR」「MariCar」といった被告標章第1を表示する公道カートに\n乗車することは,前記(ウ)と同様の理由により,需要者をして,ゲーム シリーズ「マリオカート」のキャラクターである「マリオ」,「ルイー ジ」,「ヨッシー」及び「クッパ」を連想させ,その先導者と,本件レ ンタル事業の需要者の間において周知の商品等表示である原告表\現物と を類似のものと受け取らせ,被告会社と原告との間に同一の営業を営む グループに属する関係又は原告から使用許諾を受けている関係が存する と誤信させるおそれがある。
(カ) 本件マリオ人形
本件マリオ人形(被告標章第2の11の人形)は,原告表現物マリオ\nの特徴を全て備えており,原告表現物マリオと類似するといえる。\n そして,本件マリオ人形が設置されている被告会社の店舗において本 件レンタル事業が行なわれていること,「マリオ」等がカートの運転手 となるゲームシリーズ「マリオカート」が日本及び全世界において相当 の出荷本数を有すること(前記2(1)イ(ア))からすると,同設置行為は, 少なくとも提供している役務に関する広告において営業の出所を示す表\n示としてされたものといえ,原告表現物マリオが本件レンタル事業の需\n要者において周知の原告の商品等表示であることから,被告会社と原告\nとの間に同一の営業を営むグループに属する関係又は原告から使用許諾 を受けている関係が存すると誤信させるおそれがある。
ウ 以上によれば,被告が,被告標章第2を使用して行った本件宣伝行為 (本件写真1の表示を除く,以下同じ。)は,原告の周知の商品等表\示と 類似する標章を商品等表示として使用しているものであり,これに接した\n需要者に対し,被告会社と原告との間に,原告と同一の商品化事業を営む グループに属する関係又は原告から使用許諾を受けている関係が存するも のと誤信させるものと認められる。
・・・
4 不競法に基づく本件ドメイン名の使用差止及び登録抹消請求の可否
(1) 争点7(本件ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争 に該当するか否か)について
ア 本件ドメイン名と原告文字表示の類否
原告の特定商品等表示である原告文字表\示マリカーと,本件各ドメイン 名の類否について ,本件ドメイン名のうち「.jp」,「.co.jp」及び 「.com」部分は多くのドメイン名に共通して用いられるものであるから, 出所を表示する機能\を有する部分は「maricar」又は「fuji-maricar」であり,同部分が本件各ドメイン名の要部と認められる。このうち「maricar」部分については,前記2(1)イで述べたとおり,原告文字表示マリカーと類似すると認められる。\nまた,「fuji-maricar」について,前記のとおり「maricar」部分が原 告文字表示マリカーと類似し,「fuji-」の部分は「maricar」に付加され たものと受け取ることができるものであり,「fuji-maricar」も,原告文 字表示マリカーと類似するものといえる。\n したがって,本件ドメイン名はいずれも原告文字表示マリカーと類似す\nる。
イ 図利加害目的の有無
前記2(1)イ(イ)で述べたとおり,原告文字表示マリカーは,被告会社が\n設立された平成27年6月4日の相当程度以前である平成22年頃から, 原告の販売するゲームシリーズ「マリオカート」の略称として,ゲームに 関心を有する需要者の間で全国的に知られており,被告会社がこれを認識 していなかったとは認め難いこと,被告会社は,本件訴訟提起前の平成2 9年2月23日当時,本件ドメイン名1ないし3を使用して開設したサイ ト(被告会社サイト,品川店サイト1,河口湖店サイト)において,「マ リオカート」シリーズに登場する主要キャラクターである「マリオ」「ル イージ」等のコスチュームを着用した利用者が公道カートを運転するとい う本件レンタル事業のサービス内容を写真等と共に宣伝し,「みんなでコ スプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ倍増。」と記載しており,被 告会社の意図が,原告の「マリオカート」シリーズにおけるゲームの世界 を現実世界で体験することを売りにして顧客を惹きつけようとするもので あったと推認できることからすれば(甲6の1ないし3),被告会社は, 原告文字表示マリカーと類似する本件各ドメイン名を使用することにより,\n同文字表示が有する高い知名度を利用し,原告の公認あるいは協力の下で\n本件レンタル事業を営んでいるかのような外観を作出し,不当に利益を上 げる目的があったものと認めることができる。 したがって,本件各ドメイン名の使用につき,「不正の利益を得る目的」 を有していたと認めることができる。 ウ 小括
以上によれば,被告会社は,本件レンタル事業の宣伝行為のために,不 正の利益を得る目的をもって,原告の特定商品等表示である原告文字表\示 マリカーと類似する本件各ドメイン名を使用したと認められるから,同行 為は不競法2条1項13号所定の不正競争行為に該当する。
5 著作権法に基づく原告表現物の複製又は翻案の差止請求並びに本件写真等\nの抹消及び廃棄請求の可否
(1) 争点10(複製又は翻案の差止請求の可否及び範囲)について
 原告は,請求の趣旨第4項において,原告表現物の複製又は翻案の差止\nめを求め,請求の趣旨第5項において,原告表現物の複製物又は翻案物の\n自動公衆送信又は送信可能化の差止めを求めている。\n 原告表現物を複製又は翻案する行為には,広範かつ多様な行為があると\nころ,原告の請求は,絵画の著作物である原告表現物を絵画上複製すると\nいう行為がされていない本件において,差止めの対象となる行為を具体的 に特定することなく,広範かつ多様な態様な行為のすべてを差止めの対象 とするものといえ,自動公衆送信又は送信可能化の差止めについても,そ\nの差止めの対象自体を複製物又は翻案物とすることから,同様のものとい える。このような無限定な内容の行為について,被告会社がこれを行うお それがあるものとして差止めの必要性を認めるに足りる立証はされていな い。原告の前記請求には理由がない。
(2) 争点9(本件各写真及び本件各動画が原告表現物の複製物又は翻案物に\n当たるか否か)及び争点11(本件各コスチュームが原告表現物の複製物\n又は翻案物に当たるか否か)について
本件各写真及び本件各動画が原告表現物の複製物又は翻案物に当たるか\n否か(争点9)については,これらが複製物又は翻案物に当たることを前 提とする請求である請求の趣旨第4項,第5項に係る請求が前記3(1)の 理由により認められないため,判断するに及ばない。 また,原告は,請求の趣旨第11項において,本件各コスチュームが原 告表現物の複製物又は翻案物に当たることを前提として会社である被告会\n社にその貸与の禁止を求めている。本件各コスチュームである別紙貸与物 目録記載1ないし6の各コスチュームは,それぞれ,被告標章第2の2, 3,5,6,8,10のコスチュームである。ここで,不競法に基づく請 求の趣旨第6項に係る請求には被告会社がこれらのコスチュームを使用 (貸与)することの禁止を求める請求が含まれると解され,この部分は, 請求の趣旨第11項に係る請求と選択的併合の関係に立つと解される。前 記3のとおり,不競法に基づき被告会社がこれらのコスチュームの貸与を することが禁止されることによって,請求の趣旨第11項に係る請求につ いて判断をするに及ばなくなるから,本件各コスチュームが原告表現物の\n複製物又は翻案物に当たるか否か(争点11)は判断するには及ばない。

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平成29(行ケ)10232  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年10月17日  知的財産高等裁判所(2部)

 「いきなりステーキ」の提供の仕方について、異議申立では発明でないと判断されましたが、知財高裁はこの審決を取消ました。なお、異議申\立では、進歩性は争点となっていないので、判断されていません。
問題の請求項1は下記です。
【請求項1】
A お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと,お客様からステーキの量を伺うステップと,伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと,カットした肉を焼くステップと,焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって,
B 上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と,
C 上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と,
D 上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備え,
E 上記計量機が計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力することと,
F 上記印しが上記計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたシールであることを特徴とする,
G ステーキの提供システム。
 以上によると,本件特許発明1は,ステーキ店において注文を受けて配 膳をするまでの人の手順(本件ステーキ提供方法)を要素として含むものの,これ にとどまるものではなく,札,計量機及びシール(印し)という特定の物品又は機 器(装置)からなる本件計量機等に係る構成を採用し,他のお客様の肉との混同が生じることを防止することにより,本件ステーキ提供方法を実施する際に不可避的\nに生じる要請を満たして,「お客様に好みの量のステーキを安価に提供する」という 本件特許発明1の課題を解決するものであると理解することができる。
(2) 本件特許発明1の発明該当性
前記(1)のとおり,本件特許発明1の技術的課題,その課題を解決するための技術 的手段の構成及びその構\成から導かれる効果等の技術的意義に照らすと,本件特許 発明1は,札,計量機及びシール(印し)という特定の物品又は機器(本件計量機 等)を,他のお客様の肉との混同を防止して本件特許発明1の課題を解決するため の技術的手段とするものであり,全体として「自然法則を利用した技術的思想の創 作」に該当するということができる。 したがって,本件特許発明1は,特許法2条1項所定の「発明」に該当するとい うことができる。
(3) 被告らの主張について
ア 被告らは,本件特許発明1には,「札」から「計量機」へ,「計量機」か ら「印し」又は「シール」へと「テーブル番号」を伝達させる工程や,この「テー ブル番号」を本件特許発明1において特定されている各ステップの間で伝達するた めの工程は明示的に存在せず,例えば,「札」のテーブル番号を計量機に情報として 伝達する主体が何であるのかは,特許請求の範囲において何ら特定されていないな どと主張する。 しかし,前記(1)エのとおり,本件特許発明1は,「札」に「お客様を案内したテー ブル番号が記載され」,「計量機」が,「上記お客様の要望に応じてカットした肉を計 量」し,「計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出 力」し,この「シール」を「お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のも のと区別する印し」として用いることにより,お客様の要望に応じてカットした肉 が他のお客様の肉と混同が生じないようにすることに,その技術的意義がある。本 件ステーキ提供方法の各ステップ間で,誰が,どのような方法によりテーブル番号 を伝達するのかということは,上記技術的意義との関係において必須の構成という\nことはできないから,特許請求の範囲において,上記主体や工程に係る構成が特定\nされていないことは,本件特許発明1の発明該当性についての前記判断を左右する ものではない。 イ 被告らは,本件特許発明1において,「テーブル番号」は,その番号が「テ ーブル」に割り当てられており,お客様がそのテーブル番号のテーブルにおいてス テーキを食べるという人為的な取決めを前提に初めて意味を持つものであるから, そのようなテーブル番号を含む情報が伝達されるからといって,本件特許発明1の 技術的意義が自然法則を利用した技術的思想として特徴付けられるものではないな どと主張する。 しかし,お客様がそのテーブル番号のテーブルにおいてステーキを食べることが 人為的な取決めであることと,そのテーブル番号を含む情報を本件計量機等により 伝達することが自然法則を利用した技術的思想に該当するかどうかとは,別の問題 であり,前者から直ちに後者についての結論が導かれるものではない。そして,本 件計量機等が,他のお客様の肉との混同を防止して本件特許発明1の課題を解決す るための技術的手段として用いられており,本件特許発明1が「自然法則を利用し た技術的思想の創作」に該当することは,前記(2)のとおりである。
ウ 被告らは,本件特許発明1において,特定のお客様が要望する量の肉と 他のお客様の肉との混同が生じないのは,「テーブル番号」を「キー情報」として「お 客様」と「肉」とを1対1に対応付けたことによるものであって,「肉の量」そのも のとは何らの関係がないなどと主張する。 確かに,本件明細書には,「この混同が生じないようにカットした肉Aに付すシー ルSに変えて,テーブル番号が記載された旗をカットした肉Aに刺す等の方策によ り,混同を防止する印しとしても良い。」(【0013】)と記載されており,「テーブル番号」を「キー情報」として「お客様」と「肉」とを1対1に対応付けるという 技術的思想をうかがうことができる。 しかし,前記(1)エのとおり,肉の量は,お客様ごとに異なるものである。そして, 本件明細書には,「計量機から打ち出された,ステーキの種類及び量,価格,テーブ ル番号が記された2枚のシールの内の一枚をステーキのオーダー票とし,先のステ ーキ以外のオーダー票に貼着することにより保管し」(【0012】),「焼かれ,加熱した鉄皿に乗せられたステーキを,ライス等の他のオーダー品と共に・・・,保管したオーダー票でその商品を確認し,オーダー票と共にお客様のテーブルに運ぶ」\n(【0014】)ことが記載されており,肉の量を記載したシールによって他のお客 様の肉との混同が生じていないことを確認することが記載されている。 そうすると,本件特許発明1は,本件訂正によりその技術的範囲に含まれないこ ととなった「テーブル番号が記載された旗をカットした肉Aに刺す」ことを混同防 止の印しとする方法とは異なり,計量機が出力したシールに記載された肉の量とテ ーブル番号という複数の情報を合わせて利用して,他のお客様の肉との混同を防止 するものということができるから,肉の量の情報が他のお客様の肉との混同を防止 するという効果に寄与しないものとはいえない。
エ 被告らは,本件特許発明1には,お客様が案内されるテーブルとカット ステージとが店内の別の場所に存在すること,お客様が案内されたテーブルからカ ットステージまで移動し,カットステージにおいてカットされた肉を確認した後, 案内したテーブルに戻るといった手順は,何ら特定されていないから,必ずしも特 定のお客様の肉と他のお客様の肉との混同が生じるものとはいえないなどと主張す る。 しかし,前記(1)エのとおり,他のお客様の肉との混同を防止することは,お客様 に好みの量のステーキを提供することを目的(課題)として,「お客様からステーキ の量を伺うステップ」及び「伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするス テップ」を含む本件ステーキ提供方法を実施する構成(前記(1)ア(イ)1))を採用した ことから,カットした肉とその肉の量を要望したお客様とを1対1に対応付ける必 要が生じたことによって不可避的に生じる要請であり,被告ら主張の上記手順が特 定されなければ,他のお客様の肉との混同を防止する必要が生じないということは できない。
オ 被告らは,本件特許発明1において,「札」,「計量機」,「印し」又は「シ ール」は,それぞれ独立して存在している物であって,単一の物を構成するものではなく,また,本来の機能\の一つの利用態様が特定されているにすぎないなどと主張する。 しかし,「札」,「計量機」及び「シール(印し)」は,単一の物を構成するものではないものの,前記(1)エのとおり,いずれも,他のお客様の肉との混同を防止する という効果との関係で技術的意義を有するものであって,物の本来の機能の一つの利用態様が特定されているにすぎないとか,人為的な取決めにおいてこれらの物を\n単に道具として用いることが特定されているにすぎないということはできない。

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平成29(行ケ)10165等  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年10月11日  知的財産高等裁判所

 進歩性有りとした審決が取り消されました。理由は動機付けあり+特段の効果が無いというものです。
 業者が,相違点2に係る本件発明6の構成,すなわち,引用発明2−1\nに係る4/2/1投与計画による本件抗体の投与を,本件発明6に係る8/6/3 投与計画による本件抗体の投与とすることを,容易に想到することができたか否か について検討する。
(イ) 前記のとおり,当業者は,本件優先日当時,乳がんの治療薬を含む一般的 な医薬品において,投与量を多くすれば,投与間隔を長くできる可能性があり,医\n薬品の開発の際には,投与量と投与間隔を調整して,効能と副作用を観察すること,\n抗がん剤治療において,投与間隔を長くすることは,患者にとって通院の負担や投 薬時の苦痛が減ることになり,費用効率,利便性の観点から望ましいということを 技術常識として有していたものである。 そして,引用例2には,本件抗体の薬物動態を観察するに当たり,本件抗体が週 1回10〜500mgの短持続期間の静脈注入が行われた旨記載されている。ここ で,週1回10〜500mgの投与は,患者の体重が60kgの場合は0.167 〜8.33mg/kg,70kgの場合は0.143〜7.14mg/kgに相当 する。そうすると,引用例2には,本件抗体を週1回8mg/kg程度までの投与 量で投与できることは,示唆されているといえる。 また,引用例2には,本件抗体の臨床試験において,本件抗体の毎週の投与と化 学療法剤の3週間ごとの投与を組み合わせるという治療方法が記載されている。 さらに,引用例2には,本件抗体の薬物動態として,本件抗体は投与量依存的な 薬物動態を示し,投与量レベルを上昇させれば,半減期が長期化する旨記載されて いる。
そうすると,上記のとおりの技術常識を有する当業者は,引用発明2−1のとお り本件抗体を4/2/1投与計画によって投与するだけではなく,本件抗体の投与 量と投与間隔を,その効能と副作用を観察しながら調整しつつ,本件抗体の投与期\n間について,費用効率,利便性の観点から,併用される化学療法剤の投与期間に併 せて3週間とすることや,本件抗体の投与量について,8mg/kg程度までの範 囲内で適宜増大させることは容易に試みるというべきである。そして,当業者が, このように通常の創作能力を発揮すれば,本件抗体を8/6/3投与計画によって\n投与するに至るのは容易である。
(ウ) 被告の主張について 被告は,本件優先日前には,4/2/1投与計画のみが臨床的に用いられ,本件 抗体の半減期も1週間程度と考えられていたから,8/6/3投与計画のように投 与間隔について半減期を大きく超える3週間にすることなどは,技術の最適化とは いえないと主張する。 しかし,引用例2には,本件抗体を週1回8mg/kg程度までの投与量で投与 できることが示唆され,また,本件抗体の投与量レベルを上昇させれば,半減期が 長期化する旨記載されている。さらに,丙323の1には,投与間隔が半減期に比 べて長い場合を前提とした留意事項が記載されている。そして,前記のとおりの技 術常識を有する当業者が通常の創作能力を発揮すれば,4/2/1投与計画による\n本件抗体の投与を,8/6/3投与計画による本件抗体の投与とすることは容易に 想到し得るものである。なお,A博士の宣誓書(乙8)には,がん専門臨床医は, 未試験の投与レジメンを実験することは患者の生命をリスクにさらすことになるか ら,本件抗体を8/6/3投与計画で投与することを動機付けられないなどと記載 されているが,臨床医が薬剤の新たな用法用量を臨床的に試みる動機付けがないこ とをもって,薬剤の新たな用法用量の開発を試みる動機付けを否定するものにはな らない。
(エ) よって,当業者は,引用例2の記載及び技術常識に基づき,相違点2に係 る本件発明6の構成を容易に想到することができたというべきである。\n
イ 効果について
(ア) 引用発明2−1に基づく本件発明6の進歩性を判断するに当たっては,相 違点2に係る本件発明6の構成に至ることが容易かどうかだけではなく,本件発明\n6が予測できない顕著な効果を有するか否かについても併せ考慮すべきであり,本\n件発明6に予測できない顕著な効果があることを基礎付ける事実は,特許権者であ\nる被告において,主張,立証する必要がある。 そして,本件において,被告は,本件抗体を8/6 可能である。そうすると,8/6/3投与計画は,相応の治療効果を維持しつつ,\n引用発明2−1と比較して投与間隔を3倍にするものということはできる。 しかし,引用例2には,本件抗体は投与量依存的な薬物動態を示し,投与量レベ ルを上昇させれば半減期が長期化すること,本件抗体を4/2/1投与計画で投与 すれば約79μg/mlのトラフ血清濃度を維持できたことが記載されている。そ して,この記載から,本件抗体を8/6/3投与計画で投与すれば,17μg/m l程度のトラフ血清濃度を維持できるであろうことは予測できる。\nそうすると,実施可能要件やサポート要件に関しては格別,進歩性に関しては,\n本件発明6が過去の臨床試験で求められる程度の治療効果を有しつつ,単に投与間 隔が3倍になったことをもって,本件発明6の治療効果が引用発明2−1と比較し て予測できない顕著なものということはできない。
(ウ) 治療効果
a 引用例2には,本件抗体を4/2/1投与計画で投与した場合の治療効果と して,16週と32週の間で,トラスツズマブ血清濃度は,定常期に達し,平均ト ラフ濃度及び平均ピーク濃度は,それぞれ,約79μg/ml,123μg/ml となったこと,化学療法剤単独の場合と比較すれば,病勢進行の期間が著しく長期 化し,1年間の生存率が高まったことが記載されている。 b 他方,本件明細書には,本件抗体を8/6/3投与計画で投与した場合,「お よそ10−20μg/mlのトラフ血清濃度を維持」される(【0114】),「血 清中濃度が過去のハーセプチンIV臨床試験の目標トラフ血清濃度の範囲(10− 20mcg/ml)で,17mcg/mlとなることを示唆している。」(【01 16】)と記載されている。もっとも,本件明細書には,本件抗体を8/6/3投 与計画で投与した場合における,病勢進行の期間の長期化や生存率に関する具体的 な記載はない。
c ところで,本件明細書には,本件抗体を8/6/3投与計画で投与した場合 における,病勢進行の期間の長期化や生存率に関する具体的な記載はないから,本 件発明6の治療効果は不明であって,引用発明2−1と同等の治療効果を有すると は直ちにはいえない。 また,一般にトラフ血清濃度は,一連の薬剤投与における最少の持続した有効薬 剤濃度であるから(本件明細書【0044】),一連の薬剤投与において維持され るトラフ血清濃度が高い場合には,それだけ有効薬剤濃度が高く,治療効果も高い と評価することは可能である。しかし,引用発明2−1と本件発明6のトラフ血清\n濃度を比較するに,引用発明2−1において維持されるトラフ血清濃度は約79μ g/mlであるのに対し,本件発明6において維持されるトラフ血清濃度はせいぜ い17μg/mlにとどまる。そうすると,トラフ血清濃度において比較した場合 においても,本件発明6の治療効果は引用発明2−1と同等の治療効果を有すると はいえない。 なお,本件明細書には,本件抗体を8/6/3投与計画で投与した場合における 副作用の抑制効果に関する記載もないから,副作用の抑制という観点からも,本件 発明6は,引用発明2−1と同等の治療効果を有するとはいえない。 d よって,本件発明6が引用発明2−1と同等の治療効果を有すると認めるこ とはできない。

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平成29(行ケ)10222  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年10月10日  知的財産高等裁判所

 「ハイパット」の片仮名及び「HIPAT」の