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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作者

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成28(ワ)32742  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月19日  東京地方裁判所(47部)

 いろいろ争点はありますが、写真について、著作物性が否定されました。ただ、文章について複製権・翻案権侵害が認められました。損害額は、販売不可事情を考慮して、114条1項(原告単価利益*被告販売数)の7割と認定されました。
 制作工程写真は,別紙「制作工程写真目録」記載のとおり,故一竹によ る「辻が花染」の制作工程の各場面を撮影したものであるところ,これら 制作工程写真の目的は,その性質上,いずれも制作工程の一場面を忠実に 撮影することにあり,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光 線との関係等といった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとな らざるを得ず,誰が撮影しても同じように撮影されるべきものであって, 撮影者の個性が表れないものというべきである。したがって,制作工程写 真は,いずれも著作物とは認められない。これに反する原告らの主張は採 用できない。
イ 美術館写真について
美術館写真は,別紙「美術館写真目録」記載のとおり,一竹美術館の外 観又は内部を撮影したものであるところ,これら美術館写真の目的は,そ の性質上,いずれも一竹美術館の外観又は内部を忠実に撮影することにあ り,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光線との関係等とい った写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとならざるを得ず,誰 が撮影しても同じように撮影されるべきものであって,撮影者の個性が表 れないものである。したがって,美術館写真は,いずれも著作物とは認め られない。これに反する原告らの主張は採用できない。
(2) 制作工程文章の著作物性について
制作工程文章は,別紙「制作工程文章目録」記載のとおり,「辻が花染」 の各制作工程を説明したものである。その目的は,各制作工程を説明するこ とにあるため,表現上一定の制約はあるものの,制作工程文章が,同様に「辻 が花染」の制作工程について説明した故一竹作成の文章(甲41)とも異な っていることに照らしても,各制作工程文章の具体的表現は,その作成者の 経験を踏まえた独自のものとなっており,作成者の個性が表現されていると いえるから,制作工程文章は全体として創作性があり,著作物と認められる。 これに反する被告の主張は採用できない。
(3) 旧HPコンテンツの著作物性について
旧HPコンテンツは,別紙「旧HPコンテンツ目録」記載のとおりであり, 旧HPコンテンツ1は「辻が花染」の歴史的説明,旧HPコンテンツ2は故 一竹と「辻が花染」との関わり,旧HPコンテンツ3はフランス芸術文化勲 章シュヴァリエ章勲章メッセージの和訳,旧HPコンテンツ4はスミソニア ン国立自然史博物館からの感謝状の和訳である。旧HPコンテンツ1及び2 はいずれも歴史的事実に関する記述ではあるものの,その事実の取捨選択, 表現の仕方には様々なものがあり得,その具体的表現には筆者の個性が表れ ているといえるから,創作性があり,著作物と認められる。また,旧HPコ ンテンツ3及び4はいずれも仏語ないし英語の翻訳であるが,翻訳の表現に は幅があり,用語の選択や訳し方等その具体的表現に翻訳者の個性が表れて いるといえるから,創作性があり,著作物と認められる。これに反する被告 の主張は採用できない。
複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再 製することをいうところ(著作権法2条1項15号参照),著作物の複製と は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現 に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現する ことなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が 既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作 成する行為をいうものと解すべきである。また,翻案とは,既存の著作物に 依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表 現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現する ことにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接 感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解すべきであ る(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷 判決・民集55巻4号837頁参照)。 被告作品集130−131頁(甲9)と制作工程文章を別紙「原被告作品 対比表」記載1のとおり比較対照すると,被告作品集130−131頁の制 作工程に関する各文章は,制作工程文章1ないし7及び9の各文章と全く同 一か,又はほとんど同一であり,一部改変され,相違点はあるものの,全体 として制作工程文章の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。 よって,被告は被告作品集130−131頁において制作工程文章1ないし 7及び9を複製ないし翻案したものと認められ,複製権ないし翻案権を侵害 する。そして,上記改変は著作者の意に反する改変といえるから,同一性保 持権を侵害する。 これに対して,被告は,両各文章は創作性のない部分について同一性を有 するにすぎず,複製にも翻案にも当たらないと主張するが,上記のとおり, 制作工程文章の創作的部分において同一性が認められるから,被告の主張は 採用できない。
原告らは,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集の利益額 に基づき114条1項の適用があると主張するのに対し,被告はこれを争 うため,以下検討する。
(ア) 原告作品集の販売主体及び原告らの販売能力
原告作品集の奥付には「(C)1998 (株)一竹辻が花」と記載され,原告作 品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおいて販売されていることが認 められる(甲8,29)ところ,訴外一竹辻が花(昭和59年5月8日 に「株式会社オピューレンス」から商号変更)は平成22年まで原告A が代表者を務めていた会社であり(甲50の1及び2),原告工房も含 めて実質的には原告Aらの経営によるものと認められ,その販売主体は 実質的には原告らとみることができる。また,原告作品集の制作には, 故一竹を引き継いで「辻が花染」を制作する原告Aの関与が大きいもの と考えられることも併せ考慮すれば,原告らには原告作品集の販売能力 があると認められる。 これに対し,被告は,そもそも原告らが原告作品集を販売しておらず, 販売能力がないから,被告作品集への114条1項の適用の基礎を欠く と主張するが,上記説示に照らして採用できない(なお,被告は,原告 作品集の奥付に「制作(株)便利堂」と記載されていること(甲8)も 指摘するが,この点は販売能力とは関係がない。)。
(イ) 原告作品集と被告作品集の代替性
原告作品集と被告作品集は,その大部分において,着物作品(部分を 含む。)を1頁に大きく配置して紹介するとともに,観賞の対象とする ものであり,そのほかの部分においても,故一竹の略歴,制作工程の説 明,美術館の紹介が記載されており,内容は類似するものと認められる (甲9,51)。また,上記内容の共通性に照らして,着物作品の観賞 を主としつつ,故一竹と「辻が花染」について理解を深めるという利用 目的・利用態様も基本的には同一であると認められる。そうすると,後 記のとおり,販売ルートの違いはあるものの,両作品集には代替性が認 められる。被告は,内容,利用目的・利用態様及び販売ルートの相違か ら,原告作品集と被告作品集には代替性がないと主張するが,上記説示 に照らして採用できない。
(ウ) 以上からすれば,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集 の利益額に基づき著作権法114条1項の適用があるというべきである。
イ 原告らが販売することができないとする事情(推定覆滅事情)
被告は,販売市場の相違,被告の営業努力,被告作品集の顧客吸引力に より,被告作品集の譲渡数量の全数について販売することができないとす る事情があると主張する。 そこで検討するに,原告作品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおい てインターネット上で販売されている(甲29)のに対し,被告作品集は 一竹美術館のショップ内で販売されており(前記前提事実(4)ア),顧客層 に一定の違いがあると考えられること,また,被告作品集は,美術館のシ ョップにおいてまさに一竹作品等を観賞した者に対して販売されているこ とにより,販売態様の異なる原告作品集とは顧客誘引力に違いがあると考 えられること,以上の事情を踏まえると,被告作品集の30%については, 原告らが販売することができないとする事情があったと認めるのが相当で ある。

◆判決本文

問題となった著作物は以下です。

◆別紙1

◆別紙2

◆別紙3

◆別紙4

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平成29(ワ)25465  著作者人格権確認等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年3月26日  東京地方裁判所

 「かっぱえびせん」の「やめられない,とまらない」のキャッチフレーズを考えたのは自分であるとの確認を求めましたが、訴えの利益がないとして却下されました。
 原告は,本件訴えにおいて,原告が本件CMを制作した事実の確認を求めている。 しかし,確認の訴えは,原則として,現在の権利又は法律関係の存在又は不存在 の確認を求める限りにおいて許容され,特定の事実の確認を求める訴えは,民訴法 134条のような別段の定めがある場合を除き,確認の対象としての適格を欠くも のとして,不適法になるものと解される(最高裁昭和29年(オ)第772号同3 6年5月2日第三小法廷判決・集民51号1頁,最高裁昭和37年(オ)第618 号同39年3月24日第三小法廷判決・集民72号597頁等参照)。 したがって,本件訴えのうち,原告が本件CMを制作した事実の確認を求める訴 えは不適法である。 なお,事案に鑑み付言するに,仮に,原告が,本件CMを制作した事実ではなく, 原告が本件CMにつき著作権ないし著作者人格権を有することの確認を求めたとし ても,確認の訴えは,現に,原告の有する権利又はその法律上の地位に危険又は不 安が存在し,これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが必要かつ適切で ある場合に,その確認の利益が認められるところ(最高裁昭和27年(オ)第68 3号同30年12月26日第三小法廷判決・民集9巻14号2082頁参照),前 記前提事実(第2,2),証拠(甲18ないし20,23ないし25,19,乙1, 2)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,アストロミュージックから許諾を受けて 本件キャッチフレーズを使用しているにとどまり,本件CMについて被告が著作権 ないし著作者人格権を有するなどとは主張していないから,原告が有する権利又は 法律上の地位に存する危険又は不安を除去するために,本件CMの著作権ないし著 作者人格権の存否につき被告との間で確認判決を得ることが必要かつ適切であると は認め難く,結局,確認の利益を欠くものとして不適法というほかない。
2 争点3(被告は,原告に対し,原告が本件キャッチフレーズを考えた本人で あるとの事実を被告の社内報に掲載する旨を約したか)について
原告は,被告が原告に対し,原告が本件キャッチフレーズを考えた本人であると の事実を被告の社内報に掲載する旨を約したと主張し,同事実を被告の社内報に掲 載するよう請求するところ,同主張は,原告と被告との間で,被告が同掲載義務を 負うことを内容とする契約が成立した旨を主張するものと解される。 そこで検討するに,原告と被告代表者が平成23年6月頃面会したこと,その後\n程なくして,原告と被告の宣伝課長が面会し,原告の写真を撮影したことは,当事 者間に争いがない。 しかし,原告本人尋問の結果によっても,原告と被告の宣伝課長との面会の場に おいては,被告の社内報に,誰がどのような内容の記事を作成し,いつまでに掲載 するのかなど,記事の掲載をどのように実現させていくかについては,何ら明確に 合意しなかったというのである。そうすると,仮に,原告本人が供述する事実関係 が認められたとしても,それのみをもっては,被告が行うべき給付義務の内容が具 体的に定まっていたとはいえず,原告と被告との間に,法的拘束力を有する契約と して,被告に履行を強制し得るまでの合意があったと評価することは困難である。 また,原告本人尋問の結果によっても,被告のホームページへの掲載が話題とな った形跡はおよそうかがえないから,原告と被告との間に,この点に関する契約が あったとみる余地はない。 したがって,被告の社内報及びホームページに,原告が本件キャッチフレーズを 考えた本人であるとの事実を掲載することを求める原告の請求には理由がない。

◆判決本文

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平成29(ネ)233等  損害賠償 著作権使用料請求控訴事件,同附帯控訴事件  著作権  民事訴訟  平成29年12月28日  大阪高等裁判所(8部)

 コンサートの企画運営会社に対して、損害賠償が認められました。被告は実はゴーストライターがいたというS氏です。請求原因は、全ろうの作曲者といううたい文句が虚偽だったというものです。 控訴審では、損害賠償額は、1審よりも、減額されました。理由は、「実施していれば通常得られたであろう利益であれば,不法行為に基づく損害賠償における損害として請求することができる」というものです。
 被控訴人は,この損害項目について,中止された本件公演を実施して いれば被控訴人が得られたであろう利益であるとの趣旨の主張をするが, それは,契約上の履行利益の賠償を求めるものであるから,控訴人が主 張するとおり,不法行為による損害賠償における損害としては請求する ことができない。しかし,同じ逸失利益であっても,前記のとおり,被 控訴人が同時期に他の公演を企画・実施していれば通常得られたであろ う利益であれば,不法行為に基づく損害賠償における損害として請求す ることができると解され,被控訴人の主張はこの趣旨を含むものと解さ れる。
・・・・
以上のとおりであるが,被控訴人が,実施された本件公演から算定し たと主張する,中止した公演の公演利益(4か月分の逸失利益)が42 84万0846円であることからすると,被控訴人の平成21年9月か ら平成24年8月までの間の各年度の4か月分の公演利益と同程度以下 であるということができる(後述するとおり,当裁判所の算定結果に よっても,中止した公演の公演利益は3003万4702円に過ぎな い。)。したがって,中止された本件公演を実施していれば得られたで あろう公演利益をもって,被控訴人が同時期に他の公演を企画・実施し ていれば通常得られる利益として損害を算定することとする。

◆判決本文

◆1審はこちらです。 平成26(ワ)9552等

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平成29(ネ)10061  著作者人格権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成29年10月13日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 建築の著作物について、共同著作者とは認定できないとした1審判断が維持されました。
 控訴人は,原判決が,本件建物外観(外装スクリーン部分に限られない。 以下同じ。)の設計に関し,控訴人代表者の創作的関与並びに共同創作の意\n思及び事実を認めず,また,本件建物外観を控訴人外観設計の二次的著作物 とも認めなかったのは誤りであるとして,要旨,次のとおり主張する。 ア 控訴人設計資料(甲7,7の2)及び控訴人模型(甲8)から成る控訴 人外観設計(外装スクリーン部分に限られない。以下同じ。)は,控訴人 設計資料により平面上で具体的に表現され,かつ,控訴人模型により立体\n物として具体的に表現されており,二次元での平面表\現としても,当該平 面及び模型から観念される立体表現としても,単なるアイデアではなく,\n具体的な表現である。
イ そして,控訴人外観設計は,具体的な立体形状の組亀甲柄を建築物の外 観に適用したことその他多くの点(本質的特徴部分)において,表現上の\n個性が発揮されているから,創作性を有するものであり,表現としてあり\nふれているとはいえない。
ウ したがって,控訴人外観設計は,それ自体,「建築の著作物」(著作権 法10条1項5号)であるとともに,形状,色彩,線及び明暗で思想又は 感情を表現したものであるから,「美術の著作物」(同項4号)又は単な\nる「美術」(同法2条1項1号)の範囲に属する「著作物」にも該当する。 エ 本件建物外観は,控訴人外観設計に表現された建物の本質的特徴を感得\nすることができるものであって,控訴人外観設計に基づいて制作されたも のであるところ,控訴人と被控訴人竹中工務店は,控訴人の設計を被控訴 人竹中工務店が引き継ぐ形において,共同で本件建物の外観を設計したと いえるので,本件建物外観は共同著作物である。万が一,共同著作物では ないとしても,被控訴人竹中工務店は,控訴人外観設計の本質的特徴を複 製又は翻案する形で本件建物外観を設計したから,本件建物外観は控訴人 外観設計を原著作物とする二次的著作物に当たる。
(2) しかしながら,控訴人の主張は採用できない。理由は次のとおりである。 ア まず,控訴人(控訴人代表者)は,控訴人設計資料を作成するに当たり,\n外装スクリーン部分以外は全て被控訴人竹中工務店作成に係る資料を流用 しており,手を加えていない事実を自認している。したがって,控訴人外 観設計のうち外装スクリーンを除くその余の部分については,そもそも控 訴人代表者の創作的関与を認める余地がない。\nイ 次に,外装スクリーン部分について,控訴人設計資料及び控訴人模型に 基づく控訴人代表者の提案内容が「建築の著作物」の創作に関与したと認\nめ得るだけの具体性ある表現といえないことは,原判決が指摘するとおり\nであって,控訴理由を踏まえてもその認定判断は覆らない。 控訴人は,控訴人代表者の上記提案が「実際建築される建物に用いられ\nる組亀甲柄より大きいイメージ」として作成されていた点に関し,たとえ そうであったとしても,「具体的な建物の外観が視覚的に,一般人にとっ て看取可能な形で図面上表\現されていれば,それは具体的な表現である(か\nら,上記提案がアイデアにすぎないことの根拠にはならない)」などとも 主張するが,格子の大きさ一つ取っても,その大きさ次第で,いくらでも 集合体としての外観デザインが変わり得ることは後記のとおりであるから, 控訴人が想定していた現実の外観は,控訴人設計資料及び控訴人模型をも ってしては,いまだ「視覚的に,一般人にとって看取可能な形で図面上表\ 現されていた」といえず,その主張はやはり採用できないといわざるを得 ない。
ウ また,仮に,控訴人設計資料及び控訴人模型に現れた外装スクリーン部 分の表現そのもの(図案)に関して,「建築の著作物」に限らず,何らか\nの著作物性(創作性)を認め得るとしても,(外装スクリーンに関する) 控訴人代表者の提案と現実に完成した本件建物の外観とでは,2層3方向\nの連続的な立体格子構造(組亀甲柄)が採用されている点と,せいぜい色\n(白色)が共通するのみであり,少なくとも立体格子の柄や向き,ピッチ, 幅,隙間,方向が相違することは原判決が認定するとおりであるところ, 実際に本件建物の外観を撮影した写真(甲5の1・2)と控訴人設計資料 及び控訴人模型とを見比べてみても(あるいは,乙2の比較図面を参照し ても),例えば,個々の格子を意識させるものであるかどうか(本件建物 は全体として細かい編み込み模様になっており,遠目に見ると個々の格子 をそれほど意識させない態様であるのに対し,控訴人代表者の提案は,個々\nの格子が大きく,格子を構成する直線も際立っており,遠目に見てもその\n存在を意識させるとともに,六角形のデザインがより強調される態様とな っている。),編み込み模様の編み目の向き(本件建物は横方向を意識さ せるのに対し,控訴人代表者の提案は縦方向を意識させる。),外装スク\nリーンの裏側にある建物自体の骨格を意識させるかどうか(本件建物の外 装スクリーンは編み目が細かく,裏側にある建物自体の骨格を意識させな いのに対し,控訴人代表者の提案のそれは編み目が粗く,裏側にある建物\n自体の骨格が透けて見えてその存在を意識させる。)などの点において大 きく異なっており,全体としての表現や見る者に与える印象が全く異なる\nことは明らかといえる。 この点,控訴人は,控訴理由書等において,立体格子のピッチ,幅,隙 間や,向き,方向などの相違は,いずれも本件建物の外観(見た目)に特 段の違いをもたらすとはいえず,表現の本質的特徴を違えるほどの違いと\nはいえない旨主張するが,同じ組亀甲柄を採用したデザインでも,上記の 諸要素等の違い(格子自体のデザインはもちろん,その大きさや配置,組 み合わせ方等の違い)により,様々な表現があり得ることは,本件で提出\nされている関係各証拠(甲30〜34,乙12,13など。乙号証は枝番 号を含む。)からも明らかといえるし,実際に本件建物外観と控訴人代表\n者の提案とで表現が大きく異なることは前記のとおりであるから,採用で\nきない。
エ そうすると,結局のところ,外装スクリーン部分に関し本件建物外観と 控訴人代表者の提案とで共通するのは,ほぼ2層3方向の連続的な立体格\n子構造(組亀甲柄)を採用した点に尽きるのであって,それ自体はアイデ\nアにすぎない(前記のとおり,建物の外観デザインに組亀甲柄を採用する としても,その具体的表現は様々なものがあり得るのであるから,組亀甲\n柄を採用するということ自体は,抽象的なアイデアにすぎない。)という べきであるから,控訴人代表者が本件建物外観について創作的に関与した\nとは認められないし,控訴人代表者の提案が本件建物の原著作物に当たる\nとも認められない。
(3) 以上によれば,原判決が,本件建物外観の設計に関し,控訴人代表者の創\n作的関与並びに共同創作の意思及び事実を認めず,かつ,本件建物外観を控 訴人外観設計の二次的著作物とも認めなかったことは相当であり,その認定 判断に誤りはない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成27(ワ)23694

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平成27(ワ)23694  著作者人格権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成29年4月27日  東京地方裁判所(47民)

 建物の著作物の創作者が争われました。原告は共同著作者ではないと判断され、また、原告模型の創作性も否定されました。
「建築の著作物」(同法10条1項5号)とは,現に存在する 建築物又はその設計図に表現される観念的な建物であるから,当該設計\n図には,当該建築の著作物が観念的に現れているといえる程度の表現が\n記載されている必要があると解すべきである。 (イ) 上記1(認定事実)(2)のとおり,原告代表者は,乙から本件建物の\n外観に関する設計の依頼を受け,日本の伝統柄をデザインの源泉とし, 一見洗練された現代的なデザインのように見えるが「日本」を暗喩でき るものとするとの設計思想に基づいて,原告設計資料及び原告模型を作 成し,平成25年9月6日,乙に対し,本件建物の外装スクリーンの上 部部分(2階及びR階部分)を立体形状の組亀甲とすることを含めた設 計案を提示している。そして,この時点において,被告竹中工務店は, 上記部分を立体形状の組亀甲とすることに着想していなかった(争いの ない事実)。 しかしながら,上記1(認定事実)(2)のとおり,原告設計資料及び原 告模型に基づく原告代表者の上記提案は,上記1(認定事実)(1)イの内 容が記載された被告竹中工務店設計資料を前提に,当該資料のうちの外 装スクリーンの上部部分のみを変更したものであり,上記提案には,伝 統的な和柄である組亀甲柄を立体形状とし,同一サイズの白色として等 間隔で同一方向に配置,配列することは示されているが,実際建築され る建物に用いられる組亀甲柄より大きいイメージとして作成されたもの であるため,実際建築される建物に用いられる具体的な配置や配列は示 されておらず,他に,具体的なピッチや密度,幅,厚さ,断面形状も示 されていない。一方で,上記1(認定事実)(6)のとおり,組亀甲柄は, 伝統的な和柄であり,平面形状のみならず,建築物を含めて立体形状と して用いられている例が複数存在し,建築物の図案集にも掲載されてい る。 そうすると,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提案は,\n被告竹中工務店設計資料を前提として,その外装スクリーンの上部部分 に,白色の同一形状の立体的な組亀甲柄を等間隔で同一方向に配置,配 列するとのアイデアを提供したものにすぎないというべきであり,仮に, 表現であるとしても,その表\現はありふれた表現の域を出るものとはい\nえず,要するに,建築の著作物に必要な創作性の程度に係る見解の如何 にかかわらず,創作的な表現であると認めることはできない。更に付言\nすると,原告代表者の上記提案は,実際建築される建物に用いられる組\n亀甲柄の具体的な配置や配列は示されていないから,観念的な建築物が 現されていると認めるに足りる程度の表現であるともいえない。\n以上によれば,本件建物の外観設計について原告代表者の共同著作者\nとしての創作的関与があるとは認められない。 (ウ) これに対し,原告は,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表\n者の上記提案は,建物の外観に用いられることが多くない組亀甲柄を選 択し,組亀甲柄を用いるというアイデアから想定される複数の表現から\n特定の表現を選択して決定するものであることや,組亀甲柄部分の光の\n表現についても具体的に決定されているものであることをもって,創作\n的な表現である旨主張する。\n しかしながら,組亀甲柄は,建築物の図案集にも掲載され,実際に建 築物に用いられている例が複数存在することは上記(イ)のとおりであり, 建物の外観に組亀甲柄を用いること自体がありふれていないということ はできない。また,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提\n案は,上記(イ)のとおり,組亀甲柄の大まかな色,形状,配置,配列が 決定されているにすぎず,一般的な組亀甲柄として紹介されている例 (乙11の1ないし4,12の1)と比較しても,個性の発露があると 認めるに足りる程度の創作性のある表現であるということはできない。\nさらに,原告の主張する光の表現は,具体的に明らかではなく,この点\nをもって創作性を認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用できない。 イ 「共同して創作した」といえるかについて 仮に,本件建物の外観設計における原告代表者の創作的関与の有無の\n点を措いても,前記第2の1(前提事実)(2)エ及び上記1(認定事実) (3)・(4)のとおり,被告竹中工務店の設計担当者は,本件打合せで原告代 表者から原告設計資料及び原告模型に基づく提案内容の説明を聞いたこ\nとはあるが,原告との共同設計の提案を断り,その後,原告代表者と接\n触ないし協議したことはない。 また,上記1(認定事実)(2)・(4)のとおり,原告代表者の設計思想は,\n本件建物のファサードを,日本の伝統柄をデザインの源泉とし,一見洗 練された現代的なデザインのように見えるが「日本」を暗喩できるもの とするなどというものであるのに対し,被告竹中工務店の設計思想は, 組亀甲柄のもつ2層3方向の幾何学構造に着目した編込み様のデザイン\nなどというものであって,原告代表者と被告竹中工務店の設計思想は異\nなる上,上記1(認定事実)(2)・(5)のとおり,原告代表者の提案内容と\n完成後の本件建物は,外装スクリーンの上部部分に2層3方向の立体格 子構造が採用されている点は共通するが,少なくとも立体格子の柄や向\nき,ピッチ,幅,隙間,方向が相違しており(具体的には,原告設計資 料及び原告模型には,本件建物の外装の上部に同じ形状及びサイズの白 色の組亀甲柄を等間隔で同一方向に配置,配列することとすること,ピ ッチを「@≒500mm」,巾を「≒150mm」,向きを鉛直,隙間 を「△辺≒200mm」とする格子が記載されており,この他に,外装 スクリーンの寸法や,格子のピッチ,密度,隙間,幅,厚さ,断面形状, 表面処理に関する具体的な記載はないのに対し,本件建物においては,\nその2階以上の外装部分は,アルミキャストを素材とする白色の三次元 曲面による2層3方向の立体格子構造とされ,ピッチは「@250m\nm」,巾は「90mm」,向きは斜光,隙間は「△辺94mm」の格子 が用いられ,横方向が強調された配列とされている。),建物の外観に 関する表現上の重要な部分,すなわち本質的特徴といえる点において多\nくの相違点がある。 これらの事情に照らせば,原告と被告竹中工務店の間に共同創作の意 思や事実があったとは認められず,両者が本件建物の外観設計を「共同 して創作」したと認めることはできない。
・・・・
ア 原著作物性について
上記(1)アのとおり,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提\n案は創作的な表現であるとはいえないから,これに著作物性を認めること\nはできない(更に付言すると,建物の著作物性を認めることもできない。)。
イ 被告竹中工務店による翻案について
また,仮に,原告設計資料及び原告模型に係る原告代表者の提案につい\nての著作物性の有無の点を措いても,上記(1)イのとおり,原告設計資料及 び原告模型と本件建物とは,その表現上の重要な部分において多くの相違\n点があり,本件建物から原告設計資料及び原告模型における表現上の本質\n的特徴を感得することはできない。

◆判決本文

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平成28(ワ)16088  著作権侵害損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成29年3月23日  東京地方裁判所

 原告が著作権者であるとの立証がないと判断されました。
 原告は,原告商品の製造を委託するに当たりBが作成した原画を被告に 交付した旨主張するが,そうであるとすれば,原告があぶらとり紙の名称 を変更した時点ないし被告との取引を中止した時点で,被告に対して上記 原画の返還を求め,あるいはその保管状況を問い合わせるなどの行動をと るべきものと解される。ところが,本件の証拠上,原告がそのような行動 をとったことはうかがわれず,B が作成したという原画の存在自体定かで ないといわざるを得ない。 なお,被告商品の原画に関しては,被告が「ふるや紙」の文字は書家の 書いた色紙(乙10)によるものであると主張するのに対し,原告は,色 紙の作成者に関する被告の主張が変遷し,作成時期も不明であるので,被 告の主張は失当であるとする。被告の主張が変遷したことは原告指摘のと おりであるが,本件著作物がBの作成であると認められない以上,この点 は本件の結論に影響するものでない。 イ 被告商品は遅くとも平成12年から販売され,また,被告は被告デザイ ンに酷似する「ふるや紙」の文字を用いたあぶらとり紙を平成3年から販 売していたが(前記前提事実(2)イ),原告は,平成27年12月に B が被 告に対して書面を送付するまで,被告に対して本件著作権の侵害その他何 らの異議を唱えていない(甲5,7,弁論の全趣旨)。この点につき,原 告は被告商品の存在を認識していなかった旨主張するが,原告は(所在地 は省略)で土産物店を経営する会社であり(前記前提事実⑴ア),また, 被告商品は原告の主張によれば20年間にわたり毎年100万冊が販売さ れていたというのであるから,その存在に気付かなかったというのは不自 然と解さざるを得ない。
ウ 本件著作物を表紙デザインに用いた原告商品は雑誌で紹介されるなどし\nて広く販売されており(前記前提事実(2)ウ),A は平成5年3月に本件著 作物のうち左下の文字を除いた部分からなる商標の商標登録出願をしたが (甲33),原告は,翌年8月頃,商品の名称を「ふるや紙」から「ゆと り紙」に変更した(前記前提事実(2)ウ)。この変更の理由につき,原告は, 他社が「ふるや紙」という名称のあぶらとり紙を販売し,原告商品との誤 認混同が生じたためである旨主張するが,原告商品が「ふるや紙」として 広く知られており,A が考案したという名称につき商標登録出願をしたと いうのであれば,他社に対して商品名の変更を求めることなく,自らが変 更することは不合理と解される。 (3) したがって,原告の主張はいずれも失当であり,原告が本件著作物の著作 権者であると認めることはできない。

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平成28(ラ)10009  保全異議申立決定に対する保全抗告事件  著作権  民事仮処分 平成28年11月11日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 判例百選について、編集著作物の著作者かが争われました。知財高裁は、著作者であるとした判断を破棄しました。第3部の判断です。
著作者とは著作物を創作する者をいい(法2条1項2号),著作物とは, 思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は\n音楽の範囲に属するものをいう(同項1号)。編集著作物とは,編集物 (データベースに該当するものを除く。)でその素材の選択又は配列に よって創作性を有するものであるところ(法12条1項),著作物とし て保護されるものである以上,その創作性については他の著作物の場合 と同様に理解される。 そうである以上,素材につき上記の意味での創作性のある選択及び配 列を行った者が編集著作物の著作者に当たることは当然である。 また,本件のように共同編集著作物の著作者の認定が問題となる場合, 例えば,素材の選択,配列は一定の編集方針に従って行われるものであ るから,編集方針を決定することは,素材の選択,配列を行うことと密 接不可分の関係にあって素材の選択,配列の創作性に寄与するものとい うことができる。そうである以上,編集方針を決定した者も,当該編集 著作物の著作者となり得るというべきである。 他方,編集に関するそれ以外の行為として,編集方針や素材の選択, 配列について相談を受け,意見を述べることや,他人の行った編集方針 の決定,素材の選択,配列を消極的に容認することは,いずれも直接創 作に携わる行為とはいい難いことから,これらの行為をしたにとどまる 者は当該編集著作物の著作者とはなり得ないというべきである。
イ もっとも,共同編集著作物の作成過程において行われたある者の行為が, 上記のいずれの場合に該当するかは,当該行為を行った者の当該共同編 集著作物の作成過程における地位や権限等を捨象した当該行為の客観的 ないし具体的な側面のみによっては判断し難い例があることは明らかで ある。すなわち,行為そのものは同様のものであったとしても,これを 行った者の地位,権限や当該行為が行われた時期,状況等により当該行 為の意味ないし位置付けが異なることは,世上往々にして経験する事態 である。 そうである以上,創作性のあるもの,ないものを問わず複数の者によ る様々な関与の下で共同編集著作物が作成された場合に,ある者の行為 につき著作者となり得る程度の創作性を認めることができるか否かは, 当該行為の具体的内容を踏まえるべきことは当然として,さらに,当該 行為者の当該著作物作成過程における地位,権限,当該行為のされた時 期,状況等に鑑みて理解,把握される当該行為の当該著作物作成過程に おける意味ないし位置付けをも考慮して判断されるべきである。 これに対し,抗告人は,著作者性の判断に当たっては,当該行為が行 われた状況や立場といった背景事情を捨象し,もっぱら創作的表現のみ\nに着目して判断されなければならない旨主張するけれども,複数人の関 与の下に著作物が作成される場合の実情にそぐわないというべきであり, この点に関する抗告人の主張は採用し得ない。
ウ 以上を踏まえ,前記認定事実に基づき,以下検討する。
・・・
エ このように,少なくとも本件著作物の編集に当たり中心的役割を果たし たB教授,その編集過程で内容面につき意見を述べるにとどまらず,作 業の進め方等についても編集開始当初からE及びB教授にしばしば助言 等を与えることを通じて重要な役割を果たしたというべきA教授及び抗 告人担当者であるEとの間では,相手方につき,本件著作物の編集方針 及び内容を決定する実質的権限を与えず,又は著しく制限することを相 互に了解していた上,相手方も,抗告人から「編者」への就任を求めら れ,これを受諾したものの,実質的には抗告人等のそのような意図を正 しく理解し,少なくとも表向きはこれに異議を唱えなかったことから,\nこの点については,相手方と,本件著作物の編集過程に関与した主要な 関係者との間に共通認識が形成されていたものといえる。しかも,相手 方が本件原案の作成作業には具体的に関与せず,本件原案の提示を受け た後もおおむね受動的な関与にとどまり,また,具体的な意見等を述べ て関与した場面でも,その内容は,仮に創作性を認め得るとしても必ず しも高いとはいえない程度のものであったことに鑑みると,相手方とし ても,上記共通認識を踏まえ,自らの関与を謙抑的な関与にとどめる考 えであったことがうかがわれる。 これらの事情を総合的に考慮すると,本件著作物の編集過程において, 相手方は,その「編者」の一人とされてはいたものの,実質的にはむし ろアイデアの提供や助言を期待されるにとどまるいわばアドバイザーの 地位に置かれ,相手方自身もこれに沿った関与を行ったにとどまるもの と理解するのが,本件著作物の編集過程全体の実態に適すると思われる。
(4) そうである以上,法14条による推定にもかかわらず,相手方をもって 本件著作物の著作者ということはできない。

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◆前審はこちら 平成28年(モ)第40004号

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平成28年(モ)第40004号保全異議申立事件(基本事件・平成27年(ヨ)第22071号仮処分命令申\\立事件)

 編集著作物の翻案が争われました。翻案であるとして仮処分を認めた決定を認可しました。対象は判例百選です。この事件も将来、判例百選に載るんでしょうね。
 そこで,上記イの判断を前提に,本件において,債権者が本件著作物の編集 著作者であるとの推定を覆す事情が疎明されているか否かについて検討する。 前記1(4)で認定した事実によると,1)債権者は,執筆者について,特定の実務家 1名を削除するとともに新たに別の特定の実務家3名を選択することを独自に発案 してその旨の意見を述べ,これがそのまま採用されて,本件著作物に具現されてい ること,2)本件著作物については,当初から債権者ら4名を編者として『著作権判 例百選[第4版]』を創作するとの共同の意思の下に編集作業が進められ,編集協 力者として関わったD教授の原案作成作業も,編者の納得を得られるものとするよ うに行われ,本件原案については,債権者による修正があり得るという前提でその 意見が聴取,確認されたこと,3)このような経緯の下で,債権者は,編者としての 立場に基づき,本件原案やその修正案の内容について検討した上,最終的に,本件 編者会合に出席し,他の編者と共に,判例113件の選択・配列と執筆者113名 の割当てを項目立ても含めて決定,確定する行為をし,その後の修正についても, メールで具体的な意見を述べ,編者が意見を出し合って判例及び執筆者を修正決定, 再確定していくやりとりに参画したことを指摘することができる。そして,執筆者 の執筆する解説は,本件著作物の素材をなしているところ,その執筆者の選定につ いては,とりわけ実務家を含めると選択の幅が小さくないこと,債権者が推挙した 当該3名の人選について,誰が選択しても同じ人選になるようなものとはいえない ことに照らせば,債権者による上記1)の素材の選択には創作性があるというべきで ある。その上,上記3)の確定行為の対象となった判例,執筆者及び両者の組合せの 選択並びにこれらの配列には,もとより創作性のあるものが多く含まれているとこ ろ,債権者が編者としての確定行為によりこれに関与したとみられるのである。そ うすると,上記1)ないし3)を総合しただけでも(その余の債権者主張事実の有無に ついて認定・判断するまでもなく),他の共同著作者の範囲はともかくとして,債 権者が本件著作物の編集著作者の一人であるとの評価を導き得るところ,本件にお いて,前記イの推定を覆す事情が疎明されているということはできない。 したがって,債権者は,編集著作物たる本件著作物の著作者の一人であるという べきである。

エ これに対し,債務者は,前記ウ1)に関し,(ア) 執筆者を推挙しただけでその 執筆者に判例を割り当てていない段階では,編集著作物の素材である解説の特定を していないから,素材の原料の提案にすぎず,素材の選択には当たらない,(イ) 債 権者の推挙した上記3名は,東京地裁知財部の部総括判事,元知財高裁判事の弁護 士及び著作権分野で高い実績を有し第3版においても執筆者になっていた弁護士で あるから,極めて「ありふれた」人選であって,創作性は全くない,(ウ) 仮に3名 の候補者を選択したのみで創作的な表現として著作権が生じるとすると,以後,同\n一の3名を選択することが複製に当たり著作権侵害となってしまう旨,前記ウ2)に 関し,(エ) 共同創作の「意思」があっても,何ら著作者性を基礎付ける事情とはな らない旨,前記ウ3)に関し,(オ) 著作権法においては,自ら物理的に創作的表現を\n表出していない者は,著作者たり得ないところ,著作者の認定においては,あくま\nでそのような客観的な創作的表現行為の有無のみが問題となるのであり,「立場」\nや「肩書」は何の意味も持たないし,「最終的な確定権限を有する者」というよう な行為者の権限を考慮することも許されない(当該権限を要件とするような解釈に 基づいて著作者の認定をすることは,同法2条1項2号,1号に反する。),(カ) 本 件編者会合における決定に参加したことは,他人が世に現出した表現について最終\n的に公表すべき表\\現であることを事後的に承認したにすぎず,本件著作物の作成に 創作的関与をしたとの評価にはつながらない,(キ) 本件編者会合後の修正について は,債権者は他者のした提案を一部事後承認したにすぎず,上記(カ)と同様に,本件 著作物の作成に創作的関与をしたとの評価にはつながらない,(ク) 債権者の前記ウ 3)の行為を債権者が本件著作物の編集著作者の一人であることの根拠とすることは, 「それまで表現されたものとして存在しなかったものを初めてつくり出す行為」を\nしていない者を著作者とすることであるから,同法2条1項2号,1号の文理に反 するし,著作物が創作され公表されるまでの間に関与する多数の者(学術論文の査\n読者から果てはマスコット・キャラクターを採択する会議に至るまでありとあらゆ る「確定者」)にいたずらに著作者の外延が拡大されてしまいかねない,(ケ) 債権 者の本件編者会合における承認及びその後の一部承認を創作的関与に含めて考える ことは,智恵子抄事件最高裁判決に反する旨をそれぞれ主張した上,(コ) 本件著作 物の編集に関し,債権者は,極めて限定的な関与しかしていないから,債権者が本 件著作物の編集著作者の一人であるとの評価は導き得ない,(サ) 債権者の関与して いない部分は,債権者の関与した箇所と分離して利用することができるから,同項 12号の共同著作物の要件(分離利用不可能性の要件)を満たさないなどと主張す\nる。
しかしながら,上記(ア)の点については,本件著作物において,執筆者の執筆する 解説が本件著作物の素材をなしていることは前記ウで説示したとおりであるところ, 本件著作物においてそのような解説を執筆する者を,いずれの判例を割り当てるか とは独立に選定することは可能であり,その場合,執筆者を推挙した段階で,「当\n該執筆者がいずれかの判例について執筆する解説」が観念されるから,これが素材 の選択におよそ当たらないということはできない。また,いずれにせよ,判例と執 筆者の組合せが特定されていなかったからといって,本件著作物における「執筆者 の執筆する解説」という素材の選択に関して債権者が寄与したことが否定されるも のではない。
上記(イ)の点については,本件著作物における解説の執筆者として,学者を選ぶか 実務家を選ぶか,実務家にしても裁判官にするか弁護士にするかについて,選択の 幅は大きく,裁判官や裁判官OBについても知財高裁・地裁知財部経験者の人数は 決して少なくないこと,現に第4版に関するそれまでの執筆者の案(本件原案のほ か,A教授が列挙した候補者の案なども含む。)では当該3名が含まれていなかっ たこと(前記1(4)ウないしカ),第3版や本件雑誌にもa判事とb弁護士は入って いないこと(別紙「著作権判例百選判例変遷表」,甲2の3),B教授は,当初,\nb弁護士を執筆者として追加することに消極の意見を表明していたこと(前記1(4) ク)などに照らすと,当該3名について,誰が選択しても同じ人選になるようなも のとはいえず,「ありふれた」人選などということもできない。
上記(ウ)の点については,ここでの執筆者3名というのは,本件著作物の執筆者と なった113名の中の一部であるところ,前記ウの判断は,当該3名を選択したの みで直ちに創作的な表現として独立の編集著作権が生じるとするものではなく,あ\nくまでも本件著作物全体の表現(素材の選択及び配列)について創作性が認められ\nる場合に,これを構成する一部の創作への関与(換言すれば,債権者が関与した部\n分が上記創作性を有する表現を形成する一部をなしているか)を問題とするもので\nあるし,また,債権者の当該行為時点について見ても,執筆者110名から1名を 削除し3名を加えて112名とする場合の当該3名の選択が問題となっているので ある。さらに,前記ウの判断は,必ずしも同1)の行為のみで編集著作者となり得る と判断しているわけではなく,同1)ないし3)を総合して編集著作者となり得ると判 断しているのであって,債権者が,同3)の行為をしているほかに,自ら同1)の行為 もしていることを,全体として評価すべきところである。
上記(エ)の点については,前記ウ2)の事情は,同3)の債権者の行為の前提となるも のであるから,同1)ないし3)があいまって全体として債権者の編集著作者性を基礎 付ける事情になるということができる。
上記(オ)の点については,本件のように共同編集著作物の著作者の認定が問題となる事案においては,編集著作物の完成に向けられた表現(素材の選択・配列)の創\n作に係る複数の者の一連の行為(一瞬の物理的な行為のみではない。)を全体とし て観察し,そのような一連の編集過程への実質的な関与の有無やその位置付け等を 総合的に検討して,一定の規範的な評価をすることは,避けられないものと解され る。そして,それ自体としては同じように見える行為についても,どのような状況 (コンテクスト)において,どのような立場(一貫して編集の主体とされ,内容に ついて決定権や責任を有する者としての行為なのか,アドバイスを求められた外部 の第三者としての行為なのか,事務的な補助者としての行為なのか等々)でそれを 行ったのかということにより,その行為の社会的な意味合いや位置付けは異なり得 るのであって,そのことが事実認定及び法的評価にも影響するのは当然というべき である。上記のような意味での行為者の立場を全く捨象して単純に裸の作為(「物 理的な」創作的表現表\\出行為)のみを取り出すことは,実態にそぐわない編集著作 者の認定をすることにつながりかねず,相当ではない。既に認定,説示したところ からすれば,本件著作物の編集過程において,債権者が,素材の選択及び配列に関 する実質的な権限を有しそれに基づき実質的な関与をしたことは明らかであって, 単に名義を貸しただけとか,単に名目的な「肩書」のみを有して形だけ関わったと いったケースとは明らかに異なる。なお,編集著作物の素材の選択・配列の確定に 関し行為者がどのような権限を有していたかという点も,編集著作者の認定に当たっ て一つの事情となり得るものであって,これを考慮すること(もとよりこれを「要 件」とするものではない。)が許されないということはない。 上記(カ)ないし(ク)の点については,当該編集著作物の編集過程において,当該者自 身が当該創作的表現を「物理的にこの世に現出させる」独自の提案作成行為をしな\nかった場合においても,当初から当該者を含めた複数の者を編者として当該編集著 作物を創作するとの共同の意思の下に共同作業をしている他の者が先行して「物理 的にこの世に現出させる」提案をした部分について,当該者が,それを修正するこ ともできたのに検討の上修正せずに,当該部分をそのとおり採用する決定に加わっ たという行為は,創作への関与として一概に無視することはできない。前記1(4) で認定した事実経過に照らすと,債権者は,本件著作物の編集過程に客観的・外形 的に関与しているのみならず,素材の選択及び配列について実質的な中身を思考し これに基づき上記行為をしているとみられるものであって,前記ウ3)の債権者の行 為は,著作物の形成ないし創作性の形成への「客観的な事実行為としての実質的な 関与」に当たるということができる。本件著作物の「創作」については,本件著作 物の完成に向けた一連の編集過程が開始される前には「それまで表現されたものと\nして存在しなかったもの」を,同編集過程が完了し本件著作物が完成した時点で「初 めてつくり出す行為」であり,その「創作」の主体が債権者を含めた複数の者とな るとみられるのであって,これが著作権法2条1項2号,1号の文理に反するとい うことにはならない。また,既に認定,説示したところに従って,債権者の同3)の 行為を債権者が本件著作物の編集著作者の一人であることの根拠としたとしても, 著作物が創作され公表されるまでの間に関与する多数の者にいたずらに著作者の外\n延が拡大することにはならない(単に名前を貸して形式的に権威付けをしただけの 者や,債務者が例に挙げる「学術論文の査読者」等,もともと創作する側の主体と は異なる立場から関与したり,表現内容の形成・変更の直接の決定権を有していな\nい者などは,共同著作者の一人とは認められない。)。「認定」ということの性質上, 個々の事案に合致した認定をして「共同編集著作者」の範囲を適切に画するほかは ないし,かえって,常に「最も早く物理的に表出した者が誰か」のみに着目すると\nいうことでは,本件のような事案で実態にそぐわない結論を導いてしまいかねない。 上記(ケ)の点については,智恵子抄事件最高裁判決は,当該個別事案における認定 を示した事例判例であって,本件における債権者のような者を編集著作者と認めて はならないとの判断を何ら含意しているものではないから,前記ウ3)に係る判断が 同最高裁判決に「反する」ということはない。 上記(コ)の点については,前記ウ1)の行為と,同2)を前提とした同3)の行為を総合 した場合に,債権者の関与が「極めて限定的」で編集著作者の一人との評価を導き 得ないものであるということはできない。 上記(サ)の点については,前記ウ3)の債権者の行為は,本件著作物全体に係ってい るし,同1)の債権者による素材の選択も,前示のとおり,他の素材の選択及び組合 せとあいまって全体の編集著作物を構成しているものであるから,債権者の関与部\n分のみを分離して個別に利用することはできない。本件著作物は,著作権法2条1 項12号の「二人以上の者が共同して創作した著作物であって,その各人の寄与を 分離して個別的に利用することができないもの」に当たるというべきである。 以上によると,債務者の上記各主張によって,債権者が本件著作物の編集著作者 であるとの推定を覆すことはできない。
(2) 翻案該当性ないし直接感得性(争点2)について
ア 前記1(5),(6)で認定した事実によると,1)判例の選択については,本件著作 物の収録判例と本件雑誌の収録判例とで97件が一致しており(そのうち94件は 審級も含めて全く同一であり,3件は審級のみ異なり対象事件が同一である。), 割合的には,本件著作物の収録判例113件のうち約86%が本件雑誌にも維持さ れ,かつ,当該一致部分が本件雑誌の収録判例116件のうち約84%を占めてい ること,2)執筆者(執筆者の執筆する解説)の選択については,本件著作物におけ る執筆者と本件雑誌における執筆者とで93名が一致しており,割合的には,本件 著作物の執筆者113名のうち約82%が本件雑誌にも維持され,かつ,当該一致 部分が本件雑誌の執筆者117名のうち約79%を占めていること,3)判例と執筆 者(執筆者の執筆する解説)の組合せの選択については,本件著作物における組合 せと本件雑誌における組合せとで83件が一致しており,割合的には,本件著作物 における判例と執筆者の組合せ113件のうち約73%が本件雑誌にも維持され, かつ,当該一致部分が本件雑誌における判例と執筆者の組合せ117件のうち約7 1%を占めていること,4)判例及びその解説(以下,併せて「判例等」という。) の配列については,本件著作物の判例等と本件雑誌の判例等とで合計83件の配列 (順序)が一致しており,割合的には,本件著作物の判例等113件のうち約73% の判例等の配列(順序)が本件雑誌にも維持され,かつ,当該一致部分が本件雑誌 の判例等117件のうち約71%を占めていること,5)判例等の配列を位置付ける 項目立てについても,本件著作物の大項目及び小項目の立て方と本件雑誌の大項目 及び小項目の立て方とでその大半が一致していることを指摘することができる。そ うすると,本件著作物と本件雑誌とで判例等の選択及び配列が全体として類似して いることは明らかであって,本件著作物の判例等の選択・配列の大部分が本件雑誌 にも維持されていることが確認できるとともに,本件雑誌の判例等の選択・配列を 見たときに本件著作物のそれに由来する上記各一致部分の全部又は一部を優に感得 することができる。 そして,本件著作物及び本件雑誌に掲載される判例と執筆者の執筆する解説が編 集著作物たる本件著作物及び本件雑誌の素材であるところ,その表現(素材の選択\n又は配列)の選択の幅(個性を発揮する余地)を考えると,『判例百選』の性格上, 判例の選択や判例等の配列に係る選択の幅はある程度限られるものの,執筆者の選 択すなわち誰が執筆する解説を載せるかという選択の幅は決して小さくない上,ど の判例の解説の執筆者として誰を選ぶかに係る選択の幅は極めて広いというべきで ある。そうすると,上記1)ないし5)で指摘した,本件著作物と本件雑誌とで表現(素\n材の選択又は配列)上共通する部分には,創作性を有する表現部分が相当程度ある\nものということができる(なお,編集著作物における素材の選択及び配列に係る上 記各一致部分の組合せ全体に創作性を認めることもできると考えられる。)。 以上の事情を総合すれば,本件著作物と本件雑誌とで創作的表現が共通し同一性\nがある部分が相当程度認められる一方,本件雑誌が,新たに付加された創作的な表\n現部分により,本件著作物とは別個独立の著作物になっているとはいい難い。 このように検討したところによると,本件雑誌の表現からは,本件著作物の表\\現 上の本質的特徴を直接感得することができるというべきである。
イ そして,前記1で認定したとおり,本件雑誌が本件著作物の改訂版として作 成されているものであることなどに照らすと,編集著作物たる本件雑誌が本件著作 物に依拠して編集されたことは明らかである。
ウ 以上によれば,編集著作物たる本件雑誌を創作する行為は,本件著作物に依 拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\\現に修正, 増減,変更等を加えて,新たに思想を創作的に表現することにより,これに接する\n者が本件著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を\n創作する行為,すなわち本件著作物の翻案に該当し,本件雑誌は本件著作物を原著 作物とする二次的著作物に該当する。 また,他人の著作物を素材として利用しても,その表現上の本質的な特徴を感得\nさせないような態様においてこれを利用する行為は,原著作物の同一性保持権を侵 害しないと解すべきであるが(最高裁平成6年(オ)第1028号同10年7月1 7日第二小法廷判決・判時1651号56頁等参照),本件雑誌における本件著作 物の利用は,このような同一性保持権侵害の要件をも満たすということができる。 (3) 本件著作物を本件原案の二次的著作物とする主張の当否(争点3)について 債務者は,本件著作物は本件原案を原著作物とする二次的著作物にすぎないとし た上で,二次的著作物の著作権者が権利を主張できるのは新たに付加された創作的 部分に限られるところ,本件著作物において本件原案に新たに付加された創作的表\n現が本件雑誌において再製されているとは認められない旨主張する。 しかしながら,前記1で認定した事実に前記(1)で説示したところを総合すると, 本件原案は,最終的な編集著作物たる雑誌『著作権判例百選[第4版]』の完成に 向けた一連の編集過程の途中段階において準備的に作成された一覧表の一つであり,\nまさしく原案にすぎないものであって,その後編者により修正,確定等がされるこ とを当然に予定していたもの(編者が検討するための叩き台,提案)であったこと\nは明らかであり,実際,本件原案作成後,その予定どおり,債権者を含む編者によ\nりその修正等がされ,最終的に編集著作物の素材の選択・配列が確定されて本件著 作物として完成されるに至ったものである。そうすると,本件においては,その完 成の段階で,債権者を共同著作者の一人に含む共同著作物が成立したとみるのが相 当である一方,途中の段階で本件原案が独立の編集著作物として成立したとみた上 で本件著作物について本件原案を原著作物とする二次的著作物にすぎないとするこ とは相当ではない(なお,債務者は,最終作品の作成過程において準備的に作成さ れたものが,第三者によりコピーされ,最終作品の完成後に無断でネット上で公開 されてしまった場合に,当該準備的に作成されたものも最終作品とは別個の著作物 としての保護を受けることを指摘する。しかし,そのような事例において,第三者 によるコピーの時点で,当該準備的に作成されたものがそれ自体著作物性を肯定し 得るものであったならば,それを著作物とする著作権又は著作者人格権の行使を第 三者との関係で肯認することができるとしても,本件のように,既に完成された最 終作品の翻案が問題となっているケースにおいて,当該最終作品を,同作品の完成 に向けて準備的に作成されていた原案の一つを原著作物とする二次的著作物にすぎ ないとして,最終作品に基づく権利行使を制約することは,相当でないことに変わ りはない。)。 したがって,債務者の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。

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平成27(ワ)14747  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年12月9日  東京地方裁判所

 雑誌に掲載された写真の著作権侵害が争われ、約20万円の損害賠償が認められました。
 被告は,原告各写真の著作者は各ヘアドレッサーである旨主張する。 なるほど原告各写真においては,独特のヘアスタイル,化粧,衣装等を施して所定のポーズを取っているモデルの写真も含まれている。 しかし,原告各写真については,前記(1)で検討したとおり,被写体の組み合わせや配置,構図やカメラアングル,光線・印影,背景等に創作性があるというべきであり,原告各写真の被写体のうちの,独特のヘアスタイルや化粧等を施されたモデルに関連して,別途何らかの著作物として成立する余地があるものとしても,前記(1)のとおりの原告各写真の内容によれば,原告各写真は,被写体を機械的に撮影し複製したものではなく,カメラマンにより創作されたものというべきである。 そうすると,原告各写真の著作者はカメラマンであって,ヘアドレッサーではないというべきである。したがって,被告の上記主張は採用することができない。
イ 被告は,カメラマンが創作行為を行なっていたとしても,各ヘアドレッサーも同様に創作的表現を行なっているのであり,その場合,原告各写真は,ヘアドレッサーとカメラマンとの共同著作物となる旨主張し,それに沿う証拠として平成27年10月27日付け被告代表\者の陳述書(乙20)を提出する。 平成27年10月27日付け被告代表者の陳述書(乙20)には,「美容業界誌紙は一般美容師が学ぶための作品(髪の形,髪の色,髪の流れ,髪の質感・・・等が相まって新しいスタイルは出来上がります。)を一段レベルの高い美容師に依頼して創作してもらい,それを撮影して誌面に掲載します。この美容師に著作権が有るのは当然であります。場合によっては,カメラマンにも応分の著作権があるかもしれません。しかし,主な著作権は創作した美容師が持っていると言わざるを得ません。もし著作権が美容師側にないとなると,我々の仕事は成り立ちません。」とあるところ,被告は,原告各写真の具体的な創作過程に基づいてヘアドレッサーとカメラマンとの共同制作意思等について主張立証をするわけではないが,原告各写真の創作性は,前記(1)で検討したとおり,被写体の組み合わせや配置,構図やカメラアングル,光線・印影,背景等に創作性があるところ,こうした点について,ヘアドレッサーとカメラマンとの間には原告各写真について共同著作物となるための要件である共同創作の意思が存するものとは認められないというべきである。\n

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平成24(ワ)29975等  出版差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成26年9月12日  東京地方裁判所

 記者が作成した原稿が法人著作であると認定されました。
「法人…の発意」の要件を満たすためには,著作物の作成の意思が直接又は間接に使用者の判断にかかっていればよく,著作物作成に至る経緯,業務従事者の職務,作成された著作物の内容や性質,両者の関連性の程度等を総合考慮して,従業者が職務を遂行するために著作物を作成することが必要であることを想定していたか,想定し得たときは,上記要件を満たすと解するのが相当である。
これを本件についてみると,上記(2)で認定したとおり,原書籍1及び2の記載は,Cによる「あとがき」(原書籍1),さらに「文庫化にあたっての付記」(原書籍2)が付加されているが,本文は,いずれも同一の内容であること,同本文の内容は,Cを含む,当時,読売新聞社の社会部に所属していた延べ41人の記者が,社会部長の了解の下に,平成8年(1996年)夏から,本件利益供与及び接待汚職事件について,500人以上の関係者に取材して得られた大部の証言メモ等を元に執筆されたものであり,讀賣新聞での連載記事から記述をそのまま転載した部分もあれば,記事に肉付けをした部分もあること,さらに,執筆をした記者は,原書籍1の出版につき社会部長の了解を得た上,執務時間中に社内のワープロを使用して執筆したほか,読売新聞社の費用負担において出張を含めた追加取材を行ったこと,読売新聞社が日刊新聞の発行,販売に限らず図書の発行,販売も事業目的としていたこと,以上の事実が認められる。
そうすると,原書籍1及び2については,読売新聞社という報道機関の社会部に所属していた記者らが,社会部長の了解の下,その職務に含まれていた本件利益供与及び接待汚職事件についての取材を行い,その取材結果をまとめたものとして,その職務と密接に関連する内容の書籍を執筆したことが明らかであるから,原書籍1及び2の執筆は,当時の読売新聞社の従業者が職務を遂行するために著作物を作成することが必要であることを想定していたか,想定し得た場合に当たると認めるのが相当である。 したがって,原書籍1及び2は,読売新聞社の発意に基づき作成されたというべきであり,「法人…の発意」の要件を満たすということができる。
(イ) この点に関して被告は,原書籍1及び2の作成を発意したのは,本件あとがきの執筆者である当時の社会部次長であったCであって,発意の相手方は新潮社であること,当時の社会部長の了解は,本件就業規則7条所定の社外原稿の執筆に関する手続であったにすぎず,原書籍1及び2の印税は,新潮社から本件執筆者9名のうちC外4名の主要メンバーに直接支払われているのであるから「法人…の発意」があったことを何ら意味しない旨主張し,同主張に沿うCの供述も存する。 しかし,上記Cの供述は何ら客観的な証拠に基づくものではなく,かえって,Fが原書籍1及び2の作成を最初に発案した者は自分自身であり,そのきっかけは,平成9年8月7日に本件利益供与及び接待汚職事件の関係者への取材から得た事実関係が膨大であり新聞の連載記事に収まる内容ではなかったことによるものであると述べ(甲27及び証人F),その根拠として同取材後に直ちに作成したとする資料(甲50)を提出しており,それらの証拠には特に不自然・不合理な点は認められず信用するに足りるものであるから,被告の上記主張に沿うCの供述はたやすく措信できず,他にCが最初に発案したと認めるに足りる証拠はない。
また,原書籍1及び2の作成を最初に発案した人物が誰であれ,上記(ア)のとおり,そもそも原書籍1及び2は,その内容が,延べ41名にも及ぶ社会部の記者らがその職務上行った取材の結果をまとめたものであり,その職務と密接に関連するものであるから,本件執筆者9名限りで,社会部記者としての職務を離れて執筆した社外原稿であると見ることは相当ではないし,原書籍1及び2の奥書に「著者」として表示されているのが,本件執筆者9名の氏名ではなく「読売新聞社会部」であることとも整合しない。\nこの点に関して被告は,「読売新聞社会部」との表示は,特定の自然人である本件執筆者9名の総称である旨主張する。しかし,証拠(甲29)によれば,「読売新聞社会部」との著者表\示は,「社会部」という担当部門がその表示に付されているものの,あくまで法人である読売新聞社を示すものとして,原書籍1及び2以外にも原書籍1及び2の発行の前後にわたり,多数の書籍において使用されており,しかも,読売新聞社の社会部に所属していた記者が執筆したものである旨があとがきに記載されたものであっても上記表\示が付されているものが存在することが認められるところ,「社会部」は読売新聞社の一部門の表示にすぎないから,その表\示自体からしても,法人である読売新聞社の略称として周知である「読売新聞」という表示が著作者名として通常の方法により表\示されていると評価することができる。 また,「読売新聞社会部」との著者表示を使用する上記多数の書籍においてはそれぞれ執筆を担当した特定の社会部記者が異なるものであることが認められるところ,原書籍1及び2やその他複数の書籍の執筆担当者が書籍ごとに異なるのに,同じ「読売新聞社会部」という法人の部門名を著作者名として用いていることからしても,「読売新聞社会部」という表\示は,個々の執筆者の総称などではなく,法人名を表示したものと認めるのが相当であるから,被告の上記主張は採用することができない。\nまた,印税の支払については,そもそも原書籍1の印税は,執筆をした本件執筆者9名のほかに読売新聞社の社会部や写真部にも分配されているし,また,本件職務著作規定(甲49)の5項及び同項を前提とする7項によれば,読売新聞社において,同社が職務上著作物を出版する意図を持たず,執筆者等が職務上著作物を社外で出版する場合は,それによる印税等の収入を執筆者等に帰属させることがある,と規定していることから,原書籍1及び2の印税がCら同書籍の執筆者に直接支払われたとしても,そのことをもって直ちに,原書籍1及び2の作成の意思が直接又は間接に使用者である読売新聞社の判断にかかっていることを否定する事情になるとはいえない。

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平成23(ワ)785 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年07月19日 東京地方裁判所

 写真の著作物について、職務著作ではないと認定されました。
 補助参加人は,原告が補助参加人の業務に従事する者であり,補助参加人のために本件写真を撮影し,また,本件写真は補助参加人名義のもとに公表するものであったから,本件写真の著作者は補助参加人である旨主張する。そこで検討するに,著作権法15条1項は,法人等において,その業務に従事する者が指揮監督下における職務の遂行として法人等の発意に基づいて著作物を作成し,これが法人等の名義で公表\されるという実態があることに鑑みて,同項所定の著作物の著作者を法人等とする旨を規定したものである。同項の規定により法人等が著作者とされるためには,著作物を作成した者が「法人等の業務に従事する者」であることを要する。そして,法人等と雇用関係にある者がこれに当たることは明らかであるが,雇用関係の存否が争われた場合には,同項の「法人等の業務に従事する者」に当たるか否かは,法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに,法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり,法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを,業務態様,指揮監督の有無,対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して,判断すべきものと解するのが相当である(最高裁平成13年(受)第216号同15年4月11日第二小法廷判決・裁判集民事209号469頁参照)。イ そして,本件では,原告と補助参加人との間に雇用関係は認められないから,本件写真の撮影当時において,原告が補助参加人の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり,補助参加人が原告に対して支払った金銭が労務提供の対価であると評価できるかについて検討する。証拠(甲2の1及び2,甲13,14,丙11)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成16年頃から平成22年7月頃まで,補助参加人の依頼を受けて,写真撮影を行い,撮影した写真フィルムないしデータを納品したこと,撮影のためのデジタルカメラ,レンズ,ストロボ等は原告が自らの費用で準備していたこと,補助参加人は,原告に対し,交通費のほか,報酬(日当名目)として1日2万2000円(平成19年8頃からは2万5000円)を支払っていたこと,報酬の支払時期は,撮影した写真を掲載した書籍の発行後であり,実際の撮影日から4か月程度後であったこと,平成18年(本件写真が撮影された年)において,原告の補助参加人の依頼による撮影日数は108日であり,それによって得た報酬は237万6000円であったことが認められる。以上のとおり,平成18年(本件写真が撮影された年)において,原告は,補助参加人からの依頼を受けて写真撮影の業務を行っていたものの,撮影機材は自ら準備し,写真撮影に当たっても自らの判断でその創作的内容を決定していたことが認められる。補助参加人は,原告に対し,報酬として1日2万2000円を支払っているが,その支払時期は,撮影した写真を掲載した書籍の発行後であり,原告の補助参加人の依頼による撮影日数は108日にすぎない。上記のような業務の態様や報酬の支払状況に照らすと,本件写真の撮影当時において,補助参加人が原告に対して支払った金銭が労務提供の対価であると評価することは困難であり,また,原告が補助参加人の指揮監督下にあったことを認めるに足りる証拠もない。ウ したがって,その余について判断するまでもなく,本件写真の創作が職務著作に当たるとは認められない。

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平成24(ネ)10008 各損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年10月25日 知的財産高等裁判所

 広告映像についても映画の著作物として、著29条1項の適用を受けると判断しました。
 原告は,広告映像については,劇場用映画とは異なり,著作権法29条1項の適用は排除されるので,本件ケーズCM原版の著作者であるAがその著作権者であり,原告はAから同CM原版の著作権の譲渡を受けたと主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり,採用の限りでない。著作権法29条1項は,「映画の著作物・・・の著作権は,その著作者が映画制作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは,当該映画製作者に帰属する。」と,また,同法2条3項は,「この法律にいう「映画の著作物」には,映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され,かつ,物に固定されている著作物を含むものとする。」旨規定する。本件ケーズCM原版が映画の著作物である以上(当事者間に争いはない。),その製作目的が,商品の販売促進等であることを理由として,同CM原版について同法29条1項の適用が排除されるとする原告の主張は,その主張自体失当であり,採用の余地はない。のみならず,以下のとおり,本件ケーズCM原版の具体的な製作目的,製作経緯等を検討してみても,本件ケーズCM原版について,映画の著作物の著作権に関して当該映画の製作者に帰属させる旨定めた同法29条1項の規定の適用を排除すべき格別の理由はない。
 すなわち,同法29条1項は,映画の著作物に関しては,映画製作者が自己のリスクの下に多大の製作費を投資する例が多いこと,多数の著作者全てに著作権行使を認めると,映画の著作物の円滑な利用が妨げられることなどの点を考慮して,立法されたものである。ところで,本件ケーズCM原版についてみると,同原版は,15秒及び30秒の短時間の広告映像に関するものであること(乙2,3,12),他方,製作者たる広告主は,原告及び被告アドックに対し,約3000万円の制作費を支払っているのみならず,別途多額の出演料等も支払っていること,同広告映像により,期待した広告効果を得られるか否かについてのリスクは,専ら,製作者たる広告主において負担しており,製作者たる広告主において,著作物の円滑な利用を確保する必要性は高いと考えられること等を総合考慮するならば,同CM原版について同法29条1項の適用が排除される合理的な理由は存在しないというべきである。広告映像が,劇場用映画とは,利用期間,利用方法等が異なるとしても,そのことから,広告映像につき同法29条1項の適用を排除する合理性な理由があるとはいえない。原告は,本件のような広告映像の場合,制作会社が,CM原版のプリント(複製)を受注し,その収益により制作費の不足分を補うという商習慣が確立していることから,本件ケーズCM原版に係る複製権は原告に帰属すると解すべきである旨主張する。しかし,制作会社がCM原版のプリント(複製)をする例があったとしても(甲26,28,46),本件において,原告が,当然に,そのプリント代で制作費の填補を受ける権利を有していると認定することはできない。以上のとおり,本件ケーズCM原版について同法29条1項の適用が排除されることを前提として,原告が本件ケーズCM原版の著作権(複製権)を取得したとする主張は,失当である。

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平成21(ワ)18463 著作権確認等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年02月16日 大阪地方裁判所

 漢字検定(漢検)の問題集に関する著作権帰属確認訴訟です。裁判所は、日本漢字能力検定協会が編集著作権を有すると判断しました。
 著作権法15条1項にいう「法人等の発意に基づく」とは,当該著作物を創作することについての意思決定が,直接又は間接に法人等の判断により行われていることを意味すると解され,発案者ないし提案者が誰であるかによって,法人等の発意に基づくか否かが定まるものではない。つまり,本件対策問題集の制作が原告の判断で行われたのであれば,「原告の発意に基づく」といえるのであって,最初に作成を思いついた人物や企画を出した人物が,原告の主張するようにP3(分野別シリーズ)あるいは大栄企画(ハンディシリーズ)であったか,あるいは被告らが主張するようにP2であったかは,この点を左右しない。また,前記1(2),(3)のとおり,原告は,日本漢字能力検定及びこれに係る書籍の発行を業務としているところ,日本漢字能\力検定の主催者として行う「書籍の発行」業務とは,書籍の販売のみならず,主催者(出題者)としてのノウハウを生かした書籍の制作業務を当然含んでいるものと考えられる。そうしたところ,ステップシリーズについては,5級から7級の改訂版(本件書籍16〜18)について,執筆要項が原告名義で作成され(甲57),外部業者との編集会議に出席していたのも原告の従業員らであるし(甲59),3級及び4級の改訂二版(本件書籍14,15)についても,見積依頼書(甲60),執筆要項(甲64),編集要項(甲65),組版にあたっての指示文書(甲76)等の外部業者に渡す書面が,原告名義で作成されている。さらに,分野別シリーズ5級及び6級(本件書籍26,27)に係る執筆要項(甲88),編集要項(甲89),見積依頼書(甲91,92)や,ハンディシリーズ5級及び6級(本件書籍32,33)に係る執筆要項(甲93),編集要項(甲94),印刷会社に対する発注書(甲109,110)等も,同様に原告名義で作成されている。したがって,本件対策問題集のうちこれら9冊(本件書籍14〜18,26,27,32,33)の作成は,原告の意思によって行われたものと認められる。そして,本件対策問題集のうち上記9冊以外のものについては,執筆要項などの証拠が残っていなかったものの,いずれも3種類のシリーズに属する問題集であることや,上記9冊のうち最も早く制作されたステップシリーズ5級から7級の改訂版(平成9年10月1日発行)と,最も遅く制作されたステップシリーズ3級及び4級の改訂二版(平成21年3月20日発行)との間の時期に制作されたものであることからして,上記9冊と同様に,原告の意思により作成されたものと考えられるところ,これに反する証拠もない。一方,上記編集作業について被告オークが関与したことを窺わせる事情は,編集プロダクションとの業務委託契約を締結したというだけであり,それ以上に,被告オークが上記編集作業に関与したことを認めるに足る証拠はない。以上のとおりであるから,本件対策問題集の制作に係る意思決定は,原告の判断により行われていたといえ,本件対策問題集は,原告の発意に基づき制作されたものと認められる。

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平成22(ワ)35335 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年09月30日 東京地方裁判所 

 職務著作(著15条)に該当するかが争われました。裁判所は職務著作の要件を満たさないと判断しました。
 以上説示したところによれば,本件書籍の執筆がアーバンプロデュースから原告に対し依頼されたものと認めることはできず,かえって,本件書籍の執筆は,アーバンプロデュースから被告個人に対し依頼されたものであり,各執筆担当従業員は被告からの個人的な依頼に基づき執筆を行ったものと認めるのが相当である。そうである以上,本件書籍の執筆過程で作成された著作物である本件著作物は,原告の発意に基づき,職務上作成されたものであるということはできない。キなお,前記1で認定した事実によれば,各執筆担当従業員が原告の業務時間内に本件書籍の執筆の打合せのために原告の会議室を使用していたこと,執筆を担当した従業員の中に,就業時間中に原告から貸与されたパソコン及びソ\フトウェアを用いて執筆を行った者や,原告の負担で本件書籍を執筆するための参考図書を購入した者がいたこと,被告がアーバンプロデュースを訪問した際の交通費を原告が負担したことがあったことなどが認められる。しかしながら,これらの事実は,被告が個人的に本件書籍の執筆依頼を受けたとの前記認定を覆すに足るものではない。

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平成21(ネ)10050 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年06月17日 知的財産高等裁判所

 旧著作権法下における映画の著作権の存続期間について、本事案については創作に関与した者であると判断しました。
 旧著作権法6条は,著作物の存続期間を定めた規定であるものと解されるが,同条につき,さらに,法人等の団体が著作者となり得ることを前提とした規定であると解することも可能である。そして,新著作権法における職務著作の規定の実質的な根拠とされた,法人等における著作物の創作実態及び利用上の便宜の必要性等の事情(甲5の80ないし81頁参照)は,旧著作権法の下においても,程度の差こそあれ存在していたものと推認できることからすれば,同法6条によって,直ちに,著作者として表\示された映画製作会社がその映画の著作者となると帰結されるものでないとしても,旧著作権法の下において,実際に創作活動をした自然人ではなく,団体が著作者となる場合も一応あり得たものというべきである。特に,映画制作においては,非常に多くの者が関与し,その外延が不明なことが通常であり,それら多数の者の複雑な共同作業によって映画が完成するものであるが,その関与者の関与の時期,程度,態様等も,映画によって千差万別であって,このような性質を有する映画については,映画会社がその著作者となり,原始的にその著作権を取得したものと観念するのが,各関与者の意図に合致する場合もあったものと想像され,新著作権法15条1項所定の要件と同様の要件を備え,映画会社が原始的に著作者となるべきものと認める映画も相当数あったのではないかと思われる。(5) この見地から,本件各映画についてみるに,新著作権法15条1項所定の要件が充たされているかは,具体的には,・・・前記(2)アないしウのとおり,本件映画1,3の各オープニングの冒頭部分において,新東宝の標章や「新東宝映画」との表示がされ,各ポスターにも,新東宝の標章とともに,「新東宝興業株式会社配給」ないし「新東宝の良心特作」との記載があり,・・も大きく表\示されていることを考慮すると,原告や新東宝が,自社の制作名義の下に本件各映画を公表したとはいい得るが,自社を著作者とした映画として公表\したとまでいい得るか,必ずしも断じ難いものがある。そのほかの要件については,本件では,必要な証拠が十分に提出されていないため,確たることは不明であるといわざるを得ない。そうすると,旧著作権法下において,本件各映画が著作物として保護を受けることは明らかであるところ,その著作者としては,原告ないし新東宝と本件各監督を含む多数の自然人とのいずれと認めるのが合理的であるかについては,新著作権法15条1項の要件が証拠不十\分のため,認められないとすれば,本件各映画の著作権は,本件各監督を含む多数の自然人に発生したものといわざるを得ない。そして,本件各監督を含む多数の自然人が著作者であると認めた場合には,いったん本件各監督等が各映画の著作権を取得しながら,その後,映画公開までの間に,原告又は新東宝に同著作権を黙示的に譲渡したと認められるかが問題となるところ,前記(2)セのとおり,新東宝・原告間では,著作権譲渡につき正式な契約書が存在するにもかかわらず,本件各監督と原告ないし新東宝との間の著作権の移転については,何ら証拠が提出されていない。しかしながら,監督については,前記(2)シで認定したように,原告は,テレビ放送への利用許諾等で対価を得た場合,原告もその会員である社団法人日本映画製作者連盟と,本件各監督もその組合員であった協同組合日本映画監督協会との間の申合せに従い,監督等に対し追加報酬を支払い,また,原告が放送への利用許諾等をした際には,協同組合日本映画監督協会に対しその旨を通知し,同協会は,監督等の組合員に対しその旨を連絡していることを考えると,映画製作会社は映画監督につき著作者の一人として処遇していることが窺われる。以上のように考えると,映画監督に限っては,映画公開までの間に原告又は新東宝に対し監督を務めることとなった法律関係に基づいて,自己に生じた著作権を譲渡したものと認定することができる。\n

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平成21(ネ)10051 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成21年12月24日 知的財産高等裁判所

 職務著作に該当するとした原審の判断は取り消したものの、許諾があったとして著作権侵害はないと判断しました。
職務著作について定めた著作権法15条1項は,法人等において,その業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で,その法人等が自己の名義の下に公表するものの著作者は,その作成の時における契約,勤務規則その他に別段の定めがない限り,その法人等とすると定めているところ,「法人等の業務に従事する者」に当たるか否かは,法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに,法人等の指揮監督下において労務を提供するという実体にあり,法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを,業務態様,指揮監督の有無,対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して判断すべきものと解される(最高裁平成15年4月11日第二小法廷判決・裁判集民事209号469頁参照)。イ そこで,上記見解に立って本件をみるに,前記のとおり,控訴人は被控訴人の被用者ではなく,フリーのカメラマンとして個人で写真事務所を経営しているものあること,本件各走行会において控訴人は,本件写真販売事業においては控訴人の一般的指揮の下に撮影を行ったが,撮影に当たってはプロのカメラマンとしてこれを実施したこと,第1回走行会の前日である平成18年7月12日に,控訴人の撮影した写真であることを明示してもらうため被控訴人に対し,控訴人撮影のクレジットの挿入を要求し,現にライコランド社のホームページに掲載された本件写真には「PHOTO BYX」なる撮影クレジットが挿入されていること等の事実を認めることができ,これらを総合勘案すれば,控訴人は基本的には被控訴人との契約に基づきプロの写真家として行動していた者であり,被控訴人の指揮監督の下において労務を提供するという実体にあったとまで認めることはできない。ウ そうすると,本件写真は職務著作であるとする被控訴人の主張はこれを採用することができないことになり,これを肯定した原判決の見解は採用できないということになる。

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平成18(ワ)2591 著作権侵害確認等請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年11月27日 東京地方裁判所

 論文について複製権侵害、翻案権侵害が争われました。裁判所は、複製権侵害であると認定しました。
 以上によれば,第1論文は,原告が,被告が作成した原稿について,原稿への書き込み及び口頭により,英語表現の訂正,付加や,記載の順序,内容等について指示をし,その指示を受けた被告が原稿の修文をしたり,新たに作成した文章を書き入れて,完成するに至ったものであって,第1論文は,原告と被告が共同で創作し,原告と被告の寄与を分離して個別的に利用することができないものというべきであるから,第1論文は原告と被告の共同著作物(著作権法2条1項12号)であると認められる。したがって,原告は,第1論文の共同著作者である。・・・・以上によれば,被告は,第1論文に依拠し,第1論文の「Abstract」の一部(別紙対比表1の2ないし4の各項)及び「Discussion」の一部(別紙対比表2のcないしlの各項)について,その創作的表\現を有形的に再製して第2論文を作成したものであるから,被告による第2論文の作成は,上記の限度において複製に当たるものと認められる。そして,被告は,第1論文の共同著作者である原告の同意を得ずに,第2論文を作成しているから,被告による第2論文の作成は,原告の第1論文の一部についての複製権の侵害に当たる。・・・・・原告は,第2論文は,第1論文に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,「Results」及び「Conclusion」の章のみを書き替えたものであり,両論文の読者は,その余の部分についての酷似を容易に感得できるから,第2論文は,第1論文を全体として翻案したものである旨主張する。ところで,言語の著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。これを本件についてみるに,前記(1)のとおり,第2論文において第1論文の創作的表現が有形的に再製されている部分は,「Abstract」の一部(別紙対比表1の2ないし4の各項)及び「Discussion」の一部(別紙対比表2のcないしlの各項)であって,しかも,両論文の「Results」及び「Conclusion」の各章は,記載内容が異なり,その表現において類似する箇所は存しないことに照らすならば,上記部分から第1論文全体の表\現上の本質的特徴な特徴を直接感得することができるものではないから,第2論文は,第1論文を全体として翻案したものと認めることはできない。

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◆ H18. 2.27 東京地裁 平成17(ワ)1720 著作権 民事訴訟事件

  社員の作成した講義の資料について、法人名で公表されていないとして法人著作には該当しないと判断されました。ただ、複製自体は、黙示の許諾があると判断されています。
  

◆ H18. 2.27 東京地裁 平成17(ワ)1720 著作権 民事訴訟事件

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◆H16. 1.15 大阪地裁 平成14(ワ)1919等 著作権 民事訴訟事件

 少し前の事件です。
   訴外Aの社員と被告が共同で開発したパチスロ機の関する著作権の帰属および商標権侵害が争われました。原告Bは、訴外Aの破産管財人から知的財産権の譲渡を受け、自己が権利者であると主張しました。
 具体的には、著作物に該当するのか、著作者は誰か、商標の使用に該当するのか等が争われました。裁判所はパチスロ機の液晶画面について美術の著作物に当たり、また、共同著作物ではないと判断しました。
 また、商標権については、「ソフトウエアは、一般に、その記憶媒体のいかんにかかわらず、プログラム自体が商品の本質をなすという特質を有するものである。そして、ソ\フトウエアを実行した場合にその導入部で表示される標章は、需要者に認識され、出所識別機能\を果たすものであるから、商標として使用されているというべきであり、これをプログラムに組み込むことも、商品に標章を付することに当たるというべきものである。・・・したがって、同ソフトウエアの「隠しムービー」で別紙標章目録2記載の標章が表\示されるように同ソフトウエアに組み込むことは、本件商標に類似する標章を商品に付して使用することに当たるというべきである。」と判断しました。

 

◆H16. 1.15 大阪地裁 平成14(ワ)1919等 著作権 民事訴訟事件

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◆H15. 4.23 東京地裁 平成13(ワ)13484 著作権 民事訴訟事件

 A法人の元代表者が、映画の著作物についての著作者であるとしてA法人の権利を承継した法人を訴えた事件で、裁判所は、これを認めませんでした。
「法2条1項10号は,映画製作者について,「映画の製作について発意と責任を有する者」と規定している。すなわち,映画製作者とは,自己の危険と責任において映画を製作する者を指すというべきである。映画の製作は,企画,資金調達,制作,スタッフ及びキャスト等の雇い入れ,スケジュール管理,プロモーションや宣伝活動,並びに配給等の複合的な活動から構成され,映画を製作しようとする者は,映画製作のために様々な契約を締結する必要が生じ,その契約により,多様な法律上の権利を取得し,又,法律上の義務を負担する。したがって,自己の危険と責任において製作する主体を判断するためには,これらの活動を実施する際に締結された契約により生じた,法律上の権利,義務の主体が誰であるかを基準として判断すべきことになる。 そして,上記の判断基準に照らすと,当裁判所は,以下の(ア)ないし(ウ)のとおり,本件各映画のすべてについて,その映画製作者は春樹事務所又は被告であると認定するのが相当であると判断した。確かに,証拠(甲6,乙1ないし59)並びに弁論の全趣旨によれば,原告は,本件各映画の製作に携わったことが認められるけれども,その際に関係者と締結された契約における当事者は,前記(1)及び後記(ウ)のとおり,すべて春樹事務所又は被告であるから,そうである以上,法律上の権利,義務の主体,すなわち,法的な観点からの危険と責任の主体は,原告ではなく,春樹事務所又は被告というべきである。」

 

◆H15. 4.23 東京地裁 平成13(ワ)13484 著作権 民事訴訟事件

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◆平成15年04月11日 第二小法廷判決 平成13年(受)第216号 著作権使用差止請求事件

 著作権法15条の、いわゆる法人著作に該当するのかが争われた事件です。
高裁は、「1回目と2回目の来日には,被上告人がいわゆる就労ビザを取得していなかったこと,上告人が被上告人に対し就業規則を示して勤務条件を説明したと認められないこと,雇用契約書の存在等の雇用契約の成立を示す明確な客観的証拠がないこと,雇用保険料,所得税等が控除されていなかったこと,タイムカード等による勤務管理がされていなかったことに照らすと,3回目の来日前に,上告人と被上告人との間に雇用契約が成立したと認めることはできない。したがって,本件図画は被上告人が上告人の業務に従事する者として作成したものではなく,上告人がその著作者であるとすることはできない」と判断しました(平成11年(ネ)第4341号)。
 これに対して、最高裁は、裁判官全員一致で破棄差戻しました。理由は、以下の通りです「・・・同項の「法人等の業務に従事する者」に当たるか否かは,法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに,法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり,法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを,業務態様,指揮監督の有無,対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して,判断すべきものと解するのが相当である」。

 

◆平成15年04月11日 第二小法廷判決 平成13年(受)第216号 著作権使用差止請求事件

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