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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

実施権

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成29(ネ)10090  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年4月4日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 漏れていたのでアップします。知財高裁も、1審と同様に、数値範囲がその範囲であったとはいえないとして、先使用権を有しないと判断しました。なお、知財高裁は、傍論ですが、仮にその範囲であったとしても、同じ技術思想とはいえないとして、先使用ではないと判断しています。

 実際に用いられていたアルミピロー包材と同じ品番のアルミピロー包材の中に は,底部の折り曲げ部分のアルミが剥がれているものもある(甲18,26)。ま た,防湿性を確保したアルミピローの製造は,医薬品メーカーの管理方法を含めた 製造方法に大きく依存する旨指摘されている(乙48)。実際に用いられていたア ルミピロー包材に対して,専門家による立会いの下,リーク試験が行われ,気密性 が担保されていることが確認された旨報告されているものの(乙49),同リーク 試験は,検体を水没させ,一定の減圧条件(槽内圧力−40kPa,保持時間30 秒間)において,気泡が発生しないことを目視検査するというものである。水没試 験による気泡確認によって医薬包装の完全性を試験する方法は,個人の技量による 判別量の差や水槽内の細菌・水の表面張力による検出限界などの問題を有する旨指\n摘されているほか,−40kPaの圧力下において,直径5μmの孔からは5分経 過後も気泡が確認できず,直径10μmの孔においても,気泡の発生にばらつきが みられるとされている(甲27)。上記リーク試験の結果をもって,実際に用いら れたアルミピロー包材が気密性を有していたと確定することはできない。そうする と,サンプル薬が,長期間にわたって,アルミピロー包装下で保管されている間に, 湿気の影響を受けて水分含量が増加した可能性も,十\分にあり得るものである。 なお,サンプル薬の測定時の水分含量と,実生産品の水分含量(後記ウ(ア))や, 203サンプル薬を再製造したとされる錠剤の水分含量(2.18〜2.26質量%。 乙54〜56)は,ほぼ同じである。しかし,そもそも,サンプル薬と,実生産品 や203サンプル薬の再製造品が同一工程により製造されたものとは認められない から,この事実をもって,サンプル薬の測定時の水分含量が,製造時の水分含量と ほぼ同じであったということはできない。
(ウ) したがって,サンプル薬の測定時の水分含量が本件発明2の範囲内である からといって,4年以上も前の製造時の水分含量も本件発明2の範囲内であったと 推認できるものではない。
・・・
以上のとおり,サンプル薬を製造から4年以上後に測定した時点の水分含量 が本件発明2の範囲内であるからといって,サンプル薬の製造時の水分含量も同様 に本件発明2の範囲内であったということはできない。また,実生産品の水分含量 が本件発明2の範囲内であるからといって,サンプル薬の水分含量も同様に本件発 明2の範囲内であったということはできない。かえって,サンプル薬の顆粒の水分 含量を基に算出すれば,サンプル薬の水分含量は本件発明2の範囲内にはなかった 可能性を否定できない。その他,サンプル薬の水分含量が本件発明2の範囲内にあ\nったことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,控訴人が,本件出願日までに製造し,治験を実施していた本件2m g錠剤のサンプル薬及び本件4mg錠剤のサンプル薬の水分含量は,いずれも本件 発明2の範囲内(1.5〜2.9質量%の範囲内)にあったということはできない。
(3) サンプル薬に具現された技術的思想
ア 仮に,本件2mg錠剤のサンプル薬又は本件4mg錠剤のサンプル薬の水分 含量が1.5〜2.9質量%の範囲内にあったとしても,以下のとおり,サンプル 薬に具現された技術的思想が本件発明2と同じ内容の発明であるということはでき ない。
イ 本件発明2の技術的思想
前記1のとおり,本件発明2は,ピタバスタチン又はその塩の固形製剤の水分含 量に着目し,これを2.9質量%以下にすることによってラクトン体の生成を抑制 し,これを1.5質量%以上にすることによって5−ケト体の生成を抑制し,さら に,固形製剤を気密包装体に収容することにより,水分の侵入を防ぐという技術的 思想を有するものである。
ウ サンプル薬に具現された技術的思想
(ア) 控訴人が,本件出願日前に,サンプル薬の最終的な水分含量を測定したと の事実は認められない。
(イ) また,203サンプル薬及び303サンプル薬の製造工程では,A顆粒及 びB顆粒の水分含量を乾燥減量法による測定において●●●●●●●●にする旨定 められているものの(乙23の1・2,25の1・2),A顆粒及びB顆粒以外の 添加剤の水分含量は不明である。また,サンプル薬には吸湿性の高い崩壊剤や添加 剤が含まれているにもかかわらず,打錠時の周囲の湿度,気密包装がされるまでの 管理湿度などは不明である。 そうすると,サンプル薬に含有されるA顆粒及びB顆粒の水分含量について,● ●●●●にする旨定められているからといって,控訴人が,サンプル薬の水分含量 が一定の範囲内になるよう管理していたということはできない。
(ウ) さらに,012実生産品及び062実生産品の製造工程では,B顆粒の水 分含量を乾燥減量法による測定において●●●●●●●にすると定められており (乙24,26の1・2),サンプル薬と実生産品との間で,B顆粒の水分含量の 管理範囲が●●●●●●●●から●●●●●●●●へと変更されている。控訴人は, サンプル薬の水分含量には着目していなかったというほかない。
(エ) したがって,控訴人は,本件出願日前に本件2mg錠剤のサンプル薬及び 本件4mg錠剤のサンプル薬を製造するに当たり,サンプル薬の水分含量を1.5 〜2.9質量%の範囲内又はこれに包含される範囲内となるように管理していたと も,1.5〜2.9質量%の範囲内における一定の数値となるように管理していた とも認めることはできない。
エ 以上のとおり,本件発明2は,ピタバスタチン又はその塩の固形製剤の水分 含量を1.5〜2.9質量%の範囲内にするという技術的思想を有するものである のに対し,サンプル薬においては,錠剤の水分含量を1.5〜2.9質量%の範囲 内又はこれに包含される範囲内に収めるという技術的思想はなく,また,錠剤の水 分含量を1.5〜2.9質量%の範囲内における一定の数値とする技術的思想も存 在しない。 そうすると,サンプル薬に具現された技術的思想が,本件発明2と同じ内容の発 明であるということはできない。
オ 控訴人の主張について
(ア) 控訴人は,水分含量によってピタバスタチン製剤のラクトン体が生成する ことは技術常識であったから,控訴人は,本件2mg錠剤及び本件4mg錠剤の治 験薬製造前から,錠剤中の水分含量を管理する必要性を認識していたと主張する。 しかし,一般的に,医薬組成物において製剤中の水分が類縁物質生成の原因にな るという技術常識(乙8〜10)や,ピタバスタチンについては水分含量を調整し なければならないという技術常識(乙12〜14,20,57)が認められるとし ても,水分含量の調整方法は様々であるから,このような技術常識のみから,ピタ バスタチン又はその塩と特定の崩壊剤から成る錠剤であるサンプル薬について,錠 剤としての水分含量を一定の範囲内となるように管理することを控訴人が認識して いたといえるものではない。 したがって,本件出願日前の技術常識をもって,控訴人がサンプル薬の水分含量 を管理する必要性を認識していたということはできない。
(イ) 控訴人は,サンプル薬について,水分含量を調整することにより,水分に よる影響を受ける類縁物質が生成しない,長期安定な薬剤を製造する点は,確定し ていた旨主張する。 しかし,控訴人が,サンプル薬について,ラクトン体及び5−ケト体の生成の程 度について測定し,安定な製剤であることを確認していたとしても,前記のとおり, 控訴人が,サンプル薬を製造するに当たり,その水分含量を1.5〜2.9質量% の範囲内又はこれに包含される範囲内となるように管理していたとも,1.5〜2. 9質量%の範囲内における一定の数値となるように管理していたとも認めることは できない。サンプル薬において,5−ケト体の生成を抑制できていたとしても,こ れをもって,控訴人が,サンプル薬の水分含量を1.5質量%以上に管理していた と推認できるものではなく,また,これが,控訴人がサンプル薬の水分含量を1. 5質量%以上に管理するという技術的思想を有していた結果として生じたものと評 価できるものでもない。 したがって,サンプル薬について,何らかの方法を採用することにより,水分に よる影響を受ける類縁物質が生成しない,長期安定な薬剤を製造する点が確定され ていたとしても,これをもって,サンプル薬に具現された技術的思想が,本件発明 2と同じ内容の発明であるということはできない。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成27(ワ)30872 (東京地裁29部)

 本件出願日(平成24年8月8日)までに,被 告の社内において,本件発明2の内容を知らないでこれと同じ内容の発明がされて いた(被告が被告の従業員等から当該発明を知得していた)と認めることは困難で あるし,この点を措くとしても,後記(3)のとおり,本件出願日までに,本件2mg 製品及び被告製品(本件4mg製品)の内容が,本件発明2の構成要件Eを備える\nものとして,一義的に確定していたと認めることはできず,本件発明2を用いた事 業について,被告が即時実施の意図を有し,かつ,その即時実施の意図が客観的に 認識される態様,程度において表明されていたとはいえないから,被告に先使用権\nが成立したということはできない。
・・・
しかし,被告の提出に係る書証からは,実生産品とサンプル薬が同一の工程によ り製造されたものであると直ちに認めることは困難である。すなわち,本件で問題 となるのは,「PTP包装してなる医薬品」を構成する「錠剤」の「水分含量」が\n「1.5〜2.9質量%」の範囲となるよう管理されていたか否かであるところ, 水分は,有効成分でないばかりか,積極的な添加物でもなく,不純物として扱われ るものでもないため,錠剤が製造された後,PTP包装された状態で,錠剤の水分 含量がいかなる値となるかという観点から工程の同一性を論じるためには,被告の 提出に係る全ての書証をもってしても,情報が不足しているというほかはない(少 なくとも,打錠工程の湿度環境や打錠後の保管条件は,PTP包装された錠剤の水 分含量に影響するといわざるを得ないが,被告の提出にかかる書証では,これらの 条件は明らかにされていない。)。
イ 被告は,本件2mg錠剤のサンプル薬(ロット番号:PTVD−203)及 び本件4mg錠剤のサンプル薬(ロット番号:TVD−303)の水分含量につい て,いずれも本件発明2の構成要件Eの数値範囲内にあったと主張し,乙32号証\n(以下「乙32実験報告書」という。)を提出する。 しかし,乙32実験報告書に示される本件2mg錠剤のサンプル薬(ロット番号: PTVD−203)及び本件4mg錠剤のサンプル薬(ロット番号:TVD−30 3)の水分含量の測定値は,これらの錠剤が製造されたとされる日から4年以上が 経過した時点のものである。そして,被告ないし同報告書の説明するところによれ ば,これらの錠剤は,その製造後,PTP包装とアルミピロー包装がされ,その状 態により,被告の中央研究所の検体保管庫に温度20℃,成り行き湿度(実測値: 75%RH)で保存されていたものであり,検体1錠をPTP包装から取り出して, 乳鉢で粉砕してカールフィッシャー法により水分測定を行ったというのであるが, 上記の条件下で4年以上が経過しても,錠剤の水分含量がそのまま保持されること を直接裏付ける証拠はない。 かえって,1)本件2mg製品の使用期限が2年6か月とされ,本件4mg製品(被 告製品)の使用期限が3年とされていること(甲4〔52頁〕)からすれば,4年 以上という期間は,予定されている保存期間を大きく超えるものであって,水分含\n量を含む錠剤の状態に影響を及ぼす可能性を否定できないこと,2)ピタバスタチン からラクトンが生成する反応は,脱水縮合であって,水が脱離することから,水分 含量増加の原因となり得ること,3)アルミピロー包装に使用される材料の防湿性が 高いことがうかがわれる(乙33)としても,PTP包装された上記サンプル薬を 収納したアルミピロー包装には,チャックがついていて(乙32,39),当該材 料のみでは構成されてはおらず,また,湿気等の影響を受けやすい商品の包装には\n充分に注意する必要があるとされていること(甲18),4)PTP包装やアルミピ ロー包装が施された他の医薬品について,所定の保存期間経過後に水分含量が増加 しているとみられる例があること(甲15,19)などからすれば,PTP包装と アルミピロー包装により,直ちに上記サンプル薬の水分含量の増加が完全に抑えら れていたと断ずることは,困難である。
被告は,上記サンプル薬の水分含量がそれぞれ本件2mg錠剤の実生産品(ロッ ト番号:B062)及び本件4mg錠剤の実生産品(ロット番号:B012)とほ ぼ同じ値であることから,保存期間中の吸湿の可能性が否定される旨主張するよう\nであるが,かかる被告の立論は,本件2mg錠剤のサンプル薬が本件2mg錠剤の 実生産品と同一の工程により製造され,また,本件4mg錠剤のサンプル薬が被告 錠剤(本件4mg錠剤の実生産品)と同一の工程により製造されていたことを前提 とするものであるところ,既に説示したとおり,本件2mg錠剤のサンプル薬及び 本件4mg錠剤のサンプル薬が,それぞれ本件2mg錠剤の実生産品や本件4mg 錠剤の実生産品(被告錠剤)と同一の工程により製造されたと認めるに足りる証拠 はないものというべきである。

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平成29(ワ)1752  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年2月28日  大阪地方裁判所(26部)

 専用実施権について、明文がなくても、実施義務を負っているかが争われました。実施義務については認めましたが、報告義務違反はないとして請求を棄却しました。

 原告は被告が実施義務を負っていることを前提として,それに違反した債務不 履行があると主張している。 確かに,本件契約には,被告の実施義務を定めた条項は設けられておらず,被告 が本件特許の実施に努めることさえも規定されていない。 もっとも,本件契約は専用実施権設定契約であり,被告は本件契約に基づき本件 特許の専用実施権を取得し,本件特許を独占的に実施し得る地位を獲得するのに対 し,原告は本件契約を締結することによって,本件特許を実施することや他の者に 実施許諾することができないにもかかわらず,特許維持費用の支払義務は負うとい う立場に立つことになる。また,本件契約では,イニシャルペイメントが「0円」 と明記され,またランニング実施料の金額も,実施の有無にかかわらず一定額が支 払われる条項とはされず,被告が販売した本件特許権に基づく製品の販売価格に所 定の割合(2ないし5%)を乗じた額とするにとどめられていたから,原告は,被 告が本件特許を実施しないことには,実施料の支払を全く受けられないことになる。 本件契約の当事者である原告と被告が置かれる以上のような状況を踏まえると, 専用実施権者である被告は,本件特許の実施が可能であるのに,それを殊更に実施\nしないとか,その実施に向けた努力を怠るなどということは許されず,信義則に基 づき,本件特許を実施する義務を一定の限度で負うと解すべきである。 もっとも,上述したように,本件契約では被告の実施義務に関係する条項は何ら 設けられず,またランニング実施料の金額も販売価格に一定割合を乗じた額とする にとどめられており,被告としては製品が販売できた場合にのみ実施料の支払負担 が発生するにとどまるというリスク負担を前提に本件契約を締結したものであるか ら,本件特許を実施した製品を製造販売するための努力の程度について被告に過大 な義務を負わせることは相当でない。また,被告は本件特許の製造法によって製造 したしらすを製造販売することによって本件特許を実施することになるが,本件特 許は解凍後真空包装し,加圧加熱処理することをも構成として含むものであり,被\n告はそれを行うための機械を有していなかったから,そのための準備期間が不可避 的に生ずるし,結果的に,商品が消費者に十分受け入れられず,思うように商品が\n販売できないなどという事態も生じ得る。 以上のような本件の事情を考慮すると,被告が本件特許の実施義務を負うといっ ても,本件特許を実施するために必要な事項等を踏まえつつ,その時々の状況を踏 まえ,特許の実施に向けた合理的な努力を尽くすことで足りると解するのが相当で ある。
(3) 被告の実施義務違反の有無
ア 上記(2)のような観点から,被告が本件特許の実施のための努力を怠ったといえるかを検討すると,前記(1)で認定した事実によれば,被告は,平成26年3 月28日に本件契約を締結した後,速やかに,自社ではできないパック詰め作業を 委託する業者を探して,同年5月22日までにはその目途をつけた後,パッケージ 等の製造や,そのデザインを別の業者に依頼し,同年10月末までにその目途をつ けて,製造の準備をほぼ整えたと認められる。また,被告は,以上のような製造に 向けた準備と同時並行で,元々取引のあった愛媛県内のスーパーやデパートに本件 特許の製造法によって製造したしらすの販売を持ちかけたり,P4に対してその販 売の取次を依頼したりし,幅広く本件特許の製造法により製造したしらすを販売す るための交渉等を進めたが,成果は芳しくなく,その後,同年12月までには「婦人画報」への掲載が決まり,平成27年3月には商品の製造を開始し,同年4月頃 に販売された「婦人画報」に「オレの惚れたしらす丼セット」が掲載され,実際に その販売が開始されるに至ったのである。以上のように,被告は,本件契約の締結 後,本件特許の実施に向けた準備を進め,実際に,実施にこぎつけたと認めること ができる(なお,被告製品の製造工程が本件発明の製造工程に反すると認められな いことは前記1で判示したとおりである。)。 イ もっとも,本件契約の締結から商品の製造や販売開始まで1年程度要し ていることから,被告が前記(2)で判示した本件特許の実施のための努力を尽くした といえるかを検討する。
(ア) 確かに,被告代表者自身も陳述書(乙40)において,「準備に思った\nより時間…が掛かりました」と述べているように,製造販売の準備行為に相当の時 間を要しており,さらに早期に商品の製造や販売の準備を整えることができた可能\n性も否定はできない。 しかし,被告は,パック詰め作業をする設備機械を保有していなかったのである し,パッケージ等の製造も他の業者に委託しなければならなかったのであるから, 製造準備を整えるまでに前記のような期間を要したことが,本件特許の実施を不当 に遅延したとはいえない。また,前記認定の経過によれば,被告が実際に被告製品 の製造を開始したのが平成27年3月となったのは,当初の地元のスーパーやデパ ートへの営業が販売価格の面で折り合わず,芳しくなかったが,同年4月頃に販売 される「婦人画報」に「オレの惚れたしらす丼セット」が掲載され,それを見た消 費者に対する販売が相当程度見込まれたからと推認される。そして,被告も営利企 業として事業を営んでいる以上,ある程度まとまった販売が見込まれない段階で商品の製造を開始することは現実的ではないし,信義則上も被告にそれを強いること は相当とはいえないから,被告が結果として,ある程度まとまった販売が見込まれ るに至った同年3月から商品の製造を開始したこと(それまでは本件特許の製造法 によるしらすを製造しなかったこと)が,製造販売への努力を不当に怠ったという ことはできない。
以上によれば,製造販売の準備行為に時間を要したことによって製造開始が遅れ たとまで認めることはできないし,平成27年3月からの製造開始となったことが 被告の努力が足りなかったことによるものと認めることもできない。 また,製造販売を開始した後の販売状況も,決して順調とはいえないものではあ るが,被告は,Smile Circle株式会社以外の取引先にも営業を行って少量ながら取 引をしていることからすると,販路拡大のための努力を不当に怠っていたと認める ことはできない。

◆判決本文

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平成28(ネ)10098  不当利得返還等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年4月12日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 実施契約は取締役会の決議無しとして無効と判断されました。なお、原審はアップされていません。
 当裁判所も,原審と同様に,本件各契約は,これを締結するに当たって被 控訴人において必要とされる取締役会の決議を経ておらず,控訴人はそのこと について知り得べきであったものといえるから,本件各契約はいずれも無効で あり,控訴人の被控訴人に対する反訴請求はいずれも理由がないものと判断す る。その理由は,以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」の第 4の1ないし3(原判決20頁7行目冒頭から36頁22行目末尾まで)に記 載のとおりであるから,これを引用する。

◆判決本文

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平成25(ネ)1136 意匠権侵害差止等請求控訴事件 意匠権 民事訴訟 平成25年10月10日 大阪高等裁判所

 意匠権侵害を認めなかった1審判決が維持されました。イ号および登録意匠などは1審判決中に示されています。
 したがって,その判断に当たっては,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様等を参酌して,需要者の注意が惹き付けられる部分を要部として把握した上で,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察し,全体として美感を共通にするか否かを判断すべきである。そして,意匠の要部の把握に当たっては,周知意匠のありふれた態様については,需要者の注意を惹かないことが一般であるし,意匠登録は出願前の公知意匠に類似する意匠には認められない(意匠法3条1項3号)のであるから,周知意匠や公知意匠を参酌すべきである。ただし,意匠の構\成中の一部に公知意匠の構成と同じものが含まれていても,その部分が登録意匠において需要者の注意を惹くこともあり得るところであるから,その部分が直ちに意匠の要部となり得ないと解すべきではない。\n

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成24年(ワ)第4224号大阪地裁平成25年3月7日

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平成25(ネ)10018 特許権侵害差止等請求権不存在確認等請求控訴 特許権 民事訴訟 平成25年08月28日 知的財産高等裁判所

 1審では、特許権侵害として取引先に告知した行為について、先使用権が認められました。その結果、虚偽の事実の流布として、不正競争行為として差止および損害賠償が認められました。2審では損害額が減額されました。
 控訴人らの前記信用毀損行為により被控訴人らが被った無形損害は,控訴人らの 信用毀損行為の態様,回数,内容に加えて,本件口紅は本件特許訂正発明の技術的 範囲に属するものの,被控訴人らに先使用権が発生する結果,本件特許権の侵害と ならないことなど本件における諸般の事情を総合考慮し,被控訴人ら各自につき1 00万円と認めるのが相当である。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成23(ワ)7407

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平成23(ワ)7407 特許権侵害差止等請求権不存在確認等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年01月31日 大阪地方裁判所

 特許権侵害として取引先に告知した行為について、先使用権が認められました。その結果、虚偽の事実の流布として、不正競争行為として差止および損害賠償が認められました。
 以上のとおり,原告らは,本件特許発明につき,「特許出願に係る発明を知らないでその発明をした者から知得して,特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者」に当たるから,少なくとも本件容器の実施形式の範囲で先使用権を有するものである。したがって,原告らが本件口紅を販売等することは,被告P1の有する本件特許権の侵害にはあたらないというべきである。
・・・・
前記判断の基礎となる事実(第1の1(5))記載のとおり,被告P1は,原告らの取引先に書面を送付して,原告らによる本件口紅の販売等が被告P1の本件特許権を侵害する旨の事実を,それぞれ告げたものであり,被告atooは,これに沿う記事及び原告らと被告らの紛争の経過をそのウェブサイトに掲載したものである。しかし,前記のとおり,原告らによる本件口紅の販売等は,被告P1の本件特許権を侵害するものとは認められないのであるから,被告らの上記行為は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布」するものとして,不正競争防止法2条1項14号の定める不正競争行為(信用毀損行為)に該当するといえる。そして,上記書面の送付は被告P1の名によるもの,ウェブサイトへの掲載は被告atooによるものであるが,内容的に一体のものとして行われていること,前記第1の1(3)のとおり,原告らは「ロレアル」のブランドの下に一体で事業を行っていることを考慮すると,上記信用毀損行為は,被告らが共同して,原告ら各々に対し行ったものと認めるのが相当である。

◆判決本文

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平成21(ワ)23445 特許権侵害差止請求事件 特許権 平成25年01月31日 東京地方裁判所

 独占的通常実施権設定後、第三者に通常実施権を設定したことは、独占的通常実施権者としての地位を脅かすものではないと判断しました。
 これに対し被告は,本件特許権1については,被告キシエンジニアリングが晃伸製機に通常実施権を設定し,平成17年3月25日付けでその旨の登録がされていることからすると,原告日環エンジニアリングが本件特許権1の独占的通常実施権者であるとはいえないし,また,晃伸製機が同年9月5日に本件発明1を改良した発明の特許出願をしていることからすると(乙58),晃伸製機は本件発明1を利用していることは明らかであるから,原告日環エンジニアリングが本件特許権1の実施について事実上独占しているということもできない旨主張する。確かに,証拠(甲1,10,55)及び弁論の全趣旨によれば,本件特許権1については,被告キシエンジニアリングが晃伸製機に通常実施権を設定し,平成17年3月25日に,晃伸製機を通常実施権者として,「範囲」を「地域日本国内,期間本契約の締結の日から本件特許権の存続期間満了まで 内容 全部」とし,「対価の額」を「無償」とする通常実施権の設定登録が経由されたことが認められる。一方で,前掲証拠によれば,原告キシエンジニアリングと原告日環エンジニアリングが平成15年7月18付け独占的通常実施権許諾契約書(甲8の1)を作成した当時の両原告の代表取締役社長であったBは,平成17年3月25日に晃伸製機に上記通常実施権の設定がされた当時も,引き続き原告日環エンジニアリングの代表\\取締役に在職し,上記通常実施権の設定及びその設定登録を了承していたことが認められる。そして,特許法77条4項は,専用実施権者は,特許権者の承諾を得た場合には,他人に通常実施権を許諾することができる旨規定しており,同規定は,専用実施権者が第三者に通常実施権を許諾した場合であっても専用実施権を有することに影響を及ぼすものではないことを前提としているものと解されるものであり,かかる規定の趣旨に鑑みれば,特許権者が独占的通常実施権を許諾した後に,その独占的通常実施権者の了承を得て,第三者に通常実施権を設定した場合には,通常実施権が設定されたからといって直ちに当該独占的通常実施権者の地位に影響を及ぼすものではないというべきである。
 また,本件においては,原告キシエンジニアリングが原告日環エンジニアリング及び晃伸製機以外の第三者に本件特許権1の実施権を許諾していることをうかがわせる証拠はなく,また,晃伸製機が本件特許権1の特許発明の実施品を現実に販売していることを認めるに足りる証拠もないことに照らすならば,晃伸製機に対する上記通常実施権の設定によって,原告日環エンジニアリングによる本件独占的通常実施権1に基づく本件特許権1の実施についての事実上の独占が損なわれたものということはできない。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
(イ) 以上のとおり,原告日環エンジニアリングは,本件特許権1について本件独占的通常実施権1を有するものである。ところで,独占的通常実施権者が当該独占的通常実施権に基づいて許諾を受けた特許権を独占的に実施し得る地位は法的保護に値する利益であるといえるから,故意又は過失により上記利益を侵害する行為は不法構成を構\\成し,独占的通常実施権者は,その侵害者に対し,自己が被った損害について不法行為に基づく損害賠償を求めることができるというべきである。そして,独占的通常実施権者は,登録によって公示がされていない点などで専用実施権者とは異なるが,その実施権に基づいて特許権を独占的に実施して利益を上げることができる点においては専用実施権者と実質的に異なるものではなく,損害については基本的に専用実施権者と同様の地位にあるということができるから,独占的通常実施権者については,特許法102条1項又は2項を類推適用することができると解するのが相当である。

◆判決本文

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平成24(ネ)10016 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年07月18日 知的財産高等裁判所

 先使用による通常実施権を有するとして、差止、損害賠償請求を棄却した一審判断が維持されました。
 先使用による通常実施権が成立するには,まず,これを主張する者が特許出願に係る発明の内容を知らないで,当該特許出願に係る発明と同一の発明をしていること,あるいは,発明をした者から知得することが必要である(特許法79条)。そして,発明とは,自然法則を利用した技術的思想の創作であり(同法2条1項),一定の技術的課題(目的)の設定,その課題を解決するための技術的手段の採用及びその技術的手段により所期の目的を達成し得るという効果の確認という段階を経て完成されるものであるが,発明が完成したというためには,その技術的手段が,当該技術分野における通常の知識を有する者が反復継続して目的とする効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていることを要し,またこれをもって足りるものと解するのが相当である(最高裁昭和49年(行ツ)第107号同52年10月13日第一小法廷判決・民集31巻6号805頁参照)。
(2) そこで,以上の観点から,被控訴人製品に係る発明が完成していたか否かを検討すると,前記前提となる事実及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
・・・
 以上のとおり,大阪ガスが開発したトルエン加水分解法は,BPEFの粗結晶を水とトルエンに溶かした後,不純物が溶けた水を取り除くと,BPEFのみが溶けたトルエンが得られ,これを精製して純度の高いBPEFを得るという方法であり,本件特許発明1とは異なるBPEFの製造方法であるところ,大阪ガス及び同社から平成11年4月頃にトルエン加水分解法を含んだBPEFの製造方法について開示を受けた被控訴人は,本件特許の優先権主張日である平成19年2月15日前に,本件特許発明2の技術的範囲に属するBPEFを少なくとも約30トン委託製造しているのであるから,被控訴人製品に係る発明は,その技術的手段が,当該技術分野における通常の知識を有する者が反復継続して目的とする効果を挙げることができる程度にまで具体的,客観的なものとして構成されていたということができる。したがって,被控訴人製品に係る発明は完成していたものと認められる。

◆判決本文

◆一審判決はこちら。平成22年(ワ)第9102号

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平成22(ネ)10022 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年07月20日 知的財産高等裁判所

 原審では、通常実施権のサブライセンスが認められる理由は述べられませんでしたが、知財高裁は、特94条を根拠にこれを認めました。
 確かに,専用実施権については,特許権者の承諾があれば,通常実施権を設定することができる旨の明文の規定(特許法77条4項)があるが,通常実施権については,同様の明文は存しない。しかしながら,通常実施権者は,特許権者の承諾があれば,その通常実施権を第三者に譲渡したり,質権を設定したりすることができるのであるから(同法94条1項,2項),同様に,特許権者の承諾があれば,再実施契約を設定することも可能と解すべきである。そして,前記認定のとおり,本件においては,本件専用実施権設定契約(乙1)において,再実施が許諾されているのであるから,専用実施権設定契約に代えて独占的通常実施権設定契約が締結されていると認められる以上,同契約においても,同様に,再実施契約について特許権者の許諾があると認めるのが相当である。また,控訴人は,特許庁の取扱いとして通常実施権に基づく再実施契約の登録ができないことを問題とするが,通常実施権の登録は対抗要件にすぎないから,登録の有無は再実施契約の有効性には影響しないというべきである。\n

◆判決本文

◆原審です。平成21(ワ)7735

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平成18(ワ)7758等 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成21年01月20日 大阪地方裁判所 

 販売地域制限違反が争われました。
 前記争いのない事実等のとおり,本件製造委託契約書の9項(本件エリア条項)には「快通ハーブ粒の販売に当たり,原告は近畿2府4県,及び石川,三重,徳島の各県においては店舗販売ルートにおけるハーブ粒商品の独占販売を行い,それ以外の地域については,被告ウェーブの製造販売するスリムダイエット粒と,協調販売を行う。被告ウェーブの発売するスリムダイエット粒は原告の上記独占発売地域外において販売活動を行うものとする。なお,原告の取引先に関し,広域販売網を持つ会社との取引については,その出店先が上記条項に抵触しないこと」の条項記載がある。この条項にいう「広域販売網を持つ会社」の「出店先」には「広域販売網を持つ会社」の直営店のほか卸売会社の転売先も含むものかなど,後記のように,被告ウェーブが販売すべき店舗の範囲について疑義が生ずる余地がある曖昧なところもある。しかし,少なくとも,被告ウェーブが本件エリア内の店舗に自ら快通ハーブ粒を販売することを一律に禁止され,本件エリア外においてのみ自社の販売するスリムダイエット粒を販売することが許容されているにすぎないことは,本件エリア条項の文言上は一義的に明確といわざるを得ず,上記文言で示された合意の存在を否定し,これと異なる口頭の合意の存在を認定することは,慎重である必要がある。

◆判決本文

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平成21(ネ)10036 業務委託料等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月17日 知的財産高等裁判所

 争点の1つが、特許権者の開発の遅れによって実施がきわめて制限された場合にも、、ミニマムロイヤルティの支払い義務があるかでした。
年間ミニマムロイヤルティは,控訴人が「許諾製品」を製造販売したことに対するロイヤルティ(実施許諾料)につき,被控訴人に対する最低限の支払を保証する趣旨のものであるから,契約上明文の規定はないものの,控訴人が「許諾製品」を製造販売することができず,しかも,その原因が被控訴人の研究開発の遅延にあるときは,その支払義務を負わないとする趣旨であったと解することができる。控訴人の上記主張は,そのような趣旨のものと理解することができる。ウ そして原判決(38頁下1行〜40頁17行)認定のとおり,被控訴人が開発した「W−1」は,平成15年2月22日,23日に行われた初期排出ガス試験に不合格となったため,控訴人及び被控訴人の当初の見込みに反し,指定を受けるまでのスケジュールが大幅に遅延することになり,その後,被控訴人が改良した「W−1」は,平成15年10月23日に八都県市の指定を受けたことから,平成15年12月には控訴人がモニター販売を行ったものの,平成16年1月中旬ころには,控訴人は,「W−1」の品質に問題がある,すなわち,冷温時に排気ガスのすすがフィルターにすぐに目詰まりするという欠陥があると考えたため,「W−1」のモニター販売を中止したものと認められる。以上のように,控訴人は,平成15年には,被控訴人が開発した「W−1」について2台モニター販売をしたのみであって,しかも,その主たる原因は,被控訴人の開発が遅れたことにあるものと認められるから,控訴人は,平成15年の年間ミニマムロイヤルティの支払義務を負わないというべきである。

◆判決本文

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平成20(ネ)10086 特許権実施料等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月18日 知的財産高等裁判所

 ライセンス対象が技術的範囲に属しないとしても、要素の錯誤には該当しないと判断されました。
 上記の本件実施契約の締結前後の事実経緯に照らすならば,本件実施契約を締結するに当たり,Z装置が本件発明の技術的範囲に含まれると原告が誤信した点は,要素の錯誤に当たると解すべきではなく,また,原告の認識した事実に何らかの点で誤りがあったとしても,それは重大な過失に基づくものというべきであるから,原告は本件実施契約の無効を主張することができない。その理由は,以下のとおりである。すなわち,本件実施契約は,営利を目的とする事業を遂行する当事者同士により締結されたものであり,その対象は,本件特許権(専用実施権)であるから,契約の当事者としては,取引の通念として,契約を締結する際に,契約の内容である特許権がどのようなものであるかを検討することは,必要不可欠であるといえる。すなわち,合理的な事業者としては,「発明の技術的範囲がどの程度広いものであるか」,「当該特許が将来無効とされる可能性がどの程度であるか」,「当該特許権(専用実施権)が,自己の計画する事業において,どの程度有用で貢献するか」等を総合的に検討,考慮することは当然であるといえる。そして,「技術的範囲の広狭」及び「無効の可能\性」については,特許公報,出願手続及び先行技術の状況を調査,検討することが必要になるが,仮に,自ら分析,評価することが困難であったとしても,専門家の意見を求める等により,適宜の評価をすることは可能であるというべきである。本件では,原告は,被告Kから,専用実施権の設定を受け,その権利に基づいて,第三者に再許諾(通常実施権)をし,また,自ら施設を運営するすることによって,利益を図ることを計画していたのであるから,原告としては,そのような事業目的との関連性において,本件特許権(専用実施権)の価値(発明の技術的範囲等)を分析,評価及び検討をすべきであったというべきである。ところで,本件特許権は,当事者双方が予\測しなかった事情によって,無効とされるに至ったが,本件実施契約では不返還の特約が付されていたため,原告は,無効となったことを理由として,支払った金額の返還を求めることはできなかった。しかし,仮に,本件特許が無効とされる事情が発生しなかったとすれば,本件特許権は,その特許請求の範囲の記載のとおりの技術的範囲及びその均等物に対する専有権を有していたのであり,その専有権は,原告の計画していた事業において,有益であったというべきである。実際にも,原告は,本件実施契約に基づく再許諾権限に基づいて,湯本館に対して,通常実施権を付与したことにより,525万円の契約金の支払を受けていた(乙38,39)。そうすると,技術的範囲についての原告の認識の誤りは,原告の計画していた事業の妨げになったとは到底解することはできず,Z装置が本件発明の技術的範囲又はそれと均等の範囲に含まれていない限り原告において本件実施契約を締結する意思表示をすることがなかったであろうとまで認めることはできない。以上のとおりであって,原告に,本件実施契約の対象たる特許権に係る発明の技術的範囲についての認識の誤りがあったからといって,その点が,本件実施契約についての「要素の錯誤」に該当するということはできない。また,仮に,何らかの誤認があったとしても,それは,このような事業を遂行する過程で契約を締結する際に,当然に調査検討すべき事項を怠ったことによるものであって,重大な過失に基づく誤認であるというべきである。\n

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平成21(ワ)29534 損害賠償請求 特許権 民事訴訟 平成22年03月31日 東京地方裁判所 

 ライセンサーが年金不能により権利が消滅し、ライセンシーが虚偽表\\示を回避するためにした廃棄処分など損害賠償が認められました。
 原告は,本件債務不履行により,本件特許権の登録が抹消され,本件特許権が消滅したことから,「PATENT No.3128771」との表示をした本件商品や段ボールケースを譲渡等することが,特許法の禁止する虚偽表\\示(同法188条)に該当するおそれがあると懸念して,別紙1の1記載のとおり,本件商品の在庫分49万3470枚(顧客の返品要求に応じて引き取った2万5500枚を含む。以下同じ。)及び前記特許表示をした段ボールケース140箱について,これらを廃棄することとしたと認められる。したがって,廃棄することとした在庫分等に要した生産費用は,本件債務不履行による原告の損害と認めることができる。そして,前記証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件商品の在庫分49万3470枚の紙代,印刷費,加工費等の製造原価は,約386万6959円,段ボールケース140箱の製造原価は,約1万2460円と認められるから,原告は,本件債務不履行により,少なくとも同額の損害を被ったと認めるのが相当である。また,前記証拠及び弁論の全趣旨によれば,顧客の返品要求に応じて本件商品2万5500枚を引き取った引取運賃1万6000円,廃棄処理を行うため本件商品の在庫分を原告の芳賀工場から宇都宮第二工場まで搬送するために要した運賃6万円は,本件債務不履行により生じた損害と認めることができる。・・・・・・証拠(甲4,10)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件債務不履行により,取引先から,本件特許権が消滅したことを理由として,本件特許権の実施品である販売商品(封筒)の販売価格の減額を求められ,販売単価を減額せざるを得なくなったこと,商品1個(封筒1枚)当たりの販売単価の減額幅は,少なくとも平均1円であること,本件特許権の実施許諾料は,本件商品1個(封筒1枚)当たり25銭(本件特許権及び本件商標権についての封筒1枚当たりの許諾料50銭の2分の1)であると認めることができる。また,証拠(甲3)によれば,本件契約の契約期間は,その有効期間が契約成立の日から3年間とされ,別段の意思表\\示がないときは3年間自動的に更新されるもの(本件契約9条)と認められ,本件各証拠を見ても,本件特許の無効や原告の債務不履行等(本件契約10条)により,本件契約が本件特許権の存続期限である平成29年3月7日より前に終了する可能性があることをうかがわせるような事情も見当たらない。これらによれば,原告は,本件債務不履行がなければ,本件特許権の残存期間のうち少なくとも原告が請求の基礎とする7年9か月の間は,本件契約を継続して本件商品の販売を継続することができたと推認することができ,原告は,本件債務不履行により,その間に本件商品の販売を継続することにより得られたであろう利益(本件商品1個(封筒1枚)当たり75銭)を失ったと推認することができる。\n

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平成21(ワ)7735 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年02月05日 東京地方裁判所

 未登録の専用実施権であっても、当事者間では独占的通常実施権が認められました。
 本件特許権の共有者である被告グリーンクロス及び被告Aは,平成16年6月8日,被告セントラルとの間で,本件専用実施権設定契約を締結したものの,特許原簿に本件専用実施権の設定登録はされていない。そして,特許法98条1項2号は,専用実施権の設定は,「登録しなければ,その効力を生じない」と規定しており,専用実施権の設定は登録が効力発生要件とされているため,設定登録がされなければ専用実施権が有効に成立することはない。しかし,このような場合,契約を締結した当事者間では独占的な実施権を付与するという合意は成立しているのであるから,約定の趣旨に沿って,独占的通常実施権(特許権者が他の者に重ねて実施権の許諾をしない旨の特約を付した通常実施権)としての効力は認められると解すべきである。そして,本件専用実施権設定契約において,被告グリーンクロス及び被告Aが被告セントラルに対して本件特許について独占的な実施権を許諾する意思を有していたこと,被告セントラルもこれに合意していたことは明らかである(乙1の第1条)から,独占的通常実施権の許諾として有効なものと解され,被告セントラルは,これにより本件特許権について独占的通常実施権を取得したものということができる。原告は,特許法上の書面主義の下,専用実施権設定契約には書面の作成が必要であるが,書面が作成されていないため本件専用実施権設定契約は無効であると主張するが,書面の作成を要件とする原告の主張は独自の見解であって採用することができない上,本件専用実施権設定契約については契約書(乙1)が作成されているのであるから,原告の主張はその前提が誤りである。また,通常実施権者は,特許権者の承諾がある場合には,通常実施権の再実施権を許諾することができると解すべきである。そして,前記第2の2(3)のとおり,被告セントラルは,平成16年6月16日,原告に対し,日本国内におけるスポットクーラーの製造・販売に関し,本件特許権について通常実施権を許諾することを内容とする本件通常実施権許諾契約を締結したことが認められるところ,上記契約書(乙1)によれば,本件専用実施権設定契約において,本件特許権の共有者である被告A及び被告グリーンクロスは,被告セントラルに対し,本件特許権についてその範囲全部にわたり第三者に対する再実施権を許諾したことが認められるから,本件通常実施権許諾契約は,本件特許権についての通常実施権の許諾としての要件に欠けるところはなく,これにより原告は本件特許権について通常実施権を取得したものということができる。

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◆平成18(ワ)11429 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年04月07日 大阪地方裁判所

 原実施権者に対する損害賠償請求事件です。1)特許請求の範囲の用語の解釈、2)均等判断、3)補正された場合の通知義務なとが争われまれした。
  争点1)
 「原告は,本件明細書の発明の詳細な説明には,熱伝導性無機フィラーの全量がカップリング処理されていなければ本件各特許発明の効果が得られないとは記載されていないから,構成要件Bの「熱伝導性無機フィラー」全量がカップリング処理されることまで要求されていないとも主張する。確かに,本件明細書では,熱伝導性無機フィラーの全量がカップリング処理されていなければ本件各特許発明の効果が得られないとまでは明示的に記載されていない。しかし,他方で,本件明細書には,未処理の熱伝導性無機フィラーを加えてもよいことについて何らの開示も示唆もなく,実施例にも熱伝導性無機フィラーの全量がカップリング処理されたものだけが開示されており,未処理の熱伝導性無機フィラーを加えた場合にも,そうでない場合と同様の効果が得られることについて何ら記載されていない。むしろ,前記ウのとおり,未処理の熱伝導性無機フィラーは,その表\面が疎水性の長鎖アルキル基に全く覆われていないのであるから,これを加えた場合に本件各特許発明と同様の効果が得られるとは容易に想到できないと考えられる。この点,原告は,自ら実験した結果(甲6)を基に,熱伝導性無機フィラーの半量を処理した場合であっても,本件各特許発明の効果を奏するに十分であると主張する(原告第3準備書面15頁6行〜16頁9行)。しかし,特許請求の範囲の解釈(均等侵害の成否は別論)において,明細書の記載のほか,出願経過及び公知技術を参しゃくすることを超えて,当業者にとって自明でない実験結果を考慮することはできないというべきであるから,同実験結果の信用性にかかわらず,これを根拠とすることはできない。・・・以上からすると,本件補(ウ) 正における原告の主観的意図はともかく,少なくとも構成要件Bを加えた本件補正を外形的に見れば,カップリング処理された熱伝導性無機フィラーの体積分率を限定したものと解するのが相当であり,自らかかる補正をしておきながら,後になってこれと異なる主張をすることは,本件補正の外形を信用した第三者の法的安定性を害するものであり,禁反言の法理に抵触し許されないというべきである。
 争点2)
 「そうすると,特許権者において特許発明の技術的範囲に属しないことを承認したといった主観的な意図が認定されなくても,第三者から見て,外形的に特許請求の範囲から除外されたと解されるような行動をとった場合には,第三者の予測可能\性を保護する観点から,上記特段の事情があるものと解するのが相当である。そこで,かかる解釈を前提に,本件において上記特段の事情が認められるかどうかについて検討する。・・・前記1 において認定したとおりであり,本件補正をするに当たっての原告の主観的意図はともかく,少なくとも構成要件Bを加えた本件補正を外形的に見れば,カップリング処理された熱伝導性無機フィラーの体積分率を限定したものと解される。したがって,原告は,熱伝導性無機フィラーの体積分率が「40vol%〜80vol%」の範囲内にあるもの以外の構成を外形的に特許請求の範囲から除外したと解されるような行動をとったものであり,上記特段の事情に当たるというべきである。なお,本件拒絶理由通知は,単に組成物に係る発明だからという理由で,その組成比の記載がない本件出願は,特許法36条6項2号に規定する要件を充足しないと判断しているところ,この判断の妥当性には疑問の余地がないではない。しかし,第三者に拒絶理由の妥当性についての判断のリスクを負わせることは相当でなく,原告としても,単に熱伝導性無機フィラーの総量を定める意図だったというのであれば,その意図が明確になるような補正をすることはできたはずであり,それにもかかわらず,自らの意図とは異なる解釈をされ得るような(むしろそのように解する方が自然な)特許請求の範囲に補正したのであるから,これによる不利益は原告において負担すべきである。(3) 以上により,GR−b等について,「対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない」ことという要件を充たさないから,これらを本件各特許発明と均等なものとして,その技術的範囲に属すると認めることはできない。」
 争点3)
 「原告は,信義則上,本件補正を通知する義務を負っていたと主張するところ,上記 イ・ウのとおり,出願段階では補正が認められて特許されるものかどうかが未だ確定しておらず,原告が本件補正書を提出したというだけでは直ちに本件実施契約上の権利義務に影響を及ぼすものではないと解すべきであるから,そもそも補正の事実を通知する実益に乏しく,信義則上,かかる義務を認めることはできない。他方で,補正によって特許請求の範囲が減縮された上で特許査定され,特許権が発生した場合には,本件実施契約上の権利義務にも影響を及ぼすことになるから,減縮の事実を被許諾者に通知する実益があることは否定できない。また,本件実施契約では,まず,被告において自己の販売する製品が「許諾製品」に該当するかどうかを判断すべきであるから,その判断に当たって特許請求の範囲が減縮されたことは重要な情報といえる。したがって,少なくとも,被告から本件出願の経過等について問合せがされた場合には,原告はこれに誠実に応答すべき信義則上の義務があったというべきである。しかし,さらに進んで,特許請求の範囲が減縮されたことについて,被告からの問合せの有無にかかわらず原告から積極的にこれを通知すべき義務があったか否かについては,これを容易に肯定することはできない。なぜなら,本件実施契約書においてかかる通知義務の存在を窺わせる条項は全く見当たらず,同契約書外においても通知義務を認める旨の合意の存在を推認させる具体的事情は何ら認められないのであるから,本件において通知義務を認めるということは,実施許諾契約一般において,これについての明示又は黙示の合意の有無にかかわらず,許諾者たる特許権者に信義則上の通知義務を負わせることになりかねないからである。もともと,出願段階で許諾を受けようとする者にとって,契約締結後の補正により特許成立段階で特許請求の範囲が減縮されることは,当然に想定できる事柄であり,減縮があった場合に許諾者から通知して欲しいというのであれば,契約交渉段階でその旨の同意を取り付けて契約書に明記しておくべきといえる(かかる交渉を経ずに許諾者一般にかかる義務を負わせることは,むしろ許諾者に予期しない不利益を被らせるおそれがある。)。また,被許諾者は,許諾者に特許請求の範囲を問い合わせたり(少なくとも許諾者には問合せに応答すべき義務がある。),特許公報等を参照するなどして,特許請求の範囲がどのようになったか調査することができるのである。上記のような事情を併せ考慮すれば,許諾者たる特許権者一般に,信義則上,特許請求の範囲が減縮された場合の通知義務を認めることはできないというべきであり,本件においても,原告に,信義則上かかる通知義務があったと認めるに足りる事情はない(なお,上記は特許請求の範囲が減縮された場合を前提としており,拒絶査定不服審判における不成立審決が確定した場合や,特許無効審判における無効審決が確定したような場合における通知義務については別途考慮を要するところである。)。」

◆平成18(ワ)11429 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年04月07日 大阪地方裁判所
  

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◆平成19(ワ)17344 損害賠償請求事件 特許権民事訴訟 平成20年08月28日 東京地方裁判所

 ライセンス対象物が本件特許の範囲外である実施権契約について争われました。
 「上記1,2で認定説示したところによれば,原告は,その設立をした関係者が被告Y及びZからZ装置が本件発明の実施品である旨の説明を受け,Z装置と同一の装置を独占的に実施するのに必要であるとの認識の下に本件実施契約を締結したものである。ところが,実際には,Z装置は本件発明の技術的範囲に属さず,原告は,本件実施契約を締結してもZ装置と同一の装置を独占的に実施することのできる地位を獲得することができなかったものである。原告がこのことを知っていれば本件実施契約を締結することはなかったということができるから,原告には本件実施契約の締結につき要素の錯誤があったというべきである。本件実施契約書(甲1)の6条1項は,「本契約に基づいてなされたあらゆる支払いは,事由の如何に拘わらず乙(判決注・原告)に返還されないものとする。」と規定している。しかしながら,前記1で認定した事実によれば,同条項の定めは,特許無効審判制度が存在することを前提として,本件特許権につき,契約締結後,無効審判が請求され無効審決が確定した場合であっても,本件契約金等の返還をしない趣旨を合意したものであることが認められる。同条項につき,上記の趣旨を超えて,本件実施契約につき錯誤や詐欺等が存在する場合において,契約の無効や取消しを理由として本件契約金等の返還請求をすることが一切できないとの趣旨まで含むことについての合意があったことをうかがわせる証拠はない。以上によれば,本件実施契約は錯誤により無効であり,被告Yは,原告に対し,不当利得として,本件契約金3000万円の返還義務を負う。」

◆平成19(ワ)17344 損害賠償請求事件 特許権民事訴訟 平成20年08月28日 東京地方裁判所

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