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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成29(ワ)6322  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年1月24日  大阪地方裁判所

 販促チラシについて著作物性が争われました。大阪地裁は著作物性を否定しました。
ア 原告は,本件チラシの表現のうち,1)「検査時間 受診代金[注:各文 言の上に『×』の記号あり]」や「検査なし スグ買える!」という宣伝文句(キャ ッチフレーズ)(上記(1)のア及びイ),2)「コンタクトレンズの買い方比較」という 表(同ア)及び3)「なぜ検査なしで購入できるの?」という箇所における説明文言 (同ア)の3点について,創作性があるとして,本件チラシに著作物性が認められ ると主張している。
イ しかし,まず上記1)は,旧大阪駅前店において採用された眼科での受診 (検査)なしでコンタクトレンズを購入することができるという特徴を表現したも\nのであり,眼科での受診(検査)が不要であると,検査時間や受診代金が不要とな り,また検査が不要である結果,コンタクトレンズをすぐ買えることになると認め られる。そして,上記1)の宣伝文句は,以上のビジネスモデルによる顧客の利便性を消費者に分かりやすく表現しようとしたものと認められるが,不要になる事項を\n文字(単語)で抽出し,その文字(単語)の上に「×」を付すことはありふれた表\n現方法であるし,「検査なし スグ買える!」という表現は,眼科での受診(検査)\nなしでコンタクトレンズをすぐ買えるという旧大阪駅前店のビジネスモデルによる 利便性を,文章を若干省略しつつそのまま記載したものにすぎず,そこに個性が現 れているということはできない上に,強調したい部分に着色等したり,「!」を付し たりするなどして強調することもありふれた表現方法にすぎない。以上より,上記\n1)に創作性があるとは認められない。 また,上記2)はマトリックスの表形式にすることによって,旧大阪駅前店と他の\n店舗や他の販売方法との違いを分かりやすく表現したものである。確かに,表\現方 法としては文章で伝えるなどの別の方法が存することは原告主張のとおりであるが, 本件チラシは販売宣伝のために作成されたものであるから,その性質上,表現が記\n載されるスペースは限られ,また見た者が一目で認識,理解し得るような表現をす\nべきことも求められるから,表現方法の選択の幅はそれほど広いとは認められない。\nそして,文字で表現しようと思えばできる事項を表\形式にまとめることは通常行わ れる手法であり(例えば,甲5の1枚目の料金表,甲23の1頁目の略歴の表\,乙 12の表,反訴状と題する書面の15頁の表\,反訴状訂正申立書の1ないし2頁の\n表参照),表\形式で比較するに当たり,縦の欄に旧大阪駅前店と他の店舗や他の販売方法を並べ,横の欄に複数の事項を列記し,マトリックス形式でまとめるというの も,ありふれた手法にすぎない(例えば,甲11,14,乙13及び14の表,反\n訴状と題する書面の12ないし13頁の表2つ参照)。そしてまた,ここで比較の対\n象としている事項の選択も,眼科での受診(検査)を不要とし,店舗に来店して購 入するという旧大阪駅前店でのビジネスモデルから自ずと導き出されるものばかり である。以上より,上記2)に創作性があるとは認められない。 さらに,上記3)の説明文言は,旧大阪駅前店では眼科での受診(検査)なしでコ ンタクトレンズを購入することができる理由を文章で説明したもので,その内容は 法規の内容や運用を説明した上で,旧大阪駅前店では,顧客の経済的・時間的な負 担の観点から,販売時に処方箋の有無を前提としていないことを説明したものにすぎない。これは上記のビジネスモデルの客観的な背景や方針をそのまま文章で記載 したものにすぎず,文章表現自体に特段の工夫があるとはいえない上,その記載方\n法も相当の文字数を使用して,しかも小さな文字で記載したものにすぎないから, その表現方法に何らかの工夫がみられるわけでもない。以上より,上記3)に創作性 があるとは認められない。 以上より,上記1)ないし3)の各記載について,創作性は認められない。
ウ 以上の点につき原告は,提携眼科を設けないでコンタクトレンズ販売店 をオープンさせるというのは,かなり思い切った試みであったとか,検査なしでコ ンタクトレンズを購入できる理由を書いた説明文言は適法性を支える要素となって いるなどと主張しているが,旧大阪駅前店におけるビジネスモデル自体が著作権に よる保護の対象になるわけではなく,そのビジネスモデルを表現した本件チラシに\nおける各表現方法自体がありふれたものにすぎないことなどは,上記認定・判示の\nとおりである。したがって,原告の上記主張によって,上記判断は左右されない。
(3) 本件チラシの各表現の組合せによる著作物性
原告は上記(2)の1)ないし3)等の組合せに著作物性が認められるべきであるとも 主張している。 確かに,上記1)ないし3)は,眼科での受診(検査)を不要とし,コンタクトレン ズをすぐ買えるという旧大阪駅前店でのビジネスモデルを強調するために,それが可能な理由等を小さな文字で説明する(上記3))とともに,当該ビジネスモデルに よって不要となる事項を文字(単語)で抽出し,その上に「×」を付すなどしてキ ャッチフレーズを用いたり(上記1)),マトリックスの表形式で他の店舗や他の販売\n方法と比較したりした(上記2))もので,それらを組み合わせることによって当該 ビジネスモデルを強調し,読み手に分かりやすく説明しようとしたものということ はできる。しかし,何かを強調し,分かりやすく伝えるために,説明文とキャッチ フレーズと表形式のものを組み合わせることそれ自体は,特徴的な手法とは認めら\nれないから,上記(2)で判示したとおり上記1)ないし3)の各表現に創作性が認められ\nないことを踏まえると,これらの組合せ自体にも創作性は認められない。 なお,本件チラシでは,さらに視力検査をしている男の子のイラストが組み合わ されているが,原告はイラスト自体の著作物性を主張するものではない上,広告宣 伝において適宜関連するイラストを配することもありふれた表現方法にすぎないか\nら,このイラストと組み合わせることによって,創作性が基礎付けられるとはいえ ない。 また,原告は当初,被告チラシの各商品の配列等が本件チラシとほとんど同一で あることを主張していた。しかし,本件チラシにおいては商品の写真を掲げつつ, その下側に商品名や値段等を記載し,適宜商品の説明やアピールポイント等を付加 しているところ,そのような各商品の配列等は,コンタクトレンズ販売店の広告と してありふれたものであると認められるから(乙1ないし6),創作性は認められず,原告の上記主張によって本件チラシの著作物性は基礎付けられない。
(4) 以上より,本件チラシに著作物性は認められないから,その余の争点につ いて判断するまでもなく,被告の行為に著作権・著作者人格権侵害が成立するとは いえない。したがって,被告の著作権・著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害 賠償請求には理由がない。

◆判決本文

原告、被告のチラシはこちらです。

◆チラシ

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平成29(ワ)9834  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成31年1月31日  大阪地方裁判所

 ウェブサイトにおける表現が、不正競争行為(営業誹謗)であると判断されました。\n
 ア 本件ウェブページ1及び2の閲覧者について
 本件ウェブページ1及び2が掲載された被告ウェブサイトは,不特定多数の一般 人に対して公開されているが,本件ウェブページ1及び2を含む本件連載が「50 周年記念サイト」内のコンテンツであること,被告代表者の自伝であること,社内\n報における連載記事の再掲であること等から,本件ウェブページ1及び2の閲覧者 の多くは,被告の事業内容,あるいは被告代表者の業績や人柄に関心を抱く者,具\n体的には被告の関係者や取引業者,競争相手,油圧式杭圧入引抜機を使用した工事 を行う工事業者といった当該業界の者が中心になると考えられる。 したがって,これらの者が,本件掲載文1ないし3に接した際,本件連載中の他 の記事と合わせてどのような認識を持つかについて検討すべきことになる。
イ 当該業界の認識について
平成29年当時,油圧式杭圧入引抜機の製造販売事業を行う会社は,高知県 内においては原告及び被告以外には存在しなかったこと,昭和54年から55年頃 まで,土佐機械工業がサイレントパイラーの部品の製造の下請けをしていたこと,P3が垣内商店でサイレントパイラーの図面作成等に関与した後,土佐機械工業を 経て原告に勤務していること,被告が土佐機械工業に対し同社の製品は被告の発明 の技術的範囲に属する旨を通告したことは前記1で認定したとおりであり,原告の 資本金が2300万円であるのに対し,被告の資本金が80億5567万0215 円であること(甲1,5)を考慮すると,被告代表者であるP1が,本件掲載文1\nないし3として,「当社の下請けで加工を任せていた高知の小さな会社」,「この 会社は平然とコピー機を製造している」,「当社の機械のコピー機をせっせとつく っている件の会社」と記載した際に,土佐機械工業又は原告を指す意図でしたこと は明らかである。 そして,上記各事情は,当該業界の者にとっては知り得ることであったと考えら れるし,前記1で認定したところによれば,被告と土佐機械工業及び原告との間に は,長年にわたって特許権等に関する紛争があり,これらの事情は,当該業界の者 にとって周知であったとされるのであるから,当該業界の者は,本件掲載文1ない し3に記載されている会社が土佐機械工業及びその事業を承継した原告を指すとい うことを容易に理解するものと解されるし,現に,原告の取引先は,本件ウェブペ ージ1及び2に接して原告のことを指すものと理解し,原告に連絡しているのであ る。
(イ)被告は,本件掲載文3について,原告ではなく中央自動車興業を指すもので あると主張する。しかし,「件の会社」という表現は,以前に言及された会社を指す表\現であると解するのが当然であるところ,中央自動車興業は本件連載において本件掲載文3以前に一度も言及されておらず(乙35,被告代表者),中央自動車興業が高知県内\nに本店又は支店を有していたことはないことから(甲28),第28回である本件 ウェブページ2の「件の会社」については,直前の第27回である本件ウェブペー ジ1にある「平然とコピー機を製造販売している高知の小さな会社」を受けた表現\nと解するのが相当であり,逆に,これを中央自動車興業と解する余地はないといわ ざるを得ない。
(2)「コピー機」との表現について\n
ア 「コピー」という表現は,一般には,同一性を保ちつつ,転写,複製,演奏\n等を行うことと解され,権利者の許諾を得ずに著作物,商標,意匠あるいは商品形 態についてのコピーをした場合,多くの場合に権利侵害が成立することから,コピ ー品の製造販売や輸入が違法であることは,一般的な警告の対象とされている(甲 21ないし26,33ないし35,乙22)。 特許権との関係でコピーという表現が使われることは多くはないが,上述した同\n一性の保持を前提とすると,相手方の製品が自身の製品のコピーであると表現する\nことができるのは,外観,構造等が同一,あるいは区別し得ない程度に類似してい\nるような場合か,少なくとも,相手方の製品が,自身の有する特許発明の技術的範 囲に属し,特許権侵害が肯定されるような場合に限られると解される。 そうすると,外観等が類似はしていても,全体としては同一とはいえない場合や,機能や基本となる原理が類似していても,特許発明の技術的範囲に属するのではな\nい場合に,これをコピーと表現した場合,本来は特許法その他の法律により違法と\nされる範囲外の行為について,違法との印象を与える内容を告知することになる。
イ 本件について見るに,原告の製品は,被告のサイレントパイラーと同じ圧入 原理を利用する油圧式杭圧入引抜機であるが,この基本原理自体は,サイレントパ イラーの開発以前である昭和35年から公知であったものであるし,原告の製品の 形状は,サイレントパイラーの形状と一部類似することが認められるが,油圧式杭 圧入引抜機という機械の機能を発揮するためにはある程度決まった構\造・形状を採 らざるを得ないと合理的に推測できるのであって,他の会社がかつて製造していた 油圧式杭圧入引抜機も,サイレントパイラーと主要な構造や形状が類似していたこ\nとが認められる。また,サイレントパイラーの図面作成に携わったことのあるP3 らが,その後土佐機械工業へ転職したことが認められるが,同社は油圧式杭圧入引 抜機の開発に際し,被告の有する特許権等の権利を侵害するおそれがないか弁理士 と相談して調査したとされることは前記認定のとおりである。 そして,被告の特許申請については拒絶査定が確定し,土佐機械工業において杭\n打込引抜機についての特許を取得していることは既に認定したとおりであって,本 件において,土佐機械工業または原告が自らの杭打込引抜機を製造販売することが, 特許権を含む被告の何らかの排他的権利を侵害すると認めるに足りる事実の主張, 立証はなされていない。
ウ 以上によれば,被告は,原告の製品が,被告の製品をコピーしたものである と表現し得る場合ではないにもかかわらず,本件掲載文1ないし3において,原告\nの製品を「コピー機」と記載したものであるから,これは,虚偽の事実に当たると いうべきであるし,既に検討したところに照らし,競争関係にある原告の営業上の 信用を害する行為に当たるというべきである。
エ 被告は,本件連載が被告代表者の自伝であるという性質から,主観的であり\n価値判断を含む記載であることが考慮されるべきであって,本件ウェブページ1及 び2の全体の表現ぶりや,本件掲載文2の「当社が発明した機械ではあるが,一社\nで市場を完全に独占するのはやはり罪悪である。」,「業界の小さな“鬼っ子”にむしろ感謝している。」等の表現から,「コピー機」を作っているとする会社を否\n定的に評価するものではないと主張する。 しかし,本件連載を通じ,被告代表者がサイレントパイラーを発明したことが強\n調されており,本件ウェブページ1においても,「世界ではじめて杭圧入機を実用 化し,世の中になかった「圧入業界」をつくり」との記載がある中で,本件掲載文 2及び3においては,「平然とコピー機を製造している」,「当社の機械のコピー 機をせっせとつくっている」との表現がなされているのであるから,「コピー機」\nという表現が,被告の発明品であるサイレントパイラーの技術を,被告の権利を侵\n害し,あるいは,違法な手段で盗用・模倣したという否定的な文脈で用いられてい ることは明らかであり,この表現に接した者は,原告の製品が被告の製品の模造品や模倣品,違法な権利侵害品であるとの印象を受けるものと認められる。\n上記被告の主張を採用することはできない。
(3) 「引き抜かれた」との表現について\n
本件ウェブページ2の前半は,昭和58年頃,被告の取引先の一つが会社更生手 続開始決定を受けたことをきっかけに,被告代表者が被告の営業担当者に対して社\n外への外出を禁止するという措置を執り,これに反発した営業幹部の多くが退職し, その一部は「件の会社」に引き抜かれたというものであり,被告代表者の措置に反\n発した営業幹部の退職が先行し,引抜きにより退職したとするものではない。 しかしながら,本件ウェブページ1の記載を前提に本件ウェブページ2を見た場 合,本件掲載文3の「当社の機械のコピー機をせっせと作っている件の会社」は土 佐機械工業又はその事業を承継した原告と解されることは前記認定のとおりである し,「コピー機をせっせと作っている件の会社」という否定的表現の中で「引き抜\nかれた」という表現が用いられれば,これに接する者は,土佐機械工業又は原告が,\n違法,不当な手段を用いて,被告の従業員を転籍させたとの印象を抱くものと解さ れる。 本件において,昭和58年1月31日付けで退職した被告の従業員が,土佐機械 工業に転職したとの事実は認められないし,土佐機械工業又は原告が被告の従業員 に対して違法・不当なはたらきかけをしたという事実も認められないから,被告が,本件掲載文3に「件の会社に引き抜かれた」と記載したことは,競争関係にある原 告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したことになる。

◆判決本文

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平成30(ネ)10066  損害賠償等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成31年1月31日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ウェブサイトにおいて,書籍を他人の著作物である旨を表示されたことが,氏名表\示権の侵害に当たるかが争われました。原判決は,「氏名表示権は,著作者が原作品に,又は著作物の公衆への提供,提示に際し,著作者名を表\示するか否か,表示するとすれば実名を表\示するか変名を表示するかを決定する権利であるところ,被控訴人のホームページにおいて,本件各書籍の公衆への提供,提示がされているとはいえないから,その余の点を判断するまでもなく,控訴人の請求には理由がない」と判断しました。なお、時期に後れた攻撃防御であるとの申\立ては認められませんでした。
1 時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立てについて
本件は,平成29年12月20日に東京簡易裁判所に訴えが提起され,平成30 年2月9日に東京地方裁判所に移送され,3回の弁論準備手続期日を経て,同年6 月21日の口頭弁論期日において弁論が終結されたところ,弁論の全趣旨によると, 東京地方裁判所は,同年3月30日,控訴人(一審原告)訴訟代理人に対し,被侵 害利益が公表権(著作権法18条),氏名表\示権(著作権法19条),同一性保持 権(同法20条)又は著作権法に定めのない権利利益であるのか,具体的に明らか にすることなどを求めるファックス文書を送付したこと,控訴人(一審原告)訴訟 代理人は,同年4月25日,被侵害利益は「氏名表示権(著作権法19条)」であ\nる旨を記載した同日付け原告第1準備書面を東京地方裁判所に提出し,同書面は同 日の第1回弁論準備手続期日において陳述されたことが認められる。そうすると, 控訴人は,被侵害利益を「インターネット上で自己の書籍著作物について第三者の 著者であると偽られない利益」とする不法行為に基づく損害賠償請求権の主張を, 遅くとも原審の口頭弁論終結日である平成30年6月21日までにすることが可能であったといえるから,これを当審において初めて主張することは「時機に後れて\n提出した攻撃又は防御の方法」(民訴法157条1項)に該当することが認められ る。 しかし,控訴人は,本件の控訴審の第1回口頭弁論期日(平成30年11月21 日)において,被侵害利益を「インターネット上で自己の書籍著作物について第三 者の著者であると偽られない利益」とする不法行為に基づく損害賠償請求権の主張 をしたものであって,本件は,第2回口頭弁論期日において弁論が終結されたこと からすると,上記の時点における上記主張により,訴訟の完結を遅延させることと なると認めるに足りる事情があったとはいえない。 したがって,上記主張に係る時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立ては,認め\nられない。
・・・
証拠(甲1,甲1の2)及び弁論の全趣旨によると,本件書籍1は,D VD付きの書籍であり,書籍には,写真,イラスト,文章等が,DVDには映像が 掲載されていることが認められる。そして,前記アのとおり,本件書籍1の奥付に は,控訴人以外の多くの個人又は団体の名が,様々な立場から本件書籍1の成立に 関与したものとして記載されていること,「監修」が「書籍の著述や編集を監督す ること」(広辞苑第7版)を意味することからすると,本件書籍1が編集著作物で あるとしても,前記アの記載から,その編集著作物の著作者が,控訴人であると推 定すること(著作権法14条)はできず,著作者が控訴人であるとは認められない。 また,その他に,控訴人が,本件書籍1につき,素材の選択又は配列によって創 作性を発揮したものと認めるに足りる主張・立証はない。 この点について,控訴人は,株式会社ビックスとの間における作業過程に照らし てみても,控訴人が実態として編集著作物の著作者となる旨主張する。 しかし,控訴人が主張する本件書籍1への控訴人の関与については,控訴人の陳 述書(甲8)以外の証拠はなく,また,上記陳述書によっても,「明確に覚えてい ない」というのであって,控訴人が,「監修」,すなわち,書籍の著述や編集を監 督することを超えて編集著作物の著作者と評価し得る作業を行ったことを認めるこ とはできないから,控訴人の上記主張は,採用できない。 したがって,控訴人が本件書籍1の編集著作者であるとは認められない。
そうすると,本件書籍1については,控訴人の主張する被侵害利益は,その根拠 を欠くから,その余の点を判断するまでもなく,控訴人の被控訴人に対する被侵害 利益を「インターネット上で自己の書籍著作物について第三者の著者であると偽ら れない利益」とする不法行為に基づく損害賠償請求権が存するとは認められない。

◆判決本文

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平成30(行ケ)10059  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年1月29日  知的財産高等裁判所(2部)

 商標「QRコード」について、使用されていたとした審決が維持されました。争点は、商標的使用か、登録商標との同一か等です。
 (2)ア 前記(1)アで認定した78頁最下部部分の本件太字部分の記載と本件説 明部分の記載を併せて読むと,本件太字部分のうちの「QRコード(R)リーダー”Q”」 又は「”Q”」の部分が商品名を記載したものであり,本件説明部分が上記商品の機 能等を説明した記載であると認められる。\nそして,上記事実に,本件カタログは,被告の総合カタログであり,被告の商品 の紹介等がされていること,78頁最下部部分には,「ダウンロード(無料)はこち らから!」との記載とQRコード規格の2次元コードのラベルの記載があり,上記 商品「QRコード(R)リーダー”Q”」又は「”Q”」のダウンロードの案内がされている ことを併せ考慮すると,78頁最下部部分は,本件商品2に含まれる上記商品「Q Rコード(R)リーダー”Q”」又は「”Q”」の広告であると認められる。 なお,前記(1)アで認定した78頁最下部部分の記載からすると,上記商品「”Q”」 は,QRコード規格の2次元コードの読み取り等の機能を有するプログラムソ\フト ウェアであるから,本件商標の指定商品のうちの「電子応用機械器具及びその部品」 に含まれる。
イ 前記(1)アのとおり,使用商標3は,本件商品2の広告である78頁最下 部部分に記載されているところ,前記(1)イのとおり,78頁最下部部分が掲載され た本件カタログは,要証期間内である平成27年3月6日に本件展示会の会場で頒 布されている。
ウ 次に,使用商標3が、本件商品2についての自他商品等を識別するもの として使用されているかどうかを検討する。
(ア) 後掲証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
a 株式会社技術評論社が発行する「最新パソコン用語事典2006−’\n07」及び「最新パソコン・IT用語事典2010−’11」には,「QRコード」\nの項目に,「株式会社デンソーウェーブが開発した,2次元コード(縦と横の両方\n向に意味を持たせてある符号)の一種。・・・1999年にJIS,2000年に ISOの国際規格として制定されている。」との記載がある(甲24,25)。
b 株式会社秀和システムが発行する「最新標準パソコン用語事典20\n13−2014年版」には,「QRコード」の項目に,「1994年に自動車メー カーでもあるデンソー社が開発した,バーコードに代わる2次元のマトリクス式コ\nードの1つ。・・・1999年にはJIS X0510に,2000年にはISO /IEC18004として標準化された。」との記載がある(甲26)。
c 被告は,「QRコードについては(株)デンソーウェーブの登録商標\nです。」との表示をしているほか,「QRコード」には「○R 」の表示を付している\n(甲81,甲92の1,甲98の1,乙1,27)。また,被告以外の会社の開設 した複数のウェブサイトにおいても「QR Code」又は「QRコード」につい て被告の登録商標である旨の表示がされている(乙23の1〜5)。さらに,原告の\n広告においても,「QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。」との\n記載がある(乙24〜26)。
d スマートフォン用のQRコードリーダー等のアプリのアイコンとして,図形と,その下に「QRコード」,「QR Code」又は「QR code」 と記載されたものが多数存在する(以下,同アイコンを「甲52アイコン」と総称 する。)ところ,甲52アイコンのうちの文字部分は,いずれも,何ら特徴のない白 抜きの文字である(甲52の2)。
e 平成18年8月22日付けの新聞には,「QRコード」は,カメラ付 き携帯電話の普及に伴い,爆発的に普及したものであり,現在は被告の登録商標で あるとの記事がある(甲70)。
(イ) 前記(ア)の事実によると,「QR Code」及び「QRコード」は,2 次元コードの規格の一種であると認識されることがあるものと認められるが,他方, 被告は,本件商標登録を有しており,前記(ア)のとおり,「QRコードについては(株) デンソーウェーブの登録商標です。」との表\示をしたり,「○R 」の表示を付して,\n商標登録を有していることを広く知らせており,また,前記(ア)のとおり,被告以外 の会社も,原告を含め,そのウェブサイトや広告において,「QR Code」又は 「QRコード」が被告の登録商標である旨の表示をしていることを考慮すると,「Q\nR Code」又は「QRコード」が常に2次元コードの規格の一種であるとのみ 認識されると認めることはできず,自他商品等の識別機能を発揮する態様で使用さ\nれることがあり得るというべきである。
(ウ) 使用商標3は,前記(1)ア(ア)のような態様で表示されているもので,\n他の記載とは独立して表示されている。そして,使用商標3は,「Q」の文字の右\n端の部分と「R」の文字の左端の部分が重なっており,僅かではあるが図形化され ており,赤色で表示されているものであって,単に,商品名であると認識される「Q\nRコードリーダー”Q”」又は「”Q”」の説明として記載されているものと認めるこ とはできず,上記商品についての識別標識として記載されているものと認められ, 本件カタログを見た需要者・取引者もそのように認識するものと認められる。 したがって,使用商標3は,本件商品2についての自他商品等の識別機能を有し\nていると認められる。 なお,甲52アイコンの各文字部分は,使用商標3とは表示態様が全く異なるか\nら,甲52アイコンの存在によって,使用商標3が自他商品等の識別機能を有しているという上記の判断が左右されるものではない。\n
(エ) 原告は,「QR コード」及び「QR Code」の文字からは,2 次元コードの規格の一種であるQRコード規格との認識しか生じ得ないことは,特 許庁が15例にも上る拒絶理由通知及び拒絶理由で一貫して認定していると主張す るが,いずれも本件とは異なる事例についての特許庁の判断であり,使用商標3が 自他商品等の識別機能を有しているとの上記の判断が左右されるものではない。\nまた,原告は,「『QR Code』はデンソーウェーブの登録商標です。」との表\ 示は,虚偽表示(商標法74条1号違反)であると主張するが,後記エのとおり,\n本件商標は,「QR Code」と社会通念上同一のものであるから,この表示が虚\n偽表示ということはできない。\n
(オ) 原告は,1)本件カタログに用いられている商標は「DENSO WAV E」又は「デンソーウェーブ」である,2)使用商標3は,本件カタログのうち,Q Rコード規格についての解説等をする頁で使用されており,被告の製品を紹介する場面で使用されていないから,一般の需要者・取引者からは,単に当該2次元コー ドが「QRコード規格に基づいた2次元コード」であると理解されるにすぎず,自 他商品等の識別標識として理解されることはない,3)使用商標3,「ダウンロード (無料)/はこちらから!」という記載及びQRコード規格の2次元コードの配置 からすると,使用商標3が本件商品2のアプリとの具体的関係において使用されて いると理解することは不可能である,4)本件商品2は本件カタログの78頁のQR コード規格等についての技術的な解説,紹介の中で隅に記載されているにすぎない ことからすると,本件カタログが本件商品2を紹介するものではなく,本件商品2 の広告に該当しないと主張する。 しかし,既に認定,判断したとおり,使用商標3は,78頁最下部部分において, 本件商品2についての広告として使用されているものであり,このことは,本件カ タログの商標として「DENSO WAVE」又は「デンソーウェーブ」が使用され\nていることや使用商標3が本件カタログの「基礎知識」の頁に記載されていること によって妨げられるものではなく,また,前記(1)ア(ア)で判示した78頁最下部部分 の記載内容からすると,使用商標3は,本件商品2との具体的な関係において使用 されていることも明らかであるから,原告の上記主張はいずれも理由がない。
エ 次に,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるかどうかについ て検討する。
(ア) まず,本件商標は,別紙1のとおり,「QR コード」及び「QR C ode」を上下二段に配置した商標であり,上段の「コード」の部分は,下段の「C ode」の部分を片仮名にしたものと理解されるから,「キューアールコード」の称 呼が生じ,また,QRコード規格の2次元コードの観念が生じる。 一方,使用商標3からも,「キューアールコード」の称呼と,QRコード規格の2 次元コードの観念が生じる。 このように,本件商標と使用商標3とは,称呼及び観念において共通する。
(イ) 次に,本件商標と使用商標3の外観を比較すると,使用商標3は,本 件商標の下段の「QR Code」とは,同一の文字綴りであり,上段の「QR コード」とは,片仮名及びローマ字の文字表示を相互に変更するものであり,この点で共通性が認められるが,1)本件商標は,「QR コード」及び「QR Code」 の標準文字が上下二段に配置されているのに対し,使用商標3は,「QR Code」 のみから構成されている点,2)使用商標3は,「Q」の文字の右端の部分と「R」の 文字の左端の部分が重なっており,同重なり部分が,両文字の一部を兼ねているよ うに 図形化されている点,3)使用商標3は,赤色で記載されている点で異なって いる。 しかし,前記(ア)のとおり,「QR コード」は,「QR Code」の「Code」 の部分を片仮名にしたものと理解されるのであり,「QR コード」及び「QR C ode」の称呼及び観念は同一であることからすると,上記1)の相違点の存在が, 使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの判断に影響を与えるもの ではないというべきである。 また,「Q」の文字と「R」の文字が重なった部分は僅かであり,双方の文字を独 立した文字として認識できること,図形化の程度も僅かであることからすると,上 記2)の相違点の存在が,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの 判断に影響を与えるものではないというべきである。 さらに,商標に色を付けても,通常,商標の同一性を失わせるような変更とはえ いないから,上記3)の相違点の存在が,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの判断に影響を与えるものではないというべきである。
(ウ) 以上からすると,使用商標3は本件商標と社会通念上同一であると認 められる。
(エ) この点について,原告は,本件商標上段の「QR コード」から下段 の「QR Code」以外のものを想起させるし,下段の「QR Code」から 上段の「QR コード」以外のものを想起させると主張するが,本件商標は,「QR コード」と「QR Code」を上下段に配置した商標であって,前記ウのとお り,「QR コード」及び「QR Code」が2次元コードの規格としても知られ ていることを考慮すると,「QR コード」と「QR Code」からそれら以外の ものを想起することは考え難いというべきである。このことは,被告が「QR コ ード」と「QR Code」について商標登録出願をしていることによって左右さ れるものではない。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
オ 次に,本件商品2が商標法上の「商品」に当たるかどうかについて検討 する。
(ア) 後掲証拠によると,以下の事実が認められる。
a 被告の開設しているウェブサイトには,平成26年11月6日付け で,以下の記載がある(甲61)。
(a) 「デンソーウェーブとレピカが資本・業務提携/QRコード(R)によ るクラウドサービス『Q−revoTM』活用の第一弾として,/食品及び工業製品 の『トレーサビリティ』サービスの提供を開始」
(b) 「レピカは,子会社であるアララ株式会社を通じてスマートフォン 事業を手がけており,コンシューマー向けにQRコードをトリガーとしたAR(A RAPPLI(アラプリ)』を展開しています。両社はこれまでにより精度の高いス マートフォン向けQRコードリーダーアプリの開発において共同でプロジェクトを 行っており,今後更に両者のノウハウを活用してより付加価値の高い事業を展開し ていくため,デンソーウェーブがレピカに出資することにしました。」\n
(c) 「両社は,今後,『Q−revo』および『QR Code Re ader “Q”』を活用し,食品をはじめ,工業製品において,『トレーサビリテ ィ』をキーワードに両社のノウハウを活かしたサービスを展開していきます。」 b payment naviのウェブサイトには,平成26年11月 10日付けで,以下の記載がある(乙16)。
(a) 「デンソーウェーブとレピカがQRコードによるクラウドサービス提供」\n
(b) 「両社では,提携の第一弾として,SQRC,フレームQRなど, 進化したQRコードの生成・配信,読み取り,データ蓄積を行うクラウドサーバと 『QR Code Reader “Q”』を活用した次世代型サービス『Q−re vo』を開発。今後は,食品や工業製品において,『トレーサビリティ』をキーワー ドに両者のノウハウを活かしたサービスを展開していく方針だ。」
(c) 「なお,具体的な売り上げ目標については,トレーサビリティシス テムの検証を進め,サービスとして整った際,発表する方針だ。」\n
(イ) 商標法上の商品というためには,商取引の対象となり得ることが必要 であり,そのためには,必ずしも当該商品が有償で譲渡される必要はなく,当該商 品自体は無償で譲渡されるものであっても,当該商品の譲渡によって利益を得る仕 組みがあり,その仕組みの一環として,当該商品が無償で譲渡されるのであれば, 当該商品は交換価値を有し,商取引の対象となっていると認めることができるとい うべきである。 前記(1)ア(ア)で認定した事実からすると,本件商品2は,無償でダウンロードでき ることが認められるが,前記(ア)で認定したウェブサイトにおける記載からすると, 被告は,アララ社と共同で,本件商品2を活用したサービスを展開していく計画を 有していることが認められるところ,同サービスを利用するためには,本件商品2をスマートフォンにダウンロードしておく必要があるのであるから,本件商品2の 無償配布は,同サービスの展開に大きく寄与するものと考えられ,したがって,本 件商品2の無償配布は,本件商品2を利用したサービスを提供し,同サービスの提 供によって利益を得るというビジネスモデルの一環としてされたものと評価できる。 したがって,本件商品2には交換価値があるものと認められ,本件商品2は,商 取引の対象となり得るというべきである。 なお,このように,本件商品2を無償配布した上で,本件商品2を活用したサー ビスを提供することにより利益を得るというビジネスモデルにおいても,本件商品 2を無償配布する際の商取引の対象は,あくまでも本件商品2であり,使用商標3 は,本件商品2の広告に付されたものであり,上記サービスの商標として使用され たものではない。
カ 以上のとおり,被告は,本件商標と社会通念上同一であると認められる 使用商標3を付した,商標法上の「商品」に当たる本件商品2の広告を,要証期間 内に頒布したことが認められる。
キ 原告は,使用商標3は,197号商標の一部にすぎず,使用商標3のみ が独立して認識されることはない,被告は本件QRアイコンについて商標の登録を 受けているから,本件商品2の識別標識となり得るのは本件QRアイコンのみであ る,197号商標が登録された以降は,本件商品2について197号商標を表示す\nる行為は,専ら197号商標を使用するものであることから,本件パンフレットに 表示されている商標は,197号商標であって,使用商標3ではないなどと主張す\nる。 しかし,使用商標3は,前記(1)ア(ア)のとおり,本件カタログの78頁最下部部分 に記載されており,本件QRアイコンとは完全に独立していることは明らかである から,197号商標が登録されているかどうかや本件QRアイコンについて商標登 録がされているかどうかにかかわらず,独立の商標として認識できるものである。 また,同一の商品の商標として,複数の商標を付することも認められるから,1 97号商標が登録された以降は,その一部である使用商標3を商標として使用でき ないという理由はない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。
ク 原告は,本件商品2に係る無料アプリは,アララ社が提供するものであって,被告が提供するものではないから,被告が,本件カタログにアララ社が提供 する本件商品2を掲載すると共に使用商標3を付して頒布したとしても,商標法5 0条1項の「使用」に該当することはないと主張する。 しかし,本件カタログにおける広告は,被告が,前記オで認定したビジネスモデ ルの一環として行っているものであって,本件商品2はアララ社が提供するもので あったとしても,前記認定の本件商標の「使用」の事実が左右されることはない。

◆判決本文

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平成30(ネ)10057  商標権侵害行為差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成31年1月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(2部)は、4条1項19号違反の無効理由ありとして権利行使不能とした1審判決を維持しました。
 また,控訴人は,KCP社の売上げは,平成28年以降はほとんどない旨主 張するが,乙18によると,平成28年の売上げは平成25年及び平成26年より も高いことが認められる上に,そもそも,商標法4条1項19号の周知性の判断の 基準時は,登録出願時及び査定時であるところ(商標法4条3項),本件商標の出 願及び査定は,いずれも平成27年にされている以上,KCP社商標の周知性の判 断は,平成28年における売上高に左右されない。
(ウ) さらに,控訴人は,KCP社の英語表記は,「KCEP HEAVY IN DUSTRIES CO.,LTD.」であると主張するので,同主張について,以下検討する。
a 前記(1)アのとおり,KCP社は,設立後,「KCEP」ではなく,「KC P」の文字からなるKCP社商標を,同社の製品に付して販売し,また,型番の一 部にも使用していることからすると,KCP社及び同社の製品を示す表示として,\nKCP社商標が使用されていることは明らかである。 また,控訴人代表者も,代表\者尋問において,本件商標出願の時点で,KCP社 がKCP社商標を使用していたことを認識していた旨供述していること,KCP社 の理事に送信したメールの韓国語の文書に,KCP社を「KCP」と記載している こと(乙90)からすると,控訴人代表者自身も,KCP社の英語表\記をKCPで あると認識しているものと認められる。
b 控訴人は,KCP社の正式な英語表記は「KCEP」であると主張する。\nしかし,前記のとおり,KCP社は,自社製品に「KCP」との英語の表記を\n付しており,また,証拠(乙107,114)によると,KCP社は,外国企業へ の見積もり送り状や外国企業との契約書において,自社を「KCP HEAVY INDUSTRIES CO.,LTD.」と表記していることが認められる。\n一方で,本件証拠上,KCP社が「KCEP」との英語表記を用いた事実は認\nめられない。なお,証拠(甲63,乙130)によると,KCP社の韓国貿易協会 の会員登録における英語表示が,「KCP」から「KCEP」に変更され,その後,\n「KCP」に戻ったことが認められるが,上記の「KCEP」への変更は控訴人の 働きかけによるものであり(乙129),KCP社が関与していたとは認められな いから,同事実によって,KCP社が,自社の英語表示として「KCEP」を使用していたと認めることはできない。\nしたがって,KCP社は,同社の英語表記として「KCP」を選択して使用し\nたものと認められ,このことは,KCP社の商号を韓国語から英語に訳する際の訳 語いかんによって左右されるものではない。 c 以上より,KCP社及び同社の製品を示す表示として,KCP社商標が使\n用されているのであり,前記(ア)の判断は左右されない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)12058

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平成30(ネ)10067  商号使用禁止等請求控訴事件  その他  民事訴訟 平成31年2月14日  知的財産高等裁判所  さいたま地方裁判所

 業務提携が、解消されたときに本件商号を使用しない旨の黙示の合意があったかが争われました。知財高裁は上記合意はなかったと判断しました。
 加えて,前記認定事実によれば,控訴人が平成24年9月に控訴人の保有する被控訴人の株式全部を被控訴人代表者(A)に譲渡して,控訴人と被控訴人との資本関係及び業務委託関係(業務提携)を解消した際,控訴人は,被控訴人に対し,被控訴人が上記解消後に被告商号を継続して使用することについて異議を述べたり,被控訴人の商号を別の商号に変更するよう求めなかったこと,その後も,控訴人は,平成29年6月17日に本件訴訟を提起するまでの約4年9か月間,被控訴人が被告商号を使用して営業活動を行っていることを認識しながら,被控訴人に対し,被告商号の使用を差し控えるよう求めなかったことが認められる。また,控訴人は,控訴人の保有する被控訴人の株式全部をAに譲渡する前は,被控訴人の発行済株式の過半数を有する株主であったから,Aに株式全部を譲渡する前に,被告商号が株式譲渡後に確実に変更されるための対策を講じようと思えば,講じることが可能な立場にあったにもかかわらず,控訴人がそのような対策を講じることを検討した形跡はうかがわれない。\nこれらの諸事情を勘案すると,被控訴人は,控訴人が新築した建物の顧客に対するアフターケア業務を代行して担当する子会社として設立され,被告商号が,控訴人と被控訴人の間に資本関係及び業務委託関係(業務提携)が存在することを踏まえて決定されたという経緯があったからといって,控訴人及び被控訴人のいずれにおいても,被控訴人の設立の際に,控訴人と被控訴人の資本関係及び業務提携が解消されたときは,被控訴人の商号を被告商号から別の商号へ変更する意思又は意向を有していたものと認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。

◆判決本文

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平成30(行ケ)10100  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月6日  知的財産高等裁判所

 請求項1についての無効理由なしとした審決が維持されました。本件は第4次審決の取消訴訟です。第1次審決は無効理由なしであり、審取にて取消されて、審判にて訂正がなされて無効理由なしと審決されました。これを第3次審決まで繰り返しています。また、別途無効審判がありますが、一旦併合されて、その後分離され、中断しています。争点は明確性違反などです。
 本件訂正事項1は,要するに,請求項1における「皮膚」を「皮膚(但し, 皮膚は表皮及び真皮から成る。以下同様)」に訂正するものである。\n原告が指摘するとおり,「皮膚」がどのような組織を意味するのかという点 について,本件明細書中に定義や示唆はない。そこで,証拠として提出されて いる各種辞典類(甲40・広辞苑,甲41・生化学辞典,甲77・化粧品辞典) の記載を総合的に検討すれば,通常,「皮膚」なる用語には,「表皮・真皮」\nを指す場合と,「表皮・真皮・皮下組織」を指す場合の二通りの意味があるも\nのと認められる。 すなわち,甲40(広辞苑)には,「【皮膚】後生動物の体を包む外被。体 の保護,体温・水分蒸発などの調節,各種の感覚の受容のほか,皮膚呼吸も営 む。動物によりさまざまに変形適応する。高等脊椎動物では表皮・真皮・皮下\n組織,および各種の付属器官から成る。」の後に「表皮と真皮のみを指す場合\nもある。」と明記されている。 甲41(生化学辞典)には,「皮膚[cutis,skin] 表層にある上皮性の表\ 皮とその下の結合組織性の真皮から成る.その下は皮下組織で多くの場所で脂 肪組織に変わっている.…」とある。 甲77(化粧品辞典)には,「皮膚は大きく3層(表皮,真皮,皮下組織)\nからなる」という記載がある一方で,「皮膚の厚さ(表皮と真皮を足した厚さ)\nは1.0〜4mmで,一般に女性よりも男性が厚く,幼児よりも成人が厚い.…たんなる物理的な壁ではなく,生体の保護を中心とする絶対不可欠な機能を\nもった組織である.」という記載もある。 以上のとおり,「皮膚」は,広義では,動物(高等脊椎動物)の表皮・真皮\nのみならず皮下組織をも含むものとして観念されるものの,その機能の多様性\nに照らし,表皮・真皮のみを指す場合もあるといえ,文脈を離れて一義的にそ\nの意味するところを決することはできない。 本件訂正事項1は,このうち後者の場合,すなわち,皮下組織を含まないも のと定義することによって技術的に明瞭な記載とすることを意図したものであ り,不明瞭な記載の釈明を目的とするものに該当する。また,かかる訂正によ って本件発明の解釈に支障や混乱を来すとは認められない。 以上に反して,(皮下組織をも含むものとして)皮膚概念は一義的に明確で あるとする原告の主張は,一面的な見方であって,直ちに採用できないというべきである。
・・・
本件訂正事項4は,本件訂正前の請求項1に記載された「経皮吸収製剤」か ら「目的物質が医療用針内に設けられたチャンバに封止されるか,あるいは縦 孔に収容されることによって基剤に保持されている経皮吸収製剤」(除外製剤) を除外するものであるところ,原告の主張は,要するに,この除外製剤が物と して技術的に明確でないとするものである。 そこで検討するに,除外製剤における「医療用針」が,目的物質を注入する ための注射針やランセット,マイクロニードルなどを意味することは,出願時 の技術常識に照らして明らかであるといえる。また,「チャンバ」又は「縦穴」 が当該「医療用針」内に設けられたものであること,及び「目的物質」が「チ ャンバに封止されるか,あるいは縦孔に収容されることによって基剤に保持さ れている」ことは,いずれも除外製剤の構造を特定するものであって,その特\n定に不明確な点があるとは認められない。 そうすると,上記除外製剤が,特定の構造を有する「医療用針」である「経\n皮吸収製剤」を意味していることは明らかであるから,上記除外製剤は物とし て技術的に明確であり,さらには,かかる除外製剤を除く「経皮吸収製剤」に ついても,発明の詳細な説明の記載,例えば,【0070】の「基剤に目的物 質を保持させる方法としては特に限定はなく,種々の方法が適用可能である。\n例えば,目的物質を基剤中に超分子化して含有させることにより,目的物質を 基剤に保持させることができる。その他の例をしては(判決注:「その他の例 としては」の誤記と認める。),溶解した基剤の中に目的物質を加えて懸濁状 態とし,その後に硬化させることによっても目的物質を基剤に保持させること ができる。」に接した当業者であれば,出願時の技術常識を考慮して,物とし て明確に理解することができるといえる。
 そうである以上,本件訂正事項4によって訂正された請求項1の記載は明確 であるというべきであって,これに反する(あるいは前提を異にする)原告の 主張はいずれも採用できない。

◆判決本文

第3次までの取消訴訟は以下です。

◆平成25(行ケ)10134

◆平成26(行ケ)10204

◆平成28(行ケ)10160

侵害訴訟事件です。

◆平成26(ネ)10109

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平成30(行ケ)10138  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年2月6日  知的財産高等裁判所

 オーガスタ ナショナルインコーポレイテッドが、商標「コナミスポーツクラブマスターズ」に対して、4条1項15号違反を主張した事件ですが、知財高裁は、無効理由なしと判断した審決を維持しました。経緯がややこしいです。第1次取消訴訟では、無効理由なしとした審決について、「職権証拠調べをしたにも関わらず意見陳述の機会を与えなかった」として取り消されています。
 再開された審判手続において,原告はその請求に係る役務を,”ゴルフ用ビデオの制作等”と一部を取り下げました。これは、商標法においても指定商品役務毎に無効主張ができますが、15号違反の場合、包括概念の一部についてのみ無効理由がある場合があるから、このような無効対象役務を特定する必要があるのでしょうね。
 本件商標は,「コナミスポーツクラブマスターズ」の片仮名15文字を標準文字で表して成る文字商標であって,外観的には,同一の大きさ・書体の文字により,全体が等間隔で一行にまとまりよく配置されており,一連一体のものとして構\成されていることが明らかである。そして,前記のとおり,我が国においては,「コナミスポーツクラブ」は 被告子会社が運営するスポーツクラブの名称として周知であるということが できる一方で,「マスターズ」は原告主催のゴルフ・トーナメントの略称の みならず,熟練者ないし中高年を含む一定年齢以上の年齢層を対象とした各 種スポーツ競技ないし競技大会をも指す語として,スポーツ愛好者等の間に 広く知られており,現にゴルフはもちろん,ゴルフ以外の競技においても, 大会名において「マスターズ」の語が広く使用されている事実が認められる ことからすると,本件商標を目にした者が直ちに「マスターズ」の部分のみ に着目して原告主催のゴルフ・トーナメントを連想するということはできず, むしろ,語頭の「コナミスポーツクラブ」の部分に着目して「コナミスポー ツクラブが関連する何らかのマスターズ競技ないしその競技大会」と理解す ると考える方が合理的である。したがって,外観(文字構成),称呼及び観\n念に照らしても,本件商標と引用商標の類似性の程度はそれほど高いとはい えない。
また,「マスターズ・トーナメント」という大会それ自体は世界的に周知・ 著名なゴルフ競技会であるとしても,元々「masters」が「名人,達 人」を意味する「master」の複数形にすぎず,原告の造語でないこと は原告自身も認めているところであるし,ゴルフというスポーツの技を競い 合う競技会の名称に,技術に長けた人を表す「名人,達人」の語を用いるこ\nとは,語義に忠実な用法であって,特に奇抜性があるとか斬新であるという こともできないから,当該表示や当該表\示を選択したことについて独創性が あるともいえない。
さらに,商品・役務間の関連性や取引者・需要者の共通性という点につい ても,本件商標の指定役務のうち無効請求役務は,いずれもゴルフに関連す る役務であるから,その限りにおいて,原告の役務との間で関連性や需要者の共通性が認められるというべきであるが,他方で,原告はその主催する「マ スターズ・トーナメント」がよく知られているという以外には,特に日本国 内でゴルフ競技会を開催しておらず,また,日本国内でゴルフ関連事業(商 品の販売や役務の提供)がよく知られているとも認められない。すなわち, 原告提出の証拠(甲56〜76など)によれば,原告は,一応,日本国内に おいても,ライセンス等により引用商標を表示したゴルフ用品の販売を行っ\nていることや,「マスターズ・トーナメント」の開催時期に合わせてグッズ や関連商品の販売を行っていることが認められるが,その売上高や広告宣伝 等(事業規模)の詳細は不明であって,この程度の立証では,引用商標が「マ スターズ・トーナメント」以外に原告の提供する商品それ自体の出所識別を 表示するものとしても我が国で周知著名であると認めるには足りない。\n以上のことからすると,本件において,役務の関連性や需要者の共通性は それほど重視すべき事情であるとはいえない。また,原告は経営多角化の可 能性についても言及するが,何ら具体性のある主張立証はなされておらず,\nこの点についても特にみるべき事情があるとはいえない。
(3) 以上によれば,引用商標が原告主催のゴルフ・トーナメントの略称として も周知著名であることや,引用商標と本件商標との間に「ゴルフ」という共 通項があることを踏まえても,本件商標を指定役務(無効請求役務)に使用 したとき,当該役務が,原告の業務に係る役務であるとか,原告との間にい わゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商\n品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務である(4) 原告の主張について 原告は,本件商標について法4条1項15号該当性を認めなかった本件審 決の認定判断は誤っているとして種々主張するが,その主張は要するに,「マ スターズ」の語に原告主催の「マスターズ・トーナメント」以外の意味が認 められないことや,「コナミスポーツクラブ」の周知性が認められないこと を前提とするものであって,その前提自体が採用できないものであることは, 既に説示したとおりである。 また,原告は,本件審決が本件商標と引用商標の類似性の程度が低いと認 定した点や,「マスターズ」及び「Masters」の独創性が高いとはい えないと認定した点についても誤りであると主張するが,その主張が採用で きないことも既に説示したとおりである。

◆判決本文

第1次取消訴訟はこちらです。

◆平成28(行ケ)10083
関連事件(対象が第5712040号)です。

◆平成30(行ケ)10154

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平成30(行ケ)10054  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月4日  知的財産高等裁判所(3部)

進歩性違反無しとした審決が維持されました。知財高裁は、「甲1文献の記載から,経日安定性の改善のために引用発明1の構成を2剤に変更するという解決手段を読み取れるにもかかわらず,さらに,甲2文献記載の技術事項を組み合わせる動機付けは見当たらない。」と述べました。
 原告は,本件発明1は,引用発明1に甲2文献記載の技術事項を組み合 わせることにより,当業者が容易に想到することができたものであると主 張する。
イ そこで検討するに,甲1文献における「比較例4,8〜10は発泡性, ガス保留性試験においては実施例2同様良好であったが,経日安定性に著 しく劣った。」(上記2(1)ケ)との記載から,引用発明1には経日安定性 に問題があることが理解され,当業者は,経日安定性の改善を課題として 見いだすといえる。 そして,1) 甲1文献に「後記特定組成の発泡性化粧料は,2剤型であ る為経日安定性に優れ,」(同エ)との記載があり,経日安定性試験の結 果が◎又は○である実施例1〜11(第1表)は2剤型の構\成であること (同ク),2) 経日安定性が○である比較例3(第2表)は,同様の第1\n剤と炭酸水素ナトリウムのみをPEGで被覆した粉末の2剤型の構成であ\nること(同ケ)から,炭酸塩と酸とを2剤に分ければ経日安定性が向上す ること,及び酸を水溶液とし,炭酸塩をPEG被覆すればアルギン酸ナト リウムが存在せずとも経日安定性は十分となることが理解できる。そうす\nると,これらの甲1文献に開示された事項に基づき,引用発明1の経日安 定性を改善しようとした場合,炭酸塩と酸との反応で経日安定性が低下す ることを避けるため,引用発明1において,「アルギン酸ナトリウム・炭 酸塩含有PEG被覆粉末1+酸含有PEG被覆粉末2の混合物」という構\n成を,「アルギン酸ナトリウム・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」と「酸含有PEG被覆粉末2」との2剤に分けることは,当業者であれば容易に想 到するといえる。
このように,甲1文献の記載から,経日安定性の改善のために引用発明 1の構成を2剤に変更するという解決手段を読み取れるにもかかわらず,\nさらに,甲2文献記載の技術事項を組み合わせる動機付けは見当たらない。 また,引用発明1は二酸化炭素による血行促進作用によって皮膚を賦活 化させるための化粧料で,アルギン酸ナトリウムは安定な泡を生成し,二 酸化炭素の保留性を高めるために配合されているのに対し,甲2文献には 二酸化炭素の発生についての記載はなく,甲2文献記載の技術事項におけ るアルギン酸ナトリウムは二価以上の金属塩類との反応により皮膜を形成 するためのものであって,化粧料の使用目的もアルギン酸ナトリウムの配 合目的も異なるものである。そして,甲1文献及び甲2文献には,引用発明1に甲2文献記載の技術事項を組み合わせた場合に引用発明1における 発泡性及びガス保留性を維持することができることを示唆する記載もない から,このことからも,引用発明1に甲2文献記載の技術事項を組み合わ せる動機付けがあることは否定される。
ウ 以上によれば,本件発明1について,当業者が,引用文献1に甲2文献 記載の技術事項等を適用することによって容易に想到することができたと いうことはできない。また,以上に述べたところは,本件発明9における相違点Dについても妥当する。これによれば,本件発明2〜8,10〜13についても,同様 に,容易に想到することができたとはいえない。
(3) 原告の主張について
ア 原告は,引用発明1にはダマ形成問題及び攪拌問題が存在するから,こ れらの課題を解決するために,甲2文献記載の技術事項を組み合わせる動 機付けがあると主張する。
(ア) ダマ形成問題について
ダマとは粉末の水和が早いことにより起こり,粉末の回りを水分子が 取り囲んで塊となり,粉末の内部まで水が浸透していかず,粉末が均一 に水に分散しない状態をいうと解され,アルギン酸ナトリウムを水に溶 解する際にダマが生じる問題があることが認められる(甲2,59〜6 2)。 しかし,甲1文献にはこのような問題について記載も示唆もない。そ して,引用発明1のように炭酸塩とアルギン酸ナトリウムの混合物がP EGで被覆された粉末においては,アルギン酸ナトリウムは少しずつ水 に溶解することが容易に理解され,このような炭酸塩とアルギン酸ナト リウムとの混合物がPEGで被覆された粉末と,被覆のないアルギン酸 ナトリウム粉末では水和のし易さが異なるから,引用発明1において, アルギン酸ナトリウムを水に溶解する際の一般的な問題が同等に当ては まるということはできず,当業者が,引用発明1につきダマ形成問題の 課題を見出すとは認められない。 また,原告は,甲44文献の記載によれば,PEGの被覆によりダマ 形成問題は解消しないと主張するが,原告の指摘する「主成分(ママコ を生じ易い糊料)の特性が阻害されたり,糊液粘度も変動する等の問題 点を抱えており,ママコの形成方法ないし消失法として効果的でなかっ た」との記載は,PEGの被膜によりママコが消失したとしても,異な る問題が生じ得ることを示したものと解され,引用発明1においてダマ 形成問題があることの根拠とはならないのは明らかであるから,原告の 主張は採用できない。 以上によれば,当業者は,引用発明1においてダマが形成されるとい う問題が生じるとは理解しないというべきである。
(イ) 攪拌問題について
原告は,引用発明1において,アルギン酸ナトリウムがダマを形成し, また,アルギン酸ナトリウムの水溶液濃度の上昇に伴って粘度が飛躍的 に上昇し,これと並行して炭酸塩と酸の反応が進行するから,少しでも 多くの二酸化炭素を取り込むためには難溶解性のアルギン酸ナトリウム の溶解及び均一化をできる限り短時間で行うことが求められ,そのため の徹底的な攪拌が不便かつ煩わしいという問題があると主張する。 しかし,このような問題は甲1文献に記載も示唆もなく,かえって,発泡性及びガス保留性は◎という引用発明の試験結果に照らせば,引用 発明の構成において,少しでも多くの二酸化炭素を取り込むために,素\n早く徹底的な攪拌操作をする必要があり,これが煩わしいという課題が あるとは解し得ない。
イ 以上のとおり,引用発明1において,当業者が原告の主張する課題を見 いだすとは認められないから,引用発明1に甲2文献記載の技術事項を組 み合わせることの動機付けがあるということはできず,原告の主張は採用 できない。

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こちらは分割出願に関する関連事件(審決取消事件)です。

◆平成30(行ケ)10033

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平成30(行ケ)10124  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年2月6日  知的財産高等裁判所

 商標「envie CHAMPAGNE GRAY」が、公序良俗に反するとした審決が維持されました。理由は、「シャンパン」の称呼及び「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」との観念をも生じるというものです。
 (1)本件商標は,指定商品を「眼鏡,電子出版物,アプリケーションソフトウェ\nア」として,別紙「本件商標」記載のとおり,「envie CHAMPAGNE GLAY」の 欧文字と「アンヴィ シャンパングレイ」の片仮名を上下二段に書してなるもので あ る と こ ろ , こ の 欧 文 字 と 片 仮 名 と は , 「 envie 」 と 「 ア ン ヴ ィ 」 ,「CHAMPAGNE」と「シャンパン」,「GLAY」と「グレイ」が,それぞれ対応 する関係にあることは,取引者及び需要者にとって容易に理解できる。 そして,前記認定に係る辞書,事典,雑誌,新聞等の記載内容及び掲載媒体等に 鑑みれば,本件商標のうち「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の表示は,「フ\nランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味する語であって, 生産地域,製法,生産量など所定の条件を備えたぶどう酒にだけ使用できるフラン スの原産地統制名称であって,本件商標の登録査定時以前から,日本において,シ ャンパーニュ地方産スパークリング・ワインの名称としてにとどまらず,発泡性ぶ どう酒の代名詞のようなイメージを持たれるほどに取引者のみならず消費者に広く 認識され,多大な顧客吸引力を有する極めて著名な表示であったことが認められる。\nしかも,商標法4条1項7号に当たるとされたとはいえ,「CHAMPAGNE(シャ ンパン)」の文字をその構成に含む商標や,これを模した商標が様々な指定商品又\nは指定役務につき出願されたことに鑑みると,日本において,上記表示は,ぶどう\n酒という商品分野に限られることなく,取引者及び需要者に対して高い顧客吸引力 を有するものであることがうかがわれる。 他方,本件商標を構成する他の要素のうち「envie」,「アンヴィ」は,フラン ス語で「羨望」を意味するとしても,一般の取引者及び需要者になじみのある語と はいい難い。また,他の要素である「GLAY」,「グレイ」は,「灰色」を意味する英語ないし外来語として広く認識されているということができるものの,これと 「CHAMPAGNE」,「シャンパン」とを一体的に結合した「CHAMPAGNE GRAY」,「シャンパングレイ」については,原告ないし訴外会社の商品及び他社 の商品において色彩を示す表示として使用された例は認められるものの,色彩を表\ 示する語としても,その他の意味を示す語としても,広く一般的に認識されている 語と認めるに足りる証拠はない。まして,これと「envie」,「アンヴィ」を一体 的に結合した「envie CHAMPAGNE GLAY」,「アンヴィ シャンパングレイ」 の語が広く一般的に認識されていると認めるに足りる証拠はない。 これらの事情を踏まえると,本件商標からは,「アンヴィ シャンパングレイ」 の称呼及び観念を生じるのみでなく,「シャンパン」の称呼及び「フランスのシャ ンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」との観念をも生じるということができ る。
(2) 前記各認定事実によれば,本件商標のうち「CHAMPAGNE」,「シャンパ ン」の部分は,フランスのシャンパーニュ地方で作られるスパークリング・ワイン (発泡性ぶどう酒)を意味する語であるところ,フランスにおいて,1908年 (明治41年)には法律により「CHAMPAGNE」という名称が法律上指定され, その後,原産地統制名称法(1935年7月30日付けデクレ)その他の法令により原産地統制名称として保護されていることが認められる。具体的には,公立行政 機関である原産地名称国立研究所(INAO)が定める生産区域,ぶどうの品種,生 産高,最低天然アルコール純度,栽培方法,醸造方法,蒸留方法に関する諸生産条 件を満たすぶどう酒のみがその名称として「CHAMPAGNE」(シャンパン)を使 用する権利を有することとして,シャンパーニュ地方産ワイン製品の品質につき厳 格な管理・統制が行われる一方でその生産者が保護されており,被告は,その製品 の専門的利益を防禦することをその任務とし,フランス国内及び国外において, 「CHAMPAGNE(シャンパン)」の原産地統制名称を保護する等の活動をしてい る。こうした被告をはじめとするシャンパーニュ地方のワイン生産者等の努力の結果,「CHAMPAGNE」,「シャンパン」の表示及びその対象であるシャンパーニ\nュ地方産のスパークリング・ワインは,周知著名性を獲得,維持し,高い名声,信 用ないし評判が形成されている。 これらの事情に鑑みると,「CHAMPAGNE(シャンパン)」の表示及びその対\n象であるシャンパーニュ地方産のスパークリング・ワインは,フランス及びフラン ス国民の文化的所産というべきものとなっており,重要性が極めて高いものである ことが認められる。 また,日本においても,遅くとも第二次世界大戦後,「CHAMPAGNE」(シャ ンパン)の表示につき,フランス国内法が尊重されている。\n
(3) 以上のような本件商標の文字の構成,指定商品の内容,本件商標のうちの\n「CHAMPAGNE」,「シャンパン」の文字がフランスにおいて有する意義や重要 性,日本における周知著名性等を総合的に考慮すると,本件商標をその指定商品に 使用することは,フランスのシャンパーニュ地方におけるぶどう酒製造業者の利益 を代表する被告のみならず,法令により「CHAMPAGNE(シャンパン)」の名声, 信用ないし評判を保護してきたフランス国民の国民感情を害し,日本とフランスと の友好関係にも好ましくない影響を及ぼしかねないものであり,国際信義に反し, 両国の公益を損なうおそれが高いといわざるを得ない。 したがって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当するというべきである。
(4) 原告の主張について
ア 原告は,「envie CHAMPAGNE GLAY」は原告ないし訴外会社が販売する コンタクトレンズブランド「envie」において「シャンパングレイ色」のカラーコ ンタクトレンズを示すものであり,「CHAMPAGNE」,「シャンパン」は色彩を 表示するものであり,これと色彩を示す「GLAY」,「グレイ」とが一体不可分で あることから,色彩以外の意味合いを想起することはないなどと主張する。 イ しかし,前記のとおり,「CHAMPAGNE GLAY」,「シャンパングレイ」 や「envie CHAMPAGNE GLAY」,「アンヴィ シャンパングレイ」が一体不可分のものと認識されているとはいえない。 また,「シャンパン」の語が色彩を意味する例があるといっても,「シャンパン 色(緑黄又は黄褐色)」(甲17),「シャンパン色,淡黄[緑黄]色」・「シャ ンパン(色)の」(甲18),「シャンパン色(緑黄色又は琥珀(こはく)色)」 (甲19),「シャンパン色(緑黄又は黄褐色)」(甲20),「シャンパン色の (淡い黄色)」(甲21)とされ,色彩としての「シャンパン」に相当する色彩の 表現が「緑黄色」,「黄褐色」,「琥珀色」などと必ずしも一致していないことか\nらもうかがわれるとおり,いずれもスパークリング・ワインとしてのシャンパンを 想起させることによって,いわば比喩的に「シャンパン」の語を用いて色彩を表現\nしているものである。このことは,前記のとおり,本件商標が「シャンパン」の称 呼及び「シャンパーニュ地方産のスパークリング・ワイン」の観念を生じることを むしろ裏付けるものといえる。 その他,原告は他の商標との関係や米国での商標登録の実情などをるる指摘する けれども,いずれも本件と直接関係するものではない。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。

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平成30(行ケ)10048  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年2月6日  知的財産高等裁判所

 動機付けがなく、むしろ阻害要因があるとして、無効理由なしとした審決が維持されました。
(4) 相違点3の容易想到性について
ア 前記認定に係る各文献の記載によれば,まず,甲9の軸受保持部材28は, 鍔部及び係止爪と類似する構成であるフランジ34と突起32とを有するものの,\n当該軸受保持部材28は,回転するカッター軸38を回転自在に支持するものでは なく,オイルシール40と,ころがり軸受であるオイルレスベアリング42とを支 持するものであり,軸受け部材に相当するものではない。 他方,甲5〜8,10〜16及び18は,いずれも,軸受け部材に関する技術が 記載されたものと認められるところ,弾性変形可能な係止爪が外周に突出し,基端\n側に鍔部を有し,また,係止爪は先端側に向かうほど当該軸受け部材における軸の 回転中心との距離が短くなる斜面を有している軸受け部材を,固定された板状体に 対して装着し,当該板状体に設けられた穴に軸を回転自在に支承するものである点 で共通するものの,固定された板状体以外の部材に装着することについての記載や 示唆はない。 また,甲17においては,軸受Aが装着されるボス(6)自体は板状体ではないもの の,ボス(6)は板状のベース(5)に固定されたものであり,軸受Aのフランジ板(1)と爪 片(4)の係合突起(4a)との間にのみボス(6)が配置されるものである。そうすると, 甲17と甲5〜8,10〜16及び18とは,直接に装着する対象そのものが板状 体であるか否かという点で違いはあるものの,いずれも装着される部材は板状体又 は板状のものに固定された部材であり,これをフランジと爪片との間で狭持するよ うにして固定する軸受け部材である点で共通するといえる。 以上を踏まえると,甲5〜8及び10〜18により,「固定された板状体の穴に軸を回転自在に支承する,滑り軸受けである軸受け部材において,弾性変形可能な\n係止爪が外周に突出しており,基端側に鍔部を有しており,同係止爪は先端側に向 かうほど軸受け部材における軸の回転中心との距離が短くなる斜面を有している軸 受け部材。」を周知技術として認定することができる。これは,本件審決認定に係 る周知軸受け部材に相当する。なお,甲5〜18の全ての文献から,軸受け部材に 関する周知技術というべき共通の技術事項を認めることはできない。
イ また,その余の文献の記載を見ても,まず,甲2〜4は,いずれもY字形を なし,二股に分かれた部分の先端付近に一対の回転体を設けて構成される美容器に\nおいて,回転体が非貫通状態で軸に支持されることを開示するものの,当該回転体 の支持構造として,本件発明1のような「係止爪」及び「段差部」を用いるものではない。\n次に,甲19の1のマッサージローラーは,その内装面に周囲を巡る凹部を備え, 「段差部」に類似する構成を有するものといい得るものの,マッサージローラー自\n体が弾性材料より構成されることにより,鞘の外装面の周囲を巡る隆起との間でス\nナップ結合をすることができるようにしたものである点で,本件発明1とは異なる。 他方,甲20の1のプラグ200は,フランジ201及びラッチアーム204に 突起205を有する点で,本件発明1の軸受け部材に類似する構成を有するものと\nいい得るものの,プラグ200は,2つのモジュールを固定するものであって,支 持軸に設けられる軸受け部材として機能するものではない。加えて,プラグ200\nは,モジュール140の貫通した孔からロックピン240を挿入することにより, プラグ200のラッチアーム204がモジュールの開口のラッチ凹部から離脱する のを防止するものであるから,非貫通状態の回転体を支持するために用いることを 前提としないことは明らかである。 そうすると,軸受け部材を用いて軸に対して非貫通状態の回転体を支持する際に, 回転体の内面に段差部を設けるとともに,軸受け部材には当該段差部に係止する係 合爪を用いる構成が開示されていることを認めるに足りる証拠はない。\n
ウ そもそも引用発明1は,ベアリング12及びL型ベアリング13という2つ の軸受け部材を用いることによって,ローラー4を回転自在に支承するものであるところ,これを1つの軸受け部材に置き換えることが可能であることを記載ないし\n示唆する証拠は見当たらない。 また,仮に引用発明1のベアリング12及びL型ベアリング13を1つの軸受け 部材に置き換えることが可能であったとしても,引用発明1のローラー4は,顔面\nに接触させて回転させるものであり,その長手方向と直交する方向に荷重がかかる ことは明らかであるところ,1つの軸受け部材に置き換えてしまうと,ローラーを その根元の部分でのみ支承することとなってしまい,ローラーを安定して回転させ ることが困難となることは容易に推察される。 そうすると,引用発明1のベアリング12及びL型ベアリング13を1つの軸受 け部材に置き換える動機付けはなく,むしろ阻害要因が存するといえる。
エ 以上より,引用発明1に甲2〜20の1記載の事項を適用することによって, 相違点3に係る本件発明1の構成を採用することは,当業者にとって容易に想到し\n得ることとはいえない。
オ 原告の主張について
(ア) 原告は,甲5〜18記載の事項を引用発明1に適用することが容易である ことを理由として無効理由の主張を行っているのではなく,これらの文献から共通して抽出される構成が周知の軸受け部材であるとし,これを引用発明1に適用する\nことが容易であったと主張しているにもかかわらず,本件審決は,各文献記載の事 項を個別に判断しており,その判断手法に誤りがあるなどと主張する。 しかし,甲5〜18の全ての文献から軸受け部材に関する周知技術というべき共 通の技術事項を見出すことはできないことは,前記のとおりである。本件審決は, その記載を通じて見れば,そのような理解を前提とした上で,個々の証拠における 軸受け部材を引用発明1に適用できるかを検討したものと理解されるのであり,そ の判断手法に違法があるものとはいえない。
(イ) 原告は,本件審決による周知軸受け部材の認定には誤りがある旨主張する けれども,この点に関する本件審決の判断に誤りがないことは前記のとおりである。
(ウ) 原告は,本件審決につき,実施可能要件適合性の判断においては甲5〜1\n8の記載を参酌し,板状体ではない回転体に使用する軸受け部材に係る係止片を弾 性変形させる場合に所定のクリアランスを設けることは技術常識であると認定する 一方で,進歩性の判断においては,甲5〜18の周知技術の認定として,これが技 術常識でないことを前提として判断しており,その認定・判断に矛盾があるなどと 主張する。 この点に関する原告の主張の趣旨は,やや判然としないが,そもそも,本件審決 は,実施可能要件適合性の判断の際,「係止爪を弾性変形させるために所定のクリ\nアランスを設けること」を技術常識として認定するにあたり,甲5〜18を参酌し たものではない。また,上記技術常識が認められるか否かと,甲5〜18の記載か ら原告主張に係る周知軸受け部材を認定し得るか否かとは,直接的な関係はない。 すなわち,「固定された板状体の穴に軸を回転自在に支承する,滑り軸受けである 軸受け部材において,弾性変形可能な係止爪が外周に突出しており,基端側に鍔部\nを有しており,同係止爪は先端側に向かうほど軸受け部材における軸の回転中心と の距離が短くなる斜面を有している軸受け部材」(本件審決認定に係る周知軸受け 部材)において,「固定された板状体の穴に軸を回転自在に支承する」ことは,係 止爪が弾性変形するためのクリアランスを設けることを前提とするか否かとは直接 的な関係がないことから,仮に係止爪が弾性変形するためのクリアランスを有する ことが技術常識であることを前提としても,その認定が異なることはない。
(エ) その他原告がるる指摘する点を考慮しても,この点に関する原告の主張は 採用できない。
(5)小括
以上のとおり,少なくとも,引用発明1に甲2〜20の1記載の事項を適用する ことによって,相違点3に係る本件発明1の構成を採用することは,当業者にとっ\nて容易に想到し得たものとはいえない。そうである以上,その余の点を論ずるまで もなく,本件発明1を容易に発明することができたとはいえない。

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◆平成30(行ケ)10049

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平成30(ネ)10033  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成31年1月31日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 大阪高裁は無効理由ありとして、1審の判断を取り消しました。1審では時期に後れた主張とされた無効主張も却下されませんでした。
1 争点3−4(乙64の1を主引用例とする進歩性欠如の無効理由の有無)に ついて
(1) 時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立てについて\n
被控訴人は,控訴人が当審において追加主張した乙64の1を主引用例と する進歩性欠如(争点3−4)を無効理由とする特許法104条の3第1項 の規定に基づく無効の抗弁(以下「本件無効の抗弁」という。)について, 民事訴訟法157条1項に基づき,時機に後れた攻撃防御方法に当たるもの として却下することを求める申立てをしたので,以下において判断する。\n
ア 前記第2の1(前提事実等)の(6)及び一件記録によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 控訴人は,平成27年4月17日の原審第4回弁論準備手続期日に おいて,被告準備書面(2)に基づき,実施可能要件違反の無効理由(争点\n3−1)による無効の抗弁の主張をし,同年9月14日の原審第7回弁 論準備手続期日において,被告準備書面(5)に基づき,明確性要件違反(争 点3−2)の無効理由による無効の抗弁の主張をした。 その後,原審の受命裁判官は,同年10月27日の第8回弁論準備手 続期日において,本件の侵害論の審理を終了し,損害論の審理を進める と述べた上で,控訴人に対し,被控訴人の損害主張に対し具体的に認否 反論し,必要な書面を提出するよう求めた。
(イ) 控訴人は,平成28年5月19日,本件発明1,2,6及び8につ いての本件特許を無効にすることを求める別件無効審判を請求した。 同年12月13日の原審第12回弁論準備手続期日において,控訴人 は,被告準備書面(10)に基づき,別件無効審判と同一の無効理由(サポー ト要件違反(争点3−3)の無効理由及び本件無効の抗弁に係る無効理 由を含む。)による無効の抗弁を追加して主張したのに対し,被控訴人 は,同期日において,上記主張は時機に後れた攻撃防御方法として却下 することを求める申立てをした。原審の受命裁判官は,被控訴人の上記\n申立てを容れて,控訴人の上記無効の抗弁に係る主張及び証拠を却下した。\n
(ウ) 特許庁は,平成29年12月15日,本件訂正後の請求項1,6及 び8に係る発明についての本件特許には,サポート要件違反(争点3− 3)の無効理由及び本件無効の抗弁に係る無効理由が存在するとして, 上記特許を無効とする別件審決をした。 同月20日の原審第18回弁論準備手続期日において,控訴人は,被 告準備書面(15)に基づき,別件審決が認めたサポート要件違反の無効理 由及び本件無効の抗弁に係る無効理由による無効の抗弁を再度追加して 主張したのに対し,被控訴人は,上記主張は時機に後れた攻撃防御方法 として却下することを求める申立てをした。原審の受命裁判官は,被控訴人の上記申\立てを容れて,控訴人の上記無効の抗弁に係る主張及び証拠を却下した。 原審は,同日,原審第2回口頭弁論期日において,本件訴訟の口頭弁 論を終結した後,平成30年3月22日,被控訴人の請求を一部認容す る原判決を言い渡した。 この間の同年1月20日,被控訴人は,別件審決の取消しを求める別 件審決取消訴訟を提起した。
(エ) 控訴人は,平成30年4月9日,本件控訴を提起した。控訴人は, 同年6月5日付けの控訴理由書において,被告準備書面(10)及び(15)を 引用して,サポート要件違反(争点3−3)の無効理由による無効の抗弁 及び本件無効の抗弁を記載した。 同年7月24日の当審第1回弁論準備手続期日において,控訴人は, 控訴理由書に基づき,本件無効の抗弁を主張し,被控訴人は,控訴答弁 書に基づき,上記主張は時機に後れた攻撃防御方法として却下すること を求める申立てをした。\n同年10月15日の当審第2回弁論準備手続期日において,控訴人は, 同年8月31日付けの控訴人準備書面(1)及び同年9月14日付けの控 訴人準備書面(2)に基づき,本件無効の抗弁の主張を補足し,被控訴人は, 同年10月1日付けの被控訴人第1準備書面に基づき,本件無効の抗弁に対する反論及び訂正の再抗弁を主張した。 その後,当裁判所は,同年12月10日の第1回口頭弁論期日におい て,本件口頭弁論を終結した。
イ 前記アの認定事実によれば,控訴人の当審における本件無効の抗弁の主 張は,原審において侵害論の審理を終了し,損害論の審理に入った段階で 提出されたため,時機に後れた攻撃防御方法として却下された主張と同旨 のものであるが,控訴人は,原審口頭弁論終結前に本件無効の抗弁に係る 無効理由の存在等を認めて本件特許を無効とする旨の別件審決がされた のを受けて,当審において再度提出したものであること,控訴人は,控訴 理由書に本件無効の抗弁を記載し,当審の審理の当初から本件無効の抗弁 を主張していたことが認められるから,当審における控訴人による本件無 効の抗弁の主張の提出が時機に後れたものということはできない。また,当審の審理の経過に照らすと,控訴人による本件無効の抗弁の主張の提出 により,訴訟の完結を遅延させることとなるとは認められない。 したがって,当審における控訴人による本件無効の抗弁の主張を時機に 後れた攻撃防御方法として却下することはしない。
(2) 本件明細書の記載事項等について
ア 本件発明1,2及び6の特許請求の範囲(請求項1,2及び6)の記載 は,前記第2の1(前提事実等)の(2)のとおりである。
・・・
前記aの記載事項によれば,乙64の2には,押しボタン式バルブ の下側で不燃性液体の上側の位置に,通気性を有する「連続気泡状パ ッキング」を挿入した,不燃性液化ガスを充填した噴射口を有する「噴 気式清掃機」の記載があり,その「連続気泡状パッキング」は,缶体 を逆さまにして使用しても不燃性液体がバルブ側の空間に漏れて液体 のまま噴出することを防止するためのものであることの記載があるこ とが認められる。 そして,乙64の2記載の「連続気泡状パッキング」は,連続気泡 を有する多孔質体であり,図2(別紙3)から円筒状の缶体内に挿入 された円板状の形状であることを理解できるから,「円板状多孔質 体」として,本件発明1の「通気性蓋状部材」に該当するものと認め るのが相当である。
(イ) 乙64の1には,スプレー缶を倒立状態で使用した場合や缶を倒立 状態で保管する場合に液漏れの原因となり,可燃性液化ガスの液漏れに より火炎が発生するおそれがあるため,吸収性能・保液性に優れた吸収\n体を提供することが課題であること(【0004】,【0054】)の 記載がある。 一方で,乙64の2には,乙64の2記載の「連続気泡状パッキング」 は,缶体を逆さまにして使用しても不燃性液体がバルブ側の空間に漏れ て液体のまま噴出することを防止するためのものであることの記載があ ることは,前記(ア)bのとおりである。 そうすると,乙64の1及び乙64の2に接した当業者は,乙64の 1の第1発明において,スプレー缶を倒立状態で使用した場合の吸収体 に充填された可燃性液化ガスの液漏れの防止を確実にするために,乙6 4の1の第1発明に乙64の2記載の「連続気泡状パッキング」の構成\nを適用する動機付けがあるものと認められる。 また,乙64の1の「具体的には,スプレー缶形状に合わせて,その 内径に適した大きさの円筒状の成形体とすると,充填が容易にできる上, 使用中も安定してスプレー缶内に保持することができる。」(【003 2】)との記載から,スプレー缶の使用中に吸収体を安定して保持する 必要性があることを理解できる。 以上によれば,当業者は,スプレー缶を倒立状態で使用した場合の吸 収体に充填された可燃性液化ガスの液漏れの防止を確実にし,吸収体を 安定して保持するために,乙64の1の第1発明において,乙64の2 の連続気泡状パッキングを適用する際に,乙64の2記載の連続気泡状 パッキングの構成のものを吸収体の表\面に密接に配置し,相違点2に係 る本件発明1の構成を容易に想到することができたものと認められる。\n
(ウ) これに対し被控訴人は,乙64の2記載の「連続気泡状パッキング4」は,バルブ2の下側に空間を形成するため缶体1に固定されている 必要があるため,肩部からバルブ側に押し込むように固定され(図2), バルブ2側に十分大きい空間が形成されないので,倒立状態では,比重\nの重い液体が下側(バルブ2側)へ移動し,バルブ側の空間に容易に液 が漏れることになって,倒立状態のまま噴射を継続することができない こと,乙64の2には,図2以外に,「連続気泡状パッキング4」の充 填状態について具体的に説明する記載はないことからすると,乙64の 1の第1発明に乙64の2記載の「連続気泡状パッキング」を組み合わ せる動機付けはないし,また,乙64の1の第1発明に乙64の2記載 の「連続気泡状パッキング」を組み合わせたとしても,本件発明1の通 気性蓋状部材の構成に至ることはない旨主張する。\nしかしながら,乙64の1の第1発明において,スプレー缶を倒立状 態で使用した場合の吸収体に充填された可燃性液化ガスの液漏れの防 止を確実にするために,乙64の1の第1発明に乙64の2記載の「連 続気泡状パッキング」の構成を適用する動機付けがあることは,前記\n(イ)のとおりである。 また,乙64の2には,連続気泡状パッキングが図2で示された位置 に配置することが不可欠である旨の記載はなく,連続気泡状パッキング の具体的な設置方法及び設置場所は,当業者が適宜決定すべき事項であると認められる。 さらに,乙64の2の【0012】の「連続気泡状パッキング4を挿 入し,たとえ缶体1を逆さまにして使用しても不燃性液体3が液体のま ま噴出することなく,ガスの整流性が良くなる。」との記載に照らすと, 乙64の2の「噴気式清掃機」が連続気泡状パッキングを挿入したため に倒立状態のまま噴射を継続することができないものと理解すること はできない。 したがって,被控訴人の上記主張は,採用することができない。
・・・
(7) まとめ
以上のとおり,本件発明1,2及び6は,乙64の1の第1発明及び乙6 4の2記載の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた ものと認められ,進歩性を欠くものであるから,本件特許には,特許法29 条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)があり,特許無効審判 により無効とされるべきものと認められる。
2 争点3−5(訂正の再抗弁の成否)(本件発明1及び6に関し)について
被控訴人は,本件訂正により,訂正前の請求項1及び6(本件発明1及び6) の無効理由は解消され,かつ,被告製品は,本件訂正発明1及び6の技術的範 囲に属するから,被控訴人は,控訴人に対し,本件特許権を行使することがで きる旨主張する。 そこで検討するに,本件訂正発明1(本件訂正後の請求項1)は,灰分含有 量を「1重量%以上12重量%未満」とするものであり,本件発明2と同一の 構成であるところ,前記1(5)のとおり,本件発明2は,乙64の1の第1発明 及び乙64の2の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることがで きたものと認められるから,本件発明1の無効理由は,本件訂正により解消されるものとはいえない。 また,前記1(6)で説示したのと同様の理由により,本件発明6の無効理由は, 本件訂正により,解消されるものとはいえない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,被控訴人の上記主張 は理由がない。
3 結論
以上によれば,本件発明1,2及び6は,進歩性を欠くものであり,本件特 許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)があ り,特許無効審判により無効とされるべきものと認められるから,被控訴人は, 同法104条の3第1項の規定により,控訴人に対し,本件特許権を行使する ことはできない。

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関連の審決取消し訴訟です。

◆平成30(行ケ)10012

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平成29(ワ)34450  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年1月31日  東京地方裁判所(46部)

 CS関連発明について、構成要件Dを有していないとして、非侵害の認定がされました。被告はヤフー株式会社です。
 前記(1)によれば,本件発明の意義は以下のとおりであると認められる。 従来の住宅地図は,建物表示に住所番地だけでなく居住者氏名も全て併記さ\nれていたため,氏名を記載するためのスペースを確保するために住宅地図の縮 尺を高くすることができず,そのため,地図の大きさも比較的大きくする必要 があるとともに,地図に氏名が記載されることによるプライバシー侵害や利用 者の検索への支障を生じたり,地図の更新作業のための調査に膨大な労力と人 件費がかかったりするという課題があった。また,住宅地図に付されている索 引についても,住所のうち丁目と,それぞれの丁目に該当するページが掲載さ れているだけであったため,同一の丁目の中で番地が異なっている多くの建物 の中から目的とする建物を探し出す必要があった。 本件発明は,居住者氏名を記載しないため,高い縮尺度で地図を作成するこ とにより小判で,薄い,取り扱いの容易な廉価な住宅地図を提供することや, 地図の更新のために氏名調査等の労力を要しないことによって廉価な住宅地 図を提供することを可能にするとともに,地図上に公共施設や著名ビル等以外\nは住宅番地のみを記載し,地図のページを適宜に分割して区画化したうえで建 物の所在する番地と記載ページと記載区画の記号番号を一覧的に対応させた 索引欄を付すことによって,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅地図\nを提供することを可能にするものである。\n
2 争点1−4(構成要件D(「該地図を記載した各ページを適宜に分割して区画\n化し」)についての文言侵害の有無) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告地図プログラムは,ユーザが,インターネット上の「https:/ /以下省略」のURLにアクセスし,所定の操作をするなどすると,ユーザ の端末にインストールされているWebブラウザを介して,ユーザ端末のデ ィスプレイに地図を表示できるようにしたプログラムである。\n被告地図プログラムにより表示される地図では,縮尺レベルが1〜20の\n20段階に分かれており,縮尺レベル20が最も詳細(縮尺率が小さい)な もので,縮尺レベル1が最も広域(縮尺率が大きい)なものである。各縮尺レベルに応じて,地図用のデータが存在する。 りディスプレイの画面に表示さ\nれる地図の画面表示等は,別紙「被告地図プログラムの構\成(分説)」記載の とおりである。(以上につき,甲13ないし19,乙1,22,弁論の全趣旨)
イ 被告地図において,市区町村名,町名,丁目及び番の表示の右側に〔地図〕\nと表示された部分等にはハイパーリンクが設定されており,そのハイパーリ\nンクに係るURLは,冒頭に「https://以下省略」と記載され,そ の後の記載がパラメータであることを示す「?」が記載された後に,「lat =…&lon=…&ac=…&az=…」及び「z=…」という記載を含む ものである。前記のlat,lon,ac,azが示す各値は,それぞれ当 該地点に係る緯度,経度,都道府県及び市区町村の住所コード,町,丁目, 番又は号の番号を示し,zが示す値は縮尺レベルを示す。ユーザがディスプ レイ画面上で当該ハイパーリンクをクリックすると,その緯度経度を含む地点データと縮尺データを含むURLが被告地図の地図提供サーバに送信さ れる。地図提供サーバが,この地点データに係る地点を含み,かつ,縮尺デ ータに係る縮尺のメッシュ地図を地図データベースサーバから読み出し,ユ ーザのパソコンに送信することにより,ユーザのディスプレイ画面上におい\nて当該緯度経度を中心とした所定の縮尺の地図が表示される。(甲4ないし\n19,弁論の全趣旨)
ウ インターネットに接続した状態で被告地図をユーザのディスプレイ画面 に表示し,その後,インターネットの接続を停止した上で地図表\示画面をス クロールさせると,地図が表示されない部分が画面上に表\示される。(甲3 4,弁論の全趣旨)
エ 被告地図プログラムにおける縮尺レベル19の縮尺は,概ね1/1250 から1/2857の範囲であり,被告地図における縮尺レベル20の縮尺は, 概ね1/615程度である。(甲33,乙1,弁論の全趣旨)
(2)本件明細書には、前記1(1)記載のほか、(発明の実施の形態)として以下 の記載がある。なお,以下の図1ないし5は,それぞれ,本判決別紙本件明細 書図1ないし5である。 ア 段落【0017】
・・・
(3)構成要件Dの「適宜に分割して区画化」について\n
構成要件Dの「適宜に分割して区画化」の意義について,特許請求の範囲の\n「各ページを適宜に分割して区画化し,…住宅建物の所在する番地を前記地図 上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対 応させて掲載」という記載(構成要件D,E及びF)に照らせば,構\成要件D の「適宜に分割して区画化」とは,記号番号を付すことや番地と対応する区画 を一覧的に示すことができる区画を作成することが可能となるように,検索す\nべき領域の地図のページを分割し,認識できるようにすることといえる。 そして,本件発明は, 前記1(2)のとおり、地図上に公共施設や著名ビル等以 外は住宅番地のみを記載するなどし,全ての建物が所在する番地について,掲 載ページと当該ページ内で分割された該当区画を一覧的に対応させて掲載し た索引欄を設けることによって,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅\n地図の提供を可能にするというものであり,本件発明の地図の利用者は,索引\n欄を用いて,検索対象の建物が所在する地番に対応する,ページ及び当該ペー ジにおける複数の区画の中の該当の区画を認識した上で,当該ページの該当区 画内において,検索対象の建物を検索することが想定されている。そのために は,当該ページについて,それが線その他の方法によって複数の区画に分割さ れ,利用者が該当の区画を認識することができる必要があるといえる。そうす ると,本件明細書に記載された本件発明の目的や作用効果に照らしても,本件 発明の「区画化」は,ページを見た利用者が,線その他の方法及び記号番号に より,検索対象の建物が所在する区画が,ページ内に複数ある区画の中でどの 区画であるかを認識することができる形でページを区分することをいうとい える。 前記(2)のとおり、本件明細書には、発明の実施の形態において,本件発明を 実施した場合における住宅地図の各ページの一例として別紙「本件明細書図2」 及び「本件明細書図5」が示されているところ,これらの図においては,いず れも道路その他の情報が記載された長方形の地図のページが示されたうえで, そのページが,ページ内にひかれた直線によって仕切られて複数の区画に分割 されており,その複数の区画にそれぞれ区画番号が付されている。また,本件明細書図4の索引欄には,番地に対応する形でページ番号及び区画番号が記載 されており,利用者は,検索対象の建物の番地から,索引欄において当該建物 が掲載されているページ番号及び区画番号を把握し,それらの情報を基に,該 当ページ内の該当区画を認識して,その該当区画内を検索することにより,目 的とする建物を探し出すことが記載されている(段落【0028】)。ここでは, 上記の特許請求の範囲の記載や発明の意義に従った実施の形態が記載されて いるといえる。そして,「区画化」の意義に関係して,他の実施の形態は記載さ れていない。
以上によれば,構成要件Dの「区画化」とは,地図が記載されている各ペー\nジについて,記載されている地図を線その他の方法によって仕切って複数の区画に分割し,その各区画に記号番号を付すことであり,索引欄を利用すること で,利用者が,線その他の方法及び記号番号により,当該ページ内にある複数 の区画の中の当該区画を認識することができる形で複数の区画に分割するこ とを意味すると解するのが相当である。 原告は,被告地図において,縮尺レベル19の住宅地図及び縮尺レベル20 の住宅地図がそれぞれ構成要件Dの「該地図を記載した各ページ」に該当する\nと主張した上で,被告地図のデータは,画面に表示されるときに区分された形\nでその一部が表示されるから構\成要件Dの「適宜に分割して区画化」されると 主張するとともに,「メッシュ化」され,また,複数のデータとして管理されて いるから構成要件Dの「適宜に分割して区画化」することになると主張する。\nしかし,仮に,縮尺レベル19の住宅地図及び縮尺レベル20の住宅地図が それぞれ構成要件Dの「該地図を記載した各ページ」に該当するとしても,利\n用者は,画面に表示されている地図を見ているのであって,線その他の方法及\nび記号番号により,ページにある複数の区画の中で,検索対象の建物が所在す る地番に対応する区画を認識することができるとはいえない。被告地図におい て「メッシュ化」がされていて,また,被告地図に係るデータが複数のデータ として管理されているとしても,被告地図プログラムの構成(分説)及び前記\nアないしウに照らし,利用者は,「メッシュ化」されている範囲や区分された データを通常認識しないだけでなく,それらに対応する記号番号を認識するこ とはない。したがって,被告地図において,線その他の方法及び記号番号によ り,ページにある複数の区画の中で,検索対象の建物が所在する地番に対応す る区画を認識することができるとはいえない。そうすると,前記 に照らし, 被告地図において,「各ページ」が,「適宜に分割して区画化」されているとは いえない。 これらによれば,被告地図について,構成要件Dの「適宜に分割して区画化」\nがされているとは認められない。

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平成30(ワ)3018  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年11月29日  東京地方裁判所(46部)

 サポート要件などの無効理由なし、技術的範囲に属すると判断されました。
 前記(2)のとおり、本件各名作書には、本件参照抗体と競合する,PCSK 9−LDLR結合中和抗体を同定,取得するための,免疫プログラムの手順 及びスケジュールに従った免疫化マウスの作製方法,ハイブリドーマの作製 方法,スクリーニング方法及びエピトープビニングアッセイの方法等が記載 されている。そして,当該方法によれば,本件各明細書で具体的に開示され た以外の本件参照抗体と競合する抗体も得ることができるといえる。 そうすると,本件各明細書の記載から当業者が実施可能な範囲が,本件各\n明細書記載の具体的な抗体又は当該抗体に対して特定の位置のアミノ酸の1 若しくは数個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有する抗体に限られる とはいえない。したがって,本件各明細書の記載から当業者が実施可能な範\n囲が本権各明細書記載の具体的な抗体又は当該抗体に対して特定のアミノ酸 の1もしくは数個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有する抗体に限ら れることを前提として,本件各発明の技術的範囲が本件各明細書記載の具体 的な抗体又は当該抗体に対して特定の位置のアミノ酸の1若しくは数個のア ミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有する抗体に限定されるとの被告の主張 は採用することができない。
(4)また,被告は,1)本件各明細書では,本件参照抗体と競合する抗体であれ ば,PCSK9とLDLRの結合を中和することができるという技術思想を 読み取ることはできない,2)本件各明細書の実施例に記載された3グループ ないし2グループの抗体のみによって,本件参照抗体と競合する膨大な数の 抗体全てがPCSK9−LDLR結合中和抗体であるとはいえず,本件各明 細書には,本件参照抗体と競合する膨大な数の抗体がPCSK9−LDLR 結合中和抗体であることの根拠は全く示されていないと主張する。 しかしながら,前記 のとおり,本件各明細書には,本件参照抗体がP CSK9−LDLR結合中和抗体であること,本件参照抗体がPCSK9に 結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体,又は,本件参照抗体 とPCSK9との結合を立体的に妨害するような上記エピトープに隣接する エピトープに結合する抗体である,本件参照抗体と競合する抗体は,本件参 照抗体と類似した機能的特性を有すると予\想されることが記載されている。 そして,前記 のとおりのスクリーニング等によって得られた本件各明細書の表2記載の30の抗体(21B12参照抗体と31H4参照抗体を除く。)\nのうち,24の抗体はPCSK9−LDLR結合中和抗体であり,かつ,本 件参照抗体と競合する抗体であること,表37.1.のビン1(21B12\n参照抗体と競合し,31H4参照抗体と競合しない抗体)に属する19の抗 体のうち16個,ビン2(21B12参照抗体とも,31H4参照抗体とも 競合する抗体)に属する抗体のうち2個及びビン3(31H4参照抗体と競 合し,21B12参照抗体と競合しない抗体)に属する10の抗体のうちの 7個は,表2に記載された抗体であり,これら16個と2個と7個の抗体の\nうち,27B2抗体並びに21B12参照抗体及び31H4参照抗体を除く 少なくとも20個はPCSK9−LDLR結合中和抗体であることが記載さ れている。そうすると,本件各明細書には,特定のスクリーニング等を経て 得られた抗体のうち,本件参照抗体と競合する複数の抗体がPCSK9−LDLR結合中和抗体であることが示されているといえる。 なお,この点に関係し,被告は,本件参照抗体と競合する膨大な数の抗体 がPCSK9−LDLR結合中和抗体であることの根拠は全く示されていな いと主張するが,本件各明細書に記載された抗体以外に,本件参照抗体と競 合するがPCSK9−LDLR結合中和抗体ではない具体的な抗体が示され ているものではなく,また,本件参照抗体と競合する抗体中,PCSK9− LDLR結合中和抗体でないものの割合が大きいことも明らかではない。 さらに,被告は,本件参照抗体と競合する抗体は,PCSK9−LDLR 結合中和抗体であるとは限らないとも主張する。しかし,本件各発明は,P CSK9−LDLR結合中和抗体であることを構成要件とするものであるか\nら(構成要件1A,2A),上記のような例外的な抗体は本件各発明の技術\n的範囲に含まれない。
(5)証拠(甲5,7の1,2,甲8〜10)及び弁論の全趣旨によれば,本件 各発明について,被告が主張する限定的な解釈を採らない限り,被告モノク ローナル抗体は,本件発明1−1及び本件発明2−1の各構成要件を全て充\n足し,被告製品は,本件発明1−2及び本件発明2−2の各構成要件を全て\n充足すると認められるから,被告モノクローナル抗体は,本件発明1−1及 び本件発明2−1の技術的範囲に属し,被告製品は,本件発明1−2及び本 件発明2−2の技術的範囲に属すると認められる。なお,被告モノクローナ ル抗体は,本件訂正発明1-1及び本件訂正発明2−1の技術的範囲にも属 し,被告製品は,本件訂正発明1−2及び本件訂正発明2−2の技術的範囲 にも属すると認められる。

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平成29(ワ)3572  職務発明対価請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年1月17日  大阪地方裁判所

 職務発明の対価請求について、請求が棄却されました。
 本件発明は,前述のとおり,塩素化塩化ビニル系樹脂の洗浄方法について, 装置の小型化や使用水量の削減といった生産性の向上を図ろうとするものであると ころ,原告らがこれについて特許を受ける権利を被告に承継したことによる相当の 対価を検討するに当たっては,前記イで述べたような,被告において単にこれを実施し得ることによる利益を考えるのではなく,本件発明が特許として登録され,そ の禁止的効力によって,競業者は本件発明を実施することができなくなり,被告が 競争上優位な立場に立つことによって得られる利益をもって,算定の基礎とすべき ことになる。 そして,既に検討したとおり,本件特許の登録後,競業者は,本件発明を実施す ることはできないが,公知濾過方式については実施することができるのであるから, 両者にコストや生産性の面で差があり,競業者が本件発明を実施できないことによ って被告が競争上優位な立場に立つのであれば,これによって得られる利益を,相 当の対価算定の基礎とすることができる。
エ 原告らの主張,立証について
 原告らは,公知濾過方式は実用化されておらず,競業者は,本件発明が実施 できなければデカンタ方式によることを余儀なくされるとして,デカンタ方式から 本件洗浄方式に切り替えたことによるコストの削減が,被告の排他的利益の内容で あると主張する。 しかしながら,公知濾過方式が実用化されていることは既に検討したとおりであ るし,本件発明の排他的利益を検討するに当たっては,前述のとおり,本件発明と 構成として共通する面の多い公知濾過方式と対比するのが相当であるから,原告ら\nの主張は失当である。 また,原告らは,前記ウで述べたような形での,公知濾過方式と対比する形での 本件発明による排他的利益については,予備的にも主張しない旨を明示している。\n以上によれば,特許法35条3項の相当の対価が存すると認めるに足りる主張,立証はないといわざるを得ない。

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平成30(行ケ)10027  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年1月28日  知的財産高等裁判所

 訂正の可否が争われて、知財高裁は特許庁の判断を取り消しました。争点は引用発明の認定誤りです。
 本件発明1における揮発性作業流体は,ストリッピング処理過程に付 す前に海産油に添加される液体であって,当該ストリッピング処理過程 において,海産油中に存在するある量の環境汚染物質が当該揮発性作業 流体と一緒に該海産油から分離されるものである。また,当該揮発性作 業流体はC10〜C22の遊離脂肪酸を含む。さらに,当該揮発性作業 流体はストリッピング処理過程で油から分離されるものであるから,「揮 発性」とはトリグリセリド等の油よりも揮発性が高いことを意味すると 解される(本件明細書の段落【0014】,【0021】,【0057】, 【0059】〜【0061】)。
 これに対し,甲2発明1におけるリノール酸は,ストリッピング処理 過程に付す前にサケ頭油に添加される液体であって,当該ストリッピン グ処理過程において,コレステロールと共に蒸留されるものである(上 記(1)ウ)。そして,リノール酸はC18の不飽和脂肪酸であって,トリ グリセリドと比較すると揮発性が高い(上記(1)ア)。 そうすると,本件発明1における揮発性作業流体と,甲2発明1にお けるリノール酸とは,除去対象物質が環境汚染物質であるかコレステロ ールであるかとの点で違いがあるものの,いずれもトリグリセリドと比 較して揮発性が高く,除去対象物質と共に蒸留される液体であるとの点 で共通する。また,リノール酸は,本件明細書において揮発性作業流体 として例示された「C10〜C22の遊離脂肪酸」に該当する。 したがって,甲2発明1におけるリノール酸は,本件発明1における 揮発性作業流体に当たると認めるのが相当である。 よって,この点についての本件審決の認定には誤りがある。
(オ) 小括
以上によれば,本件審決には,相違点6について,リノール酸が揮発 性作業流体といえるのか否かが明らかではないと認定した点において, 誤りがあるというべきである。

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平成30(ネ)10027  特許権に基づく損害賠償請求権不存在確認等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年12月12日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 アップルがクアルコムに対して求めた確認訴訟について、訴えの利益がないとした1審判決が維持されました。1審判決はアップされていません。
 イ この点に関し,控訴人らは,1)本件特許権がCMライセンス契約の対象 特許となっていることについて,被控訴人らからこれを裏付ける証拠は提 出されていないこと,2)被控訴人クアルコムは,控訴人アップルと被控訴 人クアルコム間のドイツ訴訟において,2016年(平成28年)第4四 半期以降,CMとの間で,新たな特許や訴訟の対象特許を取り込むための 交渉を一切行っていないことを自認しており,CMライセンス契約の有効 性やその許諾対象特許の範囲について疑義があること,3)被控訴人クアル コムは,台湾の公平交易委員会(TFTC)が2017年(平成29年) 10月20日にCMを含む携帯通信端末の製造販売業者との間で締結し ているライセンス契約について,ライセンス条件の再交渉を行うことを命 じる旨の是正命令を受けて,被控訴人クアルコムとCMとの間でCMライ センス契約の再交渉が開始されており,CMライセンス契約の条件は今後 変更される可能性があること,4)被控訴人クアルコムは,控訴人アップル に対し,自社が保有する必須宣言特許をほぼ完全に網羅する約2000頁 に及ぶ特許リスト(本件特許を含む。)(甲7)及び自社の保有する必須 宣言特許(本件特許を含む)のクレームチャート(甲14)を提示するこ とにより,「直接ライセンスなしでは(absent a direct license)」被控訴人クアルコムの必須宣言特許(本件特許を含む。)が控訴人アップルに よって侵害されているとの認識を示したこと,5)被控訴人クアルコムが, 控訴人アップルの求めに応じて提供した一覧表やクレームチャートに本\n件特許の米国対応特許及び中国対応特許が含まれていたことなどに照ら せば,本件特許権はCMライセンス契約の対象特許となっているとはいえ ず,また,控訴人アップルと被控訴人クアルコム間のライセンス交渉の中 で,被控訴人クアルコムが控訴人アップルに対し原告製品が本件特許権を 含む被控訴人クアルコムの保有する数多くの特許権を侵害していると主 張したことは明らかである旨主張する。
(ア) しかしながら,前記1(7)認定のとおり,被控訴人らは,本件弁論を 終結した当審の第1回口頭弁論期日において,被控訴人クアルコムは, CMに対し,本件特許権を含む特許について,原告製品の生産,譲渡等 に係るライセンスを付与しており,控訴人らは,CMから全ての原告製 品の供給を受けているから,被控訴人らは,控訴人らに対し,現在,本 件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を行使する意思は ないし,日本法上行使できるものとも考えていない旨を表明しているこ\nとに照らすと,本件の口頭弁論終結時点において,本件特許権が被控訴 人クアルコムとCM間のCMライセンス契約におけるライセンス対象 とされていることが認められる。 控訴人らが述べるように2016年(平成28年)第4四半期以降, 被控訴人クアルコムとCMとの間で,新たな特許や訴訟の対象特許を取 り込むための交渉を行っていないとしても,そのことは,CMライセン ス契約の内容が変更されたり,又は契約自体の効力が喪失したことを直 ちに意味するものではない。また,被控訴人クアルコムがTFTCの是正命令(処分)を受けてCMとの間でCMライセンス契約の再交渉を開 始したことを認めるに足りる証拠はない。 他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。
(イ) 前記1(2)認定のとおり,控訴人アップルと被控訴人クアルコムのラ イセンス交渉は,CMへの既存のライセンスに依拠することに代えて, 控訴人アップルに直接ライセンスを提供することを目的としていたこ とに照らすと,控訴人アップルが送付した甲9のレター記載の●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●との文中の「absent a license」の語は,「ラ イセンスがない場合に」を意味するものであり,CMに対するライセン スを含め,およそライセンスが存在しない場合を想定したものと認めら れる。 そして,前記1(2)の認定事実によれば,被控訴人クアルコムは,控 訴人アップルから被控訴人クアルコムに対してライセンスがない場合 に原告製品が侵害していると被控訴人クアルコムが考えている特許権 の特定を求められたことを受けて,控訴人アップルに対し,被控訴人ク アルコムがETSI(欧州電気通信標準化機構)に開示した特許の一覧\n表(甲7)及びサンプルクレームチャート(甲14)を提供したことが\n認められることに照らすと,上記一覧表及びクレームチャートに本件特\n許の米国対応特許及び中国対応特許が含まれているからといって,控訴 人アップルと被控訴人クアルコム間のライセンス交渉の中で,被控訴人 クアルコムが控訴人アップルに対し原告製品が本件特許権を侵害して いることを主張したものと認めることはできない。
(ウ) したがって,控訴人らの前記主張は理由がない。
」 (2) 原判決17頁4行目の「(3)」を「(3)ア」と改め,同頁19行目末尾に行 を改めて次のとおり加える。
「イ この点に関し,控訴人らは,被控訴人クアルコムは,本件訴訟では, CMライセンス契約の存在を理由として,本件特許権に基づく損害賠償 請求権及び実施料請求権を有しない又は行使できない旨主張している ものの,米国訴訟においては,CMライセンス契約の存在にかかわらず, 携帯通信SEPポートフォリオに含まれる特許につき,FRAND条件 の適合性やFRAND条件でのロイヤルティの確認を求める申立てを\nするなど,控訴人アップルによる被控訴人クアルコムの保有する特許権 の侵害を前提とする主張を行っており,被控訴人クアルコムの両主張が 矛盾することは明らかであり,このような被控訴人クアルコムの米国訴 訟における本件訴訟と矛盾した主張は本件訴えの確認の利益を基礎付 けるものといえる旨主張する。
しかしながら,前記1(6)認定のとおり,被控訴人クアルコムが,米国 訴訟において,反訴として,被控訴人クアルコムのライセンス提案がF RAND宣言に適合していること及び仮にFRAND宣言に適合しな い場合はFRAND条件によるロイヤルティの確認の申立てを行っていること,被控訴人クアルコムが,同訴訟において,2018年(平成\n30年)6月19日,控訴人アップルが本件特許の米国対応特許を侵害 している旨の専門家意見書を提出したことは,被控訴人クアルコムが, 本件訴訟において,被控訴人クアルコムからライセンスを受けたCMか ら原告製品の供給を受けている控訴人らに対し,本件特許権に基づく損 害賠償請求権及び実施料請求権を行使する意思はないし,日本法上行使 できるものとも考えていない旨主張していることと何ら矛盾するもの ではない。したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。」

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平成29(ワ)27374  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年12月11日  東京地方裁判所(47部)

 歌手の覚せい剤報道において、歌手から送られてきた未発表の楽曲を放送したことが、著41条の時事の事件の報道のための利用に該当するのかが争われました。裁判所は、41条には該当しないとして、110万円の損害を認定しました。
 1 本件楽曲は未公表の著作物であったか(争点(1)ア)について
(1)前記前提事実(3)エのとおり、本件楽曲は、被告Bが本件番組内で本件録音 データを再生した時点より前に,公衆に提供又は提示されていなかったから, 本件楽曲は法18条1項にいう「著作物でまだ公表されていないもの」に当\nたる。 この点,被告らは,原告が芸能リポーターである被告Bに対して本件録音\nデータを提供したことは公衆に提示したものと同視し得るから,本件楽曲は 本件番組内で放送された時点で「著作物でまだ公表されていないもの」には\n当たらない旨主張する。 しかしながら,法にいう「公衆」とは飽くまでも不特定多数の者又は特定 かつ多数の者をいう(法2条5項参照)のであって,被告B個人が公衆に当 たると解する余地はない。したがって,原告が被告Bに対して本件録音デー タを提供したことにより,本件楽曲が公表されたものとは認められない。\n2 公衆送信及び公表につき黙示の許諾があったか(争点(1)イ)について 証拠(甲7,乙A4)及び弁論の全趣旨によると,原告が被告Bに対して 本件録音データを提供した経緯について,次の事実が認められる。 ア 原告は,平成27年12月上旬頃,自らが執筆した自叙伝の原稿につい て芸能リポーターである被告Bの感想等を聞くため,知人を介して被告B\nの連絡先を入手した。そして,原告は,被告Bと電話で連絡を取り,その 感想等を求める趣旨であることを伝えた上,被告Bに対して上記原稿のデ ータをメールで送付した。
イ その後,原告は,被告Bと電話で連絡を取り,被告Bが上記原稿を読ん だ感想等を聞いた。その際,原告が被告Bに自らが音楽活動を行っている ことを伝え,自らが創作した曲を聴いた感想等を聞かせてほしいと頼んだ ところ,被告Bは,この依頼を承諾した。 (なお,原告は,被告Bに感想等を求めた際に,提供する楽曲を公表し\nないように求めた旨主張し,その陳述書(甲7)には,これに沿う部分が あるが,被告Bの陳述書(乙A4)にはこれに反する記載がある上,当該 主張は原告の平成30年3月6日付け準備書面で初めてされたものであっ て,それ以前はかかる明示的な求めはないことを前提とした主張がされて いたという経緯も考慮すると,原告の上記主張及び陳述部分は採用できな い。)
ウ そこで,原告は,平成27年12月22日,被告Bに対し,本件録音デ ターをメールで送信した。 被告らは,原告は音楽活動を再開したことが被告Bによってテレビ放送等 で告知されることを期待して本件録音データを提供したものであるから,本 件楽曲を公衆送信及び公表することを黙示に許諾したというべきであると主\n張する。 しかしながら, 上記(1)の認定事実によれば,原告は,本件楽曲を聴いた 被告Bの感想等を聞くために,被告Bに対して本件録音データを提供したに すぎないから,原告が本件録音データを提供したことをもって,本件楽曲を 公衆送信ないし公表することを黙示に許諾したとは認められない。被告Bが\n芸能リポーターであるからといって,それのみでは上記説示を左右しない。\n
3 被告らによる公衆送信行為は法41条所定の時事の事件の報道のための利用 に当たるか (争点(1)ウ)について 被告らは,本件楽曲は,1)視聴者に対して原告による覚せい剤使用の事実 の真偽を判断するための材料を提供するという点において「警視庁が原告を 覚せい剤使用の疑いで逮捕する方針であること」という時事の事件を構成す\nるものであるし,2)原告が執行猶予期間中に更生に向けて行っていた音楽活\n動の成果物であるという点において「原告が有罪判決後の執行猶予期間中に\n音楽活動を行い更生に向けた活動をしていたこと」という時事の事件を構成\nするものである旨主張する。 上記1)の主張について検討するに,前記前提事実(3)イおよびウによれば,本 件楽曲は,警視庁が原告に対する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求する予\n定であることやこれに関連する報道がされた際に放送されたものであると認 められるところ,警視庁が原告に対する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求 する予定であることが時事の事件に当たることについては,当事者間に争い\nがない。しかしながら,本件楽曲は,警視庁が原告に対する覚せい剤使用の疑いで 逮捕状を請求する予定であるという時事の事件の主題となるものではないし,\nかかる時事の事件と直接の関連性を有するものでもないから,時事の事件を 構成する著作物に当たるとは認められない。これに反する被告らの主張は採\n用できない。
次に,上記2)の主張について検討する。
ア 前記前提事実(3)イおよび乙B第1号証によると,以下の事実が認められる。 警視庁が原告に対する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求する予定で\nあることやこれに関連する報道がされた放送時間は,コマーシャルや他 のニュースが放送された時間を除くと約62分間であった。 このうち,本件録音データの再生に伴って原告の音楽活動に言及があ った時間は,午後3時31分頃から同36分頃までの約5分間であるが, うち約3分間はコマーシャルが放送された時間であった。具体的内容は, 別紙本件楽曲放送部分に記載のとおりである。 すなわち,本件番組の司会者は,「うーん。で,ASKA さんが,来月 ですか,新曲を YouTube で・・・。」「まあ,発表されるってことで,B\nさんが・・・」と切り出し,被告Bは,この発言を受けて,「実は,昨 年送ってきた曲がありますんで,コマーシャルの後にちょっとお伝えし たいと思います。」と発言した。 コマーシャルの放送後,被告Bは,「これ,送られてきたんで。えー, 去年の 12 月 22 日で,まあ,タイトルとしては『20年東京オリンピ ック曲』っていうふうについてたんです。」と説明した上で本件録音データを再生した。本件司会者は,本件楽曲を聴いた感想として,「今ま での曲調とは全然違いますよね。」,「どっちかというと幻想的な。」 と発言し,被告Bも,この感想に同調し,「ちょっと違う感じしますよ ね。まあ,きれいなメロディではあると思いますけど。」と発言した。 また,本件司会者は,「こういうのを作って,来月 YouTube で発表し\nようと。音楽活動に向けて動こうと。」と発言し,被告Bも,「そうで すね,この時点では,ご本人もいろいろブログを自分で書いているん で。」などと発言して,本件録音データの再生を止めた。 そして,本件録音データの再生が終わるとすぐに,本件番組の司会者 その他の出演者は,再び,警視庁が原告を覚せい剤使用の疑いで逮捕す る方針であることを話題にし,それぞれ意見を述べるなどした。 また,上記 以外の部分でも,原告の音楽活動に関する部分がある (14:23頃,14:29頃,14:33頃,15:08頃)ものの, その内容は,上記 と同様に,原告が,2020年のオリンピックのテ ーマソングとして作曲した本件楽曲を被告Bに送付し,来月,YouTube でアルバムを発売したり,友人のライブに出たりといった音楽活動に向 けて動こうとしている,ということを断片的に紹介する程度にとどまっ ている。
イ 上記認定事実によれば,本件番組中における原告の音楽活動に関する 部分は,警視庁が原告を覚せい剤使用の疑いで逮捕する予定であること\nを報道する中で,ごく短時間に,原告が2020年のオリンピックのテ ーマソングとして作曲した本件楽曲を被告Bに送付し,来月,YouTube で 新曲を発表するなど音楽活動に向けて動こうとしている,ということを\n断片的に紹介する程度にとどまっており,本件楽曲の紹介自体も,原告 がそれまでに創作した楽曲とは異なる印象を受けることを指摘するにす ぎないもので,これ以上に原告の音楽活動に係る具体的な事実の紹介は ないものであるから,このような放送内容に照らせば,本件番組中にお ける原告の音楽活動に関する部分が「原告が有罪判決後の執行猶予期間\n中に音楽活動を行い更生に向けた活動をしていたこと」という「時事の 事件の報道」に当たるとは,到底いうことができない。
4 被告らによる公衆送信行為は法32条1項所定の引用に当たるかエ)について
前記1で判示したとおり,原告が被告Bに対して本件録音データを提供した ことにより,本件楽曲が公表されたものとは認められず,本件番組の放送時に\nおいて本件楽曲は未公表の著作物であったと認められるから,被告らによる本\n件楽曲の公衆送信行為は法32条1項所定の引用には当たらない。
5 正当業務行為等により公表権侵害の違法性が阻却されるか(争点(1)オ)につ いて
被告らは,本件楽曲の公表は,原告が逮捕されそうであるという差し迫っ\nた状況において,有罪判決後の原告の音楽活動や更生に向けた活動等を具体 的に報道するとともに,視聴者に対して原告による覚せい剤使用の事実の真 偽を判断するための材料を提供するという目的で行われたものであり,その 具体的事情の下では,法41条の趣旨の準用,正当業務行為その他の事由に より違法性が阻却される旨主張する。 しかしながら,本件番組では原告の音楽活動にごく簡単に触れたに止まり, それに係る具体的な事実の紹介がないことは前記3で説示したとおりである し,本件楽曲が原告による覚せい剤使用の事実の真偽を判断するための的確 な材料であるとも認められないから,被告らの上記主張は,その前提を欠く ものであり採用できない。 また,被告Bは,原告が逮捕見込みであるとの報道に関連して,原告が更 生していることを示すために,本件録音データの一部のみを再生したもので あるから,芸能リポーターとしての正当な業務行為として違法性がない旨主\n張する。 しかしながら,原告の音楽活動に係る具体的な事実の紹介がないまま,本 件録音データの一部を再生したからといって,原告が更生していることを具 体的に示すことにはならないから,被告Bの上記主張も,その前提を欠くも のであり採用できない。
6 被告Bは公衆送信権及び公表権の侵害主体となるか カ)について
前記前提 Bは,本件番組の生放送中に出演者として本件楽曲の録音データ(本件録音データ)の一部を再生し,被告讀賣テレビは本件番組を放送したのであるところ,前記1ないし5の説示を踏まえれば,被告らは共同して原告が本件楽曲につき有する公衆送信権及び公表権を侵害したものと認められる。これに対し,被告Bは,被告讀賣テレビによる放送の履行補助者にすぎなかった旨主張するところ,その趣旨は判然としないものの,上記説示に照らして採用できない。
7 故意・過失の存否
被告Bはいわゆる芸能リポーターを業とし,被告讀賣テレビは基幹放送事\n業を業とするものであるから,被告らは,放送番組中において楽曲を再生し 放送する場合には著作権や著作者人格権の侵害がないように十分注意すべき\n高度の注意義務を負っているというべきところ,原告が本件楽曲を公衆送信 及び公表することを黙示に許諾したとは認められないにもかかわらず,その\n認識を欠いて本件楽曲を公衆送信及び公表することが許されると誤信した点\nなどにおいて,少なくとも過失があったと認められる。これに反する被告ら の主張は採用できない。 なお,原告は,本件楽曲を公表した際の本件番組の司会者と被告Bとのや\nり取りや本件番組の放送終了後の上記両名の言動を見れば,被告らが本件楽 曲を公衆送信及び公表することにつき原告の同意がないことを認識していた\nことは明らかであるから,被告らには故意がある旨主張する。 しかし,本件楽曲を公表した際の本件番組の司会者と被告Bとのやり取り\nは前記3(3)ア(イ) で認定したとおりであるところ,これらのやり取りを見ても, 上記両名が本件楽曲を公表することにつき原告による黙示の許諾がないこと\nを認識していたことはうかがわれない。また,証拠(乙A4)及び弁論の全 趣旨によれば,原告が本件番組の放送翌日に,被告Bに対して電話で本件楽 曲を放送したことを抗議した際,被告Bは,原告が本件楽曲を公表すること\nに同意していると認識していた旨の弁明をしていないものの,原告の抗議は 未発表であった本件楽曲を公表\したことを明示的に指摘したものではなかっ たことが認められるから,被告Bが上記のような弁明をしなかったからとい って,本件楽曲を公表することにつき原告の同意がないことを認識していた\nとは認められない。さらに,弁論の全趣旨によれば,本件番組の司会者と被 告Bは,平成28年12月23日に放送された番組内で,原告に対して謝罪 していることが認められるものの,その謝罪が未発表の本件楽曲を公表\した ことに対するものであったと認めるに足りる証拠はない。 その他,被告らが,本件楽曲を公表することにつき原告の同意がないと認\n識していたことや公衆送信権ないし公表権侵害の故意を有していたことを認\nめるに足りる証拠はないから,被告らの故意に係る原告の主張は採用できな い。
8 損害の有無およびその額(争点(3))について
(1)法114条3項による損害金
ア 証拠(甲3)によると,一般社団法人日本音楽著作権協会が,使用料規 程において,放送及び当該放送の録音に音楽著作物を利用する場合の使用 料について,年間の包括的利用許諾契約を締結する方法と1曲1回当たり の使用料を積算する方法とを定めているところ,著作権侵害による損害額 を算定するに当たっては,音楽著作物の継続的な利用を前提とする前者の 方法を基準とするではなく,1曲1回の利用ごとに使用料が発生すること を前提とする後者の方法を基準とするのが合理的であり,これに反する被 告らの主張は採用できない。 イ 上記使用料規程によれば,全国放送の場合,1曲1回当たりの使用料は, 利用時間が5分までは6万4000円,その後利用時間が5分を超えるご ろ,本件番組において本件楽曲が放送された時間は約1分間であった(前 記前提事実 )から,その相当対価額は6万4000円と認めるのが相 当である。
公表権侵害による慰謝料\n
前記2(1)及び3(3)で認定した各事実並びに証拠(甲7)及び弁論の全趣旨によれば,本件楽曲は平成32年(2020年)に開催される東京オリンピ ックのテーマ曲として応募することを目的として創作されたものであり,原 告としては,本件楽曲を聴いた感想を聞くために,被告Bに対して本件録音 データを提供したにすぎなかったにもかかわらず,本件番組(日本テレビ系 列28社により放送されている。)において本件楽曲が放送されたことによ り,原告は本件楽曲を創作した目的に即した時期に本件楽曲を公表する機会\nを失ったこと,しかも,本件楽曲は,本件番組において,警視庁が原告に対 する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求する予定であるという報道に関連す\nる一つの事情として紹介されたことにより,本件番組の司会者及び被告Bの 発言と相まって,本件番組の視聴者に対して原告が本件楽曲を創作した目的 とは相容れない印象を与えることとなったことが認められる。 なお,原告は,本件番組において,原告が覚せい剤の使用により精神的に 異常を来したかのような報道をされたことにより,原告の音楽家としてのイ メージを毀損され,精神的苦痛を受けた旨主張し,その陳述書(甲7)には これに沿う陳述部分があるが,本件における慰謝料請求は飽くまで本件楽曲 に係る公表権侵害を理由とするものであるから,上記認定のとおり,公表\権 侵害の方法・態様として評価し得る事情の限度で考慮するにとどめるのが相 当である。 これらの事情に加え,本件で顕れた一切の事情を併せ考慮すると,被告ら による公表権侵害に対する慰謝料の額は100万円と認めるのが相当である。\n

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平成27(ワ)8974  特許権侵害差止等請求事件  特許権 平成30年12月13日  大阪地方裁判所

 論点はいろいろありますが、主観的間接侵害における多用途品に対して差止請求が認められました。
(4) 被告表示器A,被告製品3の製造,販売等の行為についての直接侵害の成否
ア 被告表示器Aはプログラマブル表\示器であり,被告製品3はそれらにイ ンストールするソフトウェアであり,前提事実(前記第2の2(4)エ)のとおり,被 告表示器Aは被告製品3のソ\フトウェアがなければ作動せず,被告製品3のソフトウェアは被告表\示器においてのみ有効に機能する関係にあると認められるから,ユ\nーザがそれらの一方のみを使用することはないといえる。このため,原告は,1)被 告表示器Aと被告製品3は,その販売形態にかかわらず,実質的には常にセット販売されていると評価すべきものであり(セット販売理論),また,2)被告製品3のソフトウェアはユーザの下で必ず被告表\示器にインストールされるのであるから,ユーザは被告の道具としてインストールを行うにすぎない(道具理論)として,被告 表示器Aと被告製品3の各製造,販売等は,同一機会でされるものであるか否かを問わず,被告製品3のOSがインストールされた被告表\示器Aの製造,販売等と同視すべきであると主張する。
イ 被告表示器A,被告製品3は,それらが個別に販売される場合はもとより,同一の機会に販売される場合であっても,被告製品3の基本機能\OS及び拡張/オプション機能OSのうちの回路モニタ機能\等部分のインストールがいまだされ ない状態であるから,それらは直接侵害品(実施品)としての構成を備えるに至っておらず,それを備えるにはユーザによるインストール行為が必要である。\nこのような場合,確かに,ユーザの行為により物の発明に係る特許権の直接侵害 品(すなわち実施品)が完成する場合であっても,そのための全ての構成部材を製造,販売する行為が,直接侵害行為と同視すべき場合があることは否定できない。\nしかし,構成部材を製造,販売する行為を直接侵害行為(すなわち実施品の製造,販売行為)と同視するということは,ユーザが構\成部材から実施品を完成させる行為をもって構成部材の製造,販売とは別個の生産行為と評価せず,構\成部材の製造, 販売による因果の流れとして,構成部材の製造,販売行為の中に実質的に包含されているものと評価するということであるから,そのように評価し得るためには,製\n造,販売された構成部材が,それだけでは特許権の直接侵害品(実施品)として完成してはいないものの,ユーザが当然に予\定された行為をしてそれを組み合わせる などすれば,必ず発明の技術的範囲に属する直接侵害品が完成するものである必要 があると解するのが相当である。換言すれば,ユーザの行為次第によって直接侵害 品が完成するかどうかが左右されるような場合には,構成部材の製造,販売に包含され尽くされない選択行為をユーザが行っているのであるから,構\成部材を製造,販売した者が間接侵害の責任を負うことはあっても,直接侵害の責任を負うことは ないと解すべきである。
ウ このような観点から本件の事実関係について検討すると,前記(2)キ(イ) で認定した事実によれば,被告表示器Aにおいて回路モニタ機能\等を使用するため には,ユーザが,被告製品3をインストールしたパソコンで,動作設定を「回路モニタ」とする拡張機能\スイッチが配置されたプロジェクトデータを作成する必要があり,拡張/オプション機能OSのうちの回路モニタ等部分が転送対象として自動的に選択されるのも,ユーザが上記のようなプロジェクトデータを作成した場合の\nみであると認められる。これを換言すれば,そもそもユーザによって上記のような プロジェクトデータが作成されず,したがってこれが被告表示器Aにインストールされない場合には,ユーザが敢えて拡張/オプション機能\OSのうちの回路モニタ等部分を転送対象として選択しない限り,被告表示器Aに回路モニタ機能\等が備わることはないのである。 また,被告製品1−2については一部の機種では,そもそも回路モニタ機能等を使用できない。また,回路モニタ機能\等が使用可能な機種についても,これを使用\nするためにはオプション機能ボードを購入して設置する必要がある。そして,そもそもこれはオプションの部材であるから,ユーザがこれを購入して設置することが\n当然に予定されていると認めることはできないし,乙17及び18によれば,回路モニタ機能\等に対応している被告製品1−2を購入した者のうち,オプション機能\nボードを購入しなかった者が相当程度存したと認められる(原告は,乙17及び1 8は裏付け証拠がないから信用性を欠く旨主張するが,記載内容は一定の具体性を持っており,その内容が不合理であることをうかがわせる事情も認められず,かえ って,オプション機能ボードがまさにオプション品であることからすると,相当程度の者が購入しないというのは合理的であるから,具体的な割合はともかく,少な\nくともオプション機能ボードを購入しなかった者が相当程度存したと認められるという限度ではその信用性を認めるのが相当である。)。\nなお,被告製品1−1では,回路モニタ機能等が標準装備されているが,前記(2) ア(オ)での認定のとおり,被告製品1−1は他の点でも被告製品1−2にない機能を有しており,特にラダー編集機能\は,甲5のカタログでも回路モニタ機能等と並ん\nで強調されているものであることからすると,被告製品1−1を購入する者が須く 回路モニタ機能等を使用することを当然の前提としてこれを購入するとまで認めることは困難である。そして,これらの事情は,被告表\示器2Aについても妥当すると考えられる。
 以上のことを踏まえると,被告が販売した被告表示器Aや被告製品3だけでは,直ちに本件発明1の直接侵害品(実施品)が完成するわけではないし,ユーザが被\n告表示器Aを被告製のPLCに接続した上で,被告製品3の拡張/オプション機能\ OSのうちの回路モニタ機能等部分をインストールすることが必ず予\定された行為 であると認めることもできない。したがって,ユーザの行為によって直接侵害品が 完成するかどうかが左右されるような場合に該当するといわざるを得ない。
エ 以上に対し原告は,被告が被告製品1や2等のカタログにおいて,回路 モニタ機能等を強調していることや,被告表\示器Aが他の被告製品と比べて高額で あること等からすると,本件発明1を全く実施しないという使用態様が被告表示器Aと被告製品3のユーザの下で経済的,商業的又は実用的な使用形態としてあると\nは認められないと主張している。 しかし,前記ウで述べた事情からすると,カタログで強調されているからといっ て,ユーザが必ず回路モニタ機能等を使用するとまで認めることはできない。原告は,他の回路モニタ機能\等を使用できない被告製品(被告製品1−3等)との価格差も指摘するが,当該他の機種では回路モニタ機能等を使用することはできないものの,前記認定の被告表\示器Aと他の機種との画面サイズや機能の違いを踏まえる\nと,被告表示器Aを購入する者が回路モニタ機能\等を使用することを当然の前提としてこれを購入するものであるとまで認めることもできない。 なお,原告は,他社が回路モニタ機能等を使用できない廉価な製品を販売していること(甲23,24)を指摘しているが,それと被告表\示器Aや被告製品3とでは回路モニタ機能等以外の機能\が異なっており,またハード面での差異や購入後の サポートの内容も異なっていること(甲5,23,乙17)などを踏まえると,原 告のこの指摘によって上記事情が基礎付けられるともいえない。 以上より,本件発明1を全く実施しないという使用態様が,被告表示器Aと被告製品3の経済的,商業的又は実用的な使用形態でないと認めることはできないから,\n原告の上記主張は採用できない。なお,原告は東京地裁平成13年10月31日判 決を引用しているが,本件と事案を異にするから,本件には妥当しないというべき である。
オ 以上より,直接侵害の成立は認められない。したがって,仮に被告表示器Aと被告製品3の販売行為を実質的にセット販売と評価し得るとしても,その販\n売行為をもって本件特許権1の直接侵害行為と評価することはできない。
(5) 以上より,被告による被告表示器Aと被告製品3の製造,販売等の行為は本件特許権1の直接侵害行為に該当しない。\n
カ 主観的要件について
(ア) 特許法101条2号においては,「発明が特許発明であること」(主観 的要件1))及び発明に係る特許権の直接侵害品の生産に用いる「物がその発明の実 施に用いられること」(主観的要件2))を知りながら,その生産,譲渡等をすること が間接侵害の成立要件として規定されている。
(イ) 主観的要件1)について
a 被告は,本件発明1(本件特許1に係る発明)の存在を知った時期 は,本件第1特許の特許請求の範囲を本件発明1に係る構成要件のように訂正することを認めるとの審決(甲20)がされたことを知った平成28年11月16日で\nあると主張している。 そこで,まず,特許発明について特許請求の範囲の訂正があった場合には,訂正後の特許請求の範囲に係る発明を知った時に主観的要件1)を満たすことになるのか, それとも,訂正前の特許請求の範囲に係る発明を知っていれば,特許請求の範囲が 訂正された後の発明との関係でも,主観的要件1)を満たすことになるのかを検討す る。 特許法101条2号が主観的要件1)を間接侵害の要件とした趣旨は,同号の対象 品は適法な用途にも使用することができる物であることから,部品等の販売業者に 対して,部品等の供給先で行われる他人の実施内容についてまで,特許権が存在す るか否かの注意義務を負わせることは酷であり,取引の安全を害するとの点にある。 他方,特許請求の範囲等の訂正は,特許請求の範囲の減縮や誤記等の訂正等を目的 とするものに限られ(特許法126条1項),特許請求の範囲等の訂正は,願書に (最初に)添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にお いてしなければならず(同条5項),かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変 更するものであってはならないとされている(同条6項)。そして,特許請求の範囲 等の訂正をすべき旨の審決が確定したときは,その訂正後における特許請求の範囲 により特許権の設定の登録がされたものとみなされる(同法128条)。 以上のように,特許請求の範囲の訂正が認められる場合が上記のように限定され ていることを踏まえると,訂正前の特許請求の範囲に係る特許発明を知っていれば, 特許請求の範囲が訂正された後の特許発明との関係でも,主観的要件1)を満たすこ とになると解するのが相当である。このように解しても,特許法101条2号が主 観的要件1)を求めた趣旨に反するわけではないし,第三者にとって不意打ちとなる こともないからである。 なお,本件第1特許の特許請求の範囲の訂正も誤記の訂正及び特許請求の範囲の 減縮を目的とするもので,その他の訂正の要件も満たしており(甲19の1ないし 20),被告製品3は本件発明1の技術的範囲に属する以上,上記訂正前の本件発明 1の技術的範囲にも属することは明らかである。
b 本件では,被告は訂正前の本件発明1の存在を知っていたことを自認しているものの,その時期は原告からの警告書を受領した平成25年4月2日で あると主張している。これに対し,原告は被告が訂正前の本件発明1の存在をその 登録時の平成17年7月22日から知っていたと主張していることから,以下,被 告が平成25年4月2日よりも前に訂正前の本件発明1の存在を知っていたかを検 討する。
(a) 証拠(甲1,5,34,乙1ないし3,19,20)及び弁論の 全趣旨によれば,次の事実が認められる。
・・・
確かに,上記(a)の4)と5)の事実だけを見れば,原告の主張は理解し得ないわけで はないが,表示されたラダー回路の接点・コイルの指定による検索機能\\\自体は,被 告自身が平成8年12月以降,販売している「MELSEC QnA」という汎用シーケンサにおいて採用されていたのであり,GOT900で初めて採用された機 能とは認められない。そして,GOT900では,「MELSEC QnA」とは異なり,タッチパネル によって接点・コイルを指定するものとされており,これは変更点であり,訂正前 の本件発明1との共通点ではあるが,このような変更がされたのは,そもそもの操 作方法が「MELSEC QnA」ではキーボードであったのに対し,GOT90 0ではタッチパネルが採用されていたためとみることも可能である。したがって,上記事実から,被告が本件第1特許の出願を知っていたことが推認されるとまでい\nうことはできない。 そして,GOT1000でワンタッチ回路ジャンプ機能が採用されたのは,GOT900においてタッチパネル上で接点・コイルを指定して検索する機能\能\\が採用さ\nれていたことの延長線上にあるものと見ることも決して不合理ではない。 以上のような事実関係に照らせば,被告が本件第1特許の登録時に訂正前の本件 発明1の存在を知っていたとまで推認することはできない。そして,平成25年4 月2日にされた原告から被告への警告書の送付以外に,被告が訂正前の本件発明1 の存在を認識し得たことをうかがわせる事情は認められない。
なお,原告は,被告と原告はトヨタからの受注を獲得すべくしのぎを削っていた こと(甲32)や,原告や被告が他社との契約において,納入品の製作・納入に当 たり,第三者の特許権等を侵害しないよう,万全の注意を払うべき旨が明記されて いること(甲41)を指摘しているが,これらは一般的な事項にすぎず,上記具体 的な事実関係に照らせば,被告が訂正前の本件発明1を知っていたことを推認させ る事実になるとはいえない。 したがって,被告が平成25年4月2日より前に訂正前の本件発明1の存在を知 っていたと認めることはできない。
c 以上より,被告が訂正前の本件発明1の存在を知ったのは平成25年4月2日であると認められる。
(ウ) 主観的要件2)について
a 被告は,被告製品3には本件発明1を実施しない実用的他用途が存 在しており,また基本的に販売代理店に対して被告製品3を販売しているにすぎな いから,被告製品3がユーザの下で本件発明1の実施に用いられることを知らない と主張している。
b まず,どのような場合に主観的要件2)を満たすものと考えるべきか, すなわち,適法な用途にも使用することができる物の生産,譲渡等が特許「発明の 実施に用いられることを知りながら」したといえるのはどのような場合かについて 検討する。 そもそも,特許法101条2号の間接侵害は,適法な用途にも使用することがで きる物(多用途品)の生産,譲渡等を間接侵害と位置付けたものであるが,その成 立要件として,主観的要件2)を必要としたのは,対象品(部品等)が適法な用途に使用されるか,特許権を侵害する用途ないし態様で使用されるかは,個々の使用者 (ユーザ)の判断に委ねられていることから,当該物の生産,譲渡等をしようとす る者にその点についてまで注意義務を負わせることは酷であり,取引の安全を著し く欠くおそれがあることから,いたずらに間接侵害が成立する範囲が拡大しないよ うに配慮する趣旨と解される。 このような趣旨に照らせば,単に当該部品等が特許権を侵害する用途ないし態様 で使用される一般的可能性があり,ある部品等の生産,譲渡等をした者において,そのような一般的可能\性があることを認識,認容していただけで,主観的要件2)を 満たすと解するのでは,主観的要件2)によって多用途品の取引の安全に配慮するこ ととした趣旨を軽視することになり相当でなく,これを満たすためには,一般的可 能性を超えて,当該部品等の譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋然性が高い状況が現実にあり,そのことを当該部品等の生産,譲渡等をした者において認識,認\n容していることを要すると解するべきである。 他方,主観的要件2)について,部品等の生産,譲渡等をする者において,当該部 品等の個々の生産,譲渡等の行為の際に,当該部品等が個々の譲渡先等で現実に特 許発明の実施に用いられることの認識を必要とすると解するのでは,当該部品等の 譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋然性が高い状況が現実にあることを認識, 認容している場合でも,個別の譲渡先等の用途を現実に認識していない限り特許権 の効力が及ばないこととなり,直接侵害につながる蓋然性の高い予備的行為に特許権の効力を及ぼすとの特許法101条2号のそもそもの趣旨に沿わないと解される。\n以上を勘案すると,主観的要件2)が認められるためには,当該部品等の性質,その客観的利用状況,提供方法等に照らし,当該部品等を購入等する者のうち例外的 とはいえない範囲の者が当該製品を特許権侵害に利用する蓋然性が高い状況が現に 存在し,部品等の生産,譲渡等をする者において,そのことを認識,認容している ことを要し,またそれで足りると解するのが相当であり,このように解することは, 「その物がその発明の実施に用いられることを知りながら」との文言に照らしても 不合理な解釈ではない。
ア 本件の間接侵害への特許法102条1項の適用の可否
上記認定事実のとおり,本件では,被告製品3はプログラム(ソフトウェア)\nであるのに対し,原告の製品は表示器(ハードウェア)に予\めプログラム(ソフト\nウェア)がインストールされた完成品であるという相違がある。このことも踏まえ, 被告は,間接侵害には特許法102条1項は適用されないと主張している。 特許法102条1項本文は,侵害者が「侵害の行為を組成した物」を「譲渡した ・・数量」に,特許権者等が「その侵害行為がなければ販売することができた物」の 「単位数量当たりの利益の額」を乗じて得た額を,特許権者等が受けた損害の額と することができる旨を定める。この規定は,侵害行為がなければ特許権者等が利益 を得たであろうという関係があり,そのために特許権者等に損害が発生したと認め られることを前提に,特許権者等の損害額の立証負担を軽減する趣旨に基づくもの であるが,そこに定める損害額の算定方法からすると,これにより算定される損害 の額は,特許権者等の「その侵害行為がなければ販売することができた物」の逸失 販売利益に係る損害の額であることを前提にしており,さらに,侵害者の「侵害の 行為を組成した物」の譲渡行為と特許権者等の「その侵害行為がなければ販売する ことができた物」の販売行為とが同一の市場において競合する関係にあることも前 提としているものと解される。 他方,物の発明に係る間接侵害が対象とするのは,実施品の「生産に用いる物」 の譲渡等であり,実施品を構成する部品だけでなく,実施品を生産するための道具\nや原料等の譲渡等もこれに含まれるから,必ずしも侵害者の間接侵害品の譲渡行為と特許権者等の製品(部品等のこともあれば完成品のこともある)の販売行為とが 同一の市場において競合するとは限らない。そして,本件のように間接侵害品が部 品であり,特許権者等が販売する物が完成品である場合には,前者は部品市場,後 者は完成品市場を対象とするものであるから,両者の譲渡・販売行為が同一の市場 において競合するわけではない。しかし,この場合も,間接侵害品たる部品を用い て生産された直接侵害品たる実施品と,特許権者等が販売する完成品とは同一の完 成品市場の利益をめぐって競合しており,いずれにも同じ機能を担う部品が包含さ\nれている。そうすると,完成品市場における部品相当部分の市場利益に関する限り では,間接侵害品たる部品の譲渡行為は,それを用いた完成品の生産行為又は譲渡 行為を介して,特許権者等の完成品に包含される部品相当部分の販売行為と競合す る関係にあるといえるから,その限りにおいて本件のような間接侵害行為にも特許 法102条1項を適用する素地がある。 したがって,本件では,以上の考え方に基づき各要件の解釈をすることを前提に,特許法102条1項の適用を肯定するのが相当である。
イ 「侵害の行為がなければ販売することができた物」について
(ア) この要件に該当する「物」について,原告は,プログラム(ソフトウ\nェア)を表示器(ハードウェア)にインストールした原告の製品全体であると主張\nするのに対し,被告は,原告がハードウェアとソフトウェアを別個に販売していな\nいことから,原告の製品はソフトウェアである被告製品3と競合関係にないとして,\n原告の製品が「侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たらないと主 張している。 しかし,前記アで述べたところからすると,本件のような間接侵害の場合の「侵 害の行為がなければ販売することができた物」とは,特許権者等が販売する完成品 のうちの,侵害者の間接侵害品相当部分をいうものと解するのが相当である。
(イ) これを本件についてみると,原告の製品では回路モニタ機能や「追い\nかけモニタ機能」及び「ズームアップ検索機能\」が使用可能で,これは被告製品3\nで使用可能な回路モニタ機能\やワンタッチ回路ジャンプ機能(本件発明1の構\成要 件1E及び1Fの構成を充足する機能\)と同様の機能であって,これが原告の製品\nに予めインストールされているプログラム(ソ\フトウェア)による機能であること\nは明らかである。したがって,原告の製品と被告製品3を用いた完成品とは,その ようなソフトウェアが格納又はインストールされているという点で共通していると\nいうことができるから,原告の製品は,被告製品3を用いた完成品と市場で競合する物であるということができる。 そうすると,本件での「侵害の行為がなければ販売することができた物」とは, 原告の製品全体のうちの,被告製品3に対応するプログラム(ソフトウェア)部分\nである。
ウ 「譲渡数量」(侵害者が譲渡したその侵害の行為を組成した物の数量)に ついて
本件では被告による被告製品3の生産,譲渡等の行為について間接侵害の成 立が認められるから,被告製品3が「その侵害の行為を組成した物」に該当する。 なお,原告は被告表示器Aもこれに含まれると主張して,原告の製品(完成品)\nの単位利益に乗じるものとして被告表示器Aの販売数を問題としているが,被告表\ 示器Aの製造,販売について間接侵害が成立しないことは,前記3(1)及び(2)エ(ア) で判示したとおりであり,そうである以上,特許法102条1項の適用に当たって, 被告表示器Aが「その侵害の行為を組成した物」に該当することはないというべき\nである。 そして,原告は,被告製品3を「その侵害の行為を組成した物」とする場合の予\n備的な主張として,被告製品3の販売数を譲渡数量としているところ,平成25年 4月1日から平成29年12月末までの被告製品3の販売数は,合計●(省略)● 台である(前記(2)ウ)。 被告が本件発明1(本件特許1)の存在を知ったのは平成25年4月2日であり, 同日以降の被告製品3の譲渡等について間接侵害が成立することから,上記認定の販売数から同月1日の販売数を控除する必要がある。本件の主張立証から同日の販 売数は明らかでないから,同月の販売数(●(省略)●台)を4月の日数である3 0で除した●(省略)●台(1台未満は四捨五入)を同月1日の販売数と認めるほ かない。したがって,同月2日から平成29年12月末までの被告製品3の販売数 は,合計●(省略)●台と認められる。 なお,被告は,間接侵害が成立するのは主観的要件を具備して行った被告製品3 の生産,譲渡等のみであり,その立証がされていないと主張しているが,被告の行 為が間接侵害の主観的要件を具備していることは,前記3(2)カで判示したとおりで ある。
エ 侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益 額について
(ア) 原告の製品全体の平成25年度の1台当たりの限界利益額が●(省略) ●円であることは,当事者間に争いがなく(前記(2)イ),その他の年度についても同様と推認されるところ,上記イで認定したとおり,「侵害の行為がなければ販売す ることができた物」に当たるのは原告の製品のうちのプログラム(ソフトウェア)\n部分であるから,原告の製品のうちソフトウェア部分の限界利益額をもって「単位\n数量当たりの利益額」に当たるとみるべきことになる。
(イ) この点に関し,被告は,自らの製品のカタログ(甲5)記載の表示器\n(被告製品1−1)とソフトウェア(被告製品3−1)の参考標準価格を参考にし\nて,原告の製品のうちソフトウェア部分の限界利益額を算出すべき旨主張している。\nこれに対し,原告は被告が被告表示器の価格を高く設定し,ソ\フトウェアである被 告製品3の価格を低く設定するビジネスモデルをとっているから,被告の価格設定 を参考とすべきではなく,本件発明1の価値の高さに鑑み,ソフトウェア部分の寄\n与度は9割を下らないと主張する趣旨と解される。 被告製品1−1の参考標準価格は22万円から53万円,被告製品1−2の参考 標準価格は22万円から43万円であるのに対し,被告製品3−1の参考標準価格 は,単体ライセンス品で●(省略)●万円,200ライセンスまで登録可能なサイ\nトライセンス品で4万円である(前記2(2)ア(カ),(キ)参照)。このように,サイト ライセンス品と単体ライセンス品との価格差がわずかであり,被告表示器のような\n生産設備に用いる装置の場合,通常は複数台が購入され,その場合にはサイトライ センス品が購入されると考えられることからすると,通常の場合には,被告表示器\n1台当たりに必要なソフトウェア費用が極めて安価になり,原告が指摘するようなソ\フトウェアで利益を上げないビジネスモデルが存在している可能性もある。その\nため,サイトライセンス価格や実際の被告表示器1台当たりのソ\フトウェア費用 (被告の主張によっても平成26年における被告表示器Aの販売台数は被告製品3\nの販売枚数の約60倍であるから被告主張のとおり単価は500円となる。)を参考 として,被告表示器の参考標準価格と比較する場合には,ソ\フトウェアの価値が不 当に低く算定されることになり,相当でないと考えられる。しかし,単体ライセン ス品の参考標準価格を用いる場合には,被告表示器1台のみを購入する場合が想定\nされるから,この場合にはソフトウェアによる採算も軽視されないはずであるし,\n単体ライセンス品の参考標準価格は●(省略)●万円であるから,被告表示器のよ\nうなハードウェアと被告製品3のようなソフトウェアに要する一般的な原価の差も\n考えると,ハードウェアとソフトウェアの価値が相応に反映されていると考えられ\nる。
他方,原告は,原告の製品における本件発明1の寄与度が9割を下らないと主張 するが,前記1の認定・判示によれば,従来技術を参酌して導かれる本件発明1の 特徴的技術手段は,表示されたラダー回路の出力要素を指定して入力要素を検索す\nるに当たり,出力要素の指定をタッチにより行うという点にすぎないから,製品全 体に対するその寄与度は9割を大きく下回ると考えられる。 以上からすると,本件で原告の製品の利益におけるソフトウェア部分の利益を算\n定するには,被告表示器1Aと被告製品3−1の参考標準価格を参考にして原告の\n製品におけるソフトウェア部分の限界利益額を算定するほかないというべきである。\nこれを参考にして被告表示器1Aと被告製品3−1の合計額に占める被告製品3\n−1の価格割合を算定すると,被告表示器1A(ただし,被告製品1−2のうちそ\nもそも回路モニタ機能等を使用できない機種及び生産を終了した機種は除く。)のカ\nタログ記載の参考標準価格は,平均すると●(省略)●円(税抜)であり(甲5), 被告製品3−1の通常の単体ライセンス品の参考標準価格は●(省略)●万円であ る(税抜)から,被告製品3−1の価格の全体に占める割合は,●(省略)●%(0.1%未満四捨五入)と認められる。 なお,被告は被告製品1−1の参考標準価格の平均値をもとに算定しているが, 被告製品3−1がインストールされて回路モニタ機能等が使用され得る被告製品に\nは被告製品1−2も含まれるから,被告製品1−2の参考標準価格も参考にすべき である。また,被告は1枚の被告製品3が約60台の被告表示器Aにインストール\nされていることを前提に,被告製品3の価格を500円として算定しているが,そ のような場合の価格が被告製品3の価値を反映したものであるのかについては前記 のとおり問題があるから,被告製品3−1の通常の単体ライセンス品の参考標準価 格である●(省略)●万円をもって同製品の価格であると認めるのが相当である。
(ウ) 以上より,原告の製品のうちソフトウェア部分の限界利益額(1台当\nたりの金額)は,上記(ア)記載の金額に●(省略)●%を乗じた4118円と認めら れる。
オ 「販売することができないとする事情」の有無
(ア) まず,被告は被告製品3と原告の製品とが競合することはないから, 原告の譲渡数量の全部について,原告が販売することができない事情が存在すると 主張しているが,この主張に理由がないことは,前記アで認定・判示したとおりで ある。
(イ) 次に,被告は,被告製品3を購入した者の全てが回路モニタ機能を使\n用しているわけではないとか,回路モニタ機能を使用するのにオプション機能\ボー ドの設置が必要な被告製品1−2を購入した者のうちオプション機能ボードを購入\nしたのは約4分の1にとどまり,実際に回路モニタ機能等を使用していないユーザ\nはさらに多く存在すると主張する。 特許法101条2号に係る間接侵害品たる部品等は,特許権を侵害しない用途な いし態様で使用することができるものである。そして,そのような部品等の譲渡は,譲渡先での使用用途ないし態様のいかんを問わず間接侵害行為を構成するが,実際\nに譲渡先で特許権を侵害する用途ないし態様で使用されていない場合には,譲渡先 の顧客は当該特許発明の価値に吸引されて当該部品等を購入したわけではないから, 間接侵害品の売上げに当該特許権が寄与しておらず,そのような譲渡先については, 間接侵害行為がなければ特許権者の製品が販売できたとはいえないことになる。し たがって,特許権者等の損害額の算定に当たっては,そのような事情は,特許法1 02条1項ただし書の事由を構成すると解するのが相当である。\nこれを本件についてみると,先に2(4)イ(イ)で述べたとおり,乙17及び18に よれば,回路モニタ機能等に対応している被告製品1−2を購入した者のうち,オ\nプション機能ボードを購入しなかった者が相当程度存したと認められ,被告製品1\n−1や被告表示器2Aのユーザが須く回路モニタ機能\等を目的にこれらを選ぶとま で認めることは困難である。このように譲渡先が回路モニタ機能等を利用しない場\n合があることは,特許法102条1項ただし書の事由として考慮すべきであるが, その程度が明らかでないから,その考慮は極めて限定的になし得るにとどまるとい うべきである。
(ウ) 次に,被告は,1)原告がPLC用表示器の市場において意味のあるシ\nェアを有していないこと,2)原告の製品のソフトウェアに占める本件発明1の貢献\n度(寄与度)は高くても0.1%を上回ることはないこと,3)原告が宣伝広告活動において「追いかけモニタ機能」や「ズームアップ検索機能\」を重視していなかっ たことを指摘している。
a 特許法102条1項ただし書の「販売することができないとする事 情」は,侵害行為がなければ特許権者等の製品を侵害品と同じ数量だけ販売できた との相当因果関係を阻害する事情を対象とするものである。
b そして,被告の主張1)について,前記(2)エ認定の事実によれば,プ ログラマブル表示器について,原告のシェア(販売数量)と被告のシェア(販売数\n量)との間には,非常に大きな差異があったと認められるところ,シェアの格差に は,製品の魅力以外にも,営業力やブランド力等の差異も多分に影響するものであ るから,原告と被告のシェアに大きな格差があるという事情は,このような営業力 やブランド力等の差異という観点から,「販売することができないとする事情」を基 礎付ける1つの事情にはなるといえる。
c また,原告のシェアが小さいという上記の被告の主張1)は,被告以 外の他社の同種製品(競合品)が市場に多数存在しているから,被告製品3が販売 されなかったとしても,被告の製品が吸収した需要は他社の競合品が吸収し,原告 の製品の売上増加にはつながらないとの趣旨を含み,また,同様に上記の被告の主 張2)は,本件発明1の価値が低いから,被告製品3が販売されなかったとしても原 告の製品の売上増加にはつながらないとの趣旨と解される。 この点については,一般に侵害者の侵害品は特許発明の作用効果を奏するものと して顧客吸引力を有する製品であるから,それと同等の機能ないし効果を奏するも\nのでなければ,特許発明の実施品に対抗して需要を吸収し得る競合品として重視す ることができない。しかし,前記1の認定・判示によれば,従来技術を参酌して導 かれる本件発明1の特徴的技術手段は,表示されたラダー回路の出力要素を指定し\nて入力要素を検索するに当たり,出力要素の指定をタッチにより行うという点にす ぎない。また,前記1で認定したとおり,従来製品として,モニタ上に表示される\n異常種類のうち特定のものをタッチして指定すると,その指定された異常種類に対 応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路が表示され,さらにそのラダー回路\nの接点をタッチしてコイルを検索することができ,1回前に検索されたラダー図と 前回路の検索もできる構成を備える製品(乙11のもの)や,同様の製品において\n異常種類の原因となるコイルの指定や接点の指定をタッチパネル上の入力画面でデ バイス名又はデバイス番号を入力して行う製品(被告のGOT900)も存在して いた。そうすると,本件発明1に係る機能をすべて使用することができる製品が被\n告の製品以外に存在していなかったとしても,上記のような製品は存在しており, そのような製品でも,異常現象の発生時にラダー回路図面集を参照しなくても真の 異常原因を特定したり,原因の特定のために次々にラダー回路を読み出していった りすること自体は可能であり,それほど複雑な操作を要するものではないと認められるから,原告の製品とほぼ同様の機能\を備えたものであるといえる。 また,原告の製品が,上記の本件発明1の特徴的技術手段を備えるか否かも必ず しも明らかでない。 したがって,本件では,競合品の存在により,被告製品3が販売されなかったと きに原告の製品が同じだけ販売されたとの相当因果関係は,かなり大きな程度で阻 害されると認めるのが相当である。
d また,上記被告の主張3)は,原告の製品において本件発明1の機能\nは重要なものではないから,被告製品3が販売されなくとも,需要者が原告の本件 発明1の機能に惹かれて原告の製品を購入することがないとの趣旨と解される。\nしかし,原告は,カタログに甲26の図を掲載することに加え,各製品の主な特 徴の1つとして,「異常発生時,画面操作のみで問題箇所まで追いかけることができ る」ということを記載していたのであるから,実際に重要な機能として位置付けら\nれており,そして,これらの機能を顧客に対してアピールしていたと認められ,こ\nの点については被告の上記主張は採用できない。
(エ) 以上のことを踏まえると,本件では,被告製品3が販売されなかった ときに原告の製品が同じだけ販売されたとの相当因果関係は,かなり大きな程度で 阻害されると認められる。 しかし,本件における被告製品3の譲渡数量は,前記のとおり●(省略)●枚で あるが,被告によれば,平成26年の被告表示器Aの販売台数は被告製品3の約6\n0倍であるというのであるから,少なくとも被告製品3は1枚当たり約60台の被 告表示器Aにインストールされたといえる。これに対し,原告の製品は,表\示器に ソフトウェアがインストールされた完成品であり,前記エで認定したそのソ\フトウ ェア相当部分の単位利益の額は,表示器1台のソ\フトウェア相当部分の利益額であ り,その販売数量も表示器の販売数量と同じになるべきものである。そうすると,\n本件において,「販売することができないとする事情」として,侵害行為がなければ 特許権者等の製品を侵害品と同じ数量だけ販売できたとの相当因果関係を阻害する 事情の程度を判断するに当たっては,このような数量ベースの差を考慮すべきであ り,原告の製品のソフトウェア部分の数量ベースから見ると,いわば被告製品3の\n販売数量が実質的には約60倍ある関係にあることになるから,そのことを踏まえ て,被告製品3の販売行為がなければ原告の製品のソフトウェア部分を被告製品3\nの販売数量と同じ数量だけ販売できたとの相当因果関係がどの程度阻害されるかを 検討すべきである。 そして,このような考慮に基づく場合には,前記(イ)及び(ウ)で述べた諸事情を考 慮するとしても,本件において,被告製品3の譲渡数量●(省略)●枚の全部又は 一部を「販売することができないとする事情」があるとは認められない。
カ 譲渡数量に単位数量当たりの利益を乗じた額
上記ウないしオの判断を踏まえると,特許法102条1項に基づく原告の損 害額は,次のとおり,●(省略)●円と認められる。
(計算式) ●(省略)●台×4118円=●(省略)●円
(4) 原告の特許法102条2項に基づく主張について
ア 特許法102条2項は,侵害者が侵害行為により受けた利益の額を特許 権者等が受けた損害の額と推定すると定めるところ,この規定の趣旨は先に同条1 項について述べたのと同様であると解される。したがって,先に同条1項について 述べたのと同様の考え方の下に,本件において同条2項の適用を肯定するのが相当 である。
イ 侵害者が侵害の行為により受けた利益の額
(ア) これについて,原告は,被告による被告表示器Aの販売利益も含めて\n特許法102条2項の損害推定が働くと解すべきと主張している。 しかし,特許法102条2項は「その者(注:侵害者)がその侵害の行為により 利益を受けているときは,その利益の額」を特許権者等が受けた損害の額と推定す ると規定しているところ,本件で原告の本件特許権1の侵害が認められたのは,被 告による被告製品3の生産,譲渡等であり,被告表示器Aの製造,販売については\n間接侵害の成立は否定されたから,被告による被告表示器Aの販売利益が上記「利\n益の額」に含まれないことは明らかである。これに反する原告の主張は条文の文言 に照らして採用できない。
(イ) 原告は被告製品3について,販売数や平均売価,限界利益率を推計し て主張しているが,これらを認めるに足りる証拠がないことは,前記(2)ウで判示し たとおりである。そこで,被告の利益額は,被告が開示した販売額(売上額)及び 限界利益率をもとに算定するほかない。
a 被告製品3の売上額
前記(2)ウで認定した別紙「被告製品3の販売数量・販売額」記載の販売 額等をもとに,被告が本件発明1(本件特許1)の存在を知った平成25年4月2 日から平成29年12月末までの売上額(販売額)を認定すると,次のとおり,● (省略)●円と認められる(平成25年4月1日の販売数を●(省略)●枚とみる ことにつき,前記(3)ウ参照)。 (計算式) ●(省略)●円−●(省略)●円(平成25年4月1日から同年9 月末までの販売数)×●(省略)●(同年4月2日から同年9月末までの販売数) ÷●(省略)●(同年4月1日の販売数を含んだもの)=●(省略)●円(計算過 程で生ずる1円未満の端数は四捨五入)
b 被告の限界利益率
前記(2)ウで認定した被告の限界利益率は,●(省略)●%である(別紙 「被告の変動費の内訳,加重平均値及び限界利益率」の(3)参照)。
c 被告の利益額
上記a及びbによれば,●(省略)●円と認められる。なお,これによ れば,被告製品3の1枚当たりの利益額は,●(省略)●円である(計算式:● (省略)●円÷●(省略)●台=●(省略)●円)。これは,前記原告の製品のソフ\nトウェア部分の単位利益額の約●(省略)●倍である。
ウ 推定覆滅事由について
(ア) 原告は被告製品3につき本件発明1の寄与度を50%と主張している のに対し,被告はこれを1万分の1と主張するとともに,被告製品3の特徴的技術 手段の顧客への訴求力が極めて低いとか,本件発明1の技術的・商業的な価値は高 くないなどと主張している。 ここで考えるべき寄与度は,製品の顧客吸引力上の寄与度であるから,被告が主 張するようなデータ量などという物理的な側面に着目することは相当でないが,先 に特許法102条1項ただし書について述べたところ((3)オ(ウ)b,c)と同様, 本件発明1の特徴的技術手段は,表示されたラダー回路の出力要素を指定して入力\n要素を検索するに当たり,出力要素の指定をタッチにより行うという点にすぎず, 異常発生時のラダー回路の検索機能を備えた競合品も存在していたことに加え,被\n告製品3は回路モニタ機能等以外の様々な機能\を使用可能とするプログラム(描画\nソフトを含む。)が格納されていることからすると,被告製品3における本件発明1の寄与度は相当程度に低いということはできる。\nしかし,そうであるとしても,原告が原告の製品のソフトウェア部分をどの程度\n販売することができたかについては,先に特許法102条1項について述べたとこ ろ(前記(3)オ(エ))と同様,被告製品3と原告の製品のソフトウェア部分とでは,\n数量ベースが異なり,被告製品3の販売数量が,原告の製品のソフトウェア部分の\n数量ベースから見ると実質的には約60倍ある関係にあることを踏まえる必要があ る。
(イ) 他方,単位数量当たりの限界利益の額の差も推定覆滅に影響するとこ ろ,その点については,被告製品3が原告の製品のソフトウェア部分の約●(省略)\n●倍大きいこと(逆にいえば,原告の製品のソフトウェア相当部分が被告製品3の\n約●(省略)●%にとどまること)も考慮する必要がある。
(ウ) 以上の事情を踏まえると,推定覆滅率は●(省略)●%と認めるのが 相当である。
(エ) 以上より,特許法102条2項に基づく原告の損害額は,次のとおり,●(省略)●円と認められる。ただし,前記(3)で認定した同条1項に基づく原告の 損害額(●(省略)●円)の方が高いことから,その額を認容することとする。 (計算式) ●(省略)●円×●(省略)●=●(省略)●円
(5) 弁護士費用
原告は本件訴訟の追行等を原告訴訟代理人に委任したところ(当裁判所に顕著 な事実),被告の特許権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は,430万円と 認めるのが相当である。
(6) 以上より,原告の損害額は合計4702万8368円と認められる。
9 争点7(本件特許権1又は3の間接侵害を理由とする被告製品3及び4の生 産,譲渡等の差止め及び廃棄を命じることの可否)
(1) 被告による被告製品3の製造,販売及び同製品に係るコンピュータ・プロ グラムの使用許諾について,本件特許権1の間接侵害(特許法101条2号)が成 立するから,被告製品3(被告製品3に係るソフトウェアを記録した媒体と解され\nる。)の生産,譲渡及び同製品に係るコンピュータ・プログラムの使用許諾について の差止めを認容すべきである。 また,被告製品3の製品は本件特許権1の侵害の行為を組成した物に当たり,ま た被告は現在に至るまで被告製品3を生産,譲渡等していることに照らせば,同製 品が同特許権を侵害する用途として使用されるおそれがあるから,その侵害の予防\nのために同製品の廃棄を命じる必要性・相当性が認められる。
(2) なお,被告は,被告製品3には適法な用途があるから,その生産,譲渡等 を全面的に差し止め,廃棄を命じるのは過剰である旨主張する。 しかし,被告製品3に適用な用途があるとしても,被告製品3が本件発明1の特 徴的技術手段を担う不可欠品であり,その譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋 然性が高い状況が現実にあり,そのことを被告において認識,認容していると認め られる以上,その生産,譲渡等を全面的に差し止め,その廃棄を命じるのが,多用途品であっても侵害につながる蓋然性の高い行為に特許権の効力を及ぼすこととし た特許法101条2号の趣旨に沿うものというべきであるし,そのように解しても, 被告は,被告製品3から本件発明1の技術的特徴手段を除去する設計変更をすれば 間接侵害を免れるのであるから,被告製品3の生産,譲渡等の差止め命令及び廃棄 命令が過剰な差止め・廃棄命令であるとは解されない(なお,被告製品3にこのよ うな設計変更をした場合でも,製品名が変わらない場合には,差止判決の対象外と するために請求異議訴訟を経ることが必要になるが,そのような起訴責任を転換す る負担を被告が負うことはやむを得ないというべきである。)。

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平成28(ワ)6494  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年12月18日  大阪地方裁判所

 被告製品は,特許権者製の使用済み芯管と一体化すると、本件特許の構成要件を充足するので、「のみ要件」を満たすと判断しました。\n
   イ 構成要件Aの「用いられ」の意味
前記アを前提に検討すると,構成要件Aのうち「ロールペーパの回転速度を\n検出するために支持軸に角度センサを設け」との記載は,本件ロールペーパ等の「複 数の磁石」につき,そのような位置に配置されることを特定するものと理解でき, また,構成要件Aのうち「ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその固\n定時に両者を一体に回転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設け」と の記載は,本件ロールペーパ等について,そのような態様で回転させられることを 特定するものと理解できるし,構成要件Cの「測長センサ」も,構\成要件Aの記載 によって特定されると理解できる。 そうすると,本件発明に係る薬剤分包用ロールペーパの技術的範囲は,構成要件\nBないしDと,構成要件Aによる本件ロールペーパ等の上記特定に係る事項とから\n画されるものと解されるから,一体化製品が上記技術的範囲に属すれば本件発明の構成要件を充足するものであって,一体化製品が構\成要件Aを充足する薬剤分包装 置に実際に使用されるか否かは,上記構成要件充足の判断に影響するものではない\nと解される。 被告らは,原告製使用済み芯管に,輪ゴムを介してロールペーパを巻いたプ ラスチック筒部をセットした一体化製品が構成要件Aの「用いられ」を充足するた\nめには,一体化製品に,構成要件Aを充足する薬剤分包装置に用いられる以外の用\n途が存在しないことが必要であると主張し,予備的に,仮にこれが認められないと\nしても,一体化製品は構成要件Aを充足する薬剤分包装置に用いられて初めて作用\n効果を奏するものであるから,現実に構成要件Aを充足する薬剤分包装置に用いら\nれることが必要であると主張する。 しかしながら,構成要件Aを充足する薬剤分包装置に使用可能\な構成を有し,そ\nの他の構成要件をも充足するものとして薬剤分包用ロールペーパが生産,譲渡され\nれば,その時点で本件特許権の侵害は成立するのであって,その後に構成要件Aを\n充足する薬剤分包装置に当該ロールペーパが使用されるか否かは,特許権侵害の成 否を左右するものではない。 被告らは,本件発明の出願経過に照らし,構成要件Aを充足する薬剤分包装置に\n一体化製品が使用されることが本件特許権侵害に係る必須の要証事実であると主張 するが,原告が,手続補正の際に提出した意見書(乙25)において,本件発明は 構成要件Aを充足する薬剤分包装置に現実に用いられることを必須とする旨を述べたものと解することはできない。\nさらに,被告らは,本件無効審判において,本件訂正後の発明に新規性が認めら れるための構成が特定されたところ,その中には薬剤分包装置に関するものがある\nので,一体化製品が本件発明の技術的範囲に属するかの判断のために,どのような 薬剤分包装置に用いられているかを確認する必要があると主張するが,前記検討し た構成要件Aと,構\成要件BないしDとの関係に照らし,採用できないといわざる を得ない。
ウ まとめ
以上検討したところによれば,本件発明においては,構成要件Aの「用いられ」\nは,構成要件Aの記載によって構\成要件B以下の内容が特定されることを意味する ものとして使われているというべきであるから,そのように特定された構成要件を\n一体化製品が充足する場合には,構成要件Aの「用いられ」を充足すると解され,\nこれ以上に,構成要件Aの「用いられ」が,一体化製品が構\成要件Aを充足する薬 剤分包装置以外には使用されないこと,あるいは現実に構成要件Aを充足する薬剤\n分包装置が存在することを,要件として定める趣旨と解することはできない。
(2)争点(1)イ(一体化製品は「2つ折りされたシート」(構成要件A)を充足す\nるか。)について
ア 被告らは,構成要件Aの「2つ折りされたシート」とは,ロールペーパを薬\n剤分包装置内で2つ折りにするシングルタイプのロールペーパの使用を前提として おり,あらかじめ2つ折りにされたダブルタイプのロールペーパは含まれない旨を 主張する。
イ そこで,検討するに,本件明細書【0018】には,「分包部は,三角板4 で2つ折りにされた際にホッパ5から所定量の薬剤が投入された後,ミシン目カッ タを有する加熱ローラ6により所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯状にヒートシー ルするように設けられている。」との記載があるが,本件明細書【0011】の記 載によれば,本件発明は,一定の張力を保ったままシートを分包部に供給すること により,シートに耳ずれや裂傷が生じることなく薬剤を分包することを可能とする\nものであり,この技術的思想に関しては,給紙部から分包部に送られてくるシート があらかじめ2つに折り畳まれたダブルタイプであっても,折り畳まれてい ション現象が生じるため,)張力変動により分包部でシートを2つ折りした際にシ ートの縁部が正確に重ならない,いわゆる耳ずれが生じ」るという問題は,シング ルタイプのロールペーパを分包部において2つ折りにしてできた空隙に薬剤を投入 した後シートの両側縁部と幅方向に加熱融着する場合であっても,ダブルタイプの ロールペーパを分包部において折り目を広げてその空隙に薬剤を投入した後同様に 加熱融着する場合であっても,同様に生じ得る。 さらに,原告は,本件特許につき拒絶理由通知(乙24)を受けて本件補正を行 っているが,本件明細書【0018】の記載に基づくものであり,元の記載がシン グルタイプのロールペーパを分包部において折り畳むことのみを指すと解するのは 相当ではない(乙25)。
ウ 以上によれば,ダブルタイプのロールペーパを使用する一体化製品も,「2 つ折りされたシート」(構成要件A)を充足するというべきである。
(3) 争点(1)全体についての判断
ア 被告らは,一体化製品につき,構成要件Aのうち,「測長センサ」,「シー\nトを送りローラで送り出す給紙部」,「上記支持軸と上記中空軸の固定支持板間で」, 「中空軸のずれを検出する」といった要件を充足しない旨を主張するが,原告製造 の特定の薬剤分包装置の構成についての主張であり,構\成要件Aと構成要件B以下\nとの関係を前述のとおり解する以上,意味のない主張といわざるを得ない。
イ 一体化製品は,前記第2の1(5)のとおりの構成を有するところ,被告らは,\n構成要件Aに関し,争点(1)ア及びイについて争うものの,構成要件B以下の充足性\nについては争うことを明らかにしておらず(当初,構成要件B及びDの充足を争っ\nたが,後に撤回した。),弁論の全趣旨によれば,一体化製品の構成aは本件発明\nの構成要件Bを,構\成bは構成要件Cを,構\成cは構成要件Dを充足すると認めら\nれ,一体化製品は構成要件Aを充足する薬剤分包装置において使用されることが可\n能な構\成を有すると認められる。
ウ 以上によれば,一体化製品は,構成要件AないしEをすべて充足するから,\n本件発明の技術的範囲に属すると認められる。
エ なお,原告は,被告日進が前訴において構成要件Aの充足性を争わなかった\nことから,本訴訟において構成要件Aの充足性を争うことは信義則に反する旨を主\n張するが(争点(1)ウ),被告日進は,前訴とは異なる製品の関係で,構成要件Aの\n充足性を本訴訟で主張したと認められるから,この点を争うことが信義則に反する とまではいえない。
3 争点(2)(特許権侵害が成立するか。)について
(1) 問題の所在
ア 前記2によれば,一体化製品を完成して譲渡すれば,その時点において特許 権侵害が成立することになるが,前記第2の1(4)及び(5)のとおり,被告らは,一体 化製品それ自体を生産,譲渡しておらず,プラスチック筒部の外周に薬剤分包用シ ートを巻き回したロールペーパ,すなわち一体化製品のうち原告使用済み芯管のな い物を被告製品として生産,譲渡し,これを入手した利用者が,輪ゴムを介してロ ールペーパに原告製使用済み芯管を挿入し,これを一体化製品とした上で,薬剤分 包装置に使用している。
イ この点について,原告は,1)被告製品は,一体化製品の生産にのみ用いる物 であるとして,特許法101条1号の間接侵害を主張するほか,2)被告らの行為は, 顧客との共同による特許権の直接侵害に当たること,3)被告らの行為は,顧客の特 許侵害に対する教唆又は幇助に当たることを主張するので,まず間接侵害の成否に ついて検討する。
(2) 争点(2)ア(被告製品は,一体化製品の「生産にのみ用いる物」と認められる か。)について
ア 被告製品の販売方法
証拠(甲4,5,21,36,文中掲記のもの)によれば,以下の事実が認めら れる。
被告日進の販売するロールペーパの製品には,商品名の冒頭に「A」の付く 製品(被告製品。以下「Aタイプ」という。)と「B」の付く製品(以下「Bタイ プ」という。)があり,両タイプは,それぞれ分包紙の材質として「グラシン」紙 又は「セロポリ」紙を選択できるようになっている。 被告日進が平成28年11月に公開していたウェブサイト(甲20)によれ ば,Aタイプの分包紙の芯管内径は67mmであって,「外径65mm前後の分包機用 芯管に装着可能」とされ,Bタイプの分包紙の芯管内径は52mmであって,「外径 50mm前後の分包機用芯管に装着可能」とされた。\n薬剤分包用ロールペーパとして,外径65mm前後の芯管を製造しているのは 原告のみであり,外径50mm前後の芯管を製造しているのは株式会社タカゾノのみ である(弁論の全趣旨)。
前記ウェブサイトの「よくある質問Q&A」の欄には,「Q.他社分包機に 装着するには特別な道具が必要ですか?」という質問に対し,「A.弊社分包紙は, 『使用済み分包機メーカー製芯管』を使用することによって,お客様ご使用の分包 機に装着することができます。つまり,『使用済み分包機メーカー製芯管』が1個 お手元にあれば繰り返し装着することができます。」との回答が記載されていた。 被告日進が平成28年1月頃にユーザである製剤薬局等に配布していた説明 資料(甲9)には,「使用済み分包機メーカー製芯管」に輪ゴム等を取り付け被告 日進が販売する分包紙製品に差し込むことにより,芯管の空回りを防止しながら被 告日進製以外の分包機において使用する方法がイメージ図や注意事項付きで詳細に 説明されている。
まとめ
以上によれば,被告日進が販売する分包紙のうちAタイプ(被告製品)は,原告 製使用済み芯管と一体化して原告製の薬剤分包装置に使用されることを前提として 生産され,原告製の薬剤分包装置を使用し,既に原告製使用済み芯管を保有してい る者に対し,購入の案内がされたものと認められる。
イ 他の用途について
被告日進製の薬剤分包装置
前記被告日進のウェブサイト(甲20)には,「複数メーカー機に装着可能」と\nいう文言と共に,「分包紙は当社分包機の専用分包紙であり,各社分包機メーカー 及び貴社ご使用の分包機メーカーとは無関係で,承認を受けた製品ではありません。」 という記載があり,前記説明資料(甲9)にも同様の記載があることが認められる。 しかし,被告らの主張によっても,被告日進は,経済産業省により「平成25年 度補正中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」に選定され た後,平成26年に被告日進製の薬剤分包装置について営業活動を開始し,平成2 7年にカタログを作成し,平成28年5月12日に1台,同年10月25日に1台 の被告日進製の薬剤分包装置を販売したことが認められるにとどまる(甲17,乙 1,11,36)。 他方,被告製品は平成26年12月から販売されており,原告代理人は,平成2 8年1月頃に,被告らに対し,本件特許権に基づき被告製品の製造販売の中止等を 求める警告書(甲10)を送付し,同年7月4日に本訴を提起したことが認められ る。 前記時系列によれば,被告製品の販売が開始された当初,これを被告日進製 の薬剤分包装置に装着することはおよそ予定されておらず,むしろ,原告との紛争\nが顕在化した後に,わずか2台を製造販売したにとどまる。 エルク製分包装置(甲19,乙2,14〜16) 被告製品を,エルク製分包装置において使用されている芯管(外径約60mm。以 下「エルク製芯管」という。)に挿入してエルク製分包装置に装着し使用するため には,被告製品の空回りを防止するために厚さ3.2mm程度のOリングを2個,エ ルク製芯管に装着することが必要であり,さらに,被告製品の外径(約193mm) が大きすぎるため,そのままではエルク製分包装置に正常に装着できず,使用開始 に当たって長さ330mの分包紙中約88ないし100m分を廃棄する必要がある ことが認められる。 よって,被告製品をエルク製分包装置に装着して使用することは相当の困難と無 駄を伴い,経済的に合理性のある使用とはいえない。
ウエダ製分包装置(甲23,乙17,18)
ウエダ製分包機については,特定の顧客が,その支持軸を独自に製作した支持軸 に取り換えるという改造を施すことにより,被告製品を装着して使用していること が認められる。 しかし,同顧客の保有するウエダ製分包機は20年以上前に販売が終了している 機種であり,ウエダ製分包機を保有する他のユーザが同様の改造を施して被告製品 を使用することは考えにくいし,改造を施さないウエダ製分包装置において,被告 製品を正常に装着して使用できると認めるべき証拠もない。 よって,被告製品をウエダ製分包装置に装着して使用することは,一般的な使用 方法ということはできない。
タカゾノ製分包装置(乙20,21)
株式会社タカゾノ製の薬剤分包装置において使用されている薬剤分包用ロールペ ーパが,被告製品と同様の構成であることを認めるに足りる証拠はない。\n
まとめ
被告日進製の薬剤分包装置については,被告製品の販売が一定期間行われた後に, わずか2台が製造,販売されたにとどまるものであるから,被告製品が使用された としてもごくわずかといわざるを得ないし,被告以外の薬剤分包装置に被告製品を 使用することには困難が伴い,現実的ではないといわざるを得ないから,被告製品 については,原告製薬剤分包装置に使用する以外の用途は,実質的には存在しない といわざるを得ない。
ウ 争点(2)アについての判断
前記ア及びイで検討したところによれば,被告製品は,原告製使用済み芯管と一 体化し,一体化製品として原告製薬剤分包装置に使用することを想定して生産,譲 渡され,これ以外の用途は実質的には存在しないというべきであるから,被告製品 は,一体化製品の生産にのみ用いるものと認めるのが相当である。
(3) 特許権侵害についての判断
被告らが被告製品を生産,譲渡した段階では,回転角度の検出に用いる磁石を配 置した原告製使用済み芯管はこれと共には存在せず,本件特許の構成要件の全部を\n充足するものではないが,前記(2)で検討した通り,被告製品は,原告製使用済み芯 管と一体化して,本件特許の構成要件を充足する状態で使用することが予\定されて おり,他の用途が実質的に存在せず,一体化製品の生産にのみ用いられるものと認 められるのであるから,被告製品の生産,譲渡は,特許権の直接侵害に至る蓋然性 が極めて高いものとして特許法101条 1 号の間接侵害に当たり,本件特許権を侵 害するものとみなすべきものである。

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平成28(ワ)4759  不当利得返還請求事件  特許権 平成30年12月20日  大阪地方裁判所

 特許の均等侵害における第1要件の判断において、先行の29条の2の先行文献を考慮して、本質的部分の判断がなされました。被告製品は、Amazonの「Kindle paperwhite」です。
(エ) 以上によれば,乙8には,「ホログラムの単位幅における格子部幅/非 格子部幅の比が,導光板の前面出射面から出射する光を効率よく,また,面内で均 一に出射されるように,管状光源から離れる側の方が増大せしめられている」構成\nが開示されているといえる。
ウ したがって,乙8発明は,本件発明の構成要件Bと同一の構\成を備える ものであるから,相違検討点2は相違点とはいえない。
エ 原告の主張について
原告は,乙8には,導光板に設けるホログラムの面積密度を増減させる技術思 想が開示されているだけで,回折格子の単位幅における格子部幅/非格子部幅の比を変化させる技術思想は開示されていないと主張する。 しかし,前記アのとおり,本件発明も,格子部の面積の変化を通じて,導光板の 表面における輝度を増大させ,かつ均一化させるものであり,本件発明と乙8発明\nはその解決課題と解決原理を共通にしている。 そして,上記のとおり,乙8には,本件発明の構成要件Bの構\成を備えたホログ ラムの構成が開示されていると認められるから,本件発明の構\成要件Bはこれを別 の表現で記述したものにすぎず,同一の構\成が開示されていることに変わりはない。 したがって,原告の主張は採用できない。
(6) 小括
以上によれば,本件発明と乙8発明とは,前記の相違検討点1において相違す るから,同一の発明とはいえず,乙8による特許法29条の2違反の無効理由が存 するとは認められないが,本件発明と乙8発明とは,その解決課題及び解決原理を 共通にしており,解決手段たる回折格子の種類についてのみ相違するにすぎないと いうことができる。
・・・
(ア) 本件明細書に記載された従来技術及びその課題
前記認定のとおり,本件明細書では,本件発明に関する従来技術として, 導光板の下面に多数の多面プリズムをもつ透明アクリル樹脂からなり,プリズムに よる光の全反射を利用する導光板が記載されており,その具体例として,特開平5 −127157号公報記載の平面照光装置(本件明細書の図6参照)が挙げられて いる。 そして,その従来技術によっても液晶表示パネルを下方から輝度ムラが少なく明るく照らすことができると記載されているが(【0003】),1)導光板の下面にある 多面プリズムの一辺が例えば0.16mmと,光の波長に比べて相当大きいものである うえ,各プリズムが協同することなく個別に光を全反射するものであるため,導光 板の輝度を全体に高めようとすると,各プリズムの間の谷間にあたる箇所で乱反射 が起きて上面に向かう光量が減り,照光面である上面に極端な明暗のコントラスト が生じるという課題,及び2)このような導光板を設けた平行照光装置を電池で駆動 される液晶表示装置に用いると,照光面に向かう上記光量の減少を補って高輝度を\n得るべく,光源を大電流で照らす必要があるため,電池の寿命が短くなって,長期 使用ができなくなるという課題があったことが記載されている(【0004】)。
(イ) 本件発明の課題解決手段
本件発明は,従来技術の上記課題を解決するため,「光の幾何光学的性質を 利用した従来のプリズムによる全反射でなく,・・・光の波動の性質に基づく回折現象 を利用して,従来より遥かに高く,かつ均一な輝度を照光面全体に亘って得ることが でき,ひいては光源の電力消費の低減による電池の長寿命化も図ることができる導 光板を提供すること」を目的として(【0005】),本件発明の構成を採用したもの\nである。その構成は,(a)透明な板状体である導光板の裏面に回折格子を設け,導光 板の少なくとも一端面から入射する光源からの光をその表面側へ回折させるという点(構\成要件A),(b)上記回折格子の断面形状または単位幅における格子部幅/非 格子部幅の比の少なくとも1つを,上記導光板の表面における輝度が増大し,かつ\n均一化されるように変化させる点(構成要件B)である。
(ウ) 本件発明の作用効果
本件発明の導光板は,α 少なくとも一端面から光源からの光が入射する透 明な板状体の裏面に設けられた回折格子の断面形状または単位幅における格子部幅 /非格子部幅の比の少なくとも1つが,上記導光板の表面における輝度が増大し,\nかつ均一化されるように変化せしめられているので,光の波長に比べて寸法が大き く互いに協同することなく個別に光を幾何光学的に全反射する従来の導光板裏面のプリズムと異なり,ミクロン単位の互いに隣接する微細な格子が協同,相乗して波動 としての光を格段に強く回折できるうえ,β 上記一端面から離れて光源から届く光 量が減じるほど,光をより強く回折するように上記断面形状または単位幅における 格子部幅/非格子部幅の比が調整されているので,導光板の表面は高輝度で非常に\n均一に照らされる。 したがって,γ この導光板を電池で駆動される液晶表示装置,液晶テレビ,非常口 を表示する発光誘導板などに適用すれば,従来に比して格段に少ない消費電力で明\nるく均一な照明を得ることができ,光源および電池の寿命を延ばし,長期使用を可 能にすることができる(【0009】,【0023】)
(エ) もっとも,本件の場合,本件明細書に従来技術が解決できなかった課 題として記載されているところは,以下のとおり,出願時の従来技術に照らして客 観的に見て不十分なものと認められる。
a 導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは光量が減るとの課題(上記(ア)1))を,導光板の裏面に回折格子を設け,回折現象を利用して解決する構成(上記(イ)の(a),上記(ウ)α)について
本件明細書では,導光板の従来技術として,プリズムによる全反射を利用したもののみが記載され,回折現象は今まで導光板に用いられることがなかった と記載されている。 しかし,原告は平成6年3月11日に自ら,発明の名称を「回折格子を利用した バックライト導光板」とし,特許請求の範囲(請求項1)を「成形加工及び印刷 (転写を含む)された回折格子を裏面に有する事を特徴とするプラスチック製のバ ックライト導光板。なをここで裏面とは,液晶面と反対側の面と定義する。」とする 特許の出願をし,その明細書では,【課題を解決するための手段】の項において, 「導光板裏面に光と干渉する程度に微細なスリット形状を成形加工ないし印刷(転 写を含む)し,この反射格子により導光板の一端から入射する光を液晶面側に回折 させる。」(【0006】)と記載し,【発明の効果】の項において,この発明によれば蛍光管からの光を回折格子という極小単位の形状(格子スリットのピッチがサブミ クロンから数十ミクロン)の大きさのものの作用により,導光板面を均一に輝らす\n事ができるので,従来からのドット印刷や全反射を利用した導光板裏面加工による 方式に比較して,格段の面輝度とその均一性が可能になる。」(【0017】)と記載\nしていた(特願平6−79172)(乙10,20)。そして,これは本件発明の構\n成要件Aと同じ構成を備えた発明と認められる。\nまた,前記1で技術的意義等を認定した乙8発明も,回折格子の種類は同じとは 認められないものの,導光板の裏面に回折格子を設け,回折現象を利用して光量の 増大を図る発明である(乙8発明のようないわゆる拡大先願発明も参酌すべきこと は後記のとおりである。)。 以上より,導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは光量が減ると の課題は,本件特許の出願日において,本件発明と同じく導光板の裏面に回折格子 を設け,回折現象を利用することによって既に解決されている課題であったと認め られる。
b 導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは照光面に極 端な明暗のコントラストが生じるとの課題(上記(ア)1))を,回折格子の断面形状ま たは単位幅における格子部幅/非格子部幅の比の少なくとも1つを,上記導光板の 表面における輝度が増大し,かつ均一化されるように変化させることにより解決す\nる構成(上記(イ)の(b),上記(ウ)β)について 先に争点2−2(前記1)について述べたとおり,乙8発明も,導光板 の裏面にホログラムの回折格子を設け,回折現象を利用するものであり,かつ,本 件発明の構成要件Bと同一の構\成を備え,それにより,導光板の表面から出射する\n光を効率よく,また,面内で均一に出射されるようにするものである。もっとも, この乙8発明に係る特許の出願日は平成7年10月27日であり,本件特許の出願 よりも前に出願されたものであるが,乙8発明に係る特許について出願公開がされ たのは平成9年5月16日であり(乙8),本件特許の出願後であるから,乙8発明 はいわゆる拡大先願発明に該当するにすぎない。しかし,特許法29条の2は,特 許出願に係る発明が拡大先願発明と同一の発明である場合を特許要件を欠くものとしているところ,その趣旨の中には,先願の明細書等に記載されている発明は,出 願公開等により一般にその内容が公表されるから,たとえ先願が出願公開等をされ\nる前に出願された後願であっても,その内容が先願と同一内容の発明である以上, さらに新しい技術を公開するものではなく,そのような発明に特許権を与えること は,新しい発明の公開の代償として発明を保護しようとする特許制度の趣旨からみ て妥当でないとの点がある。このように特許法が,先願の明細書等に記載された発 明との関係で新しい技術を公開するものでない発明を特許権による保護の対象から 外している法意からすると,均等侵害の成否の判断のために発明の本質的部分とし て従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分を認定するに当た\nっては,拡大先願発明も参酌すべきものと解するのが相当である。 そうすると,導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは照光面に極 端な明暗のコントラストが生じるとの課題は,本件特許の出願日において,回折格 子として刻線溝又はエンボス型のホログラムを用いるか体積・位相型のホログラム を用いるかの違いがあるとはいえ,本件発明と同じく,回折格子の単位幅における 格子部幅/非格子部幅の比を,導光板の表面における輝度が増大し,かつ均一化されるように変化させることによって既に解決されている課題であったと認められる。\n
c そして,本件発明の,少ない消費電力で明るく均一な照明を得るこ とができないとの課題(上記(ア)2))は,上記a及びbで述べた課題が解決されるこ とに伴い解決されるものである(上記(ウ)γ)から,やはり既に解決されている課題 であったと認められる。
d 以上からすると,本件発明が課題とするところは,いずれも本件特 許の出願時の従来技術によって,同様の解決原理によって解決されていたといえる。 本件発明がそれらの従来技術と異なる点は,回折格子の単位幅における格子部幅/ 非格子部幅の比を,導光板の表面における輝度が増大し,かつ均一化されるように変化させることについて,体積・位相型のホログラムではなく,刻線溝又はエンボ\nス型のホログラムを用いた点にあるが,回折格子としては後者の方がむしろ通常で あること(前記1(4)ウ(ア),(エ),(オ))からすると,本件発明の従来技術に対する 貢献の程度は大きくないというべきである。
ウ 以上よりすれば,本件発明の本質的部分については,特許請求の範囲の 記載とほぼ同義のものとして認定するのが相当である。 この点について,原告は,本件発明の本質的部分は,光の波動の性質に基づく回 折現象を利用して,回折格子の断面形状又は単位幅における格子部幅/非格子部幅 の比に着目した点にあると主張するが,これまで述べたことに照らして採用できな い。
エ そうすると,被告製品の導光板では,前記のとおり,微細構造体が回折\nされた光が進行する側に設けられていることから,構成要件Aでいうところの「表\ 面」に微細構造体が設けられ,光源からの光が「表\面」側に回折させられている。 したがって,被告製品の導光板は構成要件Aの「板状体の裏面に設けられた回折格\n子」という部分を充足していない。よって,被告製品が本件発明の本質的部分を備えているということはできず,本件発明と被告製品とは本質的部分において相違すると認められるから,被告製品は,均等の第1要件を充足しない。

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平成29(ワ)33490  営業差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成30年12月20日  東京地方裁判所

 商標権侵害におけるロイヤリティー率として、原告主張の10%は根拠がないとして、3%が認定されました。
 原告は,1)原告商標を被告店舗の看板に掲示して居住用建物清掃業を営んだ 期間が,平成28年3月11日から平成29年9月10日までの18か月であ ること,2)同期間における被告店舗の売上げが月額100万円を下らないこと, 3)原告商標の使用料率は,被告店舗の売上げの10%相当額を下回ることはな いことを前提にして,180万円と算定されるべきである旨を主張する。 そこで検討するに,まず上記1)の期間の点については,証拠(甲8及び9) 及び弁論の全趣旨によって,そのとおり認められる(上記2(2)参照)。 しかしながら,上記2)の被告店舗の売上月額については,原告の主張する金 額を認めるに足りる証拠はなく,かえって,証拠(乙B6ないし乙B26)及 び弁論の全趣旨からすれば,被告らの主張するとおり月額30万0234円で あると認められる。 また,上記3)の使用料率については,原告主張に係る10%という数字につ き的確な根拠は見当らないこと,経済産業省知的財産政策室編「ロイヤルティ 料率データハンドブック〜特許権・商標権・プログラム著作権・技術ノウハウ〜」(平成22年8月。経済産業調査会)の16頁及び509頁においては,国 内アンケートの結果,原告商標の指定役務の属する第37類におけるロイヤル ティ料率の平均値が2.1%で,3%未満が全体の8割超を占めているとされ ていること等からすれば,原告標章である「おそうじ本舗」の知名度等,原告 指摘の諸点を考慮しても,3%とするのが相当である。 以上を前提に,1)18か月の期間につき,2)月額30万0234円の売上げ につき,3)月額3%の使用料率であるとして計算すると,16万2126円(た だし,1円未満は切り捨て。)となる。
(2) 弁護士費用
上記(1)の金額に加え,本件事案の内容,本件訴訟における主張立証の状況等 を総合考慮すると,商標権侵害を内容とする不法行為と相当因果関係の認めら れる弁護士費用の金額は,10万円である。

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平成29(ネ)10049等  損害賠償請求控訴事件,同反訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年12月26日  知的財産高等裁判所(2部)  東京地方裁判所

 共有者の一部による実施が、特許法73条2項の「別段の定」に違反しないかが争われました。裁判所は、事前の協議及び許可を要する制限があったと判断しました。
1 争点(1)ケ(特許権の移転登録の要否及び「別段の定」の有無)について
(1) 事案に鑑み,争点(1)ケから判断する。
特許権の移転は,相続その他の一般承継によるものを除き,登録しなければ,そ の効力を生じないから(特許法98条1項1号),被控訴人は,本件特許権1の特 許権者(共有持分権者)である(甲1)。 控訴人は,被控訴人の特許法98条1項1号を根拠とする主張は,時機に後れた 攻撃防御方法として却下すべきであると主張するが,被控訴人が本件特許権1に係 る特許原簿に特許権者(共有持分権者)として登録されていた事実(甲1)は,既 に訴状において控訴人が主張していたのであり,控訴人において被控訴人は無権利 者である旨の主張をする際にあらかじめ検討しておくべき事項であるから,上記主張は採用できない。 また,控訴人は,特許法98条1項1号は,通常の特許権の移転について登録を 効力発生要件としたものであって,本件のように,移転が解除されたことにより特 許権が譲受人から譲渡人に対し復帰的に物権変動するときには登録は不要であるな どと主張するが,同号は,相続その他の一般承継による移転には適用されない旨を 明示した上で,「特許権の移転」を対象としていること,同法74条2項は,特許 がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたとき (同法123条1項6号)であっても,その特許に係る発明について特許を受ける 権利を有する者の請求に基づく特許権の移転の登録があったことを要件として,そ の特許権が初めからその登録を受けた者に帰属していたものとみなすとしているこ とに照らすと,本件には同法98条1項1号の適用がない旨の主張は採用できな い。 そうすると,特許法73条2項の「別段の定」をした場合を除き,被控訴人は, 他の共有者の同意を得ないで,本件発明1−1の実施をすることができるから,続 いて,本件4者間の「別段の定」の有無を検討する。
(2) 控訴人は,本件共同出願契約書13条は,本件固定的役割分担合意を規定 するものであり,本件固定的役割分担合意の一部が特許法73条2項の「別段の 定」に該当すると主張するところ,前記第2の2(4)のとおり,本件共同出願契約 書には,中国語で記載され,作成日付及び本件4者の署名があるもの(甲6契約書)と,日本語で記載され,作成日付及び本件4者の署名がないもの(甲5契約 書)とがあるが,甲6契約書には作成日付及び署名があることに加え,B及びAが 中国語を理解し日本語を理解しないこと,甲6契約書は被控訴人従業員が中国語に 翻訳したものであり,控訴人も中国語を理解すること(以上の事実につき,証人 E,弁論の全趣旨)を併せ考慮すると,本件4者は,作成日付及び署名がある甲6 契約書をもって,本件共同出願契約を締結したと認めるのが相当である。
(3) 前記第2の2(4)ア(ク)のとおり,甲6契約書13条には,「事前の協議・ 許可なく,本件の各権利(本件特許権)を新たに取得し,又は生産・販売行為を行 った場合,本件の各権利は剥奪される。(甲,乙,丙及び丁の全員が対象である)」と記載されている。 同条の「生産・販売行為」の対象は,その文理に照らし,「本件の各権利(本件 特許権)」の実施品であると合理的に解釈できるから,同条は,契約当事者間にお いて「本件の各権利(本件特許権)」の実施品の生産・販売行為を制限する趣旨の 条項である。そうすると,契約当事者の合理的意思として,同条の「事前の協議・ 許可なく」とは,「事前の協議及び許可なく」の意味であると解釈でき,同条の 「生産・販売行為」とは,「生産又は販売行為」の意味であると解釈できる。前者 では「・」を「及び」と解釈し,後者では「・」を「又は」と解釈することになる が,いずれも契約当事者の合理的意思に沿うものであり,矛盾はない。また,前記 第2の2(4)ア(ア),(イ)によると,本件特許権1は,甲6契約書にいう「本件特許 権」に該当する。
以上によると,同条は,本件特許権1の共有者がその特許発明の実施である生産 又は販売をすることについて,事前の協議及び許可を要するものとして制限するも のであるから,特許法73条2項の「別段の定」に該当する。 そして,前記第2の2(5),(6)のとおり,被控訴人は,平成28年4月以降,日 本において,本件製造会社に本件発明1−1の実施品である被告各商品を製造さ せ,被告各商品を独自に販売しているが,これについて,事前の協議及び許可を経 たことは,本件全証拠によっても認められない。
したがって,被控訴人が,平成28年4月以降,日本において,本件製造会社に 本件発明1−1の実施品である被告各商品を製造させ,被告各商品を独自に販売し たことは,「別段の定」である甲6契約書13条に違反するものである。
(4) 被控訴人は,本件共同出願契約書7条には,本件発明の実施は,協議によ り別途定める旨の規定があるから,本件共同出願契約には,製造,販売等について の何らかの役割分担に関する合意は含まれないことが明らかであり,同契約書13 条は「別段の定」を規定したものではない旨の主張をする。 しかし,前記第2の2(4)ア(オ)のとおり,甲6契約書7条は,「甲,乙,丙及び 丁は,本件発明の実施に対する協議の後,別途に定める。」と規定するものである から,同契約書13条が,本件特許権1の共有者がその特許発明の実施である生産 及び販売をすることについて,事前の協議及び許可を要するものとすることと矛盾 するものではない。 そして,1)Bが中国国内の工場で本件発明1−1の実施品を製造し,2)これをA が梱包し,3)これを控訴人が仕入れ,4)さらに被控訴人がこれを日本に輸入して販 売するという本件販売形態が本件共同出願契約締結後,長年にわたり続けられてき たことは,当事者間に争いがないから,本件販売形態は,同契約書13条の「事前 の協議・許可」を経たものということができる。このように,製造,販売等につい ての役割分担を含む本件販売形態については,同契約書13条の「事前の協議・許 可」を経たものであるから,同契約書13条と矛盾するものではない。 また,前記第2の2(4)ア(カ)のとおり,甲6契約書8条は,「甲,乙,丙及び丁 は,他の全ての当事者の同意を得なければ,本件特許権を乙,丙及び丁が自ら経営 する法人以外の第三者に譲渡し,或いは本件発明の実施を許諾してはならない。」 と規定するものであるから,同契約書13条が,本件特許権1の共有者がその特許 発明の実施である生産及び販売をすることについて,事前の協議及び許可を要する ものとすることと矛盾するものということはできない。本件共同出願契約書を起案した弁護士が,甲6契約書8条と概ね同様の共同出願契約書案8条の「乙,丙及び 丁のいずれかが主体となって事業を営む法人」という文言に添えたコメントには, 「X様やA様,B様が経営している会社については,同意がなくても製造販売等が 可能です。」と記載されているが(甲49),本件4者が合意に達した甲6契約書で\nはなく,契約書作成過程の書面に付されたものにすぎないし,契約当事者のうち被 控訴人を除く控訴人ら3者が自然人であったことから,控訴人ら3者が将来的に法 人化して事業を営む際にも支障が生じない旨を説明したものと理解できるから,上 記コメントにより,甲6契約書13条が,本件特許権1の共有者がその特許発明の 実施である生産及び販売をすることについて,事前の協議及び許可を要することを 定めたものではないということはできない。 さらに,本件共同出願契約には,靴紐の購入単価又はその決定方法についての条 項はなく,被控訴人が控訴人から靴紐を購入しなければならないことを規定する条 項もないからといって,甲6契約書13条についての上記判断が左右されるもので はない。
(5) 被控訴人は,控訴人が,被控訴人との協議・許可なしに,COOLKNO Tという商品名又はブランド名により本件特許権の実施品を販売しているから,こ の控訴人の販売及び被控訴人の製造販売のいずれも,本件共同出願契約書13条に は違反しないとするのが,契約当事者の合理的意思である,本件特許権の持分を剥 奪されるのは控訴人であり,被控訴人ではないと主張するが,前記(3)のとおり, 甲6契約書13条の文理等に照らし,採用できない。
(6) 被控訴人は,本件共同出願契約書13条後段は,同条前段と合わせて読む べきところ,同条前段は,本件特許権と「実質的同一」の範囲について特許権を新 たに取得することを禁止しているから,同条後段は,実質的同一の範囲内で新たに 取得された特許権について,その実施品の生産・販売を禁止しているものと理解で きると主張する。 しかし,甲6契約書13条前段は,その文理に照らすと,事前の協議及び許可な く,「本件の各権利(本件特許権)」を未取得の国において,「本件の各権利(本件 特許権)」を新たに取得することを禁止するものと解すべきであるから,同条前段 が本件特許権と「実質的同一」の範囲について特許権を新たに取得することを禁止 しているとは認められない。また,同条前段は,「本件の各権利(本件特許権)」を 新たに取得したことのみによって「本件の各権利」を剥奪すると定めていることか らすると,同条後段が,その新たに取得された「本件の各権利(本件特許権)」の実施品を生産又は販売したことによって「本件の各権利」を剥奪することのみを定 めたものと解釈するのは不合理である。同条後段は,既に取得されているか,新た に取得されたものであるかを問わず,「本件の各権利(本件特許権)」の実施品の生 産又は販売行為を無断で行うことを禁止したものと解するのが相当である。
(7) 被控訴人は,本件共同出願契約書13条後段は,日本以外の国での販売行 為を定めた同契約書14条に違反した場合の効果を規定した条項であると理解で き,仮に日本での生産・販売行為について規定したものであるとすると,被控訴人 は,既に販売中の靴紐について,日本での販売中止を前提に本件共同出願契約を締 結したこととなり,著しく不合理であると主張する。 しかし,前記(3)のとおり,甲6契約書13条後段の文理に照らし,日本以外の 国での行為に限定されたものとは解釈できないし,被控訴人が本件共同出願契約締 結当時行っていた本件販売形態は,同条の「事前の協議・許可」を経たものとして 禁止されないから,被控訴人が本件共同出願契約締結当時被告各商品を既に販売し ていたことは,同条後段が禁止する対象から日本での行為を除外して解釈すべき理 由とはならない。
(8) 被控訴人は,本件共同出願契約書13条後段の内容は,同契約書16条の 協議を経なければ空文であり,これを法的請求の根拠とすることはできないと主張 するが,同契約書16条は,裁判外における紛争解決の方法を定めたものと合理的に解釈できるのであって,同条の協議を経なければ疑義が生じた契約条項の内容が 空文であり,法的請求の根拠とすることができないものとは認められない。

◆判決本文

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◆平成28(ワ)19633

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平成30(行ケ)10080  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成31年1月24日  知的財産高等裁判所

 無効理由なしとした審決が維持されました。争点は、明確性、実施可能要件です。経緯が少しややこしいです。被告は本件特許の訂正を求めましたが、特許庁はこれを拒絶しました。被告が知財高裁へ取消を求めたところ、知財高裁はこの審決を取り消し、特許庁は訂正を認める審決をしました。訂正後の発明について、原告が別途無効審判を請求し、請求棄却審決の取消訴訟が本件です。
 イ 前記アの記載事項を総合すると,2次元コード読取装置の技術分野にお いては,本件出願当時(出願日平成9年10月27日),1)「周波数成分 比」とは,2次元コードマトリックスに配置された「位置決め用シンボル」 (パターン)の中心を横切る(通る)走査線における「白(明)」が連続 する長さと「黒(暗)」が連続する長さの比を意味すること,2)「位置決 め用シンボル」は,同心状に相似形の図形が重なり合う形に形成されてお り,その中心をあらゆる角度で通る走査線において同じ比率が得られるた め,「周波数成分比」は「所定」の比率であること,3)「所定の周波数成 分比」の「検出」とは,2次元コード読取装置の2次元画像検出手段から 出力される画像信号(走査線信号)を2値化した後の走査線信号中から, 周波数成分比検出回路によって「所定の周波数成分比」の信号の存在の有 無を検出する処理を意味することは,技術常識であったものと認められる。 ウ これに対し原告は,同一出願人が出願した発明に係る2件の公開特許公 報(甲5,18)のみから,本件出願当時の技術常識を認定することはで きない旨主張する。 しかしながら,甲5(公開日平成8年7月12日)及び甲18(公開日 平成7年10月3日)は,マトリックス型2次元コード(いわゆるQRコ ード)の構成及び読取装置の基本的技術に係る技術文献であるものと認め\nられるから,甲5及び18から,前記イの本件出願当時の技術常識を認定 することは妥当である。したがって,原告の上記主張は理由がない。
(3) 明確性要件の適合性について
ア 構成Dの「所定の周波数成分比」について
(ア) 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言によれば,構成Dの\n「所定の周波数成分比」は,カメラ部制御装置において,読み取り対象 の画像を受光する光学的センサからの出力信号を増幅して,閾値に基づ いて2値化し,2値化された信号の中から検出され,その検出結果が出 力されるものであるが,請求項1には,「所定の周波数成分比」の値を 具体的に規定した記載はない。 次に,本件明細書(甲6,8,乙2の2)には,「所定の周波数成分 比」の語を定義した記載はない。一方で,本件明細書の記載事項(【0 029】ないし【0031】,図4)によれば,本件明細書には,実施 例として,2次元コード読取装置のCCDエリアセンサ41が撮像した 2次元画像を水平方向の走査線信号として出力し,カメラ部制御装置5 0において,これをAGCアンプ52及び補助アンプ56によって増幅 し,増幅された走査線信号は2値化回路57によって閾値に基づいて2 値化され,周波数分析器58は2値化された走査線信号の内から「所定 の周波数成分比」を検出し,その検出結果を画像メモリコントローラ6 1に出力することの開示があることが認められる。 以上の本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言,本件明細書の 開示事項及び2次元コード読取装置の技術分野における本件出願当時の技術常識(前記(2)イ)に鑑みると,本件発明の構成Dの「所定の周波数\n成分比」は,上記技術常識における用語と同義であるものと認められる から,読み取り対象の画像(2次元コードマトリックス)に配置された 「位置決め用シンボル」(パターン)の中心を横切る(通る)走査線に おける「白(明)」が連続する長さと「黒(暗)」が連続する長さの比 (「位置決め用シンボル」の中心を通るあらゆる走査線における同一の 比率)を意味するものと解される。 したがって,本件発明の構成Dの「所定の周波数成分比」の内容は明\n確である。
(イ) これに対し原告は,構成Dの「周波数成分比」との文言は一般的な\n用語ではなく,本件明細書にも,「周波数分析器58は,2値化された 走査線信号の内から所定の周波数成分比を検出し」との記載(【003 1】)があるのみで,いかなるものが「所定の周波数成分比」であるの か何ら説明がないから,構成Dの「所定の周波数成分比」の記載は,明\n確であるとはいえない旨主張する。 しかしながら,前記(ア)認定のとおり,本件出願当時の技術常識を踏 まえると,構成Dの「所定の周波数成分比」の内容は明確であるといえ\nるから,原告の上記主張は理由がない。
イ 構成Fの「相対的に長く設定し」に(ア) 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の構成Fの記載は,「前記\n読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズ に入射するよう,前記絞りを配置することによって,前記光学的センサ から射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定し」というものである。 上記記載から,「光学的センサから射出瞳位置までの距離」を「相対的 に長く設定」することは,「読み取り対象からの反射光が絞りを通過し た後で結像レンズに入射するよう,絞りを配置すること」の結果として 得られるものであることを理解することができる。 また,本件明細書には,光学的センサから射出瞳までの距離(射出瞳 距離)は,光学的センサから絞りまでの光学的距離が長くなれば,それ に伴って長くなるところ,従来の光学情報読取装置では,複数の結像レ ンズ間に絞りが配置されていたものを,「本発明」では,読取り対象か らの反射光が絞りを通過した後で結像レンズに入射するよう絞りを配置 する構成を採用したことにより,光学的センサから射出瞳位置までの距離(射出瞳距離)を相対的に長く設定することができること(【000\n9】,【0040】,【0041】,図6)の開示があることが認めら れる。 以上の本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言及び本件明細書 の開示事項に鑑みると,本件発明の構成Fの「相対的に長く設定し」と\nは,絞りの配置が「前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過し た後で前記結像レンズに入射するよう」配置されたものではないものと 比較して,光学的センサから「射出瞳位置までの距離」を「長く設定」 することを意味するものと解される。 したがって,本件発明の構成Fの「相対的に長く設定し」の内容は明\n確である。
(イ) これに対し原告は,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)におい て,「相対的に」の基準が明確でないため,「相対的に長く設定し」の 記載からは,射出瞳位置までの距離がどのように設定されていることを 意味するのか,どのようなものが本件発明の技術的範囲に含まれるのか を理解することができないから,構成Fの「相対的に長く設定し」の記\n載は,明確であるとはいえない旨主張する。 しかしながら,前記(ア)の認定事実によれば,「相対的に」の基準と なる比較の対象は,絞りの配置が「前記読み取り対象からの反射光が前 記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう」配置されたもの ではない構成のものにおける射出瞳距離を意味することは明らかである\nから,原告の上記主張は,その前提を欠くものであって,理由がない。
ウ 構成Gの「所定値」について
(ア) 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)には,構成Gの「前記光学\n的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光学的 センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上」にお ける「所定値」の値について具体的に規定した記載はない。 一方で,請求項1における「前記読み取り対象からの反射光が前記絞 りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置する ことによって,前記光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に 長く設定し,」(構成F),「前記光学的センサの中心部に位置する受\n光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素 子からの出力の比が所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定し て,露光時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が 可能となるようにしたこと」(構\成G)の記載によれば,本件発明にお いては,「前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前 記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置すること」によって「射 出瞳位置を設定」することが前提とされていることを理解することがで きる。 また,本件明細書には,構成Gの「所定値」に関し,「最終的には適\n切な読み取りを実現することが目的であるので,本発明の光学情報読取 装置においては,光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力 に対する光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所 定値以上となるように,射出瞳位置を設定している。このようにしてお けば,中央部と周辺部の出力差を考慮しながら,例えば照射光の光量や露光時間などを調整することが容易となり,中心部においても周辺部に おいても適切に読取が可能となる。」(【0011】),「適切な読み\n取りを実現するためには,センサ周辺部にある受光素子41aからの出 力レベルが所定レベル以上になる必要がある。そのため,例えば,セン サ中心部に位置する受光素子41aからの出力に対するセンサ周辺部に 位置する受光素子41aからの出力の比が所定値以上となるよう射出瞳 位置を設定することが考えられる。つまり,このような射出瞳位置とな るように絞り34aの位置を設定するのである。このようにしておけば, 中央部と周辺部の出力差を考慮しながら,例えば照射光の光量や露光時間などを調整することが容易となり,中心部においても周辺部において も適切に読取が可能となる。」(【0042】)との記載がある。\n以上の本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言及び本件明細書 の記載に鑑みると,構成Gは,「前記読み取り対象からの反射光が前記\n絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置す ること」によって「射出瞳位置を設定」することを前提とした上で,「露 光時間などの調整」により,「光学的センサの中心部においても周辺部 においても読取が可能となるように」すること,すなわち,光学的セン\nサの中心部に位置する受光素子から得られた信号を2値化するために用 いられる閾値に基づいて,光学的センサの周辺部に位置する受光素子か ら得られた信号を2値化することが可能であるような強さの光を,周辺\n部に位置する受光素子が受光できるように,射出瞳位置を設定すること を特定したものであることが認められる。 そうすると,構成Gの「所定値」とは,「露光時間」の「調整」など\n読取りに際して所与の調整を行うことにより,「光学的センサの中心部 においても周辺部においても適切に読取が可能となる」位置に射出瞳位\n置を設定することによって特定される「前記光学的センサの中心部に位 置する受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比」の値を意味するものと解される。 したがって,本件発明の構成Gの「所定値」の内容は明確である。
(イ) これに対し原告は,構成Gの「所定値」については,本件発明の特\n許請求の範囲(請求項1)に規定がなく,本件明細書にも,それがいか なる値を意味するのかの手掛かりとなる記載がないため,本件明細書に 接した当業者は,「所定値」がいかなる値であれば本件発明の課題が解 決されるのかを理解することができないし,また,中心部に位置する受 光素子からの出力信号を2値化するために用いられる「閾値」は明らか にされておらず,「所定値」の値は,特許請求の範囲の記載から一義的 に定まるものではないから,構成Gの「所定値」の記載は,明確であるとはいえない旨主張する。\nしかしながら,構成Gの「所定値」とは,あらかじめ一律に定められ\nた特定の数値をいうものではなく,「露光時間」の「調整」など読取り に際して所与の調整を行うことにより,「光学的センサの中心部におい ても周辺部においても適切に読取が可能となる」位置に射出瞳位置を設\n定することによって特定される「前記光学的センサの中心部に位置する 受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光 素子からの出力の比」の値を意味するものであることは,前記(ア)認定 のとおりである。 また,「前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前 記結像レンズに入射するよう」絞りの配置をする際に,「露光時間」の 「調整」など読取りに際して所与の調整を行うことにより,「光学的セ ンサの中心部においても周辺部においても適切に読取が可能となる」位\n置に射出瞳位置を設定することは,当業者が適宜考慮して定める設計的 事項であるというべきであるから,請求項1に「所定値」の具体的な値が記載されていないからといって,構成Gの「所定値」の内容が明確で\nないとはいえない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。
・・・
(1) 実施可能要件の適合性について
ア 「所定の周波数成分比」の記載を含む構成Dについて
原告は,構成Dの「所定の周波数成分比」の記載が明確でなく,また,\n本件明細書には,「所定の周波数成分比」の「検出」の実現方法について も何ら記載されていないから,当業者は,本件明細書に基づいて,本件発 明を実施することができない旨主張する。 しかしながら,構成Dの「所定の周波数成分比」の内容が明確であるこ\nと,本件明細書には,実施例として,2次元コード読取装置のCCDエリ アセンサ41が撮像した2次元画像を水平方向の走査線信号として出力し, カメラ部制御装置50において,これをAGCアンプ52及び補助アンプ 56によって増幅し,増幅された走査線信号は2値化回路57によって閾 値に基づいて2値化され,周波数分析器58は2値化された走査線信号の 内から「所定の周波数成分比」を検出し,その検出結果を画像メモリコン トローラ61に出力することの開示があることは,前記1(3)ア(ア)認定の とおりである。 また,2次元コード読取装置の技術分野において,「所定の周波数成分 比」の「検出」とは,2次元コード読取装置の2次元画像検出手段から出 力される画像信号(走査線信号)を2値化した後の走査線信号中から,周 波数成分比検出回路によって「所定の周波数成分比」の信号の存在の有無を検出する処理を意味することが,本件出願当時,技術常識であったこと は,前記1(2)イ認定のとおりである。 そうすると,当業者は,本件明細書の記載及び本件出願当時の技術常識 に基づいて,「所定の周波数成分比」の記載を含む構成Dを実施できたも\nのと認められるから,原告の上記主張は理由がない。
イ 「相対的に長く設定し」の記載を含む構成Fについて
原告は,構成Fの「相対的に長く設定し」との記載が明確でなく,また,\n当業者は,本件明細書から,射出瞳位置をどのように設定すれば「相対的 に長く設定」することができるのかを理解することができないから,本件 明細書に基づいて,本件発明を実施することができない旨主張する。 しかしながら,構成Fの「相対的に長く設定し」の内容が明確であるこ\nと,本件明細書には,光学的センサから射出瞳までの距離(射出瞳距離) は,光学的センサから絞りまでの光学的距離が長くなれば,それに伴って 長くなるところ,従来の光学情報読取装置では,複数の結像レンズ間に絞 りが配置されていたものを,「本発明」では,読取り対象からの反射光が 絞りを通過した後で結像レンズに入射するよう絞りを配置する構成を採用\nしたことにより,光学的センサから射出瞳位置までの距離(射出瞳距離) を相対的に長く設定することができることの開示があることは,前記1(3) イ(ア)認定のとおりである。 そうすると,当業者は,本件明細書の記載に基づいて,「相対的に長く 設定し」の記載を含む構成Fを実施できたものと認められるから,原告の\n上記主張は理由がない。
ウ 「所定値」の記載を含む構成Gについて
原告は,構成Gの「所定値」の記載が明確でなく,また,当業者は,「所\n定値」がどのようなものであるかを理解することができない以上,構成G\nの「所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定」することもできな いから,本件明細書に基づいて,本件発明を実施することができない旨主 張する。しかしながら,構成Gの「所定値」の内容が明確であることは,前記1\n(3)ウ(ア)認定のとおりである。 そして,本件明細書の【0011】及び【0042】の記載に加えて, 「前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レン ズに入射するよう」絞りの配置をする際に,「露光時間」の「調整」など 読取りに際して所与の調整を行うことにより,「光学的センサの中心部に おいても周辺部においても適切に読取が可能となる」位置に射出瞳位置を\n設定することは,当業者が適宜考慮して定める設計的事項であること(前 記1(3)ウ(イ))からすると,当業者は,本件明細書の記載に基づいて,「所 定値」の記載を含む構成Gを実施できたものと認められるから,原告の上\n記主張は理由がない。

◆判決本文

元の訂正審決の取消訴訟はこちらです。

◆平成25(行ケ)10115

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平成30(ネ)10038  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成31年1月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(4部)は、 不競法2条1項3号の商品形態模倣について、不正競争行為に該当しないとした1審判決を取り消しました。商品はサックス用のストラップです。
 不競法2条1項3号により保護される原告商品の形態について
ア 原告商品(検甲2)は,別紙「原告商品の形態」のとおりのサックス用 ストラップであり,その基本的構成態様(全体的形態)及び具体的構\成態 様は,別紙「原告商品と被告商品の各構成態様」の「原告商品」欄記載の\nとおりである。 すなわち,原告商品は,1)基本的構成態様は,V型プレート,革パッド,\nブレードクリンチ,ブレード(紐)及びフックの5つのパーツにより構成\nされ,5つのパーツは,ブレードクリンチの留めネジ(六角ボルト)を緩 めてブレード(紐)を外すことにより,分解することができる,2)V型プ レートは,中央部の四角形状とその上部から左右に伸びる辺からなり,両 翼の先端(左右の端)のそれぞれに穴が1つずつ,中央部に穴が4つある という基本的形状を有し,V型プレートの厚みは約0.3cm,左右の幅(左 端から右端までの直線距離)は約14cm,中央部の四角形状の底辺の長さ は約2cm,高さは約3cm である,3)革パッドは,2枚の革を張り合わせ, 内部に丸みを帯びた三角形状の2つのクッションを配置し,中央部にクッ ションを入れずに窪みを設け,中央部から左右の端に向けて幅が狭くなっ たテーパー型のパッドであり,左右の端にはブレード(紐)を通すための 金属のハトメがあり,中央部から左右の端までの長さは約22.5cm,中 央部の幅は5.5cmである,4)ブレードクリンチは,革パッドの左右の端 のハトメを通したブレード(紐)を固定するための空洞の円柱状の金具で ある,5)ブレード(紐)は,黒色の編み込みの紐であり,革パッドの左右 の端のハトメからブレードクリンチを経てV型プレートの左右の端の穴を 通り,中央部の四角形状の4つの穴を通ってまとめられ,フックをぶら下 げるための輪を形成している,6)フックは,光沢のある銀色の金属フック であり,ブレード(紐)を通す輪とサックスにかけるフック部分からなる という形態を有している。
イ この点に関し被控訴人は,サックス用ストラップにおいて,V型プレー トによって,ストラップ装着時に首元を圧迫しない構造にすること,革\nパッドにクッションを入れて衝撃を緩和すること,V型プレートに穴を開 けてブレード(紐)を通す構造にすることは,「当該商品の機能\を確保す るために不可欠な形態」(不競法2条1項3号括弧書き)であり,また, 原告商品の基本的構成態様(前記ア1)),V型プレートの形態(前記ア2)) 及び革パッドの形態(前記ア3))は,ありふれた形態であるから,原告商 品の形態は,同号の保護の対象とならない旨主張する。 (ア) しかしながら,サックス用ストラップにおいて,頸部や肩を圧迫し ない構造にするために革パッドにクッションを入れる構\造とし,ブレー ド(紐)の長さを調節するためにブレード(紐)を通す穴を有するアジャ スターを設ける必要はあるものと認められるが(乙1ないし5),革パッ ド及びアジャスターの具体的形態については,様々な選択肢が考えられ, 必然的に原告商品の革パッド及びV型プレート(アジャスターに相当) の形態を選択せざるを得ないものではない。 したがって,原告商品の革パッド及びV型プレートの形態は,「当該 商品の機能を確保するために不可欠な形態」(不競法2条1項3号括弧\n書き)に当たるものとは認められない。
(イ) 次に,不競法2条1項3号は,他人が資金,労力を投下して商品化 した商品の形態を他に選択肢があるにもかかわらず,ことさら模倣した 商品を,自らの商品として市場に提供し,その他人と競争する行為は, 模倣者においては商品化のための資金,労力や投資のリスクを軽減する ことができる一方で,先行者である他人の市場における利益を減少させ るものであるから,事業者間の競争上不正な行為として規制したものと 解される。 このような同号の趣旨に照らすと,同号によって保護される「商品の 形態」とは,商品全体の形態をいい,その形態は必ずしも独創的なもの であることを要しないが,他方で,商品全体の形態が同種の商品と比べ て何の特徴もないありふれた形態である場合には,特段の資金や労力を かけることなく作り出すことができるものであるから,このようなあり ふれた形態は,同号により保護される「商品の形態」に該当しないと解 すべきである。そして,商品の形態が,ありふれた形態であるか否かは, 商品を全体として観察して判断すべきであり,全体としての形態を構成\nする個々の部分的形状を取り出してそれぞれがありふれたものであるか どうかを判断することは相当ではない。 しかるところ,乙1(「オリジナル・ツェブラ・サックス・ストラッ プ ホームページ」)には,アジャスター(調節つまみ),革パッド, ブレード(紐)及びフックのパーツにより構成される「ツェブラ・スト\nラップ」の写真が掲載されているところ,アジャスターは,中央部から 左右斜め上方に伸びる辺(両翼)を有するY字状であり,中央部の形状 が四角形状でない点,両翼の角度が約90度であり,鈍角ではない点, 中央部の穴の位置などにおいて原告商品のV型プレートの形態(別紙「原 告商品の形態」)と明らかに相違し,基本的構成態様においても,ブレー\nドクリンチを有していない点で,原告商品の全体としての形態と相違す る。 また,乙2(「Protec LC305M Neck Strap」) に掲載された「Neck Strap」は,ブレードクリンチを有して いない点で原告商品の形態と相違するほか,アジャスターは,中央部か ら左右に伸びる辺(両翼)を有する形状であるものの,中央部の形状が 四角形状でない点,中央部の穴が3つであり,4つでない点,中央部の 穴の位置などにおいて原告商品のV型プレートの形態と相違し,基本的 構成態様においても,ブレードクリンチを有していない点で,原告商品\nの全体としての形態と相違する。 さらに,乙3(国際公開公報(WO 00/41589)・訳文乙1 1)記載の「キャリングストラップ」の「滑車装置」(図11)(アジャ スターに相当)は,T字状であり,中央部が四角形状でない点,乙4(再 公表特許公報(WO2008/107939))記載の「楽器用ストラッ\nプ」の「楽器連結具」(アジャスターに相当)は,細長い棒状である点, 乙5(「新型説明書公告本」(TWM443110U1)・訳文乙12) 記載の「吊り部品」の「支持ロッド」(図3,4)(アジャスターに相 当)は,細長い棒状であり,4つの穴のある四角形状部と「吊り紐」で 連結している点において,いずれも原告商品のV型プレートの形態と明 らかに相違し,基本的構成態様においても,革パッド部分の形状が原告\n商品の全体としての形態と相違する。 そうすると,乙1ないし5から,原告商品の販売が開始された平成2 8年3月当時,原告商品の形態がありふれた形態であったものと認める ことはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。
・・・
ウ 被控訴人は,旧原告商品からモデルチェンジされた商品である原告商品 の形態と旧原告商品の形態は実質的に同一であるから,原告商品の形態は, 旧原告商品の形態とは別の形態として,不競法2条1項3号により保護さ れるものではない旨主張する。 そこで検討するに,旧原告商品(検甲1)は,別紙「旧原告商品目録」 のとおりのサックス用ストラップであり,基本的構成態様が,V型プレー\nト,革パッド,ブレードクリンチ,ブレード(紐)及びフックの5つのパー ツにより構成され,5つのパーツは,ブレードクリンチの留めネジ(六角\nボルト)を緩めてブレード(紐)を外すことにより,分解することができ る点,V型プレートは,中央部の四角形状とその上部から左右に伸びる辺 からなり,両翼の先端(左右の端)のそれぞれに穴が1つずつ,中央部に 穴が4つあるという基本的形状を有する点,革パッドは,2枚の革を張り 合わせ,内部に丸みを帯びた三角形状の2つのクッションを配置し,中央 部にクッションを入れずに窪みを設け,中央部から左右の端に向けて幅が 狭くなったテーパー型のパッドである点において,原告商品(検甲2)の 形態と共通する。 しかしながら,原告商品のV型プレートと旧原告商品のV型プレートの 形態は,別紙「原告商品と旧原告商品の変更点」記載の図4(a)及び(b) のとおり,原告商品のV型プレートは,旧原告商品のV型プレートと比べ, 中央部の四角形状から左右に伸びる両翼の形状及び幅が大きく変更され, 細長くなっており,両者の形態は一見して明らかに相違することが認めら れる。 加えて,サッククス用ストラップの形態において,V型プレート(アジャ スターに相当)は,需要者が注意を引きやすい特徴的部分であることを踏 まえると,V型プレートの形態の上記相違により,原告商品から受ける商 品全体としての印象と旧原告商品から受ける商品全体としての印象は異な るものといえるから,原告商品の形態は,商品全体の形態としても,旧原 告商品の形態とは実質的に同一のものではなく,別個の形態であるものと 認められる。
・・・
この点に関し原判決は,1)原告商品は,旧原告商品からモデルチェンジ された商品であり,V型プレート,革パッド及びブレード(紐)が旧原告 商品からの変更部分である,2)原告商品の形態が,旧原告商品の形態の保 護期間(不競法19条1項5号イ)が経過した後であっても,同法2条1 項3号の保護を受け得るのは,そのV型プレートの変更部分が商品の形態 において実質的に変更されたものであり,その特有の形状が美観の点にお いて保護されるべき形態であると認められることによるものであるから, 同号による保護を求め得るのは,この変更部分に基礎を置く部分に限られ る旨判断したが,前記イ(イ)で説示したとおり,同号の趣旨に照らすと, 同号によって保護される「商品の形態」とは,商品全体の形態をいうもの であり,また,上記のとおり,原告商品の形態と旧原告商品の形態は,実 質的に同一の形態とは認められないから,原判決の上記2)の判断は妥当で はない。
エ 以上によれば,原告商品の形態は,その商品全体の形態が,不競法2条 1項3号により保護されるべきものと解される。
(2) 形態の実質的同一性について
ア 被告商品(検甲3)は,別紙「被告商品の形態」のとおりのサックス用 ストラップであり,その基本的構成態様(全体的形態)及び具体的構\成態 様は,別紙「原告商品と被告商品の各構成態様」の「被告商品」欄記載の\nとおりである。
 すなわち,被告商品は,1)基本的構成態様は,V型プレート,革パッド,\nブレードクリンチ,ブレード(紐)及びフックの5つのパーツにより構成\nされ,5つのパーツは,ブレードクリンチの留めネジ(六角ボルト)を緩 めてブレード(紐)を外すことにより,分解することができる,2)V型プ レートは,中央部の四角形状とその上部から左右に伸びる辺からなり,両 翼の先端(左右の端)のそれぞれに穴が1つずつ,中央部に穴が4つある という基本的形状を有し,V型プレートの厚みは約0.3cm,左右の幅(左 端から右端までの直線距離)は約14cm,中央部の四角形状の底辺の長さ は約2cm,高さは約2.5cm である,3)革パッドは,2枚の革を張り合わ せ,内部に丸みを帯びた三角形状の2つのクッションを配置し,中央部に クッションを入れずに窪みを設け,中央部から左右の端に向けて幅が狭く なったテーパー型のパッドであり,左右の端にはブレード(紐)を通すた めの金属のハトメがあり,中央部から左右の端までの長さは約21.5cm, 中央部の幅は5cmである,4)ブレードクリンチは,革パッドの左右の端の ハトメを通したブレード(紐)を固定するための空洞の円柱状の金具であ る,5)ブレード(紐)は,黒色の編み込みの紐であり,革パッドの左右の 端のハトメからブレードクリンチを経てV型プレートの左右の端の穴を通 り,中央部の四角形状の4つの穴を通ってまとめられ,フックをぶら下げ るための輪を形成している,6)フックは,光沢のある金色の金属フックで あり,ブレード(紐)を通す輪とサックスにかけるフック部分からなると いう形態を有している。
イ そして,原告商品(検甲2)の形態と被告商品(検甲3)の形態とを対 比すると,1)両者は,基本的構成態様が,V型プレート,革パッド,ブレー\nドクリンチ,ブレード(紐)及びフックの5つのパーツにより構成され,\n5つのパーツは,ブレードクリンチの留めネジ(六角ボルト)を緩めてブ レード(紐)を外すことにより,分解することができる点,V型プレート は,中央部の四角形状とその上部から左右に伸びる辺からなり,両翼の先 端(左右の端)のそれぞれに穴が1つずつ,中央部に穴が4つあるという 基本的形状を有する点,革パッドは,2枚の革を張り合わせ,内部に丸み を帯びた三角形状の2つのクッションを配置し,中央部にクッションを入 れずに窪みを設け,中央部から左右の端に向けて幅が狭くなったテーパー 型のパッドである点において共通し,2)V型プレートをはじめとする各パーツの具体的な構成態様においても,形状,色彩,光沢及び質感におい\nて多数の共通点(別紙「原告商品と被告商品の各構成態様」のC,D,F,\nHないしK,N,P,Q,S,T,VないしX,aないしd,fないしh の各欄のとおり)があり,原告商品と被告商品から受ける商品全体として の印象が共通することによれば,商品全体の形態が酷似し,その形態が実 質的に同一であるものと認められる。 もっとも,原告商品と被告商品とは,V型プレートにおける中央部の側 面及び下面(底辺)の形状,中央部の4つの穴のうち,上部の2つの穴の 位置及び間隔,両翼の角度及びその先端部分の角度,光沢,ロゴの位置, 革パッドの内側の革の色,革パッドの長さ及びクッションの大きさ,ブレー ドクリンチの色彩及び光沢,フックの色彩等において相違するが,次に述 べるとおり,これらの相違は,商品の全体的形態に与える変化に乏しく, 商品全体からみると,ささいな相違にとどまるものと評価すべきものであ るから,原告商品の形態と被告商品の形態が実質的に同一であるとの上記 判断を左右するものではない。

◆判決本文


1審はこちらです。

◆平成29(ワ)21107

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平成30(ワ)6943  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年12月26日  東京地方裁判所(29部)

手書きの文章をデータ入力するソフトウェアのマニュアルについて、個性があらわれておらず、著作物ではないと判断されました。
 著作物は,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又\nは音楽の範囲に属するものをいう(著作権法2条1項1号)ところ,創作的に表現さ\nれたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではな く,作成者の何らかの個性が表現されたもので足りるというべきであるが,他方,文\n章自体がごく短く,又は表現上制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現\nが平凡かつありふれたものである場合には,作成者の個性が表現されたものとはいえ\nないから,創作的な表現であるということはできない。\n
イ これを本件についてみるに,前記第2の2前提事実(2)及び前記(1)に認定したと おり,本件マニュアルは,本件システムの機能や操作方法の説明を目的として作成さ\nれたものであり,その作成目的に従い,本件コメントは,各頁に表示された本件シス\nテムの画面の内容を説明し,同画面に関連する本件システムの機能を説明し,又は同\n画面に関連する本件システムの操作といった客観的事実を説明することを目的とし て作成されており,その性質により,機能や操作方法を分かりやすく,一般的に用い\nられるありふれた表現で示すことが求められることから,表\現の選択の幅は狭いもの である。そして,本件コメントでは,本件システムの機能等を説明するためにコンピ\nュータに関する用語が選択されているものの,当該説明において他の表現を用いるこ\nとは想定し難く,また,その他の表現も操作等を説明するものとして特徴的な言い回\nしが存するともいえない。 そうすると,本件コメントに原告の個性が表現されているとはいえないのであって,\n本件マニュアルに著作物性があるということはできない。これに反する原告の主張は 採用することができない。

◆判決本文

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平成28(ワ)25956等  特許権侵害損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年12月27日  東京地方裁判所(46部)

 SONY VS 富士フイルムの特許侵害事件です。サポート要件違反の無効理由があるとして104条の3の規定により、権利行使不能と判断されました。\n
 以上によれば,式(1)には上限値は定められておらず,下限値である2 30以上の数値の全てにわたり式(1)を満たすことになるにもかかわらず, 本件明細書記載の実施例において課題を解決できることが裏付けられるH c×(1+0.5×SFD)の範囲は,230.1〜245.8(又は24 7.5)に限られることになる。そして,本件明細書にはこの範囲よりも大 きい数値の磁気録媒体の記録電流値の裕度を大きくすることができること に関する記載はない。 これらによれば,式(1)には,Hc×(1+0.5×SFD)の値の上 限値がないところ,実施例で示されているのは前記の範囲であって,その値 が実施例で示されたものよりも大きくなった場合などを含めた,式(1)の 関係が満たされることとなる場合において,当業者が,前記の課題を解決で きると認識できたとはいえないとするのが相当である。
エ 更に,本件発明においては,Hcの上限値やSFDの下限値は定められて いないから,ΔH,ひいてはSFDの値を大きくせず,Hcの値を例えば2 30以上の数値にすると,SFDの値が実施例を大きく下回る場合も式(1) の関係を満たすこととなる。しかし,このように実施例を大きく下回るSF Dの値の場合に当業者が前記課題を解決できると認識できるとはいえない。 原告は,文献(乙9),実施例2及び実施例4の記載に接することで,SFD が実施例の数値を大きく下回るなどの場合でも,式(1)によって課題を解 決できると認識することできると主張するが,式(1)の技術的意義,実施 例が示す範囲や本件明細書の記載は前記のとおりであり,採用することがで きない。
オ したがって,当業者は,本件明細書の記載から,式(1)によって記録電 流値の裕度を確保するという課題を解決できると認識できるとはいえず,ま た,本件出願当時の技術常識から,上記課題を解決できると認識できるとも いえない。 以上によれば,本件発明に係る特許請求の範囲の記載が,本件明細書の記載 により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである とはいえず,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照 らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえな いから,本件発明にはいわゆるサポート要件違反がある。
3 本件訂正発明によるサポート要件違反の解消の有無について(争点 )
原告は,本件訂正によって,いわゆるサポート要件違反が解消したと主張す るので,以下,この点について検討する。
訂正事項1−1は,保持力Hcを210以上,221以下とするものである (構成要件F2)。
前記2 アのとおり,式(1)について,磁気記録媒体の技術分野で広く 知られている式であることを認めるに足りる証拠はなく,本件明細書におい て,式(1)の意義に関する記載はない。また,同イのとおり,原告の主張 は,式(1)の意義に関して,オーバーカレント状態において,磁性粒子自 体のHcのばらつきが大きくなることによって,そのばらつきが大きくない 場合に比べ,再生出力が大きくなり記録電流値の裕度が大きくなることをい うものといえるが,本件明細書にそのことを述べる記載がなく,また,本件 出願当時,当業者にとってそのことが技術常識であったことを認めるに足り る証拠はない。
イ 本件明細書をみると,本件明細書の発明の詳細な説明には,前記2 アの とおり,実施例1ないし4及び比較例1及び2の数値が記載されている。 そして,Hcが210以上という本件訂正事項1−1によって,実施例2 は本件訂正発明の実施例でなくなる。したがって,実施例は,実施例3及び 実施例4のみであり,また,前記2 のとおり,「最適記録電流」の点から 実施例3が実施例とならないとすると,実施例は,実施例4のみとなる。 そうすると,式(1)には上限値は定められておらず,下限値である23 0以上の数値の全てにわたり式(1)を満たすことになるにもかかわらず, 本件明細書記載の実施例において課題を解決できることが裏付けられるH c×(1+0.5×SFD)の数値(範囲)は,245.8(又は245. 8〜247.5)に限られることになる。そして,本件明細書にはこの数値 (範囲)よりも大きい数値の磁気録媒体の記録電流値の裕度を確保すること ができることに関する記載はない。
 これらによれば,式(1)には,Hc×(1+0.5×SFD)の値の上 限値がないところ,実施例で示されているのは前記の数値(範囲)であり, その値が実施例で示されたものよりも大きくなった場合なども含めた,式 (1)の関係が満たされるといえる場合において,当業者が,前記の課題を 解決できると認識することができたとはいえないとするのが相当である。
ウ 更に,本件訂正発明においては,Hcの上限値は定められたが,SFDの 下限値は定められていない。そして,例えば,Hcが上限値である221の 場合,SFDが0.082であっても,式(1)を満たすこととなるが,実 施例4のSFDは0.341であり,実施例よりも大幅に小さいSFDの値 の場合に,当業者が前記の課題を解決できると認識できたとはいえない。被告は,上記のような場合でも,文献(乙9),実施例2及び実施例4の記載に 接することで,式(1)によって課題を解決できると認識することできると 主張するが,式(1)の技術的意義,実施例が示す範囲や本件明細書の記載 は前記のとおりであり,採用することができない。 以上によれば,当業者は,本件訂正後も,本件明細書の記載から,式(1) によって記録電流値の裕度を確保するという課題を解決できると認識できる とはいえず,また,本件出願当時の技術常識から,上記課題を解決できると認 識できるともいえない。
そうすると,本件特許には特許法123条1項4号の事由があり(前記2), 本件訂正によってもその事由が解消したとは認められないから,本件訂正請求 が訂正要件を満たすか(争点 )など,その他の争点を検討するまでもな く,原告は,特許法104条の3第1項により,本件特許権を行使することが できない。

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平成30(ワ)13381  不正競争行為差止請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年12月26日  東京地方裁判所(29部)

 不競法2条1項1号の不正競争行為について、周知、類似は認めましたが、混同しないとして、不正競争行為に該当しないと判断されました。
 これを本件についてみるに,前記認定のとおり,原告商品は,携帯用ディス ポーザブル低圧持続吸引器であるSBバックのうちの排液ボトル及び吸引ボトルで 構成されるものであるところ,携帯用ディスポーザブル低圧持続吸引器には様々な形\n態のものが存在する中で,SBバックのように主たる構成として2つの透明のボトル\nから構成される形態,取り分け,直方体の排液ボトル,丸みを帯びた略立方体の吸引\nボトル本体及びその上部に取り付けられた球体のゴム球体という形状の異なる3つ のパーツをまとまりよく一体化して構成されている形態は,平成30年1月頃に被告\n商品が販売されるまでは,SBバック以外の製品にはみられない形態であったのであ り,吸引方法が異なる蛇腹(バネ)吸引や握り型吸引に属する吸引器はもととより,同 じくバルーン吸引に分類される吸引器であり,株式会社メディコンが製造し,販売す る「デイボール リリアバック」の形態もSBバックの形態とは,大きく異なってい る(甲11,25,乙4)。そうすると,原告商品の形態は,1)特別顕著性,すなわち,客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していると認められる。 これに対し,被告は,原告商品は,医療従事者を需要者とする医療機器であり,医 療従事者が,患者の生命及び身体の安全に関わる医療機器を選定するに当たって重視 するのは,当該商品の機能であってその形態ではないことなどから,原告商品の形態\nは,自他識別機能及び出所表\示機能をおよそ備えていない旨を主張する。しかしなが\nら,医療機器であっても,その使用に当たっては商品の形態が使用感や使いやすさ, 利便性等に大きな影響を与えるのであるから,医療機関が商品を選定する際に考慮要 素になると考えられるのであり,このことは,被告が行ったアンケート結果において も,利便性(乙6の1),使いやすさ(乙6の2,3,9,乙7の2),使い勝手(乙 6の5,7,9,乙8の3),大きさ・寸法(乙6の2,6)等が挙げられていること から裏付けられている。したがって,原告商品の形態が自他識別機能及び出所表\示機 能をおよそ備えていないということはできない。\nまた,被告は,原告商品の形態は,携帯用ディスポーザブル低圧持続吸引器として の機能及び効用を発揮するために選択されたものであり,同種製品でも採用されてい\nる一般的なありふれた形態を組み合わせたものにすぎない旨を主張する。しかしなが ら,原告商品を構成する直方体の排液ボトルの形状,略立方体の吸引ボトルの本体及\nびその上部に取り付けられた球体のゴム球それぞれの形態が個々の形態としてあり ふれた形状であったとしても,原告商品の形態は,これらを組み合わせて一体化した ものであり,しかも,他の同種製品にはみられない形態であったのであるから,原告 商品の形態がありふれた形態ということはできない。
イ そして,前記認定のとおり,原告は,昭和59年から,SBバックを,その形 態を変更することなく製造し,販売しているところ,SBバックの形態は,平成30 年1月頃に被告商品が販売されるまでは,SBバック以外の製品にはみられない形態 であったこと,平成18年から平成28年までのポータブル低圧持続吸引器国内市場 におけるSBバックの販売数量は同市場において30%程度を占め,業界首位であっ たこと,原告は,SBバックの販売開始以来,平成14年頃から発行している医療機 器の総合カタログを定期的に更新し,医療機関に頒布してきたほか,少なくとも平成 10年から医療機器の展示会等にSBバックを展示するなど,医療機関に対する説明 会や個別の説明を常時実施してきたこと,SBバックの形態が多数の医療従事者向け 書籍等に掲載されてきたことなどからすれば,原告商品の形態は,2)その形態が原告 によって長期間独占的に使用されてきたことにより,少なくとも被告商品が販売され た平成30年1月頃には,原告の出所を示すものとして需要者である医療従事者に広 く認識されるに至ったということができる。 これに対し,被告は,原告商品の形態が掲載されている書籍等において,原告商品 の形態のみならず,常に原告の会社名や商品名も併せて記載されていることなどから, 原告商品の形態自体がその形態のみで出所表示機能\を発揮しているのではない旨主 張するが,上記説示のとおり,原告商品の形態は,その形態が原告によって長期間独 占的に使用されてきたことにより周知性を獲得したと認められるのであるから,個別 の表示の態様が原告商品の形態と原告の会社名や商品名とが併せて表\示されていた としても,上記認定を左右しないというべきである。
ウ さらに,前記認定のとおり,原告商品の形態は,携帯用ディスポーザブル低圧 持続吸引器に様々な形態のものが存在し,排液ボトルや吸引ボトルの形状にも様々な 選択肢がある中で,これらを組み合わせて一体的に構成されたものであるから,商品\nの形態が商品の技術的な機能及び効用を実現するために他の形態を選択する余地の\nない不可避的な構成に由来する場合には該当しないと認められる。\nこれに対し,被告は,原告商品の形態は,単に機能を発揮する観点から選択された\nにすぎず,その機能及び効用を発揮するために必然的,不可避的に採用せざるを得な\nい商品形態である旨を主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,原告商品は,創腔からの滲出液の集液量増加に 伴う吸引圧の変動が小さく,創腔に常に適切な陰圧を負荷できること,採取された滲 出液が逆流する陽圧発生の危険がなく取扱い容易であること,集液ゾーンと陰圧保持 ゾーンが分離され,集液貯留が全て剛性容器で行われるため,使用中は常に集液量測 定を精度良く簡便に行うことができるとともに,途中の吸引再セット時の排液操作が 必要なく,集液を追加できることなどの機能を有しているところ,このような機能\を 有するための構成としては,ボトルの数,形状及び透明性,目盛の形状,排液口の位\n置,大きさ,形状及び色彩,集液ポートの位置及び形状,排液ボトルと吸引ボトルの 連結態様,ゴム球の位置,大きさ,形状及び排気弁の有無等の様々な選択肢があるの であるから,被告の主張は採用できない。
(3) 以上のとおり,原告商品の形態は,少なくとも被告商品が販売された平成30 年1月頃には,不競法2条1項1号にいう商品等表示として需要者の間に広く認識さ\nれたものとなっていたと認められる。
3 争点2(原告商品の形態と被告商品の形態とは類似するか)について
(1) 不競法2条1項1号の「類似」に該当するか否かは,取引の実情の下において, 需要者又は取引者が,両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両 者を全体的に類似のものと受け取るおそれがあるか否かを基準に判断すべきである。
(2)これを本件についてみるに,前記認定のとおり,原告商品の形態と被告商品の 形態とは,外観において,主たる構成として排液ボトル及び吸引ボトルの2つのボト\nルを有している点で共通するほか,排液ボトル及び吸引ボトル自体の形状も多数の点 が共通し,その寸法もほぼ共通する。他方,排液ボトルについては,目盛や文字の色 等が相違し,吸引ボトルについては,「吸引ボトル」の文字や,社名,商品名等の文字 の色,ゴム球の色等が相違し,社名や商品名の称呼も相違する。 以上の共通点及び相違点を総合すると,外観上の共通点が極めて多数に上ることに 比して,相違点はいずれも細部の相違であり,色彩の相違も同系色での相違にすぎず, 社名や商品名の表示の相違も全体的な構\成からは一部分にとどまることからすれば 上記共通点は,上記相違点よりも需要者に強い印象を与えるものであると評価するこ とができる。したがって,原告商品の形態と被告商品の形態については,称呼が相違 するものではあるが,需要者が外観に基づく印象として,両者を全体的に類似のもの と受け取るおそれがあると認められ,不競法2条1項1号の「類似」に該当すると認 められる。
4 争点3(被告商品の製造販売は,原告商品と混同を生じさせるか)について
原告は,被告商品の形態は,原告の商品等表示である原告商品の形態に酷似するも\nのであるから,被告商品に接した需要者において,被告商品を原告商品又は原告のシ リーズ商品,原告のグループ会社の商品又は原告のライセンス商品であるとの誤認混 同が生じるおそれが高い旨を主張する。 不競法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」とは,商品又は役務について出所 が同一であると誤認させ,あるいはその営業につき主体が同一であると誤認させる場 合に限られず,他人の周知の商品等表示と同一又は類似のものを使用する者と当該他\n人との間にいわゆる親会社,子会社の関係や系列関係等の緊密な営業上の関係又は同 一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為も含\nまれると解される。 そこで,これを本件についてみるに,前記認定によれば,原告商品及び被告商品の 取引態様については,専門家である医療従事者が,医療機器の製造販売業者や販売業 者の担当者から,当該医療機器の特色,機能,使用方法等に関する説明を受けて,当\n該医療機器の購入を決め,医療機器専門の販売業者に対して当該医療機器を発注する というプロセスをたどって取引されているのであり,しかも,多くの医療機関におい ては,医療機器の使用について,医療機関が医療機器を採用するにあたっては,同種 の医療機器については,一種類のみを採用するという原則的な取扱いであるいわゆる 一増一減のルールが採用されているというのである。そして,原告商品と被告商品に は商品自体には商品名及び会社名が記載され,それぞれ別々のパンフレット(甲1, 20)が作成されて別々に販売される上,需要者である医療従事者も医療機器に関す る専門知識を有する者なのであるから,被告商品の販売行為によって需要者である医 療従事者において原告商品と被告商品の出所が同一であると誤認するおそれがある とは認められない。また,原告及び被告は,医療機器の分野において,相当程度のシ ェアを有する競合会社であり,ポータブル低圧持続吸引器国内市場における原告のシ ェアは約30ないし40%,被告のシェアは約5ないし15%である。上記の取引形 態等からすると,需要者である医療従事者において原告と被告が競合関係にあること を十分に認識している状況であり,原告商品の形態と被告商品の形態が類似している\nことのみから,原告と被告との間に親会社,子会社の関係や系列関係等の緊密な営業 上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信\nするおそれがあるとは認められない。そうすると,被告による被告商品の製造販売行 為が,不競法2条1項1号にいう「混同を生じさせる行為」に当たると認めることは できず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。

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平成29(ワ)22543  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年12月27日  東京地方裁判所

 ジェネリック・リプロダクト品について、侵害者利益を損害として認めました。商標はランプシェードの立体形状です。
 証拠(甲54,55)及び弁論の全趣旨によれば,原告が入手した中 国国内で製造された原告標章と同一又は類似した形状を有する本件模倣 品の中国国内の販売店の販売価格は約6668円(389.5人民元× 17.12円(平成28年4月25日の人民元の公表仲値))であり,そ\nの日本への輸送手数料が約3766円(220人民元×17.12円) であったと認められる。被告は,被告商品を中国から輸入,販売していること(前提事実 )から,侵害品の販売のために直接要した経費として,少なくとも,被告 商品の仕入れの際の購入費用や輸送手数料があると認められる。そして, 本件模倣品の販売価格や輸送手数料が上記の額であったこと,被告は被 告商品のことを「今までで最も精巧なリプロダクト」と宣伝しており(甲 2の3〔4枚目〕),被告商品は,一定の品質を確保し,同種の商品より も製造コストが高い商品であることがうかがわれないわけではないこと, 他方,本件模倣品の前記価格は販売店における販売価格であり,同販売 店の仕入れ価格はそれよりも低額であると推認されること,その他の諸 事情を考慮し,被告商品について,売上額から控除すべき上記経費の合 計は1台当たり1万2000円を超えることはないと認める。そうする と,被告が被告商品を販売することによって得た利益額を算定するに当 たり控除すべき経費は538万8000円(1万2000円×449個) となり,前記アの売上額の合計930万0586円から538万800 0円を控除した391万2586円が原告の損害額であると推定される。
(イ)これに対し,被告は,被告の平成28年7月1日から平成29年6月 30日までの期間における被告全体の売上高が1億8365万2099 円であること,売上原価が1億3902万6337円であること,人件 費その他の管理費が合計4459万3678円(人件費497万703 8円,荷造運賃763万3167円,インターネット経費2486万7 197円,広告宣伝費295万7335円,その他経費415万894 1円)であり,それを控除した営業利益が3万2084円であることが 記載された公認会計士作成の決算状況説明書(乙15)を提出した上で, 被告が被告商品によって得た利益は,売上高全体の被告商品の売上高の 比率(約5%)に照らし,1403円であると主張し,他に,被告製品 の利益や経費に関する具体的な金額についての証拠を提出しない。 しかし,商標法38条2項に基づく損害額の算定において侵害者の利 益を算定するに当たり,侵害品の売上額から控除すべき経費は侵害品の 販売のために直接要した変動費であると解されるところ,上記決算状況 説明書によっては,被告商品の上記変動費を認定することはできない。

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◆平成30(行ケ)10004

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平成30(行ケ)10103  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年12月20日  知的財産高等裁判所(3部)

 BlogMagaとブロマガの二段併記の登録商標について、カタカナ表記のみを使用証明として提出しましたが、登録商標と同一ではないとして、特許庁にて取り消されました。知財高裁も同様の判断をしました。FC2が商標権者、ドワンゴが取消審判請求人です。二段併記でもそれしか読めない場合は、一方の使用でも登録商標の使用と認めてもらえますが、BlogMaga=ブロマガとしか読めないとまではいえないとの判断です。
 本件商標は,前記第2の1(1)のとおり,ゴシック体風の「ブロマガ」 の片仮名とセンチュリー体風の「BlogMaga」の欧文字を上下2段 に配置した商標であり,上段と下段の間は文字の高さの半分程度の間隔が あり,上段と下段のフォントの大きさは概ね同じで,上段より下段の方が やや横幅が大きく構成されている。上段の「ブロマガ」部分からは,「ブロマガ」という称呼が生じる。また,下段の「BlogMaga」部分は,「Maga」が大文字の「M」で始まること,「dog」,「frog」のような「og」の語尾を持つ\n一般的な英語で「g」の発音を省略することはないこと,「Blog」は ウェブログの省略語として浸透している「ブログ」を想起させることから, 全体として「ブログマガ」という称呼が生じるものと認められる。そうす ると,本件商標からは,「ブロマガブログマガ」という称呼が生じるとい える。 また,「ブロマガ」及び「BlogMaga」はいずれも造語であり, 特段の観念を生じるとは認め難く,本件商標からは特段の観念を生じない。
イ 他方,本件使用商標は「ブロマガ」の文字のみからなるものであるから, 本件商標とは使用する文字の一部が共通するものの,外観,観念及び称呼 のいずれについても同一とはいえない。
ウ 以上に照らせば,本件使用商標について,本件商標の「書体のみに変更 を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の 表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外\n観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標(本件商標) と社会通念上同一と認められる商標」ということはできない。 エ また,原告は,原告のウェブサイトのURL中の「blomaga」の 文字の使用について,本件商標と「社会通念上同一の商標」の「使用」に 当たると主張するが,仮にURLにおける「blomaga」の使用が商 標法50条1項所定の「商標」の「使用」に当たるとしても,「blom aga」は本件商標と外観,観念及び称呼のいずれにおいても同一とはい えないことは本件使用商標と同様であるから,本件商標と「blomag a」の文字からなる「商標」が「社会通念上同一」であるとは認められな い。
(2) 原告の主張について
ア 原告は,欧文字の称呼については,特定の発音に固執せず,ある程度幅 のある発音を念頭に,日本における一般的な認識や連想等を含めて,総合 的に判断すべきであるとして,「HongKong」,「Ping-Pon g」,「Sign」,「Foreign」のように「g」を発音しない例 がしばしば存在する一方,「KING KONG」では「G」を発音する という風に日本で欧文字を読む際に「g」を発音する場合と発音しない場 合があること,2語からなる外来語や固有名詞等の略語の生成において各 語の冒頭の二拍ずつ取るのが基本であることから,本件商標の下段の「B logMaga」部分は「ブロマガ」の称呼を生じると主張する。 しかし,原告が指摘する「g」を発音しない例は「ng」,「gn」と いう語尾を有するから本件商標の欧文字部分には妥当しないし,造語の欧 文字である「BlogMaga」から原告主張の略語が生じるとも認めら れない。 さらに,原告は,社会一般では「BlogMaga」の表記を「ブロマ\nガ」と記載していることが多いと主張するが,原告がその立証のために提 出した証拠(甲36〜38)から,社会一般において「BlogMaga」 を「ブロマガ」と表記していることは認められない。また,上記(1)アのと おりの本件商標の構成からは「ブロマガ」が「BlogMaga」の表\音 であるとは認め難い。
イ 原告は,「BlogMaga」は,「Weblog」の略語である「B log」と雑誌を意味する「Magazine」の略語である「Maga」 が結合された造語であり,いろいろなブログを配信するサービスという観 念が生じ,「ブログ」と「マガジン」の略語が結合した「ブロマガ」から も,いろいろなブログを配信するサービスという観念が生じるから,「B logMaga」と「ブロマガ」から生じる観念は同一であると主張する。 しかし,本件商標の「ブロマガ」は4文字の造語で,同種同大のフォン トが均等の間隔で配置されていることからすれば,「ブロ」の部分を分離 して観念を想起し得るかは疑問であり,「ブロマガ」からブログとマガジ ンの略語の結合を想起するとはいえない。したがって,「BlogMag a」と「ブロマガ」がブログとマガジンの略語が結合したものとして理解 され,同一の観念を生じさせるとは認められない。

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関連事件です。同一商標権についての別の指定役務についての取消審判の取消訴訟です。

◆平成30(行ケ)10102

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平成30(ネ)10059 特許権侵害による損害賠償債務不存在確認等請求控訴事件 特許権 民事訴訟平成30年12月25日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所

 原審は,確認の利益がないとして本件訴えを却下しました。知財高裁は訴えの利益ありと判断しました。
2 争点(1)
(被控訴人が控訴人に対し,本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権を有しないことの確認を求める利益)について
(1)前提事実(引用に係る原判決第2の1(5))のとおり,被控訴人は,別件米国訴訟において,控訴人補助参加人に対し,控訴人補助参加人が本件各製品を製造販売した行為について,本件米国特許権の侵害を理由として損害賠償請求をしているものである。そして,前提事実(引用に係る原判決第2の1(3)及び(4))のとおり,本件各製品の製造のために用いられた本件各機械装置を製造し,これを控訴人補助参加人に販売したのは控訴人である。また,当審第1回口頭弁論期日において,被控訴人が,被控訴人は控訴人に対し,本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権を有する旨陳述したことは,当裁判所に顕著である。そうすると,控訴人と被控訴人との間に本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権の存否について争いがあり,控訴人は,被控訴人から,上記損害賠償請求権を行使されるおそれが現に存在するというべきである。したがって,被控訴人が控訴人に対し,本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権を有しないことの確認を求める訴えは,即時確定の利益を有する。
(2)被控訴人の主張について
ア 被控訴人は,控訴人による本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権を行使しない旨明確にしているから,上記損害賠償請求権の不存在を確認する訴えは,即時確定の利益を欠くと主張する。しかし,被控訴人が,本件訴訟の提起前に,控訴人に対し,控訴人による本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権を主張し,又はこれを行使したことはなく,さらに,原審第4回弁論準備手続期日において,被控訴人は控訴人に対し,上記損害賠償請求権を将来にわたって主張及び行使しない旨の一部和解に応じられる旨述べていたとしても,控訴人と被控訴人の間では,上記損害賠償請求権の存否については争いが存在するものである。また,被控訴人は,上記のとおり述べたとしても,これにより上記損害賠償請求権を行使しないことについて法的義務を負うに至ったものではなく,将来にわたって確実に権利行使をしないことを保証するものとはいえない。したがって,前記損害賠償請求権の不存在を確認する訴えについて即時確定の利益を欠くとの被控訴人の前記主張は,採用できない。
イ 被控訴人は,控訴人らが,別件大阪訴訟を提起したから,本件訴訟は確認の利益を欠く旨主張する。しかし,別件大阪訴訟は,控訴人らが,被控訴人に対し,被控訴人が控訴人補助参加人による本件米国特許権の侵害を理由として別件米国訴訟を提起したことについて,不法行為又は本件実施許諾契約の債務不履行に当たるとして損害賠償金の支払等を求めるものである(乙4,5)。一方,本件訴訟の争点(1)に係る部分は,控訴人が,被控訴人に対し,控訴人による本件各特許権の侵害を理由とする損害賠償請求権が存在しないことの確認を求めるものである。両訴訟の訴訟物が相違するだけではなく,審理の対象となる不法行為ないし債務不履行行為の内容も,全く異なる。よって,控訴人らが原判決後に別件大阪訴訟を提起したからといって,本件訴訟の確認の利益が失われることはなく,被控訴人の上記主張は,採用できない。
(3)以上によれば,被控訴人が控訴人に対し,本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権を有しないことの確認を求める利益は,存するというべきである。 ​
・・・
よって,被控訴人が控訴人及び控訴人補助参加人に対し,本件各特許権の侵害を 理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権を有しないことを確認するとの訴えに は,確認の利益があるから,原判決のうち,この訴えを却下した部分を取り消し, 当該部分につき本件を東京地方裁判所に差し戻すこととし,また,本件控訴のうち その余の部分は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決す る

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平成29(ネ)10086  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年12月18日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 1審は無効理由ありとして権利行使を認めませんでした(特104条の3)(口頭弁論終結H29/6/20)。この1審判決の少し前に、併存していた無効審判について請求理由なしとの審決がなされました(H29/4/18)。1審原告は、知財高裁に控訴しました。知財高裁は無効審判での証拠については、一事不再理の証拠なので、採用できないとして、技術的範囲に属するとの判断をしました。
 無効理由1は,本件無効審判請求と同じく,乙24公報に記載の主引 例と乙25〜31の1公報に記載の副引例ないし周知技術に基づいて進 歩性欠如の主張をしたものであるから,無効理由1は本件無効審判請求 と「同一の事実及び同一の証拠」に基づくものといえる。そして,本件 審決は確定したから,被控訴人は無効理由1に基づいて本件特許の特許 無効審判を請求することができない(特許法167条)。 特許法167条が同一当事者間における同一の事実及び同一の証拠に 基づく再度の無効審判請求を許さないものとした趣旨は,同一の当事者 間では紛争の一回的解決を実現させる点にあるものと解されるところ, その趣旨は,無効審判請求手続の内部においてのみ適用されるものでは ない。そうすると,侵害訴訟の被告が無効審判請求を行い,審決取消訴 訟を提起せずに無効不成立の審決を確定させた場合には,同一当事者間 の侵害訴訟において同一の事実及び同一の証拠に基づく無効理由を同法 104条の3第1項による特許無効の抗弁として主張することは,特段 の事情がない限り,訴訟上の信義則に反するものであり,民事訴訟法2 条の趣旨に照らし許されないものと解すべきである。 そして,本件において上記特段の事情があることはうかがわれないか ら,被控訴人が本件訴訟において特許無効の抗弁として無効理由1を主 張することは許されない。
イ 被控訴人は,特許法104条の3第1項の適用がないとしても,本件 特許は無効理由1により無効にされるべきものであるから,本件特許権 の行使は衡平の理念に反するし,いわゆるキルビー判決は,特許権を対 世的に無効にする手続から当事者を解放した上で衡平の理念を実現する というものであるから,控訴人が被控訴人に対し,本件特許権を行使す ることは権利の濫用として許されないと主張する。 しかし,被控訴人は,本件訴訟と同一の当事者間において特許権を対 世的に無効にすべく無効理由1に基づく無効審判請求を行い,それに対 する判断としての本件審決が当事者間で確定し,上記アのとおり,無効 理由1に基づいて特許法104条の3第1項による特許無効の抗弁を主 張することが許されないのであるから,本件において,控訴人が被控訴 人に対して本件特許権を行使することが衡平の理念に反するとはいえず, 権利の濫用であると解する余地はない。
(3) 無効理由2について
 無効理由2は,無効理由1と主引例が共通であり,本件審決にいう相違 点1A及び相違点2Aについて,「生体に印加する直流電源に太陽電池を 用いること」が周知技術である,あるいは,副引例として適用できること を補充するために,新たな証拠(乙44公報及び乙45公報)を追加した ものといえる。 本件審決は,相違点1B及び相違点2Bに係る構成の容易想到性を否定\nし,相違点1A及び相違点2Aについては判断していないのであるから, 被控訴人が相違点1A及び相違点2Aに関する新たな証拠を追加したとし ても,相違点1B及び相違点2Bに関する判断に影響するものではない。 そうすると,無効理由2は,新たな証拠(乙44公報及び乙45公報)が 追加されたものであるものの,相違点1B及び相違点2Bの容易想到性に 関する被控訴人の主張を排斥した本件審決の判断に対し,その判断を蒸し 返す趣旨のものにほかならず,実質的に「同一の事実及び同一の証拠」に 基づく無効主張であるというべきである。したがって,本件審決が確定し た以上,被控訴人は無効理由2に基づく特許無効審判を請求することがで きない。 そうすると,無効理由2についても上記(2)アにおいて説示したところ が妥当するから,被控訴人が本件訴訟において無効理由2に基づき特許無 効の抗弁を主張することは許されないものというべきである。

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1審はこちら。

◆平成28(ワ)4167

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平成30(行ケ)10057  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年12月18日  知的財産高等裁判所

 無効審判の取消訴訟の請求が却下されました。原告は無効審判で無効理由ありとされた特許権者で、被告は共同で無効審判を請求した一部の請求人です。原告は代理人無しの本人訴訟です。
1 訴えの利益について
(1) 本件審決に係る別紙審決書(写し)の記載及び弁論の全趣旨によれば,本件 審決は,被告及び訴外会社が共同審判請求人となり,原告らを被請求人として請求 された特許無効審判事件に係るものである。また,本件において,原告らは,被告 のみを相手方とし,訴外会社については被告としていないことは,当裁判所に顕著 な事実である。なお,訴外会社との関係では,本件審決の送達日である平成30年 3月29日から30日の出訴期間を既に経過している。 そうすると,本件審決(無効審決)は,訴外会社との関係においては,原告らが 訴外会社に対する審決取消訴訟を提起することのないまま出訴期間を経過したこと により,既に確定したこととなる。その結果,本件特許の特許権は初めから存在し なかったものとみなされるから(特許法125条本文),本件訴えは,訴えの利益 を欠く不適法なものとして却下されるべきである。
(2)原告ら及び被告の主張について
ア これに対し,原告らは,特許無効審判の請求人が複数いたとしても,審決取 消訴訟の提起により対象となる審決の確定は遮断されるから,請求人全てをその被 告とする必要はないなどと主張する。 そこで,共同で特許無効審判が請求され,無効審決がされたのに対し,被請求人 が共同審判請求人の一部の者のみを被告として審決取消訴訟を提起した場合の規律 について検討する。 同一の特許権について特許無効審判を請求する者が二人以上あるときは,これら の者は,共同して審判を請求することができる(特許法132条1項)。これは, 本来,各請求人は,単独で特許無効審判請求をし得るところ,同一の目的を達成す るためにこのような共同での審判請求を行い得ることとし,審判手続及び判断の統 一を図ったものである。もっとも,この場合の審決を不服として提起される審決取 消訴訟につき固有必要的共同訴訟であるとする規定はなく,審決の合一的確定を図 るとする規定もない。 また,同一特許について複数人が同時期に特許無効審判請求をしようとする場合 の特許無効審判手続の態様としては,1)上記の共同審判請求の場合のほか,2)別個 独立に請求された審判手続が併合された場合(同法154条1項),3)別個独立に 請求された審判手続が併合されないまま進行する場合の3つが考えられる。しかる ところ,まず,上記3)の場合において無効審決がされたときは,その取消訴訟をも って必要的共同訴訟と解する余地がないことに鑑みると,事実及び証拠が同一であ るか異なるかに関わりなく,複数の特許無効審判請求につき,請求不成立審決と無 効審決とがいずれも確定するという事態は,特許法上当然想定されているものとい うことができる。また,別個独立に請求された審判手続がたまたま併合された上記 2)の場合において無効審決がされたときも,上記3)の場合と取扱いを異にすべき合 理的理由はない。そうすると,上記1)の場合に,被請求人である特許権者の共同審 判請求人に対する対応が異なった結果として上記と同様の事態が生じることも,特 許法上想定されないこととはいえない。1)及び2)の場合にされた請求不成立審決に 対し,その請求人の一部のみが提起した審決取消訴訟がなお適法とされる(最高裁 平成7年(行ツ)第105号同12年1月27日第一小法廷判決・民集54巻1号 69頁,最高裁平成8年(行ツ)第185号同12年2月18日第二小法廷判決・ 判例時報1703号159頁参照)のも,このためと解される。 このように,共同審判請求に対する審決につき合一的確定を図ることは,法文上 の根拠がなく,その必然性も認められないことに鑑みると,その請求人の一部のみ を被告として審決取消訴訟を提起した場合に,被告とされなかった請求人との関係 で審決の確定が妨げられることもないと解される。
イ なお,この点について,被告は,本案前の答弁として,複数の審判請求人が いる場合の無効審決に対する審決取消訴訟は固有必要的共同訴訟であり,被告のみ を相手方として提起した原告らの本件訴えは不適法であるなどと主張する。 しかし,前記のとおり,共同審判請求に対する審決につき合一的確定を図ること は法文上の根拠がなく,その必然性も認められないことから,当該審決に対する取 消訴訟をもって固有必要的共同訴訟ということはできない。
ウ そうすると,共同での特許無効審判請求に対し無効審決がされたところ,被 請求人である特許権者が,共同審判請求人の一部のみを被告として当該審決の取消 訴訟を提起したにとどまり,被告とされなかった共同審判請求人との関係で出訴期 間を経過した場合には,同人との関係で当該無効審決が確定し,当該特許権は対世 的に遡って無効となることから,上記審決取消訴訟は,訴えの利益を欠く不適法な ものとして却下されるべきこととなる。

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平成30(行ケ)1008 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年12月20日  知的財産高等裁判所

 商品と小売サービスが類似するとした審決が維持されました。
 本願商標の指定商品は,第9類「電子出版物」及び第16類「雑誌,書 籍」(本願指定商品)を含むところ,近年,「従来は本や雑誌の形で提供 されていた情報を,デジタル化したソフトの形で,あるいはパソ\コン,タ ブレット端末,スマートホン,電子書籍リーダーなどを使ってアクセスで きる形で提供する出版」である電子出版が盛んになり,現に,紙に印刷さ れた商品「印刷物」の一種である「雑誌」や「書籍」の内容(コンテンツ) が,電子化された「電子出版物」として需要者へ広く配信(販売)される など,両者は相互に密接な関連性を有している。 そして,本願指定商品はいずれも,主に書籍や雑誌,電子出版物などの 出版を行う事業所である出版社により制作,販売される商品であり,多岐 にわたる年代層の個人から各種教育機関等の幅広い需要者に対して,書店 又はオンライン書店を通じて販売されている。 イ 引用商標の指定役務中,第35類「印刷物の小売又は卸売の業務におい て行われる顧客に対する便益の提供」(以下,この役務中,小売と関連す る役務を「引用小売役務」という。)は,雑誌や書籍等の印刷物及び印刷 物と密接な関連性を有する電子出版物を取り扱う小売又は卸売の業務にお いて行われる顧客に対する便益の提供である。 そして,引用小売役務は,主に書籍や雑誌,電子出版物を小売する書店 により提供される役務であり,多岐にわたる年代層の個人から各種教育機 関等の幅広い需要者に対して,主として書店又はオンライン書店において 提供される。
(3) 本願指定商品と引用小売役務との関連性について
本願指定商品と引用小売役務は,いずれも電子出版物又は印刷物を取り扱 う商品又は役務であるところ,その商品の販売場所及び役務の提供場所が一 致し(書店又はオンライン書店),需要者の範囲も一致(幅広い需要者層) する。 さらに,本願指定商品と引用小売役務は,主に出版社又は書店により製造, 販売又は提供されているとはいえ,同一営業主により製造,販売又は提供さ れている実情があり,いわゆる出版社が自己又はそのグループ会社が運営す るウェブサイト又は店舗において,電子出版物,書籍又は雑誌を販売(小売) している事例に加え,書店として小売事業を展開する事業者が,書籍や雑誌 の制作,出版をする事例も複数挙げることができる(乙8〜20)。
(4) 以上のとおり,本願指定商品と引用小売役務は,その商品の販売場所及び 役務の提供場所,並びに需要者の範囲が一致するため,相互に密接な関連性 を有する。さらに,これらは同一の営業主によって製造,販売又は提供され ている実情がある。このような取引の実情を踏まえると,これら商品及び役 務に同一又は類似の商標を使用するときは,同一営業主の製造,販売又は提 供に係る商品又は役務と誤認混同を生じるおそれがあるというべきである。 したがって,本願指定商品は引用小売役務と類似する。

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平成29(ワ)18184  特許権侵害行為差止請求  特許権  民事訴訟 平成30年12月21日  東京地方裁判所

 東京地裁40部は、補正によって追加された事項を充足しない被疑侵害品について、均等を認めました。
 第5要件に関し,被告は,構成要件Eは本件補正によって追加されたも\nのであるところ,本件拒絶理由通知に対する本件意見書における「本発明 25 は,2組の揺動部材を備える点,および,揺動部材の一方に,他方に係合 する係合部を備える点において,引用文献1に記載された発明…と相違し ています。」との記載によれば,原告は,被告製品のように係合部を別部 材とする構成を特許発明の対象から意識的に除外したと理解することが\nできるから,均等侵害は成立しないと主張する。
しかし,本件意見書には,「引用文献1には,端部が回転可能に連結さ\nれることにより開閉可能に5 設けられた一対のジョーを備えた開創器アセ ンブリが開示されています。」,「このような構成(判決注:本件発明に\n係る構成)によれば,2組の揺動部材を同時に開かせることにより,骨に\n形成した切り込みの拡大作業を容易にし,また,切り込みの切断面に局所 的に過大な押圧力が作用することを防ぐことができる」,「2つの開創器 アセンブリを単に着脱可能に組み合わせただけでは本発明の構\成を導く ことはできません。」「引用発明1には,切り込みの切断面に作用する押 圧力を低減するという課題,および,2つの開創器アセンブリを一体で開 動作させるという係合部の作用に対する示唆がありません」などの記載が ある。
上記記載によれば,本件意見書の主旨は,特許庁審査官に対し,引用例 1が一対の揺動部材を開示していることを指摘し,それに対し,本件発明 は,開閉可能な2対の揺動部材を組み合わせ,一方の揺動部材を他方の揺\n動部材に係合するための係合部を設けることにより,両揺動部材が同時に 開くことを可能にするものであることを説明する点にあるというべきで\nある。そして,同意見書には,係合部の構成,すなわち,係合部を揺動部\n材の一部として構成するか,揺動部材とは別の部材により構\成をするかを 意識又は示唆する記載は存在しない。
そうすると,被告の指摘する「2組の揺動部材を備える点,および,揺 動部材の一方に,他方に係合する係合部を備える」との記載は,上記説明 の文脈において本件発明の構成を説明したものにすぎないというべきで\nあり,同記載をもって,同意見書の提出と同時にされた本件補正により構\n成要件Eが追加された際に,原告が,係合部を揺動部材とは別の部材とす る構成を特許請求の範囲から意識的に除外したと認めることはできない。\n

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平成30(行ケ)10101  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年12月19日  知的財産高等裁判所

 ブリジストンがカンパニョロの「POTENZA」に不使用取消審判を請求しました。審決は使用を認めました。裁判所も審決維持です。
カンパニョロの指定商品は、第12類「競技用自転車の部品及び付属品・・・」です。問題の商標は、判決文の最後にあります。原告は、「POTENZA」と同一の標章について,第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」を指定商品とする防護標章登録を受けていました。カンパニョロの登録に対して、異議申し立てをしましたが、当該指定商品については、類似しないとして登録されていました。\n
イ 本件使用商品の柄の部品(クランク)の中央には,横長の白塗りの平行 四辺形内に黒色のデザイン化された文字で表された「POTENZA」の\n欧文字と,「POTENZA」の欧文字の4文字目の「E」が表された箇\n所の背後に重なるように交差する縦長の白塗りの平行四辺形内に黒色で表\nされた「11」の数字とからなる,別紙記載の本件使用商標(甲14の1, 15,16)が付されている。 しかるところ,「POTENZA」の欧文字部分は,横長の白塗りの平 行四辺形内に横書きで表されているのに対し,「11」の数字部分は,縦\n長の白塗りの平行四辺形内に縦書きで表示されていること,「11」の数\n字部分は,上に重なった「POTENZA」の欧文字部分を表する横長の\n平行四辺形によって中央で上下に分断され,数字の一部が隠されているの に対し,「POTENZA」の欧文字部分は,分断された「11」の数字 部分の前面に表されていることからすると,「POTENZA」の欧文字\n部分は,他の構成要素と分離して観察することが取引上不自然と思われる\nほど不可分的に結合しているとはいえない。 そして,「POTENZA」の欧文字部分は,「11」の数字部分の前 面の目につきやすい位置にまとまりよく配置されており,本件使用商標全 体から「ポテンザ」あるいは「ポテンツァ」の称呼が自然に生じることか らすると,「POTENZA」の欧文字部分は,その部分のみから自他商 品識別標識としての機能を発揮しているものと認められる。\n一方で,「11」の数字部分は,上記のとおり,中央で上下に分断され, 数字の一部が隠されており,注視しなければ,数字の「11」と判読でき ないことに照らすと,「11」の数字部分の自他商品識別標識としての機 能は,「POTENZA」の欧文字部分よりも,明らかに低いものと認め\nられる。また,「POTENZA」の欧文字部分が表されている横長の白\n塗りの平行四辺形は,ありふれた形状であって,黒と白のコントラストに より,「POTENZA」の欧文字部分を構成する黒色の7文字を目立つ\nように表示するための背景図形であると認識されるから,それ自体に自他\n商品識別標識としての機能があるものとはいえない。\nそして,本件使用商標の「POTENZA」の欧文字部分と本件商標と を対比すると,「POTENZA」の欧文字部分は,標準文字の本件商標 と字体の違いがあるが,構成する文字は同一であり,その字体の違いも特\nに目立ったものではないこと,両者の称呼は同一であることからすると, 本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であるものと認められ る。
(2) これに対し原告は,1)本件使用商標は,2種の略平行四辺形を前後に重ね て,それぞれの中に「POTENZA」と「11」を配置した,統一感のあ るスタイリッシュなロゴデザインであること,本件使用商標の「11」を含 む部分は,被告の自転車用ギアクランクにおいて11速を暗示させる識別標 識として機能していること,「POTENZA」の部分は,特段特徴的な態\n様で表されているとはいえず,他に比して目立っているような事情もないこ\nとからすると,本件使用商標は,「POTENZA」,「11」,略平行四 辺形の図形等の各構成要素が一体として結合した態様によって識別性が発揮\nされており,本件使用商標から「POTENZA」の部分だけを分離抽出す ることはできない,2)本件使用商品に付された本件使用商標の隣には,「P OTENZA」の部分と同じデザインで,横長の白塗りの「CAMPAGN OLO」の欧文字が表された平行四辺形が配されており,これに接した需要\n者,取引者は,本件使用商標と「CAMPAGNOLO」の欧文字が表され\nた平行四辺形の態様を含めた全体を使用商標と認識することもあるとして, 本件使用商標は,「POTENZA」の標準文字からなる本件商標とは明ら かに異なり,本件商標と社会通念上同一とはいえない旨主張する。 しかしながら,上記1)の点については,前記(1)イ認定のとおり,本件使用 商標の「POTENZA」の欧文字部分は,他の構成要素と分離して観察す\nることが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえず, 「POTENZA」の欧文字部分のみから自他商品識別標識としての機能を\n発揮しているものと認められる。また,原告が述べるように「11」の数字 が,被告の自転車用ギアクランクにおいて11速を暗示させるものであった としても,前記(1)イ認定のとおり,「11」の数字部分は,中央で上下に分 断され,数字の一部が隠されており,注視しなければ,数字の「11」と判 読できないことに照らすと,「11」の数字部分が11速を暗示させる識別 標識として機能しているものと直ちにはいえない。\n
次に,上記2)の点については,本件使用商品の柄の部品(クランク)には, 「POTENZA」の欧文字が表された平行四辺形の右隣に「CAMPAG\nNOLO」の欧文字が表された平行四辺形が付されているが(甲14の1,\n15,16),二つの平行四辺形の間には,スペースがあり,それぞれの平 行四辺形内の「POTENZA」の欧文字部分と「CAMPAGNOLO」 の欧文字部分とは,明瞭に区別される態様で示されている。加えて,前記1 の認定事実によれば,本件商標の指定商品の需要者である自転車競技や競技 用自転車に関心のある者の間では,被告は,競技用自転車の部品メーカーと して広く知られていたものと認められることに照らすと,本件使用商品に接 した需要者は,「CAMPAGNOLO」の欧文字は,被告の名称を外国語 表記したものとして,それ自体を独立の商標として認識するものと認められ\nるから,本件使用商標と「CAMPAGNOLO」の欧文字が表された平行\n四辺形の態様を含めた全体がひとまとまりの商標として認識されるというこ とはできない。
・・・・
3 本件使用商品の本件商標の指定商品該当性について
(1) 前記1の認定事実によれば,本件使用商品は,競技用自転車の部品メーカ ーである被告が製造,販売する自転車用ギアクランク(クランクセット)で あること,本件使用商品について,「新ラインナップに加わったポテンツァ 11は,スーパーレコードに採用されているエンブレイステクノロジーをは じめとした,トップグレードの性能とデザインを継承した機械式アルミグル\nープセット」,「ハードな変速ラインにも対応するレーシングパーツ」など と雑誌(甲15)に紹介されていることが認められる。 上記認定事実によれば,本件使用商品は,自転車競技に使用される自転車 のギアクランクとして用いることができるものと認められる。 そして,本件商標の指定商品「競技用自転車の部品及び付属品(自転車の フレーム・タイヤ・チューブ・車輪・リム・スポークを除く。)」にいう「競 技用自転車」の用語について,「競技」の具体的なレベルを特に限定する記 載はないこと,自転車競技は,プロのロードレーサーなどが参加する世界的 な競技のほかに,趣味として競技を行っている者を含め,様々なレベルの者 が参加できる競技が行われていることは一般に知られていることに照らすと, 自転車競技に使用される自転車に用いることができる部品であれば,本件商 標の指定商品にいう「競技用自転車の部品」に含まれるものと認められる。 そうすると,本件使用商品は,本件商標の指定商品に該当するものと認め られる。
(2) これに対し原告は,1)原告は,原告の著名な登録商標である「POTEN ZA」と同一の標章について,第12類「二輪自動車・自転車並びにそれら の部品及び附属品」を指定商品とする防護標章登録を受けていること,特許 庁は,別件異議申立事件について,「競技用自転車は,競技用としてその用\n途が限られ,かつ,専門性の高い商品」であると認定した上で,本件商標の 商標登録時の指定商品の一部を取り消す旨の別件異議決定をしたことなどの 事情を勘案すると,本件商標の指定商品は,競技専用又はそれに近い商品を 意図するものといえるから,「競技用としてその用途が限られ,かつ,専門 性の高い商品」と理解すべきである,2)被告の最上位機種の「SUPERR ECORD」と本件使用商品とでは,商品の性能が格段に異なり,その用途\n及び需要者の範囲も異なる上,本件使用商品の需要者は一般の自転車愛好家 であることからすると,本件使用商品は,「競技用としてその用途が限られ, かつ,専門性の高い商品」とはいえないとして,本件使用商品は,本件商標 の指定商品に該当しない旨主張する。 しかしながら,上記1)の点については,別件異議決定(甲30)の理由中 に,「被請求人の主張及び職権による調査によれば,競技用自転車は,競技 用としてその用途が限られ,かつ,専門性の高い商品であることから,一般 用自転車に比して高額であり,需要者の範囲も限られ,かつ,販売場所も専 門店やウェブサイトにおける注文販売などが一般的であることが認められる から,需要者が,自己の自転車に装着する商品を申立人又はブリヂストンサ\nイクルの商品であると誤認混同することは考えがたいというのが相当であ る。」との記載部分(6頁)があるが,この記載部分は,一般用自転車と対 比する意味で,「競技用自転車は,競技用としてその用途が限られ,かつ, 専門性の高い商品」であることを示したものにすぎず,自転車競技の具体的 なレベルや商品の具体的な性能についてまで述べたものではないから,本件\n商標の指定商品にいう「競技用自転車」の用語を特定のレベルの競技に限定 する根拠とはならない。また,原告がその登録商標である「POTENZA」 と同一の標章について上記防護標章登録を受けたのは平成24年4月27日 (甲23)であって,別件異議決定日(平成23年10月3日)よりも後で あるから,原告が防護標章登録を受けたことは,別件異議決定の認定及び判 断に影響を及ぼしたものとは認められない。
次に,上記2)の点については,本件使用商品が,被告の最上位機種の「S UPERRECORD」ではなく,ミドルクラスの機種であるからといって, 本件商標の指定商品にいう「競技用自転車の部品」に該当しないということ はできない。

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平成30(行ケ)10067  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年12月10日  知的財産高等裁判所

 ラルフ社の商品との出所混同が生ずるかが争われました。本件商標は「POLO」です。裁判所は、15号違反とした拒絶審決を維持しました。
(4) 混同の有無
 ア 後掲証拠によると,以下の事実が認められる。
(ア) 株式会社高石洋服店のウェブサイトでは,「非常に残念なことですが,多くの方がデパートの主力ブランドのpolo ralph laurenの偽物だと認識しているようです。ブランド名,ロゴマークは似ておりますが,実際は全く別のライセンスをキッチリ取得して生産されたブランドになります。」との記載とともに,原告製の衣服の写真を掲載し,同衣服の広告をしている(乙69の1)。
・・・
「Rakutenラクマ」のウェブサイトの「ポロベビー」という題 名の出品ページに,「ブランド」として「POLO RALPH LAUREN」と 記載された商品が出品され,同商品の写真には,原告使用商標と類似した商標が付 されている(乙74の1)。
イ 前記アの事実によると,原告製の衣服をラルフ社製の衣服と誤認して, その中古品をウェブサイトに出品している事例が少なからずあり,また,原告製の 衣服をラルフ社製の衣服と誤認して購入したり,原告製の衣服をラルフ社製の衣服 と誤認してウェブサイトで紹介したりする事例もあることが認められる。 さらに,原告製の衣服を販売している会社が,その広告において,わざわざ,多 くの人は,原告製の衣服はラルフ社製の偽物であると認識しているようであるが, 実際は,ラルフ社製の偽物ではなく,別のライセンスを取得している旨説明してい る。 以上の事実からすると,多くの者が,原告製の商品をラルフ社製の商品と誤解し て購入等しているものと推認される。 したがって,原告使用商標又は,それに似た商標を付している商品とラルフ社製 の商品との間に,現実に出所の混同が生じていることは明らかであるから,本願商 標についても出所の混同が生じるものと認められる。
ウ 原告の主張について (ア) 原告は,前記アで認定したメルカリへの出品について,買い手を意図 的に誤認させる悪意の出品である旨の主張をしているが,原告の主張は,前記アで 認定した各出品者が詐欺行為をしたことについての具体的な裏付けを伴うものでは\nなく,憶測にすぎないことから,採用できない。また,原告は,メルカリにおいて は,ブランドタグの選択肢に「ラルフローレン」しかない旨の主張をするが,そう であるとしても,前記イ記載の誤認混同が生じていることの理由とは認め難い。
(イ) 原告は,ヤフオクにおいては,原告製の商品とラルフ社製の商品との 間に混同が生じた事例はなく,また,業者と一般消費者間の取引においては,原告 製の商品とラルフ社製の商品との間に混同は生じていないと主張し,その証拠とし て,甲47,甲53の1〜8を提出するが,同証拠から直ちに,原告の上記主張事 実を認めることはできず,前記イの認定を左右するに足りるものではない。
(ウ) 原告は,甲40の1、3から,消費者が,原告製の商品をラルフ社製 の商品と区別して購入する事実がある旨主張する。 しかし,甲40の1の記事は,写真に掲載した原告製の商品がラルフ社製の商品 ではないことを注意喚起するものであり,甲40の3の記事は,一見したところラ ルフ社製の商品であると思ったが,よく確認すると,原告製の商品であることが分 かったというものであるから,原告製の商品をラルフ社製の商品と誤認する可能性\nが高いことを示すものである。したがって,上記記載は,原告製の商品とラルフ社 製の商品との間に混同が生じやすいことを裏付けるものといえる。
(5)以上からすると,引用商標の独創性の程度が造語による商標に比して低い ことを考慮しても,本願商標をその指定商品に使用した場合,当該商品がラルフ社 の業務に係る商品であると誤信され,出所の混同を生ずるおそれがあることは明ら かである。

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平成29(ワ)28884  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年11月28日  東京地方裁判所

 特許権侵害事件です。敗血症を検出するための方法の技術的範囲には属しないと判断されました。争点は、「プロカルシトニン3−116を測定する」との用語の意義でした。
(1)「プロカルシトニン3−116を測定すること」の意義
ア 構成要件Aは「患者の血清中でプロカルシトニン3−116を測定すること\nを含む」というものであるところ,一般に,「測定」に,長さ,重さ,速さといっ た種々の量を器具や装置を用いてはかるという字義があることからすると,「プロ カルシトニン3−116を測定すること」は,プロカルシトニン3−116の濃度 等の量を明らかにすることを意味すると解するのが文言上自然である。 また,前記1(2)認定のとおり,本件発明は,敗血症等の患者の血清中に比較的高 濃度で検出可能なプロカルシトニンがプロカルシトニン1−116ではなく,プロ\nカルシトニン3−116であることが確認されたことを踏まえて新規な敗血症等の 検出方法を提供することを目的とするものであり,このような本件発明の目的に照 らせば,本件発明は,患者の血清中においてプロカルシトニン3−116が比較的 高濃度で検出されるか否かを見ることを可能とすることが求められているというこ\nとができる。 以上から,構成要件Aの「プロカルシトニン3−116を測定すること」は,プ\nロカルシトニン3−116の濃度等の量を明らかにすることを意味すると解するの が相当である。
イ この点につき,原告は,「プロカルシトニン3−116を測定すること」は, プロカルシトニン3−116を敗血症等の検出に必要な精度で測定ないし検出する ことができれば,プロカルシトニン3−116だけを特異的,選択的に測定するこ とに限られず,プロカルシトニン3−116とプロカルシトニン1−116及びそ の他のプロカルシトニン由来の部分ペプチドとを区別することなく測定することも 含むと主張しており,その意味するところは明確でないが,血清中のプロカルシト ニン3−116を検出しさえすれば足りるものである旨の主張であるとすれば,そ れはプロカルシトニン3−116の存在を明らかにすることで足り,その量を明ら かにすることは必要ではないことをいうものであって,前記アでみた「測定」の文 言の解釈に反するものであり,採用することができない。 また,血清中のプロカルシトニン3−116とプロカルシトニン1−116等と を区別することなく測定することがプロカルシトニン3−116を測定することに 該当すると主張するものであると解しても,そのような測定方法では,血清中にプ ロカルシトニン3−116が存在するかも明らかにならず,もとより,血清中のプ ロカルシトニン3−116の量も確認できないから,これを「プロカルシトニン3 −116を測定すること」に該当するというのは文言上困難である。
(2)被告方法
前記第2の2(5)ア認定のとおり,被告装置及び被告キットを使用すると,患者の 検体中において,プロカルシトニン3−116とプロカルシトニン1−116とを 区別することなく,いずれをも含み得るプロカルシトニンの濃度を測定することが でき,その測定結果に基づき敗血症の鑑別診断等が行われていると認められるもの の,本件全証拠によっても,被告装置及び被告キットを使用して敗血症等を検出す る過程で,プロカルシトニン3−116の量が明らかにされているとは認められず, 更にいえば,プロカルシトニン3−116の存在自体も明らかになっているとはい えない。 したがって,被告方法は,構成要件Aの「プロカルシトニン3−116を測定す\nる」を充足するとはいえない。

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平成30(ワ)3018  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年11月29日  東京地方裁判所(46部)

 美容器について、特許権に基づく差止が認められました。争点は、「前記各支持軸の基端側をホルダの両端部で押さえる」の技術的意義の解釈です。
 本件発明は,前記1のとおり,「ホルダ」に該当する部材によって回転体を支 持する支持軸を固定するものであるところ,原告は,被告製品のソーラーパネ\nル取付台が支持軸を固定していると主張するのに対し,被告はこれを否定する。 証拠(甲10,14)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品は,回転体の支 持軸の本体側先端部分にフランジが形成されていること,被告製品の本体内部 のソーラーパネル取付台の支持軸側先端部分には一対の段差及び半円形状の\n凹部が形成され,それらは回転体の支持軸及び支持軸に形成されたフランジの 形状に係合すること,ソーラーパネル取付台の先端部で回転体の支持軸を覆っ\nてソーラーパネル取付台を被告製品本体にネジで固定するとソ\ーラーパネル 取付台に支持軸のフランジが引っかかり,支持軸の先端部分がソーラーパネル\n取付台の段差及び半円形状の凹部に組み付けられること,その組付け後は回転 体を支持する支持軸に接着剤の塗布などはなかった被告製品においても支持 軸が本体から直ちには外れることがなかったことが認められる。これらによれ ば,被告製品のソーラーパネル取付台の先端部分の段差及び半円形状の凹部は,\n回転体の支持軸を固定するための構成であり,同部分が回転体の支持軸を覆い,\n支持軸を押し付けることによって支持軸を固定し,支持軸が抜けないようにし ていると認められる。
そうすると,被告製品のソーラーパネル取付台は構\成要件B及び構成要件C\nの「ホルダ」に該当し,被告製品は構成要件Bの「前記各支持軸の基端側をホ\nルダの両端部で押さえる」及び構成要件Cの「ホルダ」を充足するといえる。\nこれに対し,被告は,ソーラーパネル取付台の半円形状の凹部はリード線の\nハンダ付け部分をカバーするためのものであり,ソーラーパネル取付台をかぶ\nせただけでは支持軸は固定されず,支持軸を接着剤で被告製品本体内部に接着 固定しなければ,支持軸は簡単に抜けることからもソーラーパネル取付台は支\n持軸を固定する機能を有していないなどと主張する。\nしかしながら,ソーラーパネル取付台の段差及び半円形状の凹部の形状は,\n回転体の支持軸に係合する形状に形成されていて,リード線のハンダ付け部分 をカバーするために形成されていると認めるに足りる証拠はない。また,回転 体の支持軸を固定するために接着剤が塗布されている被告製品があるとして も,その塗布がされたことをもってソーラーパネル取付台が回転体の支持軸を\n固定する機能を有していることが直ちに否定されるものではなく,前記のとお\nりのソーラーパネル取付台の先端部の構\造,接着剤の塗布がなかった場合の回 転体の支持軸の被告製品本体からの着脱の状況等からすれば,ソーラーパネル\n取付台は回転体の支持軸を固定する機能を有しているということができ,被告\nの主張は採用することができない。

3 争点 −ア(乙11文献に基づく新規性欠如)
争点を検討するに当たり,まず,本件発明の「前記各支持軸の基端側をホル ダの両端部で押さえる」(構成要件B)の意義について検討する。\nア 「押さえる」とは,物に力を加えて,動かないように固定するという意味 を一般的に有する(乙3の1ないし3)。 そして,本件明細書には,前記1 アないしオの記載のほか,「発明を実施 するための形態」として,「図4及び図5に示すように,前記ベース体13の 両支持筒18には,金属製の一対の支持軸20がシールリング21を介して, 交差軸線L1,L2上に位置するとともに外側に突出した状態で嵌合支持さ れている。このシールリング21は,支持軸20の周りからハンドル12の 内部へ向かう水の侵入を防止している。各支持軸20の基端には,大径状の 抜け止め頭部20aが形成されている。図4及び図9に示すように,両支持 軸20の基端部間においてベース体13上には,ホルダ22が配置されてい る。このホルダ22の両端部には,各支持軸20の基端側を押さえるための ほぼ半円筒状の押さえ部22aが形成されている。ホルダ22の中間部には, 円筒状のネジ止め部22bが形成されている。そして,ホルダ22の両端の 押さえ部22aにより両支持軸20の基端が押さえられた状態で,ホルダ2 2の中間のネジ止め部22bがネジ23によりベース体13に固定される ことによって,各支持軸20がベース体13の支持筒18に対する嵌合支持 状態に抜け止め固定されている。すなわち,支持軸20の組み付け時には, ハンドル12のベース体13に形成された一対の支持筒18に外側(図4の 左側)から支持軸20をそれぞれ嵌挿して,交差軸線L1,L2上に位置す るように配置する。次に,図5及び図9に示すように,両支持軸20の基端 間におけるベース体13上にホルダ22を配置し,そのホルダ22の両端の 押さえ部22aにより両支持軸20の基端側を押さえる。これにより,図4 及び図9に示すように,各支持軸20の基端の抜け止め頭部20aが押さえ 部22aの端縁に係合される。この状態で,ホルダ22の中間のネジ止め部 22bをネジ23によりベース体13に固定すると,一対の支持軸20がベ ース体13に対して同時に抜け止め固定される。」(段落【0013】),「従っ て,この実施形態によれば,以下のような効果を得ることができる。(1)こ の美容器においては,ハンドル12の先端部に交差軸線L1,L2上に位置 する一対の支持軸20が設けられている。各支持軸20の先端側には回転体 27が回転可能に支持され,それらの回転体27により身体に対して美容的\n作用が付与されるようになっている。前記ハンドル12における両支持軸2 0の基端部間の位置には,ホルダ22がその中間部において固定されている。 そして,このホルダ22の両端の押さえ部22aにより,各支持軸20の基 端側がハンドル12に対して押し付け保持されるようになっている。このた め,1つのホルダ22からなる簡単な固定構成により,一対の支持軸20を\nハンドル12に対して容易に固定することができて,製造コストの低減を図 ることができる。」(段落【0019】)との記載がある。
上記のとおり,本件明細書の段落【0013】,【0019】には,ホルダ の両端部に各支持軸の基端側を押さえるためのほぼ半円筒状の押さえ部が 形成され,この押さえ部が支持軸の基端に接し,それをハンドルに押し付け ることによって支持軸を保持し,支持軸が抜けることがないように固定する という実施形態が記載されており,これは,前記のとおりの「押さえる」の 一般的な意味とも整合する。 そうすると,本件発明の「前記各支持軸の基端側をホルダの両端部で押さ える」とは,支持軸の基端部をホルダの両端部に接するようにし,ホルダの 両端部から支持軸の基端部に対して押し付けること,すなわち力を加えるこ とによって,支持軸を抜けることがないように固定することを意味するもの と解するのが相当である。
イ これに対し,被告は,本件明細書の【図4】や段落【0013】の記載か ら,「押さえる」とは,支持軸の基端に設けられた抜け止め頭部や押さえ部, その他支持筒等の部材との勘合・係合によって固定される構成を包含するも\nのであると主張する。 しかし,本件明細書の段落【0013】の記載は前記アのとおりであり, ホルダが支持軸に力を加えずに,部材の勘合・係合のみによって固定する態 様が記載されているとはいえず,本件明細書のその他の記載中にも被告の主 張するような固定態様に関する記載はない。また,本件明細書の【図4】か らもそのような固定態様を看取することはできない。被告の主張は,「押さ える」の一般的な意味と一致するものでは必ずしもなく,かつ,本件明細書 にその主張を裏付ける記載はないといえるのであり,採用することができな い。
(2)。乙11発明と本件発明の対比
ア 本件特許の出願日前に公開されていた乙11文献には,1)ハンドルの先端 部に交差軸上に位置する一対の支持軸が設けられていること(乙11文献の 【図6】〜【図8】),2)腕部の先端側にマッサージを行うためのローラが回 転可能に支持されていること(乙11文献の段落【0001】【0013】),\n3)ローラ取付部材の左右両端部にそれぞれ腕部を含むローラ連結部の一端 を回転軸により軸支固定すること及び当該回転軸をローラ取付部材の穴に 挿通してEリングによって抜け止めすること(乙11文献の段落【0008】 〜【0010】),4)ローラ取付部材の中間部をローラ連結部を介してハンド ルに固定すること(乙11文献の段落【0008】【図1】【図2】),5)以上 の構成を有する美容器である乙11発明が開示されていることは当事者間\nで争いはない。 そこで,本件発明と乙11発明を対比すると,本件発明は,支持軸の基端 部をホルダの両端部で力を加えて支持軸を抜けないように固定する構成で\nあるのに対し(構成要件B),乙11発明の支持軸の固定方法はそのような\n構成を有していない点で相違する。
イ 被告は,本件発明の構成要件Bの「押さえる」とは支持軸の基端に設けら\nれた抜け止め頭部や押さえ部,その他支持筒等の部材との勘合・係合によっ て固定される構成を包含するものであることを前提として,本件発明の構\成 要件Bと乙11発明の構成3)とが同一であると主張する。 しかし,構成要件Bの「押さえる」に関する被告の主張を採用することが\nできないことは とおりであり,乙11発明の構成3)が本件発明の構\n成要件Bと同じであるということはできない。 したがって,乙11文献には構成要件Bの構\成が開示されているとはいえず, 乙11発明と本件発明は同一ではないから,本件発明が新規性を欠くというこ とはできない。

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平成30(行ケ)10041  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年12月6日  知的財産高等裁判所

 サポート要件および進歩性について、いずれも誤りであるとして拒絶審決を取り消しました。
 (1) 審決は,本願発明1は,少なくともセシウム及びストロンチウムを含む放 射性物質を,1382℃未満の温度(例えば1000℃)で焼成する場合を 含むと解され得るが,1382℃未満の温度で焼成をすると,「前記放射性 物質として含まれるセシウム及びストロンチウム」のうちのセシウム(沸点 671℃)が気化するため,本願発明1の効果である「放射性物質の気化温 度未満で焼成」し,「放射性物質や灰分が残渣として残り,放射性物質が気 化されて大気中に放出されないようにする」とともに「有機物を気化若しく は無機化させること」を実現できないとして,特許請求の範囲の記載はサポ ート要件に適合しないと判断した。
(2)ア そこで検討するに,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか 否かについては,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対 比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載され た発明で,発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明 の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記 載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を 解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきも のと解される。
イ 本件についてみると,本願発明1は,焼成汚染材を「測定下限値を超え る放射能濃度で放射性物質を含んだ動植物類,焼却灰,汚泥スラッジ,海\n洋泥砂,河川泥砂,湖泥砂,街路樹木,がれき,汚染水,土砂のうちの何 れか一つ以上を含む汚染材を,前記放射性物質として含まれるセシウム及 び/又はストロンチウムの気化温度未満で焼成した放射性物質を含有する」 ものと特定するものである。 そうすると,本願の請求項1にいう,「汚染材に放射性物質として含ま れるセシウム及び/又はストロンチウム」には,汚染材に放射性物質とし て「セシウム及びストロンチウム」の両者が含まれる場合のみならず,「セ シウム又はストロンチウム」,すなわち「セシウム」,「ストロンチウム」 のいずれか一方のみが含まれる場合も含まれているというべきである。
ウ また,本願明細書には,前記1(1)カのとおり,「前処理工程1001で は,図15に示すように,汚染材を地殻様組成体20の原料として使用す る前に,汚染材の焼成処理を行う。ここでの焼成温度は,放射性物質の気 化温度未満とし,放射性物質や灰分が残渣として残り,放射性物質が気化 されて大気中に放出されないようにする。このように,汚染材は,焼成処 理されることで,有機物を気化若しくは無機化させることが出来る。」(【0 133】),「セシウム−134は,沸点が671℃である。従って,例 えば,焼成温度を671℃未満としたときには,大分部分(判決注:原文 のまま)の放射性物質が気化することを防止することが出来る。」(【0 135】)と,焼成温度を汚染材に含まれる放射性物質の気化温度未満と することにより,放射性物質の気化を防止できることが記載されている。 これに対し,本願明細書には,汚染材に含まれる放射性物質の気化温度以 上の温度で焼成することについての記載はない。 このような本願明細書の記載に鑑みれば,本願発明1の上記特定事項に ついては,セシウム及びストロンチウムを放射性物質として含む,すなわ ち,セシウムとストロンチウムの両者を同時に放射性物質として含む場合 には,セシウム及びストロンチウムの気化温度未満で汚染材を焼成,すな わち,両者の気化温度に共通する部分となる(より低い気化温度である) セシウムの気化温度未満で焼成するものと解するのが自然である。また, セシウム又はストロンチウムのいずれか一方のみを放射性物質として含む 場合には,当該放射性物質の気化温度未満で焼成するものと解される。
エ したがって,請求項1に記載された発明は,発明の詳細な説明に記載さ れた発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解 決できると認識できる範囲のものであるというべきである。
4 取消事由2(引用発明の認定の誤り)について
(1) 審決は,引用文献には引用発明が記載されていると認定し,本願発明1は 引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたと判断した。
(2)ア そこで検討するに,進歩性の判断に際し,本願発明と対比すべき特許法 29条1項各号所定の発明は,通常,本願発明と技術分野が関連し,当該 技術分野における当業者が検討対象とする範囲内のものから選択されると ころ,同条1項3号の「刊行物に記載された発明」は,当業者が,出願時 の技術水準に基づいて本願発明を容易に発明をすることができたかどうか を判断する基礎となるべきものであるから,当該刊行物の記載から抽出し 得る具体的な技術的思想でなければならない。
イ 本件についてみると,引用文献は,その表題から,放射性物質が検出さ\nれた下水汚泥焼却灰等の処分に向けた検討状況を1枚の資料にまとめたも のと認められる。 そして,引用文献の「1 これまでの経緯と今後の予定」の項の記載か\nら,1)平成23年9月から,「放射性物質対策検討特別部会」において下 水汚泥焼却灰等の安全な処分に向けた検討が開始されたこと,2)同年10 月から,下水汚泥焼却灰等の処分に関する安全性評価検討業務委託がされ, 委託先の有識者委員会である汚染焼却灰等処分安全性評価委員会が3回開 催されたこと,3)平成24年3月に東日本大震災対策本部会議が開催又は 予定され,処分に向けた検討の方向性について確認されること,4)同年4 月以降,実現に向けた課題の抽出や整理が行われる予定であることが理解\nできる。
また,「2 第1〜3回汚染焼却灰等処分安全性評価委員会での有識者 からの主な意見」の項の記載は,上記有識者委員会での主な意見をまとめ たものと理解できるところ,「(前提)」の欄に,「今回の安全性評価の 中では,セシウム(Cs134,Cs137)を対象としたことを前提条 件として明示することが望ましい」との記載があることから,放射性物質 としてセシウムが検討対象になっていたことが把握できる。 さらに,「(方針)」の欄に,「再利用(下水汚泥焼却灰のセメント原 料化)の再開を目指すことは望ましい」,「めやす値より低いからそれで 良しとするのではなく,さらに,できる限り影響が小さくなるよう対策す る姿勢が重要」との記載があることから,上記有識者委員会において,放 射性物質としてセシウムを含む下水汚泥焼却灰のセメント原料化の再開を 目指すこと,放射線の影響はできる限り小さくするよう対策すべきことが, 方針に関する有識者の意見として存在したことをそれぞれ理解できる。 その一方で,引用文献には,放射性物質が検出された下水汚泥をどのよ うに焼却するか,下水汚泥焼却灰はどの程度の放射性物質を含むものであ るか,下水汚泥焼却灰をセメント原料化する際,できる限り影響が小さく なるようにどのような対策をするのか等,下水汚泥焼却灰を処分するに当 たっての具体的な方法,手順,条件など,技術的思想として観念するに足 りる事項についての記載は一切存在しない。
そうすると,引用文献には,単に放射性物質が検出された下水汚泥焼却 灰等の処分に向けた方針,及び当該方針に関する有識者の意見が断片的に 記載されているにすぎず,下水汚泥焼却灰等の安全な処分方法というひと まとまりの具体的な技術的思想が記載されているとはいえない。
ウ したがって,その余の点について認定,判断するまでもなく,引用文献 に審決が認定した引用発明が記載されているとはいえない。
(3) 被告の主張について
被告は,引用文献の記載から,「下水汚泥焼却灰のセメント原料化」が再 開されていないことがうかがわれるからといって,引用文献に「下水汚泥焼 却灰のセメント原料化」を行う方法が開示されていないことにはならないし, 「下水汚泥焼却灰のセメント原料化」を行う方法は一般的に確立されていた 技術といえるから,原告の主張は失当であると主張する。 しかし,引用文献中の「再開を目指すことが望ましい」との記載からは, 下水汚泥焼却灰のセメント原料化が引用文献の作成時点において中止されて いたことが明らかであるところ,上記(2)のとおり,引用文献には下水汚泥焼 却灰を処分するに当たっての具体的な方法など,技術的思想として観念する に足りる事項についての記載は一切存在しないのであるから,同文献に「下 水汚泥焼却灰のセメント原料化」を行う方法が開示されているとはいえない。 また,被告が証拠として提出した乙4〜6は,いずれも「下水汚泥焼却灰 のセメント原料化」技術に関する刊行物であるものの,放射性物質を含む下 水汚泥焼却灰のセメント原料化についての記載はないから,これらの証拠を もって,引用文献が対象とする「放射性物質が検出された下水汚泥焼却灰等」 におけるセメント原料化が確立された技術ということはできない。

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平成29(行ケ)10230  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年11月28日  知的財産高等裁判所

 特許異議申立がなされて審決は取消決定をしました。知財高裁は、「モノマーとして,着色の少ないジアミン誘導体を使用することが周知であるとしても,そのことから,本件光透過率が80%〜90%以上となるジアミン誘導体を使用することまでも周知であるということはできない」として、進歩性なしとした審決を取り消しました。\n
 ア 前記(1)で認定した甲3文献の【請求項1】,段落【0006】,【007 2】,甲7文献の段落【0043】,【0061】,乙2文献の【請求項2】,段落【0187】,【0246】の各記載によると,本件特許の出願当時,光透過性に優れた ポリイミドを得るために,波長400nm,光路長1cmの光透過率が80%以上 のテトラカルボン酸誘導体を使用することは,当業者にとって周知であったと認め られる。
イ また,前記(1)で認定した甲3文献の段落【0102】,甲7文献の段落 【0055】,甲8文献の段落【0027】,甲9文献の「1.2.2」,乙3文 献のS93頁の概要(Abstract)の欄の1行〜7行,S94頁29行〜3 4行,S105頁3行〜6行によると,本件特許の出願当時,光透過性に優れたポ リイミドを得るために,モノマーとして,着色の少ないジアミン誘導体を使用する ことは,当業者にとって周知であったと認められる。
ウ しかし,光透過性に優れたポリイミドを得るために,純水又はN,N− ジメチルアセトアミドに10質量%の濃度に溶解して得られた溶液に対する波長4 00nm,光路長1cmの光透過率(以下「本件光透過率」という。)が90%以 上である芳香環を有しないジアミン誘導体又は本件光透過率が80%以上である芳 香環を有するジアミン誘導体を使用することは,当業者にとって周知であったとは いえない。理由は以下のとおりである。
(ア) 確かに,着色の少ないジアミン誘導体を使用するということは,光透 過性の高いジアミン誘導体を使用することを意味するものと理解できる。 しかし,本件証拠上,モノマーとして,本件光透過率が80%〜90%以上のジ アミン誘導体を使用することについて記載した文献は一切ない(なお,被告は,光 透過性に優れたポリイミドの指標として,「フィルムとしたときの波長400nm の光透過率」を用いることは周知であると主張するが,同周知事項は,モノマーの 光透過性の指標として用いられるものではない。)。
(イ) また,前記(1)のとおり,甲9文献には,「モノマーの純度も重要なフ ァクターであり,見た目きれいな結晶をしていても僅かな不純物が光透過性を悪化 する原因となる。図8には用いたジアミンの再結晶前後の光透過性について示した ものである。活性炭を用いて再結晶した後のモノマーを用いた方が光透過性にやや 優れている。光透過性では僅かな差ではあるが,着色の差としてはっきりと表れる。\n」との記載があり,同記載からすると,着色の度合いと光透過性との間の相関の程 度は不明といわざるを得ず,他にこの点を認めるに足りる証拠もない。したがって ,モノマーとして,着色の少ないジアミン誘導体を使用することが周知であるとし ても,そのことから,本件光透過率が80%〜90%以上となるジアミン誘導体を 使用することまでも周知であるということはできないというべきである。
エ このように,光透過性に優れたポリイミドとするために,モノマーとし て,本件光透過率が80%〜90%以上のジアミン誘導体を使用することが周知で あったということはできないから,甲4発明に本件証拠によって認められる周知技 術を適用しても,本件発明1の構成に到らず,したがって,本件発明1は進歩性が\nないということはできない。
オ 被告の主張について
被告は,1)可視光領域(可視域)の吸収をなくして,光透過性に優れたポリイミドを 合成することは,当業界における周知の課題である,2)光透過性に優れたポリイミ ドの指標として,「フィルムとしたときの波長400nmの光透過率」を用いること は周知である,3)光透過性に優れたポリイミドとするためには,可視光を吸収する 要因を排除すればよく,そのためには,光透過性を悪化する原因となる不純物がな いよう,充分に精製した純度の高いモノマーを用いることは周知である,4)ポリイ ミド原料モノマーのうち,少なくともテトラカルボン酸二無水物において,上記の 「光透過性を悪化する原因となる不純物がないよう,充分に生成した純度の高いモ ノマー」であることの指標として,当該モノマーを適当な溶媒に溶解したときに波 長400nmの光透過率(溶媒にモノマーを溶解させた溶液の光路長1cmの光透 過率)がなるべく高いものであることを用いることは周知である,5)ポリイミドの 原料モノマーのうち,ジアミン誘導体についても,再結晶や蒸留等により精製して, 純度が高く,着色の少ないものを用いることは周知であるとした上で,甲4発明に 上記各周知技術を適用することにより,相違点1−1に係る構成を備えた本件発明\n1は容易に想到できる旨主張する。
(ア) しかし,前記ウのとおり,光透過性に優れたポリイミドとするために, モノマーとして,着色の少ないジアミン誘導体を使用することが周知であったとし ても,同周知技術から,本件光透過率が80%〜90%以上のジアミン誘導体を使 用することを導き出すことはできないところ,このことは,被告の指摘する上記の すべての周知技術を考慮しても変わるものではない。
(イ) この点,被告は,ジアミンに含まれる光透過性を悪化する原因となる 不純物が,そのままポリイミドにも含まれることとなり,ポリイミドの光透過性に 影響することから,光透過性に優れたポリイミドとするために,テトラカルボン酸 二無水物を溶媒に溶解した溶液の波長400nmの光透過率が90%以上のものを 用いるのであれば,ポリイミドを構成するもう一方のモノマーであるジアミンにつ\nいても,テトラカルボン酸二無水物と同程度の光透過率のものとすることは,当業 者であれば当然に理解する旨主張する。 a 被告の上記主張は,透明性の優れたポリイミドを製造するためには, ポリイミドの純度を高める必要があり,そのためには,モノマーであるジアミン誘 導体の純度も高める必要がある,そのジアミン誘導体の純度を光透過率に置き換え ると,もう一つのモノマーであるテトラカルボン酸誘導体に要求される光透過率と 同程度であるというものと理解できるが,本件証拠上,ジアミン誘導体及びテトラ カルボン酸誘導体のそれぞれの純度と光透過率との間の相関の程度は明らかではな く,後記bのような実験結果もあるから,透過性に優れたポリイミドの製造のため に,ジアミン誘導体の光透過率をテトラカルボン酸誘導体の光透過率と同程度とす ることが導き出されるということはできず,また,当業者もそのような理解をする とは認められない。

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平成29(行ウ)297  異議申し立て棄却処分取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年11月20日  東京地方裁判所

 特112条の2第1項の「正当な理由」には該当しないと判断されました。
 (1)特許法112条の2第1項は,同法112条4項の規定により消滅したも のとみなされた特許権の原特許権者は,同条1項の規定により特許料を追納 することができる期間内に特許料及び割増特許料を納付することができなか ったことについて「正当な理由」があるときは,経済産業省令で定める期間 内に限り,特許料等を追納することができると規定する。 そして,特許法112条の2の上記文言が,特許法条約(Patent Law Tre aty)において手続期間を徒過した場合に救済を認める要件としての「Du e Care(いわゆる『相当な注意』)」を取り入れて規定されたこと(平 成23年法律第63号による改正,乙12)からすれば,同条の「正当な理 由」があるときとは,原特許権者として,特許料等の追納期間の徒過を回避 するために相当な注意を尽くしていたにもかかわらず,客観的な事情により これを回避することができなかったときをいうものと解するのが相当である。
(2) 本件について,原告は,「正当の理由」として,主に,本件追納期間中は 別件訴訟の対応で心身ともに余裕がなかったこと,同期間中にうつ病等の複 数の疾患を抱えており,特許料等を納付できる状態ではなかったことを主張 する。 しかしながら,一般的に自己を当事者とする訴訟を追行していたとしても, それ以外の事務を行うことができなくなるものではなく,特許料の納付期限 等について注意を払うことは十分に可能\であったといえるから,原告の主張 する別件訴訟に係る事情は,追納期間の徒過を回避することができなかった と認められる客観的な事情とは評価できない。 また,原告は,本件追納期間中にうつ病等の複数の疾患に罹患していたと 主張し,原告について診断日を平成22年3月25日として「遷延性抑うつ 反応」との診断を受けたことが認められる(甲9の1)。しかし,本件追納 期間(平成25年6月12日から同年12月11日まで)中に原告が精神科 に通院するなどしてうつ病の治療を受けていたことを認めるに足りる証拠は ないほか,原告は,1)上記診断において「遷延性抑うつ反応」に罹患したと される平成20年11月10日(本件交通事故による受傷日)以降も複数の 特許出願を行なっていたことがうかがわれること(甲9の1,乙7〔3枚 目〕,2)本件追納期間中もほぼ毎週整形外科に通院していたこと(甲15, 乙7〔平成26年5月15日付け青森県立中央病院医師作成の診断書から始 まる添付資料の2,4,8,13,14枚目,2013/4/02(44)との記載から 始まる添付書類の5ないし16枚目),3)本件追納期間経過後から間もない 平成26年4月に本件特許権が消失していることを知ると,同月17日頃に は特許庁に対して特許料追納手続を問い合わせる電子メールを送信し,同月 23日には,特許庁から送付された電子メールの記載に従った追納分の特許 料相当額の印紙を貼付した本件納付書を提出し,正当な理由に該当する旨を\n記載した回復理由書を提出したこと(乙5の1,2,乙7〔2枚目,「登録 室」から2014年4月17日午前10時24分に送られた電子メールの記 載から始まる【添付資料】の1枚目〕)などからすれば,原告が本件追納期 間中に「遷延性抑うつ反応」あるいは他の疾患により行動等の制限を受ける ことがあったしても,それが特許料納付の妨げになる程度のものであったと 認めるには足りず,原告の疾病に係る事情もまた,追納期間の徒過を回避す ることができなかったと認められる客観的な事情とは評価できない。 更に,原告は,特許庁から特許料納付に係る請求書の送付がなかったとも 主張するが,特許料及びその納付期限については特許法107条以下に定め られるなどしていて,相当な注意を尽くして情報を収集すれば容易に知るこ とができたというべきであるから,上記事情は追納期間の徒過を回避するこ とができなかったと認められる客観的な事情とはいえない。 その他,追納期間の徒過を回避することができなかったと認められる客観 的な事情は認められない。
(3)以上によれば,本件納付書による特許料等の納付のうち,第4年分の特許 料等に係る部分について,本件期間徒過につき正当な理由があるとはいえな いとし,第5年分の特許料に係る部分について,第4年分の特許料等の追納 が認められないために本件特許権は消滅しているとして,本件納付書による 納付手続を却下した本件却下処分には,特許法112条の2第1項の解釈適 用を誤った違法があるとはいえない。 原告は,本件却下処分または本件決定によって本件特許権が回復しないこ とが憲法29条に違反するとも主張するが,特許権は,性質上,法が定める 条件に従って,国家から付与され存続する権利であるから,法が定める特許 料の納付等の手続を経なければこれを失うものであり,前記のとおり追納を 認めなかった本件却下処分に違法があるとはいえないことから,本件特許権 が回復しないことが憲法29条に違反することはない。

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平成29(ネ)10055  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年11月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審で新規性違反の証拠が提出されて、原審の判断が取り消されました。なお、証拠の提出が遅れたことについては、時機に後れた攻撃防御には該当するが、訴訟の完結を遅延させるとはいえないと判断されました。
 争点2−3−1(時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立て)について
ア 証拠(甲4,乙69の4・5)及び弁論の全趣旨によると,控訴人らは, 被控訴人外1名を原告,控訴人ら外3名を被告とする商標権侵害差止等請求事件に おいて,当該事件の原告訴訟代理人弁護士G及び同Hが平成19年5月22日に東 京地方裁判所に証拠として提出した乙69の4及び証拠説明書として提出した乙6 9の5を,その頃受領していること,乙69の5には,乙69の4の説明として, 「被告シンワのチラシ(2006年用)(写し)」,作成日「2006(平成18) 年」,作成者「(有)シンワ」,立証趣旨「被告シンワが原告むつ家電得意先へ営業 した事実を立証する。」旨記載されていることが認められる。 したがって,控訴人らは,平成19年5月22日頃には,乙69の4・5の存在 を知っていたものと認められる。
イ 控訴人らは,控訴人シンワ代表者Aが,平成21年1月13日〜19日,\n控訴人シンワが平成17年7月6日〜8日頃に噴火湾の漁民らにサンプルを示して 本件明細書等の図8(a)と同一形状の製品を販売していたことにつき,陳述書(乙 38の1〜13)を集め,控訴人進和化学工業の代表者であった故Eに送付したと\n主張している。 上記主張によると,控訴人らは,平成21年1月頃には,上記陳述書の存在を 知っていたものと認められる。
ウ 本件は,平成28年6月24日に東京地方裁判所に提訴され,平成29 年1月26日に口頭弁論が終結され,その後和解協議が行われたところ,上記ア, イの事実によると,控訴人らは,無効理由3(新規性欠如)に係る抗弁を,遅くと も平成29年1月26日までに提出することは可能であったといえるから,これは\n「時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法」(民訴法157条1項)に該当する ことが認められる。 しかし,控訴人らは,本件の控訴審の第1回口頭弁論期日(平成29年8月3日) において,控訴人シンワは,本件特許が出願されたとみなされる日より前に,本件 各発明の構成要件を充足する製品を販売したので,本件特許は新規性を欠く旨の主\n張をしたものであって,上記期日において,次回期日が指定され,更なる主張,立 証が予定されたことからすると,この時点における上記主張により,訴訟の完結を\n遅延させることとなると認めるに足りる事情があったとは認められない。
エ したがって,上記主張に係る時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立ては,認められない。\n
(3) 争点2−3−2(新規性欠如)について
ア(ア) 前記(2)アのとおり,控訴人らは,被控訴人外1名を原告,控訴人ら 外3名を被告とする商標権侵害差止等請求事件において,当該事件の原告訴訟代理 人弁護士G及び同Hが平成19年5月22日に東京地方裁判所に証拠として提出し た乙69の4及び証拠説明書として提出した乙69の5を,その頃受領しているこ と,乙69の5には,乙69の4の説明として,「被告シンワのチラシ(2006 年用)(写し)」,作成日「2006(平成18)年」,作成者「(有)シンワ」,立証趣旨「被告シンワが原告むつ家電得意先へ営業した事実を立証する。」旨記載され ていることが認められるところ,乙69の4には,「2006年販売促進キャン ペーン」,「キャンペーン期間 ・予約5月末まで ・納品5月20日〜9月末」, 「有限会社シンワ」,「つりピンロールバラ色 抜落防止対策品」,「サンプル価格」, 「早期出荷用グリーンピン 特別感謝価格48000円」などの記載があり,複数 の種類の「つりピン」が添付されており,その中には,5本のピンが中央付近にお いてそれぞれハの字型の1対の突起を有するとともに,そのハの字型の間の部分を 2本の直線状の部分が連通する形で連結された形状のもの(つりピンロールバラ色 と記載された部分の直近下に写し出されているもの)があることが認められる。 上記「つりピン」の形状は,上記事件の上記原告訴訟代理人が,平成19年5月 22日に,乙69の4とともに,上記商標権侵害差止等請求事件において,東京地 方裁判所に証拠として提出した乙69の3に「つりピンロール(バラ色)抜落防止 対策品」として記載されているピンク色の「つりピン」と,その形状が一致してい ると認められる。乙69の3は,乙69の4と同じ証拠説明書による説明を付して, 提出されたものであり,「2006年度 取扱いピンサンプル一覧」,「有限会社シ ンワ」,「早期出荷用」などの記載がある。 また,乙69の4は,上記事件の上記原告訴訟代理人が,平成19年5月22日 に,乙69の4とともに,「被告シンワのチラシ(2005年用)(写し)」,作成日 「2005(平成17)年」,作成者「(有)シンワ」,立証趣旨「被告シンワが原 告むつ家電得意先へ営業した事実を立証する。」旨の証拠説明書による説明を付し て,上記商標権侵害差止等請求事件において,東京地方裁判所に提出した乙69の 1と,レイアウトが類似しているところ,乙69の1には,「2005年開業キャ ンペーン 下記価格は2005年4月25日現在の価格(税込)です。」,「有限会 社シンワ」,「当社では売れ残り品は販売しておりません。お客様からの注文後製造 いたします。」などの記載がある。 以上によると,乙69の3及び4は,いずれも,控訴人シンワが,被控訴人の顧 客であった者に交付したものを,平成19年5月22日までに,被控訴人が入手し, 控訴人シンワらが,被控訴人の得意先へ営業した事実を裏付ける証拠であるとして, 上記事件において,提出したものであると認められる。 そして,乙69の4の上記記載内容,特に「販売促進キャンペーン」,「納品5月 20日〜」と記載されていることからすると,乙69の4と同じ書面が,平成18 年5月20日以前に,控訴人シンワにより,ホタテ養殖業者等の相当数の見込み客 に配布されていたことを推認することができる。
(イ) また,前記(ア)の認定事実及び弁論の全趣旨によると,乙69の4に 記載されている,5本の「つりピン」が中央付近においてそれぞれハの字型の1対 の突起を有するとともに,そのハの字型の間の部分を2本の直線状の部分が連通す る形で連結された形状のものは,控訴人シンワにより見込み客に配布されていた前 記(ア)の乙69の4と同じ書面にも添付されていたと認められる。
(ウ) 前記の5本の「つりピン」が中央付近においてそれぞれハの字型の 1対の突起を有するとともに,そのハの字型の間の部分を2本の直線状の部分が連 通する形で連結された形状のものの形状は,両端部において折り返した部分の端部 の形状が,乙69の4では,下から上へ曲線を描いて跳ね上がっているのに対し, 本件明細書等の図8(a)では,釣り針状に下方に曲がっている以外は,本件明細 書の図8(a)記載の形状と一致している。 そして,本件明細書等の図8(a)は,本件各発明に係るロール状連続貝係止具 の実施の形態として記載されたものである。
(エ) そうすると,前記(ア)及び(イ)の5本の「つりピン」が中央付近にお いてそれぞれハの字型の1対の突起を有するとともに,そのハの字型の間の部分を 2本の直線が連通する形で連結された形状のものは,形状については,本件発明1 の構成要件1A〜Hにある形状をすべて充足する。そして,証拠(乙69の1〜5)\n及び弁論の全趣旨によると,その材質は,樹脂であり,「つりピンロール」とされ ていることから,ロール状に巻き取られるものであり,その連結材は,ロール状に 巻き取られることが可能な可撓性を備えているものと認められる。したがって,乙\n69の4に記載されている「つりピン」は,本件発明1の構成要件1A〜Hを,す\nべて充足すると認められる。 また,上記の「つりピン」は,ロープ止め突起の先端と連結部材とが極めて近接 した位置にあり,2本のロープ止め突起の先端の間隔よりも一定程度狭い縦ロープ との関係では,2本の可撓性連結材の間隔が,貝係止具が差し込まれる縦ロープの 直径よりも広くなるから,本件発明2の構成要件である2Aも充足すると認められ\nる。 さらに,上記の「つりピン」が,ロール状に巻き取られるものであることは,上 記のとおりであるから,上記の「つりピン」は,本件発明3の構成要件である3A\n及び3Bも充足すると認められる。
(オ) そうすると,本件発明1〜3は,本件特許が出願されたとみなされ る日である平成18年5月24日よりも前に日本国内において公然知られた発明で あったということができ,新規性を欠き,特許を受けることができない。
イ 被控訴人は,乙69の4につき,平成19年5月22日に手元にあった ことを認めつつ,誰が,いつ,どこで入手したのかは記憶がなく,控訴人ら提出の 証拠によって,本件特許が出願されたとみなされる日前にこれが配布されていたこ とが立証されたとはいえないと主張する。 しかし,乙69の5に記載された立証趣旨に鑑みると,平成19年5月22日当 時,被控訴人は,乙69の4が控訴人シンワにより被控訴人の得意先への営業に用 いられたと認識していたことが認められるのであって,被控訴人がそれ以前にその 顧客から原本又は写しを入手したものと認められる。 乙69の4の記載内容に,販売の申出のためのチラシとして不自然なところはな\nく,上記のとおり,その記載内容によって,平成18年5月20日以前にこれが控 訴人シンワにより見込み客に配布されたことが推認される。 被控訴人は,平成18年5月24日以前に乙69の4のピンと同様の形状のピン が見込み客に配布されたことを裏付けるものとして控訴人らが提出した陳述書等の 書証の成立及び信用性について主張するが,乙69の4が上記の東京地方裁判所に おける事件において平成19年5月22日に上記のとおり被控訴人から提出された ことは動かし難い事実であり,被控訴人がその成立又は信用性を争うその他の書証 が存在しなくとも,前記アのとおりの認定をすることができる。また,被控訴人が その成立又は信用性を争う書証は,前記アの認定と矛盾するものではなく,むしろ, 間接的にこれを裏付けるものということができる。そして,これらに記載された供 述内容について,矛盾や曖昧な点があるとしても,それらは記憶の希薄化等により 起こり得ることであって,これらをもって,乙69の4等に基づき認定し得る前記 アの事実の認定を左右するに足りるものではない。さらに,特許庁における控訴人 シンワ代表者A,証人C,証人Iの各供述(乙146)についても,同様に,矛盾\nや曖昧な点や変遷があるとしても,これらをもって,乙69の4等に基づき認定し 得る前記アの事実の認定を左右するに足りるものではない。

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◆平成28(ワ)20818

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平成30(ネ)10045等  商標権侵害行為差止請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成30年11月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 日本酒の商標「白砂青松」の商標権侵害控訴事件です。1審では、要部が2つあるとして侵害と判断されました。知財高裁も「不可分的に結合しているとはいえない」として、1審判断を維持しました。なお、訴えの交換的変更により,差止の対象が変更されています。
 控訴人標章1は,別紙控訴人標章目録記載1のとおり,図形部分と, その上方に毛筆体で横書きした「大観」の文字部分及び「白砂青松」の 文字部分とからなる結合商標である。 図形部分は,長方形の黒色の枠線の中に,背後に白い山が見える,白 い砂浜に松林の続く海岸の風景画を図形化したものであり,図形部分の 大きさは,控訴人標章1全体の約5分の4を占めている。 しかるところ,「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分は, 図形部分と重なっていないこと,「大観」の文字部分は図形部分の長方 形の黒色の枠線からやや離れた上方に配置されていることから,長方形 の黒色の枠線で囲まれた図形部分と「大観」の文字部分及び「白砂青 松」の文字部分は,明瞭に区別して認識することができる。 また,図形部分の左下部には毛筆体で縦書きした「大観」の署名及び 落款印の印影が表記されており,図形部分は,横山大観作の「白砂青\n松」という作品名の絵画を図形化したものであることが認められるが (乙68ないし82),横山大観作の上記絵画が,原告商標の指定商品 「日本酒」の需要者である一般消費者の間に広く認識されるに至ってい るものと認めるに足りる証拠はないことに照らすと,需要者の多くは, 図形部分の風景画は,「白砂青松」の文字部分から連想,想起させる風 景を描いたものと認識することはあっても,横山大観作の上記絵画 景を描いたものと認識することはあっても,横山大観作の上記絵画であ ると認識するものと認めることはできないし,「大観」の文字部分及び 「白砂青松」の文字部分は,図形部分の絵画の作者が横山大観であり, その作品名が「白砂青松」であることを表示するものとして図形部分と\n一体的な関係にあると認識するものと認めることもできない。 そうすると,図形部分と「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字 部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的 に結合しているものとは認められない。 次に,「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分から全体とし て「タイカンハクサセイショウ」又は「タイカンハクシャセイショウ」 の称呼が生じるが,「大観」の文字部分は,控訴人標章1の上方左端に, 「白砂青松」の部分は,「大観」の文字部分よりも大きな文字で控訴人 標章1の上方中央にそれぞれ表示され,「大観」の文字部分は「白砂青\n松」の文字部分よりもやや上方に位置していること,「大観」の文字部 分を構成する文字と「白砂青松」の文字部分を構\成する文字は,字体が 異なり,文字の間隔は「白砂青松」の文字部分の方が広いことに照らす と,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,明瞭に区別して 認識することができるから,分離して観察することが取引上不自然と思 われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。 そして,「白砂青松」の文字部分は,控訴人標章1の上方中央に毛筆 体の大きな文字で表示され,「白砂青松」の文字部分から「ハクサセイ\nショウ」又は「ハクシャセイショウ」の称呼が自然に生じること,「白 砂青松」の文字部分の下方に表示された図形部分は,需要者の多くによ\nって「白砂青松」の文字部分から連想,想起させる風景を描いたものと 認識されることからすると,控訴人標章1が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,控訴人標章1の構成中の「白砂青松」の\n文字部分は,取引者,需要者に対し,被告商品の出所識別標識として強 く支配的な印象を与えるものと認められる。 以上によれば,控訴人標章1から「白砂青松」の文字部分を要部とし て抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断する ことも,許されるというべきである。
(イ) これに対し控訴人は,1)控訴人標章1は,被告商品の瓶のラベルに 使用されているところ,需要者が店頭で日本酒を購入する場合,日本酒 の瓶のラベルにどのような絵柄や文字が記載されているかを確認して商 品を識別するから,ラベルに表示されている文字や絵柄は,全体として\n自他商品識別機能を有しており,しかも,被告商品の瓶のラベルに占め\nる上記絵画部分は,非常に大きいこと,2)「大観 白砂青松」の文字部 分は,横山大観の自筆のものであり,この文字部分から,通常,横山大 観が描いた「白砂青松」という作品名の絵画を連想させるところ,絵画 部分は横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画であることからす れば,上記文字部分と上記絵画部分は,分離して観察することが取引上 不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえるから,控訴人標 章1から「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較し て商標そのものの類否を判断することは許されない旨主張する。 しかしながら,控訴人標章1を構成する図形部分と「大観」の文字部\n分及び「白砂青松」の文字部分とを明瞭に区別して認識することができ ることは,前記(ア)認定のとおりである。 また,上記1)の点については,日本酒を購入する場合,瓶のラベルに どのような絵柄や文字が記載されているかを確認することがあるからと いって,一般に,ラベルに表示されている文字や絵柄が全体としてのみ\n自他商品識別機能を有しているということはできない。\nさらに,上記2)の点については,仮に控訴人標章1の「大観」の文字 部分及び「白砂青松」の文字部分が横山大観の自筆のものであったとし ても,そのことが需要者である一般の消費者の間に広く認識されるに至 っているものと認めるに足りる証拠はない。また,前記(ア)認定のとお り,需要者の多くは,控訴人標章1の図形部分から,その図形部分の風 景画が横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画であると認識する ものと認めることはできない。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成29(ワ)9779

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平成30(行ケ)10060  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年11月28日  知的財産高等裁判所

 パラマウントベッドの形状の立体商標の登録について、識別力無し、3条2項の適用もなしとした審決が維持されました。
(イ) 前記(1)イ(ウ)認定のとおり,マットレス付き原告ベッドは,原告ベ ッドの機能(底板の背部の背上げ機能\及び膝部の膝上げ機能,土台の傾\n斜機能)の組合せにより,本願商標と同一の形状をとることができるこ\nとからすると,マットレス付き原告ベッドの購入者又は利用者は,その 使用時に,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形状を認識する 機会があり得るものといえる。 しかしながら,本願商標は,別紙1記載のとおり,ベッドの土台が, 頭側を上にして傾斜し,ベッドの底板が,頭側を上にして足側にかけて 全体としてS字状に屈曲し,背部が立ち上がり,腰部から足部にかけて の中間の膝部が起伏し,かつ,頭側の端部がヘッドボードの上端部の右 方に近接して位置した形状であり,マットレス付き原告ベッドを本願商 標と同一の形状とするには,原告ベッドの上記機能を組み合わせて,土\n台の傾斜角度,底板の背部の立ち上げ角度及び膝部の起伏の高さなどを 調節して設定する必要があること,マットレス付き原告ベッドの利用者 は,通常は,マットレスの上に布団をかけた状態で原告ベッドを使用す ることに照らすと,マットレス付き原告ベッドの購入者又は利用者は, その使用時に,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形状を認識 する機会は多いものとは認められないし,また,その形状を認識したと しても,それが印象に残ることは少ないものと認められる。 さらに,原告は,本社及び全国8支店のショールームに原告の総合カ タログ(甲1)及び単品カタログ(甲2)を常備し,マットレス付き原 告ベッドを展示して,販売活動を行っていること(甲5,弁論の全趣旨) に照らすと,マットレス付き原告ベッドの購入者は,その購入の際に, 総合カタログ及び単品カタログに接することがあり得るものと認められ るが,総合カタログ及び単品カタログには,別紙1の下部の写真と同様 の構図(斜視図)の写真は掲載されていないため,総合カタログ及び単\n品カタログのみから,本願商標と同一の形状を認識することはできない。 また,上記ショールームにおいてマットレス付き原告ベッドが本願商標 と同一の形状で展示されていたことを認めるに足りる証拠はない。
(ウ) マットレス付き原告ベッドを含む「楽匠Zシリーズ」の商品の新聞 広告及び雑誌広告には,1)人が横たわっている,マットレス,枕及び掛 け布団を設置した,底板及び土台が頭側に傾斜した状態のマットレス付 きベッドを表したB商標,2)マットレス,枕及び掛け布団を設置した, 土台が頭側に傾斜し,底板の背部が立ち上がった状態のマットレス付き ベッドを表したD商標,3)マットレス及び枕を設置した,土台が頭側に 傾斜し,底板の背部が立ち上がった状態のベッドに人が枕に頭をのせ, 背中を付けて座っているマットレス付きベッドを表したE商標の写真が\n掲載されていることは,前記ア(イ)認定のとおりである。 しかしながら,これらのB商標,D商標及びE商標の写真は,人,枕 及び掛け布団が写されている部分を除いても,別紙1記載の本願商標の 形状の写真と一致しないことに照らすと,B商標,D商標及びE商標を 掲載した新聞広告及び雑誌広告から,本願商標と同一の形状又は社会通 念上同一の形状を認識することはできないものと認められる。 また,同様に,マットレスの設置されていない,土台が頭側に傾斜し, 底板の背部が立ち上がった状態のベッドを表したA商標が掲載された新\n聞及び雑誌から,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形状を認識することはできないものと認められる。 次に,マットレス付き原告ベッドを含む「楽匠Zシリーズ」の商品の テレビCMには,マットレスの足元側にカバーをつけたマットレス付き ベッドにおいて,土台が水平で,土台が頭側に傾斜した状態,底板及び 土台が頭側に傾斜した状態,土台が頭側に傾斜し,底板の背部が立ち上 がった状態を表したF商標の画像,土台が頭側に傾斜し,底板の背部が\n立ち上がった状態のマットレス付きベッドを表した標章の画像が表\示さ れていることは,前記ア(ウ)認定のとおりである。 しかしながら,これらのF商標及び上記標章の画像は,マットレスの 足元側のカバーが写されている部分を除いても,別紙1記載の本願商標 の形状の写真と一致しないことに照らすと,F商標及び上記標章が表示\nされたテレビCMから,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形 状を認識することはできないものと認められる。 (エ) 前記ア(エ)のとおり,本件アンケートは,福祉用具レンタル卸業者, 貸与業者及び販売業者,ケアマネージャー(介護支援専門員),福祉用 具鑑定士,福祉用具プランナー等を対象者とするものであり,介護用品 の利用者及びその家族等の一般需要者が対象者に含まれていないから, 本件アンケートの結果は,需要者(前記(ア))の認識を適切に反映した ものとは認められない。
(オ) 以上によれば,原告によるマットレス付き原告ベッドの販売(前記 ア(ア)),新聞広告,雑誌広告及びテレビCMによる広告宣伝(前記ア(イ), (ウ)),本件アンケートの結果(前記ア(エ))を総合考慮しても,本件 審決時(審決日平成30年3月22日)までに,本願商標が,マットレ ス付き原告ベッドを表示するものとして,需要者の間に広く認識される\nに至ったものと認めることはできない。 したがって,本願商標は,マットレス付き原告ベッドについて,「使 用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識する ことができるもの」(商標法3条2項)に該当するものとはいえない。
ウ 原告の主張について
原告は,1)本願商標は,極めて斬新で特徴的な形状(「傾斜ベッド」と 「フットボード」の形状)を有しており,その特徴的な形状は,強く需要 者の目を引くこと,2)本願商標の使用商品(マットレス付き原告ベッド) は,発売後短期間に多数の販売実績を上げていること,3)積極的,集中的 かつ商品形状の露出を前面に押し出した効果的な本願商標の使用商品の宣 伝活動とも相まって,需要者である福祉用具レンタル事業者において,本 願商標の特徴的な形状は,印象的かつ鮮明に記憶され,その特徴的な形状 自体が原告の出所を表示する標識として認識されるに至っており,このこ\nとは,本件アンケート調査の結果によって裏打ちされていることからする と,本願商標は,本願商標の使用商品について,「使用をされた結果需要 者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」 (商標法3条2項)に該当すると主張する。
しかしながら,上記1)のうちの「傾斜ベッド」の形状とは,土台の傾斜 機能により,フットボード側が低くなった形状をいうものであるところ,\n原告が述べるように土台の傾斜機能は従来の介護用ベッドにない機能\であ るとしても,本願商標の構成全体の中で土台が傾斜した形状が強く需要者\nの印象に残るものとは認められない。また,上記1)のうちの「フットボー ド」の形状とは,樹脂製のボードを採用し,全体に丸みをつけて,ボード の上端がつかまりやすいグリップ形状となっている点及び外側に「収納カ バー」が設けられ,木目調のシートが貼ってある点をいうものであるとこ\nろ,グリップできるように,フットボードの上部左右に穴を設けた形状及 びフットボードの一部に木目調の模様がある形状は,他の介護用ベッドに おいても採用されている形状又は装飾であって(乙4ないし6,14,1 5),いずれも独特なものとはいえず,強く需要者の目を引くものとは認 められない。
そして,マットレス付き原告ベッドの販売実績及び広告宣伝,本件アン ケートの結果を総合考慮しても,本件審決時(審決日平成30年3月22 日)までに,本願商標が,マットレス付き原告ベッドを表示するものとし\nて,需要者の間に広く認識されるに至ったものと認めることはできないこ とは,前記イ(オ)で説示したとおりである。したがって,原告の上記主張は,理由がない。

◆判決本文

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平成30(行ケ)10024  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年11月14日  知的財産高等裁判所(2部)

 動機付けなしとした審決が維持されました。原告はソニーで、被告(特許権者)は富士フイルムです。
 原告は,甲3発明に甲4技術事項を適用し,さらに甲4技術事項を適用し た甲3発明に原告主張甲2技術事項を適用して,本件発明1を容易に想到すること ができた旨主張するので,同主張について検討する。 ア 前記2(3)のとおり,甲3発明は,テープ・ドライブのサーボ系を安定化 させる目的で(段落【0007】),テープ・カートリッジがテープ・ドライブに挿 入されるたびに,該テープ・ドライブのサーボ制御用低域通過フィルタの係数を, 挿入されたテープ・カートリッジに応じて設定し直すようにした発明(段落【00 09】)であって,甲3文献には,テープに記録されるサーボ・パターン自体はタイ ミング・ベース・サーボの基礎をなす既知のものだとされているが(段落【002 0】),サーボ・パターンによって何等かの情報を符号化して埋め込むことについて の記載はなく,また,そのような符号化が必要であるとの示唆もなく,ましてや, サーボバンド識別情報を同一のサーボバンド内に符号化することの必要性について の示唆はない。
 したがって,甲3発明にサーボバンド上に各種の情報を符号化する技術である甲 4技術事項やサーボバンド識別情報を同一のサーボバンド内に符号化する技術であ る原告主張甲2技術事項を適用する動機付けがあると認めることはできない。 また,甲3発明に甲4技術事項を適用した上で,さらに原告主張甲2技術事項を 適用することは,タイミング・ベース・サーボを前提として,サーボバンド上に情 報の符号化をすることについて何らの開示がない上記の甲3発明に,甲4文献で開 示されているタイミング・ベース・サーボにおける情報の符号化の方法を示した甲 4技術事項と,アンプリチュード・サーボにおいて同一のサーボバンド内にサーボ バンド識別情報を符号化することを示した原告主張甲2技術事項を重ねて適用する ものであるが,甲3文献には,サーボバンド上に情報を符号化することの記載すら ないのであるから,そのような状況で,同一のサーボバンド内にサーボバンド識別 情報を符号化することを示した技術を適用することが容易であったということはで きないというべきである。
イ 原告の主張について
原告は,甲3発明は複数のサーボバンドを有する磁気テープである点で原告主張 甲2技術事項と共通すること及び複数のサーボバンドを有する磁気テープにおいて は,サーボ読取りヘッドが自らが位置するサーボバンドを何らかの方法によって特 定する必要があるという課題が存在し,この課題は周知であることから,上記動機 付けが存在することは認められる旨主張する。 しかし,甲3発明は複数のサーボバンドを有する磁気テープであり,また,複数 のサーボバンドを有する磁気テープにおいて,サーボ読み取りヘッドが自らが位置 するサーボバンドを何らかの方法によって特定する必要があることは周知であると しても,甲3発明は,前記アのようなものであるから,甲3発明に甲4技術事項を 適用した上で,さらに原告主張甲2技術事項を適用することが動機付けられるとい うことはできない。このことは,タイミング・ベース・サーボにおいて,非平行な 縞を構成する線の位置をテープ長手方向にずらすことによりデータを符号化するこ\nとが,当業者にとって周知となっていたとしても,左右されるものではない。

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平成28(ワ)12791  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 平成30年11月6日  大阪地方裁判所(21民)

 部分意匠について、侵害であるとして、差止、損害賠償が認められました。なお、損害額は約300万円です。これは、利益に対する貢献や寄与が低いと認定されたためです。
 登録意匠と対比すべき意匠とが類似であるか否かの判断は,需要者の視 覚を通じて起こさせる美感に基づいて行う(意匠法24条2項)ものとされており, 意匠を全体として観察することを要するが,この場合,意匠に係る物品の性質,用 途及び使用態様,並びに公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して,取 引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として把握し,登録意匠と 対比すべき意匠とが,意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを重視\nして,観察を行うべきである。 そして,本件意匠に係る物品の説明によれば,本件意匠に係る物品である検査用 照明器具は,工場等において製品の傷やマーク等の検出(検査)に用いられるもの であるから,そのような検査を必要とする製品の製造業者等によって購入されるも のであると推認される。したがって,意匠の類否判断における取引者・需要者は, そのような製造業者等である。 そこで,このような需要者の観点から,本件意匠の要部について検討する。
イ 公知意匠
平成15年6月16日に発行された意匠公報(乙12)において,乙 12意匠(別紙「乙12意匠の図面」参照)が開示されていた。そして,乙12意 匠は,前記1(8)イで認定したとおり,本件意匠の基本的構成態様AないしDと同じ\n構成態様を備えているほか,本件意匠の具体的構\成態様E,H,I及びJの一部並 びにF,K及びLと同じ構成態様を備えている。\nそうすると,以上の構成態様は,検査用照明器具の物品分野の意匠において,本\n件意匠の意匠登録出願前に広く知られた形態であったと認められる。 他方で,後端フィン及び中間フィンの各面が,支持軸体の通過部分以 外には貫通孔がなく,平滑であるという構成態様(同M)は,乙12意匠において\nも開示されておらず,前記1(8)で述べたとおり,検査用照明器具においてそのよう な構成態様を備えたものは公知意匠として存在していなかった(甲14で開示され\nている意匠においても,後端フィン及び中間フィンの上側に貫通孔が設けられてい る。)。この点,乙8意匠はタワー型のヒートシンクの意匠であり,その後端面は 平滑であるが,前記1(3)で判示したとおり,これがどのような物品の放熱部として 用いられるものかは明らかでなく,これと他の部材との位置や大きさの関係,ある いはヒートシンクの各部分の具体的な寸法等も明らかでないし,そもそも乙8の文 献はヒートシンクに関する一般的説明をしたものにすぎないから,要部の認定に当 たって参酌すべき公知意匠というべきものとはいえない。 そして,前記1で判示したとおり,本件意匠の具体的構成態様Mは,その意匠登\n録出願前の公然知られた意匠に基づき,容易に創作することができたものとはいえ ないから,公知意匠にない新規な創作部分であると認められる。
ウ 意匠に係る物品の性質,用途,使用態様等
一定の機能及び用途を有する「物品」を離れての意匠はあり得えないから,\n部分意匠においても,部分意匠に係る物品において,意匠登録を受けた部分がどの ような機能及び用途を有するものであるかを,その類否判断やその前提となる要部\n認定の際に参酌すべき場合がある。 このような観点から検討すると,本件意匠に係る物品は検査用照明器具でありL ED等を内蔵するところ,LEDを使用すると熱を発生し,器具内の温度が上昇す ることから,その放熱(設計)の必要性が指摘されている(甲21,22,24な いし25の2)。そして,本件意匠はその放熱部の意匠であり,特にそこに設けら れたフィンは放熱するための部材(放熱フィン)であるから,放熱を必要とする検 査用照明器具の需要者は,放熱効率という観点から,本件意匠の部材の形態や配置 の状況に着目すると考えられ,具体的には,放熱部である後方部材が前方部材の延 伸上にあること,放熱部である後方部材が,前方部材と同程度の大きさ(径)であ ること,複数枚のフィンが間隔を空けて配置されていること,フィンよりも支持軸 体の方が径が小さく,支持軸体の貫通孔以外のフィンの部分が放熱に寄与すること に着目すると思われる。 また,前記1で検討した公知意匠の内容に照らすと,フィンの枚数,間隔及び厚 みを変更したり(中間フィンと後端フィンの厚みの関係も含む。),フィンに面取 りを加えたり,支持軸体の径を変更したりすることは,ありふれた手法というべき であって,需要者がそのわずかな違いに着目するとは考えられないが,需要者が放 熱を重視する場合,少なくとも,フィンの枚数や厚み,支持軸体とフィンの径の関 係,フィンの間隔とフィンの径の関係が大きく変われば,受ける美感は異なってく ると考えられる。 他方,乙12意匠等の公知意匠では,後端面(後端フィンの後面)から電源ケー ブルが引き出されており,そのために後端フィンや中間フィンの上側に貫通孔が設 けられ,又は後端フィンの中心部に孔が設けられていたところ,電源ケーブルの引 き出し位置がどこであるかは,検査用照明器具としての使用態様に関わることであ るから,後端フィン及び中間フィンについて,支持軸体の通過部分以外に貫通孔が なく,その各面が平滑である点は,本件意匠において,公知意匠にはない,需要者 の注意を惹く点であると認められる。
エ 要部の認定
以上によれば,公知意匠との関係や,需要者が着目しその注意を惹くという 観点から,前記基本的構成態様及び具体的構\成態様を総合し,以下の点を本件意匠 の要部とするのが相当である。 前端面に発光部のある検査用照明器具に設けられた後方部材である。 後方部材の中心には,検査用照明器具の前方部材の後端面より後方に 延伸する支持軸体が設けられている。 支持軸体には,薄い円柱状の中間フィン2枚及び後端フィン1枚が設 けられている。 後端フィンは,中間フィンよりも厚くなっている。 支持軸体の径は,フィンの径の5分の1程度である。 中間フィン及び後端フィンの径は,前方部材の最大径とほぼ同じであ る。 フィン相互の間隔は,フィンの径の8分の1程度である。 中間フィン及び後端フィンには,支持軸体の通過部分以外に貫通孔は なく,その各面は平滑である。
(4) 被告製品の構成態様\n
別紙「被告製品の図面」及び弁論の全趣旨によれば,被告製品の構成態様は,\n別紙「裁判所認定の構成態様」の「イ号物件」ないし「ヘ号物件」欄記載のとおり\nと認められる(符号は原告の主張をベースにしているが,構成態様の内容は,原告\nも異論がないとしている別紙「被告主張の構成態様」の内容等も踏まえ,一部変更,\n付加した。)。なお,「共通」とあるのは,「本件意匠」欄記載の構成態様と同じ\n構成態様であるという意味である。\n
(5) 本件意匠とイ号物件ないしハ号物件の意匠との類否
ア 本件意匠の要部(前記(3) いし )と前記(4)で認定した被告製品 の構成態様とを対比すると,イ号物件ないしハ号物件については,中間フィンが3\n枚であること(同 参照),支持軸体の径がフィンの径の3分の1強であること(同 参照),フィン相互の間隔がフィンの径の約10分の1ないし約6分の1である こと(同 参照),イ号物件及びハ号物件については,後端フィンの後面中心にね って,その後面又は各面が平滑でないこと(同 参照)といった差異点があり,そ の余は共通点であると認められる。
イ まず,中間フィンの枚数,支持軸体とフィンの径の関係,フィンの間隔 とフィンの径の関係について,大きく相違すれば異なる美感を生じさせる場合があ ることは前述したところであるが,本件意匠とイ号物件ないしハ号物件の各意匠と の差異はわずかであり,格別異なる美感を生じさせるとまでは認められない。
ウ 本件意匠の要部(ク)については、イ号物件ないしハ号物件の中間フィンに 貫通孔はなく,その各面は平滑であるものの,後端フィンについては,ねじ穴又は 貫通孔があり,その後面又は両面が平滑でない点で相違する。 しかしながら,イ号物件及びハ号物件については,後端フィンの後面中心にねじ 穴が設けられているため,ねじ穴自体は支持軸体の中にあって,中間フィンに貫通 孔はなく,ロ号物件については,後端フィンの左右対称位置にねじ穴があって,後 端フィンは貫通しているものの,中間フィンに貫通孔は存しない(別紙「被告製品 の後端フィンの後面に設けられたねじ穴に関する意匠(構成態様)」参照)。\n需要者が検査用照明器具の商品としての特長を把握しようとする際には,正面, あるいは斜め前方,斜め後方から見て,発光部の構造,放熱部の構\造,両者の構造\n的関係を把握しようとすると考えられ,この場合,後端フィンのみならず中間フィ ンにも貫通孔のある乙12意匠のような製品であれば,容易に貫通孔の存在を認識 するのに対し,イ号物件ないしハ号物件の場合,正面,あるいは斜め前方から観察 した程度では,ねじ穴の存在を認識することはなく,後方から観察した場合に初め て後端フィンのねじ穴の存在を認識すると考えられ,ねじ穴があるという機能の違\nいを認識することはあっても,格別これを美感の違いとして認識することはないと 思われる。
エ アないしウを総合すると,本件意匠の要部である前記(3)エ(ア)ないし(ク) とイ号物件ないしハ号物件の構成態様とを対比すると,差異点は存するものの,い\nずれも細部といえる点であって,需要者に視覚を通じて起こさせる美感が異なると いえるような大きな差異点はなく,基本的な構造としてはむしろ共通点が多いから,\nイ号物件ないしハ号物件の意匠は,いずれもこれを全体として観察した場合,本件 意匠と共通の美感を生じさせるものであって,本件意匠に類似するということがで きる。
・・・

(3) 本件意匠の寄与度ないし推定覆滅事由
ア 被告は,本件意匠の被告製品の売上げ(利益)に対する貢献や寄与は低 く,その寄与率は0.2%にも満たないと主張し,推定覆滅事由の存在についても 主張している。これに対し,原告は本件意匠の寄与度は100%であると主張し, 被告の主張を争っている。
イ そこで本件意匠の寄与度ないし推定覆滅事由について検討する。 まず,本件意匠に係る物品は検査用照明器具で,本件意匠はその後方 部材の意匠であるところ,イ号物件ないしハ号物件全体の中で,上記後方部材に相 当する部分が占める割合は,正面視における面積比において,最大でも4割程度と 考えられる(乙18参照)。そして,各物件には,本件意匠に係る物品と同じく, 前方部材には光導出ポート等が設けられ,LED等が内蔵されていると考えられる から,イ号物件ないしハ号物件全体の製造原価の中で後方部材の製造原価が占める 割合は,かなり低いと考えられる。 また,既に検討したとおり,イ号物件ないしハ号物件の意匠と本件意 匠には種々の共通点がみられるものの,これらの共通点に係る構成態様は,検査用\n照明器具の物品分野の意匠において,本件意匠の意匠登録出願前に広く知られた形 態であり,本件意匠の要部とはされない部分も多い。したがって,イ号物件ないし ハ号物件が部分意匠である本件意匠に類似するとしても,これが需要者の購買動機 に結びつく度合いは低いといわざるを得ない。 原告は,本件意匠の実施品とされる「第2世代HLVシリーズ」の製 品の販売開始に当たって,「従来品に比べ2倍以上明るい」こと,「従来より均一 度3倍アップ,明るさも26%アップした」ことを強調し,その特徴として,「低 消費電力・低発熱で環境にやさしい」ことや,「長寿命でメンテナンスコストを削 減」したこと,「軽量・小型設計で場所を取らず省スペース」であることなど,製 品自体の性能や機能\等を強調する一方で,本件意匠には言及すらしていない(甲1 5,16)。また,原告は同製品が掲載されたカタログにおいて,高輝度スポット 照明に関し,電源ケーブルを検査用照明器具の側周面から引き出した図面を掲載し つつも,その宣伝文句として,「明るさと均一度をアップした」ことや,「軽量・ コンパクト設計,しかも低消費電力で長寿命」であることを記載するとともに,製 品の説明において,「高コントラスト撮影が可能」,「従来比2倍の光量アップを\n実現」などと,製品自体の性能や機能\等を強調しており(甲8,乙6),甲17の 製品のカタログにおいても同様であった(甲17)。 被告も,製品のカタログにおいて,「鏡面ワークに最適 軽量・コンパクト」と いうことや,「パッケージ・液体・印字などの透過検査に最適」であることを強調 しており(甲5),乙23添付の他のカタログにおいても同様である(乙23)。 以上によれば,検査用照明器具の需要者は,検査を必要とする製造業者等である ことから,イ号物件ないしハ号物件を購入するに当たり,主に検査用照明器具それ 自体の性能や機能\等に着目すると認められ,本件意匠との類似性が購買の動機とな る程度は高くないといわざるを得ない。

◆判決本文

下記に、問題の意匠が掲載されています。

◆物件目録

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平成30(行ケ)10063  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年11月7日  知的財産高等裁判所

 片仮名「エナジア」を含む結合商標について、アルファベット商標「EnerGia」と類似するかが争われました。知財高裁は、類似しないとした審決を維持しました。
 また,本件商標は「エナジア」の称呼を生じ,引用商標2は「エネルギア」の称 呼を生じるが,中間音における「ナジ」と「ネルギ」の相違が4音と5音という短 い音構成からなる両称呼全体に及ぼす影響は大きいから,離隔的観察においても,\n称呼上の相違を十分認識することができる。\nさらに,本件商標が特定の観念を生じないのに対し,引用商標2は原告のブラン ドという観念を生じるから,本件商標と引用商標2とは観念において相違する。 以上によると,本件商標と引用商標2とは,外観,称呼,観念のいずれにおいて も相紛れるおそれはないから,本件商標は,引用商標2に類似する商標には当たら ないものと認められる。
・・・
イ 原告は,引用商標1及び2の「EnerGia」の欧文字は,一般的な 辞書等に掲載されていない造語であるが,1)辞書等の記載,2)先行商標採択例,3) 商標使用例,4)被告の本件商標の使用等の一般的,恒常的な取引の実情において「エ ナジア」の称呼をもって使用されているから,少なくとも「エネルギア」と「エナ ジア」の二つの称呼が生じると主張する。 しかし,前記(2)ウ,(3)イのとおり,引用商標1及び2は,中国地方のみならず 全国で,その指定役務である「電気の供給」等のエネルギーに関連する役務におい て,「エネルギア」という称呼により,原告の業務に係る役務を表示するものとして\n取引者,需要者の間に広く認識されているものである。そうすると,引用商標1及 び2に接した取引者,需要者は,そのような認識を有するのであるから,引用商標 1及び2を「エネルギア」と称呼するものということができ,引用商標1及び2を 「エナジア」と称呼するものとは認められない。 そして,このことは,「EnerGia」の欧文字が,英語「energy」(エ ナジー)になぞらえて,英語風に「エナジア」と称呼し得ることや,現に「エナジ ア」と称呼させる先行商標採択例や商標使用例があることによって,左右されるも のではない。 また,本件商標の「エナジア」の片仮名文字が「energia」に由来し,被 告ホームページにおいて本件商標が「energia」の文字とともに使用されて いるといった原告主張の事情については,前記アのとおりである。 ウ(ア) 原告は,審決が,引用商標1及び2が「エネルギア」と「エナジア」 の二つの称呼を生じるなど,二つ以上の称呼,観念を生じる場合と認定したにもか かわらず,一つの称呼,観念を生じると認定したことは,商標法4条1項11号該 当性の判断基準に照らし許されないと主張する。 しかし,引用商標1及び2は,いずれも,「エネルギア」の称呼を生じ,原告のブ ランドの観念を生じることは,前記(2),(3)のとおりであり,引用商標1及び2は, 二つ以上の称呼,観念を生じるものではない。
(イ) 原告は,審決のように,対比商標が二つ以上の称呼,観念を生じる場 合でも,一つの称呼,観念のみを生じると認定することは,あたかも禁止権を放棄 し,類似範囲が収縮し消滅したものと取り扱うことになり,商標制度に沿わない結 果を招来するものであって,許されないなどと主張する。 しかし,商標法4条1項11号の類否判断は,商標登録出願された商標に係る査 定時又は審決時において,この商標が引用商標に類似するか否かを判断すべきもの であるから,上記の基準時において,引用商標に接した取引者,需要者において二 つ以上の称呼,観念を生じると認められるときは,その二つ以上の称呼,観念をも って,類否判断すべきである一方,上記の基準時において,引用商標に接した取引 者,需要者において一つの称呼,観念のみを生じると認められるときは,その称呼, 観念をもって,類否判断すべきものである。このように解しても,引用商標に接し た取引者,需要者において一つの称呼,観念のみを生じると認められるときは,こ の称呼,観念をもって類否判断した結果,引用商標と相紛れるおそれのない非類似 である商標については,引用商標との間において出所の混同を生じるおそれはない から,商標制度に沿わないものとはいえない。
(ウ) 原告は,引用商標1及び2が,「エネルギア」と称呼され,中国地方で 周知著名性を獲得しているという事実は,特殊的,限定的な取引の実情であるから, これを考慮することは許されないと主張する。 しかし,引用商標1及び2が,中国地方のみならず全国で,その指定役務である 「電気の供給」等のエネルギーに関連する役務において,「エネルギア」という称呼 により,原告の業務に係る役務を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認\n識されているという事実は,単にその商標が現在使用されている役務についてのみ の特殊的,限定的な取引の実情ということはできないから,本件商標と引用商標1 及び2の類否判断に当たりこれを考慮すべきものである。
(エ) 原告は,審決が,引用商標1及び2が,中国地方を越え,例えば,関 東地方の「電気の供給」の役務の取引者,需要者の間で周知著名性を獲得していた か否かについて,何ら認定していないにもかかわらず,関東地方など周知著名性を 獲得していない地域まで含めて,一つの称呼,観念のみを生じると認定しているこ とは,自己矛盾であるなどと主張する。 しかし,引用商標1及び2が,中国地方のみならず全国で,その指定役務である 「電気の供給」等のエネルギーに関連する役務において,「エネルギア」という称呼 により,原告の業務に係る役務を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認\n識されていることは,前記(2)ウ,(3)イのとおりである。

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◆平成30(行ケ)10062

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平成29(ワ)2114 損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年8月17日  東京地方裁判所

 漏れていたのでアップします。ソフトウェアの表\示画面について、不競法2条1項3号の商品の形態に該当すると判断されました。ただ、同一かという点では否定されています。被告はベネッセです。
 不競法2条1項3号の「商品の形態」とは,「需要者が通常の用法に従った 使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状 並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感」をいうところ(同条4 項),原告ソフトウェアは,タブレットとは別個に経済的価値を有し,独立して取引の対象となるものであることから「商品」ということができ,また,こ\nれを起動する際にタブレットに表示される画面や各機能\を使用する際に表示される画面の形状,模様,色彩等は「形態」に該当し得るというべきである。
(2) 実質的同一性の有無について
そこで,以下,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの形態が実質的に同一 であるかどうかについて検討する。
ア 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,フィールド領域に作成 されたカード及び連結したカードが表示される点で一致し(一致点1)),こ の一致点は原告ソフトウェアの本質的部分に関するものであると主張する。しかし,学校において黒板等に貼\り付けられていたカードをタブレット上で表現し,複数のカードをプレゼンテーションの順序等に応じて連結することは,抽象的な特徴又はアイデアにすぎず,不競法2条1項3号の「商品の\n形態」に該当するものではない。 原告ソフトウェア及び被告ソ\フトウェアにおけるカード及び連結された カードの具体的な画面表示を比較すると(別紙(3),乙5の21頁「カード 結合」欄2)),1)原告ソフトウェアには,カード右上に円で囲まれた黄色の矢印が表\示されるのに対し,被告ソフトウェアにはそのような表\示はない,2)連結されたカードは,原告ソフトウェアにおいては,フィールド領域各所に配置されたカードが曲線又は直線の矢印で連結されるのに対し,被告ソ\フトウェアにおいては,フィールド領域に平行かつ一直線の形で各カードが直 線で連結される(相違点4)),3)原告ソフトウェアは,黄色の細い曲線等によりカードを結び,各カードを結んでいる線はそれぞれ独立し同一の線では\nないのに対し,被告ソフトウェアは黒色の太い一つの直線でカード間を結んでいる,4)原告ソフトウェアは連結されたカードを2行で表\示することもで きるのに対し,被告ソフトウェアでは,複数のカードを複数行で表\示するこ とはできない,5)原告ソフトウェアではプレゼンテーション時に最初に表\示 されるカードの左横に黄色の丸で囲まれた「−」の表示があるのに対し,被告ソ\フトウェアでは黒色の○に白抜きで「start」と表示されている,6)原 告ソフトウェアではプレゼンテーションにおいて最後に表\示されるカード の右上に黄色の丸で囲まれた矢印が表示されているのに対し,被告ソ\フトウ ェアでは黒色の丸に白抜きで「−」の表示がされているなどの点で相違し,全体的な印象も類似していないということができる。\n以上によれば,原告ソフトウェア及び被告ソ\フトウェアでは,カード及び 連結されたカードの画面表示が実質的に同一であるということはできず,むしろ相当程度異なると認めるのが相当である。
イ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,フィールド領域にラン チャーメニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域が表\示される点で一致する(一致点2))と主張する。 しかし,フィールド領域にランチャーメニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域を設けることは,アイデア,抽象的な特徴\n又は機能面の一致にすぎず,不競法2条1項3号の「商品の形態」に該当するものではない。
 そして,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアのランチャーメニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域の具体的な画面表\示を対比すると(別紙(3),乙5の3頁,4頁),1)ランチャーメニューは, 原告ソフトウェアにおいては,画面右に表\示されるタブをタップすることに より画面右側に縦一列で表示されるのに対し,被告ソ\フトウェアにおいては, 画面左上のボタンをタップすることで画面左側に縦一列で表示される(相違点3)),2)カード作成メニューボタンは,原告ソフトウェアでは画面左上部に縦一列で表\示されるのに対し,被告ソフトウェアではフィールド領域をタ\nップすることにより,リング状の表示がされる(相違点2)),3)カード送受 信領域については,原告ソフトウェアにおいては,メイン画面の左下に「資料箱」,「提出」,「送る」などの個別の提出先のアイコンが設けられてい\nるのに対し,被告ソフトウェアにおいては,提出先としてメイン画面の中央下に矢印を付した四角いアイコンが設けられているなどの点で相違してい\nる。  以上によれば,原告ソフトウェア及び被告ソ\フトウェアでは,ランチャー メニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域の画面表\示が実質的に同一であるということはできず,むしろ相当程度異なると認めるのが相当である。
ウ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,「カメラ」等の機能を使用すると画面全体に被写体が表\示され,撮影に必要な機能がボタンで表\示される点で一致する(一致点3))と主張する。  しかし,カメラ撮影のための機能を使用すれば,画面全体に被写体が表\示 されるのはその性質上当然であり,カメラ撮影のためにはシャッターボタン など撮影に必要な機能を使用するための表\示が不可欠であるから,一致点3) は機能を使用するために必要な表\示における一致にすぎない。
 エ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,原告ソフトウェアの「テキスト」機能\及び被告ソフトウェアの「文字」機能\において,文字入力画面が表示される点で一致する(一致点4))と主張する。 しかし,一致点4)は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアがいずれもカ ードにテキストを入力する機能を有するという機能\面での一致をいうにす ぎず,また,原告ソフトウェア及び被告ソ\フトウェアのテキスト作成画面の 表示(別紙(5))もありふれたものにすぎない。
 オ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,描画領域及び各種描画 ツールが表示される点で一致する(一致点5))と主張する。  しかし,一致点5)は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアがいずれもカ ードに描画する機能を有するという機能\面での一致をいうにすぎず,また, 原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの描画作成画面の表示(別紙(6))も ありふれたものにすぎない。

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平成29(ワ)24174  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月24日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、特許権(6154978号)侵害が認められました。原告マネースクウェア、被告外為オンラインです。損害賠償は請求されておらず、サーバの差止だけです。事実認定のところで、実際に〜すると、〜〜となるという事実から、構成要件の充足を認定しています。
 イ 被告サーバにおける「注文情報」
(ア) 前記第2の2(4)イ認定のとおり,被告サービスにおいて注文が行われると, 別表のとおり被告サーバの処理が記録されるところ,前記2認定の被告サービスの内容,別表\の各欄の内容及び被告サーバの処理に照らすと,被告サーバにおいて,注文が行われた時点,すなわち,「注文日時」欄記載の日時に,同欄記載の注文を 識別するための注文番号,「注文日時」欄記載の注文日時,「取引」欄記載の新規 注文又は決済注文の別,「通貨P」欄記載の取引対象となる通貨の種類,「売」欄 記載の売り注文であるか否か,「買」欄記載の買い注文であるか否か,「新規注文」 欄記載のイフダンオーダーを構成する新規注文の注文番号,「執行条件」欄記載の成行注文,指値注文,逆指値注文の注文種別,「指定R」欄記載の指定価格,「期\n限」欄記載の注文の有効期限といった個々の注文の内容を規定する情報が生成され ていると推認することができる。 また,被告サーバにおいて,市場に発注された個々の注文が約定等したことが検 知されると,「注文状況」欄に,その注文が「無効」,「約定」,「取消」のいず れの状況にあるかが,「約定R」欄に,約定価格が,「約定等日時」欄に,注文が 約定等した日時が,すなわち,約定等の結果に係る情報が記録されていると推認す ることができる。 そうすると,少なくとも,被告サーバに記録されている注文番号,注文日時,新 規注文又は決済注文の別,取引対象となる通貨の種類,売り注文であるか,買い注 文であるか,イフダンオーダーを構成する新規注文の注文番号,成行注文,指値注文,逆指値注文の注文種別,指定価格,注文の有効期限といった個々の注文の内容\nを規定する情報は,個々の買い注文又は売り注文を行うために必要となる情報であ るということができ,本件発明の「注文情報」に該当する。 (イ) 以上より,被告サーバでは,本件発明の構成要件BないしHの「注文情報」に相当する情報が生成されていると認められる。
ウ 小括
前記のとおり,被告サーバでは,構成要件BないしHの「注文情報」に相当する情報が生成されているところ,これらの構\成要件の充足性について,後記(2),(3)に おいて検討する構成要件G及びHを除いた構\成要件BないしFの充足性については 次のとおりであり,被告サーバは構成要件BないしFをいずれも充足する。すなわち,本件発明の「注文情報」に関する前記判示を踏まえ,被告サーバの構\成を構成要件BないしFと対比すると,被告サーバは,例えば,番号114,111,108,105の買い注文に係る買い注文情報のような複数の買い注文情報を\n生成する買い注文情報生成手段を備えるものであるから,「金融商品の買い注文を 行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段」(構成要件B)を備えており,また,例えば,番号113,110,107,104の売り注文に\n係る売り注文情報のような複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段を 備えるものであるから,「前記買い注文の約定によって保有したポジションを,約 定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文 情報生成手段とを有する注文情報生成手段」(構成要件C及びD)を備えている。さらに,被告サーバは,別表\に「注文状況」欄及び「約定等日時」欄等があることから明らかなように,「前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検 知手段とを備え」(構成要件E)るものであり,また,例えば,番号113,110,107,104の売り注文のように,指定価格が114.90円,114.2\nなるものであるから,「前記複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報は, それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報」(構成要件F)を備えている。
(2) 争点1−2(被告サーバは構成要件Hを充足するか)
ア 構成要件Hは,「前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知する\nと,前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記 複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注 文価格の情報を含む売り注文情報を生成する…」というものであり,文言上,「複 数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文」1個が約定したときに 「複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り 注文価格の情報を含む売り注文情報」1個が生成される構成を含むと解するのが相当である。\nこれを被告サーバについてみると,前記2(2)認定のとおり,被告サーバは,約定 検知手段が,例えば,番号113,110,107,104の売りの指値注文のよ うな複数の売り注文のうち,指定価格を114.90円とする最も高い売り注文価 格の番号113の売り注文が約定されたことを検知すると,注文情報生成手段は, この検知の情報を受けて,指定価格を番号113の指定価格114.90円より0. 62円高い115.52円とし,これを含む売り注文情報である番号96の新たな 売りの指値注文を生成するものであるから,構成要件Hを充足する。
イ 被告は,構成要件Hは,「複数の売り注文」全てが約定したときに,「注文情報生成手段」が新たに「複数の売り注文情報」全て「を生成する」ことを意味す\nると解すべきであるとし,その理由として,1)構成要件Hの「最も高い売り注文価格の売り注文注文が約定されたことを検知」したときは,「最も高い売り注文価格」\nより低い価格の売り注文が既に約定していることが明らかであるから,構成要件Gの「前記複数の売り注文情報」が全て約定したときを意味すること,2)本件明細書 の【0145】ないし【0147】においては,全ての売りの指値注文が約定して 初めて,新たな買いの指値注文(B1ないしB5)及び売りの指値注文(S1ない しS5)の全てが同時に行われていること,3)構成要件Hの「前記注文情報生成手段」が引用している構\成要件C及びDにおいて,「注文情報生成手段」は「複数の売り注文情報」全て「を生成する」ものであるとされていることなどを主張する。 しかしながら,被告が理由として挙げる1)については,構成要件Hの文言にない限定を付すものである上,「注文情報生成手段」が「複数の売り注文情報」を「一\nの注文手続」で生成することを規定しているにすぎない構成要件Gについて,「注文情報生成手段」が常に「複数の売り注文情報」を生成することを規定するとの限\n定を加えた解釈を前提としていることから,採用することはできない。 また,被告が理由として挙げる2)についても,本件明細書の【0145】ないし 【0147】は,構成要件Hに対応する「シフト機能\」に「決済トレール機能」等を組み合わせた実施例にすぎないから採用し得ない。後記4(1)のとおり,全ての売 り注文が約定しなければ「シフト機能」を適用できないとするものでもない。したがって,被告の主張は採用することができない。
ウ また,被告は,被告サーバが「前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文 価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報」に係る「売り注文情報を 生成する」時点は,「前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い 売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知」したときではなく,買いの成行 注文の約定を検知したときであるから,構成要件Hを充足しないと主張し,買いの成行注文が売り注文に先行して行われていることを示す事情として,別表\において,番号96の売りの指値注文が「2014/11/7 22:29」に約定すると, 同一時刻に番号89の買いの成行注文だけが行われ,約定しているのに対し,番号 85の売りの指値注文は「2014/11/7 22:30」に行われていること などを指摘する。 被告の主張の趣旨は必ずしも明確でないが,仮に,個々の注文が有効なものとし て市場に発注された時点で,被告サーバで「注文情報」が生成されると主張するも のであれば,前記2(3),3(1)イ認定のとおり,被告サーバにおいて,市場に発注前 の売りの指値注文及び逆指値注文であっても,他の注文とともに,注文が行われた 時点で,注文番号等の注文情報が生成されていることと整合せず,採用することが できない。

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平成29(ネ)10073  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 マネースクウェアVS外為オンライン事件は、控訴審でも、技術的範囲に属しないと判断されました。成行注文であるNo.97の買い注文またはNo.88に係る注文情報が、構成要件Eの「新たな一の価格の新たな前記第一注文情報」と均等であるとの主張も、置換容易性がないとして、否定されました。
 前記前提事実からすると,被控訴人サービスは,買い注文から入った場 合は,取引開始後の最初の買い注文を成行注文とし,同注文と対をなす売り注文を 指値注文とし,同売りの指値注文が約定することをトリガとして新たな価格帯での 取引として,買いの成行注文に係る注文情報を生成させることとし,その後,同買 いの成行注文と対をなす売りの指値注文が約定することをトリガとして,更に新た な価格帯での取引を行い,以降,これを繰り返すという構成を採用していることが\n認められる。
被控訴人サービスの上記構成を前提として,被控訴人サービスの構\成と本件発 明の構成とを比較すると,まず,本件発明においては,第一注文情報及び第二注文\n情報とも指値注文とする構成であるのに対し,被控訴人サービスにおいては,1)第 一注文情報のうち取引開始後最初の取引の第一注文情報と,相場価格の変動後の新 たな価格帯での最初の取引の第一注文情報のみを成行注文とする構成である点で異\nなり,この点で,被控訴人サービスは構成要件E2)を充足しないが,特定の事項を トリガとして生成する成行注文においては,トリガとなる事項をどのように構成す\nるかの点もその内容となっているものと解されること,被控訴人サービスにおいて は,2)相場変動後の新たな価格帯での最初の成行注文に係る注文情報の生成を,旧 価格帯における成行注文と対をなす指値注文の約定をトリガとして行わせる構成と\nしたことが,上記1)の構成と一体となって技術的な意義を有するものと解されるこ\nとから,上記1)及び2)の構成(以下「本件相違構\成」)を本件発明の構成との相違\n点として把握して検討するのが相当である。 この点,控訴人は,被控訴人サービスと本件発明とは,本件発明が「検出され た前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定された値以上となった場合に」,新\nたな価格の「買いの指値注文」を設定するのに対し,被控訴人サービスは,「検出 された前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定された値以上となり,売りの指\n値注文が約定した場合に」,新たな価格の「買いの成行注文」を設定する点で相違 すると主張して均等侵害の主張をしているが,同主張は,被控訴人サービスにおい ては変動後の価格帯で生成されるすべての買い注文が成行注文であるとして,本件 設定できることからすると,相場価格が指定価格となることをトリガとする構成が\n想到し易いものと考えられる。
また,前記1のとおり,本件発明は,同じ価格帯でイフダンオーダーを自動的 に繰り返すことのできる従来の発明の課題を解決したものであり,同じ価格帯での イフダンオーダーを自動的に繰り返すことを前提としているところ,被控訴人サー ビスのように本件相違構成を採用すると,新たな価格帯における取引を行わせるた\nめに必要な相場価格の変動幅は,取引開始時に設定された第二注文情報の指値注文 と取引開始時の相場価格の差額と一致することになり,その結果,同じ価格帯での イフダンオーダーを継続させるためには,相場価格が変動した場合に,旧価格帯の 成行注文と対をなす売りの指値注文の約定をトリガとして,旧価格帯における指値 注文に係る注文情報群も生成させる構成を採用するなどの工夫をする必要が生じる\n(被控訴人サービスでは,同一の価格帯でのイフダンオーダーを継続させるために は,No.113の売りの指値注文の約定をトリガとして,新たな価格帯の取引で あるNo.97の買いの成行注文に係る注文情報を生成するだけでなく,旧価格帯 の取引であるNo.100及びNo.99の各注文に係る注文情報群をも生成させ る必要がある。なお,本件発明においても,顧客が「予め設定された値」を第二注\n文情報の指値価格と第一注文情報の指値価格の差額以下の値と設定することを可能\nとするのであれば,同じ価格帯でのイフダンオーダーを継続させるためには,相場 価格が変動しても,旧価格帯での取引を継続させる構成としておく必要があるが,\n上記の設定ができないようにすれば,上記の構成とする必要はない。)。このよう\nな理由から,被控訴人サービスは,本件相違構成を採用するためには,相場価格が\n変動した場合に,旧価格帯の成行注文と対をなす指値注文の約定をトリガとして, 旧価格帯における指値注文に係る注文情報群も生成させる必要があり,この点を考 慮すると,本件発明に本件相違構成を適用するに当たっては,相応の検討が必要で\nあったというべきである。 以上のことに,本件全証拠によっても,被控訴人サービスが開始された時点に おいて,本件相違構成を採用した金融商品取引に係るサービスが存在したことや,\n本件相違構成を開示した文献があったとは認められないことを併せ考慮すると,本\n件相違構成に係る置換をすることは当業者が容易に想到することができたとは認め\nられないというべきである。

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◆平成28(ワ)21346

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平成29(行ケ)10117  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年11月6日  知的財産高等裁判所

 引用文献にはそのものが作れるレベルでは記載されていないので、29条1項3号の「記載された発明」には該当しないと判断されました。
 よってまず,引用例1から本件取消決定が認定した引用発明1を認定する ことができるかどうかについて検討する。 特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」は,当業者が,出願 時の技術水準に基づいて本願発明(本件特許発明)を容易に発明することが できたかどうかを判断する基礎となるべきものであるから,当該刊行物の記 載から抽出し得る具体的な技術的思想でなければならない。また,本件特許 発明は物の発明であるから,進歩性を検討するに当たって,刊行物に記載さ れた物の発明との対比を行うことになるが,ここで,刊行物に物の発明が記 載されているといえるためには,刊行物の記載及び本件特許の出願時(以下 「本件出願時」という。)の技術常識に基づいて,当業者がその物を作れる ことが必要である。
かかる観点から本件について検討すると,引用例1の記載及び本件出願時 の技術常識を考慮しても,引用発明1のデバイスを当業者が作れるように記 載されているとはいえない。理由は以下のとおりである。 ア 本件取消決定は,引用発明1をP1タンパク質に対するモノクローナル 抗体を用いて,患者サンプル中のマイコプラズマ・ニューモニエの検出を 行うラテラルフローデバイスに関する発明として認定しているところ,ラ テラルフローデバイスは,イムノクロマトグラフィー法に基づく検出デバ イスであり,イムノクロマトグラフィー法による抗原検出においては,抗 体と抗原がサンドイッチ複合体を形成する必要があると認められ(甲8〜 10,弁論の全趣旨),また,モノクローナル抗体の場合には,抗原を挟 み込む二つの抗体が同じものでは不都合であり,少なくとも,二つの異な る抗体を用いることが必要であると認められる(この点は特に当事者に争 いがない。)。 その一方で,異なる二つのモノクローナル抗体でありさえすれば,抗体 と抗原がサンドイッチ複合体を形成するとの本件出願時の技術常識も見当 たらず,また,サンドイッチ複合体を形成しさえすれば,必ず患者サンプ ル中のマイコプラズマ・ニューモニエを検出できると直ちにいうこともで きない。
たとえば,引用例2の199頁図1には,捕獲抗体として特異性の異な る二つのポリクローナル抗体を用い,ペルオキシダーゼ標識モノクローナ ル抗体(検出抗体)を変えてマイコプラズマ・ニューモニエ抗原の捕獲ア ッセイを行った試験の結果を表す二つのグラフが示されている。捕獲抗体\nが抗Mp−IgG(右)の場合,試験されたペルオキシダーゼ標識抗体で は,いずれも,標識抗体100ngで450nmにおける吸光度が2を超 え,標識抗体1μgにおいて,450nmにおける吸光度が3を超えてい る。これに対し,捕獲抗体が抗P1−IgG(左)の場合には,標識抗体 がP1.25又はM74では,1μgで450nmにおける吸光度が3を 超えていても,標識抗体がM57では,1μgでも吸光度が1に満たない。 このように,同じ捕獲抗体を用いた場合であっても,検出抗体によって検 出感度が異なり,サンドイッチ複合体の形成に基づく検出は,抗体の組合 せによって,検出感度が大きく異なる場合があると理解されるから,モノ クローナル抗体を用いてサンドイッチ複合体の形成に基づく検出を行う場 合には,適切な抗体を組み合わせて用いる必要があると認められる。 本件取消決定が認定した引用発明1のラテラルフローデバイスも,サン ドイッチ複合体の形成に基づく抗原の検出デバイスであるから,P1タン パク質に対するモノクローナル抗体を用いて,患者サンプル中のマイコプ ラズマ・ニューモニエを検出するラテラルフローデバイスを作るためには, 第1のモノクローナル抗体と第2のモノクローナル抗体として適切な組合 せのモノクローナル抗体を用いる必要があると認められる。 そこで,第1のモノクローナル抗体と第2のモノクローナル抗体の組合 せに関して引用例1の記載を検討するに,引用例1には,ラテラルフロー デバイスに用いる二つの抗体について,具体的なモノクローナル抗体の組 合せを示す記載は見当たらない。また,本件出願時において,ラテラルフ ローデバイス等のサンドイッチ複合体を形成できる具体的なモノクローナ ル抗体の組合せが周知であったことを示す証拠もない(引用例2の199 頁図1の左側のグラフに示されている実験において,P1.25とM74 は,それぞれ,抗P1−IgG又は抗Mp−IgGを捕獲抗体とした場合 に,抗原を検出可能としていることから,当該捕獲抗体と抗原とからなる\nサンドイッチ複合体を形成するものと考えられるが,引用例2に記載され ていることをもって,直ちにこれらの抗体が周知であるということはでき ないし,そもそも,当該捕獲抗体はいずれもポリクローナル抗体であるか ら,異なる二つのモノクローナル抗体の組合せが明らかにされているとは いえない。ほかにサンドイッチ複合体を形成できる具体的なモノクローナ ル抗体の組合せを明らかにする証拠はない。)。 次に,引用例1に記載された具体的なイムノクロマトグラフィー(IC T)デバイスについての唯一の実施例である実施例4は,抗rCARDS 抗体を用いたもので,P1タンパク質に対する抗体を用いたものではない。 また,引用例1におけるP1タンパク質に対する抗体に関する具体的な記 載は,実施例3のみであるが,実施例3における抗原の検出は,サンドイ ッチ複合体の形成とは異なる,市販の二次抗体である抗ウサギ又は抗マウ ス抗体を用いた方法によるものである。したがって,これらの実施例の記 載から,サンドイッチ複合体を形成可能なモノクローナル抗体を知ること\nはできない。
さらに,引用例1には,P1タンパク質に対するモノクローナル抗体と して,マウスのモノクローナル抗真正P1タンパク質抗体H136E7(【0 012】)とrP1に対するモノクローナル抗体(【0096】)に関す る記載があるが,P1タンパク質に対する具体的なモノクローナルは,H 136E7が記載されているにとどまり,rP1に対するモノクローナル 抗体については,その当該モノクローナル抗体を生産する細胞株も,モノ クローナル抗体のアミノ酸配列等の情報も,H136E7とのサンドイッ チ複合体の形成の有無に関する手掛かりとなる情報も記載されていない。 このような引用例1の記載に基づいて,ラテラルフローデバイスを作るた めには,モノクローナル抗体として一つはH136E7を用いるとしても, もう一つ,H136E7とサンドイッチ複合体を形成可能な別のモノクロ\nーナル抗体を用いる必要があるが,引用例1には,そのようなモノクロー ナル抗体の構造について手掛かりとなる記載がなく,何らかの方法でモノ\nクローナル抗体を入手し,それらのモノクローナル抗体が,H136E7 とサンドイッチ複合体を形成可能であるかを調べ,試行錯誤によって,H\n136E7と組み合わせて患者サンプル中のマイコプラズマ・ニューモニ エを検出するラテラルフローデバイスを構成できるモノクローナル抗体を\n見つけ出す必要がある。
以上を踏まえれば,たとえ様々なモノクローナル抗体を得る技術自体は 周知技術であるとしても,本件取消決定が認定した引用発明1のラテラル フローデバイスは,引用例1の記載及び本件出願時の技術常識から,直ち に作ることができるものとはいえない。 したがって,引用例1に引用発明が記載されている(あるいは,記載さ れているに等しい)ということはできない。

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平成29(行ケ)10191  審決取消請求事件  特許権 行政訴訟 平成30年10月29日  知的財産高等裁判所

 審決は、記載不備(明確性、サポート要件、実施可能要件)と判断しましたが、知財高裁(2部)は、これを取り消しました。
 イ(ア) 本願明細書には,前記(1)イのとおり,中間水について,少なくとも− 40度付近の温度において,規則化(コールドクリスタリゼーション)する傾向を 強く有するものと推察されること,規則化する強い傾向の存在により,不規則な状 態で凝固した状態からの加熱において,−40度付近で規則化に伴う発熱がみられ ること,規則化に伴う発熱量は,規則化を生じている水の量,すなわち,中間水の 量に比例するものと推察されることが記載されている。 (イ) 前記(1)ウの甲1〜5の記載によると,中間水の量(Wfb)は,次の式 のとおり,低温結晶化した水におけるエンタルピー変化量(ΔHcc)と,水の融解熱 (Cp)から得ることができることが理解される。
Wfb=ΔHcc/Cp
この式を変形すると,ΔHcc=Cp×Wfb となり,低温結晶化した水におけるエン タルピー変化量(ΔHcc),すなわち,コールドクリスタリゼーションに伴う発熱量 は,比例定数を Cp として,中間水の量(Wfb)に比例するといえる。 このことも,前記アと同様の理由により,日本バイオマテリアル学会の構成員や\n関係者には,平成21年の時点において,知られていたと認められるのであって, 本願明細書に記載された内容の「中間水」の量の計算方法は,本願出願時において, 当業者の技術常識になっていたと認められることができるというべきである。 そして,Cp は,純水の融解熱と等しいと考えられ,純水の融解熱が 334J / g であ ることも,前記ウの甲2及び甲4の記載並びに証拠(甲11)及び弁論の全趣旨に よると,当業者の技術常識であったと認められる。 したがって,当業者は,中間水の量の算出方法については,本願明細書の記載及 び本願出願時の技術常識に基づいて明確に理解することができたというべきである。
(3)ア 被告は,本願明細書から,「コールドクリスタリゼーションに伴う発熱量 は,中間水の量に比例するものと推察される。」という認定aだけではなく,「中間 水の量は,コールドクリスタリゼーションに伴う発熱ピークの挙動(コールドクリ スタリゼーションに伴う発熱量は含水量の増加に伴って増加するが,ある含水量以 上では変化しなくなること)と,全含水量とから求めることができる。」という認定 b及び「中間水の量は,各含水量におけるコールドクリスタリゼーションに伴う発 熱量と0度付近の吸熱量の関係から中間水の最大量を求めてW0(試料の乾燥重量) で除することにより求められる。」という認定cも認定できるところ,これらの認定 が共存するため,本願明細書から,当業者が中間水の量をどのように算出したらよ いのか明確に理解することはできない旨主張する。 認定bは,前記(1)イ(イ)b(b)の本願明細書の記載に基づくものであり,認定cは, 前記(1)イ(イ)b(c)の本願明細書の記載に基づくものであるが,いずれも,中間水の量 を求める方法についての具体的な内容の説明はされていない。 一方,認定aは,前記(1)イ(イ)b(a)の本願明細書の記載に基づくものであるが,前 記(2)イのとおり,上記記載を含む本願明細書の記載及び本願出願時の技術常識から, 中間水の量の算出方法を明確に理解することができる。 そうすると,当業者は,本願明細書に前記(1)イ(イ)b(b)及び(c)の記載があるからと いって,本願明細書の記載及び本願出願時の技術常識から明確に理解できる中間水 の算出方法を理解できなくなるというものではないというべきである。 イ 被告は,当業者は,発明の詳細な説明の記載に基づき,中間水のコール ドクリスタリゼーションは通常の水の凍結とは異なる相転移であると理解されるか ら,中間水のコールドクリスタリゼーションの単位潜熱(中間水の量を算出するた めの比例定数)は,通常の水の凍結の場合の単位凝固潜熱334J/gとは異なる 値であると考えるのが自然である旨主張する。 しかし,前記(2)イのとおり,比例定数(Cp)は,純水の融解熱に等しいと考えら れている。本願明細書に記載されたPMEAのコールドクリスタリゼーションに伴 う発熱量の最大値を中間水量で除した値が313J/gであるとしても,純水の融 解熱が334J/gであることは,当業者の技術常識である以上,当業者は,31 3J/gの方が誤差を含む数値であると考えるのか通常であると解されるのであっ て,このことにより,当業者が,中間水のコールドクリスタリゼーションの単位潜 熱(中間水の量を算出するための比例定数)が,純水の単位凝固潜熱334J/g とは異なる値であると考えるとはいい難い。 ウ 被告は,甲1〜5は,本願発明者やその共同研究者による文献であり, 中間水の概念は,本願発明者らの研究グループが独自に提唱したもので,本願発明 者らの研究グループ以外の当業者に,本願出願時までに広く知れ渡り,技術常識に なっていたことを示す証拠はない旨主張する。 「中間水」の概念が本願発明者であるAにより構築されたことは,前記(2)アのと おりであるが,前記(2)ア,イのとおり,「中間水」の概念及びその量の算出方法は当 業者の技術常識となったことが認められる。
エ 被告は,甲5は本願明細書で引用したものではなく,仮に当業者が甲5 を本願明細書の記載から探し当てることができたとしても,その記載内容が実質的 に発明の詳細な説明に記載されたに等しいものであるということはできない旨主張 する。
しかし,本願明細書の【0007】には【先行技術文献】として,「【非特許文献 1】バイオマテリアル 28−1,2010」と記載されているから,当業者であれ ば,これは,バイオマテリアルという雑誌の28巻1号(出版年2010年)とい うものであると理解する。そして,甲5は,その雑誌のその号に掲載されている。 しかも,上記の「非特許文献1」は,本願明細書の【0013】においても,「所定 量の水を含水した水和性組成物を一旦十分に冷却し,その後に比較的ゆっくりした\n速度で加熱した場合に,0℃以下の特定の温度域において所定の発熱を生じると共 に,−10度近辺から0度までの広い温度範囲において吸熱が観察されることが明 らかにされている(例えば,非特許文献1等を参照)。」という形で引用されている。 そうすると,当業者は,本願明細書の記載から,容易に甲5に行き着くものと考え られるから,甲5は本願の発明の詳細な説明【0007】で引用されたものである と認められる。
そして,甲5が,「中間水」の概念及びその量の算出方法が当業者の技術常識とな ったことを裏付け得るものであることは,前記(2)ア,イのとおりである。 オ 被告は,本願発明の「中間水の量が1wt%以上,且つ30wt%以下」 がどの時点の中間水の量を意味するかについて,発明の詳細な説明に,発熱量が最 大値になる含水量の場合と飽和含水になった時点での含水量の場合という,相異な る二通りの記載があるから,本願発明の技術的範囲が定まらない旨主張する。 しかし,前記(2)イのとおり,当業者は,本願明細書の記載及び出願当時の技術常 識に基づいて,中間水の量は,コールドクリスタリゼーションに伴う発熱量と水の 融解熱から得ることができることが理解されるから,当業者が本願補正発明を実施 するに当たり,水和性組成物について,発熱量が最大値の中間水の量と,飽和含水 になった時点の中間水の量の二通りが記載されているとしても,水和性組成物の中 間水の量は,含水量にかかわらず,コールドクリスタリゼーションに伴う発熱量と 水の融解熱から一義的に決まるものであって,本願補正発明の技術的範囲が定まら ないということはできない。
・・・
本件審決は,当業者が本願出願時の技術常識に照らしても本願明細書の記載から 中間水の量の算出方法を理解することができないから,表2に中間水量が記載され\nた具体的な組成物以外のものについては課題が解決できると認識することはできな い旨判断したが,当業者が本願出願時の技術常識に照らして本願明細書の記載から 中間水の量の算出方法を理解することができることは,前記2のとおりであるから, 本件審決のサポート要件の有無の判断は,前提を欠き,誤りがある。
4 取消事由3(実施可能要件違反)について
本件審決は,当業者が本願出願時の技術常識に照らしても本願明細書の記載から 中間水の量の算出方法を理解することができないから,本願補正発明1及び4を当

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平成29(ワ)10038  特許権移転登録手続等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月25日  東京地方裁判所(47部)

 冒認を理由に、発明者に特許権を移転せよとの判断がなされました。
 ア 原告は,昭和57年に設立され,様々な分野で使用される装置や機械設備 を設計し,顧客からの要望に応じてオーダーメイドで当該機械を製造するこ とを主たる業務とする株式会社であり,既製品として存在しない各種の機械 装置を短期間で開発・製造することを得意業務とすると自負している。原告 代表者は,新たな開発をする際には,アイデアを従業員との間でやり取りし\nて,その内容を業務日報に記録していく方法を採っていた。 被告は,美容室の営業を主たる業務とする特例有限会社である。被告代表\n者は,高校卒業後,大学で電子工学を学び,卒業後,美容学校を経て,美容 師として稼働するようになり,昭和48年に被告を設立して以降,被告の代 表取締役を務めている。被告代表\者は,発明の名称を「パーマネントウェー ブ用補助具」,「毛髪のウェーブ形成方法」,「頭髪の縞染め用器具」とする各 発明につき,自らを発明者とする特許を受けている(甲13ないし15)。 原告と被告は,原告が被告からはさみの補助器具の製造依頼を受けたのを 契機として,30年来の付き合いがあった。
イ 平成26年3月7日,原告代表者は,被告代表\者のもとを訪れて雑談して いる際に,被告代表者から市場のニーズに適合した自動洗髪機が存在しない\n旨の話を聞いた。原告代表者が原告の技術によれば被告代表\者の望むような 自動洗髪機を製造開発できる旨を伝えたところ,被告代表者は,原告代表\者 に対し,自動洗髪機の開発を依頼した。その際,被告代表者は,原告代表\者 に対し,自動洗髪装置の具体的構成について説明や指示をしていない。\n
ウ 原告代表者は,自動洗髪機の開発に当たり,まず他社の先行特許の調査を\n行い,先行特許のうち,頭皮に触れずにシャワーの水圧で流す方法について は,カットした短い毛が毛根の近くに入っているとうまくとれないという問 題があり,他方,ギアを使って突起にかかる圧力を均等にする方法について は,1つの線状の形でも複雑であり,頭の形を覆う球面にすると更に複雑と なるほか,安全面やコストの点でも問題がある等の分析を重ねた。 このほか,原告代表者は,突起等をばねで伸ばす方法も検討したが,突起\n等が3本を超えた場合に,適正な荷重を得られず,適正な圧力で頭を洗うこ とができないという結論に至った。 このような分析・検討を経て,原告代表者は,頭部の形状等が個人で異な\nり,頭部全体に均等な圧力で突起部を当接させにくいという課題の解決手段 として,柔らかいエアバッグに突起部を備え,エアバッグに空気を入れて膨 張させるという着想にたどり着いた。
そして,原告代表者は,平成26年4月5日に,本件特許発明の構\成が全 て開示されている全体構想計画案(甲2の1,甲2の2)を作成し,同月7\n日,被告代表者に対し交付した。その後,同月22日,原告代表\者は,本件 特許発明について記載した業務日報(甲3)を作成した。 エ Aは,平成26年5月2日,被告代表者から自動洗髪機に係る特許出願に\nついて初回の相談を受け,同月14日,被告代表者に対し,自動洗髪機に関\nする先行特許調査を行ったが,本件特許発明に類似する先行特許は見つから なかった旨を報告するとともに,被告代表者の指示を待って特許出願手続を\n進める旨を記載したメールを送信した(乙8)。 被告は,(所在地は省略)中小企業団体中央会(所在地は省略)地域事務局 に対し,「平成25年度補正 中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サ ービス革新事業」の公募申請書類を提出し,平成26年5月15日に同申\請 が受け付けられた旨の通知を受けた。この公募申請書類である事業計画書に\nは,自動洗髪機を示す図も記載されていた(甲9の1,9の2)。
オ 平成26年7月11日,原告代表者は,被告代表\者に対し,「昨日申し受け\nました資料」として,本件特許発明に係る内容を記載した業務日報の該当箇 所の画像を添付したメールを送信した(甲17の1ないし17の7)。
カ 平成26年7月15日,原告代表者は,前日に被告代表\者から頼まれてい たとおり,それまで面識のなかったAに電話で連絡をとった。その後,原告 代表者は,同月23日にAから,特許出願に向けて,本件特許発明の発明者\nとして原告代表者と被告代表\者の両名が記載された案文の電子ファイル(甲 6)が添付され,文面に「アサクラインターナショナル様とセリックス様の 共同出願として記載しています。」と記載された電子メールの送信を受けた (甲5)。 原告代表者は,自ら発明したものでも,顧客である被告が特許を取り,原\n告が製造を請け負って利益を得る形で双方が理解してやってきたとの認識 があったこと,特許については最終的に申請する際に被告代表\者と話せば足 りると考えていたことから,この時点で被告代表者が共同発明者となってい\nることにつき異議を述べなかった。 キ 平成27年3月9日,被告が原告に対し,これ以上の開発依頼をストップ する旨を通告したのに対し,原告が「それならば知財については当社が引き 受ける。」と伝え,原告・被告間の自動洗髪装置開発の業務委託関係は終了し た。

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平成28(ワ)38103  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月17日  東京地方裁判所

 太陽光発電システムの工事について特許権侵害が認められました。東京地裁29部は、特102条3項による損害額として約1000万円を認めました。
 (1)原告は,まず,原告が太陽光発電装置の請負契約を締結する場合の請負代金 額を基に,太陽光発電パネルの出力1kw当たりの請負代金額は32万円であると して,これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じた1億1581万440 0円を民法709条所定の損害であると主張する。 しかしながら,太陽光発電装置の施工について,被告が本件各土地で施工してい なければ,原告がこれらを受注して施工することができたと認めるに足る証拠はな いから,原告の主張する上記の損害は被告の行為と相当因果関係のある損害である と認めることはできない。
(2) 原告は,次いで,本件特許に係る「単位数量当たりの利益の額」(特許法1 02条1項)は太陽光発電パネルの出力1kwを1単位として算定すべきであると して,太陽光発電パネルの出力1kw当たりの利益の額は9万8000円であり, これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じた3546万8160円を特許 法102条1項による損害額であると主張する。
しかしながら,原告の上記の主張は,アルバテック又は原告による太陽光発電装 置の施工に係る見積書(甲22の1,甲23の1)等の書面に基づくものであり, これらが実際の取引金額を反映したものであると認めるに足る証拠はないから,本 件各土地における太陽光発電装置の施工に対応する原告の単位数量当たりの利益の 額を算定する根拠として不十分である。\nその他本件特許に係る単位数量当たりの利益の額を認めるに足る証拠はなく,し たがって,特許法102条1項による損害額として,原告の主張する上記の損害を 認定することはできない。
(3)ア 原告は,さらに,原告が本件特許の実施許諾をする場合の実施料は出力1 kw当たり3万円であるとして,これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗 じた1085万7600円を特許法102条3項による損害額であると主張する。 イ そこで検討すると,証拠(甲24)によれば,原告は,平成25年12月1 5日,他社との間で,本件特許に係る通常実施権を許諾する旨の特許権実施許諾契 約を締結しており,同契約3条(1)において,実施料については,本件特許に係る施 工方法を用いて施工された太陽光発電パネルの出力1kwに対して3万円を乗じた 額とされたことが認められる。そして,本件全証拠によっても,この実施料額が高 額にすぎて不相当であると認めることはできない。 したがって,本件発明の実施に係る実施料率としては,太陽光発電パネルの出力 1kw当たり3万円と認めるのが相当であり,本件における特許法102条3項に よる損害額は,3万円に本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じて算定するの が相当である。 そうすると,本件各土地の太陽光発電パネルの出力は,前記第2の2前提事実(4)のとおりであって,合計361.92kwであるから,本件における特許法102 条3項による損害額は合計1085万7600円(本件土地1につき3万円に84. 24kwを乗じた252万7200円,本件土地2につき3万円に277.68k wを乗じた833万0400円の合計)である。
ウ これに対し,被告は,特許権の実施料率が請負代金の10%強となることは およそ考えられず,請負代金を基準とした場合にはその1%程度の金額にとどまる 旨主張するが,その理由を具体的に主張しておらず,裏付けとなる証拠を提出して いないから,実施料率を基礎付ける事情として採用することができない。

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平成29(ワ)1129 意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 平成30年9月21日  東京地方裁判所

 高気圧酸素補給カプセルに関する意匠権侵害について、非類似であると判断されました。判決文中に両意匠が掲載されてます。
 以上のとおり,高気圧酸素補給カプセルにおいて,その全体形状が胴 部及び側部からなる円筒状をしていること(構成A),胴部の長手方向\nに正面視左端側から略中央まで及び,周方向に略中央からから上端を超 えた位置に及ぶ横長隅丸矩形状の開口部を設けること(構成B),胴部\nの内周側壁側に開口部の長手方向にスライドするスライド式ドアを設 けること(構成C)は,いずれも先行意匠にみられるものであるところ,\nその構成態様はその機能\や使用方法に基づくありふれた態様であり,取 引者,需要者の注意を惹く程度はそれほど大きくないということができ る。
d これに対し,原告は,本件意匠の基本構成態様を個別に開示する公知\nIV意匠が存在していたとしても,本件意匠における胴部における開口部の 配置及び位置並びにドアの構成の組合せを開示する公知意匠は存在し\nないと主張する。 しかし,上記各構成は先行意匠に普通に見られるありふれた態様であ\nり,取引者,需要者の注意を強く惹くものであるとはいえないことは前 記判示のとおりであり,同各構成を組み合わせることにより,取引者,\n需要者に強い印象を与えるような構成となるということもできない。\n また,原告は,上記各先行意匠は本件意匠に係る物品とはその性質を 異にするので,本件意匠の美感を検討するに当たりこれらの意匠を参照 することは相当ではないと主張する。 しかし,上記各先行意匠に係る物品は,いずれも酸素や大気等を充填 させた空間を有し,利用者が同装置内に入り横たわるなどした状態で充 填された酸素や大気等の補給を受ける点で本件意匠に係る物品と用途 及び機能を共通にするものであるから,本件意匠と被告各意匠の類否の\n検討に当たり,これらの意匠を参照することを妨げる理由はないという べきである。
e したがって,構成A〜Cは,基本的構\成態様を構成するものではある\nが,これらの構成が要部であるということはできない。
(イ)a 他方,本件意匠は,前記のとおり,側部がいずれも部分球形状であり, 透明で内部のベッドを覗き見ることを可能にする構\成態様(構成b),\nドアは透明な胴部の円弧に沿う形状であり,閉めた状態でも内部のベッ ドを覗き見ることを可能にする構\成態様(構成c)を備えている。\n この点について,本件公報(甲3)の【意匠の説明】には,以下のと おりの記載がある。 「カプセル両端の部分球形状に突出した部分は透明であり,内部のベ ッドを覗き見ることができる。カプセルの胴部分の出入口に設置されて IVいるドアは透明であり,閉めた状態でも内部のベッドを覗き見ることが できる。ドアを閉じた状態の参考斜視図及びドアを途中まで開けた状態 の参考斜視図において,透明部分には円弧状の平行斜線を施している。」 上記のとおり,本件公報の【意匠の説明】には,カプセル両端の部分 及びドアが透明であり,内部のベッドを覗き見ることができる構成とな\nっていることが強調され,胴部における開口部の配置及び位置やドアの 構成との組合せについての記載は存在しない。そして,上記各参考斜視\n図には,透明な側部部材及びドアの構成態様とともに,これらの透明な\n部分越しに見ることのできる高気圧酸素補給カプセル内部のベッドや 補強リブの構成態様などが示され,透明部分を設けることによって,物\n品外部の構成要素と物品内部の構\成要素が一体となって,本件意匠全体 の美感を形成している様子が示されている。
本件意匠のこのような特徴,特に,胴部のドア部分にとどまらずドア より大きな部分球形状の側部全体が透明となっているという構成態様\nにより,利用者は,外部から同物品を見る場合にはこれらの透明な部分 を通じて内部のベッドや補強リブなどを目にすることのできるととも に,内部に横たわった場合は,同部分を通じて内部の構成要素に加えて\n外部の景観を目にすることができる。かかる特徴を備えることにより, 本件意匠は,透明な部分がない又は少ない同種物品と比較して,利用者 を含む取引者,需要者に対し,開放感があって明るく広々した印象を与 えるとともに,物品外部の構成要素と物品内部の構\成要素の形状が一体 となって本件意匠全体の美感を形成する点において看者に強い印象を 与えると考えられる。
b これに対し,原告は,側部が透明であることは,意匠を構成する形状を\n補足的に特定する素材を示すにすぎないと主張する。 しかし,本件意匠に係る物品の側部が透明であることは,単に意匠を構\n成する素材を特定するにとどまるものではなく,その美感に大きな影響を 与えることは前記判示のとおりである。
また,原告は,筐体の一部を透明,半透明,不透明に変更する程度のこ とは一般的に行われており,本件意匠の透明の側部を半透明,不透明に変 更したとしても,美感に大きな影響を与えないと主張する。 しかし,上記先行意匠においても,胴部のドアを透明にした上で,更に 側部全体を透明にしているものは存在しないので,酸素カプセル等の側部 及び胴部のドアを透明にすることが一般的でありふれたものであるとい うことはできない。そして,側部及びドアを透明にすることにより,外部 の構成と内部の構\成が一体となって本件意匠の美感を形成し,また,本件 意匠に係る物品が明るく開放的な印象を与えることは,前記判示のとおり である。
c したがって,本件意匠の要部は,物品の側部全体及びドアが透明であり, 内部のベッド等を覗き見ることができる構成(構\成b,c)にあるという べきである。
イ 本件意匠と被告各意匠の類否
被告各意匠の基本的構成態様及び具体的構\成態様は前記のとおりである ところ,本件意匠と被告各意匠は,その要部において構成態様が相違するこ\nとは明らかである。これにより,被告各意匠においては,取引者,需要者が 本件意匠のような開放感があって明るく広々とした印象を受けることはな く,また物品外部の構成要素と物品内部の構\成要素が一体となって本件意匠 全体の美感を形成することもない。このように,本件意匠と被告各意匠とは その美感が大きく異なるものである。 したがって,本件意匠と被告各意匠がその構成態様において類似している\nということはできない。

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平成28(ワ)9003  意匠権等侵害差止等請求事件  平成30年9月7日  東京地方裁判所

 意匠権侵害および不競法の商品形態模倣かが争われました。裁判所(40部)は、前者については無効、後者については商品の形態は実質的に同一ではないと判断しました。
 原告は,原告商品の形態と被告商品の形態との間の他の共通点(形態 IV(ア),(オ)及び(コ))も創作的であると主張するが,これらの共通点に係る 形態は,女性用コートとして一般的なものであり,特に特徴的なもので あるということはできない。 また,原告商品と被告商品は,いずれもビジューの付いた装身具が設 けられ,その装着位置,形状において共通すると認められるが,女性用 コートにおいてビジューの付いた装身具を設けること自体が特徴的であ るということはできず,また,原告商品のビジューブローチは取り外し 可能であるのに対し,被告商品のビジューボタンがコートに縫い付けら\nれているという相違点も存在するので,この点をもって原告商品と被告 商品が実質的に同一であるということもできない。 以上によれば,原告商品と被告商品との間の上記各共通点をもって両 商品の実質的に同一であるということはできないというべきである。
ウ 原告商品と被告商品の相違点は,上記(3)イ記載のとおりであると認め られるが,このうち,ポケットは,原告商品においては,コート胴部の 両側に水平状に形成され,略横長長方形状のフラップが取り付けられて おり,コート前面において需要者の目を引くアクセントとなっていると いうことができる。 これに対し,被告商品においては縦の切替え線に沿って布部材がコー ト本体に縫い付けられ,フラップが形成されていないので,ポケットは それほど目立たず,コート前面は比較的シンプルで縦に流れる線が需要 者の目を惹く態様となっているということができる。 以上によれば,原告商品と被告商品の前面については,ポケットの形 状の差異により,需要者が受ける印象が相当程度異なるというべきであ る。
エ また,原告商品と被告商品とは,背面における飾りベルトの有無が相 違することは,前記のとおりである。 原告商品における飾りベルトは,腰部に水平方向に設けられ,その幅 も太い上,原告商品の背面には同ベルトに匹敵する目立つ構成部分は存\n在しないことから,当該飾りベルトは,コート背面において特に需要者 の注目を惹くものであるということができる。そして,この点において は,原告自身も,そのウェブサイトにおいて,「バックスタイルのベル トがポイント!!」(乙6),「バックウエストには飾りベルトを効か せて,後ろ姿にもメリハリをプラス」(甲7の2)などと強調しており, このことは,原告自身も飾りベルトが原告商品のデザイン上の特徴点で あるとの認識を有していたことを示している。 これに対し,被告商品では,飾りベルトが設けられておらず,切替え 線が設けられているにとどまることから,その背面は比較的シンプルで 目立つ構成部分が存在せず,すっきりした印象を与えるということがで\nきる。
以上によると,原告商品は,その胴部のほぼ同じ高さに飾りベルトと ポケットが取り付けられていることから,コートの正面視,側面視,背 面視ともに,横方向に流れる強い印象を与える構成が需要者の目を惹く\nのに対し,被告商品は,その前面及び背面ともに需要者の目を惹く態様 の構成が設けられていないため,全体としてシンプルな印象であり,身\n体のラインに沿った縦の線が需要者の目を惹く態様となっているという ことができる。このため,原告商品と被告商品は,コートの正面視,側 面視,背面視ともに,需要者に異なる印象を与えるというべきである。
オ 原告商品と被告商品のフードとを対比すると,原告商品に取り付けら れたフードは,背面視においてその横幅が肩口に及ばず,側面視におい て膨らみの少ないものであるのに対し,被告商品に取り付けられたフー ドは,背面視においてその横幅がが肩口まで及び,側面視において膨らみ の多い大きさである点で異なると認められる。このようなフードの大き IVさや形状の差違は,コート背面における美感に影響を与えるものであり, 飾りベルトの有無やフードとコート本体の色合いの違い(形態(サ))もあ いまって,需要者に背面におけるデザインが異なるとの印象を与えるも のであるということができる。
カ 以上のとおり,原告商品と被告商品との形態の相違点は,需要者の注 目を集める形態についての差違であり,その美感に対して異なる印象を 与えるものであるから,両者を実質的に同一の形態ということはできな い。
(5) 原告の主張について
これに対し,原告は,被告商品のポケットやベルト等の形態は,女性用 コートとしてありふれたものにすぎず,原告商品の形態をこれに置き換え ることは極めて容易である上,その相違点は,部分的かつ些細なものであ り,全体の形態に影響を与えないと主張する。 しかし,被告商品のポケットやベルト等の形態が特に特徴的なものでな く,置換が容易であるとしても,被告商品において飾りベルトやポケット の形状が需要者の目を惹き,コート全体の美感に影響を及ぼすものである ことは前記判示のとおりであり,その相違点が部分的かつ些細なものであ るということはできない。 また,原告は,平成28年から平成29年にかけて雑誌に掲載された女 性用コートの説明文から着目点を抽出したところ,ベルトやポケット等に 注目した記載は非常に少ないとの結果を得たと主張する。 しかし,上記の結果においてもポケットやベルトが着目点として一定程 度挙げられているように,女性用コートのポケットやベルトはコートの胴 部という目につき易いところに配置され,そのデザインも多様であること から,需要者がコートを選択する際の着目点となることは否定し難い。ま た,商品の形態が実質的に同一かどうかは,事案ごとに個別的に判断すべ IVきところ,本件においては,被告商品における飾りベルトやポケットの形 状が需要者の目を惹き,コート全体の美感に影響を及ぼすものであること は前記判示のとおりである。

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前者の関連事件はこちらです。

◆平成29(行ケ)10234

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平成29(ワ)27980  債務不履行に伴う契約解除により返還請求と,その契約不履行と相当因果関係にある損害の賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月25日  東京地方裁判所

 翻訳業者の翻訳が不適切であったとして、損害賠償を求めましたが、裁判所は棄却しました。該当の日本特許はこれです。

◆特許5926470号

 前記前提事実,各項末尾に記載の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事 実が認められる。
(1) 被告Bは,特許の翻訳を業とする被告会社の代表取締役であり,被告会社\nが設立される以前は,比較的大手の特許事務所に勤務していたが,弁理士で はない。原告も,そのことを認識していた。
(2) 原告は,本件特許発明の米国特許出願のため,平成28年1月,被告会社 に本件明細書等の翻訳を一定の報酬支払を約して依頼し,被告会社はこれを 承諾した(本件契約)。
(3) なお,原告は,本件契約以前,本件明細書の翻訳を翻訳者である訴外Dに も依頼していたため,被告会社は,当初は訴外Dによる翻訳をチェックして いたが,当該翻訳に適切でない部分が多かったため,次第に翻訳を初めから 行うことになっていった。(甲36,乙50,弁論の全趣旨)
(4) 翻訳の対象となる本件明細書等は,それが記載された特許公報が本文だけ で69頁,図も合わせると81頁にも及ぶ非常に大部なものである上,その 内容は,原告自身も自認するように,相当に複雑で難解なものであった。(甲 7,乙17,23,46,47)
(5) 本件契約が締結された同年1月当時,米国特許出願における特許請求の範 囲の記載(日本語)は確定していなかった。原告は,少なくとも同年2月1 5日,翻訳の対象となる特許請求の範囲の記載に修正を加えた。(乙3,4, 弁論の全趣旨)
(6) 同年2月22日には,原告は被告Bに対し,自らが翻訳ソフトを購入し,\n翻訳者が抜けのない翻訳をしているかを自分で確認する旨記載したメールを 送信した。(乙6)
(7) 同年3月3日には,原告は被告Bに対し,被告会社が修正を加えた翻訳を 訴外インド人弁理士に送付し,同人が1か月程度で校正を行い,被告会社が 最終版を作成するとの手順を示すメールを送信した。(乙7)
(8) 同日以降も,原告は,翻訳の対象となる本件明細書等について,断続的に 修正等を行い,その修正等についての翻訳を,被告会社に指示した。その際, まず訴外Dに翻訳をさせ,当該翻訳を被告会社に送付し,それを参考にして 翻訳するよう指示していた。同年4月11日,原告は,被告会社に対して ,「収束に向かってください。拡散した自分が,どんどんと文章を広げました。 D様もその為に,意味不明になりました。自分にも責任があります。」とメ ールした。しかし,同月16日には,「基本請求項を早朝作成します。出来 た後に,再度,B様とC様で打合せをしてください。結果が大丈夫なら,そ の他の従属項を3人で作成します。」などとメールし,同日の後刻には,「大 変迷走させまして,無駄な時間をお掛けしました。」などとメールした。(乙 8ないし21,50)
(9) 同年4月17日,被告会社は,「ご確認いただき,修正すべき点がありま したらご連絡ください。特に問題がないようであればインド代理人への送付 をお願い致します。」,「エンドレスな作業となっておりますので,ここで 一度区切りとさせてください。」などとメールに記載して,翻訳を一旦終了 し,原告に当該翻訳をメールにて送付した。この時点で,本件明細書等の大 部分について翻訳が終了していた。(甲47,弁論の全趣旨(平成30年8 月16日付け原告準備書面23,26頁))
(10) 同日以降も,原告は,累次にわたって,特許請求の範囲の記載の修正等, それに伴う明細書等の修正等を行い,その都度,被告会社にその修正等につ いての翻訳を指示し,このような指示は少なくとも同年5月17日まで続い た。その間,原告は,被告会社が原告に送付した翻訳について修正や変更を 求めたり,翻訳の内容について質問をしたりすることはなかった。(乙23 ないし41,50)
(11) 原告は,同年5月19日(米国時間),被告会社の事務所において,本件 米国出願を行った。被告会社は,本件米国出願までの間に,本件翻訳を原告 に対して引き渡した。
(12) 原告は,同年1月から7月にかけて,被告会社に対し,本件契約の代金と して合計269万2000円を支払い,被告会社はこれを異議なく受領した。 (甲6)
(13) 米国特許商標庁は,平成29年2月7日(米国時間),本件拒絶理由通知 を発出した。本件米国出願から本件拒絶理由通知までの間に,原告から被告 らに対して,本件翻訳の内容について批判が述べられたり,質問等がされた りしたことはなかった。(甲11,弁論の全趣旨)
(14) 原告は,同年4月3日,被告会社に対し,内容証明郵便により,本件翻訳 についての報告を求めた。また,原告は,同年5月18日,被告会社に対し, 内容証明郵便により,被告会社に債務不履行があるとして,本件契約の解除 の意思表示をし,契約代金の返還を求めた。(甲33,34)\n
・・・・
前記認定事実のとおり,本件契約は,原告が被告会社に対し,本件明細書 等の翻訳を一定の報酬支払を約して依頼し,被告会社がこれを承諾したもの であること,その後,原告は,本件契約の対価として,被告会社に対して合 計269万2000円を支払い,被告会社はこれを異議なく受領したことが 認められる。そうすると,本件契約は,被告会社が仕事の完成を約し,原告 がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約したものであるから,その 法的性質は請負契約(民法632条)であると解するのが相当である。 なお,原告は,本件契約における被告の業務内容には米国特許出願事務や PCT国際出願事務も含まれているかのような主張をしており,被告はこれ を争っているところ,本件の全証拠を検討しても,本件契約に米国特許出願 事務及びPCT国際出願事務の委任が含まれているものと認めるに足りる証 拠はない。原告は,被告会社が原告に対してPCT国際出願に関する助言を 行っているメール(甲39)を証拠として提出するが,これは被告会社が原 告の問い合わせに応じて返答しているものにすぎず,このようなやり取りを もって本件契約にPCT国際出願事務の委託が含まれていたものと認めるこ とはできない。また,原告は被告事務所において本件米国出願を行っている が,そのことから本件契約に米国特許出願事務の委任が含まれていたものと 認めることもできない。

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平成28(ワ)3856 特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月19日  東京地方裁判所(29部)

 ドワンゴVSFC2の特許権侵害について、文言侵害および均等侵害が否定されました。第1,第5要件を満たさないというものです。
 以上のとおり,「第1の表示欄」は動画を表\示するために確保された領域(動画表\n示可能領域),「第2の表\示欄」はコメントを表示するために確保された領域(コメン\nト表示可能\領域)であり,「第2の表示欄」は「第1の表\示欄」よりも大きいサイズで いずれも固定された領域であると解されるところ,被告ら各装置においては,動画表\n示可能領域(被告ら装置1における「StageオブジェクトA」,被告ら装置2及\nび3における<iflame>要素又は<video>要素)とコメント表示可能\領 域(被告ら装置1における「CommentDisplayオブジェクトD」,被告 ら装置2及び3における<canvas>要素)は同一のサイズであるから,被告ら 各装置は,「第1の表示欄」及び「第2の表\示欄」に相当する構成を有するとは認め\nられない。したがって,被告ら各装置は,本件発明1−1の「第1の表示欄」(構\成要 件1−1C,1−1E,1−1F)及び「第2の表示欄」(構\成要件1−1D,1−1 E,1−1−1F)を充足するとは認められず,本件発明1−1の技術的範囲に属するとは認められない。 そして,被告ら各装置は,同様に,本件発明1−5の「第1の表示欄」及び「第2\nの表示欄」(構\成要件1−5J)を充足せず,そうである以上,「第2の表示欄」を構\ 成要素とする「コメント表示部」(構\成要件1−1D,1−2H,1−5J,1−6L)も充足しないから,本件発明1−2,1−5及び1−6の技術的範囲に属するとは認 められない。 また,本件発明1−9及び1−10は,発明の対象が「プログラム」であるが,発 明の対象を「表示装置」とする本件発明1−1及び1−2と対応するものである。したがって,被告ら各プログラムは,本件発明1−1及び1−2と同様に,「第1の表\ 示欄」(構成要件1−9B,1−9E)及び「第2の表\示欄」(構成要件1−9E)を\n充足せず,本件発明1−9を引用している本件発明1−10の構成要件1−10Hも\n充足しないから,本件発明1−9及び1−10の技術的範囲に属するとは認められない。以上のとおりであるから,被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件 発明1の技術的範囲に属するとは認められない。
・・・
ア 特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかっ た技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想に基 づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にあるから,特許発明にお\nける本質的部分とは,当該特許発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に 見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。そして,\n上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて, 特許発明の課題及び解決手段とその作用効果を把握した上で,特許発明に係る特許請 求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部\n分が何であるかを確定することによって認定されるべきである(知財高裁平成27年 (ネ)第10014号同28年3月25日特別部判決・判時2306号87頁参照。)。
イ これを本件についてみると,前記2(3)で説示したとおり,本件発明2は,複数 のコメントが書き込まれても,コメントの読みにくさを低減させることができる表示\n装置,コメント表示方法及びプログラムを提供することを目的とするものであって,\nコメント表示部によって表\示されるコメントが他のコメントと重なるか否かを判定 し,コメントが重なると判定した場合に,コメント同士が重ならない位置にコメント を表示させるようにし,複数のコメントが表\示される場合において,コメント同士が 動画上で重なってしまい,各コメントが判読できなくなってしまうことを防止するこ とができるようにするとともに,動画の再生中に他の端末装置から入力されたコメン トをリアルタイムに受信して当該動画上に表示し,そのコメントをダイナミックに変\n動させることにより,リアルタイムな双方向のコミュニケーションを可能にし,大人\n数でコメントを交換する面白みを増加させる発明である。上記の「動画の再生中に他 の端末装置から入力されたコメントをリアルタイムに受信して当該動画上に表示し,\nそのコメントをダイナミックに変動させることにより,リアルタイムな双方向のコミ ュニケーションを可能にする」という作用効果は,コメント配信サーバが端末装置か\nらコメント情報を受信してそれを送信するタイミングがリアルタイムに行われるこ と,すなわち,構成要件2−1Cに規定されているように「前記コメント配信サーバ\nが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信 されるコメント情報を受信」との構成によって実現されているのであり,本件特許2\nの出願経過においても,上記構成は,表\示すべき文字情報があらかじめ決定されてい る従来技術との比較において,「ユーザの端末装置から送信されるコメントを受信し て表示するものであり,コメントを受信する毎に,表\示するコメントがダイナミック に変動する点」が相違すると説明されている。そうすると,構成要件2−1Cは,動\n画の再生中に他の端末装置から入力されたコメントをリアルタイムに受信して当該 動画上に表示し,そのコメントをダイナミックに変動させることにより,リアルタイ\nムな双方向のコミュニケーションを可能にする」という作用効果を奏する構\成を具体 的な構成として特定したものであり,この構\成が従来技術にみられない特有の技術的 思想を構成する特徴的部分であり,本件発明2における本質的部分であるというべき\nである。
ウ 他方,前記のとおり,被告ら各装置は構成要件2−1Cを充足せず,被告ら各\nプログラムは構成要件2−9Bを充足しないから,被告ら各装置及び被告ら各プログ\nラムが本件発明2の本質的部分を備えているということはできず,本件発明2と被告 ら各装置及び被告ら各プログラムは本質的部分において相違すると認められる。
(3) 第5要件(特段の事情)について
前記2(2)において認定したとおり,本件特許2の出願経過として,1)特許庁審査官 は,平成22年11月24日を起案日とする拒絶理由通知書(乙24)において,出 願当初の特許請求の範囲請求項1ないし6及び8ないし12に係る各発明について, 特許法29条2項の規定により特許を受けることができない旨を通知し,2)原告は, 平成23年1月31日付け手続補正書(乙25)において明細書を補正し,請求項1 に「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し,前記コメント情報記憶部に 記憶する受信部と,」との構成を,請求項9に「前記コメント配信サーバが前記端末装\n置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメン ト情報を受信し,」との構成を付加して変更し,3)特許庁審査官はこれに対して特許 査定をしたものである。 上記の出願経過からすれば,原告は,拒絶理由を回避するために構成要件2−1C\n及び構成要件2−9Bを備えた発明に限定して特許を受けたものといえるから,上記\n構成要件の全部又は一部を備えない発明について,本件発明2の技術的範囲に属しな\nいことを承認したか,少なくとも外形的にそのように解される行動をとったものと理 解することができる。 したがって,均等の成立を妨げる特段の事情があるというべきであり,均等の第5 要件を充足しない。

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平成29(行ケ)10129  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年5月24日  知的財産高等裁判所

 少し前の事件ですが漏れていたのでアップします。サポート要件を判断する前提としての課題の認定について誤りがあるとして、知財高裁第3部は、サポート要件違反ありとした審決を取り消しました。注目は「出願時の技術水準等との比較は,行うとすれば進歩性の問題として行うべき」という判断です。
 前記のとおり,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否か は,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請 求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発 明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決 できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がな くとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると 認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 また,発明の詳細な説明は,「発明が解決しようとする課題及びその解 決手段」その他当業者が発明の意義を理解するために必要な事項の記載が 義務付けられているものである(特許法施行規則24条の2)。 以上を踏まえれば,サポート要件の適否を判断する前提としての当該発 明の課題についても,原則として,技術常識を参酌しつつ,発明の詳細な 説明の記載に基づいてこれを認定するのが相当である。 かかる観点から本件発明について検討するに,本件明細書の発明の詳細 な説明には,米糖化物含有食品であるライスミルクの製造時に各種酵素を 制御することなく加えると,プロテアーゼによりアミノ酸,オリゴペプチ ドが生成し,うまみ調味料様の雑味がついてしまい,用途が限られたこと (【0002】),食感が滑らかで雑味がなくすっきりした味を持つ米糖 化液としてアミノ酸濃度が一定範囲である米糖化液が開発されたが,甘味, コク(ミルク感)等の風味は十分に改善されておらず,必ずしも満足でき\nるものではなかったこと,さらに,グラノーラ,パンケーキ等が流行する 一方,牛乳アレルギー,大豆アレルギーの人口は増加傾向にあり,風味が 改善された牛乳や豆乳の代用品が求められていたこと(【0003】)な どが背景技術として記載されている。その上で,発明の詳細な説明には, 発明が解決しようとする課題として,「本発明は,米糖化物含有食品のコ ク,甘味,美味しさ等を改善するという課題を解決すべく鋭意研究を重ね た結果見出されたものである。すなわち,本発明は,コク,甘味,美味し さ等を有する米糖化物含有食品を提供することを目的とする。さらに,従 来牛乳や大豆を用いて製造又は調理されていた多数の食品を作ることを可 能にする食品を提供することも目的とする。」との記載がある(【000\n6】)。
これらの記載からすれば,本件発明は,「コク,甘味,美味しさ等を有 する米糖化物含有食品を提供すること」それ自体を課題とするものである ことが明確に読み取れるといえる。 イ これに対し,異議決定は,「本件発明1の課題は,本件特許明細書の『コ ク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供すること』(【0 006】)との記載及び実施例(【0031】〜【0043】)において, 『コク(ミルク感)』,『甘み』及び『美味しさ』の各評価項目について 評価を行っていることから,『コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物 含有食品を提供すること』と認められる。」と,一旦は上記アと同様に本 件発明1の課題を認定しながら,最終的なサポート要件の適否判断に際し ては,「本件発明1の課題は,上記aのとおり,具体的には,実施例1− 1のライスミルクに比べてコク(ミルク感),甘味及び美味しさについて 優位な差を有するものを提供することであ(る)」とその課題を認定し直 し,課題の解決手段についても,「本件発明1が課題を解決できると認識 できるためには,…実施例1−1のライスミルクに比べてコク(ミルク感), 甘味及び美味しさについて優位な差を有することを認識できることが必要 である。」としている(異議決定12頁16〜25行)。 この点について,被告は,発明が解決しようとする課題とは,出願時の 技術水準に照らして未解決であった課題であるから,本件発明1の「コク, 甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供すること」という課題 は,本件出願時の技術水準を構成する米糖化物含有食品(具体的には,実\n施例1−1のライスミルク)に比べて,コク,甘味,美味しさ等を有する 米糖化物含有食品を提供することであり, したがって,異議決定において は,本件発明1の課題について,「具体的には,実施例1−1のライスミ ルクに比べてコク(ミルク感),甘味及び美味しさについて優位な差を有 するものを提供すること」としたものである(したがって,異議決定の課 題の認定に誤りはない)と主張する。 確かに,発明が解決しようとする課題は,一般的には,出願時の技術水 準に照らして未解決であった課題であるから,発明の詳細な説明に,課題 に関する記載が全くないといった例外的な事情がある場合においては,技 術水準から課題を認定するなどしてこれを補うことも全く許されないでは ないと考えられる。
しかしながら,記載要件の適否は,特許請求の範囲と発明の詳細な説明 の記載に関する問題であるから,その判断は,第一次的にはこれらの記載 に基づいてなされるべきであり,課題の認定,抽出に関しても,上記のよ うな例外的な事情がある場合でない限りは同様であるといえる。 したがって,出願時の技術水準等は,飽くまでその記載内容を理解する ために補助的に参酌されるべき事項にすぎず,本来的には,課題を抽出す るための事項として扱われるべきものではない(換言すれば,サポート要 件の適否に関しては,発明の詳細な説明から当該発明の課題が読み取れる 以上は,これに従って判断すれば十分なのであって,出願時の技術水準を\n考慮するなどという名目で,あえて周知技術や公知技術を取り込み,発明 の詳細な説明に記載された課題とは異なる課題を認定することは必要でな いし,相当でもない。出願時の技術水準等との比較は,行うとすれば進歩 性の問題として行うべきものである。)。 これを本件発明に関していえば,異議決定も一旦は発明の詳細な説明の 記載から,その課題を「コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食 品を提供すること」と認定したように,発明の詳細な説明から課題が明確 に把握できるのであるから,あえて,「出願時の技術水準」に基づいて, 課題を認定し直す(更に限定する)必要性は全くない(さらにいえば,異 議決定が技術水準であるとした実施例1−1は,そもそも公知の組成物で はない。)。 したがって,異議決定が課題を「実施例1−1のライスミルクに比べて コク(ミルク感),甘味及び美味しさについて有意な差を有するものを提 供すること」と認定し直したことは,発明の詳細な説明から発明の課題が 明確に読み取れるにもかかわらず,その記載を離れて(解決すべき水準を 上げて)課題を再設定するものであり,相当でない。 以上によれば,異議決定における課題の認定は妥当なものとはいえず, 被告の主張は採用できない。

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平成28(ワ)6539  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 平成30年10月18日  大阪地方裁判所

 ゴミ箱について、意匠権侵害、著作権侵害、不競法違反、不法行為などを主張しました。裁判所は、意匠権侵害については認め(被告自認)、差止・損害賠償を認めました。ただ、その他に請求は棄却しました。
 被告ごみ箱の意匠は本件意匠に類似する(争いがない)から,被告ごみ箱を販売 する行為については,本件意匠権を侵害する行為である。
・・・
被告ごみ箱の形態が原告ごみ箱のそれと実質的に同一であり(争いがない),こ の形態同一性は依拠の事実も推認させるところ,この推認を覆す事情は認められな いから,被告ごみ箱は原告ごみ箱の形態を模倣した商品であると認められる。した がって,被告が平成27年1月31日までに被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ 箱販売1)については,不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為に当たる。 他方,被告が同年2月1日以降に被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ箱販売2及 び3)については,原告ごみ箱が最初に販売された日から3年が経過しており,同 号所定の不正競争行為に当たらない(同法19条1項5号イ)。
上記(1)イのとおり,被告が平成27年2月1日から同年6月14日まで の間に被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ箱販売2)については,不正競争行為 に当たらないし,本件意匠権侵害について過失があったとは認められないところ, 原告は,被告ごみ箱販売2については公正な自由競争秩序を著しく害するものであ るから,一般不法行為を構成すると主張する。\nしかし,現行法上,創作されたデザインの利用に関しては,著作権法, 意匠法及び不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律がその排他的な使用権等の 及ぶ範囲,限界を明確にしていることに鑑みると,創作されたデザインの利用行為 は,各法律が規律の対象とする創作物の利用による利益とは異なる法的に保護され た利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではない\nと解するのが相当である。 したがって,原告の主張が,被告が原告ごみ箱の商品形態を模倣した被告ごみ箱 を販売したことが不法行為を構成するという趣旨であれば,不正競争防止法で保護\nされた利益と同様の保護利益が侵害された旨を主張しているにすぎないから,採用 することはできない。
ウ また,これと異なり,原告の主張が,被告が被告ごみ箱を販売すること によって原告の原告ごみ箱に係る営業が妨害され,その営業上の利益が侵害された という趣旨であれば,上記の知的財産権関係の各法律が規律の対象とする創作物の 利用による利益とは異なる法的に保護された利益を主張するものであるということ ができる。しかし,我が国では憲法上営業の自由が保障され,各人が自由競争原理 の下で営業活動を行うことが保障されていることからすると,他人の営業上の行為 によって自己の営業上の利益が害されたことをもって,直ちに不法行為上違法と評 価するのは相当ではなく,他人の行為が,殊更に相手方に損害を与えることのみを 目的としてなされた場合のように,自由競争の範囲を逸脱し,営業の自由を濫用し たものといえるような特段の事情が認められる場合に限り,違法性を有するとして 不法行為の成立が認められると解するのが相当である。 そして,本件では,原告の主張を前提としても上記特段の事情があるとは認めら れない。
・・・
被告は,上記(1)アのとおり,平成27年10月8日頃,原告から,被告ごみ箱を 輸入,販売する行為が本件意匠権を侵害するとの指摘を受けたことから,同月22 日付けで,被告に対し,被告ごみ箱を販売する行為は本件意匠権を侵害する可能性\nがあると判断して直ちに販売を中止した旨回答した(甲5)だけでなく,現に販売 を中止し,本件訴訟においても被告ごみ箱を販売する行為が本件意匠権を侵害する ことになることを争っていない(弁論の全趣旨)。したがって,被告がさらに被告 ごみ箱を輸入するおそれは認められず,また,被告は中国の業者から被告ごみ箱を 輸入して販売しているにすぎない(乙19)から,被告ごみ箱を自ら製造するおそ れも認められない。 しかし,被告は,被告ごみ箱を平成26年7月に合計3024個輸入し(乙1 6),それを平成27年10月22日の販売中止までに合計774個販売した(乙 10)と認められるから,多数の在庫を保有していると推認されるところ,被告が それら在庫を廃棄したことをうかがわせる証拠はない。そうすると,被告は,現在 も被告ごみ箱の在庫を保有していると考えざるを得ず,そうである以上,被告が被 告ごみ箱を販売するおそれを否定することはできない。したがって,被告ごみ箱の 差止請求については,その販売及び広告宣伝の差止めを求める限度で理由がある。
・・・
a 被告の過失ある本件意匠権侵害行為の期間は,被告ごみ箱販売1に 係る平成27年6月15日から同年10月21日までと認められるところ,被告ご み箱の単位数量当たりの仕入原価が205.543円であることは当事者間に争い がなく,この期間の被告による被告ごみ箱の合計販売数量は前記のとおり666個 と認められる。そして,被告がこの期間に被告ごみ箱を666個販売して得た売上 高が16万0380円であること(乙11)に照らせば,被告ごみ箱の販売の単位 数量当たりの売上高は240.811円(小数点第4位以下四捨五入)である。した がって,被告が被告ごみ箱を666個販売して得た利益は,2万3488円(1円 未満四捨五入)であると認められる。
(240.811−205.543)×666≒23,488
そうすると,2万3488円が意匠権者である原告の受けた損害の額と推定され るところ,上記推定を覆滅する事由に関する主張,立証はないから,原告の損害額 は,2万3488円であると認められる。
b これに対し,原告は,被告の平成27年7月及び同年10月におけ るインテリア計画メガマックス千葉NT店に対する販売については,販売額が仕入 原価を下回っており,独占禁止法第2条第9項に基づく不公正な取引方法第6項に 規定する不当廉売に当たるから,被告ごみ箱の販売の単位数量当たりの売上高を算 定するに当たっては,上記販売における売上額に基づくべきではなく,平成26年 8月における販売の売上額に基づくべきである(これに従えば,単位数量当たりの 売上高は540円となる。)と主張する。 しかし,販売額が仕入原価を下回るからといって直ちに独占禁止法が禁止する不 当廉売に当たるわけではない上,意匠法39条2項は,侵害者が実際に得た利益の 額をもって意匠権者の損害の額と推定する規定であるから,侵害者が原価以下で販 売した場合でも,それが実質的に見て侵害物の廃棄処分と同視し得るといった事情 のない限り,実際の販売額に基づいて侵害者の利益を算定すべきものである(意匠 権者がそれにとどまらない損害額の賠償を求めるためには,同条1項による損害額 を主張立証する道が用意されている。)。そして,上記で原告が指摘するインテリ ア計画メガマックス千葉NT店に対する販売のうち平成27年7月のものについて は,被告が原告から通知書(甲4)を受領する前の時期であるから,通常の取引行 為によるものと見るべきであり,その販売単価と同年10月の販売単価は同額であ る(甲10)から,それらの販売を実質的に見て侵害物の廃棄処分と同視すること はできない。 また,原告が被告ごみ箱の販売の単位数量当たりの売上高を算定するに当たって 基礎とすべきであるという平成26年10月における被告の販売(被告ごみ箱販売 1における販売)については,上記(1)イのとおり,被告が不法行為(本件意匠権侵 害)に基づく損害賠償責任を負うものではない。

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平成29(行ケ)10113  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年10月25日  知的財産高等裁判所

 記載不備(明確性、サポート要件、実施可能要件)の無効理由無しとした審決が維持されました。
 特許法36条6項2号の趣旨は,特許請求の範囲に記載された発明が明確 でない場合に,特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となることによ り生じ得る第三者の不測の不利益を防止することにある。そこで,特許を受 けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載のみならず, 願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願時にお ける技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不 利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきものと解 される。
(3)ア そこで検討するに,本件明細書には,泡に関し,「本明細書で用いられ る「泡」は,混合されて,可変長の時間持続する構造を有する小さい気泡\nのマスを形成する液体及び気体を意味する。」(【0036】),「気泡 は,液体のフィルムで取り囲まれた気体のセルである。」(【0037】) との定義が記載されている。また,本件発明の発泡性組成物の作用効果に 関し,本件発明の組成物は,発泡性であるために,適用された部分に留ま ることができ(【0015】),表面上に容易に広がる泡として分配でき\nる(【0018】)ものであって,空気と混合されるときに安定な泡を与 え,この泡は,個人的洗浄用又は消毒目的のために使用でき,例えばユー ザーが両手をこすったとき又は表面上に塗布されたときに壊れること(【0\n041】),本発明の重要かつ驚くべき成果は,消毒に適する組成物が40% v/vより多量のアルコールを含有すること,そして低圧容器及びエアゾール 包装容器の両者から化粧品として魅力的な泡として分配され得ること(【0 044】)がそれぞれ記載されている。
イ この点に関連して,泡に関する技術常識についてみると,「入門講座 泡 の化学」と題する論文(オレオサイエンス第1巻第8号。2001年発行。 甲12)には,「深い井戸からくみ上げた水に生ずる泡はきわめて微小な 気泡が多数水中に分散している。このように気体が液体または固体に包ま れた状態を気泡(Bubble)という。泡は各種界面活性物質,または界面活 性剤の気・液界面への吸着によって起こる現象であって,洗濯時の洗濯機 の中の液やビールの泡のようにこれが多数集まって薄膜を隔てて密接に存 在するものを泡沫(Foam)と呼ぶ。気泡と泡沫の区別は形態的であるが前 者はただ一つの界面を有するのに対し,後者は2つの界面を有する。」(8 63頁左欄)との記載がある。 この論文の公開時期に鑑みれば,泡には,形態的に区別される気泡と泡 沫とがあり,気泡(Bubble)は,気体が液体又は固体に包まれた状態を指 し,ただ1つの界面を有するのに対し,泡沫(Foam)は,気泡が多数集ま って薄膜を隔てて密接に存在し,2つの界面を有するものであることは, 親出願の出願日当時における当業者の技術常識であったと認められる。
ウ 以上のとおり,上記アに摘示した本件明細書に記載された定義と,本件 発明における泡の作用効果に関する記載からすると,本件発明における「泡」 との語は,上記イ記載の泡沫を意味するものであることは明らかである。 そして,本件明細書の記載及び親出願の出願日当時における当業者の技 術的常識を基礎とすると,本件発明1に係る特許請求の範囲の記載が,第 三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(4) 原告の主張について
原告は,本件明細書の段落【0036】における1)「可変長の時間持続す る構造」が表\す時間の長さ,2)「構造」とは,気泡と気泡のマスのいずれを\n指すのか,3)「小さい気泡」とは,何と比較して小さいのか,がいずれも不 明であるから,請求項1の記載が不明確であると主張する。 しかし,上記(3)において説示したとおり,当業者は,本件発明における「泡」 との語が泡沫を意味すること,泡沫とは,気泡が多数集まって薄膜を隔てて 密接に存在するものであるから,これはすなわち気泡のマスであること,そ して,本件明細書の段落【0036】における「構造」とは気泡のマスであ\nることをそれぞれ理解できるというべきである。 また,当該段落の「可変長の時間持続する」との語については,本件発明 の組成物が発泡性組成物であることによる作用効果に関する本件明細書の記 載からすると,本件発明の組成物は,適用された部分に留まることができ, かつ,表面上に容易に広がる泡として分配できるものであって,例えばユー\nザーが両手をこすったとき又は表面上に塗布されたときに壊れる程度の安定\n性を有するほどに,泡の持続時間が様々であることと理解できる。 さらに,「小さい」との語についても,上記本件明細書における本件発明 の作用効果に関する記載に照らせば,化粧品として魅力的な泡といえる程度 の大きさをいうものと解するのが相当である。 したがって,この点についての原告の主張を採用することはできない。

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平成29(ワ)22884  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月5日  東京地方裁判所

 特許に無効理由があるとして、104条の3で権利行使不能と判断されました。原告はアイリスオーヤマです。
 相違点1−2’は,単に公然実施品1において,「補強板」であるサッシュを金 属板からなる補強板とサッシュに分けて,補強板をサッシュに当接させるようにす れば実現される構成にすぎない。
また,公知技術である特開2002−270353号(乙13。以下「乙13公 報」という。)や公知技術である特開平7−6869号(乙11。以下「乙11公 報」という。)には,誘導加熱調理器においてサッシュと本体ケース連結金属板と を別部材により構成して両者を当接させてねじで接合することが記載されている。\n製造コストが高い機械加工により製造した部品を,製造コストが安い機械加工であ るプレス加工により製造するために金属板部品に置き換えることは,原告も主張す るとおり,機械加工分野における技術常識であるから,公然実施品1において製造 コストを下げるために乙13公報及び乙11公報に示されたプレス加工可能な金属\n板を採用することは当業者における単なる設計的事項の適用の問題にすぎず,極め て容易になし得ることである。 なお,原告は,相違点1−2は,トッププレートの幅を本体ケースよりも大きく したことに関連して新たに見出した課題に関するものであると主張するが,これは 相違点1−1の存在を前提とした主張であって前提において誤りである。また,原 告は,公然実施品1のサッシュをサッシュと金属板とに分けることに想到し得たと しても,金属板を長くする理由はなかったと主張するが,公然実施品1のガラス板 を長くすれば,それに伴い,サッシュと本体ケースを接続する金属板を長くするこ とは当然であるから,原告の主張は失当である。
c 小括
以上によれば,本件発明は,公然実施品1と同一であるか,本件出願日当時,当 25 業者が公然実施品1に基づいて容易に発明をすることができたものであって,新規 性又は進歩性を欠く。よって,本件特許は特許法29条1項2号又は同条2項に違 反してされたものであって,同法123条1項2号の無効理由があるから,特許無 効審判により無効とされるべきものである。 したがって,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない(特許 法104条の3第1項)。

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平成29(行ケ)10133  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年10月24日  知的財産高等裁判所

 引用発明の認定を争いましたが、引用文献には開示がないとして、無効でないとした審決が維持されました。
 原告は,「個人的に記録されたカセット」においては,オーバーライト の可能性がない場合には記録が可能\とされ,オーバーライトの可能性が発\n見された場合には,3つの態様(1)「記録機能は全く阻止される」,2)「問 い合わせおよび確認の後トリガされ得る」,3)「更に個々の記録に対して 記録機能の全くのブロッキングを付加データに対して設けられたメモリ\nの箇所における相応のエントリにより行なわせることもできる」)のいず れかによって「既に存在している記録の不本意乍らのオーバーライトない し消去の防止」が図られること,そのうちの1)の「記録機能は全く阻止さ\nれる」の態様の場合には,第2バイトの情報によって,カセット全体につ いて「追加記録または再生のみ可能」という用途に応じた記録の制御が行\nわれることが記載されているとして,引用発明1の第2バイトの情報(「x 01」)は,「追加記録または再生のみ可能」という用途を指示する「用\n途識別情報」(構成要件F)に該当する旨主張する。
(ア) そこで検討するに,甲1の記載事項(前記(2)ア(ア),(エ)ないし (キ),図2)によれば,甲1には,1)甲1記載の「磁気テープカセット 用メモリ装置」は「制御データを含んでおり,該制御データによっては 記録および/又は再生機器の動作モードの選択的ブロッキングが可制 御であることを特徴とする」こと(請求の範囲1項),2)「個人的に記 録されたカセット」の場合,「第2のメモリ領域にてカセットが個人的 使用のものであることが当該識別子により指示される場合次のメモリ 領域の分割も規定」され,また,第2バイトの「次のメモリ領域」(第 3バイト以降)には,初期時間及び終了時間と付加的に情報に対する複 数のバイトからなるデータセットが設けられていること,3)個人的に記 録されたカセット」の「2.1記録上の保護」として,「既に存在して いる記録の不本意乍らのオーバーライトないし消去の防止は次のよう にして達成される,即ち実際のテープ位置とメモリにおけるエントリと の比較を記録装置が常に行うようにするのである。当該比較によりオー バーライトの可能性のないことが指示された際のみ記録機能\がトリガ される。但しオーバーライトの可能性が発見されると,記録機能\は全く 阻止されるか,又は問い合わせおよび確認の後トリガされ得る」こと, 4)個人的に記録されたカセット」の「2.2チャイルドプルーフのブロ ック」として,「さらなる機能はそれぞれの個々の記録に対する再生の\nブロックの初期の解放(レリーズ)である。このことは同様に付加デー タに対して設けられた箇所にてエントリにて行われ得る。そのようにし て,正当な権限のないものに対する再生を例えば子どもによる不当な操 作に対する防止保護の形態で阻止することができる」ことが記載されて いるものと認められる。
上記記載を総合すれば,甲1には,「個人的に記録されたカセット」 の「第2バイト」(第2のメモリ領域)に記憶されている識別子により カセットが「個人的使用のもの」であることが指示され,それに対応し た用途として記録及び再生の双方が可能となることを前提として,第2\nバイトの「次のメモリ領域」(第3バイト以降)に設けられた「エント リ」によって「既に存在している記録の不本意乍らのオーバーライトな いし消去の防止」といった記録再生機器の記録動作の制御や「正当な権 限のないもの」に対する「再生のブロック」といった記録再生機器の再 生動作の制御を可能(「可制御」)としたことが開示されているものと\n認められる。
そうすると,引用発明1(「個人的に記録されたカセット」による発 明)の「第2バイト」に記憶されている情報(「x01」)は,記録再 生機器に対して,記録及び再生の双方が可能というカセットの用途に対\n応した記録動作又は再生動作の制御内容を示す情報に相当するものと いえるから,本件発明の「用途識別情報」に該当することが認められる。 また,甲1の記載事項(前記(2)ア(キ),図2)によれば,引用発明 1においては,追加記録のみ可能,すなわち,上書き禁止の制御は,「第\n2バイト」の次のメモリ領域(第3バイト以降)の付加データに対して 「エントリ」(図2記載の第13バイトの「付加データ 本例 オーバ ライト阻止」)を設けることによって行われていることからすると,第 2バイトの「x01」は,「追加記録または再生のみ可能」の用途を示\nすものとはいえない。
さらに,「個人的に記録されたカセット」においては,「既に存在し ている記録の不本意乍らのオーバーライトないし消去の防止」の態様と して,2)及び3)の態様もあり得ることに照らすと,「個人的に記録され たカセット」であることを示す第2バイトの識別子のみによって,1)な いし3)の態様を区別することは困難である。
(イ) 以上によれば,引用発明1の第2バイトの情報(「x01」)は, 「追加記録または再生のみ可能」という用途を指示する情報であるとの\n原告の前記主張は採用することができない。
イ 以上によれば,引用発明1は,構成要件Fの「ユーザが改変することが\nできず,前記磁気テープに対して追加記録または再生のみ可能」とされて\nいる「用途識別情報」に相当する構成を備えていない点において,本件発\n明と相違するから,結論において,本件審決における相違点2の認定に誤 りはない。

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◆平成29(行ケ)10134

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平成30(ネ)10042  損害賠償請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成30年10月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 不競法2条1項2号に該当するとした原審が維持されました。
 控訴人は,被告各商品に被控訴人の著名表示が付されていることは認めつつ,\n需要者がその出所につき控訴人であり被控訴人ではないと認識し得る場合であり, 著名表示は商品のデザインとしてのみ使用されていることから,著名表\示が「商品 等表示」として使用されているとはいえないなどと主張する。\nしかし,不正競争防止法2条1項2号は,同項1号と異なり,「他人の商品又は 営業と混同を生じさせる行為」であることを要件としていない。これは,同項2号 の趣旨が,著名な商品等表示について,その顧客吸引力を利用するただ乗りを防止\nすると共に,その出所表示機能\及び品質表示機能\が希釈化により害されることを防 止するところにあることによるものである。このため,他人の著名な商品等表示と\n同一又は類似の表示が,商品の出所を表\示し,自他商品を識別する機能を果たす態\n様で用いられている場合には,商品等表示としての使用であると認められるのであ\nって,需要者が当該表示により示される出所の混同を生じるか否かが直ちにこの点\nを左右するものではない。 また,原告標章は著名性を有し,高い出所識別機能を有するものであること,原\n告モノグラム表示の使用態様として,商品に応じてその一部分のみを商品に付して\n使用されており,必ずしも「LOUIS VUITTON」との文字商標を必要と はしていないことは,前記のとおりである(引用に係る原判決「事実及び理由」第 4の2(1)及び(2)。他方,被告標章1〜7は,原告標章を構成する原告記号a〜d\nと同一の記号により構成され,その配置も原告標章と同一の規則性に基づくものの\n一部分ということができ,また,被告標章8は,被告記号eの存在や配色において 原告標章と異なるものの,配置の規則性の点では原告標章と同一に配置されたもの の一部分ということができる。このような原告標章の著名性や,原告標章と被告各 標章との構成要素及び使用態様の共通性に鑑みると,被告各標章は,いずれも,こ\nれを見た者の認識において,容易に著名表示である原告標章を想起させるものであ\nることは明らかである。このことは,控訴人が取引の実情として指摘する「REM AKE」,「VINTAGEのLOUIS VUITTONの生地を…落とし込ん だ」,「カスタム」,「CUSTOM」といったウェブ上の記載の存在や「JUN KMANIA」という屋号の表示の存在等を考慮しても異ならない。\n以上より,被告各標章は,それがデザインとして認識されるか否かはさておき, 出所識別機能を有する態様で用いられているものと認められるのであって,この点\nに関し控訴人がるる指摘する事情を考慮しても,控訴人の主張は採用できない。 イ さらに,控訴人は,不正競争防止法2条1項2号に該当するには著名表示の\n主体の営業上の利益が侵害されるような場合でなければならないと主張する。 しかし,後記のとおり,表示希釈及び表\示汚染という観点をも含め,控訴人の行 為により被控訴人に現に損害を生じていると認められることから,仮に控訴人の主 張を前提としても,この点をもって不正競争防止法2条1項2号該当性が否定され ることにはならない。
ウ したがって,控訴人の行為は,不正競争防止法2条1項2号の不正競争行為 に該当する。
(2)損害の額について

ア 控訴人は,需要者は,被告各商品が被控訴人によって販売されていない商品 であることを認識しながら,敢えて控訴人の商品を購入しており,控訴人による被 告各商品の展示販売行為がなければ被控訴人が利益を得られたであろうという関係 にはないなどと主張する。 しかし,原告標章と被告各標章との類似性の程度,原告商品及び被告商品の販路 の共通性並びに需要者層の重なり合いの蓋然性に鑑みると,被控訴人には,控訴人 による侵害行為がなければ利益を得られたであろうという事情が認められることは, 前記のとおりである(引用に係る原判決「事実及び理由」第4の3(1))。
イ 控訴人は,被告各商品の販売により受けた利益は12万3442円であり, かつ,この利益額への原告標章の貢献の程度はその50%にとどまるなどと主張す る。 不正競争防止法5条2項に基づく損害額は,侵害者の売上額から原材料の仕入価 格その他の変動経費を控除した限界利益と解すべきであって,売上高の多寡にかか わらず発生し得る販売費及び一般管理費等は原則として控除されないと解される。 そして,控訴人は,経費の控除につき,その項目を区別することなく,決算書上 「経費」として計上したもの全額の控除を主張するにとどまり,変動経費の額に関 する具体的な主張立証はない。 また,推定覆滅事情は控訴人において主張立証すべきところ,控訴人主張の被告 各商品の売上げに対する原告標章の貢献の程度を裏付けるに足りる証拠はないから, この点に関する控訴人の主張も採用し得ない。
ウ 控訴人は,被告各商品の展示販売により被控訴人の信用が毀損されることは ないなどと主張する。 しかし,前記のとおり(引用に係る原判決「事実及び理由」第4の3(2)),原告 標章は著名性を獲得した商品等表示であり,また,被控訴人は,その商品の品質及\nびブランドイメージを維持管理するために多大な努力を払ってきたことが認められ る。他方,被告各商品の中には,被告商品4のように,品質の点で原告商品と比較 して粗雑というべきものが含まれていると認められることに加え,控訴人自身,被 告各商品は,原告標章(ないし原告モノグラム表示)の著名性に便乗し,被控訴人\nの商品の「高級感を揶揄し風刺する意図」で製作販売された「チープな商品」と主 張しているものであり,客観的にも,その構成等から,そのような意図等で製作販\n売された商品であることが容易にうかがわれる。 このような被告各商品が市場に存在することが,原告商品の品質及びブランドイ メージに悪影響を及ぼし得ることは明らかである。 そうすると,控訴人による不正競争行為は,被控訴人が長年の企業努力により獲 得した原告標章の著名性及びそれにより得られる顧客誘引力を不当に利用して利得 するものであり,被控訴人の企業努力の成果を実質的に減殺するものであって,著 名な原告標章を希釈化するのみならず,これを汚染するものというべきである。こ れにより,需要者の原告商品又は原告標章に対する信用や価値が毀損され,被控訴 人は無形の損害を被ったものと認められる。 エ したがって,この点に関する控訴人の主張はいずれも採用できず,不正競争 防止法5条2項に基づく損害額は108万1490円,信用毀損等の無形損害の額 は50万円及び弁護士費用相当額15万円を,いずれも下回ることはない。

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原審はこちら。

◆平成29(ワ)5423
 

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平成29(ワ)22041  差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月19日  東京地方裁判所(40部)

 構成要件B,C,Eを充足しないとして、技術的範囲に属しないと認定されました。\n
 原告は,被告製品の把持体外側の外郭部分全体の形状は「逆台形状」である から,構成要件Bを充足すると主張する。\n構成要件Bの「逆台形状」の意義に関し,本件明細書の段落【0008】,\n【0018】,【0023】,【0024】には,本件発明の把持部12が「逆 台形形状」である旨の記載があるが,その形状の定義や意義についての記載 は存在しない。そこで,一般的な用法を参酌すると,広辞苑第六版(乙1)に は,「台形」とは「一組の対辺が平行な四辺形」であると記載され,かつ,上 底が下底より短い四辺形の図が掲載されている。これによれば,「逆台形」と は,「上底が下底より長く一組の対辺が平行な四辺形」をいうと解するのが相 当である。 このような理解に立って本件明細書の図2に図示された把持部をみると, その上部(引き手から遠い部分を「上部」,引き手に近い部分を「下部」とい う。)の直線が下部の直線より長く,その側辺が直線状であるので,本件明細 書における「逆台形状」という語の意義は,上記の一般的用法に沿うものであ ると認められる。 他方,証拠(甲3)によれば,被告製品の把持体(前記第3の1(1)〔被告 の主張〕掲記の「被告製品の把持体」の赤線で囲まれた部分)は,下底は直線 状であるものの,下底から上部に向かう側辺は全体が曲線であり,把持体の 中央部分で最大幅となり,その後,上部に向かい先端部に行くほど幅が狭く なっている上,上底も直線状ではなく,曲線から構成されていることが看取\nされる。そうすると,被告製品の把持体は,平行な対辺もなく四辺形でもない ことから「逆台形状」ということはできず,むしろ「楕円形状」というべきで ある。 これに対し,原告は,「逆台形状」の「状」とは,「…のような形である」 の意味であるから,本件発明の「逆台形状」は必ずしも正確な「逆台形」に限 られないと主張する。しかし,被告の把持体が厳密な意味での「逆台形状」の 定義を満たすことは要しないとしても,少なくとも,逆台形としての基本的 な形状は備えていることを要すると解されるところ,被告製品の把持体は, 側辺及び上部が曲線で「四辺形」ということは到底できず,「楕円形状」とい うべきものであり,逆台形の基本的な形状を備えているということはできな いことは前記判示のとおりである。 したがって,被告製品の把持体は「逆台形状」とは言えず,構成要件Bを充\n足しない。
(2)争点1−2(構成要件Cの充足性)について
原告は,被告製品は,スライダーが10〜50%露出しているので,構成\n要件Cを充足すると主張する。 しかし,被告製品の写真である証拠(乙19の1の4枚目,19の2の5 枚目,19の3の3枚目,19の4の3枚目,19の5の4枚目,19の6 の4枚目,19の7の4枚目,19の8の3枚目,19の9の3枚目)によ れば,被告製品において,スライダーがファスナーカバーに収まった状態に おいて閉口端側に露出することはあるものの,その露出割合は10%を超え ないと認めることが相当である。 また,被告製品1の吊り下げヘッダー裏面にはスライダーをファスナーカ バーに収めた状態が図示されているが(甲3の1の図5),同図においても, スライダーはファスナーカバーから閉口端側に露出していない。これによれ ば,被告製品の通常の用法においては,スライダーがファスナーカバーに収 められた際に閉口端側に露出することは想定されていないものというべき である。
これに対し,原告は,被告製品1の実測値(別紙被告製品説明書の図1を 再度実測したとされるもの。原告第1準備書面11頁の図1)によれば,被 告製品1のファスナーカバーの長手方向の全長は約25mmであり,露出部 分が約3.5mmであるから,被告製品のスライダーは約14%(3.5/ 25×100=0.14)露出していると主張する。 しかし,原告が根拠とする上記の実測値は,被告製品の把持体を弾性のあ るファスナーカバーにどの程度強く押し込んだ上で実測されたかが明らか ではなく,訴状に添付された同製品に係る別紙被告製品説明書の図1(甲3 の1の図3)においては,被告製品1のスライダーの露出部分は約3mm程 度にとどまっている上,前記のとおり,吊り下げヘッダー裏面の図(甲3の 1の図5)においては,スライダーがファスナーカバーから閉口端側に露出 していないことなどに照らすと,上記の再実測図(原告第1準備書面11頁 の図1)は,被告製品1のスライダーを通常使用される態様より強くファス ナーカバーに押し込んで実測されたものであると推認される。 この点,原告は,本件発明の技術的範囲は,被告製品がスライダーをファ スナーカバーから所定の割合で露出させることが可能かどうかで判断され\nるべきであるから,スライダーを強くファスナーカバーに押し込んだ状態で 露出割合が10%を超えるのであれば構成要件Cを充足すると主張するが,\n被告製品におけるスライダーの露出割合は,当該製品が通常使用される状態 において測定されるべきであり,弾性を有するファスナーカバーにスライダ ーを強く押し込んだ状態においてスライダーの露出割合が10%を超える としても,それによって構成要件Cを充足するということはできない。\nしたがって,被告製品は構成要件Cを充足しない。
(3) 争点1−4(構成要件Eの充足性)について
原告は,被告製品は,ファスナーカバーに把持体が「収まった状態」となっ ているので,構成要件Eを充足すると主張する。\n構成要件Eの「収まった状態」との語に関し,本件明細書には,拡大把持体\nがカバー体にどの程度覆われていることを意味するかについての直接的な記 載はないが,本件発明に係る洗濯用ネットの開口部を開口及び閉口する際の 手順を記載した本件明細書の段落【0020】及び段落【0022】の記載に よれば,本件発明は,洗濯ネットの閉口時にはスライダ構成体を「確実にカバ\nー体に収」め,開口時には 閉口端側からスライダ3を押すことにより,拡大 把持体1の「先の部分」を一定量カバー体から露出させ,その部分を指でつか んで引き抜くことにより開口するものであると認められる。 このような,本件発明に係る洗濯ネットの開閉時の手順及び仕組みによれ ば,閉口時において拡大把持体は,その「先の部分」まで「確実に」カバー体 に覆われた状態にあるものと解するのが相当であり,本件明細書の【図4】 (C)にも,開口部を閉じた際に拡大把持体1が完全にカバー体に収められ た状況が図示されている。
そうすると,構成要件Eの「収まった状態」とは,拡大把持体がカバー体に\n完全に覆われた状態をいうものと解すべきであり,このような理解は,「収ま る」という語が,一般的には「ある範囲内に全部が残らず入る」ことなどを意 味すること(乙3)とも整合するというべきである。 また,仮に,原告の主張するように閉口時において拡大把持体がカバー体 に完全に覆われることを要しないと解し得るとしても,上記の開閉時の手順 及び仕組みによれば,少なくとも,拡大把持体は,開口時にその先の部分を指 でつまんでそのまま開口することができない程度までカバー体に覆われてい ることを要するというべきである。 以上に基づき被告製品についてみると,証拠(甲3,乙19)によれば,被 告製品はいずれも開口時に閉口端側からスライダーを押して把持体の先の部 分を露出することを必要とせず,そのまま把持体を指でつまんで開口するも のであり,これを可能にするように,開口部側において把持体のリング部分\nの一部が指でつまむことができる程度にファスナーカバーから露出している ことが認められる。 このように,被告製品は,閉口時に把持体がファスナーカバーに完全に覆 われておらず,少なくとも,把持体が指でつまむことができる程度に露出し ているのであるから,被告製品は構成要件Eの「拡大把持体が収まった状態」\nにあるということはできない。

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平成30(ネ)10020 特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月18日  知的財産高等裁判所(1部)  大阪地方裁判所

1審と同様に、29条1項3号違反の無効理由ありとして、権利行使不能と判断されました。控訴人(1審原告)は、訂正の再抗弁を主張しませんでした。
(エ) 以上より,乙1公報には,以下の乙1発明が記載されていると認められる。
携帯用光学式カード1などの表面の所定領域を白色に形成した情報記録領域2を,一方向に等間隔で複数の単位情報記録領域2−1〜2−nに区分けし,単位情報記\n録領域2−1〜2−nそれぞれを,マトリクス状に2×2の四つの単位領域a〜d に区分けし,各単位情報記録領域は,隣接する四つの単位領域a〜dごとに「マー ク無し」,「マーク有り」の二つの状態を記録するカルラコードにおいて,隣接す る四つの単位領域a〜dに対して,「マーク有り」の状態の単位領域には,赤色の 第1のマークMK1,緑色の第2のマークMK2及び黄色の第3のマークMK3の いずれかを印刷し,上記三色のマークに加え白色の四色で4値の情報を一の単位領 域に対して与えることで,2×2のマトリクスを形成する隣接する四つの単位領域 からなる一の単位情報記録領域2−1では4値の組合せで44=256種類の情報 の記録が可能なコード。
(3) 本件発明と乙1発明との対比
ア 「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され」(構\成要件A)について
(ア) 乙1発明の「単位領域」は,「単位領域a〜dごとに『マーク無し』, 『マーク有り』の二つの状態を記録するものである。ここで,乙1発明の「マーク」 は,「赤色の第1のマークMK1,緑色の第2のマークMK2及び黄色の第3のマ ークMK3のいずれかを印刷し」たものであるから,「マーク有り」の状態の単位 領域は,「赤色,緑色,黄色の三色」のうちいずれかの色を表示するものである。また,乙1発明の「単位領域」は「白地に形成した情報記録領域2」を区分けした\nものであるから,「マーク無し」の状態の単位領域は「白色」を表示するものである。\nしたがって,乙1発明の「単位領域」は,第1のマークMK1,第2のマークM K2及び第3のマークMK3のいずれか又はマークなしを表示する「表\示領域」に 相当する。
(イ) また,乙1公報の「単位領域」に赤色(第1のマークMK1),緑色(第 2のマークMK2),黄色(第3のマークMK3)及びマーク無し(白色)のいず れが表示されているかを判別する手法として,乙1公報には,第1の光源及び第2の光源のそれぞれから波長の異なる放射光を単位領域に照射し,単位領域により反\n射された光のレベルによって,上記放射光に対する吸収率ないし反射率の高いマー クが記録されているものと判定して単位領域の色を判別する手法(【0030】〜 【0033】,【0035】〜【0038】,【0040】,【0041】,【0 043】)が記載されている。この記載に鑑みれば,乙1発明は,色ごとに反射の 波長特性が異なることを利用した技術であることが理解できる。そうすると,乙1 発明の「単位領域」は,反射の波長特性が異なる4種の色のいずれかを表示する領域といえることから,本件発明の「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表\示領域」に相当する。
(ウ) さらに,乙1発明の「単位領域」は,一つの単位情報記録領域を「マトリ クス状に2×2の四つの単位領域a〜dに区分け」したものであるから,乙1発明 の単位情報記録領域は,四つの「単位領域」をマトリクス状に2×2に配列したも のといえる。同様に,乙1発明の単位情報記録領域は,「情報記録領域」を一方向 に等間隔で複数(n個)に区分けしたものであるから,乙1発明の「情報記録領域」 は,単位情報記録領域を一方向に等間隔で複数(n個)配列したものといえる。 そうすると,乙1発明の「情報記録領域」は,「単位領域」をマトリクス状に2 ×2に配列した単位情報記録領域を一方向に等間隔で複数(n個)配列したもの, すなわち,「単位領域」をマトリクス状に2×2nに配列したものといえるところ, 表示領域に相当する「単位領域」をマトリクス状に2×2nに配列することは,「単位領域」を縦方向に2行,横方向に2n列に並べること,すなわち,縦方向及\nび横方向からなる二次元的な配列で並べることにほかならない。
(エ) したがって,乙1発明と本件発明とは,「反射(又は放射)の波長特性が 異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され」ている点で共通する。
イ 「この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表\示の要素とした」 (構成要件B)について
(ア) 乙1発明の「単位情報記録領域」のそれぞれは,「44 =256種類の 情報の記録が可能」であるから,256種類の情報のうち1種類を表\示する「情報 表示の要素」といえる。
(イ) また,乙1発明では「2×2のマトリクスを形成する隣接する四つの単位 領域からなる一の単位情報記録領域では4値の組み合わせで44 =256種類の 情報の記録が可能」となるところ,当該「4値」は,「単位領域」に記録された「第1のマークMK1」,「第2のマークMK2」及び「第3のマークMK3」並\nびに「マーク無し」の状態に対応するそれぞれ異なった反射の波長特性を持つ4色 によって単位領域に与えられたものである。そうすると,乙1発明の「4値の組み 合わせ」は,本件発明の「表示領域の波長特性の組み合せ」に相当する。
(ウ) したがって,乙1発明の反射の波長特性が異なる「三色のマークに加え白 色の四色で4値の情報を一の単位領域に対して与えることで,2×2のマトリクス を形成する隣接する四つの単位領域からなる一の単位情報記録領域2−1では4値 の組合せで44=256種類の情報の記録が可能」であることは,本件発明の「この配列における表\示領域の波長特性の組み合せを情報表\示の要素とした」ことに相\n当する。
ウ 「ことを特徴とする二次元コード」(構成要件C)について
上記アによれば,乙1発明の「コード」は,「反射(又は放射)の波長特性が異 なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され」たものであって,四つの単位領域からなる単位情報記録領域に対して「44 =256種類の情報の記 録が可能」であるから,情報を4色の単位領域の二次元的な配列によって記録したものである。\n「コード」には「情報を表現する記号・符号の体系。また,情報伝達の効率・信頼性・守秘性を向上させるために変換された情報の表\現,また変換の規則。」といった意味があるところ,本件明細書及び乙1公報は,いずれも「コード」につき上 記の意味において使用しているものと理解される。 そうすると,乙1発明の「コード」は,4色のうち1色を取る単位領域を二次元 的に配列したコードであるといえ,本件発明の「二次元コード」に相当する。この ことは,乙1公報に「本発明は,カルラコードなどマーク状に情報が記録された光 学式カードおよびその読取装置に関するものである。」(【0001】)との記載 や,カルラコードが二次元バーコードの一種であること(本件明細書【0048】, 甲25)とも整合する。
エ 小括
以上を総合すると,本件発明と乙1発明とは,「反射又は放射の波長特性が異な る3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され,この配列における表\示 領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素としたことを特徴とする二次元コード。」である点で一致し,相違するところがない。\n(4) 控訴人の主張について
ア 控訴人は,本件発明は,一次元コードでは多くの情報を表示するためにはバーコードラベルが大型化し実用的でなくなるという課題を解決するためのものであ\nり,二次元コードにおける「二次元」とは,単に表示領域が二次元方向に幾何学的に配列されているのみではなく,この組合せにより二方向に情報表\示の要素を有することを意味するなどと主張する。 しかし,そもそも,本件発明の構成要件において二次元的に配列されるとするのは「表\示領域」であって,「情報表\示の要素」を二次元的に配列にすることは規定\nされていない。そして,乙1発明においては,本件発明の「表示領域」に相当する「単位領域」が「2×2nに配列」されていることは,上記のとおりである。\nまた,本件明細書は,「バーの本数を増加したロングバーコードと標準型のバー コードを並べて印刷することにより,情報表示量の不足をカバーしようと」する方法は「根本的な解決策にはなっていない。」(【0005】),「モノクロ…のバ\nーコードで,このような多くの情報を表示しようとすると,表\\示パターンが複雑化 すると共にバーコードラベルが大型化し,実用的でなくなる」(【0006】), 及び「モノクロの情報コードの情報表示量の限界のため実用的なシステムを作ることは困難」(【0008】)との問題点を指摘した上で,「本発明は,表\示パターンを変えなくても表示できる情報量を大幅に増大して,上記問題を解決できる情報コードを提供することを目的とする。」(【0009】)として,本件発明の課題\nを提示している。これらによれば,本件発明はモノクロのバーコードで多くの情報 を表示するためにはバーコードラベルが大型化し実用的でなくなるという課題を解決するためのものであって,必ずしも一次元コードにおける課題を解決するための\nものではないと認められる。そうすると,控訴人の主張は,本件発明の課題につい ての誤った認定に基づいたものというべきである。 その点をおくとしても,情報表示の要素を一次元に並べた場合(乙1発明)と二次元的に並べた場合(控訴人主張に係る本件発明)とで,必要な情報表\示の要素数及び表示領域の数に変化はない。そうである以上,情報表\\示の要素を二次元的に並 べた二次元コードにより控訴人主張に係る本件発明の課題が解決されるとは必ずし も認められない。控訴人の主張は,本件発明の課題解決手段についての誤った前提 に基づいたものである。 さらに,控訴人は,乙1発明におけるコードの読取方法から,乙1発明のコード の情報表示の要素は水平方向のみにしかないと指摘する。しかし,前記のとおり,本件発明が二次元的に配列していると規定するのは「情報表\示の要素」ではなく「表示領域」である。また,乙1発明の読取装置が,光学式カードを長手方向に間欠送りするという動作と,カード送り方向と直交する方向に走査するという動作と\nを共に必要とするということは,当該カードに記録されたコードは,二つの方向で, すなわち二次元的に読み取る必要があることを示すものであり,当該コードの表示領域は二次元的な配列で並べられているものと理解するほかない。
イ 控訴人は,本件発明の「コード」とは,独立コード,すなわち,コード化の 対象となる情報を表すシンボル(有意情報)と,バーコードに記載されているデータを読み取るために必要な取り決め(構\造情報)の二つの要素を含むものを意味するなどと主張する。 しかし,本件発明の特許請求の範囲及び本件明細書のいずれの記載にも,「二次 元コード」ないし「コード」を限定する趣旨の規定はない。また,本件明細書【0 048】においては,本件発明の「二次元コード」の例示としてカルラコードが挙 げられていることからすると,かえって,本件発明にいう「二次元コード」又は 「コード」は,それが構造情報を有するものか否かは問わないものであると解するのが相当である。\nさらに,本件発明が「構造情報」を有しないコードであるカルラコードが普及しなかったことを受けて開発されたものであることは,本件明細書に記載されておら\nず,立証もされていない。有意情報と構造情報とを共に備えない限りコードが発明として成立しないことも,何ら立証されていない。\nその他控訴人がるる指摘する点を考慮しても,この点に関する控訴人の主張は採 用し得ない。
ウ 控訴人は,乙1発明では波長特性の組合せが情報表示の要素とされていないなどと主張する。\nしかし,前記認定のとおり,乙1発明は,反射の波長特性が異なる「三色のマー クに加え白色の四色で4値の情報を一の単位領域に対して与えることで,2×2の マトリクスを形成する隣接する四つの単位領域からなる一の単位情報記録領域2− 1では4値の組合せで44=256種類の情報の記録が可能」なものであり,「この配列における表\示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素とした」ものであ\nるから,この点に関する控訴人の主張は採用し得ない。 エ 控訴人は,本件発明と乙1発明とは技術方式における相違があるなどと主張 する。 しかし,その指摘に係る情報波長特性の組合せ組成方式,情報領域に記録される 情報記録方式,情報領域に記録された情報の読み取り方式のいずれについても,本 件発明に係る特許請求の範囲に記載されたものではなく,また,本件明細書にも, 本件発明につきそのような限定がされていることをうかがわせる記載が見当たらな いことなどから,この点に関する控訴人の主張は採用し得ない。

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◆平成29(ワ)780

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平成29(ワ)6293  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年9月27日  東京地方裁判所

 任天堂のマリカー関連の判決です。原告表現物は周知の商品等表\示であるとして、差止および1000万円の損害賠償が認められました。
 本件動画1ないし16は,インターネット上の動画共有サービスで あるYouTubeにアップロードされたものであり,本件動画1ないし3, 5ないし12及び16については,その冒頭において被告会社が行う本 件レンタル事業に関する動画であることが表示されている。また,本件\n動画4は本件レンタル事業に係る利用者がコスチュームを着用して公道 カートを運転する様子が撮影された動画であり,本件動画13及び14 は本件レンタル事業について紹介するテレビ番組の当該紹介部分を切り 取って作成された動画であり,本件動画15は本件ロゴ等がペイントさ れた公道カートを運転する本番組の当該部分を切り取って作成された動画であり,いずれも被告会社あるいは関係団体が,本件レンタル事業を広く紹介するために動画共有 サービスにアップロードしたものと認められる。 そして,被告がその役務である本件レンタル事業を紹介する動画にお いて,原告の商品等表示といえる原告表\現物と類似の表示がされた場合,\nその表示は,少なくとも被告会社が提供している役務に関する広告にお\nいて営業の出所を示す表示としてされたということができる。\n 本件動画1ないし16においては,いずれも原告表現物の特徴の一部\nを備えたコスチューム(被告標章第2の1ないし10のいずれかのコス チューム)を着用した人物が表示されていること,これらの人物はいず\nれも公道カートに乗車していること,「マリオ」,「ルイージ」,「ヨ ッシー」,「クッパ」がカートの運転手となるゲームシリーズ「マリオ カート」が日本及び全世界において相当の出荷本数を有すること(前記 2(1)イ(ア)),これらの動画の冒頭に「MARICAR」などという表示がさ\nれていたことからすれば,これらのコスチュームを着用した動画上の人 物は,本件レンタル事業の需要者をして,ゲームシリーズ「マリオカー ト」のキャラクターである「マリオ」,「ルイージ」,「ヨッシー」, 「クッパ」を連想させ,上記各人物と,本件レンタル事業の需要者にお いて周知の商品等表示である原告表\現物とを類似のものと受け取らせ, その商品等表示と被告会社が行っている役務に関連性があると誤認させ,\n被告会社と原告との間に同一の営業を営むグループに属する関係又は原 告から使用許諾を受けている関係が存すると誤信させるおそれがある。 (オ) コスチュームを着用した被告従業員

前記(イ)及び(ウ)のとおり,本件マリオコスチューム,本件ルイージコ スチューム,本件ヨッシーコスチューム及び本件クッパコスチューム (被告標章第2の1ないし10の各コスチューム)は原告表現物の特徴\nの一部を備えるところ,これらを着用し,カートツアーの先導者として 「MARICAR」「MariCar」といった被告標章第1を表示する公道カートに\n乗車することは,前記(ウ)と同様の理由により,需要者をして,ゲーム シリーズ「マリオカート」のキャラクターである「マリオ」,「ルイー ジ」,「ヨッシー」及び「クッパ」を連想させ,その先導者と,本件レ ンタル事業の需要者の間において周知の商品等表示である原告表\現物と を類似のものと受け取らせ,被告会社と原告との間に同一の営業を営む グループに属する関係又は原告から使用許諾を受けている関係が存する と誤信させるおそれがある。
(カ) 本件マリオ人形
本件マリオ人形(被告標章第2の11の人形)は,原告表現物マリオ\nの特徴を全て備えており,原告表現物マリオと類似するといえる。\n そして,本件マリオ人形が設置されている被告会社の店舗において本 件レンタル事業が行なわれていること,「マリオ」等がカートの運転手 となるゲームシリーズ「マリオカート」が日本及び全世界において相当 の出荷本数を有すること(前記2(1)イ(ア))からすると,同設置行為は, 少なくとも提供している役務に関する広告において営業の出所を示す表\n示としてされたものといえ,原告表現物マリオが本件レンタル事業の需\n要者において周知の原告の商品等表示であることから,被告会社と原告\nとの間に同一の営業を営むグループに属する関係又は原告から使用許諾 を受けている関係が存すると誤信させるおそれがある。
ウ 以上によれば,被告が,被告標章第2を使用して行った本件宣伝行為 (本件写真1の表示を除く,以下同じ。)は,原告の周知の商品等表\示と 類似する標章を商品等表示として使用しているものであり,これに接した\n需要者に対し,被告会社と原告との間に,原告と同一の商品化事業を営む グループに属する関係又は原告から使用許諾を受けている関係が存するも のと誤信させるものと認められる。
・・・
4 不競法に基づく本件ドメイン名の使用差止及び登録抹消請求の可否
(1) 争点7(本件ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争 に該当するか否か)について
ア 本件ドメイン名と原告文字表示の類否
原告の特定商品等表示である原告文字表\示マリカーと,本件各ドメイン 名の類否について ,本件ドメイン名のうち「.jp」,「.co.jp」及び 「.com」部分は多くのドメイン名に共通して用いられるものであるから, 出所を表示する機能\を有する部分は「maricar」又は「fuji-maricar」であり,同部分が本件各ドメイン名の要部と認められる。このうち「maricar」部分については,前記2(1)イで述べたとおり,原告文字表示マリカーと類似すると認められる。\nまた,「fuji-maricar」について,前記のとおり「maricar」部分が原 告文字表示マリカーと類似し,「fuji-」の部分は「maricar」に付加され たものと受け取ることができるものであり,「fuji-maricar」も,原告文 字表示マリカーと類似するものといえる。\n したがって,本件ドメイン名はいずれも原告文字表示マリカーと類似す\nる。
イ 図利加害目的の有無
前記2(1)イ(イ)で述べたとおり,原告文字表示マリカーは,被告会社が\n設立された平成27年6月4日の相当程度以前である平成22年頃から, 原告の販売するゲームシリーズ「マリオカート」の略称として,ゲームに 関心を有する需要者の間で全国的に知られており,被告会社がこれを認識 していなかったとは認め難いこと,被告会社は,本件訴訟提起前の平成2 9年2月23日当時,本件ドメイン名1ないし3を使用して開設したサイ ト(被告会社サイト,品川店サイト1,河口湖店サイト)において,「マ リオカート」シリーズに登場する主要キャラクターである「マリオ」「ル イージ」等のコスチュームを着用した利用者が公道カートを運転するとい う本件レンタル事業のサービス内容を写真等と共に宣伝し,「みんなでコ スプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ倍増。」と記載しており,被 告会社の意図が,原告の「マリオカート」シリーズにおけるゲームの世界 を現実世界で体験することを売りにして顧客を惹きつけようとするもので あったと推認できることからすれば(甲6の1ないし3),被告会社は, 原告文字表示マリカーと類似する本件各ドメイン名を使用することにより,\n同文字表示が有する高い知名度を利用し,原告の公認あるいは協力の下で\n本件レンタル事業を営んでいるかのような外観を作出し,不当に利益を上 げる目的があったものと認めることができる。 したがって,本件各ドメイン名の使用につき,「不正の利益を得る目的」 を有していたと認めることができる。 ウ 小括
以上によれば,被告会社は,本件レンタル事業の宣伝行為のために,不 正の利益を得る目的をもって,原告の特定商品等表示である原告文字表\示 マリカーと類似する本件各ドメイン名を使用したと認められるから,同行 為は不競法2条1項13号所定の不正競争行為に該当する。
5 著作権法に基づく原告表現物の複製又は翻案の差止請求並びに本件写真等\nの抹消及び廃棄請求の可否
(1) 争点10(複製又は翻案の差止請求の可否及び範囲)について
 原告は,請求の趣旨第4項において,原告表現物の複製又は翻案の差止\nめを求め,請求の趣旨第5項において,原告表現物の複製物又は翻案物の\n自動公衆送信又は送信可能化の差止めを求めている。\n 原告表現物を複製又は翻案する行為には,広範かつ多様な行為があると\nころ,原告の請求は,絵画の著作物である原告表現物を絵画上複製すると\nいう行為がされていない本件において,差止めの対象となる行為を具体的 に特定することなく,広範かつ多様な態様な行為のすべてを差止めの対象 とするものといえ,自動公衆送信又は送信可能化の差止めについても,そ\nの差止めの対象自体を複製物又は翻案物とすることから,同様のものとい える。このような無限定な内容の行為について,被告会社がこれを行うお それがあるものとして差止めの必要性を認めるに足りる立証はされていな い。原告の前記請求には理由がない。
(2) 争点9(本件各写真及び本件各動画が原告表現物の複製物又は翻案物に\n当たるか否か)及び争点11(本件各コスチュームが原告表現物の複製物\n又は翻案物に当たるか否か)について
本件各写真及び本件各動画が原告表現物の複製物又は翻案物に当たるか\n否か(争点9)については,これらが複製物又は翻案物に当たることを前 提とする請求である請求の趣旨第4項,第5項に係る請求が前記3(1)の 理由により認められないため,判断するに及ばない。 また,原告は,請求の趣旨第11項において,本件各コスチュームが原 告表現物の複製物又は翻案物に当たることを前提として会社である被告会\n社にその貸与の禁止を求めている。本件各コスチュームである別紙貸与物 目録記載1ないし6の各コスチュームは,それぞれ,被告標章第2の2, 3,5,6,8,10のコスチュームである。ここで,不競法に基づく請 求の趣旨第6項に係る請求には被告会社がこれらのコスチュームを使用 (貸与)することの禁止を求める請求が含まれると解され,この部分は, 請求の趣旨第11項に係る請求と選択的併合の関係に立つと解される。前 記3のとおり,不競法に基づき被告会社がこれらのコスチュームの貸与を することが禁止されることによって,請求の趣旨第11項に係る請求につ いて判断をするに及ばなくなるから,本件各コスチュームが原告表現物の\n複製物又は翻案物に当たるか否か(争点11)は判断するには及ばない。

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平成29(行ケ)10232  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年10月17日  知的財産高等裁判所(2部)

 「いきなりステーキ」の提供の仕方について、異議申立では発明でないと判断されましたが、知財高裁はこの審決を取消ました。なお、異議申\立では、進歩性は争点となっていないので、判断されていません。
問題の請求項1は下記です。
【請求項1】
A お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと,お客様からステーキの量を伺うステップと,伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと,カットした肉を焼くステップと,焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって,
B 上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と,
C 上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と,
D 上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備え,
E 上記計量機が計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力することと,
F 上記印しが上記計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたシールであることを特徴とする,
G ステーキの提供システム。
 以上によると,本件特許発明1は,ステーキ店において注文を受けて配 膳をするまでの人の手順(本件ステーキ提供方法)を要素として含むものの,これ にとどまるものではなく,札,計量機及びシール(印し)という特定の物品又は機 器(装置)からなる本件計量機等に係る構成を採用し,他のお客様の肉との混同が生じることを防止することにより,本件ステーキ提供方法を実施する際に不可避的\nに生じる要請を満たして,「お客様に好みの量のステーキを安価に提供する」という 本件特許発明1の課題を解決するものであると理解することができる。
(2) 本件特許発明1の発明該当性
前記(1)のとおり,本件特許発明1の技術的課題,その課題を解決するための技術 的手段の構成及びその構\成から導かれる効果等の技術的意義に照らすと,本件特許 発明1は,札,計量機及びシール(印し)という特定の物品又は機器(本件計量機 等)を,他のお客様の肉との混同を防止して本件特許発明1の課題を解決するため の技術的手段とするものであり,全体として「自然法則を利用した技術的思想の創 作」に該当するということができる。 したがって,本件特許発明1は,特許法2条1項所定の「発明」に該当するとい うことができる。
(3) 被告らの主張について
ア 被告らは,本件特許発明1には,「札」から「計量機」へ,「計量機」か ら「印し」又は「シール」へと「テーブル番号」を伝達させる工程や,この「テー ブル番号」を本件特許発明1において特定されている各ステップの間で伝達するた めの工程は明示的に存在せず,例えば,「札」のテーブル番号を計量機に情報として 伝達する主体が何であるのかは,特許請求の範囲において何ら特定されていないな どと主張する。 しかし,前記(1)エのとおり,本件特許発明1は,「札」に「お客様を案内したテー ブル番号が記載され」,「計量機」が,「上記お客様の要望に応じてカットした肉を計 量」し,「計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出 力」し,この「シール」を「お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のも のと区別する印し」として用いることにより,お客様の要望に応じてカットした肉 が他のお客様の肉と混同が生じないようにすることに,その技術的意義がある。本 件ステーキ提供方法の各ステップ間で,誰が,どのような方法によりテーブル番号 を伝達するのかということは,上記技術的意義との関係において必須の構成という\nことはできないから,特許請求の範囲において,上記主体や工程に係る構成が特定\nされていないことは,本件特許発明1の発明該当性についての前記判断を左右する ものではない。 イ 被告らは,本件特許発明1において,「テーブル番号」は,その番号が「テ ーブル」に割り当てられており,お客様がそのテーブル番号のテーブルにおいてス テーキを食べるという人為的な取決めを前提に初めて意味を持つものであるから, そのようなテーブル番号を含む情報が伝達されるからといって,本件特許発明1の 技術的意義が自然法則を利用した技術的思想として特徴付けられるものではないな どと主張する。 しかし,お客様がそのテーブル番号のテーブルにおいてステーキを食べることが 人為的な取決めであることと,そのテーブル番号を含む情報を本件計量機等により 伝達することが自然法則を利用した技術的思想に該当するかどうかとは,別の問題 であり,前者から直ちに後者についての結論が導かれるものではない。そして,本 件計量機等が,他のお客様の肉との混同を防止して本件特許発明1の課題を解決す るための技術的手段として用いられており,本件特許発明1が「自然法則を利用し た技術的思想の創作」に該当することは,前記(2)のとおりである。
ウ 被告らは,本件特許発明1において,特定のお客様が要望する量の肉と 他のお客様の肉との混同が生じないのは,「テーブル番号」を「キー情報」として「お 客様」と「肉」とを1対1に対応付けたことによるものであって,「肉の量」そのも のとは何らの関係がないなどと主張する。 確かに,本件明細書には,「この混同が生じないようにカットした肉Aに付すシー ルSに変えて,テーブル番号が記載された旗をカットした肉Aに刺す等の方策によ り,混同を防止する印しとしても良い。」(【0013】)と記載されており,「テーブル番号」を「キー情報」として「お客様」と「肉」とを1対1に対応付けるという 技術的思想をうかがうことができる。 しかし,前記(1)エのとおり,肉の量は,お客様ごとに異なるものである。そして, 本件明細書には,「計量機から打ち出された,ステーキの種類及び量,価格,テーブ ル番号が記された2枚のシールの内の一枚をステーキのオーダー票とし,先のステ ーキ以外のオーダー票に貼着することにより保管し」(【0012】),「焼かれ,加熱した鉄皿に乗せられたステーキを,ライス等の他のオーダー品と共に・・・,保管したオーダー票でその商品を確認し,オーダー票と共にお客様のテーブルに運ぶ」\n(【0014】)ことが記載されており,肉の量を記載したシールによって他のお客 様の肉との混同が生じていないことを確認することが記載されている。 そうすると,本件特許発明1は,本件訂正によりその技術的範囲に含まれないこ ととなった「テーブル番号が記載された旗をカットした肉Aに刺す」ことを混同防 止の印しとする方法とは異なり,計量機が出力したシールに記載された肉の量とテ ーブル番号という複数の情報を合わせて利用して,他のお客様の肉との混同を防止 するものということができるから,肉の量の情報が他のお客様の肉との混同を防止 するという効果に寄与しないものとはいえない。
エ 被告らは,本件特許発明1には,お客様が案内されるテーブルとカット ステージとが店内の別の場所に存在すること,お客様が案内されたテーブルからカ ットステージまで移動し,カットステージにおいてカットされた肉を確認した後, 案内したテーブルに戻るといった手順は,何ら特定されていないから,必ずしも特 定のお客様の肉と他のお客様の肉との混同が生じるものとはいえないなどと主張す る。 しかし,前記(1)エのとおり,他のお客様の肉との混同を防止することは,お客様 に好みの量のステーキを提供することを目的(課題)として,「お客様からステーキ の量を伺うステップ」及び「伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするス テップ」を含む本件ステーキ提供方法を実施する構成(前記(1)ア(イ)1))を採用した ことから,カットした肉とその肉の量を要望したお客様とを1対1に対応付ける必 要が生じたことによって不可避的に生じる要請であり,被告ら主張の上記手順が特 定されなければ,他のお客様の肉との混同を防止する必要が生じないということは できない。
オ 被告らは,本件特許発明1において,「札」,「計量機」,「印し」又は「シ ール」は,それぞれ独立して存在している物であって,単一の物を構成するものではなく,また,本来の機能\の一つの利用態様が特定されているにすぎないなどと主張する。 しかし,「札」,「計量機」及び「シール(印し)」は,単一の物を構成するものではないものの,前記(1)エのとおり,いずれも,他のお客様の肉との混同を防止する という効果との関係で技術的意義を有するものであって,物の本来の機能の一つの利用態様が特定されているにすぎないとか,人為的な取決めにおいてこれらの物を\n単に道具として用いることが特定されているにすぎないということはできない。

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平成29(行ケ)10165等  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年10月11日  知的財産高等裁判所

 進歩性有りとした審決が取り消されました。理由は動機付けあり+特段の効果が無いというものです。
 業者が,相違点2に係る本件発明6の構成,すなわち,引用発明2−1\nに係る4/2/1投与計画による本件抗体の投与を,本件発明6に係る8/6/3 投与計画による本件抗体の投与とすることを,容易に想到することができたか否か について検討する。
(イ) 前記のとおり,当業者は,本件優先日当時,乳がんの治療薬を含む一般的 な医薬品において,投与量を多くすれば,投与間隔を長くできる可能性があり,医\n薬品の開発の際には,投与量と投与間隔を調整して,効能と副作用を観察すること,\n抗がん剤治療において,投与間隔を長くすることは,患者にとって通院の負担や投 薬時の苦痛が減ることになり,費用効率,利便性の観点から望ましいということを 技術常識として有していたものである。 そして,引用例2には,本件抗体の薬物動態を観察するに当たり,本件抗体が週 1回10〜500mgの短持続期間の静脈注入が行われた旨記載されている。ここ で,週1回10〜500mgの投与は,患者の体重が60kgの場合は0.167 〜8.33mg/kg,70kgの場合は0.143〜7.14mg/kgに相当 する。そうすると,引用例2には,本件抗体を週1回8mg/kg程度までの投与 量で投与できることは,示唆されているといえる。 また,引用例2には,本件抗体の臨床試験において,本件抗体の毎週の投与と化 学療法剤の3週間ごとの投与を組み合わせるという治療方法が記載されている。 さらに,引用例2には,本件抗体の薬物動態として,本件抗体は投与量依存的な 薬物動態を示し,投与量レベルを上昇させれば,半減期が長期化する旨記載されて いる。
そうすると,上記のとおりの技術常識を有する当業者は,引用発明2−1のとお り本件抗体を4/2/1投与計画によって投与するだけではなく,本件抗体の投与 量と投与間隔を,その効能と副作用を観察しながら調整しつつ,本件抗体の投与期\n間について,費用効率,利便性の観点から,併用される化学療法剤の投与期間に併 せて3週間とすることや,本件抗体の投与量について,8mg/kg程度までの範 囲内で適宜増大させることは容易に試みるというべきである。そして,当業者が, このように通常の創作能力を発揮すれば,本件抗体を8/6/3投与計画によって\n投与するに至るのは容易である。
(ウ) 被告の主張について 被告は,本件優先日前には,4/2/1投与計画のみが臨床的に用いられ,本件 抗体の半減期も1週間程度と考えられていたから,8/6/3投与計画のように投 与間隔について半減期を大きく超える3週間にすることなどは,技術の最適化とは いえないと主張する。 しかし,引用例2には,本件抗体を週1回8mg/kg程度までの投与量で投与 できることが示唆され,また,本件抗体の投与量レベルを上昇させれば,半減期が 長期化する旨記載されている。さらに,丙323の1には,投与間隔が半減期に比 べて長い場合を前提とした留意事項が記載されている。そして,前記のとおりの技 術常識を有する当業者が通常の創作能力を発揮すれば,4/2/1投与計画による\n本件抗体の投与を,8/6/3投与計画による本件抗体の投与とすることは容易に 想到し得るものである。なお,A博士の宣誓書(乙8)には,がん専門臨床医は, 未試験の投与レジメンを実験することは患者の生命をリスクにさらすことになるか ら,本件抗体を8/6/3投与計画で投与することを動機付けられないなどと記載 されているが,臨床医が薬剤の新たな用法用量を臨床的に試みる動機付けがないこ とをもって,薬剤の新たな用法用量の開発を試みる動機付けを否定するものにはな らない。
(エ) よって,当業者は,引用例2の記載及び技術常識に基づき,相違点2に係 る本件発明6の構成を容易に想到することができたというべきである。\n
イ 効果について
(ア) 引用発明2−1に基づく本件発明6の進歩性を判断するに当たっては,相 違点2に係る本件発明6の構成に至ることが容易かどうかだけではなく,本件発明\n6が予測できない顕著な効果を有するか否かについても併せ考慮すべきであり,本\n件発明6に予測できない顕著な効果があることを基礎付ける事実は,特許権者であ\nる被告において,主張,立証する必要がある。 そして,本件において,被告は,本件抗体を8/6 可能である。そうすると,8/6/3投与計画は,相応の治療効果を維持しつつ,\n引用発明2−1と比較して投与間隔を3倍にするものということはできる。 しかし,引用例2には,本件抗体は投与量依存的な薬物動態を示し,投与量レベ ルを上昇させれば半減期が長期化すること,本件抗体を4/2/1投与計画で投与 すれば約79μg/mlのトラフ血清濃度を維持できたことが記載されている。そ して,この記載から,本件抗体を8/6/3投与計画で投与すれば,17μg/m l程度のトラフ血清濃度を維持できるであろうことは予測できる。\nそうすると,実施可能要件やサポート要件に関しては格別,進歩性に関しては,\n本件発明6が過去の臨床試験で求められる程度の治療効果を有しつつ,単に投与間 隔が3倍になったことをもって,本件発明6の治療効果が引用発明2−1と比較し て予測できない顕著なものということはできない。
(ウ) 治療効果
a 引用例2には,本件抗体を4/2/1投与計画で投与した場合の治療効果と して,16週と32週の間で,トラスツズマブ血清濃度は,定常期に達し,平均ト ラフ濃度及び平均ピーク濃度は,それぞれ,約79μg/ml,123μg/ml となったこと,化学療法剤単独の場合と比較すれば,病勢進行の期間が著しく長期 化し,1年間の生存率が高まったことが記載されている。 b 他方,本件明細書には,本件抗体を8/6/3投与計画で投与した場合,「お よそ10−20μg/mlのトラフ血清濃度を維持」される(【0114】),「血 清中濃度が過去のハーセプチンIV臨床試験の目標トラフ血清濃度の範囲(10− 20mcg/ml)で,17mcg/mlとなることを示唆している。」(【01 16】)と記載されている。もっとも,本件明細書には,本件抗体を8/6/3投 与計画で投与した場合における,病勢進行の期間の長期化や生存率に関する具体的 な記載はない。
c ところで,本件明細書には,本件抗体を8/6/3投与計画で投与した場合 における,病勢進行の期間の長期化や生存率に関する具体的な記載はないから,本 件発明6の治療効果は不明であって,引用発明2−1と同等の治療効果を有すると は直ちにはいえない。 また,一般にトラフ血清濃度は,一連の薬剤投与における最少の持続した有効薬 剤濃度であるから(本件明細書【0044】),一連の薬剤投与において維持され るトラフ血清濃度が高い場合には,それだけ有効薬剤濃度が高く,治療効果も高い と評価することは可能である。しかし,引用発明2−1と本件発明6のトラフ血清\n濃度を比較するに,引用発明2−1において維持されるトラフ血清濃度は約79μ g/mlであるのに対し,本件発明6において維持されるトラフ血清濃度はせいぜ い17μg/mlにとどまる。そうすると,トラフ血清濃度において比較した場合 においても,本件発明6の治療効果は引用発明2−1と同等の治療効果を有すると はいえない。 なお,本件明細書には,本件抗体を8/6/3投与計画で投与した場合における 副作用の抑制効果に関する記載もないから,副作用の抑制という観点からも,本件 発明6は,引用発明2−1と同等の治療効果を有するとはいえない。 d よって,本件発明6が引用発明2−1と同等の治療効果を有すると認めるこ とはできない。

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平成29(行ケ)10222  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年10月10日  知的財産高等裁判所

 「ハイパット」の片仮名及び「HIPAT」の欧文字を二段に横書きした商標について、10号違反、15号違反などが主張されました。知財高裁4部は、無効理由無しとした審決を維持しました。もともと、原告が商標権を取得して使用していましたが、更新失念して消滅し、新規出願した被告に登録が認められていたという経緯です。
 引用商標の周知性について検討するに,まず,原告の使用商品の販 売状況をみると,前記ア(ア)の認定事実によれば,1)原告は,昭和59 年から30年以上にわたり,日本国内において,引越業者等に対し,引 用商標を付した原告商品を継続して販売していること,2)平成17年度 から平成25年度の規格品の販売数量は,年平均1万2199個(合計 10万9791個)であること,3)上記販売数量のうち,大手引越業者 に対する販売数量は,平成21年度が1300個,平成22年度が50 24個,平成23年度が3582個,平成24年度が7914個及び平 成25年度が5277個(いずれもサカイ引越センター分)であり,大 手引越業者以外の引越業者等に対する販売数量が半数を超える相当の割 合を占めていることが認められる。 次に,広告宣伝の状況をみると,前記ア(イ)の認定事実によれば,1) 平成18年ころまでは,「流通サービス新聞」,「トラック経営」,「引 越情報 月刊レポート」,「日刊運輸新聞」などの業界紙に引用商標を 付した使用商品の広告が数回掲載されたことがあったが,その後は,平 成24年5月1日発行の「企業概況ニュース」以外には,業界紙におけ る広告掲載の実績がないこと,2)平成20年から平成25年にかけて, 毎年,「工場・作業現場のプロツール総合カタログ」である「オレンジ ブック」に原告の使用商品の広告が掲載されたが,「オレンジブック」 は分野別に1巻ないし10巻に分かれ,約36万アイテムが掲載された カタログ雑誌であり,原告の使用商品が特に目立って掲載されたもので はないことが認められる。 また,原告は,平成11年以降,毎年,引用商標を付した使用商品を 掲載した,自社商品の「総合カタログ」を3000部から5000部作 成し,業界大手4社を含む引越業者等200社程度に対し,送付又は持 参して配布していたことは,前記ア(イ)認定のとおりであるが,一般貨 物自動車運送事業者数は約5万7600であり,このうち,引越専門業 者数は少なくとも4136であること(前記イ)に照らすと,上記「総 合カタログ」の配布先は,引越専門業者の1割にも満たないといえる。 さらに,原告は,引用商標を付した使用商品のチラシを昭和60年及び 平成10年にそれぞれ配布したことが認められるが,その配布数量や具 体的な配布先は明らかではない。 以上によれば,本件商標の登録出願時において,引越業者,運送業者 等の間で,原告による使用商品の前記販売及び広告宣伝によって,引用 商標が原告の業務に係る使用商品を表示するものとして広く認識されて\nいたものと認めることはできない。
(イ) この点に関し,原告は,日刊運輸新聞(平成16年3月3日号)の 記事(甲118)によれば,同紙が引越運送を行っている各社に対し反 復資材の使用などについてアンケート調査を実施したところ,反復資材 としての「梱包用ハイパット」の使用率が80%を超える結果であり, 「梱包用ハイパット」は,引用商標を付した使用商品を指すものである から,上記アンケート調査の結果は,遅くとも平成16年3月時点で, 引用商標は,引越業者の間では原告の業務に係る商品を表示するものと\nして周知著名であったことを示すものといえる旨主張する。 しかしながら,上記アンケート調査におけるアンケートの対象企業数, 回答数,回答方法等のアンケート結果の信頼性を基礎づける事実は明ら かではない。また,仮に原告が主張するように平成16年3月当時にお ける反復資材としての「梱包用ハイパット」の使用率が80%を超えて おり,「梱包用ハイパット」が原告の使用商品を指すものとして,引越 業者に認識されていたとしても,約7年後の本件商標の登録出願時にお いても同様の認識が当然に維持されていたということにはならない。 したがって,原告の上記主張を前提としても,本件商標の登録出願時 において,引越業者,運送業者等の間で,引用商標が原告の業務に係る 使用商品を表示するものとして広く認識されていたということはできな\nい。
このほか,全国引越専門協同組合連合会,引越専門協同組合,アート コーポレーション,セイノー引越株式会社,名鉄運輸株式会社の担当者 作成の平成28年12月付けの各確認書(甲67の1ないし5)中には, 「ハイパット」というマークが原告の「キルティング製梱包用具」につ いて使用されているマークであることを平成23年9月22日以前より 認識していたことを確認する旨の記載部分があり,サカイ引越センター の代表取締役作成の平成30年2月2日付けの陳述書(甲117)中に\nは,サカイ引越センターは昭和59年から継続的に原告の使用商品を購 入して使用しており,遅くとも平成13年には引越業界で「ハイパット」 といえば知らない者はいないくらいによく知られていたのではないかと 思われる旨の記載部分があるが,上記各記載部分は,上記確認書及び陳 述書の作成者の認識を示したものであり,引用商標が,本件商標の登録 出願時において,引越業者,運送業者等の間で,引用商標が原告の業務 に係る使用商品を表示するものとして広く認識されていた事実を客観的\nに裏付けることにはならない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。

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◆平成29(行ケ)10223

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平成29(行ケ)10229  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年10月3日  知的財産高等裁判所

 異議で取消決定されました。知財高裁は、引用文献の認定には誤りがあるが結論に影響しないとして、審決を維持しました。阻害要因の主張も認められませんでした。
 上記認定事実及び甲1の【0034】ないし【0036】の記載事項に よれば,甲1記載のゴルフシャフト設計装置における「スイング応答曲面」 は,ゴルファーが,シャフトの3つの設計因子である曲げ剛性,ねじれ剛 性及び曲げ剛性分布が異なる複数のゴルフクラブを使用して試打した時の 計測データから算出された移動軌跡(3次元座標データ),軸回転データ と,シャフトの設計因子(ねじり剛性,曲げ剛性及び曲げ剛性分布)の関 係式であって,「スイング応答曲面」を算出するには,シャフトの設計因 子の異なる複数のゴルフクラブを使用することが必要であるものと認めら れる。なお,甲1の【0026】の「ゴルファーは,スイングを行う際に 使用したクラブの曲げ剛性やねじれ剛性などを考慮に入れ,そのクラブ特 性にあわせたスイングを行うため,所定の特性を有する1本のゴルフクラ ブを使用してスイングの計測データを取得して,スイングの解析を行って も妥当な解析結果を得ることができない場合がある。」との記載は,ゴル フクラブが1本の場合にはシャフトの設計因子が一定のものであるためス イングの計測データから適切な「スイング応答曲面」を算出することがで きない結果,妥当な解析結果を得ることができないことを示唆するものと 認められる。 しかるところ,本件決定が認定した引用発明1においては,試打に使用 されるゴルフクラブがシャフトの設計因子の異なる複数のゴルフクラブで あることが特定されていないため,ゴルフクラブが1本のみの場合も含ま れることになるから,甲1に記載された発明の認定としては不適切であり, この点において,本件決定には誤りがあるといえる。 そして,前記アの記載事項を総合すると,甲1には,原告主張の原告引 用発明1(前記第3の1(1)ア(イ))が記載されているものと認めるのが相 当である。 しかしながら,本件発明1と原告引用発明1との一致点及び相違点は, 本件決定が認定した本件発明1と引用発明1の一致点及び相違点と同様で あり(争いがない。),本件決定は相違点の容易想到性について判断を示 しているから,本件決定における上記認定の誤りは,本件決定の結論に直 ちに影響を及ぼすものではない。
・・・
これに対し原告は,原告引用発明1においてセンサーユニットをグリッ エンドに対して着脱可能に取り付ける構\成とした場合,1)試打に用いら れるゴルフクラブの総重量や重心が変わるため,原告引用発明1が意図す る本来のスイング((試打用ではない)通常のゴルフクラブを使用してス イングした際のスイング)の計測データが得られなくなる(阻害要因1)), 2)ゴルフクラブ全体の外観が変化し,試打者の視界も悪化するため,原告 引用発明1が意図する本来のスイングの計測データが得られなくなる(阻 害要因2)),3)ゴルフクラブと6軸センサとの対応関係が乱される結果, 原告引用発明1の課題を解決できなくなるおそれがある(阻害要因3))と いった重大な弊害が生じるため,原告引用発明1に相違点2に係る本件発 明1の構成を適用することに阻害要因がある旨主張する。\nしかしながら,甲1には,「ゴルフシャフトの最適設計を行う際にはゴ ルフクラブを使用するゴルファーのスイング特性を考慮に入れて,ゴルフ ァーの技量や癖を確実に把握して,技量や癖に合致したゴルフシャフトの 設計を行う必要がある。」(【0008】),「9本のゴルフクラブ1は, 6軸センサ11,送信部12等をシャフト内に挿入することによりゴルフ クラブ1の総重量が重くならないように,6軸センサ11,送信部12及 びこれらを動作させるために必要な機器全体の重量を20gに抑えている。 これにより,市販の軽量グリップを用いることで総重量の増加を抑えるこ とができるためクラブの重量増加によるスイングへの悪影響を与えないよ うにしている。」(【0029】)との記載があることに照らすと,甲1 に接した当業者であれば,原告引用発明1の6軸センサ及び送信部(セン サーユニット)をグリップエンドに対して着脱可能に取り付ける構\成とす る場合,ゴルフクラブの総重量や重心の変化によりスイングへの悪影響を 与えないようにしたり,試打者の視界を妨げないようにすることは,ゴル ファーの技量や癖を確実に把握するために当然に配慮し,通常期待される 創作活動を通じて実現できるものと認められるから,原告主張の阻害要因 1)及び2)は採用することができない。
次に,原告引用発明1の6軸センサ及び送信部をグリップエンドに対し て着脱可能に取り付ける構\成とする場合,ゴルフクラブと6軸センサとの 対応関係が乱される結果がないように設計することも,上記と同様に,当 業者が通常期待される創作活動を通じて実現できる事柄であり,また,試 打者が,複数のゴルフクラブを使用して試打を行う場合であっても,実際 に試打を行う際に使用するゴルフクラブは特定の1本であることからする と,システムの使用時に6軸センサ及び送信部の取り付けの誤りによって 上記対応関係が乱されるおそれがあるものとは考え難いし,仮にそのよう なおそれがあるとしても,それを回避する措置を適宜とることも可能であ\nるものと認められるから,原告主張の阻害要因3)も採用することができな い。
したがって,原告引用発明1に相違点2に係る本件発明1の構成を適用\nすることに阻害要因があるとの原告の上記主張は,理由がない。

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平成27(ワ)2570  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年9月20日  大阪地方裁判所

 フラダンスの振り付けについて、一部については創作性が認められました。
 これらのフラダンスの特徴からすると,特定の楽曲の振付けにおいて, 各歌詞に対応する箇所で,当該歌詞から想定されるハンドモーションがとられてい るにすぎない場合には,既定のハンドモーションを歌詞に合わせて当てはめたにす ぎないから,その箇所の振付けを作者の個性の表れと認めることはできない。\nまた,フラダンスのハンドモーションが歌詞を表現するものであることからする\nと,ある歌詞部分の振付けについて,既定のハンドモーションどおりの動作がとら れていない場合や,決まったハンドモーションがない場合であっても,同じ楽曲又 は他の楽曲での同様の歌詞部分について他の振付けでとられている動作と同じもの である場合には,同様の歌詞の表現として同様の振付けがされた例が他にあるので\nあるから,当該歌詞の表現として同様の動作をとることについて,作者の個性が表\ れていると認めることはできない。 さらに,ある歌詞部分の振付けが,既定のハンドモーションや他の類例と差異が あるものであっても,それらとの差異が動作の細かな部分や目立たない部分での差 異にすぎない場合には,観衆から見た踊りの印象への影響が小さい上,他の振付け との境界も明確でないから,そのような差異をもって作者の個性の表れと認めるこ\nとは相当でない。また,既定のハンドモーションや他の類例との差異が,例えば動 作を行うのが片手か両手かとか,左右いずれの手で行うかなど,ありふれた変更に すぎない場合にも,それを作者の個性の表れと認めることはできない。\nもっとも,一つの歌詞に対応するハンドモーションや類例の動作が複数存する場 合には,その中から特定の動作を選択して振付けを作ることになり,歌詞部分ごと にそのような選択が累積した結果,踊り全体のハンドモーションの組合せが,他の 類例に見られないものとなる場合もあり得る。そして,フラダンスの作者は,前後 のつながりや身体動作のメリハリ,流麗さ等の舞踊的効果を考慮して,各動作の組 合せを工夫すると考えられる。しかし,その場合であっても,それらのハンドモー ションが既存の限られたものと同一であるか又は有意な差異がなく,その意味でそ れらの限られた中から選択されたにすぎないと評価し得る場合には,その選択の組 合せを作者の個性の表れと認めることはできないし,配列についても,歌詞の順に\nよるのであるから,同様に作者の個性の表れと認めることはできない。\n
エ 他方,上記で述べたのと異なり,ある歌詞に対応する振付けの動作が, 歌詞から想定される既定のハンドモーションでも,他の類例に見られるものでも, それらと有意な差異がないものでもない場合には,その動作は,当該歌詞部分の振 付けの動作として,当該振付けに独自のものであるか又は既存の動作に有意なアレ ンジを加えたものいうことができるから,作者の個性が表れていると認めるのが相\n当である。 もっとも,そのような動作も,フラダンス一般の振付けの動作として,さらには 舞踊一般の振付けの動作として見れば,ありふれたものである場合もあり得る。そ して,被告は,そのような場合にはその動作はありふれたものであると主張する。 しかし,フラダンスのハンドモーションが歌詞を表現するものであることからする\nと,たとえ動作自体はありふれたものであったとしても,それを当該歌詞の箇所に 振り付けることが他に見られないのであれば,当該歌詞の表現として作者の個性が\n表れていると認めるのが相当であり,このように解しても,特定の楽曲の特定の歌\n詞を離れて動作自体に作者の個性を認めるものではないから,個性の発現と認める 範囲が不当に拡がることはないと考えられる。
オ ところで,フラダンスのハンドモーションが歌詞を表現するものである\nことからすると,歌詞に動作を振り付けるに当たっては,歌詞の意味を解釈するこ とが前提になり,普通は言葉の通常の意味に従って解釈すると思われるが,作者に よっては,歌詞に言葉の通常の意味を離れた独自の解釈を施した上で振付けの動作 を作ることもあり得る。そして,原告は,その場合には解釈の独自性自体に作者の 個性を認めるべきであると主張する趣旨のように思われる。しかし,著作権法は具 体的な表現の創作性を保護するものであるから,解釈が独自であっても,その結果\nとしての具体的な振付けの動作が上記ウで述べたようなものである場合には,やは りその振付けの動作を作者の個性の表れと認めることはできない。\n他方,被告は,たとえ歌詞の解釈が独自であり,そのために振付けの動作が他と 異なるものとなっているとしても,当該解釈の下では当該振付けとすることがあり ふれている場合には,当該振付けを著作権法の保護の対象とすることは結局楽曲の 歌詞の解釈を保護の対象とすることにほかならず許されないと主張する。しかし, 歌詞の解釈が独自であり,そのために振付けの動作が他と異なるものとなっている 場合には,そのような振付けの動作に至る契機が他の作者には存しないのであるか ら,当該歌詞部分に当該動作を振り付けたことについて,作者の個性が表れている\nと認めるのが相当である。そして,このように解しても,個性の表れと認めるのは\n飽くまで具体的表現である振付けの動作であって,同様の解釈の下に他の動作を振\nり付けることは妨げられないのであるから,解釈自体を独占させることにはならな い。 これに対し,歌詞の解釈が言葉の通常の意味からは外れるものの,同様の解釈の 下に動作を振り付けている例が他に見られる場合には,そのような解釈の下に動作 を振り付ける契機は他の作者にもあったのであるから,当該解釈の下では当該振付 けとすることがありふれている場合には,当該歌詞部分に当該動作を振り付けたこ とについて,作者の個性が表れていると認めることはできない。\n
カ 以上のハンドモーションに対し,ステップについては,上記のとおり典 型的なものが存在しており,入門書でも,覚えたら自由に組み合わせて自分のスタ イルを作ることができるとされているとおり,これによって歌詞を表現するもので\nもないから,曲想や舞踊的効果を考慮して適宜選択して組み合わせるものと考えら れ,その選択の幅もさして広いものではない。そうすると,ステップについては, 基本的にありふれた選択と組合せにすぎないというべきであり,そこに作者の個性 が表れていると認めることはできない。しかし,ステップが既存のものと顕著に異\nなる新規なものである場合には,ステップ自体の表現に作者の個性が表\れていると 認めるべきである(なお,ステップが何らかの点で既存のものと差異があるという だけで作者の個性を認めると,僅かに異なるだけで個性が認められるステップが乱 立することになり,フラダンスの上演に支障を生じかねないから,ステップ自体に 作者の個性を認めるためには,既存のものと顕著に異なることを要すると解するの が相当である。)。また,ハンドモーションにステップを組み合わせることにより, 歌詞の表現を顕著に増幅したり,舞踊的効果を顕著に高めたりしていると認められ\nる場合には,ハンドモーションとステップを一体のものとして,当該振付けの動作 に作者の個性が表れていると認めるのが相当である。\n
キ 以上のようにして,特定の歌詞部分の振付けの動作に作者の個性が表れ\nているとしても,それらの歌詞部分の長さは長くても数秒間程度のものにすぎず, そのような一瞬の動作のみで舞踊が成立するものではないから,被告が主張すると おり,特定の歌詞部分の振付けの動作に個別に舞踊の著作物性を認めることはでき ない。しかし,楽曲の振付けとしてのフラダンスは,そのような作者の個性が表れ\nている部分やそうとは認められない部分が相俟った一連の流れとして成立するもの であるから,そのようなひとまとまりとしての動作の流れを対象とする場合には, 舞踊として成立するものであり,その中で,作者の個性が表れている部分が一定程\n度にわたる場合には,そのひとまとまりの流れの全体について舞踊の著作物性を認 めるのが相当である。そして,本件では,原告は,楽曲に対する振付けの全体とし ての著作物性を主張しているから,以上のことを振付け全体を対象として検討すべ きである。 そしてまた,このような見地からすれば,フラダンスに舞踊の著作物性が認めら れる場合に,その侵害が認められるためには,侵害対象とされたひとまとまりの上 演内容に,作者の個性が認められる特定の歌詞対応部分の振付けの動作が含まれる ことが必要なことは当然であるが,それだけでは足りず,作者の個性が表れている\nとはいえない部分も含めて,当該ひとまとまりの上演内容について,当該フラダン スの一連の流れの動作たる舞踊としての特徴が感得されることを要すると解するの が相当である。
・・・
本件振付け6では,大きく分けて,1)両手の掌を下に返して右肘を 少し曲げ,そのまま両腕を下ろしながら胸の高さまで持って行き,胸の前で体に沿 うように両腕を交差させて両手の掌を内側に向け,一連の動作は右に270度ター ンするステップの中で行われる,2)次に,ターンにより左斜め後ろを向いたまま, 両腕を伸ばしきるまで下ろしながら左斜め後ろへ左足右足を交互に2歩ずつ前進す る,という2つのパートからなる動作をしている。 まず,1)の動作についてみると,原告は,右回りに回転しながら両腕を下ろし胸 の前で交差させることで,暗い夜が続き,暗く寒くなっていることを表していると\n主張する。この点,甲25の他の振付け及び乙12の他の振付けはいずれも,手の 動きについては本件振付け6と同様の動きをしているものの,その際にターンする ものはない。ターンは通常のステップの一種ではある(乙5のスピンターン)が, 「夜」や「寒い」といった静的な歌詞からターンすることはが通常想定されない上, 両腕を降ろしながらターンすることによって体全体の躍動感を高めていることから, なお有意な差異があるというべきである。
これに対し,被告は,手の動作が既存の ハンドモーションであり,足の動作が既存のステップであり,これらを組み合わせ た動作はありふれたものであると主張するが,上記のとおり採用できない。 次に,2)の動作について見ると,原告は,聴衆と反対(後ろ)に向かって歩いて いくことで彼が孤独であることを表し,両腕を下ろすことで抱きしめる者がおらず\n一人で寒い夜を過ごしていることを表していると主張する。そして,この動作は,\nここでの歌詞から想定されるものでない上,これと同様の動作を行っている類例は 認められないから,本件振付け6独自のものであると認められる。これに対し,被 告は,このような動作があらゆる舞踊においてありふれた動作であることを指摘す るが,こうした被告の主張が採用できないことは,上記(1)エのとおりである。
c したがって,ここの歌詞に対応する振付けは,原告の個性が表現さ\nれていると評価できる。

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平成30(行ケ)10053  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年9月26日  知的財産高等裁判所

 不正使用取消審判(53条)にて、審決では取消決定がなされました。知財高裁もこれを維持しました。
 上記認定事実からすると,1)被告の靴は,昭和46年頃から本件使用行為がされ た平成25年1月28日までの間に,日本において「スペリー・トップサイダー」, 「スペリートップサイダー」あるいは「トップサイダー」というブランド名で継続 的に販売されており,大手のメーカーや靴の小売店などによって全国的に相当数が 販売されてきたものと推認されること,2)本件使用行為がされた時期に近接した3 年間に,引用商標を付した被告の靴が約5万足販売されていること,3)引用商標は, 被告の靴(デッキシューズ)とともに,本件使用行為に近接する時期である平成1 9年から平成25年までの間に,合計で10回程度,雑誌で取り上げられたほか, 引用商標の要部である「TOP−SIDER」を含んだ欧文字や「TOP SID ER」及びそれを含む欧文字並びにそれらを片仮名読みした文字が多くの雑誌や新 聞で被告の靴(デッキシューズ)とともに紹介されるなどしたこと,4)辞書や小説 にも取り上げられていることが認められる。これらの事実に,引用商標は独創性が 高いものであることや丸井社が本件使用商標について上記認定のような紹介文を付 していたことも考え併せると,引用商標は,平成25年1月28日頃には,被告の 靴(デッキシューズ)を表示するものとして,靴(デッキシューズ)の取引者及び\nその需要者である一般消費者の間で,広く知られていたものと認められる。 この点について,原告は,引用商標が表示されていた雑誌の記事は限られたもの\nである上,「トップサイダー」等の文字が掲載されただけでは引用商標の周知性は基 礎づけられないと主張する。確かに引用商標が表示された雑誌の記載は,上記認定\nのとおり限られた数にとどまるが,被告の靴は長年にわたって相当数が販売されて きたと推認されるところ,引用商標は商品である被告の靴にも付されており,また, 「TOP−SIDER」,「TOP SIDER」,「トップサイダー」等の表示は,\n引用商標の要部又はそれを想起させる表示であって,これらの表\示が数多く雑誌や 新聞に掲載されたことは,引用商標の周知性を基礎づけるものということができる。 なお,原告は,被告の靴の売上額をクラークス社の「CLARKS」ブランドの 売上額との比較で主張しているが,商標の周知性の有無は必ずしも売上額のみで決 まるものではなく,上記の引用商標の周知性についての判断が左右されることはな い。
(3) 本件使用商品と引用商標が付された商品との関連性
本件使用商品であるシャツと引用商標が使用されていた靴(デッキシューズ)は, いずれも身に着けて使用するアパレル製品であって,同じブランドで統一されてコ ーディネイトの対象となったり,同一の店舗内で販売されたりすることがあるもの ということができ,現に証拠(甲11,36,44,70)によると,被告の靴が, 衣料品店でシャツなどの衣料品と一緒に販売されている事例があることが認められ る。また,シャツと靴(デッキシューズ)について,同一の営業主によって製造さ れることもあり得るものである。 加えて,本件使用商品は,一般消費者向けのシャツであって,引用商標が付され ていた靴(デッキシューズ)も,一般消費者向けの商品であると認められるもので ある。 したがって,本件使用商品と引用商標が付された靴とは,販売場所や需要者を共 通にするなど高い関連性を有するものということができる。
(4) 本件商標の使用態様等について
本件使用商標には,本件商標にはない,雲を想起させる図形とヨットの図形が付 加されており,本件使用商標は引用商標と外観上極めて類似したものとなっている。 また,本件使用商標は,本件使用商品の襟の部分に付されていたほか,本件使用商 品には本件使用商標を記載した下げ札が二つ付されており(甲79),本件使用商標 は,取引者や需要者が容易に認識できるような形で使用されていた。
(5) 「他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをした」かどうかについての判断
以上のとおり,引用商標は,被告の靴(デッキシューズ)を表示するものとして\n取引者及び需要者の間で,広く知られているところ,本件使用商品であるシャツと 引用商標が使用されている靴(デッキシューズ)が関連性の高いものであることや, 本件使用商標は,本件商標に雲を想起させる図形とヨットの図形が付加されていて, 引用商標と極めて類似するものであることからすると,本件使用商品に接した取引 者や需要者たる一般消費者にとって,本件使用商品が被告の業務に係る商品である との混同を生じるおそれが十分にあるというべきである。\n (6) 原告のその他の主張について
原告は,別件異議決定(甲101)では,本件使用行為より後の時点でも引用商 標が周知性を獲得していない旨の判断がされていると主張するが,別件異議決定は, 本件とは異なる事件についての特許庁の決定であって,本件についての前記(5)の 判断を左右するものではない。 また,原告は,旧会社は,原告が本件商標を被服に使用しても,出所混同は生じ ないと認識していたと推測されることから,本件において出所混同のおそれはない と主張する。確かに旧会社が,指定商品を「第17類 被服(運動用特殊被服を除 く),布製見回品(他の類に属するものを除く),寝具類(寝台を除く)」とする本件 商標を原告に譲渡したという過去の経緯からすると,旧会社としては,原告が「T OP−SIDER」の欧文字からなる本件商標を,被服等の上記指定商品に使用し ても出所混同は生じないとして容認していたものと推認できる。しかし,そうであ るからといって,そのことから直ちに,旧会社が,水甚社が本件でしていたように, 本件商標に雲を想起させる図形とヨットの図形を付加し,引用商標に極めて類似す る構成で使用することについても出所混同が生じないとして容認していたとはいえ\nないのであるから,前記(5)の判断を左右するものではない。

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平成29(行ケ)10173  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年9月26日  知的財産高等裁判所

 新規性・進歩性が争点となった無効審判の取消訴訟です。特許図面の正確性は従前と同じく、正確性はそれほど要求されないとして、本件発明の技術思想が開示されていると判断されました。
 なお、判決文1ページに「被告は,平成17年9月30日,発明の名称を「ドライブスプロケット支持構造」とする発明につき,特許を出願し(特願2005−287276号),平成24年2月24日,設定登録(特許第4933764号)を受けた(請求項の数3。甲1。以下「本件特許」という。)。被告は,平成27年3月23日,本件特許の請求項1〜3に係る発明について特許無効審判を請求した(無効2015−800071号。甲16,乙1)。」とありますが、冒頭の「被告は,平成17年・・」は、「原告は,平成17年・・・」の誤記と思われます。
 前記の2の甲2の図1及び2において,ドライブスプロケット21 の左側張出部の外側は,変速機ハウジング51にボルト52aで固定されたカバー 52の内側に接しているよう図示されており,ドライブスプロケット21の右側張 出部の外側の右端は,変速機ハウジング張出部の内側に接しているよう図示されて いる。 しかし,甲2は,公開特許公報であり,甲2に掲載された前記2の図1及び2は いずれも特許出願の願書に添付された図面に描かれたものであるところ,一般に, 特許出願の願書に添付される図面は,明細書の記載内容を補完し,特許を受けよう とする発明の技術内容を当業者に理解させるための説明図であるから,当該発明の 技術内容を理解するために必要な程度の正確さを備えていれば足り,設計図面に要 求されるような正確性をもって描かれているとは限らない。 甲2において,図1は「本発明に係るポンプハブ支持構造を有したトルクコンバ\nータおよび油圧ポンプ駆動系を示す断面図」であり,図2は,「上記ポンプハブ支持 構造部分を示す断面図」であるところ,前記2認定の甲2の記載に鑑みると,これ\nらの図面は,トルクコンバータのポンプハブの支持構造に関し,ポンプハブ11を\nステータシャフト6にニードルベアリング12によって支持し,このニードルベア リング12に対して,径方向にほぼ重なるようにして,すなわち,軸方向にほぼ同 位置において,ドライブスプロケット21がスプライン結合して,ドライブスプロ ケット21に作用する径方向力をドライブスプロケット21の内径側に位置するニ ードルベアリング12により受けるようにしたことを示すために,その位置関係を 示すべく,甲2に記載されたものであって,設計図面に要求されるような正確性を もって描かれているとは考えられない。
(イ) 前記2のとおり,甲2には,「ドライブスプロケット21に作用する 径方向力は,ドライブスプロケット21の内径側に位置するニードルベアリング1 2により受ける。このように,ニードルベアリング12およびドライブスプロケッ ト21を軸方向ほぼ同じ位置に重なるように配設することにより,ドライブスプロ ケット21に作用する力をニードルベアリング12により確実に受けることができ るだけでなく,この部分の軸方向寸法を短縮してこの部分の構造をコンパクト化す\nることができる。」(【0010】)と記載されている。したがって,甲2発明は,ド ライブスプロケット21に作用する径方向力は,ドライブスプロケット21の内径 側に位置するニードルベアリング12により受けるものである。この記載のみでは, ドライブスプロケット21に作用する径方向力を外径側でも受けるかどうかは必ず しも明らかでないものの,そのような必要性があるというべき事情は認められない 上,全体として一体化したケースに対し,ドライブスプロケットのような回転する 部材を,内周面及び外周面で同時に軸受等により支持することは,回転する部材や 周囲の部材の寸法誤差の許容範囲を狭めることになり,過度の工作精度を要求する ことになるから,通常行われるものとは考え難い(全体として一体化したケースに 対し,ドライブスプロケットのような回転する部材を,内周面及び外周面で同時に 軸受等により支持する例があることを認めるに足りる証拠もない。)。 また,回転する部材と回転しない部材が,回転する部材の回転中,一時的にしろ, 接触するような状態となることがあれば,回転する部材の円滑な回転が損なわれ, 異音が発生したり,部材の摩耗が生じるといった不具合を生じることも想定される のであって,当業者は,回転する部材であるドライブスプロケット21が,回転し ない部材であるカバー及び変速機ハウジングと接触するという設計を,通常は行わ ないと解される。 さらに,甲2の図2には,ドライブスプロケット21の左側張出部の外周面とカ バー52の内周面との間の対向面,及び,ドライブスプロケット21の右側張出部 の外周面の右端と変速機ハウジング張出部の内周面との間の対向面の軸方向の長さ は,ニードルベアリング12の長さに比べて著しく短いものとして記載されている。 仮に,ドライブスプロケット21の左側張出部の外周面とカバー52の内周面との 間の対向面,及び,ドライブスプロケット21の右側張出部の外周面の右端と変速 機ハウジング張出部の内周面との間の対向面がすべり軸受として接するように設定 されているとするならば,ドライブスプロケットにかかる径方向の負荷が,当該接 触面である対向面にも負荷されることになるところ,この場合には,小さい接触面 に対して集中した負荷がかかることになると考えられる。そして,このような局所 的に集中した負荷は,当該接触面である対向面に潤滑油の介在があるとしても,早 期の摩耗等の不具合が生じるおそれがあるといえるから,通常行われるものではな いと解される。 以上によると,甲2発明におけるドライブスプロケット21は,その内周面がポ ンプハブ11を介してニードルベアリング12で支持されるのであって,ドライブ スプロケット21の左側張出部の外周面とカバー52の内周面,及び,ドライブス プロケット21の右側張出部の外周面の右端と変速機ハウジング張出部の内周面は, ドライブスプロケット21の静止時のみならず回転中も接触することがないように 間隙を設定することが前提になっている,すなわち,原告が主張する技術思想2)に よるものと解することができる。

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平成30(ネ)10044  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審の第1回準備書面における訂正の再抗弁が、時機に後れた攻撃防御と判断されました。
 当裁判所は,平成30年8月8日の当審の第1回口頭弁論期日において, 控訴人が同月3日付け準備書面(1)に基づいて提出した,特許請求の範囲の訂 正により無効理由が解消されることを理由とする訂正の再抗弁の主張につ いて,被控訴人の申立てにより,時機に後れた攻撃防御方法に当たるものと\nして却下したが,その理由は,以下のとおりである。
ア 一件記録により認められる本件訴訟の経緯等は,次のとおりである。
(ア) 本件特許に係る侵害訴訟と特許無効審判
控訴人は,平成28年8月12日,被控訴人に対し,本件特許権に基 づき,被告製品の販売の差止め等及び損害賠償を求める本件訴訟を提起 した後,カシオ計算機株式会社(以下「カシオ計算機」という。)に対 し,本件特許権に基づき,2次元コードリーダの販売の差止め等及び損 害賠償を求める訴訟(東京地方裁判所平成28年(ワ)第32038号。 以下「別件侵害訴訟」という。)を提起した。 その後,米国法人のハネウェル・インターナショナル・インク(以下 「ハネウェル社」という。)は,平成29年8月3日,本件特許につい て,「IT4400(公然実施コードリーダ)」の発明などを主引用例 とする進歩性欠如の無効理由(特許法29条2項,123条1項2号) が存在することを理由として,特許無効審判(無効2017−8001 03号。以下「別件無効審判」という。)を請求した。
(イ) 本件訴訟の経緯
a 原審における経緯
被控訴人は,平成28年12月26日の原審第2回弁論準備手続期 日において,同月20日付け準備書面(3)に基づいて,乙5を主引用例 とする進歩性欠如,サポート要件違反,明確性要件違反及び実施可能\n要件違反の無効理由が存在するとして,特許法104条の3第1項の 規定に基づく無効の抗弁(以下「無効の抗弁」という。)を主張した。 その後,被控訴人は,平成29年7月25日の原審第6回弁論準備 手続期日において,同月7日付け準備書面(8)に基づいて,IT440 0に係る発明を主引用例とする進歩性欠如の無効理由が存在するとし て,新たな無効の抗弁(以下「本件無効の抗弁」という。)を主張し た。 原審は,合計11回の弁論準備手続期日を経て,平成30年2月1 4日の第2回口頭弁論期日において口頭弁論を終結した。控訴人は, 原審の口頭弁論終結時までに,本件無効の抗弁に対し,訂正の再抗弁 を主張しなかった。なお,控訴人は,原審の口頭弁論終結前に,本件 訴訟のうち,被告製品の販売の差止め等請求に係る部分について訴え の取下げをし,被控訴人は,これに同意した。 原審は,平成30年4月13日,本件無効の抗弁は理由があるもの と認め,控訴人の請求を棄却する旨の原判決を言い渡した。
b 当審における経緯
控訴人は,平成30年4月19日,本件控訴を提起した。当審の第 1回口頭弁論期日は同年8月8日と指定され,控訴理由書の提出期限 は同年6月8日(控訴提起日から50日後の応当日)と定められた。 控訴状等の送達後,控訴理由書に対する被控訴人の準備書面の提出期 限は同年7月26日と定められた。 控訴人は,同年6月8日,控訴理由書を提出し,被控訴人は,同年 7月26日,控訴答弁書及び同日付け準備書面(1)を提出した。なお, 控訴人は,控訴理由書において,本件無効の抗弁に対する訂正の再抗 弁を主張しなかった。 その後,控訴人は,同年8月4日,同月3日付け準備書面(1)を提出 した。上記準備書面(1)には,被控訴人作成の上記準備書面(1)に対する 反論のほか,1)控訴人が,別件無効審判において,「IT4400(公 然実施コードリーダ)」の発明を主引用例とする進歩性欠如の無効理 由は理由があるから,本件発明についての本件特許を無効とする旨の 同年7月9日付けの審決の予告(以下「別件審決の予\告」という。) を受けた旨,2)控訴人が,別件無効審判において,同月31日付けで, 本件特許の特許請求の範囲(請求項1及び2)の訂正を求める訂正請 求(以下「別件訂正請求」という。訂正後の請求項1は,別紙3のと おり。)をした旨,3)当審において,別件訂正請求と同内容の訂正に よる本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁(以下「本件訂正の再抗弁」 という。)を主張する旨の記載がある。 同年8月8日の当審第1回口頭弁論期日において,控訴人は,上記 の同月3日付け準備書面(1)に基づいて,本件訂正の再抗弁を主張し, これに対し被控訴人は,同月7日付け準備書面(2)に基づいて,控訴人 の本件訂正の再抗弁の主張は,時機に後れた攻撃防御方法に当たるも のであるから,却下を求める旨の申立てをするとともに,本件訂正の\n再抗弁の主張が却下されない場合には,追って追加反論する予定であ\nる旨を述べた。
(ウ) 別件侵害訴訟における経緯
東京地方裁判所は,平成29年11月9日,別件侵害訴訟の口頭弁論 を終結し,平成30年1月30日,控訴人のカシオ計算機に対する請求 をいずれも棄却する旨の判決(乙80)を言い渡した。 上記判決の理由は,カシオ計算機が主張したIT4400により実施 (公然実施)された発明を主引用例とする進歩性欠如の無効の抗弁(本 件無効の抗弁と同じ抗弁)は理由があると判断したものである。なお, 控訴人は,別件侵害訴訟の口頭弁論終結時までに,上記無効の抗弁に対 し,訂正の再抗弁を主張しなかった。 その後,控訴人は,別件侵害訴訟の上記判決を不服として,控訴を提 起した。
(エ) 別件無効審判における経緯
控訴人は,平成29年11月3日,別件無効審判において,ハネウェ ル社主張の無効理由に対する答弁書を提出した。 その後,特許庁は,平成30年4月23日に口頭審理を行った後,同 年7月9日付けで,「IT4400(公然実施コードリーダ)」の発明 を主引用例とする進歩性欠如の無効理由は理由があるから,本件発明に ついての本件特許を無効とする旨の別件審決の予告(甲24)をした。\nこれに対し控訴人は,同月31日付けで,別件訂正請求(甲25の1 及び2)をした。
イ 前記アの事実関係によれば,1)控訴人は,原審において,平成29年7 月25日の原審弁論準備手続期日において被控訴人から本件無効の抗弁 が主張され,別件侵害訴訟及び別件無効審判においても,本件無効の抗弁 と同じ無効の抗弁又は無効理由が主張され,さらに,平成30年1月30 日に別件侵害訴訟において上記無効の抗弁を容れた請求棄却判決の言渡 しがされたが,同年2月14日の原審口頭弁論終結時までに本件無効の抗 弁に対する訂正の再抗弁を主張しなかったこと,2)その後,同年4月13 日に本件無効の抗弁を容れた原判決がされたが,控訴人は,控訴理由書提 出期限の同年6月8日に提出した控訴理由書においては本件無効の抗弁 に対する訂正の再抗弁を主張せず,その後同年7月26日に被控訴人から 控訴理由書に対する反論の準備書面が提出された後,当審第1回口頭弁論 期日(同年8月8日)の4日前の同月4日になって初めて,本件訂正の再 抗弁の主張を記載した準備書面(準備書面(1))を提出したことが認められ る。
一方で,控訴人において,当審第1回口頭弁論期日の4日前になるまで, 本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張しなかったことについて,や むを得ないといえるだけの特段の事情はうかがわれない。 もっとも,控訴人は,別件無効審判において,平成29年11月3日に 本件無効の抗弁と同じ無効理由を含むハネウェル社主張の無効理由に対す る答弁書を提出した後,平成30年7月9日付けの別件審決の予告を受け\nるまでは,特許法126条2項,134条の2第1項の規定により,本件 無効の抗弁と同じ無効理由を解消するための訂正審判の請求又は別件無効 審判における訂正の請求をすることが法律上できなかったものである。し かしながら,このような事情の下では,本件無効の抗弁に対する訂正の再 抗弁を主張するために,現にこれらの請求をしている必要はないというべ きであるから(最高裁平成28年(受)第632号平成29年7月10日 第二小法廷判決・民集71巻6号861頁参照),当該事情は,特段の事 情に該当しないというべきである。
そして,無効の抗弁に対する訂正の再抗弁の主張は,本来,原審におい て適時に行うべきものであり,しかも,控訴人は,当審において,遅くと も控訴理由書の提出期限までに訂正の再抗弁の主張をすることができたに もかかわらず,これを行わず,第1回口頭弁論期日の4日前になって初め て,本件訂正の再抗弁の主張を記載した準備書面を提出したのであるから, 本件訂正の再抗弁の主張は,控訴人の少なくとも重大な過失により時機に 後れて提出された攻撃防御方法であるものというべきである。 また,当審において,控訴人に本件訂正の再抗弁を主張することを許す ことは,被控訴人に対し,訂正の再抗弁に対する更なる反論の機会を与え る必要が生じ,これに対する控訴人の再反論等も想定し得ることから,こ れにより訴訟の完結を遅延させることとなることは明らかである。 そこで,控訴人の本件訂正の再抗弁の主張は,民事訴訟法297条にお いて準用する157条1項に基づき,これを却下したものである。

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平成30(行ケ)10046  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年9月26日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判(商50条)に対する審決取消し訴訟です。商品「ウィッグ」を展示した各展示ブースで来訪者に対し販促品として無償配布した行為は,商標法2条3項8号の「商品に関する広告に標章を付して頒布する行為」に該当するか?が争われました。
 上記認定事実によれば,被告による本件付箋紙の配布行為は,上記各併設 展示会の展示ブースにおいて,被告の販売する医療用ウィッグ等の商品の広 告の一環として行われたものと認められる。 そして,本件付箋紙の見開き内面部分に掲載された本件使用商標は,全体 として「スヴェンソンのウィッグ」商品の出所識別標識として認識することができる態様で使用されているものと認められることは,前記2(2)認定の とおりである。 そうすると,本件付箋紙は,被告の販売する医療用ウィッグ等の商品(「ス ヴェンソンのウィッグ」商品)の広告媒体に当たるものであって,被告による本件付箋紙の配布行為は,上記商品に関する広告に本件使用商標を付\nして頒布する行為(商標法2条3項8号)に該当するものと認められる。 したがって,本件審決における商標法2条3項8号該当性の判断に誤 りはない。
(2) これに対し原告は,1)本件商標は,被告のウェブサイト,被告が運営 する通販サイト,商品「ウィッグ」のいずれにも,これまで一切使用された ことはなく,被告の公式キャラクターも,これまで商品「ウィッグ」に使用 されたことはなかったことに照らすと,本件付箋紙は,被告そのものを広告 するためのノベルティ(販促品)と認識されるにとどまる,2)本件付箋紙の 見開き内面部分の文章の記載は,「ウィッグ」の語が含まれているというだ けであって,商品自体を宣伝したものではなく,「ウィッグ」の前に「スヴ ェンソンの」と付いているように,被告と商品「ウィッグ」との関係を強調したものであり,本件使用商標と商品「ウィッグ」とのつながりを示すもの\nとはいえないなどとして,本件付箋紙は,単なる被告を宣伝広告するノベル ティ(販促品)に過ぎず,商品「ウィッグ」の宣伝広告とはいえないし,商 品「ウィッグ」との具体的関係において使用されているものとはいえないか ら,本件付箋紙は,商標法2条3項8号所定の「商品に関する広告」に該当 せず,被告による本件付箋紙の配布行為は,同号に該当しない旨主張する。 しかしながら,前記(1)認定のとおり,被告による本件付箋紙の配布行為 は,前記各併設展示会の展示ブースにおいて,被告の販売する医療用ウィッ グ等の商品の広告の一環として行われたものであり,本件付箋紙は,被告の 販売する医療用ウィッグ等の商品(「スヴェンソンのウィッグ」商品)の広告媒体に当たり,上記商品に関する広告に該当するものと認められる。\nもっとも,本件付箋紙の表紙部分を含む本件付箋紙全体の記載内容(前記2(1))に照らすと,本件付箋紙は,被告それ自体を広告する広告媒体とし ての機能をも有するものと認められるが,そのことは,本件付箋紙が上記商品に関する広告に該当することを否定する事情になるものではない。また,\n本件付箋紙に「ウィッグ」に関する具体的な商品情報の記載がないことは, 本件使用商標が本件付箋紙において「スヴェンソンのウィッグ」商品の出所識別標識として認識することができる態様で使用されているとの認定の妨\nげになるものではなく(前記2(3)),しかも,被告による本件付箋紙の配 布行為は,前記各併設展示会の展示ブースにおいて,被告の販売する医療用 ウィッグ等の商品の展示とともに行われたのであるから,本件付箋紙の配布 を受けた参加者は,本件付箋紙は,上記商品の広告のために配布されたもの と認識したものと認められる。

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平成30(行ケ)10065  商標登録取消決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年9月19日  知的財産高等裁判所

 審決は、商4条1項11号の異議申立について類似と判断しました。知財高裁はこれを維持しました。争点は一部を抽出できるか否かです。
 本件商標の構成中,欧文字部分は,AとCがやや図案化されているもの\nの,その形状から,「AiCOM」の文字からなるものと認識できるから,同部分か らは「アイコム」との称呼が生じる。「亜太電信」からなる本件商標の漢字部分から は「アタデンシン」との称呼が生じる。 上記のような両部分から生ずる称呼に加え,欧文字部分と漢字部分が,いずれも 造語であって何らの観念も生じないものであること,欧文字部分と漢字部分が,異 なる種類の文字で,前記のとおり上下に2段に分けて横書きで記載されていること を考え併せると,欧文字部分と漢字部分との間に外観や観念上,何らかの関連性が あるとは認められないものである。また,この両部分を併せた称呼である「アイコ ムアタデンシン」はやや冗長である。 本件商標の構成中,図形部分についても,何らの称呼や観念も生じないものであ\nり,外観,称呼及び観念の各点で欧文字部分及び漢字部分のいずれとも何らの関連 性が認められないものである。 そして,上記のような各構成部分は,いずれも指定商品との関係でその内容,属\n性,品質等を表すものとはいえず,各構\成部分は,指定商品との関係でそれぞれ独 立して出所識別機能を有し得るものといえる。\nさらに,上記アのとおり,「AiCOM」の欧文字部分が,図案化されて漢字部分 よりも大きく記載され,かつ「i」の部分に赤色が用いられている。 そうすると,本件商標の各構成部分が,分離して観察することが取引上不自然で\nあると思われるほど不可分的に結合しているとは認められず,本件商標から「Ai COM」の欧文字部分を要部として観察することが許されるというべきである。 なお,結合商標においては要部が複数生じることもあるのであり,「亜太電信」の 漢字部分が要部となるとしても,そのことによって直ちに「AiCOM」の欧文字部 分が要部とならなくなるものではない。
(2) 原告は,本件商標の欧文字部分の冒頭が「V」を逆にしたものであること などから,欧文字部分は,「AiCOM」とは認識されないと主張する。 しかし,欧文字部分の冒頭の文字について,確かに欧文字の「A」をそのまま記 載したものではないが,同じ長さの2本の直線が上部において鋭角に交差されてい るという外郭の形状は,「A」と同一である。また,本件商標と同様に,「A」の文 字の内側にある直線を省略して図案化している例は,他の企業の標章にも複数見受 けられる(乙20〜26)。一方,欧文字部分の冒頭の文字について,それが原告の 主張するように,欧文字の「V」を逆にしたものであると認識させる契機となるよ うなものは,何ら見当たらない。そうすると,本件商標に接した者が,欧文字部分 の冒頭の文字を「V」を逆にしたものと認識するとは認められず,上記のとおり, 「A」と認識するものと認められる。 また,欧文字部分の3文字目についても,図案化されてはいるものの,円弧の右 側に開口部があり,同開口部が円弧の中央部にあるなどの特徴は欧文字の「C」と 同一である。加えて,他の標章について,本件商標と同じような態様で「C」を図 案化している例や本件商標と同様に「C」の右側開口部に他の欧文字を挟み込んで 図案化している例が見受けられること(乙27〜38)も踏まえると,本件商標に 接した者が,欧文字部分の3文字目を欧文字の「C」と容易に認識するものと認め られる。

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平成30(行ケ)10040  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年9月12日  知的財産高等裁判所

 文字の一部を図案化した商標について、元の読みが生ずるのかが争われました。知財高裁は、生ずるとした審決を維持しました。本件商標は判決文中にあります。
 本願商標は,前記第2の2のとおり,本件図形部分と欧文字「OGGY」 とを横一列に記載して成る。欧文字「OGGY」の高さは,本件図形部分の高さの 半分程度であるが,本件図形部分及び欧文字「OGGY」の下端は概ね同一線上に あり,本件図形部分及び欧文字「OGGY」の間隔は,本件図形部分と「O」との 間隔も含め,概ね等間隔である。
(2) 本件図形部分は,横長の楕円形状を半分にし,その断面に当たる左側の縦 線の上下両端に,左向きに矩形の小さな突起を配した図形の全体を黒塗りにし,そ の中央部に右横向きの四足動物と思しき絵柄をシルエット状に白抜きにしたもので ある。本件図形部分は,左側が縦線,右側が弧線の半楕円形状の輪郭を有し,その 内部の相当部分が白抜きとなっている点において,厚みのあるセリフ(字画末端部 にある爪のような張り出し部)を有する欧文字「D」と共通した形状を有している (乙3,4)。 前記(1)のとおり,本件図形部分及び欧文字「OGGY」は,その下端が概ね同一 線上にあり,概ね等間隔に配置されている上,欧文字「OGGY」は直ちに特定の 意味を有する成語とは認識できないところ,本件図形部分が上記のような形状を有 していることから,本件図形部分を欧文字「D」であるとして,本願商標全体をみ ると,「DOGGY」という構成となる。これが「犬の」という意味を有する英単語\nであることは,我が国においても容易に理解されるものであり(甲13〜23,2 5〜30,乙6),特定の意味を有する平易な英単語として認識することができる。 また,本件図形部分の内側に白抜きされた右横向きの四足動物と思しき絵柄は, 三角形の耳を立てているという形状や,胴体の半分に満たない長さの細い尾を胴体 と略平行に持ち上げているという尾の形状,その他,顔,胴体,足等の各部位の大 きさ,形状,配置等から,「犬」を表したものと容易に理解することができる。\nそこで,本件図形部分を欧文字「D」であるとした場合の本願商標全体の欧文字 の構成と,本件図形部分の内側に白抜きされた絵柄との間にも,関連性があること\nを容易に理解することができる。 そうすると,本願商標に接した需要者は,本件図形部分は,欧文字「D」を図案 化したものであると理解するものと認められる。
(3) 本願商標は,前記(1)のとおり,本件図形部分及び欧文字「OGGY」の下 端を概ね同一線上にして,概ね等間隔で,横一列に記載して成るものであり,また, 前記(2)のとおり,欧文字「D」を図案化した本件図形部分と,欧文字「OGGY」 とは,一体として一つの英単語を構成しているものである。\nそうすると,本願商標は,欧文字「DOGGY」と理解されるその全体の構成か\nら,「ドギー」という称呼を生じ,「犬の」という観念を生じるものと認められる。
・・・
前記1,2のとおり,本願商標と引用商標からは,「ドギー」という同一の称呼及 び「犬の」という同一の観念が生じる。 また,本願商標と引用商標とは,外観において,欧文字「DOGGY」と理解さ れる構成を有する点において共通する。\nそうすると,本願商標と引用商標とは,外観において,「D」の図案化の有無や, 片仮名部分の付加の有無などが相違するが,その図案化の程度や片仮名部分が欧文 字部分の読みを表したものにすぎないこと等を勘案すると,両商標を場所と時間を\n異にして離隔的に観察した場合,両商標の称呼及び観念が同一であり,外観におい ても欧文字「DOGGY」と理解される構成を有する点が共通することから,商品\nの出所を誤認混同するおそれがあるものと認められる。

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平成29(ワ)43698  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年9月12日  東京地方裁判所

 JALの文字部分が南急となっているJALマークと似た標章の使用について、不競法2条1項2号違反と判断されました。最後に両当事者の商標があります。
 不競法2条1項2号の「類似」に該当するか否かは,取引の実情の下において, 需要者又は取引者が,両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両 者を全体的に類似のものと受け取るおそれがあるか否かを基準に判断すべきである。 イ これを本件についてみるに,原告表示と被告標章とは,外観において,いずれ\nも,円形に収まるように描かれた鶴ないし鳥類の頭部,首元及び翼から成り,正面か らみて左を向いた鶴ないし鳥類の頭部及び首元を囲むような態様で,下部から頂点に 向かって円形の外周に沿うように翼が描かれた全体として円形の赤色の図形であり, 鶴ないし鳥類の頭部,首及び翼の形状や赤色の色彩が共通する。他方,被告標章の図 形には鶴ないし鳥類の頭部に目とみられる白抜きされた小さい円形様の部分が存在 するのに対して,原告表示にはそれが存在しない点,原告表\示と被告標章の円形の内 側下部には,円形の直径と比較して縦が5分の1ないし7分の1程度,横が2分の1 程度の大きさで白色の文字が記されているところ,原告表示には「JAL」との文字\nが,被告標章には「南急」との文字が記載されている点で相違する。また,原告表示\nのうち「JAL」との文字は,「ジャル」との称呼を有するのに対し,被告標章のうち 「南急」との文字は「ナンキュウ」との称呼を有し,これらの称呼は相違する。さら に,原告表示と被告標章は,全体として鶴ないし鳥類の観念を生ずる点が共通する。\n以上の共通点及び相違点を総合すると,相違点である白抜きされた部分や文字部分 は,図形全体に占める割合がそれほど大きなものではなく,地の色と同じ色彩である 白色が用いられていること,文字部分は図形全体の下方に一般的なフォントで示され ているにすぎないことからすれば,原告表示及び被告標章の図形全体及び各構\成部分 の形状や色彩の共通点は,上記相違点よりも需要者に強い印象を与えるものであると 評価することができる。したがって,原告表示と被告標章については,称呼が相違す\nるものではあるが,需要者が外観及び観念に基づく印象として,両者を全体的に類似 のものと受け取るおそれがあると認められる。
ウ これに対し,被告は,全体を観察すれば,原告表示と被告標章は役務の出所に\nつき誤認混同を生ずるおそれはなく,類似するとはいえない旨を主張するが,不競法 2条1項1号の不正競争においては,混同が発生する可能性があるのか否かが重視さ\nれるべきであるのに対し,同項2号の不正競争にあっては,著名な商品等表示とそれ\nを有する著名な事業主との一対一の対応関係を崩し,稀釈化を引き起こすような程度 に類似しているような表示か否か,すなわち,容易に著名な商品等表\示を想起させる ほど類似しているような表示か否かを検討すべきものであるから,被告指摘の事情は\n類似性の判断に影響を与えるものではなく,失当である。

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平成30(ム)10003  特許権侵害行為差止等請求再審事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月18日  知的財産高等裁判所

 技術的範囲に属しないとして確定した前訴判決について、対象特許が訂正で範囲が変わったので再審を求めました。知財高裁(2部)は、特104条の4には該当しないが、前訴で技術的範囲に属しなかった被疑侵害品が属することはあり得ないとして、請求を棄却しました。
 (ム)の事件番号は初めてみました。
 1 特許法104条の4は,特許権侵害訴訟の終局判決が確定した後に同条3号 所定の特許請求の範囲の訂正をすべき旨の審決であって政令で定めるもの(以下, 「3号訂正審決」という。)が確定したときは,上記訴訟の当事者であった者は終局 判決に対する再審の訴えにおいて3号訂正審決が確定したことを主張することがで きないと規定している。その趣旨は,特許権侵害訴訟の当事者は,同法104条の 3により,無効の抗弁及びいわゆる訂正の再抗弁(訂正により無効の抗弁に係る無 効理由が解消されることを理由とする再抗弁)を主張することができ,判決の基礎 となる特許の有効性及びその範囲につき,主張立証する機会と権能を有しているこ\nとから,そうであるにもかかわらず,上記訴訟の判決が確定した後に,特許の有効 性及びその範囲につき判決と異なる内容の審決が確定したことを理由として確定判 決を覆すことができるとすることは,紛争の蒸し返しであり,特許権侵害訴訟の紛 争解決機能や法的安定性の観点から適切ではないことにあると解される。そして,\n特許法施行令8条2号は,特許権侵害訴訟の終局判決が特許権者の敗訴判決である 場合には,「当該訴訟において立証された事実を根拠として当該特許が・・・特許無 効審判により無効にされないようにするためのものである審決」が3号訂正審決に 当たると規定している。前記第2の2(3)のとおり,再審被告両名は,基本事件にお いて無効の抗弁を主張していないから,本件訂正認容審決は,特許法施行令8条2 号所定の「当該訴訟において立証された事実を根拠として当該特許が・・・特許無 効審判により無効にされないようにするためのものである審決」ではなく,3号訂 正審決には当たらない。
2 しかし,特許法は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面を訂正 するために訂正審判を請求することを認める一方(同法126条1項本文),その訂 正は,特許請求の範囲の減縮を含む所定の事項を目的とするものに限って許される ものとし(同項ただし書),さらに,「実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更す るものであってはならない」としている(同条6項)。これは,訂正を認める旨の審 決が確定したときは,訂正の効果は特許出願の時点まで遡って生じ(同法128条), しかも,訂正された明細書,特許請求の範囲又は図面に基づく特許権の効力は不特 定多数の一般第三者に及ぶものであることに鑑み,特許請求の範囲の記載に対する 一般第三者の信頼を保護することを目的とするものであり,特に,同法126条6 項の規定は,訂正前の特許請求の範囲には含まれない発明が訂正後の特許請求の範 囲に含まれることとなると,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれがあるた め,そうした事態が生じないことを担保する趣旨の規定であると解される。このよ うに,特許法は,訂正前の特許発明の技術的範囲に属しない被疑侵害品は,訂正後 の特許発明の技術的範囲に属しないことを保障しているのであるから,被疑侵害品 が特許発明の技術的範囲に属しないことを理由とする請求棄却判決が確定した後に, 特許権者が訂正認容審決を得て,再審の訴えにおいて被疑侵害品が訂正後の特許発 明の技術的範囲に属する旨主張することは,特許法がおよそ予定していないものと\nいうべきである。そして,再審原告は,基本事件において,前訴判決の基礎となる 本件特許に係る発明(本件発明及び本件訂正発明)の技術的範囲につき,主張立証 する機会と権能を有していたのであるから,前訴判決が確定した後に,本件訂正認\n容審決が確定したという,特許法がおよそ予定していない理由によって,前訴判決\nを覆すことができるとすることは,紛争の蒸し返しであり,特許権侵害訴訟の紛争 解決機能や法的安定性の観点から適切ではなく,特許法104条の4の規定の趣旨\nにかなわないということができる。なお,再審原告は,前記第2の2(3)のとおり, 基本事件の係属中に第一次訂正を行っていたのであり,基本事件の係属中に本件訂 正認容審決を得ることができなかったというべき事情も認められない。 これらの事情を考慮すると,再審原告が本件訂正認容審決が確定したことを再審 事由として主張することは,特許法104条の4並びに同法126条1項ただし書 及び同条6項の各規定の趣旨に照らし許されないものというべきである。 3 前記2によると,再審原告は,本件訂正認容審決が確定したことを主張する ことができないから,前訴判決の基礎となった行政処分である本件特許権に係る特 許査定が後の行政処分である本件訂正認容審決により変更されたことを理由として 民訴法338条1項8号の再審事由がある旨の主張は,その前提を欠くものであり, 理由がない。

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平成29(ワ)10742  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月19日  東京地方裁判所

 加熱調理器の特許侵害事件です。裁判所(29部)は、技術的範囲に属しないと判断しました。均等侵害は主張されていません。原告はアイリスオーヤマです。
 構成要件Eのうち,「調理容器の外殻」及び「最大径の調理容器」の意義につい\nて検討する。 上記各文言は,調理容器との関係をもって加熱調理器の構成を示すものであり,\n文言のみから一義的にその意義を明らかにすることができないことから,本件明細 書等の発明の詳細な説明の内容を考慮して検討する必要がある。そこで,1⑴にお いてみたとおりの本件明細書等の記載を考慮すると,本件明細書等(【0003】, 20 【0005】,【0021】,【0028】,【0029】,【0030】,【0 032】)には,リング状枠はトッププレート上に印刷表示され,調理容器を有効\nに加熱できる領域として使用者に示されるものであること(【0003】),リン グ状枠は加熱部の領域を示し,鍋の最大径と同径で,鍋の外殻を表すものであるこ\nと(【0005】,【0021】)及び加熱部は最大の鍋径と同径で,リング状枠 であること(【0028】,【0029】)が示され,これ以外に,上記各文言の 意義の解釈を導くような説明がされていることは認められない。そうすると,「最 大径の調理容器」は,トッププレート上に印刷表示され左右の加熱部の領域を示し,\nまた,リング状枠と同径のものであり,また,「調理容器の外殻」と一致するもの であると解するのが一般的かつ自然である。 この点,被告は,構成要件Eの内容は不特定であるなどと主張するが,同主張は,\n前記認定に照らし採用することができない。
(2) 被告製品関連製品の構成\nア 原告は,別紙3被告製品説明書(原告)において,被告各製品は,「左IH ヒーター及び右IHヒーター上で,調理容器の鍋底全体を加熱できる最大径である 直径26cmの領域を示す外殻線11,12」という構成を有し,これが「調理容\n器の外殻」であり「最大径の調理容器」である旨主張する。そして,被告各製品を 除く被告製品関連製品も被告各製品と同様の構成を有する旨主張する。\nイ しかしながら,前記⑴において認定したとおり,「調理容器の外殻」及び「最 大径の調理容器」は,トッププレート上に印刷表示された加熱部及び有効加熱領域\nの領域を示すリング状枠と同径のものであるところ,原告の主張する外殻線11, 12は,原告において付しているものにすぎず,トッププレート上に表示されてい\nるものではないから,これらを「調理容器の外殻」又は「最大径の調理容器」であ るとみることはできない。そして,本件全証拠によっても,被告各製品には,加熱 部及び有効加熱領域を示す直径26cmのリング状枠が表示されているとは認めら\nれず,加熱部及び有効加熱領域を示すリング状枠と同径である「調理容器の外殻」 及び「最大径の調理容器」が直径26cmであると認めることもできない。 原告は,「調理容器の外殻」は,鍋底の最大径であり,被告は被告各製品におい て鍋底が直径26cmまでの鍋を使用することができる旨説明しているから,被告 各製品の「最大径の調理容器」は26cmのものであると主張する。しかしながら, 被告において上記のように説明することが,被告各製品で使用可能な最大径の鍋底\nを示すものといえるか否かについてひとまず措くとしても,前記⑴において認定し たとおり,「調理容器の外径」及び「最大径の調理容器」と同一であるリング状枠 及び有効加熱領域は,トッププレートに表示される必要があるのであって,表\示さ れていない有効加熱領域に基づく原告の主張はその前提を欠き失当である。
(3) 小括
以上のとおり,被告各製品は,原告主張の「調理容器の鍋底全体を加熱できる最 大径である直径26cmの領域を示す外殻線」という構成を有するとは認められな\nいから,この外殻線を前提に被告各製品が構成要件Eを充足するという原告の主張\nは採用できず,ほかにこれを認めるに足りる証拠もない。また,被告各製品を除く 被告製品関連製品が構成要件Eを充足することを認めるに足りる証拠もない。\nしたがって,その余の点について判断するまでもなく,被告製品関連製品は,構\n成要件Eを充足しないから,本件発明の技術的範囲に属すると認めることはできな い。

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平成29(ワ)22417  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年8月29日  東京地方裁判所

 CS関連発明の侵害事件です。裁判所(29部)は、技術的範囲に属しないと判断しました。均等侵害も第1要件を満たさないとしました。
 (2)本件各発明の意義
上記(1)の本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の特許請求の範囲請 求項1及び3の記載によれば,本件各発明は,より広範で深い人間関係を結ぶための, 人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該 プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関するものであり,より広\n範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートするために,上記人脈関係登録シス テム等を提供することを目的とするものであって,登録者相互間の合意によって人間 関係が結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに,人間関係を結んだ登録者の個人情 報又は識別情報を関連付けて記憶することで,個人情報又は識別情報を含む検索キー ワードによって第二の登録者と人間関係を結んでいる第三の登録者の個人情報又は 識別情報を検索することができるようにするという発明である,と認められる。
2 被告サーバの構成について\n証拠(甲16,乙4,7)及び弁論の全趣旨によれば,被告サーバにおいて,人間 関係を記憶する手順は,次のとおりであり,これを図示すると,別紙「被告サーバの 動作フロー」のとおりである(同別紙では,アカウント1号を甲,アカウント2号を 乙と表記している。)と認められる。すなわち,他のユーザと人間関係を結ぶ申\請をす ることを意味する「友達申請」(以下,単に「友達申\請」という。)をするユーザを「アカウント1号」,友達申請をされるユーザを「アカウント2号」として説明すると,1) アカウント1号が「友達申請をする」と示されたボタンをクリックする(画面08),\n2)被告サーバがアカウント1号に確認画面を送信する,3)アカウント1号が「送信す る」と示されたボタンをクリックする(画面09),4)被告サーバが記憶手段に友達申\n請に係るデータを登録する,5)被告サーバが記憶手段にアカウント1号及びアカウン ト2号の人間関係が結ばれた旨の友達リストの仮登録をする,6)被告サーバがアカウ ント2号に友達申請がされたことを通知する(画面12),7)被告サーバがアカウン ト1号に友達申請の完了画面を送信する(画面11),8)アカウント2号が被告サー バにアカウント1号のプロフィールを要求する(画面13,14),9)被告サーバが記 憶手段からアカウント1号のプロフィールを取得する,10)被告サーバがアカウント2 号にアカウント1号のプロフィールを送信する,11)アカウント2号が「友達になる」 と示されたボタンをクリックする(画面15),12)被告サーバが記憶手段の友達リス トを更新して本登録をし,友達として関連付けることが完了する,13)被告サーバがア カウント1号に友達申請が承認されたことを示すメール(甲16)を送信する,とい\nうものである。 そうすると,被告サービスにおいては,被告サーバの記憶手段にアカウント1号と アカウント2号の人間関係が結ばれたとして関連付けられた後に,アカウント1号に 対して友達申請が承認されたことを示すメールが送信されるという処理がされるの\nであり,アカウント1号とアカウント2号が友達として記憶された後に,仮にアカウ ント1号に対し友達申請が承認された旨が通知されなかったとしても,被告サーバに\nおいては,アカウント1号とアカウント2号が友達であると記憶されているといえる。
3 争点1(被告サーバは,文言上,本件各発明の技術的範囲に属するか)について 事案に鑑み,まず,争点1−3(被告サーバは構成要件1D及び2Dを充足するか)\nについて判断する。
(1) 構成要件1Dは,「上記第二のメッセージを送信したとき,上記第一の登録者\nの個人情報と第二の登録者の個人情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段 と,」というものであり,本件発明1においては,サーバが,第二の登録者と人間関係 を結ぶことを希望する旨の第一の登録者からのメッセージである「第一のメッセージ」 を受信して同メッセージを第二の登録者の端末に送信し,第二の登録者からこれに合 意する旨のメッセージである「第二のメッセージ」を受信して,同メッセージを第一 の登録者に送信したことを条件として,又は送信した後で,第一の登録者の個人情報 と第二の登録者の個人情報とを関連付けて記憶手段に記憶するものとして規定して いるということができる。 そして,構成要件1Dの「個人情報」が「識別情報」に置き換えられているほかは,\n構成要件1Dと文言を共通にする構\成要件2Dについても,サーバが第二のメッセー ジを送信したことを条件として,又は送信した後で,第一の登録者の識別情報と第二 の登録者の識別情報とを関連付けて記憶手段に記憶するものとして規定していると 認められる。
(2) この点,原告は,構成要件1D及び2Dにおける「送信したとき」の「とき」\nは「ある幅をもって考えられた時間」という意味であるとして,構成要件1D又は2\nDは,第一の登録者の個人情報又は識別情報を第二の登録者の個人情報又は識別情報 とが関連付けられた後に第二のメッセージが送信される場合をも含む旨を主張する が,「送信したとき」とは,送信したことを条件とする旨表す表\現であると解釈するの が一般的かつ自然な解釈であるというべきであり,また,これが時を表す表\現である と解釈したとしても,送信という動作が完了していることを表す表\現が用いられてい ることからすると,送信することが関連付けることに先行すると解釈するのが一般的 かつ自然であって,本件明細書その他にも異なる解釈を導く説明は見当たらない。 したがって,構成要件1D及び2Dの記載は,送信の実行が先行し,その後に関連\n付ける旨の実行がされることを規定していると解され,原告の上記主張を採用するこ とはできない。
(3)そこで,被告サービスについてみると,前記2において認定したとおり,被告 サービスにおいては,被告サーバの記憶手段に第一の登録者に相当するアカウント1 号と第二の登録者に相当するアカウント2号が友達として登録されて関連付けるこ とが終了した後に,アカウント1号に対して友達申請が承認されたことを示すメール\nが送信されるという処理がされるのであるから,被告サーバは,「第二のメッセージ を送信したとき」に,「上記第一の登録者の個人情報と第二の登録者の個人情報とを 関連付けて上記記憶手段に記憶する手段」又は「上記第一の登録者の識別情報と第二 の登録者の識別情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段」を有しているとい うことはできない。したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告サー バは,構成要件1D及び2Dを充足しない。\nよって,被告サーバは,文言上,本件各発明の技術的範囲に属すると認めることは できない。
・・・・
これを本件についてみると,前記1(2)で説示したとおり,本件各発明は,より 広範で深い人間関係を結ぶための,人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサー バ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記\n録媒体に関するものであり,より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポート するために,上記人脈関係登録システム等を提供することを目的とするものであって, 登録者相互間の合意によって人間関係が結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに, 人間関係を結んだ登録者の個人情報又は識別情報を関連付けて記憶することで,個人 情報又は識別情報を含む検索キーワードによって第二の登録者と人間関係を結んで いる第三の登録者の個人情報又は識別情報を検索することができるようにするとい う発明である。そして,登録者相互間の合意は,メールの交換によって行われるもの されている(段落【0011】,【0015】)。そうすると,本件各発明の構成要件1D及び2Dの「第二のメッセージを送信したとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶\nする」という構成は,登録者相互間の合意(メッセージの交換)によって人間関係が\n結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに,人間関係を結んだ登録者の個人情報又は 識別情報を関連付けて記憶するという課題解決手段を具体的な構成として特定した\nものであって,この構成が従来技術に見られない特有の技術的思想を構\成する特徴的 部分であり,本件各発明における本質的部分というべきである。 これに対し,原告は,より広範で深い人間関係を結ぶために共通の人間関係を結ん でいる登録者の検索を容易にするということが本件各発明の本質であり,本件各発明 における友達申請メッセージ(第一のメッセージ)や承認メッセージ(第二のメッセ\nージ)のやり取りに係る構成は,人間関係を結ぶための「合意の手段」としての意味\nを有するにすぎず,本件各発明において非本質的な部分である旨主張する。 しかしながら,本件各発明の構成要件1D及び2Dの「第二のメッセージを送信し\nたとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶する」という構成が,本件各発明の課題解\n決手段を具体的な構成として特定したものであることは前記のとおりであるから,個\n人情報又は識別情報を関連付けて記憶する過程のみを切り離して,それらの処理のタ イミングを規定したものにすぎないということはできず,本件各発明の非本質的部分 であるということはできない。また,本件各発明は,個人情報又は識別情報を含む検 索キーワードによって第二の登録者と人間関係を結んでいる第三の登録者の個人情 報又は識別情報を検索することを内容とするものである(構成要件1Eないし1G,\n2E)が,それを超えて,共通の人間関係を結んでいる登録者の検索を容易にすると いうことが,本件各発明の課題又は目的とされて本件各発明の構成として具体的に反\n映されているとはいえず,原告の主張を裏付けるに足る本件明細書の記載その他の証 拠はない。 したがって,原告の主張は採用することができない。
ウ そうすると,本件各発明の構成要件1D及び2Dの「第二のメッセージを送信\nしたとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶する」という構成は,本件各発明におけ\nる本質的部分であると解されるところ,前記説示のとおり,被告サーバは,メッセー ジを交換する前に,登録者相互間の関連付けが終了するのであって,上記構成を有し\nていないから,その相違部分が本件各発明の本質的部分ではないとはいえず,均等の 第1要件(非本質的部分)を充足しない。

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平成29(行ケ)10193  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年9月25日  知的財産高等裁判所

 審決では進歩性なしと判断されましたが、知財高裁は「固体電解質体の表\n面が露出する程度の隙間を設定することは,記載も示唆もされていない」として これを取り消しました。
 本件審決は,本件発明1における相違点1のうち,構成要件1I) の「ジル コニア充填部に設けた電極と開口用貫通穴との隙間から,ジルコニア充填部 の表面を露出させること」に関し,引用発明2の1に甲3技術1を適用して\n接着剤表面アルミナ層とするに当たり,1) 甲3の記載から,接着剤表面アルミナ層が,第1電極や第2電極の表\面の周縁部と重複してしまうと,第1電極又は第2電極の他の部分,及び,接着剤表面アルミナ層の他の部分と比較して厚くなってしまうことから,\nアルミナからなる接着剤の層を導体層の平坦部と略面一にすることによって,各未焼成シート又は各未焼成スペーサに亀裂が発生することを防止するという目的が果たせなくなることは当業者にとって明らかであるから,アルミナからなる接着剤の層と導体層が略面一であることが必須であるのに対して,アルミナからなる接着剤の層と導体層の側面とが隙間を空けることなく接することは必須ではないことは,当業者にとって明らかである, 2) 第1電極又は第2電極の表面の周縁部に,接着剤表\面アルミナ層を隙間なく接触させるように設計又は製造を行うと,避けることのできない製造誤差により,第1電極又は第2電極と接着剤表面アルミナ層が重複することがあり得るので,そのような事態を回避するために,第1電極及び第2電極と接着剤アルミナ層との間に隙間を設けることによって余裕を持たせ,第1電極及び第2電極と接着剤表\面アルミナ層との重複を回避することは,当業者が適宜なし得ることである, 3) そして,その隙間をどの程度にするかは,製造誤差の程度等を勘案して 当業者が適宜設定し得るものであって,固体電解質体の表面が露出する程\n度の隙間とすることも適宜設定し得る範囲内のものである, と判断した。
(5) そこで検討するに,本件審決が認定したとおり,甲3には,甲3技術1が 記載されており,本件特許に係る出願当時,積層タイプのガスセンサ素子に おいて,これを構成する各未焼成シートをアルミナからなる接着剤を介して\n積層することは,当業者にとって周知の技術であったと認められる。しかし, 甲3には,1)接着剤が導体層の周縁部に重複すると,亀裂の発生を防止する ことができないから,導体層と接着剤とが隙間なく接することは必須ではな いことや,2)避けることのできない製造誤差により,接着剤が導体層の周縁 部に重複すること,また,3)製造誤差の程度を勘案して,固体電解質体の表\n面が露出する程度の隙間を設定することは,記載も示唆もされていないし, 上記1)〜3)の事項が,当業者にとって当然の技術常識であると認めるに足り る証拠も見当たらない。 仮に,「製造誤差」を考慮して接着剤の量を調整することが,当業者の技 術常識であるとしても,甲3の段落【0049】及び【0050】の記載, 及び当該段落が引用する図6〜9に接した当業者は,接着剤の量は,導体層 に設けられた平坦部と略面一となるように,すなわち,当該平坦部との間に できるだけ隙間を生じないように調整するものと理解すると認めるのが相当 である。 そうすると,引用発明2の1に甲3技術1を適用するに当たり,当業者が 「電極と接着剤との間に隙間を設ける」構成を採用する動機付けがあると認\nめることはできず,構成要件1I)に係る「上記ジルコニア充填部に設けた上記 電極と上記開口用貫通穴との隙間から,上記ジルコニア充填部の表面を露出\nさせる」構成を,当業者が容易に想到できたということはできない。
(6) 原告の主張について
この点に関連して,原告は,甲3に導体層等の周りを接着剤で埋めること についての記載はないから,導体層と接着剤とを隙間なく密着させることま でが必要とされているのではないと主張する。 甲3に,導体層等の周りを接着剤で埋めるとの文言が明記されていないの は原告が主張するとおりであるが,甲3に,上記(5)の1)〜3)の事項が記載も 示唆もされていないことは,上記(5)において説示したとおりである。 そして,甲3の段落【0049】には,接着剤を導体層における平坦部と 略面一になるように塗布したと記載されている上に,当該段落が引用する図 6及び7,並びに段落【0050】が引用する図8及び9には,当該接着剤 が導体層に隙間なく接するように塗られている図が描かれていることからす ると,これらの記載に接した当業者は,接着剤を当該平坦部との間にできる だけ隙間を生じないように塗布するものと理解するのが自然というべきであ る。

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平成29(ネ)10064  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 特許権侵害訴訟の控訴審です。知財高裁第1部は、被告装置1−2は本件訂正発明1の1の技術的範囲に属する、被告装置3は本件訂正発明4の技術的範囲に属し,かつ,無効理由無し、その他の被告装置は技術的範囲に属しない、とした1審判断を維持しました。均等侵害も第1、第2要件を満たさないとしました(1審と同じ)。損害額については変わりありませんが、「寄与率」という用語が「損害額の推定の覆滅」と変更されてます。
 前記のとおり(引用に係る原判決「事実及び理由」第4の1(1)イ(原判決 65頁6行目〜21行目)),本件訂正発明1の1及び1の2の従来技術には,基 礎杭等の造成にあたって地盤を掘削する掘削装置として一般に使用されるアースオ ーガ装置では,オーガマシンの駆動時の回転反力を受支するために必ずリーダが必 要となるが,リーダの長さが長くなると,傾斜地での地盤掘削にあっては,クロー ラクレーンの接地面とリーダの接地面との段差が大きい場合にリーダの長さを長く とれず,掘削深さが制限されるという課題等があった。そこで,本件訂正発明1の 1及び1の2は,これらの課題を解決するために,掘削装置について,掘削すべき 地盤上の所定箇所に水平に設置し,固定ケーシングを上下方向に自由に挿通させる が,当該固定ケーシングの回転を阻止するケーシング挿通孔を形成してなるケーシ ング回り止め部材を備えるものとして,リーダではなく,ケーシング回り止め部材 によって回転駆動装置の回転反力を受支するものとした発明と認められる。 ここで,回転駆動装置の回転反力を受支するには,1)回転駆動装置の回転反力が 固定ケーシングによって受支されるとともに,2)固定ケーシングの回転反力がケー シング回り止め部材によって受支されなくてはならない。そうすると,1)を具体的 に実現する「固定ケーシングが,掘削軸部材に套嵌されると共に,回転駆動装置の 機枠に一体的に垂下連結される」構成及び2)を具体的に実現する「ケーシング回り 止め部材が,掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の 横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に載設固定され,固定ケーシングを上下方 向に自由に挿通させるが該固定ケーシングの回転を阻止することができるケーシン グ挿通孔を有する」構成により,ケーシング回り止め部材によってケーシング,ひ\nいては回転駆動装置の回転反力を受支するようにしたことが,従来技術には見られ ない特有の技術的思想を有する本件訂正発明1の1の特徴的部分であり,その本質 的部分というべきである。
(ウ) したがって,固定ケーシングが回転駆動装置の機枠に一体的に垂下連結さ れる構成を有しない被告装置1−3〜1−8は,本件訂正発明1の1と本質的部分\nを異にするものであり,第1要件を満たさない。
・・・
このことから,本件訂正発明1の1の「固定ケーシング5」は,「固定ケーシン グ5が円筒状ケーシングからなるため,地盤への固定ケーシング5の打ち込み及び 引き抜きが容易となり」【0028】とも記載されているように,回転駆動装置1 の下部から垂下され,ケーシング回り止め部材7のケーシング挿通口8に挿入され, 掘削軸部材2及びダウンザホールハンマー4と共に地盤の掘削により地盤に打ち込 まれ,地盤を所定深度まで掘削したら,ダウンザホールハンマー4の作動を停止さ せた後,昇降操作用ワイヤーWを巻取り操作して,掘削軸部材2及びダウンザホー ルハンマー4と共に引き上げられることを前提としたものである。 そうすると,本件訂正発明1の1の掘削装置においては,掘削後に引き抜くこと を前提にケーシングと回転駆動装置の機枠とを一体的に連結することによって,回 転駆動装置とケーシングを掘削後に引き抜く際に,地盤内でケーシングにかかる土 圧による抵抗に抗してこれを引き抜くことが可能になるものということができる。\nこれに対し,ケーシングと回転駆動装置との機枠とを一体的に連結するのでなく 着脱自在の構成にした場合,そもそも着脱自在の構\成はケーシングを掘削後に残置 させることができるという作用,効果を奏するものであるし,仮にこの構成でケー\nシングを引き上げるとすると,ケーシングと回転駆動装置の機枠との連結部の強度 が十分でないために,引き抜くことが不可能\ないし極めて困難となり,本件訂正発 明1の1の目的を達成することができない。 したがって,掘削後にケーシングを引き抜くことを前提とした本件訂正発明1の 1の掘削装置において,回転駆動装置にケーシングを着脱自在に連結する構成を採\n用すると,本件訂正発明1の1の目的を達成することが困難となり,同一の作用効 果を奏しなくなる。 そして,被告装置1−3〜1−8の構成につき,いずれも回転駆動装置の下部に\n連結された中空スリーブに設けられたスリット状の切り欠きとケーシング外周軸方 向に固設された角鉄とを係合させることにより,中空スリーブとケーシングとを着 脱自在に係合するものであるとする限りでは,当事者間に争いがない。 (イ) 以上によれば,被告装置1−3〜1−8は,第2要件を満たさない。

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◆平成25(ワ)10958

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◆平成29(行ケ)10193

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平成29(行ケ)10045  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年9月18日  知的財産高等裁判所

 異議申立について応答せずに取消決定がなされました。これに対する取消訴訟です。\n知財高裁は、実施可能要件違反、サポート要件違反として異議決定を維持しました。なお、審決書に理由が記載されていなかったことは、取消理由通知に対する応答がなかったという特殊性もあり、実質問題なしと判断されました。\n
ア 実施可能要件適合性について
(ア) 原告は,「当業者が,エピトープについて具体的に特定する記載がな い本件明細書の記載に基づいて,エピトープを決定してLRP6結合分 子を得るためには,過剰な実験を行う必要がある。」との本件異議申立\n書記載の主張に対し,本件明細書には,LRP6に関連するエピトープ が示されており,当業者であれば,本件特許の優先日当時に利用可能な\n技術を用いることにより,インビトロで,エピトープを含む特定のペプ チド(すなわち,プロペラ1領域又はプロペラ3領域のアミノ酸配列) に結合する本件発明の候補となるLRP6抗体を十分な数で特定するこ\nとができ,また,本件明細書の記載及び本件特許の優先日当時の周知技 術を用いることにより,製造された結合分子の結合性及び活性を調べ, その有用性を確認することができたと主張する。 (イ) 検討 a 物の発明について,明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要\n件に適合するというためには,当業者が,明細書及び図面の記載並び に出願時の技術常識に基づいて,その物を生産でき,かつ,使用する ことができるように具体的に記載されていることが必要であると解す るのが相当である。
b 本件明細書の記載について
上記1(2)において認定したとおり,本件明細書には,本件発明に係 るLRP6結合分子のLRP6上の結合部分や結合によるWntリガ ンドの結合阻害についての説明(【0015】,【0033】等)と ともに,実施例1には,優先的にWnt1又はWnt3a誘導Wnt シグナル伝達を阻害する抗LRP6アンタゴニストFabs(実験時 のプライベートネームであるFab003,Fab004,Fab0 15など7つのFabで記載)が同定された旨が記載されている(【0 226】〜【0228】)。 しかし,本件明細書には,上記各Fabがいかなる抗原結合部分を 含んでいるのか,すなわち,抗原結合部分やそれが認識するエピトー プがいかなるアミノ酸配列等によって特定されるのかについて,これ を具体的に示す記載はなく,その手掛かりとなる記載も見当たらない。 また,実験結果が記載されていたと推測される図は,全て欠落してい る。
c 本件発明1〜22,31〜33は特定のアミノ酸配列の抗原結合部 分を含むLRP6結合分子,すなわち化学物質の発明である。そして, 上記bにおいて説示したとおり,本件明細書の記載から,実施例で得 られた各Fabのアミノ酸配列等の化学構造や認識するエピトープを\n把握することはできない。また,本件明細書には,Wnt1特異的等 の機能的な限定に対応する具体的な化学構\造等に関する技術情報も記 載されていない。そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明におけ る他の記載及び本件特許の出願時の技術常識を考慮しても,特許請求 の範囲に規定されている300程度のアミノ酸の配列に基づき,Wn t1に特異的である等の機能を有するLRP6結合分子を得るために\nは,当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤をする必要があると認 めるのが相当である。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が,本件明 細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて,本件発明に 係る物を生産でき,かつ,使用することができるように具体的に記載 されているとはいえない。
(ウ) 原告の主張について
a 原告は,特定のエピトープに対応する抗原結合部分を有する抗体は, 汎用のファージディスプレイ法により取得することができるから,本 件発明に係る結合分子を得るために,当業者が期待し得る程度を超え る試行錯誤は要しないし,本件明細書記載の機能アッセイにより得ら\nれた抗体の機能(Wnt特異性)についても,当業者は容易に確認す\nることができると主張する。 確かに,原告が主張する技術は,いずれも本件発明が属する技術分 野における一般的な技術である,抗体類の製造方法やリガンド・受容 体の結合アッセイ法であって,例えば,抗原又はエピトープが特定さ れている場合に,ファージディスプレイ法等の周知の技術を適用する ことによって,それに対応する抗体が得られることは技術常識である といえる(この点,当事者間に争いはない)。しかし,本件発明に係 る「モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt1特異的であり,優 先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,Wnt3a誘導 シグナル伝達経路を阻害しない」「LRP6結合分子」を生産するた めには,まず,本件発明に係るLRP6の第1又は第3プロペラに相 当するそれぞれ300程度のアミノ酸の配列から,本件発明に係る特 異性を満たすエピトープになり得ると予想される特定の塩基配列を選\n定した上で,ファージディスプレイ法などの周知の手法によってそれ らに対応する化学構造(アミノ酸配列)を有するペプチド(すなわち\nFab)を取得し,得られた多数のFabの中から,「Wnt1特異 的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが,W nt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない」との機能を有するFa\nbを特定することが必要である。 これに対し,本件明細書には,本件発明に係る特異性を満たすエピ トープとなり得ると予想される特定の塩基配列の具体的な選定方法に\nついて何ら記載がないから,本件明細書に基づいて本件発明のLRP 6結合分子を得ようとする当業者は,結局,発明者が本件発明を発明 した際に行ったのと同程度の試行錯誤をしなければならないところ, これは当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を強いるものという べきである。
すなわち,エピトープを特定すれば,それに対応する抗体は周知の 手法により得ることができるとはいえるものの,本件明細書には,そ のエピトープについて,具体的なアミノ酸配列等のその構造に関する\n技術的特徴が実施例として開示されておらず,また,本件明細書にお ける他の記載及び出願時の技術常識に基づいても,エピトープ又はそ れに対応する抗体結合部分の具体的構造等を特定することができない\n以上,当業者は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて本 件発明に係る結合分子を容易に生産することができるとはいえない。
・・・
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請 求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範 囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明 の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認 識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも 当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認 識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解する のが相当である。
b これを本件についてみると,本件発明1の技術的特徴は,原告が主 張するとおり,特定のWntとLRP6におけるその特定の結合部位 との関係(例えば,Wnt1の結合部位はプロペラ1の領域であるこ と等)を有し,具体的な抗原結合部分(Fab)を備える「Wnt1 アンタゴニスト抗体」及び「Wnt3aアンタゴニスト抗体」にある と認められる。そして,特許請求の範囲に記載されているとおり,「抗 原結合部分が,配列番号:1のアミノ酸20−326;または…のい ずれかに含まれるか,またはいずれかと重複しているヒトLRP6(配 列番号:1)のエピトープに結合し」,「モノクローナル抗体の抗原 結合部分がWnt1特異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝 達経路を阻害するが,Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない」 等の主として機能によって特定される広範な化学物質の発明について\n特許を受けようとするものである。
一方,上記ア(イ)bにおいて説示したとおり,本件明細書には,具 体的な抗体の抗原結合断片Fabを得たことをうかがわせるプライベ ート番号(Fab003,Fab015など)が記載されているもの の,それらの具体的なFabの構造(アミノ酸配列)も,当該抗原結\n合断片が認識するエピトープ(LRP6中の数個のアミノ酸配列)も 記載されていない(なお,上記のとおり,実験結果が記載されていた と推測される図が全て欠落しているため,これらのFabが有する詳 細な機能・特性の検証自体が事実上不可能\である。)。そして,特許 請求の範囲には,「モノクローナル抗体の抗原結合部分がWnt1特 異的であり,優先的にWnt1誘導シグナル伝達経路を阻害するが, Wnt3a誘導シグナル伝達経路を阻害しない」という機能的な特徴\nを有することが記載されているものの,これらの機能と得られたFa\nbの構造上の特徴等を関連づける情報も何ら記載されていない。\n
そうすると,本件発明1について,特許請求の範囲に記載された発 明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記 載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のも のであるとも,また,当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の 課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。 このことは,本件発明2〜22,31〜33についても同様である。
・・・
そこで検討するに,特許異議の申立てについての決定には,決定の結論及\nび理由を記載しなければならない(特許法120条の6第1項4号)。 この点に関連して,特許法157条2項4号は,審決をする場合には審決 書に理由を記載しなければならないと定めている。この趣旨は,審判官の判 断の慎重,合理性を担保しその恣意を抑制して審決の公正を保障すること, 当事者が審決に対する取消訴訟を提起するかどうかを考慮するのに便宜を与 えること及び審決の適否に関する裁判所の審査の対象を明確にすることにあ るというべきであり,したがって,審決書に記載すべき理由としては,当該 発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者の技術上の常識又は 技術水準とされる事実などこれらの者にとって顕著な事実について判断を示 す場合であるなど特段の事由がない限り,前示のような審判における最終的 な判断として,その判断の根拠を証拠による認定事実に基づき具体的に明示 することを要するものと解するのが相当である(最高裁昭和59年3月13 日第三小法廷判決・集民141号339頁)ところ,このことは特許異議の 申立てに係る決定についても同様と解される。\n
(3) 本件についてみると,上記第2の5において認定したとおり,本件取消決 定に係る決定書そのものには,結論に至った具体的な判断過程も,その根拠 となるべき証拠による認定事実も何ら記載されていない。 しかし,当該決定書には,「平成28年5月13日付けで取消理由を通知 し」,「上記の取消理由は妥当なものと認められる」との記載がされており, 本件取消理由通知書には,取消理由の要旨と,詳細については本件異議申立\n書を参照のこととの記載がされ,本件異議申立書には,本件特許が取り消さ\nれるべきであることについての理由が,証拠を具体的に摘示して,詳細に記 載されているのであるから,本件異議申立書,本件取消理由通知書及び本件\n取消決定に係る決定書の全体をみれば,当該決定書の記載が,審決の公正を 保障し,当事者が決定に対する取消訴訟を提起するかどうかを考慮するのに 便宜を与え,決定の適否に関する裁判所の審査の対象を明確にするという趣 旨に反するものとはいえない。また,本件異議申立手続において,被告が本\n件取消理由通知をしたのに対し,原告が応答をしなかったという経緯も踏ま えれば,本件取消決定に係る決定書そのものに,結論に至った具体的な判断 過程や,その根拠となるべき証拠による認定事実が何ら記載されていないと しても,上記の結論に変わりはないものというべきである。

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平成29(ワ)40193  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月6日  東京地方裁判所

 CS関連発明に関する侵害訴訟です。東京地裁46部は、「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体」の意義を審査経過などから判断し、技術的範囲に属しないと判断しました。原告グリー、被告Supercellです。
 プレートがゲーム空間内の所定の範囲に適用されることがあることが記載さ れ,また,前記(2)イのとおり,本件明細書には,発明を実施するための形態と して,プレイヤがテンプレートの作成を指示したとき,「範囲選択画面」が表\n示され,そこにおいては,ゲーム空間の一部について,テンプレートが作成さ れる範囲が表示されていること,テンプレートが作成される範囲について,例\nとして,プレイヤが任意の2点をタップして,当該2点を対頂点とすることで 定められることがあること,ゲーム空間の一部に対して,そのテンプレートが 適用されることが記載されている。他方,本件明細書には,「ゲーム空間」の 選択に関して,上記内容とは異なる内容の記載はない。 さらに, 原告は,本件意見書において,補正により加えられた「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体」との記載について,プレイヤがゲーム空間のうちのテンプレートが作成される範囲を指定するという段落【0037】の記載を挙げた上で,プレイヤがゲーム空間の左上の点および右下の点をタップすることで,ゲーム空間の全部の範囲を選択することができることを意味する旨述べて,その記載が当初明細書から自明であると述べている。
以上によれば,本件明細書には,本件各発明のテンプレートはゲーム空間内 の所定の範囲について作成,適用されるもので,その範囲についてプレイヤが 定めることが記載されており,原告もそのことを前提として,プレイヤがゲー ム空間内の全部の範囲をテンプレートの範囲とすると定めることによりゲー ム空間の全体が選択されることになるという意見を述べたといえる。 上記の本件明細書及び本件意見書の記載を参酌すれば,構成要件1C及び2\nDの「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体」における「選択」とは, テンプレートの作成について,プレイヤがテンプレートとするゲーム空間内の 一定の範囲を選択することを前提として,テンプレートを作成する際に,プレ イヤがゲーム空間内の全部の範囲を選択することを意味するものと解釈する のが相当である。
これに対し,原告は,構成要件1C及び2Dにおける「ゲーム空間の全体」\nとは文字通りゲーム空間全体を意味するのであってゲーム空間のうちどの部 分を選択するかの決定権をプレイヤが有していることを必須の構成要素とは\nするものではないと主張し,また,本件明細書の第1及び第2実施形態は,テ ンプレートの作成,適用の具体例を示したにすぎないなどと主張する。 しかし,「ゲーム空間の全体」がプレイヤによって選択されるとしても,プレ イヤによってどのような態様による選択がされるかについては,特許請求の範 囲の記載からは明らかではない。本件明細書には,テンプレートの作成に当た って,プレイヤがゲーム空間内の一定の範囲を選択することは記載されている が,それ以外の選択に関する構成については何ら記載も示唆もないから,前記\nと異なる態様でのプレイヤによる選択について,本件明細書に記載や示唆が あるとはいえないし,原出願日の当業者の技術常識に照らして明らかであると もいえない。また,原告は,本件特許の出願経過(甲22)において,プレイ ヤがタップする任意の2点をゲーム空間の左上及び右下の点とすれば「ゲーム 空間の全体」になるなどと説明しており,この説明はプレイヤにおいてゲーム 空間内の一定の範囲を選択することを前提としているものといえ,前記 の解 釈に沿うものといえる。原告の主張は採用することができない。
上記(1)で認定のとおり,本件ゲームは,プレイヤが基本画面においてレイア ウトエディタのアイコンをタップしてレイアウトエディタ画面を表示させ,レ\nイアウトに対応する縮小画面を選択,保存することによって新たなレイアウト を作成するというものである。そうすると,そこにはプレイヤがゲーム空間内 の一定の範囲を選択するという機能や動作は全く存在していない。したがって,本件プログラム及び本件携帯端末は,いずれも構\成要件1C及び2Dを充足しない。

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平成28(ワ)35026  損害賠償請求事件 平成30年8月30日  東京地方裁判所

 被服について、不競法の商品形態模倣が認められました。判決文の最後に両当事者の商品が掲載されています。
 不競法2条1項3号は,他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡等を不正 競争行為とするところ,同号によって保護される「商品の形態」とは,「需要 者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商 品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質 感」(同条4項)をいい,商品の個々の構成要素を離れた商品全体の形態をい\nう。また,特段の資力や労力をかけることなく作り出すことができるありふ れた形態は,同号により保護される「商品の形態」に該当しないと解すべき である。
・・・
ア 原告各商品(14FW)と被告商品の形態を比較すると,別紙対比表の\nとおり,次の共通点があることが認められる(甲3,21,乙9)。 すなわち,基本的形態については,1)正面視において,全体が裾広がり 略Aライン形状であること(構成A),2)側面視において,全体が略Aライ ン形状であるが,前丈より後ろ丈の方が長いため,ブルゾンの裾が前身頃 から後ろ身頃に向かって下り傾斜していること(構成B),3)背面視におい て,全体が裾広がりの略Aライン形状であること(構成D)が,それぞれ\n共通している。
また,具体的形態については,1)前身頃において,比翼仕立てになって いることから,裾部から襟部までにかけて,中央部やや左側に,縦に一本 線が入っており,中央部やや右側に,これに略平行な薄い一本線が入って いること(構成E),2)フードにおいて,見頃部から取り外し可能なフード\nが襟部に沿って設けられ(構成F),当該フードの前部分略中央に,約11\ncm程度のファスナーが縦方向に付され(構成G),当該ファスナーを覆うよ\nうに縦長の比翼が設けられ,当該比翼の内側には,前記ファスナーの左わ き上下に設けられた2つのドットボタンに対応する2つのドットボタンが 付されており(構成H),ファスナー引手の開口部には,平面状の黒色の紐\nが通され,フード左右端部から下方へ垂れており,紐の先端には略細長円 筒状の金色の金具が付され(構成I),フードの前側端部分において,三角\n形状が連続するステッチが施されていること(構成J),3)ポケットにおい て,裾から少し上の部分より胴体部の中間あたりにかけて,縦長形状のポ ケットのフラップが形成されていること(構成K),4)後身頃において,両 肩の内側部分に肩部から裾部へ向かって縦方向にダーツが施されることに より,2本の縦線が生じており(構成L),裾は円弧を描き,円弧が最も膨\nらむ後裾の略中央部が略縦長三角形状に切欠かれ(構成M),当該切欠きの\n上に,横長長方形状のステッチが存在すること(構成N),5)袖部において, 端が三角形状のベルトが設けられ(構成O),当該ベルト三角形状部の裏側\nにはドットボタンが付され(構成P),袖部下方中央部の左側及び右側にも\nこれに対応するドットボタンが付されていること(構成Q)が,それぞれ\n共通している。
イ 原告各商品(14FW)と被告商品の形態を比較すると,次の2点にお いて,一応相違すると認められる。 まず,原告各商品(14FW)のフードには,フード端に弾力のあるワイ ヤーが縫い込まれているため,側面視において,同フードが身頃部分から 立ち上がって立体的な略正三角形状となるのに対し(構成C),被告商品の\nフードには,前記のワイヤーが使用されておらず,側面視において,同フ ードが身頃部分に折り重なる形状となる(構成C’,甲1,2,乙9)。\n また,原告各商品(14FW)の素材はポリエステル65%及びナイロ ン35%であるのに対し,被告商品の素材はポリエステル100%であり, それぞれの素材や加工方法に応じた質感を有する(甲1,争いのない事実)。
(3)1960年代にアメリカ軍によって開発,使用された防寒服であるM65パ ーカは,1)前身頃において比翼仕立てになっている点(構成E),2)身頃部か ら取り外し可能なフードが設けられている点(構\成F),3)縦長形状のポケッ トのフラップが形成されている点(構成K)において,原告各商品と共通し\nている(乙1)。 また,原告各商品が発売された平成26年より前から,M65パーカ等のア メリカ軍が使用した防寒服の形態をベースにデザインされた,ミリタリーパ ーカ,ミリタリージャケット,モッズコート等と呼ばれるファッションのカ テゴリーが存在して,複数の製品が存在し,原告各商品もこれに含まれる(甲 1,9,15)。
(4) 以上を踏まえ,原告各商品(14FW)と被告商品の形態が実質的に同一と いえるかどうかについて検討する。
ア 原告各商品(14FW)と被告商品とは,前記(2)アで述べたとおり,そ の基本的な形態から具体的な細部の形態に至るまで多数の共通点が認めら れ,その形状はほぼ同一であるといえる。 一方,原告各商品(14FW)と被告商品には,前記(2)イで述べた2つ の点において一応相違すると認められるが,これらは,フードの立体感や 生地の質感に若干の相違を与えることがあったとしても,その違いは大き いものではなく,需要者が通常の用法に従った使用に際してその違いを直 ちに認識することができるとまではいえないものであり,原告各商品(1 4FW)と被告商品の全体の印象を異なったものとするものとはいえない。 イ 前記(3)のとおり,原告各商品とM65パーカには複数の共通点があるが, M65パーカが,兵士が野外における活動の際に身につける防寒着である のに対し,原告各商品は,女性がファッションとして身につける上着とし てデザインされたもので,基本的形態が略Aラインで,全体として女性的 かつ都会的な印象を与えるものであって,M65パーカと異なる形態を有 するものといえる。
また,原告各商品が発売された平成26年以前において,ミリタリーパー カなどと呼ばれるファッションの一形態として複数の製品が販売されてお り,原告各商品もその範疇に入る商品であると認められる。しかし,原告各 商品は,基本的な形態が略Aラインであること(構成AないしD),身頃部\n分から取り外し可能なフードがあること(構\成F),フードの右左端部から 黒色の紐が下方へ垂れ下がり,紐の先端に細長円筒状の金色の金具が付さ れていること(構成I),フードの前側端部分に三角形状が連続するステッ\nチが施されていること(構成J),フード部分に本体と独立したファスナー\nが設けられていることにおいて特徴を有しているところ,ミリタリーパー カなどと呼ばれる製品において,これら原告各商品の特徴的な形態を全て 備え,商品全体の形態において原告各商品と酷似する商品が他に存在した ことを認めるに足りる証拠はない(甲2,乙13)。そうすると,原告各商 品の形態が,個々の形態の組み合わせとして個性を有しないということは できず,他の商品に見られるありふれたものということはできない。
ウ 以上によれば,原告各商品の形態はありふれたものではなく,「商品の形 態」(不競法2条1項3号)に該当するところ,原告各商品(14FW)と 被告商品は,基本的な形態から具体的な細部の形態に至るまで多数の共通 点が認められる一方,相違する点は需要者が通常の用法に従った使用に際 してこれらの違いを直ちに認識することができるとまではいえないもので あって,原告各商品(14FW)と被告商品の形態は実質的に同一であると 認められる。
2 争点(1)イ(被告商品の形態が原告各商品に依拠したものであるか)について 前記1のとおり,原告各商品のうち14FWと被告商品の形態は,実質的に同 一であるところ,同じミリタリーパーカに属するコートであっても,フード,襟 部,袖部といった相当数の個別の部分があり,全体的形態においても各個別的形 態においても,それぞれ相当数の選択肢が存在するのであるから,これらが偶然 に一致することは考えがたい。
また,前記前提事実(2)及び(3)のとおり,14FWが発売されたのは平成26 年8月から平成27年1月頃までであるのに対し,被告商品の発売は,それから 1年以上が経過した平成28年2月26日であり,被告商品の製造者において, 市場において14FWを入手するなどの何らかの方法によって,その形態を把 握することは十分に可能\であったといえる。 したがって,被告商品は,原告各商品のうち14FWの形態に依拠して製作さ れたものと認めるのが相当である。

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平成29(行ケ)10171  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年9月19日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が取り消されました。出願時の技術常識又は周知技術に照ら調製を試みる動機付けがあるというものです。
   前記アの記載事項を総合すると,本件出願の優先日(平成7年3月25 日)当時,1)乾燥温度等の乾燥条件の調節により,水和水の数の異なる炭 酸ランタン水和物を得ることができること,2)水和物として存在する医薬 においては,水分子(水和水)の数の違いが,薬物の溶解度,溶解速度及 び生物学的利用率,製剤の化学的安定性及び物理的安定性に影響を及ぼし 得ることから,医薬の開発中に,検討中の化合物が水和物を形成するかど うかを調査し,水和物の存在が確認された場合には,無水物や同じ化合物 の水和水の数の異なる別の水和物と比較し,最適なものを調製することは, 技術常識又は周知であったものと認められる。
(4) 相違点1の容易想到性の有無について ア 甲1には,慢性腎不全患者におけるリンの排泄障害から生ずる高リン血 症の治療のための「リン酸イオンに対する効率的な固定化剤,特に生体に 適応して有効な固定化剤」の発明として,「希土類元素の炭酸塩あるいは 有機酸化合物からなることを特徴とするリン酸イオンの固定化剤」が開示 され,その実施例の一つ(実施例11)として開示された炭酸ランタン1 水塩(1水和物)のリン酸イオン除去率が90%であったことは,前記(2) イのとおりである。
前記(3)イ認定の本件出願の優先日当時の技術常識又は周知技術に照ら すと,甲1に接した当業者においては,甲1記載の炭酸ランタン1水和物 (甲1発明)について,リン酸イオン除去率がより高く,溶解度,溶解速 度,化学的安定性及び物理的安定性に優れたリン酸イオンの固定化剤を求 めて,水和水の数の異なる炭酸ランタン水和物の調製を試みる動機付けが あるものと認められる。
そして,当業者は,乾燥温度等の乾燥条件を調節することなどにより, 甲1記載の炭酸ランタン1水和物(甲1発明)を,水和水の数が3ないし 6の範囲に含まれる炭酸ランタン水和物の構成(相違点1に係る本件発明1の構\成)とすることを容易に想到することができたものと認められる。これと異なる本件審決の判断は,前記(3)イ認定の本件出願の優先日当時 の技術常識又は周知技術を考慮したものではないから,誤りである。
イ これに対し被告は,1)甲1には,水和水の数の違いにより,リン酸イオ ン除去率に違いが生じることについての記載も示唆もないし,また,本件 出願の優先日当時,炭酸ランタン水和物の水和水の数を変更すると,リン 酸(塩)結合能力に影響が出るであろうことを示唆する技術常識又は周知技術は存在しない,2)甲1に接した当業者は,水和水の数を変更すること に着目することはなく,むしろ,甲1に列挙された各種の有機酸を含む希 土類元素の有機酸化合物を調製するか,あるいはアルカリ金属やアルカリ 土類金属を含有する複塩を調製し,リン酸イオン除去率を調べるはずであ る,3)甲1には,炭酸ランタン1水和物を用いた実施例11について,問 題となる点が何ら記載されておらず,完結した発明として記載されている から,この実施例を見た当業者は,炭酸ランタン1水和物で充分と考え, 炭酸ランタン1水和物における水和水の数を変更しようなどとは考えなか ったはずである,4)炭酸ランタン水和物は,水又は有機溶媒にほとんど溶 解しないから(甲51),溶解特性の面から水和水の数の違いについて検 討を試みる動機付けはないなどとして,甲1に接した当業者においては, 甲1記載の炭酸ランタン1水和物(甲1発明)を相違点1に係る本件発明 1の構成に置換する動機付けはないから,相違点1は当業者が容易に想到し得たものとはいえない旨主張する。
しかしながら,上記1)ないし3)の点については,前記(3)イのとおり,水 和物として存在する医薬においては,水分子(水和水)の数の違いが,薬 物の溶解度,溶解速度及び生物学的利用率,製剤の化学的安定性及び物理 的安定性に影響を及ぼし得ることから,医薬の開発中に,検討中の化合物 が水和物を形成するかどうかを調査し,水和物の存在が確認された場合に は,無水物や同じ化合物の水和水の数の異なる別の水和物と比較し,最適 なものを調製することが,本件出願の優先日当時,技術常識又は周知であ ったことに照らすと,甲1自体には,水和水の数の違いによりリン酸イオ ン除去率に違いが生じることや炭酸ランタン1水和物を用いた実施例11 について問題点の記載がないからといって,甲1に接した当業者において, 甲1記載の炭酸ランタン1水和物(甲1発明)について水和水の数の異な る炭酸ランタン水和物の調製を試みる動機付けがあることを否定すること はできない。また,リン酸(リン酸イオン)の固定化反応は,炭酸ランタ ン水和物が溶解して生成されたランタンイオンがリン酸イオンと反応する ことにより固定化するものであるところ(前記(2)ア(エ)の甲1記載事項), 上記のとおり,水和物として存在する医薬については,水分子(水和水) の数の違いが,薬物の溶解度及び溶解速度に影響を及ぼし得るのであるか ら,溶解度又は溶解速度の向上によりランタンイオンの溶存濃度を高め, ひいてはリン酸(リン酸イオン)の固定化反応の促進(リン酸結合能力)に影響を及ぼし得ることは自明である。
次に,上記4)の点については,仮に被告が主張するように炭酸ランタン 水和物は水又は有機溶媒にほとんど溶解しないとしても,上記のとおり, リン酸イオンの固定化反応は,炭酸ランタン水和物が溶解して生成された ランタンイオンがリン酸イオンと反応することにより固定化するものであ る以上,炭酸ランタン水和物が水又は有機溶媒に全く溶解しないものとは いえないこと,溶解度が低い水和物についても,無水物や水和水の数が異 なる化合物の調製の検討が行われていること(例えば,甲9では,「水に 極めて溶けにくい」エリスロマイシン(甲54)について,1水和物,2 水和物及び無水物の比較検討をしている。)(前記(3)ア(ア)bの「(1)」) に照らすと,炭酸ランタン水和物においても,水和水の数の違いが溶解度, 溶解速度,化学的安定性及び物理的安定性に影響を及ぼし得るものといえ るから,甲1記載の炭酸ランタン1水和物(甲1発明)について水和水の 数の異なる炭酸ランタン水和物の調製を試みる動機付けがあることを否定 することはできない。

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平成30(行ケ)10018  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年9月10日  知的財産高等裁判所

 海苔異物除去装置の無効不成立の審決が維持されました。争点は、被告が試験依頼先に配布した文書によって公然知られたか?です。
 被告は,産業機械器具等の製造等を業とする株式会社であり,平成7年頃から生 海苔異物除去装置の製造販売業に参入する方針を立て,同年8月,株式会社親和製 作所(以下「親和製作所」という。)との間で,業務提携契約を締結し,同契約に基 づき,親和製作所製造に係る生海苔異物除去装置を「ダストール」との商品名を付 して販売することになったが,平成9年秋頃から,親和製作所との関係が悪化し, 上記業務提携契約の解消を検討するようになった。 そこで,被告は,その頃,独自に,生海苔異物分離除去装置の製造をすることと し,ダストールの新型の開発に取りかかり,平成10年2月頃から,その試験機の 試験運転をするようになった。上記開発には,海苔生産者の協力が必要であったた め,被告は,上記の開発に当たって,被告の地元であるF地区で海苔生産機械等の 販売店を営み,同地区の海苔生産者とのつながりが強い西部機販の代表取締役であ\nるBに対し,上記装置の開発についての協力を依頼し,Bは,同依頼を受け,被告 に,試験運転を行う生産者を紹介し,試験機の試験運転に立ち会うなど,同開発に 協力した。 なお,西部機販は,被告が本件発明共回り防止構成を有したダストールを製造す\nるようになってからは,同ダストールを被告から仕入れて販売するようになり,A ダストールも,西部機販が被告から仕入れて,Aに販売したものである。
(イ) 本件会議の開催
平成10年4月28日,被告の技研工場において,本件会議が開催された。Bは, 被告から本件会議への出席を要請され,本件会議に出席した。 本件会議では,出席者に,本件文書が配布されたが,本件文書には,「ダストール の試験機,展示会機から新型への変更点」,「1998年4月28日 フルタ電機(株) 技研工場」との表示の下,「選別ケースの外周に共回り防止ゴムをつける 選別タン ク内の海苔濃度を濃くできる事により良品タンクへの海苔濃度が濃くできる」等の 記載がある。
(ウ) 甲52特許
被告の子会社であるフルテックは,平成10年1月26日に,甲52特許の特許 出願をし,被告は,同年6月12日に,本件特許の特許出願をした。 甲52公報には,本件発明基本構成に相当する「生海苔排出口を有する選別ケー\nシング,回転板及び異物排出口を設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混 合液槽を有する生海苔異物分離除去装置」の構成が開示されている。
(エ) Aダストール及び九研ダストール
Aダストールの写真を掲載した甲第15号証には,Aダストールの型番は「ダス トールFD380D−2K」,同製品が納入された日は平成12年1月18日,同写 真の撮影日は平成28年12月3日であると記載されている。同証拠に掲載されて いるAダストールの回転板には,L字形をした板状の金具(L字金具)が取り付け られており,L字の短い方の金具の一部が回転板からはみ出している。 また,九研ダストールの写真を掲載した甲第31号証には,九研ダストールの型 番は「ダストールFD−380S」,同製品が納入された日は平成10年,同写真の 撮影日は平成29年4月25日であると記載されている。同証拠に掲載されている 九研ダストールの選別ケーシングの外周には共回り防止ゴムを取り付けるための穴 があり,また,回転板にはL字金具を取り付けるためのネジが付いている。また, 共回り防止ゴムとL字金具が袋入りで保管されている状況の写真があり,L字金具 の形状は,AダストールのL字金具の形状と同じである。
(オ) 被告と西部機販との紛争
被告は,平成27年及び平成28年に,東京地方裁判所に対し,それぞれ,西部 機販等を被告として,本件特許権の侵害を理由に,差止め及び損害賠償等を求める 訴えを提起した。なお,被告の各請求は,いずれも一部が認容され,また,同判決 に対する西部機販の各控訴はいずれも棄却された。
イ 以上の認定に対し,原告は,Bは,被告のダストールの新型の開発に協 力するよう依頼されておらず,試験運転をする海苔生産者の紹介を依頼されただけ であると主張する。 しかし,B作成の陳述書には,「G氏より開発協力を依頼された」との記載のほか, 被告に試験運転を行う生産者を紹介したこと,試験機の問題点及びその対策の具体 的内容,並びに試験機に問題が発生すると,被告の関係者を現場に呼んで,その現 象を確認してもらったことが記載されており(甲27),また,Bは,証人尋問(当 審)において,ダストールの改良のために色々とアイデアを出した旨証言しており, 上記陳述書の記載及び証言からすると,Bが被告からダストールの新型の開発の協 力を依頼され,同依頼に基づき,同開発に協力したことは明らかである。
ウ また,被告は,本件文書は,本件会議において配布されたものではなく, 本件会議の議事録を基に作成された文書である可能性が極めて高い旨主張する。\nしかし,Bは証人尋問(当審)において,平成10年4月28日に被告の技研工 場において開催された本件会議に参加して,本件文書の交付を受けた旨証言すると ころ,実際に,本件訴訟において,本件文書は,Bの保管していた資料ファイルの 一部であるとして,証拠(甲8)として提出されていること,Bが作成した日記(甲 9,25)には,本件文書に記載されている日付と同じ平成10年4月28日の欄 に,「フルタ本社より技研工場まで送ってもらう」,「フルタ本社」,「フルタ技研」,「ダストルー会議」などの記載があり,同記載は,Bの上記証言を裏付けているこ とから,Bの上記証言は信用できるというべきである。 この点について,被告は,本件文書は,その内容からすると,本件会議前に作成 されたものではなく,事後的に作成されたものであると主張するが,本件文書は, 「新型への変更点」について記載したものであるから,本件会議の前から,変更予\n定事項等によって期待できる効果や今後の対策が記載されていても不自然ではない。 したがって,本件文書は本件会議において配布されたものと認められ,被告の上 記主張は採用できない。
(2) 以上を前提に,本件文書の配布によってBに対して,本件発明の構成が開\n示されたといえるかについて検討するが,それに当たっては,特許出願時の技術常 識を考慮することができることはもとより,Bがそれまで有していた知識も考慮す ることができるというべきである。
ア まず,本件発明共回り防止構成が開示されたといえるかについて検討す\nる。
(ア) 本件文書の記載について
前記(1)ア(イ)のとおり,本件文書には,「選別ケースの外周に共回り防止ゴムをつ ける 選別タンク内の海苔濃度を濃くできる事により良品タンクへの海苔濃度が濃 くできる」との記載があるが,同記載からは,「共回り防止ゴム」の形状は明らかで はなく,共回り防止ゴムの設置方法としては,例えば,選別ケースの外周全体を囲 むように付ける方法や,選別ケースの外周の一定の箇所に極めて薄いゴムを付ける 方法等種々の方法が考えられる以上,「共回り防止ゴム」を選別ケースの外周に付け た場合,同「共回り防止ゴム」の形状が突起物状のものとなるとは限らないから, 同記載から,共回り防止ゴムの形状が突起物状のものであるとの構成が開示された\nということはできない。
(イ) 技術常識及びBの知識について
本件特許出願時において,本件文書に記載された「共回り防止ゴム」の形状が突 起物であるとの技術常識があったことを認めるに足りる証拠はないし,B及びC作 成の各陳述書(甲27,29,32,70),Bの証人尋問(当審)における証言並 びにその他の証拠を検討しても,Bが,上記「共回り防止ゴム」の形状が突起物状 のものであることを理解していたとは認められない。 この点につき,Bは,共回り防止ゴムの大きさ及び形状について,主尋問におい て,「選別インペラーと選別ケースのクリアランスに入った海苔を取り除くための ものですから,それなりの大きさ,形状が必要だと思いました。」と証言し,また, 再主尋問において,「大きさとしては,・・・ドライバーの先端くらいの大きさだと 思います。」と証言する。 しかし,Bの主尋問における上記証言は,抽象的であり,前記(ア)のとおり,選別 ケースの外周に取り付ける共回り防止ゴムの形状及び大きさは種々のもの考えらえ ることからすると,同証言内容からは,共回り防止ゴムの形状が突起物状のもので あると認識していたとは認められない。また,Bの再主尋問における上記証言につ いても,本件文書が交付されたのは,Bの証人尋問が行われた日の20年以上も前 のことであり,Bが,その頃の認識を正確に記憶しているとは考え難いこと,Bは, 本件会議後に本件発明共回り防止構成を備えたダストールの販売をしており,その\n構造についての知識があること,Bは,L字金具を取り付けたAダストールを販売\nしており,「ドライバーの先端くらいの大きさ」という証言も,上記L字金具を念頭 に置いたものと考えると,形状の点で整合することからすると,Bは,本件会議後 に得た認識と本件会議における認識とを混同している可能性も十\分考えられるとい うべきである。また,そもそも,前記ア(オ)のとおり,Bが代表者を務める西部機販\nは,被告から,本件特許権の侵害を理由とした損害賠償請求等の訴えを提起された ことがあり,このようなBの立場を考慮すると,この点からしても,Bの上記証言 の信用性には疑義があるというべきである。 以上の点を考慮すると,Bの上記証言から,Bが,本件会議の時点で同証言のと おりの認識を有していたと認めることはできない。
(ウ) なお,本件会議における説明を考慮するとしても,本件会議は本件特 許が出願された平成10年6月12日の1か月半前の同年4月28日に開催されて いるが,本件会議が開催された時点では,本件発明の具体的内容が固まっていない ことも十分考えられるから,共回り防止ゴムの具体的な形状等の本件発明共回り防\n止構成のうちの具体的な構\成については本件会議で説明されなかったことも十分考\nえられるというべきである。そして,本件会議に出席したBも,証人尋問(当審) において,本件会議で共回り防止ゴムの形状や大きさについての話がされたか否か は覚えていない旨証言しており,また,C陳述書にも,本件会議で共回り防止ゴム の形状が突起物状のものであるとの説明があった旨の記載がなく,その他,本件会 議における説明内容について認定できる的確な証拠はない。
(エ) したがって,Bが,本件文書の配布によって,共回り防止ゴムの形状 が突起物状であると認識したと認めることはできないというべきである。
イ 以上より,本件文書の配布によって,本件発明共回り防止構成のすべて\nが開示されたと認めることはできないから,本件文書の配布によって,本件発明が, 公然知られた発明となったと認めることはできない。

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平成30(行ケ)10035  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年9月6日  知的財産高等裁判所(3部)

 商標「MONTAGNE.」が先行商標「MONTAIGNE」と類似するとした審決が維持されました。
 以上を前提に本件商標と引用商標の類否について検討する。
(ア) 本件商標と引用商標は,外観において,書体が異なる点,本件商標 の末尾に「.」があるのに引用商標にはこれがない点,引用商標には6 文字目に「I」があるが,本件商標にはこれがない点で異なる。 他方,本件商標及び引用商標は,いずれも9文字のアルファベットか らなり,「.」「I」を除いては,同じM,O,N,T,A,G,N, Eのアルファベットを同じ順序で含んで構成されており,使用される文\n字及びその使用の順序が近似している。また,いずれの商標も等間隔の アルファベットによりひとかたまりでまとまりよく構成されている。そ\nして,本件商標と引用商標の書体が相違するとしても,いずれの書体も デザイン化されていない読みやすい普通に用いられる書体であり,看者 に強い印象を与えるものではない。さらに,本件商標の「.」は末尾に 付され,大きさも小さいこと,引用商標における「I」は6文字目にあ って他の文字より幅がかなり狭いことから,これらの相違する文字は, 看者の印象に残りにくい。 以上によれば,本件商標と引用商標は,外観において,相紛らわしい ものといえる。
(イ) 本件商標及び引用商標は,いずれも特定の観念を想起させない。
(ウ) 本件商標は「モンタグネ」,「モンターニュ」の称呼を,引用商標 は「モンタイグネ」,「モンテーニュ」の称呼を生じる。 このうち,「モンタグネ」と「モンタイグネ」は,5音ないし6音の うち,冒頭の3音が共通しており,また,末尾の「グネ」も共通してい るし,差異音である「イ」の音は弱音であるから,両称呼を一連に称呼 した場合,称呼全体の語調,語感が近似したものとなる。 また,「モンターニュ」と「モンテーニュ」は,いずれも長音を含む 5音よりなり,一連に称呼した場合に,比較的聴別されにくい中間部に おいて「タ」の音と「テ」の音の差異を有するが,この差異音は子音を 共通にし,母音である「a」と「e」の音も近似しているから,両称呼 を一連に称呼した場合,称呼全体の語調,語感が著しく近似したものと なる。 そうすると,本件商標と引用商標は,称呼において相紛らわしいとい える。
(エ) 以上のとおり,本件商標と引用商標は観念において比較できないも のの,外観及び称呼は相紛らわしいものである。 そして,本件取消に係る商品と引用商標の指定商品の需要者である一 般の消費者が通常有する注意力を踏まえると,これらの一般の消費者が 必ずしも商標の構成を細部にわたって記憶して取引するとはいえないこ\nとから,本件商標と引用商標を時と所を異にして隔離的に観察した場合, 商品の出所の誤認混同を生ずるおそれがあるといえる。
(オ) したがって,本件商標は,引用商標に類似する商標であるといえる。
2 原告の主張について
(1) 指定商品の類否について
原告は,本件取消に係る商品のうち「カーボン製のスーツケース」に関し, 引用商標の指定商品とは原材料,商品の性状や外観(カーボン製は硬質感の あるハードタイプであるのに対して,革製又は人工皮革製は軟質のソフトタ\nイプである。)が明確に異なり,生産部門,販売部門,原材料,品質,用途及 び需要者がいずれも異なる非類似の商品であると主張する。 しかし,「カーボン製のスーツケース」と引用商標の指定商品である革製 又は人工皮革製の旅行かばんの用途は同じであり,同一の生産者ないし製造 者により取り扱われることがあり,需要者が共通するのは,上記1(1)説示 のとおりであり,原告の主張は採用できない。
(2) 商標の類否について
ア 原告は,本件商標は「.」部分が,引用商標は「I」の文字が非常に大 きな存在感を示すこと,書体も大きく異なること,本件商標は略長方形の 中に収まるような態様の文字部分から「.」部分が飛び出るような態様で 書されているのに対し,引用商標は「A」の文字を中心として4文字ずつ 左右対称であるかの如くバランス良く配されているから,両商標から受け る印象は大きく相違し,本件商標と引用商標とは,外観上非類似の商標で あると主張する。 しかし,本件商標の「.」の位置や大きさからすれば「.」が大きな存 在感を有するとはいえないし,引用商標の「I」の文字の幅は他の文字よ りかなり細いことから「I」が大きな存在感を有するともいえないことは, 上記1(2)エ(ア)に説示したとおりである。また,本件商標及び引用商標の 書体,文字数,使用されている文字及び語順並びにその配置からすれば, 両商標全体から受ける印象が大きく相違するとはいえないものであり,原 告の主張は採用できない。
イ 原告は,本件商標から生じる観念は,「(何かの末尾としての)山」, 「山(さらに省略されたもの)」ないし「山」であり,引用商標から生じる 観念はフランスの人名(モンテーニュ)であるから,本件商標及び引用商 標からそれぞれ生じる観念は,著しく異なっていると主張する。 しかし,本件取消に係る商品及び引用商標の指定商品の需要者,取引者 がこれらのフランス語を容易に理解すると判断する理由はなく,本件商標 と引用商標はいずれも特定の観念を想起させるものではないというべきで あるから,原告の主張は採用できない。
ウ 原告は,電子メールアドレスやインターネットのURLに日常的に触れ る需要者,取引者にとっては,非常に長い称呼であっても「ドット」の称 呼は省略せずに必ず称呼するのが常識であり,本件商標の「.」から「ド ット」の称呼を生じるから,本件商標からは「モンターニュドット」,「モ ンタグネドット」又は「モンターネドット」の称呼が生じ,「.」を無視 した称呼は生じ得ないと主張し,これを前提に,本件商標と引用商標の称 呼は非類似であると主張する。 しかし,電子メールアドレスやウェブサイトのURLは,アルファベッ トのまとまりが複数あり,そのまとまりとまとまりの間に「.」が配置され るのが通常であるのに対し,本件商標は8文字のアルファベットの末尾に 「.」を付した構成である。これによれば,本件商標に接した需要者,取引\n者が電子メールアドレスやウェブサイトのURLを連想するとはいえず, 本件商標の「.」から「ドット」の称呼が生じるとはいえないから,これを 前提とする原告の主張は採用できない。
エ 原告は,取引の実情として,1) 本件商標は原告オリジナルの商品ブラ ンドを示す商標として需要者,取引者の間で既に認識・理解されており, 他方,引用商標について顧客吸引力を有しているのは「LOUIS VU ITTON」又は「ルイ ヴィトン」ブランドであって引用商標ではなく, 本件商標と引用商標について現実に誤認混同が生じていないこと,2) 大 手百貨店のバイヤーにおいても本件商標と引用商標のブランドが類似して いると認識していないこと,3) 本件商標に関連する家具やキャリーケー ス,アタッシュケース等は十万円前後から数十\万円にわたる価格帯であり, 申立人の商品はさらに高価で類似品や偽物も多いため,需要者,取引者は\n細心の注意を払って慎重に商標を観察して取引にあたることを主張する。 しかし,商標の類否判断において参酌されるべき取引の実情とは,その 指定商品全般についての一般的,恒常的なそれを指すものであって,当該 商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的,限定的なそれを指 すものではない(最高裁昭和47年(行ツ)第33号同年4月25日第一 小法廷判決・審決取消訴訟判決集昭和49年443頁参照)。原告の主張 する上記事情は,いずれも本件商標及び引用商標が現在使用されている商 品についてのみの限定的な事情であることが明らかであるから,これらの 事情は商標の類否の判断を左右するものではない。なお,甲64,79等 は,上記1)の事実を認めるに足りる証拠とはいえず,他にこれを認めるに 足りる証拠はないし,上記2),3)の事実は,直ちに本件商標と引用商標と の類似性を否定するに足りる事情とはいえないのであるから,原告の上記 主張は,内容に立ち入って検討してみても,やはり失当である。 また,原告は,本件取消に係る商品及び引用商標の指定商品は,慎重に 選択する選択性の高い商品であり,需要者,取引者は,自ら商品を手に取 り,ブランド,デザイン,色,サイズ,素材,価格等を確かめて,商品を 購入するか否かを決めるというのが取引の実情であると主張する。 しかし,本件取消に係る商品及び引用商標の指定商品の需要者は一般の 消費者であり,これらの商品はいわゆるブランド品や,デザイン性やファ ッション性が高い商品に限られず,その価格帯も多様であるから,これら の商品の需要者に,上記の取引の実情が一般的,恒常的に当てはまるとは いえない。上記1(2)エに説示したとおりの本件商標と引用商標の類似性の 程度に照らせば,本件商標と引用商標が同一又は類似の商品に使用された 場合には,出所の誤認混同を生ずるというべきである。原告の主張は採用 できない。
3 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念を総合して全 体的に考察すれば,互いに紛れるおそれのある類似の商標というのが相当であ り,また,本件取消に係る商品と引用商標の指定商品は類似すると認められる から,本件取消に係る商品についての商標登録は,商標法4条1項11号に該 当するものである。

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平成30(行ケ)10019  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年9月10日  知的財産高等裁判所

 本件商標「UNITED TOKYO」は引用商標「UNITED」とは類似しないとした審決が維持されました。争点は、「TOKYO」が識別力が無いので分離判断すべきかです。
 複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構\ 成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否 を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識 として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出 所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,原則とし て許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12 月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第 103号平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁 平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事22 8号561頁)。 そこで,本件商標と引用商標との類否の判断に当たって,本件商標の一部である 「UNITED」を抽出して,引用商標と比較することができるかについて検討す る。
・・・
前記のとおり,「UNITED」の語は,「結合した,連合した」などの 意味を有する形容詞であり,「TOKYO」の語は名詞であるから,「UNITED」 の語は「TOKYO」の語を修飾しており,「UNITED TOKYO」という語 は,「結合した東京」,「連合した東京」又は「東京連合」と訳される。その言葉は必 ずしも一般的に用いられているものではないが,東京には,数多くの人が居住し, また,特色,歴史及び文化の異なる多くの地域があることからすると,それらの連 合体を観念することができ,したがって,「結合した東京」,「連合した東京」又は「東 京連合」をそのような意味で理解することも可能であるというべきである。そうす\nると,本件商標は,「結合した東京」,「連合した東京」又は「東京連合」という観念 上一体のものとして理解されることもあり得るというべきである。
ウ 一方,「UNITED」という語は,「結合した,連合した」などの意味 を有する形容詞であるから,他の語と一体となって,その語を修飾するために用い られるのであり,単独では意味を取りにくい語であるといえる。また,前記のとお り,被服又は靴類を指定商品として「UNITED」を含む商標が登録された例は 非常に多いことから,ファッション業界においては,「UNITED」という語はあ りふれているものと認められる。さらに,本件証拠上,「UNITED」が原告の商 品又は営業を示すものとして周知であるといった事情も認められない。
エ 以上からすると,本件商標は,一連一体のものとして理解されるという べきであって,「UNITED」の部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与 えるとか,「TOKYO」の部分から出所識別標識としての称呼,観念を生じないな どということはできないから,引用商標との類否の判断において,「UNITED TOKYO」から「UNITED」の部分を抽出して,同部分と引用商標とを比較 することは相当ではないというべきである。 (3)ア 原告は,「TOKYO」の語が被服等に用いられた場合,そのブランド の発信地を意味するものとして需要者に認識されるのであるから,本件商標のうち 「TOKYO」の部分は商品の品質,産地あるいは役務の提供地を表示するものに\nすぎず,「TOKYO」の部分には識別力がない旨主張する。 しかし,前記(2)のとおり,本件商標のうち,「UNITED」の語は形容詞であ り,これに続く「TOKYO」の語を修飾していること,「UNITED」の語意か らすると,単独では意味を取りにくく,他の語と併せて一つの意味のある言葉とな ること,本件証拠上,「UNITED」が原告の商品や原告の営業を表示するものと\nして,周知であるといった事情も認められないこと,一方,「UNITED TOK YO」の語からは,「結合した東京」,「連合した東京」又は「東京連合」という観念 が生じ得ることなどからすると,「UNITED TOKYO」のうち「TOKYO」 の語が,「UNITED」とは切り離された独立のものとしてブランドの発信地を意 味し,商品の品質,産地あるいは役務の提供地を表示するものにすぎないと理解さ\nれることはないというべきである。 イ 原告は,被告は会社名に「TOKYO」を使用しているほか,ウェブサ イト等において,「UNITED TOKYO」が東京のリアルなモードスタイルを 発信していくブランドであることを強調していることから,本件商標のうち,「TO KYO」の部分は,東京発のブランドであることを示すために用いられていると主 張する。
証拠(甲29〜31,37,38)によると,被告の開設するウェブサイトには, 「TOKYOブランドにこだわり,TOKYOのリアルなモードスタイルを世界へ 発信」,「伝統的なモノ,最先端のモノ,異文化のモノも絶妙なバランス感覚で調和 できる『TOKYO』特有の感性」,「東京のクリエーションと日本の技術のプラッ トホームになれば良いそんな想いと創造を東京/日本から世界へ発信」,「TOKY Oを代表するクリエーターと共に,TOKYOのクリエーションを『UNITED\nTOKYO』のフィルターを通して提案していきます」との記載があり,また,他 のウェブサイトの被告を紹介した記事の中に「東京を拠点とするクリエーターとコ ラボレーションしたアイテムを展開する」との記載があることが認められる。 上記事実からすると,ウェブサイトにおいて,被告のブランドが東京発のブラン ドであるとの記載があることが認められるが,前記(2)イのとおり,「UNITED TOKYO」から東京に居住する人々や東京の各地域の連合体という観念を生じ得 ることからすると,被告のブランドが東京発のブランドであると記載されることは 自然なことであって,被告のブランドが東京発のブランドであるとの記載があるこ とから直ちに,本件商標の「TOKYO」の部分が商品の品質,産地あるいは役務 の提供地を表示しているにすぎないということはできないというべきである。\n

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平成29(行ケ)10213  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年9月10日  知的財産高等裁判所

 本件発明の認定誤りを理由として、進歩性無しとした審決が取り消されました。 争点となった用語は「特定演出」です。
 前記第2の2(2)のとおり,本願補正発明の「特定演出」は,「前記有利 量付与決定手段により決定された有利量の付与」を「前記有利状態中」において「報 知可能」なものである(構\成要件E)。 そして,「前記有利量付与決定手段」は,「有利量を付与すること」を決定するも のであるから(構成要件C),「特定演出」における報知の対象は,有利量付与決定\n手段により有利量を付与することが決定されたという事実であると解するのが相当 である。 もっとも,「特定演出」は,「前記有利状態中」に実行されるものであるが,「前記 有利状態」は,「付与された有利量を消費することによって・・・制御」されるもの であるから(構成要件D),「特定演出」における報知の対象が,「特定演出」を実行\nする際の有利状態を制御するために消費中の有利量を付与することが決定されたと いう事実を指すのか,この消費中の有利量の付与とは別に,有利量を付与すること が決定されたという事実を指すのかは,特許請求の範囲の記載のみにより一義的に 明確に理解することはできない。
(イ) そこで,本願明細書を参酌すると,「課題を解決するための手段」欄に おいて,「特定演出(連続演出)」は,1)所定期間(50ゲーム)における残り期間 が特定期間(5ゲーム)となるまでに,前記所定期間が経過した後においても継続 して,複数種類の入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段(内 部抽選処理)の決定結果に応じた決定結果情報を報知する(ATモード中における ナビ演出を実行するための処理)か否かを決定する継続決定手段(継続抽選,図2 5)により,継続すると決定したときに,前記特定期間において実行される(図3 0,図31参照)とともに,2)前記継続決定手段で継続しないと決定したときであ っても,前記所定期間における残り期間が特定期間(5ゲーム)となってからその 所定期間が経過するまでに,所定の特別条件(特別条件,イチゴ当選)が成立した ことを条件に,前記決定結果情報を報知する期間を,前記所定期間以上の期間(5 0ゲーム,60ゲーム)延長する第2延長手段により,前記所定期間以上の期間延 長する場合に実行される(図31(c)(d)参照)とされている(【0009】,【0036】)。また,「特定演出」によって,所定期間における残り期間が特定期間とな ったときには,所定期間が経過した後においても継続して決定結果情報が報知され るか否かを煽ることができるとされている(【0037】)。 また,「発明を実施するための形態」欄においては,RTであるときであって,演 出状態がATモードであるときに,所定期間として50ゲームにわたり制御される ATモードの残りゲーム数が5ゲームとなったときに実行される「連続演出」(【0 244】,【0436】,【0440】,【図30】,【図31】)が,「特定演出」に相当するとされており(【0459】),ATモードの残りゲーム数が6ゲーム以上存在する場合に,所定表示領域の右上にATモードの残りゲーム数を表\示するAT用演出 (【0437】,【図29】)は,「特定演出」に相当するものとはされていない。そして,「特定演出」に相当するとされる上記「連続演出」は,ATモードの残り5ゲー ムにわたり一連の物語を展開する演出を行った後に,物語の結末としてATモード が継続するか否かを報知する演出であり,これにより,ATモードの残り5ゲーム にわたって,ATモードが継続することに対する遊技者の期待感を煽ることができ るとされ,味方キャラクタと敵キャラクタとが戦う演出を行った後,敵キャラクタ が倒れるとともに「WIN +1set」といったメッセージが表示されて,AT\nモードが継続することが報知されるとされている(【0443】,【0446】,【0449】,【0459】,【図30】,【図31】)。 このような本願明細書の記載によると,本願補正発明における「特定演出」は, 有利状態が継続する所定期間における残り期間が特定期間となったときに,上記所 定期間が経過した後においても上記有利状態が継続することに対する遊技者の期待 感を煽ることを目的とするものであって,「特定演出」を実行する際の有利状態を制 御するために消費中の有利量を付与することが決定されたという事実を報知するも のを含むものではなく,上記所定期間経過後に継続して有利状態を制御するための 有利量など,現に消費中の有利量とは別の有利量を付与することが決定されたとい う事実を報知するものであると解するのが相当である。
イ 引用発明1の「チャンスゾーン演出」について 引用発明1の「チャンスゾーン演出」(構成e1)は,その具体的な演出内容は刊\n行物1に記載されていないものの,遊技状態がRT1〜RT3に制御されてから開 始され,ボーナスに入賞するか又はゲームが所定回数(RT1は50回,RT2は 40回,RT3は5回)行われることにより終了するものである(前記(2)イ(エ)c)。 そうすると,「チャンスゾーン演出」は,RT1〜RT3に制御されたゲームを所定 回数行える状態にあることを報知するにとどまるものと認められ,現に消費中の有 利量(ゲーム数)とは別の有利量を付与することが決定されたという事実を報知す るものであるとは認められない。

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平成29(行ケ)10172  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年9月4日  知的財産高等裁判所(1部

 無効審判において、原告は訂正をしましたが、訂正後のクレームについて実施可能要件およびサポート要件違反として無効と判断されました。知財高裁は、サポート要件違反であるので無効と判断しました。
   特許請求の範囲の記載が,サポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の 記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が, 発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当 該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か,また,発明の詳 細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課 題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 (2) 特許請求の範囲の記載 本件各発明に係る特許請求の範囲は,前記第2の2【請求項1】ないし【請求項 3】のとおりである。
・・・
そうすると,当業者は,原出願日時点において,キレート配位子となり得る構造\nを有する分子が,何らかの方法により,インテグラーゼ阻害作用に関与する可能性\nがあることは認識していたものの,キレート配位子となり得る構造を有する分子が\nインテグラーゼ阻害作用を有するとは限らないとの技術常識を有していたというべ きである。
(6) 当業者が本件各発明の課題を解決できると認識し得るかについて 本件各発明の課題は,インテグラーゼ阻害作用を有する化合物を含有する医薬組 成物を新たに提供するというものである。 しかし,本件明細書には,本件各発明に係る化合物がインテグラーゼ阻害作用を 有することを示す薬理データは,一つも記載されておらず,本件各発明に係る化合 物がインテグラーゼ阻害作用を示すに至る機序についても記載されていない。 また,原出願日時点におけるインテグラーゼ阻害剤の構造に対するわずかな修飾\n変化によって,そのインテグラーゼ阻害作用に大きな差異が生じ得るとの前記の技 術常識に照らせば,A群等試験例化合物及びB群等試験例化合物がインテグラーゼ 阻害作用を有することを示す薬理データをもって,当業者が,本件各発明に係る化 合物についてもインテグラーゼ阻害作用を有すると認識することはできない。 さらに,原出願日時点におけるキレート配位子となり得る構造を有する分子がイ\nンテグラーゼ阻害作用を有するとは限らないとの前記の技術常識に照らせば,本件 各発明に係る化合物がキレート配位子となり得る構造を有することをもって,当業\n者が,本件各発明に係る化合物がインテグラーゼ阻害作用を有すると認識すること はできない。 その他,本件各発明に係る化合物がインテグラーゼ阻害作用を有すると当業者に 認識させ得るような原出願日時点における技術常識も見当たらない。 したがって,本件各発明に係る化合物は,当業者がインテグラーゼ阻害作用を有 する化合物を含有する医薬組成物を新たに提供するという本件各発明の課題を解決 できると認識し得る範囲のものとはいえないというべきである。

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こちらは対応の侵害訴訟です。

◆平成29(ネ)10105

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平成29(行ウ)559  手続却下処分取消請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年8月30日  東京地方裁判所(47部)

 国内代理人の使用していたメールサーバがウイルス感染していたとの理由で、期間内に審査請求できなかったとして争いましたが、東京地裁は正当な理由無しと判断しました。
 特許法48条の3第5項所定の「正当な理由」があるときとは,特段の事情 のない限り,特許出願を行う出願人として,相当な注意を尽くしていたにもか かわらず,出願審査請求期間の徒過に至ったときをいうものと解するのが相当 である。
(2)これを本件についてみるに,原告は,従来から,本件現地事務所が,本件国 内事務所に対し出願審査の請求手続を指示するメールを送信後,メールの到達 を確認する手順を踏まない運用をしていたこと,他方で,本件国内事務所は, 元々,国内移行の段階で審査請求を行う日にちの指示がない場合には,出願審 査請求期間満了の1か月前までに指示するよう本件現地事務所に依頼してお り,逐一その旨は連絡しておらず,同期間満了の1か月前までに指示がない場 合には審査請求を行わないものとみなす運用をしていたこと,そして,かかる 運用でも特段の問題は生じていなかったところ,本件では,本件現地事務所が 本件国内事務所に対し,平成28年4月1日,本件特許出願について出願審査 請求をするようメールで指示したにもかかわらず,本件国内事務所の所内のサ ーバー及びメールサーバーが同年3月28日から同年4月4日までの間,ウイ ルス感染により使用不可能な状況となっていたため,本件国内事務所において\n 上記メールを受信することができなかったこと等をるる主張する。 しかしながら,原告の主張する運用には,本件現地事務所と本件国内事務所 との間のメールの送受信に問題が生じた場合に対する何らの対策も含まれて おらず,この運用に沿って行動したからといって,本件現地事務所あるいは本 件国内事務所が相当な注意を払ったとは認めがたい。
また,原告は,突発的な事象として,本件国内事務所の所内サーバー及びメ ールサーバーのウイルス感染を主張するものと解されるところ,前記1?で認 定した限度で,本件国内事務所の関連会社内のサーバーに関してランサムウェ アの感染に係る問題が認識されていたことは認められるとしても,原告の主張 する期間において,本件国内事務所の所内のサーバーなどが使用不可能な状況\nになっていたと認める足りる的確な証拠はない。そして,仮に原告の主張する とおりの状況があったとしても,本件国内事務所が本件特許出願に係る出願審 査請求期間(本件期間)の終期につき,平成28年4月29日と認識していた のであれば,その1か月前である平成28年3月29日の時点でサーバーが使 用不可能な状態になっていたことになる以上,本件国内事務所としては,通常\nの運用がどうであれ,本件現地事務所に出願審査請求の指示のメールを送信し た事実の有無を確認すべきであるし,サーバーが使用可能になった時点から本\n件期間の終期まで1か月弱の期間があったことからすれば,かかる確認をする 時間的猶予は十\分にあったというべきである。 そうすると,結局,本件において,本件現地事務所あるいは本件国内事務所 が相当な注意を払ったとは,到底認めがたいし,特段の事情があったとも認め られない。 なお,原告は,自らの判断に基づき,本件現地事務所あるいは本件国内事務 所に委任して特許出願に係る手続を行わせることとした以上,原告が相当な注 意を払ったか否かという点において本件現地事務所あるいは本件国内事務所 についての前記の判断と別個の判断をすべき理由はない。
(3)したがって,本件特許出願について本件期間内に出願審査の請求をすること ができなかったことについて,特許法48条の3第5項所定の「正当な理由」 があったとは認められず,その結果,本件手続については本件特許出願の取下 擬制(特許法48条の3第4項)により客体が存在しないこととなるから,本 件却下処分は適法である。

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平成29(行ケ)10189  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年9月4日  知的財産高等裁判所(3部)

 「概ね面一」との用語が不明確性(36条6項2号)違反が争われました。第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確ではないとして、無効理由なしとした審決が維持されました。判決の最後に図面があります。
 特許法36条6項2号の趣旨は,特許請求の範囲に記載された発明が明確 でない場合に,特許が付与された発明の技術的範囲が不明確となることによ り生じ得る第三者の不測の不利益を防止することにある。そこで,特許を受 けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載のみならず, 願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時に おける技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不 利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであ る。
(2) この点,原告は,審決が,特許請求の範囲の「カバーが水槽の底部面に概 ね面一」について,「面一」とは,止水時において,水槽の底部面とカバー の頂部とがつまずくことを防止できる程度にほぼ同じ高さになることを意味 するものと解釈できると説示したのに対して,「止水時において,水槽の底 部面とカバーの頂部とがつまずくことを防止できる程度」というのは,排水 口のために水槽の底部面に形成された円筒状陥没部のR面を含む傾斜面の形 状等やカバー自体の形状でも異なるほか,当該傾斜面の形状や傾斜角度とカ バーの形状の組合せによっても異なり,さらには,使用者の年齢や性別,体 格等によっても異なる以上,「カバー(特にカバーの頂部)が水槽の底部面 に概ね面一」が「つまずくことを防止できる程度」という趣旨であるとすれ ば,権利の及ぶ範囲が不明確であり,本件発明に接した第三者は不測の不利 益を被る,などと主張する。 しかしながら,本件明細書の【0013】には,「カバーにつまづくこと を防止するため,カバーの頂面60が水槽の底部1面と概ね面一になるよう 円筒状陥没部10の縁とカバー6の縁との位置を略一致させることがよい。」 との記載があるものの,【0008】には,「カバーが水槽の底部面と概ね 面一にされ,排水口部を覆うことになって排水口部内の汚れを覆い隠すこと ができ,見栄え良くできる。」との記載もあり,かかる記載を根拠にすると, 「概ね面一」とは,「排水口部を覆うことになって排水口部内の汚れを覆い 隠すことができ,見栄え良くできる程度」と定義していると理解することも 可能である。\nそもそも,本件発明の排水栓装置は,洗面化粧台,浴槽,流し台などあら ゆる水槽が含まれるところ,「カバーにつまづくことを防止できる程度」と いうのは,飽くまで浴槽の観点からみた理解であるから(この定義が明確と いえるかどうかの点はひとまず措く。),このように理解できたとしても, 浴槽以外の,例えば,洗面化粧台における「概ね面一」の範囲が直ちに明ら かになるわけではない。 したがって,原告の主張は,「カバー(特にカバーの頂部)が水槽の底部 面に概ね面一」が「つまずくことを防止できる程度」を意味するとの理解を 前提とする限りにおいて正当な指摘を含んでいるが,それでは足りないとい うべきである。
(3) そこで,さらに進んで検討するに,本件明細書には,「概ね面一」の意味 するところを説明する確たる定義はないけれども,本件明細書の図1には, 水槽の底部面とカバーの頂部(頂面60)とがほぼ同じ高さになる状態が示 されており,この状態をもって「カバーが水槽の底部面に概ね面一」と理解 することは自然である。そして,寸法誤差,設計誤差等により,水槽の底部 面とカバーの頂部(頂面60)とが完全に同じ高さとならない場合が存する ことは技術常識であるといえるから,カバーと水槽の底部面との高さの差が, このような範囲にとどまるものを「概ね面一」と理解するなら,洗面化粧台, 浴槽,流し台などあらゆる水槽について,「カバーが水槽の底部面に概ね面 一」の意味内容を統一的に理解することができる。 審決の,「概ね面一」とは,「止水時に,カバーを水槽の底部面に対し積 極的に出没させた位置に設けようとするものではない」との説示もこうした 趣旨と理解できる。 そうとすれば,「概ね面一」の語を用いているがゆえに特許請求の範囲の 記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず,これ に反する原告の主張は採用できない。

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平成29(行ケ)10210  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年9月6日  知的財産高等裁判所(3部)

 経緯がややこしいです。無効理由無しの第1次審決が第1次審取で取り消され、本件原告は訂正をしました。第2次審決は訂正を認めた上、無効と判断しました。裁判所は、明確性違反なしと判断しました。
 本件訂正後の特許請求の範囲にいう「平均分子量が2万〜4万のコンド ロイチン硫酸或いはその塩」にいう平均分子量が,本件出願日当時,重量 平均分子量,粘度平均分子量,数平均分子量等のいずれを示すものである かについては,本件訂正明細書において,これを明らかにする記載は存在 しない。もっとも,このような場合であっても,本件訂正明細書における コンドロイチン硫酸又はその塩及びその他の高分子化合物に関する記載を 合理的に解釈し,当業者の技術常識も参酌して,その平均分子量が何であ るかを合理的に推認することができるときには,そのように解釈すべきで ある。
イ 上記1(2)カのとおり,本件訂正明細書には,「本発明に用いるコンドロ イチン硫酸又はその塩は公知の高分子化合物であり,平均分子量が0.5 万〜50万のものを用いる。より好ましくは0.5万〜20万,さらに好 ましくは平均分子量0.5万〜10万,特に好ましくは0.5万〜4万の コンドロイチン硫酸又はその塩を用いる。かかるコンドロイチン硫酸又は その塩は市販のものを利用することができ,例えば,生化学工業株式会社 から販売されている,コンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約1万, 平均分子量約2万,平均分子量約4万等)が利用できる。」(段落【00 21】)と記載されている。 上記の「生化学工業株式会社から販売されているコンドロイチン硫酸ナ トリウム(平均分子量約1万,平均分子量約2万,平均分子量約4万等)」 については,本件出願日当時,生化学工業株式会社は,同社製のコンドロ イチン硫酸ナトリウムの平均分子量について重量平均分子量の数値を提供 しており,同社製のコンドロイチン硫酸ナトリウムの平均分子量として当 業者に公然に知られた数値は重量平均分子量の数値であったこと(上記(3) イ(ア))からすれば,その「平均分子量」は重量平均分子量であると合理的 に理解することができ,そうだとすると,本件訂正後の特許請求の範囲の 「平均分子量が2万〜4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩」にいう平 均分子量も重量平均分子量を意味するものと推認することができる。加え て,本件訂正明細書の上記段落に先立つ段落に記載された他の高分子化合 物の平均分子量は重量平均分子量であると合理的に理解できること(上記 (2)イ),高分子化合物の平均分子量につき一般に重量平均分子量によって 明記されていたというのが本件出願日当時の技術常識であること(上記(2) ウ)も,本件訂正後の特許請求の範囲の「平均分子量が2万〜4万のコン ドロイチン硫酸或いはその塩」にいう平均分子量が重量平均分子量である という上記の結論を裏付けるに足りる十分な事情であるということができ\nる。
ウ よって,本件訂正後の特許請求の範囲の記載は明確性要件を充足するも のと認めるのが相当である。

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平成22(ワ)18041  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成25年7月11日  大阪地方裁判所

 かなり前の事件ですが、漏れていたのでアップします。争点は均等の第5要件と進歩性違反です。前者については、記載不備に対する補正でクレームの減縮、実施形態の削除をしましたが、特段の事情ではないと判断されました。ただし、後者の理由で権利行使不能と判断されました。
 原告は,本件特許1の出願当初,構成要件B1に相当する部分を「駆動回路7\nに電圧を提供する電源1の電圧を検出する検出手段5」としていたが,平成19 年5月2日付け拒絶理由通知を受けた後,「交流電圧の電源1から整流されて駆 動回路7に提供される直流電圧を検出する検出手段5」と補正した(乙1〜3)。 しかし,平成19年5月2日付け拒絶理由通知は,特許法36条4項(実施可 能要件)及び同条6項2号(明確性要件)の要件を満たしていないとするもので,\n新規性及び進歩性に係る拒絶理由通知ではなかったし,電圧の検出手段に係る記 載の不備を指摘するものでもなかった(乙2)。原告が手続補正書とあわせて提 出した意見書においても,電圧の検出手段に関して特段の説明をしているわけで はない。 このような経過からすれば,原告の上記補正について,新規性や進歩性の欠如 を回避するなどのため,電圧の検出手段に関して特定の構成を意識的に除外した\nものとは言い難い。 また,他に均等の成立を否定すべき特段の事情も認められない。
・・・
被告自身,本件特許発明1と乙28発明は,次のとおり相違していることを認 めている。すなわち,本件特許発明1の電源電圧が「90〜264Vの間」の 「交流電圧」であり,これを「整流」した上で「分圧」して検出するのに対し, 乙28発明の電源電圧が「12〜48Vの間」の「直流電圧」で,必然的に「整 流」はなく,検出前に「分圧」しているか明らかでない点で相違する(後記相違 点2),3))。
・・・・
エ 以上より,本件特許発明1の乙28発明と対比したときの相違点は, 当業者にとって,周知慣用技術及び技術常識を適用することで容易に想到できる 構成といえる。\n よって,本件特許発明1は進歩性を欠如しており,本件特許1は特許無効審判 により無効にされるべきものと認められるから,原告は,本件特許権1に基づく 権利を行使することはできない。

◆判決本文

控訴審でも、無効は維持されました。

◆平成25(ネ)10069

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平成30(行ケ)10026  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年8月29日  知的財産高等裁判所

 商標「VANSNEAKER」(標準文字)から、「VANS」部分のみを分離して解釈可能とした審決が維持されました。\n
 ア 本件商標のように,標準文字で一連に記載されたものであっても,それ がいくつかの文字等を組み合わせた結合商標と解されるもので,かつその一部が需 要者に対して,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの である場合やそれ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認 められる場合などには,当該一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して 商標そのものの類否判断をすることも許される(最高裁昭和37年(オ)第953 号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成 3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号500 9頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁 判集民事228号561頁参照)。
イ これを本件についてみるに, 本件商標である「VANSNEAKER」 は,全体としてみた場合,それ自体としては何の意味もない造語である。そして, 前記1で検討したように,「VANS」の欧文字からなる引用商標が,スニーカーを 中心とした履物の分野で周知であり,出所識別標章として,一般消費者の間で強い 識別力を持つものであることからすると,本件商標の語頭にある「VANS」も本 件商標の指定商品である「履物」との関係では強い識別力を持つものといえる。 他方,本件商標から語頭の「VR」はそれ自体としては何の意味もない語であるところ,そこに直前に置かれた「S」(換言すると,「VANS」に用いられている「S」)を足した「SNEAKER」は,指定商品である履物の一種であるスニーカーを表示する語として,我が国においても広く知られていること,一般消費者向けの商品等に関して,二つの語を結合するときに,一方の語の末尾と他方の語の語頭とで共通する文字を敢えて省略して商品名等をネーミングする手法が見られること(乙76の1,乙77〜81)からすると,「NEAKER」は,直前に「S」を足して,「SNEAKER」と認識される可能\性が高いということができる。しかるところ,「SNEAKER」の語は,指定商品である履物の一種を表す語として,指定商品との関係では,識別力を有さないものであるから,「NEAKER」の部分は,指定商品との関係での識別力は,上記のように周知で識別力の強い「VANS」と比して明らかに弱いものといえる。以上からすると,本件商標からその要部として「VANS」の部分を抽出して,類否判断することが許されるというべきである。\n
(2) 類否判断
本件商標からその要部である「VANS」を抽出した場合,本件商標の要部であ る「VANS」と標準文字で欧文字の「VANS」を横書きしてなる引用商標は, 外観が同一といえる上,両者からは共に「ヴァンズ」との称呼が生じる。 また,前記で認定したように,「VANS」ブランドについて,スニーカーを中心 とした商品が日本において相当多数量販売されており,かつ引用商標や「VANS」 の欧文字をデザイン化した使用商標がスニーカーなどとともにファッション雑誌等 で多数回取り上げられるなど大規模な広告宣伝活動がされているから,本件商標の 要部である「VANS」及び引用商標からは,共に「スニーカーを中心として展開 されている異議申立人の業務に係るVANSブランド」といった観念も生じるもの\nと認められる。 以上のとおり,本件商標の要部と引用商標は,外観,称呼及び観念を共通にして おり,本件商標がその指定商品である「履物」に使用された場合,引用商標と出所 混同のおそれがあるということができるから,本件商標と引用商標は類似している ものと認められる。
(3) 原告の主張について
原告は,1)本件商標に接した者が,明示的な示唆等もないのに,前半部「VAN S」の最後の文字「S」を後半部を認識するためにもう一度使用することはない, 2)本件商標に接した者は,本件商標中の「SNEAKER」から「スニーカー」を 想起するなどし,前半の「VAN」を認識して,本件商標を「ヴァンスニーカー」 などと一体として称呼,認識する,3)本件商標から「VANS」を取り出した残り は「NEAKER」であるが,「NEAKER」が商品の出所識別標識としての機能\nを有していて省略されるべきではないことからすると,本件商標は一体として「ヴ ァンズニ―カー」などと称呼,認識される可能\性もある,4)「VANS」の語は固 有の意味を有しない造語であるから,商品等のネーミング手法の一つとして,二つ の語を各語の構成文字の一部を省略し結合する他の例と同列に論じることはできな\nい,5)「VANS」を含み,指定商品を「靴及び運動用特殊靴」とする「vans ydical」が登録されていることが,被告の主張と反するなどと主張し,本件 商標について「VANS」の部分を抽出して類否判断することは許されない旨を主 張する。 しかし,上記1)〜3)については,上記で検討したように,指定商品に関して使用 された本件商標に接した場合,接した者の注意は,識別力の強い語頭の「VANS」 に向けられるとともに,「VANS」と「SNEAKER」の間で「S」が重なり合 っていると理解し,本件商標について,「VANS」と「SNEAKER」を組み合 わせて構成されたものと認識することが十\分にあり得るところであって,原告の主 張するように常に一体として認識されるとはいえず,原告の主張は採用できない。 また,上記4)についても,前記1のとおり,「VANS」は,指定商品「履物」と の関係では,周知性のある識別力の高い語であって,かつ上記のように「スニーカ ーを中心として展開されている異議申立人の業務に係るVANSブランド」という\n観念が指定商品の需要者である一般消費者の間に生じるものであるから,「VAN S」が固有の意味を有しないということはできず,原告の主張はその前提において 失当である。 さらに,上記5)についても,原告が挙げる商標の構成は,本件商標のそれとは異\nなっているから,原告が挙げる商標が登録されているからといって,それが本件商 標と引用商標との類否の判断に直ちに影響を及ぼすものとはいえず,原告の主張は 採用できない。

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平成30(行ケ)10014  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年8月29日  知的財産高等裁判所

 知財高裁も、審決と同様に、商標「TENRYU」(標準文字)から、「テンリュー」の称呼が生じ、かかる称呼から,「天竜,天龍」を意味するものと理解するのが一般的として、先願「天龍」と類似すると判断しました。
 商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合 に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであ るが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によ って取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきで あり,かつ,その商品の取引の実情を明らかにしうる限り,その具体的な取引状況 に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43 年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。 また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の\n構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支\n配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識と しての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,当該部分だけを他人の商 標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである(最高裁昭和 37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1 621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・ 民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8 日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁)。
(2) 本願商標と引用商標1との類否
ア 本願商標は,前記第2の2(1)のとおり,「TENRYU」の欧文字を標 準文字で表したものであり,「テンリュー」の称呼が生じる。\nまた,上記称呼から,本願商標は,「天竜,天龍」を意味するものと理解するの が一般的であり,「天竜,天龍」からは「天の竜(龍)」の観念が生じるから,本 願商標からは「天の竜(龍)」の観念が生じる。
イ 引用商標1は,前記第2の2(3)のとおり,別紙記載1の商標であり,「テ ンリュー」の称呼が生じ,「天の竜(龍)」の観念が生じる。 ウ 本願商標と引用商標1とは,外観は異なるものの,称呼及び観念は同一 である。 そして,引用商標1は漢字を用いているのに対し,本願商標は欧文字を用いてい るが,引用商標1をローマ字で表記すると本願商標となることは明らかである。我\nが国においては,漢字を同じ称呼のローマ字で表記することは一般的に行われてい\nるという事情を考慮すると,文字種が異なることによる本願商標と引用商標1の外 観の相違は,両商標が別異のものであると認識させるほどの強い印象を与えるもの ではないというべきである。 以上の事情を総合考慮すると,本願商標は引用商標1に類似しているというべき である。

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平成28(ワ)15812 不正競争 民事訴訟 平成30年8月17日 東京地方裁判所(40部)

 amazonで並行輸入品を販売していた並行輸入業者に対して、日本の総代理店はamazonに出品停止させました。このことが、営業誹謗行為として損害賠償請求をしました。裁判所は一部の記載について信用毀損行為であると判断しました。
 前記認定のとおり,アマゾン社は,平成27年12月4日に購入者 より本件商品1に関する真贋に関する連絡があったことを理由として, 原告商品の出品を停止し(甲20〜22),同月6日,複数の購入者か ら本件商品1及び3に関する真贋に関する連絡があったことなどを理 由として,原告の出品アカウントを停止した(甲5)。 他方,アマゾン社は,同様にジョレン本社から出品停止の要求を受け たセレブスタイルについては出品停止措置を採ったものの,出品アカ ウントの停止は行わず,カリフォルニアマートについては何らの措置 も採らなかったことは前記認定のとおりである。
原告商品の購入者のアマゾン社に対する連絡内容及び同社の調査内 容は明らかではないものの,前記のとおり,平成27年8月27日付 けのジョレン本社からアマゾン社への連絡文書(乙1の1)には本件 商品1(真正品)の外箱,容器等の写真が添付されており,アマゾン社 は真正品の外箱や容器等の外観を把握した上で原告商品に対する審査 を行ったと考えられることや,同種の製品を販売する上記三社のうち 原告に対して最も厳しい措置が採られていることを考慮すると,アマ ゾン社は,購入者からの連絡内容等を慎重に審査した上で原告商品が 真正品ではないとの判断に至ったものと考えられる。
 これに対し,原告は,アマゾン社は,被告又はジョレン本社からの通 知内容に依拠してアカウント停止に及んだと主張するが,アマゾン社 が自社の運営・管理する本件サイトの利用者に対して出品アカウント 停止という厳しい措置を講じるに当たって,被告又はジョレン本社の 通知内容にそのまま依拠したとは考え難く,その基準に照らして慎重 に審査を行ったと推認するのが相当である。  そうすると,アマゾン社が原告に対し原告のアカウント利用停止措 置を講じたとの事実も,原告商品が真正品ではないことを示す事情で あるということができる。
e 以上を総合すると,原告商品はジョレン本社が製造,販売する本件 商品の真正品ではないものと推認するのが相当であり,これを覆すに 足りる証拠はない。 したがって,原告商品がジョレン本社の販売している真正品ではな い旨の本件記載1の記載が虚偽であるということはできない。
・・・・
被告は,原告が厚生労働省から必要な許認可を得ることなく原告商品 の販売を行っている旨の記載が,原告の営業上の信用を害する虚偽の事 実の摘示であると主張するところ,調査嘱託の結果によれば,カリフォ ルニア州法に基づいて設立された法人である原告が,日本国内の消費者 に対し,米国内で仕入れた医薬部外品である本件商品を直接送付するこ とにより販売する行為は,医薬品医療機器法2条13項所定の「製造販 売」に該当しないため,同法12条1項所定の医薬部外品製造販売業許 可を得る必要はないものと認められる。そうすると,上記記載は,虚偽 の事実を摘示したものであり,これに接した一般人は,原告が関連法令 に違反している業者であるとの印象を受けると考えられるので,原告の 営業上の信用を害するものであるということができる。 これに対し,被告は,調査嘱託先と原告が事前に折衝を行い,事実と 異なる情報が提供されたことから,これを前提とする回答内容の信用性 を低いと主張するが,上記調査嘱託の回答者は嘱託書に記載された事実 に基づき,所管法令の解釈に関する見解を示したものであり,原告との 事前の折衝が当該回答に影響を及ぼしたとの被告主張は理由がない。
ウ 競争関係の有無について
原告商品と被告の販売する商品は,原告商品が真正品であるかどうかに かかわらず,いずれも日本国内の消費者を対象とし,その内容はクリーム ブリーチであることから,競争関係にあることは明らかである。
エ 小括
以上によれば,上記イ1)〜4)の各事実のうち,原告が厚生労働省から必 要な許認可を得ることなく原告商品の販売を行っている旨の事実(上記4)) の摘示は不競法2条1項15号にいう「他人の営業上の信用を害する虚偽 の事実の流布」に該当するが,その余の事実の摘示は同号の不正競争行為 には該当しないというべきである。

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平成30(行ケ)10037  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年8月23日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判の取消訴訟です。審決、知財高裁とも、「旧 関西国際学友会日本語学校」が、登録商標「関西国際学友会」の使用であると判断しました。
(1) 使用商標は,「旧」の文字と「関西国際学友会日本語学校」の文字とを半 角又は全角の空白を介して結び,かつ全体を括弧で囲んで表したものである。
(2) まず,これらの文字は,書体も大きさも同一であり,全体が括弧で囲まれ ているものの,「旧」と「関西国際学友会日本語学校」とは,空白によって 明確に分離されていること,「旧」は,「昔。過去。」といった意味を有し, 「今は主流ではないもの,過去のものとなっていることを表す語」であり(広\n辞苑〔第7版〕),その後に続く語がかつて用いられていた名称等であるこ とを指し示すものとして一般的に多用されている語であること(乙5の1〜 5の5)からすると,使用商標に接した需要者は,「旧 関西国際学友会日 本語学校」の意味は,かつての名称が関西国際学友会日本語学校であったこ とにあると理解すると認められる。 続いて,「関西国際学友会日本語学校」の部分について検討する。 ア この文字部分中,「日本語学校」は,教育の分野において,日本語を教 授する教育機関又は施設を意味する一般的名称と認められ(甲7の1〜7 の8),一般通常人にとっても馴染みのある語というべきであるから,需 要者が「関西国際学友会日本語学校」の文字に接したときに,これは「関 西国際学友会」と「日本語学校」の各語を組み合わせたものであると理解 することは明らかである。
イ 次に,「関西国際学友会」についてみると,「学友会」の文字部分だけ をみれば,学生及び卒業生の交流を図る会ないし団体といった程度の一般 的な意味を有する語と解する余地があるものの,その前に「関西国際」が 付されていることを考え合わせると,これに接した需要者は,全体として, 関西地方に所在し又は同地方において活動している,国際的に学生等の交 流を図ることを目的として設立された特定の団体の名称であると理解する と認めるのが相当である。 また,上記のとおり,「日本語学校」は,日本語を教授する教育機関又 は施設を意味する一般的名称と認められるから,需要者は,「日本語学校」 の部分を,提供される役務の内容,又はその役務を提供する施設を示して いるものと理解し,当該部分が出所を表示する機能\を有するものであると は考えないと認めるのが相当である。
ウ 上記イにおいて説示した各語が有する意味合いに鑑みると,「関西国際 学友会日本語学校」は「関西国際学友会」が運営する「日本語学校」とい った程度の意味を有する語として理解されるというべきである。 そして,「関西国際学友会」と「日本語学校」とは,一体不可分の関係 にあると理解されなければならない語であるとは言い難い上に,「日本語 学校」は,日本語を教授する教育機関又は施設を意味する一般的名称であ るから,需要者は,使用商標中の「関西国際学友会日本語学校」につき, 「関西国際学友会」の部分が出所を示す機能を果たしていると認識すると\nいうべきである。

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◆平成30(行ケ)10038

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平成29(行ケ)10216  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年8月22日  知的財産高等裁判所

 審決は、羽の寸法を追加する補正が新規事項であるとしましたが、知財高裁(第2部)は、これを取り消しました。理由は、その商品に用いることが記載されていることなどから、特定事項aは新たな技術的事項を導入するものとはいえないというものです。
 前記で認定したような本願発明において,撹拌羽根 の形状,寸法等の撹拌条件は発明特定事項として重要な要素といえるところ,当初 明細書等に本件撹拌羽根を用いることは明示されていない。しかし,当初明細書の 【0012】には,1)撹拌にET−3Aを用いること,2)「撹拌羽」は,回転中心 となる支軸の下端から漢字の「山」の字を構成する形態で対の羽部を延設した「撹\n拌羽」であること,3)「撹拌羽」の回転半径は,内容量が200mlで内径約6c mのビーカー等の円筒形容器の半径(約3cm)より僅かに小さいことが記載され ているところ,前記(1)イの事実によると,当初明細書に記載されている上記「撹拌 羽」の形状,寸法は,ET−3Aの付属品である200mlビーカー用の本件撹拌 羽根のそれと一致するものである。また,前記(1)イの事実によると,ET−3Aは, 昭和60年頃から長年にわたって販売されており,多数の当業者によって使用され てきたと推認される実験用の機械であるところ,販売開始以来,付属品である本件 撹拌羽根の形状,寸法に変更が加えられたことは一度もなく,しかも,遅くとも平 成17年7月頃には,本件撹拌羽根は,ET−3Aとともに日光ケミカルズのカタ ログに掲載されていた。さらに,当初明細書の記載に適合するような形状,寸法の ET−3A用の撹拌羽根が,ET−3A本体とは別に市販されていたことは証拠上 認められない。
以上の事実を考え併せると,当業者が,当初明細書等に接した場合,そこに記載 されている撹拌羽が,ET−3Aに付属品として添付されている200mlビーカ ー用の本件撹拌羽根を指していると理解することができるものと認められる。そし て,特定事項aは,200mlビーカー用の本件撹拌羽根の実寸法を追加するもの であるから,特定事項aを本願の請求項1に記載することが,明細書又は図面の全 ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を 導入するものとはいえず,新規事項追加の判断の誤りをいう原告の主張は理由があ る。

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平成29(ワ)9989  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年7月19日  大阪地方裁判所(26部)

 商標権侵害、不競法2条1項1号で差止を求めました。大阪地裁は、図形の部分に識別性が有り、文字「マタニティベルト」には識別力無しと商標権侵害を否定しました。また、不競法については、被告の使用形態が、「なが〜く使える マタニティベルト」という一連の語として使用されていないので類似しないと判断しました。判決の後ろに原告、被告の商品表示があります。\n
 次に,「なが〜く使える」の出所識別標識力について検討するに,妊 産婦用商品の販売に際して,出産前だけ又は出産後だけに限らずその両方の期間に またがって使用できる商品であることの宣伝文句として,「産前産後」も「長く使 える」や「長〜く使える」という商品表示が原告商品や被告各商品以外の妊産婦向\n5 けの商品の宣伝にも多くの例でされてきていること(本件事実経過一覧表の青色で\n着色した部分参照)に照らせば,「なが〜く使える」の語は,出産前だけでなく出 産後も長期間使用できるという商品の性質を指す語として,出所識別標識力がない と認めるのが相当である(このことは,当事者間に争いがない。)。
(ウ) そうすると,「なが〜く使える マタニティベルト」との原告表示は,\nこのような商品の性質を表す語と商品の普通名称を組み合わせた語にすぎないから,\nそれが原告商品の商品表示として周知性を獲得したとしても,その出所識別標識力\nは,「なが〜く使える マタニティベルト」という一連の語としてのみ認められる ものというべきである。
(2) 被告各商品の商品表示との類否\n被告各商品パッケージの構成(別紙被告商品パッケージ目録参照)は,別紙被告\n商品表示目録(被告主張)記載1及び2のとおりのものであり,被告商品1の商品\n表示については,リング状の図形(左半分は赤色,右半分は青色)の中に,1段目\nに「長〜く使える」の文字を,2段目に「ピジョン」の文字を,3段目に「産前産 後」の文字(産前は赤色,産後は青色)を,4段目に「マタニティ」の文字を,5 段目に「ベルト」の文字を,6段目に「助産師推奨」の文字を配して構成されてお\nり,被告商品2の商品表示については,1段目に「ピジョン」の文字を,2段目に\n「長〜く使える」の文字を,3段目に「産前産後」の文字(他の文字より大きく, かつ,連結した色の異なる2つの円形図形中に表示されている。)を,4段目に\n「マタニティベルト」の文字を配して構成されている,とそれぞれ認められる。\nこのような被告各商品パッケージの構成を被告各商品の商品表\示として捉える場 合,被告各商品の商品表示は,「長〜く使える」「マタニティベルト」の各語のほ\nかに,少なくとも「ピジョン」,「産前産後」の語が付加されている上,「ピジョ ン」の語は,育児用品等の製造販売を業とする被告が販売する商品の出所識別標識 として,取引者ないし需要者の間で広く認識された著名な表示である(「ピジョ\nン」や「PIGEON」の商標が日本有名商標集に掲載されていること〔乙42〕 や,原告被告双方から書証として提出された妊産婦向け雑誌の質,量は,これを裏 付けるに十分なものである。)から,原告表\示の出所識別標識力が「なが〜く使え る マタニティベルト」という一連の語としてのみ認められることを考慮すると, 両者は称呼及び外観を異にしており,類似するとはいえない。
また,原告が主張するとおり,被告各商品が「長〜く使える産前産後マタニティ ベルト」として宣伝広告され,紹介されていること(甲22及び25の各号,乙3 9の5ないし7)から,その商品表示を「長〜く使える産前産後マタニティベル\nト」として捉える場合であっても,原告表示の出所識別標識力が「なが〜く使える\nマタニティベルト」という一連の語としてのみ認められることを考慮すると,やは り両者は称呼及び外観を異にしており,類似するとはいえない。 したがって,いずれにせよ,被告各商品の商品表示が原告表\示と類似するとはい えない。 なお,被告各商品の商品表示を「長〜く使えるマタニティベルト」と捉えること\nについては,被告各商品パッケージの構成において「産前産後」の文字が「長〜く\n使える」の文字と「マタニティベルト」の文字との間に他と比べて大きく目立つ態 様で配置されていることや,被告各商品の上記宣伝広告や紹介においても「長〜く 使える産前産後マタニティベルト」との表示が使用されていることから,「長〜く\n使える」の文字と「マタニティベルト」の文字のみを抽出・連結して,「長〜く使 えるマタニティベルト」を被告各商品の商品表示と捉えることはできない。\n

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平成30(ネ)10023  著作権侵害差止等本訴請求,損害賠償反訴請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成30年8月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ドキュメンタリー映画中に、ニュース動画を用いたことが引用に当たるかが争われました。知財高裁は引用には該当しないとした1審判断を維持しました。
 控訴人は,本件映画において,本件使用部分においても,エンドクレジ ットにおいても何ら出所表示をすることなく本件各映像を利用したことが「公正な慣行」に合致しないとして引用の抗弁(著作権法32条1項)を\n認めなかった原判決の認定判断に誤りがあると主張する。 よって検討するに,本件映画において,被控訴人が報道用として編集管 理する本件各映像がその著作権者である被控訴人の名称を全く表示することなく,無許諾で複製して使用されている事実は当事者間に争いがないと\nころ,もともと出所の明示は引用者に課された著作権法上の義務(著作権 法48条1項1号)である上に,本件の場合,本件映画中の控訴人製作部 分と本件使用部分とは,原判決が指摘するとおり,画面比や画質の点にお いて一応区別がされているとみる余地もあり得るとはいえ,映画の中で, これらの部分が明瞭に区別されているわけではなく,その区別性は弱いも のであるといわざるを得ないから,本件使用部分が引用であることを明ら かにするという意味でも,その出所を明示する必要性は高いものというべ きである。また,本件のようなドキュメンタリー映画の場合,その素材と して何が用いられているのか(その正確性や客観性の程度はどのようなも のであるか)は,映画の質を左右する重要な要素であるといえるから,こ の観点からしても,素材が引用である場合には,その出所を明示する必要 性が高いものと考えられる。他方,本件においては,引用する側(本件映 画)も引用される側(本件各映像)も共に視覚によって認識可能な映像であって,字幕表\示等によって出所を明示することは十分可能\であり,かつ,そのことによって引用する側(本件映画)の表現としての価値を特に損なうものとは認められない。これらのことに,原判決が指摘する「公正な使\n用(フェア・ユース)の最善の運用(ベスト・プラクティス)についての ドキュメンタリー映画作家の声明」(乙17)の内容等を併せ考えると, 適法引用として認められるための要件という観点からも,本件映画におい て本件各映像を引用して利用する場合には,その出所を明示すべきであっ たといえ,出所を明示することが公正な慣行に合致し,あるいは,条理に 適うものといえる。そして,このことは,本件映画の総再生時間が2時間 を超えるのに対し,本件各映像を使用する部分(本件使用部分)が合計3 4秒にとどまるといった事情や,本件各映像が番組として編集される前の 映像であるといった事情によっては左右されない。 したがって,控訴人が何ら出所を明示することなく被控訴人が著作権を 有する本件各映像を本件映画に引用して利用したことについては,(単に 著作権法48条1項1号違反になるというにとどまらず)その方法や態様 において「公正な慣行」に合致しないとみるのが相当であり,かかる引用 は著作権法32条1項が規定する適法な引用には当たらない。よって,こ れと同旨をいう原判決の認定判断に誤りがあるとは認められない。 イ これに対し,控訴人は,1)「公正な慣行」の立証責任を利用者の側に負 わせるべきではない,2)本件における引用の抗弁の成否に関しては,被控 訴人が本件各映像の利用を許諾しなかった理由(不許諾理由)こそが考慮 されてしかるべきである,3)エンドクレジットへの掲載は賛辞を意味する という「公正な慣行」が存在するため,控訴人としては,許諾申請が拒否された以上,被控訴人の許諾があったかのような記載を避ける必要があっ\nた,4)そもそも出所を明示していないことを理由に引用の抗弁を退けるこ と自体が誤りである,などと主張する。 しかしながら,次のとおり,上記各主張はいずれも採用できない。 上記1)について,著作権法32条1項は,飽くまで著作権行使の制限規 定である以上,その適用については,基本的に適用を主張する側が要件充 足の主張立証責任を負うものと解するのが相当である

◆判決本文

原審は以下のように判断しました。

◆平成28(ワ)37339
(3) 本件映画と本件各映像(本件使用部分)との関係についてこれをみると,本 件映画は,資料映像・資料写真とインタビューとから構成されるドキュメンタリー映画であり,その中で資料映像として使用されている本件各映像は,テレビ局であ\nる原告の従業員が職務上撮影した報道映像である。 そして,本件映画のプロローグ部分のうち,被告制作部分は,画面比が16:9 の高画質なデジタルビデオ映像であり,他方,本件使用部分は,画面比が4:3で あり,被告制作部分に比して画質の点で劣っているから,被告制作部分と本件使用 部分とは,一応区別されているとみる余地もある。
しかし,本件映画には,本件使用部分においても,エンドクレジットにおいても, 本件各映像の著作権者である原告の名称は表示されていない。被告は,上記のとおり本件映画において原告の名称を表\示しない理由について,映像の出所は劇場用映画などからの引用の場合以外は表記しないとか,資料写真の出所は写真家の名前を伝える必要がある場合に限って表\記するなど,制作上の方針を主張するにとどまり,本件映画のようなドキュメンタリー映画の資料映像として 報道用映像を使用するに際し,当該使用部分においても,映画のエンドクレジット においても著作権者の名称を表示しないことが,「公正な慣行」に合致することを認めるに足りる社会的事実関係を何ら具体的に主張,立証しない。被告が提出する\n乙第17号証は,「公正な使用(フェア・ユース)の最善の運用(ベスト・プラク ティス)についてのドキュメンタリー映画作家の声明」であり,フェアユースに関 する規定を有する米国著作権法を念頭に置いたものであるが,同声明においても, 「歴史的シークエンスにおける著作物の利用」に関し,「この種の利用が公正であ るという主張を支持するためには,ドキュメンタリー作家は以下の点を示すことが できねばならない。」として,「素材の著作権者が適切に明確化されている。」と されており,何らかの方法により素材の著作権者を明確化することを求めているの である。
実質的にみても,資料映像・資料写真を用いたドキュメンタリー映画において, 使用される資料映像・資料写真自体の質は,資料の選択や映画全体の構成等と相俟って,当該ドキュメンタリー映画自体の価値を左右する重要な要素というべきであ\nるし,テレビ局その他の報道事業者にとって,事件映像等の報道映像は,その編集 や報道手法とともに,報道の質を左右する重要な要素であり,著作権法上も相応に 価値が認められてしかるべきものであるから(著作権法10条2項が,報道映像に つき著作物性を否定する趣旨でないことは,その規定上明らかである。),ドキュ メンタリー映画において資料映像を使用する場合に,そのエンドクレジットにすら 映像の著作権者を表示しないことが,公正な慣行として承認されているとは認め難いというべきである。\nそうすると,総再生時間が2時間を超える本件映画において,本件各映像を使用 する部分(本件使用部分)が合計34秒にとどまることを考慮してもなお,本件映 画における本件各映像の利用は,「公正な慣行」に合致して行われたものとは認め られない。 したがって,著作権の行使に対する引用(著作権法32条1項)の抗弁は成立し ない。

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平成27(ワ)1190  職務発明対価請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年5月29日  東京地方裁判所(46部)

 ソニーのFeliCa関連の発明について、職務発明に基づく報奨金として約3000万円が認められました。新聞で報道はあったのですが、判決アップまでに2ヶ月くらいかかっていました。伏せ字の部分がかなりありました。
 前記前提事実・・によれば,1)本件実施発明が平成8年5月から平成 13年3月までの間に発明の報告がされたこと,2)被告がFN社を設立し, 対象実施権を含む知的財産権のライセンス事業その他のFeliCa関連事 業を行わせていることが明らかである。
(3)ア 使用者が特許を受ける権利を承継して特許が登録された場合に,使用者 が発明の実施等によって利益を受けたことによって相当の対価を算定する 場合には,「使用者等が貢献した程度」(旧法35条4項)として,発明が されるについての使用者の貢献度のほか,実施品の売上げを得たことに対 する使用者の貢献度等の諸事情を総合的に考慮して,相当の対価を算定す ることが相当というべきである。
イ 上記(1)及び(2)の事実関係に加え,前記前提事実(3)及び前記3 おりの本件実施発明の内容及び意義によれば,本件実施発明は,被告入社 前からコンピュータ等について知見を有していた原告が,その知見を活用 し努力及び創意工夫をすることにより着想した面がある。 もっとも,被告においては昭和60年代から無線ICタグの開発がされ て,A発明がされ,その後もAが率いる無線ICタグの研究チームで研究 が続けられていて,原告も同チームに属していた。上記の着想の背景には, 原告が,被告による費用負担の下で,被告入社後にOSやコンピュータの 開発を行って知識経験を獲得し,また,被告における無線ICタグの開発 チームに所属して,その開発チームによる技術的蓄積に触れていたことが あったともいえる。そして,被告として製品を納入することを検討してい た案件において,発注者から細かな仕様が要求されたところ,本件実施発 明は,それらの要求に応じる製品の開発の過程において着想され,具体化 されたという面もある。
その後,被告製品が鉄道事業者等に多数納入されることとなるが,製品 化に当たっては,新たに各種の開発が必要であったのであり,被告におい ては,相当数の被告の従業員がその開発を行った。また,継続的なシステ ムにも関わり得るという被告製品の性質上,被告製品の導入に当たっては 一般的に発注者がその供給等についての継続性や大量の製品の供給可能性\n等を重視する場合も多いといえるが,その際には企業としての被告の実績, 規模等が影響したことが推認できる。その他,被告とJR東日本等との契 約に基づく共同開発その他の過程を経て,被告製品が開発されて被告製品 が多数納入される環境が構築され,また,FN社やビットワレット株式会\n社の設立及びその後の事業の運用により電子マネーその他の鉄道の改札以 外の用途が確立し,カードの利便性が高められて被告製品の販売数が向上 したということができる。被告においては,相当額の投資を行い,こうし た需要や顧客の要望に応え得る被告製品の生産体制の確立も行われた。加 えて,FeliCaのシステムは,暗号方式の変更等の改良が継続的に加 えられるなど,被告が継続的に技術的な改良等を行い,被告製品の売上げ が維持されている面もある。これらのことは,発明者以外の被告の従業員 等の関与があって初めて実現し得ることである。
ウ 被告の貢献度に関し,原告は,開発チームの一員として又はFeliC a事業部長として上記発注者や担当者らとの交渉や被告製品の活用方法の 提案等を行っていたこと,被告が原告の提案を受け入れなかったために本 来得られる利益を得られなかったことなどを主張する。 しかし,職務発明の発明者の行動のうち,営業面,販売面における行動 は,発明者しか行うことができない行動であれば格別,基本的には発明者 もその一員である従業員としての貢献として考慮されるものといえる。そ の他,原告は,A発明が被告製品において実施されていない上に特許の無 効理由を有するなどとも主張するが,少なくとも上記に述べた理由により, 本件実施発明がされるまでの間における被告の研究等の活動は,使用者の 貢献として考慮されるといえる。 なお,証拠(乙184)によれば,原告は,平成11年に41歳で統括 部長に,平成13年に事業部長に,平成14年にFeliCa開発・技術 部門の部門長に就任し,平成15年4月から平成17年7月の退職時まで 情報技術研究所の統括部長の地位にあり,また,上記各就任時の原告の年 齢は上記各地位の平均年齢よりも若く,特に部門長に就任した際は5歳以 上若かったと認められ,従業員等としての貢献に対しても相応の待遇を受 け,給与及び退職金についても高い処遇を受けていたといえる。
●省略●
(4) 以上の事情その他本件に現れた全事情を総合考慮すると,本件実施発明の 実施に係る相当の対価の算定に当たっての被告の貢献度は大きなものであり, その割合は95%と認めるのが相当である。

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平成29(ワ)14637  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年7月26日  東京地方裁判所

 ウェブサイトにおけるタイトルタグ、メタタグとしての使用形態について、一部の使用形態は、商品を表示する商品等表\示であるとして、不正競争行為(2条1項1号)に該当すると判断されました。
平成28年11月1日から(タイトルタグ及びメタタグでの使用は15 日から)平成29年3月22日までの間の被告ウェブページのタイトルタ グ及びメタタグ並びに被告ウェブページにおける被告標章1及び2の使用 )について
証拠(甲19)及び弁論の全趣旨によれば,被告グレイスランドは,平成28年11月15日から平成29年3月22日までの間,被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグに別紙1−1のタイトルタグ欄及びメタタグ欄のとおり記載したこと,その記載によって「楽天市場」のウェブサイトで「タカギ」,「カートリッジ」という語をキーワードとして検索した場合の検索結果の表示画面において,被告商品の写真が表\示されるとともにその横に「タカギ 取付互換性のある交換用カートリッジ浄水器カートリッジ 浄水カートリッジ(標準タイ...」といった,被告商品の種類に対応したタイトル(上記タイトルタグ冒頭の【楽天市場】を省略した記載の冒頭部分又は上記メタタグの記載の冒頭部分と同一内容のもの)が表示されたこと,それらのタイトルの下には「グレイスランド」,「楽天市場店」と表\示されたこと,それらのタイトル部分を選択することで当該種類の被告商品を販売する被告ウェブページに移動することができたこと,その検索結果の表示画面においては上記のほかにタイトルタグに記載された説明は表\示されず,メタタグに記載された説明も表示されなかったことの各事実が認められる。\n
また,証拠(甲18)及び弁論の全趣旨によれば,上記の平成28年1 1月15日から平成29年3月22日までのタイトルタグ及びメタタグの 記載により,一般の検索サイト(Google)において「タカギ」,「浄 水器」,「カートリッジ」という語をキーワードとして検索した場合の検索 結果の表示画面に「【楽天市場】タカギ 取付互換性のある交換用カート リッジ 浄水器カートリッジ..」といった被告商品の種類に対応したタイ トルが表示され,その下に上記タイトルより小さい文字で被告商品の種類\nに対応して「タカギ 取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カー トリッジ 浄水カートリッジ(高除去タイプ)※当製品はメーカー純正品 ではございません。ご理解の上,お買い求めください。」といった表示が\nされたこと,それらのタイトル部分を選択することで当該種類の被告商品 を販売する被告ウェブページに移動することができたこと,その検索結果 の表示画面のタイトル部分には上記表\示のほかにはタイトルタグに記載さ れた説明は表示されなかったことの各事実が認められる。\n 以上のとおり,平成28年11月15日から平成29年3月22日まで の間,タイトルタグ及びメタタグの記載によって,検索結果を表示するウ\nェブサイトにおいて,タイトルとして被告標章1又は2が表示され,その\n後に空白部分があり,さらにその後に商品の品名が表示されたり,説明と\nして被告標章2が表示され,その後に空白部分があり,さらにその後に商\n品の品名や説明が表示されたりした。このような態様での被告標章1及び\n2の使用は,写真や品名で説明される商品の出所を示すものであると認め ることが相当である。そして,タイトルタグやメタタグにおける記載によ って,ウェブサイトにおいて上記のような表示がされ,同サイトを閲覧し\nた者もその表示を見ることができることに照らすと,タイトルタグやメタ\nタグにおいて,被告標章1及び2は,商品を表示する商品等表\示として使 用(不競法2条1項1号)されたものと認められる。また, とおり,被告ウェブページにおいて,被告商品を購入するために商品選択 をする部分にも,別紙2−1のウェブサイトの記載欄のとおり,上記と同 様に,「タカギ」との被告標章2が表示され,その後に空白部分があり,\nさらにその後に商品の品名や説明が表示されており,これらの表\示も商品 の出所を示すものであると解するのが相当である。 これに対し,被告らは,「取付互換性のある交換用カートリッジ」,「当 製品はメーカー純正品ではございません」等といった表示があることや被\n告ウェブページ上における被告商品の外観写真が原告の純正品とは異なる ものであることなどを挙げて,タイトルタグ,メタタグ,被告ウェブペー ジにおいて,被告標章1及び2は商品の出所を表示するものとして使用さ\nれていない旨主張する。しかし,上記のとおり,被告標章1及び2の後に 空白部分があり,さらにその後に商品の品名等が記載されているという表\n示の態様,「互換性」という用語は製造販売者が同じ商品間でも用いられ ること(甲46),検索結果の表示画面において表\示される内容やそこで の説明の文字の大きさ,当該商品の性質やウェブページでの表示であるこ\nとに鑑み需要者は全ての記載を注意深く観察しない可能性が相当程度ある\nことなどに照らし,被告らの主張は採用することができない。
イ 平成29年3月23日以降の被告ウェブページのタイトルタグ及びメタ タグ並びに被告ウェブページにおける被告標章1及び2の使用(前提事実 及び 並びに証拠(甲20ないし22)及び弁論の全趣旨によれば,被告グレイスランドは,平成29年3月23日以降,被告ウェブ ページのタイトルタグ及びメタタグに別紙1−2(同年4月12日まで) 並びに同1−3及び1−4(同月13日から)のタイトルタグ欄及びメタ タグ欄のとおり記載したこと,その記載によって「楽天市場」のウェブサ イトで「タカギ」,「カートリッジ」という語をキーワードとして検索した 場合の検索結果の表示画面に被告商品の写真及びその横に「タカギに使用\n出来る取り付け互換性のある交換用カートリッジ(標準タイプ)※ はメーカー純正...」,「【標準タイプ1本パック】タカギの浄水器に使用で きる,取付け互換性のある交換用カートリッジ。...」といった被告商品 の種類に対応したタイトル(上記タイトルタグ冒頭の【楽天市場】を省略 した記載の冒頭部分又は上記メタタグの記載の冒頭部分と同一内容のもの) が表示されたこと,それらのタイトルの下には「グレイスランド」,「楽天\n市場店」との表示がされたこと,それらのタイトル部分を選択することで\n当該種類の被告商品を販売する被告ウェブページに移動することができた こと,その検索結果の表示画面には上記表\示のほかにはタイトルタグに記 載された説明は表示されず,メタタグに記載された説明も表\示されなかっ たことの各事実が認められる。以上のとおり,平成29年3月23日以降, タイトルタグ及びメタタグの記載によって,検索結果を示すウェブサイト に上記のとおりの表示がされ,また,ウェブサイトによっては,検索結果\nの表示画面に別紙1−2,1−3,1−4のメタタグ欄記載の説明が表\示 されることになったと推認されるが,それらにおいては,いずれも「タカ ギ」というカタカナ3文字の後に「に」又は「の」という助詞が付加され, 当該商品が原告商品に対応するものであるという,商品内容を説明するま とまりのある文章が表示されている。\nそして,このような表示内容に照らせば,需要者が上記の表\示に接した場合には,それらにおける「タカギ」との表示は,当該商品が対応する商品を示すものであると受け取り,当該商品自体の出所を表\示するものであると受け取ることはないと認められる。 そうすると,平成29年3月23日以降のタイトルタグ及びメタタグにお いて,被告標章1及び2は不競法2条1項1号にいう商品等表示として使\n用されたものとはいえない。

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平成29(行ケ)10218  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年8月9日  知的財産高等裁判所

 UFJ銀行の出願(CS関連発明)について、拒絶審決が維持されました。争点は、進歩性です。
 引用発明1はコンピュータ上の対話型処理を行うシステムである。また,当業者 は,本願出願日時点において,コンピュータ上の対話型処理システムである引用発 明1には,コンピュータによる対話型処理の「円滑化を図る」という周知の課題が あることを理解し,引用発明1の通信端末に,キャラクタが動いているような表示\nをするとの周知の解決手段の適用を試みるということができる。 一方,引用発明2はコンピュータ上の対話型処理を行うナビゲーション装置であ る(引用例2【0038】【0050】【0051】)。また,引用発明2は,表\n示装置にエージェントを表示し,回答時に当該エージェントの口が開くというもの\nであるから,当業者は,かかる構成を,コンピュータによる対話型処理の「円滑化\nを図る」という周知の課題を解決するための,周知の解決手段の一つ,すなわち通 信端末にキャラクタが動いているような表示をする構\成の一つであると理解する。 そうすると,引用発明1に上記周知の課題があることを認識し,これに上記周知 の解決手段の適用を試みる当業者は,同じ技術分野に属し,かかる課題を解決する 手段である引用発明2を,引用発明1に適用することを動機付けられるというべき である。
ウ 原告の主張について
(ア) 原告は,周知の課題として「メディアコミュニケーションの円滑化を図る」 などと認定することは,課題を殊更に上位概念化するものであると主張する。 しかし,引用発明1及び2は,いずれもコンピュータ上の対話型処理システムの 技術分野に関するものである。そして,このような技術分野に関する前記各文献に は,「ユーザが自然に計算機へ音声入力できる雰囲気」(周知例1・97頁),「反 応のない機械に対して発話するために間が掴み辛い」(甲6【0002】),「ユ ーザと電子機器とがコミュニケーションを取り易い環境を構築」(乙9【0019】),\n「人間を相手にしているかのような自然なコミュニケーションを通じた情報入力」 (乙10【0008】),「より自然な対話を実現」(乙11・31頁右欄)など と,コンピュータ上の対話型処理システムにおいて,対話型処理の「円滑化を図る」 必要性が複数指摘されている。 したがって,本願出願日時点において,コンピュータによる対話型処理の「円滑 化を図る」ことは,周知の課題であったと認定することができ,これは課題を殊更 に上位概念化するものということはできない。
(イ) 原告は,引用例1には本件補正発明の課題が記載されていないから,当業 者には,引用発明1に基づき相違点に係る本件補正発明の構成に到達しようという\n動機付けがないと主張する。 しかし,前記のとおり,引用発明1及び2は,コンピュータ上の対話型処理シス テムの技術分野に関するものであって,このような技術分野では,本願出願日時点 において,コンピュータによる対話型処理の「円滑化を図る」ことは周知の課題で あったものである。そして,本件補正発明は,システム上で仮想オペレータとユー ザが対話を行うというものであり(本件補正明細書【0001】【0046】), コンピュータ上の対話型処理システムの技術分野に関するものであるから,本件補 正発明は,引用発明1及び2と同様に,上記周知の課題を含むものである。また, そもそも,引用発明1を出発点として本件補正発明の構成に到達するか否かを検討\nするに当たり,引用発明1が本件補正発明の課題を必ず有していなければならない ということはできない。 したがって,引用例1には本件補正明細書に記載された本件補正発明の課題と同 じ課題が記載されていないから動機付けを欠く,との原告の主張は採用することが できない。
(4) 引用発明2を適用した引用発明1の構成
ア 前記(2)ウ(ウ)のとおり,引用発明2には,「現実の事業者のオペレータを模 造した人物を表示装置に表\示するナビゲーション装置において,当該模造した人物 が話しているように表示するため,待機中と比較して,回答側センターの応答音声\nデータをスピーカから出力させる際に,当該模造した人物の口を開くように当該模 造した人物を表示すること。」との具体的な構\成が含まれている。 イ 一方,本件補正発明の構成は,通信端末において,回答メッセージ等を再生\nする際,これを再生しない時と比較し,仮想オペレータの「一部が大きな動作を行 うように」仮想オペレータを表示するというものである。そして,仮想オペレータ\nの一部の大きな動作がどのようなものであるかについて,本件補正明細書において 何ら特定されていない。 また,仮想オペレータの一部の大きな動作について,本件補正明細書【0071】 には,「仮想オペレータの口や目を動かすようにしてもよい。あるいは手を動かす など,説明を行うジェスチャーをするようにしてもよい。すなわち,メッセージが 再生されていない時と比較し,仮想オペレータの一部がより大きな動作を行うよう にプログラムを構成してもよい。」と記載されている。したがって,待機中と比較\nして模造された人物が「口を開く」との構成は,本件補正発明における「一部」の\n「大きな動作」に含まれるものである。 さらに,仮想オペレータの一部が大きな動作をすることによって得られる効果に ついて,本件補正明細書【0072】には,「音声合成技術を活用して仮想オペレ ータと対話するため,ユーザは無機質な対話を強制されることなく,自然な対話を 行うことができる」と記載されている。もっとも,「自然な対話」の程度について は何ら特定されておらず,回答時に模造された人物が「口を開」けば,回答時にお いても待機中と同様に口を閉じている場合と比較して,円滑なコミュニケーション が図られているような印象を与えることができる。したがって,回答時に模造され た人物が「口を開く」との引用発明2の構成によって,「自然な対話を行う」とい\nう本件補正発明の効果を奏することができる。
ウ したがって,引用発明2における前記具体的な構成を引用発明1に適用すれ\nば,本件補正発明の構成に至るというべきである。\n

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平成29(ワ)30499  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年7月30日  東京地方裁判所

 婦人服について、商品形態模倣を主張しましたが、模倣とは認められませんでした。判決文の最後に原告・被告のブラウスの写真が掲載されています。
 上記イのとおり,原告各商品は,裾に向かって若干広がったノースリーブブラウス にフリル袖を縫い付けたブラウスであるが,ノースリーブブラウスの部分には特徴的 な点はないから,原告各商品のうち,特徴的であり需要者の目を引く部分は,フリル 袖であるといえる。 そこで,袖について検討すると,原告各商品と被告各商品は,いずれもノースリー ブに縫い付けられフリルを設けたものである点で共通するものの,上記相違点1)のと おり,フリル袖の広がり及びフリルのボリュームの相違という袖形状の相違は,袖全 体の形状であり着用時も含めて需要者の印象を大きく左右するものであるから,その 相違の程度が些細なものであるとはいえず,形態の全体的な印象に影響を及ぼすもの といえる。また,原告各商品と被告各商品には,黒いリボンの有無という相違がある。 原告各商品の黒いリボンは,正面から見たときに見える部分に付されており,袖の長 さからはみ出す長さであるから,ブラウスの装飾として存在感があり,フェミニンさ を強調するものである。さらに,地色が淡い原告商品3(オフホワイト色)及び原告 商品4(白地に黒のギンガムチェック)においては,黒いリボンの存在は更に印象的 である。したがって,リボンの有無は,全体的な印象を左右するものであるといえる。 以上によれば,需要者の着目するフリル袖の部分に上記相違(相違点1))があるか ら,商品全体の形態として対比した場合に,原告各商品と被告各商品が全体として酷 似しているということはできない。よって,被告各商品の形態は,原告各商品の形態 と実質的に同一であると認めることはできず,これに反する原告の主張はいずれも採 用できない。

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平成30(行ケ)10007  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月21日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は商標法4条1項7号違反の無効理由無しと判断しました。判決中で、同号違反について、類型化した判断基準を示しました。
(1) 商標法4条1項7号が規定する「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,1)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,2)当該商標の構成自体が用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,3)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されていることにより,同号該当性が認められる場合,4)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合のほか,5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合などが含まれるものと解される。本件商標に関していえば,上記1)ないし4)に該当しないことは明らかであるから,以下,上記5)の場合に該当するか否かについて検討する。
(2) この点につき,原告は,長男Aは親族間で共有していた共有商標1ないし 3を故意に消滅させ,その上で,これを独占する意図で本件商標の登録出願 を行ったものであり,かかる行為は,長男Aと長男A以外の共同権利者との 間の信義則上の義務違反となるのみならず,適正な商道徳に反し,著しく社 会的妥当性を欠く行為というべきであるから,本件商標は商標法4条1項7 号に規定する商標に該当し,その商標登録は同号の規定に違反してされたも のとして無効にされるべきである旨主張する。 確かに,長男Aは,「千鳥屋」のグループ企業を営む経営者同士で共有し その事業で使用していた共有商標1ないし3を事実上代表して管理する立場\nにありながら,存続期間を更新するために必要な手続(書換登録申請)を取\nらずにその権利を消滅させる傍らで,共有商標1ないし3と構成をほぼ同じ\nくする長男商標1ないし4や本件商標を単独で出願してその登録を得ており, かかる行為の外形のみに着目すれば,本件出願は,商標の独占を図った不当 な出願であって,適正な商道徳に反し,著しく社会的妥当性を欠く行為であ るとの評価を行うことも全くあり得ないことではないと考えられる。
(3) しかしながら,他方で,長男Aが単独で本件出願を行った目的や経緯につ いてみると,本件においては,次のような事情が認められる。 すなわち,その目的や経緯について,被告らは,本来であれば,Fの相続 人間で本件商標を含む権利関係を処理する必要があったが,長男Aは,これ までのFの相続に関する紛争の経過や,三男Cによる単独での商標登録出願 の動き等から事前協議による解決は困難であると判断し,自ら単独で権利を 取得した後に改めて「千鳥屋」グループの事業に関連する兄弟及びその関係 者(本件4者)間での共有に移そうと考えたものであり,決して本件商標等 の独占を図ったものではない旨を主張している。 しかるところ,確かに,Fの遺産相続に関しては,「千鳥屋」の事業を行 う長男Aら兄弟4名とそれ以外の相続人3名との間でも,また長男Aら兄弟 間においても,必ずしも円滑に協議が進んでいなかったことがうかがわれ(甲 20及び21は,Fの遺産分割調停に係る調停調書であり,平成9年の調停 申立てから平成15年の調停成立まで約6年を要していることが分かる。ま\nた,乙5及び6は,「千鳥屋」の内紛を報じる報道記事であり,経営者一族 間で「(Fの)遺産相続を巡りトラブルが発生」していることや,「兄弟7 人が骨肉の争いを演じ」ていることが記載されている。),三男Cに関して も,Fの死後,独自に「千鳥屋宗家」の商標登録出願をしたり(乙7),長 男Aが経営する総本家の商号と類似する「千鳥総本家」の商標登録出願をし たり(乙11),長男Aが事業を営む地域(東京)に関連する「江戸千鳥」 (乙12)や,二男B及び四男Dが事業を営む地域(福岡)に関連する「博 多千鳥」(乙13)の商標登録出願を行ったりするなど,実際に,他の兄弟 との間で緊張を生じさせかねない動きがあったことがうかがわれる。 なお,平成13年には,「西村千鳥屋」なる登録商標(登録第19219 33号)につき,Fの持分を長男Aら兄弟4名に移転する持分移転登録申請\nがされ,平成18年には,「チロリアン」なる登録商標(登録第70755 8号)につき,長男Aら兄弟4名の申請で書換登録申\請がされ,いずれもI 弁理士が申請人代理人となっている事実が認められるが(甲13,22),\nこれらは飽くまで共有商標1ないし3とは異なる商標に関する手続であって, 利害関係が全く同一であるとはいえないし,Fの遺産分割に関する相続人間 の協議が全体として円滑に進んでいなかったことは上記のとおりであるから, これらの事実をもってしても,被告らの主張が全面的に信用できないことに はならない。 また,長男Aは,本件商標等の取得後,少なくとも,本件商標に関してい えば,実際に,長男A(総本家)の関係者である被告Y1のみならず,二男 Bの経営する被告総本舗,四男Dの関係者である被告Y2の3者間の共有名 義に移しており,原告に対しても,I弁理士を通じて,他の長男商標等を含 めて,最終的に「J家関係の4者」のみでの共有とする意思があることを表\n明している(これらは,権利の独占とは明らかに反する行動であるといえる。)。 そして,被告総本舗の代表取締役であり二男Bの関係者であるGと,四男D\nの関係者(千鳥屋本家の代表者)である被告Y2が,長男Aの方針に理解を\n示して,長男Aによる本件商標等の出願及び商標登録を承認するとの意向を 示していることも,前記認定のとおりである。 さらに,現時点において本件商標権を共有する被告Y1,被告総本舗及び 被告Y2や,長男商標1ないし4を保有する総本家や長男Aが,原告及びそ の関係者に対し,これらの商標の使用を禁止するような動きは,証拠上一切 うかがわれない。 これらの事情を総合すると,被告らが主張するところもあながち不合理と はいえず,首肯できる面があるというべきである。 そうであるとすれば,原告が主張する点を考慮しても,なお,長男Aによ る本件商標の登録出願(本件出願)が,本件商標の独占を図る意図の下に行 われたと認めるには足りないというべきであり,ほかに本件商標が前記5)の 場合に該当するというべき事情は特に見当たらない。
(4) 以上によれば,本件商標は商標法4条1項7号に該当するとはいえず,こ の点に関する審決の認定判断に誤りがあるとは認められない。

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平成30(行ケ)10004  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年7月25日  知的財産高等裁判所

 知財高裁4部は、4条1項19号違反で無効とした審決を維持しました。原告は意匠権の切れたリプロダクト品を販売していました。問題の商標はランプシェードの立体的形状を2次元として表した形状で、被告商品とともに判決文の最後に挙げられています。\n
 被告商品の雑誌等の出版物への掲載状況をみると,前記(1)ウ(イ) のとおり,被告商品は,1990年(平成2年)から2013年(平成 25年)ころまでの間,家具に関する書籍,照明に関する雑誌・カタロ グ,インテリア雑誌,ファッション雑誌,経済雑誌等の多数の出版物に おいて,被告商品の形態(立体的形状)が認識できるような写真と共に 紹介されており,その基本的な内容は,被告商品は,20世紀を代表す\nるデザイナーであるヘニングセンが1958年にデザインし,被告が販 売する世界のロングセラー商品であり,そのデザインが優れていること を強調するものといえる。
エ 前記イ及びウで認定した被告商品の販売状況及び広告宣伝状況に加えて, 被告商品は,平成9年度通商産業省選定グッド・デザイン外国商品賞(イ ンテリア用品部門)を受賞し,平成24年には高等学校の教科書において, 被告商品の写真と共に,「モダンデザインの代表的ペンダント PH5… ポール・ヘニングセン」として掲載されたこと(前記(1)エ)を総合すると, 被告商品は,その販売が開始された1976年(昭和51年)当時,その 2層目から5層目が組み合わさった形状において,他のランプシェード商 品には見られない独自の特徴を有しており,しかも,被告商品が上記販売 開始後本件商標の登録出願日(平成25年6月14日)までの約40年間 にわたり全国的に継続して販売され,この間被告商品のデザインを印象づ けるような広告宣伝が継続して繰り返し行われた結果,本件商標の登録出 願時までには,被告商品が日本国内の広範囲にわたる照明器具,インテリ アの取引業者及び照明器具,インテリアに関心のある一般消費者の間で被 告が製造販売するランプシェードとして広く知られるようになり,被告商 品の立体的形状(引用商標)は,周知著名となり,自他商品識別機能ない\nし自他商品識別力を獲得するに至ったものと認められる。 そうすると,引用商標が被告商品に長年使用された結果,引用商標は, 本件商標の登録出願時及び登録査定時(登録査定日・同年12月27日) において,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,日本\n国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められる。
・・・
加えて,原告は,平成25年2月当時,被告商品を元にできるだけ忠実 に復刻生産したランプシェードの商品(原告商品)を「ポール・ヘニング センPH5」のリプロダクト品として原告のウェブサイト上で販売してい たこと(前記(1)ア及びイ)を併せ考慮すると,原告は,本件商標の登録出 願時(同年6月14日)において,被告商品は,ヘニングセンがデザイン した被告が製造販売する商品であること及び被告商品の立体的形状(引用 商標)について十分に認識していたことが認められる。\n

◆判決本文

関連事件です。こちらは19号違反なしと判断されました。上記案件とは商標が異なります。

◆平成30(行ケ)10005

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平成30(行ケ)10029  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年7月19日  知的財産高等裁判所

 著名な掲示板「2ちゃんねる」について、4条1項10号違反の無効主張がなされました。知財高裁は無効理由なしとした審決を維持しました。「2ちゃんねる」については譲渡したなどがニュースになっていたので、その関係の事件なのでしょう。裁判所は譲渡されたとは認められないと判断しました。
 電子掲示板に係る事業は,電子掲示板の名称等の商標のほか,ドメイン 名を使用する権利,電子掲示板に表示される広告に関する契約及びインタ\nーネットサービス提供に関する契約を含む複数の財産を用いて行われてい るものであるから,電子掲示板に係る事業を譲渡するに当たっては,これ らの複数の財産を移転し,その対価を支払うことを内容とする合意をする のが通常であるところ,本件事業譲渡の合意の具体的な内容は明らかでは ない。 そして,事業譲渡をするに当たっては,移転の対象となる具体的な財産 を特定し,事業譲渡の対価を定めるほか,対価の履行期及び履行方法,譲 渡の対象となる財産の移転方法(第三者の承諾等を要する場合にはその手 続の履行期及び履行方法等)を定めるのが通常であり,移転の対象となる 財産の内容によっては事業譲渡の基準日時点での債権債務の処理について 定める場合も考えられる。さらに,本件事業譲渡のように,当事者の一方 が法人である場合には,なおさら慎重な手続がとられるのが一般であるし, 本件事業譲渡は渉外法律関係を含むから準拠法の問題を生じ得ることから しても,口頭のみで契約を行うことは考えにくい。以上に照らせば,本件 事業譲渡につき契約書等の書面を作成せずに契約を締結するとはにわかに 考え難いというべきところ,本件事業譲渡に係る契約書等の処分証書の提 出はない。
イ また,本件記事において,1) 平成24年12月に,被告が本件電子掲 示板上の違法薬物に関する書き込みを放置したとして検察庁に送致された 旨,2) 平成25年3月に,本件電子掲示板上の違法薬物に関する書き込 みの削除措置がとられたために被告が不起訴処分となった旨,3) 同年8 月に,被告が本件電子掲示板に係る高額の広告収入をパケットモンスター 社から受領したとして東京国税局から指摘を受けた旨が記載されており(上 記1(7)),これによれば,被告は,平成21年1月以降も本件電子掲示板 の運営を含む本件電子掲示板に係る事業に実質的に関与していたことがう かがわれる。
ウ 以上のとおり,本件事業譲渡の合意の具体的な内容が明らかでないこと, 本件事業譲渡に係る契約書がないのはそれ自体不自然であること,本件事 業譲渡がされたという時期以降も被告が本件電子掲示板に係る事業に実質 的に関与していたことがうかがわれることに照らせば,本件事業譲渡がさ れた事実を認めることはできない。
エ 原告の主張について
(ア) 原告は,平成21年1月2日に本件ドメイン名のWhois情報上の登録 者がパケットモンスター社に変更されたことは,本件ドメイン名を使用 する権利が移転したことを意味し,これは本件事業譲渡を裏付けると主 張する。 しかし,上記1(2)のとおり平成12年から平成21年までの間に本件 ドメイン名のWhois情報上の登録者は何度も変更されているところ,これ らの登録者の変更が本件ドメイン名を使用する権利の実体上の移転を伴 うものであるかどうかは明らかではない(むしろ,登録者の変更が事業 譲渡を反映しているのだとすると,上記1(2)アないしオによれば,平成 12年から平成21年の間に本件事業譲渡を含む3回の事業譲渡が行わ れたことになるが,本件事業譲渡に対応する平成21年1月の登録者変 更以外の登録者変更に関しては,それが事業譲渡に伴うものであったこ とをうかがわせる証拠は全く存しないのであって,このことは,登録者 の変更が,必ずしも事業譲渡に伴うものではないことをうかがわせる事 情であるといえる。)。また,パケットモンスター社の設立時(平成2 0年10月13日)の株主は被告であるから(上記1(6)),パケットモ ンスター社は被告と関連を有する会社であったものとうかがわれる。以 上によれば,本件ドメイン名のWhois情報上の登録者がパケットモンスタ ー社に変更されたことをもって,本件ドメイン名を使用する権利の移転 やこれを伴う本件事業譲渡を直ちに裏付けるものとみることはできない。 なお,平成25年8月18日時点のパケットモンスター社の役員及び株 主が被告でないこと(上記1(6))は,この判断を左右するものではない。
(イ) 次に,原告は,本件ブログ及び本件書籍並びに本件記事における記載 は,本件事業譲渡を裏付けると主張する。 しかし,本件書籍及び本件ブログの「2ちゃんねる(ないし2ch) を譲渡」との記載自体からはこれが法律上の事業譲渡を意味するのかが 不明であるし,本件書籍にはこの「譲渡」の後も被告が「2ちゃんねる アドバイザー」であった旨の記載もある。また,本件記事には,被告を 「元管理人」と称し,被告が「本件電子掲示板を運営管理する権利を譲 渡したと公表した」とする部分があるが,その一方で,被告が平成21\n年1月以降も本件電子掲示板の運営に深く関与していることを示唆する 内容も含まれており,本件記事を事業譲渡を裏付ける証拠と断定するこ とはできない。 以上によれば,本件ブログ及び本件書籍並びに本件記事における記載 から,本件事業譲渡がされた事実を認めることはできない。
(ウ) さらに,原告は,本件電子掲示板上にパケットモンスター社の記載が あることは本件事業譲渡を裏付けると主張するが,本件電子掲示板をパ ケットモンスター社が運営管理している旨の記載(上記1(5))からは, パケットモンスター社が事業主体であるのか,事業主体から電子掲示板 の運営管理の委託を受けているのかが明らかではなく,本件事業譲渡を 裏付けるものとはいえない。

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◆平成30(行ケ)10028

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平成29(行ケ)10234  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成30年7月19日  知的財産高等裁判所

 審査段階で、新規性喪失の例外の主張をしました。しかし、公知にした意匠と証明書の意匠が異なるとして、例外適用が受けられませんでした。これを不服として審決取消を求めましたが、裁判所も同一とは認められないと判断しました。
 原告は,本件証明書に記載されている公開意匠(Arpege story「5wayコクーンコート」の意匠)と引用意匠は実質的同一の意匠であると主張しているので,要するに,原告が特許庁長官に提出した本件証明書(甲2の1)が引用意匠についての意匠法4条3項所定の証明書に当たる旨を主張しているものと解される。
よって検討するに,本件証明書に記載された公開意匠は,本件審決の「別 紙第3」のとおりであって,「5wayコクーンコート」なる商品名の女性 用コート(原告商品)であること,その販売価格は5万6160円であるこ と,同コートには,フードと袖口のファーとブローチが付いていること,こ れらのフードと袖口のファーとブローチはいずれも取り外しが可能であるこ\nと,袖口のファーはネック(コートの襟)に装着可能であることが,その記\n載内容から理解できる。もっとも,フードにファーが付くことや,フードの ファーが取り外し可能であることについては,本件証明書に一切記載されて\nおらず(これを示す写真も説明文もない。),本件証明書の記載から直ちに そのことを理解するのは困難である(甲2の1,乙12)。
他方,引用意匠は,本件審決の「別紙第2」のとおりであって,「【Ar pege story限定】コクーンコート」なる商品名の女性用コート(原 告商品)であること,その販売価格は6万3720円であること,同コート は,フードと袖口のファーとブローチのほか,フードのファーも付いている こと,これらのフードと袖口のファーとブローチとフードのファーはいずれ も取り外しが可能であること,袖口のファーはネック(コートの襟)に装着\n可能であることが,引用意匠に係る原告のウェブサイト(甲61,乙10の\n1及び2)の記載から理解できる。また,同ウェブサイトには,「ファー, フード,ビジューはそれぞれ取り外しが可能なので,自由に印象を変えて,\nアレンジを楽しめるのも大きな魅力!」,「”限定ポイント”アプの大人気 5WAYコートに袖とフードの両方にファーをつけました。」なる記載も認 められる。 以上によれば,公開意匠に係る商品も,引用意匠に係る商品も,共に「5 wayコクーンコート」なる商品名の女性用コート(原告商品)であって, フードと袖口のファーとブローチが付いている点,これらのフードと袖口の ファーとブローチはいずれも取り外しが可能である点及び袖口のファーはネ\nック(コートの襟)に装着可能である点で共通するが,引用意匠に係る商品\nは公開意匠に係る商品の限定品であって,袖口のほかにフードにもファーが 付いており,かかるフードのファーも袖口のファーと同様に取り外しが可能\nである点において,公開意匠にはない特徴を有するものと認められる。
(4) 上記のとおり,引用意匠は,フードにファーが付く点及びフードのファー が取り外し可能である点において公開意匠と明らかに相違すると認められる\nところ,かかる変化の態様が,本件証明書において説明ないし図示されてい なかったとしても,物品の性質や機能に照らして十\分理解することができる 範囲内のものであると認められれば,なお,引用意匠は公開意匠と実質的に みて同一であると評価する余地がある。 しかしながら,フードやファー,ベルト,ブローチなどを取り外して複数 の組合せを楽しむことができる女性用コートであれば,説明や図示がなくて も,通常はフードにファーが付くことや,当該フードのファーが取り外し可 能である,ということを十\分理解できると認めるに足る証拠はなく,商品名 に「5way」なる文言が付されていることも直ちにその認定を左右するも のとは認められない(アパレル業界,少なくともコートの業界において,「5 way」なる文言が多義的な意味で用いられていることは,被告提出の証拠 〔乙24ないし27等〕によっても明らかであるし,これらの証拠によれば, むしろ,変化の態様が公開意匠に近いものであっても,フードにファーが付 かないタイプのコートが現に存在することが認められる。)。 また,女性用コートの意匠において,フードにファーが付くことそれ自体 はありふれた構成の一つにすぎなかったとしても,現にフードにファーが付\nくか否かによって,その意匠から受ける需要者の印象が異なり得ることは明 らかというべきであるし,このことは原告自身も認めているところである(原 告は,原告準備書面(2)の3頁において,「通常,ファーはエレガント感を強 めるので,フードのファー,袖のファーの取付け,取り外しが簡単にできる ようにして,カジュアル感がなくならないように配慮したものである。」と 主張しており,これによれば,原告は,ファーの有無がエレガント感やカジ ュアル感の強弱に影響を与える意匠的特徴の一つであることを自ら認めてい るといえる。)。 そうすると,引用意匠及び公開意匠が,共にいわゆる動的意匠であって変 化の態様を有することを踏まえたとしても,フードにファーが付く点及びフ ードのファーが取り外し可能である点が物品の機能\や性質に照らして十分理\n解することができる範囲内のものであると評価することはできず,この点の 相違は実質的な相違に当たると認めるのが相当である。
(5) 以上によれば,引用意匠が本件証明書に記載されている公開意匠と実質的 に同一の意匠であるとは認められず,したがって,原告が特許庁長官に提出 した本件証明書(甲2の1)が引用意匠についてのものであると認めること はできない。 してみると,引用意匠については,そもそも,意匠法4条3項所定の証明 書が提出されていないことに帰するから,原告は引用意匠について同条2項 の適用を受ける余地はない。

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平成29(行ケ)10174  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年7月19日  知的財産高等裁判所

 ゲームに関する特許について、無効理由なしとした審決が維持されました。審決では、公知技術+周知で無効と主張していたのを、公知技術+公知で無効と主張変更することは認められませんでした。
  原告は,本件審決が甲8発明に相違点1に係る構成が記載されていると認\n定しながら,公知発明(主引用発明)と甲8発明の組合せによる本件発明1 及び8の容易想到性の有無を判断していない点において,判断遺漏の違法が ある,と主張する。 しかしながら,主引用発明が同一であったとしても,主引用発明に組み合 わせる技術が公知発明における一部の構成か,あるいは,周知技術であるか\nによって,通常,論理付けを含む発明の容易想到性の判断における具体的な 論理構成が異なることとなるから,たとえ公知技術や周知技術認定の根拠と\nなる文献が重複するとしても,上記二つの組合せは,それぞれ異なる無効理 由を構成するものと解するのが相当である。\n
しかるところ,本件審判手続において,原告は,「本件発明1及び8は, 公知発明及び周知技術Y1に基づいて,当業者が容易に発明できた」という 無効理由1−2の主張に関連して,「キャラクタの置かれている状況に応じ て間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせる」技術が「周知技術」である と主張し,その根拠の一つとして甲8発明の内容を主張立証するにとどまっ ており,更に進んで,動機付けを含む公知発明と甲8発明それ自体との組合 せによる容易想到性については一切主張していない。 そうすると,原告が本件訴訟において主張する無効理由(公知発明と甲8 発明の組合せによる容易想到性)は,本件審判手続において主張した無効理 由1−2(公知発明と甲8発明を含む周知技術Y1の組合せによる容易想到 性)とは異なる別個独立の無効理由に当たるというべきである。 したがって,本件審決が,公知発明と甲8発明との組合せによる容易想到 性について判断していないとしても,本件審決の判断に遺漏があったとは認 められない。
(2) これに対し,原告は,審判において審理された公知事実に関する限り,複 数の公知事実が審理判断されている場合に,その組合せにつき審決と異なる 主張をすることは,それだけで直ちに審判で審理判断された公知事実との対 比の枠を超えるということはできず(知財高裁平成28年(行ケ)第100 87号同29年1月17日判決),甲8発明の内容については本件審決にお いて具体的に審理されていることから,被告による防御という観点からも問 題はなく,また,紛争の一回的解決の観点からも,公知発明と甲8発明の組 合せによる容易想到性を本件訴訟において判断することは許される,と主張 する。
しかしながら,この主張が,本件審決の手続上の違法(判断の遺漏)を主 張するものではなく,実体判断上の違法(進歩性の判断の誤り)を主張する ものであるとしても,本件審判手続において,甲8発明の内容を個別に取り 上げて公知発明に適用する動機付けの有無やその他公知発明と甲8発明の組 合せの容易想到性を検討することは何ら行われていない。したがって,かか る組合せによる容易想到性の主張は,専ら当該審判手続において現実に争わ れ,かつ,審理判断された特定の無効原因に関するものとはいえないから, 本件審決の取消事由(違法事由)としては主張し得ないものである(最高裁 昭和42年(行ツ)第28号同51年3月10日大法廷判決・民集30巻2 号79頁〔メリヤス編機事件〕参照)。 なお,原告が指摘する上記知財高裁判決は,審判手続で主張されていない 引用例の組合せについて,審決取消訴訟において審理判断することを当事者 双方が認め,なおかつ,その主張立証が尽くされている事案であるから,本 件訴訟とは事案を異にするというべきである。 また,原告は,特許法167条の「同一の事実及び同一の証拠」の意義に ついて,特許無効審判の一回的紛争解決を図るという趣旨をより重視して広 く解釈されてしまうと,本件審決が確定した後に公知発明と甲8発明の組合 せによる容易想到性を争うことが同条により許されないと解釈されるおそれ があり(知財高裁平成27年(行ケ)第10260号同28年9月28日判 決),その場合,原告による本件特許の無効を争う機会を奪うことになり不 当であるから,本件訴訟で公知発明と甲8発明の組合せによる容易想到性に 関する本件審決の判断の遺漏及び違法を争うことは許される,とも主張する。 しかしながら,本件審判手続においても,本件訴訟手続においても,公知 発明と甲8発明の組合せによる容易想到性という無効理由の有無については 何ら審理判断されていないのであるから,特許法167条の「同一の事実及 び同一の証拠」に当たるということはないというべきである。
(3) 以上によれば,本件訴訟手続において,公知発明と甲8発明の組合せによ る本件発明1及び8の容易想到性を判断することは許されないというべきで ある。

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平成30(ネ)10018  特許権に基づく差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年7月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 自動麻雀卓の発明について、技術的範囲に属しないとした1審判断が維持されました。均等主張もしましたが、そもそも、それ以外の要件Iを満たしていないと判断されました。
 本件発明に係る特許請求の範囲には,「吸着面」について,1) 攪拌装 置から牌を取り上げる汲上機構を構\成する円筒回転体には円筒回転体の 一側端から「牌の横幅ほどの幅」の「吸着面」が配設されること(構成\n要件C,H,I),2) 「吸着面」の中心には磁石を埋没し,「吸着面」 に磁気力により牌を吸着して下方から上方に吸い上げるように円筒回転 体を回転させること(構成要件J),3) 汲上機構によって取り上げら\nれた牌を一方向に整列して送り出すための整列機構には,円筒回転体に\n吸い上げられた牌の方向を揃えるため「吸着面」の外側の軌道に沿って 配設した案内部材が設けられること(構成要件D,K)の記載がある。\nそして,自動麻雀卓における「牌」は,字面に垂直な方向からみて 「横幅」が「縦幅」より短い長さとなる長方形状であるから(原判決別 紙図2),構成要件Iの「牌の横幅ほどの幅」との特定は,「吸着面」\nの幅が「牌の縦幅」より「牌の横幅」に近い幅をもつことを特定するも のと解するのが文言上自然である。
イ もっとも,特許請求の範囲の記載のみからは「横幅ほど」の外延は必ずしも明らかではないことから,本件明細書の記載について検討する。 本件明細書には,上記1(2)のとおりの本件発明の課題の解決手段とし て,円筒回転体の周面部位に円筒回転体の一側端から牌の横幅ほどの幅 をもつ吸着面を配設し,磁性体を埋設した牌を,中心に磁石を埋没した 吸着面に磁気力により吸着し,円筒回転体に吸い上げられた牌の方向を 揃えるため前記吸着面の外側の軌道に沿って配設した案内部材を設け, 前記円筒回転体によって下方位置にて取り上げられた牌は,前記案内部 材にそって牌の向きを揃えながら上方に移動する(段落【0008】) ことが記載されている。そして,円筒回転体は牌の縦幅と略等しい長さ の高さ寸法であり(段落【0009】,【0021】),円筒回転体の 一側端から「牌の横幅」と略等しい幅の吸着面が形成される(段落【00 21】)ことが記載されており,これらの記載からは,「牌の縦幅」と区 別される「牌の横幅」を「吸着面の幅」に相当するものとしていること が理解され,このような理解は特許請求の範囲の記載とも整合する。 さらに,本件明細書の段落【0033】〜【0035】には,吸着面 401Bに様々な角度で吸着した牌10につき,案内部材501の入り 口付近で吸着面401Bからはみ出た側面が,案内部材先端502に接 触して抵抗を受け,磁石により吸引されて回転しながら向きを変え,縦 長方向に整列することが記載され,図10及び図11における吸着面4 01Bの幅は牌の横幅に近似する幅であることが見て取れる。
ウ 以上のとおりの各構成要件相互の関係及び本件明細書の記載によれば,\n本件発明において「牌の横幅ほどの幅をもつ吸着面」とした技術的意義 は,吸着面の幅を「牌の横幅」分の幅とすれば,牌が少しでも斜めに吸 着した場合には牌が吸着面からはみ出るから,はみ出た牌の側面に吸着 面の外側の軌道に配設した案内部材を接触させ,接触による力学的な作 用と牌に埋設された磁石と吸着面の中心に埋設された磁石との吸引力に よって牌を回転させて長手方向の向きに揃えるようにしたことにあると 解することができる。 そして,このような技術的意義に照らせば,構成要件Iの「牌の横幅ほ\nどの幅」とは,吸着面の幅が,牌の横幅(短辺)と同一か,様々な角度 で吸着面に吸着した牌の側面が当該吸着面からはみ出る部分を有し,は み出た部分に案内部材を接触させることによって牌の方向を揃えること ができる程度の幅を意味し,牌の縦幅に近似する幅はこれに含まれない と解すべきである。

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◆平成29(ワ)5074

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平成29(行ケ)10114  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年7月18日  知的財産高等裁判所(4部)

 明確性違反、進歩性違反などいくつかの無効主張について、無効でないとした審決が維持されました。数値範囲を限定した記載が原文新規事項には該当しないとも判断されました。
 原告らは,本件審決は,本件特許の請求項3の「1〜2ng/mlプラズ マ濃度」の記載について,本件国際出願明細書には,「1〜2ng/mlプ ラズマ濃度」との文言の記載はないが,「0.1〜2ng/mlプラズマ濃 度」との記載があり,「1〜2ng/mlプラズマ濃度」の数値範囲は,「0. 1〜2ng/mlプラズマ濃度」の数値範囲の約半分ほどの範囲を占める部 分であり,当該範囲は,他の数値範囲からは予測できない特段の意味を有す\nる数値範囲でもなく,新たな技術的事項を導入するものでもないから,本件 発明3及び請求項3を発明特定事項として引用する本件発明4ないし12は, 本件国際出願明細書に記載した事項の範囲内にあり,原文新規事項に該当し ない旨判断したが,1)「1〜2ng/ml」のプラズマ濃度におけるデクス メデトミジンの作用は,「0.1〜1ng/ml」のプラズマ濃度における デクスメデトミジンの作用とは,明らかに異質なものであり(甲9x,9y, 10),「1ng/mlプラズマ濃度」を数値範囲の境界値として本件特許 の請求項3に記載することは,新たな技術的事項を導入するものであるから, 原文新規事項に該当する,2)本件国際出願明細書と本件国内書面によれば, 国際出願時の請求項3で「0.1〜2ng/mlプラズマ濃度」とされてい たものが,本件国内書面の請求項3で「1〜2ng/mlプラズマ濃度」と なったようであるが,既に特許登録されている請求項3を「0.1〜2ng /mlプラズマ濃度」に訂正する手段はないから,原文新規事項に該当する というほかないとして,本件審決の上記判断は誤りである旨主張する。 そこで検討するに,本件国内書面(甲77の2)には,プラズマ濃度に関 し,「デクスメデトミジンの投与量の範囲は,標的プラズマ濃度として記載 することができる。ICUにおける患者の人々に鎮静を提供することを期待 されるプラズマ濃度範囲は,鎮静の目的レベルおよび患者の全体的な状態に 依存して0.1〜2ng/mlの間で変わる。これらのプラズマ濃度は,瞬 時投与(bolus dose)および規則的な維持注入(steady maintenance infusion) による継続投与を用いて静脈内投与によってなされることができる。たとえ ば,ヒトにおいて前記プラズマ濃度範囲に到達するための瞬時の投与量範囲 は,約10分間またはそれよりゆっくり投与されるため,約0.1〜2.0 μg/kg,好ましくは約0.5〜2μg/kg,より好ましくは1.0μ g/kgであり,ついで,約0.1〜2.0μg/kg/h,好ましくは約 0.2〜0.7μg/kg/h,より好ましくは0.4〜0.7μg/kg /hが維持投与される。デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る 塩の投与期間は,目的の使用持続期間に依存している。」(【0028】) との記載がある。上記記載によれば,【0028】には,ICUにおける患 者の人々に鎮静を提供することを期待されるプラズマ濃度範囲は,「鎮静の 目的レベルおよび患者の全体的な状態に依存して0.1〜2ng/mlの間 で変わる」ことが開示されていることが認められるが,一方で,本件国内書 面の発明の詳細な説明及び図面には,【0028】以外に,「0.1〜2n g/mlプラズマ濃度」に関して言及した記載はない。また,この点につい ては,本件国際出願明細書も,本件国内書面と同様であることが認められる。 そして,本件特許の請求項3の「1〜2ng/mlプラズマ濃度」は,【0 028】記載の「0.1〜2ng/ml」の数値範囲内にあるから,ICU における患者の人々に鎮静を提供することを期待されるプラズマ濃度範囲に あることは明らかである。 そうすると,本件特許の請求項3の「1〜2ng/mlプラズマ濃度」の 記載が,本件国際出願明細書のすべての記載を総合することにより導かれる 技術事項との関係において新たな技術的事項の導入に当たるということはで きない。
(2) この点に関し,原告らは,甲9x,9y,10を根拠として挙げて,デク スメデトミジンのプラズマ濃度が「1〜2ng/ml」に達すると,患者は 深く眠ってしまって覚醒できなくなるが,プラズマ濃度が「0.1〜1ng /ml」であれば,音声指示によって容易に目を覚ますことが可能であるか\nら,「1〜2ng/ml」のプラズマ濃度におけるデクスメデトミジンの作 用は,「0.1〜1ng/ml」のプラズマ濃度におけるデクスメデトミジ ンの作用とは,明らかに異質なものである旨主張(上記1)の主張)する。 しかし,原文新規事項に該当するかどうかは,本件国際出願明細書の全て の記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術 的事項の導入に当たるかどうかを判断すべきであるところ,甲9x,9y, 10は,本件国際出願明細書とは別の文献であり,しかも,原告らが根拠と して挙げる上記各文献の具体的な記載内容が,本件優先日当時技術常識であ ったとまで認められないから,原告らの上記1)の主張は,採用することがで きない。 また,原告らは,本件特許の請求項3の「1〜2ng/mlプラズマ濃度」 の記載が原文新規事項に該当することの根拠として,請求項3の「1〜2n g/mlプラズマ濃度」の記載を「0.1〜2ng/mlプラズマ濃度」に 訂正する手段がないことを挙げるが(上記2)の主張),そのように訂正する 手段があるかどうかの問題と請求項3の「1〜2ng/mlプラズマ濃度」 の記載が原文新規事項に該当するかどうかの問題とは別個の問題であるとい うべきであるから,原告らの上記2)の主張は失当である。
(3) 以上によれば,本件発明3及び請求項3を発明特定事項として引用する本 件発明4ないし12は,本件国際出願明細書に記載した事項の範囲内にあり, 原文新規事項に該当しないとした本件審決の判断に誤りがあるとの原告らの 上記主張(取消事由5)は,理由がない。

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平成29(ワ)32433  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月21日  東京地方裁判所(46部)

 プログラムの著作物について、複製又は翻案が争われました。全体のプログラムを新サーバへ移行しましたが、問題となっている本件共通環境設定プログラムは複製・翻案していないと判断しました。
 争点 (2)−2(本件基本契約終了後の本件共通環境設定プログラムの保守管理 業務に伴う複製権又は翻案権侵害)について
ア 原告は,被告マルイチ産商と被告テクニカルパートナーは,被告マルイチ 産商のコンピュータ保守管理のための人材派遣契約を締結し,被告テクニカ ルパートナーらは,上記派遣契約に基づき,被告マルイチ産商のコンピュー タの保守管理業務を行っており,本件基本契約が終了した平成26年9月1 7日以降も,保守管理業務の一環として,本件共通環境設定プログラムの複 製又は翻案を行ったと主張する。 しかし,保守管理業務の一環として本件共通環境設定プログラムの複製又 は翻案が行われた事実を認めるに足りる証拠はなく,原告の主張を採用する ことはできない。
イ また,仮に,被告らが本件基本契約終了後の本件共通環境設定プログラム の保守管理業務に伴い,本件共通環境設定プログラムの複製又は翻案を行っ たとしても,本件基本契約26条は,「著作権・知的財産権および諸権利の帰 属」に関する定めが本件基本契約の終了後も有効であると定めており,被告 マルイチ産商は,本件基本契約終了後も「著作権・知的財産権および諸権利 の帰属」に関する定めである本件基本契約21条3項 に基づき,本件共通 環境設定プログラムを複製等することができると解するのが相当であるか ら,複製権又は翻案権侵害は成立しないと解するのが相当である。 これに対し,原告は,本件基本契約は更新しない旨の意思表示による解約\n(28条1項但書)により終了したのであり,本件基本契約26条の「本契 約が合意の解約により終了した場合および解除により終了した場合」に直接 該当しないし,本件基本契約26条が規定するのは「著作権・知的財産権お よび諸権利の帰属」であり,本件基本契約21条3項が定める権利の帰属主 体が契約終了によっても変わらないことを定めているとしても,同項(2)の利 用に関する定めは射程外であると主張する。 しかし,本件基本契約26条は,「契約終了後の権利義務」との見出しの下 で「本契約が合意の解約により終了した場合および解除により終了した場合 でも」と定めており,他の原因による終了の場合にも適用されることを前提 にしていると解され,本件基本契約中に他の原因による契約終了時の権利義 務等を定める条項がないことからしても,本件基本契約26条は,更新しな い旨の意思表示による解約による契約終了の場合の権利義務の帰趨も定め\nていると解釈すべきである。
また,本件基本契約26条における「著作権・知的財産権および諸権利の 帰属」との文言は,本件基本契約21条の見出しと同一であること,また, 同条3項は,成果物の著作権・知的財産権および諸権利の帰属を定めるとと もに,著作権が共有となる場合(同項 )には双方が利用することができる ことを定め,原告のみに帰属する場合(同項 )には被告マルイチ産商に対 して利用することができる範囲を定めており,著作権の帰属の違いに対応し て利用することができる範囲をそれぞれ定めているものであり,そのような 定めにおいて,契約終了後,著作権の帰属の定めのみ有効に存続すると解す るのは不自然であること,契約中に契約終了後の利用やその禁止についての 定めはないことからすると,本件基本契約26条において契約終了後も有効 とされる「著作権・知的財産権および諸権利の帰属」の定めとは,同21条 の定め全体を指し,同条が定める利用に関する定めも含んでいると解釈する のが相当である。原告が主張する本件基本契約の解釈によれば,本件新冷蔵 庫等システムの使用のために必要となる本件共通環境設定プログラムは本 件基本契約終了により一切複製等できなくなり,本件共通環境設定プログラ ムのサーバ移行等を行うことができず,本件新冷蔵庫等システム自体の使用 を継続することも不可能ないし困難となるが,そのような解釈は不合理であ\nる。

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平成29(ワ)14142  損害賠償等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年6月28日  東京地方裁判所(47部)

 Appleに対する特許侵害訴訟です。裁判所は新規性違反の無効理由ありとして、請求棄却しました。また、口頭弁論の再開申し出も、原告にはより早い時期に訂正の再抗弁を主張する機会が十\分にあったとして認めませんでした。
 乙8文献の段落【0053】「検知器32は,感圧方式,電磁誘導方式, 静電容量方式等のセンサにより,ユーザが検知器32に触れたこと,及び, 離れたことを検知することができる。」及び【0056】「ユーザ側に板状 の検知器32が配置され,ユーザが指で触れた操作をその位置と共に検知す ることができるようになっている。」との記載によれば,乙8文献には,構\n成要件A「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を,直\n接的または間接的に検出する力入力検出手段と,」及び構成要件B「前記オ\nブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段と,」の\n各構成が開示されているといえる。\nまた,乙8文献の段落【0061】の「オンルートスクロールというのは, 経路上を移動する点(移動点)を表示面上の基準点に一致させた地図をスク\nロールさせるものである」,段落【0073】の「ユーザから見れば「指で 触れている自車位置マークCが移動(スクロール)を開始し,経路関連情報 の存在する地点に自車位置マークCが到達したため,自車位置マークCが振 動する」というように感じることができ」との各記載に併せて図7の記載も 考慮すれば,乙8文献記載の発明(図7から認定される発明)は,「地図」 (本件発明の「表示対象以外」に相当)が移動すること(本件発明の「表\示 態様を変更」に相当)で,あたかも「自車位置マーク」(本件発明の「表示\n対象」に相当)が移動しているように見えるよう制御されているといえる。 したがって,乙8文献には,構成要件C「前記位置入力手段にて検出された\n位置の表示対象を前記位置に保持しつつ,」,構\成要件D「前記力入力検出 手段により検出された前記力入力に応じて,当該表示対象以外の表\示態様を 変更することにより,」及び構成要件E「当該表\示対象を相対的に変更さ せ,」の各構成が開示されているというべきである。\nさらに,乙8文献の段落【0065】には,「検知器32は未検知状態に あると判定した場合に進むS140では,オンルートスクロールを一旦停止 し,上述したS105に処理を戻す」と記載されていることから,乙8文献 記載の発明においても,「自車位置マーク」に対する「地図」の変更結果を 記憶部に記憶していることは自明のことというべきである。したがって,乙 8文献には,構成要件F「当該変更結果を当該表\示対象に対する入力として 記憶部に記憶させる変更手段と,」の構成が開示されているといえる。\nまた,乙8が情報処理装置(構成要件G)を開示していることは明らかで\nある。 以上によれば,乙8文献に記載された発明と本件発明とは同一であると認 められる。
原告の主張について
ア これに対し,原告は,本件明細書の段落【0039】には,表示画面へ\nの接触による力の有無を検出する手段が記載されているが,当該手段は, 表示画面に加えられた力の有無を間接的に検出する手段であって,乙8文\n献に開示されている単なる接触の有無を検出する手段とは異なるから,乙 8文献には,本件発明の構成要件A「表\示画面にスライドせずに接触した オブジェクトの力入力を,直接的または間接的に検出する力入力検出手段 と,」(ひいては構成要件D及びFも)の構\成が開示されていない旨主張 する。
イ 本件明細書の段落【0039】には,次の記載がある。 「なお,上記のように検出装置112が機械的に直接,摩擦力または押 下力を検出することに限られず,間接的に摩擦力または押下力が検出され てもよい。例えば,後述する制御部102が,タッチパネルへの接触によ る入力位置の占める領域が,所定の形状から変化した場合に,所定の摩擦 力を検出してもよい。(判決注:中略)また,検出装置112は,表示画\n面への接触による力の強さを検出することに限られず,表示画面への接触\nによる力の有無を検出してもよい。この場合,表示画面に対して非接触の\n場合に,所定の押下力または摩擦力が検出されないものとし,表示画面に\n対して接触があった場合に,所定の押下力または摩擦力があったものとし て検出してもよい。」
ウ 原告が主張するように,上記段落【0039】の記載が,「力の強さ又 は有無を間接的に検出する手段」について述べたものであるとしても,該 「力の強さ又は有無を間接的に検出する手段」の一例として,「表示画面\nに対して非接触の場合に,所定の押下力または摩擦力が検出されないもの とし,表示画面に対して接触があった場合に,所定の押下力または摩擦力\nがあったものとして検出」する手段が記載されていることは明らかである。
エ そして,本件発明の構成要件Aは「表\示画面にスライドせずに接触した オブジェクトの力入力を,直接的または間接的に検出する力入力検出手段 と,」というものであるところ,そこにおいては,「力入力」の「検出」 に関し,それ以上に具体的な規定は何らされておらず,また,上記「力の 強さ又は有無を間接的に検出する手段」の一例である,「表示画面に対し\nて非接触の場合に,所定の押下力または摩擦力が検出されないものとし, 表示画面に対して接触があった場合に,所定の押下力または摩擦力があっ\nたものとして検出」する手段を排除する格別な理由も見当たらないことか らすれば,構成要件Aは,「表\示画面への接触・非接触による力の有無を 検出」することも含むと解すべきである。
オ したがって,乙8文献に開示されている接触の有無を検出する手段が, 本件発明の構成要件A「表\示画面にスライドせずに接触したオブジェクト の力入力を,直接的または間接的に検出する力入力検出手段と,」の構成\nと異なることを前提とする原告の上記主張は,その前提を欠くものであり, 採用できない。 (4)小括 以上のとおり,乙8文献に記載された発明は本件発明と同一であるから, 本件特許には乙8文献に基づく新規性欠如の無効理由が存すると認められる。
・・・
(なお,原告は,本件特許について訂正審判を請求したとして平成30年6月21日付けで口頭弁論の再開を申し立てたが,当裁判所は,原告にはより早い時期に訂正の再抗弁を主張する機会が十\分にあったこと等を考慮して,口頭弁論を再開しない。)。

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平成28(ワ)32742  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月19日  東京地方裁判所(47部)

 いろいろ争点はありますが、写真について、著作物性が否定されました。ただ、文章について複製権・翻案権侵害が認められました。損害額は、販売不可事情を考慮して、114条1項(原告単価利益*被告販売数)の7割と認定されました。
 制作工程写真は,別紙「制作工程写真目録」記載のとおり,故一竹によ る「辻が花染」の制作工程の各場面を撮影したものであるところ,これら 制作工程写真の目的は,その性質上,いずれも制作工程の一場面を忠実に 撮影することにあり,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光\n線との関係等といった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとな\nらざるを得ず,誰が撮影しても同じように撮影されるべきものであって, 撮影者の個性が表れないものというべきである。したがって,制作工程写\n真は,いずれも著作物とは認められない。これに反する原告らの主張は採 用できない。
イ 美術館写真について
美術館写真は,別紙「美術館写真目録」記載のとおり,一竹美術館の外 観又は内部を撮影したものであるところ,これら美術館写真の目的は,そ の性質上,いずれも一竹美術館の外観又は内部を忠実に撮影することにあ り,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光線との関係等とい\nった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとならざるを得ず,誰\nが撮影しても同じように撮影されるべきものであって,撮影者の個性が表\nれないものである。したがって,美術館写真は,いずれも著作物とは認め られない。これに反する原告らの主張は採用できない。
(2) 制作工程文章の著作物性について
制作工程文章は,別紙「制作工程文章目録」記載のとおり,「辻が花染」 の各制作工程を説明したものである。その目的は,各制作工程を説明するこ とにあるため,表現上一定の制約はあるものの,制作工程文章が,同様に「辻\nが花染」の制作工程について説明した故一竹作成の文章(甲41)とも異な っていることに照らしても,各制作工程文章の具体的表現は,その作成者の\n経験を踏まえた独自のものとなっており,作成者の個性が表現されていると\nいえるから,制作工程文章は全体として創作性があり,著作物と認められる。 これに反する被告の主張は採用できない。
(3) 旧HPコンテンツの著作物性について
旧HPコンテンツは,別紙「旧HPコンテンツ目録」記載のとおりであり, 旧HPコンテンツ1は「辻が花染」の歴史的説明,旧HPコンテンツ2は故 一竹と「辻が花染」との関わり,旧HPコンテンツ3はフランス芸術文化勲 章シュヴァリエ章勲章メッセージの和訳,旧HPコンテンツ4はスミソニア\nン国立自然史博物館からの感謝状の和訳である。旧HPコンテンツ1及び2 はいずれも歴史的事実に関する記述ではあるものの,その事実の取捨選択, 表現の仕方には様々なものがあり得,その具体的表\現には筆者の個性が表れ\nているといえるから,創作性があり,著作物と認められる。また,旧HPコ ンテンツ3及び4はいずれも仏語ないし英語の翻訳であるが,翻訳の表現に\nは幅があり,用語の選択や訳し方等その具体的表現に翻訳者の個性が表\れて いるといえるから,創作性があり,著作物と認められる。これに反する被告 の主張は採用できない。
複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再 製することをいうところ(著作権法2条1項15号参照),著作物の複製と は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現\nに修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現する\nことなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が\n既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作\n成する行為をいうものと解すべきである。また,翻案とは,既存の著作物に 依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\ 現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現する\nことにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接\n感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解すべきであ る(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷 判決・民集55巻4号837頁参照)。 被告作品集130−131頁(甲9)と制作工程文章を別紙「原被告作品 対比表」記載1のとおり比較対照すると,被告作品集130−131頁の制\n作工程に関する各文章は,制作工程文章1ないし7及び9の各文章と全く同 一か,又はほとんど同一であり,一部改変され,相違点はあるものの,全体 として制作工程文章の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。\nよって,被告は被告作品集130−131頁において制作工程文章1ないし 7及び9を複製ないし翻案したものと認められ,複製権ないし翻案権を侵害 する。そして,上記改変は著作者の意に反する改変といえるから,同一性保 持権を侵害する。 これに対して,被告は,両各文章は創作性のない部分について同一性を有 するにすぎず,複製にも翻案にも当たらないと主張するが,上記のとおり, 制作工程文章の創作的部分において同一性が認められるから,被告の主張は 採用できない。
原告らは,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集の利益額 に基づき114条1項の適用があると主張するのに対し,被告はこれを争 うため,以下検討する。
(ア) 原告作品集の販売主体及び原告らの販売能力
原告作品集の奥付には「(C)1998 (株)一竹辻が花」と記載され,原告作 品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおいて販売されていることが認 められる(甲8,29)ところ,訴外一竹辻が花(昭和59年5月8日 に「株式会社オピューレンス」から商号変更)は平成22年まで原告A が代表者を務めていた会社であり(甲50の1及び2),原告工房も含\nめて実質的には原告Aらの経営によるものと認められ,その販売主体は 実質的には原告らとみることができる。また,原告作品集の制作には, 故一竹を引き継いで「辻が花染」を制作する原告Aの関与が大きいもの と考えられることも併せ考慮すれば,原告らには原告作品集の販売能力\nがあると認められる。 これに対し,被告は,そもそも原告らが原告作品集を販売しておらず, 販売能力がないから,被告作品集への114条1項の適用の基礎を欠く\nと主張するが,上記説示に照らして採用できない(なお,被告は,原告 作品集の奥付に「制作(株)便利堂」と記載されていること(甲8)も 指摘するが,この点は販売能力とは関係がない。)。
(イ) 原告作品集と被告作品集の代替性
原告作品集と被告作品集は,その大部分において,着物作品(部分を 含む。)を1頁に大きく配置して紹介するとともに,観賞の対象とする ものであり,そのほかの部分においても,故一竹の略歴,制作工程の説 明,美術館の紹介が記載されており,内容は類似するものと認められる (甲9,51)。また,上記内容の共通性に照らして,着物作品の観賞 を主としつつ,故一竹と「辻が花染」について理解を深めるという利用 目的・利用態様も基本的には同一であると認められる。そうすると,後 記のとおり,販売ルートの違いはあるものの,両作品集には代替性が認 められる。被告は,内容,利用目的・利用態様及び販売ルートの相違か ら,原告作品集と被告作品集には代替性がないと主張するが,上記説示 に照らして採用できない。
(ウ) 以上からすれば,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集 の利益額に基づき著作権法114条1項の適用があるというべきである。
イ 原告らが販売することができないとする事情(推定覆滅事情)
被告は,販売市場の相違,被告の営業努力,被告作品集の顧客吸引力に より,被告作品集の譲渡数量の全数について販売することができないとす る事情があると主張する。 そこで検討するに,原告作品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおい てインターネット上で販売されている(甲29)のに対し,被告作品集は 一竹美術館のショップ内で販売されており(前記前提事実(4)ア),顧客層 に一定の違いがあると考えられること,また,被告作品集は,美術館のシ ョップにおいてまさに一竹作品等を観賞した者に対して販売されているこ とにより,販売態様の異なる原告作品集とは顧客誘引力に違いがあると考 えられること,以上の事情を踏まえると,被告作品集の30%については, 原告らが販売することができないとする事情があったと認めるのが相当で ある。

◆判決本文

問題となった著作物は以下です。

◆別紙1

◆別紙2

◆別紙3

◆別紙4

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平成29(ワ)12058  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年6月28日  東京地方裁判所

 商標権侵害事件です。4条1項19号(海外の著名商標を不正目的で登録した)違反の無効理由があるので権利行使不能と判断されました。
 ア 周知性について
上記アの各事実によれば,KCP社は,平成14年5月15日の 設立以来,14年程度の比較的長期間にわたり,同社の商号の一部と もいえるKCP社商標を同社の製品に付すなどして継続的に使用する とともに,同社製品の販売台数及び売上げを徐々に伸ばし,平成24 年以降,コンクリートポンプ車の韓国国内の市場において,同社の製 品の占有率は3割5分から4割を維持し,1位であったと認められる。そ うすると,KCP社商標は,本件商標の商標登録出願日(平成27年 2月18日)当時において,韓国のコンクリート圧送業者等の需要者 の間において,KCP社の商品を示すものとして広く認識されていた と認められる。 これに対し,原告は,KCP社の売上げ等の根拠となった資料(乙 15ないし18)は同社の社内データにすぎず,信用性は低い旨主張 するが,同資料記載の平成27年の総売上高(1169億8230万 8109ウォン,乙18)は韓国金融監督院の売上公開情報における 売上高(乙99)と一致しており,その他の数字についても,この信 用性を覆すに足りる証拠はない。 したがって,KCP社商標は,「外国における需要者の間に広く認識 されている商標」に当たる。
イ 本件商標とKCP社商標の同一性
本件商標は「KCP」とのアルファベットを標準文字で横書きしたも のであるのに対し,KCP社商標もまた「KCP」とのアルファベット を横書きしたものであるから,両商標は同一または類似の商標といえる。
ウ 不正の目的
上記で認定した各事実によれば,原告代表者は,1)平成24年1 2月から平成27年1月頃まで,日本国内においてKCP社の製品で あるコンクリートポンプ車等を宣伝・販売していたこと(上記イ), 2)平成27年1月頃,KCP社が日本への進出を計画し,被告Yが日 本国内のコンクリート圧送業者への営業活動を行っていることを知る と,直ちにKCP社商標と同一又は類似の本件商標につき登録出願を 行ったこと(同エ及びオ),3)同登録出願後,本件商標につき登録 査定がされる以前である同年4月頃,KCP社に対し,本件商標を無 償で譲渡等することはできない旨述べたこと(同,4)同様に同登 録出願後,登録査定以前である同年5月28日,被告Yに対し,日本 における営業活動をしないように求めるとともに,これをKCP社に 報告するように求め,本件商標の使用には原告の日本におけるこれま での営業活動に対する見返りが必要である旨の発言をしたこと(同オ ,5)同様に同登録出願後,登録査定以前である同年5月29日頃, 原告以外の販売店等がKCP社商標の付されたコンクリートポンプ車 を販売することが商標権侵害に当たることを警告するパンフレットを 作成・配布したこと(同オ(エ),6)本件商標の登録後間もない同年8月 12日,KCPジャパン社及び被告会社に対し,KCP社商標の使用 停止と削除を求める文書を送付したこと(同オ(オ))が認められる。 これらの事実からすれば,原告代表者は,KCP社が日本に進出し\nようとしていることを知ると,未だKCP社商標が商標登録されてい ないことを奇貨として,同社の日本国内参入を阻止・困難にするとと もに,同社に対し本件商標を買い取らせ,あるいは原告との販売代理 店契約の締結を強制するなどの不正の目的のために,KCP社商標と 同一又は類似する本件商標を登録出願し,設定登録を受けたものと推 認せざるを得ない。 したがって,原告は,「不正の目的」をもって本件商標を使用するも のと認めることができる。
これに対し,原告は,KCP社の国内参入を阻止または困難にする 目的等の存在を否定し,原告代表者も,KCP社の日本進出前である\n平成26年秋頃には本件商標の登録を弁理士に依頼した等と述べて, 上記主張に沿う供述をする(原告代表者〔15及び16頁〕)。\nしかしながら,原告代表者が平成26年秋頃に本件商標の登録を計\n画していたことを裏付ける客観的証拠は存在しない上,同人の供述は, 本件商標出願の理由については「別にありません」と述べ,「KCP」 との文字の組み合わせを出願しようと決定した理由については,「コン クリートポンプ車か,コンストラクションプロダクツか,韓国のコン ストラクションプロダクツか,コンクリートポンプ車か,複雑な意味 を持っていますが,はっきりは,表向きには言わなかったです。」と述\nべるなど(原告代表者〔15及び16頁〕),KCP社商標と同一又は\n類似の商標を登録出願した理由を合理的に説明するものではなく,信 用性は低い。 加えて,原告代表者は,本件商標出願以前にKCP社の商品に係る\n営業活動を行っていた2年超の間は,「KCP」との文字を含む商号を 使用することはあったとしても((1)イ(ウ)),「KCP」について排他的 効力を有する商標権を得ようとまではしていなかったにもかかわらず, KCP社の日本進出と同時期にこれを取得したことにつき,正当な理 由は見いだしがたい。 したがって,原告の上記主張は採用できない。
エ 以上によれば,本件商標は,他人の業務に係る商品を表示するものと\nして韓国国内における需要者の間に広く認識されているKCP社商標と 同一または類似の商標であって,不正の目的をもって使用するものであ るから,商標法4条1項19号に該当する。 したがって,本件商標は,商標登録無効審判により無効とされるべきものと認められ,原告は,被告らに対し,その権利を行使することができない(商標法39条,特許法104条の3)。

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平成30(行ケ)10011  商標登録維持決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年7月10日  知的財産高等裁判所

 件のベストライセンス株式会社vs特許庁の裁判です。異議申立を認めなかったのを取り消せ&商標法43条の3第5項の規定が違憲と主張しましたが、認められませんでした。
 商標法43条の3第4項は,審判官は,登録異議の申立てに係る商標登録が同法\n43条の2各号所定の登録異議事由のいずれかに該当すると認めないときは,その 商標登録を維持すべき旨の決定をしなければならない旨を規定し,また,同法43 条の3第5項は,同決定に対しては不服を申し立てることができないと規定する。\nこのように,本件決定に対しては不服を申し立てることができないのであるから,\n請求の趣旨1項に係る本件決定の取消しを求める訴えは,そもそも同法43条の3 第5項の規定に違反するものであって,不適法なものである。
2 請求の趣旨2項に係る訴えの適法性について
請求の趣旨2項に係る訴えは,原告が,本件登録異議事件について商標登録取消 決定をすべき旨を被告特許庁長官に命ずることを求めるものであり,行政事件訴訟 法(以下「行訴法」という。)3条6項2号所定のいわゆる申請型の義務付けの訴\nえとして提起するものと解される。 しかしながら,同号所定の義務付けの訴えは,当該法令に基づく申請又は審査請\n求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決に係る取消訴訟又は無効等確認の訴えと 併合して提起しなければならないところ(行訴法37条の3第3項2号),上記取 消訴訟又は無効等確認の訴えが不適法なものであれば,上記処分又は裁決はもとよ り取り消されるべきものとはいえない。よって,上記義務付けの訴えは,行訴法3 7条の3第1項2号所定の訴訟要件を欠くものであって,不適法なものとなる。 そうすると,本件決定が行訴法37条の3第1項2号所定の「当該法令に基づく 申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決」に該当するとしても,\n請求の趣旨1項に係る本件決定の取消しを求める訴えが前記1のとおり不適法であ る以上,請求の趣旨2項に係る義務付けの訴えは,同号所定の訴訟要件を欠くもの であって,不適法なものである。
3 その余の各訴えの適法性について
(1) 裁判所法3条1項の規定にいう「法律上の争訟」として裁判所の審判の対 象となるのは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争に 限られるところ,このような具体的な紛争を離れて,裁判所に対し抽象的に法令等 が憲法に適合するかしないかの判断を求めることはできないと解するのが相当であ る(最高裁昭和27年(マ)第23号同年10月8日大法廷判決・民集6巻9号7 83頁,最高裁平成2年(行ツ)第192号同3年4月19日第二小法廷判決・民 集45巻4号518頁参照)。
(2) 請求の趣旨3項に係る訴えの適法性について
請求の趣旨3項に係る訴えは,具体的な紛争を離れて,抽象的に商標法43条の 3第5項の規定が違憲無効であることの確認を求めるものにすぎない。 したがって,上記訴えは,前記(1)にいう「法律上の争訟」として裁判所の審判 の対象となるものとはいえず,不適法なものである。
(3) 請求の趣旨4項及び5項について
請求の趣旨4項に係る訴えは,具体的な紛争を離れて,抽象的に一つの法令解釈 が違憲無効であることの確認,請求の趣旨5項に係る訴えは,具体的な紛争を離れ て,抽象的に商標登録異議事件における一つの審理方法が違憲無効であることの確 認を,それぞれ求めるものにすぎない。 したがって,上記各訴えは,前記(1)にいう「法律上の争訟」として裁判所の審 判の対象となるものとはいえず,いずれも不適法なものである。 仮に,上記各訴えが本件登録異議事件において審判体がした法令解釈や審理方法 の違憲無効をいうものであったとしても,これらの訴えは,本件決定に関する具体 的な紛争を解決するものにはならないから,確認の利益を欠き,いずれも不適法な ものである。

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平成29(行ケ)10143  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年7月5日  知的財産高等裁判所

 実施可能要件およびサポート要件に違反するとした無効審決が維持されました。\n
 ところで,本件訂正発明のような有機アンモニウム化合物を含有するレジ スト除去・洗浄剤では,レジスト除去は塩基の作用によるものであって,塩 基の濃度が高い,あるいは,pHが高いほど,その除去作用が強いという傾向 にあることは当業者における技術常識である(弁論の全趣旨)。また,回路 に用いられる代表的な導電性金属である銅やアルミニウムの腐食性が,接触\nする組成物・溶液の種類とそのpHに依存することも,当業者における技術常 識であり,例えば,アルミニウムは,接触する溶液の種類によるものの, pH が12以上で不安定化する傾向にあることは周知の技術常識である(甲48)。
これらの技術常識に照らせば,当業者は,一般論として,塩基の濃度とpH を調整することにより,レジスト除去に代表されるポリマー,エッチング・\nアッシング残渣の除去作用の強弱と,回路材料である金属の腐食作用の強弱 とを変化させることが可能であると一応理解できるというべきである。さら\nに,当業者は,本件明細書の段落【0089】の記載から,レジスト除去を より高温で,より長時間行うと,より完全となる傾向があることも理解する ことができる。 しかし,本件明細書の発明の詳細な説明には,実際のpHが明らかにされた 具体的な組成物の記載は一切存在しないし(例えば,W3,W11〜W13 はpH<7,W5及びW6はpH>12であることが記載されているものの,具体的に pHがいかなる値であったのかは明らかでない。),上記(3)において説示した とおり,訂正後発明1に係る成分を含有し,基板からのポリマー,エッチン グ・アッシング残渣除去と金属で形成された回路の損傷量を許容し得る範囲 に抑えることが両立している具体的な組成物の例も記載されていない。 また,本件明細書に記載されているその余の組成物についても,基板から のポリマー,エッチング・アッシング残渣の除去作用と回路材料である金属 の腐食作用の各程度を,同一の組成物について具体的に評価した例は発明の 詳細な説明に記載されておらず,実際のpHの値が具体的に明らかにされた組 成物すら記載されていない。
(5) 以上検討したところによれば,本件明細書に接した当業者は,塩基の濃度 及びpHと,基板からのポリマー,エッチング・アッシング残渣の除去作用, 及び回路材料である金属の腐食作用との間に関係性があるとの技術常識を考 慮して,pHを調整することにより,ポリマー,エッチング・アッシング残渣 の除去と金属で形成された回路の損傷量を許容し得る範囲に抑えることの両 立が可能であることを一応理解できるとはいえるものの,反面,本件明細書\nの発明の詳細な説明においては,当該調整の出発点となるべき具体的組成物 の実際のpHの値が一切明らかにされていない上,基板からのポリマー,エッ チング・アッシング残渣の除去作用と回路材料である金属の腐食作用との関 係において,どの程度のpHの調整が必要であるのかについての具体的な情報 が余りにも不足しているといわざるを得ない。そのため,当業者が,本件明 細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて,本件訂正発明に係る組成物を生 産しようとする場合,具体的に使用するレジストや回路材料等を念頭に置い て,基板からのポリマー,エッチング・アッシング残渣の除去と回路の損傷 量を許容し得る範囲に抑えることとが両立した適切な組成物を得るためには, 的確な手掛かりもないまま,試行錯誤によって各成分の配合量を探索せざる を得ないところ,このような試行錯誤は過度の負担を強いるものというべき である。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,訂正後発明1〜7 の組成物を生産でき,かつ,使用することができるように具体的に記載され ているものとはいえない。
・・・
しかし,上記2において説示したとおり,本件明細書の発明の詳細な説明 には,上記2つの性質が両立していると具体的に評価された実施例に関する 記載はなく,技術常識を併せ考慮したとしても,当業者が本件訂正発明に係 る組成物を生産しようとする場合,過度の試行錯誤によって各成分の配合量 を探索せざるを得ない。 したがって,本件訂正発明1〜7に係る特許請求の範囲の記載は,技術常 識を考慮しても,当業者が,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,集 積回路基板等から,ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれ らの組合せの除去と回路の損傷量を許容し得る範囲に抑えることとを両立さ せることのできる組成物と認識できる範囲内のものであるとはいえない。

◆判決本文

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平成29(ネ)10103等  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ラダー図による表記したプログラムについて創作性無しと判断されました。
 ア 著作権法2条1項1号所定の「創作的に表現したもの」というためには,\n作成者の何らかの個性が表れている必要があり,表\現方法がありふれている場合な ど,作成者の個性が何ら表れていない場合は,「創作的に表\現したもの」というこ とはできないと解するのが相当である。
ラダー図は,電機の配線図を模式化したシーケンス図をさらに模式化したもので あるから,ラダー図は配線図に対応し,配線図が決まれば,ラダー図の内容も決ま ることとなり(乙ロ1),したがって,その表現方法の制約は大きい。ラダー図に\nおいては,接点等の順番やリレー回路の使用の仕方を変更することにより,理論的 には,同一の内容のものを無数の方法により表現できるが,作成者自身にとってそ\nの内容を把握しやすいものとし,また,作成者以外の者もその内容を容易に把握で きるようにするには,ラダー図全体を簡潔なものとし,また,接点等の順番やリレ ー回路の使用方法について一定の規則性を持たせる必要があり,実際のラダー図の 作成においては,ラダー図がいたずらに冗長なものとならないようにし,また,接 点等の順番やリレー回路の使用方法も規則性を持たせているのが通常である(乙ロ 1,3)。
イ 控訴人プログラム1)は,控訴人19年車両の車両制御を行うためのラダ ー図であるが,共通ブロックの各ブロックは,いずれも,各接点や回路等の記号を 規則に従って使用して,当該命令に係る条件と出力とを簡潔に記載しているもので あり,また,接点の順番やリレー回路の使用方法も一般的なものであると考えられ る。
すなわち,例えば,ブロックY09は,リモコンモード,タッチパネルモード及 びメンテナンスモードという三つのモードのモジュールを開始する条件を規定した ブロックであるところ,同ブロックでは,一つのスイッチに上記三つのモードが対 応し,モードごとの動作を実行するため,上記各モードに応じて二つの接点からな るAND回路を設け,スイッチに係るa接点と各AND回路をAND回路で接続し ているが,このような回路の描き方は一般的であると考えられる。また,同ブロッ クでは,上段にリモコンモード,中段にタッチパネルモード,下段にメンテナンス モードを記載しているが,控訴人プログラム1)の他のブロック(Y11,Y23, Y24,Y25,Y26)の記載から明らかなように,控訴人プログラム1)では, リモコンモード(RM),タッチパネルモード(TP),メンテナンスモード(M M)の順番で記載されている(なお,これらにリモコンオンリーモード(RO)が 加わる場合は,同モードが一番先に記載される。)から,ブロックY09において も,それらの順番と同じ順番にしたものであり,また,メンテナンスモードを最後 に配置した点も,同モードがメンテナンス時に使用される特殊なモードであること を考慮すると,一般的なものであると評価できる。さらに,「これだけ!シーケン ス制御」との題名の書籍に,「動作条件は一番左側」と記載されている(乙ロ3) ように,ラダー図においては,通常,動作条件となる接点は左側に記載されるもの と認められるところ,ブロックY09の上記各段の左側の接点は,各モードを開始 するための接点であり,同接点がONとなることを動作条件とするものであるから, 通常,上記左側の各接点は左側に記載され,これと右側の接点とを入れ替えるとい うことはしないというべきであり,したがって,上記各段における接点の順番も一 般的なものである。したがって,同ブロックの表現方法に作成者の個性が表\れてい るということはできない。
また,ブロックY17は,拡幅待機中であることを規定するブロックであるとこ ろ,拡幅待機中をONにする条件として,10個のb接点をすべてAND回路で接 続しているが,上記条件を表現する回路として,関係する接点を全てAND回路で\n接続することは一般的なものであると考えられる。また,上記各接点の順番も,リ モコンオンリーモード,リモコンモード,タッチパネルモード及びメンテナンスモ ードの順番にし,各モードごとに開の動作条件と閉の動作条件の順番としたもので あるところ,前記のとおり,上記各モードの順番は,他のブロックの順番と同じに したものであり,開の動作条件と閉の動作条件の順番も一般的なものである。した がって,同ブロックの表現方法に作成者の個性が表\れているということはできない。 さらに,ブロックY25は,ポップアップフロアを上昇させる動作を実行するた めのブロックであるが,拡幅フロアの上昇又は下降に関しては,拡幅フロア上昇に 関する接点及び拡幅フロア下降に関する接点がそれぞれ四つずつ存在するという状 況下において,同ブロックでは,拡幅フロア上昇に関する接点をa接点,拡幅フロ ア下降に関する接点をb接点とした上で,四つのa接点及び四つのb接点をそれぞ れOR回路とし,これら二つのOR回路をAND回路で接続している。拡幅フロア の上昇と下降という相反する動作に関する接点が存在する場合において,目的とす る動作のスイッチが入り,目的に反する動作のスイッチが入っていないときに,目 的とする動作が実行されるために,目的とする動作の接点をa接点,これと反する 動作の接点をb接点としてAND回路で接続し,命令をONとする回路で表現する\nことは,a接点及びb接点の役割に照らすと,ありふれたものといえる。また,同 一の動作に関する接点が複数あり,目的とする動作の接点であるa接点のいずれか がONとなったときに目的とする動作が実行されるようにするため,それらの接点 をOR回路で表現することもありふれたものといえる。さらに,OR回路で接続さ\nれた四つの段においては,リモコンオンリーモード,リモコンモード,タッチパネ ルモード及びメンテナンスモードの順番としているが,前記のとおり,この順番は, 他のブロックの順番と同じにしたものである。ブロックY26は,ポップアップフ ロアを下降させる動作を実行するためのブロックであり,上記のブロックY25で 述べたのと同様のことをいうことができる。加えて,ブロックY25及びブロック Y26のAND回路で接続された各二つの列においては,上昇又は下降のa接点, 下降又は上昇のb接点の順番としているが,前記のとおり,ラダー図においては動 作条件となる接点は左側に記載されるところ,ブロックY25及びブロックY26 の各1列目は,「拡幅フロア上昇」又は「拡幅フロア下降」の動作条件となる接点 であると認められるから,通常,同ブロックのとおりの順番で接続され,1列目と 2列目を入れ替えるということはしないものということができる。したがって,こ れらのブロックの表現方法に作成者の個性が表\れているということはできない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成28(ワ)19080

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平成29(ワ)39658  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月7日  東京地方裁判所

 イラストについて公衆送信権侵害の損害額として30万円が認められました。ただ、侵害と指摘されても、そのタイミングで通常のライセンス料を払えばすむなら、誰も最初からまじめに契約しようとは考えないですよね。損害賠償が得べかりし利益の補償という考え方は分かりますが、著作権侵害が故意の場合には、懲罰的賠償を可能とするとかできないんでしょうか。
 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,1)原告は,平成29年6月頃,ウェ ブサイト上に掲載する漫画の制作依頼を受けたところ,この依頼において, 掲載期間を1年間(2年目以降も掲載する場合には契約更新を行う。)とし, 原稿料は,漫画本編は1頁当たり2万円,カラー扉絵は4万円との条件を示 されたこと(甲12),2)原告は,平成28年頃,書籍の表紙用のカラーイラ\nスト(スーツを着て,ペンとメモ帳を持った女性のイラスト)及び当該書籍 中の扉絵4点を制作したところ,原稿料は,表紙のイラストについて3万円,\n扉絵について3000円であったこと(甲14の1・2),3)原告は,平成2 9年の年賀状用のカラーイラスト(餅と鳥を組み合わせたイラスト)を制作 したところ,原稿料は2万4000円であったこと(甲15の1・2),以上 の事実が認められる。 これらの事実に加え,本件各イラストの内容(前提事実 ),本件サイトは インターネットメディア事業を行うことなどを目的とする被告が運営し,そ の閲覧数に応じて被告が収入を得るものであること(弁論の全趣旨),その 他本件における諸事情を総合すると,本件各イラストの使用に対し受けるべ き金額は1年当たり3万円とするのが相当である。 そして,弁論の全趣旨によれば,被告が本件サイト上に本件各イラストを 掲載していた期間は,平成26年7月31日から平成29年6月8日までで あると認められるから,原告が,本件各イラストの使用に対し受けるべき金 銭の額は合計27万円(1年当たりの使用料3万円×3点×3年分)となる。 イ これに対し,原告は,原告が制作するイラストの使用料は1年当たり10 万円を下らないと主張し,原告本人の陳述書中にも同旨の記載がある(甲1) が,上記アの認定事実に照らし,原告の主張は採用することはできない。
ウ 他方,被告は,ツイッターのサービス利用規約上,ツイート自体を埋め 込む方法によって他のウェブサイトに掲載することが認められている点 を損害額の算定において考慮すべきであると主張するが,被告の主張を前 提としても,本件における被告の掲載行為が適法となる余地はなく,上記 に述べた本件サイトの性質等に照らしても,被告の上記主張は採用するこ とができない。 また,被告は,本件各イラストが掲載されていた本件サイトのPV数は 公開後約2か月間に集中しており,その後はほとんど閲覧されていないか ら,掲載期間全部を損害額算定の根拠することは不当であると主張する。 しかしながら,本件において原告が受けるべき金員の額は,被告による本 件各イラストの掲載行為の内容等を踏まえて算定すべきであるから,被告 の上記主張は採用することができない。
さらに,被告は,原告が本件訴訟提起前に被告に対し本件各イラストの 著作権侵害による損害賠償金として9万円(1点3万円×3点)を請求し ていたこと,上記ア1)について,漫画の原稿料にはストーリー制作作業に 対する対価も含まれると考えられること,同2)について,書籍の表紙とな\nるイラストと本件各イラストでは完成度が異なることから,いずれも本件 各イラストの使用料相当額の算定資料としては適切ではなく,むしろ,本 件各イラストの性質上,同2)の書籍の扉絵の原稿料(1点3000円)が 算定資料になり得る事例であり,本件各イラストは3点(描かれた場面の 数は合計14枚)であり,構図も3種類程度しかないこと等を踏まえると,\n本件各イラストの使用料は高くても1回2〜3万円程度であると主張す る。
しかしながら,本件訴訟提訴前に一定の金額を提示したとしてもその金 額が直ちに本件各イラストの使用料相当額であるとはいえない。また,本 件各イラストにおいては,複数の場面が多色カラーで描かれ,各場面に合 わせた説明文も記載されており,これらの場面設定や説明文についても原 告が創作していることを踏まえると,本件各イラストの使用料相当額が, 漫画や書籍の表紙の原稿料と比べて低額になるとはいえず,被告の主張は\n採用することができない。被告は,被告が本件各イラストの掲載によって得た利益は2500円程度に過ぎないとも主張するが,本件サイトの性質等を踏まえても,上記ア で認定した本件各イラストの使用に対し受けるべき金銭の額が不相当で あるとはいえない。

◆判決本文

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平成29(行ケ)10178  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年6月27日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反、サポート要件違反、明確性違反の無効主張について、「無効理由無し」とした審決が維持されました。
(1) サポート要件の適合性について
ア 本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明1に関し,「医薬品や食品 のような経口投与用組成物等の品質を損なわずに優れた識別性を有する経 口投与用組成物を得ることができ,かつ,生産性にも優れたマーキング方 法を開発するという課題」を解決するための手段として,「本発明」は,酸 化チタン,黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される少な くとも1種の変色誘起酸化物を分散させた経口投与用組成物の表面に,所\n定のレーザー光を走査することにより,変色誘起酸化物を凝集させること に起因した変色が生じるようにした構成を採用したことの記載があること\nは,前記1(1)イ認定のとおりである。
イ 次に,本件明細書の発明の詳細な説明には,1)実施例1ないし16にお いて,表1のレーザー装置及び照射条件(波長355nm,平均出力8W),\n表3のレーザー装置及び照射条件(波長266nm,平均出力3W)又は表\ 4のレーザー装置及び照射条件(波長532nm,平均出力12W)で,酸 化チタン,黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄錠剤を配合した,フィルムコー ト錠等に対し,文字又は中心線をマーキングしたこと(【0038】〜【0 056】,表1,表\3及び表4),2)表1のレーザー装置及び照射条件かつ\n走査速度1000mm/secで,実施例13のフィルム錠にレーザー照 射を行い,レーザー照射前後の二酸化チタンの粒子の状態を透過型電子顕 微鏡(TEM)により観測した結果,レーザー照射後に二酸化チタンの粒子 が凝集していることが確認されたこと(【0057】〜【0059】,図3, 図4),3)レーザー波長に関し,レーザーは,その波長が200〜1100 nmを有するものを用いることができ,好ましくは1060〜1064n m,527〜532nm,351〜355nm,263〜266nm又は2 10〜216nmの波長であり,より好ましくは527〜532nm,3 51〜355nm又は263〜266nmの波長であること(【0022】), 4)レーザー出力に関し,レーザーを走査する際の平均出力は,対象とする 経口投与用組成物の表面がほとんど食刻されない範囲で使用することがで\nき,例えば,その平均出力は,0.1W〜50Wであり,好ましくは1W〜 35Wであり,より好ましくは5W〜25Wであるが,単位時間あたりの レーザー照射エネルギーが強すぎると,アブレーションにより錠剤表面で\n食刻が発生し,変色部分まで剥がれてしまい,また,出力が弱いと変色が十\n分ではないこと(【0023】),5)レーザーの走査速度(スキャニング速 度)に関し,スキャニング速度は,特に限定されるものではないが,20m m/sec〜20000mm/secであり,また,スキャニング速度は, 高いほどマークの識別性に影響を与えることなく生産性を上げることがで きることから,例えば,レーザー出力5Wでは,スキャニング速度は,80 mm/sec〜10000mm/sec,好ましくは90mm/sec〜 10000mm/sec,より好ましくは100mm/sec〜1000 0mm/secであり,レーザー出力が8Wの場合には,スキャニング速 度は,250mm/sec〜20000mm/sec,好ましくは500 mm/sec〜15000mm/sec,より好ましくは1000mm/ sec〜10000mm/secであること(【0024】),6)単位面積 当たりのエネルギーに関し,単位面積当たりのレーザーのエネルギーは, マーキングの可否及び経口投与用組成物の食刻の有無の観点から,390 〜21000mJ/cm2であり,好ましくは400〜20000mJ/c m2,より好ましくは450〜18000mJ/cm2であり,また,390 mJ/cm2より低い場合には,マークを施すことができないのに対し,2 1000mJ/cm2より大きい場合には,食刻が生じるため,好ましくな いこと(【0025】)の記載がある。 上記1)ないし6)の記載を総合すると,本件明細書に接した当業者は,請 求項1記載の波長(200nm〜1100nm),平均出力(0.1W〜5 0W)及び走査工程の走査速度(80mm/sec〜8000mm/se c)の各数値範囲内で,波長,平均出力及び走査速度を適宜設定したレーザ ー光で,酸化チタン,黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択 される少なくとも1種の変色誘起酸化物を分散させた経口投与用組成物の 表面を走査することにより,変色誘起酸化物の粒子を凝集させて変色させ\nてマーキングを行い,「医薬品や食品のような経口投与用組成物等の品質 を損なわずに優れた識別性を有する経口投与用組成物を得ることができ, かつ,生産性にも優れたマーキング方法を開発する」という本件発明1の 課題を解決できることを認識できるものと認められる。 したがって,本件発明1は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載され たものといえるから,請求項1の記載は,サポート要件に適合するものと 認められる。同様に,請求項2ないし22の記載も,サポート要件に適合す るものと認められる。

◆判決本文

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平成30(行ケ)10021  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成30年6月27日  知的財産高等裁判所

 部分意匠について、先行意匠に類似するので無効と主張しましたが、知財高裁4部は、「無効理由無し」とした審決を維持しました。判決の最後に、図面があります。
 本件登録意匠と甲1意匠とは,本件審決が認定するとおり,意匠に係る 物品が「検査用照明器具」である点で共通し,共に検査用照明器具の放熱 に係る用途及び機能を有し,正面視全幅の約1/3以上の横幅を占める大\nきさ及び範囲を占め,正面視右上に位置する点で,物品の部分の用途及び 機能並びに位置,大きさ及び範囲の点で共通する(争いがない。)。\nそこで,本件登録意匠と甲1意匠との類否について検討するに,甲18 の2(各図面は別紙5参照)及び弁論の全趣旨によれば,「横向き円柱状 の軸体に,それよりも径が大きい複数のフィン部を等間隔に設けて,最後 部のフィン部の形状について,中間フィン部とほぼ同形として幅(厚み) を中間フィン部に比べて大きくし,後端面の外周角部を面取りした」構成\n態様(共通点Aに係る構成態様)は,検査用照明機器の物品分野の意匠に\nおいて,本件登録意匠の意匠登録出願前に広く知られた形態であることが 認められる。
そうすると,共通点Aに係る構成態様(全体の構\成態様)は,需要者の 注意を強く惹くものとはいえず,本件登録意匠と甲1意匠との類否判断に 及ぼす影響は小さいものといえる。また,共通点Bに係る構成態様(フィ\nン部の数が6つであること)についても,需要者が特に注目するとは認め られず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものといえる。
一方で,本件登録意匠と甲1意匠とは,各フィン部の形状について,本 件登録意匠では,各フィン部の右側面形状が「下部を切り欠いた円形状」 であって,その切り欠き部は底面から見た最大縦幅が各フィン部の最大縦 幅の約2分の1を占める大きさであり,かつ,平面から見た各フィン部の 左側面側外周寄りに傾斜面が形成されているのに対し,甲1意匠では,各 フィン部の右側面形状が「円形状」であって,切り欠き部が存在せず,平 面から見た各フィン部に傾斜面が形成されていないという差異(差異点a 及びb)があるところ,各フィン部の形状の上記差異は,需要者が一見し て気付く差異であって,本件登録意匠は甲1意匠と比べて別異の視覚的印 象を与えるものと認められる。
以上のとおり,本件登録意匠と甲1意匠は,共通点Aに係る構成態様(全\n体の構成態様)及び共通点Bに係る構\成態様(フィン部の数)は,需要者 の注意を強く惹くものとはいえないのに対し,差異点a及びbに係る各フ ィン部の形状の差異は,需要者が一見して気付く差異であって,本件登録 意匠と甲1意匠を別異のものと印象付けるものであること,本件登録意匠 と甲1意匠には,上記差異のほかに,差異点cないしeに係る差異もある ことを総合すると,本件登録意匠と甲1意匠は,視覚を通じて起こさせる 美観が異なるものと認められるから,本件登録意匠は甲1意匠に類似する ということはできない。

◆判決本文

関連事件です。

◆平成30(行ケ)10020

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不服2017-012293

判決ではなりませんが、ちょっと違和感あるのでアップします。 称呼同じ、観念比較できず、しかし、外観が全く違うので非類似との判断。 この判断基準なら外観がかなり違うのは全て非類似となってしまいます。

◆審決本文

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平成28(ネ)10104  販売差し止め等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成30年2月7日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 これも漏れていましたの、アップします。独占代理店は本国権利者の許可を得て日本で商標登録していました。被告は本国から真正商品を輸入しました。並行輸入に該当するかが争われました。1審は真正商品の並行輸入ではないと判断しましたが、知財高裁は並行輸入であると判断しました。
 商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品に つき,その登録商標と同一の商標を付されたものを輸入する行為は,許諾を受けな い限り,商標権を侵害する(商標法2条3項,25条)。しかし,そのような商品の 輸入であっても,1)当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許 諾を受けた者により適法に付されたものであり,2)当該外国における商標権者と我 が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得 るような関係があることにより,当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示\nするものであって(以下,「第2要件」という。),3)我が国の商標権者が直接的に又 は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該商品と我が国 の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質 的に差異がないと評価される(以下,「第3要件」という。)場合には,商標権侵害 としての実質的違法性を欠くものと解するのが相当である。(最高裁第一小法廷平成 15年2月27日判決民集57巻2号125頁) そして,商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品に つき,その登録商標と同一の商標を広告に付する行為は,許諾を受けない限り,商 標権を侵害する(商標法2条3項,25条)。しかし,そのような行為であっても, 登録商標と同一の商標を付されたものを輸入する行為と同様に,商標権侵害として の実質的違法性を欠く場合があり,その場合の上記1)の要件は,当該商品に当該商 標を使用することが外国における商標権者との関係で適法であること(以下,「第1 要件」という。)とすべきである。
イ 第1要件について
(ア) 前記1(1)のとおり,PVZ社は,本件商標2と同一の標章を用いて その商品を販売している。PVZ社商標は,別紙PVZ社商標目録のとおり,デザ イン化した「NEONERO」の欧文字の下部に左から右にかけて緩やかにカーブ しながら下がる曲線を配し,その曲線の下に小さく「FORME PREZIOS E」の欧文字を記したものである。「NEONERO」の文字が「FORME PR EZIOSE」の文字より格段に大きいこと,前記1(1)のとおり,PVZ社は「N EONERO」の本件ブランド名を用いて身飾品を製造及び販売してきたことから すると,PVZ社商標の要部はデザイン化された「NEONERO」の文字部分で あるものと認められる。 控訴人標章2は,別紙控訴人標章目録のとおり,「PIZZO D’ORO」の欧 文字を上段に小さく,「NEONERO」の欧文字を下段に大きく配してなるもので あり,その文字の大小に各段の差があることから,要部は「NEONERO」部分 であるものと認められる。したがって,控訴人標章2の要部は,PVZ社商標の要 部とその外観が類似し,称呼を同一にする。以上より,PVZ社商標と控訴人標章 2とは,類似する。 控訴人標章1は,別紙控訴人標章目録のとおり,「NEONERO」の欧文字を書 してなるものであるから,PVZ社商標の要部とその外観が類似し,称呼を同一に するものであって,PVZ社商標と控訴人標章1は類似する。 そうすると,控訴人標章1及び2は,欧州においては,PVZ社の許諾なくして 適法に使用することはできないものであると認められる。
(イ) 上記のとおり,控訴人標章1及び2は,PVZ社商標と類似するもの であるが,前記(1)のとおり,控訴人商品は,いずれもPVZ社から輸入されたもの である上,控訴人がこれに手を加えて販売したとも認められないから,控訴人が控 訴人商品の広告に控訴人標章1及び2を付する行為は,PVZ社の商標権の出所識 別機能や品質保持機能\を害するものではなく,PVZ社との関係で適法なものとい うことができる。
(ウ) したがって,本件被疑侵害行為は,第1要件を充足する。
ウ 第2要件について
第2要件は,内外権利者の実質的同一性をいうものであって,「法律的に同一人と 同視し得るような関係がある」とは,外国における商標権者と我が国の商標権者が 親子会社の関係や総販売代理店である場合をいい,「経済的に同一人と同視し得るよ うな関係がある」とは,外国における商標権者と我が国の商標権者が同一の企業グ ループを構成している等の密接な関係が存在することをいうものである。\n前記1(6)のとおり,被控訴人はPVZ社と本件ブランド商品について日本におけ る本件販売代理店契約を締結し,被控訴人はPVZ社の日本における独占的な販売 代理店となったものであるから,PVZ社と被控訴人とは,法律的に同一人と同視 し得るような関係にあるといえ,本件被疑侵害行為は,第2要件を充足する。
エ 第3要件について
(ア) 第3要件は,我が国の商標権者の品質管理可能性についていうもので\nあるところ,外国の商標権者と我が国の商標権者とが法律的又は経済的に同一視で きる場合には,原則として,外国の商標権者の品質管理可能性と我が国の商標権者\nの品質管理可能性は同一に帰すべきものであるといえる。ただし,外国の商標権者\nと我が国の商標権者とが法律的又は経済的に同一視できる場合であっても,我が国 の商標権の独占権能を活用して,自己の出所に係る商品独自の品質又は信用の維持\nを図ってきたという実績があるにもかかわらず,外国における商標権者の出所に係 る商品が輸入されることによって,そのような品質又は信用を害する結果が生じた といえるような場合には,この利益は保護に値するということができる。
(イ) 前記1の認定事実によると,PVZ社は,本件商標登録以前から本件 ブランドを付した商品を控訴人及び被控訴人に対して販売し,日本において流通さ せていたところ,被控訴人が本件商標権を登録したのは,PVZ社の商品を独占的 に輸入し販売するためであり,その登録は,PVZ社の許諾を得て行ったものであ り,本件商標1は本件ブランド名そのものであり,本件商標2は,PVZ社が本件 ブランドのために使用していた標章を用いたものであると認められる。本件におい て,被控訴人商品は身飾品であり,使用者が他人から見えるように装用して,商品 の美しさでもって使用者を飾るという機能を有するところ,前記1(16)のとおり, 被控訴人が,PVZ社パーツの組合せや鎖の長さなどを指定し,引き輪やイヤリン グのパーツを取り付けたことは認められるものの,引き輪やイヤリングのパーツは 身体を飾るという被控訴人商品の主たる機能からみて付随的な部分にすぎない。被\n控訴人のウェブサイトには,PVZ社作成の画像及びPVZ社が使用するのと同じ 本件ブランドのロゴが用いられ,PVZ社パーツのレース状の模様は明確に認識で きるが,被控訴人が独自に付したパーツが強調されている部分はなく,また,PV Z社パーツのレース状の細工以外のデザインが良いことや,引き輪やイヤリングの パーツが使用しやすいといったことは,上記ウェブサイトには記載されておらず, このような事項が需要者に認識されていたとは認められない。さらに,被控訴人は, 被控訴人商品について保証書を発行していたものの,その内容は,「品番」「仕様」 のみであり(甲23),保証内容から被控訴人独自のパーツが付されていることを購 入者が認識できるものとは認められない。 これらの事情を総合考慮すると,被控訴人が,PVZ社とは独自に,被控訴人の 商品の品質又は信用の維持を図ってきたという実績があるとまで認めることはでき ず,控訴人商品の輸入や本件被疑侵害行為によって,被控訴人の商品の品質又は信 用を害する結果が生じたということはできない。したがって,被控訴人に保護に値 する利益があるということはできない。 なお,被控訴人は,独自の検査体制によって商品の品質維持を図り,販売した商 品の無償での部品交換に応じて商品の信用維持に努めているなどと主張するが,被 控訴人が身飾品の輸入販売業者が通常行っている品質や信用を維持するための行為 を超えてこれらの行為を行っているとまで認めるに足りる証拠はなく,上記判断を 左右するものではない。
(ウ) 以上より,控訴人商品と被控訴人商品とは,本件商標の保証する品質 において実質的に差異がないと評価すべきであり,本件被疑侵害行為は,第3要件 を充足する。
(3) 以上より,本件被疑侵害行為は,第1要件〜第3要件をいずれも充足し, 実質的違法性を欠く。

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◆平成28(ワ)10643

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平成29(ワ)123  差止請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年2月14日  東京地方裁判所(29部)

 これも漏れていましたの、アップします。商品「みかんシロップ」と役務「加工食料品についての小売」が類似するかが争われました。裁判所は、審査基準には拘束されない、非類似との判断を示しました。
 そこで,まず,本件指定役務と被告商品1(緑みかんシロップ)の類否につ いて検討すると,本件指定役務は「加工食料品」という特定された取扱商品につい ての小売等役務であるのに対して,前記前提事実(3),(4)のとおり,被告商品1は, 「シロップ」であって,第32類の「清涼飲料」に属する商品であると認められる (被告商品1が第29類の「加工野菜及び加工果実」に含まれる旨の原告の主張は 採用することができない。)ところ,「清涼飲料」と「加工食料品」は,いずれも 一般消費者の飲食の用に供される商品であるとはいえ,取引の実情として,「清涼 飲料」の製造・販売と「加工食料品」を対象とする小売等役務の提供とが同一事業 者によって行われているのが通常であると認めるに足る証拠はない。 そうすると,被告商品1に本件商標と同一又は類似の商標を使用する場合に,需 要者において,被告商品1が「加工食料品」を対象とする小売等役務を提供する事 業者の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるとは認められる関係には なく,被告商品1が本件指定役務に類似するとはいえないというべきである。
(3)ア 他方で,前記前提事実(3),(4)のとおり,被告商品2(梅ジャム)及び3 (ブルーベリージャム)については,いずれも「ジャム」であって,第29類の 「加工野菜及び加工果実」に属する商品であり,本件指定役務において小売等役務 の対象とされている「加工食料品」と関連する商品であると認められる。
イ しかしながら,一般に,ジャム等の加工食料品の取引において,製造者は小 売業者又は卸売業者に商品を販売し,小売業者等によって一般消費者に商品が販売 される業態は見られるところであり,本件の証拠上も,被告は,その製造に係る梅 ジャム等の商品をパルシステム,生協,ケンコーコム等に販売し,これらの事業者 によって一般消費者に商品が販売されていると認められるほか(上記1(2)),原告 も,商品を自ら一般消費者に販売する以外に,らでぃっしゅぼーや,生協,デパー トに販売し,これらの事業者によって一般消費者に商品が販売されていたと認めら れる(上記1(1))。 そうすると,他方で,ジャム等を製造して直接一般消費者に販売する事業者が存 在するとして原告が提出する証拠(甲40の1・2)の内容を踏まえたとしても, ジャム等の加工食料品の取引の実情として,製造・販売と小売等役務の提供が同一 事業者によって行われているのが通常であるとまでは認めることができないという べきである。
ウ また,商品又は役務の類否を検討するに当たっては,実際の取引態様を前提 にすべきところ,被告標章2を包装に付した被告商品2及び3の取引態様は,上記 1(2)イで認定したとおり,被告と継続的な取引関係があるケンコーコムにおいて, 被告から商品を購入して自社が運営する通販サイトを通じて一般消費者に販売する というものであり,その通販サイトには,ケンコーコムの名称及びロゴが表示され\nていると共に,商品ごとに製造・販売者が表示されている。\nそうすると,ケンコーコムにおいて,被告商品2及び3が小売等役務を提供する 事業者の製造又は販売に係る商品であると誤認するおそれがあるとは認め難く,ま た,通販サイトで被告商品2及び3を購入する一般消費者においても,製造・販売 者とインターネット販売業者を区別して認識すると考えられるから,小売等役務を 提供するインターネット販売業者の製造又は販売に係る商品であると誤認するおそ れがあるとは認め難い。 なお,原告は,将来,原告がケンコーコムと取引を開始した場合には,同社にお いて誤認混同のおそれが生じる旨主張するが,上記1(1)で認定した原告の取引態様 を前提とする限り,同社において小売等役務を提供する事業者の製造又は販売に係 る商品と誤認するおそれを生じるとは認め難い。
エ 以上のとおり,本件の証拠上,ジャム等の加工食料品の取引の実情として, 製造・販売と小売等役務の提供が同一事業者によって行われているのが通常である とまでは認めることができないというべきであり,被告商品2及び3の実際の取引 態様を踏まえて検討しても,被告商品2及び3に本件商標と同一又は類似の商標を 使用する場合に,需要者において,被告商品2及び3が本件小売等役務を提供する 事業者の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係には ないというべきである。

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平成28(ワ)10736  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年2月27日  東京地方裁判所(46部)

 ポケフラットという折りたたみ傘について、周知と認定され、差止と140万円の損害賠償が認められました。
 一般的な折り畳み傘は,折り畳んで包袋に入れた状態において円筒形の形 態をしているのに対し,原告商品の形態は,折り畳んで包袋に入れた状態に おいて,原告商品形態を有しているところ,当該形態によって,原告商品は, 全体的に薄く扁平な板のような形状を有することが認められ,円筒形でない だけでなく,それが全体的に薄く,扁平な板のような形状である点で,一般 的な折り畳み傘の形状とは明らかに異なる特徴を有しているといえる。 そして,上記 のとおり,原告商品の広告では原告商品が薄いことが強調 されたこと(上記 ウ ),発売から間もない平成17年1月頃に日本経済 新聞社が主催する2004年日経優秀製品・サービス賞の優秀賞及び日経産 業新聞賞を受賞し,原告商品の形態が説明された上で「新しい時代に先駆け た独創的な新製品」との評価を受けたこと(上記 カ),新聞,雑誌,テレビ 番組等の多数のメディアにおいて原告商品が取り上げられたところ,そこで は原告商品が薄いことが強調されていること(上記 エ),そもそも原告商 品の形態がそれまでの商品の形態とは明らかに異なる原告商品形態である ことから上記のような多数の媒体で取り上げられたと考えられること,一般 消費者もインターネット上の商品販売サイト等に原告商品が薄いとの原告 商品形態を強調する感想を多く書き込んでいること(上記 オ)などからす ると,原告商品は需要者に対し,全体的に薄く扁平な板のような形状を有す る商品であるという強い印象を与えるものといえる。そうすると,原告商品形態は,客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していたといえ,原告商品形態には特別顕著性があるといえる。
イ これに対し,被告は,原告商品の他にも折り畳んで包袋に入れた状態が薄 く扁平な板のような形状となる折り畳み傘(乙5(乙15〜17は乙5の折 り畳み傘の写真である。),7,18〜21)や折り畳んだときの形状が薄く 扁平な板のような形状になる折り畳み傘の骨組み(乙10,11,13)が 存在し,このうち,乙第5号証及び乙第7号証の商品は原告商品が販売され るより前から販売されていたこと,折り畳んだときの傘の骨組みが直方体と なる形状の実用新案登録及び特許出願もされていた(乙1〜4)ことから, 薄く扁平な板のような形状を有する折り畳み傘はありふれた形態であって 原告商品形態に特別顕著性はない旨主張する。
しかし,原告商品が販売される前から,一定の形状の折り畳み傘の骨組み が存在し,また,骨組みの形状に関する実用新案登録等がされていたとして も,それは骨組みに関するものであって,それを利用した折り畳み傘の形態 は不明であり,折り畳み傘の形態としての原告商品形態の特別顕著性の有無 を直ちに左右するものとはいえない。また,被告が指摘する商品(乙5,7, 18〜21)には,折り畳んで包袋に入れた状態が円筒形ではなく,直方体 に似た形状を有するものもある。しかし,被告が指摘する商品はいずれも販 売数量及び売上高は明らかになっておらず,市場において広く流通している 商品であると認めるに足りる証拠はないこと,乙第5号証及び乙第7号証の 商品は既に販売が終了していること(乙6,8,41)などからすると,上 記各商品によって,原告商品形態がありふれており,他の商品と識別し得る 特徴を有しないとはいえない。

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平成29(ワ)5423  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年3月26日  東京地方裁判所(29部)

 少し前の判決ですが漏れていたのでアップします。中古購入した原告商品の一部を組み込んだ別の商品を製作しました。裁判所は、不競法の著名商品等表示であるとして、約170万円の存在賠償を認めました。判決文の最後に、被告商品が掲載されています。
 被告は,被告は被告各商品に原告標章の一部を使用したが,それは飽くまでデザイ ンとしての使用であり,原告標章と同一又は類似のものを商品等表示として使用した\n商品を販売等していない旨主張するので検討する。
不正競争防止法2条1項2号の趣旨は,著名な商品等表示について,その顧客吸引\n力を利用するただ乗りを防止するとともに,その出所表示機能\及び品質表示機能\が稀 釈化により害されることを防止するところにあると解されるから,同号の不正競争行 為というためには,単に他人の著名な商品等表示と同一又は類似の表\示を商品に付し ているというだけでは足りず,それが商品の出所を表示し,自他商品を識別する機能\ を果たす態様で用いられていることを要するというべきである。 これを本件についてみるに,前記認定のとおり,原告はバッグ類,袋物及び被服等 で知られる世界的に著名な高級ブランドを擁するフランス法人であるところ,原告標 章は,1896年から現在まで原告商品に使用されて世界的に広く知られる標章であ り,原告商品にのみ付され,大規模かつ継続的な宣伝広告により,著名性を有するも のであることからすれば,高い出所識別機能を有する商品等表\示として使用されてい るものである。そして,その使用態様は,商品に応じて原告モノグラム表示の一部を\n切り取って商品に付されて使用されるという特徴を有しており,必ずしも「LOUI S VUITTON」との文字商標を必要とはしていない。
被告標章1ないし7は,原告標章を構成する原告記号aないしdと同一の記号によ\nり構成され,その配置も原告標章と同一なものの一部分であり,被告標章8は,被告\n記号eや,被告記号aないしdをカラーにした点が異なるが,それらの記号が原告標 章と同一の配置とされたものの一部分であり,被告各商品に応じて被告各標章の一部 を切り取って商品に付されて使用されている。 このような被告各標章の使用態様からすると,被告各標章は出所識別機能を有する\n態様で用いられているものと認められ,デザインとしての使用であり商品等表示とし\nて使用ではない旨の被告の主張は採用できない。

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平成30(行ケ)10001  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月21日  知的財産高等裁判所

 商標「ありがとう」(標準文字)が、招き猫の下部に文字「ありがとう」が混在した図形商標を引例(判決文の最後に引用商標あり)として拒絶されました。
 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,対比される商標が同一又は類 似の商品又は役務に使用された場合に,その商品等の出所につき誤認混同を 生ずるおそれがあるか否かによって決すべきところ,その際には,使用され た商標がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記 憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,しかもその商品等の取引 の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するの が相当である(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2 号399頁参照)。 また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについては,\n商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思\nわれるほど不可分的に結合していると認められる場合は,その構成部分を抽\n出し,当該部分だけを他人 色で縁取りされた白色無地の扇形とで構成される図形と,当該扇形の内側\nに黒色の明朝体風の書体で横一列に「ありがとう」の文字が記載されたも ので,結合商標と解される。
イ 引用商標の構成中,「ありがとう」の文字部分は,図形の内部に記載さ\nれているものの,引用商標の中央下部に位置し,商標の横幅いっぱいの大 きさがある白色無地の扇形の中というひときわ目立つ場所に,当該扇形の 横幅全体を使うほどの大きさで,黒色の読み取りやすい書体で明瞭に記載 されているから,外観上,主として招き猫とそれが支持する扇形とからな る図形部分(招き猫の図形部分)と一見して明確に区別して認識できる。 そして,「ありがとう」の語は,平仮名5文字からなる極めて平易なもの であって,称呼しやすく,感謝の意を表す際に日常的に多用される馴染み\nのある言葉であることを考え合わせると,「ありがとう」の文字部分は, 引用商標を見る者に強い印象を与えるとともに,その注意を強く引くもの であると認めるのが相当である。 これに対し,招き猫の図形部分と「ありがとう」の語とが,観念的に密 接な関連性を有しているとは考え難いし,一連一体となった何かしらの称 呼が生じるともいえない。また,招き猫の図形部分及び「ありがとう」の 文字部分は,指定役務との関係で,当該役務の質等を表すものともいえな\nい上,このほかに各部分が単独では出所識別機能を有しないと認めるに足\nりる的確な証拠も見当たらない。 これらの事情を総合すると,招き猫の図形部分と「ありがとう」の文字 部分とが,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不 可分的に結合していると認めることはできないから,当該図形部分と当該 文字部分は,それぞれが独立して出所識別機能を有する要部であるという\nべきである。
ウ 以上によれば,引用商標においては,その全体から「アリガトウ」の称 呼及び「感謝の意を表す招き猫」といった程度の観念がそれぞれ生じると\n認められる。 そして,招き猫の図形部分からは特定の称呼を生じないものの,「招き 猫」との観念が生じ,また,「ありがとう」の文字部分から,「アリガト ウ」の称呼及び「感謝の意をあらわす挨拶語」といった程度の観念がそれ ぞれ生じると認められる。
(4) 本願商標と引用商標の類否
本願商標と,引用商標の要部である「ありがとう」の文字部分とは,外観 上,書体の相違以外は同一であり,さらに,上記(2)及び(3)において説示し たとおり,両者は称呼上も観念上も同一である。 したがって,本願商標と引用商標とは,出所について誤認混合を生ずるお それがあり,両商標は類似するものというべきである。

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◆平成30(行ケ)10002

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平成29(行ケ)10151  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年6月26日  知的財産高等裁判所

 優先権書類の提出がなかったとして、優先権の主張が認められず拒絶されました。なぜ出願人は、JPOから求められたのに、優先権証明書(米国の基礎出願)を出さなかったのでしょうか?
 本願について,特許協力条約規則17.1(a),(b)及び(bの2)の要件 のいずれも満たされないこと,並びに,JPOが,事情に応じて相当の期間内に原 告らに優先権書類を提出する機会を与えたことは,当事者間に争いがない。 原告らは,JPOが,本願について,特許協力条約実施細則715(a)の定め るところにより本件基礎出願に基づく優先権書類を電子図書館から入手可能である\nとみなされることをもって,特許協力条約規則17.1(d)にいう,指定官庁が 実施細則に定めるところにより優先権書類を電子図書館から入手可能な場合に当た\nるから,JPOは,同規則17.1(d)により,本件基礎出願に基づく優先権の 主張を無視することができない旨主張する。
ア 特許協力条約実施細則の定め しかし,まず,本件基礎出願の出願日(優先日)から16か月後の平成21年1 2月1日時点において効力を有する特許協力条約実施細則には,電子図書館に関す る規定は存在しない(乙11)。したがって,本願について,JPOは,「実施細 則に定めるところにより優先権書類を電子図書館から入手可能」ではないから,特\n許協力条約規則17.1(d)により,本件基礎出願に基づく優先権の主張を無視 することができないということはできない。そうすると,JPOは,同規則17. 1(c)により,相当の期間内に原告らに優先権書類を提出する機会を与えた上で, 優先権の主張を無視することができるところ,原告らが,特許法施行規則38条の 14に規定する期間内に,優先権書類を提出していないことは当事者間に争いがな い。よって,JPOは,特許協力条約規則17.1(c)により,本件基礎出願に基 づく優先権の主張を無視することができる。
イ 特許協力条約実施細則715(a)の事後的な充足 特許協力条約実施細則715は,本件基礎出願の出願日の16か月後である平成 21年12月1日時点においては存在しなかったものであるが,本願についてJP Oが出願人に優先権書類を提出する機会を与えた相当の期間(特許法施行規則38 条の14に規定する期間)が経過する前である平成22年1月1日に効力が生じた ものである。 仮に,特許協力条約規則17.1(c)及び(d)の規定について,出願人に優 先権書類を提出する機会を与えた相当の期間内に,JPOが特許協力条約実施細則 715(a)(i)の「通知」をするなどすれば,JPOは優先権の主張を無視で きないと解釈したとしても,後記ウのとおり,JPOが,同実施細則715(a) (i)の「通知」をしたとの事実は認められない。 したがって,JPOが特許協力条約実施細則715(a)に定めるところにより 本件基礎出願の優先権書類を電子図書館から入手可能であるとはみなされないから,\nJPOは,特許協力条約規則17.1(d)の規定の適用上,優先権書類を電子図 書館から入手可能な場合に当たらない。JPOは,同規則17.1(d)により,\n本件基礎出願に基づく優先権の主張を無視することができないということはできな い。 よって,仮に,特許協力条約規則17.1(c)及び(d)の規定について,上 記のとおり解釈したとしても,本願は,同規則17.1(d)にいう,指定官庁が 実施細則に定めるところにより優先権書類を電子図書館から入手可能な場合に当た\nらないから,JPOは,同規則17.1(c)により,本件基礎出願に基づく優先 権の主張を無視することができる。

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平成30(ネ)10001  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年6月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 会社役員Aに対して、悪意又は少なくとも重大な過失があった(会社法429条1項)として、約350万円の損害賠償が認められました。
 証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (a) 1審被告Aは,1審被告白石の代表取締役であり,1審被告白\n石の事業全般を統括していたが,平成22年6月4日,1審被告白 石宛ての1審原告の通知書(親和製作所の装置の販売が本件特許権 侵害である旨を指摘するもの)を受領し,本件特許権の存在を知る に至った。さらに,1審被告Aは,平成24年1月12日,1審被 告白石宛ての1審原告の通知書(親和製作所と1審原告の和解に関 するもの)を受領した。(甲15の資料5,資料9,乙73)
(b) 東京地方裁判所は,本件仮処分申立事件についての平成26年\n10月8日の審尋期日において,被告装置(WK型)が本件特許権 に係る発明の技術的範囲に属する旨の心証開示をした。(甲18)
(c) 1審被告白石は,平成26年10月24日から同月28日まで の間に,渡邊機開から,被告装置(WK型)を合計14台,本件板 状部材153個及び本件固定リング123個を購入した。1審被告 白石の平成23年から平成25年にかけての本件固定リングの購入 数は合計20個未満であり,平成26年10月24日から同月28 日までの本件固定リングの購入量はこれまでの取引状況に比して突 出して多い。(甲17の1,2)
(d) 東京地方裁判所は,平成26年10月31日,渡邊機開による 被告製品(WK型),本件固定リング及び本件板状部材の販売等を 差し止める旨の本件仮処分決定をし,1審原告は,同年11月4日 付け通知により1審被告白石に対しその旨を通知した。(甲15の 資料10)
(e) 1審被告白石は,本件仮処分決定後は,平成26年11月14 日頃から平成27年4月1日にかけて被告装置を販売した。
(f) 1審被告白石は,平成27年2月26日,鶴商に型式名を「L S−S」とする被告装置(実質は「WK−550」)を販売し,ま た,同年5月までには,渡邊機開からWK型として仕入れた被告装 置(「WK−600」)に,構成の変更がないのに「LS−G」型\nの表示を付したものを取り扱っていた。(上記2(1),甲22)
c 1審被告Aは,1審被告白石の事業全般を統括していたのであるか ら,1審被告白石の取引実施に当たっては,第三者の特許権を侵害し ないよう配慮すべき義務を負っていたというべきである。この観点か ら1審被告Aの責任について検討してみると,まず,平成22年6月 4日及び平成24年1月12日の時点で,1審被告Aにおいて,被告 装置が本件特許権に係る発明の技術的範囲に属することを知っていた ことを認めるに足りる証拠はない。なお,平成24年1月12日頃に 1審被告白石が1審原告から通知書を受領したことは上記b(a)のと おりであるが,その通知書の内容は親和製作所の装置に関するもので あり,渡邊機開製の被告装置とは直接関わるものではなかったのであ るから,1審被告Aが上記時点において被告装置につき専門家に問い 合わせるなどの調査等をせず,被告装置の販売を中止しなかったから といって,1審被告Aに重過失があったとすることはできない。 これに対し,上記b(d)によれば,1審被告Aは平成26年11月 初旬には本件仮処分決定について知ったものと認められるから,これ によって被告装置が本件特許権を侵害するおそれが高いことを十分に\n認識することができたと認められる。ところが,1審被告Aは,本件 仮処分決定を踏まえて,中立的な専門家の意見を聴取するなどの検討 をした形跡もないまま,取引を継続し,さらに被告装置の型式名につ いて工作をするなどしているのであり,これら上記bに認定した本件 仮処分決定前後の経過に照らせば,同月以降の1審被告白石による被 告装置の販売を中止するなどの措置をとらなかった1審被告Aには, 1審被告白石による本件特許権侵害について悪意又は少なくとも重大 な過失があったというべきである。 よって1審被告Aは,1審被告白石による被告装置の販売に係る 同月以降の本件特許権侵害について,会社法429条1項の責任を負 う。

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平成29(ネ)10029  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年6月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審における訂正の再抗弁の主張について、時期に後れたとは判断されませんでした。ただ、訂正後のクレームについても進歩性無しと判断されました。
 被控訴人は,本件再訂正に係る訂正審判請求等がされていないし,今後, このような手続が可能であるとはいえないから,本件再訂正がされたこと\nを前提とする本件再訂正発明3に基づく権利主張はできないと主張する。 この点について検討するに,特許権者が,事実審の口頭弁論終結時まで に訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず,その後に訂正審決等が 確定したことを理由に事実審の判断を争うことは,訂正の再抗弁を主張し なかったことについてやむを得ないといえるだけの特段の事情がない限り, 特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させるものとして,特許法1 04条の3及び104条の4の各規定の趣旨に照らして許されない。すな わち,特許権侵害訴訟において,特許権者は,原則として,事実審の口頭 弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなければならない。(最高裁平成 29年7月10日第二小法廷判決・民集71巻6号861頁参照)。 本件についてみると,被控訴人は,平成29年8月7日の当審第2回口 頭弁論期日において,甲26(参考資料3)発明に周知技術である基板ア ライナーを直接適用することによっても,相違点4に係る構成が容易に想\n到できるという,新たな組合せに基づく無効の抗弁を主張し,控訴人は, これを踏まえて,同年10月11日の当審第3回口頭弁論期日において, 本件再訂正に係る訂正の再抗弁の主張をした(裁判所に顕著な事実)。そ して,本件審決に係る審決取消訴訟は当裁判所に係属しており,控訴人は, 当審の口頭弁論終結時までに,本件再訂正に係る訂正審判請求等を法律上 することができなかった(特許法126条2項,134条の2第1項)。 そうすると,特許権の侵害に係る紛争をできる限り特許権侵害訴訟の手 続内で迅速にかつ一回的に解決することを図るという特許法104条の3 及び104条の4の各規定の趣旨に照らすと,本件の事実関係及び審理経 過の下では,被控訴人による新たな無効の抗弁に対する本件再訂正に係る 訂正の再抗弁を主張するために,現に本件再訂正に係る訂正審判請求等を している必要はないというべきである。 また,仮に,本件審決に係る審決取消訴訟において,本件審決を取り消 す旨の判決がされ,これが確定した場合には,本件無効審判手続が再開さ れるところ,この再開された審判手続等において,控訴人が本件再訂正に 係る訂正請求をすることができないとは直ちにいえない。

◆判決本文

対応する審取です。

◆平成28(行ケ)10250

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平成29(行ケ)10153  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年6月19日  知的財産高等裁判所

 「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」の明確性、本件発明の課題が解決できるのかについてサポート要件違反が争われました。
 上記記載事項によれば,めっき処理を行った亜鉛又は亜鉛系め っき鋼板において,酸化性雰囲気中で加熱を行うことによって,亜鉛の蒸 発を阻止するバリア層として酸化皮膜層が形成されるが,亜鉛又は亜鉛系 めっきの共通成分は亜鉛であり,亜鉛又は亜鉛系めっき鋼板がいずれも均 一な酸化皮膜を形成し,塗膜密着性,耐食性が良好という共通の性質を有 することが理解できる。そうだとすれば,当業者であれば,当然,本件発 明1の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」は「亜鉛の酸化皮膜」 であると理解すると認められる。 してみると,本件発明1の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」 が,亜鉛系めっきに由来する亜鉛の酸化皮膜を意味することは明確である といえる。このことは,本件発明1を引用する本件発明2ないし6及び(同 様の文言を有する)本件発明7についても同様である。
ウ 原告の主張について
原告は,本件訂正によって,特許請求の範囲の記載にあった「亜鉛また は亜鉛系合金のめっき層」に代えて,「スズ−亜鉛合金めっき層」などの 具体的な合金めっき層が記載されたこと,本件明細書においては,「スズ −亜鉛合金めっき」の具体例としては,「スズ−8%亜鉛合金めっき」の みが記載されている(【0038】)こと,「スズ−8%亜鉛合金めっき」 を加熱した場合に生ずる変化については本件明細書に全く記載がないこと などを挙げて,「亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」が亜鉛の酸化皮膜でな ければならないと当然に解釈できるとはいえないから,金属酸化物の種類 が不明確であると主張する。 しかしながら,本件明細書の記載から,亜鉛又は亜鉛系めっき鋼板がい ずれも均一な酸化皮膜を形成し,塗膜密着性,耐食性が良好という共通の 性質を有することが理解でき,当業者であれば,本件発明1の「加熱時の 亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」は「亜鉛の酸化皮膜」であると理解する と認められることは,前記ア,イのとおりである。他方,「スズ−8%亜 鉛合金めっき」についてのみ,これと異なる理解をすると認めるべき合理 的事情はない。
したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(2) 酸化皮膜の形成時期について
ア 原告は,本件訴訟におけるのと同様に,先行事件訴訟においても,「亜 鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」の形成時期が明らかでないと主張して明確 性要件を争っており,その結果,原告の主張を排斥する先行事件判決がな され,同判決は既に確定しているものである(当裁判所に顕著な事実)。 そうすると,原告が本件訴訟において再びこの点を争うことは,実質的 に前訴の蒸し返しに当たり,訴訟上の信義則に反するものとして許されな いというべきである。
よって,この点に関する原告の主張も採用できない。
イ 念のため,中身について検討してみても,この点に関しては,先行事件 判決が示すとおり,本件明細書の【0018】には,酸化皮膜は熱間プレ スに先立つ加熱前にある程度形成されることが必要で,その後熱間プレス 加工のための700〜1000℃の加熱によっても形成が進むと推測され ることが記載され,【0042】及び【0043】には,酸化皮膜は,熱 間プレス加工のため700〜1000℃に加熱する前に,予め形成されて\nいる場合と形成されていない場合があることを前提として,予め酸化皮膜\nが形成されている材料の場合には,酸化皮膜の維持に悪影響がない限り熱 間プレスのための加熱方法については特に制限がないことが記載され,さ らに,【0064】及び【表5】には,実施例No.2,3として,電気\nめっきを施した後,熱間プレスに先立つ加熱を大気炉で850℃,3分間 行ったものについて均一な酸化皮膜が形成されたことが記載されていると ころ,電気めっきにおいては,めっき層は加熱されないことから,上記実 施例はいずれも熱間プレスに先立つ加熱前に予め酸化皮膜が形成されてい\nない場合であって,この場合の酸化皮膜は,熱間プレスのための加熱(大 気炉で850℃,3分間)により形成されたものと理解することができる。 そうすると,本件発明の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」は, 熱間プレスの加熱前に,予め形成されている場合,ある程度形成されてい\nてその後熱間プレスの加熱時に形成が進む場合,予め形成されていないが\n熱間プレスの加熱により形成される場合のいずれでもよいことから,その 形成時期は熱間プレスの直前までであればよいと解するのが相当である。 したがって,本件発明1及びこれを引用する本件発明2ないし6並びに 本件発明7の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」の形成時期は, 本件明細書の発明の詳細な説明を参照すれば明確というべきであるから, 原告の主張はいずれにしても失当である。
(3) 「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れされる熱間プレス 用」について
ア 本件明細書の【0016】ないし【0018】,【0029】,【00 34】,【0042】,【0044】,【0048】,【0050】及び 【0064】には,熱間プレスは700〜1000℃という温度で加熱す ることを意味すること,熱間プレス成形の特徴として成形と同時に焼き入 れを行うことから,そのような焼き入れを可能とする鋼種を用いること,\n熱間成形後に急冷して高強度,高硬度となる焼き入れ鋼,例えば表1にあ\nるような鋼化学成分(鋼種A等)の高張力鋼板が実用上は特に好ましいこ と,700〜1000℃の温度で加熱してから熱間プレスを行い,めっき 層表面に亜鉛の酸化皮膜が,下層の亜鉛の蒸発を防止する一種のバリア層\nとして全面的に形成されていること,具体的には,表1に示す鋼種Aを,\n大気雰囲気の加熱炉内で950℃×5分加熱して,加熱炉より取り出し, このままの高温状態で円筒絞りの熱間プレス成形を行うこと,また,熱間 プレスに先立つ加熱を,大気炉で850℃,3分間行うことが記載されて いる。 そして,これらの記載によれば,本件発明1の「700〜1000℃に 加熱されてプレスされ焼き入れされる熱間プレス用」という文言において, 1)「700〜1000℃に加熱されて」は,熱間プレスの加熱条件であり, 2)「プレスされ焼き入れされる」は,成形と同時に焼き入れを行う熱間プ レス成形の特徴であり,3)「用」という文言の意味は,「(接尾語的に) …に使うためのものの意を表す」(広辞苑第六版)であることからすると,\n「熱間プレス用」は,後に続く,本件発明1の「鋼板」を修飾し,鋼板が 熱間プレスに使うためのものであることを意味するものと理解できる。 してみれば,「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れさ れる」は,「熱間プレス」の加熱条件及び特徴を表現するものと理解でき\nるから,本件発明1の「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き 入れされる熱間プレス用」という文言は明確である。このことは,本件発 明1を引用する本件発明2〜6及び(同様の文言を有する)本件発明7に ついても同様である。
イ 原告の主張について
原告は,本件発明は用途発明であるとした上で,種々理由を述べて,「7 00〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れされる熱間プレス用」 という記載の意味が不明確であると主張する。 しかしながら,前記アのとおり,「700〜1000℃に加熱されてプ レスされ焼き入れされる」は,「熱間プレス」の加熱条件及び特徴を表現\nするものと認められるから,その余の点について判断するまでもなく,本 件発明1の「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れされる 熱間プレス用」という文言の意味は明確である。 また,本件発明1が用途発明であるか否かは,その結論を左右するもの ではない。

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◆平成26(行ケ)10201

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平成29(ネ)10096  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年6月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 均等侵害が成立するかが争われました。出願人は、拒絶理由通知に対して、拒絶理由のない従属請求項に限定する補正をおこないました。知財高裁4部は、1審と同様に、均等の第1、第5要件から、均等成立を否定しました。
本質的部分について、上位概念化できるかについての判断基準について言及しています。
 特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なか った技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想 に基づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にある。したがって,\n特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち, 従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきで\nある。
そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許 発明の課題及び解決手段とその作用効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範 囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が\n何であるかを確定することによって認定されるべきである。すなわち,特許発明の 実質的価値は,その技術分野における従来技術と比較した貢献の程度に応じて定め られることからすれば,特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記 載,特に明細書記載の従来技術との比較から認定されるべきである。そして,従来 技術と比較して特許発明の貢献の程度が大きいと評価される場合には,特許請求の 範囲の記載の一部について,これを上位概念化したものとして認定され,従来技術 と比較して特許発明の貢献の程度がそれ程大きくないと評価される場合には,特許 請求の範囲の記載とほぼ同義のものとして認定されると解される。
ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載されているところ が,出願時の従来技術に照らして客観的に見て不十分な場合には,明細書に記載さ\nれていない従来技術も参酌して,当該特許発明の従来技術に見られない特有の技術 的思想を構成する特徴的部分が認定されるべきである。そのような場合には,特許\n発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載のみから認定される場合に 比べ,より特許請求の範囲の記載に近接したものとなり,均等が認められる範囲が より狭いものとなると解される。
・・・・
 本件特許出願日以前に,キャラクター画像情報に対する課金方法として,携帯端 末自体を改めて販売する態様ではないもの,すなわち,毎月100円を支払うこと により携帯電話機へ毎日異なるキャラクタ画面データを配信するiモード上での上 記サービス「いつでもキャラっぱ!」が公知であったこと(乙6),及びiモード においてはコンテンツプロバイダー(情報提供者)がコンテンツの情報料をNTT ドコモから携帯電話の通信料と合わせて課金し得るシステムが採用されていたこと (乙9)が認められる。このことに鑑みれば,本件特許出願日において,「サービ ス提供者にとっても,…キャラクター画像情報を更新するには,携帯端末自体を改 めて販売するしかない」ため「キャラクター画像情報により効率良く利益を得るの は困難であった。」(本件明細書【0003】)との課題が未解決のままであった とは認められない。
d しかるに,本件明細書には,乙6,8及び9記載の上記技術についての記載 はない。したがって,本件明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載さ れているところは,本件特許出願日における従来技術に照らして客観的に見て不十分なものと認められる。\nそうすると,本件発明の本質的部分は,本件明細書の記載に加えて,乙6,8及 び9記載の前記技術も参酌して認定されるべきである。
(オ) そして,本件明細書の記載並びに乙6,8及び9記載の前記技術によれば, キャラクター選択・変更等の態様に関する構成(前記1)並びに2)及び3)の組合せ) について,本件明細書は,複数のパーツを組み合わせて気に入ったキャラクターを 創作決定すること(前記2)及び3))を携帯端末サービスシステムで提供する(前記 1))という発想自体を開示するにとどまり,このようなシステムの実装における未 解決の技術的困難性を具体的に指摘し,かつ,その困難性を克服するための具体的 手段を開示するものではないので,従来技術に対する本件発明の貢献の程度は小さ いというべきである。 キャラクターの選択等に対する課金に関する構成(前記2)及び3)並びに4)の組合 せ)についても,本件明細書は,複数のパーツを組み合わせて気に入ったキャラク ターを創作決定し(前記2)及び3)),当該決定したキャラクターに応じた情報提供 料を通信料に加算する(前記4))という発想自体を開示するにとどまり,このよう な課金方法の実装における未解決の技術的困難性を具体的に指摘し,かつ,その困 難性を克服するための具体的手段を開示するものではないので,従来技術に対する 本件発明の貢献の程度は小さいというべきである。 そうすると,本件発明の本質的部分については,特許請求の範囲の記載とほぼ同 義のものとして認定するのが相当である。
・・・・
 前記認定の出願経過によれば,控訴人は,構成要件A〜C及びHからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項1に係る発明)及び構\成要件A〜E及びHからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項2に係る発明)については,特許 を受けることを諦め,これらに代えて構成要件A〜Hからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項1に同2及び5を統合した発明,すなわち本件発明)に限定\nして,特許を受けたものということができる。 そうすると,控訴人は,構成要件F及びGの全部又は一部を備えない発明について,本件発明の技術的範囲に属しないことを承認したか,少なくとも外形的にその\nように解されるような行動をとったものと理解することができる。 したがって,均等の成立を妨げる特段の事情があるというべきであり,均等の第 5要件を充足しない。
ウ 控訴人の主張について
この点につき,控訴人は,被告システムは「仮想モール」に相当する構成を有しているから,本件特許の出願経過を参酌したとしても,均等の成立を妨げる特段の\n事情があるとはいえない旨主張する。 しかし,前記のとおり,本件発明の「仮想モール」は「ショップ」というカテゴ リーを選択することによってアイテムを購入する仕組みを包含するものではなく, また,本件明細書【0045】は本件発明の「仮想モール」を説明するものと見る ことができない以上,当該段落が当初から残存していたという本件特許の出願経過 も,本件発明の「仮想モール」の技術的意義を左右するものではない。

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◆平成28年(ワ)第35182

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平成30(行ケ)10015  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月13日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判において使用が争われました。知財高裁は「使用として認める」とした審決を維持しました。
   原告は,1)本件商品が平成29年3月15日に被告のオンラインショップ でタオルとして販売開始されていること,2)「TL」という品番からして本件商品 は当初から「タオル」であって「ふきん」ではないと考えられること,3)アシスト 社への販売価格がライフブリッジ社からの仕入価格と同一であって不自然であるこ となどからすると,甲30〜33,36の信用性には重大な疑いがあると主張する。 まず,上記1)の主張は,被告のオンラインショップで発売されたタオル(甲2) が,本件商品と全く同一のものであることを前提としていると解されるが,被告代 表者は,当審において,オンラインショップで発売されたタオル(甲2)は,素材\nやデザイン等は本件商品と同一であるものの,本件商品とは別に,当初から「タオ ル」として,本件使用商標を付すことなく生産した本件商品とは異なる物であると 述べている。そして,この供述は,オンラインショップで発売されたタオル(甲2) には本件下げ札が付けられていないことと整合している上,内容的に明らかに不自 然な点も見当たらない。そうすると,本件商品と同じ素材やデザイン等からなる「タ オル」が被告のオンラインショップで平成29年3月から発売されたとしても,不 自然ではなく,前記2の認定を左右するものということはできない。 また,上記2)の主張について,「TL」という品番から直ちに本件商品が実際には 「タオル」であったとまで断ずることはできず,また,被告においては,オンライ ンショップでの販売は主たる事業ではなく,卸売が主たる事業であって,オンライ ンショップで販売される商品は,全取扱商品の20パーセントに満たない程度の商 品であり,オンラインショップの担当者がその判断で品名と発売時期を決定してい るものと認められる(被告代表者[当審])から,ふきんがオンラインショップで販\n売されていないとしても不自然ではない。 さらに,上記3)の主張について,証拠(甲18,19,被告代表者[当審])及び\n弁論の全趣旨によると,被告とアシスト社は代表者を同じくするグループ会社であ\nると認められることや被告がその他の商品と合わせて単価を決定した旨主張してい ることからすると,仕入価格と販売価格が同一であるとしても,直ちに不自然であ るとはいえない。
(2) 原告は,1)一緒に写りこんでいる商品のオンラインショップにおける発売 時期からすると,商品写真(甲29)は実際には平成29年2月末又は3月初めに 撮影されたものである,2)被告とアシスト社との関係やその内容からすると,証明 書2(甲37)は信用できない,3)請求書(甲35)は宛名がなく不自然である, 4)出荷伝票(甲34)は品番に誤りや不自然な点があって信用できないなどと主張 する。 まず,上記1)の主張について,上記(1)記載のとおり,被告においてはオンライン ショップでの販売は主たる事業ではなく,卸売が主たる事業であって,オンライン ショップの担当者がその判断で品名と発売時期を決定していることを踏まえると, 一緒に写りこんでいる他の商品が平成29年になって被告のオンラインショップで 発売されたからといって,商品写真(甲29)が,原告の主張するとおり,平成2 9年になってから撮影されたものと断ずることまではできない。 また,上記2)の主張について,証明書2(甲37)は,被告のグループ会社であ るアシスト社の従業員によって作成されたものであるが,他の証拠(甲34,35, 被告代表者[当審])と符合しており(前記2(2)),その限度では信用することがで きるものである。特許庁に提出された回答書(甲25)の内容に言及している点は, 自らが経験していない事実についての言及を含むものであるが,そうであるからと いって,その他の点まで信用することができないということにはならない。 さらに,上記3)の主張について,請求書(甲35)には宛名が記載されていない が,代表者を同じくするグループ会社間の取引について発行されたものであること\nを踏まえると,不自然で,請求書そのものの信用性が失われるとまではいえない。 そして,上記4)の主張について,出荷伝票(甲34)に記載された品名がオンラ インショップや被告のウェブサイトに記載された品名と異なっているからといって, 直ちに誤りであるとか不自然であるとか捏造されたということはできない。
(3) 原告は,1)口頭審理を拒否するなどの審判における被告の対応,2)4500 枚の本件商品のうち本件店舗に引き渡されたわずかのもの以外の行方が明らかとさ れていないこと及び3)第三者が作成した客観的な書類が提出されていないことなど からも,被告による本件商標の使用事実は存しないと主張する。 しかし,被告は,本件商標のブランド化がうまく進まない中で,本件商標を維持 するために費用や時間を費やすのに消極的な姿勢を見せているのであり(被告代表\n者[当審],弁論の全趣旨),そのような被告が,弁理士に要する費用や本件に対応 するための時間を節約しようと考えて,口頭審理を拒否するなど必要最小限の主張 立証しかしなかったとしても,直ちに不自然,不合理であるとはいえない。 また,本件では第三者たるライフブリッジ社の納品責任者が作成した客観的な取 引書類といえる納品書(甲31)が提出されているのであって,その他の第三者が 作成した書類が提出されていないからといって,前記2の認定が左右されるもので はない。

◆判決本文

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平成30(ネ)10009  損害賠償等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成30年6月7日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 不競法の商品形態模倣、著作権侵害などが争われました。知財高裁は、不競法については特徴部分は異なる形状であり、また、著作物性なしとして、1審の判断を維持しました。
 控訴人は,原告商品は,直針状の出口ノズルがフィーダ本体部の先端か ら突き出た形状で,配線チューブ等がフィーダ本体上部後端からまっすぐ に伸びている上,小型かつ軽量である点に特徴があるところ,被告各製品 もこの点において共通する形態及び構成を有していると主張する。\n この点につき検討するに,半田フィーダは,径の小さい半田(直径が1 ミリメートルに満たないものもある)を,半田付けしようとする位置に案 内するために用いられるものであるから,正確に位置決めをしたり,他の 機器との干渉を防いだりするために,供給する半田の出口に当たる出口ノ ズルを細長い直針状の形態とすることは,半田フィーダとしての機能を確\n保するために不可欠な形態というべきである。このことは,他社の半田フ ィーダが同様の形態を採用していることからも明らかである(乙11,1 2)。 また,出口ノズルに向けて半田を供給する際には,チューブ等の供給・ 支持部材と半田とが接触して,半田が曲がったり,摩擦による抵抗が生じ たりすることをできるだけ抑制し,安定して半田を供給する必要があると 考えられるところ,そのために,半田フィーダにおいて,半田の供給口に 当たる部材を出口ノズルの反対側の位置に出口ノズルに対してまっすぐに 取り付ける構成を採用することは,ごく自然な着想といえる。このことは,\n同様の構成を有する他社の半田フィーダが存在することによっても裏付け\nられているというべきである(乙12,15〜17)。 さらに,配線チューブがフィーダ本体上部後端からまっすぐに伸びてい る点についても,ある機器に何らかのチューブが取り付けられている場合 に,取り回し等の観点から複数のチューブをまとめて同方向に取り出すこ とは,他社の半田フィーダにおいても同様の構成が採用されていることが\n認められるように(乙15〜17),極めて容易に着想し得る一般的な構\n成というべきである。 なお,商品の重量そのものは,不競法2条4項が定める「商品の形態」 に当たるとはいえない。 以上によれば,控訴人が原告商品の特徴的形状であると主張する形態は, いずれも半田フィーダという商品が通常有する形態にすぎないというべき である。
・・・
著作権法上の美術の著作物として保護される ためには,仮にそれが産業用の利用を目的とするものであったとしても, 美的観点を全く捨象してしまうことは相当でなく,何らかの形で美的鑑賞 の対象となり得るような創作的特性を備えていなければならないというべ きである。 控訴人が主張するように,原告商品は,ステッピングモータの一部分が 飛び出している点を除き,出口ノズルから配線チューブ等に至るまで,各 構成が概ね直線状にコンパクトにまとめられた形態を有していることが認\nめられる。しかし,原告商品の外観からは,社会通念上,この機器を動作 させるために必要な部材を機能的観点に基づいて組み合わせたもの,すな\nわち技術的思想が表現されたものであるということ以上に,端整とか鋭敏,\n優雅といったような何かしらの審美的要素を見て取ることは困難であると いわざるを得ず,原告商品が美的鑑賞の対象となり得るような創作的特性 を備えているということはできない。

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原審はこちら。

◆平成27(ワ)33412

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平成29(行ケ)10228  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月13日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判において、「使用していた」との審決が維持されました。知財高裁は、本件ベルトの販売,納品は,売買取引の実体を伴うと判断しました。
 この点に関し原告は,フィールドハウスのヴァンヂャケットに対する本件 ベルトの譲渡行為は,関連会社間の単なる商品の移動であって,本件商標の 登録の不使用取消しを免れる目的で,名目的に本件使用商標を使用する外観 を呈する行為にすぎないから,商標法2条3項2号の使用に該当しない旨主 張する。 そこで検討するに,原告が主張するように,被告の代表取締役のAは,フ\nィールドハウス及びヴァンヂャケットの筆頭株主であること,被告の取締役 のBは,ヴァンヂャケットの社長であること,フィールドハウスの代表者の\nCは,ヴァンヂャケットの取締役であることが認められ(甲3ないし5,弁 論の全趣旨),被告,フィールドハウス及びヴァンヂャケットは,役員の一 部が共通し,相互に資本関係のある関連会社であるといえる。 しかしながら,被告,フィールドハウス及びヴァンヂャケットは,別個の 法人であって,前記1(1)認定のとおり,フィールドハウスのヴァンヂャケッ トに対する本件使用商標を付した本件ベルトの販売,納品は,売買取引の実 体を伴うものであり,関連会社間の単なる商品の移動ということはできない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。

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平成29(行ケ)10214  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月12日  知的財産高等裁判所

 デザイン化された「GUZZILLA」が、引用商標「GODZILLA」から混同生ずるか?(4条1項15号)が争われました。審判では無効理由無しと判断されましたが、知財高裁はかかる審決を取り消しました。両者は、商品・役務がかなり異なりますが、一部の商品について一般消費者によって使用されるとして、混同が認められました。
 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,称呼において相紛らわしいものであっ て,外観においても相紛らわしい点を含むものということができる。
(3) 引用商標の周知著名性及び独創性の程度
ア 怪獣映画に登場する怪獣である「ゴジラ」は,原告によって創作されたもの であり(甲4),「ゴジラ」が著名であることは当事者間に争いがない。 イ 怪獣映画に登場する怪獣である「ゴジラ」には,昭和30年,欧文字表記と\nして引用商標が当てられ,その後,引用商標が「ゴジラ」を示すものとして使用さ れるようになったものである(甲7,8)。欧文字表記の引用商標は,我が国にお\nいて,遅くとも昭和32年以降,映画の広告や当該映画中に頻繁に使用され(甲7, 8,21,39〜43,46〜50,55,79,80,81の1〜3,82,8 4),遅くとも昭和58年以降,怪獣である「ゴジラ」を紹介する書籍や,これを 基にした物品に多数使用されていること(甲17,18,21,22,26,45, 52〜54,56〜61,63〜73,77,78,86の1,92,101の3, 102の4,162),さらに,怪獣である「ゴジラ」の英語表記として多くの辞\n書にも掲載されていること(甲125〜129,143〜153)からすれば,引 用商標は著名であるということができる。
ウ 語頭が「G」で始まり,語尾が「ZILLA」で終わる登録商標は,引用商 標の他には,本件商標を除き見当たらない。架空の怪獣の名称において,語頭が濁 音で始まり,語尾が「ラ」で終わる3文字のものが多いとしても,これらは怪獣「ゴ ジラ」が著名であることの影響によるものと認められ(甲173,174),さら に,欧文字表記において,引用商標と類似するものも見当たらない。\nエ 以上によれば,引用商標は周知著名であって,その独創性の程度も高いとい うべきである。
(4) 商品の関連性の程度,取引者及び需要者の共通性
ア 商品の関連性の程度
本件指定商品は,第7類「鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,農業用 機械器具,廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置」である。本件指定商品には,専門的・ 職業的な分野において使用される機械器具が含まれる。また,これに加えて,本件 指定商品のうち,「荷役機械器具」には,油圧式ジャッキ,電動ジャッキ,チェー ンブロック,ウインチが,「農業用機械器具」には,刈払機,電動式高枝ハサミ, ヘッジトリマ,草刈機が,含まれる(甲225,226,231〜234,243, 253,乙18)。
これに対し,原告の主な業務は,映画の制作・配給,演劇の制作・興行,不動産 経営等のほか,キャラクター商品等の企画・制作・販売・賃貸,著作権・商品化権・ 商標権その他の知的財産権の取得・使用・利用許諾その他の管理であり(甲135), 多角化している。原告は,百社近くの企業に対し,引用商標の使用を許諾している ところ,その対象商品は,人形やぬいぐるみなどの玩具,文房具,衣料品,食料品, 雑貨等であるなど,多岐にわたる(甲12,83〜96,98〜102,199〜 211(枝番を含む。))。
本件指定商品のうち専門的・職業的な分野において使用される機械器具と,原告 が引用商標の使用を許諾した玩具,文房具,衣料品,食料品,雑貨等とは,前者が, 工場や事業所などの産業現場で,人間の業務を補助する機械であって,専らその性 能や品質などが商品選択の基準とされるのに対し,後者は,日常生活で,一般消費\n者によって使用される物であって,同種製品との差別化が難しいものであるから, 性質,用途及び目的における関連性の程度は高くない。 一方,本件指定商品に含まれる油圧式ジャッキ,電動ジャッキ,チェーンブロッ ク,ウインチ,刈払機,電動式高枝ハサミ,ヘッジトリマ,草刈機等の商品は,ホ ームセンター等の店舗やオンラインショッピング,テレビショッピングにおいて, 一般消費者に比較的安価で販売され得るものである(甲235〜242,244〜 252,254(枝番を含む。))。そうすると,これらの商品は,日常生活で, 一般消費者によって使用される物であって,同種製品との差別化が難しいものとい うことができる。これらの商品は,一般的な玩具等とは異なり,使用方法によって は,身体・財産に危険が生じるものではあるが,比較的小型の機械器具であって, その操作方法も比較的単純であるから,専門的な業務用途に限られるものではなく, 特別な知識,能力を有する者のみにその使用が限定されるものでもない。したがっ\nて,本件指定商品に含まれる油圧式ジャッキ,電動ジャッキ,チェーンブロック, ウインチ,刈払機,電動式高枝ハサミ,ヘッジトリマ,草刈機等と,原告が引用商 標の使用を許諾した玩具,雑貨等とは,ホームセンター等の店舗やオンラインショ ッピング,テレビショッピングにおいて,一般消費者に比較的安価で販売され得る ものであり,日常生活で,一般消費者によって使用されるなど,性質,用途又は目 的において一定の関連性を有しているといわざるを得ない。 よって,本件指定商品に含まれる商品の中には,原告の業務に係る商品と比較し た場合,性質,用途又は目的において一定の関連性を有するものが含まれていると いうべきである。
イ 取引者及び需要者の共通性
本件指定商品に含まれる前記油圧式ジャッキ等の,比較的小型で,操作方法も比 較的単純な荷役機械器具及び農業用機械器具の需要者は一般消費者であり,その取 引者は,これらの器具の製造販売や小売り等を行う者である。また,原告が引用商 標の使用を許諾した玩具,雑貨等の需要者は一般消費者であり,その取引者は,こ れらの商品の製造販売や小売り等を行う者である。本件指定商品の取引者及び需要 者の中には,原告の業務に係る商品の取引者及び需要者と共通する者が含まれる。 そして,商品の性質,用途又は目的からすれば,これら共通する取引者及び需要者 は,商品の性能や品質のみを重視するということはできず,商品に付された商標に\n表れる業務上の信用をも考慮して取引を行うというべきである。\n(5) 出所混同のおそれ 以上のとおり,「混同を生じるおそれ」の有無を判断するに当たっての各事情に ついて,取引の実情などに照らして考慮すれば,本件指定商品に含まれる専門的・ 職業的な分野において使用される機械器具と,原告の業務にかかる商品との関連性 の程度は高くない。
しかし,本件商標と引用商標とは,称呼において相紛らわしいものであって,外 観においても相紛らわしい点を含む。また,引用商標は周知著名であって,その独 創性の程度も高い。さらに,原告の業務は多角化しており,本件指定商品に含まれ る商品の中には,原告の業務に係る商品と比較した場合,性質,用途又は目的にお いて一定の関連性を有するものが含まれる。加えて,これらの商品の取引者及び需 要者と,原告の業務に係る商品の取引者及び需要者とは共通し,これらの取引者及 び需要者は,取引の際に,商品の性能や品質のみではなく,商品に付された商標に\n表れる業務上の信用をも考慮して取引を行うものということができる。\nそうすると,本件指定商品に含まれる商品の中には,本件商標を使用したときに, 当該商品が原告又は原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の 関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の\n業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるものが含まれるといわざるを得な い。
ウ 被告は,本件商標は引用商標にただ乗りするものではないし,本件商標を使 用しても引用商標の希釈化は生じないと主張する。 しかし,前記イのとおり,本件指定商品に含まれる油圧式ジャッキ等の取引者及 び需要者は,引用商標が有する力強いイメージに誘引されて,取引を行うことが十\n分に考えられるから,本件指定商品に本件商標が使用されれば,引用商標の持つ顧 客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリュ ージョン)を招く結果を生じかねない。
また,被告は,平成8年頃から,コンクリート等を圧搾する機能を有する被告ア\nタッチメントに本件商標を付して使用していることからすれば(甲130,167 〜170),被告は,引用商標が有する力強いイメージを想起させることを企図し て,被告アタッチメントに,引用商標と称呼において相紛らわしく,外観において も相紛らわしい点を含む本件商標を付していたものといわざるを得ない。さらに, 被告は,本件商標の商標出願日である平成23年11月21日以降ではあるものの, 原告が使用していた「SUPER GODZILLA」「SPACE GOZIL LA」と相紛らわしい「SUPER GUZZILLA」「SPACE GUZZ ILLA」を使用している(甲30,55,62,131,132,136〜13 8,155〜158,161〜165,198)。また,被告は,本件商標の商標 出願日以降ではあるものの,本件商標をタオル,腕時計,手袋,帽子,Tシャツ, パーカー等に付して,広く無償配布及び販売している(甲178〜188,218, 228,229)。加えて,被告は,本件商標の商標登録日以降ではあるものの, 我が国における周知著名な商標と相紛らわしい「ガリガリ君」や「STUDIO G ABULLI」との文字から成る商標につき商標登録出願もしている(甲139〜 142)。これらの被告の行為は,本件商標の商標登録出願時において,本件指定 商品に本件商標が使用されれば,引用商標の持つ顧客吸引力へのただ乗りやその希 釈化を招く結果を生じかねなかったことを間接的に裏付けるものといえる。 このように,本件指定商品に本件商標が使用されれば,引用商標の持つ顧客吸引 力へのただ乗りやその希釈化を招く結果を生じかねないから,被告の主張は採用で きない。

◆判決本文

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平成29(ネ)10033等  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年5月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審は一部侵害を認めましたが、知財高裁は、本件発明の技術的範囲に属さないとこれを取り消しました。
 特許請求の範囲の記載によれば,構成要件Eの「前記背後壁」は,「既\n設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる」(構成要件B)ものであり,\n改修の前後でその「高さ」が変わるものではない。他方,同「改修用下 枠」は,その「室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接 して支持されると共に,」その「室内寄りが,前記取付け補助部材で支 持され」(構成要件D)るものである。このため,構\成要件Eの「前記 背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さ」であることに寄与し ているのは,主ということができる。 この「取付け補助部材」について,本件明細書等の記載を見ると, 「既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用い る」(【0018】),「その取付用補助部材106の高さ寸法を変え ることで,異なる形状の既設下枠56にも同一形状の改修用下枠56 (裁判所注,改修用下枠69の誤記であると認める。)を,その支持壁 89と背後壁104を同一高さに取付けることが可能である。」(【0\n091】)との記載がある。しかも,段落【0018】には,上記記載 に先行して,「既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去したので, 改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,有効開 口面積が減少することがなく,広い開口面積が確保できる。」との記載 もある。 これらの事情を総合すると,構成要件Eの「同じ高さ」とは,「取付\nけ補助部材」で「改修用下枠」を支持することにより,「背後壁の上端」 と「改修用下枠の上端」とを,その間に高さの差が全くないという意味 での「同じ高さ」とした場合を意味するものと理解するのが最も自然で ある。 他方,「ほぼ同じ高さ」について,定義その他その意味内容を明確に 説明する記載は,本件明細書等には見当たらないが,以上に検討した点 を併せ考えると,ここでいう「ほぼ同じ高さ」とは,「取付け補助部材」 の高さ寸法を既設下枠の寸法,形状に合わせたものとすることにより, 「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とを,その間に高さの差が全 くないという意味での「同じ高さ」とする構成を念頭に,しかし,その\nような構成にしようとしても寸法誤差,設計誤差等により両者が完全に\nは「同じ高さ」とならない場合もあり得ることから,そのような場合を も含めることを含意した表現と理解することが適当である。\n
イ(ア) このように解することは,本件明細書等の図1に示された実施の形 態につき「前壁102の上端部から室内68に向かって上方へ傾斜する …底壁103の最も室内68側の端部に連な」る「背後壁104」が, 「室内側案内レール67と同一高さまで立ち上がる」ものとされ(【0 027】),また,同図6に示された実施の形態につき「既設下枠56 の背後壁104の上端部に室内68側に向かう横向片104aを有し, この横向片104aと改修用下枠69の支持壁89の上端が同一高さで ある」と記載されている(【0069】)一方で,図1及び6の実施の 形態と比較すると「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」の「高さ」 に図面上明らかに差が認められる図10及び11の実施の形態について は,「例えば,図10に示すように取付け補助部材106の高さ寸法を 大きくして室内側壁部108を底壁103に当接し,かつ室内側案内レ ール115にビス110で取付ける。…この場合には,支持壁89が背 後壁104より若干上方に突出する。」(【0092】)と記載され, 「同一高さ」等の表現が用いられていないこととも整合する。\n
(イ) 本件特許の出願経過に鑑みても,構成要件Eについては上記のよう\nに解釈することが適当というべきである。 すなわち,被控訴人らが構成要件E「前記背後壁の上端と改修用下枠\nの上端がほぼ同じ高さであり」を追加したのは,拒絶査定不服審判の請 求と同時にされた手続補正書による補正後の請求項1〜6に係る発明に 対する進歩性欠如の拒絶理由通知,これを受けての被控訴人らによる補 正案の作成と特許庁審判官によるその了承,サポート要件違反の拒絶理 由通知という経過を経た後の手続補正においてである。そうすると,構\n成要件Eの追加は,上記サポート要件違反の拒絶理由を解消するために のみなされたか,これと同時に上記進歩性欠如の拒絶理由も解消するた めになされたかのいずれかの意図によるものと理解される。 そして,サポート要件違反の拒絶理由通知には「本願の請求項1〜6 には,広い開口面積を確保する本願の課題に対応した構成が記載されて\nいない。」と記載されている。本件明細書等の記載によれば,この「広 い開口面積を確保する本願の課題」については,1)既設下枠に存在した 室外側案内レールを切断撤去してできたスペースを利用することで広い 開口面積を確保し,「有効開口面積が減少することが少ない」(本件明 細書等【0060】)ようにすることを意味するものと理解することが できる一方で,2)「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とを「ほぼ 同じ高さ」とすることで「有効開口面積が減少することがな」い(【0 018】)ようにすることを意味するものと理解することも可能である。\nしかし,「広い開口面積を確保する本願の課題」を1)の意味に理解す る場合,このような課題は本件明細書等の記載から見て本件発明により 当然に解決されるべきものであるから,本件特許に係る出願の審査段階 の当初から拒絶理由として通知されてしかるべきものである。ところが, 実際には,サポート要件違反の拒絶理由は,審査段階のみならず審判段 階でも1度目の拒絶理由通知では指摘されず,審判段階での2度目の拒 絶理由通知で指摘されたのであり,このような経緯に鑑みると,「広い 開口面積を確保する本願の課題」の意味を1)の趣旨でサポート要件違反 の拒絶理由通知がされたものと理解することは不自然というべきである。 他方,上記経過につき,審判合議体が,進歩性欠如の拒絶理由は「前 記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり」(構成要件\nE)との構成が追加されることで解消されると判断し,被控訴人らに更\nに補正の機会を与えるために,「広い開口面積を確保する本願の課題」 につき2)の意味を念頭にサポート要件違反の拒絶理由を通知したものと 理解するならば,2度目の拒絶理由通知の段階において敢えてサポート 要件違反の拒絶理由のみを通知したことも合理的かつ自然なこととして 把握し得る。現に,審判合議体は,「既設引戸を改修用引戸に改修する 際に有効開口面積が減少してしまうとういう課題を解決するものあっ て」,「当該構成は引用文献や他の文献から容易になし得たものである\nとはいえず」との審決書の記載から明らかなとおり,サポート要件違反 の拒絶理由通知を契機として「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端が ほぼ同じ高さであり」という構成要件Eが追加されたことによりサポー\nト要件違反及び進歩性欠如の拒絶理由がいずれも解消されたものとして 判断しており,このことは上記理解と整合的である。
ウ 被控訴人らの主張について
(ア) 被控訴人らは,本件発明において,改修用下枠の上端と背後壁の上 端との高さの差に一定の制限を設けないと,室外側案内レールを切断 撤去することにより従来技術に比べ開口面積の減少を少なくし,広い 開口面積を確保することが可能になったにもかかわらず,その取付け\nスペースを利用しないことにより改修用下枠が取付けスペース内に沈 み込まないために,本件発明の効果を達成し得ない構成も文言上包含\nされてしまうことから,本件発明の効果を達成できる範囲内において, 既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの関係を規定した のが構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」であると主張する。\nしかし,取付けスペースを利用することを規定したいのであれば,例 えば,改修用下枠の一部が,既設下枠の室外側案内レール(切断して撤 去されている。)が存在した高さよりも低い位置に挿入されることを規 定するなど,端的に取付けスペースを利用することを明確にする補正を すればよいのであって,取付けスペースを利用しない構成を除外する目\n的で既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの関係を請求項 に記載することの合理性は乏しいというべきである。
(イ) また,被控訴人らは,改修用引戸枠を既設引戸枠にかぶせて取り付 けるものである以上,有効開口面積は必ず減少するのであるから,本 件発明の課題(作用効果)を既設引戸を改修用引戸に改修する際に有 効開口面積を減少することがないようにすること(本件明細書等【0 018】)と理解するのは誤りであるとする。 しかし,本件明細書等には「有効開口面積が減少することが少ない」 (【0060】)と「有効開口面積が減少することがな」い(【001 8】)という異なる表現が用いられているのであるから,両者を区別し\nた上で,「有効開口面積が減少することがない」ことの意味を探求しよ うとするのはむしろ当然である。そして,本件明細書等の記載からは, 本件発明は改修引戸装置の下枠の態様に重点が置かれたものと考えられ るのであるから,その作用効果の説明を理解するに当たり下枠に着目し, 改修用引戸の取付けにより客観的には有効開口面積が減少していても, 「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」を文字通り「ほぼ同じ高さ」 とすることにより下枠に関しては「有効開口面積を減少することがない」 という作用効果が得られることが表現されていると解することには十\分 な合理性があるといえる。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成26(ワ)7643

この特許権の無効審判の審取はこちらです。

◆平成29年(行ケ)第10081号

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平成28(ワ)41720  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年5月31日  東京地方裁判所(47部)

 国が被告の特許権侵害事件です。気象庁の緊急地震速報が特許侵害かが争われました。裁判所は、「地震の到来方向」を演算したり,これを警報・通報することを想定していないとして、請求が棄却されました。
 緊急地震速報で発表する内容は以下のとおりである。
(ア) 緊急地震速報(警報)
・地震の発生時刻,震源の位置
・強い揺れ(震度5弱以上)及び震度4の地域の名称
(イ) 緊急地震速報(予報)
・地震の発生時刻,震源の位置,地震の規模(マグニチュード)
・強い揺れ(震度5弱以上)及び震度4の地域の名称
・予想される震度
・主要動の到達予想時刻
ウ 緊急地震速報の処理の流れは,以下のとおりである。
(ア) 観測点における震源推定処理
地震波を検知した観測点において地震波形を解析し,P波初動の時刻, 震央距離(B−Δ法による),震央方向(主成分分析法による),最大振幅, リアルタイム震度等を求める。この処理は地震検知を契機に実施され,そ の後毎秒,処理中枢(気象庁本庁・大阪管区気象台の処理中枢:EPOS) に送信される。
(イ) EPOS中枢処理における震源推定処理
EPOSにおいて震源を推定する処理では,最初にどこかの観測点で地 震波を検知してから,時間が経過して「地震波を検知する観測点が増える」 のに合わせ,様々な手法により震源計算を繰り返す。震源計算の手法には, IPF法,着未着法,EPOSによる自動震源決定処理があり,概ね時間 とともに精度が高くなる。
(ウ) マグニチュードの計算
前記の処理で推定した震源と観測した地震波の最大振幅を用いて,地震 の規模(マグニチュード)を毎秒推定する。
(エ) 震度等の予想
震源とマグニチュードを元に,地予想震度の精度も時間の経過とともに向上することが期待できる。
(オ) 情報の発表
震度等の計算結果が,発表条件・更新条件を満たすと,人手を介するこ\nとなく直ちに緊急地震速報を発表する。
(7) 上記(5),(6)のとおり,被告(気象庁)が行う緊急地震速報では,地震の観 測,データ処理,情報の発表を行うにすぎず,「受信」行為を行っていない(緊\n急地震速報を受信するのは,被告(気象庁)以外の第三者である。)。 また,仮に上記第三者の受信行為まで考慮に入れたとしても,被告の緊急地 震速報では,本件発明の「検出センタ」に相当する処理装置から「予想震度」\nや「到達予想時刻」が出力されており,受信機側で「予\想震度」や「到達時刻」 の演算が行われることは想定されておらず,したがって,個々の受信位置ごと に異なる個別の情報が提供されることもない。 さらに,被告の緊急地震速報で発表される情報は,上記(6)イのとおりであ り,その中に「地震の到来方向」は含まれていない。なお,インターネット検 索サイト Yahoo!JAPAN のニュースサイトに掲載された,高度利用者向け受信端 末の緊急地震速報に係る画像(甲5)上も,各地の予想震度を1つの地図内に\n図示しているにすぎず,地震データをそのまま告知に利用しており,個々の受 信機の受信位置ごとに異なる個別の情報である「地震の到来方向」を提供して いない。したがって,上記地図をみた者は,自らの所在地と震源地とを比較す ることで「地震の到来方向」を判断できるとしても,同地図上,「地震の到来方 向」自体が「警報・通報」されているものとはいえない。 このように,被告が行う緊急地震速報は,1)「受信」行為が含まれていない ほか,仮に第三者の受信行為まで考慮に入れたとしても,2)受信機側で「予想\n震度」や「到達時刻」の演算が行われることが想定されておらず,3)地震デー タをそのまま告知に利用しており,「地震の到来方向」を演算したり,これを警 報・通報することを想定していないから,いずれにしても,本件発明の構成要\n件(4)及び(5)を充足しない。これに反する原告の主張は,上記説示に照らして 採用できない。

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平成30(行ケ)10010  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成30年5月30日  知的財産高等裁判所

 特許公報(実案公報)に記載された形状が、意匠法の創作容易性の基礎となる「公然知られた意匠」に該当するのかが争われました。知財高裁は、特許庁発行の公報の目的、および公表の期間、不特定又は多数の者に知られた事実を優に推認できると判断しました。
 意匠法3条2項は,公然知られた形状等に基づいて容易に意匠の創作をする ことができたときは,意匠登録を受けることができない旨を規定している。公然「知 られた」との文言や,同条1項が,刊行物に記載された意匠(同条1項2号)と区別 して「公然知られた意匠」(同条1項1号)を規定していることと対比すれば,「公然 知られた」というためには,意匠登録出願前に,日本国内又は外国において,現実に 不特定又は多数の者に知られたという事実が必要であると解すべきである。
イ 引用意匠1は,昭和54年に公開された公開実用新案公報に記載された意匠 であり,引用意匠2は,昭和61年に公開された公開実用新案公報に記載された意 匠である。したがって,引用意匠1の記載された公報は,本願意匠の登録出願時ま でに37年が,引用意匠2の記載された公報は,同じく30年が,それぞれ経過し ている。 特許庁発行の公報は,閲覧・頒布等によりその内容を周知する目的のものであり, 多数の公共機関に対し交付され,これらの機関の多くにおいて一般の閲覧に供され ている。引用意匠1の記載された公報が発行された翌年の昭和55年当初における 交付先施設数は225か所で,このうち,一般の公開に供している地方閲覧所は1 15か所であり,昭和54年の一般地方閲覧所の公報類の閲覧者数は23万387 9人である(乙1の1・2)。引用意匠2の記載された公報が発行された昭和61年 当初における交付先施設数は211か所で,このうち,一般の公開に供している地 方閲覧所は109か所であり,同年の一般地方閲覧所の公報類の閲覧者数は17万 1665人である(乙2)。 さらに,特許庁では,平成11年3月にインターネットを通じて産業財産権情報 を無料で提供する「特許電子図書館(IPDL)」サービスを開始した。また,その 後,その運営の移管を受けた独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)に おいて,平成27年3月から「特許情報プラットフォーム(J−PlatPat)」 の提供を開始している。J−PlatPatでは,明治以降発行された1億件を超 える公報類や諸外国で発行された公報を蓄積しており,文献番号,各種分類,キー ワード等により検索することが可能である(乙3)。\n
ウ 以上の事実を総合すると,引用意匠1及び引用意匠2の記載された公報が, いずれも,本願意匠の登録出願時まで長期にわたって公然知られ得る状態にあって, 現実に不特定又は多数の者の閲覧に供されたことが認められる。そして,これらの 事実によれば,これら公報に記載された引用意匠1及び引用意匠2に係る形状が, 現実に不特定又は多数の者に知られた事実を,優に推認することができる。
(2) 創作容易性について
本願意匠は,意匠に係る物品を「中空鋼管材におけるボルト被套具」とし,その形 状は,正面視をハット状,平面視を縦長長方形の板状としたものである。 引用意匠1は,建築構成材や建築構\造材に固定される横長長方形板状の支持具の 表面に現れるボルトの頭部を,支持具全体を被覆して保護するボルトカバーに係る\n意匠であり,横長長方形板の左側端部を内側にコ字状に屈曲させ,右側端部をL字 状に屈曲させた形状のものである(甲1)。 引用意匠2は,建築用の支持材に係る意匠であり,全体形状を,長手方向に垂直 な断面をハット状に形成した板状の長尺材としたものである(甲2)。 引用例1によれば,引用意匠1のボルトカバー(7)は,固定板(1)の係止リブ (8a)(8b)に形合するように,その端部の形状が形成されているものであり, 端部の形状は,ボルトカバーを取り付ける箇所等に応じて,当業者が任意に選択で きるものと解される。また,ボルトカバーの幅や長さも,当業者が適宜選択できる ものである。そうすると,建築部材の分野における当業者であれば,引用意匠1の ボルトカバーに,引用意匠2の形状を適用して,ボルトカバーの端部の形状を変更 するとともに,その幅及び長さを変更して,正面視をハット状,平面視を縦長長方 形の板状とすることは,容易になし得ることであるから,本願意匠は,当業者が,引 用意匠1に,引用意匠2を適用して,容易に創作することができたものと認められ る。

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◆平成30(行ケ)10009

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平成29(行ケ)10197  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年5月30日  知的財産高等裁判所

 代理人を追加選任し、もとの代理人を解任した場合、すでに元の代理人宛に送られていた拒絶査定の送達の有効性が争われました。知財高裁(2部)は、条文に基づいて有効であると判断しました。
 原告は,特許出願手続においては,代理人の追加選任がされた場合には, 新たな代理人(新たな代理人が複数の場合は,その筆頭代理人)に対し,書類の送 付を行う実務運用がされてきたのであって,その実務運用には法規範性が認められ, 特許庁長官が,その実務運用に反する名宛人及び場所に送達をした場合,当該送達 には方式の瑕疵があり,適法な送達と認められない旨主張する。 日本弁理士会の対庁協議事項集(甲12)には,特許庁が,昭和54年4月1日 以前において,特許出願につき,「代理人が追加受任された場合は,新たな代理人を 筆頭の代理人とし,特許庁からの手続は,新たな代理人に対して行うが,筆頭代理 人の変更を希望しない旨の申出があったときは,この限りでない。」との取扱いを行\nっていた旨記載されており,日本弁理士会の対庁協議事項集(甲13)には,平成 28年3月17日においても,同様の取扱いを行っていたことが記載されている。 しかし,特許法12条は,前記のとおり,代理人の個別代理を定めているから, 特許庁が上記のような取扱いをしており,それが対庁協議事項集に記載されている からといって,新たな代理人以外の代理人に対する送達の効力を否定することはで きないものと解される。特許庁の上記取扱いに法規範性を認めることはできず,原 告の上記主張を採用することはできない。 そして,上記の結論は,A弁理士に任務懈怠があったとしても,左右されるもの ではない。
(5) なお,本件においては,前記1のとおり,特許庁は,本件拒絶査定の謄本 を,平成27年2月17日,発送し,当該謄本は,A弁理士に対して送達されたと ころ,同月25日には,A弁理士の代理人解任届が提出されている。原告の代理人 であった米国の法律事務所のパートナーは,平成26年10月頃以降,それより前 には定期的に連絡してきていたA弁理士から,連絡がなくなり,同年11月,A弁 理士が出願を行った別件の日本特許出願につき,拒絶査定があり,A弁理士がこれ に対して応答しなかったため,当該特許出願が失効していたことが判明したことを 契機に,A弁理士を解任し,別の代理人に業務を引き継がせることにしたというの であるから(甲3),原告は,遅くとも代理人解任届が提出された平成27年2月2 5日には,上記特許出願以外の特許出願(本願を含む。)についても,A弁理士に対 し,拒絶査定が送達され,同弁理士が応答していない可能性があることを認識し得\nたといえる。しかし,原告は,平成27年2月25日当時は,拒絶査定不服審判請 求が可能である期間中であったにもかかわらず,当該請求を行わず,当該期間を徒\n過したのであるから,実質的にみても,前記の結論を覆すに足りる事情はない。

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平成29(行ケ)10129  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年5月24日  知的財産高等裁判所

 知財高裁(3部)は、サポート要件の判断の前提となる課題の認定自体を誤ったとして、サポート要件違反の異議理由ありとした審決を取り消しました。
 前記のとおり,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否か は,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請 求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発 明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決 できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がな くとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると 認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 また,発明の詳細な説明は,「発明が解決しようとする課題及びその解 決手段」その他当業者が発明の意義を理解するために必要な事項の記載が 義務付けられているものである(特許法施行規則24条の2)。 以上を踏まえれば,サポート要件の適否を判断する前提としての当該発 明の課題についても,原則として,技術常識を参酌しつつ,発明の詳細な 説明の記載に基づいてこれを認定するのが相当である。
かかる観点から本件発明について検討するに,本件明細書の発明の詳細 な説明には,米糖化物含有食品であるライスミルクの製造時に各種酵素を 制御することなく加えると,プロテアーゼによりアミノ酸,オリゴペプチ ドが生成し,うまみ調味料様の雑味がついてしまい,用途が限られたこと (【0002】),食感が滑らかで雑味がなくすっきりした味を持つ米糖 化液としてアミノ酸濃度が一定範囲である米糖化液が開発されたが,甘味, コク(ミルク感)等の風味は十分に改善されておらず,必ずしも満足できるものではなかったこと,さらに,グラノーラ,パンケーキ等が流行する一方,牛乳アレルギー,大豆アレルギーの人口は増加傾向にあり,風味が改善された牛乳や豆乳の代用品が求められていたこと(【0003】)などが背景技術として記載されている。その上で,発明の詳細な説明には,発明が解決しようとする課題として,「本発明は,米糖化物含有食品のコ\nク,甘味,美味しさ等を改善するという課題を解決すべく鋭意研究を重ね た結果見出されたものである。すなわち,本発明は,コク,甘味,美味し さ等を有する米糖化物含有食品を提供することを目的とする。さらに,従 来牛乳や大豆を用いて製造又は調理されていた多数の食品を作ることを可 能にする食品を提供することも目的とする。」との記載がある(【000\n6】)。
これらの記載からすれば,本件発明は,「コク,甘味,美味しさ等を有 する米糖化物含有食品を提供すること」それ自体を課題とするものである ことが明確に読み取れるといえる。
イ これに対し,異議決定は,「本件発明1の課題は,本件特許明細書の『コ ク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供すること』(【0 006】)との記載及び実施例(【0031】〜【0043】)において, 『コク(ミルク感)』,『甘み』及び『美味しさ』の各評価項目について 評価を行っていることから,『コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物 含有食品を提供すること』と認められる。」と,一旦は上記アと同様に本 件発明1の課題を認定しながら,最終的なサポート要件の適否判断に際し ては,「本件発明1の課題は,上記aのとおり,具体的には,実施例1− 1のライスミルクに比べてコク(ミルク感),甘味及び美味しさについて 優位な差を有するものを提供することであ(る)」とその課題を認定し直 し,課題の解決手段についても,「本件発明1が課題を解決できると認識 できるためには,…実施例1−1のライスミルクに比べてコク(ミルク感), 甘味及び美味しさについて優位な差を有することを認識できることが必要 である。」としている(異議決定12頁16〜25行)。
この点について,被告は,発明が解決しようとする課題とは,出願時の 技術水準に照らして未解決であった課題であるから,本件発明1の「コク, 甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供すること」という課題 は,本件出願時の技術水準を構成する米糖化物含有食品(具体的には,実\n施例1−1のライスミルク)に比べて,コク,甘味,美味しさ等を有する 米糖化物含有食品を提供することであり, したがって,異議決定において は,本件発明1の課題について,「具体的には,実施例1−1のライスミ ルクに比べてコク(ミルク感),甘味及び美味しさについて優位な差を有 するものを提供すること」としたものである(したがって,異議決定の課 題の認定に誤りはない)と主張する。 確かに,発明が解決しようとする課題は,一般的には,出願時の技術水 準に照らして未解決であった課題であるから,発明の詳細な説明に,課題 に関する記載が全くないといった例外的な事情がある場合においては,技 術水準から課題を認定するなどしてこれを補うことも全く許されないでは ないと考えられる。
しかしながら,記載要件の適否は,特許請求の範囲と発明の詳細な説明 の記載に関する問題であるから,その判断は,第一次的にはこれらの記載 に基づいてなされるべきであり,課題の認定,抽出に関しても,上記のよ うな例外的な事情がある場合でない限りは同様であるといえる。 したがって,出願時の技術水準等は,飽くまでその記載内容を理解する ために補助的に参酌されるべき事項にすぎず,本来的には,課題を抽出す るための事項として扱われるべきものではない(換言すれば,サポート要 件の適否に関しては,発明の詳細な説明から当該発明の課題が読み取れる 以上は,これに従って判断すれば十分なのであって,出願時の技術水準を\n考慮するなどという名目で,あえて周知技術や公知技術を取り込み,発明 の詳細な説明に記載された課題とは異なる課題を認定することは必要でな いし,相当でもない。出願時の技術水準等との比較は,行うとすれば進歩 性の問題として行うべきものである。)。
これを本件発明に関していえば,異議決定も一旦は発明の詳細な説明の 記載から,その課題を「コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食 品を提供すること」と認定したように,発明の詳細な説明から課題が明確 に把握できるのであるから,あえて,「出願時の技術水準」に基づいて, 課題を認定し直す(更に限定する)必要性は全くない(さらにいえば,異 議決定が技術水準であるとした実施例1−1は,そもそも公知の組成物で はない。)。 したがって,異議決定が課題を「実施例1−1のライスミルクに比べて コク(ミルク感),甘味及び美味しさについて有意な差を有するものを提 供すること」と認定し直したことは,発明の詳細な説明から発明の課題が 明確に読み取れるにもかかわらず,その記載を離れて(解決すべき水準を 上げて)課題を再設定するものであり,相当でない。 以上によれば,異議決定における課題の認定は妥当なものとはいえず, 被告の主張は採用できない。
(2) 課題を解決できると認識できる範囲について
ア 上記のとおり,本件発明の課題は,コク,甘味,美味しさ等を有する米 糖化物含有食品を提供することであると認められるので,本件発明が,発 明の詳細な説明の記載から,「コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物 含有食品を提供する」という課題を解決することができると認識可能な範\n囲のものであるか否かについて検討する。
・・・
(エ) そして,上記試験例1,2及び4の結果を総合すれば,本件発明4に ついても,課題が解決できる範囲のものであることが裏付けられている といえる。
エ 以上によれば,本件発明は,いずれも,発明の詳細な説明の記載から, 「コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供する」という 課題を解決することができると認識可能な範囲のものであるといえる。\n

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平成30(行ケ)10003  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年5月28日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判の取消訴訟です。知財高裁は、「本件セールにおいて,本件商品に本件タグが付されて展示,販売された事実を推認させるものではなく・・・」と、不使用とした審決を維持しました。
 原告の提出する証拠(甲5,7,9〜12,25)から認められるのは,せいぜい,本件商品が本件セールの際に倉庫からセール会場に移動され,各500円(消費税別)で販売されたという事実にすぎず,本件セールにおいて,本件商品に本件タグが付されて展示,販売された事実を推認させるものではなく,そのほかに,原告の主張を認めるに足りる証拠はない。原告の主張は,客観的な裏付けを欠くものであり,以下のアないしウの事実に照らしても,不自然,不合理であって,採用できない。
ア 本件タグは,その表面に本件商標が表\示され,その裏面に,原告の名称のほ か,当該商品の品番,サイズ,素材,生産国,バーコード情報,本体価格,税込価 格等が表示されているところ,この税込価格は,消費税率を5%として計算したも\nのである(甲3,4の1・2)。しかし,我が国の消費税率は,本件セールの開催 日より2年半以上前の平成26年4月1日に,5%から現行の8%に改定されてい る(乙3)。この点について,原告は,特価であることの理由を示すために発売当 時の下げ札をそのまま付けておいた旨主張するが,消費税改定後に展示販売する商 品に消費税改定前の税込価格を表示したタグを付すことは,商品の購入者を混乱さ\nせたり,当該商品が古い物であるという印象を与えたりしかねないことから,通常 は,そのような取扱いはされないものと考えられる。
イ 本件タグに表示された前記アの情報は,購入者にとって重要な情報であり,\nかかる情報が表示されたタグは,それが付された商品とともに購入者に引き渡すの\nが通常であると考えられる。また,タグは,紐や結束バンドによって被服に取り付 けられるのが通常であるところ,本件タグは,タグの上部に結束バンドがくくり付 けられており,結束バンドは切断されていない(甲3,4の1・2)。かかる事実 は,本件タグが,本件商品を顧客に引き渡した際に本件商品から取り外されたもの ではないことを推認させるものである。なお,原告は,本件タグは結束バンドでは なく下げ紐により本件商品にくくり付けられていた旨主張するが,下げ紐を取り外 す際に,ハサミなどで切断せずに,その都度紐をほどくという煩瑣な方法をとって いたというのは,不自然である。また,原告は,上記のとおり購入者にとって重要 な情報が表示された本件タグを本件商品の購入者に引き渡さなかった理由について,\n何ら合理的な説明をしていない。
ウ 原告は,平成30年3月11日に,本件セールと同じ会場において,本件セ ールと同様のファミリーセールを開催し,そこで展示された原告商品の中には,本 件商品と同じ500円均一の価格(消費税別)と表示されたものも存在するが,「本\n体価格 ¥500」等の価格表示以外のタグは付されていない(乙1,2)。そう\nすると,仮に,本件セールにおいて本件商品が販売された事実があるとしても,本 件商品を展示して販売する際に,本件タグが付されていなかった可能性は高い。な\nお,原告は,上記平成30年のセールにおいて展示販売された原告の在庫資産であ る商品には,本件タグと同様の下げ札が付されていた旨主張するが,これを裏付け る的確な証拠はない。
(3)以上のとおり,原告が本件セールにおいて本件商品に本件タグを付して展示 販売することにより,本件商標を使用したとの事実を認めることはできない。また, 原告は,そのほかに,指定商品のうち第25類「被服」について,本件商標を要証 期間内に使用したことの主張立証をしない。
(4) 小括
よって,本件商標が要証期間内に指定商品のうち第25類「被服」について使用 されたとの事実は認められないというべきであり,本件商標の指定商品のうち第2 5類「被服」についての商標登録は,商標法50条の規定により取り消されるべき ものである。

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平成29(ネ)10102  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年5月21日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 知財高裁でも、均等侵害が否定されました。
 本件各発明の意義は,充填された液体に臭いが移ることがな く,自立的に形状を維持でき,内部に空気を送り込むことなく,充填された液体の ほぼ全量を排出可能なウォーターサーバー用ボトルを提供するという課題を達成す\nるために,本件各発明の構成を採用することにある。すなわち,本件各発明は,全\n体をPET樹脂によって形成することで,液体を充填した際でも自立的に形状を維 持でき,液体に臭いが移ることがないようにし,胴部に上下方向に伸縮自在な蛇腹 部を設けることで,潰れやすさを向上させ,さらに,蛇腹部と底部との間に裾絞り 部を形成することで,ボトルが大気圧で押し潰れていく際に,裾絞り部が蛇腹部の 方に引き込まれていき,蛇腹部の内部の容積を削減する機能を有するようにしたも\nのである。 このような,本件明細書に記載された,蛇腹部と底部との間に裾絞り部を形成す ることの技術的意義に鑑みると,構成要件Hの「内部の液体の排出に伴って,前記\n裾絞り部がボトル内部に引き込まれること」とは,ウォーターサーバー用ボトル内 部の液体の排出に伴って,裾絞り部が蛇腹部の内部に引き込まれることを意味する ものと解される。 また,かかる解釈は,本件各発明の実施の形態として本件明細書に記載されてい る唯一の実施例において,内部の液体の排出に伴って【図4】(B),【図5】(A), 【図5】(B)と変化することが記載され,【図5】(B)において,裾絞り部が 蛇腹部の内部に引き込まれていることとも整合する。 ウ 以上のとおり,特許請求の範囲の記載,本件明細書の記載及び本件発明1に おける裾絞り部の技術的意義を総合すれば,構成要件Hの「内部の液体の排出に伴\nって,前記裾絞り部がボトル内部に引き込まれること」とは,ウォーターサーバー 用ボトル内部の液体の排出に伴って,裾絞り部が蛇腹部の内部に引き込まれること を意味するものと解される。
エ 控訴人の主張について
控訴人は,裾絞り部がボトル内部に引き込まれることの効果は,ボトル内の残水 を減らすことにあり,これを達するには,裾絞り部がボトル内部の方向に引き込ま れれば足り,蛇腹内部に裾絞り部が引き込まれることまで要求されるものではない から,構成要件Hの「裾絞り部がボトル内部に引き込まれる」とは,裾絞り部が蛇\n腹部の方向,つまり裾絞り部から見てボトル内部の方向に引き込まれることを意味 すると解される旨主張する。 しかし,前記イのとおり,蛇腹部と底部との間に裾絞り部を形成することの技術 的意義は,ボトルが大気圧で押し潰れていく際に,裾絞り部が蛇腹部の内部に引き 込まれていき,蛇腹部の内部の容積を削減する機能を有するようにしたことにある\nところ,単に裾絞り部がボトル内部の方向に引き込まれるというだけでは,本件明 細書に記載された本件各発明の上記効果を奏するものではなく,裾絞り部が蛇腹部 の内部まで引き込まれることによって,上記効果を奏するものである。 また,控訴人は,本件特許の出願時の請求項1を特許請求の範囲から削除し,出 願時の請求項2に構成要件Hを追加して請求項1とするなどの補正をした際に(乙\n6),審査官に対し,本件発明1は構成要件FないしHの構\成を備えることにより, 「ボトルが大気圧で押し潰れていく際,裾絞り部が蛇腹部の方に引き込まれていき, 蛇腹部の内部の容積を削減する機能があり(本件明細書【0020】),ボトル内\nの残水を減らす効果がある。」旨の意見を述べていたものであり(乙7),控訴人 の前記主張は,本件特許の出願経過における控訴人の主張とも異なるものである。 したがって,控訴人の上記主張は採用できない。

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原審はこちら。

◆平成28(ワ)7649

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平成28(ネ)10101  発信者情報開示請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成30年4月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 発信者情報開示事件です。1審では、リツイートはインラインリンクであるので、著作権侵害に該当しないと判断され、請求は棄却されました。知財高裁(2部)は、著作者人格権侵害があったとして、一部の発信者情報について開示を認めました。
 前記(1)のとおり,本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている\n画像は,流通情報2(2)の画像とは異なるものである。この表示されている画像は,\n表示するに際して,本件リツイート行為の結果として送信された HTML プログラム や CSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,上記のとおり 画像が異なっているものであり,流通情報2(2)の画像データ自体に改変が加えら れているものではない。 しかし,表示される画像は,思想又は感情を創作的に表\現したものであって,文 芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号にいう 著作物ということができるところ,上記のとおり,表示するに際して,HTML プロ グラムや CSS プログラム等により,位置や大きさなどを指定されたために,本件ア カウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3〜5のよ\nうな画像となったものと認められるから,本件リツイート者らによって改変された もので,同一性保持権が侵害されているということができる。 この点について,被控訴人らは,仮に改変されたとしても,その改変の主体は, インターネットユーザーであると主張するが,上記のとおり,本件リツイート行為 の結果として送信された HTML プログラムや CSS プログラム等により位置や大きさ などが指定されたために,改変されたということができるから,改変の主体は本件 リツイート者らであると評価することができるのであって,インターネットユーザ ーを改変の主体と評価することはできない(著作権法47条の8は,電子計算機に おける著作物の利用に伴う複製に関する規定であって,同規定によってこの判断が 左右されることはない。)。
また,被控訴人らは,本件アカウント3〜5のタイム ラインにおいて表示されている画像は,流通情報2(1)の画像と同じ画像であるから, 改変を行ったのは,本件アカウント2の保有者であると主張するが,本件アカウン ト3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は,控訴人の著作物である本\n件写真と比較して改変されたものであって,上記のとおり本件リツイート者らによ って改変されたと評価することができるから,本件リツイート者らによって同一性 保持権が侵害されたということができる。さらに,被控訴人らは,著作権法20条 4項の「やむを得ない」改変に当たると主張するが,本件リツイート行為は,本件 アカウント2において控訴人に無断で本件写真の画像ファイルを含むツイートが行 われたもののリツイート行為であるから,そのような行為に伴う改変が「やむを得 ない」改変に当たると認めることはできない。
イ 氏名表示権(著作権法19条1項)侵害
本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像には,控訴人\nの氏名は表示されていない。そして,前記(1)のとおり,表示するに際して HTML プ ログラムや CSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,本件 アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3〜5の\nような画像となり,控訴人の氏名が表示されなくなったものと認められるから,控\n訴人は,本件リツイート者らによって,本件リツイート行為により,著作物の公衆 への提供又は提示に際し,著作者名を表示する権利を侵害されたということができ\nる。
・・・
(7) 「侵害情報の流通によって」(プロバイダ責任制限法4条1項1号)及び 「発信者」(同法2条4号について
前記(5)ア,イのとおり,本件リツイート行為は,控訴人の著作者人格権を侵害す る行為であるところ,前記(5)ア,イ認定の侵害態様に照らすと,この場合には,本 件写真の画像データのみならず,HTML プログラムや CSS プログラム等のデータを 含めて,プロバイダ責任制限法上の「侵害情報」ということができ,本件リツイー ト行為は,その侵害情報の流通によって控訴人の権利を侵害したことが明らかであ る。そして,この場合の「発信者」は,本件リツイート者らであるということがで きる。

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一審はこちらです。

◆平成27(ワ)17928

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平成28(ワ)30183  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年5月11日  東京地方裁判所(40部)

 「SAPIX 8月マンスリー」「SAPIX生のための復習用教材」「SAPIX今週の戦略ポイント Daily Support」)等と使用することは、自他商品等を識別する機能を果たす態様で用いられていないので、不競法2条1項1号の「使用」には該当しないと判断されました。
 原告は,不競法2条1項1号にいう「使用」の意義について,自他識別力 のある使用といえるかどうかは独立の要件ではなく,営業主体の混同のおそ れの有無の判断において考慮すべき要素にすぎないと主張する。しかし,同 号は,人の業務に係る商品又は営業(以下「商品等」という。)の表示につ\nいて,その商品等の出所を表示して自他商品等を識別する機能\,その品質を 保証する機能及びその顧客吸引力を保護し,事業者間の公正な競争を確保す\nることを趣旨とするものであるから,同号にいう「使用」というためには, 単に他人の周知の商品等表示と同一又は類似の表\示を商品等に付しているの みならず,その表示が商品等の出所を表\示し,自他商品等を識別する機能を\n果たす態様で用いられていることを要するというべきである。
ア 本件表示1〜3
これを前提として,被告のホームページ上の本件表示1〜3について検\n討するに,前記認定のとおり,被告のホームページには,そのヘッダー部 に被告学習塾の名称が表示され,またメインコンテンツ部には「中学受験\nドクターのプロ講師による」との記載があるのであるから,同ホームペー ジに掲載されたサービスの提供主体が被告であることは明らかである。 また,メインコンテンツ部の最上部の囲み枠に「塾別!今週の戦略ポイ ント」「SAPIX・日能研・四谷早稲アカの授業の要点を毎週解説!」\nなどと記載されていることによれば,被告が原告学習塾のみならず他の大 手学習塾の授業の解説を行っていることは容易に理解し得る。 その上で,本件表示1〜3をみると,本件表\示1(「SAPIX 8月 マンスリー」)は,その表示がされたバナー内の他の記載と併せ考慮する\nと,被告の行うライブ解説の対象が原告学習塾のマンスリーテストである と理解し得るのであり,その解説の主体が原告又はその子会社等であるこ とを表示するものではなく,またそのように誤認されるおそれがあるとは\n認められない。
次に,本件表示2(「SAPIX生のための復習用教材」)についても,\n原告学習塾に通う生徒のための復習教材を被告が販売していると理解し得 るのであり,その教材の販売主体が原告又はその子会社等であることを表\n示するものではなく,またそのように誤認されるおそれがあるとは認めら れない。 さらに,本件表示3(「SAPIX今週の戦略ポイント Daily Support」) についても,解説等の対象が原告学習塾の教材であることを意味するにす ぎず,その教材の販売主体が原告又はその子会社等であることを表示する\nものではなく,またそのように誤認されるおそれがあるとは認められない。  以上によれば,本件表示1〜3は,いずれも,商品等の出所を表\示し, 自他商品等を識別する機能を果たす態様で用いられているものということ\nはできない。

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平成29(ワ)1443  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年4月24日  大阪地方裁判所

 秘密管理のための工場見学の制限としては不十分として、不競法の営業秘密には該当しないと判断されました。
 原告が主張する営業秘密は,訴訟提起段階から変遷しているが,最終的に確 定したところよると,生春巻きを大量に安定的に生産するために,ライン上で全工 程を行うとともに,通常は水で戻すライスペーパーを,状況に応じた適切な温度の 湯で戻すという生春巻きの製造方法であり,ラインの長さ,作業時間,ライスペー パーの質,ラインを流す速度,工場の状況などを踏まえて,温度を管理するもので あって,ライスペーパーを戻す湯の温度は,製造する本数に応じて,ラインの速度 を変え,それに応じて40度から80度までの幅で変えることに特徴があり,具体 的には,温度を40度から50度程度に設定する場合は,ラインの人数を10名程 度にし,一つのラインでの1時間の製造本数を400本から500本程度とし,温 度を60度から80度に設定する場合は,ラインの人数を12名程度に増やし,一 つのラインでの1時間の製造本数を600本から800本程度とするというもので ある。
(2)ア そこで,まず上記主張に係る製造方法が「秘密として管理されている」(不 正競争防止法2条6項)といえるか検討するに,原告は,1)原告工場の立ち入りを 厳重に管理し,食品関係者の工場見学は,紹介により協力工場となる会社の場合な どに限られていること,2)従業員は競業他社の関係者が入社しないよう注意し,退 社時に秘密保持誓約書を作成させ徴求していることを主張している。
イ しかし,前者については,原告の主張する第三者の出入りの管理は,それ自 体は,証拠(乙8,乙9)により認められる食品工場の場合における衛生管理のた めにする人の出入りの管理と何ら変わらないものであるし,食品関係者の工場見学 は紹介により協力工場となる会社に限られるとの点も,現に被告の場合は,前日か 当日かの争いはあるとしても,短い電話による依頼だけで工場見学を許されており, 原告主張のような厳格な扱いがされていたとは認められない。 この点,原告は,被告が協力工場となることを見学の条件とし,被告がこれを承 諾したように主張するが,協力工場となる以上,事業者間で継続的契約が締結され る必要があるから,短時間の電話のやり取りだけで取引条件の詳細を詰めずに確定 的な合意に至ったとはおよそ考えられず,むしろ原告代表者の陳述書(甲6)は,\n工場見学前に協力工場になることの条件を承諾した旨の記載がないだけでなく,か えって工場見学後の被告代表者の話し振りから「私はもうすっかり協力工場になっ\nてくれるものと信じていました。」との記載があり,結局,協力工場になることが 確定的でない状態で原告工場の見学をさせたことを自認する内容になっている。な お,その後,原告担当者が被告の九州工場を視察していることからすると,被告代 表者は,協力工場となることに対して積極的方向で回答をしたことは優に認められ\nるが,そうであったとしても,それをもって事業者間での法的拘束力のある合意と 評価できないことはいうまでもない。 したがって,原告主張の工場見学の条件は,結局,その実質は,当面の競業会社 ではなく協力関係となることが十分期待できるということと変わりがないことにな\nるのであって,秘密管理のための工場見学の制限としては不十分といわなければな\nらない。
ウ また後者の従業員に対する管理の点についても,入社時の選別を実際になし ている点の証拠はないし,退職時の秘密保持誓約書(甲5)が実際に用いられてい るか否かをさておき,少なくとも,入社時に同趣旨の誓約書が徴求されているわけ ではなく,また在職中の守秘義務について定めたものは認められないから,これで は従業員に対する関係でも秘密管理が十分なされていたとはいえない。\nそのほか,証拠(甲6,乙10,乙19)及び弁論の全趣旨によれば,1)被告代 表者は,平成25年7月3日,原告工場を原告代表\者の案内で見学するとともに, 工場内施設の撮影もし,また原告代表者からは,生春巻きの製造方法の説明も受け\nたが,それに先立ち,見学で得られる技術情報について秘密管理に関する合意は原 告と被告間でなされなかったばかりか,原告代表者からその旨の求めもなされなか\nったこと,2)原告のウェブサイトには,原告工場内で商品を生産している状況を説 明している写真が掲載されており,その中には生春巻きをラインで製造している様 子が分かる写真も含まれていることが認められ,これらの事実からも,原告におい て,その主張に係る営業秘密の管理が十分なされていなかったことが推認できる。\n
エ したがって,原告主張の製造方法は,不正競争防止法2条6項の要件にいう 「秘密として管理」されていたとは認められないから,原告主張の製造方法をもっ て同法の「営業秘密」として認められず,「営業秘密」であることを前提とする損 害賠償請求は,その余の点の判断に及ぶまでもなく理由がない。 なお,原告は,被告代表者が工場訪問のお礼のメールに「ノウハウ」を教えても\nらったことを感謝する記載があることを指摘するが,そのメールをした真意はさて おき,ここで問題にしているのは,原告自身が営業秘密の要件を満たす秘密管理を していたか否かであって,被告代表者が「ノウハウ」としての価値を認め,すなわ\nち非公知で有用なノウハウであると評価していたからといって,秘密管理性の欠如 が補えるわけではない。

◆判決本文

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平成29(行ケ)10096  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年5月15日  知的財産高等裁判所

 数値限定の範囲を変えることについて動機付けありとして、進歩性違反無しとした審決が、取り消されました。
 本件訂正発明1と甲1発明との相違点である,甲1発明におけるSiO2粒 子(非磁性材)の含有量を「3重量%」(3.2mol%)から「6mol%以上」とする ことについて,当業者が容易に想到できるといえるか否かを検討する。
イ 動機付けの有無について
(ア) 上記3(1)において認定したとおり,本件特許の優先日当時,垂直磁 気記録媒体において,非磁性材であるSiO2を11mol%あるいは15〜40vol% 含有する磁性膜は,粒子の孤立化が促進され,磁気特性やノイズ特性に 優れていることが知られており,非磁性材を6mol%以上含有するスパッタ リングターゲットは技術常識であった。 そして,本件特許の優先日前に公開されていた甲4(特開2004− 339586号公報)において,従来技術として甲2が引用され,甲2 に開示されている従来のターゲットは「十分にシリカ相がCo基焼結合金 相中に十分に分散されないために,低透磁率にならず,そのために異常\n放電したり,スパッタ初期に安定した放電が得られない,という問題点 があった」(段落【0004】)と記載されていることからも,優れた スパッタリングターゲットを得るために,材料やその含有割合,混合条 件,焼結条件等に関し,日々検討が加えられている状況にあったと認め られる。 そうすると,甲1発明に係るスパッタリングターゲットにおいても, 酸化物の含有量を増加させる動機付けがあったというべきである(磁気 記録方式の違いが判断に影響を及ぼさないことについては,後記オ(ア) に説示するとおりである。)。
(イ) 次に,具体的な含有量の点についてみると,被告も,非磁性材の含有 量を「6mol%以上」と特定することで何らかの作用効果を狙ったものでは ないと主張している上,証拠に照らしても,6mol%という境界値に技術的 意義があることは何らうかがわれない。 さらに,本件明細書の段落【0016】及び【0017】に記載され ているスパッタリングターゲットの作製方法は,本件特許の優先日当時, 一般的に使用・利用可能であった通常の強磁性材及び非磁性材を用い,\n様々な原料粉の形状,粉砕・混合方法,混合時間,焼結方法,焼結温度 を選択することにより,本件訂正発明に係る形状及び寸法を備えるよう にできるというものであるから,甲1発明に基づいて非磁性材である酸 化物の含有量が6mol%以上であるターゲットを製造することに技術的困難 性が伴うものであったともいえない。 そうすると,磁気特性やノイズ特性に優れたスパッタリングターゲッ トの作製を目的として,甲1発明に基づいて,その酸化物の含有量を6mol% 以上に増加させる動機付けがあったと認めるのが相当である。
ウ 阻害要因の有無について
(ア) 審決は,ターゲットの組成を変化させるとターゲット中のセラミック 相の分散状態も変化することが推測され,例えば,当該セラミック相を 増加させようとすれば,均一に分散させることが相対的に困難になり, ターゲット中のセラミック相粒子の大きさは大きくなる等,分散の均一 性は低下する方向に変化すると考えるのが自然であって,実施例1の「3 重量%」(3.2mol%)から本件訂正発明1の「6mol%以上」という2倍近い値 まで増加させた場合に,ターゲットの断面組織写真が甲1の図1と同様 のものになるとはいえず,本件訂正発明1における非磁性材の粒子の分 散の形態を変わらず満たすものとなるか不明であると判断した。 被告も,甲1発明において酸化物含有量を「3重量%」(3.2mol%)から 「6mol%以上」に増加させた場合に,組織が維持されると当業者は認識し ない,すなわち,組織が維持されるかどうか不明であることは,甲1発 明において酸化物含有量を増やすことの阻害要因になると主張する。
(イ) この点について,上記2(2)オにおいて認定したとおり,甲1には, 実施例4(酸化物の含有量は1.46mol%)について,「このターゲットの 組織は,図1に示した酸化物(SiO2)が分散した微細混合相とほぼ同様 であった。」(段落【0022】),実施例5(同1.85mol%)及び同6 (同3.19mol%)についても「このターゲットの組織は,図1に示した組 織とほぼ同様であった。」(段落【0024】及び【0026】)との 各記載があるように,非磁性材である酸化物の含有量が1.46mol%(実施 例4)から3.19mol%(実施例6)まで2倍以上変化しても,ターゲット の断面組織写真が甲1の図1と同様のものになることが示されている。 さらに,上記3(2)において認定したとおり,メカニカルアロイングに おける混合条件の調整,例えば,十分な混合時間の確保等によってナノ\nスケールの微細な分散状態が得られることも,本件特許の優先日当時の 技術常識であった。 そうすると,甲1に接した当業者は,甲1発明において酸化物の含有 量を増加させた場合,凝集等によって図1に示されている以上に粒子の 肥大化等が生じる傾向が強まるとしても,金属材料(強磁性材)及び酸 化物(非磁性材)の粒径,性状,含有量などに応じてメカニカルアロイ ングにおける混合条件等を調整することによって,甲1発明と同程度の 微細な分散状態を得られることが理解できるというべきである。 また,上記イのとおり,甲1発明に基づいて非磁性材である酸化物の 含有量が6mol%以上であるターゲットを製造することが,何かしらの技術 的困難性を伴うものであると認めることはできない。 したがって,甲1発明において酸化物の含有量を「3重量%」(3.2 mol%) から「6mol%以上」に増加した場合に,分散状態が変化する可能性がある\nとか,上記本件組織が維持されるかどうかが不明であることが,直ちに 非磁性材の含有量を増やすことの阻害要因になるとはいえない。

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平成29(ワ)9779  商標権侵害行為差止請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年4月27日  東京地方裁判所

 日本酒の商標「白砂青松」の商標権侵害事件です。被告は「大観 白砂青松」ですが、書体も文字の大きさも異なり、2段表記されていることから、要部が2つあると判断されました。
 前記認定のとおり,被告商品に貼付されたラベルには,その中央上方に\n「白砂青松」の各文字が,上部左側に「大観」の各文字が配されているが, 「白砂青松」と「大観」は同じ毛筆体でも異なる字体であり,文字の大き さは明らかに「白砂青松」の各文字の方が大きく,文字間の間隔について も「白砂青松」の文字の方が広い。そして,同ラベルの下方には横山大観 の日本画の絵柄が付されている。 上記ラベルの下部に配された絵柄については,被告製品を収める外箱に は付されておらず(乙11,41),被告商品の商品名も「大観 白砂青 松」として販売されていること(乙3〜7)に照らすと,商品に貼付され\nたラベルのデザインというべきものであり,自他識別標識としての機能を\n有するものではないというべきである。また,同絵柄が上記各文字部分と 一体となって被告商品の出所を示すものとして需要者に認識されていた ことをうかがわせる証拠もない。そうすると,上記ラベルのうち,被告標 章として自他商品の識別標識としての機能を有するのは「大観」及び「白\n砂青松」の各文字部分であると認められる。
ウ 対比
そこで,原告商標と,被告標章として自他商品の識別標識としての機能\nを有する「大観」及び「白砂青松」の各文字部分を対比する。 前記のとおり,被告商品に貼付されたラベルにおいて,「白砂青松」と\n「大観」の各文字部分は,文字の大きさ,字体などが異なり,視覚上,両 部分は一体不可分のものではなく,分離して看取することができる。そし て,「白砂青松」と「大観」の各文字部分を比較すると,「白砂青松」を 構成する各文字の方が大きく,中央に記載されており,各文字間の間隔も\n「白砂青松」の方が広いことは明らかである。 また,被告商品を納める外箱においても,「白砂青松」と「大観」の各 文字部分は容易に分離して看取することができ,「白砂青松」を構成する\n各文字の方が相当程度大きく,中央に記載されており,各文字間の間隔も 「白砂青松」の方が広い。 そうすると,被告標章において,需要者に対して商品の出所識別標識と して強く支配的な印象を与えるのは,「白砂青松」の文字部分であるとい そこで,原告商標と被告標章の「白砂青松」との文字部分を対比すると, いずれもその称呼は「ハクサセイショウ」であり,「白い砂と青い松」と の観念が生じる。また,その文字の字体は異なるが,構成される文字は同\n一であることから,その外観も類似する。

◆判決本文

被告の商品は下記ですが、削除される可能性があります。\n

◆大観 白砂青松

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平成29(ワ)5274  特許権に基づく損害賠償請求権不存在確認等請求事件 特許権 民事訴訟 平成30年4月26日 東京地方裁判所

 不存在確認の訴訟について、訴えの利益無しと請求が却下されました。 原告はAppleです。
 確認の訴えは,現に,原告の有する権利又は法律的地位に危険又は不安が 存在し,これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが必要かつ適切 な場合に限り許されるものである(最高裁判所昭和27年(オ)第683号 同30年12月26日第三小法廷判決・民集9巻14号2082頁参照)。
・・・
本件において,原告らは,CM4社から全ての原告製品の供給を受けて いるところ,被告クアルコムとCM4社との間にはCMライセンスが存在 し,本件特許権もその対象である(認定事実 )。 被告らは,これらの事実を認めた上で,このことを理由として,本件訴 訟において,一貫して被告らは原告らによる原告製品の生産,譲渡等に つき,本件特許権侵害に基づく損害賠償請求権及び本件特許権に基づく 実施料請求権を有しないことを表明している。\nそして,上記アないしエのとおり,原告アップルと被告クアルコムとの 従前の交渉において,原告製品が本件特許権を侵害していると被告クア ルコムが主張したことがあるとは認められないし,他の訴訟等において も,被告クアルコムにおいて,被告らによる上記表明を矛盾する行動を\nとったことがあるとは認められない。その他,被告クアルコムにおいて, 原告アップルの有する権利又はその法律上の地位に危険,不安を生じさ せる行動をとったことを認めるに足りる証拠はない。 これらを総合すれば,被告クアルコムとの関係において,原告アップル の有する権利又はその法律上の地位に危険又は不安があるとは認められ ない。

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平成29(行ケ)10217  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年4月26日  知的財産高等裁判所

 「咲蔵(さくら)」と標準文字の先願「咲蔵」が類似するかが争われました。知財高裁は類似するとした審決を維持しました。判決文の最後に両商標が記載されています。
 引用商標は,別紙記載2のとおり,「咲蔵」の文字を標準文字で表して成る\nものであるところ,引用商標のように「サククラ」などと二つの音が重なる場合,一文字分を省略して「サクラ」と読むことなどは,経験則上,よくあるこ とであって特段珍しいことではない上に,商品名や店舗名などにおいて,「咲」 の文字の訓読みである「サ(ク)」から,「サ」の文字の当て字として「咲」 の漢字を利用することも,取引上よくみられることであって(乙10〜14は, その一例を示すものといえる。),やはり特段珍しいことではない。したがっ て,本願商標のように振り仮名が振られていなくても,「咲蔵」の文字から「サ クラ」の称呼が生じるものということができる。 よって,引用商標からも,本願商標と同様に,「サクラ」の称呼と,「花が 咲く蔵」,あるいは「桜の花」といった観念が生じるものと認められる。
・・・
原告は,国語辞典(甲21:広辞苑第二版補訂版874頁)には,「咲蔵」 と同様に「咲」を語頭に含む漢字2字から成る熟語が「咲分(サキワケ)」 しか記載されておらず,このような熟語において「咲」を「サ」と訓読みす る慣行はないし,「咲蔵」は造語であって常用されている言葉ではないから, 送り仮名が省略されることもないとして,「咲蔵」なる文字部分からは,基 本となる訓読みと訓読みの組合せで「サキクラ」又は「サキグラ」という称 呼しか生じず,「サクラ」という称呼は生じないと主張する。 しかしながら,本願商標のように振り仮名が振られていなくても,「咲蔵」 の文字から「サクラ」の称呼が生じるものということができることは,前記 3のとおりである。したがって,原告の主張は失当である。
(3) 「咲蔵」の文字から生じる観念に関し
原告は,「咲く蔵(クラ)」又は「蔵(クラ)が咲く」なる表現は常識的\nに思い付くような状態を示しておらず,その意味を全く想起することができ ないと主張する。 しかしながら,「咲く」という言葉が,花のつぼみが開くこと,すなわち, 花が咲くことを意味することは,常識に属することであって,かかる意味を 有する「咲」という文字と「蔵」という文字の組合せからは,前記2のとお り,「花が咲く蔵」といった華やか(にぎやか)なイメージを想起すること ができ,その意味するところも十分認識できる。\nしたがって,少なくとも「咲く蔵(クラ)」なる表現は,「花が咲く蔵」\nとして常識的に思い付くような状態を示しており,その意味を想起すること ができるといえるから,原告の主張は失当である。

◆判決本文

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平成28(ワ)6074  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年4月17日  大阪地方裁判所

 周知標章「堂島ロール」に基づく不競法2条1項1号に基づいて、約3400万円の損害賠償が認められました。被告標章は「堂島プレミアムロール」です。損害額は被告の1つあたりの利益*箱数から判断されました。被告は冷凍としてスーパーなど販売していましたが、混同すると判断されました。
 被告標章1及び4である「堂島プレミアムロール」は,「堂島」,「プレミアム」,「ロール」の3語で構成されているが,この\nうち,「プレミアム」との語は,優れたあるいは高品質なものを意味する語であり, 商品が優れたり,高品質なものであったりすることを表現するため商品名に「プレ\nミアム」という文字が付加される例も多い(乙C7の1,2,乙C8の1参照)こ とが一般的に認められるから,「プレミアム」の部分は,これと結合する他の単語 で表示される商品の品質を表\すものと理解され,商品の出所識別機能があるものと\nは認められない。他方,「堂島」は地名,「ロール」は「ロールケーキ」の普通名 詞の略称を表す語であるが,「プレミアム」が上記のとおり,品質を示す意味しか\n有しないことからすると,「プレミアム」を挟んで分離されているものの,被告標 章1及び4からは,プレミアムな,すなわち高品質な「堂島ロール」との観念が生 じ,これは原告の商品等表示として周知である「堂島ロール」の観念と類似してい\nるといえるし,また称呼も同様に類似しているといえる。 そうすると,被告標章1及び4と原告標章とは,被告標章4のみならず字体に特 徴のある被告標章1を含め,取引者,需要者が外観,称呼又は観念の同一性に基づ く印象,記憶,連想等から,両者を全体として類似のものとして受け取るおそれが あるというべきである。
ウ また被告標章2については,「(株)堂島プレミアム」と「プレミアムロー ル」との語を2段重ねで一体的に表示したものであるが,「(株)」というのは会\n社の種類を示す株式会社の略語にすぎないから,これ自体に出所識別機能は認めら\nれない。そこで,これを除くと,被告標章2は,「堂島プレミアム」と「プレミア ムロール」が2段重ねで一体化している表示であるが,上段,下段で重複して使用\nされている「プレミアム」という語は,上記で判示したとおり,独自の出所識別機 能を有しない語であるし,また取引の現場では長い名称の商品名は略して称呼され,\n観念されることが多いと考えられるから,繰り返される「プレミアム」の部分は一 単語に省略され,さらにそれ自体の出所識別機能がないことも合わさって,「堂島\nプレミアム,プレミアムロール」から,「堂島」と「ロール」という2語が需要者 に強く印象付けられると考えられる。したがって,被告標章2からは被告標章1及 び4についてみたのと同様,プレミアムな,すなわち高品質な「堂島ロール」とい う観念が生じるということができ,これは原告の商品等表示として周知である「堂\n島ロール」の観念と類似しているといえる。 また,称呼の点も,同様に「ドウジマプレミアムロール」との称呼が生じるとい えるから,原告標章の「ドウジマロール」との称呼と類似しているといえる。 そうすると,被告標章2と原告標章とは,取引者,需要者が外観,称呼又は観念 の同一性に基づく印象,記憶,連想等から,両者を全体として類似のものとして受 け取るおそれがあるというべきである。
エ さらに被告標章3は,被告標章2の上段部分の「(株)堂島プレミアム」部分 を,下段の「プレミアムロール」より小さな文字で表示しているものであるが,上\n下段の一体性を損なうほど,文字の大きさに差はないから,被告標章2と同様の理 由から,取引者,需要者は被告標章3と原告標章を類似のものと受け取るおそれが あるということができる。
オ 被告標章5は,被告標章2及び3の「(株)」の部分を「株式会社」,「(株)」 又は同部分に相当する部分がないものとしている標章であるが(ただし,2段重ね という限定はない。),「(株)」については既に説示したとおりであり,「株式会 社」についても,単なる会社の種類を表示する語にすぎないから,これが全くない\n場合も含め,被告標章5と原告標章が類似しているといってよいことは,上記ウ, エで説示したところと同じである。
カ 以上のとおり,被告標章は,いずれも原告標章と類似しているものと認めら れる。
・・・
P1は,被告会社設立時のただ一人の取締役として代表取締役を務め,平成\n26年8月1日まで,その職にあったが,その間,被告標章1を使用した被告商品 をP3に委託して製造し,P4に販売していた(甲3)。
イ P1が代表取締役を務めている間に,被告会社は,原告から平成24年11\n月14日付け及び同年12月13日付けの内容証明郵便で,被告標章1の使用が不 正競争行為に当たる旨の警告を受け,被告会社は被告標章1の使用を平成25年4 月頃に止め,その後,被告標章2を使用した被告商品を販売するようになった。な お,被告標章2を使用した被告商品の一括表示には,被告商品の箱記載の商品名で\nある被告標章2とは異なる被告標章4が記載されていた(甲24)。
ウ P2は,平成26年8月1日付けで被告会社の取締役に就任するともに代表\n取締役に就任し,同日,P1は,被告会社の代表取締役及び取締役を辞任した。ま\nた,被告会社は,同日付けで本件所在地をリーガロイヤルホテル大阪の住所地に移 転する旨の登記をした(甲3,甲23)。
エ 原告は,同年9月29日付けで,被告会社宛てに変更後の被告標章2の使用 も不正競争行為に当たる旨警告する内容証明郵便を送付したが,リーガロイヤルホ テル大阪の住所地へは郵送できなかった(甲22,甲24)。
オ 被告会社は,平成27年4月頃,被告標章2の使用を止め,同月頃から被告 商品に被告標章3を使用するようになった。
・・・
(2) 以上よりP1及びP2の会社法429条1項の損害賠償責任の有無について 検討するに,P1は,原告標章が周知となった後に設立された被告会社の唯一の取 締役であり,代表取締役として原告標章に類似する被告標章1を使用して,その唯\n一の事業である被告商品の販売事業を遂行していたものであり,その間,原告から 不正競争である旨の警告を受けるも,使用標章を類似の範囲にある被告標章2に変 更するに留めて同事業を継続させていたものである。 そしてP2は,平成26年8月1日にP1に替わって取締役に就任すると同時に 代表取締役に就任し,上記事業の遂行責任者となった者であるが,就任と同時に,\nその本店所在地を,リーガロイヤルホテル大阪の所在地に移転登記するなど,被告 商品の販売事業者を対外的に不明な状態にし,また原告が仮処分命令を申し立てた\n後も,これを争って,その販売を継続して事業を遂行し,本件仮処分命令が発令さ れた後も,販売先であるP4においては被告商品の販売を継続していた。 したがって,以上によれば,P1及びP2は,ともに被告会社が違法行為となる 不正競争行為に該当する事業を取締役として積極的に遂行したものとして,その職 務を行うことについて悪意とまで断ずることができなくとも,少なくとも重大な過 失があったことが認められるから,会社法429条1項に基づき,その在任期間に 上記不正競争により原告に生じた損害を賠償する責任があるものというべきである。
・・・
以上より,被告会社が,被告商品を販売したことにより受けた利益の額は,上記 ア認定の被告商品1個当たりの利益の額145円に上記イ認定の販売数量23万6 280個乗じて認定される3426万0600円であると認められる。

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平成29(ワ)29099  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年4月26日  東京地方裁判所(46部)

 法人格なき社団である「・・高等学校応援団山紫会」を著作権の譲受人として、差止および損害賠償が認められました。著作権法では、社団・財団も「法人」に含まれるとされています(2条6項)。
 上記1のとおり,本件写真の撮影者はAであるから,Aが本件写真の著作者であり,著作権者であったと認められる。そして,証拠(甲3の1,甲4)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成29年4月19日,Aから本件写真に係る著作権及び被告に対する本件不法行為に基づく損害賠償請求権(同日までに発生した請求権)を譲り受けたと認められる。

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平成27(ワ)21684  特許権  民事訴訟 平成30年4月20日  東京地方裁判所(40部)

 特許権侵害事件です。争点は、本件発明「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法」は製造方法の発明か、サポート要件違反、実施可能要件違反などです。製造会社だけでなく、商社、コンビニが被告とされています。裁判所は、製造方法の発明かについては判断することなく、サポート要件違反・実施可能\要件違反として無効と判断しました。
 ところで,耐食コーティングに用いる材料の種類や成分の違いにより, 缶内の飲料に与える影響に大きな差があることは,本件特許の出願日当時, 当業者に周知であるということができる(乙34〜36)。例えば,特開平 7−232737号公開特許公報(乙36)には,「エポキシ系樹脂組成物 を被覆した場合,ワイン系飲料に含まれる亜硫酸ガス(SO2)をはじめと するガスに対するガスバリヤー性が劣っており,かつフレーバー成分の収 着性が高い。例えば,ワイン系飲料等を充填した場合,含有する亜硫酸ガ ス(SO2)が塗膜を通過して下地の金属面を腐食する虞があり,場合によ っては内容物が漏洩することもある。この亜硫酸ガスは下地の金属と反応 して硫化水素(H2S)を発生させるが,この硫化水素(H2S)は悪臭の 主要因となるばかりでなく,飲料の品質保持のため必要な亜硫酸ガス(S O2)を消費するため飲料の品質を劣化させフレーバーを損なうこととな る。また,この樹脂組成物は飲料中のフレーバーを特徴付ける成分を収着 しやすく,飲料用金属容器の内面に被覆するには官能的に充分満足のでき\nるものではない。」(段落【0004】),「一方,ビニル系樹脂組成物を被覆 した場合,…エポキシ系樹脂組成物と同様に亜硫酸ガス(SO2)等に対す るガスバリヤー性に乏しく,やはり腐食や漏洩の危険性及び官能的な問題\nがある。」(段落【0005】)との記載がある。これによれば,耐食コーテ ィングに用いる材料や成分が,ワイン中の成分と反応してワインの味質等 に大きな影響を及ぼすことは,本件特許の出願日当時の技術常識であった ということができる。
上記のとおり,耐食コーティングに用いる材料の成分が,ワイン中の成 分と反応してワインの味質等に大きな影響を及ぼし得ることに照らすと, 本件明細書に記載された「エポキシ樹脂」以外の組成の耐食コーティング についても本件発明の効果を実現できることを具体例等に基づいて当業 者が認識し得るように記載することを要するというべきである。 この点,原告は,本件発明の課題は,ワイン中の遊離SO2,塩化物及び スルフェートの含有量を所定値以下にすることにより達成されるのであ り,耐食コーティングの種類によりその効果は左右されない旨主張する。 しかし,塗膜組成物の組成を変えることにより塗膜の物性が大きく変動し, 缶内の飲料に大きな影響を及ぼすことは周知であり(乙34の第1表,乙\n35の第2,3表等),ワイン中の遊離SO2,塩化物及びスルフェートの\n含有量を所定値以下にすれば,コーティングの種類にかかわらず同様の効 果を奏すると認めるに足りる証拠はない。
(4) 以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,具体例の開示がなく とも当業者が本件発明の課題が解決できると認識するに十分な記載があると\nいうことはできない。そこで,本件明細書に記載された具体例(試験)によ り当業者が本件発明の課題を解決できると認識し得たかについて,以下検討 する。
ア 本件明細書には,「パッケージングされたワインを,周囲条件下で6ヶ 月間,30℃で6ヶ月間保存する。50%の缶を直立状態で,50%の缶 を倒立状態で保存する。」(段落【0038】)との方法で試験が行われ た旨の記載がある。しかし,本件明細書には,当該「パッケージングされ たワイン」の「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の濃度,そ の他の成分の濃度,耐食コーティングに用いる材料や成分等については何 ら記載がなく,その記載からは,当該「パッケージングされたワイン」が 本件発明に係るワインであることも確認できない。
イ また,本件明細書には,試験方法について,「製品を2ヶ月の間隔を置 いて,Al,pH,°ブリックス(Brix),頭隙酸素及び缶の目視検査に関 してチェックする。…目視検査は,ラッカー状態,ラッカーの汚染,シー ム状態を含む。…官能試験は,味覚パネルによる認識客観システムを用い\nる。」(段落【0039】)との記載がある。「頭隙酸素」については, 乙29文献(4頁下から2行〜末行)に「ヘッドスペースの酸素は,アル ミニウムの放出に関して非常に重大である」との記載があるとおり,ワイ ンの品質に大きな影響を与え得る因子であり,「官能試験」はワインの味\n質の検査であるから,いずれもその方法や結果は効果の有無を認識する上 で重要である。しかし,本件明細書には,「頭隙酸素」のチェック結果や 「目視検査」の結果についての記載はなく,「官能試験」についても「味\n覚パネルによる認識客観システム」についての説明や試験結果についての 記載は存在しない。
ウ さらに,本件発明に係る特許請求の範囲はワイン中の三つの成分を特定 した上でその濃度の範囲を規定するものであるから,比較試験を行わない と本件発明に係る方法により所望の効果が生じることが確認できないが, 本件明細書の発明の詳細な説明には比較試験についての記載は存在しな い。このため,当業者は,本件発明で特定されている「遊離SO2」,「塩 化物」及び「スルフェート」以外の成分や条件を同程度としつつ,「遊離 SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の濃度を特許請求の範囲に記載 された数値の範囲外とした場合には所望の効果を得ることができないか どうかを認識することができない。 加えて,耐食コーティングについては,試験で用いられたものが本件明 細書に記載されている「エポキシ樹脂」かどうかも明らかではなく,まし て,エポキシ樹脂以外の材料や成分においても同様の効果を奏することを 具体的に示す試験結果は開示されていない。
エ 以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された「試験」は, ワインの組成や耐食コーティングの種類や成分など,基本的な数値,条件 等が開示されていないなど不十分のものであり,比較試験に関する記載も\n一切存在しない。また,当該試験の結果,所定の効果が得られるとしても, それが本件発明に係る「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の 濃度によるのか,それ以外の成分の影響によるのか,耐食コーティングの 成分の影響によるのかなどの点について,当業者が認識することはできな い。 そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明に実施例として記載された 「試験」に関する記載は,本件発明の課題を解決できると認識するに足り る具体性,客観性を有するものではなく,その記載を参酌したとしても, 当業者は本件発明の課題を解決できるとは認識し得ないというべきであ る。
オ この点,原告は,本件発明の特徴的な部分は,従来存在しなかった技術 思想であり,「塩化物」等の濃度には臨界的な意義もないので,その裏付 けとなる実験結果等の記載がないとしてもサポート要件には違反しない と主張する。 しかし,前記判示のとおり,特許請求の範囲に記載された構成の技術的\nな意義に関する本件明細書の記載は不十分であり,具体例の開示がなくて\nも技術常識から所望の効果が生じることが当業者に明らかであるという ことはできない。また,「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」 に係る濃度については,その範囲が数値により限定されている以上,その 範囲内において所望の効果が生じ,その範囲外の場合には同様の効果が得 られないことを比較試験等に基づいて具体的に示す必要があるというべ きである。
・・・
(5) 以上のとおり,本件発明に係るワインを製造することは困難ではないが, 本件発明の効果に影響を及ぼし得る耐食コーティングの種類やワインの組成 成分について,本件明細書の発明の詳細な説明には十分な開示がされている\nとはいい難いことに照らすと,本件明細書の発明の詳細の記載は,当業者が 実施できる程度に明確かつ十分に記載されているということはできず,特許\n法36条4項1号に違反するというべきである。

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平成27(ワ)21897等  著作権侵害行為差止等請求事件,損害賠償請求反訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月28日  東京地方裁判所

 データが入れられる前のデータベースシステムは、著作権法で保護されるデータベースではないと判断されました。
 原告は,原告が平成16年8月10日に完成させた同日版「eBASEserv er」は,1)合計22個の辞書がそれぞれ様々な辞書情報を備えており,データベ ースの体系的な構成の中で各データ項目と紐付けられて辞書網を構\成している点に 創作性が認められ,2)個々の辞書が,それ単独でも,体系的構成及び情報の選択に\nおいて創作性が認められるから,それ自体が,データベースの著作物と認められる べき旨主張する。 原告の主張によれば,「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事 業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデ\nータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることに\nよりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,この\nような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアであ\nる「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著 作権法2条1項10号の3)とは認められない。 原告は,「eBASEserver」に搭載されている辞書情報を「情報」と捉 え,この集合物をもって「データベース」と主張するものとも解されるが,原告の 主張によっても,これらの辞書ファイルは,商品情報の登録に際して,当該商品情 報のうち特定のデータ項目を入力する際に参照されるものにすぎないのであって, 辞書ファイルが備える個々の項目が,「電子計算機を用いて検索することができる ように体系的に構成」(著作権法2条1項10号の3)されていると認めることは\n困難である。 したがって,「eBASEserver」は,著作権法上の「データベース」に 当たるものとは認められないから,その創作性につき検討するまでもなく,データ ベースの著作物ということはできない。

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北京市高等裁判所(2017)京民終454 号、判決日:2018 年3月28日

中国で興味深い判決がなされました。 北京市高等裁判所は、複数の実行主体を含む方法クレームにおいて、当該方法を使用する装置を販売しているメーカの幇助責任を認めました(判決番号:(2017)京民終454 号、判決日:2018 年3月28日)。 中国では、寄与侵害の規定が制限的に運用されていましたが、今後は、当該判決のような幇助責任ありと認定されることも想定されます。
事件の概要など、詳しくは、林達劉グループ 北京林達劉知識産権代理事務所の

◆西電捷通VS ソニーのWAPI 特許侵害事件に関する検討
を参照ください。

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平成29(ネ)10087  専用実施権設定登録抹消登録等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年4月18日  知的財産高等裁判所(4部)  大阪地方裁判所

 1審は原告の主張を認めませんでしたが、知財高裁(4部)は、250万円の支払いを命じました。
他方,甲4契約の締結された当時,本件特許発明は実用化されたとはいえない段 階にあって事業の将来見込みが不確実であったところ,被控訴人は,控訴人に合計 2500万円の契約金を支払った。さらに,被控訴人は,少なくとも約1300万 円を支出して,本件特許発明に係る方法の実施に適するよう,汎用電子レンジを改 造して本件機械を開発した。本件機械の導入によって,歯科医院において本件特許 発明に係る方法を容易に実施できるようになり,被控訴人が歯科医院から義歯を預 かって本件特許発明を実施していたときよりも,顧客層が大きく拡大することに なった。このことは,本件特許発明を実施する上で必要な本件液の販売数が,平成 27年初めは月約700本であったところ,平成27年後半には月少なくとも約1 300本に増加していること(乙44)からも裏付けられる。 また,控訴人は,本件訴訟提起前の平成27年4月24日,被控訴人に対し,本 件機械と本件液の売上高の各3%の実施料の支払を求め,被控訴人は,暫定的支払 としつつも現在まで上記額の支払を継続し,控訴人はこれを受領している。 これらの事情のほか,本件訴訟に現れた事情を総合考慮すれば,本件機械の販売 に係る実施料は,売上高の6%をもって相当と認める。
(ウ) 控訴人の主張について
控訴人は,社会通念上相当な実施料は,本件機械の売上高から製造原価を控除し た額(粗利)の25%,そうでないとしても,本件機械の売上高の10%であると 主張する。 しかし,まず,粗利の額は,被控訴人の営業秘密である製造原価を明らかにしな ければ算定不能であること,売上高は双方にとって簡便かつ明確な算定基準となる\nこと,甲4契約においても販売価格と通常価格の差額(2条7項。具体的には加工 単価を基に算定している。)や第三者からの実施許諾料(同条8項)を算定基準と していることに照らせば,粗利ではなく売上高を算定基準とするのが当事者の意思 に合致するものと解される。そして,控訴人主張の利益三分法ないし四分法は,ラ イセンス料を定めるに際しての一つの指針にすぎず,売上高ないし粗利の25%を 原則的なライセンス料と考えることは相当でない。本件においても,前記(イ)のと おり,被控訴人自身が実施していた当時の実施料,被控訴人が契約締結時に支払っ た実施料や本件機械の開発費用等の先行投資額,本件機械の導入による顧客層の拡 大,従前の交渉経緯等を総合考慮すれば,売上高の6%をもって相当と認める。

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平成29(行ケ)10138  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年4月18日  知的財産高等裁判所

 サポート要件、実施可能要件について、無効理由なしとした審決が維持されました。\n
 原告は,図1に示された気体溶解装置は,加圧型気体溶解手段3によって生成さ れ,溶存槽4に貯留された水素水を気体溶解装置の内部で循環させるようには構成\nされておらず,図3に示された気体溶解装置は,その内部に,「溶存槽4(41,4 2)」に貯留された水素水を「加圧型気体溶解手段3」に送出する「加圧送水通路」 を備えてはいないから,本件発明1は,図1に示された気体溶解装置,図3に示さ れた気体溶解装置のいずれによってもサポートされていない旨主張する。 しかし,本件明細書には,図1に示された気体溶解装置について,「溶存槽4に保 存された液体は,降圧移送手段5である細管5a内で層流状態を維持して流れるこ とで降圧され(S6),水素水吐出口10から外部へ吐出される(S7)。」(【003 4】)との記載がある一方で,「本発明の気体溶解装置1は,加圧型気体溶解手段3 で加圧して気体を溶解した液体を,排出せずに循環して加圧型気体溶解手段3に送 り,循環した後に,降圧移送手段5に送る」(【0037】)との記載がある。したが って,図1に示された気体溶解装置は,加圧型気体溶解手段3によって生成され, 溶存槽4に貯留された水素水を気体溶解装置の内部で循環させるように構成されて\nいると認められる。 また,本件明細書には,前記イのとおり,本件発明1の「溶存槽」と「加圧型気体 溶解手段」との間に水素水を循環させる経路として,ウォーターサーバーを用いる 場合,水槽を用いる場合,加圧型気体溶解手段で加圧して気体を溶解した液体を, 排出せずに循環して加圧型気体溶解手段に送る経路を用いる場合の開示がある一方, これらの場合に循環の経路が限定されるとの記載や示唆はない。したがって,当業 者であれば,本件発明1においては,水素水が,これらの場合を含む何らかの経路 で循環すればよく,図3に示された気体溶解装置は,水素水を「送出し加圧送水し て循環させ」る経路の例示にすぎないことを理解できる。 よって,原告の主張は採用することができない。
・・・
原告は,請求項1及び8はウォーターサーバーを発明特定事項としていないが, 実施例1,3ないし13には,図3に示すウォーターサーバーに気体溶解装置を接 続した場合の実験条件しか記載されていない,また,実施例2は,図1に示す気体 溶解装置を用いたものであるが,どのように水素水を生成,循環させたのか不明で あるから,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件発明1及び8を実施できる程度 に明確かつ十分に記載されているとはいえない旨主張する。\nしかしながら,本件発明1及び8は,本件明細書に例示された,ウォーターサー バーを用いる場合,水槽を用いる場合,加圧型気体溶解手段で加圧して気体を溶解 した液体を,排出せずに循環して加圧型気体溶解手段に送る場合を含む,何らかの 経路により水素水を循環させるものであることは,前記2(3),(4)で検討したとおり である。そして,本件明細書には,ウォーターサーバーを用いた実施例1,3ないし 13の実験条件が,他の経路により循環させる構成について当てはまらないと解す\nべき根拠となる記載はない。 また,実施例2についても,加圧型気体溶解手段で加圧して気体を溶解した液体 を,排出せずに循環して加圧型気体溶解手段に送る場合を含む,何らかの経路によ り水素水を循環させるものであると理解することができる。 そうすると,当業者は,本件明細書の発明の詳細な説明を参考にして,本件発明 1及び8を実施することができるといえるから,原告の主張は採用できない。

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平成29(行ケ)10078  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年4月17日  知的財産高等裁判所

 4条8,10、15、19号違反とした審決について、理由に誤りはあるが結論において妥当として審決が維持されました。商標は「戸田派武甲流薙刀術」(標準文字)です。
 前記認定の諸事実及び本件商標の登録出願の経緯によれば,本件商標が,その登 録出願時及び登録査定時に出所として表示するのは,古武道の一流派である本件流\n派そのものであって,原告及び被告もこれに属するものであると認められる(なお, 原告が被告に対し本件流派から破門する旨を通知したことは,上記認定を左右する ものではない。)。 そして,本件商標は,その表記に応じて,本件流派(戸田派武甲流薙刀術)を,\n取引者,需要者に想起させるものであるから,客観的表記に基づく需要者の認識と\n登録出願の経緯等に基づく出所の主体の間にも齟齬はないものと認められる。 他方,審判における原告主張の無効理由のうち,商標法4条1項8号に関して主 張する「他人」とは,「遅くとも昭和10年以降,代表者として宗家を置き,「戸田\n派武甲流薙刀術」との名称で薙刀術の教授等をしている社団」であるから,本件流 派そのものである。同条1項10号に関して主張する「他人」の商標とは,「「戸田 派武甲流薙刀術」の教授等の役務を示すものとして需要者の間で広く認識されてい る商標」であって,本件流派を出所とする商標である。同条1項15号に関して主 張する「他人」とは,「原告が宗家代理を務める本件流派」と記載されるが,実質的 には,原告が宗家代理を務める本件流派に限定されるものではなく,遅くとも昭和 10年以降,代表者として宗家を置き「戸田派武甲流薙刀術」の教授等を行ってき\nた本件流派を「他人」として主張するものと善解される。同条1項19号に関して 主張する「他人」とは,「需要者の間で著名な「戸田派武甲流薙刀術」」であるから, 本件流派そのものである。 以上のとおり,原告が無効理由として主張する商標法4条1項8号,10号,1 5号及び19号における「他人」とは,いずれも本件流派を指すものであるところ, 本件商標がその出所として表示するのも,本件流派そのものであるから,両者は同\n一であるといえる。そうすると,前記各号に関して原告が主張する「他人」が,本 件商標が出所を表示する主体と異なる者とは認められないから,前記(1)のとおり, 商標法4条1項8号,10号,15号及び19号に基づいて,本件商標が商標登録 を受けることができない商標と認めることはできず,原告の主張は,理由がないも のといわざるを得ない。 この点,審決は,先代宗家から,本件流派の運営及び管理等を原告と共に依頼さ れた被告が流儀代表手続をしたことが不当なものとまでいうことができないとした\n上で,被告が,振興会の常任理事会において,本件流派の流儀代表者として了承さ\nれた後,古武道大会等に本件流派の代表者として参加しており,各種新聞,雑誌に\nおいて,本件流派の代表者として掲載されているといった事情を考慮して,被告は,\n本件商標の登録出願時及び登録査定時に本件流派との関係において,商標法4条1 項8号,10号,15号及び19号に規定する「他人」に該当するということはで きないと判断した。 しかしながら,本件商標がその出所として表示するのは,古武道の一流派である\n本件流派そのものであることは前記のとおりであり,被告個人が,本件商標につい て,本件流派との関係において,上記「他人」に該当するか否かは,商標法4条1 項8号,10号,15号及び19号該当性の判断に,直ちに影響を及ぼすものでは ない(原告は,被告が商標登録した本件商標が,「他人」である本件流派との関係で 無効理由があると主張するものと解される。)。 したがって,審決が,本件商標の出所等を検討することなく,被告個人が,本件 流派との関係において,上記「他人」に該当しないことを理由に,商標法4条1項 8号,10号,15号及び19号該当性の判断をした点には誤りがあるといわざる を得ない。しかしながら,本件商標について,商標法4条1項8号,10号,15 号及び19号に該当しないとの審決の判断は,結論において誤りはないといえる。
(3) 原告の主張について
原告は,本件流派の宗家代理の地位にあり次期宗家の決定権限を有する原告が承 認しないにもかかわらず,被告が,本件流派の宗家であると名乗った上で,振興会 等に登録手続を行い,演武大会に出場し,また,原告に無断で本件商標の登録出願 手続をしたなどと主張する。 しかしながら,本件商標がその出所の主体として表示するのは,古武道の一流派\nである本件流派そのものであって,原告が他人として主張する団体と同一のもので あることは前記のとおりであり,本件商標の登録出願の経緯や本件流派の代表者が\n原告であるのか否かなどの点については,本件商標について原告が無効理由として 主張する商標法4条1項8号,10号,15号及び19号該当性に関する前記判断 を左右するものではない。

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平成28(ワ)27057  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年4月13日  東京地方裁判所

 特許侵害訴訟において、進歩性無しとして、請求棄却されました。
 以上のとおり,乙9〜12によれば,光学的センサの周辺部に位置す る受光素子に入射する光束の光量が減少するのを防止するため,「読み 取り対象からの反射光が絞りを通過した後に結像レンズに入射するよう, 絞りを配置することによって,光学的センサから射出瞳位置までの距離 を相対的に長く設定」するという構成とすることは,本件特許出願当時,ビデオカメラ等の分野において周知であったと認めることができる。
(イ) 原告は,ビデオカメラ等と2次元バーコードリーダーの技術的意義は 異なるので,当業者がビデオカメラ分野の技術(乙9〜12)を当然の こととして2次元コードリーダの読取装置に適用することを考えるもの ではないと主張する。 しかし,その主たる目的が色彩等の再現性にあるか2次元バーコード の読取りにあるかという点で異なる面があるとしても,集光レンズ付き CCDエリアセンサを通常の目的で使用する限りは,光学的センサの周 辺部に位置する受光素子に入射する光束の光量が減少することにより光 学素子に入射する光束の光量が低下して検出感度が低下するという課題 は共通しており,当業者であれば,2次元バーコードリーダーにおける 同課題の解決のため,光学系の近接した技術分野であるスチルカメラ, デジタルカメラ,ビデオカメラ等の技術を適用することについての動機 付けを得ることは容易であるというべきである。 そして,前記(1)ウのとおり,ICX084ALデータシート(乙39) には,ICX084ALが2次元バーコードリーダー,PCインプット カメラに適している旨の記載が,1995年9月25日付けの日経エレ クトロニクス(乙64の3)には,ICX084ALを含むソニーの全画素読出し方式CCDが電子スチルカメラ,2次元バーコードリーダー\n等に適している旨の記載があり,また,平成9年7月13日付け日経産 業新聞(乙57)には,「バーコード読み取り手持ち型機器を発売・・・ デジタルカメラの技術を応用し」との記載があることも,バーコードリ ーダーとデジタルカメラとが技術を共通にする関係にあることを裏付け るものということができる。

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平成29(行ケ)10051  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年4月12日  知的財産高等裁判所(3部)

 暗号化回路について、実施可能要件違反とした審決が維持されました。\n
 そうすると,本願発明の目的である「サイドチャネルを利用した攻撃 から回路を保護すること」は,段落【0009】,【0010】及び 【0041】で言及されているサイドチャネルを利用した攻撃から関数 鍵 kc を保護することを意味し,この保護は関数鍵 kc を第2の鍵(又は 非機能の鍵)ki でマスクする,すなわち kc と ki を XOR 演算することに よって達成されるものと理解される。換言すれば,本願発明の暗号回路 においてサイドチャネルを利用した攻撃の目標として想定されているの は関数鍵 kc であり,この関数鍵 kc をそのような攻撃から保護するため に第2の鍵 ki を必要とし,関数鍵 kc を第2の鍵 ki と XOR 演算すること によってマスクする(マスク鍵 kc(+)ki とする)という方法によって,関 数鍵 kc の保護が達成されるものと把握される。 さらに,本願明細書等には,サイドチャネルを利用した攻撃の具体的 な目標として関数鍵 kc 以外のものは記載されていない。 このように,本願発明が想定している攻撃目標は関数鍵 kc であり, それ以外の攻撃目標を想定しない以上,本願発明の暗号回路が出力する 暗号文 y の秘密性は関数鍵 kcに依拠し,暗号文の計算手順(すなわち本 願発明の「暗号化アルゴリズム」)に依拠するものではないと認められ る。そうであれば,関数鍵 kc が判明すれば,本願発明により出力され る暗号文 y を解読し得ることになる。これは,本願発明の暗号回路が出 力する暗号文 y の暗号鍵が関数鍵 kcであることを意味する。すなわち, 本願発明は,秘密情報である関数鍵 kcを用いて平文 x から暗号文 y を計 算する関数を F で表したとき,y=F(x,kc)を満たす暗号文 y を出力す る暗号回路であると認められる(以下,この技術思想を「本願技術思想 1)」という。)。 このように理解することは,本願明細書等の「関数鍵 kc が回路21 の暗号化を実施する役割を果たす。この暗号化は例えばレジスタ22の 内部で入力変数 x を暗号化された変数 y=DES(x,kc)に変換する DES アルゴリズム23である。」(【0040】)との記載とも整合する。
・・・
上記本願技術思想1)及び2)によれば,本願発明の暗号回路を具現化 するためには,暗号回路によって実際に計算された暗号文と,暗号化ア ルゴリズム F に基づいて計算された暗号文とが等しいこと,すなわち G(x,kc(+)ki)=F(x,kc) を満たすことが要求される(以下,この要求を「本願発明の技術的要求」 という。)。 しかし,本願発明の技術的要求を満たす関数 G を構成する計算方法\nが,当業者の技術常識に鑑みて自明であると認めるに足りる証拠はない。 そこで,G(x,kc(+)ki)の具体的な計算方法が本願明細書等に示されて いるかについて,以下検討する。
・・・
以上のとおり,本願明細書等の図1及び2に示される回路において は,そもそもマスク鍵 kc(+)ki が計算されているとは認められないこと から,両図の回路をもって関数 G(x,kc(+)ki)の具体的態様を開示し たものということはできない。 d また,段落【0028】記載の「【数2】K(+)M」は,2つの値が XOR 演算されているという点で本願発明のマスク鍵と共通するもの の,記号が異なることから,本願発明を説明したものとは認められな い。

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平成29(行ケ)10180  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月28日  知的財産高等裁判所

 審決では動機付け無しとして進歩性違反なしと判断されていました。知財高裁(2部)は動機付けありとして、審決を取り消しました。
 登記識別情報保護シールを登記識別情報通知書に何度も貼り付け,剥離すること\nを繰り返すと,粘着剤層が多数積層して,登記識別情報を読み取りにくくなるとい う登記識別情報保護シールにおける本件課題は,登記識別情報保護シールを登記識 別情報通知書に何度も貼り付け,剥離することを繰り返すと必然的に生じるもので\nあって,登記識別情報保護シールの需要者には当然に認識されていたと考えられる (甲15)。現に,本件原出願日の5年以上前である平成21年9月30日には, 登記識別情報保護シールの需要者である司法書士に認識されていたものと認められ る(甲26の3)。そして,登記識別情報保護シールの製造・販売業者は,需要者 の要求に応じた製品を開発しようとするから,本件課題は,本件原出願日前に,当 業者において周知の課題であったといえる。 そうすると,本件課題に直面した登記識別情報保護シールの技術分野における当 業者は,粘着剤層の下の文字(登記識別情報)が見えにくくならないようにするた めに,粘着剤層が登記識別情報の上に付着することがないように工夫するものと認 められる。甲3発明は,秘密情報に対応する部分には実質的に粘着剤が設けられて いないものであり,甲3発明と甲1発明は,秘密情報保護シールであるという技術 分野が共通し,一度剥がすと再度貼ることはできないようにして,秘密情報の漏洩\nがあったことを感知するという点でも共通する。したがって,甲1発明に甲3発明 を適用する動機付けがあるといえる。 甲1発明に甲3発明を適用すると,粘着剤層が登記識別情報の上に付着すること がなくなり,本件課題が解決される。したがって,甲1発明において,甲3発明を 適用し,相違点に係る構成とすることは,当業者が容易に想到するものと認められ\nる。
ウ 被告の主張について
(ア) 被告は,甲3発明には,シールを何度も貼り付け,剥離することを繰\nり返すという課題は存在せず,その使用目的から容器又はシールを使い回すことは 倫理上許されないから本件課題とは矛盾し,阻害要因がある,と主張する。 しかし,甲3発明のシールは何度も貼り付け,剥離することを予\定されていない としても,一度剥がした後に新たなシールを貼付することは可能\である。また,甲 3発明が,医療,保健衛生分野において使用される検体用容器等に使用される場合 には,何度も貼り付け,剥離することはないのは,検体用容器等の用途がそのよう\nなものであるからであって,甲3発明自体の作用,機能に基づくものではなく,甲\n3発明は保健,衛生分野に限って使用されるものではないから,甲1発明と組み合 わせるのに阻害要因があるとはいえない。したがって,被告の主張には,理由がな い。

◆判決本文

同じ特許発明に関する別の無効審判の取消事件です。 こちらも進歩性無しと判断されました。

◆平成29(行ケ)10176

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平成29(行ケ)10139  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年4月16日  知的財産高等裁判所

 条件判断を入れ替えると、技術的意義に変動が生じるので単なる設計事項ではないとして、進歩性なしとした拒絶審決を知財高裁は取り消しました。
 引用発明の衝突対応車両制御は,衝突対応制御プログラムが実行されることによ って行われる。同プログラムは,S1の自車線上存在物特定ルーチン及びS2のA CC・PCS対象特定ルーチンにおいて,自車線上の存在物であるか否かという条 件の充足性が判断され,その後に処理されるS5のACC・PCS作動ルーチンに おいて,自車両の速度,ブレーキ操作部材の操作の有無,自車両と直前存在物との 衝突時間や車間時間等の条件に応じて,特定のACC制御やPCS制御が開始され, 又は開始されないというものである。
(イ) 条件判断の順序の入替えについて
本願補正発明では,ターゲット物体との相対移動の検知に応答してアクションを 始動するように構成された後に,自車線上にある存在物を特定し,アクションの始\n動を無効にするという構成が採用されている。したがって,引用発明を,相違点に\n係る本願補正発明の構成に至らしめるためには,少なくとも,まず,自車線上の存\n在物であるか否かという条件の充足性判断を行い,続いて,特定のACC制御やP CS制御を開始するために自車両の速度等の条件判断を行うという引用発明の条件 判断の順序を入れ替える必要がある。 しかし,引用発明では,S1及びS2において,自車線上の存在物であるか否か という条件の充足性が判断される。この条件は,ACC制御,PCS制御の対象と なる前方存在物を特定するためのものである(引用例【0091】)。そして,引 用発明は,これにより,多数の特定存在物の中から,自車線上にある存在物を特定 し,ACC制御,PCS制御の対象となる存在物を絞り込み,ACC制御,PCS 制御のための処理負担を軽減することができる。一方,ACC制御,PCS制御の 対象となる存在物を絞り込まずに,ACC制御,PCS制御のための処理を行うと, その処理負担が大きくなる。このように,引用発明において,自車線上の存在物で あるか否かという条件の充足性判断を,ACC制御,PCS制御のための処理の前 に行うか,後に行うかによって,その技術的意義に変動が生じる。 したがって,複数の条件が成立したときに特定のアクションを始動する装置にお いて,複数の条件の成立判断の順序を入れ替えることが通常行い得る設計変更であ ったとしても,引用発明において,まず,特定のACC制御やPCS制御を開始す るために自車両の速度等の条件判断を行い,続いて,自車線上の存在物であるか否 かという条件の充足性判断を行うという構成を採用することはできない。\nよって,引用発明における条件判断の順序を入れ替えることが,単なる設計変更 であるということはできないから,相違点に係る本願補正発明の構成は,容易に想\n到することができるものではない。
(ウ) 本件周知技術の適用
a 引用発明における条件判断の順序を入れ替えることが単なる設計変更であっ たとしても,条件判断の順序を入れ替えた引用発明は,まず,自車両の速度等の条 件判断がされ,続いて,自車線上の存在物であるか否かという条件の充足性が判断 され,その後,特定のACC制御やPCS制御が開始され,又は開始されないもの になる。そして,これに本件周知技術を適用できたとしても,本件周知技術を適用 した引用発明は,まず,自車両の速度等の条件判断がされ,続いて,自車線上の存 在物であるか否かという条件の充足性が判断され,その後,特定のACC制御やP CS制御が開始され,又は開始されないものになり,加えて,特定の条件を満たし た場合には,当該ACC制御やPCS制御の始動が無効になるにとどまる。 ここで,本件周知技術を適用した引用発明は,特定の条件を満たした場合に,P CS制御等の始動を無効にするものである。そして,本件周知技術を適用した引用 発明においては,PCS制御等の開始に当たり,既に,自車線上の存在物であるか 否かという条件の充足性が判断されているから,自車線上の存在物であるか否かと いう条件を,再度,PCS制御等の始動を無効にするに当たり判断される条件とす ることはない。 これに対し,相違点に係る本願補正発明の構成は,「横方向オフセット値に基づ\nいて」,すなわち,自車線上の存在物であるか否かという条件の充足性判断に基づ いて,少なくとも1のアクションの始動を無効にするものである。 したがって,引用発明に本件周知技術を適用しても,相違点に係る本願補正発明 の構成には至らないというべきである。
b なお,本件周知技術を適用した引用発明は,自車両の速度等の条件判断と, それに続く,自車線上の存在物であるか否かという条件の充足性判断をもって,P CS制御等を開始するものである。PCS制御等の開始を,自車線上の存在物であ るか否かという条件の充足性判断よりも前に行うことについて,引用例には記載も 示唆もされておらず,このことが周知慣用技術であることを示す証拠もない。 したがって,引用発明に本件周知技術を適用しても,その発明は相違点に係る本 願補正発明の構成には至らないところ,さらに,PCS制御等の開始を,自車線上\nの存在物であるか否かという条件の充足性判断よりも前に行うことにより,当該発 明を,相違点に係る本願補正発明の構成に至らしめることができるものではない。
c そもそも,本願補正発明では,ターゲット物体との相対移動の検知に応答し てアクションを始動するように構成された後に,自車線上にある存在物を特定し,\nアクションの始動を無効にするという構成が採用されている。本願補正発明は,タ\nーゲット物体との相対移動の検知に応答してアクションを始動するという既存の構\n成に,当該構成を変更することなく,単に,自車線上の存在物であるか否かという\n条件の充足性判断を付加することによって,アクションの始動を無効にするという ものであり,引用発明とは技術的思想を異にするものである。
(エ) 以上のとおり,引用発明における条件判断の順序を入れ替えることが単な る設計変更ということはできず,また,引用発明に本件周知技術を適用しても,相 違点に係る本願補正発明の構成には至らないというべきであるから,相違点に係る\n本願補正発明の構成は,引用発明に基づき,容易に想到できたものとはいえない。\n

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平成29(行ケ)10208  審決取消請求事件  行政訴訟 平成30年4月11日  知的財産高等裁判所(4部)

 商標「マイナンバー実務検定」が商標法4条1項6号、11号違反とした審決が維持されました。先願既登録商標として、「マイナンバー」(標準文字)(第5756402号)がありました。
 イ 本願商標の「マイナンバー」の構成部分を類否判断の対象とすることの可否\n本願商標は,「マイナンバー実務検定」というものであり,その全体の構成から,\n「マイナンバージツムケンテイ」との称呼を生じ,「マイナンバーについての実務検 定」との観念を生じる。 また,本願商標の「マイナンバー」の構成部分は,著名な標章である「マイナンバ\nー」とその構成文字を同じくするものであるから,当該構\成部分は,役務の出所識 別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。 他方,本願商標の指定役務には,「検定試験の企画・運営又は実施及びこれらに関 する情報の提供」,「検定試験受験者へのセミナーの開催及びこれらに関する情報の 提供」が含まれるところ,本願商標の「実務検定」の構成部分は,上記指定役務との\n関係では,「実務」の「検定」であることを一般的に表示するものにすぎず,当該構\ 成部分から役務の出所識別標識としての称呼,観念は生じないというべきである。 以上によれば,本願商標からは,「マイナンバージツムケンテイ」との称呼及び「マ イナンバーについての実務検定」との観念のみならず,「マイナンバー」との称呼及 び著名な標章である「マイナンバー」と同一の観念,すなわち,「マイナンバー法に 基づく社会保障・税番号又は個人番号,社会保障・税番号制度であるマイナンバー 制度」との観念も生じ得る。 よって,本願商標のうち,「マイナンバー」という構成部分を抽出し,当該構\成部 分のみを引用商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきであ る。
・・・・
 原告は,本願商標からは,「マイナンバー実務検定」としての一連の称呼,観念の みを生じると主張する。
1)原告が,文部科学大臣の許可法人,文部科学省生涯学習政策局の所管の団体と して,平成11年10月15日に設立が認可された一般財団法人であり(甲67, 129),情報教育に関する技能検定試験を実施し,また,情報教育に関する講習会\nを開催するとともに,情報学習に関する調査研究及び出版物の刊行を行うことによ り,情報に係る生涯学習を推進していること(甲68),2)原告が,産経新聞社,角 川アスキー総合研究所の後援を得て,平成27年8月2日から平成29年12月1 7日までの間に,全国の主要都市の合計138会場において,12回にわたり,「マ イナンバー実務検定」との名称の検定試験を実施しており,その受験申込者は,合\n計4万5968名に達していること(甲69〜71,82〜95,112,133, 134),3)原告が,ウェブサイト「マイナンバー実務検定」を紹介するほか(甲7 0,71),「マイナンバー実務検定」の広告動画を大手動画サイトであるYouT ubeにアップロードし(甲72,74,123〜126),テレビでコマーシャル 映像を合計502回放映し(甲73,116,117の1〜6,127,128,1 35,136の1〜4,137〜143,144の1・2),新聞にも広告記事を掲 載し(甲75,76,133,134),いずれにおいても,「マイナンバー実務検 定」の文字が表示されていること,4)原告が,「マイナンバー実務検定」に関するパ ンフレット,案内ビラ,ポスター等を作成の上,配布又は展示しており(甲77〜9 4,118),これらにおいても,「マイナンバー実務検定」の文字が表示されている\nこと,5)原告が,マイナンバー実務検定のテキストや過去問題集等を発行しており (甲97〜102,131,132),その印刷部数は,平成29年5月の時点で, Web販売のみの7000部を含めて3万部に達し(甲119,120),その全て に「マイナンバー実務検定」の文字が表示されていること等の取引の実情に照らす\nなら,本願商標に,一定の周知性はあるものと認められる。 しかし,本願商標の「マイナンバー」の構成部分が,役務の出所識別標識として強\nい印象を与えるのに対して,「実務検定」の構成部分は,役務の出所識別標識として\nの呼称,観念を生じるものではないことから,「マイナンバー」の構成部分を抽出し,\nこの部分だけを引用商標と比較して商標の類否を判断することが許されることは, 前記イのとおりである。そうすると,本願商標から「マイナンバー実務検定」として の一連の称呼及び観念を生じるほか,「マイナンバー」の構成部分のみを抽出した場\n合には,「マイナンバー」との称呼や,「マイナンバー法に基づく社会保障・税番号又 は個人番号,社会保障・税番号制度であるマイナンバー制度」との観念も生じるか ら,本願商標から,「マイナンバー実務検定」としての一連の称呼,観念のみを生じ るとはいえない。

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平成28年(行ケ)第10182号 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成30年4月13日 知的財産高等裁判所(特別部)

 知財高裁大合議の判断です。「無効審判不成立の審決に対する取消の訴えの利益は,特許権消滅後であっても,損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり,刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情がない限り,失なれない。」および「刊行物に化合物が一般式の形式で記載され,当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合には,特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り,当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず,これを引用発明と認定できない。」と判断しました。
 本件審判請求が行われたのは平成27年3月31日であるから,審判 請求に関しては同日当時の特許法(平成26年法律第36号による改正前の特許法) が適用されるところ,当時の特許法123条2項は,「特許無効審判は,何人も請求 することができる(以下略)」として,利害関係の存否にかかわらず,特許無効審判 請求をすることができる旨を規定していた(なお,冒認や共同出願違反に関しては 別個の定めが置かれているが,本件には関係しないので,触れないこととする。こ の点は,以下の判断においても同様である。)。 このような規定が置かれた趣旨は,特許権が独占権であり,何人に対しても特許 権者の許諾なく特許権に係る技術を使用することを禁ずるものであるところから, 誤って登録された特許を無効にすることは,全ての人の利益となる公益的な行為で あるという性格を有することに鑑み,その請求権者を,当該特許を無効にすること について私的な利害関係を有している者に限定せず,広く一般人に広げたところに あると解される。 そして,特許無効審判請求は,当該特許権の存続期間満了後も行うことができる のであるから(特許法123条3項),特許権の存続期間が満了したからといって, 特許無効審判請求を行う利益,したがって,特許無効審判請求を不成立とした審決 に対する取消しの訴えの利益が消滅するものではないことも明らかである。
イ 被告は,特許無効審判請求を不成立とした審決に対する特許権の存続期 間満了後の取消しの訴えについて,東京高裁平成2年12月26日判決を引用して, 訴えの利益が認められるのは当該特許権の存在による審判請求人の法的不利益が具 体的なものとして存在すると評価できる場合のみに限られる旨主張する。 しかし,特許権消滅後に特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの 訴えの利益が認められる場合が,特許権の存続期間が経過したとしても,特許権者 と審判請求人との間に,当該特許の有効か無効かが前提問題となる損害賠償請求等 の紛争が生じていたり,今後そのような紛争に発展する原因となる可能性がある事実関係があることが認められ,当該特許権の存在による審判請求人の法的不利益が\n具体的なものとして存在すると評価できる場合のみに限られるとすると,訴えの利 益は,職権調査事項であることから,裁判所は,特許権消滅後,当該特許の有効・ 無効が前提問題となる紛争やそのような紛争に発展する可能性の事実関係の有無を調査・判断しなければならない。そして,そのためには,裁判所は,当事者に対し\nて,例えば,自己の製造した製品が特定の特許の侵害品であるか否かにつき,現に 紛争が生じていることや,今後そのような紛争に発展する原因となる可能性がある事実関係が存在すること等を主張することを求めることとなるが,このような主張\nには,自己の製造した製品が当該特許発明の実施品であると評価され得る可能性がある構\成を有していること等,自己に不利益になる可能\性がある事実の主張が含ま\nれ得る。 このような事実の主張を当事者に強いる結果となるのは,相当ではない。
ウ もっとも,特許権の存続期間が満了し,かつ,特許権の存続期間中にさ れた行為について,何人に対しても,損害賠償又は不当利得返還の請求が行われた り,刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情が存する場合,例えば,特許権の存続期間が満了してから既に20年が経過した場合等\nには,もはや当該特許権の存在によって不利益を受けるおそれがある者が全くいな くなったことになるから,特許を無効にすることは意味がないものというべきであ る。したがって,このような場合には,特許無効審判請求を不成立とした審決に対す る取消しの訴えの利益も失われるものと解される。
エ 以上によると,平成26年法律第36号による改正前の特許法の下にお いて,特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益は,特許 権消滅後であっても,特許権の存続期間中にされた行為について,何人に対しても, 損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり,刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情がない限り,失われることはない。\nオ 以上を踏まえて本件を検討してみると,本件において上記のような特段 の事情が存するとは認められないから,本件訴訟の訴えの利益は失われていない。
(2) なお,平成26年法律第36号による改正によって,特許無効審判は,「利 害関係人」のみが行うことができるものとされ,代わりに,「何人も」行うことがで きるところの特許異議申立制度が導入されたことにより,現在においては,特許無効審判請求をすることができるのは,特許を無効にすることについて私的な利害関\n係を有する者のみに限定されたものと解さざるを得ない。 しかし,特許権侵害を問題にされる可能性が少しでも残っている限り,そのような問題を提起されるおそれのある者は,当該特許を無効にすることについて私的な\n利害関係を有し,特許無効審判請求を行う利益(したがって,特許無効審判請求を 不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益)を有することは明らかであるから, 訴えの利益が消滅したというためには,客観的に見て,原告に対し特許権侵害を問 題にされる可能性が全くなくなったと認められることが必要であり,特許権の存続期間が満了し,かつ,特許権の存続期間中にされた行為について,原告に対し,損\n害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり,刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情が存することが必要であると解すべきである。\n
・・・
特許法29条1項は,「産業上利用することができる発明をした者は,次に掲げる 発明を除き,その発明について特許を受けることができる。」と定め,同項3号とし て,「特許出願前に日本国内又は外国において」「頒布された刊行物に記載された発 明」を挙げている。同条2項は,特許出願前に当業者が同条1項各号に定める発明 に基づいて容易に発明をすることができたときは,その発明については,特許を受 けることができない旨を規定し,いわゆる進歩性を有していない発明は特許を受け ることができないことを定めている。
上記進歩性に係る要件が認められるかどうかは,特許請求の範囲に基づいて特許 出願に係る発明(以下「本願発明」という。)を認定した上で,同条1項各号所定の 発明と対比し,一致する点及び相違する点を認定し,相違する点が存する場合には, 当業者が,出願時(又は優先権主張日。以下「3 取消事由1について」において 同じ。)の技術水準に基づいて,当該相違点に対応する本願発明を容易に想到するこ とができたかどうかを判断することとなる。
このような進歩性の判断に際し,本願発明と対比すべき同条1項各号所定の発明 (以下「主引用発明」といい,後記「副引用発明」と併せて「引用発明」という。) は,通常,本願発明と技術分野が関連し,当該技術分野における当業者が検討対象 とする範囲内のものから選択されるところ,同条1項3号の「刊行物に記載された 発明」については,当業者が,出願時の技術水準に基づいて本願発明を容易に発明 をすることができたかどうかを判断する基礎となるべきものであるから,当該刊行 物の記載から抽出し得る具体的な技術的思想でなければならない。そして,当該刊 行物に化合物が一般式の形式で記載され,当該一般式が膨大な数の選択肢を有する 場合には,当業者は,特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を積極的あるいは優 先的に選択すべき事情がない限り,当該刊行物の記載から当該特定の選択肢に係る 具体的な技術的思想を抽出することはできない。 したがって,引用発明として主張された発明が「刊行物に記載された発明」であ って,当該刊行物に化合物が一般式の形式で記載され,当該一般式が膨大な数の選 択肢を有する場合には,特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に 選択すべき事情がない限り,当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出す ることはできず,これを引用発明と認定することはできないと認めるのが相当であ る。
この理は,本願発明と主引用発明との間の相違点に対応する他の同条 1 項3号所 定の「刊行物に記載された発明」(以下「副引用発明」という。)があり,主引用発 明に副引用発明を適用することにより本願発明を容易に発明をすることができたか どうかを判断する場合において,刊行物から副引用発明を認定するときも,同様で ある。したがって,副引用発明が「刊行物に記載された発明」であって,当該刊行 物に化合物が一般式の形式で記載され,当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場 合には,特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を積極的あるいは優先的に選択す べき事情がない限り,当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出すること はできず,これを副引用発明と認定することはできないと認めるのが相当である。 そして,上記のとおり,主引用発明に副引用発明を適用することにより本願発明 を容易に発明をすることができたかどうかを判断する場合には,1)主引用発明又は 副引用発明の内容中の示唆,技術分野の関連性,課題や作用・機能の共通性等を総\n合的に考慮して,主引用発明に副引用発明を適用して本願発明に至る動機付けがあ るかどうかを判断するとともに,2)適用を阻害する要因の有無,予測できない顕著\nな効果の有無等を併せ考慮して判断することとなる。特許無効審判の審決に対する 取消訴訟においては,上記1)については,特許の無効を主張する者(特許拒絶査定 不服審判の審決に対する取消訴訟及び特許異議の申立てに係る取消決定に対する取\n消訴訟においては,特許庁長官)が,上記2)については,特許権者(特許拒絶査定 不服審判の審決に対する取消訴訟においては,特許出願人)が,それぞれそれらが あることを基礎付ける事実を主張,立証する必要があるものということができる。

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平成28(ワ)29320  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月29日  東京地方裁判所(46部)

 技術的範囲に属すると判断されました。損害額として102条3項を主張しましたが、売上げに寄与する程度が小さいとして、減額されました。
 上記(1)の記載によれば,本件発明1及び2は,熱可塑性樹脂発泡シートに 非発泡の熱可塑性樹脂フィルムを積層した発泡積層シートを成形してなる容 器について,熱可塑性樹脂発泡シートと熱可塑性樹脂フィルムとの硬さの差 により,容器に触れた際に,硬いフィルムで指等を裂傷するおそれがあるが, 突出部の上下面に凹凸を形成すると,蓋体を外嵌させる際に突起部が係合さ れる突出部の下面側にも凹凸形状が形成されることとなって強固な係合状態 を形成させることが困難となり,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体などを強 固に止着させることが困難であるという課題を,本件発明1の構成,特に上記端縁部の上面に凹凸形状を形成する一方で下面は平坦とする形状とすることによって解決することとしたものということができる。\nまた,上記(2)の記載を参酌すると,本件発明1及び2は,上記端縁部を, 厚みが圧縮されて薄肉化されたもので,かつ,上面に凹凸形状が存在するも のとすることにより,その強度を強め,これによって蓋体を強固に止着させ るという課題を解決するものということができる。 以上によれば,本件発明1及び2は,容器の突出部の端縁部の形状につい て,上面に他の部分との厚みの差を付けて凹凸形状を形成するという形状と することで端縁部での怪我を防止するとの課題を解決し,端縁部につき上記 の端縁部の形状とすることに加えて下面を平坦にすることで,蓋の強固な止 着を実現するという課題を解決し,これによって上記各課題の双方を解決す ることを技術的意義とする発明である。

・・・・
 以上によれば,本件明細書においても,発明の構成につき特許請求の範囲の記載と同様の記載がされ,その実施例においても,側周壁部の上端縁であり,被収容物が収容される収容凹部のへりといえる開口縁から外側に\n張り出して形成されているものが突出部とされている。実施例を示す図面 には突出部が水平で平坦な容器が示されているが,発明の詳細な説明欄に は,突出部が平坦であることについての説明はなく,本件発明1及び2の 突出部を突出部が平坦なものに限る趣旨の記載は見当たらない。これらに よれば,「開口縁」及び「突出部」については,上記アのように解するの が相当であり,「突出部」は水平で平坦なものには限られない。
ウ これに対して,被告は,出願経過に照らし,本件発明1及び2は突出部 が水平で平坦である容器に関する発明であると主張する。 原告は,前記1(2)のとおり,「前記突出部の端縁部の…且つ該端縁部の」 と補正をしたものであるところ,証拠(乙12〔2〕)によれば,審判請 求書において,上記補正の根拠として,突出部の端縁部において熱可塑性 樹脂発泡シートが圧縮されて薄肉とされたものであることを明確にしたも のであり,この点が本件明細書の例えば段落【0019】や【図3】b) に記載されているもので,願書に添付した明細書及び図面に記載された事 項の範囲内のものである旨記載したことが認められる。 上記認定事実によれば,補正の前後に係る特許請求の範囲をみても,補 正された部分は「端縁部の上面」と「収容凹部の開口縁近傍の突出部の上 面」の位置関係と端縁部における形状についてであって,突出部の形状が 水平で平坦である旨の明示的な記載も示唆も見当たらないし,原告が主張 したのは本件明細書において発明の実施の形態として記載(段落【001 9】や【図3】b))があることから補正の要件を満たすということであ るから,突出部の形状が水平で平坦なものに限定する趣旨を読み取ること ができない。したがって,本件発明1及び2の容器の突出部が水平で平坦 であると解することはできず,被告の主張は採用できない。
・・・・
上記記載によれば,本件発明1及び2は前記1(3)のとおりの技術的意義 を持つもので,端縁部の下面が平坦であることとその厚みが薄いことの双 方が備わることで,それぞれの効果が生じ,蓋の強固な止着が実現するの であって,端縁部が圧縮されて薄くなっていることと上面の位置との関係 に何らかの技術的意義があるものでないし,実施例においても何らの効果 も示されていない。そうすると,物の態様として「ように」の語が特段の 意味を有すると解することはできず,前記ア1)及び2)の各構成が両立していれば足りると解するのが相当である。
ウ これに対し,被告は,「突出部の端縁部において…薄くなっており」と いう構成によってのみ「前記突出部の…下位となる」構\成が実現しなけれ ばならないと解釈すべき旨を主張し,その根拠として本件明細書の記載 (段落【0019】),審判請求書(乙12)において上記部分に係る補正 の根拠を本件明細書の「例えば段落0019や図3(b)」と主張したと いう出願経過を挙げる。 しかし,上記の本件明細書の記載(段落【0019】)は実施例の記載 であり,こうした実施例があることから上記のとおり解釈することは相当 でないし,当該記載が引用する【図3】b)によれば端縁部の下面も端縁 部以外の突出部の下面に比して下位となっており,端縁部を圧縮して薄く しなくても端縁部の上面が端縁部以外の突出部の上面に比して下位となっ ているとみる余地がある。補正の根拠に関する主張は,補正に係る部分が 本件明細書の記載の範囲内であることを指摘したものであって,説明した 部分に補正に係る部分の解釈を限定する趣旨を読み取ることはできない。 被告の主張は採用できない。
・・・
上記 1)によれば,プラスチック製品や容器についての一般的な実施 料率は2〜4%程度ということができる。また,・・・によれば, 本件発明1及び2の技術的意義が現れているのは容器の一部である端縁 部の形状に限定されるところ,一般的には端縁部における手指の切創を 防止することは顧客吸引力を持ち得るといえるものの,原告の製品にお いて行われている上記「セーフティエッジ」加工は,蓋の端縁部の加工 であって本件発明1及び2の包装用容器に係る加工であるとは認め難く, 原告においても平成27年以降はこの加工の存在をカタログ等において 顧客に告知していない。被告においても,端縁部において手指の怪我が 生じ得るという課題を認識して顧客に告知する一方で,その部分の怪我 防止の措置について顧客に告知をしていない。そうすると,本件発明1 及び2の技術的意義が容器の売上げに寄与する程度は相当程度小さいも のとならざるを得ないから,上記の一般的な実施料率よりも相当程度低 くすべきである。 以上によれば,本件発明1及び2の実施によって受けるべき相当な実 施料率は●(省略)●と認めるのが相当である。
ウ 損害の額
上記ア及びイによれば,本件発明1及び2の実施に対し受けるべき金銭 の額に相当するのは,1694万4217円であると認められる。

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平成29(行ケ)10127  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所

 明確性違反および実施可能要件違反の無効を主張しましたが、審決、知財高裁とも無効理由無しと判断しました。
 原告は,平成13年(2001年)以降でさえ,先行技術(甲20)と 技術常識に基づいて,外部から侵入した水分による劣化を防止しているとはいえ ない程度に蛍光体の沈降が抑えられた濃度分布の実現は不可能であったのであり,\n本件明細書の「フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材,形成温度,粘度やフ ォトルミネセンス蛍光体の形状,粒度分布などを調整することによって種々の分 布を実現することができ」(【0047】)との記載は,本件構成に対応する技\n術的手段が単に抽象的に記載されているだけで,当業者が発明の実施をすること ができない記載にすぎないことを意味するものに他ならないから,実施可能要件\nを欠くというべきであって,審決の結論には明らかな違法がある旨主張する。 明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者がその実施をすることができ る程度に明確かつ十分に記載したものであることを要する(特許法36条4項1号)。\n本件発明は,「発光装置と表示装置」(発光ダイオード)という物の発明であるとこ\nろ,物の発明における発明の「実施」とは,その物の生産,使用等をする行為をい うから(特許法2条3項1号),物の発明について実施をすることができるとは,そ の物を生産することができ,かつ,その物を使用することができることであると解 される。 本件明細書には,「蛍光体の分布は,フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材, 形成温度,粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状,粒度分布などを調整すること によって種々の分布を実現することができ,発光ダイオードの使用条件などを考慮 して分布状態が設定される。」(【0047】)との記載があることから,蛍光体の濃 度分布を適宜調整することにより,本件発明の「コーティング樹脂中のガーネット 系蛍光体の濃度が,コーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に向かって高く\nなっている」発光ダイオードを生産することができ,かつ,使用することができる ことは,本件明細書に接した当業者にとって明らかであると認められる。 したがって,発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明を実施することがで きる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められるから,その旨の審決の\n判断に誤りはない。 これに対し,原告が主張する,外部から侵入した水分による劣化を防止している とはいえない程度に蛍光体の沈降が抑えられた濃度分布とは,本件構成に係る「コ\nーティング樹脂中のガーネット系蛍光体の濃度が,コーティング樹脂の表面側から\nLEDチップ側に向かって高くなっている」ものではない状態を示すものである。 そうすると,仮に,このような濃度分布について,発明の詳細な説明や出願時の 技術常識を考慮しても実現することができない,又は,その実現に過度の試行錯誤 を要するとしても,このことは,本件明細書の発明の詳細な説明が,当業者が本件 発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとの前記認定を左右するも\nのではない(発光ダイオードの製造工程において,蛍光体がコーティング樹脂中を 沈降することによって,本件構成を満足するものを製造することができることにつ\nいては,当事者間に争いがないものと解される。)

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平成29(行ケ)10130  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤りを理由に、異議理由ありとした審決が取り消されました。異議理由ありとの審決自体が珍しいですが、さらにそれが取り消されたので珍しいケースです。
イ 上記アによれば,本件訂正明細書には,アナターゼ型酸化チタンは光触 媒作用が強いため,熱可塑性樹脂等の高分子化合物に添加されるとそれを分解等し てしまうことから,SiO2などで表面処理を行うのが好ましいこと,すなわち,\n本件訂正発明1の表面処理に用いられるSiO2は,光触媒作用が強いアナターゼ\n型酸化チタンが,熱可塑性樹脂等の高分子化合物を分解等しないようにするための ものであることが記載されているものと認められる。
・・・
上記イによれば,SiO2(シリカ)とシロキサンは,共に酸化チタン を被覆するものであること,SiO2(シリカ)は,Si−O−Si結合を有して いるものの,テトラアルコキシシランが加水分解及び重合し,反応すべきものが全 て反応したときの反応物であるのに対して,シロキサンは,Si−O−Si結合を 含むものの総称であって,化学式SiO2で表されるものではないこと,したがっ\nて,SiO2(シリカ)とシロキサンは,化学物質として区別されるものであるこ とが認められる。
エ 前記認定のとおり,本件訂正発明1の「SiO2で表面処理された・・・\n酸化チタン粒子」とは,文言上,「酸化チタン粒子」が,「SiO2(シリカ)」で表\n面処理されているものであることは明らかである。 これに対し,甲1文献には,酸化チタン粉末の表面処理のいずれの方法によって\nも,甲1発明の酸化チタン粉末の表面にシロキサンの被膜が形成されたことが記載\nされていることが認められるものの,甲1文献の上記記載は,甲1発明の酸化チタ ン粉末の表面に「Si−O−Si結合」を含有する被膜が形成されていることを示\nすにとどまるものであって,「SiO2(シリカ)」の被膜が形成されていることを 推認させるものではない(前記認定のとおり,シロキサンは,Si−O−Si結合 を含むものの総称であって,SiO2(シリカ)とは化学物質として区別されるも のである。)。また,その他,甲1発明の酸化チタン粉末の表面に「SiO2(シリ\nカ)」が生成されていることを認めるに足りる証拠はない。 さらに,甲1文献には,テトラアルコキシシラン及び/又はテトラアルコキシシ ランの部分加水分解縮合物について反応すべきものが全て反応したことについては, 記載も示唆もされていないのであるから,この点においても,甲1発明の酸化チタ ン粉末の表面に「SiO2(シリカ)」が生成されていると認めることはできない。\nしたがって,甲1発明において,酸化チタン粉末の表面に,「SiO2(シリカ)」\nが生成されているとは認めることができず,甲1発明の酸化チタン粉末が「SiO 2(シリカ)」で表面処理されているということはできない。\n

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平成29(行ケ)10211  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所

 「AMG」を図案化した商標が「AMG」と認識されるかが争われました。知財高裁は認識できるとした審決を維持しました。原告の法人名が「(株)エイエムジー」なので、「AMG」を前提として、本件商標を図案化したものと推測されると裁判所に言及されています。
 本願商標は,前記第2,1 のとおりの構成であり,オレンジ色で,3つの図形\nを横に並べて表記されているものである。本願商標中,左部分は,左下から右斜め\n上に向かって伸びる斜線と,それに比べ2倍程度太い縦線とが,上部で接した図形 (デザイン部分1),中央部分は,アルファベットのM字状の図形(右端の縦線は, 他の直線より2倍程度太い線で表されている。デザイン部分3),右部分は,右中程\nから,上部及び左側に向けて円弧を描き,その円弧の右途中から円の中心に向けて 直線を描くことで,円弧の右側中程の一部を開口した図形(左側曲線部分は一部2 倍程度太く表されている。デザイン部分2)である。そして,本願商標の上記各部\n分は,それぞれ同じ大きさ,同色であり,構成の一部分を他の部分のより2倍程度\n太く表しているなど,デザイン化の手法も類似して,まとまりよく表\されているも のと認められる。 本願商標の構成中,デザイン部分3は,アルファベットの「M」の語とその形状\nを同じくし,「M」をデザイン化した図形であり,これを連想させるものとして表記\nしたものと理解するのが自然である。 また,証拠(乙4〜7)及び弁論の全趣旨によれば,アルファベットの「G」が デザイン部分2のような構成にデザイン化されて表\される事例があることが認めら れる。そうすると,本願商標の構成中,デザイン部分2及び3は,両者相まって,\nデザイン部分3は「M」を,デザイン部分2は「G」をデザイン化して表したもの\nと容易に理解し,認識されるものと認められる。 デザイン部分1は,その右部分に,デザイン化された「M」,「G」のアルファベ ットとともに,均等に配置され,同色で,しかも,構成の一部分を他の部分より2\n倍程度太く表しているなど同じ手法でデザイン化されて表\されていることが認めら れる。そして,デザイン部分1は,三角形の形状であるから,アルファベットの「A」 が想起されるものであり,「A」がデザイン部分1のような構成にデザイン化されて\n表される事例が多数あること(乙8〜18)を考慮すると,デザイン部分1は,「A」\nをデザイン化して表したものと容易に理解し,認識されるものと認められる。\n以上によれば,本願商標は,「AMG」をデザイン化して表したものと認められる\nから,本願商標からは,「エイエムジイ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないもの である。

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平成29(行ケ)10097  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所

 ゲームプログラムについて、進歩性ありとした審決が維持されました。
 前記1(1)の認定事実によれば,本件発明は,ユーザがシリーズ化された一連のゲ ームソフトを買い揃えるだけで,標準のゲーム内容に加え,拡張されたゲーム内容\nを楽しむことを可能とすることによって,シリーズ化された後作の