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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

104条の3

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成29(ワ)22884  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月5日  東京地方裁判所

 特許に無効理由があるとして、104条の3で権利行使不能と判断されました。原告はアイリスオーヤマです。
 相違点1−2’は,単に公然実施品1において,「補強板」であるサッシュを金 属板からなる補強板とサッシュに分けて,補強板をサッシュに当接させるようにす れば実現される構成にすぎない。
また,公知技術である特開2002−270353号(乙13。以下「乙13公 報」という。)や公知技術である特開平7−6869号(乙11。以下「乙11公 報」という。)には,誘導加熱調理器においてサッシュと本体ケース連結金属板と を別部材により構成して両者を当接させてねじで接合することが記載されている。\n製造コストが高い機械加工により製造した部品を,製造コストが安い機械加工であ るプレス加工により製造するために金属板部品に置き換えることは,原告も主張す るとおり,機械加工分野における技術常識であるから,公然実施品1において製造 コストを下げるために乙13公報及び乙11公報に示されたプレス加工可能な金属\n板を採用することは当業者における単なる設計的事項の適用の問題にすぎず,極め て容易になし得ることである。 なお,原告は,相違点1−2は,トッププレートの幅を本体ケースよりも大きく したことに関連して新たに見出した課題に関するものであると主張するが,これは 相違点1−1の存在を前提とした主張であって前提において誤りである。また,原 告は,公然実施品1のサッシュをサッシュと金属板とに分けることに想到し得たと しても,金属板を長くする理由はなかったと主張するが,公然実施品1のガラス板 を長くすれば,それに伴い,サッシュと本体ケースを接続する金属板を長くするこ とは当然であるから,原告の主張は失当である。
c 小括
以上によれば,本件発明は,公然実施品1と同一であるか,本件出願日当時,当 25 業者が公然実施品1に基づいて容易に発明をすることができたものであって,新規 性又は進歩性を欠く。よって,本件特許は特許法29条1項2号又は同条2項に違 反してされたものであって,同法123条1項2号の無効理由があるから,特許無 効審判により無効とされるべきものである。 したがって,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない(特許 法104条の3第1項)。

◆判決本文

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平成30(ネ)10020 特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月18日  知的財産高等裁判所(1部)  大阪地方裁判所

1審と同様に、29条1項3号違反の無効理由ありとして、権利行使不能と判断されました。控訴人(1審原告)は、訂正の再抗弁を主張しませんでした。
(エ) 以上より,乙1公報には,以下の乙1発明が記載されていると認められる。
携帯用光学式カード1などの表面の所定領域を白色に形成した情報記録領域2を,一方向に等間隔で複数の単位情報記録領域2−1〜2−nに区分けし,単位情報記\n録領域2−1〜2−nそれぞれを,マトリクス状に2×2の四つの単位領域a〜d に区分けし,各単位情報記録領域は,隣接する四つの単位領域a〜dごとに「マー ク無し」,「マーク有り」の二つの状態を記録するカルラコードにおいて,隣接す る四つの単位領域a〜dに対して,「マーク有り」の状態の単位領域には,赤色の 第1のマークMK1,緑色の第2のマークMK2及び黄色の第3のマークMK3の いずれかを印刷し,上記三色のマークに加え白色の四色で4値の情報を一の単位領 域に対して与えることで,2×2のマトリクスを形成する隣接する四つの単位領域 からなる一の単位情報記録領域2−1では4値の組合せで44=256種類の情報 の記録が可能なコード。
(3) 本件発明と乙1発明との対比
ア 「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され」(構\成要件A)について
(ア) 乙1発明の「単位領域」は,「単位領域a〜dごとに『マーク無し』, 『マーク有り』の二つの状態を記録するものである。ここで,乙1発明の「マーク」 は,「赤色の第1のマークMK1,緑色の第2のマークMK2及び黄色の第3のマ ークMK3のいずれかを印刷し」たものであるから,「マーク有り」の状態の単位 領域は,「赤色,緑色,黄色の三色」のうちいずれかの色を表示するものである。また,乙1発明の「単位領域」は「白地に形成した情報記録領域2」を区分けした\nものであるから,「マーク無し」の状態の単位領域は「白色」を表示するものである。\nしたがって,乙1発明の「単位領域」は,第1のマークMK1,第2のマークM K2及び第3のマークMK3のいずれか又はマークなしを表示する「表\示領域」に 相当する。
(イ) また,乙1公報の「単位領域」に赤色(第1のマークMK1),緑色(第 2のマークMK2),黄色(第3のマークMK3)及びマーク無し(白色)のいず れが表示されているかを判別する手法として,乙1公報には,第1の光源及び第2の光源のそれぞれから波長の異なる放射光を単位領域に照射し,単位領域により反\n射された光のレベルによって,上記放射光に対する吸収率ないし反射率の高いマー クが記録されているものと判定して単位領域の色を判別する手法(【0030】〜 【0033】,【0035】〜【0038】,【0040】,【0041】,【0 043】)が記載されている。この記載に鑑みれば,乙1発明は,色ごとに反射の 波長特性が異なることを利用した技術であることが理解できる。そうすると,乙1 発明の「単位領域」は,反射の波長特性が異なる4種の色のいずれかを表示する領域といえることから,本件発明の「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表\示領域」に相当する。
(ウ) さらに,乙1発明の「単位領域」は,一つの単位情報記録領域を「マトリ クス状に2×2の四つの単位領域a〜dに区分け」したものであるから,乙1発明 の単位情報記録領域は,四つの「単位領域」をマトリクス状に2×2に配列したも のといえる。同様に,乙1発明の単位情報記録領域は,「情報記録領域」を一方向 に等間隔で複数(n個)に区分けしたものであるから,乙1発明の「情報記録領域」 は,単位情報記録領域を一方向に等間隔で複数(n個)配列したものといえる。 そうすると,乙1発明の「情報記録領域」は,「単位領域」をマトリクス状に2 ×2に配列した単位情報記録領域を一方向に等間隔で複数(n個)配列したもの, すなわち,「単位領域」をマトリクス状に2×2nに配列したものといえるところ, 表示領域に相当する「単位領域」をマトリクス状に2×2nに配列することは,「単位領域」を縦方向に2行,横方向に2n列に並べること,すなわち,縦方向及\nび横方向からなる二次元的な配列で並べることにほかならない。
(エ) したがって,乙1発明と本件発明とは,「反射(又は放射)の波長特性が 異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され」ている点で共通する。
イ 「この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表\示の要素とした」 (構成要件B)について
(ア) 乙1発明の「単位情報記録領域」のそれぞれは,「44 =256種類の 情報の記録が可能」であるから,256種類の情報のうち1種類を表\示する「情報 表示の要素」といえる。
(イ) また,乙1発明では「2×2のマトリクスを形成する隣接する四つの単位 領域からなる一の単位情報記録領域では4値の組み合わせで44 =256種類の 情報の記録が可能」となるところ,当該「4値」は,「単位領域」に記録された「第1のマークMK1」,「第2のマークMK2」及び「第3のマークMK3」並\nびに「マーク無し」の状態に対応するそれぞれ異なった反射の波長特性を持つ4色 によって単位領域に与えられたものである。そうすると,乙1発明の「4値の組み 合わせ」は,本件発明の「表示領域の波長特性の組み合せ」に相当する。
(ウ) したがって,乙1発明の反射の波長特性が異なる「三色のマークに加え白 色の四色で4値の情報を一の単位領域に対して与えることで,2×2のマトリクス を形成する隣接する四つの単位領域からなる一の単位情報記録領域2−1では4値 の組合せで44=256種類の情報の記録が可能」であることは,本件発明の「この配列における表\示領域の波長特性の組み合せを情報表\示の要素とした」ことに相\n当する。
ウ 「ことを特徴とする二次元コード」(構成要件C)について
上記アによれば,乙1発明の「コード」は,「反射(又は放射)の波長特性が異 なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され」たものであって,四つの単位領域からなる単位情報記録領域に対して「44 =256種類の情報の記 録が可能」であるから,情報を4色の単位領域の二次元的な配列によって記録したものである。\n「コード」には「情報を表現する記号・符号の体系。また,情報伝達の効率・信頼性・守秘性を向上させるために変換された情報の表\現,また変換の規則。」といった意味があるところ,本件明細書及び乙1公報は,いずれも「コード」につき上 記の意味において使用しているものと理解される。 そうすると,乙1発明の「コード」は,4色のうち1色を取る単位領域を二次元 的に配列したコードであるといえ,本件発明の「二次元コード」に相当する。この ことは,乙1公報に「本発明は,カルラコードなどマーク状に情報が記録された光 学式カードおよびその読取装置に関するものである。」(【0001】)との記載 や,カルラコードが二次元バーコードの一種であること(本件明細書【0048】, 甲25)とも整合する。
エ 小括
以上を総合すると,本件発明と乙1発明とは,「反射又は放射の波長特性が異な る3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され,この配列における表\示 領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素としたことを特徴とする二次元コード。」である点で一致し,相違するところがない。\n(4) 控訴人の主張について
ア 控訴人は,本件発明は,一次元コードでは多くの情報を表示するためにはバーコードラベルが大型化し実用的でなくなるという課題を解決するためのものであ\nり,二次元コードにおける「二次元」とは,単に表示領域が二次元方向に幾何学的に配列されているのみではなく,この組合せにより二方向に情報表\示の要素を有することを意味するなどと主張する。 しかし,そもそも,本件発明の構成要件において二次元的に配列されるとするのは「表\示領域」であって,「情報表\示の要素」を二次元的に配列にすることは規定\nされていない。そして,乙1発明においては,本件発明の「表示領域」に相当する「単位領域」が「2×2nに配列」されていることは,上記のとおりである。\nまた,本件明細書は,「バーの本数を増加したロングバーコードと標準型のバー コードを並べて印刷することにより,情報表示量の不足をカバーしようと」する方法は「根本的な解決策にはなっていない。」(【0005】),「モノクロ…のバ\nーコードで,このような多くの情報を表示しようとすると,表\\示パターンが複雑化 すると共にバーコードラベルが大型化し,実用的でなくなる」(【0006】), 及び「モノクロの情報コードの情報表示量の限界のため実用的なシステムを作ることは困難」(【0008】)との問題点を指摘した上で,「本発明は,表\示パターンを変えなくても表示できる情報量を大幅に増大して,上記問題を解決できる情報コードを提供することを目的とする。」(【0009】)として,本件発明の課題\nを提示している。これらによれば,本件発明はモノクロのバーコードで多くの情報 を表示するためにはバーコードラベルが大型化し実用的でなくなるという課題を解決するためのものであって,必ずしも一次元コードにおける課題を解決するための\nものではないと認められる。そうすると,控訴人の主張は,本件発明の課題につい ての誤った認定に基づいたものというべきである。 その点をおくとしても,情報表示の要素を一次元に並べた場合(乙1発明)と二次元的に並べた場合(控訴人主張に係る本件発明)とで,必要な情報表\示の要素数及び表示領域の数に変化はない。そうである以上,情報表\\示の要素を二次元的に並 べた二次元コードにより控訴人主張に係る本件発明の課題が解決されるとは必ずし も認められない。控訴人の主張は,本件発明の課題解決手段についての誤った前提 に基づいたものである。 さらに,控訴人は,乙1発明におけるコードの読取方法から,乙1発明のコード の情報表示の要素は水平方向のみにしかないと指摘する。しかし,前記のとおり,本件発明が二次元的に配列していると規定するのは「情報表\示の要素」ではなく「表示領域」である。また,乙1発明の読取装置が,光学式カードを長手方向に間欠送りするという動作と,カード送り方向と直交する方向に走査するという動作と\nを共に必要とするということは,当該カードに記録されたコードは,二つの方向で, すなわち二次元的に読み取る必要があることを示すものであり,当該コードの表示領域は二次元的な配列で並べられているものと理解するほかない。
イ 控訴人は,本件発明の「コード」とは,独立コード,すなわち,コード化の 対象となる情報を表すシンボル(有意情報)と,バーコードに記載されているデータを読み取るために必要な取り決め(構\造情報)の二つの要素を含むものを意味するなどと主張する。 しかし,本件発明の特許請求の範囲及び本件明細書のいずれの記載にも,「二次 元コード」ないし「コード」を限定する趣旨の規定はない。また,本件明細書【0 048】においては,本件発明の「二次元コード」の例示としてカルラコードが挙 げられていることからすると,かえって,本件発明にいう「二次元コード」又は 「コード」は,それが構造情報を有するものか否かは問わないものであると解するのが相当である。\nさらに,本件発明が「構造情報」を有しないコードであるカルラコードが普及しなかったことを受けて開発されたものであることは,本件明細書に記載されておら\nず,立証もされていない。有意情報と構造情報とを共に備えない限りコードが発明として成立しないことも,何ら立証されていない。\nその他控訴人がるる指摘する点を考慮しても,この点に関する控訴人の主張は採 用し得ない。
ウ 控訴人は,乙1発明では波長特性の組合せが情報表示の要素とされていないなどと主張する。\nしかし,前記認定のとおり,乙1発明は,反射の波長特性が異なる「三色のマー クに加え白色の四色で4値の情報を一の単位領域に対して与えることで,2×2の マトリクスを形成する隣接する四つの単位領域からなる一の単位情報記録領域2− 1では4値の組合せで44=256種類の情報の記録が可能」なものであり,「この配列における表\示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素とした」ものであ\nるから,この点に関する控訴人の主張は採用し得ない。 エ 控訴人は,本件発明と乙1発明とは技術方式における相違があるなどと主張 する。 しかし,その指摘に係る情報波長特性の組合せ組成方式,情報領域に記録される 情報記録方式,情報領域に記録された情報の読み取り方式のいずれについても,本 件発明に係る特許請求の範囲に記載されたものではなく,また,本件明細書にも, 本件発明につきそのような限定がされていることをうかがわせる記載が見当たらな いことなどから,この点に関する控訴人の主張は採用し得ない。

◆判決本文
原審はこちら。

◆平成29(ワ)780

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平成29(ネ)10064  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 特許権侵害訴訟の控訴審です。知財高裁第1部は、被告装置1−2は本件訂正発明1の1の技術的範囲に属する、被告装置3は本件訂正発明4の技術的範囲に属し,かつ,無効理由無し、その他の被告装置は技術的範囲に属しない、とした1審判断を維持しました。均等侵害も第1、第2要件を満たさないとしました(1審と同じ)。損害額については変わりありませんが、「寄与率」という用語が「損害額の推定の覆滅」と変更されてます。
 前記のとおり(引用に係る原判決「事実及び理由」第4の1(1)イ(原判決 65頁6行目〜21行目)),本件訂正発明1の1及び1の2の従来技術には,基 礎杭等の造成にあたって地盤を掘削する掘削装置として一般に使用されるアースオ ーガ装置では,オーガマシンの駆動時の回転反力を受支するために必ずリーダが必 要となるが,リーダの長さが長くなると,傾斜地での地盤掘削にあっては,クロー ラクレーンの接地面とリーダの接地面との段差が大きい場合にリーダの長さを長く とれず,掘削深さが制限されるという課題等があった。そこで,本件訂正発明1の 1及び1の2は,これらの課題を解決するために,掘削装置について,掘削すべき 地盤上の所定箇所に水平に設置し,固定ケーシングを上下方向に自由に挿通させる が,当該固定ケーシングの回転を阻止するケーシング挿通孔を形成してなるケーシ ング回り止め部材を備えるものとして,リーダではなく,ケーシング回り止め部材 によって回転駆動装置の回転反力を受支するものとした発明と認められる。 ここで,回転駆動装置の回転反力を受支するには,1)回転駆動装置の回転反力が 固定ケーシングによって受支されるとともに,2)固定ケーシングの回転反力がケー シング回り止め部材によって受支されなくてはならない。そうすると,1)を具体的 に実現する「固定ケーシングが,掘削軸部材に套嵌されると共に,回転駆動装置の 機枠に一体的に垂下連結される」構成及び2)を具体的に実現する「ケーシング回り 止め部材が,掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の 横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に載設固定され,固定ケーシングを上下方 向に自由に挿通させるが該固定ケーシングの回転を阻止することができるケーシン グ挿通孔を有する」構成により,ケーシング回り止め部材によってケーシング,ひ\nいては回転駆動装置の回転反力を受支するようにしたことが,従来技術には見られ ない特有の技術的思想を有する本件訂正発明1の1の特徴的部分であり,その本質 的部分というべきである。
(ウ) したがって,固定ケーシングが回転駆動装置の機枠に一体的に垂下連結さ れる構成を有しない被告装置1−3〜1−8は,本件訂正発明1の1と本質的部分\nを異にするものであり,第1要件を満たさない。
・・・
このことから,本件訂正発明1の1の「固定ケーシング5」は,「固定ケーシン グ5が円筒状ケーシングからなるため,地盤への固定ケーシング5の打ち込み及び 引き抜きが容易となり」【0028】とも記載されているように,回転駆動装置1 の下部から垂下され,ケーシング回り止め部材7のケーシング挿通口8に挿入され, 掘削軸部材2及びダウンザホールハンマー4と共に地盤の掘削により地盤に打ち込 まれ,地盤を所定深度まで掘削したら,ダウンザホールハンマー4の作動を停止さ せた後,昇降操作用ワイヤーWを巻取り操作して,掘削軸部材2及びダウンザホー ルハンマー4と共に引き上げられることを前提としたものである。 そうすると,本件訂正発明1の1の掘削装置においては,掘削後に引き抜くこと を前提にケーシングと回転駆動装置の機枠とを一体的に連結することによって,回 転駆動装置とケーシングを掘削後に引き抜く際に,地盤内でケーシングにかかる土 圧による抵抗に抗してこれを引き抜くことが可能になるものということができる。\nこれに対し,ケーシングと回転駆動装置との機枠とを一体的に連結するのでなく 着脱自在の構成にした場合,そもそも着脱自在の構\成はケーシングを掘削後に残置 させることができるという作用,効果を奏するものであるし,仮にこの構成でケー\nシングを引き上げるとすると,ケーシングと回転駆動装置の機枠との連結部の強度 が十分でないために,引き抜くことが不可能\ないし極めて困難となり,本件訂正発 明1の1の目的を達成することができない。 したがって,掘削後にケーシングを引き抜くことを前提とした本件訂正発明1の 1の掘削装置において,回転駆動装置にケーシングを着脱自在に連結する構成を採\n用すると,本件訂正発明1の1の目的を達成することが困難となり,同一の作用効 果を奏しなくなる。 そして,被告装置1−3〜1−8の構成につき,いずれも回転駆動装置の下部に\n連結された中空スリーブに設けられたスリット状の切り欠きとケーシング外周軸方 向に固設された角鉄とを係合させることにより,中空スリーブとケーシングとを着 脱自在に係合するものであるとする限りでは,当事者間に争いがない。 (イ) 以上によれば,被告装置1−3〜1−8は,第2要件を満たさない。

◆判決本文

1審判決はこちら。

◆平成25(ワ)10958

関連の無効審決の取消訴訟はこちら。

◆平成29(行ケ)10193

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平成22(ワ)18041  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成25年7月11日  大阪地方裁判所

 かなり前の事件ですが、漏れていたのでアップします。争点は均等の第5要件と進歩性違反です。前者については、記載不備に対する補正でクレームの減縮、実施形態の削除をしましたが、特段の事情ではないと判断されました。ただし、後者の理由で権利行使不能と判断されました。
 原告は,本件特許1の出願当初,構成要件B1に相当する部分を「駆動回路7\nに電圧を提供する電源1の電圧を検出する検出手段5」としていたが,平成19 年5月2日付け拒絶理由通知を受けた後,「交流電圧の電源1から整流されて駆 動回路7に提供される直流電圧を検出する検出手段5」と補正した(乙1〜3)。 しかし,平成19年5月2日付け拒絶理由通知は,特許法36条4項(実施可 能要件)及び同条6項2号(明確性要件)の要件を満たしていないとするもので,\n新規性及び進歩性に係る拒絶理由通知ではなかったし,電圧の検出手段に係る記 載の不備を指摘するものでもなかった(乙2)。原告が手続補正書とあわせて提 出した意見書においても,電圧の検出手段に関して特段の説明をしているわけで はない。 このような経過からすれば,原告の上記補正について,新規性や進歩性の欠如 を回避するなどのため,電圧の検出手段に関して特定の構成を意識的に除外した\nものとは言い難い。 また,他に均等の成立を否定すべき特段の事情も認められない。
・・・
被告自身,本件特許発明1と乙28発明は,次のとおり相違していることを認 めている。すなわち,本件特許発明1の電源電圧が「90〜264Vの間」の 「交流電圧」であり,これを「整流」した上で「分圧」して検出するのに対し, 乙28発明の電源電圧が「12〜48Vの間」の「直流電圧」で,必然的に「整 流」はなく,検出前に「分圧」しているか明らかでない点で相違する(後記相違 点2),3))。
・・・・
エ 以上より,本件特許発明1の乙28発明と対比したときの相違点は, 当業者にとって,周知慣用技術及び技術常識を適用することで容易に想到できる 構成といえる。\n よって,本件特許発明1は進歩性を欠如しており,本件特許1は特許無効審判 により無効にされるべきものと認められるから,原告は,本件特許権1に基づく 権利を行使することはできない。

◆判決本文

控訴審でも、無効は維持されました。

◆平成25(ネ)10069

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平成29(ワ)14142  損害賠償等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年6月28日  東京地方裁判所(47部)

 Appleに対する特許侵害訴訟です。裁判所は新規性違反の無効理由ありとして、請求棄却しました。また、口頭弁論の再開申し出も、原告にはより早い時期に訂正の再抗弁を主張する機会が十\分にあったとして認めませんでした。
 乙8文献の段落【0053】「検知器32は,感圧方式,電磁誘導方式, 静電容量方式等のセンサにより,ユーザが検知器32に触れたこと,及び, 離れたことを検知することができる。」及び【0056】「ユーザ側に板状 の検知器32が配置され,ユーザが指で触れた操作をその位置と共に検知す ることができるようになっている。」との記載によれば,乙8文献には,構\n成要件A「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を,直\n接的または間接的に検出する力入力検出手段と,」及び構成要件B「前記オ\nブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段と,」の\n各構成が開示されているといえる。\nまた,乙8文献の段落【0061】の「オンルートスクロールというのは, 経路上を移動する点(移動点)を表示面上の基準点に一致させた地図をスク\nロールさせるものである」,段落【0073】の「ユーザから見れば「指で 触れている自車位置マークCが移動(スクロール)を開始し,経路関連情報 の存在する地点に自車位置マークCが到達したため,自車位置マークCが振 動する」というように感じることができ」との各記載に併せて図7の記載も 考慮すれば,乙8文献記載の発明(図7から認定される発明)は,「地図」 (本件発明の「表示対象以外」に相当)が移動すること(本件発明の「表\示 態様を変更」に相当)で,あたかも「自車位置マーク」(本件発明の「表示\n対象」に相当)が移動しているように見えるよう制御されているといえる。 したがって,乙8文献には,構成要件C「前記位置入力手段にて検出された\n位置の表示対象を前記位置に保持しつつ,」,構\成要件D「前記力入力検出 手段により検出された前記力入力に応じて,当該表示対象以外の表\示態様を 変更することにより,」及び構成要件E「当該表\示対象を相対的に変更さ せ,」の各構成が開示されているというべきである。\nさらに,乙8文献の段落【0065】には,「検知器32は未検知状態に あると判定した場合に進むS140では,オンルートスクロールを一旦停止 し,上述したS105に処理を戻す」と記載されていることから,乙8文献 記載の発明においても,「自車位置マーク」に対する「地図」の変更結果を 記憶部に記憶していることは自明のことというべきである。したがって,乙 8文献には,構成要件F「当該変更結果を当該表\示対象に対する入力として 記憶部に記憶させる変更手段と,」の構成が開示されているといえる。\nまた,乙8が情報処理装置(構成要件G)を開示していることは明らかで\nある。 以上によれば,乙8文献に記載された発明と本件発明とは同一であると認 められる。
原告の主張について
ア これに対し,原告は,本件明細書の段落【0039】には,表示画面へ\nの接触による力の有無を検出する手段が記載されているが,当該手段は, 表示画面に加えられた力の有無を間接的に検出する手段であって,乙8文\n献に開示されている単なる接触の有無を検出する手段とは異なるから,乙 8文献には,本件発明の構成要件A「表\示画面にスライドせずに接触した オブジェクトの力入力を,直接的または間接的に検出する力入力検出手段 と,」(ひいては構成要件D及びFも)の構\成が開示されていない旨主張 する。
イ 本件明細書の段落【0039】には,次の記載がある。 「なお,上記のように検出装置112が機械的に直接,摩擦力または押 下力を検出することに限られず,間接的に摩擦力または押下力が検出され てもよい。例えば,後述する制御部102が,タッチパネルへの接触によ る入力位置の占める領域が,所定の形状から変化した場合に,所定の摩擦 力を検出してもよい。(判決注:中略)また,検出装置112は,表示画\n面への接触による力の強さを検出することに限られず,表示画面への接触\nによる力の有無を検出してもよい。この場合,表示画面に対して非接触の\n場合に,所定の押下力または摩擦力が検出されないものとし,表示画面に\n対して接触があった場合に,所定の押下力または摩擦力があったものとし て検出してもよい。」
ウ 原告が主張するように,上記段落【0039】の記載が,「力の強さ又 は有無を間接的に検出する手段」について述べたものであるとしても,該 「力の強さ又は有無を間接的に検出する手段」の一例として,「表示画面\nに対して非接触の場合に,所定の押下力または摩擦力が検出されないもの とし,表示画面に対して接触があった場合に,所定の押下力または摩擦力\nがあったものとして検出」する手段が記載されていることは明らかである。
エ そして,本件発明の構成要件Aは「表\示画面にスライドせずに接触した オブジェクトの力入力を,直接的または間接的に検出する力入力検出手段 と,」というものであるところ,そこにおいては,「力入力」の「検出」 に関し,それ以上に具体的な規定は何らされておらず,また,上記「力の 強さ又は有無を間接的に検出する手段」の一例である,「表示画面に対し\nて非接触の場合に,所定の押下力または摩擦力が検出されないものとし, 表示画面に対して接触があった場合に,所定の押下力または摩擦力があっ\nたものとして検出」する手段を排除する格別な理由も見当たらないことか らすれば,構成要件Aは,「表\示画面への接触・非接触による力の有無を 検出」することも含むと解すべきである。
オ したがって,乙8文献に開示されている接触の有無を検出する手段が, 本件発明の構成要件A「表\示画面にスライドせずに接触したオブジェクト の力入力を,直接的または間接的に検出する力入力検出手段と,」の構成\nと異なることを前提とする原告の上記主張は,その前提を欠くものであり, 採用できない。 (4)小括 以上のとおり,乙8文献に記載された発明は本件発明と同一であるから, 本件特許には乙8文献に基づく新規性欠如の無効理由が存すると認められる。
・・・
(なお,原告は,本件特許について訂正審判を請求したとして平成30年6月21日付けで口頭弁論の再開を申し立てたが,当裁判所は,原告にはより早い時期に訂正の再抗弁を主張する機会が十\分にあったこと等を考慮して,口頭弁論を再開しない。)。

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平成29(ネ)10029  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年6月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審における訂正の再抗弁の主張について、時期に後れたとは判断されませんでした。ただ、訂正後のクレームについても進歩性無しと判断されました。
 被控訴人は,本件再訂正に係る訂正審判請求等がされていないし,今後, このような手続が可能であるとはいえないから,本件再訂正がされたこと\nを前提とする本件再訂正発明3に基づく権利主張はできないと主張する。 この点について検討するに,特許権者が,事実審の口頭弁論終結時まで に訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず,その後に訂正審決等が 確定したことを理由に事実審の判断を争うことは,訂正の再抗弁を主張し なかったことについてやむを得ないといえるだけの特段の事情がない限り, 特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させるものとして,特許法1 04条の3及び104条の4の各規定の趣旨に照らして許されない。すな わち,特許権侵害訴訟において,特許権者は,原則として,事実審の口頭 弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなければならない。(最高裁平成 29年7月10日第二小法廷判決・民集71巻6号861頁参照)。 本件についてみると,被控訴人は,平成29年8月7日の当審第2回口 頭弁論期日において,甲26(参考資料3)発明に周知技術である基板ア ライナーを直接適用することによっても,相違点4に係る構成が容易に想\n到できるという,新たな組合せに基づく無効の抗弁を主張し,控訴人は, これを踏まえて,同年10月11日の当審第3回口頭弁論期日において, 本件再訂正に係る訂正の再抗弁の主張をした(裁判所に顕著な事実)。そ して,本件審決に係る審決取消訴訟は当裁判所に係属しており,控訴人は, 当審の口頭弁論終結時までに,本件再訂正に係る訂正審判請求等を法律上 することができなかった(特許法126条2項,134条の2第1項)。 そうすると,特許権の侵害に係る紛争をできる限り特許権侵害訴訟の手 続内で迅速にかつ一回的に解決することを図るという特許法104条の3 及び104条の4の各規定の趣旨に照らすと,本件の事実関係及び審理経 過の下では,被控訴人による新たな無効の抗弁に対する本件再訂正に係る 訂正の再抗弁を主張するために,現に本件再訂正に係る訂正審判請求等を している必要はないというべきである。 また,仮に,本件審決に係る審決取消訴訟において,本件審決を取り消 す旨の判決がされ,これが確定した場合には,本件無効審判手続が再開さ れるところ,この再開された審判手続等において,控訴人が本件再訂正に 係る訂正請求をすることができないとは直ちにいえない。

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対応する審取です。

◆平成28(行ケ)10250

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平成28(ワ)41720  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年5月31日  東京地方裁判所(47部)

 国が被告の特許権侵害事件です。気象庁の緊急地震速報が特許侵害かが争われました。裁判所は、「地震の到来方向」を演算したり,これを警報・通報することを想定していないとして、請求が棄却されました。
 緊急地震速報で発表する内容は以下のとおりである。
(ア) 緊急地震速報(警報)
・地震の発生時刻,震源の位置
・強い揺れ(震度5弱以上)及び震度4の地域の名称
(イ) 緊急地震速報(予報)
・地震の発生時刻,震源の位置,地震の規模(マグニチュード)
・強い揺れ(震度5弱以上)及び震度4の地域の名称
・予想される震度
・主要動の到達予想時刻
ウ 緊急地震速報の処理の流れは,以下のとおりである。
(ア) 観測点における震源推定処理
地震波を検知した観測点において地震波形を解析し,P波初動の時刻, 震央距離(B−Δ法による),震央方向(主成分分析法による),最大振幅, リアルタイム震度等を求める。この処理は地震検知を契機に実施され,そ の後毎秒,処理中枢(気象庁本庁・大阪管区気象台の処理中枢:EPOS) に送信される。
(イ) EPOS中枢処理における震源推定処理
EPOSにおいて震源を推定する処理では,最初にどこかの観測点で地 震波を検知してから,時間が経過して「地震波を検知する観測点が増える」 のに合わせ,様々な手法により震源計算を繰り返す。震源計算の手法には, IPF法,着未着法,EPOSによる自動震源決定処理があり,概ね時間 とともに精度が高くなる。
(ウ) マグニチュードの計算
前記の処理で推定した震源と観測した地震波の最大振幅を用いて,地震 の規模(マグニチュード)を毎秒推定する。
(エ) 震度等の予想
震源とマグニチュードを元に,地予想震度の精度も時間の経過とともに向上することが期待できる。
(オ) 情報の発表
震度等の計算結果が,発表条件・更新条件を満たすと,人手を介するこ\nとなく直ちに緊急地震速報を発表する。
(7) 上記(5),(6)のとおり,被告(気象庁)が行う緊急地震速報では,地震の観 測,データ処理,情報の発表を行うにすぎず,「受信」行為を行っていない(緊\n急地震速報を受信するのは,被告(気象庁)以外の第三者である。)。 また,仮に上記第三者の受信行為まで考慮に入れたとしても,被告の緊急地 震速報では,本件発明の「検出センタ」に相当する処理装置から「予想震度」\nや「到達予想時刻」が出力されており,受信機側で「予\想震度」や「到達時刻」 の演算が行われることは想定されておらず,したがって,個々の受信位置ごと に異なる個別の情報が提供されることもない。 さらに,被告の緊急地震速報で発表される情報は,上記(6)イのとおりであ り,その中に「地震の到来方向」は含まれていない。なお,インターネット検 索サイト Yahoo!JAPAN のニュースサイトに掲載された,高度利用者向け受信端 末の緊急地震速報に係る画像(甲5)上も,各地の予想震度を1つの地図内に\n図示しているにすぎず,地震データをそのまま告知に利用しており,個々の受 信機の受信位置ごとに異なる個別の情報である「地震の到来方向」を提供して いない。したがって,上記地図をみた者は,自らの所在地と震源地とを比較す ることで「地震の到来方向」を判断できるとしても,同地図上,「地震の到来方 向」自体が「警報・通報」されているものとはいえない。 このように,被告が行う緊急地震速報は,1)「受信」行為が含まれていない ほか,仮に第三者の受信行為まで考慮に入れたとしても,2)受信機側で「予想\n震度」や「到達時刻」の演算が行われることが想定されておらず,3)地震デー タをそのまま告知に利用しており,「地震の到来方向」を演算したり,これを警 報・通報することを想定していないから,いずれにしても,本件発明の構成要\n件(4)及び(5)を充足しない。これに反する原告の主張は,上記説示に照らして 採用できない。

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平成27(ワ)21684  特許権  民事訴訟 平成30年4月20日  東京地方裁判所(40部)

 特許権侵害事件です。争点は、本件発明「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法」は製造方法の発明か、サポート要件違反、実施可能要件違反などです。製造会社だけでなく、商社、コンビニが被告とされています。裁判所は、製造方法の発明かについては判断することなく、サポート要件違反・実施可能\要件違反として無効と判断しました。
 ところで,耐食コーティングに用いる材料の種類や成分の違いにより, 缶内の飲料に与える影響に大きな差があることは,本件特許の出願日当時, 当業者に周知であるということができる(乙34〜36)。例えば,特開平 7−232737号公開特許公報(乙36)には,「エポキシ系樹脂組成物 を被覆した場合,ワイン系飲料に含まれる亜硫酸ガス(SO2)をはじめと するガスに対するガスバリヤー性が劣っており,かつフレーバー成分の収 着性が高い。例えば,ワイン系飲料等を充填した場合,含有する亜硫酸ガ ス(SO2)が塗膜を通過して下地の金属面を腐食する虞があり,場合によ っては内容物が漏洩することもある。この亜硫酸ガスは下地の金属と反応 して硫化水素(H2S)を発生させるが,この硫化水素(H2S)は悪臭の 主要因となるばかりでなく,飲料の品質保持のため必要な亜硫酸ガス(S O2)を消費するため飲料の品質を劣化させフレーバーを損なうこととな る。また,この樹脂組成物は飲料中のフレーバーを特徴付ける成分を収着 しやすく,飲料用金属容器の内面に被覆するには官能的に充分満足のでき\nるものではない。」(段落【0004】),「一方,ビニル系樹脂組成物を被覆 した場合,…エポキシ系樹脂組成物と同様に亜硫酸ガス(SO2)等に対す るガスバリヤー性に乏しく,やはり腐食や漏洩の危険性及び官能的な問題\nがある。」(段落【0005】)との記載がある。これによれば,耐食コーテ ィングに用いる材料や成分が,ワイン中の成分と反応してワインの味質等 に大きな影響を及ぼすことは,本件特許の出願日当時の技術常識であった ということができる。
上記のとおり,耐食コーティングに用いる材料の成分が,ワイン中の成 分と反応してワインの味質等に大きな影響を及ぼし得ることに照らすと, 本件明細書に記載された「エポキシ樹脂」以外の組成の耐食コーティング についても本件発明の効果を実現できることを具体例等に基づいて当業 者が認識し得るように記載することを要するというべきである。 この点,原告は,本件発明の課題は,ワイン中の遊離SO2,塩化物及び スルフェートの含有量を所定値以下にすることにより達成されるのであ り,耐食コーティングの種類によりその効果は左右されない旨主張する。 しかし,塗膜組成物の組成を変えることにより塗膜の物性が大きく変動し, 缶内の飲料に大きな影響を及ぼすことは周知であり(乙34の第1表,乙\n35の第2,3表等),ワイン中の遊離SO2,塩化物及びスルフェートの\n含有量を所定値以下にすれば,コーティングの種類にかかわらず同様の効 果を奏すると認めるに足りる証拠はない。
(4) 以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,具体例の開示がなく とも当業者が本件発明の課題が解決できると認識するに十分な記載があると\nいうことはできない。そこで,本件明細書に記載された具体例(試験)によ り当業者が本件発明の課題を解決できると認識し得たかについて,以下検討 する。
ア 本件明細書には,「パッケージングされたワインを,周囲条件下で6ヶ 月間,30℃で6ヶ月間保存する。50%の缶を直立状態で,50%の缶 を倒立状態で保存する。」(段落【0038】)との方法で試験が行われ た旨の記載がある。しかし,本件明細書には,当該「パッケージングされ たワイン」の「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の濃度,そ の他の成分の濃度,耐食コーティングに用いる材料や成分等については何 ら記載がなく,その記載からは,当該「パッケージングされたワイン」が 本件発明に係るワインであることも確認できない。
イ また,本件明細書には,試験方法について,「製品を2ヶ月の間隔を置 いて,Al,pH,°ブリックス(Brix),頭隙酸素及び缶の目視検査に関 してチェックする。…目視検査は,ラッカー状態,ラッカーの汚染,シー ム状態を含む。…官能試験は,味覚パネルによる認識客観システムを用い\nる。」(段落【0039】)との記載がある。「頭隙酸素」については, 乙29文献(4頁下から2行〜末行)に「ヘッドスペースの酸素は,アル ミニウムの放出に関して非常に重大である」との記載があるとおり,ワイ ンの品質に大きな影響を与え得る因子であり,「官能試験」はワインの味\n質の検査であるから,いずれもその方法や結果は効果の有無を認識する上 で重要である。しかし,本件明細書には,「頭隙酸素」のチェック結果や 「目視検査」の結果についての記載はなく,「官能試験」についても「味\n覚パネルによる認識客観システム」についての説明や試験結果についての 記載は存在しない。
ウ さらに,本件発明に係る特許請求の範囲はワイン中の三つの成分を特定 した上でその濃度の範囲を規定するものであるから,比較試験を行わない と本件発明に係る方法により所望の効果が生じることが確認できないが, 本件明細書の発明の詳細な説明には比較試験についての記載は存在しな い。このため,当業者は,本件発明で特定されている「遊離SO2」,「塩 化物」及び「スルフェート」以外の成分や条件を同程度としつつ,「遊離 SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の濃度を特許請求の範囲に記載 された数値の範囲外とした場合には所望の効果を得ることができないか どうかを認識することができない。 加えて,耐食コーティングについては,試験で用いられたものが本件明 細書に記載されている「エポキシ樹脂」かどうかも明らかではなく,まし て,エポキシ樹脂以外の材料や成分においても同様の効果を奏することを 具体的に示す試験結果は開示されていない。
エ 以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された「試験」は, ワインの組成や耐食コーティングの種類や成分など,基本的な数値,条件 等が開示されていないなど不十分のものであり,比較試験に関する記載も\n一切存在しない。また,当該試験の結果,所定の効果が得られるとしても, それが本件発明に係る「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の 濃度によるのか,それ以外の成分の影響によるのか,耐食コーティングの 成分の影響によるのかなどの点について,当業者が認識することはできな い。 そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明に実施例として記載された 「試験」に関する記載は,本件発明の課題を解決できると認識するに足り る具体性,客観性を有するものではなく,その記載を参酌したとしても, 当業者は本件発明の課題を解決できるとは認識し得ないというべきであ る。
オ この点,原告は,本件発明の特徴的な部分は,従来存在しなかった技術 思想であり,「塩化物」等の濃度には臨界的な意義もないので,その裏付 けとなる実験結果等の記載がないとしてもサポート要件には違反しない と主張する。 しかし,前記判示のとおり,特許請求の範囲に記載された構成の技術的\nな意義に関する本件明細書の記載は不十分であり,具体例の開示がなくて\nも技術常識から所望の効果が生じることが当業者に明らかであるという ことはできない。また,「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」 に係る濃度については,その範囲が数値により限定されている以上,その 範囲内において所望の効果が生じ,その範囲外の場合には同様の効果が得 られないことを比較試験等に基づいて具体的に示す必要があるというべ きである。
・・・
(5) 以上のとおり,本件発明に係るワインを製造することは困難ではないが, 本件発明の効果に影響を及ぼし得る耐食コーティングの種類やワインの組成 成分について,本件明細書の発明の詳細な説明には十分な開示がされている\nとはいい難いことに照らすと,本件明細書の発明の詳細の記載は,当業者が 実施できる程度に明確かつ十分に記載されているということはできず,特許\n法36条4項1号に違反するというべきである。

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平成28(ワ)27057  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年4月13日  東京地方裁判所

 特許侵害訴訟において、進歩性無しとして、請求棄却されました。
 以上のとおり,乙9〜12によれば,光学的センサの周辺部に位置す る受光素子に入射する光束の光量が減少するのを防止するため,「読み 取り対象からの反射光が絞りを通過した後に結像レンズに入射するよう, 絞りを配置することによって,光学的センサから射出瞳位置までの距離 を相対的に長く設定」するという構成とすることは,本件特許出願当時,ビデオカメラ等の分野において周知であったと認めることができる。
(イ) 原告は,ビデオカメラ等と2次元バーコードリーダーの技術的意義は 異なるので,当業者がビデオカメラ分野の技術(乙9〜12)を当然の こととして2次元コードリーダの読取装置に適用することを考えるもの ではないと主張する。 しかし,その主たる目的が色彩等の再現性にあるか2次元バーコード の読取りにあるかという点で異なる面があるとしても,集光レンズ付き CCDエリアセンサを通常の目的で使用する限りは,光学的センサの周 辺部に位置する受光素子に入射する光束の光量が減少することにより光 学素子に入射する光束の光量が低下して検出感度が低下するという課題 は共通しており,当業者であれば,2次元バーコードリーダーにおける 同課題の解決のため,光学系の近接した技術分野であるスチルカメラ, デジタルカメラ,ビデオカメラ等の技術を適用することについての動機 付けを得ることは容易であるというべきである。 そして,前記(1)ウのとおり,ICX084ALデータシート(乙39) には,ICX084ALが2次元バーコードリーダー,PCインプット カメラに適している旨の記載が,1995年9月25日付けの日経エレ クトロニクス(乙64の3)には,ICX084ALを含むソニーの全画素読出し方式CCDが電子スチルカメラ,2次元バーコードリーダー\n等に適している旨の記載があり,また,平成9年7月13日付け日経産 業新聞(乙57)には,「バーコード読み取り手持ち型機器を発売・・・ デジタルカメラの技術を応用し」との記載があることも,バーコードリ ーダーとデジタルカメラとが技術を共通にする関係にあることを裏付け るものということができる。

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平成29(ネ)10092  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 一審(東地46部)は、技術的範囲に属しないと判断しましたが、知財高裁(4部)は属する、無効理由無しと判断しました。
 前記1(2)のとおり,本件発明1の意義は,熱放散ブリッジに軸方向空気通 路を貫設せずに電力電子回路を冷却することにより,電子構成部品の配置に利用可\n能な空間を十\分に確保するという課題を達成するために,熱放散ブリッジの底面を 冷却流体通路の一方の壁とする構成を採用したことなどにある。すなわち,本件発\n明1は,冷却流体が,横方向に吸い込まれて,後部軸受けの中央スロット4b及び 4cの方に流れ,熱放散ブリッジの下方で冷却流体通路内を循環し,熱放散ブリッ ジの底面及び冷却フィンを,それらの全長にわたって掃引した後,後部軸受けの側 部スロット4a及び4dを通って排出される構成とすることにより,熱放散ブリッ\nジの上面に搭載された電力電子回路が,冷却フィン及び熱放散ブリッジを介して, 伝導によって冷却されるという効果を奏するようにしたものである。 そして,このように構成要件1Gの冷却流体通路が,熱放散ブリッジを冷却する\nための構成であり,同通路を流れる冷却流体が,熱放散ブリッジの底面をその全長\nにわたって掃引するものであることからすると,冷却流体通路の長手方向壁のうち, 少なくとも熱放散ブリッジの底面により形成される壁は,冷却効率の観点から,冷 却流体通路の全長にわたっている必要がある。
(イ) 一方,本件明細書1には,構成要件1Gの冷却流体通路が,同通路の他方\nの長手方向壁を形成している後部軸受けを冷却するための構成であることは何ら記\n載されていない。そして,前記1(2)のとおり,本件発明1は,軸方向を流れる冷却 流体によって,機械内の冷却流体全体の流量が増加し,オルタネータの内部部品を はるかに良好に冷却することができるという効果を奏するものであることからする と,後部軸受けの冷却は,冷却流体通路を通る空気によってではなく,主に,空間 22を通る軸方向空気流により機械内の空気流量全体が増加することによって達成 されるものであると認められる。 そうすると,後部軸受けをもって冷却流体通路の壁を形成する構成とすることは,\n空気の流れを冷却流体通路に沿わせる目的を持つのみということになるため,必ず しも,冷却通路全体にわたる必要はない。例えば,本件発明1の実施形態において, 後部軸受けの中央スロット4b及び4cの直上にある空気は,ファンによって後部 軸受け内部に流入し,絶えず側方からの空気と入れ替わるので,その直上の熱放散 ブリッジを冷却する空気流を形成することは,【図2】に示される構造から明らか\nであり,熱放散ブリッジを冷却するという機能に鑑みれば,中央スロット4b及び\n4cの部分には後部軸受けにより形成される壁はないものの,冷却流体通路に該当 するといえる。
(ウ) 以上のとおり,本件明細書1に記載された冷却流体通路の技術的意義に鑑 みると,構成要件1Gの冷却流体通路は,熱放散ブリッジの底面により形成される\n長手方向壁が全長にわたって設けられることを必要とする一方,後部軸受けにより 形成される長手方向壁が全長にわたって設けられることは,必ずしも必要ではない と解される。 また,かかる解釈は,冷却流体通路と冷却フィンとの関係とも整合する。すなわ ち,本件明細書1には,「この冷却手段は,通路17内に配置されて,選択された 通路に冷却流体を流す。」(【0054】)との記載があり,かつ,【図2】によ れば,冷却フィンが熱放散ブリッジの底面の半径方向全長にわたって配置され,後 部軸受けが対向しない箇所にも存在していることが読み取れるのであるから,熱放 散ブリッジと中央スロット4b及び4cとが対向する箇所は,冷却フィンが配置さ れる箇所という観点からも,熱放散ブリッジと後部軸受けとが対向する箇所と同様, 通路17の内部といえる。 加えて,仮に,熱放散ブリッジの底面及び後部軸受けの双方が壁をなしている部 分のみが冷却流体通路に該当すると解するならば,冷却流体通路の半径方向外側の 端部は,熱放散ブリッジの外周か後部軸受けの外周のうち軸側の部分となるところ, 【図2】を参照すると,後部軸受けの外周が保護カバー11に到達しておらず,後 部軸受けと保護カバーとの間に隙間が存在することは明らかであるから,冷却流体 通路は保護カバーと連通していないと理解される。しかし,本件明細書1には,「本 発明によれば,保護カバーは,流体通路17と向き合う位置に開口19を有する。 この開口は,通路17の外周と連通している。」(【0049】)として,通路1 7が保護カバーの開口と連通していることが記載されており,前記理解と整合しな い。
ウ 以上のとおり,特許請求の範囲の記載,本件明細書1の記載及び本件発明1 における冷却流体通路の技術的意義を総合すれば,冷却流体通路は,熱放散ブリッ ジの底面が冷却流体通路の全長にわたり長手方向壁を形成していることを要する一 方,後部軸受けにより形成される長手方向壁は冷却流体通路の全長にわたる必要は ないと解される。

◆判決本文

◆一審はこちらです。平成28(ワ)13239

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平成29(ネ)10089  虚偽事実の告知・流布差止等本訴請求,特許権侵害差止等反訴請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年2月22日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 プロバイダー宛ての特許侵害であるとの通知書の送付が、営業誹謗行為かが争われました。知財高裁(3部)は公然実施の無効理由があるとして、営業誹謗行為であると判断しました。
 控訴人は,縷々理由を述べて,控訴人による本件ニフティ宛文書の送付は, 社会通念上必要と認められる範囲のものであり,正当な権利行使の一環とし て違法性が阻却されるべき行為であるとか,これについて控訴人に過失はな いなどと主張する。 しかしながら,控訴人が本件ニフティ宛文書の送付に当たり無効理由の有 無について何ら調査検討を行っていないことは,控訴人自身が認めていると ころ,本件特許権1等の出願の経緯や,NTTコムのプロジェクト(本件サ ービスの開発に係る本件プロジェクト)に控訴人自身が参画していた経緯に 照らせば,本件発明1については,本件サービスや甲11発明等の関係で拡 大先願(特許法29条の2)や公然実施(特許法29条1項2号)などの無 効理由が主張され得ることは容易に予測できることであって,たまたま被控\n訴人との間の事前交渉において,かかる無効主張がなされなかったとしても, そのことだけで直ちにかかる無効理由についての調査検討を全く行わなくて もよいということにはならないというべきである。 また,証拠(甲12の1,15の1,16の1,18等)及び弁論の全趣 旨によれば,控訴人は,本件ニフティ宛文書の送付に先立つ平成22年11 月頃から平成23年5月頃にかけて,数か月にわたり,被控訴人との間で, 弁護士・弁理士等の専門家を交えて,被控訴人製品の使用等が本件特許1等 に抵触するものであるか否かについて交渉を行っており,その後,抵触を否 定する被控訴人との間で交渉が暗礁に乗り上げていたにもかかわらず,被控 訴人に対して再度交渉を求めたり,あるいは,訴訟提起を行ったりすること なく,平成26年3月頃から,被控訴人の顧客等に対して控訴人とのライセ ンスを持ちかける文書を送付するようになり,被控訴人から同文書の送付を 直ちに中止するよう求められても,これを中止するどころか,ニフティに対 し,明示的な侵害警告文書である本件ニフティ宛文書を送付するに至ったも のと認められる。 上記のような事情に照らせば,本件ニフティ宛文書の送付は,特許権侵害 の有無について十分な法的検討を行った上でしたものとは認められず,その\n経過も,要するに,被控訴人との交渉では埒が明かないことから,その取引 先に対し警告文書を送ることによって,事態の打開を図ろうとした(すなわ ち,侵害の成否について公権的な判断を経ることなく,いわば既成事実化す ることによって,競争上優位に立とうとした)ものであるといえる(なお, 控訴人は,本件書状3を送った時点では,ニフティが被控訴人の取引先であ るとは知らなかったとも主張するが,事実経過に照らして直ちに信用するこ とはできないし,少なくとも,本件書状4及び本件メールを送った時点では, 既にこれを明確に認識していた〔甲16〕のであるから,かかる事由をもっ て,違法性がないとか,過失がないということもできない。)。 このような控訴人の行為が,社会通念上必要と認められる範囲のものであ り,正当な権利行使の一環として違法性が阻却されるべき行為であるといえ ないことは明らかであり,また,これについて控訴人に過失が認められるこ とも明らかである。 したがって,本件ニフティ宛文書の送付は違法であり,かつ,控訴人には 少なくとも過失が認められるというべきであるから,これに反する控訴人の 主張は採用できない。

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平成29(ネ)10027  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年12月21日  知的財産高等裁判所(2部)  東京地方裁判所

CS関連発明について、控訴審で差止請求が認められました。無効理由については「時機に後れた」として採用されませんでした。1審は、均等侵害も第1、第2、第3要件を満たさない、分割要件違反、および一部のクレームについてサポート要件違反があると判断していました。
 引用発明1は,前記ア(イ)のとおり,「毎度の自動売買では自動売買テーブルでの 約定価より真下の安値の買取り及び約定価より真上の高値の売込みが同時に発注さ れるよう設定されたものであって,それにより,先に約定した注文と同種の注文を 含む売込み注文と買取り注文を同時に発注することで,株価が最初の売買価の値段 の範囲から上下に変動する場合に,所定の収益を発生させることに加え,口座の残 高及び持ち株の範囲において,株の現在価を無視して株の値段への変動を一向に予\n測することなく,従前の株の買取り値より株価が下落すると所定量を買い取り,買 取り値より株価が上がると所定量を売り込むこと」を特徴とするものである。 このように,引用発明1において,従前の株の買取り値より株価が下落すると所 定量を買い取り,買取り値より株価が上がると所定量を売り込む,という,連続し た買取り又は売込みによる口座の残高又は持ち株の増大をも目的とするものである から,このような設定に係る構成を,約定価と同じ価格の注文を含む注文を発注対\n象に含めるようにし,それを「繰り返し行わせる」設定に変更することは,「約定価 より真下の安値の買取り」及び「約定価より真上の高値の売込み」を同時に発注す ることにより,「従前の株の買取り値より株価が下落すると所定量を買取り,買取り 値より株価が上がると所定量を売込む」という,引用発明1の特徴を損なわせるこ とになる。 そうすると,引用発明1を本件発明の構成1Hに係る構\成の如く変更する動機付 けあるといえないから,構成1Hに相当する構\成は,引用発明1から当業者が容易 に想到し得たものとはいえない。
エ 被控訴人の主張について
被控訴人は,本件発明1と引用発明1との相違点は,引用発明1が本件発明1の 構成1Fのうち「前記一の注文価格を一の最高価格として設定し」ていない点であ\nり,その余の点では一致していることを前提に,本件発明1は,引用発明1から容 易想到である,と主張する。 しかし,前記イのとおり,本件発明1と引用発明1とは,引用発明1が本件発明 1の構成1Hの構\成を有していない点について相違している。被控訴人の主張は, その前提を欠き,理由がない。
・・・・
4 なお,被控訴人は,口頭弁論終結後に,本件発明1が無効とされるべきであ ることが明白である事由があるとして,口頭弁論再開を申し立てるが,無効事由の\n根拠となるべき資料は10年以上前に作成されていたものであり,上記無効事由は, 被控訴人が重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法であって, これによって訴訟の完結を遅延させることとなるから,却下されるべきものである から,口頭弁論を再開しない。

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◆1審はこちらです。平成27(ワ)4461

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平成27(ワ)23087  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年12月6日  東京地方裁判所

 医薬品について、薬理データが記載されていないとして、実施可能性違反、サポート要件違反で無効と判断されました。\n
 特許法36条4項1号は,明細書の発明の詳細な説明の記載は「その発明 の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることが できる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定めると\nころ,この規定にいう「実施」とは,物の発明においては,当該発明にかか る物の生産,使用等をいうものであるから,実施可能要件を満たすためには,\n明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が当該発明に係る物を生産し, 使用することができる程度のものでなければならない。 そして,医薬の用途発明においては,一般に,物質名,化学構造等が示さ\nれることのみによっては,当該用途の有用性及びそのための当該医薬の有効 量を予測することは困難であり,当該医薬を当該用途に使用することができ\nないから,医薬の用途発明において実施可能要件を満たすためには,明細書\nの発明の詳細な説明は,その医薬を製造することができるだけでなく,出願 時の技術常識に照らして,医薬としての有用性を当業者が理解できるように 記載される必要がある。
(2) 本件の検討
本件についてこれをみるに,本件発明1では,式(I)のRAが−NHC O−(アミド結合)を有する構成(構\成要件B)を有するものであるところ, そのようなRAを有する化合物で本件明細書に記載されているものは,「化 合物C−71」(本件明細書214頁)のみである。そして,本件発明1は インテグラーゼ阻害剤(構成要件H)としてインテグラーゼ阻害活性を有す\nるものとされているところ,「化合物C−71」がインテグラーゼ阻害活性 を有することを示す具体的な薬理データ等は本件明細書に存在しないことに ついては,当事者間に争いがない。 したがって,本件明細書の記載は,医薬としての有用性を当業者が理解で きるように記載されたものではなく,その実施をすることができる程度に明 確かつ十分に記載されたものではないというべきであり,以下に判示すると\nおり,本件出願(平成14年(2002年)8月8日。なお,特許法41条 2項は同法36条を引用していない。)当時の技術常識及び本件明細書の記 載を参酌しても,本件特許化合物がインテグラーゼ阻害活性を有したと当業 者が理解し得たということもできない。
・・・
すなわち,上記各文献からうかがわれる本件優先日当時の技術常識と しては,ある種の化合物(ヒドロキシル化芳香族化合物等)がインテグ ラーゼ阻害活性を示すのは,同化合物がキレーター構造を有しているこ\nとが理由となっている可能性があるという程度の認識にとどまり,具体\n的にどのようなキレーター構造を備えた化合物がインテグラーゼ阻害活\n性を有するのか,また当該化合物がどのように作用してインテグラーゼ 活性が阻害されるのかについての技術常識が存在したと認めるに足りる 証拠はない。
・・・
以上の認定は本件優先日当時の技術常識に係るものであるが,その ほぼ1年後の本件出願時にこれと異なる技術常識が存在したことを認め るに足りる証拠はなく,本件出願当時における技術常識はこれと同様と 認められる。このことに加え,そもそも本件明細書には,本件特許化合 物を含めた本件発明化合物がインテグラーゼの活性部位に存在する二つ の金属イオンに配位結合することによりインテグラーゼ活性を阻害する 2核架橋型3座配位子(2メタルキレーター)タイプの阻害剤であると の記載はないことや,本件特許化合物がキレート構造を有していたとし\nても,本件出願当時インテグラーゼ阻害活性を有するとされていたヒド ロキシル化芳香族化合物等とは異なる化合物であることなどに照らすと, 本件明細書に接した当業者が,本件明細書に開示された種々の本件発明 化合物が,背面の環状構造により配位原子が同方向に連立した2核架橋\n型3座配位子構造(2メタルキレーター構\造)と末端に環構造を有する\n置換基とを特徴として,インテグラーゼの活性中心に存在する二つの金 属イオンに配位結合する化合物であると認識したと認めることはできな い。 以上によれば,本件出願当時の技術常識及び本件明細書の記載を参酌して も,本件特許化合物がインテグラーゼ阻害活性を有したと当業者が理解し得 たということもできない。 したがって,本件明細書の記載は本件発明1を当業者が実施できる程度に 明確かつ十分に記載したものではなく,本件発明1に係る特許は特許法36\n条4項1号の規定に違反してされたものであるので,本件発明1に係る特許 は特許法123条1項4号に基づき特許無効審判により無効にされるべきも のである。
3 争点(1)イ(イ)(サポート要件違反)について
上記2で説示したところに照らせば,本件明細書の発明の詳細な説明に本件 発明1が記載されているとはいえず,本件発明1に係る特許は特許法36条6 項1号の規定に違反してされたものというべきである。

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平成28(ワ)14131  特許権侵害行為差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年9月28日  東京地方裁判所(47部)

 薬品について、無効理由ありとして権利行使不能と判断されました。争点は無効かどうかのみです。\n
 上記各記載によれば,乙15には,「ヒトにおいて乾癬を処置するために皮 膚に塗布するための混合物であって,1α,24-dihydroxycholecalciferol(タ カルシトール),及びBMV(ベタメタゾン吉草酸エステル),並びにワセリ ンとを含有する非水性混合物であり,皮膚に1日2回塗布するもの」が記載さ れていると認められる。 そして,本件発明12と上記の乙15発明とを対比すると,両発明は,「ヒ トの乾癬を処置するための皮膚用の医薬組成物であって,ビタミンD3の類似 体からなる第1の薬理学的活性成分A,及びベタメタゾンまたは薬学的に受容 可能なそのエステルからなる第2の薬理学的活性成分B,並びに少なくとも1\nつの薬学的に受容可能なキャリア,溶媒または希釈剤を含む,非水性医薬組成\n物であり,医学的有効量で局所適用されるもの」で一致し,前記第2,1(7)記 載の相違点1及び3において相違すると認められる(なお,相違点1及び3の 存在については,当事者間に争いがない。)。 なお,原告は,相違点2(本件発明12は非水性医薬組成物であるのに対し, 乙15発明は非水性組成物であるか定かではない点。)の存在を主張するが, 以下の理由により,相違点2の存在は認められない。 すなわち,乙15にはTV−02軟膏についてはワセリン基剤であることが 記載されている。軟膏は基剤に活性成分を混合分散させたものといえるが,ワ セリンは油脂性基剤であって,混和性の点から,ワセリンと水が併用されるこ とは考えにくい。また,乙15では,TV−02軟膏塗布と白色ワセリン塗布 とが比較され(432頁),D3+BMV混合物塗布とBMV+ワセリン混合 物塗布とが比較されており(431頁,433頁),通常,比較においては, 活性成分以外の条件は揃えるから,TV−02の基剤はワセリンであると考え られる。そうすると,TV−02軟膏に,水は基剤として添加されていないと 考えるのが自然であるし,TV−02軟膏と混合するBMV軟膏についても, 混和性の点から,油脂性基剤が使用され,水は基剤として添加されてはいない と考えるのが妥当である。したがって,乙15発明に係るTV−02軟膏とB MV軟膏の混合物(D3+BMV混合物)についても,水が基剤として添加さ れていないものと理解される(なお,仮に,相違点2を一応認定するとしても, それは実質的なものとはいえないから,当業者であれば,相違点2に係る構成\nは容易に想到できるものといえる。)。

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平成27(ネ)10122  不当利得返還請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年8月9日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁3部は、特許権侵害について、特許無効と判断した1審判断を維持し、請求棄却しました。侵害事件と並行して、無効審判が請求されており、特許庁は審理の結果、無効予告をしました。特許権者は訂正をしましたが、訂正要件を満たしていないとして、最終的に無効と判断されました。これに対して、特許権者は、審取を提起しました。\n原審(侵害訴訟)でも、訂正要件を満たしていないと判断されてます。
 訂正前の「…前記第1の位相から調節できるように固定された第1 の量だけ転位させた第2の位相を有する第3のクロック信号…」の記載 によれば,「第2の位相」の「第1の位相」からの変位量(転位の量) は,第3のクロックが調節されたとしても,第1のクロックが同じ量 だけ調節されれば,変位量に変化がなく,このような調節も「固定」 に含まれると解される。 これに対し,訂正後の「…第2の位相の前記第1の値をもつ第1の位 相を基準とした変位量は,第1の位相が前記第1の値をもっている状態 において第3のクロック信号の調整がなされるまでの間,固定された第 1の量であり,前記変位量は,第3のクロック信号が調節されたときは 調節される…」との記載によれば,変位量は,第1のクロックの調節に よらず専ら第3のクロックの調節により調節され,第3のクロック信号 が調節されれば,仮に第1のクロックが同じ量だけ調節されたとしても 変化するように,「固定」の技術的意味を変更するものと理解される。
(エ) 以上より,訂正事項2は,特許請求の範囲の減縮を目的とするもの に当たらないとともに,不明瞭な記載の釈明又は誤記の訂正を目的と する訂正であるということもできない。 また,訂正事項2が,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当 該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものでな いことは明らかである。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成25(ワ)33706

◆対応の無効事件はこちらです。平成28(行ケ)10111

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平成29(ネ)10014  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 本件発明の「緩衝剤」は,添加したものに限られると判断して、技術的範囲に属しないと判断されました。  
 確かに,本件明細書の段落【0050】には「実施例18」との記載はあ るが,他方で,本件明細書における実施例18(b)に関する記載をみると,「比較 のために,例えば豪州国特許出願第29896/95号(1996年3月7日公開) に記載されているような水性オキサリプラチン組成物を,以下のように調製した」 (段落【0050】前段)と記載され,また,実施例18の安定性試験の結果を 示すに当たっては,「比較例18の安定性」との表題が付された上で,実施例1\n8(b)については「非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物」と表現されている\n(段落【0073】)。そして,豪州国特許出願第29896/95号(1996 年3月7日公開)は,乙4発明に対応する豪州国特許であり,同特許は水性オキサ リプラチン組成物に係る発明であって,本件明細書で従来技術として挙げられる もの(段落【0010】)にほかならない。 上記各記載を総合すると,実施例18(b)は,「実施例」という用語が用いら れているものの,その実質は本件発明の実施例ではなく,本件発明と比較するため に,「非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物」,すなわち,緩衝剤が用いられていな い従来既知の水性オキサリプラチン組成物を調製したものであると認めるのが相当

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成27(ワ)28467

以下は類似案件です。

◆平成27(ワ)12412号

◆被告の異なる事件です。

◆これの原審はこちらです。平成27(ワ)28698

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)29001

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)29158

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)28467

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)28698

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)29159

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)12412

◆被告の異なる控訴審事件です。平成28(ネ)10046

こちらは、結論は非侵害で同じですが、1審では技術的範囲に属すると判断されましたので、それが取り消されています。また、控訴審における追加主張は時期に後れた抗弁として、却下されてます。

◆平成28(ネ)10031

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平成29(ネ)10009等  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月12日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(3部)は、1審の判断(「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まない)を維持し、控訴棄却しました。
 本件発明1の構成要件1C(オキサリプラティヌムの水溶液からなり)\nが,オキサリプラティヌムと水のみからなる水溶液であることを意味するの か,オキサリプラティヌムと水からなる水溶液であれば足り,他の添加剤等 の成分が含まれる場合をも包含するのかについては,特許請求の範囲の記載 自体からは,いずれの解釈も可能である。そこで,この点については,本件\n明細書1の記載及び本件特許1の出願経過を参酌して判断することとする。
・・・
前記アの本件明細書1の記載によれば,オキサリプラティヌムは,種々 の型の癌の治療に使用し得る公知の細胞増殖抑制性抗新生物薬であり,本 件発明1は,オキサリプラティヌムの凍結乾燥物と同等な化学的純度及び 治療活性を示すオキサリプラティヌム水溶液を得ることを目的とする発明 である。そして,本件明細書1には,オキサリプラティヌム水溶液におい て,有効成分の濃度とpHを限定された範囲内に特定することと併せて, 「酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくはその他の添加剤を含まない オキサリプラティヌム水溶液」を用いることにより,本件発明1の目的を 達成できることが記載され,「この製剤は他の成分を含まず,原則とし て,約2%を超える不純物を含んではならない」との記載も認められる。 他方で,本件明細書1には,「該水溶液が,酸性またはアルカリ性薬剤, 緩衝剤もしくはその他の添加剤」を含有する場合に生じる不都合について の記載はなく,実施例においても,添加剤の有無についての具体的条件は 示されておらず,これらの添加剤を入れた比較例についての記載もない。
しかしながら,前記イの出願経過において控訴人が提出した本件意見書 には,本件発明1の目的が,「オキサリプラティヌム水溶液を安定な製剤 で得ること」及び「該製剤のpHが4.5〜6であること」に加えて, 「該水溶液が,酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくはその他の添加 剤を含まないこと」にあること,さらに,水溶液のpHが該溶液に固有の ものであって,オキサリプラティヌムの水溶液の濃度にのみ依存するこ と,オキサリプラティヌムの性質上,本件発明1の構成においてのみ,\n「安定な水溶液」を得られることがわざわざ明記され,これらの記載を受 けて,審査官が拒絶理由通知の根拠とする引用文献1ないし3では,その ような「安定な水溶液」は得られないこと,すなわち,緩衝剤を含む凍結 乾燥物やクエン酸を含む水溶液では,「オキサリプラティヌムの安定な水 溶液」を得ることは困難である旨が具体的に説明されている。 その上で,本件意見書は,本件発明1が特許法29条2項に該当しない との結論を導いて審査官に再考を求めているのであり,その結果として控 訴人は,本件特許1の特許査定を受けているのである。 以上のような本件明細書1の記載及び本件特許1の出願経過を総合的に みれば,本件発明1は,公知の有効成分である「オキサリプラティヌム」 について,直ぐ使用でき,承認された基準に従って許容可能な期間医薬的\nに安定であり,凍結乾燥物を再構成して得られる物と同等の化学的純度及\nび治療活性を示す,オキサリプラティヌム注射液を得ることを課題とし, その解決手段として,オキサリプラティヌムを1〜5mg/mlの範囲の 濃度と4.5〜6の範囲のpHで水に溶解することを示すものであるが, 更に加えて,「該水溶液が,酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくは その他の添加剤を含まない」ことをも同等の解決手段として示すものであ ると認めることができる。 してみると,本件発明1の特許請求の範囲における「オキサリプラティ ヌムの水溶液からなり」(構成要件1C)とは,本件発明1がオキサリプ\nラティヌムと水のみからなる水溶液であって,他の添加剤等の成分を含ま ないものであることを意味すると解するのが相当である。

◆判決本文

◆1審はこちらです。

関連事件(同一特許、異被告)です。

◆平成27(ワ)28699等

◆平成27(ワ)29001

◆平成27(ワ)29158

同一特許の別訴事件で、1審(平成27(ワ)12416号)では技術的範囲内と判断されましたが、知財高裁はこれを取り消しました。

◆平成28(ネ)10031

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平成28(受)632  特許権侵害差止等請求事件 平成29年7月10日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  知的財産高等裁判所

 最高裁(第2小法廷)判決です。特許権者が,事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず,その後に特許法104条の4第3号所定の特許請求の範囲の訂正をすべき旨の審決等が確定したことを理由に事実審の判断を争うことはできないと判断されました。本件については、別途無効審判が継続(審取中を含む)しており、法上、訂正審判の請求ができなかったという特殊事情があります。この点については、訂正審判を請求しなくても、訂正の抗弁まで禁止されていたわけではないと判断されました。
 特許権侵害訴訟の終局判決の確定前であっても,特許権者が,事実審の 口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず,その後に訂 正審決等の確定を理由として事実審の判断を争うことを許すことは,終局判決に対 する再審の訴えにおいて訂正審決等が確定したことを主張することを認める場合と 同様に,事実審における審理及び判断を全てやり直すことを認めるに等しいといえ る。 そうすると,特許権者が,事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張し なかったにもかかわらず,その後に訂正審決等が確定したことを理由に事実審の判 断を争うことは,訂正の再抗弁を主張しなかったことについてやむを得ないといえ るだけの特段の事情がない限り,特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させ るものとして,特許法104条の3及び104条の4の各規定の趣旨に照らして許 されないものというべきである。
(2) これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,上告人は,原審の 口頭弁論終結時までに,原審において主張された本件無効の抗弁に対する訂正の再 抗弁を主張しなかったものである。そして,上告人は,その時までに,本件無効の 抗弁に係る無効理由を解消するための訂正についての訂正審判の請求又は訂正の請 求をすることが法律上できなかったものである。しかしながら,それが,原審で新 たに主張された本件無効の抗弁に係る無効理由とは別の無効理由に係る別件審決に 対する審決取消訴訟が既に係属中であることから別件審決が確定していなかったた めであるなどの前記1(5)の事情の下では,本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁 を主張するために現にこれらの請求をしている必要はないというべきであるから, これをもって,上告人が原審において本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張 することができなかったとはいえず,その他上告人において訂正の再抗弁を主張し なかったことについてやむを得ないといえるだけの特段の事情はうかがわれない。

◆判決本文

◆1審はこちら。平成25(ワ)32665

◆2審はこちら。平成26(ネ)10124

◆無効審判の取消訴訟はこちら。平成26(行ケ)10198

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平成28(ネ)10047  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年10月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 少し前の事件ですが、漏れていたのでアップします。特許侵害事件において、無効理由無かつ技術的範囲に属するとした1審判断を維持しました。同一特許に係る審決取消請求事件の判決の理由中の判断は,侵害訴訟における技術的範囲の確定に対して拘束力を持たないとも言及しました。
 ところで,特許発明の技術的範囲の確定の場面におけるクレーム解釈と,当該特 許の新規性,進歩性等を判断する前提としての発明の要旨認定の場面におけるクレ ーム解釈とは整合するのが望ましいところ,確かに,本件特許2に係る審決取消請 求事件の判決(甲12)には,控訴人が指摘するとおり,「本件特許発明2は,ケ ーブルコネクタの回転のみによって,すなわち,ケーブルコネクタとレセプタクル コネクタ間のスライドなどによる相対位置の変化なしに,ロック突部の最後方位置 が突出部に対して位置変化を起こす構成に限定されていると解される。」旨の記載\nがある(39頁)。しかし,上記判決は,主引用例(本件における乙3)の嵌合過 程について,「…肩部56で形成される溝部49の底面に回転中心突起53が当た り,ここで停止する状態となる。…この状態で相手コネクタ33を回転させるので はなく,回転中心突起53を肩部56に沿って動かすことで,相手コネクタ33を コネクタ31に対してコネクタ突合方向のケーブル44側にずらした状態にして, 相手コネクタ33をコネクタ突合方向に直交する溝部方向に動かすことができない ようにし,その後,回転中心突起53を中心に相手コネクタ33を回転させている」 (36〜37頁)との認定を前提に,本件特許発明2と乙3発明とを対比するに当 たり,乙3発明には,「回転によって,回転中心突起53の最後方位置が回転前に 比較して後方に位置するという技術思想が記載されているとはいえない」,「回転 中心突起53の上方に肩部56の上面が位置するように,相手コネクタ33が傾斜 している状態で肩部56の前側から後側(ケーブル側)へ回転中心突起53を移動 させているものであって,相手コネクタ33の回転により回転中心突起56の最後 方位置が後方(ケーブル側)へ移動するものではない」(38頁)として,乙3発 明は,「コネクタ嵌合過程にて上記ケーブルコネクタの前端がもち上がって該ケー ブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるとき,上記ロック突部の突部後縁の最後方位 置が,上記ケーブルコネクタがコネクタ嵌合終了姿勢にあるときと比較して前方に 位置するものではないという点において,本件特許発明2と相違する。」旨認定し ている(38頁)。上記のように,乙3発明においては,ロック突部の突部後縁の 最後方位置の変化に,ケーブルコネクタの上向き傾斜姿勢からコネクタ嵌合終了姿 勢への回転を伴う姿勢の変化が関係していないこと(「回転によって,回転中心突 起53の最後方位置が回転前に比較して後方に位置するという技術思想が記載され ているとはいえない」こと)に照らせば,本件特許発明2と乙3発明とが相違する ことを認定するについては,本件特許発明2におけるロック突部の突部後縁の最後 方位置の変化が,ケーブルコネクタの上向き傾斜姿勢からコネクタ嵌合終了姿勢へ の回転を伴う姿勢の変化によって生じるものであれば足り,「回転のみによって」 生じること,言い換えれば,ケーブルコネクタを上向き傾斜姿勢からコネクタ嵌合 終了姿勢へと変化させる際に,姿勢方向を回転させることに伴って生じる「ケーブ ルコネクタとレセプタクルコネクタ間のスライドなどによる相対位置の変位」が一 切あってはならないことを要するものではないというべきである。なお,同一特許 に係る審決取消請求事件の判決の理由中の判断は,侵害訴訟における技術的範囲の 確定に対して拘束力を持つものではない。 したがって,控訴人の上記限定解釈に係る主張は,理由がない。
(イ) 控訴人は,被控訴人が,特許の無効を回避するために,自ら,「本件特許 発明2は,「ロック突部の突部後縁の最後方位置」が,「ケーブルコネクタが上向 き傾斜姿勢にあるとき」はロック溝部の溝部後縁から溝内方に突出する突出部の最 前方位置よりも前方に位置し,また,「ケーブルコネクタがコネクタ嵌合終了姿勢 にあるとき」は上記突出部の最前方位置よりも後方に位置することを規定している」 旨構成要件e及びfを限定解釈すべきことを主張しているのであるから,その技術\n的範囲の解釈に際しては,被控訴人の上記主張が前提にされるべきである旨主張す る。 しかし,特許発明の技術的範囲を解釈するについて,相手方の無効主張に対する 反論として述べた当事者の主張は,必ずしも裁判所の判断を拘束するものではない。 そして,本件特許発明2に係る特許請求の範囲には,控訴人が主張するような限 定は規定されていないし,前記(1)イ記載の本件特許発明2の課題及び作用効果は, ロック突部の突部後縁の最後方位置が,ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にある とき,すなわち,コネクタ嵌合終了姿勢に至る前は,常にロック溝部の溝部後縁か ら溝内方に突出する突出部の最前方位置よりも前方に位置しているのでなければ奏 し得ないというものではない。また,そもそも,本件明細書2には,本件特許発明 2に係る実施例の嵌合動作について,「ロック突部21’の下部傾斜部21’B− 2が,ロック溝部57’の後縁突出部59’Bの位置まで達すると,該後縁突出部 59’Bに対して下部傾斜部21’B−2が該後縁突出部59’Bの下方に向けて 滑動しながらケーブルコネクタ10はその前端が時計方向に回転して水平姿勢とな って嵌合終了の姿勢に至る。」(【0053】)と記載されているように,ケーブ ルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるときであっても,嵌合終了姿勢(水平姿勢)に 近づくと,ロック突部の突部後縁の最後方位置が,ロック溝部の溝部後縁から溝内 方に突出する突出部の最前方位置よりも後方に位置することが開示されているとい えるから,構成要件eを,「ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるときは,ロ\nック突部の突部後縁の最後方位置が,ロック溝部の溝部後縁から溝内方に突出する 突出部の最前方位置よりも前方に位置する」ことを規定したものと解釈することは, 誤りである。
・・・・・
 ア 控訴人の明確性要件違反並びに新規性及び進歩性欠如に係る主張は,控訴人 が請求した無効審判請求(無効2014−800015)と同一の事実及び同一の 証拠に基づくものであるところ,上記無効審判請求については,請求不成立審決が, 既に確定した(甲8,12)。したがって,控訴人において,本件特許2が,上記 明確性要件違反並びに新規性及び進歩性の欠如を理由として,特許無効審判により 無効にされるべきものと主張することは,紛争の蒸し返しに当たり,訴訟上の信義 則によって,許されない(同法167条,104条の3第1項)。
イ なお,控訴人は,本件特許発明2が「ケーブルコネクタの回転のみによって, すなわち,ケーブルコネクタとレセプタクルコネクタ間のスライドなどによる相対 位置の変化なしに,ロック突部の最後方位置が突出部に対して位置変化を起こす構\n成に限定されている」ものと解釈されないとすれば,本件特許発明2は進歩性を欠 く旨主張する。 しかし,本件特許発明2の要旨を上記のように限定的に認定しない場合であって も,乙3発明における嵌合動作は,相手コネクタ33の回転中心突起53をコネク タ31の溝部49に肩部56で停止する深さまで挿入し,次いで,回転中心突起5 3を肩部56に沿って動かし,回転中心突起53が溝部49に形成された肩部56 のケーブル44側に当接している状態にして,その後,回転中心突起53を中心に 相手コネクタ33を回転させ,嵌合終了姿勢に至るというものであり,本件特許発 明2と乙3発明とは,本件特許発明2では,「コネクタ嵌合過程にて上記ケーブル コネクタの前端がもち上がって該ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるとき, 上記ロック突部の突部後縁の最後方位置が,上記ケーブルコネクタがコネクタ嵌合 終了姿勢にあるときと比較して前方に位置し」ているのに対し,乙3発明では,コ ネクタ嵌合過程にて相手コネクタ33の前端がもち上がって該相手コネクタ33が 上向き傾斜姿勢にあるときのうち,少なくとも,コネクタ突合方向のケーブル44 側の端までずらした状態で回転中心突起53を中心に相手コネクタ33を回転させ るとき,回転中心突起の突部後縁の最後方位置が,相手コネクタ33がコネクタ嵌 合終了姿勢にあるときと同一の地点に位置している点,すなわち構成要件eの点で\n相違する。そして,乙3には,乙3発明の上記嵌合動作に関し,回転によって,回 転中心突起53の最後方位置が回転前に比較して後方に位置するという技術的思想 が記載されているとはいえず(甲12・38頁),また,乙3発明と乙7ないし1 0に記載された各コネクタとでは,その構造や形状が大きく異なるから,乙3発明\nにおいて,上記各コネクタの嵌合過程における突起部と突出部との位置関係を適用 しようとする動機付けがあるということはできないし,仮に適用を試みたとしても, 乙3発明において,上記相違点に係る本件特許発明2の構成を備えることが容易に\n想到できたとは認められない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成26(ワ)14006

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平成29(ネ)10005  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年6月13日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 被告製品が構成要件「加熱前のメラミン系樹脂発泡体よりも柔軟な」を充足するかが争われました。知財高裁(4部)は、1審同様、充足しないと判断しました。
本件各発明は,メラミン系樹脂発泡体からなる清掃具における「折り畳み可能な\n清掃具の変形能や,清掃対象面の形態に応じて変形可能\な清掃具の柔軟性等」が乏 しいという課題(【0006】)を解決することを目的とするものであり,その効 果は,「捩じり又は絞ったり,或いは,手指の動きに応じて多様な清掃対象物の汚 れを拭き取るといった布雑巾的な用法で使用可能な」ものを提供する(【0011】)\nというものであることからも,本件各発明における圧縮・加熱の工程を経たメラミ ン系樹脂発泡体が,加熱前のメラミン系樹脂発泡体「よりも柔軟な」ものになった ということは,圧縮・加熱前よりも,容易に折り畳みが可能で,清掃対象面の形態\nに応じて変形することができるようになったことを意味するということができる。 よって,本件各発明における「柔軟な」とは,容易に折り畳んだり,変形させた りできることを意味するものと認めることが相当である。
・・・
圧縮前後のメラミン系樹脂発泡体のサンプル平均を比較すると,甲45試験では, 圧縮前後の荷重の差は2.3Nであり,圧縮後のメラミン系樹脂発泡体の方が圧縮 前のものよりも,約5分の1の力で10mmたわんだとの結果になっている。しか しながら,乙11試験では,メラミン系樹脂発泡体の10mmたわみ時の荷重の圧 縮前後の差は0.06Nで,圧縮後の方がより弱い力でたわんだとの結果になって いるものの,約15%弱い力にすぎず,乙34試験では,その差は0.03Nとさ らに小さく,圧縮後の方が約5%弱い力でたわんだとの結果にとどまる。甲45試 験と,乙11試験,乙34試験の試験結果は,同一の試験機関によるものであると ころ,各試験で用いられた試料の圧縮の程度に差があることを考慮したとしても, 大きく異なるといわざるを得ないが,甲45,乙11,乙34の各報告書中には, これら試験結果に大きな差が生じ得たと考えられるような条件の記載はない。 圧縮後のメラミン系樹脂発泡体における10mmたわみ時荷重の平均値は,甲4 5試験において0.60N,乙11試験において0.41N,乙34試験において 0.62Nで,特に,甲45試験と乙34試験の数値は極めて近い。ところが,圧 縮前のものについての同数値は,乙11試験では0.47N,乙34試験では0. 65Nなのに対し,甲45試験では,2.90Nとされており,乙11,乙34の 各試験結果とは2.0N以上,約4倍の差となっているのであって,圧縮の条件等 による差が考えられない圧縮前の数値についてのみ,このような顕著な差があるこ とについて,合理的に理解することは困難といわざるを得ない。乙34報告書によ れば,厚さ40mmのメラミン系樹脂発泡体を10mmに圧縮したものについての 10mmたわみ時荷重は平均2.8N(サンプル数5)で,甲45試験と極めて近 接した数値となっていることも勘案すると,甲45試験の結果をもって,圧縮後の 方が「柔軟」になったと認定することはできない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成27年(ワ)第9891号

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平成28(ネ)10083  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年5月18日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審は特許権侵害を認め、無効理由無しと判断しましたが、知財高裁(2部)はこれを取り消しました。結論が変わったのは、引用文献の認定により進歩性欠如です。
(1) 相違点の認定について
被控訴人らは,乙1公報には「治療用マーカー」について何らの記載も示唆もな いから,本件発明が「治療用マーカー」であるのに対し,乙1発明は「治療用マー カー」ではない点も相違点として認定すべきである,と主張する。 しかし,前記1(2)ウのとおり,乙1発明は,皮膚用の入れ墨転写シールを含めた 各種用途の転写シールである。乙1公報には,乙1発明の転写シールが治療用マー カーに用いられることは明示されていないものの,皮膚用の入れ墨転写シールの用 途については限定を設けていないから,乙1発明が治療用マーカーではないとはい えない。本件発明と乙1発明との相違点4として,「本件発明が治療用マーカーであ るのに対し,乙1発明では皮膚用の入れ墨転写シールを含めた各種用途の転写シー ルである点」と認定するのが相当である。
(2) 相違点1,2及び4の判断について
被控訴人らは,乙9発明の「台紙」は「基材」と訳されるべきものであり,患者 の皮膚に接触したままにされるから,治療用の目印となるインク層を皮膚に接着さ せた後すぐに皮膚から剥がされることになる本件発明の「基台紙」とは,構造を全\nく異にし,乙1発明に乙9発明を組み合わせたとしても,本件発明との相違点4に 係る構成に想到するのは容易ではなく,また,乙9発明には「基台紙」がないから,\n乙1発明に乙9発明を組み合わせても,インク層と同一のマークを基台紙に印刷す ることを容易に想到できない,と主張する。 しかし,前記1(4)イ,ウのとおり,乙9発明の装置は,被控訴人ら主張のとおり, 「台紙」を患者の皮膚に接触したままにしておく使用方法もあるが,「台紙」が剥が れた場合のことをも想定しており,「台紙」が剥がれた場合には,「台紙」は,本件 発明において同じく皮膚から剥がされる「基台紙」と同様の機能を有するというこ\nとができる。したがって,乙9発明の「substrate」を「台紙」と訳すこ とは誤りとはいえず,また,本件発明との相違点1,2及び4についての容易想到 性についての被控訴人らの上記主張を採用することはできない。 (3) 相違点3の判断について
ア 被控訴人らは,乙1発明は,「水転写タイプ」を含む従来の入れ墨転写シ ールの課題を解決するために,「粘着転写タイプ」のシールを記載したものであって, 「水転写タイプ」を動機付けるものではなく,むしろ「水転写タイプ」を不具合あ るものとして排除している,と主張する。 しかし,乙1文献に明示的に記載されている実施例は「粘着転写タイプ」である ものの,「粘着転写タイプ」と「水転写タイプ」との違いは,セパレーターを取り除 いた後に,転写シールの粘着層をそのまま皮膚に貼り付けるか,転写シールを水で\n湿してから皮膚に押さえ付けるかの点にある(乙3)にすぎないから,乙1文献記 載の従来技術の問題点である「絵柄がひび割れる,剥離が困難」といった点は,水 転写タイプに特有のものとは認められない。また,乙1発明が課題解決の方法とし て採用した特性を持つ透明弾性層が,転写シールの粘着層を皮膚に貼り付ける前に\n水で湿すことによってその効果を発揮しないとか,その他乙1発明を水転写タイプ とすることが技術的に困難である事情は認められない。したがって,乙1発明が水 転写タイプを排除しているとはいえず,被控訴人らの上記主張を採用することはで きない。
イ 被控訴人らは,乙9発明は「基材」そのものが治療用の目印として皮膚 に転写されるから,水転写タイプを想起させるものではない,と主張する。 しかし,前記(2)のとおり,乙9発明の装置は,「台紙」が剥がれた場合のことを 想定しており,「台紙」が剥がれる場合には,「台紙」の皮膚に接着する側に配置さ れた第1インク層が皮膚に転写され,「台紙」は治療用の目印ではなくなり,インク 層のみが皮膚に転写されることとなるところ,水転写タイプもこのような構成を採\n用するものである(乙3)から,被控訴人らの主張を採用することはできない。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成26年(ワ)第21436号

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平成28(ワ)298等  特許権侵害差止等請求事件,債務不存在確認等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年4月20日  大阪地方裁判所(21民)

 特許権侵害事件で、新規性喪失の例外主張における証明書では提出されていなかった証拠がある(関連したものでない)として、無効(特104-3)と判断されました。商品形態模倣(不競法2条1項3号)も否定されました。よって、取引先への告知は、営業誹謗行為(不競法2条1項15号)が成立すると判断されました。
 1 争点2(本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものか)について
(1) 証拠(乙2の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,本件発明の実施品で ある原告製品は,本件発明の原出願である実用新案の出願日(平成26年11月2 6日)より前である同年9月22日以前に,Q2コープ連合に対して納品され,ま たQ2コープ連合においてそのチラシに掲載されて販売され,さらに同年10月1 0日には,被告において市場で取得された事実が認められるから,本件発明は,出 願前に日本国内において公然実施された (特許法29条1項2号)というべきこと になる。
(2) 上記(1)の事由は,本件特許を特許無効審判により無効とすべき事由となるが, 原告は,本件発明の原出願において原告が行った手続により,特許法30条2項に 定める新規性喪失の例外が認められる旨主張する。 そこで検討するに,特許法30条2項による新規性喪失の例外が認められるため には,同条3項により定める,同法29条1項各号のいずれかに該当するに至った 発明が,同法30条2項の規定を受けることができる発明であることを証明する書 面(以下「証明書」という。)を提出する必要があるところ,証拠(甲3)によれば, 原告は,本件発明の原出願(実願2014−6265,出願日:同年11月26日) の手続において,同年12月2日,実用新案法11条,特許法30条2項に定める 新規性喪失の例外の適用を受けるための証明書を提出した事実が認められる(特許 法46条の2,44条4項の規定により,特許出願と同時に提出されたものとみな される。)。 しかし,同証明書は,公開の事実として,平成26年6月2日,原告を公開者, Q1生活協同組合を販売した場所とし,原告が一般消費者にQ1生活協同組合のチ ラシ記載の「ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ(商品名:「ドラム式洗濯機の毛ゴ ミフィルター」)を販売した事実を記載しているだけであって,上記Q2コープ連合 における販売の事実については記載されていないものである。 この点,原告は,上記Q2コープ連合における販売につき,実質的に同一の原告 製品についての,日本生活協同組合連合会の傘下の生活協同組合を通しての一連の 販売行為であるから,新規性喪失の例外規定の適用を受けるために手続を行った販 売行為と実質的に同一の範疇にある密接に関連するものであり,原告が提出した上 記証明書により要件を満たし,特許法30条2項の適用を受ける旨主張する。 しかし,同項が,新規性喪失の例外を認める手続として特に定められたものであ ることからすると,権利者の行為に起因して公開された発明が複数存在するような 場合には,本来,それぞれにつき同項の適用を受ける手続を行う必要があるが,手 続を行った発明の公開行為と実質的に同一とみることができるような密接に関連す る公開行為によって公開された場合については,別個の手続を要することなく同項 の適用を受けることができるものと解するのが相当であるところ,これにより本件 についてみると,証拠(乙16の1,2)によれば,Q2コープ連合及びQ1生活 協同組合は,いずれも日本生活協同組合連合会の傘下にあるが,それぞれ別個の法 人格を有し,販売地域が異なっているばかりでなく,それぞれが異なる商品を取り 扱っていることが認められる。すなわち,上記証明書に記載された原告のQ1生活 協同組合における販売行為とQ2コープ連合における販売行為とは,実質的に同一 の販売行為とみることができるような密接に関連するものであるということはでき ず,そうであれば,同項により上記Q1生活協同組合における販売行為についての 証明書に記載されたものとみることはできないことになる。
・・・・
上記検討した両製品において同一といえる形態的特徴のうち,本体部の形態 が長方形であるという点は,ドラム式洗濯機のリントフィルタに装着して用いる商 品である原告製品及び被告製品にとっては,リントフィルタの内面に沿って装着す るために必然的にもたらされる形態であるといえ,したがってこれは,その機能を\n確保するために不可欠なことであると認められる。また,もう一つの同一といえる 形態的特徴である本体部にスリットが存在するという点も,本件発明の効果をもた らすことに直接関係した形態であることからすると(上記第2の2(2)(10)),これも 両製品に共通する機能を確保するために不可欠な形態であるといえる。\nしたがって,これらの基本的形態で両製品の形態の同一性が認められたとしても, これによって両製品の形態が実質的に同一ということはできないというべきである (なお被告は,これらの形態の特徴をとらえて原告製品はありふた形態であって保 護されないと主張するが,原告製品が市販される以前に,同種の製品が市場に存し た事実は認められないから,商品の形態がありふれていることで保護されないわけ ではなく,機能確保に不可欠な形態として保護の限界が検討されるべきである。)。\n他方,上記検討したとおり,原告製品と被告製品は,機能確保のため必要とされ\nる形態的特徴以外の部分の細部における特徴的な形態というべき部分において形態 の差異が多数あるというのであるから,両製品の形態が酷似しているとはおよそい えず,結局,原告製品と被告製品は形態が実質的に同一であるとはいえないという べきである。
(5) これに対して原告は,両製品は主として通信販売されており,需要者が商品 を手に取って詳細に観察することがなければ両者の違いを認識し得ないから,両製 品の形態の差異は微細な差異で形態が実質的に同一であるということを妨げないよ うに主張するが,不正競争防止法2条4項に「商品の形態」は「需要者が通常の用 法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の 形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう。」と定義されてい ることに明らかなように,本件で問題とすべき原告製品及び被告製品の形態とは, 上記検討したような包装袋から取り出された商品そのものの形態であって,これと 異なる前提に立つ原告の主張は失当である。 さらに,原告は,両製品の包装におけるチラシが共通することも指摘するが,原 告製品及び被告製品は,包装と一体となって切り離し得ないものではないから,原 告が指摘する包装のチラシは「商品の形態」とはいえず,原告の指摘は当たらない。
(6) 以上からすると,原告製品と被告製品とは,その形態が実質的に同一とはい えないから,被告製品は原告製品を模倣した商品とはいえず,被告が不正競争防止 法2条1項3号の不正競争をしたことを前提とする原告の請求はその余の判断に及 ぶまでもなく理由がない。
・・・・
(1) 原告は,平成27年6月11日頃,被告の取引先であるP1に対し,被告製 品は原告製品の形態を模倣した商品であり被告製品を販売する行為は不正競争防止 法2条1項3号に該当するとして,被告製品の販売の停止及び廃棄を求める内容を 記載した「申入書」と題する書面を内容証明郵便で送付している(本件告知行為)。\n上記2のとおり,被告製品は原告製品の模倣商品でないから,上記「申入書」の\n記載内容は虚偽の事実であるとともに,被告の営業上の信用を害する事実であると いうべきである。そして,原告と被告は競争関係にあるから,本件告知行為は,「競 争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知」する行為といえ,不 正競争防止法2条1項15号所定の不正競争に該当する。
(2) そのほか被告は,原告がした不正競争防止法2条1項15号該当の不正競争 行為として,原告が生活協同組合に対して被告の権利侵害の事実を理由として被告 製品の取扱いをすべきでない旨申し入れた旨主張する。\n確かに証拠(乙14の1ないし3,乙15,乙30)によれば,被告は,P2か ら被告製品の販売を中止された事実,及び,P2が被告に対し,被告製品の販売を 中止する理由として,原告の営業担当者から被告製品の販売企画を中止した方がよ いとの要望を受けたという生活協同組合のバイヤーから,そのことを理由に被告製 品の差替えの要望を受けたことを挙げていたことが認められる。 したがって,これらの事実によれば,P2における被告製品の販売中止が,原告 の営業担当の従業員がもたらした行為に起因することが認められそうであるが,前 掲証拠によれば,原告の営業担当者が生活協同組合のバイヤーに伝えた内容という のは「企画を中止した方が良い的な要望」というにとどまるというのであって,そ れだけでは原告が被告の権利を侵害したといった虚偽の事実が告知されたと認める に足りないものである。また,そもそも原告の営業担当の従業員が何らかの接触を したという生活協同組合のバイヤーは,どの生活協同組合であるかを含めて特定さ れておらず,その生活協同組合のバイヤーが実際に原告の営業担当の従業員から直 接働きかけを受けたのかを確かめようがないものである。これらのことからすれば, 原告の営業担当者の行為に起因してP2が被告製品の販売を中止したとしても,そ れをもって原告の不正競争行為を認定することは困難であるといわなければならな い。
(3) したがって,被告主張に係る原告がした不正競争防止法2条1項15号該当 の不正競争については,原告が,平成27年6月11日頃,被告の取引先であるP 1に対し,被告製品は原告製品の形態を模倣した商品であり被告製品を販売する行 為は不正競争防止法2条1項3号に該当する旨記載した「申入書」と題する書面を\n内容証明郵便で送付した事実の限度で認めるのが相当であって,それ以外の生活協 同組合に対する関係では同号の不正競争のみならず不法行為を構成する事実は認め\nられない。

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平成27(受)1876  不正競争防止法による差止等請求本訴,商標権侵害行為差止等請求反訴事件 平成29年2月28日  最高裁判所第三小法廷  判決  その他  福岡高等裁判所

 商標権に関する部分が興味深いです。周知商標に基づく無効審判請求(4条1項10号)は、5年の除斥期間があります(商47条)。よって、侵害訴訟において5年経過すると、無効抗弁(特104条の3)ができないかが論点となります。 最高裁は、原則、無効主張できないが、周知にした本人は除かれると判断しました。ただ、本件の場合、不正競争防止法における周知認定を誤っていると判断されていますので、そもそも、周知でないとの判断となるかもしれません。
 そして,商標法39条において準用される特許法104条の3第1項の規定(以下「本件規定」という。)によれば,商標権侵害訴訟において,商標登録が無効審判により無効にされるべきものと認められるときは,商標権者は相手方に対しその権利を行使することができないとされているところ,上記のとおり商標権の設定登録の日から5年を経過した後は商標法47条1項の規定により同法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判を請求することができないのであるから,この無効審判が請求されないまま上記の期間を経過した後に商標権侵害訴訟の相手方が商標登録の無効理由の存在を主張しても,同訴訟において商標登録が無効審判により無効にされるべきものと認める余地はない。また,上記の期間経過後であっても商標権侵害訴訟において商標法4条1項10号該当を理由として本件規定に係る抗弁を主張し得ることとすると,商標権者は,商標権侵害訴訟を提起しても,相手方からそのような抗弁を主張されることによって自らの権利を行使することができなくなり,商標登録がされたことによる既存の継続的な状態を保護するものとした同法47条1項の上記趣旨が没却されることとなる。 そうすると,商標法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後においては,当該商標登録が不正競争の目的で受けたものである場合を除き,商標権侵害訴訟の相手方は,その登録商標が同号に該当することによる商標登録の無効理由の存在をもって,本件規定に係る抗弁を主張することが許されないと解するのが相当である。
・・・・
そこで,商標権侵害訴訟の相手方は,自己の業務に係る商品等を表示するものとして認識されている商標との関係で登録商標が商標法4条1項10号に該当することを理由として,自己に対する商標権の行使が権利の濫用に当たることを抗弁として主張することができるものと解されるところ,かかる抗弁については,商標権の設定登録の日から5年を経過したために本件規定に係る抗弁を主張し得なくなった後においても主張することができるものとしても,同法47条1項の上記(ア)の趣旨を没却するものとはいえない。 したがって,商標法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求 されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後であっても,当該商標登 録が不正競争の目的で受けたものであるか否かにかかわらず,商標権侵害訴訟の相 手方は,その登録商標が自己の業務に係る商品等を表示するものとして当該商標登\n録の出願時において需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標 であるために同号に該当することを理由として,自己に対する商標権の行使が権利 の濫用に当たることを抗弁として主張することが許されると解するのが相当であ る。そして,本件における被上告人の主張は,本件各登録商標が被上告人の業務に 係る商品を表示するものとして商標登録の出願時において需要者の間に広く認識さ\nれている商標又はこれに類似する商標であるために商標法4条1項10号に該当す ることを理由として,被上告人に対する本件各商標権の行使が許されない旨をいう ものであるから,上記のような権利濫用の抗弁の主張を含むものと解される。

◆判決本文

原審はアップされていません。

◆関連判決(商標登録無効審判の取消訴訟)はこちらです。平成27年(行ケ)第10083号

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平成28(ネ)10010  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年12月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(第4部)は、サポート要件違反として無効とした原審を維持しました。
 以上のとおり,Crの濃度変動があるか否か不明であるだけではなく,さらに, その濃度変動の程度も何ら特定されていない球形の合金相(B)を含むターゲット は,当業者が本件発明2の課題を解決できると認識できる範囲のものということは できないから,Crの濃度変動の有無及びその程度を何ら特定しない球形の合金相 (B)を含む特許請求の範囲請求項2に記載された本件発明2は,発明の詳細な 説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題 を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。また,このような球形 の合金相(B)を含むターゲットが,当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明 の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということもできない。 したがって,本件発明2に係る請求項2の記載は,サポート要件を満たしている とはいえないから,本件発明2に係る特許は特許無効審判により無効にされるべき ものと認められる。

◆判決本文

関連事件です。こちらでは、請求項4はサポート要件を満たしていると判断されています。

◆平成27(行ケ)10261

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平成27(ワ)5869  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年11月8日  大阪地方裁判所

 特許発明について、出願前に公然実施されたとして104条の3で権利行使できないと判断されました。均等侵害についても争われてましたが、そちらは判断されませんでした。
 そこで,さらに上記使用が,特許法29条1項25)の「公然実施をされた」 といえるか検討するに,「公然実施をされた」というためには,発明の内容を秘密 にする義務を負わない人が発明内容を知り得る状態で使用等の実施行為が行われた ことが必要である。 しかるところ,公然実施の対象となるOBネットユニットは,小浜製鋼株式会社 によって製造され市販されていた商品にすぎないし,また証拠(乙1)からうかが われる両護岸工事の実施状況や工事内容,工事場所が公共の場であることなどから すれば,OBネットユニットの設置作業に従事した現場作業員が,OBネットユニ ットの構造について小浜製鋼株式会社から守秘義務を課せられていたことをうかが\nわせる事情はなく,かえって,工事使用前に,その構造を確認する機会も十\分あっ たものと認められるから,OBネットユニットの本件発明の構成要件D,E,Fを\n除く構成要件は,それら工事関係者に十\分認識されていたといえる。 そして,前記(3)で認定したとおり,そのOBネットユニットが,両護岸工事に おいて本件発明の構成要件D,E,Fを充足する態様で使用されたというのである\nが,その工事現場には,上記のとおりOBネットユニットの構成を確認した工事関\n係者が立ち会って,その使用態様を現認したものと推認できるから(なお,構成要\n件Eを充足する使用対象事態を撮影した写真は僅かであるが,その使用態様が特殊 なものとはいえない以上,両護岸工事現場で写真として記録が残っていないOBネ ットユニットであっても,多くは同様の態様で使用され,工事関係者らによって, その使用態様が現認されていたものと推認できる。),これらにより,本件発明は, 公然と実施されたものと認めて差し支えないというべきである。 なお,原告は,上記の認識の限度であれば,本件発明の構成要件Aの「式3≦N\n/M≦20」の数値限定,あるいは構成要件Eの「25%〜80%」の数値限定が\n認識されないと主張するが,公然実施されたOBネットユニットの使用態様が上記 限定された数値内,すなわち本件発明の下位概念に一致するのであれば,これをも って本件発明が公然実施されたといって差し支えないから,この点についての原告 の主張は失当である。
(5) したがって,本件発明は,特許法29条1項25)により特許を受けることが できないものに当たり,本件特許は,特許無効審判により無効とされるべきもので あるから,同法104条の3第1項により原告が本件特許権を行使することはでき ないというべきである。
(6) なお,原告は,上記認定に用いた各証拠(乙1,乙2,乙23)の信用性に ついて争っているのでこの点について付言するに,まず上掲の証拠によれば,両護 岸工事の行われた時期及び場所そのものは確実に認定できる事実であると認められ る上,原告の指摘にかかわらず,その後に同じ場所で同種の工事が行われた事実は 認められないから,被告が,本件訴訟提起後において両護岸工事が実施された現場 で確認したOBネットユニット(乙2,乙23)は,本件特許出願前にされた両護 岸工事において使用されたものであることは明らかである。 そして,これに中詰め材を充填して釣り上げた状況(上篠崎護岸工事につき乙1 別紙7−11,高谷護岸工事につき乙1別紙4−16A)についても,これら写真 の撮影時が両護岸工事の最中であることは,各写真の遠景に写り込んでいる建造物 等の位置関係から明らかであるから,これらにより上記(2),(3)のとおり十分認定\nできるものであり,これに反する原告の主張は失当である。

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平成28(ネ)10027  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年11月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審判決の後に訂正審判を請求し、独立特許要件ありとして認められましたが、知財高裁は引用文献の認定を誤っているとして、進歩性なしと判断しました。なお、本件においては、訂正の抗弁について、時機に後れた抗弁とは認定されませんでした。
 事案に鑑み,被控訴人が主張する本件各訂正発明に係る特許の無効理由の うち,乙16発明に基づく新規性及び進歩性欠如について,以下判断する(な お,控訴人ら 被控訴人主張の抗弁につき,時機に後れた攻撃防御方法として却下すべき旨を述べるが,少なくとも,これらの主張 が「訴訟の完結を遅延させる」ものでないことは明らかであるから,時機に後れた攻撃防御方法としての却下はしないこととする。)。
・・・
 このように,乙16文献には,ユーザによって選択された商品を表示\nする際に,「はこだてビールオリジナルギフトセット」というジャンル の表題の下に,「はこだてビールギフトAセット」,「はこだてビールギ\nフトBセット」等の複数の商品の商品名,価格,写真が一覧表示された\nWebページ画像( のページ)が表示されることが記載されて\nいるのであるから,選択された商品情報の表示の際に,店舗カテゴリを\n示す情報と店舗カテゴリに分類される商品を示す情報を表示することが\n記載されているものといえるのであって,控訴人らの上記主張は,その 前提において理由がない。 なお,本件訂正を認めた訂正2016−390052事件に係る審決 (甲70)は,本件訂正発明1について独立特許要件の有無を判断する に当たり,乙16文献の記載について,上記と異なる認定(控訴人ら主 張のとおりの認定)をしているが,乙16文献の記載からは、上記で述 べたとおりのことが読み取れるというべきであるから,上記審決の認定 は是認できない。

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◆1審はこちらです。平成26(ワ)25282

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平成28(ワ)15355  特許権侵害に基づく損害賠償請求事件  民事訴訟 平成28年10月31日  東京地方裁判所

 「緩衝剤」の文言について、技術的見地、明細書の記載、先行技術などから判断し、技術的範囲に属しないと判断されました。
a 以上のとおり,本件明細書が,「オキサリプラチンの従来既知の水性組成物」 を従来技術として開示し,これよりも,本件発明1の組成物は「生成される不純物, 例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオDACHプラチン二量体が少ない ことを意味する。」と記載していること,解離シュウ酸は,オキサリプラチンが溶 液中で分解することにより,ジアクオDACHプラチンと対になって生成されるも のであること,本件発明1の発明特定事項として構成要件1Gが限定する緩衝剤の\nモル濃度の範囲に関する具体的な技術的裏付けを伴う数値の例として,本件明細書 は,添加されたシュウ酸又はシュウ酸ナトリウムの数値のみを記載し,解離シュウ 酸のモル濃度を何ら記載していないこと,本件明細書には,専ら,「緩衝剤」を外 部から添加する実施例のみが開示されていると解されること,請求項1は,「シュ ウ酸」と「そのアルカリ金属塩」とを区別して記載し,さらには「緩衝『剤』」と いう用語を用いていることなどをすべて整合的に説明しようとすれば,本件発明1 における「緩衝剤」は,外部から添加されるものに限られるものと解釈せざるを得 ない。
すなわち,本件発明1は,専ら,オキサリプラチン水溶液に,緩衝剤として,シ ュウ酸又はそのアルカリ金属塩を添加(外部から付加)することにより,オキサリ プラチン溶液中のシュウ酸濃度を人為的に増加させ,平衡に関係している物質の濃 度が増加すると,当該物質の濃度が減少する方向に平衡が移動するという原理(ル シャトリエの原理)に従い,結果として,オキサリプラチン溶液中におけるジアク オDACHプラチン及びジアクオDACHプラチン二量体などの望ましくない不純 物の量を,シュウ酸又はそのアルカリ金属塩を添加(外部から付加)しない場合よ りも,減少させることを目した発明と把握するべきであり,そのように把握するこ とにより,初めて,本件明細書の段落【0031】が「本発明の組成物は,オキサ リプラチンの従来既知の水性組成物よりも製造工程中に安定であることが判明して おり,このことは,オキサリプラチンの従来既知の水性組成物の場合よりも本発明 の組成物中に生成される不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオ DACHプラチン二量体が少ないことを意味する。」と記載していることや,本件 明細書には,シュウ酸又はシュウ酸ナトリウムを,構成要件1Gが規定する数値の\nモル濃度だけ,オキサリプラチン溶液に「添加」する実施例のみが開示されている こと,さらには,本件明細書に開示された実施例において,解離シュウ酸の量を明 記していないことや,他の不純物の量から解離シュウ酸の量を推計することを示唆 する記載すらないことなどを整合的に説明できるのである。 また,オキサリプラチン溶液に,緩衝剤として,シュウ酸又はそのアルカリ金属 塩を添加(外部から付加)して得られたオキサリプラチン溶液組成物は,これを添 加しないオキサリプラチンの従来既知の水性組成物よりも,ジアクオDACHプラ チン及びジアクオDACHプラチン二量体などの望ましくない不純物の量が減少す るから,客観的構成において異なる(すなわち,「物」として異なる。)ことにな\nるということもできる。
b 他方で,仮に,本件発明1を上記のように解することなく,原告らが主張す るように,解離シュウ酸であってもジアクオDACHプラチン及びジアクオDAC Hプラチン二量体の生成を防止し又は遅延させているとみなすというのであれば, 本件発明1は,本件優先日時点において公知のオキサリプラチン溶液が生来的に有 している性質(すなわち,オキサリプラチン溶液が可逆反応しており,シュウ酸イ オンが平衡に関係している物質であるという,当業者には自明ともいうべき事象) を単に記述するとともに,当該溶液中の解離シュウ酸濃度として,ごく通常の値を 含む範囲を特定したものにすぎず,新規性及び進歩性を見いだし難い発明というべ きである。すなわち,本件優先日時点において,例えば,濃度が5mg/mLのオ キサリプラチン水溶液が公知であった(乙1の1)。そして,当該水溶液中のオキ サリプラチンが分解して解離シュウ酸が生成されることは,その生来的な性質であ り(本件明細書の段落【0013】ないし同【0016】参照),シュウ酸が平衡 に関係している物質であることも同様であるところ,種々の条件下である程度の期 間保存された濃度5mg/mLのオキサリプラチン水溶液中には,解離シュウ酸が 存在し,その量が,5x10−5M以上となることが多いことが,乙13の3試験,甲2 0試験(「5x10−5M」として,有効数字を1桁とする以上,「4.86x10−5M」又は 「4.94x10−5M」も,「5x10−5M」とみて差し支えない〔乙12参照〕。),乙3 2試験及び乙37試験の各結果から,さらには,本件特許権に係る原告デビオファ ームの延長登録出願の願書(乙33)の記載から認められる(なお,上記認定は, 上記各試験が乙1の1実施例の追試として妥当であるか否かはともかく,少なくと も,公知の組成物である濃度5mg/mLのオキサリプラチン水溶液において,解 離シュウ酸のモル濃度が5x10−5M以上となることは,ごく通常のことであると認め るのが相当であることを指摘したものである。)。そうすると,公知の組成物であ るオキサリプラチン水溶液中に存在し,同水溶液の平衡に関係している物質である シュウ酸イオン(解離シュウ酸)に,「平衡に関係している」という理由で「緩衝 剤」という名を付け,上記のとおり通常存在しうる程度のモル濃度を数値範囲とし て規定したにとどまる発明は,公知の組成物と実質的に同一の物にすぎない新規性 を欠く発明か,少なくとも当業者にとって自明の事項を発明特定事項として加えた にすぎない進歩性を欠く発明というほかはない。
c したがって,本件発明にいう「緩衝剤」には,オキサリプラチンが溶媒中で 分解して生じたシュウ酸イオン(解離シュウ酸)は含まれないと解するのが相当で ある。

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平成25(ワ)3167等  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年8月31日  東京地方裁判所

公知技術と同一であるので新規性なし、さらにサポート要件違反もあるとして、被侵害と判断されました。訂正の再抗弁も否定されました。
 これを本件についてみると,原告の主張によれば,本件発明の構成要件C\n及びDの「上部,下部,左(右)側部」とは「上部,下部又は左(右)側 部」を意味するのであり,左右側面部の裏面において一過性の粘着剤が塗布 される位置を,当該分離して使用するものの上部,下部又は左(右)側部の 内側のいずれか及び上部,下部又は左(右)側部の外側に該当する部分のい ずれかであればよいというのである。 これに対し,本件明細書等の発明の詳細な説明の欄には,一過性の粘着剤 を塗布する部分の具体例として,分離して使用するもの4と中央面部1の上 部境界,下部境界,左側部(右側部)境界の各境界の内側近傍と外側近傍に 接着剤を塗布したものしか記載されていない。そのため,特許請求の範囲に 記載された発明は,発明の詳細な説明及び図面に記載されたものより広い。 しかるに,このように,本件明細書等の発明の詳細な説明の欄を超えて, 一過性の粘着剤が塗布される位置を原告の上記主張のとおりでよいとすると, このうちどの部分に粘着剤を塗布すれば「葉書,チケット,クーポン券等の 分離して使用するものを広告等の印刷物より切り取る必要がなく,かつその 周囲に切り込みが入っているにもかかわらず,広告等の印刷物に付いていて 紛失させることなく,しかも手間がかからず葉書,チケット,クーポン券等 の分離して使用するものを利用することが出来る印刷物を提供すること」 (本件明細書等の段落【0006】)という本件発明の課題を解決すること ができ,また「印刷物に付いている葉書,チケット,クーポン券等を切り取 ろうとする意思を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にすることにな る。」(同段落【0012】)の作用効果を奏することになるのか,必ずし も明らかとはいえない(乙B11及び乙B12も参照)。 したがって,当業者において,本件発明の課題解決手段や,発明を理解す るための技術的事項が,発明の詳細な説明に記載されているものとはいい難 い。
(3) 以上によれば,本件発明は特許法36条6項1号に規定するサポート要件 を充たしていないから,本件特許は同法123条1項4号により特許無効審 判により無効にされるべきものである。
・・・・
以上によれば,乙B1文献には引用発明1'が記載されており,このうち 「情報記録体」の具体例として「レスポンス用葉書」が記載されているに等 しく,引用発明1'は本件訂正発明の構成要件A\ないしI\の全てを備えて\nいるから,引用発明1’は本件訂正発明と同一である。なお,この点に関し て原告は,引用発明1'と本件訂正発明はさらに相違点があると主張するが (相違点1−1及び1−2),前記2(4)の争点(3)ア(無効理由1)におい て説示したところに照らし,いずれも採用することができない。 そうすると,本件訂正発明は引用発明1'と同一であって,なお新規性を 欠くものであるから,本件訂正に係る原告の再抗弁は,前記(1)で説示した 3)の要件を充たしていないというほかない。

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平成27(ワ)23129  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年8月30日  東京地方裁判所

特許の技術的範囲に属するとしたものの、進歩性なしとして権利公使不能と判断しました。特許庁審決では特許有効と判断されていますので、ニュースでも取り上げられていました。
 そこで判断するに,まず,上記1)及び2)については,前記イで説示した とおり,安定性は化粧品の製造工程において常に問題とされる化粧品の品 質特性であり,pHの調整が安定化のための一般的な手法であることから すれば,乙6ウェブページに掲載されている成分リストが販売開始から間 もない原告旧製品のものであるとしても,当業者が化粧品の安定性の確 保,向上という課題を全く認識しないということはできないし,pHの調 整という手法を採用することが困難であったということもできない。 次に,上記3)については,原告は乙6発明のpHが7.9〜8.3であ ることを前提にこれを酸性側に変更することの阻害要因を主張するが,そ のような前提を採ることができないことは前記(1)イのとおりである。こ の点をおくとしても,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件特許の出 願当時,a)リン酸アスコルビルマグネシウム単体の水溶液については, pHが8〜9の弱アルカリ性の領域においては安定とされていたが,pH が中性〜酸性の範囲においては安定性に問題があるとされていたこと(甲 30〜32,50〜55),b)リン酸アスコルビルマグネシウムを含む化 粧料について,弱酸性における安定性を改善する手法が検討されており (甲31,50〜52,61,乙10の2,25),実際にリン酸アスコ ルビルマグネシウムを含有する弱酸性の化粧品が販売されていたこと(乙 28,29)が認められる。これら事実関係によれば,リン酸アスコルビ ルマグネシウムに加え他の成分を含む化粧品については,弱酸性下におけ る安定性の改善が試みられており,現に製品としても販売されていたので あるから,原告が主張するリン酸アスコルビルマグネシウム単体の水溶液 が酸性下においてその安定性に問題があるという事情は,乙6発明の美容 液のpHを弱酸性の範囲に調整することの阻害要因とならないと解する のが相当である。 上記4)については,前記イで説示したとおり,pHの調整が化粧品の安 定性を高めるための手法として周知であったことからすると,本件発明の 実施例について吸光度の残存率の高さや性状変化の少なさといった経時 安定性の測定結果が良好であったとしても(本件明細書の【表4】〜【表\ 6】),●(省略)●予測し得る範囲を超えた顕著な効果を奏するとは認\nめられない。したがって,原告の上記主張1)〜4)はいずれも採用することができない。
(3) まとめ
以上によれば,本件発明は乙6発明に基づいて容易に発明することができ たものであるから,原告は本件特許権を行使することができない。

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平成28(ネ)10006  債務不存在確認請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年7月13日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 iPhoneなどのタッチパネルの制御発明について、1審と同じく104条の3で権利公使不能と判断されました。無効審判において訂正を行いましたが、その補正も要旨変更と判断されました。登録時の構\成D、訂正請求時の構成D’および訂正請求を補正した後の構\成要件D”については下記の通りです。
登録時の構成D
「前記カウント手段によりカウントされる指示部位の数に加えて,前記距離算出手段により算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化に応じて前記情報処理装置が所定の動作を行うようにする制御手段と,」

訂正請求時の構成D’(削除された部分を< >で,付加された部分を[ ]で示す。)
「<前記カウント手段によりカウントされる指示部位の数に加えて,>前前記距離算出手段により算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化[,及び前記カウント手段により前記一定の時間においてカウントされる指示部位の数又は該数の過渡的な変化]に応じて[,特定の時間において算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化,及び前記特定の時間においてカウントされる指示部位の数又は該数の過渡的な変化に対応した所定の動作から選ばれる所定の動作を,]前記情報処理装置が行うようにする制御手段と,」

訂正請求を補正した後の構成要件D”(削除された部分を< >で示す。)
「前記距離算出手段により算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化,及び前記カウント手段により前記一定の時間においてカウントされる指示部位の数<又は該数の過渡的な変化>に応じて,特定の時間において算出される指示位置の間の距離又は該距離の過渡的な変化,及び前記特定の時間においてカウントされる指示部位の数<又は該数の過渡的な変化>に対応した所定の動作から選ばれる所定の動作を,前記情報処理装置が行うようにする制御手段と」


 マルチタッチパネルシステムにおいて,位置検出手段により検出される2個所の 指示部位の指示位置の間の距離を算出し,算出される指示位置の間の距離又は該距 離の過渡的な変化に応じて所定の動作を行うことは,本件特許の出願前周知の技術 と認められる(甲12の58頁4〜10行目,73頁2〜12行目,甲22の【0 015】〜【0017】【0046】,甲23の【0036】【0037】【図10】 【図11】参照)である。 上記ア(ア)のとおり,甲13発明も2箇所の指示位置の間の距離の相対比又はその 過渡的変化に着目しているものであり,指示位置間の距離又はその過渡的変化を基 礎としているから,甲13発明において,上記周知技術を適用し,その距離算定方 法を構成要件B及Cの距離算定方法に置換することは,当業者が適宜なす程度のことであり,容易に想到できる。
(イ) 控訴人の主張について
控訴人は,相違点1は容易に想到できないと主張するが,相違点B及び相違点C の存在を前提とする主張であり,本件発明1と甲13発明とが,相違点B及び相違 点 C の点で相違するものでないことは,上記アに認定のとおりであるから,その主 張を採用することはできない。
ウ 小括 以上からすれば,本件発明1は,甲13発明及び周知技術に基いて,当業者が容 易に発明することができる。そうすると,本件発明1に係る特許は,特許無効審判 により無効にされるべきものと認められる。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成26年(ワ)第371号

◆関連の無効審判事件です。平成27(行ケ)10185

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平成27(ネ)10091  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年6月1日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 1審よりも高額の損害賠償が認められました。
(ア) 一審被告は,1)被告製品は,1種類の正・逆転パターンの制御しかできず, 正転角度と逆転角度を均衡にしたときのみが本件特許権の侵害となるにすぎないこ と,2)被告製品は,納品時は正転60秒,逆転60秒にセットされており,この状 態では,ブリッジ現象が生じることが明らかであり,本件特許発明1及び2の作用 効果を奏しないこと,3)被告製品の正転タイマ及び逆転タイマによる正逆転制御(1 種類のパターンでの制御)では,本件特許発明1及び2は,進歩性を欠くこと,4) 被告製品の制御は,本件特許発明の作用効果を考慮したとき,本件特許発明とは全 く別異であり,実施は不可能であるものの形式的には本件特許の請求項の制御を実\n施し得る場合が考えられるというにすぎないことを考慮すれば,被告製品における 侵害部分が,購買者の需要を喚起するということはあり得ないから,本件特許発明 1及び2の寄与率が30%を超えることはない旨主張する。
(イ) 1の点について
本件特許発明1の「正・逆転パターンの繰り返し駆動」は,前記2(3)のとおり, 単なる右回転又は左回転ではなく,右回転と左回転の組合せを1パターンとして, 1種ないし複数種類のパターンを繰り返す駆動であって,1パターン内の右回転と 左回転は均衡した回転角度とされているものを意味するものと解される。被告製品 が1種類の正・逆転パターンの制御しかできないものであったとしても,結局,被 告製品は,本件特許発明1及び2を充足するような使用方法が可能である。他方,\n被告製品に本件特許発明の効果以外の特徴があり,その特徴に購買者の需要喚起力 があるという事情が立証されていない以上,寄与率なる概念によって損害を減額す ることはできないし,特許法102条1項ただし書に該当する事情であるというこ ともできない。
(ウ) 2)の点について
仮に,被告製品の納品時におけるタイマセットの状態のままでは,本件特許発明 1及び2のブリッジ現象の発生の防止という作用効果を奏しないとしても,被告製 品は,前記2(3)のとおり,定期正転時間,定期逆転時間を,それぞれ,0から30 00秒の範囲で,10分の1秒単位で数値により設定することができるものである から,結局,被告製品は,本件特許発明1及び2を充足するような使用方法が可能\nである。そして,前記(イ)と同様に,寄与率なる概念によって損害を減額すること はできないし,特許法102条1項ただし書に該当する事情であるということもで きない。
(エ) 3)の点について
1種類の正・逆転パターンでの制御であると,本件特許発明1及び2が進歩性を 欠くとの点については,これを認めるに足りる証拠はない。
(オ) 4)の点について
被告製品の制御が,本件特許発明1の「正・逆転パターンの繰り返し駆動」に相 当するものであることは,前記2(3)のとおりであり,被告製品の制御と本件特許発 明1及び2の制御とが別異のものであるとする一審被告の主張は,その前提を欠く。 ク 小括
以上によれば,特許法102条1項に基づく損害額は,2810万1920円で あると認められる
。 (2) 一審被告が保守作業を行ったことによる損害
一審原告は,一審被告は被告製品を保守することで,被告製品の譲受人による被 告製品の使用を継続させ,又はこれを容易にさせているということができるから, 譲受人による被告製品の使用につき,その行為の幇助者として共同不法行為責任に 基づき,損害賠償責任を負う旨主張する。 しかし,一審原告の上記主張は,幇助の対象となる使用行為を具体的に特定して 主張するものではないから,失当である上,一審被告が,被告製品について具体的 に保守行為を行ったことを認めるに足りる証拠はない。また,被告製品の使用によ り一審原告が被った損害(逸失利益)は,前記(1)の譲渡による損害において評価さ れ尽くしているものといえ,これとは別に,その後被告製品が使用されたことによ り,一審原告に新たな損害が生じたとの事実については,これを具体的に認めるに 足りる証拠はない。さらに,保守行為によって特許製品を新たに作り出すものと認 められる場合や間接侵害の規定(特許法101条)に該当する場合は格別として, そのような場合でない限り,保守行為自体は特許権侵害行為に該当しないのである から,特許権者である一審原告のみが,保守行為を行うことができるという性質の ものではない。 以上によれば,一審原告の上記主張は理由がない。

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◆1審はこちらです。平成24(ワ)6435

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平成26(ネ)10080等  特許権侵害行為差止等請求控訴事件,同附帯控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年3月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 訂正要件を満たしているのかが争われました。裁判所は、新規事項であると判断しました。
 被控訴人は,本件特許について本件訂正を行ったことに伴い,従前の特許発明に 基づく請求を維持したまま,限定的減縮を行った訂正後の発明に基づいて予備的請\n求を行うところ,特許権者が自らの意思に基づいて訂正請求等を行う以上,特許権 に基づく侵害訴訟においても,これを訂正の再抗弁として位置付けて,訂正後の発 明に基づく請求のみを審理判断すべきものと解されるが,本件では,後記のとおり 訂正発明1に係る訂正自体が不適法であることから,予備的請求1だけでなく主位\n的請求についても審理判断することとする。なお,予備的請求2については,被控\n訴人の主張のとおり,訂正後の請求項4に基づく請求を,訂正の再抗弁として位置 付けて審理判断する。 そして,当裁判所は,主位的請求については,控訴人は本件発明1の技術的範囲 に属する控訴人方法1を使用していると認められる(争点(1)及び(6))が,本件発 明1に係る特許には新規性欠如の無効理由はない(争点(2))ものの,進歩性欠如 の無効理由がある(争点(3))と判断する。また,予備的請求1については,訂正\n発明1に係る本件訂正は不適法であり許容されない(争点(8))上,控訴人が控訴 人方法2を使用しているとは認め難い(争点(9))と判断する。さらに,予備的請\n求2については,控訴人方法3は訂正発明4の技術的範囲に属すると認められる (争点(13))ものの,訂正発明4に係る特許にも進歩性欠如の無効理由がある(争 点(14))と判断する。
・・・
しかしながら,本件明細書には,スピネル型マンガン酸リチウムの製造過程にお いて用いられる電解二酸化マンガンにおけるナトリウム又はカリウムの存在形態, あるいは,「本発明」における製造方法により得られるスピネル型マンガン酸リチ ウムにおけるナトリウム又はカリウムの存在形態を具体的に特定する記載や,これ を示唆する記載は一切見当たらない。 したがって,本件明細書には,「結晶構造中にナトリウムもしくはカリウムを実\n質的に含む」形態を除くスピネル型マンガン酸リチウムについて,少なくとも明示 的な記載はないと認められる。
ウ 「(結晶構造中にナトリウムもしくはカリウムを実質的に含むものを除\nく。)」との事項が,本件明細書の記載から自明な事項であるか否か 次に,「(結晶構造中にナトリウムもしくはカリウムを実質的に含むものを除\nく。)」との事項が,本件明細書の記載から自明な事項であるか,すなわち,本件 出願時の技術常識に照らして,本件明細書に記載されているも同然であると理解す ることができるか否かについて検討する。 (ア) 本件発明1は,電析した二酸化マンガンをナトリウム化合物又はカ リウム化合物で中和し,所定のpH及びナトリウム又はカリウムの含有量とした電 解二酸化マンガンに,リチウム原料と,アルミニウムその他特定の元素のうち少な くとも1種以上の元素で置換されるように当該元素を含む化合物とを加えて混合し, 所定の温度で焼成して作製することを特徴とするスピネル型マンガン酸リチウムの 製造方法であるところ,このような製造方法で製造したスピネル型マンガン酸リチ ウムにおいて,原料として用いられた電解二酸化マンガンの中和に用いられたナト リウム又はカリウムがどのような形態で存在するかについては,本件出願当時,少 なくともこれがLiMn2O4の結晶構造中ではなく,その外側に存在するとの技\n術常識が存在することを認めるに足りる証拠はない。
(イ) 一方,前記5(2)イ(ウ)及び同ウのとおり,乙18文献の記載に照ら して,リチウム二次電池の正極活物質として用いられるLiMn2O4を作製する 際に,ナトリウム,ナトリウム化合物,アンモニウム化合物などの添加剤を混合し て焼成することにより,LiMn2O4の結晶構造中にナトリウムが取り込まれ,\nそれによりマンガンの溶出が抑制されることが知られていたと認められ,また,乙 15文献の記載に照らして,電解二酸化マンガンを水酸化ナトリウムで中和するこ とにより得られた二酸化マンガンは,ナトリウムを含有すること,このような二酸 化マンガンを原料にしてリチウムマンガン複合酸化物を作製すると,二酸化マンガ ン中のナトリウムは,リチウムマンガン複合酸化物中のリチウムイオンの吸蔵放出 サイトに取り込まれることが,広く知られていたと認められる。 そして,本件出願当時,中和剤あるいは添加剤として用いられたナトリウムが, 焼成後のリチウムマンガン複合酸化物やスピネル型マンガン酸リチウムの結晶構造\n中に取り込まれることなく存在する場合があることや,その場合のナトリウムの具 体的な存在形態を示す知見を認めるに足りる証拠はない。
(ウ) これらの事情に加え,ナトリウムを添加剤として添加する場合と, 電解二酸化マンガンの中和に用いる場合とで,焼成時のナトリウムの挙動に差異が あることを示す技術常識が存在すると認めるに足りる証拠はないことに照らせば, スピネル型マンガン酸リチウムの製造工程において用いられる電解二酸化マンガン をナトリウム又はカリウムで中和処理するとの本件明細書の記載に接した当業者は, 中和処理に用いられたナトリウムやカリウムが,焼成後に得られるスピネル型マン ガン酸リチウムの結晶構造中に取り込まれることをごく自然に理解するというべき\nである。これに対し,本件明細書の記載から,本件発明1の製造方法により製造さ れたスピネル型マンガン酸リチウムにおいて,ナトリウムやカリウムがLiMn2 O4の結晶構造中ではなくその外側に存在することを,本件明細書に記載されてい\nるのも同然の事項として理解することは,到底できないというべきである。 さらに,「本発明」におけるスピネル型マンガン酸リチウムの製造の際に用いら れる原料や製造工程の具体的な内容を含む本件明細書の記載を見ても,上記の理解 を否定すべき事情は見当たらない。

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平成26(ワ)25282  損害賠償等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年1月14日  東京地方裁判所

 「電子ショッピングモールシステム」について、新規性なしとして侵害否定されました。興味深いのは、当該動作を行うための構成を有することは、当該動作から明らかと認定した点です。被告は楽天です。原告は訂正審判を請求しましたが、訂正拒絶理由が通知されて最終的には、取り下げています。審査における審査メモには「参考文献には、ユーザが電子ショッピングモールを訪れた当初は共通カテゴリを用いて商品が提示され、ある商品が選択された後にはその商品を販売する店舗が独自に定めた店舗カテゴリを用いて商品が提示される構\成が記載されておらず、一方、本願発明はそれにより、電子ショッピングモール全体としての統一感を保ちつつも、店舗の個性を発揮して他店舗との差別化を図ることができるという顕著な効果を発揮。」とあります。
 ア 乙16文献には次の趣旨の記載がある。(乙16) 楽天市場のオンラインショッピングなら,ジャンルを掘り下げていくだけで目的の商品まで簡単にたどり着くことができる。ここでは北海道・函館の地ビールを検索する。トップページの「商品名で調べる」又は「商品別」をクリックして商品名で探すこともできる。表示されているジャンル名「ドリンク・アルコール類」から開始し,その先は「ビール・地ビール」→「地ビール」→「北海道」とジャンルが絞られていき,その度にそれぞれのジャンルでの検索結果に商品名が表\示される。金額も表示されるので,わざわざ店のホームページにアクセスしなくても商品を選べるのは利点だ。(66頁) 商品別で検索したときも,商品名をクリックすれば,店舗のホームページにアクセスして,その商品の紹介ページが見られる。「はこだてビール」の店舗のホームページには「オリジナルギフトセット」というジャンルがあり,このジャンルの画像や価格,セット名を一覧表示することができたので,その中から商品を選ぶことにした。(68頁)
イ 楽天市場のトップページから順次表示されるものであり,楽天市場の全体\nルギフトセット」のジャンルは,特定の商品を取り扱う店舗のホームページに表示されるものであり,当該店舗が設定した商品分類に基づく店舗カテゴリであると,それぞれ認めることができる。そして,乙16文献に記載されたインターネットショッピングモールに係る発明(乙16発明)においては,ある共通カテゴリが示された場合に・・・のであるから,商品と共通カテゴリ及び店舗カテゴリを示す情報が相互に結び付けられるように記憶されていると認められる。また,ある店舗が取り扱う商品に係る情報から当該店舗独自のカテゴリ及びこれに分類される商品が表\示される(同)のであるから,ある商品がどの店舗カテゴリに属するか,その店舗カテゴリにどの商品が属するかを識別するに足りる情報が記憶されているということができる。
ウ 以上によれば,乙16発明は,本件各発明の前記争いのある各構成をいずれも備えていると認められる。\n

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平成25(ワ)3357  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年12月25日  東京地方裁判所

 サポート要件違反の無効理由ありとして、特許権侵害が否定されました。訂正による解消も認められませんでした。
 特許制度は,明細書に開示された発明を特許として保護するものであり,明細書に開示されていない発明までも特許として保護することは特許制度の趣旨に反することから,特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件が定められたものである。したがって,同号の要件については,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明の欄の記載によって十分に裏付けられ,開示されていることが求められるものであり,同要件に適合するものであるかどうかは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか,すなわち,発明の詳細な説明の記載と当業者の出願時の技術常識に照らし,当該発明における課題とその解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な技術的事項が発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討して判断すべきものと解される。\n(2) これを本件についてみると,本件明細書等においては,「ターゲット組織に含まれる球形の合金相(B)が,中心付近にCrが25mol%以上濃縮し,外周部にかけてCrの含有量が中心部より低くなる組成の合金相を形成していることが有効である。本願発明は,このようなターゲットを提供する。すなわち,このようなターゲットでは,球形の合金相(B)は,中心部と外周部にかけて顕著な不均一性を有している。・・・球形の合金相(B)の存在は,本願発明ターゲットの独特の組織構造を示すものであり,本願ターゲットの漏洩磁束を高める大きな要因となっている。」(段落【0015】),「球形の合金相(B)の存在による漏洩磁束を高めるメカニズムは,必ずしも明確ではないが,・・・球形の合金相(B)には,少なからずCrの濃度が低い領域と高い領域が存在し,このような濃度変動の大きな場所では格子歪みが存在すると考えられる。」(段落【0016】),「第二に,球形の合金相(B)中のCr濃度の高い領域は,析出物として磁壁の移動を妨げていると考えられる。その結果,ターゲットの透磁率が低くなり漏洩磁束が増す。・・・Cr濃度の高い領域の存在が漏洩磁束に影響を与えている可能\性が考えられる。」(段落【0017】),「合金相(B)が球形であると,・・・周囲の金属粉(Co粉,Pt粉など)との拡散が進みにくく,組成不均一な相(B),すなわち中心付近にCrが25mol%以上濃縮し,外周部にかけてCrの含有量が中心部より低くなる組成の合金相が容易に形成されるようになる。」(段落【0018】)と記載され,少なくとも「球形の合金相(B)」中のCr濃度の高い領域の存在が漏洩磁束を高める効果に影響を与えていることが記載されていること,実施例においても,第1の実施例につき,「球形の合金相の部分においてCoとCrの濃度が高くなっており,特にCrは周辺部から中心部に向かって,より濃度が高く(白っぽく)なっている。EPMAの測定結果から球形の合金相では,Crが25mol%以上濃縮されたCrリッチ相が中心付近に存在し,外周に近づくにつれてCrの濃度が低くなっていることが確認された。一方,同図において,球形の合金相の領域では,SiとOについては黒くなっており,この合金相中に殆ど存在していないことが分かる。」(段落【0035】。第2,第3の実施例に関する段落【0043】及び【0051】の記載も同旨〔前記1(1)ウにおける摘記は省略〕)と,第4の実施例につき,「球形の合金相の部分において CoとCrの濃度が高くなっており,特にCrは周辺部から中心部に向かって,より濃度が高くなっていることが確認された。」(段落【0059】。第5ないし第9の実施例に関する段落【0067】,【0075】,【0083】,【0091】及び【0099】の記載も同旨〔前記1(1)ウにおける摘記は省略〕)としており,いずれの実施例においても,上記「球形の合金相(B)」の部分においてCoとCrの濃度が高くなり,Crは周辺部から中心部に向かってより濃度が高くなっているとの態様でしか,漏洩磁束を高める作用効果を奏することが記載されていないことからすれば,当業者において,前記1(2)記載の本件各発明の課題解決手段や,発明を理解するための技術的事項が,発明の詳細な説明に記載されているものとは言い難い。 したがって,本件特許には,サポート要件(特許法36条6項1号)違反の無効理由があるものと認めるのが相当である。
・・・
また,原告は,本件訂正によりサポート要件違反の無効理由が解消する旨も主張する。 しかし,前記6で検討したところから明らかなとおり,本件各訂正発明は,いずれもサポート要件違反の無効理由を解消するものとは認められない。 すなわち,原告は,本件明細書等には「相(A)」の中に「球形の合金相(B)」を含有させることにより,Crの濃度の高い領域と低い領域を作り出すことで,均一な組織と比べて,漏洩磁束を高めることが記載されていると主張するところ,なるほど本件明細書等の段落【0015】ないし【0017】には,漏洩磁束を高めるメカニズムに関する記載はあるものの,本件訂正に係るCr,Coの濃度分布に濃淡があるだけで,スパッタリングターゲットにおいて漏洩磁束を高める理由として記載された,「格子歪み」(段落【0016】)を生じさせ,「磁壁の移動を妨げ・・・母相である強磁性相内の磁気的相互作用を遮断する」(段落【0017】)ことができるものとは認め難く,前記のとおり,本件明細書等の実施例においては,一定の態様でしか効果を奏することが示されていないから,本件各訂正発明においても,依然としてサポート要件違反の無効理由が存するというべきである。

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平成26(ネ)10124  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年12月16日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審は80万円の損害賠償を認めました。1審と同時係属の無効審判(無効2014-800004)では無効理由なしと判断されていました。知財高裁は、1審判断を取り消しました。理由は、本件発明におけるガイド板について文言通り判断し、乙13発明から新規性なしというものです。なお、前記無効審判では乙13発明からの進歩性は争われていませんでした。
 本件特許発明の特許請求の範囲(請求項1)には,「ガイド板」に 関し,「前記本体と可動的に接続されたガイド板」及び「前記本体が 前記ガイド板に対して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃 または前記第2の刃が出る」との記載があるが,「ガイド板」の形状, 大きさ,厚さ,材質などを特定のものに限定する記載はない。また, 「カッター」は,一般に,「切る道具」,すなわち,切断道具を意味 するものであり(広辞苑第六版),本件特許発明の「ガイド板」は, 切断道具である「カッター」を構成する部材である。加えて,一般に,「ガイド」とは「案内すること。手引きすること。」\nなどを意味し,「板」とは「1)材木を薄く平たくひきわったもの。2) 金属や石などを薄く平たくしたもの。」などを意味すること(広辞苑 第六版)を踏まえると,請求項1の記載から,本件特許発明の「ガイ ド板」は,「切断方向を案内するための平たい形状の部材」であるこ とを理解することができる。 次に,本件明細書には,「ガイド板」の語を定義した記載はない。 また,本件明細書には,「ガイド板」に関し,「本体(1)の中に, カッターナイフの刃(2)を設け,シャフト(3)の通ったガイド板 (4)を設ける。」(段落【0005】),「このシートカッターは ノンスリップシートなどの表面の凹凸に,ガイド板(4)を合わせ,シャフト(3)を軸に本体を傾けるだけで,設けてあるカッターナイ\nフの刃(2)が出てくる。後はノンスリップシートなどの凹凸に沿わ せ滑らせるだけで,光の向きや照度に左右される事なく,簡単できれ い,かつ迅速にノンスリップシートなどを切断できる。」(段落【0 006】),「本体(1)の中にカッターナイフの刃(2)を設け, シャフト(3)を軸にスイングするガイド板(4)を設ける。・・これ を使用する時は,ガイド板(4)をノンスリップシートなどの表面の凹凸に合わせ,シャフト(3)を軸にして本体(1)を傾けカッター\nナイフの刃(2)を出す。」(段落【0008】)との記載があるが, 「ガイド板」の形状,大きさ,厚さ,材質などについて具体的に述べ た記載はないし,「ガイド板」がノンスリップシートなどの切断対象 物の切断時に切断対象物等に対してどのように作用するのかに関して, これを特定の態様に限定する記載もない。 さらに,図2及び3には台形の上辺に中央に孔の開いた半円を組み 合わせた形状のガイド板4が示されているが,本件明細書には,「ガ イド板」の形状を図2及び3に示すものに限定する記載はない。 以上の本件特許発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件 明細書の記載によれば,本件特許発明の「ガイド板」(構成要件D)は,「切断方向を案内するための平たい形状の部材」であると認めら\nれる。
b この点に関し,被控訴人は,「ガイド板」の文言及び本件明細書記 載の本件特許発明の効果(第1及び第2の効果)に照らすと,本件特 許発明の「ガイド板」は,「切断面に沿わせて切断方向をガイドする ための板」と解すべきである旨主張する。 しかしながら,前記aのとおり,本件特許発明の特許請求の範囲(請 求項1)及び本件明細書には,「ガイド板」の形状,大きさ,厚さ, 材質などを特定のものに限定する記載はないし,また,本件明細書に は,「ガイド板」が切断対象物の切断時に切断対象物等に対してどの ように作用するのかに関して,これを特定の態様に限定する記載はな く,被控訴人が本件特許発明の第1の効果において主張するような「ガ イド板」が「切断面に沿わせて滑らせることにより切断する方向をリ ードする部材である」ことを示した記載もない。 さらに,被控訴人が主張する本件特許発明の第2の効果は,本件明 細書の段落【0008】記載の「応用例として,壁紙の施工時,入り 隅や枠の凹凸に沿わせ,…壁紙の余計な部分を,地ベラや定規を使用 せず切り取る。」という効果であり,同段落に「応用例として」との 記載があるように,本件特許発明の一実施形態の効果として本件明細 書に示されたものであって,本件特許発明自体の特徴的な効果である ということはできないから,これをもって「ガイド板」の意義を特定 の構成のものに限定して解釈することはできない。以上によれば,本件特許発明の「ガイド板」は,「切断面に沿わせ\nて」切断方向をガイドする構成のものに限定されるものではないというべきであるから,被控訴人の上記主張は,この点において採用する\nことができない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成25(ワ)32665

◆無効審判の審取事件です。平成26(行ケ)10198

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平成26(ネ)10102  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年11月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について、進歩性がないので104条の3により権利できないとした1審判断が維持されました。
 相違点に係る本件発明1の構成は,「危険源評価データ生成手段」が「前\n記演算手段を使用して,前記危険源評価マスターテーブルを参照して,前 記内訳データ生成手段により生成された内訳データに含まれる各要素に基 づき,当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し,該 抽出した危険有害要因および事故型分類を含む危険源評価データを生成す る」(構成要件2−E)というものである。\n本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載には,「危険源評価デ ータ」が抽出した危険有害要因及び事故型分類を含むことのみが特定され ており,その形式や態様等が特定されているわけではないから,「危険源 評価データ」は,抽出した危険有害要因及び事故型分類を含むものであり さえすれば足りるものと解される。 他方,乙5発明において,「内訳データ」に含まれる「要素」である「規 格」に基づき,「危険源評価マスターテーブル」を参照し,「当該要素に 関連する危険有害要因及び事故型分類」(「安全管理情報」)を抽出して いることは,前記(4)オ認定のとおりである。 そして,乙5発明において,上記抽出した「安全管理情報」を利用する ためにこれをデータとして出力し,「危険有害要因及び事故型分類を含む 危険源評価データ」を「生成」するように構成することは,当業者であれ\nば格別の困難なく行うことができたことが認められる。 したがって,乙5に接した当業者であれば,相違点に係る本件発明の構\n成(構成要件2−Eの構\成)を容易に想到することができたものと認めら れる。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成25(ワ)19768

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平成27(ネ)10075  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年11月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 冒認であるとして無効とした原審の認定について、知財高裁はこれを維持しました。被控訴人はアップルです。
 発明者とは,当該発明の特徴的部分,すなわち,特許請求の範囲に記載 された発明の構成のうち,従来技術には見られない部分の完成に創作的に\n寄与した者であると解すべきところ,本件発明において,従来技術には見 られない部分は構成要件Eのみであり,構\成要件FないしHの構成は本件\n出願前の公知技術にすぎないから(後記イないしエ参照),本件発明の特 徴的部分は,構成要件Eの構\成のみである。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成25(ワ)14849

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平成27(ワ)1025  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年10月29日  東京地方裁判所

 サントリーVSアサヒのノンアルコールビールについての特許権侵害事件です。成分を特定した特許について、進歩性なしとして無効(特104条の3)と判断されました。 請求項は「エキス分の総量が0.5重量%以上2.0重量%以下であるノンアルコールのビールテイスト飲料であって,pHが3.0以上4.5以下であり,糖質の含量が0.5g/100ml以下である,前記飲料。」です。
 公然実施発明1は,本件特許の優先日当時,我が国におけるノンアルコールのビールテイスト飲料の中で販売金額が最も大きかったが,その一方で,消費者から,コク(飲み応え)がない,物足りない,味が薄いといった評価を受けていた。(乙10,34〜36) ノンアルコールのビールテイスト飲料については,本件特許の優先日以前から,濃厚感,旨味感,モルト感,ボリューム感やコク感を欠くという問題点が指摘されており,これらを解消して飲み応えを向上させるため,穀物の摩砕物にプロテアーゼ処理を施して得られる風味付与剤,麦芽溶液を抽出して得られる香味改善剤又は香料組成物,植物性タンパク分解物や麦芽抽出物,麦芽エキス,清酒由来のエキスを用いる風味向上剤,茶葉の水又はエタノール抽出物といった添加物を用いる技術が周知となっていた。(乙14〜16,25〜27) 本件明細書におけるエキス分の総量とは,アルコール度数が0.005%未満の飲料の場合,脱ガスしたサンプルをビール酒造組合国際技術委員会(BOCJ)が定めるビール分析法に従って測定したエキス値(重量%をいう(段落0022)。上記(イ)の風味付与材料等はいずれもこの方法の測定対象となるエキス分に当たる。(甲2,乙2)
上記事実関係によれば,公然実施発明1に接した当業者において飲み応えが乏しいとの問題があると認識することが明らかであり,これを改善するための手段として,エキス分の添加という方法を採用することは容易であったと認められる。そして,その添加によりエキス分の総量は当然に増加するところ,公然実施発明1の0.39重量%を0.5重量%以上とすることが困難であるとはうかがわれない。そうすると,相違点に係る本件発明の構成は当業者であれば容易に想到し得る事項であると解すべきである。\nなお,飲料中のエキス分の総量を増加させた場合にはpH及び糖質の含量が変化すると考えられるが,エキス分には糖質由来のものとそれ以外のものがあり(本件明細書の段落【0020】,【0033】参照),pHにも多様のものがあると解されることに照らすと,公然実施発明1にエキス分を適宜(例えば,非糖質由来で酸性又は中性のものを)加えてその総量を0.5重量以上としつつ,pH及び糖質の含量を公然実施発明1と同 程度のもの(本件発明の特許請求の範囲に記載の各数値範囲を超えないもの)とすることに困難性はないと解される。

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平成26(ワ)688  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年7月31日  東京地方裁判所

 争点の一つが、分割要件違反かです。東京地裁は、薬剤の特許について分割要件を満たさないとして、104条の3で無効と判断されました。
 上記ア及びイからすると,本件方法特許の出願当初は,保存方法の対象となる結晶について,20.68°の回折角(2θ)のピーク強度を100%とした場合の30.16°の回折角ピークの相対強度が25%よりも大きなもののみとしていたにもかかわらず,上記イの補正により,上記相対強度が25%以下のものを含むものへと拡大されたものと認められる。そして,出願当初の特許請求の範囲,明細書及び図面には,構成要件Cの相対強度の発明特定事項を満たさない結晶形態であっても安定に保存できることについての記載はない。\nそうすると,上記イの補正は,新たな技術的事項を導入するものであって,特許法17条の2第3項の補正要件に違反するから,本件方法特許は,同法123条1項1号により無効とされるべきものである。

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平成26(ワ)18842  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年7月28日  東京地方裁判所

 特許侵害訴訟です。東京地裁は、文言解釈により技術的範囲に属しないと判断しました。また進歩性なしとして特許104条の3により権利行使不能とも判断してます。\n
 まず,「接触圧」との文言について,原被告双方が異なる解釈を採って いるため,この点について検討する。 「圧」とは「おしつける力」を意味し,「接触」とは「近づきふれるこ と,さわること」を意味する(広辞苑第6版,乙1参照)。 そして,これらの文言の通常の解釈からすれば,本件特許発明1におけ る「接触圧」との文言は,複数の物体が互いに接触する際に生じる力ない し圧力を意味するものと解されるところ,次に指摘する本件特許1の明細 書の記載を参酌すれば,上記文言は,複数の物体が互いに接触する際に生 じる力を意味すると解すべきである。 すなわち,本件特許1の明細書(甲2)において,前記ア 「・・・上記複数の弾性腕の接触部はコネクタ嵌合時に相手端子と最初に 接触する接触部から順に相手端子に対する接触圧が小さくなっており,相 手コネクタを嵌合するときに,最初の接触部を圧したその勢いで,次の弾 性腕の接触部を圧することができるので,小さい挿入力で弾性変形させる ことができ・・・」「指圧(操作者がコネクタ嵌合時に相手コネクタを押 し込む力であり,接触部での接圧に比例する。)」などと記載されている ことからすれば,同明細書の記載は「接触圧」を力と同視しているものと いえ,「接触圧」が相手端子と各弾性腕の接触部との間で生じる力を意味 すること,すなわち「力」であることが明らかといえる。 これに対し,原告は,「接触圧」とは単位変位量当たりの反力(N/m m)を意味する旨主張する。しかし,これは通常の文言解釈に反する上, 原告の上記解釈を根拠付けるような明細書上の記載は存在しないため,原 告の上記主張を採用することはできない。 このほか,原告は,上記「接触圧」が,嵌合終了時点ではなく嵌合途中 の数値を指すとも主張するところ,既に検討したところによれば,この点 について判断するまでもなく,原告の同主張は採用できない。 ウ 原告は,「接触圧」に関する自らの解釈を前提として,被告製品が構成\n要件1Fを充足する旨主張するが,「接触圧」に関する原告の解釈を採用 できないことは前記イのとおりであって,被告製品が「接触圧」に関する 構成要件1Fを充足することを認めるに足りる証拠はない。\n

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平成24(ワ)6435  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年5月28日  大阪地方裁判所

 特102条1項による損害として、特許権者の利益額350万/台(限界利益)*被告の販売台数5台=1750万円が認められました。
 被告は,本件特許が登録された後,5台の被告製品(被告製品1を4台,被 告製品2を1台。)を販売したことを自認している(前記第2の6【被告の主 張】(1))。
イ 原告は,契約後,未納となっている被告製品の譲渡が少なくとも3台あるこ とを主張する。 一般論として,侵害品の譲渡契約がされた場合には,それが未納であったと しても,特許法102条1項にいう「譲渡数量」に加算できる場合はあるもの というべきであるが,本件においては,上記譲渡契約に基づいて,被告製品と して特定された本件特許発明の技術的範囲に属する製品が納入されることに ついて,的確に認定し得る証拠は提出されていないから,上記3台が特許法1 02条1項にいう「譲渡数量」に含まれるものと認めることはできない。 したがって,被告製品の譲渡数量は,5台と認めるのが相当である。
(2) 被告の侵害行為がなければ原告が販売することができた物について 証拠(甲12,13)によると,原告が販売する型番HTP−3,6,10, 15,20ないしHT−3,6,10,15,20の製品は,本件特許発明の実 施品と認められるし,仮にそうでなかったとしても,自治体の廃棄物処理場等に 納入される破袋機であって,被告製品と競合する関係にあることは明らかである。 したがって,原告は,販売可能な製品を有していたものといえる。\n
(3) 単位数量当たりの利益の額
証拠(甲19)及び弁論の全趣旨によると,原告は,次のとおり,上記(2)の原 告実施品を製造,販売したこと,原告製品の実際の製造は外注によって行われ, 下記の粗利において直接労務費は既に控除されているものと認められる。 そうすると,原告製品の販売台数は14台,売上合計は9039万円,粗利合 計は4917万8369円,1台当たりの粗利は,351万2740円(1円未 満切り捨て)となる。
・・・
なお,前記のとおり,原告が現実の製造を外注して行っているのであれば,い わゆる限界利益を考慮するとしても,製造人件費,変動経費は外注費として控除 されていると考えられるから,本件において,上記からさらに控除すべき経費は 想定されない。 被告は,そのような利益率は常識はずれであって合理性がないと主張するが, 何ら具体的根拠,証拠を提示しないし,控除すべき費目を具体的に特定するもの でもないから,上記判断を左右しない。 したがって,単位数量当たりの利益の額は,351万2740円と認められる。 (4) 原告の実施能力
上記認定にかかる原告の販売実績及び被告の譲渡数量を比較すると,原告の実 施の能力から,被告の販売台数5台全てを原告が販売できたものと認められる。\n(5) 販売することができないとする事情(特許法102条1項ただし書)
ア 競合品の存在,破袋機の流通形態について
被告は,破袋機を製造する第三者が多数存在することを指摘し,その旨の証 拠(乙55から71まで)を提出するが,単に破袋機を製造販売するメーカー が存在することを挙げるにすぎず,本件特許発明を回避しつつ,同様の作用効 果を発揮する競合品の存在や具体的なシェアが明らかとなっているものでは ないから,上記証拠によって本項ただし書の事情を認めることはできない。 また,破袋機が,常時市場に存在するものでないことは,そもそも本項ただ し書に該当する事情に当たらない。
イ 原告製品と被告製品の価格差について
上記のとおり,原告製品の販売価格は,418万円から950万円であるの に対し,被告製品の販売価格(定価)は,証拠(乙41ないし45)及び弁論 の全趣旨によると,350万円であることが認められる。もっとも,原告製品 のうち高価格のものは,容量ないし処理量の大きいものと認められるから,こ の点も考慮に入れると,原告製品の価格帯と,被告製品の価格帯の差はさほど 大きなものとは評価できず,本項ただし書にいう事情に当たるとはいえない。 ウ 寄与度について
本件特許発明は,破袋機の構造の中心的部分に関するものである上,原告は,\n一定のブランド力も有するものであるから,上記のとおり,多様な破袋機を製 造販売するメーカーが,原告,被告のほか多数あること等の被告の主張を考慮 に入れたとしても,本件特許発明が被告製品や原告製品に寄与する割合を減ず ることはできない。 また,被告が日本唯一の雪上車メーカーであることは,本件と何ら関係のな い事情である。
(6) まとめ(特許法102条1項による金額)
以上によると,特許法102条1項により,原告の損害は,単位数量当たりの 利益額351万2740円に,被告の譲渡数量5台を乗じた,1756万370 0円と推定され,この推定を覆す事情は認められない。 なお,特許法102条2項により推定される金額は,被告の売上額の合計が上 記金額に満たないものと認められる(乙41ないし44)から,本件においては これを採用しない。
(7) 保守費用について
ア 特許権者は,物の発明にあっては,特許発明を使用した製品(以下「特許製 品」という。)の「使用」についてもその権利を専有するものであるから(特 許法68条,2条3項1号),侵害品の譲受人が侵害品を使用することもまた, 特許権侵害となり,不法行為を構成することになる。\nそうすると,侵害品を保守,修理することで,譲受人の侵害品の使用を継続 させたり,容易させたりなどした場合は,上記使用による不法行為を幇助する ものとして,共同不法行為(民法709条,719条2項)を構成する余地が\nあるが,侵害品の保守,修理それ自体は,間接侵害(特許法101条)の規定 に抵触しない限り,独立の不法行為となるものではない。 イ 原告は,被告の使用者に対する保守行為を不法行為の幇助と構成し,前記検\n討した被告製品の譲渡による損害とは別に,保守行為によって被告が得た利益 相当額を原告の単価等により計算した上,これを原告の逸失利益として,被告 に対する損害賠償として請求するものであるが,本件においては,被告の保守 行為それ自体が独立の不法行為に当たることを認めるに足りる証拠はないし, 原告もそのような主張はしていない。 ウ また,本件においては,既に検討したとおり,侵害品の製造,譲渡を理由と する損害賠償請求が認容され,これによって,原告の販売機会喪失等による損 害は全て填補されるところ,これとは別に,譲受人が侵害品を使用することに よって,原告にどのような損害が生じるかは明らかにされておらず,これに対 する幇助として,被告がさらに損害賠償義務を負担すると認めるべき理由はな い。
エ そうすると,原告の,保守費用相当額の損害賠償請求は,理由がないものと いうべきである。

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平成24(受)1204  特許権侵害差止請求事件 平成27年6月5日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  知的財産高等裁判

 一部の構成を製法で特定した物の発明について、知財高裁は「発明の要旨は,当該物をその構\造又は特性により直接特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するときでない限り,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物に限定して認定されるべき」としましたが、最高裁はこれを破棄差戻しました。
 特許法36条6項2号によれば,特許請求の範囲の記載は,「発明が明確であること」という要件に適合するものでなければならない。特許制度は,発明を公開した者に独占的な権利である特許権を付与することによって,特許権者についてはその発明を保護し,一方で第三者については特許に係る発明の内容を把握させることにより,その発明の利用を図ることを通じて,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とするものであるところ(特許法1条参照),同法36条6項2号が特許請求の範囲の記載において発明の明確性を要求しているのは,この目的を踏まえたものであると解することができる。この観点からみると,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているあらゆる場合に,その特許権の効力が当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物に及ぶものとして発明の要旨を認定するとするならば,これにより,第三者の利益が不当に害されることが生じかねず,問題がある。すなわち,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲において,その製造方法が記載されていると,一般的には,当該製造方法が当該物のどのような構\\造若しくは特性を表しているのか,又は物の発明であってもその発明の要旨を当該製造方法により製造された物に限定しているのかが不明であり,特許請求の範囲等の記載を読む者において,当該発明の内容を明確に理解することができず,権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予\測可能性を奪うことになり,適当ではない。他方,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲においては,通常,当該物についてその構\造又は特性を明記して直接特定することになるが,その具体的内容,性質等によっては,出願時において当該物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能\であったり,特許出願の性質上,迅速性等を必要とすることに鑑みて,特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要するなど,出願人にこのような特定を要求することがおよそ実際的でない場合もあり得るところである。そうすると,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法を記載することを一切認めないとすべきではなく,上記のような事情がある場合には,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として発明の要旨を認定しても,第三者の利益を不当に害することがないというべきである。
以上によれば,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能\\であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁平成24年(受)第1204号平成27年6月5日第二小法廷判決・裁判所時報1629号登載予定参照)。 以上と異なり,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,そのような特許請求の範囲の記載を一般的に許容しつつ,その発明の要旨は,原則として,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造された物に限定して認定されるべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本判決の示すところに従い,本件発明の要旨を認定し,更に本件特許請求の範囲の記載が上記4(2)の事情が存在するものとして「発明が明確であること」という要件に適合し認められるものであるか否か等について審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

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◆原審はこちらです。 平成22(ネ)10043

◆関連訴訟です。平成24(受)2658

◆関連事件の原審はこちらです。平成23(ネ)10057

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平成26(ネ)10015  債務不存在確認請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年3月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審での訂正の再々抗弁も理由なしと判断されました。
 本件訂正発明1のメッセージ提供手段は,特許請求の範囲(甲7の2)の記載によれば,「前記連絡先番号に係る広告主に対し,前記広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供するメッセージ提供手段」というものである。 ここに,「前記広告情報」とあるのは,「いずれの広告情報に基づいて架電してきたかを識別するための識別番号と連絡先番号とを関連情報として有するデータベース」との発明特定事項中の「広告情報」を指すものであるから,この広告情報は,識別番号を有する「いずれの広告情報」を意味することとなる。すると,「前記広告情報に基づく架電である旨」は「いずれの広告情報に基づく架電である旨」と解することができる。このことは,1)本件訂正発明1が,識別番号に基づいて接続処理をするにもかかわらず,一転して,メッセージ提供手段が提供するメッセージのみがその識別番号を利用しないことが不自然なこと,2)メッセージ提供手段が提供するメッセージが,「広告情報に基づく架電である」それ自体を通知するものであるとした場合,「いずれの広告情報に基づいて架電してきたかを識別するための識別番号」と,広告情報と識別番号との関連付けを明示した意味がなくなってしまうことからみても,肯定することができる。 したがって,特許請求の範囲の記載からは,メッセージ提供手段が提供するメッセージは,「いずれの広告情報に基づく架電である旨」すなわち「複数の広告情報のうちのいずれの広告情報に基づく架電である旨」と解することができる。
(b) 本件明細書の記載
本件明細書(甲1)には,次の記載がある。
・・・
これらの記載によれば,CTI演算部は,あらかじめ記録された所定の応答音声データを応答検知部623Cから出力できるところ,その音声データを,識別番号に従った音声データとすることを妨げる記載はないから,本件訂正明細書の記載を参酌しても,上記特許請求の範囲の記載の検討結果を左右するものとまではいえない。 (c) 被控訴人らの主張について 被控訴人らは,本件訂正発明1のメッセージ提供手段が提供するメッセージは,本件訂正明細書の【0039】【0156】【図10】の記載からみて,「広告情報に基づく架電である」旨であると主張する。 しかしながら,当該メッセージの内容についての特許請求の範囲の記載は,前記のとおり解釈され,明細書における上記各記載のメッセージの内容は,例示にすぎないほか,その記載における「○○からの入電です。」の「○○」も,「広告情報を閲覧した利用者からの入電です。」の「広告情報」も,「いずれの広告情報」と解釈する余地があるから,被控訴人ら主張の記載は,メッセージ提供手段が提供するメッセージが,単に,「広告情報に基づく架電である」旨の通知であることを積極的に根拠付けるものとまではいい難い。 被控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(d) 小括
以上のとおり,本件訂正発明1のメッセージ提供手段が提供するメッセージは,広告主に対して,「複数の広告情報のうちのいずれの広告情報に基づき架電したきたか」を通知するものであり,その広告情報の具体的な内容を広告主に通知することと特定するものと認められる。
・・・・・
上記(a)〜(c)の記載によれば,発信者からの呼を受けた転送元が,その呼を転送先に転送する際に,呼に関するメッセージを提供しているといえ,このような架電接続方式は周知技術であったと認められる。 控訴人は,甲33は,広告に関するものではなく,受信者の利便を目的とするので,甲12A発明とは分野,目的を異にする旨を主張する。しかしながら,相違点である構成【訂正1−G】は,専ら通話の転送の際のメッセージ提供に係るものといえ,控訴人主張の甲33と甲12A発明との相違が,転送の際のメッセージの提供に係る甲33に記載の事項を,相違点に係る周知技術の認定資料とすることを妨げることはない。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
c 容易想到性
甲12A発明は,電話3からの呼を受けたサーバが,その呼をアクセス先の電話に接続(転送)する架電接続方式であるといえる。また,上記bのとおり,発信者からの呼を受けた転送元が,その呼を転送先に転送する際に,呼に関するメッセー ジを提供する架電接続方式は周知技術である。 そうすると,甲12A発明と周知技術は,ともに呼の転送を行う架電接続方式であるから,甲12A発明において,周知技術を採用し,呼をアクセス先の電話に転送する際に,呼に関するメッセージを提供するように設計変更することに格別の困難性は認められない。そして,甲12A発明のサーバは,受けた呼が,どのような種類の広告を見た発信者からの呼であるかを認識できるのであるから(甲12の【0025】),呼をアクセス先の電話に転送する際に,呼に関するメッセージとして,どのような種類の広告を見た発信者からの呼である旨,すなわち,いずれの広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供するように構成することは,当業者であれば容易に想到し得るものであり,その構\成をとったことによる効果も,甲12A発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
(ウ) 控訴人の主張について
1)控訴人は,相違点に係る本件訂正発明1の構成により,着信応答時に,直ちに広告効果があったか否かを広告主に伝えることを可能\とする顕著な効果を奏する旨を主張する。 しかしながら,相違点に係る本件訂正発明1の構成,すなわち,広告主に対しいずれの広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供する構\成が,当業者にとって容易に組み合わせられることは,前記のとおりであり,そのような構成を採用した場合,着信応答時に広告効果があったか否かが分かるのは当然の帰結であるから,控訴人主張の上記効果は,甲12A発明及び周知技術から,当業者が予\測し得る範囲内のものである。 控訴人の上記主張は,採用することができない。 2) 控訴人は,甲12A発明は,架電がすべて広告情報を視聴した者からされるため,アクセス先に対して広告情報に基づく架電である旨のメッセージの提供をする実益はなく,甲12A発明に本件訂正発明1の構成【訂正1−G】を組み合わせる動機付けがない旨を主張する。\n しかしながら,甲12A発明の構成は,広告を視聴せず「アクセス先電話番号」に架電したユーザの存在を排除するものではなく,このことは,本件訂正発明1と全く同様である。\n控訴人の上記主張は,その前提に誤りがあり,採用することができない。 イ 本件訂正発明6 上記アの認定判断によれば,本件訂正発明6が,甲12B発明及び周知技術から容易に想到できたことは明らかである。

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対応する無効審決に対する取消訴訟はこちらです。平成26(行ケ)10184

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平成26(ネ)10069  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年3月5日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審でも進歩性違反有りとして、損害賠償請求は棄却されました(特104条の3)
 上記記載によれば,乙7発明について,次のとおり認められる。 乙7発明は,鋳造品の製造において,鋳型に溶湯を注入する際,溶湯が装入された取鍋を,保持炉等から注湯機まで自動的に搬送するための装置に関するものである。従来,鋳造品の製造において,鋳鉄等の溶湯が装入された取鍋を保持炉から注湯機まで搬送する作業は,ホイストで取鍋を吊り上げ,モノレールにより走行させていたが(【0001】,【0002】,図5),ホイストによる取鍋の上下動及びモノレールによる電動走行を除き,そのほとんどは作業者の手作業であり,また,作業者は取鍋に追従して移動する必要があり,さらに,溶湯が装入された取鍋をホイストで吊って搬送することには,各種の危険があった(【0004】,【0005】)。そこで,取鍋の搬送作業を自動化することによって危険を回避するとともに,取鍋搬送を安定化し,更に時間短縮等,作業の効率化を図ることを目的とし(【0006】),保持炉と注湯機の間にレールを敷設し,取鍋を載置した台車を走行機構により電動走行させ,台車上に設けたローラコンベア(本件発明の「取鍋移動手段」に相当。)と,注湯機上に設けたローラコンベア(本件発明の「取鍋移送手段」に相当。)により,取鍋を,台車から注湯機上における取鍋を載置すべき所定位置へ移送するもの(【0007】,【0008】,【0012】,図1,図3)である。\nしたがって,乙7文献には,取鍋を保持炉から注湯機上に搬送するため,ホイストとモノレールに換え,取鍋を載せて自走し,かつ,載せた取鍋をその上で移動させるためのローラコンベアと,注湯機上に設けたローラコンベアからなる取鍋移送手段を用いることが記載されているといえる。
(イ) そこで,乙5発明に乙7発明を適用することにより,本件出願時に当業者が本件発明を容易に想到することができたか否かについて検討する。 前記に認定したとおり,乙5発明と乙7発明は,いずれも,鋳鉄の鋳造設備に関するものであり,保持炉に保持されていた鋳鉄溶湯を取鍋に装入し,その鋳鉄溶湯が装入された取鍋を,保持炉から次の所定の処理を行う装置まで搬送する工程を有する点で共通するものである。 また,「鋳造工場の自動化・省力化マニュアル」(平成7年3月31日発行。財団法人素形材センター。乙24)によれば,鋳造設備において取鍋を搬送する際,クレーンあるいはモノレールを使用した空間搬送の場合であっても,人が所定の場所までペンダントを持って運ぶことが多く,溶湯が高温であるから,その安全性が第一に問われていたこと,そのため,その安全性を確保しながら,工場の環境整備,省力化のために搬送手段の自動化が進められてきたことが認められ,その方法として,自動走行クレーンの利用による空中搬送のほかに,地上方式の場合も少なくなく,搬送には様々な方法,用途があり,実用化がされていたことが認められる(97〜99頁)。これによれば,本件出願当時,当業者にとって,取鍋を搬送するに当たっては,その作業を自動化することによって危険を回避するとともに,取鍋搬送を安定化し,更に時間短縮等,作業の効率化を図るという課題が周知であり,空中搬送に換えて地上搬送を行うことも周知であったと認められる。 そして,乙7発明は,前記のとおり,取鍋の搬送作業を自動化することによって危険を回避するとともに,取鍋搬送を安定化し,更に時間短縮等,作業の効率化を図ることを目的としたものである。 そうすると,乙5発明及び乙7発明に接した当業者であれば,乙5発明において, 前炉に保持されていた溶鉄が充填された取鍋を,前炉から処理ステーションに搬送するに当たり,取鍋の搬送作業を自動化することにより,危険を回避するとともに,取鍋搬送を安定化し,更に時間短縮等,作業の効率化を図るために,取鍋の搬送手段として乙7発明を適用して,前炉と処理ステーションの間にレールを敷設し,取鍋を載置した台車を走行機構により電動走行させ,台車上に設けたローラコンベアと,処理ステーションに設けたローラコンベアにより,取鍋を,台車から処理ステーションにおける適宜定められた位置へ移送するという相違点に係る構\成を容易に想到することができるというべきである。

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平成24(ワ)15693  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年1月23日  東京地方裁判所

 図書保管管理システム(CS関連発明)について、技術的範囲に属しないと判断されました。また、訂正の抗弁についても、「再訂正によって特許の無効理由が解消されるとは認められない」と判断されました。
 本件発明が物の発明であることに鑑みると,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに対して…更新する」との文言から,上記更新手段は,\n ステーションに搬送された状態で,図書が取り出された状態のコンテナ又は図書が返却された状態のコンテナに対して,記憶手段の記憶内容を更新するという構成を示していると解するのが自然である。そして,本件明細書等には,「図書館員がコンソ\ール54を操作して返却完了の指示を中央処理装置39に入力すると,図書コードと,…コンテナ番号とを組み合わせ,その組み合わせたデータを…前記ハードディスク47等に登録する。」(段落【0051】),「…図書館員がコンソール54を操作して取り出し完了の指示を中央処理装置39に入力すると,…更新する。」(段落【0058】)というように上記解釈を裏付ける記載はあるが,その一方で,本件明細書等には,ステーションに搬送されていない状態で,図書の取り出し又は返却の完了していない状態のコンテナに対して更新するものとする更新手段の構\成については,記載されていないし,かかる構成の示唆すらない。\nさらに,前記の本件明細書等の記載には,「…図書の取り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,…記憶内容が更新される」(段落【0010】),「このようなサイズ別フリーロケーション方式による図書の保管管理手段を採用することにより,…同一寸法の図書ならば,その寸法の図書を収容するためのコンテナ内に任意に返却することが可能となるので,…自動化による図書の取り出し及び返却作業の能\率を効果的に向上させることができる」(段落【0011】)と記載されており,これらの記載から,本件発明において前提とされるサイズ別フリーロケーション方式は,同一寸法の図書ならばコンテナ内に任意に返却することが可能な構\成,すなわち,同一寸法の図書であればその寸法の図書を収容するためのコンテナ内に空きのある限り任意に収容することが可能な構\成とされているものと理解することができる。そして,コンテナ内に空きのある限り図書を任意に収容するためには,図書の取 り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,更新手段が記憶内容を更新する,すなわち,図書の取り出しや返却が行われた状態にあるコンテナに対して記憶内容を更新することが必要であり,そのような構成が本件発明におけるサイズ別フリーロケーション方式の前提となっているものと解される。
ウ したがって,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに対して…更新する更新手段」とは,ステーションに搬送された状態で図書が返却された状態のコンテナに対して記憶内容を更新する構\成を具備する更新手段をいうものと解するのが相当である。
・・・
以上のイないしオによれば,乙22公報,乙26公報,乙23公報,乙27公報には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚領域を設けること,又は,自動倉庫の分野で幅及び高さがそれぞれ異なる棚領域を設けることが記載されており,これらのことが従来周知の技術的事項であると認められる。 また,乙26公報及び乙27公報に記載されているように,自動倉庫に格納される収容物がコンテナ又は容器に収納した状態で格納されることは,周知の事項であり,乙27公報に記載されているように,収容物の寸法に応じて大きさの異なる容器を使い分けることも,従来から一般的に行われていることであると認められる。そして,このコンテナ又は容器が収容される棚領域が,収容物の大きさ(寸法)に対応したものとなることは自明の事項である。 以上によれば,前記イないしオから,「収容物の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領域を有する倉庫とそれぞれが収容された棚領域に対応した寸法を有する複数の収容物を収容する複数のコンテナを備えた自動公庫」との事項が周知技術であると認められる。 キ そして,乙12発明と上記カで認定した周知技術は,コンテナ等に収容物を収容し,このコンテナを,棚等を有する収容場所に格納するものであるという点で共通するから,乙12発明に上記周知技術を適用することは, 当業者が容易になし得たことであると認められる。

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 平成25(ワ)2421  特許権侵害損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年11月26日  東京地方裁判所

 訂正要件を満たしていないとして訂正の抗弁が否定されました。
 特許に無効理由が存在する場合であっても,1)特許権者が適法な訂正請求又は訂正審判請求を行い,2)その訂正により無効理由が解消され,かつ,3)被告製品が訂正後の発明の技術的範囲に属するものと認められる場合には,訂正の再抗弁が成立し,特許法104条の3により特許権の行使が制限されることはない(知財高裁平成21年8月25日判決・判時2059号125頁)。 本件において,原告は,第2次訂正請求を行ったとして,訂正の再抗弁を 主張しているので,第2次訂正請求による訂正により,前記1及び2で説示した新規性,進歩性欠如の無効理由が解消されているか(上記2)の要件)について検討する。
・・・
上記「ゲームのアプリケーションソフトウェア」で生成されるデータがどのようなものか,乙A10には明示されていないが,携帯情報装置において実行される「ゲームのアプリケーションソ\\フトウェア」が,「『撮像手段が取得した画像をスルー表示して得られる動画』,『保存された動画データ』を再生して得られる動画』及び『受信した動画信号を復号して得られる動画』のいずれにも該当しない動画」を生成することは,本件特許権の優先日時点において当業者の技術常識であったと認められる(例えば,乙A25の段落【0020】)。\n(オ) 以上によれば,相違点2は,乙A10自体から(その「変形例」と「第1の実施の形態」とを組み合わせることにより),当業者が容易に想到できるものと認められる。
(カ) 原告は,乙A10の「第2の実施の形態」と「第1の実施の形態」との間には,画像情報の生成処理をPDA10側で行うかHMD20側で行うかという本質的な相違点があるから,「第1の実施の形態」と「第2の実施の形態」とを組み合わせることには阻害要因が存在し,「第2の実施の形態」に係る記載(段落【0041】〜【0064】)は考慮する必要がない,と主張する。 しかし,「第2の実施の形態」の変形例である【0058】の構成を「第1の実施の形態」と組み合わせることについて【0063】で開示があることは上記のとおりであり,また,【0058】の変形例を「第1の実施の形態」と組み合わせることに技術的困難性は存在しない。したがって,それらを組み合わせることに阻害要因が存在するとの原告の主張は失当である。オ 以上によれば,相違点1及び2はいずれも当業者が容易に想到できる構成であるから,訂正発明1は,乙A10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。\n

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平成24(ワ)15612  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年10月9日  東京地方裁判所

 特許権侵害訴訟です。開示不十分として、特104条3により権利行使不能と判断されました。
 証拠(甲2)によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,「ここで本発明において「介在物」とは,鋳造時の凝固過程に生じる一般に粗大である晶出物並びに溶解時の溶湯内での反応により生じる酸化物,硫化物等,更には,鋳造時の凝固過程以降,すなわち凝固後の冷却過程,熱間圧延後,溶体化処理後の冷却過程及び時効処理時に固相のマトリックス中に析出反応で生じる析出物であり,本銅合金のSEM観察によりマトリックス中に観察される粒子を包括するものである。」(段落【0009】),介在物のうち晶出物及び析出物について,「時効処理は所望の強度及び電気伝導性を得るために行うが,時効処理温度は300〜650℃にする必要がある。300℃未満では時効処理に時間がかかり経済的でなく,650℃を越えるとNi−Si粒子は粗大化し,更に700℃を超えるとNi及びSiが固溶してしまい,強度及び電気伝導性が向上しないためである。300〜650℃の範囲で時効処理する際,時効処理時間は,1〜10時間であれば十分な強度,電気伝導性が得られる。」(段落【0019】)との記載があることが認められ,これによれば,時効処理温度及び時間につき,粗大な晶出物及び析出物の個数を低減させる方法についての一定の開示があるということができる。\nしかしながら,溶解時の溶湯内での反応により生じる酸化物,硫化物等については,本件明細書の発明の詳細な説明に,直径4μm以上の介在物個数を低減させる方法の開示は全くない。
(3) そして,本件明細書の記載内容及び弁論の全趣旨からすれば,原告が本件特許出願時において直径4μm以上の全ての介在物個数を0個/mm2とするCu−Ni−Si系合金部材を製造することができたと認めるに足りず,技術的な説明がなくても,当業者が出願時の技術常識に基づいてその物を製造できたと認めることもできない。 そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明には,特許請求の範囲に記載された数値範囲全体についての実施例の開示がなく,かつ,実施例のない部 分について実施可能であることが理解できる程度の技術的な説明もないものといわざるを得ない。
(4) したがって,本件発明は,特許請求の範囲で,粗大な介在物が存在しないものも含めて特定しながら,明細書の発明の詳細の説明では,粗大な介在物の個数が最小で25個/mm2である発明例を記載するのみで0個/mm2の発明例を記載せず,かつ,全ての粗大な介在物の個数を低減する方法について記載されていないことなどからすれば,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件発明の少なくとも一部につき,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。\n3 以上のとおりであって,被告製品のうち亜鉛の含有量が1.5%以下のものは本件発明の技術的範囲に属するが,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,特許法104条の3第1項により,本件特許権を行使することができない。そうすると,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。

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平成25(ワ)4303  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月25日  東京地方裁判所

 進歩性無しとして、権利行使不能(特104条の3)と判断されました。
 以上の事実,すなわち,乙13発明と乙16文献に記載された発明は,技術分野,解決すべき課題及び課題解決原理が共通し,経皮吸収製剤の形状及び強度並びにその構造的な強さを形成・保持するための基剤及び成形方法という課題解決手段にも共通性があること,粘弾性・保水力の大きいゼリー様のヒアルロン酸溶液を乾燥させると非常に強固な固体となるという物性が技術常識として知られていたことに照らせば,乙16文献に接した当業者がこれを乙13発明と組み合せる動機付けがあり,当業者において,乙13発明の基剤を乙16文献の基剤に置き換え,角質層を貫通するように十\分強い生体適合性材料の一つとしてヒアルロン酸を基剤(マトリックス)に選択することも,容易に想到し得たことであって,これを乙13発明に組み合せて成形した経皮吸収製剤が皮膚を貫通するのに十分な強度を有することも,容易に理解し得たということができる。\nまた,本件発明に係る経皮吸収製剤の作用効果が格別顕著なものであることを認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件発明は,乙13発明に乙16文献を組み合せることにより,当業者において容易に想到することができたものというべきである。  

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平成25(ワ)25813  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月25日  東京地方裁判所

 数値限定の発明について進歩性有りとして、差止が認められました。
 以上を踏まえて判断するに,まず,本件発明は,ハンドルに設けられたマッサージ用のボールで顔,腕等の肌をマッサージすることにより,血流を促したりして美しい肌を実現することができる美容器に関するものであるから(前記1(2)ア),その効果を評価する基準としては主として個々人の使用感によらざるを得ず,官能評価によること自体があいまいであるとすることはできない。\nそして,上記認定の本件明細書の記載によれば,1) 本件発明の構成要件Cの一対のボール支持軸の開き角度及び構\成要件Dの一対のボール外周面間の間隔は,いずれも小さくなると肌の摘み上げ効果が強く,大きくなると同効果が弱くなるものであり,一定の範囲で好ましい摘み上げ効果を発揮すること,2) 原告が,側方投影角度,ボールの直径等の条件を固定してボール支持軸の開き角度又はボール外周面間の間隔のみを変化させる官能評価を行ったところ,ボール支持軸の開き角度については,70度の場合が最も良好で,これより広く又は狭くすると徐々に効果が下がるが,40〜120度の範囲ではおおむね3分の1以上の者が「良い」と感じ,また,ボール外周面間の間隔については,実施する体の部位によって異なるものの,11mm又は12〜15mmの場合が最も良好で,これより広く又は狭くすると徐々に効果が下がるが,8〜25mmの範囲ではおおむね3分の1以上の者が「良い」と感じていることが認められる一方,支持軸の開き角度及び外周面間の間隔が構\成要件C及びDの数値範囲を満たすにもかかわらず本件発明の効果が奏されない場合があることをうかがわせる証拠はない。 そうすると,本件発明は,支持軸の開き角度及び外周面間の間隔の双方を一定の範囲に限定し,これを他の構成要件と組み合わせることによって所定の効果を発揮するようにしたものと理解することができるのであって,本件の関係各証拠上,数値限定による異質な又は優れた効果がないことを理由に進歩性を欠くとの被告の主張を採用することはできないと解すべきである。\n

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平成25(ワ)7569  特許権 民事訴訟 平成26年07月17日 東京地方裁判所

 特104条の3により権利行使不能と判断されました。
 上記(3)2),3)及び5)の点についてみるに,これらは,本件発明の流路切換ユニットでは各ポートが形成された流路ブロックに各制御弁が設けられ,全体として小型化されているのに対し,乙8発明のカートン取出し装置では,流路ブロックを有するか不明であり,かえって吸盤と流路等から成るために小型とはいえないことを相違点とするものである。そこで,この相違点の容易想到性につき判断するに,証拠(乙9〜12)及び弁論の全趣旨によれば,本件特許の出願当時,真空を利用して電子部品等のワークを吸着し搬送する装置に関する技術分野においては,真空の供給及び破壊,正圧空気の供給等のために空気を流出入させるポートとこれらを連通する流路を一体化したブロック状の部材を設け,これに真空及び正圧空気の供給等のための弁を設け,装置全体の小型化を図ることは当業者にとって周知の技術事項であったことが認められる。また,乙8発明は真空を利用したカートンの吸着移動手段に関するものであり,装置の小型化が忌避されるといった事情は見当たらないから,乙8発明に上記周知の技術事項を適用することに阻害要因はないと解される。そうすると,上記2),3)及び5)の点に係る本件発明の構成は当業者が容易に想到することができたものと認められる。\n

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平成23(ワ)29178 損害賠償等請求事件  特許権 民事訴訟 平成26年06月06日 東京地方裁判所

 CS関連発明について、均等論の主張も否定されました。無効主張に対して、訂正の抗弁をしていましたが、訂正後のクレームも技術的範囲に属しないと判断されました。
 上記(1)に判示した均等侵害の成立要件のうち1)の要件に関し,特許発明の本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうち,公開された明細書や出願関係書類の記載から把握される当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分をいうと解するのが相当である。これを本件発明についてみると,本件発明は,従来のネットワークゲームにあった課題,すなわち,くじ引きゲームのようなゲームでは,くじ引きという当たり又は外れによる偶然性に基盤が置かれるため,ユーザはゲームの進行度合いに応じて画像データの獲得率が向上する等の期待感が高まることがないため,ユーザに継続的にゲームを行わせることが困難である,という課題を解決するため,ユーザに「対価データ」の獲得を容易に行わせるとともに,ユーザに継続的にゲームを行わせるために,ユーザに対してゲームを行うことで直接に「対価データ」を付与するのではなく,「対価データ」を獲得するために必要な「ポイント」を付与するものとし,「対価データ」はその「ポイント」の対価としてユーザが獲得するものとした構\成が採用されたのであり,これが本件発明の課題解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分であるというべきである。そうすると,本件発明と被告サーバ装置との間において構成の異なる部分のうち,構\成要件A,D−1,E,F,G,D−2,C−2における「対価データ」を備える構成は,本件発明の本質的部分であるというべきである。他方,前記3のとおり,本件ゲームにおいては,「対価データ」に相当するものはなく,原告が主張する「強化された選手カード画像」は,強化ポイントによって新たにユーザに付与されるものではないから,本件発明の「対価データ」と本件ゲームの「強化された選手カード画像」の相違点は発明の非本質的部分と認めることはできない。したがって,均等侵害の成立要件の1)の要件を充たさないというべきである。

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平成24(ワ)15614 特許権侵害行為差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年06月24日 東京地方裁判所

 特許権侵害について、審査経緯から介在物が0個の場合を含まない、また、無効理由もありとして請求棄却されました。
 上記事実関係に基づいて判断するに,本件訂正発明2の特許請求の範囲にいう「以下」とは基準となる数量(45個)と同じ又はこれより少ない数量を意味するものであるから,その文言上は,0個の場合を含むと解することが可能である。しかし,本件明細書の記載によれば,本件訂正発明2は,「介在物の分布の制御を行うことにより」従来技術の問題点を解決するものであり(前記(3)ア(イ)),5〜10μmの粗大な介在物の分布が圧延方向に平行な断面において45個/mm2未満であれば曲げ加工性等の特性を損なうことがないとの知見(同(ウ)参照)に基づくものである。そして,5〜10μmの粗大な介在物が0個であれば「粗大な介在物の分布」は問題とならないから,本件明細書の記載を考慮すると,上記大きさの介在物が0個の場合はその技術的範囲に属しないと解することができる。これに加え,原告は,析出物及び晶出物粒子の粒径をすべて5μm以下とすることは容易である旨をいう本件拒絶理由通知に対し,本件意見書において,介在物を小さくすれば銅合金の特性改善が図れることは知られていたが,粗大な介在物が存在してもその個数が一定限度であれば良好な特性が得られるという,粗大な介在物の分布の概念を新たに導入した点に本件発明の意義がある旨を述べたものである。本件意見書の上記記載は,5〜10μmの大きさの介在物が存在する場合にのみ本件発明の技術的意義が認められ,5〜10μmの介在物が0個の場合はその技術的範囲に含まれないことを前提としているものと解される。そうすると,原告は,構成要件Fにいう「5〜10μmの大きさの介在物個数が…50個/mm2未満」であることの意義につき,これが0個/mm2の場合を含まない旨を本件意見書において言明し,これにより本件拒絶理由通知に基づく拒絶を回避して特許登録を受けることができたものであるから,本件訴訟において上記介在物の個数が構成要件F’’の「45個/mm2以下」に0個/mm2の場合が含まれると主張することは,上記出願手続における主張と矛盾するものであり,禁反言の原則に照らし許されないというべきである。したがって,構成要件F’’にいう「45個/mm2以下」には0個/mm2の場合が含まれないと判断することが相当である。
2 争点3(無効理由の有無)について
前記1で判断したとおり,構成要件F’’にいう「45個/mm2以下」には介在物個数が0個/mm2の場合を含まないと解すべきものであるが,その文言上はこれを含むと解することもできるので,そのように解した場合に本件特許に無効理由があるかについて念のため検討する。
(1) 乙3文献に基づく新規性欠如について
ア 乙3文献には次の趣旨の記載がある(乙3)。
・・・・
(ア) まず,乙3発明の「晶出物又は析出物」を本件訂正発明2の「介在物」と同視できるかを検討すると,証拠(乙32)及び弁論の全趣旨によれば,1)銅合金を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると,二次電子像(いわゆるSEM画像)により,晶出物,析出物,酸化物,硫化物等の粗大な粒子の大きさ及び個数を測定することができるが,晶出物,析出物,酸化物,硫化物等のいずれであるかの区別はできないこと,2)EPMA装置により特性X線を検出してS及びOを同定する分析を行い,これにより得られるSを同定したEPMA画像及びOを同定したEPMA画像とSEM画像とを対照すれば,SEM画像で観察した粒子から酸化物及び硫化物を除外することが可能であること,3) EPMA画像を撮影して分析するためには,単にSEM画像を撮影して分析するのに比し,数十倍の時間を要することが認められる。他方,乙3文献には,「晶出物又は析出物の大きさ」の測定のために,上記1)のSEM画像の観察のほかに,上記2)のEPMA装置による分析を行ったことの記載はない。また,乙3文献には,有害な不純物であるS及びO2の量を厳密に規定した(段落【0013】)ことの記載はあるが,酸化物及び硫化物の粒子の大きさに関する記載はなく,SEM画像で観察される粗大な粒子に酸化物及び硫化物が含まれていることを示唆する記載もない。そうすると,乙3発明について上記2)のEPMA装置による分析を行ったとは認められず,乙3発明の「晶出物又は析出物の大きさ」(前記イ(オ))は,上記1)のSEM画像により観察された粗大な粒子の大きさを意味するものと解される。さらに,本件明細書(甲40の3)には,介在物個数はSEMで観察したものであること(段落【0019】)が記載されているから,本件訂正発明2の「介在物」も,SEM画像により観察される粗大な粒子であると解される。以上によれば,乙3発明の「晶出物又は析出物」も本件訂正発明2の「介在物」もSEM画像により観察される粗大な粒子であり,測定の対象は同じであるから,乙3発明の「晶出物又は析出物」(前記イ(オ))は,本件訂正発明2の「介在物」(構成要件E及びF\\)と同視できるというべきである。
(イ) 次に,乙3発明の「大きさが1.3〜1.8μm」という構成(前記イ(オ))について検討する。乙3発明は「晶出物又は析出物の大きさが3μm未満」とする発明に係る実施例ないし比較例であること,乙3文献には,晶出物又は析出物の大きさが3μm以上だとめっき性等が悪化するとの記載がある(段落【0014】)ことからすれば,乙3発明における「晶出物又は析出物の大きさ」とは,これらの粒子の大きさの最大値をいうものと解される。したがって,乙3発明における「大きさが1.3〜1.8μm」には,粒子の大きさが5μm未満である構成が開示されているものと解される。そして,前記(ア)のとおり,乙3発明における「晶出物又は析出物」は,本件訂正発明2における「介在物」と同視できるから,乙3発明は,「介在物の大きさが10μm以下であり,かつ,5〜10μmの大きさの介在物個数が圧延方向に平行な断面で45個/mm2以下(0個/mm2の場合を含む。)」(構成要件E及びF\\)の構\成を実質的に開示するものである。
・・・・
オ 以上によれば,乙3発明は本件訂正発明2と実質的に同一の構成を開示するものである。そして,乙3文献には乙3発明の製造方法が説明され,当業者が当該構\成を実施し得る程度の記載があると認められるから,本件訂正発明2は新規性を欠くものというべきである。(2) したがって,本件訂正発明2に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,特許法104条の3第1項により,原告は,本件特許権を行使することができない。

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平成23(ワ)3292 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月26日 東京地方裁判所

 販売不可事情として7割に関しては除外されましたが、特102条1項により、1億6000万円を超える損害賠償が認められました。
 以上によれば,本件発明1は,電池電圧低下を検出した場合に,従来技術において採用されていた,意味不明かつ耳障りなブザー音に代えて,意味が明確かつ耳障りでない音声メッセージによって電池交換を促すとともに,利用者が音声メッセージを聴取するための誘因として,視覚的効果を有する表示灯手段を採用し,さらに,表\示灯手段を視認して誘引された利用者が確認要求受付手段を利用することにより,確実に音声メッセージを認識できるようにしたものである。そうすると,本件発明1の技術的意義は,第1に,従来技術における意味不明かつ耳障りなブザー音に代えて音声メッセージを利用するようにしたことであり,第2に音声メッセージへ到達するための誘因として視覚的な表示灯手段を利用するとともに,利用者の確認要求によって音声メッセージを確実に認識できるようにしたことにある。このような技術的意義を有する構\成を採用したことにより,早期に確実に電池交換をすることが促進され,電池の無駄な消費も抑えることができるようになる。本件発明1の上記技術的意義に照らせば,本件発明1において,電池電圧低下の検出と同時に発することが排除されているのは,利用者がうるさがって電池を抜き出してしまう程度に耳障りな音声又はブザー音であって,表示灯手段による報知と併せて発音を行うこと自体が全く排除されているものではないと解するのが相当である。そして,ハ号及びニ号製品における「ピッ」音は,50秒単位で発せられるものであり,利用者に異常表\示灯手段への注意を促す程度のものとみることができるから,上記発音が,利用者においてうるさがって電池を抜き出してしまう程度に耳障りなものとは解されず,上記発音が本件発明1において排除されている音声に当たるものとは解されない。
・・・
また,被告は,原告は,平成20年8月までは,原告製品1及び2のみしか販売していなかったものであるから,同月末日までの間は,原告製品1及び2のみが「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たると主張する。しかし,特許法102条1項は,一定期間にわたる特許権侵害が認められる場合に,権利者の上記期間における競合品としてあり得べき権利者製品の販売機会の喪失による逸失利益を全体として評価して,これを権利者の受けた損害とするものであり,権利者製品と侵害品を厳密に1対1対応させ,販売機会の喪失を検討することが予定されているものではないというべきである。したがって,本件においても,特許法102条1項に基づく原告の損害を算定するに当たり,平成19年8月24日から平成24年3月末日までの期間を全体として捉え,原告製品を,いずれも,上記期間において「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たるとみて,その平均利益をもって原告の損害を評価することは,特許法102条1項の上記趣旨に反するものではなく,許容されるものというべきである。(オ) よって,被告の主張はいずれも採用することができず,原告製品は,被告製品全部との関係において,「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たるものと認められる。
ウ 「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することのできた物の単位数量当たりの利益の額」
(ア) 特許法102条1項にいう「単位数量当たりの利益の額」とは,原則として,権利者製品の売上高から変動費を控除した利益(限界利益)をいうが,費用のうち権利者製品の製造又は販売に直接必要な個別固定費も例外的に含むものと解するのが相当である。他方,本件発明は,その構成により,利用者が早期かつ確実に電池電圧低下を認識し,これを放置することなく早期の電池交換が促されることで,無監視状態で警報器が放置される事態を回避することが可能\になるという作用効果を有するものであるところ(前記第4の1(1)イ(ウ)),被告製品のカタログ等に本件発明に係る構成が記載されていること(上記(イ)e)に照らせば,本件発明の作用効果が購入者らによる製品購入(又は事業者による製品採用)の動機付けの一つとなっていることがうかがわれるものというべきである。ただし,火災警報器における基本的性能は,監視領域における火災等の異常を確実に検知し報知する点にあると考えられるのであって,電池電圧低下の検知及び報知は,異常を確実に検知し報知するための警報器の作動を確保するための機能\に関するものではあるものの,複数あり得る火災警報器の故障又は異常状態の一類型に対応するものにすぎないことや電池電圧の低下の検知及び報知については音声のみによる方法等の本件発明を実施しない他の方法もあり得ることを考慮すれば,本件発明に係る構成に基づく作用効果が,購入の決定的な動機付けとなり,又は製品を選択するに当たり大きな影響力をもつものとまでは考え難い。以上の諸事情については,被告製品の販売数量のうち,本件発明の作用効果を考慮してもなお他社の競合品によって代替されたと考えられる割合及び被告自身の営業力や本件発明の実施部分以外の被告製品の特性等により販売することができたと考えられる割合について,これらを総合して,原告が原告製品を「販売することができないとする事情」があると解するのが相当である。そして,上記諸事情に照らし,上記数量は7割とみるのが相当である。
(オ) 以上の認定に関し,原告は,パナソニック等の製品は本件特許権を侵害するものであるから,これらの製品の存在を考慮して,「販売することができないとする事情」を認定するのは相当ではないと主張するが,上記製品が本件特許権を侵害するものと認めるに足りず,採用することができない。(カ) したがって,前記アの被告製品の販売数量のうち,7割に相当する数量に応じた額を,原告の損害額から控除すべきである。

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平成24(ワ)11800 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月27日 東京地方裁判所

 被告が完成し公然実施した発明なので、本件特許発明は新規性がないとして権利行使不能と判断されました。
 原告は,先行製品は1ロットの中ですら,αMDが10ppm/度(摂氏)未満であったり,αTDが7ppm/度(摂氏)超であったりして,本件発明1の構成要件1C1及び2と一致しないものであり,被告が先行発明を完成させていないことは,1)被告やその譲渡先が公表していたウェブサイト,論文等に先行発明に関する記載がないこと,2)厚さ約35μmのポリイミドフィルムについては,αTDをαMDと等しくしたものとαMDより低くしたものに別の名称を付しているのに対し,厚さ25μmの先行製品については,別の名称を付していないこと,3)被告がαTDをαMDより低くしたポリイミドフィルムに関する発明を特許出願したのは,平成20年6月であることから明らかであると主張する。しかしながら,特許法2条1項の「発明」は,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいうから,当業者が創作された技術内容を反復実施することにより同一の結果を得られること,すなわち,反復可能性のあることが必要である(最高裁平成10年(行ツ)第19号同12年2月29日第三小法廷判決・民集54巻2号709頁参照)。被告は,平成14年3月10日ころから平成15年4月2日までの間に,先行発明の技術的範囲に属する28本の先行製品を製造したのであって,先行発明には反復可能\性があるから,被告が平成16年3月30日以前に先行発明を完成させていたことは明らかである。確かに,先行製品は,別表記載のとおり,1ロットの中でも,αMDが10ppm/度(摂氏)未満であったり,αTDが3ppm/度(摂氏)未満や7ppm/度(摂氏)超であったりしたのであるが,弁論の全趣旨によれば,それは,被告が,本件発明1の内容を知らず,αMDを10ppm/度(摂氏)以上,αTDを3〜7ppm/度(摂氏)以上とすることを目標にしていなかったからにすぎないことが認められる。そして,1)や2)については,証拠(乙9,32,34,35,47)によれば,被告は,平成14年ころから,銅張積層体メーカーと共にCOF用基板を開発するために,αTDをαMDより低くした先行製品を製造していたことが認められるから,被告やその譲渡先が公表していたウェブサイト,論文等に先行発明に関する記載がなく,また,先行発明の技術的範囲に属する先行製品に別の名称を付していないとしても,このこと自体,格別不自然であるということはできない。3)については,証拠(甲15)によれば,被告が平成20年6月に特許出願した発明は,αTDをαMDより低くしたポリイミドフィルムの連続製造方法に係る発明であって,上記ポリイミドフィルムに係る発明でないことが認められる。原告の前記主張は,採用することができない。(ウ) そうであるから,被告は,本件特許権の優先日に係る特許出願前に,一部の本件発明1に相当する先行発明を完成させたものと認められる。
イ 先行発明の公然実施について
(ア) 被告は,別表記載のとおり,平成14年4月5日から平成16年3月12日までの間に,複数の銅張積層体メーカーに対し,先行発明の技術的範囲に属する28本の先行製品のうち,αMDが10.1〜14.4ppm/度(摂氏)であり,αTDが3.5〜7.0ppm/度(摂氏)である19本の全部又は一部を譲渡した。そして,被告や上記銅張積層体メーカーが当該譲渡について相互に守秘義務を負っていたことを認めるに足りる証拠はない。(イ) 原告は,前記譲渡がCOF用のポリイミドフィルムを共同開発するためであって,相互に守秘義務を負っていたと主張する。しかしながら,証拠(乙47)によれば,前記銅張積層体メーカーの1社である東レ株式会社が平成15年1月に発行された業界誌に投稿した論文には,αTDをαMDより低くしたポリイミドフィルムがCOF用に適している旨の記載があることが認められ,この事実に照らすと,被告や前記銅張積層体メーカーが相互に守秘義務を負っていたとは考え難い。原告の前記主張は,採用することができない。(ウ) そうであるから,被告は,本件特許権の優先日に係る特許出願前に,先行発明のうちαTDが3.5ppm/度(摂氏)以上のものを公然と実施したものである。ウ したがって,本件発明1は,本件特許権の優先日に係る特許出願前に公然実施をされた発明であり,本件発明1に係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。

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平成24(ワ)24822 損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月20日 東京地方裁判所

 特許権侵害について、売上額の3%の損害が認定されました。
 原告らは,特許権侵害に係る不当利得の額は不当利得対象期間の被告各製品の売上額4億1602万5629円に実施料率3.5%を乗じた額であり,損害の額は損害賠償対象期間の被告の利益額633万0671円に等しいと主張する。上記売上額及び利益額に争いはなく,被告は,不当利得についての実施料率は0.5%であり,損害賠償についての寄与率は10%にとどまる旨主張するので,以下,検討する。
・・・
被告は,不当利得対象期間中,本件発明の実施許諾を得ないまま,その技術的範囲に属する被告各製品の製造販売をしたのであるから,少なくとも実施料相当額につき法律上の原因なくして利益を得,原告ペパーレットはこれと同額の損失を被ったということができる。イ そこで,本件発明の実施料率についてみるに,上記事実関係によれば,カラーチェンジ機能は猫砂に求められる複数の機能\のうちの一つにとどまり,顧客がこれを他の機能より重視しているとはいえないものの,紙製の猫砂全体に占めるカラーチェンジ機能\を有する製品の割合が,固まり性や消臭性を備えた猫砂の商品化後も徐々に拡大し,5割程度に達していることからすれば,カラーチェンジ機能は,同種製品の販売上,不可欠ではないとしても有益な機能\とみるべきものである。そして,被告各製品の包装をみても,製品ごとに強調の程度は異なるものの,カラーチェンジ機能をセールスポイントとして扱っている。また,実施料率について調査した文献によれば,本件発明の実施品が属するパルプ,紙加工品等の分野における実施料率は3%程度の契約例が多いとされている(甲14)。これらの事情を総合すれば,本件における実施料率は,売上額の3%と認めるのが相当である。したがって,原告らが返還を請求し得る不当利得の額は,合計1248万0768円(4億1602万5629円×3%)となる。\n
・・・
イ そこで判断するに,上記事実関係によれば,本件発明の効果であるカラーチェンジ機能が被告各製品の販売に貢献していることは明らかといえるが,他方,被告各製品は,消臭性,固まり性といった機能\も併せ有するのであり,これらに着目して,本件発明の実施品である原告らの動物用排尿処理材や,商品名等により専らカラーチェンジ機能が強調されていた前訴対象製品ではなく,被告各製品を選択する消費者も少なからず存在したものと推認することができる。これらの事情を総合すると,被告の利益のうち5割は本件発明以外の要因が寄与して生じたものであり,この限度で上記推定が覆ると考えられる。したがって,寄与率を10%とする被告の主張を採用することはできず,原告らが請求し得る損害賠償の額は合計316万5335円(633万0671円×50%)であると解するのが相当である。\n

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平成21(ワ)14726 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年02月21日 東京地方裁判所

 特許権侵害に基づき、差止・損害賠償が請求されましたが、裁判所は特104条の3により請求を棄却しました。
 乙46明細書のこれらの記載からすれば,引用発明において,リンクの下端部を,軸を介してサイドフレーム部材に取り付けるための支持構造として示された態様は,上記請求項1及び2の基本的な技術思想を実現するための一具体例であると解するのが相当である。したがって,乙46明細書には,サイドフレーム部材に対するリンク下端部の枢着位置を調節可能\に取り付ける構造として,種々のものを採用できることが示唆されているということができる。そうすると,当業者にとって,引用発明において一具体例として示された,保持コンソ\ールの穴に着脱可能に固定された軸受ブロックに,軸受パイプを軸を介して枢着するという支持構\造に代えて,支持部材に相対する軸穴を設け,それらの軸穴とその間に位置する部材の穴とに着脱可能な枢軸を挿通して支持するという,より簡略な前記周知技術を適用して,前記相違点に係る本件発明の支持構\造に至ることは,容易であったということができる。したがって,本件発明は,引用発明を主引例とし,それに前記ア記載の周知技術を組み合わせることによって,容易に想到されるものであると認めるのが相当である。

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◆関連事件です。平成23(ワ)12196

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平成24(ワ)5664 特許権侵害差止等請求事件 特許権 平成26年02月06日 東京地方裁判所 

 技術的範囲には属するものの、新規事項違反があるとして特104条の3により、権利行使不能と判断されました。\n
 ところで,証拠(甲4)によれば,当初明細書等には「段差部」という語は用いられていないことが認められるほか,当初明細書の発明の詳細な説明には,「この目的を達成するために発明項1記載の育苗ポットは,底壁と,その底壁の縁部から上方に向かって立設する側壁と,その側壁と前記底壁とで囲まれる空間であって苗や培土を収納する収納空間と,その収納空間に培土や苗を入れるために前記側壁の上縁部により形成される開口面と,前記側壁の一部であって,前記側壁の上縁部との間に所定間隔を開けた部分に他の側壁の外面よりも前記収納空間側に窪む第1凹部と,その第1凹部の前記開口面を臨む部分に開口され,前記収納空間に収納される苗に関する情報が表示された表\示板を差込む差込み口とを備えていることを特徴とする育苗ポット。」(段落【0011】),「この発明項1に記載の育苗ポットによれば,苗に関する情報が表示された表\示板は差込み口に差込まれることで育苗ポットに取付けられる。ここで,この差込み口は第1凹部の開口面を臨む部分に開口されているので,収納空間に培土を収納した後に,開口面からは差込み口を把握することはできない。一方,差込み口が開口されている第1凹部は,側壁の一部であって他の側壁の外面よりも収納空間側に窪んだ部分であるので,その第1凹部を目印とすることで,差込み口の位置は,育苗ポットの側壁側から把握される。また,第1凹部は,側壁の上縁部との間に所定間隔を開けた部分に設けられているので,その所定間隔を開けた部分では,差込み口に差込まれた表示板は,側壁の内面と培土とによって挟まれた状態とされる。」(段落【0012】),「発明項1記載の育苗ポットによれば,差込み口が開口されている第1凹部は,側壁の上縁部との間に所定間隔を開けた部分に設けられているので,その所定間隔を開けた部分では,差込み口に差込まれた表\示板は,側壁の内面と培土とによって挟まれた状態とされる。よって,表示板を育苗ポットに対して略直立した状態で固定することができるという効果がある。」(段落【0026】),「通常,表\示板2は,育苗ポット1に培土Bを収納した後に差込み口9に差込まれ,育苗ポット1に取付けられる。また,培土Bは第1凹部7よりも高い位置になるまで収納される。よって,育苗ポット1に培土Bを収納した後には,差込み口9は,培土Bに埋まり,開口面6からは,差込み口9の位置を把握することができない。」(段落【0068】),「また,第1実施例の育苗ポット1のように,側面4に形成された凹部が第1凹部7であるか第2凹部8であるかを判断する必要はなく,側面4に形成された凹部は全て第1凹部7であり,その第1凹部7には差込み口9が開口されているので,収納空間5に培土Bによって差込み口9が埋もれ,差込み口9の位置を外部から把握できなくても,第1凹部7の窪みを目印とすることで,表示板2を差込む位置を外部から容易に判断することができる。」(段落【0079】)との記載があることが認められ,これらによれば,当初明細書における第1凹部は,側壁の一部であって,側壁の上縁部との間に所定間隔を開けた部分に他の側壁の外面よりも収納空間側に窪んでいて,収納空間に培土を収納した場合にその培土によって埋没し,開口面を臨む部分に収納空間に収納される苗に関する情報が表\示された表示板を差込む差込み口を有するものであることが認められる。そして,証拠(甲4)によれば,当初図面には,第1凹部7について,【図1】及び【図6】のような内容が図示されていることが認められる。そうすると,当初明細書等の「第1凹部」(第1凹部7を含\nむ。)が本件発明の「段差部」に対応し,これ以外に,本件発明の「段差部」に対応するものは,当初明細書等において見出すことができない。イ そこで,第1凹部がどのような技術的意義を有するかについて検討するに,証拠(甲4)によれば,当初特許請求の範囲に記載された発明は,苗に関する情報が表示された表\示板を育苗ポットに対して略直立した状態で固定することができると共に,育苗ポット内に培土が収納されている状態であっても,その表示板を取付けるための位置を外部から容易に把握することができる育苗ポット及び表\示板付育苗ポットを提供することを目的とするものであり・・・このうち,目印としての機能は,「育苗ポット内に培土が収納されている状態であっても,その表\示板を取付けるための位置を外部から容易に把握することができる」という発明の目的を実現するための重要な機能であると解されるが,証拠(甲4)によれば,当初明細書の発明の詳細な説明の段落【0027】に,「また,差込み口が開口されている第1凹部は,側壁の一部であって他の側壁の外面よりも収納空間側に窪んだ部分であるので,収納空間に培土を収納し,差込み口が培土に埋もれ,開口面から差込み口の位置を把握することができなくなったとしても,第1凹部を目印とすることで,育苗ポットの側壁側から差込み口の位置を把握することができるという効果がある。」と記載され,実施例では他の側壁4の外面よりも収納空間5側に窪み,側壁4の上縁部との間に所定間隔を空けた位置から底壁3まで帯状に延びる形状とされる(段落【0049】,【0073】,【図1】ないし【図6】)ほか,例えば,えくぼ的に収納空間5側に窪むように形成していてもよいなどとされていること(段落【0082】)が認められるから,これらに照らすと,差込み口が開口される第1凹部は,垂直方向(高さ方向)においても水平方向においても目印としての機能\を果たすべきものであり,かつ,かかる目印としての機能を果たすための第1凹部は,側壁側から差込み口の位置を把握することができる程度の一定の水平方向の幅を有する,側壁の一部分の窪みである必要があると考えられる。\nウ 本件発明の「段差部」が水平方向の一定の幅を有するものに限定されないことは,前記1イのとおりであり,本件発明の「段差部」は,第1凹部と異なるものであって,当初明細書等に記載のない事項であるといわざるを得ない。なお,証拠(甲4)によれば,当初明細書の発明の詳細な説明には,「また,上記実施例では,第1凹部7と第2凹部8とは,側壁4の外面から収納空間5側に窪むように形成する場合について説明した。しかしながら,第1凹部7と第2凹部8とは,側壁4の内面から収納空間5側に突出するように形成しても良い。但し,かかる場合には,側壁4の外面には,差込み口9の位置を示すような目印を設ける必要がある。」(段落【0083】)との記載があることが認められるが,この記載は,第1凹部7が側壁4の内面から収納空間5側に突出するように形成されることにより,側壁4の外面側から第1凹部7の位置を把握することができない場合に限定してのものであって,これを把握することができる場合についてのものではない。そして,上記段落は,その記載内容からして,第1凹部7と第2凹部8を有し,第1凹部が差込み口設置機能,目印としての機能\及び根巻き防止機能を有する実施例の改変例として記載されているものであり,このような実施例における第1凹部7は,他の側壁4の外面よりも収納空間5側に窪み,側壁4の上縁部との間に所定間隔を空けた位置から底壁3まで帯状に延びる形状のものであるから,この記載を根拠として,当初明細書等に段差部についての記載があるということはできない。\nア 原告らは,当初明細書の発明の詳細な説明の段落【0049】及び当初図面の【図2】及び【図5】には,側壁4に形成された他の側壁4の外面よりも収納空間5側に窪んだ段差部が記載,図示されていると主張する。これは,側壁4の1つの面全体に段差部を設けることが記載,図示されているとの趣旨を主張するものと解されるが,証拠(甲4)によれば,同段落は,「また,側壁4には,他の側壁4の外面よりも収納空間5側に窪み,側壁4の上縁部との間に所定間隔を開けた位置から底壁3まで帯状に延びる1つの第1凹部7と3つの第2凹部8とが形成されている。」というもので,これは,【図1】ないし【図4】に基づく実施例の説明としてであって,側壁4の1つの面の上縁部との間に所定間隔を開けた位置から底壁3まで延びる帯状の第1凹部についての記載であり,また,当初図面の【図2】及び【図5】は,上記のとおりの第1凹部を有する実施例の断面図を示すに過ぎないものであると認められるから,当初明細書等の上記の箇所に,側壁4の1の面全体に段差部を設けることが記載,図示されていると認めることはできない。

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平成24(ネ)10049 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年01月27日 知的財産高等裁判所 

 出願中の補正が要旨変更であるとして出願日が繰り下がり、これにより、新規性無しとして無効理由ありとした1審の判断が維持されました。
 上記(3)アのとおり,本件発明と乙54発明とは,X枠の長さを変えずに,かつ,左右側枠に対するX枠上端部の上下位置を変えずに車椅子の巾を調節可能にするための構\成として,下側杆(軸受パイプ41)に軸を挿通しこれを支持するための軸穴を下側杆取付部(軸受ブロック42)に相対して設けるとともに,下側杆の支持部を複数設けるとの点で一致している。また,上記(3)イによれば,乙54発明の軸受パイプ41の支持構造は,本件発明に相当する構\成でいえば,下側杆に挿通され左右側枠に沿う方向に配設されている枢軸が,左右側枠に沿う方向を向く下側杆取付部の軸穴に支持され,下側杆取付部が左右側枠に複数個上下に配列して設けられたねじ穴に支持されるとの一連の技術的機構を備えていたものと理解できる。上記の点にかんがみると,結局,相違点2)´に係る本件発明の構成とは,本件発明の技術課題と直接的な関連を有するものではなく,軸,軸受ブロック,ねじなどを用いた軸受支持構\造に代えて,部材の数を低減させ,軸と両端取付部を用いた軸受支持構造を採用したものであるといえる。しかるに,上記アの認定によれば,乙63文献及び乙5文献には,両端部に縦貫する穴を有する部材を穴を有する対向二片部間に配置するとともに,対向二片部の穴に軸を通してナット等で着脱可能\に接続することで,対向二片部の穴がその間に挿入された穴を有する部材を回動可能に支持する構\造が開示されている。このことからも明らかなように,穴のある軸受部材に着脱可能な軸を接続して軸受部材間に配置された別部材を回動可能\に支持する構造は,本件特許の出願当時,広く一般的に用いられている周知技術であると認められる。そうすると,乙54発明における軸受支持構\造に代えて,部材数を低減させて同等の構成を実現した上記周知技術の軸受支持構\造を採用し,相違点2)´に係る本件発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものといえる。ウ 控訴人の主張に対して控訴人は,本件発明は車椅子の巾調節に当たって工具が不要である効果を有する旨を主張するが,本件発明は,その特許請求の範囲の記載において枢軸の抜止め手段を限定しておらず,ナット等で枢軸の抜止めをする構成も排除されていない。なお,枢軸に抜止め手段を施さないことは,車椅子が通常有すべき安全性の観点からみて,技術上想定し難い(本件発明は枢軸の構\造も限定しておらず,単なる棒状のものとする構成も排除されていない。)。そのほか控訴人がるる主張するところも,本件明細書に記載のない効果をいうものか,乙54発明に前記周知技術を適用して得られた結果から当業者が予\測可能な範囲内のものである。\n

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◆原審はこちらです。平成21(ワ)6273

◆関連事件はこちらです。平成25(行ケ)10155

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平成24(ワ)18038 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年10月30日 東京地方裁判所

 技術的範囲に属する、ただし進歩性欠如として無効であると判断されました。
「地表面の起伏についての高度情報を含む三次元的な地勢データ」の意義\n
ア 被告は,「地表面」との文言が,二次元的な広がりをもった「面」を意味するものである上,本件発明が,「直線と地表\面との交点を算出」(構成要件L)するものであることから,「地表\面の起伏についての高度情報を含む三次元的な地勢データ」は,「面」の情報を含むデータである必要があると主張する。
イ しかし,構成要件Kは「地表\面の起伏についての高度情報を含む三次元的な地勢データ」というものであり,その文言からは,「高度情報」が地表面の起伏を反映したものであることを要することが読み取れるのみであり,地勢データ自体が「面」としての情報を含むことが,文言上,必ずしも要求されるものではない。\n
ウ また,確かに,本件明細書によれば,本件発明に係る位置特定装置は,機体の位置から撮影手段の向いている方向に延ばした直線と地表面との交点を算出し, 目標物の位置として特定するものであり( 【請求項7】),「三次元的な地勢データ」は,「地表面と直線との交点を算出」する際に用いられるものである(構\成要件L中段)。しかし,上記「地表面」(構\成要件L中段)は,「地表面記録手段からの出力に応答し」(構\成要件L前段),「三次元的に高度情報を含んで表される」(【0014】)ものであるから,「三次元的な地勢データ」は,その出力により,三次元的に高度情報を含んだ面を表\すことができるものであれば足り(なお,「三次元的に高度情報を含んだ面を表す」ことの意義については,構\成要件Lにおいて検討する。),「三次元的な地勢データ」自体が「面」としての情報を有するものである必要は必ずしもないものと解される。
エ 加えて,本件発明は,上記のとおり直線と地表面との交点を算出するに当たり,「地表\面」として二次元平面を用いると,目標物が三次元的な起伏のある地表面上に存在することにより,目標物までの直線を二次元平面まで延長した交点の位置が,目標物の位置を二次元平面に投影した位置と比較して,高度に対応する距離だけ異なる位置と判断してしまうことから(【0015】),「地表\面」として,二次元平面ではなく,三次元的な起伏のある地表面を用いることで,目標物の位置を,三次元的に精度よく特定することを可能\としたものである(【0014】,【0015】)。そうすると,「地表面の起伏についての高度情報を含む三次元的な地勢データ」とは,緯度及び経度の情報のみを含む二次元平面データに代わるものとして記載されているにとどまるものであるから,緯度及び経度の情報に加えて,地表\面の起伏を反映した高度情報を含むことに意義を有するものということができ,「面」としての情報を有することに,その意義が見出されるものではない。
オ 以上によれば,「地表面の起伏についての高度情報を含む三次元的な地勢データ」とは,三次元的な,すなわち緯度,経度及び高度の情報を含む地勢データであって,上記高度情報が,地表\面の起伏を反映したものであると評価することができるものであれば足り,これに加えて,「面」としての情報を含むものである必要はないものと解される。
(2) イ号装置における検討
ア イ号装置はメッシュデータが記録された記録媒体を有するところ(構成k),メッシュデータは,メッシュの位置情報(緯度・経度)及びメッシュ中心点の標高情報を含むモデルデータである(争いがない)。上記標高情報は,国土地理院が刊行する2万5000分の1地図に描かれている等高線を計測してベクトルデータを作成し,それから計算によって求めるものであるとされるから(甲10),地表\面の起伏を反映したものであると評価することができる。イ したがって,メッシュデータは,「地表面の起伏についての高度情報を含む三次元的な地勢データ」に相当し,上記メッシュデータが記録された記録媒体を有するイ号装置は,構\成要件Kを充足する。・・・・本件発明は,主として災害発生現場等の位置を特定するという民生分野における利用を目的とした発明であるが,乙24発明とは航空機による目的物の地図上における位置の特定という技術においては共通するものであり,かつ,軍事技術分野における技術が民生分野に転用されることが多いことは公知の事実であるから,本件発明が主として民生分野における利用を目的とするものであるとしても,乙24発明に乙4発明を適用して本件発明に至ることの妨げとなるものではない。
エ 以上によれば,本件発明は,乙24発明に乙4発明を適用することにより,本件特許出願当時,当業者において容易に想到することができたものであり,本件特許権は特許無効審判により無効とされるべきものであると認められる。

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平成23(ワ)15499 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年10月24日 大阪地方裁判所

 特許権侵害が認定され、102条3項での損害額よりも、102条2項による損害額の方が高額ということで、3000万円強の損害額が認定がされました。
 原告製品及び被告各製品のほかにも,食品を収納するとともに,当該食材を加熱可能な容器が多数存在することは当事者間で争いがない。もっとも,このうちフラップ部と蓋を一体成型したものについては,原告製品,被告各製品及び乙30発明に係る実施品の存在を認めることができるにとどまる。本件各特許発明は,「加熱調理後,容器内の水分を,開口部を通じて,排出可能\である。この結果,本発明の容器は,パスタ等の調理に好適に使用可能となる。」(段落【0023】)という作用効果を奏する点に技術的意義があるものである。このような代替品の有無などに関する状況及び本件各特許発明の技術的意義に加え,本件で表\れた一切の事情を総合すると,本件各特許発明の被告各製品の売上げに対する寄与度は15%とするのが相当である。エ 損害以上によれば,売上高5億9510万5017円から経費合計3億9795万7004円を控除した額に寄与度15%を乗じた2957万2201円を,特許法102条2項に基づき算定される損害額と認める。
(3)特許法102条3項に基づく損害の計算
証拠(乙27の1〜3)によれば,プラスチック製品に係る実施料率は,平成4年度から平成10年度までの期間において,イニシャルペイメントがある場合において平均350%,イニシャルペイメントがない場合において39%であったことが認められる。このことに加え,前記で検討した代替品の有無などに関する状況及び本件各特許発明の技術的意義等も考慮すると,本件において相当な実施料率は35%であると認める。そうすると,売上高5億9510万5017円に実施料率35%を乗じた2082万8675円が相当な実施料額であると認める。
以上によれば,より高額である前記の計算に基づき,原告の損害(逸失利益)は2957万2201円であると認めるのが相当である。この約1割に相当する300万円の限度で,弁護士費用及び弁理士費用についても本件と相当因果関係のある損害と認める。

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平成24(ワ)11220 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年09月26日 大阪地方裁判所

 特許権侵害事件において、一部の請求項は無効、有効な請求項は技術的範囲に属しないと判断されました。
 前記(2)によれば,乙1発明のA からG までは,本件特許発明1の構成要件1A から1G にそれぞれ相当するものであり,乙1文献には,本件特許発明1の各構成要件をいずれも備えた発明(乙1発明)が記載されているものと認めることができる。原告は,乙1文献には構\成要件1C 及び1E に相当する構成(前記(2)C 及びE の構成)が記載されていない旨主張するので,以下,補足する。ア 本件特許発明1の構成要件1C に相当する構成(前記(2)C の構成)前記(1)のとおり,乙1文献には,「引張り試験の方法は,アムスラー万能試験機等に固定し,片端より管軸方向に加重をかけ,ブレード部分の離脱及び破断時の強度を測定するものとする。」という記載がある。この記載は,引張り試験において,ブレード部分の離脱及び破断が生じた後に,フレキシブルチューブの離脱又は破断が生じるという前後関係を当然の前提としたものである。そもそも,フレキシブルチューブ本体は蛇腹構\造のものであり,その名のとおり伸縮可能なものである(当事者間で争いがない。)のに対し,乙1文献のブレードはステンレス鋼(SUS304)であり,フレキシブルチューブの外面に均一に編まれたものであるから,構造上,フレキシブルチューブの伸長を防止する作用を奏するものであることが明らかである。本件特許1の出願時以前における技術常識についても,以下の点が認められる。昭和41年12月刊行の石井俊二著「螺旋管とベローズ型伸縮管継手のすべて」と題する論文(乙2)によれば,ブレードは,一般に,螺旋管に伸びを生じたり,外部からの衝撃から防護したり,美観を保持したりすることを目的とする部材である。また,平成9年7月1日発行の財団法人日本建築センター編『建築設備耐震設計・施工指針(1997年版)』(乙4)には,地震によるフレキシブル継手の破損状況が紹介されているところ,そこではブレードが破断したフレキシブル継手の写真が掲載されており,当該写真からはフレキシブルチューブがブレードの長さの約2倍の長さにまで伸長していることが読み取れる。以上のとおり,乙1文献には,フレキシブルチューブが破損するよりも先にブレードが離脱又は破断することを前提とした記載があること,乙1発明の構\造からすれば,必然的に当該構成が備わっていること,本件特許1の出願以前においても,当該構\成は公知のものであったことが認められる。そうすると,乙1文献に接した当業者であれば,乙1発明が本件特許発明1の構成要件1H に相当する構成(前記(2)H の構成)を備えていることについては,直ちに理解することができるものというべきである。\n
イ 本件特許発明1の構成要件1 に相当する構成(前記(2) の構成)\n
前記アのとおり,乙1文献には,フレキシブルチューブが破損するよりも先にブレードが離脱又は破断することを前提とした記載があること,フレキシブルチューブは蛇腹構造のものであり,その名のとおり伸縮可能\なものであるのに対し,ブレードはフレキシブルチューブの伸長を防止する構成のものであることが認められる。そうすると,乙1発明においても,ブレードが離脱又は破断した後,フレキシブルチューブは当然に伸長する。しかも,前記アのとおり,ブレードが離脱した後,フレキシブルチューブが約2倍の長さにまで伸長する構\成のフレキシブル継ぎ手が公知のものであったことも認められる。これらのことからすれば,乙1文献に接した当業者であれば,乙1発明が本件特許発明1の構成要件1 に相当する構成(前記(2) の構成)を備えていることについても,直ちに理解することができるものというべきである。\n
・・・
前提事実(3)イのとおり,構成要件2 は,「樹脂スリーブの小径内周の高さと金属スリーブの中間外周の高さおよび小径外周の高さの和を一致させ,」というものである。この文言からすると,樹脂スリーブの小径内周の高さと,金属スリーブの中間外周の高さ及び小径外周の高さの和は,同一であると解される。構成要件2Fにおいて「樹脂スリーブの大径内周径と金属スリーブの中間外周径をほぼ一致させたことを特徴とする」とされており,【特許請求の範囲】の記載において,「ほぼ一致」と「一致」とで書き分けられていることからも,上記のとおり解釈するのが合理的である。
・・・
前記のとおり,被告製品2−1が小径外周の構成を備えるか否かについては当事者間に争いがあるものの,樹脂スリーブの小径内周の高さが約13mmであり,金属スリーブの中間外周の高さ(又はこれと小径外周の高さの和)が約16mmであることについては当事者間で争いがない。そうすると,被告製品2−1において,樹脂スリーブの小径内周の高さは,金属スリーブの中間外周の高さ(又はこれと小径外周の高さの和)よりも短く,同一ではないから,構成要件2 を文言上充足するとは認められない。仮に,完全な同一を求めているとまではいえないとしても,上記3mmの違いは,全体の大きさや前記(1)に述べたことに照らしても,「一致」しているとはいえない。

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平成22(ワ)42637 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年08月30日 東京地方裁判所

 ライン照明モードについて技術的範囲に属しないと、また、スポット照明モードについては技術的範囲に属すると判断されたものの、公知発明から容易であるとして侵害は認められませんでした。
(ウ) ところで,本件明細書においては,共焦点作用について,「第一の次元での共焦点作用」又は「部分的共焦点作用」と「第一及び第二の次元での共焦点作用」又は「完全な共焦点作用」とを区別している。この点について,発明の詳細な説明においては,「発明の開示」において,「前記光はスリットを備えた一次元空間フィルタを通過して第一の次元で共焦点作用をもたらし,前記光検出器の前記所与の領域で受ける光が,前記所与の領域外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出され,前記所与の領域は前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されていることを特徴とする」(4欄47行〜5欄3行)とされ,実施例に関する記載においては,「第3図の構成が部分的共焦点作用のみを発揮する理由は,CCDとコンピュータにより提供される空間フィルタリングが一次元でのみ起こり,二次元では起きないからである。これは,第1図のものと同じエレメントに空間フィルタ14を加えた第4図の実施例を使用することにより克服できる。…スリット30は一次元空間フィルタリングのみを提供し,ラマンバンド28のそれぞれが第5図の水平方向に空間的にフィルタリングされるようにしていることが認められるであろう。しかしながら,焦点19の外側からの若干の光が依然としてスリット30を通過し第3図の影を付けた領域に対応する第5図の領域において受領されることがある。これを克服するには,コンピュータ25を第3図の実施例におけると同様にプログラムして,線44同士の間にあるピクセルからのデータだけを処理し,線46同士の間にある他のピクセルを排除する。これにより,垂直方向における空間フィルタリングが得られ,スリット30により与えられる水平空間フィルタリングと一緒に,完全な二次元共焦点作用が達成される。」(6欄46行〜7欄33行)とされている。以上によれば,本件発明7は,焦点合わせの困難なピンホールを使用しない共焦点作用の技術において,Z軸方向の分解能\向上のために,単にCCDとコンピュータの組合せによる一次元空間フィルタリングを行うのみ(例えば,第1図の従来技術による部分的共焦点作用)ではなく,これにスリットによる空間フィルタリングを組み合わせることにより二次元の空間フィルタリングを行い,これによって完全な共焦点作用を達成しようとするものである。原告らは,完全な共焦点作用については,非分散性エレメントを用いる場合と分散性エレメントを用いる場合の2つに分け,部分的共焦点作用は分散性エレメントを用いる場合であるとするが,本件明細書において,そのような明確な区別をしているとみるだけの根拠に乏しく,いずれのエレメントを用いる場合においても,完全な共焦点作用と部分的な共焦点作用が生じるものと解するのが相当である。このような,本件発明7の技術的意義及び他に特許請求の範囲や発明の詳細な説明において「光」の意義を明らかにするような記載がないことに照らせば,構成要件Aの「光」の意義については,本件発明7の技術的意義を達成できるような光であるか否か,言い換えれば,本件発明7の構\成を備えた装置において,第一及び第二の次元での共焦点作用をもたらす光といえるか否かという観点から検討するのが相当である。
ウ そこで,ライン照明が第一及び第二の次元での共焦点作用をもたらす光といえるか否かについて検討する。
・・・
スポット照明の場合には試料のスポット光が照射された点から出たラマン散乱光のみがCCDに到達するのであるから,線44間の領域を読み取ることにより,Z軸方向の分解能が高くなり,第二の次元の共焦点作用が生じるものと解される。しかし,ライン照明の場合には,これと同様ということはできない。線PP間を読み取るということは,線PP間に到達した光全てを一括して1データとして読み取るということであって,線PP間に到達した光を検出器の各画素位置ごとに分解してデータを読み取るのではないことを意味し,これは線QQについても同様であると解される(原告らの実験である甲18別紙2の1頁14〜16行参照)。そうすると,ライン照明の場合には,たとえ線QQ間を読み取ったとしても,原告参考図6のように,他の点からの光が含まれており,Z軸方向の分解能\が高まるとはいえない。以上のとおり,原理的にみて,ライン照明の場合においては,QQ間のデータを読み取ったとしても,第二の次元の共焦点作用は生じないものというべきである。
・・・
原告らの実験3及び4によれば,スポット照明では,検出器の列数が少なくなると,FWHMの数値が小さくなり解像度が上がっている。他方で,原告らの実験5によれば,一様なサンプルを用いたライン照明では,検出器の列数を3から1にするとFWHMが小さくなっているが,列数を7から5及び5から3にする過程ではFWHMが小さくなっているとはいえないから,原告らの実験によっても,一様なサンプルを用いたライン照明において共焦点作用が生じるとはいい難い。オ 以上のとおり,原理的には,ライン照明では,光検出器における所与の領域は,サンプルの所与の面からの光だけでなく,他の面からの光も相当量受光するから,「第二の次元」の「共焦点作用」が生じないものと解されるし,実験の結果からみても,ライン照明において「第二の次元」の「共焦点作用」が生じるとは認められない。そして,その他ライン照明において共焦点作用が生じることを認めるに足りる証拠はない。カ 以上を踏まえて,構成要件Aの「光」の意義について検討するに,上記オのとおり,ライン照明において「第二の次元」の「共焦点作用」が生じるとは認められない。そうすると,構\成要件Aの「光」は,スポット照明を意味すると解するのが相当である。
・・・
乙16発明では,前記試料に照射されたスポット光からの散乱光は,前記入射スリットにおいて,入射スリットの手前に導入されたシリンドリカル・レンズの光学系を介して入射スリットの幅方向において焦点に絞り込まれて前記入射スリットを通過するものである。これは,回折格子(グレーティング)を使用した分光器で使われている球面鏡のような反射型光学素子により生じる前記PS−PMT上での非点収差を,シリンドリカル・レンズにより補正するものである(上記アの乙16発明の認定を参照)。すなわち,「シリンドリカル・レンズ」の光学系によって,入射スリットにおいて,あえて非点収差を与え,この非点収差によって分光器により生じる非点収差を解消するものであると解される。このように,入射スリットの手前にシリンドリカル・レンズが存在する限りは,それによって非点収差が与えられることにより,サンプルの所与の面の焦点からの散乱光がスリットにおいてスポットとして焦点に絞り込まれることにはならないものと考えられる。しかし,乙31号証には,「凹面鏡で光軸外に集光されることにより生じる非点収差を補正するために,CCDカメラの前に円柱レンズ(図1に図示されない)が用いられた。」(訳文2頁7〜9行)と記載されている(「円柱レンズ」はcylindrical lensの訳)。そして,乙16発明において設けられた「シリンドリカル・レンズ」は,球面鏡のような反射型光学素子により発生する非点収差の補正を行うものであるから,乙31号証の「円柱レンズ」は,乙16発明の「シリンドリカル・レンズ」と機能が同一であると認められる。そうすると,乙16発明の「シリンドリカル・レンズ」の位置を,乙31号証のように単に光検出器の前に移動させることは当業者にとって設計的事項というべきものであり,そのように構\成したことによる格別の効果も存在しない。そして,「シリンドリカル・レンズ」の位置を乙31号証のように光検出器の前に移動させることによって,乙16発明において,サンプルの所与の面の焦点からの散乱光は,入射スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて入射スリットを通過し,サンプルの所与の面の焦点の前または後で散乱される光は,入射スリットにおいて焦点を結ばないことになる。なお,シリンドリカル・レンズが光検出器の前に置かれ,そこで非点収差が与えられるとしても,これはそれによって分光器によって生じた非点収差を解消するためのものであるから,「前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器の所与の領域に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段」という構成要件Dの構\成が阻害されるものではない。したがって,相違点4に係る構成は,当業者にとって容易想到であったと認められる。\n
・・・
乙16発明では,光検出器としてPS−PMT検出器が用いられているが,これは,CCDのようなアナログ検出器とは異なり,PS−PMTがデジタル検出器であり,宇宙線ノイズが入ったとしても,そのエネルギーに比例した応答がされるわけではなく,1カウントと数えられるだけであるため,超微弱信号の検出の目的に沿っているからである(乙16・3頁下から9行〜4頁6行)。回折格子(グレーティング)を使用した分光器では反射型光学素子を使わざるを得ないので非点収差が発生し,二次元検出器上でY方向への像の広がりが大きくなってしまうので,Y方向に信号を積算して(ビンニング),X方向の一次元検出器に変換して使用する。乙16発明では,ビンニングによりノイズを大量に取り込んでしまうと感度が低下するという問題が発生するために,非点収差を補正して,ビンニングされる素子の数をできるだけ減らすことによりノイズの取り込みを抑えるものである(乙16・4頁10行〜5頁2行)。ビンニングされる素子の数をできるだけ減らすことによりノイズの取り込みを抑えるという効果は,「PS−PMT検出器の場合により顕著である。」(乙16・4頁下から4〜3行)とされているが,CCDの場合にこの効果が生じないとされているわけではない。そして,乙16号証には,量子効率の絶対値や赤外域の感度などを重んじるならばCCD検出器の方が優れているなど,目的によって選択は異なってくることが記載されている(4頁6〜8行)。以上に照らすと,乙16発明において,PS−PMTに代えて,CCD検出器を採用することは当業者にとって容易に想到できることであったと認められる。これに対し,原告らは,超微弱信号の検出以外の目的でCCD検出器を用いることがあるとしても,かかる目的の場合は乙16発明を用いる必要はないから,乙16発明においてCCD検出器を用いる動機付けはないなどと主張する。しかしながら,PS−PMTを用いた乙16発明が超微弱信号の検出で有利であるとしても,上記のとおりCCD検出器の方が優れている部分もあるのであるから,他の目的のために,検出器をCCDに置換することが考えられるのであって,原告らの主張は採用できない。

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平成20(ワ)38602  特許権 民事訴訟 平成25年04月19日 東京地方裁判所

 特許権侵害事件です。審査中に行った補正が特許後に要旨変更と認定され、出願日が繰り下がり、特許無効と判断されました。
 旧特許法41条の規定中,「願書に最初に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」とは,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内」においてするものということができるというべきところ,上記明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項は,必ずしも明細書又は図面に直接表現されていなくとも,明細書又は図面の記載から自明である技術的事項であれば,特段の事情がない限り,「新たな技術的事項を導入しないものである」と認めるのが相当である。そして,そのような「自明である技術的事項」には,その技術的事項自体が,その発明の属する技術分野において周知の技術的事項であって,かつ,当業者であれば,その発明の目的からみて当然にその発明において用いることができるものと容易に判断することができ,その技術的事項が明細書に記載されているのと同視できるものである場合も含むと解するのが相当である。これを本件においてみるに,前記のとおり,本件発明は,「交換システム」が備える「第2の手段」において,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する」構\成(本件構成)を有するものである。そして,前記(1)のとおり,本件発明の要旨の認定に関しては,本件構成における「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信されるように入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段」にいう「交換システムから送信される」,「交換システムで受信される」,「交換システムが送信する」の各文言は,交換システムの出入口における送受信の制御のみならず,交換システムの内部における送受信の制御という動作をも含んでいると解されるものの,その文言解釈上,第一義的には,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する手段」と解釈される。これに対し,本件当初発明にはこのような記載はもともと存せず,本件構\成のうち上記解釈される部分は本件補正によって新たに追加された構成である。・・・したがって,プロセッサからボコーダに送信される時刻を制御する技術的事項を開示するにすぎない本件当初明細書等には,本件構\成のうち,交換システムの出口から送信する時刻を制御する技術的事項については何ら記載されておらず,また,本件当初明細書の記載から自明である技術的事項であるということできない。以上によると,本件補正は,本件当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるとは認められないから,本件補正は,旧特許法41条所定の「明細書又は図面に記載した事項の範囲内」においてするものということはできず,要旨変更に該当するものというほかない。
・・・・
 これを本件についてみるに,前記3のとおり,本件当初明細書等の発明の詳細な説明と,本件明細書等の発明の詳細な説明の記載は,その技術内容に係る記載において異なるものではなく,したがって,本件発明における構成要件F2(本件構\成)のうち,「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する手段」と解釈される部分は,本件明細書等の発明の詳細な説明に記載のない事項であり,入トラヒックを交換システムの出口が送信する時刻を制御する技術的事項につき,出願当時の技術常識からみても,当業者がそれを正確に理解でき,かつ過度の試行錯誤を経ることなく発明を再現することができるだけの記載があるとはいえないから,本件発明は,平成6年法律第116号附則6条でなお従前の例によるとされる特許法36条4項の実施可能要件を満たしておらず,本件発明1及び2に係る特許はいずれも特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。\n

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平成24(ネ)10092 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年04月11日 知的財産高等裁判所 

 間接侵害(特許法101条1号)について、専用品であるとの1審認定が維持されました。また、被告の無効主張は、時期に後れた抗弁としての却下はせず、採用したものの、最終的には無効理由無しと判断しました。
 第1審被告は,本件回転板が被告装置のために必須であるからといって,必ずしも本件発明を実施しないで使うことが使用形態として認められないというわけではなく,本件プレート板を使用しない形態が被告装置の経済的,商業的又は実用的な使用形態と認めることはできないとした原判決の認定は,事実を無視したものである,特許法101条1号は,他の用途がないことを要件とするものであって,「全く使用しないという使用形態」が要件となるわけではないし,本件プレート板を使用するか否かは,ユーザーの選択に委ねられているなどと主張する。しかしながら,特許法101条1号は,その物自体を利用して特許発明に係る物の生産にのみ用いる物についてこれを生産,譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものであるところ,同号が,特許権を侵害するものとみなす行為の範囲を,「その物の生産にのみ用いる物」を生産,譲渡等する行為のみに限定したのは,そのような性質を有する物であれば,それが生産,譲渡等される場合には侵害行為を誘発する蓋然性が極めて高いことから,特許権の効力の不当な拡張とならない範囲でその効力の実効性を確保するという趣旨に基づくものであると考えられる。このような観点から考えれば,その物の生産に「のみ」用いる物とは,当該物に経済的,商業的又は実用的な他の用途がないことが必要であると解するのが相当である。そうすると,本件回転板及び本件プレート板は,本件発明における「共回り防止装置」の専用部品であると認められる以上,これらにおいて,経済的,商業的又は実用的な他の用途は認め難く,したがって,本件回転板及び本件プレート板は,「その物の生産にのみ用いる物」に当たるといわざるを得ない。したがって,被告装置が本件プレート板を用いないで使用することが可能であることは,本件回転板及び本件プレート板が被告装置の生産にのみ用いる物に該当するとの判断を左右するものではない。
・・・・
 アの認定事実によれば,原審において,第1審被告は,被告装置は本件発明の技術的範囲に属しないと考え,無効の抗弁を提出しなかったところ,その後,第1審被告の予想に反して損害論の審理が行われるに至ったため,無効の抗弁を提出しようとしたが,原審裁判所は時機に後れたものとしてこれを認めなかったものと認められる。ウ 第1審被告は,当審において無効の抗弁を提出し,無効理由として,1)特許法36条違反,2)乙38文献に記載された発明に基づく容易想到性,3)本件発明と乙3文献に記載された発明との同一性について主張するが,特許法36条違反については,本件明細書等の記載を速やかに検討すれば早期に主張が可能であったものといえること,乙3文献は,平成22年9月1日の原審第1回口頭弁論期日において書証として提出されており,また,乙38ないし40の各文献は,平成24年5月9日の原審第12回弁論準備手続期日において書証として提出されたものであること(なお,乙39文献は第1審被告の出願に係る公開特許公報である。)からすると,原審裁判所が時機に後れたものとして主張を許さなかった無効の抗弁を当審に至って提出することは,時機に後れたものというほかない。そして, 無効の抗弁の提出が時機に後れた理由は,本件発明の技術的範囲に属するか否かについて,自らの主張が正しいと信じていたというにすぎないというのであるから,第1審被告には重大な過失が認められるといわざるを得ない。しかしながら,当事者双方は無効の抗弁について主張立証の追加を求めず,当裁判所は,平成25年3月14日の当審第1回口頭弁論期日において,弁論を終結したものである以上,無効の抗弁の提出が「訴訟の完結を遅延させる」(民訴法157条1項)ものとは認められず,また,「審理を不当に遅延させることを目的として提出された」(特許法104条の3第2項)とまで認めることはできない。よって,第1審被告による無効の抗弁の提出は,時機に後れた攻撃防御方法の提出として,これを却下することはできない。

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平成23(ネ)10087 特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権 民事訴訟 平成25年03月05日 知的財産高等裁判所

 侵害との主張に対して、1審は特許無効とされるべきとして、請求を棄却し、その控訴審も棄却しました。1審弁論手続き終了後に、並列進行していた特許無効審判において、訂正がなされ、無効でないとの審決がなされました。本件、原告は、1審にてかかる主張を行いましたが、裁判所は時期に後れた抗弁としてこれを却下しました。控訴審では、上記審決が、審決取消訴訟にて取り消されたことも考慮したのか、時期に後れた抗弁については言及せず、訂正後の発明についても進歩性なしとして、請求を棄却しました。
 本件訂正発明1にいう「特定挙動」は前記のとおり「事故につながるおそれのある危険な操作に伴う車両の挙動」であって交通事故の発生を前提とするものではない(交通事故が発生しない場合も含む)が,本件訂正発明1においても,例えばセンサ部から得られる角速度等のデータが所定の閾値を超えたか否かによって「特定挙動」の有無が判定されるから(本件訂正明細書の段落【0030】,【0034】,【0050】,図2,3等),装置の機能の面に着目すれば,本件訂正発明1において「特定挙動」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構\成は,上記周知技術において「交通事故」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構成と実質的に異なるものではない。加えて,上記周知技術と引用発明1とは,属する技術分野が共通し,前者を後者に適用するに当たって特段障害はないから,本件優先日当時,かかる適用を行うことにより,当業者が本件訂正発明1,2にいう「特定挙動」の発生前後の所定時間分の車両の挙動に係る情報を収集,記録する構\成に想到することは容易であるということができる。以上のとおり,乙第6号証記載の引用発明1に,「特定挙動」の発生前後の車両の挙動に係る情報を収集する条件を記録媒体に記録,設定する乙第2号証記載の発明と,「特定挙動」に相当する一定の契機(交通事故等)の発生前後所定時間分の車両の挙動に係る情報収集をする乙第1,第8,第11号証の1ないし5記載の周知技術を適用することにより,本件優先日当時,当業者において,相違点Aに係る構成に容易に想到することができたというべきであり,本件訂正発明1は進歩性を欠く。\n

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平成23(ワ)16885 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年01月30日 東京地方裁判所

 特許発明の技術的範囲に属するが,本件特許は無効理由有りとして、請求棄却されました。
  ところで,乙6の【0007】には,「一般的に,望遠ズームレンズは,第1レンズ群が最も大型のレンズ群であり,フォーカシング時に繰り出されることが多い。このため,第1レンズ群を…補正光学系にすることは,保持機構及び駆動機構\が大型化し好ましくない。従って,本発明における正負負正負タイプも同様に,第1レンズ群を防振補正光学系にするのは好ましくない。」と記載されているから,第1群フォーカス方式が開示されていると解されるが,上記の「本発明」に対応する請求項1は,フォーカス方式を特定していない。そして,乙6発明の技術的意義に照らすと,乙6発明において第1群フォーカス方式であることが必須の前提であるとは解されない。そうすると,乙6発明は,第1群フォーカス方式以外のフォーカス方式を排除していないというべきである。また,証拠(乙8〜10)によれば,ズームレンズの技術分野において,1群フォーカスでは大型の構造になる欠点があるために,インナーフォーカスとすることは周知であることが認められる(乙8の【0003】,乙9の(従来の技術),乙10の[従来の技術と課題])。以上のとおり,乙6発明は第1群フォーカス方式の態様を含むのであり,上記の周知技術に照らすと,第1群フォーカス方式の態様において大型の構\造になるという課題を当業者は認識できる。
 (ウ) 乙7には,上記アのとおり,望遠レンズにおいては,第1レンズ群以外の比較的レンズ系の小さなレンズ群を光軸上移動させてフォーカスを行う内焦式フォーカス方式(インナーフォーカス方式)を用いている場合が多いことが記載されるとともに,インナーフォーカス方式を用いた望遠レンズにおいて,一部のレンズ群を偏芯させて防振を行うと,偏芯収差の発生量が著しく多くなり,特にフォーカスに際しての偏芯収差の発生量の変動が多くなり撮影画像の光学性能を著しく低下させる原因となっていることが記載されている。そして,上記の周知技術に照らすと,当業者は,乙7では,第1群フォーカス方式のレンズが従来技術と位置付けられているとともに,その課題を解決するためにインナーフォーカス方式が採用されてきたことに加え,インナーフォーカス方式における防振レンズでは,撮影画像の光学性能\を著しく低下させるとの課題が生じることが示されていると認識できる。
 (エ) そして,乙6と乙7はともに,本件特許発明の属する像シフトが可能なレンズの技術分野に属するものであるから,当該技術分野の当業者は,乙6と乙7とに同時に接することができる。そうすると,当業者は,1群フォーカス方式の態様を含む乙6発明において,1群フォーカス方式の欠点を解消するとともに,撮影画像の光学性能\を著しく低下させることのない防振レンズを構成するとの課題を認識することができるから,その課題を解決するために乙7発明を適用する動機付けがあると認められる。したがって,乙6発明に乙7発明を組み合わせることは容易であると認められる。\n

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平成24(ネ)10030 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年01月30日 知的財産高等裁判所

 侵害訴訟について侵害成立を認めた1審判断が維持されました。1審被告の無効主張は時期に後れた抗弁として採用されませんでした。
 以上のように,原審の受命裁判官は,第1回弁論準備手続期日において控訴人らに対し無効論の準備をするように指示し,控訴人らは,本件訴訟の提起(平成20年11月19日,同月25日訴状送達)から2か月以上後の平成21年2月6日付け第1準備書面により,本件特許1及び本件特許2の請求項1,3,5について最初の無効主張を行い,同年6月12日付け準備書面(4)により請求原因に追加された本件特許2の請求項7,8については,追加から約3か月後である同年9月18日付け第8準備書面により最初の無効主張を行っている。そして,平成22年2月5日の第8回弁論準備手続期日において,受命裁判官は,本件各特許について無効理由の追加は原則として認めないとし,同年6月14日(本件主張期限)の第11回弁論準備手続期日におい当事者双方により技術説明が実施され,原審裁判所は,以後,侵害論についての主張立証の追加は認めないとしたものである。上記原審の審理経過によれば,原審裁判所が侵害論についての主張立証の追加は認めないとした平成22年6月14日(本件主張期限)は,本件訴訟の提起から1年6か月以上後で,本件特許2の請求項7,8が請求原因に追加されてから約1年を経過し,しかも,受命裁判官が無効理由の追加は原則として認めないとした第8回弁論準備手続期日からも4か月以上を経過しているのであるから,侵害論の主張を制限する期間として短すぎるとは認められない。控訴人らは,505号明細書を主引用例とする無効主張は,本件発明2−7,2−8とほとんど同じ構成の発明が記載されたものであること等を理由に,その主張立証は訴訟の完結を遅延させることとなるものではないと主張する。しかしながら,同無効主張を審理するためには,505号明細書に記載された技術事項及びこれに基づく容易想到性の論理付け等について被控訴人に反論反証の機会を与えなければならず,そのためには相当の期間を要するものと認められ,訴訟の完結を遅延させることは明らかである。また,控訴人らは,505号明細書は米国特許明細書であるから,提出が後れたことはやむを得ないものであった旨主張する。しかしながら,本件主張期限(平成22年6月14日)は本件訴訟の提起から1年6か月以上後である上,505号明細書を主引用例とする無効主張が記載された第25準備書面の提出及び505号明細書の証拠申\出がされたのは,更にその10か月以上後の平成23年5月9日であって,米国特許明細書であることを考慮しても,その提出がこの時期に至ったことにやむを得ない事情があったと認めることはできず,控訴人らの主張は理由がない。控訴人らは,無効61号事件において被控訴人が訂正請求を遅延させたために不利益を被った旨主張する。しかしながら,無効61号事件における訂正請求の内容は,無効190号事件における平成21年12月24日付け訂正請求と同一であり,被控訴人は,同訂正を内容とする訂正の対抗主張を,同年11月20日付け準備書面(11)によりしていたのであるから,本件訴訟において,無効61号事件における平成23年11月4日付け訂正請求が控訴人らに不利益を与えたということはできない。原審追加無効主張(平成22年12月15日付け第24準備書面,平成23年5月9日付け第25準備書面,同年8月4日付け第27準備書面及び同月30日付け第28準備書面による主張)及びこれらに係る上記各証拠は,いずれも本件主張期限から6か月以上も経過した後に提出されたもので,提出が当該時期となったことにやむを得ない事情は認められないから,控訴人らは,少なくとも重大な過失によりこれらの主張立証を時機に後れて提出したものというべきであり,かつ,これにより訴訟の完結を遅延させるものと認められる。したがって,原審追加無効主張を時機に後れた攻撃防御方法であるとして却下した原審裁判所の判断に,誤りはない。
(ウ) 当審においても,原審追加無効主張は,上述したのと同様の理由により少なくとも重大な過失により時機に後れて提出されたものというほかなく,かつ,これにより訴訟の完結を遅延させるものであることも明らかである。控訴人らは,本件のように改正法の公布,施行時をまたいで係属していた事件について,無効主張を時機に後れた攻撃防御方法として却下すると,控訴人らは予想外の著しい不利益を被ることになるなどと主張する。しかしながら,上記イに認定した原審の審理経過によれば,控訴人らには無効主張を提出する十\分な期間があったというべきであるから,控訴人らの主張を採用することはできない。よって,当審において提出された控訴人らの原審追加無効主張は,民事訴訟法157条1項によりこれを却下する。

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平成23(ネ)10080 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年11月14日 知的財産高等裁判所

 経緯が複雑です。1審では無効理由有りとして権利行使不能(特104条の3)と判断されました。権利者は控訴するとともに、訂正をしましたが、訂正要件を満たしていないので、訂正は認められないとして、1審と同じく請求棄却されました。 この侵害訴訟と並列に、無効審判でも争われています。特許庁は無効理由無しとしましたが、知財高裁はこれを取り消しました。特許権者は訂正請求し、特許庁は訂正を認めたうえ、無効理由無しと判断しました。これについても訂正要件を満たしていないので、訂正は認められないと判断されました。
 ウ 以上のとおり,本件明細書の全ての記載を総合しても,「前記長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の一種または二種以上」としてラウリルメタクリレート又はステアリルメタクリレートが必須であること及び「前記他の重合性ビニル単量体の一種または二種以上」としてメチルメタクリレートが必須であること並びにラウリルメタクリレート又はステアリルメタクリレート,及びメチルメタクリレートと,これらの物質にそのほか任意に重合性ビニル単量体を付加した構成とがいずれも機能\上等価であることに関する技術的事項が導き出せない以上,訂正事項1及び2により,多種類の他の化合物と同列に例示されていたにすぎないラウリルメタクリレート又はステアリルメタクリレート,及びメチルメタクリレートを必須のものとして含むように本件特許発明を訂正することは,本件明細書の実施例10及び11を上位概念化した新規な技術的事項を導入するものというべきであり,許されるものではない。
 エ この点について,控訴人は,1)ラウリルメタクリレート又はステアリルメタクリレート,及びメチルメタクリレートは,いずれも本件特許発明における発明特定事項の下位概念としての具体的単量体であり,訂正事項1及び2により,具体的単量体を必須成分とした発明に減縮されることから,訂正事項1及び2は,特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する,2)本件訂正は,本件明細書に当初から開示されていた顕著に優れた効果について,「液晶パネル点灯時の光抜け防止」の特に優れた具体的効果を奏する構成として特定したにすぎず,本件特許発明の技術的評価を変容させるものではないなどと主張する。しかしながら,本件明細書において,ラウリルメタクリレート又はステアリルメタクリレート,及びメチルメタクリレートは,多種類の他の化合物と同列に例示されていたにすぎず,「前記長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の一種または二種以上」としてラウリルメタクリレート又はステアリルメタクリレートが必須であること及び「前記他の重合性ビニル単量体の一種または二種以上」としてメチルメタクリレートが必須であること並びにラウリルメタクリレート又はステアリルメタクリレート,及びメチルメタクリレートと,これらの物質にそのほか任意に重合性ビニル単量体を付加した構\成とがいずれも機能上等価であることに関する技術的事項が本件明細書に開示されていない以上,具体的単量体を必須成分とした発明に特定することをもって,訂正事項1及び2が訂正要件を充足するものということはできない。また,ラウリルメタクリレート又はステアリルメタクリレート,及びメチルメタクリレートを必須のものとして含むように訂正することこそが,新たな技術的事項を導入するものというべきである以上,本件訂正が,本件明細書に当初から開示されていた顕著に優れた効果について,「液晶パネル点灯時の光抜け防止」の特に優れた具体的効果を奏する構\成として特定したものであるか否かは,前記ウの判断を左右するものではない。

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◆原審はこちらです。平成21(ワ)30094号

◆こちらは訂正取消審決です。平成23(行ケ)10431

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平成23(ワ)8218 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年11月15日 大阪地方裁判所

 侵害訴訟にて、無効抗弁が認められ、非侵害と判断されました。
 乙1発明を本件特許発明と対比すると,1)乙1発明の「基板」は本件特許発明の「載置板」に,2)乙1発明の「金属ケース」は本件特許発明の「ケース層」に,3)乙1発明の「開口」部分は,本件特許発明の「接続挟持層」に,4)乙1発明の「基板」の底表面と「金属ケース」との間に存在する層は本件特許発明の「板底挟持層」に,5) 乙1発明の「接触子」は本件特許発明の「第1接続端子」に,6)乙1発明の外部電子機器に設けられた接続端子は本件特許発明の「第2接続端子」に,7) 乙1発明の基板の底表面に固定された「電子素子」は本件特許発明の「電子装置」に,それぞれ相当することが認められる。したがって,乙1発明は,USB規格に基づくものであるか否かが明らかではないものの,その他の点では本件特許発明と同一の構\成であると認めることができる(原告も明らかに争っていない。)。乙1文献には,プラグの規格に関する記載が見当たらないものの,USB規格を除くなど,限定的に解釈する理由は見当たらない。かえって,乙6によれば,本件優先日(平成16年11月1日)当時,USB規格は広く知られていたことが認められる。前記(1)図1,図2aのプラグの形状からしても,乙1文献に接した当業者は,乙1発明におけるプラグの規格として,USB規格も想起したことが明らかである。乙1文献のプラグの規格にUSB規格を採用することについて,何らかの阻害要因が存したことを窺わせる事情もない。そうすると,上記相違点に係る本件特許発明の構成(プラグがUSB規格によったものであること)は,実質的に乙1文献に記載されているものと同視することができる。したがって,本件特許発明は,乙1発明と同一であると認められる。\n2 争点6(訂正の再抗弁1)について 原告は,乙1発明に本件訂正発明の構成要件訂正I及び訂正Jが記載されていないから,本件訂正によって前記1の無効理由が解消される旨主張する。しかしながら,以下のとおり,乙1発明に本件訂正発明の構\成要件訂正I及び訂正Jが記載されていないとは認めることができない。結局,前記1で述べたところを総合すると,本件訂正発明も,乙1発明と同一であると認めることができる。
(1)本件訂正発明の構成要件訂正I
本件訂正発明の構成要件訂正Iは「前記板底挟持層内の一部に該板底挟持層の変形を防止するための支持装置を設け,」というものである。前記1(1)の乙1文献に記載された各図には,基板1のコネクタ11側の端部を支持する金属ケース3の開口部に設けた部材(図2bの左端下側の斜線で描かれた階段状部分)が図示されている。当該部材は,基板1の厚みを有する段を備え,基板1のコネクタ11側の端を幅全体にわたって支持するものである。そうすると,当該部材の上記構成自体からして,基板1を支持することで乙1発明の基板1の底表\面と金属ケース3とで画定される層(本件訂正発明の「板底挟持層」に相当)の変形を防止するものであることは明らかである。したがって,上記部材は,本件訂正発明の構成要件訂正Iの「支持装置」に相当するものであると認めることができるから,乙1文献には,本件訂正発明の構\成要件訂正Iが記載されているものというべきである。
(2)本件訂正発明の構成要件訂正J
本件訂正発明の構成要件訂正Jは,「該板底挟持層の外界との接続面のみに前端保護層を設けたことを特徴とする,」というものである。前記1(1)の乙1文献に記載された各図には,基板1のコネクタ11側の端部を支持する金属ケース3の開口部に設けた部材(図2bの左端下側の斜線で描かれた階段状部分)が図示されている。そして,当該部材の上記構成自体から,乙1発明の基板1の底表\面と金属ケース3とで画定される層(本件訂正発明の「板底挟持層」に相当)の外界との接続面のみに設けられた部材であることは明らかである。そうすると,上記部材は,本件訂正発明の構成要件訂正Jの「前端保護層」に相当する構\成であると認めることができるから,乙1文献には,本件訂正発明の構成要件訂正Jが記載されているものというべきである。\n

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平成23(ワ)24355  特許権 民事訴訟 平成24年10月30日 東京地方裁判所

 技術的範囲に属する、間接侵害を構成する、無効理由無しとして、差止請求のみの請求が認められました。経緯は以下の通りです。無効審判請求に対して、訂正請求がなされ、審判では無効と判断されました(第1次審決)。取消訴訟が提起され、知財高裁はこれを取り消した。差し戻し後、無効理由無しとした審決がなされました。
 本件訂正発明1の特許請求の範囲(本件訂正後の請求項1)の記載中には,「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部」との記載があり,「発光部」が発光する「光」は,「受光手段に投光するための光」であると規定しているが,この「光」を特定の領域の波長に限定したり,可視光に限定する旨の文言は存在しない。加えて,甲18(岩波理化学辞典(第5版))に,「光」は,「可視光線に限定することもあるが,ふつうは紫外線,赤外線をあわせ波長が約1nm〜1mmの範囲にある電磁波を光とよぶ。」との記載があること,本件訂正明細書(甲24)の「発明の詳細な説明」中には,本件訂正後の請求項1の「光」の用語を定義する記載や,この用語を普通の意味とは異なる特定の意味で使用することを説明した記載がないことに照らすならば,本件訂正後の請求項1の「光」は,その文理上,可視光に限定されるものではなく,赤外線を含むものと解される。
b 次に,本件訂正後の請求項1の文言,前記(イ)の本件訂正明細書の「発明な詳細の説明」の記載事項及び各図面を総合すれば,本件訂正明細書には,i)従来,キャリッジに複数のインクタンクを搭載して使用する記憶装置としてのプリンタにおいては,インクタンクの誤装着を防止するために搭載位置を特定する構成として,インク色に対応するインクタンクの搭載位置を定めた上,搭載部とインクタンクが係合する相互の形状を搭載位置ごとに異ならせ,他のインク色のインクタンクが装着できないようにする構\\成や,インクタンクの電気接点とキャリッジ等の搭載位置における本体側の電気接点とが接続して形成される回路の信号線を,搭載位置ごとに個別のものとし,この個別の信号線を用いてインクタンクからインク色情報を読み出し,インクタンクが正しい位置に装着されているか否かを検出する構成が提案されていたが,これらの構\\成では,インク色ごとに異なる形状のインクタンクを製造したり,信号線の配線数を増す必要があり,コスト増の要因となるなどの課題があったこと,ii)一方で,信号線の配線数を削減するための配線方式としては,複数のインクタンクと記録装置との間に共通の信号配線を用いる共通バス接続方式が有効であるが,共通バス接続方式を採用した場合,全てのインクタンクからの信号が共通の信号配線で送信されてくるため,インクタンクからの信号を受信しただけでは当該インクタンクがキャリッジ内に装着されていることを検出することはできても,その搭載位置を特定することができず,それが正しい搭載位置に装着されているか否かを検出できないという課題があったこと,iii)本件訂正発明1は,共通バス接続方式を採用しながらも,各インクタンクがインク色に応じてキャリッジの所定の位置に正しく装着されているか否かを検出することを目的とし,上記課題を解決するための手段として,キャリッジに搭載された複数のインクタンクにそれぞれのインク色情報を保持可能な情報部と,本体側の記憶装置に設けられた受光部に投光するための光を発光する発光部と,その発光を制御する制御部とを設け,インクタンクが受光部に対向する位置で発光する場合には受光部が受光できるようにし,キャリッジを相対移動させることにより,所定の位置で各インクタンクと受光部とを対向させ,本来装着されるべき位置のインク色のインクタンクを順次発光させ,受光部が受光できたときは当該インク色のインクタンクが本来の正しい搭載位置に装着されていると判断し,受光部が受光できなかったときは受光部に対向する位置には誤ったインク色のインクタンクが装着されていると判断するという「光照合処理」(前記(イ)i)の方法を採用することにより,共通バス接続方式を採用しつつインクタンクの装着位置の誤りを検出するという作用効果を奏するようにした点に技術的意義があることが開示されているものと認められる。そして,上記「光照合処理」は,インクタンクの発光部が発する光が赤外線であっても行うことができること(甲3ないし12)からすると,本件訂正発明1の上記技術的意義に鑑みても,本件訂正発明1の「光」から赤外線を除外すべき理由はない。

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平成23(ワ)6980 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年11月01日 大阪地方裁判所 

 技術的範囲に属する、間接侵害品に該当すると認定されましたが、104条の3により権利行使不能と判断されました。
 構成要件A3は,「当該接触検出回路で接触体(5)と被加工物又は工具ないし工具取付軸との接触を電気的に検出する位置検出器において」というものであるが,「接触検出回路」が「接触体」と「被加工物又は工具ないし工具取付具」との「接触」を「検出」する方法につき,「電気」や「電流」によって検出するとはせず,「電気的に」検出するとしている。一般に「的に」との用語を名詞の語尾に付けた場合,それそのものではないが,それと似た性質を持つものを含めた語感を持つことになるところ,「電気的に検出する」との表現は,「接触検出回路」が接触体,被加工物等及び位置検出器本体を流れた電流を直接検出する場合のみを指すのではなく,電気と似た性質を持つ媒体を介在させて検出した場合も含んだものと解するのが文言上自然である。イ 本件明細書の記載及び技術常識本件明細書においても,「接触体」と「被加工物又は工具ないし工具取付具」との「接触」を「検出」する方法につき,接触体,被加工物等及び位置検出器本体を流れた電流を直接検出するものに限定する記載はない。むしろ,本件特許発明は,接触体に通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁化することに伴う誤差発生防止を課題として掲げるものであることに照らせば,位置検出の過程で接触体への通電を利用する構成であれば足り,「接触検出回路」がその電流を直接検出しているか否かで技術的範囲の属否を左右させる合理的理由は見出しがたいというべきである。
ウ 被告の主張について
被告は,「電気的に検出する」の意味につき,接触体と被加工物との間に流れる電気を直接に検出する構成に限定されると主張するが,あえて「的に」という幅を持たせる文言が使用されていることと整合しない解釈といわざるを得ず,採用できない。
エ 小括
以上によると,構成要件A3の「電気的に検出する」とは,「接触検出回路」が接触体,被加工物等及び位置検出器本体を流れた電流を直接検出する場合のみを指すのではなく,電気と似た性質を持つ媒体を介在させて検出した場合も含んでおり,電磁気学の技術常識に照らし,少なくとも磁気を介在させて検出した場合を含むと解するのが相当である。そして,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器の構\成ロa3は,「前記励起コイルをもって励起されている本体及び接触体と被加工物であるワークとの接触を,前記接触体,前記ワーク,及び機械主軸により閉ループ回路が形成されることにより,前記検出コイルに誘電電流が流れ,電気的に検出する位置検出器」であるが,接触体,被加工物等及び位置検出器本体を流れた電流の電磁誘導によって検出コイルに誘導電流を流し,接触検出回路がこれを検出するというものである。そうすると,被加工物等との接触によって接触体などを流れた電流と接触検出回路が直接検出する電流との間には,磁気が介在することになるが,上記のとおり解釈したところの「電気的に検出する」構成といえる。したがって,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は,「接触検出回路」が,接触体と被加工物等との接触を「電気的に検出する」ものであり,構\成要件A3を充足する。
(4) 構成要件A2の充足性
原告は,構成要件A2の「接続」につき,物理的に有線で接触している場合だけでなく,相互に情報を交信できるような状態をも含むと主張するのに対し,被告は,接触検出回路が接触体と直接電気的に接続されていることが必要とされている旨主張するので,この点を検討し,充足性を判断する。
ア 特許請求の範囲の記載
構成要件A2は,「当該接触体に接続された接触検出回路(3,4)とを備え,」というものであるが,「接続」の意味を明示的に表現する記載はない。しかし,特許請求の範囲の記載全体に照らして考えれば,「接触体」と「接触検出回路」の「接続」は,「接触検出回路」が「接触体」と「被加工物又は工具ないし工具取付軸」との「接触」を「電気的に検出する」ことを可能\とするために必要とされる構成であることが読み取れる。そうすると,「接触体」と「接触検出回路」との「接続」は,上記「接触」を「電気的に検出する」ことが可能\な構成であることを求めているとはいえるものの,接触検出回路が接触体と直接電気的に接続されている,つまり,接触体に流れた電流が接触検出回路に直接流れるような構\成であることまでは求めていないと解される。
イ 本件明細書の記載
本件明細書において,「接続」の意味や射程を説明する記載は特にない。しかし,本件特許発明は,接触体に通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁化することに伴う誤差発生防止を課題として掲げるものであることに照らせば,「位置検出回路」が「接触体」と「被加工物」等との「接触」という情報を,「接触体」への通電を利用して「検出」できるものであることが必須であるところ,「接触体」と「接触検出回路」との「接続」も,かかる情報伝達が可能な構\成を求める趣旨であると解して矛盾はない一方,接触体に流れた電流が接触検出回路に直接流れるような構成に限定する合理的理由は見出しがたい。
ウ 被告の主張について
被告は,「接続」につき,接触検出回路が接触体と直接,電気的に接続されていることが必要とされている旨主張するが,その主な根拠としては,この「接続」が,構成要件A3の「電気的に検出する」の前提となる構\成であることを挙げる。この点,「接続」が「電気的に検出する」の前提として必要とされる構成であることは被告の指摘のとおりである。しかし,「電気的に検出する」の解釈につき,被告の主張が採用できないことは,前記(3)において論じたとおりであり,「電気的に検出する」を前記(3)のとおり解釈する以上,その前提となる「接続」についても,前記ア,イのとおり理解するのが一貫性のある解釈といえる。したがって,被告の主張は採用できない。
エ 小括
以上によると,「当該接触体に接続された接触検出回路」の「接続」は,「接触検出回路」が「接触体」と「被加工物」等との「接触」という情報を,前記(3)で示した意味で「電気的に検出する」ことを可能とする情報伝達の構\成をとっていることを求めているものの,接触体に流れた電流が接触検出回路に直接流れるなど,物理的なつながりは求めていないと解するのが相当である。
・・・
(1) 特許法101条1号
証拠(甲2〜4)によれば,ハ号スタイラスは,これを備え付けても本件特許発明の技術的範囲に属することにはならない内部接点方式の位置検出器とも適合性を有することが認められるから,本件特許発明の技術的範囲に属する製品の生産に「のみ」用いる物(特許法101条1号)であるとはいえない。この点,原告は,ハ号スタイラスを内部接点方式の位置検出器に用いることは,社会通念上経済的,商業的ないしは実用的であると認められる用途に当たらないため,「その物の生産にのみ用いる」との要件を否定する理由にはならない旨主張する。確かに,内部接点方式の位置検出器では接触体は通電されないため,その接触部の磁化による測定誤差発生という課題はなく,接触部を非磁性体とした接触体を使う必要性に欠ける。しかし,ハ号スタイラスは,超硬合金であることに由来し,被加工物等との接触を繰り返すことで摩耗や変形による測定誤差が生じることを防止するという作用効果も有するのであるから,内部接点方式の位置検出器であっても,ハ号スタイラスを装着させる実用性は肯定されるというべきである。したがって,原告の主張は採用できない。
(2) 特許法101条2号
ア ハ号スタイラスは,本件特許発明の技術的範囲に属するハ号スタイラスを装着したイ号検出器及びハ号スタイラスを装着したロ号検出器の生産に用いるものである。加えて,本件特許発明は,その課題として,通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁性化して誤差が発生することを防止するとともに,接触体が被加工物等との当接離隔を繰り返すことで摩耗や変形による測定誤差が発生することを防止することを掲げ,その解決方法として,「接触体(5)の接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で形成されている」(構成要件B)との構\成を採るものである。そうすると,「接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる弱磁性として非磁性材であるHAN6で形成されている」(構成イb,ロb)ハ号スタイラスは,まさに本件特許発明の掲げる課題を解決する構\成を成しているといえる。したがって,ハ号スタイラスは,「物の発明」である本件特許につき,「その物の生産に用いる物」であり,かつ「その発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条2号)といえる。イ そして,原告は,被告に対し,平成22年12月3日付の「催告書」と題する書面を送付し,被告はこれを遅くとも同月6日には受領したが,同書面には,本件特許の特許番号,登録日,本件特許発明の構成要件に加え,イ号検出器が本件特許権を侵害することなどが記載されていた(乙1,弁論の全趣旨)ところ,被告は同日以降,本件特許発明が「特許発明であること」及びハ号スタイラスが「その発明の実施に用いられること」を知っていた(特許法101条2号)といえる。ただし,同日より前の時点で,被告がそれら事実関係を知っていたと認めるに足りる証拠はない。
ウ 一方,被告は,ハ号スタイラスにつき,間接侵害(特許法101条2号)の除外要件である「日本国内において広く一般に流通しているもの」に当たる旨主張する。確かに,ハ号スタイラスの用途は,これを備え付けた場合に本件特許発明の技術的範囲に属することになるイ号検出器及びロ号検出器に限定されているわけではなく,本件特許発明の技術的範囲に属さない内部接点方式の位置検出器とも適合性を有するものではある(甲2〜4)。しかし,結局のところその用途は,位置検出器にその接触体として装着することに限定されており,この点,ねじや釘などの幅広い用途を持つ製品とは大きく異なる。また,そのような用途の限定があるため,実際にハ号スタイラスを購入するのは,位置検出器を使用している者に限られると考えられる。このような事情を踏まえると,ハ号スタイラスは,市場で一般に入手可能な製品であるという意味では,「一般に流通している」物とはいえようが,「広く」流通しているとは言い難い。また,そもそもこのような除外要件が設けられている趣旨は,「広く一般に流通しているもの」の生産,譲渡等を間接侵害に当たるとすることが一般における取引の安全を害するためと解されるが,上記のように用途及び需要者が限定されるハ号スタイラスにつき,取引の安全を理由間接侵害の対象から除外する必要性にも欠けるといえる。したがって,ハ号スタイラスは「日本国内において広く一般に流通しているもの」に当たらず,この点に関する被告の主張は採用できない。
(3) 小括
以上によると,被告によるハ号スタイラスの製造,販売は,本件特許発明との関係において,平成22年12月6日以降,特許法101条2号の規定する間接侵害の要件を満たすものといえる。
・・・
そこで次に,乙12発明の接触体の接触部について,「非磁性部材」の具体的材質の選択に当たり,乙14文献及び乙24文献の開示する技術的事項を適用して本件特許発明を想到することが容易であったかを検討する。まず本件特許発明の掲げる課題は,通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁化することに伴う測定誤差発生の防止と,接触体と被加工物等との繰り返しの接触による接触体の摩耗や変形に伴う測定誤差発生の防止とであるが,前者は接触体の接触部を非磁性部材とすることで解決される課題であるから,乙12発明で未解決なのは後者の課題のみである。そして,乙12文献内に明示こそされていないものの,通電方式の位置検出器の接触体の接触部は,金属製の被加工物等と繰り返し接触することが当然に想定されていること,被告において,平成元年の時点で既に接触部を超硬合金とする接触体を製造,販売し,現在まで継続していること(甲2〜4,乙19〜23)からすると,接触体の摩耗や変形に伴う測定誤差という課題は,本件特許出願(平成11年4月7日)の時点で,当業者にとって周知の課題であったといえるし,また,その解決手法として,接触体の接触部を超硬合金とすることも周知技術であったといえる。一方,タングステンカーバイトにニッケルを結合材として焼結することで非磁性体の超硬合金が得られるとの技術的事項は,昭和45年には既に文献公知となり(乙24),平成2年頒布の「改訂5版金属便覧」と題する文献にも記載され(乙14),本件特許出願(平成11年4月7日)前に技術常識であったと認められることに加え,本件特許発明と用途や課題が異なるとはいえ,同一の技術分野において本件特許出願前に頒布された文献(乙17,18)中でも,同部材が利用されていた。そうすると,乙12発明の開示する「非磁性部材」の具体的材質を選択するに際し,上記周知課題及び周知技術の下で,「タングステンカーバイトにニッケルを結合材として焼結した非磁性の超硬合金」を選択することは,単に公知材料からの最適材料の選択に過ぎず,当業者の通常の創作能力の発揮であり,当業者が容易に想到することができたものといえる。したがって,乙12発明に,乙14文献及び乙24文献の開示する技術的事項を組み合わせて本件特許発明に想到することは容易であったといえる。
(5) 原告の主張について
この点,原告は,通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁化することに伴う測定誤差発生の防止という本件特許発明の掲げる課題が,乙12文献ほか,本件特許出願前のどの文献にも開示されておらず,本件特許発明に至る動機付けに欠ける旨主張する。しかし,この課題は,乙12文献の開示する乙12発明の構成,つまり,「接触体の接触部を非磁性部材とする」ことで既に解決されているのであるから,当該課題にかかる動機付けがなければ本件特許発明の構\成に至ることができないなどというものではない。言い換えれば,通電方式の位置検出器において,「接触体の接触部を非磁性部材とする」構成は,主引例である乙12文献に開示されているのであるから,かかる構\成へ至るための課題の開示,動機付けの有無を問題とする必要はないといえる。また,「接触体の接触部を非磁性部材とする」構成の具体的な材料選択をする前提として,そのような上位概念で表\現された構成を維持することへの動機付けが求められると解したとしても,あくまで既に公知となっている構\成を維持するだけの動機付けがあるか否かの問題であり,新規の構成へ至る動機付けがあったかが問われるわけではない。通電方式の位置検出器において,「接触体の接触部を非磁性部材とする」ことでその磁性化を防止できることは,乙12文献でその構\成に触れた当業者にとって明らかであるが,通電方式の位置検出器における測定対象は通電性のある物質であること,乙12文献中の上記構成は強磁性の環境下における位置検出器で採用されたものであることからして,接触体の接触部の磁性化を避けることができれば,切削加工等で生じた切粉の付着など磁性化に伴う不都合を回避する効果が得られることも,乙12文献に触れた当業者が予\測し得る範囲内にある。そのため,「接触体の接触部を非磁性部材とする」構成を採る技術的意義は,その構\成自体が示唆するものといえ,これを維持するだけの動機付けがあるといえる。なお,同様の理由により,当業者の予測し得ない顕著な作用効果や用途を見出したともいえず,かかる観点から本件特許発明の進歩性を肯定することも困難である。したがって,課題の示唆がないことを理由として本件特許発明の容易想到性を否定する原告の主張は採用できない。
(6) 小括
以上によると,本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,被告に対し,本件特許権に基づく権利を行使することはできない(特許法104条の3)。

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平成23(ワ)10712 不当利得返還請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年10月18日 大阪地方裁判所

 携帯のワン切り関係の特許について、第1特許については技術的範囲外、第2特許については104条の3により権利行使不能と判断されました。
 前記(ア)の出願経過によれば,原告は,審査官から「前記制御手段は,前記ID番号が前記電話帳メモリに登録されている番号の一つと一致したら着信音を発生させる一方,一致しなければ所定時間だけ着信音を発生させず,その後所定時間経過したら着信音を発生させること」という構成が新規事項に当たるとして拒絶理由通知を受けたことから,この構\\成を含まないものとして手続補正をし,これにより特許査定を受けたものというほかない。前記アの原告の主張は,本件特許発明2−3の構成要件Jの意義について,上記拒絶理由通知を受けた構\\成と同一であるというものにほかならないから,上記出願経過に照らせば,包袋禁反言の法理により許されないものというべきである。
エ 小括
これらのことからすると,本件特許発明2−3の構成要件Jの「着信情報」とは, i)通信端末装置が圏外や電源がオフの場合に,ii) 通信ネットワーク側の交換制御装置に記憶されるものであり,iii) 少なくとも発呼側のID情報及び呼出継続時間情報を含むものをいうと解するほかない。
(2)被告製品の構成
 被告製品について,i) 通信端末装置が圏外や電源がオフの場合に,ii) 通信ネットワーク側の交換制御装置に記憶されるものであり,iii) 少なくとも発呼側のID情報及び呼出継続時間情報を含むものとしての「着信情報」を受信する構成を有する旨の主張立証はない。この場合に,リンガーの発生を制御する構\\成を有する旨の主張立証もない。したがって,被告製品について,本件特許発明2−3の構成要件Jを充足するとは認めることができない。
2 争点3−1(先願発明の有無)について
以下のとおり,本件特許発明1は,乙14発明と同一であると認められる。(1)乙14公報に関する出願明細書には,以下の記載がある。
・・・
乙14発明の各構成は前記(2)のとおりであるが,同発明と本件特許発明1−1ないし1−3を対比すると,1Fを除いた乙14発明の構成が本件特許発明1−1ないし1−3の各構\\成要件と同一であることについて,原告は,これを明らかには争っていない。原告は,前記第3の5【原告の主張】のとおり,発呼側端末のID番号が格納されているのは,本件特許発明1−1では構成要件Fの「電話帳メモリ」であるのに対し,乙14発明では「電話帳及び/又は発信履歴」である点において相違する旨主張する。一般に,「及び」は,名詞相互をつなぎ,それらの指すものに一括して言及する場合に使われる接続詞であるのに対し,「又は」は,i) 複数のうち少なくとも一つが成り立つこと,ii) 複数のうちどれか一つだけが成り立つことをいう場合に使われる接続詞である。そうすると,乙14発明の「電話帳及び/又は発信履歴」という文言からすれば,電話帳と発信履歴のいずれか一つだけの場合も含まれることが認められ,これと異なる解釈をとるべき理由は見当たらない。そうすると,乙14発明の構成には,「電話帳」のみに発呼側端末のID番号が格納されているものとする構\\成も含まれるから,この点において,本件特許発明1−1と相違するとはいえない。よって,本件特許発明1−1ないし1−3は,乙14発明と同一であると認めることができる。

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平成23(ワ)7576等 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年09月27日 大阪地方裁判所

 「物の生産」は,「発明の構成要件を充足しない物」を素材として「発明の構\成要件のすべてを充足する物」を新たに作り出す行為をいう」として、間接侵害不成立、さらに、無効理由有りと判断されました。
 「物の生産」の通常の語義等も併せ考慮すれば,「物の生産」とは,特許範囲に属する技術的範囲に属する物を新たに作り出す行為を意味し,具体的には,「発明の構成要件を充足しない物」を素材として「発明の構\成要件のすべてを充足する物」を新たに作り出す行為をいうものと解すべきである。一方,「物の生産」というために,加工,修理,組立て等の行為態様に限定はないものの,供給を受けた物を素材として,これに何らかの手を加えることが必要であり,素材の本来の用途に従って使用するにすぎない行為は「物の生産」に含まれないものと解される。前提事実のとおり,本件各特許発明の【特許請求の範囲】は,いずれも「ピオグリタゾンまたはその薬理学的に許容しうる塩」と,本件併用医薬品とを「組み合わせてなる糖尿病または糖尿病性合併症の予防・治療用医薬。」というものである。したがって,本件各特許発明は,当該医薬品に関する発明,すなわち「物の発明」であると認めることができ,このこと自体は当事者間でも争いがない。なお,「組み合せる。」とは,一般に,「2つ以上のものを取り合わせてひとまとまりにする。」ことをいい,「なる」とは,「無かったものが新たに形ができて現れる。」「別の物・状態にかわる。」ことをいうものと解される。したがって,「組み合わせてなる」「医薬」とは,一般に,「2つ以上の有効成分を取り合わせて,ひとまとまりにすることにより新しく作られた医薬品」をいうものと解釈することができる。・・・,法101条2号の「物の生産」は,「発明の構\成要件を充足しない物」を素材として「発明の構成要件のすべてを充足する物」を新たに作り出す行為をいう。すなわち,加工,修理,組立て等の行為態様に限定はないものの,供給を受けた物を素材として,これに何らかの手を加えることが必要であって,素材の本来の用途に従って使用するにすぎない行為は含まれない。被告ら各製品が,それ自体として完成された医薬品であり,これに何らかの手が加えられることは全く予\定されておらず,他の医薬品と併用されるか否かはともかく,糖尿病又は糖尿病性合併症の予防・治療用医薬としての用途に従って,そのまま使用(処方,服用)されるものであることについては,当事者間で争いがない。したがって,被告ら各製品を用いて,「物の生産」がされることはない。換言すれば,被告ら各製品は,単に「使用」(処方,服用)されるものにすぎず,「物の生産に用いられるもの」には当たらない。\n

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平成23(ネ)10045 特許権侵害行為差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年09月27日 知的財産高等裁判所

 侵害訴訟について、技術的範囲に属しない、および104条の3により権利行使不能と判断されました。
 本件発明1の作用効果は,誤入力が生じやすい軸別の移動命令ではなく,駆動対象をロボットとする移動命令を用いて,複数のロボットを制御することにある(本件明細書1【0006】,【0010】)。したがって,本件発明1の「移動命令判別手段」の技術的意義は,駆動対象をロボットとする移動命令から,ロボットに対応するドライバーを選定するところにあると認められる。これに対し,イ号製品のMOVP命令は,前記認定(原判決第4の2(4))のとおり,「ポジションNO.によって指定されるポジションデータに従って,所定の軸をポイント・トゥ・ポイント(PTP)移動させよ」という命令であり,駆動対象となる軸が決定されれば,それに対応するドライバーは一義的に特定されるものであり,ドライバーを選定する必要がない。したがって,イ号製品は,構成要件1−Fを充足するとはいえない。\n

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◆こちらは関連事件(1)です。平成23(行ケ)10261

◆こちらは関連事件(2)です。平成23(行ケ)10154

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平成23(ネ)10057 特許権侵害差止請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年08月09日 知的財産高等裁判所

 104条の3によって権利行使不要との判断が維持されました。時期に後れた抗弁にも該当しないと判断されました。
 本件は,被告製品が本件特許の技術的範囲に属することについては当事者間に争いがなく,本件特許の無効事由の存否が主たる争点である。原審において,被告は,乙1資料及び乙5公報を主引例とする進歩性欠如等の主張をした(乙5公報には純度99.8パーセントのプラバスタチンナトリウムを得たとの実施例が記載されていたものの,本件特許に記載の製造方法については何らの言及がされていないものである。)。原審は,平成23年7月28日に,被告の主張を採用して,原告の請求を棄却した。
 (イ) 原告は,本件控訴を提起した。ところで,原告は,訴外協和発酵キリン株式会社に対して,本件特許権に基づき,特許権侵害訴訟を提起し,同事件の控訴審が大合議事件となった。当審では,大合議事件の審理等を優先することとし,当審での第1回口頭弁論期日を平成24年4月12日と指定した(その間,被告は,平成23年12月9日に,控訴状に対する答弁書を提出したが,答弁書においては,乙13公報を主引例とする進歩性欠如の無効理由の主張はされていない。)。
 (ウ) 平成24年1月27日,大合議事件において判決の言渡しがされた。その後,当審において同年4月12日に実施した第1 回口頭弁論期日において,被告は,本件特許には,乙13公報を主引例とする進歩性欠如の無効理由が存在する旨主張をした。
 イ 判断以上の経緯に照らし,時機に後れた攻撃防御方法に当たるか否かについて判断する。「物の発明」に係る特許請求の範囲にその物の「製造方法」が記載されている場合の発明の要旨認定に関し,原審では,「製造方法」に限定されないとの理解を前提とした審理がされていた。そのような原審の審理を前提として,被告は,より純度の高いプラバスタチンナトリウムについての記載がある乙5公報を主引例とする無効理由を挙げて無効の抗弁をした。しかし,大合議事件判決において,本件発明の要旨の認定について,「製造方法」に限定される旨の判断がされたことから,被告は,当審の第1 回弁論期日において,同一の製造方法が開示された乙13公報に基づく無効事由を主張した。このような経緯に照らすならば,被告が上記の主張をしたことに合理性を欠く点はなく,また時機に後れたと解することもできない。よって,被告の主張が時機に後れているとの原告の主張は採用できない。

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平成22(ワ)26341 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年05月23日 東京地方裁判所

 化粧品について3億円を超える損害賠償が認められました。あとで提出した証拠は、時期に後れたとして、採用却下されました。また、売上高、実施料率などは全て伏せ字になってます。ただ、60億円までは達していないことは、下記の記載から読み取れます。
 裁判所は,平成23年5月31日の第5回弁論準備手続期日において,原告及び被告から,本件の侵害論に関する主張立証は終了した旨を聴取した上で,侵害論に関する審理を終結し,本件に関する裁判所の見解を示して和解を勧告するとともに,損害論に関する審理に入ったものであり,被告の上記準備書面(6)及び(7)は,損害論の審理が相当程度進行した時点で提出されたものである。加えて,被告が,平成22年11月5日付け被告準備書面(1)において,乙2の1文献に基づく無効理由を主張し,同日付けで,上記準備書面におけるものと同様の無効理由に基づき無効審判を請求している(乙3)ことも考慮すると,被告は,平成23年5月31日の上記弁論準備手続期日までの間に,上記補足主張をすることが可能であったというべきであるから,被告が上記(ア)のとおり行った補充主張及び書証(乙32ないし37号証,53号証)の提出の申し出は,重大な過失により時機に後れてなされたものであり,また,これにより訴訟の完結を遅延させるものであることが明らかである。なお,被告は,損害論に入った後であっても,明白な無効原因があるときには,同無効原因を追加主張することは時機に後れた攻撃防御方法に当たらないところ,特許庁において無効審決がなされた場合には,明白な無効原因があるものとみるべきである旨主張する。しかし,乙2の1発明に基づく無効理由に関する当裁判所の判断,とりわけ前記5 (2)ウ及びエでみたところを考慮すれば,被告の補足主張によっても,本件各発明に明白な無効理由があるとは考えられず,これは,特許庁において無効審決がなされていることを考慮しても同様であるから,被告の当該主張を採用することはできない。したがって,民訴法157条1項に基づき,上記補足主張並びに乙32ないし37号証及び乙53号証の提出の申し出はこれを却下する。\n
 原告は・・・売上高は61億0964万円を下回らないと主張する。しかし,上記書証は,「商品別日別/月別売上照会」をデータ出力したものとして提出されたものであり,注文数量,注文金額等を黒塗りしたものではあるが,その体裁,内容等をみても,その信用性を疑わせるべき事情は直ちには見当たらない。また,証拠(甲43,44)によれば,被告のクレンジングオイル売上高は,平成21年において60.5億円,平成22年において59.5億円であることが認められるが,被告が,被告各製品のほかにも「薬用ディープクレンジングオイル」等のクレンジングオイル製品を販売していることにかんがみれば,被告の開示する金額が信用できないものということはできない。したがって,この点に関する原告の主張は採用できず,被告製品1及び被告化粧品セットの売上高については上記(ア)ないし(カ)のとおりであると認められる。

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平成21(ワ)31535 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年04月27日 東京地方裁判所

 訴訟物は異なるとはいえ、実質的に,同一の争いを繰り返すものであるとして、請求棄却されました。サポート要件違反などの無効理由もありと認定されました。
 前訴と本訴では,原告の請求権を基礎付ける特許権はいずれも本件特許権で同一であるが,前訴は本件特許権に基づく前訴マウスの使用等の差止請求権を訴訟物とするもので,前訴の確定判決により既判力が生じるのは,前訴の控訴審の口頭弁論終結時である平成14年7月9日における上記請求権の存否であるのに対し,本訴は前訴控訴審判決が確定した平成15年3月25日から本訴の提起日までの間における被告の本訴マウスの使用等による本件特許権侵害の不法行為又は共同不法行為に基づく損害賠償請求権を訴訟物とするものであって,前訴と本訴では訴訟物が異なり,前訴の既判力が本訴に直接に及ぶものではない。
・・・・
イ(ア) 他方で,本訴と前訴は,いずれも本件発明の構成要件Bの充足性が争点となり,その具体的な争点が,構\成要件Bの「ヒト器官から得られた腫瘍組織塊」の解釈及び各マウスのその構成の充足性である点では共通している。もっとも,前訴マウスと本訴マウスとでは,前記アのとおり,構\成が異なる部分があるが,ヌードマウスの皮下で継代したヒト腫瘍組織塊が同所移植された点では共通するので,上記構成が異なる部分があることが,上記争点の判断の結論に影響を及ぼすものではない。そして,前訴1審判決及び前訴控訴審判決は,上記争点について,構\成要件Bの「ヒト器官から得られた腫瘍組織塊」は,ヒト器官から採取した腫瘍組織塊そのもののみならず,ヌードマウスの皮下で継代した腫瘍組織塊を含むと解すべきであるとした原告の主張を排斥し,前訴マウスの構成要件Bの充足性を否定する判断を示し,原告の請求及び控訴をそれぞれ棄却したものである。ところが,原告は,本訴において,上記争点について,前訴でした主張と同様の主張を行い,本訴マウスが構\成要件Bを充足し,ひいては本件発明の技術的範囲に属する旨主張している。前訴1審判決及び前訴控訴審判決が示した構成要件Bの「ヒト器官から得られた腫瘍組織塊」についての解釈は判決における理由中の判断であって,本訴はもとより,前訴においても既判力の対象となるものではないが,本訴において,原告が構\成要件Bの「ヒト器官から得られた腫瘍組織塊」の解釈を再び争い,本訴マウスが本件発明の技術的範囲に属すると主張することは,前訴の判決によって原告と被告との間で既判力をもって確定している前訴マウスの使用等による本件特許権に基づく差止請求権の不存在の判断と矛盾する主張をすることに帰し,実質的に,同一の争いを繰り返すものであるといわざるを得ない。
・・・・
以上の(ア)ないし(ウ)を総合すると,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件出願の優先権主張日当時の技術常識に照らし,当業者が,ヌードマウスでの皮下継代を経た脳以外のヒト器官から採取したヒト腫瘍組織塊が同所移植された本件発明のモデル動物がヒト腫瘍組織を増殖及び転移させるに足る能力を有するモデル動物を作成するという本件発明の課題を解決できることを認識できるものと認めることはできない。したがって,本件発明の特許請求の範囲の記載は,サポート要件に適合しないというべきである。\n

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平成23(ネ)10069 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年04月25日 知的財産高等裁判所

 優先権主張が認められず、新規性無しとして特104条の3の規定により、権利公使不能と判断されました。
 本件特許発明1については,特許法29条等の規定の適用に関して優先権主張の利益を享受できず,現実の出願日である平成14年10月2日を基準として新規性等を判断すべきであるところ,同日以前に実施品「スイングクランプLH」が製造・販売されていたので,新規性を欠き,特許無効審判によって無効とされるべきものである。
・・・
原判決が認定するとおり(58〜63頁),平成13年11月13日にされた特許出願(第1基礎出願)に係る基礎出願明細書1(図面を含む。乙2)にも,平成13年12月18日にされた特許出願(第2基礎出願)に係る基礎出願明細書2(図面を含む。乙3)にも,平成14年4月3日にされた特許出願(第3基礎出願)に係る基礎出願明細書3(図面を含む。乙4)にも,クランプロッド5の下摺動部分12に4つのガイド溝を設けることを前提に,下摺動部分12の外周面を展開した状態における螺旋溝27(旋回溝)に傾斜角度を付けることは開示されているものの,傾斜角度の具体的範囲については記載も示唆もされておらず,本件特許発明1の構成のうち,「第2摺動部分(12)の外周面を展開した状態における上記の旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定」するとの構\成(発明特定事項)については,平成14年法律第24号による改正前の特許法41条1項にいう先の出願「の願書に最初に添付した明細書又は図面・・・に記載された発明に基づ」いて特許出願されたものでないから,本件特許発明1についての特許法29条等の規定の適用については,優先権主張の利益を享受できず,現実の出願日である平成14年10月2日を基準として新規性等を判断すべきである。

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平成22(ワ)30777 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年03月29日 東京地方裁判所

 実験する条件について動機づけがあるので進歩性なしとして、非侵害と認定されました。
 乙7には,「WB法より簡便かつ高感度な方法の確立を目的として,ELISA法について検討」した結果の報告である旨の記載があるが(前記(1)ア(ア)),遠心分離処理条件の検討がされた旨の記載はない。乙7記載の方法を更に簡便とするため,目的とする物質の遠心分離が達成できる範囲で遠心分離処理条件を変更し,その検出結果を検討することは,当業者が当然試みることといえる。そして,乙7及び乙9は,ELISA法に用いてPrPScを検出する試料の調製法に係る文献である点で,その技術分野を共通にするところ,乙7には,「脳又は脾臓」から試料を調製する場合に,両者を区別せずに「69,000×g」で遠心すると記載されているのに対し,乙9には,脾臓,リンパ節等については,遠心を40,000回転とする一方で,脳の場合には15,000回転とされていること(前記イ(ア)d)に照らすならば,乙7及び乙9に接した当業者であれば,乙7記載の方法において,「脳」(脳組織)から試料を調製する場合に,「69,000×g」の遠心分離処理条件に代えて,乙9記載の「毎分1万5000回転」の遠心分離処理条件(相違点に係る本件発明の構成)を適用することを容易に想到し得たものと認められる。
 (イ) これに対し原告は,界面活性剤の種類,分析対象組織の種類,適用される遠心分離の方法,洗浄,再沈殿などの精製工程の有無は,結果に大きく影響するところ,乙7及び乙9を検討すると,超遠心分離の適用が原則であること,乙7では,Zwittergentとサーコシルの組合せよりも,トリトンX−100とサーコシルの組合せの方が良好であったことなどからすると,Zwittergentを使用する乙9に記載された遠心分離の条件を,乙7における既に良好である方法を変更するために適用する動機付けが存在しないから,乙7に記載された発明に,乙9記載の遠心分離条件(相違点に係る本件発明の構成)を組み合わせることは容易想到とはいえない旨主張する。しかしながら,前記(ア)で述べたように,乙7記載の方法において,目的とする物質の遠心分離が達成できる範囲で遠心分離処理条件を変更し,その検出結果を検討することは,当業者が当然試みることであり,しかも,乙9には「脳」(脳組織)から試料を調製する場合の遠心分離の回転数について15,000回転と記載されていることからすると,乙7記載の方法に,乙9記載の遠心分離条件を適用する動機付けが存在するものといえること,乙7には,「脳」から試料を調製する場合に,「69,000×g」の遠心分離処理条件を変更することに問題があることを積極的に示唆する記載はなく,上記の適用について阻害事由もないこと照らすならば,原告の上記主張は,採用することができない。

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平成23(ネ)10002 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年03月22日 知的財産高等裁判所 

 切り餅事件について、特102条2項により求めた利益のうち、寄与度を15%として損害8億と認定されました。被告は、2012/4/3に、「上告した」との発表をしています。和解段階で、代理人が変わったりしたようです。
 被告は,被告製品について,i)平成15年9月ころから「サトウの切り餅パリッとスリット」との名称で販売し,切餅の上下面及び側面に切り込みが入り,ふっくら焼けることを積極的に宣伝・広告において強調していること,ii)平成17年ころから,切り込みを入れた包装餅が消費者にも広く知られるようになり,売上増加の一因となるようになったこと,iii)平成22年度からは包装餅のほぼ全部を切り込み入りとしたことが認められ,これらを総合すると,切餅の立直側面である側周表面に切り込み部等を形成し,切り込みによりうまく焼けることが,消費者が被告製品(別紙物件目録1ないし5)を選択することに結びつき,売上げの増加に相当程度寄与していると解される(甲4,21〜26,43,51,56の1〜22,甲60〜63,乙152,153,164〜167)。上記のとおり被告製品(別紙物件目録1ないし5)における侵害部分の価値ないし重要度,顧客吸引力,消費者の選択購入の動機等を考慮すると,被告が被告製品(別紙物件目録1ないし5)の販売によって得た利益において,本件特許が寄与した割合は15%と認めるのが相当である。
・・・・
 当裁判所は,被告代理人らが,控訴審の口頭弁論終結段階になって選任され,限られた時間的制約の中で,精力的に,記録及び事実関係を精査し,新たな観点からの審理,判断を要請した点を理解しないわけではなく,その努力に敬意を表するものである。しかし,特許権侵害訴訟は,ビジネスに関連した経済訴訟であり,迅速な紛争解決が,とりわけ重視されている訴訟類型であること,当裁判所は,原告と被告(解任前の被告訴訟代理人)から,進行についての意見聴取をし,審理方針を伝えた上で進行したことなど,一切の事情を考慮するならば,最終の口頭弁論期日において,新たな審理を開始することは,妥当でないと判断した。\n

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◆中間判決はこちら

◆1審はこちら

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平成20(ワ)27001 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年02月28日 東京地方裁判所

 特104条の3の規定により、権利行使不能と判断されました。
 ・・・(前記(2)ア,1(1)ア(エ))に照らすならば,別件知財高裁判決2が認定判断するように,乙C1記載発明において,二組のアーム同士及びコラムなどとの干渉を回避するために,ハンド部の伸縮方向を「第1及び第2の支持部材の移動方向及び前記支持部材が前記コラムから延びる方向に関して直交する方向」とする構成を採用することは,設計事項にすぎないものということができる。(ウ) 以上によれば,当業者であれば,乙C1記載発明及び上記周知技術に基づいて,相違点1に係る本件発明2の構成を容易に想到することができたものというべきである。
・・・・
 以上のとおり,本件発明2は,当業者が乙C1記載発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,本件発明2は進歩性を欠くものであり,本件発明2に係る本件特許2には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)があり,特許無効審判により無効とされるべきものと認められる。したがって,原告は,特許法104条の3第1項の規定により,被告に対し,本件発明2に係る本件特許権2を行使することができない。

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◆別件知財高裁判決2はこちらです。平成22年(行ケ)10034
 

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平成22(ワ)11604 損害賠償 商標権 平成24年02月28日 東京地方裁判所

 商標権侵害に対して、商3条1項違反の無効主張に基づく権利濫用の抗弁がなされました。権利者は、商47条の除斥期間の適用があると反論してますが、これも排斥されました。
 以上によれば,原告による本件商標の登録出願は,商標法3条1項柱書きが定める商標の登録要件を欠くものであるから,本件商標の商標登録には同項柱書きに違反する無効理由(商標法46条1項1号)がある。(2) 権利濫用の成否についてア 上記(1)で述べたとおり,本件商標は,その商標登録当時,出願人たる原告において,自己の業務に現に使用していたとは認められず,かつ,自己の業務に使用する意思があったとも認められないものであって,その商標登録に商標法3条1項柱書きに違反する無効理由があることは明らかである。加えて,前記(1)イ(イ)で検討したところによれば,本件商標の商標登録後においても,原告が,本件商標を「墓地又は納骨堂の提供」の役務に係る業務において現に使用した事実は認められず,また,将来において本件商標を使用する具体的な計画があることも認められないものであるから,本件商標には,原告の信用が化体されているとはいえない。これらの事情に鑑みれば,原告の本件商標権に基づく損害賠償請求権の行使を容認することは,商標法の趣旨・目的,とりわけ,いわゆる登録主義の法制下においての濫用的な商標登録を排除し,登録商標制度の健全な運営を確保するという同法3条1項柱書きの規定趣旨に反する結果をもたらすものといえるから,原告の被告らに対する本件商標権に基づく損害賠償請求権の行使は,権利の濫用に当たるものとして許されないというべきである。
イ これに対し,原告は,本件商標については,商標法47条1項所定の除斥期間の経過により商標登録無効審判の請求をすることができず,したがって,被告らは,本件商標の商標登録が無効であることを理由とする権利行使制限の抗弁(商標法39条,特許法104条の3第1項)を主張することができないにもかかわらず,本件商標の商標登録に無効理由があることを根拠として権利濫用の主張を認めることは,上記除斥期間を定めた商標法47条1項の趣旨を没却することとなり,許されない旨を主張する。しかしながら,商標法47条1項の規定は,商標登録を対世的かつ遡及的に無効とするための無効審判請求との関係において,その請求のないまま一定の期間が平穏に経過した場合に,現存の法律状態を尊重し維持するために,商標登録についての瑕疵が消滅したものと扱う趣旨の規定であると解されるところ,商標権者の特定の相手方に対する具体的な商標権の行使が権利の濫用に当たるか否かの判断は,商標法47条1項の規定が対象とする無効審判請求の可否の問題とは異なる場面の問題である。上記権利濫用の成否は,当事者間において具体的に認められる諸般の事情を考慮して,当該権利行使を認めることが正義に反するか否かの観点から総合的に判断されるべきものであって,ここで考慮され得る事情については,特段の制限が加えられるべきものではない。したがって,商標権の行使が権利濫用に当たるか否かの判断に当たっては,当該商標の商標登録に無効理由が存在するとの事情を考慮し得るというべきであり,当該無効理由につき商標法47条1項の除斥期間が経過しているからといって,このような考慮が許されないものとされるべき理由はなく,このことが同項の趣旨を没却するなどといえないことは明らかであるから,原告の上記主張は理由がない。

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平成22(ワ)31756 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年02月22日 東京地方裁判所 

 進歩性なしとして、権利行使不能と判断しました。
 乙8発明で挙げられた被処理物のうち,「醸造施設においてのモロミ」及び「食品製造施設においての水産物その他の加工食品」が食品原料に当たることは明らかであり,乙8発明の技術分野は本件訂正発明における食品原料の濾過システムの技術分野を含むものであるから,相違点i)は実質的な相違点とは認められない。次に,相違点ii)について検討すると,乙8文献に,ケーシング20の目詰まり防止が技術的課題として示されていることは,前記第4の2(3)エ(ア)でみたとおりであるところ,乙8発明が食品原料以外の汚泥,産業廃棄物等にも利用することができるものであることは前記のとおりであって,上記技術的課題は,被処理物の種類にかかわらず共通のものとして示されているものということができる。そうすると,乙8発明に接した食品原料の濾過システムの技術分野の当業者は,汚泥,産業廃棄物等の処理技術が食品原料の濾過システムの分野における技術分野に適用できることを容易に認識することができる。また,乙8発明には,上記目詰まり防止という課題の解決手段として,適宜の圧力を付与した清浄水を噴射させる方法が示されているものであることは前記第4の2(3)エ(ア)のとおりであって,乙8発明には,上記技術的課題を解決するための他の手段を検討するについての動機付けが存在するものということができる。そして,乙7発明は,汚泥の濾過式脱水圧搾機に関するものであり,上記濾過式脱水圧搾機の濾過孔の目詰まりを解消するため,スクリューコンベアブレードの外側端部の全体に沿って,濾過式脱水用媒体の内周面と隙間なく連続的に接触するコイルばね式清掃用ブレードを設け,これにより上記内周面に付着する固形物を清掃するものであることは前記第4の2(1)ア(オ)のとおりであり,乙7発明は,脱水処理機における濾過孔の目詰まり防止を技術的課題とするものであるということができる。そうすると,食品原料の濾過システムの技術分野における当業者は,目詰まり防止に関する技術が食品原料を被処理物とする場合に限定されず,汚泥処理技術にも共通することを容易に認識できるものである以上,乙8発明に接することよって,前記技術的課題(脱水処理装置における濾過孔の目詰まり防止)を動機付けられ,さらに,乙8発明と乙7発明は,技術的課題を共通にするものと認識した上で,解決課題において共通する乙7発明に記載された技術を適用し,上記課題解決手段として,乙7発明に示されたコイルばね式清掃用ブレードを適用して,乙8発明に記載された脱水処理装置を,シャフトの送り羽根先端に沿って,ケーシング20内周面と隙間なく連続的に接触するコイルばね式清掃用ブレード(「スクリュ状羽根の外周端面全域に沿って,前記フィルタエレメントと摺接し,スクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けたスクレーパ機構」)を有するものとし,ケーシング20内周面に付着する固形物を清掃できる(「前記フィルタエレメントの周面に付着する濾カス固形分を引掻除去できる」)ことを特徴とするスクレーパ濾過システムとすることは容易であるということができる。\n

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平成22(ワ)40331 特権侵害差止等請求事件 平成23年11月30日 東京地方裁判所 

 技術的範囲には属するものの、特許法104条の3により権利行使不能と判断されました。原告の訂正主張について、「審判請求していないという理由で主張の提出自体が許されないわけではない」と言及したものの、「その主張か時期に後れた防御である」として認められませんでした。
 原告は,無効理由4に係る被告の無効主張は時機に後れた攻撃防御方法であるから却下すべきと主張する。しかしながら,当該無効主張は,平成23年7月13日の第4回弁論準備手続において,同月12日付け被告準備書面(4)をもってなされたものであるところ,同時点では,いわゆる二段階審理における侵害論についての審理中であったから,当該無効主張についての審理がなければ直ちに弁論を終結できる段階になく,上記無効主張により訴訟の完結を遅延させることになるものとは認められない。原告は,無効審判請求の審理が終結した後に新たに無効主張を追加することは,侵害訴訟と審決取消訴訟におけるいわゆるダブルトラック問題を引き起こすと指摘するが,上記無効主張により訴訟の完結を遅延させることになるものと認められないことは上記のとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。
 3 訂正を理由とする対抗主張について
原告は,平成23年9月22日付け原告第6準備書面をもって,本件訂正発明には無効理由がなく,かつ,被告製品は本件訂正発明の技術的範囲に属すると主張し,これに対し,被告は,原告の上記主張は,時機に後れた攻撃防御方法であるから却下されるべきであると主張する。そこで検討するに,原告の上記対抗主張は,前記平成23年7月12日付け被告準備書面(4)をもってなされた無効理由2〜4に対するものであるところ,受命裁判官は第5回弁論準備手続期日(同年8月5日)において,原告に対し,上記無効理由についても審理するので,これに対する反論があれば次回までに提出するよう促し,反論の機会を与えたにもかかわらず,原告は,第6回弁論準備手続期日(同年9月9日)までに上記対抗主張をすることなく,同期日で弁論準備手続を終結することについても何ら異議を述べなかったものである。無効理由2及び3は,いずれも既出の証拠(乙2及び乙3)を主引用例とする無効主張であり,無効理由4も,平成14年5月20日付け特許異議申立てにおいて既に刊行物として引用されていた乙6に基づくものであるから,原告は,上記無効理由の主張があった第4回弁論準備手続期日から弁論準備手続を終結した第6回弁論準備手続期日までの間に対抗主張を提出することが可能\\であったと認められる(原告は,乙6に基づく無効理由4を回避するために訂正請求を行うことができるのは第2次無効審判請求の無効審判請求書副本の送達日である平成23年8月19日から答弁書提出期限である同年10月18日までの期間のみであると主張するが,本件訴訟において対抗主張を提出することはできたものというべきである。原告は,対抗主張が認められる要件として現に訂正審判の請求あるいは訂正請求を行ったことが必要とする見解が多数であるとも主張するが,訂正審判請求前又は訂正請求前であっても,訴訟において対抗主張の提出自体が許されないわけではなく,理由がない。)にもかかわらず,これを提出せず,弁論準備手続の終結後,最終の口頭弁論期日になって上記対抗主張に及ぶことは,少なくとも重大な過失により時機に後れて提出したものというほかなく,また,これにより訴訟の完結を遅延させるものであることも明らかである。

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平成22(ワ)24818 特許権差止等請求事件 平成23年11月25日 東京地方裁判所

 訂正要件を満たさないため無効理由を解消できず、104条の3の規定により、権利行使不能と判断されました。
 本件特許発明は「鍵」発明であり,ロータリーディスクタンブラー錠の構成に関する上記限定を加えたからといって,「鍵」自体の構\成が限定されるとは認められないのであるから,上記限定によって,本件特許発明に係る特許請求の範囲を減縮するものということはできず,また,本件特許発明の「鍵」の構成が明瞭になるとも,誤記又は誤訳が訂正されることになるということもできない。したがって,本件訂正請求は,特許法134条の2第1項ただし書各号所定の事項を目的とするものとは認められないから,不適法なものであり,これによって,本件特許が有する前示1の無効理由を解消することはできない。\n

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平成22(ワ)23188 特許権侵害差止等請求事件 平成23年10月19日 東京地方裁判所

 無効理由なし、特許権を侵害すると判断されました。
 以上の明細書の記載及びその課題解決のためのカフとカラー部分との関係について示した構成要件Eの記載に照らして,「直接隣接する」の技術的意義を検討すると,本件発明は,従来技術において,カフ上端部の分泌物を吸引するについて,カラーの延在部よりも上部に吸引孔を設けざるを得ず,その結果,吸引孔とカフ上端部の位置が遠ざけられ,そのためカフ上端部の分泌物を十\分吸引できなかったのを,カラーに被せるようにカフを膨らませ,気管をシールすることによって,カラー部分の存在によるカフ上端部からの吸引孔の離間を回避し,カフ上端部と吸引孔の近接を可能にしたことにあると認めるのが相当である。したがって,「直接隣接する」の意義は,カラー部分の存在による吸引孔とカフ上端部との離間が防止されていること,すなわち,カラー部分の存在によりカラー部分を隔てて吸引孔とカフ上端部が隣接することが回避されていることを意味するものと介される。したがって,カフの近位端と吸引孔の間の空隙の有無が直ちに「直接隣接する」か否かの評価に結び付くのではなく,カラー部分に重なるようにカフが膨らむ構\成によって,カラー部分の距離がそのまま吸引孔を設けることの障害となっていた従来技術と比較して,カフの上端部(近位端)と吸引孔の間の空隙を短縮することができているのであれば,「直接隣接する」と評価することができるものというべきである。

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平成21(ワ)3527等 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年06月24日 東京地方裁判所

 少し前の事件ですが、最高裁で上告棄却され、確定しましたのでアップしておきます。
 インクタンクの販売が、本件液体インク供給システムの特許権侵害か争われました。 争点は、技術的範囲、無効、間接侵害等です。
 特許法101条2号所定の「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは,より広い用途を有するねじや釘のような普及品を想定して制定されたものである。原告製プリンタにしか使用することができない被告製品2は,発光と受光という本件発明の特徴的機能を有しない機種計67機種の他の原告製プリンタにも使用することができるとしても,汎用品ということは到底できず,「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは認められない。上記「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは,汎用の部品や材料が,特許発明の侵害する製品の製造に用いられたとしても,間接侵害とならないように設けられた規定であり,被告製インクタンクは,原告製プリンタ専用のインクタンクであるから,到底,汎用の部品とはいえない。したがって,被告製品2は,「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは認められない。\n

◆判決本文

◆控訴審はこちらです。平成22年(ネ)10064
 

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平成21(ワ)44954 特許権に基づく工事差止等請求事件 平成23年09月29日 東京地方裁判所

 土木分野の特許について、無効により権利行使できないと判断されました。
 前記(1)及び上記イを前提に検討するに,乙1記載の方法と乙2記載の巻上装置を使用した法面処理作業の方法は,法面に対する作業内容が,法面の破砕であるのか,法面に対するアスファルト舗装であるのかという違いはあるものの,ウインチとワイヤーとを用いて傾斜面上の「加工機械本体」(台車あるいは処理用作業車)を移動させて作業を行う「法面の加工方法」という同一の技術分野に属するものであり,また,傾斜面上の所望の位置に加工機械本体を移動させ,効率よく法面作業を行うことを目的とする点で課題も共通すること,上記課題を解決するための手段として,乙1では,アンカー及び巻取機(ウインチ)を法面上部の「左,中,右」の位置に合計三つ設け,「中」の位置のウインチを駆動させて加工機械本体を昇降移動させるとともに,「左」及び「右」の位置の各ウインチを駆動させ,左右2本のワイヤーの巻上げ量を調整することにより可動連結具及び舵取り機構を介して加工機械本体の車輪の軸を水平面内で回動させる構\成としたのに対し,乙2では,2台のウインチを左右に設け,左右2本のワイヤーの巻上げ量を変え,その牽引力を異ならせることにより,加工機械本体を曲線をなす境界線に沿って移動させながら上昇させる構成とした点に違いはあるものの,上記課題を解決するために左右のウインチを駆動させて左右2本のワイヤーの巻上げ量を変化させる構\成を採用している点では両者は共通していることに照らすならば,乙1及び乙2に接した当業者であれば,乙1記載の方法において,アンカー及びウインチを法面上部の「左,中,右」の位置に合計三つ設けた上記構成に代えて,乙2記載の上記構\成のように「左右」の位置に合計二つ設ける構成(相違点に係る本件発明1の構\成)とし,これらのウインチの駆動量を別個に制御することによって左右2本のワイヤーの巻上げ量を変え,加工機械本体を所望の位置に移動させることができるようになることを格別の困難なく想到することができたものと認められるから,本件発明1は,乙1記載の方法発明及び乙2記載の発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものというべきである。

◆判決本文

◆関連案件 平成21(ワ)298

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平成22(ワ)5012 特許権侵害差止等請求事件 平成23年09月22日 大阪地方裁判所

 特許権侵害事件ですが、争点は無効理由があるか否かで、技術的範囲の属否は争点になっていません。裁判所は、無効理由なしとして差止、損害賠償を認めました。
 これらの記載によれば,本件特許発明が解決しようとする課題は,給油取扱所における固定式消火設備の設置場所について選択の自由度を高めることにあり,これを解決するための手段が相違点2に係る構成要件Fの構\成であり,これにより選択弁以降の配管取り出しを格納箱の三側方のいずれの方向からも行うことができるという作用効果を奏するという技術的意義があると認めることができる。イ これに対し,乙1発明に係る乙1文献には,相違点2に係る上記アの課題について記載や示唆はない。被告らが引用する文献(乙2,6ないし8,12及び13)についても同様である(なお,乙6,7について,本件特許出願前の刊行物であるかどうかは不明であり,乙8は,本件特許出願後である平成21年6月に頒布されたものである。)。また,乙12,13には,「限られた空間に対して部材を斜めに配置」することが開示されている。しかし,乙12は「室内に洗濯物を干すときに使用する物干し竿」の配置に係るものであって,固定式消火設備における水平送出管部の配置を対象とするものではなく,乙13は「巨大コイルを構成する10本の電線の結線部分(コネクター)」の配置に関するものであって,固定式消火設備における水平送出管部の配置を対象とするものではない。本件特許発明は,前記アのとおり,「格納箱内における多数の分岐管及び選択弁の取付法や配置法に工夫を凝らすことにより,多数の分岐管の全ての選択弁以降の配管取り出し方向の拡大化を図れ,給油取扱所内への格納箱の設置場所の選択自由度を拡げることのできる固定式消火設備を提供すること」(段落【0005】)を課題とし,当該課題を解決するために,水平送出管部を「平面視で格納箱奥行方向に対して斜交するように斜め方向にかつ側面視で水平に配設」(段落【0006】)するものであって,単に,限られた空間に部材を斜めに配置するだけのものではない。すなわち,前記アのとおり「水平送出管部の複数箇所の各箇所の上下に分岐管を設ける」ことと,水平送出管部を「平面視で格納箱奥行方向に対して斜交するように斜め方向にかつ側面視で水平に配設」する(段落【0006】)こととが技術的に関連し,有機的に機能\し合うことによって,複数の分岐管の全ての選択弁以降の配管取り出しが,格納箱の左側,右側,後ろ側のいずれの方向からも行うことができるとする作用効果を奏するものである。

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平成20(ワ)28967 特許権侵害差止等請求事件 平成23年08月19日 東京地方裁判所

 侵害判断にて、訂正請求がなされているが、たとえ訂正が認められても無効理由ありとして、権利行使を認めませんでした。
 上記3(1)のとおり,乙19発明は,「従来の納豆製品…の問題点を解消し,固体納豆の栄養成分および酵素類等を豊富に含み,しかも誰にでも容易に摂取可能な新しい食品を提供することを目的として」(上記3(1)サ)おり,「近年,納豆中に含まれる酵素の一種(ナットウキナーゼ)が血栓溶解作用を有するという報告…もなされ,その機能性が特に注目を集めている。」(上記3(1)キ),「この発明は…,納豆菌と,その代謝産物である人体に有益な機能性物質を含有する納豆菌培養液とからなることを特徴とする液体納豆を提供する。納豆菌は,…は,ナットウキナーゼ産生能\に優れている…」(上記3(1)シ),「培養液の組成および各成分の含有量の調整によって最終製品の旨味,香り,臭い(アンモニア臭等の好ましくない臭い),粘性等の程度,あるいはビタミン類や酵素類等の含有量を随意に調節することができる。」(上記3(1)ス),「さらにこの発明は,上記の納豆菌とその培養液とからなる液体納豆の乾燥粉末と,この乾燥粉末を含有する食品を提供する。」(上記3(1)セ)等のとおり,酵素類としてナットウキナーゼが着目されていることが認められ,また,「液体培養では,通気攪拌条件等を自在に設定することができるため,納豆菌の増殖や代謝に応じて最適な条件のもとで発酵を行わせることができる。」(上記3(1)ソ),「培養液には,納豆菌によって産生させることを目的とする物質(ビタミン類,アミノ酸類,ナットウキナーゼ等の酵素類など),および固体納豆の特徴を再現するために必要とされる特性(香りや粘性等)に応じて,それらの必要基質を選択して添加すればよい。」(上記3(1)タ)等のとおり,納豆菌によって産生されるナットウキナーゼ等の目的物質に応じて必要基質を添加し,通気攪拌条件等を自在に設定して行うことができるとされるものである。そうすると,好適な液体培養条件を設定して乙19発明のナットウキナーゼをより豊富なものとすることは当業者には容易に想到し得るものということができる。
 イ なお,本件訂正発明において,ナットウキナーゼの含有量を「5000FU/g乾燥重量以上」と限定したことについて,本件明細書には,「1g当り,…乾燥粉末の場合は,…5000FU以上であり得,10000FU以上であり得る。」(段落【0018】)との記載の他,実施例3の表2中に納豆菌培養エキス粉末の活性値として「13000FU/g」との記載があるが,いずれもナットウキナーゼ活性が5000FU/g乾燥重量以上の納豆菌培養液(またはその濃縮物)を含むか否かによって,量的に顕著な差異があることを開示するものとはいえないものである。したがって,本件明細書の記載からは上記数値限定をすることの意義は認めることはできない。\n

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平成23(ネ)10002 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成23年09月07日 知的財産高等裁判所 

 切り餅事件について、知財高裁は無効であるとした1審判決を破棄した中間判決をしました。
 上記発明の詳細な説明欄の記載によれば,本件発明の作用効果として,i)加熱時の突発的な膨化による噴き出しの抑制,ii)切り込み部位の忌避すべき焼き上がり防止(美感の維持),iii)均一な焼き上がり,iV)べ易く,美味しい焼き上がり,が挙げられている。そして,本件発明は,切餅の立直側面である側周表面に切り込み部等を形成し,焼き上がり時に,上側が持ち上がることにより,上記i)ないしiV)の作用効果が生ずるものと理解することができる。これに対して,発明の詳細な説明欄において,側周表面に切り込み部等を設け,更に,載置底面又は平坦上面に切り込み部等を形成すると,上記作用効果が生じないなどとの説明がされた部分はない。本件明細書の記載及び図面を考慮しても,構\成要件Bにおける「載置底面又は平坦上面ではなく」との記載は,通常は,最も広い面を載置底面として焼き上げるのが一般的であるが,そのような態様で載置しない場合もあり得ることから,載置状態との関係を示すため,「側周表面」を,より明確にする趣旨で付加された記載と理解することができ,載置底面又は平坦上面に切り込み部等を設けることを排除する趣旨を読み取ることはできない。
c これに対し,被告は,本件発明は,切餅について,切り込みの設定によって,焼き途中での膨化による噴き出しを制御できるという効果(効果i))と,焼いた後の焼き餅の美感も損なわず実用化できるという効果(効果ii))を共に奏するものであるが(本件明細書段落【0032】),切餅の平坦上面又は載置底面に切り込みが存在する場合には,焼き上がった後その切り込み部位が人肌での傷跡のような焼き上がりとなるため,忌避すべき状態になることから(本件明細書段落【0007】),本件発明における効果ii)を奏することはないと主張する。しかし,被告の主張は,採用の限りでない。すなわち,本件発明は,上記のとおり,切餅の側周表面の周方向の切り込みによって,膨化による噴き出しを抑制する効果があるということを利用した発明であり,焼いた後の焼き餅の美感も損なわず実用化できるという効果は,これに伴う当然の結果であるといえる。載置底面又は平坦上面に切り込み部を設けたために,美観を損なう場合が生じ得るからといって,そのことから直ちに,構\成要件Bにおいて,載置底面又は平坦上面に切り込み部を設けることが,排除されると解することは相当でない。また,当初明細書(甲6の2)の段落【0021】には,作用効果に寄与する切り込みの形成方法が記載され,同明細書の段落【0043】,【0045】には,周方向の切り込み等は,側周表面に設けるよりは作用効果が十\分ではないが,平坦頂面における場合でも同様の作用効果が生じる旨記載され,図6(別紙図5)が示されていたことに照らすと,周方向の切り込み等による上側の持ち上がりが生ずる限りは,本件発明の作用効果が生ずるものと理解することができ,載置底面又は平坦上面に切り込み部を設けないとの限定がされているとはいえない。さらに,本件明細書段落【0007】の記載は,米菓で採られた噴き出し抑制手段の適用における問題点を記載したものであり,本件発明において,周方向の切り込み等による,上側の持ち上がりによる噴き出し抑制手段を採用するに当たり,載置底面又は平坦上面に切り込み等を設けるか否かについて,本件明細書に何らかの言及がされていると解する余地はない。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
d また,被告は,切り込み部位が小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表\面に設けられるという構成であることを表\\現するのであれば,「小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表\面に切り込み部又は溝部を設ける」と記載すれば足り,「載置底面又は平坦上面ではなく」との記載を付加する必要はない,と主張する。しかし,被告のこの点の主張も採用できない。すなわち,前記のとおり,角形等の小片餅体である切餅において,最も広い面を載置底面として焼き上げるのが一般的であるといえるが,これにより一義的に全ての面が特定できるとは解されない(別紙「原告提出の参考図面」参照)。したがって,小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表\\面を特定するため,「載置底面又は平坦上面ではなく」との記載を付加することに,意味があるといえる。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。

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平成21(ワ)8390 特許権侵害差止等請求事件 平成23年08月30日 東京地方裁判所 

 イーモバイルに対する特許権侵害事件です。裁判所は、新規性違反を理由に権利行使できないと判断しました(特104条の3)。また、時期に後れた抗弁として、追加主張を却下しました。
 以上によれば,乙15には,乙15記載の伝送方法が,「第1のデータフィールドに第1のデータフォーマットのデータを含め,第2のデータフィールドに該第1のデータフォーマットとは異なる第2のデータフォーマットのデータを含める工程」(構成要件B),「前記第1のデータフィールド内に前記メッセージ信号全体の構\成を表す第1の識別子を挿入する工程」(構\成要件C),「前記第1の識別子に前記データフィールドの数,データフィールドの大きさ,又はデータフォーマットの少なくともいずれか1つに関する情報を含める工程」(構成要件D)を含むことが実質的に開示されているものと認められる。c 前記a及びbによれば,乙15記載の伝送方法は,構成要件AないしEの構\成をすべて備えているものということができるから,本件発明1と実質的に同一であるものと認められる。
・・・・
 以上を前提に検討するに,原告が原告第7準備書面をもって行った訴えの追加的変更は,本件各発明(請求項1及び11)に係る本件特許権の侵害の事実の主張に加えて,本件発明3及び4(請求項2及び12)に係る本件特許権の侵害の事実の主張を新たに請求原因に追加するものであり,請求原因を変更する訴えの変更(民事訴訟法143条1項本文)に当たるものといえるところ,本件の審理の経過によれば,上記訴えの追加的変更は,本件各発明に係る本件特許権の侵害論の審理が完了し,原告の本件各発明に係る請求について裁判をするのに熟した後にされたものであることは,明らかである。そして,請求項2及び12がそれぞれ請求項1及び11を引用する形式のものであること(前記第3の3 ア及びイ)からすれば,本件発明3及び4に係る本件特許権の侵害論の審理は,本件各発明に係る本件特許権の侵害論の審理と共通する部分があり,その主張立証を利用できる面があるとはいえるものの,一方で,請求項2及び12に特有の構成要件(構\成要件K,L,N,P)が存在することに照らすならば,原告が追加した本件発明3及び4に係る本件特許権の侵害の事実に関する請求原因の審理を行うとなれば,上記構成要件の充足の有無,本件発明3及び4に係る本件特許の無効事由の有無に関する新たな双方の主張立証や,再度の専門委員関与の下における技術説明会の実施の要否の検討などが必要となり,更に審理に相当の期間を要することになるものと認められる。加えて,原告においては,平成21年5月14日の第1回口頭弁論期日から平成22年6月14日の第6回弁論準備手続期日までの間に,本件発明3及び4(請求項2及び12)に係る本件特許権の侵害の事実の主張を請求原因に追加することについて特段の支障がなかったこと,その他本件の審理の経過に顕れた諸般の事情を考慮すると,上記訴えの追加的変更は,本件の訴訟手続を著しく遅滞させることになるものであり,不当であるといわざるを得ない。 以上によれば,本件発明3及び4(請求項2及び12)に係る本件特許権の侵害の事実を請求原因に追加した訴えの追加的変更は,本件の訴訟手続を著しく遅滞させることになるものであって,民事訴訟法143条1項ただし書の場合に当たる不適法なものであるから,これを却下することとする。

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平成20(ワ)831 特許権侵害差止等請求事件 平成23年08月26日 東京地方裁判所

 計算鑑定人により102条2項による損害額が認定されました。また、寄与率については100%とされました。
 特許法102条2項所定の「その者がその侵害の行為により利益を受けているときは」にいう「利益」とは,侵害品の売上高から侵害品の製造又は販売と相当因果関係のある費用を控除した利益(限界利益)をいい,ここで控除の対象とすべき費用は,侵害品の製造又は販売に直接必要な変動費及び個別固定費をいうものと解するのが相当である。本件計算鑑定は,被告各製品の製造及び販売に直接必要な変動費及び個別固定費につき次のaないしeのとおり,変動費の減少項目につき次のfのとおりそれぞれ認定・判断した上で,平成19年9月1日から平成21年9月30日までの期間における被告各製品の売上高(前記ア(ア))から控除すべき費用の合計額を3億7470万6005円,限界利益の合計額を2869万7562円と算定した(本件計算鑑定書添付の別紙1参照)。上記aないしeの費用について,本件計算鑑定は,被告が製造及び販売する猫砂全製品において被告各製品の占める割合(aにつき販売リッター数に占める割合,bないしeにつき製造リッター数に占める割合)で按分して算出している(本件計算鑑定書の「VII対象品の計算根拠と変動費の範囲について」(8頁),本件計算鑑定書添付の別紙7及び8参照)。
・・・・
これに対し原告は,i)本件計算鑑定書添付の別紙9によれば,経費の内容には,変動費3億3364万2241円のみならず,個別固定費5457万8946円も含まれているが,本件計算鑑定は,被告の製造する猫砂は,パッケージが違ったとしても,すべて同じ構造の製品で「生産工程,機械,人員」もすべて同じであること,25期(平成21年5月〜平成21年9月)における被告の全製品に対する被告各製品の販売割合が15.5%(本件計算鑑定書添付の別紙8)であることを前提に鑑定をしていることからすれば,被告各製品のためだけに被告ないしその特定の工場の製造ラインが使用されているわけではないのであるから,個別固定費はそもそも控除されるべきではない,ii)個別固定費のうち減価償却費として控除されている2647万2548円(本件計算鑑定書添付の別紙9)は,四国工場の費用を「全額」費用計上したのであるとすれば,被告各製品の販売割合が15.5%(四国工場内でも16.9%)しかない以上,明確な誤りである,iii)本件計算鑑定では,売上げはバルクで計算するのに対し,包装機械は減価償却費,人件費は加工費として経費に含めているが,これも過剰な経費計上である旨主張する。しかしながら,原告の主張は,以下のとおり理由がない。・・・ ・・・被告各製品は,他の猫砂(甲8)と比較して,吸尿によって変色し,それによって使用部分と未使用部分を視覚的に容易に判別することができる構成となっている点を重要なセールスポイントとしていることが認められる。そして,そのようなセールスポイントは,本件発明の構\\成によるものであるから,被告各製品の商品としての主たる価値は,本件発明からもたらされるものと評価できる。これに対し被告は,被告各製品と同等の原告製品は,被告各製品の1.5倍程度の価格で販売されており,被告各製品の主たる販売要因は,その価格競争力にある旨主張するが,本件においては,被告各製品の仕入値が原告製品に比して低いことを裏付けるに足りる客観的な証拠は提出されていないのみならず,仮に被告各製品の価格が同等の原告製品より低かったとしても,そのような価格は本件特許を無許諾で実施した結果形成されたものというべきであるから,本件発明の寄与率に影響するものとは認められない。以上のとおり,乙35ないし乙39の各特許の請求項1に係る各発明は,いずれもその構成において,原材料である廃材粉や粉砕物の「粒度」を規定しているところ,本件においては,被告各製品の原材料の粒度を具体的に特定するに足りる証拠は提出されていないことからすると,被告各製品が上記各発明を実施しているかどうかは定かでないといわざるを得ない。また,仮にこれらの発明が被告各製品に実施されているとしても,そのことが被告各製品の重要なセールスポイントとなるなど,被告各製品の販売に具体的に寄与していることを認めるに足りる証拠はない。(ウ) 小括以上のとおり,被告各製品のセールスポイントは,本件発明の構成によるものであり,被告各製品の商品としての主たる価値は,本件発明からもたらされるものといえるから,本件発明の寄与率は,100%と認めるのが相当である。\n

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平成21(ワ)7821 特許権侵害行為差止等請求事件 平成23年06月23日 大阪地方裁判所

 ロボットの特許権侵害について、裁判所は、技術的範囲外および進歩性なしとして 権利行使不能と判断しました。\n

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平成21(ワ)13089 特許権侵害行為差止等請求事件 平成23年03月29日 大阪地方裁判所

 102条2項の損害賠償額の推定について、寄与率が考慮されました。
 被告各製品の販売個数及び売上額については,被告が,平成21年4月9日から同年7月6日までの間,被告製品1を1186個,被告製品2を590個販売し,その売上額が合計で983万1644円であったとの限度で当事者間に争いがなく,これを超えた販売数量あるいは売上額を認めるに足りる証拠はない。また,被告が被告各製品の販売行為により受ける利益の率が20%であることは当事者間に争いがない。そうすると,被告が被告各製品の販売行為により受けた利益は,上記売上額983万1644円に利益率20%を乗じて得られる196万6328円(1円未満切捨て)ということになる。そして,表示領域を確保しながら操作性を向上させるという本件各特許発明の作用効果(本件明細書段落【0015】)は,被告各製品を購入する顧客が重視するものとは考えられるが,他方,被告各製品には,本件各特許発明に係る機能\だけでなく,走行距離,平均スピード,最速スピードなどを計測する機能やディスプレイのバックライト機能\なども備わっており(甲3),また,上記で認定したプラネットバイク社製品などの本件各特許発明の代替技術を用いた競合商品も存在するから,これら諸般の事情にかんがみれば,被告各製品の販売に本件各特許発明が寄与した割合は30%と認めるのが相当である。したがって,特許法102条2項本文により推定される原告の損害額は,被告が被告各製品の販売行為により受けた利益196万6328円に本件各特許発明の寄与度30%を乗じた額である58万9898円(1円未満切捨て)の限度で認定するのが相当である。

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平成22(ワ)2544 実用新案権侵害差止等請求事件 実用新案権 民事訴訟 平成23年02月24日 大阪地方裁判所

 登録実用新案が公知技術から進歩性なしとして、差止請求棄却されました。
 本件考案と引用考案との一致点,相違点からすると,本件考案の特徴点は,「スペシャルセット」として出願前から公然実施されていた構成要件A,B,Cの構\成からなる製品の「袋状のカバー」の形状の改良にあり,その改良点は,袋状のカバーにおいて,前身ごろの下端部に「略逆三角形状」のフロントガード片を連続形成し(構成要件D),該前身ごろの身丈を,後身ごろの身丈よりも長くしている(構\成要件E)点にあるといえるが,上記のとおり,そのような改良は,妊婦用品として引用考案と技術分野を同じくする腹帯に関する考案において知られていたのであるから,引用考案の袋状のカバー(ベリーバンドゥ)を,より適切に妊婦の体型に対応させ,また拡開した前立て部を適切に覆い隠すことを目的として,妊婦用腹帯の形状として従来公知であった上記一連の考案の腹帯の形状を適用しようとすることは,当業者であればきわめて容易に想到することができたものということができる。また,その作用効果も,結局のところ,組み合わせにかかる部材が有するそれぞれの作用効果を発揮しているものにすぎないから,それは当業者が予期し得る範囲内の作用効果でしかないものといえる。したがって,本件考案は,本件実用新案登録出願前に販売されていたスペシャルセットを購入した妊婦が臨月近くに着用した際の「ベリーバンドゥ」の形状に合わせて,本件考案の「袋状のカバー」の形状を設定したものであり,当該形状自体も妊婦用腹帯として従来公知の形状(乙5考案,乙12考案,乙13考案,マタニティサッシュベルト)を適宜組み合わせたものに過ぎないということができるから,本件考案は,引用考案及び妊婦用腹帯に係る公知技術(乙5考案,乙12考案,乙13考案,マタニティサッシュベルト)に基づいて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるといえる。\n

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平成21(ワ)18507 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成23年01月21日 東京地方裁判所

 特許権侵害認定されました。「載置」は特許用語なんですね。
 前記(ア)のとおり,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本件発明の「載置部」は,座面の周縁部を少しの高さだけ下方に湾曲させて周縁部に形成した部分であり,先端縁,両側縁部及び後縁部から構成されている。そして,i)「載置」とは,「物の上に他の物を置くこと」を意味すること(「特許技術用語集(第3版)」(日刊工業新聞社)67頁),ii)「幼児用補助便座」は,便器付属の便座に載置して使用する構成のものを指すこと(本件明細書の段落【0001】)からすれば,本件発明の「載置部」は,便器付属の便座の上に補助便座を置く部分をいい,換言すれば,補助便座において便器付属の便座の上面に接する部分を意味するものと解される。一方で,本件明細書の記載(前記(イ))によれば,本件発明は,従来の便座の構造は,座面全体を水平かつ平滑に形成し,排泄のための透孔部分のみを座面から透孔内周面に向かって円弧状に湾曲形成しただけのものであったが,近時の便座は,保温機能\や暖房機能を付加し,あるいは洗浄機能\付きのものは後方部分が上方に傾斜した形状となり,また,便座面の湾曲形状が前面位置と,後面位置では湾曲の態様を別異に形成したり,あるいは座面の外側位置から内周位置に向かって徐々に傾斜させるなど複雑な座面形状を採用したものがあり,これらの近時の便座の構造に対応するものであることに照らすと,本件発明は,座面全体を水平かつ平滑に形成した従来構\造の便座だけではなく,様々な座面の形状を有する近時の便座に対応することを前提とするものといえるから,本件発明の「載置部」は,その構成部分(先端縁,両側縁部及び後縁部)の全体が便器付属の便座の上面に接することまで想定したものではなく,少なくともその構\成部分の一部が便座の上面に接する部分として規定されているものと解するのが相当である。

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平成21(ワ)3409 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年12月16日 東京地方裁判所

 侵害訴訟にて未確定の訂正クレームに基づき、104条の3にて権利行使不能と判断されました。経緯としては、以下です。この侵害訴訟と並列して無効審判が継続しており、この無効審判中にて訂正手続きをし、訂正は認める、特許は無効とするとの審決がなされました。これに対して審決取消訴訟提起されています。
 本件特許については,その無効審判事件(無効2009−800082号)において,本件訂正の請求がされており,同訂正はいまだ確定していない状況にある。このような場合において,特許法104条の3第1項所定の「当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるとき」とは,当該特許についての訂正審判請求又は訂正請求に係る訂正が将来認められ,訂正の効力が確定したときにおいても,当該特許が無効審判により無効とされるべきものと認められるか否かによって判断すべきものと解するのが相当である。したがって,原告は,被告が,訂正前の特許請求の範囲の請求項について無効理由があると主張するのに対し,i)当該請求項について訂正審判請求又は訂正請求をしたこと,ii)当該訂正が特許法126条又は134条の2所定の訂正要件を充たすこと,iii)当該訂正により,当該請求項について無効の抗弁で主張された無効理由が解消すること,iv)被告製品が訂正後の請求項の技術的範囲に属すること,を主張立証することができ,被告は,これに対し,訂正後の請求項に係る特許につき無効事由があることを主張立証することができるというべきである。

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平成22(ワ)18769等 特許権差止請求権本訴事件,損害賠償等請求反訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年09月17日 東京地方裁判所

 1つの争点が、特許権侵害であるとの取引先への警告が不競法の営業誹謗行為(2条1項14号)に該当するか否かでしたが、裁判所はこれを認めました。
 本件特許発明は,当業者が引用発明,甲18の2刊行物及び甲19の2刊行物の記載に基づき容易に発明することができたものであって進歩性を欠くものであるが,i)引用発明が記載された甲22刊行物は,本件特許出願の3年以上前の平成11年1月に旭化成建材がパワーボードの施工をする業者向けに発行した技術情報パンフレットであり,相当の部数が当業者に配布されたことが推認できること,ii)副引用例である甲18の2刊行物及び甲19の2刊行物は本件特許権の出願審査の過程でされた平成19年4月24日付け拒絶理由通知において引用文献として指摘されていたこと(乙5),iii)それにもかかわらず,被告が甲3及び甲4の書面を送付するに当たり,本件特許の無効事由の有無につき検討したのか否か,したとすればどのような検討を行ったのかについて,被告は何ら主張立証をしていないこと等に照らすと,被告が本件告知行為を行うに当たって上記注意義務を尽くしたと認めることはできず,被告には過失があるというべきである。

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平成21(ワ)31831 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年10月01日 東京地方裁判所 

 104条の3により、権利行使できないと判断されました。
 以上によれば,本件発明の相違点a,bに係る構成は,引用発明に,乙3及び乙5に記載された周知の技術的事項(座椅子の座部が座面中央に座面側に向かって次第に拡大する形状の円穴を設けること)及び乙6,乙7,乙9及び乙10に記載された周知の技術的事項(椅子用のクッション材として上層に低反発クッション部材を配設すること)を組み合わせることにより,当業者が容易に想到できたものと認められる。(5) 以上のとおり,本件発明は,当業者が引用発明及び上記の周知の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであり,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,特許法104条の3第1項により,原告は被告に対し本件特許権を行使することができない。

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平成20(ワ)14669 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年08月27日 東京地方裁判所

 104条の3により、権利行使不能と判断されました。権利者は無効とする審決に対して訂正をし、訂正後の発明については進歩性なしとの審決がなされており、これに対する審取事件が係属中でした。
 機械設計上,構成部材を少なくし構\成をより単純化することは,当業者にとって,製造コストの削減や製品の耐久性向上等につながる一般的な技術課題であるといえる。そのため,引用発明においても,カップ部材であるケースホルダー20とホルダ部材であるローラケース21を着脱自在に係合ロックするための構成について,構\成部材が少ないより単純な構成とすることは,当業者が当然に認識する自明の技術課題であったといえる。そうすると,引用発明の係合ロックの構\成(ロックレバー39やコイルスプリング46等の部品を組み立てて成るローラケース21をケースホルダー20に係合ロックする構成)を,構\成部材が少ないより単純な構成である上記クで認定した周知の係合ロックの構\成(一方の部材に係合溝を設け,他方の部材に弾性が付与されて成る可動片に設けられた係合突起を一体成形することにより,2つの部材を着脱自在に係合ロックする構成)に置き換えることは,当業者にとって,十\分に動機付けられていたということができ,通常の創作能力により容易になし得たといえる。\n

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平成21(ワ)9328 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年08月06日 東京地方裁判所

 104条の3により権利行使が制限されました。
 前記アによれば,帳票,伝票などにおいては,その表面領域が限られ,表\面領域に記録して伝達することができる情報にも限りがあるため,その限られた表面領域を有効利用して,より多様な情報を記録して伝達するため,配送伝票に関する様々な技術を開示した多くの特許,実用新案公報文献に,分離票等の下層に情報記載欄を設けることが示されており,本件特許の出願当時,かかる技術は,汎用的な技術として当業者に採用されていたことが認められる。したがって,乙4の2発明に,前記の周知の構\成を適用して,「台紙2」の「切り込み7」よりも内側の表面領域に情報記載欄を備えるという構\成とすることは,当業者において容易になし得たことであると認められる。そして,そのような構成を採用した場合には,その結果として,本件発明の「輪郭切り取り線を切断して本票から分離票を切り離すと分離票に相当する部位に台紙の情報記載欄が現れるようになっている」(相違点4)との構\成を備えることになる。したがって,乙4の2発明に,前記の周知技術を適用して,相違点2及び相違点3に係る構成を採用して本件発明の構\成とすることは,当業者において容易に想到し得たものである。

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平成21(ワ)2208等 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年04月15日 大阪地方裁判所

 特許権侵害訴訟において、技術的範囲外さらに特104条の3の規定により権利行使不能と判断されました。
 以上の事実を総合すれば,本件2ピークは,白金ホルダーピークであるとしても説明が困難でなく,かつ,検出の原因として,白金ホルダーの使用以外には考えにくいから,白金ホルダーピークであると考えるのが合理的である。そうすると,本件2ピークは,本件発明の特定のためには余分な事項であるが,それにもかかわらず,特許請求の範囲に,その回折角及び強度が記載されていることになり,特許請求の範囲中,本件2ピークに係る記載は,事後的・客観的にみれば,誤った記載というべきである。誤記のなかには,特許法上の訂正審判や訂正の請求による訂正を待つまでもなく,誤記であることを前提として,特許請求の範囲を解釈することができる場合も存在するが,本件2ピークの記載は,単なる誤記(表記上の誤り)とは性格を異にする。すなわち,本件特許出願に際し,原告は,本件2ピークが本件エステル塩酸塩一水和物結晶のピークであると信じ,特許請求の範囲として表\示しようとしたとおりのクレームをしているのであって,後に,その信じていたところが誤りであったことが判明したに過ぎないと認めるのが相当である(原告が本件2ピークが本件エステル塩酸塩一水和物結晶のピークではなく,白金ホルダーのピークであると認識していたのであれば,その旨を本件明細書に記載したはずである。)。出願時において要件とした事項であっても,後に,実際には不要であったことが判明することは,一般に生じ得る事態であるが,特許請求の範囲の記載を前提とする第三者の行為は,このような出願人の調査不足や不注意によって規制されるべきではない。
・・・・ 本件明細書には「S-, 1108塩酸塩無水物は容易に水一分子を吸収して本発明のS-1108塩酸塩一水和物となる。」(段落【0021】),「S-1108塩酸塩無水物‥‥は吸水性で粉末化,製剤化などの操作中に部分的吸湿が起きて含水量が変動する」(段落【0003】)との記載がある。また,P2 准教授作成の鑑定意見書(乙8)では,本件標準品について,105℃から110℃付近まで昇温すると,水1分子が離脱して,本件明細書記載の本件エステル塩酸塩無水物結晶となり,この無水物結晶を大気中で室温まで降温すると,水1分子を吸収して,本件明細書記載の本件エステル塩酸塩一水和物結晶となることが明らかにされている。そうすると,本件エステル塩酸塩の結晶は,高温状態に置いて無水物結晶としない限りは,一水和物結晶の状態にあるといえる。そして,本件エステル塩酸塩水和物結晶が1種類しかないことは原告自身が主張し,立証するところであるから(甲19),前記イの工程により得られた本件エステル塩酸塩の結晶は,すなわち本件エステル塩酸塩一水和物の結晶であるといえる。

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平成21(ネ)10028 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年04月28日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとして104条の3により請求棄却とした原審が取り消されました。
 以上によると,甲11技術は,・・・という点で共通するものということができるが,柱の垂直度の調整方法については,・・・,本件発明と異なり,柱の垂直度の調整は,柱を垂直状態に吊り下げた状態において行われるものと判断される。また,甲11技術においては,建柱作業の終了後も,ボルト体はベースの下面四方部に残されるものであるのに対して,本件発明の建て直し装置は,建入れ直し装置のナットの上方にベースプレートの縁部を配置するものであって,作業終了後には装置を撤去するものである。また,甲12技術には,鉄骨柱の建入れ直しにおいて,鉄骨柱を鉛直に姿勢制御すること,鉄骨柱を鉛直に姿勢制御するに当たって,歪直し用のワイヤを不要とすることという技術課題が開示されており,この課題の解決手段として,鉄骨柱の建入れ直しにおいて,鉄骨柱の歪みを直すためにジャッキ装置が鉄骨柱の重量を積極的に引き受けようとするものであって,本件発明のように,鉄骨柱の重量の大半をテツダンゴが引き受け,ボルトの軸線方向に移動可能であるナットについては,てこの原理によって,鉄骨柱の重量に対して比較的小さな力を加えることによって,ベースプレートの縁部を持ち上げてベースプレートが水平になるように微調整をすることができるものであって,鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるものではないものとは,その機能\\において異なるところがあり,甲12技術と本件発明とでは,それぞれのジャッキ又は建て直し装置に求められる対象物を支えるために適した大きさや強度についての構造等に違いが生ずるものである。そうであるから,上(ア)記 のとおり,本件発明とは技術分野や課題が異なり,本件発明とは異なって対象物の重量を積極的に引き受けるホイスト(ジャッキ装置)についての乙1発明に,鉄骨柱の建入れ直し方法として鉄骨柱の垂直度の調整方法や作業終了後の建入れ直し装置の取扱が本件発明とは異なっている甲11技術や,鉄骨柱の鉛直への姿勢制御において,ボルトの軸線方向に移動可能なナットの機能\\について鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるものではない本件発明とは異なって,鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるジャッキによる甲12技術を適用して,相違点1を克服することが容易想到であるということはできないというべきである。

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◆原審・平成21年03月05日東京地裁判H20年(ワ)第19469号事件

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平成20(ワ)8086 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年02月24日 東京地方裁判所

 特許権侵害に対して、要旨変更による出願繰り下げにより新規性無しとして、特104条の3の規定により、権利行使不能と判断されました。
 以上のとおり,本件当初明細書の特許請求の範囲の(1)や,〔課題を解決するための手段〕欄には,格子定数関係式2が記載され,これらには,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくするとの限定はない。(イ) しかしながら,格子定数関係式2に係る発明につき,本件当初明細書の〔作用〕欄には,「なお,a(CB)<a(InP)<a(CW)の場合には,量子井戸層とバリア層の厚さを調整して,活性層全体としての平均的な格子定数をInPの格子定数に等しくする。」と記載されている。また,格子定数関係式2に係る発明の実施例は,第2の実施例のみであると認められるところ,これには,「平均の格子定数がInPに格子整合する活性層(17)を有」すること,「活性層(17)の平均格子定数は,量子井戸層(20)とバリア層(21)の厚みと組成を調整することによってInPの格子定数と等しくすることができる」ことが記載されている。他方で,格子定数関係式2に係る発明について,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくすることを前提としない場合の構成及び作用に関する記載はなく,実施例の記載もない。また,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくすることを前提としない格子定数関係式2に係る発明を採用した場合に,歪を緩和するという作用効果が生ずることをうかがわせる記載はないのみならず,そもそも,転位の発生の防止という本件発明の課題との関係において,具体的にどのような効果が生ずるかについての記載もない。(ウ) また,証拠(乙6)によれば,本件特許出願前である1986年(昭和61年)に公刊されたと認められる乙6刊行物には,・・・・ことが記載されている。他方で,本件各証拠に照らしても,本件特許出願当時,歪超格子において,InP基板に格子整合させずに,単に格子定数関係式2に係る発明を採用することにより,歪を緩和して,転位の発生を防止することを記載した刊行物が存在したとは認められない。(エ) このような本件特許出願当時の技術水準に照らして,本件当初明細書の〔作用〕欄の記載及び第2の実施例の記載(特に,「平均の格子定数がInPに格子整合する活性層(17)を有」すること,「活性層(17)の平均格子定数は,量子井戸層(20)とバリア層(21)の厚みと組成を調整することによってInPの格子定数に等しくすることができる」との記載)に接した当業者は,これらの記載につき,乙6刊行物に記載された知見(歪超格子の平均的な格子定数,すなわち,全体的な平衡値を,適切な組成と厚さを選択することにより,InP基板に格子整合させ,歪エネルギーを最小化すること)を,量子井戸半導体レーザ素子に適用したものと理解するものと認められる。(オ) 以上のことからすれば,本件当初明細書の記載に接した当業者は,格子定数関係式2に係る発明が,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくすることを前提とした発明であると理解するものと認められる。したがって,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくすることを前提としない,格子定数関係式2に係る発明は,本件当初明細書には記載されていなかったものと認められる。・・・以上のことからすれば,第2回補正は,本件当初明細書には記載されていなかった,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくせずに,量子井戸層の格子定数をInPの格子定数より大きくし,バリア層の格子定数をInPの格子定数よりも小さいものとすることにより,歪による転位の発生を緩和するという技術的事項を新たに追加するものであるから,本件当初明細書の要旨を変更するものと認められる。

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平成21(ワ)6505 損害賠償請求事件 特許権 平成22年01月22日 東京地方裁判所

 原告は最終口頭弁論期日の直前に訂正審判をして104条3の無効理由はないと主張しましたが、時期に後れた抗弁として却下されました。
 そこで検討するに,原告は,既に第1回口頭弁論期日において被告らから乙6刊行物記載の発明が本件特許発明と同一の発明であるとして乙6刊行物を提示されたのに対して,両発明が同一ではないとの主張を終始維持し続けていたにもかかわらず(主張を変更することを妨げる事情は何ら認められない。),弁論準備手続終結後になって訂正審判請求をした上で,最終口頭弁論期日に,この訂正により乙6刊行物記載の発明には本件特許発明と相違点が生じ無効理由がない旨の上記主張に及んだものである。そして,このことについてやむを得ないとみられる合理的な説明を何らしていない。したがって,原告の上記主張は,少なくとも重大な過失により時機に後れて提出したものというほかなく,また,これにより訴訟の完結を遅延させるものであることも明らかである。よって,原告の上記主張は,民事訴訟法157条により,これを却下する。

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平成20(ワ)7901等 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月25日 東京地方裁判所

 特許権侵害訴訟について、裁判所は、104条の3の規定により、権利行使不能と判断しました。
 「以上の記載から,シート形状の被処理物を支持具で支持してメッキ液中でメッキ処理するに当たり,被処理物を垂直状態で支持すること,メッキ電流を陰極バー,支持具を介して被処理物に給電することは,第3特許出願前におけるメッキ処理という技術分野における周知技術であったことが認められる。そうすると,乙11の1発明において,被処理物をワークキャリアに保持してメッキ液中でメッキ処理するに当たり,上記の周知技術を適用して,被処理物を「ワークキャリア2」で垂直状態に保持すること,メッキ電流を「ワークキャリア2」及び「ワークレール13」を介して被処理物に給電することは,当業者であれば容易に行い得るものというべきであって,当業者は相違点1に係る構成を容易に想到できたものと認められる。
イ 相違点2について
上記2,(4)イで詳述したように,乙9の5刊行物(乙11の7刊行物)には,浴内で陰極レール(1)又は陰極フレームにおいて間隔を空けて交互に1列に配列されたワークピース(3)上になされる電解コーティングを向上させる工程に関し,各ワークピースの間隔を小さく保つことで「ドッグ・ボーン効果」と呼ばれる両端部近傍のメッキ厚さが肉厚となる現象の発生を抑える技術が開示されていることが認められ,一定の間隔に保持された各被処理物の間隔を設定するに当たり,被処理物の両端近傍のメッキ厚が肉厚とならないようにするために,その間隔を小さくすべきことは第3特許出願前におけるメッキ処理という技術分野における公知の解決手段であったといえる。そうすると,乙11の1発明において,めっき槽搬送手段に取り付けられた各被処理物の間隔を一定の間隔に保持するに当たり,上記の公知の解決手段を適用して,各被処理物の間隔をめっき厚さに不均一を生じない程度に小さく保持することは,技術分野が共通であり,均一なメッキ膜を形成するという技術課題も共通であることから,当業者が容易に行い得るものというべきであって,当業者は相違点2に係る構成を容易に想到できたものと認められる。」\n

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平成20(ワ)38425等 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月21日 東京地方裁判所

 104条の3により、請求が認められませんでした。
 前記(1)で認定したように,乙20公報の記載内容を知る当業者は,乙22公報の記載自体からも,フレームサイズが294 mm ×427 mm のような大型ペリクルでも,ピンと張った状態でペリクル膜をたるみなくフレームに貼り付けることが要求されるものであり,その結果,ペリクル膜の張力によりフレームに歪みが生じ,その歪みは,フレームサイズが大きくなるにつれて増大するという技術課題が開示されているものと理解できる。他方,前記(2)で認定したように,長辺及び短辺を有する方形状の枠体において,長辺の撓みを減少させるために長辺の幅のみを広くすることは,技術常識であって,当業者が当然のこととして知るところである。そうすると,公知となっている,大型ペリクルにおいてフレームサイズが大きくなるにつれてフレームの歪みが増大するという上記の技術課題を解決する観点から,長辺の撓みを減少させるために長辺の幅のみを増大させるという上記の技術常識を当てはめて,ペリクル膜の張力による歪みに応じ,長辺の幅を短辺の幅よりも広くすることは,当業者が容易に想到することができたものであるといえる。したがって,前記相違点のうち,「長辺の幅」が「短辺の幅」よりも大きいという本件発明の構成は,乙22発明に,当業者の技術常識を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものというべきである。\n

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平成20(ワ)10854 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月24日 大阪地方裁判所

 サポート要件違反を理由にして104条の3により権利行使不能と認定されました。
 旧特許法36条5項1号は1 ,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」と規定し,特許請求の範囲の記載がこれに適合することを求めている(明細書のサポート要件)。その趣旨は,発明を公開させることを前提に,その発明に特許を付与して一定期間その発明を業として独占的,排他的に実施することを保障し,もって,発明を奨励し,産業の発達に寄与することを目的とする特許制度の趣旨に基づき,願書に添付すべき明細書に,発明の技術内容を一般に開示させるとともに,その効力の及ぶ範囲(特許発明の技術的範囲)を明らかにするという役割を果たさせるため,明細書の発明の詳細な説明に,その発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載することを要求し,公開されていない発明について独占的,排他的な権利が発生することにより,一般公衆からその自由利用の利益を奪い,ひいては産業の発達を阻害することを防ぐことにある。そして,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10042号同年11月11日特別部判決・判例タイムズ1192号164頁参照)。以下,かかる観点から,本件特許に係る特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものであるかについて検討する。・・・そうすると,本件特許発明が解決する課題(目的)は,環境に危険な材料を含まず,かつ,動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けてもスイッチが確実に作動するよう設計されたレベル・センサを得ることにあると認められる。そして,上記のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明の【実施例】の項に「水位レベルが上昇し始めると,レベルセンサは遂には傾き始め,…主水平位置に到達する。容積と重量の適切な選択により,水位レベルがセンサより上に如何に上昇するかに関係なく,センサはこの水平位置を取る(段落【0014 「。」】) センサがその水平位置近くからスタートすると,そのとき重心10がベアリング6,8の下で且つ右にある平衡重り9はベアリング6,8のまわりを時計方向に回転する。この回転は平衡重り9の表面の一つが中空本体1の内面と接触することによって制限される。このように移動している間,平衡重りの表\面13は接続円板5および弾性ヨーク16との接触を失っている。それからマイクロスイッチはスイッチが接続されるか又は切離されることを意味する他の位置をとるように作動される。」(段落【0015】)と記載されていることからすれば,本件特許発明の上記課題である,動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けてもスイッチが確実に作動するよう設計されたレベル・センサを得るため,本件特許発明のレベル・センサは,液中にある状態で,概ね主水平位置を安定的に維持するような構成を採用したものと解され,その具体的構\成の一つが,構成要件E,すなわち,平衡重りの重量を,センサが空気によって囲まれている時そのセンサの全重量の少なくとも30%とするとの数値限定したものと解される。ところで,そのような数値限定をする構\成を採用したことについて,本件明細書の発明の詳細な説明には,【実施例】の項に「マイクロスイッチを確実に停止させるため,平衡重り9は相対的に重く,レベル・センサの全重量の可成りの部分を構成する。しかしながら同時に,センサは製造上の理由のために重過ぎてはならない。受入れ可能\な安全性を得る最小値は全重量の30%であるが,適切な値は50から80%の間である。」(段落【0016】)と記載されており,この記載によれば,平衡重りの重量をセンサが空気によって囲まれている時そのセンサ全重量の少なくとも30%とすることが,本件特許発明の上記課題(その動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けても,概ね主水平位置を安定的に維持し,もってスイッチが確実に作動するよう設計されたレベル・センサを得る)を解決するために不可欠な構成とされていることが明らかである(上記数値限定を内容とする構\成が,本件特許発明が解決する課題のうち「環境に危険な材料を含ま」ないレベル・センサを得ることを解決するものでないことは明らかである。)。・・・以上によれば,「レベル・センサを液中において概ね主水平位置に安定的に維持する」という効果との関係において,平衡重りとセンサ全体の重量比が影響を及ぼすとの技術常識を認めることはできない。エ以上によれば,本件特許に係る出願時の技術常識に照らして,本件明細書の上記記載から,「動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける外力を受けてもスイッチが確実に作動する」との効果を得るために,平衡重りの重量をセンサ全重量の30%以上にすることの技術的意義ばかりでなく,平衡重りの重量をセンサ全重量の一定割合を超えるように設定することの技術的な意味を当業者が理解することができないというべきである。他に,平衡重りの重量をセンサ全重量の一定割合を超えるように設定することの技術的な意味を示唆するような記載も見当たらない。したがって,本件特許の特許請求の範囲の記載は,明細書のサポート要件に違反するというべきである。

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平成21(ネ)10046 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月28日 知的財産高等裁判所

 第1審は、進歩性なしを理由として104条の3により権利行使不能と認定しました。控訴人は、引用文献に記載の技術は、基本原理が異なると控訴しましたが、知財高裁は原審の判断を維持しました。
 すなわち,確かに,同じ断面の管路に同じ速さで液体を流すことを前提とするならば,粘性の高い液体にはその分だけ高い圧力を必要とすることとなる。しかし,実際の装置における液体の流速は,ノズルの長さ,大きさや液体の粘性などの諸条件に応じて異なり,液体に加えられる圧力も異なるものと認められ,乙22に記載された「0.1から5bar」という圧力は,一概に低いとは言い切れないとしても,高いとも断言できないものである。また,前記a(b)のとおり,乙22記載の発明において分析液体7が圧力チャンバー1内で加圧下に保持されていたとしても,そのことから直ちに,乙22記載の発明が液体供給源の圧力によって液体が放出されることを基本原理とするものとは認められない。・・・前記(ア)bのとおり,乙22の記載(【0021】等)によれば,液圧加速とは,閉鎖領域19がノズル放出口3より広いことにより,閉鎖素子13の移動の速さよりもノズル放出口3から放出される液体の速さが速くなることを意味するものと認められ,原告主張のように,閉鎖素子の移動によってバルブの開きが小さくなったときに流量が減少するという問題に対して流量を補うものとは認められない。以上によれば,乙22記載の発明は,閉鎖素子の移動によって液体が放出されるものと認められ,液体供給源の圧力によって液体が放出されることを基本原理とするものとは認められない。

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平成19(ワ)3494 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月27日 東京地方裁判所

 侵害訴訟で、除くクレームが新規事項かが争われました。

 特許法17条の2第3項は,第1項の規定により明細書等について補正をするときは,願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしなければならないと規定している。そして,「明細書等に記載した事項」とは,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するもの(当業者)を基準として,明細書・特許請求の範囲・図面のすべての記載を総合して理解することができる技術的事項のことであり,補正が,上記のようにして導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は「明細書等に記載した事項の範囲内」であると解すべきである。したがって,特許請求の範囲の減縮を目的として特許請求の範囲に限定を付加する補正を行う場合,付加される補正事項が当該明細書等に明示されているときのみならず,明示されていないときでも新たな技術的事項を導入するものではないときは,「明細書等に記載した事項の範囲内」の減縮であるというべきであり,このことは除くクレームを付加する補正においても妥当する。・・・別件特許は,球状活性炭に関し,本件特許とは異なり,フェノール樹脂又はイオン交換樹脂を出発原料として特定せず,また,本件特許では従来技術に属するものとされるピッチ類を用いても調整が可能であるとして,このR値の観点から球状活性炭を特定したものである。そうすると,球状活性炭のうちフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として用いた場合において,そのR値が1.4以上であるときには,本件特許に係る発明と別件特許に係る発明は同一であるということができる。そして,本件補正は,このR値が1.4以上である球状活性炭を特許請求の範囲から除くことを目的とするものであり,特許請求の範囲の記載に技術的観点から限定を加えるものではなく,新たな技術的事項を導入するものではないと認めるのが相当である。・したがって,本件補正は,「明細書等に記載した事項の範囲内」の減縮であるので,特許法17条の2第3項に違反するものではなく,本件特許は,無効とされるべきものとは認められない。なお,本件特許の審決取消請求訴訟において,同様の判断がされている(知的財産高等裁判所平成21年3月31日判決・甲77)。」\n

◆平成19(ワ)3494 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月27日 東京地方裁判所
 

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平成20(ワ)25354 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟

 数値限定発明について、104条の3で権利行使不能と判断されました。\n  「・・・乙1発明の「軽量微小素材粉末」として適当な含水のもの(WEタイプ)を使用した場合の水の添加量「52.1〜78重量%」を,本件特許発明の「65〜85重量%」と変更することについての格別の技術的意義は,本件明細書からは見い出せない。そうすると,本件特許発明において水の添加量を「65〜85重量%」としたことは,乙1発明の「軽量微小素材粉末」として適当な含水のものの添加量の数値範囲を好適なものに変更したにすぎず,当業者が適宜行う範囲内のことというほかない。」

◆平成20(ワ)25354 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年09月11日 東京地方裁判所

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平成20(ワ)5712 損害賠償請求事件 意匠権 民事訴訟 平成21年09月10日 大阪地方裁判所

 意匠権および特許権に基づく損害賠償が請求されました。裁判所は104条の3の規定により、権利行使を認めませんでした。
 「原告は,ランドの面積を小さくするというのは,有限の小さい面積にすることであり,ランドの幅を実質0にするという思想ではないし,本件特許の出願前は,ランドの幅が小さ過ぎると,剛性が低下するし,飛距離も劣ると考えられており,ランドの面積を小さくすることからランドの幅を0.0mmにするという発想に至ることは,飛躍があって直ちにはできないと主張する。しかしながら,本件発明1においても,実際には,ランドの面積は有限の小さい面積となるし,ランドの幅は有限の細い幅となるのであるから,結局,ランドの幅を0.0mmに設定することは,ランドの合計面積を小さくすることの延長線上にあるといえる。また,ランドの幅と連動するディンプル占有率については,最適値に係る特定の見解が確立されておらず,当業者が,剛性の低下にも配慮しつつ,各自の見解に基づき,飛距離を伸ばすにあたって最適な範囲を設定していたのであり(甲36ないし44),これを定めるにあたり特段の制約があった事実は認められない。したがって,上記組合せにつき,特段の阻害要因も認められないといえる。・・・以上のとおり,引用例3及び5は,いずれもゴルフボールに関する発明であって,解決すべき課題も共通し,引用例3に引用例5を組み合わせることによる特段の作用効果も認められないか,認められたとしても予測し得る範囲のものであり,組合せについて特段の阻害要因も認められない。そうすると,相違点に係る本件発明1の構\成は,引用例3に引用例5を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たといえる。」

◆平成20(ワ)5712 損害賠償請求事件 意匠権 民事訴訟 平成21年09月10日 大阪地方裁判所

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平成20(ワ)19402 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月31日 東京地方裁判所

 特許侵害訴訟について、進歩性なしとして権利行使不能と判断されました。

◆平成20(ワ)19402 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月31日 東京地方裁判所

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平成20(ネ)10068 特許権侵害差止控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月25日 知的財産高等裁判所

 均等侵害も第4,第5要件を満足しないとして、否定されました。
 控訴人は,拒絶査定不服審判の請求の理由として,「切削の対象が正方形または長方形の半導体ウェーハであること…が関連しあって,…独特の作用効果を奏するものである。仮に,切削対象が不定型なワークであるとすると,…」と記載し(乙8の17),その後,本件発明に係る特許出願は,特許査定された(乙8の19)。(ウ) 上記(ア)認定の本件明細書の記載に照らせば,控訴人は,被加工物すなわち切削対象物として半導体ウェーハの外,フェライト等が存在することを想起し,半導体ウェーハ以外の切削対象物を包含した上位概念により特許請求の範囲を記載することが容易にできたにもかかわらず,本件発明の特許請求の範囲には,あえてこれを「半導体ウェーハ」に限定する記載をしたものということができる。また,上記(イ)認定の出願経緯に照らしても,控訴人は,圧電基板等の切削方法が開示されている引用発明1(乙9)との関係で,本件発明の切削対象物が「正方形または長方形の半導体ウェーハ」であることを相違点として強調し,しかも,切削対象物を半導体ウェーハに限定しない当初の請求項1を削除するなどして,本件発明においては意識的に「半導体ウェーハ」に限定したと評価することができる。このように,当業者であれば,当初から「半導体ウェーハ」以外の切削対象物を包含した上位概念により特許請求の範囲を記載することが容易にできたにもかかわらず,控訴人は,切削対象物を「半導体ウェーハ」に限定しこれのみを対象として特許出願し,切削対象物を半導体ウェーハに限定しない当初の請求項1を削除するなどしたものであるから,外形的には「半導体ウェーハ」以外の切削対象物を意識的に除外したものと解されてもやむを得ないものといわざるを得ない。(エ) そうすると,被控訴人方法は,均等侵害の要件のうち,少なくとも,前記5の要件を欠くことが明らかである。ウ均等侵害の要件4についてまた,仮に,被控訴人方法が「半導体ウェーハ」以外の本件発明の構成要件を充足するとすると,後記2(1)で判示するのと同様に,被控訴人方法も,引用発明1から容易に推考することができるというべきであるから,均等侵害の要件のうち,前記4の要件も欠くことに帰する

◆平成20(ネ)10068 特許権侵害差止控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成21(行ケ)10046

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◆平成19(ワ)27187 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年07月15日 東京地方裁判所

 ユーザインターフェイス関係の特許(CS関連発明)について最終的には、進歩性違反を理由に権利行使不能と判断されましたが、用語の解釈について興味深い判断がなされました。
  「被告は,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続では,原告が,「テレビジョン番組リスト」の用語を「個々の番組単位における番組情報」の意味では使用しておらず,各手続における特許庁の主張及び裁判所の判決においても,「テレビジョン番組リスト」とは,テレビジョン番組のタイトルのリスト,すなわち,テレビジョン番組のタイトルが並んだものと解されているから,本件発明における「テレビジョン番組リスト」の文言についても,「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を意味すると解すべきであり,分割出願に係る本件特許権による権利行使の際に,同用語の意義を違えて主張することは,信義則に基づく禁反言法理から許されないと主張する。しかしながら,分割出願制度は,一つの出願において二つ以上の異なる発明の特許出願をした出願人に対し,出願を分割する方法により,各発明につき,それぞれ元の出願の時に遡って出願がされたものとみなして特許を受けさせるものであるから,原出願で特許出願された発明と,分割出願で特許出願された発明は,本来,内容を異にするものであり,分割出願された発明の「特許請求の範囲」に記載された文言の解釈が,原出願の手続における文言の解釈と必ずしも一致する必要はないというべきである。したがって,本件特許の「テレビジョン番組リスト」の文言の解釈において,仮に,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続において使用された「テレビジョン番組リスト」の文言の意味とは異なる解釈をしたとしても,禁反言法理から許されないとはいえず,被告の上記主張は採用できない。」

◆平成19(ワ)27187 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年07月15日 東京地方裁判所

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◆平成19(ワ)8426 不当利得返還請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年05月20日 東京地方裁判所

 侵害訴訟における無効判断時に、発明の要旨認定にリパーゼ判決を用いると言及がなされました。
   「そもそも,本件発明も,外部取り出し端子に印加された静電気が,2端子素子の保護回路及び共通浮遊電極を通じて,他の外部取り出し端子へと分割されるという分散放電の技術思想をその必須の内容とするものではないから,乙2文献が分散放電の技術思想を開示していないことによって,相違点1についての前記(ア)の判断が左右されるものではない。すなわち,特許出願手続,無効審判手続及び審決取消訴訟における発明の要旨認定は,特許請求の範囲の記載に基づいて行われ,明細書の発明の詳細な説明の記載や図面が参酌されるのは,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限られると解すべきところ(最高裁昭和62年(行ツ)第3号平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁参照),侵害訴訟において特許法104条の3第1項に基づく権利行使の制限の主張が行われた場合の当該特許発明の要旨認定においても,同条項が「特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは」と規定されていることに照らし,特許無効審判手続及びその審決取消訴訟における発明の要旨認定の場合と同じ認定手法によるのが相当と認められる。したがって,上記権利行使の制限の主張が行われた場合の発明の要旨認定は,原則として,特許請求の範囲の記載に基づいて行われ,明細書の発明の詳細な説明の記載や図面が参酌されるのは,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限られると解すべきである。 ところで,本件明細書(甲10添付)には,発明の詳細な説明の欄において,「共通浮遊電極を設けた場合には,静電気は2端子素子から共通浮遊電極さらに2端子素子を通して他の複数の端子に放電されるので,さらに印加電圧を低くすることができる。」,「第6図は,さらに第5図の例において遮光膜を第1主電極延在部27として第1主電極106に接続した例で,両方向に電流を流しやすい構造を有している。」との記載があるが,特許請求の範囲の記載は,前記争いのない事実等の(1)で認定したとおりであり,同記載によれば,本件発明においては,2端子薄膜半導体素子の付加ゲート電極及び第2主電極は外部取り出し端子に接続し,第1主電極は共通浮遊電極に接続するという順方向接続態様で接続する構\\成(構成要件E)であることが明らかであり,この接続態様によれば,電流は,外部取り出し端子から2端子薄膜半導体素子を介して共通浮遊電極へ流れる方向には流れやすいが,共通浮遊電極から2端子薄膜半導体素子を介して他の外部取り出し端子に流れる方向には流れにくくなっているものと認められる。そうすると,本件特許の特許請求の範囲の記載からみて,分散放電の技術思想ないしそれを実現する構\\成は,本件発明の必須の内容とはされていないというべきである。したがって,原告の上記主張は理由がない。b 仮に,原告の主張に係る分散放電を,本件発明の構成でも実現できる程度のものと解した場合でも,以下のとおり,原告の上記主張には理由がない。」

◆平成19(ワ)8426 不当利得返還請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年05月20日 東京地方裁判所

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◆平成20(ワ)6226 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月04日 大阪地方裁判所

 CS関連発明ではありませんが、新規性無しとして権利行使不能とされました。
 「これらの記載によると,本件明細書に記載された本件発明の実施例において,書込と読出は同時に行われることはなく,「タイムスリット」と呼ばれる短い時間を単位として,書込と読出が時分割で行われていることが示されている。具体的には,1個の書込タイムスロット「0」で書込を行い,次に,63個の読出タイムスロット「1」〜「63」で読出を行うという,合計64個のタイムスロットを繰り返すことが示されており,書込中の箇所を含む複数個の任意の位置から読出するのではなく,書込中の箇所を除く複数個の任意の位置から読出することがわかる(なお,仮に,本件発明1の「任意の複数の位置」が,引用発明3のタイムスロットのn個全体における任意の位置を意味するのであれば,引用発明3を理由として,本件発明1の無効をいうことはできなくなるが,そのときは,特許庁による判定〔乙1〕で示されたとおり,被告製品は,本件発明1を文言上侵害していないということになる。)。」

◆平成20(ワ)6226 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月04日 大阪地方裁判所

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◆平成21(ワ)4394 損害賠償 特許権 民事訴訟 平成21年04月27日 大阪地方裁判所

  機能的クレームについてサポート要件違反を理由として、権利行使ができないと判断されました。
   「原告は,「地震時のロックが確実になる」との効果を奏する取付位置は,当業者が試行錯誤をしてみれば極めて容易に判明すると主張するが,かかる主張は「自由端でない位置」という特許請求の範囲の記載が本件明細書で記載された課題解決の手段である「自由端から蝶番側へ(一定程度)離れた位置」を超えるものであることに対する反論にはなっておらず,失当である。仮に,係止手段の大きさや地震検出感度,地震時の係止手段の作動速度や作動時間,開き戸の開口の大きさ,並びに地震時の開き戸の開口速度や開口時間等の条件が明らかであれば,当業者にとって,技術常識に照らし,一定の位置を特定することも可能であるといえるが,本件明細書には,これらの諸条件の記載や示唆すら全くないのである。さらに,原告は「自由端でない位置」では課題を解決する手段として十\分でなくても,「押すまで閉じられずわずかに開かれた」との構成要件により作動が確実との課題を解決できるとも主張するが,そのようなことは本件明細書の発明の詳細な説明において何ら記載されていない。また,段落【0005】の「開き戸の動きが最も大きい自由端ではないため地震時のロックが確実になる」との記載によれば,取付位置は確実に係合する(ひっかける)ための構\成と位置づけられるところ,原告の主張によれば「押すまで閉じられずわずかに開かれた」という構成は,一旦係合した後の係合状態を維持するためものと解されるから,かかる構\成をもって,自由端に近接した位置における係合が確保できるとは解されない。以上より,構成要件Dの「自由端でない位置」との記載は,発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えるものであり,特許法36条6項1号の定めるサポート要件を充たすとは認められない。」

◆平成21(ワ)4394 損害賠償 特許権 民事訴訟 平成21年04月27日 大阪地方裁判所

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◆平成19(ワ)17762 損害賠償請求事件 実用新案権民事訴訟 平成21年02月27日 東京地方裁判所

 侵害訴訟で無効主張の抗弁がなされ、これに対して訂正による再抗弁を行う場合の主張立証責任は権利者にあると判断されました。
 「このような事情の下で,原告は,本件訂正請求により,上記の無効理由が解消される旨の対抗主張をしているところ,当該主張については,上記の無効主張と両立しつつ,その法律効果の発生を妨げるものとして,同無効主張に対する再抗弁と位置付けるのが相当である。そして,その成立要件については,上記権利行使制限の抗弁の法律効果を障害することによって請求原因による法律効果を復活させ,原告の本件実用新案権の行使を可能にするという法律効果が生じることに照らし,原告において,その法律効果発生を実現するに足りる要件,すなわち,?@原告が適法な訂正請求を行っていること,?A当該訂正によって被告が主張している無効理由が解消されること,?B被告製品が当該訂正後の請求項に係る考案の技術的範囲に属することを主張立証すべきであると解する。」

◆平成19(ワ)17762 損害賠償請求事件 実用新案権民事訴訟 平成21年02月27日 東京地方裁判所

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◆平成20(ワ)4056 損害賠償請求事件 特許権民事訴訟 平成21年03月05日 大阪地方裁判所

   審査においてした補正が要旨変更と判断され、特許法104条の3により権利行使が制限されました。
 「明細書の要旨」とは,旧特許法上その意義を定めた明文の規定がないものの,特許請求の範囲に記載された技術的事項を指すものと解すべきである。したがって,特許請求の範囲を増加し,減少し,変更することは,その本来的意味においては,いずれも明細書の要旨を変更するものということができる。しかし,「出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前に,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更する補正は,明細書の要旨を変更しないものとみなす」と定めているから(旧。特許法41条),当該補正が明細書の要旨を変更することになるか否かは,結局のところ,当該補正後の特許請求の範囲に記載された技術的事項が「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」か否かによって決せられることになる。そして,「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項」とは,当業者によって,出願時の明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,このように導かれる技術的事項との関係において,当該補正が特許請求の範囲の記載に新たな技術的事項を導入するものであるときは,当該補正は,「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということはできず,明細書の要旨を変更するものということになる。以下,このような見地から本件補正が当初明細書の特許請求の範囲に記載された技術的事項に新たな技術的事項を導入するものであるか否かを検討する。
 ・・・イ このように,当初明細書等に開示された発明は,もっぱら,複数の画像表示部で1つの画面を構\成し,かつ,折りたたみ可能とすることにより,不要時には小さく,必要時には大きくすることができ,装置の小型化と画面の大型化を同時に実現できる画像表\示装置であったといえる。そして,このときの各画像表示部の位置関係について,被告は,相互に当接していることを要する旨主張し,当初明細書等の実施例の説明においては「当接して」との文言が記載されている(上記(4)オ(ア))ところ,必ずしも各画像表示部が「当接」すなわち当たり接していなくても,1つの画像表\示がなされたと認識し得るような近接した位置関係にあれば,当初明細書等の上記発明の効果を奏しないとはいえない。したがって,当初明細書等に記載された発明は,「当接する」ことまでは要しないが,少なくとも複数の画像表示部が1つの画像を表\示していると認識し得る程度に近接していることを要するというべきであって,各画像表示部が離れた位置にあることによって1つの画面を構\成しないような画像表示装置は記載も示唆もされていないというべきである。そして,かかる構\成が当業者にとって自明であったともいえない。補正事項?@に係る補正後の特許請求の範囲の記載では「画像表示用の表\示部を複数有し」とされているのみで,「複数の画像表示部が一つの画像表\示がなされたと認識し得る程度に近接している」もの以外の構成を包含し得るものとなっているから,補正事項?@に係る補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で,当初明細書等に開示された発明の構成に関する技術的事項に新たな技術的事項を導入するものというべきである。したがって,同補正は,当初明細書等の範囲内においてするものではなく,当初明細書等の要旨を変更するものというべきである。」

◆平成20(ワ)4056 損害賠償請求事件 特許権民事訴訟 平成21年03月05日 大阪地方裁判所

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◆平成18(ワ)7760等 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年10月06日 大阪地方裁判所

 優先権主張の基礎出願1に開示がないとして、優先権が認められず、また、基礎出願2よりも前に先行技術があるので、104条の3の規定により権利行使が制限されました。
  「たしかに,アテローム性動脈硬化症(甲45:平成元年発行)や慢性関節リウマチ(甲47:平成6年発行),腫瘍組織の増殖,進展,及び転移(甲48:平成6年3月発行)がマクロファージの過剰な走化に起因したり,関係したりすることが,本件基礎出願1の出願当時の技術常識であったことが窺われる。しかし,本件基礎出願1の出願当時,88Cがマクロファージの走化と関係することが,同出願の明細書に開示されていないことは前記(4)ア(イ),(5)アで述べたとおりであり,同明細書に,本件各発明に係る88Cがこれらの疾患に関係しているか否かについての具体的な記載や示唆はないというべきである。また,仮に,88Cによりマクロファージの走化が誘引されることが当業者において理解されることを前提としても,具体的にどの疾患に関係するかについては,何ら特定されておらず,本件基礎出願1の明細書には,88Cの具体的な機能が,記載ないし示唆されていないというべきである。・・・・・以上によると,本件基礎出願1の明細書には,ケモカイン受容体88C(CCR5)と結合するケモカイン(リガンド)についての記載がなく,88Cの機能\が開示されていないこととなり,産業上の利用可能性ないし実施可能\性要件を欠き,また,最初の出願に係る出願書類の全体により本件各発明が明らかにされているということもできない。したがって,本件特許は,本件基礎出願1に基づく優先権を享受することができない。4 新規性欠如の有無(その2)(争点3-3)アイコスは,前記本件基礎出願1の後である平成8年6月7日,米国において,本件基礎出願1の一部継続出願(本件基礎出願2)をし,本件基礎出願2の明細書において,CCR5のリガンドとしてRANTES,MIP-1α,MIP-1βを特定している。しかし,本件基礎出願2の出願日(平成8年6月7日)に先立ち,上記リガンドについての文献(乙10の1・2,乙11)が存する。上記各文献のうち乙10の1・2(平成8年3月19日発行)では,CCR5(88C)のアミノ酸配列が記載された上,このリガンドとして,CCケモカイン中,MIP-1α,MIP-1β,RANTESが特定され,MIP-1αが,もっとも高いアゴニスト活性を示したが,他のCCケモカインであるMCP-1,MCP-2,MCP-3並びにCXCケモカイン類は無効であったことが報告されている。そして,上記文献乙10の1・2に記載されている「CC CKR5(hChemR13)」が本件各発明における88C(CCR5)と同一であることについては,当事者間に争いがない(原告第2準備書面7頁)。また,上記各文献のうち乙11(平成8年3月29日発行)でも,CCR5(88C,CC CKR5)とこれに対応するケモカインとしてMIP-1α,MIP-1β,RANTESの記載がある。一方,前記1で述べた技術的背景及び上記各文献(乙10の1・2,乙1511)によると,同各文献に接した当業者にとって,本件各発明に係る物質を精製,単離することは,技術的に容易であったと認めることができる。そうすると,本件各発明は,上記文献に開示されているか,もしくは,これから容易に想到することができるというべきである。以上によると,本件特許は,本件基礎出願2の優先権を主張できたとしても,本件各発明に係る特許は,いずれも新規性もしくは進歩性を欠如することとなり,特許無効審判により無効にされるべきであると認められるから(特許法123条1項2号,29条),特許法104条の3により,原告は,被告に対し本件各発明に係る特許権を行使することができない。」

◆平成18(ワ)7760等 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年10月06日 大阪地方裁判所

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◆平成18(受)1772 特許権に基づく製造販売禁止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年04月24日 最高裁判所第一小法廷(判決棄却 大阪高等裁判所)

  特許法104条の3の無効主張について、訂正審判により防御するのであれば、事実審口頭弁論終結時までに行うべきとの判断がなされました。
  「以上のように,訂正審判の請求をした場合には無効部分を排除することができる こと,及び,被告製品が減縮後の特許請求の範囲に係る発明の技術的範囲に属する ことは,被告の権利行使制限の抗弁が成立するか否かを判断するための要素であっ て,その基礎事実が事実審口頭弁論終結時までに既に存在し,原告においてその時 までにいつでも主張立証することができたものである。原告としては,事実審口頭 弁論終結時までに,上記の主張立証を尽くして権利行使制限の抗弁を排斥すべきで あり,事実審が,当事者双方の主張立証の程度に応じた訴訟状態に基づく自由心証 の結果として,権利行使制限の抗弁の成立を認めた以上,事実審口頭弁論終結後に なって,原告が訂正審判を請求し訂正審決が確定したとしても,訂正審決によって もたらされる法律効果は事実審口頭弁論終結時までに主張することができたもので あるから,訂正審決が確定したことをもって事実審の上記判断を違法とすることは できないのである(なお,最高裁昭和55年(オ)第589号同年10月23日第 一小法廷判決・民集34巻5号747頁,最高裁昭和54年(オ)第110号同5 7年3月30日第三小法廷判決・民集36巻3号501頁参照)。」

◆平成18(受)1772 特許権に基づく製造販売禁止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年04月24日 最高裁判所第一小法廷(判決棄却 大阪高等裁判所)

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◆平成18(ワ)22172 損害賠償請求事件 特許権民事訴訟 平成19年09月11日 東京地方裁判所

   特許法104条の3で、無効にされるべきものとして、請求が棄却されました。興味深いのは、弁論終結後に、特許庁で無効不成立とする審決がなされても、裁判所は「無効である」として弁論再開不要と判断した点です
  「(3) 以上によれば,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告両名は,本件特許権を行使することができない(特許法104条の3)。なお,本件については,弁論終結後に,無効不成立とする審決がなされたとして,原告両名から弁論の再開申請がなされている。しかし,本件特許については,本件特許発明の課題解決手段の主要な部分がすでに乙1公報に開示されており,無効にされるべきものと認められることは上記のとおりであるから,本件については弁論の再開は不要と考える。」

◆平成18(ワ)22172 損害賠償請求事件 特許権民事訴訟 平成19年09月11日 東京地方裁判所

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◆平成17(ワ)1199 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成19年04月19日 東京地方裁判所

 CS関連発明について、他のソフトウェアのマニュアルに記載された発明から容易であるとして、権利行使不能\と判断されました。
 「ARC/INFO のマニュアル類は,ARC/INFO マニュアルV5も含め,多数のライセンシーとその社員,従業員,学生など不特定多数の人に頒布され,その内容が公開されていること,マニュアル類自体には,ソースコード等の開示はなく(乙24,25),高度の秘密情報が記載されているものではないこと,ARC/INFO の営業活動においては,当該マニュアル類が実際には厳格に秘密として管理されておらず,契約条項において定められている秘密保持条項は,実際には,ソフトウエアを念頭に置かれたものであり,マニュアルについては営業政策上厳格な秘密保持義務を課していたとまでみることはできないことが認められ,以上によれば,ARC/INFOマニュアルV5を含む上記マニュアル類は「日本国内又は外国において,頒布された刊行物」に該当するものと認められる。」

 同じ特許に対する判決です。
   ◆平成16(ワ)17929等 特許権侵害差止請求権不存在確認等請求事件 特許権民事訴訟 平成19年03月29日 東京地方裁判所

◆平成17(ワ)1199 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成19年04月19日 東京地方裁判所

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◆平成15(ワ)16924 損害賠償等請求事件 特許権民事訴訟 平成19年02月27日 東京地方裁判所

  本件侵害訴訟では、訂正が認められることを前提にして、約3000万円の損害賠償が認められました。
   争点はいくつかありますが、興味深いのは、併存する無効審判との関係です。本件訴訟の対象である特許権は、無効審決がなされたので、特許権者は取消訴訟を提起するとともに、別途訂正審判を請求をしました。知財高裁は、差し戻し決定をしました。無効審判では、訂正を認めた上で、再度、無効審決がなされました。特許権者は、取消訴訟を提起し、現在、知財高裁に継続中です。
  「本件特許については,その無効審判事件において,本件訂正の請求がなされており,特許庁は,その審決において,本件訂正を認め,本件訂正特許1を無効と判断したものの,原告が同審決に対し審決取消訴訟を提起したために,未だ本件訂正が確定していない状況にある。特許法104条の3第1項における「当該特許が無効審判により無効とされるべきものと認められるとき」とは,当該特許について訂正審判請求あるいは訂正請求がなされたときは,将来その訂正が認められ,訂正の効力が確定したときにおいても,当該特許が無効審判により無効とされるべきものと認められるかどうかにより判断すべきである。したがって,原告は,訂正前の特許請求の範囲の請求項について容易想到性の無効理由がある場合においては,?@当該請求項について訂正審判請求ないし訂正請求をしたこと,?A当該訂正が特許法126条の訂正要件を充たすこと,?B当該訂正により,当該請求項について無効の抗弁で主張された無効理由が解消すること(特許法29条の新規性,容易想到性,同36条の明細書の記載要件等の無効理由が典型例として考えられる,)?C被告製品が訂正後の請求項の技術的範囲に属することを,主張立証すべきである。
 また、間接侵害についても、輸出向け専用品については間接侵害を構成しないと判断しました。
 「特許法101条は,特許権の効力の不当な拡張とならない範囲でその実効性を確保するという観点から,特許権侵害とする対象を,それが生産,譲渡される等の場合には当該特許発明の侵害行為(実施行為)を誘発する蓋然性が極めて高い物の生産,譲渡等に限定して拡張する趣旨の規定であると解される。そうすると,「その物の生産にのみ使用する物」(1号)という要件が予定する「生産」は,日本国内における生産を意味するものと解釈すべきである。外国におけるイ号物件の生産に使用される物を日本国内で生産する行為についてまで特許権の効力を拡張する場合には,日本の特許権者が,属地主義の原則から,本来当該特許権によっておよそ享受し得ないはずの,外国での実施による市場機会の獲得という利益まで享受し得ることになり,不当に当該特許権の効力を拡張することになるというべきである。」
 また、新規事項であるとの主張についても、これを否定しました。
 「本件訂正前明細書には,搬送部(15,16)を伸縮する際に共通駆動部(13)を回動させる構成及び当該共通駆動部の回動の際,他方の搬送部(16,15)が駆動制御手段における制御により見かけ上静止状態を保持し,共通駆動部(13)上に取り込まれた状態で共通駆動アームと同様に旋回する構\成が記載されていることが認められる。そうすると,本件訂正にかかる本件訂正特許発明1は,本件訂正前明細書に記載されていたといえるから,本件訂正は,願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内の訂正である。被告は,前記b)?@の記載を根拠に本件各特許発明の駆動制御手段は,前記b)?@に記載された構成に限定して解釈すべきであると主張し,かかる限定解釈を前提とすれば,本件訂正は本件各特許発明における駆動制御手段に含まれない構\成を含むことになるから特許法126条3項に違反する旨主張する。しかし,本件訂正前の本件各特許発明の特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載から被告が主張するような限定解釈をすべき理由はない。」

◆平成15(ワ)16924 損害賠償等請求事件 特許権民事訴訟 平成19年02月27日 東京地方裁判所

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◆平成17(ワ)2649 特許権侵害差止等請求事件 平成18年07月20日 大阪地方裁判所

  改正前特許法36条4項に規定する実施可能要件を満たしていないとして、権利行使不可と判断されました。
「本件明細書は,重合の初期に重合開始剤(過酸化水素水)を多量に添加する場合はともかく,それ以外の方法によって製造された水性接着剤も本件発明に包含される以上,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているということはできない。したがって,本件特許は,改正前特許法36条4項に規定する実施可能\要件を満たしていないから,同法123条1項4号に該当し,特許無効審判により無効とすべきものと認められるから,特許法104条の3第1項により,原告は,被告に対し,本件特許権に基づく権利行使をすることはできないというべきである。」

◆平成17(ワ)2649 特許権侵害差止等請求事件 平成18年07月20日 大阪地方裁判所

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◆H17. 9.30 知財高裁 平成17(ネ)10040 特許権 民事訴訟事件

 アイコン特許(CS関連発明)について、地裁判決が破棄されました。判決文を見る限り、控訴審で無効資料が新たに提出されたようです。
 知財高裁は、「アイコンの機能説明を表\示させる機能を実行するための手段についてみても,本件特許出願前の1988年(昭和63年)7月に頒布された乙12文献(「ハイパープログラマーのためのハイパーツール」)には,「ハイパーツールは,あなたが異なるツールに関する情報を素早く得ることを可能\とする,組み込みヘルプ機能を含みます。このスクリーン上のツールについてヘルプを得るには,ヘルプ・アイコンをクリックします。そして示されたツールのアイコンのうちいずれかをクリックします。」(訳文〔甲19〕14頁下から7行目ないし下から4行目)と記載されているから,本件特許出願当時,ヘルプを得るためのアイコン,すなわち,機能\説明を表示させる機能\を実行させるアイコンも,既に公知の手段であったことが認められる。そうであれば,乙18発明において,アイコンの機能説明を表\示させる機能を実行させる「機能\説明表示手段」として,「スクリーン/メニュー・ヘルプ」アイテムに代えて「アイコン」を採用することは,当業者が容易に想到し得ることというべきである。」と判断しました。

 少し気になるのは、今回の事例で、101条4号の間接侵害が成立しないと述べている点です。知財高裁は「同号は,その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能である物についてこれを生産,譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものであって,そのような物の生産に用いられる物を製造,譲渡等する行為を特許権侵害とみなしているものではない。」といっている点です。もし、方法クレームしかなければ、プログラムが記録されたCD−ROMの差止ができないということになりそうです。

◆H17. 9.30 知財高裁 平成17(ネ)10040 特許権 民事訴訟事件

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◆H17. 4. 8 東京地裁 平成15(ワ)3552 特許権 民事訴訟事件

  侵害訴訟にて、要旨変更か否か、実施料率、無効理由などいくつかの争点が争われました。
 要旨変更について、裁判所は「前記イのとおりの当初明細書の記載及び当初明細書の第4図からすると,突片7A3,7A4ないし連結片75が,保持容器外周面位置決め用片ないし保持容器頂面位置決め用片に相当する。したがって,「アース用外部端子」との文言こそ記載されていないものの,前記イの記載の意味するところは,本件発明の構成要件Eの「前記外周面位置決め用片ないし保持容器頂面位置決め用片を水晶振動子本体アース用外部端子とした」と同一であるということができる。したがって,・・・とする補正は,当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内であると認められるから,明細書の要旨を変更しないものとみなされる(平成6年法律第116号による改正前の特許法41条)。」と認定しました。

◆H17. 4. 8 東京地裁 平成15(ワ)3552 特許権 民事訴訟事件

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◆H17. 3.10 東京地裁 平成16(ワ)11289 特許権 民事訴訟事件

 冒認出願を理由に権利行使不能と判断されました。
  「上記アにおいて認定した事実を前提とすると,原告Aは,被告に対し,第1回打合せ時において,小型マンホールでの使用のため装置の大きさを小さくすること,表示パネルを分離して遠隔操作で本体を操作すること,管内での固定方法を検討して欲しいと要望しただけであり,その後,被告において,以前に被告が製造販売していたパイプレーザは電源を外部に求めていたこと,被告の製品である「TP−L2」の小型化に際し,電池収納部を取り外して小型化した経験があったことなどから,被告が既に製造販売していた製品「TP−L3」の電源部を照射機構\部分から別体化する方法で小型化することに想到したものである。また,前記(1)に認定の事実関係に照らせば,本件特許発明1の本質ともいうべき構成は,本件特許権の出願経過にかんがみると,「レーザ照射機構\から少なくともレーザ照射部を分離して小口径マンホールを通過する大きさとして,この分離したレーザ照射部のみを小口径マンホールを介して敷設パイプ類内に設置可能とした」点にあるということができるところ,この点に関しては,原告Aが,第1回打合せ時に提案したものとはいえず,被告従業員が発明者というべきである。そうすると,本件特許発明1は,特許法123条1項6号の「発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してなされたもの」というべきで,無効理由を有することが明らかである。」

◆H17. 3.10 東京地裁 平成16(ワ)11289 特許権 民事訴訟事件

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◆H17. 1.18 東京地裁 平成16(ワ)8967 特許権 民事訴訟事件

  裁判所は、「ランク別に登録したメモリを設け、ランク別の着信音表示を行なう」ものではない、加えて、本件特許は,進歩性を欠くとして、権利濫用であると判断しました。36条の記載不備も争点でしたが、この点については判断されませんでした。従来、「構\成要件該当せず、その他の点については判断するまでもなく・・・」というのが多かったように記憶していますが、最近には、念押しのような判決が見受けられます。
  

◆H17. 1.18 東京地裁 平成16(ワ)8967 特許権 民事訴訟事件

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◆H16.12.28 東京地裁 平成15(ワ)19733等 特許権 民事訴訟事件

  機能的な表\現で記載されているクレーム関する技術的範囲についての判断が為されました。なお、本件は明らかな無効理由も存在するとされてます。
 問題となったクレームは、以下の通りです。「芯のくり抜かれた新鮮な苺の中にアイスクリームが充填され,全体が冷凍されているアイスクリーム充填苺であって,該アイスクリームは,外側の苺が解凍された時点で,柔軟性を有し且つクリームが流れ出ない程度の形態保持性を有していることを特徴とするアイスクリーム充填苺」
 裁判所は、「この「外側の苺が解凍された時点で,柔軟性を有し且つクリームが流れ出ない程度の形態保持性を有していることを特徴とする」との記載は,「新鮮な苺のままの外観と風味を残し,苺が食べ頃に解凍し始めても内部に充填されたアイスクリームが開口部から流れ出すことがなく,食するのに便利であ」る(本件明細書【0008】。本件公報3欄38行ないし41行)という本件特許発明の目的そのものであり,かつ,「柔軟性を有し且つクリームが流れ出ない程度の形態保持性」という文言は,本件特許発明におけるアイスクリーム充填苺の機能ないし作用効果を表\現しているだけであって,本件特許発明の目的ないし効果を達成するために必要な具体的な構成を明らかにするものではない。 このように,特許請求の範囲に記載された発明の構成が作用的,機能\的な表現で記載されている場合において,当該機能\ないし作用効果を果たし得る構成であれば,すべてその技術的範囲に含まれると解すると,明細書に開示されていない技術思想に属する構\成までもが発明の技術的範囲に含まれ得ることとなり,出願人が発明した範囲を超えて特許権による保護を与える結果となりかねない。しかし,このような結果が生ずることは,特許権に基づく発明者の独占権は当該発明を公衆に対して開示することの代償として与えられるという特許法の理念に反することになる。 したがって,特許請求の範囲が,上記のような作用的,機能的な表\現で記載されている場合には,その記載のみによって発明の技術的範囲を明らかにすることはできず,当該記載に加えて明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌し,そこに開示された具体的な構成に示されている技術思想に基づいて当該発明の技術的範囲を確定すべきものと解するのが相当である。」と述べました。

◆H16.12.28 東京地裁 平成15(ワ)19733等 特許権 民事訴訟事件

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◆H16.10. 1 東京地裁 平成15(ワ)28554 特許権 民事訴訟事件

 2画面式の携帯電話機に関する特許について、損害賠償請求権等が存在しない旨の判決がなされました。
こちらは関連事件です(H16.10. 1 東京地裁 平成15(ワ)28575 特許権 民事訴訟事件)。

◆H16.10. 1 東京地裁 平成15(ワ)28554 特許権 民事訴訟事件

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◆H16. 5.14 東京地裁 平成13(ワ)12933 特許権 民事訴訟事件

 出願公告後にした構成要件を追加する補正が、特許請求の範囲を実質上変更するものであり本件特許には無効理由ありとして、損害賠償請求を棄却しました。
「平成6年改正前特許法64条,126条2項が公告決定後の補正につき上記のように補正の要件を規定している趣旨は,特許出願人と第三者との間の利害の調整にあるところ,特許請求の範囲に新たな構成を付加することで表\面的には特許請求の範囲の減縮に当たっても,実質的にはこれによって全く別個の発明になるような場合にまで補正を許容すると,補正後の別個の発明の技術的範囲について補正前の特許発明の出願日に遡って出願公告に伴う仮保護の権利を与えることとなり,特許公報の記載を信頼して行動する第三者に対して不測の不利益を与えることとなるからである。そして,この場合において,補正前の特許請求の範囲に係る発明に新たに付加された構成が,同発明の特許出願当時,当業者にとって周知の技術手段(周知技術)に該当しない場合には,補正前の特許発明と補正後の特許請求の範囲の記載に係る発明は,特段の事情のない限り,別個の発明というべきである。けだし,周知の技術手段を付加するものである限りは,発明はその同一性を失うことがなく,特許請求の範囲も実質上変更されることはないが,周知でない新規な技術手段を付加するときは,特段の事情のない限り,構\成を異にすることになり,別個の発明となってしまうからである。」 と述べました。
実質上の変更に該当するかについては、類型化できるほどの判断例が多くないので、具体的事案について検討してみたいですね。

 

◆H16. 5.14 東京地裁 平成13(ワ)12933 特許権 民事訴訟事件

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◆H15. 7.30 東京地裁 平成14(ワ)2473 特許権 民事訴訟事件

 裁判所が侵害事件にて無効と判断した事例です。ただ、同時継続の無効審判では、侵害訴訟と逆の判断をしました。キルビー事件の最高裁は「明らかな無効理由があるとき」と条件を付けていたので、特許庁で無効理由無し、裁判所で無効と判断されることは、現実にはないのでは?と考えてましたが、現実にはあるんですね。
  裁判所は、「本件は,平成15年4月7日に口頭弁論を終結し,判決言渡日を,当初,6月25日と指定した。この間に,本件特許に係る無効審判事件(無効2002−35245号)について,6月17日付けで,「本件審判請求は,成り立たない。」旨の審決がされた。これを受けて,原告から,口頭弁論再開の申立てがされたため,当裁判所は,原告,被告双方から,審理に関する意見を聴取した上で,本件については弁論を再開をしないが,他方,念のため,当事者からの事実上の主張を確認するために,判決言渡日を7月30日に延期することとした。 本件のような事案において,特許権侵害事件を審理する裁判所が,権利濫用の抗弁を肯定して,本件請求を棄却すべきか,無効審判事件における審決が確定するまで中止すべきかは,事案の性質及び審理の進行状況によって異なる対応が考えられ,一様ではないというべきである。本件においては,当裁判所の本件特許の有効性に関する判断を示した上で,控訴審において,審決と本件判決の両者を,一回的に審理し,結論を出すのが,最も,紛争の迅速な解決に資するものと解したため,本判決を言い渡すこととした。」と述べました。

 

◆H15. 7.30 東京地裁 平成14(ワ)2473 特許権 民事訴訟事件

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◆H15. 4.16 東京地裁 平成13(ワ)15719 特許権 民事訴訟事件

  パソコンの画面上でウィンドウを複数重ね合わせて表\示する特許が侵害されたとして、差止および損害賠償を求めていた裁判で、東京地裁は、出願前の公知文献に記載された発明から進歩性がないとして、権利行使を認めませんでした。
主な争点としては、1)出願日前(86/2/15)より以前の(86/1/16)に当該マニュアルが配布されたか、2)当該配布がされているとして、容易想到性があるかが争われました。
上記争点1)について、裁判所はいろいろな資料から見て、86/1/16に当該マニュアルが配布されたと認定しました。たしかに、86/1/16に当該マニュアルが存在したことは立証できていると思われますが、86/1/16に当該マニュアルが配布されたかというと疑問がないわけではありません。当該マニュアルは、配布物としての保護を受けるために、訴外第三者によって米国政府へ著作権登録がなされています。そのときの申請内容では86/1/16発行となっていたことが、決め手になったのでしょうか?、確かに第三者がわざわざ嘘をつくことはないのですが、特許法における文献公知の認定としては少し甘いのではないでしょうか?。この点は控訴審で争われるかもしれません。もしかすると、裁判所は、訴外の第三者が86/1/16からショーで展示即売してと意思表示している以上、見ようと思えば見れる状態で展示されたので、販売されたという事実がやや疑問でも、文献公知と考えて差し支えないと考えたのでしょうか?
 争点2)については、当該マニュアルには、「表示優先順位が決められた」複数のウインドウを”その表\示優先順位に従って”重ね合わせることまでは開示されていない」と判断したものの、当該マニュアルと、Macintosh Revealedに記載されている技術を組み合わせることによって,容易に想到し得たものということができると容易であると認定しました。

 

◆H15. 4.16 東京地裁 平成13(ワ)15719 特許権 民事訴訟事件

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◆H15. 2.26 東京地裁 平成14(ワ)6241 特許権 民事訴訟事件

  冷凍枝豆の侵害訴訟について、無効か否かが争われました。なお、本件特許については別途特許庁審判にて無効と判断されています。
  裁判所は「緑色を維持しながらもそのような構成を達成できることは,格別の証拠の検討をするまでもなく,健全な社会通念ないし経験則上明らであるということができるから,本件発明出願当時の当業者にとって容易であったものといえる。・・・ブランチングの際の塩分濃度を高くしたり,加熱時間を長くしたり,加熱温度を高めたりすれば,緑色を維持しながらも「豆の中心まで薄塩味が浸透している」という構\成を容易に達成することができたことは,証拠上も認めることができる。」と権利行使を認めませんでした。

 

◆H15. 2.26 東京地裁 平成14(ワ)6241 特許権 民事訴訟事件

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◆H15. 1.20 東京地裁 平成14(ワ)5502 実用新案権 民事訴訟事件

   特別な項目を有する貸借対照表について実用新案権に対して、裁判所は、「本件考案は,”自然法則を利用した技術的思想”に該当しないから,本件実用新案登録には,法3条1項柱書きに反する無効理由の存することが明らかである」と権利行使を認めませんでした。
 問題となった実案のクレームは以下の通りです。
  A)資金別の貸借対照表であって,この表\は,損益資金の部の欄と,固定資金の部の欄と,売上仕入資金の部の欄と,流動資金の部の欄とを含み,これらの欄は縦方向または横方向に配設してあり,B)上記損益資金の部の欄,固定資金の部の欄,売上仕入資金の部の欄,流動資金の部の欄の各欄は貸方・借方の欄に分けてあり,更に貸方・借方の欄に複数の勘定科目が設けてあり,C)上記損益資金の部の欄,固定資金の部の欄,売上仕入資金の部の欄,流動資金の部の欄の各欄に対応して現在の現金預金の欄が設けてあるD)資金別貸借対照表。

 

◆H15. 1.20 東京地裁 平成14(ワ)5502 実用新案権 民事訴訟事件

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