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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成29(ワ)7391等  職務発明の対価請求  特許権  民事訴訟 令和4年3月24日  大阪地方裁判所

 職務発明の報奨金として、約200万円が認められました。なお、使用者と従業者等と間で、十分な意見聴取や説明がなされなかったという原告の主張は、「協議の状況に不合理な点は認められない。」と判断されました。

 被告は、本件発明2−1を国内において自ら実施している。 前記(1(2)ア)のとおり、「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」 (同条4項)とは、使用者等が当該発明を実施することによって得られる利益の全 体ではなく、その全体の額から通常実施権の実施によって得られる利益の額を控除 した残額(独占の利益)をいうと解されるところ、特許権者が自ら特許発明を実施 している場合の独占の利益は、使用者等が自ら発明を独占的に実施し、他社に当該 特許発明の実施を禁止したことに基づいて得られた利益に相当する売上額(超過売 上)と解される。この場合、相当の対価は、「対象商品(実施品)の売上合計額× 超過売上の割合×仮想実施料率×対象特許発明の貢献の程度×(1−被告の貢献割 合)×共同発明者間における原告の貢献割合」によって算定するのが相当である。 また、特許の登録前であっても、特許出願人は、出願公開後発明を実施した第三 者に対して一定の要件の下に補償金を請求することができること等を踏まえると、 出願公開以降の売上額には一定の独占的利益があると見るのが相当である。もっと も、出願公開から登録までの期間においては、登録されて排他的な独占権を有する か否かが未確定であることに鑑み、売上の2分の1を独占の利益の検討の基礎とす るのが相当である。
・・・
エ 超過売上の割合
(ア) 対象製品群2の販売による市場占有率の変化等
対象製品群2は、平成16年10月から被告の 200シーズン年度モデルとして 販売され、●(省略)● また、被告のルームエアコンの国内の出荷台数は、2003 冷凍年度から 200冷凍 年度にかけて増加し、国内4位から3位に上昇するだけでなく、1位及び2位との 出荷台数の差が縮小したことを踏まえれば、200冷凍年度においては、その市場 占有率が上昇したものと認められる(前記(2)キ(ウ))。このような被告の市場占有 率の上昇には、当該時期に被告の製造販売する●(省略)●対象製品群2の販売が 直接貢献していることがうかがわれる。 なお、原告は 2004 シーズン年度モデルによる被告の市場占有率の上昇等につい ても指摘するが、本件発明2−1は当該モデルでは実施されていないことから(弁 論の全趣旨)、当該モデルの市場占有率の変動と本件発明2−1との間に関連性は 認められない。
(イ) 本件発明2−1の技術的意義及び代替技術等
a 本件発明2−1は、ルームエアコン室内機に搭載される熱交換器の配置につ いて、前面熱交換器の設置角度 α を特定すると共に、クロスフローファンの翼の出 口角 β2 を特定することで、所定風量を得るのに必要なファンモータ入力や回転数 を低減することができ、省エネを図ることができる点にその技術的意義がある。ま た、設置角度 α を 65°以上とすることで、熱交換器からの水滴がファンへ流入して 室内ユニットの外部へ吹き出されること等を防止し、また、ユニットの奥行きをコ ンパクトにできるという効果もある(前記(1)ア(オ)【0024】)。
b もっとも、省エネ、ドレン水の確実な処理及び室内機ユニットのコンパクト 化という課題自体は本件発明2−1の出願以前から存在するものである。また、当 該課題に対して、熱交換器を逆 V 字状にすること、前面熱交換器と背面熱交換器と の連結部を送風ファンの中心軸よりも前面側に位置させ、かつ前面熱交換器の傾斜 を急な配置にすること、熱交換器を通過した空気がファンの翼に当たる際の空気の 流れを滑らかにし、空気流の剥離等を防ぐために、翼形状を変更することといった 着想やその技術自体も、従来から存在した(前記(2)ウ)。 したがって、本件発明2−1は、熱交換器の配置とクロスフローファンの翼形状 (出口角)の双方を、同時に、具体的な数値をもって特定したところに技術的な意 義があるといえる。
c また、ルームエアコンの省エネ性能の向上を図る技術には、室内機及び室外 機それぞれを見ても、熱交換器、圧縮機、モータ、送風機等に係る種々の技術が存 在する。しかも、被告のほか、国内の競合他社であるパナソニック、ダイキン、東 芝、日立等は、それぞれ、省エネのための独自の基本的な技術を有しており、● (省略)●被告以上又は同等の市場占有率を保持していたと認められる(上記(2) イ、キ(ウ)、ク(イ)及び(ウ))。 加えて、本件発明2−1は熱交換器の配置とクロスフローファンの翼形状を特定 するものであるから、それぞれ独自のユニット、熱交換器、ファン等の形状や配置 を工夫して製品化している競合他社において、本件発明2−1をそのまま実施する ことにより直ちに性能が向上するといった性質の技術であるとは思われない。
d 以上の事情を総合的に考慮すると、本件発明2−1に係る超過売上の割合は 50%と見るのが相当である。
オ 仮想実施料率
本件発明2−1に係る仮想実施料率を検討するにあたっても、上記エの事情は同 様に考慮されるべきである。 また、経済産業省知的財産政策室編「ロイヤルティ料率データハンドブック」 (平成22年8月31日発行。乙 A4)によれば、技術分類を「機関またはポンプ」 とする対象例(16件)では、平均ロイヤリティ料率 3.1%、標準偏差 1.4%、最大 値 5.5%、最小値 0.5%である。また、技術分類を「照明;加熱」とする対象例(1 6件)では、平均ロイヤリティ料率 3.9%、標準偏差 2.2%、最大値 9.5%、最小値 1.5%である。 ●(省略)●
以上の事情のほか、本件発明2−1がルームエアコン室内機における熱交換器の 配置とクロスフローファンの翼の出口角の数値を限定したものであり、このような 最適な数値を検討する行為自体は当業者が自ずと行うものであること等を踏まえる と、本件発明2−1の仮想実施料率は、3.5%とするのが相当である。
カ 対象特許発明の貢献の程度
(ア) 対象製品群2には、本件発明2−1のほか、●(省略)●特許が実施されて おり(乙 A10、乙 B27)、また、被告カタログ2)で訴求されている代表的な技術に 関連する特許は、●(省略)●(乙 A35、乙 B59)。 このうち、被告のポキポキモータに係る技術は、従来のモータ以上にコイルを密 に巻き、それによりモータ効率を向上させるという基本的・汎用的な技術である点 で、室外機の圧縮機モータ及び●(省略)●それぞれ重要な技術といえる。
(イ) また、被告は、対象製品群2の販売に当たり、被告カタログ2)においてムー ブアイを大々的に取り上げると共に、そのほかにも脱臭機能、換気機能、サプリメ ントエアー機能といった付加価値的な部分をも顧客に対し強く訴求している。当時、 既にルームエアコンは家庭に広く普及し、省エネ等に係る技術も各社製品において 採用されていたと考えられることを踏まえると、付加価値的なものとはいえ、この ような他社製品と差別化を図る技術は消費者に対する訴求力を高め、対象製品群2 の売上に大きく貢献したものと見るのが相当である。もとより、本件発明2−1も、 熱交換器の配置を工夫することで室内機のコンパクト化といった訴求力のある効果 を実現し、また、同時にシロッコファンの翼形状の角度を数値限定することで省エ ネ効果等を実現していることから、対象製品群2の売上に貢献したと見られるもの の、その貢献の程度が他の技術と比較して特に顕著であったことまではうかがわれ ない。
(ウ) 以上の事情のほか、対象製品群2の売上高には、室内機のみならず室外機の 売上高も含まれること等を踏まえると、対象製品群2における本件発明2−1の貢 献の程度としては、1%と見るのが相当である。
キ 使用者の貢献割合
●(省略)●
さらに、対象製品群2の開発にあっては、熱交換器やクロスフローファンの翼形 状のみならず、被告カタログ2)で訴求されたものをはじめとする種々の開発項目や 試験項目があり、これをクリアして製品化に至ることは、被告の有する多くの蓄積 された技術や物的・人的な体制があってこそ可能になるといえる。 このほか、量産化及び販売も含めて被告が●(省略)●多額の費用を投入してい ること、長年にわたりルームエアコンを販売してきた被告及び被告ブランドの知名 度が対象製品群2の販売実績に大きく貢献していると見られることなどを踏まえる と、被告の貢献割合は 95%とみるのが相当である。
ク 共同発明者間における原告の貢献割合
本件発明2−1は、熱交換器の配置及びクロスフローファンの出口角の数値を限 定した点に意義があるところ、原告は、流体解析の技術を用いて、その数値解析に 中心的に寄与したことが認められる(前記(2)ア(イ))。 もっとも、発明当時、被告においても既に流体解析の技術及びこれを支援する装 置等が存在し(乙 A16、乙 B44)、●(省略)●これらの事情に加え、●(省略)●(弁論の全趣旨)、●(省略)●などを踏まえると、共同発明者間における原告の貢献割合は 60%とみるのが相当である。
ケ 小括
以上のとおり、対象製品群2の国内実施分に係る●(省略)●、超過売上の割合 50%、仮想実施料率 3.5%、対象特許発明の貢献割合 1%、被告の貢献割合 95%、共 同発明者間における原告の貢献割合 60%と認められる。これに反する原告及び被告 の各主張はいずれも採用できない。 その結果、本件発明2−1に係る相当の対価の額は、●(省略)●となる。 ●(省略)●*50%*3.5%*1%*(100-95%)*60%=●(省略)● もっとも、被告は、本件各発明2について、既に特許を受ける権利の承継を受け た対価として原告に対し●(省略)●を支払済みであることから(前記2の2(7) ウ)、これを差し引くと●(省略)●となる。 したがって、原告は、被告に対し、昭和34年法35条3項に基づき、●(省略) ●の相当対価請求権を有する。
・・・
(ア) 協議の状況
前記(2)のとおり、被告は、●(省略)●従業員側の意見を聴取する機会も十分 に設け、これに対応した行動を取ったものといってよい。 したがって、●(省略)●原告を含む従業者と被告との間で行われた協議の状況 に不合理な点は認められない。 これに対し、原告は、被告規程が知財部門により一方的に定められ、少なくとも 原告が協議に関与していないなどと主張する。しかし、上記のとおり、●(省略) ●の過程において、被告の従業員に対する説明及び従業員からの意見聴取は十分に 行われたものと見られることに鑑みると、被告規程●(省略)●が知財部門により 一方的に定められたとの評価は当たらない。また、原告も●(省略)●質問等の機 会を現に与えられていたことから、原告が協議に関与していないということもでき ない。そもそも、使用者等と従業員等との協議として、個々の従業員が規程内容の 作成に個別的ないし直接的に関与する手続を担保することまでが求められていると は解されない。その他原告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する原告 の主張は採用できない。
(イ) 開示の状況
前記(2)及び(3)のとおり、被告は、●(省略)● 以上のような状況を踏まえれば、●(省略)●被告規程の基準の開示の状況に不 合理な点は認められない。 これに対し、原告は、開示された基準では従業員が自ら実績補償金を算定できず、 また、●(省略)●労力を要するため、開示の状況は不合理であるなどと主張する。 しかし、被告において被告規程に係る基準が開示されていることに争いはない。 その上、被告では、●(省略)●が開示されていたのであるから、従業員は、これ と被告規程を照合すれば、実際の実績補償金の算定過程についても一定程度理解可 能であったとうかがわれる。それ以上に、●(省略)●についてまで、基準として 開示しないことをもって不合理とはいえない。 また、●(省略)●基準の開示として不合理とすべきほどに特段の労力を要する と見るべき具体的な事情も見当たらない。 したがって、この点に関する原告の主張は採用できない。
(ウ) 意見聴取の状況
●(省略)●最終的に、原告と被告との間で意見等の相違は解消されなかったと 見られるものの、原告からの意見聴取の状況という観点からは、被告による原告か らの意見聴取は実質的に尽くされたといってよい状況にあり、被告の一連の対応に つき不合理ないし不誠実と評価すべきものはないというべきである。 これに対し、原告は、十分な意見聴取や説明がなされなかったとして縷々主張す る。しかし、その内容は、被告細則の解釈や発明に対する評価の程度に対する不満 を述べるものであって、被告における原告からの意見聴取の手続自体が不合理であ ることを基礎付けるものではない。 したがって、この点に関する原告の主張は採用できない。
・・・
(ウ) 以上のとおりの●(省略)●基準の策定に際して使用者等と従業員等との間 で行われた協議の状況、策定された当該基準の開示状況のほか、●(省略)●の定 めたところにより相当の利益を与えることが不合理であると評価することはできな い。
これに対し、原告は、被告が●(省略)●対して真摯に回答しなかった旨などを 主張する。しかし、被告は、●(省略)●協議が不合理であるとはいえない。その 他原告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用できな い。 なお、原告は、●(省略)●被告規程における実績報奨金の算定基準の内容面及 びその適用の不合理性をも主張する。しかし、●(省略)●これをもって不合理と は必ずしも認められない。この点に関する原告の主張は採用できない。
ウ 小括
以上の事情を総合的に考慮すると、被告の原告に対する●(省略)●支払は、い ずれも不合理であるとは認められない。これに反する原告の主張は採用できない。 したがって、本件各発明3に係る相当の対価支払につき、平成16年法35条5 項は適用されないから、本件発明3−2−2に係る不法行為に基づく損害賠償請求 も含め、その余の争点について判断するまでもなく、同項に基づく原告の請求はい ずれも認められない。

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令和3(行ケ)10080 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年5月11日  知的財産高等裁判所

 審判では無効理由無しと判断されましたが、裁判所は、甲4には「溶剤インクジェット印刷を施すことにより透光性の印刷層を形成することができる黒色の再帰反射フィルム」が記載されているとして、進歩性無しと判断しました。

(3) 上記(1)イ及びウの「Reflective ... Film」との用語に加え、上記(1)エ及 び(2)のとおり通常光下では黒色であった商品サンプルがフラッシュ光下では肌色 様に見えることや弁論の全趣旨も併せ考慮すると、甲4に貼付された黒色の商品サ\nンプルは、「黒色の再帰反射フィルム」であると認めるのが相当である。 また、上記(1)ウの「従来の印刷手法に加え、溶剤及びUVインクジェットに対 応しています」との記載は、甲4の黒色の再帰反射フィルムに溶剤インクジェット 印刷を施すことが可能であることを意味するものと解され、溶剤インクジェット印\n刷が施されれば、黒色の再帰反射フィルムの上に印刷層が形成されることは明らか であるから、甲4には「溶剤インクジェット印刷を施すことにより印刷層を形成す ることができる黒色の再帰反射フィルム」が記載されているといえる。
(4) そこで進んで、甲4に「溶剤インクジェット印刷を施すことにより透光性 の印刷層を形成することができる黒色の再帰反射フィルム」が記載されているかに つき検討する。
ア 上記(1)ウのとおり、印刷層の形成に関し、甲4には「従来の印刷手法に加 え、溶剤及びUVインクジェットに対応しています」との記載があるのみであり、 溶剤インクジェット印刷が非透光性のインクを用いたものに限られるとの記載又は 示唆はみられない。
イ ここで、溶剤インクジェット印刷の意義等に関し、下記の各証拠には、それ ぞれ次の記載がある。
(ア) 甲18(全日本印刷工業組合連合会(教育・労務委員会)編「印刷技術」 (平成20年7月発行))
「カラー印刷では基本的にCMYKの4色によって原稿の色を再現している。こ の4色をプロセスセットインキと呼び、このうちCMYは透明インキとなっている ので刷り重ねで印刷した場合、下のインキの色が一緒になり2次色、3次色が発色 する。」
(イ) 甲19(高橋恭介監修「インクジェット技術と材料」(平成19年5月2 4日発行))
「インクの色剤としては染料、顔料を挙げることができる。・・・ 染料は媒体である水に可溶であり、分子状態でインク媒体中に存在している。個 々の分子が置かれた環境はほぼ同一であるため、吸収スペクトルは非常にシャープ であり、透明性の高い印刷物が得られる。・・・ 従来、インクジェットプリンタ用色材としては、上記特徴とインク設計が容易で あるということで、染料が用いられた。」
(ウ) 甲20(Janet Best 編「Colour design Theories and applications」
(2012年発行)) 「CMYK:印刷業界で画像の再現に使用される減法混色プロセスであって、純 度の高い透光性プロセスカラーインク(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック) が網点様に重ね刷りされて、様々な色及びトーンを表現する。」\n
(エ) 甲21(特開2012−242608号公報)
「【0033】ここで、第1の装飾層20aを形成する印刷インクとしては、光 透過性を有し、屋外使用にも耐えられる有機溶剤系のアクリル樹脂インク、例えば、 市販のエコソルインクMAXのESL3−CY、ESL3−MG、ESL3−YE、\nESL3−BK(それぞれローランド社製)を用いることが望ましい。 そして、かかる第1の装飾層20aを形成するには、例えば、インクジェットプ リンタなどのインクジェット装置に、印刷インクをセットし、これを微滴化して表\n面フィルム12h上の所定場所に、吹き付け処理して行なうことが好ましい。」
ウ 上記イによれば、本件出願日当時、溶剤インクジェット印刷においては、透 光性(透明性)を有するCMYのインクが広く用いられていたものと認められるか ら、仮に、本件出願日当時、溶剤インクジェット印刷において非透光性のインクが 用いられることがあったとしても、溶剤インクジェット印刷に対応しており、かつ、 前記アのとおり、溶剤インクジェット印刷が非透光性のインクを用いたものに限ら れるとの記載も示唆もみられない甲4の記載に接した当業者は、甲4は透光性を有 するインクを用いた溶剤インクジェット印刷に対応しているものと容易に理解した といえる。
エ 以上によると、甲4には「溶剤インクジェット印刷を施すことにより透光性 の印刷層を形成することができる黒色の再帰反射フィルム」が記載されていると認 められるから、甲4発明は、そのように認定するのが相当である。これと異なる本 件審決の認定は誤りである。
オ この点に関し、被告は、甲4発明の用途(トラックを始めとする車両に貼付\nされるステッカー等)に照らすと、甲4発明に透光性の印刷層を設けることは考え られないと主張する。確かに、前記(1)ウのとおり、甲4には消防自動車様の車両を撮影した写真が掲 載されているが、車両に貼付して用いる黒色の再帰反射フィルムの上に透光性の印\n刷層を形成すると甲4発明の目的が阻害されるものと認めるに足りる証拠はないし、 また、甲4には甲4発明の用途が車両に貼付して用いるステッカー等に限られると\nする記載も示唆もないから、被告の上記主張を採用することはできない。

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令和3(ネ)2608 商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和4年5月13日  大阪高等裁判所

 納入された際の原告標章を使用せずに商品販売したことが商標権侵害となるかについて、1審は契約の問題であり侵害は成立しないと判断しました。高裁も同様に判断しました。

 控訴人は、商標権者である控訴人が控訴人標章を付した本件商品につい て、その譲渡を受けた卸売業者等である被控訴人らが、梱包箱に被控訴人ら シールを貼付し、本件商品とともに梱包されていた控訴人説明書を被控訴人\nら説明書に差し替えた行為は、本件商標の出所表示機能\及び品質保証機能を\n積極的に毀損するものとして、商標の剥離抹消行為と評価し得る本件商標権 侵害に当たる旨主張するとともに、上記譲渡によって本件商標権が消尽する とみるべきではないとして原審の判断を非難する(前記第2の5(1))。
(2) 商標法の目的は、信用化体の対象となる商標が登録された場合に、その 登録商標を使用できる権利を商標権者に排他的に与え、商品又は役務の出所 の誤認ないし混同を抑止することにあり、商標権侵害は、指定商品又は指定 役務の同一類似の範囲内で、商標権者以外の者が、登録商標と同一又は類似 の商標を使用する場合に成立することが基本である(商標法25条、37 条)。すなわち、商標法は、登録商標の付された商品又は役務の出所が当該 商標権者であると特定できる関係を確立することによって当該商標の保護を 図っているということができる。 商標権者が指定商品に付した登録商標を、商標権者から譲渡を受けた卸売 業者等が流通過程で剥離抹消し、さらには異なる自己の標章を付して流通さ せる行為は、登録商標の付された商品に接した取引者や需要者がその商品の 出所を誤認混同するおそれを生ぜしめるものではなく、上記行為を抑止する ことは商標法の予定する保護の態様とは異なるといわざるを得ない。した\nがって、上記のような登録商標の剥離抹消行為等が、それ自体で商標権侵害 を構成するとは認められないというべきである。\n
(3) また、その点を措くとしても、後半期間における被控訴人らの行為(被 控訴人らの行為2)及び3)に関する。)は、以下のとおり、控訴人標章の剥離 抹消行為と評価し得る行為には当たらないと解される。
ア 前記第2の2で補正した上で引用した前提事実によれば、控訴人が被控 訴人らに納入した本件商品の梱包箱の外側にはそもそも控訴人標章は表示\nされていないから、被控訴人らが仕入れ後に貼付した被控訴人らシールに\nよって控訴人標章が覆い隠されたという事実はない。控訴人が被控訴人ら シール1)によって覆い隠されたのを問題としているのは、控訴人の屋号で あって、控訴人標章ではない。また、被控訴人らの行為によって、本件商 品本体に英文字で印字された「Roller Sticker」という標章(称呼及び観 念において控訴人標章と同一のもの)に何らかの変更が加えられたという 事実もない(本件商品の品質にも変更はない。)。
イ そうすると、控訴人標章の剥離抹消行為として問題となり得る行為は、 被控訴人フジホームが、控訴人から本件商品を仕入れた際に梱包箱に同梱 されていた控訴人説明書を被控訴人説明書に差し替えた行為のみ(被控訴 人ら行為2)に関する。)であるが、控訴人説明書は、取引によって納入さ れた本件商品の梱包箱の中に、本件商品の使用方法を説明する書面として、 本件商品に貼付等されずに単に同梱されていたものにすぎないから、本件\n商品に標章を付した(商標法2条3項1号)とはいえず、控訴人説明書が 取引書類(同項8号)に当たると認めるに足りる事情も窺われない。した がって、控訴人説明書に「ローラーステッカー使用説明書」との記載があ るのは、控訴人標章を商標として使用したものとは認められず、控訴人説 明書を差し替えたことが控訴人標章の剥離抹消行為と評価すべきものとは 認められない。
ウ 以上のとおり、後半期間における被控訴人らの行為は、そもそも控訴人 標章の剥離抹消行為と評価される行為には当たらないから、その余の点を 判断するまでもなく、商標の剥離抹消を理由として商標権侵害をいう控訴 人の主張は採用できない。 なお、被控訴人らの行為2)及び3)における本件商品について、控訴人が 本件商品本体に付した標章(称呼及び観念において控訴人標章と同一の もの)と、被控訴人らが梱包箱に付した被控訴人ら標章とが併存してい るとしても、控訴人から適法に本件商品を仕入れた被控訴人らが、再販 売業者としての出所を明らかにするため本件商品に併存して自らの標章 を付すことが一般的に禁止される理由もない。

◆判決本文

1審はこちら。

◆令和2(ワ)3646

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令和3(ワ)23928  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年4月15日  東京地方裁判所

 写真がトリミングされてSNSに投稿されたことが、同一性保持権および氏名表示権侵害として、約24万円の損害賠償が認められました。複製・公衆送信権侵害などは争われていません。

 前記前提事実(1)のとおり、原告が撮影した原告写真1及び2は「写真の著 作物」(著作権法10条1項8号)に該当するから、原告は、原告写真1及 び2に係る同一性保持権を有するところ、前記前提事実(3)のとおり、被告は、 原告写真1の上下左右を正方形になるようにトリミングして被告写真1を、 原告写真2の上下左右を正方形になるようにトリミングして被告写真2を、 それぞれ作成したものである。 したがって、被告は、原告写真1及び2に係る原告の同一性保持権を侵害 したと認めるのが相当である。
(2) これに対して、被告は、原告写真1及び2の中央位置はそのままにし、イ ンスタグラムの仕様に合わせて正方形にトリミングしたものであり、原告写 真1及び2の創作性及び特徴を害したものではないし、「やむを得ないと認 められる改変」(著作権法20条2項4号)に該当すると主張する。 そこで検討するに、原告写真1及び2は、列車が川に架かる鉄橋を走行す る様子を、列車をほぼ中心に据え、周囲に霧のかかった川及び連なる山々を 配置し、列車と比較して周囲の川及び山を大きく写すような横長の構図で撮\n影されたものであり、これらの点について創作性を認めることができる。そ して、被告写真1及び2は、上記のような原告写真1及び2の上下左右をト リミングして正方形にし、それらに写し出された左右の山を大きく切り取っ たものである。そうすると、被告が被告写真1及び2を作成したことにより、 原告写真1及び2について、その著作者である原告の意に反し、上記のとお り創作性の認められる表現部分に実質的な改変が加えられたことは明らかで\nあって、これが原告写真1及び2の創作性及び特徴を害さないものというこ とはできない。 また、本件全証拠によっても、被告が被告のインスタグラム上のアカウン トにおいて掲載するために原告写真1及び2をトリミングすることについて、 正当な理由を基礎付ける事実は認められないから、被告による上記改変が 「やむを得ないと認められる改変」に該当するとは認められない。
・・・
前記前提事実(1)のとおり、原告が撮影した原告写真1及び2は「写真の著 作物」に該当するから、原告は、原告写真1及び2に係る氏名表示権を有す\nるところ、被告は、前記前提事実(3)のとおり、原告写真1及び2をそれぞれ トリミングして被告写真1及び2を作成した上、前記前提事実(4)のとおり、 被告のツイッター上のアカウントにおいて、原告の氏名を表示することなく\n被告写真1の掲載を含む本件投稿1をし、また、被告のインスタグラム上の アカウントにおいて、原告の氏名を表示することなく被告写真1及び2の掲\n載を含む本件投稿2及び3をしたものである。 したがって、被告は、原告写真1及びに2に係る原告の氏名表示権を侵害\nしたと認めるのが相当である。
(2) これに対して、被告は、原告写真1及び2には原告に著作権があることを 示す原告のウォーターマークの表示はなく、被告がこれを削除したものでは\nないし、被告写真1に記載された「B以下省略」は被告のアカウント名でも 本名でもないから、これによって被告写真1の著作権者が被告であると理解 されるとはいえないと主張する。 しかし、氏名表示権とは、「その著作物の公衆への提供若しくは提示に際\nし、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表\示し ないこととする権利」(著作権法19条1項)をいうところ、前記前提事実
(4)のとおり、被告写真1及び2の掲載を含む本件投稿1ないし3において、 原告の氏名は表示されていなかったものであり、原告写真1及び2に原告の\n氏名が記載されていなかったからといって、原告が、原告写真1及び2を公 衆に提示するに際し、自身の氏名を著作者名として表示しない意思を有して\nいたということはできず、本件全証拠によっても、そのような意思を有して いたとは認められない。

◆判決本文

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令和3(ネ)10072  特許権侵害行為差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和4年4月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁1部は、共同侵害あり、無効理由なしとした1審判断を維持しました。

 前記(1)の認定事実によれば、1)控訴人アンカー及び控訴人ジョウズは、 いずれも中国法人の中国アンカー社を中核企業とする国際的な企業グル ープ「Ankerグループ」の日本法人であり、控訴人ジョウズの全株 式は、中国アンカー社の完全子会社である POWER MOBILE LIFE、 LLC が 保有していること、2)控訴人ジョウズの設立当時(平成30年2月28 日)の代表取締役は、控訴人アンカーの代表\取締役と同一人(A)であ ったこと、3)控訴人ジョウズの本店所在地のオフィスの利用契約は、控 訴人アンカーが契約し、同年4月16日、控訴人ジョウズに契約上の地 位が譲渡されたものであり、かつ、利用契約上の利用者はA1名のみで あること、4)令和元年9月時点の控訴人ジョウズの従業員数は2名であ り、そのうちの1名のBは、平成30年4月から平成31年4月末まで 控訴人アンカーに在籍し、令和元年5月から控訴人ジョウズに在籍して いたこと、5)控訴人ジョウズと控訴人アンカーは、控訴人ジョウズ設立 日の翌日の平成30年3月1日付けで、控訴人ジョウズが控訴人アンカ ーに対し、控訴人ジョウズの喫煙具製品の開発補助業務及びそれに付随 する一切の業務、喫煙具製品のマーケティング及びそれに付随する一切 の業務、会計事務及び経営管理に関する一切の業務、その他控訴人ジョ ウズと控訴人アンカーの協議の上決定された業務の全部又は一部を委託 する旨の本件業務委託契約を締結したこと、6)被告製品は、同年6月以 降、控訴人ジョウズのウェブサイトで販売が開始され、同年11月当時 には、アマゾンサイト及び楽天市場のサイトで、控訴人ジョウズを販売 者として販売されており、また、被告製品の輸入手続は、控訴人ジョウ ズを輸入者として行われたこと(乙14、37)、7)アマゾンサイトでは、 被告商品について、「米国・日本・欧州のEC市場において、スマートフ ォン・タブレット関連製品でトップクラスの販売実績を誇る『Anke r』のサポートのもと、精密かつ均一な温度管理と・・・最適な加熱環境を 作り出し、たばこ本来の香りと味を忠実に再現」などと紹介され(甲4 の1、5の1)、また、Ankerグループのオフィシャルストアの海外 のウェブサイトでは、被告製品が「Anker Jouz 20」など として販売されていたこと(甲14)、8)被告製品1及び2の記者発表に\n関する同年6月20日付け記事等(甲13の1ないし4)には、「Ank erグループが技術的にサポートしたことから、アンカー・ジャパンの A社長がジョウズ・ジャパンの代表取締役を兼任する」などと掲載され、\n被告製品3の記者発表に関する2019年(平成31年)4月9日付け\n記事(甲32)には、当時控訴人アンカーの従業員であったBが「ジョ ウズ・ジャパン株式会社事業戦略本部マネジャー」との肩書きでプレゼ ンテーションを行ったことが掲載されたことが認められる。
上記認定の控訴人ジョウズと控訴人アンカーの人的及び物的な結合関 係(1)ないし4))、控訴人ジョウズの控訴人アンカーに対する本件業務委 託契約に基づく委託業務の範囲が控訴人ジョウズの業務全般にわたって いること(5))、被告製品の広告宣伝の態様(7)、8))その他前記(1)認定 の諸事情を総合考慮すると、控訴人ジョウズと控訴人アンカーは、被告 製品の販売等に関し、緊密な一体関係があるものと認められるから、被 告製品の販売及びその輸入手続が控訴人ジョウズ名義で行われていたこ と(6))を勘案しても、控訴人ジョウズと控訴人アンカーは、平成30 年6月以降、共同して被告製品の販売等を行っていたものと認めるのが 相当である。
そして、被告製品は、被告方法の使用に用いる物であって、本件発明 1による「課題の解決に不可欠なもの」に該当することは、前記のとお りであるところ、控訴人らは、遅くとも、本件仮処分命令の送達により、 本件発明1が特許発明であること及び被告製品が方法の発明である本件 発明1の実施に用いられることを知ったものと認められるから、控訴人 らによる被告製品の上記販売等の行為は、本件発明2に係る本件特許権 の侵害(直接侵害)に該当するとともに、本件発明1に係る本件特許権 の間接侵害(特許法101条5号)に該当するものと認められる。 したがって、控訴人らについて本件特許権侵害の共同不法行為が成立 するものと認められる。
・・・
そこで検討するに、本件業務委託契約書には、控訴人ジョウズは控訴人 アンカーに対し業務委託料として毎月100万円に消費税相当額を加算 した額を支払う旨の条項(5条1項)があり、同条項によれば、控訴人ア ンカーの業務委託料は固定額であるといえるが、一方で、前記(2)認定のと おり、控訴人ジョウズと控訴人アンカーは、被告製品の販売等に関し、緊 密な一体関係があるものと認められるから、控訴人アンカーの業務委託料 が固定額であるからといって、控訴人アンカーが被告製品の販売等に関す る業務を一切行っていないということはできない。

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1審はこちらです。

◆令和2(ワ)4332

関連事件です。 ◆令和1(行ケ)10174

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令和3(行ケ)10097  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年4月28日  知的財産高等裁判所

 補正前後の請求項に係る発明が一対一又はこれに準ずるような対応関係にない補正が限定的減縮(特17-2第5項)に該当するかが争われました。裁判所は、該当しないとした審決を維持しました。

 ア 特許法17条の2第5項は、拒絶査定不服審判を請求する場合において、 その審判の請求と同時に特許請求の範囲についてする補正(同条1項ただし 書4号)は、同条5項1号から4号までのいずれかの事項を目的とするもの に限ると規定し、同項2号は、「特許請求の範囲の減縮」(同法36条5項の 規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するも のであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該 請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同 一であるものに限る。)と規定している。同法17条の2第5項の趣旨は、拒 絶査定を受け、拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲の補正 について、既に行った先行技術文献調査の結果等を有効利用できる範囲内に 制限することにより、迅速な審査を行うことができるようにしたことにある ものと解される。このような同項の趣旨及び同項2号の文言に照らすと、補 正が「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するというためには、 補正後の請求項が補正前の請求項の発明特定事項を限定した関係にあること が必要であり、その判断に当たっては、補正後の請求項が補正前のどの請求 項と対応関係にあるかを特定し、その上で、補正後の請求項が補正前の当該 請求項の発明特定事項を限定するものかどうかを判断すべきものと解される。 また、補正により新しい請求項を追加する増項補正であっても、補正後の新 しい請求項がそれと対応関係にある補正前の特定の請求項の発明特定事項を 限定するものであれば、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当す るものと解される。 以上を前提に、補正事項1が「特許請求の範囲の減縮」を目的とするもの に該当するかどうかについて判断する。
・・・
ア 前記(1)ウ認定のとおり、本件補正後の請求項8は、本件補正前の請求項1 0と対応関係にあることが認められる。 しかるところ、前記(1)ウ認定のとおり、本件補正後の請求項8は、本件補 正前の請求項10の発明特定事項から、「前記ストラップセンサが、前記スト ラップの第1の部分に備えられた1個以上の第1接点と、前記ストラップの 第2の部分に備えられた1個以上の第2接点とを備えるか、あるいは、第1 接点および第2接点と通信可能であり、第1接点のうちの1個以上が、第2\n接点のうちの1個以上と選択的に接触可能であり、前記ストラップが閉じら\nれるか固定されたときに、第1接点の1個以上および第2接点の1個以上の 間の接触により測定回路を完成させるように構成されている導体によって、\n第1接点と第2接点とが結合されて、該システムが、前記ストラップセンサ によって測定された前記測定回路の少なくとも1つの電気特性に基づいて、 前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さを特定するよ うに構成されている」との構\成を削除した請求項であるところ、この削除に よって、本件補正前の請求項10の発明特定事項を限定したものと認めるこ とはできず、かえって、本件補正前の請求項10に係る発明を上位概念化し たものといえるから、補正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする ものと認められない。
イ これに対し原告は、1)本件補正後の請求項8は、本件補正後の請求項1な いし7に従属し、本件補正前の請求項1に内的付加に相当する追加的要件を 規定したものであるから、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定する ために必要な事項を限定するものである、2)本件拒絶理由通知では、本件補 正前の請求項1について新規性及び進歩性などの実体的要件に関する拒絶理 由の指摘はなく、本件補正前の請求項1に特許性が認められていることから すると、本件補正後の請求項8は、本件補正前の請求項1に対する従前の審 査内容に沿って特許性を具備するものといえるから、本件補正前の請求項1 についての審査を十分に有効活用して、補正された発明の審査を行うことが\n可能であり、新たな先行技術調査等を要求することで審査遅延などの事態を\n生じさせないことも明らかである、3)厳密には、本件補正後の請求項8は、 本件補正前の請求項1と一対一で対応する請求項ではないとしても、これに 準ずるような対応関係に立つものであり、補正事項1は、既にされた審査結 果を有効に活用できる範囲内で補正を認めることとした特許法17条の2第 5項の制度趣旨に反するものではなく、同項2号が許容する増項補正に相当 するから、本件補正前の請求項1との関係で「特許請求の範囲の減縮」(同号) を目的とするものに該当する旨主張する。
しかしながら、前記(1)エで説示したとおり、本件補正後の請求項8は、本 件補正前の請求項1と一対一で対応する請求項に該当しないのはもとより、 これに準ずるような対応関係に立つものと認めることはできないから、この 点において、原告の上記主張は、その前提を欠くものである。 また、前記アで説示したとおり、本件補正後の請求項8は、本件補正前の 請求項10の発明特定事項の構成の一部を削除した請求項であるが、本件に\nおいては、本件補正前の請求項10の発明特定事項から上記構成を削除した\n請求項について、サポート要件等の記載要件の審査が行われた形跡はうかが われず、かかる審査が新たに必要となるものと考えられるから、本件補正後 の請求項8は、本件補正前の請求項1に対する従前の審査内容に沿って特許 性を具備するものと直ちにいえるものではなく、この点においても、原告の 上記主張は、その前提を欠くものである。

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平成30(ネ)10034  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和4年3月14日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審は技術的範囲に属しないと判断しました。控訴人は均等侵害を追加主張しましたが、知財高裁は均等侵害を検討するまでもなく、技術的範囲に属するとして、約8900万円の損害を認定しました。計算は1項と3項の合算が、2項の侵害よりも多いとしてそちらが採用されています。

上記の各種実験結果によると、被告製品は、長時間の塩水噴霧試験(乙 14実験)、試験紙を用いた湿気の流入実験(乙19実験、乙20実験) の結果からすると、端部部材だけで外部雰囲気(湿気や水等の流体物) の流入を遮断するものとはいえないが、同じ場所に10数滴の液体を滴 下したり(乙15実験の第2実験)、連続して液体を注入したり(甲4 9実験の実験2)、液体を滴下後に強い衝撃を加える(乙15実験の第 3実験、甲49実験の実験3)といった条件がない限り、少量の水滴を 滴下した実験では、端部部材だけでも液体の流入は抑制されており(甲 33実験、甲49実験の実験1)、また、湿気の流入も短時間であれば 抑制されている(甲58実験の試験1及び試験2)ことからすると、被 告製品の端部部材は外部雰囲気(湿気や水等)の進入を抑制するものと いえる(なお、乙15実験の第1実験は、被告製品の端部部材及びOリ ングのみならず弁本体側のOリングも外しており、甲50実験の試験結 果からすると、上記認定を左右するものではなく、また、乙16実験は、 圧縮機の取付孔側面に穴を穿設しており、実験条件の前提が異なるため、 上記認定を左右するものではない。)。
また、乙1実験、乙14実験、甲49実験、甲58実験、乙19実験 及び乙20実験の試験結果によれば、端部部材とシール部材(Oリング) を備えた被告製品においては、外部雰囲気(湿気や水等)の流入が完全 に抑制されていることが認められる。 そうすると、被告製品は、端部部材(H)をボディ の上部側の開口部 に嵌合させることにより外部雰囲気の流入を抑制し、シール部材 の構\n成を備えることにより、ボディ と取付孔の間を密封して外部雰囲気の 流入をより抑制する効果を奏するものであるから、被告製品は、構成要\n件B6の「『密封』嵌合」の文言も充足する。 したがって、被告製品は、構成要件B6を充足する。\n
・・・
引用に係る原判決第3の【原告の主張】及び【被告の主張】の各 のと おり、被告製品の構成につき、控訴人は、原判決別紙被告製品目録(原告)\n(以下「原告作成目録」という。)記載のとおりであると、被控訴人は、 同被告製品目録(被告)(以下「被告作成目録」という。)記載のとおり であるとそれぞれ主張する。原告作成目録の写真2と被告作成目録の写真 1がそれぞれ被告製品の外観形状を、原告作成目録の図1と被告作成目録 の写真2がそれぞれ同内部構造を明らかにするものであるところ、これら\nを対比すると、被告製品の構成部材の名称や配置についてはほぼ争いがな\nく、争いがあるのは、ソレノイドと弁本体の境界をどの部分と位置付ける\nかに関してのみであり、この点に関する当事者双方の主張は、上記原判決 第3の【原告の主張】及び【被告の主張】の各 及び のとおりである。 そこで、原告作成目録の図1と被告作成目録の写真2を見ると、いずれ においても構成要件B8の「プランジャ」は「プランジャ 」、「バルブ」 は「弁本体(V)」、「ロッド」は「作動ロッド 」にそれぞれ当たり、「作 動ロッド 」は電磁コイル を含むボディ やシール部材 より下部まで 上下に可動する構成となっている。そして、前記アにおいて説示したとお\nり、ロッドは、本件発明におけるソレノイドの一部を構\成するものといえ るから、本件発明における「ソレノイド」部は、控訴人が主張するとおり、\n原告作成目録の図1の「ソレノイド 」の矢印で示される範囲までを指す ものと理解するのが相当である。そうすると、同図1のとおり、被告製品 におけるシール部材 は、本件発明との対比におけるソレノイド の部分 (ソレノイド の下端側である弁本体(V)側)の外周に設けられたもので あり、弁本体(V)からの流体の進入を防止するものであるといえる。
・・・
被告製品は、構成要件B6及びCを充足するものであり、その他の構\成要 件の充足性については引用に係る原判決の第2の2 のとおりであるから、 争点2(均等論)について判断するまでもなく、本件発明の技術的範囲に属 するものである。
・・・
被告製品の実施料率について判断する。 甲79報告書によれば、日本国内で特許出願を行った国内企業・団体 のうち上位となっている企業・団体(対象2031件)及び株式会社帝 国データバンク保有データ信用調査報告書ファイル(約143万社収録) の中からライセンス契約を実施していると判断できる企業(対象975 件)につき、重複データを削除した合計3006件を調査対象とし、平 成21年11月5日から平成22年2月15日までを調査対象期間とし て、技術分類別ロイヤルティ率のアンケート調査を実施した結果(有効 回答は563件)によると、本件発明に最も近い技術分野である「精密 機械」のロイヤルティ率は、最大値9.5%、最小値0.5%、平均値 3.5%であった(同報告書52頁)ことが認められる。また、同報告 書によると、実施料の決定要因の重要度としては、1)当事者におけるラ イセンスの必要性、2)ライセンス対象(特許権の評価)の重要度が高い ことが挙げられている。
なお、控訴人は、前記第2の4 ウ【控訴人の主張】 のとおり、平 成4年度から平成10年までのデータによる実施料率〔第5版〕データ や平成10年3月30日言渡しの別件判決の説示を基にした主張もする が、平成27年から平成30年までの間の実施料率を問題とする本件で は参考とならず、採用の限りではない。
本件発明の特許請求の範囲及び本件明細書の記載を総合すると、本件 発明は、「ソレノイド」を備えた制御弁の発明であるが、その特徴的部\n分は、1)アッパーブレードの外側で取付孔に嵌合して取付孔の開口部を 塞ぐ端部部材と、2)取付孔と端部部材との間に配置されるシール部材の 2つの構成を採用したことにあり、これらの構\成によって、外部雰囲気 (湿気や水等の流体)の進入が抑制されて、ソレノイドの耐食性を向上\nさせるとともに、ハウジングの取付孔に挿入するだけで正確な位置決め ができ、ボルトによるハウジングへの締結等も不要となり、取付性が向 上するという効果を奏するものである。 これに対し、相手方ハウジング部材に取付孔を設けてこの部分に容量 制御弁を挿入するという技術は、本件発明の出願時には公知の技術であ る(乙8、9)。また、シール部材の配置については、原告製品2のよ うに、取付孔と端部部材の間のシール部材を設けることなく、腐食防止 のために鉄系材料にメッキを施して可変容量制御弁の耐久性を保つ代替 技術(従来技術。本件明細書の【0011】)があることから、ソレノ\nイドの耐食性の向上という観点からいえば、当事者のライセンスの必要 性の程度が高いとはいえず、特許としての重要度も高いとはいえない。 そして、被控訴人が●●●社向けに作成した、原告製品2との比較を 含む被告製品のプレゼンテーション資料(乙25)には、重要設計項目 として、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が 挙げられているように、弁本体の機能や動作性等が重視され、本件発明\nの上記特徴的部分については何ら言及されていないから、被告製品にお ける本件発明の実施の程度及びその価値は相対的に低いと言わざるを得 ない。
以上のような本件各事情を総合すると、前記 のとおり、控訴人と被 控訴人は、可変容量制御弁の分野では国際的にシェアを分かち合う競業 関係にあるといった事情を考慮しても、被告製品における本件特許の実 施料率は2%程度であると認めるのが相当である。 ウ ところで、前記 アのとおり、本件特許は控訴人及び●●●●●●の共 有関係にあり、その持分割合について両社で特段の合意がされたと認める に足りないから、民法250条により共有持分は相等しい割合に推定され る。 そうすると、特許法102条3項による損害は、以下の計算式のとおり、 ●●●●●円であると認定するのが相当である。
[計算式] ●●●●●●●●●●●●●●●●●●
特許法102条1項による損害について
・・・
c 原告製品2の限界利益額に関する覆滅事由について
前記3 イ のとおり、本件発明は、「ソレノイド」を備えた制御\n弁の発明であるが、その特徴的部分は、1)アッパープレートの外側で 取付孔に嵌合して取付孔の開口部を塞ぐ耐食性材料による端部部材と、 2)取付孔と端部部材の間に配置されるシール部材の2つの構成を採用\nしたことにあり、これらの構成によって、外部雰囲気(湿気や水等の\n流体)の進入が抑制されて、ソレノイドの耐食性を向上させるととも\nに、ハウジングの取付孔に挿入するだけで正確な位置決めができ、ボ ルトによるハウジングへの締結等も不要となり、取付性が向上すると いう効果を奏するものである。
前記 ウ のとおり、原告製品2は、取付性の向上及び端部部材に よる外部雰囲気(湿気や水等の流体)の進入の抑制といった本件発明 の作用効果を備えているといえるが、アッパープレードの外側で取付 孔に嵌合して取付孔の開口部を塞ぐ耐食性材料による端部部材を備え ている(上記1)を備える。)ものの、端部部材と取付孔との間のシー ル部材(Oリング)を備えておらず(上記2)を備えておらず)、腐食 防止のために鉄系材料にメッキを施している。また、原告製品2は、 自動車に搭載するソレノイドを有する可変容量コンプレッサ制御弁で\nある以上、自動車メーカーとしては、外部雰囲気の進入の抑制という よりは、原告製品2の制御弁としての機能及び動作性に最も着目する\nものといえる。 このように、原告製品2は、本件発明の従来技術の課題とされてい る、耐食性を必要とする構成部材にメッキ処理を施したものであるこ\nとや、原告製品2は可変容量コンプレッサ容量制御弁であって、制御 弁としての機能及び動作性の点に強い顧客吸引力があるといえるから、\n原告製品2の販売によって得られる限界利益の全額を控訴人の逸失利 益と認めるのは相当ではないところ、原告製品2が備える機能等や顧\n客誘引力等の本件諸事情を総合考慮すると、事実上推定される限界利 益の全額から95%の覆滅を認めるのが相当である。
・・・
エ 控訴人が販売することができないとする事情
特許法102条1項1号に規定するところの侵害品の譲渡数量の全部又 は一部に相当する数量を特許権者等が販売することができないとする事 情は、侵害行為と特許権者等の製品の販売減少と相当因果関係を阻害する 事情であり、例えば、1)特許権者と侵害者の業務態様や価格等に相違が存 在すること(市場の非同一性)、2)市場における競合品の存在、3)侵害者 の営業努力(ブランド力、宣伝広告)、4)侵害品及び特許権者の製品の機 能(機能\、デザイン等特許発明以外の特徴)に相違が存在すること等の事 情がこれに該当するというべきである(前掲知財高裁大合議判決)。 以下これを前提として検討する。
前記第2の4 ア【被控訴人の主張】 aのとおり、被控訴人は、「販 売することができない事情」として、●●●社の前身である●●●社及 び同社が買収した●社と被控訴人との間では、長年の取引関係があり、 被控訴人は、こうした取引関係を通じて構築された信頼関係に基づいて、\n●●●社との間で年間●●●●個に及ぶ被告製品の取引を行ってきたが、 控訴人は、●●●社の事業領域については何らの商圏を有していなかっ たのであるから、容量制御弁を年間●●●●個生産する能力があるとし\nても、せいぜい従前●●●社に納入していた程度の数量である●●万個 程度の数量しか販売することができなかったというべきである旨主張す る。
確かに、被控訴人は、●●●社の前身である●●●社及び●社、●● ●●社と長年の取引関係にあり、価格競争や開発対応等の点で表彰を受\nけるなど、一定の信頼関係を築いてきたこと(乙36ないし40)は認 められるものの、前記 カ及びキのとおり、●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●、こうした事情に照らせば、原告製品2 について本件侵害期間より前の期間に納入していた数量の限度でしか 販売することができなかったとはいえないから、被控訴人の上記主張は 理由がない。
前記第2の4 ア【被控訴人の主張】 bのとおり、被控訴人は、「販 売することができない事情」として、●●●社は、防水手段についてメ ッキ処理で行うか、端部部材へのシール部材の装着で行うかについては 全く重視しておらず、被告製品が本件発明の技術的範囲に属すると被控 訴人において認識すれば、「メッキ処理」に変更した代替品に転換する ことは容易に可能であったから、被告製品に代わって控訴人が原告製品\n2を納入することができるというものではない旨主張する。 しかし、「販売することができない事情」で考慮されるべき事情は、 本件侵害期間中に原告製品2を被告製品の販売個数では販売することが できなかった事情が問題となるのであって、被控訴人が主張する上記の ような仮定的事情はこれに当たらないから、被控訴人の上記主張は理由 がない。
前記第2の4 ア【被控訴人の主張】 cないしeのとおり、被控訴 人は、「販売することができない事情」として、●●●社の購入動機や 信頼関係の存否等につき主張する。 そこで、検討するに、前記 キによれば、●●●●●●●●●●●● ●●●●●●被告製品を選択した理由の1つとして価格面を挙げている ことが認められる。実際、控訴人の担当部長が作成した報告書(甲67) の添付資料によると、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●ことが認められる。被告製品が原告製品2と比 較して価格面で有利であったという点は、本件侵害期間中における原告 製品2の販売個数に少なからず影響する事情であるということができる。 また、前記 のとおり、被控訴人は、●●●社の前身である●●●社 及び●社、●●●●社と長年の取引関係にあり、価格競争や開発対応等 の点で表彰を受けるなど、サポート面や協力態勢の面で一定の信頼関係\nを築いてきており、実際のところ、●●●社が原告製品2から被告製品 に切り替えた理由の1つとして、被控訴人のサポート態勢等を挙げてい る。被控訴人が被告製品の販売個数を順調に維持することができた背景 には、こうした事情が影響しているものと認められるから、被控訴人と ●●●社との信頼関係の構築は、本件侵害期間中における原告製品2の\n販売個数に影響する事情であるといえる。 さらに、証拠(乙25、32、48)によれば、被控訴人は、原告製 品2と被告製品の起動性に関する対比実験を提示し(乙25)、●●● 社の仕様等に関する要望を受けて改良し、●●●社は、被告製品の制御 弁としての性能面を評価して被告製品を採用したことが認められるから、\nこうした事情は、本件侵害期間中において、被告製品の販売実績に相当 する原告製品2を販売し得たことを阻害する事情であるといえる。 以上で指摘した事情を総合考慮すると、侵害品である被告製品の譲渡 数量を控訴人が販売することができない事情に相当する数量は、譲渡数 量全体の2割であると認めるのが相当である。
・・・
なお、共有に係る特許権であっても、各共有者は、契約で別段の定めを した場合を除いて他の共有者の同意を得ることなく特許発明の実施をす ることができる(特許法73条2項。なお、本件では、控訴人が●●●● ●●との間で実施割合に関する特段の合意をしたと認めるに足りる証拠 はない。)ところ、特許法102条1項により算定される損害については、 侵害者による侵害組成物の譲渡数量に特許権者等がその侵害行為がなけ れば販売することができた物の単位数量当たりの利益額を乗じて算出さ れる額には、特許権の非実施の共有者に係る侵害者による侵害組成物の譲 渡数量に応じた実施料相当額の損害が含まれるものではなく、その全部又 は一部に相当する数量を特許権者等が販売することができないとする事 情にも当たらないから、後記の同条2項による損害の推定における場合と 異なり、非実施の共有者の実施料相当額を控除することもできない。
・・・
キ 特許法102条1項2号による実施料相当額ついて
前記エ のとおり、特許法102条1項1号の「その全部又は一部に相 当する数量を当該特許権者又は専用実施権者が販売することができない とする事情」としては、侵害品である被告製品と原告製品2の価格差、被 控訴人によるサポート面や協力態勢の面で●●●社との間との一定の信 頼関係の構築、被告製品と原告製品2の性能\面の差異といった事情がある と認められる。
ところで、特許法102条1項2号は、括弧書で「特許権者・・・が、当該 特許権者の特許権についての専用実施権の設定若しくは通常実施権の許 諾・・・をし得たと認められない場合を除く。」と規定するところ、この括弧 書部分は、特定数量がある場合であってもライセンスをし得たとは認めら れないときは、その数量に応じた実施相当額を損害として合算しないこと を規定するものであると解される。 これを前提として本件についてみると、特許法102条1項1号に規定 する特定数量に該当するとされた事情は、上記のとおりであるところ、被 告製品と原告製品2の性能面の差異については、その性質上、控訴人が被\n控訴人にライセンスをし得たのに、その機会を失ったものとは認められな いが、被控訴人の営業努力等に関わる点については、本件発明の存在を前 提にした上でのものというべきであるから、控訴人が被控訴人にライセン スをし得たのに、その機会を失ったものといえる。 これらの事情を総合考慮すると、特定数量2割のうちライセンスの機会 を喪失したといえる数量は、その半分に当たる譲渡数量の1割とするのが 相当である。
また、前記 アのとおり、本件侵害期間中の被告製品の1個当たりの販 売価格は●●●●●●●円(本件侵害期間の総販売金額●●●●●●●● ●●●●●●●円を、同期間における総製造数●●●●●●●●個で割っ た額(乙23参照)。)であり、前記 イのとおり、被告製品の実施料率 は2%程度とするのが相当であり、本件特許は控訴人及び●●●●●●の 共有関係にあることも前記認定事実のとおりである。 以上を前提とすると、特許法102条1項2号により算定される控訴人 の損害額は268万円と認められる。
・・・
特許法102条2項による損害について
ア 覆滅事由について
本件侵害期間中における月別の被告製品の生産個数及び売上高は当事者 間に争いがないが、控除すべき経費の範囲及びその額について争いがある。 ところで、特許法102条2項における推定の覆滅については、同条1 項ただし書の事情と同様に、侵害者が主張立証責任を負うものであり、侵 害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事 情がこれに当たると解され、例えば、1)特許権者と侵害者の業務態様等に 相違があること(市場の非同一性)、2)市場における競合品の存在、3)侵 害者の営業努力、4)侵害品の性能(機能\、デザイン等特許発明以外の特徴) 等の事情がこれに当たり、また、特許発明が侵害品の一部分のみに実施さ れている場合には、この点も、推定覆滅の事情として考慮することができ るが、特許発明が侵害品の一部分のみに実施されていることから直ちに上 記推定の覆滅が認められるのではなく、特許発明が実施されている部分の 侵害品中における位置付け、当該特許発明の顧客誘引力等の事情を総合的 に考慮して決するのが相当である(知財高裁令和元年6月7日大合議判 決・判例時報2430号34頁以下参照)。 控訴人は、特許法102条2項による損害の算定に当たり、覆滅事由は ないと主張しているところ、被控訴人は、1項ただし書と同様の事由、す なわち、1)●●●社における事情、2)代替品の納入が可能であること、3) 原告製品2と被告製品の性能に本件発明以外に相違があること、4)被告製 品が原告製品2と比較して低価格であること、5)被控訴人の市場開発努力、 営業努力、販売力の事情を指摘して、覆滅事由を主張するので、この点に つき、まず検討を加える。
前記 エで説示したのと同様に、●●●社が原告製品2の供給を打ち切 って被告製品を採用したのは、被告製品が原告製品2と比較して価格面で 有利であったこと、被控訴人は、●●●社及びその前身の●●●社(●● ●社が買収した●社を含む。)と長年取引関係にあって信頼関係を醸成し ており、被告製品の販売個数を順調に伸ばしてきたのはこうした事情が背 景にあるものと推認されること、被控訴人は、原告製品2と被告製品の起 動性に関する対比実験を提示し、●●●社の仕様等の要望を受けて改良し たことにより、被告製品の採用に至ったものと認められる。
こうした被告製品の価格面での優位性、被控訴人の企業努力等の事情に 加えて、被告製品における本件発明が実施されている部分の位置付け、本 件発明の顧客吸引力等の事情についてみると、被告製品は容量制御弁であ り、ソレノイドの耐食性や取付容易性といった本件発明の特徴的部分もさ\nることながら、弁本体の機能がむしろ重要であり(被控訴人が●●●社向\nけに作成した被告製品のプレゼンテーション資料(乙25)には、本件発 明の特徴的部分については何ら触れるところはないことは既に説示したと おりである。)、また、前記 イ のとおり、相手側ハウジング部材に取 付孔を設けてこの部分に容量制御弁を挿入するという技術は、本件発明の 出願時には公知の技術であり、密封構造に関しても、容量制御弁の高耐食\n性については、鉄製材料をメッキ処理するといった従来技術(代替技術) が存在していたことからすると、被告製品における本件発明の位置付けは 重要なものとはいえず、顧客吸引力も低いものと言わざるを得ない。 被控訴人の主張する覆滅事情は上記の限度で理由があり、これらの事情 を総合考慮すると、覆滅割合は9割とするのが相当である。
イ 本件特許が共有であることについて
本件特許権は、控訴人及び●●●●●●の共有に係るものであり、前 記 オで説示したとおり、●●●●●●は、少なくとも本件侵害期間中 において本件特許権を実施していない。 ところで、特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定 めをした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施 をすることができる(特許法73条2項)。本件では、控訴人が●●● ●●●との間で実施割合に関する特段の合意をしたと認めるに足りる証 拠はないから、本件特許権の共有者である控訴人は、共有持分割合に応 じて特許法102条2項により推定される損害の按分割合に応じた損害 賠償を請求することができるにすぎない旨の被控訴人の主張は理由がな い。
他方で、実施料に相当する損害は、特許権の実施の有無にかかわらず 請求することができるから、特許権を共有するがその特許を実施してい ない共有者であっても、その特許が侵害された場合には、特許法102 条3項により推定される実施料相当額の損害賠償を受けられる余地があ るところ、仮に、同条2項により推定される全額を共有に係る特許権を 実施する共有者の損害額であると推定されると、侵害者は実際に得た利 益以上に損害賠償の責めを負うことになることからすると、共有に係る 特許権を実施する共有者が同条2項に基づいて侵害者が得た利益を損害 として請求するときは、同条3項に基づいて推定される共有に係る特許 権を実施していない共有者の損害額は控除されるべきである。そして、 侵害に係る特許権が共有に係るものであるといった事情は、同条2項に より推定される損害の覆滅事情に当たるものであるから、侵害者がその 立証責任を負うというべきである。
次に、前記第2の4 イ【控訴人の主張】 のとおり、控訴人は、● ●●●●●が特許法102条3項に基づく損害賠償請求権について控訴 人が消滅時効を援用することにより、被控訴人は、控訴人に対して●● ●●●●の被控訴人に対する実施相当額を控除すべき旨を主張すること ができない旨主張する。 しかし、控訴人の被控訴人に対する損害賠償請求権と、●●●●●● の被控訴人に対する損害賠償請求権は、いずれも金銭債権であって可分 であり、可分債権である●●●●●●の損害賠償請求権が時効により消 滅したからといってその損害賠償請求権があたかも復帰的に控訴人に帰 属したかのように控訴人がこれを行使することができるわけではないか ら、控訴人が●●●●●●の被控訴人に対して有する損害賠償請求権を 援用することができる正当な利益を有する者ではなく、控訴人の上記主 張は明らかに失当である。 もっとも、●●●●●●の特許法102条3項に基づく損害賠償請求 権が時効により消滅している場合には、被控訴人は、これを援用するこ とにより、その支払を免れることができるのであるから、いわゆる二重 払いにより、実際に得た利益以上に損害賠償の責めを負うことになるリ スクは生じないし、このような特殊事情がある場合にまで、特許権侵害 により得た利益の留保を被控訴人に許すことは、法の趣旨に照らし相当 とはいえないというべきである。
ウ 損害額の算定
前記アのとおり、特許法102条2項に基づき、被控訴人が特許権侵害 により受けた利益の額を算定するに当たり、控除すべき経費については前 記第2の4 イ のとおり当事者間に争いがあり、仮に、被控訴人が主張 するところの覆滅事由を考慮せずに控訴人が請求する●●●●●●●● ●●●円を前提としたとしても、前記アの覆滅割合(約90%)分を控除 すると、●●●●●円である。そうすると、前記イ のとおり、●●●● ●●の特許法102条3項に基づく損害賠償請求権が時効により消滅し ている場合には、その実施料相当額を覆滅事由として控除しないと解する 余地があるものの、このような場合を仮定しても、特許法102条2項に より算定される損害額は、上記●●●●●円を上回ることはない。
小括
以上によれば、特許法102条1項による損害額は●●●●●円であり、 同条2項による損害額は●●●●●円を上回ることはなく、同条3項による 損害額は●●●●●円であるから、特許法102条により算定される損害額 は●●●●●円をもって相当と認める。 また、控訴人は、本件において弁護士及び弁理士に委任して訴訟を遂行し ているところ、被控訴人による特許権侵害行為と相当因果関係のある弁護士 費用及び弁理士費用は、本件事案の性質及び内容、認容額、本件事案の難易 度等を考慮すると、●●●●●円とするのが相当である。 そうすると、本件特許権侵害による損害額は8920万円となる。

◆判決本文

原審はこちら。

◆平成29年(ワ)3569号
「密封嵌合」とは,「ソレノイドの耐食性を向上させる効果をもた\nらすように外部雰囲気の進入を抑制させる程度に,端部材が取付孔に対してぴっちり と封をするように機械部品がはまり合う関係」を意味すると解されるところ,Oリン グ(シール部材(13))を外した被告製品が,取付孔内部への水分の進入を抑制する効果 があるとは認められないのであるから,被告製品の端部材(H)が取付孔に「密封嵌合」 しているとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告製品は,構成要件B6の「該アッパープレートの外側で前記取付\n孔に密封嵌合して該取付孔の開口部を塞ぐ耐食性材料による端部部材」に係る構成を\n有しない。そうすると,被告製品は,その余の構成要件を検討するまでもなく,本件\n発明の技術的範囲に属すると認めることはできない。

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令和1(ワ)34096  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年3月18日  東京地方裁判所

 「ぼてぢゅう総本家」は登録商標「ぼてぢゅう」に類似するとして、原告らに対して約1000万円の損害賠償が認められました。

そこで、前記1(結合商標の類否の判断基準)に基づき本件商標1と被告 標章I)の類否を検討するに、被告標章I)は、暖簾を模した図案の上に2段書 きされた文字を記載しており、図案と文字との結合商標であるといえる。そ して、図案部分についてみると、現実の暖簾には文字が記載されることも少 なくないという実情を踏まえると、単なる背景や文字枠として認識されるも のであり、図案部分自体には、出所を識別する機能があるとはいえない。\n他方、被告標章I)の文字部分についてみると、2段書きされており、各段 の文字を結合したものであるといえるところ、全体的に見て、上段の「宗右 衛門町趣味のお好み焼」が下段の「ぼてぢゅう総本家」に対し、小さい文字 で付されたものであることからすれば、その内容に照らしても、需要者は、 上段部分が、下段部分の説明書きであると理解するといえるから、上段部分 には出所を識別する機能があるとはいえない。\nそして、被告標章I)の下段の文字部分についてみると、「ぼてぢゅう」と 「総本家」とを結合したものであるといえるところ、前者は、お好み焼き店 のために創作された極めて特徴的な造語であるのに対し、後者は、「おおも との本家」を意味する一般的な日本語であって(甲28)、その前後に接続 する語句がある場合には、その語句に関連する「総本家」であると理解され るのが通常であるから、下段の文字部分中「総本家」の文字部分から出所識 別標識としての称呼、観念が生ずるものとはいえない。そうすると、「ぼて ぢゅう」の文字部分が、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として 強く支配的な印象を与えるものと認めるのが相当である。
(3) したがって、被告標章I)は、その構成中の「ぼてぢゅう」の文字部分を抽\n出し、この部分だけを本件商標1と比較して商標そのものの類否を判断する ことが許されるというべきである。そして、被告標章I)は、筆書きによる平 仮名「ぼてぢゅう」を同大同間隔に左横書きした外観を有するのに対し、本 件商標1は、別紙商標目録記載1のとおり、筆書きの「ぼてぢゅう」の文字 を同大同間隔で左横書きにした外観を有するのであるから、両者は、その外 観において類似するものであり、両者の称呼及び観念が同一であることも明 らかである。以上によれば、本件商標1と被告標章I)とは、類似するものと認めるのが 相当である。
(4) これに対し、被告は、「宗右衛門町」が著名であり、「趣味」が特徴的な 言葉であることを理由として、出所識別機能を有すると主張するが、「宗右\n衛門町趣味のお好み焼」という部分は、地理的名称、商品の性質、商品の種 類を示すものと理解されるのであるから、「ぼてぢゅう」が強く支配的な印 象を与えるという上記認定を左右するものとはいえない。 また、被告は、「総本家」が出所識別機能を有しないとする根拠は存在せ\nず、被告標章I)の2段の文字部分の1段に記載され、まとまりのある「ぼて ぢゅう総本家」という9音を分離観察する理由もないなどと主張する。しか し、「総本家」の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生ずるものと はいえないことは、上記において説示したとおりである。のみならず、「ぼ てぢゅう」の5字は、「総本家」の3字に比し、大きく書かれ、視覚的にも それ自体十分区別し得る上、前者の文言は、後者の文言に対し、強く支配的\nな印象を与えるものといえる。これらの事情を踏まえると、「ぼてぢゅう」 と「総本家」とを分離して観察することが、取引上不自然であると思われる ほど不可分的に結合しているものともいえないのであるから、被告の主張は、 上記結論を左右するものとはいえない。
・・・
商標法38条2項は、民法の原則の下では、商標権侵害によって商標権者 が被った損害の賠償を求めるためには、商標権者において、損害の発生及び 額、これと商標権侵害行為との間の因果関係を主張、立証しなければならな いところ、その立証等には困難が伴い、その結果、妥当な損害の填補がされ ないという不都合が生じ得ることに照らして、侵害者が侵害行為によって利 益を受けているときは、その利益の額を商標権者の損害額と推定するとして、 立証の困難性の軽減を図った規定である。そして、商標権者に侵害者による 商標権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在 する場合には、商標法38条2項の適用が認められると解すべきである。 これを本件についてみると、証拠(甲81ないし83)及び弁論の全趣旨 によれば、原告らの店舗は、外食市場が伸び悩む現状を踏まえ、コンビニや スーパーの弁当や惣菜を中心として着実に成長しているいわゆる中食市場に 進出することとし、平成29年11月又は12月以降、焼きそばやお好み焼 き等のテイクアウト販売及びデリバリー販売の事業を展開していることが認 められる。そうすると、原告らの事業に係る焼きそばやお好み焼き等の商品 が被告商品1)及び4)と同じ種類の商品であることを踏まえると、被告商品1) 及び4)が一定の調理を要することを考慮しても、少なくとも中食市場におけ る原告らの事業は、被告商品1)及び4)を販売等する被告事業と競業関係にあ るものといえる。 したがって、原告らに、被告による商標権侵害行為がなかったならば利益 が得られたであろうという事情が存在することが認められ、商標法38条2 項の適用が認められる。
・・・
商標法38条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額は、侵害 者の侵害品の売上高から、侵害者において侵害品を製造販売することにより その製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益 の額であり、その主張立証責任は商標権者側にあるものと解すべきである。 そして、原告が、被告商品1)及び4)の限界利益の額を売上高の3割である と主張するのに対し、当該商品を実際に製造する被告は、その割合は24% であると主張するにとどまり、これを裏付ける証拠を何ら提出していない事 情を踏まえると、限界利益の額は、原告らの主張する上記3割を下回らない と認めるのが相当である。 そうすると、商標法38条2項の損害額と推定される侵害品の限界利益の 額は、原告東京フードについては、前記10(2)で認定した売上高2億482 0万8219円の3割に相当する7446万2465円であると認めるのが 相当であり、原告BGHDについては、前記10(2)で認定した売上高654 6万8493円の3割に相当する1964万0547円であると認めるのが 相当である。
(2) 商標法38条2項における推定の覆滅については、侵害者が主張立証責任 を負うものであり、侵害者が得た利益と商標権者が受けた損害との相当因果 関係を阻害する事情がこれに当たるものと解される。
これを本件についてみると、前記10(2)のとおり、原告らは、「ぼてぢゅ う」の名を付した店舗を出店し、主としてお好み焼きや焼きそばなどを提供 する事業を行っているところ、平成29年11月又は12月以降テイクアウ ト販売及びデリバリー販売の事業を展開しているものの、その事業規模は明 らかではなく、原告の業務態様は、基本的にはスーパーマーケットなどで商 品を販売するという被告の業務態様とは、大きく異なるものであること、他 方、前記前提事実、証拠(乙1、2、4)及び弁論の全趣旨によれば、被告 は、平成23年3月19日、最初に「ぼてぢゅう」のお好み焼き店を開業し た者が設立した株式会社ぼてぢゆう総本家から、被告保有商標1の譲渡を受 けてこれを使用し、被告保有商標1が失効した後も、被告保有商標2及び3 を保有して、お好み焼きや焼そば等を販売してきたことが認められ、被告は、 元祖「ぼてぢゅう」の信用をも引き継ぎつつ、相応の営業努力をして商品を 販売等してきたことが認められること、以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば、原告らと被告の業務態様等には大きな相違が存在 する上、被告も通常の範囲を超える格別の営業努力をして商品を販売等して きたことが認められ、その他に本件に現れた事情を総合考慮すると、原告ら に生じた損害については、商標38条2項による推定を覆滅する事情がある というべきであり、その推定の覆滅の割合は、上記諸事情を踏まえ、9割と 認めるのが相当である。
(3)これに対し、原告らは、「ぼてぢゅう監修」などと表記した商品(甲18\nないし25、62)を販売しており、被告による商標権侵害行為により、当 該商品の売上げも減少し、原告らに損害が生じた旨主張する。 しかし、証拠(甲18ないし25、62)及び弁論の全趣旨によれば、上 記商品の販売減による原告らの利益の減少は、ライセンス収入の減少に相当 するものにすぎず、しかも、原告らは、上記減少に係る具体的な額について 何ら主張立証していないことからすれば、原告らの主張は、上記判断を左右 するものとはいえない。したがって、原告らの主張は、採用することができない。
(4) 以上によれば、原告東京フードに生じた商標法38条3項で推定される損 害額は、前記(1)の限界利益の額7446万2465円の1割である744万 6246円と算定され、当該事案の内容、難易度、審理経過及び認容額等に 鑑み、これと相当因果関係あると認められる弁護士費用相当損害74万46 24円との合計819万0870円となり、原告BGHDに生じた商標法3 8条3項による損害額は、前記(1)の限界利益の額1964万0547円の1 割である196万4054円と算定され、当該事案の内容、難易度、審理経 過及び認容額等に鑑み、これと相当因果関係あると認められる弁護士費用相 当損害19万6405円との合計額は216万0459円となる。

◆判決本文

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令和1(ワ)25152  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年3月24日  東京地方裁判所

 ドワンゴvsFC2のコンピュータ関連発明の特許権侵害事件です。東京地裁29部は、海外サーバからの提供について、準拠法は認めたものの、被告システムは本件発明の技術的範囲に属するが、「生産」に該当しないとして、請求を棄却しました。 なお、国際裁判管轄については、被告FC2が争うことなく弁論をしてとして、日本の裁判所に管轄権を認めています。

2 争点1(準拠法)について
(1) 差止め及び除却等の請求について
特許権に基づく差止め及び廃棄請求の準拠法は、当該特許権が登録された 国の法律であると解すべきであるから(最高裁平成12年(受)第580同 14年9月26日第一小法廷判決・民集56巻7号1551頁)、本件の差止 め及び除却等の請求についても、本件特許権が登録された国の法律である日 本法が準拠法となる。
(2) 損害賠償請求について
特許権侵害を理由とする損害賠償請求については、特許権特有の問題では なく、財産権の侵害に対する民事上の救済の一環にほかならないから、法律 関係の性質は不法行為である(前掲最高裁平成14年9月26日第一小法廷 判決)。したがって、その準拠法については、通則法17条によるべきである から、「加害行為の結果が発生した地の法」となる。 原告の損害賠償請求は、被告らが、被告サービスにおいて日本国内の端末 に向けてファイルを配信したこと等によって、日本国特許である本件特許権 を侵害したことを理由とするものであり、その主張が認められる場合には、 権利侵害という結果は日本で発生したということができるから、上記損害賠 償請求に係る準拠法は日本法である。
・・・
前記(1)のとおり、被告システム1は、構成要件1Bないし1F及び1Hを\n充足し、前記前提事実(6)アのとおり、被告システム1が構成要件1A、1G\n及び1Iを充足することは、当事者間に争いがない。 そして、前記(2)のとおり、被告システム2及び3は、構成要件1Aないし\n1F及び1Hを充足し、前記前提事実(6)イのとおり、被告システム2及び3 が構成要件1G及び1Iを充足することは、当事者間に争いがない。\nしたがって、被告システムは本件発明1の技術的範囲に属するものと認め られる。
(2) 被告FC2による被告システムの「生産」の有無について
ア 本件発明1の関係での被告システム1(被告サービス1のFLASH版) の「生産」について
本件発明1の「実施」として被告FC2による被告システム1の「生産」 があるといえるかを、まず、被告サービス1のFLASH版について検討 する。
(ア) 物の発明の「実施」としての「生産」(特許法2条3項1号)とは、 発明の技術的範囲に属する「物」を新たに作り出す行為をいうと解され る。また、特許権の効力が当該国の領域内においてのみ認められること を意味する属地主義の原則(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年 7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁、最高裁平成12 年(受)第580号同14年9月26日第一小法廷判決・民集56巻7 号1551頁参照)からは、上記「生産」は、日本国内におけるものに 限定されると解するのが相当である。したがって、上記の「生産」に当 たるためには、特許発明の構成要件の全てを満たす物が、日本国内にお\nいて新たに作り出されることが必要であると解すべきである。
(イ) 前記3(1)のとおり、被告システム1は、本件発明1の構成要件を全\nて充足し、その技術的範囲に属するものであって、被告システム1にお ける構成1aないし1iは、本件発明1の構\成要件1Aないし1Iにそ れぞれ相当する。 また、被告サービス1のFLASH版においてコメント付き動画を日 本国内のユーザ端末に表示させる手順は、前記(1)ウ(ア)のとおりであっ て、被告サービス1がその手順どおりに機能することによって、上記の\nとおり本件発明1の構成要件を全て充足するコメント配信システムであ\nる被告システム1が新たに作り出されるということができる。 そして、本件発明1のコメント配信システムは、「サーバ」と「これと ネットワークを介して接続された複数の端末装置」をその構成要素とす\nる物であるところ(構成要件1A)、被告システム1においては、日本国\n内のユーザ端末へのコメント付き動画を表示させる場合、上記の「これ\nとネットワークを介して接続された複数の端末装置」は、日本国内に存 在しているものといえる。
他方で、前記3(2)アによれば、本件発明1における「サーバ」(構成\n要件1A等)とは、視聴中のユーザからのコメントを受信する機能を有\nするとともに(構成要件1B)、端末装置に「動画」及び「コメント情報」\nを送信する機能(構\成要件1C)を有するものであるところ、これに該 当する被告FC2が管理する前記(1)ウ(ア)の動画配信用サーバ及びコメ ント配信用サーバは、前記(1)イ(ア)のとおり、令和元年5月17日以降 の時期において、いずれも米国内に存在しており、日本国内に存在して いるものとは認められない。
そうすると、被告サービス1により日本国内のユーザ端末へのコメン ト付き動画を表示させる場合、被告サービス1が前記(1)ウ(ア)の手順ど おりに機能することによって、本件発明1の構\成要件を全て充足するコ メント配信システムが新たに作り出されるとしても、それは、米国内に 存在する動画配信用サーバ及びコメント配信用サーバと日本国内に存在 するユーザ端末とを構成要素とするコメント配信システム(被告システ\nム1)が作り出されるものである。
したがって、完成した被告システム1のうち日本国内の構成要素であ\nるユーザ端末のみでは本件発明1の全ての構成要件を充足しないことに\nなるから、直ちには、本件発明1の対象となる「物」である「コメント 配信システム」が日本国内において「生産」されていると認めることが できない。
(ウ) 原告は、被告システム1では、多数のユーザ端末は日本国内に存在し ているから、被告システム1の大部分は日本国内に存在している、被告 FC2が管理するサーバが国外に存在するとしても、「生産」行為が国外 の行為により開始されるということを意味するだけで、「生産」行為の大 部分は日本国内で行われている、本件発明1において重要な構成要件1\nHに対応する被告システム1の構成1hは国内で実現されている、被告\nシステム1については「生産」という実施行為が全体として見て日本国 内で行われているのと同視し得るにもかかわらず、被告らが単にサーバ を国外に設置することで日本の特許権侵害を免れられるという結論とな るのは著しく妥当性を欠くなどとして、被告システム1は、量的に見て も、質的に見ても、その大部分は日本国内に作り出される「物」であり、 被告らによる「生産」は日本国内において行われていると評価すること ができると主張する。
しかしながら、前記(ア)のとおり、特許法2条3項1号の「生産」に該 当するためには、特許発明の構成要件を全て満たす物が日本国内におい\nて作り出される必要があると解するのが相当であり、特許権による禁止 権の及ぶ範囲については明確である必要性が高いといえることからも、 明文の根拠なく、物の構成要素の大部分が日本国内において作り出され\nるといった基準をもって、物の発明の「実施」としての「生産」の範囲 を画するのは相当とはいえない。そうすると、被告システム1の構成要\n素の大部分が日本国内にあることを根拠として、直ちに被告システム1 が日本国内で生産されていると認めることはできないというべきである。 また、前記(1)ウ(ア)の2)−2及び5)からすれば、被告システム1にお いては、被告FC2のウェブサーバがユーザ端末に配信するSWFファ イルによって規定される条件に基づいて、2つのコメントが重複するか 否かを判定する計算式及び重複すると判定された場合の重ならない表示\n位置の指定が行われており、構成要件1Fの「判定部」及び構\成要件1 Gの「表示位置制御部」に相当する構\成1f及び1gの動作の実現は、 日本国内に存在するユーザ端末において行われるものであるということ ができ、これらのユーザ端末における動作からは、原告が指摘する構成\n要件1Hに対応する構成1hのうち「前記ユーザ端末のディスプレイに\nは、前記動画と、前記コメント付与時間に対応する動画再生時間におい て、前記動画上に、右から左方向に移動する前記コメント1及び前記コ メント2とが、追いついて重複しないように表示される、」という部分に\n相当する動作は、日本国内に存在するユーザ端末において実現されるも のということができるものの、構成要件1Hに対応する構\成1hのうち 「前記サーバが、前記動画ファイルと、前記コメントファイルとを前記 ユーザ端末に配信することにより、」という部分に相当する動作は、米国 内に存在するコメント配信用サーバ及び動画配信用サーバによって実現 されるものであり、構成1hが日本国内に存在するユーザ端末のみによ\nって実現されているとはいえない。前記1(2)イで検討したところからす れば、本件発明1の目的は、単に、構成要件1Fの「判定部」及び構\成 要件1Gの「表示位置制御部」に相当する構\成等を備える端末装置を提 供することではなく、ユーザ間において、同じ動画を共有して、コメン トを利用しコミュニケーションを図ることができるコメント配信システ ムを提供することであり、この目的に照らせば、動画の送信(構成要件\n1C及び1H)並びにコメントの受信及びコメント付与時間を含むコメ ント情報の送信(構成要件1B、1C及び1H)を行う「サーバ」は、\nこの目的を実現する構成として重要な役割を担うものというべきである。\nこの点からしても、本件発明1に関しては、ユーザ端末のみが日本に存 在することをもって、「生産」の対象となる被告システム1の構成要素の\n大部分が日本国内に存在するものと認めることはできないというべきで ある。 さらに、前記(1)アのとおり、被告サービスにおいては、日本語が使用 可能であり、日本在住のユーザに向けたサービスが提供されていたと考\nえられ、同オのとおり、平成26年当時、日本法人である被告HPSが、 被告FC2の委託を受けて、被告サービスを含む同被告の運営するサー ビスに関する業務を行っていたという事情は認められるものの、本件全 証拠によっても、本件特許権の設定登録がされた令和元年5月17日以 降の時期において、米国法人である被告FC2が本件特許権の侵害の責 任を回避するために動画配信用サーバ及びコメント配信用サーバを日本 国外に設置し、実質的には日本国内から管理していたといった、結論と して著しく妥当性を欠くとの評価を基礎付けるような事情は認められな い。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(エ) 以上によれば、被告サービス1のFLASH版については、本件発明 1の関係で、被告FC2による被告システム1の日本国内での「生産」 を認めることができないというべきである。
・・・
オ 小活
以上のとおり、本件発明1の関係でも、本件発明2の関係でも、被告サ ービス(FLASH版及びHTML5版)において、被告FC2による被 告システムの日本国内での「生産」を認めることはできない。

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令和3(行ケ)10148  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年4月25日  知的財産高等裁判所

 文字の一部を図形化した商標について、先願文字商標と類似するとした審決が維持されました。判決の末尾に本件商標が添付されています。

 本願商標は、別紙1の1のとおり、1)上段には「natural baby soap」の文 字が、水色の手書き風の書体で、下段部分の文字より小さく、また、下段部 分よりも幅が狭く、上側に湾曲する形で配され、2)下段には、Doodle Pen の 特徴を備えた書体で、上段の欧文字よりも目立つ大きさで「nico」の欧文字 が水色で横書きに表され、「nico」の「o」の上部には「サボテン」のような 図形が配され、「o」の内側には、横並びに2つの点とその下に両端上がりの 弧線が配されて顔を表すように図案化された、結合商標である。\n ところで、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の\n出所識別機能として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、そ\nれ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる 場合等には、商標の構成部分の一部を要部として取り出し、これと他人の商\n標とを比較して商標そのものの類否を判断することも、許されると解するの が相当である。そして、本件においては、要部が本件商標の下段部分である ことについては、当事者間に争いがなく、本願商標が、全体の構成からみる\nと、上段部分と下段部分とを分離して観察することが取引上不自然とはいえ ず、上段部分は下段部分と比して全体の大きさは小さく、出所識別標識とし て特定の称呼、観念を生じさせないものであること等に照らしても、本件商 標の要部は下段部分であるとするのが相当である
次に、本件商標の要部である下段部分について検討する。
前記(1)のとおり、本件商標の要部である下段部分は、「nico」の欧文字が横 書きに表され、「nico」の「o」の上部には「サボテン」のような図形が配さ れ、「o」の内側には、横並びに2つの点とその下に両端上がりの弧線が配さ れて顔を表すように図案化されているところ、店舗名や商品名等に含まれる\n欧文字の「o」の内側に横並びに2つの点とその下に両端上がりの弧線を配し て顔を表すように図案化したり(乙3ないし8、10、11、14)、「o」の 文字上部にイラストを配して図案化する(乙9ないし14)ことは慣用され ていることが認められる。そうすると、本願商標の下段部分に接した取引者 及び需要者は、末尾の欧文字は一般的に慣用されているものと同様に図案化 されたものと理解し、認識するものということができる。そして、この下段 部分からは「nico」の欧文字に相応して「ニコ」の称呼を生じるものである が、「nico」の欧文字は辞書等に載録されているものでなく、特定の観念を生 じさせるものではない。
これに対し、原告は、前記第3の1(1)のとおり、欧文字の称呼「ニコ」と イラスト部分が「にこにこ笑う」との共通の印象を与えるものであり、「nico」 ないし「ニコ」の欧文字は、これを含む商品が多数存在し、登録商標等が合 計30件あることから、必ずしも取引者及び需要者に強い印象を与えるもの ではないのに対し、イラスト部分は、独自性を有するものであり、イラスト 部分からは観念が生じ、出所識別標識として強い支配的な印象を与えること を前提とした類否判断をすべきである旨主張する。
しかし、「nico」ないし「ニコ」の欧文字は、原告が提出する証拠によれば、 本願商標の指定商品と同一又は類似する商品では2件しか使用されておらず (甲9、10)、少なくとも本願商標の指定商品と同一又は類似する分野にお いて、「nico」ないし「ニコ」が出所識別標識としての機能が弱いとまではい\nえない。また、前記(2)のとおり、欧文字の「o」の内側に横並びに2つの点と その下に両端上がりの弧線を配して顔を表すように図案化したり、「o」の文 字上部にイラストを配して図案化することは慣用されているところ、本願商 標の下段部分の「o」の部分も一般的に慣用されている態様と同様であるし、
また、サボテンのようなイラストも特定の観念を生じさせるような特異なも のとはいえず、その大きさや態様において強い印象を与えるものとはいい難 い。そうすると、特に商標の細部にまで注意を払うことがない一般消費者が、 取引に際して、下段部分のうちイラスト部分にことさら着目し、それにより 特異な観念が生じ、出所識別標識として強い支配的な印象を受けるものとは 認め難いから、原告の主張は理由がない。
・・・・
これに対し、原告は、前記第3の1(3)イのとおり、本願商標の下段部分は 特徴的なイラスト部分があるが、引用商標の欧文字はこうした特徴的なもの を備えておらず、また、本願商標と引用商標の字体、イラスト、文字の与え る印象を挙げて、本願商標と引用商標は、外観において、離隔的観察のもと でも称呼における類似性をしのぐほどの差異を取引者及び需要者に与える旨 主張する。
しかし、原告が指摘するイラスト部分は、欧文字の「o」を顔等の図案化す るものとしてこれまで慣用されてきたものと大きく異なるものではなく、イ ラスト部分が強い支配的印象を与えるものではないことは繰り返し説示して きたとおりであり、また、本願商標と引用商標の字体、イラスト、文字の与 える外観上の差異については、離隔的観察のもとでは、取引者及び需要者に 大きく異なる印象を与えるものであるとまではいえない。
また、原告は、前記第3の1(3)ウのとおり、本願商標の下段部分全体から、 「にこにこ笑った」印象を与えるものであるのに対し、引用商標は特定の観 念を生じさせない旨主張するが、前記1(2) において判示したところに照らせ ば、その前提を誤るものというべきである。
さらに、原告は、前記第3の1(3)エのとおり、本願商標を付した原告の商 品について、現在までに本願商標と引用商標その他の第三者の商標と混同し たような内容の問い合わせがないことを「取引の実情」として挙げて、称呼 が共通していても、外観及び観念の相違から誤認混同が生じていない旨主張 するが、商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは、そ の指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すものであつて、該商 標が現在使用されている商品についてのみの特殊的、限定的なそれを指すも のではない(最高裁昭和47年(行ツ)第33号同49年4月25日第一小 法廷判決参照)ところ、原告の上記主張は、本願商標が現在使用されている 商品についての取引の実情をいうものであるから、当を得ない。

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平成31(ワ)8969  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年4月22日  東京地方裁判所

 ゲーム画面が著作権侵害か否か争われました。前提として裁判管轄についても争われました。後者の裁判管轄は「あり」としましたが、被告は、リンク設定行為をしただけなので、複製及び公衆送信には該当しないと、請求棄却されました。

証拠(乙8)及び弁論の全趣旨によれば、原告及び被告は、いずれも中国 に住所を置く法人であり、日本に事務所等の拠点を有しないこと、被告ゲー ムの開発や配信に関する主要な作業は中国において行われたことが認められ る。これらの事情によれば、本件訴訟に関する証拠が中国に存在することが うかがわれるから、本件を日本の裁判所で審理した場合には、被告が、本件 訴訟の争点に関する主張立証をする際に、中国語で記載された書類を日本語 に翻訳したり、中国語を話す関係者のために通訳を手配したりするなどの一 定の負担を被り得ることは、否定し難い。
しかし、本件訴訟における原告の請求は、日本国内向けに配信された被告 ゲーム及びそれに関連する画像の複製を差し止め、被告ゲーム等のデータを 削除し、被告ゲームの売上げに基づき著作権法114条2項によって推定さ れる額の損害を賠償すること等を求めるというものである。そうすると、本 件訴訟における請求の内容は日本と密接に関連するものであり、かつ、原告 が主張する上記損害は日本において発生したものと解されるから、本件は、 事案の性質上、日本とも強い関連性を有するというべきである。 また、本件訴訟の争点は、前記第2の3及び前記第3のとおり、原告各画 像と被告各画像の表現の同一性ないし類似性(争点2−1)、被告による原\n告画像1に係る著作権侵害の成否(争点2−2)、被告が原告各画像に依拠 して被告各画像を作成したと認められるか否か(争点2−3)、差止め及び 削除請求の必要性(争点3)並びに損害額(争点4)である。この点、上記 争点2−1については、原告各画像と被告各画像の対比や同一性ないし類似 性が認められる部分が創作的な表現であるか否かに関する検討を要するとこ\nろ、それらの点に係る主張立証は、主として原告各画像及び被告各画像自体 に基づいて行うことになる。これに加えて、他の画像に基づき、上記同一性 ないし類似性の認められる部分がありふれた表現であることの主張立証を行\nうことも考えられるが、当該他の画像に関する証拠が中国に存在するとして も、その性質上、翻訳等の作業は必要とされないであろうから、被告に過大 な負担が生じるとは認め難い。上記争点2−2は、本件リンク設定行為が原 告画像1に係る原告の著作権を侵害するかどうかを、主として日本の著作権 法の解釈、適用によって判断するというものであるから、証拠の所在地が当 該争点の判断において重要な意味を持つものとはいえない。上記争点2−3 に関する証拠としては、原告ゲーム及び被告ゲーム以外のゲーム等の画像及 び公表時期に関する資料、ゲーム制作者の陳述書等が想定されるが、それら\nの全てが中国にのみ所在するとはうかがわれず、立証に際して被告に過大な 負担が生じるとまでは認め難い。上記争点3については、前記第3の3のと おり、被告ゲームの配信が中止された事実が重要な評価障害事実として主張 立証され得るところ、被告ゲームが日本国内向けに配信されたオンラインゲ ームであることを踏まえると、上記事実に関する主要な証拠は日本に所在す るものと認められる。上記争点4についても、上記のとおり、原告が主張す る損害は日本において発生したものと解されるから、損害額の算定の基礎と なる主要な証拠は日本に所在するものと考えられる。したがって、本件が日 本で審理されるとしても、本件の重要な争点に係る主張立証に当たり、被告 に過大な負担が生じるとまでは認められない。
(2) これに対し、被告は、1)本件訴訟と当事者、事案及び争点において密接な 関連性が存在する別件中国訴訟が中国の裁判所において係属していること、 2)原告と被告は、当然に、本件訴訟を中国の裁判所に提起することが最も適 切であり、本件が中国の裁判所での解決が図られると想定していたこと、3) 本件訴訟に関する客観的な事実関係は全て中国において発生したこと、4)本 件訴訟の証拠は全て中国国内に存在すること、5)本件を日本の裁判所で審理 する場合には被告に過大な負担を課すること等を根拠として挙げ、本件訴訟 には民事訴訟法3条の9所定の「特別の事情」があると主張する。 しかし、まず、上記1)についてみるに、本件訴訟と別件中国訴訟は、いず れも原告が当事者であるという点において共通するものの、被告は別件中国 訴訟の当事者の地位にはないから、当事者が完全に一致するものではない。 しかも、別件中国訴訟においては、原告ゲームの中国語版の表現と「C」と\n称するゲームの表現の類否等が争点とされているのであって、被告ゲームの\n表現との類否は争点とされていないばかりか、証拠(甲10)によれば、別\n件中国訴訟において争点とされている原告ゲームの表現はいずれも原告各画\n像とは異なる画像等に係るものであると認められる。そうすると、本件訴訟 と別件中国訴訟の事案及び争点はいずれも大きく相違するものといえるから、 本件訴訟と別件中国訴訟との間に強い関連性があるとまでは認められない。 次に、上記2)についてみるに、上記のとおり、本件訴訟と別件中国訴訟と の関連性は強くない上、原告ゲームと被告ゲームがいずれも日本国内向けに 配信されたスマートフォン向けのオンラインゲームであることに照らすと、 別件中国訴訟が本件訴訟に先立って中国国内の裁判所に係属していたとして も、原告ゲームと被告ゲームに関する著作権侵害に関する紛争の解決が中国 の裁判所で図られることが想定されていたとまでは認められない。 さらに、上記3)ないし5)についてみるに、前記(1)のとおり、本件の請求 の内容は日本と密接に関連するものであり、かつ、原告が主張する上記損害 は日本において発生したものと解されることから、本件に関する客観的な事 実関係が全て中国において発生したということはできない。また、前記(1) のとおり、本件の証拠が専ら中国に存在するとは認められないし、本件を日 本の裁判所が審理するとしても、立証に関して被告に過大な負担を生じさせ るものとまでは認められない。 したがって、被告の上記1)ないし5)の主張はいずれも理由がない。
(3) 以上の次第で、本件の事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の 所在地、原告を当事者とする中国の裁判所に係属中の訴訟の存在その他の事 情を十分に考慮しても、本件訴訟について、民事訴訟法3条の9所定の「特\n別の事情」があると認めることはできない。
・・・
ア 証拠(甲9、乙15ないし17)及び弁論の全趣旨によれば、本件リン ク設定行為は、本件動画の表紙画面である被告画像1をリンク先のサーバ\nーから本件ウェブページの閲覧者の端末に直接表示させるものにすぎず、\n被告は、本件リンク設定行為を通じて、被告画像1のデータを本件ウェブ ページのサーバーに入力する行為を行っていないものと認められる。そう すると、前記(2)アのとおり原告画像1を複製したものと認められる被告 画像1を含む本件動画をYouTubeが管理するサーバーに入力、蓄積 し、これを公衆送信し得る状態を作出したのは、本件動画の投稿者であっ て、被告による本件リンク設定行為は、原告画像1について、有形的に再 製するものとも、公衆送信するものともいえないというべきである。
イ これに対し、原告は、1)本件ウェブページに被告画像1を貼り付ける行\n為も、本件リンク設定行為も、本件ウェブページの閲覧者にとっては、何 らの操作を介することなく被告画像1を閲覧できる点で異なるところはな いこと、2)本件リンク設定行為は、被告画像1を閲覧者の端末上に自動表\n示させるために不可欠な行為であり、かつ、原告画像1の複製の実現にお ける枢要な行為といえること、3)本件リンク設定行為をすることにより、 被告ゲームを宣伝し、被告ゲームの販売による多大な利益を得たことを指 摘し、規範的にみて、被告が複製及び公衆送信の主体と認められる旨を主 張する。しかし、上記1)についてみると、単に、本件ウェブページに被告画像1 を貼り付ける等の侵害行為がされた場合と同一の結果が生起したことをも\nって、本件リンク設定行為について、複製権及び公衆送信権の侵害主体性 を直ちに肯定することはできないというべきである。 また、上記2)についてみると、仮に枢要な行為に該当することが侵害主 体性を基礎付け得ると解したとしても、本件リンク設定行為の前の時点で 既に本件動画の投稿者による原告画像1の複製行為が完了していたことに 照らすと、本件リンク設定行為が原告画像1の複製について枢要な行為で あるとは認め難いというべきである。なお、本件動画は、本件ウェブペー ジを閲覧する方法によらずとも、本件動画が投稿されたYouTubeの 「D」のページにアクセスすることによっても閲覧することができるから、 本件リンク設定行為が原告画像1の公衆送信にとって枢要な行為であると も認められない。 さらに、上記3)についてみると、本件全証拠によっても、本件リンク設 定行為により被告がどの程度の利益を得ていたのかは明らかではないから、 その点をもって、被告が原告画像1の複製及び公衆送信の主体であること を根拠付けることはできない。 したがって、上記1)ないし3)の点を考慮しても、被告を原告画像1の複 製及び公衆送信の主体であると認めることはできず、原告の上記主張は採 用することができない。
ウ また、原告は、仮に被告が著作権侵害の主体であると認められない場合 であっても、少なくとも、被告が本件リンク設定行為により上記著作権侵 害を幇助したものと認められると主張する。 しかし、前記アのとおり、被告による本件リンク設定行為は、被告画像 1をリンク先のサーバーから本件ウェブページの閲覧者の端末に直接表示\nさせるものにすぎず、本件動画の投稿者による被告画像1を含む本件動画 をYouTubeが管理するサーバーに入力・蓄積して公衆送信し得る状 態にする行為と直接関係するものではない。そうすると、本件リンク設定 行為が本件動画の投稿者による複製及び公衆送信行為自体を容易にしたと はいい難いから、被告による本件リンク設定行為が、被告画像1に係る原 告の著作権(複製権及び公衆送信権)侵害を幇助するものと認めることは できない。 したがって、被告を原告画像1の複製及び公衆送信の幇助者であると認 めることはできない。

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令和3(ネ)10074  債務不存在確認請求控訴事件  著作権 民事訴訟 令和4年4月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ファイル共有ソフトBitTorrentによる動画のダウンロードについて訴訟です。損害賠償請求不存在確認訴訟です。知財高裁は、1審とほぼ同額の損害賠償を認めました。ファイル共有ソフトによるダウンロードは、分散しているデータをまとめた完全なファイルのダウンロードが完了すると、その後は、シーダー(ダウンロードさせる者)の責任(共同侵害)も課せられます。\n

 イ 一審原告ら(一審原告X6及び一審原告X10を除く。)は、同一審原告らが 本件著作物をアップロードしたことの立証に欠けると主張するが、訂正の上引用し た原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の2(4)のとおり、一審被告 は、BitTorrentを利用して本件著作物をアップロード及びダウンロード している者のIPアドレスを特定し、プロバイダから、上記IPアドレスに対応す る契約者の氏名及び住所の開示を受けていることが認められ、証拠(乙13の2・ 3・6・7)によると、プロバイダの回答書にIPアドレス並びに一審原告X2、 一審原告X4、一審原告X3、A、一審原告X7、一審原告X9の氏名及び住所の 記載があり、これら一審原告らの氏名及び住所の開示を受ける過程において、IP アドレスの混同がないことが認められる。なお、Aとの記載が、一審原告X8の行 為に係るものであることについては当事者間に争いがない。また、一審原告X1の 氏名及び住所が記載された株式会社TOKAIコミュニケーションズからの通知書 (乙13の1)には、IPアドレスの記載はないものの、「添付ファイル「接続記録 リスト」 No.49〜58」との記載があり、同記載は、一審被告作成の「調査結果一覧 (株式会社TOKAIコミュニケーションズ)」と題する書面(乙11の1)の49 〜58行目に対応するものと推認され、乙11の1の記載からIPアドレスの特定 ができることから、IPアドレスの混同がないことが認められる。そうすると、前 記(1)のとおり立証がされていないと認められる一審原告X5及び一審原告X11 を除き、一審原告ら(一審原告X6及び一審原告X10を除く。)について、本件著 作物をアップロードしたことについての立証がされていると認めるのが相当である。
(2) 争点1−2(共同不法行為性)について
ア 本件で、一審原告X1らは、本件各ファイルを、BitTorrentを利 用して送信可能な状態におくことで、一審被告の著作権を侵害した。ところで、訂\n正の上引用した原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の2(3)のとお り、BitTorrentを利用してファイルをダウンロードする際には、分割さ れたファイル(ピース)を複数のピアから取得することになるところ、後掲の証拠 によると、一部のピアのみが安定してファイルの供給源となる一方で、大半のピア は短時間の滞在時(BitTorrentの利用時)に一時的なファイルの供給源 の役割を担うものとされるが、一審原告X1らは、常にBitTorrentを利 用していたものではないことから、一時的なファイルの供給源の役割を担っていた と考えられること(甲12、15、21)、あるトラッカーが、特定の時点で把握し ているリーチャーとシーダーの数は0〜5件程度と、特定時点における特定のファ イルに着目した場合には必ずしも多くのユーザー間でデータのやり取りがされてい るものではないこと(乙2〜4、8〜10)、BitTorrentを利用したアッ プロードの速度は、ダウンロードの速度よりも100倍以上遅く、また、ファイル の容量に比しても必ずしも大きくなく、例えば本件各ファイルの容量がそれぞれ8. 8GB、7.0GB、2.3GBであるのに照らしても、アップロードの速度は平 均0〜17.6kB/s程度(本件著作物以外の著作物に関するものを含む。)と遅 く、ダウンロードに当たっては、相当程度の時間をかけて、相当程度の数のピアか らピースを取得することで、1つのファイルを完成させていると推認されること(甲 5、6、乙2〜4、6)がそれぞれ認められる。これらの事情に照らすと、Bit Torrentを利用した本件各ファイルのダウンロードによる一審被告の損害の 発生は、あるBitTorrentのユーザーが、本件ファイル1〜3の一つ(以 下「対象ファイル」という。)をダウンロードしている期間に、BitTorren tのクライアントソフトを起動させて対象ファイルを送信可能\化していた相当程度 の数のピアが存在することにより達成されているというべきであり、一審原告X1 らが、上記ダウンロードの期間において、対象ファイルを有する端末を用いてBi tTorrentのクライアントソフトを起動した蓋然性が相当程度あることを踏\nまえると、一審原告X1らが対象ファイルを送信可能化していた行為と、一審原告\nX1らが対象ファイルをダウンロードした日からBitTorrentの利用を停 止した日までの間における対象ファイルのダウンロードとの間に相当因果関係があ ると認めるのも不合理とはいえない。
そうすると、一審原告X1らは、BitTorrentを利用して本件各ファイ ルをアップロードした他の一審原告X1ら又は氏名不詳者らと、本件ファイル1〜 3のファイルごとに共同して、BitTorrentのユーザーに本件ファイル1 〜3のいずれかをダウンロードさせることで一審被告に損害を生じさせたというこ とができるから、一審原告X1らが本件各ファイルを送信可能化したことについて、\n同時期に同一の本件各ファイルを送信可能化していた他の一審原告X1ら又は氏名\n不詳者らと連帯して、一審被告の損害を賠償する責任を負う。 なお、控訴人(一審原告)らは、原判決が、一審原告X1らが送信可能化した始\n期から終期までの期間のダウンロード数をひとまとめで判断したことが不相当であ る旨主張するが、原判決は、当該期間のダウンロード数をもってひとまとめの損害 が生じたと認定したものではなく、1ダウンロード当たりの損害額を認定した上で、 当該期間にダウンロードされた本件各ファイルの数を推定して、推定したダウンロ ード数に応じた損害額を算定しているのであって、この手法は相当である。
イ 控訴人(一審原告)らは、原判決が、一審原告らがBitTorrentの 仕組みを十分認識・理解していたと認定したことについて事実誤認であると主張す\nるところ、訂正の上引用した原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判 断」の1(2)のとおり、控訴人(一審原告)らは、BitTorrentを利用して ファイルをダウンロードした場合、同時に、同ファイルを送信可能化していること\nについて、認識・理解していたか又は容易に認識し得たのに理解しないでいたもの と認められ、少なくとも、本件各ファイルを送信可能化したことについて過失があ\nると認めるのが相当である。 そうすると、控訴人(一審原告)らが、本件著作物の送信可能化に関し、不法行\n為責任を負うとした原判決の判断は相当である。
(3) 争点2−1(共同不法行為に基づく損害の範囲)について
ア 一審被告は、本件各ファイルが最初にBitTorrentにアップロード されて以降の権利侵害の全てについて、一審原告らが責任を負う旨主張するが、一 審原告らと本件各ファイルをアップロードしている他の一審原告ら又は氏名不詳者 との間に共謀があるものでもないのであるから、一審原告らは、BitTorre ntを利用して本件各ファイルのダウンロードをする前や、BitTorrent の利用を終了した後においては、本件著作物について権利侵害行為をしていないの は明らかである。また、本件各ファイルの送信可能化による損害は、1ダウンロー\nドごとに発生すると考えられるところ、一審原告らがBitTorrentの利用 をしていない時期におけるダウンロードについてまで、一審原告らの行為と因果関 係があるなどということはできない。そうすると、一審原告らは、BitTorr entを利用して本件各ファイルのダウンロードをする前及びBitTorren tの利用を終了した後については、本件著作物の権利侵害について責任を負わない というべきであり、一審被告の上記主張は採用できない。
イ 一審原告X1らによる本件各ファイルのアップロードの終期について、別紙 「損害額一覧表」の「終期」欄記載の日(プロバイダからの意見照会を受けた日)\nと認定できるのは、訂正の上引用した原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁 判所の判断」2(3)記載のとおりである。これは、一審原告X1らの陳述書(甲15、 20の1)に基づき認定したものであるが、プロバイダからの意見照会を受けたこ とで怖くなり、BitTorrentのクライアントソフトを削除したり、Bit\nTorrentの利用を控えるのは通常の行動であり、上記各陳述書の内容に不自 然な点はない。
ウ 一審原告らは、BitTorrentの利用者が、ファイルのアップロード を24時間継続することはまずないことや、シーダーやピアが数百以上散在してい ることなどを踏まえ、本件の損害額については、例えば原判決の認定する額の10 0分の1などとして算定すべきと主張する。しかしながら、前記(1)及び(2)に判示 したとおり、一審原告X1らは、BitTorrentを利用して本件各ファイル をダウンロードしてから、BitTorrentの利用を停止するまでの間の本件 各ファイルのダウンロードによる損害の全額について、共同不法行為者として責任 を負うと認めることが相当である。また、BitTorrentの仕組みに照らす と、本件各ファイルのダウンロードキャッシュを削除するか、BitTorren tの利用を停止するまでの間は、一審原告X1らの端末にダウンロード済みの本件 各ファイルが送信可能な状態にあったのであるから、一審原告X1らが本件各ファ\nイルのダウンロードキャッシュを削除したこと又はBitTorrentの利用を 停止したことが認められる時点までは、一審原告X1らの不法行為は継続していた と認めるのが相当であり、本件では、一審原告X1らが、別紙「損害額一覧表」の\n「終期」欄記載の日よりも前の特定の日に、本件各ファイルのダウンロードキャッ シュを削除したことを認めるに足りる証拠はない一方で、一審原告X1らが、同別 紙の「終期」に記載の日より後はBitTorrentの利用をしていないことが 認められるから、同日までの間は、一審原告X1らは、本件各ファイルの送信可能\n化による不法行為を継続していたと推認することが相当である。 ところで、一審原告らは、正確なダウンロード数についての立証がない旨指摘す るが、正確なダウンロード数は不明であるものの、一審原告X1らが本件各ファイ ルを送信可能化していた期間におけるダウンロード数は、令和元年10月1日から\n令和3年5月18日までの間にダウンロードされた数から、別紙「損害額一覧表」\nの「5)期間中のダウンロード数」のとおりに推計することができるから、本件にお いては、当該ダウンロード数の限度で立証されているというべきである。

◆判決本文

原審はこちら。

◆令和2(ワ)1573

◆別紙1

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令和3(行ケ)10068  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年4月14日  知的財産高等裁判所

 パチンコ機について明確性違反とした拒絶審決が取り消されました。争点となったのは、「〜状態となる場合には前記第2操作手段の選択率が高く、〜状態とならない場合には前記第1操作手段の選択率が高い」という記載です。出願時は代理人なしの本人出願です。通常はこのレベルで審取まで争うことはやらないので参考になります。

以上を総合すると、本件発明の「前記演出制御手段は、前記可動体演出 を行う際に、前記当否判定の結果が大当りで、且つ大当り遊技の終了後に 前記特典遊技状態となる場合には前記第2操作手段の選択率が高く、前記 当否判定の結果が大当りで、且つ大当り遊技の終了後に前記特典遊技状態 とならない場合には前記第1操作手段の選択率が高い」との記載は、「前記 演出制御手段」が、「前記可動体演出を行う際に、前記当否判定の結果が大 当りで、且つ大当り遊技の終了後に前記特典遊技状態となる場合」には、 前記第1操作手段が操作されることを起因に可動体演出を行う選択をす るより、前記第2操作手段が操作されることを起因に可動体演出を行う選 択をする割合が高く、「前記当否判定の結果が大当りで、且つ大当り遊技の 終了後に前記特典遊技状態とならない場合」には、前記第2操作手段が操 作されることを起因に可動体演出を行う選択をするより、前記第1操作手 段が操作されることを起因に可動体演出を行う選択をする割合が高いこ とを規定したものと理解できる。 したがって、本件発明の「前記演出制御手段は、前記可動体演出を行う 際に、前記当否判定の結果が大当りで、且つ大当り遊技の終了後に前記特 典遊技状態となる場合には前記第2操作手段の選択率が高く、前記当否判 定の結果が大当りで、且つ大当り遊技の終了後に前記特典遊技状態となら ない場合には前記第1操作手段の選択率が高い」との記載は、その記載内 容が明確である。
(2) これに対し、被告は、1)請求項1の「前記演出制御手段は、所定の前記変 動演出の実行中に、前記第1操作手段又は前記第2操作手段が操作されるこ とを起因に前記可動体を所定の可動態様で作動せしめる可動体演出を行い」 との記載から、第1操作手段又は第2操作手段が操作されることを起因に可 動体を所定の可動態様で作動せしめる可動体演出を行うことを理解できるが、 第1操作手段と第2操作手段の両方が操作される場合や、その他の操作手段 が操作される場合が排除されていないため、上記記載は、「第1操作手段又は 第2操作手段が二者択一で選択される構成」を特定しているとはいえないし、\n仮に「第1操作手段又は第2操作手段が二者択一で選択される構成」を読み\n取れるとしても、そのことから直ちに、記載j1の「前記当否判定の結果が 大当りで、且つ大当り遊技の終了後に前記特典遊技状態となる場合には前記 第2操作手段の選択率が高く」との記載における「前記第2操作手段の選択 率」の比較対象や、記載j2の「前記当否判定の結果が大当りで、且つ大当 り遊技の終了後に前記特典遊技状態とならない場合には前記第1操作手段の 選択率が高い」との記載における「前記第1操作手段の選択率」の比較対象 が一義的に導かれるわけではない、2)本件明細書の【0012】及び【00 13】の記載は、請求項1の記載Jに対応しておらず、本件発明の解釈の根 拠とはならないから、記載Jを含む本件発明は、明確性要件に適合しない旨 主張する。
しかし、1)については、請求項1の「前記演出制御手段は、所定の前記変 動演出の実行中に、前記第1操作手段又は前記第2操作手段が操作されるこ とを起因に前記可動体を所定の可動態様で作動せしめる可動体演出を行い」 との記載が、「演出制御手段」が、第1操作手段と第2操作手段の両方が操作 される場合や、その他の操作手段が操作される場合について可動体演出を行 うことを規定しているものと読み取ることはできないし、請求項1の記載全 体をみても同請求項がそのように規定しているものと読み取ることはできな い。
また、前記(1)のとおり、本件発明の「演出制御手段」は、当否判定の結果 が大当りである場合、変動演出の実行中、第1操作手段が操作されることを 起因に可動体演出を行うか、又は第2操作手段が操作されることを起因に可 動体演出を行うかを選択するものと理解できることからすると、記載j1は、 「前記可動体演出を行う際に、前記当否判定の結果が大当りで、且つ大当り 遊技の終了後に前記特典遊技状態となる場合」について、「前記第2操作手段 の選択率」が「前記第1操作手段の選択率」よりも高いことを規定するもの と、記載j2は、「前記当否判定の結果が大当りで、且つ大当り遊技の終了後 に前記特典遊技状態とならない場合」について、「前記第1操作手段の選択率」 が「前記第2操作手段の選択率」よりも高いことを規定するものとそれぞれ 理解できるから、記載j1及びj2のいずれの記載についてもその比較対象 は明確である。 2)については、前記(1)のとおり、記載Jの記載内容が明確であることは、 本件明細書の【0012】及び【0013】を根拠とするものではないから、 被告の主張は前提を欠くものである。

◆判決本文

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令和2(ワ)19920等  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年1月19日  東京地方裁判所

 医薬品の用途発明について、請求項1,2については、実施可能要件・サポート要件違反として訂正が認められず、請求項3,4については均等侵害も否定されました。

医薬の用途発明においては,一般に,物質名,化学構造等が示されるこ\nとのみによっては,当該用途の有用性を予測することは困難であり,当該\n医薬を当該用途に使用することができないから,医薬の用途発明において 実施可能要件を満たすためには,明細書の発明の詳細な説明にその医薬の\n有用性を当業者が理解できるような薬理試験結果を記載する必要がある が,前記判示のとおり,本件明細書等には,本件化合物が神経障害性疼痛 又は心因性疼痛による痛覚過敏又は接触異痛の痛みの治療に有効である と当業者が理解し得るような薬理試験結果の記載は存在しない。
(3) 本件特許出願当時の技術常識
ア 本件明細書等には,本件化合物が侵害受容性疼痛による痛覚過敏又は接 触異痛に対して有効であれば,神経障害又は心因性による痛覚過敏又は接 触異痛についての薬理試験を要することなく治療効果が予測されること\nを明示又は示唆する技術常識の記載は存在しない。また,侵害受容性疼痛, 神経障害性疼痛,心因性疼痛などの種類を問わず,痛覚過敏又は接触異痛 などの痛みの発症原因や機序が同一であり,いずれかの種類の痛みに対し て有効な医薬品であれば,他の種類の痛みに対しても有効であることが本 件特許出願当時の当業者に知られていたなどの記載もない。
・・・・
上記各文献は,本件の技術分野に属する専門家により執筆されたもので あり,その当時の技術常識を反映した書籍であるというべきところ,上記 に摘示した各記載によれば,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛及び心因性 疼痛は,その発症原因,痛みの態様・程度及び治療方法がそれぞれ異なる というのが本件特許出願当時の技術常識であり,痛みの種類を問わず,痛 覚過敏又は接触異痛などの痛みの発症原因や機序は同一であり,いずれか の種類の痛みに対して有効な医薬品であれば,他の種類の痛みに対しても 有効であるとの技術常識が存在したということはできない。
ウ 以上によれば,本件化合物が神経障害又は心因性による痛覚過敏又は接 触異痛の痛みの治療に有効であることを示す薬理試験結果の記載もなく, 本件明細書等の記載に接した当業者が,本件化合物がこれらの痛みの治療 に有効であると認識し得たとは考えられない。
(4) したがって,本件明細書等の記載は訂正前発明1及び2を当業者が実施で きる程度に明確かつ十分に記載したものであるということはできず,実施可\n能要件を充足しない。\n
(5) 原告の主張について
これに対し,原告は,本件特許出願当時,慢性疼痛は,それが侵害受容性 疼痛,神経障害性疼痛又は心因性疼痛のいずれによるものであっても,末梢 や中枢の神経細胞の感作という神経の機能異常で生ずる痛覚過敏や接触異痛\nの痛みであるとの技術常識が存在したので,当業者は,本件明細書等の記載及 び同明細書等に記載された薬理試験から,本件化合物が同明細書等に記載さ れた各種の痛みに有用であると認識することができたと主張する。
・・・・
(オ) 以上によれば,上記(ア)ないし(ウ)の各記載から,侵害受容性疼痛,神 経障害性疼痛等で出現する痛覚過敏と,脊髄のNMDA受容体の活性化 による中枢性感作との間に関連性があるといい得るとしても,本件特許 出願当時,本件明細書等に記載された侵害受容性疼痛(炎症性疼痛,術 後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み,痛風,火傷痛等)や神経障害性 疼痛(三叉神経痛,急性疱疹性神経痛,糖尿病性神経障害,カウザルギ ー等)により出現する痛覚過敏がすべて末梢や中枢の神経細胞の感作と いう神経の機能異常により生じるとの技術常識が存在したとは認め難\nく,まして,これらの記載から,当業者が,薬理試験結果の記載もなく, 本件化合物が神経障害性疼痛の治療に有効であると認識し得たという ことはできない。
・・・・
原告は,被告医薬品が構成要件3B及び4Bの文言を充足しない場合であっ\nても,均等侵害が成立すると主張する。 しかし,相手方が製造等をする製品(対象製品)が,特許請求の範囲に記載 された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属すると認められる\nためには,当該対象製品が特許請求の範囲に記載された構成と異なる部分が特\n許発明の本質的部分ではないことを要する(第1要件)。 本件発明3及び4と被告医薬品との相違部分は,その用途にあるところ,同 各発明は,既知の薬物である本件化合物が,侵害受容性疼痛の治療に有効であ ることを新たに見出したことにあるので,その用途が同各発明の本質的部分を 構成することは明らかである。\nしたがって,被告医薬品は,第1要件を充足しないので,均等侵害は成立し ない。
7 まとめ
以上によれば,訂正前発明1及び2に係る特許は,実施可能要件及びサポー\nト要件の各違反を理由に特許無効審判により無効にされるべきものであり,本 件訂正は訂正要件を具備せず,同訂正によっても上記各無効理由が解消されな い。また,被告医薬品は,本件発明3及び4の技術的範囲に属しない。

◆判決本文

特許権は同じく、被告が異なる事件です。

◆令和2(ワ)19932

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令和3(ワ)5668 発信者情報開示請求事件 著作権 令和4年1月20日  東京地方裁判所

 著作権侵害がなされたツイート時のログイン時のIPアドレスに加えて、それ以外のツイート時のIPアドレスも、法4条1項所定の「権利の侵害に係る発信者情報」に該当するかが争われました。東京地裁は該当すると判断しました。

1 争点1(本件ログイン時IPアドレス等の「権利の侵害に係る発信者情報」 (法4条1項)該当性)について
(1) 原告が本件において開示を求める本件発信者情報は,本件各投稿に利用さ れた本件各アカウントを保有する者の電話番号及び電子メールアドレスのほか,本 件各アカウントにログインした際に割り当てられたIPアドレス及びそのタイムス タンプに係る情報であり,原告の本件各写真に係る公衆送信権侵害行為を構成する\n情報の送信時に割り当てられたIPアドレス及びそのタイムスタンプではない。そ こで,本件ログイン時IPアドレス等のようなログインする際に割り当てられたI Pアドレス及びそれが割り当てられたタイムスタンプが,法4条1項所定の「権利 の侵害に係る発信者情報」に該当するかが問題となる。
(2) 法4条1項は,特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害 されたとする者が開示関係役務提供者に対して開示を請求することのできる情報と して,「権利の侵害に係る発信者情報」と規定しており,権利侵害行為そのものに使 用された発信者情報に限定した規定ではなく,「係る」という,関係するという意義 の文言が用いられていることからしても,「権利の侵害に係る発信者情報」は,権利 侵害行為に関係する情報を含むと解するのが相当である。そして,法4条の趣旨は, 特定電気通信(法2条1号)による情報の流通には,これにより他人の権利の侵害 が容易に行われ,その高度の伝ぱ性ゆえに被害が際限なく拡大し,匿名で情報の発 信がされた場合には加害者の特定すらできず被害回復も困難になるという,他の情 報流通手段とは異なる特徴があることを踏まえ,特定電気通信による情報の流通に よって権利の侵害を受けた者が,情報の発信者のプライバシー,表現の自由,通信\nの秘密に配慮した厳格な要件の下で,当該特定電気通信の用に供される特定電気通 信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対して発信者情報の開示を請求すること ができるものとすることにより,加害者の特定を可能にして被害者の権利の救済を\n図ることにあると解され(最高裁平成22年4月8日第一小法廷判決・民集64巻 3号676頁参照),かかる趣旨からすると,権利侵害行為そのものの送信時点では なく,その前後に割り当てられたIPアドレス等から把握される発信者情報であっ ても,それが当該侵害情報の発信者のものと認められる場合には,「権利の侵害に係 る発信者情報」に当たると解すべきである。 被告は,ログイン行為と侵害情報そのもの送信行為とは全く異なる性質のもので あること等を理由に,法4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」には,ログイ ン時のIPアドレス等を含まないと主張する。 しかし,ログイン時のIPアドレス等であっても,当該ログインが侵害情報の発 信者のものと認められる場合には,当該ログイン時のIPアドレス等は侵害情報の 送信行為との関連性を有するということができ,したがって,当該ログインに係る IPアドレス等も法4条1項所定の発信者情報に当たるといえるのであるから,被 告の上記主張は採用することができない。 また,被告は,法4条1項の委任を受けた省令8号が「侵害情報が送信された年 月日及び時刻」と規定していることやログイン情報の送信が1対1の電気通信であ って,「特定電気通信」(法2条1号)に該当しないことからすると,ログイン時の タイムスタンプは開示が認められる発信者情報に該当せず,また,省令5号は省令 8号と整合的に解釈すべきであるから,省令5号にいうIPアドレスも侵害情報の 送信時に割り当てられたIPアドレスのみをいうのであって,ログイン時に割り当 てられたIPアドレスを含まないとも主張する。 しかし,省令5号及び8号に開示の対象となる発信者情報の特定を委任した法4 条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」は,権利侵害行為そのものの送信時点で はなく,その前後に割り当てられたIPアドレス等から把握される発信者情報であ っても,それが当該侵害情報の発信者のものと認められるものをも含むと解するこ とができることは前記説示のとおりである。また,省令5号は,法4条1項所定の 発信者情報に該当するIPアドレスにつき,「侵害情報に係る」と規定しており,侵 害情報の送信の際に割り当てられたIPアドレスに限定する規定ぶりとはなってい ないことからすれば,ログインの際に割り当てられたIPアドレスも「侵害情報に 係るアイ・ピー・アドレス」に該当するというべきである。そして,IPアドレス の開示を受けるだけでは発信者を特定することが不可能ないし極めて困難であって,\n発信者の特定には,当該IPアドレスを割り当てられた年月日及び時刻(タイムス タンプ)を必要とすることからすれば,省令8号の規定するタイムスタンプは,ロ グインの際のIPアドレスが割り当てられた電気通信設備からのログイン情報の発 信時のものを含むと解するのが相当であるというべきであって,被告の上記主張は 採用することができない。また,本件各投稿は不特定の者の投稿・閲覧が認められ るツイッター上にされたものであり,不特定の者によって受信されることを目的と する電気通信の送信といえることに照らし,「特定電気通信」該当性を否定する被告 の上記主張も採用の限りではない。
(3) 続いて,本件ログイン時IPアドレス等から把握される発信者情報が本件 各投稿の発信者のものと認められるかどうかを検討する。 弁論の全趣旨によれば,被告が提供するツイッターを利用するには,まず,アカ ウントを作成する必要があり,アカウントの作成には,ユーザID及びパスワード の設定が必要となること,ツイッターを利用する際は,ユーザID及びパスワード を入力して当該アカウントにログインすることが必要であり,当該アカウントの管 理者はスマートフォン等の各種デバイスを利用してツイッターにログインして当該 アカウントにツイート(投稿)していることが認められる。このようなツイッター の仕組みを踏まえると,法人や団体においてその営業や事業に利用する場合を除き, 複数人が共有して特定のアカウントを利用する可能性は極めて乏しく,また,本件\nにおいて複数人が本件各アカウントを共有して使用していることをうかがわせる事 情は見当たらない。そうすると,本件各アカウントはそれぞれ特定の個人が利用し ていたものであるというべきであり,本件各アカウントにそれぞれログインした者 と本件各投稿の各発信者とは同一の者であると認められ,本件IPアドレス等から 把握される発信者情報が本件各投稿の発信者のものということができる。 被告は,本件各投稿がされる前のログイン情報もさることながら,本件各投稿が された後の情報であって,本判決確定の時点で被告が保有する本件各アカウントへ のログインの際のIPアドレス等から把握される情報(最新ログイン時の情報)ま でをも「権利の侵害に係る発信者情報」ということはできないと主張する。 しかし,前記認定したツイッターの仕組みからすれば,本件各投稿を本件各アカ ウントの設定者がこれを第三者に譲渡したことがうかがわれるなどの特段の事情の ない限り,本件各投稿と開示を求めるログイン時の情報との前後関係,その時間的 間隔の程度等を考慮することなく,本件各アカウントにログインした際のIPアド レス等は,本件各投稿による権利の侵害に係る発信者の特定に資する情報に該当す るというべきであるところ,本件全証拠に照らしても,上記特段の事情の存在はう かがわれない。 以上からすると,本件各アカウントにログインした際のIPアドレス等の情報は, 最新のログインの時のIPアドレス等も「権利の侵害に係る発信者情報」に当たる というべきである。 そして,被告は,原告の著作権を侵害する本件各投稿に係る侵害情報の発信者と 同一の者によるものと認められる各通信を媒介し,その際に割り当てられた本件ロ グイン時IPアドレス等を保有する特定電気通信役務提供者であるから「開示関係 役務提供者」に当たるということができる

◆判決本文

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令和2(ワ)5616 特許権 令和4年1月25日  東京地方裁判所

 訂正後の発明について、技術的範囲に属しないと判断されました。

2 争点1(被告各製品の20ライン分のラインバッファは,「単一のVRAM」 を充足するか(構成要件D及びHの充足性))について\n
(1) 「単一のVRAM」の意義
ア 本件特許の特許請求の範囲における構成要件Dにおいては,「グラフィ\nックコントローラ」が,「該中央演算回路の処理結果に基づき,単一のVR AMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い,「該読み 出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成」すると\n規定されている。 また,構成要件Hにおいては,「グラフィックコントローラ」が,「前記\n単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度 を有する画像のビットマップデータ」を読み出し,「該読み出したビットマ ップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成」すること及び「前記単\n一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像 度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し,「該読み出したビット マップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成」することが規定され\nている(なお,構成要件Hにおける「前記単一のVRAM」との文言から,\n構成要件Dと構\成要件Hの「単一のVRAM」は同一の意義を持つものと 解される。)。
さらに,構成要件F,H,Jによると,「ディスプレイパネルの画面解像\n度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」は,「外部ディス プレイ手段」に表示するためのものであるといる。\nこれらの記載によれば,構成要件D及びHの「単一のVRAM」は,「グ\nラフィックコントローラ」により,「ビットマップデータの書き込み/読み 出し」がされるものであって,外部ディスプレイ手段に表示するための「デ\nィスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビット マップデータ」の書き込み/読み出しがされるものであり,前記「ディス プレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマッ プデータ」の全体を記憶することが可能なものと解するのが相当である。\nそして,前記1に認定した本件明細書の記載(特に段落【0115】,【0 117】,【0127】)も,その記載内容に照らせば,構成要件D及びHの\n「単一のVRAM」が,「ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像 度を有する画像のビットマップデータ」の全体を記憶することが可能なも\nのであるとの上記クレーム解釈に整合しており,同解釈を裏付けるものと 評価することができる。
イ 原告は,構成要件Hは,ビットマップデータの読み出しの具体的な方法\nについて何らの特定もしておらず,ディスプレイパネルの画面解像度と同 じ解像度を有する画像のビットマップデータを一挙に読み出すことを規 定したものとは解されない旨を主張する。しかし,特許請求の範囲の記載, 明細書の記載を検討すると,上記アに説示したとおり,「単一のVRAM」 は,「ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像の ビットマップデータ」の全体を記憶することが可能なものと認めるのが相\n当である。原告の上記主張は採用することができない。
(2) 「単一のVRAM」の充足性
以上のクレーム解釈を前提に,被告各製品が,構成要件D,Hの「単一の\nVRAM」を充足するかについて検討する。 前記前提事実のとおり,被告各製品は,データ処理手段としてのCPU(中 央演算回路)及び液晶コントローラ(グラフィックコントローラ)を備える ものであるところ,このCPU(中央演算回路)は,無線通信手段から受信 した信号(圧縮した通信信号)をデコードして画像データを展開し,拡大/ 縮小(補間/間引き)を適宜行って内蔵用表示データ及び外部用表\示データ を生成し,生成した表示データを同CPU(中央演算回路)に接続されたS\nDRAMに書き込み/読み出しを行い,その内蔵用表示データ及び外部用表\ 示データを液晶コントローラ(グラフィックコントローラ)に送信する構成\nを有している。しかして,この液晶コントローラ(グラフィックコントロー ラ)には,6個の2Mビット(256kバイト)DRAMが内蔵されている ところ,これは,外部表示用のラインバッファ(20ライン分)であり,画\n像全体を書き込み/読み出しするためのものではないというのである(被告 各製品の構成d)。\n
しかして,このような,被告各製品の液晶コントローラ(グラフィックコ ントローラ)が内蔵するDRAMは,少なくとも外部表示用にはラインバッ\nファ(外部表示手段に表\示するための画像全体を書き込み/読み出しするた めのものではない)として用いられるものであるから外部表示手段に表\示す るための「ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像 のビットマップデータ」の全体を記憶するものではないことは明らかである というほかない。 そうすると,被告各製品における上記DRAM(20ライン分のラインバ ッファ)は,「単一のVRAM」との文言を充足するものとは認められず,被 告各製品が,構成要件D及びHを充足するものとは認められない。\n

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令和3(ネ)1005 特許権侵害差止等請求控訴事件,同附帯控訴事件  特許権  民事訴訟 令和4年2月10日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 空調服の特許について、1審は侵害を認めました。1審被告は控訴しましたが控訴は棄却されました。1審(東京地裁29部)は、102条2項侵害について、貢献の程度および競合品の存在による覆滅を被告の利益約5600万円のうち10%の損害額を認定しました。控訴審も覆滅割合は同じです。また、1審は、侵害論が終わってからの無効主張について、時期に後れたと判断しましたが、控訴審も同様です。  

前記ア及びイの認定事実によれば,本件各発明が被告各製品の部分 にのみ実施されていること,電動ファン付きウェアの市場において, 他社の販売する被告各製品の競合品が存在していたことは,本件推定 の覆滅事由に該当するものと認められる。 そして,本件推定の上記覆滅事由に加えて,1)前記アで説示した とおり,本件各発明は,空調服の襟後部と首後部との間に形成される 開口部の大きさを襟後部の内表面に設けた一組の調整紐で調整する従\n来技術における一組の調整紐を,取付部を有する二つの調整ベルトに 置き換えて,一方の調整ベルトの取付部と他方の調整ベルトの複数あ る取付部のうちいずれか一つを取り付けることによって,襟後部と首 後部との間に形成される開口部の大きさを調整することを可能にし,\nより適切な空調服の冷却効果を,より簡単に得ることを目指したもの であり,開口部からの空気の排出の効率化という点では,従来技術の 延長線上に位置づけられるものであること,本件特許の出願当時,ボ タン及びボタンホール等を使用し,衣服におけるサイズを複数段階で 調整することは,周知慣用の技術であったことに照らすと,本件各発 明の技術的意義は必ずしも大きいものとはいえず,その作用効果も従 来技術と比較して大きなものとは認められないから,被告各製品にお いて本件各発明を実施した部分の顧客吸引力は高いものとはいえない こと,2)電動ファン付きウェアの市場における一審原告,一審被告及 び競業他社のシェアの割合(前記イ(ア)),3)一審被告における被告 各製品の広告宣伝の態様(甲3の1,6,乙57等)を総合考慮する と,被告各製品の購買動機の形成に対する本件各発明の寄与割合は1 0%と認めるのが相当であり,上記寄与割合を超える部分については 被告各製品の限界利益の額と一審原告の受けた損害額との間に相当因 果関係がないものと認められる。 したがって,本件推定は上記限度で覆滅されるものと認められる から,特許法102条2項に基づく一審原告の損害額は,被告各製品 の限界利益の額(5652万1465円)の10%に相当する565 万2147円と認められる。
・・・
当裁判所は,令和3年11月8日の当審第1回口頭弁論期日において,一審 被告が同年7月9日付け控訴理由書に基づいて提出した「無効理由5ないし9」 に基づく無効の抗弁(同理由書第3ないし第6記載)及び権利の濫用の抗弁 (同理由書第8記載)の主張について,一審原告の申立てにより,時機に後れ\nた攻撃防御方法に当たるものとして却下したが,その理由は,以下のとおりで ある。
(1) 一件記録により認められる本件訴訟の経緯等は,次のとおりである。
ア 一審原告は,平成30年7月6日,原審に本件訴訟を提起した。 一審被告は,同年11月12日の原審第1回弁論準備手続期日におい て,同年10月31日付け被告第1準備書面に基づいて,本件各発明 (請求項3及び9)に係る本件特許に明確性要件違反の無効理由(本件 の争点2−1)が存在するとして,特許法104条の3第1項の無効の 抗弁を主張した。その後,一審被告は,平成31年3月7日の原審第3 回弁論準備手続期日において,同年2月28日付け被告第3準備書面に 基づいて,上記無効の抗弁について,乙2公報を主引用例とする新規性 欠如及び進歩性欠如の無効理由(本件の争点2−2及び2−3)を追加 して主張した。 一審原告及び一審被告は,令和元年6月27日の原審第5回弁論準備 手続期日において,侵害論についての主張立証は終了した旨陳述した。 その後,本件訴訟は,同年7月19日の原審第6回弁論準備手続期日 から,損害論の審理に入った。
イ 株式会社サンエスは,令和2年10月15日,本件特許のうち,請求項 3ないし10に係る特許について,明確性要件違反(無効理由1),冒 認出願又は共同出願要件違反(無効理由2),公然実施発明(結び紐タ イプの空調服に係る発明)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由3), 乙2公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由4)(ただし,本件の 争点2−3とは,乙2公報記載の発明の内容,副引用例等の主張が異な る。)を無効理由として特許無効審判(無効2020−800103号 事件。以下「別件無効審判」という。乙104)を請求した。
ウ 一審被告は,令和2年10月22日の原審第14回弁論準備手続期日に おいて,同月16日付けの被告第10準備書面に基づいて,本件各発明 に係る本件特許に別件無効審判の無効理由1ないし4と同一の無効理由 が存在するとして,新たな無効の抗弁の主張をした。
原審は,同年12月18日の第15回弁論準備手続期日において,一 審原告の申立てにより,被告第10準備書面で追加された上記無効の抗\n弁の主張を時機に後れた攻撃防御方法に当たるものとして却下した。 原審は,令和3年1月28日の第16回弁論準備手続期日で弁論準備 手続を終結した後,同年2月26日の原審第2回口頭弁論期日において 口頭弁論を終結し,同年5月20日,一審原告の請求を一部認容する原 判決を言い渡した。
エ 一審被告は,令和3年5月20日,本件控訴を提起し,一審原告は,同 年6月3日,本件附帯控訴を提起した。 一審被告は,同年11月8日の当審第1回口頭弁論期日において,同年 7月9日付け控訴理由書に基づいて,本件各発明に係る本件特許に「無 効理由5」(別件無効審判の無効理由2と同じ),「無効理由6」(別 件無効審判の無効理由3と同じ),「無効理由7」(別件無効審判の無 効理由4と同じ),「無効理由8」(サポート要件違反)及び「無効理 由9」(実施可能要件違反)が存在するとして無効の抗弁の主張を追加\nし,また,権利の濫用の抗弁の主張を追加した。 これに対し一審原告は,同年8月26日付け控訴答弁書に基づいて一 審被告の「無効理由5ないし9」に基づく無効の抗弁及び権利の濫用の 抗弁の主張は,時機に後れた攻撃防御方法に当たるものであるから,却 下を求める旨の申立てをした。\n
オ なお,別件無効審判は,当審の本件口頭弁論終結時(令和3年11月8 日)において,特許庁に係属中である。
(2) 前記(1)の事実関係によれば,1)一審被告は,原審において,平成31年 3月7日の原審第3回弁論準備手続期日までに,本件各発明に係る本件特許 に明確性要件違反の無効理由,乙2公報を主引用例とする新規性欠如及び進 歩性欠如の無効理由(本件の争点2−1ないし2−3)が存在するとして無 効の抗弁を主張し,その上で,令和元年6月27日の原審第5回弁論準備手 続期日において,侵害論についての主張立証は終了したと陳述した後,同年 7月19日の原審第6回弁論準備手続期日から,本件訴訟は損害論の審理に 入ったこと,2)その後,一審被告は,令和2年10月22日の原審第14回 弁論準備手続期日において,本件各発明に係る本件特許に別件無効審判の無 効理由1ないし4と同一の無効理由が存在するとして,新たな無効の抗弁の 主張をしたが,原審が,同年12月18日の第15回弁論準備手続期日にお いて,上記主張を時機に後れた攻撃防御方法に当たるものとして却下したこ と,3)一審被告は,令和3年11月8日の当審第1回口頭弁論期日において, 控訴理由書に基づいて,本件各発明に係る本件特許に別件無効審判の無効理 由2ないし4と同じ無効理由である「無効理由5ないし7」,原審で主張し なかった「無効理由8」(サポート要件違反)及び「無効理由9」(実施可 能要件違反)が存在するとして無効の抗弁の主張をするとともに,新たに権\n利の濫用の抗弁の主張をしたこと,4)別件無効審判は,当審の本件口頭弁論 終結時において,特許庁に係属中であることが認められる。
以上を前提に検討するに,侵害論に関する抗弁の主張は,本来,原審に おいて適時に行うべきものであるところ,一審被告が,原審において,令和 元年6月27日の原審第5回弁論準備手続期日に侵害論についての主張立証 は終了したと陳述するまでの間に,当審で主張する「無効理由5ないし9」 に基づく無効の抗弁及び権利の濫用の抗弁の主張をしなかったことについて, やむを得ないといえるだけの特段の事情はうかがわれないから,当審におけ る上記無効の抗弁及び権利の濫用の抗弁の主張は,一審被告の少なくとも重 大な過失により時機に後れて提出された攻撃防御方法であるものというべき である。
そして,当審において,一審被告に上記無効の抗弁及び権利の濫用の抗 弁の主張を許すことは,一審原告に対し,上記各主張に対する更なる反論の 機会を与える必要が生じ,これに対する一審被告の再反論等も想定し得るこ とから,これにより訴訟の完結を遅延させることとなることは明らかである。 そこで,当審は,民事訴訟法297条において準用する同法157条1 項に基づき,一審被告の上記無効の抗弁及び権利の濫用の抗弁の主張を却下 したものである。

◆判決本文

1審はこちら。

◆平成30(ワ)21900

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平成30(ワ)4329等  損害賠償等請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年3月18日  東京地方裁判所

 二重まぶた形成用テープの特許権侵害で約2億4000万円の損害賠償が認められました。 ◆原告のウェブサイトには本件を含めて経緯が開示されています。
争点は、技術的範囲の属否、無効(104条の3)、損害額の認定、覆滅の程度などです。

 被告らは、原告製品の売上げが伸びずに損害が発生したのは、原告製 品及び被告各製品の競合品であるマイクロファイバー及びオリシキの販 売が開始されたからであり、特にマイクロファイバーは販売開始から現 在に至るまでに270万個が販売されるほどの人気商品であると主張す る。しかし、マイクロファイバー及びオリシキが販売されたのは、平成3 0年3月又は同年11月以降であり、前記(1)イ(ア)のとおり、被告各製 品の販売による本件特許権の侵害が認められた期間の一部にすぎない。 また、証拠(甲82)によれば、ドン・キホーテにおける原告製品の 販売はその販路全体の一部にすぎないと認められるところ、二重瞼形成 用アイテムの市場又はそのうち収縮食い込み型の商品の市場における原 告製品及び被告各製品の各シェアがどの程度のものであったかを認める に足りる的確な証拠はない。
さらに、証拠(乙75)及び弁論の全趣旨によれば、令和3年1月頃、 マイクロファイバーの広告には「累計販売数270万個突破」と記載さ れていることが認められるが、二重瞼形成用アイテムの市場又は収縮食 い込み型の商品の市場において販売された商品全体の個数が明らかでは ないから、上記の記載のみによってシェアを認定することはできないし、 前記(1)イ(ア)のとおり、マクロファイバーの販売が開始されたのは、被 告各製品の販売により本件特許権が侵害されたと認められる期間の半ば 頃である上、マイクロファイバーの販売個数の推移も明らかではない。 以上によれば、マイクロファイバー及びオリシキが販売されていたこ とのみをもって、推定の覆滅を認めるのは相当でない。
もっとも、前記(ア)a及びdのとおり、二重瞼形成用アイテムには接着 型、シャッター型及び収縮食い込み型が存在し、ドン・キホーテにおけ る販売数を見ても、原告製品、マイクロファイバー及びオリシキのほか にも、接着型の二重瞼形成用アイテムが相当数販売されており(ただし、 商品ごとに、これを1個購入することにより、どの程度の期間、二重瞼 を形成することができるかなどの条件が異なると考えられるため、販売 数を単純に比較することはできない。)、需要者は、収縮食い込み型の 被告各製品を購入することができない場合、同じく二重瞼形成用アイテ ムである接着型の商品やシャッター型の商品を購入することも十分に考えられる。そうすると、原告製品及び被告各製品の競合品が存在することに基づき、法102条2項により推定される損害額の10%について\n推定の覆滅を認めるのが相当である。

◆判決本文

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令和2(ワ)25127 著作権  民事訴訟 令和4年3月25日  東京地方裁判所

 「オーサグラフ世界地図」について、そもそも原告は共同著作者ではないと判断されました。

 著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学\n術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)をいい、 共同著作物とは、「二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その 各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」(同項12号) をいう。
そうすると、本件地図1ないし4が原告及び被告の共同著作物であり、原 告がこれらについての共有著作権及び著作者人格権を有するというためには、 原告の思想又は感情が本件地図1ないし4に創作的に表現されたと認められ\nる必要がある。
(2) 前記1(5)及び(6)のとおり、被告は、平成12年頃に、原告と本件覚書を 交わし、原告との共同研究が終了した後、原告と面会したり、直接連絡をと ったりしたことはなかったところ、原告に相談することなく、平成21年に 本件発表をし、その頃に本件地図1及び2が掲載された本件論文1を、平成\n29年に本件地図3及び4が掲載された本件論文2を、それぞれ作成したも のであり、原告は、被告の本件発表並びに本件論文1及び2の作成の事実を\n知らなかったものである。また、原告は、その本人尋問において、本件地図1ないし4自体を作成し たのは被告である旨供述している。したがって、仮に本件論文1に掲載された本件地図1及び2並びに本件論 文2に掲載された本件地図3及び4に著作物性が認められるとしても、本件 地図1ないし4は、原告の思想又は感情が創作的に表現されたものではなく、\n被告のみの思想又は感情が創作的に表現されたものと認めるのが相当であり、\n原告及び被告の各氏名が記載された本件論文1に掲載された本件地図1及び 2について、著作権法14条に基づき、原告及び被告が著作者であると推定 されたとしても、その推定は覆されるというべきである。
(3)ア これに対して、原告は、1) 本件論文1及び2は、原告及び被告を共同発 明者とする本件出願1ないし3の各願書に添付した明細書に記載された内 容に基づくものであり、本件論文1及び2に掲載された本件地図1ないし 4は、本件出願1ないし3の各願書に添付した図面と基本的に同一である こと、2) 本件発表の発表\者として原告の氏名が挙げられ、本件論文1の冒 頭に原告の氏名が、末尾に原告に対する謝辞が、それぞれ記載されている ことからすると、本件地図1ないし4は原告及び被告の共同著作物である と主張する。
イ しかし、上記1)について、本件出願1ないし3の各願書に添付した明細 書に従って本件地図1ないし4を作成できるとの事実を認めるに足りる証 拠はない。
また、前記前提事実(2)ないし(4)のとおり、原告は本件出願1ないし3 の各発明者の一人として名前が挙げられているが、発明とは「自然法則を 利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」(特許法2条1項)であり、 発明者はこのような技術的思想を創作した者をいうのに対し、著作物とは 「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)であ\nり、著作者は「著作物を創作する者」(同項2号)をいうことから、両者 が創作する対象は、それぞれ技術的思想と表現という異なるものである。\n仮に本件出願1ないし3が地図の作成方法に関する発明に係る出願であり、 本件出願1ないし3の各願書に添付した明細書に従って地図を作成するこ とができたとしても、上記発明に係る技術的思想の創作に関わったにすぎ ない原告の思想又は感情が当該地図において創作的に表現されたというこ\nとにはならない。
さらに、証拠(甲1、2、4ないし6)によれば、本件地図1及び3と 本件出願1の願書に添付した図面の【図10】のLC2、本件出願2の願 書に添付した図面の【図10】のLC2及び本件出願3の願書に添付した 図面のFIG.10のLC2とを比較すると、国境線及び地名の記載の有 無、各大陸の形状、位置関係等が少なからず異なっており、本件地図2及 び4と本件出願1の願書に添付した図面の【図9】、本件出願2の願書に 添付した図面の【図9】及び本件出願3の願書に添付した図面のFIG. 9とを比較すると、各大陸の形状、位置関係等が少なからず異なっている ことが認められる。地図が地形等を客観的に表現することを目的としたも\nのであることを考慮すると、仮に本件出願1ないし3の上記各図面に原告 の思想又は感情が創作的に表現されたといえるとしても、上記のような相\n違のある本件地図1ないし4にも同様に原告の思想又は感情が創作的に表\n現されたということは困難である。以上を総合すると、上記1)の事情をもって、原告の思想又は感情が本件地図1ないし4に創作的に表現されたというには足りないから、同事情は前記(2)の認定を左右するものではないというべきである。
ウ また、上記2)について、前記前提事実(5)のとおり、日本国際地図学会の 平成21年度定期大会のプログラムには、本件発表の発表\者として、被告 のみならず原告の氏名が記載されており、本件論文1の冒頭にも、被告の みならず原告の氏名が記載され、その末尾に「本研究の基礎はA氏との半 年間の共同研究によるものである。」と記載されている。しかし、被告は、その本人尋問において、被告が修士論文を作成した際、原告が被告に対してアイデアの盗用であるなどと主張したことがあったことから、原告に配慮して、上記のとおり、原告の氏名を記載するなどした旨供述しているところ、前記1(3)ないし(5)の経過に鑑みると、被告の上 記供述は信用することができるというべきである。そうすると、上記各記載の存在をもって、本件論文1に掲載された本件地図1及び2に原告の思想又は感情が創作的に表現されているということはできないから、上記2)の事情も前記(2)の認定を左右するものではない。
エ したがって、原告の前記アの主張は採用することができない。
(4) 以上によれば、本件地図1ないし4は、原告及び被告の共同著作物とは認 められないから、原告が本件地図1ないし4に係る共有著作権及び著作者人 格権を有するとはいえない。 087/091087

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令和1(ワ)5620等  特許権侵害差止等請求事件、不正競争行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年3月24日  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、キッティング作業を行うことでいずれかのプログラムが解放されて稼働するコンピュータについて、起動していない製品については、特101条の「その物の生産に用いる物」「その物の生産にのみ用いる物」ではないと判断されました。

イ 特許法101条1号について
 間接侵害について検討するに、特許法101条1号の「その物の生産にのみ用い る物」とは、抽象的ないし試験的な使用の可能性では足らず、社会通念上、経済的、\n商業的ないしは実用的観点からみて、特許発明に係る物の生産に使用する以外の他 の用途がないことをいうと解するのが相当である。 被告製品2)には、被告システムに使用される以外に、社会通念上、経済的、商業 的ないしは実用的であると認められる他の用途があるとはいえないから、被告製品 2)は「その物の生産にのみ用いる物」に該当する。
 被告らは、被告製品には、本件仕様2)のみならず、本件仕様1)及び3)があること、 被告製品は蒸気タービン発電システムの計測器として使用されていること、被告製 品のメイン基板として使用されているコンピュータは汎用的な小型コンピュータで あることから、拡張ボードと組み合わせることにより種々の用途に使用することが できることを指摘して、被告製品には他の用途がある旨を主張する。 しかし、被告システムに使用され、本件特許権侵害が問題となるのは被告製品のうち本件仕様2)に係るプログラムが現に稼働したものに限られるところ、前提事実(4)及び前記2 (1)のとおり、被告製品にインストールされている本件仕様1)〜3)に係るプログラ ムに対してキッティング作業を行うことでいずれかのプログラムが解放されて稼働 することになるが、同作業は被告フィールドロジック以外の者が行うことができず、 いったん設定された仕様の変更も、被告フィールドロジックが特殊ツールを使って 同作業を行い、再設定済みの機器を現地に送付するほかないのである。 そうであれば、本件仕様2)が稼働していない被告製品(本件仕様1)ないし3)のいずれも稼働していない製品も含む。)に関しては、被告システムに使用されるとはいえないから、「その物の生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)ないし「その物の生産に用いる物」(同条2号)に該当するとはいえない。
また、本件仕様1)ないし3)のいずれも稼働していない被告製品について、顧客の要望に応じて被告フィールドロジックが本件仕様1)又は3)に係るプログラムを解放する可能性はあり、そのような態様での被告製品の使用が、社会通念上、経済的、商業的ないしは実用的な用途でないとも認められない。\n
 一方、本件仕様2)に係るプログラムが現に稼働した被告製品2)については、前記のとおり、被告システムに使用されるものと認められるところ、被告製品2)の使用を続けながら、本件仕様1)又は3)に係るプログラムが稼働する使用を行うことはできないから、かかる使用を被告製品2)の他の用途ということはできないし、その他、被告らが指摘する用途は、いずれも被告製品2)の用途以外のものであるから、被告らの主張は採用できない。なお、被告らは、被告製品のうち本件仕様2)を稼働させた場合、太陽光発電システムのほかにも風力発電システム及び小水力発電システムにも使用される旨を主張するが、これを裏付ける証拠はなく、実用的な用途であるとは認められない。
ウ 前記イのとおり、本件仕様2)が稼働していない被告製品は、特許法101条 2号の「その物の生産に用いる物」に該当しない。また、本件仕様2)が稼働してい る被告製品2)については、同号に基づく間接侵害の成否を検討するまでもなく、前 記イのとおり、同条1号に基づく間接侵害が成立するものと認められる。

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令和3(ワ)6266  著作権侵害等に基づく発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年3月30日  東京地方裁判所

 被告は、プロ責法の「開示関係役務提供者」には該当しないとして、発信者情報の開示請求が否定されました。

 プロバイダ責任制限法は、4条1項において、「開示関係役務提供者」の 意義について「当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる 特定電気通信役務提供者」と定め、「特定電気通信による情報の流通によっ て自己の権利を侵害されたとする者」は、「侵害情報の流通によって当該開 示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであ」り(同項1号)、 かつ、「当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使 のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由が あるとき」(同項2号)に限り、開示関係役務提供者に対し、当該開示関係 役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報の開示を請求するこ とができる旨を規定し、また、同条2項において、開示関係役務提供者がそ のような請求を受けた場合には、原則として発信者の意見を聴かなければな らない旨を規定する。
これらの規定の趣旨は、発信者情報が、発信者のプライバシー、表現の自\n由、通信の秘密に関わる情報であり、正当な理由がない限り第三者に開示さ れるべきものではなく、また、これが一旦開示されると開示前の状態への回 復は不可能となることから、発信者情報の開示請求につき厳格な要件を定め\nた上で、開示請求を受けた開示関係役務提供者に対し、上記のような発信者 の利益の保護のために、発信者からの意見聴取を義務付けて、開示関係役務 提供者において、発信者の意見も踏まえてその利益が不当に侵害されること がないように十分に意を用い、当該開示請求が同条1項各号の要件を満たす\nか否かを慎重に判断させることとしたものと解される。 こうした「開示関係役務提供者」の意義及びプロバイダ責任制限法の定め の趣旨に鑑みれば、「開示関係役務提供者」については厳格に解すべきであ って、ある特定電気通信役務提供者が「開示関係役務提供者」に当たるとい うためには、当該特定電気通信役務提供者が用いる特定電気通信設備が侵害 情報の流通に供されたことが必要であると解すべきである。
(2) 判断
ア 被告TOKAIについて
(ア) 本件ツイート1の投稿について
原告らが被告TOKAIに対して開示を求める契約者の情報である本 件発信者情報1は、令和2(2020)年6月29日15時56分35 秒(UTC)頃及び同年8月16日7時49分52秒(UTC)頃に被 告TOKAIから(IPアドレスは省略)という発信元IPアドレスを 割り当てられていた契約者に関するものである。 この点、本件ツイート1が投稿されたのは、同年6月29日17時4 5分(JST。これをUTCに換算すると同日8時45分となる。)で あるから、本件発信者情報1のうち、同日15時56分35秒(UTC) 頃に関するものは、本件ツイート1の投稿から7時間余り後のものであ り、同年8月16日7時49分52秒(UTC)頃に関するものは、同 投稿から48日余り後のものである。したがって、被告TOKAIから 上記発信元IPアドレスを割り当てられた通信によるログインの状態下 で、本件ツイート1の投稿に係る通信がされたものと認めることはでき ない。
また、証拠(甲35、36、39、40、乙5の1)によれば、(I Pアドレスは省略)というIPアドレスに係るドメインには「t−co m.ne.jp」という文字列が含まれていたと認められるから、被告 TOKAIが割り当てるIPアドレスに係るドメインには、この「t− com.ne.jp」という文字列が含まれるものと推認される。そし て、当該文字列を含むドメインに係るIPアドレスが割り当てられた通 信によって本件アカウントにログインされた時刻は、その大半が17時 台から23時台までの間(いずれもUTC)であって、8時台(UTC) は見当たらない。したがって、本件ツイート1が投稿された令和2(2 020)年6月29日8時45分(UTC)頃に、被告TOKAIの電 気通信設備を経由する通信によって本件アカウントにログインがされた ものと認めることはできない。 かえって、証拠(甲40)によれば、本件ツイート1の投稿の直前の ログインに係る通信は「amazonaws.com」を含むドメイン のものであると認められ、これは、本件ツイート1の投稿に係る通信が、 被告TOKAIの電気通信設備以外の電気通信設備を経由してなされた ことをうかがわせる事情といえる。 以上によれば、被告TOKAIが用いる電気通信設備が本件ツイート 1の投稿に供されたことは認められないから、本件ツイート1の投稿に ついて、被告TOKAIが「開示関係役務提供者」に該当するとは認め られない。
・・・
ウ 原告らの主張について
(ア) 原告らは、侵害情報の投稿の通信に用いられた電気通信設備とログイ ンの通信に用いられた電気通信設備が同一であれば、当該電気通信設備 を用いる特定電気通信役務提供者は「開示関係役務提供者」に該当する 旨を主張する。しかし、仮に原告らの解釈を前提にしても、前記ア及び イのとおり、本件各ツイートが被告らの電気通信設備を経由して投稿さ れたとは認められないから、侵害情報の投稿の通信に用いられた電気通 信設備とログインの通信に用いられた電気通信設備が同一であるとは認 められない。したがって、原告らの上記主張は理由がない。 さらに、原告らは、侵害情報の投稿の通信に用いられた電気通信設備 が厳密に特定できなくとも、そのいずれかの電気通信設備を用いて投稿 されたことが明らかであれば、権利侵害を受けた者の権利回復を図ると いう観点からも、立証責任を緩和して、いずれの経由プロバイダに対す る発信者情報開示請求についても認められるべきであるとも主張する。 しかし、前記(1)のとおり、プロバイダ責任制限法4条1項は、情報の 発信者のプライバシー、表現の自由、通信の秘密に配慮した厳格な要件\nの下で、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特 定電気通信役務提供者に対して発信者情報の開示を請求することを認め たものと解されるから、権利侵害を受けた者の権利回復を図るという観 点のみを根拠として、その者の立証責任を緩和し、複数の経由プロバイ ダのうちいずれかの経由プロバイダの電気通信設備を用いて投稿された ことさえ立証されれば、いずれの経由プロバイダに対しても発信者情報 開示請求が認められると解するというのは、相当でないというべきであ る。原告らの主張は独自の見解というほかはなく、採用の限りではない。
(イ) 原告らは、さくらインターネット株式会社やアマゾンジャパン合同会 社が管理する通信網を経由した本件アカウントへのログイン(「sak ura.ne.jp」や「amazonaws.com」の文字列を含 むドメインによるIPアドレスが割り当てられた通信によるログインを 指すと解される。)は、本件ツイート1及び2の投稿者とは異なる別事 業者が提供する、本件アカウントと連携したツイッター専用アプリケー ションを用いて本件アカウントにログインしたものであって、上記投稿 者による通信ではないと主張する。しかし、本件全証拠によっても、原 告が主張する上記事実は認められないから、本件各ツイートの投稿の通 信に関する前記ア及びイの認定を何ら左右するものではない。
(ウ) したがって、原告らの前記(ア)及び(イ)の主張はいずれも採用すること ができず、その他原告らが種々主張するところを十分に考慮しても、前\n記(2)ア及びイの認定を左右するには至らない。

◆判決本文

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令和3(ネ)10049等  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和4年3月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審(東京地裁46部)では文言侵害として3600万円の損害賠償が認められましたが、知財高裁(2部)は、技術的範囲に属しない(均等含む)と判断しました。

3 争点1−1(被告製品のピンが,長手方向断面が「楕円形」(構成要件B,D)\nである先端部を有しているか)について
(1) 「楕円形」の一般的な意味について
ア 「楕円形」とは,「楕円状をなした形」をいい,「楕円」とは,「円錐曲線 (二次曲線)の一つ。幾何学的には,一平面上で二定点(F,F’)からの距離の和 (FP+F’P)が一定であるような点Pの軌跡。」を意味する(「広辞苑 第六版」 (平成20年1月11日発行,株式会社岩波書店)1705頁,乙2参照)。この点, 被控訴人が提出するウェブサイト「コトバンク」における検索結果に係る証拠(甲 2。令和元年5月30日印刷)では,「楕円形」について,「楕円状をなす形,ある いは,それに近い形。」(デジタル大辞典の解説),「楕円のような形。また,そのよ うな形のさま。小判がた。長円形。側円形。」(精選版日本国語大辞典の解説)とさ れている。 上記を踏まえると,一般に,「楕円形」とは,「楕円状をなした形」をいい,幾何 学上の楕円の形状がそれに含まれることはもとより,同形状とは異なるがそれに近 い形についても用いられる語であると解される。 もっとも,幾何学上の楕円の形状とは異なるがそれに近い形として,どのような 形が「楕円形」に含まれるか,「楕円形」の意味の外延は,上記の辞書的な意味から は明確とはいえない。
イ 上記に関し,「卵形(たまごがた)」は,「鶏卵に似た楕円形。」を意味する語 である(上記「広辞苑 第六版」1756頁,甲78参照)。なお,被控訴人が提出 するウェブサイト「コトバンク」における検索結果に係る証拠(甲77。令和3年 7月29日印刷)では,「卵形(たまごがた)」について,「鶏卵のような楕円形。ま た,そのような形のもの。たまごなり。」(精選版日本国語大辞典の解説),「鶏卵に 似た楕円形。たまごなり。らんけい。」(デジタル大辞典の解説)とされている。 また,「卵形(らんけい)」は,「たまごのような形。たまごがた。」を意味する語 である(上記「広辞苑 第六版」2933頁)。なお,上記証拠(甲77)では,「卵 形(らんけい)」について,「卵のような形。楕円の一方が少し細くなっている形。 たまごがた。」(精選版日本国語大辞典の解説),「卵のような形。たまごがた。」(デジタル大辞典の解説)とされている。 そうすると,「楕円形」の語は,「卵形」を含むものとして用いられることもある ものの,他方で,前記アの「楕円形」の意味において,「卵形」と同義である旨の説 明はもちろん例示としても「卵形」という説明がみられないことや,上記のとおり, 「卵形」の意味においても,限定なしで「楕円形」と同義であることは何ら示され ず,「鶏卵に似た」,「鶏卵のような」といった限定を付して「楕円形」という語が用 いられたり,「楕円の一方が少し細くなっている形」との説明がされていることも踏 まえると,「楕円形」は本来的な意味として「卵形」を含むものではないとみられる ところである。
ウ 以上によると,「楕円形」の語は,幾何学上の楕円の形状及びそれに近い形を いうものであるが,当該楕円の両端(当該楕円とその長軸が交わる2点をいう。)付 近の曲線を比較した場合に,その一方の曲率が他方の曲率より小さい形状(「卵形」 など。当事者の主張における「長手方向の端の一方が他方よりも緩い曲率の形状」。 以下「曲率に差のある形状」という。)を含むものとして「楕円形」の語が用いられ ているか否かは,明細書(図面を含む。)における当該「楕円形」の語が用いられて いる文脈等を踏まえて判断する必要があるというべきである。
エ これに対し,被控訴人は,「楕円形」の語が卵形等を含むものであると主張し て,インターネットでの画像検索の結果(甲10の1〜6)やウェブサイト等にお ける語の使用例(甲79〜84)を指摘するが,それらは一般に「楕円形」の語が どのような形を説明する際に用いられているかといった事情を示すものにすぎず, 「楕円形」の語が上記各証拠で示される各種の形をその意味として当然に含むこと を示すものとは解されない。
(2) 本件明細書における「楕円形」の語について
ア 本件明細書に,「楕円形」の意味について説明する記載等は見当たらない。 ただし,請求項1の発明においては先端部が「球形」とされ,本件明細書でも「球 形」と「楕円形」が使い分けられていることを踏まえると,少なくとも,本件発明 の「楕円形」は,円形(球形の断面)を含むものではなく,円形を含み得るような 広い意味の語ではないことは理解されるといえる。
イ(ア) 訂正の上引用した原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」 の1(2)を踏まえると,本件発明が解決しようとする課題は,従来技術について,矢 の先端部に「かえし」が存在することにより生じていた,1)矢を的から外すときに 丸釘のピンだけ的に残ってフィルムだけ引き抜かれてしまうという課題と,2)ダブ ル突入の場合に後ろの矢を引き抜くときにフィルムが丸釘のピンから抜け,後ろの 矢のピンが前の矢のフィルム内に残ってしまうという課題(以下,併せて「ピン抜 けの課題」という。)のほか,矢の先端部の頭部と円柱部の位置のずれやフィルム の重なりにより生じていた,3)上下方向の重心に偏りがあるという課題(以下「重 心の課題」という。)であると解される。
(イ) 本件発明の「長手方向断面が楕円形」という先端部の形状は,ピン抜けの課 題の原因が先端部の「かえし」の存在にあったとされていることを踏まえると,ピ ン抜けの課題の解決手段の一つとして採用されたものと理解されるところ,「かえ し」の存在をなくすという観点からは,先端部の形状は,幾何学上の楕円の形状で 足り,曲率に差のある形状である必要はない。したがって,ピン抜けの課題の解決 手段の一つであるという事情は,本件発明における「楕円形」の語が,曲率に差の ある形状を含むというべき積極的な事情には当たらない。むしろ,曲率に差のある 形状とした場合,具体的な形状次第では,的やダブル突入の場合の前の矢のフィル ムに曲率の差のある形状の先端部が残ってしまうという可能性が別途生じ,ピン抜\nけの課題の解決に支障が生じ得るともいえるところである。この点,本件明細書に は,先端部の形状について,「楕円形」としてどのような範囲内のものであればピン 抜けの課題が適切に解決されるかの判断の資料となり得るデータ等は,何ら記載さ れていない。
他方,本件明細書上,重心の課題の解決と「長手方向断面が楕円形」という先端 部の形状との関係は明確ではないが,重心の課題の原因の一つとして,矢の先端部 の頭部と円柱部との位置のずれが挙げられていることのほか,本件発明の効果等に 関し,請求項1の発明に係る実施例についてのものではあるものの,「ピンを従来 の丸釘から先端球形に変更することによって矢の長手方向の重心位置を矢の先端方 向に寄せることができた」ことが記載され,その変形例が本件発明に係るもので, 上記実施例と同様に従来の矢の丸釘と比較した丸ピンの重量等について具体的な記 載がされていることも考慮すると,「長手方向断面が楕円形」という先端部の形状 は,円柱部との位置のずれを解消しやすく,また,上下方向の重心に偏りがなく, かつ,従来の丸釘よりも先端部が後ろに長い形状であるために先端部が相対的に重 くなるといった観点から,重心の課題の解決手段の一つとして採用されたものと理 解することもあり得る。しかし,そのような観点からも,先端部の形状は,幾何学 上の楕円の形状で足り,曲率に差のある形状である必要はない。むしろ,曲率に差 のある形状とした場合,具体的な形状次第では,円柱部との位置の調整が困難にな ったり,上下方向の重心に偏りがなく,かつ,先端部が相対的に重くなるといった 特徴が十分に発揮できなくなり,重心の課題の解決に支障を生じ得るともいえると\nころである。この点,本件明細書には,先端部の形状について,「楕円形」としてど のような範囲内のものであれば重心の課題が適切に解決されるかの判断の資料とな り得るデータ等は,何ら記載されていない。
ウ 本件発明の実施例は,本件明細書の【0065】〜【0069】及び【図3】 のとおりであり,先端部の長手方向の断面は,請求項1の発明の実施例(同【図2】) の先端部の形状である「球形」の長手方向の断面である円を左右(矢の進行方向か らすると前後)に二つに分割してその間に長方形を挟み込んだような形(換言する と,「円」を左右に引き伸ばしたような形)であって,「小判型」や「俵型の断面」 などというべきものであり,幾何学上の楕円の形状とは異なるものの,長手方向の 両端の曲率を同じくするものである。上記の形については,本件明細書に実験結果 が記載されており,また,前記イ(イ)で指摘したような,ピン抜けの課題の解決や重 心の課題の解決に支障を生じ得るといった事情も認め難いものといえる。
(3) 構成要件B及びDの「楕円形」の意味及び文言侵害の成否について\n
ア 前記(1)及び(2)の点を踏まえると,構成要件B及びDの「楕円形」は,幾何\n学上の楕円の形状や,本件発明の実施例の形のような,楕円に近い形状であって長 手方向の両端の曲率を同じくする形状は含むものと解される一方で,曲率に差のあ る形状は含まないものと解するのが相当である。なお,これと異なる技術常識を認 めるべき証拠もない。
イ 被告製品のピンの先端部は,「長手方向断面が,前部が曲率の緩い曲線形状, 後部が略円錐形となるように円弧を描き,後部の円柱部との接合面が上下に角を有 し,前記後部の角と角とを直線で結んだ形状である先端部」(構成要件b)であり,\n曲率に差のある形状の一端を更に一定の範囲で切断した形状というべきものである から,構成要件B及びDの「楕円形」には含まれない。\nしたがって,被告製品が,文言上,本件発明の技術的範囲に属するとは認められ ない。
ウ 被控訴人は,曲率に差のある形状のピンの先端についても,1)「かえし」が ないため矢が抜きやすいこと,2)上下方向の重心が均等であり,また,3)従来技術 の釘形状の先端部と比べて錘として重くなり,矢全体の長手方向の重心を前寄りに 寄せることという本件発明の技術的意義を満たすものであるから構成要件B及びD\nの「楕円形」に含まれると主張するが,前記(1)及び(2)で認定説示した点に照らし, 上記1)〜3)を満たすことから直ちに上記「楕円形」に含まれるということはできな い(なお,被控訴人の上記主張によると,請求項1の発明に係る「球形」が,同時 に本件発明に係る「楕円形」に含まれることとなり得,この観点からも上記主張は 相当といい難い。)。 また,被控訴人は,本件で問題になっているのは,一般的に楕円形といえばどの ような形を最初に思い浮かべるかではなく,卵形や涙滴型のような,長手方向の端 の一方が他方よりも緩い曲率の形状を「楕円形」と表現するのか否かであると主張\nするが,被告製品の先端部の形状が本件発明の構成要件B及びDの「楕円形」に含\nまれるかという判断に先立って,まず,本件発明の構成要件の解釈として構\成要件 B及びDの「楕円形」の意味が問題となるのであるから,被控訴人の上記主張は, その前提を誤るものといえ,前記ア及びイの判断を左右するものではない。
4 争点1−2(均等侵害の成否)について
・・・・
(エ) 本件発明の構成要件A〜Eに加え,前記(ア)ないし(ウ)を踏まえると,本件発 明について,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分とは,\nピンと巻いたフィルムによって構成される吹矢において,構\成要件B〜Dのうち, 特に「長手方向断面が楕円形である先端部と該先端部から後方に延びる円柱部とか らなるピン」,「先端部に前記ピンの円柱部すべてが差し込まれ・・・たフィルム」 及び「前記フィルムの先端部に連続して前記ピンの楕円形の部分が錘として接続さ れた」という構成を採用することにより,ピン抜けの課題と重心の課題をともに解\n決するという点にあると解される。
(オ) 前記3で認定判断した構成要件B及びDの「楕円形」の意味及び弁論の全趣\n旨によると,本件発明の先端部の形状と被告製品の先端部の形状について,1)本件 発明では「楕円形」であるのに対し,被告製品では,曲率に差のある形状を基礎と して,「長手方向断面が,前部が曲率の緩い曲線形状,後部が略円錐形となるよう に円弧を描」く形状となっていること(なお,別紙乙第1号証のとおり,後部の略 円錐形となるような円弧について,一定の曲率が選択されているものである。乙3 の1・2,乙15参照)と,2)根元段差部分があることとにおいて,異なっている ということができる。 上記のうち1)について,前記3(2)イで指摘したところからすると,本件発明は, 少なくともピン抜けの課題の解決方法として,「長手方向断面が楕円形である先端 部」という構成を採用したものと解される。そして,同イ(イ)で指摘したとおり,「長 手方向断面が楕円形」という形状を曲率に差のある形状に変更した場合,ピン抜け の課題の解決や重心の課題の解決に支障を生じ得るともいえるところ,「楕円形」と してどのような範囲内のものであればピン抜けの課題が適切に解決されるかの判断 の資料となり得るデータ等は本件明細書に記載されていない。 そうすると,本件発明における前記3(3)で認定判断した意味での「長手方向断面 が楕円形」という先端部の形状の特定は,本件発明の本質的部分に含まれるものと いうべきであり,それを被告製品の先端部の形状に置き換えることは,本件発明の 本質的部分を変更するものというべきである。 ウ したがって,本件発明の構成中に,被告製品と異なる部分が存在するところ,\n異なる部分は本件発明の本質部分であるから,第1要件を満たさない。
(2) 第3要件について
また,本件全証拠をもってしても,本件発明の「長手方向断面が楕円形」という 形状を被告製品の先端部の形状に置き換えることについて,前記3(2)イ(イ)で指摘 したとおり,曲率に差のある形状への変更によりピン抜けの課題の解決や重心の課 題の解決に支障を生じ得るともいえる一方で,どのような範囲内の変更であればそ れらの課題がなお適切に解決されるかの判断の資料となり得る記載が本件明細書に ないにもかかわらず,当業者が被告製品の製造等の時点において上記置換えを容易 に想到することができたというべき技術常識等は認められない。 したがって,第3要件も満たさない。
(3) まとめ
したがって,その余の点について判断するまでもなく,均等侵害は成立しない。
(4) 被控訴人の主張について
ア(ア) 被控訴人は,第1要件について,「かえし」部分が存在せず,矢が的や前の 矢から引き抜きやすい滑らかな曲線状の長手方向断面形状を有する先端部と,当該 先端部の略中心部を円柱部が通る形状のピンを備えているという点が本件発明の本 質的部分であると主張するが,前記(1)ア及びイで認定説示したとおりであって,被 控訴人の上記主張は採用できない。それゆえ,上記主張を前提とする本件発明と被 告製品との一致点・相違点に係る被控訴人の主張も採用できない。 (イ) 被控訴人は,第1要件について,ピンの先端部の後方部の形状に着目したと いう点で本件発明は技術的思想として新しいなどとも主張するが,そのような着眼 点に本件発明の一つの特徴があるとしても,その上で,本件発明においては,課題 解決の方法として,「長手方向断面が楕円形」という先端部の形状が選択されたとい う事情を均等侵害の成否の検討においても無視することはできず,また,ピンの先 端部の後方部の形状に係る構成は,本件発明による複数の課題の解決のうちのいま\nだ一つにとどまるというべきものであるから,被控訴人の上記主張は,前記(1)イ及 びウの認定判断を左右するものではない。
イ 被控訴人は,第3要件について,本件発明は,矢が的や前の矢から引き抜き やすいピンの先端部を提供するものであり,そのためにはピンの先端部の形状は球 形や楕円形に限られず,「かえし」部分が存在せず,かつ,引き抜く際の抵抗がよ り小さくなるような滑らかな曲線状で形成されていればよいことは,当業者におい て容易に想到できるなどと主張するが,前記ア(ア)のとおり,本件発明の本質的部分 についての被控訴人の主張は採用できないから,当業者において容易に想到できる という被控訴人の上記主張は,その前提を欠くものであり,第3要件を満たさない というべきことは,前記(2)のとおりである。その余の被控訴人の主張も,本件発明 の本質的部分についての被控訴人の主張を前提とするものか,本件発明において課 題解決の方法として「長手方向断面が楕円形」という先端部の形状が選択されたと いう事情を無視するもので相当でないものであって,いずれも採用できない。

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1審はこちら。

◆平成31(ワ)2675

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令和2(ワ)11834  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年1月27日  大阪地方裁判所

 漏れていたのでアップします。原告のイラストをテレビに自作イラストとして投稿して、放映された事件で、著作権侵害として、34万円の損害賠償が認められました。著作権侵害の場合、特許などと異なり、故意・過失が侵害認定要件となっていますが、「検索サイトによる画像検索等の方法により特定の画像の制作者等を特定することは,特別の専門的知識等がなくとも比較的容易」と判断されています。  原告は,平成28年6月19日,自ら作成した本件イラストを原告筆名の名義で 開設する SNS「ツイッター」のアカウント(以下「原告アカウント」という。) により投稿してこれを公表した。\nまた,原告は,同年10月頃,イラスト集(以下「本件イラスト集」という。) を出版したが,本件イラスト集には掲載されたイラストの著作者名として原告筆名 が表示され,また,本件イラストもこれに掲載されている。\nさらに,本件イラストは,令和元年9月10日以降,「コンビニプリント」と称 するサービスにより,全国のコンビニエンスストアでその複製物を購入し得るよう になっているところ,そのサービス提供に当たり,原告筆名が著作者名として表示\nされている。(以上につき甲5〜8,当裁判所に顕著な事実)
・・・
前提事実(第2の2(2))によれば,原告は,本件イラストの著作者とし て,その著作権及び著作者人格権を有する者と認められる。 にもかかわらず,被告が,本件応募行為等に際し,本件データを原告に無断で 複製していまじんに提供し,また,いまじんに対し本件イラストの著作者が「X 2」である旨を伝えたことにより,本件番組の放送に際してはその旨の表示がさ\nれ,原告の実名又は原告筆名は著作者として表示されなかった。\n
イ 被告の故意又は過失の有無(争点1)
被告は,本件イラストの著作者ではなく,また,その主張を前提としても, SNS を通じて知り合っただけの人物から同人の作品としてデータの提供を受けた にとどまる。 本件応募フォーム,とりわけ本件注意書の記載内容(前記1(1))に鑑みれば, 本件番組がオリジナル作品の制作者本人による応募を前提とするものであること は容易に理解される。また,この趣旨を踏まえれば,仮に制作者本人以外の者が 応募する場合であっても,応募者が制作者本人の承諾等を得た上で応募すべきこ とが求められることも,やはり容易に理解し得る。さらに,日テレ及びその系列 局で本件番組が放送されること及び放送日時等も踏まえれば,本件番組が多くの 視聴者により視聴されることも容易に予想される。\n他方,昨今のインターネットをめぐる状況を踏まえると,SNS その他ウェブサ イト等を通じて,他人が作成したイラスト等の画像データを入手することは事実 上容易であり,また,検索サイトによる画像検索等の方法により特定の画像の制 作者等を特定することは,特別の専門的知識等がなくとも比較的容易である。
以上のような事情を踏まえれば,被告は,本件応募行為等に際し,本件イラス トに係る他人の著作権及び著作者人格権を侵害することのないよう,インターネ ット上の画像検索等の客観性を有する適切な方法により,その著作者ないし著作 権者を確認すべき注意義務を負っていたことが認められる。にもかかわらず,被 告は,その主張を前提としても,単に被告に本件データを提供した人物(P3) に本件イラストが同人の作品であることなどを直接電話等で確認したにとどま る。そうである以上,被告には,本件イラストに係る著作権(複製権)及び著作 者人格権(氏名表示権)の各侵害行為について,少なくとも過失が認められる\n(なお,原告は,複製権侵害につき,明示的には被告の故意を主張するにとどま るが,その主張全体の趣旨から,過失の主張も包むものと理解される。)。これ に反する被告の主張は採用できない。

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令和1(ワ)25550 設計図面の複製の差止め等請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年3月30日  東京地方裁判所

 原告は企画書の著作者ではないとして、著作権侵害が否定されました。

 原告は、本件企画書の作成に際して本件土地の開発計画を立案し、つくば 建設設計事務所等から提出された検討結果を総合的に取りまとめ、本件企画 書に落とし込む作業を行ったこと、建築計画等の制作において設計図面等の 著作権は発注者である取りまとめ会社に帰属する慣例があることから、原告 は本件企画書の著作者であると主張する。 しかし、単に計画を立案したというのみではアイデアの提供にとどまるし、 他社による検討結果を取りまとめ、本件企画書に落とし込む作業をしたとし ても、当該他社の創作的表現を本件企画書に記載したのみでは、当該作業を\n通じて、本件企画書に原告の思想又は感情を創作的に表現したことにはなら\nないというべきである。そして、本件全証拠によっても、原告が本件企画書 等の作成にどのように関与したのかは明らかではないから、本件企画書等が 「著作物」に該当するとしても、原告がこれを「創作」したと認めることは できない。したがって、原告が本件企画書等の「著作者」(著作権法2条1 項2号)であるとは認められない。 また、原告が主張するような慣例が存在することを認めるに足りる証拠も ないから、そのような慣例に基づいて原告が本件企画書等の著作者になると 認めることもできない。 以上の次第で、仮に本件企画書等に著作物性が認められるとしても、原告 は本件企画書等の著作者であると認めることはできない。

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令和2(ワ)32121  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年3月30日  東京地方裁判所

 写真の複製・翻案かが争われました。料理写真なので、構図なども一般的と判断されています。\n

 著作権法が、著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、\n文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(同法2条1項1号)をいい、 複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製 することをいう旨規定していること(同項15号)からすると、著作物の複 製(同法21条)とは、当該著作物に依拠して、その創作的表現を有形的に\n再製する行為をいうものと解される。 また、著作物の翻案(同法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、 その表現上の本質的な特徴である創作的表\現の同一性を維持しつつ、具体的 表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表\現す ることにより、これに接する者が既存の著作物の創作的表現を直接感得する\nことのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される。 そうすると、被告写真3が原告写真を複製又は翻案したものに当たるとい うためには、原告写真と被告写真3との間で表現が共通し、その表\現が創作 性のある表現であること、すなわち、創作的表\現が共通することが必要であ るものと解するのが相当である。
一方で、原告写真と被告写真3において、アイデアなど表現それ自体では\nない部分が共通するにすぎない場合には、被告写真3が原告写真を複製又は 翻案したものに当たらないと解される。そして、共通する表現がありふれた\nものであるような場合には、そのような表現に独占権を認めると、後進の創\n作者の自由かつ多様な表現の妨げとなり、文化の発展に寄与するという著作\n権法の目的(同法1条)に反する結果となりかねないため、当該表現に創作\n性を肯定して保護することは許容されない。したがって、この場合も、複製 又は翻案したものに当たらないと解される。
(2) 原告は、原告写真と被告写真3において共通する部分である共通点aない しfは創作性のある表現であるから、被告写真3は原告写真を複製又は翻案\nしたものに当たる旨主張するので、以下において判断する。
ア 共通点aについて
原告写真と被告写真3とは、被写体であるスティック春巻を2本ない し3本ずつ両側から交差させている点において共通する。 しかし、証拠(乙9)によれば、角度や向きを変えながら料理を順に 重ねて盛る「重ね盛り」という方法が存在することが認められるところ、 原告写真と被告写真3の被写体であるスティック春巻はいずれも細長い 形状を有するから、スティック春巻を盛り付ける場合に、上記の「重ね 盛り」の方法によってスティック春巻を数本ずつ交差させて配置するこ とは、スティック春巻の撮影する場合に一般的に行われるものであると いうことができる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8) によれば、共通点aと同様に、棒状の春巻を配置して撮影された写真が 複数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現は、\nありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点aは創作的表現であるとはいえないから、被告写\n真3の共通点aの部分が、原告写真の共通点aの部分を複製又は翻案した ものに当たると認めることはできない。
イ 共通点bについて
原告写真と被告写真3とは、2本のスティック春巻を斜めにカットして、 断面を視覚的に認識しやすいように見せ、さらに、チーズも主役でない程 度に見えるようにしている点において共通する。 しかし、具が衣に包まれているという春巻の形状に照らすと、春巻の 具を撮影するためには春巻をカットしなければならないし、その際、具 を強調するために、断面積が大きくなるよう、斜めにカットすることは、 スティック春巻を撮影する際に一般的に採用され得る手法ということが できる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8)によれば、 共通点bと同様に春巻を斜めにカットした断面を配置して撮影された写 真が複数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表\n現は、ありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点bは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点bの部分が原告写真の共通点bの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
ウ 共通点cについて
原告写真と被告写真3とは、端に角度がついた、白色で模様がなく、被 写体である複数本のスティック春巻とフィットする大きさの皿を使用して いる点において共通する。 しかし、証拠(乙10、11)によれば、白い器は料理の色を引き立て る効果があり、選択肢として基本的な色であること、料理の写真を撮影す る際には盛り付ける料理にぴったり合う大きさの皿を選択することが重要 であることが認められる。そうすると、白色で模様がなく、黄土色のステ ィック春巻とフィットする大きさの皿を使用することは、スティック春巻 の写真を撮影する上で一般的に行われ得るということができる。加えて、 証拠(甲25、26、乙2、8)によれば、共通点cと同様に、白色で模 様がなく、被写体である複数本のスティック春巻とフィットする大きさの 皿を使用して撮影された写真が複数存在すると認められることに照らすと、 上記の共通点に係る表現はありふれたものといわざるを得ない。\n以上によれば、共通点cは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点cの部分が原告写真の共通点cの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
エ 共通点dについて
原告写真と被告写真3とは、皿に並べた春巻を、正面からでなく、角度 をつけて撮影している点において共通する。 しかし、証拠(乙12)によれば、料理写真の構図として、料理を正面\nから撮影するのではなく、左右に回転させて左右向きに配置して、斜めの 方向から撮影する手法が存在することが認められる。そうすると、皿に並 べた春巻を、角度をつけて撮影することは、一般的に行われ得るというこ とができる。加えて、証拠(甲25、26、乙7、8)によれば、共通点 dと同様に、皿に並べた春巻を、角度をつけて撮影した写真が複数存在す ると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現はありふれたも\nのといわざるを得ない。 以上によれば、共通点dは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点dの部分が原告写真の共通点dの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
オ 共通点eについて
原告写真と被告写真3とは、撮影時に光を真上から当てるのではなく、 斜め上から当てることで、被写体の影を付けている点において共通する。 しかし、証拠(乙13)によれば、料理写真の撮影方法として、料理の 斜め後ろから料理に光を当て、料理上部を明るく照らすとともに手前側を 暗くして立体感を生じさせる斜め逆光という手法が存在すること、斜め逆 光は料理写真で最もよく使われるライティングであることが認められる。 したがって、被写体に影を付け、立体感を醸成するという撮影方法は、春 巻を含む料理の写真を撮影する上で一般的に用いられ得る手法であるとい うことができる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8)によ れば、共通点eと同様に、斜め逆光の手法を用いて撮影された春巻の写真 が多数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現は\nありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点eは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点eの部分が原告写真の共通点eの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
カ 共通点fについて
原告写真と被告写真3とは、葉物を含む野菜を皿の左上のスペースに置 いている点において共通する。 しかし、揚げ物である春巻に、野菜が付け合わせとして盛り付けられ ることは、一般的に行われることであるといえるから、春巻の写真を撮 影する際に野菜が皿の隅のスペースに置かれることもまた、一般的に行 われることということができる。現に、証拠(甲25、26、乙2、6 ないし8)によれば、上記の共通点と同様に配置された春巻の写真が複 数存在することが認められる。そうすると、上記の共通点に係る表現は\nありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点fは創作的表現であるとはいえないから、被告写\n真3の共通点fの部分が原告写真の共通点fの部分を複製又は翻案したも のに当たると認めることはできない。
キ 全体的観察
前記アないしカのとおり、共通点aないしfはいずれも創作的表現であ\nるとは認められないから、これらの共通点を全体として観察しても、原告 写真と被告写真3との間で創作的表現が共通するとは認められない。\n
ク 小括
以上の次第で、原告写真と被告写真3は、ありふれた表現が共通するに\nすぎず、原告写真と被告写真3との間で創作的表現が共通するとは認めら\nれないから、被告写真3が原告写真を複製又は翻案したものに当たるとは 認められない。

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令和3(ネ)10075 意匠権侵害差止等請求控訴事件  意匠権  民事訴訟 令和4年3月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 先使用権ありとして意匠権侵害は成立しないとした1審判断が維持されました。

 控訴人は,ダイセン又はWuxi社が本件出願前意匠の存在について悪意 であったから,本件出願前意匠に類似する原告意匠についても悪意であった といえ,原告意匠と類似する被告製品の意匠についてダイセンに先使用権は 成立しない旨主張する。 しかしながら,当時ダイセンの営業部長であったCの陳述書(乙38)に よれば,ダイセン及びWuxi社は,被告製品の開発に当たって,本件出願 前意匠に接する機会はなく,既に市販されていた洗面台用ごみ受けの構成\n(原判決別紙公知意匠目録1ないし3)を参考としつつ,打合せの最中に, つまみ部分があったほうが取り外しやすいという意見が出たことから,取り 外しの便宜のためにつまみ部を付加することにしたことが認められる。かか る開発の経緯は,排水口のごみ受けの分野全般において,円状のフィルタの 周囲につまみ部を設ける構成が珍しくなかったこと(同目録4〜13)に照\nらしても,何ら不自然ではない。 他方,前記第3の2(1)の控訴人の主張が事実であったとしても,被告製品 の開発の過程でWuxi社が本件出願前意匠に接し得たことをうかがわせる 事情(例えば,Wuxi社と控訴人の中国の協力会社との間に人的つながり や地理的近接性があったこと等)は,本件証拠上全くうかがわれない。控訴 人の主張は,ほぼ同じ時期に,同じ中国で製品の開発が行われていたという だけの事実に基づいて,Wuxi社は本件出願前意匠の存在を知ったはずだ とするものであり,到底採用することができない。
(2) 以上によれば,本件出願前意匠と原告意匠との同一性や,原告意匠と被告 製品の意匠との類似性を問うまでもなく,ダイセン又はWuxi社は,意匠 登録出願に係る意匠(原告意匠)「を知らないで」被告製品の意匠を創作し たと認められるから,この点において先使用権の成立要件は充足されている。

◆判決本文

1審はこちら。  

◆令和2(ワ)11491

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令和3(行ケ)10087  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年3月22日  知的財産高等裁判所

 本件商標は、指定商品が「フランス製の被服・・」となっています。これに対して不使用取消審判が請求されました。審決は、使用していた商品がフランス製ではないとして、不使用としました。知財高裁はこれを維持しました。商標は、「IRO PARIS」です。

2 登録商標を使用すべき商品について
(1) 商標法50条2項によれば,本件の場合,商標権者たる原告が本件商標の 登録取消しを免れるためには,本件指定商品のいずれかについての本件登録 商標の使用の事実を証明しなければならない。そして,使用の事実は本件指 定商品と同一の商品に限られるのであって,指定商品に類似する商品につい ての使用の事実を証明しても,登録取消しを免れ得ないことは,同条項の文 理上明らかである。商標権のうち禁止権に係る部分すなわち類似部分の使用 は,権利としての使用でなく事実上の使用であるため,商標法50条の意図 する登録商標の使用義務の履行とは認められないからである。 なお,商標法50条2項の適用に当たり,使用する商標については商標法 38条5項かっこ書きが適用されるため,「登録商標と社会通念上同一と認 められる商標」の使用であっても登録取消しを免れ得るが,いかなる商品に ついての使用であるかに関しては商標法に同旨の定めはないから,上記「社 会通念上同一」とは登録商標に関する記述であって,「指定商品と社会通念 上同一と認められる商品」について使用の事実を証明しても,商標の登録取 消しを免れることはできないと解される。
(2) そして,本件指定商品は,「フランス製の被服」であり,「フランス製」 とは,フランス国内で製造された物を意味すると解されるところ,前記認定 のとおり,本件使用商品は,フランス国以外の国で製造された物であるから, 本件使用商品の使用によっては本件指定商品について本件登録商標を使用し たものと認めることはできないというべきである。
3 原告の個別の主張について
(1) 原告は,本件使用商品がフランス国以外の国で製造されたことを自認しつ つも,フランス国で企画,デザイン及び品質管理が行われていることを理由 に,「フランス製の」被服等に当たると認められるべきであるとして,前記 第3の1及び2のとおり種々の主張をする。 しかしながら,同主張に係る事実関係を前提としても,原告の主張は,結 局のところ,本件使用商品(フランスで企画等が行われた被服等)は本件指 定商品(「フランス製の」被服等)と類似すること,あるいは社会通念上同 一と認められることを理由に,本件商標の登録取消しを免れ得ると主張する に等しいものであり,上記のとおり,商標法50条2項の文理に反するから, 採用できない。そして,このことは,商品の原産地表示に関する不正競争防\n止法,関税法並びに不当景品類及び不当表示防止法の一般的な運用(乙2,\n3,5〜8,11)に照らしても明らかである。
(2) 商標審査便覧に係る主張(前記第3の3)につき
原告は,商標審査便覧において,商標法4条1項16号の拒絶理由を解消 するための補正として指定商品に「○○製の」との限定を付すことが示され ているところ,この限定が「製造された」の趣旨であるとは明記されていな いことを指摘する。 しかしながら,商標審査便覧の内容が当裁判所における商標法の解釈適用 を左右しないことは当然である。また,原告の指摘箇所において,「○○製 の」との限定を付す補正は一例として教示されているにすぎないと解され, 現に,「イタリア製の」との限定を付す補正を教示する拒絶理由通知書(甲 21の2)に対して「イタリアにてデザインされイタリア国法人としての出 願人による厳格かつ恒常的な品質管理の下で出願人の指示に従って生産され た」等の限定を付す補正を行い登録査定に至った登録第6430949号 (甲21の3)のような例もみられるのであるから,商標出願の実務におい て,「○○製の」と「〇〇国でデザインされた」等とは区別されているとい うべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(3) 商標法50条の趣旨に係る主張(前記第3の4)につき 確かに,上記認定の事実関係を前提とすれば,本件使用商品はフランス国 で企画等がされた被服等であって「フランス製の」被服等と著しく類似する から,商標の使用を通じた信用の蓄積がない商標を整理しようとする商標法 50条の趣旨に照らして,本件商標の登録を取り消すことはいささか酷であ るともいえる。また,本件商標の場合,出願人(原告)が「フランス製の」 との限定を付す補正をしたのは商標法4条1項16号の拒絶理由を解消する ためやむなく行ったことにすぎず,例えば「フランスで製造,企画,デザイ ン又は品質管理された」のような限定を付す補正が拒絶理由通知書や商標審 査便覧等において教示されていたとすればそれに従った可能性が高い,とい\nう事情もある。 しかしながら,そのような事情があるとしても,前記2のとおり,商標法 50条2項の文理からすれば,「指定商品」を「指定商品と社会通念上同一 と認められる商品」に拡張解釈することは認められないのであるから,かか る拡張解釈を排した本件審決の判断に誤りはない。 なお,原告は,商標法2条1項1号における「商標」と「標章」との使い 分けを根拠に,「社会通念上同一と認められる商標」とは「『社会通念上同 一と認められる標章』が,『社会通念上同一と認められる商品』について使 用されている」と解釈されるべきとも主張するが,独自の解釈であって採用 することができない。
(4) 特許庁における審査実務の一貫性に係る主張(前記第3の5)につき 原告は,外国の地名を含む商標の出願に対して商標法4条1項16号該当 の拒絶理由通知がされた後,「○○製の」ではなく「○○でデザインされ た」等の限定を付す補正によって登録査定に至った例があると主張する。 しかしながら,そのことは,当該補正によって商標法4条1項16号該当 の拒絶理由が解消したと判断されたことを示すにすぎず,「○○でデザイン された」等と「○○製の」とが同義であると判断されたことを示すわけでは ない。したがって,原告の上記主張は,上記2の判断を何ら左右しない。

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令和3(行ケ)1005 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年3月28日  知的財産高等裁判所

 スマホの操作関連の発明について、公然実施発明から進歩性無しと判断した審決が維持されました。無効審判請求人(本件被告)はApple Japanです。

 公然実施発明と甲3発明1は、技術分野や作用機能を共通にし、甲\n3文献に接した当業者であれば、公然実施発明には、スリープ状態にお いてホームボタンを押してから認証を経てデバイスにアクセスできるま での一連の動作に関して、デバイスのホームスクリーン又はメニューを 表示する前に、本人認証のためにパスコードの入力を要求することは、\nパスコードが知られたり、パスワードを忘れたりするという、甲3発明 1と共通の技術課題が存在することを想起するものといえ、公然実施発 明において、許可されていない人物がユーザの個人情報にアクセスし、 閲覧することを防ぐため、デバイス機能を有効にする前又はデバイスリ\nソースにアクセスする前の起動時に、デバイスが迅速にユーザを認証す\nることを目的とした甲3発明1を適用する動機付けがあるといえる。
(イ) 原告は、前記第3の1(1)イ(イ)のとおり、公然実施発明では、本件 発明1のように、使用者識別機能を、使用者の操作以外の追加の操作を\nすることなく、実行するという技術思想は全くない旨主張するが、前記 (ア)のとおり、甲3発明1に接した当業者であれば、公然実施発明が有 する技術課題及び甲3発明1の適用を想起するものといえ、原告の主張 する当初の技術思想の相違は、その後の技術適用の動機付けの有無と直 接関係するものとはいえないから、原告の上記主張は当を得ないという べきである。
また、原告は、公然実施発明において、ディスプレイがオンにされた 後に、更にディスプレイ上のスライダをドラッグすることで初めて認証 を実行することには、ユーザの誤操作(意図せざる操作等)による誤動 作を防止するという意義があるから、これを改変して本件発明1のよう に構成することは、公然実施発明の技術的意義・機能\を損なう旨の主張 もするが、甲3発明1の使用者識別機能を採用し、指紋によるユーザ認\n証をしても、認証に係る誤操作は防止できるから、公然実施発明の技術 的意義・機能を損なうことにはならない。なお、仮に、原告がホーム画\n面の誤作動防止に係る機能をも指摘しているとしても、そもそも本件発\n明1においては、ロック画面からホーム画面への移行の仕方については 何ら規定していないから、操作入力を行った使用者が正当な使用者と認 証された場合に、ディスプレイ上のスライダをドラッグすることで初め てホーム画面に移行する構成も本件発明1の構\成に含まれることにな り(現に本件明細書の図1等においてもスライダが表示されているとこ\nろである。)、スライダを取り除く改変をしなければ本件発明 1 の構成\nに至らないわけではないから、原告の主張は前提を誤るものといえる。 したがって、原告の主張は、いずれにしても採用できない。
エ 公然実施発明に甲3発明1を適用した場合に、本件発明1の構成に容易\nに想到するかについて
(ア) 甲3発明1において、指紋による認証の結果を得るには一定の時間 を要することは、明らかである。また、公然実施発明に甲3発明1を適 用することで、ホームボタンを押下すると、起動によりディスプレイが オンになり、それと同時に指紋認証を行い(別紙4のA図右及びB図1 左)、認証が成功すれば、追加の操作を要することなく、更にホーム画面 に移行するという構成を得ることが可能\である(別紙4のB図1右)。 そして、本件発明1で特定されるロック画面は、「前記非活性状態の際 になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて」「表示さ\nれ」るものであって、ロックが解除されていない状態を表示する機能\以 外は特定されていない。そうすると、公然実施発明に甲3発明1を適用 したものにおいて、ホームボタンの押下後、オンになったディスプレイ にホーム画面に移行する前に表示される画面も、客観的にロックが解除\nされていない状態を表示するものであり、これを「ロック画面」という\nことができる。したがって、公然実施発明に甲3発明1を適用した場合、使用者によ る追加の操作なしに、指紋認識による使用者識別機能が、非活性状態か\nらロック画面が表示された活性状態への切り替えのための操作入力によ\nり行われるという、本件発明1の構成に容易に想到するということがで\nきる。
(イ) 原告は、前記第3の1(1)イ(ウ)aのとおり、甲3発明1においても、 ロックを解除するために画面上のスライダのドラッグ操作を受け付け る構成となっているから、公然実施発明に甲3発明1を組み合わせた場\n合には、当業者は、公然実施発明と甲3発明1の共通の技術思想をなす 上記構成を残しつつ甲3発明1の指紋認証を行うことを想到すること\nになり、ディスプレイが活性化された後にスライダのドラッグという追 加の操作を要することになるから、本件発明1の構成とはならない旨主\n張する。しかし、前記イ(ア)aのとおり、甲3文献からは、ホームボタンの背 後にセンサを配置し、ユーザが当該ホームボタンを押下した時に、ユー ザからの明示的な入力を要求することなく、指紋による認証を行う構成\nも、甲3発明1として認定することができるのであるから、原告の主張 は採用できない。
(ウ) 原告は、前記第3の1(1)イ(ウ)bのとおり、公然実施発明の構成に\nおいては、ロック状態の画面を表示させ、その画面上に表\示されるスラ イダがドラッグされたときに初めて、次のパスコードの入力画面に移行 し、パスコードを入力させて認証を行う、という一連の認証操作を行わ せるものであるから、公然実施発明の使用者識別機能に係る手順のうち\nロック状態の画面上でのスライダをドラッグする処理を排除するので あれば、ロック画面も用いない構成しか想到できない旨主張する。\nしかし、前記(ア)のとおり、「ロック画面」自体は、ロックが解除さ れていない状態を示す画面であり、スライダのドラッグ操作とロック画 面の表示を不可分一体のものとして捉えなければならない理由はない\nから、原告の主張は採用できない。
(エ) 原告は、前記第3の1(1)イ(ウ)cのとおり、公然実施発明のロック 画面は、パスコードの入力における意図せぬ誤操作を防止する意義・機 能があるとした上で、甲3発明1の「シームレス」に使用者識別機能\を 行う構成とは両立しない旨主張する。しかし、公然実施発明において、\n甲3発明1の使用者識別機能を採用し、ロック解除する時に指紋による\nユーザ認証をしても、偶発的な誤操作等は防止できることは前記ウ(イ) のとおりであって、原告の主張は採用できない。
(オ) 原告は、前記第3の1(1)イ(ウ)dのとおり、別紙4のB図1左には スライダが表示されているところ、指紋認証に成功した場合に「当該成\n功後に直ちにホーム画面に遷移する構成」であるとされる以上、スライ\nダの機能は利用されず、当業者がそのように何ら機能\を発揮しないスラ イダをあえて表示させる構\成を考え付くとすれば、本件発明1を見た上 での後知恵である旨主張する。
原告の主張の真意は判然としないが、そもそも本件発明1においては、 ロック画面からホーム画面への移行の仕方については何ら規定してい ない(したがって、この場面におけるスライダの表示の有無やその利用\nの有無等についても何も限定はない)ことは前記ウ(イ)において説示し たとおりであるところ、被告の主張如何にかかわらず、公然実施発明に 甲3発明1を組み合わせた場合に、正当な使用者と認証されたときに、 スライダを利用しようとしなかろうと、どちらにしてもロック画面から ホーム画面へ移行させることが可能であること自体は明らかであるか\nら、原告の主張は失当というほかない。
(4) 小括
その他原告がるる主張する点は、いずれもその前提に誤りがある、あるい は理由がないものであり、採用できない。 以上によれば、相違点1についての容易想到性を認めた本件審決の判断に 誤りはないから、原告主張の取消事由1は理由がない。

◆判決本文

関連事件です。

◆令和3(行ケ)10054
本件の侵害事件です。

◆令和3(ネ)10081
上記控訴審の1審です。104条の3で権利行使不能と判断されています。\n

◆平成31(ワ)647

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平成31(ワ)11108  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和4年3月11日  東京地方裁判所

 赤い靴底のハイヒールで有名なルブタンがコピー品の差止、損害賠償を求めました。裁判所は、被告ハイヒールはマニュキュアのような光沢がある赤色ではないとして、請求を棄却しました。

 不競法2条1項1号は、他人の周知な商品等表示(人の業務に係る氏名、\n商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示す\nるものをいう。以下同じ。)と同一又は類似の商品等表示を使用等すること\nをもって、不正競争に該当する旨規定している。この規定は、周知な商品等 表示の有する出所表\示機能を保護するという観点から、周知な商品等表\示に 化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得す る行為を防止し、事業者間の公正な競争等を確保するものと解される。そし て、商品の形態(色彩を含むものをいう。以下同じ。)は、特定の出所を表\n示する二次的意味を有する場合があるものの、商標等とは異なり、本来的に は商品の出所表示機能\を有するものではないから、上記規定の趣旨に鑑みる と、その形態が商標等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能\を 発揮するような特段の事情がない限り、商品等表示には該当しないというべ\nきである。そうすると、商品の形態は、1)客観的に他の同種商品とは異なる 顕著な特徴(以下「特別顕著性」という。)を有しており、かつ、2)特定の 事業者によって長期間にわたり独占的に利用され、又は短期間であっても極 めて強力な宣伝広告がされるなど、その形態を有する商品が特定の事業者の 出所を表示するものとして周知(以下、「周知性」といい、特別顕著性と併\nせて「出所表示要件」という。)であると認められる特段の事情がない限り、\n不競法2条1項1号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。\n
そして、商品に関する表示が複数の商品形態を含む場合において、その一\n部の商品形態が商品等表示に該当しないときであっても、上記商品に関する\n表示が全体として商品等表\示に該当するとして、その一部の商品を販売等す る行為まで不正競争に該当するとすれば、出所表示機能\を発揮しない商品の 形態までをも保護することになるから、上記規定の趣旨に照らし、かえって 事業者間の公正な競争を阻害するというべきである。のみならず、不競法2 条1項1号により使用等が禁止される商品等表示は、登録商標とは異なり、\n公報等によって公開されるものではないから、その要件の該当性が不明確な ものとなれば、表現、創作活動等の自由を大きく萎縮させるなど、社会経済\nの健全な発展を損なうおそれがあるというべきである。そうすると、商品に 関する表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品形態が商\n品等表示に該当しないときは、上記商品に関する表\示は、全体として不競法 2条1項1号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。\n
これを本件についてみると、原告表示は、別紙原告表\示目録記載のとおり、 原告赤色を靴底部分に付した女性用ハイヒールと特定されるにとどまり、女 性用ハイヒールの形状(靴底を含む。)、その形状に結合した模様、光沢、 質感及び靴底以外の色彩その他の特徴については何ら限定がなく、靴底に付 された唯一の色彩である原告赤色も、それ自体特別な色彩であるとはいえな いため、被告商品を含め、広範かつ多数の商品形態を含むものである。
そして、前記認定事実及び第2回口頭弁論期日における検証の結果(第2 回口頭弁論調書及び検証調書各参照)によれば、原告商品の靴底は革製であ り、これに赤色のラッカー塗装をしているため、靴底の色は、いわばマニュ キュアのような光沢がある赤色(以下「ラッカーレッド」という。)であっ て、原告商品の形態は、この点において特徴があるのに対し、被告商品の靴 底はゴム製であり、これに特段塗装はされていないため、靴底の色は光沢が ない赤色であることが認められる。そうすると、原告商品の形態と被告商品 の形態とは、材質等から生ずる靴底の光沢及び質感において明らかに印象を 異にするものであるから、少なくとも被告商品の形態は、原告商品が提供す る高級ブランド品としての価値に鑑みると、原告らの出所を表示するものと\nして周知であると認めることはできない。そして、靴底の光沢及び質感にお ける上記の顕著な相違に鑑みると、この理は、赤色ゴム底のハイヒール一般 についても異なるところはないというべきである。
したがって、原告表示に含まれる赤色ゴム底のハイヒールは明らかに商品\n等表示に該当しないことからすると、原告表\示は、全体として不競法2条1 項1号にいう商品等表示に該当しないものと認めるのが相当である。\n
のみならず、前記認定事実によれば、そもそも靴という商品において使用 される赤色は、伝統的にも、商品の美感等の観点から採用される典型的な色 彩の一つであり、靴底に赤色を付すことも通常の創作能力の発揮において行\nい得るものであって、このことはハイヒールの靴底であっても異なるところ はない。そして、原告赤色と似た赤色は、ファッション関係においては国内 外を問わず古くから採用されている色であり、現に、前記認定事実によれば、 女性用ハイヒールにおいても、原告商品が日本で販売される前から靴底の色 彩として継続して使用され、現在、一般的なデザインとなっているものとい える。そうすると、原告表示は、それ自体、特別顕著性を有するものとはい\nえない。また、前記認定事実によれば、日本における原告商品の販売期間は、 約20年にとどまり、それほど長期間にわたり販売したものとはいえず、原 告会社は、いわゆるサンプルトラフィッキング(雑誌編集者、スタイリスト、 著名人等からの要望又は依頼に応じて、これらの者が雑誌の記事、メディア での撮影等で使用するため原告商品を貸し出すという広告宣伝方法をいう。) を行うにとどまり、自ら広告宣伝費用を払ってテレビ、雑誌、ネット等によ る広告宣伝を行っていない事情等を踏まえても、極めて強力な宣伝広告が行 われているとまではいえず、原告表示は、周知性の要件を充足しないという\nべきである。したがって、原告表示は、そもそも出所表\示要件を充足するも のとはいえず、不競法2条1項1号にいう商品等表示に該当するものとはい\nえない。
(3) また、前記認定事実によれば、原告商品は、最低でも8万円を超える高価 格帯のハイヒールであって、靴底のラッカーレッド及びその曲線的な形状に 加え、靴の形状、ヒールの高さその他の形態上の顕著なデザイン性を有する 商品であるのに対し、被告商品は、手頃な価格帯の赤色ゴム底のハイヒール であることからすると、ハイヒールの需要者は、両商品の出所の違いをそれ 自体で十分に識別し得るものと認めるのが相当である。さらに、いわゆる高\n級ブランドである原告商品のような靴を購入しようとする需要者は、その価 格帯を踏まえても、商品の形態自体ではなく、商標等によってもその商品の 出所を確認するのが通常であって、原告商品、被告商品とも、中敷や靴底に ブランド名のロゴが付されているのであるから、需要者は当該ロゴにより出 所の違いを十分に確認することができる。しかも、原告商品のような高級ブ\nランド品を購入しようとする需要者は、自らの好みに合った商品を厳選して 購入しているといえるから、旧知の靴であれば格別、現物の印象や履き心地 などを確認した上で購入するのが通常であるといえ、上記の事情を踏まえて も、このような場合に誤認混同が生じないことは明らかである。 このような取引の実情に加え、原告商品と被告商品の各形態における靴底 の光沢及び質感における顕著な相違に鑑みると、原告商品と被告商品とは、 需要者において出所の混同を生じさせるものと認めることはできない。 そうすると、被告商品の販売は、不競法2条1項1号にいう不正競争に明 らかに該当しないものと認められる。

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令和1(ワ)10829  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 令和4年2月10日  大阪地方裁判所

 頭部マッサージ具の意匠権侵害事件です。大阪地裁(26部)は、約700万円の損害賠償を認めました。39条2項と3項の重畳的に適用についても認められています。

(イ) 本件意匠1の実施品である原告製品1は、使用者がその柄を握り、枝部の先 端の涙滴状部を頭部(頭皮)に当てた状態で、枝部から涙滴状部にかけて力を加え て動かしながら、頭部をマッサージするものである。
(ウ) このような頭部マッサージ具の購入に当たり、需要者は、通常、店舗であれ ば店頭に置かれた商品そのものないし商品パッケージに付された商品画像等を、イ ンターネット上であれば EC サイト等に掲載された商品画像等を視認する。 原告製品1のパッケージ(以下「本件パッケージ1」という。)は、台紙上に製 品を正面側から視認できる状態で設置し、これを透明なプラスチックケースで覆う ものである。台紙の表面(商品側)には、「頭のラインに沿って/頭皮をかき上げ\n/キュっと引き締め」(「/」は改行部分を示す。以下同じ。)という説明文と、 使用者が原告製品1の柄を持ち、その涙滴状部を頭皮に当てている画像(以下「本 件画像1−1」という。)及び人物の頭部を他者が両手の手指を広げてマッサージ するイメージ画像と、涙滴状部を頭皮に当て枝部の先端方向に動かしてマッサージ することをうかがわせるイラスト(以下「本件イラスト1」という。)等が掲載さ れている。本件画像1−1及び本件イラスト1に掲載された原告製品1の画像等は、 いずれも、正面側を斜め上方向から見たものである。また、台紙の裏側には、「使 用方法」として「突起部分をヘッドラインに沿って頭皮に当て、押しながらかき上 げてください。」との説明文(以下「本件説明文1」という。)や、本件画像1− 1と同様のイラスト及び本件イラスト1が掲載されている。(乙1) 他方、原告サイトの原告製品1の紹介ページ(乙12)には、上部に商品画像と して本件パッケージ1の画像及び以下の画像から説明文や矢印等を除いた商品自体 のみの画像の2つの画像のうち1画像が拡大表示可能\とされているほか、「ヘッド ラインタイプ/頭のラインに沿って/頭皮をかき上げてキュッ」という説明文、本 件画像1−1と同様の画像に人物の頭部に使用方向を示す矢印が三本描かれている 画像、本件イラスト1及び本件説明文1が掲載されているほか、次の画像(以下 「本件画像1−2」という。)が掲載されている。
(エ) 需要者が注意を惹かれる部分
上記各事情に照らせば、需要者は、原告製品1の使用に当たり、頭部マッサージ の効果に直截的に影響を与える部分である枝部の本数、頭皮に直接当たる部分であ る枝部の先端の形状、柄から涙滴状部に力を伝える部分である枝部の形状に主に注 目すると考えられる。他方、各涙滴状部間の距離については、さほど注意を惹かれ ないと思われる。 また、性質上頭部マッサージを現に実施している間に原告製品1を直接視認する ことは困難と思われるものの、事前ないし事後の時点では、これを正面側ないし正 面側に向かって前後左右いずれかのやや斜め方向から視認することが多いものと考 えられる。他方、原告製品1の購入に当たっては、需要者は、これを正面側ないし 正面側に向かって前後左右いずれかのやや斜め方向から視認することが多く、左右 各側面側、平面側及び背面側から視認する機会は乏しいと考えられる。
イ 本件公知意匠1について
(ア) 証拠(乙2、3)によれば、本件公知意匠1は、いずれも本件出願日1 (平成20年3月6日)前に公知となった意匠と認められる。
(イ) 乙2意匠
証拠(甲17、乙2、15、24)及び弁論の全趣旨によれば、乙2意匠は、次 のとおりのものと認められる。 乙2意匠は、いわゆる「孫の手」であり、背中を掻いたり、身体を叩いたりする 目的で使用される物品に係る意匠である。この種の商品は、頭部を掻いたり叩いた りする方法で頭部に刺激を与える目的で使用される場合もある。そのため、乙2意 匠は、本件意匠1の属する分野と同一の分野に属しないものとはいえない。 もっとも、乙2意匠は、正面視において、柄の先端に接続された板状の部材が、 接続部側と先端側との間の中央付近で湾曲し、湾曲した先の先端側部分が平行な5 本の枝部に枝分かれしているものである。乙2意匠における「基端」を柄の先端と の接続部と捉えるならば、枝部は、熊手状に湾曲させて形成されてはいるものの、 基端からは分岐しておらず、また、各枝部は丸棒状ではなく板状に形成されている。 他方、板状の部材の接続部側と先端側との間の中央付近の湾曲部付近を「基端」と 捉えるならば、乙2意匠の枝部は、基端から5本に分岐し、熊手状に湾曲させて形 成されたものとはいえるものの、各枝部が丸棒状ではなく板状に形成されているこ とは、同様である。 さらに、「基端」をいずれと捉えるかにかかわらず、各枝部の先端部は、丸みの ある形状とされてはいるものの厚みに変化はなく、涙滴状部に相当するものはない。 各枝部間の距離も、各枝部の先端部の幅に比してかなり狭い。
(ウ) 乙3意匠
証拠(乙3)及び弁論の全趣旨によれば、乙3意匠は次のとおりのものであると 認められる。 乙3意匠は、人やペット等の背中や腹部を掻いたり、マッサージするためなどに 使用される物品に係る意匠である。これも、乙2意匠と同様に、本件意匠1の属す る分野と同一の分野に属しないものとはいえない。 乙3意匠は、人の手をそのまま模した形状であり、その指部をもって「基端から 5本に分岐した丸棒状の枝部」と捉えることは、一応可能である。もっとも、乙3\n文献を見る限り、指部(枝部)は、基端から先端まで熊手状に湾曲しているとはい えず、また、その先端に涙滴状部が形成されていない。さらに、乙3意匠が本件意 匠1の具体的構成要件 C1-3〜E1-3 に相当する構成を有するとも認められない。\n
(エ) 以上のとおり、本件公知意匠1のうち、乙2意匠は、5本に分岐した枝部が 形成されている点及び枝部が熊手状に湾曲させて形成されている点で、また、乙3 意匠は、「基端から5本に分岐した丸棒状の枝部」と捉えることが可能な部分があ\nる点で、それぞれ本件意匠1と共通する部分があるといえるにとどまる。もっとも、 その共通するといえる部分の具体的形状は、本件意匠1とは大きく異なる。 そうである以上、本件公知意匠1は、本件意匠1の基本的構成態様及び具体的構\ 成態様いずれとの関係でも、本件意匠1に先行する公知意匠ということはできない。 その他本件意匠1の要部を判断するにあたり参考とすべき公知意匠は、証拠上見当 たらない。
ウ 本件後願意匠
登録意匠の要部認定に当たっては、先行する公知意匠を考慮すべきではあっても、 登録意匠の出願に後れる後願意匠を考慮することは、原則として相当でない。また、 この点を措くとしても、証拠(乙4)によれば、乙4意匠は、涙滴状部に金属球を 有する点で本件意匠1の形状と明確に異なること、証拠(乙5)によれば、乙5意 匠は、基端から5本に分岐した丸棒状の枝部が全体として人の手指の指部を想起さ せる形状となっており、その先端に涙滴状部がない点で本件意匠1の形状と明確に 異なることなどから、本件後願意匠は、翻って本件意匠1の要部を判断するものと して参考となり得るものではない。
エ 小括
以上の事情を総合的に考慮すれば、本件意匠1の要部は、基本的構成態様 A1-3 及び B1-3 並びに具体的構成態様 D1-3 であると見るのが相当である。
・・・
イ 差異点について
(ア) 差異点 A について
差異点 A は、平面視における枝部の湾曲の程度と、これによる左右各側面視にお ける涙滴状部の配置に係るものである。需要者が原告製品1及び被告製品1を平面 側及び左右の側面側から視認する機会が乏しいこと等を踏まえれば、差異点 A は、 本件意匠1と被告意匠1とで異なる印象を需要者に与えるほどの差異とはいえない。
(イ) 差異点 B 及び C について
差異点 B は、正面視における一番外側の枝部の湾曲の形状に係るもの、差異点 C は、等間隔に配置された涙滴状部間の距離に係るものである。 これらの差異点は、いずれも、原告製品1及び被告製品1を正面側から視認する ことにより認識し得るものであり、需要者はこれを目にする機会が多いといえる。 もっとも、上記各差異点は、中央の枝部がほぼ直線状に伸び、外側にいくにつれて 枝部の湾曲の程度が大きくなるという共通点 B や、枝部の先端の涙滴状部が等間隔 に配置されているという共通点 C がある中で、一番外側の枝部の先端近くの形状や、 涙滴状部間の距離がいささか異なるというにとどまり、顕著に特徴的なものとまで はいえず、本件意匠1と被告意匠1とで異なる印象を需要者に与えるほどの差異で はない。
ウ 小括
以上の事情を総合的に考慮すると、本件意匠1と被告意匠1は、その骨格的な構\n成態様において共通し、両意匠の差異点は、それ自体も、また、これらを組み合わ せたとしても、そのもたらす印象をもって共通点により需要者に生じる美感の共通 性を凌駕するほどのものということはできない。
・・・・
) 法39条2項による損害額の推定覆滅に係る部分については、同項に基づく 推定が覆滅されるとはいえ、無許諾で実施されたことに違いはない以上、当該部分 に係る損害評価が尽くされたとはいえない。したがって、当該部分については、同 条3項が重畳的に適用されると解するのが相当である。この点に関する被告の主張 は採用できない。
・・・
b 検討
被告製品1と原告製品1は、共に頭部マッサージ具である。原告製品1は枝部の 先端に形成された涙滴状部を頭部の形状に沿って押し当て、押しながらかき上げる といった使用方法が想定されている(乙1)のに対し、被告製品1は、枝部の先端 に形成された涙滴状部を頭皮に押し当て、微細な振動を与えるといった使用方法が 想定されている(甲3、4、乙29)。このように、両製品は、具体的な使用方法 は異にするものの、枝部の先端に形成された涙滴状部を頭皮等のマッサージ対象部 位に押し当ててマッサージを行うものである点で、その基本的な用途を同じくす る。両製品の販売価格には2倍以上の差があるものの、具体的な価格差は610円 (税抜)であり、「プチプラ」のもともとの意義はともかく、市場において「プチ プラ」と呼ばれる廉価な生活雑貨品のカテゴリーにいずれも分類されることがある 以上、両製品は、その価格差を踏まえても、市場において競合するものといえる。 また、被告は、被告各製品を被告店舗等のみで販売しているものの、被告店舗の 出店先の商業施設に原告の製品を取り扱う店舗も出店している例が多数ある。こう した商業施設では、需要者は、商業施設内の各店舗を巡って目的に適う同種製品を 比較検討して購入することが可能であり、実際上も、このような行動はしばしば見\n受けられる。さらに、被告製品1が販売されている EC サイトは被告サイトのみで あるとしても、被告店舗等で被告製品1に触れた需要者が、他の EC サイトで頭部 マッサージ具を検索することは容易であり、これもしばしば見受けられる行動とい えるのであって、その結果、複数の EC サイトにおいて販売されている原告製品1 が検索結果として表示されることも容易に推察される。\nこのような事情を踏まえれば、業務態様ないし販売チャンネルのあり方における 原告と被告との違いや被告製品1と原告製品1との価格差は、損害額の推定を覆滅 すべき事情とはいえないか、いえるとしてもその程度は限られる。 これに対し、被告は、被告店舗での取扱商品の多様さや、商品ラインナップにお ける被告製品1の位置付けなどから、需要者は、被告店舗を訪れて被告製品1に触 れた際に始めて被告製品1の存在を知り、そのまま衝動的に購入する場合が多く、 被告製品1が存在しなければそもそも頭部マッサージ具の需要が発生しないか、需 要者が当初より被告製品1を購入する意思をもって被告サイトで被告製品1を購入 しているため、被告製品1が販売されなくともその分の需要が原告製品1に吸収さ れるとはいえないなどと主張する。しかし、そのような需要者の購買行動等があり 得るとしても、被告製品1の需要者の全てないし多くがそのように行動すると考え るべき根拠はない。被告製品1が廉価なことを踏まえても、価格のみならずその機 能やデザイン等を含む総合的な評価に基づいて、同種製品と比較検討の上で購入に\n至る需要者も一定数存在すると考えるのが、むしろ経験則に合致する。 その他被告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する被告の主張は採用 できない。
(ウ) 競合品の存在
本件意匠1及び被告意匠1の各構成態様並びに原告製品1及び被告製品1の具体\n的な使用態様等を踏まえると、乙28の各ウェブサイト掲載商品に係る別紙「被告 主張の競合品一覧(本件意匠1)」のうち、少なくとも1)、2)、4)〜6)、9)、10)、 15)、20)、21)は、原告製品1及び被告製品1の競合品と認められる。 そうすると、被告製品1が市場に存在しない場合、被告製品1に係る需要の全て が原告製品1に吸収されるとは限らないから、これらの競合品の存在は、被告が得 た利益と原告が受けた損害との間との相当因果関係を阻害するものとして、損害額 の推定を一定程度覆滅させる事情として考慮すべきである。
(エ) 被告の営業努力等
証拠(甲41、乙45〜49)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、約6年の間 に全国的に被告店舗を多数展開し(令和3年5月時点で62店舗)、複数のウェブ サイトで人気の生活雑貨店として取り上げられていることが認められることなどを 踏まえると、被告ブランドは一定程度需要者に認知されているとうかがわれる。 もっとも、被告自身、被告製品1につき被告の主力商品として販売されていたも のではないと主張していることに加え、被告製品1に特化した宣伝広告等がされた ことを認めるに足りる証拠もないこと、廉価な生活雑貨品という被告製品1の性格 等を踏まえると、被告製品1を購入する需要者にとって、被告ブランドの取扱商品 であることが主な購入の理由ないし動機となっているとは考え難い。 その他被告の格別な営業努力が被告製品1の売上増加に貢献していると見るべき 具体的な事情はない。 したがって、被告の営業努力等は、損害額の推定を覆滅すべき事情とはいえない か、いえるとしてもその程度は限られる。
(オ) 侵害品の性能\n
前記((イ)b)のとおり、被告製品1は、枝部の先端に形成された涙滴状部を頭 皮に押し当て、微細な振動を与えることにより頭皮をマッサージする効果を奏する 商品であり、涙滴状部を頭部の形状に沿って押し当て、押しながらかき上げるとい った使用方法が想定されている原告製品1とは、その具体的な使用方法において異 なる。この使用方法の相違は、実用品である頭部マッサージ具の機能に関わるもの\nである。実用品である以上、商品の機能性は、デザインと同等かそれ以上に需要者\nの商品選択において重要な要因として位置付けられる。このことは、被告が商品デ ザインを重視した商品開発を行い、需要者に対してこれを訴求していることがうか がわれること(甲81〜83)などを考慮しても異ならない。 したがって、原告製品1と被告製品1の具体的な使用方法の相違すなわち機能面\nの相違は、損害額の推定を相当程度覆滅すべき事情といえる。
(カ) 覆滅の程度
以上の事情を総合的に考慮すると、本件では、被告製品1に係る原告の損害額の 推定につき、4割の限度で覆滅されるとするのが相当である。これに反する原告及 び被告の各主張はいずれも採用できない。 そうすると、被告の本件意匠権1侵害による原告の損害額は、●(省略)●円 (=●(省略)●*(1-0.4))となる。
オ 法39条2項及び3項の重畳適用、実施料率
(ア) 法39条2項による損害額の推定覆滅に係る部分については、同項に基づく 推定が覆滅されるとはいえ、無許諾で実施されたことに違いはない以上、当該部分 に係る損害評価が尽くされたとはいえない。したがって、当該部分については、同 条3項が重畳的に適用されると解するのが相当である。この点に関する被告の主張 は採用できない。
(イ) 実施に対し受けるべき金銭の額
「意匠の実施に対し受けるべき金銭の額」(法39条3項)すなわち意匠の実施 に対し受けるべき料率は、当該意匠の実際の実施許諾契約における実施料率や、そ れが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、当該意 匠自体の価値、当該意匠を当該製品に用いた場合の売上及び利益への貢献や侵害の 態様、意匠権者と侵害者との競業関係や意匠権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情 を総合的に考慮して、合理的な料率を定めるべきである。また、その際、必ずしも 当該意匠権についての実施許諾契約における実施料率に基づかなければならない必 然性はなく、意匠権侵害をした者に対して事後的に定められるべき、実施に対し受 けるべき料率は、むしろ、通常の実施料率に比べて自ずと高額になるであろうこと を考慮すべきである。 また、不当利得返還請求に関し、当該「受けるべき金銭の額に相当する額」は、 本来、意匠権者がその登録意匠の実施に当たり意匠権者に対して支払うべきであっ た実施料相当額であるから、侵害者がこれを支払うことなく登録意匠を実施した場 合は、その実施により、侵害者は同額の利得を得、意匠権者は同額の損失を受けた ものと評価することができる。したがって、法39条3項の「受けるべき金銭の額 に相当する額」が不当利得における受益者の利得の額に相当し、かつ、権利者の損 失の額に相当すると認めるのが相当である。
(ウ) まず、本件意匠権1に係る実施許諾契約が締結されたことを認めるに足りる 証拠はなく、その他原告が本件意匠権1に係る実施許諾契約を締結する場合に定め る実施料率をうかがわせる事情はない。 また、「実施料率〔第5版〕技術契約のためのデータブック」(甲59)によれ ば、「プラスチック製品」の技術分野(その対象には、「プラスチック板・棒・管 ・継手・異形押出製品製造技術、・・・その他のプラスチック製品製造技術」であり、 「その他のプラスチック製品」とは「プラスチック製台所用品・浴室用品等」であ るが、「プラスチック製の家具(29)・ブラシ(31)・履物(27)等」は含まれ ない。)における外国技術導入契約の実施料(許諾製品の出来高にリンクした料率 表示であったもの)につき、平成4年度〜平成10年度の外国技術導入契約(イニ\nシャルロイヤリティがないもの。63件)の場合、平均値は3.9%、中央値は3 %であった(なお、甲59には、このほかに技術分野を「ゴム製品」とする項も存 するが、その対象は、タイヤ・チューブ製造技術、ゴム製・プラスチック製履物・ 同付属品製造技術等であり、被告製品1の分野と類似するものがないから、これを 参考とするのは相当でない。)。また、「ロイヤルティ料率データハンドブック〜 特許権・商標権・プログラム著作権・技術ノウハウ〜」(甲60)によれば、「個 人用品または家庭用品」の技術分類における実施料率(13件)は、平均が3.5 %、標準偏差1.6%、最大値7.5%、最小値0.5%であり、「健康;人命救 助;娯楽」の技術分類(54件)では、平均5.3%、標準偏差3.2%、最大値 14.5%、最小値0.5%である。
さらに、前記(エ(イ)b、エ(オ))のとおり、被告製品1の需要者は、製品の機能\nを中心に、デザイン及び価格性を総合的に考慮した上で商品選択を行うものと見ら れることから、本件意匠1ないしこれに類似する被告意匠1を用いた場合の売上及 び利益への貢献の程度の評価にあたっても、これを踏まえる必要がある。 加えて、原告製品1と被告製品1はいずれも頭部マッサージ具であることに加 え、原告と被告は、取扱い商品や販売店舗の出店先が相当程度に重複していること から、高い程度で競合関係にあるといえる。このため、仮に原告が被告に対し本件 意匠権1に係る実施許諾契約を締結するならば、その実施料は高めに設定されるの が通常であると考えられる。しかも、証拠(甲64〜69)及び弁論の全趣旨によ れば、原告は、自己の保有する登録意匠に係る侵害品の防止に積極的に努めている ことがうかがわれる。
以上の事情に加え、意匠権侵害に基づく損害賠償請求の場面での仮想実施料率の 考察であることを総合的に考慮すると、本件意匠権1を侵害した者に対して事後的 に定められるべき、実施に対し受けるべき料率は5%を下らないというべきであ る。これに反する原告及び被告の主張はいずれも採用できない。 そうすると、法39条3項により認められる損害賠償請求の額は、●(省略)● 円(≒●(省略)●*0.4*0.05)となる。

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令和2(ワ)19931等  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年2月16日  東京地方裁判所

 医薬用途発明の特許権侵害訴訟です。東京地裁(29部)は、本件発明1,2については実施可能要件・サポート要件違反の無効理由ありと判断しました。また、本件発明3,4について、均等侵害も否定しました。本件発明1,2は特許庁で訂正要件を満たさないと判断されており、審決取消訴訟に係属しています。本件発明3,4は特許庁で訂正が認められています。

 いわゆる医薬用途発明においては,一般に,当業者にとって,物質名, 化学構造等が示されることのみによっては,当該用途の有用性及びそのた\nめの当該医薬の有効量を予測することは困難であり,当該発明に係る医薬\nを当該用途に使用することができないから,そのような発明において実施 可能要件を満たすためには,明細書の発明の詳細な説明に,薬理データの\n記載又はこれと同視し得る程度の記載をすることなどにより,当該用途の 有用性及びそのための当該医薬の有効量を裏付ける記載を要するものと解 するのが相当である。 本件発明1及び2の特許請求の範囲においては,本件化合物が「痛みの 処置における」(構成要件1B)「鎮痛剤」(構\成要件1C)及び「鎮痛 剤」(構成要件2C)として作用することが記載されているところ,いず\nれも本件化合物の鎮痛効果が認められる痛みは特定されていない。しかし, 本件明細書には,本件化合物について,「痛みの処置とくに慢性の疼痛性 障害の処置における使用方法である。このような障害にはそれらに限定さ れるものではないが炎症性疼痛,術後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み, 三叉神経痛,急性疱疹性および治療後神経痛,糖尿病性神経障害,カウザ ルギー,上腕神経叢捻除,後頭部神経痛,反射交感神経ジストロフィー, 線維筋痛症,痛風,幻想肢痛,火傷痛ならびに他の形態の神経痛,神経障 害および特発性疼痛症候群が包含される。」(前記1(1)イ)と記載されて いることに照らすと,本件発明1及び2は,本件化合物が少なくとも上記 各痛みに対して鎮痛効果を有することを内容とするものと解される。 したがって,本件発明1及び2について実施可能要件を満たすというた\nめには,本件明細書の発明の詳細な説明に,薬理データの記載又はこれと 同視し得る程度の記載をすることなどにより,上記各痛みに対して鎮痛効 果があること及びそのための当該医薬の有効量を裏付ける記載が必要であ るというべきである。
・・・
前記(ア)の各文献の記載によれば,本件出願当時,術後疼痛試験は,ラ ットの皮膚,筋膜及び足蹠の足底側面の筋肉を切開することにより,痛 覚過敏を引き起こし,これに対する薬剤の効果を確かめる試験であるこ とが,技術常識であったと認められる。 そして,本件明細書には,「S−(+)−3−イソブチルギャバ」\n(弁論の全趣旨によれば,構成要件3Aを充足する本件化合物の一種で\nあると認められる。)が術後疼痛試験において有効であったことが記載 されており,さらに,「ラット足蹠筋肉の切開は熱痛覚過敏および接触 異痛を生じた。いずれの侵害受容反応も手術後1時間以内にピークに達 し,3日間維持された。実験期間中,動物はすべて良好な健康状態を維 持した。」(前記1(1)キ(キ)),「ここに掲げた結果はラット足蹠筋肉 の切開は少なくとも3時間続く熱痛覚過敏および接触異痛を誘発するこ とを示している。本試験の主要な所見は,ギャバペンチンおよびS− (+)−3−イソブチルギャバがいずれの侵害受容反応の遮断に対して\nも等しく有効なことである。」(同(コ))との記載がある。 以上によれば,本件出願当時,本件明細書の術後疼痛試験の結果に接 した当業者は,本件化合物について,侵害受容性疼痛としての熱痛覚過 敏及び接触異痛に対して有効であると理解し,その他の痛みに対して有 効であると理解することはなかったというべきである。
・・・
ア 被告医薬品が本件発明3の構成と均等なものであるかについて\n
(ア) 原告は,本件発明3は,慢性疼痛に対する画期的処方薬として,抗て んかん作用を有するGABA類縁体を痛みの処置に用いることを見いだ したものであり,その本質的部分は本件化合物を慢性疼痛の処置に用い る点にあるから,対象となる痛みが侵害受容性疼痛か,神経障害性疼痛 や線維筋痛症かは本質的部分ではなく,効能・効果を神経障害性疼痛や\n線維筋痛症に伴う疼痛とし,慢性疼痛の処置に用いる鎮痛剤である被告 医薬品は,均等侵害の第1要件を満たすと主張する。
しかし,前記1(1)アのとおり,本件特許に係る発明は,てんかん,ハ ンチントン舞踏病等の中枢性神経系疾患に対する抗発作療法等に有用な 薬物である本件化合物が,痛みの治療における鎮痛作用及び抗痛覚過敏 作用を有し,反復使用により耐性を生じず,モルヒネと交叉耐性がない ことに着目した医薬用途発明であるところ,前記2(1)イのとおり,本件 出願当時,痛みには種々のものがあり,その原因や機序も様々であるこ とが技術常識であった。
そうすると,いかなる痛みに対して鎮痛効果を有するかは,本件発明 3において本質的部分というべきであり,その鎮痛効果の対象を異にす る被告医薬品は,本件発明3の本質的部分を備えているものと認めるこ とはできない。したがって,本件発明3に係る特許請求の範囲に記載さ れた構成中の被告医薬品と異なる部分が本件発明3の本質的部分でない\nということはできないから,被告医薬品は均等の第1要件を満たさない。
(イ) また,前記(1)アによれば,原告は,本件訂正前発明3においては鎮痛 の対象となる痛みを限定していなかったところ,本件訂正により「炎症 を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」に限定していること からすると,本件発明3との関係においては,被告医薬品の効能・効果\nである神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛を意図的に除外したと 認めるのが相当である。 したがって,被告医薬品は均等の第5要件も満たさない。
(ウ) 以上によれば,被告医薬品は,本件発明3の特許請求の範囲に記載さ れた構成と均等なものとは認められない。\n
イ 被告医薬品が本件発明4の構成と均等なものであるかについて\n
前記アと同様に,いかなる痛みに対して鎮痛効果を有するかは,本件発 明4の本質的部分というべきであり,被告医薬品は均等の第1要件を満た さず,また,本件発明4との関係においては,被告医薬品の効能・効果で\nある神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛が意図的に除外されている から,均等の第5要件も満たさない。 したがって,被告医薬品は,本件発明4の特許請求の範囲に記載された 構成と均等なものとは認められない。\n

◆判決本文

関連事件です。本件特許は同じですが、被告が異なります。なお、原告代理人はなぜか異なります。

◆令和2(ワ)19923等

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令和3(ネ)10083  著作権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和4年3月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 コンピュータソフトの画面について、著作物性、不競法2条1項1号の商品等表示に該当するかが争われました。知財高裁2部は、1審の判断を維持しました。

ア 控訴人は,控訴人表示画面と被控訴人表\示画面との一致箇所をひとまとまり として捉えて創作性を判断すべきこと,ビジネスソフトウェアのディスプレイ(表\ 示画面をいう趣旨と解される。)における表現の創作性については丁寧な検討が必\n要であること,控訴人表示画面について表\現上主要な箇所は2)データ分析等画面(単 品詳細情報画面,日別画面,他店舗在庫表示画面,定期改正入力画面,リクエスト\n管理画面)であり,そこには表現上の工夫が多数散りばめられていることなどを主\n張する。
しかし,被控訴人製品の各表示画面から控訴人製品の各表\示画面の本質的な特徴 を感得することはできず,被控訴人表示画面に接する者が全体として控訴人表\示画 面の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるとは認められないことは,\n訂正して引用した原判決の第4の1で認定判断したとおりである。 控訴人表示画面と被控訴人表\示画面の対比に係る判断は,同1(3)のとおりであ って,控訴人表示画面と被控訴人表\示画面の共通する部分をひとまとまりにして検 討することによって,上記判断が左右されるものではない。ビジネスソフトウェア\nのディスプレイ(表示画面)における表\現の創作性について丁寧な検討が必要であ るという一般論の主張も,上記判断に影響しない。控訴人が2)データ分析等画面に 多数散りばめられていると主張する表現上の工夫のうち,発注操作を行う欄の配色\nについては,創作者の思想又は感情が創作的に表現されているといえる程度の特徴\nを有するものとは認められず,同欄の位置や詳細情報を画面の下方に配置すること は,書店業務を効率的に行うという観点から通常想定される範囲内のものである。 控訴人の主張する2)データ分析等画面における素材の選択及び配列における選択の 幅についても,訂正して引用した原判決の第4の1(4)で判断したとおりである。
イ 控訴人は,控訴人製品の表示画面と被控訴人製品の表\示画面に共通性が多数 認められること,操作ガイダンスの文字列に一致が何か所もあることなどを主張す るが,それらの主張は,訂正して引用した原判決の第4の1の認定判断を左右する ものではない。
(2) 争点4(不正競争防止法違反の有無)に関する控訴人の補充主張について
ア 控訴人は,控訴人表示画面の特別顕著性に関し,需要者を書店ユーザーに限\n定すべきこと,控訴人製品がその表示画面に顕著な特徴を有することを主張するが,\n控訴人表示画面の特徴に関しては訂正して引用した原判決の第4の1(3)及び(4)で 認定判断したとおりであり,控訴人表示画面に特別顕著性が認められないことは,\n同3で判断したとおりである。控訴人の主張するように控訴人製品の需要者を書店 に限定したとしても,上記の認定判断は左右されない。
イ 控訴人は,周知性についても主張するところ,控訴人製品のシェアについて 控訴人が当審で追加提出した証拠(甲83の1・2,甲84)を含む本件全証拠を もってしても,控訴人の主張するシェアを認めるに足りない。なお,仮に,控訴人 製品が相応のシェアを占めているとしても,そのことから直ちに,控訴人表示画面\nの周知性が認められるものともいえない。 また,控訴人は,控訴人製品の宣伝・広報活動について主張するが,当該活動に ついて控訴人が追加提出した証拠(甲85〜91)を含む本件全証拠をもってして も,当該活動は一定の期間及び範囲に限定して認められるにすぎず,また,その内 容をみても,当該活動において控訴人表示画面が媒体に表\示されていたものではな いから,控訴人表示画面の周知性を裏付けるものとはいえない。\n控訴人のその他の主張も,訂正して引用した原判決の第4の3(2)における控訴 人表示画面の周知性が認められない旨の判断を左右するものではない。\n

◆判決本文

1審はこちら。

◆平成30(ワ)28215

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令和3(行ケ)10112  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年3月23日  知的財産高等裁判所

 不使用であったとした審決が維持されました。争点は「IC電子点滅器」が「電子応用機械器具」に該当するか否かです。

(2) 本件指定商品は、本件商標について書換登録申請がされた日(平成13年\n3月15日(甲7、8)。以下「本件申請日」という。)に施行されていた商標法\n施行規則別表(平成13年経済産業省令第202号による改正前のもの。以下「省\n令別表」という。)第9類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」を意味\nするものと解されるので、同類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」の 意義について検討する。
ア 本件申請日に施行されていた商標法施行令別表\(平成13年政令第265号 による改正前のもの)には、「第9類 科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、 映像用、計量用、信号用、検査用、救命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械 器具及び電気式又は光学式の機械器具」との定めがある。
イ 省令別表には、次の定めがある。\n
(ア) 「第9類3 配電用又は制御用の機械器具
開閉器 継電器 遮断機 制御器 整流器 接続器 断路器 蓄電器 抵抗器 点滅器 配線函 配電盤 ヒューズ 避雷器 変圧器 誘導電圧調整器 リアクト ル」
(イ) 「第9類15 電子応用機械器具及びその部品
(1) 電子応用機械器具
ガイガー計数器 高周波ミシン サイクロトロン 産業用X線機械器具 産業用 ベータートロン 磁気探鉱機 磁気探知機 磁気ディスク用シールドケース 地震 探鉱機械器具 水中聴音機械器具 超音波応用測探器 超音波応用探傷器 超音波 応用探知機 電子応用静電複写機 電子応用扉自動開閉装置 電子計算機(中央処 理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テ ープその他の周辺機器を含む。) 電子顕微鏡 電子式卓上計算機 ワードプロセ ッサ
・・・
ウ なお、弁論の全趣旨により本件申請日の後に発行されたものと認められる類\n似商品・役務審査基準(乙1、2)においても、「配電用又は制御用の機械器具」 として「開閉器」及び「点滅器」が掲げられているが、「電子応用機械器具及びそ の部品」としては、「開閉器」も「点滅器」も掲げられていない。
エ 上記ア及びイによると、本件指定商品(「電子応用機械器具及びその部品」) は、上記イ(イ)のとおり省令別表第9類15に定める「電子応用機械器具及びその\n部品」に該当するものとして掲げられた「電子計算機」、「X線管」、「ダイオー ド」、「集積回路」等の商品を含み、上記イ(ア)のとおり同類3に定める「配電用 又は制御用の機械器具」に該当するものとして掲げられた「開閉器」及び「点滅器」 を含まないと解するのが相当である。そして、証拠(甲13〜15)及び弁論の全 趣旨によると、ここでいう「開閉器」ないし「点滅器」とは、電気回路を開閉する 装置、すなわち、スイッチを意味するものと認められる。
(3) これを本件各商品についてみるに、証拠(甲5、9〜12、16の1、甲 17〜19、23、24)及び弁論の全趣旨によると、本件各商品は、いずれも照 明器具の点滅を制御したり、その色を調節したりするICスイッチであると認めら れるから、本件各商品は、少なくとも省令別表第9類3に定める「制御用の機械器\n具」としての「開閉器」ないし「点滅器」に該当するというべきである。したがっ て、本件各商品は、同類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」、すなわ ち、本件指定商品には該当しないといわざるを得ない。
(4) 原告は、本件各商品の部品(CPU、IC等)はいずれも本件指定商品に 該当するから、本件各商品も本件指定商品に該当する旨主張する。しかしながら、 本件において本件指定商品に該当するか否かが問題とされるのは、完成品たる本件 各商品であり、その部品ではないから、仮に原告が主張するとおり本件各商品の全 ての部品が本件指定商品に該当するとしても、そのことは、本件各商品が本件指定 商品に該当しないとの上記判断を左右しない。 また、原告は、「配電」は変電所から需要端までの屋外の電力輸送を意味し、家 庭内等において使用する照明器具の内部に配設される本件商品1は「配電用の機械 器具」の範ちゅうに属しないとして、本件商品1が「配電用の機械器具」の範ちゅ うに属し、「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属しないとした本件審 決の判断は誤りである旨主張する。しかしながら、上記(3)において説示したとお り、本件商品1は、少なくとも「制御用の機械器具」としての「開閉器」ないし 「点滅器」に該当するものであるから、仮に「配電」の意義が原告の主張するとお りであったとしても、そのことは、本件商品1が本件指定商品に該当しないとの上 記判断を左右しない。

◆判決本文

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令和3(行ケ)10058  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年3月23日  知的財産高等裁判所

 コメント表示装置(CS関連発明)について、進歩性違反なしとした審決が維持されました。FC2(無効審判請求人)vsドワンゴ(特許権者)です。争点は引用文献の開示です。

 甲5技術は、コンテンツの映像(主映像)及び主映像を補足するなどの理由で表\n示される字幕等の映像(副映像)を表示することができるようにした復号装置に係\nる技術である。甲5技術においては、主映像及び副映像は、表示装置の画面(甲5\nの第19図参照)上に設けられた各画枠の内部に表示されるところ、主映像の画枠\nのサイズは、表示装置のアスペクト比及び主映像のアスペクト比に基づいて変換さ\nれ、副映像の画枠のサイズも、表示装置のアスペクト比及び副映像のアスペクト比\nに基づいて変換される。このようにしてサイズが変換された主映像及び副映像の各 画枠は、表示装置の画面上に配置されるが、その際、例えば表\示装置のアスペクト 比が16:9であり、主映像のアスペクト比が4:3であるなどの条件を満たす場 合、副映像の画枠の一部は、主映像の画枠と重なり合い、副映像の一部は、主映像 の画枠の内側に表示されるが、その余の部分は、主映像の画枠の外側に表\示される という事象が生じるものである。
そして、甲5技術によると、主映像の画枠は、主映像が表示される領域であると\n解されるから、これが本件発明1の構成1E及び1Fにいう「第1の表\示欄」(動 画を表示する領域)に相当するものであることは明らかである。\nしかしながら、甲5技術によると、副映像の画枠に表示される副映像の例として\n挙げられているのは字幕であり、甲4技術の「データコンテンツ」と同様、主映像 の配信時に既に存在するものである(なお、甲5によると、甲5技術の副映像に当 たる字幕は、映像データであることがうかがわれる。甲5には、字幕がテキストデ ータであるとの開示又は示唆はない。)。これに対し、本件発明1のコメントは、 前記のとおり、動画に対し任意の時間にユーザが付与するものである。 また、甲5の記載(明細書1頁5行目〜2頁11行目)によると、従来、副映像 のアスペクト比は、主映像のアスペクト比に関連付けられており、例えば、表示装\n置のアスペクト比が16:9であり、主映像のアスペクト比が4:3であるとき、 副映像(字幕)のアスペクト比は必ず4:3となるため、小型の電子機器において は字幕が見えづらくなってしまうという問題があったところ、甲5技術は、主映像 のアスペクト比から独立したアスペクト比で副映像を表示することにより、副映像\nを見やすくすることを目的とするものであると認められる。これに対し、本件発明 1は、前記のとおり、動画と重なって表示されたコメントが動画に含まれるもので\nはないこと及びこれがユーザによって書き込まれたものであることをユーザが把握 できるようにすることを目的とするものである。 以上のとおり、甲5技術の「副映像の画枠」は、本件発明1の「コメント」を表\n示する領域ではないから、これが本件発明1の構成1E及び1Fにいう「第2の表\ 示欄」に相当するということはできない。また、甲5技術において、副映像の画枠 の一部が主映像の画枠と重なり、副映像の一部が主映像の画枠の内側に表示され、\nその余の部分が主映像の画枠の外側に表示されるという事象を生じさせるのは、副\n映像のアスペクト比が主映像のアスペクト比と関連付けられていたことから来る副 映像の見づらさを解消するためであり、本件発明1のようにコメントが動画に含ま れるものではないこと及びこれがユーザによって書き込まれたものであることをユ ーザが把握できるようにすることを目的とするものではなく、この点からも、甲5 技術の上記内容が本件発明1の構成1E及び1Fに相当するということはできない。\nしたがって、甲5技術も、本件発明1の構成1E及び1Fに相当する構\成を有する ものではない。
エ 原告の主張について
原告は、甲5技術の「字幕」はユーザが入力するものでないものの、これを端末 に表示させる局面においては本件発明1と同様に文字列データとして処理されるも\nのであるし、本件原出願日当時にWEB2.0が技術常識であったことからしても、 甲5に接した当業者にとって、甲5技術の「字幕」を本件発明1の「コメント」に 置換することは容易であったと主張する。 しかしながら、甲5技術の「字幕」と本件発明1の「コメント」の技術的意義の 相違は、前記ウにおいて説示したとおりであるところ、仮に、甲5技術及び本件発 明1において「字幕」及び「コメント」が文字列データとして処理される場面があ るとしても(ただし、甲5に甲5技術の字幕がテキストデータであるとの開示又は 示唆がないことは、前記ウにおいて説示したとおりである。)、そのことにより上 記相違の本質が解消されるものではない。また、前記(2)エ(ア)において説示した ところに照らすと、仮に、本件原出願日当時、原告が主張するような内容のWEB 2.0という社会現象が生じていたとしても、そのことから直ちに、甲5技術にい う「字幕」(副映像)と本件発明1にいう「コメント」につき、これらが相互に置 換可能であると認めることはできない。よって、原告の上記主張は失当である。\n
(4) 前記(2)及び(3)のとおり、甲4技術及び甲5技術は、いずれも本件発明1 の構成1E及び1Fに相当する構\成を有するものではないから、甲1発明に甲4技 術及び甲5技術を適用しても、相違点1−1に係る本件発明1の構成を得ることは\nできない。
(5) なお、原告は、相違点1−1に係る本件発明1の構成は甲1発明において\nふきだしの大きさ並びにふきだし中のコメント(テキスト注釈)の文字長、フォン トの大きさ及び表示位置を適宜変更することにより得られるものであるから、設計\n的事項にすぎないと主張する。 しかしながら、甲1の図18によると、甲1発明においては、ふきだしが映像表\n示部の枠の外側にはみ出すこととされる一方、テキスト注釈については、それが3 行にわたる場合を含め、ふきだし中の上側、下側、左側及び右側にあえて十分な余\n白を設けて、テキスト注釈が映像表示部の枠の外側にはみ出さないようにしている\nと認められるから、ふきだしの大きさ並びにふきだし中のテキスト注釈の文字長及 びフォントの大きさをどのようにするかが設計的事項であるとしても、ふきだしと 映像表示部との位置関係及びテキスト注釈の表\示位置につき、これを相違点1−1 に係る本件発明1の構成(構\成1E及び1F)とすることについてまで設計的事項 であるということはできない。よって、原告の上記主張を採用することはできない。
(6) 小括
以上のとおりであるから、相違点1−1についての本件審決の判断に誤りはない。 そして、前記2(4)のとおり、本件発明9と甲1プログラム発明との間にも、相違 点1−1と同様の相違点が存在するといえるところ、上記説示したところに照らす と、この相違点についての本件審決の判断にも誤りはない。取消事由5は理由がな い。よって、無効理由2−1は理由がない。

◆判決本文

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令和2(ワ)31138等  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年1月28日  東京地方裁判所

 原告は、登録商標「ライスパワー」「RICE POWER」を、被告は登録商標「いいべさーホワイトライスパワー」をそれぞれ保有していました。被告は「ホワイトライスパワー」「WHITE RICE POWER」を使用しており、これらが商標権侵害・不正競争行為に該当するのかが争われました。裁判所は商標権侵害・不正競争行為であるとして、差止および17万円の損害賠償を認めました。

被告主張表示1について\n
被告主張表示1は,「IIBESA」,「いいべさー」,「ホワイトライ\nスパワー」の3段の文字列からなり,「ホワイトライスパワー」の部分 は,黒字の背景に白文字の表示となっており,「いいべさー」,「いいべ\nさー」,「ほわいとらいすぱわー」との称呼が生じる。そして,「いいべ さー」とは,東北地方の方言で「いいでしょう」という意味を持ち, 「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白い米の力」との観念が生じるも のといえる。
このように,被告主張表示1の外観において,「IIBESA」,「い\nいべさー」,「ホワイトライスパワー」の部分は3段に分かれて表示され\nており,「ホワイトライスパワー」の部分は黒字の背景に白文字の表示\nになっており,他とは区別されている。そして,その観念については, 「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白い米の力」というものであり, 「いいでしょう」は「白い米の力」(ホワイトライスパワーの文字部分) を修飾しており,「白い米の力」の部分が需要者の注意を引きつけるも のといえる。また,その称呼についても「いいべさー」,「いいべさー」, 「ほわいとらいすぱわー」というものであり,これを一連のものと一読 するのは冗長であり,各部分について格別に称呼が生じるといえる。 加えて,被告主張表示1の「ホワイトライスパワー」のうち「ライス\nパワー」部分は,需要者である化粧品に関心のある一般の消費者に原告 勇心酒造の出所を示すものとして周知の表示であった(前記3(1))。そ して,原告商品及び被告各商品は,ともに化粧品の部類に属するものと いえるところ,化粧品類の取引においては,一般に,「ホワイト」とは, その商品の色彩を表示するもの又は肌の美白効果を謳う品質や効能\表示\nに用いられるものとして,広く使用されているといえ,このような化粧 品類の取引の実情に鑑みれば,「ホワイト」の部分は,その商品の品質, 効能,色彩を表\示するものと理解し得るものといえる。これらによれば, 本件においては,「ホワイトライスパワー」のうち,「ライスパワー」の 部分が周知の表示として需要者に強い印象を与え,このこととの関係に\nおいて,「ホワイト」の部分は,その「ライスパワー」の品質,効能,\n色彩を示すものと理解し得て,その場合には識別力を有しないか,又は 識別力の弱い部分であるというべきであり,一般の消費者は,「ライス パワー」部分に着目するといえる。
このように,被告主張表示1の外観や観念,称呼に加えて,「ライス\nパワー」部分が需要者に周知の表示といえることや化粧品類の取引の実\n情に照らせば,被告主張表示1において強く支配的な印象を与えるのは,\n「ホワイトライスパワー」の文字部分のうちの「ライスパワー」部分で あるというべきである。 したがって,被告主張表示1については,原告各表\示と被告主張表示\n1の「ライスパワー」部分の類似性を検討するのが相当である。 そうすると,原告表示1と,被告主張表\示1の「ライスパワー」部分 は,外観,称呼,観念において同一であり,原告表示2及び3と被告主\n張表示1の「ライスパワー」部分は,称呼,観念において同一であると\nいえるから,原告各表示と被告主張表\示1は,両者を全体的に類似のも のとして受け取るおそれがあるといえ,類似しているといえる。
・・・
原告各表示と被告各表\示が類似していることに加えて,原告商品及び被告各 商品はいずれ化粧品の部類に属し,取引者及び需要者は共通のものといえる ことなどに照らせば,被告が原告各表示と類似する被告各表\示を付して被告 各商品の販売等することは,需要者に他人である原告の商品と混同を生じさ せる行為といえる。 したがって,被告が被告各表示を使用した商品を販売等する行為は,不競法\n2条1項1号の不正競争に該当する行為といえる。
・・・
被告主張標章1について
被告主張標章1は,被告主張表示1と同一の構\成であり,「IBESA」,「いいべさー」,「ホワイトライスパワー」の3段の文字列からなり, 「ホワイトライスパワー」の部分は,黒字の背景に白文字の表示となっ\nており,「いいべさー」,「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」との 称呼が生じる。そして,「いいべさー」とは,東北地方の方言で「いい でしょう」という意味を持ち,「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白 い米の力」との観念が生じるものといえる。 このように,被告主張標章1の外観において,「IIBESA」,「い いべさー」,「ホワイトライスパワー」の部分は3段に分かれて表示され\nており,「ホワイトライスパワー」の部分は黒字の背景に白文字の表示\nになっており,他とは区別されている。そして,その観念については, 「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白い米の力」というものであり, 「いいでしょう」は「白い米の力」(ホワイトライスパワーの文字部分) を修飾しており,「ホワイトライスパワー」の文字部分が需要者の注意 を引きつけるものといえる。また,その称呼についても「いいべさー」, 「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」というものであり,これを一 連のものと一読するのは冗長であり,各部分について格別に称呼が生じ るといえる。
加えて,被告主張標章1の「ホワイトライスパワー」のうち「ライス パワー」部分は,化粧品に関心のある一般の消費者に,原告勇心酒造の 出所を示す表示として周知の表\示といえ,需要者に強い印象を与えると いえる(前記3(1))。また,原告商品及び被告各商品は,ともに化粧品 の部類に属するものといえるところ,化粧品類の取引においては,「ホ ワイト」とは,一般に,その商品の色彩を表示するもの又は肌の美白効\n果を謳う品質や効能表\示に用いられるものとして,広く使用されている といえ,このような化粧品類の取引の実情に鑑みれば,「ホワイト」の 部分は,その商品の品質,効能,色彩を表\示するものと理解し得るもの といえる。これらによれば,本件においては,「ホワイトライスパワー」 のうち,「ライスパワー」の部分が周知の表示として需要者に強い印象\nを与え,このこととの関係において,「ホワイト」の部分は,その「ラ イスパワー」の品質,効能,色彩を示すものと理解し得て,その場合に\nは識別力を有しないか,又は識別力の弱い部分であるというべきであり, 一般の消費者は,「ライスパワー」部分に着目するといえる。
このように,被告主張標章1の外観や観念,称呼に加えて,「ライス パワー」の部分が需要者に周知の表示といえることや化粧品類の取引の\n実情に照らせば,被告主張標章1で強く支配的な印象を与える部分は, 「ホワイトライスパワー」の文字部分のうちの「ライスパワー」部分で あるというべきである。 したがって,被告主張標章1については,原告各表示と,被告主張標\n章1の「ライスパワー」部分との類否を検討するのが相当である。そう すると,原告商標1と,被告主張標章1の「ライスパワー」部分は,外 観,称呼,観念において同一であり,原告商標2と被告主張標章1の 「ライスパワー」部分は,称呼,観念において同一であるといえる。そ して,原告勇心酒造と原告創研は,原告各商標の持つ出所識別機能等を\n保護発展させるという共通の目的のもとに結束しているものと評価する ことができ(前記認定事実(4)),実質的には同一の表示による商品化事\n業を一体として営む関係にあるといえることに鑑みれば,上記「ライス パワー」部分が同一である場合,原告各商標と被告主張標章1は,類似 しているということが相当である。
・・・
カ 被告は,1)被告主張標章1ないし4が全体としてまとまりよく表示され\nており,称呼も冗長ではなく,よどみなく一連に称呼できることから,全 体を一体として理解すべきである,2)「ホワイトライスパワー」のうち 「ホワイトライス」とは白米を指すことから,「ホワイト」の部分だけを 分離して判断することはできないなどと主張するが,これらの被告の主張 を採用することができないのは,前記4(3)キのとおりである。
キ 以上のとおり,原告各商標と被告主張標章1ないし4及び被告標章5な いし8は類似しているといえる。そして,被告主張標章1ないし4は, 「ホワイトライスパワー」又は「White Rice Power」と いう被告標章1ないし4の文字列を含むことからすれば,原告各商標と被 告標章1ないし4は類似しているといえる。したがって,原告各商標と被 告各標章は類似しているといえる。

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令和2(ワ)22071  特許権に基づく損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年2月18日  東京地方裁判所

 ユーグレナに対して、個人発明家が特許権侵害と300万円の損害賠償を求めました。早期審査と分割出願を繰り返しています。親出願は代理人がついていますが、分割出願は代理人無しです。本人訴訟です。裁判所はサポート要件違反として権利行使不能と判断しました。\n

2 争点2−3(サポート要件違反)について
事案にかんがみ,サポート要件に関する争点2−3から判断する。
(1) 判断枠組み
特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特 許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲 に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な 説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲の ものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術 常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか 否かを検討して判断すべきであり,明細書のサポート要件の存在は特許権者 が証明責任を負うと解するのが相当である。
(2) 本件発明の課題
ア 【0006】には,本件発明の目的が「タンパク質を抽出できる液状化 粧品を提供すること」と記載されているにとどまり,界面活性剤の含有の 有無や含有量,界面活性剤がタンパク質の抽出に与える作用に関する記載 はない。 しかし,本件明細書において,【0006】は,【0005】とともに 「発明が解決しようとする課題」についての記載と位置付けられるとこ ろ,【0005】には,「界面活性剤は,皮膚に負担をかけ,荒れ等を生 じさせ得るため,界面活性剤を使用していないか,又は,界面活性剤の 使用量が極少量である方法が求められていた。」との記載が存在する。そ うすると,【0006】に記載された本件発明の目的は,【0005】に 記載された従来技術の課題の解決を踏まえたものと解釈するのが合理的 である。 加えて,【0011】には,本件発明に係る液状化粧品は,「有効成分を 所定量にて含有してなるタンパク質抽出剤の一態様を指すもの」である との記載がある。そして,本件発明に対応する「第2のタンパク質抽出 剤」の「有効成分」について,【0037】では,「第2の高級アルコー ル」及び「炭化水素」が挙げられている一方,界面活性剤は挙げられて おらず,かえって,【0038】には,「本発明の第2のタンパク質抽出 剤は,界面活性剤を含まなくともよい。」との記載がある。また,上記の 「所定量」について,【0060】には,「第2のタンパク質抽出剤を液 状化粧品として使用する場合,「炭化水素」の含量としては,タンパク質 抽出剤(液状化粧品)の「全量」に対して3体積%以上含まれているこ とが好適である。」,「炭化水素の濃度が低い場合には,タンパク質抽出剤 (液状化粧品)をより多く使用することにより,タンパク質の抽出は可 能である。しかし,炭化水素の含有量が全量に対して3体積%を下回る\nと,化粧品として実用的な範囲を上回る量を使用しなければならなくな るため,好適ではない。」,「第2のタンパク質抽出剤を液状化粧品として 使用する場合,「第2の高級アルコール」の含量としては,「炭化水素」 の体積に対して1体積%以上含まれていることが好適である。」,「第2の 高級アルコールの濃度が低い場合には,タンパク質抽出剤(液状化粧品) をより多く使用することによりタンパク質の抽出は可能である。しかし,\n第2の高級アルコールの含有量が炭化水素に対して1体積%を下回ると, 化粧品として実用的な範囲を上回る量を使用しなければならなくなるた め,好適ではない。」との記載がある。 さらに,【0044】には,「第2の高級アルコール」を「炭化水素」と 組み合わせることによってタンパク質を抽出できる機序が記載されてい るほか,【0065】には,本件発明の「タンパク質抽出剤は,界面活性 剤等を含まなくとも,優れたタンパク質抽出効果を奏する。したがって, 本発明のタンパク質抽出剤によれば,皮膚への負担を低減しつつ,所望 の洗浄効果が得られる。」との記載が存在する一方,界面活性剤がタンパ ク質を抽出する作用ないし機序についての記載はない。 以上によれば,本件発明の課題は,単にタンパク質を抽出できる液状化 粧品を提供することと解することはできず,界面活性剤を使用していな いか又は界面活性剤の使用量がごく少量であってもタンパク質を抽出で きる液状化粧品を提供することであると認めるのが相当である。
イ 原告は,本件発明の課題は,【0006】記載のとおり,タンパク質を 抽出できる液状化粧品を提供することであると解釈すべき旨を主張するが, 前記アで説示したところに照らし,採用することができず,このことは, 本件特許の出願経過において,原告が【0006】にあった「上記課題を 解決するためになされたものであり,」との記載を削除する補正をした事 実によっても左右されるものではない。
・・・
ウ 本件明細書に記載された実施例のうち,実施例13(【0149】)は, 角栓のある皮膚に対する洗浄効果に関するものであり,第2のタンパク質 抽出剤Aとして,約30体積%のオクチルドデカノールと,約60体積% のスクアラン(スクワラン)を含むものが用いられている(【0141】)。 なお,実施例13の結果として,実際に毛穴に詰まった角栓を除去できた ことに関する記載や示唆はない。 また,本件明細書に記載されたその余の実施例は,いずれも,角栓のあ る皮膚に関するものではない。
エ 本件明細書には,炭化水素の含有量が全量に対して3体積%を下回る場 合及び第2の高級アルコールの含有量が炭化水素に対して1体積%を下回 る場合において,角栓除去の効果を奏することができるか否かに関する記 載や示唆はない。
(5) 検討
前記(2)のとおり,本件発明の課題は,界面活性剤を使用していないか又 は界面活性剤の使用量がごく少量であってもタンパク質を抽出できる液状化 粧品を提供することにあると認められるところ,前記(2)のとおり,本件明 細書の特許請求の範囲にはオクチルドデカノール及び炭化水素の含有量に関 する記載がないから,特許請求の範囲の記載上,上記課題を解決するために 必要となるオクチルドデカノール及び炭化水素の含有量について何ら限定は ないと理解できる。
しかるに,前記(4)のとおり,本件明細書においては,タンパク質を抽出 する効果を奏する有効成分として,第2の高級アルコールであるオクチルド デカノールと,リモネン,スクアレン,及びスクアランからなる群から選ば れる1種類以上の炭化水素が特定されているところ,炭化水素の含有量がタ ンパク質抽出剤の全量に対して3体積%を下回る場合及び第2の高級アルコ ールの含有量が炭化水素に対して1体積%を下回る場合には,化粧品として 実用的なものではないことが記載されており,かつ,炭化水素及び第2の高 級アルコールの含有量が上記の数値を下回った場合に角栓を除去する効果を 奏することができるか否かについては何らの記載も示唆もない。 また,本件明細書には,本件発明に係る角栓除去用液状クレンジング剤に よって実際に角栓を除去することができた旨の記載は見当たらない。これに 加えて,角栓のある皮膚を対象とする実施例13において用いられた,角栓 除去用液状クレンジング剤に相当する「第2のタンパク質抽出剤A」に含ま れるスクアラン及びオクチルドデカノールの含有量は,それぞれ,全量の3 体積%及び炭化水素(スクアラン)に対する1体積%を大きく上回るもので ある。
以上によれば,本件発明の特許請求の範囲の記載は,本件明細書の発明の 詳細な説明の記載により,当業者が,本件発明に係る角栓除去用液状クレン ジング剤のうち炭化水素の配合量が全量の3体積%未満又はオクチルドデカ ノールの配合量が炭化水素の1体積%未満の範囲であっても,角栓除去作用 があり,前記(2)の課題を解決できることについて,認識することはできな いというべきであり,本件全証拠によっても,本件明細書の発明の詳細な説 明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし上記の本件発 明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認めることはできな い。
(6) 原告の主張について
ア 原告は,【0002】ないし【0005】の記載は,本件発明をするに 至った契機を記載したものにすぎず,【0006】は,こうした認識に端 を発して「タンパク質を抽出できる液状化粧品を提供することを目的と」 してなされたものであることが記載されているものにすぎない旨を主張す る。 しかし,前記(2)アで説示したところによれば,本件発明の課題が単に タンパク質を抽出できる液状化粧品を提供することに限定されると解す ることはできない。
イ 原告は,【0061】には液状化粧品に含まれるオクチルドデカノール 及びスクアランの含有量が少なくてもよいことが記載されているから,本 件発明が本件明細書の発明の詳細な説明に記載されている旨を主張する。 しかし,【0061】には,第2のタンパク質抽出剤を「液状化粧品」 に使用した場合の各成分の含有量について,実際の使用態様において 「好適な量」よりも薄い濃度で使用することを許容する旨が記載されて いるにすぎず,オクチルドデカノール及びスクアランを「好適な量」含 有しない濃度において,タンパク質を抽出する作用及び角栓除去作用を 奏することができるかについては,何ら記載も示唆もされていない。し たがって,【0061】の記載をもって,本件発明が本件明細書の発明の 詳細な説明に記載されたものであると認めることはできない。
ウ 原告は,【0061】には,水を含有する態様の第2のタンパク質抽出 剤(液状化粧品)において,炭化水素の配合量は水への溶解度以上の量で あり,第2の高級アルコールの配合量は,炭化水素の体積に比し,1体 積%以上から200体積%以下の範囲内の量であると記載されているとこ ろ,炭化水素であるスクアランは水に溶けないから,スクアランがわずか でも含まれていればよいことが本件明細書の発明の詳細な説明に記載され ている旨を主張する。
しかし,【0061】の直前の段落である【0060】には,第2のタ ンパク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合に,水を含有する態様 と含有しない態様とを区別することなく,炭化水素の配合量を定めるこ とが記載されている。そして,これに続く【0061】も,【0060】 と同様,第2のタンパク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合につ いて説明したものであり,かつ,【0060】の記載内容を排斥する記載 はない。そうすると,【0061】は,【0060】の記載のとおり,炭 化水素が全量の3体積%以上含まれていることを前提とした記載と解釈 するのが相当である。
エ 原告は,本件明細書の実施例13には,スクワランとオクチルドデカノ ールが含まれる第2のタンパク質抽出剤Aは,角栓のある皮膚に対する洗 浄効果,すなわち角栓除去効果が市販の石けんより高かったことが明らか にされているから,その記載により当業者は本件発明の課題が解決できる ことを認識できる旨を主張する。 しかし,実施例13には,角栓のある皮膚に対する洗浄効果の高さにつ いての記載が存在するにとどまり,実際に毛穴に詰まった角栓が除去さ れたことについては記載されていない。

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令和3(行コ)10003  手続却下処分取消請求控訴事件  特許権  行政訴訟 令和4年2月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 国際特許出願について、期限内に翻訳文を提出しなかった点について、救済を求めましたが、1審はこれを認めませんでした。知財高裁も同様です。

 法184条の4第4項は,外国語特許出願の翻訳文の提出について,手続 期間を遵守しなかったことによって出願又は特許に係る権利の喪失を引き起 こしたときの権利の回復について定めた特許法条約(PLT)12条に整合し た救済手続を導入するために,平成23年の特許法改正により新設されたも のであり,こうした規定新設の経緯からすると,外国語特許出願人について, 期限の徒過があった場合でも,柔軟な救済を図ることを目的としたものであ ると解される。しかし,他方で,1)特許協力条約(PCT)に基づく国際特許 出願の制度は,国内書面提出期間内に翻訳文を提出することによって,我が 国において,当該外国語特許出願が国際出願日にされた特許出願とみなされ るというものであるから,同制度を利用しようとする外国語特許出願の出願 人には,自己責任の下で,国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出する ことが求められる。また,2)取り下げられたものとみなされた国際特許出願 に係る権利の回復を無制限に認めると,国内書面提出期間経過後も,当該国 際特許出願が取り下げられたものとみなされたか否かについて,第三者に過 大な監視負担をかけることになる。そうすると,法184条の4第4項にい う「正当な理由があるとき」とは,特段の事情がない限り,国際特許出願を 行う出願人が相当の注意を尽くしていたにもかかわらず,客観的にみて国内 書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかったときをいう ものと解すべきである。控訴人は,法184条の4第4項の「正当な理由」 の解釈は,期限管理システムが通常の状態で有効に機能しているのであれば,\n人は間違えることもあるのだからそれは救済するという立場に近づける方向 で緩やかにすべきであると主張するが,その解釈に当たって上記1),2)の点 も考慮しなければならないことからすると,「正当な理由」の解釈を一概に緩 やかにすべきであるということはできず,控訴人の上記主張は,採用するこ とができない。
(2) 相当な注意を尽くしていたか否かについて
控訴人は,本件担当パラリーガルが控訴人に送付した本件メールに,日本 の国内移行手続の期限として誤った記載がされたのは,本件代理人事務所に おいてダブルチェック体制による期限管理システムが有効に機能していたに\nもかかわらず,偶発的でかつ予期し得ない人為的ミスが重なって生じたもの\nであり,偶発的に生じた予期し難いものであったとした上で,法184条の\n4第4項の「正当な理由」の解釈を控訴人主張のとおりに緩やかにすれば, 本件においては,相当な注意を尽くしていたにもかかわらず,客観的にみて 国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかったもので あり,法184条の4第4項の「正当な理由」があると主張する。 しかし,法184条の4第4項の「正当な理由」の解釈を控訴人主張のと おりに緩やかにすることができないことは,前記(1)に述べたとおりである。 また,本件代理人事務所では,国際出願の出願人に,国内移行手続の期限と して,国・地域にかかわらず,国内移行手続の期間が30か月である場合の 期限を報告するのが標準の実務であり,また,費用見積りは,クライアント から要望があった場合に行う手続であった(甲23和訳3〜4頁)。そうする と,費用見積りを,クライアントの要望がないにもかかわらず,本件担当弁 護士が選択した国について,国内移行手続の期間が30か月の国と31か月 の国に分けて用意し,それに伴って国内移行手続の期限も,国内移行手続の 期間が30か月の国と31か月の国に分けて表示するというのであれば,そ\nれは通常の取扱いと異なるのであるから,通常の取扱いと異なる部分につい て,誤りが生じないように,通常の取扱い以上にチェックすることが必要と なるというべきである。そして,本件の取扱いにおいては,国内移行手続の 期限を,国内移行手続の期間が30か月の国と31か月の国に分けて表示す\nるという点が,同期間が30か月である場合の期限のみを報告するという通 常の場合と異なっており,同期限は,国際特許出願の出願人であるクライア ントの権利の得喪に非常に重要な意味を有するから,通常と異なる取扱いを する以上は,同期限の表示の誤りの有無は,入念に点検すべきであるといえ\nる。そして,本件メール案には,国内移行手続の期限及び同手続に要する費 用の見積額が記入された一覧表(本件一覧表\)が記載され,国によって異な る期限が表示されていたのであるから,これらの国ごとの期限に誤りがない\nかを点検すべきであり,これをすることは容易にできたものと認められる。 しかしながら,本件一覧表に示された期限が正しいかどうかについてダブル\nチェック等により入念な点検が行われたことはうかがわれない。 本件一覧表に記載されていたのと同じ誤った期限は,本件担当パラリーガ\nルが日本の特許事務所に送付した,見積額を問い合わせるメール(甲19の 英文2頁目)にも表示されていたが,それは,本文の上の「Re:」という欄に 表示されていたにとどまり,そのメールの本文の問い合わせ事項に含まれて\nいたものではなかった。そのため,これに返信した日本の特許事務所がこの 表示の誤りを指摘しなかったとしても,日本の特許事務所がその表\示に誤り がないことを確認したと考えることは必ずしもできないようなものであった。 そうすると,上記メールに対する日本の特許事務所の返信メールに誤りの指 摘がなかったことをもって,その表示が正しいことについて確認がされたと\n認めることはできない。 したがって,控訴人は,相当な注意を尽くしていたにもかかわらず,客観 的にみて国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかっ たものであるとは認められず,法184条の4第4項の「正当な理由」があ るとは認められない。

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◆令和2(行ウ)316

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令和2(ワ)7486  特許権移転登録手続等請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年2月28日  大阪地方裁判所

 冒認発明を理由に移転請求をしました。裁判所は共同発明であるとして移転請求を認めました。

ア 特徴的部分1)について
前記各認定によれば、被告は、少なくとも平成29年8月10日頃までは、魚の 神経抜き及び血抜きにあたってはあえて少し血を残す方が良く、魚の熟成等の観点 からは血の回りだけでなく神経絞めに意味があると考えており、このような考えに 基づき、脳髄や神経を抜くことで血抜きをするという発想を持っていたことがうか がわれる。また、被告は、この頃、「明石浦漁港のやり方」すなわち背骨上側に沿う 脊髄神経に針金を通し神経を破壊する方法に加えて水圧を使うことを提案している ことに鑑みると、尾部を切断することやそれによって血液弓門を露出させ、血液弓 門から水圧を掛けて血抜きをすることは、必ずしも想到していなかったものと推察 される。他方、原告は、早く確実に作業することが可能なことや骨全体まで完全に血抜きをすることを重視し、神経抜きはすればよいがしなくてもよく、血を回さな\nいための神経抜きであると考えていた。原告は、当時実施していた方法はエラに水 圧を掛けて血抜きをするものであったが、この方法では鬱血を広げてしまうという 欠点があるとしていたところ、足踏み式試作品を見て、水が噴出されるノズルの先 端部分の形状をより細くすれば十分に加圧することが可能\\となり、「全て切った尾 びれの付け根から処理でき」る、すなわち、尾部を切断して血液弓門を露出させ、 そこに先端を細くしたノズルを刺して水圧を掛け、神経抜きと血抜きを行う方法を 着想したことがうかがわれる。 その後の原告と被告とのやり取りは、原告が着想した上記方法を念頭に、ノズル の形状や流量調節器具に関する具体的検討を進めたものと理解される。 したがって、本件各発明の特徴的部分1)は、被告が製作した足踏み式試作品に接 したことを契機とするものの、長年の水産会社勤務、とりわけ魚の生き締めに関す る実地での経験等を背景とした原告の着想及び具体化に基づくものといってよい。 したがって、本件各発明の特徴的部分1)の完成については、被告のみならず原告も 創作的に寄与したものというべきである。 イ 特徴的部分2)について
前記各認定によれば、本件各発明の特徴的部分2)に関する原告と被告とのやり取 りは、以下のような経過をたどったものと理解される。 すなわち、被告は、原告とのやり取りを開始した平成29年7月11日までには 既にノズルの先端の形状がテーパ状である足踏み式試作品を試作していたが、同月 12日には、ノズルの形状が針状のエアダスターにつき、十分に用途を果たすこと、\nエアガンでないと極細ノズルが付けられないこと、魚によっては極細ノズルは要ら ないかもしれないが、特に血管の方までやるなら極細ノズルは必要と考えることな どの意見を述べた。また、原告は、同年8月1日、被告に対し、足踏み式試作品に ついて、先端部分をもっと細くすることができるかを尋ね、被告が簡単にできる旨 を回答すると、それであれば神経まで潰せるし、逆から骨の血も抜ける、全て切っ た尾ヒレの付け根から処理できるとの考えを示した。さらに、同日、原告は、針状 試作品について、これを用いれば簡単に後ろから処理できる、水圧で神経が出せる なら、スーパーでも使えるなどと感想を述べた。その後の同年9月の間のやり取り においても、原告と被告は、ノズルの形状については針状の極細ノズルとすること を念頭に検討を進めていたことがうかがわれる。 もっとも、原告は、針状試作品では魚が暴れた際等にノズルが変形等してしまう\nなどの不具合があると結論付け、同年11月1日、被告に対し、ノズルの形状をテー パ状にすることを提案した。これに対し、被告は、当初、テーパ状とすると製造に あたって精密さが求められ、コストが掛かることなどを指摘し、消極的な態度を示 したが、原告が製造業者からテーパ状のノズルの製作は比較的簡単である旨の回答 を得たこともあって、ノズルの形状をテーパ状とすることも検討することとした。 しかるに、原告は、その後、ノズルの形状をテーパ状とするだけでは十分ではな\nく、せめて先端の1cm程度を針状にして魚の骨の中で固定することが必要であると し、当該針状の部位からそのままテーパ状の部位につながるノズルの形状を提案し た。これに対し、被告は、スプレー式に噴出するテーパ状のノズルであっても、圧 力の逃げ場がないように神経弓門や血液弓門に刺すなどすることができるのではな いか、との意見を述べたが、原告は、これに否定的な態度を示した。 このような経緯を経て、本件各発明は、あらゆる大きさの魚に対応するための血 液弓門の密着封止構造を実現すると共に、ノズル先端部の破損を抑制するため、ノ\nズルの先端部分の形状をテーパ状にすること(特徴的部分2))をその特徴的部分の 1つとするものとして完成するに至ったものといえる。このことに鑑みると、特徴 的部分2)につき、最終的には被告の考えに基づき発明として完成したものの、課題 を解決するための着想及びその具体化の過程においては、被告のみならず原告も創 作的に寄与したものというべきである。
ウ したがって、原告と被告は、共に本件各発明の特徴的部分1)及び2)の完成に 創作的に寄与したものといえ、原告と被告は、本件各発明の共同発明者と認められ る。これに反する原告の主張は採用できない。
エ 被告の主張について
被告は、原告の助言を受ける前に既に本件各発明を完成させていた旨を主張し、 これに沿う供述等をする。 しかし、着想としてであれ被告が原告とのやり取りとかかわりなく単独で本件各 発明を完成させていたことをうかがわせる検討メモその他の客観的な資料は見当た らない。その点を措くとしても、前記認定に係る本件各発明に至る経緯を見る限り、 被告は、とりわけ本件各発明の特徴的部分2)について、原告の意見を踏まえて方針 を変更したことがうかがわれる。この方針変更は、特徴的部分2)に関わるものであ る以上、単に本件各発明を商品化する上で必要となったという程度にとどまるもの とはいえない。また、本件各発明を商品化した商品の販売促進につき原告の協力を 得るという被告の意図の存在は、前記認定に係る本件各発明に至る経緯からもうか がわれるものの、本件各発明の構成を具体的に示すなどして原告との議論を誘導す\nるなどした形跡はうかがわれず、むしろ上記のとおり原告の意見を踏まえて方針変 更をしたことなどを踏まえると、そのような意図のみに基づくものとまでは認めら れない。 その他被告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する被告の主張は採用 できない。
(5) 小括
以上より、本件特許は、特許法38条に違反してされたものであるから、同法1 23条1項2号所定の要件に該当すると共に、原告は本件特許に係る発明である本 件各発明について特許を受ける権利を有する者であることから、原告は、特許権者 である被告に対し、同法74条1項に基づき、その持分の移転請求権を有する。
2 本件出願の不法行為該当性等(争点2)について
不法行為の被害者が自己の権利擁護のため訴えを提起することを余儀なくされ、 訴訟追行を弁護士に委任した場合、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容 された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、 不法行為と相当因果関係に立つものというべきである(最高裁昭和44年2月27 日第一小法廷判決・民集23巻2号441頁参照)。 しかし、本件において、原告は、冒認出願又は共同出願違反による損害として、 本件訴訟追行に要した弁護士費用以外の損害の主張をしていないことから、弁護士 費用以外の損害を認めることはできない。そうである以上、原告が、冒認出願等の 被害者として、本件出願により生じた損害につき本件訴えを提起することを余儀な くされたとは認められない。そうすると、原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用 は、冒認出願等と相当因果関係のある損害とはいえない。 したがって、原告の被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の成立は認め られない。これに反する原告の主張は採用できない。

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令和3(行ケ)10072  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年2月21日  知的財産高等裁判所

 記載不備、進歩性なしとして拒絶審決が成されました。記載不備については理由ありとされましたが、進歩性欠如として審決維持です。

(1) 特許出願における特許請求の範囲の記載については,「特許を受けようとす る発明が明確であること」という要件に適合することが求められるが(特許法36 条6項2号),これは,特許制度が,発明を公開した者に独占的な権利である特許権 を付与することによって,特許権者についてはその発明を保護し,一方で第三者に ついては特許に係る発明の内容を把握させることにより,その発明の利用を図るこ とを通じて発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とするものであ ることを踏まえたものである(最高裁平成24年(受)第1204号同27年6月 5日第二小法廷判決・民集69巻4号700頁)。同要件については,同目的の見地 を踏まえ,請求項の記載のほか,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識 を考慮して判断されることになる。 これを本願発明についてみると,前記第2の2の本願の請求項1の記載及び本願 明細書の図1の内容に加え,本願明細書中,本願発明の特徴について説明する段落 において,「増幅器の出力回路」(又は「アナログ増幅器の出力回路」)という表現が\nひとまとまりの語として用いられていること(本願明細書の段落[0001],[0002], [0007]〜[0009],[0012]。同[0017],[0020]も参照。なお,本願明細書[甲11]中に,本願発明の内容に関して,「出力回路」の語が単体で用いられている個所 はない。),前記1(2)の本願発明の概要からすると,本願発明の技術的特徴の最たる 部分は,出力電流に相関した消費電流の変化がないという点にあり,その旨が本願 の請求項1にも明記されているところ,本願明細書の段落[0009]の記載からする と,本願発明が上記の技術的特徴を回路の構成によって実現するものであることは\n明らかであることのほか,実施例についても,「信号に相関した電流を電源回路に流 さない出力部」という記載がある(本願明細書の段落[0015]。同[0018],[0023] も参照)一方で,前段の増幅部については図示されていない旨の記載があること(同 [0016]。同[0019]も参照)を踏まえると,本願の請求項1中,「・・・を特徴と するオーディオ用増幅器の出力回路」という記載において,「・・・を特徴とする」 という部分は,「オーディオ用増幅器の出力回路」,すなわち,「オーディオ用増幅器」におけるものであるという特定の付加された「出力回路」を修飾するものであるこ とが,明確であるというべきである。 そうすると,本願の請求項1の記載は,第三者が特許に係る発明の内容を把握す ることを困難にするものとはいえず,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確 なものであるとは認められず,本願発明に係る特許請求の範囲の記載は,特許法3 6条6項2号に規定する要件を満たしている。
(2) 前記(1)の判断に反する被告の主張は,いずれも採用することができない。被 告の主張は,本願の請求項1の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明 確なものであることを根拠づけるものとはいえない。
(3) したがって,取消事由1には理由がある。
もっとも,前記第2の3(2)の本件審決の進歩性についての判断は,本願の請求項 1の記載の明確性についての前記(1)の判断を前提としても,なお問題となるもの であって,前記進歩性についての判断に誤りがない場合には,本件審決の結論に誤 りはないこととなるから,次に,取消事由2について検討する。
5 取消事由2(進歩性について)について
・・・
以上を踏まえると,相違点アを認定しなかった点で本件審決に誤りがあるとはい えない。なお,仮に,形式的に引用発明と本願発明を対比して,相違点アを認定し たとしても,引用発明におけるショットキーバリアダイオードが高抵抗素子として 機能するものであることを含めて既に述べた点のほか,本願発明についても3端子\n増幅素子の入力端子より信号SIG側にバイアス回路として抵抗R1及びR2を設け ることが示されていること(本願明細書の段落[0015],図1)に照らし,相違点ア が本願発明の進歩性を基礎付けるものとはいえない。
c 前記bは,あくまで本願発明がショットキーバリアダイオードの構成を付加\nすることを排除していない旨をいうものにすぎず,同構成を本願発明の構\成要素と して追加するものではない。後者の理解を前提とする原告の主張(それゆえにそれ が前者の理解と矛盾しているという主張を含む。)は,採用することができない。 また,特に入出力電圧の点で引用発明と本願発明が異なるという原告の主張は, 本願発明の発明特定事項に含まれていない構成を前提に本願発明についていうもの\nであって,その前提を欠き,採用することができない。引用発明との対比のために, 本願発明の入出力電圧の範囲を具体的に検討する必要がある旨をいう原告の主張も, 同様に,本願発明の発明特定事項に含まれていない構成をいうもので,採用するこ\nとができない。

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令和2(ネ)10059  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟__全文__ 令和4年2月9日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審は、アルギニンは,その後の発酵処理工程で初めて混合されるものであるから技術的範囲に属さないと判断しましたが、知財高裁は、属すると判断しました。1審判決後に訂正審判がなされ、これが確定しています。控訴人は訂正発明のみについての判断を求めました。争点は104条の推定規定の出願日が優先権基礎出願日が適用されるのか、推定が覆滅されるか等です。

 以上によると,基礎出願A,Bの上記記載に接した当業者は,上記本件優先日当 時の技術常識とを考え併せ,「大豆胚軸」以外の「ダイゼイン類を含む原料」を発酵 原料とした場合でも,ラクトコッカス20-92株のようなエクオール及びオルニ チンの産生能力を有する微生物によって,発酵原料中の「ダイゼイン類」がアルギ\nニンと共に代謝されるようにすることにより,発酵物の乾燥重量1g当たり,8m g以上のオルニチン及び1mg以上のエクオールを含有する,食品素材として用い られる粉末状の発酵物を生成することが可能であると認識することができたという\nべきであるから,本件訂正発明を基礎出願A,Bから読み取ることができるものと 認められる。 したがって,本件訂正発明は,少なくとも基礎出願A,Bに記載されていたか, 記載されていたに等しい発明であると認められ,本件訂正発明は,基礎出願A,B に基づく優先権主張の効果を享受できるというべきである。 そうすると,本件特許は,特許法104条の規定の適用については,本件優先日 である平成19年6月13日に出願されたものとみなされるから,本件訂正発明生 産物が同条の特許出願前に日本国内において「公然知られた物でない」か否かを検 討するに当たり,本件優先日以降に公開された乙B3(国際公開第2007/06 6655号。国際公開日2007(平成19)年6月14日)を考慮することはで きない。
ウ 「公然知られた物でない」に当たるか
その物が特許法104条の「公然知られた」物に当たるといえるには,基準時に おいて,少なくとも当業者がその物を製造する手がかりが得られる程度に知られた 事実が存することを有するというべきところ,本件訂正発明生産物が,本件優先日 当時に公知であった乙B16,乙B24に記載されていたとはいえず,また,乙B 16又は乙B24から本件訂正発明を容易に想到することができないことは後記3 (4),(6)のとおりである。そうすると,本件優先日時点において,乙B16又は乙 B24に触れた当業者が本件訂正発明生産物を製造する手がかりが得られたという ことはできない。 また,被控訴人らは,本件訂正発明生産物は,乙B16の「実施例1」の「乾燥 重量1g当たり,1mg−3mgのエクオールが生成」している発酵物「992m g」に栄養強化添加物である「97.48%」の純度のオルニチン(乙B67の国 際公開公報(WO2006/051940))を「8mg」加えたものであるにすぎ ないから,「公然知られた物」であると主張するが,前記アのとおり,本件訂正発明 生産物は,「オルニチン及びエクオールを含有する粉末状の発酵物であって,前記発 酵物の乾燥重量1g当たり,8mg以上のオルニチン及び1mg以上のエクオール が生成され,食品素材として用いられる物」であるから,乙B16に乙B67を組 み合わせたとしても,「発酵物の乾燥重量1g当たり,8mg以上のオルニチン及び 1mg以上のエクオールが生成された」物に当たらないから,上記被控訴人らの主 張は採用できない。
なお,被控訴人らは,本件発明による生産物について,乙B4により公然知られ た物に当たる旨の主張をしていたので念のため検討するに,乙B4に本件訂正発明 が記載されていたとはいえず,また,乙B4から本件訂正発明を容易に想到できた ものではないことは後記3(3)のとおりであり,乙B4によっても当業者が本件訂 正発明生産物を製造する手がかりが得られたということはできない。 したがって,本件訂正発明生産物は,本件優先日当時,「公然知られた物でない」 といえる。
エ 被控訴人方法の構成について\n
被控訴人らは,被控訴人原料の生産方法が原判決別紙「被告方法目録」記載の被 控訴人方法であることについて自白が成立しているから,特許法104条の推定は 働かないと主張する。そして,令和元年6月7日の原審第4回弁論準備手続期日に おいて,当事者双方が,被控訴人方法の構成について原判決別紙「被告方法目録」\n記載のとおりである旨陳述している(当裁判所に顕著)。 原審において当事者間に争いがないものとされた被控訴人方法と,当審で控訴人 が主張する被控訴人方法とでは,前者における「α3 前記酵素処理工程を経て得 られたダイゼインを含む処理液と,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●をアルギニンを含む培養液と共に混合して発酵処理をし,」との構成部\n分を,後者では「α3−1 前記酵素処理工程を経て得られたダイゼインを,アル ギニンを含むその他の成分と混合して培地とした上,これを滅菌処理して滅菌済培 地とし,」と「α3−2 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●を同滅菌済培地に植菌して発酵処理をし,」との構成に変更するというものであ\nるところ,同α3−1及びα3−2の内容は,α3の内容を更に具体化・詳細化し ようとするものであり,また,控訴人は,原判決における本件訂正発明に係るクレ ーム解釈に基づく場合の構成としてα3−1及びα3−2とすべきと主張している\nものであるから,まずは,原審において当事者間に争いがないものとされた被控訴 人方法(α1〜6によるものであって,α3をα3−1及びα3−2に変更しない もの)の構成について検討を進めることとする。\n
オ 推定の覆滅について
被控訴人らは,被控訴人原料の生産方法が被控訴人方法であり,これが本件訂正 発明の方法とは異なるから,本件訂正発明の方法を使用していないとの主張立証を しているものと解されるから,以下,被控訴人方法(まずは,α1〜6によるもの であって,α3をα3−1及びα3−2に変更しないもの)が本件訂正発明の方法 とは異なるものであるか検討する。
・・・
c 原判決は,構成α3の「アルギニンを含む培養液」は,本件発明の構\成要件 A−2,A−3の「アルギニンを含む発酵原料」に当たらず,被控訴人方法は本件 発明のA−2,A−3を充足しないと判断したが,本件訂正発明においても,構成\n要件B’−1に「アルギニンを含む発酵原料」とあるので,α3の「アルギニンを 含む培養液」が構成要件B’−1の「アルギニンを含む発酵原料」に当たるか検討\nする。 構成要件B’−1は,「前記ダイゼイン類と前記アルギニンを含む発酵原料を」と\nいうものであるが,これは,構成要件A’においてダイゼイン類にアルギニンを添\n加したものを指すと解するのが自然である。そして,上記bのとおり,被控訴人方 法の構成α3においては,「ダイゼイン」を含む処理液と「アルギニン」を含む培養\n液を,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●と共に混合して発 酵処理をしているところ,「ダイゼイン」を含む処理液と「アルギニン」を含む培養 液の混合物を,「オルニチン産生能力及びエクオール産生能\力を有する微生物」であ る●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●で「発酵処理」してい るから,上記混合物は発酵原料に当たるというべきである。そうすると,同混合物 は,「前記ダイゼイン類と前記アルギニンを含む発酵原料」に当たるから,被控訴人 らの主張する被控訴人方法を前提としても,被控訴人原料の生産方法は,本件訂正 発明の構成要件B’−1を充足し,構\成要件B’−1の発酵原料を微生物で発酵処 理することを内容とする構成要件B’−2も充足する。\n
この点,原判決は,本件発明について,アルギニンは,発酵処理をする前の発酵 原料の調製をする段階において発酵原料に含まれているものであり,構成α3の「ダ\nイゼインを含む処理液」が発酵原料に当たり,「アルギニンを含む培養液」は発酵原 料ではなく,発酵効率の促進等を目的とする栄養成分に当たるものと解した上で, 被控訴人方法は発酵処理段階においてアルギニンが初めて現れるから本件発明の構\n成要件を充足しないと判断した。
しかしながら,本件特許請求の範囲及び本件明細書をみても,ダイゼイン類にア ルギニンを添加した後に微生物を加えることと,ダイゼイン類とアルギニンと微生 物を同時に混合することとの間に何らかの差異があることをうかがわせる記載はな い。また,本件明細書をみると,【0091】に「発酵原料(発酵に供される原料)」 との記載があるものの,【0093】には「ダイゼイン類を含む発酵原料としては, ダイゼイン類を含む限り,特に制限されるものではない」と発酵原料に特段の制限 がないものとされており,そのほかには発酵原料を定義付ける記載はない。前記1 (2)のとおり,本件訂正発明においてオルニチン産生能力及びエクオール産生能\力 を有する微生物による発酵に供されるのは,「ダイゼイン類」と「アルギニン」であ り,ダイゼイン類にアルギニンが添加されたのちに微生物が添加されたとしても, ダイゼイン類に,アルギニンと微生物が同時に添加されたとしても,アルギニンが 発酵に供されることに変わりがない。そうすると,被控訴人方法におけるアルギニ ンが,発酵原料ではないというべき理由がない。
原判決は,本件明細書の【0033】の「当該エクオール含有大豆胚軸発酵物は, 発酵原料として大豆胚軸を用いて製造される」との記載及び【0036】の「大豆 胚軸の発酵において,発酵原料となる大豆胚軸には,必要に応じて,発酵効率の促 進や発酵物の風味向上等を目的として,酵母エキス,ポリペプトン,肉エキス等の 窒素源;グルコース,シュクロース等の炭素源;リン酸塩,炭酸塩,硫酸塩等の無 機塩;ビタミン類;アミノ酸等の栄養成分を添加してもよい。特に,エクオール産 生微生物として,アルギニンをオルニチンに変換する能力を有するもの(中略)を\n使用する場合には,大豆胚軸にアルギニンを添加して発酵を行うことによって,得 られる発酵物中にオルニチンを含有させることができる。この場合,アルギニンの 添加量については,例えば,大豆胚軸(乾燥重量換算)100重量部に対して,ア ルギニンが0.5〜3重量部程度が例示される。」と発酵原料となる大豆胚軸には, 必要に応じて,発酵効率の促進等を目的とする栄養成分を添加してもよいと記載さ れていることから,発酵効率の促進等を目的とする栄養成分は,発酵原料とは別の 成分として扱われていると認定したが,ダイゼイン類を含む「大豆胚軸」が発酵原 料に当たることと,ダイゼイン類を含む処理液とアルギニンを含む培養液のいずれ もが発酵原料に当たると考えることは何ら矛盾するものではない。また,【0036】 の記載も,大豆胚軸にアルギニンを添加したものを発酵原料とみなすことと矛盾す るものではない。したがって,原判決の判断には誤りがあるというほかない。 そうすると,α3の「アルギニンを含む培養液」は,構成要件B’−1の「アル\nギニンを含む発酵原料」に当たると認めるのが相当であるから,被控訴人方法が構\n成要件A’,B’−1,B’−2を充足しないことが立証されているとはいえない。
・・・
(ウ) 以上のとおり,被控訴人原料の生産に本件訂正発明の方法を使用していない ことが立証されているとはいえないから,特許法104条の推定が覆滅されたと認 めることはできない。

◆判決本文

1審はこちら。

◆平成30(ワ)18555

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令和2(ワ)22290等  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年1月19日  東京地方裁判所

 医薬用途発明について、「各痛みに対して鎮痛効果があること及びそのための当該医薬の有効量を裏付ける記載がない」として、実施可能要件違反なので権利公使不能\と判断されました。

ア 実施可能要件違反の判断基準について
いわゆる医薬用途発明においては,一般に,当業者にとって,物質名, 化学構造等が示されることのみによっては,当該用途の有用性及びそのための当該医薬の有効量を予\測することは困難であり,当該発明に係る医薬を当該用途に使用することができないから,そのような発明において実施 可能要件を満たすためには,明細書の発明の詳細な説明に,薬理データの記載又はこれと同視し得る程度の記載をすることなどにより,当該用途の有用性及びそのための当該医薬の有効量を裏付ける記載を要するものと解\nするのが相当である。 本件発明1及び2の特許請求の範囲においては,本件化合物が「痛みの 処置における」(構成要件1B)「鎮痛剤」(構\成要件1C)及び「鎮痛 剤」(構成要件2C)として作用することが記載されているところ,いずれも本件化合物の鎮痛効果が認められる痛みは特定されていない。しかし,本件明細書には,本件化合物について,「痛みの処置とくに慢性の疼痛性\n障害の処置における使用方法である。このような障害にはそれらに限定さ れるものではないが炎症性疼痛,術後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み, 三叉神経痛,急性疱疹性および治療後神経痛,糖尿病性神経障害,カウザ ルギー,上腕神経叢捻除,後頭部神経痛,反射交感神経ジストロフィー, 線維筋痛症,痛風,幻想肢痛,火傷痛ならびに他の形態の神経痛,神経障 害および特発性疼痛症候群が包含される。」(前記1(1)イ)と記載されて いることに照らすと,本件発明1及び2は,本件化合物が少なくとも上記 各痛みに対して鎮痛効果を有することを内容とするものと解される。 したがって,本件発明1及び2について実施可能要件を満たすというためには,本件明細書の発明の詳細な説明に,薬理データの記載又はこれと同視し得る程度の記載をすることなどにより,上記各痛みに対して鎮痛効\n果があること及びそのための当該医薬の有効量を裏付ける記載が必要であ るというべきである。
イ 痛みの分類及び機序について
(ア) 痛みの分類及び機序について,証拠(甲15の1,甲26,39,4 1,42,46,55,59,77ないし84,86,88)によれば, 本件出願当時,以下の文献が存在したことが認められる。
・・・
(イ) 前記(ア)aないしgの文献の記載によれば,痛みは,その機序により大 きく分けると,1)炎症や組織損傷による侵害レセプターへの刺激により 生じる侵害受容性疼痛,2)末梢神経又は中枢神経が圧迫されたり,絞扼 されたり,遮断されたりすることにより生じる神経障害性疼痛,3)直接 末梢からの侵害刺激がないにもかかわらず存在し,心因性のもので,特 発性疼痛とも呼ばれる心因性疼痛の三つに分類することができること, 線維筋痛症は,上記3)の心因性疼痛に分類されること,上記のとおりに 分類された痛みの中にも様々なものがあり,それぞれの痛みについて機 序や症状,治療方法が存在することが,本件出願当時,技術常識であっ たと認めるのが相当である。
(ウ) これに対して,原告は,痛覚過敏及び接触異痛は,通常の痛みとは異 なり,末梢性感作や中枢性感作による神経の機能異常で生じる痛みであると主張し,その根拠として,本件出願当時に前記(ア)hないしlのとお りの文献が存在したことを指摘する。 しかし,前記(ア)h,i,k及びlの各文献は,マスタードオイル,カ プサイシン及び切開による侵害刺激を与える実験の結果に基づくもので あるから,これらの実験により,痛覚過敏及び接触異痛が,その原因に かかわらず,末梢性感作や中枢性感作による神経の機能異常により生じると,直ちにいうことはできない。
また,前記(ア)jの文献では,「NメチルDアスパラギン酸(NMDA) 受容体の過剰活性は,神経障害性疼痛の発生における要因の1つである 可能性がある。」,「動物の神経障害性疼痛モデルにおいて示唆されるように…,痛覚過敏は NMDA 受容体によって介在される「ワインドアップ 現象」の提示である可能性がある。」などと記載されているところ,これらの記載は,NMDA受容体の過剰活性が神経障害性疼痛の要因となること,あるいは痛覚過敏がNMDA受容体によって介在されるワイン\nドアップ現象(神経細胞の感作)によるものであることの可能性を指摘したにすぎず,これをもって,上記文献の記載内容が本件出願当時の技術常識であったということはできない。そして,他に,本件出願当時,痛覚過敏及び接触異痛がその原因にかかわらず末梢性感作や中枢性感作による神経の機能\異常で生じる痛みであることが技術常識であったと認めるに足りる的確な証拠はない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
・・・
以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明においては,ホルマリン 試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験の各薬理データの記載により,本 件化合物が侵害受容性疼痛に分類される痛みに対して鎮痛効果があること 及びそのための当該医薬の有効量は裏付けられているといえる。しかし, 本件発明1及び2がその内容とする「痛み」,すなわち,少なくとも「炎 症性疼痛,術後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み,三叉神経痛,急性疱 疹性および治療後神経痛,糖尿病性神経障害,カウザルギー,上腕神経叢 捻除,後頭部神経痛,反射交感神経ジストロフィー,線維筋痛症,痛風, 幻想肢痛,火傷痛ならびに他の形態の神経痛,神経障害および特発性疼痛 症候群」(前記1(1)イ)の各痛みに対して鎮痛効果があること及びそのた めの当該医薬の有効量を裏付ける記載はない。したがって,本件発明1及 び2は,実施可能要件に違反するものと認められる。\n

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令和3(行ケ)10101  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年2月22日  知的財産高等裁判所

 経過概要は以下です。PUMAが「ジャンピングシーサー」の図形商標につき、4条1項7号、15号違反の無効審判を請求しました。これに対して、被告は商標権放棄をしました。また、5年の除斥期間経過しているとして、却下審決がなされました。原告は除斥期間は不正目的の場合は適用がないとして審決取消を求めました。 原告の主張によると、被告はアダルトグッズに使用し、ブランドイメージ毀損されているとのことです。裁判所は、審決維持しました。

商標法4条1項15号を無効理由とする本件審判の請求について
ア 本件審判の請求は,本件商標権の設定登録の日から5年の除斥期間を経 過した後にされたものであるから,本件審判の請求中,商標法4条1項1 5号を理由とする請求は,本件商標が「不正の目的で商標登録を受けた場 合」(商標法47条1項括弧書き)に限りする
原告は,1)本件商標の動物図形と原告の業務に係る周知著名な引用商標に は高い類似性があり,本件商標と引用商標が同一又は類似の商品に使用され た場合,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあること,2)被告によ る被告標章の商標登録の無効審決の確定後の被告標章の使用及びアダルトグ ッズへの被告標章の使用の事実があること,3)本件審判において,被告の自 白をもとに,被告の不正の目的を推認させる事情を原告が具体的かつ詳細に 立証した後,被告がこれに争わない意向を表明した経緯があることを総合考\n慮すれば,被告は,周知著名な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし, その出所表示機能\を希釈化させ,又はその名声を毀損させる「不正の目的」 で本件商標の登録出願をし,その商標登録を受けたものである旨主張する。
ア そこで検討するに,1)については,引用商標は原告の業務に係る周知著 名な商標ではあるが,前記(1)ウ(イ)認定のとおり,本件商標と引用商標と は,外観,称呼,観念のいずれにおいても異なり,本件商標と引用商標は, 類似しない。 また,本件商標の動物図形と引用商標は,四足動物が右から左に向けて 跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿 でシルエット風に描かれている点で共通し,その基本的姿勢等に似通った 点があることから,本件商標に接した需要者は,本件商標の動物図形は引 用商標を模倣したものと連想,想起するものと一応いい得るが,「JUM PING SHI−SA」の文字部分があることによって,本件商標の動 物図形からは,引用商標から生じる「PUMA」ブランドの観念や「プー マ」の称呼は生じないものと認められること(前記(1)ウ(ア)a)に照らす と,本件商標の動物図形は引用商標を模倣したものと連想,想起するから といって,被告が本件商標の登録出願をし,その商標登録を受けたことに ついて,周知著名な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出 所表示機能\を希釈化させる「不正の目的」があったものと認めることはで きない。
イ 2)については,証拠(甲61ないし63)によれば,知的財産高等裁判 所は,別紙3のとおりの構成からなる被告標章についての商標登録無効審\n判請求を不成立とした審決(無効2016−890014号事件)の審決 を取り消す旨の判決をした後,特許庁が被告標章が商標法4条1項15号 に該当することを理由に被告標章の商標登録を無効とする別件無効審決 をし,別件無効審決は,令和元年9月2日,確定したことが認められる。 しかしながら,本件商標と被告標章の外観は,四足動物が右から左に向 けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見 た姿でシルエット風に描かれている点で共通し,その基本的姿勢等に似通 った点があるものの,被告標章には本件商標において大きな構成部分であ\nる文字部分を有していないという顕著な相違があり,両商標は,外観,称 呼及び観念において異なり,類似しないことに照らすと,原告が主張する 被告による被告標章の商標登録の無効審決の確定後の被告標章の使用及 びアダルトグッズへの被告標章の使用の事実があるからといって,被告が 本件商標の登録出願をし,その商標登録を受けたことについて,周知著名 な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能\を希釈 化させ,又はその名声を毀損させる「不正の目的」があったものと認める ことはできない。
ウ 3)については,商標登録無効審判の審判手続においては,職権で証拠調 べをすることができ,当事者が申し立てない理由についても審理すること\nができるなどの職権探知主義が採用され(商標法56条において準用する 特許法150条1項,153条1項),自白法則は適用されないから(商 標法56条において準用する特許法151条が準用する民事訴訟法17 9条の規定から「当事者が自白した事実は証明することを要しない」とし た部分の準用が除かれている。),商標登録無効審判の請求人は被請求人 が商標登録の無効理由を基礎づける事実について自白した場合であって も,当該事実を証拠によって証明する必要がある。また,被請求人には特 許庁がした審決を取り消す権限がなく,商標登録無効審判に処分権主義の 適用はないから,被請求人は,請求人の請求を認諾することはできないも のと解される。
しかるところ,原告が3)の根拠として挙げる被告作成の令和2年9月2 8日付け上申書(甲104)には,「被請求人は,請求人の主張を認め,\n請求の趣旨に対し,請求人が主張するとおりの審決がなされ,本件商標権 が遡及消滅することを争わない。」との記載があるが,上記記載中の「請 求人の主張を認め」にいう「請求人の主張」を基礎づける具体的な事実が 特定されていないから,上記記載をもって被告が具体的事実について自白 したものと認めることはできないのみならず,具体的事実を証明する供述 証拠として評価することもできない。また,上記記載中の「請求の趣旨に 対し,請求人が主張するとおりの審決がなされ…争わない。」との部分は 請求の認諾の趣旨のものとうかがわれるが,商標登録無効審判においては 請求の認諾はできないから,上記部分を斟酌することはできない。 次に,原告が3)の根拠として挙げる被告作成の平成19年9月12日付 け「商標登録第5040036号について1)」と題する書面(甲41)に は,商標の制作経緯等に関し,「2003年(平成15年)年末ごろ,弊 社も新アイテムとして『シーサー』を分かりやすく,そして現代の若者に も受け入れられるデザインをコンセプトにしようと改めてデザインを構\n想しました。2004年(平成16年)3月ごろ,コンセプトであげた『分 かりやすく・シンプルに』と言うことでデザインに当時では珍しいピクト グラム(道路標識や公共施設,非常口など図柄だけで意味を表現するデザ\nイン)を取り入れてはどうか?と,社内で議論しました。そこで,(スポ ーツブランド)にはシンプルなデザイン(ロゴ)が多数使用されていたこ とから世界的に有名な『ラコステ』『ポロ・ラルフローレン』『マンシン グウェア』『プーマ』など,動物(生物)をモチーフにしたデザインを参 考にして図3)のように大まかなデザインができあがりました。空想上の生 物なので,伝統工芸の焼き物や民芸雑貨などをシルエット(影)にしてみ たものの形状はまだ複雑でシンプルを追求すると(プーマ)風なデザイン になっていました。しかし,デザイン(ロゴ)だけでは『シーサー』を表\n現していると誰も気づかないのでは?等の意見もあり,前述で述べた『獅 子面T-シャツ』のように文字(読み方・言い方)をデザインに組み合わせ てはどうか?ということで図4)になりました」,「その後,何度かデザイ ンを変更して図5)〜7)を経て現在は図8)(平成17年から発売)になって います。」との記載がある。しかし,上記記載中の「『プーマ』など,動 物(生物)をモチーフにしたデザインを参考にし」た,「(プーマ)風な デザインになっていました」旨の部分は,これに引き続きく「デザイン(ロ ゴ)だけでは『シーサー』を表現していると誰も気づかないのでは?等の\n意見もあり,前述で述べた『獅子面T-シャツ』のように文字(読み方・言 い方)をデザインに組み合わせてはどうか?ということで図4)になりまし た」との部分と併せて読めば,本件商標(図6))は,『プーマ』など,動 物(生物)をモチーフにしたデザインを参考にして『シーサー』を表現す\nる意図で作成されたものとうかがわれるから,被告が周知著名な引用商標 に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能\を希釈化させる 「不正の目的」で本件商標(図6))の登録出願をし,その商標登録を受け たことを認め,あるいはこれを裏付ける趣旨の記載であると評価すること はできない。 したがって,上記書面から,被告に上記「不正の目的」があったものと 認めることはできない。
(3) 小括
以上によれば,本件商標は「不正の目的」で商標登録を受けたものに該当 しないとした本件審決の判断に誤りはないから, 原告主張の取消事由1は, 理由がない。

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◆令和3(行ケ)10102

◆令和3(行ケ)10103

◆令和3(行ケ)10104

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令和3(行ケ)10041  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年3月8日  知的財産高等裁判所

 本件商標「BREZTRI」が商標「BREEZHALER」と類似または出所混同するかが争われました。裁判所は、無効理由なしとした審決を維持しました。争点は文理解釈が可能かどうかです。\n

ア 本件商標に係る主張について
(ア) 原告は,本件商標につき,「BREZ」部分を要部として分離観察す ることが可能である旨主張する(前記第3の1〔原告の主張〕(1))。 (イ) しかしながら,前記のとおり,本件商標は,「BREZTRI」の欧 文字を標準文字で書してなるものであり,いずれかの部分が目立つ態様 で記載されているものではない。また,本件商標の構成文字数は7文字\nと少なく,全体を「ブレズトリ」と自然に発音することが可能である。\nさらに,「BREZ」は,辞書等に掲載されていない語であり,後記のと おり,この部分が取引者,需要者に格別の造語として認識されている事 実も認められないことからすれば,独立した単語として認識されるもの とはいえない。加えて,「TRI」は,接頭辞として用いられた場合に「三, 三重の」等を意味する旨が辞書等に掲載されてはいるものの(甲22), 本件商標の「TRI」部分は語尾に位置することからすれば,直ちに「三, 三重の」や「triple」を意味する単語として認識されるものとは いえない。 これらの事情によれば,本件商標は,各構成部分がそれを分離して観\n察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合してい る商標というべきであるから,全体を一連一体のものとして観察するの が相当であり,「BREZ」部分と「TRI」部分とを分離して観察する ことはできないというべきである。
(ウ) 上記の点に関して原告は,「TRI」部分につき,薬剤の名称とし 末尾に「tri」を付すことが多い実情が存するから,識別力が弱い旨 主張する。 確かに,証拠(甲38,39)によれば,原告が主張するような使用 例が複数あることが認められる。しかしながら,本件商標の構成文字数\nが少ないこと,「BREZ」は独立した単語として認識されるものとはい えないことからすれば,「TRI」部分について,単に薬剤の名称の末尾 に付された語であり,「BREZ」部分とは区別すべきものであると直ち に認識されるものとはいい難い。そうすると,原告が主張するような実 情があるからといって,「TRI」部分の識別力が弱いということはでき ない。
(エ) また,原告は,「BREZ」部分につき,需要者の間で広く認識され た引用商標1の「BREZ」部分と同様に,特徴的で識別力の強い部分 である旨主張する。 しかしながら,後記のとおり,引用商標1それ自体はある程度の周知 性を有しているといえるものの,だからといって同商標の「BREZ」 部分も周知であるということはできないから,本件商標の「BREZ」 部分につき,特徴的で識別力の強い部分であるということはできない。
(オ) 以上によれば,本件商標につき,「BREZ」部分を要部として分離 観察することはできないというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない

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令和2(ワ)3481  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 令和4年1月20日  大阪地方裁判所

 顧客情報および見積書の価格情報について、秘密管理性無しとして営業秘密に該当しないと判断されました。

ア 「営業秘密」(法2条6項)といえるためには,当該情報が秘密として管理 されていることを要するところ,秘密として管理されているといえるためには,秘 密としての管理方法が適切であって,管理の意思が客観的に認識可能であることを\n要すると解される。 これを本件見積書記載の情報について見るに,前記各認定事実のとおり,本件見 積書には営業秘密である旨の表示がなく,そのデータにはパスワード等のアクセス\n制限措置が施されていなかった。また,原告において,業務上の秘密保持に関する 就業規則の規定はなく,被告P1との間で見積書の内容に関する秘密保持契約等も 締結等していなかった。原告は,発注者との間においても見積書の内容に関する秘 密保持契約を締結していなかった。さらに,原告は,見積書記載の情報が営業秘密 であることなどの注意喚起も,その取扱いに関する研修等の教育的措置も行ってい なかった。本件見積書のデータ管理の点でも,原告は,見積書の使用後にデータを 西脇支社のコンピュータから削除するよう指示しなかった。 このような本件顧客情報及び本件価格情報その他本件見積書記載の情報の管理状 況に鑑みると,当該情報は,原告の企業規模等の具体的状況を考慮しても,原告に おいて,特別な費用を要さずに容易に採り得る最低限の秘密管理措置すら採られて おらず,適切に秘密として管理されていたとはいえず,また,秘密として管理され ていると客観的に認識可能な状態にあったとはいえない。\nしたがって,本件見積書記載の情報は秘密として管理されていたとはいえない。
イ 原告は,本件見積書記載の情報につき,原告代表者が一元的に管理し,その\n了承がなければ従業員や外部業者に対して明らかにされないから,秘密として管理 されていたと主張する。 しかし,前記認定のとおり,本件見積書の各データは,パスワードによる保護等 の措置のないままに,発注者に交付されるべきもの又は参考として被告P1にメー ルにより送信されたものであり,その使用後も,情報漏洩を防止する何らの措置も 採られなかったことなどに鑑みると,これらの情報は,いずれも秘密として適切に 管理されているとはいえず,秘密として管理されていると客観的に認識可能な状態\nであったともいえない。 その他原告が縷々指摘する事情を考慮しても,この点に関する原告の主張は採用 できない。
ウ そうすると,その余の点について検討するまでもなく,本件顧客情報及び本 件価格情報は,「営業秘密」に該当しない。

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令和2(行ケ)10114    商標権  行政訴訟 令和4年2月10日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判の請求自体が信義則に反するとして、不使用とした審決が取り消されました。なお被告は欠席裁判です。

原告らとブランデッドボースト社が平成27年(2015年)11月4日 に締結した本件和解契約には,1)原告らは,「BOAST」の商号で「BO AST」商標を付した商品を米国外で自由に販売することができることを確 認する旨の条項(12項),2)ブランデッドボースト社は,世界中でボース ト社又は原告によるその他の登録により保護される原告らの商号権及び商標 権を妨害しない旨の条項(14項)が存在することは,前記1(4)認定のとお りである。
前記1認定の本件和解契約締結に至る経緯,本件和解条項12項及び14 項の文言に鑑みると,本件和解条項14項の「世界中でボースト社又は原告 によるその他の登録により保護される原告らの商号権及び商標権を妨害しな い」にいう「妨害しない」との文言は,ブランデッドボースト社が,原告ら が有する米国外で商標登録された「BOAST」ブランドに係る商号権及び 商標権の有効性を争わない義務(いわゆる不争義務)を負うことを定めた趣 旨を含むものと解される。 そうすると,ブランデッドボースト社は,本件和解契約に基づき,原告に 対し,本件商標の商標権について不争義務を負うものと認められる。 そして,前記1(5)認定のとおり,被告は,平成29年(2017年)10 月3日,ブランデッドボースト社から,米国内の「BOAST」ブランドに 係る事業を買収し,同社が保有する「BOAST」ブランドに係る米国登録 商標の移転を受け,これに伴い,ブランデッドボースト社の本件和解契約に 基づく契約上の地位を承継したのであるから,被告は,原告に対し,本件和 解契約に基づいて,本件商標の商標権について不争義務を負うものと認めら れる。
(2) 商標法50条1項が,「何人も」,同項所定の商標登録取消審判を請求す ることができる旨を規定し,請求人適格について制限を設けていないのは, 不使用商標の累積により他人の商標選択の幅を狭くする事態を抑制するとと もに,請求人を「利害関係人」に限ると定めた場合に必要とされる利害関係 の有無の審理のための時間を削減し,審理の迅速を図るという公益的観点に よるものと解される。 一方で,商標権に関する紛争の解決を目的として和解契約が締結され,そ の和解契約において当事者の一方が他方(商標権者)に対して当該商標権に ついて不争義務を負うことが合意された場合には,そのような当事者間の合意の効力を尊重することは,当該商標権の利用を促進するという効果をもた らすものである。また,このように当事者間の合意の効力を尊重するとして も,第三者が当該商標権に係る商標登録について同項所定の商標登録取消審 判を請求することは可能であるから,上記公益的観点による利益を損なうも\nのとはいえない。 したがって,和解契約に基づいて商標権について不争義務を負う者が,当 該商標権に係る商標登録について同項所定の商標登録取消審判を請求するこ とは,信義則に反し許されないと解するのが相当である。 しかるところ,前記(1)認定のとおり,被告は,原告に対し,本件和解契約 に基づいて,本件商標の商標権について不争義務を負うものであるから,被 告による本件審判の請求は,信義則に反し,許されないというべきである。 これと異なる本件審決の判断は誤りであある。

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令和3(行ケ)10056  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年2月10日  知的財産高等裁判所

 サブコンビネーション発明の要旨認定について、発明の構造,機能\等を何ら特定してない場合は,除外して認定すると判断し、審決の判断を維持しました。

(1) 発明の要旨認定
特許出願に係る発明の要旨の認定は,特段の事情がない限り,願書に添付 した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであるが,特許請 求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか, あるいは,一見してその記載が誤記であることが発明の詳細な説明の記載に 照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合は,明細書の発明の詳細 な説明の記載を参酌することが許される(最高裁平成3年3月8日第二小法 廷判決・民集45巻3号123頁参照)。 これを本件補正後発明について検討するに,前記1(3)のとおり,本件補正 後発明は,二つ以上の装置を組み合わせてなる全体装置の発明に対し,組み 合わされる各装置の発明(サブコンビネーション発明)であって,特許請求 の範囲請求項1の記載から,第1ユーザによって操作される情報処理装置に 関する発明であることが理解されるが,特許請求の範囲請求項1の記載中に, 情報処理装置とは別の,他の装置であるサーバにおける処理の内容が記載さ れているため,特許請求の範囲の記載の技術的意義を一義的に明確に理解す ることができない特段の事情がある。 したがって,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,本件補正 後発明の要旨を認定することとする。
ところで,サブコンビネーション発明においては,特許請求の範囲の請求 項中に記載された「他の装置」に関する事項が,形状,構造,構\成要素,組 成,作用,機能,性質,特性,行為又は動作,用途等(以下「構\造,機能\n等」という。)の観点から当該請求項に係る発明の特定にどのような意味を 有するかを把握して当該発明の要旨を認定する必要があるところ,「他の装 置」に関する事項が当該「他の装置」のみを特定する事項であって,当該請 求項に係る発明の構造,機能\等を何ら特定してない場合は,「他の装置」に 関する事項は,当該請求項に係る発明を特定するために意味を有しないこと になるから,これを除外して当該請求項に係る発明の要旨を認定することが 相当であるというべきである。 以上の観点から,以下,本件補正後発明を検討する。
(2) 構成要件(A)及び(E)について\n
本件補正後発明の構成要件(A)及び(E)は,発明の対象が「第1ユー\nザによって操作される情報処理装置」であることを特定する記載事項である から,これによって,本件補正後発明は「情報処理装置」の発明であること が画定される。
(3) 構成要件(B)について\n
特許請求の範囲請求項1の記載によれば,構成要件(B)における「事業\nに使用されていないが前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権を,前記 第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から特定し,当該知的財産権 に関する公報の情報を,前記サーバに通知する公報通知手段と」の記載は, 情報処理装置が有する公報通知手段を直接的に特定する構成であるといえる。\n一方,「(公報の情報を,)サーバによる第2情報及び第3情報の抽出の 根拠となる情報を含む第1情報として(,前記サーバに通知する)」との記 載は,サーバに通知する公報の情報を更に限定する記載であると認めること はできるが,サーバによって抽出処理を行うことを前提とした限定であって 直接的に情報処理装置を限定する特定事項ではない。 上記第2情報及び第3情報の抽出処理について,請求項の記載をみると 「(C1)前記公報通知手段により通知された前記第1情報により特定される 前記公報に含まれ得る第1書類の内容のうち,所定の文字,図形,記号,又 はそれらの結合が,前記第2情報として抽出され, (C2)当該公報に含まれ得る第2書類の内容のうち,抽出された前記第2 情報と関連する文字,図形,記号又はそれらの結合が,前記第3情報として 抽出され,」 と特定されている。 上記特定事項に対応する発明の詳細な説明の記載を参照すると,構成要件\n(C1)は,特に段落【0023】のクレーム内単語として抽出する構成に,\n構成要件(C2)は段落【0024】の明細書内関連単語として抽出する構成\nに対応すると認められる。 一方,本願明細書等の段落【0021】には,上記「第1情報」に関して, 「特許権者は,活用を希望する特許権の情報(例えば特許番号等)を予めサ\nーバ1に通知しているものとする。即ち,当該特許権の公報(特許掲載公報 若しくは出願公開公報)の内容が公報情報DB61にデータとして記憶され ているものとする。」と記載され,段落【0022】には,「ここで,公報 の内容のデータは,必ずしも公報の謄本のデータである必要は特になく,そ の名称のごとく,公報の内容さえ特定できれば足り,任意の形態のデータで よい。」と記載されていることから,これらの抽出処理に用いられる公報の 情報は,普通に公開されている特許公報の内容であれば足りるといえ,第1 情報としてサーバに通知される知的財産権に関する公報の情報は,普通に公 開されている特許権の公報の内容を表す情報(すなわち,知的財産権に関す\nる公報の情報)以上に格別の内容を含むものではないことは明白である。 すなわち,構成要件(B)における,公報通知手段が「第1情報」としてサ\nーバに通知する公報の情報とは,通常の特許公報又は公開特許公報を示すに すぎないと認められる。そして,本願明細書等を精査しても,当該情報を通 知するに先立って,情報処理装置において,サーバにおける処理(第2情報 及び第3情報の抽出等)に資するため何らかの処理がされること等を開示又 は示唆する記載は,何ら見出すことができない。 そうすると,構成要件(B)の「サーバによる第2情報及び第3情報の抽\n出の根拠となる情報を含む第1情報として」との記載事項は,第1情報の通 知を受けたサーバが当該第1情報から第2情報及び第3情報を抽出するとい う,サーバにおける処理(構成要件(C1)及び(C2))を特定しているにす ぎない。すなわち,上記記載事項は,第1情報自体が,第2情報及び第3情 報を抽出するため通常の公報とは異なる格別の情報を含むことを特定してい るものではない。 このように,本件補正後発明の構成要件(B)のうち「サーバによる第2\n情報及び第3情報の抽出の根拠となる情報を含む第1情報として」の記載事 項は,サーバの処理を特定したものであり,情報処理装置が備える公報通知 手段の内容を特定するものではないから,構成要件(B)によって特定され\nる発明特定事項の認定に当たっては,上記記載事項を除外するのが相当であり,本件審決が(B')のとおり認定したことに誤りはない。
(4) 構成要件(C)及び(C1)ないし(C7)について
本件補正後発明の構成要件(C)及び(C1)ないし(C7)は,情報処理装 置から知的財産権に関する公報の情報(第1情報)の通知(送信)を受けた サーバが,第1情報から第2情報を抽出し,さらに第3情報を抽出し,第3 情報と第4情報とから通知対象を決定して当該公報の情報を第5情報として 通知対象者の端末に通知し,その後,通知対象者の端末から第6情報を受信 し第7情報を生成して情報処理装置に送信するという,サーバが行う処理を 特定したものであって,情報処理装置が行う処理を特定するものではない。 すなわち,情報処理装置から通知された情報に対して,どのような処理を行 い,どのような情報を生成して情報処理装置に送信するかという処理は,サ ーバが独自に行う処理であって,情報処理装置が行う処理に影響を及ぼすものではない。 一方,情報処理装置は,第1情報をサーバに送信し,第7情報をサーバか ら受信するものであるところ,かかる情報処置装置の機能は,サーバに所定\nの情報を送信してサーバから所定の情報を受信するという機能に留まり,当\n該機能は,上記構\成要件(C)及び(C1)ないし(C7)によって影響を受け たり制約されるものではない。このように,構成要件(C)及び(C1)ない し(C7)は,情報処理装置の機能,作用を何ら特定するものではない。\nよって,本件補正後発明の認定に当たっては,構成要件(C)及び(C1) ないし(C7)を発明特定事項とはみなさずに本件補正後発明の要旨を認定す べきであり,これと同旨の本件審決に誤りはない。
(5) 構成要件(D)について\n
本件補正後発明の構成要件(D)は,情報処理装置が備える「受付手段」\nが,サーバから送信される「第7情報」を受け付けることを特定するもので ある。 そして,本件補正後発明の構成要件(C)及び(C1)ないし(C7)の記載 によれば,「第7情報」は,「知的財産権に興味を有する者が存在すること を少なくとも示す情報」であって,「情報処理装置により前記第1情報が (サーバに)通知された結果として生成され」,「(サーバから)情報処理 装置に送信された」情報である。また,同(B)の記載によれば,「前記第 1情報」は「知的財産権に関する公報の情報」である。そして,構成要件\n(C6)及び(C7)に対応する発明の詳細な説明の記載(段落【0029】, 【0040】及び【0041】)も参酌すると,「第7情報」は,サーバの 通知部が特許権者端末に通知する情報であって,特許権者がサーバに登録し た特許掲載公報を見て興味応答を示した事業者のリスト(匿名事業者リス ト)を少なくとも含む情報であるということができ,これは,上記特許請求 の範囲の記載から特定した「第7情報」と格別の相違はない。そうすると, 結局,「第7情報」は,「知的財産権に興味を有する者が存在することを少 なくとも示す情報であって,情報処理装置により知的財産権に関する公報の 情報がサーバに通知された結果として生成され,サーバから情報処理装置に 送信された情報」ということができる。 よって,本件補正後発明の構成要件(D)により特定される事項の認定に\n当たっては,「第7情報」を上記のとおり言い換えるのが相当であり,本件 審決が(D')のとおり認定したことに誤りはない。
(6) 原告の主張に対する判断
ア 原告は,知的財産権を有効活用してくれる候補者を数多くかつ容易に提 示するという本件補正後発明の課題からして,本件補正後発明はサーバと 情報処理装置とを組み合わせたシステムを前提にしたものであって,構成\n要件(C)及び(C1)ないし(C7)によって,情報処理装置の発明の機能\nを特定している旨主張する。 しかしながら,本願明細書等には発明の課題としてそのような記載があ るとしても,親出願についてはともかく,分割出願としての本件補正後発 明は,上記(1)ないし(5)で説示したとおり,システムの発明ではなくあくまで情報処理装置の発明である。そして,上記(4)で説示したとおり,構成要\n件(C)及び(C1)ないし(C7)はサーバの処理を特定するものであって 情報処理装置の機能を特定するものではないから,本件補正後発明を特定\nする事項には含まれない。 よって,原告の前記主張は採用することができない。
イ 原告は,知財高裁平成22年(行ケ)第10056号事件の判決を援用 し,本件補正後発明はサーバと情報処理装置とを組み合わせたシステムを 前提にしたものであってサーバを除外して検討するのは誤りであるとも主 張する。 しかしながら,原告が援用する上記事件は本件とは無関係の全く別の事 件であって,事案も異なるから,上記事件の判決の判断を根拠とする原告 の上記主張はそもそも採用することができない。 なお,付言するに,原告が援用する上記事件に係る発明は,発光部を有 する液体インク収納容器と,前記液体インク収納容器を搭載し前記発光部 の発光を受光する受光手段を備えた記録装置とを組み合わせたシステムに おける液体インク収納容器に関する発明であって,上記システムに専用さ れる特定の液体インク収納容器がこれに対応する記録装置の構成と一組の\nものとして発明を構成するものであることから,容易想到性を検討するに\nあたり,記録装置の存在を除外して検討することはできないとした裁判例 であるところ,原告は,これに関連して,本件補正後発明の情報処理装置 は,第7情報として認識された場合において当該第7情報を受け付ける専 用端末である旨主張する。 しかしながら,本件補正後発明における情報処理装置とサーバからなる システムでは,情報処理装置の機能は,単に,サーバに「公報の情報」\n(第1情報)を送信し,サーバから「知的財産権に興味を有する者が存在 することを少なくとも示す情報」(第7情報)を受信するという機能に留\nまるものであって,サーバに対して情報を送受信する機能を有する情報処\n理装置であればどのような情報処理装置であってもよいから,サーバに対 して専用される特定の情報処理装置とみなすことはできない。また,本願 明細書等には,情報処理装置が種々の情報の中から第7情報を選択して認 識する等の技術事項は開示されておらず,情報処理装置はサーバから送信 された情報を単に第7情報として受け付けるものにすぎないと解されるか ら,原告の上記主張は本願明細書等に開示された技術事項に基づくもので はなく,採用することができない。
ウ 原告は,情報処理装置とサーバが別個のものとしても,本件審決は,発 明の実施形態に強みを有する事業者を選択できるという本件補正後発明の 意義を無視し,「公報通知手段」がサーバに通知する情報について,単に 「当該知的財産に関する公報の情報」と矮小化し,また「受付手段」が受 け付ける情報についても,「知的財産権に興味を有する者が存在すること を少なくとも示す情報」と矮小化して認定しており,本件審決の認定は誤 りである旨主張する。 しかしながら,第1情報を送信するという送信処理自体は,かかる第1 情報からどのようにして第2情報及び第3情報を抽出するのか,その抽出 方法を規定するものではないから,情報処理装置の「公報通知手段」は, 技術的には,知的財産権に関する公報の情報をサーバに送信するものにす ぎないというべきである。また,第7情報は知的財産権に興味を有する者 の情報であるところ,本件補正後発明の構成要件(C5)及び(C6)によれ ば,事業者による選択結果という事業者の自由な意思に基づいた人為的な 情報にすぎないものであって,第1情報と関連するものの第1情報から 「生成された」情報ではない。さらに,情報処理装置の「受付手段」は, サーバから上記第7情報を受け付けるものの,これは単に情報の受信にす ぎないものであって,情報処理装置の側に,当該第7情報を受け付けるた めの特別の構成を有するものでもない。\nしてみると,上記(2)ないし(5)で検討したとおり,本件補正後発明の「公 報通知手段」は,単に「知的財産に関する公報の情報」をサーバに通知す るものにすぎず,本件補正後発明の「受付手段」は「知的財産権に興味を 有する者が存在することを少なくとも示す情報」を受け付けるものにすぎ ないというべきであり,本件審決が「公報通知手段」及び「受付手段」に つき,それぞれ(B')及び(D')のとおり認定したことに誤りはない。

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令和3(行ケ)10076  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年2月9日  知的財産高等裁判所

 商標「知本主義」の不使用取消審判の審決取消訴訟です。会報のタイトルとして「賢主主義と知本主義」を使用していましたが、審決は不使用と認定しました。裁判所も同様です。本件会報は市場における独立した商取引の対象たる商品ではないとされています。

 商標法上,商標の本質的機能は,自他商品又は役務の識別機能\にあると解するの が相当であるから(同法3条参照),同法50条にいう「登録商標の使用」という ためには,当該登録商標が商品又は役務の出所を表示し,自他商品又は役務を識別\nするものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されることを要すると 解するのが相当である。 この点に関し,原告は,上記「登録商標の使用」といえるためには,当該登録商 標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足りる旨 主張するが,上記のとおりの商標の本質的機能に照らし,採用することができない。\n
(2) 本件各書籍について
証拠(甲8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,36の 1及び2)によれば,本件各書籍(表紙,裏表\紙,書籍に付された帯等も含む。) には,「知本主義の時代を生きろ」,「私は資本主義ではなく「知本主義」時代が 到来すると思う。」,「資本主義に代わる知本主義」,「「資本主義」から「知本 主義」へ」など,「知本主義」の文字を用いた表現が一定程度記載されているもの\nと認められる。 しかしながら,原告が「知本」の語につき辞書にも記載がないと主張するとおり, 「知本主義」の語の観念は不明確であり,「主義」との語尾から何らかの主義主張 を指すことがうかがわれるのみである。そうすると,上記のとおり本件各書籍にお いて「知本主義」の文字を用いた表現が一定程度記載されていることや,本件各書\n籍が通信販売サイト等において宣伝されていること(甲9,11,13,15,1 7,19,21,23,25,27,37)を考慮しても,「知本主義」の文字又 はこれを含む表現に触れた取引者及び需要者は,これらの文字等を書籍の副題の一\n部,記載内容,宣伝文句,著者の主張等であると認識するにとどまり,これらの文 字等が当該書籍に係る自他商品識別機能を果たすと認識するとは考え難い(これは,\n「知本主義」の文字が鍵括弧でくくられている場合であっても変わるところではな い。)。なお,この点に関し,原告も,「知本主義」の文字等が書籍に付された場 合,「知本」の主義主張に関する分野ないし事項の書籍であることを取引者及び需 要者に想起させる旨主張しているところである。 したがって,本件各書籍における「知本主義」の文字の記載は,商標法50条に いう「登録商標の使用」に該当しない。
(3) 甲28会報について
ア 証拠(甲28)によれば,甲28会報には,「賢主主義と知本主義」との表\n題が付され,「X会のうた」として,「いっぱい 知本主義」との記載がされ, 「「知本主義」を実践するX会12月例会」なる会合の告知がされているものと認 められるが,甲28の記載やその他の証拠によっても,甲28会報が市場における 独立した商取引の対象たる商品であると認めることはできないから,甲28会報に おける上記表題等の記載をもって,本件商標が商品について使用されたということ\nはできない。
イ 証拠(甲28)によれば,甲28会報には,「令和元年12月23日」との 日付の記載があるものと認められ,その他,甲28会報が本件要証期間内に発行さ れたものと認めるに足りる証拠はない。
ウ 以上のとおりであるから,甲28会報における上記アの記載をもって,原告 又は本件商標の専用使用権者若しくは通常使用権者(以下「原告ら」という。)が 本件要証期間内に本件指定商品について本件商標を使用したと認めることはできな い。
(4) 甲29の選挙公報について
証拠(甲29)によれば,甲29は,東京都選挙管理委員会が平成11年4月1 1日執行の東京都知事選挙に際して発行した選挙公報(原告に係るもの)であり, 「資本主義(拝金主義)から知本主義へ」との記載がされているものと認められる。 しかしながら,一般に選挙公報が「新聞」,「雑誌」若しくは「書籍」又はこれ らに係る広告等に該当しないことは明らかである。また,上記認定のとおりの選挙 の執行期日にも照らすと,同選挙公報が本件要証期間内に発行されたと認めること もできない。 そうすると,甲29の選挙公報における上記記載をもって,原告らが本件要証期 間内に本件指定商品について本件商標を使用したと認めることはできない。
(5) 甲30の社歌について
証拠(甲30)及び弁論の全趣旨によれば,甲30の書面には,「知本主義・知 財企業「B 勤務心得の歌」」と題する歌の歌詞が記載され,その歌詞の中に「知 本主義」の語が用いられているものと認められる。 しかしながら,本件全証拠によっても,甲30の書面が「新聞」,「雑誌」若し くは「書籍」又はこれらに係る広告等に該当すると認めることはできないし,同書 面の作成時期も不明である(同書面には,「SINCE1957」との記載がみられるのみ である。)。 そうすると,甲30の書面における上記記載をもって,原告らが本件要証期間内 に本件指定商品について本件商標を使用したと認めることはできない。
(6) 甲34のウェブサイトについて
証拠(甲34)及び弁論の全趣旨によれば,甲34は,原告の著書を宣伝するウ ェブサイトであって,原告が代表取締役を務める株式会社Bが運営するものの画面\nを印刷した書面であると認められる。 しかし,甲34をみても,本件商標又は社会通念上これと同一の商標が当該ウェ ブサイトに表示されているということはできない。\nしたがって,原告らが甲34のウェブサイトにおいて本件商標を使用したとは認 められない。
(7) 甲37のウェブサイトについて
証拠(甲37)及び弁論の全趣旨によれば,甲37は,原告の著書(甲36の1 及び2)を宣伝するウェブサイトであって,上記株式会社Bが運営するものの画面 を印刷した書面であり,同画面には,同著書を宣伝する文言として,「資本主義社 会は「知本主義」へ」との記載がされているものと認められる。 しかしながら,前記(2)において説示したとおり,「知本主義」の文字を含む上 記記載に触れた取引者及び需要者は,これを同著書の記載内容,宣伝文句,著者の 主張等であると認識するにとどまり,これが同著書に係る自他商品識別機能を果た\nすと認識するとは考え難い。 したがって,甲37のウェブサイトにおける上記記載は,商標法50条にいう 「登録商標の使用」に該当しない。

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令和3(ネ)10066  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和4年2月8日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について、構成要件Bの「操作メニュー情報」を有するとは認められないとして、1審判断を維持しました。

ア 前記のとおり補正して引用する原判決が説示するとおり(原判決46頁 23行目ないし49頁1行目),本件各発明の特許請求の範囲の記載内容 に加え,本件明細書の段落【0012】の記載内容及び【図7】に記載さ れた本件各発明の実施例としての様々な操作メニュー情報の表示内容か\nらすれば,本件各発明の「操作メニュー情報」とは,「ポインタの座標位置 によって実行される命令結果を利用者が理解できるように前記出力手段 に表示するため」の「画像データ」であり,出力手段に表\示され,利用者 がその表示自体から「実行される命令結果」の内容を理解できるように構\ 成されていることを要するものというべきである。
イ そして,被告製品のページ一部表示が,縮小された中央ページの右端又\nは左端あるいは両端に,幅が細く縦長の白みがかった長方形として表示さ\nれること,そこには何の文字,図形,記号,アイコン等は表示されないこ\nとからすれば,当該長方形部分のみを見た利用者は,それがどのような命 令を実行する表示であるのかを理解することはできないというべきであ\nり,したがって,被告製品のページ一部表示の画像は本件各発明の「操作\nメニュー情報」には当たらず,本件ホームアプリが構成要件Bの「操作メ\nニュー情報」を有するとは認められないことは,前記のとおり補正して引 用する原判決が説示するとおりである(原判決49頁2行目ないし50頁 6行目)。
控訴人は,1)被告製品においては構成e又は構\成e’によってそれまで 表示されていなかったページ一部表\示の画像が液晶画面に表示されるよ\nうになること,2)ページ一部表示の画像と壁紙画像との境界が明確である\nことを指摘するが,これらの点は,いずれも利用者がページ一部表示の画\n像自体から「実行される命令結果」の内容を理解することができるか否か に関わるものではないから,上記の判断を左右するものではないというべ きである。また,控訴人は,3)被告製品のページ一部表示の画像が表\現し ている表示内容は,実行されるスクロール命令の結果を小さな絵で表\現し た画像であるとも指摘するが,上記のとおり,ページ一部表示の画像は,\nその表示内容等からすれば,利用者がその表\示自体から「実行される命令 結果」の内容を理解できるように構成された画像データであるということ\nはできない。 なお,上記の判断に照らすと,控訴人が上記第2の3(1)アにおいて主張 する判断基準によったとしても,被告製品のページ一部表示の画像は,少\nなくとも同主張における3)の要件を満たすものとはいえないから,本件ホ ームアプリが構成要件Bの「操作メニュー情報」を有するとは認められな\nい。
ウ したがって,控訴人の主張(1)アは採用することができない。
(2) 控訴人の主張(1)イについて
ア 控訴人が主張(1)イにおいて指摘する各点は,いずれも上記(1)で検討し たところと同様の事情であるといえるから,いずれも前記の判断を左右す るものではないというべきである。そして,このことは,本件ホームアプ リに係るソースコードの記載内容を基に検討した場合であっても同様で\nある。
イ したがって,控訴人の主張(1)イは採用することができない。
(3) 小括
ア 控訴人は,上記のほかにも,争点1−3について縷々主張するが,いず れも前記の判断を左右するものではないというべきである。 イ 以上によれば,本件ホームアプリは,構成要件Bにいう「操作メニュー\n情報」を有するとは認められず,被告製品が構成要件Bを充足するものと\nは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,被告製品 が本件各発明の技術的範囲に属するものと認めることはできない。

◆判決本文

原審はこちら。

◆令和2(ワ)15464

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令和2(ワ)1160  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年1月31日  東京地方裁判所

 商標権侵害事件です。3段併記の商標「KENT/MARINE SPIRIT/BROS.」、2段併記の商標「KENT/BROS.」、が、原告商標「Kent」に類似すると判断されました。被告は、2段併記の登録商標「KENT BROS/ケントブロス」を保有していましたが専用権の範囲外の使用と判断されています。

 ア 被告標章1の分離観察の可否
 被告標章1の外観は別紙被告標章目録記載1のとおりである。すなわち, 上段に横書きの「KENT」,中段に横書きの「MARINE SPIR IT」,下段に横書きの「BROS.」を,いずれもほぼ同じ列幅で,か つ,上段と中段との行間及び中段と下段との行間をほとんど空けること なく三段に配して成る結合商標であって,全体としてまとまりよく構成\nされている。 もっとも,欧文字は左から右に順次目線を移して読解するものであるか ら,二段以上にまたがって欧文字が配された場合には,横一列に配され た場合と比較して結合の度合いは相当弱くなるといえる。特に,上段と 下段でそれぞれ独立した単語となり得る場合には,なおさらである。さ らに,上段と下段を構成する欧文字はいずれもおおむね同じ大きさであ\nる上,黒地に白抜きで記載されている点及び手書き風の字体である点に おいても共通するのに対し,中段を構成する欧文字の大きさは上段及び\n下段の欧文字より相当小さく,その行の高さは上段及び下段の行の高さ の3分の1程度にすぎない上,白地に黒い字で記載されている。しかも, 中段を構成する欧文字は,水平方向に平行に延びる2本の直線と垂直方\n向の弦を有する2つの半円とを組み合わせた横長の角丸長方形様の図形 によって囲まれ,当該図形部分は白く着色されており(そのため,中段 を構成する欧文字は,上段及び下段とは異なり,黒字で記載されてい\nる。),中段の全体が一本の白い横棒のような外観を呈している。このよ うに,中段の外観は上段及び下段と大きく異なる上,横棒のような外観 を有しているから,中段を境に,上段と下段が分離されたような外観を 有しているということができる。
そして,前記(2)アのとおり,イトーヨーカドーは,平成21年度以降, 約10年という相当長期間にわたって,168回もの多数回,チラシに 「Kent」ブランドのシャツ,パーカー,パンツ,靴下,コート,セ ーター,下着,手袋等の広告を掲載しており,前記(2)ウのとおり,「K ent」ブランドの商品については,イトーヨーカドーにおいて,平成 21年度から平成30年度までの間に●(省略)●もの売上げがあった もので,年によって増減はあるものの,平均すれば年間約50億円を売 り上げてきたこと,前記(2)イのとおり,限られた期間及び回数ながら, 著名人を起用した「Kent」ブランドのテレビCMが全国に放映され たことに照らせば,「Kent」ブランドは,令和元年当時,被服の分野 において,相応の周知性を有しており,取引者及び需要者に対し,商品 の出所識別標識として相当強い印象を与えていたものと認めるのが相当 である。そうすると,被告標章1の上段の「KENT」は,上記「Ke nt」の二文字目以降を大文字で記載したほかは,つづりが同一である ことから,「KENT」の標章が被服に用いられた場合には,取引者及び 需要者において「Kent」ブランドを想起するものと認めることがで きる。
他方,「BROS.」についてみれば,25類・被服を指定商品とする 「BROS ブロス」との登録商標が存在すると認められるものの(乙 3),本件全証拠によっても,被服に関する「BROS」の実際の使用例 としては,男性用下着のサブブランドとしてのものが認められるのみで あって,「BROS」がどの程度の周知性を有するのかは明らかではない。 そうすると,上記の登録商標の存在を根拠に「BROS.」から出所識別 標識としての称呼,観念が生ずると認めることはできず,その点につい ては,本件証拠上,明らかではないというべきである。以上の事情を総 合すれば,被告標章1の構成部分のうち,「BROS.」から出所識別標\n識としての称呼,観念が生じないとまでは認められないものの,上段の 「KENT」と下段の「BROS.」は,二段以上にまたがって配され, かつ,それぞれが独立した単語となり得ることにより,横一列に配され た場合と比較して結合の度合いは相当弱くなることに加え,一本の白い 横棒のような外観を有する中段の「MARINE SPIRIT」によ り上下に分離されている上,「KENT」に対応する「Kent」ブラン ドが,被服の分野において,相応の周知性を有しており,取引者及び需 要者に対し,商品の出所識別標識として相当強い印象を与え得ることか らすれば,上段の「KENT」と下段の「BROS.」とを分離して観察 することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合している とまではいえない。したがって,被告標章1については,上段の「KE NT」のみを分離して観察することができると認めるのが相当である。 その結果,被告標章1については,「ケント」との称呼が生じ,かつ,原 告が使用権を設定し,イトーヨーカドーが使用する「Kent」ブラン ドの商品であるとの観念が生じるものと認められる。
イ 被告標章2の分離観察の可否
被告標章2の外観は別紙被告標章目録記載2のとおりである。すなわち, 上段に横書きの「KENT」,下段に横書きの「BROS.」を,いずれ もほぼ同じ列幅で,かつ,上段と下段との行間をほとんど空けることな く二段に配して成る結合商標であって,全体としてまとまりよく構成さ\nれている。 もっとも,欧文字は左から右に順次目線を移して読解するものであるか ら,上記の「KENT」と「BROS.」のように,二段以上にまたがっ て欧文字が配された場合には,横一列に配された場合と比較して結合の 度合いは弱くなり,上段と下段でそれぞれ独立した単語となり得る場合, その結合の度合いがより弱くなることは,被告標章1の場合と同様であ る。
そして,前記アのとおり,「BROS.」から出所識別標識としての称呼, 観念が生じないとは認められないものの,他方で,「Kent」は商品の 出所識別標識として取引者及び需要者に相当強い印象を与えていたもの と認められ,かつ,「KENT」の標章が被服に用いられた場合には,取 引者及び需要者において「Kent」ブランドを想起するものと認めら れる。 そうすると,被告標章2においては,被告標章1の中段に相当する部分 が存在しないものの,そもそも「KENT」と「BROS.」の結合の度 合いが弱い上,「KENT」に対応する「Kent」ブランドが商品の出 所識別標識として相当強い印象を与え得ることからして,被告標章2の 各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思わ\nれるほど不可分的に結合しているものとは認められないというべきであ り,上段の「KENT」を分離観察することができるというべきである。 その結果,被告標章2についても,被告標章1と同様,「ケント」との称 呼及び「Kent」ブランドの商品の観念が生じるものと認められる。

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令和2(ワ)19927  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年12月24日  東京地方裁判所

 薬について技術的範囲に属しないと判断されました。均等侵害についても本質的要件を満たさないと判断されました。

 原告は,本件発明3は,慢性疼痛に対する画期的処方薬として,抗て んかん作用を有するGABA類縁体を痛みの処置に用いることを見いだ したものであり,その本質的部分は本件化合物を慢性疼痛の処置に用い る点にあるから,対象となる痛みが侵害受容性疼痛か,神経障害性疼痛 や線維筋痛症かは本質的部分ではなく,効能・効果を神経障害性疼痛や\n線維筋痛症に伴う疼痛とし,慢性疼痛の処置に用いる鎮痛剤である被告 医薬品は,均等侵害の第1要件を満たすと主張する。 しかし,前記1(1)アのとおり,本件特許に係る発明は,てんかん,ハ ンチントン舞踏病等の中枢性神経系疾患に対する抗発作療法等に有用な 薬物である本件化合物が,痛みの治療における鎮痛作用及び抗痛覚過敏 作用を有し,反復使用により耐性を生じず,モルヒネと交叉耐性がない ことに着目した医薬用途発明であるところ,前記2(1)イのとおり,本件 出願当時,痛みには種々のものがあり,その原因や機序も様々であるこ とが技術常識であった。 そうすると,いかなる痛みに対して鎮痛効果を有するかは,本件発明 3において本質的部分というべきであり,その鎮痛効果の対象を異にす る被告医薬品は,本件発明3の本質的部分を備えているものと認めるこ とはできない。したがって,本件発明3に係る特許請求の範囲に記載さ れた構成中の被告医薬品と異なる部分が本件発明3の本質的部分でない\nということはできないから,被告医薬品は均等の第1要件を満たさない。
(イ) また,前記(1)アによれば,原告は,本件訂正前発明3においては鎮痛 の対象となる痛みを限定していなかったところ,本件訂正により「炎症 を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」に限定していること からすると,本件発明3との関係においては,被告医薬品の効能・効果\nである神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛を意図的に除外したと 認めるのが相当である。 したがって,被告医薬品は均等の第5要件も満たさない。

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令和2(ワ)19927  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年12月24日  東京地方裁判所

 社史の発行が原告書籍の翻案であるとした不当利得返還請求訴訟です。裁判所は、創作的表現において同一性を有しないとして、請求を棄却しました。\n

(1) 言語の著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,か つ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正, 増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,\nこれに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得すること\nのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして,著作権法は,思想又は 感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照),既\n存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア, 事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない部 分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には 当たらないと解するのが相当である(最高裁平成11年(受)第922号同 13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁)。 そうすると,本件社史部分が原告書籍を翻案したものに当たるというため には,原告書籍と本件社史部分とが,創作的表現において同一性を有するこ\nとが必要であるものと解される。
したがって,原告書籍と本件社史部分との間で,事実など表現それ自体で\nない部分でのみ同一性が認められる場合には,本件社史部分は原告書籍を翻 案したものに当たらない。 また,原告書籍と本件社史部分との間に,表現において同一性が認められ\nる場合であっても,同一性を有する表現がありふれたものである場合には,\nその表現に創作性が認められず,本件社史部分は原告書籍を翻案したものに\n当たらないと解すべきである。すなわち,著作者等の権利の保護を図り,も って文化の発展に寄与するという著作権法の目的(同法1条)に照らせば, 著作物に作成者の何らかの個性が現れており,その権利を保護する必要性が あるといえる場合には,上記の創作性が肯定され得るが,一方で,表現があ\nりふれたものである場合には,そのような表現に独占権を認めると,後進の\n創作者の自由かつ多様な表現の妨げとなり,かえって上記の著作権法の目的\nに反する結果となりかねないため,当該表現に創作性を肯定して保護を与え\nることは許容されないというべきであり,そのため,原告書籍と本件社史部 分との間で同一性を有する表現がありふれたものである場合には,その表\現 に創作性を認めることができない。
(2) まず,別紙2記述対比表の原告書籍及び本件社史部分の各記述について,\nそれぞれの間での創作性を有する表現の同一性が認められるか否かについて\n検討する。
ア 番号1の各記述について
(ア) 原告書籍の番号1の記述は,原告書籍における当該記述の前後の文脈 を踏まえると,被告従業員であったBが被告の二輪世界選手権への再挑 戦の担当者になるとの内示を受ける前日に出身地を尋ねられた際のやり とりを記述したものであり,本件社史部分の番号1の記述は,本件社史 部分における当該記述の前後の文脈を踏まえると,Bが上記内示の際に 出身地を尋ねられたことを記述したものであると認められる。 これらの記述は,Bが上記内示を受ける際に出身地を尋ねられたこと を内容とする点で共通しているが,このようなやりとりがあったことは 事実にすぎないというべきであり,表現それ自体でない部分で同一性が\n認められるに留まる。また,出身地を尋ねるやりとりがあったことにつ いて,原告書籍の番号1の記述では,「おいB,おまえ家は東京だよな」 と記述されているのに対し,本件社史部分の番号1の記述では,「世間話 の中で出身地を聞かれました。『東京です』と答えたのを覚えていますよ」 と記述されており,それらの具体的な記述における描写の手法が異なる ものとなっており,表現それ自体において同一性を有するとは認められ\nない。
(イ) 原告は,原告書籍と本件社史部分に同じ事実が記述されていることに ついて,社史編纂委員会の担当者は原告書籍に記述された事実を原告書 籍に依拠して知ったものであるから,翻案該当性が認められるべき旨を 主張する。 しかしながら,前記(1)のとおり,本件社史部分に記述された事実が原 告書籍に依拠したものであったとしても,原告書籍と本件社史部分の各 記述が事実といった表現それ自体でない部分において同一性を有するに\n留まる場合には,原告書籍の翻案には当たらないと解するのが相当であ るから,原告の上記主張は採用することができない。 (ウ) したがって,番号1の各記述について,創作的表現において同一性を\n有するものと認めることはできない。
・・・
(ウ) 小活 前記(ア)及び(イ)の対比の結果に照らせば,原告書籍の番号20−1及 び20−2の記述と本件社史部分の番号20の記述が創作的表現におい\nて同一性を有するものと認めることはできず,これは,原告書籍の番号 20の記述全体と本件社史部分の番号20の記述とを対比した場合でも 同様である。
(3) 前記(2)のとおり,番号1ないし20の各記述において,本件社史部分が 原告書籍と創作的表現において同一性を有するとは認められないから,依拠\n性について検討するまでもなく,被告社史中の本件社史部分は原告書籍の翻 案に該当するものではない。

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平成30(ワ)866 職務発明の対価 特許権 民事訴訟 令和3年12月27日 大阪地方裁判所

 職務発明であるとして1億円を越える請求を求めましたが、裁判所は独占的利益を得ていないとして請求を棄却しました。なお、原告は45万円の報奨金を受け取っていました。

ウ コスト面について
(ア) 本件工場の建設に係る設備投資について,実行予算●(省略)●に対し,実\n際には●(省略)●の建設費用を要し,本件増設工事に更に●(省略)●の費用を 要したことで,合計●(省略)●を要したこと(前記(3)ウ(イ)a)に加え,被告に とって,本件工場は本件乾式分別法による設備を導入した初めての事例であるのに 対し,溶剤分別法による設備を設置した事例は既に FOJ 等において存在し,FVO 建設当初における溶剤分別設備に係る投資額の見積もりは本件設備の見積もりに比 して比較的正確になされたと考えられること等を踏まえると,本件工場建設に係る 設備投資額が溶剤分別法による設備を導入する場合と比して安価であったとは考え 難く,少なくともその点は不明と見るほかない。
(イ) 比例費については,平成27年〜平成29年の FVO 等の各 SOS パーツの加 工費に係る試算結果を比較した場合,FVO は FOJ 等に比して大幅に低額である。 また,分別設備に係る最終製品の比例費を見ても,FVO は,●(省略)●FOJ 等 に比して幾分低額である(以上につき,前記(3)ウ(イ)b)。もっとも,具体的な金 額は不明ながら,本件工場の稼働開始から平成26年までは FVO において●(省 略)●ことも考慮に入れる必要がある。
(ウ) 歩留まりについては,当初より乾式分別法による歩留まりが溶剤分別法より も低いことが前提とはされていたものの,本件増設工事を経て更に設計上の分別収 率は●(省略)●に引き下げられ,実際の歩留まりも●(省略)●という状況にあ る(前記(3)ウ(イ)c)。
(エ) これらの事情を総合的に考慮すると,本件乾式分別法は,必ずしも溶剤分別 法に比してコスト面で明確に有利とはいえない。
エ 採算性について
FVO パーツ品の採算性については,販売限利率を見る限り,FVO パーツ品は, CBE として販売されたもの及び SOS パーツ単体で販売されたもののいずれも,総 じて FOJ パーツ品よりも低い(前記(3)ウ(イ)d)。すなわち,FVO 品は,SOS パ ーツ製造の比例費を溶剤分別法により製造された FOJ 品に比して抑えられている にもかかわらず,FOJ 品よりも利益への貢献の程度は低いといえる。 なお,販売限利率は,分別方法による利益率の相違等をそれ自体として表すもの\nでは必ずしもないが,販売限利は,その算出に当たってその時々の相場と過去の実 績等が考慮され,変動費に相当する見込額として位置付けられるものであることな どに鑑みると,販売限利率に基づき収支採算性を評価することには一定程度の合理 性があると考えられる。
オ CBE 販売市場の状況について
CBE の国際的な需要は,平成12年〜平成20年にかけて急激に拡大し,それ 以降も,平成28年まで,緩やかな拡大傾向を示しているところ(前記(3)エ(ア)), 被告グループのシェアが本件工場の稼働によって増大したことを裏付けるに足りる 客観的な資料はない。むしろ,平成19年〜平成28年における被告グループのシ ェアは●(省略)●で増減していると見られると共に,この変動はココアバターと の価格変動との関連性がうかがわれる(前記(3)エ(イ))。これを見る限り,本件各 発明の実施は,被告による競合他社からのシェア奪取にはつながっていないと考え られる。 また,被告との合計で CBE 市場の約8割のシェアを占める AKK 及び LC は, CBE 製造にあたり,いずれもシア脂から SOS パーツを製造・精製する工程におい て,溶剤分別法によっている。本件各発明はシア脂を原料とする分別にも利用でき るとされているものの,実際には,各設備の規模等のほか,本件工場の稼働による 被告のシェア増大といった事情もないことをも踏まえれば,競合他社にとって,多 額の設備投資を行って本件乾式分別法による設備を導入するメリットは乏しいと思 われ,本件各特許権の存在いかんにかかわりなく本件乾式分別法による設備の導入 は容易ではないと考えられるのであって,本件各特許権の存在が競合他社による本 件各発明の実施を回避させているとまではいえない。 このことは,原告との係争が表面化した後とはいえ,被告が特許料不納付により\n本件各特許権を消滅させ,又はその方向で対応する旨の判断を示していることとも 平仄が合うといえる。
なお,油脂分別技術の開発の方向性としては,安全性及びコスト面での問題を抱 える溶剤分別法から,最も持続可能性の高い方法とされる乾式分別法に向かうとし\nても,現状においては乾式分別法もなお問題点を抱えており,溶剤分別法も依然と して選ばれる場面があるとされていることなどに鑑みると,少なくとも本件各特許 権の存続期間においては,油脂分別法として溶剤分別法と乾式分別法はなお選択的 な関係にあるものと見るべきであって,その意味で,溶剤分別法は本件各発明の代 替技術として位置付けられる。
カ 小括
以上の事情を総合的に考慮すると,本件において,本件各特許権に係る通常実施 権の実施によって得られる利益の額を超えて被告が利益を得たと認めるに足りる証 拠はないというべきである。すなわち,被告は,本件各特許権により独占の利益を 得たとはいえない。
キ 原告の主張について
原告は,被告が本件各特許権により独占の利益を得ているとして,縷々主張する。 しかし,FVO パーツ品及び FVO 品の品質については,原告は主にパイロットレ ベルでの乾式分別法による SOS パーツの数値を根拠とするにとどまり,また,実 際に本件設備を用いて製造した FVO パーツ品を用いた分析結果等の信用性につき 疑義を抱くべき事情は見当たらない。また,コスト及び採算性については,前記の とおりである。
さらに,溶剤分別法に係る各種規制の存在も,溶剤分別法による設備の導入の障 害になり得るものではあっても,その新設が不可能ないし著しく困難であるとまで\n見るべき事情はない。このため,前記のとおり,油脂分別法として溶剤分別法はな お乾式分別法の代替技術といえる。 本件発明賞や本件経営賞の受賞等も,FVO における本件乾式分別法による設備 の導入に対する肯定的な評価を裏付けるものではあるものの,必ずしも被告に独占 の利益が生じたことを前提とするものではない。 被告の有価証券報告書に FVO から被告への特許料支払が記載されていること (甲74)についても,その支払が本件各特許権の実施に係るものであるかが明ら かではない上,本件各特許権の特許権者が被告であること,グループ会社とはいえ 被告と FVO とは法人格を異にすることなどに鑑みると,これをもって,被告に本 件各特許権による独占の利益が生じていることを示すものとは必ずしも見られない。 その他原告が縷々指摘する事情を踏まえても,この点に関する原告の主張は採用 できない。

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令和3(ワ)1333    著作権 令和3年12月21日  東京地方裁判所

 東京地裁47部は、漫画閲覧サイトにおける公衆送信について、被告らの行為が原告漫画の売上減少に寄与した割合は,約1%として、1000万円の損害を認めました。 0.1を乗じているのは、印税(10%)です。

 前記認定のとおり,原告漫画1の累計発行部数(紙媒体による書籍,電子書籍及 び複数巻を一つにまとめた新装版を含む。以下同じ。)は約2000万部,原告漫画 2の累計発行部数は約370万部であり,原告漫画の1冊当たりの販売価格は46 2円であって,原告漫画の売上額は,およそ109億4940万円となるところ, 原告漫画の著作権者であると認められる原告が受けるべき使用料相当額は,原告漫 画の上記のような発行部数等に照らし,同売上額の10パーセントと認めるのが相 当である。 ところで,本件ウェブサイトによる原告漫画が無断掲載されたことにより,原告 漫画の正規品の売上が減少することが容易に推察され,原告漫画においても,発売 日翌日に本件ウェブサイト上にその新作が掲載されていたことによれば,新作が無 料で閲覧できることにより,読者の原告漫画の購買意欲は大きく減退するというべ きである一方,被告らの行為は,本件ウェブサイトによる原告漫画の違法な無断掲 載を,広告の出稿や広告料支払という行為によって幇助したものにとどまること, 原告漫画2の上記累計発行部数は令和2年1月頃までのものであって,本件ウェブ サイトが閉鎖された平成30年4月より後の期間における原告漫画2の売上げに関 して被告らの行為との間の関連性を認めることができないことその他本件に顕れた 一切の事情に照らして検討すれば,被告らの本件における行為が原告漫画の売上減 少に寄与した割合は,約1パーセントと認めるのが相当である。 これらの事情に鑑みると,本件ウェブサイトによる原告漫画に係る著作権(公衆 送信権)侵害行為を被告らが幇助したことと相当因果関係が認められる原告の損害 額は,1000万円(≒109億4940万円×0.1×0.01)と認めるのが 相当である。

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令和1(ワ)25121 特許権 令和3年12月9日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属すると認められるが、無効理由あり(新規性なし)として権利行使不能(特104-3)と判断されました。

 このように,乙8発明は,ユーザから入力された情報から抽出したキーワードに 基づいてそれに関連するウェブページを収集し,そのリンク情報を取得して記憶し, ユーザ端末にキーワードに関連するウェブサイトのリンクをユーザ端末に出力する ものである。しかして,かかるウェブサイトのリンクをユーザ端末に出力すること は,ユーザに対してユーザの関心のある事項に関連するウェブサイトの閲覧を勧め るものであるといえ,当該リンクを出力することは,ユーザに対する提案を行うも のということができ,また,当該リンクはウェブ上から取得されるものであるから, ウェブサイトからユーザに対して提案すべき情報を取得しているということができ る。 そうすると,乙8発明がユーザコメントに基づいてリンクを出力するアバター管 理部及び情報収集部は,構成要件1Eの「前記第1又は第2受付手段によって受け\n付けられた個人情報に基づいて前記ユーザに対して提案を行う提案手段」に相当し, また,乙8発明の,アバター管理部及び情報収集部によりユーザコメントに基づい てウェブサイトのリンクをユーザ端末に出力する機能は,構\成要件5Eの「前記受 け付けた個人情報に基づいて前記ユーザに対して提案を行うステップ」に相当する。 さらに,乙8発明における,ウェブ上からキーワードに関連するウェブページのリ ンクを取得する情報収集部は,構成要件1Fの「前記個人情報に基づいてウェブサ\nイトから前記ユーザに対して提案すべき情報を取得する手段」に相当し,上記情報 収集部によりウェブ上からキーワードに関連するウェブページのリンクを取得する 機能は,構\成要件5Fの「前記個人情報に基づいてウェブサイトから前記ユーザに 対して提案すべき情報を取得するステップ」に相当する。 その他,構成要件E及びFと乙8発明の間に,相違する点は認められない。\n以上によれば,構成要件E及びFは,乙8発明の構\成と同一のものといえる。
エ 構成要件G(「前記個人情報に基づいてユーザに注意を促す手段と,を有する」「前記個人情報に基づいてユーザに注意を促すステップと,を更に有する」)につき,\n乙8発明と対比する。 構成要件Gに関し,本件明細書の記載をみると,「飲みすぎないように!」などの\nアドバイスのメッセージを出力する旨の記載があり(【0119】),かかる記載内容 からすると,構成要件Gにおける「注意を促す」とは,気を付けるように仕向ける,\n気を配るように仕向けるとの意であると解することができる。 しかして,乙8発明は,スケジュールが未完了であることが確認すると,アバタ ーから,「スケジュールが未完了だよ。代わりのスケジュールを入力してね」のよう な,スケジュールの修正を依頼するアバターコメントを出力する機能を有する(【0\n043】)。そして,乙8発明の学習・生活支援サーバ内にはアバターコメントを出 力するアバター管理部が実装されている(【0024】等)ところ,上記機能は,ユ\nーザに対してスケジュールが完了していないことに気を付けるように仕向け,又は, スケジュールに気を配るように仕向けるものであるといえる。 そうすると,乙8発明の,アバターコメントの出力を実行するアバター管理部は, 構成要件1Gの「前記個人情報に基づいてユーザに注意を促す手段」に相当し,ま\nた,乙8発明の,ユーザに対して上記の趣旨のアバターコメントを出力するアバタ ー管理部の機能は,構\成要件5Gの「前記個人情報に基づいてユーザに注意を促す ステップ」に相当する。 その他,構成要件Gと乙8発明の間に,相違する点は認められない。\n以上によれば,構成要件Gは,乙8発明の構\成と同一のものといえる。
オ 構成要件H(「情報提供装置。」「を情報提供装置に実行させる情報提供プロ\nグラム。」につき,乙8発明と対比する。 乙8発明のアバター管理部によるアバターコメントの出力は,情報の提供に当た るため,この点をもって既に,アバター管理部を有する乙8発明の学習・生活支援 サーバは,情報を提供する装置(「情報提供装置」)であるということができる。 また,上記サーバは,アバター管理部のほかに,ユーザ情報管理部,テキスト分 析部,情報収集部,コンテンツ管理部で構成される制御部を有しており,制御部は,\n少なくとも一つのCPU等を備え,ROM等に予め記憶されたプログラムを読み込\nんで実行することにより,上記各部の機能を事項することが可能\となるものである (【0021】等)ことから,乙8発明の学習・生活支援サーバは,情報提供装置で あって,各種機能を実行させる情報提供プログラムを有しているといえ,乙8発明\nは,構成要件1Hの「情報提供装置」,構\成要件5Hの「情報提供プログラム」と同 一であるといえる。 その他,構成要件Hと乙8発明の間に,実質的に相違する点は認められない。\n以上によれば,構成要件Hは,乙8発明の構\成と実質的に同一のものといえる。
(4) したがって,本件各発明は,その全ての構成要件が,乙8発明の構\成と実質 的に同一のものであるから,本件各発明は,乙8発明との関係で,新規性を欠くも のといわざるを得ず,いずれも,特許無効審判により無効にされるべきものと認め られる(特許法29条1項3号,123条1項2号)。
(5) 原告らの主張について
原告らは,1)乙8公報に記載されている「スケジュールの修正を依頼する」とは, 構成要件Eにおける,議案や意見を提出するという「提案を行う」こととは相違す\nる,2)乙8公報がユーザ端末に出力するウェブサイトのリンクは,ウェブサイトの 所在を示す情報であって,この所在を示す情報が,「提案を行う」内容である議案や 意見であるはずがなく,乙8発明は構成要件Eと相違し,また,ウェブサイトのリ\nンクはユーザに対して提案すべき情報を規定している構成要件Fの「情報」とも相\n違する,3)乙8発明がユーザのスケジュールが未完了であることを確認した場合に ユーザにスケジュールの修正を依頼することは,構成要件Gの,気を付けるよう仕\n向けることとは相違する,4)乙8発明のユーザ端末は,情報提供をするものではな いから,構成要件Hと相違する,などとして,本件各発明が乙8発明の構\成と実質 的に相違する旨主張する。
しかしながら,原告らの上記各主張は,次のとおり,いずれも理由がないという べきである。 まず,上記1)及び3)の点については,乙8発明において「スケジュールの修正」 を依頼されたユーザは,スケジュールが完了していないことを知り,新たなスケジ ュールを考えて入力するように促されることとなるのであって,「スケジュールの 修正の依頼」も,ユーザに対して新たなスケジュールを組み立てる旨の議案や意見 の提出にも当たるといえるから,構成要件Eの「提案を行う」と実質的に同一の構\ 成であるといえる。また,乙8発明の上記のような働きは,まさにユーザに対しス ケジュールが完了していないことに気を付けるように仕向け,又は,気を配るよう に仕向けることであるといえるから,乙8発明は,構成要件Gの「注意を促す手段」\nないし「注意を促すステップ」と実質的に同一の構成を有するといえる。\nまた,上記2)の点については,構成要件Eの「提案を行う」との文言について,\n特許請求の範囲及び本件明細書の記載に,ユーザに提案すべき情報の具体的内容を 限定する根拠となるものはなく,ウェブページを出力することに限る旨の示唆もな い。その上,前記説示のとおり,キーワードに関連するウェブページのリンクをユ ーザ端末に出力することは,当該リンク先のウェブページを閲覧することをユーザ に勧めることに該当し,まさに,この点が「提案」といえるというべきである。そ うすると,乙8発明のアバター管理部が当該リンクをユーザ端末に出力することは, 構成要件Eが規定するユーザに対する「提案を行う」との構\成と,同一であるとい わなければならない。また,構成要件Fの「情報」との相違を指摘する原告の主張\nも,結局,リンクはあくまでウェブサイトの所在を示す情報に過ぎず,これがユー ザに対して提案すべき情報には当たらないとの主張であると解されるが,前記のと おり,ユーザ端末にユーザの個人情報に基づいてこれに関連するウェブページのリ ンクを出力することは,ユーザに対して当該リンク先のウェブページの閲覧を勧め るという意味において,ユーザに提案すべき情報を表示するものであり,乙8発明\nにおいてユーザ端末に出力されるリンクは,構成要件Fの「情報」と異なるもので\nはないというべきである。 さらに,上記4)の点は,前記説示のとおり,乙8発明の学習・生活支援サーバ及 びプログラムは,構成要件1Hの「情報提供装置」,構\成要件5Hの「情報提供プロ グラム」と同一であるといえる。 以上によれば,原告らの主張はいずれも採用することができない。

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令和3(行ケ)10113  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年1月25日  知的財産高等裁判所

 商標「睡眠コンサルタント」が識別力無し(3条1項3号)とした拒絶審決が維持されました。

(3) 上記認定事実によれば,「睡眠コンサルタント」が,「睡眠の事柄につい て相談・助言・指導を行う専門家」の意味合いを容易に認識させることは, その構成から明らかである。そして,上記認定事実によれば,「睡眠コンサ\nルタント」と称する資格又は「睡眠コンサルタント」の文字を含む名称を冠 する資格を与える団体が存在し,当該団体が睡眠に関する専門的な知識の教 授等を行っている例が複数あること(上記ア〜エ),これらの団体により認 定資格を得た者が「睡眠コンサルタント」と名乗り,睡眠に関する知識の教 授,及び睡眠に関するセミナーの企画・運営又は開催を行っている例が複数 あること(上記オ〜ク),それ以外にも,睡眠に関する専門的な知識を有す る「睡眠コンサルタント」と称する者が,睡眠に関する知識の教授,及び睡 眠に関するセミナーの企画・運営又は開催等を行っている例が複数あること (上記ケ〜タ)が認められる。また,知識の教授及びセミナーの企画・運営 又は開催を行う業界において,講義及びセミナー等の内容に関する書籍(テ キスト,問題集等)及びビデオ等が制作されている実情があることは,顕著 な事実である。
以上からすると,本願商標は,本願指定役務である「技芸・スポーツ又は 知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,書籍の制 作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用 のものを除く。)」との関係で,本件審決がされた令和3年7月26日の時 点において,「睡眠に関する専門的な知識を有する者による,睡眠に関する 役務である」という役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切\nな表示であり,本願商標の取引者,需要者によって本願商標が本願指定役務\nに使用された場合に,役務の質を表示したものと一般に認識されるものであ\nるから,本願商標は,本願指定役務について役務の質を普通に用いられる方 法で表示する標章のみからなる商標であると認めるのが相当である。\nしたがって,本願商標は,商標法3条1項3号に該当する。これと同旨の 本件審決の認定判断に誤りはない。 ・・・ 原告は,「○○〇コンサルタント」という商標の登録例が多数あること,専門分野を表す「〇〇〇」の次に「専門家」を意味する言葉を付加した商標の登録例も多数あることを挙げて,これらの登録例と構\成を同じくする本願商標は登録されて然るべきである旨主張する。しかしながら,商標登録の可否は,商標の構成,指定役務,取引の実情等を踏まえて,具体的な実情に基づき商標ごとに個別に判断すべきものであって,原告が指摘するような他の商標登録事例が多数あるからといって本願商標の登録の可否が影響を受けるものではないから,本願商標が本願指定役務について役務の質を普通に用いられる方法で表\示する標章のみからなる商標であることを否定する理由にはならない。

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令和3(行ケ)10092  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年1月27日  知的財産高等裁判所

 本件商標「hihachi」が「HITACHI」と出所混同するとして異議申立がなされました。知財高裁は、4条1項15号違反とした審決を維持しました。

ア 上記(1)ないし(3)のとおり,本件商標及び引用商標は,観念において類 似するものではないものの,外観及び称呼が互いに相紛らわしいものであ るというべきである。 そして,前記3で検討したとおり,本件商標及び引用商標に係る需要者 には一般消費者が含まれるものであるところ,一般消費者が通常有する注 意力を踏まえると,外観及び称呼が互いに相紛らわしい両商標を取り違え ることは十分にあり得るといえることからすれば,両商標の類似性の程度\nは,相当程度高いというべきである。
イ 原告は,引用商標の取引の実情に関して,商標中の大文字のアルファベ ットを小文字表記に変えて使用することなどは全く行われておらず,この\nことは引用商標においても同様である旨主張する。 しかしながら,上記(1)イのとおり,アルファベットからなる商標の使用 においては,その構成文字について,大文字と小文字とを相互に変換して\n表記することが一般に行われているといえる。また,商標法においても,\n商標登録の取消しの審判について,登録商標と社会通念上同一と認められ る商標(例えば,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更\nするものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標)の使用を証明するこ とによって商標登録の取消しを免れることができる旨が規定されている が(商標法50条1項,2項,38条5項),これは,商標の使用において は,同一の称呼及び観念が生じる範囲内で商標の構成文字の文字種を相互\nに変換して表記したり,デザイン化したりすることが一般によく行われる\nことを前提とした規定であるといえる。これらの事情を考慮すると,商標 中の大文字のアルファベットを小文字表記に変えて使用することが全く\n行われていないということはできない。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。
5 出所混同が生ずるおそれの有無
本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基 準として,前記2ないし4において検討した事情を総合的に考慮すると,注意 力がそれほど高いとはいえない一般消費者が,被告補助参加人及びそのグルー プ会社の業務に係る商品及び役務を表示するものとして極めて高い周知著名性\nを有する引用商標に相当程度類似し,取り扱う商品も密接に関連する本件商標 が付された商品に接した場合には,当該商品が被告補助参加人及びそのグルー プ会社の業務に係る商品であると混同するおそれがあるというべきである。

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令和2(行ケ)10071  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年2月2日  知的財産高等裁判所

 訂正後の発明について無効理由なしとした審決が取り消されました。理由は基準日当時の骨粗鬆症に関する技術常識から動機付けありというものです。

 (イ) 前記(ア)の各記載によると,本件基準日当時の骨粗鬆症に関する技術 常識は,次のとおりである。すなわち,1)骨粗鬆症は,骨強度の低下を特徴とし,骨折の危険性が増大した骨疾患であり,その治療の目的は,骨折を予防し,QOL(qu\nality of life)の維持改善を図ることである,2)骨粗鬆症は,加齢とと もに発生が増加する,3)骨粗鬆症による骨折の複数の危険因子の中で, わが国では,低骨密度,既存骨折,年齢に関するエビデンスがある,4) 骨粗鬆症の診断基準に関して,1990年当時,厚生省シルバーサイエ ンスプロジェクト「老人性骨粗鬆症の予防および治療に関する総合的研\n究班」により提唱された診断基準(1989年診断基準)があったが, 1996年に診断基準が改訂され(1996年診断基準),その後,20 00年に更に改訂された(2000年診断基準),5)骨強度は骨密度と骨 質の2つの要因からなり,骨密度が骨強度のほぼ70%を,骨質が残り の30%を説明することが知られていたといえる。
イ 本件3条件について
(ア) 甲7発明と本件発明1とは,「1回当たり200単位のPTH(1− 34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする」との用量の点 において一致するが,その投与の対象となる骨粗鬆症患者の範囲を一応 異にする。
(イ) 甲7発明で投与対象とされた患者は,前記(1)のとおり,1989年診 断基準で骨粗鬆症と診断された患者であるところ,より新しい基準を参 酌しながらその患者を選別することは,当業者がごく普通に行うことで あるから,甲7発明に接した当業者が,甲7発明のPTH200単位週 1回投与の骨粗鬆症治療剤を投与する対象患者を選択するのであれば, 1989年診断基準とともに,より新しい,1996年診断基準又は2 000年診断基準を参酌するといえる。 そして,前記ア(ア)b及びcのとおり,1996年診断基準で骨粗鬆 症と診断される者は,1)骨萎縮度I度以上又は骨密度値がYAMの8 0%以下の低骨量で非外傷性椎体骨折を有する者か,2)X線上椎体骨折 を認めないが,骨萎縮度II)度以上,又は,骨密度値がYAMの70%未 満である者であり,2000年診断基準で骨粗鬆症と診断される者は, 3)骨萎縮度II)度以上又は骨密度がYAMの80%未満の低骨量が原因で, 軽微な外力による非外傷性椎体骨折等(脆弱性骨折)を有する者か,4) 脆弱性骨折がないものの,骨萎縮度II)度以上,又は,骨密度値がYAM の70%未満の者である。
本件条件(2)及び本件条件(3)は,上記1)と同じであるから(「既 存椎体骨折」は「非外傷性椎体骨折」を含む。),当業者が甲7発明の2 00単位週1回投与の骨粗鬆症治療剤を投与する骨粗鬆症患者を本件条 件(2)及び本件条件(3)で選別するのには何ら困難を要しない。 また,前記ア(イ)のとおり,骨粗鬆症は,加齢とともに発生が増加す るとの技術常識があり,高齢者は加齢を重ねた者であるのは明らかであ るところ,高齢者として65歳以上の者を選択するのは常識的なことで あり,高齢者の医療の確保に関する法律32条でも65歳以上が高齢者 とされている。したがって,これらを参酌し,骨粗鬆症による骨折の複 数の危険因子として,低骨密度及び既存骨折に並んで年齢が掲げられて いることに着目して投与する骨粗鬆症患者を65歳以上として,本件条 件(2)及び本件条件(3)に加えて本件条件(1)のように設定する ことはごく自然な選択であって,何ら困難を要しない。 そうすると,甲7発明に接した当業者が,投与対象患者を本件3条件 を全て満たす患者と特定することは,当業者に格別の困難を要すること ではない。
ウ 被告の主張について
(ア) 被告は,前記第3の3(2)ア(イ)a及びbのとおり,本件3条件は, 層別解析により初めて,本件条件(1)ないし本件条件(3)を組み合 わせるとPTHの骨折抑制効果が高いという新規な知見を得たことに基 づくものであり,本件3条件は一般的な指標ではなく,甲7文献の開示 事項からは導かれず,むしろ甲7文献にはサブグループ間で薬物に対す る応答は同程度であった旨の記載があり,甲7発明から本件3条件を選 択する動機付けは否定される旨主張する。
しかしながら,前記イにおいて判示したように,本件基準日における 技術常識に照らせば,甲7発明に接した当業者が投与対象患者を本件3 条件を全て満たす患者とすることに格別の困難はない。また,本件3条 件の組合せについても,客観的観点からその選択において格別なもので ある,あるいは,他の骨折リスク因子等も含めた様々な組合せが想定さ れる中で本件3条件を組み合わせること自体に特別の意味合いがあると 認めるに足りる証拠はない(被告が主張する層別解析は,後述するよう に,あくまで本件3条件の全てを満たす患者(高リスク患者)のグルー プと,本件3条件の全部又は一部を満たさない患者(低リスク患者)の グループのうちごく一部のグループとを比較するものにすぎず,また, その結果自体も被告主張の顕著な効果が認められると即断できるもので はない。)。 そして,確かに甲7文献には,別紙2のとおり,「年齢が64歳以下と 65歳以上,体重が49kg以下と50kg以上,閉経後10年未満,10 から20年,20年以上,および脊椎骨折が0,1および2箇所以上を 有するサブグループに被験者を分類して比較したところ,サブグループ 間で薬物に対する応答は同程度であった。」との記載があることは認めら れるものの(300頁左欄11行ないし右欄6行目),当該記載は,上記 記載中の条件によってサブグループ化されたサブグループ間の薬物効果 の比較について述べているにすぎず,当該記載により,甲7発明の投与 対象患者をサブグループ化すること全般が阻害されるとはいえない。 したがって,被告の上記主張は,いずれも採用することができない。
(イ) また,被告は,前記第3の3(2)ア(イ)cのとおり,甲7発明におけ る200単位投与群には,副作用が多発しており,200単位は副作用 脱落率が高い用量と認識されているから,当業者はこれを試みない旨主 張する。
確かに,別紙2のとおり,甲7文献には,PTH200単位週1回投 与のH群の副作用発生率は42%であり,72人のうち16人(約22%) が副作用により脱落していて,副作用発生率及び副作用による脱落率は, 50単位を投与したL群(副作用発生率19%)及び100単位を投与 したM群(副作用発生率19%)のいずれと比べても高いことが記載さ れており(表6),骨粗鬆症の治療は長期間にわたるため,臨床使用にお\nいて患者の症状や治療継続意思に直接に影響する副作用が起こることは 望ましくはないから(甲70ないし72,100),甲7文献の上記記載 に接した当業者は,この点に限っていえば,200単位の投与よりも1 00単位の投与の方がより適当であると認識することが考えられる。 しかしながら,他方,甲7文献には,重篤な有害事象は認められない と記載されており(301頁左欄1行ないし右欄4行目),さらに,20 0単位の投与が腰椎骨密度を48週間後に8.1%増加させたこと,及び, その増加の程度は,100単位投与の3.6%,及び,50単位投与の0. 6%のいずれよりも高いことが記載され,PTHは腰椎骨密度を48週 という比較的短期間で用量に依存して増加させる極めて有望なものと評 価されている(300頁左欄11行ないし右欄6行目,301頁右欄5 行ないし303頁右欄23行目。有望とされた対象から200単位の投 与のみが排除されているとは理解し難い。)。そして,前記ア(イ)のとお り,骨粗鬆症の治療の目的は骨折を予防することであるところ,骨密度\nが低いことは,既存骨折,年齢とともに,わが国でエビデンスがある骨 折危険因子であり,骨密度は骨強度のほぼ70%を説明するとの技術常 識がある。
以上によれば,甲7文献に接した当業者は,200単位週1回投与と 100単位週1回投与とを対比した場合に,副作用の面と効果の面を総 合考慮して,いずれを選択するか判断するものと考えられ,200単位 週1回投与がその選択が排除されるほど劣位したものと見られるとはい えず,これを選択することもまた十分に動機付けられているというべき\nである。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
(ウ) さらに,被告は,前記第3の3(2)ア(イ)dのとおり,PTH製剤が 高齢者には効きにくいということは技術常識であったから,PTH製剤 を高齢者に特に使用しようとする積極的な動機付けは生じない旨主張す る。
被告は,関係文献(乙29)を挙げて,PTH製剤が高齢者には効き にくいということは技術常識であるとするが,「フォルテオ皮下注キット 600μg フォルテオ皮下注カート600μg「2.7.3臨床的有 効性の概要」」(乙29)における記載(213頁)として,プラセボ投 与群,テリパラチド20μg投与群(連日投与)及びテリパラチド40 μg投与群(連日投与)に分けてフォルテオを投与をした際の新規椎体 骨折発生率の結果が示されているところ,65歳以上75歳未満の患者, 及び,75歳以上の患者いずれに対しても,テリパラチド投与群におけ る椎体骨折発生率は,プラセボ投与群の椎体骨折発生率より低くなって いるから,これらの記載をもって,フォルテオが高齢者,すなわち65 歳以上の患者に効きにくいなどとはいえない。また,被告は,20μg投与群又は40μg投与群のプラセボ投与群に対する骨折相対リスク減少率は,患者が75歳以上の場合には,65歳以上75歳未満の場合よりも低くなっている旨を指摘するが,75歳 以上の患者群の骨折相対リスク減少率が65歳以上75歳未満の患者群 の骨折相対リスク減少率よりも低いとしても,それは,投与対象を75 歳以上の高齢者とすることの動機付けの有無の問題にはなるとしても, 投与対象を65歳以上の高齢者とすることの動機付けには何らの影響を 与えない。したがって,上記各文献をもって,200単位のPTH製剤を65歳 以上の高齢者に投与することが妨げられ,動機付けが生じないとはいえ ない。

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令和3(行ケ)10037  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年2月2日  知的財産高等裁判所

 一部のクレームについて、新規事項であるので訂正要件を満たさないとした審決が維持されました。

 以上の訂正前明細書の記載を全体的に総合して観察すると、訂正前 発明における「固定」には、摩擦力やチルト機構等を用い所定量以上の\n力を加えることによって状態の変更が可能な「半固定」と、ストッパ等\nを用い回動を停止させる「一時的に固定」の2種類が存在し、時に「半 固定」と「一時的に固定」とを混然と使用する箇所もないではないが、 これらを使い分けていることが理解できるし、これらが概念的に異なる ものであることはその性質上も明らかである。このことを考慮して、訂正前発明1の構成をみてみると、2つの表\示板を約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度に「ストッパにより」「固定する」構成eの中間左右見開き固定手段は、「一時的\nに固定」する手段であり、2つの表示板を「摩擦力により」「保持する」\n構成Cの任意角度保持手段は「半固定」をする手段であることは明らか\nであり、両者は異なる固定手段を用いる別な手段であることが当然に理 解できる。したがって、構成eの中間左右見開き固定手段の構\成を基に して、任意角度保持手段について「任意の角度」を約120度から約1 70度までの範囲内のいずれかの角度を意味するなどと限定して解釈 する根拠はないこととなり、任意角度保持手段の「任意の角度」は通常 の語義に従い、0度から360度の範囲が含まれると理解すべきもので ある。
(オ) 以上からすると、訂正事項1−4は、訂正前発明に、2つの表示板を\n0度から最大見開き角度までの任意の角度とすることができ、最大見開 き角度が約180度を超えるものを包含するよう訂正するものとなる ところ、このような構成は訂正前明細書には記載されていない。\nしたがって、訂正事項1−4は、訂正前の明細書の全ての記載を総合 することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事 項を導入しないものであるとはいえない。
イ 原告の主張について
原告は、前記第3の1(1)イのとおり、1)「ユーザーの任意の角度」とは、 ユーザが装置の構造上の制約の下に自由意思により変化・回動させること\nができる角度である、2)180度を超えてから360度まで回動させても 2つの表示板の各画面を容易に見ることができず実用的な意味は全くな\nい、3)0度から360度まで回動させるためにはヒンジ部の1つの回転軸 を2つの表示板の厚さ寸法を合計した長さ以上の巨大な直径を有する回\n転軸としなければならないが、訂正前明細書【図2】からみると訂正前発 明の表示装置はそのような構\造を有していない旨主張する。 しかしながら、「あらかじめ定められた角度にユーザが任意に変化させ られること」と「ユーザが任意の角度に変化させられること」とは、固定 方法を異にすれば両立する機能であるところ、どちらも角度の変化はユー\nザがその自由意思によりするものであるから、訂正前明細書にユーザが自 在に枠体を折り曲げられるとの記載等、角度の変化がユーザの自由意思に よるとの記載があったからといって、「任意の角度」が前者に限定されると する根拠にはならず、上記1)の主張は採用することができない。 また、引用文献1には第1のパネル12と第2のパネル14が背中合わ せで並置され、片手で装置を運び、もう片方の手でデータを入力する状態 が記載されていることからしても(9頁32行ないし10頁13行目、図 3)、表示装置の2つの表\示板の回動角度を270度ないし360度の範 囲にまで設定可能にする使用方法も十\分に実用的なものといえるから、上 記2)の主張も採用することができない。 また、上記3)の主張は、単なる実施例に関する図面に基づく主張にすぎ ず、訂正前発明は、ヒンジ軸の構造も、回転軸の直径も、表\示板の厚さも 何ら特定するものではないから、前提を欠くものとして失当である。 したがって、原告の上記主張はいずれも採用することができない。その ほか、原告はるる主張するが、いずれも、前記アの認定判断を左右しない。
ウ まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1−4は新規事項を追加する訂正で ある。

◆判決本文

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令和3(行コ)10001  手続却下処分取消等請求控訴事件  特許権  行政訴訟 令和4年1月27日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 期間徒過後にPCT国際出願の翻訳文提出したのは、期限管理ソフトへの入力ミスがあり、184条の4第4項の「正当な理由」にあたると争いました。知財高裁1部は、これを認めませんでした。

エ 控訴人は,1)法184条の4第4項の立法趣旨や立法経緯,特許庁の ガイドラインに鑑みると,期間徒過の原因となった事象が予測可能\であ るといえない場合は,当該事象により期間徒過に至ることのないように 事前に措置を講じておくことを出願人等に求めるのは酷であることから すると,期間徒過の原因となった事象が出願人等の補助者の人為的ミス に起因するときは,ガイドラインの「相応の措置」(状況に応じて必要と されるしかるべき措置)が採られたかどうか,すなわち,期間内に手続 をすることができなかったことについて「正当な理由」があるかどうか は,監督者が個々具体的な人為的ミスを防ぐための措置を採っていたか ではなく,当該補助者を使用する出願人等がガイドライン3.1.5(5) に規定するaからcの3要件を満たしているか否かによって判断される べきである,2)本件特許事務所では,特許期限管理システム「IPマネ ージャー」を使用し,経験豊富な補助者(A,B及びC)を起用するな ど期間徒過が生じることがないようにするための期限管理体制が採用さ れていたが,本件期間徒過は,本件国際出願の期限前日である平成28 年9月21日,本件国際出願の出願書類の準備と本件国際出願用の新た な期限管理ファイル(本件期限管理ファイル)作成の作業が並行して行 われるという緊急事態の状況下で,Aが錯誤により本件期限管理ファイ ルに本件国際出願の基礎出願の優先日を誤入力し,優先日の入力に対す るB及びCによるダブルチェックが働かず,Aの誤入力が見過ごされた 結果,IPマネージャーによって誤った優先日に基づいて誤った国内移 行の移行期限が自動作成され,それに気づかなかったことが重なって偶 発的に起きた事象であり,このような特殊な事態に起因する複数の補助 者による偶発的な確認ミス等は予測可能\であるといえないから,上記期 限管理体制は,「相応の措置」に該当し,本件期間徒過を回避することが できなかったことについて「正当な理由」があるというべきである旨主 張する。 しかしながら,1)については,ガイドラインは,期間徒過後の救済規 定に関し,救済要件の内容,救済に係る判断の指針及び救済規定の適用 を受けるために必要な手続を例示することによって,救済が認められる か否かについて出願人等の予見可能\性を確保することを目的として,特 許庁が作成したものであり(乙4の表紙から4枚目の「期間徒過後の救\n済規定に係るガイドラインの利用に当たって」),法令等の法規範性を有 するものではなく,裁判所の法令の解釈やその判断を拘束するものでは ない。
次に,2)については,前記(2)及び(3)によれば,IPマネージャーの期 限管理ファイルの「基礎出願」欄に優先日として優先権を主張する基礎 出願の出願日を正確に入力することは,控訴人から本件国際出願の委任 を受けた本件特許事務所の基本的な業務であり,これを正確に入力する 必要性が高いことは明らかであること,本件においては,国際出願手続 及び各国への国内移行手続を担当するCから,ドケット管理部署に所属 するAへの連絡が適切ではなかったこと,本件期限管理ファイルを作成 したAは本件国際出願に係る優先日として米国特許仮出願1及び2のい ずれの出願日を入力すべきであるかを十分に確認することなく誤った優\n先日を入力(本件誤入力)したこと,本件国際出願の際のD弁護士等に よるチェック,本件国際出願後のBによるチェック及び本件国内移行期 限管理ファイル作成の際のドケット管理部署による優先日の事後的なチ ェックがいずれも行われなかったか,不十分であったことによって本件\n期間徒過が発生したことが認められる。 また,本件国際出願の期限の前日に,本件国際出願の出願書類の準備 と本件国際出願用の新たな期限管理ファイル(本件期限管理ファイル) 作成の作業を並行して行うことが,緊急事態であるということも,特殊 な事態であるということもできないし,本件国際出願を期限に余裕をも って行えば,このような事態に至ることを回避することも可能であった\nものである。
さらに,Aの本件誤入力は,本件期限管理ファイルへ優先日として米 国特許仮出願1の出願日である「2015年9月22日」と入力すべき であったのに,米国特許仮出願2の出願日である「2015年12月1 6日」と入力したという単純なミスであり,D弁護士等,B又はドケッ ト管理部署が,通常の注意力をもって,他の資料等と照合してダブルチ ェックを行えば,容易に発見することができたものと認められる そうすると,控訴人から委任を受けた本件特許事務所の担当弁護士や 補助者事務員が本件期間徒過を回避するために相当な注意を尽くしたも のと認められないから,控訴人において,本件期間徒過を回避すること ができなかったことについて「正当な理由」(法184条の4第4項)が あるものと認めることはできない。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。

◆判決本文

同様の人為ミスの事件です。 知財高裁2部は、正当理由についてかなり踏み込んで判断しています。

◆令和3(行コ)10002
(ア) 控訴人は,本件技術担当補助者は特許庁における7年以上の職歴を有する弁 理士であり,担当弁理士においては,本件案件について相当な注意を払って本件技 術担当補助者を選任したものである旨を主張するが,一般的に,本件技術担当補助 者が特許庁において担当していた業務と,その後担当弁理士の事務所において担当 するに至った業務とを同視することはできないものであるところ,本件全証拠によ っても,これらを同視することができる事情を認めることはできない。補正して引 用した原判決の「事実及び理由」中の「第4 当裁判所の判断」(以下,単に「原 判決の第4」という。)の1(3)イ(ア)で認定したとおり,本件技術担当補助者は, 平成30年4月に担当弁理士の事務所に採用され,本件案件について指示を受けた 当時,同事務所における勤務経験は2か月程度にすぎなかったものであって,そも そも「業務の進め方」に記載された通常の業務の流れについてすら,必ずしも習熟 していたといえるか疑問が残るところである。 上記に関し,同じく原判決の第4の1(2)で指摘した本件回復理由書の記載によ ると,本件期間徒過に至った当時,本件技術担当補助者に対する指導・教育等のた めに担当弁理士の業務負担は一時的に更に増大していたなどというのであるが,そ のことは,本件技術担当補助者の特許庁における経験や弁理士という資格をもって, 直ちに担当弁理士の事務所における技術担当補助者としての業務の遂行能力を評価\nすることができないことを裏付けているといえる。なお,控訴人が提出する世界知 的所有権機関のPCT受理官庁ガイドライン(甲35)の166Mの(f)においても, 出願人又は代理人が説明すべき事情の一つとして,当該補助者が「その特定の業務」 を任されていた年数が指摘されているところである。 したがって,控訴人の上記主張は,本件期間徒過について正当な理由が認められ ないとの前記認定判断を左右するものではない。
(イ) 控訴人は,本件技術担当補助者の誤認や思い込みは,担当弁理士の想定外の 人為的ミスというほかない旨を主張するが,本件期間徒過の原因について,専ら本 件技術担当補助者の単独の人為的過誤であると評価することが相当でないことは, 補正して引用した原判決の第4の1(3)アで説示したとおりである。
(ウ) 控訴人は,補助者の選任について相当な注意を払っていた以上,担当弁理士 においては,補助者を信頼することが許されるという旨を主張するが,補正して引 用した原判決の第4の1(3)アで説示したとおり,本件期間徒過に関しては,担当弁 理士の指示の方法が本件技術担当補助者の誤認に無視できない影響を与えたものと みるのが相当であって,そのことや,前記(ア)で指摘した点を考慮すると,控訴人の 上記主張は,その前提を欠くものというべきである。
(エ) 控訴人は,来客対応や外出等が重なれば,担当弁理士において,期限管理シ ステムにアクセスする余裕がないことが生じ得ることや,補助者への指示が万事円 滑に行われているという認識の下において担当弁理士に期限管理システムにアクセ スする義務があるとはいえない旨を主張するが,前者の点は,何ら正当な理由を基 礎付ける事情に当たらず,後者の点は,前記(ウ)で説示したところからして,本件期 間徒過についてはその前提を欠くものというべきである。
(オ) その他の控訴人の主張する点も,本件期間徒過について正当な理由が認めら れないとの前記認定判断を左右するものではない。 以上に関し,本件技術担当補助者の誤認についての主張からすると,控訴人は, 要するに,弁理士であって国内書面の提出期限の重要性を認識していた本件技術担 当補助者においては,少なくとも事務担当補助者から国内書面の印刷物を渡された 以上,担当弁理士が直接に事務担当補助者に国内書面の作成を指示したといった事 情にかかわらず,自らの経験も踏まえ,国内書面提出期間の徒過に至らないよう対 応すべきであったものであり,そのような対応をしなかった本件技術担当補助者に 本件期間徒過のほぼ全面的な責任があるとの捉え方を前提として,担当弁理士には 正当な理由があったことを主張するものとみられるが,本件技術担当補助者に対す るそのような要求ないし期待は,「業務の進め方」に記載された通常の業務の流れ における技術担当補助者の責任の範囲すらも一定程度超えるものとみ得るものであ り,ましてや,担当弁理士が通常の業務の流れから逸脱した形で指示を行った本件 において,担当弁理士が相当な注意を尽くしていたことを基礎付ける事情とは到底 なり得ないものである。

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令和3(ネ)10025 損害賠償請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和4年1月18日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 交換用カートリッジの記載が不競法2条1項1号の周知の商品等表示に該当するかが争われました。知財高裁1部は、該当しないとした1審判断を維持しました。

ア(ア) 本件アマゾンサイトのウェブページ(本件切替え画像)において, 別紙3(2)のとおり,交換用カートリッジのイメージ画像の左上部に被告 表示2が,その下の中央部に「待望の」,「交換用カートリッジ」,「つい に発売!!」との本件三段書き表\示が,被告表 示2の左上部に小さく表\ 示された複数の画像が,その上に青色の文字で「【ノーブランド品】タカ ギの浄水器に使用できる、取付け互換性のある交換用カートリッジ...」 との表示が掲載されていた。 
本件切替え画像は,交換用カートリッジのイメージ画像及び本件三段 書き表示の「交換用カートリッジ」,「ついに発売!!」の文字部分から, イメージ画像に表\示された交換用カートリッジの商品の販売広告である ことを理解できる。
また,被告表示2は, 
「タカギ社製
浄水蛇口の交換用カートリッジを
お探しの皆様へ」
と青色の文字で3段書きに表示してなるものである。 
被告表示2の上段の「タカギ社製」の文字部分(被告標章)及び中段 の「浄水蛇口の交換用カートリッジ」の文字部分の2段の記載部分は,\n販売広告の対象商品と関連付けたものとして理解できる。そして,2段 の上記記載部は,その構成態様から,「タカギ」が製造した「交換用カー トリッジ」を表\示したものと読み取ることが可能 であり,また,「タカギ」\nが製造した「浄水蛇口」に適合する「交換用カートリッジ」を表示した ものと読み取ることも可能\であると一応考えられる。 一方で,被告表示2の左上部に小さく表\ 示された複数の画像の上に青 色の文字で「【ノーブランド品】タカギの浄水器に使用できる、取付け互 換性のある交換用カートリッジ...」との表示は,販売広告の対象商品が 「ノーブランド品」であって,「タカギ」が製造した「浄水器」に使用で\nきる「交換用カートリッジ」であることを説明したものと理解できる。 そして,1)「ノーブランド品」とは,ブランドを掲げずに一般名称の みを記した商品を意味するものと解されること,2)原告表示(黒色のゴ シック体の「タカギ」の表\示)は,家庭用浄水器及びその関連商品を購 入しようとする需要者の間において,控訴人の業務に係る商品を表示す るものとして周知となっており(前記1(1)イ),家庭用浄水器及びその 関連商品のブランド名として理解されていたことに鑑みると,控訴人製 の純正品の交換用カートリッジについて「ノーブランド品」と表示する ことは通常考えられないというべきであるから,本件切替え画像に接し\nた需要者は,「【ノーブランド品】タカギの浄水器に使用できる、取付け 互換性のある交換用カートリッジ...」との表示は,販売広告の対象商品 が控訴人製の純正品とは異なる商品であることを示したものと理解する\nものと認められる。 そうすると,「【ノーブランド品】タカギの浄水器に使用できる、取付 け互換性のある交換用カートリッジ...」との表示は,被告表\ 示2の上段 の「タカギ社製」の文字部分(被告標章)及び中段の「浄水蛇口の交換 用カートリッジ」の文字部分の2段の記載部分が「タカギ」が製造した 「交換用カートリッジ」(控訴人製の純正品)を表示したものと読み取る ことを否定する打ち消し表\示としての機能 を有するものと認められる。\nしたがって,本件アマゾンサイトの本件切替え画像の被告表示2に接 した需要者は,被告表\示2の上段の「タカギ社製」の文字部分(被告標 章)及び中段の「浄水蛇口の交換用カートリッジ」の文字部分の2段の 記載部分は,「タカギ」が製造した「浄水蛇口」に適合する「交換用カー トリッジ」を表示したものと理解するものと認められる。 
(イ) 以上によれば,被告表示2における被告標章の使用によって,被告 商品が控訴人製の純正品であると需要者に誤認させて,被告商品の出所\nが控訴人又は控訴人の関連会社であるとの混同を生じさせるおそれが あるものと認めることはできないし,また,その営業主体が控訴人又は 控訴人の関連会社であるとの混同を生じさせるおそれがあるものと認 めることはできない。
イ(ア) これに対し控訴人は,本件アマゾンサイトアンケート調査の結果に よれば,「ノーブランド品」と掲げ,かつ,「タカギの浄水器に使用でき る、取付け互換性のある交換用カートリッジ」と表示されていたとして も,「タカギ」が製造・販売元であると認識する回答者の数は,「タカギ」\nが製造・販売元ではないと認識する回答者の数を上回っており,また, 原告製浄水器を使用したことがある需要者に着目すると,3分の1を超 える需要者は「タカギ」が製造元であると認識していることに照らすと, 「【ノーブランド品】タカギの浄水器に使用できる、取付け互換性のある 交換用カートリッジ」との表示が,被告商品が「タカギ」が製造・販売 する商品ではないと需要者が認識する表\示(打ち消し表 示)であるとい\nうことはできないなどとして,上記調査結果から,本件切替え画像に接 した大多数の需要者は,被告標章を含む被告表示2から,「タカギ」 が被告商品の製造・販売元であると認識する旨主張する。\nそこで検討するに,証拠(甲23ないし25)によれば,本件アマゾ ンサイトアンケート調査は,本件アマゾンサイトに掲載された被告表示 2についての需要者の認識を確認することを目的とし,控訴人がGMO\nリサーチに委託し,2021年(令和3年)4月27日,20歳以上9 9歳以下のオンラインショッピング利用経験者を調査対象者とし,別紙 4(3)の本件アマゾンサイトの商品ページに掲載されている商品の画像及 びその説明文(本件アマゾンサイト画像1)),別紙4(4)の本件アマゾンサ イトの商品ページに掲載されている商品の画像(本件アマゾンサイト画 像2))を提示して,調査対象者が,画像を見ながら質問に回答するオン ラインリサーチを実施し,それぞれの画像につき各500名の回答(回 答者の重複はない。)を得て,その回答結果を集計したものであることが 認められる。
しかるところ,前記1(3)ア(ア)認定のとおり,原告商品の需要者は,家 庭用浄水器及びその関連商品を購入しようとする者であり,原告製浄水 器の交換用カートリッジである被告商品の需要者も,これと同様である ところ,本件アマゾンサイトアンケート調査の調査対象者は,20歳以 上99歳以下のオンラインショッピング利用経験者であって,その中に は,家庭用浄水器及びその関連商品を購入しようとする者以外の者が含 まれている点において,本件アマゾンサイトアンケート調査の結果は, 需要者の認識を正確に反映したものとはいえない。 また,本件アマゾンサイトアンケート調査で調査対象者に提示された 画像は,本件切替え画像全体ではなく,そのうちの被告表示2のみの画 像(本件アマゾンサイト画像2))であり,交換用カートリッジの購入を 検討する需要者が実際に接する画像と異なることに照らすと,本件アマ ゾンサイトアンケート調査の結果から,需要者の認識を確認すること は困難であるというべきである。 したがって,その余の点について検討するまでもなく,控訴人の上記 主張は,採用することができない。
(イ) また,控訴人は,甲18の報告書記載のとおり,本件アマゾンサイト の被告標章に接した複数の顧客から被告商品を控訴人製の純正品である と勘違いして購入した旨のクレームを受けたことを根拠として挙げて, 被告標章の使用によって,被告商品が控訴人製の純正品であると需要者 に誤認させた旨主張する。 しかしながら,甲18の報告書に記載されている「顧客」が本件アマ ゾンサイトで被告商品を購入した者であるかどうかは不明であり,その 数も僅かであることに照らすと,甲18の報告書の記載から,被告標章 の使用によって,被告商品が控訴人製の純正品であると需要者に誤認さ せたものと認めることはできない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
ウ 前記ア及びイによれば,被控訴人グレイスランドが本件アマゾンサイト で被告商品の広告に被告表示2を掲載した行為による被告標章(「タカギ 社製」の表\示)の使用が,控訴人の商品又は営業と混同を生じさせる行為 に該当するものと認めることはできないから,控訴人の前記主張は,理由 がない。
(3) 小括
以上のとおり,被控訴人グレイスランドが本件アマゾンサイトで被告商品 の広告に被告表示2を掲載した行為による被告標章の使用は,控訴人の商品 又は営業と混同を生じさせる行為に該当するものと認められないから,不競\n法2条1項1号の不正競争行為に該当しない。

◆判決本文

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令和2(行ケ)10080等  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年12月27日  知的財産高等裁判所

 医薬用途発明の「実施可能要件」について、患者に投与した場合に,著しい副作用又は有害事象の危険が生ずるため投与を避けるべきことが明白であるなどの特段の事由がない限り,治療効果を有することを当業者が理解できるものであれば足りると判断しました。

(3) 本件出願当時の5−HT1A 受容体部分作動薬の双極性障害のうつ病エピ ソードに対する治療効果に関する技術常識について\n
ア 前記(1)イの記載事項を総合すると,本件出願当時,1)大うつ病(単極性 うつ病)の症状の一つである「大うつ病エピソード」(うつ病エピソ\ード) と双極性障害(双極性障害I)型及びII)型)の症状の一つである「大うつ病 エピソード」(うつ病エピソ\ード)の定義及び診断基準は同一であったこと, 2)大うつ病性障害の患者に有効であることが立証されているすべての抗う つ薬は双極性障害のうつ病エピソードの患者にも有効であると考えられて\nいたこと,3)一方で,双極性障害の患者に対する抗うつ薬の投与によって, 躁病エピソードを誘発し,躁転や急速交代化を引き起こす可能\性があるが, このような可能性がある場合には,抗うつ薬の投与量の調整,気分安定薬\nとの併用等により対応していたことが認められる。 上記認定事実と5−HT1A 受容体部分作動薬が,脳内のシナプス後5− HT1A 受容体に結合することによって発現する5−HT1A 受容体部分作 動作用に基づいて抗うつ作用を有することは,本件出願当時の技術常識で あったこと(前記(2))によれば,本件出願当時,5−HT1A 受容体部分 作動薬一般がその抗うつ作用により双極性障害のうつ病エピソードに対\nして治療効果を有することは技術常識であったことが認められる。
イ この点に関し本件審決は,本件出願時において,各種の抗うつ薬を双極 性障害の「うつ病エピソード」の治療に使用することができることは,技\n術常識であるが,一方で,双極性障害の患者に抗うつ薬を使用した場合, 躁病エピソードの誘発,軽躁エピソ\ードの誘発,急速交代化の誘発,及び 混合状態の悪化等の様々な有害事象が生じる危険性があることを考慮する と,全ての抗うつ薬が双極性障害の「うつ病エピソード」の治療に使用す\nることができるという技術常識があるとは言い難く,5−HT1A 部分作動 薬を双極性障害の「うつ病エピソード」の治療に使用できることが技術常\n識であるとはいえないなどとして,5−HT1A 部分作動薬を双極性障害の 治療に使用することができることは,本件出願時の技術常識であるとはい えない旨判断した。
(ア) ところで,医薬品の開発は,基礎研究として対象疾患の治療の標的 分子(受容体等)を探索し,標的分子(受容体等)に対する薬理作用及び 当該薬理作用を有する化合物を探索する薬理試験(in vitro 試験,動物実 験)が実施され,このような薬理試験の結果として,化合物が有する薬 理作用が疾患に対する治療効果を有すること(「医薬の有効性」)につい て合理的な期待が得られた段階で医薬用途発明の特許出願がされるのが 一般的であるものと認められる。 一方で,薬機法は,医薬品の製造販売をしようとする者は,その品目 ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければなら ない旨規定し(14条1項),その承認審査においては,申請に係る医薬\n品の名称,成分,分量,用法,用量,効能,効果,副作用その他の品質,\n有効性及び安全性に関する事項を審査し,その審査の結果,申請に係る\n医薬品又は医薬部外品が,その申請に係る効能\又は効果を有すると認め られないとき,申請に係る医薬品が,その効能\又は効果に比して著しく 有害な作用を有することにより,医薬品又は医薬部外品として使用価値 がないと認められるときは,承認を与えない旨規定し(同条2項3号), 厚生労働省令で定める医薬品の承認を受けようとする者は,申請書に,\n厚生労働省令で定める基準に従って収集され,かつ,作成された臨床試 験の試験成績に関する資料その他の資料を添付して申請しなければなら\nない旨規定している(同条3項)。この臨床試験は,臨床試験第1相(少 数の健常人に対する投与であり,副作用などの有無をみる。),臨床試験 第2相(少数の患者に対する投与であり,効果などが見込まれるかをみ る。),臨床試験第3相(多数の患者に対する投与であり,効果などがあ ることを確認する。)の3段階の試験で実施される。このように医薬品の 承認審査では,申請に係る化合物の薬効及び安全性(副作用,有害事象\nの有無及び程度等)を総合的に考慮し,「医薬の有用性」について審査し ている。
以上のような医薬品の開発の実情,医薬品の承認審査制度の内容,特 許法の記載要件(実施可能要件,サポート要件)の審査は,先願主義の下\nで,発明の保護及び利用を図ることにより,発明を奨励し,もって産業 の発達に寄与するとの特許法の目的を踏まえてされるべきものであるこ とに鑑みると,物の発明である医薬用途発明について「その物の使用す る行為」としての「実施」をすることができるというためには,当該医薬 をその医薬用途の対象疾患に罹患した患者に対して投与した場合に,著 しい副作用又は有害事象の危険が生ずるため投与を避けるべきことが明 白であるなどの特段の事由がない限り,明細書の発明の詳細な説明の記 載及び特許出願時の技術常識に基づいて,当該医薬が当該対象疾患に対 して治療効果を有することを当業者が理解できるものであれば足りるも のと解するのが相当である。
これを本件についてみるに,本件審決が述べる「双極性障害の患者に 抗うつ薬を使用した場合,躁病エピソードの誘発,軽躁エピソ\ードの誘 発,急速交代化の誘発,及び混合状態の悪化等」の「様々な有害事象が生 じる危険性」については,本件出願当時,抗うつ薬と気分安定薬とを併 用することにより,躁転のリスクコントロールが可能であり,躁転発生\n時には抗うつ薬の中止又は漸減により対応可能であると考えられていた\nこと(前記ア3))に照らすと,上記特段の事由に当たるものと認められない。 そして,本件出願当時,5−HT1A 受容体部分作動薬一般がその抗う つ作用により双極性障害のうつ病エピソードに対して治療効果を有する\nことが技術常識であったことは,前記ア認定のとおりである。
(イ) 以上によれば,本件審決の前記判断は誤りである。
ウ この点に関し被告らは,双極性障害については,鬱病相と躁病相があり, 双極性障害の鬱病相を治療するために抗鬱薬を投与すると,躁転の可能性\nを有意に高め,双極性障害の症状を悪化させる可能性が高いという固有の\n事情が存在し(甲A1,2,31の1,乙A98,106,),臨床上も,双 極性障害の鬱病相の治療において抗鬱薬の使用は慎重に行うべきとされて いることからすれば,全ての抗鬱薬を双極性障害の鬱病相(うつ病エピソ\nード)の治療に用いることができるなどという技術常識は存在しない旨主 張する。 しかしながら,前記イで説示したところに照らすと,被告ら主張の上記 固有の事情があるとしても,本件出願当時,5−HT1A 受容体部分作動薬 一般がその抗うつ作用により双極性障害のうつ病エピソードに対して治療\n効果を有することが技術常識であったことを否定する根拠にならない。 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。

◆判決本文

関連事件です。 令和2(行ケ)10079等

◆判決本文
令和2(行ケ)10078等

◆判決本文
令和2(行ケ)10077

◆判決本文

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令和2(行ケ)10128  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年1月11日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は引用文献の認定誤りです。

(2) 引用発明における「検出部ID」の技術的意義
上記認定に係る引用発明の「検出部ID」が,「電源タップ4」の住居内 での設置箇所を識別するものであるか否かについて検討する。 引用発明の「検出部ID」は,住居内で「電源タップ4」を一意に識別す る符号であるものの,引用文献1には,前記「検出部ID」が「電源タップ 4」の設置箇所を表す情報と関連するものであることは一切記載されていな\nい。また,電源タップの一般的な使用形態を参酌すると,電源タップを住居 内のどこに設置してどのような電気機器に接続するかは,当該電源タップを 利用する者が任意に決められるものと解される。 引用文献1では,「電源タップ4」に照明器具が接続される態様も開示さ れているものの(【図6】),照明器具は,居間,トイレ,寝室等,住居内 のあらゆる箇所で用いられるものであり,よって,当該照明器具に接続され る電源タップの設置箇所も住居内のあらゆる場所が想定されるものであるか ら,「検出部ID」により「電源タップ4」を一意に識別しても,それは 「電源タップ4」の識別にとどまるものであって,当該「電源タップ4」の 設置箇所も識別できるとする根拠は見出せない。 すなわち,「電源タップ4」の「検出部ID」から住居内の設置箇所を識 別するためには,「検出部ID」と当該「電源タップ4」の住居内での設置 箇所とを対応付けた何らかの付加的情報が必要である。「電源タップ4」の 「検出部ID」という,電源タップを一意に識別する符号から,当該「電源 タップ4」の設置箇所を識別することができる,と認めることはできない。
(3) 被告の主張について
ア 被告は,本願明細書等の段落【0024】において,照明装置から発信 されるID番号としては「位置ID番号」のみが開示されているところ, 位置ID番号に紐づけられる位置情報に設置箇所(個々の部屋)が含まれ るか否かが明らかでないと指摘する。 しかしながら,次の(ア)ないし(ウ)に照らすと,本願発明の「位置ID 番号」には,居宅内の各部屋を特定する「内部管理ID番号」が含まれる, と理解されるから,被告の上記指摘は上記認定を覆すものではない。
(ア) 段落【0026】及び【0027】においては,情報を受信するク ラウドサーバの側のデータベース内に,居宅内の各部屋を特定する「内 部管理ID番号」が登録されることが記載されており,段落【002 9】以下では,安否確認システムの動作によって,居宅内のどの部屋 (設置箇所)において異常が生じているのかを判定する仕組みが詳細に 説明されている。そうすると,発信装置から発信される「位置ID番 号」が,クラウドサーバの保有する「内部管理ID番号」を含むものと 解しないと,本願明細書等の記載全体を合理的に理解することができな い。
(イ) 段落【0035】,【0040】及び【0042】には,段落【0 024】と異なり,「位置ID番号」が照明装置の設置箇所(居間,ト イレ,寝室等の各部屋)を特定することが明示されている。
(ウ) 段落【0024】において,「位置ID番号」に紐づけられる「位 置情報」は,「設置箇所が存在する施設の住所,並びに設置箇所の緯度 経度及び施設の設置する階数等」(下線付加)である。この「等」に, 設置箇所となる各部屋の名称(居間,トイレ,寝室等)を含めることに よって,位置ID番号が,設置箇所を特定する情報(クラウドサーバの 「内部管理ID番号」に対応する情報)を含むものと解釈することが許 されないとはいえない。 また,設置箇所となる各部屋の名称を「等」に含めることが許されな い,あるいは位置情報をクラウドサーバへ登録する旨について述べたも のにとどまる,と解釈し,当該施設の中での「設置箇所」(各部屋)の 位置情報は,利用者が照明装置の設置後にアプリを用いてクラウドサー バに登録する,と理解することも可能である。段落【0019】の「利\n用者は,取得したアプリにしたがい,・・・照明装置の設置箇所・・・ の設定登録を行う」との記載も参酌すると,むしろ,かかる理解が本筋 であるともいえる。 前記(1)のとおり,照明装置から発信される「ID番号」とクラウドサ ーバに登録される「ID番号」とを相互に対照することができて初めて 本願発明は所期の作用効果を奏することができるのであるから,本願明 細書等に接する当業者の理解は,上記のいずれかであると考えられる。
イ 被告は,電源タップに接続される電気機器の設置箇所(部屋)は,電気 機器の種別によって通常定まるから,引用発明の「検出部ID」は,単に 「電源タップ4を一意に識別する符号」,すなわち,住居内の「どれ」か ということを識別する符号にとどまるものでもなく,住居内で「どこ」に 設置されているのかを識別する符号であって,位置情報として意味を有し, 本願発明の「内部管理ID番号」と同じ役割を有している旨主張する。
たしかに,被告がその主張の根拠とする引用文献1の【図5】において, 「住居ID」,「検出部ID」(図5の「計測部ID」との記載は「検出 部ID」の誤記と認められる。),「機器種類」,「稼働状況」などから なる機器稼働データが例示されており,たとえば,「検出部ID」が“i d13”の場合は,「住居ID」が“hid7”の場合も“hid2”の 場合も「機器種類」が“電気炊飯器”であること,「検出部ID」が“i d17”の場合は,「機器種類」が“PC”,“アイロン”,あるいは “ポット”であることが例示されており,「検出部ID」と電気機器の種 類,ひいては「電源タップ4」の設置箇所との間に何らかの相関関係があ ることも推測される。 しかしながら,引用文献1の【図5】におけるこれらの例示は,利用者 が住居内に各電源タップを任意に設置して電気機器に接続した結果として 生じる,「検出部ID」と接続されている電気機器との対応関係を示して いるにすぎないというべきであって,たとえば,前記ポットは,台所,居 間,ダイニング,寝室のいずれでも利用されることに鑑みると,【図5】 の記載をもってして,「電源タップ4」の「検出部ID」と当該「電源タ ップ4」の設置箇所との間に何らかの対応関係が定められているとするこ とはできない。
また,引用文献1の段落【0075】ないし【0078】には,実施の 形態3に係る生活状況監視システムにおいて,「電源タップ4」に機器種 類を設定する「スライドスイッチ20a」を設けることが記載されており, 【図16】には,機器種類として,「冷蔵庫」,「炊飯器」,「テレビ」, 「アイロン」,「レンジ」,「その他」が例示されており,「スライドス イッチ20a」がこれらの機器種類の中から任意に機器種類を選択するこ とが示されている。 してみると,引用文献1に記載の「電源タップ4」は,「冷蔵庫」, 「炊飯器」,「テレビ」等を含め,種々の電気機器に接続されることを前 提としたものであり,当該「電源タップ4」が設置される箇所も,台所, 居間等,住居内の様々な箇所が想定されるものであるから,「電源タップ 4」の「検出部ID」と当該「電源タップ4」の設置箇所との間には,元 来関連性はない。
以上によれば,引用文献1に,「電源タップ4」を一意に識別するため の「検出部ID」に基づいて,当該「電源タップ4」の設置箇所を識別す るという技術思想が開示されているとは認められず,被告の上記主張は採 用することができない。
ウ 被告は,住居内の電源タップ及びそれに接続される家電機器は,いった ん設置されれば移動しないのが通常であること,引用発明においては「電 源タップ4」の設置箇所が判明しているからこそ警戒すべき状況か否かの 判定ができること,を考慮すれば,「電源タップ4」の「検出部ID」は 設置箇所を識別し得る情報であり,本願発明の位置情報(設置箇所の情報 を含む。)と相違しない旨主張する。 しかしながら,以下のとおり,被告の上記主張は採用することができな い。
(ア) 引用文献1の【図13】には,警戒すべき状況か否かを判定するた めの条件の例が記載されている。この記載からは,電気機器の種別(テ レビ,炊飯器,アイロン等)と稼働状況(稼働中か停止中か)に応じて 警戒状況を判定するという技術思想は読み取れるものの,電気機器の種 別が同一である場合に,当該電気機器の設置箇所に応じて判定する条件 を異ならせる(例えば,居間と寝室のテレビとで判定条件を異ならせ る)という技術思想を読み取ることはできない。 例えば,【図13】に記載された判定条件のうち,「3日以上,『電 気炊飯器』の『停止』が続いた場合」は,住人が食事をとっていないと いう事態をうかがわせるから,かかる場合をもって段落【0057】等 にいう「警戒すべき稼働状況」として登録する,というのが引用発明の 技術思想であると解される。電気炊飯器の設置箇所は,通常,「台所」 という住居内の特定の部屋であるが,その間に住人が台所に立ち入った か否かが,警戒状況か否かを判定するための条件とされているものでは ない。 このように,引用発明においては,警戒すべき状況か否かを判定する ための情報として,特定の電源タップに接続された電気機器の種別を用 いているが,当該電源タップ及びそれに接続された電気機器の設置箇所 と関連する情報を用いることの開示又は示唆はない。
(イ) 引用文献1の【図6】には,二つの部屋のそれぞれにおいて,同一 の種別の電気機器である照明装置が「電源タップ4」に接続される態様 が開示されており,二つの部屋にそれぞれ設けられた「電源タップ4」 が,「検出部ID」を「遠隔監視装置1」に送信するものと認められる が,この場合であっても,上記(ア)に示したとおり,「検出部ID」は, 各々の電源タップ及びこれに接続された電気機器を一意に識別するため の符号であるにとどまり,「電源タップ4」の設置箇所を示す情報では ないから,「検出部ID」により各部屋を識別できるとする技術的根拠 は見出せない。
(4) 以上によれば,引用発明の「検出部ID」は,「電源タップ4」の住居内 での設置箇所を識別するものではないから,本願発明の位置情報のうち,住 居内における設置箇所を特定する「内部管理ID番号」(具体的には居間, トイレ,寝室等の各部屋)とは技術的意義を異にする。 それにもかかわらず,本件審決は,引用発明の「検出部ID」は本願発明 の「内部管理ID番号」に相当するとして,「施設内での設置箇所に係るI D番号」が安否確認に用いられることを一致点の認定に含めており,この認 定には誤りがあるといわざるを得ない。その結果,本件審決は,原告の主張 に係る相違点5を看過しており,上記一致点の認定誤りは本件審決の結論に 影響を及ぼす誤りである。

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令和3(ネ)10031  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和4年1月13日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 IPブリッジによる侵害事件です。知財高裁は技術的範囲に属しないとした1審判断を維持しました。控訴人は本件発明はDRAMも含むと主張しましたが、裁判所は、明細書における本件発明の課題とその解決原理から、含まれないと判断しました。

イ 控訴人の主張ア(イ)(本件発明の課題解決原理に基づく検討について)に つき
本件発明の技術的意義(前記1(2))に鑑みれば,本件明細書に開示され た発明は,半導体チップ上の領域ごとのゲート電極周縁長の合計が異なる 半導体集積回路装置(具体的にはシステムLSI)において,このような 領域ごとのゲート電極周縁長の合計のばらつきが,従来知られていたマイ クロローディング効果による局所的なパターン寸法の変動などとは異な り,半導体チップ全体にわたるCDロスに許容できないほどの変動をもた らすという,本件特許の出願時においては新規な課題を見い出し,これを, ダミーパターンを挿入してゲート電極周縁長のばらつきを抑えることに より解決したものである。したがって,本件発明の課題とその解決原理に 照らすと,本件発明の「半導体集積回路装置」は,システムLSIを意味 するものと解される。
本件特許の出願時に既に慣用されていたDRAMにおいて,メモリセル アレイを構成するビットラインやワードラインが,DRAMにおける他の\n回路と比較して周縁長が密な回路パターンであり,メモリセルアレイ領域 とそれ以外の回路領域とではゲート電極周縁長の合計がばらつくという 技術常識があったとしても,それが,DRAMを構成する半導体チップ全\n体にわたるCDロスに許容できないほどの変動をもたらすものであるこ とは,本件明細書に何ら言及されておらず,また,上記の新規な課題が, システムLSI中の一部の領域にすぎないDRAM単体においても同様 に生じるものであると認めるに足りる証拠はない。 そうすると,本件発明の課題とその解決原理に照らして,本件発明の「半 導体集積回路装置」は,システムLSIを意味するものと解され,DRA Mを含むと解することはできない。
ウ 控訴人の主張ア(ウ)(審査経過に基づく検討について)につき
控訴人は,審査経過に関し,第1回目及び第2回目の拒絶理由通知につ いて,審査官は,本件特許の発明がシステムLSIの発明であるとは認識 しておらず,また,出願人の意見書においても,本願発明と引用発明の相 違点について,本願発明はシステムLSIであるのに対して引用発明はシ ステムLSIではないという説明はしていないと主張する。 しかし,そもそも特許発明の技術的範囲の画定は,特許請求の範囲の記 載に基づいて定められるが,特許請求の範囲に記載された用語の意義の解 釈は明細書及び図面を考慮して行われるのであって(特許法70条1項及 び2項参照),特許出願の審査過程において,審査官がその特許発明をどの ように理解していたかということは,裁判所の特許発明の技術的範囲の画 定の判断を拘束するものではない。
また,出願人は,第1回目の拒絶理由通知に対する意見書(平成15年 11月28日提出,乙2)において,特許法29条1項3号及び同条2項 の規定に該当しない理由として,「言い換えると,ダミーパターンを挿入す ることによって,異なるマスクパターンレイアウト間でパターンの粗密の 程度を小さくします。このため,ライン状パターンに品種に依存した寸法 変動が生じることを防止できるので,DRAM等の搭載率が用途又は仕様 により異なるシステムLSIにおいても,ゲート電極又はメタル配線等の 加工寸法をマスクパターンレイアウトと無関係に一定にできます。従って, 請求項4の発明によると,動作マージンのバラツキが解消された半導体集 積回路装置を実現できるという格別の効果が得られます。」(乙2〔2〜3 頁〕)と記載し,第2回目の拒絶理由通知に対する意見書(平成16年3月 25日提出,乙4)において,特許法29条2項の規定に該当しない理由 として,「言い換えると,ダミーパターンを挿入することによって,異なる マスクパターンレイアウト間でパターンの粗密の程度を小さくします。こ のため,本願明細書の段落番号[0132]に記載されておりますように, 『半導体集積回路装置の品種によりマスクパターンレイアウトが大きく 異なる場合にも,マスクパターンレイアウトの違いに起因してライン状パ ターンに寸法ばらつきが生じることを防止できる。従って,DRAM等の 搭載率が用途又は仕様により異なるシステムLSIにおいても,ゲート電 極又はメタル配線等の加工寸法をマスクパターンレイアウトと無関係に 一定にできるので,動作マージンのバラツキが解消された半導体集積回路 装置を実現できる』という格別の効果・・・が得られます。」(乙4〔4頁〕) と記載し,いずれの意見書においても,本願発明がシステムLSIに用い られて効果を生ずることを明確に述べており,このような段階を踏まえて 本件特許が登録されたものである。 したがって,仮に,審査官が,拒絶理由通知を発出する際に,特許請求 の範囲に記載された発明の要旨認定において,「半導体集積回路装置」を, その一般的な字義どおりに,DRAMを含む半導体集積回路装置全般と解 釈しており,また,出願人の意見書において,本願発明と引用発明の相違 点として,本願発明はシステムLSIであるのに対して引用発明はシステ ムLSIではないことが明示されていなかったとしても,それに基づいて, 本件発明の「半導体集積回路装置」にシステムLSIではないDRAM自 体が含まれるということはできない。
(3) そうすると,本件発明における「半導体集積回路装置」(構成要件1A,1\nE,5B,5E等)という語は,システムLSIを意味するものとして用い られており,DRAMはこれに含まれないというべきであり,DRAMであ ることに争いのない被控訴人製品(前記第2,2による引用のうちの原判決 「事実及び理由」第2,2⑽(原判決8頁20〜23行目))は,本件発明1 の構成要件1A,1E,本件発明5の構\成要件5B,5Eをいずれも充足せ ず,本件発明1及び本件発明5の技術的範囲のいずれにも属さないものと認 められる。 控訴人は種々主張するが,その主張は,いずれも採用することができない。

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令和2(行ケ)10113  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年1月19日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判の請求が権利濫用かが争われました。知財高裁は、権利濫用とまではいえないとした審決を取り消しました。

 上記各事実によれば,被告は,ブランデッドボースト社を買収した後,本 件審判請求に及ぶ直前まで,原告との間で,原告が保有する本件商標を含む 日本及びその他の国のBOASTブランドに係る登録商標の買取りについて 協議をしていたが,協議中断の数か月後に本件審判請求に及んだものである。 こうした経緯に加え,被告は,本件審判請求における手続において,原告 が,「2017年10月3日,請求人は,ブランドボースト社(当審注:ブ ランデッドボースト社のこと)より,同社の「BOAST」ブランド事業を 買収し,同社が保有する米国「BOAST」登録商標の移転を受けた(乙1)。 したがって,請求人は,被請求人が保有する日本「BOAST」登録商標に 干渉しない義務を含む,本件和解契約に基づく義務を履行する責任を負う」, 「また,請求人は,本件和解契約に基づき,日本「BOAST」登録商標に 係る被請求人の権利に対する干渉を行ってはならない義務を負う」旨主張し たのに対して,具体的に弁駁していないことは記録上明らかであり,また, 本訴における原告による同旨の主張についても反論していないことからする と,被告は,ブランデッドボースト社から米国内における「BOAST」事 業を買収するに際して,原告らと同社との間では,同社が,世界中でボース ト社又は原告によるその他の登録により保護される原告らの商号権及び商標 権を妨害しない旨の本件和解契約に基づく義務を負担しており,上記買収に より被告も同義務を履行する責任を負うことを認識しながら,これを前提と して,原告との間で,原告が保有する本件商標を含む日本及びその他の国の BOASTブランドに係る登録商標の買取り交渉をしていたものと認められ る。
そうすると,被告は,原告との間で,原告が保有する本件商標を含む日本 及びその他の国のBOASTブランドに係る登録商標の買取り交渉が頓挫す るや否や,原告が保有する商標権を妨害してはならない旨の上記義務に反す ることを知りながら,本件商標の取消しを求めて本件審判請求に及んだもの と認めるのが相当である。したがって,本件審判請求は,金銭的負担をすることなく本件商標を使用することを企図し,取消審判制度が何人も申し立てることができることに藉\n口して,専ら原告を害する目的でしたものと認められるから,権利の濫用に 当たるものというべきである。

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審決(取消2018−300722)は、下記のように、権利濫用とまではいえないとして、不使用であるので登録を取り消すと判断していました。
 イ 判断
上記事実によれば、被請求人らとブランドボースト社との間で、互いの商号及び商標に係る権利について妨害しないことを含む本件和解契約が結ばれていたことは窺えるものの、そのような当事者間の合意が、本件商標に対する不使用取消審判の請求までも禁止するものであるかは、証拠上明らかでなく、当該契約違反か否かは措くとしても、請求人による本件審判の請求が専ら被請求人を害することを目的としていると認められる事情を見いだすこともできない。また、前記(1)の不使用取消制度の趣旨からすれば、登録商標は使用をしているからこそ、保護を受けられるのであって、一定期間登録商標が使用されていない場合には、保護すべき信用が存しないのであるから、取り消されてもやむを得ないものである。
そして、後述するとおり、被請求人は本件商標の使用について、何らの主張、立証もしていないものである。なお、請求人と被請求人との登録商標買取り交渉が合意に至らなかった状況において、本件商標の不使用を理由として、請求人が本件審判請求を行ったとしても、そのこと自体は格別不自然とはいえない。その他、請求人による本件審判の請求が専ら被請求人を害することを目的としていると認められる場合などの特段の事情は見いだせず、本件審判請求が権利の濫用であるとはいえないし、信義則違反であるとして本件審判請求が成り立たないとすべきともいえない。   

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令和3(行ケ)10107  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年1月19日  知的財産高等裁判所

 商標「花間堂」が、商標法4条1項10号,15号,19号又は7号の無効理由があるかが争われました。知財高裁は、無効理由無しとした審決を維持しました。

 また,仮に,引用商標の中国における周知性が認められると仮定しても,前 記認定事実によれば,被告は,中国人であるものの,来日してから長らく我が 国に居住し,本件商標の登録出願に先立って「旅程管理業務を行う主任(国内)」 の資格を取得し,本件商標の商標登録後,引用商標が登録出願されるまでに, 実際に本件商標を構成する「花間堂」の文字を含む名称のツアーを主催したこ\nとが認められることからすると,本件商標の指定役務である「宿泊施設の提供, 宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」等のために本件商標を登録出願して 登録を受けたものと推認されるところであり,また,本件商標を構成する文字\nを選択した理由についても具体的に陳述しているところである。このような事 実関係からすれば,被告が本件商標の登録出願をした経緯に,不正の利益を得 る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的があったとは認め難く, 本件全証拠を検討してみても,被告に上記のような目的があったと認めるに足 りる証拠はない(なお,引用商標の中国における周知性についても,原告提出 の書証中には,原告が運営する「花間堂」を「中国大陸で有名な高級チェーン ホテル」(前記1(3)イ(ウ)),「中国の有名な民宿ブランド」(同(エ)),「中 国大陸の有名な高級ホテルブランド」(同(オ)),「中国国内の有名な優れた リゾートホテルブランド花間堂」(同(カ))として紹介するものがあるものの, 該当部分の抄訳であり,当該記事内容やその記事がどういった媒体からによる ものであるのかの詳細が不明であるし,その他のものを併せても,これらの記 事等のみから,引用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において, 中国の需要者の間で原告の業務に係る役務を表示するものとして周知であると\n認定することはできず,また,「花間堂」の中国国内における売上高,利用者 数,旅行業界におけるシェア等に関する証拠もないから,上記中国における周 知性を認めることはできないことを念のため付言する。)。 そうすると,本件商標は,商標法4条1項19号に該当するものとはいえず, これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

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令和3(行ケ)10067  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 令和4年1月12日  知的財産高等裁判所

 物品の認定があやまっているとして、類似するとした審決を取り消しました。本件意匠にかかる物品は「インジェクターカートリッジ」であり、「インジェクターカートリッジ」とは,「注射器用の交換可能な液体・ガスなどを充填した小容器」を意味する。と、引用意匠の「注射器用シリンジ」とは非類似物品と判断されました。\n

1 本件審決は,本願意匠が引用意匠に類似し,意匠法3条1項3号に該当する から意匠登録を受けることができないと判断した。
そこで検討するに,意匠は物品と一体をなすものであるから,登録出願前に日本 国内若しくは外国において公然知られた意匠又は登録出願前に日本国内若しくは外 国において頒布された刊行物に記載された意匠と同一又は類似の意匠であることを 理由として,意匠法3条1項により登録を拒絶するためには,まずその意匠にかか る物品が同一又は類似であることを必要とし,更に,意匠自体においても同一又は 類似と認められるものでなければならない(最高裁判所昭和45年(行ツ)第45 号同49年3月19日第三小法廷判決・民集28巻2号308頁参照)。 そうすると,物品の同一性又は類似性の認定に誤りがある場合には,意匠法3条 1項該当性の判断に誤りがあるというべきである。 2(1) 原告は,本件審決が,本願意匠に係る物品について「医療用注射器の外筒」 と認定したことが誤りであると主張し,これに対し被告は,1)本件審決は,本件願 書等の記載から本願意匠に係る物品を「医療用注射器の外筒の用途及び機能を有す\nるもの」と認定したところ,この判断に誤りはなく,2)原告が,本件意見書や本件 審判請求書で本願意匠と引用意匠の物品が「注射器等に用いられるカートリッジ」 であって「物品が共通する」などと主張していたことは上記1)の認定を裏付けるも のであり,原告が,本訴において,本件審決以前にしていた主張と異なる主張をす ることは禁反言により許されないなどと主張している。
(2) そこで検討するに,本件意見書や本件審判請求書において,原告は,本願意 匠と引用意匠の物品が「注射器等に用いられるカートリッジ」であって「物品が共 通する」などと主張していたことが認められるが(乙5,7),意匠登録出願につい ての拒絶理由の存否は,審査官が職権により判断すべきものであって(旧法17条), 出願人が審査段階又は審判段階において述べたことについて自白の拘束力が働くも のではない上,権利行使の当否ではなく権利設定の適否が問題となる審決取消訴訟 である本件において,被告は行政庁として対応しているものであって,本願意匠の 意匠に係る物品につき,査定及び審判の各段階における原告の主張が本訴における 主張と異なるものであったことにより被告の利益が不当に害されるとの関係もない ことからすると,本件意見書や本件審判請求書における上記の原告の主張をもって, 禁反言の法理の適用などによって原告が本訴において本件審決以前にしていた主張 と異なる主張をすることが許されないとまでいうことはできない。 また,被告以外の第三者との関係において,禁反言の法理が適用されることによ り,原告が本願意匠に係る意匠権を行使する場面に制限を受けるおそれがあるとし ても,特定の当事者間における権利行使の制限の当否と権利の付与の適否とは,お よそ場面が異なるのであるから,直ちに本願意匠について,意匠権登録による保護 を与えるべきではないなどということはできない。
(3) さらに,審決取消訴訟の審理対象は,当該審決の判断の違法であり,その範 囲は当該審判手続において具体的に争われた拒絶理由に限定されるものであるから (最高裁判所昭和42年(行ツ)第28号同51年3月10日大法廷判決・民集3 0巻2号79頁参照),各当事者は,審判手続において具体的に争われていない拒絶 理由を主張することは許されないものの,審判手続において具体的に争われた拒絶 理由に係る判断の当否に係る主張やそれを裏付ける証拠の提出についてまで制限を 受けるものではない。そして,原告の,本願意匠の意匠に係る物品が「自動注射器 等の内部に挿入される,交換可能な薬液溶液」であり,引用意匠に係る物品である\n「注射器用シリンジ」とは異なる旨の主張は,本件の審判手続について争われた拒 絶理由である「引用意匠との類似」に関する主張であって,審理対象に含まれない 事項に係るものではないから,この観点からも原告の主張を制限する理由はない。
(4) そこで,以下,原告が,本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品が異なると主 張していることを前提として,本願意匠に係る物品について検討する。 3(1) 意匠法24条1項は「登録意匠の範囲は,願書の記載及び願書に添附した 図面に記載され又は願書に添附した写真,ひな形若しくは見本により現わされた意 匠に基いて定めなければならない。」と規定する。 また,旧法6条1項3号は,意匠登録出願の際に提出すべき書類に,「意匠に係る 物品」を記載すべき旨規定し,意匠法施行規則別表第一には意匠に係る物品の欄に\n記載すべき区分が定められているが,同表には「インジェクターカートリッジ」と\nの区分の記載はない(乙2,3,15。なお,同表には,「インジェクター」を含む\n区分の記載もなく,「カートリッジ」を含むものとしては「レコードプレーヤー用カ ートリッジ」の区分の記載があるのみである。)。同表の備考二には,「この表\の下欄 に掲げる物品の区分のいずれにも属さない物品について意匠登録出願をするときは, その下欄に掲げる物品の区分と同程度の区分による物品の区分を願書の「意匠に係 る物品」の欄に記載しなければならない。」と記載されている。そして,同規則様式 第2備考39には「別表第一の下欄に掲げる物品の区分のいずれにも属さない物品\nについて意匠登録出願をするときは,「【意匠に係る物品の説明】」の欄にその物品の 使用の目的,使用の状態等物品の理解を助けることができるような説明を記載する。」 と記載されている。
(2) 前記(1)の各規定を踏まえ,本件願書等の記載から,本願意匠の意匠に係る物 品が何であるか検討する。本件願書等(乙1)の記載をみると,【意匠に係る物品】 として「インジェクターカートリッジ」とあるほか,【意匠の説明】及び図面はいず れも別紙第1記載のとおりであって,本件願書等には【意匠に係る物品の説明】の 欄はなく,その余の欄にも意匠に係る物品の説明は記載されていない。本件願書等 における物品を示唆する記載は「インジェクターカートリッジ」との文言及び図面 のみである。
(3) そこで,「インジェクターカートリッジ」との文言について検討すると,これ は,「インジェクター」と「カードリッジ」という2つの単語が組み合わされたもの と認められる。
ア 「インジェクター」についてみると,新英和大辞典第六版(乙9)には,外 来語である「インジェクター」のもとの英単語である「injector」について,「注射 する人,注入器,注射器」という意味が記載されており,証拠(甲7,15)によ ると,本件優先日より前に,糖尿病の注射治療に用いる注射薬として「オートイン ジェクター」と呼ばれる,ボタンを押すだけであらかじめ充填されている1回分の 薬液が自動的に注入されるGLP−1受容体作動薬の注入器及び「アポカインイン ジェクター」との名称の電動式医療品注入器(原告の主張する自動注射器を意味す るものと推認される。)が既に存在していたことが認められる。加えて,原告及び被 告ともに,インジェクターが「注射器」を意味するものと認識している。そうする と,本件において,「インジェクター」は注射器を意味すると推察される。
イ 「カートリッジ」についてみると,外来語である「カートリッジ」のもとの 英単語である「cartridge」について,新英和大辞典第六版(乙9)には,「弾薬筒, 薬筒,薬包,実包」「(機械・器具などの一部に取換えのできるように工夫された液 体・ガスなどの)小容器」,ウィズダム英和辞典(甲8)には「交換[詰め替え]用容 器」,New Oxford American Dictionary(甲9)には「巻かれた写真用フィルム,イ ンク,その他の物又は物質を内包する容器であり,装置の中に挿入するべくデザイ ンされたもの」との意味がそれぞれ記載されている。そして,証拠(甲13)によ ると,本件優先日より前に,専用注入器に装着して使用する「カートリッジ製剤」 と呼ばれるインスリン製剤が存在していたことが認められる。また,本件優先日よ り前に公開されていた特許公報(甲12,28〜32)には,自動注射器,注射器 装置,ばね駆動式の注射装置,ペン型注射器及び医療用自動注射装置に用いられる, 薬を充填した小容器を意味する「カートリッジ」に関する記載(その中には,薬剤 カートリッジ,薬物充填カートリッジなどと記載されている部分もある。)があるこ とが認められる。そうすると,「カートリッジ」は交換用の液体・ガスなどを充填し た小容器を意味するものと推測される。なお,上記各証拠に照らす限り,「カートリ ッジ」が文言上,「外筒」を意味するものと認めることはできない。
ウ 次に,「インジェクターカートリッジ」の語句について検討するに,被告は, 本件願書の【意匠に係る物品】の記載は「インジェクターカートリッジ」であり, 「インジェクター用カートリッジ」ではないなどとも主張するが,証拠(甲17〜 20,22,23)によると,「カートリッジ」の文言は,「トナーカートリッジ」 「インクカートリッジ」のようにカートリッジ自体についてその内容物を意味する 文言とともに用いられる場合がある一方で,浄水器に用いられるカートリッジにつ いて「浄水器用カートリッジ」とする登録意匠と「浄水器カートリッジ」とする登 録意匠とが存在し,「浄水器カートリッジ」が浄水器用のカートリッジを意味する場 合があることが認められ,「インジェクターカートリッジ」という文言をもって,イ ンジェクター用のカートリッジを意味するものと理解することも不自然ではない。 そして,本願意匠の意匠に係る物品として,出願人である原告が,注射器を意味す る「インジェクター」のみにとどめず,あえて「インジェクターカートリッジ」と したものであることを併せ考慮すると,「インジェクターカートリッジ」は,「注射 器用のカートリッジ」を意味すると認めるのが相当である。
エ 前記ア〜ウを総合すると,「インジェクターカートリッジ」は,「注射器用の 交換可能な液体・ガスなどを充填した小容器」を意味すると認めるのが相当である。\n
(4) そうすると,本願意匠の意匠に係る物品を「医療用注射器の外筒の用途及び 機能を有するもの」とした本件審決の認定には誤りがあるというほかない。もっと\nも,本件願書等には,「インジェクター」(注射器)が「自動注射器」を意味するこ とまでを示唆する記載はなく,本件優先日当時において,一般に,「インジェクター カートリッジ」が自動注射器用のカートリッジを意味していたと認めるに足りる証 拠もないから,本願意匠の意匠に係る物品は,自動注射器に限ることなく,「『注射 器』用の交換可能な液体・ガスなどを充填した小容器」であると認めるのが相当で\nある。
(5) 被告は,本件審決は「医療用注射器の外筒の用途及び機能を有するインジェ\nクターカートリッジ」であると認定したのであって「医療用注射器の外筒」と認定 したものではないから原告の主張は前提を欠くなどと主張するが,物品の同一性及 び類似性は,物品の用途及び機能等を比較して実質的に判断すべきところ,本件審\n決の認定は「医療用注射器の外筒の用途及び機能を有するもの」というものであっ\nて実質的に上記原告の主張のとおり「医療用注射器の外筒」と認定したものといえ る。被告の上記主張は形式にすぎ,本質を看過したもので相当ではない。 また,被告は, 本件願書に【意匠に係る物品の説明】の欄を設けて物品の理解を 助ける説明を記載し,参考図を提出する必要があったと主張しているところ,前記 3(1)のとおり,意匠法施行規則別表第一には「インジェクターカートリッジ」との\n区分の記載はなく,また,「インジェクターカートリッジ」が一般用語とはいえない ことからすれば,被告の主張するように【意匠に係る物品の説明】を記載するのが 適当であったとはいえるものの,このことから,本願意匠に係る物品が「医療用注 射器の外筒の用途及び機能を有するもの」であると直ちに認定できるものではなく,\n上記被告の主張は,本願意匠に係る物品についての上記認定に影響しない。
4 他方,本件審決は,別紙第2記載の注射器の意匠のうち,「注射器用シリンジ」 の意匠を引用意匠としているところ,当該部分に係る物品は,注射器用外筒の用途 及び機能を有するものと認められる。\nそうすると,本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は共通しない。
5 したがって,本件審決の本願意匠に係る物品の認定及び本願意匠と引用意匠 の同一性の認定には誤りがあるから,取消事由1(本願意匠に係る物品の認定及び 本願意匠と引用意匠の物品の同一性(類似性)の認定の誤り)には理由がある。

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令和3(行ケ)10050 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年12月22日  知的財産高等裁判所

 原告は個人で本人訴訟です。無効審判も代理人無しです。被告は富士フイルムです。 進歩性違反なしとした審決が維持されました。被告は訂正無しでした。

ア 原告の主張(1)について
(ア) 前記1(3)で検討したとおり,従来の撮像装置においては,ヒンジユ ニットを本体に連結する第1ヒンジに係る軸Aが,ディスプレイをヒン ジユニットに支持する第2ヒンジの外側で第2ヒンジに係る軸Bと交 差し,軸A上の一対の第1ヒンジがディスプレイの外側に突出して配置 されているために,ヒンジユニットがディスプレイよりも大きくなって しまうという課題があったところ,本件発明1は,この課題を解決する ために,一対の第1ヒンジの一方が一対の第2ヒンジの間に配置される 構成(構\成要件1Fの構成)を採ったものであり,この点に技術的意義\nがあるということができる。 他方で,前記2(1)及び(2)によれば,甲1発明においては,軸受44 の孔44bを有する支持部44eが,孔44aを有する支持部44dよ りも液晶表示ディスプレイ3に近い側にあり,軸受44の支持部44d\n及び第1回転軸41の他方端が貫通するガイド45が,基台43におけ る第2回転軸42の他方端を軸支するサイドフレーム46と反対側のカ メラ縦方向の一辺に配置されている(構成要件1gの構\成。甲1公報の 段落【0028】ないし【0030】及び図1ないし3)。そうすると, 甲1発明においては,本件発明1における「一対の第1ヒンジ」に相当 する支持部44d及びガイド45の一方が,本件発明1における「一対 の第2ヒンジの間」に相当する支持部44eとサイドフレーム46との 間に配置されているものではないから,甲1発明は,構成要件1Fの構\ 成を備えるものではない。 以上によれば,本件発明1及び甲1発明は,甲1発明が構成要件1F\nの構成を備えていない点に実質的な相違があるといえ,両発明を対比し\nた場合には,この点を相違点として認定するのが相当であるから,両発 明について,ディスプレイ及び中間に位置するプレートが共に動く方向 とディスプレイのみが動く方向とが,縦方向又は水平方向のいずれであ るのかの違いしかないということはできない。 (イ) また,前記2(1)及び(2)によれば,甲1発明2は,甲1発明と構成\n要件1c及び1f以外の構成を共通にするものであるところ,上記(ア) で検討したとおりの構成要件1gの構\成の内容からすれば,甲1発明2 も,構成要件1Fの構\成を備えていないものといえる。 そうすると,甲1公報の段落【0074】において開示されている構\n成どおりの図を描けば,本件発明1及び甲1発明は同じものになるとい うことはできない。
(ウ) 以上によれば,原告の主張(1)は採用することができない。
イ 原告の主張(2)について
(ア) 原告の主張(2)は,善解するに,甲1発明において軸受の方向を90 度ずらして取り付けることにより,構成要件1Fの構\成と同様の構成を\n採ることができること,このことは甲1公報の段落【0074】に開示 されていることを主張するものと解される。 (イ) しかしながら,甲1公報の段落【0074】には,甲1発明におい て,カメラ縦方向回りに左右に回動させるヒンジユニット及びカメラ横 方向回りに上下に回動させる液晶ディスプレイのそれぞれの回動の向 きを,ヒンジユニットをカメラ横方向回りに,液晶ディスプレイをカメ ラ縦方向回りとしてもよいことが記載されているにすぎず,軸受の方向 を90度ずらして取り付けることが開示され,又は示唆されているもの とはいえない。また,上記アで検討したとおり,甲1公報の段落【00 74】には,構成要件1Fの構\成が開示されているものではないという べきである。
(ウ) 以上によれば,原告の主張(2)は採用することができない。
ウ 原告の主張(3)について
(ア) 本件明細書の図3について検討するに,第2ヒンジ24に係るヒン ジブラケット33が支持部21に接している部分の位置を基準とすれば, 第1ヒンジ23の軸B寄りに位置する方のヒンジブラケット31は,一 対の第2ヒンジ24の間に配置されているといえる。ただし,図3にお いては,上記ヒンジブラケット33の先端は,原告が主張するように, 支持部の外側に向かって水平方向に延びており,同ヒンジブラケット3 3に設けられた軸B回りにディスプレイを回動可能に支持する孔が上記\n第1ヒンジ23の外側に位置する形となっているようにもみえる。その ようにみると,本件明細書の図3における軸A及び軸Bは,図6Aと同 様の位置関係となるといえるところ,図6Aは,ヒンジユニットが大き くなってしまうという課題を有する従来技術が「参考例」として記載さ れているものであると解されることからすれば,図3は,本件発明1の 実施形態を説明するための図1Aの分解斜視図であると説明されてはい るものの,本件発明1の実施例を示す図面としては,適切なものではな いといわざるを得ない。 しかしながら,本件明細書においては,本件発明1の実施形態を示す 図面として図4Aが記載されているところ,図4Aは,一対の第1ヒン ジの一方が一対の第2ヒンジの間に配置されるという構成要件1Fの構\ 成を適切に示した図面であるといえる。そして,図4Aは,図3のヒン ジユニットの一対の第1ヒンジ及び一対の第2ヒンジの配置を示す模式 図として説明されているから,図3を上記原告の主張するようにしか読 み取ることができないというものではない。
(イ) そうすると,本件明細書の図3は,原告の主張するようにしか読み 取ることができないというものではないから,図3の記載内容を根拠と して,本件発明1が甲1発明と同じであるなどということはできない。
(ウ) 以上によれば,原告の主張(3)は採用することができない。
エ 原告の主張(4)について
(ア) 前記1(2)によれば,本件明細書の図6A及び図6Bは,ヒンジユニ ットが大きくなってしまうという課題を有する従来技術が「参考例」と して記載されているものである。そうすると,図6A及び図6Bの記載 内容を根拠として,本件発明1が甲1発明と同じであるなどということ はできない。
(イ) 以上によれば,原告の主張(4)は採用することができない。
オ その他 このほか,原告は,本件発明1は甲1発明に対する新規性を欠くとして 種々の主張をするが,これまで検討したところに照らすと,原告の主張は 採用することができない。
(4) 小括
以上によれば,本件発明1ないし5は甲1発明に対する新規性を欠くもの ではないとした本件審決の判断に誤りはない。

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令和3(ネ)10008  謝罪広告等請求控訴事件  その他  民事訴訟 令和3年12月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 芸能人が、私立大学に裏口入学をしたこと等を内容とする記事のネット配信、車内広告などが名誉毀損およびパブリシティ権の侵害であるとしてする出版社を訴えました。1審は440万の損害賠償を認めました。知財高裁はこの判断を維持しました。

当裁判所は,原審裁判所と同じく,一審被告の主張に係る違法性阻却事由は 認められないと判断する。その理由は,次のとおりである。
(1) 民事上の不法行為である名誉毀損については,その行為が公共の利害に関 する事実に係り専ら公益を図る目的に出た場合には,摘示された事実が真実 であることが証明されたときは,右行為には違法性がなく,不法行為は成立 しないものと解するのが相当であり,もし,右事実が真実であることが証明 されなくても,その行為者においてその事実を真実と信じるについて相当の 理由があるときには,右行為には故意もしくは過失がなく,結局,不法行為 は成立しないものと解するのが相当である(最高裁昭和41年6月23日第 一小法廷判決・民集20巻5号1118頁)。 この点について一審被告は,「一審原告の父親が,一審原告を日大に裏口 入学させた」という事実が真実であり,又は真実であると信じるにつき相当 の理由があること,当該事実の摘示が公共の利害に関する事実に係ること, 当該事実の摘示が専ら公益を図る目的でされたことを主張して,名誉毀損に よる不法行為責任を否定する。 以下,検討する。
(2)事実の公共性及び目的の公益性について
この点に関して,一審原告は,単に一審原告が著名人であるという理由だ けで「公共性」を満たすことには全くならないから,本件各記事は,そもそ も公共の利害に関する事実には当たらず,公益を図る目的がないことも明ら かである旨主張する。 しかしながら,一審原告は,もともとは「B」の一員として世に出たが, 本件各証拠によれば,本件各記事等の掲載の時点までには,テレビ番組の司 会者を務めたり,雑誌等のインタビュー記事や自らの著書等において政治や 社会に関する発言を公にしたりしていることが認められるから,一審原告の 経歴や人柄にかかわる事実は,一定程度,不特定多数人が関心を寄せてしか るべき公共の利害に関する事実に当たるというべきである。また,そのよう な人物につき,社会一般では非難の対象となる裏口入学という事実が存在し ていたのであれば,それを広く報道することは,経歴に関する不正を正そう とする行為と認められるから,一定程度,公益を図る目的に出たものという べきである。 したがって,本件各記事等の掲載は,公共の利害に関する事実に係るもの であり,専ら公益を図る目的でされたものと認められる。 もっとも,一審原告が現実に公職に就いたことはない上に,公職への応募 や立候補を企図していることをうかがわせる証拠もないのであるから,公共 の利害に関する程度はさして高いものではない。また,大学への裏口入学と いう事実が仮にあったとしても,未成年の当時のことである上に,一審原告 の現在の活動に対する評価は学歴によって左右される性質のものでもないか ら,公益にかかわる程度は高いものではないというべきである。
(3) 真実性又は真実と信ずるについての相当の理由の存否について
本件各記事等に記載された内容は,本件経営コンサルタントから聴き取っ た内容として編集スタッフがまとめた乙17録取書に依存しているものであ る。しかるに,本件経営コンサルタントについてはその特定は必ずしも十分\nであるとはいえず,また,後述のとおり,乙17録取書に同人の供述内容が 正確に録取されていることの担保はなく,乙17録取書の内容の真実性を基 礎付けるに足りる証拠は乏しく,かえって,乙17録取書の内容には客観的 事実及び証拠に矛盾する点が多い上に,一般的な経験則に照らして不自然な 内容も多い。これらの点に照らすと,乙17録取書の内容に依存している本 件各記事等の内容,特に,「一審原告の父親が,一審原告を日大に裏口入学 させた」という事実が真実であることの証明があったとはいえない。 また,乙17録取書に依存した内容の本件各記事等を公にすることによる 影響(一審原告の社会的評価の低下等)の大きさに比して,実際に一審被告 において行った取材の期間・経過やその内容等は前記1のとおりであって, 後述のとおり,編集スタッフにおいて,本件経営コンサルタントの陳述につ き十分な検討や裏付け取材を行ったとはいえない。そうすると,一審被告に\nおいて,本件各記事等の内容を真実と信じるについての相当な理由があった (以下,このことを「相当性」という。)とは認められない。 以下,当審における一審原告の主張も踏まえて,詳述する。
・・・
オ 小括
上記イないしエに説示したことを考慮すると,一審被告は本件経営コン サルタントの供述(乙17録取書)と矛盾せず積極的にその信用性を基礎 付けるには足りない取材結果のみを積み重ね,それに基づいて本件経営コ ンサルタントの供述が信用できるものと軽信したものといわざるを得ない から,編集スタッフが得た取材結果等は本件各記事等の内容の真実性を裏 付けるものではなく,また,真実と信じるについて相当の理由があると認 めることもできないというべきである。なお,このことは,真実性の証明 の対象事実として,一審被告が主張する事実(すなわち,亡父が本件経営 コンサルタントを通じて裏口入学のための手段を尽くした結果として一審 原告を日芸演劇学科に入学させたという事実)を前提としても,その内容 に照らし,左右されるものではない。

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◆平成30(ワ)26219

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平成31(ワ)647 債務不存在確認請求事件 特許権 民事訴訟 令和3年8月26日  東京地方裁判所

 Appleによる債務不存在確認訴訟です。進歩性無しとして104条の3で権利公使不能と判断されました。\n

ウ そこで,以上の説示を前提として,以下,公然実施発明1への甲5−1発 明の組合せの可否について検討する。 まず,公然実施発明1は,スリープ状態とスリープ解除状態とを有し,スリープ 状態からスリープ解除状態とする際の操作及びその際にロック画面が表示されるス\nマートフォンというものであり,他方,甲5−1発明の技術分野は,生体情報を利 用した電子デバイスの内蔵認証システムに関するものである。そうすると,両発明 の技術分野については関連性が存するものというべきである。 また,公然実施発明1は,スリープ状態において,ホームボタンを押すことによ り,デバイス機能を有効にするときに,起動して認証を行うというものであるか\nら,ホームボタンの押下によりスリープ状態からスリープ解除状態に切り替わった ときに,パスコード認証によりユーザを識別するという機能を有するものである。\nこの点,公然実施発明1においては,ホームボタンの押下の後,パスコード認証の 前に,ロック画面においてスライダをドラッグするという操作入力という構成があ\nるが,この構成については,タッチパネル入力による誤作動防止(パスコードによ\nる認証の設定がされている場合は,パスコードやホーム画面の誤作動防止であり, パスコードによる認証の設定がされていない場合であっても,ホーム画面の誤作動 防止)という,ユーザ識別とは別の技術的意義があるといえるところ,パスコード 認証という構成は,これとは別の,ユーザ識別のための構\成として把握することが できるものであって,上記スライダをドラッグするという構成とは可分な別個の構\ 成であるというべきである。そして,甲5−1発明における「ユーザがデバイスを オンにする,ロックを解除する,または,起動する」ことは,デバイスの機能を有\n効にすることであるといえ,また,デバイス機能を有効にする前に,生体情報の提\n供をユーザに対して要求する認証方法という構成のものである。そうすると,公然\n実施発明1と甲5−1発明とは,デバイスの機能を有効にするときに,ユーザ識別\nのための認証動作を行う点に関して,その作用機能が共通するものと認められる。\n以上によれば,公然実施発明1と甲5−1発明においては,技術分野の関連性及 び作用機能の共通性が認められるものであって,当業者(その発明の属する技術の\n分野における通常の知識を有する者)において,両者を組み合わせる動機付けがあ るものと認められるものであり,その他,本件全証拠をみても,両者の組合せを阻 害する事情を認めるに足りる主張立証はない。そうすると,公然実施発明1のデバ イスの機能を有効にするときのユーザ認証として,甲5−1発明におけるデバイス\nの機能を有効にするときにデバイスが迅速かつシームレスにユーザを認証するため\nのホームボタンの背後に配置した指紋を検出するセンサによって指紋認証を行う構\n成を組み合わせることは,当業者が容易に想到できたことである。また,公然実施 発明1はパスコードの入力による認証に関して,誤ったパスコードが入力されると, ロック状態が維持され,ディスプレイに認証を行うよう求めるメッセージが表示さ\nれる構成を有するし,甲5−1発明も,特定されたユーザが許可されていないと判\n断した場合,認証を行うようユーザに指示する構成を有し(甲5文献【0080】),\nかかる指示がディスプレイ部に表示することによってなされること,及びユーザ認\n証のための操作が行われると,認証結果にかかわらずディスプレイがオンにされる ことは,当該技術の性質・内容に照らし,周知慣用技術といえる。そして,公然実 施発明1は,使用者識別機能による認証の結果,使用者が正当な使用者と認証され\nなければロック状態を維持するものであるところ,公然実施発明1に甲5−1発明 を組み合わせる際に,かかる構成をあえて排除又は変更する理由は,本件全証拠を\nみても見当たらない。 以上からすると,当業者は,相違点1に係る構成を容易に想到することができた\nものといえ,本件発明1−1を容易に発明することができたものと認められる。
エ 被告の主張について
(ア) 被告は,公然実施発明1は,パスコードの入力という使用者識別機能を有\nするものの,指紋等の生体情報による内蔵認証システムを有するものではなく,こ れを有する甲5発明とは技術の点における共通性がない旨主張する。 しかし,前記認定のとおり,両発明においては,いずれも,デバイスの機能を有\n効にするときにユーザ識別のための認証動作を行う点で共通しているのであって, パスコードの入力による認証方法と指紋等の生体情報による認証方法というように 認証に用いる情報の内容は異なるものの,両発明の技術分野に相違があるとは認め られない。そうすると,被告の上記主張は,採用することができない。
(イ) また,被告は,公然実施発明1は,ホームボタンに対する操作入力及びスラ イダのドラッグ操作を経てから使用者識別機能を実行するものであるところ,これ\nは,デバイス機能を有効とする前あるいはデバイスリソ\ースへのアクセスの前のシ ームレスな認証という甲5発明の課題と共通しないから,公然実施発明1に甲5発 明を組み合わせる動機付けがないと主張する。 しかしながら,前記説示のとおり,公然実施発明1に係るパスコード認証という 構成については,ユーザ識別のための構\成として,上記のスライダをドラッグする という構成とは可分な別個の構\成として把握することができるというべきである。 そうすると,公然実施発明1におけるパスコードによる認証という構成と,甲5−\n1発明におけるシームレスな認証処理という構成とは,ユーザにおいて許可されて\nいない人が個人情報にアクセスして閲覧することを防ぐ方法の一つとしての認証方 法を備えている点で共通するものであり,両発明において,デバイス機能を有効に\nするときのユーザ認証の動作に関して,その作用機能が共通するものと認められる\nことに変わりはない。すなわち,ユーザによる誤作動の防止と,スリープ状態にお いてホームボタンを押してユーザ識別を実行するための動作とは,その性質内容に 照らし,互いに別個のものということができ,公然実施発明1がユーザによる誤作 動防止の意義を有するからといって,これに甲5−1発明を組み合わせることがで きないことになるとはいえない。 そうすると,被告の上記主張は,採用することができない。
(ウ) さらに,被告は,本件発明1−1は,1) 指紋認証による使用者識別機能が,\n非活性状態から活性状態に切り替えるための操作入力により,かつ,使用者による 追加操作なしに行われる,2) 使用者識別機能による認証の結果,使用者が正当な\n使用者と認証されなければ,移動通信端末機のロック状態を維持するとともに,デ ィスプレイ部にメッセージを表示する,3) 活性化ボタンにおいて非活性状態にあ るときに操作入力を受け付けると,使用者識別機能による認証の結果にかかわらず,\nディスプレイ部をオンにして活性状態に切り替えるという構成を有するが,公然実\n施発明1にはこれらのいずれも有していないという相違点があるところ,甲5発明 には,上記1)ないし3)に係る構成が開示されていないため,両者を組み合わせても,\n上記相違点を埋めることはできないと主張する。 しかし,被告主張の上記1)については,上記ウで説示したとおり,公然実施発明 1のデバイスの機能を有効にするときにユーザ認証として,甲5−1発明における\nデバイスの機能を有効にするときにデバイスが迅速かつシームレスにユーザを認証\nするための構成を,公然実施発明1のスライダを備えたロック画面を残したまま組\nみ合わせることは当業者が容易に想到できたことである。 また,公然実施発明1は,パスコードを入力することによる使用者識別機能によ\nる認証の結果,認証されなければロックを維持するものといえるところ,公然実施 発明1に甲5−1発明を組み合わせる際に,かかる構成をあえて排除又は変更する\n理由が認められないこと,ユーザ認証がされなかった場合には,ディスプレイに認 証を行うよう求める旨のメッセージが表示されること,及びユーザ認証のための操\n作が行われると,認証結果にかかわらずディスプレイがオンになることは周知慣用 技術といえることは,前記説示のとおりである。そうすると,被告主張の上記2)及 び3)について,実質的な相違点ということはできないというべきである。 以上によれば,被告の上記主張は採用することができない。
オ 小括
上記によれば,本件発明1―1は,当業者が公然実施発明1に甲5−1発明を組\nみ合わせることにより,容易に想到することができたものといえ(特許法29条2 項),本件発明1−1は,特許無効審判により無効にされるべきものというべきで ある(同法123条1項2号)。
・・・
7 争点3−3(無効理由2の解消の有無)
(1) 本件訂正事項2−1,2−2に係る訂正による無効理由2の解消の有無
ア 訂正の概要
本件訂正事項2−1は,本件発明2−1の構成要件2−1Cの活性状態をロック\n画面が表示されたものに限定するものであり,本件訂正事項2−2は,本件発明2\n−2の構成要件2−2Aに,「前記ロック画面には,現在の時間を表\示することがで きる」と追加するものである。 イ 本件訂正事項2−1,2−2に係る訂正による無効理由2の解消の有無 しかしながら,本件訂正発明2−1及び本件訂正発明2−2と公然実施発明2と を対比してみたとしても,前記5(2)で認定した公然実施発明2の構成からすれば,\nスリープ状態からスリープ解除状態においてロック画面が表示される点,同画面に\n現在の時間を表示することができる点について,相違するものではない。\n以上によれば,本件訂正事項2−1,2−2に係る訂正によっても,無効理由2 を解消することはできないといわなければならない。

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令和2(ワ)1573  債務不存在確認請求事件  著作権  民事訴訟 令和3年8月27日  東京地方裁判所

 ファイル共有ソフトの使用者に対して、公衆送信権侵害が認められました。\n

ア 以上のとおり,原告X1,原告X2及び原告X3は本件ファイル1を, 原 告X4,原告X6,原告X7及び原告X8は本件ファイル2を,原告X9及 び原告X10は本件ファイル3を,それぞれ,BitTorrentを通じ てダウンロードしたものと認められる(以下,ダウンロードを行ったと認め られる上記各原告を「原告X1ら」という。)。 そして,前記前提事実2(3)のとおり,BitTorrentは,リーチャ ーが,目的のファイル全体のダウンロードが完了する前であっても,既に所 持しているファイルの一部(ピース)を,他のリーチャーと共有するために アップロード可能な状態に置く仕組みとなっていることに照らすと,原告X\n1らは,ダウンロードしたファイルを同時にアップロード可能な状態に置い\nたものと認められる。
イ 前記前提事実のとおり,BitTorrentは,特定のファイルをピー スに細分化し,これをBitTorrentネットワーク上のユーザー間で 相互に共有及び授受することを通じ,分割された全てのファイル(ピース) をダウンロードし,完全なファイルに復元して,当該ファイルを取得するこ とを可能にする仕組みであるということができる。\n これを本件に即していうと,原告X1らが個々の送受信によりダウンロー ドし又はアップロード可能な状態に置いたのは本件著作物の動画ファイル\nの一部(ピース)であったとしても,BitTorrentに参加する他の ユーザーからその余のピースをダウンロードすることにより完全なファイ ルを取得し,また,自己がアップロード可能な状態に置いた動画ファイルの\n一部(ピース)と,他のユーザーがアップロード可能な状態に置いたその余\nのピースとが相まって,原告X1ら以外のユーザーが完全なファイルをダウ ンロードすることにより取得することを可能にしたものということができ\nる。そして,原告X1らは,BitTorrentを利用するに際し,その 仕組みを当然認識・理解して,これを利用したものと認めるのが相当である。
以上によれば,原告X1らは,BitTorrentの本質的な特徴,す なわち動画ファイルを分割したピースをユーザー間で共有し,これをインタ ーネットを通じて相互にアップロード可能な状態に置くことにより,ネット\nワークを通じて一体的かつ継続的に完全なファイルを取得することが可能\nになることを十分に理解した上で,これを利用し,他のユーザーと共同して,\n本件著作物の完全なファイルを送信可能化したと評価することができる。\n したがって,原告X1らは,いずれも,他のユーザーとの共同不法行為に より,本件著作物に係る被告の送信可能化権を侵害したものと認められる。\nウ(ア) これに対し,原告らは,アップロード可能な状態に置いたファイルが全\n体のごく一部であり,個々のピースは著作物として価値があるものではな いから,原告らの行為は著作権侵害に当たらないと主張するが,上記イで 判示したとおり,原告X1らによる行為は,他のユーザーと共同して本件 著作物を送信可能化したものと評価できるから,原告らの主張は採用する\nことができない。
(イ) 原告らは,ファイルを送信する側は,自らがファイルをアップロード可 能な状態に置いていることを認識していないことも多いと指摘するが,原\n告X1らは,BitTorrentを利用するに当たって,前記前提事実 (3)イ記載のような手続を踏み,各種ファイルやソフトウェアを入手して\nいる以上,BitTorrentの基本的な仕組みを理解していると推認 されるのであって,とりわけ,BitTorrentにおいて,ユーザー がダウンロードしたファイル(ピース)について同時にアップロード可能\nな状態に置かれることは,その特徴的な点であるから,これを利用した原 告X1らがこの点を認識していなかったとは考え難い。
(ウ) 原告らは,送信可能化権侵害の主張に関し,ユーザー間における本件著\n作物に係るファイルの一部(ピース)の授受を中継した可能性やダウンロ\nードを開始した直後に何らかの事情でダウンロードが停止した可能性が\nあり,原告らが本件著作物を送信可能な状態に置いたと評価することはで\nきないと主張する。 しかし,BitTorrentにおいて,ユーザーがダウンロードした ファイル(ピース)について同時にアップロード可能な状態に置かれるこ\nとは,前記判示のとおりであり,原告X1らがこれを中継したにすぎない ということはできず,また,本件各ファイルのダウンロードの開始直後に ダウンロードが停止したことをうかがわせる証拠もない。
(エ) 原告らは,シーダーとして本件著作物の動画ファイルの配布を行ったも のではなく,原告X6や原告X10の共有比に照らしても,被告の主張す るダウンロード総数の全部や主要な部分を惹起したということはできな いので,民法719条1項前段を適用する前提を欠くと主張する。 しかしながら,そもそも,民法719条1項前段は,個々の行為者が結 果の一部しか惹起していない場合であっても,個々の行為を全体としてみ た場合に一つの加害行為が存在していると評価される場合に,個々の行為 者につき結果の全部につき賠償責任を負わせる規定であるから,仮に個々 の原告がアップロード可能な状態に置いたデータの量が少なく,結果に対\nする寄与が少なかったとしても,そのことは,原告X1らの共同不法行為 責任を否定する事情にはならないというべきである。
エ 以上によれば,その余の点を判断するまでもなく,原告X1らが本件各フ ァイルをアップロード可能な状態に置いた行為は,本件著作物に係る被告の\n送信可能化権を侵害することになる。\n
2 争点2−1(共同不法行為に基づく損害の範囲)について
(1) 被告は,本件著作物の侵害は,本件各ファイルの最初のアップロード以降継 続しており,社会的にも実質的にも密接な関連を持つ一体の行為であることな どを理由として,原告らがBitTorrentを利用する以前に生じた損害 も含め,令和2年4月2日当時のダウンロード回数について,原告らは賠償義 務を負う旨主張する。しかしながら,民法719条1項前段に基づき共同不法行為責任を負う場合であっても,自らが本件各ファイルをダウンロードし又はアップロード可能な\n状態に置く前に他の参加者が行い,既に損害が発生しているダウンロード行為 についてまで責任を負うと解すべき根拠は存在しないから,被告の上記主張は 採用することはできない。
また,被告は,BitTorrentにアップロードされたファイルは,サ ーバからの削除という概念がないため,永遠に違法なダウンロードが可能であ\nるとして,現在に至るまで損害は拡大している旨主張する。 しかし,前記前提事実(3)ウのとおり,BitTorrentは,ソフトウェ\nアを起動していなければアップロードは行われないほか,BitTorren t上や端末の記録媒体からファイルを削除すれば,以後,当該ファイルがアッ プロードされることはないものと認められる。 そうすると,原告X1らがBitTorrentを通じて自ら本件各ファイ ルを他のユーザーに送信することができる間に限り,不法行為が継続している と解すべきであり,その間に行われた本件各ファイルのダウンロードにより生 じた損害については,原告X1らの送信可能化権侵害と相当因果関係のある損\n害に当たるというべきである。他方,端末の記録媒体から本件各ファイルを削 除するなどして,BitTorrentを通じて本件各ファイルの送受信がで きなくなった場合には,原告X1らがそれ以降に行われた本件各ファイルのダ ウンロード行為について責任を負うことはないというべきである。
(2) アップロードの始期について
ア 以上を前提に検討するに,証拠(甲6)によれば,原告X6については, 遅くとも平成30年6月4日までには本件ファイル2をアップロード可能\nな状態に置いていたことが認められる。
イ 原告X1,原告X2,原告X3,原告X4,原告X7,原告X8,原告X 9及び原告X10については,BitTorrentを通じて本件各ファイ ルのダウンロードを開始した時期は明らかではないものの,証拠(乙11)に よれば,遅くとも,それぞれ次の各年月日において本件各ファイルをアップ ロード可能な状態に置いていたことが認められる。\n
(ア) 原告X1 平成30年6月12日
(イ) 原告X2 平成30年6月4日
(ウ) 原告X3 平成30年6月2日
(エ) 原告X4 平成30年6月4日
(オ) 原告X7 平成30年6月12日
(カ) 原告X8 平成30年6月13日
(キ) 原告X9 平成30年6月2日
(ク) 原告X10 平成30年6月9日
(3) アップロードの終期について
ア 乙14及び弁論の全趣旨によれば,原告X1らは,それぞれ,別紙「損害 額一覧表」の「終期」欄記載の各年月日に原告ら代理人に相談をしたことが\n認められるところ,同原告らは既にプロバイダ各社からの意見照会を受け, 著作権者から損害賠償請求を受ける可能性があることを認識していた上,上\n記相談の際に,原告ら代理人からBitTorrentの利用を直ちに停止 すべき旨の助言を受けたものと推認することができるから,同原告らは,そ れぞれ,遅くとも同日にはBitTorrentの利用を停止し,もって, 本件各ファイルにつきアップロード可能な状態を終了したものと認めるの\nが相当である。
イ これに対し,原告らは,プロバイダ各社からの意見照会を受けた時点で, 直感的にBitTorrentの利用を停止した旨主張するが,プロバイダ 各社から意見照会を受けたからといって,直ちにBitTorrentの利 用停止という行動に及ぶとは限らず,実際のところ,原告X6は,平成30 年10月19日に受領したものの,少なくとも同年11月頃までBitTo rrentソフトウェアを端末にインストールしていたことがうかがわれ\nる(甲6)。そうすると,プロバイダ各社からの意見照会を受けた時点でB itTorrentの利用を停止したと認めることはできない。
ウ 以上によれば,原告X1らは,それぞれ,別紙「損害額一覧表」の「期間」\n欄記載の期間中に他のユーザーが本件各ファイルをダウンロードしたこと により生じた損害の限度で,賠償義務を負うことになる。
(4) ダウンロード数
ア 本件全証拠によっても,上記各期間中に本件各ファイルがダウンロードさ れた正確な回数は明らかではない。他方で,証拠(乙2〜4,8〜10)に よれば,令和元年10月1日から令和3年5月18日までの595日間にお いて,本件ファイル1については501,本件ファイル2については232, 本件ファイル3については910,それぞれダウンロード数が増加している ことが認められるところ,各原告につき,同期間の本件各ファイルのダウン ロード数の増加率に,前記(2)・(3)において認定したダウンロードの始期か ら終期までの日数(別紙「損害額一覧表」の「日数」欄記載のとおり)を乗\nじる方法によりダウンロード数を算定するのが相当である。この計算方法に基づき算定されたダウンロード数は,別紙「損害額一覧表」の「期間中のダウンロード数」欄記載のとおりである。\n
なお,原告らは,乙2〜4記載のコンプリート数(ダウンロード数)と甲 10記載のコンプリート数が大幅に異なることを根拠に,乙2〜4記載のコ ンプリート数に依拠することは相当ではないと主張するが,コンプリート数 が一致しないのは,参照するトラッカーサーバーが異なることが原因である と考えられ,上記乙2〜4のコンプリート数に特に不自然・不合理な点はな い以上,上記各証拠に記載されたコンプリート数に基づいてダウンロード数 を計算することが相当である。
(5) 基礎とすべき販売価格
ア 原告X1らが本件各ファイルをBitTorrentにアップロード可 能な状態に置いたことにより,BitTorrentのユーザーにおいて,\n本件著作物を購入することなく,無料でダウンロードすることが可能となっ\nたことが認められる。これにより,被告は,本件各ファイルが1回ダウンロ ードされるごとに,本件著作物を1回ダウンロード・ストリーミング販売す る機会を失ったということができるから,本件著作物ダウンロード及びスト リーミング形式の販売価格(通常版980円,HD版1270円)を基礎に 損害を算定するのが相当である。
そして,被告は,DMMのウェブサイトにおいて本件著作物のダウンロー ド・ストリーミング販売を行っているところ,被告の売上げは上記の販売価 格の38%であると認められるので(弁論の全趣旨),本件各ファイルが1回 ダウンロードされる都度,被告は,通常版につき372円(=980×0. 38),HD版につき482円(=1270×0.38)の損害を被ったも のということができる。
イ 本件ファイル3は通常版の動画ファイルのピースであるのに対し,本件フ ァイル1及び2はHD版の動画ファイルのピースであることが認められる ので(弁論の全趣旨),別紙「損害額一覧表」の「価格」欄記載のとおり,\n原告X1,原告X2,原告X3,原告X4,原告X6,原告X7及び原告X 8については482円,原告X9及び原告X10については372円を基礎 として,損害額を計算することが相当である。
ウ 本件各ファイルをダウンロードしたユーザーの中には有料であれば本件 著作物を購入しなかったものも存在するという原告らの指摘や,BitTo rrentのユーザーと本件著作物の需要者等が異なるという原告らの指 摘も,前記認定を左右するものということはできない。 (6) 以上によれば,原告X1らが被告に対して負うべき損害賠償の額は,それぞ れ,別紙「損害額一覧表」の「損害額」欄記載のとおりとなる(なお,同別紙\n「5)期間中のダウンロード数」は計算結果を小数第2位まで表示したものであ\nり,「損害額」欄は小数第1位で切り捨てたものである。)。
3 争点2−2(減免責の可否)について
原告らは,原告らにおいて複製物を作成しようという意思が希薄であり,客観 的にも本件著作物の流通に軽微な寄与をしたにすぎないことや,原告らとユーザ ーとの間の主観的・経済的な結び付きが存在しないことからすれば,関連共同性 は微弱であるとして,損害額につき大幅な減免責が認められるべきである旨主張 するが,原告らの指摘するような事情をもって,前記認定の損害額を減免責すべ き事情に当たるということはできない。

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令和1(ワ)27053  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年8月31日  東京地方裁判所

 出願経過から用語の意義を解釈して、技術的範囲に属しないと判断されました。

争点1−1(被告製品の小径部側壁部は,係止片は大径部側に一体形成される一方 小径部側には設けられていないという文言を充足するか−構成要件1E4),2E4), 3E5)充足性)について
構成要件1E4),2E4),3E5)によれば,「係止片は」「大径部側に」「一体形成 される一方」「小径部側には設けられておらず」というのであり,上記のとおり,本 件発明は,従来よりも安全性などの向上を図るというその目的をより良く達成する という上記の技術的見地から,針先再露出防止を担う係止片の構成を工夫して,拡\n開部の大径部側に一体形成し小径部側には設けないという構成を採用したものとい\nうことができる。これによれば,本件発明において,拡開部に設ける「係止片」に ついては,大径部側に一体形成されている必要があるとともに,小径部側には設け られていない構成である必要があるものであって,「係止片」が小径部側に設けられ\nている構成は排除されているものといわなければならない。\n
そして,この「係止片」は,使用後の針先再露出を防止する部材であるといえる が,当該部材が針先の先端側への移動を阻止して針先再露出を防止する態様につい ては,構成要件1Dに「該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた\n所定位置において,該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止 される」とある以上には何ら具体的な限定がなされていない。また,本件明細書の 発明の詳細な説明を見ても,当該部材が,針先の先端側への移動を阻止する具体的 態様を限定する根拠となり得るような記載は見当たらない。加えて,本件特許の出 願経過を見ると,証拠(乙14,15)によれば,原告は,令和元年5月15日頃, 特許庁から進歩性欠如等を理由とする拒絶理由通知を受け,その際,構成要件1D\nに関し,「針先プロテクタの断面形状を,周知の形状である小径部と大径部とを備え た楕円形とし,大径部の周壁に針ハブ係合部を設け,大径部の周壁で覆われた内部 に係止部を設けた構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。」などと\n指摘されたことを踏まえて,同年6月19日,従前の請求項で「前記拡開部の前記 大径部に対応する位置に,前記筒状の周壁に一体形成された前記係止部が設けられ て」と記載していた部分を,「前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方, 前記小径部側には設けられておらず,」と補正したものであることが認められる。そ の上で原告は,同日特許庁に提出した意見書において,本件発明の進歩性を基礎付 ける事情として,拒絶理由通知書で審査官が指摘した引用文献(乙27,29)に ついては,いずれも針先プロテクタの小径部側に係止部が設けられており本件発明 とは異なる旨主張し,その際,当該係止部が針先の先端側への移動を阻止する具体 的態様には言及していなかったことが認められる。そして,本件特許は,その上で 登録されている。
そうすると,本件特許請求の範囲の記載文言をみても,本件明細書の発明の詳細 な説明をみても,小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」が針先 の先端側への移動を阻止する具体的態様を限定する根拠となり得るような記載がな く,加えて,原告自身,本件特許の出願手続においては,その特許請求の範囲を前 記のように「前記小径部側には設けられておらず,」と補正した上で,意見書におい て,具体的態様については何ら限定しないまま,小径部側に「係止片」が設けられ ていない点を本件発明の進歩性を基礎付ける事情として主張し,その上で本件特許 が登録されたものである。 以上によれば,本件発明において小径部側に設けられてはならない「係止片」は, 針先の先端側への移動を阻止する具体的態様が限定されているものではなく,他の 部材と協働して針先の先端側への移動を阻止する構成を含むものであるといわなけ\nればならない。
そこで,被告製品をみるに,前記前提事実によれば,被告製品においては,針基 に設けられた針リブと針先保護部に設けられた小径部側壁部とが,小径部側壁部の 突端面により縦リブの側面を挟持することで互いに係合することにより,針基が針 先保護部に対して回動することを防止する構成になっており,仮にこのような回動\nが発生して針基の受部が大径部係止手段のない小径部側まで移動した場合には,針 基が大径部係止手段をすり抜けて針先保護部に対して前進することになる。すなわ ち,小径部側壁部がなければ,大径部係止手段が無効化されて,針基が前進し,留 置針の針先が針先保護部の先端側から再露出することになるのであるから,被告製 品においては,小径部側壁部による針基の回動防止と大径部係止手段による針基の 受け部の係止が協働して機能することによって,針先の再露出を防止していると認\nめられる。
そうすると,被告製品の小径部側壁部は,他の部材と協働して,針先の先端側へ の移動を阻止する構成であるといえ,当該小径部側壁部は,本件発明において小径\n部側に設けられることが排除されている「係止片」に当たるといわなければならな い。これによれば,「係止片」が針先抜出防止機構を含むものであるか否かに関わら\nず,被告製品は,小径部側に「係止片」が設けられているものとして,本件発明に おいて排除されている構成を有しているから,本件発明の構\成要件1E4),2E4), 3E5)をいずれも充足しないといわなければならない。 したがって,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するとはいえない。
(2) 原告の主張について
ア 原告は,本件発明の構成要件1Dの「係止片」が,針ハブ(に設けられた受部)\nと「係止」されることによって「再露出を防止する(つまり,留置針が前進しな いように止める)」ものであるのに対し,被告製品の小径部側壁部は,針基の縦リ ブの側面を挟持して針基の回動を防止しているだけで,針基の前進を防止してい るわけではないから,「係止片」に該当しないなどと主張する。 しかし,前記説示のとおり,本件発明にいう「係止片」は,他の部材と協働し て針先の先端側への移動を阻止する構成を含むものといわなければならない。そ\nして,被告製品において,小径部側壁部がそれ単体として針先の再露出を防止す るものでないとしても,小径部側壁部による針基の回動防止と大径部係止手段に よる針基の受け部の係止が協働して機能することによって針先の再露出を防止し\nているものである以上,本件発明にいう「係止片」に該当しないということはで きない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
イ また,原告は,被告製品の小径部側壁部が針基の縦リブの側面を挟持する場所 は,針基と針先保護部の位置関係にかかわらないのであって,留置針の針先側へ 針先プロテクタが移動せしめられた「所定位置」において係止するものでないた め,被告製品の小径部側壁部は「係止片」に当たらないとも主張する。 しかしながら,前記のとおり,被告製品は,小径部側壁部がそれ単体として針 先の再露出を防止するものではなく,小径部側壁部による針基の回動防止と大径 部係止手段による針基の受け部の係止が協働して機能することによって針先の再\n露出を防止するものであり,その機能が発揮される場所は,前記前提事実のとお\nり,針管と針先保護部が相対移動してクリック感が生じる位置に限定されている。 このことからすれば,被告製品の小径部側壁部は,「留置針の針先側へ針先プロテ クタが移動せしめられた所定位置において」,大径部係止手段と協働して針先の再 露出を防止しているといえる。被告製品の小径部側壁部が,針先と針先保護部の 位置関係にかかわらず針基の縦リブの側面を挟持しているという事情は,この説 示を左右するものではない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
ウ さらに,原告は,本件発明の構成要件1E4),2E4),3E5)が「前記係止片 は,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,」と規定していることをもって, 本件発明で小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」は「前記針 ハブに向かって傾斜した内側面」を有しているものに限られているなどと主張す る。
しかし,構成要件1E4),2E4),3E5)の「前記係止片は,前記針ハブに向 かって傾斜した内側面を有し」との文言は,本件明細書の段落【0061】の記 載(「・・・垂直面79a,79aの外周側に位置する傾斜面79b,79bが,外周 側になるにつれて先端側に傾斜していることから,垂直面79a,79aと基端 側規制面40とが傾斜面79b,79bに干渉されることなく当接することがで きて,針ユニット20と針先プロテクタ10の軸方向における相対移動防止効果 がより確実に発揮され得る。」との記載)も併せると,そのような大径部側に一体 形成される係止片の構成について,規定した針ユニットと針先プロテクタの軸方\n向における相対移動防止効果がより確実に発揮されるという効果を奏させるべく 規定されたものであると認められる。そうすると,当該文言は,大径部側に円筒 状部と一体形成される係止片について特定したものにすぎず,設けられていては ならない位置にある「係止片」の形状を限定するものではないというべきである。 したがって,被告製品の小径部側壁部が「傾斜した内側面」を有しないことは, 被告製品の小径部側壁部が本件発明において小径部側に設けられてはならないと されている「係止片」に当たることを否定する理由にはならない。原告の上記主 張は,採用することができない。
エ 以上によれば,原告の上記主張はいずれも採用できない。原告は,その他も縷々 主張するが,それらの主張内容を慎重に精査しても,上記説示を左右するに足り るものはない。

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平成30(ワ)1130  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年8月31日  東京地方裁判所

 102条2項について、2割の推定覆滅が認められました。同3項による認定についても触れています。損害額は15億円です。対応EP特許でドイツでも侵害訴訟があります。

ア 前記前提事実によれば,本件発明の構成要件1Eは,「該印刷層は,白色の有機\n顔料,白色または黄色の無機顔料,蛍光染料,および蛍光増白剤のうちの一以上 の着色剤を含有する」である。これに対応する被告製品(1)の構成1eは,「印刷層\nは,●(省略)●と●(省略)●を含有する●(省略)●印刷インキにより形成 されるが,」である。そして,被告製品の印刷層の●(省略)●印刷インキに含有 される●(省略)●は,「白色」の「無機顔料」に当たる。 ここでは,本件発明については,印刷層が「白色の有機顔料・・・着色剤」を含有 すれば,それだけで構成要件1Eを充足するのではなく,これにより「色相を明\nるくすること」を要するかが問題となる。
イ 本件発明の構成要件1Eには,印刷層が「白色の有機顔料,および蛍光増白剤」\nのいずれかを含有するとの記載がされているだけであり,「色相を明るくすること」 が発明特定事項として記載されているわけではない。 また,前記1のとおり,本件発明は,再帰反射シートに関する発明であるとこ ろ,本件明細書の段落【0004】には,三角錐型キューブコーナー再帰反射シ ートのうち,反射素子の反射側面に蒸着層が設置されている「蒸着型」三角錐型 キューブコーナー再帰反射シートについては,その再帰反射素子の性質から金属 の色の影響を受けて外観が暗くなってしまうという欠点を有していると記載され ているものの,それ以外の再帰反射シートについては,外観の暗さが課題になっ ている旨の記載がない。また,本件明細書の【0014】,【0015】には,本 件発明の技術的意義は「色相の改善」であると記載され,段落【0021】,【0 030】,【0032】には,印刷層の目的は「色相を調節」,「色相の調整」と記 載され,段落【0036】には,「本発明に用いられる着色剤は,特に限定される ものではないが,・・・色相を明るくすることができ,且つ,隠蔽性が得られるもの が良く,シートの色相に合わせた明色系の色が好ましく,・・・白色の有機顔料や白 色や黄色の無機顔料,並びに蛍光染料や蛍光増白剤を挙げることができ,中でも, 白色や黄色の無機顔料が好ましい。」と記載されており,「色相を明るくすること」 は,「隠蔽性」を得ることや「シートの色相に合わせた」色であることと並んで, あくまで好ましい態様であるとされているにすぎない。そのため,本件発明の着 色剤の技術的意義である「色相の改善」は,色相の調節ないし調整を意味するも のであり,「色相を明るくすること」に限定されるものではないと解される。他方, 本件明細書の実施例では,白色顔料が用いられているものの,その他の着色剤と 比較して明るさが向上するとの趣旨で記載されているものではなく,比較例でも, 実施例とは印刷の模様のみを変えて,「Y値」すなわち「色相(明るさ)」には変 化がないが耐候性が改善することを確認しているにすぎない。このような本件明 細書全体の記載を考慮すれば,本件発明の構成要件1Eの「着色剤」が「色相を\n明るくすること」を要件としたものとは解されない。 以上によれば,本件発明の構成要件1Eの「着色剤」が「色相を明るくするこ\nと」を要しているとはいえないというべきである。
ウ これに対し,被告らは,本件特許の出願経過において,原告が,補正により本 件発明に構成要件1Eを追加し(乙21),本件発明の効果は,「色相,特に昼光\n下での色相(Y値=明るさ)が改善されて」いることであり,同構成要件の着色\n剤を用いることにより色相(Y値=明るさ)を改善したと主張しており(乙3), 同構成要件の「白色」,「黄色」,「蛍光」を用いて「色相(Y値=明るさ)」を改善\nする技術的意義を強調しているから,上記着色剤の意義は,色相を明るくするこ とにあると主張している。 しかし,原告が提出した乙21の内容を見ても,本件発明の構成要件1Eの技\n術的意義が,「色相を明るくすること」であるとは記載されていない。 むしろ,乙3には,本件発明の効果は,「十分な再帰反射性能\を有し,かつ色相, 特に昼光下での色相(Y値=明るさ)が改善されており,耐候性及び耐水性にも 優れている」ことであると記載され,Y値と同義である「色相(Y値=明るさ)」 と,それに限定されない意味での「色相」とが区別されているため,明るさに限 定されない色相の改善についても主張していると解される。さらに,乙3には, 一般に用いられている着色剤は,再帰反射性の確保のために光透過性を有するが, 光透過性を有する着色剤は光劣化しやすいという欠点があったのに対して,本件 発明の構成要件1Eの着色剤は,光透過性を有するものではないこと,本件発明\nは,構成要件1Eの着色剤を用いることにより,再帰反射シートの昼光下での色\n相(Y値=明るさ)を更に改善したこと,本件発明では,印刷領域が構成要件1\nB〜1Dを具備する独立印刷領域であるため,印刷層が光透過性を有しない構成\n要件1Eの着色剤を含有しても,それ以外の領域を通じて十分な再帰反射性能\を 有することが記載されている。以上によれば,原告は,本件特許の出願経過にお いて,本件発明の構成要件1Eの着色剤について,明るさの改善だけでなく,そ\nれ以外の効果も主張していると解されるから,そのような主張をもって,本件発 明の着色剤の技術的意義が色相を明るくすることに限定されるとまではいえない というべきである。 その他,被告らの主張を検討しても,採用すべきものはない。
エ したがって,被告製品(1)の構成1eは,それぞれ本件発明の構\成要件1E及び これを引用する構成要件2Bを充足する(なお,仮に同構\成要件の着色剤が「色 相を明るくすること」を意味するものとしても,これは相対的に色相を明るくで きるような所定の着色剤を含有させれば足り,必ずしも絶対的に「色相を明るく すること」を要するものではないというべきであるところ,証拠(甲17)及び 弁論の全趣旨によれば,被告製品では,「白色」の「無機顔料」に当たる●(省略) ●を含有しない領域よりも,これを含有する領域の方が色相も改善●(省略)● による色相改善の効果を享受)していることがうかがわれ,被告製品の●(省略) ●印刷インキの色相が暗くなっているのは,●(省略)●で色相が明るくなった 一方で,●(省略)●で色相が暗くなったにすぎないというべきであり,これに よって本件発明の構成要件1Eの充足性が否定されることにはならないというべ\nきである。)。
・・・
推定覆滅の事情
a 特許法102条2項における推定の覆滅については,同条1項ただし書の 事情と同様に,侵害者が主張立証責任を負うものであり,侵害者が得た利益 と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると 解される。例えば,1)特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在すること (市場の非同一性),2)市場における競合品の存在,3)侵害者の営業努力(ブ ランド力,宣伝広告),4)侵害品の性能(機能\,デザイン等特許発明以外の特 徴)などの事情について,特許法102条1項ただし書の事情と同様,同条 2項についても,これらの事情を推定覆滅の事情として考慮することができ るものと解される。
b そこで,被告らが特許法102条1項ただし書の推定覆滅事由として主張 する点について検討するに,次のとおり,2割の推定覆滅を認めるのが相当 である。
(a) 被告らは,本件発明において従来発明と相違する特徴とされる印刷層の 印刷領域の面積の限定は,顧客吸引には全く寄与しておらず,被告旧製品 と被告新製品の耐候性にも実質的な差異はないのであり,被告旧製品のカ タログでも,印刷層の面積の大小はセールスポイントとされていないし, 原告も本件発明の実施品を日本国内で販売していないのであり,本件発明 は,被告旧製品の販売に寄与しているとはいえない旨を主張する。 しかし,前記1(9)で説示したとおり,本件発明の従来技術とは異なる技 術的特徴は,再帰反射シートの印刷層について,「印刷領域が独立した領域 をなして繰り返しのパターンで設置されており,連続層を形成せず」,「独 立印刷領域の面積が0.15mm2〜30mm2」,かつ,「白色の有機顔料・・・着色 剤を含有させる」との構成を組み合わせることにより,印刷層周辺の密着\n性を向上させ,耐水性・耐候性を向上させるとともに,色相の改善を図る ことにあるのであるから,その一部のみを独立して捉えて技術的特徴を措 定する被告らの上記主張は,その前提を欠くものである。また,被告旧製 品と被告新製品の耐候性の実験結果(乙45〜49)についても,その実 験条件や環境の適否については必ずしも明らかでないから,これをもって 直ちに被告旧製品と被告新製品の耐候性に実質的な差異はないとはいえな い。そして,証拠(甲3,4,9,10,23,67〜70)及び弁論の 全趣旨によれば,被告旧製品のカタログやウェブサイトには,本件発明の 技術的特徴である耐水性・耐候性・色相に関する性能の良さを強調する記\n載が多数存在することも認められる。 したがって,被告らの上記主張をもって推定覆滅事由と認めるのは相当 ではないというべきである。
(b) 次に,被告は,本件発明は,被告旧製品の顧客への販売に貢献しておら ず,むしろ,3Mブランドに裏付けられた被告らの信用,実績及び知名度 等こそが,被告旧製品の販売に極めて大きな貢献をしているというべきで あり,現に被告旧製品から被告新製品に切り替えた前後でも売上高は大き く変化していないと主張する。 しかし,仮に被告らが3Mグループとしてのブランド力を有するとして も,これが被告旧製品の販売にどの程度の貢献をしたかを裏付ける的確な 証拠は提出されていない。また,仮に被告旧製品から被告新製品に切り替 えた前後で売上高が大きく変化していないとしても,顧客において被告旧 製品と被告新製品との相違点を認識しているか否かが定かでない以上,従 前の被告旧製品の顧客吸引力がその後の被告新製品の販売に影響を与えた 可能性が否定できないから,これをもって直ちに本件発明が顧客への販売\nに貢献していないということはできない。 したがって,被告らの上記主張をもって推定覆滅事由であると認めるの は相当ではない。
(c) また,被告らは,主要国道および高速道路等における道路標識に用いら れる被告製品を含む長尺ロール製品については,再帰反射シートのパイオ ニア的存在である被告らの売上シェアが極めて大きく,原告は被告旧製品 の販売数量分の実施能力を有していないのであり,実際に,被告らの販売\nする被告製品並びにその他の製品(Diamondグレード及びEngi neeringグレードの再帰反射シート)の売上比がそれぞれ●(省略) ●であり,原告製品の売上比が10%であるから,仮に被告製品(1)が販売 できなくなったとすれば,そのうちの●(省略)●(=10/(10+● (省略)●))のみが原告製品に向かうことになると主張する。 しかし,そもそも,競合品といえるためには,市場において侵害品と競 合関係に立つ製品であることを要するものと解される。被告らは,被告ら が販売するDiamondグレード及びEngineeringグレード の再帰反射シートが競合品であることを前提としているが,弁論の全趣旨 によれば,前者の価格は被告旧製品の●(省略)●以上であり,後者の性 能は被告旧製品と同等ではないこともうかがわれるから,これらの製品の\n価格や性能等を捨象して,同様の用途に用いられる再帰反射シートである\nことをもって競合品であると解するのは相当ではない。そうすると,被告 らが主張するDiamondグレード及びEngineeringグレー ドの再帰反射シートが市場において被告旧製品と競合関係に立つものと認 めることはできず,それゆえに被告旧製品の需要がDiamondグレー ド及びEngineeringグレードの再帰反射シートと原告製品の売 上シェアに応じて按分されるとはいえないというべきである。 したがって,被告らの上記主張をもって推定覆滅事由であると認めるの は相当ではない。
(d) さらに,被告らは,仮に被告旧製品の需要が全て原告製品に向かったと しても,原告の逸失利益は,被告旧製品の販売数量に原告製品の限界利益 率を乗じた額にとどまるところ,原告製品の販売単価は被告旧製品の●(省 略)●程度の価格帯であり,原価等の控除すべき費用も被告旧製品と同じ く●(省略)●程度であるはずであり,原告製品の限界利益率は被告製品 のそれの●(省略)●程度にすぎないことが推認されるから,特許法10 2条2項によって推定される損害額は,原告の逸失利益を大幅に超えるこ ととなると主張する。
この点,弁論の全趣旨によれば,原告製品の販売単価は,被告旧製品の ●(省略)●程度の価格帯であることが認められるところ,仮に被告旧製 品が販売されなかったとしても,原告において,被告旧製品の限界利益と 同額の限界利益を得ることができたとは認め難く,この点については,一 定割合の推定覆滅を認めるのが相当であるが,他方で,原告製品の販売単 価が低価格であることにより,その販売数量が,被告製品の販売数量より も大きくなる可能性もあるのであるから,大幅な推定覆滅を認めるのが相\n当であるともいえない。
(e) 以上の事情を総合考慮すると,被告らが主張する推定覆滅事由のうち, 原告製品と被告旧製品の販売単価の差異についてのみ,推定覆滅事由とし て考慮するのが相当であり,その覆滅割合は2割と認めるのが相当である。
・・・
ア 次に,原告は,予備的主張として,特許法102条3項の適用を前提とする損\n害額の支払を求めているため,以下検討する。
・・・
a 特許法102条3項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の 額に相当する額」については,平成10年法律第51号による改正前は「そ の特許発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額」と定められ ていたところ,「通常受けるべき金銭の額」では侵害のし得になってしまうと して,同改正により「通常」の部分が削除された経緯がある。 特許発明の実施許諾契約においては,技術的範囲への属否や当該特許が無 効にされるべきものか否かが明らかではない段階で,被許諾者が最低保証額 を支払い,当該特許が無効にされた場合であっても支払済みの実施料の返還 を求めることができないなどさまざまな契約上の制約を受けるのが通常であ る状況の下で事前に実施料率が決定されるのに対し,技術的範囲に属し当該 特許が無効にされるべきものとはいえないとして特許権侵害に当たるとされ た場合には,侵害者が上記のような契約上の制約を負わない。そして,上記 のような特許法改正の経緯に照らせば,同項に基づく損害の算定に当たって は,必ずしも当該特許権についての実施許諾契約における実施料率に基づか なければならない必然性はなく,特許権侵害をした者に対して事後的に定め られるべき,実施に対し受けるべき料率は,むしろ,通常の実施料率に比べ て自ずと高額になるであろうことを考慮すべきである。
したがって,実施に対し受けるべき料率は,1)当該特許発明の実際の実施 許諾契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界における実 施料の相場等も考慮に入れつつ,2)当該特許発明自体の価値すなわち特許発 明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能性,3)当該特許発明を当該 製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様,4)特許権者と侵 害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮し て,合理的な料率を定めるべきである。
b そこで検討するに,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,1)原告は,本 件訴訟の提起前に,被告らを含む3Mグループに対し,本件特許のライセン ス料率5%を提案していたこと(乙41),他方で,米国3Mは,過去に第三 者に提起した特許権侵害訴訟において,再帰反射シートに関する特許の実施 料率は9%であると主張していたこと(甲71),米国3Mらは,過去に第三 者に提起した訴訟において,ロイヤルティ料率20%での合意をしたこと(甲 72,乙66),株式会社帝国データバンク編「知的財産の価値評価を踏まえ た特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書 〜知的財産(資産)価値 及びロイヤルティ料率に関する実態把握〜」(平成22年3月)において,再 帰反射シート(樹脂シート)が該当する「化学」の最小値が0.5%,最大 値が32.5%,平均が4.3%であるとされていること(甲73,乙67), 被告3Mジャパンらは,原告に提起した特許権侵害訴訟において,実施料率 を10%と主張していること等が認められる。 また,2)本件発明は,前記のとおり,再帰反射シートの構成全体に関わる\n発明であり,相応の重要性を有しているといえ,これらの構成を備えた従来\n技術は存在せず,この点についての代替技術が存在することはうかがわれな い。
そして,3)本件発明は,被告旧製品の全体について実施されており,これ によって向上される耐水性・耐候性は,需要者の購入動機に影響を与えるも のであるから,本件発明を被告旧製品に用いることにより,被告らの売上及 び利益に貢献するものと認められる。
さらに,原告と被告らは,いずれも再帰反射シートの製造販売業者であり, 競業関係にある。
c 上記bの諸事情を含む本件訴訟に表れた事業を総合考慮すると,本件特許\n権を侵害した被告らに事後的に定められるべき,本件での実施に対し受ける べき料率は,10%を下らないものと認めるのが相当である。 したがって,本件特許権侵害について,特許法102条3項により算定さ れる損害額は,前記(1)で認定した被告旧製品の売上高の10%になる。

◆判決本文

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平成18(行ケ)10043  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成18年6月29日  知的財産高等裁判所

 かなり昔の判決ですが、興味深いのであげておきます。登録商標の同一性および、取説における使用も使用と認定されました。
 標章「速脳速聴基本プログラム」の使用が、登録「速脳速聴」の使用と認定されました。指定商品は「中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・ 磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器」です。

 本件関連標章1は,「速脳速聴」(本件商標)と「基本プログラム」と が結合した語から成るものである。この構成中の「速脳速聴」の部分は,\n高速で聴くことによって脳の回転を高めるといった程度の意味を有するも のと理解されないこともないが,明確な意味を有するとまではいえず,取 引者・需要者において,既存の明確な観念を伴わない新たな造語であると 認識するものと認められる。一方,「プログラム」の語は,本件商標の指 定商品である電子応用機械器具の分野において,その一種である電子計算 機のためのプログラムを示す普通名称であり,これに冠して付加されてい る「基本」の語は,「物事が成り立つためのよりどころとなるおおもと。 基礎。」(甲27の2,ウェブサイトの「 辞書」),「物事がそれに goo 基づいて成り立つような根本。」(甲28,株式会社岩波書店平成3年1 1月15日発行「広辞苑第4版」)を意味し,後に「応用」若しくは「発 展」など次の段階へと続くことを想起,連想させる一般的な記載にすぎな いから,本件関連標章1に接した取引者・需要者は,通常,その構成中の\n「基本プログラム」の部分は,商品の特定のために当該商品の用途等を表\n示したものと理解して,それ自体を自他商品の識別力を有する部分とは考 えないと認めるのが相当である。
そして,「速脳速聴」と「基本プログラム」とは,一体不可分の密接な 関係にあるとはいえないし,「速脳速聴基本プログラム」の称呼は,「ソ\nクノウソクチョウキホンプログラム」と著しく冗長であって,この一連一\n体の称呼によることが取引の実情に即したものであるとは言いがたく,む しろ,取引の実際においては,冒頭の「速脳速聴」の部分に即して「ソク\nノウソクチョウ」との称呼を生ずるのが通常であるということができる。\nそうすると,本件関連標章1の「速脳速聴基本プログラム」の語は, 「速脳速聴」の部分において,取引者・需要者の注意を引くものであり, その部分が自他商品の識別力を有するものというべきである。 もっとも,本件関連標章1の「速脳速聴」の部分について,高速で聴く ことによって脳の回転を高めるといった程度の意味のものととらえ,本件 関連標章1について,一体として「速脳速聴の基本的なプログラム」,あ るいは,「速脳速聴に関する基本的なプログラム」との観念を生ずること もあり得ないものではない。しかし,一般には,「速脳速聴」の観念が必 ずしも明確でないことに照らしても,「速脳速聴の基本的なプログラム」 等の観念が生ずる可能性がないわけではないことによって,「速脳速聴」\nの部分の自他商品識別力が否定されるものではないというべきである。 そして,この「速脳速聴」は,本件商標と同一なのであるから,本件関 連標章1は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標とみるのが相当 であり,上記1及び2・・・ に照らせば,プランニングラボは,本件予\n告登録前3年以内に,本件関連標章1により,本件商標の指定商品である 本件商品1につき,商標法2条3項1号及び8号にいう本件商標の「使 用」をしていたというべきである。
ウ ところで,被告は,本件CDに付されている商標は,「速脳速聴基本プ ログラム」であるから,本件商標「速脳速聴」とは,同一の商標ではない し,「速脳速聴基本プログラム」は,一体として「速脳速聴の基本プログ ラム」の観念が生じ,当然,一連一体として観察,称呼しなければならず, 本件商標とは,称呼,外観,観念のすべてを異にするものであり,識別力 を異にすることが明らかであるから,本件関連標章1は,本件商標と社会 通念上同一と認められる商標でないと主張する。 しかし,「速脳速聴基本プログラム」がそれ自体一つの商標であるとし ても,上記のとおり,取引の実際においては,「速脳速聴」の部分,すな わち,本件商標に相当する部分が商標として自他商品識別力を有している ものというべきである。また,「速脳速聴基本プログラム」から,一体と して「速脳速聴の基本プログラム」の観念が生ずる可能性があることは,\n上記のとおりであるが,そのことから,このような結合語を,直ちに一連 一体として観察,称呼しなければならないものとはいえず,一体として 「速脳速聴の基本プログラム」の観念が生ずる可能性があることによって,\n「速脳速聴」の部分の自他商品識別力が否定されるものではないことも, 上記のとおりである。
(4) 次に,本件取扱説明書の表紙に記載されている「速脳速聴<R>基本プログ ラム」(以下「本件関連標章2」という。)について検討する。 ア 本件関連標章2が,本件商標と社会通念上同一といえるかについてみる と,本件関連標章2は,「速脳速聴」と「基本プログラム」とが<R>マー クで区分された語であるところ,この<R>マークは,米国における連邦登 録商標の商標表示の方法(米国連邦商標法1111条〔ランナム法29\n条〕)であって,商標法73条,同法施行規則17条にいう商標登録表示\nではないが,我が国でも登録商標に簡明な<R>マークを付すことが慣行的 に行われていることは,当裁判所に顕著である。そして,本件関連標章2 においては,<R>マークによって,「速脳速聴」と「基本プログラム」と が明確に分離されており,また,上記のとおり,本件取扱説明書の裏表紙\nには,「『速脳』『速脳速読』『速脳速聴』等は新日本速読研究会(X 〔注,原告〕)が保有する商標です。」等の記載があることから,取引者 ・需要者は,「速脳速聴」が商標であると容易に理解することができるも のである。 そうすると,本件関連標章2は,本件関連標章1以上に,「速脳速聴」 の部分に自他商品識別力があるということができるから,本件商標と社会 通念上同一と認められる商標であり,プランニングラボは,本件関連標章 2によっても,本件関連標章1と同様,本件商標の使用をしていたといわ なければならない。

◆判決本文

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平成30(ワ)28215 著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和3年9月17日  東京地方裁判所

 コンピュータソフトの画面について、著作物性、不競法2条1項1号の商品等表示に該当するかが争われました。本件ではいずれも否定されましたが、一般論としては「ビジネスソ\フトウェアの表示画面は,商品の形態と同様,・・特別顕著性,かつ,・・周知になっている場合に不競法2条1項1号の「商品等表\示」に該当すると解するのが相当である。」と 認定されています。

 以上のとおり,原告表示画面と被告表\示画面の共通する部分は,いずれも アイデアに属する事項であるか,又は,書店業務を効率的に行うに当たり必 要な一般的な指標や情報にすぎず,各表示項目の名称の選択,配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表\現においても,創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない上,両製品の配色の差違等により,利用者が画面全体から受ける印象も相当異なるというべきである。そ\nして,被告表示画面について,他に原告表\示画面の本質的特徴を直接感得し 得ると認めるに足りる証拠はない。
(4) 表示画面の選択や相互の牽連関係における創作性の有無・程度
ア 原告は,表示画面の牽連性に関し,原告製品は,画面の最上部にメニュータグを常時表\示し,どの画面からも次の業務に移行できるようにしている点や,画面の中央にサブメニュー画面を用意し,画面遷移なしに表示することを可能\にしている点などに独自性があると主張する。 しかし,画面の最上部にメニュータグを常時表示し,そのいずれの画面からも次の業務に移行できるようにすることや,画面の中央にサブメニュー画\n面を用意し,画面遷移なしに表示することを可能\にすることは,利用者の操 作性や一覧性あるいは業務の効率性を重視するビジネスソフトウェアにおいては,ありふれた構\成又は工夫にすぎないというべきであり,原告製品における表示画面相互の牽連性に特段の創作性があるということはできない。
イ また,原告は,原告製品が補充発注画面や自動計算機能を備えていることをもって他社にはない独自性があると主張するが,在庫の変動に伴い商品を\n補充して発注することや,定期改正数を自動計算することなどは,一般的な 書店業務の一部であり,原告製品の補充発注(条件設定)画面及び補充発注 (入力)画面に表示された項目の名称の選択,配列順序及びそのレイアウトなどの具体的な表\現において,創作者の思想又は感情が創作的に表現されて\nいるということはできないことは,前記(3)ケ及びコで判示のとおりである。
ウ したがって,原告製品は,表示画面の選択や画面相互の牽連性において独自性又は創作性があるとの原告主張は採用し得ない。\n
・・・
(1) 原告は,被告製品の表示画面が不競法2条1項1号の規定する不正競争行為に該当すると主張するところ,ビジネスソ\フトウェアの表示画面は,商品の形\n態と同様,1)当該表示画面が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,2)その表示画面が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な広告宣伝や爆発的な販売実績等により,\n需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっている場合に不競法2条1項1号の「商品等表\示」に該当すると解するのが相当である。
(2) 周知性について
原告は,原告表示画面が,遅くとも平成25年末までには,出版業界及び書店業界において広く認識されていたと主張するが,以下のとおり,理由がない。\nア 原告製品の販売数や市場占有率に関し,原告は,原告のシステム製品は出 版社市場でトップシェアを占めており,原告製品は既に全国の小売書店10 00店舗に向けて販売・採用されていると主張するが,原告商品の導入件数, 市場規模,原告製品の市場占有率を客観的に示す証拠は提出されていない。
イ また,原告は,業界新聞である「文化通信BB」において原告製品が紹介 されたことを指摘するが,「文化通信BB」の発行部数等は明らかではなく, その記事の内容は原告製品を紹介する内容を含むものの,原告製品の表示画面は一切掲載されていない(甲18)。\n同様に,原告は,日販が平成25年8月1日付け業界新聞において書店向 けPOSレジと原告製品を連携させることを発表し,系列の書店1000店に合計1300台を販売することを表\明したと主張するが,同記事で導入が表明されているのはPOSレジであり,原告製品が書店に導入されたことを裏付けるものではない上,同記事には原告製品の表\示画面は一切表示されて\nいない(乙23)。
ウ さらに,原告は,「文化通信」及び「新文化」のウェブサイトの上段に,バ ナー広告を掲載したことや,「BOOK EXPO」や「書店大商談会」に出 展し,広報を行っていることを根拠に,原告表示画面には周知性がある旨主張する。\n しかし,証拠(乙22)によれば,文化通信社のウェブサイト上に掲載さ れたバナー広告は,「BOOK ANSWERシリーズ」という製品名を表示するものにすぎず,原告製品の表\示画面は一切示されていない。また,「BOOK EX PO」や「書店大商談会」への出展についても,その規模や具体的な出展・ 宣伝態様などは一切明らかではない。
エ 以上によれば,原告画面表示が,遅くとも平成25年末までに,出版業界及び書店業界において広く認識されていたと認めることはできない。\n
(3) 特別顕著性について
原告は,原告表示画面には特別顕著性が認められる旨主張し,その根拠として,1)業務統合型のシステムを構築するという設計思想に基づき,仕入部門で使用するメニューと店売部門で使用するメニューが統合されている点や,2)発 注に当たって,商品分析の画面から一旦発注画面に移行することなく,商品分 析の画面から即発注することができる点,3)帳票を作成するという発想がなく, 画面上に表示して見るということを基本にしている点,4)独自の用語を用いて いる点に,他社製品にはない原告製品の独創的な特徴がある旨主張する。
しかし,上記1)〜3)の点は,いずれも,原告製品の設計思想や機能としての独自性を指摘するものにすぎず,表\示画面自体の顕著な特徴を基礎付けるものということはできない。また,上記4)の点についても,原告製品の表示画面に用いられた用語は,一般的な書店業務に用いられているものがほとんどであり,\n画面全体の特別顕著性を基礎付けるに足りる独創的を有すると認めることは できない。
したがって,原告表示画面が同種製品と異なる顕著な特徴を有しているということはできない。\n
(4) 以上のとおり,原告表示画面には,周知性及び特別顕著性のいずれも認められないから,原告表\示画面が「商品等表示」に該当するということはできない。\nしたがって,その余の点を判断するまでもなく,不正競争防止法に関する原 告の主張についても理由がない。

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令和3(ネ)10026  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年9月30日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

損害賠償不存在確認訴訟です。 国際裁判管轄の有無、訴えの準拠法、確認の利益の有無、など争点はたくさんです。1審の判断が維持されました。

(2) 控訴人の当審における補充主張に対する判断
控訴人は,請求1−1に関し,前記第2の3(1)アのとおり,別件評決ない し別件米国判決は,被控訴人の元従業員であるAの認識や記憶に基づかない 意図的な偽証に基づきされたのであり,被控訴人自身も,そのことを認識し たはずであるにもかかわらず,Aの供述や証言を援用して,自らに有利な架 空のストーリーを主張していたことになり,別件評決及び別件米国判決には, 民事訴訟法338条1項7号の再審事由が存するといえ,我が国の法秩序の 基礎をなす公序,適正手続という観点に照らして到底容認されるべきもので はなく,同法118条3号の要件を欠くほどに重大な瑕疵があると主張する。 しかし,民事訴訟法338条1項7号の再審事由は,証人の虚偽の陳述が 判決の証拠となった場合でなければならず,同号を理由に再審を求める場合 には,まず刑事手続で有罪の判決が確定した後等でなければならないところ (同条2項),本件においてはこのような事情は認められない。したがって, Aの供述・証言に係る事情をもって同号の再審事由が認められるとする控訴 人の主張は失当というほかない。証人の供述の信用性等は,本来,別件米国 訴訟の中で攻撃防御を尽くした上,誤った判断がされたのであれば,最終的 には上告や再審といった手続の中で是正されるべきものであるところ,別件 米国訴訟においては,そのような機会を経た上で,控訴人の敗訴が確定し, 現在に至っているのであるから,請求1−1に係る控訴人の訴えは,別件米 国訴訟の蒸し返しに当たるといわざるを得ない。 なお,念のために付言すれば,Aは,2015年(平成27年)2月15 日付けの宣誓供述書(甲32)で,参加人が宇部興産に本件発明の実施品を 販売するために本件特許のライセンスを被控訴人に要求し,被控訴人は宇部 興産が非競合者であるためライセンスを与えることを許諾したと供述してい るものの,別件米国訴訟における証人尋問においては,A自身はライセンス の交渉自体には関与していないこと,Cから,本件特許により設備を販売で きなくなり参加人としては困るとの話があったので購買部門に話をつないだ こと,参加人が販売対象として考えているのが非競合他社であるかどうかに ついては明確な議論はなく,ただ,その後上級管理者からは,非競合他社で ある宇部興産に販売しようとしているので問題はないだろうと言われたこと を証言し(甲35),別件関連訴訟における陳述書(甲50)では,Cから ライセンスの打診は受けたが上司に話をつないだだけであるとし,別件関連 訴訟の証人尋問では,Cから本件特許が製品の販売に支障をきたすので何と かならないかという話があったので,上司に話をつないだこと,宇部興産と いう具体名は出なかったが,被控訴人の競合相手ではない同社のことだろう と推測したものであることを証言している(甲51)。このような経緯に照 らせば,別件米国訴訟においてAが意図的な偽証をしていたとまで認めるこ とは困難であり,また,その偽証に基づき被控訴人が別件米国訴訟を追行し ていたともいい難い。 その他,控訴人がるる主張する点を考慮しても,日本の裁判所が審理及び 裁判をすることが当事者間の衡平を害する特別の事情(民事訴訟法3条の9) があるとの判断を覆すに足りるものではない。
2 確認の利益の有無(請求1−2について。争点3)
確認の利益が認められるためには,原告の権利又は法律的地位に危険又は不 安が存在し,これを除去するために,原告と被告の間で,その訴訟物である権 利あるいは法律関係の存否を確認することが必要かつ適切であることを要する。 被控訴人は,令和3年7月20日の当審第1回口頭弁論期日において,仮に, 本件日本特許権の侵害に基づく被控訴人の控訴人に対する損害賠償請求権が存 在するとしても,請求権自体放棄すると陳述した。 そうすると,請求1−2の対象となる権利については,被控訴人による権利 行使の意思がないことはもちろん,本件口頭弁論終結時におけるその存在自体 が認められないことになり,権利の存否を巡る法律上の紛争は解決されたとい えるから,現に控訴人の法律的地位に危険又は不安が存在し,これを除去する ため被控訴人に対し確認判決を得ることが必要かつ適切であると認めることは できない。 したがって,その他の点について判断するまでもなく,請求1−2に係る訴 えには確認の利益が認められないから,不適法というべきである。
3 訴訟物の特定の有無(請求2について。争点4)
当裁判所も,請求2に係る訴訟物の特定に欠けるところはないものと判断す る。その理由は,原判決の第3の3の説示のとおりであるから,これを引用す る。
4 請求2−1に係る訴えの準拠法(争点2)並びに別件米国訴訟の提起及び追 行の違法性等(争点6)
(1) 日本法に基づく不法行為の成否
ア 不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は,原則として加害行為の 結果発生地の法による(通則法17条本文)。もっとも,不法行為につい て外国法によるべき場合において,当該外国法を適用すべき事実が日本法 によれば不法とならないときは,当該外国法に基づく損害賠償その他の処 分の請求は,することができない(同法22条1項)。このため,請求2 −1に係る訴えの準拠法をいずれの地の法と考えるとしても,被控訴人に よる別件米国訴訟の提起及び追行につき日本法により不法行為といえる 必要があることになる。そこで,以下,この点につきまず検討する。
イ 別件米国訴訟は,被控訴人が勝訴して確定するに至っており,このよう な場合に,訴えの提起や追行が不法行為となるためには,確定判決の騙取 が不法行為となる要件,すなわち判決の成立過程において,被控訴人が控 訴人の権利を害する意図のもとに,作為又は不作為によって控訴人の訴訟 手続に対する関与を妨げ,あるいは虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔す\nる等の不正な行為を行い,その結果,本来あり得べからざる内容の確定判 決を取得したこと(最高裁判所昭和43年(オ)第906号同44年7月 8日第三小法廷判決・民集23巻8号1407頁),ないしはこれに準ず る特段の事情を要すると考えるのが相当である。そもそも,法的紛争の当 事者が当該紛争の終局的解決を裁判所に求め得ることは,法治国家の根幹 に関わる重要な事柄であるから,訴えの提起や追行が不法行為を構成する\nか否かを判断するに当たっては,裁判制度の利用を不当に制限する結果と ならないような慎重な配慮が必要とされるのであり,民事訴訟を提起した 者が敗訴の確定判決を受けた場合ですら,当該訴えの提起が相手方に対す る違法な行為となるには,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法 律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者が,そのことを 知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに あえて訴えを提起し,又はそれを維持したなど,訴えの提起・追行が裁判 制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められることを要す ると理解されている(63年判決)のであるから,民事訴訟を提起した者 が勝訴の確定判決を受けている場合には,前示のとおり,より高次の特段 の事情を要するというべきである。
これを前提にして本件を見れば,引用に係る原判決第2の1(補正後の もの)及び第3の1(2)イで認定された事実関係に照らせば,本件が,確定 判決の騙取が不法行為となる要件ないしはこれに準ずる特段の事情どこ ろか,民事訴訟を提起した者が敗訴した場合の要件すら満たし得ないもの であることは明らかというべきである(なお,別件米国訴訟においてAが 意図的な偽証をしていたとまで認めることは困難であり,また,その偽証 に基づき被控訴人が別件米国訴訟を追行していたともいい難いことは,前 記1(2)において判示したとおりである。)。 以上のとおりであるから,被控訴人による別件米国訴訟の提起・追行が 不法行為となるとはいえない。
(2) 小括
以上によれば,請求2−1に係る訴えの準拠法をいずれの地とした場合 でも,日本法によれば,被控訴人による別件米国訴訟の提起及び追行につ き,控訴人に対する不法行為は成立しない以上,損害賠償その他の処分の 請求をすることはできない。 したがって,その他の点について判断するまでもなく,請求2−1は理 由がない。
5 請求2−2に係る訴えの準拠法(争点2)及び本件許諾契約に基づく被控訴 人の控訴人に対する本件各特許権不行使債務の不履行の有無(争点7)につい て
(1)準拠法について
本件許諾契約には,その成立及び効力に係る準拠法を明示的に定めた規定 はない。もっとも,本件許諾契約により参加人に対する独占的通常実施権の 許諾を行う被控訴人は,日本に主たる事務所を有する日本法人であること等 を踏まえれば,本件許諾契約の効力の準拠法は,その最密接関係地である日 本法とするのが相当である(通則法8条2項,1項)。
(2) 債務不履行の有無について
控訴人は,前記第2の3(4)アのとおり,参加人と被控訴人との間で締結さ れた第三者のためにする契約の効果又は参加人が本件各特許発明について再 実施許諾する権限に基づき控訴人に本件各特許権の再実施を許諾したことに より,控訴人は本件各発明について実施権を有し,被控訴人は控訴人に対し 本件各特許権を行使しない義務を負っているところ,これに反して被控訴人 が別件米国訴訟を提起したことが控訴人に対する債務不履行となると主張す る(なお,控訴人のこの点に係る請求は,被控訴人が別件米国訴訟を提起, 追行したことにより生じた弁護士費用相当額の損害賠償である。)。 しかし,控訴人の特許権者の実施権者に対する提訴が債務不履行となると すれば,それは実質的には訴権の放棄に等しい効果をもたらすものであるか ら,特許権者が実施権者に不提訴義務を負うことが前提となるというべきで ある。仮に参加人からの機械装置の購入者が,本件許諾契約に基づき,本件 各特許発明について実施権を取得し,それが被控訴人に主張できるものであ るとしても,そのことは,被控訴人が購入者に対し差止請求権や損害賠償請 求権を行使して訴えを提起しても,抗弁が成立して請求が棄却されることを 意味するだけで,当然に被控訴人に参加人からの機械装置の購入者に対する 訴えの提起をしない義務を負わせるものとはいえない。 本件許諾契約には,参加人から機械装置を購入して本件各特許発明(製法 特許)を実施した者に対する不提訴義務が規定されていないことはもちろん, 参加人に対する不提訴義務についても規定されていない。事情が変更する可 能性があり,様々な形態をとり得る特許権者と実施権者ないし実施権者から\nの機械装置の購入者の将来の紛争について,明文の規定もなく不提訴の合意 があったと軽々に認めることはできない。控訴人は本件許諾契約の当事者で はなく,当時存在もしていなかったのであるから(控訴人の成立は,原判決 第2の1(1)アのとおり,2008年〔平成20年〕4月頃である。),なお さら,本件許諾契約が控訴人に対する不提訴義務を定めていると認めること はできない。その他に,本件において,不提訴の合意があったことを裏付け るに足りる事情は見当たらない。 したがって,その他の点について判断するまでもなく,本件において被控 訴人の控訴人に対する不提訴義務は認められず,被控訴人が別件米国訴訟の 提起をしたことについて,債務不履行が成立する余地はないというべきであ る。
(3) 小括
以上のとおり,被控訴人が別件米国訴訟を提起したことについて債務不履 行は認められず,請求2−2は理由がない。

◆判決本文

1審はこちら。

◆平成30(ワ)5041

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令和3(ワ)12332  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 令和3年10月15日  東京地方裁判所

ログインに関する本件発信者情報がプロバイダ責任制限法4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」に該当すると判断されました。

 上記認定事実によれば,本件アカウントにログインした者が本件各投稿をす ることによって,下記2において説示するとおり,原告の権利を侵害したもの と認めるのが相当である。そうすると,ログインに関する本件発信者情報は, 上記侵害の行為をした発信者を特定する情報であるといえるから,「権利の侵 害に係る発信者情報」に該当するものと認めるのが相当である。 これに対し,被告は,本件発信者情報が本件アカウントにログインした者の 情報にすぎず,本件各投稿を行った本件発信者の情報ではないことからすると, 本件発信者情報は「権利の侵害に係る発信者情報」に該当しないと主張する。 しかしながら,本件発信者情報は本件各投稿を行った本件発信者の情報であ るといえることは,上記において説示したとおりであり,被告の主張は,その 前提を欠く。のみならず,プロバイダ責任制限法4条の趣旨は,特定電気通信 による情報の流通によって権利の侵害を受けた者が,情報の発信者のプライバ シー,表現の自由,通信の秘密に配慮した厳格な要件の下で,当該特定電気通\n信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対し て発信者情報の開示を請求することができるものとすることにより,加害者の 特定を可能にして被害者の権利の救済を図ることにある(最高裁平成21年\n(受)第1049号同22年4月8日第一小法廷判決・民集64巻3号676 頁参照)。そうすると,アカウントにログインした者が,権利の侵害に係る情 報を送信したものと認められる場合には,侵害情報の送信時点ではなく,アカ ウントにログインした時点における発信者情報であっても,「権利の侵害に係 る発信者情報」に該当するものと認めるのが相当である。そうすると,被告の 主張は,上記判断を左右するに至らない。

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令和1(ワ)15716等  競業行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年10月29日  東京地方裁判所

 商標権の行使が権利濫用と認定されました。原告Aと被告Bが婚姻していたなど特殊事情があります。

 証拠(乙4,75)及び弁論の全趣旨によれば,原告商標は被告ら標章1 と同一であること,Bは,遅くとも,母であるDが亡くなった平成19年以 降,本件商号を用いて貸画廊を運営しており,平成21年以降は,被告ら標 章1を使用していたこと,原告において本件営業譲渡契約が締結されたと主 張する平成27年2月当時,本件商号及び被告ら標章1には原告独自の信用 が化体しておらず,むしろ,それらが正当に帰属すべきはBであったと認め られる。
これに対し,原告は,本件営業譲渡によって,Bから本件商号を含め本件 画廊に関する全ての権利を譲り受けていると主張するが,前記1のとおり, 本件営業譲渡契約の成立は認められないから,平成30年1月30日の原告 商標の登録出願がされた時点においても,本件商号及び被告ら標章1に原告 独自の信用が化体していたとは認められず,これらが正当に帰属すべきはB であったと認めるのが相当である。 そうすると,原告が,Bに対して,原告商標権に基づく差止及び廃棄請求 並びに商標権侵害による損害賠償請求を行うことは,権利の濫用に該当して 許されないというべきである。また,弁論の全趣旨によれば,被告会社は, Bが代表者を務め,Bと一体になって被告ら標章1を使用しているものと認\nめられるから,原告が,被告会社に対して,原告商標権に基づく差止及び廃 棄請求を行うことも,同様に権利の濫用に該当するというべきである。

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平成31(ネ)10008 不正競争防止法に基づく差止・損害賠償請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和3年3月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 漏れていたのでアップします。 卵子及び胚の100%の生存率が達成できるとの記載が不競法2条1項20号の不正競争に当たるが争われました。1審は該当せずと判断しましたが、知財高裁は品質誤認を認めました。損害賠償額は、5条2項による被控訴人(1審被告)の利益額として推定がなされ、被控訴人が書類の提出を拒んだため、控訴人(1審原告)の主張がそのまま認められたものの、覆滅が95%として、5%が損害額です。

前記第2の2で判示したとおり被告サイト1には本件表示1〜6が記載されているほか,前記1(2)アで認定した記載がされている。 不妊治療において,治療用の器具を使用する際は,当該器具の使用方法に従うこ とは当然であることを考慮すると,被告サイト1の上記記載を閲覧した医療関係者 は,被告サイト1に記載された本件表示1〜6は,医療関係者が,クライオテック法のプロトコールを遵守して,被告製品を使用して正常な卵子,胚及び胚盤胞,す\nなわち,臨床において使用可能な卵子,胚及び胚盤胞(以下「正常な卵子」などという。)の凍結保存をした場合,融解後の生存率は100%となるという意味であ\nると認識するものと認められる。
・・・
ア 控訴人は,令和2年9月7日,法7条に基づき,平成30年7月26日 から令和2年7月31日までの間の1)貸借対照表・損益計算書・法人事業概況説明書を含む決算報告書,2)営業報告書,3)確定申告書控え(添付書類を含む),4)総 勘定元帳,5)売上元帳,6)仕入元帳を提出対象の書類とし,上記期間の被告製品に よって乳児が出生される年間の件数は2万8333件であること,乳児一人の出生 に必要な被告製品一式の販売価格は7733円であること及び被告製品の利益率は 70%であることを証すべき事実として,書類提出命令の申立てをしたところ,当裁判所は,同年10月9日,送達日から14日以内に上記申\立てに係る書類の提出を命じる旨の決定をしたが,被控訴人は,提出期限までに上記の各書類を提出しな かった。 そして,上記の各書類の記載に関して具体的な主張をすること及び上記の各書類 によって証明すべき事実を他の証拠によって証明することは,著しく困難であると 認められる。
したがって,民訴法224条3項により,控訴人が,被告広告によって受けた損 害の賠償請求期間として主張している平成27年7月26日から令和2年7月31 日までの間における被告製品によって乳児が出生される年間の件数は2万8333 件であること,乳児一人の出生に必要な被告製品一式の販売価格は7733円であ ること及び被告製品の利益率は70%であることは真実と認められる。 なお,前記2〜4のとおり,被告広告に本件記載部分を含む本件各表示を表\示す る行為は,法2条1項20号の不正競争に当たり,被控訴人は,同不正競争につい て,控訴人に対し損害賠償責任を負うものと認められるところ,上記の書類提出命 令に係る書類は,いずれも,被控訴人の上記不正競争によって控訴人の受けた損害 を算定するために必要であること,被控訴人は,上記書類の提出によって受ける損 害について特段の主張をしていないことからすると,上記の書類提出命令について, 被控訴人において,書類の提出を拒む正当な理由があるとは認められない。 イ 被控訴人は,被告製品を購入した者は,被告製品を実際に使用してみて 購入したのであり,被告広告に接したことによって被告製品を購入したのではない こと,被告製品の性能,品質は原告製品よりも優れていること,控訴人の売上げ,利益は減少していないことを理由に,被控訴人は,被告広告によって利益を受けた\n事実は認められないと主張する。 しかし,前記アのとおり,法5条2項の「侵害の行為により・・・受けてい る・・・利益の額」は,侵害行為と相当因果関係のある利益を意味するのではなく, 侵害者が得た利益の全額を意味するのであり,本件においては,上記「利益の額」 は,本件記載部分を含む本件各表示を掲載した被告広告を表\示している期間中に, 本件各表示によってその品質等が示されている被告製品を販売したことによって被控訴人が受けた利益の全額であるというべきであるから,被控訴人の上記主張は理\n由がない。
(3) 推定の覆滅について
ア 前記1(3)のとおり,被控訴人の営業活動は,主に,営業担当者が被告 製品の購入が見込まれる不妊治療施設を訪問して行うというものであるから,その ような営業活動において,被告広告が利用されることがあるとしても,被控訴人の 営業活動にとって,広告の占める程度は小さいといえる。 しかし,そうであるとしても,被告広告に記載された本件各表示に接することにより,被告製品の購入を検討するようになり,前記1(3)のとおり,所属の培養士 を技術講習会(ワークショップ)に参加させ,その結果,被告製品を購入する不妊 医療施設が存在するものと推認され,このような意味において,本件各表示は,被告製品の購入動機に影響を与えている場合があるというべきである。もっとも,そ\nの場合であっても,技術講習会(ワークショップ)における被告製品の使用感等が 被告製品を購入しようとの意思決定をするに当たって重視されるものと考えられる から,本件各表示の影響は相当程度限定的であるというべきである。また,本件製品は継続的に使用されるものであるから,原告製品や被告製品の販\n売の多くは,既に,同製品を購入して,同製品を使用している不妊医療施設に対す るものであると認められるところ,「生存率100%」が実現できるかは,客観的 に判明し,被告製品を使用している者にとっては,その真偽を比較的容易に認識し 得るといえることからすると,被告製品を継続的に購入し,使用している不妊医療 施設が購入の更なる継続をしようとの意思決定をするに当たっては,「生存率10 0%」などの本件記載部分に影響を受けることはないというべきである。 以上の事情を総合考慮すると,被告製品の売上げに対する被告広告の貢献の程度 は,かなり小さいといわざるを得ない。
また,前記1(9)のとおり,日本において販売されている本件製品のほとんどは, 原告製品又は被告製品であるが,海外においては,原告製品と被告製品が競合して いるインドのシェアは,被告製品が18%,原告製品が54%であり,原告製品と 被告製品が競合しているロシアのシェアは,被告製品が15%,原告製品が60% である。そうすると,法5条2項の推定が一部覆滅され,その割合は95%であると解するのが相当である。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成30(ワ)22646
以上によれば,研究報告1ないし5によっては,手順を厳密に遵守して被 告製品を用いて卵子を凍結保存し融解したとしても100%の生存率を達成 することができないとは認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠も ないから,被告から提出された証拠(乙4ないし10)の内容も考慮すれば, 本件記載部分を含む本件各表示が被告製品の需要者である医療関係者や研究者をしてその品質等を誤認させるおそれがあるとは認めるに足りない(なお,\n本件記載部分の表現については,紛争予\防の観点から,研究報告1ないし5 の内容も踏まえ,より慎重に検討することが望まれる。)。

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平成31(ワ)2534  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 令和3年11月11日  大阪地方裁判所

 自然保護センターのインターネット展示システムについて著作物性があるかが争われました。大阪地裁は著作物性無しと判断しました。

ア 著作物とは,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,\n美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(法2条1項1号)。したがって,著作 物といえるためには,思想又は感情を表現したものであること,その表\現に創作性 があること,文学,学術,美術又は音楽の範囲に属するものであることを要する。
イ 前提事実及び前記認定に係る各事実によれば,原告は,旧展示システムから の移行として本件展示システムを構築するに当たり,本件購入契約及び本件構\築契 約に基づき,本件展示システムの機能を実現するために必要な機能\を選定し,性能,\nセキュリティ対策ないし費用等の面から必要かつ最適と考えるサーバ機器及びネッ トワーク機器等を,その組合せも踏まえた上で選定し,各機能等を分担させて本件\n展示システムを構築することとして,本件サーバ設計書を改訂し,これに基づき,\n本件展示システムを構築したことが認められる。\nもっとも,本件サーバ設計書と本件展示システム自体とはその表現形式を異にす\nることから,本件展示システムの著作物性の有無は,本件サーバ設計書の著作物性 とは別個に検討する必要がある。すなわち,本件展示システム自体につき著作物性 が認められるためには,本件サーバ設計書を離れてなお固有の創作性が認められる 必要がある。 しかるに,本件展示システム自体は,いわば本件サーバ設計書の記載 を技術的・機械的に具体化したものにとどまるものというべきであって,固有の創 作性があると見るべき部分に関する具体的な主張立証はない。そうである以上,本 件展示システム自体をもって創作的な表現と見ることはできない。\nしたがって,本件サーバ設計書の表現の創作性すなわち著作物性の有無に関わり\nなく,本件展示システム自体をもって著作物ということはできない。
ウ これに対し,原告は,本件展示システムは本件サーバ設計書とは独立して外 部に表出された著作物である旨などを主張する。\nしかし,本件展示システムが本件サーバ設計書の記載のとおりに構築されたもの\nであることは,原告自身も認めるところである。原告が本件展示システム自体の創 作性の表現として縷々主張するものも,本件サーバ設計書の記載に基づき実現され\nているものと理解されるのであって,前記のとおり,これを離れて本件展示システ ムに固有の創作性があると見るべき部分についての具体的な主張立証はない。また, 本件保守管理仕様書には「生物情報データベースフォーマット,及び,WebGIS」 の著作権が原告に帰属する旨の記載があるものの,著作物性の有無は当事者間の契 約条項の記載によって決定されるものではない。そもそも,上記記載が示すものと 本件展示システム自体との関係性に関する具体的な主張立証はなく,両者の異同そ の他の関係性は不明というほかない。 その他原告が縷々指摘する事情を考慮しても,この点に関する原告の主張は採用 できない。
(3) 小括
以上のとおり,本件展示システム自体の著作物性は認められない。したがって, 原告は,本件展示システム自体に係る著作者人格権(同一性保持権)を有しないか ら,その余の点を論ずるまでもなく,被告に対する著作者人格権に基づく差止及び 廃棄請求権を有しない。
ア 本件サーバ設計書1頁にはネットワーク構成図等が記載されているところ\n(前記1(1)エ(イ)),本件展示システムが ADSL 回線と本件ルータを接続すること により外部ネットワークと接続することは,本件購入仕様書及び本件構築仕様書に\nも,システム構成として記載されている。また,同頁記載の各端末に割り当てられ\nたグローバル IP アドレスは,本件サーバ設計書を見ずとも,所定の手順を履践す ることにより確認可能なものである。また,本件サーバ設計書15頁には,「項目\n名設計」の項に本件ルータの初期パスワード及び変更後パスワードが記載されてい るところ(前同),このうち,初期パスワードは本件説明書にも記載がある。さら に,本件サーバ設計書17頁には,「ルータ・ファイアウォール設定コマンド」の 項の「パケットフィルタリング」に関する記載があるところ(前同),本件展示シ ステムにおいてファイアウォール機能がパケットフィルタリングにより行われるこ\nとは,本件購入仕様書及び本件構築仕様書にも記載されている。加えて,本件ルー\nタがファイアウォール機能を有することやそのファイアウォールポリシーの詳細な\n設定情報,ルータの設定コマンド等は一般に公開されている(乙1,3〜5)。し かも,「パケットフィルタリング」記載の設定方法は,メーカーが一般に公開して いる設定例集(乙5)記載の設定例と,サーバの IP アドレスを異にするに過ぎな い。
そうすると,本件展示システムにつき外部との接続を遮断するために必要な情報 のうち,本件サーバ設計書を参照しなければ被告及び外部業者が把握し得ないもの は,本件ルータの変更後パスワード及び開放されているポート番号である。これに, 確認に所定の手順を要するIPアドレスをも含むとしても,サーバのIPアドレス及 び本件ルータの変更後パスワードは,本件展示システムに固有のものと思われるこ とから,これらの情報が第三者との関係で秘密として保持されることにつき,原告 にとっての有用性ないし固有の利益があるとは考え難く,少なくともこれがあるこ との具体的な主張立証はない。また,本件サーバ設計書17頁には,開放済みポー ト番号として本件閉鎖行為により閉鎖された80,25及び53のほか,110, 143,123も記載されているが,これらも含め,いずれも代表的なポート番号\nとされるものであるから(乙14),これらの情報についても,秘密として保持さ れることにつき原告にとっての有用性ないし固有の利益があるとは考え難い。 そうすると,被告の外部業者に対する本件開示行為(本件サーバ設計書1頁,1 5頁及び17頁の開示)につき,原告の法的に保護すべき権利ないし利益を侵害す るものとはいえない。 したがって,本件開示行為をもって,被告による国家賠償法上の違法行為と認め ることはできない。
イ これに対し,原告は,本件開示行為により,本件サーバ設計書記載の原告の 秘密情報を保持する権利ないし利益が侵害された旨及びこれにより本件展示システ ムの基となっている基礎システムを使用する他の顧客のシステムについてセキュリ ティ対策を施す必要が生じ,損害を受けた旨などを主張する。 しかし,前記のとおり,本件開示行為により開示された情報は,いずれも公開さ れたものであるか,原告にとって有用性ないし固有の利益がある情報とはいえない。 また,損害の点についても,他の顧客に対する連絡・周知文書や対策として調達し たとする機器の購入の裏付資料といった客観的な証拠はない。 その他原告が縷々主張する事情を考慮しても,この点に関する原告の主張は採用 できない。

◆判決本文

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令和3(ネ)10057  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年11月17日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 原告が、共同発明者か否かかが争われました。1審、控訴審とも発明者ではないと判断しました。

控訴人は,1)平成22年6月24日,3本スリットフィンの風上側 のスリットをなくすことにより座屈強度の向上を図ることができること を着想し,同日,Eに対し,フラットフィンの強度計算をFにしてもら うように指示し,その後,2本スリットフィンの座屈強度計算もFにし てもらうように指示したこと,2)その結果,2本スリットフィンの座屈 強度は当初フィンの2.5倍で,フラットフィンとほぼ同一であったが, Eは,2本スリットでは伝熱性能が低下するとして,3本のスリットを\n風下側に押し込めることを提案し,控訴人はこれを承諾したこと,3)そ の後,控訴人及びEによる試験を経て,同年7月下旬頃,本件発明が完 成したことを主張する(本判決による補正後の原判決4頁21行目から 5頁20行目まで)。
(イ) そこで,前記(ア)の控訴人の主張について検討する。
控訴人は,控訴人メール1において,Eに対し,フラットフィンの座 屈強度の解析を指示し,Eは,Eメールにより,●(省略)●を報告し た。しかし,それらの●(省略)●に記載されていたものであり(前記 (3)ケ(イ)),このうち●(省略)●に提出されたものであり(前記キ),E らが住環研において●(省略)●を示すものであった。
また,控訴人は,Eメールに対して返信した控訴人メール2において, ●(省略)●と記述したが,これは,Eメールに示された●●を見て, 控訴人がその時に,●(省略)●と認識したというにとどまるものと認 められ,それをもって,控訴人が,Eらに先んじて,当初フィンを2本 スリットフィンに変えることを着想したとはいえない。 さらに,控訴人がEに対して2本スリットフィンの座屈強度計算を指 示したことを認めるに足りる証拠はなく,Eが3本のスリットを風下側 に押し込めることを提案し,控訴人がこれを承諾したこと,その後,控 訴人及びEによる試験を経て,平成22年7月下旬頃,本件発明が完成 したことなどの控訴人の主張に係る事実を認めるに足りる証拠もない。 そうすると,仮に,伝熱性能を確保しつつ座屈強度を向上させるため\nに2本スリットフィンとすることが本件発明の特徴的部分に係る着想で あるとしても,控訴人がそれを着想したとは認められず,控訴人は,本 件発明の発明者とは認められない。

◆判決本文

1審はこちら。

◆令和1(ワ)5059

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令和2(ワ)10386  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 令和3年11月25日  大阪地方裁判所

 意匠権侵害、不競法2条1項3号の商品形態模倣が争点です。大阪地裁は意匠は類似していない・模倣でもないと判断しました。

ウ 原告商品1−1と被告商品との共通点及び差異点
原告商品1−1と被告商品の各形態を対比すると,原告商品1−1の基本的形態 の全て及び具体的形態 T1-1-3 と,被告意匠の基本的形態の全て及び具体的形態 t3 が 共通点であり,それ以外の形態が差異点であると認められる。 すなわち,原告商品1−1と被告商品の各形態とは,差異点2)’,3)’,5)’〜12)’の ほか,具体的形態 S1-1-3 と s3 につき,原告商品1−1では,中空部中央に位置する 円形板から細い48本の直線状のファンガードが放射状に円筒状中空部下面とほぼ 面一に形成されている(S1-1-3)のに対し,被告商品では,中空部中央に位置する円 形板から細い36本の湾曲線状のファンガードが放射状に円筒状中空部下面とほぼ 面一に形成されている(s3)点で相違する(差異点 C)。
エ 検討
原告商品1−1と被告商品の各形態の差異点のうち,差異点2)’,3)’,6)’〜10)'及 び C は,原告意匠と被告意匠の差異点2),3),6)〜10)及び A と同じである。そうで ある以上,少なくとも差異点3)’,6)’,8)’,9)’及び C については,原告意匠と被告意匠とが差異点3),6),8),9)及び A により異なる美感を生じるのと同様に,原告 商品1−1と被告商品の各形態につき,需要者に異なる美感を生じさせるものとい える。また,これらの差異点の存在にもかかわらずなお両商品の形態が酷似し,実 質的に同一というべき事情は見当たらない。 したがって,原告商品1−1と被告商品の各形態は実質的に同一であるとは認められないから,被告商品は,原告商品1−1の形態を模倣したものということはできない。これに反する原告の主張は採用できない。

◆判決本文

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令和2(ネ)10029  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年11月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審はサポート要件違反として無効と判断しましたが、控訴審は約360万円の損害賠償を認めました。

イ 原告は,1)本件発明1の「該平均重合度が,該セルロース粉末を塩酸2. 5N,15分間煮沸して加水分解させた後,粘度法により測定されるレベ ルオフ重合度より5〜300高いこと」との要件(差分要件)は,「該セル ロース粉末」に関するレベルオフ重合度との差分であるにもかかわらず, 本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたレベルオフ重合度は,いずれ も「原料パルプ」のレベルオフ重合度であって,実施例及び比較例の「該 セルロース粉末」のレベルオフ重合度は不明であること,BATTIST A論文の記載に照らすと,「該セルロース粉末」と「原料パルプ」のレベル オフ重合度が同じであるとは認められないことからすると,本件明細書の 発明の詳細な説明の記載から,差分要件の数値範囲において,本件発明の 1の課題を解決できると当業者が認識することはできない,2)仮に本件審 決が認定するように「該セルロース粉末」のレベルオフ重合度は,「原料パ ルプ」のレベルオフ重合度より100低いと仮定した場合,実施例2ない し6において示されている差分の範囲は150〜255であり,その下限 値は150であること,差分5ないし10という数値は,粘度法による重 合度測定の誤差の範囲のレベルであり,実質的にはレベルオフ重合度との 差分を技術的有意性をもって認識することはできないこと,当業者は,差 分要件の作用機序の技術的意味を理解できないことからすると,本件明細 書記載の差分が150以上の実施例のデータのみをもって,測定誤差のレ ベルである差分5ないし10を下限とする差分要件の数値範囲の全体に わたり本件発明1の課題を解決できると認識することはできないとして, 本件発明1はサポート要件に適合しない旨主張するので,以下において判 断する。
(ア) 本件発明1の「レベルオフ重合度」の意義について
本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,本件発明1の「レベ ルオフ重合度」の意義について規定した記載はないが,本件明細書の【0 015】に,「本発明でいうレベルオフ重合度とは2.5N塩酸,沸騰温 度,15分の条件で加水分解した後,粘度法(銅エチレンジアミン法) により測定される重合度をいう。」との記載がある。 上記記載は,本件発明1の「レベルオフ重合度」を定義したものとい えるから(前記6(1)イ),本件発明1の「レベルオフ重合度」とは,2. 5N塩酸,沸騰温度,15分の条件で加水分解した後,粘度法(銅エチ レンジアミン法)により測定される重合度」をいうものと解される。 なお,本件明細書の【0015】には,レベルオフ重合度に関し,「セ ルロース質物質を温和な条件下で加水分解すると,酸が浸透しうる結晶 以外の領域,いわゆる非晶質領域を選択的に解重合させるため,レベル オフ重合度といわれる一定の平均重合度をもつことが知られており(I NDUSTRIAL AND ENGINEERING CHEMIST RY,Vol.42,No.3,p.502−507(1950)),その 後は加水分解時間を延長しても重合度はレベルオフ重合度以下にはなら ない。従って乾燥後のセルロース粉末を2.5N塩酸,沸騰温度,15分 の条件で加水分解した時,重合度の低下がおきなければレベルオフ重合 度に達していると判断でき,重合度の低下が起きれば,レベルオフ重合 度でないと判断できる。」との記載がある。上記記載中の「乾燥後のセ ルロース粉末を2.5N塩酸,沸騰温度,15分の条件で加水分解した時, 重合度の低下がおきなければレベルオフ重合度に達していると判断でき, 重合度の低下が起きれば,レベルオフ重合度でないと判断できる。」と の記載部分は,本件出願当時,「レベルオフ重合度」とは,セルロースを 酸加水分解すると,その重合度は,酸加水分解初期に急激に200−3 00に低下した後ほぼ一定になり,このほぼ一定になった重合度を意味 することは技術常識であったこと(前記(1)イ(ア))に照らすと,レベルオ フ重合度に達しているか否かの一般的な判断基準を示したものではない ものと理解できる。
(イ) 1)について
a 本件明細書には,実施例2ないし7及び比較例1ないし11のセル ロース粉末について,それぞれの原料パルプ(市販SPパルプ,市販 KPパルプ等)のレベルオフ重合度が記載されている(【0039】な いし【0047】)。 前記(1)イ(ア)のとおり,本件出願当時,酸加水分解時に,非結晶部 分は酸で分解されやすいが,結晶部分は分解されず残り,残った部分 の化学構造と結晶構\造は,原料セルロースのままであって,分解され ずに残った部分の結晶領域の長さが「レベルオフ重合度」に対応する ことは技術常識であったことを踏まえると,本件明細書の上記実施例 及び比較例記載のセルロース粉末のレベルオフ重合度は,原料パルプ のレベルオフ重合度とおおむね等しいものと理解できる。 この点に関し磯貝明作成の令和2年9月11日付け意見書(乙72) 中には,「3桁のLODPを報告するときの有効数字は2桁とするのが 一般的であるが,実際のところ,2桁目,3桁目の精度は無いといっ ていほどバラバラになるので,LODPについて十の桁,一の桁を議\n論することは技術的に意味がない。そして,同一のセルロースでもL ODPは酸加水分解条件等によって変化することも常識である,その ため,例えば,市販の木材パルプのLODPを測定したとしても,そ の木材パルプを原料として酸加水分解したセルロース粉末のLODP については,やはり実際に測定してみなければわからず,原料である 木材パルプと同一になるとは推測できないばかりか,具体的にいかな る値になるかも推測することはできない。」との記載部分がある。 しかしながら,他方で,上記意見書中には,「LODPとは「セルロ ース試料を酸で加水分解処理した残渣の重合度が一定時間(・・・)経過 しても”ほぼ”一定になる現象」であると述べる部分や,「BATTI STA論文でも同様であるが,「ほぼ一定になる」という現象を示す以 上に,例えば,「平均重合度が下がりきっている(これ以上全く低下し ない)」という含意はない。」,「「一定」といっても過酷な条件であれば 少なくとも2時間程度は更なる酸加水分解によって平均重合度が緩や かに低下していくことは常識である。」,「こうした変化も含めて200 〜300程度の粗い幅で「ほぼ一定」と言っているのである。」と述べ る部分がある。
これらを総合すると,上記意見書の上記記載部分は,市販の木材パ ルプのLODPとその木材パルプを原料として酸加水分解したセルロ ース粉末のLODPとの間における「かなり程度の高い同一性」を問 題とした上で,木材パルプを原料として酸加水分解したセルロース粉 末のLODPについては,原料である木材パルプと同一になるとは推 測できない旨を述べたにとどまるものというべきであるから,上記記 載部分によって,本件明細書の実施例及び比較例記載のセルロース粉 末のレベルオフ重合度が原料パルプのレベルオフ重合度とおおむね等 しいものと理解できるとの上記判断を左右するものではない。
b 加えて,本件明細書の表4には,実施例2ないし7及び比較例1な\nいし11のセルロース粉末の平均重合度の記載があることからすると, 本件明細書に接した当業者は,上記セルロース粉末が差分要件を満た すかどうかを把握できるものと解される。 また,本件明細書の表4には,「平均重合度」,「粒子の平均L/D(長\n径短径比)」,「平均粒子径」,「見掛け比容積」,「見掛けタッピング比容 積」,「安息角」及び「平均重合度とレベルオフ重合度との差分」(差分 要件)のいずれもが本件発明1の数値範囲内にある実施例2ないし7 のセルロース粉末の円柱状成形体とそのいずれかが本件発明1の数値 範囲外である比較例1ないし11とのセルロース粉末の円柱状成形体 について,平均降伏圧[MPa],錠剤の水蒸気吸着速度Ka,硬度[N] 及び崩壊時間[秒]が示されている。 そして,実施例2ないし7のセルロース粉末は,いずれも,安息角 が55°以下,錠剤硬度が170N以上,崩壊時間が130秒以下で あり,ここで,安息角は,55°を超えると,流動性が著しく悪くな り(【0018】),錠剤硬度は成形性を示す実用的な物性値であり,1 70N以上が好ましく(【0019】),崩壊時間は崩壊性を示す実用的 な物性値であり,130秒以下が好ましい(【0019】)のであるか ら,実施例2ないし7のセルロース粉末は,成形性,流動性及び崩壊 性の諸機能をバランスよく併せ持つセルロース粉末であるということ\nができる。
したがって,当業者は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び 本件出願時の技術常識から,実施例2ないし7のセルロース粉末は, 本件発明1の課題を解決できると認識できるものと認められるから, 1)は採用することができない。
(ウ) 2)について
本件明細書には,「平均重合度はレベルオフ重合度ではないことが好ま しい。レベルオフ重合度まで加水分解させてしまうと製造工程における 攪拌操作で粒子L/Dが低下しやすく成形性が低下するので好ましくな い。」(【0015】),「レベルオフ重合度からどの程度重合度を高めて おく必要があるかということについては,5〜300程度であることが 好ましい。さらに好ましくは10〜250程度である。5未満では粒子 L/Dを特定範囲に制御することが困難となり成形性が低下して好まし くない。300を超えると繊維性が増して崩壊性,流動性が悪くなって 好ましくない。」(【0016】),「セルロース質物質をレベルオフ重合 度まで加水分解してしまうと,製造工程における攪拌操作で粒子L/D が低下しやすく成形性が低下するので好ましくない。・・・セルロース分散 液の粒子は乾燥により凝集し,L/Dが小さくなるので,乾燥前の粒子 の平均L/Dを一定範囲に保つことで高成形性でかつ崩壊性の良好なセ ルロース粉末が得られる。」(【0021】)との記載がある。 これらの記載から,セルロース粉末がレベルオフ重合度まで加水分解 されてしまうと,乾燥前のセルロース粒子のL/Dが低下しやすく,そ の後の乾燥工程でセルロース粒子が凝集して,得られるセルロース粉末 のL/Dが小さくなり,L/Dが小さくなると,成形性が低下すること を理解できる。 そして,本件発明1の差分要件は,レベルオフ重合度まで重合度が低 下しないように加水分解することを,セルロース粉末の平均重合度とレ ベルオフ重合度の差分(差分要件)で表し,その下限を「5」としたこ\nとを理解できるから,当業者は,本件発明1の差分要件の数値範囲の全 体にわたり,本件発明1の課題を解決できると認識できるものと認めら れる。 したがって,2)は採用することができない。
(エ) まとめ
以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件出願時 の技術常識から,当業者は,本件発明1の差分要件の数値範囲の全体に わたり,本件発明の課題を解決できると認識できるものと認められるか ら,本件発明1は,発明の詳細な説明に記載したものであることが認め られる。 また,これと同様の理由により,本件発明2も,発明の詳細な説明に 記載したものであることが認められる。

◆判決本文

1審はこちら

◆東京地裁平成29年(ワ)24598号
キ 以上によれば,本件差分要件は,粉末セルロースについての平均重合度 と本件加水分解条件下でのレベルオフ重合度の差に関するものであるところ,明細書の発明の詳細な説明には,実施例について,粉末セルロースの 本件加水分解条件でのレベルオフ重合度についての明示的な記載はなく,また,優先日当時の技術常識によっても,それが記載されているに等しい とはいえない。したがって,本件明細書の発明な詳細には,本件特許請求 の範囲に記載された要件を満たす実施例の記載はないこととなる。そうすると,本件明細書の発明な詳細において,特許請求に記載された 本件差分要件の範囲内であれば,所望の効果(性能)が得られると当業者において認識できる程度に具体的な例が開示して記載されているとはいえない。\n

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令和1(ワ)30282  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年11月29日  東京地方裁判所

 本件登録商標を使用していたとする虚偽の主張を行い,原告に対し本件連絡書を送付して損害賠償を請求し,本件仮処分命令申立てをしたという,IBEX社による一連の行為は,原告に対する故意による不法行為を構\成するとして、IBEX社の代表取締役に、約1600万円の損害賠償が認められました。

前記1(1)イ(ア)のとおり,原告は,従前から使用していたブランド である「Attractions」に係る原告標章を商標登録しよう と考え,本件弁理士に対し相談したところ,本件登録商標の存在が判 明したため,その取消請求をすることとした。こうした経緯に照らす と,原告は,今後「Attractions」のブランドを事業展開 するに当たり,原告標章の使用が本件商標権を侵害するおそれがあっ たことから,それを避けることを目的として上記取消請求をすること としたものと認められる。
また,証拠(原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,I\nBEX社との和解交渉が難航していたことや,原告代理人から,IB EX社が原告に対し保全命令を申し立て,原告の商品が差し押さえら\nれるなどする可能性があるとの説明を受けたことなどを契機として,\n平成29年7月末頃から「Attractions」のブランドの使 用を取り止めることを選択肢の一つとして検討し始めたこと,同年8 月8日頃にIBEX社から本件連絡書の送付を受けたため,「Att ractions」のブランドの使用を取り止め,別ブランドに変更 することを決定したこと,さらに,同年9月1日以降,実際に「At tractions」の商標を切り替える対応を採り,商標を切り替 えることができない本件在庫商品については販売の停止を決定したこ とが認められる。
さらに,前記(1)ア(ア)のとおり,平成28年9月1日から平成29 年8月31日までの会計年度における原告の売上高は1億0794万 2353円であると認められるのに対し,前記(1)ア(イ)のとおり,平 成29年8月31日の時点において原告が保有していた本件在庫商品 の販売価額は合計2875万7760円であると認められるから,こ れらの数値を基礎とすれば,本件在庫商品が原告の総売上高に占める 割合は26%余りであることになる。 以上のように,原告は,そもそも本件商標権を侵害するリスクを避 けるために本件審判請求事件に係る請求をしたところ,IBEX社が これを争い,同社の主張に沿う外観の証拠が提出され,その一方でI BEX社との手続外での和解交渉が難航していたことからすると,遅 くとも平成29年7月頃には,本件在庫商品を販売することにより本 件商標権を侵害し,原告の商品が差し押さえられるなどするリスクを 相当程度具体的に認識していたと認められる。そして,本件在庫商品 が原告の総売上高に占める割合が26%余りであったことからすると, これが差し押さえられた場合には原告の経営に大きな影響を及ぼす可 能性があったと認められる。こうした中で,本件連絡書を送付され,\nIBEX社から同年8月18日までの回答を迫られたという経緯に照 らせば,原告において,同年9月1日以降に「Attraction s」のブランドの使用を取り止めるという判断をするのはやむを得な いものであったというべきである。
以上によれば,IBEX社の前記1(2)の不法行為と原告の損害と の間に相当因果関係が認められることはもとより,被告に認められる 善管注意義務違反が,IBEX社の代表取締役としての権限を行使す\nることなく,Bらに業務を任せきりにし,IBEX社による上記不法 行為を惹起したというものであることに照らすと,被告の任務懈怠と 原告の損害との間にも相当因果関係があると認めるのが相当である。 b これに対し,被告は,原告が商標を切り替える対応を採り,本件在 庫商品の販売を取り止めるという行為に及んだのは,原告自身の経営 判断によるものであるとして,被告の任務懈怠と原告の損害との相当 因果関係は認められないと主張する。 しかし,原告の上記行為が経営判断に基づくものであるとしても, 前記 a で説示したとおり,それはやむを得ないものであったというこ とができ,むしろ,経営判断として合理的かつ自然なものであるとい うべきであるから,原告の経営判断が介在したことをもって,被告の 任務懈怠と原告の損害との間の相当因果関係を否定することはできな い。したがって,被告の上記主張を採用することはできない。 c また,被告は,IBEX社の経営を実質的に支配していたのはBで あり,被告がBの判断を翻意させることはできなかったから,被告の 任務懈怠と原告の損害との間には相当因果関係は認められないと主張 する。 しかし,前記1(1)アのとおり,被告は,Bの大学の同級生であり, IBEX社の経営会議やBとF弁護士との打ち合わせに同席するなど, 代表取締役として一応の役割を果たしていた。また,被告は同社の代\n表取締役であり,被告の他に同社には役員が選任されていなかったの\nであるから,法的には同社の業務に関する一切の権限を被告のみが有 しており,同社の代表取締役として,主体的に行動することは可能\で あったというべきである。したがって,被告は,IBEX社の一連の 不法行為により原告が損害を被ることについても,これを阻止するこ とができなかったとまではいえない。
以上によれば,被告が代表取締役としての任務を懈怠することなく,\n原告に不法行為による損害を与えないようにする善管注意義務を果た し,本件審判請求事件や本件仮処分命令申立て等について適切に対処\nしていれば,原告が主張する損害が発生していなかったということが できる。 してみると,IBEX社の経営をBが実質的に支配していたことか ら直ちに被告の任務懈怠と原告の損害との間の相当因果関係が否定さ れるものではなく,被告の上記主張は採用することができない。

◆判決本文

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平成27(ワ)547  不正競争行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成29年1月19日  大阪地方裁判所

 漏れていたのでアップします。メタタグが商標的使用になるかについて、ディスクリプションメタタグないしタイトルタグは該当、キーワードメタタグについては、該当せずと判断されました。

 被告のウェブサイトの html ファイル上の前記前提事実(4)ウ記載のコードのう ち,「<meta name=″keywords″content=″バイクリフター″>」との記載は,い わゆるキーワードメタタグであり,ユーザーが,ヤフー等の検索サイトにおいて, 検索ワードとして「バイクリフター」を入力して検索を実行した際に,被告のウェ ブサイトを検索結果としてヒットさせて,上記(1)のディスクリプションメタタグ 及びキーワードタグの内容を検索結果画面に表示させる機能\を有するものであると 認められる。このようにキーワードメタタグは,被告のウェブサイトを検索結果と してヒットさせる機能を有するにすぎず,ブラウザの表\示からソース機能\をクリッ クするなど,需要者が意識的に所定の操作をして初めて視認されるものであり,こ れら操作がない場合には,検索結果の表示画面の被告のウェブサイトの欄にそのキ\nーワードが表示されることはない。(弁論の全趣旨)\n
ところで,商標法は,商標の出所識別機能に基づき,その保護により商標の使用\nをする者の業務上の信用の維持を図ることを目的の一つとしている(商標法1条) ところ,商標による出所識別は,需要者が当該商標を知覚によって認識することを 通じて行われるものである。したがって,その保護・禁止の対象とする商標法2条 3項所定の「使用」も,このような知覚による認識が行われる態様での使用行為を 規定したものと解するのが相当であり,同項8号所定の「商品…に関する広告…を 内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」というのも,同号 の「広告…に標章を付して展示し,若しくは頒布し」と同様に,広告の内容自体に おいてその標章が知覚により認識し得ることを要すると解するのが相当である。 そうすると,本件でのキーワードメタタグにおける原告商標の使用は,表示され\nる検索結果たる被告のウェブサイトの広告の内容自体において,原告商標が知覚に より認識される態様で使用されているものではないから,商標法2条3項8号所定 の使用行為に当たらないというべきである。
これに対し,原告は,インターネットの検索サイトの利用者がサーチエンジンに キーワードとして原告商標を入力した際にサーチエンジンを通じて被告ホームペー ジでのメタタグ表記を視認しているといえることから,被告による原告商標のメタ\nタグ使用は,商標的使用に当たると主張する。しかし,検索サイトにおける検索キ ーワードと検索結果との関係にさまざまな濃淡があることは周知のことであること からすると,検索結果画面に接した需要者において,検索キーワードをもって,検 索結果として表示された各ウェブサイトの広告の内容となっていると認識するとは\n認め難いから,検索キーワードの入力や表示をもって,キーワードメタタグが,被\n告のウェブサイトの広告の内容として知覚により認識される態様で使用されている と認めることはできない。
(3) よって,被告標章1のディスクリプションメタタグないしタイトルタグへの 記載は商標的使用に当たり,侵害行為であると認められるが,原告商標のキーワー ドメタタグへの使用については,これを商標的使用に当たると認めることはできな いから,侵害行為であるとは認められない。

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令和3(ネ)10046  著作者人格権等侵害行為差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年12月22日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 一審原告から懲戒請求を受けた弁護士である一審被告Yが自らのブログ上に懲戒請求の内容とともに一審原告の主張に対する反論を掲載しました。これらが著作権侵害なのか、また権利濫用なのかが争われました。1審は被告のブログ掲載の削除を認めました。知財高裁は、これを取り消しました。

本件懲戒請求書は,一審原告が,弁護士会に対し,一審被告Yに対する 懲戒請求をすること,及び懲戒請求に理由があること等を示すために,本 件懲戒請求の趣旨・理由等を記載したものであって,利用者に鑑賞しても らうことを意図して創作されたものではないから,それによって財産的利 益を得ることを目的とするものとは認められず,その表現も,懲戒請求の\n内容を事務的に伝えるものにすぎないから,全体として,著作物であるこ とを基礎づける創作性があることは否定できないとしても,独創性の高い 表現による高度の創作性を備えるものではない。\n
イ 一審原告自身の行動及びその影響
本件産経記事は,一審原告による本件懲戒請求の後,産経新聞のニュー スサイトに掲載されたものであって,本件懲戒請求書の「懲戒請求の理由」 の第3段落全体(4行)を,その用語や文末を若干変えるなどした上で, かぎ括弧付きで引用していることに加え,証拠(甲2,乙2,6)及び弁 論の全趣旨を総合すれば,一審原告は,産経新聞社に対し,一審被告Yの 氏名に関する情報を含め,本件懲戒請求書又はその内容に関する情報を自 ら提供したものと推認される。 そうすると,一審原告は,産経新聞社に対し,本件懲戒請求書又はその 内容に関する情報を提供し,それに基づいて,本件懲戒請求書の一部を引 用した本件産経記事が産経新聞のニュースサイトに掲載され,その結果, 後記(2)のとおり,一審被告Yが,ブログにより,本件懲戒請求書に記載さ れた懲戒請求の理由及び本件産経記事の内容に対して反論しなければな らない状況を自ら生じさせたものということができる。
ウ 保護されるべき一審原告の利益
前記2のとおり,本件懲戒請求書は公表されたものとは認められないか\nら,一審原告は,本件懲戒請求書に関して,公衆送信権により保護される べき利益として,公衆送信されないことに対する財産的利益を有しており, 公表権により保護されるべき利益として,公表\されないことに対する人格 的利益を有していたものと認められる。 しかし,本件懲戒請求書の性質・内容(前記ア)を考慮すると,一審原 告が本件懲戒請求書に関して有する財産的利益及び人格的利益は,もとも とそれほど大きなものとはいえない上,一審原告自身の行動及びその影響 (前記イ)を考慮すると,保護されるべき一審原告の上記利益は,一審原 告自身の自発的な行動により,少なくとも産経新聞のニュースサイトに本 件産経記事が掲載された時以降は,相当程度減少していたものと認めるの が相当である。
(2) 一審被告Yによる本件記事1と本件リンクの目的について 前記第2の2(前提事実)によれば,本件記事1の目的は,本件産経記事 により,一審被告Yに対する本件懲戒請求の事実が報道され,一審被告Yに 対する批判的な論評がされたことから,一審被告Yが,自らの信用・名誉を 回復するため,本件懲戒請求の理由及びそれを踏まえた本件産経記事の報道 内容に対して反論することにあったものと認められる。 ところで,弁護士に対する懲戒請求は,最終的に弁護士会が懲戒処分をす ることが確定するか否かを問わず,懲戒請求がされたという事実が第三者に 知られるだけで請求を受けた弁護士の業務上又は社会上の信用や名誉を低下 させるものと認められるから,懲戒請求が弁護士会によって審理・判断され る前に懲戒請求の事実が第三者に公表された場合には,最終的に懲戒をしな\nい旨の決定が確定した場合に,そのときになってその事実を公にするだけで は,懲戒請求を受けた弁護士の信用や名誉を回復することが困難であること は容易に推認されるところである。したがって,弁護士が懲戒請求を受け, それが新聞報道等によって弁護士の実名で公表された場合には,懲戒請求に\n対する反論を公にし,懲戒請求に理由のないことを示すなどの手段により, 弁護士としての信用や名誉の低下を防ぐ機会を与えられることが必要である と解すべきである。
本件においては,前記(1)イのとおり,一審原告が一審被告Yに対する懲戒 請求をしたことに加え,一審原告が本件懲戒請求書又はその内容に関する情 報を自ら産経新聞社に提供したため,一審被告Yに対して本件懲戒請求がさ れたことが報道され,広く公衆の知るところになったのであるから,一審被 告Yが,公衆によるアクセスが可能なブログに反論文である本件記事1を掲\n載し,本件懲戒請求に理由のないことを示し,弁護士としての信用や名誉の 低下を防ぐ手段を講じることは当然に必要であったというべきである。した がって,本件記事1を作成,公表し,本件リンクを張ることについて,その\n目的は正当であったものと認められる。
(3) 本件リンクによる引用の態様の相当性について
ア 上記(1)及び(2)のとおり,一審被告Yは,本件リンクにより,本件懲戒請 求書の全文(ただし,本件懲戒請求書のうち,一審原告の住所の「丁目」 以下及び電話番号が墨塗りされているもの。)を本件記事1に引用したも のであるが,本件においては,一審原告が自ら産経新聞社に本件懲戒請求 書又はその内容を提供し,産経新聞のニュースサイトに本件産経記事が掲 載されたため,一審被告Yは,弁護士としての信用及び名誉の低下を防ぐ ために,ブログに反論文である本件記事1を掲載し,懲戒請求に理由のな いことを示すことが必要となった。 確かに,本件懲戒請求書は未公表の著作物であり,本件産経記事には本\n件懲戒請求書の一部が引用されていたものの,その全体が公開されていた ものではないが,懲戒請求書の理由の欄には,その全体にわたって,懲戒 請求を正当とする理由の主張が記載されていたから(甲2),一審被告Yと しては,本件記事1において本件懲戒請求書の要旨を摘示して反論しただ けでは,自分に都合のよい部分のみを摘示したのではないかという疑念を 抱かれるおそれもあったため,その疑念を払拭し,本件懲戒請求の全ての 点について理由がないことを示す必要があり,そのためには,本件懲戒請 求書の全部を引用して開示し,一審被告Yによる要旨の摘示が恣意的でな いことを確認することができるようにする必要があったものと認められ る。 また,一審被告Yは,本件記事1に本件懲戒請求書自体を直接掲載する のではなく,本件懲戒請求書のPDFファイルに本件リンクを張ることに よって本件懲戒請求書を引用しており,本件懲戒請求書が,本件記事1を 見る者全ての目に直ちに触れるものでなく,本件懲戒請求書の全文を確認 することを望む者が本件懲戒請求書を閲覧できるように工夫しており,本 件懲戒請求書が必要な限りで開示されるような方策をとっているという ことができる。 さらに,本件記事 1 は,本件懲戒請求書とは明確に区別されており,本 件懲戒請求に理由のないことを詳細に論じるものであって,その反論の前 提として本件懲戒請求書が引用されていることは明らかであり,仮に主従 関係を考えるとすれば,本件記事1が主であり,本件懲戒請求書はその前 提として従たる位置づけを有するにとどまる。 そして,前記(1)のとおり,一審原告が本件懲戒請求書に関して有する, 公衆送信権により保護されるべき財産的利益,公表権により保護されるべ\nき人格的利益は,もともとそれほど大きなものとはいえない上,一審原告 自らの行動により,相当程度減少していたから,本件懲戒請求書の全部が 引用されることにより一審原告の被る不利益も相当程度減少していたと 認められるばかりか,一審原告は,自らの行為により,本件懲戒請求書又 はその内容を産経新聞社に提供し,本件産経記事の産経新聞のニュースサ イトへの掲載を招来したものであり,一審原告の上記行為は,本件懲戒請 求があったこと及び本件懲戒請求書の内容を世間に公にするという点に おいて,一審被告Yの弁護士としての信用及び名誉に関して非常に大きな 影響を与えるものであったと認められる。 イ 以上の点を考慮するならば,一審被告Yが,本件リンクを張ることによ って本件懲戒請求書の全文を引用したことは,一審原告が自ら産経新聞社 に本件懲戒請求書又はその内容に関する情報を提供して本件産経記事が産 経新聞のニュースサイトに掲載されたことなどの本件事案における個別的 な事情のもとにおいては,本件懲戒請求に対する反論を公にする方法とし て相当なものであったと認められる。
(4) 権利濫用の成否
前記(1)のとおり,一審原告が本件懲戒請求書に関して有する,公衆送信権 により保護されるべき財産的利益,公表権により保護されるべき人格的利益\nは,もともとそれほど大きなものとはいえない上,一審原告自身の行動によ り,相当程度減少していたこと,前記(2)のとおり,本件記事1を作成,公表\nし,本件リンクを張ることについて,その目的は正当であったこと,前記(3) のとおり,本件リンクによる引用の態様は,本件事案における個別的な事情 のもとにおいては,本件懲戒請求に対する反論を公にする方法として相当な ものであったことを総合考慮すると,一審原告の一審被告Yに対する公衆送 信権及び公表権に基づく権利行使は,権利濫用に当たり,許されないものと\n認めるのが相当である。
(5)当事者の主張に対する判断
ア 一審原告の主張について
(ア) 一審原告は,一審原告が本件懲戒請求書又はその内容に関する情報 を産経新聞社に提供し,本件懲戒請求書の一部が本件産経記事に引用さ れたとしても,一審原告の公表権を保護すべき必要性が全くなくなった\nわけではなく,他方,一審被告Yは,本件懲戒請求書の要旨又はその一 部を引用することにより一審原告の懲戒請求に対して反論することが可 能であり,本件懲戒請求書の全部を引用する必要がなかったにもかかわ\nらず,これを全部引用して公表したのであるから,一審原告の一審被告\nYに対する公表権の行使は権利濫用に当たらないと主張する。\n しかし,前記(1)ウのとおり,一審原告が本件懲戒請求書に関して公衆 送信権により保護されるべき財産的利益,公表権により保護されるべき\n人格的利益は,もともとそれほど大きなものとはいえない上,一審原告 自身の行動により相当程度減少していたものと認められる。他方,前記 (3)のとおり,一審被告Yは,一審原告が産経新聞社に本件懲戒請求書又 はその内容を提供し,産経新聞のニュースサイトに本件産経記事が掲載 されたため,弁護士としての信用及び名誉の低下を防ぐために,本件懲 戒請求書の全文を引用して開示した上で反論する必要があったものであ るから,それらを比較衡量すれば,後者の必要性が前者の必要性をはる かに凌駕するというべきであるから,たとえ一審原告の公表権を保護す\nべき必要性が全くなくなったわけではないとしても,一審原告の一審被 告Yに対する公表権の行使は権利濫用に該当するというべきである。\nしたがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
(イ) 一審原告は,本件懲戒請求書又はその内容に関する情報を産経新聞 社に提供するという一審原告の行為と,本件リンクを張るという一審被 告Yの行為とは,行為の性質やそれによって閲覧可能となる範囲・程度\nが異なり,本件懲戒請求書の内容が拡散する規模は,本件リンクを張る 行為の方が,本件懲戒請求書又はその内容に関する情報を産経新聞社に 提供する行為よりも圧倒的に大きいから,一審原告による公衆送信権及 び公表権の行使は権利濫用に当たらないと主張する。\n しかし,本件懲戒請求書又はその内容に関する情報を産経新聞社に提 供するという一審原告の行為は,産経新聞又はそのニュースサイトによ って本件懲戒請求に関する情報が報道されることを意図してされたもの と容易に推認され,実際,産経新聞のニュースサイトに本件産経記事が 掲載されたものであり,産経新聞が大手の一般紙であって,法律に興味 を有する者に限らず広く公衆がその新聞又はニュースサイトを閲読する ものであることからすると,一審原告の上記行為は,一審被告Yに対す る本件懲戒請求があったこと及び本件懲戒請求書の内容を世間に公にす るという点において,一審被告Yの弁護士としての信用及び名誉に関し て非常に大きな影響を与えるものであったと認められるから,本件懲戒 請求書の内容が拡散する規模において,本件リンクを張る行為の方が, 本件懲戒請求書又はその内容に関する情報を産経新聞社に提供するとい う一審原告の行為よりも大きいということはできない。

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1審はこちら。

◆令和2(ワ)4481等

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令和2(行ケ)10069  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年12月9日  知的財産高等裁判所

 医薬品の特許について、進歩性違反なしとした審決が取り消されました。

(ア) 検討
a 甲7発明と本件発明1とは,「1回当たり200単位のPTH(1− 34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする」との用量の 点において一致するが,その投与の対象となる骨粗鬆症患者の範囲を 一応異にする。
b 甲7発明で投与対象とされた患者は,前記(1)のとおり,1989年 診断基準で骨粗鬆症と診断された患者であるところ,甲7発明に接し た当業者が,甲7発明のPTH200単位週1回投与の骨粗鬆症治療 剤を投与する対象患者を選択するのであれば,より新しい基準を参酌 しながらその患者を選別することは,当業者がごく普通に行うことで あるから,1989年診断基準とともに,より新しい,1996年診 断基準又は2000年診断基準を参酌するといえる。 そして,前記ア(ア)b及びcのとおり,1996年診断基準で骨粗 鬆症と診断される者は,1)骨萎縮度I度以上又は骨密度値がYAMの 80%以下の低骨量で非外傷性椎体骨折を有する者か,2)X線上椎体 骨折を認めないが,骨萎縮度II)度以上,又は,骨密度値がYAMの7 0%未満である者であり,2000年診断基準で骨粗鬆症と診断され る者は,3)骨萎縮度II)度以上又は骨密度がYAMの80%未満の低骨 量で,軽微な外力による非外傷性椎体骨折等(脆弱性骨折)を有する 者か,4)脆弱性骨折がないものの,骨萎縮度II)度以上,又は,骨密度 値がYAMの70%未満の者である。
本件条件(2)及び本件条件(3)は,上記1)と同じであるから(「既 存の骨折」は「非外傷性椎体骨折」を含む。),当業者が甲7発明の2 00単位週1回投与の骨粗鬆症治療剤を投与する骨粗鬆症患者を本件 条件(2)及び本件条件(3)で選別するのには何ら困難を要しない。 また,前記ア(イ)のとおり,骨粗鬆症は,加齢とともに発生が増加 するとの技術常識があり,高齢者は加齢を重ねた者であるのは明らか であるところ,高齢者として65歳以上の者を選択するのは常識的な ことであり,高齢者の医療の確保に関する法律32条でも65歳以上 が高齢者とされている。したがって,これらを参酌し,骨粗鬆症によ る骨折の複数の危険因子として,低骨密度及び既存骨折に並んで年齢 が掲げられていることに着目して投与する骨粗鬆症患者を65歳以上 として,本件条件(2)及び本件条件(3)に加えて本件条件(1) のように設定することはごく自然な選択であって,何ら困難を要しな い。
そうすると,甲7発明に接した当業者が,投与対象患者を本件3条 件を全て満たす患者と特定することは,当業者に格別の困難を要する ことではない

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令和1(ワ)8905 特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年11月18日  大阪地方裁判所

 発明の技術的意義から、用語を解釈し、技術的範囲に属しないと判断されました。

(ア) 本件明細書の記載によれば,本件明細書においては,「針先の再露出」ない しこれと同旨の意味を含む表現(「針先再露出阻止機構\」等)と「針抜出し」ない しこれと同旨の意味を含む表現(「針抜出阻止機構\」等)がそれぞれ用いられてい る。その上で,「針先の再露出」等の表現は,針先プロテクタが留置針の針先側へ\nの移動位置において針ハブに係止された後に,針先プロテクタが留置針の基端側へ 後退(移動)すること(【0013】,【0027】,【0070】,【0073】)又は留置針 が針先側(先端側)へ前進(移動)すること(【0028】,【0029】,【0034】〜 【0036】)により針先が外部に露出することを意味する場合に用いられている。 他方,「針抜出し」等の表現は,留置針が基端側へ移動し,針先プロテクタの基端\n側から抜け落ちることにより針先が外部に露出することを意味する場合に用いられ るものと理解される(【0022】,【0028】,【0029】,【0034】,【0035】, 【0071】)。
このように,本件明細書では,「針先の再露出」等と「針抜出し」等の表現が明\n確に使い分けられていることを踏まえると,「留置針の針先の再露出」(構成要件\n1D 等)とは,針先プロテクタが留置針の針先側への移動位置において針ハブに係 止された後に,針先プロテクタが留置針の基端側へ後退(移動)すること又は留置 針が針先側(先端側)へ前進(移動)することにより針先が外部に露出することを 意味するものであって,留置針が基端側へ移動し,針先プロテクタの基端側から抜 け落ちることにより針先が外部に露出する場合はこれに含まれないと解される。こ れに反する被告の主張は採用できない。 したがって,「係止片」(構成要件 1D 等)は,上記の意味における「留置針の 針先の再露出」を防止する機構を構\成するものと理解される。構成要件 1E4)等の 「係止片」も,「前記係止片」として構成要件 1D 等を受けたものであることか ら,同様である。
(イ) 「係止片」(構成要件 1E4)等)につき,本件明細書には,針先プロテクタの 大径部側に形成されるものの形状及び機能等に関しては,それが「針ハブに向かっ\nて傾斜した内側面を有し」,「円筒状部と一体形成される」ことを含めて具体的に 記載されている(【0028】,【0034】,【0036】,【0058】,【0059】, 【0061】,【0065】,【0067】〜【0070】,図 9)。これに対し,「小径部側に 設けられ」ない「係止片」に関しては,その形状はもとより,係止片を小径部側に 設けないことの技術的な意義ないし作用効果やこれを設けた場合の弊害等につい て,本件明細書には何ら記載されていない。
また,本件特許の出願経過を見ると,本件意見書によれば,小径部に設けられて いない係止片の形状につき,原告は「前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有」 するものを念頭に置いていると理解する余地もあるものの,本件各発明の進歩性を 主張するに当たり,本件通知書の引用文献2及び4に各記載の「針先プロテクタの 小径部側」に設けられている「係止部」の具体的な形状に言及してはおらず,小径 部に設けられていない係止片の形状についてはもとより,係止片を小径部側に設け ないことの技術的な意義ないし作用効果やこれを設けた場合の弊害についての言及 もない。そうすると,本件意見書の記載については,原告は,公知の発明と構成が\n異なることを示す趣旨で「係止片」が「小径部側には設けられて」いないことに言 及したに過ぎず,「係止片」の形状に関しては,拡開部の大径部側に設けられた係 止片Sが針ハブに向かって傾斜した内側面を有することを説明するにとどまり,小径 部側に設けられていない係止片に関しては何ら述べていないものと理解される。 このような本件明細書の記載及び本件特許に係る出願経過を参酌すると,「係止 片」(構成要件 1E4)等)につき,「前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有 し」とは,「前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される」「係止片」の形状を 特定したものであって,「前記小径部側には設けられて」いない「係止片」の形状 を特定するものではないと理解される。これに反する原告の主張は採用できない。
(ウ) 小括
以上より,本件各発明の「係止部」とは,「該針先プロテクタに設けられた」も のであり,これが「該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が 防止される」,すなわち,針先プロテクタが留置針の針先側への移動位置において 針ハブに係止された後に,針先プロテクタが留置針の基端側へ後退(移動)するこ と又は留置針が針先側(先端側)へ前進(移動)することにより針先が外部に露出 することを防止するものであって(以上につき,構成要件 1D 等),針先プロテク タの有する「前記円筒状部の基端側に」設けられるものであり(構成要件 1E2) 等),かつ,「前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記大径部側に前記 円筒状部と一体形成される」が,その形状のいかんを問わず「前記小径部側には設 けられ」ない(以上につき,構成要件 1E4)等)ものであると解される。
(2) 構成要件の充足性\n
ア 被告各製品の小径部の側壁部の構成等\n
(ア) 被告各製品の小径部側壁部につき,針先保護部(針先プロテクタ)の基端側 に設けられていること,針抜出防止機構(針先プロテクタが留置針の針先側への移\n動位置において針ハブに係止された後に,更に留置針が基端側へ移動し,針先プロ テクタの基端側から抜け落ちることにより針先が外部に露出することを防止する機 構)として機能\すること,及び,少なくとも針管と針先保護部が相対移動してクリ ック感が生じる位置において,小径部側壁部の突端面により針基に設けられた縦リ ブの側面を挟持することで,針基が針先保護部に対して回動を防止する状態となる ことについては,当事者間に争いがない。
(イ) 証拠(甲3〜6,乙5)及び弁論の全趣旨によれば,被告各製品において は,小径部側壁部が針基に設けられた縦リブの側面を挟持することで針基の回動を 防止しつつ,針先保護部が初期状態の配置位置から留置針の針先方向へ移動し,小 径部側壁部が針基に設けられた縦リブの側面を挟持した状態のまま,クリック感が 生じる位置(「該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位 置」(構成要件 1D 等)に相当する。)である針基の受け部において大径部係止手 段が針基に対して係止されることによって,針管の針先が再度,針先保護部の先端 側から露出することが防止されることとなる。 また,証拠(乙63)及び弁論の全趣旨によれば,仮に被告各製品の小径部側壁 部が存在しない場合,針基の受け部においても針基は回動可能な状態にある。この\n場合,針基が回動したとしても,針先保護部の大径部係止手段に針基の縦リブが接 触することにより針基の回動がいったん停止することとなる。この状態ではなお大 径部係止手段と針基の受け部が接触しているため,直ちに針先保護部が基端側に移 動可能となるものではない。もっとも,この状態において一定の外力が加えられる\nと,縦リブが大径部係止手段を乗り越えて再び回動するなどして,針基の受け部と 大径部係止手段の係止が解除され,針先保護部が基端側に再度移動し,留置針の針 先が再露出する状態となり得ることが認められる。 しかも,被告各製品の添付文書(甲5)には,次のような記載がある。
「・針を収納する際は,ロックが外れたことを確認し,真っ直ぐ引くこと。(針 基が曲がったり,折れるおそれがある。)
・針が収納,固定された状態でグリップ部を強く引っ張る,回転させる操作をし ないこと。(針基が曲がったり,折れるおそれがある。)
・針が収納,固定された状態で針先が飛び出す方向に力を加えないこと。(針刺 し及び感染のおそれがある。)」 これらの記載によれば,被告各製品においては,留置針を収納する際や収納・固 定された状態において日常的な使用時に作用し得る程度の外力により,針基の屈曲 や針先再露出といった状態が生じ得ることがうかがわれる。まして,被告各製品の 小径部側壁部が存在しない場合は,更に小さい外力によりこのような状態が生じ得 ると考えられる。
(ウ) そうすると,被告各製品においては,針先保護部に大径部係止手段及び小径 部側壁部が設けられており,針管と針先保護部が相対移動してクリック感が生じる 位置において,針先保護部に設けられた大径部係止手段が針基に対して係止される ことと,針基に設けられた縦リブと針先保護部に設けられた小径部側壁部とが相互 に係合することにより針基が針先保護部に対して回動することが防止される状態に あることとが相まって,針基が大径部係止手段をすり抜けて針先保護部に対して前 進することができなくなっているものと認められる。すなわち,被告各製品は,大 径部係止手段のみならず小径部側壁部が針先保護部に設けられていることにより針 先の再露出が防止される構成となっている。\n以上のとおり,被告各製品の小径部側壁部は,針先再露出防止機構としての機能\ をも有するものと認められる。したがって,被告各製品の小径部側壁部は,「係止 片」(構成要件 1D 等)に該当し,これが小径部に設けられている以上,被告各製 品は,「前記係止片は,…前記小径部側には設けられておらず」(構成要件 1E 4))を充足しない。

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平成30(ワ)35263  損害賠償等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和3年9月29日  東京地方裁判所

原告のデータは、営業秘密であるとは認定されましたが、被告がそれを用いたとの事実を認める証拠がないと判断されました。

(1) 秘密管理性
ア 本件データは,気圧の上限・下限,加圧(減圧)に要する時間,チャン バー内を一定の気圧に保っている時間,排気時間及び動作の繰返しの回数 等を内容とし,これらの数値に基づいて酸素チャンバー内の気圧を昇降さ せるためのものであり,本件酸素チャンバーの制御装置内に設置された媒 体に記録されているものであると認められる(原告代表者〔10,11頁〕),\n弁論の全趣旨)。
イ 本件データの上記内容に照らすと,同データは酸素チャンバーの作動を 制御する上で中核をなすものであり,その秘密性は高いと考えられるとこ ろ,証拠(甲2,3,9,11,15,原告代表者〔2,6,23頁〕)\nによれば,1)原告製の酸素チャンバーは,その出荷前に,制御装置内の特 定の箇所をジャンパー線で接続し導通させることにより,本件データ等を 読み出せないようロックがかけられており,それ以降,原告社内でこれに アクセスできるのは,原告代表者のほか限られた人数の役員等であったこ\nと,2)原告の従業員には就業規則第5条(5)により守秘義務を課せられて いたこと,3)原告は,本件データを含む制御装置一式の製作を委託してい た協立電機との間で機密保持契約を締結しており,本件データは同契約第 1条の「秘密情報」に該当すると考えられること,4)原告製の酸素チャン バーの販売代理店であった被告会社も本件データの変更は自由にできな かったこと,5)原告製の酸素チャンバーを購入した顧客も本件データにア クセスすることはできなかったことの各事実が認められ,これを覆すに足 りる証拠はない。 このように,原告社内においても本件データにアクセスすることのでき る者は限られており,取引先等についても秘密保持義務が課せられ,ある いは本件データへのアクセスができない状態とされていたことに照らす と,本件データは原告において秘密として管理されていたというべきであ る。
ウ(ア) これに対し,被告らは,原告が主張するロックの内容は明らかではな く,また,全国的に販売されている原告製の酸素チャンバーの納品や修 理の作業を支障なく行うには本件データの内容を原告の従業員等が知っ ていることが必要であったと主張する。 しかし,原告の主張するロックの内容は上記イ1)のとおり十分に具体\n的であり,かかる措置を講じてもなお本件データへのアクセスが可能で\nあることをうかがわせる証拠はない。また,原告の従業員が,原告製の 酸素チャンバーの納品を行い,あるいは同製品の修理を行うために本件 データにアクセスすることが必要な事例が日常的に生じていたことをう かがわせる証拠はなく,原告製の酸素チャンバーが全国に販売されてい たとしても,そのことから,原告従業員が本件データにアクセスするこ とができたとの事実を推認することはできない。
(イ) また,被告らは,原告との間で,本件データを対象とする秘密保持契 約を締結したことはなく,本件販売代理店契約の契約書(甲3)をみて も,原告製の酸素チャンバー全てについて原告又は原告が委託した者が 修理をする旨の規定はないと主張する。 しかし,上記イ4)のとおり,被告会社が本件データを自由にアクセス し,これを変更し得たことを示す証拠はないことに照らすと,被告会社 との間で本件データは秘密として保護されていたというべきである。ま た,被告会社又は原告の委託者が原告製酸素チャンバーを修理すること があったとしても,これらの業者が本件データにアクセスすることがで きたことをうかがわせる証拠はない。 そうすると,本件データは,被告会社及び原告製酸素チャンバーの修 理を行う業者との間においても,秘密として管理されていたというべき である。
(ウ) さらに,被告らは,本件クラブに納品された本件酸素チャンバーには 本件データのロックがかけられていなかったので,本件データは秘密と して管理されていなかったと主張する。 しかし,本件クラブに納品された本件酸素チャンバーに本件データの ロックがかけられなかったのは,前記前提事実(3)イのとおり例外的な 措置であって,このことは,本件データが秘密として管理されていたと の上記判断を左右しないというべきである。
・・・
本件においては,以下のとおり,被告らが本件データを実際に読 み出して取得し,また,被告会社が取得した本件データを使用して酸素チャ ンバーを製造したことを客観的に示す証拠は存在しない。 ア 被告らが本件制御装置等を保管していた間,本件制御装置に対していか なる作業又は操作を行ったかは証拠上明らかではない。
原告は,本件制御装置等の持ち出し前と返還後とでは,同装置等の側面 にテープ付けしていた鍵の位置が異なっており,明らかに鍵を使用した痕 跡があったことや,原告が本件酸素チャンバーの復旧作業を行った際,本 件制御装置に対する原告のPC以外のPCからのアクセスを確認したこ となどを指摘するが,これを裏付ける客観的な証拠は何ら提出されていな い。 また,原告代表者は,本件クラブには本件データを読み出し,パラメー\nタの設定や変更を行い得る設備や人材等を有していたため,ロックの解除 の方法を伝えたものであり,本件クラブにおいて同ロックを解除したかど うか,また,パラメータ等の変更後のロックをかけたかどうかは承知して いない旨の供述をしているところ(原告代表者〔24,28〜29頁〕),\n同供述を前提にすると,仮に被告らが持ち出した本件制御装置等を使用し て本件データへのアクセスを試みたとしても,奏功したかどうかは明らか ではない。
さらに,原告は,制御装置等の取外しや取付けをしたのみでは酸素チャ ンバーの機能が動作しなくなることはないので,本件制御装置等の返還後\nに本件酸素チャンバーの低圧モードに支障が生じたのは,本件データの複 製等が行われた現れであると主張するが,低圧モードに支障が生じたこと から,直ちに本件データの複製等が行われたと推認することはできない。 そして,他に,被告らが本件制御装置等を保管していた間に本件制御装 置に対して行った具体的な操作や作業の内容を特定し得る証拠はない。 イ 原告は,被告会社が本件データを使用して,酸素チャンバーを製造した と主張するが,被告会社製の酸素チャンバーの開発・製造に当たり,本件 データが使用されたことを客観的に示す証拠はない。
かえって,被告会社の製造した酸素チャンバーの制御装置マニュアル(乙 8)及びW証言〔1,2頁〕によれば,被告会社製の酸素チャンバーにお いては,制御装置のモード選択画面に表示される圧力や運転時間について,\n納品時に所定の設定はされているものの,顧客がこれを変更することも可 能な仕様となっており,顧客がこれらの数値を自由に変更することができ\nない原告製の酸素チャンバーとは仕様が異なるものであると認められる。 なお,原告は,本件酸素チャンバーのラダープログラムと被告会社製の 酸素チャンバーのラダープログラムを対比することにより,被告会社によ る本件データの使用の有無を解析できると主張し,被告らに対し,同プロ グラムの任意提出を求めていたが,その後,被告らが同プログラムを改ざ んしているおそれが高いとして,被告会社の保有するラダープログラムの 提出を求めない旨の意思を表明した(原告第6準備書面)。原告は,被告\nらがラダープログラムを証拠として任意提出しないことから本件データ の使用を推認し得ると主張するが,ラダープログラムを実際に対比するこ となく,そのような推認をすることはできない。
ウ 以上によれば,被告らが本件データを取得し,また,被告会社が取得し た本件データを使用して酸素チャンバーを製造したとの事実を認めるに 足りる証拠はないので,本件持出し行為が不競法2条1項4号の不正競争 行為に該当するとの原告主張は理由がない。

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令和2(ワ)4023 特許権  民事訴訟 令和3年10月7日  大阪地方裁判所

 特102条2項による損害賠償として8割の推定覆滅が認められました。

(3) 推定覆滅について
ア 本件発明の効果
本件発明の効果は,各種タイプのチャイルドシートの背面側に装着することがで きること(【0022】),カバーの天部の高さ位置を適宜設定・変更することがで き,カバーの内部空間で,幼児の頭頂部がカバー天部に接触しないか,接触しても カバーの重みがもろに幼児の頭部に掛ることが少なくなり,居住環境が向上するこ と(【0023】)である。 要するに,本件発明の作用効果は,1)各種のチャイルドシートに装着できるこ と,2)幼児の頭部に合わせてカバーの天部高さ位置を適宜調整できることにあると いえる。 もっとも,様々な形状のチャイルドシートに対応してその略全体を被覆するチャ イルドシートカバーは従来技術として各種存在し(【0002】〜【0010】),これら は本件発明以外の適宜の方法で装着されていたのであるから,上記効果のうち1) は,本件発明によるのでなければ実現し得ない効果とはいえない。 また,前記1ないし3のとおり,ハ号物件等,ホ号物件等及びト号物件等のよう に本件発明の技術的範囲に属しない部品によっても,装着方法によってはチャイル ドシートカバーを適宜高さ位置に装着できると考えられるから,本件発明の効果2) も,本件発明によるのでなければ実現し得ない効果とはいえない。
イ 本件発明の貢献の程度等について
(ア) 本件発明は,チャイルドシートのほぼ全体を被覆するチャイルドシートカ バーを自転車のチャイルドシートに装着する際に使用される部品である装着補助プ レートの発明である。チャイルドシートカバーを選択するのは,主に幼児の保護者 等である自転車所有者と考えられるが,装着補助プレートは,チャイルドシートカ バーそのものではなく装着に用いる補助的な部品であって,使用時にはチャイルド シートカバーの内部に隠れ,雨避け等のチャイルドシートカバーの機能そのものを\n発揮する部分ではないから,装着補助プレート自体が需要者の関心を惹き,製品選 択の直接の動機となるとはいえない。 また,本件発明の効果は,前記アのとおり,いずれも本件発明によるのでなけれ ば実現し得ない効果ではなく,本件発明の実施による貢献の程度の評価に当たって は,必ずしも重視できるものではないが,本件発明に係る装着補助プレートを使用 したチャイルドシートカバーの広告において前記の効果1)及び2)を謳っている場合 は,需要者に当該チャイルドシートカバーの利点,優位性を認識させるものである から,製品選択の動機となり得る事情といえる。
(イ) 証拠(甲4,5)によれば,被告は,イ号物件の特徴として,「背もたれ の高いタイプのチャイルドシートなら装着 OK」などと効果1)については謳ってい るものの,効果2)については特に宣伝していない。 また,証拠(甲6)によれば,被告は,ロ号物件の特徴としても,「各種後付け シートに対応しています」などと効果1)については謳っているものの,効果2)に関 しては,取付方法の説明において「6)最後にファスナーを閉じたら,装着完了。突 っ張る部分がある場合は,カバーの高さを調節してください。背面部分を高くセッ トしすぎるとカバーにシワが寄ったり,突っ張ったりするので適宜調節ください」 との記載があるにすぎず,カバーの高さ位置を調整できる旨を記載しているが,特 段の利点としては記載していない。 さらに,証拠(甲4,18)によれば,イ号物件及びロ号物件の購入者のレビュ ーにおいても,効果2)について記載したものはなく,単にカバーがワイヤーにより 自立して天井が高いことに係る記載があるにとどまり,証拠(甲3,16)によれ ば,原告においても,効果1)及び2)を宣伝していないことが認められる。
(ウ) 原告は,チャイルドシートカバーが自転車に常時装着されているものでは なく,使用,不使用時に取り外しを行うものであるので,需要者にとってカバーが 簡単に取り付けられるかどうかが重要であるところ,原告製品の補助プレートを用 いることでカバーの取付が従来より容易となり,需要者から支持を得ていると主張 する。
しかしながら,本件明細書によれば,「カバーを装着したままで使用するという ことが常態」(【0009】)であるというのであり,「本発明においても,上記従来 のチャイルドシートカバーと同様に,これを装着したままの状態で,自転車の不使 用時は勿論のこと,…どのような天候の際にも,幼児を乗せて使用することができ るカバーに適用可能なものである」(【0012】)とされているから,本件発明は, チャイルドシートカバーを常時装着した状態で使用することを前提としたものであ る。また,本件発明にチャイルドシートカバーの取付を容易にする効果があること は本件明細書に記載がなく,【発明が解決しようとする課題】や【課題を解決する ための手段】にも取付を容易にすることに関する記載はないから,チャイルドシー トカバーの取付が容易になることは本件発明の効果とは関係がない。
(エ) 以上によれば,本件発明は,効果1)及び2)を有し,これを実施する製品の 販売等に一応貢献し得るものであるが,効果1)については需要者に重視されず,効 果2)については,イ号物件及びロ号物件において需要者にほとんどその効果が認識 されないものであって,顧客誘引力は極めて低く,イ号物件及びロ号物件の他の利 点を考慮して,これを購入した需要者が多かったものと考えられる。
ウ 推定覆滅の程度
以上の事情を総合的に考慮すれば,本件においては,8割の損害額の推定が覆滅 されるとすべきである。

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令和1(ワ)9113  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年9月16日  大阪地方裁判所

 特102条2項による損害額算定において、5%の覆滅されました。

ウ 推定覆滅について
(ア) 本件各発明の効果
本件発明1の効果は,発明に係るケーシングのコンセント部に対する設置形態を 採用することにより,設置面からの表示面部の突出量が極力小さくなり,設置箇所\nの美観が向上されると共に,歩行の妨げになることが抑制されること,上記設置形 態を採用することで大きさ等に制限が生じるケーシング内に複数のアンテナ素子を 配置するにあたり,複数のアンテナ素子がケーシングの内壁面に沿う板状に形成さ れ,内挿部の内壁面において表示面部の後方側内部空間を挟んで離間する位置に分\n配配置されることで,アンテナ素子間の離間距離を十分に大きくとって,送受信波\nの相互干渉を良好に抑制することができること(【0009】)である。 本件発明2の効果は,本件発明1の効果に加えて,ケーシングの内挿部における 四方の内壁面において,表示面部の両側縁部から後方に延出し互いに対向する一対\nの平面状側壁部が存在し,これらの平面状側壁部のそれぞれに複数のアンテナ素子 を分配配置するという合理的な構成により,これら複数のアンテナ素子を表\示面部 の後方側内部空間を挟んで離間する位置に分配配置できると共に,一対の平面状側 壁部は互いに平行な平面となるので,その平面状側壁部に沿った姿勢で配置される 複数のアンテナ素子のそれぞれにおいて,指向性を決定する延出方向が設定しやす くなること(【0019】),複数のアンテナ素子が表示面部の後方側内部空間を挟ん\nで対角位置に配置されているので,それぞれのアンテナ素子間の離間距離を一層大 きくとって,それぞれのアンテナ素子における送受信波の相互干渉を一層良好に抑 制することができること(【0021】)である。 本件発明3の効果は,本件発明1及び2の効果に加えて,無線 LAN に加えて有 線 LAN や電話回線が利用可能になること,表\示面部の後方側にモジュラーアダプ タが配置されているので,複数のアンテナ素子をモジュラーアダプタを間に挟んだ 状態で配置することができ,それぞれのアンテナ素子における送受信波の相互干渉 が一層良好に抑制されること(【0017】)である。 要するに,本件各発明の作用効果は,1)ケーシングをコンセント部に埋設状態で 設置でき,設置面からの表示面部の突出量が極力小さくなることによる美観の向上\n及び歩行の妨げとなることの防止,2)複数のアンテナ素子間の送受信波の相互干渉 の抑制,3)アンテナ素子の指向性を決定する延出方向設定の容易化(本件発明1を 除く)にあるといえる。
(イ) 本件各発明の貢献の程度等について
本件各発明は,コンセント部に埋設状態で設置される情報コンセントに係る発明 であり,主として集合住宅やホテル,オフィス等に一括して設置することが想定さ れる(甲4,54,55,弁論の全趣旨)。そうすると,それらの設置を扱うイン ターネットサービスプロバイダーが原告製品及び各被告製品の主要な取引者と解さ れると共に,最終的な需要者である情報コンセントが設置される建築物の施主の意 向も,製品選択に影響することが考えられる。これらの者にとって,本件各発明の 前記の効果1)〜3)は,いずれも選択の動機となり得る事情といえる。 また,証拠(甲52)によれば,被告は,各被告製品について,「標準の情報コ ンセント内に埋込み,省スペースで快適な無線 LAN 環境」,「美観重視のお客様 に適した,見た目がスマートな埋込み型」,「JIS 規格のコンセントであればメー カを問わず設置可能」などと宣伝しており,効果1)を謳っている上,「もっと電波 を強くしてほしい」という要望に応じて導入された事例や,「確実に無線が使用で きる環境でありながら,部屋に設置しても存在を意識しないデザイン」が評価され たという事例等を紹介して宣伝してもおり,効果2)を取り上げた宣伝も行っている と認められる。 そうすると,本件各発明は,少なくとも効果1)及び2)により,これを実施する製 品の販売に貢献するものというべきであって,顧客誘引力がない又は乏しいものと はいえない。
これに対し,被告は,本件各発明の特徴は従来から存在したケーシングに対して 技術常識に基づく配置を併せた点に限定されること,原告が商品の訴求ポイントと して挙げる事情は本件各発明と無関係であること,乙26文献及び乙27文献記載 の公知技術の存在を指摘して,本件各発明は売上や利益に対して寄与せず,又はそ の寄与は無視できる程度に小さいなどと主張する。 しかし,被告がその主張の前提とする本件各発明の特徴に関する理解は,本件各 発明に係る技術的思想や効果を正しく理解したものとはいえず,被告の上記主張は その前提を欠く。また,乙26文献及び乙27文献には,いずれも複数のアンテナ を配置することの記載も示唆もないから,これらの文献記載の公知技術の存在は, 本件各発明の貢献の程度を失わせるものとはいえない。 このほか,被告において,他に顧客誘引力を有すべき製品の特徴等についての主 張立証はない。 したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
(ウ) 競合品の存在について
証拠(甲1,49〜52,55,56)によれば,原告製品及び各被告製品は, JIS 規格のコンセントプレートに対応した情報コンセント型無線 LAN アクセスポイ ントの製品であるところ,エレコム株式会社の製品(WAB-S733IW-PD。以下「甲 56製品」という。)も,1つの電子チップ型アンテナ及び1つの基板アンテナの 2つのアンテナ素子を有し,JIS 規格のコンセントプレートに対応した製品である から,原告製品及び各被告製品と市場において競合する製品であることが認められ る。もっとも,その販売開始時期,販売価格,販売実績,市場占有率その他具体的 な事情について,被告による主張立証はなく,証拠上明らかでない。また,甲56 製品のほかに,原告製品及び各被告製品と市場において競合するものと認められる 製品の存在等に関する具体的な主張立証はない。 そうすると,原告製品及び各被告製品と市場において競合する製品として甲56 製品が存在する以上,その存在をもって特許法102条2項に基づく損害額の推定 の覆滅事由として考慮すべきではあるものの,その覆滅の程度は極めて限定的であ り,本件においては,5%の限度で推定が覆滅されるにとどまると考えるのが相当 である。
これに対し,被告は,原告製品及び各被告製品と同種の製品を販売している競合 企業が多数存在するなどと主張する。しかし,一般論として技術的に同一の製品で はなくとも市場において競合することがあり得るとしても,他社製品との競合の状 況に関する具体的な主張立証がない以上,特許法102条2項に基づく損害額の推 定を覆滅すべき事情としてこれを考慮することはできない。また,原告製品の失注 といった個別の取引事例に基づく主張については,その具体的な事情が明らかでは ないから,失注の点をもって直ちに原告製品の競争力の乏しさを示すものとは必ず しもいえない。したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
・・・
(3) 損害額(特許法102条3項に基づくもの)並びに特許法102条2項及 び3項の重畳適用について
原告は,損害額につき,選択的に特許法102条3項に基づく推定をも主張す る。しかし,その主張する額は特許法102条2項に基づき推定される損害額(前 記(2)エ)より少ない。したがって,同条3項に基づく損害額について論ずる必要 はない。 特許法102条2項及び3項の重畳適用については,前記(2)ウのとおり,本件 において同条2項に基づく損害額の推定を覆滅すべき事情として考慮すべきものは 競合製品の存在のみであるところ,被告による各被告製品の販売実績等と直接の関 わりを有しないこのような事情に基づく覆滅部分に関しては,同条3項適用の基礎 を欠く。したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。

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令和2(ワ)3646  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年11月9日  大阪地方裁判所

 納入された際の原告標章を使用せずに商品販売したことが商標権侵害となるかについて、裁判所は契約の問題であり侵害は成立しないと判断しました。

原告は,原告標章(標準文字)が商標登録され,これに係る公報が発行された後 は,原告標章を使用せず,被告ら標章により本件商品を販売した行為は,登録商標 の出所表示機能\を毀損するものとして,商標権侵害が成立する旨を主張する。
しかしながら,商標権侵害は,指定商品又は指定役務の同一類似の範囲内で,商 標権者以外の者が,登録商標を同一又は類似の商標を使用する場合に成立すること がその基本であり(商標法25条,37条),原告が原告標章を付した本件商標を 被告らに譲渡した際に,原告標章と同一又は類似の商標を使用する競業者が存在し なかったことをもって,本件商標権はその役割を終えたと見ることができるのであ り,原告から本件商品を譲り受けた被告らが,これを原告標章以外の商品名で販売 することができるかは,商標権の問題ではなく,前記検討したとおり,原告と被告 らとの合意の存否の問題と考えざるを得ない。 したがって,後半期間において,被告フジホームが本件商品を被告ら標章により, また取扱説明書を差し替えて自社のオンラインストアで販売したこと(被告ら行為 2)),あるいは被告サンリビングが,原告より直接入手した本件商品を,被告ら標 章によりダイワに譲渡したことは(被告ら行為3)),いずれも商標権侵害にはあた らないといわざるを得ない。

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令和3(行ケ)10016  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年11月30日  知的財産高等裁判所

 延長登録拒絶審決が維持されました。争点は 本件発明における「緩衝剤の量」です。

 特許権の存続期間の延長登録の制度は,政令処分を受けることが必要であったた めに特許発明の実施をすることができなかった期間を回復することを目的とする ものであるから,本件医薬品の製造販売が,本件各発明の実施に当たらないのであ れば,本件処分を受けることが必要であったために特許発明の実施をすることがで きなかったということはできない。 ところで,本件処分は,オキサリプラチンを有効成分とする「エルプラット点滴 静注液50mg」(本件医薬品)に係る本件処分に係る医薬品製造販売承認事項一部 変更承認申請当時(平成26年10月3日。甲2・参考資料7参照)の法14条9\n項に規定する医薬品の製造販売についての承認である。原告は,本件医薬品はオキ サリプラチンと注射用水からなり,本件医薬品中でオキサリプラチンが水と反応し て遊離したシュウ酸を緩衝剤とする旨主張している。 そこで,以下,本件医薬品の製造販売行為が,本件各発明の実施に当たるか検討 する。
3 本件各発明の「緩衝剤の量」について
(1) 本件各発明の特許請求の範囲の記載は,前記第2の1(2)のとおりであり,本 件発明1〜9及び15〜17については,1)オキサリプラチン,2)有効安定化量の 緩衝剤であるシュウ酸又はそのアルカリ金属塩及び3)製薬上許容可能な担体である\n水,を包含する「安定オキサリプラチン溶液組成物」に係るものであり,本件発明 10は,1)オキサリプラチン,2)有効安定化量の緩衝剤であるシュウ酸又はそのア ルカリ金属塩及び3)製薬上許容可能な担体,を包含する水性溶液である「オキサリ\nプラチン溶液組成物」に関して,緩衝剤を溶液に付加することを含む安定化方法に 係る発明,本件発明11〜14は,本件発明1〜9のいずれかの組成物についての 担体(水)と緩衝剤を混合することを含む製造方法に係る発明である。
(2) 原告は本件審決における「緩衝剤の量」の認定に誤りがあると主張するので 検討するに,上記(1)の特許請求の範囲の記載からすると,「緩衝剤」は,溶液に添 加したり,混合することを前提とするものと解するのが自然である。また,上記の 通り,本件発明1〜9及び15〜17が,オキサリプラチン,緩衝剤及び担体を含 む溶液組成物に係るものであるところ,オキサリプラチンを水に溶解させたときに 生じるシュウ酸を緩衝剤と称し,オキサリプラチンや水とは別個の要素として把握 するのは不自然である。さらに,「緩衝剤」の「剤」は,「各種の薬を調合すること。 また,その薬」(広辞苑〔第6版〕)を意味するから,この一般的な意義に従うと, 「緩衝剤」は,「緩衝作用を有する薬」を意味すると解される。そうすると,特許請 求の範囲の記載からは,本件各発明における「緩衝剤」に,オキサリプラチンから 遊離したシュウ酸は含まれないと解するのが相当である。
(3) 次に,特許請求の範囲に記載された用語の意義は,明細書の記載を考慮して 解釈するものとされる(特許法70条2項)ので,本件明細書(甲1)の記載をみ ると,前記1(1)のとおり,「緩衝剤という用語」について,「オキサリプラチン溶液 を安定化し,それにより望ましくない不純物,例えばジアクオDACHプラチンお よびジアクオDACHプラチン二量体の生成を防止するかまたは遅延させ得るあら ゆる酸性または塩基性剤を意味する。」(【0022】)として,これを定義付ける記 載があり,上記の「剤」の一般的意義に照らしても,「緩衝剤」について,「緩衝作 用を有する薬」を意味するものと理解することは,本件明細書の記載にも整合する。 なお,原告は,本件において,本件明細書の記載を考慮すべきではない旨主張し ているが,特許法70条2項は一般的に特許発明の技術的範囲を定める場面に適用 され,特許侵害訴訟における充足性を検討する場面にのみ適用されるものではない から,原告の上記主張は採用できない。また,原告は,オキサリプラチンから遊離 したシュウ酸が緩衝剤としての役割を果たすと主張するが,同主張は本件特許の特 許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載に整合していないし,一般に,有効成分 である化合物が水溶液中で分解した場合に,当該分解物を「緩衝剤」と称するとい うような技術常識があると認めるべき証拠もない。
(4) そして,前記1(2)のとおり,本件各発明が,オキサリプラチンと水からなる 従来技術よりも安定したオキサリプラチン溶液組成物を提供することを目的とする ものであることに加え,本件明細書には,緩衝剤としてシュウ酸が二水和物として 付加される実施例1〜17が記載され,オキサリプラチン及び水のみからなる実施 例18は従来技術である比較例とされていることなどの本件明細書のその余の記載 を考慮しても,「緩衝剤」にオキサリプラチンから遊離したシュウ酸を含むと認める ことはできない。そうすると,「緩衝剤の量」に,オキサリプラチンから遊離したシ ュウ酸の量を含めるべきであるという原告の主張を採用することはできず,本件発 明1の「緩衝剤の量」について,「オキサリプラチン溶液組成物の作製時に,オキサ リプラチン及び担体に添加,混合された緩衝剤の量を意味し,オキサリプラチン溶 液組成物中のオキサリプラチンが経時的に分解することで生じたシュウ酸の量は, 当該『緩衝剤の量』に含まれない」とする本件審決の認定に誤りはない。
4 本件医薬品を製造販売する行為が本件各発明の実施行為に該当するか否かに ついて
(1) 証拠(甲9)によると,本件医薬品中のシュウ酸モル濃度は,製造直後にお いて5×10-5M,36箇月保存後において8×10-5Mであることが認められる ものの,前記3のとおり,オキサリプラチン溶液組成物中のオキサリプラチンが経 時的に分解することで生じたシュウ酸の量は,本件各発明における「緩衝剤の量」 に含まれないから,本件医薬品のシュウ酸モル濃度から直ちに,本件医薬品が本件 各発明の「緩衝剤の量」の範囲の緩衝剤を含有するということはできない。そして, 証拠(甲3,10)によると,本件医薬品は,オキサリプラチンと注射用水のみを 成分とし,その他の添加物はないことが認められるから,本件各発明における「緩 衝剤」すなわち「オキサリプラチン溶液組成物の作製時に,オキサリプラチン及び 担体に添加,混合された緩衝剤」を含有しないというほかないから,本件医薬品は, 本件各発明における「緩衝剤の量」の範囲を満たす量の「緩衝剤」を含有しない。
(2) そうすると,本件医薬品を製造・販売することは,本件各発明の実施に当た らないから,本件医薬品には緩衝剤が外から添加されていないとして,特許発明の 実施に本件処分を受けることが必要であったとは認められないとした本件審決の判 断に誤りはない。

◆判決本文

延長対象の特許が同じ事件です。

◆令和3(行ケ)10021

◆令和3(行ケ)10020

◆令和3(行ケ)10019

◆令和3(行ケ)10018

◆令和3(行ケ)10017

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令和2(ワ)11491  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 令和3年9月15日  東京地方裁判所

 先使用権ありとして意匠権侵害は成立しないと判断されました。

ア 原告意匠の出願日は令和元年8月20日であるところ,上記(2)におい て判示した被告製品の開発経緯によれば,被告製品を開発・製造して被告 に販売したダイセンは,Wuxi社及びCNTA社との間で洗面台用排水 口フィルターの新製品の開発を進め,平成31年4月にWuxi社から抜 き型図面(乙20)を受け取り,これに基づき試作品を作成した上で,被 告に対して新製品販売の提案を行い,被告製品の意匠は令和元年7月に被 告に採用されて,被告製品の製造・販売に至ったものと認められる。
イ ダイセンがWuxi社から受領した上記抜き型図面の構成は,上記(1) イの被告製品の意匠の基本的構成態様及び具体的構\成態様をいずれも備 えたものであり,被告製品の意匠と同一又は類似するということができる。 そして,同図面に基づいて作成されたと推認される被告製品の試作品(乙 23の2の1の下段,乙23の2の2,乙23の4)も同様に被告製品の 意匠の基本的構成態様及び具体的構\成態様をいずれも備え,被告製品の意 匠が被告に採用された後に,ダイセンの担当課長がCNTA社の担当者に 送信した電子メール(乙27)の本文に挿入された試作品の画像も同各態 様を備えていたものと認められる。 そうすると,原告意匠と同一又は類似する意匠は,平成31年4月にダ イセンがWuxi社から知得し,仮にそうではないとしても,ダイセンが 被告と打合せを重ねる中で原告意匠の出願日までの間に創作したもので あり,その意匠は平成31年4月から被告製品の意匠の採用時まで,一貫 して,上記(1)イの基本的構成態様及び具体的構\成態様を備えていたもの というべきである。
ウ 意匠法29条は「現に日本国内においてその意匠又はこれに類似する意 匠の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は,そ の実施又は準備をしている意匠及び事業の目的の範囲内において,その意 匠登録出願に係る意匠権について通常実施権を有する」と規定するところ, 上記(2)のとおり,ダイセンは,令和元年8月2日には被告から2万個の被 告製品の製造を受注していたことに照らすと,原告意匠の出願日(同月2 0日)には原告意匠又はこれに類する意匠の実施である事業を開始してい たというべきである。 加えて,ダイセンが,原告意匠の出願日当時,原告意匠について知って いたことを示す証拠はない。
エ 以上によれば,原告意匠と被告製品の意匠が類似しているとしても,ダ イセンは,原告意匠を知らないで自ら原告意匠又はこれに類似する意匠を 創作し,又は同意匠の創作をした者から知得して,原告意匠登録出願の際, 現に日本国内において原告意匠又はこれに類似する意匠の実施である事 業をしていたということができるので,意匠法29条に基づき,原告意匠 権について通常実施権を有するものというべきである。そうすると,被告 が,原告意匠権について通常実施権を有するダイセンから被告製品を仕入 れて販売等する行為が原告意匠権を侵害するということはできない。
(4) 原告の主張について
ア 抜き型図面(乙20)について
(ア) 原告は,抜き型図面は,作成日付が印字されておらず,手書き部分は 後日追記された可能性があるため,同図面が原告意匠の登録出願前に作\n成されたかどうか不明であると主張する。 しかし,ダイセンが平成31年4月11日にWuxi社及びCNTA 社と打合せを行った際の商談記録表(乙21)には,「シートサイズ:\nφ40mm(穴/12mm)×厚さ5mm,取っ手/8mm(45゜C))」, 「抜き型の形状は4月13日までに協議した上で決定させる。」,「別 紙参照:抜き型図面データ」との記載がある。同記録表はその内容,形\n式等に照らして,その「作成日」(同月17日)に作成されたものと信 用し得るところ,同記録表の上記記載に加えて,令和元年6月5日付け\nの電子メールに添付されていた乙23の2の1上段の画像データが乙 20の抜き型図面と同一であり,同図面にはその寸法が記載されている ことなども考慮すると,平成31年4月11日の上記打合せにおいて同 抜き型図面が配布されたと認めるのが相当である。 原告は,同抜き型画面には「4/13 最終案」との手書きの書込み があるのに対し,乙23の2の1上段の画像データには同様の書込みが ないと主張するが,同画像データは,乙20の抜き型図面の図面部分の みを画像データとしたものとも考えられることからすると,同画像デー タに書込みがないことをもって,「4/13 最終案」との上記書込み が原告と被告間の紛争が生じてからされたものであるということはで きない。
(イ) また,原告は,Wuxi社が,抜き型図面のCADファイルをわざわ ざ印刷した上で,紙媒体を日本まで郵送したというのは不自然であると 主張する。 この点,Wuxi社が抜き型図面の元データを印刷して紙媒体として 配布した経緯は明らかではないが,データの流用,改変の防止などの観 点から,CADデータを印刷し,精度を落とした上で,取引先との打合 せにおいて配布したとしても不自然ということはできない。
(ウ) さらに,原告は,乙20の抜き型図面の元データに作為が加わる可能\n性は否定できないと主張するが,乙20の画像データに作為が加えられ たことを具体的に示す証拠は存在しない。
イ 令和元年6月5日付け電子メール(乙23の1)に添付された図面及び 写真データ(乙23の2の1)について
(ア) 原告は,乙23の2の1の画像データ及び製品比較表(乙23の4)\nの画像データのプロパティ(乙34,36の2)は容易に変更すること ができるので,その信用性には疑問があると主張するが,同プロパティ が変更されたことを具体的に示す証拠は存在しない。
(イ) 原告は,被告の主張によると乙23の2の1上段の画像データが作成 されたのは抜き型図面の作成後ということになるが,通常,データを作 成してから印刷するはずであるから,被告の主張は不自然であると主張 する。 しかし,被告の主張するとおり,本件では,Wuxi社が,自らの保 有するデータに基づき,紙媒体の抜き型図面を作成してダイセンに交付 し,その後にダイセンが紙媒体の同図面から必要な部分をデータ化して 乙23の2の1上段の画像データを作成したものと認めるのが相当であ る。そうすると,抜き型図面の作成時期が乙23の2の1上段の画像デ ータの作成時期より早いのは当然であるというべきである。
ウ 製品比較表(乙23の4)について\n
(ア) 原告は,乙36の2のプロパティの作成日時は「2014/12/1 7」と本件よりはるかに過去のものになっており,また,最終更新日も 記載されておらず,同プロパティにある「最終印刷日」もいずれの画面 を印刷したのか不明であると主張する。 しかし,同プロパティの「作成日時」の記載は,同表の元になったフ\nォーマットの作成日時を示すものであると考えられ,製品比較表の作成\n日を示すものということはできない。 また,同プロパティによれば,その最終更新日は令和元年6月5日午 前9時41分であり,最終印刷日は同日午前9時40分であると認めら れ,印刷対象は同表であると認められる。そうすると,同プロパティの\n最終更新日や印刷対象が不明であるということはできない。 同プロパティに表示された最終更新日や最終印刷日は,令和元年5月\n27日の商談記録表(乙22)に「類似商品が販売されていないか,確\n認の依頼を受ける。比較資料を作成し,提出するとした。」との記載が あり,その次の打合せが同年6月12日に行われていること(乙24) とも整合するものであり,信用することができるというべきである。
(イ) 原告は,製品比較表の表\示と乙36の1のデータファイルの画像とは 異なると主張するが,乙36の1は画面の一部をスクロールしたために その一部が表示されていないものにすぎず,製品比較表\(乙23の4) と乙36の1のデータファイルとは同一のものであると認められる。
(ウ) 原告は,製品比較表は乙23の2の1下段の画像データを利用してい\nるので製品比較表のデータファイルの最終印刷日(令和元年6月5日午\n前9時40分)が乙23の2の1の画像データの作成日時(同日午前1 1時14分。乙34)より早いのは不自然であると主張する。 しかし,被告の主張する「乙23の2の1の画像データの作成日時」 は,乙23の2の1の画像データを貼り付けたエクセルファイルをPD\nFファイルに変換した日時にすぎないものと認められる(乙34)から, 被告が,試作品の画像データを作成した上で,これを利用して製品比較 表を作成し,その後同データと抜き型図面の画像データを併せて乙23\nの2の1のPDFファイルを作成したとも考えられる。そうすると,製 品比較表のデータファイルの最終印刷日が被告製品の試作品の写真の\n画像データを貼り付けたPDFファイルの作成日時より早いとしても\n不自然ということはできない。
エ 令和元年7月31日付け電子メール(乙27)について
原告は,電子メールの改ざんや編集は容易であって,ダイセンにも乙2 7の電子メールを改ざんする動機があったと主張するが,同メールの記載 やその本文に挿入された試作品の画像データが改ざんされたことを具体 的に示す証拠は存在しない。
オ 被告製品の意匠の完成時期について
原告は,令和元年8月2日の打合せに係る商談記録表(乙29)に「デ\nザイン案を提出したが,NGとのことであった。」と記載されていること をもって,この時点においてデザインが完成していなかったと主張する。 しかし,1)同年7月22日に行われた被告とダイセンの商談記録表には\n「当初の提案形状のままで,商品化を依頼した」との記載があること,2) 同月30日付けでキャンドゥから採用通知書がダイセンに送付されてい ること(乙26),3)ダイセンの担当課長のCNTA社の担当者宛の電子 メール(乙27)に「下記のフィルターで,採用決定しました。」と記載 され,その直下に被告製品の試作品の画像が挿入されていることによれば, 乙29の商談記録表における「デザイン」とは被告商品の形状に関するデ\nザインではなく,上記電子メールに「作成中」であると記載されている被 告製品の化粧袋のデザインであると解するのが相当である。 そうすると,同年8月2日時点において被告製品のデザインが完成して いなかったとの原告の主張は採用し得ない。

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平成31(ワ)7038等  特許権侵害行為差止等請求事件,損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年10月29日  東京地方裁判所

 29条1項2号にいう「公然実施」について、出願前から製造していた物と現在製造している物に変化がないとして、公然実施と認定し、権利行使不能と判断されました。\n

29条1項2号にいう「公然実施」とは,発明の内容を不特定多数の 者が知り得る状況でその発明が実施されることをいい,本件各発明のよう な物の発明の場合には,商品が不特定多数の者に販売され,かつ,当業者 がその商品を外部から観察しただけで発明の内容を知り得る場合はもちろ ん,外部からそれを知ることができなくても,当業者がその商品を通常の 方法で分解,分析することによって知ることができる場合も公然実施とな ると解するのが相当である。
・・・
エ 日本黒鉛らについて
(ア) 日本黒鉛各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか
a 日本黒鉛製品2,4及び5に係る日本黒鉛製品結果及び乙A18結 果は近接していること,日本黒鉛製品4及び5に係る乙A18結果の 回折プロファイルにおいて,菱面晶系黒鉛層(3R)の(101)面 及び六方晶系黒鉛層(2H)の(101)面の各ピークが出現すると される回折線の角度43ないし44°付近のピークは比較的明瞭であ り,前記2(1)ウ(イ)のとおり,PDXLの自動解析機能を使用しても\n適切な解が得られると考えられること,日本黒鉛製品2に係る乙A1 8結果の回折プロファイルにおける回折線の角度43ないし44°付 近のピークは明瞭とはいい難いが,このような場合に,PDXLの自 動解析機能を使用して得られた解が常に誤っていることを認めるに足\nりる証拠はないことからすると,日本黒鉛製品2,4及び5のRat e(3R)については,日本黒鉛製品結果及び乙A18結果のいずれ も採用することができるというべきである。
他方で,日本黒鉛製品1及び3に係る乙A18結果については,同 じ製品であるにもかかわらず,算出されたRate(3R)にかなり のばらつきがあること,日本黒鉛製品1及び3に係る乙A18結果の 各回折プロファイルにおける回折線の角度43ないし44°付近のピ ークは必ずしも明瞭ではないこと,前記2(1)ウ(イ)のとおり,PDX Lは,ピークが不明瞭な場合,自動解析機能によっては不合理な解に\n収束したり,解が発散したりすることがあり,このような場合,試料 を考慮した解析条件を手動で入力する必要があること,前記(1)ウ(イ) aのとおり,原告は,自動解析機能によっては不合理な解に収束した\nり,解が発散したりする場合には適宜の解析条件を手動で入力するこ とにより,PDXLを用いて解析を行い,日本黒鉛製品結果を得たこ とからすると,日本黒鉛製品1及び3のRate(3R)については, 日本黒鉛製品結果を採用することができ,乙A18結果は採用するこ とができないというべきである。
b 日本黒鉛製品結果及び乙A18結果によれば,日本黒鉛製品2は本 件各発明の構成要件1B及び2Bを,日本黒鉛製品4及び5は構\成要 件1Bをそれぞれ充足し,日本黒鉛製品結果によれば,日本黒鉛製品 1及び3は構成要件1B及び2Bを充足することとなり,前記2の本\n件各発明の解釈を前提とすると,日本黒鉛製品1ないし3は本件各発 明の,日本黒鉛製品4及び5は本件発明1の各技術的範囲に属すると 認めるのが相当である。
(イ) サンプルのRate(3R)
a 次に,前記(1)ウ(イ)bのとおり,日本黒鉛工業が保管していた日本 黒鉛製品1,2,4及び5の各サンプルのRate(3R)は,サン プル結果3)のとおりである。
そして,日本黒鉛工業の証人Zは,日本黒鉛工業においては,平成 13年10月頃からおおむね10年に1回,製品のサンプルを保管す るようになり,平成20年6月12日に採取した日本黒鉛製品1のサ ンプル,平成13年10月5日に採取した日本黒鉛製品2のサンプル, 平成20年7月30日に採取した日本黒鉛製品4のサンプル及び同年 12月16日に採取した日本黒鉛製品5のサンプルを保管している旨 証言し,Z証人作成の陳述書(乙A120)にも同旨の記載があると ころ,証拠(乙A86,94,95)による裏付けがあることからす ると,Z証人の上記証言は採用することができるというべきである。 したがって,上記日本黒鉛製品1,2,4及び5の各サンプルは上 記各日に採取したものと認めるのが相当である。
b 日本黒鉛製品1に係るサンプル結果3)については,同じ製品である にもかかわらず,算出されたRate(3R)にかなりのばらつきが あること,サンプル結果3)の回折プロファイルにおいて,菱面晶系黒 鉛層(3R)の(101)面及び六方晶系黒鉛層(2H)の(101) 面の各ピークが出現するとされる回折線の角度43ないし44°付近 のピークは必ずしも明瞭ではないこと,前記2(1)ウ(イ)のとおり,P DXLは,ピークが不明瞭な場合,自動解析機能によっては不合理な\n解に収束したり,解が発散したりすることがあり,このような場合, 試料を考慮した解析条件を手動で入力する必要があることからすると, 日本黒鉛製品1のサンプルのRate(3R)について,サンプル結 果3)は採用することができないというべきである。 他方で,日本黒鉛製品4及び5の各サンプルに係るサンプル結果3) については,複数回算出したRate(3R)にばらつきはほとんど なく,サンプル結果3)の回折プロファイルにおける回折線の角度43 ないし44°付近のピークは比較的明瞭であり,前記2(1)ウ(イ)のと おり,PDXLの自動解析機能を使用しても適切な解が得られると考\nえられることからすると,日本黒鉛製品4及び5の各サンプルのRa te(3R)について,サンプル結果3)を採用することができるとい うべきである。 日本黒鉛製品2のサンプルに係るサンプル結果3)については,複数 回算出したRate(3R)にばらつきはほとんどないこと,そして, サンプル結果3)の回折プロファイルにおける回折線の角度43ないし 44°付近のピークは必ずしも明瞭ではないものの,本件証拠上,こ のような場合に,PDXLの自動解析機能を使用して得られた解が常\nに誤っているとまでは認められないことからすると,日本黒鉛製品2 のサンプルのRate(3R)について,サンプル結果3)を一応採用 することができるというべきである。
(ウ) 日本黒鉛らが本件特許出願前から本件各発明の技術的範囲に属する日 本黒鉛各製品を製造販売していたか
前記イ(イ)のとおり,菱面晶系黒鉛層の増加に影響を及ぼすと考えられ る要素のほとんどは,黒鉛製品の製造工程及び製造された製品が満たす べき規格に関わるといえるが,具体的に,どのような条件の下,どのよ うな操作をすることにより,単に菱面晶系黒鉛層が増加するだけでなく, 六方晶系黒鉛層との総和における菱面晶系黒鉛層の割合であるRate (3R)がどの程度変動するかは,本件訴訟に現れた全証拠によっても 確定することができない。 そして,前記(1)ウ(ア)のとおり,日本黒鉛工業は,本件特許出願前か ら日本黒鉛各製品を製造しており,本件特許出願前から現在に至るまで, その製造工程及び出荷の基準となる規格値に大きな変更はない。 また,前記前提事実(2)及び(7)アのとおり,原告が日本黒鉛製品結果 をもって日本黒鉛らに対して提訴したのは平成31年3月であり,平成 26年9月9日の本件特許出願からそれほど長い年月が経過しているも のとはいえない。
以上によれば,日本黒鉛らは,本件特許出願前から現在に至るまで, 日本黒鉛各製品の各名称を付した黒鉛製品を製造販売しており,この間, 菱面晶系黒鉛層の増減に影響を与えると考えられるこれらの製品の製造 工程及び規格値に変更はないことから,この間に製造販売された日本黒 鉛各製品は,同じ製造工程を経て,同じ規格を満たすものであると認め られる。そして,他にこれらの製品に対してRate(3R)の増減に 影響を及ぼす事情が存したとは認められず,前記(ア)のとおり,現時点に おいて,日本黒鉛製品1ないし3は本件各発明の,日本黒鉛製品4及び 5は本件発明1の各技術的範囲に属する。これらの事情に照らせば,日 本黒鉛らは,本件特許出願前から,このような日本黒鉛各製品を製造販 売していたと認めるのが相当であり,前記(イ)bのとおり,本件特許出願 前の平成20年に採取した日本黒鉛製品4及び5のRate(3R)が 31%以上であることも,この結論を裏付けるというべきである。
なお,日本黒鉛製品2に係るサンプル結果3)は,乙A18結果と相違 しているが,日本黒鉛製品2は土状黒鉛であり,菱面晶系黒鉛層(3R) の(101)面及び六方晶系黒鉛層(2H)の(101)面の各ピーク が出現するとされる回折線の角度43ないし44°付近のピークが必ず しも明瞭ではなく,前記2(1)ウ(イ)のとおり,PDXLは,ピークが不 明瞭な場合,自動解析機能によっては不合理な解に収束したり,解が発\n散したりすることがあり,同じく土状黒鉛である日本黒鉛製品1に係る サンプル結果3)及び乙A18結果を見てもばらつきがあることからする と,日本黒鉛製品2に係るサンプル結果3)と乙A18結果が相違するこ とは,日本黒鉛らが本件特許出願前から本件各発明の技術的範囲に属す る日本黒鉛製品2を製造販売していたという上記認定を左右するとはい えない。

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令和3(ネ)10044  著作権侵害請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年12月8日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

公園に設置したタコの滑り台について1審は著作物ではないと判断し、知財高裁もこの判断を維持しました。

「イ 前記ア認定のとおり,本件原告滑り台は,遊具としての実用に供 されることを目的として製作されたことが認められる。 ところで,著作権法2条1項1号は,「著作物」とは,「思想又は 感情を創作的に表現したものであつて,文芸,学術,美術又は音楽の\n範囲に属するもの」をいうと規定し,同法10条1項4号は,同法に いう著作物の例示として,「絵画,版画,彫刻その他の美術の著作物」 を規定しているところ,同法2条1項1号の「美術」の「範囲に属す るもの」とは,美的鑑賞の対象となり得るものをいうと解される。そ して,実用に供されることを目的とした作品であって,専ら美的鑑賞 を目的とする純粋美術とはいえないものであっても,美的鑑賞の対象 となり得るものは,応用美術として,「美術」の「範囲に属するもの」 と解される。 次に,応用美術には,一品製作の美術工芸品と量産される量産品 が含まれるところ,著作権法は,同法にいう「美術の著作物」には, 美術工芸品を含むものとする(同法2条2項)と定めているが,美術 工芸品以外の応用美術については特段の規定は存在しない。 上記同条1項1号の著作物の定義規定に鑑みれば,美的鑑賞の対 象となり得るものであって,思想又は感情を創作的に表現したもので\nあれば,美術の著作物に含まれると解するのが自然であるから,同条 2項は,美術工芸品が美術の著作物として保護されることを例示した 規定であると解される。他方で,応用美術のうち,美術工芸品以外の 量産品について,美的鑑賞の対象となり得るというだけで一律に美術 の著作物として保護されることになると,実用的な物品の機能を実現\nするために必要な形状等の構成についても著作権で保護されることに\nなり,当該物品の形状等の利用を過度に制約し,将来の創作活動を阻 害することになって,妥当でない。もっとも,このような物品の形状 等であっても,視覚を通じて美感を起こさせるものについては,意匠 として意匠法によって保護されることが否定されるものではない。 これらを踏まえると,応用美術のうち,美術工芸品以外のもので あっても,実用目的を達成するために必要な機能に係る構\成と分離し て,美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えてい\nる部分を把握できるものについては,当該部分を含む作品全体が美術 の著作物として,保護され得ると解するのが相当である。 以上を前提に,本件原告滑り台が美術の著作物に該当するかどう かについて判断する。
ウ 控訴人は,本件原告滑り台は,一品製作品というべきものであり, 「美術工芸品」(著作権法2条2項)に当たり,創作性を有するから, 美術の著作物に該当する旨主張する。
そこで検討するに,1)「タコの滑り台,北欧に」との見出しの平 成23年7月7日の朝日新聞の記事(甲4)には,控訴人のB会長の 発言として「タコの滑り台は一つ一つデザインが違い,その都度設計 する。」,2)「タコの滑り台の話」と題するC作成の令和2年7月11 日の毎日新聞の記事(甲25)には,タコの滑り台について「一つ一 つが手作りで,全く同形の作品はないという。」,3)株式会社パークフ ル作成のウェブサイトに掲載された「日本縦断!タコすべり台がある 公園特集」と題する2018年(平成30年)1月3日付けの記事 (乙24)には,タコの滑り台について「どのタコも手作りで作られ ていて,二つとして同じ形のタコはいないんだそう!」との記載があ る。
しかしながら,上記各証拠の記載は,いずれも,B会長の発言又 は伝聞を掲載したものであって,客観的な裏付けに欠けるものである。 他方で,前記前提事実(2)及び(3)のとおり,前田商事が全国各地から発 注を受けて製作したタコの滑り台は260基以上にわたること,前田 商事が製作したタコの滑り台は,基本的な構造が定まっており,大き\nさや構造等から複数の種類に分類され,本件原告滑り台は,その一種\nである「ミニタコ」に属するものであったことからすれば,本件原告 滑り台と同様の「ミニタコ」の形状を有する滑り台が他にも製作され ていたことがうかがわれる。そうすると,上記各証拠から直ちに本件 原告滑り台が一品製作品であったものと認めることはできない。他に これを認めるに足りる証拠はない。
よって,本件原告滑り台は,「美術工芸品」に該当するものと認め られないから,控訴人の上記主張は,その前提を欠くものであって, 理由がない。
エ 控訴人は,本件原告滑り台が「美術工芸品」に当たらないとしても, 美術の著作物として保護される応用美術である旨主張する。 そこで,まず,本件原告滑り台において,実用目的を達成するた めに必要な機能に係る構\成と分離して,美的鑑賞の対象となり得る美 的特性である創作的表現を備えている部分を把握できるかどうかを検\n討し,その上で,全体として美術の著作物に該当するかどうかについ て判断する。
・・・
このように,タコの頭部を模した部分は,本件原告滑り台の中でも最 も高い箇所に設置されており,同部分に設置された上記各開口部は,滑 り降りるためのスライダー等を同部分に接続するために不可欠な構造で\nあって,滑り台としての実用目的を達成するために必要な構成であると\nいえる。また,上記空洞は,同部分に上った利用者が,上記各開口部及 びスライダーに移動するために必要な構造である上,開口部を除く周囲\nが囲まれた構造であることによって,高い箇所にある踊り場様の床から\n利用者が落下することを防止する機能を有するといえる。他方で,上記\n空洞のうち,スライダーが接続された開口部の上部に,これを覆うよう に配置された略半球状の天蓋部分については,利用者の落下を防止する などの滑り台としての実用目的を達成するために必要な構成とまではい\nえない。 そうすると,本件原告滑り台のタコの頭部を模した部分のうち,上記 天蓋部分については,滑り台としての実用目的を達成するために必要な 機能に係る構\成と分離して把握できるものであるといえる。 しかるところ,上記天蓋部分の形状は,別紙1のとおり,頭頂部から 後部に向かってやや傾いた略半球状であり,タコの頭部をも連想させる ものではあるが,その形状自体は単純なものであり,タコの頭部の形状 としても,ありふれたものである。 したがって,上記天蓋部分は,美的特性である創作的表現を備えてい\nるものとは認められない。 そして,本件原告滑り台のタコの頭部を模した部分のうち,上記天蓋 部分を除いた部分については,上記のとおり,滑り台としての実用目的 を達成するために必要な機能に係る構\成であるといえるから,これを分 離して美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えてい\nるものと把握することはできないというべきである。 以上によれば,本件原告滑り台のうち,タコの頭部を模した部分は, 実用目的を達成するために必要な機能に係る構\成と分離して,美的鑑賞 の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握で\nきるものとは認められない。
・・・
そうすると,本件原告滑り台のうち,タコの足を模した部分は,座っ て滑走する遊具としての利用のために必要な構成であるといえるから,\n同部分は,実用目的を達成するために必要な機能に係る構\成と分離して, 美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分\nを把握できるものとは認められない。
・・・
前記(ア)ないし(ウ)のとおり,本件原告滑り台を構成する各部分にお\nいて,実用目的を達成するために必要な機能に係る構\成と分離して, 美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部\n分を把握することはできない。 そして,上記各部分の組合せからなる本件原告滑り台の全体の形状に ついても,美的鑑賞の対象となり得るものと認めることはできないし, また,美的特性である創作的表現を備えるものと認めることもできない。\nしたがって,本件原告滑り台が美術の著作物に該当するとの控訴人の 主張は,採用することができない。
・・・
「(カ) また,控訴人は,応用美術であっても「実用目的を達成するため に必要な機能に係る構\成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的 特性を備えている部分を把握できるもの」については「美術の著作物」 として保護され得るという判断基準によるとしても,「実用目的を達 成するために必要な機能に係る構\成と分離して」とは,その構成部分\nを物理的に取り除くというのではなく,実用品として必要な機能を果\nたす構成を観念的に捨象して,創作物をみることを意味すると解すべ\nきであり,本件原告滑り台を滑り台としての機能を取り去ってみたと\nき,その形状は,Aが彫刻家としての思想又は感情を創作的に表現し\nたものであり,抽象芸術として十分に鑑賞の対象になり得るものであ\nるから,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているとして,美 術の著作物に該当する旨主張する。 しかしながら,本件原告滑り台は,遊具としての実用に供されるこ とを目的として製作された作品である以上,これが美術の著作物に該 当するか否かを判断するに当たっては,実用品である滑り台としての 機能を果たす構\成を観念的に捨象して検討することはできないから, 控訴人の上記主張は,採用することができない。

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◆令和1(ワ)21993

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令和3(ワ)15819  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 令和3年12月10日  東京地方裁判所

 ログインに関する本件発信者情報がプロバイダ責任制限法4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」に該当すると判断されました。

前記前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ る。
ア ツイッターの利用者がツイート等の投稿を行うには,事前にアカウントを 登録した上,ユーザー名,パスワード等を入力し,当該アカウントにログイ ンすることが必要である。そのため,アカウントの使用者は,ツイッターの 仕組み上,当該アカウントにログインした者とされている。
イ ツイッター社により開示された本件IPアドレス等の使用期間(令和3年 3月15日から同年5月7日まで)においても,本件各アカウントは,いず れも,昼夜を問わず頻繁にログインされるなど,継続的に使用されている。 (甲2ないし6,12)。
「権利の侵害に係る発信者情報」該当性
上記認定事実によれば,ツイッターの上記仕組み及び本件各アカウントの使 用状況を踏まえると,本件各アカウントにログインした者が本件各投稿をする ことによって,下記2において説示するとおり,原告の権利を侵害したものと 認めるのが相当であり,これを覆すに足りる的確な証拠はない。そうすると, ログインに関する本件発信者情報は,上記侵害の行為をした発信者を特定する 情報であるといえるから,「権利の侵害に係る発信者情報」に該当するものと いえる。 これに対し,被告は,本件発信者情報が本件アカウントにログインした者の 情報にすぎず,本件各投稿を行った本件発信者の情報そのものではないことか らすると,本件発信者情報は「権利の侵害に係る発信者情報」に該当しない旨 主張する。 しかしながら,本件発信者情報は本件各投稿を行った本件発信者の情報であ るといえることは,上記において説示したとおりであり,被告の主張は,その 前提を欠く。のみならず,プロバイダ責任制限法4条の趣旨は,特定電気通信 による情報の流通によって権利の侵害を受けた者が,情報の発信者のプライバ シー,表現の自由,通信の秘密に配慮した厳格な要件の下で,当該特定電気通\n信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対し て発信者情報の開示を請求することができるものとすることにより,加害者の 特定を可能にして被害者の権利の救済を図ることにある(最高裁平成21年\n(受)第1049号同22年4月8日第一小法廷判決・民集64巻3号676 頁参照)。そうすると,アカウントにログインした者が,権利の侵害に係る情 報を送信したものと認められる場合には,侵害情報の送信時点ではなく,アカ ウントにログインした時点における発信者情報であっても,「権利の侵害に係 る発信者情報」に該当するものと認めるのが相当である。

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令和2(行ケ)10089  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年12月15日  知的財産高等裁判所

 訂正発明は、進歩性違反無しとした審決が取り消されました。

発明の要旨認定は,特許請求の範囲の記載に基づいて行うべきであ り,発明が属する技術分野における優先日前の技術常識を考慮した通 常の意味内容により特許請求の範囲の記載を解釈するのが相当である。 もっとも,特許請求の範囲の記載の意味内容が,明細書又は図面にお いて,通常の意味内容とは異なるものとして定義又は説明されていれ ば,通常の意味内容とは異なるものとして解される余地はあるものの, そのような定義又は説明がない場合には,上記のとおり解釈するのが 相当である。
・・・
f 本件審決の解釈の適否
(a) 本件審決の説示
本件審決は,シートシェルについて次のように説示する。 (i) 「ア.本件発明1の『シートシェル』で特定される事項」に おいて「本件発明1の『シートシェル』は,・・・『支持部』と は別個の部材であると解するのが相当である。そうすると, 『シートシェル』の定義は,『シート』の『シェル』であって,『子 供又は乳児を支持する支持部』とは別個の部材であって,『前 記支持部は前記シートシェルの内側にあ』るから,支持部が 内側にある『支持部のための構造要素』である『シェル』とい\nうことができる。」とする(本件審決第5,2(1)(1−2)ア 〔本件審決49頁9〜17行目〕)。 (ii) 前記(i)の「『シートシェル』の定義からみて,甲1発明1の 『側方支持部6を備えた背もたれ5,座部4,ヘッドレスト 10』は子供を支持する部材であるから本件発明1の『支持 部』に相当するものであり」とする(本件審決第5,2(1)(1 −2)イ〔本件審決49頁19〜21行目〕)。 (iii) 「シートシェルが,従来技術とは異なり,子供を支持する 支持部材とは別な部材であることは,以下の明細書の記載か らも明白である。」(本件審決第5,2(1)(1−2)オ(ア)〔本 件審決53頁20〜21行目〕)として,本件明細書の段落【0 008】及び【0019】を挙げる。
(b)本件審決の解釈
前記(a)の本件審決の説示を総合すると,本件審決は,本件発明の 「支持部」が,シートシェルに係る技術常識の(a)ないし(c)(前記c (a)ないし(c)により理解される「シートシェル」及び「子供を支え る柔軟性のある素材」に相当し,本件発明の「シートシェル」は, 「支持部」を内側に配置する,従来技術(技術常識)における「シ ートシェル」及び「子供を支える柔軟性のある素材」とは別異の, それらに更に追加される構造要素と解釈しているものと認められ\nる。
(c) 本件審決の解釈の適否
本件審決は,本件発明の「シートシェルが,従来技術とは異なり, 子供を支持する支持部材とは別な部材である」と解する根拠として, 本件明細書の段落【0008】や【0019】を引用するが(前記 (a) (iii)),これらの段落は,「側面衝突保護部」の配置とその作用又 は効果についての説明にとどまるものであって,「シートシェル」が 従来技術とは別異なものであるとの記載はないし,支持部について は何らの記載もないことからすると,上記段落が本件審決の上記解 釈を裏付けるものとはいえない。そして,本件発明の特許請求の範 囲の記載や本件明細書の発明の詳細な説明の記載において,前記(b) の本件審決の解釈を採用すべき根拠を見出すことはできない。した がって,前記(b)の本件審決の解釈を採用することはできない。
(d)被告の主張の検討
被告は,本件発明の「シートシェル」の解釈について,「背部側か ら支持部を構造的に保持するシェル(外殻)的構\造要素である」,「支 持部とは別個のシェル形状の一構成要素であり,子供を前部側で支\n持する支持部の背部側を外側から構造的に保持する,支持部のため\nのシェル(外殻)的構造要素であって,車両の側部から伝わる横か\nらの力がシートシェルに導かれるように側面衝突保護部を配置し たシェルである」,「シートシェルは,シートシェルの内側にある支 持部の背部側を外側から構造的に保持し,かつ側面衝突保護部を取\nり付けるのに必要とされる程度に剛性(段落【0022】)を備える シェル形状部材である」,「シートシェルはその背部側が露出してお り,シェルの名のとおり曲面形状である」などと主張する(前記第 3,1(1)ア〔被告の主張〕)。確かに,本件図面の図2,5及び6に, シートの背部に曲面形状の構造が示されているようにも見え,実施\n例において,それがシートシェルに該当するとされている。しかし, 本件明細書には,本件発明のシートシェルを,被告が主張するよう な外殻的構造の意味に限定して解釈すべき根拠となるような記載\nはなく,シートシェルという用語の解釈に当たって,本件発明が属 する技術分野における優先日前の技術常識を考慮した通常の意味 内容とは異なるように解釈すべきことを裏付ける根拠もないから, 被告の上記主張は採用することができない。
(イ) 側面衝突保護部の配置について
a 請求項1(本件発明1)により示される側面衝突保護部の配置 本件発明1は「前記シートシェルの外側で前記シートシェルに取り 付けられる側面衝突保護部」(構成要件1D)という構\成を備えるから, 本件発明1の側面衝突保護部は,シートシェルの外側でシートシェル に取り付けられるものである。そして,前記(ア)dのとおり,「シート シェル」は,剛性のある素材から成るチャイルドセーフティシートの 基本構造体であると解されることからすると,このような基本構\造体 である「シートシェル」の側面の外側に取り付けられた「側面衝突保 護部」が受けた力は,自ずと「シートシェル」に伝達されることにな る。
本件発明1は,「前記側面衝突保護部は,前記チャイルドセーフティ シートが前記車両の前記シートに取付けられた状態において,前記車 両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力が 前記シートシェルに導かれるように,配置される」(構成要件1G)と\nいう構成を備えるところ,上記のとおり,側面衝突保護部がシートシ\nェルの外側で前記シートシェルに取り付けられること(構成要件1D),\nシートシェルは剛性のある素材から成るチャイルドセーフティシート の基本構造体であり(前記(ア)d),側面衝突保護部が受けた力は自ず とシートシェルに伝達されることに照らすと,上記の構成(構\成要件 1G)は,シートシェルの外側に取り付けた側面衝突保護部の配置(換 言すれば「取付位置」)が,シートシェルの側面の外側であることを示 すのみであり,その配置について,それ以上に何ら具体的な特定をす るものではないと認められる。
b 被告の主張の検討
被告は,請求項1(本件発明1)の「側面衝突保護部は,・・・横か らの力が前記シートシェルに導かれるように,配置される」(構成要件\n1G)という文言は,機能的限定であるから,本件明細書に記載され\nた具体的構成に基づいて限定的に解釈し,「側面衝突保護部が,チャイ\nルドセーフティシートの座部領域より上方であって,チャイルドセー フティシートの背部に配置される」ことによって,「横からの力が,支 持部(子供)には導かれず,シートシェルにのみ導かれる」ことを意 味するものと解釈すべきであると主張する(前記第3,1(1)イ〔被告 の主張〕)。
しかし,発明の要旨認定は,特許請求の範囲の記載に基づいて行わ れるべきであり,それは,特許請求の範囲の記載の中に作用又は機能\nを用いて物を特定しようとする記載がある場合であっても同様である。 本件発明1の「前記側面衝突保護部は,前記チャイルドセーフティシ ートが前記車両の前記シートに取付けられた状態において,前記車両 の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力が前 記シートシェルに導かれるように,配置される」(構成要件1G)とい\nう構成には,「車両の側部からチャイルドセーフティシートに伝わる横\nからの力がシートシェルに導かれる」ということしか記載されておら ず,「横からの力が,支持部(子供)には導かれず,シートシェルにの み導かれる」とは記載されていないから,被告主張のような限定的な 解釈をとることはできない。請求項6(本件発明6)には,側面衝突 保護部の側部要素がチャイルドセーフティシートの座部領域より上に 配置されるチャイルドセーフティシートが記載され,請求項7(本件 発明7)には,側部要素がチャイルドセーフティシートの背部に配置 されるチャイルドセーフティシートが記載されており,また,本件明 細書の段落【0008】及び【0019】には,衝突による横からの 力が子供の体に直接伝わらず,子供の体を迂回してシートシェルに導 かれるように取り付けられる側面衝突保護部材に関する記載があるが, 請求項1(本件発明1)の文言を,従属請求項である請求項6及び7 の記載並びに本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】及び 【0019】の記載によって限定して解釈する理由はないから,被告 の上記主張は採用することができない。

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令和2(行ケ)10150  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年12月16日  知的財産高等裁判所

 原告は、訂正発明は、進歩性違反、新規事項、委任省令違反などの無効理由があるとして、無効理由無しとした審決の取消を求めました。知財高裁は審決を維持しました。

特許法36条4項1号の委任する特許法施行規則24条の2は,発明の詳細な説 明の記載について,「発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発 明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解 するために必要な事項を記載することによりしなければならない」と規定するとこ ろ,原告は,本件明細書からはオルニチンを用いた本件訂正発明が,どのような課 題をどのように解決したか明らかでないこと,「発酵物の乾燥重量1g当たり」「8 mg 以上のオルチニン」という数値限定に対応する課題も効果も,本件明細書に記載 がなく,当業者において本件訂正発明の課題やその解決手段を認識することはでき ないから,上記委任省令要件違反である旨主張する。
(2) 本件明細書の記載について
そこで検討するに,前記1(1)のとおり,本件明細書の段落【0226】には,「ア ルギニンについては,発酵処理によりオルニチンに変換されることが確認された。 従って,大豆胚軸にアルギニンを添加してラクトコッカス 20-92 株で発酵処理する ことにより,エクオールのみならず,オルニチンをも生成させ得ることが明らかと なった。」との記載があり,本件明細書の段落【0228】【表3】にも,発酵によ\nり,アルギニンからオルニチンが生成することが示されている。また,本件明細書 の段落【0050】には,「ダイゼイン類を含む原料」の一例である「大豆胚軸」を 用いた場合のオルニチンの含有量について,「エクオール含有大豆胚軸発酵物の乾燥 重量1g当たりオルニチンが5〜20mg,好ましくは8〜15mg,更に好ましくは 9〜12mg 程度が例示される。」と記載されており,当業者は,本件訂正発明は,こ の好ましい量の下限を採用したものであると理解できる(前記5(5)参照)。
これらからすると,当業者は,本件訂正発明の技術上の意義は,ラクトコッカス 20-92 株で発酵処理することにより,エクオールのみならず,オルニチンをも生成さ せ得ることを明らかにし,エクオール及びオルニチンを含有する発酵物(オルニチ ンの含有量は乾燥重量1g当たり8mg 以上)の製造方法を提供したことにあること 及び発酵処理によりこれを解決することが理解できるから,本件明細書の発明の詳 細な説明の記載には,当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が 記載されているということができる。
(3) 原告の主張について
原告は,本件明細書の【発明が解決しようとする課題】段落【0010】におい てオルニチンに係る記載がないことを指摘するが,上記のとおり,特許法施行規則 24条の2は,「発明の詳細な説明の記載」に係る規定であるから,本件明細書全 体の記載から理解できれば足り,必ずしも,発明の技術上の意義を理解するために 必要な事項が「発明が解決しようとする課題」の項目に記載されている必要はない。

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令和3(行ケ)10052  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年12月20日  知的財産高等裁判所

 髪の毛のカット手法を分析する方法について、発明該当性無しとした審決が維持されました。

以上によれば,本願補正発明の第1のステップないし第4のステップは, 全体として考察すると,分析者が,頭髪の知識等を利用して自然乾燥ヘア スタイルを推定し(第1のステップ),分析の対象となる頭部の領域を選択 し(第2のステップ),セクションに適した分類項目の中から分析者が推定 した分析対象者のヘアスタイルを分類し(第3のステップ),この分類に対 応するカット手法の分析を導出する(第4のステップ)ことを,頭の中で すべて行うことが含まれるものである以上,仮に,分析者が頭の中で行う 分析の過程で利用する頭髪の知識や経験に自然法則が含まれているとして も,専ら人の精神的活動によって前記1(1)で認定した課題の解決すること を発明特定事項に含むものであって,「自然法則を利用した技術的思想の創 作」であるとはいえないから,特許法2条1項に規定する「発明」に該当 するものとはいえない。

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令和3(行ケ)10060  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年12月20日  知的財産高等裁判所

 ブロックチェーン関連技術のCS関連発明について、進歩性無しとした審決が維持されました。

進歩性無しとされた請求項1は以下です。
請求項1(本件補正発明)
管理主体が存在しないパブリック型ネットワークにおいて台帳を分散して記録する複数のノードの少なくとも1つに対し,トランザクションのリクエストを送信する複数のプロセスであって,設定されるプロセス多重度に応じた複数のプロセスを生成する生成部と,
トランザクションの指示を受け付け,前記複数のプロセスのいずれかに当該トランザクションのリクエスト送信を割り当てる割当部と,を備えるシステム。
これらの記載によると,引用文献1の実験においては,スレッド当たり のリクエスト数をセキュリティ機能のOFF又はONの相違に従って固\n定し,並列スレッド数を変化させてスループット(1秒当たりのリクエス ト処理量)を測定しているのであり,「全スレッドによる合計リクエスト件 数」は並列スレッド数にのみ左右されるから,引用文献1は,専ら並列ス レッド数とスループットとの関係を測定したものであり,その測定結果と して,並列スレッド数の増加に対するスループットは,ある程度までは増 加し,一定程度で頭打ちとなり,その後は挙動不安定になるというものが 得られたとするものである。そうすると,引用文献1は,並列スレッド数 を増加させていけばスループットは増加するが,ある程度以降は挙動が安 定しなくなるので,その場合には並列スレッド数の増加による効果がなく なり,「リクエストの流量制限」で対応しなければならないと理解すべきも のであるから,その記載内容は,スレッド数の増加による効果には一定の 最大限度があることを含意するものというべきである。 以上のとおりであるから 原告の前記第3の1(1)アの主張は採用する ことができない。なお,原告は,引用文献1においては,「負荷が大きすぎ ること」,すなわち「単位時間当たりのリクエスト数が大きすぎること」を 認識するための手段としてスレッドの数を増加させてみた測定結果が記 載されているのにすぎず,このような記載をもって,「スレッド数(並列度) の制御」を,「リクエストの流量制御」における課題解決手段として読み取 ることはできないない旨主張するが,前述のとおり,引用文献1の該当部 分の記載は,単に課題認識手段としての測定結果を表示したものとはいえ\nず,スレッドの数を増加させた場合の結果に応じて,課題解決に向けた対 応策の示唆等にも及ぶものであるから,原告の前記主張は前提を欠くもの というべきである。 したがって,引用文献1には,引用発明がスレッド数を制御すること, 少なくとも,スレッドの多重度を設定し,これより,設定されるスレッド 多重度に応じた複数のスレッドを生成するものであるとの記載があると 認められる。

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令和2(行ケ)10144  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年11月16日  知的財産高等裁判所

 無効理由(進歩性、サポート要件など)は無しとした審決が維持されました。

ア 特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許 請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載さ れた発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載によ り当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,ま た,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題 を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断するのが相当で ある。
イ 本件訂正発明の課題について
(ア) 前記1(2)によると,本件訂正発明は,連通可能な隔壁手段で区画された複数\nの室を有する輸液容器が病院で使用されているところ,輸液中には通常微量金属元 素が含まれていないことから投与が長期になると微量金属元素欠乏症を発症するが, 微量金属元素は輸液と混合した状態で保存すると品質劣化が問題となるため,依然 として輸液の投与直前に混合されているという現状に鑑み,外部からの押圧によっ て連通可能な隔壁手段で区画された複数の室を有する輸液容器を用い,用時に細菌\n汚染の可能性なく微量金属元素を混入することができ,かつ,保存安定性にも優れ\nた輸液製剤の創製研究が開始されたものの,含硫アミノ酸を含むアミノ酸輸液を一 室に充填して微量金属元素収容容器を同室に収容すると,当該アミノ酸輸液と微量 金属元素が隔離してあっても微量金属元素を含む溶液が不安定であるという問題が 生じることを知見し,その上で,微量金属元素が安定に存在していることを特徴と する含硫化合物を含む溶液を有する輸液製剤を提供することを目的とするものであ る。
(イ) 上記(ア)からすると,本件訂正発明1及び2は,微量金属元素が安定に存在し ていることを特徴とする含硫化合物を含む溶液を有する輸液製剤を提供することを 課題とするものであるが,より具体的には,外部からの押圧によって連通可能な隔\n壁手段で区画された複数の室を有する輸液容器を用いて,あらかじめ微量金属元素 を用時に混入可能な形で保存してある輸液製剤であって,含硫化合物を含む溶液を\n一室に充填した場合であっても微量金属元素が安定に存在している輸液製剤を提供 することを課題とするものと解される。同様に,本件訂正発明10及び11の課題 は,そのような輸液製剤の保存安定化方法を提供することを課題とするものである。
ウ 本件訂正発明1について
(ア) 本件訂正発明の請求項1は,前記イの課題に関し,「外部からの押圧によって 連通可能な隔壁手段で区画されている複数の室を有する輸液容器において」,「室\nに・・・微量金属元素を含む液が収容された微量金属元素収容容器が収納されて」 いるとして,あらかじめ微量金属元素を用時に混入可能な形で保存することを特定\nしつつ,「一室に含硫アミノ酸および亜硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも 1種を含有する溶液が充填され,他の室に・・・微量金属元素を含む液が収容され た微量金属元素収容容器が収納されており,微量金属元素収容容器は熱可塑性樹脂 フィルム製の袋であ」り,「前記溶液は,アセチルシステインを含むアミノ酸輸液で あり」,「前記輸液容器は,ガスバリヤー性外袋に収納されており」,「前記外袋内の 酸素を取り除いた」ものであるとして,含硫化合物を含む溶液を一室に充填した場 合であっても微量金属元素が安定に存在している構成を特定しているものといえる。\n
(イ) 本件明細書の発明の詳細な説明をみると,段落【0006】及び【0007】 で輸液製剤の大枠が示された上で,輸液容器の構造や材料(同【0012】,【00\n13】),微量金属元素,特に銅イオンを安定化することができるという効果(同【0 014】),硫黄原子を含む化合物及びこれを含む溶液の例示(同【0015】,【0 016】),微量金属元素を含有する液を収容する容器の具体的な収納方法や態様(同 【0020】),微量金属元素の例示(同【0021】)や,微量金属元素の組成(同 【0022】),微量金属元素収容容器を収納している室の態様(同【0024】)や 当該室に充填され得る輸液やその組成等(同【0025】〜【0030】)が,それ ぞれ具体的に記載されている。 そして,本件訂正発明1に係る構造や材質に対応した輸液製剤の好ましい態様で\nある本件明細書の【図1】について,その構造(段落【0031】)や,微量金属元\n素を用時に混入可能とする構\成(同【0032】),輸液の充填の態様(同【003 3】),ガスバリヤー性外袋や脱酸素剤の封入とそれらの材質等(同【0035】〜 【0039】),投与時の混合の態様(同【0046】)がそれぞれ詳細に記載されて いる。
(ウ) その上で,本件訂正発明1に該当する実施例1(同【0052】,【図1】)と, これに該当せず,含硫アミノ酸を含む溶液を充填した室に微量金属元素収容容器を 収納した比較例(同【0060】,【図4】)について,具体的な製造方法や溶液(A)〜(C)の具体的な成分組成(同【0062】【表1】,【0063】【表\2】,【0064】【表3】)が示され,実施例1と比較例の重要な差異が微量金属元素収容容器\nを収納する室の差異であることが示された上で,「安定性試験」として,60゜C)で2 週間保存した後の容器の外観を肉眼で観察したところ,比較例の輸液製剤において のみ微量金属元素収容容器に着色がみられたこと(同【0065】),「銅の安定性」 について,開始時を「100.0%」とした場合,実施例1では,60゜C)で2週間 保存した場合が「100.8%」,60゜C)で4週間保存した場合が「102.6%」 であったのに対し,比較例では,60゜C)で2週間保存した場合が「88.8%」,6 0゜C)で4週間保存した場合が「69.8%」であったことが示されて(【表5】),最後に,発明の効果が記載されている(同【0066】)ところである。\nなお,上記「安定性試験」に関し,輸液製剤の保存時において含硫アミノ酸であ るシステインやその誘導体であるアセチルシステイン等が分解することにより硫化 水素ガスが発生すること,硫化水素ガスが熱可塑性樹脂フィルムを透過すること及 び硫化水素ガスが銅や鉄などの金属と反応して硫化物を生成する(水溶液中におい ては黒色の沈殿を生成する)ことは,技術常識である(甲7〜9,弁論の全趣旨)。 また,微量金属の定量分析法としては,ICP発光分光分析法が慣用技術であって, その測定法等は技術常識であると解される(甲34,35,弁論の全趣旨)。
(エ) 前記(ア)〜(ウ)によると,当業者は,本件訂正発明1の構成を採ることによって,\n同【0065】や【表5】に記載されているように,含硫アミノ酸を含む溶液を充\n填した室に微量金属元素収容容器を収納した場合と比較して,微量金属元素が安定 に存在している輸液製剤を得ることができると認識することができると解され,本 件訂正発明1は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細 な説明の記載により当業者がその課題を解決できると認識できる範囲内のものであ るといえる。 したがって,本件訂正発明1がサポート要件を欠くものとはいえない。
(オ) 原告の主張について
a 原告は,本件明細書の実施例1において,アセチルシステインから発生した 硫化水素ガスが溶液(C)を充填した小袋に到達することを妨げることのできる実 施例1の構成は,小袋を収納する「第1室4」にブドウ糖を含む溶液(A)が充填\nされているとの構成1)及び外袋に「脱酸素剤9」が封入されているとの構成2)のみ であり,当業者も構成1)及び構成2)によるものであると当然に理解すると主張する。 しかし,本件訂正発明1の構成に係る本件明細書の実施例1では,アセチルシス\nテインを含む溶液(B)が「第2室5」に充填された一方で,溶液(C)を充填し た小袋は,それとは異なる室である「第1室4」に挟着されているのであって,同 小袋を「第2室5」に収納した比較例の場合と比較すると,同小袋の外面が直接溶 液(B)に触れることがないという点と,溶液(B)と溶液(C)との間に,同小 袋の構成素材に加え,「第2室5」の構\成素材及び「第1室4」の構成素材とを介す\nる状態となっている(被告のいう「三重の壁」となっている。)という点で,差異が あることが明らかである。 そして,上記の差異が,アセチルシステインから発生する硫化水素ガスが溶液(C) を充填した小袋に到達することを妨げるに当たり,何らの作用を果たさないという べき技術常識その他の事情は認められないから(なお,被告の実験報告書[甲21, 36,乙1]を排斥して専ら原告の実験報告書[甲19,20,23]の結果の信 用性を認めるべき事情は見当たらない。),当業者の理解に係る原告の上記主張は採 用することができない。 したがって,当業者において,本件明細書の実施例について専ら構成1)及び構成\n2)により微量金属元素の安定が図れたと理解することを前提とする原告の主張は, 本件訂正発明1における「他の室」が空室である場合についての主張も含め,いず れも採用することができない。

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令和3(ワ)3208  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和3年11月9日  大阪地方裁判所

 プログラムの著作権侵害として、10億円を超える損害額が認定され、一部として6000万円の損害賠償が認められました。原告プログラムはAUTOCADです。

(1) 著作権法114条3項に基づく使用許諾料相当の損害について
ア 証拠(甲1,2,4〜9,18,乙2,3[各枝番を含む。])及び弁論の全 趣旨によれば,原告製品は,オンラインストア等で顧客に対し販売されていること, 原告製品には,永久ライセンス版と,使用期間を1か月,1年,3年に制限したサ ブスクリプション版が存在するところ,これらの動作種別は,ライセンス認証時に 原告から送付される認証コードの種別により決せられることが認められるが,被告 は,前記認定のとおり,本件海賊版製品の落札者に対し,本件海賊版製品と共に, ライセンス認証を回避する不正なプログラム,及びインターネットに接続せずにイ ンストールをすること等を指示するマニュアル等を添付して,落札者をして前記ラ イセンス認証システムを無効化させ,これによって,落札者は,使用期間の制限な く本件海賊版製品を使用することが可能になったことが認められる。\nこれらの事実関係に照らすと,原告製品の永久ライセンス版の定価をもって,原 告が原告製品の著作権の行使につき受けるべき価額であると認めるのが相当である。
イ これに対し,被告は,原告製品の定価をもって著作権法114条3項の使用 料相当額とすることは,最低限の賠償額を保障した同3項の趣旨及び文理に反する 旨を主張する。しかし,被告販売行為により,落札者は,もともとの原告製品の使 用期間制限の有無や期間にかかわらず,使用期間の制限なく本件海賊版製品を使用 することが可能となるのであり,これによって,原告は,被告販売行為がなければ\n得られたであろう永久ライセンス版の定価の額に相当する額を得られなかったこと になるし,被告販売行為の態様は,本件海賊版製品をライセンス認証を回避しつつ インストールすることができるよう販売するという悪質なものであり,その違法性 は高く,市場への影響も大きい。 被告は,原告製品の定価と原告製品の使用料相当額として受けるべき金銭の額と は別である旨を主張するが,原告製品のようなアプリケーションプログラムの販売 価格は,その本質において著作物の使用許諾に対する対価というべきであるから, 前述のとおり,原告製品の定価をもって,著作権法114条3項が定める著作権の 行使につき受けるべき金銭の額と見ることができるのであり,被告の主張は理由が ない。
また,被告は,原告製品と動作環境との適合性や進化するセキュリティソフトと\nの相性の問題等があるため,本件海賊版製品を期間の制限なく使用できることはあ り得ないことから,原告製品の永久ライセンス版の価格を使用許諾料の基準とする のは相当でないこと,あるいは,原告製品の期間契約には,1か月,1年及び3年 の各期間設定があるところ,契約期間が長くなれば割安になることから,原告製品 のうち永久ライセンス版が設定されていないものについて1年ライセンス版の価格 を使用許諾料の基準とするのは相当でないことを主張する。しかし,前述したとお り,被告販売行為により,落札者は,もともとの原告製品の使用期間制限の有無や 期間にかかわらず,使用期間の制限なく本件海賊版製品を使用することが可能とな\nるのであり,その時点で原告には原告製品の永久ライセンス版の定価相当額の損害 が発生したというべきであって,その後,動作環境等により本件海賊版製品を使用 できなくなる可能性があることやもともとの原告製品には期間制限があることなど\nの事情は,損害額の算定には影響しないと解するのが相当である。
ウ 証拠(甲2の1〜2の18)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品の永久ラ イセンス版の定価は,別紙2−1「原告損害一覧表1」及び同2−2「原告損害一\n覧表2」の各「原告製品価格」欄記載の価格をくだらないことが認められ,被告販\n売行為による原告の損害は,同各「原告損害」欄記載の合計10億5509万67 50円をくだらない。
(2) 弁護士費用相当の損害について
被告販売行為と相当因果関係のある弁護士費用は,原告が主張する弁護士費用1 億0550万円をもって相当と認める。

◆判決本文

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令和3(ネ)10043  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年11月11日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審と同じく、知財高裁は、明細書の別の部分に記載されている構成を、複数組み合わせた発明特定事項を追加する補正が新規事項であるとして権利行使不能\と判断しました。

以上からすると,当業者によって,当初明細書等の全ての記載を総合す ることにより導かれる技術的事項とは,低地球温暖化係数の化合物である HFO−1234yfを調整する際に,不純物や副反応物が追加の化合物 として少量存在し得るという点にとどまるものというほかない。
(2) 控訴人の主張について
ア 控訴人は,沸点の近い化合物を組み合せて共沸組成物とすることが本件 発明の技術的思想であることや,低コストで有益な組成物を提供すること ができること等を主張するが,当初明細書中には,沸点の近い化合物を組 み合せて共沸組成物とすることや低コストで有益な組成物を提供できる ことについては,記載も示唆もされていないから,その主張は前提を欠く し,このような当初明細書に記載のない観点から本件補正をしたというの であれば,それは新たな技術的事項を導入するものであり,まさしく新規 事項の追加にほかならない。

◆判決本文

1審はこちら

◆令和1(ワ)30991

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令和3(ネ)10058  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年11月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 遠隔監視システムについて、均等侵害が第1要件を満たさないと判断した1審の判断が維持されました。

なお,事案に鑑み,念のため,被告製品の均等論の第1要件の充足につい て判断する。
本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書の開示事 項を総合すれば,本件発明1は,従来の遠隔監視システムでは,施設の侵入 者があったり,施設において異常が発生した場合に,当該施設の所有者や管 理責任者が一次的に当該侵入や異常発生を知ることができず,また,警備会 社からの二次的な通報により上記所有者や責任者が侵入や異常発生を知るこ とは可能であるが,これらの者が外出している場合等には警備会社が通報を\nすることができないといった課題があり,こうした課題を解決するために, 構成要件1Bないし1Gの構\成を採用し,施設の監視対象領域を監視する監 視装置からのメッセージと監視装置によって得られた画像の情報が当該施設 の所有者や管理責任者に対応する顧客の携帯端末に通知又は伝達されること により,顧客が何れの場所においても施設の異常等を適切に把握することが できるとともに,監視装置から受理された画像の略中央部分の画像からなる コンテンツを携帯端末に伝達することにより,表示装置が小さい携帯端末で\nも顧客により十分に認識可能\な画像を表示することができ,さらに,カメラ\nの「パンニング」を含む携帯端末からの遠隔操作命令により「パンニング」 に従った領域を特定し,その領域の画像を携帯端末に伝達するステップを備 え,顧客が参照したい領域を特定して携帯端末に提示することができるよう にしたことにより,施設の所有者や管理責任者が外部からの侵入や異常の発 生を知り,その内容を確認することができるという効果を奏するようにした ことに技術的意義があるものと認められる(【0004】ないし【0007】)。 このような技術的意義に鑑みると,本件発明1の本質的部分は,1)何れの 場所においても顧客が携帯し得るものとして,監視装置からの異常検出によ って監視装置により撮影された画像データの伝達を受ける端末を「携帯端末」 とし,2)「携帯端末」に伝達する画像は,略中央部分の画像領域から構成さ\nれ,3)携帯端末からの「パンニング」を含む遠隔操作命令を受理し,その領 域の画像を携帯端末に伝達するステップを含むことにより,4)表示装置が小\nさい携帯端末でも,顧客により十分に認識可能\な画像を表示することができ,\nさらに,携帯端末からの遠隔操作命令により,顧客が参照したい領域を特定 して携帯端末に提示することができるようにした点にあるものと認められる。 すなわち,単にセンサの情報伝達の宛先を警備会社の中央コンピュータから 施設の所有者等の携帯端末に切り替えたことのみに重きがあるわけではなく, 何れの場所においても顧客にとって携帯が容易で,操作等が迅速かつ簡便で あるためには表示装置が小さい端末とならざるを得ない面があるところ,そ\nうであっても,外部からの侵入や異常の発生を知り,その内容を確認するこ とが十分に可能\な構成を有することが本件発明1の本質的部分であるという\nべきである。なお,本件発明2及び3は本件発明1(請求項1)の従属項で あり,また,本件発明5は,本件発明1の遠隔監視方法の発明を監視制御サ ーバに関する発明としたものであるから,これらの発明の本質的部分もこれ に同様である。
これに対し,被告製品は,監視装置からの異常検出によって監視装置によ り撮影された画像データを伝達する端末は,携帯電話のような表示装置が小\nさい端末ではなく,また,端末からの遠隔操作命令により受理された画像の うち他の領域の画像を参照すること示す命令である「パンニング」を含む遠 隔操作命令を受理し,その領域の画像を携帯端末に伝達するステップを含ま ないため,顧客が何れの場所においても施設の異常等を適切に把握すること ができ,表示装置が小さい「携帯端末」でも顧客は十\分に認識可能な画像を\n表示することができ,顧客が参照したい領域を特定して「携帯端末」に提示\nすることができるようにしたことにより,施設の所有者や管理責任者が外部 からの侵入や異常の発生を知り,その内容を確認することができるという本 件各発明の効果を奏するものと認めることはできない。 したがって,被告製品は, 本件各発明の本質的部分を備えているものと認 めることはできず,被告製品の相違部分は,本件各発明の本質的部分でない ということはできないから,均等論の第1要件を充足しない。 よって,その余の点について判断するまでもなく,被告製品は,本件各発 明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められない。\n

◆判決本文
1審はこちらです。

◆令和1(ワ)21597

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令和3(ワ)2526  発信者情報開示請求事件 令和3年9月6日  大阪地方裁判所

 発信者情報開示の前提として、著作権侵害が争点となりました。動画のテロップ全体からの翻案であると判断されました。

 本件テロップと本件記事の各内容を比較すると,本件記事には本件テロップと完全に一致する表現が多数含まれる。他方,相違する部分は,句読点の有無や助詞の違い,文言の一部省略等の僅かな相違のほか,例えば,次のような相違部分が存在する。これらの相違部分は,表\現の手法等に若干の違いが見られるものの,内容的には,本件テロップの表現を若干修正したり,要約又は省略したり,前後の表\現を入れ替えるなどしているにとどまり,実質的にほぼ同一の内容を表現したものといえる。\n
1) 本件テロップ:「ドイツ出身のヴァレンティンさんは幼い頃からずっと動物 を大切に思ってきました。」
本件記事:「この感動のストーリーは2人の人間から始まります。その1人がヴァ レンティンさん。ヴァレンティンさんはドイツ出身。幼い頃よりずっと動物を大切 に思ってきました。」
2) 本件テロップ:「2人はボツワナで自然保護プロジェクトを立ち上げました。 野生動物の保護を目的とするプロジェクトです。」
本件記事:「2人はボツワナで野生動物の保護を目的とする自然保護プロジェクト を立ち上げました。」
3) 本件テロップ:「メスのライオンで非常に弱っており,瀕死の状態です。」
本件記事:「そのメスの幼いライオンで非常に弱っており,瀕死の状態です。」
4) 本件テロップ:「けれどシルガにとって,人間に慣れてしまう事は危険な事で す。」
本件記事:「しかし,人間に慣れてしまってはいけません。」
5) 本件テロップ:「そう決めた2人は決して他の人間をシルガと交流させたりし ませんでした。」
本件記事:「他の人間とは交流させませんでした。」
6) 本件テロップ:「2人は本当にシルガの為を思い,幸せを願っていたのです。」
本件記事:「2人はシルガの幸せ,野生に戻る事を1番に考えていました。」
7) 本件テロップ:「ヴァレンティンさんとミッケルさんは,シルガの世話をする だけでなく狩りの仕方も教えます。」
本件記事:「2人は世話だけでなく,狩りの仕方も教えます。」
8) 本件テロップ:「何度も何度も練習を重ね,ようやくシルガが獲物を狩る事が 出来るようになった頃,2人は複雑な気持ちに襲われはじめていました。」
本件記事:「狩りの練習を何度も練習を重ね,ようやくシルガは獲物を狩る事が出 来る様になった頃,2人は複雑な気持ちになりました。」
9) 本件テロップ:「そしてシルガは予想を上回る反応を示します。」
本件記事:「そこで予想を超える事に。」
10) 本件テロップ:「ずっとヴァレンティンさんに会えずに寂しく思っていた事が, その表情から伝わります。」
本件記事:「ずっとヴァレンティンさんに会えず,さみしかった事が分かります。」
(2) 複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製 することをいうところ(著作権法2条1項15号),著作物の複製とは,既存の著作 物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表\現することなく,その表現上の本質\n的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうものと解される。また,\n翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴 を直接感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最 高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻 4号837頁参照)。
本件記事は,記事中に本件動画が埋め込まれていること(甲5)や,上記のとお り,本件テロップと完全に一致する表現を多数含み,相違する部分も,句読点の有無等の僅かな形式的な相違のほか,本件テロップの表\現の僅かな修正,要約,前後の入れ替え等にとどまり,実質的にほぼ同一の内容を表現したものであることに鑑みると,本件テロップに依拠したものと認められると共に,著作物である本件テロッ\nプの表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者がその特徴を直接感得できるものと認められる。\n

◆判決本文

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令和3(ネ)10007  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年11月16日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審では方法クレームについても、物クレームと同じく「連通可能な室」として、構\成要件を具備しないと判断されました。これに対して、知財高裁は方法クレームについては「室」の意義について「連通可能な」という要件がないものも含むとして、方法クレームの侵害と判断しました。

「室」という語は,一般的には,「へや」すなわち「物を入れる所」などを 意味する語であるところ(甲27),構成要件1A及び2Aの文言のほか,前記2(2)の本件各訂正発明の概要及び前記(1)の本件各訂正発明の課題を踏まえると,構成要件1A及び2Aの「複数の室を有する輸液容器」の要件は,複数の輸液を混合\nするのに用いられる従来技術であるそのような輸液容器を用いる輸液製剤であるこ とを示すことによって,本件訂正発明1及び2の対象となる範囲を明らかにするも のである。本件各訂正発明の課題は,そのような輸液容器を用いて,あらかじめ微 量金属元素を用時に混入可能な形で保存してある輸液製剤で,含硫化合物を含む溶液を一室に充填した場合であっても微量金属元素が安定に存在している輸液製剤を\n提供することにあるから,本件各訂正発明における「室」の意義の解釈に当たって は,上記の一般的な意義のほか,輸液容器における「室」の意義も考慮するのが相 当である。
そこで検討すると,本件特許の出願当時には,輸液容器全体の構成の中で基礎となる一連の部材によって構\成される空間であって,輸液を他の輸液と分離して収容しておくための仕切られた空間を「室」と呼んだ上で(乙31),その「室」の中に 収納される,薬剤を収容する構成部材を「容器」と呼んだり(甲25,乙17),その「室」の外側に付加して空間を構\成する部材を「被覆部材」と呼んだり(乙16),その「室」に連通される「ポート部材」が薬剤を収容し得る機能を備えるものとしたり(乙12),その「室」を分割したものを「区画室」と呼んだり(乙5)すると\nいった例があった。本件特許の出願後も,上記基礎となる一連の部材によって構成される「室」の中に収納される,薬液を収容する構\成部材を「容器」や「袋」などと呼ぶ例が複数みられるが(甲14,15,乙19),そのように,輸液等を収容す るという機能を有する部分を指す語として「室」以外の語が加えられている中においても,「室」という語は,基本的に,輸液容器全体の構\成の中で基礎となる一連の部材によって構成される空間であって,輸液を他の輸液と分離して収容しておくために仕切られた相対的に大きな空間を指すものとして用いられ,「容器」や「袋」の\n付加の有無にかかわらず,そのような「室」が複数あるものが「複室輸液容器」な どと呼ばれていたことがうかがわれる(なお,上記のうち,甲15は,大きな「隔 室」の中に「内袋」があり,その「内袋」が更に複数の「薬剤収容室」で構成されているというものであり,「室」の中に「室」があるという点では,やや珍しいもの\nともみられるが,各「隔室」と各「薬剤収容室」は,あくまでそれぞれ一連の部材 によって構成されている。)。そして,上記のような「室」の理解は,本件明細書の記載とも整合的である。\n
(イ) 上記(ア)の点を踏まえると,構成要件1A及び2Aにいう「室」についても,輸液容器全体の構\成の中で基礎となる一連の部材によって構成される空間であって,\n輸液を他の輸液と分離して収容しておくための仕切られた相対的に大きな空間をい うものと解するのが相当である。
イ 「外部からの押圧によって連通可能な隔壁手段で区画されている複数の室を有する輸液容器」について\n
もっとも,本件訂正発明1の構成要件1A及び本件訂正発明2の構\成要件2Aに おいては,「複数の室を有する輸液容器」の前に,「外部からの押圧によって連通可 能な隔壁手段で区画されている」との特定が付加されている。そうすると,上記特定により,「室」が「連通可能\な」ものであることが明確にされているというべきであるから,構成要件1A及び2Aにおける「室」については,「外部からの押圧によって連通可能\な」ものであることを要するものである。
ウ 被控訴人製品について
(ア) 「室」について
a 先に引用した原判決の「事実及び理由」中の第2の1(7)ア及び弁論の全趣旨 によると,被控訴人製品に係る輸液容器について,その構成の中で基礎となる一連の部材によって構\成される空間は,大室及び中室を直接構成するとともに小室T及\nび小室Vの外側を構成する一連の部材によって構\成される空間であるといえる。
b もっとも,小室Tに関しては,外側の樹脂フィルムによって構成される空間が,上記のとおり輸液容器全体の構\成の中で基礎となる一連の部材によって構成さ\nれる空間である一方で,連通時にも,内側の樹脂フィルムによって構成される空間(本件袋)にのみ輸液が通じることとされており,小室Tの外側の樹脂フィルムに\nよって構成される空間に輸液が直接触れることがない。そのため,小室Tの外側の樹脂フィルムによって構\成される空間が,前記の「室」の理解のうち,輸液を他の輸液と分離して収容しておくための仕切られた相対的に大きな空間に当たるかどう かが問題となり得る。 しかし,輸液容器全体の構成を踏まえると,被控訴人製品における小室Tは,外側の樹脂フィルムによって構\成される空間の中に,内側の樹脂フィルムによって構\n成される空間(本件袋)を内包するという二重の構造になっているにすぎず,輸液を他の輸液と分離して収容しておくための空間としての構\成において,外側の樹脂フィルムと内側の樹脂フィルムとの間に機能の優劣等があるとはみられない。この点,小室Tと中室との間の接着部について,内側の樹脂フィルムの接着を剥離した\n場合のみならず,外側の樹脂フィルムの接着のみを剥離した場合であっても小室T の外側のフィルムの内側の空間に中室に収容された輸液が流入してこれが本件袋の 外面に直接触れることとなり,中室内の輸液と本件袋の中の液との分離の態様に少 なからず差異が生じるのであり,輸液同士の混合という点では専ら小室Tの内側の 樹脂フィルムの接着部分が意味を持つとしても,隣接する中室内の輸液からの分離 という観点からは,外側の樹脂フィルムにも重要な意義があることは明らかである。 そして,内側の樹脂フィルムによって構成される空間(本件袋)は,被控訴人製品に係る輸液容器において基礎となる一連の部材とは別の部材により構\成され,上記基礎となる一連の部材に構成を追加する部分である(このことは,小室Vの内側の樹脂フィルムによって構\成される空間と対比しても,明らかである。)。以上の諸点を踏まえると,小室Tについても,被控訴人製品に係る輸液容器の構成の中で基礎となる一連の部材である外側の樹脂フィルムによって構\成される空間(本件小室T)をもって,「室」に当たるとみるのが相当である。
c ところで,被控訴人製品の小室Tの外側の樹脂フィルムによって区画される 空間のように,輸液容器全体の構成の中で基礎となる一連の部材によって構\成され る空間が,輸液を他の輸液と分離して収容しておくための仕切られた相対的に大き な空間であるといえるか疑問があり得るような場合に,本件各訂正発明の「室」を どのように理解すべきかについて,本件訂正発明1及び2に係る請求項の文言上は, 必ずしも明らかであるといえないから,そのような場合における「室」の理解につ いて,本件明細書の内容を踏まえた検討も行うと,本件明細書の段落【0024】 は,「微量金属元素収容容器を収納している室」には,溶液が充填されていてもよ いし,充填されていなくてもよい旨を明記しており,同【0033】は,「本態様 の輸液製剤では,図1に示す輸液容器の第1室4に,溶液が充填されていてもよい し,充填されていなくてもよい」と明記しているところであるから,本件各訂正発 明においては,輸液が充填される空間であるか否かという点は,「室」であるか否か を決定する不可欠の要素ではないと解される。 それゆえ,前記bのような理解は,本件明細書における「室」の理解にも沿うも のであるといえる。
d 以上に対し,被控訴人らは,被控訴人製品において,小室Tの外側の樹脂フ ィルムによって構成される空間(本件小室T)は存在しないと主張するが,2枚の樹脂フィルムの間に空間が構\成されている(その空間中には,2枚の内側の樹脂フィルムの間の空間(本件袋)が包摂されている。)こと自体は,明らかであり,被控 訴人らの主張は採用することができない。
(イ) 「連通可能」について
a 前記(ア)のとおり,「室」については理解すべきものであるとしても,前記イ のとおり,構成要件1A及び2Aにおいては,「室」が「連通可能\」であることが要 件とされているところ,前記(ア)bで既に指摘したとおり,小室Tに関しては,連通 時にも,内側の樹脂フィルムによって構成される空間(本件袋)にのみ輸液が通じることとされており,「室」である外側の樹脂フィルムによって構\成される空間(本件小室T)に輸液が通じることはない。 そうすると,結局,被控訴人製品は,「室」が「連通可能」という要件を充足しないから,構\成要件1A及び2Aを充足しないというべきである。
b これに対し,控訴人は,本件小室Tに収納された本件袋に輸液が通じること は,本件小室Tに輸液が通じることといえる旨を主張する。この点,前記(ア)dのと おり,本件小室Tという空間が本件袋という空間を包摂していることは確かに認め られるが,そのことと,本件袋との連通をもって本件小室Tとの連通と評価し得る かは,別の問題である。本件訂正発明1及び2に係る請求項1及び2が「室」と「容 器」を明確に分けていることや,前記ア(ア)で指摘した「室」と「容器」についての 技術的な関係のほか,本件明細書の段落【0020】の「微量金属元素収容容器は, それを収納している室と連通可能であることが望ましい。」という記載は,容器の連通が室の連通とは異なるものとみる見方に沿うものであることからすると,控訴人\nの上記主張を採用することはできない。
(3) 争点(4)について
構成要件10A及び11Aの「複室輸液製剤」にいう「室」についても,前記(2) アと同様に解するのが相当である。 そして,構成要件1A及び2Aと異なり,構\成要件10A及び11Aについては, 「室」が「連通可能」であることは要件とされていない。したがって,先に引用した原判決の「事実及び理由」中の第2の1(7)イ及び弁論 の全趣旨により,被控訴人方法は,構成要件10A及び11Aを充足するというべきである。\n
4 争点(2)(構成要件10C及び11Cに係る点に限る。)について
前記3(2)及び(3)で指摘した点を踏まえ,先に引用した原判決の「事実及び理由」 中の第2の1(7)イ及び弁論の全趣旨によると,被控訴人方法においては,「含硫ア ミノ酸および亜硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する溶液を収 容している室」である中室とは「別室」である小室Tの外側の樹脂フィルムによっ て構成される「室」(本件小室T)に,構\成要件10C又は11Cで特定された微 量金属元素を含む液が収容された微量金属元素収容容器である,小室Tの内側の樹 脂フィルムによって構成される本件袋が収納されていると認められる。したがって,被控訴人方法は,構\成要件10C及び11Cを充足する。

◆判決本文

1審は、構成要件1C、10Cを具備しないので、技術的範囲に属しないと判断していました。

◆平成30(ワ)29802
以上の記載によれば,本件各発明については,次のとおりのものである旨 認めることができる。
すなわち,まず本件各発明の技術分野は,経口・経腸管栄養補給が不能又は不十\分な患者に対して,経静脈からの各種輸液(糖製剤,アミノ酸製剤,電解質製剤,混合ビタミン製剤,脂肪乳剤等)の投与を行うための輸液製剤 に関するものである。この点,当該輸液製剤は,経時変化を受けることなく 保存し,その使用時に細菌による汚染なく混合するため,連通可能な隔壁手段で区画された複数の室を有する輸液容器に収容される。\nしかして,輸液中には,通常,銅等の微量金属元素が含まれていないこと から,患者は,輸液の投与が長期になるときにはいわゆる微量金属元素欠乏 症を発症することとなる。しかるところ,これを予防するために必要な微量金属元素を輸液と混合した状態で保存すると,化学反応によって品質劣化の\n原因になり,これを防ぐべく含硫アミノ酸を含むアミノ酸輸液を一室に充填 し,微量金属元素収容容器を同室に収容すると,当該アミノ酸輸液と微量金 属元素とを隔離していても,微量金属元素を含む溶液が不安定となるという 技術的課題が生じていた。
本件各発明は,このような技術的な課題に対して,連通可能な隔壁手段で区画されている複室の一室に含硫アミノ酸を含有する溶液を充填し,これと\nは他の室に,微量金属元素を収容した容器を収納するという構成を採用することにより,上記技術的な課題を解決し,微量金属元素が安定に存在してい\nることを特徴とする含硫化合物を含む溶液を有する輸液製剤を提供するとい う効果を奏するようにしたものであるというべきである。 そうである以上,本件各発明の課題解決の点における特徴的な技術的構成は,微量金属元素収容容器を,含硫アミノ酸を含有する溶液と同じ室ではな\nく,同室と連通可能な他の室に収納するという構\成を採用したところにある ものというべきである。そして,これは,連通可能な隔壁手段で区画された複数の室を有する輸液容器であることを前提として,その複数の各「室」に\nついては,それぞれ異なる輸液を充填して保存するための構造となっており,上記の微量金属元素収容容器を収納する「室」は,含硫アミノ酸を含有する\n溶液とは異なる輸液の充填・保存のための構造となっている「室」であるという技術的構\成が採用されたものということができる。すなわち,本件各発明において,構成要件1Aの「複数の室」及び構\成要 件10Aの「複室」は,各種輸液を充填して保存するための構造となっている各空間を意味すると解されることから,輸液容器に設けられた空間がその\n一室である構成要件1C及び10Cの「室」に当たるためには,当該空間が輸液を充填して保存し得る構\造を備えていることを要すると解するのが相当であり,これに反する原告の前記主張は採用できない。 この点,証拠(甲2)によれば,本件明細書には,発明の詳細な説明とし て,「(略)また,微量金属元素収容容器は,それを収納している室と連通 可能であることが好ましい。(以下,略)」(段落【0020】)との記載や,「上記『微量金属元素収容容器を収納している室』には,溶液が充填さ\nれていてもよいし,充填されていなくてもよい。(以下,略)」(段落【0 024】)との記載のあることが認められる。しかしながら,前者の記載に ついては,前記で説示した本件各発明の技術的意義に照らせば,微量金属元 素収容容器が上記のような意味の「室」に収納されていることを前提とする 記載であり,同容器が輸液を充填して保存し得る構造を備えていない構\成の ものに収納されている場合をも許容する趣旨であるとは解されない。また, 後者の記載についても,同様に,「微量金属元素収容容器を収納している 室」には,輸液が充填されていない構成のものも含まれることを述べたものにすぎず,そもそも輸液を充填して保存するための構\造となっていない構成\nのものまで含まれることを意味したものと解することはできない。 したがって,これらの記載によっては,前記判断は左右されず,その他, 本件明細書の記載内容を詳細に検討しても,前記判断を左右し得る記載は見 当たらない。
そこで,これを被告製品ないし被告方法について見ると, 及び弁論の全趣旨によれば,小室Tの内側の樹脂フィルムで形成された袋を 覆っている外側の樹脂フィルム2枚は,中室側及び小室V側の両端部におい て内側の樹脂フィルムと溶着されており,使用時にも当該溶着部分は剥離し ないと認められる。 そうすると,小室Tの外側の樹脂フィルムと内側の樹脂フィルムとの間の 空間は,使用時に中室及び小室Vと連通するものではなく,これに照らすと, 同空間が,輸液を充填して保存し得る構造を備えているものとは認められないといわざるを得ず,同空間が「室」に当たるということはできない。\nしたがって,被告製品及び被告方法は構成要件1C及び10Cの「室に・・・微量金属元素収容容器が収納」されている構成を具備するとは認められない。\n

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令和3(ネ)10047  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年10月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 自ら作詞作曲した楽曲を含めてライブハウスでの演奏利用許諾の申込みをJASRACにしましたが、そのライブハウスが著作権使用料相当額の清算が未了であることを理由に拒否されました。裁判所は、著作権等管理事業法16条の「正当な理由」に当たると判断し、請求を棄却した1審判断を維持しました。

(ア) 控訴人X1は,被控訴人は形式的な権利者にすぎないから,利用申\n込みを拒否するに当たり,実質的な権利者である委託者や受益者の意思 を確認すべき義務があり,本件利用申込み1の対象楽曲には控訴人X1\nの作詞及び作曲に係る本件3曲が含まれていたから,通常の委託者であ れば許諾を望むと考えられるにもかかわらず,控訴人X1及びブラステ ィーの意思の確認を怠った旨主張する。
しかし,まず,引用する原判決の第2の2(6)エ(補正後のもの)のと おり,被控訴人は,本件著作権契約によりその権限を得たブラスティー から本件3曲の楽曲の著作権の信託譲渡を受けており,形式的にも実質 的にも本件3曲の著作権者であることから,被控訴人が「形式的な権利 者」であるとする控訴人X1の上記主張はそもそも当を得ない。 また,この点を措くとしても,被控訴人は,著作者等から委託を受け て多数の楽曲の著作権等を集中的に管理しており,委託者もこうした管 理の実態を前提として楽曲の委託をしているから,利用者からの申込み\nを拒絶することについて「正当な理由」があるか否かは,個々の委託者 の利害や実情にとどまらず,著作権等に関する適正な管理と管理団体業 務への信頼の維持の必要性等についても勘案した上で,利用者からの演 奏利用許諾の申込みを許諾することが通常の委託者の合理的意思に反す\nるか否かの観点から判断されるべきことは前記アで説示したとおりであ る。そして,本件においては,通常の委託者の合理的意思に照らし,同 申込みを拒絶することについて「正当な理由」があると認められること\nは,前記イで説示したとおりであり,その結論は,本件利用申込み1に\n本件3曲が含まれているか否かによって左右されるものではないから, 受託者である被控訴人が本件3曲に関して委託者兼受益者であるブラス ティーの意向を確認すべき義務があったとはいえず,まして本件3曲に 関する本件約款上の受益者でもない控訴人X1の意向を確認すべき義務 があったとは到底いえない。
(イ) 控訴人X1は,本件利用申込み1は別件訴訟を有利にするためにA\nらの呼びかけに応じたものではなく,Aらとも親しい関係にはないし, 本件店舗は控訴人X1がライブ演奏を行う1つの店にすぎず,平成28 年4月6日に本件店舗で被控訴人管理楽曲を演奏した際は1曲140円 を供託した上で演奏しており,著作権侵害に加担していないなどと主張 する。 しかし,前示のとおり,本件利用申込み1は,著作権の管理に係る被\n控訴人の方針や別件一審判決を不服とし,ライブ演奏の予約済みの出演\n者等に被控訴人管理楽曲を演奏する場合には出演者が被控訴人に利用申\n込みをするようホームページで公表された後にされたものであり,また,\n控訴人X1は,本件店舗に21回の出演歴があり,別件一審判決直後も 無許諾で被控訴人管理楽曲を演奏していたこと等を踏まえると,控訴人 X1の主観的意図はともかく,外形的,客観的に見れば,同申込みは,\n無許諾で長期間にわたって被控訴人管理楽曲を使用してきた本件店舗の 運営に賛同し,支援するものと受け止められてもやむを得ないものであ る。なお,本件全証拠を精査しても,平成28年4月6日に開催された 本件店舗のライブ演奏に当たって,控訴人X1が被控訴人管理楽曲の演 奏使用料を供託したとの事実を認めることはできない(本件店舗の経営 者らに被控訴人管理楽曲の使用料を手渡したとしても,それが供託に当 たるものではないことはいうまでもない。)。
エ また,控訴人X1は,当審においてそれぞれ以下のとおり主張するが, いずれも理由がない(なお,前記イ及びウと重複する部分は説示しない。)。
(ア) 控訴人X1は,前記第2の4(1)ア(ア)のとおり,被控訴人は,係争 中の店舗における演奏を予定する第三者からの演奏利用許諾の申\込み については一切受け付けない方針の下,本件利用申込み1について「正\n当な理由」の審査を行うことなく,本件店舗が使用料未清算であるとい った理由のみで拒否したものであり,こうした拒否は,使用料を徴収す るための私的制裁措置であって独占禁止法19条で禁止される優越的 地位の濫用に当たる旨主張する。
確かに,被控訴人は,被控訴人管理楽曲の利用許諾を得ることなく営 業の一環として演奏した店舗との間では,その店舗が過去の楽曲の使用 料を清算しなければ,新たに被控訴人管理楽曲に係る演奏の利用許諾を しないこととしており,また,その店舗において無許諾の利用があり, 楽曲の使用料の清算が未了であれば,第三者からその店舗における被控 訴人管理楽曲の利用の申込みがあっても,その楽曲の利用がその店舗の\n営業の一環として行われるものである限り,利用の許諾をしない取扱い をしている(前記認定事実1(4)イ)が,楽曲の演奏の利用許諾の申込み\nについて拒否したことに「正当な理由」があるか否かは,演奏利用許諾 の申込みの時点における事情を踏まえた事後的な法律判断というべきで\nあり,演奏利用許諾の申込みを拒否した際に示した理由に拘束されるも\nのではない。そして,本件においては,上記申込みの時点でAらと被控\n訴人間には著作権侵害等に係る裁判が係属しており,被控訴人は,平成 22年9月24日以降,職員を本件店舗のライブに客として派遣し,ラ イブ名,演奏曲目や演奏時間等の実態調査等をしており,また,本件店 舗のホームページ等を調査することを通じて,控訴人X1の本件店舗の 出演歴や本件申込みがされた経緯等を把握していたことが認められるの\nであり(前記認定事実1(2),(3)ア,イ,(4)ア),このような事情を踏 まえると,本件利用申込み拒否1に「正当な理由」があることは,現に\n拒否時に示された理由等にかかわらず,揺らぎ得ない。そして,本件利 用申込み拒否1に「正当な理由」がある以上,それが私的制裁措置であ\nって優越的地位の濫用に当たるなどという控訴人X1の上記主張も当を 得ないというほかない。
なお,控訴人X1は,前記第2の4(1)ア(イ)のとおり,被控訴人が控 訴人X1による本件利用申込み1を拒否した当時,別件訴訟の判決は確\n定していなかったにもかかわらず,被控訴人は,本件店舗の経営者らが 被控訴人管理楽曲の使用料相当額を清算していないものと決めつけて控 訴人X1による被控訴人管理楽曲の演奏利用許諾の申込みを拒否してお\nり,こうした被控訴人による拒否は優越的地位の濫用であり,本件約款 における受託者としての忠実義務にも反するとも主張する。しかし,債 権者は,事実的,法律的根拠があれば,判決の確定を待つことなく,債 務者との間の権利義務関係があることを前提とした措置を執ることはで きる(判決の確定により債権が存在しないことが明らかとなったときは, その措置により生じた損害を賠償すべきことは無論である。)ところ, 被控訴人による措置が事実的,法律的根拠を明らかに欠いているといっ た事情は見当たらない(後に別件訴訟はAらの敗訴で確定している。)。 したがって,被控訴人が講じた措置は優越的地位の濫用に当たらず,受 益者との関係で忠実義務に反するものでもない。
(イ) また,控訴人X1は,前記第2の4(1)イのとおり,控訴人X1が被 控訴人管理楽曲の利用料の支払を申し出て音楽著作物の演奏利用許諾を\n求めているのであるから,受託者である被控訴人がこれを拒否すること は信託法上の忠実義務に反する旨主張する。
しかし,前記アで説示したとおり,被控訴人が多数の委託者からの委 託を受けて楽曲に係る著作権等を集中的に管理しており,委託者も広く 楽曲の利用がされることを期待して被控訴人による楽曲の集中管理を前 提とした委託をしている以上,被控訴人による楽曲全体の著作権等に関 する適正な管理と管理団体としての業務全般の信頼の維持という観点を 軽視することは相当でない。そして,本件利用申込み1がされた経緯や\n時期等を踏まえると,控訴人X1が使用料の支払を申し出て被控訴人管\n理楽曲の演奏利用の許諾を求めたとしても,これに許諾を与えることは, 本件店舗の運営姿勢を是認し,安定的な著作権の管理,使用料の徴収に 支障を生じさせることにつながりかねないものであるといわざるを得ず, 通常の委託者の合理的意思に反するものであって,被控訴人の管理団体 としての業務の信頼を損ねかねないものである(なお,本件のような状 況下においては,支払がされる確実性についての信頼関係も希薄になら ざるを得ないと解される。)。控訴人X1の上記主張は,個別の委託者 兼受益者の実情を重視して本件利用申込み1を拒否することが特定の楽\n曲の委託者兼受益者の信託法上の忠実義務に反するというものであって, 被控訴人による多数の楽曲に係る著作権等の集中管理の実態を見ないも のというほかなく,当を得ない。

◆判決本文

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令和3(ネ)10048  著作権侵害行為差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年10月27日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 講義レジュメについて、著作物性なしとした1審判断を維持しました。

 著作権法は,著作物とは,思想又は感情を創作的に表現したものであっ\nて,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの(同法2条1項1号) をいい,複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有 形的に再製することをいう旨規定していること(同項15号)からすると, 著作物の複製(同法21条)とは,当該著作物に依拠して,その創作的表\n現を有形的に再製する行為をいうものと解される。 また,著作物の翻案(同法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ, その表現上の本質的な特徴である創作的表\現の同一性を維持しつつ,具体 的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表\ 現することにより,これに接する者が既存の著作物の創作的表現を直接感\n得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される。 そうすると,被告レジュメが原告ワークブックに係る著作物を複製又は 翻案したものに当たるというためには,原告ワークブックと被告レジュメ との間で表現が共通し,その表\現が創作性のある表現であること,すなわ\nち,創作的表現が共通することが必要であるものと解するのが相当である。\n一方で,原告ワークブックと被告レジュメにおいて,アイデアなど表現そ\nれ自体ではない部分が共通するにすぎない場合や共通する表現がありふ\nれた表現である場合には,被告レジュメが原告ワークブックを複製又は翻\n案したものに当たらないと解される。
イ 控訴人会社は,原告ワークブックと被告レジュメは,全体の構成が実質\n的に同一であり,しかも,原判決別紙2レジュメ対比表及び原判決別紙5\n原告ワークブックに関する主張対比表の「原告らの主張」欄記載のとおり,\n具体的な記述部分における同一性を有する表現は創作性のある表\現であ るから,被告レジュメは原告ワークブックを複製又は翻案したものに当た る旨主張するので,以下において判断する。
(ア) 原告記述部分1ないし24及び被告記述部分1ないし24に係る複 製又は翻案について
a 原告記述部分1ないし5と被告記述部分1ないし5について
(a) 原判決別紙2レジュメ対比表の番号1ないし5のとおり,原告ワ\nークブックの当該部分と被告レジュメの当該部分とは,それぞれ, 会議において,会議での約束事として,そのまま「やってみる」こ と(番号1),「携帯」電話を切っておくこと(番号2),「問題」 を見つけたら,「問題を指摘する」のではなく,「解決策を提示す る」こと(番号3),「わかりません」という回答はしないこと(番 号4),「発言」は,「短く」,「簡潔に」,「直接的な表現で」\n行うこと(番号5)を内容とする記述である点で共通する。 しかしながら,原告記述部分1は「まずは本書の手順どおりその ままやってみる。」であるのに対し,被告記述部分1は「とりあえず 身を預けてやってみる。」,原告記述部分3は「問題を見つけたら問 題を指摘するのではなく,解決できる人に解決策を提示する(自分 自身かもしれない)。」であるのに対し,被告記述部分3は「問題を 発見したとき,解決策を提示する。問題を指摘するだけは無し」,原 告記述部分4は「このワークブックが質問してくる質問に「わかり ません」という回答はなし。」であるのに対し,被告記述部分4は「侍 会議中,「わかりません」「ありません」という答えは無しでやっ てみる」,原告記述部分5は「発言は3Sにやる。(スリーエス:Short 短く,Simple 簡潔に,Straight 直接的な表現で)」であるのに対し, 被告記述部分5は「発言は短く,簡潔に,直接的な表現でやる。」で あり,具体的記述における表現は異なり,共通性は認められない。\nそうすると,被告記述部分1ないし5と原告記述部分1ないし5 は,会議の約束事を説明した記述であるという点において共通して いるものの,その共通する部分は,会議における約束事をどのよう に取り決めるかというアイデアであって,表現それ自体ではない。\n
(b) 控訴人会社は,1)原告記述部分1ないし5及び被告記述部分1な いし5について,会議における約束事の表現の仕方にはいくつかの\n選択肢がある中で,一見当たり前と思われるような内容も約束事と してあらかじめ記載するという表現形式をとっている点で同一性\nを有しており,その同一性を有する部分は創作的な表現である,2) また,会議における約束事は多数あり,どの約束事を選択するか, その組合せ,約束事の表現の仕方については,その選択の幅は広く,\nアイデアの表現方法がただ1つしか存在しない場合,あるいは,1\nつでなくとも相当程度に限定されている場合には該当しないので あるから,原告記述部分1ないし5と被告記述部分1ないし5の同 一性を有する部分はアイデアそのものではない旨主張する。
しかしながら,会議の冒頭で約束事を決めることや,当たり前の ことをあえてワークブックないしレジュメに記載するということ 自体は,アイデアにすぎないから,仮に,そうしたアイデアそのも のに個性の表れが認められるとしても,そのことをもって直ちに創\n作的表現部分に共通性があるとはいえない。また,アイデアの表\現 方法がただ1つしか存在しない場合,あるいは,1つでなくとも相 当程度に限定されている場合かどうかは,具体的表現を前提にその\n表現に創作性があるかどうかの考慮要素になり得るとしても,前記\n(a)認定の原告記述部分1ないし5と被告記述部分1ないし5の共 通する部分がそもそも表現であるか,アイデアであるかの判断を左\n右するものではない。 したがって,控訴人会社の上記主張は,採用することができない。
(c)また,控訴人会社は,1)原告記述部分1ないし5と被告記述部分 1ないし5の5つの約束事が同一であり,約束事の1つ1つは短い 表現であるが,約束事は一体として意味を成すものであることから,\n原告記述部分1ないし5と被告記述部分1ないし5の表現を一体\nとしてみた場合には,相当程度の文章になるのであって,短い表現\nではない,2)これらの5つの約束事を全て記載した他の書籍やウェ ブページは見当たらず,約束事の1つ目に,手順どおりそのまま「や ってみる」という表現を選択していることには作成者の創意工夫が\n表れているなど,これらの5つの約束事の配置や文字列には作成者\nの創意工夫が表れており,ありふれた表\現とはいえないから,創作 的表現が共通する旨主張する。\nしかしながら,前記(a)認定のとおり,原告記述部分1ないし5と 被告記述部分1ないし5は,具体的記述における表現の共通性は認\nめられない。
また,原告記述部分1中の「まずは・・・そのままやってみる。」との 表現部分は,ウェブページ(乙16)において「素直にそのままや\nる」との記載が,書籍(乙20)において「おやくそく」,「まず はやってみよう」との記載が,それぞれ存在していること,会議中 の「発言」に関するものとして,原告記述部分5中の「発言は3S にやる。(スリーエス:Short 短く,Simple 簡潔に,Straight 直接的 な表現で)」との表現部分は,ウェブページ(乙15)において「会\n議での発言は「3S」(Short=短く,Simple=簡潔で, Straight=直接的に)のルールでおこないましょう。」と の記載が存在することに照らすと,上記各表現部分は,いずれもあ\nりふれた表現であり,創作性があるとはいえない。\nしたがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(d)以上によれば,被告記述部分1ないし5が原告記述部分1ないし 5と共通する部分は,表現それ自体ではないから,被告記述部分1\nないし5は,原告記述部分1ないし5を複製又は翻案したものに当 たるものと認めることはできない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成31(ワ)4521

原告・被告物件などはこちら

◆資料1

◆資料2

◆資料3

◆資料44

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令和2(ワ)3474  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年10月19日  大阪地方裁判所

 102条2項における控除は2割と認定され、約70万円の損害賠償が認められました。

ア 本件発明1〜3の効果
本件発明の効果は,センサ保持具の回動を保持するための機械的な連結構造がコ\nンパクトになること(【0014】),接続器を引掛型配線器具に掛着する作業に際し て引掛型配線器具の掛着面を視認しやすく,作業が容易になると共に,作業の安全 性も向上すること(【0016】),本体カバーを天井面に密着させることが可能にな\nり,美観に優れた取付状態が得られること(【0017】)である。 要するに,本件発明の作用効果は,1)センサの回動構造のコンパクト化,2)引掛 型配線器具の掛着面の視認性の向上,3)本体カバーの天井面への密着にあるといえ る。
イ 本件発明の貢献の程度等について
本件発明は,センサを用いてランプを自動的に点灯・消灯する天井取付タイプの 照明器具に係る発明であるから,主として屋内のトイレ灯などとして使用されるこ とが想定される。そして,本件発明の実施品である照明器具の需要者は,新築建物 に照明器具を設置する総合住宅メーカー等の業者と既存の照明器具を交換しようと する個人が想定されるところ,前記の効果1)〜3)は,いずれも選択の動機となり得 る事情といえる。 もっとも,本件発明の効果1)については,センサを回動させることが前提となっ ているところ,屋内のトイレ灯等を想定すると,一度センサの検知範囲を確認して 照明器具を設置してしまえば,後にセンサを回動させて検知範囲を変更する必要が 生じることはそれほどないものと考えられるから,センサが取付後も回動可能であることの顧客誘引力は低いものと解される。\nまた,本件発明の効果2)及び3)は,接続器等を引掛型配線器具に掛着した後,別 体に形成された本体カバー及びセードを後付けすることによる効果であるため,本 件発明によるのでなければ実現し得ない効果ではなく,例えば,周知技術1によっ ても実現することができる。そうすると,効果2)及び3)については,本件発明の実 施による貢献の程度の評価に当たっては,必ずしも重視できるものではない。 さらに,被告は,そのカタログ(乙14)において,被告製品1の特徴として, 人感センサ付,クイック点灯,引掛シーリング取付式,本体可動式,点灯照度調節 機能付,点灯保持時間調節機能\付などを挙げているものの,掛着面の視認性や本体 カバーが後付けであることについては触れていない。 以上によれば,本件発明は,センサの回動構造がコンパクトであるという効果\n(効果1))によりこれを実施する製品の販売等に貢献するものであって,相応の顧 客誘引力を有するといえるものの,その程度は限られているというべきである。ま た,効果2)及び3)に関しては,本件発明は,本体カバーが後付けであり,外観上の 体裁が同程度の他の製品に対する優位をもたらすほどの貢献をするものとはいえな い。
ウ 競合品について
(ア) 効果1)について
本件発明の効果1)は,センサが回動可能であることを前提として,構\造をコンパ クトにするものであるが,センサを回動可能としたのは照明器具本体(本体カバ\nー,セード等)により検知範囲が制約されることに対処したものであるから,本体 がコンパクトであることによってセンサの検知範囲に制約がなく,センサを回動さ せる必要がない製品も,本件発明の効果1)と同様の効果を奏しているものといえ, 被告製品の競合品に該当するといえる。
証拠(乙11の1〜6,乙20の1〜3,乙21の1〜5,乙22の1〜7,乙 23の1〜3,乙24の1,2,乙25〜28)によれば,原告及び被告以外のセ ンサ付シーリングライト製品のうち,乙11の1の型番 LBC56975,乙11の4の 型番 OL 013 180,OL 013 120,乙11の5の型番 IG20026C,乙11の6の型番 L E-3837 については,センサ保持具が大きく,本体がコンパクトではないが,その余 のセンサ付シーリングライト製品は,いずれも被告製品と同等以下のコンパクトな 形状を有しているものと認められる。これにより,これらの製品は,本件発明の効 果1)と同様の効果を奏するものといえる。
(イ) 効果2)について
本件発明の効果2)は,引掛型配線器具に掛着する照明器具であることを前提とす るが,照明器具が一般的な引掛型配線器具に掛着する形式であるか,電気設備工事 を要するものであるかは,照明器具を交換しようとする個人の需要者にとっては大 きな違いである。また,総合住宅メーカー等の事業者においても,引掛型配線器具 を設置するか否かや施工の際の視認性は相応に商品選択に影響があると考えられ る。そうすると,各被告製品の競合品といえる前提として,引掛型配線器具に掛着 する照明器具であることが必要である。 証拠(乙20の1〜3,乙21の1〜5,乙22の1〜7,乙23の1〜3,乙 24の1,2,乙25〜28)によれば,乙20の1〜3,乙21の1〜5,乙2 2の1〜7,乙23の1〜3,乙24の1,2,乙25〜28の被告指摘に係る製 品は,いずれも引掛型配線器具に掛着する照明器具であり,被告製品と同等程度に は掛着面が視認しやすく,効果2)と同様の効果を奏するものといえる。
(ウ) 効果3)について
証拠(乙20の1〜3,乙21の1〜5,乙22の1〜7,乙23の1〜3,乙 24の1,2,乙25〜28)によれば,原告及び被告以外のセンサ付引掛シーリ ングライト製品のうち,乙21の1〜5の型番 IG20042C(以下「乙21製品」と いう。),乙23の1の型番 TGS-6119(以下「乙23の1製品」という。),乙 23の2の型番 TZGS-6099(以下「乙23の2製品」という。),乙24の1の型 番 SCL9NMS-HL(以下「乙24製品」という。),乙28の型番 TN-CLLS-L(以 下「乙28製品」という。また,以上を併せて,「乙21製品等」という。)は, いずれも,本体カバーが天井面に密着した外観を有しており,効果3)を奏するもの といえる。
(エ) その他
原告は,ランプ交換ができない LED 内蔵型照明器具は,ランプ交換を望む顧客 の需要を満たすことができないので,競合品に当たらないと主張する。 しかしながら,そのような需要者が存在するのか明らかではなく,そもそも,ラ ンプ交換が可能であるか否かは本件発明の作用効果とは無関係である。\nしたがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(オ) 以上より,乙21製品等は,いずれも,本件発明の効果と同様の効果を有 する製品として,原告製品及び各被告製品と市場において競合するものとみるのが 相当である。 また,証拠(乙21の1,乙22の1,乙23の1,2,乙24の1,乙28) によれば,乙21製品等の販売開始時期は,乙21製品が平成16年4月,乙23 の1製品が平成20年6月,乙23の2製品が平成22年2月,乙24製品が平成 29年10月,乙28製品が平成28年7月であることが認められる。原告は,乙 21製品について,平成16年〜平成20年のカタログに掲載された製品であり, 平成21年9月1日に生産を終了したと主張するが,一般的にカタログに掲載され た製品は特段回収等がされない限り数年程度は流通していると考えられ,被告製品 の競合品に当たらないとはいえない。
もっとも,原告製品,各被告製品及び乙21製品等のセンサ付引掛シーリングラ イトの市場におけるシェアは明らかではなく,原告において,平成27年当時の住 宅用照明のうち直付け型の居室外用の照明器具市場における原告のシェアが●(省 略)●%であったことを自認するにとどまる。被告は,照明器具市場全体の売上の シェアや住宅用照明市場におけるシェア,LED シーリングライト市場におけるシェ アを主張するが,原告製品,被告製品及び乙21製品等のセンサ付引掛シーリング ライトは,そのごく一部であって,他の多数の照明器具が含まれるシェアから被告 製品の競合品のシェアを推認することは困難である。 これらの事情を総合的に考慮すると,センサ付引掛シーリングライトの市場にお いて原告製品及び被告製品に対する複数の競合品が存在することに鑑みれば,特許 法102条2項に基づく損害額の推定に係る覆滅事由としてこれを考慮すべきでは あるものの,その程度は限定的と考えるのが相当である。
エ 推定覆滅の程度 以上の事情を総合的に考慮すれば,本件においては,2割の限度で損害額の推定 が覆滅されるにとどまるとすべきである。

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令和3(行ケ)10061  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年11月4日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判事件です。商標権者の使用について立証責任は権利者にありますが、特定技術を用いて製造されたか否かの立証までは、被告の防御の準備の機会を著しく損なうとして、使用義務を果たしていると知財高裁2部は、審決の判断を維持しました。

ア 原告は,本件商標の使用が特定乳化技術を用いて製造した化粧品ではない化 粧品についてのものであることまで被告が主張立証しなければならないと主張する が,既に判示したとおり,同主張を採用することはできない。
イ 原告は,その主張の根拠として商標法50条2項を挙げるところ,同項は, 「その請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をし ていることを被請求人が証明しない限り」と定めるが,上記のうち「その請求に係 る指定商品又は指定役務」という文言から,直ちに,本件商標の使用が特定乳化技 術を用いて製造した化粧品ではない化粧品についてのものであることまで被告が主 張立証しなければならないとはいえない。
商標法50条が定める取消審判請求の審理の対象となる指定商品の範囲は,設定 登録において表示された指定商品の記載に基づいて決められるのではなく,審判請求人において取消しを求めた審判請求書の「請求の趣旨」の記載に基づいて決めら\nれるものではあるが,審判請求書の「請求の趣旨」は,審判における審理の対象・ 範囲を画し,取消審決が確定した場合における登録商標の効力の及ぶ指定商品の範 囲を決定づけるという意味のほか,被請求人における防御の要否の判断・防御の準 備の機会を保障するという意味でも重要なものというべきである。
しかるに,本件のように,要証期間における本件商標の指定商品のうち関連部分が第3類「化粧品」であったにもかかわらず,専ら審判請求人において,本件商標の登録の日の後に認知されてきたものとみられる一方で要証期間を通じて周知のものであるとも認めら れない商品の製造方法である特定乳化技術に基づいて,本件審判請求と対の審判請 求とに取消審判請求を分けた上で,被告に対し,対の審判請求においては化粧品が 特定乳化技術に基づいて製造したものであることも含めた本件商標の使用の主張立 証を求め,本件審判請求においては特定乳化技術を用いて製造した化粧品でないこ とをも含めた本件商標の使用の主張立証を求めることは,被告の防御の準備の機会 を著しく損なうものであって,前記のとおり,被請求人において,審判請求に係る 指定商品又は指定役務の「いずれかについて」の登録商標の使用を証明すれば足り ると定める商標法50条2項が,上記のような要請まで含むものとは解されないと ころである。
特に,本件のように,製造方法に係る特定を審判請求人が任意に付し た場合に,商標権者において,自らの商品の製造方法を開示して立証しない限り, 商標登録の取消しを免れないとみることは,商標権者に過度の負担を課すものであ って不合理であることが明らかであり,そのような立証を求めるに帰する原告の主 張は,信義誠実の原則に照らしても採用することができない。

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令和3(行ケ)10006  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年10月26日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が維持されました。阻害要因についても無しと判断されました。

 ア 前記1(3)によれば,引用文献2技術事項は,物質に特有な高吸収X線を 利用することにより,荷物や人体内に隠匿した麻薬,あるいは爆薬や象牙 などの禁制品の有無を検査できるものであるから,人体用だけでなく,荷 物の中の見えない物体の有無を検査するX線荷物検査装置でもあるとい える。そうすると,食品等の異物検査を行うX線検出装置である引用発明 1の技術分野と,医療検査や荷物検査を行う引用文献2技術事項の技術分 野は,X線検査装置が用いられる技術分野として関連するものであるとい える。 また,引用発明1においては,判定部24において「各ライン走査ごと のデータ中の最大画素濃度のデータを所定の閾値と比較してX線吸収率 が大きい金属異物等の混入の有無が検出濃度レベルと閾値との比較によ り判定される」(M)ものであり,ワークWのX線画像の検出濃度レベルと 所定の閾値とを比較することにより,金属異物等の混入が有る場合の濃度 レベルと混入が無い場合の濃度レベルとを判定する必要があるから,ワー クWのX線画像における金属異物等の混入の有無の濃度レベルの間の差 異を明確にしなければならず,X線画像において目的とする物体を透過し たX線の検出出力と前記目的とする物体以外の部分を透過したX線の検 出出力との間に明確な差異を有するX線画像を生成するという課題を有 している。一方,引用文献2においては,従来のX線撮影装置では「目的 とする臓器などを明瞭に表示するようにしたコントラストの高いX線像\nを得ることが難しい」(【0002】)という課題を有し,また,異なる波長 の単色X線を用いて得られたX線像の差分から目的とする部分を際立た せて表示する方法を用いる場合,「異なる時刻に撮影したX線像の差分を\n取ると,位置がずれてしまい明瞭な動脈像を生成することができない」 (【0004】)という課題を有しているところ,引用文献2技術事項によ り「それぞれピクセルへの入射X線量をカウントしカウント値の差分を取 ると,軟部組織や骨に吸収されたX線が相殺され血管部分のみに差が現れ て冠状動脈のコントラストの大きな鮮明な映像を得ることができる」(【0 021】)としている。コントラストが大きなX線画像は,物体を透過した X線の検出出力と目的とする物体以外の部分を透過したX線の検出出力 との間に明確な差異を有するものであるから,引用発明1と引用文献2技 術事項とは課題を共通するといえる。 さらに,引用発明1と引用文献2技術事項は,いずれも被測定物の中の 外から見えない物体を検出するために用いられるX線画像を形成し,当該 X線画像に基づいて検査を行うという作用・機能が共通するといえ,加え\nて,引用文献2には,「X線検出部11に1次元のリニアアレイを用いて1 次元走査して測定することもできる」【0014】ことが記載され,被測定 物を1次元走査してX線画像を得ることも示唆されており,引用発明1の X線ラインセンサにより搬送される被測定物のX線画像とは,X線画像を 被測定物を1次元走査して生成するという点においても共通する。 以上のように,引用発明1と引用文献2技術事項との間に,技術分野, 解決課題及び作用機能に密接な関連性・共通性があることからすると,引\n用発明1に引用文献2技術事項を組み合わせることに強い動機付けがあ るといえる。
イ 前記第3の1(1)イ(ア)bのとおり,原告は,引用発明1のX線検査装置 は異物の有無を低コストで検査する分野の装置であり,簡易な検査作業の 実現を目的とするのに対し,引用文献2技術事項のX線検査装置は,コス トを度外視して検査する分野の装置であり,被曝防止を目的とするもので あるから,当業者は,異物検出の精度向上のためにわざわざ引用発明1に 引用文献2技術事項とを組み合わせたりする動機付けない旨主張する。 まず,引用文献2には,「撮影は1度で済み」(【0010】),「エネルギ ーを変えて検査するときにも1度の撮影で済むので検査時間が短縮する 利点がある。」(【0022】)との記載があるが,それは副次的なものにす ぎず,引用文献2技術事項の課題は,複雑で高価な装置を用いずにコント ラストの高いX線像を得ることである(【0003】ないし【0007】, 【0010】,【0022】,【0024】)。したがって,引用文献2技術事 項のX線検査装置は,コストを度外視して検査する分野の装置であると認 めることはそもそも相当でない。また,引用発明1が,コンベア搬送路上 のワークの金属異物等の混入の有無を検査する異物検査装置であること からして,引用発明1が製品製造現場用の装置であり,引用文献2の記載 上は,引用文献2技術事項が直接には医療用検査装置に用いることを想定 しているとしても,コストをどの程度かけるかということと技術分野とは 直結しないところ,製品の性質,製造現場の規模,製品の販路等も度外視 して,製品製造現場用の装置であれば,おしなべて性能の低い製品で足り,\n当業者は性能の向上には意を払わず,医療検査装置用の技術には関知しな\nいなどとは当然にいえることではなく,そのようにいえる証拠は提出され ていない。
異物検査装置の異物検査の性能を向上させることは自明の要請ともいう\nべきところであり,前記アのとおり,引用発明1の異物検査装置に,技術 分野,課題・解決手段,作用・機能,効果とも密接に関連ないし共通する\n引用文献2技術事項を適用する強い動機付けがあるというべきである。
ウ 前記第3の1(1)イ(イ)aのとおり,原告は,1つの「設定時X線画像」 を基準とする引用発明1に,複数個の画像を基準とし,その基礎とする技 術的思想を異にする引用文献2技術事項を適用することには阻害要因が ある旨主張する。 ここで,「設定時X線画像」とは,実検査前にサンプルを使用した検査に おいて得られたX線画像データとして設定情報記憶部23に保持された 初期設定データの1つであり(引用文献1の【0052】ないし【005 5】),当該品種に設定された各種パラメータや検出条件及び判定条件にお ける検査における代表画像とされ(【0042】),実検査時に実検査時のX\n線画像Wiと共に表示器26に表\示され,実検査中に両者を照合すること により,検査の条件に実検査品が適合したものか否かを判定することや (【0046】,【0059】ないし【0061】),品種選択操作を視覚的に 容易に把握することに役立てるものである(【0062】,【0063】)。 したがって,検査の目的に合わせたX線画像を得られるならば「設定時 X線画像」も同時に得られる関係にあるところ,引用文献2技術事項によ ると複数のX線画像を生成することができ得るが,特に感度のよいエネル ギー領域を選択して目的部位の像を鮮明化したり,異なるX線エネルギー 領域における出力信号の差分に基づいて画像化するなどして,最適な条件 で選んだ画像を1つ生成できることも明らかである。そして,当業者が, 異物検査の目的に応じて最適な画像を選択してそれを代表画像とするこ\nとができないとする理由もない。 そうすると,引用発明1のX線画像を得る手段として引用文献2技術事 項を適用することには,阻害要因はない。
エ 前記第3の1(1)イ(イ)bのとおり,原告は,低コストでの簡便・容易化 を目指す引用発明1に,高精度で複雑・高度な引用文献2技術事項を適用 することには,甲1発明の目的から乖離・矛盾するから阻害要因がある旨 主張する。 しかしながら,前記イにて説示したとおり,技術分野としての観点から 見た場合に,あたかもX線検査装置が低コストでの簡便・容易化を目指す 装置の分野の技術と複雑・高精度で複雑・高度な装置の分野の技術に二極 化していて,両者の技術が相容れないとは認められない。その上,引用文 献2技術事項の課題は,前記イのとおり,複雑で高価な装置を用いずにコ ントラストの高いX線像を得ることであり,前記アのように,被測定物を 1次元走査して測定するような簡易な方法も示唆されている。また,引用 文献2に禁制品の有無を検査することもできるとの示唆があるからとい って,引用文献2技術事項が空港や税関等で用いる検査装置のみに用いら れる技術ととらえることは,同技術の正しい理解とはいい難い。 したがって,原告の上記主張は前提を欠くものであって,採用すること ができない。
オ 以上のとおり,引用発明1に引用文献2技術事項を組み合わせる動機付 けがあり,阻害要因があることもうかがわれないところ,引用発明1にお いて,引用文献2技術事項に基づき,相違点1に係る本件発明1の発明特 定事項を得ることが容易であることは,本件決定が引用する取消理由通知 書が説示するとおりであり,誤りは認められない。

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令和3(ワ)2322 著作権  民事訴訟 令和3年8月20日  東京地方裁判所

 プロレスラーの衣装に関する著作権侵害事件です。黙示の許諾があったと判断されました。この種の業務についても、きちんと契約が必要ということですね。

 事案に鑑み,まず,争点1−4について検討する。
(1)ア 前記前提事実によれば,原告X1は,令和元年7月6日,プロレスラーと してのデビューに当たって必要となるコスチュームの制作について被告か ら相談を受け,衣装制作会社及びデザイナーを紹介するとともに,被告から 送信を受けた本件デザイン画のデータについて,「アイドルらしくて,いい よ。」,「コスチューム代,俺が出そうか?」,「絶対にクオリティは下げ ないで。」などのコメントをしているとの事実が認められる。これによれば, 原告X1は,本件コスチュームの制作に積極的に協力し,その代金の負担ま で申し出ているのであり,完成したデザイン画及びそれに基づいて制作され\nる本件コスチュームの著作権の使用について特段の制限や条件を付したこ とをうかがわせる事実は存在しない。
イ 同様に,原告X1は,令和元年8月8日,被告から,完成した本件コスチ ュームを着用した写真の送付を受けたが,これ対して特段の異議を述べるこ とはなく,被告のデビュー後も,被告とLINEを通じてやり取りを行って いるが,その際に,本件デザイン画や本件コスチュームの使用について特段 の異議を述べたとの事実も認められない。
ウ このように,原告X1は,被告が令和元年8月10日にプロレスラーとし てデビューすることを認識した上で,本件デザイン画や同デザイン画をベー スとしてコスチュームを制作することを認識し,同日の前に実際に制作され たコスチュームのデザインを確認していながら,その使用についてデビュー の前後を通じ何ら異議を述べていないのであるから,仮に原告会社が本件デ ザイン画及び本件コスチュームの著作権を有するとしても,被告に対してそ の使用を許諾していたものというべきである。
(2)ア これに対し,原告会社は,本件デザイン画につき,著作権法30条の3に いう「検討の過程における利用」において必要と認められる限度で使用する ことは承諾していたが,当該限度を超えて,本件デザイン画と同一又は類似 のコスチュームを使用することは承諾していなかった旨主張する。 しかし,原告X1は,被告が完成した本件デザイン画を使用して本件コス チュームを制作し,これを着用して活動することを認識した上で,同デザイ ン画の使用に関して何らの制限や条件を付していなかったと認められるこ とは前記判示のとおりである。 したがって,「検討の過程における利用」のみを許諾していたとの原告会 社の主張は採用し得ない。
イ 原告会社は,原告X1が令和元年8月8日に本件コスチュームの写真を確 認した際に異議を述べなかったのは,2日後に被告のデビューが控えていた ためである旨主張する。 しかし,原告X1は,令和元年8月8日より以前の段階から,本件デザイ ン画に基づいて本件コスチュームを制作していることを認識していたと認 められ,デビュー後の被告とのやりとりにおいても,本件デザイン画及び本 件コスチュームの使用について何ら異議を述べていないのであるから,原告 X1が本件コスチュームの写真を確認したのが被告のデビューの2日前で あったとしても,同事実は,原告会社が本件デザイン画及び本件コスチュー ムの使用について承諾していたとの結論を左右しない。 したがって,原告会社の上記主張は採用し得ない。

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平成29(ワ)1390 特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年9月16日  大阪地方裁判所

 パナソニックの知財信託会社による侵害訴訟です。技術的範囲に属しないと判断されました。対象特許は7件です。多くは29条1項2号(公然実施)による権利公使不能です。事件番号が平成29・・なので、提訴から判決まで4年かかったことになります。委託者および受託者が原告となっています。

 本件訂正発明1−1に係る特許請求の範囲の記載によれば,同発明に係るランプ は,「基板を保持する金属製の基台」(構成要件 1-1F’)をその構成要素の1つと\nして備えるところ,「前記基台は,前記長尺状の底部と,前記底部の短手方向の一 方の端部に設けられた第1壁部と,前記底部の短手方向の他方の端部に設けられた 第2壁部とを有し」(構成要件 1-1I’),「前記第1壁部及び前記第2壁部は,前 記底部の前記基板側に衝立状に形成されて」(構成要件 1-1J’)いることが特定さ れている。 これによれば,基台の底部の短手方向の両端部にそれぞれ設けられた第1壁部と 第2壁部は,底部に対し基板側に形成されるものであり,その形状ないし状態が 「衝立状」であることが示されている。もっとも,いかなる形状等をもって「衝立 状」とするかについては記載がなく,その意味が一義的に明らかとはいえない。
イ 本件明細書1の記載等
「第1壁部」及び「第2壁部」について,本件明細書1【0055】には,第1基 台 50 が,長尺状の底部(底板部)と,底部における第1基台 50 の短手方向(基板 11 の幅方向)の両端部に形成された第1壁部 51 及び第2壁部 52 とを有すること, これらの壁部は,第1基台 50 を構成する金属板を折り曲げ加工することによって\n衝立状に形成されていることが記載されている。また,同段落には,同明細書図 3B と合わせ,LED モジュール の基板 11 は第1壁部 51 と第2壁部 52 とによっ て挟持されており,LED モジュール は,第1壁部 51 と第2壁部 52 とによって 基板 11 の短手方向の動きが規制された状態で第1基台 50 に配置されることも記載 されている。本件訂正における本件訂正発明1−1の構成要件 1-1J'の追加は,こ の記載等を含む本件明細書1の記載による開示に基づいて行われたものである(甲 83)。 さらに,広辞苑(乙291)においては,「衝立」とは「衝立障子の略」であり, 「衝立障子」とは「屏障具の一。一枚の襖障子または板障子に台をとりつけ,移動 便ならしめたもの。・・・玄関・座敷などに立てて隔てとする。」と説明されている。 加えて,「衝立障子」は,一般に,それが設置される面に対して略直立するものと 把握される。他方,「状」とは,物事の形,姿,有り様,様子を意味し,「○○状」 とは,ある物事の形等を「○○」に例える際に用いられる表現である。\n以上の本件明細書1の記載等を踏まえると,第1壁部及び第2壁部は,基台の底 部の基板側に衝立状に形成されることにより基板11を挟持し,短手方向の動きが 規制する機能を果たすものであるところ,その形状等は上記意味での「衝立障子」\nに例えられるものである必要があることが理解できる。
ウ 小括
以上より,本件訂正発明1−1に係る特許請求の範囲及び本件明細書1の記載等 並びに「衝立」の一般的な意味等に鑑みると,第1壁部及び第2壁部が「衝立状」 に形成されるとは,これらの壁部が基台の底部の基板側に,同底部に対して略直立 した形状に形成されていることを意味するものと解される。これに反する原告の主 張は採用できない。
(2) 被告製品1〜5,7〜10及び12の構成要件充足性
被告製品1〜5,7〜10及び12の断面図は,別添「被告製品断面図」のとお りである。 このうち,被告製品4及び5については,第1壁部及び第2壁部に相当すると見 られる部位は,基台の底部から基板側に形成された基台の一部が内側に向けて鋭角 に傾斜した形状に形成されており,底部に対して略直立した形状とはいえない。 次に,被告製品1〜3,7〜10及び12については,第1壁部及び第2壁部に 相当すると見られる部位には,基台の底部から基板側に略直立といってよい形状に 延出している部分もあるものの,これと一体のものとして,基板とほぼ同じ高さで 基台の底部に平行に形成された部分もあるため,全体としては「コの字」又は「T 字」と表現すべき形状に形成されているものというべきであって,底部に対して略\n直立した形状に形成されているとはいえない。 したがって,被告製品1〜5,7〜10及び12は,いずれも,第1壁部及び第 2壁部に相当すると見られる部位が底部の基板側に「衝立状」に形成されておらず, 本件訂正発明1−1の構成要件 1-1J’を充足しない。
(3) 小括
以上により,被告製品1〜5,7〜10及び12は,いずれも,本件訂正発明1 −1の技術的範囲に属しない。
4 充足論のまとめ
本件発明1−1,1−3,1−16及び1−17及び並びに本件訂正発明1−1 7につき,対象となる各被告製品が各発明の構成要件を充足し,その技術的範囲に\n属することは,前記(第1の5)のとおりである。 また,本件発明1−14並びに本件訂正発明1−18及び1−20については, 前記2のとおり,被告製品1〜5,7〜16は,対応する各発明の構成要件を充足\nし,その技術的範囲に属すると認められる。 他方,本件訂正発明1−1については,被告製品1〜5,7〜10及び12は, いずれもその構成要件 1-1J'を充足せず,その技術的範囲に属しない。したがって, 本件訂正発明1−1については,その余の点を論ずるまでもなく,訂正の再抗弁は 認められない。
5 403W 製品に基づく先使用権の成否(争点10) 事案に鑑み,まず,403W 製品に基づく先使用権の成否(争点10)について検 討する。
(1) 403W 製品の先使用について
ア 証拠(以下に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら れる。
(ア) 被告は,平成24年4月23日頃,韓国で製造された 403W 製品480セッ トを輸入した(乙143,315)。
(イ) 被告は,同月25日,ミツワ電機株式会社関西支社に対し,403W 製品24 台を含む商品の見積書を作成,送付し,同月26日,同社関西特機営業所から受注 して,同月28日,これを井づつやに納品した(乙167,168)。 その後,井づつやに納品された上記 403W 製品24台は,同所のエントランスロ ビー等において使用されていたところ,被告は,平成30年7月23日までに,井 づつやからこれを入手した。この被告 403W 製品には,製造ロット番号として 「120416」が表示されているところ,これは,当該製品の製造年月日が平成24\n年4月16日であることを意味する。(乙166,弁論の全趣旨)
(ウ) 被告は,本件チラシ(平成24年1月発行)に,平成24年3月初旬発売予\n定の商品として 403W 製品を掲載した(乙138)。また,被告は,本件カタログ (同年2月発行)にも 403W 製品を掲載したところ,他の掲載商品には発売予定時\n期を明記したものが見られるが,403W 製品にはそのような記載はない(乙35)。
イ 上記各認定事実を総合的に考慮すれば,被告は,遅くとも本件優先日である 平成24年4月25日以前に,403W 発明の実施である事業をしていたことが認め られる。
(2) 403W 発明の構成等\n
ア 403W 発明の構成のうち,上記第2「10」(被告の主張)(3)における構成 1- 3a10〜c及び e並びに 1-14a10〜f及び hについては,原告 PIPM も明ら かには争わないから,これを認める。 上記構成 1-3a10〜c及び eは,本件発明1−1の構成要件 1-1A〜C 及び E, 本件発明1−3の構成要件 1-3A〜C 及び E,本件発明1−16の構成要件 1-16A〜 C 及び F,本件発明1−17の構成要件 1-17A〜C 及び E 並びに本件訂正発明1− 17の構成要件 1-17B’〜D’にそれぞれ相当するものといえる。また,構成 1-14a10 〜f及び hは,本件発明1−14の構成要件 1-14A〜E,G 及び本件訂正発明 1−18の構成要件 1-18B’〜F’,I’にそれぞれ相当するものといえる。 さらに,403W 製品は,直管形 LED ユニットであり,樹脂(ポリカーボネート) 製カバー(筐体)の長手方向の両端に口金が設けられているところ,その一方には 電源内蔵ユニット用専用口金を備え,この口金のみが,電源内蔵用専用ソケット\n(給電側)を通じて交流電力を受けるものである(乙35,299)。そうすると, 403W 発明は,本件発明1−16の構成要件 1-16E 並びに本件訂正発明1−17の 構成要件 1-17E’及び本件訂正発明1−18の構成要件 1-18G’,H’に相当する構成を\n備えていることが認められる。 加えて,403W 製品は,既存の器具本体をそのまま残し,専用ソケット及び直管形\nLED ユニットをリニューアルして照明装置として使用する製品シリーズに含まれる製 品である(乙35)。したがって,ランプである 403W 製品に係る発明(403W 発明) は,そのランプが取り付けられた照明装置に係る発明に含まれるといえる。このため, 403W 発明は,本件発明1−17の構成要件 1-17F,本件訂正発明1−17の構成要\n件 1-17A’及び G’並びに本件訂正発明1−18の構成要件 1-18A’及び K’に相当する構成を備えていることが認められる。\n
イ 403W 製品の輝度均斉度等
(ア) 証拠(以下に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら れる。
a LED モジュールの寿命は,製造業者等が指定する条件下で点灯したとき, LED モジュールが点灯しなくなるまでの総点灯時間,又は全光束が点灯初期に測 定した値の70%に下がるまでの総点灯時間のいずれか短い時間とされているとこ ろ,高光束 LED を1万時間連続通電してその光出力の変化を調査した実験データ によれば,1チップ方式の白色 LED の寿命(光出力が70%になる時間)は4万 5000時間と推定されるとの実験データがある。なお,原告パナソニックのカタ\nログ(乙34)には,直管形 LED ランプについて,4万時間経過後の光束維持率 が95%であることが示されている。 また,LED を連続的に点灯し続けると,LED チップを封止する樹脂(以下 「LED 樹脂部」という。)が黄変し,光量の低下を招くことがある。さらに,LED 照明は,使用する場所の環境温度が高くなるほど劣化が加速されると共に,使用環 境下に硫化ガス等の発生要因がある場合,LED 樹脂部及び接合部にダメージを与 えることなどによっても,劣化が加速する場合がある。 (以上につき,上記のほか,甲37〜39)
b 被告 403W 製品は,平成24年4月28日の井づつやへの納品後,被告が平 成30年7月に入手するまで,6年以上の間継続的に使用されていたものと見られ るところ,その LED 素子の中央部分はやや黄変しており(乙217,218), カタログに記載された初期値を100%とした場合の被告 403W 製品の全光束(全 ての方向に放出する光束の総和)は89.0%,光効率は92.6%に減少してい る(乙216)。もっとも,被告 403W 製品の LED1個あたりの配光データは, 新品の LED の配光データが概ね120度(ランバーシアン配光の場合)であるの に対し,114度及び115度である(乙214,215の3,215の4)。 また,403W 製品のカバーと 402W 製品のカバーは,共通の部材(ポリカーボネ ート)を使用した同じ仕様のものであると認められるところ(乙35,298,2 99,315),被告 403W 製品と未使用の 402W 製品について,それぞれカバー を交換して全光束及び y/x 値を測定した結果,いずれも交換せずに測定した結果と の差は,1%以下(全光束)及び0.01(y/x 値)であった(乙316〜318, 弁論の全趣旨)。
(イ) 以上の事情を踏まえると,被告 403W 製品の LED 素子は,6年以上使用を 継続されているものであり,LED 樹脂部の黄変及び全光束や光効率の減少は生じ ているものの,その配光特性は,初期値(ランバーシアン配光)と大きく異ならず, 著しい経時変化は見られないものといってよい。403W 製品の光拡散性を有するカ バー部分についても,被告 403W 製品には,上記継続使用期間にもかかわらず,全 光束や y/x 値の測定値に影響を与えるような劣化等が生じているとはいえない。 そうすると,被告 403W 製品について,被告が平成30年7月23日に測定した y 値=15.7mm,x 値=11.7mm,y=1.34x との測定結果(乙166)及び令和2年1 月29日に測定した y 値=15.6mm,x 値=11.7mm,y=1.33x との測定結果(乙29 7)は,いずれも 403W 製品の初期値とほぼ同等のものと見るのが相当である。
(ウ) そうすると,403W 発明は,「前記複数の LED チップの各々の光が前記ラン プの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅を y(mm)とし,隣り合 う前記 LED チップの発光中心間隔を x(mm)とすると,y=15.7mm,x=11.7mm であり,y=1.34x」との構成すなわち構\成 1-3d及び 1-14g10)を有するといえる。 したがって,403w 発明は,本件発明1−1の構成要件 1-1D,本件発明1−3の 構成要件 1-3D,本件発明1−14の構成要件 1-14F,本件発明1−16の構成要\n素 1-16D 及び本件発明1−17の構成要件 1-17D 並びに本件訂正発明1−17の 構成要件 1-17F’及び本件訂正発明1−18の構成要件 1-18J’に相当する構成を有し\nていると認められる。
ウ 以上より,403W 発明は,本件各発明1並びに本件訂正発明1−17及び1 −18の構成要件を充足する構\成を備えたものであり,これらの各発明と同一性が 認められる。
エ 原告 PIPM の主張について
原告 PIPM は,被告 403W 製品について,長時間の使用による経年変化,LED 素子の樹脂やせや黄変,使用環境の影響等により,被告測定時点での被告 403W 製 品の y/x 値等が初期値のものと同等とはいえない旨を主張する。 しかし,上記のとおり,被告 403W 製品については,長時間の使用による経年変 化等により,LED 素子の中央部に黄変が見られ,また,カタログ値と比較して全 光束や光効率が10%程度減少しているという事実は認められるものの,それ以上 に,LED 素子の劣化(凹み)をはじめ,配光特性に影響を及ぼし得るような LED 素子の劣化等を裏付ける具体的な事情は見当たらず,カバー部材についても,y/x 値等に影響を与えるような劣化が生じているといった事実の存在を具体的にうかが わせる事情は見当たらない。本件交換実験の結果に関しても,上記のとおり,交換 に係る製品が共通の部材を使用した同じ仕様のものであると認められることに鑑み ると,原告 PIPM が指摘する事情を考慮しても,その結果の信用性を直ちに疑うべ きものとまではいえない。 その他原告 PIPM が縷々指摘する事情を踏まえても,この点に関する原告 PIPM の主張は採用できない。
(3) 先使用権の範囲
上記(1)及び(2)によれば,被告は,本件各発明1並びに本件訂正発明1−17及 び1−18の内容を知らないで自らこれらに含まれる 403W 発明をし,本件優先日 の際に,日本国内において,その発明の実施である事業をしている者と認められる。 したがって,被告は,403W 発明及び上記事業の範囲内において,本件各発明1並 びに本件訂正発明1−17及び1−18に係る特許権について,通常実施権を有す る。 また,403W 製品は,x 値及び y 値の関係性を特定する技術的思想が明示的ない し具体的にうかがわれるものではないものの,実際にはその x 値及び y 値の関係性 により,本件各発明1並びに本件訂正発明1−17及び1−18に係る構成要件に\n相当する構成を有し,その作用効果を生じさせている。加えて,403W 発明につき, 照明器具としての機能を維持したまま,本件各発明1並びに本件訂正発明1−17\n及び1−18の特定する x 値及び y 値の関係性を充たす数値範囲に設計変更するこ とは可能と思われる。このため,被告製品1〜5及び7〜16は,いずれも,\n403W 発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式であるにとどまる ものといえる。 そうすると,被告による被告製品1〜5及び7〜16の製造販売は,被告の上記 通常実施権の及ぶ範囲内に含まれる。
(4) 小括
以上のとおり,被告は,403W 発明に基づく上記通常実施権により,業として被 告製品1〜5及び7〜16を製造販売し得ることから,その余の点につき論ずるま でもなく,原告 PIPM は,被告に対し,本件各発明1並びに本件訂正発明1−17 及び1−18に係る本件特許権1を行使し得ない。
6 無効理由9(クラーテ製品2)の公然実施による新規性欠如)の有無(争点12)
(1) 公然実施の有無
ア 証拠(以下に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら れる。
(ア) リコーは,平成23年7月7日,直管形 LED ランプである「クラーテ P シ リーズ40形」を同月末発売予定である旨をプレスリリースした。また,同社は,\n平成24年1月現在の製品を掲載したカタログ「<クラーテ>P シリーズ」(乙1 71の1)にクラーテ製品2)を掲載しているところ,同カタログ掲載の仕様は,上 記プレスリリースに係る製品の仕様と概ね同一である。さらに,同社は,遅くとも 同月には,クラーテ製品2)を含むシリーズ製品を販売していた。(上記のほか,乙 170,172,173,368)
(イ) 被告は,令和元年9月12日終了のオークションにより,クラーテ製品2)1 4本(被告クラーテ製品2))を入手したところ,これらの被告クラーテ製品2)には, いずれも,製造ロット番号として「1203」が表示されている。これは,当該製品\nの製造年月が平成24年3月であることを意味する。(乙172,174,186, 288)
イ 上記各認定事実を総合的に考慮すれば,クラーテ製品2)は,遅くとも平成2 4年1月頃には,リコーから販売されたことによりその構造が解析可能\な状態に至 ったものと認められる。 これに対し,原告 PIPM は,クラーテ製品2)の上市時期が明らかでないこと,仮 に被告クラーテ製品2)の製造日が平成24年3月であっても,製品製造後すぐ出回 るとは考えがたいことなどを主張する。 しかし,上記のとおり,リコーがクラーテ製品2)を平成24年1月には販売して いたことが認められるのであって,それから約3か月が経過した本件優先日時点で は,クラーテ製品2)が実際に市場に出回っていたものと見るのが合理的かつ相当で ある。したがって,この点に関する原告 PIPM の主張は採用できない。
ウ 小括
以上より,クラーテ発明2)は,本件優先日より前に日本国内において公然実施を された発明といえる。
(2) クラーテ発明2)の構成等\n
ア クラーテ発明2)が構成 1-20a’12〜f’12 及び h’12 を有すること,これらの構\n成がそれぞれ本件訂正発明1−20の構成要件 1-20A’〜F’及び H’に相当すること については,原告は明らかに争わないことから,これを認める。なお,本件訂正発 明1−20の構成要件 1-20D’の「「基台の上に実装された」の意義について, LED チップが実装された容器が基板を介して間接的に実装された構成を含むこと\nは上記2のとおりである。 イ 被告クラーテ製品2)14本の構成 1-20g’12 に係るパラメータ(y/x)の被告 測定値は,1.208〜1.278 であった(乙289)。また,関連無効審判における検 証手続の結果によれば,被告クラーテ製品2)は,x 値は 8.6mm,y 値は 10.39mm であり,y≒1.208x であった(乙346,365,弁論の全趣旨)。 そうすると,クラーテ発明2)は,「前記複数の LED チップの各々の光が前記ラン プの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅を y(mm)とし,隣り合う 前記 LED チップの発光中心間隔を x(mm)とすると,y≒1.208x の関係である」(構\n成 1-20g’12)の構成を有するものと認められる。この構\成は,本件訂正発明1−20 の構成要件 1-20G’に相当する。
(3) したがって,本件訂正発明1−20は,本件優先日より前に日本国内におい て公然実施をされた発明であるクラーテ製品2)に係る発明と同一の発明であるから, 法29条1項2号に違反し,無効にされるべきものと認められる。すなわち,本件 訂正発明1−20に係る本件訂正によっては無効理由が解消されないことから,本 件訂正発明1−20に係る訂正の再抗弁は認められない。
(4) 原告 PIPM の主張について
原告 PIPM は,被告測定値のばらつきや経年変化等の事情を指摘して,被告測定 値が初期値と等しいとはいえない旨を主張する。 この点,被告クラーテ製品2)については,オークションの出品者による説明とし て,中古品であること,商品の状態として「やや傷や汚れ」があること,使用期間 が2年弱であること,電気工事業者による取り外し作業の際に「ざっくりと中性洗 剤で管だけ拭きあげた状態」で丁寧な梱包により発送すること,「RICOH ロゴマ ークあたり」が黒ずんで見えるものの,LED は使用が進んでも黒ずむことはない ため元々の仕様であることなどが記載されている(乙288)。 もっとも,クラーテ製品2)は,光束が70%まで低下するまでの定格寿命が4万 時間とされている(乙170の3,171の1)。このため,被告クラーテ製品2) につき,仮に25%に相当する1万時間使用された事実があったとしても,配光特 性に影響を与えるとは必ずしもいえず,現に,被告クラーテ製品2)のうち2本の配 光特性はいずれも117度である(乙320)。口金ピンやランプマーク側の管端 部の黒ずみについても,その存在から直ちに他の部位にも同様の黒ずみが存在し, 配光特性に影響を与えるとは必ずしも推認し得ないことから,同様である。また, クラーテ製品2)については,光触媒の膜が剥がれて本来の効果が得られなくなる場 合があるとして,製品の表面を強く擦らないようにとの注意喚起がされているもの\nの(乙170の3),「ざっくりと中性洗剤で」「拭き上げ」るといった態様がこ れに含まれるとは考えられない。むしろ,LED ランプの手入れ方法としてこのよ うな方法が奨励されているとも見られる(乙35)。さらに,被告クラーテ製品1) (乙169,214,215によれば,未使用品と認められる。)と被告クラーテ 製品2)のカバー部材を交換した測定によっても,両者の半値幅等に有意な差異はな い(乙370)。 これらの事情等を踏まえると,被告クラーテ製品2)につき,経年変化等によりパ ラメータの値に変化が生じているとは考えられず,上記(2)での認定に係る被告ク ラーテ製品2)の被告測定値及び関連無効審判の検証手続における測定値は,初期値 と概ね等しいものと見られる。 したがって,この点に関する原告 PIPM の主張は採用できない。
7 まとめ
以上のとおり,本件各発明1(並びに本件訂正発明1−17及び1−18)に係 る本件特許権1に基づく原告 PIPM の請求については,被告に 403W 発明に基づく 先使用権が成立することにより,原告 PIPM は,被告に対し,本件特許権1を行使 し得ない。他方,本件訂正発明1−1に係る訂正の再抗弁は,被告製品1〜5,7 〜16がその技術的範囲に属さないことにより,また,本件訂正発明1−20に係 る訂正の再抗弁は,クラーテ発明2)の公然実施を理由とする新規性欠如の無効理由 があり,本件訂正によって無効理由が解消されないことにより,いずれも再抗弁の 成立が認められない。 以上より,その余の点について論ずるまでもなく,被告による本件特許権1の侵 害は認められないから,原告 PIPM の本件特許権1の侵害に基づく請求は,いずれ も理由がない。

◆添付1

◆添付2

◆添付3

◆添付4

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令和2(ワ)26567    著作権  民事訴訟 令和3年8月18日  東京地方裁判所

 取説について著作物性なしと判断されました。不存在確認訴訟なので被告が著作権者です。なお、被告は答弁書すら提出していません。説明書の一部は下記です。
「この水虫(白癬)爪専用クリアーネイル&ヤスリセットは100年以上の歴史を誇るDrスコール社が科学的に研究を重ねて作られた独自技術の集大成です。解決法として従来製品よりも簡単に優しく治療できます。
水虫(白癬)菌の発育を妨げ菌の発生を防ぎます。
水虫(白癬)菌の成長と始発を予防し清潔な爪に貢献をします。」\n

 被告説明文の「ア」部分は,本件商品がドクターショール社の製品であるこ とや,本件製品が従来製品よりも簡単かつ優しく治療できること,水虫菌の発 生・発育を防止することなどを記載するものである。このような製品の出所, 特性や効能については,その性質上,消費者が過大な期待を抱くことのないよ\nうに,客観的な事実をできる限り正確かつ明確に説明することが求められてお り,思想又は感情を創作的に表現する幅は狭く,表\現の選択肢は限られたもの となると考えられる。このため,上記「ア」部分の記載に創作性があるとは認 められない。
(2) 被告説明文の「イ〜エ」部分は,本件商品が適合する症状や,本件商品の使 用方法,爪白癬(爪水虫)が生じる原因について記載したものである。これら についても,利用者が誤った場面や方法で本件商品を使用すること等を避ける ために,前記ア同様,その性質上,客観的な事実をできる限り正確かつ明確に 説明することが求められており,思想又は感情を創作的に表現する幅は狭く,\n表現の選択肢は限られたものとなると考えられる。このため,上記「イ〜エ」\n部分の記載についても創作性があるとは認められない。

◆判決本文

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令和3(ネ)10005 損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年9月16日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 特許侵害事件で、1審は4億4000万円の損害賠償を認めましたが、原告が控訴しました。知財高裁は約7億円の損害賠償を認めました。

ア 特許法102条3項による損害額として,侵害品の売上高を基準とし, そこに実施に対し受けるべき料率を乗じて算定する場合,実施に対し受 けるべき金銭の料率の算定に当たっては,1)当該特許発明の実際の実施 許諾契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界におけ る実施料の相場等も考慮に入れつつ,2)当該特許発明自体の価値すなわ ち特許発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能性,3)当該特 許発明を当該製品に用いた場合の売上及び利益への貢献や侵害の態様,
4)特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた 諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきである。以下,順に 検討する。
1) 当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や,それが明 らかでない場合には業界における実施料の相場等 本件訂正発明について実際に実施許諾契約が締結されたことを示 す証拠はない。
・・・
本件訴訟において,本件特許権の技術分野については実際の実施許 諾契約の実施料率を示す証拠はない。 本件特許権の技術分野に近似する分野(「機関またはポンプ」) の実施料率についてのアンケート調査結果によれば,実施料率3〜 4%未満の例が最も多く(37.5%),実施料率5〜6%未満の例 や実施料率2〜3%未満の例は同数(12.5%),実施料率1〜 2%未満は3件(18.8%)とされており,また,他の調査結果や データベースには,実施料率3%又は6%の例や実施料率5〜8%又 は3%の例もあったとされていることからすれば,圧縮機の分野でも, 実施料率を3%から4%程度とする例を中心としつつ,その前後の実 施料率とする例も相当程度あることがうかがわれる。 なお,一審被告は,前記第2の3 本件訴訟の 事案と本件ライセンス契約はいずれも圧縮機を販売するための特許権 の実施許諾を対象とするものであって,実施許諾の対象は同じと評価 すべきであるから,本件ライセンス契約を重視すべきであると主張す るが,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●このようなライセンス契約の事例を他の事例より 特に重視すべき理由があるとはいえず,圧縮機分野の実施料率の一例 としてみるのが相当である。
また,一審被告は,甲19ないし21に掲げられた事例は,いず れも,一審被告や一審原告とは何ら関係がない一般的なものであって, 具体的な点において,本件と共通性や類似性はないとか,本件特許権 は,圧縮機の分野に係る日本の特許権1件であるから,特許法102 条3項の実施に対し受けるべき料率を検討するに当たっては,日本の 特許権1件の非独占的な実施許諾による料率と対比すべきであるとこ ろ,甲20は日本の特許権に関するものではなく,また,独占的実施 許諾の事例であるなどと主張するが,実施料率を定める事例として, 具体的な点において完全に合致する事例がなければ,同分野の他の事 例(他の国の特許権に関するものを含む。)を参酌することは当然で あるし,甲20で独占的とされるのは製造のみであり,販売について ライセンシーが独占権を得ていることはうかがわれない。したがって, 一審被告の主張は採用できない。
2) 本件訂正発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能性\n
本件優先日前である平成9年3月25日に発行された書籍「カーエ アコン」(甲11)には,ピストン式圧縮機の斜板形のものでロータ リバルブを使用したものは記載されておらず,113頁の図6.5で 吸入弁(リードバルブ)が図示されている。 従来技術であるリードバルブ方式は,シリンダ室と吸入室の圧力 差が必要であること,流路断面積が小さいこと,弁による吸入抵抗が 発生するという難点があることから,シャフトの回転によって冷媒を 提供するロータリバルブ方式が提案されてはいたものの(乙18,2 2,23,28,30等),回転軸の外周面と軸孔の内周面のクリア ランスによって,吐出行程時の圧縮室から冷媒が漏れるという問題が あったこと,クリアランス管理が非常に難しいこと(本件明細書【0 004】)から実用化には至っていなかったのであり,本件訂正発明 において,ロータリバルブを備えた回転軸に伝達される圧縮反力を利 用して,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向 けてロータリバルブを付勢させて,体積効率を向上させていること (本件明細書【0015】),クリアランスに関する厳密な管理が不 要となること(本件明細書【0043】)は,コスト面も含め,ロー タリバルブ方式を実用化するのに寄与したものと認められ,一審原告 が,本件優先日後に,ロータリバルブ方式のピストン式圧縮機を販売 していることは争いがない。
もっとも,実用化当初の一審原告の製品(10SR15C)は, 本件訂正前の構成であるから,ロータリバルブが円筒状でなく凹部や\n溝が設けられており,本件訂正発明そのものの実施品ではないと考え られる。しかし,同製品も,圧縮反力で冷媒漏れを防止するという本 件訂正発明の技術思想を利用するものであり,この点については本件 訂正の前後で変更はない。 そうすると,本件訂正発明はロータリバルブ方式のピストン式圧 縮機の実用化に寄与したものというべきで,相応の顧客吸引力がある ということができる。
一審被告は,被告各製品の販売先であるマツダに対し,設計変更 品を継続して販売しているが,●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●少なくとも,侵害時(平成24年12月から平成 29年6月)の大部分において,本件訂正発明の効果を奏する代替 技術はなかったということになる。
3) 当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上及び利益への貢献や侵害 の態様
本件訂正発明がロータリバルブ方式を実用化するのに貢献したこ とは前記2)のとおりである。 一方,どの程度の体積効率の向上がもたらされるかは具体的数値 をもっては明らかではなく,本件訂正発明の作用効果についての顧客 吸引力等は一定程度限定される。 被告各製品はクラッチ部分と組み合わされて販売されている。 乙62によれば,被告各製品に該当する部品番号に相当するコン プレッサー(クラッチ部分及び圧縮機部分)の販売価格は468.1 5ドル,クラッチ部分のみの販売価格は231.82ドルとする事例 があることが認められるが,これはアフターマーケット(商品販売後 の需要に対する正規ディーラーではない業者の市場)における販売価 格であり,直ちに一審被告とJCSないしマツダとの間の被告各製品 の取引にあてはめることはできない。また,一審被告は,被告各製品 と別にクラッチを販売しているものではない。 しかし,クラッチ部分と圧縮機部分は観念的には区別することが でき,特許法102条3項の適用に当たっては,被告各製品の売上高 は,クラッチ部分を含むものであるという事情も考慮する必要がある。 一審被告は,前記第2の3 被告各製品は,本 件訂正発明とは無関係に,厳密なクリアランス管理により,冷媒漏 れ防止の効果を達成していると主張する。 一審被告のいう被告各製品における「厳密なクリアランス管理」 は,シャフトとシャフト用孔を極めて高精度に仕上げ,クリアラン スを30μmに設定する構造を採用し,ラジアル軸受は,斜板取付\nけ部とスラスト軸受を除く全領域でシャフトを支持する軸受とし, さらに,軸受がシリンダブロックの外側に突き出る長い構造を採用\nすることによって,シャフトの動きを伴うことなく,冷媒が吸入通 路の入口から漏出するのを防止するというものである(引用に係る 原判決12頁5行目ないし13行目)。
しかし,一審被告の主張のとおり厳密なクリアランス管理により冷 媒漏れを防止しているというのであれば,乙3報告書(被告製品1 〔クリアランスが30μm〕と,クリアランスを50μm,70μm, 90μm,110μmに変更した圧縮機の体積効率を比較したもの) において,クリアランスが30μmである被告製品1よりも50μm のものの方が体積効率は落ちることになるはずであるが,30μmと 50μmとで体積効率はほとんど変わらなかったとされているのであ るから,一審被告の主張は十分な裏付けを欠くものというべきである。\nまた,仮に,被告各製品が,一審被告主張の厳密なクリアランスを 採用し,その構成が冷媒漏れの防止に対する効果を奏することがある\nとしても,一方で,被告各製品は,原判決別紙イ号物件説明書及びロ 号物件説明書記載のとおりの構造を有しており,ピストン60に作用\nした圧縮反力Fが斜板やスラスト荷重吸収機能が付与されたフロント\n側スラスト軸受70に伝達され,このスラスト荷重吸収により斜板5 1の動きを許容することで斜板51の径中心部を中心としてシャフト 50を傾かせようと作用し,これによって,シャフト50(回転弁) は,吐出行程中のシリンダボア22に連通するフロント側通路23の 入口に向けて付勢され,この際シャフト50が変位しているのであっ て,この本件訂正発明の構成要件C,Fを充足する構\成によっても, 冷媒漏れが防止されるものといえることは,原判決が第4の3で説示 するとおりであるから,本件訂正発明とは無関係に冷媒漏れを防止し ているという一審被告の主張は採用できない。
4) 特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針
一審原告は,ロータリバルブ方式のピストン式圧縮機を製造・販 売しており,一審被告は,平成24年12月以降,ロータリバルブ 方式のピストン式圧縮機である被告各製品を輸入・販売しているの であるから,両者は競合関係にある。一審被告は,前記第2の3⑵ のとおり,被告各製品が組み込まれていたマツダ製の自動車 においては,圧縮機について,「被告親会社→一審被告→JCS→ マツダの商流」という系列関係が確立しているとして競業関係を否 定するが,ここでは,特許権者と侵害者の間の料率を定める上で競 業関係が問題とされているのであるから,一審原告がマツダに直接 販売することができるかどうかの問題ではなく,一審被告の主張は 採用できない。 ロータリバルブ方式のピストン式圧縮機の市場は寡占状態にあり, 相互に実施許諾を行っていない閉ざされた市場傾向にある(弁論の 全趣旨)。
イ 以上の検討を踏まえると,圧縮機の分野では,実施料率を3%から 4%程度とする例を中心としつつ,その前後の実施料率とする例も相当 程度あることがうかがわれること,本件訂正発明が相応の技術的価値を 有し,代替品もなかったこと,一審原告と一審被告が競業関係にあり, 相互に実施許諾を行うことが考えにくいこと,他方,本件訂正発明の作 用効果に対する顧客吸引力等は一定程度限定されること,被告各製品の 売上高はクラッチ部分を含むものであること等の本件諸事情を考慮すれ ば,特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき,本件での実 施に対し受けるべき料率は,3%と認めるのが相当である。 なお,一審被告は,第2の3 本件訂正発明の作用 効果や侵害の成否等について,前件侵害訴訟における知財高裁判決や本件 無効審決,ソウル高等法院等,判断主体によって判断が分かれていること\nを理由に,本件訂正発明の価値が低いと主張するが,事前の実施許諾契約 の料率については特許権が無効となる可能性等も考慮して算定されるのと\n異なり,特許法102条3項の損害は,特許権が有効であり,特許権侵害 があることを前提に算定されるものであるから,別個の手続の状況を考慮 に入れるのは相当でない。

◆判決本文

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◆平成29(ワ)28541

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令和3(ネ)10029  特許侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年10月13日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 知財高裁は、1審の「技術的範囲に属する、推定覆滅率2割」を維持し、約7300万円の損害賠償を認めました。1審判決が出たのが2021年3月なので早いですね。

 足場が不要になることが本件発明の唯一の効果であるとはいえないことは,上記2のとおりである。また,同業他社の製品(乙60の各枝番)の施工方法は,証拠上は必ずしも明らかではなく,本件発明及び被告方法のように,倹鈍式によるガラス板の嵌め込み,ガラス板及び目地枠を摺動させることによる取付け,係止爪と被係止爪との係止,といった工程を可能にするものか否かは定かでない。また,控訴人が引用する裁判例は,本件とは事案を異にし,本件における損害額の算定において参考となるものではない。そうすると,控訴人の当審における上記主張は,原判決を引用して説示したとおり推定覆滅率2割を相当とするとの判断を左右するものではなく,採用することができない。\n

◆判決本文

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◆平成29(ワ)10716
以上によれば,本件発明は,施工コスト低減という効果(3))によりこれを 実施する製品の販売等に貢献するものであって,相応の顧客誘引力を有するといえ るものの,その程度は限られているというべきである。また,効果1)及び2)に関し ては,本件発明は,手摺本体の取付け完了後の外観上の体裁及び取付強度の点で同 程度の他の製品に対する優位をもたらすほどの貢献をするものとはいえない。
ウ 競合品について
(ア) 外観上の体裁の良さ等(1))について
証拠(乙27,29〜31,39,42。各枝番を含む。以下同じ。)によれ ば,乙27製品等は,いずれも,手摺本体の室外側長手方向略全域に連続して複数 のガラス板が取り付けられ,ガラス板間にはアルミ製目地枠を用いているものと認 められる。これにより,これらの製品は,本件発明の効果1)と同様の効果を奏する ものといえる。
(イ) 取付強度の高さ等(2))について
証拠(乙27,29〜31,39,42)によれば,乙27製品等は,いずれ も,ガラス板間の目地材としてアルミ製目地枠(縦枠,竪枠)を用い,ガラス取付 枠とアルミ製目地枠とでガラス板の上下左右を係合保持しているものと認められる (乙31製品については,「2辺支持タイプ」との記載もあるが(甲18),「4 辺支持」との記載のある「ガラスタイプ」もある(乙31)。)。これにより,こ れらの製品は,本件発明の効果2)と同様の効果を奏するものといえる。 これに対し,原告は,乙30製品,乙31製品及び乙42製品につき,アルミ製 目地枠ないし手摺笠木部分の取付方法ゆえに取付強度と耐久性に難点がある旨を指 摘する。しかし,上記取付方法ゆえに生じる取付強度及び耐久性の問題点が具体的 にどの程度のものであるかは明らかでない。そもそも,本件明細書によれば,取付 強度及び耐久性に係る本件発明の効果は,「ガラス板の上下端縁のみが上下枠に係 合保持され,隣合うガラス板間には従来のゴム系の目地材を充填するのに比較し て」(【0013】)の強度に関するものに過ぎない。このほか,原告製品(証拠(甲 14,15)及び弁論の全趣旨より,本件発明に係る取付方法により取り付けられ るものと認められる。)と同様に,これらの製品の施工例として高層マンション等 の複数階層を有する建築物が示されていること(乙30,31,42)に鑑みて も,乙30製品,乙31製品及び乙42製品は,少なくとも,原告製品と競合し得 る程度には本件発明の効果2)と同様の効果を奏するものと見られる。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(ウ) 施工コストの低減(3))について
証拠(乙37〜42)によれば,乙27製品等は,いずれも,ガラス板とアルミ 製目地枠を室内側から取り付けることが可能であり,ガラス板とアルミ製目地枠を\n室外側に取り付ける作業のために足場を組む必要はないものと認められる。これに より,これらの製品は,本件発明の効果3)と同様の効果を奏するものといえる。 これに対し,原告は,乙30製品,乙31製品及び乙42製品につき,アルミ製 目地枠ないし手摺笠木部分が回転式であるがゆえに製造コストに難点がある旨を指 摘する。しかし,上記取付方法ゆえに生じる製造コストの問題点が具体的にどの程 度のものであるかは明らかでない。そもそも,本件発明の効果の1つである施工コ ストの低減は,足場等を設ける必要がないことによって実現されるものであって, アルミ製目地枠の取付方法が回転式であること(乙30製品,乙31製品)や手摺 笠木部分の取付方法が回転式であること(乙42製品)による製造コストとは無関 係である。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(エ) その他
原告は,乙27製品及び乙29製品につき,本件特許権を侵害する製品である可 能性が高い旨を指摘する。しかし,原告も可能\性を指摘するにとどまるし,これら の製品が本件特許権を侵害することを認めるに足りる証拠もないことから,本件に おいては,この点は考慮に含めないこととする。
(オ) 以上より,乙27製品等は,いずれも,本件発明の効果と同様の効果を有す る製品として,原告製品及び被告製品と市場において競合するものと見るのが相当 である。 もっとも,原告は,原告製品を遅くとも平成24年3月までには販売していると 認められる(甲14,15,弁論の全趣旨)。他方,証拠(乙55)及び弁論の全 趣旨によれば,乙27製品等の販売開始時期は,乙31製品が平成24年,乙27 製品が平成26年,乙30製品が平成27年,乙29製品が平成28年3月,乙3 9製品が平成29年10月であることが認められる。 また,原告製品,被告製品及び乙27製品等の各売上額やアルミ製目地枠のフラ ットレール製品市場におけるシェアは,いずれも証拠上明らかでない。 これらの事情を総合的に考慮すると,アルミ製手摺製品の市場において原告製品 及び被告製品に対する複数の競合品が存在することに鑑みれば,特許法102条2 項に基づく損害額の推定覆滅事由としてこれを考慮すべきではあるものの,被告に よる主張立証の程度に鑑みれば,その程度は相当に限られると見るべきである。
エ 推定覆滅の程度
以上の事情を総合的に考慮すれば,被告製品の売上に対する本件発明の貢献の程 度は限られるものの,他方で,競合品の存在による推定覆滅の程度も相当に限定的 であり,他に推定を覆滅すべき具体的な事情も見当たらないことから,本件におい ては,2割の限度で損害額の推定が覆滅されるものとするのが相当である。これに 反する原告及び被告の各主張は,いずれも採用できない。 そうすると,特許法102条2項に基づき推定される原告の損害額は,以下のと おりとなる。
・・・
したがって,原告の損害額は合計5481万9267円となり(内訳は以下のと おり),原告は,被告に対し,本件特許権侵害の不法行為に基づき,同額の損害賠 償請求権を有する。

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令和3(ネ)10036  著作権等の侵害に基づく削除等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年9月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 原告はイラストと文章をTwitterに投稿しました。被告の行為は原告著作物の公衆送信権、翻案権侵害と訴えました。知財高裁は1審判断を維持しました。

 既存の著作物に依拠して創作された著作物が思想,感情若しくはアイデア, 事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない部 分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案に当 たらないことは引用する原判決が説示するとおりである。
本件についてみると,被告イラストは,原告文章と同じく,原作である「O NE PIECE」に登場するキャラクターの設定に依拠して,身長差のあ る同性の2人が,壁に掴まりながら特定の体位で性交渉を行うという描写に おいて,原告文章と同一性を有するにとどまるものであり,こうした描写自 体は,アイデアないし着想にすぎないか,表現上の創作性がない部分である。\nそうすると,原告文章を全体として見た場合に一定の創作性が認められる余 地があるとしても,前述のとおり,被告イラストは,原告文章のうちアイデ アないし着想にすぎないか,表現上の創作性がない部分において同一性を有\nするにすぎないのであるから,原告文章の翻案に当たるものでないことは明 らかというべきである。 控訴人は,原告文章の創作性につき前記第2の3(1)のとおり指摘し,被告 イラストは,これらの創作部分が全て描写されているので,原告文章の翻案 に当たる旨主張するが,控訴人の指摘する部分は,いずれも,アイデアない し表現上の創作性のない部分であるにすぎないし(「ONE PIECE」 に登場するキャラクターの設定については,当然のことながら創作性を認め ることができない。),その具体的な表現ぶりも,性表\現として平凡かつあ りふれたものであり,そもそも被告イラストが当該表現部分に依拠して作成\nされたと特定することもできないものといわざるを得ない。 したがって,控訴人の主張は失当というほかない。
(2) 被告文章が原告イラストの翻案に当たるとの点について
被告文章は,原作である「ONE PIECE」に登場するキャラクター の設定に依拠して,原作に登場する2人の人物が性交渉後に,身長の低く若 い人物(ルフィ)が失禁したと勘違いし,動揺をしている描写設定において, 原告イラストと同一性を有するに止まり,こうした描写設定は,同性間の性 交渉を描写するに当たってのアイデアないし着想にすぎないか,表現上の創\n作性があるとはいえない部分である。そうすると,原告イラストを全体とし て見た場合に一定の創作性が認められる余地があるとしても,前述のとおり, 被告文章は,原告イラストのうちアイデアないし着想にすぎないか,表現上\nの創作性がない部分において同一性を有するにすぎないのであるから,原告 イラストの翻案に当たるものでないことは明らかというべきである。 控訴人は,前記第2の3(2)のとおり,被告文章は,原告イラストの最後の コマの「ルフィ」のセリフを受けて,あたかも連歌のように,直前の状況や 内容を参看し,その背景や情趣,心境を踏まえて,そのポエジーを受け継い で記載されたものである旨主張するが,独自の見解というほかないものであ り,控訴人主張のセリフ自体に表現上の創作性を認めることはできないし,\nましてやそのセリフから連歌性やポエジーの存在を認め,被告文章が原告イ ラストに依拠した翻案に当たるなどと認めることは到底できない。  

◆判決本文

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◆令和1(ワ)30833
以下のように判断されています。
まず,原告文章と被告イラストについては,原告文章が言語の著作物で あるのに対し,被告イラストは基本的には美術の著作物であって,表現の\n形式が異なり,これらを対比すると,両者は,描写対象の設定(身長差の ある設定の2人の登場人物が,一般的には困難と思われている体位で性行 為を行っている点,性器の状態,及び登場人物の一方が壁につかまろうと しているという点)につき同一性を有するにとどまるといえる。しかして, 上記描写対象の設定は,その内容自体や,原告文章の性質・内容に照らし, 内面的思想たるアイデアにすぎず,表現それ自体でない部分であるという\nべきである。また,仮に表現自体と捉えられる部分があったとしても,本\n件各証拠を見ても,上記設定による表現に幅があると認められ制作者の個\n性の表れとして著作物性を肯定することを基礎付けるに足りるものは見当\nたらず,原告文章の性質・内容に照らせば,上記設定を前提とする限り, これを表現したものとしては平凡かつありふれたものであり,表\現上の創 作性がない部分であるといわざるを得ない。
イ 次に,原告イラストと被告文章については,原告イラストが基本的には 美術の著作物であるのに対し,被告文章は言語の著作物であって,表現の\n形式が異なり,これらを対比すると,両者は,描写対象の設定(2人いる 登場人物の一方が性的行為の際に勘違いをした状況で,他方の登場人物に 対する言動・働きかけに及んでいる点)につき同一性を有するにとどまる といえる。しかして,これについても,上記説示が同様に当てはまるもの である。すなわち,上記描写対象の設定は,その内容自体や,原告イラス トの性質・内容に照らし,内面的思想たるアイデアにすぎず,表現それ自\n体でない部分であるというべきである。また,仮に表現自体と捉えられる\n部分があったとしても,本件各証拠を見ても,上記設定による表現に幅が\nあると認められ制作者の個性の表れとして著作物性を肯定できることを基\n礎付けるに足りるものは見当たらず,原告イラストの性質・内容に照らせ ば,上記設定を前提とする限り,これを表現したものとしては平凡かつあ\nりふれたものであり,表現上の創作性がない部分であるといわざるを得な\nい。
ウ 以上によれば,被告イラストは原告文章を翻案したものには当たらず, また,被告文章は原告イラストを翻案したものには当たらないというべき である。

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令和2(行ケ)10103 特許権 行政訴訟 令和3年10月6日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が、引用文献の認定誤りを理由として、動機付けがないとして取り消されました。引用文献における「演色性」は本件とは意味が異なるという認定です。

ア 甲1発明の課題の認定について
(ア) 黄色の発色
甲1には,「イエロー系」,「イエローとライトイエローの違いが分かり づらいです。」(4頁の上から5枚目の写真の上下)と記載されていると ころ,この記載からは,甲1製品において,「イエロー」と「ライトイエ ロー」の色の相違が判別し難いという問題があることは認められる。し かし,上記の記載の前提として,「イエロー」は,色票等ではなくペンラ イトの「ライトイエロー」との比較がされているにとどまる上(上記写 真),色の相対的な判別の問題と,一般的に各色の基準とされている色(色 票の該当色)にどれだけ近い色を出しているかという発色の問題は異な るから,「イエロー」と「ライトイエロー」の色の相違が判別し難いとい う上記の問題は,「イエロー」が一般的に黄色の基準とされている色にど れだけ近い色を出しているかという発色の問題とは異なる。 本件審決は,「それら『イエロー』及び『ライトイエロー』の各発色に ついて検討するに,p.4-写真には,写真中央に位置する4本のペンライ トの他に,その左側に2本(『亜美・真美』及び『小鳥』),右側に2本(『ル ミスティック』及び『大電光改』)の計4本の他のペンライトが色比較の ために配置されているところ,上記写真中央の4本(甲1発明)の『イ エロー』の発色は,上記他の4本のペンライトの黄色の発色とは異なり, むしろ p.4-6 写真((摘示(1q))示されるオレンジ系の色に近い発色 となっている。」(本件審決第6,2,2−1(2)(2−1)ア(ア) 〔本件 審決47頁〕)と述べ,甲1の写真を根拠として,甲1製品の「イエロー」 とされる黄色の発色自体に問題があるという認定をしている。本件審決 が,甲1サイトのアドレスにアクセスの上,ディスプレイ上に表示され\nた写真(画像)に基づいて上記認定をしたのか,又は用紙に印刷された 写真に基づいて上記認定をしたのかは,本件審決の記載からは直ちには 明らかでないが,仮に,前者であるとした場合,ディスプレイに表示さ\nれる色の発色は,ディスプレイ自体の性能や調整に依存するものである\nし,また,後者であるとした場合でも,紙に印刷される色の発色は,紙 の品質やプリンタの性能や調整に依存するものであり,さらにいえば,\n写真を撮影したカメラの性能や調整によっても発色は相違するものであ\nるから,いずれにしても,実際の甲1製品の発色とディスプレイ上の表\n示又は印刷されたものの発色は,必ずしも同じとは限らない。また,甲 1製品と対比された他社のペンライトが,甲1製品よりも,一般的に黄 色の基準とされている色に近いことを裏付ける客観的な証拠はない。そ のため,甲1の写真に基づいて,「イエロー」が一般的に黄色の基準とさ れている色にどれだけ近い色を出しているかを判断することはできず, 甲1の写真を根拠に,「イエロー」とされる黄色の発色自体に問題がある と認定することはできない。
その他の甲1の記載によっても,甲1に,「イエロー」とされる黄色の 発色自体に問題が内在しているという課題が示されていると認めること はできない。 そうすると,「イエロー」と「ライトイエロー」の各発色の色の違いを 明確に識別することができないという問題は,「イエロー」とされる黄色 の発色自体に問題が内在しているということもできるとする本件審決の 判断(前記(3)ア(ア))は誤りである。
(イ) 演色性
本件審決が甲1発明の課題に関して認定する「演色性」は,発色のバ ランスを崩れないようにすることや,全体が綺麗に光るようにすること (前記(3)ア(イ)),多くの色彩の選択肢を提供すること(前記(3)(ウ)。 本件審決は,第6,2,2−1(2)(2−1)ア(ウ)〔本件審決48頁〕で, 甲10に記載されているように周知の課題といえると認定する。)であり, 甲2に記載された技術事項として認定された「演色性」,すなわち,照明 された物体の色が自然光で見た場合に近いか否かという,一般的な意味 での「演色性」(前記(3)イ(イ))とは異なる。
イ 甲2に記載された技術事項の認定
前記(3)イ(イ)のとおり,甲2に記載された技術事項として認定された「演 色性」は,照明された物体の色が自然光で見た場合に近いか否かという, 一般的な意味での「演色性」であるものと認められる。
ウ 相違点1に係る本件発明1の構成のうちの「黄色発光ダイオード」及び\nその「発光色」の容易想到性
前記(2)のとおり,甲1発明と甲2に記載された技術事項は,技術分野が 完全に一致しているとまではいえず,近接しているにとどまるから,甲1 発明に甲2に記載された技術事項を採用して本件発明1を想到すること が容易であるというためには,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採 用するについて,相応の動機付けが必要であるというべきである。
本件審決は,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用する動機付け があり,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用して本件発明1を容 易に想到することができたと判断する前提として,甲1発明に,「イエロー」 とされる黄色の発色自体に問題が内在しているという課題があり(前記(3) ア(ア)),甲1発明に,演色性を向上させるという,甲2と共通の課題があ ると認定した(前記(3)ア(イ),(ウ))。しかし,前記ア(ア)のとおり,甲1発 明に,「イエロー」とされる黄色の発色自体に問題が内在しているという課 題があるとする本件審決の認定は誤りであるし,また,本件審決が甲1発 明の課題に関して認定する「演色性」(本件審決が第6,2,2−1(2)(2 −1)ア(ウ)〔本件審決48頁〕で,甲10に記載されているように周知の 課題といえると認定する事項を含む。)は,甲2に記載された技術事項とし て認定された「演色性」,すなわち,照明された物体の色が自然光で見た場 合に近いか否かという,一般的な意味での「演色性」とは異なる(前記ア (イ))。
そうすると,本件審決は,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用 する動機を基礎づける甲1発明の課題の認定を誤っているものであり,ま た,甲2に記載された技術事項の内容(前記(1)),甲1発明と甲2に記載さ れた技術事項の技術分野相互の関係(前記(2))を考慮すると,甲1発明に は,甲2に記載された技術事項と共通する課題があるとは認められず,そ のため,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用する動機付けがある とは認められない。 したがって,甲1発明に甲2に記載された技術事項及び周知の課題(甲 10)を採用して,黄色発光ダイオードを設けることを容易に想到するこ とができたとは認められず,これを容易に想到することができたとする本 件審決の判断(前記(3)ウ(ア))は誤りである。
本件審決は,甲1発明に甲2に記載された技術事項及び周知の課題(甲 10)を採用して,黄色発光ダイオードを設けることを容易に想到するこ とができた(前記(3)ウ(ア))という判断を前提として,甲1発明に甲2に記 載された技術事項及び周知の課題(甲10)を採用し,本件発明1の構成\nのうちの「黄色発光ダイオード」及びその「発光色」を容易に想到するこ とができた(本件審決第6,2,2−1(2)(2−1)イ(ア)〔本件審決48 〜50頁〕)と判断するところ,その前提とする判断が誤っているから,本 件発明1の構成のうちの「黄色発光ダイオード」及びその「発光色」を容\n易に想到することができたという判断も誤りである。
エ 黄色発光ダイオードの単独発光色及び混合発光色の容易想到性
前記ウのとおり,甲1発明と甲2に記載された技術事項との間には課題 の共通性がなく,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用する動機付 けがあるとは認められないが,念のため,仮にそのような動機付けがある として,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用することにより,黄 色発光ダイオードが単独で発光することにより得られる黄色の発光色,及 び前記黄色発光ダイオードとそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオード から発せられる光が混合することにより得られる発光色という,相違点1 に係る本件発明1の構成を容易に想到することができたかについて検討\nする。
甲2には,前記(1)認定のとおり,カード型LED照明光源10に実装さ れるLEDを,相関色温度が低い光色用又は相関色温度が高い光色用や青, 赤,緑,黄など個別の光色を有するものとすることができること(段落【0 080】)が記載されているが,当該事項に係る実施の形態1に関連する段 落【0076】ないし【0080】の記載全体をみても,青,赤,緑,黄 など個別の光色のうちからいずれか1色の単色LEDのみを搭載したLE D光源により青,赤,緑,黄などいずれかの個別の光色を発光するという 意味なのか,複数色のLED光源を搭載して青,赤,緑,黄などの個別の 光色となるように制御するという意味なのか必ずしも判然としない。段落 【0080】に続いて,段落【0081】の前半において「更に,多発光 色(2種以上の光色)のLEDをカード型LED照明光源10に実装する ことにより,・・・この場合,2種の光色を用いた2波長タイプのときには」 との記載が続くことに照らせば,段落【0080】の上記記載は,前者の 意味,すなわち,1種の光色を用いた1波長タイプを意味し,黄色の単色 LEDを搭載したLED光源により黄色の光色を有するという意味と解す ることはできる。しかし,本件発明1は,赤色発光ダイオード,緑色発光 ダイオード,青色発光ダイオード,黄色発光ダイオード及び白色発光ダイ オードを備え,複数得られる特定の発光色として,少なくとも,黄色発光 ダイオードから単独で発せられる光により得られる発光色の他に,黄色発 光ダイオードから発せられる光とそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオー ドから発せられる光とを混合して得られる発光色が得られなければならな いところ(相違点1),前者の意味であるとすれば,上記の混合して得られ る発光色が容易想到であるとはいえない。他方,仮に後者の意味だとして も,甲2には,複数色のLED光源に黄色のLEDを含んでいるとの直接 的な記載はないから,黄色以外のLED光源によって黄色の光色を得てい る可能性も否定できず,黄色のLEDの単独発光が容易想到であるとはい\nえない。 さらに,前記(1)イで認定したとおり,甲2には,3種の光色を用いた3 波長タイプの場合は青と青緑(緑)と赤発光の組合せ,4種の光色を用い た4波長タイプの場合は青と青緑(緑)と黄(橙)と赤発光の組合せが望 ましく,特に4波長タイプのときには平均演色評価数が90を超える高演 色な光源を実現できること(段落【0081】)が記載されており,演色性 を向上させるためにRGBY(赤,緑,青,黄)4種類のLEDを用いる ことが記載されているが,これらの記載は,一般的な意味での演色性の向 上に関するものであるから,これらの記載からは,RGBY4種類のLE Dを用いた照明装置において,黄色のLEDを単独発光させることが客観 的かつ具体的に把握できるものとは認められない。 また,甲2には,RGBWY(赤,緑,青,白,黄)の5種類のLED を用いることが,段落【0065】や【0189】に記載されているが, 具体的な記載としては電源に関する説明があるのみで,これらの記載から は,RGBWYの5種類のLEDを用いた照明装置において,黄色LED を単独で発光させることやその他の色と混ぜて発光色を制御することは, 客観的かつ具体的に把握することはできない。 そうすると,仮に甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用する動機 付けがあり,甲2に記載された技術事項を甲1発明において採用し,甲1 発明において黄色発光ダイオードを備えたとしても,黄色発光ダイオード が単独で発光することにより得られる黄色の発光色,及び,前記黄色発光 ダイオードとそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオードから発せられる 光が混合することにより得られる発光色という,相違点1に係る本件発明 1の構成を容易に想到することができたとは認められない。\n
なお,本件発明1は,黄色LEDを追加した上で,白色LEDとそれ以 外の1つ又は2つのLEDから発せられる光が混合して発光色を得,黄色 LEDとそれ以外の1つ又は2つのLEDから発せられる光が混合して 発光色を得るとの構成をとることによって,電圧が低下した状態において\nも発色のバランスを保つことができるもの(本件特許の明細書の段落【0 007】,【0009】,【0010】,【0013】〜【0017】,【002 1】,【0033】,【0034】)であり,このような発明の効果は,甲1発 明及び甲2に記載された技術事項から予測できるものとはいえないから,\nこの点からしても,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用すること によって本件発明1を容易に想到することができたとは認められない。

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令和3(行ケ)10036  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年10月6日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、30類に「菓子」について、商標「スイーツパーティー」と「スイートパーティー」が非類似(11号)と判断し、無効理由無しとした審決を維持しました。

ア 国語辞典の記載
本件商標と引用商標(スイートパーティー)は,「スイーツ」という部分 と「スイート」という部分が異なる。 国語辞典には,「スイーツ」という語については,「【sweets】甘いもの。 ケーキ・菓子など。」を意味するものと記載されている(広辞苑第7版,乙 2)。 他方,「スイート」という語については,「【sweet】1)甘いこと,甘口。 2)甘美なこと。快いこと。気持ちよいさま。」を意味するものと記載され, 「スイート」という語を用いた語として,「−・コーン【〜corn】トウモロ コシの一品種。糖分を多く含む。−・スポット【〜spot】ゴルフのクラブ・ フェースやテニスのラケットなどの,球を最も効果的に打つことができる 点。−・ハート【〜heart】恋人(特に女性)。愛人。−・ピー【〜pea】マ メ科の蔓性観賞用一年草。シチリア島原産で,江戸時代末に渡来。葉はエ ンドウに似,先端は巻ひげとなる。桃色・白色・紫色・斑などの蝶形花を つけ,花後に莢を生じる。園芸品種が多い。ジャコウエンドウ。ジャコウ レンリソウ。−・ホーム【〜home】(特に新婚の)楽しい家庭。愛の巣。−・ ポテト【〜potato】1)サツマイモのこと。2)サツマイモで作った洋風菓子。 サツマイモを蒸して裏漉しし,砂糖・卵黄・バターなどを加えて練り,オ ーブンで焼く。」が挙げられている(広辞苑第7版,乙2)。 上記の国語辞典の記載によれば,「スイーツ」と「スイート」は別の語と して一般的に認識されており,また,「スイート」という語は,「1)甘いこ と,甘口。」の他に,「2)甘美なこと。快いこと。気持ちよいさま。」などの 意味を有し,「スイートハート」,「スイートホーム」など,「甘いこと」以 外の,「愛しい」,「楽しい」の意味で用いられる例があることが一般的に認 識されているものと認められる。
イ 実際の使用例
(ア) 「スイーツ」という語の使用例
インターネット上で検索結果の多い「スイーツ」という語を含む用語 の例として「人気スイーツ」があり(検索結果:約 2,060,000 件,乙1 2),「絶対おすすめ!人気スイーツベスト 20!」,「人気スイーツをお取 り寄せ」のように使用されている(乙13,14)。また,「スイーツレ シピ」という用語(検索結果:約 1,780,000 件,乙15)は,「お手軽ス イーツレシピをご紹介」,「『本格チョコ』のスイーツレシピ特集」のよう に使用されている(乙16,17)。「スイーツ食べ放題」(検索結果:約 1,440,000 件,乙18)という用語は,「種類以上のスイーツ食べ放 題!」,「平日限定スイーツ食べ放題プラン」のように使用されている(乙 19,20)。これらの用語において,「スイーツ」という語は,「ケーキ・ 菓子など」の意味で使用されている。
(イ) 「スイート」という語の使用例
「スイート」という語が食料品との関係で使用される例としては,「ス イートワイン」,「スイートチョコレート」,「スイートチリソース」など\nがあり(乙21〜乙23),「スイート」という語は「甘い,甘口」の意 味で使用されている。
(ウ) 「スイーツ」という語と「スイート」という語が同一作成者のウェ ブページで使い分けられている例
・・・
(エ) 「スイーツパーティー」という語の使用例
・・・
(キ) 以上によれば,実際の使用例において,「スイーツ」という語と「ス イート」という語は,それらが他の語と結びつく場合も含めて区別して 使用されており,「スイーツ」という語は,「甘いもの,ケーキ・菓子な ど」の意味で使用され,他方,「スイート」という語は,「甘い,甘口」 の他,「甘美な,快い,愛しい,楽しい」という意味で用いられているも のと認められる。そして,「スイーツパーティー」という語は,スイーツ (甘いもの,ケーキ,菓子など)が提供され,それらを食べるパーティ ーの意味で用いられている。
ウ そうすると,本件商標は,「スイーツ」と「パーティー」を二段書きにし たものであるから,「スイーツ」(甘いもの,ケーキ・菓子など)という名 詞が強調された上で,その全体から,「スイーツパーティー」という語とし て認識され,スイーツ(甘いもの,ケーキ,菓子など)が提供され,それ らを食べるパーティーという観念を生じるものと認められる。 他方,引用商標は,「スイートパーティー」又は「SWEET PART Y」という語として認識され形容詞である「スイート」「SWEET」が必 然的に名詞の「パーティー」を修飾する関係にあるから「スイート」なパ ーティーを意味し,「スイート」という語の意味のうち,パーティーを修飾 する場合に当てはまる意味は,「甘美な,快い,愛しい,楽しい」という意 味であるから,「甘美な,快い,愛しい,楽しいパーティー」という観念を 生じるものと認められる。
・・・・
(5) 類否の判断
以上のとおり,本件商標と引用商標は,外観上明確に区別できるものであ ること,本件商標と引用商標は観念において明確な差異があること,本件商 標と引用商標とは称呼において類似しているものの,その類似性の程度は高 くないことを考慮すると,本件商標と引用商標は,外観,観念,称呼等によ って取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察する場合に は,同一又は類似の商品に使用された場合に,その商品の出所につき誤認混 同を生ずるおそれはないものと認められる。 したがって,本件商標を引用商標の類似商標と解することはできないとい うべきである。
3 原告の主張の検討
(1)ア 原告は,「スイーツパーティー」という語が一般的になればなるほど「ス イートパーティー」,「SWEET PARTY」は,「スイーツパーティー」 と同じような,「甘いものを対象としたパーティー」という類似する観念で 捉えられ,観念としても非常に近い,紛らわしいものとして認識されるお それは十分に生じる旨主張する(前記第3,2(3)イ(ア))。 しかし,前記2(3)のとおり,「スイーツ」という語と「スイート」という 語は,区別して観念されており,それらが他の語と結びつく場合も含めて 区別して使用されているから,「スイーツパーティー」という語が一般的に なっても,「スイートパーティー」,「SWEET PARTY」から類似す る観念が生ずるとはいえず,原告の上記主張は,採用することができない。
イ(ア) 原告は,「スイーツパーティー」と「スイートパーティー」とが混同 を生じるか否かが問題であって,「スイーツ」という語と「スイート」と いう語の違いを強調して商標の類否を判断することは重大な誤りである 旨主張する(前記第3,2(3)イ(イ))。 しかし,前記のとおり,本件商標は,「スイーツ」と「パーティー」を 二段書きにしたものであり,しかも名詞と名詞が結合した商標であるか ら,上段の「スイーツ」を分離して観察することが可能であること,「ス\nイーツ」,「スイート」及び「パーティー」はそれぞれ独立した意味のあ る単語であって,「スイーツパーティー」と「スイートパーティー」は, 「パーティー」の部分において共通し,「スイーツ」,「スイート」は,「パ ーティー」という語を修飾して,どのようなパーティーであるかを示す 部分であるから,「スイーツパーティー」と「スイートパーティー」とが 混同を生じるか否かを明らかにする上で,「スイーツ」という語と「スイ ート」という語の観念等の違いの有無を検討することは必要である。
(イ) また,原告は,「スイート」という語が「すてきな」,「楽しい」,「か わいらしい」といった意味で使用されている例は乙27以外にない旨, 食品,とりわけ菓子について「スイート」という語が用いられた場合, 味覚を表す「甘い」という意味以外の理解をし,わざわざ「甘美な」,「快\nい」という意味を認識する者はいない旨主張する(前記第3,2(3)イ(イ))。 しかし,「スイート」という語が,甘美な,愛しい,楽しいという意味 で使用された例は,乙27(前記2(3)イ(カ))の他,乙8(前記2(3)イ(ウ) d),乙24,乙26(前記2(3)イ(エ)a),乙65(前記2(3)イ(オ))に ある。また,食品,とりわけ菓子について用いられる場合でも,「スイー ト」という語により修飾される語が味覚を生ずるものでない場合は,「ス イート」という語は,甘美な,愛しい,楽しいの意味で使用されるもの と推認され,前記2(3)イ(ウ)dのとおり,菓子について,「スイートなビ ジュアルが本命チョコにお勧め!」(乙8〔2頁〕)として,「スイート」 という語が,甘美な,愛しい,楽しいの意味で用いられている例もある。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
(2)ア 原告は,本件商標及び引用商標の指定商品の需要者は,幼児,老人を含 む大衆であり,本件商標と引用商標のカタカナ表記(外観)及び称呼は,\n同行音の近似音とされる「ツ」と「ト」の一字(一音)が相違するだけで あり,本件商標を英語表記して引用商標の英語表\記と比較しても,「S」一 文字の有無が相違するだけであるから,需要者の通常の注意力を基準とす ると,本件商標と引用商標は相紛らわしく,混同のおそれがあると主張す る(前記第3,2(4)ア)。
しかし,「スイート」,「パーティー」という語は,子供を含めて一般に広 く知られた平易な語であると認められ(弁論の全趣旨),「スイーツ」,「ス イーツパーティー」という語も,子供を対象とするゲーム,玩具,絵本に ついて用いられていることからすれば(乙62〜乙64),広く知られた平 易な語であると認められるから,難解で聞き慣れない語の中の一字(一音) が相違する場合と異なり,本件商標と引用商標は,外観及び称呼において, 「ツ」と「ト」の一字(一音)が相違するだけであっても,その区別は可 能であるものと認められる。そして,本件商標と引用商標とで観念が明確\nに異なることは,前記2(3)ウのとおりである。したがって,需要者を考慮 しても,本件商標と引用商標は混同のおそれがあるとは認められず,原告 の上記主張は,採用することができない。
イ 原告は,菓子等を製造販売する訴外会社の申し入れにより商標使用許諾\n契約を締結し,訴外会社から指摘されて本件無効審判を請求したことから, 本件商標と引用商標とが相紛らわしいことは,菓子等の製造販売業者にお いて認識されていたと主張する(前記第3,2(4)イ)。 しかし,原告と訴外会社との一契約をもって,菓子等の製造業者すべて における認識を判断することは相当ではなく,また,原告が訴外会社と商 標使用許諾契約を締結するに至った経緯や訴外会社の意図は明らかでない から,菓子等の製造販売業者において,一般に,引用商標と「スイーツパ ーティー」という商品名が商標として類似していると認識していたと認め るに足りないというべきである。

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令和2(行ケ)10123  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年10月7日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決に対して、知財高裁は一致点の認定誤りを理由として審決を取り消しました。

(3) 本願発明の「制御装置」と引用発明の「短絡制御回路」の対比
ア(ア) 本願発明の制御装置は,「燃料電池スタックの水和レベルを増加させる再 水和間隔を提供するために」,「燃料電池スタックを通る空気流動を調節するように 構成される」ものである。\n
(イ) 本願発明の特許請求の範囲の請求項1の文言や本願発明が燃料電池に係るも のであることのほか,前記1(2)の本願発明の概要からして,上記のうち「燃料電池 スタックの水和レベルを増加させる再水和間隔を提供するために」については,燃 料電池の良好な動作のために,膜/電極接合体(MEA)が好適に水和された状態 とすべく,MEA内の水分量を積極的に増加させるという目的をいうものと解され る。この点,本願明細書の段落【0036】及び【0037】には,「再水和間隔」 が,燃料電池カソードにおいて過剰な水を産生して燃料電池における膜の水分量を\n増加させる短い期間であって,燃料電池上の外部電気負荷及び温度などのその環境 動作条件に基づき有効であるレベルを超えて,水和レベルを増加させるために,燃 料電池アセンブリがその動作環境を能動的に制御する期間である旨が記載されてい\nるところである。 そして,「燃料電池スタックを通る空気流動を調節する」については,上記目的の ために,膜の含水量の低下等をもたらし得る空気流動を調節することをいうものと 解される。
イ 引用発明の短絡制御回路は,「燃料電池の負の水和降下現象を防止するため に」,「燃料電池への燃料ガスの供給を停止する」ものであるところ,このうち「負 の水和降下現象」の意味内容については,前記2(3)イで検討したとおりである。そ して,その意味内容を踏まえると,「負の水和降下現象を防止する」とは,基本的に, MEAにおける水和の損失が,熱の発生につながり,それが薄膜電極アセンブリの 乾燥につながるといった状態を停止させる,又は抑制することをいうものと解され る。 そして,「燃料電池への燃料ガスの供給を停止する」については,上記目的のため に,燃料電池の発熱につながる燃料ガスの供給を停止することをいうものと解され る。
ウ(ア) 上記ア及びイによると,本願発明の「制御装置」と引用発明の「短絡制御 回路」は,MEA内の水分量を積極的に増加させることを目的とするか,MEAに おける水和の損失等を停止させる,又は抑制することを目的とするにとどまるかと いった点において異なるとともに,燃料電池のカソード側で水分の低下につながり\n得る空気流動を調節するか,アノード側で熱の発生につながる燃料ガスの供給を停 止するかといった点においても異なっている。
(イ) もっとも,上記のうち後者の点については,本件審決は,「空気流動を調節す る」ことと「燃料ガスの供給を停止する」ことを「気体流動を調節する」とした上 で,相違点2を認定しており,その認定判断に誤りがあるとはいえない。
エ 他方で,本願発明の制御装置と引用発明の短絡制御回路について,「所定条件 で,かつ前記燃料電池システム上の電流需要とは独立して」,気体流動を調節するよ うに構成される「制御装置」であるという点で一致するとした本件審決の判断に誤\nりがあるとは認められない。
オ 以上によると,本願発明の制御装置と引用発明の短絡制御回路が,「水和レベ ルを増加させる再水和間隔を提供するために」という点で一致しているとした点に おいて,本件審決には誤りがある。
カ 原告は,本願発明の制御装置が短絡制御を行うものではない旨を主張するが, 短絡制御の点は一致点として認定されておらず,原告の上記主張は当を得ないもの である。また,原告は,引用発明における燃料ガスの供給の停止が「流動を調節す る」に当たらないと主張するが,甲3の段落【0023】には,燃料電池10への 燃料ガス105の供給を停止するような位置にバルブ104をすると同時に,電気 的スイッチ124を閉鎖電気状態にする旨の記載がある一方,本願明細書の段落【0 010】には空気流動をゼロまで減少させることについて記載があり,これらの記 載も踏まえると,両者は,対象となる気体以外の点で実質的に相違するものとは認 められず,いずれも気体流動の調整を行うとの概念の範囲で一致するものといえる。 さらに,原告は,「所定条件」の内容が本願発明と引用発明とで全く異なる旨を主張 するが,本件審決が認定した相違点1及び2のほか,前記ウ(ア)で指摘した本願発明 の制御装置と引用発明の短絡制御回路の目的の相違があることに加え,別途,それ らの動作に係る所定条件に関して相違点を認定すべきものとは認められない。
キ(ア) 被告は,燃料電池においてイオン交換膜の含水量が減少する一般的な原因 について主張した上で,引用発明においても,薄膜電極アセンブリの水和レベルが 増加することは明らかであると主張する。 しかし,被告の上記の主張のうち,単に薄膜電極アセンブリの含水量の減少量が 小さくなることをいうにすぎないもの(含水量の積極的な増加を意図した制御を行 っているものではない。)は,前記ウ(ア)の判断を左右するものではない。この点, 被告は,燃料電池内の発熱が収まることで,それまでの発電で生じた水や空気中に 含まれる水蒸気によって水和レベルが増加することも主張するが,当該主張を裏付 ける証拠や,そのような技術常識を直ちに認めるに足りる証拠は見当たらない。
(イ) 被告は,本願発明における水和レベルの増加のメカニズムが明確でなく,本 願の実施例で実行される制御で水和レベルが増加するのであれば,引用発明でも同 様であるという旨を主張するが,本願発明における「燃料電池スタックの水和レベ ルを増加させる再水和間隔を提供するために」の意味内容については,前記ア(イ)で 認定判断したとおりであって,そのメカニズムが明確か否かという点は,直ちに本 願発明と引用発明の一致点及び相違点の判断に影響を与えるものではない。
(4) まとめ
ア 以上によると,本願発明と引用発明は,次の一致点で一致し,本件審決が認 定した相違点1及び2のほか,次の相違点3及び4で相違するというべきである。
(一致点)
「燃料電池システムであって,
第1の燃料電池スタックと,
前記第1の燃料電池スタックと直列の,第2の燃料電池スタックと,
前記第1の燃料電池スタックと並列の,第1の電子部品と,
前記第1の燃料電池スタックの水和状態を調整するために,所定条件で,かつ前記燃料電池システム上の電流需要とは独立して,前記第1の燃料電池スタックを通る気体流動を調節するように構成される,制御装置と,
を備える,前記燃料電池システム。」
(相違点1)
所定条件に関し,本願発明は,「定期的に」であるのに対し,引用発明は,「燃料 電池の出力電圧が約0.4Vより低くなる場合」である点。
(相違点2)
気体流動の調節に関し,本願発明は,気体は空気であるのに対し,引用発明は, 気体は燃料ガスである点。
(相違点3)
第1の電子部品に関し,本願発明は,電子部品は整流器であるのに対し,引用発 明は,電子部品は電界効果トランジスタである点。
(相違点4)
燃料電池スタックの水和状態を調整するために関し,本願発明は,水和レベルを 増加させる再水和間隔を提供するためであるのに対し,引用発明は,負の水和降下 現象を防止するためである点。
イ その上で,後記5の点も踏まえると,少なくとも相違点4の看過は,本件審 決の取消事由に当たるというべきである。
5 容易想到性の判断について
(1) 相違点1,2及び4は,いずれも本願発明の「制御装置」又は引用発明の「短 絡制御回路」に関するもので,技術的構成として相互に関連するものといえるから,\n以下,一括して検討する。
(2)ア 前記4(3)イからすると,引用発明が「燃料電池の出力電圧が0.4Vよ り低くなる場合」に「燃料ガス」を調節する目的は,主として熱の発生を抑えるこ とで「負の水和降下現象を防止する」ためであり,これは,甲3にいう「第1の動 作条件」(甲3の段落【0024】)に係るものである。 他方で,甲3には,「第2の動作条件」として,燃料電池の特性パラメータを回復 させる構成が記載されている(甲3の段落【0025】〜【0027】)。\nこのように,二つの条件に係る構成があることに加え,甲3の段落【0001】,\n【0009】,【0023】,【0029】及び【0030】の記載並びに【図4】に 照らし,上記「第1の動作条件」が,基本的に,「燃料電池が故障した際」(同【0 001】。【図4】にいう「欠陥は重大」である場合である。)に係るものとみられる ことからすると,相違点1,2及び4に係る引用発明の構成は,燃料電池の故障を\n示すものとみ得る状態を具体的に検知し,負の水和降下現象を防止するために,燃 料ガスの供給を停止して熱の発生を抑えるためのものと解するのが相当である。 イ 上記のような燃料電池の故障を示すものとみ得る状態を具体的に検知したと の引用発明に係る「燃料電池の出力電圧が0.4Vより低くなる場合」の動作につ いて,実際の出力が閾値以上に変化しているか否かにかかわらず,これを「定期的 に」行うことを想到することが,当業者において容易であるとはいい難いというべ きである。甲3に,引用発明に係る燃料ガスの供給の停止を定期的に行うこととす る動機付けや示唆があるとは認められない。甲3の段落【0024】には,第1の 動作条件について,「約0.4Vより低い範囲に低下する場合」以外の記載があるが, そこで挙げられている他の特性パラメータも,燃料電池の故障を示すものとみ得る 状態の検知の範疇に止まるものである。燃料電池の保湿レベルを周期的に増加させ ることに係る周知の事項(甲4[前記3(1)],甲5[前記3(2)])を参照しても, 上記判断は左右されない。 上記判断に反する被告の主張は,いずれも採用することができない。
ウ また,引用発明が,上記アのように,主として熱の発生を抑えることを目的 としたものであることを考慮すると,「気体流動を調節する」ことについて,引用発 明から,燃料電池の乾燥につながり得る一方で冷却効果をも有する空気の流動(本 願明細書の段落【0006】参照)を停止することを,当業者が容易に想到し得た ということも困難である。甲3に,空気の流動を調節することの動機付けや示唆が あるとは認められない。 上記判断に反する被告の主張は,いずれも採用することができない。
(3) 以上によると,相違点1,2及び4に係る本願発明の構成が引用発明に基づ\nいて容易に想到できたものとは認められないから,相違点1及び2について容易想 到と判断した点において,本件審決には誤りがあるというべきである。

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令和3(行ケ)10071  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年10月14日  知的財産高等裁判所

 無効審判の審決取消訴訟です。争点は、商標「pum’s」がpumaと類似(11号)または混同するか(15号)です。指定商品は18類「折り畳み式傘,晴雨兼用傘,ビーチパラソル,日傘」及び第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」です。知財高裁は類似・混同しないとした審決を維持しました。\n

(1) 本件商標と引用商標の類否判断について
ア 外観
(ア) 本件商標は,「pum’s」の文字を太字の斜体の書体で表し,末尾\nの「s」の文字の下端を語頭の「p」の文字の下部まで横一直線に延伸 し,下線のように表されて構\成されている。原告は,本件商標の1文字 目と4文字目は,大文字「P」「S」と認識されると主張するが,1文 字目の左側の縦棒が下に突き出しているのは小文字であるからなのは明 らかであり,4文字目も上端が他の小文字と同じ高さに位置しているか ら,大文字とは認識されない。また,原告は,本件商標の2文字目は, 右側の縦棒がないため,大文字「U」と捉えられると主張するが,2文 字目は他の小文字と同じ大きさであって,直ちに採用できない。 一方,引用商標は,「PUmA」の文字を縦線を太く垂直に,横線を 細く描く書体で表し,各文字は,小文字である「m」も含めて,同じ高\nさで構成されている。\n両者は,語頭を含めた「pum(PUm)」の文字を共通にするが, 末尾において本件商標が小文字の「s」であるのに引用商標が大文字の 「A」であるという文字の相違,アポストロフィの有無,下線のように 表されたものの有無,書体が斜体であるか否か及び文字の横線が細いか\n否かといった点において明らかに異なり,外観においては,相紛れるお それはない。
(イ) 原告は,第3の1(1)ア(ア)cのとおり,るる主張するが,前記(ア)で 認定したとおり,本件商標と引用商標の外観上の相違は明白であり,仮 に,原告が主張する個別の点につき一定の類似が認められるとしても, そのことから,外観において相紛れるおそれがあるということはできな い。 なお,念のために判断すれば,上記c(a)については,引用商標は文字 の横線が細いことが明確であるのに対し,本件商標では縦線と横線の太 さの違いは子細に見なければ看取できず,逆に,本件商標では角部の丸 みは明確であるが,引用商標では明らかでないし,同(b)については,本 件商標が斜体であるのに対し,引用商標は各文字が垂直かつ同じ高さで, 長方形の範囲に収まって全体として整然とした印象を与えるものであっ て,両者の印象が異なることは明らかであるし,同(c)については,いず れにしても本件商標における「s」の文字の下端の延伸された部分が引 用商標との相違点として着目されないということにはならないし,同? については,相違する最後の「A」と「S」の文字が相似た文字に看取 される場合があるとは認め難いし,同(e)については,特段の意味内容を 想起させない「pum」の欧文字部分が本件商標の要部であるとは到底 いえず,原告の各主張は個別にみても採用し得ない。 そうすると,本件商標と引用商標の外観は大きく異なるものであって, 前記1の引用商標の周知著名性を勘案しても,両者の外観が類似すると の原告の主張は採用できない。
イ 称呼
(ア) 本件商標からは「パムズ」,「パムス」,「プムズ」又は「プムス」 の称呼が生じるのに対し,引用商標からは「プーマ」又は「ピューマ」 の称呼が生じ,語頭の「pu」ないし「PU」を「プ」と読んだ場合に 音を共通にする場合があるとしても,いずれも3音という短い音数にお いては,2音目及び3音目における音の相違,特に,3音目の「ズ」な いし「ス」(本件商標)と「マ」(引用商標)の相違は大きいものであ って,相紛れるおそれはない。
(イ) 原告は,前記第3の1(1)ア(イ)のとおり,本件審決が,本件商標の要 部である「PUm」の欧文字部分から生ずる「プム」の称呼と引用商標 から生ずる称呼とを対比していないと主張するが,本件商標における 「pum」の欧文字部分が要部であるという主張が到底採用できないこ とは前記アのとおりである上,仮に同部分を本件商標の要部とし,これ を「プム」と称呼し,引用商標を「プーマ」と称呼したとしても,短音 と長音の違い,「ム」と「マ」の違いは,短い標章の中では大きな差異 として認識されるものというべきである。
ウ 観念
本件商標が造語であることから,特定の観念を生じないのに対し,引用 商標が周知著名であることから,「原告のブランド」との観念を生じ,両 者は明確に区別することができ,相紛れるおそれがない。
エ その他
原告は,前記第3の1(1)ア(エ)のとおり,本件商標と引用商標の需要者 である一般消費者は,衣類や靴等に商標をワンポイントマークとして小さ く表示された場合,些細な相違点に気付かないことも多いと主張する。\nしかし,商標が小さく表示された場合をことさら取り上げることの当否\nは措くとしても,そもそも本件商標と引用商標は全体的な印象においても 明らかに異なることは前記アのとおりであり,小さく表示された場合でも,\nその相違は明白であるから,原告の主張は採用できない。 また,原告は,前記第3の1(1)ア(オ)のとおり,本件消費者調査の結果を 理由に,本件商標と引用商標の類似性を主張する。 しかし,本件消費者調査は,本件商標の登録査定時よりも後に実施され たものであること,本件商標について助成想起(本件商標の指定商品〔ス ポーツ関連用品〕の出所標識という前提〔ヒント〕を与えて自由回答形式 で聴取するもの)による質問について原告を連想した15%という数値は 大きいとはいえない上,スポーツ関連用品というヒントを与えられれば, 多少とも本件商標と共通点のあるブランドを想起しようと努めると考え られることを考慮すると,この数値すらそのまま受け取ることはできない こと,本件商標と引用商標を並べた場合に両商標が類似するという回答も, このような限界のある質問の後にされたものであることを考慮すれば,本 件商標と引用商標の類似性を裏付ける資料とはいえない。したがって,こ の点に係る原告の主張も採用し得ない。
(2) 小括
以上によれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれに おいても相紛れるおそれがなく,類似しないものと認められる。 そうすると,本件商標の指定商品と同一又は類似する商品が引用商標7, 8及び10の指定商品中に含まれているとしても,本件商標は,商標法4条 1項11号に該当せず,本件審決の判断に誤りはない。
3 取消事由2(本件商標の商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)につい て
(1) 混同のおそれについて
「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程\n度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度,当該商標の指定商品等と他\n人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並 びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし,当該 商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準 として,総合的に判断すべきである。 これを本件につき検討するに,前記2において判断したとおり,本件商標 と引用商標とは,引用商標の周知著名性を勘案しても,外観,称呼及び観念 のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,その類似 性は極めて低いというべきであるから,本件商標の指定商品には「運動用特 殊衣服,運動用特殊靴」が含まれており,原告の業務に係る商品との間の関 連性や,取引者や需要者の共通性が高く,また,そのような商品はいずれも 注意力が高いとはいえない一般消費者も需要者とするものであることを考慮 しても,本件商標に接する取引者及び需要者が,原告又は引用商標を連想又 は想起することはないというべきである。これに反する原告の主張は,前記 2において判断したのと同様の理由によりいずれも採用し得ない。そうする と,本件商標は,これをその指定商品に使用をしても,その取引者及び需要 者をして,当該商品が原告の商品に係るものであると誤信させるおそれがあ るものとはいえない。

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令和3(ネ)10040  差止請求権不存在確認請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年10月14日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、均等侵害を認めた大阪地裁の判断を知財高裁も支持しました。

 控訴人は,前記第2の3(2)エ(ア)のとおり,本件特許の出願過程の経 緯から客観的,外形的に見るならば,物又は方法の発明として特許出願 している被控訴人が,その補正として「逐次又は一斉に表示」という構\ 成を削除したのであるから,画像選択手段を含むコンピューターにより 出力されるという構成においても「逐次又は一斉に表\示」という構成を\n意識的に除外したと主張する。
しかし,当該出願経過によれば,被控訴人は,明確性要件違反の拒絶 理由(甲8)に対し,本件補正により,コンピューターを構成に含む学\n習用具と記載し,また,被控訴人が甲第10号証と併せて提出した意見 書(甲9)3頁の「(4)記載不備の拒絶への対処」では「作業の主体を 「手段」とし,人が行う作業を示す部分を削除致しました。」としている のであり,他の部分も削除したことを外形的に示す説明はない。 また,「一の組画の画像データを選択する画像選択手段」との構成を付\n加した点について,客観的には,組画を構成する複数の画のうち任意の\n1つの画像データ(ユニット画)を選択すること(例えば第一の関連画 のみを選択すること)が意識的に除外されているとはいい得るとしても, 二以上の組画の画像データを選択することが意識的に除外されたとは いえない。また,「逐次」の文言が用いられている本件明細書【0037】, 【0038】及び【0052】 において,「逐次」及び「一斉」の両方 が用いられているのは特定の組画を構成するユニット画について記載\nしている【0038】に「特定の組画を構成するユニット画は,全て一\n斉に表示してもよいが,前述のように逐次表\示するほうが,学習効果が 増して好ましい。」とあるのみであるから,本件補正前の「それぞれの前 記記憶対象に対応する前記組画を逐次又は一斉に表示して前記記憶対\n象を記憶する」との記載は,特定の組画を構成するユニット画を逐次又\nは一斉に表示することを指していると解するべきであり,「逐次又は一\n斉に表示」という構\成を削除したからといって,複数の組画を選択する 構成を除外する意図であったと認めることはできない。\n
さらに,被控訴人が,上記意見書で進歩性に関して主張したところは, 本件発明が,1)対応する語句が存在する原画の形態を,その形態に対応 する語句と結びつけて記憶することを目的すること,2)関連画の輪郭が, 原画に類似等しており,一定の意味内容を有することから,学習対象者 が,意味内容と原画との関連付けにより,記憶することに苦痛を感じる ことなく楽しみを感じながら,原画を記憶することができること,3)関 連画及び原画に対応する語句の音声データを再生し,関連画及び原画の 表示は対応する語句の再生と同期して行うこと,4)原画又は原画に対応 する語句を思い出すことを目的とするため,関連画の表示及び関連画に\n対応する語句の再生を行った後に,原画の表示及び原画に対応する語句\nの再生を行うこと,5)第一の関連画,第二の関連画,及び原画の順に表\n示し,しかも,前記第一の関連画,前記第二の関連画,及び前記原画を, 対応する語句の再生と同期して表示することにより,4通りのルートに\nよって原画及び対応する語句を思い出すことができることを挙げるもの であるが(甲9),これらの特徴は,複数の組画を選択する構成と矛盾す\nるものではなく,これを意識的に除外する旨を表示したものとはいえな\nい。
(イ) 控訴人は,前記第2の3(2)エ(イ)のとおり,被控訴人が補正において, 構成要件B2の画像選択手段の構\成を加えた点について,複数の組画を 選択する構成を除外しない意図であるならば「一又は複数の組画」や単\nに「組画」等といった記載にすることは極めて容易であり,本件特許の 出願経過を客観的,外形的に見るならば,「一の組画の画像データを選択 する画像選択手段」を付加したことは,複数の組画を選択する構成を意\n識的に除外したことになると主張する。 しかし,仮に,他により容易な記載方法があったとしても,出願人が, 補正時に,これを特許請求の範囲に記載しなかったからといって,それ だけでは,第三者に,対象製品等が特許請求の範囲から除外されるとの 信頼を生じさせるとはいえない。客観的にみて,「一の組画の画像データ を選択する」との記載が,組画を構成する画が維持された状態で選択す\nる限りにおいては,二以上の組画の画像データを選択することを意識的 に除外するものとまでは認められないことは,前記(ア)のとおりである。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆大阪地判 平成31年(ワ)第3273号)

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令和3(行ケ)10032    商標権  行政訴訟 令和3年10月6日  知的財産高等裁判所

 「ヒルドプレミアム」に対して、先願「ヒルドイド」の商標権者が無効審判を請求しました(4条1項11号、15号)。審決は無効理由無しと判断し、知財高裁も同様の判断をしました。「ヒルドイド」は、医薬品として周知著名だとしても、化粧品としてはそこまではいえないというものです。

 上記事実(ア)ないし(エ)によれば,本件商標の登録出願当時,原告使用商標 は,処方薬としての原告薬剤を表示する商標として,処方薬の需要者であ\nる皮膚科の医師等の医療関係者の間において,広く知られていたものと認 められる。これに対し,化粧品としての用途が,雑誌記事に取り上げられ るなどして一般に知られるようになったのは,証拠上は平成26年以降で ある上(事実(オ)),その紹介記事の内容(別紙2)をみても,「知る人ぞ 知る」という取り上げ方をされており,その時点において既に周知著名で あったとはいえない。そして,これらの記事においては原告薬剤は処方薬 であることへの注意喚起がなされていること(事実(オ)),原告が医師等に 対して美容目的での処方をしないように啓発していること(事実(カ))も踏 まえると,本件商標の登録出願(平成30年1月29日)の時点において, 化粧品の需要者である一般消費者の間で,原告使用商標が周知著名であっ たとまではいえない。
また,事実(キ)ないし(ケ)のとおり,これらの記事が出た後に,複数の事業 者からヘパリン類似物質含有商品が相次いで販売された事実,その広報宣 伝において原告薬剤を引き合いに出すものや,名称に「ヒル」又は「ヒル ド」を含むものが多くみられる事実は,化粧品の分野におけるヘパリン類 似物質含有商品という市場自体が,原告薬剤の美容目的への流用という事 態によって成立したという経緯を反映するものではあるが(例えば甲26 の1(2018(平成30)年12月6日付け「日経doors」記事)の 「『ヒルドイド』で知られる医療用保湿剤の成分,ヘパリン類似物質を配 合した市販薬とコスメが,18年秋に相次いで登場した。背景には,化粧 品代わりに求める女性が増え,健康保険財政を圧迫するまでになったとい う事情がある。」との記載),そのような経緯があるからといって,医療 用医薬品である原告薬剤の名称としての原告使用商標が,化粧品の分野に おいて周知著名性を獲得していたことになるものではない。
なお,本件アンケートにおいてヒルドイドの「認知度」が5割ないし6 割にのぼっていた(事実(コ))としても,これらの「認知度」は,皮膚の乾 燥に起因すると考えられるトラブルを抱えて何らかの皮膚薬を最近になっ て使用していた者の間でのものであるから(事実(コ)のa),原告薬剤が処 方薬の分野で5割以上の高い市場占有率を得ていること(事実(ウ))に照ら して,本件アンケートにおける「認知度」が高くなることはある程度必然 的であり,化粧品の分野における一般消費者の間での周知著名性を明らか にするものではない。
ウ 原告の主張について
原告は,上記アの各事実に基づき,原告使用商標が化粧品の分野におい ても本件商標の登録出願当時に周知著名性を獲得していた旨主張するが, これらの事実を前提としても周知著名性を認定するに足りないことは,上 記イで説示したとおりであるから,原告の主張は採用することができない。 また,原告は,ヘパリン類似物質を含有する一般用医薬品「ヒルマイル ド」につき,原告薬剤を想起している需要者が多数いること(別紙4)や, 「あのヒルドイドが店頭で新発売!」といううたい文句で販売されている ことからも,原告使用商標が広く知られている実態を見て取れる旨主張す るが,そもそも「ヒルマイルド」は被告の販売する商品ではないばかりか, 「ヒルマイルド」は「ヒル」の文字の後に「イ」の文字を含み,「ド」の 文字で終始する点において,原告使用商標との類似性は本件商標よりも更 に高いから需要者に原告薬剤を想起させたとも考えられるところであるし, 「あのヒルドイドが店頭で新発売」という文言は,医療用医薬品であって 店頭では販売されない原告薬剤の代わりとなる商品が発売されたという趣 旨に理解されるから,原告の主張は,上記イの判断を左右しない。

◆判決本文

関連事件です。こちらは医薬品について周知著名と認定されています。

◆令和3(行ケ)10028

◆令和3(行ケ)10029

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令和2(行ケ)10103 特許権  行政訴訟 令和3年10月6日  知的財産高等裁判所

 内在する課題が共通するとして進歩性無しとした審決が、課題の認定が誤っているとして審決を取り消しました。

 ウ 相違点1に係る本件発明1の構成のうちの「黄色発光ダイオード」及びその「発光色」の容易想到性\n
前記(2)のとおり,甲1発明と甲2に記載された技術事項は,技術分野が 完全に一致しているとまではいえず,近接しているにとどまるから,甲1 発明に甲2に記載された技術事項を採用して本件発明1を想到すること が容易であるというためには,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採 用するについて,相応の動機付けが必要であるというべきである。
本件審決は,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用する動機付け があり,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用して本件発明1を容 易に想到することができたと判断する前提として,甲1発明に,「イエロー」 とされる黄色の発色自体に問題が内在しているという課題があり(前記(3) ア(ア)),甲1発明に,演色性を向上させるという,甲2と共通の課題があ ると認定した(前記(3)ア(イ),(ウ))。
しかし,前記ア(ア)のとおり,甲1発 明に,「イエロー」とされる黄色の発色自体に問題が内在しているという課 題があるとする本件審決の認定は誤りであるし,また,本件審決が甲1発 明の課題に関して認定する「演色性」(本件審決が第6,2,2−1(2)(2 −1)ア(ウ)〔本件審決48頁〕で,甲10に記載されているように周知の 課題といえると認定する事項を含む。)は,甲2に記載された技術事項とし て認定された「演色性」,すなわち,照明された物体の色が自然光で見た場 合に近いか否かという,一般的な意味での「演色性」とは異なる(前記ア (イ))。
そうすると,本件審決は,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用 する動機を基礎づける甲1発明の課題の認定を誤っているものであり,ま た,甲2に記載された技術事項の内容(前記(1)),甲1発明と甲2に記載さ れた技術事項の技術分野相互の関係(前記(2))を考慮すると,甲1発明に は,甲2に記載された技術事項と共通する課題があるとは認められず,そ のため,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用する動機付けがある とは認められない。 したがって,甲1発明に甲2に記載された技術事項及び周知の課題(甲 10)を採用して,黄色発光ダイオードを設けることを容易に想到するこ とができたとは認められず,これを容易に想到することができたとする本 件審決の判断(前記(3)ウ(ア))は誤りである。 本件審決は,甲1発明に甲2に記載された技術事項及び周知の課題(甲 10)を採用して,黄色発光ダイオードを設けることを容易に想到するこ とができた(前記(3)ウ(ア))という判断を前提として,甲1発明に甲2に記 載された技術事項及び周知の課題(甲10)を採用し,本件発明1の構成\nのうちの「黄色発光ダイオード」及びその「発光色」を容易に想到するこ とができた(本件審決第6,2,2−1(2)(2−1)イ(ア)〔本件審決48 〜50頁〕)と判断するところ,その前提とする判断が誤っているから,本 件発明1の構成のうちの「黄色発光ダイオード」及びその「発光色」を容\n易に想到することができたという判断も誤りである。
エ 黄色発光ダイオードの単独発光色及び混合発光色の容易想到性
前記ウのとおり,甲1発明と甲2に記載された技術事項との間には課題 の共通性がなく,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用する動機付 けがあるとは認められないが,念のため,仮にそのような動機付けがある として,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用することにより,黄 色発光ダイオードが単独で発光することにより得られる黄色の発光色,及 び前記黄色発光ダイオードとそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオード から発せられる光が混合することにより得られる発光色という,相違点1 に係る本件発明1の構成を容易に想到することができたかについて検討\nする。
甲2には,前記(1)認定のとおり,カード型LED照明光源10に実装さ れるLEDを,相関色温度が低い光色用又は相関色温度が高い光色用や青, 赤,緑,黄など個別の光色を有するものとすることができること(段落【0 080】)が記載されているが,当該事項に係る実施の形態1に関連する段 落【0076】ないし【0080】の記載全体をみても,青,赤,緑,黄 など個別の光色のうちからいずれか1色の単色LEDのみを搭載したLE D光源により青,赤,緑,黄などいずれかの個別の光色を発光するという 意味なのか,複数色のLED光源を搭載して青,赤,緑,黄などの個別の 光色となるように制御するという意味なのか必ずしも判然としない。段落 【0080】に続いて,段落【0081】の前半において「更に,多発光 色(2種以上の光色)のLEDをカード型LED照明光源10に実装する ことにより,・・・この場合,2種の光色を用いた2波長タイプのときには」 との記載が続くことに照らせば,段落【0080】の上記記載は,前者の 意味,すなわち,1種の光色を用いた1波長タイプを意味し,黄色の単色 LEDを搭載したLED光源により黄色の光色を有するという意味と解す ることはできる。しかし,本件発明1は,赤色発光ダイオード,緑色発光 ダイオード,青色発光ダイオード,黄色発光ダイオード及び白色発光ダイ オードを備え,複数得られる特定の発光色として,少なくとも,黄色発光 ダイオードから単独で発せられる光により得られる発光色の他に,黄色発 光ダイオードから発せられる光とそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオー ドから発せられる光とを混合して得られる発光色が得られなければならな いところ(相違点1),前者の意味であるとすれば,上記の混合して得られ る発光色が容易想到であるとはいえない。他方,仮に後者の意味だとして も,甲2には,複数色のLED光源に黄色のLEDを含んでいるとの直接 的な記載はないから,黄色以外のLED光源によって黄色の光色を得てい る可能性も否定できず,黄色のLEDの単独発光が容易想到であるとはい\nえない。
さらに,前記(1)イで認定したとおり,甲2には,3種の光色を用いた3 波長タイプの場合は青と青緑(緑)と赤発光の組合せ,4種の光色を用い た4波長タイプの場合は青と青緑(緑)と黄(橙)と赤発光の組合せが望 ましく,特に4波長タイプのときには平均演色評価数が90を超える高演 色な光源を実現できること(段落【0081】)が記載されており,演色性 を向上させるためにRGBY(赤,緑,青,黄)4種類のLEDを用いる ことが記載されているが,これらの記載は,一般的な意味での演色性の向 上に関するものであるから,これらの記載からは,RGBY4種類のLE Dを用いた照明装置において,黄色のLEDを単独発光させることが客観 的かつ具体的に把握できるものとは認められない。 また,甲2には,RGBWY(赤,緑,青,白,黄)の5種類のLED を用いることが,段落【0065】や【0189】に記載されているが, 具体的な記載としては電源に関する説明があるのみで,これらの記載から は,RGBWYの5種類のLEDを用いた照明装置において,黄色LED を単独で発光させることやその他の色と混ぜて発光色を制御することは, 客観的かつ具体的に把握することはできない。 そうすると,仮に甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用する動機 付けがあり,甲2に記載された技術事項を甲1発明において採用し,甲1 発明において黄色発光ダイオードを備えたとしても,黄色発光ダイオード が単独で発光することにより得られる黄色の発光色,及び,前記黄色発光 ダイオードとそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオードから発せられる 光が混合することにより得られる発光色という,相違点1に係る本件発明 1の構成を容易に想到することができたとは認められない。\n

◆判決本文

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令和2(行ケ)10123  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年10月7日  知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤りを理由として、進歩性無しとした審決が取り消されました。

 イ 引用発明の「電界効果トランジスタ」は,甲3における「第1の条件」にお いて,「不良燃料セルのアノードとカソードの間の電流を短絡し,よってその不良燃料電池のための電流側路を設ける」もの(甲3の段落【0009】)であり,甲3の\n【図3】において,電気的なスイッチ124(nチャネルMOSFET)として示 されているもので,開放電気状態と閉鎖電気状態とを有する(同【0020】〜【0 022】)。そして,引用発明においては,燃料電池の出力電圧が約0.4Vより低 くなるような場合に,電界効果トランジスタが閉鎖電気状態とされる(同【002 3】)。 この点,電界効果トランジスタが閉鎖電気状態とされた場合,ドレインからソース,ソ\ースからドレインのいずれの方向にも電流が流れ得ることは,技術常識であるから,直ちに引用発明の電界効果トランジスタが整流器に相当するものとはいえ ない。 そこで,上記のように,引用発明の電界効果トランジスタが閉鎖電気状態とされ た場合の電流の流れについて検討すると,燃料電池の出力電圧が約0.4Vより低 くなるような状態となって電界効果トランジスタが閉鎖電気状態とされた時点では, 燃料電池のアノード,カソード間の電位差により,電界効果トランジスタでは,カソ\ード53側からアノード52側へ電流が流れ,その後,燃料電池の電位差が低下することによって,アノード52側からカソード53側へ電流が流れるに至るものと解するのが相当である。そうすると,甲3において,好適実施例として記載され\nている【図3】の構成においても,電界効果トランジスタを流れる電流は一方向に限定されているものではない。\n
ウ 以上によると,本願発明における第1の整流器が飽くまで一方向にのみ電流 を流すものであるのに対し,引用発明における電界効果トランジスタは,双方向に 電流を流すものであるから,引用発明の電界効果トランジスタが本願発明の第1の 整流器に相当するとはいえず,この点において,本件審決には誤りがある。
エ(ア) これに対し,被告は,引用発明においては,電界効果トランジスタが閉鎖 電気状態とされた場合であっても,電流は電界効果トランジスタをアノード52側 からカソード53側に流れると主張し,その根拠として,甲3の段落【0023】の記載を指摘する。\n
しかし,上記イのように,電界効果トランジスタが閉鎖電気状態とされた時点で は,カソード53側からアノード52側へ電流が流れるとしても,その後,アノード52側からカソ\ード53側へ電流が流れるに至るのであって,同段落の記載はそのような理解と矛盾するものとはいえない。甲3の段落【0001】,【0005】, 【0008】及び【0009】の記載や,【図4】(上記各段落の記載内容に照らし, 引用発明に係る甲3の「第1の条件」の際の動作は,同図の「欠陥は重大か?」に 対する答えが肯定(Y)の場合の動作,すなわち同図の「燃料電池への水素供給遮 断及び燃料電池の両端を永久的に短絡」という動作に当たるものと認められる。)を 踏まえると,段落【0023】は,引用発明において電界効果トランジスタが閉鎖 電気状態とされた場合に最終的に至る,引用発明の構成においてより重要な電流の流れについてのみ記載したものと理解することができ,そこに至るまでに一旦電流\nが反対方向に流れることを否定するものとは解されない。 したがって,甲3の段落【0023】の記載は被告の上記主張の根拠とはならず, 乙13(前記3(5))の記載や,燃料電池を迂回する経路をMOSFETで形成する ことに係る周知技術(乙13[前記3(5)],乙14[同(6)]参照)など,その他被 告の主張する点は,いずれも上記認定判断を左右する事情ではない。 なお,被告は,本件第1回口頭弁論期日における技術説明会のための資料におい て,甲3の【図3】における電界効果トランジスタについて,ドレインとソースの表\記が逆である旨を指摘するが(乙15の10頁),上記認定判断のとおり,同図の記載と段落【0023】の記載が直ちに矛盾しているとはいえず,相当とはいえな い。

◆判決本文

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令和1(ワ)11874    商標権  民事訴訟 令和3年6月23日  東京地方裁判所

 漏れていたのでアップします。商標権侵害事件です。38条3項のライセンス相当額が0.15%と判断されました。総額では1億円を超えています。判決文中では2項侵害の主張はされていません。

ア 証拠(乙112,113)によれば,平成22年10月1日から平成3 1年4月30日までの期間における本件各店舗の総売上高は,652億5 439万2382円であると認められる。
イ 使用料率について
(ア) 商標法38条3項による損害は,原則として,侵害に係る役務の売上 高を基準とし,これに実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきで あり,実施に対し受けるべき料率は,1)実際の実施許諾契約における実 施料率や,業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ,2)当該商標 権の顧客吸引力,3)当該商標を使用した場合の売上げ及び利益への貢献 や侵害の態様,4)商標権者と侵害者との競業関係や商標権者の営業方針 等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきであ る(知財高裁特別部平成30年(ネ)第10063号・令和元年6月7日 判決(最高裁HP)参照)。
(イ) 被告らは,パチンコホールの売上げを計上する場合,貸玉の対価をも って売上高とするグロス方式と,貸玉の対価から客に提供した景品原価 を控除した金額をもって売上高とするネット方式があるところ,パチン コ店について商標法38条3項の損害額を算定するに当たっては,ネッ ト方式により貸玉の対価から景品原価を控除した金額を基に計算するべ きであると主張する。 しかし,本件において,損害を算定する基準となる売上高は,当該役 務によって得られる収入,すなわち,貸玉の対価と解するのが自然であ り,店舗運営に係る諸費用のうち景品原価のみを控除した額を売上げと みなすべき合理的な理由はない。被告らが主張するような,パチンコ業 界における利益率は使用料率の算定において考慮すれば足りるというべ きである。
(ウ) そこで,原告各商標についての相当な使用料率について以下検討する。
a 本件においては,原告が実際に原告各商標の使用を許諾したことを うかがわせる証拠はなく,業界における実施料の一般的な相場等も明 らかではない。
b 原告各商標は,上記(1)イで摘示した事情,すなわち,パチンコ業界 における店舗数ランキング,「ベガスベガス」という名称の需要者へ の訴求力,原告の店舗情報に関するウェブサイトへのアクセス状況, 原告の会員数などを考慮すると,相応の顧客吸引力を有するものと認 められる。
他方で,全日本遊技事業協同組合連合会が実施したアンケート結果 (乙40・15頁)によると,パチンコホールを選ぶ上でのポイント として需要者が重視するのは,1)遊戯機種,2)アクセスの容易さ,3) 出玉感,4)ホールの雰囲気,5)店員の接客態度などであり,店舗の名 称が売上げ又は利益に貢献する程度は限定的であるというべきである。
c さらに,原告と被告らはその事業分野で競合しているが,営業地域 をみると,原告の店舗は,北海道,東北地方及び関東地方が中心であ り,本件各店舗の所在する広島県及び山口県においては店舗展開及び 営業活動をしていない。他方,被告らは,原告各商標の出願前から本 件各店舗を同地域に出店し,地元の需要者に対して,新聞の折込みチ ラシ(乙55,56,78,85〜87,90,91,96,97), 新聞紙面広告(乙53,54,77),テレビCM(乙57,59〜 66,86〜88,91〜93,97〜101)などによる宣伝広告 活動を継続してきたものと認められ,被告らによるかかる営業活動が その売上げに貢献する割合は大きかったと推察される。
d 本件各店舗の月当たりの営業利益をみると,売上高の概ね●(省略) ●前後で推移しているものと認められ(乙112,113),売上高 に対する営業利益の比率は必ずしも高くないことからすると,通常想 定される使用料率は上記の割合より相当程度低くなると考えられるが, 本件においては,さらに,店舗の名称が売上げに貢献する程度は限定 的であり,原告と被告らは本件各店舗の所在地で競合していないこと, 被告の営業努力の寄与が大きいなどの事情が認められる。
e 以上の事情も含め,本件に現れた事情を総合考慮すると,原告各商 標に関する使用料率は0.15%であると認めるのが相当である。

◆判決本文

関連事件です。不使用であるとした審決の取消請求事件です。

◆平成29(行ケ)10126

◆令和2(行ケ)10091

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令和3(行ケ)10029  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年9月21日  知的財産高等裁判所

 商標 「HIRUDOMILD」について、引用商標1「Hirudoid」及び引用商標2「ヒルドイド」から無効か否かが争われました。審決は非類似、出所混同無し(11,15号違反無し)と判断しましたが、知財高裁は、「HIRUDO」の文字のみを抽出できるとして、審決を取り消しました。

 ア 本件商標は,「HIRUDOMILD」の10文字の標準文字で表してなるものであり,「ヒルドマイルド」の称呼が生じるものである。\nところで,本件商標が10文字からなるものでその一部のみを観察することも想 定可能な程度の長さを有していること,その構\成中の「MILD」の文字部分は, 前記1(5)のとおり,「物事の程度や人の性質・態度などが穏やかなさま。」「刺激の 少ないさま。」などを意味する英単語として広く知られ,また,会話中においても日 常的に使用されており,ひとまとまりの語句として強く認識され得るものであるこ とからすると,本件商標は,「HIRUDO」の構成部分と「MILD」の構\成部分 からなる結合商標であるとみることができる。 そして,「HIRUDO」の構成部分は,我が国において周知されているものではないから一種の造語と理解され,同構\成部分に対応する和名の「ヒルド」は,前記1(1)のとおり長期間にわたって原告商品の他には薬剤の名称には使用されておら ず,薬剤の名称としてありふれたものではないことからしても,需要者に対し,商 品の出所識別標識として強い印象を与えるといえる。これに対し,「MILD」の構成部分は,前記1(5)のとおり,薬剤の分野においては,薬の効果や刺激が弱いこと を意味するものとして理解され,その和名である「マイルド」は薬のブランド名等 とともに商品名に用いられることが相当程度にあるから,指定商品である薬剤との 関係において,自他識別機能は極めて弱いというべきであり,「MILD」の構\成部 分から出所識別標識としての称呼,観念が生じるとはいえない。 そうすると,本件商標については,「HIRUDO」の文字のみを抽出し,この部 分だけを引用商標と比較して類否を判断することも許されるというべきである。
イ したがって,本件商標については,「HIRUDOMILD」の外観及び「ヒ ルドマイルド」の称呼のほか,「HIRUDO」の外観及び「ヒルド」の称呼が生じ るものとして引用商標と比較することが相当である。なお,「HIRUDO」は特定 の意味合いを有しない一種の造語と理解され,本件商標からは特定の観念を生じな いというべきである。もっとも,上記1(5)からすれば,「HIRUDOMILD」 が薬剤に使用された場合には,「薬効又は刺激が弱い『HIRUDO』」という観念 が生じ得ると認めるのが相当である。
(2) 引用商標について
ア 引用商標1は,「Hirudoid」の8文字のアルファベットからなるもの であり,「ヒルドイド」の称呼を生じる。辞書等に採録された既成語ではなく,特定 の意味合いを有しない一種の造語と理解され,特定の観念を生じない。
イ 引用商標2は,「ヒルドイド」の5文字の片仮名からなるもので,「ヒルドイ ド」の称呼を生じる。辞書等に採録された既成語ではなく,特定の意味合いを有し ない一種の造語と理解され,特定の観念を生じない。
4 本件商標と引用商標1の類否
本件商標と引用商標1の類否について検討する。
(1) 本件商標の指定商品は「薬剤」であり,引用商標1の指定商品は「薬剤(蚊 取線香その他の蚊駆除用の薫料・日本薬局方の薬用せっけん・薬用酒を除く。)」を 含むものであって,その指定商品は同一又は類似である。
(2)ア 本件商標は,その10文字中,7文字目の「M」,9文字目の「L」を除 く「HIRUDO(Hirudo)」「I(i)」「D(d)」の8文字が,引用商標1と大文字と小文字の差はあるものの共通し,その並び順も同じである。次に,称呼 についてみると,本件商標と引用商標1は,「ヒルド」「イ」「ド」の5つの構成音が共通し,その並び順も同じであり,本件商標の方が引用商標1よりも「マ」と「ル」\nの2音多いものの,印象の強い語頭の3音と語尾の1音が同じである。そして,前 記3(1)のとおり,本件商標は,薬剤に使用された場合,「薬効又は刺激が弱いHI RUDO」を連想させるものである。 イ 本件商標の「HIRUDO」の構成部分と引用商標1を比較すると,大文字と小文字の差はあるものの,その6文字全てが引用商標1の冒頭6文字と共通し,\nその3つの構成音全てと引用商標1の語頭の3つの構\成音が共通する。「HIRU DO」及び引用商標1はいずれも特定の意味を有しない造語であり,それ自体から 特定の観念は生じない。
(3) 原告商品は医療用医薬品であるものの,その需要者は医療関係者に限られる ものではなく,その最終需要者は患者である上に,前記1(2)のように,記事やオン ラインショップ等で,市販品であるヘパリン類似物質含有製剤について「『ヒルドイ ド』で知られる医療用保湿剤の成分」を配合している旨の説明がされるほどに「ヒ ルドイド」が市販品である保湿剤の購入者に知られていたと推認されることからし ても,原告使用商標が表示された原告商品の需要者には,医師等医療関係者のみならず患者も含まれるというべきである。本件商標の付された商品は存在しないもの\nの,仮に被告が主張するように医療用医薬品のみに使用されるものであったとして も上記需要者の認定を左右しない。 その上で,取引の実情について検討するに,前記1(1)及び(2)のとおり,引用商 標1を表示した原告商品が60年以上にわたり販売されていること,原告が原告商品について一定の宣伝活動を継続していること,平成29年度には原告商品が医療\n用医薬品の年間売上げで19位となるなど非常に高い売上げを有していること,平 成26年度から平成30年度までの間のヘパリン類似物質含有製剤又は血液凝固阻 止剤の分野における原告商品の売上占有率は,徐々に減少しているものの全期間を 通じて金額にして7割,数量にしても5割を超えていたこと,平成29年頃には, アンチエイジングの効果がある又は肌荒れ・乾燥に効果のある保湿クリームとして 女性誌等でも取り上げられ,美容目的で処方を受ける例があることが疑われるなど として問題視されるまでになっていたこと,原告が適正な処方をするよう注意喚起 した後に,原告商品と同じヘパリン類似物質を配合した市販品(医薬品又は医薬部 外品)が複数販売されるようになり,製造者や販売店が,「ヒルドイドで有名な『ヘ パリン類似物質』を配合」などと説明するなどしていたこと及び令和3年2月から 同年3月に実施されたアンケートによると乾燥肌等に対する皮膚薬を使用又は1年 以内に使用した者の44%が「ヒルドイド」を保湿剤であると認識していたことか らすると,平成29年頃までには,需要者の相当割合の者が,「ヒルドイド」という 造語及びこれに対応する欧文字の「Hirudoid」から,「ヘパリン類似物質を 配合した保湿剤」である原告商品を想起するものと認められ,長期間をかけて形成 されたこの状況は,本件商標の出願日及び本件査定日においても継続していたもの と認めるのが相当である。 また,昭和51年から平成11年まで販売されていた「ヒルドシン」を除けば, 語頭に「ヒルド」や「HIRUDO(Hirudo)」が付された薬剤は原告商品の みであったこと,原告が原告商品について適正な処方をするよう注意喚起した後に, 原告商品と同じヘパリン類似物質を配合した市販品(医薬品又は医薬部外品)が複 数販売されるようになり,そのうち医薬部外品の一つは語頭に「ヒルド」を用いて おり,一部の購入者が原告商品の市販品であると誤解して購入するなどしていたこ と等に照らすと,本件商標の出願日及び本件査定日時点において,需要者の間では, 「ヒルド」やこれに対応する欧文字の「HIRUDO」は,「ヒルドイド」及び「H IRUDOID」を意味する単語として認識されており,「ヒルド」に対応する欧文 字の「Hirudo」は「Hirudoid」を意味するものと認識されていたと 認めるのが相当であるから,「HIRUDO」と引用商標1は,いずれも「ヘパリン 類似物質を配合した保湿剤であるヒルドイド」を想起させるということができ,観 念を共通とするものと認められる。
(4) 被告の主張について
被告は,「○○」と「○○MILD」の両方が商標登録されている例が複数ある旨 指摘するが,これらの登録例は,同一権利者による商標出願に係るものか,指定商 品が異なるか,「○○」の部分が「PRECIOUS」など特定の意味を有する単語 であるなどしていて,本件とは事案が異なる(乙1)。また,「ウフェナ」の文字を 標準文字で表してなる商標が,「ウフェナマイルド」の文字と「UFENAMILD」の文字を上下二段に表\してなる構成の引用商標と類似しないと判断した審決例(乙\n2)があるが,当該引用商標の構成が本件商標及び本件の引用商標とは異なる上,同審決においては取引の実情が考慮されていないなど本件とは事案が異なるもので\nある。 次に,被告は,語頭に「ヒルド」を付す名称の薬剤は原告商品のみではない旨主 張するが,「ヒルド」を語頭に付した名称の商品が原告商品の他に複数販売されてい る状況が長期間にわたり継続するなどして「HIRUDO」の構成部分の出所識別機能\が失われたとまで認めるべき事情はないから,これらの商品の存在は,本件商標と引用商標1の類否の判断に影響しない。
(5) 上記を総合すると,本件商標と引用商標1は,指定商品が同一で,外観,観 念,称呼に共通している部分があり,同一又は類似の商品に使用された場合に,商 品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるというほかないから,両商標は類似 すると認めるのが相当である。

◆判決本文
関連事件です。商標がカタカナ表記です。

◆令和3(行ケ)10028
関連事件です。

◆令和3(行ケ)10032

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令和2(ワ)8061  商標権侵害差止請求  商標権  民事訴訟 令和3年9月27日  大阪地方裁判所

 被告はメルカリの販売サイトにて「♯シャルマントサック」のハッシュタグを使用して、ハンドメイド品の巾着袋を販売していました。 大阪地裁は、「♯シャルマントサック」は商標的使用として、差し止めを認めました。

 被告は,被告標章1につき,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であるこ とを認識することができる態様により使用されていない,すなわち商標的使用がさ れていない旨を主張する。 しかし,前記のとおり,オンラインフリーマーケットサービスであるメルカリに おける具体的な取引状況をも考慮すると,記号部分「#」は,商品等に係る情報の検 索の便に供する目的で,当該記号に引き続く文字列等に関する情報の所在場所であ ることを示す記号として理解される。このため,被告サイトにおける被告標章1の 表示行為は,メルカリ利用者がメルカリに出品される商品等の中から「シャルマン\nトサック」なる商品名ないしブランド名の商品等に係る情報を検索する便に供する ことにより,被告サイトへ当該利用者を誘導し,当該サイトに掲載された商品等の 販売を促進する目的で行われるものといえる。このことは,メルカリにおけるハッ シュタグの利用につき,「より広範囲なメルカリユーザーへ検索ヒットさせること ができる」,「ハッシュタグ機能をメルカリ上で使うと使わないでは,商品閲覧数\nや売り上げに大きく差が出ます」などとされていること(いずれも甲7)からもう かがわれる。
また,被告サイトにおける被告標章1の表示は,メルカリ利用者が検索等を通じ\nて被告サイトの閲覧に至った段階で,当該利用者に認識されるものである。そうす ると,当該利用者にとって,被告標章1の表示は,それが表\示される被告サイト中 に「シャルマントサック」なる商品名ないしブランド名の商品等に関する情報が所 在することを認識することとなる。これには,「被告サイトに掲載されている商品 が「シャルマントサック」なる商品名又はブランド名のものである」との認識も当 然に含まれ得る。
他方,被告サイトにおいては,掲載商品がハンドメイド品であることが示されて いる。また,被告標章1が同じくハッシュタグによりタグ付けされた「ドットバッ グ」等の文字列と並列的に上下に並べられ,かつ,一連のハッシュタグ付き表示の\n末尾に「好きの方にも・・・」などと付されて表示されている。これらの表\示は,掲載 商品が被告自ら製造するものであること,「シャルマントサック」,「ドットバッ グ」等のタグ付けされた文字列により示される商品そのものではなくとも,これに 関心を持つ利用者に推奨される商品であることを示すものとも理解し得る。しかし, これらの表示は,それ自体として被告標章1の表\示により生じ得る「被告サイトに 掲載されている商品が「シャルマントサック」なる商品名又はブランド名である」 との認識を失わせるに足りるものではなく,これと両立し得る。 これらの事情を踏まえると,被告サイトにおける被告標章1の表示は,需要者に\nとって,出所識別標識及び自他商品識別標識としての機能を果たしているものと見\nられる。すなわち,被告標章1は,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であ ることを認識することができる態様による使用すなわち商標的使用がされているも のと認められる。これに反する被告の主張は採用できない。

◆判決本文

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令和1(ワ)5444  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年9月28日  大阪地方裁判所

 知財高裁特別部で判断された「二酸化炭素含有粘性組成物事件」の原告は、侵害事件で勝訴しましたが、被告会社が破産したため、実質経営者である取締役に対して訴訟をしました。裁判所は、被告らに監視・監督義務があるとして1億円を超える損害賠償を認めました。

 法人の代表者等が,法人の業務として第三者の特許権を侵害する行為を行った場\n合,第三者の排他的権利を侵害する不法行為を行ったものとして,法人は第三者に 対し損害賠償債務を負担すると共に,当該行為者が罰せられるほか,法人自身も刑 罰の対象となる(特許法196条,196条の2,201条)。 したがって,会社の取締役は,その善管注意義務の内容として,会社が第三者の 特許権侵害となる行為に及ぶことを主導してはならず,また他の取締役の業務執行 を監視して,会社がそのような行為に及ぶことのないよう注意すべき義務を負うと いうことができる。 他方,特許権者と被疑侵害者との間で特許権侵害の成否や特許の有効無効につい て厳しく意見が対立し,双方が一定の論拠をもって自説を主張する場合には,特許 庁あるいは裁判所の手続を経て,侵害の成否又は特許の有効性についての公権的判 断が確定するまでに,一定の時間を要することがある。 このような場合に,特許権者が被疑侵害者に特許権侵害を通告したからといっ て,被疑侵害者の立場で,いかなる場合であっても,その一事をもって当然に実施 行為を停止すべきであるということはできないし,逆に,被疑侵害者の側に,非侵 害又は特許の無効を主張する一定の論拠があるからといって,実施行為を継続する ことが当然に許容されることにもならない。 自社の行為が第三者の特許権侵害となる可能性のあることを指摘された取締役と\nしては,侵害の成否又は権利の有効性についての自社の論拠及び相手方の論拠を慎 重に検討した上で,前述のとおり,侵害の成否または権利の有効性については,公 権的判断が確定するまではいずれとも決しない場合があること,その判断が自社に 有利に確定するとは限らないこと,正常な経済活動を理由なく停止すべきではない が,第三者の権利を侵害して損害賠償債務を負担する事態は可及的に回避すべきで あり,仮に侵害となる場合であっても,負担する損害賠償債務は可及的に抑制すべ きこと等を総合的に考慮しつつ,当該事案において最も適切な経営判断を行うべき こととなり,それが取締役としての善管注意義務の内容をなすと考えられる。
具体的には,1)非侵害又は無効の判断が得られる蓋然性を考慮して,実施行為を 停止し,あるいは製品の構造,構\成等を変更する,2)相手方との間で,非侵害又は 無効についての自社の主張を反映した料率を定め,使用料を支払って実施行為を継 続する,3)暫定的合意により実施行為を停止し,非侵害又は無効の判断が確定すれ ば,その間の補償が得られるようにする,4)実施行為を継続しつつ,損害賠償相当 額を利益より留保するなどして,侵害かつ有効の判断が確定した場合には直ちに補 償を行い,自社が損害賠償債務を実質的には負担しないようにするなど,いくつか の方法が考えられるのであって,それぞれの事案の特質に応じ,取締役の行った経 営判断が適切であったかを検討すべきことになる。
・・・
(コ) 別件判決は,ネオケミアに対し,金1億1107万7895円及びこれに 対する遅延損害金を原告に支払うこと等を命じるものであり,令和元年6月7日に これに対する控訴棄却判決がなされたが,原告において供託金の差押え等の方法に より計700万円を回収した以外に,ネオケミアより原告に対する前記損害賠償債 務の弁済はなされていない。 被告P1は,令和2年9月24日付けで,二酸化炭素経皮吸収技術の開発等を目 的とする新会社を設立した。また被告P1は,ネオケミアについて破産手続開始の 申立てを行い,同年12月7日,同手続開始決定を得た。\n破産者ネオケミアについては,令和3年2月28日の時点で,回収済みとして破 産管財人が保管している資産の額は124万9370円,届出のあった一般破産債 権の総額は1億6969万3683円とされた。
・・・
ウ 判断
前記アで認定した事実,及び前記イで被告P1の主張について判断したところを 総合すると,被告P1が,各被告製品の製造販売が本件各特許権の侵害にならな い,あるいは本件各特許は無効であると主張した点について十分な論拠があったと\nいうことはできず,むしろ特許制度の基本的な内容に対する無理解の故に,ネオケ ミア特許の実施品であれば本件各特許権の侵害にはならないと誤解して各被告製品 の製造販売を続け,取引先にもそのように説明したものである。 前述のとおり,特許権侵害の成否,権利の有効無効については,公権力のある判 断が確定するまでは軽々に決し得ない場合があり,自社に不利な判断が確定する場 合もあるのであるから,取締役にはそれを前提とした経営判断をすべきことが求め られ,前記(1)の1)ないし4)で述べたような方法をとることで,特許権侵害に及 び,自社に損害賠償債務を負担させることを可及的に回避することは可能であるに\nも関わらず,被告P1はそのいずれの方法をとることもせず,各被告製品の製造販 売を継続している。さらに,別件判決(甲5)によれば,ネオケミアは各被告製品 の販売により相応の利益を得ていたのであるから,特許権侵害となった場合の賠償 相当額を留保するなどして,別件判決確定後に損害を遅滞なく填補すれば,ネオケ ミアに損害賠償債務を確定的に負担させないようにすることも可能であったのに,\n被告P1は任意での賠償を行わず,ネオケミアを債務超過の状態としたまま,破産 手続開始の申立てを行ったものである。\n
以上を総合すると,被告P1が,本件各特許が登録されたことを知りながら,特 段の方法をとることなく各被告製品の製造販売を継続したことは,ネオケミアの取 締役としての善管注意義務に違反するものであり,被告P1は,その前提となる事 情をすべて認識しながら,ネオケミアの業務としてこれを行ったのであるから,そ の善管注意義務違反は,悪意によるものと評価するのが相当である。
(3) 被告P2の悪意重過失について
ア 会社法上,取締役として選任されている以上は,個々の能力,知識,報酬等\nの有無にかかわらず,取締役として一般に要求される善管注意義務を尽くして代表\n取締役の業務執行を監視,監督すべきものである。 被告P2は,自身が名目上の取締役であり,ネオケミアの業務に全く関与せず, 本件各特許の内容を知らず,各被告製品が本件各特許権を侵害するかを判断する機 会もなかったので,被告P1の経営判断が特許権侵害であるとしても,それを発見 し,抑止することはできなかったと主張するが,このような理由で,取締役として の善管注意義務が存在しない,あるいは免除されていると解することはできない。
イ 既に認定したとおり,原告とネオケミアとの間で各被告製品に係る明らかな 紛争が発生していたのであるから,被告P2において,これを把握することは容易 であり,前記(2)で検討したとおり,被告P1に対し,ネオケミアに不利となる公 権的判断が確定する可能性をも考慮した適切な経営判断を行っているかを確認し,\n被告P1の判断に不十分な点があれば,再考を求めることは可能\であったと解され る。 被告P2が,上述したような監視,監督を尽くしても,被告P1の行為を抑止で きなかったとすべき具体的な事情は認められないし,被告P2がネオケミアの業務 に関心を持たず,本件各特許すら知らず,各被告製品に係る紛争を知らなかったと いうことを被告P2に有利な事情と解することはできず,むしろ,取締役としての 義務に違反する程度は大きいといわざるを得ない。
以上を総合すると,被告P2には,取締役である被告P1の業務執行に対する適 切な監視,監督を怠ったことについて,重大な過失があったということができる。
(4) 被告P3の悪意重過失について
ア 前記前提事実,証拠(甲31の1,60の1及び2,乙82の1,丙1, 2,4,被告P3本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 被告P3は,エステティシャンとして活動していたところ,原告ら10数 社から発売されていた炭酸ガスパックを試した結果,ネオケミアの製品が効果的で あったため,被告P1に面会して炭酸ガス療法及び炭酸ガス美容について説明を受 け,炭酸ガスパック剤の特許はネオケミアのみが有しているので,安心して販売で きると聞いた。 被告P3は,ネオケミアの製品には特許使用料が上乗せされて他の商品より高額 であったが,ネオケミアの製品が最も良いと考え,これを仕入れて販売することに した。
(イ) 被告P3は,ネオケミアの製品が人気を博した後,琉球粘土を配合した炭 酸ガスパック剤を作りたいと考え,被告P1に相談した。 被告P3は,事業を法人化して製品の開発・販売を進めることし,平成23年1 1月18日,自らを代表取締役とするクリアノワールを設立し,平成24年頃,ネ\nオケミアの協力を得て被告製品14を開発した。
(ウ) 被告P3は,平成25年7月22日,原告から被告製品14が本件各特許 の技術的範囲に属するとして,その製造販売の中止等を求める通告書を受領し,ま た,取引先からも,原告から同様の通告を受けたと聞いた。 被告P3は,原告からの通告書を確認してもその内容を理解することができなか ったため,被告P1に面会して説明を求めたところ,被告P1から,原告は本件各 特許権を有しているが,大阪の大手の事務所である北浜法律事務所の弁護士と青山 特許事務所の弁理士に相談しており,弁護士及び弁理士が特許権の侵害はないから 心配はないと言っていると聞いた。また,被告P1は,弁護士を代理人として原告 と交渉しているので心配ない,任せてほしいなどとも言ったことから,被告P3 は,これを信用し,被告製品14の販売を継続することとした。 被告P3は,同月29日頃,被告P1から,前記(2)ア(キ)の書面(丙4)を受領 した。
(エ) 被告P3は,別件訴訟の提起を受けて,改めて被告P1に説明を求めたと ころ,被告P1から,北浜法律事務所の弁護士と青山特許事務所の弁理士が原告の 特許権を侵害していることはないと言っている旨を再び告げられ,別件訴訟の裁判 費用をネオケミアが負担し,万一敗訴した場合は,賠償金もネオケミアが負担する と言われた。また,被告P3は,その頃,被告P1から,被告製品2について,本 件発明2−1の技術的範囲に属さない旨の青山特許事務所の弁理士作成の鑑定書の 写しの交付を受けた。 被告P3は,炭酸ガスパックの専門家である被告P1が自信を持っており,原告 製品よりもネオケミアの製品の方が品質・性能が良く,悪い製品の特許が優先する\nことはあり得ないと考え,被告製品14の販売を継続した。 その後,被告P3は,ネオケミアの代理人弁護士や弁理士から直接説明を受ける 機会があり,その際も,大丈夫だ,心配ないと言われた。
(オ) 被告P3は,平成28年12月16日,別件訴訟において裁判所から心証 開示を受けた後も,被告製品14の販売が本件各特許権の侵害に当たることに疑問 を持っていたが,裁判所の判断である以上やむを得ないと考え,被告製品14の販 売を止めた。
(カ) 令和元年6月7日の控訴棄却判決により,クリアノワールに対し1223 万6265円及び遅延損害金を支払うよう命じた別件判決は確定したが,原告にお いて供託金の差押えにより150万円を回収した以外に,クリアノワールが原告に 対し前記債務を弁済することはなく,被告P3は,同年6月,琉球粘土と炭酸ガス パックからなるスキンケア商品その他を販売することを目的とする新会社を設立し た。
イ 判断
前記認定したところによれば,被告P3は,原告から被告製品14の販売が本件 各特許権の侵害に当たるとの警告を受けたものの,本件各特許の発明者であって炭 酸ガスパックの専門家であった被告P1から,ネオケミアが委任した弁護士や弁理 士が特許権侵害ではないと言っているなどと聞き,どのような根拠で特許権侵害に 当たらないということになるのか理解できないまま,ネオケミアも特許権を有して いて,原告製品よりネオケミアの製品の方が品質・性能が良いので,原告の特許権\nが優先することはないなどと考え,被告製品14の販売を継続する意思決定をした というのであるから,主として,被告製品14の製造元であるネオケミアからの説 明に依拠してその判断を行ったことになる。 しかしながら,特許権侵害が成立しないとするネオケミア側の説明に十分な論拠\nがなく,むしろ被告P1の特許制度に対する誤解が前提となっていたことは,前記 (2)で検討したとおりであるし,品質・性能において上回っていることは,特許権侵\n害を否定する理由とはなり得ない。
被告P3は,特許権侵害の判断は素人には難しく,警告を受ければすべからく製 造販売等を停止しなければならないとすることは不当であると主張するが,前記 (1)で述べたとおり,クリアノワールの代表取締役として,被告P3には,特許権\n侵害の成否や権利の有効性についての公権的判断が,自己に有利にも不利にも確定 する可能性があることを前提に,そのいずれの場合であっても第三者の権利を侵害\nし損害を生じさせることを可及的に回避しつつ,自社の利益を図るような経営判断 をすべき注意義務があったということができる。 この点について被告P3は,特許権侵害の警告を受けた後も,主として被告製品 14の製造元であるネオケミア側からの説明に依拠し,前記(1)の1)ないし4)で検 討したような方法をとることもなく,裁判所からの心証開示があるまでの間,被告 製品の14の販売をして特許権侵害の不法行為を継続し,原告に損害を生じさせた のであるから,取締役としての善管注意義務に違反したというべきであり,少なく とも重過失によると認めるのが相当である。
(5) 被告P4の悪意過失について
会社法上,取締役として選任されている以上は,個々の能力,知識,報酬等の有\n無にかかわらず,取締役として一般に要求される善管注意義務を尽くして代表取締\n役の業務執行の監督を行うべきものである。 前記(4)のとおり,原告から警告書の送付を受けるなど,クリアノワールについ て被告製品14に係る明らかな紛争が発生していたのであるから,その取締役であ った被告P4においてこれを把握することは容易であった。また,前記(4)で認定 したとおり,被告P3に確認すれば,特許権侵害が成立しないことの十分な論拠は\nなく,仮に特許権侵害が確定した場合の対応も想定しないままに,クリアノワール が被告製品14の販売を継続しようとしていることを知り得たのであるから,被告 P4には,取締役である被告P3の監視・監督を怠る義務違反があったというべき であり,その過失の程度は重大というべきである。
4 原告の損害額(争点4)について
(1) 訴外2社の行為に係る原告の損害額
ア ネオケミアの行為に係る原告の損害額
(ア) 証拠(甲45〜49,51〜57)及び弁論の全趣旨によれば,各被告製 品とその顆粒の販売によるネオケミアの売上の額は別紙「ネオケミアの売上の推 移」(ただし,平成22年12月6日の被告製品6の売上を除く)のとおりと認め られる。 そして,当該売上額から,原告において経費として控除することを自認する額を 差し引き,その1割に相当する金額を弁護士費用として加算した金額は,1億08 29万1485円である。 証拠(甲5,6)によれば,別件訴訟において原告が弁護士及び弁理士に委任し て訴訟追行していたことが認められ,ネオケミアの行為と相当因果関係のある弁護 士費用等は,ネオケミアの利益の額の1割とするのが相当であるから,ネオケミア の行為と相当因果関係のある損害として特許法102条2項により推定される損害 額及び弁護士費用は,1億0829万1485円であると認められる。 また,原告は,700万円を回収した等として控除することを自認しているか ら,ネオケミアの行為と相当因果関係のある損害額として現存するのは,1億01 29万1485円であると認められる。
(イ) 上記1億0829万1485円という金額は,別件判決が特許法102条 2項を適用して算出したネオケミアの損害賠償債務の元金部分(1億1107万7 895円)から,被告製品6の売上にかかる部分と原告が差押え等により回収した 700万円を控除した金額に一致するところ,被告らは,会社法429条1項に基 づく責任に特許法102条2項を適用または類推適用すべきではない旨主張する。 しかしながら,特許法102条2項は,推定を用いるとはいえ,特許権者が受け た損害賠償額を算定する方法を定めたものであり,別件判決の確定により,原告が ネオケミアの特許権侵害により上記損害を受けたことは確定しているのであるか ら,取締役の善管注意義務違反によりネオケミアが特許権侵害を行ったことによる 損害も,これと同じものであると解するのが相当であり,法的性質は異なるとし て,別途の算定をしなければならないと解すべき理由はない。
イ クリアノワールの行為に係る原告の損害額
(ア) 弁論の全趣旨によれば,被告製品14の販売に係る別紙「ダイヤモンドス キンジェルパック売上一覧表(クリアノワール)」の内容は,クリアノワールが自\nら原告に開示したものであると認められ,被告製品14の販売によるクリアノワー ルの売上の額は当該別紙記載のとおりと認められる。 そして,当該売上額から,原告において経費として控除することを自認する額を 差し引き,その1割に相当する金額を弁護士費用として加算した金額は,1223 万6265円であり,被告P4がクリアノワールの取締役であった平成26年11 月30日までの期間の利益額は896万8027円である。 証拠(甲5,6)によれば,別件訴訟において原告が弁護士及び弁理士に委任し て訴訟追行していたことが認められ,クリアノワールの行為と相当因果関係のある 弁護士費用等は,クリアノワールの利益の額の1割とするのが相当であるから,ク リアノワールの行為と相当因果関係のある損害として特許法102条2項により推 定される損害額及び弁護士費用は,1223万6265円であると認められる。 また,原告は,150万円を回収したとして控除することを自認しているから, 現存するクリアノワールの行為と相当因果関係のある損害額は,1073万626 5円であると認められる。
(イ) 上記1223万6265円という金額は,別件判決が特許法102条2項 を適用して算出したクリアノワールの損害賠償債務の元金部分に一致するが,前記 アで述べたとおり,取締役の善管注意義務違反によりクリアノワールが特許権侵害 を行ったことによる損害も,同様に解するのが相当である。 被告P3及び被告P4は,会社法429条1項は悪意又は重過失を要件としてお り,成立要件を厳格にしておきながら,損害額の立証については立証を容易にする 推定規定を適用することは立法趣旨に反すると主張するが,会社法429条1項の 責任は不法行為責任とは別個の責任を定めるものであるところ,第三者の生じた損 害をどう認定するかについては何も定めておらず,特許権侵害があった場合の損害 の算定について,特許法の規定を用いることを禁じるものとは解されない。
(2) 損害の発生について
被告P3及び被告P4は,クリアノワールが沖縄県内でのみ被告製品14を販売 しており,原告は沖縄県内で原告製品を販売していなかったから,クリアノワール の行為によって原告は損害を被っていないと主張する。 しかしながら,証拠(甲7,8)によれば,原告製品は販売地域を限定した製品 とは認められないものであり,原告製品の性質上,沖縄県内での販売が困難である とか,原告において沖縄県において原告製品を販売することができない事情があっ たとは認められないから,仮に原告製品が沖縄県において販売されていなかったと しても,被告製品14が販売されていることが原告製品の沖縄県への進出を妨げる 等の損害が生じ得たのであり,特許法102条2項の適用を否定すべき理由とはな らない。
(3) 被告らの任務懈怠行為との因果関係について
ア 被告P1について
前記3(2)のとおり,被告P1は,本件各特許が登録されたことを知ってなお, ネオケミアにおいて各被告製品やその顆粒剤を製造販売するに際し,被告P1の当 該意思決定によってネオケミアが本件各特許権の侵害行為をしたのであるから,ネ オケミアが本件各特許権の侵害行為により原告に与えた前記(1)アの損害は,被告 P1の任務懈怠行為と相当因果関係のある損害と認められる。
イ 被告P2について
前記3(3)のとおり,被告P2は,被告P1にネオケミアの業務執行を一任して 監視・監督義務を怠ったものであり,これは重過失による任務懈怠行為に当たると ころ,前記アのとおり,原告がネオケミアから受けた前記(1)アの損害が被告P1 の悪意の任務懈怠によって生じたものであって,被告P1の任務懈怠行為と同損害 に相当因果関係があるのであるから,被告P2の任務懈怠行為と同損害にも相当因 果関係があると認められる。
ウ 被告P3について
前記3(4)のとおり,被告P3は,原告から被告製品14の販売が本件各特許権 の侵害となるとの通知を受けてなお,クリアノワールにおいて被告製品14を販売 するに際し,調査・検討を怠って,漫然と被告製品14の販売を継続する意思決定 をしたものであり,この善管注意義務違反は重過失による任務懈怠に当たるとこ ろ,クリアノワールが本件各特許権の侵害行為により原告に与えた前記(1)イの損 害は,被告P3の任務懈怠行為と相当因果関係のある損害と認められる。
エ 被告P4について
前記3(5)のとおり,被告P4は,被告P3にクリアノワールの業務執行を一任 して監視・監督義務を怠ったものであり,これが任務懈怠行為に当たるところ,前 記ウのとおり,原告がクリアノワールから受けた前記(1)イの損害が被告P3の重 過失による任務懈怠によって生じたものであって,被告P3の任務懈怠行為と同損 害に相当因果関係があるのであるから,被告P4の任務懈怠行為と被告P4がクリ アノワールの取締役在任中にクリアノワールから原告が受けた損害にも相当因果関 係があると認められる。 そして,前記(1)イのとおり,被告P4がクリアノワールの取締役であった期間 にクリアノワールが本件各特許権を侵害して被告製品14を販売したことにより得 た利益は,896万8027円であり,原告は,これから回収済みの150万円を 控除した746万8027円についてのみ被告P4に対して請求しているから,こ の全額について,被告P4の任務懈怠行為との間に相当因果関係があるものと認め られる。

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令和3(行ケ)10046  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年9月29日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判の審決取消訴訟事件です。知財高裁は、指定商品に使用していたとした審決を維持しました。

 本件商標は,「Nクール」の文字を標準文字で表してなるものである。\n次に,本件使用商標は,別紙1のとおり,「Nクール(R)ベストII」の緑色 の文字を表してなるものである。そして,本件使用商標の構\成中の「ベス ト」の文字部分は,本件使用商品(「メッシュベスト」)との関係では, 商品の種類を表すものであり,「(R)」の文字部分は登録商標を意味する記 号及び「II」の文字部分はローマ数字の2を表するものであって,いずれ\nも自他商品識別標識としての機能を有するものと認められないから,本件\n使用商標の要部は,「Nクール」の文字部分であると認めるのが相当である。 そこで,本件商標と本件使用商標の要部の「Nクール」の文字部分を対 比すると,外観は異なるが,構成文字が共通であり,「エヌクール」とい\nう同一の称呼が生じることからすると,本件使用商標は,全体として本件 商標と社会通念上同一の商標であると認められる。
ウ 以上によれば,被告は,要証期間内の令和2年1月23日から同年4月 2日までの間,日本国内において,本件使用商品に関する広告(本件カタ ログデータ)に本件商標と社会通念上同一の商標である本件使用商標を付 して電磁的方法により提供したものと認められるから,かかる被告の行為 は,本件商標の使用(商標法2条3項8号)に該当するものと認められる。
2 本件使用商品の本件商標の指定商品該当性について
(1) 本件使用商品が本件審判の請求に係る指定商品である第25類「ベスト」 に該当するかについて検討する。
ア(ア) 本件商標の登録出願時(登録出願日平成28年6月20日)に施行 されていた商標法施行令別表(以下「政令別表\」という。)には,第25 類の名称として「被服及び履物」が挙げられている。 また,本件商標の登録出願時に施行されていた商標法施行規則別表(平\n成28年経済産業省令第109号による改正前のもの。以下「省令別表」\nという。)には,第25類に属する商品として「一 被服」を掲げ,その 細分類として定められた「(一) 洋服」から「(十一) ナイトキャップ 帽子」までに商品が例示列挙されているが,「ベスト」については掲げら れていない。
(イ) 次に,本件商標の登録出願時に用いられていた国際分類(第10− 2016版)を構成する類別表\(以下「国際分類類別表」という。)の第\n25類の「注釈」(Explanatory Note)には,「この類 には,特に,次の商品は含まない:特殊な用途に供する被服及び履物(商 品のアルファベット順一覧表参照).」と記載されている。一方で,国際\n分類類別表の「商品のアルファベット順一覧表\」には,「ベスト」(「ve sts」,「waistcoats」)は,第25類に属する商品として掲 げられている。
(ウ) 「ベスト」(「vests」,「waistcoats」)とは,一般に, 「丈が短く,体にぴったりつく,袖のない胴着の一種」を意味するもの と認められる(甲3,4)。
イ 前記ア認定の政令別表第25類の名称,省令別表\に第25類に属するも のとされた商品の内容,国際分類類別表の第25類の「注釈」において示\nされた商品の説明及び国際分類類別表の「商品のアルファベット順一覧表\」 の記載,「ベスト」の用語の意義を総合考慮すると,本件審判の請求に係る 指定商品である第25類「ベスト」とは,省令別表第25類に属する商品\nとして掲げられた「被服」に含まれる「丈が短く,体にぴったりつく,袖 のない胴着の一種」であって,「特殊な用途に供するものではないもの」と 解するのが相当である。
これを本件使用商品についてみるに,証拠(甲7,8,13の2,14 の3,15の3)によれば,本件使用商品は,メッシュ生地で作られた, 丈が短く,体にぴったりつく,袖のない胴着であると認められる。 また,前記1(1)ウの認定事実によれば,本件使用商品は,被告が販売す る「空調服」(電動ファンを内蔵した上着)(甲9)の下に着用する「専用 メッシュベスト」であるが,「空調服」自体,その有する機能から暑さ対策\nが必要となる場面で着用されることが想定された商品であり,実際に,業 界を問わず,様々な場面で利用されており(本件カタログデータの2頁に 「建設,建築業界を始め,土木・自動車・流通・運輸・金属・農業など・・・ 業界を問わず,あらゆるシーンで採用されています。」との記載(前記1(1) ウ(イ))がある。),その用途が限定されていないことからすれば,本件使 用商品も,同様にその用途が限定されていないものと認められるから,「特 殊な用途に供するものではないもの」と認められる。 したがって,本件使用商品は,「丈が短く,体にぴったりつく,袖のない 胴着の一種」であって,「特殊な用途に供するものではないもの」であるか ら,本件商標の指定商品第25類「ベスト」に含まれるものと認められる。
(2) これに対し原告は,1)類似商品・役務審査基準によれば,第25類は,細 分類として「被服」を含み,更にこの「被服」は「洋服,コート,セーター 類,ワイシャツ類」を含み,このうちの「セーター類」には「3 セーター 類 カーディガン,セーター,チョッキ」が含まれるところ,「ベスト」(「v ests and waistcoats)」は,「1 洋服」とは別の「3 セーター類 カーディガン,セーター,チョッキ」の中に分類されており, これに準じるものでなければならないから,洋装ファッションとしての「機 能又は用途」と,それにふさわしい「材料」を有するものでなければならな\nい,2)「メッシュベスト」(本件使用商品)は,保冷剤を保持するための装着 具であり,洋装ファッションとしての「機能又は用途」を有せず,また,単\n純にメッシュ(網)を,保冷剤を保持するように縫製したものにすぎず,保 冷剤を装着せずに使用することは実用性がなく実際上も考えられない特別な 「材料」からなり,保冷具の一部材にすぎないから,洋装ファッションとし てのベストではなく,第25類の一般的な被服に属する「ベスト」(類似群コ ード17A01)の範疇に属する商品であるとはいえない旨主張する。 しかしながら,1)については,本件審判の請求に係る指定商品である第2 5類「ベスト」は,省令別表第25類に属する商品として掲げられた「被服」\nに含まれる「丈が短く,体にぴったりつく,袖のない胴着の一種」であって, 「特殊な用途に供するものではないもの」と解すべきであることは,前記(1) イ認定のとおりである。また,省令別表には,第25類に属する商品として\n掲げた「一 被服」の細分類の「(一) 洋服」から「(十一) ナイトキャップ 帽子」までに「ベスト」は掲げられていないが,上記細分類に掲げられた商 品は,第25類に属する商品の例示列挙であるから,第25類「ベスト」は, 上記細分類中の「(三) セーター類 カーディガン セーター チョッキ」 に準じるものでなければならないと解すべき理由はない。また,国際分類類 別表の第25類の「注釈」において示された商品の説明(前記(1)ア(イ))に 照らしても,第25類「ベスト」は,洋装ファッションとしての「機能又は\n用途」とそれにふさわしい「材料」を有するものでなければならないと解す べき合理的な根拠はない。
2)については,本件使用商品は,メッシュ生地で作られた,丈が短く,体 にぴったりつく,袖のない胴着であるが(前記(1)イ),その材料は特殊なもの であるとはいえず,保冷剤を装着することができるという機能を有するとし\nても,そのことによって本件使用商品が保冷具の一部材にすぎないものであ るともいえない。また,上記のとおり,第25類「ベスト」は,洋装ファッシ ョンとしてのベストに限られるものではない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。

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令和3(ネ)10028  損害賠償等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年9月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ゲームの著作物について複製・翻案であるかについて1審は複製・翻案ではないと判断しました。知財高裁(1部)も同様です。

 また,控訴人は,当審において,原判決は,全体として一つのゲーム を一画面一画面に分断し,分断した画面ごとに共通する部分(アイコン 等の配置等)について,個別に創作性を判断し,その結果として,共通 する部分全体の創作性を否定したものであり,一連の流れのあるゲーム の著作権侵害を判断しているのではなく,画面の著作権侵害を判断して いるにすぎないから,このような原判決の判断手法によると,他社のゲ ームをデッドコピーしても,キャラクターやアイコンのデザイン等を多 少変更さえしてしまえば,著作権侵害を免れることになり,不合理であ るとして,被告ゲームは原告ゲームを複製又は翻案したものに当たらな いとした原判決の判断手法は誤りである旨主張する。 しかしながら,原告ゲーム全体と被告ゲーム全体の共通部分が創作的 表現といえるか否かを判断する際に,その構\成要素を分析し,それぞれ について表現といえるか否か,表\現上の創作性を有するか否かを検討す ることは,有益かつ必要なことであり,その上で,ゲーム全体又は侵害 が主張されている部分全体について表現といえるか否か,表\現上の創作 性を有するか否かを判断することは,合理的な判断手法であると解され る。 そして,前記(イ)のとおり,原判決は,被告ゲームと原告ゲームの共 通点はアイデアや創作性のないものにとどまり,また,具体的表現にお\nいて相違し,デッドコピーであるとは評価できないから,被告ゲーム全 体が,原告ゲーム全体を複製又は翻案したものに当たるということはで きないと判断したものであり,その判断手法に誤りはない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。」
(2) 原判決42頁6行目の「原告は,」を「ア 控訴人は,」と改め,同43頁 20行目から44頁20行目までを次のとおり改める。
「 イ ところで,著作権法上の「プログラム」は,「電子計算機を機能させ\nて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせ たものとして表現したもの」をいい(同法2条1項10号の2),プロ\nグラムをプログラム著作物(同法10条1項9号)として保護するた めには,プログラムの具体的記述に作成者の思想又は感情が創作的に 表現され,その作成者の個性が表\れていることが必要であると解され る。すなわち,プログラムの具体的記述において,指令の表現自体,そ\nの指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選 択の幅があり,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表\れ ていることが必要であると解される。 これを原告ソースコードについてみるに,前記ア認定のとおり,原\n告ソースコードは,原告ゲームの473個のLuaファイルのうちの\n1個である「MissionMainPage.lua」であり,原告 ソースコードに係るプログラムは,「任務(ミッション)」に係る画面\n(メインミッション画面,デイリーミッション画面,功績画面)の切 り替えに関する処理及び表示内容の更新処理を行うプログラムである。\nそして,原告ソースコードの記述は,原判決別紙「ソ\ースコード対比 表」の「原告ソ\ースコード」欄記載のとおりであり,個々の記述の意味 は,同表の「裁判所の認定」欄記載のとおりである。\n原告ソースコードの記述は,いずれも単純な作業を行うfunct\nion(ローカル変数やテーブルの宣言及びモジュールの呼び出し等) が複数記述されたものであり,ソースコードによって記述される機能\ が上記のとおりローカル変数やテーブルの宣言及びモジュールの呼び 出し等の単純な作業を行うことである以上,表現の選択の幅は狭く,\nその具体的記述の表現も,定型的なものであり,ありふれたものであ\nると言わざるを得ない。 また,個々の記述の順序や組合せについても,ゲームの機能に対応\nさせたにすぎないものであり,ありふれたものである。 そうすると,原告ソースコードの具体的記述に控訴人の思想又は感\n情が創作的に表現され,控訴人の個性が表\れていると認めることはで きないから,原告ソースコードに係るプログラムは,プログラムの著\n作物に該当するものと認めることはできない。 したがって,被告ソースコードの大部分が原告ソ\ースコードと共通 しているとしても,原告ソースコードに係るプログラムの著作物性は\n認められないから,被告ソースコードの制作は,原告ソ\ースコードに 係るプログラム著作権(複製権又は翻案権)の侵害に当たらない。
(4) 編集著作権の侵害について 控訴人は,当審において,1)原告ゲームは,素材である個々の画面(8 4画面)の選択,その画面遷移等の配列,素材である各画面内における アイコン,ボタン,キャラクター等の選択又は配列に作成者の個性が発 揮されているから,素材の選択又は配列によって創作性を有する編集著 作物である,2)原告ソースコードも,個々のソ\ースコードの書き方,各 ソースコードの順序,変数の名称等の素材を選択して組み合わせたこと\nに作成者の個性が発揮されているから,素材の選択又は配列によって創 作性を有する編集著作物である,3)被告ゲームは,編集著作物である原 告ゲーム(原告ソースコードを含む。)を複製又は翻案して制作されたも\nのであるから,被告ゲームの制作及び配信行為は,原告ゲームについて 控訴人が有する編集著作権(複製権,翻案権及び公衆送信権)の侵害に 当たる旨主張する。 しかしながら,控訴人の上記主張は,原告ゲーム又は原告ソースコー\nドにおける個々の素材の選択又は配列にいかなる創作的表現がされてい\nるのか,その創作的表現が被告ゲーム又は被告ソ\ースコードにおいてど のように利用されているのかについて具体的に主張するものではないか ら,その主張自体理由がない。

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令和2(ワ)14629  意匠権侵害差止等請求事  意匠権  民事訴訟 令和3年9月7日  東京地方裁判所

 意匠権侵害事件です。東京地裁46部は、両者は類似していないとして請求を棄却しました。

 ア 本件意匠と被告意匠は,基本的構成態様において共通し,また,具体的構\ 成態様のうち,共通点1から5において共通する。 このうち,本件意匠の基本的構成態様は,需要者の注意を引くべき形状等\nとはいえず,類否判断に当たって,それが共通することを大きく取り扱うこ とは相当ではない。 具体的構成態様の共通点のうち,共通点1及び2は,需要者の注意を引く\nべき形状等に係るものであり,これらが共通することは,類否判断に影響を 与える。もっとも,渦流生成部において,捕捉部を中心とする等角度位置に 配置された複数の斜面体を設ける構成を有する公知意匠があり(前記\n),この点を特に大きく取り扱うことは相当とはいえない。 共通点3から4は,フランジ部の形状等であり,需要者が注意を引くべき 部分の形状等ではなく,また,フランジ部においてその形状等が占める割合 も大きくなく,類否判断に与える影響は小さいといえる。
イ 本件意匠と被告意匠の具体的構成態様は,差異点1から6において異なる。\n差異点1から4は,渦流生成部の形状であり,注意を引くべき形状等に関 するものである。そして,本件意匠においては,渦流生成部を形成する4個 の斜面体が,段差構造によって境界を形成するものであり,渦流生成部を形\n成する斜面体が,段差構造によって境界を形成し,斜面体を区切る構\造体が ないという形状等が,注意を引くべき形状等に含まれるといえるところ,差 異点1は,その形状等に係るものである。本件意匠が上記の形状等であるの に対し,被告意匠においては,本件意匠と異なり,斜面体の外周部には,堰 部が設けられている。斜面体の段差構造によって境界を形成するか,別に堰\n部を設けるかは,その形状等自体が明確に異なるものである。ヘアキャッチ ャーの需要者は,それが排水口の上に設置された際等も含めてその真上から だけでなく,やや斜め上から見る場合も多いといえるところ,斜視図等(別 紙本件意匠,本件意匠説明図,被告意匠目録,被告意匠説明図,本件意匠・ 被告意匠対照表)に特に明らかなとおり,需要者は,本件意匠の渦流生成部\nは平面状の斜面体のみで構成されるやや平板な段差構\造であることを認識 するのに対し,被告意匠では,斜面体の外周部に斜面体に対し垂直方向に突 出する堰部があることを認識し,斜面体から堰部が突出していること及び堰 部によってもたらされる別の斜面体との段差が強く印象付けられる。また, 本件意匠では,斜面体のみで渦状模様を生じさせるものであり,渦流生成部 が平面状の斜面体のみからなり,渦状模様もあっさりした印象を与える。こ れに対し,被告意匠では,堰部によって各斜面体が明確に区別され,堰部自 体も斜面体と独立して渦状模様を顕出させるものであって,このことにより 斜面体と堰部それぞれによって二重の明確な渦状模様を生じさせるという 印象を与えるものである。したがって,差異点1は,本件意匠と被告意匠の 類否判断に大きく影響を与える。 差異点2(斜面体の個数)及び3(斜面体の形状)も,需要者の注意を引 くと考えられる渦流生成部の形状に係る差異であり,類否判断に影響を与え るといえる。もっとも,本件意匠と被告意匠において,斜面体の形状は,い ずれも最も長い曲線が内側に湾曲する3つの線で囲まれるものであり,その 形状の差は大きなものとはいえない。そして,本件意匠と被告意匠では,こ のような形状の斜面体がいずれも捕捉部を中心として等角度位置に配置さ れていて,斜面体の形状に大きな差がないことからも,その個数が6個であ っても4個であっても,数個の斜面体で構成されているとの印象を与える側\n面があり,個数の差が美感に与える影響は必ずしも大きなものであるとはい えない。差異点4(捕捉部の形状)は,需要者の注意を引くと考えられる捕 捉部の形状に係る差異であり,本件意匠の捕捉部には整流体がないのに対し, 被告意匠には,本件意匠にはない整流体があり,それが膨出していることか らも,類否判断に一定の影響を与えるといえる。 差異点4から6は,いずれも,需要者の注意を引くとはいえない,フラン ジ部における差異であり,その差異も大きくなく,類否判断に与える影響は 大きくないといえる。
ウ 以上によれば,本件意匠と被告意匠は,基本的構成態様で共通し,具体的\n構成態様においても,注意を引くべき形状等に係る共通点1及び2において\n共通する。もっとも,本件意匠の基本的構成態様は,注意を引くべき形状等\nとはいえず,また,具体的構成態様の共通点も類否判断に与える影響を特に\n大きく取り扱うことは相当ではない。 他方,本件意匠と被告意匠の具体的構成態様の差異のうち,差異点1は,\n本件意匠において特に注意を引くべき形状等に関する差異であり,被告意匠 には本件意匠には見られない堰部があるのであり,前記のとおり,それが類 否判断に与える影響は大きい。また,差異点4も類否判断に一定の影響を及 ぼす。 これらからすると,本件意匠と被告意匠の差異点から受ける印象は,本件 意匠と被告意匠の共通点から受ける印象を凌駕するものであるといえる。よ って,被告意匠は,本件意匠に類似していないというべきである。
(7) 原告は,本件意匠も被告意匠も,堰部の有無にかかわらず,内側に向かう渦 の流れという美感が共通するので,堰部の有無は美感判断に影響をしないと主 張する。既に説示したとおり,内側に向かう渦の流れという美感自体は,公知 意匠にも共通するありふれた意匠であり(公知意匠1から4),この点を共通 にすることを類否判断で大きく扱うことは相当ではない。 また,原告は,公知意匠1から4のヘアキャッチャーに係る意匠はいずれも, 正面視において渦流壁がフランジ部よりも上方に張り出していたところ,本件 意匠も被告意匠もこれがなく,全体的に平面的な美感を共通にしていると主張 する。上記公知意匠における渦流壁は,フランジ部よりも上部に張り出し,ま た,平面視において占める面積は大きく,被告意匠の堰部は,公知意匠の渦流 壁に比べれば,その存在感は大きくない。しかし,渦流生成部を区分けする構\n造体がフランジ部よりも上部に張り出していない意匠自体は公知であったと いえる上(公知意匠5),本件意匠は渦流壁,堰部に相当する部位を全く有して いないのに対し,被告意匠は堰部を有しているのであって,堰部の存在の有無 自体が類否判断に大きな影響を与えるというべきである。原告の指摘は前記判 断を覆すに足りるものではない。

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令和2(行ケ)10038  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年9月28日  知的財産高等裁判所

 薬について、動機付け無しとした審決が取り消されました。顕著な効果も記載が無い、実験成績証明書の参酌をしたとしても、顕著な効果とはいえないと判断されました。

 前示のとおり,本件訂正発明の構成は容易想到であるが,これに対し,\n被告は,前記第3の5(2)イのとおり,本件訂正発明は,本件3条件を全て 満たす患者に対する顕著な骨折抑制効果(以下「効果1)」という。),2)本 件条件(4)の服薬歴がある患者に投与すると,本件条件(4)の服薬歴 のない患者に対するよりも骨折抑制効果がより増強される効果(以下「効 果2)」という。)を奏し,これらの効果は,当業者が予測をすることができ\nなかった顕著な効果を奏するものである旨主張する。 以下,これらの効果について検討する。
(ア) 効果1)について
a 前記イ(イ)のとおり,骨粗鬆症は,骨強度の低下を特徴とし,骨折 の危険性が増大した骨疾患であり,骨粗鬆症の治療の目的は骨折を予\n防することであり,「骨強度」は骨密度と骨質の2つの要因からなり, 骨密度は骨強度のほぼ70%を説明するとの技術常識があったから, 当業者は,骨密度の増加は,骨折の予防に寄与すると理解するところ,\n甲7文献には,「ここに挙げた薬剤を投与することによって骨密度(B MD)が増加するため,骨折予防は飛躍的に進歩した」(296頁右欄\n10行ないし297頁左欄25行目)と骨密度の増加が骨折予防に寄\n与することが記載され,その上で,48週で骨密度を8.1%増大させ たことが開示されている(300頁左欄11行ないし右欄6行目)。そ うすると,甲7発明の骨粗鬆症治療剤が骨折を抑制する効果を奏して いることは,当業者において容易に理解できる。
b 効果1)の骨折抑制効果とは,単なる骨折発生率の低減ではなく,プ ラセボ投与群の骨折発生率と対比した場合の骨折発生率の低下割合を 指すものであるが,本件明細書の記載からでは,本件3条件を全て満 たす患者と定義付けられる高リスク患者に対する骨折抑制効果が,本 件3条件の全部又は一部を欠く者と定義付けられる低リスク患者に対 する骨折抑制効果よりも高いということを理解することはできない。 すなわち,効果1)を確認するためには,高リスク患者に対する骨折 抑制効果と低リスク患者に対する骨折抑制効果とを対比する必要があ るが,前記1のとおり,本件明細書には,実施例1において,高リス ク患者では,100単位週1回投与群における新規椎体骨折及び椎体 以外の部位の骨折発生率は,いずれも実質的なプラセボである5単位 週1回投与群における発生率に対して有意差が認められるが,低リス ク患者では,100単位週1回投与群における新規椎体骨折及び椎体 以外の部位の骨折の発生率は,いずれも,5単位週1回投与群におけ る発生率に対して有意差が認められなかったと記載されているのにと どまる(【0086】ないし【0096】,【表6】ないし【表\11】)。 そして,低リスク患者の新規椎体骨折についていえば,100単位週 1回投与群11人と5単位週1回投与群10人(令和3年1月15日 付け被告第1準備書面33頁における再解析の数値による。)について, それぞれ,ただ1人の骨折例数があったというものであり,また,椎 体以外の部位の骨折は,上記5単位週1回投与群について,ただ1人 の骨折例数があったというものであって,有意差がなかったことが, 症例数が不足していることによることを否定できない。このように, 低リスク患者において,100単位週1回投与群の新規椎体骨折及び 椎体以外の部位の骨折の発生率が5単位週1回投与群のそれらの発生 率に対して有意差がなかったとの結論が,上記のような少ない症例数 を基に導かれたことからすると,高リスク患者における骨折発生の抑 制の程度を低リスク患者における骨折発生の抑制の程度と比較して, 前者が後者よりも優れていると結論付けることはできない。 したがって,実施例1をみても,高リスク患者に対するPTHの骨 折抑制効果が,低リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高 いということを理解することはできず,さらに,本件明細書のその他 の部分をみても,高リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果が,低 リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高いということを理 解することはできない。 以上によれば,効果1)は,本件明細書の記載に基づかないものとい うべきである。
c 被告は,効果1)を明らかにするものとして,別紙4の実験成績証明 書(甲79)を提出する。
しかしながら,本件明細書の記載から,高リスク患者に対するPT Hの骨折抑制効果が,低リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果よ りも高いということを理解することができず,また,これを推認する こともできない以上,効果1)は対外的に開示されていないものである から,上記実験成績証明書を採用して,効果1)を認めることは相当で ない。 仮に,上記実験成績証明書を参酌するにしても,本件3条件の全て を満たす患者(高リスク患者)のグループと,本件3条件の全部又は 一部を満たさない患者(低リスク患者)のグループのうちごく一部の グループとを比較しているものにすぎないから,本件3条件の効果が 明らかになっているとはいえない。また,上記実験成績証明書には, 本件条件(1)を満たし,本件条件(2)又は本件条件(3)のいず れかを満たさない患者とされる「非3条件充足患者」につき,「非3条 件充足患者においてもPTH投与群ではコントロール群よりも骨折の 発生が抑制されたが,3条件充足患者においては,PTH投与群では コントロール群よりも骨折の発生が『有意に』抑制された。」旨が記載 されているだけである。すなわち,本件3条件を満たさない患者につ いては,PTH投与群においてコントロール群よりも骨折発生が抑制 されたものの有意差がなかったことが理解できるのみであり,それら 有意差がなかったとの結論も症例数が少ないことによるものと推認さ れることからすると,本件3条件の全てを満たす患者の骨折発生の抑 制の程度が本件3条件を満たさない患者に対する骨折発生の抑制の程 度より優れていると結論付けることはできない。そうすると,上記実 験成績証明書をみても,本件3条件を全て満たす患者に対するPTH の骨折抑制効果が,本件3条件を満たさない患者に対するPTHの骨 折抑制効果よりも高いということを理解することはできない。 d 以上によれば,いずれにしても効果1)を認めることはできないから, その他の点について判断するまでもなく,効果1)を予測することので\nきない顕著な効果という余地はない。
(イ) 効果2)について
前記ア(ウ)のとおり,効果2)は本件明細書からうかがうことのできな い効果である。
被告は,骨粗鬆症治療薬の服薬歴が本件3薬剤のいずれか1剤のみの 場合における新規椎体骨折発生数が記載された甲86証明書により本件 訂正発明の顕著な効果が裏付けられると主張する。仮に,上記実験成績 証明書を参酌するにしても,甲86証明書は,本件3薬剤それぞれにつ いて,服薬歴のある患者につき被験薬(PTH)を投与された場合と対 照薬(プラセボ)を投与された場合との骨密度変化率や新規椎体骨折発 生数を対比しているにすぎず,本件3薬剤のいずれかの服薬歴がある患 者と当該薬剤の服薬歴がない患者との間で,被験薬を投与された場合の 骨密度変化率や新規椎体骨折発生数を対比したものではないから,プラ セボ投与との対比による被験薬の骨粗鬆症治療に対する効果しか示され ていない。しかも,各薬剤についての評価例数があまりにも僅少で,そ のようなデータから算出される骨折相対リスク減少率は,骨折例数が1 件増減するだけで大きくその値を変えることは明らかであり,骨折相対 リスク減少率を対比してその効果を論じることも相当ではない。

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令和1(ワ)23407  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年8月10日  東京地方裁判所

 漏れていたのでアップします。「調整」の文言を解釈して、被告製品1,2は技術的範囲に属しないと判断されました。

 本件発明の技術的意義や本件発明における調整手段の位置付けについて みると,従来の吊張り装置としては,略円弧状の天井部に沿って設けら れたウインチワイヤーと吊り上げワイヤーとを連結する連結体が,天頂 部との距離に応じてウインチワイヤーに沿って移動するよう構成されて\nいる装置が考えられたが,複数の停止体の設置等の調整作業を天井側で 行わなければならず費用がかかり煩雑である等の問題点があった(段落 【0006】【0008】)ところ,本件発明は,略円弧状の屋内の天 井部に沿ってウインチワイヤーを設け,吊り上げワイヤーを一端側でウ インチワイヤーに連結しその他端側に吊張体を設けるなどの構成をとる\nとともに,天頂部,又は天頂部に最も近接している基準となる吊り上げ ワイヤーのウインチワイヤーとの取付位置と,任意の吊り上げワイヤー のウインチワイヤーとの取付位置との「高さ方向の距離に対応した長さ」 (構成要件C),すなわち,取付位置の高さの差の長さ(以下「本件差\n分」という。)に基づく吊り上げワイヤー等の長さの変更,すなわち調 整を,ネット等の吊張体若しくは吊り上げワイヤーの下端(床面)側又 はその両方に調整手段を設け,あらかじめ行うことにより,上記問題点 を解決するものである(段落【0010】【0025】【0026】 【0045】。前記1(2))。
また,「調整」とは,「1)調子の悪いものに手を加えてととのえること。 2)ある基準に合わせてととのえること。過不足なくすること。3)釣り合 いのとれた状態にすること。折り合いをつけること。」(大辞林第4版) などとされる。 上記のとおりの本件発明の技術的意義,調整手段の意義や,「調整」の 一般的意味からすると,本件発明に係る吊張り装置において吊張体を過 不足なく適切に吊り張りするためには,本件差分が認識された上で,本 件差分を基準としてこれに合うように吊り上げワイヤー等の長さをあら かじめ変更する必要があり,本件発明の「調整手段」は,そのためのも のであって,本件差分を基準としてこれに合うように吊り上げワイヤー 等の長さをあらかじめ変更する構成であり,その調整を行うことにより,\n吊張体を過不足なく適切に吊り張りするための手段であると理解するこ とができる。 本件明細書の具体的な実施例についてみても,ネット吊張り装置におい て,天頂部の吊り上げワイヤー(9b)の取付位置と,他の吊り上げワ イヤー(9a)の取付位置との「距離に対応した長さ」であるL1等の長 さ(L)が認識された上で,一対の筒状体(15)を吊り上げワイヤー に挿通し,その一対(2個)の筒状体の間の距離を「距離に対応した長 さ」(L 本件差分)とすることによって,調整を行う調整手段が記載 されており(段落【0036】【0037】【図1】【図4】【図5】 等)ここでは,ネット体を過不足なく適切に吊り張りするため,吊り上 げワイヤーに挿通する一対の筒状体が設けられ,その筒状体の間の距離 を認識された差(L 本件差分)と同じにすることができることが記載 されており,本件差分(L)を基準としてこれに合うように筒状体の間 の距離の長さをあらかじめ変更する構成が調整手段として記載されてい\nる。以上のとおり,本件発明の「調整手段」(構成要件C)とは,吊張体を\n過不足なく適切に吊り張りするため,認識された本件差分を基準として これに合うように長さをあらかじめ変更するための手段であると解され る。
なお,吊張体の吊張り装置は,複数の部材を組み合わせて構成され,そ\nこには当然に連結部材や係止部材が含まれ,それらの連結部材や係止部 材において,何らかの長さの変更を行うことができる場合もあり得る。 しかし,本件発明の「調整手段」等の技術的意義は,上記のとおりのも のであり,吊張り装置に何らかの長さ変更を行う構成があったとしても,\n本件差分を基準としてこれに合うように吊り上げワイヤー等の長さをあ らかじめ変更するための手段であると認められないものは,本件発明の 「調整手段」とはいえないと解される。仮に,本件発明において,単に 長さを変更する手段のみをもって調整手段に該当すると解するとすれば, 吊張体の施工やメンテナンスに際して吊り上げワイヤー等の長さを変更 するに当たり,他の手段によって,本件差分を基準としてこれに合うよ うにしなければならないことになるが,そのような作業を床面側のみで 行うことが可能であることは本件明細書の記載等によっても明らかでは\nなく,このような構成によっては本件発明の課題を解決することができ\nない。ここで,本件明細書には,吊り上げワイヤーにネット体への係止 体を設けることで,又は,ネット体に吊り上げワイヤーの係止体を設け ることで,吊り上げワイヤーの長さの調整を行うこともできることが記 載されている(段落【0058】)。これまで述べてきたところから, そのような係止体が,認識された本件差分を基準としてこれに合うよう に吊り上げワイヤー等の長さをあらかじめ変更するための手段といえる 場合には,本件発明の「調整手段」といえ,上記記載はその趣旨のもの と理解することができる。それに対し,そのような手段とはいえず,通 常の係止体としての構成,機能\を超える構成,機能\等を有しないものは, これまで述べたところに照らせば,本件発明と関係なく用いられている 係止体であり,本件発明の「調整手段」が有する効果を奏するものでは なく,本件発明の「調整手段」に該当するとは認められない。 他方,被告らは,本件発明の「調整手段」が筒状体など本件明細書に記 載された具体的な実施例に限られる趣旨の主張もするが,本件発明の技 術的範囲が上記の範囲に限定される理由はなく,前記のとおり,本件差 分を基準としてこれに合うように吊り上げワイヤー等の長さをあらかじ め変更する構成を備えたものであれば,本件発明の「調整手段」といえ\nる。
・・・・
(3) 被告製品1が本件発明の技術的範囲に属するかについて
原告は,被告製品1において,各吊り上げワイヤーと各バトンを連結する シャックル,リングキャッチ,チェーン(以下,これらを「本件連結材」と いう。)が本件発明の調整手段であると主張する。 ここで,本件発明の「調整手段」(構成要件C)とは,吊張体を過不足な\nく適切に吊り張りするため,認識された本件差分を基準としてこれに合うよ うに長さをあらかじめ変更するための手段である(前記(1)イ)。 本件連結材は,ワイヤーとバトンを連結する際に通常用いられる連結材と 認められるところ,それは,単に連結のために通常用いられる複数の構成部\n品から成っているものにすぎず,認識された本件差分を基準としてこれに合 うように長さをあらかじめ変更する構成を有するものであるとは認められず,\nそのような調整作業をするための手段とはいえない。 また,被告製品1において,もともと各吊り上げワイヤーのウインチワイ ヤーへの連結位置から連結材の下端までの長さはほぼ同程度であり(前記(2) イ),天頂部に最も近接した吊り上げワイヤーが取り付けられたバトンが床 面に到達した状態においては,他の各吊り上げワイヤーはたわんだ状態とな るのであって(同エ),本件連結材によって吊り上げワイヤー等の長さの変 更は行っていない(同ウ)。本件連結材による長さの変更が想定されている ことを認めるに足りる証拠もなく,本件連結材は,そもそも長さの変更を行 うための手段ではないともいえる。 したがって,被告製品1の連結材は,構成要件Cの調整手段には該当しな\nい。 以上から,被告製品1は,構成要件Cを充足せず,本件発明の技術的範囲\nに属しない。

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令和3(行ケ)10047  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年9月15日  知的財産高等裁判所

 不使用であるとした審決が取り消されました。商標権者は、訴訟にて使用の事実を示す新証拠を提出しました。

 これに対し被告は,1)本件各写真(甲28)の撮影日が2018年11月 14日であることについては,客観的な裏付けがなく,撮影日が同日である ことは疑わしい,2)発行名義を桂ヶ丘開発とする「精算書控」及び「御精算書」 (甲46の1ないし9)は,本件審判段階では提出されず,本件訴訟に至って 初めて提出されたものであること,桂ヶ丘開発は原告が代表取締役を務める会\n社であり,発行名義を桂ヶ丘開発とする精算書をいつでも作成できること,令 和3年6月20日に本件ゴルフ場のクラブハウス内の物販コーナーで「福米」 を表示した米が販売された際に発行された「御精算書」(乙1)には,「福米」\nの文字の記載がなく,甲46の1ないし9記載の発行日付当時に実際に発行さ れていた精算書に「福米」の文字が表示されていたものとは,にわかに信用し\n難いことに照らすと,甲46の1ないし9の証明力は低い,3)桂ヶ丘開発が本 件ゴルフ場の利用者に対して福米2018を販売したとの原告の主張は,原 告が本件審判段階で本件ゴルフ場のクラブハウス内で一般客に対して自ら商 品「米」の販売を行ったと主張していたこと及びその立証のために提出され た桂ヶ丘開発の取締役会議事録(甲45)の記載と矛盾する旨主張する。 しかしながら,1)については,本件各写真(甲28の2枚の写真)の画像デ ータ(甲56)の「プロパティ」の「詳細」の「撮影日時」欄にそれぞれ「2 018/11/14 13:24」(甲28の「下」の写真に係る画像データ) 及び「2018/11/14 13:25」(甲28の「上」の写真に係る画 像データ)と表示されていること,本件各写真に写された本件価格表\には「期 間限定」,「福米2018」及び「2018年11月末日までの限定価格。」と の表示があり,その表\示内容は,本件各写真の撮影日時が「2018/11 /14 13:24」及び「2018/11/14 13:25」であるこ とと矛盾しないことに照らすと,本件各写真の撮影日は2018年11月1 4日であると認められる。被告が1)について指摘する原告提出の他の写真(甲 15,29ないし31)に日付が入っていない点,本件ゴルフ場のクラブハウ スのフロント付近で日常的に販売されている商品を写真撮影する理由も考え難 い点,同日以外の日に他の客の少ない時間にフロント前に商品を陳列し,写真 撮影することは容易であるとの点は,上記認定を覆すものではない。
次に,2)については,甲46の1ないし3,5ないし7は,桂ヶ丘開発が 運営する「桂ヶ丘カントリークラブ」作成名義の「精算書控」,甲46の8は, 甲46の3の「精算書控」に対応する「桂ヶ丘カントリークラブ」作成名義 の「御精算書」であり,それぞれ利用者の氏名,「お客様番号」,発行日時, 「精算金額」のほか,「精算項目」欄にプレーフィ,利用税等とともに,「福 米(5kg)」,「数量」欄に「1」又は「2」,「単価」欄に「2,200」, 「金額」欄に「2,200」又は「4,400」との記載があり,その体裁に 特段不自然な点は認められないから,甲46の1ないし3,5ないし8の記載 内容は信用できるものといえる。この点に関し被告が提出する「桂ヶ丘カント リークラブ」作成名義の「御精算書」(乙1)には,「2021年6月20日 1 3:29」,「精算項目」欄に「〈軽〉新米(2kg)」,「数量」欄に「1」,「単 価」欄に「800」,「金額」欄に「800」と記載され,「福米」の記載はな いことが認められる。しかし,乙1は,要証期間経過後の令和3年6月20 日に単価800円で販売された「新米(2kg)」の精算書であり,甲46の 1ないし3,5ないし8に係る「福米」とは販売時期が異なること,本件各 写真に撮影された本件価格表に表\示された「福米2018」の「2kg」の 販売価格「700円」と単価が異なることに照らすと,乙1に係る「新米(2 kg)」は,甲46の1ないし3,5ないし8に係る「福米」と異なる商品で あると認められるから,乙1に「福米」の記載がないことは,甲46の1な いし3,5ないし8の記載内容の信用性を揺るがすものではない。また,原告 は,本件審決において本件審判段階で主張した本件商標の使用の事実が認め られなかったため,本件訴訟において,本件商標の使用の事実を改めて整理 して主張し,その立証のため,甲46の1ないし9を新たに提出したものであ るから,甲46の1ないし9が本件審判段階では提出されなかったことや桂 ヶ丘開発は原告が代表取締役を務める会社であることは,甲46の1ないし3,\n5ないし8の信用性を左右する事情には当たらない。 さらに,3)については,本件審決は,原告による「桂ヶ丘カントリークラ ブ」(本件ゴルフ場)のクラブハウス内の物販コーナーにおける「米」の販売 に係る本件商標の使用の主張について,平成30年10月1日に開催された 桂ヶ丘開発の取締役会議事録(審判乙34・本訴甲45)には,「第1号議案 として,本件商標権者が個人事業主として生産している米(福米2018) を桂ケ丘カントリークラブのロビー内の物販コーナーで販売することについ て承認された旨の記載があるが,当該米についての販売期間の記載はない。」 (審決書13頁36行〜14頁1行)として,上記主張は認められない旨判 断した。原告は,本件審決の上記判断を踏まえて,本件訴訟において,上記 物販コーナーにおける「米」の販売に係る本件商標の使用の主体を,原告か ら原告が代表取締役を務める桂ヶ丘開発に構\成し直して,桂ヶ丘開発が本件 ゴルフ場の利用者に対して本件ステッカーが米袋に貼付された福米2018\nを販売したとの主張をするに至ったものと認められるから,原告の主張の変 遷が不自然であるということはできないし,上記取締役会議事録の記載と矛 盾するということもできない。

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令和2(ワ)3247等  損害賠償請求  特許権  民事訴訟 令和3年9月6日  大阪地方裁判所

 原告は被告に対して特許権侵害による損害賠償を求めましたが、被告は提訴自体が不法行為は裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとして、反訴請求しました。裁判所は被告の主張を認め、50万円の損害賠償を認めました。

 (1) 前提事実,争いのない事実に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば, 次の事実が認められる。 ア 被告は,原告退職後の平成22年9月から漏水探査等を目的とする事業を行 うようになったところ,平成23年頃実施の門川町上水道漏水調査委託業務の入札 に参加し,これを落札した。これについて,原告は,その後,門川町に対し,被告の 指名競争入札参加申請書及び被告が納品した漏水調査結果報告書等を求めて公文書\n公開請求を行った(甲15,16)。
イ 被告は,平成26年10月1日,原告から,平成23年4月26日付け「情 報窃盗に関する記述」と題する部分及び平成25年9月26日付け「情報窃盗及び 機密保持違反に関する刑事告訴に至る記述」と題する部分からなる書面(乙7)を 受領した。同書面のうち,前者の部分には,被告が,原告が「業務を通じ考案した 「エアー加圧工法」を実用新案特許出願中 平成2年6月 その工法さえも盗み出 した」との旨や,書類(結果報告書及び作業計画書等)の無断使用による著作権侵 害,原告の固定客や取引先の横取り等による原告の被害額が推定1500万円以上 に上ること,被告を刑事告訴する旨等が記載されている。後者の部分には,前者の 部分と同趣旨の記載のほか,「虚偽申請による不当なる資格取得」との記載があり,\n原告の被害額が推定3000万円以上に上ること,被告を刑事告訴する旨等が記載 されている。
ウ 原告は,全国漏水調査協会会長に宛て,平成27年4月1日付け「質問書」 (乙9)を送付した。同書面には,同協会発行の有資格者認定名簿における被告の 記載に関する質問等が記載されている。
エ 原告は,同月6日,被告に対し,「「漏水調査技術者認定証等」に関する件」 と題する書面(乙8の1)を送付した。同書面には,被告につき,「不正に全国漏 水調査協会の民間資格者として,再登録を行っています。」,「貴殿が行った行為 は,「業務上横領」や「詐欺」に匹敵する許し難い行為だと思います。」,「まず貴\n殿が,「弊社の技術」を盗む目的を持って入社し弊社が長年の研究や試行錯誤の上 で開発した「エア加圧工法」と言う独自工法を盗み」などと記載されていると共に, 「期日までに,何らかのご連絡,若しくは,「漏水調査技術者証の返還」が,無き 場合は,「刑事告訴」及び「法的手段」を取りますので,ご了承下さい。」とも記載 されている。
オ 原告は,全国漏水調査協会会長に宛て,同年5月6日付け「勧告書」(甲3 2,乙10)を送付した。同書面は,上記「質問書」に対する回答が得られていな いとして送付されたものであり,ここには,有資格者の調査技師の欄に被告が記載 されているが,その記載内容は虚偽である旨の指摘等が記載されている。また,同 書面(乙10)の余白には,「この書面を提出した事で,彼は責任を取り自から会 長職を辞職した!!」との原告代表者の手書きによる記載がある。\n
カ 原告は,同年6月11日,被告に対し,同日付け「通知書」(甲29,乙11 の1)を送付した。同書面には,「その盗んだ技術の中身には,長年研究開発した 「エア加圧工法」が含まれており,弊社が開発した技術を無断で利用して,平然と 営業利益を上げています。」などとして,原告の損害金総額1億円の支払を求める 旨等が記載されている。 これに対し,被告は,同年9月14日,原告に対し,同日付け「回答書」(甲9, 31,乙12の1)を送付した(同月15日に原告に到達。乙12の2)。同書面に は,「調査内容の「エア加圧工法」は他社企業でも行われている工法で,特許侵害 等の法を犯す工法ではありません」などと記載されていると共に,1億円の支払請 求については,内容が事実に反していることなどから応じられない旨が記載されて いる。
キ 被告は,平成31年2月7日頃,原告から,平成30年2月7日付け「最後 通告書」(乙13の1。なお,同書面の作成日付は,書面全体の記載の趣旨から, 「平成31年」の誤記と思われる。)を受領した(乙13の2)。同書面には,「貴 殿は,…私文書偽造詐欺行為を平然と行って置きながら,…全国漏水調査協会に私\n文書偽造の行為にあたる事を長年繰り返し申請をして,不正に漏水調査士の資格を\n取得しています。」,「弊社の「報告書書式や漏水調査カルテ書式等」を退職時に 何らかの形で持ち出しましたね。」,「「工具は持ち出して居ない」とは思います が,どの様な方法でエアを注入していますか?」,「漏水調査工法のエア加圧工法 は,弊社が開発したものです。…弊社は,昨年5月11日付で,エア加圧工法で, 「特許権」を取得しています。このままだと仕事を失う事になりますよ。速やかに, なんらかの行動を起して下さい。」,「弊社が取得した「エア加圧工法」は,…何人 たりとも勝手に利用して,使用が出来ないのです。それを犯して使用する場合は, 「知的財産権の侵害行為」となり,そこには,処罰の対象になります。…独自の工 法を考えださない限りは,特許権侵害行為になり,この仕事は,出来ません。」な どと記載されていると共に,改めて,総額1億円の技術使用料の支払を求める旨等 が記載されている。 なお,同書面には,被告の使用する工法が原告の「特許権」の侵害にあたると原 告が考える理由等に関する記載はない。
ク 原告は,本件の証拠として提出した令和2年8月22日付け「上申書(5)認否 事項についての反論」(甲21)において,「裁判を提訴するまで,被告の行って居 る工法につては,知る由は無かった。」としている。
ケ 原告は,全国漏水調査協会会長に宛て,本訴の提起後である令和2年9月1 1日付けで,同協会の漏水調査技術資格認定者名簿における被告の記載に関して質 問をし,同月28日付けで回答を得たものの,これを不十分として,同年10月1\n日付け「公開質問書」(甲32)を送付して再度質問をし,同月16日付けで回答 を得た。
(2) 法的紛争の当事者が紛争の解決を求めて訴えを提起することは,原則として 正当な行為であり,訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴 訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くもので ある上,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知 り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的 に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当 である(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月26日第三小法廷判決・ 民集42巻1号1頁参照)。 前記(1)認定のとおり,原告は,被告が原告を退職して独立開業した後,本訴の提 起に至るまでの間,被告が門川町の業務を落札したことを契機に,被告の事業活動 を問題視するようになり,被告の使用する工法が原告の「エア加圧工法」を無断で 使用するものであるなどとして,刑事告訴の可能性にも言及するなどしつつ,被告\nに対して直接非難する趣旨を含む書面を送付した。他方で,原告は,漏水調査協会 に対しても,有資格者名簿に被告が記載されていることにつき,質問の形式を取り ながら,これを問題視していることをうかがわせる内容の書面を送付した(しかも, 原告は,本訴提起後も改めてこのような行為に及んでいる。)。さらに,本件特許 権の設定登録後には,「エア加圧工法」につき特許権を取得したとの前提ではある ものの,被告の行為は特許権侵害にあたるとして,技術使用料の支払を重ねて求め たものである。 こうした経過を経て本件の本訴が提起されたことを踏まえると,本訴の提起も, 被告がその事業上実施する工法を原告が問題視して行った一連の行動の一環として 行われたものと理解される。
他方,原告と被告との一連のやり取りにおいて,原告は,被告から「特許侵害等 の法を犯す工法ではありません」などと反論されたこともあるにもかかわらず,被 告の使用する工法等が原告の特許権を侵害するものと考える理由に言及したことは なく,また,被告が使用する漏水探査方法の具体的内容やこれに使用する装置につ いて質問等をしたのも,平成30年2月7日付け「最後通告書」におけるものが初 めてである。加えて,本件における原告の主張立証活動,就中,原告自身が「裁判 を提訴するまで,被告の行って居る工法につては,知る由は無かった。」とし,実 際,被告が主張する被告装置の構成等を前提として主張立証を行っていることに鑑\nみると,原告は,本訴の提起に先立ち,被告の使用する漏水探査方法やこれに使用 する装置に関する調査等を自ら積極的には必ずしも行っていなかったことがうかが われる。 このような本訴の提起に至る経緯や訴訟の経過等に加え,前記のとおり,被告装 置につき本件各発明の技術的範囲に属さないことに照らすと,原告は,本訴で主張 する権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであることにつき,少なく とも通常人であれば容易にそのことを知り得たのに,被告による事業展開を妨げる ことすなわち営業を妨害することを目的として,敢えて本訴を提起したものと見る のが相当である。 そうすると,原告による本訴の提起は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相 当性を欠くものと認められるから,被告に対する不法行為を構成する。これに反す\nる原告の主張は採用できない。

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令和1(ワ)11673  差止請求等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和3年9月3日  東京地方裁判所

 女性用下着の形状について、周知著名商品等表示ではないと判断されましたが、不競法2条1項3号の形態模倣であるとして、約2億円の損害賠償が認められました。

 原告は,原告商品は形態1)ないし7)を組み合わせたものであり,原告 商品全体の形態と同一又は類似の商品は見当たらないから,他の同種商 品と識別し得る特徴を有すると主張する。 しかし,原告商品の販売が開始された当時,原告商品が備える形態1) ないし7)の全てを備えるブラジャー又はナイトブラが販売されていたこ とを認めるに足りる証拠はないものの,前記(1)ウ(ア)のとおり,形態1) ないし7)のうちの3つ又は4つを備える商品AないしGが存在していた。 そうすると,原告商品の販売開始時点では,既に,原告商品の形態に似 通った商品が複数販売されていたということができる。しかも,前記(ア) のとおり,原告商品の形態1)ないし7)は,いずれも他の商品とは異なる 顕著な特徴とは認められないから,当該商品には認められないが原告商 品には認められる形態上の特徴により,需要者であるブラジャー又はナ イトブラの購入に関心がある一般消費者が出所の違いを識別することが できるとはいえない。そして,形態1)ないし7)を組み合わせることによ り上記需要者の注意を特に惹くことになる事情も見当たらないことから すると,形態1)ないし7)を組み合わせた原告商品の形態が他の同種の商 品とは異なる顕著な特徴を有していると認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
ウ 周知性について
前記(1)イ(ア)のとおり,原告商品は平成28年9月12日に販売が開始 されたところ,原告商品の形態につき周知性が確立したと原告が主張する 平成29年12月までに約1年4か月,被告商品1の販売が開始された平 成30年10月まででも約2年1か月しか経過していない。そして,前記 (1)ウ(ア)のとおり,原告商品の販売が開始される前から,原告商品が備え る形態1)ないし7)のうち複数を有するブラジャー又はナイトブラが販売さ れており,原告商品の形態が原告によって長期間独占的に利用されたとは 認められない。
・・・
商品の形態を比較した場合,問題とされている商品の形態に他 人の商品の形態と相違する部分があるとしても,当該相違部分についての 改変の内容・程度,改変の着想の難易,改変が商品全体の形態に与える効 果等を総合的に判断した上で,その相違がわずかな改変に基づくものであ って,商品の全体的形態に与える変化が乏しく,商品全体から見て些細な 相違にとどまると評価されるときには,当該商品は他人の商品と実質的に 同一の形態というべきである。
イ 被告商品1について
(ア) 前記(1)アのとおり,被告商品1は,原告商品が備える形態1)ないし7) を全て備え,別紙3比較写真目録記載の写真のとおり,全体的なデザイ ンはほぼ同一であるといえる。 被告商品1と原告商品の間には相違点1)が認められるが,別紙2原告 商品目録記載の写真のとおり,原告商品のカップ部の中央に付けられた リボンはごく小さな装飾にすぎず,そのようなリボンを取り外すという 改変については,その程度はわずかであり,着想することが困難である とはいえず,商品全体の形態に与える効果もほとんどないといえる。 また,被告商品1と原告商品の間には相違点2)が認められるが,別紙 1被告商品目録記載1の写真のとおり,左右の前身頃を構成する3枚の\n生地のうち最下部にある生地が被告商品全体に占める面積はそれほど大 きいものではなく,他の部分の布地と同系色であってレース生地の存在 が際立つものではない上,別紙3比較写真目録記載の写真のとおり,原 告商品と被告商品1とで,ナイトブラとしての機能を成り立たせるパー\nツの形状及び構成は同一といってよいことからすると,相違点2)は,需 要者であるブラジャー又はナイトブラの購入に関心がある一般消費者に 対し,原告商品よりもレース生地が比較的多いという印象を与えるにと どまるから,被告商品1の上記部分をレース生地とすることが商品全体 の形態に与える効果は小さいといえる。さらに,前記1(2)イのとおり, ブラジャーにレース生地を用いること自体ありふれた形態であり,上記 部分を無地の生地からレース生地に置き換える着想が困難であるともい えない。
そうすると,相違点1)及び2)は,いずれもわずかな改変に基づくもの であり,商品の全体的形態に与える変化は乏しく,商品全体から見て些 細な相違にとどまるといえるから,被告商品1は原告商品と実質的に同 一の形態であると認めるのが相当である。 (イ) 前記(ア)のとおり,被告商品1と原告商品は実質的に同一の形態であり, 前記前提事実(2)及び(3)アのとおり,被告商品1の販売が開始された平 成30年10月頃に先立つ平成28年9月12日に原告商品の販売が開 始されているところ,本件全証拠によっても,被告が被告商品1を独自 に開発したことをうかがわせる事情は認められないことからすると,被 告は原告商品の形態に依拠して被告商品1を作り出したと推認するのが 相当である。
(ウ) 以上によれば,被告商品1は,原告商品の「商品の形態」を「模倣し た商品」であると認められる。
・・・
また,被告商品2と原告商品の間には相違点5)が認められるが,別紙 1被告商品目録記載2の写真のとおり,被告商品2も,被告商品1と同 様,レース生地の色合いが他の部分の布地と同系色であって,レース生 地の存在が際立つものではなく,被告商品2では,被告商品1よりレー ス生地が多く用いられているものの,そのレース生地が肩紐部や背部と いった比較的注目することが多くないと考えられる部分に用いられてお り,一方で,同写真と別紙2原告商品目録記載の写真を見比べると,原 告商品と被告商品2とで,ナイトブラとしての機能を成り立たせるパー\nツの形状及び構成はほぼ同一であるといえることからすると,この改変\nが商品全体の形態に与える効果は大きくないというべきである。さらに, 前記1(2)イのとおり,ブラジャーにレース生地を用いること自体ありふ れた形態であり,被告商品2の相違点5)に係る部分を無地の生地からレ ース生地に置き換える着想が困難であるとはいえない。 被告商品2と原告商品の間には相違点6)が認められるが,ホックが4 段階であるか3段階であるかの違いにすぎず,ホックを連結する段階数 を増やすという改変を着想することは容易であり,そのような改変が商 品全体の形態に与える効果は小さいといえる。 そうすると,相違点3)ないし6)は,いずれもわずかな改変に基づくも のであり,商品の全体的形態に与える変化は大きくなく,商品全体から 見て些細な相違にとどまるといえるから,被告商品2は原告商品と実質 的に同一の形態であると認めるのが相当である。
(イ) 前記(ア)のとおり,被告商品2と原告商品は実質的に同一の形態であり, 前記前提事実(2)及び(3)イのとおり,被告商品2の販売が開始された平 成31年2月頃に先立つ平成28年9月12日に原告商品の販売が開始 されているところ,本件全証拠によっても,被告が被告商品2を独自に 開発したことをうかがわせる事情は認められないことからすると,被告 は原告商品の形態に依拠して被告商品2を作り出したと推認するのが相 当である。
・・・
不競法5条2項の侵害者が侵害行為により受けた利益の額は,侵害者の侵 害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりその製 造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額で あると解するのが相当である。 辞任前の被告訴訟代理人が作成した一覧表(甲54)によれば,被告が被\n告商品1を販売したことにより,1億5794万円の売上げがあり,商品原 価として2650万円,カード決済料金として552万7900円及び送料 原価として2650万円を要したこと,被告が被告商品2を販売したことに より,1億4254万5320円の売上げがあり,商品原価として2873 万7640円,カード決済料金として498万9086円及び送料原価とし て2391万7000円を要したことが認められる。
そして,弁論の全趣旨 によれば,上記の商品原価,カード決済料金及び送料原価は,いずれも被告 各商品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費と認められる。 他方で,上記一覧表(甲54)には,被告商品1につき広告費として73\n20万5070円,人件費420万円及び販売システム費用789万700 0円,被告商品2につき広告費として7063万0834円,人件費630 万円及び販売システム費用712万7266円を要したかのような記載があ る。しかし,被告が上記広告費を支出してどのような内容の広告をしたのか, それが被告各商品に係るものであったかは,証拠上明らかではないし,上記 人件費及び販売システム費用がいかなる目的で支出されたかも証拠上明らか でないから,これらの費用は,被告各商品の製造販売に直接関連して追加的 に必要となった経費とは認められない。
したがって,被告が被告商品1を販売したことによる利益の額は9941 万2100円(=1億5794万円−2650万円−552万7900円− 2650万円)であると,被告商品2を販売したことによる利益の額は84 90万1594円(=1億4254万5320円−2873万7640円− 498万9086円−2391万7000円)であると,それぞれ認められ る。
(2) 本件訴訟に現れた全ての事情を勘案すると,本件訴訟の弁護士費用相当の 損害額は,被告商品1につき994万1210円,被告商品2につき849 万0159円と認めるのが相当である。
(3) したがって,被告が被告各商品を販売したことにより原告が被った損害額 は,合計2億0274万5063円である。

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令和2(行ケ)10044  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年8月30日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が取り消されました。論点は「ω−6脂肪酸の用量は,40g以下」との動機付けがあるか否かです。

 原告は,相違点2に関し,本件審決が,1)刊行物5の記載及び脂質の大量 の摂取を控えることが健康上の技術常識であることを考慮すると,1回の「用 量」でω−6脂肪酸を40gを超えた脂質含有配合物として用いることは考 えられないから,「ω−6脂肪酸の用量は,40g以下」であること(相違点 2に係る本願発明の構成)は,刊行物5に記載自体がなくとも記載されてい\nるに等しい事項であるから,相違点2は,実質的な相違点ではないか,刊行 物5発明において,「ω−6脂肪酸の用量は,40g以下」とすることは,「用 量」の意味が,1回の「用量」や1日の「用量」であるかにかかわらず当業 者が容易になし得る技術的事項である旨判断したのは誤りである旨主張する ので,以下において判断する。
ア(ア) 刊行物5(甲24)には,1)「従来の技術」として「最近の日本人の 食生活は欧米型化が進み,肉類を中心とした食事の機会が大幅に増え, 脂肪の摂取量については一日当り40gと増加し,それに伴い,疾病の 種類も変化し,高血圧,心臓病の循環器系疾患や乳癌,大腸癌などが増 加して,こちらも欧米型化になり,大きな社会問題になっている。これ らの疾病の原因は,脂肪酸の摂取過多と考えられていた。しかし,研究 が進むにつれて,脂肪を構成する不飽和脂肪酸の種類の摂取アンバラン\nスによることが判明した。これは肉類に多く含まれるω−6脂肪酸であ るアラキドン酸から産生される2型のプロスタグランジンやロイコトリ エンなどが過剰になり,ω−3脂肪酸によって産出される3型のプロス タグランジンやロイコトリエンとのバランスがくずれる事による。」(前 記(1)エ),2)「発明が解決しようとする課題」として,「ω−6脂肪酸の 過剰摂取は,PGF2α,TXA2などの2型プロスタグランジンやロイ コトリエンの産生を促し,血小板凝集や血管収縮を起こし動脈硬化や血 栓症を誘発する。しかしω−3脂肪酸は逆に,これらの疾患を抑制した り,更に,乳癌や大腸癌の発癌率を抑えたり(・・・),癌細胞の転移能を低\n下させる(・・・)ことが報告されている。・・・気をつけなければならないの は,ω−3脂肪酸ばかりを摂取するのではなく,ω−3脂肪酸とω−6 脂肪酸をバランス良く摂取することである。しかし,前述のように現在 の日本人の食事はω−6脂肪酸の摂取に偏っている。この状態を改善す るためにω−3脂肪酸などを高濃度に濃縮して添加した食品や栄養補助 剤などが開発された。しかしこれらの製品を過度に摂取した場合,逆に ω−3脂肪酸の過剰摂取につながり新たな疾病の原因となる。そこでω −3,ω−6脂肪酸の適正な比率での摂取が必要である。」,「本発明は, ω−3脂肪酸とω−6脂肪酸をバランス良く摂取することができ,前述 の疾病の予防や改善に効果が期待されるように,脂質の脂肪酸組成を適\n正比率に調整した食品を提供することを目的とする。」(以上,前記(1)オ), 3)「課題を解決するための手段」として,「本発明の食品は,脂肪酸組成 をω−3脂肪酸とω−6脂肪酸との比が1:1〜1:5になるように調 整した高度不飽和脂肪酸を含むことを特徴とする。」,「本発明の食品の脂 肪酸組成は,ω−3脂肪酸とω−6脂肪酸との比が1:1〜1:5にな るように調整する。この範囲よりも小さいときは,ω−3脂肪酸が過剰 になり,この範囲よりも大きいときはω−6脂肪酸が過剰になってしま い,いずれの場合もω−3脂肪酸とω−6脂肪酸との摂取バランスが崩 れてしまうので好ましくない。」(以上,前記(1)カ),4)「発明の効果」 として,「本発明によれば,食品に含有される脂質のω−3,ω−6脂肪 酸の比率を適正比率である1:1〜1:5に保つように調製された食品 を提供することができるので,ω−3脂肪酸とω−6脂肪酸をバランス 良く摂取することができ,高血圧,心臓病の循環器系疾患や乳癌,大腸 癌などの疾病の予防や改善に効果が期待される。」(以上,前記(1)キ)と の記載がある。
これらの記載によれば,刊行物5には,刊行物5記載の高度不飽和脂 肪酸を含む食品(「本発明」)の技術的意義に関し,従来は,高血圧,心 臓病の循環器系疾患や乳癌,大腸癌などの疾病の原因は,脂肪酸の「摂 取過多」と考えられていたが,研究が進むにつれて,脂肪を構成する不\n飽和脂肪酸の種類の摂取アンバランスによることが判明したこと,現在 の日本人の食事はω−6脂肪酸の摂取に偏っており,この状態(ω−6 脂肪酸の「過剰摂取」)を改善するためにω−3脂肪酸などを高濃度に濃 縮して添加した食品や栄養補助剤などが開発されたが,これらの製品を 過度に摂取した場合,逆にω−3脂肪酸の「過剰摂取」につながり新た な疾病の原因となるため,ω−3,ω−6脂肪酸の適正な比率での摂取 が必要であることから,「本発明」は,ω−3脂肪酸とω−6脂肪酸をバ ランス良く摂取することができ,前述の疾病の予防や改善に効果が期待\nされるように,脂質の脂肪酸組成を適正比率に調整した食品を提供する ことを目的とし,その課題を解決するための手段として,脂肪酸組成を ω−3脂肪酸とω−6脂肪酸との比が1:1〜1:5になるように調整 した高度不飽和脂肪酸を含む構成を採用し,これによりω−3脂肪酸と\nω−6脂肪酸をバランス良く摂取することができ,高血圧,心臓病の循 環器系疾患や乳癌,大腸癌などの疾病の予防や改善の効果が期待される\nことについての開示があることが認められる。また,前記(1)の刊行物5 の記載によれば,刊行物5において,「過剰摂取」の用語は,ω−3脂肪 酸,ω−6脂肪酸が適正比率(1:1〜1:5)の範囲を基準として, 「この範囲よりも小さいときは,ω−3脂肪酸が過剰になり,この範囲 よりも大きいときはω−6脂肪酸が過剰にな」ると述べていること(前 記(1)カ)に照らすと,ω−3脂肪酸とω−6脂肪酸との摂取バランス(比 率)が崩れた状態を表現するために用いており,一方で,「摂取量」が多\nい状態を表現するときは「摂取過多」の用語を用い,「摂取量」との関係\nでは,「過剰摂取」の用語を用いていないことが認められる。 以上を前提に検討すると,刊行物5における「最近の日本人の食生活 は欧米型化が進み,肉類を中心とした食事の機会が大幅に増え,脂肪の 摂取量については一日当り40gと増加し,それに伴い,疾病の種類も 変化し,高血圧,心臓病の循環器系疾患や乳癌,大腸癌などが増加して, こちらも欧米型化になり,大きな社会問題になっている。」との記載は, それに引き続き「しかし,研究が進むにつれて,脂肪を構成する不飽和\n脂肪酸の種類の摂取アンバランスによることが判明した。」などの記載が あることに照らすと,「脂肪の摂取量」が「一日当り40g」に増加した こと自体が問題であることを述べたり,それを改善すべきことを示唆す るものではないと理解するのが自然である。 また,刊行物5の記載全体をみても,刊行物5において,脂肪の摂取 量を1日当たり40gに差し控えるべきことや,「ω−6脂肪酸の用量」 は,1日又は1回当たり「40g以下」とすべきことについての記載や 示唆はない。
(イ) 次に,本件審決が述べるように「脂質の大量の摂取を控えること」 自体が健康上の技術常識であるといえるとしても,脂質の適正な摂取量 は,年齢,性別,エネルギー摂取量等の要素によって変わり得るものと 考えられるから,そのことから直ちに「脂肪の摂取量」を1日当り40 g以下とすることが技術常識であることを導出することはできないし, それが技術常識であることを前提に「ω−6脂肪酸の用量」は,1日又 は1回当たり「40g以下」とすることが技術常識であるということは できない。本件においては,他に「ω−6脂肪酸の用量は,40g以下」 とすることが技術常識であることを認めるに足りる証拠はない。 イ(ア) 前記アの認定を総合すると,刊行物5には,本件審決のいう技術常 識を踏まえても,刊行物載5発明に含有する「ω−6脂肪酸の用量は, 40g以下であること」についての実質的な開示があるものと認めるこ とはできない。 そうすると,刊行物5発明が「ω−6脂肪酸の用量は,40g以下」 であるとの構成(相違点2に係る本願発明の構\成)を有することは認め られないから,相違点2は実質的な相違点であるものと認められる。 これと異なる本件審決の判断は誤りである。
(イ) 次に,前記ア認定のとおり,刊行物5には,脂肪の摂取量を1日当 たり40gに差し控えるべきことや,「ω−6脂肪酸の用量」は,1日又 は1回当たり「40g以下」とすべきことについての記載や示唆はなく, また,「ω−6脂肪酸の用量は,40g以下」とすることが技術常識であ ることを認めるに足りる証拠がないことに照らすと,刊行物5に接した 当業者が,刊行物5発明において,相違点2に係る本願発明の構成を採\n用することの動機付けがあるものと認めることはできないから,上記構\n成とすることを容易に想到することができたものと認められない。 これと異なる本件審決の判断は誤りである。
ウ これに対し被告は,1)刊行物5には,脂肪の摂取量については1日当た り40gと増加しているとの記載及びそれを問題であると認識している ことの記載があり,刊行物5発明は,脂質(脂肪)の取り過ぎの抑制を前 提に,ω−6脂肪酸とω−3脂肪酸をバランス良く摂取することを技術思 想とする発明であるから,脂質の一部である不飽和脂肪酸のさらに一部で あるω−6脂肪酸を一定以下に抑えることは当然であり,脂質全体として 取り過ぎであるとの認識である40gという値以下と特定することには 強い動機付けがある,2)しかも,1日の脂質摂取は,刊行物5発明のドリ ンク剤組成物以外の食品からも生じるのであるから,1日又は1回当たり ω−6脂肪酸40g以下との上限を設定することは,当業者が容易になし 得る技術的事項であるから,当業者は,刊行物5発明において,相違点2 に係る本願発明の構成とすることを容易に想到することができた旨主張\nする。
しかしながら,前記ア(ア)で説示したとおり,刊行物5における「最近の 日本人の食生活は欧米型化が進み,肉類を中心とした食事の機会が大幅に 増え,脂肪の摂取量については一日当り40gと増加し,それに伴い,疾 病の種類も変化し,高血圧,心臓病の循環器系疾患や乳癌,大腸癌などが 増加して,こちらも欧米型化になり,大きな社会問題になっている。」との 記載は,「脂肪の摂取量」が「一日当り40g」に増加したこと自体が問題 であることを述べたり,それを改善すべきことを示唆するものではない。 また,刊行物5の記載全体をみても,刊行物5において,脂肪の摂取量 を1日当たり40gに差し控えるべきことや,「ω−6脂肪酸の用量」は, 1日又は1回当たり「40g以下」とすべきことについての記載や示唆は ない。 加えて,本件においては,他に「ω−6脂肪酸の用量は,40g以下」 とすることが技術常識であることを認めるに足りる証拠はない。 したがって,刊行物5に接した当業者が刊行物5発明において相違点2 に係る本願発明の構成を採用することの動機付けがあるものと認めるこ\nとはできないから,被告の上記主張は採用することができない。

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令和2(ワ)4332  特許権侵害行為差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年8月20日  東京地方裁判所

 特許権侵害事件で無効理由無し、技術的範囲に属するとの判断がなされました。被告らは共同関係にないと主張しましたが認められませんでした。

上記認定事実のとおり,被告ジョウズ及び被告アンカーは,いずれもAn kerグループに属する法人であり,被告ジョウズの設立時の代表者と被告\nアンカーの代表者は同一である上,被告ジョウズの令和元年9月時点での従\n業員数は2名であり,そのうちの1名であるZは令和元年5月に被告アンカ ーから被告ジョウズに移籍しているとの事実が認められる。また,被告ジョ ウズの本店所在地のオフィスの利用契約上の地位は被告アンカーから譲り受 けたものであるなど,両社には密接な人的及び物的な関係があるということ ができる。
また,被告ジョウズは被告製品1及び2の販売に関する記者発表が行われ\nる約4か月前に設立されているが,その人的態勢は,代表者であるYのほか\n従業員が2名にすぎず,その2名についても,令和元年9月1日から同月3 0日までの1人当たりの勤務日数及び勤務時間は通常の事業活動をしている とは考え難いほど短い。また,被告ジョウズのオフィスはシェアオフィスで あり,平成30年10月時点において,同オフィスの入居するビル1階の受 付には被告ジョウズの表示はなかったことなどによれば,被告ジョウズが被\n告製品に関する実質的な事業活動を行っていたとは考え難い。 さらに,上記のとおり,楽天における被告製品の販売サイトにおける商品 の返送先住所は被告アンカーの所在地と同じビルであると認められるところ, 被告ジョウズが被告アンカーに対して返品された商品の取扱いを委託すると ともに,マーケティング業務などを委託していたことについては当事者間に 争いがない。被告らは,被告アンカーが受託したのは上記業務に限定される と主張するが,マーケティング業務も行いながら,商品については返品取扱 い業務のみを取り扱っていたとは考え難く,上記の被告ジョウズの物的・人 的態勢も考慮すると,被告アンカーは被告製品の販売等に関する業務を被告 ジョウズと共同して行っていたと推認することが相当である。
加えて,被告製品1及び2の記者発表に関する記事等には,「Anker\nグループが技術的にサポートしたことから,アンカー・ジャパンのY社長が ジョウズ・ジャパンの代表取締役を兼任する」などと記載されていること,\n被告製品3の記者発表は当時まだ被告アンカーの在籍していたZが行ってい\nること,被告商品に関するウェブページには,同製品がAnkerグループ ないし中国アンカー社のサポートを受けて作られたものである旨の説明がさ れていること,Ankerグループのオフィシャルストアの海外のウェブサ イトにおいて被告製品が「Anker Jouz 20」などとして販売さ れていることなどの事実によれば,被告製品に関する事業には,被告アンカ ーを含むAnkerグループや中国アンカー社が関与していることがうかが われる。 以上を総合すると,被告アンカーが被告ジョウズと共同して被告製品の販 売等をしていたと認めるのが相当である。
(3) 被告らの主張について
ア これに対し,被告らは,被告製品に関する業務の委託先の一つにすぎず, 被告製品の返品及びマーケティング業務等の委託を受けていただけであ り,業務委託の対価も固定額であり,被告製品の販売実績によって金額が 左右されるものではないと主張する。
しかし,被告らからは,被告アンカーから被告ジョウズに宛てた業務委 託料の請求書や担当者名等が黒塗りされた請求書や電子メール等が提出 されているにとどまり,被告ジョウズと被告アンカーとの間の業務委託契 約書,被告製品に関する費用や利益の帰属を示す客観的な証拠,被告アン カーが行っていた業務の実態やこれに関与した者の氏名や具体的な役割 等を客観的かつ具体的に明らかにする証拠は提出されていない。 前記判示のとおり,被告ジョウズと被告アンカーの人的・物的関係や被 告ジョウズの実態などを考慮すると,被告アンカーは被告ジョウズから一 部の業務を受託していたにとどまらず,被告製品の販売等に関する業務を 同被告と共同して行っていたと推認することが相当であり,これを覆すに 足りる的確な証拠は存在しない。したがって,被告らの上記主張は理由がない。
イ 被告らは,被告ジョウズと被告アンカーには資本関係がなく,取扱製品 も異なる上,代表取締役自らが営業等を行っている会社は多数存在し,商\n品開発において他社と協力することも通常の事業活動にすぎないので,被 告らに相互に相手方の役割等を認識し,これを利用する意思はなかったと 主張する。
しかし,両社はいずれもAnkerグループに属する法人であり,被告 ジョウズの設立時の代表者と被告アンカーの代表\者は同一である上,被告 ジョウズは本店所在地のオフィスの利用契約上の地位を被告アンカーか ら譲り受けるなど,両社には密接な人的及び物的な関係があることは前記 判示のとおりである。また,被告ジョウズの実態などを考慮すると,被告 アンカーが返品処理業務やマーケティングなど一部の業務を受託してい たにとどまらず,被告製品の販売等に関する業務を被告ジョウズと共同し て行っていたと評価し得ることも上記のとおりである。 したがって,被告らの上記主張は理由がない。
(4) 以上によれば,被告アンカーは,被告ジョウズと共同して,被告製品の販 売,輸入及び販売の申出をしてきたと認められる。\n

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関連事件です。

◆令和1(行ケ)10174

下記はアップされていません。 令和1年(ワ)20075特許権侵害差止請求事件

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令和2(行ケ)10132  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年8月31日  知的財産高等裁判所

 無効理由無しとした審決について、裁判所は予測できない効果ではないとして、これを取り消しました。\n

 発明の効果が予測できない顕著なものであるかについては,当該発明の\n特許要件判断の基準日当時,当該発明の構成が奏するものとして当業者が\n予測することのできなかったものか否か,当該構\成から当業者が予測する\nことのできた範囲の効果を超える顕著なものであるか否かという観点か ら検討する必要がある(最高裁判所平成30年(行ヒ)第69号令和元年 8月27日第三小法廷判決・集民262号51頁参照)。もっとも,当該発 明の構成のみから予\測できない顕著な効果が認められるか否かを判断す ることは困難であるから,当該発明の構成に近い構\成を有するものとして 選択された引用発明の奏する効果や技術水準において達成されていた同 種の効果を参酌することは許されると解される。 前示のとおり,本件発明の構成は容易想到であるが,これに対し,被告\nは,前記第3の3(2)イのとおり,本件発明は,本件3条件を全て満たす患 者に対する顕著な骨折抑制効果(以下「効果1)」という。),2)本件条件(4) を満たす患者に対する副作用発現率と血清カルシウムに関する安全性が 腎機能が正常である患者に対する安全性と同等であるという効果(以下\n「効果2)」という。)及び3)BMD増加率が低くてもより低い骨折相対リス クが得られるとの効果(以下「効果3)」という。)を奏し,これらの効果は, 当業者が予測をすることができなかった顕著な効果を奏するものである\n旨主張する。 以下,これらの効果について検討する。
(ア) 効果1)について
a 前記イ(イ)のとおり,骨粗鬆症は,骨強度の低下を特徴とし,骨折 の危険性が増大した骨疾患であり,骨粗鬆症の治療の目的は骨折を予\n防することであり,「骨強度」は骨密度と骨質の2つの要因からなり, 骨密度は骨強度のほぼ70%を説明するとの技術常識があったから, 当業者は,骨密度の増加は,骨折の予防に寄与すると理解するところ,\n甲7文献には,「ここに挙げた薬剤を投与することによって骨密度(B MD)が増加するため,骨折予防は飛躍的に進歩した」(296頁右欄\n10行ないし297頁左欄25行目)と骨密度の増加が骨折予防に寄\n与することが記載され,その上で,48週で骨密度を8.1%増大させ たことが開示されている(300頁左欄11行ないし右欄6行目)。そ うすると,甲7発明の骨粗鬆症治療剤が骨折を抑制する効果を奏して いることは,当業者において容易に理解できる。 b 効果1)の骨折抑制効果とは,単なる骨折発生率の低減ではなく,プ ラセボの骨折発生率と対比した場合の骨折発生率の低下割合を指すも のであるが,本件明細書の記載からでは,本件3条件を全て満たす患 者と定義付けられる高リスク患者に対する骨折抑制効果が,本件3条 件の全部又は一部を欠く者と定義付けられる低リスク患者に対する骨 折抑制効果よりも高いということを理解することはできない。 すなわち,効果1)を確認するためには,高リスク患者に対する骨折 抑制効果と低リスク患者に対する骨折抑制効果とを対比する必要があ るが,前記1のとおり,本件明細書には,実施例1において,高リス ク患者では,100単位週1回投与群における新規椎体骨折及び椎体 以外の部位の骨折発生率は,いずれも実質的なプラセボである5単位 週1回投与群における発生率に対して有意差が認められるが,低リス ク患者では,100単位週1回投与群における新規椎体骨折及び椎体 以外の部位の骨折の発生率は,いずれも,5単位週1回投与群におけ る発生率に対して有意差が認められなかったと記載されているのにと どまる(【0086】ないし【0096】,【表6】ないし【表\11】)。
ここで,低リスク患者の新規椎体骨折についていえば,100単位 週1回投与群11人と5単位週1回投与群10人(令和3年2月15 日付け被告第1準備書面32頁における再解析の数値による。)につい て,それぞれ,ただ1人の骨折例数があったというものであり,また, 椎体以外の部位の骨折は,上記5単位週1回投与群について,ただ1 人の骨折例数があったというものであって,有意差がなかったことが, 症例数が不足していることによることを否定できない。このように, 低リスク患者において,100単位週1回投与群の新規椎体骨折及び 椎体以外の部位の骨折の発生率が5単位週1回投与群のそれらの発生 率に対して有意差がなかったとの結論が,上記のような少ない症例数 を基に導かれたことからすると,高リスク患者における骨折発生の抑 制の程度を低リスク患者における骨折発生の抑制の程度と比較して, 前者が後者よりも優れていると結論付けることはできない。 したがって,実施例 1 をみても,高リスク患者に対するPTHの骨 折抑制効果が,低リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高 いということを理解することはできず,さらに,本件明細書のその他 の部分をみても,高リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果が,低 リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高いということを理 解することはできず,ましてや,200単位週1回投与群に関し,高 リスク患者における骨折発生抑制が,低リスク患者における骨折発生 抑制よりも優れていると結論付けることはできない。 以上によれば,効果1)は,本件明細書の記載に基づかないものとい うべきである。

◆判決本文

当事者が同じ分割出願についての関連事件です。審決取り消しです。

◆令和2(行ケ)10056

こちらは審決維持です。

◆令和2(行ケ)10004

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平成28(行ケ)10257  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年10月19日  知的財産高等裁判所

 漏れていたので追加します。補正は新規事項であるとした審決が維持されました。

原告は,本件発明特定事項の機能Aは,当業者によって,本件明細書の\n段落【0117】,段落【0118】,段落【0120】及び段落【0143】な どの記載を総合することにより導かれると主張する。
しかし,段落【0117】は,ウェブサーバから画像データファイル をダウンロードすることについての記載ではなく,ウェブページを閲覧する場合 についての記載であり,同段落の「ページ画像」とは,ウェブページをブラウザで 表示した画像であって,画像データをデータファイルとしてダウンロードする場合\nに関する記載ということはできない。 また,同段落には,閲覧しているウェブページがLCDパネル15Aの画面水平 解像度よりも広い固定幅レイアウトを採用する場合に,中央演算回路1_10A1 が,その固定幅と同じ水平画素数を有するページ画像の描画命令を生成し,VRA M1_10Cに書き込むとともに,グラフィックコントローラ1_10Bが,LCD パネル15Aの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータを切 り出してLCDドライバ15Bに送信することが記載されているが,「その結果と して,LCDパネル15Aにおいてページ画像がスクロール表示される。」のであ\nり,LCDドライバ15Bに送信される信号は,画像の一部分に対応するビットマ ップデータの信号であるから,この場合には,本来解像度がディスプレイパネルの 画面解像度より大きい画像から,ディスプレイパネルの画面解像度と同じ画像への 解像度の変更が行われているということはできない。 次に,段落【0118】に記載されている事項は,携帯電話機1がテレビ番組の 視聴用に使用される場合のグラフィックコントローラ1_10BやVRAM1_10 C等の機能であり,携帯電話機1により表\示される「画像」は,テレビ受信用アン テナ112Aで受信した「テレビ番組の画像」であるから,画像データをデータフ ァイルとしてダウンロードする場合とは異なるというべきである。 そして,段落【0143】には,段落【0117】,【0118】に記載されてい るような,ウェブページの閲覧やテレビ動画の表示の場合との関連性を示唆する記\n載はない上,段落【0143】の記載は前記のとおりであって,画像データファイ ルの解像度を変更することなく表示することが記載されているから,段落【014\n3】の記載に接した当業者が,その記載を段落【0117】,段落【0118】の記 載と関連付けて,ウェブサーバから画像データファイルをダウンロードして画像を 表示する場合に画像ファイルの解像度を変更することが記載されていると理解する\nとは考えられない。
(イ) 段落【0120】には,「デジタル音声信号及び/又はデジタル動画 信号をデータファイルに変換して保存したり,該保存したデータファイルを読み出 して必要な処理を行う」,「画像データファイル及び/又は音声データファイルは, ウェブサイトにアクセスし,・・・受信・変換されたデジタル信号を,バス19経由で 中央演算回路1_10A1が受信し,必要な変換を行ってフラッシュメモリ14A に書き込むことによっても保存することができる。」との記載があるが,段落【01 20】には,受信した「デジタル音声信号及び/又はデジタル動画信号」を携帯電 話1においてデータファイルに変換して保存したり,それを読み出して再生する ことが記載されているにすぎず,この記載と前記のような内容の段落【0143】 の記載を併せて見たとしても,当業者が,ウェブサーバから本来解像度が携帯電話 機のディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データファイルをダウンロー ドして画像を表示する場合に,VRAMからディスプレイパネルの画面解像度と同\nじ解像度を有する画像のビットマップデータを読み出し,読み出したビットマップ データを伝達するデジタル表示信号を生成し,これをディスプレイ制御手段に送信\nする機能を想起するとは考えられない。\n
(ウ) そうすると,原告の主張する本件明細書の各記載を総合しても,訂 正事項7に係る「前記ウェブサーバから「本来解像度がディスプレイパネルの画面 解像度より大きい画像データファイル」をダウンロードして画像を表示する場合\nに,前記VRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有す る画像のビットマップデータ」を読み出し,「該読み出されたビットマップデータ を伝達するデジタル表示信号」を生成し,該デジタル表\示信号を前記ディスプレイ 制御手段に送信する機能」が導かれるとは認められず,本件明細書には他に同機能\ の実現についての記載又は示唆は存在しない。

◆判決本文

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平成25(行ケ)10346  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年10月9日  知的財産高等裁判所

 漏れていたので追加します。明細書の別の部分に記載されている構成を、複数組み合わせた発明特定事項を追加する補正が新規事項であるとして、審決が取り消されました。\n

 本件特許明細書には,【0041】に,中立線 を残して,その両側に溝を形成し,音叉腕の中立線を含めた部分幅W7は 0.05mmより小さく,また,各々の溝の幅は0.04mmより小さくな るように構成する態様,及び,このような構\成により,M1をMnより大きく することができることが記載されている。また,【0043】には,溝が中 立線を挟む(含む)ように音叉腕に設けられている第1実施例〜第4実施例 の水晶発振器に用いられる音叉形状の屈曲水晶振動子の基本波モード振動で の容量比r1が2次高調波モード振動の容量比r2より小さくなるように構成\nされていること,及び,このような構成により,同じ負荷容量CLの変化に\n対して,基本波モードで振動する屈曲水晶振動子の周波数変化が2次高調波 モードで振動する屈曲水晶振動子の周波数変化より大きくなることが記載さ れている。 しかし,上記【0041】と【0043】の各記載に係る構成の態様は,\nそれぞれ独立したものであるから,そこに記載されているのは,各々独立し た技術的事項であって,これらの記載を併せて,本件追加事項,すなわち, 「中立線を残してその両側に,前記中立線を含めた部分幅が0.05mmよ り小さく,各々の溝の幅が0.04mmより小さくなるように溝が形成され た場合において,基本波モード振動の容量比r1が2次高調波モード振動の 容量比r2より小さく,かつ,基本波モードのフイガーオブメリットM1が高 調波モード振動のフイガーオブメリットMnより大きい」という事項が記載 されているということはできない。また,その他,本件特許明細書等の全て においても,本件追加事項について記載はないし,本件追加事項が自明の技 術的事項であるということもできない。 そうすると,本件追加事項の追加は,本件特許明細書等の全ての記載を総 合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項 を導入するものというべきである。

◆判決本文

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令和1(ワ)30991 特許権侵害差止等請求事件 令和3年3月30日 東京地方裁判所

 漏れていたので追加します。特許侵害事件において、明細書の別の部分に記載されている構成を、複数組み合わせた発明特定事項を追加する補正が新規事項であるとして権利行使不能\と判断されました。
なお、原告の査証命令申立てについては却下されました。\n 

 前記(2)に説示したとおり,前記第2の1(4)アの出願当初の請求項1及び 2の記載からすれば,本件特許に係る特許出願当初の請求項1及び2の記載 は,HFO−1234yfに対する「追加の化合物」を多数列挙し,あるい は当該「追加の化合物」に「約1重量パーセント未満」という限定を付すに とどまり,上記のとおり多数列挙された化合物の中から,特定の化合物の組 合せ(HFO−1234yfに,HFO−1243zfとHFC−245c bとを組み合わせること)を具体的に記載するものではなかったというべき である。
しかして,上記(3)の当初明細書の各記載について見ても,特許出願の当 初の請求項1と同一の内容が記載され(【0004】),新たな低地球温暖化 係数(GWP)の化合物であるHFO−1234yf等を調製する際に,H FO−1234yf又はその原料(HCFC−243db,HCFO−12 33xf,及びHCFC−244bb)に含まれる不純物や副生成物が特定 の「追加の化合物」として少量存在することが記載されており(【0003】, 【0016】,【0019】,【0022】),具体的には,HFO−1234y fを作製するプロセスにおいて,有用な組成物(原料)がHCFC−243 db,HCFO−1233xfおよび/またはHCFC−244bbである ことが記載され(【0005】),HCFC−243db,HCFO−123 3xf及びHCFC−244bbに追加的に含まれ得る化合物が多数列挙さ れてはいる(【0006】ないし【0008】)ものの,そのような記載にと どまっているものである。
そして他方,当初明細書においては,そもそもHFO−1234yfに対 する「追加の化合物」として,多数列挙された化合物の中から特に,HFO −1243zfとHFC−245cbという特定の組合せを選択することは 何ら記載されていない。この点,当初明細書においては,HFO−1234 yf,HFO−1243zf,HFC−245cbは,それぞれ個別に記載 されてはいるが,特定の3種類の化合物の組合せとして記載されているもの ではなく,当該特定の3種類の化合物の組合せが必然である根拠が記載され ているものでもない。また,表6(実施例16)については,8種類の化合\n物及び「未知」の成分が記載されているが,そのうちの「245cb」と 「1234yf」に着目する理由は,当初明細書には記載されていない。さ らに,当初明細書には,特許出願当初の請求項1に列記されているように, 表6に記載されていない化合物が多数記載されている。それにもかかわらず,\nその中から特にHFO−1243zfだけを選び出し,HFC−245cb 及びHFO−1234yfと組み合わせて,3種類の化合物を組み合わせた 構成とすることについては,当業者においてそのような構\成を導き出す動機 付けとなる記載が必要と考えられるところ,そのような記載は存するとは認 められない(なお,本件特許につき,優先権主張がされた日から特許出願時 までの間に,上記各説示と異なる趣旨の開示がされていたことを認めるに足 りる証拠はない。)。
これらに照らせば,当業者によって,当初明細書,特許請求の範囲又は図 面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項としては,低地球 温暖化係数(GWP)の化合物であるHFO−1234yfを調製する際に, HFO−1234yf又はその原料(HCFC−243db,HCFO−1 233xf,及びHCFC−244bb)に含まれる不純物や副反応物が特 定の「追加の化合物」として少量存在する,という点にとどまるものという ほかなく,その開示は,発明というよりはいわば発見に等しいような性質の ものとみざるを得ないものである。そして,当初明細書等の記載から導かれ る技術的事項が,このような性質のものにすぎない場合において,多数の化 合物が列記されている中から特定の3種類の化合物の組合せに限定した構成\nに補正(本件補正)することは,前記のとおり,そのような特定の組合せを 導き出す技術的意義を理解するに足りる記載が当初明細書等に一切見当たら ないことに鑑み,当初明細書等とは異質の新たな技術的事項を導入するもの と評価せざるを得ない。したがって,本件補正は,当初明細書等の記載から 導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入したもので あるというほかない。
以上によれば,本件補正は「願書に最初に添付した明細書,特許請求の範 囲又は図面に記載した事項の範囲内」においてしたものということはできず, 特許法17条の2第3項の補正要件に違反してされたものというほかなく, 本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められ(特許法 123条1項1号),同法104条の3第1項により,特許権者たる原告は, 被告に対しその権利を行使することができないこととなる。
・・・
原告は,令和2年10月19日,原告主張製品のうち,被告から原告に対 し販売された最終製品以外のものに含まれるHFO−1234yf,HFO −1243zf,HFC−245cb及びHFO1234zeの含有量を立 証すべき事項として,査証命令の申立てをした(当庁令和2年(モ)第267 4号)。
(2) しかしながら,前記のとおり,本件特許は特許無効審判により無効にされ るべきものと認められるのであって,原告主張製品であれ,被告主張製品で あれ,対象製品が本件発明の技術的範囲に属するか否かを問わず,原告は被 告に対し,本件特許権を行使することができないものである。そうすると, 当裁判所としては,本件訴訟において,原告の請求に理由があるかを判断す るために,上記の立証すべき事項たる事実を判断する必要がないものといわ ざるを得ず,ひいては,同事実を判断するため,上記査証命令申立てにより\n得られる証拠を取り調べることが必要であるとも認められない。 以上によれば,上記査証命令の申立ては,必要でない証拠の収集を求める\nものであり,その必要性を欠くものというべきであるから,原告の上記査証 命令申立ては,これを却下することとする。\n

◆判決本文

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令和2(行ケ)10126  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年8月30日  知的財産高等裁判所

 音商標「マツモトキヨシ」について、商標法4条1項8号に該当するとした拒絶審決が取り消されました。

 本願商標の商標法4条1項8号該当性について
原告は,1)本願商標の出願当時,本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」\nという言語的要素からなる音から,通常,容易に連想,想起するのは,ドラ ッグストアの店名としての「マツモトキヨシ」又は企業名としての株式会社 マツモトキヨシ,株式会社マツモトキヨシホールディングス(原告)であっ て,「マツモトキヨシ」と読まれる人の氏名であるとはいえないから,本願 商標を構成する「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音は,「マツ\nモトキヨシ」を読みとする人の氏名として客観的に把握されるものではない, 2)したがって,本願商標は,「他人の氏名」を含む商標であるとはいえない から,本願商標が商標法4条1項8号に該当するとした本件審決の判断は誤 りである旨主張するので,以下において判断する。
(1)商標法4条1項8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称 等を含む商標は,その承諾を得ているものを除き,商標登録を受けること ができないと規定した趣旨は,人は,自らの承諾なしに,その氏名,名称 等を商標に使われることがないという人格的利益を保護することにある ものと解される(最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日 第三小法廷判決・裁判集民事214号373頁,最高裁平成16年(行ヒ) 第343号同17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号59 5頁参照)。 このような同号の趣旨に照らせば,音商標を構成する音が,一般に人の\n氏名を指し示すものとして認識される場合には,当該音商標は,「他人の 氏名」を含む商標として,その承諾を得ているものを除き,同号により商 標登録を受けることができないと解される。 また,同号は,出願人の商標登録を受ける利益と他人の氏名,名称等に 係る人格的利益の調整を図る趣旨の規定であり,音商標を構成する音と同\n一の称呼の氏名の者が存在するとしても,当該音が一般に人の氏名を指し 示すものとして認識されない場合にまで,他人の氏名に係る人格的利益を 常に優先させることを規定したものと解することはできない。 そうすると,音商標を構成する音と同一の称呼の氏名の者が存在すると\nしても,取引の実情に照らし,商標登録出願時において,音商標に接した 者が,普通は,音商標を構成する音から人の氏名を連想,想起するものと\n認められないときは,当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識 されるものといえないから,当該音商標は,同号の「他人の氏名」を含む 商標に当たるものと認めることはできないというべきである。
(2)ア これを本願商標についてみるに,前記2の認定事実によれば,1)株式 会社マツモトキヨシが昭和62年にドラッグストア「マツモトキヨシ」 の店舗展開を開始した後,平成29年1月30日に本願の出願がされる までの約30年以上にわたり,株式会社マツモトキヨシ,原告及び原告 のグループ会社が,「マツモトキヨシ」の表示をドラッグストアの店名\n又は自己の企業名として継続して使用したこと,2)同年3月31日現在 で,ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店舗数は,全国45都道府県 で1555店舗,原告のグループ会社のメンバーズカード(ポイントカ ード)の会員数は約2440万人に達しており,また,「マツモトキヨ シ」のブランドは,インターブランド社による2016年度及び201 7年度のブランド価値評価ランキングでドラッグストアとして日本で ナンバーワンブランドの評価を獲得したこと,3)平成8年から開始され たドラッグストア「マツモトキヨシ」のテレビコマーシャルでは,女性 又は男性の声の音色,複数の声の斉唱で本願商標と同一又は類似の音を フレーズに含むコマーシャルソングが相当数使用され,テレビコマーシ\nャルが放映された以降においても,本願商標と同一又は類似の音がドラ ッグストア「マツモトキヨシ」の各小売店の店舗内において使用されて いたことが認められる。 これらの認定事実によれば,本願商標に関する取引の実情として,「マ ツモトキヨシ」の表示は,本願商標の出願当時(出願日平成29年1月\n30日),ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店名や株式会社マツモ トキヨシ,原告又は原告のグループ会社を示すものとして全国的に著名 であったこと,「マツモトキヨシ」という言語的要素を含む本願商標と 同一又は類似の音は,テレビコマーシャル及びドラッグストア「マツモ トキヨシ」の各小売店の店舗内において使用された結果,ドラッグスト ア「マツモトキヨシ」の広告宣伝(CMソングのフレーズ)として広く\n知られていたことが認められる。
イ 前記アの取引の実情の下においては,本願商標の登録出願当時(出願 日平成29年1月30日),本願商標に接した者が,本願商標の構成中\nの「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音から,通常,容易に 連想,想起するのは,ドラッグストアの店名としての「マツモトキヨシ」, 企業名としての株式会社マツモトキヨシ,原告又は原告のグループ会社 であって,普通は,「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」,「松本 潔」,「松本清司」等の人の氏名を連想,想起するものと認められない から,当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものと はいえない。 したがって,本願商標は,商標法4条1項8号の「他人の氏名」を含 む商標に当たるものと認めることはできないというべきである。
(3)ア これに対し被告は,1)ウェブサイト(乙4ないし7)には,原告とは 他人の「松本清」,「松本潔」,「松本清司」等の氏名表示のひとつと\nして,「マツモトキヨシ」の片仮名が表記されており,かつ,これらの\n者は,現存していると推認できること,各地域のハローページ(乙8な いし19)には,「マツモトキヨシ」と読まれる人の氏名として,原告 とは他人の「松本清」,「松本潔」等が掲載されており,かつ,これら の者は,いずれも本願商標の登録出願時から現在まで存在している者で あると推認できること,氏名を片仮名表記することは,各種の商取引に\nおいて,社会一般に行われていること(乙20ないし28)からすると, 本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音は,\n「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」,「松本潔」,「松本清司」 等の人の氏名を容易に連想,想起させるものであり,「マツモトキヨシ」 と読まれる人の氏名として客観的に把握されるものである,2)原告の提 出に係るテレビコマーシャルに関する証拠からは,当該テレビコマーシ ャルの規模が明らかでなく,平成19年以降の放映も確認できないから, 当該テレビコマーシャルが本願商標の音を聞いた者の認識に与える影 響は限定的であること,当該テレビコマーシャルを視聴した者は,視覚 的要素とともに「マツモトキヨシ」の言語的要素からなる音を聴取,把 握し,記憶するものといえるので,当該テレビコマーシャルは,本願商 標に接した者が,「マツモトキヨシ」の言語的要素からなる音を,マツ モトを姓とし,キヨシを名とする人の氏名であると認識することなく, 店舗名又は企業名としてのみ認識することの根拠たり得ないこと,原告 の挙げるブランド価値ランキングは,本願商標の音を聞いた者の認識を 直接反映したものとはいい難く,このほか,「マツモトキヨシ」という 言語的要素からなる音がドラッグストアの店名又は企業名としてのみ 認識されることを裏付ける証拠はないことからすると,1)のとおり,上 記言語的要素からなる音が,「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」, 「松本潔」,「松本清司」等の人の氏名として客観的に把握されること を否定することはできないとして,本願商標は,商標法4条1項8号の 「他人の氏名」を含む商標に当たる旨主張する。 しかしながら,前記(2)ア認定のとおり,「マツモトキヨシ」の表\n示は,本願商標の出願当時,ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店名 や株式会社マツモトキヨシ,原告又は原告のグループ会社を示すものと して全国的に著名であり,「マツモトキヨシ」という言語的要素を含む 本願商標と同一又は類似の音は,テレビコマーシャル及びドラッグスト ア「マツモトキヨシ」の各小売店の店舗内において使用された結果,ド ラッグストア「マツモトキヨシ」の広告宣伝(CMソングのフレーズ)\nとして広く知られていたという取引の実情を踏まえると,本願商標に接 した者が,本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」という言語的要素か\nらなる音から,通常,容易に連想,想起するのは,ドラッグストアの店 名としての「マツモトキヨシ」,企業名としての株式会社マツモトキヨ シ又は原告のグループ企業であって,普通は,「マツモトキヨシ」と読 まれる「松本清」,「松本潔」,「松本清司」等の人の氏名を連想,想 起するものと認められない。
また,甲43によれば,上記テレビコマーシャルの規模は首都圏を中心 にドラッグストア「マツモトキヨシ」の出店のある全国の地域に及んでい たことが認められる上,上記テレビコマーシャルの放映後も,上記テレビ コマーシャルで使用された本願商標と同一又は類似の音がドラッグスト ア「マツモトキヨシ」の各小売店の店舗内で使用されていたものと認めら れるから,当該テレビコマーシャルが本願商標を聞いた者の認識に与える 影響が限定的であるということはできないし,上記テレビコマーシャルが 視覚的要素を伴うことも,上記認定を左右するものではない。 さらに,前記(1)で説示したとおり,同号は,出願人の商標登録を受 ける利益と他人の氏名,名称等に係る人格的利益の調整を図る趣旨の規定 であり,当該音が一般に人の氏名を指し示すものとして認識されない場合 にまで,他人の氏名に係る人格的利益を常に優先させることを規定したも のと解することはできないことに鑑みると,本願商標に接した者が,「マツ モトキヨシ」の言語的要素からなる音をドラッグストアの店名又は企業名 としてのみ認識することがない以上は,本願商標が同号の「他人の氏名」 を含む商標に該当するとの解釈は妥当とはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。
イ 次に,被告は,本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」という言語的要\n素からなる音が,「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」,「松本潔」,「松 本清司」等の人の氏名として客観的に把握され,本願商標は「他人の氏名」 を含む商標である以上,商標法4条1項8号の趣旨に照らせば,上記言語 的要素からなる音が,原告又は株式会社マツモトキヨシが経営するドラッ グストアを指し示すものとして一定程度知られていることや,特定の者の 略称として一定の著名性を有することは,本願商標の同号該当性を左右す るものではない旨主張する。 しかしながら,前記アで説示したとおり,本願商標は「他人の氏名」を 含む商標であるとはいえないから,被告の上記主張は,その前提を欠くも のであり,採用することができない。

◆判決本文

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令和3(行ケ)10031  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年8月19日  知的財産高等裁判所

 本件商標 HIRUDOSOFT(標準文字)について、先行商標「Hirudoid」、商標「ヒルドイド」に対して、類似または混同が生ずるかが争われました(4条1項11号、同15号違反)。知財高裁(4部)は、無効理由無しとした審決を維持しました。

前記2(1)のとおり,本件商標と引用商標1及び2は,外観及び称呼にお いて明らかに相違するものであるから,引用商標と同一又は類似である原 告使用商標も,本件商標とは非類似の商標であるといえる。
もっとも,本件商標が原告商標と非類似の商標であっても,その商品の 出所について混同を生じるおそれがある商標については,商標法4条1項 15号に規定する商標に当たる余地もあり得るので,以下,念のためこの 点についても検討する。
イ 前記2(1)アのとおり,本件商標の取引者及び需要者は,先発医薬品につ いては,医師,薬剤師等の医療関係者であり,一般用医薬品及び医薬部外 品については,薬剤師等のほか,一般消費者も含まれることになる。 そして,仮に原告使用商標が周知著名であるとしても,原告使用商標は 「Hirudoid」又は「ヒルドイド」として認知されているのであっ て,「Hirudo」又は「ヒルド」として認知されているわけではなく, また,本件全証拠を精査しても,薬剤の取引の分野において,販売名の語 頭3文字に略して取引されているといった取引の実情を認めるに足りる 証拠はないことからすると,一般消費者を含む取引者及び需要者において 普通に払われる注意力を基準としても,本件商標を付した一般用医薬品又 医薬部外品について,原告が製造販売したものであり,又は原告と経済的 若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの ようにその商品の出所について混同を生じる恐れがあるものと認めるこ とはできない。 なお,前示のとおり,本件商標は先発医薬品にも使用されることもあり 得るところ,その取引者及び需要者は,医療関係従事者であり,薬効も原 告使用商標に付される原告商品と異なるものであるから,その商品の出所 について混同を生じるおそれがあるといえないことはなおさら明らかで ある。

◆判決本文

こちらは関連事件です。「ヒルドソフト」(標準文字)と仮名表\示となった商標です。

◆令和3(行ケ)10030

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令和2(行ケ)10115 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年6月24日  知的財産高等裁判所

 阻害要因ありとして、進歩性なしとした審決を取り消しました。

 甲1には,請求項1に「任意の形状の中央ハンドル」との記載があり,発 明の詳細な説明中に,ユーザが握る中央ハンドルは「球,あるいは他のあら ゆる任意の形状とすることが可能である。」と記載があることから,長尺状の\nハンドルを排除するものではないと理解することはできる。しかし,「球,あ るいは他のあらゆる任意の形状とすることが可能である。」との記載ぶりか\nらすれば,まずは「球」が念頭に置かれていると理解するのが自然であり, しかも甲1の添付図(FIG.1,FIG.2)は,いずれも器具の正面図 であり,実施例を表すとされているが,そこに描かれたハンドルの形状や全\n体のバランスに照らして,球状のハンドルが開示されているとしか理解でき ないものである。 また,甲1には,甲1発明のマッサージ器具は,ユーザがハンドル(1)を握 り,これを傾けて,ハンドルに2つの軸で固定された2つの回転可能な球を\n皮膚に当てて回転させると,球が進行方向に対して非垂直な軸で回転するこ とにより,球の対称な滑りが生じ,球の間に拘束されて挟まれた皮膚を集め て皮膚に沿って動き,引っ張る代わりに押圧すると,球の滑りと皮膚に沿っ た動きによって皮膚が引き伸ばされることが開示されているところ,こうし た2つの球がハンドルに2つの軸に固定され,2つの軸が70〜100度を なす角度で調整された甲1発明において,球が進行方向に対して非垂直な軸 で回転し,球の間に拘束されて挟まれた皮膚を集めて皮膚に沿った動きをさ せるためには,ハンドルを進行方向に向かって倒す方向に傾けることが前提 となる。
ハンドルが球状のものであれば,後述するハンドルの周囲に軸で4個の球 を固定した場合を含めて,把持したハンドル(1)の角度を適宜調整して進行方 向に向かって倒す方向に傾けることが可能である。しかし,ハンドルを長尺\n状のものとし,その先端部に2つの球を支持する構成とすると,球状のハン\nドルと比較して傾けられる角度に制約があるために進行方向に傾けて引っ張 る際にハンドルの把持部と肌が干渉して操作性に支障が生じかねず,こうし た操作性を解消するために長尺状の形状を改良する(例えば,本件発明のよ うに,ボールの軸線をハンドルの中心軸に対して前傾させて構成させる(相\n違点3の構成)。)必要が更に生じることになる。そうすると,甲1の中央ハ\nンドルを球に限らず「任意の形状」とすることが可能であるとの開示がある\nといっても,甲1発明の中央ハンドルをあえて長尺状のものとする動機付け があるとはいえない。 また,甲1においては,「マッサージする面に適合させるために,より大き な直径を持つ1つまたは2つの追加球をハンドルが受容可能である」形態も\n開示されており,FIG.2には,小さい直径の球(2)を2つ,大きな直径球
(3)を2つそれぞれハンドル(1)に軸によって固定された図が開示されている。 このような実施例において,ハンドル(1)を球状から長尺状とすると,前記の とおり,甲1発明のマッサージ器具は,ユーザがハンドル(1)を握り,これを 傾けて,ハンドルに2つの軸で固定された2つの回転可能な球を皮膚に当て\nて回転させると,球が進行方向に対して非垂直な軸で回転することにより, 球の対称な滑りが生じ,球の間に拘束されて挟まれた皮膚を集めて皮膚に沿 って動き,引っ張る代わりに押圧すると,球の滑りと皮膚に沿った動きによ って皮膚が引き伸ばされるとの作用効果を生じるところ,例えば,大きい球 (3)を皮膚に当てることを想定し,長尺状のハンドルを中心軸に前傾させて構\n成させると,小さい球(2)を皮膚に当てるときには,ハンドルを進行方向に対 して傾けて小さい球(2)の球を引っ張ることができなくなる。したがって,こ うした点からすると,甲1のハンドル(1)を長尺状のものとすることには,む しろ阻害要因があるといえる。
(2) これに対し,被告は,1)甲1のFIG.1の正面図は,ハンドルが円形で 図示されているが,ハンドルが円柱状(長尺状)の形状であるとしても整合 する,2)同FIG.2においては,4つの球をハンドルに取り付けて,皮膚 が吸引される使用方法が記載されており,こうした使用方法を前提とすると, ハンドルが長尺状であればローラ(球)と接触することなくハンドルを握る ことができるから,ハンドルの形状は,球体と理解するよりも長尺状(円柱 状)のハンドルと理解するのが自然である旨主張する。 しかし,正面図であるFIG.1やFIG.2において図示されている円 形が球状ではなく円柱状(長尺状)の形状を示すものと理解することが困難 なことは,前記(1)において判示したところから明らかである。また,4つの 球をハンドルに取り付けて使用する形態であっても,FIG.2の実施例の 記載によると,使用されるのは2つの球であり,ハンドルを把持する際には 軸を避けて指でハンドルを把持すれば足り,ハンドルを長尺状(円柱状)の ハンドルと解するのが自然であるともいえず,かえって,上記のとおりハン ドルを長尺状とすることについては阻害要因があるというべきである。そう すると,甲1の実施例(FIG.1,FIG.2)には球状のものしか開示 されていないと認められ,被告の上記主張は採用し得ない。 また,被告は,甲1において,ハンドル(1)は,握って引っ張るものである という使用方法が明記され,ハンドルの形状としてあらゆる任意の形状とす ることができると記載されているのであるから,当然ながら握りやすい長尺 状の形状が想定された形状であり,甲1発明のハンドルは,握って傾けなが ら引っ張るものであるから,ハンドルの先端部に球を設けることは当業者で あれば容易に想到するものであるから,本件審決の判断に誤りはない旨主張 する。
しかし,たとえハンドルを球に限らず任意の形状とすることは可能である\nとしても,甲1発明の球状のハンドルを長尺状のものとした場合における操 作性の問題があることから,球状の実施形態しか開示されていない甲1発明 の中央ハンドルを長尺状のものとする動機付けがあるとはいえないことは前 記(1)のとおりであり,一般的に長尺状のハンドルが握りやすいものであると いえたとしても,そのことは結論を左右し得ない。また,小さい球(2)を2つ, 大きい球(3)を2つそれぞれハンドル(1)に軸によって固定された場合に,ハン ドル(1)を長尺状とすると,甲1発明の作用効果との関係でその操作に支障が 生じることから,甲1発明のハンドル(1)を長尺状のものとすることにはむし ろ阻害要因があることも前記(1)のとおりである。したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(3) そうすると,甲1発明のハンドルが長尺状のハンドルを排除するものでは ないとして,当業者が長尺状のハンドルを容易に想起し得るものとはいえな いし,ましてや,長尺状のハンドルが甲1に記載されたに等しい事項である と認めることはできないから,甲1発明のハンドルには長尺状のものが含ま れ,長尺状のハンドルが甲1の1に記載されたに等しい事項であることを前 提として,相違点1については,ハンドルを長尺状のものとした場合には, 一対の回転可能な球を先端部に配置することは甲1発明,又は甲1発明及び\n周知技術1に基づいて当業者であれば容易に想到し得たものであり,また, 相違点3については実質的な相違点にならないとした本件審決の判断は誤り というほかない。

◆判決本文

こちらは審決の判断維持ですが無効理由なしとの審決が維持されています。 原告・被告が入れ替わってます

◆令和2(行ケ)10045

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令和2(行ケ)10148  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年6月16日  知的財産高等裁判所

 図形と文字の結合商標について、同じ文字構成の先願既登録商標が存在するして、拒絶された審決の取消訴訟で、知財高裁は審決の判断を維持しました。本件商標は、カンガルーをモチーフとしたと思われる図形部分と,その下に「KANGOL」と横書きされた欧文字部分で構\成されてました。指定役務は「洋服・コート・セーター類・ワイシャツ類・・・,寝巻き類・下着・水泳着・水泳帽の小売など・・・」のファッション分野の小売りなどです。先行登録商標は、「KANGOL」の文字を標準文字で表し,指定役務が「帽子の小売等・・・」ですが、小売りサービスとしては同じ35K02の類似群コードが付与されています。

ア 本願商標
(ア) 本願商標は,カンガルーをモチーフとしたと思われる図形部分と, その下に「KANGOL」と横書きされた欧文字部分からなる。
(イ) 上記の図形は,その形状からすれば,カンガルーをモチーフとした 図形であると認識され得るものといえるが,やや抽象化された図形であ ることからすれば,同図形部分から特定の称呼や観念が生じるものとま ではいえない。また,上記の欧文字は,一般的な辞書等に掲載されてい る語ではなく,特段の図案化もされていないことからすれば,同欧文字 部分から特定の観念が生じるものとはいえない。 そうすると,上記の図形部分及び欧文字部分には観念上のつながりが あるとはいえないところ,本願商標全体の構成からすると,同各部分は,\n視覚上分離して看取されるものであって,分離して観察することが取引 上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないか ら,それぞれが要部として認識されるものといえる。
(ウ) そして,上記の欧文字部分についてみるに,同部分からは「KAN GOL」の欧文字に相応して「カンゴール」の称呼が生じるが,特定の 観念は生じないといえる。
イ 引用商標
引用商標は,「KANGOL」の欧文字を標準文字で表したものであると\nころ,本願商標の欧文字部分と同様に,引用商標からは「カンゴール」の 称呼が生じるが,特定の観念は生じないといえる。
ウ 類否判断 上記ア及びイを基に,本願商標の要部である「KANGOL」の欧文字 部分と引用商標とを比較すると,両者は,観念を比較することはできない ものの,欧文字のつづりが同じである上,本願商標の欧文字部分について 特段の図案化はされていないから,外観が極めて類似するものといえる。 また,両者からはいずれも「カンゴール」の称呼が生じるから,両者は称 呼を共通にするものといえる。 以上の事情を総合して全体的に考察すれば,本願商標の要部である「K ANGOL」の欧文字部分及び引用商標については,これらが同一又は類 似の商品又は役務に使用された場合には,その商品又は役務の出所につき 誤認混同を生ずるおそれがあるといえる。
・・・・
上記ア及びイで検討したとおり,本願指定役務及び引用指定役務は,い ずれも衣類を中心とするファッション商品を取扱商品とするものである 上,これらの取扱商品が通信販売ウェブサイトにおいて販売されるなどし ている実情があることからすれば,いずれも一般需要者を広く対象とする ものといえる。また,上記イ(ア)ないし(エ)及び(コ)によれば,特定のブ ランドが付された両役務の取扱商品を,同一の小売業者から購入する需要 者は少なくないと考えられる。 これらの事情を考慮すると,本願指定役務及び引用指定役務は,需要者 の範囲が一致するものといえる。
エ 類否判断
上記アないしウで検討したところによれば,本願指定役務及び引用指定 役務は,具体的な取扱商品は異なるものの,いずれも衣類を中心とするフ ァッション商品を取扱商品とする点において共通するほか,役務を提供す る手段,目的及び業種が共通するものといえる。また,両役務は,役務を 提供する場所が共通する場合があるほか,需要者の範囲が一致するものと いえる。 これらの事情を考慮すると,本願指定役務及び引用指定役務については, これらの役務に同一又は類似の商標を使用する場合には,同一営業主の提 供に係る役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるといえ る。

◆判決本文

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令和2(行ケ)10057  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年7月8日  知的財産高等裁判所

 無効理由無しとした審決が取り消されました。

 前記(1)のとおり,相違点2は,相違点21)及び相違点23)により構成さ\nれるべきものである。本件審決は,相違点21)は容易に想到できるとして おり(当裁判所としてもその結論を是認できる。),原告は,相違点23)の 容易想到性を否定した本件審決の判断を争っている。
イ 相違点23)の容易想到性
(ア) 相違点23)は,「『フレームと床との間に介護者又は患者の足が存在 しても,挟み込みが生じないように』,下降スイッチが押し状態であって もフレームをいったん停止させ,『ブザーを鳴らして警報』すること」で ある。
原告は,前記第3の2(1)イ(イ)のとおり,「フレームと床との間に,介 護者又は患者の足が存在しても,挟み込みが生じないように」との点が 用途による限定を付すものであり発明の構成とはならないから,相違点\nを構成することもない旨主張するが,上記特定事項は,フレームが停止\nする高さを何に基づいて決定するかを特定するものであるから,発明を 構成する部分であり,その主張は失当である。したがって,本件訂正発\n明1が用途発明になることもない。 そうすると,同(2)イ(ア)の被告の主張につき判断するまでもなく,原 告の上記主張はいずれにせよ採用することができない。 (イ)a 前記第2の3(2)アのとおり,甲1発明における下方中間位置は患 者支持面が床から約14インチ(約356mm)の高さであり,同最 下位置は患者支持面が床から約8インチ(約203mm)の高さであ るところ,下方中間位置から最下位置に153mm下降できるという ことは,少なくともフレームの下端が床から153mm以上離れてい なければならないから,下方中間位置でのメインフレーム12の床か らの高さは153mmよりは高いことになる。 ここで,甲2技術事項に係る別紙3の記載によると,足が届く範囲 の可動部と床面との間に120mm以上の寸法があれば,足を挟み込 む危険がないものと理解される。 そうすると,甲1発明における下方中間位置でのメインフレーム1 2の床からの高さは,本件訂正発明1の「介護者又は患者の足が存在 しても,挟み込み等が生じないような高さ」(本件訂正明細書【002 1】)であるといえ,また,甲1発明の最下位置は「床に近接して配置 される」ものであり(甲1[0011],FIG−4),足が挟み込まれ る高さであることは明らかであるから,最下位置に向けて下降する下 方中間位置は「これ以上フレーム1が下降すると,足を挟み込んでし まうような高さ」(本件訂正明細書【0021】)である。 そして,甲1には,「磁石112のホール効果センサ118に隣接し た配置までの移動は,下方中間位置でのベッド10の位置付けに相当 し,磁石112のホール効果センサ116に隣接した配置までの移動 は,上方中間位置でのベッド10の位置付けに相当する。」([0036]) との記載があり,そして,甲1発明の管部110は,軸受部材108 に摺動接触して支持された状態でねじ式リニ