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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

賠償額認定

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成30(ワ)21900  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年5月20日  東京地方裁判所

東京地裁29部は、102条2項侵害について、貢献の程度および競合品の存在による覆滅を被告の利益約5600万円のうち10%の損害額を認定しました。

(1) 推定される損害額
ア 前記前提事実(5)のとおり,被告は,本件特許権の登録日である平成29 年6月16日から令和元年10月31日までの間,被告各製品合計●省略 ●個を販売し,これにより●省略●円の売上げがあり,少なくとも●省略 ●円の経費を要した。 したがって,法102条2項の利益の額は,5652万1465円(消 費税込み)と認めるのが相当である。 イ 被告は,被告による被告各製品の販売がなかったならば原告が利益を得 られたであろうという事情は存在しないので,法102条2項の適用はな いと主張する。
しかし,証拠(甲12,35ないし38,乙17,33,107,10 8)及び弁論の全趣旨によれば,1) 電動ファン付きウエアの市場において, 平成29年当時,原告グループ(原告,株式会社空調服等。以下同じ。) は約30%,被告グループ(被告,株式会社サンエス等。以下同じ。)は 約40%,平成30年当時,原告グループは約33%,被告グループは約 33%,令和元年当時,原告グループは約40%,被告グループは約2 0%,令和2年当時,原告グループは約35%,被告グループは約20% の各シェアを占めていたこと,2) 原告は,首後部からの空気の排出口の大 きさを調整することができるように,空調服の販売を開始した当初は調整 紐型空調服を製造販売し,その後,2段階調整型空調服を製造販売してい るが,本件各発明を実施する空調服は製造販売していないことが認められ る。 上記認定事実によれば,原告グループは電動ファン付きウエアの市場に おいて大きなシェアを占め,原告は,首後部からの空気の排出口の大きさ を調整するために,調整紐型空調服又は2段階調整型空調服を販売してい たものと認められる。他方で,被告各製品のように複数段階で調整できる 空調服が多数販売され,他の電動ファン付きウエアの市場とは異なる独自 の市場を形成していたことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,原告製品は被告各製品の競合品であると認めるのが相当で あるから,被告が被告各製品を販売して本件特許権を侵害しなければ,原 告は原告製品をさらに販売して利益を得られたであろうという事情が認め られる。 したがって,本件には法102条2項が適用されるので,被告の上記主 張は採用することができない。
ウ 被告は,商品の運用及び管理を●省略●に委託しており,平均すると商 品1点当たり●省略●円の経費を要したから,売上げから合計●省略●円 (●省略●円×●省略●個)を控除すべきであると主張する。 法102条2項の利益の額とは,侵害者の売上高から,侵害者において 侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必 要となった経費を控除した限界利益の額をいうところ,証拠(乙62)及 び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成28年6月21日以降,●省略● に対し,被告の物流センターにおける衣料用繊維製品等の入出荷業務その 他これに付随する業務全般を,製品の点数にかかわらず一律の月額委託料 (平成29年8月1日以降は●省略●円)を支払うことを約して委託した ことが認められる。 そうすると,●省略●に対する委託料は,被告が被告各製品を製造販売 することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費と は認められないから,前記アの被告各製品の売上げからこれを控除するの は相当でない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(2) 推定の覆滅事由
ア 本件各発明が被告各製品の部分のみに実施されていること
(ア) 前記1(2)のとおり,空調服は,送風手段を用いて外部から服内に空気 を取り込み,当該空気が服内を流通し,その間に人体から出た汗を蒸発 させ,気化熱により体表面の温度を下げようとするものであるところ, 本件発明1は,空調服の襟後部又はその周辺に二つの調整ベルトを設け, 一方の調整ベルトの取付部と他方の調整ベルトの複数ある取付部のうち いずれか一つを取り付けることによって,襟後部と首後部との間に形成 される開口部を広げたり,狭めたりすることを可能にし,より適切な空 調服の冷却効果を,より簡単に得ることを目指したものである。 しかし,本件特許の出願当時,既に,空調服の襟後部の内表面に一組 の調整紐を設け,これらを結ぶことによって上記開口部の大きさを調整 する技術があったところ(本件明細書【0004】),本件発明1は, 一組の調整紐を任意の長さに結ぶことが難しく,上記開口部の大きさを 求める冷却効果に応じた適正なものにすることが困難であったことを解 決しようとしたものであり(同【0006】及び【0009】),上記 開口部からの空気の排出の効率化という点では,従来技術の延長線上に 位置付けられるものである。そして,本件発明1は,主として,従来技 術における調整紐を「取付部」を有する「調整ベルト」に置き換えたも のであるが,前記5(2)のとおり,本件特許の出願当時,ボタン及びボタ ンホール等を使用し,衣服におけるサイズを複数段階で調整することが できる周知慣用の技術が存在したものである。 以上からすると,従来技術と比較したときの本件発明1の技術的意義 は,必ずしも大きいものではなかったといわざるを得ない。 なお,本件発明2は,本件発明1の空気排出口調整機構を備える空調 服の服本体の発明であって,本件発明2につき本件発明1とは異なる独 自の技術的意義は認められない。
(イ) 従来技術に係る調整紐型空調服において,送風手段を作動させたとき の襟後部と首後部との間に形成される開口部の形状は,電動ファンの風 力,前部ファスナーの締め具合,着用者の姿勢や体格,服の布地や布ベ ルト,ゴムベルト等の素材,襟部の形状等の影響を受けると考えられる ところ,この点については,本件発明1を実施した空調服であっても異 なるところはない。そして,上記従来技術又は本件発明1に係る空気排 出口調整機構が,上記の諸要素と比較して,上記開口部の形状決定にど の程度の影響を与えるのか,ひいては当該空調服の冷却性能にどの程度 の作用効果があるのかを確定するに足りる証拠はない。 また,調整紐型空調服の場合,結び目付近に調整紐の先端部分が集ま り,空気排出の障害となることが指摘されるが(本件明細書【000 8】),紐という形状から考えて障害の程度がさほど大きいものとはい えず,本件発明1により特に有意な作用効果が得られるとはいえない。 さらに,従来技術に係る調整紐型空調服においても,一定の技量があ れば調整紐を任意の長さに結ぶことは可能であり,本件発明はこの点に ついて特段の技量を要しないこととしたところに発明の作用効果がある といえるものの,実際に空調服を使用するに際し,上記の調整紐の長さ につき,どれほどの頻度で,どの程度細かく調整することが必要とされ ていたのかは明らかではない。 そうすると,本件発明1は,容易に襟後部と首後部との間に空気排出 口を形成し,これを調整することができるものの,従来技術に比して大 きな作用効果があるものとは認められない。
(ウ) 証拠(乙34,35)及び弁論の全趣旨によれば,顧客が空調服を選 択する際,空調服の価格,デザイン,服の素材並びに電動ファン及びバ ッテリーの性能に着目することが多いと認められ,空調服の襟後部と人 体の首後部との間の空気排出口を調整する機構の有無が特に着目された ことを認めるに足りる証拠はない。 また,被告各製品のうちの本件各発明を実施する部分は,ボタン,ボ タンホール,ゴムベルト及び布ベルトで構成され,その製造がさほど困 難であったとは認められず,証拠(乙19)及び弁論の全趣旨によれば, 被告各製品に上記部分を設けるのに要する費用は1着当たり41ないし 42円であり,被告各製品の販売価格の1ないし2%にすぎなかったと 認められる。 さらに,証拠(甲3,乙57ないし59)及び弁論の全趣旨によれば, 平成29年から令和元年までの被告の商品のパンフレット及びウェブサ イトにおいて,空調服の構造を紹介するページに,本件発明1に係るゴ ムベルト及び布ベルトが取り付けられた部分の写真が掲載され,その機 能を紹介する記載があるが,同写真は,ファンの写真よりは小さく,フ ァンの取り付け位置及び着脱方法並びにバッテリーの各写真と同程度の 大きさであったこと,個々の空調服を紹介するページに,空調服が備え る機能として,ペンを差すポケット,バッテリー用ポケット,袖口の複 数のボタン,保冷剤用ポケット等の各写真と並んで,上記部分の写真が 掲載されていることが認められる。 そうすると,被告各製品が備える機能のうち本件発明1を実施した部 分が占める割合は小さかったといえ,また,同部分の顧客誘引力が特に 高かったとはいえない。
(エ) 以上によれば,本件発明1の技術的意義や作用効果,被告各製品のう ち本件発明1が実施された部分の顧客誘引力等に照らすと,本件特許権 を侵害する同部分が被告各製品の販売に貢献したところは小さいといわ ざるを得ないから,この事情に基づき,法102条2項により推定され る損害額の80%について推定の覆滅を認めるのが相当である。
イ 市場における競合品の存在
(ア) 前記(1)イのとおり,平成29年から令和元年までの電動ファン付きウ エアの市場において,原告グループのシェアは約30ないし40%,被 告グループのシェアは約20ないし40%であり,原告は,襟後部と首 後部との間に形成される開口部の大きさを調整することができるように, 2段階調整型空調服を製造販売している。 また,前記ア(ウ)のとおり,被告は,その商品のパンフレット等におい て,ペンを差すポケット,バッテリー用ポケット等の機能と並んで本件 発明1に係る部分を紹介しており,購入者が本件発明1が実施された部 分のみに着目して被告各製品を選択したとはいい難い。 一方で,証拠(乙39ないし45)及び弁論の全趣旨によれば,原告 及び被告以外の業者も,首後部からの空気の排出をより効率的に行うた めの機能を備えた空調服や,その他種々の機能を備えた空調服を販売し ていることが認められる。 そうすると,空調服のうちの特定のものだけが被告各製品の競合品と なるとは認められず,競合品に係るシェアは上記の原告,被告及びその 他の競業他社のシェアのとおりと認めるのが相当であり,これを踏まえ ると,被告が被告各製品を販売することがなかったとしてもその購入者 の全てが原告製品を購入したとはいえないから,この事情に基づき,法 102条2項により推定される損害額の50%について推定の覆滅を認 めるのが相当である。
(イ) 被告は,被告各製品を製造販売しなかったとしても,被告各製品を購 入しようとしていた顧客は,本件各発明の技術的範囲に属しない被告の 代替製品を購入するはずであるから,被告各製品の販売と原告の損害と の間には因果関係は認められず,仮に法102条2項が適用されるとし ても,この点は推定の覆滅事由になると主張する。 しかし,被告が被告各製品を製造販売しなかったとして,被告が他に いかなる空調服を製造販売したかは証拠上明らかではないから,被告の 上記主張は採用することができない。
ウ 被告の営業努力
被告は,独自のブランドである「空調風神服」の名称で被告各製品を販 売しており,「空調風神服」には強い出所識別力があるから,被告各製品 の販売には上記ブランドによる力が貢献していると主張する。 しかし,前記(1)イのとおり,遅くとも平成29年以降,電動ファン付き ウエアの市場において,原告グループのシェアと被告グループのシェアは 拮抗し,むしろ原告グループのシェアの方が伸びていることからすると, 原告製品の顧客吸引力と比較して「空調風神服」の名称に特に強い顧客吸 引力があるとは認められないというべきであり,他にこれを認めるに足り る証拠はない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。
エ その他
被告は,1) 原告製品は本件発明1を実施しておらず,被告が被告各製品 を販売したことにより原告が損害を受けることはない,2) 原告製品はイン ターネットショッピングサイトにおいて酷評されていると主張する。 しかし,上記1)について,前記(1)イのとおり,原告は,電動ファン付き ウエアの市場において,被告各製品の競合品を製造販売していたから,原 告製品において本件各特許が実施されていなかったからといって,被告が 被告各製品を製造販売したことにより,原告が損害を被ったことを否定す ることはできない。 また,上記2)について,原告(原告グループ)が電動ファン付きウエア の市場において相当程度のシェアを占めていることは前記(1)イのとおりで あり,インターネットショッピングサイトにおけるごく一部の評価(乙4 6)をもって,被告各製品が販売されなかったとしても原告製品が売れる ことはなかったということはできない。 したがって,被告の上記各主張はいずれも採用することができない。 (3) 小括 ア 以上によれば,本件各発明の被告各製品の売上げに対する貢献の程度に より80%(前記(1)ア),電動ファン付きウエアの市場に競合品が存在す ることにより50%(前記(1)イ)の推定の覆滅を認めるべきであるから, 被告による本件特許権の侵害により,原告が被った逸失利益に係る損害額 は,565万2147円(5652万1465円×(1−0.8)×(1 −0.5))と認められる。 イ 被告の上記不法行為と相当因果関係の認められる弁護士費用相当額は6 0万円と認めるのが相当である。
ウ よって,原告が被った損害額は合計625万2147円である。

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平成29(ワ)36506 損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年5月19日  東京地方裁判所

 LINEのフリフリ機能の特許権侵害について、約1400万円の損害賠償か認められました。広告収入については因果関係無しとして認められず、有料スタンプの売り上げのみでした。

 原告は,被告に対し,特許法102条3項に基づく損害賠償を請求していると ころ,同項は,「特許権者・・・は,故意又は過失により自己の特許権・・・を侵害した者に対し,その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を, 自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。」旨規定してい るから,同項による損害は,原則として,侵害品の売上高を基準とし,そこに, 実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。 そして,かかる実施に対し受けるべき料率は,1)当該特許発明の実際の実施許 諾契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界における実施料の 相場等も考慮に入れつつ,2)当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内 容や重要性,他のものによる代替可能性,3)当該特許発明を当該製品に用いた場 合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様,4)特許権者と侵害者との競業関係や 特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定め るべきである(知財高裁平成30年(ネ)第10063号令和元年6月7日大合 議判決参照)。
本件においては,被告アプリが無償で配信されており,被告アプリのユーザが 友だち登録をし,友だち等との間で被告システム等によるメッセージの送受信等 のサービスを享受すること自体により被告に売上げは発生しない(甲73)から, 「侵害品の売上高」をどのように確定すべきかがまず問題となり,次いで,実施 に対し受けるべき料率(相当実施料率)の算定が問題となる。 そこで,それぞれにつき,以下,検討する。
(1) 売上高について
ア 当事者の主張
原告は,被告の事業のうち,本件特許権侵害の対象となる事業は,コア事 業中の「アカウント広告」と「コミュニケーション」の売上げであり,本件 特許登録日である平成29年9月15日から被告が「ふるふる」の提供を終 了した日の前の日である令和2年5月10日までの間(以下「本件損害算定 期間」という。)の売上高(アカウント広告につき合計1519億5800 万円,コミュニケーションにつき767億2800万円)に基づいて損害額 を算定すべきであると主張する。 一方,被告は,主に被告アプリ上でアカウントを有する企業等からの売上 げであるアカウント広告の売上げは損害賠償額算定の対象とならず,仮に, コミュニケーションの売上げが損害賠償額算定の対象となり得るとしても, 対象となるのは本件機能と関係のある部分に限られると主張する。\n
イ 認定事実
そこで検討するに,前記前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると, 以下の事実を認めることができる。
・・・
(ウ) 企業等のアカウントとの間の「ふるふる」による友だち登録(被告シス テム等図面【図38】,甲61) LINE@等のサービスを導入している企業等が住所の位置情報をあ らかじめ登録している場合,一般ユーザが被告アプリの友だち追加画面で 「ふるふる」を選択して手元のスマートフォンを振ると,半径1km圏内 の上記企業等も友だち登録の候補として表示され,同ユーザが同企業等に\nつき友だち追加処理をすると,同企業等が同ユーザの友だちとして追加登 録される。
ウ 「ふるふる」以外の友だち登録及び海外企業への輸出に係る売上げ等につ いて
原告は,損害賠償の対象は,「ふるふる」による友だち登録及びこれによ り友だちとなったユーザとの交流等に限定されず,QRコードやID検索等 の他の友だち登録も含み,また,海外企業を含む連結売上高を対象とすべき であると主張する。 (ア) しかし,原告は,本訴提起当初から,一貫して「ふるふる」による友だ ち登録及びその後の交流が本件各発明の技術的範囲に属する旨の主張を していたのであり(前記前提事実(5),被告システム等図面【図2】〜【図 4】,【図34】〜【図44】),その余の友だち登録手段による友だち 登録等が本件各発明の技術的範囲に属する旨の主張立証は侵害論の対象 とされていないので,損害賠償の対象となるのは,「ふるふる」による友 だち登録と相当因果関係のある範囲の売上高に限定されるというべきで ある。
(イ) また,海外企業を含む連結売上高を対象とすべきとの点については,被 告から海外企業への実施品の輸出に係る売上高を対象とする趣旨と考え られるが,原告が侵害論において対象としていた被告の実施行為は,被告 システムの使用と,被告アプリの生産,譲渡及び譲渡の申出にとどまって\nおり,仮に被告システム等が輸出されているとしても,当該被告システム 等に本件機能が搭載されているかどうかといった点も本件の証拠上明ら\nかではないから,この点の原告の主張も採用し難い。
エ 損害賠償の対象となる売上高の範囲について そこで,前記イ(ア)〜(ウ)で認定した事実に基づき,本件において損害賠償 の対象となる売上高の範囲につき検討する。
(ア) アカウント広告の売上げについて
アカウント広告の売上げは,企業等からの売上げに関するものであると ころ,一般ユーザは,かかる企業等との間でも「ふるふる」による友だち 登録をなし得るものの,この場合は,企業等が住所の位置情報をあらかじ め登録している必要があり,また,その際,企業等はスマートフォンを操 作するとは考え難いから,そもそも,この場合に,「近くにいるユーザ同 士がスマートフォン(2)を操作して友だち登録することによりコンピュ ータ(14)を利用してコミュニケーションによる交流」(構成a等)を\n具備するとは認め難く,他にこの場合の被告システム等が本件各発明の技 術的範囲に属するという的確な主張立証はない。 また,前記イ(ア)aに記載されたアカウント広告を構成する各売上げの\n内容に照らすと,これらの売上げは,いずれも,一般のユーザ同士の本件 機能による友だち登録との関係がないか,関係があっても希薄であるとい\nうべきである。 そうすると,アカウント広告の売上げは,本件の損害賠償の対象となら ないと解するのが相当である。
・・・
b 前記aで認定した売上高は,「ふるふる」以外の友だち登録に関する 分も含まれているところ,被告の侵害行為は,「ふるふる」による友だ ち登録に関するものであるから,被告の侵害行為と相当因果関係にある 売上高は,上記売上高に,本件損害算定期間中の「ふるふる」による友 だち登録割合を乗じて算出するのが相当である。そして,前記イ(イ)の とおり,同割合は,●(省略)●であるから,被告の侵害行為と相当因果 関係にある売上高は,●(省略)●となる。 ●(省略)●
(ウ) 以上のとおり,被告の侵害行為と相当因果関係にある売上高は,●(省 略)●となる。
・・・
(2) 相当実施料率について
ア 本件各発明の実施許諾契約における実施料率やその相場等
原告は,原告代表者から専用実施権の設定を受けているが,その設定契約\nの詳細は本件の証拠上明らかでなく,また,原告が他人に本件各発明の実施 を許諾したことをうかがわせる証拠はない。 そこで,相場等につきみるに,証拠(甲157〜159,乙82)によれ ば,電子計算機に係るロイヤルティ(件数719件)は,平均値が33.2%, 最頻値が50.0%,中央値が40.0%とされている一方,「技術分類 コ ンピュータテクノロジー」,「対象となる製品・技術例 計算;係数,チェ ック装置等」におけるロイヤルティ料率の相場は,1%未満,1〜2%未満, 2〜3%未満,3〜4%未満がいずれも16.7%であり,4〜5%未満が 25.0%であるとされている。 しかし,本件においては,被告アプリは無償で配信され,被告アプリのユ ーザが「ふるふる」を使用して友だち登録をし,その後の交流を行うといっ た行為自体による被告の売上げは発生しないという特殊性があることから すれば,上記の相場等を重視することはできない。
イ 本件各発明の価値や代替可能性等\n
本件各発明は,前記1(2)に記載のとおり,初対面の人物同士が出会った 後互いにコンタクトを取ることができるようにする際に,極力個人情報を明 かすことなくコンタクトが取れるようにするためのコンピュータシステム 及びプログラムに関する発明であって,相手方に互いの個人情報を通知する ことなく後々コンタクトを取ることができ,かつ,相手方以外の他人がその 相手方に成りすましてコンタクトしてくる不都合をも防止できる理想的な 連絡可能状態を構\築する手段を提供することを目的として,現実世界で出会 ったユーザ同士がユーザ端末を操作し,コンピュータを利用して交流を行う に当たり,コンピュータ(サーバ)が各ユーザ端末の位置情報を取得し,該 位置情報に基づいて所定時間中に所定距離内に位置するユーザ端末が検索 されたことを必要条件として,該検索されたユーザ端末を新たな交流先とし て交流先のリストに追加して表示させ,ユーザが表\示された複数の交流先の 内からコミュニケーションを取りたい相手を選択指定し,指定された相手と の間でメッセージを送受信できるようにするという手段を採用することで, 互いにコミュニケーションによる交流に同意したユーザ同士が連絡先の個 人情報を知らせ合うことなく交流できるという効果が得られるようにした ことを特徴とする発明である。 このような発明には一定のニーズが存在するものと考えられるから,本件 各発明には相応の価値があるものと認められる。 もっとも,前提事実(6)のとおり,本件特許に関する無効審判請求におい て,特許庁は,本件特許が進歩性を欠く旨の職権審理結果通知をしていると ころ,このことは,実際に本件特許が無効となるか否かはともかく,類似の 技術が存在することを示すものということができる。
ウ 本件各発明の被告の売上げや利益への貢献等
証拠(甲41・3丁)によれば,「ふるふる」を利用する場合の最大の特 長は,複数人と一度に友だちになれることであり,サークルや部活,仕事の チーム,パーティーなど,複数の人が集まる場で活躍しそうであるとされて いることが認められ,これらの事実に加え,前記(1)イ(イ)記載の事実関係に よると,既に友人等であるユーザ同士が友だち登録する方法が多く,実際に もそのようなユーザ同士により友だち登録がされることが多いことがうか がわれることからすると,被告システム等においては「ふるふる」による友 だち登録がされる場合であっても,それ以前に相互の個人情報を交換してい る場合も少なくないものと考えられる。
●(省略)●
被告による企業努力が大きく貢献しているとうかがわれるとこ ろである。 そうすると,被告システム等に係る売上げや利益についての本件各発明の 貢献の度合いは,かなり限定的なものであると認められる。 エ 以上の諸事情,とりわけ,本件各発明には相応の価値があると認められる ものの,これと類似の技術が存在することがうかがわれることや,被告シス テム等に係る売上げや利益についての本件各発明の貢献の程度は限定的な ものであることなどを総合的に考慮すると,本件における相当実施料率は● (省略)●と認めるのが相当である。

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令和1(ワ)23033  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年5月21日  東京地方裁判所

 商標権侵害の損害論の審理に入ってから約半年が経過後の被告側の限界利益算出のための調査の申し出は、時期に後れた攻撃防御として却下されました。\n

 (a) 以上に対し,被告は,1)前記(1)イの売上高には,被告が楽天に 支払うべき楽天市場の出店手数料及び広告料が含まれているから, 限界利益を算定する上では,上記の売上高から上記出店手数料や広 告料を差し引くべきである旨を主張し,2)上記1)の主張に関連して, 平成18年8月11日から令和元年8月27日までの間の売上高に 関して被告が楽天に支払った月ごと又は年ごとの金額を調査の趣旨 とする令和2年2月28日付けの調査嘱託を申し立て(以下「本件\n調査嘱託の申立て」という。),さらに,3)楽天市場に出店する際の 月額固定費,売上げに応じた変動費等が支払われており,これらを 差し引くべきであるとの主張を記載した令和3年3月11日付け準 備書面(以下「本件被告準備書面」という。)及び同日作成の書証 (「楽天市場への出店方法の流れと費用,体験談から見るメリッ ト・デメリットを解説」と題するウェブページをプリントアウトし たもの。以下「本件被告書証」という。)を提出した。 これに対し,原告は,前記第2の4(5)(原告の主張)ウのとお り,上記2)及び3)は時機に後れた防御方法に当たるから,民事訴訟 法157条1項により却下されるべきであるとの意見を述べた。
(b) そこで検討すると,本件の審理が以下の経過をたどったことは, 当裁判所に顕著である。
i 本件の訴状は令和元年9月19日に被告に送達された。
ii 本件は,令和元年10月30日の第1回口頭弁論期日の後, 弁論準備手続に付され,令和2年8月28日の第7回弁論準備 手続期日まで,主として,被告による原告各商標権侵害の成否 (いわゆる侵害論)についての争点整理が行われた。
iii 原告は,令和2年8月28日,平成18年8月11日から令 和元年8月27日までの間における本件被告販売商品1−1及 び1−2の売上高等に関する楽天に対する調査嘱託を申し立て\nたところ,同年10月29日,楽天は,上記調査嘱託の回答書 (甲35)を提出した。
なお,上記提出に先立つ同月5日の第8回弁論準備手続期日 において,被告は,調査嘱託の回答があったときには,次回期 日までに,調査嘱託の回答を踏まえて,主張立証の方針につい て検討する旨を陳述した。
iV 被告は,令和2年12月14日の第9回弁論準備手続期日に おいて,前記iiiの回答書(甲35)に関し,月ごとの売上高等 を調査事項とする調査嘱託を申し立てる意向を示すとともに,\n損害論に関する事実調査を尽くす旨を陳述した。 そして,被告は,同月21日,楽天に対する上記調査嘱託を 申し立て,楽天は,令和3年1月21日,同調査嘱託に対する\n回答書(甲36)を提出した。
V 被告は,令和3年1月28日の第10回弁論準備手続期日に おいて,同年3月1日までに,損害論についての認否反論を尽 くす旨を陳述した。
Vi 被告は,前記(a)2)のとおり,令和3年2月28日付けで本件 調査嘱託の申立てをした。これに対し,原告は,本件調査嘱託\nの申立ては,必要性がなく,かつ不適法であるとの意見を記載\nした同年3月5日付け意見書を提出した。
Vii 被告は,前記(a)1)の主張を記載した本件被告準備書面を提出 し,令和3年3月11日の第11回弁論準備手続期日において 同準備書面を陳述した。 また,被告は,前記(a)3)の主張を記載した準備書面(同月1 1日付け)を提出するとともに,本件被告書証を乙第1号証と して提出した。
(c) 本件では,訴状において,商標法38条2項により推定される逸 失利益の額に関する主張が記載されていたから,被告においても, 限界利益の算定に当たって控除すべき経費の項目及び額が争点とな り得ることについては,同訴状送達日である令和元年9月19日の 時点で認識することができたといえる。 そして,前記(b)iiのとおり,本件の審理において,侵害論の争 点整理は令和2年8月28日までにおおむね終了し,同日からは損 害の発生及び額(いわゆる損害論)に関する争点整理に進み,その 後の4回の弁論準備手続期日の中で,被告には,前記iV及びVのと おり,損害論に関する事実調査及び主張立証を尽くす機会が与えら れたというべきである。
以上のような審理経過に加え,被告が楽天に支払った手数料の額 に関する情報は,通常,被告において管理されていてしかるべきも のであって,仮にその情報が被告の元に存在しなかったとしても, そのような事情はさほど期間を要せずとも把握することが可能な性\n質のものであることを考慮すれば,被告は,遅くとも令和2年12 月21日付けの調査嘱託を申し立てた時点において,それと同時に\n本件調査嘱託の申立てをすることが十\分に可能であったというべき\nであるし,そのころ,本件被告準備書面及び本件被告書証を提出す ることも十分に可能\であったというべきである。しかるに,訴状が 送達された日から約1年3か月が経過し,損害論の審理に入ってか らも約半年が経過して,損害論について主張立証を尽くす旨を陳述 した第10回弁論準備手続期日の後,その期限である同年3月1日 の直前になって,本件調査嘱託の申立てがされ,同期限後に作成さ\nれた本件被告準備書面及び本件被告書証が提出されたものであるか ら,これらはいずれも時機に後れた防御方法の提出であり,かつ, このことについて被告に重大な過失があると認めざるを得ない。 そして,本件調査嘱託の申立てを採用すれば,楽天から回答を受\nけるのに相当期間を要した後,その回答を踏まえた主張立証がされ ることとなるから,訴訟の完結を遅延させることとなるのは明らか である。
また,本件被告準備書面を陳述させ,本件被告書証を取り調べる と,これらに対する原告の反論の機会を設ける必要があるほか,損 害論に関する被告の主張の整理に相応の期間を要することとなり, 訴訟の完結を遅延させることとなるのは明らかである。
(d) 以上のとおり,本件調査嘱託の申立て,本件被告準備書面及び本\n件被告書証は,いずれも,被告が重大な過失により時機に後れて提 出した防御の方法に該当し,かつ,訴訟の完結を遅延させることと なるものと認められる。よって,本件調査嘱託の申立て,本件被告\n準備書面及び本件被告書証の提出は,いずれも時機に後れた防御方 法として,却下する(民事訴訟法157条1項)。

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平成31(ワ)2675  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年5月18日  東京地方裁判所

 吹矢に関する特許侵害の損害認定について、101条1項、2項に基づき約3600万円の請求が認められました。

 以上によれば,被告製品は,そのほとんどが吹矢協会と関係がある需要 者により購入されたと認めることが相当である。そして,被告製品は,吹 矢協会の関係者において吹矢協会の公認用具であることを理由として購 入された割合が相当に高いと認められる。原告の製造販売する吹矢用具は 令和2年12月1日以降は吹矢協会の公認用具でなかったから上記の理 由で購入された被告製品の需要の全てが原告の製造販売する吹矢の矢に 向かうとは認められない。他方,原告の製造する吹矢の矢については,吹 矢協会の公認がなくとも購入するとする者もいたことがうかがわれ,被告 製品の需要が全く原告の製造販売する吹矢用具に向かわないとはいえな い。
被告は,原告の吹矢用具が吹矢協会の公認用具でないことを理由として 令和2年12月1日以降の被告の売上げについての推定覆滅を主張する ところ,上記事情に照らせば,同日以降の利益については,65%の割合 で損害額の推定が覆滅すると認めるのが相当である。

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平成30(ワ)3461  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟

 分包紙ロールのロールを販売する行為は間接侵害に該当すると判断されました。実施料率は立証がなく被告が自白した3%が認定されました。

 ア これまで検討したところによれば,原告製の使用済み紙管を保有する者は, 被告製品と合わせることで一体化製品を生産できること,一体化製品は本件特許の 技術的範囲に属すること,被告製品は,一体化製品の生産にのみ用いられる物であ ることが認められるから,業として被告製品を製造,販売することは,特許法10 1条1号の間接侵害に当たるというべきである。 この点について被告らは,原告製品の購入者は,紙管に分包紙を合わせて買い受 けたものであるところ,本件発明の本質は紙管部分にあるから,分包紙を費消した としても原告製品の効用は終了せず,分包紙の交換は,製品としての同一性を保っ たまま,通常の用法における消耗部材を交換することにすぎないから,原告は,原 告製品の購入者に対し,本件特許権に基づく権利行使をすることができない旨を主 張する(消尽の法理)。 これに対し原告は,使用済み紙管については原告が所有権を留保しており,一体 化製品の生産は特許製品の新たな製造に当たるとして,消尽を否定し,間接侵害の 成立を主張する。
イ そこで検討するに,本件発明の実施品である原告製品を原告より取得した利 用者がこれに何らかの加工を加えて利用した場合に,当初製品の同一性の範囲内で の利用にとどまり,改めて本件特許権行使の対象にはならないとすべきか,特許製 品の新たな製造にあたり,本件特許権行使の対象となるとすべきかは,当該特許製 品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか,取引の実情等も総 合考慮して判断すべきものである(最高裁判所平成19年11月8日第一小法廷判 決・民集61巻8号2989頁参照)。 本件発明は,分包紙ロールの発明であって,紙管と,紙管に巻き回される分包紙 から成るものであり,紙管についてはこれに設ける磁石の取付方法に限定があるの に対し,分包紙については,紙管に巻き回す以上の限定がないことは,既に述べた ところから明らかである。
しかしながら,証拠(甲5の1,2,甲23,乙11,12)及び弁論の全趣旨 によれば,分包紙ロールの価格は分包紙の種類によって決められていること,原告 製の使用済み紙管については,相当数が回収されていることが認められるのである から,本件特許の特徴は紙管の構造にあるとしても,原告製品を購入する利用者が\n原告に支払う対価は,基本的に分包紙に対するものであると解されるし,調剤薬局 や医院等で薬剤を分包するために使用されるという性質上,当初の分包紙を費消し た場合に,利用者自らが分包紙を巻き回すなどして使用済み紙管を繰り返し利用す るといったことは通常予定されておらず,被告製品を利用するといった特別な場合\nを除けば,原告より新たな分包紙ロールを購入するというのが,一般的な取引のあ り方であると解される。 また,一体化製品を利用するためには,利用者は,使用済み紙管の外周に輪ゴム を巻いた上で,これを被告製品の芯材内に挿入しなければならないが,これは,使 用済み紙管を一体化製品として使用し得るよう,一部改造することにほかならない。 そうすると,分包紙ロールは,分包紙を費消した時点で,製品としての効用をい ったん喪失すると解するのが相当であり,使用済み紙管を被告製品と合わせ一体化 製品を作出する行為は,当初製品とは同一性を欠く新たな特許製品の製造に当たる というべきであり,消尽の法理を適用すべき場合には当たらない。
ウ なお, 原告は,利用者との合意により,使用済み紙管の所有権は原告に留保 されていると主張するところ,証拠(甲3,17ないし21,23,25)によっ ても,使用済み紙管を原告に返還すべきこととされている取引の実情が認めるにと どまり,利用者との間で所有権留保についての明確な合意が存在するとまでは認め られないが,前記イで検討したところによれば,使用済み紙管の所有権の所在は, 上記結論を左右するものではない。
エ 以上検討したところによれば,使用済み紙管と被告製品を合わせて一体化製 品を作出すれば,新たな特許製品の製造に当たり,一体化製品の生産にのみ用いる 被告製品を業として製造,販売することは,特許法101条1号の間接侵害に当た るというべきである。
・・・・
原告は,前記認定した被告日進の利益率が約27%であることから,被告O HUと被告セイエーの利益率も同程度と推認されること,被告日進の原価率が約7 0%(被告OHUより4203万8700円で仕入れ,5952万4536円で販 売。)であることから,被告OHUの原価率も同程度と推認されること(被告日進 に4203万8700円で売った物は,被告セイエーより2942万7090円で 仕入れた。その27%が被告セイエーの利益。)と主張する。 しかしながら,原告において共同不法行為が成立すると主張する被告らの関係に おいて,被告セイエー,被告OHU,被告日進,顧客と被告製品が流通する過程に おいて,各段階で高い利益を確保することができる場合もあれば,最終の被告日進 から顧客に至る段階で利益を確保しようとする場合もあり得るところ,本件におい て,前者の取引形態であったことを示す証拠,あるいはそれを示唆するような事実 は何ら示されていない。
原告が推認する利益率,原価率をあてはめた場合,被告日進の販売額の約6割の 金額を,グループとしての被告らは利益として確保したことになり,高額に過ぎる と解されると同時に,被告セイエーが負担した製造原価以外には,被告OHUも被 告日進も,控除すべき費用をほとんど負担していないことになる。 以上によれば,被告らの利益率がすべて27%であり,被告OHUの原価率は被 告日進と同様に70%と推認される旨の原告の主張は採用できないというべきであ る。 本件において,被告セイエーが負担した製造原価等の経費,被告OHUの被 告セイエーからの仕入額,被告OHUが負担した経費については,主張,証拠共に 開示されていないが,これは被告らが開示するよう求められつつこれを拒んだので はなく,原告が,訴状(平成30年4月20日付け)の段階では,被告セイエー及 び被告OHUは,いずれも被告日進の売上高の3%の利益を有する旨を主張し,損 害論の審理に入る際の訴えの変更申立書(令和2年1月27日付け)においても,\n被告セイエー及び被告OHUは,いずれも被告日進の売上高の3%相当の利益を有 していると主張したため,被告らにおいてこれを争わず,被告セイエーらの経費等 に関する主張,証拠を提出しないままに終わったという審理の経緯によるものであ る。
原告は,被告らが被告日進の売上及び経費に関する主張,証拠を提出した後の訴 えの変更申立書(2)(同年11月13日付け)に の推認を主張したところ,被告らは,被告セイエー及び被告OHUの利益が被告日 進の売上の3%であることについては,裁判上の自白が成立している旨を主張した ものである。
以上の経緯を前提に検討すると,原告の訴状,訴えの変更申立書の主張は,\n被告日進の売上高が確定する前になしたものであるから,具体的な金額についての ものではなく,裁判上の自白が成立するとはいい難い。 他方,被告らの利益率をいずれも27%,被告セイエーの原価率を70%と推認 することについては,具体的な根拠に乏しく,被告セイエー及び被告OHUが負担 した経費等が開示されておらず,これに基づいて被告らの利益を算定できないこと について,被告らを責めるべき事情は存しない。 以上の審理の経過を踏まえ,原告が訴状の段階から訴訟の最終の段階に至るまで, 被告セイエー及び被告OHUの利益は被告日進の売上の3%とする主張を維持し, 被告らもこれを争わずに来たこと,他に依拠すべき算定方法がないことを考慮し, 弁論の全趣旨により,被告セイエー及び被告OHUが被告製品の製造,販売によっ て得た利益は,被告OHUにつき被告日進の売上の3%である178万5736円, 被告セイエーにつき,同金額から, のとおり,返品等分の製造原価とし て11万3925円を控除した167万1811円と認めるのが相当である。
(3) 推定の覆滅
これまで検討したところによれば,薬剤分包装置を業務上使用するためには薬剤 分包紙が必須であるから,同装置の利用者は,定期的に自己の保有する薬剤分包装 置に適合した分包紙ロールを購入することとなる。そして,被告製品は,使用済み 紙管の外径とほぼ一致する内径を持つ分包紙ロールであり,被告らが一体化製品を 作出して原告装置において使用できることを明示していたこと,市場に存在する原 告製品又は被告製品以外の主な分包紙ロールがこれと異なる寸法の内径を持つもの であることは前記3(1)ウのとおりであるから,需要者は,原告製の分包紙の代替と して被告製品を購入していたものと考えられる。 原告は,本件発明の技術的範囲に属する原告製品の製造,販売を独占できる立場 にあり,被告製品が市場に存在しない場合には,需要者は値段にかかわらず原告製 品を購入したものと考えられるから,被告製品の価格がこれに比べて有利であるこ とは,特許法102条2項に基づく前記(1)の推定を覆滅するものではない。

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平成30(ワ)36690  特許権侵害損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年1月15日  東京地方裁判所

 実施料率0.01%の980万円の不当利得があると認定されました。損害賠償は時効と判断されて、不当利得の返還を求めました。判決に目次があり、目次だけでほぼ3ページあります。

(1) 消滅時効の成否
前記前提事実(2),(6)ないし(8)のとおり,本件特許の登録は平成22年7 月30日にされており,被告各製品の製造,販売は同年12月から平成23 年9月の期間に行われたものであったところ,原告は,平成24年1月9日 頃,被告による被告各製品の製造,販売が別件特許権の侵害に当たる等とし て,特許権侵害の不法行為による損害賠償請求を求める別件訴訟を提起し, 平成25年8月2日に別件判決が言い渡された。 そして,証拠(甲4,5,乙1,5)及び弁論の全趣旨によれば,原告は, 別件訴訟の審理を通じて,遅くとも別件判決の言渡日である平成25年8月 2日までには,被告各製品の具体的な構成について本件の訴状で記載した程\n度には認識していたものと認められる。 したがって,本件の主位的請求に係る不法行為に基づく損害賠償請求権に ついては,原告が遅くとも同日までにその損害及び加害者を知ったものと認 められるから,改正前民法724条前段の3年の時効期間は同日から進行し, 平成28年8月2日の経過をもって,本件訴訟提起前に消滅時効が完成した ものと認められる。
・・・
ウ 実施料率の認定
(ア) 前記イ(ア)ないし(ウ)によれば,1)実際の実施許諾契約における実施料 率,業界における実施料の相場等について,次の点を指摘することがで きる。 本件発明を含め,原告による特許発明の実施許諾の実績はない。また, 業界における実施料の相場等として,本件報告書及び前記「実施料率 〔第5版〕」における平均値等の記載を採用することも相当ではない。こ のような状況に照らせば,本件発明に関し,業界における実施料の相場 等を示すものとしては,被告が締結した被告製品に関する特許の実施許 諾契約の内容を参考とするのが相当である。 そして,被告従業員の前記陳述書においては,被告各製品に関連する 標準必須特許以外のライセンス契約において,パテントファミリー単位 での特許権1件あたりのライセンス料率が●(省略)●%であり,その うち,ランニング方式での契約をとるC社との契約においてはライセン ス料率の平均が約●(省略)●%であったこと,また,被告が,平成2 2年頃,被告各製品の販売に関連し,画像処理・外部出力関連の標準規 格の特許ライセンス料を含む使用許諾料として支払っていた額は1台当 たり合計●(省略)●米ドルであったことが説明されている(別紙5 「被告各製品の販売状況」記載の売上合計を販売台数合計で除して算出 した,被告各製品1台当たりの売上高は約●(省略)●円である。)。 なお,上記陳述書における被告従業員の説明によれば,これらのライ センス契約のうち,C社を含む一部の会社との間の契約においてはクロ スライセンスの条項が設けられていたところ,前記イ(イ)a(a)によれば, クロスライセンスの存在はライセンス料率を引き下げる要因と考えられ るから,上記の被告従業員の説明に係るライセンス料率についても,ク ロスライセンスによる減額がされていた可能性は否定されない。\n(イ) 前記(ア)の点に加え,前記イ(エ)のとおり,2)本件発明が被告各製品に とって代替不可能なものとは認められず,3)本件発明を実施することに よる被告の利益の程度も明らかではないこと,前記イ(ア)のとおり,4)原 告と被告との間に競業関係がなく,原告は,特許発明について自社での 実施はしておらず,他社に実施許諾をして実施料を得ることを営業方針 としているものの,これまで保有する特許発明について,実施許諾契約 の締結に至ったことはないことといった事情を総合考慮すれば,本件発 明について,被告各製品の製造,販売に対して受けるべき実施料率は0. 01%と認めるのが相当である。
エ 被告が返還すべき利得の額
以上によれば,被告が返還すべき利得額は,別紙5「被告各製品の販売 状況」記載の被告各製品の売上高合計980億1770万4000円に実 施料率0.01%を乗じた980万1770円と認められる。

◆判決本文

別件訴訟はこちらです(請求棄却)。

◆平成24年(ワ)237

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令和2(ネ)10035  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年3月8日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審では約3000万円の損害賠償が認定されました。1審被告が控訴しましたが、控訴棄却されました。ハンドル部分の構造に関する特許ですが、102条2項における寄与率減額なしです。

 本件発明の技術的思想(課題解決原理)は,前記2(1)ア(イ)のとおり,二 股の美容器において,ハンドルを,凹部を有するハンドル本体と,その凹部 を覆うハンドルカバーで構成することにより,ハンドルが上下又は左右に分\n割された従来の構成よりも,ハンドルの成形精度や強度を高く維持するとと\nもに,美容器の組み立て作業性が向上するようにしたというものである。そ して,本件発明に係る美容器は,美容器のハンドルを持ち,ローラを肌に押 し当ててこれを使用するから,本件発明の技術的思想(課題解決原理)によ って達成されるハンドルの成形精度や強度の維持は,美容器を使用する需要 者一般が関心を有する美容器の基本構造に関するものであり,二股美容器の\n使用やマッサージの施行に影響する事項であって,美容器全体に貢献してい るものと認められる。本件発明が需要者の商品選択に特段寄与しないとする 根拠はなく,被告各製品の販売に対する本件発明の寄与が限定的であるとす る根拠もない。したがって,本件において,本件発明の寄与率を考慮して推 定を覆滅すべき理由はない。
控訴人は,被告各製品は特許第5840320号の技術的範囲には属しな いが,同特許に係る発明の効果を有しており,そのような効果のあることが 被告各製品購入の主な動機になっていることは,本件における損害額算定に 当たっての推定覆滅事由として考慮されなければならないと主張する(前記 第2の5(4)ア(イ))。しかし,被告各製品が特許第5840320号に係る 発明の効果を有しているかどうかは明らかでなく,また,そのような効果の 存在が被告各製品購入の主な動機になっていることを認めるに足りる証拠は ない。したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。

◆判決本文

1審はこちら。

◆平成29(ワ)32839


当事者が同じ関連侵害訴訟および審決取消訴訟です。

◆平成31(ネ)10001等

◆平成30(行ケ)10049

◆平成30(行ケ)10048

◆平成29(ネ)10086

◆平成28(ワ)4356

◆平成30(行ケ)10013

◆平成29(行ケ)10201

◆平成29(行ケ)10095

◆平成28(ワ)6400

◆平成31(行ケ)10032

当事者が同じ審決取消訴訟はこちらです。

◆令和1(行ケ)10090

◆令和1(行ケ)10066

◆平成31(行ケ)10057

◆平成30(行ケ)10160

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令和2(ネ)1492    意匠権  民事訴訟 令和3年2月18日  大阪高等裁判所

 意匠法39条2項の推定覆滅の割合は9割、実施料率3%とすべきと主張しましたが、控訴審も1審と同様に、覆滅割合を7割実施料率5%と判断しました。

 ア 推定覆滅の割合について
前記引用に係る原判決において説示されているとおり(原判決43頁 14行目から51頁13行目まで)け,本件においては,意匠法39条2 項による損害額の推定は,7割の限度で覆滅されるというべきである。 控訴人は,控訴人の製品が被控訴人の製品より安価であることを理由 に,覆滅の割合を9割とすべきであると主張する。しかし,証拠(乙1 9)によれば,ここで控訴人が比較しているのは,外付け型 HDD につい ての控訴人の製品全体の平均単価と被控訴人の製品全体の平均単価で あって,原告製品の価格と被告製品の価格がどれだけ違うのかは明らか でない。被告製品が一般に原告製品より安価であるといえるとしても, 前記の7割という推定覆滅の程度は,このことをも考慮の対象とした上 でのものである。したがって,控訴人の主張を採用することはできない。
イ 実施料率について
前記引用に係る原判決において説示されているとおり(原判決52頁 5行目から53頁21行目まで),本件においては,意匠法39条3項 を適用して損害額を認定するに当たり(同条2項による損害額の推定が 覆滅される部分について同条3項を適用する場合を含む。),被控訴人 が本件意匠の実施に対し受けるべき料率(実施料率)は,5%を下らな いというべきである。 控訴人は,アンケート調査結果(乙45)を根拠として,本件におけ る実施料率は3%程度とすべきであると主張する。このアンケート調査 結果には,特許権のみの場合のロイヤルティ料率と特許権と意匠権を組 み合わせた場合のロイヤルティ料率が示されており,前者は,平均値が 約3.5%,中央値が約3.3%であり,後者は,平均値が約3.1%,中 央値が約2.9%であるから,確かに控訴人の指摘するとおり,後者の数 字の方が若干低くなっている。しかし,このアンケート調査の回答数は 必ずしも多くなく,特許権と意匠権を組み合わせた場合のロイヤルティ 料率についての回答数は全部で25にすぎないし,意匠権のみの場合の ロイヤルティ料率についての調査結果は存在しない。また,特許権,意 匠権それぞれ単独でロイヤルティ料率を設定する場合と,これを組み合 わせてロイヤルティ料率を設定する場合を比較すると,単純に,単独の 場合の料率を足したものが組み合わせた場合の料率になるとは考え難く, むしろ,組み合わせた場合の料率は,単独の場合の料率を足したものよ り低くなるのが一般的ではないかと考えられる。したがって,このアン ケート調査結果は,本件における実施料率を認定するに当たっては,あ くまでも参考資料の一つにとどまるといわざるを得ない。これに加え, 本件意匠自体の価値,被告製品の需要者がデザイン性を考慮する程度, 原告製品と被告製品とが競合品の関係にあることといった事情を総合的 に考慮すれば,本件における実施料率は5%を下らないというべきであ り,控訴人の主張を採用することはできない。

◆判決本文

1審はこちら。

◆平成30(ワ)6029

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平成29(ワ)10716  特許権侵害差止等請求事件  特許権 令和3年2月18日  大阪地方裁判所

 特許法102条2項による損害認定について、2割の覆滅が認められました。 消費税については、侵害時の税率で計算すると判断されました。

 消費税は,国内において事業者が行った資産の譲渡等に課されるものであるとこ ろ(消費税法4条1項),「例えば,次に掲げる損害賠償金のように,その実質が 資産の譲渡等の対価に該当すると認められるものは資産の譲渡等の対価に該当する ことに留意する。・・・(2) 無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財 産権の権利者が収受する損害賠償金」(消費税法基本通達 5-2-5)とされているこ とに鑑みると,特許権を侵害された者が特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金 を侵害者から受領した場合,その損害賠償金も消費税の課税対象となるものと推察 される。そうすると,特許権者が特許権侵害による損害のてん補を受けるために は,課税されるであろう消費税額相当分についても損害として受領し得る必要があ るというべきであるから,「利益」には消費税額相当分も含まれ得ると解される。 適用されるべき消費税率について,原告は,損害賠償支払時点の税率(10%) によるべきと主張する。
しかし,上記のとおり,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金に対する消費 税が課せられるのは,損害賠償金の実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認めら れることによる。ここで,資産の譲渡等に相当する行為と見られるのは,特許権侵 害行為である。また,消費税基本通達 9-1-21 では,「工業所有権等又はノウハウを 他の者に使用させたことにより支払いを受ける使用料の額を対価とする資産の譲渡 等の時期は,その額が確定した日とする。」とされている。これらのことに鑑みる と,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金は,特許権侵害行為時に直ちに損害 が発生して金額が確定するものであるから,資産の譲渡等の時期は,特許権侵害行 為時であると解される。 そうすると,本件においては,第1期間〜第4期間のいずれにおいても,本件特 許権侵害行為時の消費税率8%が適用されることとなる。
・・・・
本件明細書の記載によれば,本件発明の効果は,前記4(1)のとおりである。要 するに,本件発明の効果は,1)外観上の体裁の良さ及び室内側への風雨の進入防止 並びに2)取付強度の高さ及び風圧に対する耐久性の良さと,3)取付作業時に足場等 が不要となることによる施工コストの低減にあるといえる。もっとも,上記効果の うち1)及び2)は,手摺本体取付け後の効果であるため,取付方法に係る発明である 本件発明によるのでなければ実現し得ない効果とは必ずしもいえない。
イ 本件発明の貢献の程度等について
(ア) 本件発明は,手摺の取付方法に係る発明である。手摺を選択するのは,最終 的にはこれを取り付ける建築物の施主であるものの,手摺の取付方法そのものが施 主の関心を惹くとは考え難い。その意味で,本件発明に係る手摺の取付方法を実施 することは,製品選択の直接の動機となるとはいえない。 しかし,本件発明の効果1)〜3)は,いずれも建築物に取り付けるべき手摺製品の 選択の動機となり得る事情ということはできる。
(イ) もっとも,前記アのとおり,効果1)及び2)は,いずれも手摺本体取付け後の 効果であるため,取付方法に係る発明である本件発明によるのでなければ実現し得 ない効果とは必ずしもいえない。例えば,本件特許出願後に公開されたものである ものの,特開 2009-2283号公報(乙16。平成21年10月8日公開)には,手 摺本体の室外側長手方向略全域に連続して複数のガラス板等のパネルが取り付けら れ,パネル間にはパネル支持枠(アルミニウム系金属で構成されるものであり\n(【0012】),アルミ製目地枠に相当する。)を用い,パネルの上下左右全ての側 部が支持固定される手摺の構成が開示されている。そうすると,効果1)及び2)につ いては,本件発明の実施による貢献の程度の評価に当たっては,必ずしも重視し得 るものではない。
(ウ) 他方,効果3)については,最終的な需要者(ないしこれに対して建築物に取 り付けるべき手摺を提案する手摺取付業者や建築物の開発業者等)にとって,顧客 誘引力を生じ得るものといってよく,本件発明の貢献の程度を評価するに当たって はこれを考慮に入れるべきである。 もっとも,複数階層の建築物の建築現場においては,手摺取付工事のための足場 は不要であっても,別工程のために足場の設置が必要となることは,当然あり得る (乙50〜54参照)。このため,このような場合は,結局は足場等設置に要する コストが発生し,施工コスト低減の効果がないか,あるとしても,設置期間短縮等 による限られた効果しか生じないものと合理的に推察される。 他方,このような事情は主として建築物の新築時や大規模修繕時のものであり, それ以外のメンテナンス時には,足場等を不要とすることによる施工コストの低減 という効果が発揮されることは考えられる。現に,乙42製品のカタログ(乙4 2)には,「パネルは室内側から取り付けられ,メンテナンス性に優れていま す。」と記載されている。また,原告製品のカタログ(甲15)においても,「ガ ラス嵌め込み工事における,外部足場が不要になります。」との記載があり,これ もメンテナンス性における優位性を指摘するものと理解される。ただし,建築物の 新築時及び大規模修繕時に比較すると,それ以外の機会にメンテナンスを実際に要 する例は,規模的にかなり少ないと推察される。 さらに,被告は,そのウェブサイト(甲3の1)において,被告製品の特徴とし て,ガラスの連続した意匠となること,4辺支持とすることでガラス厚を薄く設計 できるとともに,手すりの高耐風圧仕様となること,ガラスの縦枠への掛かり寸法 をガラス厚とし,安心な製品仕様としていることを挙げるものの,足場を組む必要 がないこと(その結果として施工費が安価になること)については触れていない。 加えて,本件発明に係る手摺取付方法によれば,ガラス取付業者においてガラス 板と目地枠を取り付けることができるとしても,それがどの程度施工コストの低減 に貢献する効果を有しているのかは明らかではない。
(エ) 以上によれば,本件発明は,施工コスト低減という効果(3))によりこれを 実施する製品の販売等に貢献するものであって,相応の顧客誘引力を有するといえ るものの,その程度は限られているというべきである。また,効果1)及び2)に関し ては,本件発明は,手摺本体の取付け完了後の外観上の体裁及び取付強度の点で同 程度の他の製品に対する優位をもたらすほどの貢献をするものとはいえない。
ウ 競合品について
(ア) 外観上の体裁の良さ等(1))について 証拠(乙27,29〜31,39,42。各枝番を含む。以下同じ。)によれ ば,乙27製品等は,いずれも,手摺本体の室外側長手方向略全域に連続して複数 のガラス板が取り付けられ,ガラス板間にはアルミ製目地枠を用いているものと認 められる。これにより,これらの製品は,本件発明の効果1)と同様の効果を奏する ものといえる。
(イ) 取付強度の高さ等(2))について 証拠(乙27,29〜31,39,42)によれば,乙27製品等は,いずれ も,ガラス板間の目地材としてアルミ製目地枠(縦枠,竪枠)を用い,ガラス取付 枠とアルミ製目地枠とでガラス板の上下左右を係合保持しているものと認められる (乙31製品については,「2辺支持タイプ」との記載もあるが(甲18),「4 辺支持」との記載のある「ガラスタイプ」もある(乙31)。)。これにより,こ れらの製品は,本件発明の効果2)と同様の効果を奏するものといえる。 これに対し,原告は,乙30製品,乙31製品及び乙42製品につき,アルミ製 目地枠ないし手摺笠木部分の取付方法ゆえに取付強度と耐久性に難点がある旨を指 摘する。しかし,上記取付方法ゆえに生じる取付強度及び耐久性の問題点が具体的 にどの程度のものであるかは明らかでない。そもそも,本件明細書によれば,取付 強度及び耐久性に係る本件発明の効果は,「ガラス板の上下端縁のみが上下枠に係 合保持され,隣合うガラス板間には従来のゴム系の目地材を充填するのに比較し て」(【0013】)の強度に関するものに過ぎない。このほか,原告製品(証拠(甲 14,15)及び弁論の全趣旨より,本件発明に係る取付方法により取り付けられ るものと認められる。)と同様に,これらの製品の施工例として高層マンション等 の複数階層を有する建築物が示されていること(乙30,31,42)に鑑みて も,乙30製品,乙31製品及び乙42製品は,少なくとも,原告製品と競合し得 る程度には本件発明の効果2)と同様の効果を奏するものと見られる。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(ウ) 施工コストの低減(3))について 証拠(乙37〜42)によれば,乙27製品等は,いずれも,ガラス板とアルミ 製目地枠を室内側から取り付けることが可能であり,ガラス板とアルミ製目地枠を\n室外側に取り付ける作業のために足場を組む必要はないものと認められる。これに より,これらの製品は,本件発明の効果3)と同様の効果を奏するものといえる。 これに対し,原告は,乙30製品,乙31製品及び乙42製品につき,アルミ製 目地枠ないし手摺笠木部分が回転式であるがゆえに製造コストに難点がある旨を指 摘する。しかし,上記取付方法ゆえに生じる製造コストの問題点が具体的にどの程 度のものであるかは明らかでない。そもそも,本件発明の効果の1つである施工コ ストの低減は,足場等を設ける必要がないことによって実現されるものであって, アルミ製目地枠の取付方法が回転式であること(乙30製品,乙31製品)や手摺 笠木部分の取付方法が回転式であること(乙42製品)による製造コストとは無関 係である。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(エ) その他 原告は,乙27製品及び乙29製品につき,本件特許権を侵害する製品である可 能性が高い旨を指摘する。しかし,原告も可能\性を指摘するにとどまるし,これら の製品が本件特許権を侵害することを認めるに足りる証拠もないことから,本件に おいては,この点は考慮に含めないこととする。
(オ) 以上より,乙27製品等は,いずれも,本件発明の効果と同様の効果を有す る製品として,原告製品及び被告製品と市場において競合するものと見るのが相当 である。 もっとも,原告は,原告製品を遅くとも平成24年3月までには販売していると 認められる(甲14,15,弁論の全趣旨)。他方,証拠(乙55)及び弁論の全 趣旨によれば,乙27製品等の販売開始時期は,乙31製品が平成24年,乙27 製品が平成26年,乙30製品が平成27年,乙29製品が平成28年3月,乙3 9製品が平成29年10月であることが認められる。 また,原告製品,被告製品及び乙27製品等の各売上額やアルミ製目地枠のフラ ットレール製品市場におけるシェアは,いずれも証拠上明らかでない。
これらの事情を総合的に考慮すると,アルミ製手摺製品の市場において原告製品 及び被告製品に対する複数の競合品が存在することに鑑みれば,特許法102条2 項に基づく損害額の推定覆滅事由としてこれを考慮すべきではあるものの,被告に よる主張立証の程度に鑑みれば,その程度は相当に限られると見るべきである。
エ 推定覆滅の程度
以上の事情を総合的に考慮すれば,被告製品の売上に対する本件発明の貢献の程 度は限られるものの,他方で,競合品の存在による推定覆滅の程度も相当に限定的 であり,他に推定を覆滅すべき具体的な事情も見当たらないことから,本件におい ては,2割の限度で損害額の推定が覆滅されるものとするのが相当である。これに 反する原告及び被告の各主張は,いずれも採用できない。

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令和1(ワ)21183  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和2年12月3日  東京地方裁判所

 仮差押申立事件において仮差し押さえられた部分について,商標権者に過失があるとして、その分の返還を認めました。前件訴訟では、種々の事情を考慮した上で商標法39条において準用する特許法105条の3を適用して,相当な損害額を認定していました。\n

 以上によれば,前件仮差押申立事件において500万円を超えて仮に差し\n押さえられた部分について,被告米国法人には過失が推定される。 これに対し,被告米国法人は,前件仮差押申立事件において,商標法38\n条1項において被告米国法人が販売することができた商品には,規範的に被 告米国法人と同視できる者が販売することができた商品も含むという理解を 前提として被保全債権額の主張をしたところ,事実関係や裁判例等から,そ のような主張をしたことには相当な理由があるから被告米国法人には過失が ない旨主張し,上記の事由から過失の推定が覆滅する旨主張する。 前件仮差押申立事件の申\立書において,被告米国法人は,被告米国法人が 被告商品を直販しているから,日本における推定小売価格の全額が被告米国 法人の利益となる旨主張していた(前記1(3))。
被告商品は,実際には,被告米国法人から,順に,MSオペレーション, MSリージョナルセイルズ,被告日本法人に販売され,日本国内において, 被告日本法人により販売されていたのであるが,前件仮差押申立事件の申\立 書において,被告米国法人は,前記のとおりの主張をしており,被告商品を 日本において販売しているのが被告日本法人であることや,被告日本法人が 被告米国法人と同視することができることなどの主張はしていなかった。そ して,取引の流れについて上記の主張をしていないだけでなく,被告米国法 人の販売後日本における販売までの間に独立の法人格を有する複数の法人が 介在している以上,前件仮差押申立事件の申\立人である被告米国法人の利益 はMSオペレーションに販売することによる利益であるのが原則であるのに, 特段の説明も一切なく,「直販」していることを挙げて日本における推定小 売価格の全額が被告米国法人の利益であるとの主張をしていた。この主張は, 被告米国法人が自ら日本国内で販売していることを前提として主張していた と解するほかはない。
これらからすると,前件仮差押申立事件の仮差押申\立書における被告米国 法人の主張は,実際の取引の流れを踏まえつつ,商標法38条1項において 被告米国法人が販売することができた商品には,規範的に被告米国法人と同 視できる者が販売することができた商品も含むという理解を前提にしてされ たものとは認められない(なお,仮に,実際の取引の流れを踏まえて,上記 のような理解から仮差押申立書を記載したとすると,被告日本法人と被告米\n国法人の関係や被告日本法人が被告米国法人と同視できるなどの主張を明示 的にせずに仮差押申立書において上記のように主張することが適切であるか\nは疑問の余地があるほか,特に,被告米国法人の利益について,特段の説明 もなく,直販を理由として日本国内の推定小売価格の全額が被告米国法人の 利益となるとの主張をすることは不適切といえる。債務者の審尋等を経ない 仮差押えの申立てにおける主張については,特にこのことがいえる。)。\n被告米国法人は,本件において,過失の推定を覆す事情として上記理解を していたことを前提とする主張をするのであるが,その主張は前提を欠くと いえる。被告らの主張中には,前件訴訟等における被告米国法人の原告に対する損 害賠償額が前記の額となったことに関係して,原告が前件訴訟等において侵 害行為の詳細を明らかにしなかったことを指摘する部分がある。
しかし,上記が本件における過失の推定を覆す事情になるかは措くとして も,原告が販売した原告商品に対応する被告商品の種類等が明らかにならな かったことによって前件訴訟等における損害賠償額が本来の損害賠償額より も少額となったことを認めるに足りる証拠はない。前件訴訟等の裁判所は, 上記詳細が明らかにならなかったことから証拠がないことを理由に損害が認 められないとしたりはせず,同状況も含み得る種々の事情を考慮した上で商 標法39条において準用する特許法105条の3を適用して,相当な損害額 を認定したものである。なお,被告米国法人は,前件仮差押申立事件の申\立 書において,商標法38条2項に基づき損害が算定され,直販を理由として 日本の推定小売価格の全額が被告米国法人の利益であるとの主張をしていた が,被告米国法人から独立した法人格を有する複数の企業を介して日本国内 において被告商品が販売される以上,仮に介在する企業が完全子会社であっ たとしても,被告米国法人の利益は,被告米国法人がMSオペレーションに 販売したことによって得られた利益であり,その額は,通常は,日本におけ る推定小売価格の全額とはならないといえる。また,被告米国法人は,前件 仮差押申立事件の申\立書において,上記のとおり,日本の推定小売価格の全 額が被告米国法人の利益であるとの主張をしていたが,その後の前件訴訟等 においては,利益率は42%であると主張し,前件訴訟等の裁判所は,原告 主張の利益率を逸失利益の算定の根拠とすることは相当でないとしてその利 益率を採用しなかった。
以上によれば,前件仮差押申立事件において500万円を超えて仮に差し\n押さえられた部分について,被告米国法人に過失が推定され,被告米国法人 は,その推定が覆ると主張するが,本件において,被告米国法人が過失の推 定が覆るとしている事由はその前提を欠くといえる 。

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令和2(ネ)10025 特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和2年11月18日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 原審は、約1800万円の損害賠償を認めましたが、知財高裁(2部)は原告の請求額を100%認めました。損害認定額は約1億3700万円で、請求額は1億3200万円でした。

 4 損害発生の有無及びその額(争点8)について(当審における当事者の補充主張に対する判断を含む。)
(1)特許法102条3項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」について
特許法102条3項は,特許権侵害の際に特許権者が請求し得る最低限度の損害額を法定した規定であり,同項による損害は,原則として,侵害品の売上高を基準とし,そこに,実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。そして,同項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」については,技術的範囲への属否や当該特許が無効にされるべきものか否かが明らかではない段階で,被許諾者が最低保証額を支払い,当該特許が無効にされた場合であっても支払済みの実施料の返還を求めることができないなどさまざまな契約上の制約を受けるのが通常である状況の下で事前に実施料率が決定される特許発明の実施許諾契約の場合と異なり,技術的範囲に属し当該特許が無効にされるべきものとはいえないとして特許権侵害に当たるとされた場合には,侵害者が上記のような契約上の制約を負わないことや,平成10年法律第51号による同項の改正の経緯に照らし,同項に基づく損害の算定に当たっては,必ずしも当該特許権についての実施許諾契約における実施料率に基づかなければならない必然性はない。特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき,実施に対し受けるべき料率は,通常の実施料率に比べて自ずと高額になるであろうことを考慮すべきであり,1)当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ,2)当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能性,3)当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様,4)特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して,合理的な実施料率を定めるべきである。
(2) 実施料率の算定に当たり考慮すべき事情括弧内に掲記する証拠及び弁論の全趣旨によると,次の各事実が認められる。ア実施料率に関する数値等(ア)社団法人発明協会発行の「実施料率〔第5版〕」(平成15年9月30日発行。甲79)には,「電子・通信用部品」分野の実施料率について,次の旨の記載がある。aイニシャル・ペイメント条件がない場合の実施料率の平均値は,昭和63年度〜平成3年度は4.9%,平成4年度〜10年度は3.3%である。平均値が下降した結果,全技術分野中実施料が最も低い技術分野の一つとなった。
bこの技術分野は,契約件数が全技術分野の中でも多い方であるが,他の契約件数上位の技術分野と比較して,実施料率が低く抑えられている。その理由としては,1)この技術分野では,高額のライセンス収入を得ることとともに,技術を普及させ,対象技術の標準化を目指すことが重要視されるケースが他の技術分野と比較して多いことや,2)半導体産業は設備投資が大きく,ライセンシーの危険負担が大きいことが考えられる。c平成4年度〜10年度の実施料率8%以上の契約(イニシャル・ペイメント条件の有無を問わない。)合計21件を技術内容的に細分すると,電子管が1件,半導体が18件,その他の電子・通信用部品が2件であり,半導体が大半を占めている。
(イ)平成22年8月31日に発行された「ロイヤルティ料率データハンドブック〜特許権・商標権・プログラム著作権・技術ノウハウ〜」によると,本件発明1〜3に関連する「電気」の分野の実施料率について,平均値は2.9%,最大値は9.5%,最小値は0.5%であった(乙89)。
(ウ)一審原告が訴訟等で相手方と和解をする際には,相手方において侵害品から一審原告の製造するLEDへの置換えが可能な場合には,当該LEDを相手方が購入することを条件として,侵害品の売上高に5%前後の実施料率を乗じた損害賠償額で和解をすることがあるが,そのような置換えが難しい場合には,製品の製造販売の中止を条件に,侵害品の売上高に上記より高い実施料率を乗じた損害賠償額で和解をすることがある(甲84の1)。一審原告は,平成28年5月,本件特許1を含む二つの特許を侵害するLED電球の販売に係る事案に関し,相手方と,総売上高に10%の実施料率を乗じた額に8%の消費税相当額を加算した金額で裁判上の和解を成立させた(甲84の1・3)。\n
(エ)一審原告の競合メーカーであるフィリップス社は,平成28年6月21日,LED照明及びLEDレトロフィット電球のライセンスプログラムを公表したが,そこでは,LED照明の総収入に基づく実施料率は,単色照明(白色又は有色の固定色)については3%であることが示されている(乙102)。\n
イ本件発明1〜3の価値・重要性等に関する事情
(ア)一審原告による青色LEDの開発後,赤,緑,青の三種類のLEDを用いるのではなく,青色LEDと蛍光体を用いて一審原告が白色LEDの開発を実現したことは,非常に重要な産業上の意味を持つもので,その後のLED市場の急速な拡大に大きく寄与し(甲24,26),一審原告による白色LEDの開発については,文部科学省発行の「令和元年版科学技術白書」(甲86)においても取り上げられている。
(イ)白色LEDを構成するために青色LEDチップと組み合わせる蛍光体の材料としては,YAG系のほか,TAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット)系,サイアロン系,BOS(バリウム・オルソ\シリケート)系などがある(乙105)。この点,ドイツのOSRAM Opto社は,平成15年〜平成16年頃に,複数の会社に対し,TAG蛍光体による白色LEDのライセンスを供与しており(乙108),平成20年には,アメリカのVishayIntertechnology社は,カメラのフラッシュ・ライト,自動車のブレーキ・ランプや方向指示器やインスツルメント・パネルのバックライトや非常灯などに向けたものとして,TAG蛍光体を用いた白色LEDを発売した(乙109の1・2)。平成18年には,TAG系蛍光体材料などを用いた白色LEDが続々登場しているとの報道があり(乙106),平成24年には,YAG,TAG及びシリケートが,世界三大の蛍光体であると評価されていた(乙107)。
(ウ)平成27年に発表された「LED製品開発の現状と最新動向」と題する論文(豊田合成技報57号。乙91)には,次の旨の記載がある。\n
a青色LEDを光源とし蛍光体を励起させる方式の白色LEDの開発により,小型・省電力の白色光源が実用化され,更なる用途拡大が進んだ。代表例としては,液晶ディスプレイが挙げられる。白色LEDの高効率化により,急速にバックライト用光源の置き換えが進んだ。LED化によるメリットは,主に,発光効率が高いことと,薄型化ができることである。LEDは光源自体のエネルギー効率が高いことに加え,配光指向性によりバックライトへの入射効率が高くなるため,機器としての省エネが図りやすいことも大きなメリットとなっている。LEDが当たり前になった現在においても,パネル画質向上(高精細化・広色域化)に伴うパネル透過率低下(画面が暗くなること)を補うため,LEDへの効率向上への期待・ニーズは依然として高い。\n
b最近,従来の青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせから,光の三原色である青色LEDと緑色蛍光体・赤色蛍光体の組み合わせによる色品質の向上が図られている。従来の青色LEDに黄色蛍光体を加えた疑似白色光は,液晶に用いられる場合,色の純度が低く,液晶パネル上の色域が狭いのが一般的である。色域を拡げるためには,液晶パネルのカラーフィルタの濃度を上げる方法があるが,光の損失が大きくなるため望ましくない。そこで,色域を向上させるため,青色LEDに緑色蛍光体と赤色蛍光体を組み合わせた,新規白色光が開発されている。
ウ一審被告製品の売上げ及び本件LEDの位置付け等
(ア)一審被告製品の売上げ(乙87)
a一審被告製品1一審被告製品1の販売期間は平成26年1月から平成28年3月までであり,総販売台数は43万3971台で,1台当たりの平均販売価格は3万3902円,総売上高は147億1230万5518円であった。売上高の内訳は,平成26年1月から平成27年9月までが147億0404万7272円,同年10月が293万6815円,同年11月から平成28年3月までが532万1431円であった。
b一審被告製品2一審被告製品2の販売期間は平成27年5月から平成28年12月までであり,総販売台数は29万6608台,1台当たりの平均販売価格は3万4461円,総売上高は102億2138万1519円であった。売上高の内訳は,平成27年5月から平成27年9月までが24億1436万1080円,同年10月が9億3268万0350円,同年11月から平成28年11月までが68億4922万2715円,同年12月が2511万7374円であった。
(イ)一審被告製品における本件LEDの位置付け等
a一審被告製品は,いずれもデジタルハイビジョン液晶テレビであり,一審被告製品1及び2のバックライトには,いずれも1台につき24個のイ号LED又はロ号LEDが搭載されていた。液晶テレビの方式は,バックライトの種類によって,直下型とエッジ型とに区分されるところ,一審被告製品は,直下型である(甲85)。
bテレビに用いられるLEDについては,テレビ一台に複数のLEDが用いられることから安価であることが望ましい一方で,テレビ内部に設けられたLEDを交換することはできないから,耐久性が極めて重要な特性として求められる。
c東芝のテレビ事業部の担当者は,平成21年4月に,液晶テレビのバックライトは白色LEDがトレンドになると主張し,RGB三色のLED光源よりも白色LEDの方がより高画質を実現できるという認識を明らかにしていた(甲32)。そして,一審被告は,一審被告製品を含む液晶テレビのシリーズ商品を販売するに当たり,映像美を一つのセールスポイントとしており,また,一審被告製品は,「おまかせオートピクチャー」という,周囲の明るさに適した画質に自動で調整するとの機能を有していたところ,それは,リニアに発光するというLEDの特性を利用したものであった(甲77,78,92)。一審被告製品1を購入したユーザーのレビューには,画質の良さやコストパフォーマンスの良さを指摘するものがある(甲93)。\n
d一審被告製品は,平成27年7月から11月までの売れ筋ランキングの上位(第3位)を占めていた(甲94)。
e直下型バックライトが採用される液晶テレビ用の一般的なサイズのLEDにおいては,本件発明2及び3に関連した技術を用いたLEDが多用されている(甲87〜89)。
f一審被告製品はOEM製品であり,一審被告は,本件LEDの単価も知らず,本件LEDがどこのメーカーの製品であるのかも知らなかった。
エLEDに関する市場等
(ア)テレビのバックライト用の白色LEDの世界的な平均価格は,平成26年は0.1ドル,平成27年は0.08ドル,平成28年は0.068ドルであった(乙85の1〜3,乙104)。なお,年間平均為替レート(TTS)は,平成26年は106.85円/1ドル,平成27年は122.05円/1ドル,平成28年は109.84円/1ドルであった(乙90)。(イ)株式会社富士キメラ総研発行の「2017LED関連市場総調査」(平成29年1月25日発行。甲84の2)には,次の旨の記載がある。
aテレビ用バックライトユニットについてテレビ用バックライトユニットでは,直下型の白色LEDパッケージが採用されている。テレビ向けのLEDは,高出力かつ広色域,長寿命が要求されるケースが多く,他のバックライトユニット向けLEDと比較してハイエンドな商品となる。平成28年第4四半期時点において,32型テレビ用の直下型バックライトユニットの主要な価格帯は,1台当たり1400円〜1700円である。ただし,光学シート構成やLEDパッケージの仕様,搭載個数によって大きく価格が変動する。また,テレビメーカー各社が独自設計を行うハイエンドテレビ用バックライトユニットは,より高価格になる。\nなお,光学シートの機能複合による搭載枚数削減,LEDパッケージの性能\向上による搭載数量削減により,今後も低価格化が続く見通しである。b白色LEDパッケージについて白色LEDパッケージとは,疑似白色に発光するLEDパッケージである。主に可視光(GaN系)LEDチップに蛍光体を使用することで,疑似的に白色光を実現している。白色LEDパッケージについて,日本では発光効率を高める開発が続けられている。一方で,演色性(色再現性)も必要であるが,演色性と発光効率はトレードオフの関係にある。なお,中国では,コストの圧縮を目的として,LEDパッケージメーカーによるリードフレームを始めとする各種部材の内製化が進んでいる。世界的にみると,白色LEDパッケージ市場は,数量ベースで引き続き好調な伸びとなっている。ただし,従来大きなウェイトを占めてきたバックライト向けは,出荷数量が大きく減少している。セット機器の減少に加え,中小型バックライト向けでは搭載工数の減少やOLEDへの移行,テレビ用バックライト向けではパッケージ当たりの光束量の増加に伴う搭載個数の減少が主な市場縮小の要因となっている。白色LEDパッケージについて平成28年第4四半期時点で,バックライト向けの直下型の白色LEDパッケージの価格は,1個当たり,18円〜24円である。
c白色LEDパッケージに採用される蛍光体について高発光効率・低価格が要求される製品には,黄色の蛍光体が単体で採用されるケースが多い。演色性や広い色域が要求される場合には,黄色と赤色や,赤色と緑色の組み合わせが採用されている。LED用蛍光体については,中国において,地域別生産数量に占めるウェイトが高まっている。平成27年の出荷数量実績では,黄色の蛍光体について,YAG蛍光体が83.5%を占めており,シリケート系が10.2%,その他が6.3%を占めている。この点,シリケート系は,近年減少傾向にある。YAGなどに比べ高温高湿条件下での信頼性に劣るためである。平成29年に一審原告のYAG主要保有特許が失効するのを受けて,特に電球など色温度3000K程度の照明向けLEDパッケージでは,効率の良さを背景にYAGへの移行が進む可能性がある。\n
(ウ)総合技研株式会社発行の「2017年度白色LED・応用市場の現状と将来性」(乙86)には,次の旨の記載がある。a白色LEDメーカーシェア動向について,メーカーは一審原告のほかに合計10社以上あるところ,平成24年〜平成28年において,一審原告は継続してシェア第1位を占めている。この点,シェアは,平成24年は23.7%,平成25年は24.2%,平成26年度は25.4%,平成27年度は19.6%,平成28年度は19.1%である。b分野別・用途別白色LED応用市場分析に関し,分野別市場規模について,平成24年〜平成29年で,液晶バックライトを用途とするものは,61.2%から44.4%に減少し,一般照明を用途とするものが34.5%から50.8%に増加してきた。他方,液晶バックライトの数量ベースでみると,平成24〜平成28年で,液晶テレビを用途とするものは,40%前後で推移しており,他の用途(ノートパソコン,液晶モニター,タブレット端末,スマートフォン等)を大きく引き離している。\n
(エ)直下型バックライトについては,商流として,LEDメーカーとは別に直下型バックライトを製造するバックライトメーカーが存在し,テレビの製造メーカーに対しては,当該バックライトメーカーが直下型バックライトを部材として供給している。オ一審原告のライセンス方針等(ア)一審原告は,平成28年においても,バックライト用LED(テレビ,モニター,ノートパソコン及びタブレットを含む。)収入で,世界第2位,14.1%のシュアを占めている(乙84)。(イ)一審原告は,後発メーカーとの間で,平成8年頃から,各国で特許訴訟の提起や交渉を繰り返してきたところ,平成14年には,後発メーカーのLEDの技術水準も向上したため,互いに補完し合える技術を保有しているメーカーとはクロスライセンス契約を結んで和解をするようになったが,その際,クロスライセンス以外の形態でLEDメーカーにライセンスを供与することは,一部の例外を除いてなかった。それは,ライセンス収入には頼らず,特許はあくまでも自社の技術を保護する手段と考え,自社製品の販売によって利益を得るという経営方針によるものである(甲84の1)。
(3) 実施料率の算定
訂正して引用した原判決第3で判示した本件発明1〜3の意義等に加え,上記(2)で認定した諸事情を踏まえ,以下,実施料相当額について検討する。
ア実施料率を乗じる基礎(ロイヤルティベース)について
(ア)前記(1)で特許法102条3項について指摘した点に加え,1)本件LEDは直下型バックライトに搭載されて一審被告製品に使用されていたところ,直下型バックライトは,液晶テレビである一審被告製品の内部に搭載された基幹的な部品の一つというべきであり,一審被告製品から容易に分離することが可能なものとはいえないこと,2)LEDの性能は,液晶テレビの画質に大きく影響するとともに,どのようなLEDを用い,どのようにして製造するかは製造コストにも影響するものであること,3)一審被告は,後記イのとおり,本件LEDの特性を活かした完成品として一審被告製品を販売していたもので,一審被告製品の販売によって収益を得ていたこと等に照らすと,一審被告製品の売上げを基礎として,特許法102条3項の実施料相当額を算定するのが相当である。
(イ)これに対し,一審被告は,本件特許1〜3の貢献が,LEDチップに限定される旨を主張するが,採用することができない。また,一審被告は,LEDチップが独立して客観的な市場価値を有して流通していると主張するが,そうであるとしても,上記(ア)1)〜3)の事情からすると,本件においてLEDの価格をロイヤリティのベースとすることは相当ではない。なお,直下型バックライトについても,独立の市場価値を有するものと認められるが,上記(ア)1)〜3)の事情からすると,直下型バックライトの価格をロイヤリティのベースとすることも相当ではない。
さらに,一審被告は,最終製品を実施料算定の基礎とすると,本件LEDがより高価な最終製品に搭載されるほど実施料が高額になると主張するが,本件LEDがより高額な製品に搭載されてより高額な収入をもたらしたのであれば,その製品の売上げに対する本件LEDの貢献度に応じて実施料を請求することができるとしても不合理ではない。
イ実施料率について
(ア)a一審原告は,クロスライセンス以外の形態でLEDメーカーにライセンスを供与することは,一部の例外を除いてはなく(前記(2)オ(イ)),特許権が侵害された場合,一審原告の製造するLEDへの置換えが可能な場合にはそれを前提に5%前後の実施料率を用いて,置換えが難しい場合にはより高い実施料率を用いて和解をしており,平成28年に,本件特許1を含む二つの特許権を侵害するLED電球の販売に係る事案において,10%の実施料率を想定し,それに8%の消費税相当額を付加して,裁判上の和解をした(前記(2)ア(ウ))。 b平成10年度までにおいて,電子・通信用部品分野のうち,半導体については,実施料率8%以上の契約が少なからず存する(前記2ア(ア)c)。
c本件特許1は,長時間の使用に対する特性劣化が少なく,色ずれや輝度低下の極めて少ない発光装置に係る特許であり,本件特許2及び3は,ダイシングの際の剥離の防止や廃棄される樹脂の低減を図るとともに,生産効率を大幅に向上させ,安価な発光装置を提供する方法及び当該装置に係る特許である。これらの特性は,液晶テレビのバックモニタ用の白色LEDとして,大きく活かされるものであったといえ,殊に,本件特許1は,非常に重要な産業上の意味を持つものとして,その後のLED市場の急速な拡大に大きく寄与した(前記(2)イ(ア),(ウ)a,同ウ(イ)b,c,e,同エ(イ)a)。この点,YAG系の蛍光体以外の蛍光体を用いた白色LEDも存在していたことが認められる(同イ(イ),(ウ))が,一審原告は,白色LEDメーカーとして,平成24年〜平成28年において継続してシェア第1位を占めており,平成28年にバックライト用LED収入でも世界第2位のシェアを占めていること(同エ(ウ)a,同オ(ア))や,平成27年の出荷数量実績において黄色の蛍光体につきYAG系の蛍光体が大部分を占めていること(同エ(イ)c)に照らすと,一審被告製品の販売期間である平成26年1月から平成28年12月までの期間において,液晶テレビのバックライト用の白色LEDについて,一審原告の製品は他の製品に比べてかなり優位な地位にあったものと認められる。
d以上のa〜cで述べたところに,前記(1)で特許法102条3項の実施料率について述べたところや,前記(2)で認定した関連技術分野における実施料率の特徴や幅,YAG系蛍光体を用いた白色LEDの価値等に係る他の事情を総合すると,平成26年1月から平成28年12月までの期間(ただし,本件特許3については平成27年10月23日以後,本件特許2については平成28年12月16日以後)における本件発明1〜3の実施料率は,10%を下回ることのない相当に高い数値となるものと認められる。なお,1)フィリップス社は平成28年に単色のLED照明の実施料率について3%と公表しており(前記(2)ア(エ)),2)LEDの属する技術分野における実施料率の平均値は,3.3%,2.9%といった数値である(同ア(ア)a,(イ))。しかし,上記1)の数値は,フィリップス社の特許についてこれからライセンスする場合の数値であり,また,上記2)は,広汎な分野における実施料率の平均値であり,いずれも上記認定を左右するものではない。
(イ)液晶テレビである一審被告製品は,本件LED以外の多数の部品から成り立っており,上記(ア)の実施料率をそのまま適用することは相当ではないが,前記(ア)cのとおり,本件発明1〜3の技術は,液晶テレビのバックモニタ用の白色LEDとして,大きく活かされるものであったということができる上,一審被告製品は,映像美を一つのセールスポイントとするなどして,売れ行きは好調であった(前記(2)ウ(イ)c,d)のであるから,一審被告製品の売上げに対する本件発明1〜3の技術の貢献は相当に大きいものであり,前記(2)で認定した白色LEDの価格等に係る事情を考慮しても,平成26年1月から平成28年1月までの間(ただし,本件特許3については平成27年10月23日以後,本件特許2については平成28年12月16日以後)において,一審被告製品の売上げを基礎とした場合の実施料率は,0.5%を下回るものではないと認めるのが相当である。
ウ一審被告の主張について一審被告は,一審被告製品2には一審原告が主張立証するLEDチップとは異なるチップが使用されているため,一審原告が主張立証するロ号LEDが使用されている一審被告製品2の販売数量は不明であるから一審被告製品2に係る損害賠償請求は認められないと主張するが,訂正して引用した原判決第3の1(5)(原判決93頁)で判示したことからすると,一審被告製品2には,その販売期間を通じて,本件特許1〜3を侵害するロ号LEDが使用されていたと推認されるというべきであり,一審被告の上記主張やその裏付けとしての証拠(乙66,70)は,この推認を覆すに足りるものではない。その他,一審被告の主張は,前記イの認定を左右するに足りるものではない。
(4) 一審原告が一審被告に請求し得る額の算定以上を踏まえると,一審原告が一審被告に請求し得る額は,次のとおりとなる。ア実施料相当額について,一審被告製品の総売上高は,一審被告製品1が147億1230万5518円,一審被告製品2が102億2138万1519円で,合計249億3368万7037円であり,同額に,上記(3)の実施料率0.5%を乗じると,1億2466万8435円(1円未満四捨五入)となる。
イ弁護士費用相当額については,原告の主張額である1200万円を認めるのが相当である。
ウしたがって,一審原告は,一審被告に対し,少なくとも損害賠償として,合計1億3666万8435円を請求することができるところ,この金額は,一審原告の請求額を超えているので,消費税相当額の加算について判断するまでもなく,一審原告の損害賠償請求は,全部について理由がある。

◆判決本文

1審はこちら。

◆平成29(ワ)27238

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令和2(ネ)10004  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和2年9月30日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 原審の特102条2項による推定について「売上げに対する本件再訂正発明の寄与ないし貢献の程度が相当低い」として覆滅が認められました。

 ウ 推定覆滅事由について
一審被告は,1)本件期間1ないし4に係る販売分につき,一審被告が販 売した被告各製品中,順方向電圧の異なるLEDを搭載した製品の販売実 績が乏しいこと等,被告各製品の競合品の存在,2)本件期間1及び2に係 る販売分につき,本件特許権が一審原告と三菱化学との共有であったこと は,いずれも本件推定を覆す事情に該当し,かかる事情を考慮すると,本 件推定は覆滅される旨主張するので,以下において判断する。 (ア) 本件期間1ないし4に係る販売分につき,一審被告が販売した被告 各製品中,順方向電圧の異なるLEDを搭載した製品の販売実績が乏し いこと等,被告各製品の競合品の存在 a 一審被告は,1)LED基板のサイズを同一にして,部品点数及び製 造コストを削減できるとともに,LED基板の大きさを可及的に小さ くして,汎用性を向上させることができるという本件再訂正発明の作 用効果は,順方向電圧の異なるLED搭載製品を作製することを前提 とするものであり,被告各製品において,白色LEDと青色LEDと は,いずれも順方向電圧は同じであり,順方向電圧が異なるのは赤色 LEDであるから,本件再訂正発明の作用効果を奏するのは赤色LE Dを搭載する製品であるところ,本件期間1ないし4の期間中に一審 被告が販売した被告各製品中,赤色LED搭載製品(被告製品2及び 5)の販売実績が乏しいこと,2)需要者の立場からは,LED基板の 設計において,本件再訂正発明の実施品であるLED単位数の「最小 公倍数」の単位基板が長さ方向に連設されている製品と最小公倍数で はない「公倍数」の単位基板が連設されている製品とでは,購入意欲 に有意な差異を生じるものではなく,また,本件再訂正発明において 複数のLED基板が直列させてある点は,基板の接続箇所で不具合が 起こる可能性が高いとして,製品としての評価を低下させ得る事情で\nあることは,被告各製品に実施された本件再訂正発明に顧客吸引力が ないことなどを示すものといえるから,本件推定を覆す事情に該当す る旨主張する。
(a) 1)について
本件再訂正により,本件再訂正前の第1次訂正発明(請求項1) の「LED基板」の枚数及び配置が「複数の前記LED基板を前記 ライン方向に沿って直列させてある」構成に特定されたこと,第1\n次訂正発明の技術的意義は,前記2(1)ア,イ(イ)及びウで説示した とおりである。また,本件明細書の【0009】及び【0041】 の記載から,順方向電圧の異なるLED毎に定まるLEDの個数を LED単位数の「最小公倍数」にすることにより可及的に小さくし たLED基板の直列させる数を変えることで,このLED基板を 様々な長さの光照射装置に用いることができるようになることを理 解できる。
これらを総合考慮すると,本件再訂正発明の技術的意義は,順方 向電圧の異なる種類のLEDを用いたライン状の光を照射する光照 射装置において,LED基板の大きさを同一にして,部品の共通化 により部品点数の削減,製造コストの削減を実現することを主たる 課題とし,電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の 合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数と し,LED基板に搭載するLEDの個数を順方向電圧の異なるLE D毎に定まるLED単位数の「最小公倍数」とする構成を採用した\nことにより,順方向電圧の異なるLED同士でLED基板に搭載さ れるLEDの個数を同一にし,順方向電圧の異なるLEDが搭載さ れるLED基板同士の大きさを同じにすることができ,また,LE D基板を収容する筐体として同一のものを用いることができること から,LED基板及び筐体などの部品を共通化し,部品点数を削減 することができるとともに,製造コストを削減するという効果を奏 し,さらに,LED基板の大きさを可及的に小さくして,汎用性を 向上させるという効果を奏し,加えて,「複数の前記LED基板を 前記ライン方向に沿って直列させてある」構成を採用したことによ\nり,可及的に小さくしたLED基板の直列させる数を変えることで, このLED基板を様々な長さの光照射装置に用いることができると いう効果を奏することにあるものと認められる。
そして,被告各製品のうち,白色LED搭載製品と青色LED搭 載製品は,順方向電圧が同じであり(白色LED搭載製品である被 告製品1と青色LED搭載製品である被告製品3,白色LED搭載 製品である被告製品4と青色LED搭載製品である被告製品6は, 順方向電圧が同じであることは,争いがない。),LED基板は共 通のサイズのものを利用することができるので,被告各製品におい ては,本件再訂正発明は,白色LED搭載製品及び青色LED搭載 製品と順方向電圧が異なる赤色LED搭載製品(被告製品2及び5) 及び赤外LED搭載製品(被告製品7)について,専用のLED基 板及びこれを収容する筐体を用意する必要はなく,白色LED搭載 製品及び青色LED搭載製品と共通のサイズのLED基板及び同一 の筐体を用いることができる点において主たる効果を発揮するもの と認められる。
しかるところ,本件期間1ないし4における被告各製品の販売個 数は,合計●●●個であり,このうち,被告製品2及び5は●個, 被告製品7は●個であるから(前記イ(ア)),被告製品2,5及び 9の販売個数(合計●●個)が占める割合は,全体の約●●●●で ある。
一方で,被告各製品のうち,白色LED搭載製品又は青色LED 搭載製品を購入した者においても,その購入時に赤色LED搭載製 品一緒に購入している場合や,既に赤色LED搭載製品を有し,又 は将来赤色LED搭載製品を購入する予定である場合もあり得るか\nら,白色LED搭載製品及び青色LED搭載製品においては本件再 訂正発明の主たる効果が発揮されていないとまではいえないが,こ のような点を考慮してもなお,被告製品2,5及び7の販売個数(合 計●●個)が全体の約●●●●であることは,本件期間1ないし4 における被告各製品の売上げに対する本件再訂正発明の寄与ないし 貢献の程度が相当低いことを示すものといえる。
したがって,被告製品2,5及び7の販売個数(合計●●個)が 全体の約●●●●であることは,本件推定を覆す事情に該当するも のと認められる。これに反する一審原告の主張は採用することができない。
(b) 2)について
一審被告は,需要者の立場からは,LED基板の設計において, 本件再訂正発明の実施品であるLED単位数の「最小公倍数」の単 位基板が長さ方向に連設されている製品と最小公倍数ではない「公 倍数」の単位基板が連設されている製品とでは,購入意欲に有意な 差異を生じるものではなく,また,本件再訂正発明において複数の LED基板が直列させてある点は,基板の接続箇所で不具合が起こ る可能性が高いとして,製品としての評価を低下させ得る事情であ\nることは,被告各製品に実施された本件再訂正発明に顧客吸引力が ないことを示すものといえるから,これらの事情は,本件推定を覆 す事情に該当する旨主張する。 しかしながら,一審被告の上記主張の根拠とする事情を裏付ける に足りる証拠はないから,一審被告の上記主張は採用することがで きない。
b 次に,一審被告は,本件再訂正発明の実施品であるライン光照射装 置と実施品ではないライン光照射装置とは,照明器具としての性能に\n変わりがなく,ライン光照射装置であれば全て被告各製品及び原告が 販売する原告各製品の競合品となることに鑑みると,仮に被告各製品 が販売されなかったとしても,被告各製品の販売数量に対応する需要 が,原判決別紙競合品(被告主張)一覧表記載の他社のライン光照射\n装置にも向かったであろうといえるから,このような被告各製品の競 合品の存在は,本件推定を覆す事情に該当する旨主張する。 そこで検討するに,原判決別紙競合品(被告主張)一覧表記載の原\n判決別紙競合品(被告主張)一覧表記載の他社のライン光照射装置は,\n被告各製品の競合品に該当し,このような被告各製品の競合品の存在 は,本件推定を覆す事情に該当するものと認められる。その理由は, 次のとおり訂正するほか,原判決60頁2行目から61頁8行目まで に記載のとおりであるから,これを引用する。
・・・・
(c) 原判決61頁8行目末尾に次のとおり加える。
「また,被告各製品のカタログ(甲3)及びウェブページ(甲4, 13)には,被告各製品において本件再訂正発明を実施している ことやその実施により光照射装置としての性能が向上し,部品点\n数及び製造コストの削減を図ることができることなどをうかがわ せる記載は見当たらず,他方で,「業界最高クラスの光量を実現」, 「驚異の明るさを実現」など被告各製品の光量の大きさに関する 機能を宣伝文言としていることに照らすと,被告各製品において\n本件再訂正発明が実施されていることが大きな顧客吸引力となっ ていたということはできない。」
c 以上を前提に検討するに,前記a(a)及びbの本件推定を覆す事情の 内容,本件再訂正発明の技術的意義等を総合的に考慮すると,被告各 製品の限界利益の形成に対する本件再訂正発明の寄与は●●と認め るのが相当であり,前記寄与割合を超える部分については被告各製品 の限界利益の額と控訴人の受けた損害額との間に相当因果関係がな いものと認められる。したがって,本件推定は上記a(a)及びbの本件推定を覆す事情により上記限度で覆滅されるものと認められる。 そうすると,上記推定覆滅後の被告各製品の限界利益の額は,別紙 認容額算定表の3)欄記載の562万2270円となる。
d これに対し一審原告は,1)被告各製品のうち,白色LED搭載製品 及び青色LED搭載製品においても,本件再訂正発明は大きな顧客吸 引力を有すること,2)画像処理LED照明の国内シェア(数量ベース) については,平成26年から平成30年まで一貫して,一審原告が1 位,一審被告が2位であり,一審原告のシェアは2割を超えており(甲 18ないし22),このように画像処理LED照明のシェアを2割以 上一審原告が有している以上,被告各製品の販売がなかった場合には, そのうちの少なくとも2割は原告各製品に向かうことは明らかである し,シェア上位の会社の信頼性という面からは,2位のシェアを占め る被告各製品を購入した需要者は,被告各製品の販売がなかった場合 には1位のシェアを占める原告各製品を購入する蓋然性が高いこと, 3)原判決別紙競合品(被告主張)一覧表記載の各製品のうち,原告各\n製品の種類の多さを考えても,被告各製品の販売がなかった場合には これに対応する需要は原告各製品に向かう割合は極めて高いことを勘 案すると,本件推定は5割を超えては覆滅しない旨主張する。 しかしながら,1)については,前記bで説示したとおり(原判決引 用部分),本件再訂正発明の顧客吸引力は大きいとはいえない。 また,2)については,原告各製品及び被告各製品は,ライン状の光 を照射する光照射装置(ライン光照射装置)であるところ,仮に画像 処理LED照明一般という,ライン光照射装置よりも広いカテゴリの シェアで一審原告が1位であり,そのシェアが2割を超えていたとし ても,被告各製品の販売がなかった場合に,これに対応する2割の需 要が原告各製品に向かい,原告各製品を購入する蓋然性が高いという ことはできない。 さらに,3)については,原告各製品の種類が多いからといって,被 告各製品の販売がなかった場合にはこれに対応する需要は原告各製品 に向かう割合は極めて高いということはできない。 したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
・・・
b 原判決61頁16行目から62頁12行目までを次のとおり改める。 「b(a) 特許法73条2項は,特許権が共有に係るときは,各共有者 は,契約で別段の定めをした場合を除き,他の共有者の同意を 得ないでその特許発明の実施をすることができる旨規定してい るから,各共有者は,上記の場合を除き,自己の持分割合にか かわらず,無制限に特許発明を実施することができる。 そうすると,特許権の共有者は,自己の共有持分権の侵害に よる損害を被った場合には,侵害者に対し,特許発明の実施の 程度に応じて特許法102条2項に基づく損害額の損害賠償を 請求できるものと解される。また,同条3項は特許権侵害の際 に特許権者が請求し得る最低限度の損害額を法定した規定であ ると解されることに鑑みると,特許権の共有者に侵害者による 侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情 が存在しないため,同条2項の適用が認められない場合であっ ても,自己の共有持分割合に応じて,同条3項に基づく実施料 相当額の損害額の損害賠償を請求できるものと解される。 しかるところ,例えば,2名の共有者の一方が単独で同条2 項に基づく損害額の損害賠償請求をする場合,侵害者が侵害行 為により受けた利益は,一方の共有者の共有持分権の侵害のみ ならず,他方の共有者の共有者持分権の侵害によるものである といえるから,上記利益の額のうち,他方の共有者の共有持分 権の侵害に係る損害額に相当する部分については,一方の共有 者の受けた損害額との間に相当因果関係はないものと認められ, この限度で同条2項による推定は覆滅されるものと解するのが 相当である。
以上を総合すると,特許権が他の共有者との共有であること 及び他の共有者が特許発明の実施により利益を受けていること は,同項による推定の覆滅事由となり得るものであり,侵害者 が,特許権が他の共有者との共有であることを主張立証したと きは,同項による推定は他の共有者の共有持分割合による同条 3項に基づく実施料相当額の損害額の限度で覆滅され,また, 侵害者が,他の共有者が特許発明を実施していることを主張立 証したときは,同条2項による推定は他の共有者の実施の程度 (共有者間の実施による利益額の比)に応じて按分した損害額 の限度で覆滅されるものと解するのが相当である。 これを本件についてみるに,一審原告と三菱化学は,本件期 間1及び2において,本件特許権を持分2分の1の割合で共有 していたことは,前記aのとおりであるが,一方で,その期間 中に,三菱化学が本件再訂正発明を実施したことについての立 証はない。 そうすると,本件期間1及び2に係る販売分についての本件 推定は,三菱化学の共有持分割合による同条3項に基づく実施 料相当額の損害額の限度で覆滅されるというべきある。

◆判決本文

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◆平成29(ワ)7532

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平成28(ワ)35157  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和2年3月24日  東京地方裁判所

 少し前の事件です。 損害額の算定について、2件の特許侵害があり、102条2項による額はいずれかの特許の侵害による損害額であると判断されました。

 しかして,前記第2のとおり,原告は,特許第5177317号(本件特 許権1)に基づく請求と,同第5610056号(本件特許権2)に基づく 請求をするところ,両請求の関係は,選択的併合の関係にあるものと解され る。そして,原告は,いずれの請求についても,損害額として,特許法10 2条2項により算定される損害額,弁護士費用相当額及びこれらに対する遅 延損害金を主張するものであるから,仮に本件特許権2の侵害が認められる 場合であっても,本件特許権1の侵害により算定される損害額と,本件特許 権2の侵害により算定される損害額とは,同一の額となるというべきである。 そうすると,本件特許権1の侵害による損害額の算定を行ったものが,原 告の請求の一部認容となる場合も,上記損害額が,仮に被告らの輸入販売等 の行為が本件特許権2を侵害するものであった場合の同侵害による損害額を 下回るものとは認められないものと考えられるから,本件特許権2の侵害や 損害額について判断するまでもなく,本件特許権1の侵害による損害額を, 原告の被った損害としてそのまま認容すべきこととなる。 そこで,原告の損害額として,本件特許権1の侵害による損害額について 検討する。
特許法102条2項により算定される損害額
ア 前記前提条件(4)(5)のとおり ,被告LEDは被告製品に搭載されて販 売されたものであるところ,被告LEDの主な用途は写真撮影時のフラッ シュライトであるが,被告らが販売している被告製品以外の機種にはかか るフラッシュライトの性能を特長にしたスマートフォンもあること(甲5),被告製品はデザインを重視し,機能\をシンプルなものにした製品として紹介・宣伝されており,被告製品の紹介や宣伝の中ではLEDライト の性能等について一切触れられておらず,被告製品の基本スペックとしてもLEDライトは挙げられていないこと(甲5,6の1,7)などの各事\n実がそれぞれ認められる。これらによれば,被告LEDについては,被告 製品の主要な特長として位置付けられているとは認められず,このような 被告LEDにつき被告製品の主要部として特に強い顧客吸引力があるとい うことは困難というべきである。 そして,前記前提条件(4)のとおり被告製品の販売による利益額は、被 告HTCについては●(省略)●円,被告兼松については●(省略)●円 であるところ,被告製品の市場想定価格は●(省略)●円(税別)である こと(甲7),被告製品自体の製造コストは明らかでないものの,被告製 品が発売された平成27年10月時点で既に販売されていた他のメーカー のスマートフォンについては,利益率は60%前後であるとされているこ と(乙52),他方,HTC台湾に被告製品を納入したメーカーが被告L EDを仕入れた価格は1個●(省略)●米ドルであったこと(乙47)が それぞれ認められる。
これらの事実からすれば,被告製品の製造コストは約●(省略)●円 (≒●(省略)●円×〔1−0.6〕)となり,これを被告製品が発売さ れた平成27年10月の平均の為替レート120.16円/米ドルで換算 すると,約●(省略)●米ドル(≒●(省略)●円÷120.16円/米 ドル)となるから,被告製品の製造コストに占める被告LEDの仕入価格 の割合は,約●(省略)●%(≒●(省略)●×100)となる。なお, 証拠(甲50)によると,50種類の単色LEDが1個約700円ないし 900円でインターネット販売されていることが認められるが,これらの 単色LEDは,砲弾型のものや複数のLEDチップが実装されたものであ るなど,被告LEDと同じ構成のものであるか明らかでないから,損害額を算定するに当たって事情として考慮するのは相当とはいえない。\n以上を総合すれば,被告LEDの販売による利益額は,被告HTCにつ いては●(省略)●円(≒●(省略)●円×0.25%),被告兼松につ いては●(省略)●円(≒●(省略)●円×0.25%)と認めるのが相 当である。
イ これに対し,原告は,被告製品1台当たりにおける被告LEDによる利 益額は100円を下回らない旨主張する。 しかしながら,前記前提条件(4)によれば 被告製品の販売による利益額 は,被告HTCについては1台当たり約●(省略)●円(≒●(省略)● 円÷●(省略)●台),被告兼松については1台当たり約●(省略)●円 (≒●(省略)●円÷●(省略)●台)となるところ,被告LEDによる 利益額を1台当たり100円とすれば,その割合は,前者との関係では約 ●(省略)●%,後者との関係では約●(省略)●%となるのであって, 上記アに説示した被告製品における被告LEDの位置付けや顧客誘引力に 照らすと,いずれの割合も相当とは認め難いから,原告の上記主張は採用 できない。
ウ 以上によれば,被告HTCに対する特許法102条2項による損害金の 額は,●(省略)●円と,被告兼松に対する特許法102条2項による損 害金の額は,●(省略)●円とそれぞれ認められる。
・・・
(3) 推定覆滅事由について
ア 証拠(甲68〜77,183〜186)及び弁論の全趣旨によれば,原告は, 自社の商品を,主に靴の量販店やインターネット上の通信販売サイトを通じて販売 し,その小売価格は2000円から6000円程度の商品が中心であり,原告が, 対象期間中に原告各商標と同一ないし類似する商標を付したスニーカー(甲183) を販売した際の売上げは一足当たり3000円程度であったと認められる。 他方で,証拠(乙19)及び弁論の全趣旨によれば,被告商品は主に百貨店等の 店頭で販売されたものであり,別紙3被告商品販売一覧表記載のとおり,その小売\n価格は1万5000円から2万1000円,被告が百貨店等に販売する際の卸売価 格は●(省略)●円から●(省略)●円であったと認められる。 被告商品の販売による一足平均の限界利益は前記(2)エ(ウ)で認定した583万0 211円を,前記(2)イ(ウ)で認定した販売数量である●(省略)●足で除した● (省略)●円であり,原告が販売した競合品の一足当たりの限界利益を裏付ける証 拠はないが,上記の原告が販売した競合品の価格自体や,被告商品における一足当 たりの売上額が原告による競合品よりも大幅に高かったことからすれば,販売され た商品一足当たりの限界利益についても,被告商品の方が原告の商品よりも大きか ったものと推認される。 このような販売態様や販売価格の違い及び一足当たりの限界利益の違いは,被告 の限界利益額の一部について,商標法38条2項の推定を覆滅すべき事情として考 慮すべきである。
イ 他方で,被告が主張するその他の事情については,以下のとおり,いずれも 商標法38条2項の推定覆滅事情として考慮すべき事情とはいえない。 (ア) 原告が原告各商標を使用しない商品を販売していたことについて 被告は,原告が販売していた商品の多くには,原告各商標と同一又は類似の標章 が付されておらず,被告商品の販売によって,原告の売上げが減少したという関係 にないと主張する。
原告は,原告各商標と同一又は類似する標章を使用したスニーカーを販売してお り,被告による被告商品の輸入販売行為がなかったならば利益が得られたであろう という事情が原告に認められることは前記(1)のとおりであり,原告が上記のスニー カー以外に原告各商標と類似する標章が付されていない靴を販売していたとの事情 は,損害額の推定を覆滅すべき事情に当たるとも認められない。

◆判決本文

◆イ号および本件商標

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令和1(ネ)10067  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和2年6月18日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 102条2項の推定覆滅として7割を認めた1審判断が維持されました。

(2) 推定の覆滅について
ア 当裁判所も,特許法102条2項による損害額の推定(上記(1))は,7 割の限度で覆滅され,さらに,第2及び第3特許を一審原告及びミサワホ ームが共有していることから,同社が有する損害賠償請求権の相当額14 63万7125円についても推定が覆滅され,この結果,一審原告の損害 額は,原判決と同様に4867万8376円であると認定する。その理由 は,次のとおりである。
イ 第2及び第3特許の技術的意義とその位置付け
第2及び第3特許の技術的意義についての検討は,原判決39頁18行 目から42頁11行目までの記載のとおりなので(ただし,原判決42頁 同10行目の「幅方向へ」から11行目末尾までを「幅方向へ移動しない ようにする点,及び,台輪の接続部の嵌合部と被嵌合部が,台輪本体の長 手方向の向きを逆にしても接続するように構成されている点(効果4)であると認められる。」と改める。),これを引用する。これによると,第2特許の技術的意義は,台輪本体の延在方向に沿って\nテーパ部を設けることによって,布基礎の凸部に干渉されることなく台輪 本体を略水平な状態で布基礎の天端面に設置することができること(効果 2)であり,第3特許の技術的意義は,台輪の両端部に設けられた接続部 を嵌合可能な構\成とすることにより,台輪が幅方向に移動しないようにす ることができること(効果3)と,当該接続部の嵌合部と被嵌合部が,台 輪本体の長手方向の向きを逆にしても接続するように構成されていること(効果4)であると認められる。そうすると,第2特許,第3特許は,いずれも台輪全体に関する特許という形になってはいるものの,第2特許は\n台輪本体の側面縁部(延在方向),第3特許は台輪両端部に設けられた接 続部という,台輪のごく一部に技術的特徴が存するのにすぎないのである から,実質的には,特許発明が侵害品の部分のみに実施されている場合に 当たるものと解される。したがって,推定覆滅が認められるかどうかは, 特許発明が実施されている部分の侵害品中における位置付け,当該特許発 明の顧客誘引力等の事情を総合的に考慮して判断すべきものである。
ウ 推定覆滅に関する判断(その1:第2及び第3特許の顧客誘引力等) 推定覆滅に関する判断の前提となる基礎的事情は,原判決42頁12行 目から45頁13行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 以上に基づいて,まず,第2特許の顧客誘引力等について判断するに, 第2特許の技術的特徴であるテーパ部は,本件被告カタログで挙げられた 6点の特徴の中には挙げられておらず(テーパ部に関しては,「素手で持 っても痛くありません」という,第2特許の技術的特徴とは異なる特徴と の関係で挙げられているのにすぎない。),また,一審原告のカタログ等 においても,甲20の1,2のカタログには「両端に天端モルタルのバリ 逃げ」との説明が付された一審原告の製品の図が小さく掲載されているの みであるし,最も詳しい説明のある甲21のパンフレットには,「バリ逃 げ」が項目として取り上げられている(第2発明の技術的特徴に関する具 体的言及も存在する。)ものの,11点の特徴のうちの1点として位置付 けられているのにすぎず,大きな特徴という取扱いはされていない。しか も,被告第2製品におけるテーパ部は,高さ1mm,幅2mmという極めて小 さなものであるため,布基礎の凸部による干渉を避ける効果も極めて限定 されたものであり,第2特許の技術的特徴が十分に発揮されているとは到底いえないものといわざるを得ないから,仮に第2特許そのものには相応の顧客誘引力があるとしても,被告第2製品のテーパ部は,その顧客誘引\n力を十分に発揮しているとはいい難い。このように考えると,被告第2製品における第2特許の顧客誘引力は,極めて限定されたものであるというべきである。\n
次に,第3特許の顧客誘引力等について判断すると,この点についても, 本件被告カタログが挙げる6点の特徴には,明示的な言及はされていない (「スピード施工」との記載はあるが,「スピード施工」が可能となる理由は様々あり得るのであるから,これによって,第3特許の技術的特徴について言及されたとはいえない。また,説明写真の中には,「連結構\造」についての言及はあるものの,連結構造そのものが第3特許の技術的特徴とはいえないことは既に指摘したとおりであるし,第3特許の技術的特徴\nである嵌合部に関しては全く言及がない。)。また,一審原告のカタログ 等においても,甲20の1,2のカタログには何ら言及はなく,最も詳し い説明のある甲21のパンフレットにも,「7 継手嵌合 キソパッキンロングを連結するための,凹凸の形状です。」という記載があるのみで,嵌合部については説明があるものの,第3特許の技術的特徴に関連する記\n載は全くない。このように考えると,第3特許の技術的特徴は,被告第2 製品においてはもとより,一審原告の製品においても,大きな意味がある ものとしては取り扱われていないと判断せざるを得ない。したがって,被 告第2製品における第3特許の顧客誘引力も非常に限定されたものにとど まるというべきである。
以上の点に,前述のとおり,第2特許の技術的特徴である側面縁部のテ ーパ部,及び第3特許の技術的特徴である接続部は,いずれも,台輪本体 のごく一部を占めるにすぎないこと等を総合的に考慮すると,本件におい ては,特許法102条2項による推定が,7割の限度で覆滅されるという べきである。 一審被告は,推定覆滅が少なくとも8割の限度で認められるべきである として種々主張するが,第2,第3特許の顧客誘引力に関していう点につ いては既に判示したとおりであって,採用することができない。また,被 告第2製品に競合品が存するとはいえないことは原判決37頁16行目か ら39頁1行目までに記載されたとおりであり,被告第2製品に易切断領 域が設けられていることが推定覆滅に影響を及ぼすものではないことは原 判決39頁2行目から17行目までに説示されたとおりであって,これら に関する主張も採用することはできない。 他方,一審原告は,7割の推定覆滅には根拠がないとして種々主張する が,この点に関しては,既に説示したとおりであって,やはりその主張は 採用することができない。
エ 推定覆滅に関する判断(その2:ミサワホームに生じた損害)
この点に関する判断は,原判決47頁1行目から17行目までに記載の とおりであって,ミサワホームに生じた損害1463万7125円の限度 で,推定が覆滅されるべきであると認められる。
オ 一審原告の損害額
この点に関する判断は,原判決47頁18行目から23行目までに記載 のとおりであって,一審原告の損害額は,一審被告の利益額2億1105 万1670円に,推定が覆滅されない割合3割を乗じ,その結果からミサ ワホームに生じた損害額1463万7125円を控除した残額である48 67万8376円であると認められる。

◆判決本文


原審はこちらです。

◆平成29(ワ)7576

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平成28(ワ)4815 特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和2年1月20日  大阪地方裁判所

 大阪地裁26部で、102条2項により13億を越える損害賠償(代理人費用含む)が認められました。9割覆滅されています。

 特許法102条2項は,民法の原則の下では,特許権侵害によって特許権者 が被った損害の賠償を求めるためには,特許権者において,損害の発生及び額,こ れと特許権侵害行為との間の因果関係を主張,立証しなければならないところ,そ の立証等には困難が伴い,その結果,妥当な損害の填補がされないという不都合が 生じ得ることに照らして,侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは,そ の利益の額を特許権者の損害額と推定するとして,立証の困難性の軽減を図った規 定である。このような趣旨に鑑みると,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為 がなかったならば利益を得られたであろうという事情が存在する場合には,同項の 適用が認められると解すべきであるとともに,同項所定の侵害行為により侵害者が 受けた利益の額とは,原則として,侵害者が得た利益全額であると解するのが相当 であって,このような利益全額について同項による推定が及ぶと解される。
(イ) 証拠(甲13)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,被告による本件特許権 侵害行為の期間(平成20年〜平成28年)において,スクリュ圧縮機に相当する 圧縮機ユニット又はスクリュ圧縮機に凝縮器を備えたものに相当するコンデンシン グユニットである原告各製品を製造し,プラント業者等に販売していたことが認め られる。 他方,証拠(乙39,78,81,82,85,93,99,110)及び弁論 の全趣旨によれば,被告は,平成20年〜平成28年にかけて,油冷式スクリュ圧 縮機である被告製品2−2及び2−3が組み込まれたスクリュ式ガス圧縮システム であるNewTonシステムを使用した冷凍・冷蔵プラントである被告製プラントを販 売した一方,NewTonシステムや被告製品2−2及び2−3を,国内においては別 個独立に販売することはなかったこと(なお,国外向けには,被告のグループ会社 に単体又は単独で販売し,当該グループ会社がシステムを完成させて顧客に販売す ることはあった。)が認められる。 このように,被告は,基本的には,油冷式スクリュ圧縮機である被告製品2−2 及び2−3が組み込まれたNewTonシステムを使用した被告製プラントを販売する という形で本件特許権侵害行為を行っているから,本件特許権侵害行為における侵 害品は,上記NewTonシステムとするのが相当である。 そして,NewTonシステムと原告各製品が組み込まれたシステムとは,上記のと おり,冷凍・冷蔵プラントの需要者を需要者とする点で共通する以上,NewTonシ ステムと原告各製品の需要者も,その面では共通する部分があるといえる。 したがって,本件においては,原告に,被告による本件特許権侵害行為がなかっ たならば利益が得られたであろうという事情が存在するといえることから,特許法 102条2項の適用が認められる。
(ウ) これに対し,被告は,原告各製品がスクリュ圧縮機等であるのに対し,被告 が販売するのは被告製品2−2及び2−3が組み込まれたNewTonシステムを使用し た被告製プラントであることを指摘して,特許法102条2項の適用は認められな いと主張する。 しかし,被告指摘に係る事情は,要するに特許権者である原告と侵害者である被 告との間の業務態様の相違(ひいては市場の非同一性)を指摘するものであるとこ ろ,このような事情を考慮しても,原告各製品と被告製品2−2及び2−3とは, 上記(ア)のような形で市場においてなお競合関係にあると見るのが相当であるから, 特許法102条2項の適用を否定すべき事情とはいえない。被告指摘に係る当該事 情は,同項に基づく損害額の推定を覆滅する事情として考慮すれば足りる。 したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
イ 本件特許権侵害行為により被告が受けた利益の額
(ア) 侵害者がその侵害の行為により受けた「利益の額」(特許法102条2項)は, 侵害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりそ の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であ り,その主張立証責任は特許権者側にあると解される。 前記アのとおり,本件における侵害品は被告製品2−2及び2−3が組み込まれ たNewTonシステムであるから,本件特許権侵害行為により被告が受けた「利益の 額」は,その売上高から,被告においてNewTonシステムの製造販売に直接関連して 追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額を算定するのが相当である。 これに対し,被告は,本件発明が油冷式スクリュ圧縮機に関する発明であること, 原告自身が侵害品を圧縮機として特定していること,NewTonシステムから圧縮機だ けを分離可能であることなどを指摘して,本件の侵害品は,NewTonシステムではな く,圧縮機本体を中核とする被告製品2−2及び2−3であると主張する。 しかし,前記アのとおり,本件の侵害品はNewTonシステムとすることが相当であ り,このことは,本件発明が油冷式スクリュ圧縮機に関する発明であることなどに より左右されない。NewTonシステムから圧縮機を物理的に分離可能であるとしても,\n前記アのとおり,被告においては基本的にこれを別個独立に販売しておらず,この 部分の譲渡による利益を直接的に観念し得ない以上,同様であり,被告製品2−2 及び2−3がNewTonシステムの一部分であることは,損害額の推定を覆滅する事情 として考慮すれば足りる。 したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
(イ) NewTonシステムの販売台数
証拠(乙85,93,110)及び弁論の全趣旨によれば,被告が販売した NewTonシステムの販売台数は,別紙「NewTonシステムの利益額算定表(1)」〜 「NewTonシステムの利益額算定表(6)」の「NewTon台数」欄に各記載のとおりであ ることが認められる。
b これに対し,被告は,被告が販売したNewTonシステムのうち,本件特許権の 存続期間中に受注し,存続期間満了後に製造を終えて納入したものについては,本 件特許権の存続期間中に,存続期間満了後に行われた適法な譲渡についての申出が\n行われたにすぎないから,本件特許権侵害行為による損害賠償の算定の基礎にすべ きではないと主張する。 しかし,被告は,本件特許権の存続期間中に「譲渡の申出」を行った上で受注し\nており,この時点で顧客との間の請負契約が成立している以上,製造及び納入の完 了が本件特許権の存続期間満了後であったとしても,これによる原告の損害は,な お本件特許権の存続期間中の侵害行為である「譲渡の申出」と相当因果関係にある\n損害というべきである。そうすると,これに係る「譲渡」による販売分も,本件特 許権侵害行為による損害賠償の算定の基礎にするのが相当である。 したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
(ウ) NewTonシステム1台ごとの売上額
a NewTonシステムは,前記ア(イ)のとおり,基本的に冷凍・冷蔵プラントとは 別個独立のものとして販売されていないものの,証拠(乙39,92,110)及 び弁論の全趣旨によれば,被告は,被告製品2−2及び2−3が組み込まれた NewTonシステムの「定価」を設定し,そのNewTonシステムを使用した被告製プラ ントを販売するに当たって,当該「定価」を見積書に記載するなどして顧客に対し 見積りを示した上で,被告製プラントを販売していることが認められる。 そうすると,NewTonシステム1台ごとの売上額を算定するに当たり,当該「定 価」に依拠することには合理性がある。
他方,証拠(甲23,乙100,119)及び弁論の全趣旨によれば,被告は, NewTonシステムを使用した被告製プラントの販売に当たり,「出精値引」などと して,冷凍・冷蔵プラントを構成する部品価格の合計額から値引きして販売する例\nがあったことが認められる。もっとも,全ての取引において値引きが行われたこと を認めるに足りる事情はなく,また,プラントを構成するいずれの部品が値引き対\n象とされたかも不明であるから,上記売上額の算定に当たり値引き分を考慮するこ とは合理的でない。 以上を踏まえると,証拠(乙39)及び弁論の全趣旨によれば,NewTonシステ ム1台ごとの売上額は,別紙「NewTonシステムの利益額算定表(1)」〜「NewTon システムの利益額算定表(4)」の「定価(単価)」欄に各記載のとおりであると認め られる。 これに対し,被告は,NewTonシステム1台ごとの売上額は,その実質的な販売 価格に相当する●(省略)●により算定すべきであると主張する。 しかし,証拠(乙39,92,93)及び弁論の全趣旨によれば,NewTonシス テムの●(省略)●は,被告の製造部門が販売部門に販売処理手続を行う際の設定 される価格にすぎず,被告は,この●(省略)●を上回る価格を「定価」として設 定した上で,NewTonシステムを使用した被告製プラントを販売していることが認 められる。すなわち,●(省略)●「定価」においてこれが反映されているものと 理解される。そうすると,顧客に対する関係では,●(省略)●は実質的な販売価 格とはいえない。 したがって,NewTonシステム1台ごとの売上額の算定に当たりその●(省略) ●を基礎とすることは合理性を欠き,相当でない。この点に関する被告の主張は採 用できない。
b 593番代替機及び6048番転用機について
証拠(乙99)及び弁論の全趣旨によれば,別紙「NewTonシステムの利益額算 定表(5)」の対象となっている593番代替機は,106番機の代替機として,顧客 に無償で譲渡されたことが認められる。そうすると,106番機と593番代替機 の販売は一連の取引によるものといえる。このような経緯を踏まえると,106番 機と593番代替機の販売については,106番機1台分の売上額●(省略)●円 をもって2台合計の売上額として算定するのが相当である。 また,証拠(乙99)及び弁論の全趣旨によれば,別紙「NewTonシステムの利 益額算定表(6)」の対象となっている6048番転用機は,同一の顧客に対して61 8番機2台と共に合計3台として納品されたこと,この取引におけるNewTonシステ ムの代金は2台分の代金とされたことが認められる。このような経緯を踏まえると, 2台分の売上額である●(省略)●円(●(省略)●円×2)をもってこれら3台合 計の売上額として算定するのが相当である。 以上に反する原告の主張は採用できない。
(エ) NewTonシステム1台ごとの経費
a 前記(ア)のとおり,控除すべき経費は,侵害品の製造販売に直接関連して追加 的に必要となったものをいい,例えば,侵害品についての原材料費,仕入費用,運 送費等がこれに当たる。これに対し,例えば,管理部門の人件費や交通・通信費等 は,通常,侵害品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費には当たら ない。
b 控除すべき経費
(a) 製造原価
証拠(乙39,93,110)及び弁論の全趣旨によれば,NewTonシステム1 台ごとの製造原価は,別紙「NewTonシステムの利益額算定表(1)」〜「NewTonシ ステムの利益額算定表(4)」の「製造原価(単価)」欄に各記載のとおりであること が認められる。
(b) その余の経費
被告は,上記製造原価のほかに,被告製品2−2及び2−3が組み込まれた NewTonシステムの製造工場に係る間接人件費並びに販売費及び一般管理費を控除 すべき旨を指摘する。 まず,間接人件費についてみると,間接人件費は,正に管理部門の人件費である ところ,被告製品2−2及び2−3が組み込まれたNewTonシステムの製品の製造 販売に直接関連して,間接人件費に相当する費用が追加的に発生したと見るべき事 情は見当たらない。そうすると,被告製品2−2及び2−3が組み込まれた NewTonシステムの製造販売に直接関連して追加的に必要となった費用とはいえず, 控除すべき経費に当たらない。 次に,販売費及び一般管理費についてみると,証拠(乙75,84,109)及 び弁論の全趣旨によれば,上記(a)の製造原価には,社内加工費及び艤装作業費が含 まれていることが認められるところ,これを除くと,証拠(乙78,101)及び 弁論の全趣旨によっても,被告製品2−2及び2−3が組み込まれたNewTonシス テムの製品の製造販売に直接関連して,販売費又は一般管理費に相当する費用が追 加的に発生したと見るべき事情は見当たらない。そうすると,被告指摘に係る販売 費及び一般管理費は,被告製品2−2及び2−3が組み込まれたNewTonシステム の製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった費用とはいえず,控除すべ き経費に当たらない。 したがって,被告の上記指摘は当たらない。
(c) 被告の主張について
そもそも被告は,最小二乗法を用いて限界利益率を算定するのが管理会計学上確 立した方法であるとして,本件特許権侵害行為により被告が受けた利益の額を算定 するに当たっても,最小二乗法を用いるのが合理的であると主張する。 しかし,前記(ア)のとおり,特許法102条2項所定の侵害行為により侵害者が受 けた利益の額として算定すべき額は,侵害者の侵害品の売上高から,侵害者におい て侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要とな った経費を控除した限界利益の額であり,被告主張に係る管理会計学上の限界利益 の額とは必ずしも一致しない。また,算定の目的を異にする以上,侵害者が受けた 「利益の額」(特許法102条2項)の算定に当たり,管理会計学上の限界利益の 額の算定方法である最小二乗法を用いないとしても,不合理であることにはならな い。 したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
・・・
ウ 推定の覆滅について
(ア) 基礎となる事情
a NewTonシステム及び被告製品2−2及び2−3等について
(a) NewTonシステムの特徴及び販売促進活動
NewTonシステムは,平成19年にNewTon3000が商品化され,平成20年以降, 被告製プラントに使用される形で販売されており(甲8の3,乙45),基本的に, 冷凍・冷蔵プラントとは別個独立のものとしては販売されていない。被告製品2− 2及び2−3のみならず,被告製品2は,いずれもNewTonシステム専用の圧縮機で あり(甲3),NewTonシステムを使用した被告製プラントを購入する際には,必然 的に購入することになるところ,これらも,NewTonシステムと同様に,基本的に別 個独立のものとして販売されていない。また,NewTon3000は,IPMモーターを 搭載することなどにより,従来式に比べて20%の省エネを実現するとされ,発売 開始当初は年間200台,10年後には年間800台の販売を目標にしていた(乙 45,116)。 被告は,その後もNewTonシステムの開発を継続し,平成24年にはチルド専用の NewTonC,フリーザー専用のNewTonF等のシリーズ展開が行われ,平成28年ま でに累計●(省略)●台以上を販売した。さらに,被告は,平成28年7月,省エ ネ性を保ちつつ,冷媒充填量の削減,メンテナンス性の向上及び小型・軽量化を達 成したフリーザー専用の機種として,F-300,F-600等の販売を開始した(甲8の3, 乙45)。
NewTonシステムは,被告自ら開発したIPMモーターを搭載することなどによっ て,より高度な経済性と省エネルギー性を実現する点,令和2年に全廃されるフロ ン冷媒対策として,自然冷媒であるアンモニアで二酸化炭素を冷却するという間接 冷却方式を採用するとともに,アンモニアを機械室に閉じ込める構造によりその安\n全な利用を可能とし,さらに,漏洩センサー等を装備するなどしてアンモニアが漏\n洩しても素早い対応が取れるようにしている点,コンパクトなユニット設計を採用 することで導入を容易としている点,遠方監視システム及び保全診断システムなど 24時間365日のサポート体制を設けている点等に特徴があるとされ,これらの 点が強調された形で販売促進活動が行われていた(甲8の3,乙38,45)。 なお,NewTonシステムや被告製品2−2及び2−3の宣伝広告物には,本件明細 書記載の本件発明の作用効果に直接言及し,又はこれを具体的にうかがわせる記載 は見られない(甲3,8の3,乙38,66の1)。
(b) NewTonシステムを導入した業者によるNewTonシステムについての評価 被告は,その作成に係る「Customer’s Point of View」と題する記事において, NewTonシステムを導入した顧客の導入の動機,導入後の成果等を紹介していると ころ,これには,以下のような記載がある。
・・・
(b) 原告各製品の取扱業者による販売促進活動
・・・・
(イ) 検討
a 前記認定のとおり,被告は,基本的には,油冷式スクリュ圧縮機である被告 製品2−2及び2−3を独立して販売しておらず,また,これらを組み込んだ NewTonシステムについても同様であり,被告製品2−2及び2−3を組み込んだ NewTonシステムを使用した被告製プラントを販売している。他方,原告は,スク リュ圧縮機又はこれに凝縮器を付加した原告各製品を販売しているにとどまり,プ ラントという単位でみると,「セットメーカ」などといわれる別の業者が需要者に 対して提案するパッケージに組み込まれて販売されるという関係にある。このよう に両者の業務形態が大幅に異なることは,本件の侵害品であるNewTonシステムへ の需要と原告各製品への需要とが質的に異なる面があることをうかがわせる。この ため,仮に被告製品2−2ないし2−3を組み込んだNewTonシステムが販売され なかったとしても,原告各製品のいずれかが被告製品2−2又は2−3に直接代替 されることは考え難い。他方,そのような場合に,被告製品2−2及び2−3の譲 渡数量に対応する需要の全部又は一部が原告各製品の組み込まれたシステムを使用 したプラントに向かうことはあり得ることから,その場合は,結果的に,上記需要 が原告各製品に向かったことになる。もっとも,原告は,プラントを構成する圧縮\n機を販売するにとどまり,プラント全体の構成及び価格の決定や需要者に対する販\n売促進活動において及ぼし得る影響力には限りがあると思われる。 以下では,このような観点も踏まえて,推定覆滅の有無及び程度を検討する。
b 被告製品2−2及び2−3は,本件発明の技術的範囲に属するものである以 上,基本的には本件発明の作用効果を奏すると考えられるところ,被告製品2−2 及び2−3において,本件発明の作用効果を奏していないという事情はうかがわれ ない。この点,被告は,被告製品2−2及び2−3が本件発明の作用効果を奏する ものではない旨主張するが,採用できない。 もっとも,本件発明の作用効果は,スラスト軸受の負荷容量を大きくすること, バランスピストンの受圧面積を大きくすること,逆スラスト荷重状態の発生をなく すことなど,単純かつコンパクトな構造で,振動,騒音を低減させることができる\nというものであり,技術的にはさておき,本件発明の実施品ないしこれを組み込ん だシステムの経済的価値に強いインパクトを及ぼすような性質のものとは必ずしも いえない。このことは,被告製品2−2及び2−3につき,被告がその販売促進活 動において本件発明の作用効果に直接的に言及していないこと,NewTonシステム に対する外部的な評価においても,本件発明の作用効果に直接的に関わるものは見 当たらず,これを示唆するものもないこと,特許権者である原告自身も,スクリュ 圧縮機等である原告各製品において本件発明を実施していないことによっても裏付 けられる。そうすると,本件発明の作用効果それ自体には,それほど強い顧客吸引 力はないと見るのが相当である。
また,弁論の全趣旨によれば,NewTonシステムは被告製プラントの顧客吸引力 の中核を成す部分であり,被告製品2−2及び2−3は,NewTonシステムを稼働 させるために不可欠な部品であることが認められる。そこで,NewTonシステムの 顧客吸引力を検討すると,被告は,NewTonシステムの販売促進活動において,省 エネ,安全性,サポート体制等を特徴とするものであるとの点を強調している。し かも,被告が強調するNewTonシステムのこれらの特徴は,表彰の受賞理由とされ,\nまた,その導入の動機となり,現にその実績も上がっているとされるなど,第三者 からも積極的に評価されていることがうかがわれる(なお,原告は,省エネや安全 性が本件発明の作用効果であるとも主張するけれども,NewTonシステムにおける 省エネや安全性はIPMモーターや間接冷却方式を採用するなどしたことによるも のであり,本件発明の作用効果とは無関係と見られることから,この点に関する原 告の主張は採用できない。)。
c 被告製品2−2及び2−3の製造原価がNewTonシステムの製造原価に占め る割合は,被告製品2−2及び2−3の技術的・商業的価値を直接的に反映したも のではないが,これを推し測る一事情とはなるところ,被告製品2−2及び2−3 がNewTonシステムを可動させるために不可欠な部分であるといっても,NewTonシ ステムの製造原価における被告製品2−2又は2−3の製造原価の割合は,●(省 略)●にとどまる。
d NewTonシステムを使用した被告製プラントとそれ以外の同様のプラントの 販売実績は,アンモニア/二酸化炭素冷媒・冷凍設備の冷凍機用途の油冷式スクリ ュ圧縮機市場が事実上被告と原告の二社寡占状態であることに鑑みると,原告及び 被告の各製造に係る圧縮機の納入実績におおむね対応するものと推察されることか ら,NewTonシステムを使用した被告製プラントの販売実績の方が右肩上がりであ る●(省略)●。また,被告製プラントで使用されるNewTonシステムに組み込ま れる圧縮機として被告の製造に係るもの以外のもの(おのずと,原告の製造に係る 製品がその候補となる。)が組み込まれるという事態は考え難い。そうすると,被 告が非侵害品を販売していたり,販売することが容易であったりすれば,仮に被告 製品2−2及び2−3が組み込まれたNewTonシステムが販売されなかったとして も,需要の多くは被告の製造に係る非侵害品等を組み込んだNewTonシステムを使 用したプラントに向かったであろうと考えるのが合理的である。 そして,被告は,被告製品2−2及び2−3以外にも,本件発明を侵害しない NewTonシステム専用品として,被告製品2−1を製造しており,これによって被 告製品2−2及び2−3に代替することが考えられる。なお,原告は,被告製品2 −1が組み込まれたNewTonシステムの販売実績が少なかったことを指摘するけれ ども,現に納入実績がある以上,需要者の需要を満たすものである限り,被告製品 2−1による代替に需要が向かう可能性を否定することはできない。\nまた,被告は,本件特許権侵害行為当時,被告製品2以外にはNewTonシステム 専用の油冷式スクリュ圧縮機を製造していなかったものの,弁論の全趣旨によれば, NewTonシステムにおいて,本件特許権の侵害を回避するために,例えば油ポンプ を加えて加圧流路を設けることについての物理的な制約はさほどなく,また,コス ト的にも問題とすべき程度に至るとは見られない。そうすると,被告製プラントを 欲する需要者の要望に対し,既存機種をベースとしたカスタマイズ等の形で対応し, 本件特許権侵害を回避することは比較的容易であったとうかがわれる。実際には, 本件特許権の非侵害品であるNewTonシステム専用の圧縮機としては被告製品2− 1しかなく,また,上記カスタマイズといった対応も取られなかったとはいえ,推 定を覆滅すべき事情としては,この点も考慮するのが合理的である。この点につき, 原告は,競合品として考慮できるのは現実に市場に存在した製品に限られると主張 するが,上記のとおり,これを採用することはできない。
e 被告は,被告のNewTon事業の限界利益率が,原告の圧縮機事業の限界利益 率を上回ることを前提に,特許法102条2項により算定された利益の額が,特許 権者である原告がその実施能力に基づき得られたであろう利益の額を上回る場合は,\nその限度で覆滅されると主張する。 しかし,仮に被告のNewTon事業の限界利益率が原告の圧縮機事業の限界利益率 を上回るとしても,それをもって原告の圧縮機事業の実施能力が被告のNewTon事 業の実施能力に劣ることを意味するものではないから,被告の上記主張は,その前\n提を欠く。 したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
f 以上の事情を総合的に考慮すると,本件においては,被告製品2−2及び2 −3が組み込まれたNewTonシステムを使用した被告製プラントの販売がなかった 場合に,これに対応する需要の全てが原告各製品やこれを組み込んだスクリュ圧縮 機,更にはこれを使用したプラントに向かったであろうと見ることに合理性はなく, むしろ,そのような需要はごく限られると考えられる。そうすると,本件では,9 割の限度で,特許法102条2項による推定を覆滅するのが相当である。 この点に関する原告及び被告の各主張は,いずれも採用できない。
エ 以上によれば,原告の逸失利益の額は,別紙「損害額算定表(裁判所認定)」\nの(3)欄のとおり,合計12億5428万1900円であると認められる。

◆判決本文

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平成31(ネ)10003  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和2年2月28日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 特別部、いわゆる大合議の判断です。102条1項但し書きについて、販売に寄与した割合(寄与度)ではなく、利益に貢献した割合を考慮するとしました。
「本件発明2が原告製品の販売による利益に貢献している程度を考慮して,原 告製品の限界利益の全額から6割を控除し,また,被告製品の販売数量に上記の原 告製品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た一審原告の受けた損害額から,特 許法102条1項ただし書により5割を控除するのが相当である。」
 知財高裁は、最近、寄与度という用語を使用しないという傾向を打ち出しています。特別部として明確化したということでしょうか。

 特許法102条1項は,民法709条に基づき販売数量減少による逸失利益の損 害賠償を求める際の損害額の算定方法について定めた規定であり,特許法102条 1項本文において,侵害者の譲渡した物の数量に特許権者又は専用実施権者(以下 「特許権者等」という。)がその侵害行為がなければ販売することができた物の単位 数量当たりの利益額を乗じた額を,特許権者等の実施の能力の限度で損害額とし,同項ただし書において,譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者等が販売することができないとする事情を侵害者が立証したときは,当該事情に相当する\n数量に応じた額を控除するものと規定して,侵害行為と相当因果関係のある販売減 少数量の立証責任の転換を図ることにより,より柔軟な販売減少数量の認定を目的 とする規定である。 特許法102条1項の文言及び上記趣旨に照らせば,特許権者等が「侵害行為が なければ販売することができた物」とは,侵害行為によってその販売数量に影響を 受ける特許権者等の製品,すなわち,侵害品と市場において競合関係に立つ特許権 者等の製品であれば足りると解すべきである。 また,「単位数量当たりの利益の額」は,特許権者等の製品の売上高から特許権者 等において上記製品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的 に必要となった経費を控除した額(限界利益の額)であり,その主張立証責任は, 特許権者等の実施の能力を含め特許権者側にあるものと解すべきである。さらに,特許法102条1項ただし書の規定する譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者等が「販売することができないとする事情」については,侵害\n者が主張立証責任を負い,このような事情の存在が主張立証されたときに,当該事 情に相当する数量に応じた額を控除するものである。
(2) 侵害の行為を組成した物の譲渡数量
ア 前記3ないし5のとおり,被告製品の譲渡行為は,本件特許権2を侵害 するものであり,被告製品は「侵害の行為を組成した物」に該当する。 イ 一審原告が本件訴訟において損害賠償請求をしている不法行為の期間で ある平成27年12月4日から平成29年5月8日までの期間(以下「本件侵害期 間」という。)の被告製品の譲渡数量は下記のとおりであり,被告は総計35万17 24個,月平均2万0690個程度の被告製品を譲渡したことになる(争いがない。)。
被告製品1(DR−250A) 7万1077個
被告製品2(DR−250C) 14万1135個
被告製品3(FS−800) 1万5114個
被告製品4(DR−250P) 8万2584個
被告製品5(DR−250G) 1万8526個
被告製品6(DR―250SW) 8263個
被告製品7(JDR−300) 416個
被告製品8(DR−260BK) 6088個
被告製品9(DR−260C) 8521個
ウ 被告製品は,ディスカウントストアや雑貨店に卸売販売されることが中 心であり,一審被告作成の文書では1万5000円(税抜)の価格表示がされているものが多いが(甲7〜13),実際には,3000円ないし5000円程度の価格で販売されている(乙85〜93)。\n被告製品は,ゲルマニウムの粒を使用したゲルマミラーボールと説明されている が,後記の原告製品のように微弱電流(マイクロカレント)を発生する機構は有していない(甲7〜13)。
(3) 侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額
ア 侵害行為がなければ販売することができた物
前記(1)のとおり,「侵害行為がなければ販売することができた物」とは,侵害行 為によってその販売数量に影響を受ける特許権者等の製品,すなわち,侵害品と市 場において競合関係に立つ特許権者等の製品であれば足りる。一審原告は,本件発 明2の実施品として,「ReFa CARAT(リファ カラット)」という名称の 美容器(以下「原告製品」という。)を,平成21年2月以降販売しており(甲23, 24,弁論の全趣旨),原告製品は,「侵害行為がなければ販売することができた物」 に当たることは明らかである。 原告製品は,ローラの表面にプラチナムコートが施され,支持軸に回転可能\に支 持された一対のローリング部を肌に押し付けて回転させることにより,肌を摘み上 げ,肌に対して美容的作用を付与しようとする美容器(弁論の全趣旨)であり,搭 載されたソーラーパネルにより,微弱電流(マイクロカレント)を発生する機構\を 有している(甲23)。 原告製品は,原告の店舗,大手通販業者,百貨店,家電量販店で販売され,希望 小売価格である2万3800円(税抜)又はこれに近い価格で販売されている(甲 23,乙94〜108)。 一審原告は,平成27年10月から平成29年8月までの間に,125万641 0個の原告製品を販売しており(月平均5万4626個〔1個未満切り捨て〕),最 も少ない月(平成28年1月)でも1万8770個,最も多い月(平成28年12 月)には8万5492個を販売した(甲38)。
イ 単位数量当たりの利益の額の意義
前記(1)のとおり,特許法102条1項所定の「単位数量当たりの利益の額」は, 特許権者等の製品の売上高から,特許権者等において上記製品を製造販売すること によりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益 の額であり,その主張立証責任は特許権者側にあるものと解すべきである。
ウ 原告製品の限界利益の額
(ア) 売上高及び製造原価
平成27年10月から平成29年8月までの間の原告製品の販売数量は125万 6410個,売上高は合計132億4606万1089円であり,製造原価は●● ●●●●●●●●●●●である(甲38,39)。
(イ) 製造原価以外の控除すべき費用
a 前記(ア)の期間における一審原告の全製品の売上高は合計671億0 968万1552円であり(甲40),一審原告の全製品に対する原告製品の売上比 率は19.74%となる(132億4606万1089円÷671億0968万1 552円≒0.1974)。
b また,前記(ア)の期間における原告製品が含まれる「ReFa」ブラ ンドの製品全体の売上高が342億0958万6196円であり(甲28),同売上 に占める原告製品の売上比率は38.72%となる(132億4606万1089 円÷342億0958万6196円≒0.3872)。
c 前記(ア)の期間における原告製品の製造販売に直接関連して追加的に 必要となった費用は,前記(ア)の製造原価のほか,後記(1)〜(9)のとおりであり,その 額は,(1),(3),(4),(6)〜(9)については,一審原告の全製品について生じた各費用(甲 40)に前記aの比率を乗じた額であり,(2)及び(5)については,「ReFa」ブラン ドの製品について生じた各費用(甲32,33)に前記bの比率を乗じた額である
(1円未満切り捨て)。
(1) 販売手数料 ●●●●●●●●●●●●
(2) 販売促進費 2億5798万4777円
(3) ポイント引当金 741万7870円
(4) 見本品費 5343万9379円
(5) 宣伝広告費 5億2075万3024円
(6) 荷造運賃 4億5578万0084円
(7) クレーム処理費 6548万5934円
(8) 製品保証引当金繰入 590万2260円
(9) 市場調査費 1038万5182円
(1)から(9)までの合計額 ●●●●●●●●●●●●●
d 一審被告は,原告製品の売上高から,一審原告の全ての費用を,原 告製品の売上比率に従って控除すべきであると主張する。
しかし,前記(1)のとおり,特許法102条1項は,民法709条に基づき販売数 量減少による逸失利益の損害賠償を求める際の損害額の算定方法について定めた規 定であり,侵害者の譲渡した物の数量に特許権者等がその侵害行為がなければ販売 することができた物の単位数量当たりの利益額を乗じた額を上記の損害額としたも のである。このように,同項の損害額は,侵害行為がなければ特許権者等が販売で きた特許権者等の製品についての逸失利益であるから,同項の「単位数量当たりの 利益の額」を算定するに当たっては,特許権者等の製品の製造販売のために直接関 連しない費用を売上高から控除するのは相当ではなく,管理部門の人件費や交通・ 通信費などが,通常,これに当たる。また,一審原告は,既に,原告製品を製造販 売しており,そのために必要な既に支出した費用(例えば,当該製品を製造するた めに必要な機器や設備に要する費用で既に支出したもの)も,売上高から控除する のは相当ではないというべきである。 一審被告が,売上高から控除すべきであると主張する上記費用のうち,前記cの (1)〜(9)の費用以外の費用は,全て上記の売上高から控除するのが相当ではない費用 に当たるというべきであるから,一審被告の上記主張は理由がない。
(ウ) 原告製品の限界利益の額は,原告製品の前記(ア)の売上高から前記(ア) の製造原価と前記(イ)cの各費用の合計額を控除した69億6809万2706円で あり,これを,前記(ア)の期間における原告製品の販売数量125万6410個で除 すると5546円(69億6809万2706円÷125万6410個≒5546. 03円。1円未満切り捨て)となる。
(エ) 前記第2の2で認定した本件発明2の特許請求の範囲の記載及び前記 1で認定した本件明細書2の記載からすると,本件発明2は,回転体,支持軸,軸 受け部材,ハンドル等の部材から構成される美容器の発明であるが,軸受け部材と回転体の内周面の形状に特徴のある発明であると認められる(以下,この部分を「本件特徴部分」という。)。\n原告製品は,前記アのとおり,支持軸に回転可能に支持された一対のローリング部を肌に押し付けて回転させることにより,肌を摘み上げ,肌に対して美容的作用を付与しようとする美容器であるから,本件特徴部分は,原告製品の一部分である\nにすぎない。 ところで,本件のように,特許発明を実施した特許権者の製品において,特許発 明の特徴部分がその一部分にすぎない場合であっても,特許権者の製品の販売によ って得られる限界利益の全額が特許権者の逸失利益となることが事実上推定される というべきである。 そして,原告製品にとっては,ローリング部の良好な回転を実現することも重要 であり,そのために必要な部材である本件特徴部分すなわち軸受け部材と回転体の 内周面の形状も,原告製品の販売による利益に相応に貢献しているものといえる。 しかし,上記のとおり,原告製品は,一対のローリング部を皮膚に押し付けて回 転させることにより,皮膚を摘み上げて美容的作用を付与するという美容器である から,原告製品のうち大きな顧客誘引力を有する部分は,ローリング部の構成であるものと認められ,また,前記アのとおり,原告製品は,ソ\ーラーパネルを備え,微弱電流を発生させており,これにより,顧客誘引力を高めているものと認められ る。これらの事情からすると,本件特徴部分が原告製品の販売による利益の全てに 貢献しているとはいえないから,原告製品の販売によって得られる限界利益の全額 を原告の逸失利益と認めるのは相当でなく,したがって,原告製品においては,上 記の事実上の推定が一部覆滅されるというべきである。 そして,上記で判示した本件特徴部分の原告製品における位置付け,原告製品が 本件特徴部分以外に備えている特徴やその顧客誘引力など本件に現れた事情を総合 考慮すると,同覆滅がされる程度は,全体の約6割であると認めるのが相当である。 この点に関し,一審被告は,原告製品全体の製造費用に占める軸受けの製造費用 の割合を貢献の程度とすべき旨主張するが,上記の推定覆滅は,原告製品の販売に よる利益に対する本件特徴部分の貢献の程度に着目してされるものであり,当該部 分の製造費用の割合のみによってされるべきものではない。また,一審被告は,原 告製品においては,ローラの抜落の防止機能が不十\分であるから,軸受けの貢献度 は低い旨主張するが,一審被告が根拠とする乙138(原告製品に関するブログの 記載)から,原告製品においてローラの抜落の防止機能が不十\分であると認めるこ とはできず,他に同事実を認めるに足りる証拠はない。よって,上記主張はいずれ も採用できない。 以上より,原告製品の「単位数量当たりの利益の額」の算定に当たっては,原告 製品全体の限界利益の額である5546円から,その約6割を控除するのが相当で あり,原告製品の単位数量当たりの利益の額は,2218円(5546円×0.4 ≒2218円)となる。
(4) 実施の能力に応じた額
特許法102条1項は,前記(1)のとおり,侵害者の譲渡数量に特許権者等の製品 の単位数量当たりの利益の額を乗じた額の全額を特許権者等の受けた損害の額とす るのではなく,特許権者等の実施の能力に応じた額を超えない限度という制約を設けているところ,この「実施の能\力」は,潜在的な能力で足り,生産委託等の方法により,侵害品の販売数量に対応する数量の製品を供給することが可能\な場合も実施の能力があるものと解すべきであり,その主張立証責任は特許権者側にある。そして,前記(3)アのとおり,一審原告は,毎月の平均販売個数に対し,約3万個 の余剰製品供給能力を有していたと推認できるのであるから,この余剰能\力の範囲 内で月に平均2万個程度の数量の原告製品を追加して販売する能力を有していたと認めるのが相当である。したがって,一審原告は,一審被告が本件侵害期間中に販売した被告製品の数量\nの原告製品を販売する能力を有していたと認められる。
(5) 一審原告が販売することができないとする事情
ア 前記(1)のとおり,特許法102条1項ただし書は,侵害品の譲渡数量の 全部又は一部に相当する数量を特許権者が販売することができないとする事情(以 下「販売できない事情」という。)があるときは,販売できない事情に相当する数量 に応じた額を控除するものとすると規定しており,侵害者が,販売できない事情と して認められる各種の事情及び同事情に相当する数量に応じた額を主張立証した場 合には,同項本文により認定された損害額から上記数量に応じた額が控除される。 そして,「販売することができないとする事情」は,侵害行為と特許権者等の製品 の販売減少との相当因果関係を阻害する事情をいい,例えば,(1)特許権者と侵害者 の業務態様や価格等に相違が存在すること(市場の非同一性),(2)市場における競合 品の存在,(3)侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),(4)侵害品及び特許権者の 製品の性能(機能\,デザイン等特許発明以外の特徴)に相違が存在することなどの 事情がこれに該当するというべきである。
イ 以下,一審被告が販売できない事情として主張する事情について検討す る。
(ア) 一審被告は,原告製品と被告製品の価格の差異や販売店舗の差異を, 販売できない事情として主張する。
a 本件においては,前記(2)ウ,(3)アのとおり,原告製品は,大手通 販業者や百貨店において,2万3800円又はこれに近い価格で販売されているの に対し,被告製品はディスカウントストアや雑貨店において,3000円ないし5 000円程度の価格で販売されているが,このように,原告製品は,比較的高額な 美容器であるのに対し,被告製品は,原告製品の価格の8分の1ないし5分の1程 度の廉価で販売されていることからすると,被告製品を購入した者は,被告製品が 存在しなかった場合には,原告製品を購入するとは必ずしもいえないというべきで ある。したがって,上記の販売価格の差異は,販売できない事情と認めることがで きる。 そして,原告製品及び被告製品の上記の価格差は小さいとはいえないことからす ると,同事情の存在による販売できない事情に相当する数量は小さくはないものと 認められる。 一方で,上記両製品は美容器であるところ,美容器という商品の性質からすると, その需要者の中には,価格を重視せず,安価な商品がある場合は同商品を購入する が,安価な商品がない場合は,高価な商品を購入するという者も少なからず存在す るものと推認できるというべきである。また,前記(3)アのとおり,原告製品は,ロ ーラの表面にプラチナムコートが施され,ソ\ーラーパネルが搭載されて,微弱電流 を発生させるものであるから,これらの装備のない被告製品に比べてその品質は高 いということができ,したがって,原告製品は,その販売価格が約2万4000円 であるとしても,3000円ないし5000円程度の販売価格の被告製品の需要者 の一定数を取り込むことは可能であるというべきである。以上からすると,原告製品及び被告製品の上記価格差の存在による販売できない事情に相当する数量がかなりの数量になるとは認められない。\n
b このように,原告製品と被告製品との価格の差異は,需要者の購入 動機に影響を与えているといえるが,大手通販業者や百貨店において商品を購入す る者がディスカウントストアや雑貨店において商品を購入しないというような経験 則があるとは認め難いから,価格の差を離れて,原告製品と被告製品の上記販売態 様の差異が,需要者の購入動機に影響を与えているとは認められず,販売態様の差 異は,販売できない事情として認めることはできないというべきである。
(イ) 一審被告は,競合品が多数存在することを,販売できない事情として 主張する。
平成31年4月の時点で,原告製品と被告製品の同種の製品として,少なくとも 29種類の製品が販売されていることが認められる(乙176,弁論の全趣旨)が, 本件証拠上,本件侵害期間(平成27年12月4日ないし平成29年5月8日)に, 市場において,原告製品と競合関係に立つ製品が販売されていたと認めるに足りな いから,この点を,販売できない事情と認めることはできない。
(ウ) 一審被告は,本件発明2は軸受けについての発明であるところ,被告 製品における軸受けの製造費用は全体の製造費用の僅かな部分を占めるにすぎず, 軸受けは付属品に類するものであることを販売できない事情として主張する。 しかし,本件発明2が美容器の一部に特徴のある発明であるという事情は,既に 原告製品の単位数量当たりの利益の額の算定に当たって考慮しているのであるから, 重ねて,これを販売できない事情として考慮する必要はないというべきである。
(エ) 一審被告は,軸受けの部分は外見上認識することができず,代替技術 が存することなどを販売できない事情として主張する。 しかし,一審被告の主張する上記の事情は,被告製品及び原告製品のいずれにも 当てはまるものであるから,同事情の存在によって,被告製品がなかった場合に, 被告製品に対する需要が原告製品に向かわなくなるということはできず,したがっ て,これらの事情を販売できない事情と認めることはできない。
(オ) 一審被告は,原告製品は,微弱電流を発生する機構を有しているが,被告製品はそのような機構\を有していないことを販売できない事情として主張する。確かに,前記(3)アのとおり,原告製品は,微弱電流を発生する機構を有しており,一方で,被告製品はそのような機構\を有していないが,このことは,被告製品は,原告製品に比べ顧客誘引力が劣ることを意味するから,被告製品が存在しなかった 場合に,その需要が原告製品に向かうことを妨げる事情とはいい難い。したがって, 上記の点は,販売できない事情と認めることはできない。
(カ) 一審被告は,一審被告の営業努力を,販売できない事情として主張す るが,本件証拠上,一審被告に,販売できない事情と認めるに足りる程度の営業努 力があったとは認められない。
ウ 以上によれば,本件においては,前記イ(ア)aで判示した事情を考慮する と,この販売できない事情に相当する数量は,全体の約5割であると認めるのが相 当である。
(6) 本件発明2の寄与度を考慮した損害額の減額の可否について 前記(3)及び(5)のとおり,原告製品の単位数量当たりの利益の額の算定に当たっ ては,本件発明2が原告製品の販売による利益に貢献している程度を考慮して,原 告製品の限界利益の全額から6割を控除し,また,被告製品の販売数量に上記の原 告製品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た一審原告の受けた損害額から,特 許法102条1項ただし書により5割を控除するのが相当である。仮に,一審被告 の主張が,これらの控除とは別に,本件発明2が被告製品の販売に寄与した割合を 考慮して損害額を減額すべきであるとの趣旨であるとしても,これを認める規定は なく,また,これを認める根拠はないから,そのような寄与度の考慮による減額を 認めることはできない。
(7) 損害額の算定
以上からすると,特許法102条1項による一審原告の損害額は,被告製品の譲 渡数量35万1724個のうち,約5割については販売することができないとする 事情があるからその分を控除し,控除後の販売数量を原告製品の単位数量当たりの 利益額2218円に乗じることで,3億9006万円(2218円×35万172 4個×0.5≒3億9006万円)となる。 また,一審被告による本件特許権2の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用 は,認容額,本件訴訟の難易度及び一審原告の差止請求が認容されていることを考 慮して,5000万円と認めるのが相当である。 したがって,一審原告の損害額は,合計で4億4006万円となる。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成28(ワ)5345
本件発明2の技術の利用が被告製品の販売に寄与した度合いは高くなく,上記事情を総合すると,その寄与率は10%と認めるのが相当である。
・・・
上記アないしオで検討したところによれば,特許法102条1項による原告の損 害額は,被告製品の譲渡数量35万1724個のうち,5割については販売するこ とができないとする事情があるから控除し,これに原告製品の単位数量当たりの利 益額●(省略)●円及び本件特許2の寄与率10%を乗じることで,・・・

関連する審決取消訴訟はこちらです。

◆令和1(行ケ)10090

◆令和1(行ケ)10066

◆平成31(行ケ)10057

◆平成30(行ケ)10160

関連侵害訴訟および審決取消訴訟です。

◆平成31(ネ)10001等

◆平成30(行ケ)10049

◆平成30(行ケ)10048

◆平成29(ネ)10086

◆平成28(ワ)4356

◆平成30(行ケ)10013

◆平成29(行ケ)10201

◆平成29(行ケ)10095

◆平成28(ワ)6400

◆平成31(行ケ)10032

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令和1(ネ)10046  特許権侵害行為差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年11月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁3部は、侵害を認めた1審判断を維持しました。なお、判決文がテキストデータになっていないため、OCR処理しましたが、誤字についてはご了承ください。

 当審における補充主張に対する判断
控訴人は,本件明細書等の記載によれば,本件各発明の効果は, ドラ イパビットの翼部の屈曲部l乙ネジの翼係合部の屈曲部が接触することに よるものであるとし,これを前提に,被告製品は本件各発明の効果を奏 しないと主張する。 本件明細書等の段落【0003), 【0004】, 【0008】, 【図1】の記載からは,従来技術においては,食い付き部分を有する ネジを含む従来のネジにおいて,翼係合部とドライパピットの翼部と の引っ掛かりが悪いことやドライパピットがネジに対して傾いた状態 であることにより更ネジを回転させようとするとき,カムアウト現象 が生じ易いという課題が存するところ,本件各発明の「側壁面」の構\n成を採用すると,対応する形状の翼部を有するピットを用いれば,ネ ジに対してドライパピットが傾きにくくなり,また,翼部の屈曲した 側面に,対応する形状に屈曲した翼係合部の側壁面が食い込むので, 前記側面が前記側壁面を確実に把握し,翼部と翼係合部との引っ掛か りがよくなるため, ドライバピットがカムアウトしにくくなり,上記 課題が解決されることが理解できる。 そして「食い込む」とは「他の領域へ入りこんで侵す。侵入す る。」 (乙10 1) ことであるから,本件明細書等の段落【0008】 の「翼部の屈曲した側面に,対応する形状に屈曲した翼係合部の側壁面 が食い込むJとは,回転力を加えることにより, ドライパピットの翼部 とネジの翼係合部が接触する箇所において, ドライパピットの翼部の側 面がネジの翼係合部の側壁面を確実に把握し,引っ掛かりがよくなるこ とを意味するものと解され,本件各発明の効果を奏するために, ドライ パピットの翼部とネジの翼係合部の屈曲部同士が接触することが必須で あるということはできない。また,控訴人の指摘する本件明細書等の段 落【0014], 【0017]及び【0022]にも, ドライバピット の翼部とネジの翼係合部の屈曲部同士が接触することの記載はない。 控訴人は,本件意見書2の図A,B等は, ドライパピットの翼部の屈 曲部にネジの翼係合部の屈曲部が接触することを裏付けると主張するが, 本件明細書等の上記記載に照らせば,本件意見書2の各図は上記判断を 左右するものではない。
(イ) 控訴人の主張によっても,専用ピットの翼部の先端が被告製品の 「先端部内側面Jに点状に接触するというのであるから,被告製品に おいても, ドライパピットに回転力を加えた際に当該接触した箇所で 食い込みが生じ,翼部と翼係合部との引っ掛かりがよくなり, ドライ パビットがカムアウトしにくくなるという効果を奏すると解され,被 告製品において本件各発明の効果を奏しないということはできない。
本件特許に係る無効理由の有無(争点2) について
(1) 本件特許に係る無効理由の有無(争点2) についての判断は,次のとお り補正し,後記のとおり当審における補充主張に対する判断を付加するほか は,原判決第4の・・・記載のとおりであるから,これを引用する。
ア原判決56頁24行目「動機」を「動機付け」と改める。
イ原判決57頁19行目冒頭から25行目末尾までを次のとおり改める。
「しかし,前記判示のとおり,ネジ及びドライパピットの食い付き部分は 周知技術であり,出願当初の明細書等の実施例に当該周知技術について記 載がされていないとしても,それは本件各発明が当該周知技術を備えるこ とを排除する趣旨であるとは解し得ない。そうすると,本件各発明の技術 的範囲に当該周知技術の構成を備えたネジが含まれるとしても,構\成要件 1D及び2Aの「ネジの中心側から外方に向かつて延びる平面状の基端側 部分」との発明特定事項を追加する本件手続補正が新規事項の追加となる ものではない。 また,本件明細書等の段落【0003], 【0004】, 【0008], 【図1】の記載からは,本件各発明の「側壁面」の構成を備えることによ\nり,対応する形状の翼部を有するピットを用いれば,ネジに対してドライ パピットが傾きにくくなり,また,翼部の屈曲した側面に,対応する形状 に屈曲した翼係合部の側壁面が食い込むので,前記側面が前記側壁面を確 実に把握し,翼部と翼係合部との引っ掛かりがよくなるため, ドライパピ ットがカムアウトしにくくなるという本件各発明の効果が得られることが 理解でき(本判決第3の2(3)ウ(7)参照。), 「食い付き部分」の有無は 本件各発明の課題の解決に影響する構成とはいえない。したがって,控訴\n人主張の点は,サポート要件適合性を否定するものではないというべきで ある」
(2) 当審における補充主張に対する判断
ア 乙13考案及び乙5-8公報に開示された周知技術による進歩性の欠如 (争点2- 1) について
控訴人は,食い付き部分に関し,屈曲した二平面とR面を相互に代替す ることは当業者の技術常識であると主張するo しかし,食い付き部分と本 件各発明の「側壁面」は,目的も機能も異なり,食い付き部分の構\成に関 する技術常識を側壁面に適用することはできなし、から,控訴人の主張は採 用できない。
イ 乙13考案並びに乙12考案及び乙5〜8公報に開示された周知技術に よる進歩性の欠知(争点2-2) について
控訴人は,乙12考案の効果は本件各発明の「食い込む」ことにより 「カムアウトがしにくくなる」効果と実質的に同質の効果であるから, 乙13考案と乙12考案とは,実質的な目的・課題及び作用・機能にお\nいて共通し,両者を組み合わせる動機付けがあると主張する。しかし, 乙12考案の「切込溝3Jは錆びついたピスを容易に抜くために設けた ものであるのに対し,乙13考案の「円弧E-Fからなる溝」は, ドラ イパーのねじ込み力を完全に受け止めるために設けられたものであって, これらの考案の課題は全く異なることは,上記引用に係る補正された原 判決第4の5に説示したとおりであり,乙13考案に乙12考案を組み 合わせる動機付けがあるということはできない。
ウ補正要件違反又はサポート要件違反の有無について(争点2-3) につ いて
控訴人は,本件各発明の「屈曲」について,翼部の屈曲した側面に,対 応する形状に屈曲した翼係合部の側壁面が食い込むことが可能な「屈曲J, すなわち, ドライパピットの翼部の屈曲部に,対応する形状に屈曲したネ ジの翼係合部の屈曲部が深く内部に入り込むほど接触することを要すると 限定解釈しないとすると,本件各発明の課題である「ドライパピットがカ ムアウトしにくい(回動部から外れにくい)ネジおよびドライパピットを 提供するJ (【0004】)を解決し得ると当業者が認識し得ないものを 特許請求の範囲に含むことになると主張する。しかし, ドライパビットが カムアウトしにくい(回動部から外れにくし、)ネジとの課題を解決するに つき, ドライパピットの翼部の屈曲部にネジの翼係合部の屈曲部が接触す る(食い込む)ことが必須であるといえないのは前記2(1)イ及び(2)に説 示したとおりでありこれを前提とする控訴人の主張は採用できない。

◆判決本文


1審はこちらです。

◆平成28(ワ)14753
 被告は,本件意見書1における,「引用文献2〜4」のネジと本件各発 明のネジ穴とは構成が異なる旨の記載は,本件各発明の特許請求の範囲か\nら,ネジ穴の中心部に食い付き部分(円弧面状の部分)を有する構成を意\n識的に除外する趣旨であって,食い付き部分を有する構成が本件各発明の\n技術的範囲に属すると主張することは,禁反言の法理に照らして許されな いと主張する。
イ しかし,本件意見書1には,以下の内容の記載がある。
(ア) 本件手続補正は,請求項1について「引用文献2〜4記載の発明との 相違が明確になるように締付側側壁面(10)の形状をより細かく限定 した」ものであり,請求項2について「引用文献2〜4記載の発明との 相違が明確になるようにネジの翼係合部(2)の緩め側側壁面(9)の 形状をより細かく限定したもの」である。(乙10の2頁)
(イ) 「引用文献2」(乙6)記載の発明は,「本来の意味においては,各 翼係合部は屈曲部を有していない。具体的には,引用文献2記載の発明 の場合,各翼係合部の両側壁面は,それぞれ全体が1つの平面状をなし ており,全く屈曲されていない」点で本件各発明と異なる。 引用文献2記載の発明において「強いて回動部の中心部の円弧面状の 部分を翼係合部の側壁面の基端側の部分と解釈したとしても」,本願発 明のような優れた作用効果を全く果たさない。(乙10の4頁)
(ウ) 「引用文献3」(乙7),「同4」(乙8)記載の発明においても, 「本来の意味においては,各翼係合部は屈曲部を有していない。具体的 には,引用文献3,4記載の発明の場合,本来の意味での各翼係合部の 両側壁面は,軸方向から見ると扇形の両辺(直線状部)をなす平面状の 部分のみである」点で本件各発明と異なる。 引用文献3,4記載の発明における「ネジの中央部分において翼係合 部の基端側部分間をつなぐR部分は,円弧面状をなす部分であって,ネ ジへのドライバビットの食い付きをよくするために設けられる所謂食い 付き部を構成する部分」であって,「前記R部分(食い付き部分)は,\nネジの締め付けおよび緩め動作自体には直接関係のない部分」にすぎな い。 「引用文献3,4」記載の発明において,「強いて前記R部分を翼係 合部の側壁面の基端側の部分と解釈したとしても,これらの部分は,平 面状ではなく,円弧面状の部分であり,かつネジの中心側から外方に向 かって延びていない」ので,本件各発明とは構成が異なる。\n 引用文献3,4記載の発明において,「強いて前記R部分を翼係合部 の側壁面の基端側の部分と解釈したとしても」,本件各発明の作用効果 は生じない。(乙10の5頁)
 ウ 本件意見書1の上記記載によれば,原告は同意見書において,「引用文 献2〜4」記載の発明に係る構成と本件各発明に係る構\成が異なることを 説明するとともに,仮に同各文献の構成が対応する本件各発明の構\成に相 当するとしても,同各文献記載の発明が本件各発明の効果を奏しないとい うことを説明しているにすぎないのであって,上記記載をもって,本件各 発明の特許請求の範囲から,ネジ穴の中心部に食い付き部分(円弧面状の 部分)を有する構成を意識的に除外しているということはできない。\n

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平成30(ネ)10031  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年11月20日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 実施していない共有者が存在する場合、102条2項に基づく損害額の推定は,不実施に係る他の共有者の持分割合による同条3項に基づく実施料相当額の限度で一部覆滅されると判断されました。

 1審原告は,特許法102条2項に基づく推定額から共有に係る特許権者である 訴外会社に生じた損害額を控除することはできない旨を,1審被告らは,侵害者の 得た利益の額を共有者の持分権の割合によって按分した額を当該共有者の受けた損 害額と推定すべき旨を,それぞれ主張する。 民法の原則の下では,特許権侵害による特許権者の損害の賠償を求めるためには, 特許権者において損害の発生及び額等につき主張立証しなければならないところ, 前記のとおり,特許法102条2項は,損害額の立証の困難性を軽減する趣旨で設 けられたものであり,加害行為がなかった場合に想定される利益状態と加害行為に よって現実に発生した不利益状態とを金銭的に評価した場合の差額を「損害」とし て把握し,その填補賠償を目的とするという点で,民法上の不法行為による損害賠 償制度の枠内にあるものであることに違いはない。特許権の共有者は,それぞれ, 原則として他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができるも のの(特許法73条2項),その価値の全てを独占するものではないことに鑑みる と,特許法102条2項に基づく損害額の推定を受けるに当たり,共有者は,原則 としてその実施の程度に応じてその逸失利益額を推定されると解するのが相当であ り,共有者各自の逸失利益額と相関関係にない持分権の割合を基準とすることは合 理的でない。なお,本件では,引用に係る原判決指摘のとおり,原告製品は本件発 明の実施品と認めるに足りる証拠はないものの,原告製品と被告製品とは市場にお いて競合関係にあるものといえる。このため,前記のとおり特許法102条2項の 適用が認められることから,本件においても上記と同様に解するのが相当である。 もっとも,特許発明の実施品(又は侵害品と競合する特許権者の製品)の販売利 益の減少等による特許権者の逸失利益と,侵害者から得べかりし実施料の喪失によ る逸失利益とは,類型的にその性質を異にするものである。また,共有者の一部が 当該特許発明を実施しなかったとしても(又は侵害品と競合する製品の製造等を行 っていなかったとしても),共有に係る特許権の侵害による侵害者の利益は,特許 権の共有者の一方の持分権の侵害のみならず他方の持分権の侵害にもよるものであ る以上,実施料相当額の逸失利益を観念することは可能であり,特許法102条3\n項もこのことを前提とするものと理解される。そうである以上,同条2項による損 害額の推定に基づき侵害者に対し特許権の共有者の一部が損害賠償請求権を行使す るに当たっては,同条2項に基づく損害額の推定は,不実施に係る他の共有者の持 分割合による同条3項に基づく実施料相当額の限度で一部覆滅されるとするのが合 理的である。
また,1審原告は,本件における特別の事情として,訴外会社の1審被告らに対 する損害賠償請求権が1審原告に債権譲渡されていることを指摘する。 しかし,当該請求権は本件における1審原告固有の損害賠償請求権とその発生原 因を異にし,訴外会社の1審被告らに対する債権譲渡の結果,1審原告の下に両立 していると考えられること,1審原告が,債権譲渡を受けた損害賠償請求権を行使 しないで,固有の損害賠償請求権のみの行使を主張する旨明言していることなどに 鑑みると,本件においては,結果として同一人に帰属しているからといって,結論 を異にすべき事情ということはできない。 その他1審原告ないし1審被告らがるる指摘する事情を考慮しても,この点につ いてのそれぞれの主張はいずれも採用できない。
ウ 推定覆滅事由の存否(争点9)について
(ア) インターネット上のサイトに見られる原告製品及び被告製品に関する宣伝 文句に鑑みると,引用に係る原判決の認定のとおり,原告製品及び被告製品は,い ずれも脚口部分が前方に突出するように構成され,脚口部分及びお尻の部分がずり\n上がらないという特徴を有する点で共通すると認められるところ,これらは,本件 発明の作用効果に係るものということができる。また,原告製品及び被告製品は, いずれも,これらの機能に関係する形状を除き,そのデザイン面で特徴的というべ\nき形状ないし装飾は存在しない。ただし,原告製品にはハイウエストタイプの製品 及びテンセル素材の製品が存在しないのに対し,被告製品には存在するところ,丈 のタイプ及び素材は,いずれも下肢用衣料にとって重要な要素である着心地に直接 関わる要素であり,ハイウエストタイプやテンセル素材を好む需要者も一定程度存 在することは容易に推察されること,他方で,被告製品の販売実績に占める割合等 から,この点が需要者の購買に及ぼす影響は,限定的ながらも存在すると考えるの が相当である。
(イ) 価格については,一般に,同種かつ同程度の機能等の製品相互間では,製\n造者・販売者のブランド力等様々な要素が需要者の購買行動に影響するものの,価 格の顧客誘引力も大きな影響力を持つといえること,その影響力の程度は,製造者 等のブランド力等の影響をも受けつつ,製品相互間の機能面等での差異の程度に応\nじて相対的に変化することは,経験則上明らかである。その意味で,市場において 競合関係にあり,その機能面でも同種かつ同等ないし類似する関係にあると見られ\nる製品における価格帯の相違は,推定覆滅事由として考慮されることがあり得ると いうべきである。もっとも,本件においては,原告製品と被告製品との価格差をも って,顧客誘引力の点で大きな影響を及ぼすものとまでは認められない。
(ウ) 販売形態の相違について,1審被告らは,何らかの理由で店頭での商品購 入のみを行い,インターネット販売を利用しない需要者の存在を主張する。 しかし,これを具体的に裏付けるに足りる的確な証拠はないし,現在のインター ネット利用可能な端末それ自体やインターネット上での日用品取引の普及状況等に\n鑑みると,特許法102条2項に基づく損害額の推定を覆滅すべき事由とはいえな い。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成26(ワ)7604

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平成29(ワ)7532  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年12月16日  大阪地方裁判所

 本件再訂正発明の実施品ではない原告各製品に向かう部分はごく限られるとして、特102条2項による推定の覆滅が、認められました。

 本件再訂正発明の技術的意義は,LED基板のサイズを同一にして,部品点数 及び製造コストを削減できるとともに,LED基板の大きさを可及的に小さくして, 汎用性を向上させることができる点にある。このような技術的意義は,光照射装置 としての性能の向上に必ずしも直結するものではないといえるものの,ライン状の\n光を照射する光照射装置の製造者にとっては,これにより製品の販売価格をより廉 価とし得ることで競合品との価格競争力を高め得ることその他のメリットを期待し 得る。他方,そのような製品の使用者(需要者)にとっては,販売価格のより廉価 な製品を購入し得るというメリットはあるものの,それ以外には,メリットがある としても乏しいものと思われる。このため,本件再訂正発明の実施により他の競合 品の価格より競争力がある程度に廉価な製品を製造,販売しているのでなければ, 本件再訂正発明の実施による顧客吸引力は乏しいと評価すべきことになる。 しかるに,証拠(乙37)及び弁論の全趣旨によれば,原告各製品及び被告各製 品を含むライン状の光を照射する光照射装置(別紙競合品(被告主張)一覧表記載\nの各製品)の市場における実勢価格は,おおむね同程度であり,また,当該市場に おいて原告及び被告の各シェアは,いずれもトップにはないと認められる。被告各 製品のカタログ(甲3)及びウェブページ(甲4,13)においても,本件再訂正 発明の実施により,光照射装置としての性能が向上していること,部品点数及び製\n造コストの削減を図ることができていること又はこれを前提として他社製品より廉 価で販売可能であることなどをうかがわせる宣伝文句は見られず,他方で,「業界最\n高クラスの光量を実現」,「驚異の明るさを実現」と,被告各製品の機能を宣伝文句\nとしており,被告各製品に対する需要は,販売価格というよりもむしろ光量の大き さといった機能によって喚起されたことがうかがわれる。\nしかも,上記のような市場の状況にあるにもかかわらず,前記認定のとおり,原 告は,本件再訂正発明を実施しているとは認められない。 そうすると,本件再訂正発明は,その実施により光照射装置の性能を必ずしも向\n上するというものではなく,また,販売価格の面でも,実施によるコスト削減に伴 い他社製品との価格競争上同程度の地位に立つことを可能にすることはあり得ると\nしても,価格競争上他社より優位に立ち得る程度のメリットをもたらすものとまで はいえないと見られる。これを需要者の側から見ると,本件再訂正発明の実施品で あることは,そのこと自体により直ちに需要者の購買意欲を高めるものとはいえな いことになる。すなわち,本件再訂正発明は,その性質上,顧客吸引力は必ずしも 高くないものと評価すべきである。
(イ) もっとも,被告が約5年間にわたって本件再訂正発明を実施していたことに 鑑みると,本件再訂正発明を実施することに経済的な意義がないとは考え難く,少 なくとも,被告各製品の販売価格が,ライン状の光を照射する光照射装置の市場に おいて,他社製品に後れを取ることがない程度となることに本件再訂正発明の作用 効果が影響していると考えることには合理性がある。
(ウ) 証拠(甲3,4,13,乙37)によれば,原告各製品及び被告各製品を含 むライン状の光を照射する光照射装置の製品としての特徴は,別紙競合品(被告主 張)一覧表記載のとおりと認められる。本件においては,原告各製品と被告各製品\nとが市場において競合関係に立つ製品であることが前提となるところ,これを踏ま えて上記製品のうち被告各製品及び原告各製品以外のものを見ると,いずれも原告 各製品及び被告各製品と用途例が共通しており(同一覧表の「用途欄」において,\n具体的な用途が「不明」とされているものも,少なくとも原告各製品及び被告各製 品と同様の用途に用い得るとうかがわれる。),長さ寸法及び発光色も対応してい る。前記認定のとおり,これらの製品の価格帯もおおむね同程度である。他方,こ れらの製品の冷却方式は様々であるものの,被告各製品はいずれも自然空冷である 一方,原告各製品には自然空冷だけでなくファン空冷のものもあることに照らせば, その違いは競合関係を否定する事情とまではいえない。また,前記のとおり,本件 再訂正発明の実施によって光照射装置としての性能が向上するとはいえない。色及\nびサイズ展開の点も,機能面で大きな差異を生じるのでなければ,需要者にとって\nは必要とする特定の色及びサイズに対応した製品であれば足り,製品ラインナップ として多色展開していることや,希望サイズに対応するためにLED基板を複数とす るか1枚の基板で対応するかといったことは,需要者にとっては必ずしも重要でな いと思われる。 これらの事情に鑑みると,これらの製品は,原告製品及び被告各製品と市場にお いて競合関係に立つ製品であると認められる。 そうすると,原告各製品及び被告各製品の競合品としては,ライン状の光を照射 する光照射装置を想定するのが相当であり,多色展開していて,複数のLED基板を ライン方向に直列させることで多数のサイズ展開をしているライン状の光を照射す る光照射装置に限られないというべきである。
(エ) 以上の事情を総合的に考慮すると,本件においては,被告各製品の販売がな かった場合に,これに対応する需要が全て原告各製品に向かったであろうと見るこ とに合理性はなく,むしろ,本件再訂正発明の実施品ではない原告各製品に向かう 部分はごく限られると考える。そうすると,本件では,●(省略)●の限度で特許 法102条2項による推定が覆滅されると認めるのが相当である。 これに対し,原告は,本件再訂正発明の顧客吸引力は大きいと主張するとともに, 競合品は,多色展開していて,複数のLED基板をライン方向に直列させることで多 数のサイズ展開をしているライン光照射装置に限られるなどと主張する。しかし, 上記のとおり,この点に関する原告の主張は採用できない。
(オ) そうすると,被告が本件特許権侵害行為によって得た利益の額は,別紙「損 害額算定表」の(3)欄のとおりであり,937万0447円であると認められる。 これに反する原告及び被告の各主張はいずれも採用できない
・・・
(カ) 共有者の存在について
a 前記のとおり,本件特許権は,被告による特許権侵害行為の継続した期間の うち,その始期である平成24年7月から平成26年11月21日までの間,原告 と三菱化学との共有に係るものであった。 特許権の共有者は,それぞれ,原則として他の共有者の同意を得ないでその特許 発明の実施をすることができるが(特許法73条2項),その価値の全てを独占す るものではないことに鑑みると,同法102条2項に基づく損害額の推定を受ける に当たり,共有者は,原則としてその実施の程度に応じてその逸失利益額を推定さ れると解するのが相当であり,共有者各自の逸失利益額と相関関係にない持分権の 割合を基準とすることは合理的でない。 もっとも,特許発明の実施品又は侵害品と競合する特許権者の製品に係る販売利 益の減少等による特許権者の逸失利益と,侵害者から得べかりし実施料の喪失によ る逸失利益とは,類型的にその性質を異にするものである。また,共有者の一部が 当該特許発明を実施したり,侵害品と競合する製品の製造等を行ったりしていなか ったとしても,共有に係る特許権の侵害による侵害者の利益は,特許権の共有者の 一方の持分権の侵害のみならず他方の持分権の侵害にもよるものである以上,実施 料相当額の逸失利益を観念することは可能であり,同法102条3項もこのことを\n前提とするものと理解される。そうである以上,同条2項による損害額の推定に基 づき侵害者に対し特許権の共有者の一部が損害賠償請求権を行使するに当たっては, 同条2項に基づく損害額の推定は,不実施に係る他の共有者の持分割合による同条 3項に基づく特許発明の実施に対し受けるべき金銭相当額の限度で一部覆滅される とするのが合理的である。 これに反する原告及び被告の主張はいずれも採用できない。
b なお,原告は,三菱化学から,その共有に係る特許権に基づく被告に対する 損害賠償請求権を譲渡されたと主張する。しかし,証拠(甲16)及び弁論の全趣 旨を総合しても,そのような事実を認めるに足りる証拠はない。この点に関する原 告の主張は採用できない。 そこで,三菱化学の賠償請求し得る損害額を特許法102条3項に基づき算 定する必要があるところ,同項による損害額は,原則として,侵害品の売上高を基 準とし,そこに,実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。実施に対 し受けるべき料率を定めるに当たっては,当該特許発明の実際の実施許諾契約にお ける実施料率や,それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮 に入れつつ,当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性,他の ものによる代替可能性,当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益へ\nの貢献や侵害の態様,特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟 に現れた諸事情を総合的に考慮して,合理的な料率を定めるべきである。 まず,料率について,「実施料率〔第5版〕」(甲17)によれば,「民生用電 気機械・電球・照明器具」(イニシャル無)の技術分野における平成4年度〜平成 10年度の実施料率の平均値は4.6%であり,昭和63年度〜平成3年度に比較 してほぼ横ばいとなっている。また,平成4年度〜平成10年度の実施料率の最頻 値及び中央値はいずれも4%である。なお,上記技術分野は,民生用電気機械器具 製造技術及び電球・電気照明器具製造技術であり,具体的には,電球,蛍光灯,ネ オンランプ等の電球ないし電気照明器具のほか,電気アイロン,暖房用電熱器,扇 風機,電気洗濯機,電気冷蔵庫等を含む。 次に,本件再訂正発明の価値及び他のものによる代替可能性については,推定覆\n滅に関する前記事情に鑑みると,価値的には必ずしも高いとはいえず,また,競合 品による代替の余地は大きく,売上げに対する貢献の程度も同様である。 さらに,証拠(乙27)及び弁論の全趣旨によれば,原告と被告は,長年にわた って競業関係にあることが認められる。 これらの各事情を斟酌すると,本件において,本件特許権の実施に対し受けるべ き料率は,●(省略)●とするのが相当である。これに反する原告及び被告の主張 は,いずれも採用できない。 他方,本件特許権が共有されていた期間(本件期間1及び本件期間2)における 被告製品1〜6の売上高が●(省略)●円(本件期間1:●(省略)●円,本件期 間2:●(省略)●円)であることは,当事者間に争いがない
d なお,被告は,被告製品1〜6の売上高を基礎として実施に対し受けるべき 料率を算定することが不合理であると主張する。しかし,前記のとおり,被告製品 1〜6が本件再訂正発明の作用効果を全く奏していないとはいえないし,その程度 が乏しいとしても,その点は実施に対し受けるべき料率の算定に当たって斟酌すれ ば足りるのであって,被告製品1〜6の売上高を基礎として実施に対し受けるべき 料率を算定することが不合理であるとまではいえない。したがって,この点に関す る被告の主張は採用できない。
e 以上より,三菱化学に生じた損害の額は,別紙「損害額算定表」の(4)欄のと おり,合計26万6379円であると認められる。

◆判決本文

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平成28(ワ)42833等  特許権侵害差止等請求事件,特許権侵害差止請求事件,特許権侵害に基づく損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年3月7日  東京地方裁判所

 漏れていたので、アップします。国際裁判管轄、差止請求等に係る訴えの利益、技術的範囲の属否、間接侵害、無効理由など、争点は満載なので、判決文が200頁以上あります。認められた損害額も40億円を超えています。

 (1) 特許法102条2項の適用の有無(争点11−1) 原告は,被告らが特許権侵害行為により利益を受けているとして,特許法 102条2項の適用があると主張するのに対し,被告らは,原告が本件発明 1を実施していないこと,また,本件発明1は被告製品の販売に何ら寄与し ていないことから,被告製品の販売と原告の損害との間には因果関係がなく, 特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られた であろうという事情が存在しないから,特許法102条2項の適用がないと 主張する。
そこで検討するに,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかった ならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,特許法10 2条2項の適用が認められると解すべきであり,特許法102条2項の適用 に当たり,特許権者において,当該特許発明を実施していることを要件とす るものではないというべきである(知財高裁平成24年(ネ)第10015 号同平成25年2月1日判決参照)。 そうすると,原告が本件発明1を実施していないことは,特許法102条 2項の適用を妨げる事情とはいえない。また,原告は,被告製品と同様にL TO−7規格に準拠する原告製品を販売しており(弁論の全趣旨),原告製 品と被告製品の市場が共通していることからすれば,特許権者である原告に, 侵害者である被告らによる特許権侵害行為がなかったならば利益が得られた であろうという事情が認められるから,原告の損害額の算定につき,特許法 102条2項の適用が排除される理由はないというべきである。被告らが主 張する,被告製品の販売における本件特許1の寄与の程度については,推定 覆滅の一事情として考慮すべきである(後記(4)参照)。 以上のとおり,被告らの主張は採用することができず,原告の損害額の算 定については,特許法102条2項の適用による推定が及ぶ。
(2) 輸出を伴う取引形態における利益の範囲(争点11−2)
被告OEM製品の取引形態のうち,取引形態2(被告OEM製品の製造業 者である被告SSMMが被告OEM製品を海外に輸出し,海外において被告 SSMM自身の在庫として保有しているものを,被告ソニー又は被告SSM\nSを介して海外の顧客に販売する取引形態)によって被告らが得た利益につ いて,特許法102条2項の推定が及ぶか否かについて検討する。この点, 被告らは,取引形態2によって得られた利益は,全て海外での販売行為によ り発生したものであるから,属地主義の原則から,これには上記推定が及ば ないと主張する。
弁論の全趣旨(被告準備書面(7))によれば,被告OEM製品の取引形態 2は,具体的には,(1)平成27年12月から平成29年3月までは,被告S SMMが,被告OEM製品を日本国内で製造して海外に輸出した後に,被告 ソニーに対して販売し,さらに,被告ソ\ニーが,これを顧客に対して販売し ており,(2)平成29年4月から同年9月までは,被告SSMMが,被告OE M製品を日本国内で製造して海外に輸出した後に,被告SSMSに対して販 売し,さらに,被告SSMSが,これを被告ソニーに対して販売し,その後,\n被告ソニーが,これを顧客に対して販売しており,(3)平成29年10月以降 は,被告SSMMが,被告OEM製品を日本国内で製造して海外に輸出した 後に,被告SSMSに対して販売し,さらに,被告SSMSが,これを顧客 に対して販売したことが認められる。 上記事実に照らせば,被告OEM製品の取引形態2における販売行為は, 形式的には全て被告SSMMが被告OEM製品を海外に輸出した後に行われ ているものである。しかしながら,被告OEM製品は,その性質上,被告ら (本件期間(1)においては被告ソニー及び被告SSMM)が,本件OEM供給\n先(HPE及びQuantum)の発注を受けて製造し,本件OEM供給先に対し てのみ販売することが予定されていたものであるから,被告SSMMが被告\nOEM製品を日本国内で製造して海外に輸出し,被告ソニーや被告SSMS\nに販売し,さらに被告ソニーや被告SSMSがこれを顧客(本件OEM供給\n先)に販売するという一連の行為が行われた際には,その前提として,当然, 当該製品の内容,数量等について,被告らと本件OEM供給先との密接な意 思疎通があり,それに基づいて上記の被告SSMMによる日本国内での製造 と輸出やその後における被告らによる販売が行われたことを優に推認するこ とができる。そうであれば,上記一連の行為の一部が形式的には被告OEM 製品の輸出後に行われたとしても,上記一連の行為の意思決定は実質的には 被告OEM製品が製造される時点で既に日本国内で行われていたと評価する ことができる。被告らは,被告SSMMが本件OEM供給先から提供を受け たフォーキャストと,実際の被告OEM製品の受注は必ずしも一致しないこ とから,被告SSMMの製造・輸出と,その後の販売行為は独立した別々の 行為である旨主張するが,被告SSMMは本件OEM供給先から提供される フォーキャストで示された予想される発注量に基づいて被告OEM製品を製\n造し,被告らはこれを販売していたものであるから,月々のフォーキャスト と受注が必ずしも一致しないことをもって,被告らの行為ないしその意思決 定の一連性が否定されるものではない。また,被告らは,本件OEM供給先 からの被告OEM製品の受注,被告OEM製品の海外倉庫からの出庫(海外 倉庫の管理を含む)及びOEM顧客への発送,並びにOEM顧客に対する請 求を,各国に本拠地を有する各現地協力会社に委託しており,これらの業務 は全て,日本国内ではなく海外において行われたものであるとも主張するが, 単に事実行為の一部を海外の協力会社に委託していたと主張するにすぎない ものであって,上記一連の行為の意思決定が実質的に日本国内で行われてい たと評価することができるという上記結論を何ら左右するものではない。 加えて,少なくとも,本件特許権1の侵害行為である被告OEM製品の国 内での製造及び輸出が被告らによる共同不法行為であると認められる(前記 7参照)以上,被告らによる販売行為が,全て被告SSMMが被告OEM製 品を海外に輸出した後に行われたものであるとしても,被告らの販売行為に よる利益は,被告らによる国内における上記共同不法行為(被告OEM製品 の国内での製造及び輸出)と相当因果関係のある利益(原告にとっての損害) ということができ,侵害行為により受けた利益といえる。 したがって,取引形態2によって被告らが得た利益についても,特許法1 02条2項の推定が及ぶと解すべきであり,このように解しても,我が国の 特許権の効力を我が国の領域外において認めるものではないから,属地主義 の原則とは整合するというべきである。これに反する被告らの主張は採用で きない。
・・・
(4) 推定覆滅事由の存否及びその割合(争点11−4)
ア 被告製品が本件発明1の作用効果を奏していないとの主張について 被告らは,被告製品においては,硬度の高い磁性層表面を形成している\nことにより,裏写りを十分に抑制することができていること,また,本件\n発明1の構成要件1Cを充足する製品としない製品の保存試験(乙204,\n206)の結果などから,被告製品が本件発明1の作用効果を奏していな いと主張する。 しかしながら,前記5(4),(5)説示のとおり,本件明細書1・表1の記\n載からは,磁性層表面及びバックコート層表\面の10μmピッチにおける スペクトル密度,磁性層の中心面平均表面粗さ,六方晶フェライト粉末の\n平均板径のそれぞれが本件発明1−1に規定された範囲内である実施例は, 比較例よりも保存前後のSNRの変化が小さいことを読み取ることができ, そこから,本件発明1により発明の課題を解決することができるものと理 解できるから,そうである以上,本件発明1の技術的範囲に属する被告製 品は本件発明1の作用効果を奏していると認められ,これを覆すに足りる 証拠はない。 これに対し,被告らは,被告製品が本件明細書1の実施例に記載されて いる磁気テープとは材質・組成等が異なるものであり,構成要件を充足す\nるからといって当然に明細書に記載されている発明の効果を奏すると認め られるものではないと主張するが,本件明細書1の実施例に記載されてい る磁気テープと被告製品とは材質・組成等が異なるとしても,そのことに よって被告製品が本件発明1の発明の効果を奏していないものと認めるに 足りる証拠はない。被告らはその他るる主張するが,いずれも上記結論を 左右しない(なお,原告の製品が本件発明1の実施品でないとする主張に ついては,その主張の根拠である測定結果(乙116,117)が前記4 (2)イ(ア)の説示に照らして信用できないから,採用できない。)。
なお,被告らが主張する,被告製品が硬度の高い磁性層表面を形成して\nいる点について検討するに,確かに,証拠(乙197ないし199)によ れば,磁性層表面が硬いほど裏写りが生じにくいことが認められ,また,\n本件発明1の構成要件1Cを充足しないように調整した被告製品において,\n高温保存の前後でエラーレートに有意な変化は生じなかったこと(乙20 4)からすれば,本件発明1の構成要件1Cを充足しないように調整した\n被告製品においては,硬度の高い磁性層表面を形成していること(原告は\n特に争っていない)によって,高温保存後の電磁変換特性の悪化が抑えら れているものと認められる。 (なお,原告は,甲96の実験を根拠に,磁性層の硬度を高めたとして も裏写りは防止できないと主張するが,同実験においては,磁気テープの 硬度の指標として引張り強度が用いられているところ,裏写りによる磁気 テープの電磁変換特性の悪化を防止するための磁性層の硬度の指標として は,押込み強度が用いられるべきである(乙197・段落【0024】, 【0026】,乙205)から,同実験によっても,磁性層の硬度(押込 み強度)を高めた場合に裏写りが防止できないものと認めることはできな い。また,原告は,エラーレートの検証がなぜ本件発明1の作用効果の検 証につながるのか説明がないなどと主張するが,磁気テープにおいて電磁 変換特性が悪化した場合,エラーレートが上昇すること(乙204)から すれば,エラーレートの変化を検証することで電磁変換特性の変化も検証 できるものと考えられる。)。 しかしながら,一方,証拠(乙206)によれば,本件発明1の構成要\n件1Cを充足する被告製品においても,高温保存の前後でエラーレートに 有意な変化は生じず,高温保存後の電磁変換特性の悪化が抑制されている ものと認められるが,上記のとおり,本件発明1の技術的範囲に属する被 告製品は本件発明1の作用効果を奏していると認められるところ,被告製 品において,硬度の高い磁性層表面を形成していることにより,本件発明\n1の作用効果を超えて,独自の作用効果を奏していることを認めるに足り る証拠はない。
イ 本件発明1の作用効果が被告製品の購入動機となっていないとの主張に ついて
被告らは,被告製品の顧客は,本件発明1の作用効果に着目して被告製 品を選択しているわけではなく,本件発明1の作用効果が被告製品の購入 動機となっていないと主張する。 そこで検討するに,特許法102条2項の趣旨からすれば,同条項の推 定を覆滅させる事由として認められるためには,特許権侵害がなかったと しても,被告製品の販売等による利益(の一部)は原告に向かわなかった であろう事由の存在が必要である。したがって,被告製品の顧客の購入動 機が単に本件発明1の作用効果に着目していなかったというのでは足りず (ゆえに,被告製品のパンフレットに本件発明1の作用効果がセールスポ イントとして記載されていないのみでは推定覆滅事由足りえない。),被 告製品の顧客の購入動機が,被告製品の独自の技術や性能に着目したもの\nであったことを具体的に主張立証する必要がある。 そして,被告らは,被告製品の顧客の主要な購入動機として,被告製品 が大記録容量及び高速データ転送速度を実現した製品である点,記録媒体 としての磁気テープの利点(保存時に通電が不要である点等),単一ドラ イブを用いて時期テープカートリッジへのデータ記録を行った場合におけ る,記録容量,転送レート及び記録速度の安定性(原告製品と比較してよ り優れた性能を有すること)を挙げるが,これらの点が被告製品独自のも\nのであることや,仮に独自のものであったとしても,それが原告製品と比 較して異なる程度,及び,これらの点が被告製品の顧客の主要な購入動機 となっていたことを認めるに足りる証拠はないから,仮に本件特許権1の 侵害がなかったとしても,これらの点のために,被告製品の販売等による 利益(の一部)は原告に向かわなかったであろうと認めるには足りない。 なお,前記アのとおり,本件発明1の技術的範囲に属する被告製品は本 件発明1の作用効果を奏していると認められるところ,被告製品において, 硬度の高い磁性層表面を形成していることにより,本件発明1の作用効果\nを超えて,独自の作用効果を奏していることを認めるに足りる証拠はない し,仮に,被告製品において,磁性層の素材の硬度を高めることにより本 件発明1と同様な独自の作用効果を一部奏しているとしても,そのような 被告製品独自の作用効果がどの程度生じているのかは不明である上,その 点が被告製品独自の購入動機となっていたとも認められない(被告自身が 本件発明1の作用効果は購入動機となっていない旨主張している。また, 被告製品の広告(甲97)では,データの長期保存について記載されてい るところ,本件発明1の作用効果である長期保存後の裏写りの防止は,デ ータの長期保存に資するものであるから,被告製品が本件発明1の作用効 果を有していることは,間接的には購入の動機の一因になっているものと 考えられるが,上記のとおり,そのような作用効果ひいては購入の動機が 被告製品独自の構成によって生じたり,高められたりしたものと認めるこ\nとはできない。)。したがって,仮に,被告製品が磁性層の素材の硬度を 高めることで本件発明1の作用効果を一部奏しているとしても,そのこと によって,仮に本件特許権1の侵害がなかった場合に,被告製品の販売等 による利益(の一部)は原告に向かわなかったであろうと認めることはで きない。
ウ 以上のほか,被告らは,本件発明1の技術的範囲に属さない代替製品を 製造・販売することできたことも主張するが,現にそのような代替製品を 製造・販売していたものではなく,その可能性にとどまるものであるから,\n推定覆滅事由として認めることはできない。 したがって,特許法102条2項の推定を覆滅させる事由を認めること はできない。

◆判決本文

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平成29(ワ)6334  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和2年1月16日  大阪地方裁判所(21部)

 102条2項に基づく損害として約1000万円が認められました。経費として、「単に被告らの従業員が被告製品の製造に関与しているというだけでは,侵害品である被告製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を要したと認めることはできず・・」と判断されています。

 まず,原告の主位的主張について検討すると,被告らは被告製品を製造販 売等し,被告製品の包装箱には「発売元」として被告ナプラが,「製造販売元」と して被告ビー・エス・ピーが記載されていたこと,その株主及び代表取締役が同一\nであることを踏まえると,被告らは原告に対して共同不法行為に基づく損害賠償責 任を負うというべきである。 そして,原告と被告ナプラは理美容室向け毛髪化粧品の分野の競業企業であり, 原告は被告製品と競合する「エルジューダ サントリートメント セラム」という UVケアオイル(アウトバストリートメント)を販売しているから(弁論の全趣旨), 特許権者である原告に,被告らによる特許権侵害行為がなかったならば利益が得ら れたであろうという事情が存在すると認めることができる。したがって,本件には 特許法102条2項が適用される。
(2) 特許法102条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額は,侵 害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりその 製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であり, その主張立証責任は特許権者側にあるものと解すべきである(知財高裁令和元年6 月7日判決・最高裁ウェブサイト)。 このような観点から,被告らの利益額を検討するが,被告らに共同不法行為が成 立することから,被告らを一個の製造,販売の主体と見て,被告らにいくらの利益 が生じたかという観点から検討する。
ア 被告製品の売上金額
被告らが一旦,被告製品1を1万0056個販売し,その売上金額が737 万5231円(税込)であったこと,被告製品2を4716個販売し,その売上金 額が557万6552円(税込)であったことは,当事者間に争いがない。 もっとも,被告らは,原告が損害賠償を請求している平成29年2月2日から平 成31年4月2日までの被告製品の出荷分についても返品があったとして,その売 上金額を差し引くべきと主張する。 そこで,この点について検討すると,上記期間の出荷分に返品があり,その返品 に係る売上金額が計上されない場合には,被告らにそれに相当する利益があったと いえないことは明らかである。したがって,特許法102条2項の利益の額の算定 に当たっては,上記期間の出荷分に返品があった場合には,売上金額の算定に当た って,返品に係る売上金額を控除すべきである。 そして,上記期間における被告製品の返品数は,乙39及び弁論の全趣旨によれ ば,被告製品1が124個(その売上金額は,合計9万1065円(税込)),被 告製品2が21個(その売上金額は,合計2万4948円(税込))と認められる。 原告は,返品されたのは平成29年2月1日以前の出荷分である旨主張するが, 乙39記載の返品時期に照らし,同月2日以降の出荷分である可能性は否定できず,\n前記認定に反する証拠があるわけでもないから,被告らに上記金額に相当する売上 げないし利益が生じたことを認めるには足りないというべきである。 したがって,被告製品の販売個数及び売上金額は,次のとおりと認められる。
販売個数 売上金額(税込)
被告製品1 9932個 728万4166円
被告製品2 4695個 555万1604円
合計 1万4627個 1283万5770円
イ 被告らの経費の額
(ア) 商品原価
被告らは,乙27記載の各経費を控除すべきと主張するのに対し,原告は これを否認して争い,予備的に,被告製品1について204円/個,被告製品2に\nついて330円/個の限度で控除するにとどめるべきと主張する。そこで,乙27 記載の各経費について,控除の可否を検討する。
a バルク原価(原料原価,調合光熱費及び調合手間)
乙40及び弁論の全趣旨によれば,被告らが被告製品を製造販売するに 当たり,バルク原価として,原料原価及び調合光熱費を要したと認められ,その性 質上,これらは侵害者である被告らにおいて侵害品である被告製品を製造販売する ことによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費に当たると認め られる。そして,上記書証等によれば,原料原価は(中略)円/kg,調合光熱費は (中略)円/kgを下らないと認められるところ,これによれば,被告製品1個当た りのこれらの費用は,被告製品1について(中略),被告製品2について(中略) を下らないと認められる。 これに対し,乙40では「調合手間」もバルク原価に含み,これは調合作業の人 件費に相当するものと説明されている。しかし,単に被告らの従業員が被告製品の 製造に関与しているというだけでは,侵害品である被告製品の製造販売に直接関連 して追加的に必要となった経費を要したと認めることはできず,これに当たること を認めるべき事情は主張立証されていない。したがって,「調合手間」については, 経費として控除すべきとはいえない。
b 容器,ポンプ,キャップ,一本箱,添付文書,内箱,外箱に係る費用
乙27及び弁論の全趣旨によれば,被告らが被告製品を製造販売するに 当たり,これらの費用を要したと認められ,その性質上,これらは侵害者である被 告らにおいて侵害品である被告製品を製造販売することによりその製造販売に直接 関連して追加的に必要となった経費に当たると認められる。そして,上記書証等に よれば,被告製品1個当たりのこれらの費用は,被告製品1について合計(中略) 円,被告製品2について合計(中略)円を下らないと認められる。
c 運賃,関税輸送費
乙27,39及び弁論の全趣旨によれば,被告らが被告製品を製造販売 するに当たり,これらの費用を要したと認められ,その性質上,これらは侵害者で ある被告らにおいて侵害品である被告製品を製造販売することによりその製造販売 に直接関連して追加的に必要となった経費に当たると認められる。そして,上記書 証等によれば,被告製品1個当たりのこれらの費用は,被告製品1について運賃(中 略)円,関税輸送費(中略)円,被告製品2について運賃(中略)円,関税輸送費 (中略)円を下らないと認められる。
d 手間
乙27,39では「手間」も商品原価に含み,これは女性7名による作 業や添付文書の差込みに関する経費である旨説明されている。しかし,前記aの「調 合手間」と同様の理由により,これを経費として控除すべきとはいえない。
e 原告の主張について
原告は乙27記載の各経費を要したことを否認し,仮定による試算結果 にすぎないなどと主張するが,被告製品の製造販売に当たって前記aないしcで控 除を認めた諸経費を要することは明らかであり,また前記認定に反する証拠がある わけでもないから,前記認定は左右されない(被告らの利益額の立証責任が原告に あることは前述したとおりである。)。
f 控除すべき経費の額
商品原価として控除すべき経費の額は,被告製品1について合計217. 02円/個,被告製品2について合計364.21円/個と認められ(弁論の全趣 旨によれば,これらの金額は税込みの金額と認められる。),これによると,商品 原価は合計386万5409円となる。 計算式:217.02×9932個+364.21円×4695個=386万5 409円(小数点以下切上げ)
(イ) UV防止効果の試験費用
被告らは,平成28年3月31日と同年5月20日付けで依頼したSPF・ UVAPF測定試験に係る費用(乙34の1ないし35の2)を経費として控除す べきと主張する。 しかし,同年3月31日付け依頼分については,被告の主張によっても,被告製 品を研究開発する過程で支出された費用にとどまるものといわざるを得ず,被告製 品そのものについて試験をしたものとは認められないから,この費用をもって,侵 害品である被告製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費に当たる ということはできない。 これに対し,同年5月20日付け依頼分について,原告はこれが被告製品に関す る試験であることを前提としつつ,平成29年2月2日以降に販売された製品その ものについて行われた試験ではないという理由で,経費として控除することを争っ ている。しかし,被告製品は,化粧料としての性質上,これを製造販売するために は,平成28年5月20日付け依頼分のような試験を行うことが必要不可欠であり, この試験は,平成29年2月2日以降に被告製品を販売するのにも必要であったと いうことができる。そうすると,上記試験の費用(86万4000円(税込))は, その全てが侵害品である被告製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった 経費に当たるということはできないが,原告が本件で損害賠償を請求している期間 の被告製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となったと認められる部分につ いては,経費として控除するのが相当である。 控除する金額については,原告が本件で損害賠償を請求している期間における被 告製品の調合量(弁論の全趣旨によれば,310kg)の,それ以外の期間も含めた 被告製品の調合量(弁論の全趣旨によれば,6070kg)に対する割合によって按 分して算定すべきであり,原告が本件で損害賠償を請求している期間の終期の後に も被告製品が販売されていることをも考慮して,原告が主張し,被告らも予備的に\n主張する4万円の限度で,原告が本件で損害賠償を請求している期間の被告製品の 製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費と認めるのが相当である。
(ウ) 被告らの経費の額
以上によれば,被告らの経費の額は,合計390万5409円となる。 計算式:386万5409円+4万円=390万5409円
ウ 被告らの利益額
前記ア及びイによれば,被告らの特許権侵害行為による利益額は,893万 0361円となり,この額が原告の損害額と推定される。 なお,原告は予備的に特許法102条3項に基づく損害を請求しているが,原告\nが主張する同項に基づく損害額は上記金額を上回らないから,同条2項に基づく損 害額をもって原告の損害額とすべきである。
エ 弁護士費用
原告は,原告訴訟代理人弁護士に委任して,本件の各請求をしているところ, 差止請求分も考慮し,被告らの特許権侵害行為と因果関係のある弁護士費用は,1 10万円と認めるのが相当である。
オ 以上より,原告の損害額は,1003万0361円となる。

◆判決本文

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令和1(ネ)10036  特許権侵害差止等請求控訴事件  民事訴訟 令和2年1月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 フランジに特徴がある梁補強金具の発明について、特許法102条2項における推定覆滅を主張しましたが、裁判所は「覆滅すべき事情があるとは認められない」と判断しました。

ア 推定覆滅の事情
 特許法102条2項における推定の覆滅については,同条1項ただし書の事情と 同様に,侵害者が主張立証責任を負うものであり,侵害者が得た利益と特許権者が 受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。例えば, (1)特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在すること(市場の非同一性),(2)市場 における競合品の存在,(3)侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),(4)侵害品の 性能(機能\,デザイン等特許発明以外の特徴)などの事情について,特許法102 条1項ただし書の事情と同様,同条2項についても,これらの事情を推定覆滅の事 情として考慮することができるものと解される。また,特許発明が侵害品の部分の みに実施されている場合においても,推定覆滅の事情として考慮することができる が,特許発明が侵害品の部分のみに実施されていることから直ちに上記推定の覆滅 が認められるのではなく,特許発明が実施されている部分の侵害品中における位置 付け,当該特許発明の顧客誘引力等の事情を総合的に考慮してこれを決するのが相 当である。
イ 控訴人の主張について
(ア) 控訴人は,本件各発明等は,その全体が被告各製品の全体を対象とするもの の,特徴部分は,梁補強金具の外周部の軸方向の「片面側の端部に形成」した「フ ランジ部」であり,被告各製品においては,ダイヤリングの外周部の軸方向の「片 面側の端部に形成」した「つば状の出っ張り部の外周部」がこれに該当するところ, 侵害製品全体に対する特許発明の実施部分の価値の割合,すなわち特許発明の寄与 度を考慮すべきであり,上記推定は,少なくとも70%の割合で覆滅されるべきで あると主張する。 前記認定の本件明細書等の記載(引用に係る原判決「事実及び理由」第4の1(1)) によれば,本件各発明等は,各種建築構造物を構\成する梁に形成された貫通孔に固 定され当該梁を補強する梁補強金具およびこれを用いた梁貫通孔補強構造に関し\n(【0001】),梁に開設された貫通孔に対する配管の取り付けの自由度を高める とともに大きさの異なる貫通孔に対しても材料の無駄を省きつつ必要な強度まで補 強することができ,柱梁接合部に近い塑性化領域における貫通孔設置を可能とする\n梁補強金具と,前記梁補強金具を用いた梁貫通孔補強構造とを提供するために(【0\n010】),梁に形成された貫通孔の周縁部に外周部が溶接固定されるリング状の梁 補強金具であって,その軸方向の長さを半径方向の肉厚の0.5倍〜10.0倍と し,前記貫通孔より外径が大きいフランジ部を前記外周部の軸方向の片面側に形成 し(訂正前の請求項1),さらに,フランジ部を前記外周部の軸方向の片面側の端部 に形成し,前記梁補強金具の軸方向の前記片面側の面は,前記梁補強金具の内周か ら前記梁補強金具の前記外周部の一部である前記フランジ部の外周まで平面である という構成を採用したものであって(訂正後の請求項1),梁に外力が加わったとき\n貫通孔の周縁部に生じる応力は,ウェブ部から貫通孔の中心軸に沿って離れるに従 って徐々に小さくなることから,梁補強金具の軸方向長さを必要以上に長くしない ように規制することにより,大きさの異なる貫通孔に対しても材料の無駄を省きつ つ必要な強度まで補強することができ(【0012】),また,フランジ部により軸方 向の位置決めを正確かつ迅速に行うことができるという効果を奏するものである (【0048】)。 このように,本件各発明等の特徴部分が,フランジ部のみにあるということはで きない。
(イ) また,控訴人は,本件各発明等の特徴部分であるフランジ部に特有の効果 は,「軸方向の位置決めを正確かつ迅速に行うことができる」というものにとどまり, 同効果は,被告各製品の宣伝広告において,需要者に何ら積極的に訴求されていな いなどと主張する。 しかし,控訴人のウェブサイト(甲3)や被告各製品のカタログ(甲4)におい て,被告各製品のフランジ状の部分も図示され,被告各製品の特徴として,鉄骨梁 ウェブ開口に被告各製品をはめ込み,片面(つば状の出っ張り部の外周部)のみを 全周溶接することにより,取付けの際に梁の回転が不要となり施工性が大幅にアッ プするという点が挙げられている。このような施工が可能となるのも,梁補強金具\nにフランジ部に該当するつば状の出っ張り部を設けたからであると考えられ,被告 各製品の特徴は本件各発明等の構成に由来するものであると考えられる。\nこの点,控訴人は,控訴人のウェブサイトや被告各製品のカタログにおいては, 「つば状の出っ張り部の外周部」のみを溶接固定するため,「[梁の反転が不要]とな り施工性が大幅にアップ」する作用効果が需要者に訴求されているところ,これら は,控訴人により工夫された独自の工法により奏される顕著な作用効果であって, 本件各発明等の作用効果ではない旨主張する。 しかし,本件各発明等は,梁に形成された貫通孔にリング状の梁補強金具をはめ 込んで,フランジ部を含む外周部が溶接固定される梁補強金具であるところ,被告 各製品の,鉄骨梁ウェブ開口に被告各製品をはめ込み,片面(つば状の出っ張り部 の外周部)のみを全周溶接するという取付方法は,本件各発明等に係る梁補強金具 の取付方法として通常想定される態様の1つにすぎず,控訴人により工夫された独 自の工法とはいえないから,控訴人の主張は採用できない。
ウ 推定覆滅の事情は,侵害者が主張立証責任を負うものであるところ,以上に よれば,本件においては,損害額の推定を覆滅すべき事情があるとは認められない。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成29(ワ)26468

本件特許権の審取事件です。無効理由無しとした審決が維持されました。

◆平成30(行ケ)10163

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平成28(ワ)10759  特許権に基づく製造販売禁止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月30日  東京地方裁判所(40部)

 石けんの特許権侵害について、1社あたり2億円を越える損害賠償が認められました。102条1項の販売不可事情は否定されました。

(3) 譲渡数量に単位数量当たりの利益を乗じた額
前記(1)の譲渡数量に前記(2)の単位数量当たりの利益を乗じた額は,以下 のとおりとなる。
ア 被告日本生化学について
原告長寿乃里
21万3457個×1225円=2億6148万4825円
原告イング
23万9658個×993円=2億3798万0394円
イ 被告ブレーンコスモスについて
原告長寿乃里
17万0132個×1225円=2億0841万1700円
原告イング
19万1015個×993円=1億8967万7895円
ウ 被告ビーシーリンクについて
原告長寿乃里
135個×1225円=16万5375円
原告イング
152個×993円=15万0936円
(4) 特許法102条1項ただし書の「販売することができないとする事情」の 有無
ア 競合品の存在
証拠(甲8,乙24)によれば,シラスが配合された洗顔料が原告製品 及び被告製品のほかに8銘柄が存在したことが認められるが,販売数が多 いものでも,株式会社メディカルドーズの「お茶!入ったよ〜わっぜ!! 火山灰石けん」が平成22年9月から平成27年12月までに2万754 8個を販売したにとどまり,他の銘柄は,販売数が約1000個から38 00個程度にとどまるか,販売数が明らかではないから,これらの洗顔料 の存在が,「販売することができないとする事情」に当たるということは できない。
イ 原告製品の販売経過
被告日本生化学は,被告製品を販売していない月でも原告製品の販売が 落ちている月があることから,原告製品の販売は被告製品の販売に影響を 受けていなかったと主張するが,原告製品についてそのような販売経過と なった原因としては様々なものが考えられるのであり,上記の販売経過が 直ちに「販売することができないとする事情」に当たるとはいえない。
ウ 薬機法上の区分及び本件発明1の作用効果
被告日本生化学は,原告製品及び被告製品について,薬機法上の区分が 異なること及び宣伝広告の内容から,本件発明1の作用効果は原告製品及 び被告製品の販売に寄与していないと主張する。 しかし,消費者が薬機法上の区分を意識して商品を選択するとは考え難 く,前記判示のとおり,原告製品と被告製品はいずれもシラスが配合され た石けんという同種の商品であり,かつ,被告製品は本件発明1の作用効 果を奏するのであるから,両者は市場で競合する製品であるということが できる。 また,被告ブレーンコスモスは,被告製品の説明において,原告製品は 発売以来700万個以上が売れた大ヒット商品であると紹介するととも に,被告製品には,人工皮膚成分「リピジュア」が配合され,原告製品と 同じ価格だが,内容量が多いという2点が異なることを挙げて,被告製品 の宣伝をしていたことが認められ(甲14),このような宣伝内容によっ て,原告製品ではなく被告製品を購入した消費者も相当数いるものと考え られる。 そうすると,被告日本生化学が主張する上記事情は,「販売することが できないとする事情」に当たるとはいえない。
エ 販売ルートの違いについて
被告ブレーンコスモスらは,原告らは消費者に直接販売する小売である のに対し,被告ブレーンコスモスは販売数のうち95%は企業に対する卸 売りであり,販売ルートが異なるから,競合しないと主張する。 しかし,原告製品及び被告製品はいずれも最終的には一般消費者によっ て購入され,使用される石けんであり,被告製品が一般消費者に販売され る段階では原告製品と競合すると認められるところ,被告製品が存在しな ければ,被告ブレーンコスモスが他の企業に被告製品を卸売りすることも なく,ひいては被告製品が一般消費者に販売されることもないのであるか ら,被告ブレーンコスモスが卸売りを主たる取引形態とするからといって, 原告製品と被告製品が市場において競合することは左右されず,「販売す ることができないとする事情」に当たるとはいえない。
オ 東日本大震災の義援金に充てる旨のアテンションシールについて
被告ブレーンコスモスらは,売上げの一部を東日本大震災の義援金に充 てる旨記載されたアテンションシールを被告製品に貼っていた期間(平成\n23年4月1日から同年9月30日まで)の販売数がそうでない期間の販 売数を上回っており,同シールが被告製品の売上げに寄与した旨主張する。 しかし,平成23年4月1日から同年9月30日まで被告製品に上記シ ールが貼られていたことを認めるに足りる証拠はない上,仮に同シールが\n貼付されていたとしても,平成23年1月から同年9月までの被告製品\n(100gのもの)の販売数は毎月概ね1万個程度で推移しており(丙1, 21),販売数の増加が同シールによるものとは認め難く,被告ブレーン コスモスらの主張はその前提を欠き,採用できない。
カ 海外市場における競合
被告ブレーンコスモスらは,被告ビーシーリンクは専ら海外に被告製品 を販売しているところ,原告製品と被告製品は海外市場において競合しな いと主張する。 しかし,証拠(甲76,77,84〜87,108〜112,丙25〜 28)によれば,被告ビーシーリンクは,平成25年2月から11月にか けて,米国,中国,シンガポール,ラトビアに被告製品を販売していたこ と,原告長寿乃里は,自ら又は株式会社フェローシップ等を介して,以下 のとおり海外に原告商品を出荷したことが認められる。
・・・
以上の事実関係に照らせば,原告製品と被告製品は,少なくとも米国及 び中国の海外市場において競合していたことが認められるから,被告ビー シーリンクが専ら海外において被告製品を販売していることは,「販売す ることができないとする事情」に当たるとはいえない。
キ 以上のとおり,被告らが主張する事情は,いずれも「販売することがで きないとする事情」に当たらないから,特許法102条1項に基づく損害 額の推定は覆滅されない。

◆判決本文

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平成29(ワ)31544  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年8月30日  東京地方裁判所

 東京地裁40部は、技術的範囲に属すると判断し、102条2項に基づく損害賠償を認めました。

 上記グラフにおけるZn(青線)とPk(赤線)の線形性にほぼ差異はない 上,ZnとXcの差(Zn−Xc)のZnの値に対する比率((Zn−Xc)/Z n)は,Brix値が0%のとき約4.98%,10%のとき約3.82%, 20%のとき約2.75%,30%のとき約1.62%,40%のとき約1. 46%,50%のとき約0.99%であって,ZnとXcの値の差は全体的に かなり小さく,Zn≒Xcと評価しるものであって,そうすると,式(B)は, 重心であるZnの平均値を出しているにすぎないというべきである。 また,式(B)の分子の式(Zn+(Zn−Xc))については,(1)Xc値> Zn値の場合,(2)Xc値=Zn値の場合,(3)Zn値>Xc値の場合があり得るが, (2)の場合にはPkの値は重心位置と一致する上,上記計測結果のような(1)の 場合又は(3)の場合に,式(B)により算出されるPkの値(被告の主張によれ ば臨界角点)が理論上の臨界角点により近似することの合理的な説明はなさ れておらず,そのことを示す的確な証拠もない。そうすると,式(B)が臨 界角点を求めるものとしての技術的意義を有すると認めることはできず,む しろ,前記のとおり,ZnとXcの値の差は全体的にかなり小さく,Zn≒X cと評価し得るものであることを踏まえると,式(B)は重心であるZnの平 均値を出しているものというべきであり,さらに,被告製品において式(B) に基づき複数の試行を行っていることも,同製品が構成要件Eを充足すると\nの結論を左右しない。
ウ 式(C)について
本件発明における式(2)は,「Pc=Pc’+C」というものであると ころ,本件明細書等の段落【0035】〜【0038】,段落【0040】, 【0041】によれば,定数Cは,重心位置Pc’に加算して臨界角点Pc (=Pc’+C)を求めるための定数であり,屈折率が既知である試料を用 いた実験により予め決定された値であると認められる。そして,本件発明は,\nこのように式(1)と式(2)を組み合わせることにより,臨界角点を直接 求めるよりも,同点をより正確に求めることができるとの効果を奏するもの であると認められる。 他方,被告製品の用いている式(C)は,「ΔPc=PCT20−PC0」とい うものであるところ,被告製品説明書,証拠(甲7,8,乙1,9)及び弁 論の全趣旨によれば,PCT20は,式(A)により得られたZn値を式(B) により調整したPk値(前記判示のとおり,重心であるZnの平均値)を,2 0°Cの環境下での値に換算した値であるから,この値は,上記手順により調 整された光量分布曲線の一次微分曲線(あるいは一次差分曲線)の重心位置 のアドレス値(甲7・10頁における「ゼロセット後 10%測定」欄の「Bary T20」の値(30.146))であり,PC0は,20°Cの環境下で濃度0%の 水を用いて計測した重心位置のアドレス値(同頁における「水基準書き込み 後 水」欄の「CAL OffSet」の値(18.54758))であること,また, 水の屈折率は既知であるところ,被告製品の理論上の臨界角点のアドレス値 は18.50000であることが認められる。 そして,甲7によれば,被告製品は,(1)上記PCT20の値(上記「Bary T20」 の値)を入力し,(2)「Bary T20」の値から「CAL OffSet」(水書き込みアド レス値)を差し引いた値を計算する,(3)上記(2)の値をBrix値に換算し, 「Saccharin T20」(Brix値)を算出する,(4)ゼロセットオフセット値を 読み込む,(5)「Saccharin T20」(Brix値)から「ゼロセットオフ値」を 差し引き,その結果を「Brix Value」(Brix値)として算出する,(6)「Brix Value」(Brix値)を「Final Rfact」(屈折率)に換算するという順序 でプログラムが実行されているものと認められる。 上記のプログラム実行過程のうち(2)の計算式は,試料の重心位置のアドレ ス値である「Bary T20」(PCT20)の値から水の重心位置のアドレス値であ る「CAL OffSet」(PC0)の値を差し引くものであり,試料の重心位置のア ドレス値の原点を水の重心位置のアドレス値に改めるとの意味を有するも のであるところ,このPC0値(18.54758)は理論値(水の理論上の 臨界角点のアドレス値である18.50000)との差(0.04758) を含む値であるということができる。そうすると,上記(2)の計算式は,試料 の重心位置のアドレス値から水の重心位置のアドレス値を直接差し引くも のであるが,実質的には,PCT20及びPC0の双方から水の臨界角点の理論 値(18.50000)を控除していったん同理論値を原点とする試料の重 心位置と水の重心位置の各アドレス値を算出し,さらに前者から上記差の値 (0.04758)を調整しているに等しく,試料の重心位置のアドレス値 に,屈折率が既知である水を用いた実験により予め決定された定数(−0.\n04758)を加算する計算をしているのと同義であるということができる。 したがって,式(C)は,式(2)を充足する。
(3) 被告の主張について
ア 被告は,式(1)と式(A)が形式的に異なっているから,被告製品は構\n
成要件Eを文言充足しないと主張する。 しかし,式(1)は,光量分布曲線の一次微分曲線(あるいは一次差分曲 線)の重心位置Pc’を求めるものであって,式(A)と技術的思想を同じ くするものであり,かつ,式(A)は式(1)に変形し得るものであって, 当業者であれば,式(A)と式(1)が実質的に同一の式であると認識し得 るというべきである。 そうすると,式(1)の技術的範囲は式(A)を包含するものと認めるの が相当である。
イ 被告は,被告製品におけるZnは13回算出され,更にPkを5回算出して 臨界角点Pcを算出しているのに対し,本件発明は,重心位置Pc’を1回 算出し,これに定数Cを加えてPcを算出しているのであるから,技術的思 想が異なると主張する。 しかし,Znが重心位置を求める式であると認められるのは前記のとおり であり,これを13回にわたり求めて,平均値を算出するといった手法は当 業者が容易に採用し得る技術常識に属するものと解される。また,前記のと おり,式(B)が臨界角点を求めるものとしての技術的意義を有すると認め ることはできず,むしろ,重心であるZnの平均値を出しているものという べきであることは前記判示のとおりであるから,本件発明と被告製品の技術 的思想が異なるということもできないというべきである。
ウ 被告は,PC0はΔPcを算出するための基準数値にすぎないから定数Cに 対応する概念ではなく,ΔPcも本件発明の式(2)のPcに対応する概念 ではなく,フェーズが異なるなどと主張する。 しかし,ΔPcを算出する式(PCT20−PC0)が有する意義は前記のとお りであって,被告製品においても試料の重心位置につき差分を調整すること で臨界角点を求めている点で本件発明と変わりがないから,式(C)が式(2) と実質的に異なるということはできない。
エ 被告は,本件発明における式(2)に関し,Pc’は特定の装置における 測定値ベースの臨界角点であり,定数Cは当該装置毎の個体差を較正する値 にすぎないなどと主張する。 しかし,前記のとおり,式(1)により得られるPc’は光量分布曲線の 一次微分曲線(あるいは一次差分曲線)の重心位置であるから,臨界角点と は異なるものであって,本件発明がこれに定数Cを加えることで臨界角点を 求めるものであることは,前記判示のとおりである。
(4) 以上のとおり,被告製品は構成要件Eを充足し,また,被告製品が構\成要件 A〜D及びFを充足することは前記前提事実(3)ウのとおりであるから,被告 製品は,本件発明の技術的範囲に属する。
・・・
(1)特許法102条2項に基づく損害額について
ア 被告は,(1)平成28年9月9日から平成30年2月9日までの間に被告製 品を137個販売し,(2)その売上総額は204万4164円であり,(3)被告 製品1個当たりの製造原価は1万0249円であるが,(4)特許法102条2 項所定の被告の利益額を算出するに当たっては,(3)に加えて配送費合計16 00円を控除すべきと主張するところ,(1),(3)及び(4)については,当事者間 に争いがなく,証拠(乙10〜12)によれば,(2)の事実を認めることがで きる。 そうすると,原告の損害額は,特許法102条2項に基づき,63万84 51円(=204万4164円−(137個×1万0249円+1600円)) と推定される。被告がこれを超える利益を得たことを認めるに足りる証拠は ない。
イ 被告は,寄与率を考慮すべきと主張する。しかし,本件発明は,屈折率を 測定するための臨界角点の算定という,屈折計の本質的ないし根幹的技術に 関するものであって,その可分的な一部に関するものではないから,本件で 寄与率を考慮すべきとは認められない。被告主張の諸事情は,この結論を左 右しない。
(2) 弁護士・弁理士費用について
本件事案の難易,請求額及び認容額等の諸般の事情を考慮すると,被告の侵 害行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金として6万円を認めるの が相当である。

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平成28(ワ)16912  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月4日  東京地方裁判所

 CS関連発明についての特許権侵害事件です。東京地裁40部は、差止、102条2項による損害賠償を認めました。損害賠償額は計算鑑定人が計算しています。総額は不明です。 なお、クレームは「〜情報管理プログラム。」です。

2 争点1−1(被告プログラムにおける架電番号が「架電先の電話器を識別す る識別情報」に当たるか)について
(1) 証拠(甲6,7)及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件不動産サイトにお ける物件の連絡先への架電等の仕組みは,以下のとおりであると認められる。
ア 本件不動産サイトにおいて,ユーザが特定の不動産物件の詳細情報を選 択すると,例えば,以下の画面のような,当該物件についてのウェブペー ジが表示され,同ページの下段・右側に「電話」ボタンが表\示される。
イ 上記「電話」ボタンをユーザが選択すると,例えば,次の画面に遷移す る。同画面には,架電番号が表示されるとともに「このページを開いて\nから10分以内にお電話をお願いいたします。」「上記無料通話番号は, 今回のお問合せ用に発行したワンタイムの電話番号です。」と表示される。\n
ウ ユーザが上記画面に表示された架電番号に架電すると,当該物件を管\n理する不動産業者に宜接通話が繋がるが,一定時間を経過すると,当該 架電番号に架電しでも電話は繋がらず,接続先がない旨の自動音声案内 が流れる。
エ 上記イの画像の表示から,架建言することなく10分以上経過してから, 間一携帯端末で,同一の不動産物件について架電番号を表示すると,例え\nば,以下のとおり,別の架電番号が表示される。\n
オ 上記ウにより繋がらなくなった架電番号は, 53Jのユーザ、端末や商品に 対応した電話番号として再利用し得る。なお,ユーザが,同架電番号に いったん架電をすると,その後も,同番号は端末上にリダイヤノレのため 再表示され,同時に,別の端末において異なる物件の連絡先として同ー\nの架電番号が表示され得る。\n
(2) 被告は,被告プログラムにおける架電番号が「架電先の電話器を識別する 識別情報J (構成要件(1))に該当しないので,被告プログラムは,構成要件\n(1)を充足しないと主張する。 しかしr識別情報」の意義については,本件明細書等の段落(0019) には「識別情報とは,架電先に関連付けられることによりその架電先を識別 する情報であj ると記載されているところ,証拠(甲6,7,乙2) によれ ば,被告プログラムを使用してサービスを提供している本件不動産サイトに おいては,ユーザが希望する物件を選択すると,当該物件の詳細情報が表示\nされた画面に問合せのための専用電話番号が表示され,当該番号が表\示され るとその時点で架電番号がロックされた状態となり,その表示から一定期間,\n当該架電番号に架電するとその不動産業者に架電されるとの事実が認められ る。そうすると,被告プログラムにおける架電番号は,「架電先に関連付け られることによりその架電先を識別する情報」であり,構成要件(1)にいう 「識別情報」に該当するということができる。
(3) また,原告が行った実験結果(甲8・実施結果1。なお,以下の実験結果 はいずれも被告プログラムを使用している本件不動産サイトを利用したもの である。)によれば,(i)本件不動産サイトのユーザが,端末を用い,特定 の物件の連絡先画面を表示させると,特定の架電番号が表\示された,(ii)そ のまま架電せずに前記連絡画面を閉じ,再び物件の連絡先画面を表示させる\nと同じ架電番号が表示された,(iii)ユーザが,異なる端末の電話機能を用い,\n同一の架電番号に架電しても,同一の連絡先である広告主に接続されたとの 事実が認められる。 上記結果は,被告プログラムにおいて,ある端末に特定の物件の連絡先に 繋がる架電番号を表示させると,それにより当該番号と架電先が関連付けら\nれ,それ以降は当該架電番号に対応する連絡先の不動産業者が識別されると の上記(1)の認定を裏付けるものであり,同結果に照らしても,被告プログ ラムにおける架電番号は,構成要件(1)にいう「識別情報」に該当するという ことができる。
(4) これに対し,被告は,架電番号と発信者番号とで架電先を識別するので, 架電番号は,本件発明にいう「識別情報」に当たらないと主張し,端末に表\n示させた架電番号に発信者番号非通知の設定で架電した場合,架電先にも接 続されないという実験結果(乙3)は被告主張を裏付けるものであると主張 する。 しかし,架電前においては,被告プログラムは当該ユーザの発信者番号を 知らないはずであるから,架電前において,同プログラムが架電番号と発信 者番号とで架電先を識別するとは考え難い。上記実験において端末に表示さ\nれた架電番号に架電した場合に架電先に接続されなかったのは,後記のとお り,被告プログラムが当該架電番号に架電した時点以降,架電番号と発信者 番号とで架電先が識別されていること(この点については当事者間に争いが ない。)に起因するものと考えるのが相当であって,上記実験結果は,架電 前において表示された架電番号と架電先が関連付けられることを否定するに\n足りるものではない。 むしろ,原告の行った実験結果(甲9)によれば,発信者番号を送信し得 ないパーソナルコンピュータに本件不動産サイトを表\示した場合であっても, 物件の連絡先に繋がる架電番号が表示され,携帯端末から当該番号に架電し\nたところ,当該連絡先に接続したとの事実が認められ,これによれば,被告 プログラムは,架電前の時点において,架電番号により架電先を識別してい ると推認することが相当である。
(5) 被告は,乙8の実験2の結果は,被告プログラムにおいて,1つの架電番 号が,同時に複数のユーザが複数の架電先に接続するために利用されている ことを示しているので,当該架電番号のみでは架電先を識別し得ないと主張 する。
しかし,上記実験は,(i)本件不動産サイトのユーザが,端末(1)を用い, 物件1の連絡先画面を表示させると架電番号が表\示された,(ii)端末(1)の電 話機能で当該番号に架電した後,1990台分の仮想端末を用い,それぞれ\n物件2の連絡先画面を表示させた,(iii)その後,上記(i)の時点から10分 以内に,端末(2)で物件2の連絡先画面を表示すると,同一の架電番号が表\示 された,(iV)上記(iii)の後,前記(i)から10分以内に,端末(1)で再び物件 1の連絡先画面を表示すると,同一の架電番号が表\示されたというものであ ると認められる。 同実験の(iii)において,端末(2)において物件2の連絡先画面が表示された\nのは,上記(i)のとおり,端末(1)により架電をした後であるから,物件2の 連絡先画面が表示された時点においては,物件1の連絡先は,架電番号のみ\nではなく,架電番号と発信者番号とで識別されるようになっており,それゆ えに,物件2の連絡先画面において同一の架電番号を表示することが可能\に なったものと考えられる。 そうすると,上記実験も,架電前において表示された架電番号と架電先が\n関連付けられることを否定するに足りるものではないというべきである。
(6) 被告は,乙10の実験結果も,同一の架電番号が同時に複数のユーザによ って未架電の異なる架電先に架電するための番号として用いられることを示 していると主張する。
ア 乙10の実験は,(i)本件不動産サイトのユーザが,端末(1)を用い,物 件1の連絡先画面を表示させると架電番号Xが表\示され,同番号に架電し た(午前2時10分),(ii)その後,端末(1)で物件2の連絡先画面を表示\nさせると,架電番号Yが表示された(午前2時10分),(iii)その後,1 994台分の仮想端末を用い,物件3の連絡先画面を表示させ,それぞれ\n架電番号を表示させた,(iV)端末(2)を用い,前記(ii)の表示から10分以\n内に,物件3の連絡先画面を表示させると,架電番号Yが表\示され(午前 2時14分),続いて端末(2)から架電番号Yに架電した(午前2時15 分),(v)端末(3)を用い,前記(ii)の表示から10分以内に,物件4の連\n絡先画面を表示させると,架電番号Yが表\示された(午前2時15分), (vi)前記(ii)の表示から10分以内に,端末(1)〜(3)において,再度各物件 について架電番号を表示させると,いずれの端末においても架電番号Yが\n表示されたというものであると認められる。\n
イ 上記実験結果のうち,(iv)〜(vi)において端末(1)〜(3)において架電番 号Yが表示されたこと,取り分け,端末(1)において架電番号Yに架電をし ていないにもかかわらず,端末(1)及び(3)に架電番号Yが表示されたことに\nついては,ある端末(この場合は端末(1))から架電すると,当該端末の発 信者番号が被告プログラムに登録され(この点は争いがない。被告準備書 面9の14頁参照),架電済みの端末に払い出された未架電の架電番号に ついても,架電番号と発信者番号とで識別されることによるものであると 考えられる。 このことは,原告が行った実験結果(甲15)からも裏付けられる。す なわち,同実験(甲15・実験A−1,2)は,(i) 本件不動産サイト のユーザが,端末Aを用い,物件Aの連絡先画面を表示させると,架電番\n号Aが表示された,(i) 端末Aの電話機能で架電番号Aに架電した後,\n端末Aで物件Bの連絡先画面を表示させると,架電番号Bが表\示された, (iii) 前記(ii)から10分以内に,端末Bの電話機能を用い架電番号Bに\n架電しても,物件Bの連絡先である広告主には接続されなかった,(iv)他 方,前記(iii)の代わり,端末Aの電話機能を用いて架電すれば,物件Bの\n連絡先である広告主に接続されたというものであると認められる。同実験 結果によれば,架電済みの端末に払い出された未架電の架電番号について も,架電番号と発信者番号とで識別されるものと認めるのが相当である。 そうすると,上記アの(iv)〜(vi)において架電番号Yが表示されたの\nは,その時点において,端末(1)及び(2)については,架電番号Yと各端末の 発信者番号により関連付けが行われていたからであり,同実験結果も,架 電前において表示された架電番号と架電先が関連付けられることを否定す\nるに足りるものではないというべきである。
(7) 以上によれば,被告プログラムにおいて,未架電の端末にのみ架電番号が 表示されている場合には,当該架電番号は,「架電先に関連付けられること\nによりその架電先を識別する情報」であり,構成要件(1)にいう「識別情報」 に該当するということができる。そして,前記判示のとおり,被告プログラ ムが架電後においては架電番号と発信者番号とで架電先を識別しているとし ても,このことは被告プログラムが構成要件(1)を充足するとの結論を左右す るものではないというべきである。 したがって,被告プログラムは,構成要件(1)を充足する。
・・・
(1) 特許法102条2項所定の利益の額について ア 特許法102条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額は, 侵害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売すること によりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した 限界利益の額であり,その主張立証責任は特許権者側にあるものと解すべ きである(知的財産高裁平成30年(ネ)第10063号令和元年6月7 日判決参照)。 本件における計算鑑定の結果によれば,被告プログラムについては,平 成25年6月分から平成30年9月分までの間,別紙2−3(1)欄記載の売 上高があり,製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費の額は同 (2)欄記載のとおりであるので,その限界利益の額は同(3)欄記載のとおりで あると認めることができる。
イ これに対し,原告は,●(省略)●であることを指摘し,別紙2−3(2) 欄記載の変動費に含まれる●(省略)●からの仕入費の額については,そ の利益相当額50%を控除した額とするべきであると主張する(なお,当 裁判所は,この点に関する原告の主張のうち,●(省略)●が,被告サー ビスを実質的に運営する共同事業者であって,共同不法行為者に当たるな どとする主張については,時機に後れた攻撃防御方法を理由とする却下を した。)。しかし,●(省略)●されるべきものでないことは当然であり, また,その仕入価格が不当に高額に設定されていたといったような事情を 認めるに足りる証拠もないのであるから,この点に関する原告の主張を採 用することはできない。
ウ 他方,被告は,別紙2−3(2)欄記載の金額のほか,(1)通信回線及び通信 機器設備の利用料,(2)派遣労働者の費用,(3)専用プログラムの開発費も, 変動費又は個別固定費として控除すべきであると主張する。 しかし,証拠(乙30〜32)によれば,上記(1)〜(3)の費用は,被告プ ログラムにのみ費消されたものではなく,被告の提供する他のサービスに ついても費消されているものであると認められ,被告プログラムの作成や 販売に直接関連して追加的に必要となった経費であるということはできな い。 したがって,これを売上高から控除すべきであるとの被告主張は採用し 得ない。
エ もっとも,本件において,原告の請求の対象となる限界利益は,平成2 5年5月26日から平成31年4月30日までの利用に対するものである のに対し,前記計算鑑定は,平成25年6月分から平成30年9月分まで の売上を対象とするところ,乙27及び弁論の全趣旨によれば,これら各 月分の売上は,それぞれ前月分の利用に対応することが認められる。そこ で,平成25年5月の利用については,同年6月分の限界利益の額を日割 り計算し,平成30年9月から平成31年4月までの利用については,平 成30年4月分から同年9月分までの限界利益の額の平均額を採用するの が相当である。そうすると,特許法102条2項所定の利益の額は,この 計算によって得た別紙2−1(2)欄記載の額に,それぞれの時期における同 2−3(3)欄記載の消費税率を加算した額と計算されることになる。
(2) 推定覆滅事由について
被告は,被告サービスに対する本件発明の寄与率は0%と解すべきである として,特許法102条2項における推定覆滅事由があり,その割合は10 0%であると主張する。
ア 同条項における覆滅については,侵害者が主張立証責任を負うものであ り,侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害 する事情がこれに当たると解され,同条1項ただし書の事情と同様,同 条2項についても,これらの事情を推定覆滅の事情として考慮すること ができるものと解される。(前掲知的財産高等裁判所判決参照)
イ 被告は,被告プログラムの訴求ポイントは,PhoneCookieと いう独自技術を用い,ウェブと電話から得られるトランザクション情報を 効果的に利用する点であるのに対し,本件発明の特徴点は,補正手続にお いて付加された構成要件(6)であるから,被告プログラムと本件発明は訴求 ポイントが異なると主張する。 しかし,本件発明は,その構成要件が一体となって所期の効果,すなわ\nち,「架電先を識別するための識別情報を広告情報ごとに動的に割り当て て,識別情報の再利用を可能とすることにより,識別情報の資源の有効活\n用及び枯渇防止を図る」(段落【0049】)とともに,「ウェブページ への提供期間や提供回数に応じて動的に識別情報を変化させることにより, 広告効果を時期や時間帯に基づき把握すること」(段落【0050】)を 可能にするものであり,構\成要件(6)が出願審査の過程において補正により 付加されたとしても,同構成要件のみが本件発明の特徴点であると解する\nことはできない。 他方,被告プログラムを使用している本件不動産サイト(甲6)におい ては,ユーザーによる架電の負担の軽減が課題として掲げられるとともに, 「その時・その人にだけ有効な『即時電話番号』を発行」し,「静的に電 話番号を割り振るのではなく,ユーザーのアクションに応じて動的に電話 番号を割り振」るとの内容を有することが記載されていることが認められ る。 上記本件不動産サイトに記載された「その時・その人にだけ有効な『即 時電話番号』を発行」し,「動的に電話番号を割り振」ることは,「識別 情報の資源の有効活用及び枯渇防止を図る」などの本件発明の効果を発揮 する上で不可欠な要素であり,被告プログラムにおいてもこうした構成を\n備えた結果,その顧客は本件発明と同様の効果を享受しているものという ことができる。 被告は,被告サービスの訴求ポイントについて,PhoneCooki eという独自技術を用い,ウェブと電話から得られるトランザクション情 報を効果的に利用することができる点にあると主張するが,同技術が被告 サービスの売上に貢献したことを具体的に示す証拠はない。 そうすると,被告プログラムがPhoneCookieという独自技術 を用いているとしても,この点を覆滅事由として考慮することはできない というべきであり,被告がそのために被告を特許権者とする特許技術(特 許第5411290号,特許第5719409号)を使用していることも, 上記結論を左右しない。
ウ 被告は,本件発明のうち架電番号の再利用という部分の機能は,従来技\n術にすぎないと主張する。 しかし,原告が従来技術として挙げるLRU方式は,前記判示のとおり, 使用されてから最も長い時間が経った架電番号から順に利用する方式であ り,本件特許とはその採用している方式が異なるものであり,本件発明が 従来技術として利用しているものではない上,市場において本件発明と同 様の効果を奏する代替可能な技術として原告の提供するサービスと競合関\n係にあるということはできない。 また,被告は,被告を特許権者とする前記特許明細書に記載された方式 によっても,本件発明を代替することが可能であると主張するが,同方式\nは,架電番号の在庫が尽きた場合に,これを初期化し,その初期化したこ とを通知するものであり(乙18・段落【0095】),本件特許とはそ の採用している方式が異なるものであり,本件発明が従来技術として利用 しているものではない上,市場において本件発明と同様の効果を奏する代 替可能な技術として原告の提供するサービスと競合関係にあるということ\nはできない。 以上のとおり,本件発明のうち架電番号の再利用という部分の機能が従\n来技術にすぎないとの被告主張は理由がなく,この点を推定覆滅事由とし て考慮することもできない。
エ したがって,本件においては,被告が得た利益の全部又は一部について 推定を覆滅する事由があるということはできない。
(3) 小括
前記のとおり,特許法102条2項の「利益」の額は,別紙2−1(2)欄記 載の額に同(3)欄の消費税率を乗じた額であり,同項における推定覆滅事由が あるとは認められないので,被告が賠償すべき額は,その10%に相当する 弁護士費用相当額を加算し,一円単位に切り捨てた別紙2−1(5)欄のとおり と計算される。また,弁論の全趣旨によれば,これらの損害の発生日は,遅 くとも,それぞれ同(6)記載の日であると認められるので,各同日から支払済 みまでの遅延損害金の請求をすることができる。

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◆別紙1

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平成29(ワ)7576  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月19日  大阪地方裁判所

 特許権侵害の損害について、7割の限度で特許法102条2項による推定が覆滅され、3項で相当実施料率は4%と判断されました(双方争いなし)。

 以上を踏まえ,顧客吸引力の観点から被告第2製品における本件第2 及び第3特許の技術的意義の有無及び程度を検討すると,まず,本件被告カタログ 記載の「6つの特徴」の1つとして,被告第2製品は「素手で持っても痛くありま せん。」との記載がある。「テーパ部」の解釈に関する被告の主張をも考慮すると, これは「テーパ部」の存在をうかがわせるものとも理解し得るものの,いかなる構\n成によって「素手で持っても痛く」ないことを実現しているのかは具体的に示され ていない。当該記載に付された写真では,製品のアンカーボルト挿通用の開口部に 手指を通して握る形で,当該開口部を囲む部材のうち長辺部分をなす部材のうちの 1つを掌全体で把持していること(甲4,乙32)に鑑みると,「テーパ部」の存在 故に「素手で持っても痛く」ないという効果を奏しているとも断じ得ない。また, 本件第2発明の効果2に言及する記載もない。 さらに,本件被告カタログには,「6つの特徴」の1つとして,「スピード施工」 が挙げられているところ,その部分には,被告第2製品の片方の端部の接続部につ いて「連結構造」との説明が付されている。もっとも,「連結構\造」とされる接続部 の構造や接続の仕方ないし効果に関する説明はない。\nむしろ,前記認定のとおり,本件被告カタログでは,被告第2製品の強度や換気 性能,供給・品質・価格の安定性,カットしやすい独自の形状を有する省施工商品\nであること等が強調されている。 この点は,原告や同業他社のカタログ等にも共通する。このうち,原告のカタロ グ等には「テーパ部」や「接続部」に関する記載も見られるものの,その構造は具\n体的に示されておらず,作用効果も,他の記載と比較すると,強調の度合いは低い。 むしろ,全周敷き込みの簡単施工や特殊構造の換気スリット・防鼠材といった点が\n前面に出されて強調されている。 以上の事情に加え,被告第2製品が本件第2発明の効果を奏しない形で使用され ることがあり得ることは否定できないこと(ただし,実務上そのような使用態様が 採られる割合は不明である以上,この事情を推定覆滅に当たって過大視することは できない。),前述のとおり,台輪の幅方向への移動を防止する別の方法もあること を踏まえると,本件第2及び第3発明は,施工容易性の実現という観点から一定の 顧客吸引力を有するといえるものの,本件第2発明の「テーパ部」の構成や本件第\n3発明の構成要件3C〜3Gの構\成を有することによる顧客吸引力は,相対的には 小さいというべきである。 なお,被告は,被告第2製品の形状変更後に売上げが増加したことを指摘してい るが,その裏付けとなる資料(乙60)は形状変更後の4か月の売上額を集計した ものにすぎないし,売上げの変動要因としては様々なものが考えられることから, 上記事情が直ちに本件第2及び第3特許が被告第2製品の需要に与える影響が小さ いことを裏付けると見ることはできない。 これらの事情を総合的に考慮すると,本件では,7割の限度で特許法102条2 項による推定が覆滅されると認めるのが相当である。これに反する原告及び被告の 各主張はいずれも採用できない。
エ ミサワホームに生じた損害
本件第2及び第3特許がいずれも持分2分の1の割合による原告とミサワホ ームの共有であることは当事者間に争いはなく,また,弁論の全趣旨によれば,ミ サワホームが自社施工工事分を除きこれらの特許を実施していないことが認められ る。そして,原告及び被告いずれも,特許法102条3項に基づき損害額を算定す る場合の本件第2及び第3特許の相当実施料率を4%程度とし,これを不合理ない し不相当と見るべき事情もないことから,相当実施料率は4%と認められるところ, 相当実施料率を乗じる対象となる売上額を消費税込の金額とすべき証拠はない。 そうすると,次のとおり,1463万7125円をもってミサワホーム(なお, 同社が本件第2特許の持分を取得する以前の損害賠償請求権を持分譲渡人が有して いるのであれば,その譲渡人を含む。)の損害額と認めるのが相当である。 そして,侵害された特許権が共有であったことにより侵害者の賠償すべき損害額 が単独保有の場合に比較して増額されるいわれはないことなどから,原告との関係 においては,更にこの限度で,特許法102条2項による推定が覆滅されるとする のが相当である。
(計算式) 売上額7億3185万6254円(税抜)×4%×1/2=146 3万7125円
オ 原告の損害額
以上より,特許法102条2項に基づく原告の損害額は,別紙「被告第2製 品に係る損害額(裁判所の認定)」の「原告の損害額」欄記載のとおり,4867万 8376円と認められる。
(計算式) 被告の利益の額2億1105万1670円×0.3−1463万7125円=4867万8376円
(4) 原告の予備的主張について\n
原告は,被告工場製品の製造販売について,特許法102条2項に基づき推定 される損害額が同条3項に基づくそれを下回る場合には,予備的に,同項に基づく\n損害額を主張する。 しかし,前記認定から明らかなとおり,特許法102条3項に基づき推定される 原告の損害額は,同条2項に基づくそれを上回るものではないから,この点に関す る原告の主張は採用できない。 仮に,原告の主張が,被告工場製品を除く被告第2製品の販売による損害につい ては特許法102条2項に基づき賠償請求しつつ,被告工場製品の販売による損害 については,同項に基づき算定される損害額が同条3項に基づくそれを下回る場合 に,予備的に同項に基づく損害額を主張する趣旨であったとしても,前記3(2)ウ (オ)で判示したとおり,被告工場製品とそれ以外の製品とで訴訟物が異なると見るべ き根拠はないから,原告の主張は採用できない。
(5) 弁護士費用(本件第1特許権の侵害分も含む。)について
原告は本件訴訟代理人弁護士に訴訟の提起・追行を委任したところ,被告の本 件第1〜第3特許権侵害の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,510万 円と認めるのが相当である。なお,逸失利益に係る損害の発生状況に照らし,弁護 士費用に係る損害賠償支払債務のうち,平成29年8月17日の時点で遅滞に陥っ ていたのは460万円の損害賠償債務であると認めるのが相当である。また,被告 の不法行為終了時期が平成30年10月末であることを踏まえると,残額の損害賠 償債務の遅滞損害金の起算日は同月31日とするのが相当である。
(6) 原告の逸失利益に対する確定遅延損害金について
原告が確定遅延損害金を請求している期間の,被告第2製品の製造販売による 損害に対する遅延損害金の金額は,別紙「被告第2製品に係る損害額(裁判所の認 定)」の「H31.2.28までの確定遅延損害金」欄記載のとおりの方法で計算すると,合 計1231万6870円である。

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平成30(ネ)10006等  特許権侵害行為差止等請求控訴,同附帯控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月11日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 ゲームの特許について、約1.7億円の損害賠償が認められました。1審よりも損害賠償額が上がりました。これは1審では、A事件は特許無効と判断されましたが、知財高裁はA事件の特許に無効理由無しと判断したためです。

 これに対し控訴人は,本件発明A1の「拡張ゲームプログラムおよび /またはデータ」は,標準のゲーム内容に加え,拡張されたゲーム内容 を楽しむことが可能となるものであるから(本件明細書Aの【0020】\n等),標準のゲーム内容を置き換えるゲームプログラム及び/又はデー タを含まないと解され,本件発明A1と公知発明1との間には,相違点 1−1及び1−2のほかに,相違点1−3ないし1−5が存在する旨主 張する。
そこで検討するに,本件発明A1の特許請求の範囲(請求項1)の記 載によれば,「所定の拡張ゲームプログラムおよび/またはデータ」は, 「標準ゲームプログラムおよび/またはデータに加えて,ゲームキャラ クタの増加および/またはゲームキャラクタのもつ機能の豊富化および\n/または場面の拡張および/または音響の豊富化を達成するためのゲー ムプログラムおよび/またはデータ」であり,「第2の記憶媒体」に「包 含」されるものであって,「上記第2の記憶媒体が上記ゲーム装置に装 填され」,「上記ゲーム装置が」「第1の記憶媒体」が「包含する」「所 定のキーを読み込んでいる場合に」,「上記標準ゲームプログラムおよ び/またはデータと上記拡張ゲームプログラムおよび/またはデータの 双方によってゲーム装置を作動させ」ることを理解できる。 一方,上記特許請求の範囲には,「上記標準ゲームプログラムおよび /またはデータと上記拡張ゲームプログラムおよび/またはデータの双 方によってゲーム装置を作動させ」た場合に動作する「上記標準ゲーム プログラムおよび/またはデータ」が,「上記標準ゲームプログラムお よび/またはデータ」の全部であると限定して解釈すべき根拠となる記 載はない。そして,本件明細書Aの発明の詳細な説明にも,「上記標準 ゲームプログラムおよび/またはデータと上記拡張ゲームプログラムお よび/またはデータの双方によってゲーム装置を作動させ」る場合とは, 「上記標準ゲームプログラムおよび/またはデータ」の一部しか作動し ない場合を含まないものであり,「上記標準ゲームプログラムおよび/ またはデータ」の全部が動作することが必要であると解釈すべき根拠と なる記載はない。 前記(ア)のとおり,本件公知発明1の「勇士の紋章DDII」は,魔洞戦 紀DDIから転送されたキャラクタの魔洞戦紀におけるレベルが16以 上であるときには,(1)そのキャラクタの勇士の紋章におけるレベルが最 初から2となり,(2)神殿で祈ると「ゆうけんしのしそん じゅんくよ。 がんばるのだぞ。」とのメッセージが表示され,アイテム「くさのつゆ」\n及び「しろきのこ」が1つ増える,という動作機能を実行するゲームプ\nログラム及び/又はデータを包含するものである。 そうすると,上記(1)の点は,「勇士の紋章」の標準のゲーム内容であ ればレベル1からスタートするゲームキャラクタのレベル(乙A4の2・ 11枚目,乙A8の1・8頁)をレベル2からスタートできるようにす るものであり(乙A4の1・8枚目),上記(2)の点は,標準のゲーム内 容であれば金貨(GOLD)で支払わなければ取得できないアイテム(乙 A4の1・13枚目,乙A4の2・8枚目)を神殿で祈ることで取得で きるようにするものであって(乙A9・2頁,乙A10・3頁),いず れも新たな機能をゲームキャラクタに持たせるものであるから,これが\n「ゲームキャラクタのもつ機能の豊富化」に当たることは明らかである。\nまた,上記(2)の点は,「勇士の紋章」の標準のゲームの内容であれば, 神殿で祈ると「あなたのたたかいが ぶじおわりますよう。あくまに わ ざわいを!」とのメッセージのみが表示される場面を,神殿で祈ると「ゆ\nうけんしのしそん じゅんくよ。がんばるのだぞ。」とのメッセージが 表示され,アイテム「くさのつゆ」及び「しろきのこ」が1つ増えると\nいう場面とするものであるから,これが「場面の拡張」に当たることも 明らかである。 以上によれば,本件公知発明1の「勇士の紋章DDII」は,「標準ゲ ーム機能部分を実行する標準ゲームプログラム及び/又はデータ」に加\nえて,「ゲームキャラクタのもつ機能の豊富化」及び「場面の拡張」を\n達成するためのゲームプログラム及び/又はデータ,すなわち,本件発 明A1の「拡張ゲームプログラムおよび/またはデータ」を包含するも のといえる。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(ウ) 他方,被控訴人は,公知発明1における「所定のキー」に相当する「キ ャラクタ(じゅんく)のレベルが16以上であることを示す情報」とは, (1)魔洞戦紀DDIが装填されたことを示すデータ及び(2)キャラクタ(じ ゅんく)のレベルが16以上であるセーブデータである旨主張する。 そこで検討するに,証拠(甲A4の1,4の2,13の2)及び弁論 の全趣旨によれば,本件ゲームシステムA1において,まず,勇士の紋 章DDIIを装填し,次いで,「まどうせんきのAメンをいれてください」 というインストラクションに基づき,魔洞戦紀DDIを装填し,キャラ クタ「じゅんく」を選択した後,再度,勇士の紋章DDIIを装填した場 合には,勇士の紋章においてもキャラクタ「じゅんく」でプレイできる ことが認められる。 しかしながら,魔洞戦紀DDIを装填することにより当然に,本件発 明A1の「拡張ゲームプログラムおよび/またはデータ」に相当する, 本件公知発明1の「ゲームキャラクタのもつ機能の豊富化」及び「場面\nの拡張」を達成するためのゲームプログラム及び/又はデータと,標準 ゲームプログラム及び/又はデータの双方によって,ファミリーコンピ ュータが作動されるものではない。前記(ア)及び(イ)のとおり,本件公知 発明1の「標準ゲームプログラムおよび/またはデータと拡張ゲームプ ログラム及び/又はデータの双方によってファミリーコンピュータを作 動させ」るには,魔洞戦紀DDIから,キャラクタ(じゅんく)のレベ ルが16以上であるセーブデータを読み込むことが必要であり,かかる データを読み込んでいない場合には,上記のようにインストラクション に基づき魔洞戦紀DDIを装填するなどの作業をしたとしても,本件公 知発明1の「標準ゲームプログラムおよび/またはデータのみによって ファミリーコンピュータを作動させる」こととなる。 以上によれば,上記(1)のデータは,本件公知発明1の「拡張ゲームプ ログラムおよび/またはデータ」を作動させる条件であるとはいえない から,本件発明A1の「所定のキー」に相当する本件公知発明1の「キ ャラクタ(じゅんく)のレベルが16以上であることを示す情報」には, 上記(1)のデータは含まれないといえる。 したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。
イ 本件発明A1と本件公知発明1の対比 本件発明A1と本件公知発明1とを対比すると,以下の相違点が存在す ることが認められる。
(相違点1−1)
一の記憶媒体,二の記憶媒体が,本件発明A1は,「記憶媒体(ただし, セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)」であるのに対し,本件公\n知発明1は「セーブデータなどを記憶可能なディスク」である点。\n
(相違点1−2)
本件発明A1の「第1の記憶媒体」は,セーブデータを記憶可能な記憶\n媒体を除くから,「所定のキー」はセーブデータを含まないのに対し,本 件公知発明1では,魔洞戦紀DDIに包含される「所定のキー」が,魔洞 戦紀DDIに記憶されたセーブデータであって,魔洞戦紀DDIにセーブ されたキャラクタのレベルが21であることを示す情報である点。
ウ 相違点の容易想到性について
(ア) 本件公知発明1の技術思想
本件公知発明1の内容に加え,前記アに掲記の各証拠及び弁論の全趣 旨を総合すれば,(1)ディープダンジョン(DD)シリーズの後作「勇士 の紋章」は,前作「魔洞戦紀」の続編であって,両者は,魔洞戦紀にお いて,魔王が勇剣士に倒され平和を取り戻したものの,勇士の紋章にお いて,魔王が復活し,勇剣士が再び冒険するという一連のストーリーを 有するゲームであること,(2)「魔洞戦紀」の勇剣士のキャラクタを,「勇 士の紋章」に転送することにより,「魔洞戦紀」の「勇剣士」を,「勇 士の紋章」の「勇士」として復活させることができること,(3)「魔洞戦 紀」において,キャラクタのレベルが16以上であれば,レベル1から ではなく,レベル2のキャラクタとして「勇士の紋章」でプレイできる こと,(4)このような場合に,「魔洞戦紀」から転送されたレベル16以 上のキャラクタは,「勇士の紋章」においては「勇剣士の子孫」として 復活すること,(5)「魔洞戦紀」のキャラクタリストは,「魔洞戦紀」に おいて,特定のキャラクタでゲームをプレイしている途中で中断し,そ の後,中断した場面からゲームを再開してプレイするために,ディスク にセーブされたものと解されることが認められる。 上記認定事実によれば,本件公知発明1は,前作と後作との間でスト ーリーに連続性を持たせた上,後作のゲームにおいても,前作のゲーム のキャラクタでプレイしたり,前作のゲームのプレイ実績により,後作 のゲームのプレイを有利にしたりすることによって,前作のゲームをプ レイしたユーザに対して,続編である後作のゲームもプレイしたいとい う欲求を喚起し,これにより後作のゲームの購入を促すという技術思想 を有するものと認められる。
(イ) 相違点1−1について
前記(ア)のとおり,本件公知発明1は,キャラクタでプレイするゲーム において,セーブされたキャラクタを前作のゲームから後作のゲームに 転送するものであり,前作のゲームにおいて,プレイ途中でセーブして, なおかつ,キャラクタのレベルが16以上である場合に,後作のゲーム において,ゲームのプレイが有利になるという特典が与えられるもので ある。 そうすると,本件公知発明1は,少なくとも,前作において,ゲーム をプレイ途中でセーブするとともに,ゲームをある程度達成した,すな わち,前作のゲームにおいて,キャラクタのレベルが16以上となるま でプレイしたという実績があることが,後作においてプレイを有利にす るための必須の条件であり,「キャラクタ」,「プレイ実績」を示す情 報を前作の記憶媒体にセーブできることが本件公知発明1の前提であっ て,「キャラクタ」,「プレイ実績」の情報をセーブできない記憶媒体 を採用すると,前作のゲームにおける「キャラクタ」,「プレイ実績」 の情報が記憶媒体に記憶されないこととなり,「前作のゲームのキャラ クタで,後作のゲームをプレイする」,「前作のキャラクタのレベルが 16以上であると,後作において拡張ゲームプログラムを動作させる」 という本件公知発明1を実現することができなくなることは明らかであ る。 したがって,仮に,被控訴人の主張するとおり,ゲームプログラム及 び/又はデータを記憶する媒体としてCD−ROMを用いることが本件 特許Aの出願前において周知技術であり,また,同一タイトルのゲーム をCD−ROMやROMカセットに移植することが一般的に行われてい る事項であったとしても,本件公知発明1において,記憶媒体を,ゲー ムのキャラクタやプレイ実績をセーブできない「記憶媒体(ただし,セ ーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)」に変更する動機付けはな\nく,そのような記憶媒体を採用することには,阻害要因がある。 以上のとおりであるから,本件公知発明1において,相違点1−1に 係る本件発明A1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たもの\nであるとは認められない。
(ウ) 相違点1−2について
前記(イ)と同様の理由により,本件公知発明1において,相違点1−2 に係る本件発明A1の構成を採用することは,動機付けを欠き,むしろ\n阻害要因があるというべきであるから,当業者が容易に想到し得たもの であるとは認められない。
(エ) 被控訴人の主張について
これに対し被控訴人は,相違点1−1及び1−2は,本件訂正Aによ り,「第1の記憶媒体」及び「第2の記憶媒体」から「セーブデータを 記憶可能な記憶媒体」が除かれ,その結果,「所定のキー」からセーブ\nデータが除かれたこと(「除くクレーム」とされたこと)により生じた ものであることを前提として,除くクレームとする訂正により,形式的 に主引用発明との間に相違点が存在すると認められる場合は,(1)相違点 に係る構成によって,技術的観点から主引用発明と異なる作用効果が存\n在するか否かを検討し,(2)技術的意義が認められない場合には,実質的 な相違点とはいえず新規性が否定されると解すべきであり,(3)技術的意 義が認められた場合には,当業者において適宜なし得る設計事項に過ぎ ないか否かを検討し,設計事項に過ぎない場合には,進歩性が否定され ると解すべきであるところ,本件訂正Aは,シリーズ化された一連のゲ ームソフトを買い揃えていくことにより,豊富な内容のゲームを楽しむ\nことができるようにするという本件発明A1の課題との関係では,技術 的な解決手段を示したものとはいえず,技術的意義がないものであって, 本件発明A1の作用効果や技術的思想は,本件訂正Aの前後で変わらな いから,相違点1−1及び1−2は,実質的に相違点とはいえず,少な くとも,当業者が適宜なし得る設計事項である旨主張する。 しかしながら,前記(イ)及び(ウ)のとおり,本件公知発明1において, 相違点1−1及び1−2に係る本件発明A1の構成を採用することは,\n動機付けを欠き,むしろ阻害要因があるというべきものである。 また,本件発明A1において,「第1の記憶媒体」及び「第2の記憶 媒体」を「セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く」ものとすること\nは,前作のプレイ実績にかかわらず,後作において拡張ゲームプログラ ム及び/又はデータによってゲームを楽しむことができるという作用効 果を奏するものであって,技術的意義を有するものであることからする と,相違点1−1及び1−2は,実質的な相違点であるといえるし,当 業者が適宜なし得る設計事項であるとは認められない。 したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。
(オ) 小括
以上のとおり,本件公知発明1において,相違点1−1及び1−2に 係る本件発明A1の構成とすることには,動機付けがなく,むしろ阻害\n要因があるため,当業者が容易に想到し得たこととは認められない。 したがって,本件発明A1は,当業者が本件公知発明1に基づき容易 に発明をすることができたものであるとは認められない。
・・・・
特許法102条3項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき 金銭の額に相当する額」については,平成10年法律第51号による改 正前は「その特許発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する 額の金銭」と定められていたところ,「通常受けるべき金銭の額」では 侵害のし得になってしまうとして,同改正により「通常」の部分が削除 された経緯がある。 特許発明の実施許諾契約においては,技術的範囲への属否や当該特許 が無効にされるべきものか否かが明らかではない段階で,被許諾者が最 低保証額を支払い,当該特許が無効にされた場合であっても支払済みの 実施料の返還を求めることができないなど様々な契約上の制約を受ける のが通常である状況の下で事前に実施料率が決定されるのに対し,技術 的範囲に属し当該特許が無効にされるべきものとはいえないとして特許 権侵害に当たるとされた場合には,侵害者が上記のような契約上の制約 を負わない。そして,上記のような特許法改正の経緯に照らせば,同項 に基づく損害の算定に当たっては,必ずしも当該特許権についての実施 許諾契約における実施料率に基づかなければならない必然性はなく,特 許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき,実施に対し受ける べき料率は,むしろ,通常の実施料率に比べて自ずと高額になるであろ うことを考慮すべきである。 したがって,実施に対し受けるべき料率は,(1)当該特許発明の実際の 実施許諾契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界に おける実施料の相場等も考慮に入れつつ,(2)当該特許発明自体の価値す なわち特許発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能性,(3)当 該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の 態様,(4)特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に 現れた諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきである。
(イ) 認定事実
a 本件特許Aについての実際の実施許諾契約の実施料率は,本件訴訟 に現れていない。 そして,証拠(乙A115,116,乙B28)及び弁論の全趣旨 によれば,以下の事実が認められる。
(a) 株式会社帝国データバンクが「知的財産の価値評価を踏まえた特 許等の活用の在り方に関する調査研究報告書〜知的財産(資産)価 値及びロイヤルティ料率に関する実態把握〜(平成22年3月)」 (乙B28。本件調査報告書)を作成するに当たって行った,特許 権に関するロイヤルティ率情報のアンケート(以下「本件アンケー ト」という。)の結果を記載した表2−2には,技術分類を「家具,\nゲーム」とする特許のロイヤルティ料率の平均は2.5%(最大値 4.5%,最小値0.5%,標準偏差1.5%)(件数14件)と 記載されている。
(b)本件調査報告書には,本件アンケート調査結果の回答及び集計に 当たっての前提条件について,(1)ライセンス・アウト(ライセンス を与える側)の立場での回答であること,(2)国内同業他社へのライ センスを想定していること,(3)通常実施権(ライセンス提供先を独 占的にする訳ではなく,複数の者とライセンスを行うことができる 形態)によるライセンスを想定していること,(4)正味販売高に対す る料率を想定していること,(5)特殊な事情(エンタイアマーケット バリュールール(特許技術が製品の一部に使われているだけだとし ても,侵害された部品を含む製品全体の単価に基づいて損害額を計 算するルール)によるロイヤルティ算定,契約相手の事情など)を 捨象したケースであること,(6)ロイヤルティ料率相場はカテゴリ選 択肢で回答であるが,集計時には各選択肢の中央値をロイヤルティ 料率として集計を行ったことが記載されている。
(C) 経済産業省知的財産政策室編の「ロイヤルティ料率データハンド ブック〜特許権・商標権・プログラム著作権・技術ノウハウ〜」(平 成22年8月31日発行)の「II 各国のロイヤルティ料率」には, (1)ロイヤルティ算定方式として最も広く採用されているのは,定率 方式であり,そのロイヤルティは,「対象製品の販売価格×ロイヤ ルティ料率」として算定されること,(2)販売価格の対象となるロイ ヤルティベースには,総販売価格,純販売価格(正味販売価格), 小売価格等が使用されるが,実務面では,純販売価格(正味販売価 格)が採用されることが比較的多いとされること,(3)純販売価格(正 味販売価格)は,総販売価格から一定の費用項目を控除した残額と して定義され,控除費用項目としては,一般的に,輸送費,保険料, 倉庫保管費用,リベート,包装梱包費等,販売地によって変動する 可能性のある費用項目が中心となるが,業界慣行や製品種類等によ\nって異なることが記載されている。
b 前記(1)アのとおり,本件発明A1は,ゲームプログラム及び/又は データを記憶する記憶媒体を所定のゲーム装置に装填してゲームシス テムを作動させる方法であって,上記記憶媒体は,少なくとも,所定 のゲームプログラム及び/又はデータと,所定のキーとを包含する第 1の記憶媒体と,所定の標準ゲームプログラム及び/又はデータに加 えて所定の拡張ゲームプログラム及び/又はデータを包含する第2の 記憶媒体とが準備され,上記第2の記憶媒体が上記ゲーム装置に装填 されるとき,上記ゲーム装置が上記所定のキーを読み込んでいる場合 には,上記標準ゲームプログラム及び/又はデータと上記拡張ゲーム プログラム及び/又はデータの双方によってゲーム装置を作動させる ことにより,ユーザにとっては,一回の購入金額が適正なシリーズも のの記憶媒体を買い揃えてゆくことによって,最終的に極めて豊富な 内容のゲームソフトを入手したのと同じになり,メーカにとっては,\n膨大な内容のゲームソフトを,ユーザが購入しやすい方法で提供でき\nるという効果をもたらすものである。 このように,本件発明A1は,ゲームシステム作動方法の発明であ り,その構成及び効果は上記のとおりであるところ,イ−9号方法等\nは本件発明A1の技術的範囲に属するものであり,イ−9号製品等は, ゲーム装置に装填してゲームを実行するためのゲームソフトであって,\n本件発明A1の「第2の記憶媒体」に相当する,同発明を実施するた めに不可欠の物である。そして,前記(1)イのとおり,イ−9号製品等 は,本編ディスク(第1の記憶媒体)から所定のキーを読み込むこと により,アペンドディスク(第2の記憶媒体)に記録された標準のゲ ームプログラム及び/又はデータに加えて,拡張ゲームプログラム及 び/又はデータを作動させることができるものであるから,本件発明 A1は,イ−9号製品等にとって,相応の重要性を有するものといえ る。 また,家庭用ゲーム機などの情報処理装置を対象としたシステム作 動方法に関し,本件発明A1の上記技術についての代替技術が存在す ることはうかがわれない。
c(a) 前記bのとおり,本件発明A1は,イ−9号製品等に記録された 拡張ゲームプログラム及び/又はデータを作動するに当たり不可欠 な技術であるところ,家庭用ゲーム機本体に装着してゲームを楽し むゲームソフトにおけるゲームキャラクタのもつ機能\,場面,音響 が豊富であることは,通常,需要者の購入動機に影響を与えるもの といえる。 そして,被控訴人は,イ−9号製品等を販売するに当たり,製品 解説書(甲A5,7,8,10,11)において,MIXJOY機 能について紹介し,前作のディスク(本編ディスク)があると本作\n(アペンドディスク)とのMIXJOYを楽しむことができ,前作 のシナリオを本作のキャラクタでプレイしたり,前作では特定のキ ャラクタとのみ迎えることができたエンディングを全てのキャラク タと迎えることができたりする旨を説明している。 これらの事情を考慮すると,本件発明A1をイ−9号製品等に用 いることにより被控訴人の売上げ及び利益に貢献するものと認めら れる。
・・・
a 前記(イ)のとおり,本件訴訟において本件特許Aの実際の実施許諾 契約の実施料率は現れていないところ,本件特許Aの技術分野が属す る分野の近年の統計上の平均的な実施料率が,本件アンケート結果で は2.5%(最大値4.5%,最小値0.5%,標準偏差1.5%) であり,同実施料率は正味販売高に対する料率を想定したものである ことが認められる。そして,このことを踏まえた上,侵害品に係るゲ ームソフトにおいては,ゲームのキャラクタや内容,販売方法の工夫\n等が,その売り上げに大きく貢献していることは否定できないとはい え,本件発明A1に係る技術も,売上げの向上に相応の貢献をしてい ると認められることや,本件発明A1の代替となる技術は存在しない こと,控訴人と被控訴人は競業関係にあることなど,本件訴訟に現れ た事情を考慮すると,特許権侵害をした者に対して事後的に定められ るべき,本件での実施に対し受けるべき料率(以下「本件実施料率A」 という。)は,消費税相当額を含む被控訴人の正味販売価格に対し, 3.0%を下らないものと認めるのが相当である。
b 被控訴人は,別紙1「販売開始日一覧表」記載の販売開始日から本\n件特許権Aの存続期間満了日までのイ−9号製品等の売上高(被控訴 人の卸売価格)が,別紙7「売上高(補正後)」の「売上高」欄記載 のとおりであると主張するところ,イ−9号製品等の売上高(被控訴 人の卸売価格)が上記金額を超えるものであることを認めるに足りる 証拠はない。そこで,同金額に消費税相当額(5%)を加えた金額を, 実施料算定の基礎となる価格とするのが相当である。 もっとも,前記(イ)c(C)のとおり,イ−9号製品等のうちには,本件 発明A1の「第2の記憶媒体」に該当するゲームソフトのほかに,1\n個ないし5個の当該ゲームソフトと同一シリーズのゲームソ\フト(記 憶媒体)が含まれるパッケージ商品も存在するところ,これらのゲー ムソフトは,本件発明A1についての本件特許権Aを侵害するもので\nはなく,かつ,イ−9号製品等に含まれなくとも,単体で販売の対象 となる商品である。また,前記(イ)a(b)のとおり,本件調査報告書には, 本件アンケート調査結果の回答及び集計に当たっての前提条件につい て,特殊な事情(エンタイアマーケットバリュールール(特許技術が 製品の一部に使われているだけだとしても,侵害された部品を含む製 品全体の単価に基づいて損害額を計算するルール)によるロイヤルテ ィ算定,契約相手の事情など)を捨象したケースであることが記載さ れている。そうすると,侵害品以外のゲームソフトの価格に相当する\n部分については,本件実施料率Aを乗じるべき販売価格から控除する のが相当というべきであるから,イ−9号製品等の販売価格を侵害品 であるゲームソフトとそれ以外のゲームソ\フトとの合計数で除したも のをもって,本件実施料率Aを乗ずべき売上高とするのが相当である。 また,前記(イ)c(C)のとおり,イ−19及び23(2)号製品には,本件 発明A1の「第2の記憶媒体」に該当するゲームソフトのほかに,「最\n強データ収録CD−ROM」やグッズが同梱されているものもあるが, 上記CD−ROMは,ゲームソフトで使用するデータ(キャラクタの\n能力値等が最大の状態のデータ)が記録されているに過ぎず,それら\nが単独で商品として流通するものではないから,当該製品の販売価格 全体をもって,本件実施料率Aを乗ずべき売上高とするのが相当であ る。 他方,イ−39号製品(「遥かなる時空の中で3十六夜記 プレミ アムBOX」(希望小売価格9800円))は,同日付で発売された イ−35号製品(「遥かなる時空の中で3十六夜記」(希望小売価格\n4980円))に対して,4820円高く価格が設定され,その製品 の相違は同梱グッズのみであって,イ−39号製品に含まれる同梱グ ッズの価格は,おおむね同製品の2分の1に相当するものといえるか ら,同製品の販売価格の2分の1を本件実施料率Aを乗ずべき売上高 とするのが相当である。 さらに,イ−40号製品(「遥かなる時空の中でプレミアムBOX コンプリート」)は,本件発明A1の「第2の記憶媒体」に該当する ゲームソフトのほかに,これと同一の「遥かなる時空の中でシリーズ」\nのゲームソフト5個が含まれるところ,同製品についても,イ−39\n号製品と同様に,同梱グッズの価格は,これと対応するゲームソフト\nの価格のおおむね2分の1に相当するものといえる。そうすると,同 製品の販売価格の12分の1をもって,本件実施料率Aを乗ずるべき 売上高とするのが相当である。
c 以上によれば,本件特許権Aの侵害について,特許法102条3項 により算定される損害額は,別紙10のとおり計算され,その合計額 は1億1667万3710円となる。
(エ) 控訴人の主張について
控訴人は,(1)本件発明A1及びA2は,イ号製品のユーザにおいて実 施されるゲームシステム作動方法であること,イ号製品のような本件特 許権Aの間接侵害を構成する製品の製造販売に関する特許権者の許諾は,\n当該製品がユーザに販売されることを当然の前提とすることなどから, 実施料率算定の基礎となるイ−9号製品等の売上高は,被控訴人の卸売 価格ではなく小売価格とすべきである,(2)イ−9号製品等に同梱される アイテムがある場合でも,イ号製品は,同梱されたアイテムを含む製品 全体で一個の商品(販売単位)であり,製品の販売等行為全体が一個の 特許権侵害を構成するから,イ−9号製品等の販売価格全体が本件実施\n料率Aに乗ずべき価格となる旨主張する。 しかしながら,上記(1)の点については,控訴人の主張を裏付けるに足 りる客観的な証拠はない。前記(イ)aのとおり,本件特許Aの技術分野が 属する分野の近年の統計上の平均的な実施料率は,正味販売高に対する 料率を想定したものであることからすると,実施料算定の元となる売上 高は,被控訴人のイ−9号製品等の販売価格,すなわち卸売価格とする のが相当である。 上記(2)の点については,前記(ウ)bのとおり,イ−9号製品等のうち, 本件発明A1の「第2の記憶媒体」に該当するゲームソフト以外のゲー\nムソフトを含むものや,同梱されたグッズが,商品構\成や価格構成上,\n明らかにゲームソフトとは別の価値を有するもの,すなわち,別個の商\n品として扱われていると判断し得るものについては,これらのゲームソ\nフト及びグッズの価格に相当する金額を本件実施料率Aを乗ずべき価格 から控除するのが相当である。 控訴人の主張するその余の点も,前記(ウ)の判断を左右するものでは ない。
(オ) 被控訴人の主張について
被控訴人は,(1)実施料率算定の基礎となるべき正味販売価格に消費税 相当額は含まれない,(2)本件調査報告書によれば,「家具,ゲーム」の 技術分野には,「ビデオゲーム」のような全体の一部に特許発明が実施 されているもの以外に,「家具」,「カードゲーム,盤上ゲーム,ルー レットゲーム;小遊技動体を用いる室内用ゲーム」も含まれるため,本 件特許Aの実施料率は,上記実施料率の平均値(2.5%)より低くな る,(3)同梱グッズについても,別紙7「売上高(補正後)」記載のとお り,そのアイテム数に応じて売上高を補正すべきである,(4)本件発明A 1は,セーブデータを「所定のキー」とする方法,「拡張ゲームプログ ラム等」の一部を「所定のキー」とする方法,第2の記憶媒体に「拡張 ゲームプログラム等」のみを記憶する方法により,同発明と同様の作用 効果を奏しながら,同発明を回避することができる,(5)控訴人は,競業 者と特許クロスライセンス契約を締結し,「ライセンスなどの特許権の 有効活用を促進」するとしたプレスリリースを公開しており(乙A83 の1〜3),むしろ開放的ライセンスポリシーを採用している,(6)イ号 製品は,武将やステージを新規に追加するものというよりは,「違った 遊びを提供するという概念で開発」されたものであり,本編ディスクで はプレイできなかったモードを提供することが主眼となった製品であっ て,それ単体でも十分楽しめる内容である反面,MIXJOYをするこ\nとで可能となるのは,本編ディスクでプレイできたモードやシナリオを\nアペンドディスクでもプレイできるというものであり,MIXJOYを 行う場面は限定されている旨主張する。 しかしながら,上記(1)の点については,消費税相当額も被控訴人の販 売価格の一部としてそれに含まれているものであるから,損害額の算定 に当たって消費税相当額を控除すべき理由はない。 上記(2)の点については,前記(イ)a(a)のとおり,本件アンケート結果 を記載した,本件調査報告書の表2−2には,技術分類を「家具,ゲー\nム」とする特許のロイヤルティ料率の平均は2.5%であり,件数は1 4件である旨が記載されているものの,アンケート回答者の保有する特 許の内容,特許の実施品について,具体的な記載はない。したがって, 本件調査報告書の記載からは,本件特許Aの実施料率が,上記実施料率 の平均値より低くなると認めることはできない。 上記(3)の点については,前記(イ)c(C)のとおり,イ−9号製品等に同梱 されているグッズは,本件発明A1の「第2の記憶媒体」に相当するゲ ームソフトの付属物というべきものであって,単独で商品として流通す\nるものではないから,イ−39及び40号製品に同梱されたグッズを除 き,当該製品の販売価格全体をもって,本件実施料率Aを乗ずべき売上 高とするのが相当である。
上記(4)の点については,i)前記(5)ウ(エ)のとおり,本件発明A1にお いて,「第1の記憶媒体」及び「第2の記憶媒体」を「セーブデータを 記憶可能な記憶媒体を除く」ものとすることは,前作のプレイ実績にか\nかわらず,後作において拡張ゲームプログラム及び/又はデータによっ てゲームを楽しむことができるという技術的意義を有するものであり, セーブデータを「所定のキー」とする方法は,本件発明A1と同様の作 用効果を奏するものではなく,また,記憶媒体をセーブデータを記憶可 能なものにした場合は,大量の記憶容量を有し,安価で大量生産が可能\ なCD−ROM,DVD−ROM等の読み出し専用メモリーを用いるこ とができなくなること,ii)本件発明A1は,第1の記憶媒体に記憶され た「所定のキー」を読み込むだけで,第2の記憶媒体に記録された標準 ゲームプログラム及び拡張ゲームプログラムによりゲーム装置を作動さ せるものであって,装置の作動中に第1の記憶媒体を入れ換え可能なも\nのであるが,「拡張ゲームプログラム等」の一部を「所定のキー」とす る方法では,標準ゲームプログラム及び拡張ゲームプログラムによるゲ ーム装置の作動中に,第1の記憶媒体を装填し続ける必要があること, iii)第2の記憶媒体に「拡張ゲームプログラム等」のみを記憶する方法 では,第2の記憶媒体単体で,標準ゲームプログラム及び拡張ゲームプ ログラムによりゲーム装置を作動させることができないことから,これ らの方法が本件発明A1の代替技術であるとはいえない。
上記(5)の点については,たとえ,特許権者が開放的ライセンスポリシ ーを有しているとしても,そのことは,特許権侵害者に対して事後的に 定めるべき実施料率を下げる理由にはならないものというべきである。 上記(6)の点については,前記(イ)c(a)のとおり,本件発明A1により ゲームキャラクタのもつ機能,場面,音響が豊富になるという効果は,\n通常,需要者の購入動機に影響を与えるものであるといえ,イ−9号製 品等においても,MIXJOY機能により,前作のシナリオを本作のキ\nャラクタでプレイしたり,前作では特定のキャラクタとのみ迎えること ができたエンディングを全てのキャラクタと迎えることができたりする ものであって,被控訴人は製品解説書でかかる機能を紹介し,宣伝して\nいるものである。そうすると,本件発明A1は,これをイ−9号製品等 に用いることにより被控訴人の売上及び利益に相応の貢献をするものと 認められるものであって,イ−9号製品等が単体でも十分楽しめるもの\nか否かという点や,MIXJOYを行う場面が限定されているか否かと いう点は,上記判断を左右するものではない。 被控訴人の主張するその余の点も,前記(ウ)の判断を左右するもので はない。

◆判決本文
1審はこちらです。

◆判決本文
判決理由は、A、B事件にそれぞれ分けられています。

◆A事件

◆B事件

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平成28(ワ)12296  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月10日  大阪地方裁判所

 特許権侵害認定されましたが、損害額については102条2項について、「他の店舗用品とを組み合わせて販売されたバンドル取引商品である」ことを覆滅事由として、6割の推定が覆滅されました。

 まず,被告が経費として主張する製造委託費,検査費等は,いずれ も侵害者である被告において侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接 関連して追加的に必要となった経費に当たると認められるから,被告の利益額を算 定するに当たり,上記販売金額からこれらの経費の金額を控除すべきである。
b そして,乙53,56ないし61及び弁論の全趣旨によれば,製造 委託費(樹脂やプレートの材料代,プレートの組付費用を含み,金型の作成費用は 含まない。),検査費等として,別紙「被告の損害論における主張」の「被告の経 費額」欄記載の経費を支出したと認められる。
c 原告らは,被告主張の仕入価格には高すぎるなどの疑問があると主 張して,被告主張の経費のうち「製造委託費」の金額を争っている。 しかし,この主張は特許法102条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利 益の額の算定の問題に関連する主張であるが,そもそもその利益の額(限界利益の 額)の主張立証責任は特許権者側にあるものと解すべきであるから(知財高裁令和 元年6月7日判決・最高裁ウェブサイト),そのような観点から検討すると,原告 らは原告製品の製造販売に係る経費と対比をするのみで,被告製品の製造販売に係 る経費について具体的な立証をしているわけではない。 他方,被告製品の製造委託先は,被告と資本関係にあるわけではなく(乙62, 弁論の全趣旨),被告の主張する製品1個当たりの製造委託費は,別紙「被告主張 の被告製品1個当たりの経費額」の「製造委託費(材料費込)」欄記載のとおりで あるところ,その金額には一定の裏付け(乙56ないし61)がある。したがって, 原告らの上記指摘によって前記認定は左右されず,下記(ウ)で認定する金額を超え る利益が被告に生じていたことを認めることはできない。
(ウ) 被告の利益額
以上によれば,被告が本件特許権の侵害行為により受けた利益の額は,別 紙「被告の損害論における主張」の「被告の限界利益」欄記載のとおり,合計(中 略)円と認められる。
イ 推定覆滅事由の有無
(ア) 特許法102条2項における推定の覆滅については,侵害者が主張立 証責任を負うものであり,侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果 関係を阻害する事情がこれに当たると解され,例えば,(1)特許権者と侵害者の業務 態様等に相違が存在すること(市場の非同一性),(2)市場における競合品の存在,
(3)侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),(4)侵害品の性能(機能\,デザイン 等特許発明以外の特徴)などの事情について,考慮することができるものと解され る(前掲知財高裁令和元年6月7日判決)。
(イ) 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
a 原告扶桑産業について(甲1,33) 原告扶桑産業は,資本金の額を2500万円とする会社であり,その従 業員数は30名程度である。そして,原告扶桑産業は,店装用備品等の企画,製造 販売,陳列器具及び店舗什器関連備品等の製造販売等を事業品目とし,全国スーパ ー量販店備品卸売業者,全国インテリア装飾・店装業者等を取引先としている。そ して,原告製品については,被告や他の企業に対して卸売販売され,そこを通じて 小売量販店に販売された(量販店の各店舗に設置された)ほか,原告扶桑産業から 直接,株式会社サンリオの直営店等の量販店に販売されることもあった。
b 被告について(乙1,53ないし55,65ないし66の5)
(a) 被告は,資本金の額を1億円とする会社であり,その従業員数は 3000人程度で,平成28年度の売上高は1220億円(グループ全体で346 0億円)であり,平成20年から東北楽天ゴールデンイーグルスのメインスポンサ ーとなっている。そして,被告は,生活用品の企画,製造,販売を事業内容として おり,販売している商品は,LED照明,家電,調理用品,日用品,収納用品,ハ ードオフィス・資材等多岐に渡っており,被告のこれらの商品は全国のホームセン ターで販売されている。
(b) 被告は,量販店等の店舗向けに,什器・備品を単体で販売するの ではなく,内装工事を含め,店舗のあらゆるスペースをデザイン・プロデュースし, 店舗全体又は売り場全体の什器・備品を総合的に販売することも行っている。 そして,被告は,販売する什器について,500頁を超えるカタログ(乙1,5 4)を作成しており,そこに掲載されている什器は,カードケースを含むシステム 什器だけでなく,内装・棚下照明,陳列用什器,インフォメーション器具,販促用 品,オフィス家具,運営サポート用品及び照明・演出用品といったように,多岐に 渡っている。
(c) 被告が顧客との間で上記(b)の取引をする場合の流れは,次のと おりである。すなわち,まず顧客から要望についてヒアリングをした上で,それを もとに現地調査をする。その後,顧客から建築平面図等を取得し,什器の配置を検 討し,顧客と打合せをした上で,什器配置図等を作成するとともに,コストをシミ ュレーションする。そして,顧客の要望に応じた什器・オプションアイテムを提案 し,納品内容を確定した上で,現場への納品や施工の手配を行う。
(d) 被告が平成25年12月5日,ある株式会社に対して発行した見 積書(乙55)では,取引金額が合計(中略)万円(税抜)とされたが,そのうち カードケースの代金額は(中略)円(個数は合計(中略)個)であった。
(e) 平成26年の被告製品の販売金額は,合計(中略)円であったが, その大半((中略)円)はカードケースと他の店舗用品とを組み合わせて販売され るいわゆるバンドル取引によるものであった。
c 原告扶桑産業と被告との間の取引
(a) 被告は,遅くとも平成24年1月以降,原告扶桑産業から原告製 品を購入しており,同月から平成25年11月までの原告製品の販売数量は,次の とおりであった。
・・・・
(b) 上記(a)のうち平成25年の原告製品4(ただし,QPCII−65 を除く。)の販売数量・販売金額は次のとおりであったほか,平成26年ないし平 成28年の原告製品(ただし,QPCII−65を除く。)の販売数量・販売金額は, 次のとおりであった(乙78の2)。
・・・・
(ウ) 被告の主張について
a まず,被告は被告製品1,4,6及び10については,原告製品に 相当するものがないことを指摘している。 しかし,上記各被告製品は,原告製品と色やサイズが異なるだけであり,原告扶 桑産業が販売している他の色やサイズの製品が購入されなかったとまで認めること はできないし,原告扶桑産業が販売していた製品をみる限り,原告扶桑産業が被告 製品と同じ色やサイズの製品を製造し,販売することができなかったと認めること もできない。 したがって,被告の上記主張は推定覆滅事由とならない。
b 次に,被告は取引の実情として,被告製品の販売方法や,被告によ る販売力・営業努力・企業規模・ブランドイメージを理由とする推定覆滅を主張す る。
(a)(1) 前記認定のとおり,被告が販売している什器は多岐に渡ってお り,また量販店等の店舗向けに,什器・備品を単体で販売するのではなく,内装工 事を含め,店舗全体又は売り場全体の什器・備品を総合的に販売することも行って いた。そして,前記認定事実によれば,被告製品は,その大半が他の店舗用品と組 み合わせて販売されるいわゆるバンドル取引によって販売されていた。 しかも,前記認定事実によれば,そのようなバンドル取引の取引額に占めるカー ドケースである被告製品の販売額はわずかであったと認められる。 このような被告製品に係る取引の実情によれば,被告製品の需要者の大半は,カ ードケースである被告製品に殊更に注目して被告製品を購入したというよりも,他 の店舗用品と組み合わせて購入できる利便性や,内装工事を含めて店舗全体又は売 り場全体の什器・備品を総合的に購入することができるという被告の販売体制に魅 力を感じて,被告と取引をするに至り,その取引の一環として被告製品を購入した と認めるのが相当である。
(2) 原告らの主張について
原告らは,被告がドン・キホーテの店舗内装を受注するに当たり, ドン・キホーテから原告製品を使用するよう指示されたため,原告扶桑産業と原告 製品の取引をするようになったとか,バンドル取引においても原告製品を組み込む 需要があり,被告がその需要に応え,顧客との取引を維持するために原告製品を侵 害品である被告製品に置き換えたなどと主張する。 確かに,被告は現在でも,原告扶桑産業から原告製品を購入しているから,本件 発明の技術的範囲に属する製品を購入し,エンドユーザーにこれを販売する一定の 需要があったというべきである。 しかし,原告らが主張する原告扶桑産業との取引開始の経緯や,被告が本件特許 のライセンスを求めたことについては,これを認めるに足りる証拠はないし,被告 が,被告製品のモデルチェンジをして,本件特許権の侵害とならないカードケース を販売するようになった後,被告のバンドル取引による売上げが減ったとの事情も 認められない。 以上の事情に加え,前記認定の被告製品の取引の実情を踏まえると,被告が顧客 との取引を維持するために原告製品を侵害品である被告製品に置き換えたとまで認 めることはできず,原告らの上記主張は採用できない。
(3) そうすると,被告主張の事情は,侵害者である被告が得た利益 と特許権者である原告扶桑産業が受けた損害との相当因果関係を相当程度,阻害す る事情といえる。
(b) また,被告の企業規模や販売する製品の多様性は前記認定のとお りであり,被告が被告製品を販売するに当たり,被告自身の販売力や企業規模,ブ ランドイメージか需要者に与えた影響も小さくないものというべきである。 したがって,この事情も,上記(a)の事情と相まって,侵害者である被告が得た利 益と特許権者である原告扶桑産業が受けた損害との相当因果関係を一定程度,阻害 する事情といえる。
(c) なお,被告はその他に自身の営業努力も推定覆滅事由として主張 するが,被告製品に関する事実関係が明らかではなく,事業者は,製品の製造,販 売に当たり,製品の利便性について工夫し,営業努力を行うのが通常であることを 踏まえると,推定覆滅事由として考慮すべきとまでいうことはできない。
c 被告は代替品・競合品(乙67ないし72)の存在を指摘している。 しかし,推定覆滅事由として考慮する競合品といえるためには,市場において侵 害品と競合関係に立つ製品であることを要するものと解される(前掲知財高裁令和 元年6月7日判決)。このような観点から被告主張の製品を検討すると,被告が指 摘する製品には,その具体的構成や使用方法が判然としないものも含まれているほ\nか,カードケースが上保持部と下保持部を備えるなどという本件発明の構成の基本\n的部分を備えたものと認めることもできないから,被告指摘の製品を代替品ないし 競合品ということはできない。また,被告指摘の製品の販売時期等も不明である。 したがって,被告の上記指摘によって推定が覆滅されるとはいえない。
d 被告は,乙73ないし77の先行技術等の存在を指摘して,被告製 品の販売に対して本件発明の技術的意義が寄与する程度は低いということを主張す る。 しかし,被告が指摘する乙73ないし77はいずれも,カードケースが上保持部 と下保持部を備えるなどという本件発明の構成の基本的部分を備えたものと認める\nことはできない。また,被告が指摘する乙77は,表示板支持棒の先端に表\示板が 取り付けられているものの,その取り付け方法は,指示棒の先端に平板部分を設け, その下面に突設されたピンに表示板を保持するというものであり(乙77の【考案\nの詳細な説明】の【0021】),本件発明の構成とは大きく異なっている。それ\nだけでなく,被告製品が販売されていた時期に,本件発明の作用効果の一部を奏す るとされる技術があったとしても,それだけで直ちに,原告扶桑産業において,本 件特許の全構成を備えた被告製品の販売による利益に相当する損害を被ったことが\n否定されるとはいえない。 したがって,被告の主張の技術的観点からの主張は採用できない。
e 以上より,本件では前記b(a)及び(b)記載の事情を推定覆滅事由と して考慮すべきところ,前記認定・判示の事情を踏まえると,6割の限度で推定が 覆滅されると認めるのが相当である。 この点に関し,被告は顧客が原告らに注文して原告製品を購入するという行動に 出たという可能性は皆無であったなどとして,推定覆滅率を99.09%とすべき\n旨主張する。 確かに,被告が原告扶桑産業から原告製品を購入すべき義務を負っていたという 事情はうかがえないから,被告が原告製品以外のカードケースを販売すること自体 は自由にできたことと認められる。 しかし,他方で,被告は遅くとも平成24年1月以降,原告製品を購入し,量販 店等のエンドユーザーに対して販売しており,以前原告製品を購入したことのある エンドユーザーがバンドル取引において原告製品を組み込むことを希望する可能性\nも否定できない。また,前記認定のとおり,被告製品の販売を開始した平成25年 2月以降も,原告製品の購入を完全にやめたわけではなく,量販店等のエンドユー ザーへの販売もされていたことが推認されるから,被告において原告製品を購入し, これをエンドユーザーに販売する必要性が全くなかったとまで認めることはできな い。むしろ,従前の経緯を踏まえると,被告が本件特許の侵害品を販売しなければ, 原告扶桑産業から原告製品を購入し続け,原告扶桑産業が利益を得ていた可能性も\n一定程度認められるものというべきである。 したがって,被告が主張するように99.09%もの推定覆滅を認めることは相 当でない。
f 他に共有者がいることによる控除(推定覆滅)
(a) 被告は,特許法102条2項に基づく原告扶桑産業の損害は,同 項に基づき算定される逸失利益の2分の1にとどまると主張する。 しかし,特許権の共有者は,それぞれ,原則として他の共有者の同意を得ないで その特許発明の実施をすることができるものの(特許法73条2項),その価値の 全てを独占するものではないことに鑑みると,特許法102条2項に基づく損害額 の推定を受けるに当たり,共有者は,原則としてその実施の程度に応じてその逸失 利益額を推定されると解するのが相当であり,共有持分の割合を基準に共有者各自 の逸失利益額を推定すべきものではない。本件においては,前記(1)オで検討したと おり,原告製品を製造して被告に販売するという実施による利益は原告扶桑産業に 帰属し,原告ソーグは,これに伴って金員を得ていたにすぎないから,原告扶桑産\n業の損害額を算定するに当たり,特許法102条2項に基づく利益額の算定から, 共有持分の割合に応じて2分の1を控除(推定覆滅)すべき理由はない。 しかしながら,原告ソーグについては,被告製品の販売により,特許法102条\n3項の実施料相当額の損害を観念し得ることは既に述べたとおりであり,この場合 に,特許権の共有者の一部(原告扶桑産業)が同条2項により侵害者に対し損害賠 償請求権を行使するに当たっては,同項に基づく損害額の推定は,不実施に係る他 の共有者(原告ソーグ)の同条3項に基づく実施料相当額(共有持分の割合により\n取得する。)の限度で一部覆滅されるとするのが合理的である(知財高裁平成30 年11月20日判決・最高裁ウェブページ)。
(b) そこで,原告ソーグが被告に対して請求することができる特許法\n102条3項に基づく実施料相当損害金の額について検討する。 この点について,被告は原告らの間で支払われていた差益をもとに実施料率を算 定すべきと主張するが,原告らが指摘する差益は特許権の共有者間で支払われてい るものであり,その具体的内容や法的位置付けは判然としない(なお,原告らは訴 状において原告製品の原材料の売買による差益と主張していた。)から,この金額 を実施料相当損害金の額を算定するのに用いることは相当でない。 そこで,本件では業界における実施料の相場を考慮に入れつつ,相当な実施料率 を認定するのが相当である。 被告はそれを前提としつつも,本件発明の寄与度や被告による販売力等を考慮す ると,原告ソーグの共有持分(2分の1)に係る相当な実施料率は0.025%で\nあると主張するが,推定覆滅事由に関する前記判示によれば,本件発明の寄与度を 考慮するのは相当でない。そして,プラスチック製品(イニシャル・ペイメント条 件無し)の平成4年度から平成10年度までの実施料率の統計データによると,最 頻値は1%,中央値は3%,平均値は3.9%であること(乙83),本件発明の 構成によるとカードケースの使用者の操作性等が相当向上すると認められること,\n前記認定のとおり,被告による被告製品の売上には被告の販売力やブランドイメー ジ等が大きく影響したと認められること,その他本件に現れた事情に加え,さらに は特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき,実施に対し受けるべき料 率は,通常の実施料率に比べて自ずと高額になるであろうこと(前掲知財高裁令和 元年6月7日判決参照)をも考慮すると,本件で相当な実施料率は5%と認めるべ きであり,原告ソーグの特許法102条3項に基づく損害は(中略)円(計算式:\n被告製品の売上額(中略)円×5%×1/2(共有持分の割合))となる。
(c) そして,原告ソーグについて特許法102条3項により算定した\n(中略)円を,原告扶桑産業との関係では,前記eの推定覆滅に加え,さらに控 除(覆滅)すべきことになる。
ウ したがって,原告扶桑産業の特許法102条2項に基づく損害額は(中 略)円(計算式:(中略)円×4割(推定覆滅後)−(中略)円)と認められる。 なお,原告扶桑産業は特許法102条1項に基づく損害の主張もしているが,原 告ら主張の原告らの利益額は(中略)円であるところ,特許法102条1項ただし 書の「販売することができないとする事情」として考慮される事情は,同条2項の 推定覆滅事由として考慮される事情と変わるものではなく(前掲知財高裁平成27 年11月29日判決参照),本件では前記判示に照らすと,原告らの利益について 6割の限度で「販売することができないとする事情」があったと認めるのが相当で ある。そうすると,原告ら主張の利益額について立証されているかを検討するまで もなく,同条1項に基づく損害額が前記認定の同条2項に基づく損害額を下回るも のであることは明らかである。
エ 原告扶桑産業は,原告ら訴訟代理人及び補佐人弁理士に本件訴訟の提起 等を委任したところ,被告の特許権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は(中 略)万円と認めるのが相当であり,原告扶桑産業の損害額は合計(中略)円となる。
(3) 原告ソーグの損害額\n
原告ソーグの特許法102条3項に基づく損害額は,上記認定のとおり,(中\n略)円と認められる。 そして,原告ソーグは,原告ら訴訟代理人及び補佐人弁理士に本件訴訟の提起等\nを委任したところ,被告の特許権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は(中 略)万円と認めるのが相当であり,原告ソーグの損害額は合計(中略)円となる。\n
4 以上より,原告らの請求は,それぞれ主文第1項及び第2項に掲げる限度で 理由があるから,その限度で認容し,その余の請求はいずれも理由がないから,棄 却することとして,主文のとおり判決する。

◆判決本文

◆別紙1

◆別紙2

◆別紙3

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平成29(ワ)4311  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年7月18日  大阪地方裁判所

 特許権侵害で102条2項に基づく損害として1000万を越える損害額が認定されました。利益を計算するに当たって、消費税を控除すべきかについても判断されています。

 後記検討する【図2】及び【図3】の問題を除けば,上記検討した本件明細 書の記載には,肘置き部が,施術部よりも上方部で施術部に連結していなければな らないことを積極的に示すような内容は存しないと思われるのに対し,本件発明の 効果の観点では,肘置き部は,施術の対象である被施術者の目の部分に近接する位 置で,施術部に連結されると解するのが合理的である。 そして,本件発明1の文言において,「上方位置」と「施術者の上方部」とは近 接する位置で使用されており,本件補正により追加された際にも,当然両者を認識 の上,別異の意味を有するものとして使用されたと解されるところ,前述のとおり, 「上方位置」が施術部よりも上方部の意味である以上,「施術部の上方部」はこれ とは異なる意味であると解され,このことに,上記検討した本件明細書の記載内容 を総合すると,構成要件Cの「施術部の上方部」は,施術部における上方部,すな\nわち,施術部の上下方向における略中心を想定し,それよりも上方の部分を指すと 解するのが相当である。 被告らは,構成要件Cが本件補正により追加された要件であるところ,特許\n請求の範囲の補正に当たって新たな技術的事項の導入は許されないとして,本件明 細書の【図2】及び【図3】においては,肘置き部の上方位置の背面に連結部であ る水平軸が設けられていることから,本件発明における「上方部」は,構成要件B\nの「上方位置」と同様,「施術部の,それより上の部分」(施術部を含まず,施術 部に対して上)と解釈せざるを得ないと主張する。 確かに,本件明細書の【図3】では,肘受け部の回転軸が,施術部の上縁より少 し上方に存するように見えるが,これが実施例にすぎないことは本件明細書にも明 示されているし(【0015】),回転軸が,施術部の上縁に接する状態であれば, これも,施術部における上方部に,肘置き部が連結されているといえなくもない。 その他の【図】で開示されている実施例では,肘置き部がどの位置で施術部に連 結され,回転軸がどの位置に存在するかは全く不明といわざるを得ないが,少なく とも,施術部における上方部に肘置き部を連結する構成と,明らかに矛盾するよう\nな内容は存しない。
イ 出願経過及び本件意見書の記載について
本件意見書には,「4.特許法第29条第2項の拒絶の理由がないことの説 明」という表題の下,「(a)本願第1発明の説明」として,本件発明1につき,\nアイメイクの施術部位は被施術者の目尻,目頭,瞼,まつ毛,眉毛等であるため, この施術部位の周辺に施術者の手を配置すれば,必然的に肘の位置は手の位置を基 点とした範囲内(被施術者の頭部周辺)になるところ,その範囲で肘を支える部材 として肘置き部を備えたのが本件発明1であること,肘置き部が施術部の上方部を 基点として,これを軸に施術部に対して回動することで施術部に対する角度が変化 するが,肘置き部がどのような角度に調整された場合であっても,回動する範囲は 施術部の周囲(頭部の左右位置,もしくは左右位置及び上方位置)において一定で あるため,肘置き部が回動する範囲は,施術部位周辺に施術者が手を配置した際に その施術者の肘が配置される範囲と常に一致すること,これにより,施術者は肘置 き部により肘を固定させて施術することができるため,施術が安定するとともに施 術効率を向上させることができる旨が記載されている。 また,原告は,上記に続く「(b)本件拒絶理由通知書における認定」にお いて,本件拒絶理由通知の概略を,1)「被施術者の頭部を載置する施術部が形成さ れている施術台において,前記施術部の周囲であって,載置される前記被施術者の 頭部の左右位置,もしくは左右位置及び上方位置に,施術者の肘を固定可能な肘置\nき部を設けることで施術者の施術における負担の軽減を図るものは,例えば,引用 文献2の第1図における肘掛け34a,34b(中略)にみられるように周知技術 (以下「周知技術1」という。)であり,引用発明1において上記周知技術1を適 用し,前記施術部の周囲であって,載置される前記被施術者の頭部の左右位置,も しくは左右位置及び上方位置に,施術者の肘を固定可能な肘置き部を設けたものと\nする(中略)ことは当業者が容易になし得たものである。」,及び2)「さらに,施 術者の肘を固定可能な肘置き部を水平を軸にして回動可能\なものとすることも,例 えば,引用文献3(中略),引用文献4(中略)にみられるように周知技術(以下 「周知技術2」という。)であり,引用発明1において上記周知技術2を適用し, 前記肘置き部は水平を軸にして回動可能であるものとすることも当業者が容易にな\nし得たものである。」とまとめた上で,それに続く「(c)本願第1発明と引用発 明との対比」において,引用発明2について,「ヘッドレスト33が傾倒するもの であり,肘掛け34a,34bは個別に回動するものではありません。また,肘掛 け34a,34bの取り付け位置は,ヘッドレスト33の左右方向です。」「した がって,引用発明1に,上記した各引用発明のいずれを適用したとしても,本件発 明1のように,『肘置き部が前記施術部の上方部に連結され,水平を軸にして前記 施術部に対して回動可能』な構\成とはならない」と記載した。 被告らは,上記原告の引用発明2に関する文章(「肘掛け34a,34bの 取り付け位置は,ヘッドレスト33の左右方向です。」)を理由に,本件意見書に おいて,原告は,肘置き部の取付け位置が施術部の左右である構成を排除した旨を\n主張する。 しかしながら,本件意見書の上記文章は,引用発明2について,肘掛けの取付け 位置がヘッドレストの左右であるものの,肘掛けが回動しない点で本件発明とは異 なる旨を指摘したものと解することができ,被告の主張は採用できない。
ウ まとめ
以上検討したところを総合すると,構成要件Cの「施術部の上方部」とは,施術\n部における上方部の意味に解すべきであるが,肘置き部の回転軸が施術部の上縁に 接するよう連結する構成も含み得るとすると,その範囲については,別紙原告図面\nのうち,赤で示された部分を指すと解すべきこととなる。
(2)構成要件Cの「連結」の意義について\n
ア 「連結」の字義的意味は,「つらねむすぶこと。むすびあわせること。」で あるところ,本件明細書には,特に「連結」についての定義や,具体的な連結方法 についての記載はない。 本件明細書の【図2】及び【図3】には,肘置き部と施術部が,それぞれ支持部 材と背面部材を介して,水平軸の位置でつながっている形態が示されており,段落 【0018】も上記形態について説明する。 また,本件意見書には,肘置き部が,施術部の上方部を基点として,これを軸に 施術部に対して回動すること,引用発明3及び引用発明4においては,枕F(また は head rest 2)と肘受24(または head rest 4)とが連動せず別々に動作するこ とが望ましいと考えられるため,引用発明1にこれらの発明を適用したとしても本 件発明1の構成要件Cのような構\成にはならないことが記載されている。 そうすると,構成要件Cにおける「連結」とは,施術部と肘置き部が別々に動作\nすることができない形態でつながっていることを意味し,それ以上具体的な連結方 法について定めるものではないと解するのが相当である。
イ 被告らは,本件明細書の【図1】及び【図6】に示される実施形態から,構\n成要件Cの「連結」とは,「肘置き部が,その上方位置の背面において,前記施術 部の上方部に連結され」と解釈すべきであると主張するが,同図は,1つの実施形 態にすぎないから,そこから具体的な連結部位についてまで定められていると解す べきではない。
(3) 被告製品の構成\n
ア 別紙被告製品写真1ないし4及び別紙「被告製品の説明書」によれば,構成\n要件Cに対応する被告製品の構成cは,施術部の左右側面のうち,上下方向におけ\nる中央線よりも上の部分において,回動部材を介して施術部とリクライニングアー ムとがつながる構成をとり,施術部を左右方向に横切るような仮想の回転軸を中心\nにリクライニングアームが回動するものであると認められる。
イ 被告らは,被告製品の肘置き部が施術部の「左右位置」において回転自在に 支持されていることから,本件発明の構成要件Cを充足しないと主張するが,構\成 要件Cの「施術部の上方部」が施術部の左右側面を排除しない概念であることは前 述のとおりであり,また,構成要件Cの「連結」が具体的な連結方法や連結部位を\n定めるものではないことも前述のとおりであるから,上記被告らの主張を採用する ことはできない。
ウ また,被告らは,被告製品について,仮想の回転軸が施術部を貫通している ことから,回転軸が施術部の背面にあり,また施術部よりも上方にある本件発明と 比較して,肘置き部を回転させた時に肘置き部の左右位置と施術部との間の距離が 比較的短く施術しやすい,という本件明細書から記載された発明からは導き出せな い技術的事項を有すると主張するが,本件発明の回転軸が施術部よりも上方にある との主張は採用できず,被告らの主張は理由がない。
(4) まとめ
以上より,被告製品のリクライニングアームは,施術部の上方部に連結され,水 平を軸として施術部に対して回動可能であると認められるから,本件発明の構\成要 件Cを充足する。
・・・
上記(1)及び(2)によると,被告製品の売上高(税込)から原価(税込)を控除した 額は,951万7032円(別紙被告計算表の「粗利(総計売上税込−総計原価税\n込)」欄参照。)であり,同額を被告らの利益の額と認め,原告の損害額を算定す る基礎とするのが相当である。 なお,消費税基本通達5−2−5に鑑みれば,知的財産権の侵害に基づく損害賠 償金は,消費税法上の資産の譲渡等の対価に該当し,消費税の課税対象となると解 するのが相当であり(消費税法2条1項8号,同法4条1項),本件における損害 賠償金も,特許権の侵害に基づく損害賠償金として消費税の課税対象となると解さ れるところ,上記被告らの利益の額は,税込売上高から税込原価を控除したもので あり,消費税相当額を含む額であるから,原告の損害額を算定する際に,さらに消 費税相当額8%を加算する必要はない。
イ 被告らの主張について
被告らは,消費税に関し,特許法102条2項の「利益」の算定方法について主 張するほか,そもそも,同項により推定される損害賠償金は逸失利益であるから, 一般的に消費税の課税の対象とならないか,本件の個別事情に照らし,損害賠償金 は対価性がないため消費税の課税の対象とならないこと,仮に本件における損害賠 償金が消費税の課税の対象になるとしても,原告と被告との間において内税方式, 外税方式のいずれを採用するかについての合意がない以上,内税方式によるべきで あることを主張する。 しかしながら,特許権侵害に対する損害賠償請求訴訟では,典型的には,特許権 者のみが発明の実施品を製造,販売している状態を想定し,侵害品の販売により特 許権者側の売上等が減少したことを損害と捉え,認定又は推定の方法により算定し た損害賠償額金を得させることで,権利侵害のなかった原状に可及的に復させよう とするものであるところ,その回復の対象となる原状において,特許権者が発明の 実施品を製造,販売すれば,売上,経費いずれの面でも消費税は考慮されるはずで ある。 そうすると,本件のように,回復の対象である原状において,消費税が考慮され る事案においては,その回復の手段として逸失利益の損害賠償を算定する際におい ても消費税の負担は考慮すべきことになり,これに反する被告らの主張は採用でき ない。 そして,その計算としては,前述のとおり,消費税相当額を考慮した売上額から, 消費税相当額を考慮した経費額を控除すれば足りると解され,これによって算定し た損害額に,さらに消費税相当額を加算する必要はないし,当事者間に特段の合意 がなければ内税方式により計算すべきであるとの被告らの主張も理由がない。 また,被告らは,消費税相当額分の遅延損害金の起算日は,その額が確定した日, すなわち判決確定日であって不法行為時ではないと主張するが,上記アのとおり, 原告に支払われるべき損害賠償金は,消費税相当額を含むものの,全体としては特 許法102条2項により原告の損害と推定される額であるから,全部につき不法行 為の日から遅滞に陥ると解するのが相当である。
(4) 推定覆滅又は寄与率について
ア 被告らは,本件発明の被告製品に対する技術的寄与及び顧客吸引力は小さく, 寄与率は50%程度であると主張する。 しかし,本件発明3の構成要件Fは,リクライニング機構\が付与されていること とされており,本件明細書の段落【0020】及び【0021】にも,電動式を含 むリクライニング機構が付与されていることにより,異なるアイメイク施術を1台\nで済ませることができたり,被施術者が仰向けになったときの下半身の負担を軽減 したりすることができる旨の記載がある。また,本件発明はアイメイク用施術台全 体に関するものであって,リクライニングアームのみに関する発明ではない。 よって,本件発明の,被告製品に対する技術的寄与が少ないという上記被告らの 主張を採用することはできない。
イ また,被告製品の価格(11万8000円(税抜))と本件発明の実施品の 価格(18万2000円(税抜))との差は6万4000円であるところ(乙29), これが直ちに顧客吸引力に大きな差が生じるまでの金額ということはできない。ま た,被告らは,高田ベッド製作所がアイメイク用施術台の分野において特別なブラ ンド力を有することや,被告製品の広告宣伝において,高田ベッド製作所のブラン ド力を使用していること等の主張立証をせず,リクライニング機構が本件発明3の\n構成要件となっていることは,上記アのとおりである。\nよって,本件発明が,顧客の購買に寄与する要素が極めて小さいという上記被告 らの主張を採用することはできない。
ウ したがって,本件において特許法102条2項の推定を覆滅すべき事情は認 められない。
(5) 特許法102条4項後段に関する主張
原告は,平成28年10月31日付け及び同年12月5日付けで,被告アイラッ シュに対し,本件特許権の侵害について2回にわたり警告し,被告アイラッシュも これに回答していることから(甲5ないし8),被告らにおいて被告製品が本件特 許の権利範囲外であると考えたことについて,故意または重過失がなかったとして 損害賠償の額を定めるにつきこれを参酌すべき場合であるとは認められない。

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平成29(ワ)9201  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年6月20日  大阪地方裁判所

 特許権侵害が認定され、102条3項の実施料率として7%が認定されました。大阪地裁はその理由を詳細に認定しています。H31.3の特許法改正規定の施行を先取りする形で、「通常の実施料率に比べておのずと高額になるであろうことを考慮すべき」と一般論を述べています。

 特許法102条3項は,「特許権者…は,故意又は過失により自己の特許権 …を侵害した者に対し,その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する 額の金銭を,自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。」旨 規定する。そうすると,同項による損害は,原則として,侵害品の売上高を基準と し,そこに,実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。 ここで,特許法102条3項については,「その特許発明の実施に対し通常受け るべき金銭の額に相当する額」では侵害のし得になってしまうとして,平成10年 法律第51号による改正により「通常」の部分が削除された経緯がある。また,特 許発明の実施許諾契約においては,技術的範囲への属否や当該特許の効力が明らか ではない段階で,被許諾者が最低保証額を支払い,当該特許が無効にされた場合で あっても支払済みの実施料の返還を求めることができないなど,様々な契約上の制 約を受けるのが通常である状況の下で,事前に実施料率が決定される。これに対し, 特許権侵害訴訟で特許権侵害に当たるとされた場合,侵害者は,上記のような契約 上の制約を負わない。これらの事情に照らせば,同項に基づく損害の算定に当たっ て用いる実施に対し受けるべき料率は,必ずしも当該特許権についての実施許諾契 約における実施料率に基づかなければならない必然性はなく,むしろ,通常の実施 料率に比べておのずと高額になるであろうことを考慮すべきである。 したがって,特許法102条3項による損害を算定する基礎となる実施に対し受 けるべき料率は,1)当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や,それ が明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ,2)当該特 許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能\n性,3)当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態 様,4)特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情 を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきである。
(イ) 実施料の相場(1))
「実施料率〔第5版〕」(社団法人発明協会研究センター編,平成15年発行。 甲38)によれば,「医薬品・その他の化学製品」(イニシャル無)の技術分野に おける平成4年度〜平成10年度の実施料率の平均値は7.1%であり,昭和63 年度〜平成3年度に比較して上昇しているところ,その要因として,「実施料率全 体の契約件数は減少しているものの,8%以上の契約に限れば件数が増加しており, この結果,…実施料率の平均値が高率にシフトしている。」,「この技術分野が他 の技術分野と比較して実施料率が高率であることと,実施料率の高率へのシフト傾 向は,医薬品が支 れている。また,「バイオ・製薬」の技術分野においては,平均6.0%,最大値 32.5%,最小値0.5%とされている。
(ウ) 本件における実施料率を考えるにあたり考慮すべき事情(2)〜3))
a 原告は,本件各発明の技術的価値は極めて優れたものであり,また,速乾性 手指消毒剤の市場における泡状の製品の占めるシェアの動向から,経済的にもその 価値は高いなどと主張する。 泡状の速乾性手指消毒剤である被告各製品に係る宣伝広告(甲5,7,8),製 品情報(甲6,9)及び医薬品インタビューフォーム(甲10)では,液状の速乾 性手指消毒剤では手に取ったときにこぼれやすく,ジェル状の速乾性手指消毒剤で は増粘剤が配合されているためにポンプのノズルの詰まりや繰り返し塗布したとき の使用感が問題になることがあったところ,被告各製品は,これらの問題点を解決 する製品である旨がうたわれていることが認められる。 また,本件各発明の実施品である泡状の速乾性手指消毒剤(平成23年6月発売。 甲39,41の1〜41の5,弁論の全趣旨)の販売業者が医療関係者向けに開設 したウェブサイト(甲40)には,泡が目に見えるので消毒範囲が確認できるとと もに,泡が消えるまで塗り広げることが消毒時間の目安にもなる点や,増粘剤が入 っていないので,ポンプが詰まらず,手に擦り込んでもヨレ(増粘剤入りの消毒剤 や化粧品を手に擦り込んだ際に出る糊状の剥離物)が出ないことがうたわれている。 さらに,平成30年9月26日付け薬事日報ウェブサイトの新薬・新製品情報に関 する記事(甲44)においては,第三者の販売に係る「医薬品として日本で初めて 承認された低アルコール濃度72vol%の手指殺菌・消毒剤」の出荷開始予定について\n報じる中で,「同品の登場によって,手指消毒剤の課題であったアルコールによる 手肌への刺激が低減され,…このほか,▽きめ細かく弾力のある泡で,手からこぼ れるリスクを軽減する▽泡が目でしっかり見えるため,手指消毒の状態を確認でき る−といった使用感も特徴。」,「現在,医療分野における手指消毒剤市場は約1 60億円とされ,構成比は液状が6割,ジェル状が3割,泡状が1割という状況。\nただ,液状の構成比は年々減少しており,今後はジェル状と共に泡状も伸びていく\nことが見込まれている。」とされている。 加えて,被告サラヤが実施したアンケートによれば,アンケート対象者である医 療従事者の施設で使用されている速乾性手指消毒剤の種類は,平成25年にはジェ ルタイプ67%,液タイプ27%,泡タイプ6%であったものが,平成27年には それぞれ66%,24%,10%となっている(甲42,43)。 以上の事情を総合的に見ると,被告各製品と本件各発明の実施品に加え,第三者 の製品も,本件各発明の奏する作用効果(前記3(2)ア)と同趣旨と見られる効果を 利点としてうたっていることなどに鑑みれば,泡状の手指消毒剤において本件各発 明が持つ技術的価値は高いものと見られる。また,手指消毒剤の市場において,泡 状の製品のシェアが徐々に高まっていることがうかがわれることに鑑みると,本件 各発明の経済的価値も積極的に評価されるべきものといえる。もっとも,後者に関 しては,ジェル状の製品のシェアはなお維持されているといってよいことに鑑みる と,その評価は必ずしも高いものとまではいえない。実施料率の決定要因としては, 当該特許発明の技術的価値よりも経済的価値の方がより影響力が強いと推察される ことに鑑みると,このことは軽視し得ない。 これに対し,被告らは,本件各発明は平均的な発明に比して技術的に優れた発明 ではなく,また,泡状の手指消毒剤のシェアの拡大は直接的には当該製品の販売事 業者の営業努力によるものであり,シェア拡大をもって特許の経済的価値が高いと はいえないなどと主張する。 しかし,進歩性が認められる本件各発明の奏する作用効果と同趣旨と見られる効 果が実際の製品の利点としてうたわれていることなどに鑑みれば,上記のとおり本 件各発明の技術的価値は高いものと評価するのが相当である。また,販売事業者が 営業活動に当たって相応の営業努力を行うことは当然である上,泡状の手指消毒剤 に係る営業方法等が,ジェル状ないし液状のものに係る営業方法等と比較して,格 別のものであると見るべき事情もない。 これらのことから,この点に関する被告らの主張は採用できない。
b 被告各製品は,被告製品1(500mLの泡ポンプ付が定価1760円,3 00mLの泡ポンプ付が1200円,80mLの泡ポンプ付が670円,600m Lのディスペンサー用が2000円。甲5,28,乙13),被告製品2(500 mLの泡ポンプ付が1760円,300mLの泡ポンプ付が1200円,200m Lの泡ポンプ付が930円,80mLのものが670円,600mLのディスペン サー用が2000円。甲8,29,乙14)いずれも比較的低価格である。反面, これを踏まえて被告各製品の売上高を見ると,その販売数量は多いといえるから, 被告各製品はいわゆる量産品であり,利益率は必ずしも高くないと合理的に推認さ れる。この点は,本件各発明を被告各製品に用いた場合の利益への貢献という観点 から見ると,実施料率を低下させる要因といえる。
(エ) 小括
上記(イ)及び(ウ)の各事情を斟酌すると,特許権侵害をした者に対して事後的に定め られるべき,本件での実施に対し受けるべき料率については,7%とするのが相当 である。これに反する原告及び被告らの各主張は,いずれも採用できない。 ウ 「特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」 以上によれば,原告が被告らによる本件各発明の実施に対し受けるべき金銭の額 に相当する額は,売上高に7%を乗じて算定すべきこととなる。

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平成30(ネ)10017  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成31年4月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 特許権侵害事件が控訴されましたが、1審と同様に、差止・損害賠償が認められました。損害賠償額は増えています。102条3項の実施料率について判断されています。具体的数値は伏せ字となっているため不明です。控訴審でも平均値である5.9%平均よりも、低く認定されたようですが、1審よりも高くなったと思われます。

  (1) 実施料率
ア 1)平成19年に日本で特許出願を行った国内企業・団体のうち,合計出 願件数の上位となっている企業・団体(対象2031件)に加えて,株式会社帝国 データバンク保有データ信用調査報告書ファイルの中からライセンス契約を実施し ていると判断された企業(対象975件)に対するアンケート調査(有効回答56 3件)において,化学分野(IPC分類のC01〜C14;103件)に係る特許 権のロイヤルティ料率の平均値は4.3%であるとされていること(甲67,乙5 8),2)財団法人経済産業調査会発行の「ロイヤルティ料率データハンドブック〜特 許権・商標権・プログラム著作権・技術ノウハウ〜」(甲68)において,上記アン ケート結果をその技術分類と異なる技術分類で新たに分析した結果として,「有機化 学,農薬」分野(IPC分類のA61,C07,C40;54件)のロイヤルティ 率の平均値は5.9%とされていることが認められる。 本件各発明のIPC分類は,C07D,A01N,A01Pである(甲2の2) から,上記1)よりは2)の方が本件各発明からより遠い技術分野のサンプルが除外さ れており,2)の54件というサンプル数も少なくないということができるから,本 件各発明の相当実施料率の検討に当たっては,1)よりは2)を念頭に検討することが 相当である。
イ 証拠(甲2の2,乙1〜4)及び弁論の全趣旨によると,本件各発明は, 除草剤の有効成分又はその候補となる新規化合物を提供することを課題として,化 合物の一般式及び置換基の組合せを示したものであるが,発明の詳細な説明におい て,上記化合物の除草特性に関する個別の実験結果は示されておらず,本件出願日 当時の技術常識に照らして上記化合物が除草作用を有しており,除草剤の有効成分 の候補となり得るものであることが認識できるにとどまるものである。そうすると, 本件各発明の化合物を水稲など特定の作物に用いる農薬として利用するためには, 本件各発明の多数の化合物の中からテフリルトリオンのような特定の化合物を選び 出した上,その化合物が上記作物の栽培に当たり想定される具体的な雑草に対する 除草効果を発揮する一方,上記作物に対する有害性がないことを確認する必要があ り,相応の試行錯誤を要することは明らかである。 したがって,本件各発明の実施料率は,類似する技術分野の実施料率の分布にお いて,平均よりも一定程度低く位置付けることが相当である。
ウ 証拠(甲4,5,甲6の1〜4,甲7の1〜3,甲55〜61,72) 及び弁論の全趣旨によると,1)被告製品2は,いずれもテフリルトリオンに加えて もう1種類の有効成分(被告製品2(1)〜(3)のフェントラザミド,同(4)〜(6)のメフェ ナセット,同(7)〜(12)のトリアファモン。以下,「フェントラザミド等」という。)を 含有する農薬混合物であること,2)テフリルトリオンは,ノビエを除く幅広い雑草 に対する除草効果に優れ,スルホニルウレア抵抗性雑草(ホタルイ類,アゼナ類, コナギ等)に高い除草作用を有しているのに対し,フェントラザミド等は,いずれ もテフリルトリオンの除草効果が十分でないノビエに対して優れた除草効果を有し\nており,テフリルトリオンと相互に除草効果を補完する関係にあること,3)一審被 告が作成した被告製品2の技術資料やパンフレット等の広告宣伝でも,2種類の有 効成分が含まれた農薬混合物であることによってスルホニルウレア抵抗性雑草及び ノビエに対して優れた除草効果を発揮することが一貫して記載されていること(例 えば,被告製品(4)〜(6)の技術資料〔甲5〕においては,表紙である1頁に「2成分\nで白く枯らす。効きめが見える。」と記載され,4頁の「ポッシブルの特長」におい ても6項目中の1番目に「2成分で高い除草効果 ノビエをはじめとした一年生雑 草から,ホタルイ,ウリカワ,ミズガヤツリ,ヘラオモダカ,ヒルムシロ,セリ, オモダカ,クログワイなと〔判決注・「など」の誤記と認める。〕の多年生雑草に対 し高い効果を示します。また,新規成分テフリルトリオンとメフェナセットの2種 混合なので,減農薬栽培にも適しています。」などと記載されている。)が認められ る。
上記認定の事実によると,被告製品2においては,テフリルトリオンが,ノビエ を除く幅広い雑草に対する除草効果に優れ,スルホニルウレア抵抗性雑草にも高い 除草作用を有していることから,有効成分として主たる役割を果たすものと認めら れるが,フェントラザミド等は,テフリルトリオンの除草効果が十分でないノビエ\nに対して優れた除草効果を有しているところ,ノビエに対する除草効果も重要であ るものと認められる。 そうすると,被告製品2の顧客吸引力は,その過半がテフリルトリオンによるも のではあるが,その一部はフェントラザミド等によるものであると認められる。
エ 前記ア〜ウに併せて,一審被告が一審原告から本件特許の実施許諾を得 ずに被告製品2の製造販売等を継続していた一方,結果的に本件訂正により解消し たとはいえ,本件特許は無効理由を有していたことなど,本件に顕れた全ての事情 を総合すると,被告製品2に係る本件特許権侵害の不法行為の損害の額を特許法1 02条3項により算定する際に適用すべき実施料率は●●●●が相当である。 なお,証拠(乙65〜67)によると,OATアグリオ株式会社は,平成28年 8月頃,「サスケ−ラジカルジャンボ」,「半蔵1キロ粒剤」という水稲用一発処理除 草剤を販売していたこと,いずれも,ホタルイ,コナギ,アゼナ類などSU抵抗性 雑草に強いことを宣伝文句としており,有効成分にシクロスルファムロン及びベン ゾビシクロンを含む(その余の有効成分として,前者はカフェンストロール及びダ イムロンを,後者はペントキサゾンを含む。)こと,「サスケ」及び「半蔵」はBA SF社(一審原告又はその関連会社と推認される。)の登録商標であったことが認め られる。しかし,上記登録商標の使用許諾以外には,これらの除草剤の販売に一審 原告がどのように関わっているかや,これらの除草剤が被告製品2とどの程度競合 関係にあるかは,本件全証拠によっても明らかではないから,これらの事実につい ては,考慮しないこととする。また,前記認定のとおり,バイエル特許が存することが認められるが,被告製品2は,本件各発明の技術的範囲に属するから,本件特許を実施してはじめてバイエル特許を実施することができるものであり,前記のとおり,本件各発明の化合物を除草剤とするには相応の試行錯誤が必要であることは既に考慮しているから,バイエル特許が存することを,既に判示したところを超えて考慮する必要はない。

◆判決本文

原審では、実施料率について、以下のように認定されています。

◆平成27(ワ)2862

上記のアンケート結果をその技術分類と異なる技術分類で新たに分析した結果 として,「有機化学,農薬」分野のロイヤルティ率の平均値は5.9%とされてい ることが認められる。 上記事実関係に照らすと,被告製品2は,本件各発明の技術的範囲に含まれるテ フリルトリオンを有効成分の一つとする農薬混合物ではあるものの,本件各発明の 効果が特に顕著であるとみることはできない。また,被告製品2においては,テフ リルトリオン以外の有効成分もテフリルトリオンの除草効果を補完する重要な効果 を有しており,技術資料等においても二種類の有効成分が含まれた農薬混合物であ ることが一貫して記載されていることも実施料率を算定するに当たって十分に考慮\nされる必要がある。 加えて,本件各発明についての特許に上記3(1)及び(2)のとおりの無効理由がある ことからすると,被告が原告との間でライセンス契約を締結することなく被告製品 2を製造販売等して本件特許権を侵害してきたことをもって,実施料率をそれ程高 額なものと認定するのは相当とはいえない。 以上を総合すると,本件における特許法102条3項所定の損害の額は,被告製 品2の売上高に●(省略)●を乗じて算定するのが相当である。

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平成30(ネ)10063  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年6月7日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 知財高裁特別部、いわゆる大合議判決です。争点は充足論、無効論など、多々ありますが、102条2項の推定覆滅事由、同3項の損害額の判断基準について一般論を述べています。

(3) 推定覆滅事由について
ア 推定覆滅の事情
特許法102条2項における推定の覆滅については,同条1項ただし書の事情 と同様に,侵害者が主張立証責任を負うものであり,侵害者が得た利益と特許権者 が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。例えば, 1)特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在すること(市場の非同一性),2)市 場における競合品の存在,3)侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),4)侵害 品の性能(機能\,デザイン等特許発明以外の特徴)などの事情について,特許法1 02条1項ただし書の事情と同様,同条2項についても,これらの事情を推定覆滅 の事情として考慮することができるものと解される。また,特許発明が侵害品の部 分のみに実施されている場合においても,推定覆滅の事情として考慮することがで きるが,特許発明が侵害品の部分のみに実施されていることから直ちに上記推定の 覆滅が認められるのではなく,特許発明が実施されている部分の侵害品中における 位置付け,当該特許発明の顧客誘引力等の事情を総合的に考慮してこれを決するの が相当である。
イ 控訴人らは,炭酸ガスを利用したパック化粧料全てが競合品であることを 前提に,他の炭酸パック化粧料の存在が推定覆滅事由となると主張する。 しかし,そもそも,競合品といえるためには,市場において侵害品と競合関係 に立つ製品であることを要するものと解される。 被告各製品は,炭酸パックの2剤型のキットの1剤を含水粘性組成物とし,炭 酸塩と酸を含水粘性組成物中で反応させて二酸化炭素を発生させ,得られた二酸化 炭素含有粘性組成物に二酸化炭素を気泡状で保持させる炭酸ガスを利用したパック 化粧料である。そして,化粧料における剤型は,簡便さ,扱いやすさのみならず, 手間をかけることにより得られる満足感等にも影響するものであり,各消費者の必 要や好みに応じて選択されるものであるから,剤型を捨象して広く炭酸ガスを利用 したパック化粧料全てをもって競合品であると解するのは相当ではない。控訴人ら が競合品であると主張する製品は,その販売時期や市場占有率等が不明であり,市 場において被告各製品と競合関係に立つものと認めるには足りない。
ウ 控訴人らは,被告各製品が利便性に優れているとか,被告各製品の販売は 控訴人らの企画力・営業努力によって成し遂げられたものであると主張する。 しかし,事業者は,製品の製造,販売に当たり,製品の利便性について工夫し, 営業努力を行うのが通常であるから,通常の範囲の工夫や営業努力をしたとしても, 推定覆滅事由に当たるとはいえないところ,本件において,控訴人らが通常の範囲 を超える格別の工夫や営業努力をしたことを認めるに足りる的確な証拠はない。
エ 控訴人らは,被告各製品は原告製品に比べて顕著に優れた効能を有すると\n主張する。 侵害品が特許権者の製品に比べて優れた効能を有するとしても,そのことから\n直ちに推定の覆滅が認められるのではなく,当該優れた効能が侵害者の売上げに貢\n献しているといった事情がなければならないというべきである。
・・・
(ウ) 被告各製品及び原告製品は,いずれも本件発明1−1及び本件発明2−1 の実施品であり,炭酸塩と酸を含水粘性組成物中で反応させて二酸化炭素を発生さ せ,得られた二酸化炭素含有粘性組成物に二酸化炭素を気泡状で保持させ,皮膚に 適用して二酸化炭素を皮下組織等に供給することにより,美肌,部分肥満改善等に 効果を有するものであると認められるのであり,上記(ア)及び(イ)に認定した事実に よっても,被告各製品が原告製品に比して顕著に優れた効能を有し,これが控訴人\nらの売上げに貢献しているといった事情を認めるには足りず,ほかにこれを認める に足りる的確な証拠はない。
オ 控訴人らは,被告各製品が控訴人ネオケミアの有する特許発明の実施品で あるなどとして,これらの特許発明の寄与を考慮して損害賠償額が減額されるべき であると主張する。 侵害品が他の特許発明の実施品であるとしても,そのことから直ちに推定の覆 滅が認められるのではなく,他の特許発明を実施したことが侵害品の売上げに貢献 しているといった事情がなければならないというべきである。控訴人ネオケミアが, 二酸化炭素外用剤に関連する特許である,1)特許第4130181号(乙A18), 2)特許第4248878号(乙A19),3)特許第4589432号(乙A20), 4)特許第4756265号(乙B全7)を保有していることは認められるが,被告 各製品が上記各特許に係る発明の技術的範囲に属することを裏付ける的確な証拠は ないから,そもそも,被告各製品が他の特許発明の実施品であるということができ ない。よって,これらの特許発明の寄与による推定の覆滅を認めることはできない。 なお,被告各製品の中には,上記特許権の存在や,特許取得済みであることを 外装箱に表示したり,宣伝広告に表\示したりしているものがあったことが認められ る(甲7,8,17,20)が,特許発明の実施の事実が認められない場合に,そ の特許に関する表示のみをもって推定覆滅事由として考慮することは相当でないか\nら,この点による推定の覆滅を認めることもできない。
カ 控訴人らは,従来技術との比較の観点から,本件発明1−1及び本件発明 2−1の技術的価値が低いことを主張するが,控訴人らが指摘するジェルと粉末を 組み合わせる化粧料の技術(資生堂614及び日清324)は,炭酸ガスを利用し た化粧料に係るものではないし(乙A103,乙E全9,35,36),2剤混合 型の気泡状の二酸化炭素を発生する化粧料(石垣発明1及び2)は,炭酸ガスの気 泡の破裂により皮膚等をマッサージするための発泡性化粧料の技術であって,二酸 化炭素を気泡状で保持する二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのものではない (乙E全4,5,37,38)から,いずれも本件発明1−1及び本件発明2−1 を代替するものではない。そうすると,これらの従来技術の存在は,被控訴人の受 ける損害とは無関係であるから,推定覆滅事由に当たるということはできない。 キ 控訴人らは,乙A3の実験結果によれば,ブチレングリコールが配合され た被告各製品においては,本件発明1−1及び本件発明2−1の寄与は限定的であ ると主張する。しかし,本件発明1−1及び本件発明2−1は二酸化炭素含有粘性 組成物を得るための2剤型の化粧料のキットの発明であるところ,被告各製品は, 炭酸塩を含むジェル剤と酸を含む顆粒剤を混合して使用するパック化粧料のキット であるから,本件発明1−1及び本件発明2−1は被告各製品の全体について実施 されているというべきである。また,被告各製品にブチレングリコールが配合され たことによる効果が控訴人らの売上げに貢献しているといった事情も認められない 本件において,ブチレングリコールが配合されていることは,被控訴人の受ける損 害とは無関係であるから,控訴人らが指摘する乙A3の実験の結果は,控訴人らの 上記主張を基礎付けるものではない。
・・・
6 損害(特許法102条3項)(争点6−2)
(1) 特許法102条3項について
ア 被控訴人は,選択的に,別紙「損害額一覧表」の「被控訴人主張額」「3\n項による損害額」欄記載のとおり,特許法102条3項により算定される損害額も 主張している。特許法102条3項は,特許権侵害の際に特許権者が請求し得る最 低限度の損害額を法定した規定である。
イ 特許法102条3項は,「特許権者…は,故意又は過失により自己の特許 権…を侵害した者に対し,その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当す る額の金銭を,自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。」 旨規定する。そうすると,同項による損害は,原則として,侵害品の売上高を基準 とし,そこに,実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。
(2) その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額
ア 特許法102条3項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の 額に相当する額」については,平成10年法律第51号による改正前は「その特許 発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額」と定められていたところ, 「通常受けるべき金銭の額」では侵害のし得になってしまうとして,同改正により 「通常」の部分が削除された経緯がある。
特許発明の実施許諾契約においては,技術的範囲への属否や当該特許が無効に されるべきものか否かが明らかではない段階で,被許諾者が最低保証額を支払い, 当該特許が無効にされた場合であっても支払済みの実施料の返還を求めることがで きないなどさまざまな契約上の制約を受けるのが通常である状況の下で事前に実施 料率が決定されるのに対し,技術的範囲に属し当該特許が無効にされるべきものと はいえないとして特許権侵害に当たるとされた場合には,侵害者が上記のような契 約上の制約を負わない。そして,上記のような特許法改正の経緯に照らせば,同項 に基づく損害の算定に当たっては,必ずしも当該特許権についての実施許諾契約に おける実施料率に基づかなければならない必然性はなく,特許権侵害をした者に対 して事後的に定められるべき,実施に対し受けるべき料率は,むしろ,通常の実施 料率に比べて自ずと高額になるであろうことを考慮すべきである。
したがって,実施に対し受けるべき料率は,1)当該特許発明の実際の実施許諾 契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界における実施料の相場 等も考慮に入れつつ,2)当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重 要性,他のものによる代替可能性,3)当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上 げ及び利益への貢献や侵害の態様,4)特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の 営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきである。
・・・・
ウ 実施に対し受けるべき金銭の額
上記のとおり,1)本件訴訟において本件各特許の実際の実施許諾契約の実施料 率は現れていないところ,本件各特許の技術分野が属する分野の近年の統計上の平 均的な実施料率が,国内企業のアンケート結果では5.3%で,司法決定では6. 1%であること及び被控訴人の保有する同じ分野の特許の特許権侵害に関する解決 金を売上高の10%とした事例があること,2)本件発明1−1及び本件発明2−1 は相応の重要性を有し,代替技術があるものではないこと,3)本件発明1−1及び 本件発明2−1の実施は被告各製品の売上げ及び利益に貢献するものといえること, 4)被控訴人と控訴人らは競業関係にあることなど,本件訴訟に現れた事情を考慮す ると,特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき,本件での実施に対し 受けるべき料率は10%を下らないものと認めるのが相当である。なお,本件特許 権1及び本件特許権2の内容に照らし,一方のみの場合と双方を合わせた場合でそ の料率は異ならないものと解すべきである。 したがって,本件各特許権侵害について,特許法102条3項により算定され る損害額は,別紙「損害額一覧表」の「裁判所認定額」「3項による損害額」欄記\n載のとおりとなる。
(3) 控訴人らの主張について
控訴人らは,被告各製品における本件各特許の寄与が限定されることを根拠に 実施に対し受けるべき料率を低くすべきであると主張するが,前記5(3)に説示し たところに照らし,本件発明1−1及び本件発明2−1を被告各製品に用いたこと による売上げ及び利益への貢献が限定されるとは認められないから,控訴人らの主 張は前提を欠く。 また,控訴人らは,被控訴人のビジネスモデルが不当に競争を制限するもので あると主張するが,前記5(1)イにおいて認定したとおり,被控訴人は本件各特許 の実施品を製造販売しているのであるから,被控訴人のビジネスモデルが不当に競 争を制限するものであると解する根拠がない。控訴人らの,MLMによる販売手法 に関する主張は具体的な主張を欠き,失当である。 控訴人らの主張するその余の点も,上記判断を左右するものではない。
7 総括
(1) 被控訴人キアラマキアート(被告製品5)については,上記6で認定した 特許法102条3項に係る損害額が,前記5で認定した同条2項に係る損害額より も高いから,同条3項に係る損害額をもって被控訴人の損害額と認めるべきことに なる。 他方,その余の控訴人らについては,いずれも前記5で認定した同条2項に係 る損害額の方が高いから,この金額をもって被控訴人の損害額と認めるべきことに なる。
なお,控訴人コスメプロらは,被告各製品を製造,販売するに至った経緯等に 照らし控訴人コスメプロらには故意又は重大な過失はなかったとして,同条4項に 基づき,このことを控訴人コスメプロらの損害賠償額を定めるについて参酌すべき であると主張する。しかし,控訴人コスメプロ,控訴人アイリカ,控訴人ウインセ ンス,控訴人コスメボーゼ及び控訴人クリアノワールは,化粧品の製造会社であり, 仮に同控訴人らの主張する諸事情があったとしても,同控訴人らにつき,特許権侵 害についての故意又は重大な過失がなかったということはできないから,控訴人ら の上記主張は採用できない。

◆判決本文

◆要旨

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◆平成27(ワ)4292

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平成27(ワ)4292  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年6月28日  大阪地方裁判所

 漏れていたのでアップします。大阪地裁は、特許侵害として、差止請求および総計3.3億円の損害賠償請求を認めました。争点は、間接侵害、サポート要件、進歩性違反などたくさんあります。この事件は控訴されており、知財高裁の特別部での審議が発表されています。大合議事件にされた理由は、下記でしょうか?\n

 「共同不法行為が成立するためには,各侵害者に共謀関係があるなど主観的な関連 共同性が認められる場合や,各侵害者の行為に客観的に密接な関連共同性が認めら れる場合など,各侵害者に,他の侵害者による行為によって生じた損害についても 負担させることを是認させるような特定の関連性があることを要すると解すべきで ある。そして,例えば,製造業者が小売業者に製品を販売し,これを小売業者が消 費者に販売するという取引形態は,極めて一般的なものであり,製造業者と小売業 者双方が,このような取引形態を取っていることを認識し容認しているとしても, これだけでは共同不法行為責任を認めるに足りるだけの十分な関連共同性があると\nはいえない。
・・・
被告アンプリーは,被告ネオケミアから被告製品8を仕入れ,これを被告リズ ムに転売していたところ,被告リズムは設立当初から被告アンプリーに対して販売 する商品の相談をしており,その中で被告製品8を仕入れることになり,被告リズ ムにとって被告アンプリーは特別な取引先であるとの認識であった(乙B12の 1)。これに対し,被告アンプリーは,OEMメーカーではあったが,被告リズム の創業を応援しようと決めて被告リズムと取引を開始し,販路として育成していこ うと考え,被告リズムを「販路育成プログラム」対象企業の第一号という位置付け の企業にし,被告リズムと協力して炭酸ガスパックを売り出していたというのであ る(乙B13の1,弁論の全趣旨)。そして,本件訴訟では,被告アンプリーは被 告リズムとの間で顧客や顧客からの注文等に関する情報交換を密にしていたとまで 主張しているのであり,被告アンプリーと被告リズムとはそのような関係性にあっ たと認められる(以上につき弁論の全趣旨)。そして,被告リズムによる売上額は 3億円を超えており,被告アンプリー自身の売上額も1億円を超えており,他の被 告の他の製品の売上額と比較しても,桁違いに売上額が大きい。このような売上げ を上げることができたのは,以上のような被告アンプリーと被告リズムとの間の関 係性があったからであると推認され,両社は相互に利用補充しながら,被告製品8 の製造,販売をしてきたということができる。したがって,両社の行為には,客観 的に密接な関連共同性があったといえ,共同不法行為が成立するというべきである。 これに対し,被告アンプリーらと被告ネオケミアとの関係性についてみると,被 告アンプリーは被告ネオケミアの取引先ではあるものの,被告ネオケミアは他にも 自ら本件各発明の技術的範囲に属する同種製品(被告製品1,3,4及び15)を 製造するなどし,被告アンプリー以外の者に対しても販売していたのである。この ような実態に照らせば,被告アンプリーが被告ネオケミアの総代理店的な立場にあ ったとはいえないし,同被告らの行為に客観的に密接な関連共同性が認められるな どともいえない。 以上より,被告製品8に関し,被告アンプリーと被告リズムとの間に限って共同 不法行為が成立する。」

◆判決本文

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平成28(ワ)38103  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月17日  東京地方裁判所

 太陽光発電システムの工事について特許権侵害が認められました。東京地裁29部は、特102条3項による損害額として約1000万円を認めました。
 (1)原告は,まず,原告が太陽光発電装置の請負契約を締結する場合の請負代金 額を基に,太陽光発電パネルの出力1kw当たりの請負代金額は32万円であると して,これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じた1億1581万440 0円を民法709条所定の損害であると主張する。 しかしながら,太陽光発電装置の施工について,被告が本件各土地で施工してい なければ,原告がこれらを受注して施工することができたと認めるに足る証拠はな いから,原告の主張する上記の損害は被告の行為と相当因果関係のある損害である と認めることはできない。
(2) 原告は,次いで,本件特許に係る「単位数量当たりの利益の額」(特許法1 02条1項)は太陽光発電パネルの出力1kwを1単位として算定すべきであると して,太陽光発電パネルの出力1kw当たりの利益の額は9万8000円であり, これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じた3546万8160円を特許 法102条1項による損害額であると主張する。
しかしながら,原告の上記の主張は,アルバテック又は原告による太陽光発電装 置の施工に係る見積書(甲22の1,甲23の1)等の書面に基づくものであり, これらが実際の取引金額を反映したものであると認めるに足る証拠はないから,本 件各土地における太陽光発電装置の施工に対応する原告の単位数量当たりの利益の 額を算定する根拠として不十分である。\nその他本件特許に係る単位数量当たりの利益の額を認めるに足る証拠はなく,し たがって,特許法102条1項による損害額として,原告の主張する上記の損害を 認定することはできない。
(3)ア 原告は,さらに,原告が本件特許の実施許諾をする場合の実施料は出力1 kw当たり3万円であるとして,これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗 じた1085万7600円を特許法102条3項による損害額であると主張する。 イ そこで検討すると,証拠(甲24)によれば,原告は,平成25年12月1 5日,他社との間で,本件特許に係る通常実施権を許諾する旨の特許権実施許諾契 約を締結しており,同契約3条(1)において,実施料については,本件特許に係る施 工方法を用いて施工された太陽光発電パネルの出力1kwに対して3万円を乗じた 額とされたことが認められる。そして,本件全証拠によっても,この実施料額が高 額にすぎて不相当であると認めることはできない。 したがって,本件発明の実施に係る実施料率としては,太陽光発電パネルの出力 1kw当たり3万円と認めるのが相当であり,本件における特許法102条3項に よる損害額は,3万円に本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じて算定するの が相当である。 そうすると,本件各土地の太陽光発電パネルの出力は,前記第2の2前提事実(4)のとおりであって,合計361.92kwであるから,本件における特許法102 条3項による損害額は合計1085万7600円(本件土地1につき3万円に84. 24kwを乗じた252万7200円,本件土地2につき3万円に277.68k wを乗じた833万0400円の合計)である。
ウ これに対し,被告は,特許権の実施料率が請負代金の10%強となることは およそ考えられず,請負代金を基準とした場合にはその1%程度の金額にとどまる 旨主張するが,その理由を具体的に主張しておらず,裏付けとなる証拠を提出して いないから,実施料率を基礎付ける事情として採用することができない。

◆判決本文

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平成29(ネ)10064  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 特許権侵害訴訟の控訴審です。知財高裁第1部は、被告装置1−2は本件訂正発明1の1の技術的範囲に属する、被告装置3は本件訂正発明4の技術的範囲に属し,かつ,無効理由無し、その他の被告装置は技術的範囲に属しない、とした1審判断を維持しました。均等侵害も第1、第2要件を満たさないとしました(1審と同じ)。損害額については変わりありませんが、「寄与率」という用語が「損害額の推定の覆滅」と変更されてます。
 前記のとおり(引用に係る原判決「事実及び理由」第4の1(1)イ(原判決 65頁6行目〜21行目)),本件訂正発明1の1及び1の2の従来技術には,基 礎杭等の造成にあたって地盤を掘削する掘削装置として一般に使用されるアースオ ーガ装置では,オーガマシンの駆動時の回転反力を受支するために必ずリーダが必 要となるが,リーダの長さが長くなると,傾斜地での地盤掘削にあっては,クロー ラクレーンの接地面とリーダの接地面との段差が大きい場合にリーダの長さを長く とれず,掘削深さが制限されるという課題等があった。そこで,本件訂正発明1の 1及び1の2は,これらの課題を解決するために,掘削装置について,掘削すべき 地盤上の所定箇所に水平に設置し,固定ケーシングを上下方向に自由に挿通させる が,当該固定ケーシングの回転を阻止するケーシング挿通孔を形成してなるケーシ ング回り止め部材を備えるものとして,リーダではなく,ケーシング回り止め部材 によって回転駆動装置の回転反力を受支するものとした発明と認められる。 ここで,回転駆動装置の回転反力を受支するには,1)回転駆動装置の回転反力が 固定ケーシングによって受支されるとともに,2)固定ケーシングの回転反力がケー シング回り止め部材によって受支されなくてはならない。そうすると,1)を具体的 に実現する「固定ケーシングが,掘削軸部材に套嵌されると共に,回転駆動装置の 機枠に一体的に垂下連結される」構成及び2)を具体的に実現する「ケーシング回り 止め部材が,掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の 横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に載設固定され,固定ケーシングを上下方 向に自由に挿通させるが該固定ケーシングの回転を阻止することができるケーシン グ挿通孔を有する」構成により,ケーシング回り止め部材によってケーシング,ひ\nいては回転駆動装置の回転反力を受支するようにしたことが,従来技術には見られ ない特有の技術的思想を有する本件訂正発明1の1の特徴的部分であり,その本質 的部分というべきである。
(ウ) したがって,固定ケーシングが回転駆動装置の機枠に一体的に垂下連結さ れる構成を有しない被告装置1−3〜1−8は,本件訂正発明1の1と本質的部分\nを異にするものであり,第1要件を満たさない。
・・・
このことから,本件訂正発明1の1の「固定ケーシング5」は,「固定ケーシン グ5が円筒状ケーシングからなるため,地盤への固定ケーシング5の打ち込み及び 引き抜きが容易となり」【0028】とも記載されているように,回転駆動装置1 の下部から垂下され,ケーシング回り止め部材7のケーシング挿通口8に挿入され, 掘削軸部材2及びダウンザホールハンマー4と共に地盤の掘削により地盤に打ち込 まれ,地盤を所定深度まで掘削したら,ダウンザホールハンマー4の作動を停止さ せた後,昇降操作用ワイヤーWを巻取り操作して,掘削軸部材2及びダウンザホー ルハンマー4と共に引き上げられることを前提としたものである。 そうすると,本件訂正発明1の1の掘削装置においては,掘削後に引き抜くこと を前提にケーシングと回転駆動装置の機枠とを一体的に連結することによって,回 転駆動装置とケーシングを掘削後に引き抜く際に,地盤内でケーシングにかかる土 圧による抵抗に抗してこれを引き抜くことが可能になるものということができる。\nこれに対し,ケーシングと回転駆動装置との機枠とを一体的に連結するのでなく 着脱自在の構成にした場合,そもそも着脱自在の構\成はケーシングを掘削後に残置 させることができるという作用,効果を奏するものであるし,仮にこの構成でケー\nシングを引き上げるとすると,ケーシングと回転駆動装置の機枠との連結部の強度 が十分でないために,引き抜くことが不可能\ないし極めて困難となり,本件訂正発 明1の1の目的を達成することができない。 したがって,掘削後にケーシングを引き抜くことを前提とした本件訂正発明1の 1の掘削装置において,回転駆動装置にケーシングを着脱自在に連結する構成を採\n用すると,本件訂正発明1の1の目的を達成することが困難となり,同一の作用効 果を奏しなくなる。 そして,被告装置1−3〜1−8の構成につき,いずれも回転駆動装置の下部に\n連結された中空スリーブに設けられたスリット状の切り欠きとケーシング外周軸方 向に固設された角鉄とを係合させることにより,中空スリーブとケーシングとを着 脱自在に係合するものであるとする限りでは,当事者間に争いがない。 (イ) 以上によれば,被告装置1−3〜1−8は,第2要件を満たさない。

◆判決本文

1審判決はこちら。

◆平成25(ワ)10958

関連の無効審決の取消訴訟はこちら。

◆平成29(行ケ)10193

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平成30(ネ)10001  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年6月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 会社役員Aに対して、悪意又は少なくとも重大な過失があった(会社法429条1項)として、約350万円の損害賠償が認められました。
 証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (a) 1審被告Aは,1審被告白石の代表取締役であり,1審被告白\n石の事業全般を統括していたが,平成22年6月4日,1審被告白 石宛ての1審原告の通知書(親和製作所の装置の販売が本件特許権 侵害である旨を指摘するもの)を受領し,本件特許権の存在を知る に至った。さらに,1審被告Aは,平成24年1月12日,1審被 告白石宛ての1審原告の通知書(親和製作所と1審原告の和解に関 するもの)を受領した。(甲15の資料5,資料9,乙73)
(b) 東京地方裁判所は,本件仮処分申立事件についての平成26年\n10月8日の審尋期日において,被告装置(WK型)が本件特許権 に係る発明の技術的範囲に属する旨の心証開示をした。(甲18)
(c) 1審被告白石は,平成26年10月24日から同月28日まで の間に,渡邊機開から,被告装置(WK型)を合計14台,本件板 状部材153個及び本件固定リング123個を購入した。1審被告 白石の平成23年から平成25年にかけての本件固定リングの購入 数は合計20個未満であり,平成26年10月24日から同月28 日までの本件固定リングの購入量はこれまでの取引状況に比して突 出して多い。(甲17の1,2)
(d) 東京地方裁判所は,平成26年10月31日,渡邊機開による 被告製品(WK型),本件固定リング及び本件板状部材の販売等を 差し止める旨の本件仮処分決定をし,1審原告は,同年11月4日 付け通知により1審被告白石に対しその旨を通知した。(甲15の 資料10)
(e) 1審被告白石は,本件仮処分決定後は,平成26年11月14 日頃から平成27年4月1日にかけて被告装置を販売した。
(f) 1審被告白石は,平成27年2月26日,鶴商に型式名を「L S−S」とする被告装置(実質は「WK−550」)を販売し,ま た,同年5月までには,渡邊機開からWK型として仕入れた被告装 置(「WK−600」)に,構成の変更がないのに「LS−G」型\nの表示を付したものを取り扱っていた。(上記2(1),甲22)
c 1審被告Aは,1審被告白石の事業全般を統括していたのであるか ら,1審被告白石の取引実施に当たっては,第三者の特許権を侵害し ないよう配慮すべき義務を負っていたというべきである。この観点か ら1審被告Aの責任について検討してみると,まず,平成22年6月 4日及び平成24年1月12日の時点で,1審被告Aにおいて,被告 装置が本件特許権に係る発明の技術的範囲に属することを知っていた ことを認めるに足りる証拠はない。なお,平成24年1月12日頃に 1審被告白石が1審原告から通知書を受領したことは上記b(a)のと おりであるが,その通知書の内容は親和製作所の装置に関するもので あり,渡邊機開製の被告装置とは直接関わるものではなかったのであ るから,1審被告Aが上記時点において被告装置につき専門家に問い 合わせるなどの調査等をせず,被告装置の販売を中止しなかったから といって,1審被告Aに重過失があったとすることはできない。 これに対し,上記b(d)によれば,1審被告Aは平成26年11月 初旬には本件仮処分決定について知ったものと認められるから,これ によって被告装置が本件特許権を侵害するおそれが高いことを十分に\n認識することができたと認められる。ところが,1審被告Aは,本件 仮処分決定を踏まえて,中立的な専門家の意見を聴取するなどの検討 をした形跡もないまま,取引を継続し,さらに被告装置の型式名につ いて工作をするなどしているのであり,これら上記bに認定した本件 仮処分決定前後の経過に照らせば,同月以降の1審被告白石による被 告装置の販売を中止するなどの措置をとらなかった1審被告Aには, 1審被告白石による本件特許権侵害について悪意又は少なくとも重大 な過失があったというべきである。 よって1審被告Aは,1審被告白石による被告装置の販売に係る 同月以降の本件特許権侵害について,会社法429条1項の責任を負 う。

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平成29(ネ)10087  専用実施権設定登録抹消登録等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年4月18日  知的財産高等裁判所(4部)  大阪地方裁判所

 1審は原告の主張を認めませんでしたが、知財高裁(4部)は、250万円の支払いを命じました。
他方,甲4契約の締結された当時,本件特許発明は実用化されたとはいえない段 階にあって事業の将来見込みが不確実であったところ,被控訴人は,控訴人に合計 2500万円の契約金を支払った。さらに,被控訴人は,少なくとも約1300万 円を支出して,本件特許発明に係る方法の実施に適するよう,汎用電子レンジを改 造して本件機械を開発した。本件機械の導入によって,歯科医院において本件特許 発明に係る方法を容易に実施できるようになり,被控訴人が歯科医院から義歯を預 かって本件特許発明を実施していたときよりも,顧客層が大きく拡大することに なった。このことは,本件特許発明を実施する上で必要な本件液の販売数が,平成 27年初めは月約700本であったところ,平成27年後半には月少なくとも約1 300本に増加していること(乙44)からも裏付けられる。 また,控訴人は,本件訴訟提起前の平成27年4月24日,被控訴人に対し,本 件機械と本件液の売上高の各3%の実施料の支払を求め,被控訴人は,暫定的支払 としつつも現在まで上記額の支払を継続し,控訴人はこれを受領している。 これらの事情のほか,本件訴訟に現れた事情を総合考慮すれば,本件機械の販売 に係る実施料は,売上高の6%をもって相当と認める。
(ウ) 控訴人の主張について
控訴人は,社会通念上相当な実施料は,本件機械の売上高から製造原価を控除し た額(粗利)の25%,そうでないとしても,本件機械の売上高の10%であると 主張する。 しかし,まず,粗利の額は,被控訴人の営業秘密である製造原価を明らかにしな ければ算定不能であること,売上高は双方にとって簡便かつ明確な算定基準となる\nこと,甲4契約においても販売価格と通常価格の差額(2条7項。具体的には加工 単価を基に算定している。)や第三者からの実施許諾料(同条8項)を算定基準と していることに照らせば,粗利ではなく売上高を算定基準とするのが当事者の意思 に合致するものと解される。そして,控訴人主張の利益三分法ないし四分法は,ラ イセンス料を定めるに際しての一つの指針にすぎず,売上高ないし粗利の25%を 原則的なライセンス料と考えることは相当でない。本件においても,前記(イ)のと おり,被控訴人自身が実施していた当時の実施料,被控訴人が契約締結時に支払っ た実施料や本件機械の開発費用等の先行投資額,本件機械の導入による顧客層の拡 大,従前の交渉経緯等を総合考慮すれば,売上高の6%をもって相当と認める。

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平成28(ワ)29320  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月29日  東京地方裁判所(46部)

 技術的範囲に属すると判断されました。損害額として102条3項を主張しましたが、売上げに寄与する程度が小さいとして、減額されました。
 上記(1)の記載によれば,本件発明1及び2は,熱可塑性樹脂発泡シートに 非発泡の熱可塑性樹脂フィルムを積層した発泡積層シートを成形してなる容 器について,熱可塑性樹脂発泡シートと熱可塑性樹脂フィルムとの硬さの差 により,容器に触れた際に,硬いフィルムで指等を裂傷するおそれがあるが, 突出部の上下面に凹凸を形成すると,蓋体を外嵌させる際に突起部が係合さ れる突出部の下面側にも凹凸形状が形成されることとなって強固な係合状態 を形成させることが困難となり,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体などを強 固に止着させることが困難であるという課題を,本件発明1の構成,特に上記端縁部の上面に凹凸形状を形成する一方で下面は平坦とする形状とすることによって解決することとしたものということができる。\nまた,上記(2)の記載を参酌すると,本件発明1及び2は,上記端縁部を, 厚みが圧縮されて薄肉化されたもので,かつ,上面に凹凸形状が存在するも のとすることにより,その強度を強め,これによって蓋体を強固に止着させ るという課題を解決するものということができる。 以上によれば,本件発明1及び2は,容器の突出部の端縁部の形状につい て,上面に他の部分との厚みの差を付けて凹凸形状を形成するという形状と することで端縁部での怪我を防止するとの課題を解決し,端縁部につき上記 の端縁部の形状とすることに加えて下面を平坦にすることで,蓋の強固な止 着を実現するという課題を解決し,これによって上記各課題の双方を解決す ることを技術的意義とする発明である。

・・・・
 以上によれば,本件明細書においても,発明の構成につき特許請求の範囲の記載と同様の記載がされ,その実施例においても,側周壁部の上端縁であり,被収容物が収容される収容凹部のへりといえる開口縁から外側に\n張り出して形成されているものが突出部とされている。実施例を示す図面 には突出部が水平で平坦な容器が示されているが,発明の詳細な説明欄に は,突出部が平坦であることについての説明はなく,本件発明1及び2の 突出部を突出部が平坦なものに限る趣旨の記載は見当たらない。これらに よれば,「開口縁」及び「突出部」については,上記アのように解するの が相当であり,「突出部」は水平で平坦なものには限られない。
ウ これに対して,被告は,出願経過に照らし,本件発明1及び2は突出部 が水平で平坦である容器に関する発明であると主張する。 原告は,前記1(2)のとおり,「前記突出部の端縁部の…且つ該端縁部の」 と補正をしたものであるところ,証拠(乙12〔2〕)によれば,審判請 求書において,上記補正の根拠として,突出部の端縁部において熱可塑性 樹脂発泡シートが圧縮されて薄肉とされたものであることを明確にしたも のであり,この点が本件明細書の例えば段落【0019】や【図3】b) に記載されているもので,願書に添付した明細書及び図面に記載された事 項の範囲内のものである旨記載したことが認められる。 上記認定事実によれば,補正の前後に係る特許請求の範囲をみても,補 正された部分は「端縁部の上面」と「収容凹部の開口縁近傍の突出部の上 面」の位置関係と端縁部における形状についてであって,突出部の形状が 水平で平坦である旨の明示的な記載も示唆も見当たらないし,原告が主張 したのは本件明細書において発明の実施の形態として記載(段落【001 9】や【図3】b))があることから補正の要件を満たすということであ るから,突出部の形状が水平で平坦なものに限定する趣旨を読み取ること ができない。したがって,本件発明1及び2の容器の突出部が水平で平坦 であると解することはできず,被告の主張は採用できない。
・・・・
上記記載によれば,本件発明1及び2は前記1(3)のとおりの技術的意義 を持つもので,端縁部の下面が平坦であることとその厚みが薄いことの双 方が備わることで,それぞれの効果が生じ,蓋の強固な止着が実現するの であって,端縁部が圧縮されて薄くなっていることと上面の位置との関係 に何らかの技術的意義があるものでないし,実施例においても何らの効果 も示されていない。そうすると,物の態様として「ように」の語が特段の 意味を有すると解することはできず,前記ア1)及び2)の各構成が両立していれば足りると解するのが相当である。
ウ これに対し,被告は,「突出部の端縁部において…薄くなっており」と いう構成によってのみ「前記突出部の…下位となる」構\成が実現しなけれ ばならないと解釈すべき旨を主張し,その根拠として本件明細書の記載 (段落【0019】),審判請求書(乙12)において上記部分に係る補正 の根拠を本件明細書の「例えば段落0019や図3(b)」と主張したと いう出願経過を挙げる。 しかし,上記の本件明細書の記載(段落【0019】)は実施例の記載 であり,こうした実施例があることから上記のとおり解釈することは相当 でないし,当該記載が引用する【図3】b)によれば端縁部の下面も端縁 部以外の突出部の下面に比して下位となっており,端縁部を圧縮して薄く しなくても端縁部の上面が端縁部以外の突出部の上面に比して下位となっ ているとみる余地がある。補正の根拠に関する主張は,補正に係る部分が 本件明細書の記載の範囲内であることを指摘したものであって,説明した 部分に補正に係る部分の解釈を限定する趣旨を読み取ることはできない。 被告の主張は採用できない。
・・・
上記 1)によれば,プラスチック製品や容器についての一般的な実施 料率は2〜4%程度ということができる。また,・・・によれば, 本件発明1及び2の技術的意義が現れているのは容器の一部である端縁 部の形状に限定されるところ,一般的には端縁部における手指の切創を 防止することは顧客吸引力を持ち得るといえるものの,原告の製品にお いて行われている上記「セーフティエッジ」加工は,蓋の端縁部の加工 であって本件発明1及び2の包装用容器に係る加工であるとは認め難く, 原告においても平成27年以降はこの加工の存在をカタログ等において 顧客に告知していない。被告においても,端縁部において手指の怪我が 生じ得るという課題を認識して顧客に告知する一方で,その部分の怪我 防止の措置について顧客に告知をしていない。そうすると,本件発明1 及び2の技術的意義が容器の売上げに寄与する程度は相当程度小さいも のとならざるを得ないから,上記の一般的な実施料率よりも相当程度低 くすべきである。 以上によれば,本件発明1及び2の実施によって受けるべき相当な実 施料率は●(省略)●と認めるのが相当である。
ウ 損害の額
上記ア及びイによれば,本件発明1及び2の実施に対し受けるべき金銭 の額に相当するのは,1694万4217円であると認められる。

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平成27(ワ)8736  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年2月15日  大阪地方裁判所

 5%の推定覆滅事由が認められましたが、特102条2項により約4100万円の損害賠償が認められました。
 以上より,乙43発明は,同公報において,本件発明の課題として,開閉操作 部がチャック部を跨ぐように配置されていることから,保持の仕方によっては容器を 保持する手は充填部の一部に重なって充填物の量を確認しにくいという課題がある ことを前提に,開閉操作部とチャック部の位置関係につき,チャック部を開閉操作部 の下側になるよう特定したものと理解できる。 そして確かに,本件発明の実施例は,すべて開閉操作部がチャック部を跨ぐように なっているものの,本件発明の特許請求の範囲において,チャックの位置関係は何ら 特定されているわけではない。そうすると,乙43発明に,本件発明において特定さ れていないチャック部と開閉操作部の位置関係を特定することで進歩性があるとし ても,結局,片手操作で栄養剤注入するという本件発明の改良形にすぎないことは明 らかであって,本件発明1を実施している以上に技術的に積極的な意味はなく,被告 製品の販売拡大に貢献している程度はさほど大きいものとは認められない。
e 乙44ないし乙46意匠
乙44意匠ないし乙46意匠は,被告製品そのものを対象として出願し登録された 意匠といえるが,乙45意匠,乙46意匠は乙44意匠の部分についての部分意匠と して登録されているにすぎないから,結局,本件で問題とすべきは,被告製品が乙4 4意匠を実施していることということになる。 しかし,その意匠は,乙41発明,乙42発明の実施例と同じものにすぎないし, 栄養供給バッグという商品の性質上,登録意匠のもたらす美観が需要を喚起すること は考えにくいから,登録意匠を実施していることをもって,本件特許権侵害を理由と する法102条2項の推定を覆滅する事由となるものとは認め難い。
f まとめ
以上を総合すると,被告製品は,確かに乙40発明ないし乙43発明及び乙44意 匠ないし乙46意匠を実施しているが,本件発明に技術的に付与するものは乙43発 明のみであり,その付与の程度がさほど大きくないことは上記のとおりである。 したがって,その事情が,法102条2項の推定覆滅事由となるにしても,5%を 減じるにとどまるというべきである。
ウ 被告製品の売上げについての被告の営業力,ブランド力の貢献
被告は,被告製品の売上げは被告の営業力,ブランド力よるものであり,技術面の 寄与度はせいぜい30%であると主張する。 確かに証拠(甲18,乙57)及び弁論の全趣旨によれば,連結売上高で原告は5 76億3600万円であるのに対し,被告は3596億9900万円であり,従業員 数でも原告はグループ総数で6777名にとどまるのに対し,被告のそれは2万74 15名であって,企業規模としては被告の方が圧倒的に大きく,したがって原告が全 国に支社,営業所を有していることを考慮しても,営業力,ブランド力とも被告の方 が強いことは否定できない。 しかし,証拠(乙47)によれば,本件で問題とすべき経腸栄養バッグ(空バッグ) の分野に限れば,当該市場は,●(省略)●のシェアを占め,その余を他社が占める というのであり,とりわけ「片手の指を挿入するためのシート状の1対の開閉操作部」 を有する経腸栄養バッグに限れば,市場には原告と被告の製品以外は存しないから, 市場を●(省略)●を占めるという関係にあり,当該分野に限れば,限られた需要者 の間において原告がブランド力を確立していることは容易に推認され,原告との間で, 営業力,ブランド力の差が生じているものとは認められない。 したがって,原告と被告の営業力,ブランド力の差をもって,法102条2項によ る推定が覆滅されるとする被告の主張は採用できない。
(5) 総括
以上を総合すると,法102条2項の規定により原告の損害として認定されるべき 額は,上記(3)で認定した被告製品の販売により受けた利益の額●(省略)●に,上 記(4)で認定した減額事由を考慮し,以下の計算式のとおり3718万0364円と 認定するのが相当である。
(計算式)
●(省略)●=37,180,364 円
また,上記損害額に本件に現れた一切の事情を斟酌すると,本件と因果関係のある 弁護士及び弁理士費用相当の損害額は380万円と認定するのが相当である。

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平成28(ワ)1777  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月14日  東京地方裁判所

 海苔の異物除去に関する事件です。同原告の事件もたくさんあります。争点はいろいろありますが、裁判所は寄与率による減額も否定しました。
 イ 寄与率について
被告九研は,本件各発明が本件製品1及び2の販売に寄与した割合は 10%を超えるものではないなどと主張する。 しかし,本件各発明は,共回り現象の発生を回避してクリアランスの 目詰まりをなくし,効率的・連続的な異物分離を実現するものであって, 生海苔異物除去装置の構造の中心的部分に関するものというべきである。\nすなわち,生海苔異物除去装置として,選別ケーシング(固定リング) と回転円板との間に設けられたクリアランスに生海苔混合液を通過させ ることによりクリアランスを通過できない異物を分離除去する装置が従 来用いられていたとしても,本件各発明の解決課題を従来の装置が抱え ていることは明らかであり,この点は需要者の購買行動に強い影響を及 ぼすものと推察される。このことと,従来の装置の現在における販売実 績等の主張立証もないことを考えると,本件各発明の実施は生海苔異物 除去装置の需要者にとって必須のものであることがうかがわれる。 他方,本件各発明が本件製品1及び2に寄与する割合を減ずべきであ るとする被告九研の主張の根拠は,いずれも具体性を欠くものにとどま る。 したがって,本件各発明が本件製品1及び2の販売に寄与する割合を 減ずることは相当でない。

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◆関連事件です。平成28(ワ)4529

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平成25(ワ)10958  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年5月17日  東京地方裁判所(40部)

 特許権侵害について、一部の被告装置について、差止と損害賠償(約1400万円)が認められました。102条2項について寄与率による減額を主張しましたが否定されました。
 本件訂正発明1の1及び1の2の意義
上記各記載によれば,本件訂正発明1の1及び1の2は,基礎杭等の造 成にあたって地盤を掘削する掘削装置に関するものであって,この種の掘 削装置として一般に使用されるアースオーガ装置では,オーガマシンの駆 動時の回転反力を受支するために必ずリーダが必要となるが,リーダの長 さが長くなると,施工現場内でのリーダの移動作業や,現場へのリーダの 搬入及び現場からの搬出作業に非常な手間と時間を要するという課題及び 傾斜地での地盤掘削にあっては,クローラクレーンの接地面とリーダの接 地面との段差が大きい場合にリーダの長さを長くとれず,掘削深さが制限 されるという課題があることから,本件訂正発明1の1及び1の2は,こ れらの課題を解決するために,掘削装置について,掘削すべき地盤上の所 定箇所に水平に設置し,固定ケーシングを上下方向に自由に挿通させるが, 当該固定ケーシングの回転を阻止するケーシング挿通孔を形成してなるケ ーシング回り止め部材を備えるものとして,リーダではなく,ケーシング 回り止め部材によって回転駆動装置の回転反力を受支するものとした発明 である,と認められる。
・・・・
原告は,本件訂正発明1の1の実施による被告の利益を算定するに当 たっては,本件発訂正明1の1を実施した工程の代金のみならず,請負 代金額の全額を基礎とすべきと主張する。 しかし,本件訂正発明1の1は,掘削装置に関する発明であり,掘削 工事以外の工程には使用されない。そして,前記「内訳明細書」(乙1 05)によれば,被告は,現場(1)について,本件訂正発明1の1を実施 した掘削工事である「先行削孔砂置換工」のみを受注したものではなく, 「道路改良工事」を受注し,上記掘削工事の他,本件訂正発明1の1を 実施していない工事である「場所打杭工」,「鋼矢板工」及び「桟橋盛 替工」の各工事を行っており,これらの工事の代金(直接工事費)につ いては,本件訂正発明1の1を実施していないのであるから,本件訂正 発明1の1の実施があったためにその余の工事の受注ができたなどの特 段の事情がない限り,本件訂正発明1の1を実施したことにより被告が 受けた利益に当たるということはできない。そして,本件において,上 記事情を認めるに足りる証拠はない。
また,被告は,現場(1)の工事について,上記直接工事費のほかに,間 接工事費として「重機組解回送費」,「重機回送費」及び「経費」の支 払を受けているが,これらについても本件訂正発明1の1の実施により 受けた利益に当たると認めるべき証拠がない。 したがって,被告が,本件訂正発明1の1を実施したことにより受領 した額は,本件訂正発明1の1の実施による先行削孔砂置換工(DH削 孔費)の14本分の代金140万円である。
イ 利益率
被告の利益率が18%であることについて当事者間に争いがない。 したがって,本件訂正発明1の1を実施したことにより被告が得た利益 額は,25万2000円(=140万円×0.18)である。
ウ 寄与率
被告は,本件訂正発明1の1の売上に対する寄与率は低いなどと主張す るので検討するに,特許法102条2項は,損害が発生している場合でも, その損害額を立証することが極めて困難であることに鑑みて定められた推 定規定であるから,当該特許権の対象製品に占める技術的価値,市場にお ける競合品・代替品の存在,被疑侵害者の営業努力,被疑侵害品の付加的 性能の存在,特許権者の特許実施品と被疑侵害品との市場の非同一性など\nに関し,その推定を覆滅させる事由が立証された場合には,それらの事情 に応じた一定の割合(寄与率)を乗じて損害額を算定することができると いうべきである。
本件では,たしかに,前記アのとおり,現場(1)において,15本のうち 1本のケーシングについては,本件訂正発明1の1を実施しない形態(下 部/1本のH形鋼)が用いられていることが認められるものの,これは, 被告の主張によれば,山(崖)側に位置するケーシングでは,下部で井桁 状を組むことが困難であることから「下部/2本のH形鋼」ではなく「下 部/1本のH形鋼」の構成が用いられているというのであって,「下部2本のH形鋼」の構\成により,「下部/1本のH形鋼」の構\成と同等ない\nしより優れた効果が得られるためではない。また,上記イで算出した利益 の額は,本件訂正発明1の1の技術的範囲に属する被告装置1を用いて行 った工事である先行削孔砂置換工(DH削孔費)により被告が得た利益額 そのものであり,それ以外の工事による利益の額は含まれていない。 さらに,被告は,各杭の「掘削長×掘削基本時間」の単価計算から求め られたものに(「掘削時間」/〔「掘削時間」+「準備時間」+「排土埋 戻し時間」〕)を乗じたものが,掘削に対しての時間の割り出し単価とな るなどと主張しており,工事費用について時間当たりの単価を算出して, 現実に掘削に要した時間に相当する分についてのみ本件訂正発明1の1が 寄与しているかのような主張をしているが,被告が「先行削孔砂置換工」 のうちの掘削作業のみを受注しているものではなく,また,一般に掘削作 業のみを受注する形態が考えにくいこと,掘削作業が「先行削孔砂置換工」 の重要部分を占めると考えられること,発注者は準備時間や排土埋戻しの ために被告に工事を発注しているものでなく,準備や排土埋戻しの作業が 利益をあげているとはいえないことなどからすると,被告の上記主張は採 用することができない。 そうすると,代替技術の存在を考慮に入れたとしても,上記額が原告の 損害であるという推定を覆滅させるに足りる証拠がないというほかないか ら,被告の寄与率に係る主張は理由がない。

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平成28(ワ)12480  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年6月30日  東京地方裁判所

 生海苔異物除去機の一部の部品を交換する行為が生産が該当する(特許権侵害)と判断されました。
 原告は,被告ワンマン及び被告西部機販に対し,本件メンテナンス行為1 の差止めを求めるところ,製品について加工や部材の交換をする行為であっ ても,当該製品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか, 取引の実情等も総合考慮して,その行為によって特許製品を新たに作り出す ものと認められるときは,特許製品の「生産」(法2条3項1号)として, 侵害行為に当たると解するのが相当である。 本件各発明は,前記1(2)のとおり,生海苔混合液槽の選別ケーシングの 円周面と回転板の円周面との間に設けられた僅かなクリアランスを利用して, 生海苔・海水混合液から異物を分離除去する回転板方式の生海苔異物分離除 去装置において,クリアランスの目詰まりが発生する状況が生じ,回転板の 停止又は作業の停止を招いて,結果的に異物分離作業の能率低下等を招いて\nしまうとの課題を解決するために,突起・板体の突起物を選別ケーシングの 円周端面に設け(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面 に設け(本件発明3),あるいは,クリアランスに設けること(本件発明4) によって,共回りの発生をなくし,クリアランスの目詰まりの発生を防ぐと いうものである。そして,本件板状部材は,本件固定リングに形成された凹 部に嵌め込むように取り付けられて固定されることにより,本件各発明の 「共回りを防止する防止手段」(構成要件A3)に該当する「表\面側の突出 部」,「側面側の突出部」を形成するものであること(当事者間に争いがな い)からすると,本件固定リング及び本件板状部材は,被告装置の使用(回 転円板の回転)に伴って摩耗するものと認められるのであって,このような 摩耗によって上記突出部を失い,共回り,目詰まり防止の効果を喪失した被 告装置は,本件各発明の「共回りを防止する防止手段」を欠き,もはや「共 回り防止装置」には該当しないと解される。 そうすると,「表面側の突出部」,「側面側の突出部」を失った被告装置\nについて,新しい本件固定リング及び本件板状部材の両方,あるいは,いず れか一方を交換することにより,新たに「表面側の突出部」,「側面側の突\n出部」を設ける行為は,本件各発明の「共回りを防止する防止手段」を備え た「共回り防止装置」を新たに作り出す行為というべきであり,法2条3項 1号の「生産」に該当すると評価することができるから,原告は,被告らに 対し,法100条1項に基づき,上記(1)の差止めに加えて,本件メンテナ ンス行為1の差止めを求めることができる。
・・・・
これに対し,被告ワンマン及び被告西部機販は,要旨,1本件装置1及 び2の仕入代金以外に必要経費が生じているから,これらについても被告ワ ンマン及び被告西部機販の利益から控除すべきである,2)本件特許は本件装 置1及び2の販売にほとんど寄与しておらず,本件装置1及び2の売上への 寄与率が10%を超えることはない,3)被告ワンマン及び被告西部機販が本 件装置1及び2の販売によって得た利益を原告の損害と推定することについ ての推定覆滅事由があるなどと主張する。 しかしながら,上記1)について,必要経費として控除できるのは,本件装 置1及び2の販売に直接関連して追加的に必要になった経費に限られるもの と解すべきところ,被告ワンマン及び被告西部機販の主張する経費が本件装 置1及び2の販売に直接関連して追加的に必要になったものと認められない のはもちろん,そもそも同経費が現実に生じたこと自体を認めるに足る証拠 が一切なく,その算定根拠も判然としない。また,上記2)について,本件各 発明は,生海苔異物除去装置の構造の中心的部分に関するものである一方,\n本件各発明が本件装置1及び2に寄与する割合を減ずべきであるとする被告 ワンマン及び被告西部機販の主張の根拠は判然としないことに照らせば,本 件各発明が本件装置1及び本件各部品の販売に寄与する割合を減ずることは 相当でない。さらに,上記3)について,被告が主張するのは,単に,原告が 販売店ではなく製造業者であるという事実にとどまるところ,同事実のみか ら,本件各発明の実施品が有する顧客吸引力にもかかわらず,原告がその取 引先への販売の機会を持ち得なかったということはできないし,ほかに原告 が取引の機会を奪われたとはいえない特段の事情もないから,法102条2 項による推定を覆滅するには足りないというほかない。

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平成27(ワ)6812  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年6月23日  東京地方裁判所

 搾汁ジューサについて、均等侵害が認められました。興味深いのが損害額200万円がすべて代理人費用という点です。
 上記(ア)の本件明細書の記載によれば,圧力排出路の存在は本件発明が 解決すべき課題と直接関係するものではない。もっとも,本件発明の 効果等に関する上記 b,cの記載をみると,圧力排出路は,食材が 網ドラムの底部で最終的に圧縮され脱水される過程で生じる一部の汁 が防水円筒を超えてハウジングの外に流出するのを防ぐことを目的と するものであり,汁を排出するための通路をハウジング底面において 防水円筒の下部縁に形成することは発明の本質的部分であるとみる余 地がある。しかし,上記の効果を奏するためには,上記通路が防水円 筒の下部縁に存在すれば足り,これをどのような部材で構成するかに\nより異なるものではない。そうすると,上記の異なる部分は本件発明 の本質的部分に当たらないと解するのが相当である。
ウ 第2要件(置換可能性)について
前記イのとおり,本件発明における圧力排出路は,食材が網ドラム の底部で最終的に圧縮されて脱水される過程で生じる一部の汁が防水 円筒を超えてハウジングの外に流出するのを防ぐものである。また, これにスクリューギヤが挿入されて回転することにより,高粘度の汁 を効率的に排出することができる。 他方,前記前提事実 ウdの被告製品の構成及び別紙図17のとおり,\n被告製品のハウジングにスクリュー及び網ドラムを配置すると果汁案 内路が形成され,これが汁排出口と連通して,搾汁された汁の一部を 汁排出口へ案内する機能を果たすと認められる。また,被告製品のス\nクリュー下部に形成されたスクリューギアは,果汁案内路に挿入され て回転する(甲11)。そして,網ドラムはハウジングの上方から配置 されるものであり,果汁案内壁とハウジング底面との間に隙間が生じ ることもあり得るところ,その場合には当該隙間から汁が果汁案内路 の外側に流出するから,果汁案内路に流入した汁が内周側の防水円筒 を超えてハウジング外部に流出することはないものと考えられる。し たがって,被告製品の果汁案内路は本件発明の圧力排出路と同一の作 用効果を奏するということができる。 以上のとおり,被告製品の果汁案内路は圧力排出路と同一の作用効果 を奏するものとして,置換可能と評価するのが相当である。\nこれに対し,被告は,被告製品はハウジング底面を平坦化することに より清掃を容易にするという新たな効果が生じているから置換可能と\nはいえない旨主張する。しかし,仮にそのような効果が生じるとして も,ハウジング底面の清掃容易性は本件発明の前記課題とは無関係で あり,これをもって第2要件の充足性を否定することはできない。
エ 第3要件(置換容易性)について
本件明細書には,本件発明の実施例として,ハウジングに形成された 圧力排出路の外側のハウジング底面の上部に網ドラム底部に形成され た底部リングを載置し,その内周面と圧力排出路の外周面が上下に一 体となって,これと防水円筒の外周面により圧力排出路の上方に続く 空間を形成し,そこにスクリュー下方に突出形成された内部リング及 びその下端のスクリューギヤが挿入される例が記載されている(段落 【0045】,【0052】,【0056】,【図3A】,【図3B】)。この とき,水分(汁)の一部が内部リングと網ドラムの内部リング挿入孔 (底部リングの内側に当たる。)との間の隙間に押し込まれ,圧力排出 路に流入する(段落【0072】),すなわち,底部リング(網ドラ ム)内壁からそのまま圧力排出路の外周側の内壁を伝って圧力排出路 に流入しており,上記実施例において網ドラムの一部は圧力排出路の 外周側の壁の役割を果たしているといえる。また,本件発明と同じ技 術分野に属する搾汁機において,搾汁ケース(本件発明のハウジング に相当する。)のブッシング(同防水円筒に相当する。)の下部縁に流 路を形成せず,搾汁ケースの底部のこの部分を平坦にしたものは被告 製品の製造販売時に公知であったと認められる(甲26)。そうすると, 本件明細書の前記記載に接した当業者にとって,上記実施例の網ドラ ムないし底部リングを下方に伸長して圧力排出路の外周側の壁に代え るとともに,この部分のハウジングの底面を平坦にすることによって, 圧力排出路の外周側の壁全体を網ドラムで形成することに思い至るの は容易であるというべきである。 これに対し,被告は,ハウジングの底部を平坦にした被告製品は本件 発明と根本的に相違する旨主張するが,以上の説示に照らしこれを採 用することはできない。
オ 以上のとおり,被告製品の果汁案内路は本件発明の圧力排出路と均等で あるということができる。
・・・
3 争点 (原告の損害額)について
前記1及び2で判示したとおり被告製品は本件発明の技術的範囲に属す るところ,原告は,被告が被告製品の販売により1500万円の利益を得 たとして,特許法102条2項に基づき同額の損害賠償を請求する。これ に対し,被告は,被告製品の販売により316万9653円の損失が生じ ており,利益は得ていないと主張するところ,原告はこれに具体的に反論 せず原告主張を裏付けるに足りる証拠も提出しない。以上によれば,被告 が本件特許権の侵害行為により利益を得たと認めることはできないから, 独占的通常実施権の有無等の点について判断するまでもなく,原告の上記 請求は理由がないことになる。 本件事案の内容,経緯等に照らすと,本件において被告に負担させるべ き弁護士及び弁理士費用の額は200万円が相当であり,原告の被告に対 する本件特許権侵害による損害賠償請求はその限度で理由がある。

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平成26(ワ)8905  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年6月15日  東京地方裁判所

 損害賠償が認められましたが、特許権侵害による損害額のうち、ほとんどは弁護士費用です。
 ア(ア) 原告は,特許法102条2項の適用を主張するところ,前記前提事実及び 弁論の全趣旨によれば,原告は,被告LEDと競合するLEDを販売等していると 認められるから,原告には,被告らによる本件特許権1の侵害行為がなかったなら ば利益が得られたであろう事情が認められるといえ,同条項の適用が認められるべ きである(知財高裁平成24年(ネ)第10015号同25年2月1日特別部判 決・判時2179号36頁)。この点について,被告らは,被告LEDが譲渡等さ れなければ,原告の製品が販売されていたであろうとの条件関係が存在しないから, 原告には逸失利益の損害は生じていないと主張するが,上記のとおり原告が被告L EDの競合品を販売等していることからして,なお原告に逸失利益の損害が生じた と認定するに差し支えないというべきである。 (イ) 本件特許権1の侵害により被告らがそれぞれ得た利益の額について,被告E &Eが10万5000円の利益を得たことについては,原告と同被告との間で争い がない。また,被告立花が被告LEDの販売により得る利益が,売上高の10パー セントであることは,原告と同被告との間で争いがないところ,被告立花は,イガ ラシに対して被告LEDを2万円で販売し,それ以上に被告LEDの販売等により 売上をあげた事実は認められないから,被告立花が得た利益の額は,2000円と 認めるのが相当である(なお,被告立花は,上記売上代金を全てイガラシに返金し ているとの事情を主張するが,同事実によっても,一度発生した損害が発生しなか ったことになるわけではないし,これにより原告に生じた損害が填補されたと認め ることもできない。)。したがって,これらの額は,特許法102条2項により, 原告が受けた損害の額と推定される。
(ウ) 被告らは,1)原告が被告LEDについて原告が保有する9件の特許権を侵害 すると主張していること,2)被告LEDは,本件発明1の作用効果を奏しないか, 奏したとしても極めてわずかな効果しか奏しないこと,3)被告LEDは,被告製品 (窒化物半導体素子)にさらなる部材を付加していること,4)有色LED市場にお ける原告のシェアなどからすれば,本件発明1が被告らの得た利益に寄与した割合 は5パーセントを上回ることはなく,推定された損害額のうち95パーセント相当 額について,同推定が覆滅されるべきである旨主張する。 しかしながら,1)について,被告LEDが,原告の他の特許権に係る発明の技術 的範囲に含まれるか,含まれるとして,他の特許権に係る発明が被告LEDの売上 にいかに寄与したかについては,本件証拠によっても,判然としないというほかな い。2)について,被告LEDが本件発明1の作用効果を奏しないか,極めてわずか しか奏しないなどといった事実は認められない。3)については,被告LEDが被告 製品に部材を付加しているとしても,その価値の源泉の大半は被告製品にあるもの と合理的に推認できる。4)については,有色LED市場における原告のシェアを一 般的に示すのみでは,本件において,なお原告の受けた損害の額についての推認を 覆すには十分とはいえない。以上のとおり,損害の額の推定が一部覆滅されるべきであるとする被告らの主張は,採用することができない。
(エ) 以上の検討によれば,被告E&Eによる本件特許権1の侵害行為により原告 が受けた損害(逸失利益)の額は10万5000円と認められ,被告立花による本 件特許権1の侵害行為により原告が受けた損害(逸失利益)の額は2000円と認 められる。

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平成26(ワ)28449  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年5月26日  東京地方裁判所

 102条3項に基づく損害額の算定で、売り上げの5%が認められました。
 原告は平成25年4月5日〜平成27年10月末日の被告製品の売上高4 億4967万3858円に実施料率5%を乗じた2248万3692円が 本件特許権の侵害による損害額(特許法102条3項)であると主張する ところ,売上高は被告の自認する2億8279万4711円の限度で認め られ,これを上回る額を認めるに足りる証拠はない。 次に,実施料率についてみるに,前記前提事実に加え,証拠(甲2,23, 24,乙27)及び弁論の全趣旨によれば,1)本件発明は被告製品の構成\nの中核部分に用いられており,本件発明の技術的範囲に属する部分を取り 除くと被告製品はアンテナとして体をなさないこと,2) 本件発明は高さ約 70mm以下という限られた空間しか有しないアンテナケースに組み込ん でも良好な電気的特性を得ることのできるアンテナ装置の提供を目的とす るところ,被告製品はこれと同様に背が低いにもかかわらず受信性能に優\nれたアンテナ装置であって,被告はこの点を被告製品の宣伝上強調してい ること,3) 本件発明の属する電子・通信用部品ないし電気産業の分野のラ イセンス契約における実施料率については平均3.3〜3.5%ないし2. 9%とする調査結果が公表されていること,以上の事実が認められる。こ\nれらの事実を総合すると,本件において特許法102条3項に基づく損害 額算定に当たっては被告製品の売上額の5%をもって原告の損害とするの が相当である。 したがって,原告の損害額は1413万9735円となる。

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平成25(ワ)33070  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年5月26日  東京地方裁判所

 102条2項に基づく損害額について、滅失する割合が75%、95%と認定されました。
 本件の各発明が被告の上記利益に寄与した割合について,本件発明1に つき被告は2.5%,原告は50%であると,同2−1及び2−2につき 被告はロ号物件につき0.3%,ニ号物件につき0.9%,へ号物件につ き0.2%,原告は30%であるとし,その余の部分につき特許法102 条2項の推定が覆滅する旨主張する。 そこで判断するに,本件明細書1(甲2)によれば本件発明1は農産物 の選別装置に関するものであって主としてリターンコンベアを設けること 及びその終端を工夫したことに,同2(甲4)によれば本件発明2−1及 び2−2は内部品質検査装置に係るものであって主として複数の光源を設 け,遮光手段を工夫したことに,それぞれ技術的意義があるものと認めら れる。その一方で,前記1(1)のとおりロ号〜ホ号物件はプールコンベアに 設定される仕分区分が集積状態によって適宜変動する構成を採用しており,\nその結果,そうでない構成と比べてオーバーフローする青果物入り受皿の\n数が減少するものと認められ,その限度において本件発明1が被告の上記 利益に寄与した割合が減少すると考えられる。 また,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,1)ロ号〜へ号物件は,選 別設備及び内部品質検査装置のほかに荷受設備(ニ号物件を除く。),箱詰 設備,封函・製品搬送設備,製函・空箱搬送設備その他の設備から構成さ\nれるものであり,上記イの利益にこれらの製造及び施工に係る利益が含ま れていること(乙38〜41),2)ロ号〜へ号物件の各設置場所に関する 入札条件(甲14〜18)上,少なくともリターンコンベアの戻し位置を 本件発明1所定の位置にすること及び内部品質検査装置において本件発明 2−1及び2−2所定の複数の発光光源を設けることは必須の要件とされ ていなかったこと,以上の事実が認められる。 上記の技術的意義及び事実関係によれば,上記利益額の一部については 特許権侵害による原告の損害額であるとの推定を覆滅する事情があると認 められ,その割合は本件発明1につき75%,同2−1及び2−2につき 95%と認めるのが相当である。

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平成27(ネ)10091  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年6月1日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 1審よりも高額の損害賠償が認められました。
(ア) 一審被告は,1)被告製品は,1種類の正・逆転パターンの制御しかできず, 正転角度と逆転角度を均衡にしたときのみが本件特許権の侵害となるにすぎないこ と,2)被告製品は,納品時は正転60秒,逆転60秒にセットされており,この状 態では,ブリッジ現象が生じることが明らかであり,本件特許発明1及び2の作用 効果を奏しないこと,3)被告製品の正転タイマ及び逆転タイマによる正逆転制御(1 種類のパターンでの制御)では,本件特許発明1及び2は,進歩性を欠くこと,4) 被告製品の制御は,本件特許発明の作用効果を考慮したとき,本件特許発明とは全 く別異であり,実施は不可能であるものの形式的には本件特許の請求項の制御を実\n施し得る場合が考えられるというにすぎないことを考慮すれば,被告製品における 侵害部分が,購買者の需要を喚起するということはあり得ないから,本件特許発明 1及び2の寄与率が30%を超えることはない旨主張する。
(イ) 1の点について
本件特許発明1の「正・逆転パターンの繰り返し駆動」は,前記2(3)のとおり, 単なる右回転又は左回転ではなく,右回転と左回転の組合せを1パターンとして, 1種ないし複数種類のパターンを繰り返す駆動であって,1パターン内の右回転と 左回転は均衡した回転角度とされているものを意味するものと解される。被告製品 が1種類の正・逆転パターンの制御しかできないものであったとしても,結局,被 告製品は,本件特許発明1及び2を充足するような使用方法が可能である。他方,\n被告製品に本件特許発明の効果以外の特徴があり,その特徴に購買者の需要喚起力 があるという事情が立証されていない以上,寄与率なる概念によって損害を減額す ることはできないし,特許法102条1項ただし書に該当する事情であるというこ ともできない。
(ウ) 2)の点について
仮に,被告製品の納品時におけるタイマセットの状態のままでは,本件特許発明 1及び2のブリッジ現象の発生の防止という作用効果を奏しないとしても,被告製 品は,前記2(3)のとおり,定期正転時間,定期逆転時間を,それぞれ,0から30 00秒の範囲で,10分の1秒単位で数値により設定することができるものである から,結局,被告製品は,本件特許発明1及び2を充足するような使用方法が可能\nである。そして,前記(イ)と同様に,寄与率なる概念によって損害を減額すること はできないし,特許法102条1項ただし書に該当する事情であるということもで きない。
(エ) 3)の点について
1種類の正・逆転パターンでの制御であると,本件特許発明1及び2が進歩性を 欠くとの点については,これを認めるに足りる証拠はない。
(オ) 4)の点について
被告製品の制御が,本件特許発明1の「正・逆転パターンの繰り返し駆動」に相 当するものであることは,前記2(3)のとおりであり,被告製品の制御と本件特許発 明1及び2の制御とが別異のものであるとする一審被告の主張は,その前提を欠く。 ク 小括
以上によれば,特許法102条1項に基づく損害額は,2810万1920円で あると認められる
。 (2) 一審被告が保守作業を行ったことによる損害
一審原告は,一審被告は被告製品を保守することで,被告製品の譲受人による被 告製品の使用を継続させ,又はこれを容易にさせているということができるから, 譲受人による被告製品の使用につき,その行為の幇助者として共同不法行為責任に 基づき,損害賠償責任を負う旨主張する。 しかし,一審原告の上記主張は,幇助の対象となる使用行為を具体的に特定して 主張するものではないから,失当である上,一審被告が,被告製品について具体的 に保守行為を行ったことを認めるに足りる証拠はない。また,被告製品の使用によ り一審原告が被った損害(逸失利益)は,前記(1)の譲渡による損害において評価さ れ尽くしているものといえ,これとは別に,その後被告製品が使用されたことによ り,一審原告に新たな損害が生じたとの事実については,これを具体的に認めるに 足りる証拠はない。さらに,保守行為によって特許製品を新たに作り出すものと認 められる場合や間接侵害の規定(特許法101条)に該当する場合は格別として, そのような場合でない限り,保守行為自体は特許権侵害行為に該当しないのである から,特許権者である一審原告のみが,保守行為を行うことができるという性質の ものではない。 以上によれば,一審原告の上記主張は理由がない。

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◆1審はこちらです。平成24(ワ)6435

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平成27(ネ)10091  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年6月1日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 1審よりも高額の損害賠償が認められました。
(ア) 一審被告は,1)被告製品は,1種類の正・逆転パターンの制御しかできず, 正転角度と逆転角度を均衡にしたときのみが本件特許権の侵害となるにすぎないこ と,2)被告製品は,納品時は正転60秒,逆転60秒にセットされており,この状 態では,ブリッジ現象が生じることが明らかであり,本件特許発明1及び2の作用 効果を奏しないこと,3)被告製品の正転タイマ及び逆転タイマによる正逆転制御(1 種類のパターンでの制御)では,本件特許発明1及び2は,進歩性を欠くこと,4) 被告製品の制御は,本件特許発明の作用効果を考慮したとき,本件特許発明とは全 く別異であり,実施は不可能であるものの形式的には本件特許の請求項の制御を実\n施し得る場合が考えられるというにすぎないことを考慮すれば,被告製品における 侵害部分が,購買者の需要を喚起するということはあり得ないから,本件特許発明 1及び2の寄与率が30%を超えることはない旨主張する。
(イ) 1の点について
本件特許発明1の「正・逆転パターンの繰り返し駆動」は,前記2(3)のとおり, 単なる右回転又は左回転ではなく,右回転と左回転の組合せを1パターンとして, 1種ないし複数種類のパターンを繰り返す駆動であって,1パターン内の右回転と 左回転は均衡した回転角度とされているものを意味するものと解される。被告製品 が1種類の正・逆転パターンの制御しかできないものであったとしても,結局,被 告製品は,本件特許発明1及び2を充足するような使用方法が可能である。他方,\n被告製品に本件特許発明の効果以外の特徴があり,その特徴に購買者の需要喚起力 があるという事情が立証されていない以上,寄与率なる概念によって損害を減額す ることはできないし,特許法102条1項ただし書に該当する事情であるというこ ともできない。
(ウ) 2)の点について
仮に,被告製品の納品時におけるタイマセットの状態のままでは,本件特許発明 1及び2のブリッジ現象の発生の防止という作用効果を奏しないとしても,被告製 品は,前記2(3)のとおり,定期正転時間,定期逆転時間を,それぞれ,0から30 00秒の範囲で,10分の1秒単位で数値により設定することができるものである から,結局,被告製品は,本件特許発明1及び2を充足するような使用方法が可能\nである。そして,前記(イ)と同様に,寄与率なる概念によって損害を減額すること はできないし,特許法102条1項ただし書に該当する事情であるということもで きない。
(エ) 3)の点について
1種類の正・逆転パターンでの制御であると,本件特許発明1及び2が進歩性を 欠くとの点については,これを認めるに足りる証拠はない。
(オ) 4)の点について
被告製品の制御が,本件特許発明1の「正・逆転パターンの繰り返し駆動」に相 当するものであることは,前記2(3)のとおりであり,被告製品の制御と本件特許発 明1及び2の制御とが別異のものであるとする一審被告の主張は,その前提を欠く。 ク 小括
以上によれば,特許法102条1項に基づく損害額は,2810万1920円で あると認められる
。 (2) 一審被告が保守作業を行ったことによる損害
一審原告は,一審被告は被告製品を保守することで,被告製品の譲受人による被 告製品の使用を継続させ,又はこれを容易にさせているということができるから, 譲受人による被告製品の使用につき,その行為の幇助者として共同不法行為責任に 基づき,損害賠償責任を負う旨主張する。 しかし,一審原告の上記主張は,幇助の対象となる使用行為を具体的に特定して 主張するものではないから,失当である上,一審被告が,被告製品について具体的 に保守行為を行ったことを認めるに足りる証拠はない。また,被告製品の使用によ り一審原告が被った損害(逸失利益)は,前記(1)の譲渡による損害において評価さ れ尽くしているものといえ,これとは別に,その後被告製品が使用されたことによ り,一審原告に新たな損害が生じたとの事実については,これを具体的に認めるに 足りる証拠はない。さらに,保守行為によって特許製品を新たに作り出すものと認 められる場合や間接侵害の規定(特許法101条)に該当する場合は格別として, そのような場合でない限り,保守行為自体は特許権侵害行為に該当しないのである から,特許権者である一審原告のみが,保守行為を行うことができるという性質の ものではない。 以上によれば,一審原告の上記主張は理由がない。

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平成26(ワ)1690  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年3月28日  東京地方裁判所

 特許無効理由なし、また、損害額について文書提出命令に応じて書類を提出しない被告に対して、原告の主張どおりの損害(102条2項)が認められました。
 被告は,本件発明2についての特許について,本件明細書2の特許の特許請 求の範囲は,単に「覆い片の背部の凹所に係入する係入片」と記載するのみで, 「係入片が受片と協働してスタータにて壁パネルの下端部を強固に支持する」との 効果を奏しない「係入片」をもその範囲に含んでおり,権利の外縁を明確に記載し ていないから,明確性要件に違反すると主張する。 しかしながら,本件発明2が「壁パネルの下端部の支持構造」に関するものであ\nることから明らかなとおり,本件明細書2に接した当業者であれば,上記「係入 片」の意義について,覆い片の背部の凹所に係入し壁パネルを支持するため,凹部 の形状と照らして,同凹部に嵌合されるに適した形状を有する必要があることは容 易に認識できるというべきであるから,「覆い片の背部の凹所に係入する係入片」 という記載が,明確性を欠くものとは認められない。
イ また,被告は,本件明細書2の特許請求の範囲の記載が明確であるというな らば,同明細書の発明の詳細な説明には記載されていない発明を特許請求の範囲に 含むものであってサポート要件に違反するとか,発明の詳細な説明が当業者に実施 可能な程度に明確かつ十\分に記載されておらず実施可能要件にも違反すると主張す\nるが,本件明細書2には,本件発明2(請求項1記載の発明)の実施例として, 「スタータ15を取付け片11においてチャンネル材の壁下地10にボルト18に て取付け,スタータ15の係入片8を壁パネルAの覆い片3の背部の凹所4に係入 するとともに受片9にて嵌合凸部2の下面を受けることで,スタータ15にて壁パ ネルAを強固に支持するのである。」と記載され(段落【0012】),【図1】 には,係入片4が壁パネルAの覆い片3の背部の凹所4に係入されている態様が具 体的に開示されているのであるから,サポート要件に違反するということはできな いし,前記のとおり,本件明細書2に接した当業者であれば,「係入片」の意義に ついて,覆い片の背部の凹所に係入し壁パネルを支持するため,凹部の形状と照ら して,同凹部に嵌合されるに適した形状を有するべきことを容易に認識できるので あるから,実施可能要件に違反するということもできない。\n
・・・
原告は,平成27年11月20日,被告における平成23年1月1日から平 成27年4月20日までの被告各製品の売上高及び利益の額が原告の主張する額で あることを証明するため,特許法105条1項に基づき,被告に対し,被告各製品 の販売量,販売単価,販売原価及び販売のために直接要した販売経費の額が記載さ れている書面である売上伝票,請求書控え,製造原価報告書及び経費明細書(製造 経費及び販売経費)(以下,併せて「対象文書」という。)の提出を求める文書 提出命令申立てを行った(当庁平成27年(モ)第3723号事件)。\n当裁判所は,平成27年12月2日,被告に対し,決定の確定の日から14日以 内に,対象文書を当裁判所に提出すべきことを命ずる決定(以下「本件文書提出 命令」という。)をして,同日,決定書の正本が被告に送達された。本件文書提 出命令は,平成27年12月9日の経過により確定したところ,被告は,上記提出 期限内に,対象文書を当裁判所に提出しなかった。
エ 以上のとおり,被告は,当裁判所がした本件文書提出命令にもかかわらず, 正当な理由なく,対象文書を提出しなかったものである。 そこで,民訴法224条1項又は3項の規定により,対象文書の記載に関する原 告の主張を真実と認め,又は対象文書により証明すべき事実に関する原告の主張を 真実を認めることができるかについて検討する。 対象文書は,被告の売上伝票,請求書控え,製造原価報告書及び経費明細書(製 造経費及び販売経費)であって,被告の業務に際して作成される会計帳簿書類であ るから,その記載に関して,原告が具体的な主張をすることは著しく困難である。 また,原告が,対象文書により立証すべき事実(被告における平成23年1月1日 から平成27年4月20日までの被告各製品の売上高及び利益の額が原告の主張す る額であること)を他の証拠により立証することも著しく困難である。 そうすると,民訴法224条3項の規定により,被告における平成23年1月1 日から平成27年4月20日までの被告各製品の売上高及び利益の額は,原告の主 張,すなわち,被告は,平成23年1月1日から平成27年4月20日までの間に, 被告各製品を販売して合計8億1715万2306円を売り上げ(うち平成26年 1月23日までの売上高は7億8021万6380円,同年12月21日までの売 上高は8億1685万6414円),かつ,被告各製品の利益率はいずれも15パ ーセントを下回ることはないとの事実を真実であると認めるのが相当である。なお, 被告の平成22年4月1日から平成26年3月31日までの総売上の合計が53億 6258万6000円であり,うち,完成工事高が36億2028万2000円, 兼業事業売上高が17億4230万4000円であること,同期間中の兼業事業売 上高に占める原価率は66.27パーセントであること(以上につき,甲70ない し77),被告は,被告製品1−1及び同1−2につき平成21年12月17日に, 被告製品4−1及び同4−2につき平成23年11月7日に耐火認定(建築基準法 及び同法施行令に規定する基準に適合することの認定)を受けたこと(当事者間に 争いがない。)などの事実関係からすれば,上記真実擬制に係る事実は,客観的真 実とも十分に符合しうるというべきである。
オ そうすると,被告は,本件特許権1の侵害により,8億1685万6414 円に15パーセントを乗じて算出される1億2252万8462円(うち平成26 年1月23日までの売上に係る利益は1億1703万2457円)の利益を受けた ものと認められる。

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平成26(ワ)5210  損害賠償請求事件  民事訴訟 平成28年1月21日  大阪地方裁判所

 均等侵害が認定されました。また、損害額について譲渡対象とならなかった分について、有償譲渡とは異なる料率が認定されました。
 本件特許発明が,シートによって鼻全体を覆うことを想定していることは先に述 べたとおりである。しかし,本件明細書の記載によれば,従来のシートでも鼻の上 部に切り込みは設けられておらず(【0005】,図2),鼻の上部に当たる目頭付近 部分は,従来技術によってもシートで覆うことが実現されていたのに対し,本件特 許発明の技術的課題は,従来のパック用シートでは,小鼻部分にシートで覆えない 大きな隙間が空き,また,シートの小鼻に対応した部分が浮き上がってしまう欠点 があったことから,顔面で最も高く膨出する鼻の小鼻部分をもぴったりと覆うこと にあり,本件特許発明は,「ほぼ台形の領域」にミシン目状の切り込み線を配すると したことにより,不織布の横方向に伸びやすいという物性と相俟って,パック用シ ートが鼻筋や鼻の角度に沿って自然と横方向に伸び広がるようにし,隙間を生じる ことなく小鼻部分をもぴったり覆うようにしたものであると認められる。 これらからすると,本件特許発明は,鼻部にミシン目状の切り込み線を複数列配 することによって,従来技術では困難であった小鼻部分を覆うことを実現した点に 固有の作用効果があると認められる。そうすると,被告製品において,目頭の高さ からやや下の部分までの領域に切り込み線が設けられていない点は,このような本 件特許発明の固有の作用効果を基礎付ける本質的部分に属する相違点ではないとい うべきである。
イ 置換可能性について
証拠(甲3)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品は,目頭の高さからやや下の 部分までの領域にミシン目状の切り込み線が設けられていなくとも,小鼻部分を含 めた鼻全体に密着するものであると認められる。 そうすると,被告製品も,本件特許発明の目的を達することができ,同一の作用 効果を奏するものであると認められる。 ウ 置換容易性について 前記のとおり,鼻の上部に当たる目頭付近部分は,従来技術によってもシートで 覆うことが実現されていたことからすると,切り込み線が配される台形状の領域の 上底の高さを,眼の付け根である目頭の高さよりも,目頭の1段分か2段分,下に 設けても本件特許発明と同一の作用効果を奏することは,当業者が,対象製品等の 製造等の時点において容易に想到することができたというべきである。
・・・・
(2) 被告製品の製造に関する実施料相当額
被告に納入されたパック用シート●●●●●●●●のうち,被告製品として譲渡 されたのは●●●●●●●●であり,その差である●●●●●●●●については, 納入されたが譲渡されなかったものである。しかし,被告製品のパック用シートが 特殊な形状をしていることからすると,被告は,シートの製造業者に発注して被告 製品用のパック用シートを製造させたと推認され,そうすると,被告は,パック用 シートの製造行為を行ったと評価すべきである。そして,パック用シートの製造も 本件特許発明の実施であり,侵害行為に当たるから,納入されたが譲渡されなかっ た分も損害賠償の対象とするのが相当である。 もっとも,被告は,これらについては,その価値を市場に提供して利用したわけ ではないことからすると,これを有償譲渡と同視し,前記の想定市場販売価格を基 礎として実施料相当額を算定するのは相当でない。そこで,これらシートについて は,その製造自体の価値を示すものとして,その納入価格を基礎として実施料相当 額を算定するのが相当であり,証拠(乙12)によれば,シート1枚当たりの納入 価格は●●円であると認められる。この点について,原告は,これらについても想 定市場販売価格を基礎にして実施料相当額を算定すべきであると主張するが,前記 に照らして採用できない。 また,前記(1)エにおいて考慮した事情に照らせば,これらシートの納入価格には, 美容液の価値が考慮されていないから,被告製品用のシートを製造したが譲渡しな かった場合の実施料率は,●●と認めるのが相当である。

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平成24(ワ)6435  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年5月28日  大阪地方裁判所

 特102条1項による損害として、特許権者の利益額350万/台(限界利益)*被告の販売台数5台=1750万円が認められました。
 被告は,本件特許が登録された後,5台の被告製品(被告製品1を4台,被 告製品2を1台。)を販売したことを自認している(前記第2の6【被告の主 張】(1))。
イ 原告は,契約後,未納となっている被告製品の譲渡が少なくとも3台あるこ とを主張する。 一般論として,侵害品の譲渡契約がされた場合には,それが未納であったと しても,特許法102条1項にいう「譲渡数量」に加算できる場合はあるもの というべきであるが,本件においては,上記譲渡契約に基づいて,被告製品と して特定された本件特許発明の技術的範囲に属する製品が納入されることに ついて,的確に認定し得る証拠は提出されていないから,上記3台が特許法1 02条1項にいう「譲渡数量」に含まれるものと認めることはできない。 したがって,被告製品の譲渡数量は,5台と認めるのが相当である。
(2) 被告の侵害行為がなければ原告が販売することができた物について 証拠(甲12,13)によると,原告が販売する型番HTP−3,6,10, 15,20ないしHT−3,6,10,15,20の製品は,本件特許発明の実 施品と認められるし,仮にそうでなかったとしても,自治体の廃棄物処理場等に 納入される破袋機であって,被告製品と競合する関係にあることは明らかである。 したがって,原告は,販売可能な製品を有していたものといえる。\n
(3) 単位数量当たりの利益の額
証拠(甲19)及び弁論の全趣旨によると,原告は,次のとおり,上記(2)の原 告実施品を製造,販売したこと,原告製品の実際の製造は外注によって行われ, 下記の粗利において直接労務費は既に控除されているものと認められる。 そうすると,原告製品の販売台数は14台,売上合計は9039万円,粗利合 計は4917万8369円,1台当たりの粗利は,351万2740円(1円未 満切り捨て)となる。
・・・
なお,前記のとおり,原告が現実の製造を外注して行っているのであれば,い わゆる限界利益を考慮するとしても,製造人件費,変動経費は外注費として控除 されていると考えられるから,本件において,上記からさらに控除すべき経費は 想定されない。 被告は,そのような利益率は常識はずれであって合理性がないと主張するが, 何ら具体的根拠,証拠を提示しないし,控除すべき費目を具体的に特定するもの でもないから,上記判断を左右しない。 したがって,単位数量当たりの利益の額は,351万2740円と認められる。 (4) 原告の実施能力
上記認定にかかる原告の販売実績及び被告の譲渡数量を比較すると,原告の実 施の能力から,被告の販売台数5台全てを原告が販売できたものと認められる。\n(5) 販売することができないとする事情(特許法102条1項ただし書)
ア 競合品の存在,破袋機の流通形態について
被告は,破袋機を製造する第三者が多数存在することを指摘し,その旨の証 拠(乙55から71まで)を提出するが,単に破袋機を製造販売するメーカー が存在することを挙げるにすぎず,本件特許発明を回避しつつ,同様の作用効 果を発揮する競合品の存在や具体的なシェアが明らかとなっているものでは ないから,上記証拠によって本項ただし書の事情を認めることはできない。 また,破袋機が,常時市場に存在するものでないことは,そもそも本項ただ し書に該当する事情に当たらない。
イ 原告製品と被告製品の価格差について
上記のとおり,原告製品の販売価格は,418万円から950万円であるの に対し,被告製品の販売価格(定価)は,証拠(乙41ないし45)及び弁論 の全趣旨によると,350万円であることが認められる。もっとも,原告製品 のうち高価格のものは,容量ないし処理量の大きいものと認められるから,こ の点も考慮に入れると,原告製品の価格帯と,被告製品の価格帯の差はさほど 大きなものとは評価できず,本項ただし書にいう事情に当たるとはいえない。 ウ 寄与度について
本件特許発明は,破袋機の構造の中心的部分に関するものである上,原告は,\n一定のブランド力も有するものであるから,上記のとおり,多様な破袋機を製 造販売するメーカーが,原告,被告のほか多数あること等の被告の主張を考慮 に入れたとしても,本件特許発明が被告製品や原告製品に寄与する割合を減ず ることはできない。 また,被告が日本唯一の雪上車メーカーであることは,本件と何ら関係のな い事情である。
(6) まとめ(特許法102条1項による金額)
以上によると,特許法102条1項により,原告の損害は,単位数量当たりの 利益額351万2740円に,被告の譲渡数量5台を乗じた,1756万370 0円と推定され,この推定を覆す事情は認められない。 なお,特許法102条2項により推定される金額は,被告の売上額の合計が上 記金額に満たないものと認められる(乙41ないし44)から,本件においては これを採用しない。
(7) 保守費用について
ア 特許権者は,物の発明にあっては,特許発明を使用した製品(以下「特許製 品」という。)の「使用」についてもその権利を専有するものであるから(特 許法68条,2条3項1号),侵害品の譲受人が侵害品を使用することもまた, 特許権侵害となり,不法行為を構成することになる。\nそうすると,侵害品を保守,修理することで,譲受人の侵害品の使用を継続 させたり,容易させたりなどした場合は,上記使用による不法行為を幇助する ものとして,共同不法行為(民法709条,719条2項)を構成する余地が\nあるが,侵害品の保守,修理それ自体は,間接侵害(特許法101条)の規定 に抵触しない限り,独立の不法行為となるものではない。 イ 原告は,被告の使用者に対する保守行為を不法行為の幇助と構成し,前記検\n討した被告製品の譲渡による損害とは別に,保守行為によって被告が得た利益 相当額を原告の単価等により計算した上,これを原告の逸失利益として,被告 に対する損害賠償として請求するものであるが,本件においては,被告の保守 行為それ自体が独立の不法行為に当たることを認めるに足りる証拠はないし, 原告もそのような主張はしていない。 ウ また,本件においては,既に検討したとおり,侵害品の製造,譲渡を理由と する損害賠償請求が認容され,これによって,原告の販売機会喪失等による損 害は全て填補されるところ,これとは別に,譲受人が侵害品を使用することに よって,原告にどのような損害が生じるかは明らかにされておらず,これに対 する幇助として,被告がさらに損害賠償義務を負担すると認めるべき理由はな い。
エ そうすると,原告の,保守費用相当額の損害賠償請求は,理由がないものと いうべきである。

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 平成25(ワ)6414  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年2月26日  大阪地方裁判所

 特許権侵害として7%の実施料相当額が認められました。
 イ 上記認定事実を前提にすると,被告が受注した同種システムの中で,被告装置を備えるものは多くなく,常に一体として販売されているとは いえないこと,被告装置自体の売上額も,被告装置を備えるシステム総売上額27億4337万5000円の中の2億4834万9000円と,約9%であることからすれば,被告が受注したパワートレイン開発,計測等のシステム全体をもって,本件特許発明の実施に該当すると解するのは相当ではない。 また,被告システムにおける排ガス分析計であるAMAi60は,被告装置と組み合わせて使うことが予定されているものであるが,独立した装置であり,被告装置とは別に,システムの一部要素として構\成されていることが認められるから(別紙受注一覧取引番号3ないし6,甲6,乙6の2),本件特許発明の技術的範囲に属する被告装置の一部と評価できるものではない。 よって,本件特許発明の実施料の対象として捉えるべきものは(特許法102条3項),被告装置自体の受注額であると解される。
ウ 前記認定事実を前提に,本件特許発明の実施に対し原告が受けるべき額について検討するに,被告装置の受注額を基礎に,本件特許発明の実施料を算定すべきであることは前述のとおりであるが,被告装置と排ガス分析計AMAi60とが組み合わせて販売されており,一定限度,被告装置の販売は,AMAi60の販売に寄与していると評価することができるから,この点を使用料率の算定にあたって考慮することはできるものと解する。 また,被告装置を含むものとして受注したパワートレイン開発,計測等のシステムは,1件あたりの受注額の平均が4億円以上となる大規模なものであること,システム全体のうち,排ガス測定機器の関係について,原告と被告は競合していること,被告において,原告のCVS装置をシステムに組み込むこともある中で,温調機能を有する被告装置を含む発注を受けているのであるから,被告装置の存在は,システム全体の\n受注に一定限度寄与しているというべきであり,前述のとおり,被告装置の受注額を基礎に本件特許発明の実施料を算定するとしても,その料率の関係では,この点を考慮するのが相当である。 さらに,本件特許発明は,サンプリング流路全体とともにサンプルバッグを加熱するという比較的単純な構成からなるものであるから,競合関係にある被告にとって,被告装置が本件特許の侵害となるか否かの検討は容易であると考えられ,前述のとおり,原告のCVS装置も選択可能\な中で,あえて温調機能を有する被告装置を含むシステムを受注したのであるから,この点は,実施料率を算定するに当たって考慮すべき事情と解される。\n以上を総合すると,本件特許発明の実施に対し原告が受けるべき実施料としては,被告装置の受注額の7%とするのが相当である。
エ そうすると,原告が特許法102条3項により受けるべき金銭の額は,被告装置の受注額の7%,別紙損害算定表の実施料相当額欄記載のとおりとなり,合計1738万4430円と認めるのが相当である。\n

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平成24(ワ)35757  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年2月10日  東京地方裁判所

 登録日から特許公報発行前の期間について、特103条の過失の推定規定の適用があるかが争われました。裁判所は、登録時からの過失を認定しました。
 前記1及び2のとおり,被告は,原告らの本件特許権を侵害しており,特許権侵害につき過失があるものと推定される(特許法103条)から,原告らに対し,平成21年12月18日(本件特許の登録日)から平成23年10月23日までの被告製品の製造販売により原告らに生じた損害につき,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 イ これに対し,被告は,本件特許の特許公報の公開までの間は,同条に基づく過失の推定は覆滅されると主張する。 そこで判断するに,特許法は,特許権は設定の登録により発生する(66条1項),登録があったときは特許権者の氏名等を特許公報に掲載する(同条3項),特許公報は特許庁が発行する(193条1項)と規定するところ,登録から特許公報の発行までは,事柄の性質上,ある程度の期間を要すると考えられるから,特許権発生後,特許公報が発行されていない期間が生じることは,同法の規定上,予定されていると解される。一方,同法103条は,単に「特許権」を侵害した者はその侵害の行為について過失があったものと推定される旨規定し,特許権の発生時(登録時)から過失による不法行為責任を負うことを原則としてお\n り,特許公報の発行を過失の推定の要件と定めてはいない。また,同条が過失の推定を定めたのは,発明を奨励しもって産業の発達に寄与するという法目的(同法1条)に鑑み,特許権者の権利行使を容易にしてその保護を図るためであることは明らかである。以上の特許法の諸規定に照らせば,特許公報の発行前であることのみから過失の推定が覆されると解することは相当ではない。

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平成25(ワ)14214  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年11月18日  東京地方裁判所

 同族会社の取締役に、特許権侵害につき悪意又は重過失であったとして、600万円を超える損害賠償が認められました。
 前記争いのない事実等及び弁論の全趣旨によれば,上記不法行為期間のうち平成23年4月1日から同年6月30日までの間,被告Bは代表取締役として本件新会社の本件治療器に係る業務を執行し,被告Aも取締役として同業務についての意思決定に関わっており,特許権侵害につき悪意又は重過失であったと認められる。\nしたがって,被告らは,この間の本件新会社による特許権侵害の不法行為につき,会社法429条1項に基づく責任を負う。 イ 平成23年7月1日から平成24年3月31日まで 原告は,本件新会社は同族会社であり,被告らは役員でない期間もD一族のトップとして実権を行使していたことなどから,本件新会社の不法行為につき責任を負う旨主張する。しかし,事実上の取締役について会社法429条1項の類推適用を認める余地があるとしても,本件において,被告らが取締役でなかった期間における本件新会社の経営の実態等については何ら具体的な主張がない。したがって,被告らが同項による責任を負うとは認められない。
・・・
1) 前記2(2)アのとおり,被告らは,本件新会社による平成23年4月1日から同年6月30日までの特許権侵害の不法行為により生じた原告の損害につき会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負うから,同期間の原告の損害額を検討する。 ア 証拠(甲6〜11)及び弁論の全趣旨によれば,本件旧会社が本件事業により得た利益は年間平均2549万6461円であったことが認められる。そして,本件新会社は本件旧会社と同様に本件治療器に係る業務を行 っていると解されるところ,被告らは本件新会社の利益につき原告の主張に対して具体的な反論をせず,積極的な反証もしていない。そうすると,本件新会社が本件治療器を販売し,これを使用したセラピーを提供したことによる年間の利益は上記と同額であると推認されるから,平成23年4月1日から同年6月30日までの利益は635万6652円(2549万6461円×91÷365)であると認めることができる。 イ 原告は,本件治療器の販売をし,本件治療器を使用した施術を提供していると認められるから(甲32),本件新会社が本件発明の実施により得た利益の額は原告が受けた損害の額であると推定される(特許法102条2項)。 なお,被告らは,セラピーに係る利益は同項の「利益」に当たらないと主張するが,実施品の使用(同法2条3項1号)という特許権侵害行為により得た利益であることは明らかであり,被告らの主張は採用できない。 ウ 被告らは,本件治療器の販売及びセラピーにおける使用により利益を得るためには,使用方法のノウハウの提供及びセラピストの技術等が寄与する程度が大きく,上記利益に対する本件特許の寄与度は,販売について5%,セラピーについて2.5%であると主張する。 そこで検討するに,本件発明は音叉型治療器の発明であり,実施品の販売やセラピーでの使用に際して,使用方法の説明やセラピストの知識及び技術が必要なのは当然であり,本件新会社に特有の事情ではない。そして,被告らの主張によっても,本件新会社における使用方法の説明,セラピストの知識及び技術,セラピストの団体等の具体的内容は明らかでなく,本件において,上記イの推定を覆滅するに足りる事情があるとは認められない。
(2) したがって,本件新会社の上記期間の特許権侵害の不法行為による原告の損害額は635万6652円であると認められ,被告らは,会社法429条1項に基づき,各自同額の損害賠償義務を負う。

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平成26(ネ)10022  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月11日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審で損害額が変更されました。双方とも特102条2項に基づく判断ですが、同項による推定を一部覆滅する事情について、1審は75%減額、控訴審は65%減額と判断しました。
 特許法102条2項の規定により損害の額を算定するに当たっては,第1審被告が得た利益のうちに当該特許発明の実施以外の要因により生じたものと認められる部分があるときは,同項による推定を一部覆滅する事情があるものとして,その分の額を損害の額から減ずるのが相当である。
これを本件についてみると,第1審被告aで認定したとおりであるが,第1審被告は本件特許の登録前から同種サービスを提供しており,第1審被告装置1は本件特許を侵害第1審被告は保有する3件の特許権に係る特許発明を実施しており,その提供するサービスについて,能率と費用の面でより効果的なものとしている本件発明と同様の調査データを取得し得る方法として,本件特許の侵害とならない方法によることが困難なものとは認められないこと(例えば,被告装置5の実施態様(b)。c,)などからすると,本件発明の技術的意義はさほど高いものではなく,第1審被告事業による利益に対する本件特許の寄与は,相当限定的な範囲にとどまるものと認めるのが相当である。 加えて,特許権侵害期間における第1審被告の顧客55社のうち35社(約63%)が本件特許権の特許登録前からの顧客であり,また,固定電話分の売上げの約8割がこれらの顧客によるものであるところ(前記アc),第1審被告による本件発明の実施の影響が新規顧客のみに限定されるものではないとしても,本件発明の実施に対応して需要者が何らかの具体的な選択をしたことをうかがわせるような証拠もないことに照らすと,上記の顧客の状況については,第1審被告事業の利益に対する本件発明の寄与を更に限定する要素と認めざるを得ない。 第1審原告は,寄与割合を判断するに当たっては,需要者の選択購入の動機が基軸的な要素として重視されるべきであると主張するが,上記のとおり,その主張を認めるに足りる証拠はなく,本件においては,第1審原告の上記主張は採用することができない。 また,本件においては,市場に同種のサービスを提供する業者の存在が調査データと特定の電話番号を照合することにより利用状況を調査するサービスに関しては,第1審原告と第1審被告のほかにサービスを提供する上記の点は,推定を覆滅する要素として重視することはできない。 以上の各事情に加え,第1審原告及び第1審被告の主張に照らし,本件の証拠上認められる一切の事情について検討すると,上記第1審被告の利益が特許権侵害による第1審原告の損害額であるとの推定を一部覆滅する事情があると認められ,その割合は65%と認めるのが相当である。 そうすると,特許法102条2項の規定に基づいて算定される損害額は,前記において認定した利益額9994万2225円に35%を乗じた3497万9779円となり,第1審原告がこれを上回る損害を被ったことを認めるに足りる証拠はない。

◆判決本文

◆原審はこちら 平成21(ワ)32515

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平成24(ワ)14652  特許権侵害損害賠償等請求事件  特許権  民事訴訟  平成26年7月23日  東京地方裁判所

 洗濯機のカビプロテクト機能について「商品選択に寄与する割合が低いものであったとはいい難い」として売上高の1%の損害が認められました(特102条3項)。
 そして,本件688明細書の上記(イ)e,fの記載に照らせば,本件688発明において,洗濯兼脱水槽から洗濯物が取り出され,槽内に洗濯物がない状態で上記槽乾燥工程を行うことで,脱水孔から空気が外槽内にスムーズに流れ,槽内の乾燥効率向上という作用効果が得られるものとされていることをうかがうことができるところ,本件688明細書に,上記(イ)gのとおり,温風供給手段を動作させるタイミングを,洗濯兼脱水槽から洗濯物を取り出した後とするためには,蓋の開閉動作があったことを条件とすればよい旨の記載があることも考慮すれば,蓋開閉検知は,洗濯兼脱水槽内から洗濯物が取り出された状態で槽乾燥工程が行われることを担保し,槽内の乾燥効率の向上という上記作用効果を確保するための構成であると解されるところである。そうすると,「検知を条件に」を,槽乾燥工程への自動移行を意味するものと解すべき理由はなく,同文言は,単に蓋開閉検知がされなければ槽乾燥工程に移行しないことを意味するにとどまるものと解するのが相当である。\n
・・・・
以上によれば,本件521特許及び本件893特許の侵害を理由とする原告らの請求は,争点(4)イ・ウについて検討するまでもなく理由がないことに帰着する。 そこで,以下においては,争点(4)ア(本件688特許の侵害による損害額)についてのみ検討する。
・・・・
そうすると,ロ号製品について,そのカタログやウェブサイト上の製品説明において,本件688特許登録前の製造販売に係る製品のように,「カビプロテクト」機能につき大きく取り上げる扱いがされていなかったとしても,従前の宣伝広告等により,需要者が当該機能\\を重視することは十分にあり得るものというべきである。なお,被告は,本件688特許登録前の製造販売に係る製品は,いわゆる縦型洗濯機であり,ドラム式洗濯乾燥機であるロ号製品とは無関係なものである旨主張するが,縦型洗濯機とドラム式洗濯乾燥機の需要者は共通するものと解されるのであって,前者に係る宣伝広告の効果が後者に波及することは十\\分にあり得るものと解されるところである。加えて,ロ号製品についても,機種名TW−G520L/Rの製品については,そのカタログにおいて,「カビプロテクト」機能により手軽に槽の手入れをすることができる旨が大きく取り上げられていること(甲36,乙64),機種名TW−Z370L,TW−G520Lの製品については,株式会社東芝のウェブサイトにおける上記製品の「商品情報」において,カビプロテクト機能\\を有する旨が記載されていること(乙66)に照らせば,ロ号製品においても,「カビプロテクト」機能はその宣伝広告において取り上げられることがあったものということができるのであって,本件688発明に係る機能\\が需要者の商品選択に寄与する割合が低いものであったとはいい難いものというべきである。
エ 他方,特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決を実現するための従来技術に見られない特有の技術的思想に基づく解決手段を具体的な構成をもって社会に開示した点にあるというべきところ,本件688発明がその課題解決のために具体的に開示した新たな技術的手段としての構\\成は,「前記検知工程による検知を条件に」槽乾燥工程へ移行するようにしたところであって,同発明は,蓋の開閉検知のほかには,「洗濯物が取り出された状態」とするための技術的手段を開示していないことは,前記1で見たとおりである。
オ 以上の事情を総合考慮すると,ロ号製品の売上高に1%を乗じた金額が,本件688特許の特許権者が本件688発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する金額(特許法102条3項)として相当であると認められる。

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平成24(ワ)30098 特許権侵害行為差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年07月10日 東京地方裁判所

 特許権侵害で1億円を超える損害賠償が認められました。
 上記技術分野における実施料率に関しては,平成4年度〜10年度の無機化学製品の契約件数(イニシャルペイメントなし)は3件であり,実施料率別では5%が2件,2%が1件であった旨, 平成21年頃の国内企業へのアンケートによると化学分野の実施料率は平均5.3%であった旨, 平成9年〜20年に損害賠償訴訟で判断された化学分野の実施料率は平均3.1%であった旨の調査結果が報告されている。(甲9,38,39,46)(3) 上記事実関係によれば,本件発明は二次電池の正極材料の基本性能に関するものであり,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属する被告方法により製造されたものとして,高温保存特性が優れるという効果を奏するものということができるが,他方,被告製品の売上げに関しては,それ以外にも二次電池に求められる上記各性能\を被告製品が有していることによる部分が大きいと推認される。以上に説示した本件の諸事情を総合すると,原告が被告による本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額は,前記(1)の55億8300万円に2%を乗じた1億1166万円と認めるのが相当である。

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平成25(ネ)10043 債務不存在確認請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成26年05月16日 知的財産高等裁判所

 知財高裁がFRAND宣言した特許権の行使についてアミカスブリーフを求めた事件です。争点は多数ですが、2次使用について消尽が適用されるのかについて展開した後、FRAND宣言における必須特許1/529の約1000万円の損害賠償を認めました。最後に意見募集についても言及されました。
 インテル社は,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約によって,本件ベースバンドチップの製造,販売等を許諾されていると仮定されるから,前記(イ)にいう特許権者からその許諾を受けた通常実施権者に該当する。また,「データを送信する装置」(構成要件A)及び「データ送信装置」(構\成要件H)に該当するのは本件ベースバンドチップを組み込んだ本件製品2及び4であると解される一方,本件ベースバンドチップには,本件発明1の技術的範囲に属する物を生産する以外には,社会通念上,経済的,商業的又は実用的な他の用途はないと認められるから,本件ベースバンドチップは,特許法101条1号に該当する製品(1号製品)である。アップル社は,インテル社が製造した本件ベースバンドチップにその他の必要とされる各種の部品を組み合わせることで,新たに本件発明1の技術的範囲に属する本件製品2及び4を生産し,被控訴人がこれを輸入・販売しているのであるから,前記(ア),(イ)のとおり,控訴人による本件特許権の行使は当然には制限されるものではない。b そこで,まず,控訴人においてこのような特許製品の生産を黙示的に承諾していると認められるかを検討する。この点,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約が存続しており,かつ,本件ベースバンドチップがその対象となると仮定した場合における,仮定される控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約は,控訴人が有する現在及び将来の多数の特許権を含む包括的なクロスライセンス契約であり,本件特許を含めて,個別の特許権の属性や価値に逐一注目して締結された契約であるとは考えられない。また,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約の対象は,「インテル・ライセンス対象商品」すなわち「(a)半導体材料,(b)半導体素子,又は(c)集積回路を構成する全ての製品」であって,「インテル・ライセンス対象商品」に該当する物には,控訴人の有する特許権との対比における技術的価値や経済的価値の異なる様々なものが含まれ得る。そうすると,かかる包括的なクロスライセンスの対象となった「インテル・ライセンス対象商品」を用いて生産される可能\性のある多種多様な製品の全てについて,控訴人において黙示的に承諾していたと解することは困難である。そして,インテル社が譲渡した本件ベースバンドチップを用いて「データを送信する装置」や「データ送信装置」を製造するには,さらに,RFチップ,パワーマネジメントチップ,アンテナ,バッテリー等の部品が必要で,これらは技術的にも経済的にも重要な価値を有すると認められること,本件ベースバンドチップの価格と本件製品2及び4との間には数十倍の価格差が存在すること(乙31,32),いわゆるスマートフォンやタブレットデバイスである本件製品2及び4は「インテル・ライセンス対象商品」には含まれていないことを総合考慮するならば,控訴人が,本件製品2及び4の生産を黙示的に承諾していたと認めることはできない。なお,このように解したとしても,本件ベースバンドチップをそのままの状態で流通させる限りにおいては,本件特許権の行使は許されないのであるから,本件ベースバンドチップを用いて本件製品2及び4を生産するに当たり,関連する特許権者からの許諾を受けることが必要であると解したとしても,本件ベースバンドチップ自体の流通が阻害されるとは直ちには考えられないし,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約が,契約の対象となった個別の特許権の価値に注目して対価を定めたものでないことからすると,控訴人に二重の利得を得ることを許すものともいえない。\n
・・・
すなわち,ある者が,標準規格に準拠した製品の製造,販売等を試みる場合,当該規格を定めた標準化団体の知的財産権の取扱基準を参酌して,必須特許についてFRAND宣言する義務を構成員に課している等,将来,必須特許についてFRAND条件によるライセンスが受けられる条件が整っていることを確認した上で,投資をし,標準規格に準拠した製品等の製造・販売を行う。仮に,後に必須宣言特許に基づいてFRAND条件によるライセンス料相当額を超える損害賠償請求を許容することがあれば,FRAND条件によるライセンスが受けられると信頼して当該標準規格に準拠した製品の製造・販売を企図し,投資等をした者の合理的な信頼を損なうことになる。必須宣言特許の保有者は,当該標準規格の利用者に当該必須宣言特許が利用されることを前提として,自らの意思で,FRAND条件でのライセンスを行う旨宣言していること,標準規格の一部となることで幅広い潜在的なライセンシーを獲得できることからすると,必須宣言特許の保有者にFRAND条件でのライセンス料相当額を超えた損害賠償請求を許容することは,必須宣言特許の保有者に過度の保護を与えることになり,特許発明に係る技術の幅広い利用を抑制させ,特許法の目的である「産業の発達」(同法1条)を阻害することになる。(イ) 一方,必須宣言特許に基づく損害賠償請求であっても,FRAND条件によるライセンス料相当額の範囲内にある限りにおいては,その行使を制限することは,発明への意欲を削ぎ,技術の標準化の促進を阻害する弊害を招き,同様に特許法の目的である「産業の発達」(同法1条)を阻害するおそれがあるから,合理性を欠くというべきである。標準規格に準拠した製品を製造,販売しようとする者は,FRAND条件でのライセンス料相当額の支払は当然に予定していたと考えられるから,特許権者が,FRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内で損害賠償金の支払を請求する限りにおいては,当該損害賠償金の支払は,標準規格に準拠した製品を製造,販売する者の予\測に反するものではない。また,FRAND宣言の目的,趣旨に照らし,同宣言をした特許権者は,FRAND条件によるライセンス契約を締結する意思のある者に対しては,差止請求権を行使することができないという制約を受けると解すべきである(当裁判所においても,控訴人が被控訴人に対して本件特許権に基づく差止請求権を被保全債権として,本件製品2及び4に加えて「iPhone 4S」の販売等の差止等を請求した仮処分事件(本件仮処分の申立て及び別件仮処分の申\立ての抗告審。当庁平成25年(ラ)第10007号,同10008号事件)において,控訴人の申立てを却下した原審決定を維持する旨の決定をした。)。FRAND宣言をした特許権者における差止請求権を行使することができないという上記制約を考慮するならば,FRAND条件でのライセンス料相当額の損害賠償請求を認めることこそが,発明の公開に対する対価として極めて重要な意味を有するものであるから,これを制限することは慎重であるべきといえる。(ウ) 以上を「FRAND条件でのライセンス料相当額を超える損害賠償請求」と「FRAND条件でのライセンス料相当額による損害賠償請求」に分けて,より本件の事実に即して敷衍する。
・・・
意見の中には,諸外国での状況を整理したもの,詳細な経済学的分析により望ましい解決を論証するもの,結論を導くに当たり重視すべき法的論点を整理するもの,従前ほとんど議論されていなかった新たな視点を提供するものがあった。これらの意見は,裁判所が広い視野に立って適正な判断を示すための貴重かつ有益な資料であり,意見を提出するために多大な労を執った各位に対し,深甚なる敬意を表する次第である。\n

◆判決本文

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平成25(ネ)10086 債務不存在確認請求本訴,損害賠償請求反訴請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成26年04月24日 知的財産高等裁判所

 アップルのクリックホイールに関するの訴訟で、1審は約3億円の損害賠償を認めました。本件は、その控訴審です。知財高裁は、1審の判断をほぼそのまま認めました。
 平成19年9月から発売が開始されたiPod touchではクリックホイールが採用されず,タッチパネルが採用されている(乙26)。タッチパネルはプッシュスイッチを有するものではなく,また,タッチパネルによる操作方法は,タッチパネル向けに最適化されており,コンテンツをCover Flowで表示するには,iPod touchを横に回転させ,アルバムカバーをブラウズするには,左右にドラッグするか,フリックし,任意のトラックを再生するには,再生したいトラックをタップする等というものであって,クリックホイールによる操作とは大幅に異なる(甲138)。そうすると,タッチパネルとクリックホイールとでは,小型携帯装置の入力手段であるという程度の共通性しか見出せず,両者が代替手段の範疇にあるとは認められない。

◆判決本文

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平成23(ワ)3292 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月26日 東京地方裁判所

 販売不可事情として7割に関しては除外されましたが、特102条1項により、1億6000万円を超える損害賠償が認められました。
 以上によれば,本件発明1は,電池電圧低下を検出した場合に,従来技術において採用されていた,意味不明かつ耳障りなブザー音に代えて,意味が明確かつ耳障りでない音声メッセージによって電池交換を促すとともに,利用者が音声メッセージを聴取するための誘因として,視覚的効果を有する表示灯手段を採用し,さらに,表\示灯手段を視認して誘引された利用者が確認要求受付手段を利用することにより,確実に音声メッセージを認識できるようにしたものである。そうすると,本件発明1の技術的意義は,第1に,従来技術における意味不明かつ耳障りなブザー音に代えて音声メッセージを利用するようにしたことであり,第2に音声メッセージへ到達するための誘因として視覚的な表示灯手段を利用するとともに,利用者の確認要求によって音声メッセージを確実に認識できるようにしたことにある。このような技術的意義を有する構\成を採用したことにより,早期に確実に電池交換をすることが促進され,電池の無駄な消費も抑えることができるようになる。本件発明1の上記技術的意義に照らせば,本件発明1において,電池電圧低下の検出と同時に発することが排除されているのは,利用者がうるさがって電池を抜き出してしまう程度に耳障りな音声又はブザー音であって,表示灯手段による報知と併せて発音を行うこと自体が全く排除されているものではないと解するのが相当である。そして,ハ号及びニ号製品における「ピッ」音は,50秒単位で発せられるものであり,利用者に異常表\示灯手段への注意を促す程度のものとみることができるから,上記発音が,利用者においてうるさがって電池を抜き出してしまう程度に耳障りなものとは解されず,上記発音が本件発明1において排除されている音声に当たるものとは解されない。
・・・
また,被告は,原告は,平成20年8月までは,原告製品1及び2のみしか販売していなかったものであるから,同月末日までの間は,原告製品1及び2のみが「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たると主張する。しかし,特許法102条1項は,一定期間にわたる特許権侵害が認められる場合に,権利者の上記期間における競合品としてあり得べき権利者製品の販売機会の喪失による逸失利益を全体として評価して,これを権利者の受けた損害とするものであり,権利者製品と侵害品を厳密に1対1対応させ,販売機会の喪失を検討することが予定されているものではないというべきである。したがって,本件においても,特許法102条1項に基づく原告の損害を算定するに当たり,平成19年8月24日から平成24年3月末日までの期間を全体として捉え,原告製品を,いずれも,上記期間において「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たるとみて,その平均利益をもって原告の損害を評価することは,特許法102条1項の上記趣旨に反するものではなく,許容されるものというべきである。(オ) よって,被告の主張はいずれも採用することができず,原告製品は,被告製品全部との関係において,「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たるものと認められる。
ウ 「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することのできた物の単位数量当たりの利益の額」
(ア) 特許法102条1項にいう「単位数量当たりの利益の額」とは,原則として,権利者製品の売上高から変動費を控除した利益(限界利益)をいうが,費用のうち権利者製品の製造又は販売に直接必要な個別固定費も例外的に含むものと解するのが相当である。他方,本件発明は,その構成により,利用者が早期かつ確実に電池電圧低下を認識し,これを放置することなく早期の電池交換が促されることで,無監視状態で警報器が放置される事態を回避することが可能\になるという作用効果を有するものであるところ(前記第4の1(1)イ(ウ)),被告製品のカタログ等に本件発明に係る構成が記載されていること(上記(イ)e)に照らせば,本件発明の作用効果が購入者らによる製品購入(又は事業者による製品採用)の動機付けの一つとなっていることがうかがわれるものというべきである。ただし,火災警報器における基本的性能は,監視領域における火災等の異常を確実に検知し報知する点にあると考えられるのであって,電池電圧低下の検知及び報知は,異常を確実に検知し報知するための警報器の作動を確保するための機能\に関するものではあるものの,複数あり得る火災警報器の故障又は異常状態の一類型に対応するものにすぎないことや電池電圧の低下の検知及び報知については音声のみによる方法等の本件発明を実施しない他の方法もあり得ることを考慮すれば,本件発明に係る構成に基づく作用効果が,購入の決定的な動機付けとなり,又は製品を選択するに当たり大きな影響力をもつものとまでは考え難い。以上の諸事情については,被告製品の販売数量のうち,本件発明の作用効果を考慮してもなお他社の競合品によって代替されたと考えられる割合及び被告自身の営業力や本件発明の実施部分以外の被告製品の特性等により販売することができたと考えられる割合について,これらを総合して,原告が原告製品を「販売することができないとする事情」があると解するのが相当である。そして,上記諸事情に照らし,上記数量は7割とみるのが相当である。
(オ) 以上の認定に関し,原告は,パナソニック等の製品は本件特許権を侵害するものであるから,これらの製品の存在を考慮して,「販売することができないとする事情」を認定するのは相当ではないと主張するが,上記製品が本件特許権を侵害するものと認めるに足りず,採用することができない。(カ) したがって,前記アの被告製品の販売数量のうち,7割に相当する数量に応じた額を,原告の損害額から控除すべきである。

◆判決本文

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平成23(ワ)36583 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月20日 東京地方裁判所

 独占的通常実施権者に対して、特許法102条1項による損害賠償が認められました。
 原告製品1個当たりの利益の額は423.3円であること,被告は,平成21年2月23日から平成22年12月3日までに被告製品を10万0034個販売したことは当事者間に争いがない。また,証拠(甲30,乙7の1)及び弁論の全趣旨によれば,原告は平成16年から19年までは年間20万個を超える原告製品を,平成20年から22年までも年間10万個を超える原告製品を販売しており,原告の保有する生産設備やこれまでの販売実績からすれば,原告が被告の譲渡数量について実施する能力を有していたことが認められる。よって,原告の損害額は4234万4392円となる(なお,被告は本件に特許法102条1項の類推適用があることを争っていない。)\n
・・・・
被告は,原告製品と被告製品の価格差が大きいこと,装身具用連結金具の市場における原告のシェアが30%程度であり,複数の競合品が販売されていることから,被告製品の譲渡数量の一部につき「販売することができないとする事情」(特許法102条1項ただし書)があると主張する。そこで検討すると,前記争いのない事実等,証拠(甲31,32,乙8〜13。枝番号のある証拠はすべての枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨を総合すると,1)原告製品の販売価格は1個859.5円であるのに対し,被告製品は約467.5円であること,2) 装身具用連結金具製品を販売する業者は原告と被告のほかにも複数存在することが認められる。しかしながら,1)価格差のあることが上記ただし書の事情に当たり得るものであるとしても,本件においては,弁論の全趣旨によれば,装身具用連結金具がネックレス等の環状装身具の部品の一つとして使用されるものであり,最終製品である環状装身具の価格が連結金具の価格を大きく上回るものであることに照らすと,原告製品と被告製品に上記の程度の価格差があることから原告製品につき「販売することができないとする事情」があると認めることはできない。また,2) 他社の装身具用連結金具製品が,本件発明と構成を異にするものであり,かつ,操作性が容易であり,構\造が簡単でコスト的にも優れているという本件発明と同様の効果を奏するものとして,原告製品の競合品となり得る特徴を有するものであるかは明らかではない。
 イ 次に,被告は,被告製品は別件発明に係る特許の実施品でもあるので,被告製品の販売における本件発明の寄与度は多くとも5割であると主張する。そこで検討すると,前記争いのない事実等(5)のとおり,原告と被告は,別件特許権の独占的通常実施権の侵害に係る別件訴訟において,被告が原告に解決金600万円を支払う,本件特許の独占的通常実施権侵害に基づく損害賠償債務の存在及び額が判決等により確定した場合には,この解決金を上記損害賠償債務に充当する旨の別件和解が成立し,別件特許権については原告と被告の間に他に債権債務はないことが確認されている。このような別件和解の経緯及びその内容に照らせば,被告製品の販売数量についての別件発明の寄与については,原告と被告の間では別件和解により解決済みであると解すべきであって,本件発明に係る独占的通常実施権侵害の損害額から別件発明の寄与度に相当する部分を減額するのは相当でない。

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平成24(ワ)24822 損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月20日 東京地方裁判所

 特許権侵害について、売上額の3%の損害が認定されました。
 原告らは,特許権侵害に係る不当利得の額は不当利得対象期間の被告各製品の売上額4億1602万5629円に実施料率3.5%を乗じた額であり,損害の額は損害賠償対象期間の被告の利益額633万0671円に等しいと主張する。上記売上額及び利益額に争いはなく,被告は,不当利得についての実施料率は0.5%であり,損害賠償についての寄与率は10%にとどまる旨主張するので,以下,検討する。
・・・
被告は,不当利得対象期間中,本件発明の実施許諾を得ないまま,その技術的範囲に属する被告各製品の製造販売をしたのであるから,少なくとも実施料相当額につき法律上の原因なくして利益を得,原告ペパーレットはこれと同額の損失を被ったということができる。イ そこで,本件発明の実施料率についてみるに,上記事実関係によれば,カラーチェンジ機能は猫砂に求められる複数の機能\のうちの一つにとどまり,顧客がこれを他の機能より重視しているとはいえないものの,紙製の猫砂全体に占めるカラーチェンジ機能\を有する製品の割合が,固まり性や消臭性を備えた猫砂の商品化後も徐々に拡大し,5割程度に達していることからすれば,カラーチェンジ機能は,同種製品の販売上,不可欠ではないとしても有益な機能\とみるべきものである。そして,被告各製品の包装をみても,製品ごとに強調の程度は異なるものの,カラーチェンジ機能をセールスポイントとして扱っている。また,実施料率について調査した文献によれば,本件発明の実施品が属するパルプ,紙加工品等の分野における実施料率は3%程度の契約例が多いとされている(甲14)。これらの事情を総合すれば,本件における実施料率は,売上額の3%と認めるのが相当である。したがって,原告らが返還を請求し得る不当利得の額は,合計1248万0768円(4億1602万5629円×3%)となる。\n
・・・
イ そこで判断するに,上記事実関係によれば,本件発明の効果であるカラーチェンジ機能が被告各製品の販売に貢献していることは明らかといえるが,他方,被告各製品は,消臭性,固まり性といった機能\も併せ有するのであり,これらに着目して,本件発明の実施品である原告らの動物用排尿処理材や,商品名等により専らカラーチェンジ機能が強調されていた前訴対象製品ではなく,被告各製品を選択する消費者も少なからず存在したものと推認することができる。これらの事情を総合すると,被告の利益のうち5割は本件発明以外の要因が寄与して生じたものであり,この限度で上記推定が覆ると考えられる。したがって,寄与率を10%とする被告の主張を採用することはできず,原告らが請求し得る損害賠償の額は合計316万5335円(633万0671円×50%)であると解するのが相当である。\n

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平成24(ワ)8071 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年01月16日 大阪地方裁判所

 使用済みの原告製品の芯管に分包紙を巻き直して製品化する行為について、特許はすでに消尽しているかが争われました。裁判所は、新たな生産行為として侵害と認定しました。また、商標権についても侵害認定をしました。損害額は102条2項(侵害者の利益を損害と推定する)で認定されました。
 特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされ,それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは,特許権者は,その特許製品について,特許権を行使することが許される。特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされた場合において,当該加工等が特許製品の新たな製造に当たるとして特許権者がその特許製品につき特許権を行使することが許されるといえるかどうかについては,当該特許製品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか,取引の実情等も総合考慮して判断すべきである(最高裁判所平成19年11月8日第一小法廷判決・民集61巻8号2989頁)。
(2)検討
まず,特許製品の属性についてみると,原告製品及び被告製品の分包紙が消耗部材であるのと比較すれば,芯管の耐用期間が相当長いことは明らかである。他方で,分包紙を費消した後は,新たに分包紙を巻き直すことがない限り,製品として使用することができないものであるから,分包紙を費消した時点で製品としての効用をいったんは喪失するものであるといえる。また,証拠(甲10)によれば,原告製品は,病院や薬局等で医薬品の分包に用いられることから高度の品質が要求されるものであり,厳密に衛生管理された自社工場内で製造されていることが認められる。同様に,証拠(甲12〜14,乙5)によれば,被告製品も,被告が製造委託した工場において高い品質管理の下で製造されていることが認められる。これらのことからすれば,顧客にとって,原告製品(被告製品)は上記製品に占める分包紙の部分の価値が高いものであること,需要者である病院や薬局等が使用済みの芯管に分包紙を自ら巻き直すなどして再利用することはできないため,顧客にとって,分包紙を費消した後の芯管自体には価値がないことも認められる。そうすると,特許製品の属性としては,分包紙の部分の価値が高く,分包紙を費消した後の芯管自体は無価値なものであり,分包紙が費消された時点で製品としての本来の効用を終えるものということができる。芯管の部分が同一であったとしても,分包紙の部分が異なる製品については,社会的,経済的見地からみて,同一性を有する製品であるとはいいがたいものというべきである。被告製品の製造において行われる加工及び部材の交換の態様及び取引の実情の観点からみても,使用済みの原告製品の芯管に分包紙を巻き直して製品化する行為は,製品の主要な部材を交換し,いったん製品としての本来の効用を終えた製品について新たに製品化する行為であって,かつ,顧客(製品の使用者)には実施することのできない行為であるといえる。以上によれば,使用済みの原告製品の芯管に分包紙を巻き直して製品化する行為は,製品としての本来の効用を終えた原告製品について,製品の主要な部材を交換し,新たに製品化する行為であって,そのような行為を顧客(製品の使用者)が実施することもできない上,そのようにして製品化された被告製品は,社会的,経済的見地からみて,原告製品と同一性を有するともいいがたい。これらのことからすると,被告製品は,加工前の原告製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認めるのが相当である。被告製品を製品化する行為が本件特許発明の実施(生産)に当たる旨の原告の主張には理由がある。
4 争点3(原告が被告製品につき本件各商標権を行使することの可否)に対する判断 前記3のとおり,原告製品及び被告製品は,いずれも病院や薬局等で医薬品の分包に用いられることから高度の品質が要求されるものであり,厳重な品質管理の下で,芯管に分包紙を巻き付けて製造されるものである。顧客にとって,上記製品に占める分包紙の部分の品質は最大の関心事であることが窺える(なお,前記のとおり,需要者である病院や薬局等が使用済みの芯管に分包紙を自ら巻き直すなどして再利用することもできない。)。そうすると,分包紙及びその加工の主体が異なる場合には,品質において同一性のある商品であるとはいいがたいから,このような原告製品との同一性を欠く被告製品について本件各登録商標を付して販売する被告の行為は,原告の本件各商標権(専用使用権)を侵害するものというべきである。実質的にみても,購入者の認識にかかわらず,被告製品の出所が原告ではない以上,これに本件各登録商標を付したまま販売する行為は,その出所表示機能\を害するものである。また,被告製品については原告が責任を負うことができないにもかかわらず,これに本件登録商標が付されていると,その品質表示機能\をも害することになる。これらのことからすると,原告は被告製品につき本件各商標権を行使することができるものと解するのが相当である。

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平成19(ワ)2525 債務不存在確認請求本訴事件,損害賠償請求反訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年09月26日 東京地方裁判所

 アップルと個人発明家との訴訟で、裁判所は約3億円の損害賠償を認めました。本件は、不存在確認訴訟なので、原告がアップルです。
 (1) 証拠(甲95,98,127,128,計算鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年10月1日から平成25年3月30日までの間の原告各製品の日本国内における売上高(消費税抜き)は,●(省略)●円であり,消費税込みの売上高は,●(省略)●円であると認められる。被告は,原告の平成23年5月26日付け準備書面(24)別紙1の記載を根拠に,原告各製品の売上高が5976億円であると主張するが,原告は,上記の記載が誤記であると述べている上,そもそも上記記載が売上高の記載であるかどうかも不明であり,他に原告の上記主張を裏付ける的確な証拠がないことに照らすと,これを採用することはできない。また,被告は,計算鑑定の結果等は,製品別売上台帳等の取引別の詳細データを用いていないから信用することができないと主張するが,原告は製品別売上台帳等の取引別の詳細データを常備していないというのであり,「<以下略>の追加陳述書」(甲98)及び「<以下略>の補充的陳述書」(甲128)の基となるデータは米国のアップル・インクに対する監査報告手続において会計監査人が依拠している会計データベース(SAPデータベース)から析出して得られたものであって,無作為に選択された25件の取引レベルのサンプルデータにより,上記データベースから抽出した販売数量及び売上データが請求システムのデータと一致することが確認されている上(甲127),鑑定対象期間である平成18年10月1日から平成23年9月24日までの売上高については上記データベースから抽出された製品別月次売上データと原告の計算書類上の売上高との整合性に特段の問題はないとされているから(計算鑑定の結果),原告の上記主張は,採用することができない。
 (2) 本件各発明の実施に対し被告が受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を算出するに当たっては,前記消費税込みの売上高に相当な実施料率を乗じる方法によるのが相当である。原告は,クリックホイールの価格をベースとすべきであると主張するが,原告各製品の原価が証拠上不明であることに照らしても,採用することができない。
 (3) そこで,相当な実施料率につき,以下検討する。
ア 実施料率〔第5版〕(乙54)によれば,「19.ラジオ・テレビ・その他の通信音響機器」に含まれる「電気音響機械器具」には,録音装置,再生装置,拡声装置及びそれらの付属品が含まれるところ,この分野の平成4年度ないし平成10年度の実施料率(イニシャルなし)の平均値は,5.7%である。なお,「20.電子計算機・その他の電子応用装置」の同様の平均値は,33.2%であるが,これは主にソフトウエアの実施料率が高率であることによるものとされているから,これを参考にすることは相当でない。なお,弁論の全趣旨によれば,被告が本件特許につき他に許諾した例はないことが認められる。イ 本件各発明は,1) リング状に予め特定された軌跡上にタッチ位置検出センサーを配置して軌跡に沿って移動する接触点を一次元座標上の位置データとして検出すること,及び,2) 前記軌跡に沿ってタッチ位置検出センサーとは別個にプッシュスイッチ手段の接点が設けられており,前記検出とは独立してプッシュスイッチ手段の接点のオン又はオフを行うことができることに特徴があると考えられるところ,1)については,同様の機能を有するタッチホイールを搭載したiPodが原告各製品の販売開始より前の平成14年7月に既に販売されていたものであり(乙3,26,36,37,39,41),2)については,甲5公報及び甲39公報に開示されていたほか,タッチ位置検出センサーの下部にプッシュスイッチ手段を設置し,タッチ位置検出センサーによる検出とは独立してプッシュスイッチ手段の接点のオン又はオフを行う構成については甲6公報,甲7公報及び甲31公報等に開示があり,このような構\成は,原出願当時,広く知られた技術であったと認められる。そうであるから,本件各発明の技術内容,程度は高度なものであるとは認め難いというべきである。ウ 代替手段については,平成19年9月から発売が開始されたiPodtouchではクリックホイールが採用されず,タッチパネルが採用されているが(乙26),これによる入力方法等の詳細は証拠上判然としないから,これをもって代替手段となるとは認め難い。原告各製品の販売開始前に販売されていたiPodは,前記のタッチホイール及びタッチホイールの上部(軌跡から外れた位置)等に配置しているものがあり(乙3,26),そのような構成で代替することは可能\であったということができるものの,それを採用したのでは操作性に劣り先進性を欠くことになると考えられるし(乙30ないし38),実際に原告各製品の販売開始後にそのような構成を採用したモデルがあることは窺えないから,この点を重視することはできない。エ 本件各発明の技術が原告各製品に対して寄与する程度について見る。(ア) 証拠(甲1の1)によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,発明の効果として,次の記載があることが認められる。「本発明は,以上のように構成されており,特に指先からの軌跡上のアナログ的な変移情報または接点の移動情報が電子機器へ確実に入力することができ,1次元上または2次元上もしくは3次元上の所定の軌跡上を倣って移動,変移する接触点の位置,変移値,及び押圧力を検知することができる。そして,操作性良く薄型でしかも少ない部品点数で電子機器を構\成することができるように1つの部品で複数の操作ができるプッシュスイッチ付きの接触操作型電子部品を提供することができる。」(段落【0014】)「また,この操作部品により非常に多くの機能の選択を行ったり,例えばボリュームスイッチ等のスイッチ入力を繊細に行うことができる。さらにはセンサータッチのイベント数により入力を行うための接触検知スイッチとして使用された場合には,イベント入力数を人間の指の感覚でもって自在に調節させ,指を当てる場所に応じてイベント数を変更させることにより操作性と多機能\性を向上することができる。しかも,このような操作性を発揮する電子機器の構成部品として該機器の操作部の構\造を単純化でき且つメンテナンス性を向上することもできる。そして,単一の操作部品でもって接触操作型電子部品およびプッシュスイッチ夫々の機能を同時に操作することができる。さらに,従来のプッシュスイッチ付き回転操作型部品とは異なり,装置自体をスイッチ押下方向に薄くして形成でき,装置の中央に配することが可能\となり,片手で持って操作するような装置に組み込んだ場合でも,両手いずれでも操作を簡単に行なうことができる。また,以上の接触検出センサー付プッシュキーにより,単純なキーの押下以外に接触もしくは十分に弱い押圧によりイベント入力が行なえる。」(同【0015】)(イ) 移動する接触点の位置等を検知し,機能の選択等を行う点は,既にタッチホイールにより行われていた。1つの部品で複数の操作ができるプッシュスイッチ付きの接触操作型電子部品を提供する点は,原告各製品は本件図面中の【図21】のようにプッシュスイッチの上部にタッチ位置検出センサーが配置されて1つの部品で複数の操作ができるようになっているものではなく,これらは別の部品で構\成されているのであり(別紙原告製品説明書,乙16),装置の薄型化は,バッテリや液晶ディスプレイとハードディスクとの配置の工夫やフラッシュメモリの採用等により果たされていることが窺える(乙16,26)。操作性の向上の点は,タッチホイールを採用していた従前のモデルの後に,クリックホイールを採用した原告各製品等が販売されたことや原告自身がクリックホイールによる操作性の向上を宣伝していること(乙30ないし38)からすると,一定の寄与があるとは考えられるが,クリックホイールの機能の割当てや本件各発明とは無関係のセンターボタンの存在の果たす役割も大きいと考えられるから,この点に関する本件各発明の寄与の程度が大きいとは認め難い。そうすると,本件各発明の技術が原告各製品に対して寄与する程度は大きくないというべきである。オ 本件各発明が原告各製品の売上げに寄与する程度について見るに,証拠(乙4,21,30,31,34,37,38,40,41,43)によれば,原告自身,クリックホイールを原告各製品の操作性の要と位置付け,新機能,セールスポイントとしてこれを積極的に宣伝し,好評を博してきたことが認められる。また,証拠(甲97,乙4,16,23,27,28,29,31,34,38,39,40,53,62)によれば,「アップル」のブランドの価値は非常に高く,原告各製品のデザイン,カラーバリエーション,iTunes,ビデオ再生,ゲーム,大型液晶,記憶容量,バッテリ容量,小型軽量といった点の訴求力がかなり強いものであり,平成18年11月16日時点におけるデジタルミュージックプレーヤー市場におけるiPodの国内シェアは約60%に達しているが,それには原告の販売努力が相当程度貢献していることが認められる。カ このような諸般の事情を総合考慮すると,相当な実施料率は,●(省略)●%と認めるのが相当である。(4) そうすると,被告が受けた損害の額は,次の算式のとおり,3億3664万1920円(円未満切捨て)となる。

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平成23(ワ)14336 意匠権侵害行為差止等請求事件 意匠権 民事訴訟 平成25年09月26日 大阪地方裁判所

 販売不可事情があるとして、意匠法39条1項(特102条1項に対応)の損害額が85%控除されました。
 意匠法39条1項を適用して損害額を算定するに当たっては,侵害品の譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を意匠権者が販売することができないとする事情があるときは,当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとされる(意匠法39条1項但し書)上,意匠権者の実施品の利益に対する登録意匠の寄与した度合によっては,損害額の全部又は一部を減額すべきものと解される。ア そこで検討するに,前記3において,本件意匠部分2の要部に関して論じたとおり,原告製品は,「正面視が略横長長方形状で,平面視で右辺から左辺に背面側へ傾斜」(構成態様A2)し,その「傾斜する角度が前後方向の直線に対して約75°」(構\成態様C2)であることにより,正面からだけでなく,左側面からもその表示を視認しやすい点に特徴があり,その広告宣伝においても,「横から見てもこんなに見やすい!!」「横顔に自信アリ。」などと強調されている(甲141,乙24)。しかし,前記2及び3で論じたとおり,構\成態様A2及びC2は,乙7意匠によって公然知られた形態をありふれた手法で若干変更したにとどまるもので,この部分が原告製品の売上げや利益に寄与していたとしても,これをもって本件意匠部分2の寄与と見ることはできない。本件意匠部分2の創作性が肯定されるのは,あくまで上記態様に,「7個のセグメントが略8の字状に2個横並びで突出して配置」(構成態様E2)(構\成態様E2)との形状を組み合わせているからであり,本件意匠部分2の寄与度としても,このような組み合わせの形態であることによる寄与度を考えるべきである。この点,構成態様A2及びC2に,略8の字状のセグメントが突出する形状を組み合わせることで,数値等の情報表\示部の視認性がより高められており(甲141,乙24),一定の需要喚起効があるものといえるが(甲111),上記のとおり,構成態様A2及びC2は公然知られた形態をありふれた手法で若干変更したにとどまること,本件意匠部分2は正面視で左側部分のみの部分意匠であること,原告製品の広告宣伝(甲141,乙24)において,本件意匠部分2に係る部分とは異なるスイッチ部や液晶のデータ表\示部の機能なども強調されており,意匠のみを差別化要因とする製品ではないことからすれば,本件意匠部分2の寄与度は,相当限定的に見ざるを得ない。イ また,被告製品は,遊技機に関する数値情報等を表示し,遊技者などに伝達するとの用途及び機能\を備える点において,原告製品と共通するとはいえ,被告の販売する呼出ランプ「エレクスランプ」が遊技機に接続されていることを前提として設置される付属品である(乙3,25〜27,37)。この点において,他の機器を前提とすることなく遊技機と接続可能な呼出ランプである原告製品(甲141,乙24)との違いがあり,被告製品3996台の販売がなかったとしても,その前提となる「エレクスランプ」の販売台数も同台数だけ連動して減少し,同じく呼出ランプである原告製品の販売が同台数増加することまではなかったといえる。ウ 以上の事情に照らし,意匠法39条1項による原告の損害額算定としては,同項本文に従って求められた1924万0740円から,その85%に当たる1635万4629円を控除するのが相当であり,288万6111円と算定される。

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平成22(ワ)17810 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年09月25日 東京地方裁判所

 特許権侵害について102条1項および3項による損害賠償が認められました。
 以上によれば,原告プレックスの損害は,以下のとおりである。被告は,平成20年12月から平成24年2月までの間に,被告製品1及び2を合計61台販売していたところ,侵害行為がなければ,原告プレックスは原告製品1ないし4を同一数量販売して,1台当たり321万7327円,合計1億9625万6947円の利益を得ることができた。また,被告は,平成20年12月から平成24年2月までの間に,被告製品3を合計10台販売していたところ,侵害行為がなければ,原告プレックスは原告製品5及び6を同一数量販売して,1台当たり436万8056円,合計4368万0560円の利益を得ることができた。この合計である2億3993万7507円が原告プレックスの損害と推定され,この推定を覆すに足りる事情はない。
(8) 原告イエンセンの損害について
ア 原告らは,原告イエンセンにつき,特許法102条3項により,1台当たり130万円,合計9230万円の実施料相当損害金を請求している。しかし,原告イエンセンは,被告による侵害期間中,原告プレックスに専用実施権を設定しており(甲1),被告との間でライセンス契約を締結して実施料を得られる可能性は全く存在しなかったのであるから(特許法68条ただし書き,77条2項),原告イエンセンは,特許法102条3項により実施料相当額を損害額と推定する基礎を欠いているものというべきである。イ 原告イエンセンが特許法102条3項に基づく請求ができないとしても,原告イエンセンに損害が生じていれば,民法709条の原則に従った損害賠償は可能である。被告が平成20年12月から平成24年2月までの間に被告製品71台(うち13台は海外向け)を販売したことは争いがないところ,原告製品1ないし4は被告製品1及び2の,原告製品5及び6は被告製品3の,それぞれ競合品であり,少なくとも国内においては他に競合品を製造販売する業者があったとは認められないことからすると,少なくとも国内において販売された被告製品58台分については,侵害の行為がなかったならば,原告プレックスが原告製品を同一数量販売していたであろうと認められ,原告プレックスが原告製品58台を追加販売していれば,原告イエンセンは1台当たり65万円,合計3770万円の実施料を取得することができたと認められる(甲16,計算鑑定の結果,弁論の全趣旨)。他方,海外向けに販売された被告製品13台分については,被告に立証責任のある特許法102条1項ただし書の適用に関する限り,原告プレックスに「販売することができないとする事情」の立証があったとはいえないことは前記のとおりであるが,原告らに立証責任のある民法709条の相当因果関係の問題として考えると,被告製品の販売先に対応する海外向け販売にはどのような条件が必要で,原告プレックスはこれを備えているのか否か,当該各販売先においても原告製品や被告製品の競合品は他に存在しないのか否か等は必ずしも明らかでなく,被告製品の販売がなかったならば,原告プレックスが原告製品を同一数量販売することができ,原告イエンセンが対応する特許料を取得することができたという相当因果関係の立証があったとまでは認め難い。そうすると,原告イエンセンは,被告の侵害行為により,原告プレックスから3770万円の実施料を取得する機会を失ったのであるから,同額を民法709条に基づく被告の侵害行為と相当因果関係ある損害として請求することができるというべきである。これは,原告イエンセンが原告プレックスの追加販売から得られたであろう実施料相当額であるから,原告ら間の契約で定められた1台当たり65万円(甲16)という額よりも高く,あるいは低く修正する余地はない。\nウ 被告は,原告プレックスが特許法102条1項の請求を行い,原告イエンセンが同条3項の請求を行えば二重請求となり,また本件発明を原告プレックスが有していたときに比べ損害賠償の総額が大きくなって不当である,などと主張するので,民法709条に基づく損害賠償請求との関係でも上記の点を検討する。原告プレックスの特許法102条1項の損害算定において,原告プレックスが原告イエンセンに支払っているロイヤリティーとして1台当たり65万円を変動経費として控除しているのであるから(計算鑑定書4,10頁),原告イエンセンに1台当たり65万円を民法709条に基づく損害として認めたとしても,二重請求となるものではないし,原告プレックスが自ら特許を有していたときよりも損害総額が大きくなることもない。

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平成23(ワ)8085等 各損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年09月12日 東京地方裁判所

 特許権侵害について損害賠償が認められました。幇助者に対して、先行技術を調査 するべきだったとして幇助についての過失が認定されました。
 被告三菱電機が被告製品4及び5を譲渡し,又は譲渡等の申出をしたことを認めるに足りる証拠はない。ところで,被告三菱電機を除く被告らは,被告日本建鐵が製造して,被告ライフネットワーク及び同住環境システムズに販売し,同被告両名が転売するという関係にあったから,被告ライフネットワークが販売した被告製品4及び5に係る被告日本建鐵と同ライフネットワークの各譲渡,被告住環境システムズが販売した被告製品4及び5に係る被告日本建鐵と同住環境システムズの各譲渡は,それぞれ客観的に関連したものということができる。そして,証拠(甲33ないし35,40ないし56,58ないし60,73,74,81)及び弁論の全趣旨によれば,被告ライフネットワーク,同住環境システムズ及び同日本建鐵は,被告三菱電機の完全子会社であるところ,被告三菱電機は,被告ライフネットワーク,同住環境システムズ及び同日本建鐵と共に洗濯機の製造販売に係る事業を行い,被告日本建鐵と共に被告製品4及び5を開発したり,被告製品4及び5を発売する旨のプレスリリースや新聞広告を出したり,被告製品4及び5のカタログや取扱説明書の最終頁に自らの名称を表\示したり,製造物責任を負担する趣旨で被告製品4及び5に自らの商号を表示したりしたことが認められる。これらの事実によれば,被告三菱電機は,被告製品4及び5に係る被告日本建鐵,同ライフネットワーク及び同住環境システムズのそれぞれの譲渡を幇助したものということができる。そして,被告三菱電機は,被告日本建鐵と共に,被告製品4及び5を開発したのであるから,先行技術を調査するなどして上記各譲渡を幇助すべきでなかったのに,漫然と幇助した過失も認められる。したがって,被告らは,民法719条の共同不法行為として,連帯して損害賠償責任を負う。\n

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平成23(ワ)6878 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年08月27日 大阪地方裁判所

 単純方法の発明の侵害について、侵害者利益の40%が損害への寄与度と認定されました。
 特許法102条2項により,特許権(あるいは独占的通常実施権)を侵害した者がその侵害行為により利益を受けているときは,その利益の額が損害額と推定されるが,特許発明の実施が当該利益に寄与した度合によっては,上記損害額の推定の一部が覆滅されるものと解される。この点,前記イでも論じたとおり,本件特許発明1は,着色漆喰組成物の着色を均一かつ安定的にし,当該漆喰組成物の使用時に形成される着色漆喰塗膜の色むらを防止するという作用効果を有する。これは,塗壁材としての用途を有する着色漆喰組成物にとって,その有用性を高め,商品価値に直結するものであり,被告製品1の販売による利益に寄与していることは確かである。しかし,本件特許発明1は,物の発明でも,物を生産する発明の方法でもなく,単純方法の発明であるから,物の販売による利益への寄与度については,低く評価せざるを得ない。また,被告製品1を紹介するウェブサイト(甲25)及びカタログ(甲26)は,本件特許発明1で特定されている含有成分やそれに伴う着色の均一性や安定性,製品使用時に形成される着色漆喰塗膜の色むら防止といった作用効果を,被告製品1の特徴として挙げていなかった。むしろ,それらウェブサイトやカタログは,被告製品1につき,漆喰が有する調湿機能などを基本としつつ,酸化チタンを配合することによる防臭機能\\や,銀イオンを含有することによる抗菌機能などを特徴として強調しており,この点が現に一定の需要を喚起したこともうかがわれる(乙50〜52)。以上の事情に加え,競業他者の存在(甲33,乙12,13)も考慮し,60%の範囲で,特許法102条2項の推定が覆滅されると認めるのが相当である。なお,被告は,被告製品1の販売による利益には,被告の信用や顧客との信頼関係の寄与が大きい旨主張するが,前記ウ記載のカタログ等の製作や広告掲載のほか,被告において,その信用を高めるためにいかなる活動を行ったのか具体的かつ客観的に裏付ける証拠はない。被告の営業活動については,既に広告宣伝に要する費用として粗利の1割を超す額を利益から控除しているのであり,寄与度としてさらに考慮すべき事情を認めることはできない。また,被告は,平成24年8月に被告製品1の製造を中止し,石灰を含有しない製品へと設計変更した後,着色安定化作用はむしろ高まり,設計変更前と比べて売上げの減少も見られない(乙53,54,79〜87)とも主張するが,着色安定化作用の有無及び違いの程度を裏付けるに足りる証拠はない上,設計変更後の売上げがどのようにして維持されたかの具体的経過も明らかでなく,本件特許発明1の寄与度が低いことを示す事情とはいえない。したがって,特許法102条2項により,本件特許権1等の侵害によって原告が被った損害額(逸失利益)は,2278万8170円(=5697万0427円×(1−0.6),1円未満切捨て)と算定される。\n

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平成23(ワ)13054 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年05月23日 大阪地方裁判所

 特102条2項に損害推定についての覆滅事由は否定されました。
 被告は,本件特許発明の切断刃は,交換装置と共に利用されて初めて技術的な貢献をするものであり,切断刃自体は,公知の切断刃の一部分に極めてありふれた単純な構造の付加を行っただけの物品であるから,本件特許発明は,被告製品全体のうち,せいぜい公知の切断刃の物品に付加された構\成による利用価値を高めるだけであり,被告製品の購買動機に影響を与えるものではないと主張する。確かに,被告製品は,剪断式破砕機用切断刃であり,対象物を切断することを目的とするが,本件特許発明は,切断刃の取外し作業の効率性を高めるものであり,切断の機能自体に関わるものではない。しかし,被告製品のような分割式の切断刃自体は公知のものであり(乙B1,本件明細書段落【0004】),本件特許発明の実施品たる構\成を備え,切断刃の取外し作業の効率性を高めている点を除き,格別の特徴を有するわけではないのであるから,本件特許発明の実施品であることこそが被告製品にとって最も重要な差別化要因であったといえる。現に証拠(甲5〜11,乙A29)及び弁論の全趣旨によれば,被告から被告製品を購入した顧客らは,被告製品の「輪形凹部3で形成した係合部」と係合する切断刃交換装置を保有しており,被告製品が本件特許発明の実施品であるからこそ発注,購入したものと認められる。したがって,本件特許発明の実施が被告製品の売上げに寄与した度合は,むしろ大きいというべきであって,損害額の推定の全部又は一部が覆滅されるべき事情があったとは認められない。なお,被告製品を購入した大栄環境株式会社の担当者は,切断刃交換装置を保有しておらず,ハンマーでたたいて切断刃の取り外しを行っていると述べる(乙A30)。しかし,前記1(2)のとおり,被告製品の構成を有する以上,本件特許発明の技術的範囲に属すると認められるところ,被告は,いずれも顧客から指示された仕様に従って被告製品を製造,販売したことが認められる。また,このような事情及び証拠(甲10,11)によれば,大栄環境株式会社は,原告の関連会社から切断刃交換装置を購入していたことも認められ,他にこの認定を妨げるに足りる証拠はない。そのため,ハンマーでたたいて切断刃の取り外しを行っているという上記担当者の陳述内容が真実であったとしても,損害額の推定の全部又は一部が覆滅されるべき事情とすることはできない。\n

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平成24(ネ)10015 特許権侵害差止等本訴,損害賠償反訴請求控訴事件 特許権 民事訴訟平成25年02月01日 知的財産高等裁判所

 原告は外国企業で、日本国内では独占的実施権者が実施している場合に、102条2項が適用されるかについて争われました。1審は、同3項で損害額を認定しましたが、知財高裁は同2項の適用を認めました。
 上記認定事実によれば,原告は,コンビ社との間で本件販売店契約を締結し,これに基づき,コンビ社を日本国内における原告製品の販売店とし,コンビ社に対し,英国で製造した本件発明1に係る原告製カセットを販売(輸出)していること,コンビ社は,上記原告製カセットを,日本国内において,一般消費者に対し,販売していること,もって,原告は,コンビ社を通じて原告製カセットを日本国内において販売しているといえること,被告は,イ号物件を日本国内に輸入し,販売することにより,コンビ社のみならず原告ともごみ貯蔵カセットに係る日本国内の市場において競業関係にあること,被告の侵害行為(イ号物件の販売)により,原告製カセットの日本国内での売上げが減少していることが認められる。以上の事実経緯に照らすならば,原告には,被告の侵害行為がなかったならば,利益が得られたであろうという事情が認められるから,原告の損害額の算定につき,特許法102条2項の適用が排除される理由はないというべきである。これに対し,被告は,特許法102条2項が損害の発生自体を推定する規定ではないことや属地主義の原則の見地から,同項が適用されるためには,特許権者が当該特許発明について,日本国内において,同法2条3項所定の「実施」を行っていることを要する,原告は,日本国内では,本件発明1に係る原告製カセットの販売等を行っておらず,原告の損害額の算定につき,同法102条2項の適用は否定されるべきである,と主張する。しかし,被告の上記主張は,採用することができない。すなわち,特許法102条2項には,特許権者が当該特許発明の実施をしていることを要する旨の文言は存在しないこと,上記(ア)で述べたとおり,同項は,損害額の立証の困難性を軽減する趣旨で設けられたものであり,また,推定規定であることに照らすならば,同項を適用するに当たって,殊更厳格な要件を課すことは妥当を欠くというべきであることなどを総合すれば,特許権者が当該特許発明を実施していることは,同項を適用するための要件とはいえない。上記(ア)のとおり,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,特許法102条2項の適用が認められると解すべきである。したがって,本件においては,原告の上記行為が特許法2条3項所定の「実施」に当たるか否かにかかわらず,同法102条2項を適用することができる。また,このように解したとしても,本件特許権の効力を日本国外に及ぼすものではなく,いわゆる属地主義の原則に反するとはいえない。以上のとおり,被告の上記主張は採用することができず,原告の損害額の算定については,特許法102条2項を適用することができ,同項による推定が及ぶ。

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◆原審はこちらです。平成21年(ワ)第44391号

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平成22(ワ)10064 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年10月04日 大阪地方裁判所

 102条1項による損害が認められました。
 証拠(甲54〜56)及び弁論の全趣旨によると,原告は,祝園貯蔵庫工事に際し,4回にわたり,原告実施品(内型枠)を販売しているが,その際,いずれも外型枠と合わせて仕入れ,これを合わせて販売したことが認められる。上記販売における,外型枠と内型枠との価格内訳は明らかではなく,仕入れに際しては,資材の重量によって価格が決まることからすれば,上記価格の内訳は,外型枠と内型枠の重量比(内型枠は全体の4分の3)によって推計することが相当であり(甲56,57),内型枠の仕入価格は,仕入価格全体の4分の3であるから,販売価格も同様,販売価格全体の4分の3であると推計することとする。また,上記販売は,バイバック方式といい,後に原告が買い戻すことが予定されているものであり,その買戻価格は,常に当初の販売価格の●●●であり,納入先からは,上記買戻価格を予\め控除した残額の支払を受けていたことが認められる(甲54。以下,便宜上,上記控除後の金額を「販売価格)という。)。以上を踏まえ,証拠(甲54〜56,甲58の1・2,甲59の1〜5)及び弁論の全趣旨によると,内型枠1台当たりの売上額は,●●●●●●●●●円であると認められる。ところで,被告は,わずかな費用の加工費用で再度販売(バイバック方式)される場合であるにもかかわらず,原告の主張する●●●●●円という価格で,再販売品を購入する顧客はいないと主張する。しかし,上述したとおり,原告は,4回に渡り原告実施品を販売しており,その販売価格に多少のばらつきはあるものの,ほぼ一定していることが窺える。また,上記販売価格(平均●●●●●●●●●円)は,被告が被告製品1を賃貸した際の売上額(真柄建設に対する賃料:●●●●●円,奥村組に対する賃料:●●●●●円)とそれほど大きな違いはない。たしかに,仕入価格については,別紙計算表のとおり,祝園貯蔵庫工事における4回の販売の間でも,相当大きな変動が認められるものの,販売価格としてはある程度一定していると考える方が自然である。加工費如何によっては,利益率が大きく変動するものの,そのような販売形態があっても不思議ではなく,上記算定を左右するに足りる事情は見いだせない。
(イ)経費額
既に前記(ア)で述べたとおり,経費についても,売上額と同様の推計をすべきところ,証拠(甲54〜56,甲58の3・4,甲59の6〜9)及び弁論の全趣旨によると,原告実施品を製造するのに要した費用(仕入価格)は,別紙計算表のとおり,原告実施品(内型枠)1台当たり,●●●●●●●●円であると認めることができる。また,証拠(甲54〜56)及び弁論の全趣旨によると,営業経費についても,別紙計算表\のとおり,1台当たり●●●円であると認めることができる。
(ウ)原告実施品1台当たりの利益額
原告実施品の1台当たりの利益額は●●●●●●●●●円であったと認めることができる。
イ 実施能力及び寄与率
(ア)実施能力
被告は,原告が原告実施品と同じ型枠を2台しか保有しておらず,4件の工事に携わっていた当時,被告の顧客に販売する能力はなかった旨主張する。しかし,2台の保有により,4件の工事に提供していることからも,被告が被告製品1を賃貸した当時,上記保有の原告実施品を提供できなかったことを認めるに足りる証拠はなく,また,上記の事情のみにより,原告実施品と同等の製品を製造,販売する能\力がなかったともいえない。 (イ)顧客吸引力 被告はトンネル建設機械の分野において高いシェアを有していることが認められる(弁論の全趣旨)。建設機械の受注に際し,シェアなど,それまでの実績は,重要な要素となり得るが,それのみによって,契約の成否が決まるものではない。
(ウ) 発注の経緯
被告は,真柄建設にしても奥村組にしても,被告の納入する内型枠に原告特許発明1の技術を採用するか否かは,受注時には決まっておらず,真柄建設からは,受注後,上記技術の採用を依頼されたと主張する。しかし,被告自身,真柄建設から原告特許発明1(上記受注時には,原告特許1は登録されている。)の使用を依頼されたと述べており,しかも,それまでは,被告の納入する内型枠に原告特許発明1の技術が用いられることはなかったにもかかわらず,奥村組に対して販売した被告製品1にも同様の構成がとられていたことを併せ考えると,原告特許発明1が,受注に影響していないということは困難である。以上によると,被告の主張する発注の経緯にもかかわらず,原告特許発明1の採用と発注との関係を否定することはできず,むしろ,真柄建設からわざわざ原告特許発明1の実施を依頼されたということは,上記発明の寄与率が小さくないことを表\しているというべきである。
(エ) 従来工法との違い
証拠(甲53)及び弁論の全趣旨によると,従来,内型枠の外側で鉄筋の組立作業を行うにあたり,施工長さの短い工事では,足場を組み,施工長さの長い工事では,門型を利用して鉄筋組立作業を行っていた。これに対し,原告特許発明1を実施した内型枠では,足場を下から組み立てる必要や別途門型を製造する必要は原則としてなく,工期も短縮でき,その結果,コストを削減できることが窺える。もっとも,原告特許発明1を実施したからといって,内型枠の全てをカバーできるわけではなく,足場を下から組む必要が生じる可能性を否定できない。
(オ) まとめ
以上を総合すると,前記ア(ウ)の利益のうち,原告特許発明1の使用と相当因果関係のある利益は●●●であると認めるのが相当である。
ウ 小括
以上によると,被告が被告製品1を少なくとも2台賃貸したことにより,原告に与えた損害は636万9375円と算定するのが相当である。

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平成23(ネ)10002 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年03月22日 知的財産高等裁判所 

 切り餅事件について、特102条2項により求めた利益のうち、寄与度を15%として損害8億と認定されました。被告は、2012/4/3に、「上告した」との発表をしています。和解段階で、代理人が変わったりしたようです。
 被告は,被告製品について,i)平成15年9月ころから「サトウの切り餅パリッとスリット」との名称で販売し,切餅の上下面及び側面に切り込みが入り,ふっくら焼けることを積極的に宣伝・広告において強調していること,ii)平成17年ころから,切り込みを入れた包装餅が消費者にも広く知られるようになり,売上増加の一因となるようになったこと,iii)平成22年度からは包装餅のほぼ全部を切り込み入りとしたことが認められ,これらを総合すると,切餅の立直側面である側周表面に切り込み部等を形成し,切り込みによりうまく焼けることが,消費者が被告製品(別紙物件目録1ないし5)を選択することに結びつき,売上げの増加に相当程度寄与していると解される(甲4,21〜26,43,51,56の1〜22,甲60〜63,乙152,153,164〜167)。上記のとおり被告製品(別紙物件目録1ないし5)における侵害部分の価値ないし重要度,顧客吸引力,消費者の選択購入の動機等を考慮すると,被告が被告製品(別紙物件目録1ないし5)の販売によって得た利益において,本件特許が寄与した割合は15%と認めるのが相当である。
・・・・
 当裁判所は,被告代理人らが,控訴審の口頭弁論終結段階になって選任され,限られた時間的制約の中で,精力的に,記録及び事実関係を精査し,新たな観点からの審理,判断を要請した点を理解しないわけではなく,その努力に敬意を表するものである。しかし,特許権侵害訴訟は,ビジネスに関連した経済訴訟であり,迅速な紛争解決が,とりわけ重視されている訴訟類型であること,当裁判所は,原告と被告(解任前の被告訴訟代理人)から,進行についての意見聴取をし,審理方針を伝えた上で進行したことなど,一切の事情を考慮するならば,最終の口頭弁論期日において,新たな審理を開始することは,妥当でないと判断した。\n

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◆1審はこちら

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平成21(ワ)15096 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年03月22日 大阪地方裁判所

 技術的範囲に属するとして、102条2項に基づき1億を超える損害が認められました。
 原告は,被告物件の構成を上記第3の1【原告の主張】(1)のとおり主張し,他方,被告は,これを同【被告の主張】(1)のとおり主張しているが,被告物件の縦断面図が,別紙被告物件説明書図2のとおりであることは当事者間に争いがない。したがって,被告物件の構成についての当事者の主張の違いは,被告物件の客観的構\成に争いがあることによるものではなく,同じ構成を異なる表\現を用いて記述するものと認められる。そして,後記(2)のとおり,被告物件が本件特許発明の構成要件A,C,Dを充足することは当事者間に争いがないから,結局,構\成要件Bに対応する構成bの特定のみを検討すれば足りるところ,構\成bについての当事者の主張の違いは,炉内に挿入されている炉内ヒータ(発熱体)の上側部分(発熱しない部分)の構成(このような構\成があることは争いがない。)について,被告主張のように「端部(天井の差し込み部及び天井への差し込み部から連続する発熱しない部分)」として記述すべきか否かという点にのみあると認められる(なお,当裁判所は,構成bについての被告の主張を前提としても,被告物件は構\成要件Bを充足すると判断することから,後記(2)イにおいて,被告物件の構成に係る被告の主張を前提に検討する。)。
・・・・
被告は,構成要件Bの「鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し,前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部とした」については,本件明細書に記載された従来技術である【図6】の炉内ヒータを除外して解釈すべきであるから,「端部(天井への差し込み部及び天井への差し込み部から連続する発熱しない部分)を除いた部分に対し,鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し,前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部とした」と解釈すべきと主張する。しかしながら,上記(ウ)のとおり,「鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し,前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部とした」とは,熱処理空間内におけるヒータの配設態様のことと解釈されることからすれば,そもそも,天井への差し込み部の構成は,本件特許発明の技術的範囲を検討する上で考慮する必要がない。
・・・
したがって,ヒータの構成について,天井への差し込み部から連続する発熱しない部分(端部)を除いた部分という限定を付する被告の主張は採用できない。\n

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平成22(ワ)9966 意匠権侵害差止等請求事件 平成23年09月15日 大阪地方裁判所

 意匠権侵害が認定されました。いわゆる100均で販売された場合の損害額の認定で販売不可事情も認定されました。
(ア) 被告商品の価格について
被告商品の税抜き小売価格は100円であり,原告実施品の税抜き小売価格500円と比較すると,比率では5分の1であり,価格差では約400円安い関係にある。絶対的な価格差でみると,原告がいうように,その差はわずか数百円という見方もできるが,被告商品は,単に原告実施品に比して安価である以上に,100円という,購入に当たって特段逡巡することなく気軽に購入できる絶対的な低価格であることが,商品を特徴づけ需要者の購買意欲をそそる要素になっているといえる。そうすると,原告実施品が,被告商品の5倍の価格設定であって当該同種商品としては通常の価格帯にあると考えられることからすると,原告が原告実施品を被告商品と同様に販売できたものとは考え難く,したがって,被告商品がそのような著しく低廉な価格に設定されているという事実は,意匠法39条1項ただし書の事情に該当する事情の一つになり得るというべきである。
(イ) 販売ルートについて
被告商品は,いわゆる100円ショップの最大手であって,全国に数多くの店舗を構えるダイソ\ーで販売されており,実際に被告商品を取り扱った店舗は,2000店以上存在する(丙10)。そして,ダイソーは,多種多様な商品を原則としてすべて100円で販売することを特徴とする営業形態を採用しており,そのため,消費者において,特定の商品を買い求めるのではなく,100円であれば購入するという前提で,商品ジャンルを問わず掘り出し物を探す場合もあると考えられる。そうであれば,そのような消費者が,たまたま被告商品を購入したからといって,その消費者が,原告実施品を購入したはずであるとみるのは難しいといわなければならない。もちろん,原告実施品が販売されているという知識がある需要者が,より安価で原告実施品に相当する商品を求めてダイソ\ーを訪れる場合も存在すると考えられるが,そうであれば,そのような需要者は,もともと原告実施品を購入する可能性が低いものとみなされるのではないかと考えられる。したがって,被告商品が100円という均一で低廉な価格で多種多様な商品を販売しているダイソ\ーで販売されているという事実自体も,意匠法39条1項ただし書の事情に該当する事実の一つになるというべきである。
(ウ) 競合品について
資生堂の商品(乙4)は,棒状や板状の爪やすり(甲22)ではなく,原告実施品と同じ,ラウンドタイプの爪やすりである。しかも,資生堂の商品は,本件意匠の要部である隆起部を有しないものの,爪やすりの本体が,一端が鋭角で立ち上がり他端が鈍角で立ち上がるD字形状板である点や,やすりが,本体の下端部の湾曲した側面に設けられた凹部に埋設されている点において,本件意匠の要部と構成を共通にしている。したがって,資生堂の商品と原告実施品とは,本体の正面・背面のデザインや,価格(資生堂商品は税抜き952円[乙4]ないし1000円[乙7の1〜3]で販売されている。)において異なっていても,市場では競合する範囲内のものであると考えられ,被告商品と異なる競合品の存在は,意匠法39条1項ただし書の事情に該当する事実の一つになるというべきである。
(エ) 本件意匠の寄与度について
原告は,原告実施品は,隆起部の窪みあたりを指で挟んで使用することで,しっかりと爪やすりを保持することが可能となり,軽くこするだけで爪を綺麗に削ることができるデザインとなっていると主張する。ところが,被告商品は,サイズが小さい分把持しにくい上,そのパッケージの使用状態を示す写真(甲4)には,隆起部の窪みとは関係のない部分を指で挟んで使用している様子が示されており(原告実施品のように隆起部の窪みのカーブを利用して指で挟むように把持した場合(甲14の1,甲22),鎖が垂れ下がって邪魔になるはずである。),結局,被告商品にとって隆起部はデザイン以上の意味はないものと考えられ,したがって新聞や雑誌等で高く評価されてきたという,原告実施品のデザイン性や機能性が発揮されている商品であるとはいえないものである。加えて,パッケージの謳い文句を見ても,軽くこするだけで良く削れることや,なめらかに仕上がるという爪ヤスリの本来の機能\よりも,可愛くて携帯に便利であることの方が,よりアピールされているとも考えられる(甲4)。さらに,上記のとおり,被告商品については,かわいくて携帯に便利であることがアピールされているところ,被告商品のかわいらしさには,被告商品の大きさが影響を与えているといえるし,携帯に便利であることについては,被告商品の大きさに加え,鎖の存在が影響を与えているといえる。他方,原告実施品の販売実績(甲25)を見ても,被告商品の販売開始前である2008(平成20)年と,被告商品の販売開始後である2009(平成21)年以降において,青・黄・緑・白(SS-403)については売上げが半減しているが,ピンク・白(G-1002)については増加ないし横ばいであり,原告実施品についても,本件意匠のデザイン以外の要素が販売数量に影響を及ぼしていたことは否定できない。したがって,被告商品の販売に対し,被告意匠のうち,本件意匠に類似していない特徴が寄与しているという点は,これもまた,意匠法39条1項ただし書の事情に該当する事実の一つとなるというべきである。
  (オ) 結論
これら意匠法39条1項ただし書の事情に該当する諸事実の存在を考慮すれば,被告大創による被告商品の譲渡数量のうち,原告が販売することができなかったと認められる原告実施品の数量を控除した数量は,被告商品の譲渡数量の3分の1と認めるのが相当である。

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平成20(ワ)831 特許権侵害差止等請求事件 平成23年08月26日 東京地方裁判所

 計算鑑定人により102条2項による損害額が認定されました。また、寄与率については100%とされました。
 特許法102条2項所定の「その者がその侵害の行為により利益を受けているときは」にいう「利益」とは,侵害品の売上高から侵害品の製造又は販売と相当因果関係のある費用を控除した利益(限界利益)をいい,ここで控除の対象とすべき費用は,侵害品の製造又は販売に直接必要な変動費及び個別固定費をいうものと解するのが相当である。本件計算鑑定は,被告各製品の製造及び販売に直接必要な変動費及び個別固定費につき次のaないしeのとおり,変動費の減少項目につき次のfのとおりそれぞれ認定・判断した上で,平成19年9月1日から平成21年9月30日までの期間における被告各製品の売上高(前記ア(ア))から控除すべき費用の合計額を3億7470万6005円,限界利益の合計額を2869万7562円と算定した(本件計算鑑定書添付の別紙1参照)。上記aないしeの費用について,本件計算鑑定は,被告が製造及び販売する猫砂全製品において被告各製品の占める割合(aにつき販売リッター数に占める割合,bないしeにつき製造リッター数に占める割合)で按分して算出している(本件計算鑑定書の「VII対象品の計算根拠と変動費の範囲について」(8頁),本件計算鑑定書添付の別紙7及び8参照)。
・・・・
これに対し原告は,i)本件計算鑑定書添付の別紙9によれば,経費の内容には,変動費3億3364万2241円のみならず,個別固定費5457万8946円も含まれているが,本件計算鑑定は,被告の製造する猫砂は,パッケージが違ったとしても,すべて同じ構造の製品で「生産工程,機械,人員」もすべて同じであること,25期(平成21年5月〜平成21年9月)における被告の全製品に対する被告各製品の販売割合が15.5%(本件計算鑑定書添付の別紙8)であることを前提に鑑定をしていることからすれば,被告各製品のためだけに被告ないしその特定の工場の製造ラインが使用されているわけではないのであるから,個別固定費はそもそも控除されるべきではない,ii)個別固定費のうち減価償却費として控除されている2647万2548円(本件計算鑑定書添付の別紙9)は,四国工場の費用を「全額」費用計上したのであるとすれば,被告各製品の販売割合が15.5%(四国工場内でも16.9%)しかない以上,明確な誤りである,iii)本件計算鑑定では,売上げはバルクで計算するのに対し,包装機械は減価償却費,人件費は加工費として経費に含めているが,これも過剰な経費計上である旨主張する。しかしながら,原告の主張は,以下のとおり理由がない。・・・ ・・・被告各製品は,他の猫砂(甲8)と比較して,吸尿によって変色し,それによって使用部分と未使用部分を視覚的に容易に判別することができる構成となっている点を重要なセールスポイントとしていることが認められる。そして,そのようなセールスポイントは,本件発明の構\\成によるものであるから,被告各製品の商品としての主たる価値は,本件発明からもたらされるものと評価できる。これに対し被告は,被告各製品と同等の原告製品は,被告各製品の1.5倍程度の価格で販売されており,被告各製品の主たる販売要因は,その価格競争力にある旨主張するが,本件においては,被告各製品の仕入値が原告製品に比して低いことを裏付けるに足りる客観的な証拠は提出されていないのみならず,仮に被告各製品の価格が同等の原告製品より低かったとしても,そのような価格は本件特許を無許諾で実施した結果形成されたものというべきであるから,本件発明の寄与率に影響するものとは認められない。以上のとおり,乙35ないし乙39の各特許の請求項1に係る各発明は,いずれもその構成において,原材料である廃材粉や粉砕物の「粒度」を規定しているところ,本件においては,被告各製品の原材料の粒度を具体的に特定するに足りる証拠は提出されていないことからすると,被告各製品が上記各発明を実施しているかどうかは定かでないといわざるを得ない。また,仮にこれらの発明が被告各製品に実施されているとしても,そのことが被告各製品の重要なセールスポイントとなるなど,被告各製品の販売に具体的に寄与していることを認めるに足りる証拠はない。(ウ) 小括以上のとおり,被告各製品のセールスポイントは,本件発明の構成によるものであり,被告各製品の商品としての主たる価値は,本件発明からもたらされるものといえるから,本件発明の寄与率は,100%と認めるのが相当である。\n

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平成19(ワ)5015 特許権侵害差止等請求事件 平成23年06月09日 大阪地方裁判所

 特許権侵害が認定。損害賠償について寄与率も認定。期間を分割して102条1〜3項による損害額が認められました。
ウ そこで,被告各物件における本件各特許発明が売上に与えた寄与率を検討する。
 (ア) 裏異物検出機能の意義証拠(甲26,57)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。近時,コンビニエンスストアなどでおにぎりが多く売れるようになり,海苔の需要が高まるとともに,厳しい品質管理が求められるようになった。海苔の場合は,異物の混入の有無が品質にも大きく影響し,その検出が重要な課題となっており,また,そのための装置が開発されてきた。そして,原告製品1,2及び被告各物件は,いずれも,乾海苔を一度くぐらせるだけで,その表\面,中,裏面の異物を検出することができる機能を有しており,これが同時にできないと,同じ作業を繰り返す必要があり,検出作業に要する手間や時間が増える(仮に,1台の機械をもって検出作業をするのであれば,2倍近い時間がかかる。2台〔2種類〕の機械を同時に使用する場合は,同様の時間を要することはないが,検出機の購入代金が割高になることが予\想されることのほか,2台分の設置場所や,検出機から排出された乾海苔を,改めて別の検出機にセットする手間を要する。)。したがって,表面や中だけでなく,裏面の異物検出機能\を有し,1回の搬送で検出を終えることのできる機能は,海苔異物検出機の販売に際し,大きな貢献を果たしているというべきである。
 (イ) 本件各特許発明と代替技術本件明細書によると,本件各特許発明の出願以前の海苔の異物検出に関する従来技術として,目視に頼るか,上下のローラーで挟んでその厚みにより異物を検出する方法が記載されている。しかし,その一方で,次に述べるとおり,海苔の異物を検出する機能を有した装置自体は,開発がすすみ,普及していったことが窺われる。被告各物件においても,裏面検出機能\のほか,表面検出機能\と中検出機能を具備しているところ,中検出は検出対象物が違うものの,少なくとも表\面検出機能については,その機能\において違いがあるわけではない(前述したとおり,裏返しした上での検出が議論されているが,そもそも,そのような検出方法が不可能であることを前提とした議論はされていない。)。
・・・
 オ 以上を総合すると,被告物件1の後期型の販売における寄与率は20%,被告物件2の販売における寄与率は25%と認めるのが相当である。

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平成20(ワ)36814 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成23年01月20日 東京地方裁判所

 特102条1項による損害賠償が認められました。
(イ) 証拠(甲28〜38,40〜43。枝番号のある書証は,枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年度から平成21年度までの間に販売された原告製品の1台当たり限界利益(原告製品の売上高から,材料費(原告製品の材料に関する経費),消耗材料費(出荷前検査に要する試薬等の消耗される材料に関する経費)及び外注加工費(原告製品の組立てを外注委託する場合の加工賃等)を控除した金額。)は,別紙算定表記載のとおり,原告製品3000につき●(省略)●円であり,原告製品3000Sにつき●(省略)●円であると認められる。上記認定の利益額について,その合理性を疑わせるに足りる証拠はない。したがって,以下の計算式のとおり,原告製品17台の販売利益合計1億3578万2389円から原告製品1台当たりの物流関係変動経費(旅費交通費,運送費,配達費,燃料費及び宿泊費)である11万7000円の17台分である198万9000円を控除した1億3379万3389円が,原告製品の限界利益となる。\n

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平成17(ワ)26473 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年02月26日 東京地方裁判所

 ゴルフボールの特許について、10億を超える損害賠償が認められました。
 (ア) 特許法102条1項ただし書は,侵害品の譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を権利者が「販売することができないとする事情」があるときは,同項本文の損害額から,当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする旨規定している。被告は,本件においては,本件訂正発明の実施の有無が需用者の購買の動機付けとなっていないこと,原告各製品の市場におけるマーケットシェアを超える部分は,他の製品が代替して販売されたものと評価すべきであること,被告の営業努力,ブランド力及び販売力などの事情が存在し,これらの事情は,原告が原告各製品を「販売することができないとする事情」に該当するので,上記事情に相当する数量に応じた額を原告主張の損害額から控除すべきである旨主張する。・・・・以上・・事情を総合考慮すると,前記ア(ウ)認定の被告各製品の譲渡数量のうち,60%に相当する数量については,被告の営業努力,ブランド力,他社の競合品の存在等に起因するものであり,被告による本件特許権の侵害がなくとも,原告が原告各製品を「販売することができないとする事情」があったものと認めるのが相当である。したがって,前記ア(ウ)認定の被告各製品の譲渡数量のうち,60%に相当する数量に応じた額を,原告の損害額から控除すべきである。(イ)a これに対し被告は,原告各製品(5種類)が特許法102条1項本文の「侵害の行為がなければ販売することができた物」であることを前提に,その「単位数量当たりの利益の額」を基に損害額を算定する以上,同項ただし書の「販売することができないとする事情」としての市場におけるマーケットシェア(市場占有率)を考慮する際には,上記5種類の原告各製品の市場占有率に限定すべきであり,当該市場占有率を超える部分は,他の製品が代替して販売されたものと評価すべきである旨主張する。しかし,i)ゴルフメーカー各社の営業努力及びブランド力は,市場占有率に反映されているといえるが,それを適切に評価するためには,ゴルフボール全体の市場占有率を考慮するのが相当であると考えられること,ii)本件においては,原告各製品と競合する他社メーカーの具体的な製品についての市場占有率に関する主張がされていないなど,被告各製品の譲渡数量のうち,原告各製品の市場占有率を超える部分は他の製品が代替して販売されたものと評価できることを基礎付ける事情はうかがわれないことに照らすならば,被告の上記主張は採用することができない。b また,被告は,原告各製品及び被告各製品の販売において,本件訂正発明の対象である添加剤の使用は,一切ユーザーには知らされておらず,本件訂正発明の使用の有無により,ユーザーが被告各製品の購買の動機付けとなることはあり得ないから,本件訂正発明の実施の有無が需用者の購買の動機付けとなっていないことを,原告が「販売することができないとする事情」として考慮すべきである旨主張する。しかし,前記(ア)b認定のとおり,ユーザーがゴルフボールを選択する際,ゴルフボールの性能(飛距離性能\,スピン性能等)を重視する傾向にあるといえるが,一般のユーザーはゴルフボールの性能\を発揮する原因となるゴルフボールを構成する具体的な成分等については特段の関心を抱いていないものとうかがわれることに照らすならば,原告各製品及び被告各製品の販売において本件訂正発明の対象である添加剤の使用がユーザーには知らされていないことを,前記ア(ウ)認定の被告各製品の譲渡数量を原告が「販売することができないとする事情」として考慮すべき余地はないというべきである。

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平成19(ワ)2076 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年01月28日 大阪地方裁判所

 特許権侵害事件について、102条2項における推定の覆滅が否定され、約15億の損害賠償が認められました。
 被告は,原被告以外の製造業者としてアンリツがあり,アンリツは被告と同程度を販売していたのであるから,被告物件の販売数のすべてを原告が販売することができたという関係にないと主張する。確かに,証拠(乙196,197)によれば,アンリツが,本件特許権の存続期間中,複数のホッパを有する自動電子計量機を製造販売していたこと,平成17年5月に作成されたアンリツの自動電子計量機「クリーンマルチスケール」のカタログには「高速度ダイレクトシャッタで,シャッタ開閉時間を1/2に短縮。しかも速度制御が可能。信頼性のあるステッピングモータを使用のため高寿命を実現いたしました。」などの記載があることが認められる。しかし,アンリツ製の自動電子計量機が,ステッピングモータを採用しており,シャッタ(ゲート)の開閉速度を制御することが可能\\であるとしても,被告物件のようにきめ細かにゲートの開閉制御を行うことができる機能を具備しているかは不明であり,被告物件の代替品といえるものかは明らかでない上,被告は,アンリツが自動電子計量機をどの程度販売していたのかについて何ら立証していないのであるから(なお,被告は,原告と被告が計量装置のシェアを2分する企業であるとの主張もしており,このことからすれば,原被告に比べればアンリツの自動電子計量機の販売数が相当多かったとはいえない,被告物件が販売さ。) れていなかったと仮定した場合に,被告物件を購入していた顧客が,被告物件の代替品としてアンリツ製の自動電子計量機をどの程度購入していたのかは全く不明というほかない。したがって,本件においては,特許法102条2項本文による原告の損害額の推定を覆滅するに足りる事実が具体的に立証されているとはいえないから,上記(3)で算出した原告の損害額を減額するのは相当でない。

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◆平成17(ワ)12207 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成19年04月19日 大阪地方裁判所

 1年以上前の判決ですが、特許法102条3項に基づく判決なのであげておきます。
 原告は、特許法102条1項ただし書が適用された結果,販売できないと認定された分について,同条3項の実施料相当額が認められるべきだと主張しました。しかし、裁判所は、マッサージ器事件◆(平成17(ネ)10047)と同様に、これを否定しました。
  「特許法102条1項は,特許権者が被った販売減少等による逸失利益相当の損害の額に関する特則であり,逸失利益相当の損害額を算定するという民法709条の原則を超えた保護を特許権者に付与するための特則ではないと解すべきである。そして,特許法102条1項は,侵害品が販売されなかったとすれば特許権者が得ることができた販売機会に応じて逸失利益を算定することを認めた規定であり,そのただし書において,侵害行為と損害との因果関係を否定すべき事情を考慮することとしているものである。これに対し,同条3項は,当該特許発明の実施に対し受けるべき実施料相当額を損害とするものであるところ,同条1項ただし書に基づいて損害と相当因果関係がないと認められた侵害品の販売数量に基づいて実施料相当額を損害として算定したのでは,権利者が被った逸失利益相当の損害を超える額の損害の賠償を認めることとなるから相当ではない。よって,原告の特許法102条3項に基づく請求は理由がない。」

◆平成17(ワ)12207 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成19年04月19日 大阪地方裁判所

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◆平成17(ワ)6346 損害賠償請求事件 特許権民事訴訟 平成19年02月15日 東京地方裁判所

  裁判所は、実施料率については、0.7%と認定しました。
  「本件特許発明は,使い捨て紙おむつの基本構造に関する特許発明ではなく,構\成要件A及びBの構造を有する紙おむつにおいて前後漏れ防止を確実に達成できるとともに,着用感に優れた使い捨て紙おむつを提供することを目的とするものである。そして,その作用効果は,本件特許発明の技術的範囲に属すると判断される被告製品についてなされた前記の各実験からみても,前後漏れ防止について極めて顕著な効果を奏するものとは言い難いものである。そして,本件特許発明は進歩性を有するものの,既に述べたとおり,これと類似した構\造を有する特許発明が出願時に複数存在していたこと,及び,本件特許発明の対象である紙おむつは廉価で(乙93,95),大量に消費される商品であり,本件特許発明が紙おむつに使用される複数の技術の一つにすぎないことからしても,本件特許発明の実施料率は比較的低いものと認定されてもやむを得ないものである。・・・・以上の諸事情を考慮すれば,本件特許発明の実施料率は0.7%をもって相当と認める。」

◆平成17(ワ)6346 損害賠償請求事件 特許権民事訴訟 平成19年02月15日 東京地方裁判所

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◆平成17(ネ)10047 特許権侵害差止等請求控訴事件 平成18年09月25日 知的財産高等裁判所

   均等論に基づく侵害が認定されました。また、損害額については、販売不可事情が考慮され、102条1項の対象となったのは、販売数量の1%と判断されました。ちなみに、残り99%についての102条3項の実施料相当額の請求は認められませんでした。
   「前記判示のとおり,本件発明5は,「従来のものにおいては,マッサージ中は身体は自由状態となっているため,圧搾空気の給排気に伴う座部の袋体の膨縮にしたがって身体も上下動することになり,腿部を含む脚部,尻部の筋肉をストレッチしつつマッサージをすることができず,より効果的なマッサージをするという面では満足のいくものではないという問題があった。」(段落【0003】)ことを踏まえ,この技術課題を解決するために,座部用袋体と脚用袋体への圧搾空気の供給を同期させ,膨脹した脚用袋体によって両側から脚部を挟持しつつ,座部用袋体を膨脹させて使用者の身体を押し上げることにより,腿部及び尻部をストレッチ及びマッサージするものであると認められる。本件発明5の上述した課題,構成,作用効果に照らすと,本件発明5の本質的部分は,座部用袋体及び脚用袋体の膨脹のタイミングを工夫することにより,脚用袋体によって脚部を両側から挟持した状態で,座部用袋体を膨脹させ,脚部及び尻部のストレッチ及びマッサージを可能\にした点にあるというべきであり,そのために必要な構成要素として,空気袋を膨脹させて使用者の各脚を両側から挟持するという構\成には特徴が認められるとしても,使用者の各脚を挟持するための手段として,脚載置部の側壁の両側に空気袋を配設するのか,片側のみに空気袋を配設し,他方にはチップウレタン等の緩衝材を配設するのかという点は,発明を特徴付ける本質的部分ではないというべきである。」
  「以上のとおり,本件発明5の本質的な特徴は,座部用袋体及び脚用袋体の膨脹のタイミングを工夫することによるストレッチ又はマッサージ効果にあるところ,本件では,?@本件発明5の機能は,控訴人各製品の一部の動作モードを選択した場合に初めて発現するものであること,?A本件発明5に係る作用効果は,椅子式マッサージの作用としては付随的であり,その効果も限られたものであること,?B控訴人製品のパンフレットや被控訴人製品のパンフレットにおいても,本件発明5に係る作用は,ほとんど紹介されていないこと,?C本件特許5の設定登録当時,被控訴人の市場占有率は数%にすぎず,椅子式マッサージ機の市場には有力な競業者が存在したこと,?D控訴人製品は,もみ玉によるマッサージとエアバッグによるマッサージを併用する機能や,光センサーによりツボを自動検索する機能\など,本件発明5とは異なる特徴的な機能を備えており,これらの機能\を重視して消費者は控訴人製品を選択したと考えられること,?E被控訴人製品はエアーバッグによるマッサージ方式であり,その市場競争力は必ずしも強いものではなく,被控訴人の製品販売力も限定的であったなどの事情が認められる。これらの事情を総合考慮すれば,控訴人各製品の譲渡数量のうち,被控訴人が販売することができなかったと認められる数量を控除した数量は,いずれの控訴人製品についても,上記譲渡数量の1%と認めるのが相当である。・・・・ 被控訴人は,仮に,競合品の存在を考慮して特許法102条1項ただし書を適用したとしても,被控訴人によって販売できないとされた分(99%)については,特許法102条3項の実施料相当額として販売額の5%が損害として認められるべきであると主張する。しかしながら,特許法102条1項は,特許侵害に当たる実施行為がなかったことを前提に逸失利益を算定するのに対し,特許法102条3項は当該特許発明の実施に対し受けるべき実施料相当額を損害とするものであるから,それぞれが前提を異にする別個の損害算定方法というべきであり,また,特許権者によって販売できないとされた分についてまで,実施料相当額を請求し得ると解すると,特許権者が侵害行為に対する損害賠償として本来請求しうる逸失利益の範囲を超えて,損害の填補を受けることを容認することになるが,このように特許権者の逸失利益を超えた損害の填補を認めるべき合理的な理由は見出し難い。」

◆平成17(ネ)10047 特許権侵害差止等請求控訴事件 平成18年09月25日 知的財産高等裁判所

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◆H17. 9. 5 大阪地裁 平成16(ワ)2398等 商標権 民事訴訟事件

  特許の事件ではありません、ブランド商標を付与した商品を安売りしていた場合の損害額が争われました。裁判所は、38条3項の額の基準は侵害者の上代を基準とするべきであるとの判断をしました。なお、本件は債務不存在確認訴訟を本訴とする反訴事件ですので、本文中、被告とは商標権者、原告とは侵害者のことです。
 「一方で商標についての一般的な使用料率を考慮し,他方で上記のような本件での特殊事情を考慮し,加えて前記のような被告の商品と本件商品との上代価格の差を考慮した場合,本件における「本件商標の使用に対し被告が受けるべき金銭の額」(商標法38条3項)としては,原告による本件商品の売上額の7%をもってするのが相当である。」

◆H17. 9. 5 大阪地裁 平成16(ワ)2398等 商標権 民事訴訟事件

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◆H17. 4. 8 東京地裁 平成15(ワ)3552 特許権 民事訴訟事件

  侵害訴訟にて、要旨変更か否か、実施料率、無効理由などいくつかの争点が争われました。
 要旨変更について、裁判所は「前記イのとおりの当初明細書の記載及び当初明細書の第4図からすると,突片7A3,7A4ないし連結片75が,保持容器外周面位置決め用片ないし保持容器頂面位置決め用片に相当する。したがって,「アース用外部端子」との文言こそ記載されていないものの,前記イの記載の意味するところは,本件発明の構成要件Eの「前記外周面位置決め用片ないし保持容器頂面位置決め用片を水晶振動子本体アース用外部端子とした」と同一であるということができる。したがって,・・・とする補正は,当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内であると認められるから,明細書の要旨を変更しないものとみなされる(平成6年法律第116号による改正前の特許法41条)。」と認定しました。

◆H17. 4. 8 東京地裁 平成15(ワ)3552 特許権 民事訴訟事件

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◆H17. 3.29 大阪高裁 平成16(ネ)648 特許権 民事訴訟事件

 控訴人が、被控訴人に対し、被控訴人が控訴人を相手取り特許権に基づく差止請求権を被保全権利として仮処分命令の申立てをし、仮処分命令を得てその執行をした後に、上記特許権に係る特許を無効とする審決が確定したため、違法な仮処分命令の執行により損害を受けたとして、不法行為に基づく損害賠償を求めました。
 原審は、「被控訴人には仮処分命令を得てその執行をしたことについて過失がなく、不当利得も成立しない」として、控訴人の請求を棄却しましたが、大阪高裁は、原判決を変更しました。
 興味深いのは、693万円のうち、143万円が損害で、残りは弁護士費用等だということです。

◆H17. 3.29 大阪高裁 平成16(ネ)648 特許権 民事訴訟事件

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◆H17. 2.10 大阪地裁 平成15(ワ)4726 実用新案権 民事訴訟事件

 無償譲渡した分の数量についても実29条1項(特102条1項:原告の利益)による損害が認定できるかが争われました。
 裁判所は、「被告が被告物件を譲渡したことによる損害を、実用新案法29条1項により算定するにあたっては、無償での譲渡数のうち4352個分に相当する額を控除すべきであるが、この分についても、被告は被告物件を譲渡したことによって本件実用新案権を侵害したものであるから、これにより原告に損害が生じているというべきである。そして、この分の損害については、同条3項により算定すべきものである(後記イ)。」と、判断しました。

◆H17. 2.10 大阪地裁 平成15(ワ)4726 実用新案権 民事訴訟事件

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◆H16. 3.23 東京高裁 平成14(行ケ)459 特許権 行政訴訟事件

  特許第3014572号について無効でないとした審決を取り消しました。判断について特質すべき点はないように思えますが、昨年の4月9日になされた計15億の損害賠償事件の対象となった特許の1つです。損害賠償の総額に影響があるかもしれません。
 以下が損害賠償事件です。 
">◆H15. 3.26 東京地裁 平成13(ワ)3485 特許権 民事訴訟事件
 

◆H16. 3.23 東京高裁 平成14(行ケ)459 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 4.22 大阪地裁 平成14(ワ)3309 商標権 民事訴訟事件

損害賠償が7200万くらい認められましたが、そのうちの1割弱が弁護士費用です。これは多いんでしょうか?、少ないんでしょうか?
 「弁護士費用は、本件事案の難易、請求額、認容額、その他諸般の事情を考慮し、660万円をもって相当と認める。したがって、原告の総損害額は、7273万1868円となる。」と判断しました。 

 

◆H15. 4.22 大阪地裁 平成14(ワ)3309 商標権 民事訴訟事件

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◆H15. 3.26 東京地裁 平成13(ワ)3485 特許権 民事訴訟事件

  約15億の損害賠償が認められた案件です。最後の付言を見る限り、裁判官の心証はよくなかったんでしょうね。
裁判所は、「・・・原告は,被告に対して,平成11年9月30日,本件発明1ないし4を含む合計11個の公開公報を同封した書面で警告を発した。次いで,原告は,同年12月10日に本件発明1,3及び4について,設定登録を受けた。  しかるに,被告は,被告製品1の製造,販売を継続し,被告製品2の製造,販売を開始した。ところで,被告各製品の構成を仔細に検討すると,被告各製品は,本件各発明への依拠,模倣の程度が極めて高く,被告において,本件各特許権の侵害を回避するための技術的な工夫をした形跡が全く窺えない。・・・変更後の各製品を検討しても,本件各特許権の侵害を回避するための十\分な工夫がされた様子がみられない。・・・およそ,1つの対象製品が同時に4個の特許権を侵害していることは,あまり例がなく,また,4種の対象製品が延べ合計11個の特許権を侵害していることも,やはり異例といえる。・・・製品を製造,販売する者が,製造,販売に先立って,法的ないし技術的な観点から問題点を解消させるための適宜の措置を採るべきであるが,被告は,そのようなことを行うこともなく,漫然と被告製品の製造,販売を継続していたのであって,このような態度は,他者の権利を尊重し,法を遵守し,法的な手続に沿って紛争を解決する立場から大きく離れているといえる。被告は,本件口頭弁論を終結した後においても,本件特許5が発明として成り立たないことを示す証拠を新たに発見したとして,口頭弁論の再開を申し立てているが,このような訴訟活動も,迅速な紛争解決を阻害する行為であるといえよう。」と述べました。

◆H15. 3.26 東京地裁 平成13(ワ)3485 特許権 民事訴訟事件

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