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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作物

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

令和5(ネ)1384等  損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和6年1月26日  大阪高等裁判所

大阪高裁は、アマゾンに対してサイト上に掲載した画像等が被告の著作権を侵害する等の申告をした行為が不正競争防止法(不競法)2条1項21号の不正競争行為に該当すると判断されました。1審の判決維持です。なお、著作物性無しと判断されたのは、芸能人を被写体とする写真が印刷された平面的な表紙及び裏表紙を、できるだけ忠実に再現するため真正面から撮影した画像です。

写真集及び卓上カレンダーに係る被告画像1、2及び4ないし10は、 インターネットショッピングサイトにおいて販売する商品がどのような ものかを紹介するために、芸能人を被写体とする写真が印刷された平面 的な表紙及び裏表紙を、できるだけ忠実に再現するため真正面から撮影 した画像であり、上記表紙及び裏表紙以外に背景や余白はないのであっ て、被写体の選択・組合せ・配置、構図・カメラアングルの設定、背景 等に選択の余地がなく、上記表紙及び裏表紙ひいてはそこに印刷された 芸能人を被写体とする写真を忠実に再現する以外に、その画像の表現自 体に何らかの形で撮影者の個性が表れているとは認められないから、上 記各被告画像には創作性が認められない。したがって、上記各被告画像 は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号) とはいえず、著作物とは認められないから、一審被告が上記各被告画像 について著作権を有するとは認められない。
(イ) 被告画像3について
単語帳に係る被告画像3も、インターネットショッピングサイトにお いて販売する商品がどのようなものかを紹介するための写真ではあるが、 芸能人を被写体とする写真が印刷された表紙及び裏表紙を金具のリング から取り外し、各写真を表にして平面上に上下に並べ、その右側に一部 裏表紙と重なる形で、63枚の単語カードを写真側を表にして金具のリ ングを要として扇状に広げたものを撮影したものであり、正面から撮影 されたものではあるものの、上記単語カードを扇状に広げることによっ てその重なり合いによる陰影が表現され、また、2枚目以降の単語カー ドの白い縁取りからわずかに各写真が垣間見えるように広げることによ って各単語カードにそれぞれ異なる写真が印刷されていることを表現し ており、白い背景によって表紙及び裏表紙の写真等を浮き立たせる効果 も生んでいるといえる。このような手法が商品としての単語帳を紹介す る際にまま見られるもの(乙62、63)であったとしても、その被写 体の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、背景の選択には 複数の余地があり、被告画像3の表現自体に撮影者の個性が表れている と認められる。したがって、被告画像3は、「思想又は感情を創作的に 表現したもの」といえ、著作物性が認められるから、その撮影者である 一審被告は被告画像3について著作権を有すると認められる。
(ウ) 以上に対し、一審被告は、被告画像1、2及び4ないし10についても、 手ブレ補正、露出補正、ホワイトバランス等の細かい調整を行い、光の 入り方に気を配って撮影場所にこだわり、複数の写真を撮影してその中 の一番良い写真について彩度、色合いを編集するなどの独自の工夫を凝 らしている旨主張するが、一審被告が主張するそのような工夫は、商品 である写真集ないし卓上カレンダーの表紙及び裏表紙、ひいてはそこに 印刷された芸能人を被写体とする写真を忠実に再現するためのものであ って、上記工夫の結果、それらが忠実に再現された各被告画像が得られ たとしても、その表現自体に何らかの形で撮影者である一審被告の個性 が表れているとは認められない。したがって、上記一審被告の主張は上 記(ア)の判断を左右しない。
・・・
ア 上記のとおり、被告サイト上の被告各画像及び商品名のうち、そもそも著 作物性が認められるのは被告画像3のみであり、その余については著作物性 自体が認められず、一審被告が著作権を有しないから、一審原告がその著作 権を侵害した事実はおよそ存在しない。そこで、原告画像3の掲載が被告画 像3についての一審被告の著作権侵害に当たるかにつき、以下検討する。
イ 被告画像3の表現上の本質的特徴は、前記(3)ア(イ)のとおり、本件商品3 を撮影する際の被写体の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、 背景の選択等を総合した表現に認められるところ、画像テンプレートを利用 して作成された原告画像3は、単語帳から取り外した一部の表紙等を並べて その横に単語帳を扇状に広げて置くなどの点で商品の見せ方に関する基本的 なアイデアに被告画像3との共通点はあるが、取り外して並べられたのが表 紙や裏表紙の写真面か、単語カードの韓国語単語が記載された面か、その枚 数、色彩及び配置、金具のリングを要として扇状に広げられた単語帳がその 右側に配置されているか左側に配置されているか等の配置、同単語帳の1枚 目のカードに印刷された写真内容、同単語帳の単語カードの枚数、色彩、扇 状の広がり方及び陰影等で異なっていることが一見して明らかであって、そ の素材の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、色彩の配合、素 材と背景のコントラスト等において被告画像3と異なるから、被告画像3の 表現上の本質的特徴を直接感得させるものとはいえない。なお、原告画像3 で選択された素材のうち、本件商品3の表紙を正面から撮影した画像部分の みは被告画像3と共通するが、その画像自体は、被告画像1、2及び4ない し10について検討したと同様、平面的な上記表紙を忠実に再現したのみで 創作性が認められない部分であるから、同画像部分が共通しているからとい って、原告画像3が被告画像3と類似しているとは到底認められない。した がって、一審原告が原告画像3を原告サイトに掲載したことが、被告画像3 に係る一審被告の著作権を侵害するものとは認められない。
以上によれば、一審被告が、本件各申告によってアマゾンに告知した、一 審原告が被告サイト上の被告各画像及び商品名についての一審被告の著作権 を侵害しているとの本件各申告の内容は、全て虚偽の事実であったというこ とになる。そして、前記第2の2で原判決を補正した上で引用した前提事実 (1)によれば、一審原告と一審被告は競争関係にあるといえ、また、上記著 作権侵害の事実を申告する行為は一審原告の営業上の信用を害する虚偽の事 実を告知する行為といえるから、本件各申告は、客観的に不競法2条1項2 1号に該当するということになる。

◆判決本文

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令和4(ワ)9461 著作権 民事訴訟 令和6年2月7日  東京地方裁判所

不動産売買・賃貸の仲介にもちいる物件写真について、著作権侵害が認定されました。 ただ、損害額は1000円/枚で、約7万円です。

証拠(甲5、11、15、27、原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、\n本件各写真は、賃貸物件の外観・内観及び周辺環境等を撮影したものであるこ と、本件各写真の撮影は、賃貸物件の内容を分かりやすく需要者に伝えるため、 明るさや撮影角度等を調整して行われたものであること、本件各写真の中には、 対象を広く写真に収めるため、パノラマ写真を撮影できるカメラを利用して撮 影されたものも含まれていることが認められる。 このような本件各写真の内容や撮影方法に照らすと、本件各写真は、被写体 の構図、カメラアングル、照明、撮影方法等を工夫して撮影されたものであり、\n撮影者の個性が表現されたものといえる。\nしたがって、本件各写真は、いずれも思想又は感情を創作的に表現したもの\nと認められ、「著作物」(著作権法2条1項1号)に該当し、これに反する被告 らの主張は採用できない。
・・・
証拠(甲27、原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、通常、管理会社\n等を通さずに物件写真を取得する際には、自社の従業員などが現地を訪問し、 賃貸物件の外観や内観等の撮影した上で、必要に応じて写真の加工等を行っ ていることが認められるところ、被告会社は、本件侵害対象写真を使用する ことによって、上記の作業に係る支出等を免れたものといえる。
そして、証拠(甲23の3、25、26、乙3、5)及び弁論の全趣旨に よれば、物件写真の撮影代行サービスの料金については、1)広角一眼レフカ メラ撮影の外観・内観セット(単発発注)については、3600円から45 00円、360度パノラマ撮影(単発発注)については、3200円から4 000円(写真の加工等には別途オプション料金が必要)とするもの、2)内 観(画像15枚程度)2750円、外観・共用部セット3300円、高品質 撮影5500円、交通費2000円程度とするもの、3)外観・エントラン ス・看板7枚以上で2750円〜5500円、外観・共用部・室内全て7枚 以上で1万3200円(いずれも一眼レフカメラ、広角カメラで撮影。1回 の撮影枚数は30枚以上。)、シータによる撮影(8枚以上)は1件4400 円(写真の加工等には別途オプション料金が必要で、徒歩15分以上の撮影 の場合は1650円が加算される。)とするもの、4)マンション一眼レフカ メラ広角レンズ撮影について、外観のみ(10枚程度)3500円、内観の み(20枚程度)4000円、外観・内観(30枚まで)4500円、オプ ションとして360度パノラマ撮影について、1枚500円、5枚まで10 00円〜2000円(ただし、駅から徒歩16分以上の場合は1000円が 加 算 さ れ る 。) とするもの、5)外観 の み (5枚 か ら 10枚程度)1 200円から1800円、外観・内観セットについて10枚から15枚程度 の場合は2200円から2500円、30枚程度の場合は2500円から2 800円とするものなどがあることが認められ、このような料金の定めから すれば、物件写真の撮影代行サービスを利用する場合、写真1枚当たりに換 算すると数百円程度の費用が必要となるほか、交通費や写真の加工等のため のオプション料金が別途発生し得ることが認められる。
上記の事情に加え、本件侵害対象写真の掲載期間は最大で2か月弱であっ てさほど長くないこと(前記3)、他方で、著作権侵害があった場合に事後 的に定められるべき「著作権の行使につき受けるべき金銭の額」は通常の使 用料に比べて高額となることといった事情を併せ考慮すると、本件侵害対象 写真の著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(著作権法11 4条3項)は、写真1枚当たり1000円の合計7万1000円と認めるの が相当である。
(2) これに対し、原告は、NHKエンタープライズ(甲19)、毎日フォトバ ンク(甲20)やアマナイメージズ(甲21)の写真使用料の定めからすれ ば、本件侵害対象写真の使用料相当額は1枚当たり2万円とすべきであると 主張する。
しかし、NHKエンタープライズや毎日フォトバンクの提供する写真は、 報道等のために撮影された写真であり、また、アマナイメージズの提供する 写真はウェブ広告や動画配信広告等に用いられるものであって、その撮影対 象や撮影方法は、賃貸物件の紹介を目的とした物件写真とは大きく異なるも のといえるから、上記各社の写真使用料の定めを本件で参考にすることは相 当ではない。

◆判決本文

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令和5(ワ)70052  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年2月26日  東京地方裁判所

 囲碁将棋チャンネルは、YouTubeに、著作権侵害としてYouTuberの動画の削除申請しました。これが違法か否か争われました。争点は棋譜に著作権があるのか否かです。裁判所は約2万円の損害賠償を認めました。

原告は、本件において虚偽の事実を告知等されたことによって、経済的損害に つき不正競争防止法2条1項21号に基づく損害賠償請求権が発生するほかに、 併せて人格的利益を侵害するものとして、別途不法行為に基づく損害賠償請求権 が発生する旨主張する。そこで検討するに、人格権ないし人格的利益とは、明文上の根拠を有するものではなく、生命又は身体的価値を保護する人格権、名誉権、プライバシー権、肖像権、名誉感情、自己決定権、平穏生活権、リプロダクティブ権、パブリシティ 権その他憲法13条の法意に照らし判例法理上認められるに至った各種の権利 利益を総称するものであるから、人格的利益の侵害を主張するのみでは、特定の 被侵害利益に基づく請求を特定するものとはいえない。しかしながら、原告は、 裁判所の重ねての釈明にもかかわらず、単なる総称としての人格的利益をいうに とどまることからすると、原告の主張は、請求の特定を欠くものとして失当とい うほかない。
もっとも、原告は、原告主張に係る人格的利益とは、最高裁平成16年(受) 第930号同17年7月14日第一小法廷判決・民集59巻6号1569頁(平 成17年判決)にいう著作者の人格的利益と同趣旨のものであり、大阪高裁令和 4年(ネ)第265号、第599号同4年10月14日判決(令和4年判決)も、 その趣旨をいうものである旨主張する。
仮に、原告主張に係る人格的利益が、上記判例を引用する限度で特定されてい るものと善解したとしても、平成17年判決は、著作者の思想の自由,表現の自\n由が憲法により保障された基本的人権であることに鑑み、公立図書館において閲 覧に供された図書の著作者の思想、意見等伝達の利益を法的な利益として肯定す るものであり、その射程は、公立図書館の職員がその基本的義務に違反して独断 的評価や個人的好みに基づく不公平な取扱によって蔵書を廃棄した場合に限定 されるものである。そうすると、私立図書館その他の私企業における場合は、明 らかにその射程外というべきものであるから、平成17年判決は、私企業である YouTubeにおける投稿動画に係る伝達の利益が問題とされている本件に は、適切なものといえない。
また、原告が引用する大阪高裁令和4年(ネ)第265号、第599号同4年 10月14日判決(令和4年判決)は、人格的利益に関わるものと説示しつつも、 投稿者の営業活動を妨害するという側面をも踏まえたものであるから、精神的価 値という法益に限定して法的利益性が主張されている本件には、必ずしも適切で はない。のみならず、平成17年判決が、上記のとおり、伝達の利益を法的な利 益として肯定する場面を、公立図書館の職員による極めて不公平な取扱等の場合 に制限している趣旨に照らしても、憲法で保障されている表現の自由から、直ち\nにYouTubeにおける投稿動画に係る伝達の利益を肯定するのは相当では ない。その他に、原告は、著作権法、電気通信事業法その他の法令を縷々指摘して、 原告主張に係る人格的利益が重要性の高い法益である旨主張するものの、原告が 掲げる法令は、原告主張に係る人格的利益を保護するものとはいえず、上記にお いて説示したところに鑑みると、原告の主張は、その特定及び根拠を欠くもので あり、採用の限りではない。

◆判決本文

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令和5(ネ)10038  著作権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和5年12月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

1審と同じく、著作物に該当するが、黙示の許諾があったと判断されました。

「確かに、乙14の4から13、乙15ないし20、22によれば、紙 におけるにじみなどの模様は模様付きの和紙としてカタログで販売される ものにも見られるものではある。しかし、控訴人は、楮を原料とし、にじ みが良く、染め方に深みを出すことができる和紙に、膠、明礬及び水を混 合した礬砂を刷毛で和紙の片面又は両面に引いて乾かし、その際、礬砂の 配合量や引き方等を調整したり、複数の刷毛を使い分けたりすることによ り、紙上に、水のにじみにくい部分や染料の染みにくい部分を生み出し、 毛質、長さ、大小が異なり、特別に注文した複数の刷毛を使い分け、主に 柿渋、胡桃、墨、土など自然の染料で和紙を染め、刷毛のあと、にじみに より紙上に色を配置するなどの手法を用いて和紙に模様や色彩を施し、一 点ずつ異なる模様の染描紙を制作しており、創作ノートに構図のためのス\nケッチ、色、染料の選択、配置、濃淡、線や動き等を記載することもあっ た(前記1(3))こと、そして、本件染描紙15から20のうち、本件染描 紙18は約65cm×約180cm、それ以外は約74cm×約100c mという大きさを備えるものであって、控訴人は空の情景を意識して本件 染描紙15から20を制作していること(前記1(2)、(3))、それぞれの模様 は原判決別紙本件染描紙(15〜20)一覧の各写真のとおりであって、 控訴人が、特定の色彩を選択して、構図を考えた上で模様を配置し、全体\nとしてまとまりのある図柄を作り上げたものといえることを考慮すれば、 創作的表現がされていると認められる。これらの事情を総合すれば、本件\n染描紙15から20の上記創作的表現は、模様のついた和紙として通常想\n定される模様とはいえず、実用的な目的のためのものといえる特徴と分離 して、美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備える部分を把握することが できるといえる。したがって、本件染描紙15から20は、控訴人の著作 物であると認められる。」
(2) 翻案について
翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質な特徴の同一\n性を維持しつつ、具体的な表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想\n又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の\n表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行\n為をいう(最高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法 廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
これを本件において検討すると、被控訴人Y’が制作した本件展示物15 から20は、本件染描紙15から20に依拠し、原判決別紙染描紙(15〜 20)一覧において、四角い枠を付したものとして示した写真における、四 角い枠で囲んだ部分を利用して、補正した上で引用した原判決第3の2(3)で 認定した制作過程を経て制作されたものと認められ、また、本件展示物15 から20は、作品の全体像として、「Yアートワークス/天空図屏風シリーズ」 と題する一連の作品として、屏風様式を取り入れ、上記作品より一回り大き い茶色のアルミ複合版製の下地とともに設置され、晴天の日の日中は、各展 示場の上方の天井にそれぞれ存在する天窓から日差しが差し込むように配置 され、本件展示物15から20が展示されている各壁面の正面付近の各床に は、本件展示物15から20について、本件説明とともに、それぞれ各和歌 (原典及び口語訳)が記載された説明書きが埋め込まれていて、これらの構\n成要素が組み合わされて仕立てあげられた作品であることが認められるから、 本件染描紙15から20の具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新た\nに思想又は感情を創作的に表現するものと認められるものの、本件展示物1\n5から20の屏風の部分の表現と本件染描紙15から20の上記四角い枠で\n囲んだ部分の表現とを対比すると、前者は後者と比較して、全体的に青系の\n色彩が強調され、また、刷毛のあとや染色の境目などの輪郭が鋭く明確化さ れているなど、両者は色合いや色調に多少の相違が認められるものの、刷毛 状の模様、にじみ具合及びこれらの構成や配置は極めて類似しているから、\n本件展示物15から20に接する者が本件染描紙15から20の表現上の本\n質的特徴を直接感得することが十分に可能\であるということができる。 したがって、本件展示物15から20は、本件染描紙15から20を翻案 したものであると認めるのが相当である。
・・・
6 当審における当事者の補充主張に対する判断
(1) 被控訴人Y’の前記第2の5(1)の主張について
被控訴人Y’は、本件染描紙15から20は著作物に当たらないと主張する。 しかし、補正の上で引用した原判決「事実及び理由」第3の4(2)のとおり、 本件染描紙15から20については創作的表現がされていると認められる。\n前記のとおり、本件染描紙15から20の模様は、単なる和紙の染みやに じみではなく、控訴人は、膠、明礬及び水を混合した礬砂を刷毛で和紙の片 面又は両面に引いて乾かし、その際、礬砂の配合量や引き方等を調整したり、 複数の刷毛を使い分けたりすることにより、紙上に、水のにじみにくい部分 や染料の染みにくい部分を生み出し、毛質、長さ、大小が異なり、特別に注 文した複数の刷毛を使い分け、主に柿渋、胡桃、墨、土など自然の染料で和 紙を染め、刷毛のあと、にじみにより紙上に色を配置するなどの手法を用い て模様や色彩を施すなどして、一点ごとに模様の異なる染描紙を制作してお り、本件染描紙15から20は空の情景を意識して制作したものである(補 正の上で引用した原判決「事実及び理由」第3の1(3))。
実際、被控訴人Y’も、控訴人店舗以外の店でも和紙を購入したが、控訴人店舗で購入した染描紙の模様が「空」や「雲」の世界観を見出しやすいと認識し、さらに、本件 染描紙15から20の中に「空」や「雲」の世界観を見出すことのできる部 分があると認め(補正の上で引用した原判決「事実及び理由」第3の2(3)、 乙24)、その部分を選定して切り出し、染描紙の色合いや色調の変化等を調 整、刷毛のあとを際立たせるといった加工を行い、その上で、紙をスキャナ で読み込んでスキャンデータを作成し、これを拡大し、電子データ上で色付 けし、縦横比を調整するなどして「天空図屏風シリーズ」と題する一連の作 品を制作したのであって、本件染描紙15から20の模様を変えることなく、 これを強調することによって「空」をイメージさせる作品を作ったといえる。 これらの事情からすれば、本件染描紙15から20については、創作ノート その他染描紙の構成や色彩に関して控訴人が記載した資料は証拠として提出\nされていないものの、控訴人は、これらの染描紙の制作にあたり、特定の色 彩を選択して、構図を考えた上で模様を配置して図柄を作り上げ、完成した\nこれらの染描紙は、実用的な目的のためのものといえる特徴と分離して、美 的鑑賞の対象となり得る美的特性を備える部分を把握することができる。
原審で行われた控訴人本人尋問の結果によれば、控訴人は、染描紙を制作 する際に用いる刷毛に含まれた水が紙の上でどのように動くのかについて完 全にコントロールすることはできず、染料を紙に染み込ませた後にどのよう な模様が浮かび上がるのかを事前に完全に予想できるわけではないと認めら\nれる。しかし、上記のとおり、本件染描紙15から20については、控訴人 が空の情景を意識して制作し、実際に空の情景を見出し得る模様が作り出さ れていると認められるのであって、制作過程の中に一部控訴人のコントロー ルが及ばない部分があることや、完成した模様が控訴人の事前の想定と完全 には一致しないことがあるとしても、そのことをもって、本件染描紙15か ら20が著作物と認められないことにはならない。
・・・
控訴人は、染描紙につき、和紙と分離して無体物である「染描」部分だけ を利用することを包括的に許諾したことはなく、翻案等も含めた利用を包括 的かつ黙示に許諾してはいないと主張する。 しかし、控訴人が控訴人店舗に掲げていた本件注意書きは、「無断転用、模 倣、複写による商業行為」を禁ずるとの内容である。この「無断転用、模倣、 複写」に、控訴人がいう「無体物」としての利用、すなわち、染描紙の購入 者が染描紙の紙自体を使わずに模様をデータ化するなどして絵画等の作品制 作において利用する行為が含まれることが明らかであるとはいえない。控訴 人は、控訴人店舗で販売された染描紙にアーティストが絵を描いたものを控 訴人ウェブサイトに掲載しており(原判決「事実及び理由」第3の1(4))、染 描紙の購入者が染描紙を自らの作品に使用することが可能である旨を示して\nいたといえ、それにもかかわらず控訴人がいう「無体物」としての利用を明 示的に禁じていなかったのであるから、控訴人店舗で染描紙を購入した者が、 本件注意書きを見て、染描紙の模様をデータ化するなどして利用する行為が 禁じられていると理解することはできなかったといえ、かつ、控訴人も、こ うした行為を禁ずる意図を有していなかったと推認することができる。 また、控訴人は、被控訴人Y’が染描紙を利用して雑誌「和樂」の「源氏 物語」の挿絵を作成して掲載することを被控訴人Y’から伝えられながら、 被控訴人Y’による染描紙の利用を問題とせず(原判決「事実及び理由」第 3の1(5)ク)、被控訴人Y’が染描紙を利用して実際にどのような絵を制作し て雑誌に掲載したのかを確認しなかった(控訴人本人、弁論の全趣旨)。この 事実からも、控訴人が、染描紙の購入者が染描紙を利用して他の作品を制作 することに関し、染描紙に直接絵を描くことは許諾し、染描紙の模様をデー タ化するなどして利用することは禁じていたとの区別をしていたとは認めら れない。
控訴人のいう「無体物」としての利用であっても、それによって作品を制 作しようとする者は和紙である染描紙を購入するのであるから、控訴人が染 描紙を制作する目的が手漉き和紙の販売の促進にあるとしても、控訴人が「無 体物」としての利用も含めて黙示に許諾することと矛盾しない。 控訴人が、染描紙について「無体物」としての利用をしようとする者に対 して明示的な許諾の意思表示をしたことがあるとしても、そのことは控訴人\nが「無体物」としての利用を含めて他の作品制作への染描紙の利用を黙示に 許諾していたことと矛盾しない。控訴人が、明示的な許諾をする際に、「無体 物」としての利用を希望する者と何らかの条件交渉を行ったことがあるのか 否か、どのような条件交渉を行ったのかは不明であり、仮に何らかの条件交 渉を行った上で明示的な許諾の意思表示をしたことがあるとしても、事前に\n利用態様を認識した場合に控訴人がその者に対して一定の条件を求めること はあり得るといえ、やはり、控訴人が「無体物」としての利用を含めて他の 作品制作への染描紙の利用を黙示に許諾していたことと矛盾しない。 以上の事情に加え、原判決「事実及び理由」第3の5に挙げられた事情も 併せ考慮すれば、控訴人は、複製に当たる場合を除き、「無体物」としての利 用を含め、染描紙を用いて他の作品を制作することを黙示的に許諾していた と認められる。

◆判決本文

1審はこちら。

◆平成30(ワ)39895等

こちらに、問題となった展示物などがあります。

◆画像

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令和5(ワ)70139  著作権侵害差止請求事件  著作権  民事訴訟 令和5年12月7日  東京地方裁判所

木枯し紋次郎の作者の遺族が、口に長い竹の楊枝をくわえた長脇差を携えた渡世人の図形について、木枯し紋次郎をイメージさせるとして、著作権侵害、不競法2条1項1号該当性を争いました。裁判所は、抽象的アイデアであると判断しました。

さらに念のため、本件渡世人に係る記述自体をみても、原告ら主張に係る 本件渡世人は、1)通常より大きい三度笠を目深にかぶり、2)通常よりも長い 引き回しの道中合羽で身を包み、3)口に長い竹の楊枝をくわえ、4)長脇差を 携えた渡世人というものである。そして、証拠(乙1ないし15)及び弁論 の全趣旨によれば、渡世人が、三度笠を目深にかぶり、引き回しの道中合羽 で身を包み、長脇差を携えていたというのは、江戸時代の渡世人の姿として ありふれた事実をいうものであり、口に長い竹の楊枝をくわえるという部分 を更に加えたとしても、これがアイデアとして独自性を有するかどうかは格 別、著作権法で保護されるべき創作的表現という観点からすれば、その記述\n自体は明らかにありふれたものである。仮に、本件渡世人に対しその後本件 テレビ作品で加えられた表現をもって二次的著作物とする原告らの主張に立\nって、「通常より大きい」三度笠で、「通常よりも長い」道中合羽で身を包 んでいるという記述を加えて更に検討したとしても、これらの記述も同じく 極めてありふれたものであり、原告らの上記主張の当否を判断するまでもな く、本件渡世人に係る上記記述は、全体として、ありふれた事実をありふれ た記述で江戸時代の渡世人をいうものにすぎず、これを創作的表現であると\n認めることはできない。
・・・・
不正競争防止法2条1項1号又は2号にいう「商品等表示」とは、人の業務\nに係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営 業を表示するものをいう。\nこれを本件についてみると、原告ら主張に係る商品等表示とは、前記1)ない し4)の特徴を備えた本件渡世人に係る表示をいうところ(第1回口頭弁論調書\n参照)、本件渡世人がありふれた江戸時代の渡世人をいうにすぎないことは、 上記において説示したとおりであり、本件渡世人に係る表示は、そもそも不正\n競争防止法2条1項1号又は2号にいう「商品等表示」に該当するものとはい\nえない。
仮に、原告らの主張が、本件渡世人の図柄又は写真に「紋次郎」という名称 が付された表示をいうものとしても、商品等表\示として具体的な特定を欠くの みならず、一般に「紋次郎」という名称は、本件書籍、本件漫画作品、本件テ レビ作品及び本件映画作品に登場する中心人物を示す、いわゆるキャラクター に関する識別情報であり、本来的に商品又は営業の出所表示機能\を有するもの ではない。そして、本件全証拠をもっても、原告ら主張に係る上記表示が、キ\nャラクターに関する識別情報を超えて、原告らの営業を表示する二次的意味を\n有するものと認めるに足りず、まして原告ら主張に係る上記表示が、原告らの\n営業等を表示するものとして周知著名であるものとは、本件全証拠\nを踏まえても、明らかに認めるに足りない。
のみならず、証拠(乙20ないし28)及び弁論の全趣旨によれば、被告図 柄は昭和52年に、「紋次郎いか」は昭和57年に、「げんこつ紋次郎」は平 成20年に、それぞれ商標登録を受け、被告がこれらの商標を付するなどして 被告商品を販売し、その信用を長年にわたり蓄積してきた実情及び実績を踏ま えると、仮に原告らの主張に立ったとしても、原告らの営業等と誤認混同を生 ずるおそれを直ちに認めることはできず、これを覆すに足りる証拠はない。 そうすると、仮に上記キャラクターに関する識別情報に一定の財産的価値が 化体していたとしても、実在の人物としてパブリシティ権侵害をいうなら格別、 被告が被告図柄を付して被告商品を製造販売する行為は、不正競争防止法2条 1項1号又は2号に掲げる「不正競争」に該当するものとはいえない。 したがって、原告らの主張は、いずれも採用することができない。

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令和1(ワ)10940  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和6年1月29日  大阪地方裁判所

プログラムの著作物性は認められましたが、複製・翻案については同意があったと認定されました。一方、氏名表示権侵害として10万円が認められました。\n

ア 本件プログラム1は、マンロック(高圧室作業場所への作業員の出入り用 気密扉)内の気圧、二酸化炭素濃度等を記録するペーパーレスレコーダー(最 大10機)を集中管理(レコーダーで記録された情報を遠隔地のパソコンで\nリアルタイムに表示し、データを蓄積するとともに閾値を超えた場合は警告\nを発することが可能)するシステムプログラムであり、統合管理画面(メイ\nンフォーム画面)、個々のレコーダーの監視画面(レコーダーフォーム画面。 表示形式はレコーダーと同様。)、レコーダーの通信ルーチン、データベース\n(レコーダーの情報を集積する部分)などを構成要素とするものである。(甲\n28、弁論の全趣旨)
この点、画面構成や、レコーダーのデータをどのように扱うかについては、\nプログラムの目的、環境規制の態様、ハードウェアやオペレーティングシス テムなどに由来する制約等により、表現の選択の余地の乏しいものもあると\n考えられるが、データ処理の具体的態様(クラス、サブルーチンの利用等の 構造化処理を含む)、レコーダーとの通信プロトコルの選択及びそれに応じ\nた実装、データベース化の具体的処理手順などについて、各処理の効率化な ども意識してソースコードを記述する過程においては、相応の選択の幅があ\nるものと認められる。
イ 原告は、このような選択の幅の中から、データ処理の態様を設計した上、 A4用紙で約120頁分(1頁あたり60行程度。以下同様)のソースコー\nドを作成したことからすると、ソースコード(甲28)の具体的記述を全体\nとしてみると、本件プログラム1は、原告の個性が反映されたものであって、 創作性があり、著作物であるということができる。
ウ 被告は、本件プログラム1のソースコードの多くの記述が公開されたサン\nプルプログラムであり、単純な作業を行う機能の複数の記述であり、計測上\nの管理基準に対応させた記述の順序や組合せであるから、ソースコードの記\n述に創作性はない旨を主張する。しかし、ソースコードに既存のサンプルが\n含まれることについて的確な立証はない上、仮にそのような記述が含まれる としても、プログラム全体としての創作性を直ちに否定するものともいえな いから、被告の主張は採用できない。
・・・
前提事実及び認定事実によると、本件各プログラムの中には、明示的に 異なる現場で用いることを前提とする仕様が採用されたものがあること、 本件各プログラムはいずれも発注の原因となった現場と異なる現場で用 いることについてプログラムの仕様上の制限はないとうかがわれること、 原告自身、一つの現場が終了したと見込まれる後も、プログラムの修正に 応じるなどしていること、原告自らソースコードを納品したものもあるこ\nとに加え、原告が、平成2年に独立した後、多数回にわたって被告から依 頼されたプログラムを制作、納品し、平成20年12月から平成21年4 月までの間は、被告に採用されてプログラム制作業務に従事していたこと からすれば、計測業務における被告のプログラムの利用実態(プログラム を一つの現場で利用するだけでなく他の現場においても複製、変更又は改 変(カスタマイズ)して利用していたことを含む。)から、自己が制作して 納品したプログラムが被告により複数の現場で利用され得ることを認識 していたものとみられることが認められる。これらの本件においてうかが われる事情からすると、本件各プログラムの開発に係る各請負契約におい て、成果物が、少なくとも被告の内部で使用される限りにおいては、他の 現場における使用や改変を許容する旨の黙示の合意があったものという べきである。
・・・
(1) 氏名表示権が侵害されたか(争点3−3、5−2)及び被告に故意又は過失\nがあったか(争点3−4、5−3)
ア 本件プログラム3(争点3−3、3−4)
前記前提事実のとおり、本件プログラム3を複製、変更した被告プログラ ム3の起動画面やバージョン表示画面においては、被告の社名が表\示され、 原告の氏名は表示されていない(甲9)。そして、本件プログラム3と被告プ\nログラム3を比較すると、ソースコードの大部分において同一であり、被告\nプログラム3には本件プログラム3に時間率評価機能を果たす計算処理や\ndB値の時系列変数の計算処理の機能が追加された点において相違するが\n(甲8の3)、この相違点から被告プログラム3が本件プログラム3と別個 のプログラムであるということはできない。 したがって、被告による上記表記により、本件プログラム3について、原\n告の氏名表示権が侵害され、その態様から、被告に故意があったと認められ\nる。
・・・
(3)損害の有無及び額(争点3−5、5−4)
(1)の被告の行為により原告の被った損害は、本件に顕れた一切の事情を考 慮し、10万円と認め(なお、原告は、本件プログラム5についての氏名表示\n権侵害固有の損害を主張しないが、弁論の全趣旨から、相当の損害賠償を求め る趣旨と解される。)、被告は、相当因果関係のある弁護士費用1万円を加えた 11万円及びこれに対する遅延損害金を支払う義務を負う。

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令和5(ワ)6100  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和6年1月30日  大阪地方裁判所

X(旧Twitter)にて、アカウントのアイコンを一部変形して、第三者が使用したことが氏名権、著作権などを侵害するとして、15万円の損害賠償が認められました。

(1) 氏名権侵害について
氏名は、個人の人格の象徴であり、人格権の一内容を構成するものというべきで\nあるから、人は、その氏名を他人に冒用されない権利を有する。 前提事実(3)並びに証拠(甲5〜9)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、本件 アカウントを通じて本件各投稿を行っているところ、本件投稿1では、本件アカウ ントにおける名前(原告の氏名である「P1」)及びユーザー名(原告が経営する 法人グループの総称である「(省略)」)が表示されており、本件投稿2ないし4\nでは、「P1」がリツイートした旨が表示されていることに加え、所定の操作によ\nり本件アカウントにおける名前等が表示されることが認められ、本件各投稿に接し\nた閲覧者は、投稿者として原告の氏名を認識するものと認められるから、被告は本 件各投稿において原告の氏名を冒用したといえる。したがって、本件各投稿は、原 告の氏名権を侵害する。 被告は、本件アカウントのプロフィール欄には「フィクションのため実在の人物 とは一切関係がございません」と記載されているから、閲覧者は、実在の人物とは 関係がないとの結論に至り、原告本人ではないと認識をする可能性がある旨を主張\nする。しかし、閲覧者は、アカウントに表示された氏名やユーザー名によって投稿\n者を特定するものと解されるから、被告指摘の記載があったとしても、閲覧者は、 原告がその旨を記載していると理解するにすぎず、前記判示に影響を与えるもので はない。被告の前記主張は採用できない。
(2) 本件著作権の侵害について
著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美\n術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)をいう。 本件イラストは、P3氏が、ツイッター上の交流において原告を表すためにふさ\nわしいイラストとして制作したものであり、腹ばいになるアザラシの様子をイラス トにし、その下部に「(省略)」と記載したものであるところ、全体的に丸みを帯 びた輪郭で、頭部を大きくし、ヒレを頭部付近に小さく描くことにより、親しみや すくかわいらしい印象を与えている点、大きな頭部いっぱいに両目、鼻及び口を描 くことでアザラシの表情に存在感を与えている点、これらに「(省略)」という表\ 記を欧文字で加えることで、その性格(原告の人柄)を示しつつイラストとしての 一体感を感じさせる点において、選択の幅がある中から作成者によってあえて選ば れた表現であるということができる。したがって、本件イラストは、作成者の思想\n又は感情が創作的に表現された、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えたもの\nであると認められ、「著作物」に該当する。 証拠(甲20、21)及び弁論の全趣旨によれば、P3氏は、本件イラストを制 作し、原告に対し、本件イラストに係る著作権を譲渡したことが認められ、原告 は、本件イラストに係る著作権を有していると認められる。 本件黒塗りイラストは、本件イラストの両目部分に黒の横線が入れられ、「(省 略)」という表記が黒塗りされたものであるが、被告がかかる改変を行ったことを\n認めるに足りる証拠はない。一方、前記改変は、前記目線等を加えたことに限られ るから、本件黒塗りイラストは、本件イラストに依拠し、かつ、その表現上の本質\n的な特徴の同一性を維持しつつ、これに接する者が本件イラストの表現上の本質的\nな特徴を直接感得することができるものと認められ、本件黒塗りイラストは本件イ ラストの複製物又は翻案物であって、原告が著作権を有するものといえる。そうで あるところ、被告は、本件各投稿によって、本件黒塗りイラストに改変等を加える ことなくツイッター上に投稿して、少なくとも不特定の者に対して閲覧可能な状態\nにしたことから、本件各投稿は、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害す るといえる。
・・・
(4) 名誉感情侵害について
本件投稿1について検討するに、本件投稿1は、原告の氏名及び原告が経営する 法人グループの名称を表示するとともに、その存在はフィクションであり、実在の\n団体人物とは関係がない旨が記載されたものであるところ、一般閲覧者の普通の注 意と読み方を基準として判断した場合、本件投稿1に接した閲覧者は、原告自身が 原告や(省略)とは関係がない旨を投稿したと認識するものと認められる。したが って、本件投稿1は、閲覧者に対し、原告は趣旨不明な投稿をする人物であるとの 印象を与え、原告の名誉感情を侵害するものといえる。被告は、本件各投稿は司法 書士として品位に欠ける言動をやめさせる公益目的で行った旨主張するが、仮にそ のような目的があったとしても、原告になりすまして本件投稿1を行うことが正当 化される理由にはならない。 本件投稿2ないし4について検討するに、原告は、被告がP4アカウントを作成 したことを前提として、本件投稿2ないし4の閲覧者は、原告があたかもP4氏の 名誉権を侵害したり、プライバシー権を侵害したりする投稿を平気で行う人物であ ると受け止めることから、これらの投稿は原告の名誉感情を侵害する旨を主張す る。しかし、被告がP4アカウントを作成したことを認めるに足りる証拠はない。
また、P4アカウントによる投稿に接した閲覧者は、P4氏が自身のアカウントで 投稿していると認識するものと認められるところ、仮に被告が同氏になりすまして P4アカウントを作成し投稿していたとしても、P4アカウントによる投稿をリツ イートすること自体によって、直ちに同氏の名誉権やプライバシー権が侵害される ことにはならないから、原告の前記主張はその前提を欠く。そして、本件投稿2 は、名前を「P4」、ユーザー名を「(省略)」とするP4アカウントによる「ば ればれだよ。ことP4です。」という投稿を本件アカウントでリツイートしたもの であるところ、一般閲覧者の普通の注意と読み方を基準として判断した場合、本件 投稿2に接した閲覧者は、P4氏が自身のユーザー名及び氏名を紹介した投稿に対 して原告が注目し閲覧者に伝えようとしたと認識するものと認められる。したがっ て、本件投稿2は、原告の名誉感情を侵害するものとはいえない。また、本件投稿 3及び4は、P4アカウントによる「ネコではなくタチのP4です。」及び「バリ タチのP4です。」という投稿を本件アカウントでそれぞれリツイートしたもので あるところ、「ネコ」、「タチ」及び「バリ」が同性愛者を指す用語として用いら れることがあること(甲19)を踏まえ、一般閲覧者の普通の注意と読み方を基準 として判断した場合、本件投稿3及び4に接した閲覧者は、P4氏が自身が同性愛 者であることを摘示した投稿に対して原告が注目し閲覧者に伝えようとしたと認識 するものと認められる。したがって、本件投稿3及び4は、原告の名誉感情を侵害 するものとはいえない。
(5) 以上から、本件各投稿は原告の氏名権及び本件著作権(複製権及び公衆送 信権)を侵害し、本件投稿1は原告の名誉感情を侵害するものとして、不法行為を 構成する。\n
2 争点2(損害の発生及びその額)について
前記1認定の本件各投稿による権利侵害の内容及び態様の一切を考慮すると、本 件各投稿により、原告が被った精神的苦痛を慰藉する金額は、15万円が相当と認 められる。ただし、原告は本件イラストの著作者ではなく、本件著作権(複製権及 び公衆送信権)侵害により原告に精神的苦痛が生じたとは認めるに足りない。

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令和4(ワ)11394  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年1月16日  大阪地方裁判所

棋譜情報をフリーライド利用された被告が、Googleに対して著作権侵害であると申告したことが、不競法2条1項21号の不正競争に当たるとして、争われました。大阪地裁は、「虚偽の事実の告知」に該当すると認定し、約120万円の損害賠償を認めました。\n

本件動画は被告の著作権を侵害するものではない(この点について被告は争って いない。)にもかかわらず、本件削除申請は、グーグル等に対し、本件動画が被告\nの著作権を侵害する旨を摘示するものであるから、客観的な真実に反する内容を告 知するものとして、「虚偽の事実の告知」に当たると認められる。 これに対し、被告は、本件動画は被告の営業上の利益その他何らかの権利を侵害 する旨を主張するが、本件削除申請が虚偽の事実の告知に当たるかどうかの判断と\nは無関係である上、本件動画により被告の何らかの権利が侵害された事実も明らか でないから、採用できない。
2 争点2(本件削除申請は原告の「営業上の利益」を侵害するか)について\n
前提事実に加え、証拠(枝番号があるものは各枝番号を含む。以下同じ。甲4〜 13、15、16)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、ユーチューブ及びツイキ ャスにおいて、本件動画を配信して収益を得ていたところ、本件削除申請は、グー\nグル等のプラットフォーマーに対し、本件動画が被告の著作権を侵害する違法なも のであることを摘示する内容であり、これによって、原告は、ユーチューブにおい ては、別紙「原告動画目録」の「配信停止期間」欄記載の期間、動画の配信が停止 されたことが、ツイキャスにおいては、動画配信によって収益を得ることが少なく とも一定期間停止されたことがそれぞれ認められる。そうすると、本件削除申請は、\n原告が本件動画の配信という営利事業を遂行していく上での信用を害するものとし て、原告の「営業上の利益」を侵害したと認められる。
これに対し、被告は、原告による本件動画の配信は、被告が配信する棋譜情報を フリーライドで利用するという著しく不公正な手段を用いて被告ら棋戦主催者の営 業活動上の利益を侵害するものとして不法行為を構成することを指摘して、本件動\n画の配信に係る営業上の利益は法律上保護される利益に当たらない旨を主張し、こ れを裏付ける証拠として「王将戦における棋譜利用ガイドライン」(乙2)を提出 する。しかし、棋譜は、公式戦対局の指し手進行を再現した「盤面図」及び符号・ 記号による「指し手順の文字情報」を含むものと認められるところ(乙2)、本件 動画で利用された棋譜等の情報は、被告が実況中継した対局における対局者の指し 手及び挙動(考慮中かどうか)であって、有償で配信されたものとはいえ、公表さ\nれた客観的事実であり、原則として自由利用の範疇に属する情報であると解される。 同ガイドラインは、棋譜の利用権等を王将戦主催者が独占的に有する旨規定するが、 王将戦主催者が、原告を含めた被告の実況中継の閲覧者の関与なく一方的に定めた ものであり(乙2)、原告に対して法的拘束力を生じさせるものであるとはいえな い。また、前記1のとおり、本件動画は被告の著作権を侵害するものではなく、そ の他、原告が、被告の配信する棋譜情報を利用することが不法行為を構成すること\nを認めるに足りる事情はない。したがって、被告の前記主張は、その前提を欠き、 採用できない。

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令和4(ワ)9090 損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和5年6月12日  東京地方裁判所

YouTube動画におけるテロップについて、著作物と認定され、約24万円の支払いを認めました。

(1) 前提事実(第 2 の 1)、証拠(甲 8〜10)及び弁論の全趣旨によれば、本件動 画は、動物等のイメージ画像等を繋ぎ合わせたスライドショー、BGM、本件テロッ プ及びこれを朗読したナレーションによって構成されるところ、スライドショー及\nび BGM のみではストーリー性が乏しく、本件動画の内容を正しく把握することは 困難であると認められる。その意味で、本件テロップ及びこれを朗読したナレーシ ョンは、その余の構成部分に比して、本件動画の中で重要な役割を担うものといえ\nる。また、このような役割を担う本件テロップの内容は、男性 2 人が群れを離れた 野生のライオンを保護し育てた後、野生動物の保護地区に戻したことや、後に男性 らの 1 名がこの保護地区を訪れた際の当該ライオンとの再会の模様等の一連の出来 事に関し、推察される各主体の心情等を交えて叙述したものである。表現方法につ\nいても、本件テロップは、動画視聴者の興味を引くことを意図してエピソード自体\nや表現の手法等を選択すると共に、構\成や分量等を工夫して作成されたものといえ る。 したがって、本件テロップは、その作成者である原告の思想及び感情を創作的に 表現したものであり、言語の著作物と認められる。\n
(2) 被告は、本件テロップと同様の文章の構成により本件テロップと同じエピソ\ ードを紹介するインターネット上の記事は本件テロップの公開前から散見されるな どとして、本件テロップの著作物性は認められない旨主張する。 証拠(乙 1〜4)によれば、本件テロップの公開前から、男性 2 人が野生のライオ ンを育て、保護地区に戻したことや、後に男性が保護地区を訪れた際の当該ライオ ンとの再会の模様等の一連の流れに関して、本件テロップと共通性を有する少なく とも 4 つの記事がインターネット上で公開されていることが認められる。そのうち の 1 つの内容は、おおむね別紙「既公開記事の内容」記載のとおりであり、本件テ ロップとその公開前から存在する記事とでは、アイデアないし事実を共通にする部 分があると認められる。しかし、その具体的な表現を比較したとき、各主体の心情\nその他の表現の内容及び方法においてこれらは表\現を異にし、本件テロップにおい ては、上記既存の記事には見られない創作性が発揮されているといってよい。した がって、この点に関する被告の主張は採用できない。
2 争点 1-2(複製権、翻案権及び公衆送信権侵害の有無)
本件テロップと本件記事の各内容を比較すると、本件記事には、本件テロップと 完全に一致する表現が多数含まれる。他方、相違する部分は、句読点の有無や助詞\nの違い、文言の一部省略等の僅かな相違のほか、例えば、本件テロップには、「ドイ ツ出身のCさんは幼い頃からずっと動物を大切に思ってきました。」とあるのに対 し、本件記事には、「この感動のストーリーは 2 人の人間から始まります。その 1 人 がCさん。Cさんはドイツ出身。幼い頃よりずっと動物を大切に思ってきました。」 とあるなどの相違部分が存在する。これらの相違部分は、表現の手法等に若干の違\nいが見られるものの、内容的には、本件テロップの表現を若干修正したり、要約又\nは省略したり、前後の表現を入れ替えるなどしているにとどまり、実質的にほぼ同\n一の内容を表現したものといえる。\n複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製する ことをいうところ(著作権法 2 条 1 項 号)、著作物の再製とは、既存の著作物に 依拠し、これと同一のものを作成し、又は、具体的表現に修正、増減、変更等を加\nえても、新たに思想又は感情を創作的に表現することなく、その表\現上の本質的な 特徴の同一性を維持し、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を\n直接感得できるものを作成する行為をいうものと解される。また、翻案とは、既存 の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体\n的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表\現するこ とにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得でき\nる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成 11 年(受)第 922 号同 13 年 6 月 28 日第一小法廷判決・民集 5巻 4 号 837 頁参照)。
本件記事は、記事中に本件動画が埋め込まれていること(甲 4)や、上記のとおり、本件テロップと完全に一致する表現を多数含み、相違する部分も、句読点の有無等の僅かな形式的な相違や本件テロップの表\現の僅かな修正、要約、前後の入れ替え等にとどまり、実質的にほぼ同一の内容を表現したものであることに鑑みると、本件テロップに依拠したものと認められると共に、著作物である本件テロップの表\現上の本質的な特徴の同一性を維持し、これに接する者がその特徴を直接感得できるものと認められる。したがって、被告が本件記事を被告サイト上に投稿する行為は、原告の本件テロップに係る複製権又は翻案権を侵害するものであると共に、本件記事を送信可能化するものとして公衆送信権を侵害するものと認められる。また、本件記事が本件テロップに依拠していることから、上記著作権侵害行為につき、被告には少なくとも過失が認められる。これに反する被告の主張は採用できない。以上より、原告は、被告に対し、著作権(複製権又は翻案権、公衆送信権)侵害の不法行為に基づき、損害賠償請求権を有することが認められる。\n
3 争点 1-3(原告が本件テロップの著作権を主張することの信義則違反の有無)
被告は、原告が第三者の著作権を侵害して作成した動画による収益が減少したと して損賠賠償を請求し、また、本件動画全体としては請求が認められない可能性が\nあるため、本件テロップのみを対象として権利侵害を主張しているとして、原告の 請求が信義則に反する旨主張する。 しかし、そもそも、本件動画につき第三者の著作権を侵害して作成されたもので あることを認めるに足りる的確な証拠はない。その点を措くとしても、本件テロッ プは独立した表現物として把握し得るものであること、本件記事もそのような本件\nテロップに依拠して作成されたものとみられることに鑑みると、原告が本件テロッ プの著作権侵害を主張することをもって信義則に反するということはできない。こ の点に関する被告の主張は採用できない。
・・・
4 争点 2(原告の損害)
(1) 認定事実
前提事実、証拠(甲 14〜19(17 については枝番を含む。)、乙 11〜14)及び弁論 の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 原告は、令和 2 年 6 月 日に本件動画を投稿した。YouTube では動画の再生 回数等に応じて動画投稿者に収益が支払われるところ、上記投稿日から同年 月 日までの本件動画の再生回数は約 680 万 5000 回、推定収益は 309 万 6740 円で あった。また、推定収益の推移は別紙「推定収益の推移データ」のとおりであり、 上記投稿日から同年 11 月 30 日までの推定収益は 379 万 4863 円であった。
イ 令和 2 年 7 月 27 日、被告は本件記事を投稿して公開したが、同年 9 月 30 日 まで閲覧者はおらず、その後、原告の申入れを受けて本件記事を削除した同年 11 月 までの本件記事の閲覧回数は 154 回であった。
ウ 作家等文芸を職業とする者の職能団体であり、著作権管理事業を行う日本文\n藝家協会は、その著作物使用料規程である本件規程により、著作物を書籍として複 製し、公衆に譲渡する場合の使用料につき、本体価格の 15%に発行部数を乗じた額 を上限として利用者と協会が協議して定める額としている。
エ 原告は、本件訴訟に先立ち、本件記事につき発信者情報開示請求訴訟を提起 して発信者情報の開示を受けたところ、その際、原告は、弁護士に訴訟追行を委任 し、弁護士費用 44 万円(消費税込)、実費 1 万 4194 円を支払った。
(2) 逸失利益について
ア 主位的主張について
上記認定のとおり、本件記事の閲覧回数は、同年 月 1 日以降本件記事が削除 されるまでの間の 154 回にとどまる。このことと、本件動画の再生回数及び推定収 益、とりわけ推定収益の推移の状況に鑑みると、このような本件記事の投稿と本件 動画の再生回数ないし収益の減少との間に因果関係を認めることはできない。した がって、この点に関する原告の主張は採用できない。
イ 予備的主張について\n
原告は、本件記事により被告が得た収益の額ではなく、本件動画の経済的価値に 本件規程を参考にした仮想使用料率を乗じて、一回的な給付としての「著作権の行 使につき受けるべき金銭の額に相当する額」(著作権法 114 条 3 項)を算出すべき 旨主張するものと理解される。他方、被告は、このような原告の主張を前提としつ つ、本件記事により被告が得た収益の額を本件動画の経済的価値(ただし、その算 定対象期間は原告の主張と異なる。)に加算したものに仮想使用料率を乗じて「著作 権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」を算出すべき旨を主張する。そ こで、本件においては、本件動画の経済的価値を基礎とし、これに仮想使用料率を 乗ずることによって、一回的な給付としての「著作権の行使につき受けるべき金銭 の額に相当する額」を算出することとする。 まず、本件動画の経済的価値は、本件記事の投稿期間とは直接の関わりがないと 思われることから、原告の主張のとおり、本件動画の投稿日から本件記事の削除日 までの収益額 379 万 4863 円をもって本件動画の経済的価値とするのが相当である。 他方、上記本件動画の経済的価値及び本件規程の内容を参酌すると共に、本件テロ ップは、本件動画の中で重要な役割を担うものではあるものの、画像等と一体とな って本件動画を構成するものであること、ここでの仮想使用料率は著作権侵害をし\nた者との関係で事後的に定められるものであることその他本件に現れた一切の事情 を考慮すれば、仮想使用料率については 3%程度とみるのが相当である。そうする と、本件テロップに係る「著作権の行使につき受けるべき金銭の額」(著作権法 114 条3項)は、12 万円をもって相当とすべきである。これに反する原告及び被告の主 張はいずれも採用できない。
(3) 発信者情報の取得に要した費用
ウェブサイトに匿名で投稿された記事が不法行為を構成し、被侵害者が損害賠償\n請求等の手段を取ろうとする場合、被侵害者は、侵害者である投稿者を特定する必 要がある。このための手段として、非侵害者には、特定電気通信役務提供者の損害 賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律により発信者情報の開示を請求 する権利が認められているものの、これを行使するためには、多くの場合、訴訟手 続等の法的手続を利用することが必要となる。その際、手続遂行のために、一定の 手続費用を要するほか、事案によっては弁護士費用を要することも当然あり得る。 そうすると、これらの発信者情報開示手続に要した費用は、当該不法行為による損 害賠償請求の遂行に必要な費用という意味で、不法行為との間で相当因果関係のあ る損害となり得るといってよい。 本件では、上記認定のとおり、原告は、発信者情報開示請求訴訟に係る弁護士費 用 44 万円(消費税込)及び実費 1 万 4194 円の合計 4万 4194 円を支出した。発 信者情報開示手続の性質・内容等を考慮すると、このうち 万円をもって被告の 不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

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令和4(ネ)10106 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和5年6月8日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所

鉄道会社が、新聞記事をスキャンして、社内イントラネットにて閲覧できるようにしていた行為について、複製権侵害・公衆送信権侵害が争われました。1審は約200万円の損害賠償を認めました。知財高裁も同様ですが、損害額が上がっています。

1審被告は平成30年度掲載記事が「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(著作権法10条2項)であり、著作物に該当しない旨主張する。
しかしながら、上記認定のとおり、平成30年度掲載記事(甲9、10、乙14)は、事故に関する記事や、新しい機器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介事業等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に関する記事であるところ、そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなど表現上の工夫をし、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テーマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表\現上の工夫をして記事を作成していることが認められ、各記事の作成者の個性が表れており、いずれも作成者の思想又は感情が創作的に表\現されたものと認められるものであり、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」であるということはできない。
また、著作物といえるための創作性の程度については、高度な芸術性や独創性まで要するものではなく、作成者の何らかの個性が発揮されていれば足り、報道を目的とする新聞記事であるからといって、そのような意味での創作性を有し得ないということにはならない。
したがって、1審被告の上記主張は採用することができない。その他1審被告は、平成30年度掲載記事が著作物に該当しない理由を縷々指摘するが、いずれも採用することができない。

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◆令和5(ネ)10008

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◆令和2(ワ)12348

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令和4(ネ)74 損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和5年4月27日  大阪高等裁判所

布団の花柄模様について、大阪高裁は著作物ではないと判断しました。1審はアップされていません。判決文の最後に、原告商品があります。

控訴人は、P1から本件絵柄の著作権を譲り受けたことを前提に、被控訴 人らの布団製造販売行為が、控訴人が取得した著作権の侵害行為であると主張 して本件各請求をしている。しかしながら、以下に述べるとおり、本件絵柄は 著作権法上の著作物ということができないから、控訴人は著作権を譲り受けた といえず、したがって主張に係る著作権の侵害を前提とする控訴人の被控訴人 らに対する各請求はいずれも理由がないというべきである。
(2) 本件絵柄は、テキスタイルデザイナーであるP1によって販売目的で量産 衣料品の生地に用いるデザイン案として制作され、現にその目的に沿って控訴 人に対して販売され、実用品である原告商品の絵柄として用いられたものであ り(前記第2の2(2))、いわゆる応用美術に当たる。控訴人は、本件絵柄が、 いわゆる応用美術であるとしても、布団の絵柄は実用的機能とは全く無関係な\n部分であるし、またP1が本件絵柄を完成させた時点では、本件絵柄と布団は 分離されているから、本件絵柄は、他の著作物同様の創作性の判断基準で著作 物性が認められるべき旨主張する。
そこで検討するに、著作権法2条1項1号は、「著作物」とは「思想又は感情 を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する\nものをいう」と規定し、同法10条1項4号は、同法にいう著作物の例示とし て、「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」を規定し、同法2条2項は、「こ の法律にいう『美術の著作物』には、美術工芸品を含むものとする」と規定し ている。ここにいう「美術工芸品」は例示と解され、美術工芸品以外のいわゆ る応用美術が、著作物として保護されるか否かは著作権法の文言上明らかでな いが、同法が、「文化の発展に寄与すること」を目的とし(同法1条)、著作権 につき審査も登録も要することなく長期間の保護を与えているのに対し(同法 51条)、産業上利用することができる意匠については、「産業の発達に寄与す ること」を目的とする意匠法(同法1条)において、出願、審査を経て登録を 受けることで、意匠権として著作権に比して短期間の保護が与えられるにとど まること(同法6条、16条、20条1項、21条)からすると、産業上利用 することができる意匠、すなわち、実用品に用いられるデザインについては、 その創作的表現が、実用品としての産業上の利用を離れて、独立に美的鑑賞の\n対象となる美的特性を備えていない限り、著作権法が保護を予定している対象\nではなく、同法2条1項1号の「美術の著作物」に当たらないというべきであ る。そして、ここで実用品としての産業上の利用を離れて、独立に美的鑑賞の 対象となる美的特性を備えているといえるためには、当該実用品における創作 的表現が、少なくとも実用目的のために制約されていることが明らかなもので\nあってはならないというべきである。
これに対し、控訴人は、著作権法と意匠法による保護が重複することについ て何ら調整の必要がないとする前提で著作権法による保護を求めていると解 されるが、両法制度の相違に鑑みれば、両法制度で重複的に保護される範囲に は自ずと限界があり、美術の著作物として保護されるためには、上記のとおり の要件が必要であるというべきである。実用品における創作的表現につき、無\n限定に著作権法上の保護を及ぼそうとする控訴人の主張は、現行の法体系に照 らし、著作権法が想定しているところを超えてまで保護の対象を広げようとす るものであって採用することはできない。
(3) 以上の観点から、本件絵柄についてみると、本件絵柄それ自体は、テキスタ イルデザイナーであるP1によってパソコン上で制作された絵柄データであ\nり、また、実用品である布団の生地など、量産衣料品の生地にプリントされて 用いられることを目的として制作された絵柄であるが、その絵柄自体は二次的 平面物であり、生地にプリントされた状態になったとしても、プリントされた 物品である生地から分離して観念することも容易である。そして、本件絵柄の 細部の表現を区々に見ていくと、控訴人が縷々主張するようにテキスタイルデ\nザイナーであるP1が細部に及んで美的表現を追求して技術、技能\を盛り込ん だ美的創作物であるということができ、その限りで作者であるP1の個性が表\nれていることも否定できない。
しかし、本件絵柄は、その上辺と下辺、左辺と右辺が、これを並べた場合に 模様が連続するように構成要素が配置され描かれており、これは、本件絵柄を\n基本単位として、上下左右に繰り返し展開して衣料製品(工業製品)に用いる 大きな絵柄模様とするための工夫であると認められる(本件絵柄は、原告商品 であるシングルサイズの敷布団では上下左右に連続して約6枚分、掛布団では 同様に約9枚分プリントされて全体に一体となった大きな絵柄模様を作り出 すよう用いられている(弁論の全趣旨)。)から、この点において、その創作的 表現が、実用目的によって制約されているといわなければならない。\nまた、本件絵柄に描かれている構成は、平面上に一方向に連続している花の\n絵柄とアラベスク模様を交互につなぎ、背景にダマスク模様を淡く描いたもの であるが(本件絵柄に用いられている模様が、このように称される絵柄である ことは訴訟当初から当事者間に争いがない 。)、証拠(乙2、丙3ないし13) 及び弁論の全趣旨によれば、アラベスク模様はイスラムに由来する幾何学的な 連続模様であり、またダマスク模様は中東のダマスク織に使用される植物等の 有機的モチーフの連続模様であって、いずれも衣料製品等の絵柄として古来か ら親しまれている典型的な絵柄であり、これら典型的な絵柄を平面上に一方向 に連続している花の絵柄と組み合わせ、布団生地や布団カバーを含む、カーテ ン、絨毯等の工業製品としての衣料製品の絵柄模様として用いるという構成は、\n日本国内のみならず海外の同様の衣料製品についても周知慣用されているこ とが認められる。そして、本件絵柄における創作的表現は、このような衣料製\n品(工業製品)に付すための一般的な絵柄模様の方式に従ったものであって、 その域を超えるものではないということができ、また、販売用に本件絵柄を制 作したP1においても、そのことを意図して、創作に当たって上記構成を採用\nしたものと考えられるから、この点においても、その創作的表現は、実用目的\nによって制約されていることが、むしろ明らかであるといえる。 そうすると、本件絵柄における創作的表現は、その細部を区々に見る限りに\nおいて、美的表現を追求した作者の個性が表\れていることを否定できないが、 全体的に見れば、衣料製品(工業製品)の絵柄に用いるという実用目的によっ て制約されていることがむしろ明らかであるといえるから、実用品である衣料 製品としての産業上の利用を離れて、独立に美的鑑賞の対象となる美的特性を 備えているとはいえない。したがって、本件絵柄は、「美術の著作物」に当たるとはいえず、著作物性を認めることはできないというべきである。
(4) 以上によれば、控訴人が譲り受けたとする本件絵柄は著作物ではなく著作 権そのものが認められないから、控訴人が本件絵柄について著作権を有してい るとは認められず、その結果、被告製品に付された絵柄が、本件絵柄に依拠し て作成されたものであり、また同一性が認められる範囲内にあるとしても、被 控訴人らの被告製品の製造販売行為をもって著作権侵害であることを前提と する控訴人の被控訴人らに対する請求は、その余の争点について判断するまで もなく理由がないというべきである。なお、控訴人が、控訴人において本件絵 柄の背景のダマスク模様の一部を改変して制作した原告絵柄4及び同5の著 作権侵害をいう部分があるが、その主張が認められないことは上記と同様であ る。

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令和3(ワ)11472  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年5月11日  大阪地方裁判所

被告がAmazonに対して、著作権侵害申告をした行為が不競法2条1項21号の不正競争行為に該当すると判断されました。裁判所は、正面から商品を撮影した画像について、そもそも著作物ではないと判断しました。\n

前記(1)アのとおり、被告各画像のうち、写真集又は卓上カレンダーに 係る画像である被告画像1、2及び4ないし10は、販売する商品がどの ようなものかを紹介するために、平面的な商品を、できるだけ忠実に再現 することを目的として正面から撮影された商品全体の画像である。被告は、 商品の状態が視覚的に伝わるようほぼ真上から撮影し、商品の状態を的確 に伝え、需要者の購買意欲を促進するという観点から被告が独自に工夫を 凝らしているなどと主張するが、具体的なその工夫の痕跡は看取できない 上、撮影の結果として当該各画像に表現されているものは、写真集等とい\nう本件各商品の性質や、正確に商品の態様を購入希望者に伝達するという 役割に照らして、商品の写真自体(ないしそれ自体は別途著作物である写 真集のコンテンツとしての写真)をより忠実に反映・再現したものにすぎ ない。
(イ) 単語帳に係る画像である被告画像3は、前記同様に商品をできるだけ 忠実に再現することを目的として正面から撮影された商品全体を撮影し た平面的な画像2点と、扇型に広げた商品の画像1点を配置したものであ り、当該配置・構図・カメラアングル等は同種の商品を紹介する画像とし\nてありふれたものであるといえ、被告独自のものとはいえない。
(ウ) 以上より、被告各画像は、被告自身の思想又は感情を創作的に表現し\nたものとはいえず、著作物とは認められない。 (エ) また、商品名については、前記(1)イのとおり、いずれも商品自体に付 された商品名をそのまま使用するか、欧文字をカタカナ表記に変更したり、\n大文字表記を小文字表\記にしたり、単に商品の内容を一般的に説明したに とどまるありふれたものであって、著作物とは認められない。 そのほか、被告は、本件各申告には被告サイト上の商品の説明文に関す\nる著作権侵害も含まれるかのように主張するが、具体性を欠く上、その説 明が創作性を有するとは想定できず、失当である。

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令和4(ネ)10079  著作権侵害による損害賠償、損害賠償反訴請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和5年1月31日  知的財産高等裁判所  横浜地方裁判所

 知財高裁(4部)は、1審と同じく、原告設計図の著作物性を否定しました。なお、原審はアップされていません。

 控訴人は、前記第2の3(1)アのとおり、設計図は、工事に携わる者の間の 共通言語であり、特に、設計者と施工者が異なる場合は、設計図面以外での 詳細な情報伝達手段はないから、原告設計図全体では創作性があると認めら れるべきである旨主張する。しかし、設計図が工事に携わる者に共通して利 用されるものであることは、むしろ、多くの場合、様々な関係者が施工内容 を理解することができるよう、作図上の表現方法や内装の具体的な表\現は実 用的、機能的でありふれたものにならざるを得ないことを示すものというべきであり、現に、原告設計図や原告設計図の具体的な表\現内容が実用的、機能的でありふれたものであることは、引用に係る原判決第4の2(3)における 説示のとおりである。 また、控訴人は、前記第2の3(1)イのとおり、原告設計図作成時点におい て被控訴人運営に係る既存店は、第三者が経営する店舗を譲り受けたものに すぎず、デザイン構築上準備段階のものであり、本件店舗が、被控訴人の経営する系列店舗で初の旗艦店であるから、原告設計図は創作性を有する旨主\n張する。しかし、ここで問題となっているのは、被控訴人運営に係る各店舗 に統一感を持たせる観点から、内装のデザインには一定の制約があったとい うことであり、各店舗の具体的な内装の先後関係ではないから、上記主張は 採用できない。
(2) 前記(1)によれば、原告設計図や原告内装について著作物性が認められない 以上は、その他の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない というほかないが、念のために、控訴人の前記第2の3(2)記載の主張につい ても触れると、建物やその内装の完成のための手段であり、通常それ自体が 鑑賞の対象となるものではない設計図の性質からして、設計に係る契約にお いては、特段の合意がない限り、設計報酬とは別に設計図ないし内装の著作 権についての使用料請求権が設計者に留保されるとは認め難く、本件で特段 の合意がされたと認めるべき証拠もない。これを裏返して言えば、控訴人は、 本件設計等契約において、被控訴人に対し、原告設計図に基づき、自ら又は 第三者をして本件店舗の内装工事を施工し、工事完了後は本件店舗で親子カ フェの営業を行うこと等を当然に了承していたもので、著作権ないし著作者 人格権を行使しないことが契約締結の前提となっていたものというべきであ る。 なお、原告設計図に基づき本件店舗の内装が施工されたことは事実であり、 また、補正の上引用した原判決第2の2(2)オのとおり、一審被告キャピタラ ンドと訴外アイ・イーエスとの間の本件店舗の内装工事に係る請負契約では、 デザイン・設計料は別途とされたものであるところ、それにもかかわらず控 訴人が誰からも設計図に係る報酬を得られないことについては同情すべき面 もあるが、報酬請求権が時効消滅した以上、やむを得ないというほかない。

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令和3(ワ)5086  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年12月12日  大阪地方裁判所

原告の「桜のイラスト」の複製・翻案かが争われました。大阪地裁は、著作物性は認めたものの、創作性ある部分が共通しないとして、請求棄却しました。

3 争点2(被告各イラストが、原告各イラストを複製ないし翻案したものであり、 かつ同一性保持権を侵害するものであるかどうか)について(被告イラスト2に 関する判断)
前記2の認定によると、原告イラスト1は、現実の桜にみられる要素を原告な りの手法により適宜デフォルメして表現し、それらを組み合わせた上、認定に係\nる背景を付した所定の用紙上に配置するなどして1個のデザインとして完成さ せたものであって、認定した表現を含む表\現の総体としては原告の個性が現れた ものであって創作性があるといえ、著作物性を一応肯定できる(争点1)。 よって、進んで争点2について判断する。
この点、原告は、原告特徴1)〜9)が原告イラスト1の表現上の本質的な特徴で\nあり、そのうち原告特徴1)及び3)〜9)が被告各イラストと共通し、被告各イラス トに接した者が原告イラスト1の表現上の本質的な特徴を直接感得することが\nできると主張するところ、原告は、主に被告イラスト2との対比において複製な いし翻案を主張したので、まず被告イラスト2について検討する。
(1) 原告特徴1)について
原告主張の原告特徴1)は、前記第3の2(1)に主張のとおりであるところ、 ここでいう「背景全体」とは、花の白いスタンピング(かすれ要素A)が原告 特徴2)として特定されてこれが除かれていることから、原告イラスト1から、 正面視花要素A、側面視花要素A、つぼみ要素A、かすれ要素Aを除いた部分 をいうものと解される。
そして、前記認定によると、同部分の具体的態様は、「色調の異なるピンク色 や一部オレンジ色が、不明瞭にぼかし味をもちながら配色された」ものであっ て、これと対応する被告イラスト2の要素としては、「赤みのある紫、青みのあ る紫、オレンジ色などがグラデーション、ぼかしを伴って全体としてはマーブ ル状に彩色され、前記すかしを伴ったスタンピング要素Bがランダムに散りば められている」背景部分が該当する。
この点、原告イラスト1と被告イラスト2の背景部分は、そもそもの枠の大 きさが異なることに伴う広がりの規模や、背景として認識される部分の形状が 大きく異なって特段の共通点を見出し難い上、被告イラスト2における、赤み のある紫、青みのある紫、オレンジ色などがマーブル状に彩色されている点は、 原告イラスト1にはみられない被告イラスト2の特徴というべきであって、こ れらの相違点の与える影響は大きなものがある。したがって、原告特徴1)で指摘する内容は、被告イラスト2との共通点を構成しないというべきである。\n
(2) 原告特徴3)ないし同4)について
原告は、原告特徴3)及び同4)が被告イラスト2にもみられると主張するとこ ろ、前記認定によると、原告イラスト1には、5または6個の正面視花要素A 等で構成されるまとまりが台紙の略左中央上、略右上及び略右下の3か所にあ\nることが認められる。また、原告特徴4)中の「空きスペース」に描かれた「適 宜桜の花」が具体的に何を指すかは必ずしも明らかではないが、右上上端及び 左中下端に見切れた正面視花要素Aが各1個、台紙略左下のおおむね中央に正 面視花要素A1個をいうものと解され、これらが同位置に配されている。
一方、被告イラスト2においては、3個の正面視花要素B等で構成されるま\nとまり(別紙被告イラスト2分析図でいうγ及びεのまとまり)、4個の正面 視花要素B等で構成されるまとまり(同分析図でいうδのまとまり)、5個の\n正面視花要素B等で構成されるまとまり(同分析図でいうα及びβのまとまり)\nが、袋体正面では15から20個、前記αからεまでのまとまりが回転を加え たうえでやや不規則に被告イラスト2の枠を埋めるように配されている。また、 これらのまとまりが不整形な形状のためにできたまとまりのない部分に正面 視花要素Bが単独で配されている。 そして、原告イラスト1にみられるまとまりと、被告イラスト2におけるま とまりを、それ自体で相互に比較しても、各構成要素(正面視花要素、側面視\n花要素、つぼみ要素)の構成や形態において同一のものは認められない上、被\n告イラスト2においては、まとまりの数自体や、まとまりの繰り返しによって 与えられる印象が強く、後述の各構成要素の相違点と相まって、「5ないし6\n個の桜の花をまとまって描く」というアイデアのレベルを超えた具体的な表現\n上の共通性を認めることはできない。また、桜の花を数個まとめて描くこと自 体は、自然の桜を描写する際に自然に着想することであって、他の桜のイラス トにもみられるありふれたものといわざるを得ない。また、原告特徴4)につい ても、原告イラスト1においては、被告イラスト2との対比において、まとま りとまとまりの間隔というものは観念しづらく、むしろまとまりの配置のない 略左下部に1個の正面視花要素Aを配したとの印象が強く、具体的表現におけ\nる共通性を感得できない。 以上によると、原告特徴3)及び同4)で指摘される内容は、被告イラスト2に みられる特徴とはいえず、共通点は認められない。
(3) 原告特徴5)、同6)及び同7)について
原告は、正面視花要素Aに関して、原告特徴5)、同6)及び同7)が特徴であり、 同特徴が被告イラスト2にも存すると主張する。 この点、まず、正面視花要素Aと同Bの花弁についてみると、前記認定のと おり、原告イラスト1における花弁は、「白色で基部付近はピンクないし淡い ピンク色が不均一の色調でぼかしたように配されている」のであり、花弁の白 と背景のコントラストが強く意識される一方、被告イラスト2における花弁は 「ごく薄い赤みないし青みのかかった紫色の下地に透明感のある白の小さな おおむね丸いドットが重なるように多数配されて前記薄紫の下地が透けて看 取できる」態様で描かれており、花弁それ自体も淡く着色されている上、背景 とのコントラストは弱く、全体として正面視花要素Bは同Aと相当に異なった 印象を受けるものである。したがって、原告特徴5)が被告デザイン2にも備わ っているとは認められない。また、原告特徴6)及び同7)についてみると、完全 に開花した桜を正面視で「5枚の花弁を放射線状に一体に、花弁ごとに区切ら ずに描き、花弁の中央部に略放射線状にランダムな長さ及び角度で8本又は9 本描く」ことや、同様にやや斜方視で、「5枚の花弁を略扇形に一体に、花弁ご とに区切らずに描いた上で、弧の部分にランダムに山を複数描き、花弁の下寄 りの部分に茶色の細い線でおしべ等を略扇形状にランダムな長さ及び角度で 6本又は7本描き、その先端を茶色の小さい丸で描いている点」は、前記認定 に係る自然の桜の態様及び他のイラストの表現に照らすと、桜のイラストにみ\nられるごく一般的な表現であり、ありふれたものであって、そもそもかかる特\n徴は、原告イラスト1の本質的特徴に当たらない。
(4) 原告特徴8)及び同9)について
原告主張の「先端に白色のつぼみがついた茶色の花柄及びがく片を、花から 適宜飛び出して描いている点」(原告特徴8))及び「つぼみには完全に閉じた状 態のものと、半開き状態のものがあり、前者はふっくらとした雫形状で、先端 がやや尖っていて、がく片は3本であり、後者は略扇形で弧の部分にランダム に山を複数描き、がく片は基本的に4本となっている点」についても、前記認 定に係る自然の桜の態様及び他のイラストの表現に照らすと、桜のイラストに\nみられるごく一般的な表現であり、ありふれたものといわざるをえず、原告イ\nラスト1の本質的特徴に当たらない。
・・・
(6) まとめ
以上のとおり、被告イラスト2は、アイデアなど表現それ自体でない部分又\nは表現上創作性がない部分において原告イラスト1と同一性を有するにとど\nまり、これに接する者が、原告イラスト1の表現上の本質的な特徴を感得する\nことはできないから、依拠性を判断するまでもなく、原告イラスト1の複製及 び翻案に当たらない。よって、被告イラスト2を用いた被告製品2を被告が販 売した行為は、原告の原告各イラストに係る複製権及び翻案権を侵害するもの とはいえず、同様に、同一性保持権を侵害するということもない。

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令和3(ワ)21224  損害賠償金請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年11月21日  東京地方裁判所

ウェブページのフライパンの説明画像について、著作権侵害を認め、5万円の賠償を認めました。

本件において、原告が、本件各画像を含め、自己が著作権を有する著作 物を第三者に有償で利用許諾していたと認めるに足りる証拠はないから、 実際の利用許諾例に準じて使用料相当額を算定することはできない。 イ この点、原告は、新聞社や写真提供会社が提供する画像レンタルサービ スにおける使用料を根拠として、本件各画像の1ページ当たりの使用料相 当額は6万6666円を下らず、これに本件各画像が掲載されたウェブペ ージのページ数を乗じて使用料相当額を算定すべきであると主張する。 (ア) まず、ページ数を単純に乗ずることの当否について検討すると、原告 商品は、特長、材質、製造方法、メーカーなどが同一である複数のフラ イパンの一群からなる商品であるところ(甲12)、被告ストアにおける 本件各画像の利用態様も、複数の商品販売ページにわたって、原告商品 が等しく備える特長等を紹介する本件画像1)ないし7)の各画像の複製物 を共通して複製及び送信可能化し、本件商品画像については、当該ペー\nジで販売している商品に相当する画像1点を複製及び送信可能化したと\nいうものであることが認められる(前提事実(2)ア、イ、甲2)。このよ うな利用態様にかんがみれば、特に、全てのページにわたって原告商品 に共通する特長等を紹介する同一の画像7点については、異なる態様で 複数回利用された場合と同視することはできず、本件において、単純に ページ数(すなわち販売している商品の種類の数)を乗じて使用料相当 額を算定することが相当であるとはいえない。
そこで、更に検討すると、本件各画像は、商品群からなる原告商品の ネット通販用広告画像、すなわち販売促進資料として作成されたものと 認められることから(甲12)、原告商品の販売と無関係に本件各画像を 使用することは通常考え難く、仮に原告が第三者に本件各画像の利用を 許諾するとすれば、原告も主張するとおり、原告商品の日本国内の正規 代理店として、原告商品の再販売契約をするに当たり、その販売促進資 料として本件各画像全体を利用許諾するような場合が想定される。そし て、同一のオンラインショッピングモール上に出店しているとしても、 オンラインストア名が異なれば、商品の販売経路を複数有することにな るから、販売促進資料としての画像の利用許諾契約に当たっても、原告 商品を取り扱うオンラインストア数の多寡を考慮するのが合理的といえ る。アフロ社が提供している画像レンタルサービスにおいて、同一サイ トである限り、使用箇所を問わず同じ使用料が設定されている(甲7の 「ウェブ広告・ホームページ」欄の注記)ことも、オンラインストア数 に応じて使用料相当額を算定する方法の合理性を裏付けるものである。 以上のとおり、原告商品が一つの商品群からなるものであること、被 告ストアにおける本件各画像の実際の利用態様及び想定される本件各画 像の利用許諾の態様にかんがみれば、本件各画像の使用料相当額を算定 するに当たっては、本件各画像の複製物が掲載されたページ数(すなわ ち販売している商品の種類の数)ではなく、オンラインストア数を基準 とすべきであって、本件においては、被告ストアが一つであることから、 被告ストア全体にわたって本件各画像を1回利用したものとして算定す るのが相当というべきである。
(イ) 次に、本件各画像の具体的な使用料相当額について検討する。
a 原告が指摘する新聞社の画像レンタルサービスにおいて、具体的に どのような写真や画像が提供されているのかを認めるに足りる証拠は ない。しかし、新聞社が提供する写真は、いわゆる報道写真にみられ るように、ある事件や事象の一瞬を捉えているなど、構図やシャッタ\nーチャンス等に高度な工夫を凝らした創作性の高いものや、他の手段 では入手が困難な希少性の高いものである可能性があると考えられる。\nまた、アフロ社が提供する画像レンタルサービスについては、上記 のような報道写真とは異なる性格の画像も提供されていることがうか がわれるものの(甲7)、やはり、実際にどのような写真や画像が提供 されているのかは、本件証拠上認めるに足りない。
b その一方で、被告が指摘するシャッターストック社やピクスタ社の 画像レンタルサービスについてみると、証拠からうかがわれる具体的 な画像の内容(乙3、4)のほか、ピクスタ社では6200万点以上 の写真、イラストなどの素材について、料金が1か月間に利用できる 画像の点数に基づいて設定されていたり、未利用画像数を翌月以降に 繰り越せるといった条件で提供されていたりすること(乙2、4)に かんがみれば、これらのサービスにおいて低額な使用料で提供されて いるのは、汎用性のあるウェブサイト用の素材である可能性が高い。\n もっとも、商業的利用の可否など、その余の使用条件については、 本件証拠上判然としない。
c これに対し、前提事実(2)ア及び前記(ア)のとおり、本件各画像は、 商品販売ページを見た顧客の購買意欲を高めるように、原告商品を用 いて調理している様子を撮影した写真や特長等を述べた文言、画像な どを配置した原告商品に特化した販売促進目的の画像であって、報道 写真とも、シャッターストック社やピクスタ社が提供する汎用性のあ るウェブサイト用の素材とも、性格及び目的が大きく異なる。また、 前記(ア)において説示したとおり、原告が第三者に本件各画像を利用許 諾することが想定されるのは、原告商品の正規代理店として、原告商 品の再販売契約に当たって販売促進資料として利用されるような場合 であるから、専ら写真、画像等の利用許諾に伴う使用料をもって収益 を上げるというビジネスモデルに基づき設定された使用料の水準が妥 当するともいい難い。これらの事情に照らせば、原告及び被告の双方 がそれぞれ指摘する画像レンタルサービスにおいて規定されている使 用料の水準が本件においてそのまま妥当するとはいえない。
その一方で、前記(ア)のとおり、本件各画像は、原告商品の再販売契 約に伴う販売促進資料との位置付けで利用許諾されることが想定でき るから、本件各画像の使用料のみによって本件各画像の取得費用を回 収したり、原告商品の再販売によって得られる利益を超えたりするよ うな高額な使用料が設定されるとは考え難い。
このほか、本件各画像は、報道写真のように高度の創作性を有して おり代替可能性が小さいとまではいえないものの、原告商品に特化し\nた販売促進資料として工夫して作成されたものであり(前記(ア))、相 応に創作性を有する著作物であること(前記1)、被告ストアにおける 販売商品数は11点であり、本件各画像の利用期間が約3か月間であ ったこと(前記(1))、本件各画像の利用に当たっての将来の使用料額 を定める場面ではなく、原告の許諾を何ら得ることなく本件各画像を 利用した被告に対する損害賠償を請求する場面での金額の算定である ことなどを総合考慮すると、本件各画像の使用料相当額は合計5万円 と認められる。
ウ 当事者の主張について
(ア) 原告は、本件各画像の使用料相当額を算定するに当たり、いつも社に 本件各画像のデザイン制作料等として約700万円を支払ったことを考 慮すべきであると主張する。 しかし、原告がいつも社に委託したのは、ウェブサイト関連業務及び 検索エンジン最適化サービスであり、本件各画像の制作業務はその一部 を構成するにすぎないと認められるところ(甲12)、本件各画像のデザ\nイン制作のみに要した費用を認めるに足りる的確な証拠はない。 したがって、本件各画像の使用料相当額の算定に当たって、原告が主 張する金額を考慮することはできない。

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平成30(ワ)17968 著作権 民事訴訟 令和4年8月30日 東京地方裁判所

 在宅医療用プログラムの著作物性について争われました。東京地裁は被告プログラムのうち表現が似ている部分については、いずれも創作性無しと判断しました。\n

 以上のように、PMポータルを基盤としPMポータルのWebフレーム ワークを用いて作成されたことに起因して、(ア)部分の多くはPMポータル のWebフレームワークを構成するプログラムファイルから構\成されてお り、(ウ)部分は、PMポータルのWebアプリケーション部を参照して作成 され、データの処理や画面の表示などの中核的な機能\は(ア)部分を参照して 実行するため、その内容は、自由度が制約され、基本的な命令文を列挙し て、変数にデータを代入する処理や画面を表示するためのHTML文書が\n記述された部分が多くを占めていること(前記第2の1(5)イ、前記イ)、 作成、表示される医事文書の基本的な様式も通知により定められるなどし\nていることから、各プログラムにおいて変数に値を設定する処理や画面を 表示するためのHTML文書を記述するに当たっても個性を発揮する余地\nが乏しい。これらの(ア)及び(ウ)部分の特性から、電子カルテシステムに適用 するために、PMポータルを修正し新たに作成した部分があるからといっ て、そのことが直ちに本件31個の各プログラムの表現上の創作性につな\nがるとはいえない(前記ウ )。そして、原告は、本件各31個の各プロ グラムがそれぞれ著作物であり、それらに創作性があると主張するところ、 原告が本件31個の各プログラムの創作的表現であると主張する具体的な\n各点について、本件31個の各プログラムを含む(ア)及び(ウ)部分が上記のと おりの特性を有する部分でありそこにおけるプログラムもその特性の下に あるものであることにも関係し、原告が創作性があるとして主張する具体 的な記述等はいずれもありふれたといえるものなどであって、それらに独 自に著作物といえる程度の表現上の創作性を認めるに足りない(前記ウ\n〜 )。 以上のとおり、本件31個の各プログラムにPMポータルを離れた独自 の創作性があるとは認めるに足りない。
・・・・
原告プログラム4と被告プログラムにおいて共通する本件共通箇所は、原告 プログラム4においては、(オ)部分に用いられているORCAから受信したXM Lデータを解析する部分の一部である。 本件共通箇所のうち、オープンソースである「XML_Unserializer.php」を 用いた部分は、その仕様に基づくインスタンスを記述したものであり(前記1 (2)ウ )、その記述例もインターネットウェブサイトにおいて公開されている ものであって(乙56)、ありふれた表現であって、創作性が認められない。\nまた、本件共通箇所のその余の部分は、異なる施設間で診療情報を電子的に 交換するために制作された規約であるMML及びCLAIMにおいて定義され たタグ(用語)(前記1(2)ウ )を、「XML_Unserializer.php」の仕様に従 って記述した(乙62)ありふれた表現であって、創作性が認められない。\n以上によれば、本件共通箇所に創作性があると認めるに足りない。

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令和4(ネ)10011  商号使用差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和4年9月27日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 会社名を示すロゴについて著作物性無しと判断されました。原審の最後に問題の標章があります。

著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学\n術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう(著作権法2条1項1号)。そ して、商品又は営業の出所を表示するものとして文字から構\成される標章 は、商品又は営業の出所を示すという実用的な目的で作出され、使用され るものであり、その保護は、商標法又は不正競争防止法により図られるべ きものである。文字からなる商標の中には、外観や見栄えの良さに配慮し て、文字の形や配列に工夫をしたものもあるが、それらは、文字として認 識され、かつ出所を表示するものとして、見る者にどのように訴えかける\nか、すなわち標章としての機能を発揮させるためにどのように構\成するこ とが適切かという実用目的のためにそのような工夫がされているもので あるから、通常は、美的鑑賞の対象となるような思想又は感情の創作性が 発揮されているものとは認められない。商品又は営業の出所を表示するも\nのとして文字から構成される標章が著作物に該当する場合があり得ると\nしても、それは、商標法などの標識法で保護されるべき自他商品・役務識 別機能を超えた顕著な特徴を有するといった独創性を備え、かつそれ自体\nが、識別機能という実用性の面を離れて客観的、外形的に純粋美術と同視\nし得る程度の美的鑑賞の対象となり得る創作性を備えなければならない というべきである。
・・・
商標法などの標識法で保護されるべき自他商品・役務識別機能を超えた\n顕著な特徴を有するといった独創性を備え、かつそれ自体が、識別機能と\nいう実用性の面を離れて客観的、外形的に純粋美術と同視し得る程度の美 的鑑賞の対象となり得る創作性を備えるものとは認められないから、著作 権法により保護されるべき著作物に該当するとは認められない。
ア 控訴人は、Bは、控訴人標章に、単なるロゴタイプ・デザインを超えた 美の表現・印象を強く感じ、ウェブでの被控訴人商品の販売に利用したい\nと考えて控訴人標章を模倣したものであり、このことからしても、控訴人 標章には個性があり著作物性があると主張する(前記第3の2(1)〔控訴人 の主張〕ア)。 しかし、Bは、被控訴人商品に関する事業を実施するに当たり、同事業 に対するBの様々な意図や願望を込め、禅宗の僧侶等にも相談するなどし て「アノワ」という語を含む被控訴人商号を考案して商号変更し、さらに そのローマ字表記である「ANOWA」を含む被控訴人商品の名称(「AN\nOWA41」)を考案したものと認められ(乙11)、控訴人標章を被控訴 人商品に使用するために、被控訴人の商号を、控訴人標章の「ANOWA」 の読みである「アノワ」とし、ドメイン名を「ANOWA」を含む「AN OWA41」としたものであることを認めるに足りる証拠はない。 したがって、Bが控訴人標章を模倣したと認めることはできず、控訴人 の上記主張は、その前提を欠き、採用することはできない。
イ 控訴人は、不正競争防止法によればTシャツの柄は保護の対象となるか ら、デザインも保護すべきであり、著作権法によってもデザインを保護す べきであると主張する(前記第3の2(1)〔控訴人の主張〕イ)。 しかし、Tシャツの柄が不正競争防止法による保護の対象となる場合が あるとしても、著作権法は、思想又は感情の創作的な表現を保護するもの\nであるから、著作権法によって当然にデザインの全てが保護されるべきで あるとはいえないし、標章は、Tシャツのデザインと性質を異にするもの であるから、控訴人の上記主張に基づいて、控訴人標章が著作権法により 保護されるということはできない。
ウ 控訴人は、控訴人標章は、文字を用いるものであるが、控訴人のロゴタ イプとしての利用を目的としてデザインされたものであり、控訴人の商号 と一致するアルファベットを強調していること、文字は誰でも使用できる ものであるから文字を強調するロゴタイプ・デザインは全て著作物とはな りえないとする合理的理由はないことを主張する(前記第3の2(1)〔控訴 人の主張〕ウ)。 しかし、控訴人標章は、標章としての機能を発揮させるためにどのよう\nに構成することが適切かという実用目的のために工夫がされているもの\nであり、美的鑑賞の対象となるような思想又は感情の創作性が発揮されて いるものとは認められないから、美術その他の範囲に属する著作物には該 当しないものというべきであり、控訴人の上記主張を採用することはでき ない。
エ 控訴人は、控訴人標章はポスターと等価値であり、著作権法制定当時、 ポスターは著作物又は著作物の複製として扱われるというのが著作権法 の解釈であったから、控訴人標章も著作権法上保護されるべきであると主 張する(前記第3の2(1)〔控訴人の主張〕エ)。 しかし、控訴人標章は、商品又は営業の出所を表示する標章であり、商\n標法や不正競争防止法の保護の対象となる余地があり得るとしても、ポス ターと等価値であるとはいえないから、控訴人の上記主張は、採用するこ とができない。
オ 控訴人は、控訴人標章が一品制作の図又は絵であるとしたら創作性のあ ることは議論の余地がなく、漫画の特徴的な表現を含む一こまを模倣して\nも著作権侵害となるのに、ロゴタイプ・デザイン(量産品の原画)である が故に著作権法の保護の対象とならない、あるいは高度の創作性がなけれ ば著作権法の保護の対象とならないというのは、著作権法上の著作物の定 義に反すると主張する(前記第3の2(1)〔控訴人の主張〕オ)。 しかし、控訴人標章は、商品又は営業の出所を表示する標章であり、商\n標法や不正競争防止法の保護の対象となる余地があり得るとしても、一品 制作の図又は絵や漫画とは性質を異にするから、控訴人の上記主張は、採 用することができない。

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原審はこちらです。

◆令和2(ワ)19840

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令和3(ワ)30051  損害賠償請求事件  その他  民事訴訟 令和4年9月28日  東京地方裁判所

 放送局における番組中のナレーションが原告ブログに依拠しているかについて、著作物性を立証していないとして、著作者人格権による損害賠償請求が棄却されました。興味深いのは、被告が、既存の文章をほぼ転載したものであることを謝罪する旨の文章をウェブサイトにて掲載している点です。

原告は、被告によって、原告文章を無断転載して制作した本件番組が放送 されたことにより、原告の名誉が毀損される可能性が生じて、原告の平穏な\n日常を阻害され、原告が、これに対応するために金銭的及び時間的な負担を 負い、精神的苦痛を被り、人格権が侵害されたとして、不法行為に基づく損 害賠償を請求するものと理解することができる。そこで、この理解を前提に、 被告による本件番組の放送が原告の「権利又は法律上保護される利益を侵害 した」(民法709条)といえるか否かについて検討する。
前記前提事実(2)及び(3)のとおり、被告が原告文章に依拠して本件ナレー ション等を作成した結果、本件ナレーション等は、原告文章と類似しており、 原告文章中の「以下省略」といった比較的特徴のある表現についてもほぼ同\nじ内容となっている。そして、被告が、本件番組において本件ナレーション 等を流すことについて、原告から事前の了解を得ていたことや、本件番組を 放送するに当たり、原告文章が掲載されている原告ウェブサイトを参照した 旨を表示したことを認めるに足りる証拠はない。そうすると、被告の上記行\n為は、公共の放送事業者として不適切なものであったといわざるを得ない。
また、原告が主張するように、原告ウェブサイト中の文章は、分かりやす く面白いものとなるように配慮され、独自性を有していると評価し得ること や、被告が放送法で定められた公共の放送事業者であることからすると、本 件番組を視聴した者が、原告文章を見たとき、被告が無断転載をするはずが ないと考えて、むしろ原告ウェブサイトの方が無断転載をしていると疑う可 能性を否定することはできない。しかし、前記前提事実(4)のとおり、被告は、本件番組が放送された4日後には、本件番組に係るウェブサイトにおいて、本件ナレーション等が既存の文章をほぼ転載したものであることを謝罪する旨の文章を掲載しており、こ れは、上記のような誤解が生じることを防止し得る措置であるといえる。そ して、本件全証拠によっても、実際に、上記のような誤解が広まったとは認 められない。しかも、名誉毀損が成立するためには、人の社会的評価を低下 させる事実を摘示することが必要であるところ、将棋の対局マナーについて 述べた本件ナレーション等において、原告の社会的評価を低下させる事実が 摘示されたとは認められない。そうすると、原告の主張する名誉毀損の可能\n性については、いまだ抽象的なものにとどまるものといわざるを得ない。
また、原告の主張に係る平穏に日常生活を送る利益について、上記のとお り、原告の懸念する誤解が実際に広まったとは認められず、原告の名誉が毀 損される可能性も抽象的なものに留まることに照らせば、被告に対する損害\n賠償請求を可能とする程度に、原告の平穏な日常生活が害されたということ\nはできず、不法行為の成立要件である「権利又は法律上保護される利益」の 「侵害」を認めることはできないというべきである。 なお、被告が原告文章と類似する本件ナレーション等を含む本件番組を放 送したことが原告の権利を侵害するかは、本来、原告文章に著作物性が認め られ、原告文章に係る原告の著作権又は著作者人格権が侵害されたと認めら れるかという観点から検討すべきであるということができる。しかし、原告 は、本件訴訟において、著作権及び著作者人格権が侵害されたことを主張し ないとしていることから、その要件についての具体的な主張立証がされてい ないため、著作権侵害及び著作者人格権侵害の事実を認めることはできない。 (2) 以上によれば、本件番組の放送により、原告の人格権が侵害されたとは認 められず、また、原告文章に係る原告のそのほかの権利が侵害されたと認め

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令和2(ワ)3931 損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年10月6日  東京地方裁判所

 鉄道会社が、新聞記事をスキャンして、社内イントラネットにて閲覧できるようにしていた行為について、複製権侵害・公衆送信権侵害が認められ、約200万円の損害賠償が認められました。被告は、新聞記事は事実の報道なので、著作物無しとも主張しましたが、読みやすく表現しているので創作性ありと認定しました。また、記録が残っていないH30年以前の配信についても、推定認定されています。

 ア 平成30年度掲載記事のうちの一部の記事について、被告は、その著作物 性を争っている。 しかしながら、平成30年度掲載記事は、事故に関する記事や、新しい機 器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介、事業 等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に 関する記事である。そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報 について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなど されており、表現上の工夫がされている。また、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テー\nマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関 係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表現上の工夫をして記事を作成している。したがって、平成30年度掲載記事は、\nいずれも創作的な表現であり、著作物であると認められる。
・・・
以上の事実に、平成30年度について被告が本件イントラネットに掲載し た原告が著作権を有する記事の数が前記 のとおりであることなどの状況 等を考慮すると、平成30年度掲載記事の選別を行ったC証人が選別した平 成28年度及び平成29年度については、被告による著作権侵害が認められ る記事の総数(自社及び沿線記事に分類した記事及びそれに分類していない 記事の合計)は、これら両年度の枠付き記事(自社及び沿線記事に分類した 記事の一部)の合計である52本の3倍に当たる156本を下らないもので あると認定するのが相当である。
・・・
原告は、本件個別規定に基づく損害額を主張するところ、上記によれば、原 告においては、少なくも平成20年以降は、本件個別規定を適用して原告が発 行する新聞の記事について利用許諾を検討する体制を整えており、これらの規 定を複数年にわたり、少なくとも1000件程度適用し、これに基づく使用料 を徴収してきた実績があることが認められる。また、本件個別規定には、社内 LAN(イントラネット)での利用を想定した文言がある。他方、本件で問題 になっているイントラネットでの掲載に関して本件個別規定に基づき支払われ た利用料の額等の実績については不明であり、また、本件個別規定には件数が 多い場合の割引に関する規定もあり、件数が相当に多い場合、どの程度本件個 別規定の本文で定める額が現実に適用されていたかが必ずしも明らかではない。 さらに、本件イントラネットによる新聞記事の掲載は、被告の業務に関連する 最新の時事情報を従業員等に周知することを目的とするものであったことから すると、掲載から短期間で当該記事にアクセスする者は事実上いなくなると認 められる。これらの事実に加え、本件に係る被告による侵害態様等を総合的に 考慮すると、本件については、原告が著作権の行使につき受けるべき金銭の額 (著作権法114条3項)は、掲載された原告の記事1本について掲載期間に かかわらず3000円として、原告に同額の損害が生じたものと認めるのが相 当である。
被告は、被告による使用が本件個別規定における「非営利で公共性のある使 用」に当たること、被告が取材対象者に当たる記事も存在することなどを指摘 する。本件個別規定の【割引】、【無料】の項目にはこれらの事情により原告が 無料での利用を許諾することが記載されている。しかし、株式会社である被告 にこれらの規定が適用されたかは明らかではなく、また、上記で定められてい る取扱いをしなければならないことが一般的であったことを認めるに足りる証 拠はない。また、被告は、本件は本件包括規定によるべきであると主張するが、 本件個別規定について前記 ア、イに認定した事情が認められる状況で、本件 包括規定の存在は、本件個別規定も参酌して上記のとおりの損額の額を認定す ることの妨げになるものとは認められない。 前記のとおり、平成30年度以前については、遅くとも平成30年3月31 日までに、原告が著作権を有する記事が458本掲載されたと認めるのが相当 であるから、これによる損害は137万4000円となる。平成30年度掲載 記事について、別紙損害金計算表の「掲載月」欄記載の月に対応する「記事数」欄記載の数の記事について侵害が成立すると認められる(なお、原告は、記事\n177、185、215について被告で2本分の記事が掲載されたことを理由 に2本分の損害を計上しているが、単一の記事に係る単一のイントラネットへ の掲載であることなどからすると、いずれも1本分の損害を計上するのが相当 である。)から、損害額は「損害額」欄記載のとおりとなり、その合計額は、3 9万9000円になる。

◆判決本文

原告新聞社が異なる関連事件です。こちらは約460万円の損害が認められています。

◆令和2(ワ)12348

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平成21年(ネ)第10024号 著作権確認等請求控訴事件 原審・大阪地方裁判所平成17年(ワ)第2641号

 1審大阪地裁は、ソースコード1000行以上から構成されていることから、本件プログラムの著作物性を認めましたが、知財高裁(4部)は、創作性がある部分を立証しなかった原告に対して、多くの命令数により記述されているだけでは、実現される機能が多岐にわたることを意味するにすぎないとして、1審判決を破棄しました。

、 ア DHL車側プログラム(甲291)について
DHL車側プログラムのうち,「NL」「NL1」の処理(TC車の車番付けを 命ずる命令に関する処理)を行うための部分(甲291の8頁〜12頁(0286 番地〜0427番地))に関する部分は,200行前後のうちプログラムの実行順 序に係る制御を行う命令(JP命令とCALL命令)の行数が50行前後,つまり ステップ数で全体の4分の1前後が実行順序制御に係る命令に用いられている(甲 291,294)。 DHL車側プログラムには,ソースコード上では,「JP,・・・##」と示さ\nれる,飛び先の番地が指定されず,結果として0000番地が指定された場合と同 様の動作を行うJP命令(CA0000)が含まれている(なお,甲291及び後 述する甲292においては,上述したもの以外のJP命令については飛び先となる メモリのアドレス(番地)の値が具体的に示されており,甲289及び290と同 様に,ロードされるメモリ上のアドレス(番地)及びJP命令の飛び先となるアド レスが絶対的に定まったものとされている。)。 これらの命令は,変更後DHCフローチャート(甲189の1)や変更前のソー\nスコード(甲289)には含まれているものではないから,本件装置を動作させる ための最低限の機能を実現するために必要不可欠なものであったか否かは不明であ\nる。もっとも,昭和61年12月に「不連結時TC流動発生ブレーキ閉が作用しな い」という異常への対処としてプログラムが変更されたことからすると,変更を行 ったプログラム作成者は,何らかの意図,たとえば,当該プログラムの変更による 変更後の制御のタイミングを維持すべきであること等に基づいて,ほかに選択肢が あるにもかかわらず,あえて上記部分を挿入したままとしたものと推測されなくも ない。
そうすると,DHL車側プログラムには,上記命令が存在することにより,創作 性が認められる余地がないわけではない。 もっとも,1審原告は,本来,ソースコードの詳細な検討を行うまでもなく,本\n件プログラムは著作物性を有するなどと主張して,当初,本件プログラムのソース\nコードを文書として提出せず,当審の平成22年5月10日の第4回弁論準備手続 期日における受命裁判官の求釈明により,本件プログラム全体のソースコードを文\n書として提出するか否かについて検討し,DHL車側プログラムについては,ソー\nスコードを提出したものの,本件プログラムのいかなる箇所にプログラム制作者の 個性が発揮されているのかについて具体的に主張立証しない。 したがって,DHL車側プログラムに挿入された上記命令がどのような機能を有\nするものか,他に選択可能な挿入箇所や他に選択可能\な命令が存在したか否かにつ いてすら,不明であるというほかなく,当該命令部分の存在が,選択の幅がある中 から,プログラム制作者が選択したものであり,かつ,それがありふれた表現では\nなく,プログラム制作者の個性,すなわち表現上の創作性が発揮されているもので\nあることについて,これを認めるに足りる証拠はないというほかない。 以上からすると,DHL車側のプログラムには,表現上の創作性を認めることは\nできない。
イ TC車側プログラム(甲292)について
TC車側プログラムのうち,「LINK」の処理(TC車側における車番がつく までの処理)を行うための部分(甲292の4頁〜9頁(00F7番地〜0317 番地))は,294行中88行がプログラムの実行順序に係る制御を行う命令であ るとされている(甲294)ところ,当該部分の相当程度について,ソースコード\nが開示されていない。 DHL車側プログラムとTC車側プログラムとは,各プログラムが機能すること\nによって,本件装置を制御するものであるから,「不連結時TC流動発生ブレーキ 閉が作用しないという異常」を防止するために本件装置を制御するためには,両者 について同様の配慮が必要となると推測されることから,TC車側プログラムにも, DHL車側プログラムと同様に,本件装置を動作させるための最低限の機能を実現\nするために必要不可欠なものであったか否かは明らかではない命令が挿入されてい る可能性は否定できない。\nもっとも,仮に,このような命令が挿入されていたとしても,DHL車側プログ ラムと同様に,当該命令部分の存在が,プログラム制作者の個性,すなわち表現上\nの創作性が発揮されているものであることについて,これを認めるに足りる証拠は ないというほかない。 したがって,TC車側プログラムにも,表現上の創作性を認めることはできない。\n
ウ 1審原告の主張について
1審原告は,本件装置は,特許権を取得できるほどに新規で進歩性を有する画期 的な技術であり,新規な機能を有するものであるから,当該装置を稼働させるため\nの本件プログラムも,他の既存のプログラムの表現を模倣することにより作成する\nことはできないところ,特に,中核部分であるTC車の車番付けを行わせる部分は, 本件プログラムが有する多数の機能のうち最重要部分を実現するもので,新規のア\nイデアに基づき全くのゼロから開発されたものである,当該中核部分を構成する各\nパートは,それぞれ数十から百数十\もの命令数により記述されている上,多数のサ ブルーチンを用いた構成となっているところ,このような複雑なプログラムにつき,\nその表現が1つ又は極めて限定された数しかなかったり,だれが記述しても大同小\n異のものとなったりすることは到底あり得ないし,他にも多数の機能を実現するた\nめの部分が有機的に組み合わされてひとまとまりのプログラムとなっているのであ るから,本件プログラムは,本来,ソースコードの詳細な検討を行うまでもなく,\n著作権の保護を受けるプログラムの著作物に該当することは明らかであるなどと主 張する。しかしながら,本件装置が新規性を有するからといって,当該装置を稼働させるためのプログラムが直ちに著作物性を有するということができないことは明らかで ある。
また,先に述べたとおり,プログラムに著作物性があるというためには,プログ ラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個\n性,すなわち,表現上の創作性が表\れていることを要するのであるから,新規のア イデアに基づきゼロから開発されたものであること,多くの命令数により記述され ていることから,直ちに表現上の創作性を認めることはできない。本件プログラム\nが多数の機能を実現するための部分が有機的に組み合わされているとしても,当該\nプログラムに表現上の創作性があることについて具体的に主張立証されない以上,\n当該プログラムにより実現される機能が多岐にわたることを意味するにすぎない。\nさらに,1審原告は,TC車側プログラムのうち,SOSUBサブルーチン(0 72F〜0792番地)のソースコードを例として,甲290及び292が機械語\nレベルでほぼ同一の命令構成となっているにもかかわらず,ソ\ースコードレベルで の具体的表現が異なること,SOSUBルーチンの行う仕事は,1)連結器のピンを 外すパワーシリンダを作動させる部分,2)パワーシリンダが正常に作動したか否か をチェックする部分,3)パワーシリンダの作動状況及びそのチェックの結果を操作 者に知らせるため表示灯の点・消灯を行う部分の3つに大別できるところ,本件プ\nログラムの極めて小さな一部分であるSOSUBルーチンのソースコードにおける\n具体的表現だけをみても,多数の選択肢の中から開発者の個性により選択された表\ 現が用いられているなどとも主張する。
しかしながら,甲290及び292におけるソースコードレベルでの具体的表\現 の相違は,CPUの機種変更に応じて必然的に定まる変更に基づくものにすぎず, 創作性の基礎になり得るものではない。また,上記1)ないし3)の機能を実現するそのほかの表\現に係る選択肢が存在する可能性があるからといって,直ちに本件プログラムにおけるSOSUBルーチンの具体的表\現について,創作性が認められるものでもない。1審原告が具体的に指摘する各事項は,いずれも本件装置が要求する仕様や機能を単にプログラムとして実現したものにすぎず,表\現上の創作性を基礎付けるものではない。

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◆平成17(ワ)2641

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令和3(ワ)10987  著作権侵害損害賠償請求事件  著作権 令和4年2月24日  東京地方裁判所

 「文章自体がごく短く又は表現上制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合には,筆者の個性が表\現されたものとはいえない」として、著作権侵害ではないと判断されました。

そこで検討すると,著作物の複製(著作権法21条,2条1項15号)と は,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを 再製することをいい(最高裁判所昭和50年(オ)第324号同53年9月 7日第一小法廷判決・民集32巻6号1145頁参照),著作物の翻案(著作 権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特\n徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新た\nに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著\n作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創\n作する行為をいう。しかして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を\n保護するものであるから(著作権法2条1項1号),既存の著作物に依拠して 創作された著作物が思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表\n現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作\n物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらないもの と解される(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第 一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
このように,複製又は翻案に該当するためには,既存の著作物とこれに依 拠して創作された著作物との同一性を有する部分が,著作権法による保護の 対象となる思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要である\n(著作権法2条1項1号)。そして,「創作的」に表現されたというためには,\n厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,筆者の何 らかの個性が表現されたもので足りるというべきであるが,他方,文章自体\nがごく短く又は表現上制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現\nが平凡かつありふれたものである場合には,筆者の個性が表現されたものと\nはいえないから,創作的な表現であるということはできない。\n したがって,被告各記述を含む被告の雑誌記事,書籍等が,被告各記述に 対応する原告各記述との同一性により原告雑誌記事,原告ルポの複製又は翻 案に当たるか否かを判断するに当たっては,両者において共通する部分が, 思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部\n分又は表現上の創作性がない部分でないかどうかを検討する必要がある。\nそこで,以上の見地から,別紙1及び2の各対比表について個別に検討す\nることとする。
(2) 別紙1の対比表について\n
ア 「1−1あ」,「1−5あ」,「1−6あ」,「1−7あ」,「1−10あ」に ついて
この箇所の原告記述と被告記述とでは,1)奨学金の原資を確保するので あれば,元本の回収が何より重要であること,2)日本学生支援機構は20\n04年以降,回収金をまず延滞金と利息に充当するという方針をとってい ること,3)日本学生支援機構の2010年度の利息収入は232億円,延\n滞金収入は37億円に達し,これらの金は経常収益に計上され,原資とは 無関係のところにあること,といった点が共通している。 しかし,上記共通点のうち,1)は,原告雑誌記事が発行,公表される以\n前から既に問題になっていた奨学金の金融事業化についての一般的な考察 (乙5ないし7)であって,思想又はアイデアに属するものというべきで ある。2)と3)は,奨学金の回収方法や日本学生支援機構の収支に関する事\n実であり,3)の後段の,回収された金と奨学金の原資との関係についての 評価は,これもまた1)と同様に奨学金の金融事業化についての一般的考察 として思想又はアイデアに属するものというべきであって,原告記述と被 告記述とは,表現それ自体ではない部分において同一性を有するにすぎな\nい。また,1)ないし3)の記述順序は同一ではあるが,その記述順序自体は 独創的なものとはいえないし,文章の分量も短く簡潔で,表現も特徴のな\nいありふれたものといわざるを得ず,表現上の創作性が認められない部分\nにおいて同一性を有するにすぎない。

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令和1(ワ)26366  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年5月27日  東京地方裁判所

 ポスティング業務を行うために住宅地図を購入し、これを適宜縮小して複写し、これにさらに、集合住宅名、ポストの数、配布数、交差点名、道路の状況、配布禁止宅等のポスティング業務に必要な情報を書き込むなどした地図(以下「ポスティング用地図」という。)の原図を作成して、配置していた被告に対して、差止請求と3000万円の損害賠償が認められました。

一般に、地図は、地形や土地の利用状況等の地球上の現象を所定の記号に よって、客観的に表現するものであるから、個性的表\現の余地が少なく、文 学、音楽、造形美術上の著作に比して、著作権による保護を受ける範囲が狭 いのが通例である。しかし、地図において記載すべき情報の取捨選択及びそ の表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験等が重要な役割を\n果たし得るものであるから、なおそこに創作性が表れ得るものということが\nできる。そこで、地図の著作物性は、記載すべき情報の取捨選択及びその表\n示の方法を総合して判断すべきものである。
・・・
前記(2)によれば、本件改訂により発行された原告各地図は、都市計画図等 を基にしつつ、原告がそれまでに作成していた住宅地図における情報を記載 し、調査員が現地を訪れて家形枠の形状等を調査して得た情報を書き加える などし、住宅地図として完成させたものであり、目的の地図を容易に検索す ることができる工夫がされ、イラストを用いることにより、施設がわかりや すく表示されたり、道路等の名称や建物の居住者名、住居表\示等が記載され たり、建物等を真上から見たときの形を表す枠線である家形枠が記載された\nりするなど、長年にわたり、住宅地図を作成販売してきた原告において、住 宅地図に必要と考える情報を取捨選択し、より見やすいと考える方法により 表示したものということができる。したがって、本件改訂により発行された\n原告各地図は、作成者の思想又は感情が創作的に表現されたもの(著作権法\n2条1項)と評価することができるから、地図の著作物(著作権法10条1 項6号)であると認めるのが相当である。また、前記(2)アのとおり、本件改訂より後に更に改訂された原告各地図は、いずれも本件改訂により発行された原告各地図の内容を備えるものであるから、同様に地図の著作物であると認めるのが相当である。なお、本件改訂より前に発行された原告各地図については、原告は、本件訴訟において、被告らにより著作権が侵害された対象として主張していないので(前記第2の4(1)(原告の主張)エ)、著作物性についての検討を要しない(以下においては、「原告各地図」という場合、特に断らない限り、本件改訂以降に発行されたものを指す。)。
(5) これに対して、被告らは、1) 地図に著作物性が認められる場合は一般的に 狭く、住宅地図は他の地図と比較して著作物性が認められる場合が更に制限 される、2) 原告各地図は、江戸時代の古地図や既存の地図、都市計画図に依 拠して作成されたものであり、創作性が発揮される余地は乏しい、3) 原告各 地図は機械的に作成され、正確・精密であるとされることからすると、創作 性が発揮される部分は更に限定され、国土地理院は、2500分の1の縮尺 の都市計画基本図について、著作物性が認められる可能性は低いとの見解を\n示している、4) 過去に作成された住宅地図には家形枠が記載されたものがあ り、家形枠を用いた表現自体ありふれている、5) 原告は地図作成業務のうち 少なくとも6割を海外の会社に対して発注しており、原告各地図には独自性 がないとして、原告各地図には著作物性が認められないと主張する。 しかし、上記1)については、前記(1)のとおり、地図の著作物性は、記載す べき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して判断すべきものであると\nころ、前記(4)のとおり、原告各地図は、その作成方法、内容等に照らして、 作成者の個性が発現したものであって、その思想又は感情を創作的に表現し\nたものと評価できるから、地図の著作物であると認められる。 上記2)については、原告が古地図や都市計画図等を参照して原告各地図を 作成したものであったとしても、前記(2)アのとおり、原告各地図は、本件改 訂によって、都市計画図等をデータ化したものに、居住者名や建物名、地形 情報、調査員が現地を訪れて調査した家形枠の形状等を書き加えるなどして 作成されたものであり、その結果、前記(2)イの特徴を備えるに至ったもので あって、このような原告各地図の作成方法、特徴等に照らせば、原告各地図 は、都市計画図等に新たな創作的表現が付加されたものとして、著作物性を\n有していると認められる。
上記3)については、原告各地図が正確・精密であるとしても、前記(1)のと おり、記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法等において創作性を発\n揮する余地はある。また、被告らの指摘する国土地理院の見解(乙63)は、 都市計画基本図について述べたものであり、住宅地図作成会社が作成する住 宅地図一般について述べたものではないし、上記2)について説示したとおり、 原告各地図は、都市計画図等を基図としてデータ化した上、これに種々の情 報を書き加えるなどすることで、住宅地図として完成させたものであるから、 国土地理院の上記見解は原告各地図に当てはまるものではない。さらに、前 記(2)イのとおり、原告各地図は、地図の4辺に目盛りが振られ、当該地図の 上、右上、右、右下、下、左下、左及び左上の各位置にある地図の番号が記 載されており、目的とする地図を検索しやすいものとなっている上、信号機 やバス停等がイラストを用いてわかりやすく表示されたり、建物等の居住者\n名や店舗名等を記載することにより住居表示についてもわかりやすくする工\n夫がされているなどの特徴を有するのに対し、証拠(乙70ないし73)に よれば、都市計画基本図にはこのような特徴が全くないことが認められ、原 告各地図と都市計画基本図とでは、そもそも性質が異なることから、同列に 論じることはできない。
上記4)については、住宅地図において家形枠を記載することがよくあると しても、原告各地図における家形枠の具体的な表現がありふれていることを\n認めるに足りる証拠はないから、直ちに原告各地図の著作物性を否定するこ とはできないというべきである。
上記5)については、原告が原告各地図の作成業務を海外の会社に発注して いることのみをもって、原告各地図の独自性を否定し、ひいては、その著作 物性を否定することはできないというべきである。

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平成31(ワ)8969  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年4月22日  東京地方裁判所

 ゲーム画面が著作権侵害か否か争われました。前提として裁判管轄についても争われました。後者の裁判管轄は「あり」としましたが、被告は、リンク設定行為をしただけなので、複製及び公衆送信には該当しないと、請求棄却されました。

証拠(乙8)及び弁論の全趣旨によれば、原告及び被告は、いずれも中国 に住所を置く法人であり、日本に事務所等の拠点を有しないこと、被告ゲー ムの開発や配信に関する主要な作業は中国において行われたことが認められ る。これらの事情によれば、本件訴訟に関する証拠が中国に存在することが うかがわれるから、本件を日本の裁判所で審理した場合には、被告が、本件 訴訟の争点に関する主張立証をする際に、中国語で記載された書類を日本語 に翻訳したり、中国語を話す関係者のために通訳を手配したりするなどの一 定の負担を被り得ることは、否定し難い。
しかし、本件訴訟における原告の請求は、日本国内向けに配信された被告 ゲーム及びそれに関連する画像の複製を差し止め、被告ゲーム等のデータを 削除し、被告ゲームの売上げに基づき著作権法114条2項によって推定さ れる額の損害を賠償すること等を求めるというものである。そうすると、本 件訴訟における請求の内容は日本と密接に関連するものであり、かつ、原告 が主張する上記損害は日本において発生したものと解されるから、本件は、 事案の性質上、日本とも強い関連性を有するというべきである。 また、本件訴訟の争点は、前記第2の3及び前記第3のとおり、原告各画 像と被告各画像の表現の同一性ないし類似性(争点2−1)、被告による原\n告画像1に係る著作権侵害の成否(争点2−2)、被告が原告各画像に依拠 して被告各画像を作成したと認められるか否か(争点2−3)、差止め及び 削除請求の必要性(争点3)並びに損害額(争点4)である。この点、上記 争点2−1については、原告各画像と被告各画像の対比や同一性ないし類似 性が認められる部分が創作的な表現であるか否かに関する検討を要するとこ\nろ、それらの点に係る主張立証は、主として原告各画像及び被告各画像自体 に基づいて行うことになる。これに加えて、他の画像に基づき、上記同一性 ないし類似性の認められる部分がありふれた表現であることの主張立証を行\nうことも考えられるが、当該他の画像に関する証拠が中国に存在するとして も、その性質上、翻訳等の作業は必要とされないであろうから、被告に過大 な負担が生じるとは認め難い。上記争点2−2は、本件リンク設定行為が原 告画像1に係る原告の著作権を侵害するかどうかを、主として日本の著作権 法の解釈、適用によって判断するというものであるから、証拠の所在地が当 該争点の判断において重要な意味を持つものとはいえない。上記争点2−3 に関する証拠としては、原告ゲーム及び被告ゲーム以外のゲーム等の画像及 び公表時期に関する資料、ゲーム制作者の陳述書等が想定されるが、それら\nの全てが中国にのみ所在するとはうかがわれず、立証に際して被告に過大な 負担が生じるとまでは認め難い。上記争点3については、前記第3の3のと おり、被告ゲームの配信が中止された事実が重要な評価障害事実として主張 立証され得るところ、被告ゲームが日本国内向けに配信されたオンラインゲ ームであることを踏まえると、上記事実に関する主要な証拠は日本に所在す るものと認められる。上記争点4についても、上記のとおり、原告が主張す る損害は日本において発生したものと解されるから、損害額の算定の基礎と なる主要な証拠は日本に所在するものと考えられる。したがって、本件が日 本で審理されるとしても、本件の重要な争点に係る主張立証に当たり、被告 に過大な負担が生じるとまでは認められない。
(2) これに対し、被告は、1)本件訴訟と当事者、事案及び争点において密接な 関連性が存在する別件中国訴訟が中国の裁判所において係属していること、 2)原告と被告は、当然に、本件訴訟を中国の裁判所に提起することが最も適 切であり、本件が中国の裁判所での解決が図られると想定していたこと、3) 本件訴訟に関する客観的な事実関係は全て中国において発生したこと、4)本 件訴訟の証拠は全て中国国内に存在すること、5)本件を日本の裁判所で審理 する場合には被告に過大な負担を課すること等を根拠として挙げ、本件訴訟 には民事訴訟法3条の9所定の「特別の事情」があると主張する。 しかし、まず、上記1)についてみるに、本件訴訟と別件中国訴訟は、いず れも原告が当事者であるという点において共通するものの、被告は別件中国 訴訟の当事者の地位にはないから、当事者が完全に一致するものではない。 しかも、別件中国訴訟においては、原告ゲームの中国語版の表現と「C」と\n称するゲームの表現の類否等が争点とされているのであって、被告ゲームの\n表現との類否は争点とされていないばかりか、証拠(甲10)によれば、別\n件中国訴訟において争点とされている原告ゲームの表現はいずれも原告各画\n像とは異なる画像等に係るものであると認められる。そうすると、本件訴訟 と別件中国訴訟の事案及び争点はいずれも大きく相違するものといえるから、 本件訴訟と別件中国訴訟との間に強い関連性があるとまでは認められない。 次に、上記2)についてみるに、上記のとおり、本件訴訟と別件中国訴訟と の関連性は強くない上、原告ゲームと被告ゲームがいずれも日本国内向けに 配信されたスマートフォン向けのオンラインゲームであることに照らすと、 別件中国訴訟が本件訴訟に先立って中国国内の裁判所に係属していたとして も、原告ゲームと被告ゲームに関する著作権侵害に関する紛争の解決が中国 の裁判所で図られることが想定されていたとまでは認められない。 さらに、上記3)ないし5)についてみるに、前記(1)のとおり、本件の請求 の内容は日本と密接に関連するものであり、かつ、原告が主張する上記損害 は日本において発生したものと解されることから、本件に関する客観的な事 実関係が全て中国において発生したということはできない。また、前記(1) のとおり、本件の証拠が専ら中国に存在するとは認められないし、本件を日 本の裁判所が審理するとしても、立証に関して被告に過大な負担を生じさせ るものとまでは認められない。 したがって、被告の上記1)ないし5)の主張はいずれも理由がない。
(3) 以上の次第で、本件の事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の 所在地、原告を当事者とする中国の裁判所に係属中の訴訟の存在その他の事 情を十分に考慮しても、本件訴訟について、民事訴訟法3条の9所定の「特\n別の事情」があると認めることはできない。
・・・
ア 証拠(甲9、乙15ないし17)及び弁論の全趣旨によれば、本件リン ク設定行為は、本件動画の表紙画面である被告画像1をリンク先のサーバ\nーから本件ウェブページの閲覧者の端末に直接表示させるものにすぎず、\n被告は、本件リンク設定行為を通じて、被告画像1のデータを本件ウェブ ページのサーバーに入力する行為を行っていないものと認められる。そう すると、前記(2)アのとおり原告画像1を複製したものと認められる被告 画像1を含む本件動画をYouTubeが管理するサーバーに入力、蓄積 し、これを公衆送信し得る状態を作出したのは、本件動画の投稿者であっ て、被告による本件リンク設定行為は、原告画像1について、有形的に再 製するものとも、公衆送信するものともいえないというべきである。
イ これに対し、原告は、1)本件ウェブページに被告画像1を貼り付ける行\n為も、本件リンク設定行為も、本件ウェブページの閲覧者にとっては、何 らの操作を介することなく被告画像1を閲覧できる点で異なるところはな いこと、2)本件リンク設定行為は、被告画像1を閲覧者の端末上に自動表\n示させるために不可欠な行為であり、かつ、原告画像1の複製の実現にお ける枢要な行為といえること、3)本件リンク設定行為をすることにより、 被告ゲームを宣伝し、被告ゲームの販売による多大な利益を得たことを指 摘し、規範的にみて、被告が複製及び公衆送信の主体と認められる旨を主 張する。しかし、上記1)についてみると、単に、本件ウェブページに被告画像1 を貼り付ける等の侵害行為がされた場合と同一の結果が生起したことをも\nって、本件リンク設定行為について、複製権及び公衆送信権の侵害主体性 を直ちに肯定することはできないというべきである。 また、上記2)についてみると、仮に枢要な行為に該当することが侵害主 体性を基礎付け得ると解したとしても、本件リンク設定行為の前の時点で 既に本件動画の投稿者による原告画像1の複製行為が完了していたことに 照らすと、本件リンク設定行為が原告画像1の複製について枢要な行為で あるとは認め難いというべきである。なお、本件動画は、本件ウェブペー ジを閲覧する方法によらずとも、本件動画が投稿されたYouTubeの 「D」のページにアクセスすることによっても閲覧することができるから、 本件リンク設定行為が原告画像1の公衆送信にとって枢要な行為であると も認められない。 さらに、上記3)についてみると、本件全証拠によっても、本件リンク設 定行為により被告がどの程度の利益を得ていたのかは明らかではないから、 その点をもって、被告が原告画像1の複製及び公衆送信の主体であること を根拠付けることはできない。 したがって、上記1)ないし3)の点を考慮しても、被告を原告画像1の複 製及び公衆送信の主体であると認めることはできず、原告の上記主張は採 用することができない。
ウ また、原告は、仮に被告が著作権侵害の主体であると認められない場合 であっても、少なくとも、被告が本件リンク設定行為により上記著作権侵 害を幇助したものと認められると主張する。 しかし、前記アのとおり、被告による本件リンク設定行為は、被告画像 1をリンク先のサーバーから本件ウェブページの閲覧者の端末に直接表示\nさせるものにすぎず、本件動画の投稿者による被告画像1を含む本件動画 をYouTubeが管理するサーバーに入力・蓄積して公衆送信し得る状 態にする行為と直接関係するものではない。そうすると、本件リンク設定 行為が本件動画の投稿者による複製及び公衆送信行為自体を容易にしたと はいい難いから、被告による本件リンク設定行為が、被告画像1に係る原 告の著作権(複製権及び公衆送信権)侵害を幇助するものと認めることは できない。 したがって、被告を原告画像1の複製及び公衆送信の幇助者であると認 めることはできない。

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令和2(ワ)25127 著作権  民事訴訟 令和4年3月25日  東京地方裁判所

 「オーサグラフ世界地図」について、そもそも原告は共同著作者ではないと判断されました。

 著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学\n術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)をいい、 共同著作物とは、「二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その 各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」(同項12号) をいう。
そうすると、本件地図1ないし4が原告及び被告の共同著作物であり、原 告がこれらについての共有著作権及び著作者人格権を有するというためには、 原告の思想又は感情が本件地図1ないし4に創作的に表現されたと認められ\nる必要がある。
(2) 前記1(5)及び(6)のとおり、被告は、平成12年頃に、原告と本件覚書を 交わし、原告との共同研究が終了した後、原告と面会したり、直接連絡をと ったりしたことはなかったところ、原告に相談することなく、平成21年に 本件発表をし、その頃に本件地図1及び2が掲載された本件論文1を、平成\n29年に本件地図3及び4が掲載された本件論文2を、それぞれ作成したも のであり、原告は、被告の本件発表並びに本件論文1及び2の作成の事実を\n知らなかったものである。また、原告は、その本人尋問において、本件地図1ないし4自体を作成し たのは被告である旨供述している。したがって、仮に本件論文1に掲載された本件地図1及び2並びに本件論 文2に掲載された本件地図3及び4に著作物性が認められるとしても、本件 地図1ないし4は、原告の思想又は感情が創作的に表現されたものではなく、\n被告のみの思想又は感情が創作的に表現されたものと認めるのが相当であり、\n原告及び被告の各氏名が記載された本件論文1に掲載された本件地図1及び 2について、著作権法14条に基づき、原告及び被告が著作者であると推定 されたとしても、その推定は覆されるというべきである。
(3)ア これに対して、原告は、1) 本件論文1及び2は、原告及び被告を共同発 明者とする本件出願1ないし3の各願書に添付した明細書に記載された内 容に基づくものであり、本件論文1及び2に掲載された本件地図1ないし 4は、本件出願1ないし3の各願書に添付した図面と基本的に同一である こと、2) 本件発表の発表\者として原告の氏名が挙げられ、本件論文1の冒 頭に原告の氏名が、末尾に原告に対する謝辞が、それぞれ記載されている ことからすると、本件地図1ないし4は原告及び被告の共同著作物である と主張する。
イ しかし、上記1)について、本件出願1ないし3の各願書に添付した明細 書に従って本件地図1ないし4を作成できるとの事実を認めるに足りる証 拠はない。
また、前記前提事実(2)ないし(4)のとおり、原告は本件出願1ないし3 の各発明者の一人として名前が挙げられているが、発明とは「自然法則を 利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」(特許法2条1項)であり、 発明者はこのような技術的思想を創作した者をいうのに対し、著作物とは 「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)であ\nり、著作者は「著作物を創作する者」(同項2号)をいうことから、両者 が創作する対象は、それぞれ技術的思想と表現という異なるものである。\n仮に本件出願1ないし3が地図の作成方法に関する発明に係る出願であり、 本件出願1ないし3の各願書に添付した明細書に従って地図を作成するこ とができたとしても、上記発明に係る技術的思想の創作に関わったにすぎ ない原告の思想又は感情が当該地図において創作的に表現されたというこ\nとにはならない。
さらに、証拠(甲1、2、4ないし6)によれば、本件地図1及び3と 本件出願1の願書に添付した図面の【図10】のLC2、本件出願2の願 書に添付した図面の【図10】のLC2及び本件出願3の願書に添付した 図面のFIG.10のLC2とを比較すると、国境線及び地名の記載の有 無、各大陸の形状、位置関係等が少なからず異なっており、本件地図2及 び4と本件出願1の願書に添付した図面の【図9】、本件出願2の願書に 添付した図面の【図9】及び本件出願3の願書に添付した図面のFIG. 9とを比較すると、各大陸の形状、位置関係等が少なからず異なっている ことが認められる。地図が地形等を客観的に表現することを目的としたも\nのであることを考慮すると、仮に本件出願1ないし3の上記各図面に原告 の思想又は感情が創作的に表現されたといえるとしても、上記のような相\n違のある本件地図1ないし4にも同様に原告の思想又は感情が創作的に表\n現されたということは困難である。以上を総合すると、上記1)の事情をもって、原告の思想又は感情が本件地図1ないし4に創作的に表現されたというには足りないから、同事情は前記(2)の認定を左右するものではないというべきである。
ウ また、上記2)について、前記前提事実(5)のとおり、日本国際地図学会の 平成21年度定期大会のプログラムには、本件発表の発表\者として、被告 のみならず原告の氏名が記載されており、本件論文1の冒頭にも、被告の みならず原告の氏名が記載され、その末尾に「本研究の基礎はA氏との半 年間の共同研究によるものである。」と記載されている。しかし、被告は、その本人尋問において、被告が修士論文を作成した際、原告が被告に対してアイデアの盗用であるなどと主張したことがあったことから、原告に配慮して、上記のとおり、原告の氏名を記載するなどした旨供述しているところ、前記1(3)ないし(5)の経過に鑑みると、被告の上 記供述は信用することができるというべきである。そうすると、上記各記載の存在をもって、本件論文1に掲載された本件地図1及び2に原告の思想又は感情が創作的に表現されているということはできないから、上記2)の事情も前記(2)の認定を左右するものではない。
エ したがって、原告の前記アの主張は採用することができない。
(4) 以上によれば、本件地図1ないし4は、原告及び被告の共同著作物とは認 められないから、原告が本件地図1ないし4に係る共有著作権及び著作者人 格権を有するとはいえない。 087/091087

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令和2(ワ)32121  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年3月30日  東京地方裁判所

 写真の複製・翻案かが争われました。料理写真なので、構図なども一般的と判断されています。\n

 著作権法が、著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、\n文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(同法2条1項1号)をいい、 複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製 することをいう旨規定していること(同項15号)からすると、著作物の複 製(同法21条)とは、当該著作物に依拠して、その創作的表現を有形的に\n再製する行為をいうものと解される。 また、著作物の翻案(同法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、 その表現上の本質的な特徴である創作的表\現の同一性を維持しつつ、具体的 表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表\現す ることにより、これに接する者が既存の著作物の創作的表現を直接感得する\nことのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される。 そうすると、被告写真3が原告写真を複製又は翻案したものに当たるとい うためには、原告写真と被告写真3との間で表現が共通し、その表\現が創作 性のある表現であること、すなわち、創作的表\現が共通することが必要であ るものと解するのが相当である。
一方で、原告写真と被告写真3において、アイデアなど表現それ自体では\nない部分が共通するにすぎない場合には、被告写真3が原告写真を複製又は 翻案したものに当たらないと解される。そして、共通する表現がありふれた\nものであるような場合には、そのような表現に独占権を認めると、後進の創\n作者の自由かつ多様な表現の妨げとなり、文化の発展に寄与するという著作\n権法の目的(同法1条)に反する結果となりかねないため、当該表現に創作\n性を肯定して保護することは許容されない。したがって、この場合も、複製 又は翻案したものに当たらないと解される。
(2) 原告は、原告写真と被告写真3において共通する部分である共通点aない しfは創作性のある表現であるから、被告写真3は原告写真を複製又は翻案\nしたものに当たる旨主張するので、以下において判断する。
ア 共通点aについて
原告写真と被告写真3とは、被写体であるスティック春巻を2本ない し3本ずつ両側から交差させている点において共通する。 しかし、証拠(乙9)によれば、角度や向きを変えながら料理を順に 重ねて盛る「重ね盛り」という方法が存在することが認められるところ、 原告写真と被告写真3の被写体であるスティック春巻はいずれも細長い 形状を有するから、スティック春巻を盛り付ける場合に、上記の「重ね 盛り」の方法によってスティック春巻を数本ずつ交差させて配置するこ とは、スティック春巻の撮影する場合に一般的に行われるものであると いうことができる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8) によれば、共通点aと同様に、棒状の春巻を配置して撮影された写真が 複数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現は、\nありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点aは創作的表現であるとはいえないから、被告写\n真3の共通点aの部分が、原告写真の共通点aの部分を複製又は翻案した ものに当たると認めることはできない。
イ 共通点bについて
原告写真と被告写真3とは、2本のスティック春巻を斜めにカットして、 断面を視覚的に認識しやすいように見せ、さらに、チーズも主役でない程 度に見えるようにしている点において共通する。 しかし、具が衣に包まれているという春巻の形状に照らすと、春巻の 具を撮影するためには春巻をカットしなければならないし、その際、具 を強調するために、断面積が大きくなるよう、斜めにカットすることは、 スティック春巻を撮影する際に一般的に採用され得る手法ということが できる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8)によれば、 共通点bと同様に春巻を斜めにカットした断面を配置して撮影された写 真が複数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表\n現は、ありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点bは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点bの部分が原告写真の共通点bの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
ウ 共通点cについて
原告写真と被告写真3とは、端に角度がついた、白色で模様がなく、被 写体である複数本のスティック春巻とフィットする大きさの皿を使用して いる点において共通する。 しかし、証拠(乙10、11)によれば、白い器は料理の色を引き立て る効果があり、選択肢として基本的な色であること、料理の写真を撮影す る際には盛り付ける料理にぴったり合う大きさの皿を選択することが重要 であることが認められる。そうすると、白色で模様がなく、黄土色のステ ィック春巻とフィットする大きさの皿を使用することは、スティック春巻 の写真を撮影する上で一般的に行われ得るということができる。加えて、 証拠(甲25、26、乙2、8)によれば、共通点cと同様に、白色で模 様がなく、被写体である複数本のスティック春巻とフィットする大きさの 皿を使用して撮影された写真が複数存在すると認められることに照らすと、 上記の共通点に係る表現はありふれたものといわざるを得ない。\n以上によれば、共通点cは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点cの部分が原告写真の共通点cの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
エ 共通点dについて
原告写真と被告写真3とは、皿に並べた春巻を、正面からでなく、角度 をつけて撮影している点において共通する。 しかし、証拠(乙12)によれば、料理写真の構図として、料理を正面\nから撮影するのではなく、左右に回転させて左右向きに配置して、斜めの 方向から撮影する手法が存在することが認められる。そうすると、皿に並 べた春巻を、角度をつけて撮影することは、一般的に行われ得るというこ とができる。加えて、証拠(甲25、26、乙7、8)によれば、共通点 dと同様に、皿に並べた春巻を、角度をつけて撮影した写真が複数存在す ると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現はありふれたも\nのといわざるを得ない。 以上によれば、共通点dは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点dの部分が原告写真の共通点dの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
オ 共通点eについて
原告写真と被告写真3とは、撮影時に光を真上から当てるのではなく、 斜め上から当てることで、被写体の影を付けている点において共通する。 しかし、証拠(乙13)によれば、料理写真の撮影方法として、料理の 斜め後ろから料理に光を当て、料理上部を明るく照らすとともに手前側を 暗くして立体感を生じさせる斜め逆光という手法が存在すること、斜め逆 光は料理写真で最もよく使われるライティングであることが認められる。 したがって、被写体に影を付け、立体感を醸成するという撮影方法は、春 巻を含む料理の写真を撮影する上で一般的に用いられ得る手法であるとい うことができる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8)によ れば、共通点eと同様に、斜め逆光の手法を用いて撮影された春巻の写真 が多数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現は\nありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点eは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点eの部分が原告写真の共通点eの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
カ 共通点fについて
原告写真と被告写真3とは、葉物を含む野菜を皿の左上のスペースに置 いている点において共通する。 しかし、揚げ物である春巻に、野菜が付け合わせとして盛り付けられ ることは、一般的に行われることであるといえるから、春巻の写真を撮 影する際に野菜が皿の隅のスペースに置かれることもまた、一般的に行 われることということができる。現に、証拠(甲25、26、乙2、6 ないし8)によれば、上記の共通点と同様に配置された春巻の写真が複 数存在することが認められる。そうすると、上記の共通点に係る表現は\nありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点fは創作的表現であるとはいえないから、被告写\n真3の共通点fの部分が原告写真の共通点fの部分を複製又は翻案したも のに当たると認めることはできない。
キ 全体的観察
前記アないしカのとおり、共通点aないしfはいずれも創作的表現であ\nるとは認められないから、これらの共通点を全体として観察しても、原告 写真と被告写真3との間で創作的表現が共通するとは認められない。\n
ク 小括
以上の次第で、原告写真と被告写真3は、ありふれた表現が共通するに\nすぎず、原告写真と被告写真3との間で創作的表現が共通するとは認めら\nれないから、被告写真3が原告写真を複製又は翻案したものに当たるとは 認められない。

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令和3(ネ)10083  著作権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和4年3月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 コンピュータソフトの画面について、著作物性、不競法2条1項1号の商品等表示に該当するかが争われました。知財高裁2部は、1審の判断を維持しました。

ア 控訴人は,控訴人表示画面と被控訴人表\示画面との一致箇所をひとまとまり として捉えて創作性を判断すべきこと,ビジネスソフトウェアのディスプレイ(表\ 示画面をいう趣旨と解される。)における表現の創作性については丁寧な検討が必\n要であること,控訴人表示画面について表\現上主要な箇所は2)データ分析等画面(単 品詳細情報画面,日別画面,他店舗在庫表示画面,定期改正入力画面,リクエスト\n管理画面)であり,そこには表現上の工夫が多数散りばめられていることなどを主\n張する。
しかし,被控訴人製品の各表示画面から控訴人製品の各表\示画面の本質的な特徴 を感得することはできず,被控訴人表示画面に接する者が全体として控訴人表\示画 面の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるとは認められないことは,\n訂正して引用した原判決の第4の1で認定判断したとおりである。 控訴人表示画面と被控訴人表\示画面の対比に係る判断は,同1(3)のとおりであ って,控訴人表示画面と被控訴人表\示画面の共通する部分をひとまとまりにして検 討することによって,上記判断が左右されるものではない。ビジネスソフトウェア\nのディスプレイ(表示画面)における表\現の創作性について丁寧な検討が必要であ るという一般論の主張も,上記判断に影響しない。控訴人が2)データ分析等画面に 多数散りばめられていると主張する表現上の工夫のうち,発注操作を行う欄の配色\nについては,創作者の思想又は感情が創作的に表現されているといえる程度の特徴\nを有するものとは認められず,同欄の位置や詳細情報を画面の下方に配置すること は,書店業務を効率的に行うという観点から通常想定される範囲内のものである。 控訴人の主張する2)データ分析等画面における素材の選択及び配列における選択の 幅についても,訂正して引用した原判決の第4の1(4)で判断したとおりである。
イ 控訴人は,控訴人製品の表示画面と被控訴人製品の表\示画面に共通性が多数 認められること,操作ガイダンスの文字列に一致が何か所もあることなどを主張す るが,それらの主張は,訂正して引用した原判決の第4の1の認定判断を左右する ものではない。
(2) 争点4(不正競争防止法違反の有無)に関する控訴人の補充主張について
ア 控訴人は,控訴人表示画面の特別顕著性に関し,需要者を書店ユーザーに限\n定すべきこと,控訴人製品がその表示画面に顕著な特徴を有することを主張するが,\n控訴人表示画面の特徴に関しては訂正して引用した原判決の第4の1(3)及び(4)で 認定判断したとおりであり,控訴人表示画面に特別顕著性が認められないことは,\n同3で判断したとおりである。控訴人の主張するように控訴人製品の需要者を書店 に限定したとしても,上記の認定判断は左右されない。
イ 控訴人は,周知性についても主張するところ,控訴人製品のシェアについて 控訴人が当審で追加提出した証拠(甲83の1・2,甲84)を含む本件全証拠を もってしても,控訴人の主張するシェアを認めるに足りない。なお,仮に,控訴人 製品が相応のシェアを占めているとしても,そのことから直ちに,控訴人表示画面\nの周知性が認められるものともいえない。 また,控訴人は,控訴人製品の宣伝・広報活動について主張するが,当該活動に ついて控訴人が追加提出した証拠(甲85〜91)を含む本件全証拠をもってして も,当該活動は一定の期間及び範囲に限定して認められるにすぎず,また,その内 容をみても,当該活動において控訴人表示画面が媒体に表\示されていたものではな いから,控訴人表示画面の周知性を裏付けるものとはいえない。\n控訴人のその他の主張も,訂正して引用した原判決の第4の3(2)における控訴 人表示画面の周知性が認められない旨の判断を左右するものではない。\n

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1審はこちら。

◆平成30(ワ)28215

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令和2(ワ)19927  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年12月24日  東京地方裁判所

 社史の発行が原告書籍の翻案であるとした不当利得返還請求訴訟です。裁判所は、創作的表現において同一性を有しないとして、請求を棄却しました。\n

(1) 言語の著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,か つ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正, 増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,\nこれに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得すること\nのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして,著作権法は,思想又は 感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照),既\n存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア, 事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない部 分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には 当たらないと解するのが相当である(最高裁平成11年(受)第922号同 13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁)。 そうすると,本件社史部分が原告書籍を翻案したものに当たるというため には,原告書籍と本件社史部分とが,創作的表現において同一性を有するこ\nとが必要であるものと解される。
したがって,原告書籍と本件社史部分との間で,事実など表現それ自体で\nない部分でのみ同一性が認められる場合には,本件社史部分は原告書籍を翻 案したものに当たらない。 また,原告書籍と本件社史部分との間に,表現において同一性が認められ\nる場合であっても,同一性を有する表現がありふれたものである場合には,\nその表現に創作性が認められず,本件社史部分は原告書籍を翻案したものに\n当たらないと解すべきである。すなわち,著作者等の権利の保護を図り,も って文化の発展に寄与するという著作権法の目的(同法1条)に照らせば, 著作物に作成者の何らかの個性が現れており,その権利を保護する必要性が あるといえる場合には,上記の創作性が肯定され得るが,一方で,表現があ\nりふれたものである場合には,そのような表現に独占権を認めると,後進の\n創作者の自由かつ多様な表現の妨げとなり,かえって上記の著作権法の目的\nに反する結果となりかねないため,当該表現に創作性を肯定して保護を与え\nることは許容されないというべきであり,そのため,原告書籍と本件社史部 分との間で同一性を有する表現がありふれたものである場合には,その表\現 に創作性を認めることができない。
(2) まず,別紙2記述対比表の原告書籍及び本件社史部分の各記述について,\nそれぞれの間での創作性を有する表現の同一性が認められるか否かについて\n検討する。
ア 番号1の各記述について
(ア) 原告書籍の番号1の記述は,原告書籍における当該記述の前後の文脈 を踏まえると,被告従業員であったBが被告の二輪世界選手権への再挑 戦の担当者になるとの内示を受ける前日に出身地を尋ねられた際のやり とりを記述したものであり,本件社史部分の番号1の記述は,本件社史 部分における当該記述の前後の文脈を踏まえると,Bが上記内示の際に 出身地を尋ねられたことを記述したものであると認められる。 これらの記述は,Bが上記内示を受ける際に出身地を尋ねられたこと を内容とする点で共通しているが,このようなやりとりがあったことは 事実にすぎないというべきであり,表現それ自体でない部分で同一性が\n認められるに留まる。また,出身地を尋ねるやりとりがあったことにつ いて,原告書籍の番号1の記述では,「おいB,おまえ家は東京だよな」 と記述されているのに対し,本件社史部分の番号1の記述では,「世間話 の中で出身地を聞かれました。『東京です』と答えたのを覚えていますよ」 と記述されており,それらの具体的な記述における描写の手法が異なる ものとなっており,表現それ自体において同一性を有するとは認められ\nない。
(イ) 原告は,原告書籍と本件社史部分に同じ事実が記述されていることに ついて,社史編纂委員会の担当者は原告書籍に記述された事実を原告書 籍に依拠して知ったものであるから,翻案該当性が認められるべき旨を 主張する。 しかしながら,前記(1)のとおり,本件社史部分に記述された事実が原 告書籍に依拠したものであったとしても,原告書籍と本件社史部分の各 記述が事実といった表現それ自体でない部分において同一性を有するに\n留まる場合には,原告書籍の翻案には当たらないと解するのが相当であ るから,原告の上記主張は採用することができない。 (ウ) したがって,番号1の各記述について,創作的表現において同一性を\n有するものと認めることはできない。
・・・
(ウ) 小活 前記(ア)及び(イ)の対比の結果に照らせば,原告書籍の番号20−1及 び20−2の記述と本件社史部分の番号20の記述が創作的表現におい\nて同一性を有するものと認めることはできず,これは,原告書籍の番号 20の記述全体と本件社史部分の番号20の記述とを対比した場合でも 同様である。
(3) 前記(2)のとおり,番号1ないし20の各記述において,本件社史部分が 原告書籍と創作的表現において同一性を有するとは認められないから,依拠\n性について検討するまでもなく,被告社史中の本件社史部分は原告書籍の翻 案に該当するものではない。

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平成30(ワ)28215 著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和3年9月17日  東京地方裁判所

 コンピュータソフトの画面について、著作物性、不競法2条1項1号の商品等表示に該当するかが争われました。本件ではいずれも否定されましたが、一般論としては「ビジネスソ\フトウェアの表示画面は,商品の形態と同様,・・特別顕著性,かつ,・・周知になっている場合に不競法2条1項1号の「商品等表\示」に該当すると解するのが相当である。」と 認定されています。

 以上のとおり,原告表示画面と被告表\示画面の共通する部分は,いずれも アイデアに属する事項であるか,又は,書店業務を効率的に行うに当たり必 要な一般的な指標や情報にすぎず,各表示項目の名称の選択,配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表\現においても,創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない上,両製品の配色の差違等により,利用者が画面全体から受ける印象も相当異なるというべきである。そ\nして,被告表示画面について,他に原告表\示画面の本質的特徴を直接感得し 得ると認めるに足りる証拠はない。
(4) 表示画面の選択や相互の牽連関係における創作性の有無・程度
ア 原告は,表示画面の牽連性に関し,原告製品は,画面の最上部にメニュータグを常時表\示し,どの画面からも次の業務に移行できるようにしている点や,画面の中央にサブメニュー画面を用意し,画面遷移なしに表示することを可能\にしている点などに独自性があると主張する。 しかし,画面の最上部にメニュータグを常時表示し,そのいずれの画面からも次の業務に移行できるようにすることや,画面の中央にサブメニュー画\n面を用意し,画面遷移なしに表示することを可能\にすることは,利用者の操 作性や一覧性あるいは業務の効率性を重視するビジネスソフトウェアにおいては,ありふれた構\成又は工夫にすぎないというべきであり,原告製品における表示画面相互の牽連性に特段の創作性があるということはできない。
イ また,原告は,原告製品が補充発注画面や自動計算機能を備えていることをもって他社にはない独自性があると主張するが,在庫の変動に伴い商品を\n補充して発注することや,定期改正数を自動計算することなどは,一般的な 書店業務の一部であり,原告製品の補充発注(条件設定)画面及び補充発注 (入力)画面に表示された項目の名称の選択,配列順序及びそのレイアウトなどの具体的な表\現において,創作者の思想又は感情が創作的に表現されて\nいるということはできないことは,前記(3)ケ及びコで判示のとおりである。
ウ したがって,原告製品は,表示画面の選択や画面相互の牽連性において独自性又は創作性があるとの原告主張は採用し得ない。\n
・・・
(1) 原告は,被告製品の表示画面が不競法2条1項1号の規定する不正競争行為に該当すると主張するところ,ビジネスソ\フトウェアの表示画面は,商品の形\n態と同様,1)当該表示画面が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,2)その表示画面が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な広告宣伝や爆発的な販売実績等により,\n需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっている場合に不競法2条1項1号の「商品等表\示」に該当すると解するのが相当である。
(2) 周知性について
原告は,原告表示画面が,遅くとも平成25年末までには,出版業界及び書店業界において広く認識されていたと主張するが,以下のとおり,理由がない。\nア 原告製品の販売数や市場占有率に関し,原告は,原告のシステム製品は出 版社市場でトップシェアを占めており,原告製品は既に全国の小売書店10 00店舗に向けて販売・採用されていると主張するが,原告商品の導入件数, 市場規模,原告製品の市場占有率を客観的に示す証拠は提出されていない。
イ また,原告は,業界新聞である「文化通信BB」において原告製品が紹介 されたことを指摘するが,「文化通信BB」の発行部数等は明らかではなく, その記事の内容は原告製品を紹介する内容を含むものの,原告製品の表示画面は一切掲載されていない(甲18)。\n同様に,原告は,日販が平成25年8月1日付け業界新聞において書店向 けPOSレジと原告製品を連携させることを発表し,系列の書店1000店に合計1300台を販売することを表\明したと主張するが,同記事で導入が表明されているのはPOSレジであり,原告製品が書店に導入されたことを裏付けるものではない上,同記事には原告製品の表\示画面は一切表示されて\nいない(乙23)。
ウ さらに,原告は,「文化通信」及び「新文化」のウェブサイトの上段に,バ ナー広告を掲載したことや,「BOOK EXPO」や「書店大商談会」に出 展し,広報を行っていることを根拠に,原告表示画面には周知性がある旨主張する。\n しかし,証拠(乙22)によれば,文化通信社のウェブサイト上に掲載さ れたバナー広告は,「BOOK ANSWERシリーズ」という製品名を表示するものにすぎず,原告製品の表\示画面は一切示されていない。また,「BOOK EX PO」や「書店大商談会」への出展についても,その規模や具体的な出展・ 宣伝態様などは一切明らかではない。
エ 以上によれば,原告画面表示が,遅くとも平成25年末までに,出版業界及び書店業界において広く認識されていたと認めることはできない。\n
(3) 特別顕著性について
原告は,原告表示画面には特別顕著性が認められる旨主張し,その根拠として,1)業務統合型のシステムを構築するという設計思想に基づき,仕入部門で使用するメニューと店売部門で使用するメニューが統合されている点や,2)発 注に当たって,商品分析の画面から一旦発注画面に移行することなく,商品分 析の画面から即発注することができる点,3)帳票を作成するという発想がなく, 画面上に表示して見るということを基本にしている点,4)独自の用語を用いて いる点に,他社製品にはない原告製品の独創的な特徴がある旨主張する。
しかし,上記1)〜3)の点は,いずれも,原告製品の設計思想や機能としての独自性を指摘するものにすぎず,表\示画面自体の顕著な特徴を基礎付けるものということはできない。また,上記4)の点についても,原告製品の表示画面に用いられた用語は,一般的な書店業務に用いられているものがほとんどであり,\n画面全体の特別顕著性を基礎付けるに足りる独創的を有すると認めることは できない。
したがって,原告表示画面が同種製品と異なる顕著な特徴を有しているということはできない。\n
(4) 以上のとおり,原告表示画面には,周知性及び特別顕著性のいずれも認められないから,原告表\示画面が「商品等表示」に該当するということはできない。\nしたがって,その余の点を判断するまでもなく,不正競争防止法に関する原 告の主張についても理由がない。

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平成31(ワ)2534  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 令和3年11月11日  大阪地方裁判所

 自然保護センターのインターネット展示システムについて著作物性があるかが争われました。大阪地裁は著作物性無しと判断しました。

ア 著作物とは,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,\n美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(法2条1項1号)。したがって,著作 物といえるためには,思想又は感情を表現したものであること,その表\現に創作性 があること,文学,学術,美術又は音楽の範囲に属するものであることを要する。
イ 前提事実及び前記認定に係る各事実によれば,原告は,旧展示システムから の移行として本件展示システムを構築するに当たり,本件購入契約及び本件構\築契 約に基づき,本件展示システムの機能を実現するために必要な機能\を選定し,性能,\nセキュリティ対策ないし費用等の面から必要かつ最適と考えるサーバ機器及びネッ トワーク機器等を,その組合せも踏まえた上で選定し,各機能等を分担させて本件\n展示システムを構築することとして,本件サーバ設計書を改訂し,これに基づき,\n本件展示システムを構築したことが認められる。\nもっとも,本件サーバ設計書と本件展示システム自体とはその表現形式を異にす\nることから,本件展示システムの著作物性の有無は,本件サーバ設計書の著作物性 とは別個に検討する必要がある。すなわち,本件展示システム自体につき著作物性 が認められるためには,本件サーバ設計書を離れてなお固有の創作性が認められる 必要がある。 しかるに,本件展示システム自体は,いわば本件サーバ設計書の記載 を技術的・機械的に具体化したものにとどまるものというべきであって,固有の創 作性があると見るべき部分に関する具体的な主張立証はない。そうである以上,本 件展示システム自体をもって創作的な表現と見ることはできない。\nしたがって,本件サーバ設計書の表現の創作性すなわち著作物性の有無に関わり\nなく,本件展示システム自体をもって著作物ということはできない。
ウ これに対し,原告は,本件展示システムは本件サーバ設計書とは独立して外 部に表出された著作物である旨などを主張する。\nしかし,本件展示システムが本件サーバ設計書の記載のとおりに構築されたもの\nであることは,原告自身も認めるところである。原告が本件展示システム自体の創 作性の表現として縷々主張するものも,本件サーバ設計書の記載に基づき実現され\nているものと理解されるのであって,前記のとおり,これを離れて本件展示システ ムに固有の創作性があると見るべき部分についての具体的な主張立証はない。また, 本件保守管理仕様書には「生物情報データベースフォーマット,及び,WebGIS」 の著作権が原告に帰属する旨の記載があるものの,著作物性の有無は当事者間の契 約条項の記載によって決定されるものではない。そもそも,上記記載が示すものと 本件展示システム自体との関係性に関する具体的な主張立証はなく,両者の異同そ の他の関係性は不明というほかない。 その他原告が縷々指摘する事情を考慮しても,この点に関する原告の主張は採用 できない。
(3) 小括
以上のとおり,本件展示システム自体の著作物性は認められない。したがって, 原告は,本件展示システム自体に係る著作者人格権(同一性保持権)を有しないか ら,その余の点を論ずるまでもなく,被告に対する著作者人格権に基づく差止及び 廃棄請求権を有しない。
ア 本件サーバ設計書1頁にはネットワーク構成図等が記載されているところ\n(前記1(1)エ(イ)),本件展示システムが ADSL 回線と本件ルータを接続すること により外部ネットワークと接続することは,本件購入仕様書及び本件構築仕様書に\nも,システム構成として記載されている。また,同頁記載の各端末に割り当てられ\nたグローバル IP アドレスは,本件サーバ設計書を見ずとも,所定の手順を履践す ることにより確認可能なものである。また,本件サーバ設計書15頁には,「項目\n名設計」の項に本件ルータの初期パスワード及び変更後パスワードが記載されてい るところ(前同),このうち,初期パスワードは本件説明書にも記載がある。さら に,本件サーバ設計書17頁には,「ルータ・ファイアウォール設定コマンド」の 項の「パケットフィルタリング」に関する記載があるところ(前同),本件展示シ ステムにおいてファイアウォール機能がパケットフィルタリングにより行われるこ\nとは,本件購入仕様書及び本件構築仕様書にも記載されている。加えて,本件ルー\nタがファイアウォール機能を有することやそのファイアウォールポリシーの詳細な\n設定情報,ルータの設定コマンド等は一般に公開されている(乙1,3〜5)。し かも,「パケットフィルタリング」記載の設定方法は,メーカーが一般に公開して いる設定例集(乙5)記載の設定例と,サーバの IP アドレスを異にするに過ぎな い。
そうすると,本件展示システムにつき外部との接続を遮断するために必要な情報 のうち,本件サーバ設計書を参照しなければ被告及び外部業者が把握し得ないもの は,本件ルータの変更後パスワード及び開放されているポート番号である。これに, 確認に所定の手順を要するIPアドレスをも含むとしても,サーバのIPアドレス及 び本件ルータの変更後パスワードは,本件展示システムに固有のものと思われるこ とから,これらの情報が第三者との関係で秘密として保持されることにつき,原告 にとっての有用性ないし固有の利益があるとは考え難く,少なくともこれがあるこ との具体的な主張立証はない。また,本件サーバ設計書17頁には,開放済みポー ト番号として本件閉鎖行為により閉鎖された80,25及び53のほか,110, 143,123も記載されているが,これらも含め,いずれも代表的なポート番号\nとされるものであるから(乙14),これらの情報についても,秘密として保持さ れることにつき原告にとっての有用性ないし固有の利益があるとは考え難い。 そうすると,被告の外部業者に対する本件開示行為(本件サーバ設計書1頁,1 5頁及び17頁の開示)につき,原告の法的に保護すべき権利ないし利益を侵害す るものとはいえない。 したがって,本件開示行為をもって,被告による国家賠償法上の違法行為と認め ることはできない。
イ これに対し,原告は,本件開示行為により,本件サーバ設計書記載の原告の 秘密情報を保持する権利ないし利益が侵害された旨及びこれにより本件展示システ ムの基となっている基礎システムを使用する他の顧客のシステムについてセキュリ ティ対策を施す必要が生じ,損害を受けた旨などを主張する。 しかし,前記のとおり,本件開示行為により開示された情報は,いずれも公開さ れたものであるか,原告にとって有用性ないし固有の利益がある情報とはいえない。 また,損害の点についても,他の顧客に対する連絡・周知文書や対策として調達し たとする機器の購入の裏付資料といった客観的な証拠はない。 その他原告が縷々主張する事情を考慮しても,この点に関する原告の主張は採用 できない。

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令和3(ネ)10044  著作権侵害請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年12月8日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

公園に設置したタコの滑り台について1審は著作物ではないと判断し、知財高裁もこの判断を維持しました。

「イ 前記ア認定のとおり,本件原告滑り台は,遊具としての実用に供 されることを目的として製作されたことが認められる。 ところで,著作権法2条1項1号は,「著作物」とは,「思想又は 感情を創作的に表現したものであつて,文芸,学術,美術又は音楽の\n範囲に属するもの」をいうと規定し,同法10条1項4号は,同法に いう著作物の例示として,「絵画,版画,彫刻その他の美術の著作物」 を規定しているところ,同法2条1項1号の「美術」の「範囲に属す るもの」とは,美的鑑賞の対象となり得るものをいうと解される。そ して,実用に供されることを目的とした作品であって,専ら美的鑑賞 を目的とする純粋美術とはいえないものであっても,美的鑑賞の対象 となり得るものは,応用美術として,「美術」の「範囲に属するもの」 と解される。 次に,応用美術には,一品製作の美術工芸品と量産される量産品 が含まれるところ,著作権法は,同法にいう「美術の著作物」には, 美術工芸品を含むものとする(同法2条2項)と定めているが,美術 工芸品以外の応用美術については特段の規定は存在しない。 上記同条1項1号の著作物の定義規定に鑑みれば,美的鑑賞の対 象となり得るものであって,思想又は感情を創作的に表現したもので\nあれば,美術の著作物に含まれると解するのが自然であるから,同条 2項は,美術工芸品が美術の著作物として保護されることを例示した 規定であると解される。他方で,応用美術のうち,美術工芸品以外の 量産品について,美的鑑賞の対象となり得るというだけで一律に美術 の著作物として保護されることになると,実用的な物品の機能を実現\nするために必要な形状等の構成についても著作権で保護されることに\nなり,当該物品の形状等の利用を過度に制約し,将来の創作活動を阻 害することになって,妥当でない。もっとも,このような物品の形状 等であっても,視覚を通じて美感を起こさせるものについては,意匠 として意匠法によって保護されることが否定されるものではない。 これらを踏まえると,応用美術のうち,美術工芸品以外のもので あっても,実用目的を達成するために必要な機能に係る構\成と分離し て,美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えてい\nる部分を把握できるものについては,当該部分を含む作品全体が美術 の著作物として,保護され得ると解するのが相当である。 以上を前提に,本件原告滑り台が美術の著作物に該当するかどう かについて判断する。
ウ 控訴人は,本件原告滑り台は,一品製作品というべきものであり, 「美術工芸品」(著作権法2条2項)に当たり,創作性を有するから, 美術の著作物に該当する旨主張する。
そこで検討するに,1)「タコの滑り台,北欧に」との見出しの平 成23年7月7日の朝日新聞の記事(甲4)には,控訴人のB会長の 発言として「タコの滑り台は一つ一つデザインが違い,その都度設計 する。」,2)「タコの滑り台の話」と題するC作成の令和2年7月11 日の毎日新聞の記事(甲25)には,タコの滑り台について「一つ一 つが手作りで,全く同形の作品はないという。」,3)株式会社パークフ ル作成のウェブサイトに掲載された「日本縦断!タコすべり台がある 公園特集」と題する2018年(平成30年)1月3日付けの記事 (乙24)には,タコの滑り台について「どのタコも手作りで作られ ていて,二つとして同じ形のタコはいないんだそう!」との記載があ る。
しかしながら,上記各証拠の記載は,いずれも,B会長の発言又 は伝聞を掲載したものであって,客観的な裏付けに欠けるものである。 他方で,前記前提事実(2)及び(3)のとおり,前田商事が全国各地から発 注を受けて製作したタコの滑り台は260基以上にわたること,前田 商事が製作したタコの滑り台は,基本的な構造が定まっており,大き\nさや構造等から複数の種類に分類され,本件原告滑り台は,その一種\nである「ミニタコ」に属するものであったことからすれば,本件原告 滑り台と同様の「ミニタコ」の形状を有する滑り台が他にも製作され ていたことがうかがわれる。そうすると,上記各証拠から直ちに本件 原告滑り台が一品製作品であったものと認めることはできない。他に これを認めるに足りる証拠はない。
よって,本件原告滑り台は,「美術工芸品」に該当するものと認め られないから,控訴人の上記主張は,その前提を欠くものであって, 理由がない。
エ 控訴人は,本件原告滑り台が「美術工芸品」に当たらないとしても, 美術の著作物として保護される応用美術である旨主張する。 そこで,まず,本件原告滑り台において,実用目的を達成するた めに必要な機能に係る構\成と分離して,美的鑑賞の対象となり得る美 的特性である創作的表現を備えている部分を把握できるかどうかを検\n討し,その上で,全体として美術の著作物に該当するかどうかについ て判断する。
・・・
このように,タコの頭部を模した部分は,本件原告滑り台の中でも最 も高い箇所に設置されており,同部分に設置された上記各開口部は,滑 り降りるためのスライダー等を同部分に接続するために不可欠な構造で\nあって,滑り台としての実用目的を達成するために必要な構成であると\nいえる。また,上記空洞は,同部分に上った利用者が,上記各開口部及 びスライダーに移動するために必要な構造である上,開口部を除く周囲\nが囲まれた構造であることによって,高い箇所にある踊り場様の床から\n利用者が落下することを防止する機能を有するといえる。他方で,上記\n空洞のうち,スライダーが接続された開口部の上部に,これを覆うよう に配置された略半球状の天蓋部分については,利用者の落下を防止する などの滑り台としての実用目的を達成するために必要な構成とまではい\nえない。 そうすると,本件原告滑り台のタコの頭部を模した部分のうち,上記 天蓋部分については,滑り台としての実用目的を達成するために必要な 機能に係る構\成と分離して把握できるものであるといえる。 しかるところ,上記天蓋部分の形状は,別紙1のとおり,頭頂部から 後部に向かってやや傾いた略半球状であり,タコの頭部をも連想させる ものではあるが,その形状自体は単純なものであり,タコの頭部の形状 としても,ありふれたものである。 したがって,上記天蓋部分は,美的特性である創作的表現を備えてい\nるものとは認められない。 そして,本件原告滑り台のタコの頭部を模した部分のうち,上記天蓋 部分を除いた部分については,上記のとおり,滑り台としての実用目的 を達成するために必要な機能に係る構\成であるといえるから,これを分 離して美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えてい\nるものと把握することはできないというべきである。 以上によれば,本件原告滑り台のうち,タコの頭部を模した部分は, 実用目的を達成するために必要な機能に係る構\成と分離して,美的鑑賞 の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握で\nきるものとは認められない。
・・・
そうすると,本件原告滑り台のうち,タコの足を模した部分は,座っ て滑走する遊具としての利用のために必要な構成であるといえるから,\n同部分は,実用目的を達成するために必要な機能に係る構\成と分離して, 美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分\nを把握できるものとは認められない。
・・・
前記(ア)ないし(ウ)のとおり,本件原告滑り台を構成する各部分にお\nいて,実用目的を達成するために必要な機能に係る構\成と分離して, 美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部\n分を把握することはできない。 そして,上記各部分の組合せからなる本件原告滑り台の全体の形状に ついても,美的鑑賞の対象となり得るものと認めることはできないし, また,美的特性である創作的表現を備えるものと認めることもできない。\nしたがって,本件原告滑り台が美術の著作物に該当するとの控訴人の 主張は,採用することができない。
・・・
「(カ) また,控訴人は,応用美術であっても「実用目的を達成するため に必要な機能に係る構\成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的 特性を備えている部分を把握できるもの」については「美術の著作物」 として保護され得るという判断基準によるとしても,「実用目的を達 成するために必要な機能に係る構\成と分離して」とは,その構成部分\nを物理的に取り除くというのではなく,実用品として必要な機能を果\nたす構成を観念的に捨象して,創作物をみることを意味すると解すべ\nきであり,本件原告滑り台を滑り台としての機能を取り去ってみたと\nき,その形状は,Aが彫刻家としての思想又は感情を創作的に表現し\nたものであり,抽象芸術として十分に鑑賞の対象になり得るものであ\nるから,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているとして,美 術の著作物に該当する旨主張する。 しかしながら,本件原告滑り台は,遊具としての実用に供されるこ とを目的として製作された作品である以上,これが美術の著作物に該 当するか否かを判断するに当たっては,実用品である滑り台としての 機能を果たす構\成を観念的に捨象して検討することはできないから, 控訴人の上記主張は,採用することができない。

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1審はこちら。

◆令和1(ワ)21993

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令和3(ワ)2526  発信者情報開示請求事件 令和3年9月6日  大阪地方裁判所

 発信者情報開示の前提として、著作権侵害が争点となりました。動画のテロップ全体からの翻案であると判断されました。

 本件テロップと本件記事の各内容を比較すると,本件記事には本件テロップと完全に一致する表現が多数含まれる。他方,相違する部分は,句読点の有無や助詞の違い,文言の一部省略等の僅かな相違のほか,例えば,次のような相違部分が存在する。これらの相違部分は,表\現の手法等に若干の違いが見られるものの,内容的には,本件テロップの表現を若干修正したり,要約又は省略したり,前後の表\現を入れ替えるなどしているにとどまり,実質的にほぼ同一の内容を表現したものといえる。\n
1) 本件テロップ:「ドイツ出身のヴァレンティンさんは幼い頃からずっと動物 を大切に思ってきました。」
本件記事:「この感動のストーリーは2人の人間から始まります。その1人がヴァ レンティンさん。ヴァレンティンさんはドイツ出身。幼い頃よりずっと動物を大切 に思ってきました。」
2) 本件テロップ:「2人はボツワナで自然保護プロジェクトを立ち上げました。 野生動物の保護を目的とするプロジェクトです。」
本件記事:「2人はボツワナで野生動物の保護を目的とする自然保護プロジェクト を立ち上げました。」
3) 本件テロップ:「メスのライオンで非常に弱っており,瀕死の状態です。」
本件記事:「そのメスの幼いライオンで非常に弱っており,瀕死の状態です。」
4) 本件テロップ:「けれどシルガにとって,人間に慣れてしまう事は危険な事で す。」
本件記事:「しかし,人間に慣れてしまってはいけません。」
5) 本件テロップ:「そう決めた2人は決して他の人間をシルガと交流させたりし ませんでした。」
本件記事:「他の人間とは交流させませんでした。」
6) 本件テロップ:「2人は本当にシルガの為を思い,幸せを願っていたのです。」
本件記事:「2人はシルガの幸せ,野生に戻る事を1番に考えていました。」
7) 本件テロップ:「ヴァレンティンさんとミッケルさんは,シルガの世話をする だけでなく狩りの仕方も教えます。」
本件記事:「2人は世話だけでなく,狩りの仕方も教えます。」
8) 本件テロップ:「何度も何度も練習を重ね,ようやくシルガが獲物を狩る事が 出来るようになった頃,2人は複雑な気持ちに襲われはじめていました。」
本件記事:「狩りの練習を何度も練習を重ね,ようやくシルガは獲物を狩る事が出 来る様になった頃,2人は複雑な気持ちになりました。」
9) 本件テロップ:「そしてシルガは予想を上回る反応を示します。」
本件記事:「そこで予想を超える事に。」
10) 本件テロップ:「ずっとヴァレンティンさんに会えずに寂しく思っていた事が, その表情から伝わります。」
本件記事:「ずっとヴァレンティンさんに会えず,さみしかった事が分かります。」
(2) 複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製 することをいうところ(著作権法2条1項15号),著作物の複製とは,既存の著作 物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表\現することなく,その表現上の本質\n的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうものと解される。また,\n翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴 を直接感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最 高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻 4号837頁参照)。
本件記事は,記事中に本件動画が埋め込まれていること(甲5)や,上記のとお り,本件テロップと完全に一致する表現を多数含み,相違する部分も,句読点の有無等の僅かな形式的な相違のほか,本件テロップの表\現の僅かな修正,要約,前後の入れ替え等にとどまり,実質的にほぼ同一の内容を表現したものであることに鑑みると,本件テロップに依拠したものと認められると共に,著作物である本件テロッ\nプの表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者がその特徴を直接感得できるものと認められる。\n

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令和3(ネ)10048  著作権侵害行為差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年10月27日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 講義レジュメについて、著作物性なしとした1審判断を維持しました。

 著作権法は,著作物とは,思想又は感情を創作的に表現したものであっ\nて,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの(同法2条1項1号) をいい,複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有 形的に再製することをいう旨規定していること(同項15号)からすると, 著作物の複製(同法21条)とは,当該著作物に依拠して,その創作的表\n現を有形的に再製する行為をいうものと解される。 また,著作物の翻案(同法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ, その表現上の本質的な特徴である創作的表\現の同一性を維持しつつ,具体 的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表\ 現することにより,これに接する者が既存の著作物の創作的表現を直接感\n得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される。 そうすると,被告レジュメが原告ワークブックに係る著作物を複製又は 翻案したものに当たるというためには,原告ワークブックと被告レジュメ との間で表現が共通し,その表\現が創作性のある表現であること,すなわ\nち,創作的表現が共通することが必要であるものと解するのが相当である。\n一方で,原告ワークブックと被告レジュメにおいて,アイデアなど表現そ\nれ自体ではない部分が共通するにすぎない場合や共通する表現がありふ\nれた表現である場合には,被告レジュメが原告ワークブックを複製又は翻\n案したものに当たらないと解される。
イ 控訴人会社は,原告ワークブックと被告レジュメは,全体の構成が実質\n的に同一であり,しかも,原判決別紙2レジュメ対比表及び原判決別紙5\n原告ワークブックに関する主張対比表の「原告らの主張」欄記載のとおり,\n具体的な記述部分における同一性を有する表現は創作性のある表\現であ るから,被告レジュメは原告ワークブックを複製又は翻案したものに当た る旨主張するので,以下において判断する。
(ア) 原告記述部分1ないし24及び被告記述部分1ないし24に係る複 製又は翻案について
a 原告記述部分1ないし5と被告記述部分1ないし5について
(a) 原判決別紙2レジュメ対比表の番号1ないし5のとおり,原告ワ\nークブックの当該部分と被告レジュメの当該部分とは,それぞれ, 会議において,会議での約束事として,そのまま「やってみる」こ と(番号1),「携帯」電話を切っておくこと(番号2),「問題」 を見つけたら,「問題を指摘する」のではなく,「解決策を提示す る」こと(番号3),「わかりません」という回答はしないこと(番 号4),「発言」は,「短く」,「簡潔に」,「直接的な表現で」\n行うこと(番号5)を内容とする記述である点で共通する。 しかしながら,原告記述部分1は「まずは本書の手順どおりその ままやってみる。」であるのに対し,被告記述部分1は「とりあえず 身を預けてやってみる。」,原告記述部分3は「問題を見つけたら問 題を指摘するのではなく,解決できる人に解決策を提示する(自分 自身かもしれない)。」であるのに対し,被告記述部分3は「問題を 発見したとき,解決策を提示する。問題を指摘するだけは無し」,原 告記述部分4は「このワークブックが質問してくる質問に「わかり ません」という回答はなし。」であるのに対し,被告記述部分4は「侍 会議中,「わかりません」「ありません」という答えは無しでやっ てみる」,原告記述部分5は「発言は3Sにやる。(スリーエス:Short 短く,Simple 簡潔に,Straight 直接的な表現で)」であるのに対し, 被告記述部分5は「発言は短く,簡潔に,直接的な表現でやる。」で あり,具体的記述における表現は異なり,共通性は認められない。\nそうすると,被告記述部分1ないし5と原告記述部分1ないし5 は,会議の約束事を説明した記述であるという点において共通して いるものの,その共通する部分は,会議における約束事をどのよう に取り決めるかというアイデアであって,表現それ自体ではない。\n
(b) 控訴人会社は,1)原告記述部分1ないし5及び被告記述部分1な いし5について,会議における約束事の表現の仕方にはいくつかの\n選択肢がある中で,一見当たり前と思われるような内容も約束事と してあらかじめ記載するという表現形式をとっている点で同一性\nを有しており,その同一性を有する部分は創作的な表現である,2) また,会議における約束事は多数あり,どの約束事を選択するか, その組合せ,約束事の表現の仕方については,その選択の幅は広く,\nアイデアの表現方法がただ1つしか存在しない場合,あるいは,1\nつでなくとも相当程度に限定されている場合には該当しないので あるから,原告記述部分1ないし5と被告記述部分1ないし5の同 一性を有する部分はアイデアそのものではない旨主張する。
しかしながら,会議の冒頭で約束事を決めることや,当たり前の ことをあえてワークブックないしレジュメに記載するということ 自体は,アイデアにすぎないから,仮に,そうしたアイデアそのも のに個性の表れが認められるとしても,そのことをもって直ちに創\n作的表現部分に共通性があるとはいえない。また,アイデアの表\現 方法がただ1つしか存在しない場合,あるいは,1つでなくとも相 当程度に限定されている場合かどうかは,具体的表現を前提にその\n表現に創作性があるかどうかの考慮要素になり得るとしても,前記\n(a)認定の原告記述部分1ないし5と被告記述部分1ないし5の共 通する部分がそもそも表現であるか,アイデアであるかの判断を左\n右するものではない。 したがって,控訴人会社の上記主張は,採用することができない。
(c)また,控訴人会社は,1)原告記述部分1ないし5と被告記述部分 1ないし5の5つの約束事が同一であり,約束事の1つ1つは短い 表現であるが,約束事は一体として意味を成すものであることから,\n原告記述部分1ないし5と被告記述部分1ないし5の表現を一体\nとしてみた場合には,相当程度の文章になるのであって,短い表現\nではない,2)これらの5つの約束事を全て記載した他の書籍やウェ ブページは見当たらず,約束事の1つ目に,手順どおりそのまま「や ってみる」という表現を選択していることには作成者の創意工夫が\n表れているなど,これらの5つの約束事の配置や文字列には作成者\nの創意工夫が表れており,ありふれた表\現とはいえないから,創作 的表現が共通する旨主張する。\nしかしながら,前記(a)認定のとおり,原告記述部分1ないし5と 被告記述部分1ないし5は,具体的記述における表現の共通性は認\nめられない。
また,原告記述部分1中の「まずは・・・そのままやってみる。」との 表現部分は,ウェブページ(乙16)において「素直にそのままや\nる」との記載が,書籍(乙20)において「おやくそく」,「まず はやってみよう」との記載が,それぞれ存在していること,会議中 の「発言」に関するものとして,原告記述部分5中の「発言は3S にやる。(スリーエス:Short 短く,Simple 簡潔に,Straight 直接的 な表現で)」との表現部分は,ウェブページ(乙15)において「会\n議での発言は「3S」(Short=短く,Simple=簡潔で, Straight=直接的に)のルールでおこないましょう。」と の記載が存在することに照らすと,上記各表現部分は,いずれもあ\nりふれた表現であり,創作性があるとはいえない。\nしたがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(d)以上によれば,被告記述部分1ないし5が原告記述部分1ないし 5と共通する部分は,表現それ自体ではないから,被告記述部分1\nないし5は,原告記述部分1ないし5を複製又は翻案したものに当 たるものと認めることはできない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成31(ワ)4521

原告・被告物件などはこちら

◆資料1

◆資料2

◆資料3

◆資料44

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令和3(ワ)2322 著作権  民事訴訟 令和3年8月20日  東京地方裁判所

 プロレスラーの衣装に関する著作権侵害事件です。黙示の許諾があったと判断されました。この種の業務についても、きちんと契約が必要ということですね。

 事案に鑑み,まず,争点1−4について検討する。
(1)ア 前記前提事実によれば,原告X1は,令和元年7月6日,プロレスラーと してのデビューに当たって必要となるコスチュームの制作について被告か ら相談を受け,衣装制作会社及びデザイナーを紹介するとともに,被告から 送信を受けた本件デザイン画のデータについて,「アイドルらしくて,いい よ。」,「コスチューム代,俺が出そうか?」,「絶対にクオリティは下げ ないで。」などのコメントをしているとの事実が認められる。これによれば, 原告X1は,本件コスチュームの制作に積極的に協力し,その代金の負担ま で申し出ているのであり,完成したデザイン画及びそれに基づいて制作され\nる本件コスチュームの著作権の使用について特段の制限や条件を付したこ とをうかがわせる事実は存在しない。
イ 同様に,原告X1は,令和元年8月8日,被告から,完成した本件コスチ ュームを着用した写真の送付を受けたが,これ対して特段の異議を述べるこ とはなく,被告のデビュー後も,被告とLINEを通じてやり取りを行って いるが,その際に,本件デザイン画や本件コスチュームの使用について特段 の異議を述べたとの事実も認められない。
ウ このように,原告X1は,被告が令和元年8月10日にプロレスラーとし てデビューすることを認識した上で,本件デザイン画や同デザイン画をベー スとしてコスチュームを制作することを認識し,同日の前に実際に制作され たコスチュームのデザインを確認していながら,その使用についてデビュー の前後を通じ何ら異議を述べていないのであるから,仮に原告会社が本件デ ザイン画及び本件コスチュームの著作権を有するとしても,被告に対してそ の使用を許諾していたものというべきである。
(2)ア これに対し,原告会社は,本件デザイン画につき,著作権法30条の3に いう「検討の過程における利用」において必要と認められる限度で使用する ことは承諾していたが,当該限度を超えて,本件デザイン画と同一又は類似 のコスチュームを使用することは承諾していなかった旨主張する。 しかし,原告X1は,被告が完成した本件デザイン画を使用して本件コス チュームを制作し,これを着用して活動することを認識した上で,同デザイ ン画の使用に関して何らの制限や条件を付していなかったと認められるこ とは前記判示のとおりである。 したがって,「検討の過程における利用」のみを許諾していたとの原告会 社の主張は採用し得ない。
イ 原告会社は,原告X1が令和元年8月8日に本件コスチュームの写真を確 認した際に異議を述べなかったのは,2日後に被告のデビューが控えていた ためである旨主張する。 しかし,原告X1は,令和元年8月8日より以前の段階から,本件デザイ ン画に基づいて本件コスチュームを制作していることを認識していたと認 められ,デビュー後の被告とのやりとりにおいても,本件デザイン画及び本 件コスチュームの使用について何ら異議を述べていないのであるから,原告 X1が本件コスチュームの写真を確認したのが被告のデビューの2日前で あったとしても,同事実は,原告会社が本件デザイン画及び本件コスチュー ムの使用について承諾していたとの結論を左右しない。 したがって,原告会社の上記主張は採用し得ない。

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令和2(ワ)26567    著作権  民事訴訟 令和3年8月18日  東京地方裁判所

 取説について著作物性なしと判断されました。不存在確認訴訟なので被告が著作権者です。なお、被告は答弁書すら提出していません。説明書の一部は下記です。
「この水虫(白癬)爪専用クリアーネイル&ヤスリセットは100年以上の歴史を誇るDrスコール社が科学的に研究を重ねて作られた独自技術の集大成です。解決法として従来製品よりも簡単に優しく治療できます。
水虫(白癬)菌の発育を妨げ菌の発生を防ぎます。
水虫(白癬)菌の成長と始発を予防し清潔な爪に貢献をします。」\n

 被告説明文の「ア」部分は,本件商品がドクターショール社の製品であるこ とや,本件製品が従来製品よりも簡単かつ優しく治療できること,水虫菌の発 生・発育を防止することなどを記載するものである。このような製品の出所, 特性や効能については,その性質上,消費者が過大な期待を抱くことのないよ\nうに,客観的な事実をできる限り正確かつ明確に説明することが求められてお り,思想又は感情を創作的に表現する幅は狭く,表\現の選択肢は限られたもの となると考えられる。このため,上記「ア」部分の記載に創作性があるとは認 められない。
(2) 被告説明文の「イ〜エ」部分は,本件商品が適合する症状や,本件商品の使 用方法,爪白癬(爪水虫)が生じる原因について記載したものである。これら についても,利用者が誤った場面や方法で本件商品を使用すること等を避ける ために,前記ア同様,その性質上,客観的な事実をできる限り正確かつ明確に 説明することが求められており,思想又は感情を創作的に表現する幅は狭く,\n表現の選択肢は限られたものとなると考えられる。このため,上記「イ〜エ」\n部分の記載についても創作性があるとは認められない。

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令和3(ネ)10036  著作権等の侵害に基づく削除等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年9月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 原告はイラストと文章をTwitterに投稿しました。被告の行為は原告著作物の公衆送信権、翻案権侵害と訴えました。知財高裁は1審判断を維持しました。

 既存の著作物に依拠して創作された著作物が思想,感情若しくはアイデア, 事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない部 分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案に当 たらないことは引用する原判決が説示するとおりである。
本件についてみると,被告イラストは,原告文章と同じく,原作である「O NE PIECE」に登場するキャラクターの設定に依拠して,身長差のあ る同性の2人が,壁に掴まりながら特定の体位で性交渉を行うという描写に おいて,原告文章と同一性を有するにとどまるものであり,こうした描写自 体は,アイデアないし着想にすぎないか,表現上の創作性がない部分である。\nそうすると,原告文章を全体として見た場合に一定の創作性が認められる余 地があるとしても,前述のとおり,被告イラストは,原告文章のうちアイデ アないし着想にすぎないか,表現上の創作性がない部分において同一性を有\nするにすぎないのであるから,原告文章の翻案に当たるものでないことは明 らかというべきである。 控訴人は,原告文章の創作性につき前記第2の3(1)のとおり指摘し,被告 イラストは,これらの創作部分が全て描写されているので,原告文章の翻案 に当たる旨主張するが,控訴人の指摘する部分は,いずれも,アイデアない し表現上の創作性のない部分であるにすぎないし(「ONE PIECE」 に登場するキャラクターの設定については,当然のことながら創作性を認め ることができない。),その具体的な表現ぶりも,性表\現として平凡かつあ りふれたものであり,そもそも被告イラストが当該表現部分に依拠して作成\nされたと特定することもできないものといわざるを得ない。 したがって,控訴人の主張は失当というほかない。
(2) 被告文章が原告イラストの翻案に当たるとの点について
被告文章は,原作である「ONE PIECE」に登場するキャラクター の設定に依拠して,原作に登場する2人の人物が性交渉後に,身長の低く若 い人物(ルフィ)が失禁したと勘違いし,動揺をしている描写設定において, 原告イラストと同一性を有するに止まり,こうした描写設定は,同性間の性 交渉を描写するに当たってのアイデアないし着想にすぎないか,表現上の創\n作性があるとはいえない部分である。そうすると,原告イラストを全体とし て見た場合に一定の創作性が認められる余地があるとしても,前述のとおり, 被告文章は,原告イラストのうちアイデアないし着想にすぎないか,表現上\nの創作性がない部分において同一性を有するにすぎないのであるから,原告 イラストの翻案に当たるものでないことは明らかというべきである。 控訴人は,前記第2の3(2)のとおり,被告文章は,原告イラストの最後の コマの「ルフィ」のセリフを受けて,あたかも連歌のように,直前の状況や 内容を参看し,その背景や情趣,心境を踏まえて,そのポエジーを受け継い で記載されたものである旨主張するが,独自の見解というほかないものであ り,控訴人主張のセリフ自体に表現上の創作性を認めることはできないし,\nましてやそのセリフから連歌性やポエジーの存在を認め,被告文章が原告イ ラストに依拠した翻案に当たるなどと認めることは到底できない。  

◆判決本文

原審はこちら

◆令和1(ワ)30833
以下のように判断されています。
まず,原告文章と被告イラストについては,原告文章が言語の著作物で あるのに対し,被告イラストは基本的には美術の著作物であって,表現の\n形式が異なり,これらを対比すると,両者は,描写対象の設定(身長差の ある設定の2人の登場人物が,一般的には困難と思われている体位で性行 為を行っている点,性器の状態,及び登場人物の一方が壁につかまろうと しているという点)につき同一性を有するにとどまるといえる。しかして, 上記描写対象の設定は,その内容自体や,原告文章の性質・内容に照らし, 内面的思想たるアイデアにすぎず,表現それ自体でない部分であるという\nべきである。また,仮に表現自体と捉えられる部分があったとしても,本\n件各証拠を見ても,上記設定による表現に幅があると認められ制作者の個\n性の表れとして著作物性を肯定することを基礎付けるに足りるものは見当\nたらず,原告文章の性質・内容に照らせば,上記設定を前提とする限り, これを表現したものとしては平凡かつありふれたものであり,表\現上の創 作性がない部分であるといわざるを得ない。
イ 次に,原告イラストと被告文章については,原告イラストが基本的には 美術の著作物であるのに対し,被告文章は言語の著作物であって,表現の\n形式が異なり,これらを対比すると,両者は,描写対象の設定(2人いる 登場人物の一方が性的行為の際に勘違いをした状況で,他方の登場人物に 対する言動・働きかけに及んでいる点)につき同一性を有するにとどまる といえる。しかして,これについても,上記説示が同様に当てはまるもの である。すなわち,上記描写対象の設定は,その内容自体や,原告イラス トの性質・内容に照らし,内面的思想たるアイデアにすぎず,表現それ自\n体でない部分であるというべきである。また,仮に表現自体と捉えられる\n部分があったとしても,本件各証拠を見ても,上記設定による表現に幅が\nあると認められ制作者の個性の表れとして著作物性を肯定できることを基\n礎付けるに足りるものは見当たらず,原告イラストの性質・内容に照らせ ば,上記設定を前提とする限り,これを表現したものとしては平凡かつあ\nりふれたものであり,表現上の創作性がない部分であるといわざるを得な\nい。
ウ 以上によれば,被告イラストは原告文章を翻案したものには当たらず, また,被告文章は原告イラストを翻案したものには当たらないというべき である。

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令和3(ネ)10028  損害賠償等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年9月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ゲームの著作物について複製・翻案であるかについて1審は複製・翻案ではないと判断しました。知財高裁(1部)も同様です。

 また,控訴人は,当審において,原判決は,全体として一つのゲーム を一画面一画面に分断し,分断した画面ごとに共通する部分(アイコン 等の配置等)について,個別に創作性を判断し,その結果として,共通 する部分全体の創作性を否定したものであり,一連の流れのあるゲーム の著作権侵害を判断しているのではなく,画面の著作権侵害を判断して いるにすぎないから,このような原判決の判断手法によると,他社のゲ ームをデッドコピーしても,キャラクターやアイコンのデザイン等を多 少変更さえしてしまえば,著作権侵害を免れることになり,不合理であ るとして,被告ゲームは原告ゲームを複製又は翻案したものに当たらな いとした原判決の判断手法は誤りである旨主張する。 しかしながら,原告ゲーム全体と被告ゲーム全体の共通部分が創作的 表現といえるか否かを判断する際に,その構\成要素を分析し,それぞれ について表現といえるか否か,表\現上の創作性を有するか否かを検討す ることは,有益かつ必要なことであり,その上で,ゲーム全体又は侵害 が主張されている部分全体について表現といえるか否か,表\現上の創作 性を有するか否かを判断することは,合理的な判断手法であると解され る。 そして,前記(イ)のとおり,原判決は,被告ゲームと原告ゲームの共 通点はアイデアや創作性のないものにとどまり,また,具体的表現にお\nいて相違し,デッドコピーであるとは評価できないから,被告ゲーム全 体が,原告ゲーム全体を複製又は翻案したものに当たるということはで きないと判断したものであり,その判断手法に誤りはない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。」
(2) 原判決42頁6行目の「原告は,」を「ア 控訴人は,」と改め,同43頁 20行目から44頁20行目までを次のとおり改める。
「 イ ところで,著作権法上の「プログラム」は,「電子計算機を機能させ\nて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせ たものとして表現したもの」をいい(同法2条1項10号の2),プロ\nグラムをプログラム著作物(同法10条1項9号)として保護するた めには,プログラムの具体的記述に作成者の思想又は感情が創作的に 表現され,その作成者の個性が表\れていることが必要であると解され る。すなわち,プログラムの具体的記述において,指令の表現自体,そ\nの指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選 択の幅があり,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表\れ ていることが必要であると解される。 これを原告ソースコードについてみるに,前記ア認定のとおり,原\n告ソースコードは,原告ゲームの473個のLuaファイルのうちの\n1個である「MissionMainPage.lua」であり,原告 ソースコードに係るプログラムは,「任務(ミッション)」に係る画面\n(メインミッション画面,デイリーミッション画面,功績画面)の切 り替えに関する処理及び表示内容の更新処理を行うプログラムである。\nそして,原告ソースコードの記述は,原判決別紙「ソ\ースコード対比 表」の「原告ソ\ースコード」欄記載のとおりであり,個々の記述の意味 は,同表の「裁判所の認定」欄記載のとおりである。\n原告ソースコードの記述は,いずれも単純な作業を行うfunct\nion(ローカル変数やテーブルの宣言及びモジュールの呼び出し等) が複数記述されたものであり,ソースコードによって記述される機能\ が上記のとおりローカル変数やテーブルの宣言及びモジュールの呼び 出し等の単純な作業を行うことである以上,表現の選択の幅は狭く,\nその具体的記述の表現も,定型的なものであり,ありふれたものであ\nると言わざるを得ない。 また,個々の記述の順序や組合せについても,ゲームの機能に対応\nさせたにすぎないものであり,ありふれたものである。 そうすると,原告ソースコードの具体的記述に控訴人の思想又は感\n情が創作的に表現され,控訴人の個性が表\れていると認めることはで きないから,原告ソースコードに係るプログラムは,プログラムの著\n作物に該当するものと認めることはできない。 したがって,被告ソースコードの大部分が原告ソ\ースコードと共通 しているとしても,原告ソースコードに係るプログラムの著作物性は\n認められないから,被告ソースコードの制作は,原告ソ\ースコードに 係るプログラム著作権(複製権又は翻案権)の侵害に当たらない。
(4) 編集著作権の侵害について 控訴人は,当審において,1)原告ゲームは,素材である個々の画面(8 4画面)の選択,その画面遷移等の配列,素材である各画面内における アイコン,ボタン,キャラクター等の選択又は配列に作成者の個性が発 揮されているから,素材の選択又は配列によって創作性を有する編集著 作物である,2)原告ソースコードも,個々のソ\ースコードの書き方,各 ソースコードの順序,変数の名称等の素材を選択して組み合わせたこと\nに作成者の個性が発揮されているから,素材の選択又は配列によって創 作性を有する編集著作物である,3)被告ゲームは,編集著作物である原 告ゲーム(原告ソースコードを含む。)を複製又は翻案して制作されたも\nのであるから,被告ゲームの制作及び配信行為は,原告ゲームについて 控訴人が有する編集著作権(複製権,翻案権及び公衆送信権)の侵害に 当たる旨主張する。 しかしながら,控訴人の上記主張は,原告ゲーム又は原告ソースコー\nドにおける個々の素材の選択又は配列にいかなる創作的表現がされてい\nるのか,その創作的表現が被告ゲーム又は被告ソ\ースコードにおいてど のように利用されているのかについて具体的に主張するものではないか ら,その主張自体理由がない。

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令和2(ワ)9992  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和3年6月24日  大阪地方裁判所

 時計の文字盤のデザインについて著作物性が否定されました。

 1 本件原画の著作物性(争点1)について
(1)前記(第2の2(1))のとおり,本件原画は,一般向けの販売を目的とする時計のデザインを記載した原画であり,それ自体の鑑賞を目的としたものではなく,現に,原告は,本件原画に基づき商品化された原告製品を量産して販売している。すなわち,本件原画は,実用に供する目的で制作されたものであり,いわゆる応用美術に当たる。
( 2 )「著作物」とは,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)をいい,このうち「美術の著作物」には美術工芸品が含まれる(同条2項)。他方,応用美術のうち,美術工芸品に当たらないものが「美術の著作物」に該当するかどうかについては,明文の規定はない。しかし,「著作物」の上記定義によれば,「美術の著作物」は,実用目的を有しない純粋美術及び美術工芸品に限定されるべきものではない。すなわち,実用目的で量産される応用美術であっても,実用目的に必要な構\成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できるものについては,純粋美術の著作物と客観的に同一なものとみることができる。そうである以上,当該部分は美術の著作物として保護されるべきである。他方で,実用目的の応用美術のうち,実用目的に必要な構成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握することができないものについては,純粋美術の著作物と客観的に同一なものとみることはできないから,美術の著作物として保護されないと解される。\n
(3)本件原画について
ア 本件原画は,別紙写真目録記載のとおりであるところ,本件形態1及び2の観点を踏まえると,これには,以下のとおりの形態の時計が表現されているものと認められる。\n
(ア)長針,短針,秒針の三種の針を有する壁掛け型アナログ時計であり,各針はいずれも白色である。各針は,いずれも黒色の円盤状部の中心にその回転軸を固定されている。
(イ)上記円盤状部の頂部上部に数字の「12」を配置し,これを起点として,上記円盤状部の外周に沿って右回りに,黒色太字ゴシック体様の算用数字「1」〜「11」を概ね均一の大きさで順に円環状に配置している。これらの数字のうち,「1」,「2」,「5」,「6」,「7」,「11」及び「12」は,上記円盤状部に接着している。また,「6」及び「7」を除く数字は,隣接する別の数字のいずれか又は両者と接着している。
(ウ)前記数字のうち「12」を構成する「2」の頂部から「1」〜「8」を経て「9」の下部まで,円環状に配置された各数字の外周側に,これらに沿うと共にそれぞれの数字に接着する形で,黒色の円弧状の枠が配置されている。
イ 本件原画のうち,本件形態1に係る部分(前記ア(ア))について,時計の針が本体の色彩との関係で視認しやすいこと自体は,針の位置により時間を表示するアナログ時計の実用目的に必要な構\成といえる。配色に係るデザイン性(本体の黒色と針の白色のコントラスト)も,このような構成を実現するために採用されているものといえるのであって,当該構\成と分離して美的鑑賞の対象となるような美的特性を備えている部分として把握することはできない。
ウ 本件形態2に係る部分(前記ア(イ),(ウ))については,まず,アナログ時計において,「1」〜「12」の各数字及びこれを「12」を頂部として配置して右回りに円環状に配置することは,時間の表示という実用目的に必要な構\成といえる。また,これらの数字により形成された円環の内側にある円盤状部及び外側に形成された円弧状の枠は,円環状に配置された数字と互いに接着することにより,全体として時計本体を構成し,その形状を維持している部分と見られるから,これらも実用目的に必要な構\成といえる。使用されている数字のフォントや円盤状部の大きさの点も,数字の見易さ及び時計としての使用に耐える一定の強度の実現という時計としての実用目的に必要な構成である。さらに,数字の字体そのものは,何ら特徴的なものではない。\n
他方,各数字の外周側に円弧状の枠が設けられていない部分は,デザインの観点から目を引く部分と見ることも可能である。もっとも,当該部分は,下部に上記枠の終端部が接する「9」を除くと,2桁の数字(「10」〜「12」)が配置された部分であるところ,全ての数字の外側を円弧上の枠により囲んだ製品においては「10」及び「11」の数字のサイズが他の数字に比して明らかに小さいこと(乙3)にも鑑みると,上記枠の設けられていない部分に他の部分と同様に枠を設けた場合,10の桁を示す「1」の部分がそれぞれ円弧状の枠と干渉して数字を読み取り難くなり,時間の把握という時計の実用目的を部分的にであれ損なうことになると考えられる。\n
そうすると,当該部分のデザインについても,時計の実用目的に必要な構成と分離して美的鑑賞の対象となるような美的特性を備えている部分として把握することはできない。エしたがって,本件原画は,実用目的に必要な構\成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握することができないものであるから,これを純粋美術の著作物と客観的に同一なものと見ることはできず,著作物とは認められない。

◆判決本文

◆原告の文字盤の写真

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令和1(ワ)21993  著作権侵害訴訟事件  著作権  民事訴訟 令和3年4月28日  東京地方裁判所

 公園に設置したタコの滑り台について著作物ではないと判断されました。

 (1) 争点1−1(本件原告滑り台が美術の著作物に該当するか)について
ア 前記前提事実(2)及び(3)によれば,本件原告滑り台は,自治体(兵庫県 赤穂市)から公園に設置する遊具の発注を受けて,小型のタコの滑り台と して製作されたものであり,その形状は,別紙1原告滑り台目録記載のと おり,上部にタコの頭部を模した部分を備え,正面に1本,右側面に2本, 左側面に1本の計4本のタコの足を有するというものである。そして,こ れらのタコの足は,いずれも,子どもたちなどの利用者が滑り降りること ができるスライダーとなっており,また,利用者がスライダーの上部に昇 るための取っ手が取り付けられているなど,遊具である滑り台として通常 有する構造を備えている。そうすると,本件原告滑り台は,利用者が滑り\n台として遊ぶなど,公園に設置され,遊具として用いられることを前提に 製作されたものであると認められる。したがって,本件原告滑り台は,一 般的な芸術作品等と同様の展示等を目的とするものではなく,遊具として の実用に供されることを目的とするものであるというべきである。 そして,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されてい\nる美的創作物(いわゆる応用美術)が,著作権法2条1項1号の「美術」 「の範囲に属するもの」として著作物性を有するかについては,同法上, 「美術工芸品」が「美術の著作物」に含まれることは明らかであるもの の(著作権法2条2項),それ以外の応用美術に関しては,明文の規定が 存在しない。
この点については,応用美術と同様に実用に供されるという性質を有す る印刷用書体に関し,それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を 備えることを要件の一つとして挙げた上で,同法2条1項1号の著作物 に該当し得るとした最高裁判決(最高裁平成10年(受)第332号同 12年9月7日第一小法廷判決・民集54巻7号2481頁)の判示に 照らし,同条2項は,単なる例示規定と解すべきである。 さらに,上記の最高裁判決の判示に加え,同判決が,実用的機能の観点\nから見た美しさがあれば足りるとすると,文化の発展に寄与しようとす る著作権法の目的に反することになる旨説示していることに照らせば, 応用美術のうち,「美術工芸品」以外のものであっても,実用目的を達成 するために必要な機能に係る構\成と分離して,美術鑑賞の対象となり得 る美的特性を備えている部分を把握できるものについては,「美術」「の 範囲に属するもの」(同法2条1項1号)である「美術の著作物」(同法 10条1項4号)として,保護され得ると解するのが相当である。 以上を前提に,本件原告滑り台が「美術の著作物」として保護される応 用美術に該当するかを検討する。 イ 原告は,本件原告滑り台が,一品製作品というべきものであり,「美術 工芸品」(著作権法2条2項)に当たるから,「美術の著作物」(同法10 条1項4号)に含まれる旨主張する。 そこで検討するに,著作権法10条1項4号が「美術の著作物」の典型 例として「絵画,版画,彫刻」を掲げていることに照らすと,同法2条 2項の「美術工芸品」とは,同法10条1項4号所定の「絵画,版画, 彫刻」と同様に,主として鑑賞を目的とする工芸品を指すものと解すべ きであり,仮に一品製作的な物であったとしても,そのことをもって直 ちに「美術工芸品」に該当するものではないというべきである。
本件においてこれをみると,前記アのとおり,本件原告滑り台は,自治 体の発注に基づき,遊具として製作されたものであり,主として,遊具 として利用者である子どもたちに遊びの場を提供するという目的を有す る物品であって,「絵画,版画,彫刻」のように主として鑑賞を目的とす るものであるとまでは認められない。 したがって,本件原告滑り台が「美術工芸品」に該当すると認めること はできず,原告の上記主張は採用することができない。 ウ 原告は,本件原告滑り台が「美術工芸品」に当たらないとしても「美術 の著作物」として保護される応用美術であると主張する。そこで,本件原 告滑り台が,実用目的を達成するために必要な機能に係る構\成と分離して, 美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるもので あるか否かについて,以下検討する。
(ア) タコの頭部を模した部分について
別紙1原告滑り台目録記載1(2)の各写真によれば,本件原告滑り台 のうちタコの頭部を模した部分の構成は,次のとおりであると認められ\nる。すなわち,タコの頭部を模した部分は,本件原告滑り台を正面から 見て,その最も高い箇所のほぼ中央部に存在しており,タコの足を模し たスライダーによって形作られるなだらかな稜線から上に突き出るよう な格好で配置されている。そして,その形状は,本件原告滑り台のうち 最も高い箇所に存在する頭頂部から,正面向かって後方にやや傾いた略 鐘形をなしており,全体として曲線的な印象を与える形状であって,そ うした形状と,上記のような配置等から,当該部位を見た者をして,タ コの頭部を連想させるような外観となっている。さらに,その構造をみ\nると,内部は空洞をなし,頭部に上った利用者が立てるような踊り場様 の床が設置されている。また,正面,左側面及び背面にそれぞれ1か所, 右側面に2か所の開口部を有しており,そのうち正面,右側面及び左側 面の開口部からは後述のタコの足を模したスライダーが延びているほか, 背面の開口部付近には,手でつかんだり,足を掛けたりして上り下りす るための取っ手が8個取り付けられている。 このように,タコの頭部を模した部分は,本件原告滑り台の中でも最 も高い箇所に設置されているのであるから,同部分に設置された上記各 開口部は,滑り降りるためのスライダー等を同部分に接続するために不 可欠な構造であって,滑り台としての実用目的に必要な構\成そのもので あるといえる。また,上記空洞は,同部分に上った利用者が,上記各開 口部及びスライダーに移動するために不可欠な構造である上,開口部を\n除く周囲が囲まれた構造であることによって,最も高い箇所にある踊り\n場様の床から利用者が落下することを防止する機能を有するといえるし,\nそれのみならず,周囲が囲まれているという構造を利用して,隠れん坊\nの要領で遊ぶことなどを可能にしているとも考えられる。\nそうすると,本件原告滑り台のうち,タコの頭部を模した部分は,総 じて,滑り台の遊具としての利用と強く結びついているものというべき であるから,実用目的を達成するために必要な機能に係る構\成と分離し て,美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できる ものとは認められない。
(イ) タコの足を模した部分について
別紙1原告滑り台目録記載1(2)の各写真によれば,本件原告滑り台 には,タコの頭部を模した部分から4本のスライダーが延びており,こ れらはいずれもタコの足を模したものであって,その形状は,直線状か 曲線状かの相違はあるものの,いずれについても,なだらかな斜度をな しつつ,地面に向かって延びているほか,滑らかな板状のすべり面を有 し,かつ,その左右には手すり様の構造物が付されていると認められる。\nこの点,滑り台は,高い箇所から低い箇所に滑り降りる用途の遊具で あるから,スライダーは滑り台にとって不可欠な構成要素であることは\n明らかであるところ,タコの足を模した部分は,いずれもスライダーと して利用者に用いられる部分であるから,滑り台としての機能を果たす\nに当たって欠くことのできない構成部分といえる。\nそうすると,本件原告滑り台のうち,タコの足を模した部分は,遊具 としての利用のために必要不可欠な構成であるというべきであるから,\n実用目的を達成するために必要な機能に係る構\成と分離して,美術鑑賞 の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるものとは認め られない。
(ウ) 空洞(トンネル)部分について
別紙1原告滑り台目録記載1(2)の各写真によれば,本件原告滑り台 には,正面から見て左右に 1 か所ずつ,スライダーの下部に,通り抜け 可能なトンネル状の空洞が配置されていると認められる。\nこの構成は,滑り台としての機能\には必ずしも直結しないものではあ るが,前記アのとおり,本件原告滑り台は,公園の遊具として製作され, 設置された物であり,その公園内で遊ぶ本件原告滑り台の利用者は,こ れを滑り台として利用するのみならず,上記空洞において,隠れん坊な どの遊びをすることもできると考えられる。 そうすると,本件原告滑り台に設けられた上記各空洞部分は,遊具と しての利用と不可分に結びついた構成部分というべきであるから,実用\n目的を達成するために必要な機能に係る構\成と分離して,美術鑑賞の対 象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるものとは認められ ない。
(エ) 本件原告滑り台全体の形状等について
別紙1原告滑り台目録記載1(2)の各写真によれば,本件原告滑り台 は,頭部(前記(ア)),足(前記(イ))及び空洞(前記(ウ))等によって形 成されており,その全体を見ると,本件原告滑り台は,見る者をしてタ コの体を模しているとの印象を与えるものであると認められる。また, とりわけ本件原告滑り台の正面からその全体を見ると,空洞のある頭部 を頂点に,左右へ広がる緩やかな2本の足によって均整の取れた三角形 を見て取ることができ,見栄えのよい外観を有するものということがで きる。 この点,本件原告滑り台のようにタコを模した外観を有することは, 滑り台として不可欠の要素であるとまでは認められないが,そのような 外観は,子どもたちなどの本件原告滑り台の利用者に興味や関心を与え たり,親しみやすさを感じさせたりして,遊びたいという気持ちを生じ させ得る,遊具のデザインとしての性質を有することは否定できず,遊 具としての利用と関連性があるといえる。また,本件原告滑り台の正面 が均整の取れた外観を有するとしても,そうした外観は,前記(ア)及び
(イ)でみたとおり,滑り台の遊具としての利用と必要不可欠ないし強く 結びついた頭部及び足の組み合わせにより形成されているものであるか ら,遊具である滑り台としての機能と分離して把握することはできず,\n遊具のデザインとしての性質の域を出るものではないというべきである。 そうすると,本件原告滑り台の外観は,遊具のデザインとしての実用 目的を達成するために必要な機能に係る構\成と分離して,美術鑑賞の対 象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるものとは認められ ない。
(オ) 以上のとおり,本件原告滑り台は,その構成部分についてみても,\n全体の形状からみても,実用目的を達するために必要な機能に係る構\成 と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把 握できるものとは認められないから,「美術の著作物」として保護され る応用美術とは認められない。
(カ) これに対し,原告は,本件原告滑り台の実用目的は滑り台自体とし ての機能を前提に把握すべきであり,高所に上がるための手段と,滑り\n降りるためのスライダーがあればその機能を果たすことができるので,\n表現の選択の幅は広いとした上で,本件原告滑り台のタコの頭部を模し\nた部分,タコの足を模した部分及び空洞(トンネル)部分は,滑り台の 機能から必然的に創作できるものではなく,滑り台の機能\とは独立して 存在する特徴であって,製作者であるBの個性が表われた部分といえる\nから,そのような部分を有する本件原告滑り台は「美術の著作物」に該 当する応用美術であると主張する。 しかしながら,ある製作物が「美術の著作物」たる応用美術に該当す るか否かに当たって考慮すべき実用目的及び機能は,当該製作物が現に\n実用に供されている具体的な用途を前提として把握すべきであって,製 作物の種類により形式的にその目的及び機能を把握するべきではない。\n原告の主張は,滑り台には様々な形状や用途のものがあるにもかかわら ず,本件原告滑り台が滑り台として製作されたものであるという点を過 度に重視するものであり,子どもたちなどの利用者が本件原告滑り台に おいて具体的にどのような遊び方をするかを捨象している点で相当では ない。
また,原告の上記主張は,本件原告滑り台の表現の選択の幅が広く,\n製作者であるBの個性が表われていることを根拠とするものであるが,\nその点は,著作物性(著作権法2条1項1号)の要件のうち,「思想又 は感情を創作的に表現したもの」との要件に係るものであって,「美術」\n「の範囲に属するもの」との要件に係るものではないというべきである。 したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 エ 以上によれば,本件原告滑り台は,著作権法10条1項4号の「美術の 著作物」に該当せず,同法2条1項1号所定の著作物としての保護は認め られないというべきである。

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平成30(ワ)5948  損害賠償請求事件  著作権 令和3年1月21日  大阪地方裁判所

 舟券購入のプログラムについて著作物性、翻案かが争われました。裁判所はこれを認め、約1.4億円の損害額を認めました。ただ請求が一部請求したため1400万の損害賠償額です。

 プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,そ\nの指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があ り,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表\現上の創 作性が表れていることを要するといわなければならない(知財高裁平成21年\n(ネ)第10024号同24年1月25日判決・判例時報2163号88頁)。
イ そこで検討するに,前記1(5)で認定したところによれば,原告プログラム は,市販のプログラム開発支援ソフトウェアである Microsoft Visual Studio を使用 して Microsoft Visual Basic 言語で記述されているから,ソースコードを個別の行\nについてみれば,標準的な構文やありふれた指令の表\現が多用されており,独創的 な関数等は用いられていない。 しかしながら,前記(5)イについては,一定の画面表示を得るために複数の記述\n方法が考えられるところ,一定の意図のもとに特定の指令を組み合わせ,独自のメ ソッドを作成して独自の構\成で記述しており,同ウ及びエについては,一定の処理 方式を選択すること自体はアイデアにすぎないが,やはり,一定の結果を得るため にどのように指令を組み合せ,どの範囲で構造体を設定し,配列・構\造化するかに は様々な選択肢が考えられるところ,その具体的な記述は,一定の意図のもとに特 定の指令を組み合わせ,多数の構造体を設定し,配列・構\造化した独自のものにな っている。
また,同オについては,HTML データから一定の情報を抽出する指令の記述は 選択の幅があるところ,メンテナンス性を考慮して独自の記述をしていることが認 められ,同カについても,人間が情報を入力してログインや舟券購入の操作をする ことを想定して作成されている投票サイトのサーバーに,人間の操作を介さずに必 要なデータを送信してログインや舟券の購入を完了するための指令の表現方法は複\n数考えられるところ,複数の方式を適宜使い分けて記述し,一連の舟券購入動作を 構成していることが認められる。\nそうすると,前記イないしカのソースコードには表\現上の創作性があるといえ, これらを組み合わせて構成されている原告プログラムにも,表\現上の創作性が認め られるというべきである。
ウ 被告ら(被告エーワンを除く。以下同じ。)は,原告プログラムの機能は,\n原告プログラムを利用せずに競艇公式ウェブサイト等により実行できると主張する が,競艇公式ウェブサイト等で人間の動作として情報を得たり舟券の購入をしたり することと,原告プログラムにより情報を得たり自動的に舟券を購入したりするこ とは異なるから,原告プログラムに創作性がないとする理由にはならない。 また,被告らは,原告プログラムが利用しているデータが競艇公式ウェブサイト で公知であると主張するが,プログラムに入力される変数であるレース情報等のデ ータが公知であるか否かはプログラムの著作物性とは関係がなく,失当である。 さらに,被告らは,原告プログラムのうち自動運転機能の部分は,既存のソ\ース コードを単純作業により組み合わせたものであり,「Boat Advisor」等の類似のソ\nフトウェアが多数存在すると主張する。しかしながら,前記のとおり,原告プログ ラムは,独自の指令の組合せ,構造体等の設定,構\成によって記述されており,あ りふれたものとはいえず,証拠(乙2)をみても,「Boat Advisor」はレース予\n想,データ分析を主たる機能とするソ\フトウェアであり,原告プログラムのように 舟券を自動購入するものであるとは認められず,原告プログラムがありふれたソー\nスコードによって構成されているものとはいえない。\n原告プログラムに著作物性がないとの被告らの主張は,採用できない。
(2) 争点2(被告プログラムは,原告プログラムを複製又は翻案したものか) について
ア 前記1(3)で認定したところによれば,被告プログラムは,被告P4がP7 より入手した原告プログラムについて,被告P3において逆コンパイルを行うと共 に難読化を解除し,期待値と称する機能を追加した以外は,逆コンパイルによって\n得られた原告プログラムの機能をそのまま利用したものであるから,少なくともそ\nのまま利用した部分において,被告プログラムは,原告プログラムを複製したもの ということができる。
イ また,前記1(6)で認定したところによれば,被告プログラムは,少なくと も,原告プログラムの BoatRaceCom.DLL 及び Kcommon.DLL を複製して作成され たことが明らかである。 さらに,被告プログラムは,原告プログラムと画面表示やモジュール名がほぼ同\nじであること,マニュアルに記載された機能が原告プログラムとほぼ同一であるこ\nとも,上記アの結論と合致する。
ウ 被告らは,被告プログラムは,被告プログラム独自のアルゴリズムで算出さ れた期待値(人気指数)に基づく予想をユーザーに提供するものであって,その部\n分に創作性があり,原告プログラムとは全く異なるものであると主張する。 被告らが主張する期待値の機能については,本件の証拠によっても判然とはしな\nいが,仮に,より勝率が高くなることが期待される買目を計算して推奨し,舟券を 自動購入する機能を追加した点で,被告プログラムは原告プログラムと異なる旨を\nいう趣旨であるとしても,原告プログラムが元々有する買目設定の機能を強化,発\n展させたものと理解し得るものであると共に,既に認定したとおり,被告プログラ ムは,期待値の機能を追加した以外の部分については,原告プログラムを複製した\nものをそのまま利用しているとされるのであり,全体として,被告プログラムは, 原告プログラムの本質的特徴を直接感得し得るものであるから,少なくとも翻案に あたることは明らかというべきであり,被告プログラムの作成は,原告プログラム についての原告らの著作権を侵害するものである。 なお,被告らは,被告プログラムに「買目切捨」や「保険買目」など,原告プロ グラムにはない機能があると主張するが,被告P3において,期待値の機能\以外は 原告プログラムと異なる機能はないと供述していること,前記のとおり,マニュア\nルや画面が同じであること,原告プログラムにも同一の機能があることから,当該\n主張は上記結論を左右するものではない。
・・・
前記1の(2)ないし(4)によれば,P7は1本20万円を原告らに支払って取 得した原告ソフトウェアを1本50万円から80万円で約30本販売したこと,被\n告P5は,被告エーワンの名義で,被告ソフトウェア約70本を1本60万円から\n100万円で販売し,その中に,平成28年5月2日のP8に対する100万円の 売買が含まれること,以上の事実が認められる。なお,被告ガルヒが被告ソフトウ\nェアを販売するためのセキュリティ認証キーを140個用意したことは前記1の (4)で認定したとおりであるが,これに対応する140本の被告ソフトウェアが販\n売されたと認めるに足りる証拠はない。
イ 以上によれば,被告らは,被告ソフトウェアを少なくとも70本販売し,う\nち少なくとも1本は平成28年5月2日に100万円で販売し,その余は少なくと も1本60万円で販売したと認めるのが相当であり,ここから控除すべき経費等の 主張はないから,被告ソフトウェアの販売により被告らが受けた利益は,少なくと\nも4240万円であると認められる。 そうすると,著作権法114条2項により,原告らの受けた損害額は4240万 円,著作権を共有する原告各人について2120万円ずつと推定される。 また,損害のうち100万円(各50万円)は,平成28年5月2日に被告ソフ\nトウェアが販売されたことによるものであり,被告エーワンを含む被告らは,同日 から遅滞の責を負う。その余については販売時期が不明であり,前記のとおり,被 告ソフトウェアが3から4か月間販売されていたことからすれば,遅くとも同年9\n月2日までには,その余の損害すべてに係る侵害行為が行われたと認められるか ら,原告らのその余の損害について,被告らは,同日から遅滞の責を負うものと認 められる。

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令和1(ネ)1735 著作権に基づく差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年1月14日  大阪高等裁判所

 電話ボックスを金魚鉢にみたてた現代アートについて、1審は著作物性は認めましたが、 複製ではないと判断しました。控訴審は、「受話器がハンガー部から外されて水中に浮いた状態で固定され,その受話部から気泡が発生している」点について、著作物性を認めて、翻案権侵害と認定しました。

同一性又は類似性について
ア 共通点
原告作品と被告作品の共通点は次のとおり(以下「共通点1)」などと いう。)である。
1) 公衆電話ボックス様の造作水槽(側面は4面とも全面がアクリルガ ラス)に水が入れられ(ただし,後記イ6)を参照),水中に主に赤色の 金魚が50匹から150匹程度,泳いでいる。
2) 公衆電話機の受話器がハンガー部から外されて水中に浮いた状態で 固定され,その受話部から気泡が発生している。
・・・・
著作物の複製とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知 させるに足りるものを有形的に再製すること(著作権法2条1項15号) をいい,著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上\nの本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更\n等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これ\nに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得すること\nのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁昭和53年9月7日 第一小法廷判決・民集32巻6号1145頁,最高裁平成13年6月2 8日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。 依拠については後記(3)において検討することとし,ここではそれ以外 の要件について検討する。 共通点1)及び2)は,原告作品のうち表現上の創作性のある部分と重な\nる。なお,被告作品は,平成26年2月22日に展示を開始した当初は, アクリルガラスのうちの1面に,縦長の蝶番を模した部材を貼り付けて\nいた(相違点6))。しかし,前記のとおり,この蝶番は目立つものでは なく,公衆電話を利用する者にとっても,鑑賞者にとっても,注意をひ かれる部位とはいえないから,この点の相違が,共通点1)として表れて\nいる原告作品と被告作品の共通性を減殺するものではない。
一方,他の相違点はいずれも,原告作品のうち表現上の創作性のない\n部分に関係する。原告作品も被告作品も,本物の公衆電話ボックスを模 したものであり,いずれにおいても,公衆電話機の機種と色,屋根の色 (相違点1)〜3))は,本物の公衆電話ボックスにおいても見られるもの である。公衆電話機の下の棚(相違点4))は,公衆電話を利用する者に しても鑑賞者にしても,注意を向ける部位ではなく,水の量(相違点5)) についても同様であることは前記のとおりである。すなわち,これらの 相違点はいずれもありふれた表現であるか,鑑賞者が注意を向けない表\ 現にすぎないというべきである。 そうすると,被告作品は,原告作品のうち表現上の創作性のある部分\nの全てを有形的に再製しているといえる一方で,それ以外の部位や細部 の具体的な表現において相違があるものの,被告作品が新たに思想又は\n感情を創作的に表現した作品であるとはいえない。そして,後記(3)のと おり,被告作品は,原告作品に依拠していると認めるべきであり,被告 作品は原告作品を複製したものということができる。 仮に,公衆電話機の種類と色,屋根の色(相違点1)〜3))の選択に創 作性を認めることができ,被告作品が,原告作品と別の著作物というこ とができるとしても,被告作品は,上記相違点1)から3)について変更を 加えながらも,後記(3)のとおり原告作品に依拠し,かつ,上記共通点1) 及び2)に基づく表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,原告作品にお\nける表現上の本質的な特徴を直接感得することができるから,原告作品\nを翻案したものということができる。

◆判決本文

1審はこちら。

◆平成30年(ワ)466

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令和2(ネ)597  著作権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年1月21日  大阪高等裁判所

 1審は請求棄却でしたが、大阪高裁は、別のレシピブックを作成することについて黙示の許諾はなかったとして、著作権侵害と判断しました。一部の写真については著作物性が否定されています。

 原告制作物1を含む原告レシピブック1に係るデザイン制作委託契約 においては,契約書は作成されておらず,成果物の著作権の帰属や利用 に関する明示的な合意は存在しない。また,原告レシピブック1の発注 から納品に至る交渉経過等の詳細は明らかでない。
控訴人代表者は,同種の夏用レシピブックにつき,次の夏まで常識的な範囲で増刷することを許諾すると伝えたことがあったとか,レシピ\nブックに掲載された素材等を別の媒体で使うときは連絡があればほぼ快 諾しており,追加料金を生じるとは限らないなどと供述している(控訴 人代表者本人)。また,控訴人は,播磨喜水の依頼を受けて,シェフコラボレシピブック等に掲載した写真及びレシピ情報等を用いてレシピ\nカードを制作するなど,一旦納品した成果物の一部を他の制作物に用い ることもあったことが認められる(甲43〜50,控訴人代表者本人)。このように,レシピブック等に掲載した写真や情報が,レシピブック\n以外の媒体において控訴人に制作を依頼せずに使用されることもありう ると解されていたことが窺われるものの,新たな制作物において使用す る場合の具体的な権利関係が明確に決められていたとは認め難く,控訴 人と播磨喜水との間の個別のデザイン制作委託契約の趣旨,内容等から, 控訴人の著作物である原告制作物1に関する利用許諾についての当事者 の合理的意思を解釈する必要がある。
原告レシピブック1は,播磨喜水の取扱商品をレシピ情報の提供と組 み合わせて紹介することによって,宣伝広告,販売促進に役立て,さら にはブランドイメージの向上を図るものとして,播磨喜水が制作を依頼 し,控訴人が制作したものと解される。そして,播磨喜水の事業遂行に おいて,原告レシピブック1の内容と整合する範囲で,その成果物の一 部をそのまま使用する場合については,播磨喜水のブランドイメージの 形成,向上を企図した宣伝広告や販売促進活動における使用として,播 磨喜水はもちろん,控訴人も想定していたとみるのが合理的である。 しかし,被告制作物1は,原告制作物1(成果物である原告レシピ ブック1の出来上がった料理の写真である。)を「2017 SUMMER」と 明記された平成29年夏期用のチラシの背景に使用したものであり,そ の制作目的は同じとはいえない。 また,控訴人のデザイナーであるP2は,被告制作物1を発見し,平 成29年6月6日,P1に対し,LINEを通じて抗議をしており(甲 19:「事前にご相談がありましたら問題になりませんでしたが,この 件は著作物の無断使用になります。困りましたね。」という内容),控 訴人は,本件提訴後,これが被控訴人による最初の著作権侵害であると 主張し,控訴人代表者もその旨供述している(甲39,控訴人代表\者本 人21頁)。 これに対し,当時,被控訴人代表者のP1は,控訴人から原告制作物1の使用について,許諾があったという反論をしておらず,むしろ,播\n磨喜水がチラシ等を作成しようとする都度,ブランディング名目で常に 事前相談を求められることについて,不満を有していたことが認められ る(甲19,乙34)。
以上によると,前述したとおり,播磨喜水において,その事業活動の 一環として,控訴人が制作した成果物又はその一部をその作成目的に 従って,そのまま別の機会に利用する場合はともかく,成果物を構成する素材である原告制作物1(写真)を,事前の許諾を得ずにこれを異な\nる目的で利用することまで許諾していたと認めることはできない。
エ 抗弁1についてのまとめ
被控訴人による被告制作物1の制作は,控訴人の利用許諾を得ずに原 告制作物1をそのまま,制作目的の異なる制作物(原判決別紙被告制作 物目録記載2のチラシ)の背景に印刷し,これを複製するものであって, 原告制作物1の著作権を侵害する行為であると認められる。
・・・・
原告制作物5−2の著作物性については,いずれも,3種類の商品(播 磨喜水の白,黒,赤)を右下角斜め上方から撮影した写真であり,その撮影 方法は,商品を紹介する写真としてありふれた表現である。
・・・・
(イ) 損害額について
証拠(甲7の8,甲44の1〜44の5,甲45の1,甲50)及び 弁論の全趣旨によれば,原告制作物1を含む原告レシピブック1(12 頁から成り,5種類の料理写真及びそのレシピ情報,表紙写真,及びその料理写真,商品写真,商品の値段その他の情報,通信販売案内等を掲\n載するもの)の制作に係るオリジナルレシピブランディング料及び撮 影・スタイリング・フードコーディネイト料が100万円であったこと, 控訴人においては,同種のレシピブックに掲載した料理の1つのレシピ 情報と写真を1枚のレシピカードとして基づいてレシピカードを制作す る費用が1枚2万5000円とされていたことが認められ,控訴人は, レシピカードの上記制作費用が複製の使用料であると主張する。 これらを踏まえ,原告制作物1(写真1枚)に対する使用料としては, 2万5000円と認めるのが相当である。 また,事案の内容,認容額その他諸般の事情を考慮し,控訴人が負担 した弁護士費用のうち2500円につき,本件による損害として相当と 認める。
(ウ) 以上によれば,原告制作物1に係る著作権侵害による損害賠償請求は, 2万7500円(及び遅延損害金)の支払を求める限度で理由があるが, その余は理由がない。

◆判決本文
原審はこちら。

◆平成29(ワ)12572


◆原告および被告作品

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令和2(ワ)910 発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年9月25日  東京地方裁判所

 屋外に恒常的に設置された建物の写真について、著作物性ありと判断され、発信者情報開示が認められました。

 前記前提事実,証拠(甲1,6,8,乙1)及び弁論の全趣旨によれば, 本件写真は,原告が,空気の透明度が高い冬季において,天候が良好な日 の夜間に,約180度の眺望を有する本件展望台から見ることができる夜 景のうち,大阪府内所在のりんくうゲートタワー及びその周辺の建造物の 組合せを被写体として選択し,中でも目を引く建造物であるりんくうゲー トタワーを構図のほぼ中心に据え,その左右に複数の建造物がそれぞれ配\n置されるようにして,カメラについては,「70−200mm」のレンズを 選択し,レンズ焦点距離を「200.00mm」,シャッター速度を「16. 0秒」,絞り値を「f/9」とするなどの設定をした上で,ストロボ発光な しで撮影したものと認められる。 そうすると,本件写真は,原告において,撮影時期及び時間帯,撮影時 の天候,撮影場所等の条件を選択し,被写体の組合せ,選択及び配置,構\n図並びに撮影方法を工夫し,シャッターチャンスを捉えて撮影したもので あり,原告の個性が表現されているものと認められる。\nしたがって,原告が撮影した本件写真及びこれに本件文字を付加して作 成した本件写真画像は,いずれも,原告の思想又は感情を創作的に表現し\nたものということができるから,「著作物」(著作権法2条1項1号)に該 当する。
イ 被告は,本件写真の被写体であるりんくうゲートタワー及びその周辺の 建造物は,屋外に恒常的に設置されているものであるから,これを被写体 として撮影しようとすれば,焦点距離や撮影位置,構図等の表\現の選択の 幅は必然的に限定され,本件写真の構図自体ありふれたものであるから,\n撮影者の個性が現れたものとはいえず,本件写真には創作性がない旨主張 する。
しかしながら,別紙4写真画像目録記載の本件写真画像から明らかなよ うに,本件展望台からの眺望は広く,撮影することができる建造物は多数 あり,それらから発せられる光も様々であるから,どのような位置から, どのような構図で撮影するか,どの建物に焦点を合わせるかといった選択\nの幅が限定的であるということはできない。 そして,前記アのとおり,原告は,上記の幅の中から1つの撮影位置, 構図及び焦点距離を選択した上,さらに,撮影時期及び時間帯,撮影時の\n天候等の条件についても選択して,撮影方法を工夫し,シャッターチャン スを捉えて撮影したものであるから,本件写真には,原告の個性が現れて いるものと認められる。

◆判決本文

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平成29(ワ)19073  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年3月4日  東京地方裁判所

 本件コンピュータプログラムは著作物性なしと判断されました。

イ そこで検討すると,前記1(1),(3)イ認定のとおり,本件プログラムは,ED INETにおける取扱いに変更があったことを踏まえ,ユーザーが作成した会計に 関するエクセルファイル等をX−Smartに取り込み,会計科目を開示科目に組 み替え,編集作業等を経て,宝XBRLの形式に変換することを簡易に行うことな どを目的として開発されたものであり,相応の分量のソースコードから成るもので\nある。 しかしながら,前記1(2)に照らすと,DI社が原告に本件プログラムの開発を委託した際に提供された本件各資料のうち,少なくとも本件資料4ないし6には,本 件プログラムに要求される機能及びそれを実現する処理,画面の構\成要素等を別紙 3本件プログラム説明書と同様のものとすることが概ね示されていたと認められる。 また,前記1(3)認定のとおり,本件プログラムは,ユーザーからのフィードバッ クの結果を踏まえ,順次,DI社からの発注を受けて修正及び追加等をしながら開 発されたものであり,その過程で,そのソースコードの一部については,DI社か\nら元となるデータやそのサンプルが提供され,その作成方法を指示されるなどして 作成されたものであること,その他,ソースコード中にNetAdvantageに含まれるフ ァイル,VisualStudioで自動生成されるファイル,オープンソースからダウンロー\nドしたファイルから作成された部分や,一般的な設定ファイル等である部分も相応 に含まれていることにも照らせば,ソースコードの分量等をもって,本件プログラ\nムに係る表現の選択の幅が広いと直ちにはいえない。\n
(2)原告が創作的表現であると主張している部分についての検討\n
以上を前提として,本件プログラムのうち,原告が創作的表現であると主張して\nいる部分について検討する。 ア ドロップダウンリストの生成に係る部分 前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード1には,画面1の「ファイル形式」を\n選択するドロップダウンリストを生成する処理が記述されているところ,原告は, 本件ソースコード1では,ドロップダウンリストを「asp:DropDownList」を利用し て別の箇所で生成しているが,他の表現1のように,ドロップダウンリストを直接\n生成することもできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れている旨主\n張する。 しかしながら,前記1(3)ウ認定のとおり,本件プログラムの開発はASP.NE T環境下で行われているところ,証拠(乙227)及び弁論の全趣旨によれば, 「asp:DropDownList」は,ドロップダウンリストを生成するためのツールとしてA SP.NET環境で用意されているものであり,これを利用する方法は一般的なこ とであると認められるから,他の表現1があるとしても,「asp:DropDownList」を 利用することに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,本件ソースコード1の具体的な記述も,ASP.NET環境で利用可能\な 宣言構文のとおりのものであると認められる(乙227)のであって,作成者の個\n性が表れていると認めるに足りず,創作的表\現であるとはいえない。
イ サブルーチンに係る部分
原告は,本件ソースコード2ないし4について,サブルーチン化するか否か,サ\nブルーチン化するとしてどのようにサブルーチン化するかについて選択の幅がある と主張する。 しかしながら,前記第2の2(5)ア認定のとおり,サブルーチンは,高等学校工業 科用の文部科学省検定済教科書である乙232文献にも記載されているような基本 的なプログラミング技術の一つであり,証拠(乙238,240)及び弁論の全趣 旨によれば,プログラム中で繰り返し表れる作業につきサブルーチンに設定するこ\nとで可読性及び保守性を向上させることができ,そのような観点からサブルーチン を設定することは一般的な手法であると認められるから,本件ソースコード2ない\nし4にサブルーチンが設定されているというだけでは,作成者の個性が表れている\nとはいえない。
また,本件ソースコード3において,更にサブルーチンを設定しないことに何ら\nかの目的,意図があるともいい難いから,サブルーチンを更に分割することができ るというだけでは,作成者の個性が表れていると認めるに足りないというべきであ\nる。 以上に加えて,原告は,上記の各点以外に,本件ソースコード2ないし4の記述\nに選択の幅があることを具体的に主張立証しておらず,これらを創作的表現である\nと認めるに足りない。
ウ 条件分岐及びループに係る部分
(ア) 本件ソースコード5\n
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード5には,画面1から画面2に遷移する\n際に呼び出されるサブルーチンのうち,アップロードしたファイルの種類を判別し, 対応する画面を生成する処理が記述されているところ,原告は,本件ソースコード\n5では,switch文で条件分岐を行っているが,他の表現5のように,els\ne−ifで条件分岐を行うこともできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性 が表れている旨主張する。\nしかしながら,証拠(乙223ないし226,232,233)及び弁論の全趣 旨によれば,switch文は,複数の選択肢の中から式の値に合うものを選び, その処理を行うものであり,else‐ifは,複数の条件のどれに当てはまるか によって異なる処理を行うものであって,いずれも高等学校工業科用の文部科学省 検定済教科書である乙232文献その他複数の文献(乙223ないし226,23 3)に記載されている条件分岐の基本的な制御文であり,3種類以上の場合に分け て条件を指定するときに使用されるものであると認められるから,本件ソースコー\nド5のように,アップロードしたファイルの種類によって場合を分けて条件を指定 する必要がある場合に,switch文を使用すること自体は一般的なことである と認められ,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\n
(イ) 本件ソースコード6\n
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード6には,ファイルの何列目からデータ\nを取り込むかを取得し,取り込み開始が20列目を超えているか否かを判別し,超 えている場合にはエラーを発生させる処理が記述されているところ,原告は,本件 ソースコード6では,for文でループを行っているが,他の表\現6のように,w hile文でループを行うこともできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性 が表れている旨主張する。\nしかしながら,証拠(乙223ないし226,232,233)及び弁論の全趣 旨によれば,for文は,繰り返す回数を指定して反復処理を行うものであり,w hile文は,指定した条件を満たす限り反復処理を行うものであって,いずれも, 高等学校工業科用の文部科学省検定済教科書である乙232文献その他複数の文献 (乙223ないし226,233)に記載されているループの基本的な制御文であ り,for文で記述できるものはwhile文でも記述可能であると認められるか\nら,本件ソースコード6のように,取り込み開始が20列目を超えているか否かを\nループ処理によって判別するに当たり,for文を使用すること自体は一般的なこ とであると認められ,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\n
(ウ) 本件ソースコード7\n前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード7には,ファイルの最大列数や項目名\nの開始列を取得する処理が記述されているところ,原告は,本件ソースコード7で\nは,全てのデータに対してforeach文でループを行っているが,他の表現7\n(1)のように,あらかじめ決められた条件で抽出されたデータに対してのみループを 行うことも可能であり,他の表\現7(2)のように,for文でループを行うこともで きるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れている旨主張する。\n
しかしながら,証拠(乙223ないし226,233)及び弁論の全趣旨によれ ば,C#において,foreach文は,複数のデータの集まりの各要素を最初か ら最後まで1回ずつ呼び出して処理するものであり,for文等と共に複数の文献 (乙223ないし226,233)に記載されているループの基本的な制御文であ って,for文等で記述された処理を代替し得るものであると認められるから,本 件ソースコード7のように,ファイルの最大列数や項目名の開始列を判別するに当\nたり,foreach文を使用すること自体は一般的なことであると認められ,そ のことに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,他の表現7(1)及び(2)は,ループを行う範囲を限定するものであると認めら れるが,同等の処理を行うものと認められる本件ソースコード7と比べて記述が長\nく,可読性が低下していると認められるところ,あえてそのような記述をする必要 があると認めるに足る証拠はないから,これを選択可能な他の表\現であるとは認め 難い。
(エ) 本件ソースコード8\n
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード8には,金額の単位を選択するために\n画面3に表示されるドロップダウンリストを生成するための判別処理等が記述され\nているところ,原告は,本件ソースコード8では,foreach文によるループ\nの中で,求める条件が正しい場合に次の条件に進むように記述しているが,他の表\n現8のように,求める条件が正しくない場合にループをやり直すように記述するこ ともできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れている旨主張する。\nしかしながら,前記(ウ)のとおり,foreach文は,ループの基本的な制御 文であるから,本件ソースコード8のように,ドロップダウンリストを生成するた\nめの判別処理として,foreach文を使用すること自体は一般的なことである と認められ,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,証拠(乙232ないし234)及び弁論の全趣旨によれば,他の表現8に\n用いられているcontinue文は,ループの中で使用され,その前のif文が 真になった場合にcontinue以降の処理をスキップして,次のループ処理の 最初に戻るものであると認められるものの,if文を用いた本件ソースコード8と\n比べてソースコードが長く,可読性が低下していると認められ,あえてそのような\n記述をする必要があると認めるに足る証拠はないから,これを選択可能な他の表\現 であるとは認め難い。
(オ) 本件ソースコード9\n
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード9には,画面2で選択された列の種別\nを判別して対応する処理が記述されているところ,原告は,本件ソースコード9で\nは,else−ifで条件分岐を行っているが,他の表現9(1)のように,swit ch文で条件分岐を行うこともでき,他の表現9(2)のように,switch文に加 えて,foreach文によるループの対象として,条件分岐の判別に必要な変数 を直接取得することもできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れてい\nる旨主張する。 しかしながら,前記(ア)のとおり,else−if及びswitch文は,いず れも条件分岐の基本的な制御文であるから,本件ソースコード9のように,画面2\nで選択された列の種別を判別して対応する処理を行うに当たり,else−ifで 条件分岐を行うこと自体は一般的なことであると認められ,そのことに作成者の個 性が表れているということはできない。\nまた,証拠(乙222)及び弁論の全趣旨によれば,他の表現9(2)は,他の表現\n9(1)と同様のswitch文の中に統合言語クエリ(LINQ)を実行する処理に 係る記述を挿入したものであると認められるものの,ソースコードが長く,可読性\nが低下していると認められ,あえてそのような記述をする必要があると認めるに足 る証拠はないから,これを選択可能な他の表\現であるとは認め難い。
(カ) 小括(本件ソースコード5ないし9)\n
原告は,上記(ア)ないし(オ)の各点以外に,本件ソースコード5ないし9の記述に\n選択の幅があることを具体的に主張立証しておらず,これらを創作的表現であると\n認めるに足りない。
エ 変数への設定に係る部分
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード10には,画面4に表\示される会計科 目のデータの判別及び設定を行う処理が記述されているところ,原告は,本件ソー\nスコード10では,変数に対して判別結果を直接設定し,条件演算子「?」,「:」 を使用しているが,他の表現10のように,if文によって変数に設定する値を変\nえることもできる,実際の表現の方が簡潔に表\現されているが,他の表現10にも,\nデバッグやログの出力をしやすいといった利点があるのであって,選択の幅があり, ここに原告の個性が表れている旨主張する。\nしかしながら,証拠(甲48,乙236,237)及び弁論の全趣旨によれば, 条件演算子は,条件に基づいて複数の処理を選択する演算子であると認められ,i f文等の条件分岐の制御文と同様の処理を行い得るものであって,両者は代替され 得るものとして認識されていると認められるから,本件ソースコード10のように,\n会計科目のデータの判別及び設定を行うに当たり,条件演算子を使用すること自体 は一般的なことであると認められ,変数に対して判別結果が直接設定されることが 特殊なことであると認めるに足る証拠もないから,それらに作成者の個性が表れて\nいるということはできない。 また,原告は,上記の点以外に,本件ソースコード10の記述に選択の幅がある\nことを具体的に主張立証していないから,これを創作的表現であると認めるに足り\nない。
オ チェック処理に係る部分
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード11には,組替操作時に画面4でドロ\nップされた行番号の取得及び変換を行う処理が記述されているところ,原告は,本 件ソースコード11では,TryParseメソ\ッドの戻り値でドロップされた行 番号のチェック結果を判別しているが,他の表現11のように,Parseメソ\ッ ドを用いて,まず行番号の取得を試みて,エラーが発生するかどうかでチェック結 果を判別することもできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れている\n旨主張する。 しかしながら,証拠(乙226,227)によれば,TryParseメソッド\n及びParseメソッドは,いずれもC#ライブラリに標準機能\として搭載された, 文字列を数値に変換する手法であるところ,TryParseメソッドは,変換に\n失敗したときに,例外として情報を取得し,それを精査することにより失敗の原因 を究明することができるとされるParseメソッドとは異なり,戻り値として,\n失敗したという情報だけを取得し,ソースコードはParseメソ\ッドより短くな ると認められ,本件ソースコード11のように,ドロップされた行番号の取得及び\n変換を行うに当たり,TryParseメソッドを用いること自体は一般的なこと\nであると認められ,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,原告は,上記の点以外に,本件ソースコード11の記述に選択の幅がある\nことを具体的に主張立証していないから,これを創作的表現であると認めるに足り\nない。
カ デバッグログを出力するコードに係る部分
(ア) 本件ソースコード12\n
原告は,本件ソースコード12にデバッグログを出力するコードが挿入されてい\nることにプログラム作成者の個性が表れると主張する。\nしかしながら,弁論の全趣旨によれば,プログラムの開発過程において,プログ ラムの保守及び変更等の必要から,不具合があり得ると考えられるソースコード上\nにデバッグログを出力するコードを挿入することは一般的に行われていることであ ると認められるから,デバッグログを出力するコードが挿入されているというだけ で,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,本件ソースコード12のデバッグログを出力するコードの記述に作成者の\n個性が表れていることについて原告は具体的に主張立証していないから,これを創\n作的表現であると認めるに足りない。\n
(イ) 本件ソースコード13\n
原告は,デバッグログを出力するコードが挿入されていない本件ソースコード1\n3に対し,他の表現12(1)及び(2)のように,デバッグログを出力するコードを挿入 することも選択し得るとも主張するが,納品されるプログラムにデバッグログを出 力するコードが挿入されていないこと自体は一般的なことであると考えられるから, そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\n
キ コメントに係る部分
原告は,本件ソースコード14等におけるコメントの有無及びその内容にプログ\nラム作成者の個性が表れる旨主張する。\nしかしながら,前記(1)アのとおり,プログラムは,電子計算機を機能させて一の\n結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現し\nたもの(著作権法2条1項10号の2)であるところ,コメントは,コンピュータ ーの処理の結果に影響するものではなく,コンピューターに対する指令を構成する\nものであるとはいえないから,上記のプログラムに当たらない。 また,原告は,本件ソースコード14のコメントの内容に作成者の個性が表\れて いることを具体的に主張立証しておらず,これを創作的表現であると認めるに足り\nない。
ク 小括(本件ソースコード)\n
以上のとおり,原告が創作的表現であると主張している本件ソ\ースコードについ て,作成者の個性が表れているということはできず,著作権法で保護されるべき著\n作物であると認めることはできない。
(3) 原告の主張について
原告は,本件プログラムはプログラムの著作物に当たるとし,その理由として, 1)本件プログラムは,原告が創作した部分に限っても,合計4万0381ステップ という膨大な量のソースコードから成り,指令の組み合せ方,その順序,関数化の\n方法等には無限に近い選択肢があること,2)本件プログラムにおけるエクセル取込 機能及び簡易組替機能\は,一般的な用途に使用されるものではないから,これらの 機能を実現するためのプログラムがありふれたものであるとはいえないこと,3)原 告は,NetAdvantageやVisualStudio等の開発ツールを用いながらも,ライブラリ群 の中からどのライブラリを用いるべきか,どの順番でライブラリを呼び出させるべ きか,どのように加工すべきか,どのようにパラメータを設定すべきかなどに工夫 を凝らしており,それらに個性が表れていること,4)本件各資料は,いずれも要求 定義又は外部設計に関するものにすぎず,DI社が要求している機能を実現するた\nめの指令の組合せは記載されていないから,本件プログラムに係る選択の幅を狭め るものではないことを主張する。 しかしながら,上記1)について,前記(1)アのとおり,プログラムに著作物性があ るというためには,プログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた 表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表\現上の創作性が表れていることを要す\nると解されるところ,本件プログラムに表現上の創作性があることについて具体的\nに主張立証されない以上,前記(1)イで認定,説示したとおり,多くのステップ数に より記述されていることをもって,直ちに表現上の創作性を認めることはできない。\nまた,上記2)について,原告の主張は,本件プログラムの機能の特殊性を指摘す\nるにとどまっているところ,プログラムの機能そのものは著作権法によって保護さ\nれるものではなく,特定の機能を実現するためのプログラムであるというだけで,\n直ちに表現上の創作性を認めることはできない。\nさらに,上記3)について,原告は,ライブラリの使用等にどのような工夫をした かについて具体的に主張立証しておらず,その点に選択の幅があり,作成者の個性 が表れていると認めるに足りない。\nまた,上記4)について,本件各資料にソースコードが具体的に記述されていない\nとしても,要求されている機能及び処理を実現するための表\現に選択の幅があると 当然にはいえないから,この点を考慮しても,本件プログラムに表現上の創作性を\n認めるに足りないというべきである。

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令和1(ネ)10043  著作権に基づく差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年11月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 テキスト本の解説をネット配信する行為が、テキスト本の著作権侵害(翻案権)かが争われました。知財高裁は1審と同様に、著作物性は認めたものの、本件解説と本質的特徴を同一にするとは認められないと判断しました。

 ア 最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決(同平成11年(受)第9 22号,民集55巻4号837頁)は,言語の著作物に関してであるが, 著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な\n特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,\n新たに思想又は感情を表現することにより,これに接する者が既存の著作\n物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作\nする行為であるとしている。そして,翻案の意義は,本件問題のような編 集著作物についても同様であると解されるから,編集著作物の翻案が行わ れたといえるためには,素材の選択又は配列に含まれた既存の編集著作物 の本質的特徴を直接感得することができるような別の著作物が創作された といえる必要があるものと考えられる。
イ これを本件について検討してみるに,本件問題は,控訴人自身も主張す るとおり,題材となる作品の選択や,題材とされる文章のうち設問に取り 上げる文又は箇所の選択,設問の内容,設問の配列・順序に作者の個性が 現れた編集著作物であり,ここでは,このような素材の選択及び配列等に, その本質的特徴が現れているということができる。これに対し,被告ライ ブ解説は,作成された問題(すなわち,素材の選択及び配列等)を所与の ものとして,これに対する解説,すなわち,問いかけられた問題に対する 回答者の思考過程や思想内容を表現する言語の著作物であって,このよう\nな思考過程や思想内容の表現にその本質的特徴が現れているものである。\nこのように,編集著作物である本件問題と,言語の著作物である被告ライ ブ解説とでは,その本質的特徴を異にするといわざるを得ないのであるか ら,仮に,被告ライブ解説が,本件問題が取り上げた文を対象とし,本件 問題が提起したのと同一の問題を,その配列・順序に従って解説している ものであるとしても,それは,あくまでも問題の解説をしているのであっ て,問題を再現ないし変形しているのではなく,したがって,本件問題の 翻案には当たらないものといわざるを得ない。 この点について,控訴人は,本件問題と被告ライブ解説とはその本質的 特徴を同一にするとして種々主張しているけれども,上記に指摘した点に 照らし,採用することはできない。
(3) 被告ライブ解説は本件解説の翻案に当たるかについて
控訴人は,本件解説と被告ライブ解説とは,本件問題の読解対象文章及び 設問・選択肢の文章を前提としているということでは全く共通であるから, 個々の文言にほとんど共通性がないからといって,表現の本質的特徴に同一\n性がないということにはならない旨主張する。しかしながら,読解対象文章 及び設問・選択肢の文章を前提としていること自体からは,表現にわたらな\nい内容の同一性がもたらされるにすぎないから,表現の本質的特徴の同一性\nの有無は,別途,文言等の共通性等を通じて判断されるべきものである。し たがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 また,控訴人は,本件ライブ解説の個々の箇所について,本件解説との間 で表現上の本質的特徴の同一性を有する旨主張する。しかしながら,本件解\n説と被告ライブ解説とがいずれも本件問題に対する解説であることに由来し て内容の類似性・同一性はみられ,被告ライブ解説は,その内容については 部分的に本件解説と本質的特徴を同一にするといえるものの,その表現につ\nいては,控訴人の主張を踏まえて検討しても,本件解説と本質的特徴を同一 にするとは認められない。したがって,控訴人の主張は採用することができ ない。

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◆平成30(ワ)16791

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平成30(ワ)14843  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和元年9月18日  東京地方裁判所

 写真の著作物が無料でアップロードされたとして、約30万円の損害賠償が認められました。

 本件各写真は,本件各商品を販売するために撮影されたものであると認めら れるところ(甲33),以下のとおり,いずれも,商品の特性に応じて,被写体の 配置,構図・カメラアングルの設定,被写体と光線との関係,陰影の付け方,背景\n等の写真の表現上の諸要素につき相応の工夫がされており,撮影者の思想又は感情\nが創作的に表現されているということができる。\n
ア すなわち,本件写真1ないし4は,ト音記号,楽譜又は楽器の柄のネクタイ を被写体とするものであり,ネクタイの下端部を手前にして波打つように配置され, 背景はネクタイの下端部が配置された写真下部を白色,写真上部を暗い灰色又は黒 色とし,陰影が明確に付されるなどして,ネクタイの柄や質感を視覚的に認識しや すいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているという ことができる。
イ 本件写真5ないし10は,弦楽器の柄のコインケース等の商品を被写体とす るものであり,本件写真5,7,9は,商品を中央に配置して全体を撮影したもの, 本件写真6,8,10は,柄の部分を大きく撮影したものであって,商品の配置の 仕方や陰影の付し方により,商品の質感や弦楽器の柄を視覚的に認識しやすいもの となっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということがで きる。
ウ 本件写真11ないし40は,楽器を演奏する動物等の置物を被写体とするも のであり,本件写真11,14,17,20,23,26,29,32,35,3 8は,商品の前方を正面から撮影したもの,本件写真12,15,18,21,2 4,27,30,33,36,39は,商品の後方を斜め上から撮影したもの,本 件写真13,16,19,22,25,28,31,34,37,40は,動物等 の顔を斜め上から大きく撮影したものであって,背景は緑色,白色又はそれらのグ ラデーションとし,陰影を付すなどして,動物等の表情や演奏態様等を視覚的に認\n識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされている ということができる。
エ 本件写真41ないし44は,鍵盤等の柄のフロアマットを被写体とするもの であり,本件写真41及び43は,四角形状の商品の形態に沿って商品のみを大き く撮影したもの,本件写真42及び44は,その一部を大きく撮影したものであっ て,生地の質感や鍵盤等の柄を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販 売用の写真として相応の工夫がされているということができる。
オ 本件写真45ないし50は,写譜用のペンを被写体とするものであり,本件 写真45,47,49は,商品を中央に配置して全体を撮影したもの,本件写真4 6,48,50は,ペンの先端部分を大きく撮影したものであって,商品に光を反 射させ,背景を白色とし,陰影を付すなどして,商品の質感や細かい模様を視覚的 に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされて いるということができる。
カ 本件写真51及び52は,写譜用のペンの替芯(5本)及びそのケースを被 写体とするものであり,ケースから突出する替芯につき長さを変えた状態で大きく 撮影したものであって,背景を白色とし,陰影を付すなどして,商品の形状を視覚 的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされ ているということができる。
キ 本件写真53ないし61は,トランペット等の楽器の柄の黒色クリアファイ ルを被写体とするものであり,本件写真53,55,57,59は,商品を中央に 配置して全体を撮影し,柄の部分に光を反射させ,背景は黒色を基調とし,陰影を 付すなどしたもの,本件写真54,56,58,60は,柄の部分を大きく撮影し たものであって,トランペット等の楽器の柄を視覚的に認識しやすいものとなって おり,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということができる。ま た,本件写真61は,商品を中央に配置して柄のない方向から全体を撮影したもの であり,背景を白色と黒色のグラデーションとし,陰影を付すなどして,商品の形 状を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工 夫がされているということができる。 ク 以上のとおり,本件各写真には,商品の販売用の写真として相応の工夫がさ れており,撮影者の思想又は感情が創作的に表現されているということができる。\n
(2)被告は,本件各写真が著作物であることを争い,取り分け,本件写真42な いし44は商品を上から撮影しているだけであり,本件写真45,46,50ない し52は商品の販売用の写真として一般的なものであるから,これらに創作性が認 められないことは明らかである旨主張するが,前記のとおり,本件各写真には,商 品の販売用の写真として相応の工夫がされており,撮影者の思想又は感情が創作的 に表現されているということができるのであって,被告の上記主張は採用すること\nができない。
(3) 以上によれば,本件各写真には創作性が認められ,前記前提事実(2)のとおり, これらは原告代表者によって原告の発意に基づき職務上作成されたものであるから,\nいずれも,原告の著作物であると認められる。
前記のとおり,被告は,原告の著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害しており,これらについて,少なくとも,過失があると認められるから,不法行為による損害賠償責任を負っているところ,原告は,本件\n各写真の使用料相当額に係る損害(著作権法114条3項)として,著作権侵害に 係るものにつき合計46万3800円,著作者人格権侵害に係るものにつき合計4 万6800円の損害が生じたと主張する。
(2) そこで検討すると,前記のとおり,被告は,原告が本件各写真を原告ウェブ サイトに掲載することによって販売していた本件各商品を,本件各写真と実質的に 同一の被告各写真を被告ウェブサイトに掲載することによって販売していたもので あり,このような被告各写真の使用態様に加えて,被告各写真の掲載期間は長いも ので1年6か月にわたること,証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,画像素材 の販売業者である「ペイレスイメージズ」のウェブサイトでは,画像素材の単品で の購入価格が432円から5400円までとされていると認められることなど,本 件訴訟に現れた事情を考慮すると,本件各写真の複製及び公衆送信につき受けるべ き金銭の額(著作権法114条3項)は,写真1枚当たり5000円と認めるのが 相当である。もっとも,原告の氏名表示権が侵害されたことによって,別途の財産\n的損害が生じたと認めるに足りない。
(3)ア これに対し,原告は,アマナイメージズの価格表において,画像素材1点\n当たりの使用期間1年までの使用単価は3万8880円,使用期間3年までの使用 単価は6万0480円,無断使用した場合には使用料金の200%を請求できると されていることを主張するが,弁論の全趣旨によれば,アマナイメージズは,画像 素材のレンタルや販売を業とする株式会社であると認められるのに対し,本件各写 真はレンタルや販売を目的として撮影されたものではないから,原告が主張する価 格表について本件各写真の複製及び公衆送信に係る著作権法114条3項所定の損\n害額の算定に当たって大きく考慮することは相当とはいえない。 イ 他方で,被告は,(1)本件各写真の創作性の程度の低さなどに照らせば,販売 用の広告写真1枚当たりの使用料相当額はせいぜい1000円程度である,(2)被告 において学遊社に本件各写真と同じカットでプロカメラマンによる写真撮影の見積 りを依頼したところ,ライティングを施すことを含む見積額が8万円であったから, 本件各写真の使用料相当額に係る損害は高くても合計8万円である旨主張する。 しかしながら,(1)については,前記のとおり,本件各写真は,商品の販売用の写 真として相応の工夫がされているということができるから,創作性の程度が低いこ とを理由として著作権法114条3項所定の損害額を著しく低額にすべきであると いうことはできない。
(2)については,証拠(甲41,乙3)及び弁論の全趣旨によれば,学遊社は,被 告から提供を受けた本件各写真をサンプルとして参照し,本件各写真に対応する6 1カットの写真を半日でまとめて撮影した場合の撮影料を見積もったものと認めら れるところ,学遊社の見積りは,本件各写真をサンプルとして参照しているため, 被写体の配置,カメラアングル・構図等を検討する必要はなく,また,半日でまと\nめて撮影しているため,複数日にわたって撮影されたと認められる本件各写真と比 べて撮影費用が低額となっているとみる余地があることなどからすれば,見積額が 8万円であるからといって,本件各写真の複製及び公衆送信に係る著作権法114 条3項所定の損害額が同程度であるということはできない。
(3) そうすると,本件各写真の複製及び公衆送信につき受けるべき金銭の額(著 作権法114条3項)は,合計30万5000円(5000円×61枚)であると 認められる。

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令和1(ネ)10045  標章使用差止反訴請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年10月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ピクトグラムの使用合意があること、およびその複製又は翻案には該当しないとした1審の判断が維持されました。複製又は翻案には該当しない理由は1審と同じです。

 まず,控訴人が主張する反訴原告主張合意については,これを記載した 契約書等の書面は作成されていない。また,控訴人が主張する平成14年 頃の反訴原告主張合意の成立にかかる事実経過(前記第2の5(控訴人の 主張)ア)も,これを裏付ける客観的な証拠は見当たらない。
ア そこで,控訴人と被控訴人との間の取引経過についてみると,各業態 の第1号店を出店する際の請求書をみても,店舗デザイン設計料とのみ あるだけで,反訴原告標章であるロゴや反訴原告ピクトグラムに係る制 作料,使用料については何ら記載されていない。そして,ロゴやピクト グラムについては,ハードオフ,オフハウス,モードオフ,ガレージオ フ,ホビーオフ,リカーオフといった各業態の第1号店を出店した(ハ ードオフのピクトグラムについては,平成7年頃に使い始めた)後は, コーナーの拡大などの必要に応じて更なるピクトグラムの制作・納品を しつつも,基本的にはそれまでに制作したロゴやピクトグラムを用いて 店舗デザインの設計等を行うのが恒例となっており,各業態によって差 はあるものの,制作したロゴ及びピクトグラムはその後の出店店舗でも 用いられていた。また,平成29年4月26日に請求するまで(前記1 において引用する原判決第3の1(15)),20年以上の長期間にわたっ て,控訴人は,反訴原告標章であるロゴや反訴原告ピクトグラムの使用 料を店舗デザイン設計(監理)料と別に請求したことはなく,制作料に ついても,その請求を裏付ける書面は基本的に存在しない。 ただし,控訴人から被控訴人に対する制作料の請求については,平成 16年3月22日の制作料(基本デザイン料)の請求(前記1⑴におい て改めた原判決引用部分第3の1(10))及び平成28年3月の制作料の請 求(前記1において引用する原判決第3の1(12)エ)が存在する。しか しながら,仮に反訴原告主張合意が存在したのであれば,かかる請求が できないことは控訴人にとって明らかであって,それにもかかわらず請 求したこと自体,それまでに作成・納品した制作料について将来も請求 できないことを認識していたからこそ,新たに作成・納品したロゴ等に ついて,制作料の支払合意を取り付けるべく,このような行為に及んだ と考えられるところである。なお,仮に,かかる2回の請求以外に,控 訴人が被控訴人に対し,口頭で,ロゴ等の制作料の請求をしたことがあ ったとしても同様である。 このような状況に照らすと,将来的に,控訴人,被控訴人の間におい て,店舗デザイン設計(監理)料等の名目で支払われた金員とは別に, 反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの制作料・使用料を請求する権 利が留保されていたとは考えにくく,むしろ,これらの制作料及び使用 料の支払義務を前提とする反訴原告主張合意がなかったことが窺われる。
イ また,契約終了に当たり,控訴人が被控訴人に当初交付した書類の内 容は前記1(2)に記載のとおりであるところ,かかる記載内容からは,無 償使用許諾を前提とする反訴原告主張合意の存在というよりも,むしろ, 使用料は店舗のデザイン設計料に含まれていたとの認識が窺われる。ま た,同書面には,制作料そのものについての言及は存在しない。
ウ 加えて,被控訴人においては,仮に反訴原告標章や反訴原告ピクトグ ラムの使用ができなくなれば,重大な不利益が生じることが明らかであ る。したがって,仮に反訴原告主張合意のような合意が存在するのであ れば,これによって生じる不利益の重大性に鑑み,合意の内容を書面化 することが通常であると考えられるところ,そのような書面が存在しな いことは既に指摘したとおりである。
エ 以上によれば,被控訴人は,店舗デザイン設計料等とは別に,ロゴや ピクトグラムの制作料,使用料を支払う意思はなく,控訴人も,被控訴 人からの店舗デザイン設計の依頼を受ける際に,ロゴや平成7年頃以降 はピクトグラムの制作をも必要に応じて行うことを前提としつつも,こ れらの制作料や使用料については,将来的にも被控訴人から引き続き店 舗設計業務の依頼を受けられることを期待したことから,明示的に制作 料や使用料として請求することはせずに,店舗設計業務を継続して受注 していく中で,これらについて実質的に回収を図っていこうという意向 であったと考えられる。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)37350

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平成30(ワ)5427  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和元年10月3日  大阪地方裁判所(21部)

 作成してもらったウェブサイトを依頼会社が別のサーバに移転して公開しました。これについて、本件の場合、著作権は被告が有するとして、著作権侵害とはならないと判断しました。

 本件において,原告は,被告ウェブサイトの公衆送信等の差止め及び削除,並び に金員の支払を求めているが,その根拠とするところは,一般不法行為等によるも のを除けば,原告ウェブサイトが原告の著作物であることであり,さらにその理由 として主張するところは,原告が原告ウェブサイトを創作的に制作したこと,及び 原告と被告ピー・エム・エーの契約により,原告ウェブサイトの著作権は原告に属 する旨合意されたことである。 これに対し,被告らは,原告ウェブサイトの著作権は,被告ピー・エム・エーに 帰属するとの黙示の合意があること,原告が原告ウェブサイトを制作したことによ ってその著作権が原告に帰属することはないこと,原告ウェブサイトの著作権を原 告に帰属させる旨を原告との間で合意した事実はないことを主張し,仮に原告に原 告ウェブサイトの著作権が認められるとしても,本件の経緯において,原告が被告 らに対し,原告ウェブサイトの著作権を主張することは,権利の濫用に当たる旨を 主張する。 そこで,まず,原告が原告ウェブサイトを制作したことにより,原告ウェブサイ トが原告の著作物と認められるか,次に,原告と被告ピー・エム・エーとの合意に より,原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属すると認められるか,そして,仮に 原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属する場合に,原告が被告らに対し,著作権 を行使することが権利の濫用に当たるかにつき検討する。
(2) 原告ウェブサイトの制作による著作権の帰属
ア 前記認定したところによれば,被告ピー・エム・エーは,旧ウェブサイトを 訴外彩登に制作させ,訴外ユウシステムに管理を委託していたところ,集客力の向 上のために,まず旧ウェブサイトの本件サーバの移管を原告に委託し,さらにその 保守業務を原告に委託した後,本件制作業務委託契約により,旧ウェブサイトを, スマートフォンやタブレットに対応できるようにするなど,全面的にリニューアル することを求めたことが認められるのであって,原告ウェブサイトの制作は,原告 の発意によるものではなく,被告ピー・エム・エーの委託に基づくものであり,原 告が自ら使用することは予定せず,被告ピー・エム・エーの企業活動のために使用\nすることが予定されていたものということができる。\n
イ 上述のとおり,原告ウェブサイトは,元々被告ピー・エム・エーが訴外彩登 に制作させた旧ウェブサイトを,本件サーバへの移管後にリニューアルしたもので, 前記認定したところによれば,原告ウェブサイトのデザイン,記載内容や色調の基 礎となったのは,リニューアル前の旧ウェブサイトであることが認められる。 また,前記認定したところによれば,原告は,原告ウェブサイトを制作するにあ たり,ワードプレス専用のプラグインやフォント,写真を購入したり,ワードプレ スを利用して,原告ウェブサイトが利用しやすく顧客吸引力があるように構成した\nものと認められるが,一方で,原告ウェブサイトは,被告ピー・エム・エーの株式 スクールとしての企業活動を紹介するものであって,その内容は,基本的に被告ピ ー・エム・エーに由来するというべきであるし,原告が,被告ピー・エム・エーか ら,その従業員を通じ,仕様や構成について指示及び要望を聞いて制作したもので\nあることは,前記認定のとおりである。
ウ 原告と被告ピー・エム・エーは,以上の内容・性質を有する原告ウェブサイ トの制作について,本件制作業務委託契約を締結し,例えば原告ウェブサイトの権 利を原告に留保して,原告が被告ピー・エム・エーに使用を許諾し使用料を収受す るといった形式ではなく,原告ウェブサイトの制作に対し,対価324万円を支払 う旨を約したのであるから,原告が原告ウェブサイトを制作し,被告ピー・エム・ エーのウェブサイトとして公開された時点で,その引渡しがあったものとして,原 告ウェブサイトに係る権利は,原告が制作したり購入したりした部分を含め,全体 として被告ピー・エム・エーに帰属したと解するのが相当である。 上記解釈は,原告ウェブサイト制作後も,原告が被告ピー・エム・エーに保守業 務委託料の支払を求めていることとも合致する。すなわち,原告ウェブサイトが原 告のものであれば,被告ピー・エム・エーがその保守を原告に委託することはあり 得ず,原告ウェブサイトが被告ピー・エム・エーのものであるからこそ,代金を支 払ってその保守を原告に委託したと考えられるからである。 また,上述のとおり,原告ウェブサイトは,被告ピー・エム・エーの企業として の活動そのものを内容とするものであるから,原告がこれを自ら利用したり,第三 者に使用を許諾したり,あるいは第三者に権利を移転したりすることはおよそ予定\nされていないというべきであるから,原告ウェブサイトについての権利が原告に帰 属するとすべき合理的理由はない。さらに,原告ウェブサイトについての権利が原 告に帰属するとすれば,被告ピー・エム・エーは,原告の許諾のない限り,原告ウ ェブサイトの保守委託先を変更したり,使用するサーバを変更するために原告ウェ ブサイトのデータを移転したりすることはできないことになるが,そのような結果 は不合理といわざるを得ない。
エ 以上より,原告が原告ウェブサイトを制作したことを理由に,原告ウェブサ イトの著作権が原告に帰属すると考えることはできず,原告ウェブサイトの著作権 は,被告ピー・エム・エーに帰属するものと解すべきである。
(3) 合意による著作権の帰属
ア 本件保守業務委託契約において,同契約に基づいて,原告が制作したウェブ サイトの著作権その他の権利が原告に帰属する旨の規定(14条2項)があること は前記認定のとおりである。 しかしながら,本件保守業務委託契約は,訴外彩登が制作した旧ウェブサイトを 本件サーバに移管した後に,その保守業務を被告ピー・エム・エーが原告に委託す る際に締結されたものであって,原告がウェブサイトを制作完成することは予定さ\nれていないから,上記条項が何を想定したものかは不明といわざるを得ないし,同 条項が,その後に締結された本件制作業務委託契約に当然に適用されるとも解され ない。
イ 本件制作業務委託契約については,被告ピー・エム・エー名義で作成された 本件注文書の「仕様」欄に,「全面リニューアル後の成果物の著作権その他の権利 は,制作者のP1に帰属するものとする。」と記載がある。 しかしながら,被告P3本人の尋問の結果によっても,被告ピー・エム・エーが, 原告と上記記載に係る合意を成立させる趣旨で,本件注文書に上記記載をしたとは 認められないし,他に,原告と被告ピー・エム・エーとの間で上記記載に係る合意 が成立したと認めるに足りる証拠は提出されていない。
ウ 原告ウェブサイトの制作の対価を324万円と定める本件制作業務委託契約 において,制作後の原告ウェブサイトの権利が原告に帰属するとすることが不合理 であることは前記(2)で述べたとおりであり,あえてそのように合意するとすれば, その合意は明確なものでなければならず,本件においてそのような合意が成立した と明確に認めるに足りる証拠がないことは上記ア及びイのとおりであるから,被告 ピー・エム・エーと原告の合意によって,原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属 したと認めることはできない。
(4) 権利の濫用
ア 本件の事実関係を前提とすると,仮に,原告ウェブサイトの一部に,原告の 著作物と認めるべき部分が存在する場合であったとしても,以下に述べるとおり, 原告が,その部分の著作権を理由に,被告ウェブサイトに対する権利行使をするこ とは,権利の濫用に当たり許されないというべきである。
イ すなわち,前記認定したところによれば,原告は,原告ウェブサイト制作後, その保守管理を行っていたこと,被告ピー・エム・エーは,平成29年秋の時点で, 原告に対する支払を遅滞し,本件サーバの更新料も支払っていなかったこと,本件 サーバを使用継続するには,同年11月30日に最低1万2960円(12か月分) を支払う必要があったが,被告ピー・エム・エーはこれを徒過したこと,同年12 月12日,本件サーバは凍結され,原告ウェブサイトの利用ができなくなったこと, 被告ピー・エム・エーはその直後に原告に13万8240円を振り込み,原告ウェ ブサイトを復旧するよう原告に依頼したこと,本件サーバの規約によれば,原告ウ ェブサイトのようなドメインが失効した場合,利用期限日から30日以内であれば, 更新費用を支払えば復旧可能であること,原告は,同月13日,被告P4に対し,\n原告ウェブサイトのデータは失われ,復旧するには再度制作する必要があり,その 費用は434万円余であると伝えたこと,被告ピー・エム・エーは,原告の提案を 断って,P6に,原告ウェブサイトの復旧を依頼したこと,P6は,原告ウェブサ イトのデータを利用して被告ウェブサイトを作成し,平成30年1月ころ公開した こと,以上の事実が認められる。 原告本人尋問及び被告P3本人尋問の結果を総合しても,原告が被告ピー・エム・ エーに対し,本件サーバの更新費用を怠った場合のリスクについて,適切に警告し, 期限を徒過しないよう十分注意したとは認められないし,原告ウェブサイトの利用\nができなくなった直後に被告ピー・エム・エーが金員を原告に振り込み,本件サー バの規約ではデータの使用が可能な期限内であるのに,原告が,データが失われ復\n旧もできないと説明したことが適切であったことを裏付ける事情や,復旧のために 434万円余もの高額の費用が必要であると説明したことの合理的理由は見出し難 い。かえって証人P6は,サーバが凍結された場合,サーバ会社に料金を支払えば すぐ復旧することができ,特に作業等をする必要はない旨を証言している。 前記認定したところによれば,原告ウェブサイトは,新たな顧客のために,被告 ピー・エム・エーの事業内容を紹介するのみならず,すでに顧客,会員となった者 に対するサービスの提供も行っているのであるから,原告ウェブサイトの停止は, 被告ピー・エム・エーの企業としての活動を停止することであり,その制作・保守・ 管理を行った原告は,当然にこれを了解していた。
ウ 前記イで述べたところによれば,原告ウェブサイトが停止するまでの原告の 行為は,その保守・管理を受託した者として不十分であったというべきであるし,\n原告ウェブサイトの停止後の原告の行為は,原告ウェブサイトの停止が被告ピー・ エム・エーを窮地に追い込むことを知りながら,これを利用して,データは失われ た,復旧できないと述べて,法外な代金を請求したものと解さざるを得ない。 上述のとおり,原告ウェブサイトの停止は企業としての活動の停止を意味し,既 に検討したとおり,原告ウェブサイトの著作権は全体として被告ピー・エム・エー に帰属すると解されるのであるから,被告ピー・エム・エーが,法外な代金を請求 された原告との信頼関係は失われたとして,原告の十分な了解を得ることなく,原\n告ウェブサイトのデータを移転するようP6に依頼したとしても,やむを得ないこ とであると評価せざるを得ない。
エ これらの事情を総合すると,仮に,原告ウェブサイトの一部に原告の著作権 を認めるべき部分が存在していたとしても,本件の事情において,原告がその著作 権を主張して,被告ウェブサイトの利用等に対し権利行使することは,権利の濫用 に当たり許されないというべきである。
(5) 本件動画ウェブサイトについて
前記認定事実のとおり,本件動画ウェブサイトは,被告ピー・エム・エーがソー\nシャルキャストのサービスを利用して提供していた授業の動画を,被告インタース テラーが引き継いだ後に,サブドメインを変更したウェブページであって,原告ウ ェブサイト及び被告ウェブサイトとは,内容も形式も全く異なるものである。 また,原告ウェブサイトと上記動画はもともと関連付けられていなかったところ, 本件サーバ凍結後,原告ウェブサイトから会員専用ウェブページを閲覧することが できなくなったため,被告ウェブサイト上において,「ログイン」ボタンを押すと 上記動画に遷移するよう設定され,サブドメインの変更に伴いリンク先も本件動画 ウェブサイトに変更されたものである。 したがって,仮に原告ウェブサイトの一部に原告の著作権が認められる場合であ っても,本件動画ウェブサイトの設定が,原告の著作権(複製権又は翻案権)侵害 となる余地はないといわざるを得ない。

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平成29(ワ)37350  標章使用差止請求反訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年5月21日  東京地方裁判所

 ピクトグラムが表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないとして、著作権侵害が否定されました。ただ、両者の具体例は掲載されていないので詳細は不明ですが、「H君」(「H」の文字を人間に見立て,両足,顔,耳,口,両手を連\n想させる装飾を施した部分をいう。),ボックスボイテル型の瓶のシルエット(反訴原告標章5),エレキギターの黒塗りイラスト等のようです。

 反訴被告標章1,2及び5の作成,使用等によって,反訴原告標章1,2 及び5についての反訴原告の複製権又は翻案権が侵害されるか否かを検討 するため,反訴被告標章1と反訴原告標章1が同一性を有する部分について みると,これらは,深緑色の長方形(横長)の中に白いアルファベット文字 が配置されていること,そのアルファベット文字の書体,大きさ,文字間の 間隔及び配置のバランス,全ての文字が円の構成要素とされていること,「O\nFF」と「USE」のアルファベット文字の上部に三つの白丸で弧を描くよ うな装飾が施されていることなどで共通している。 アルファベット文字について著作物性を肯定するためには,その文字自体 が鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えていなければならないと解 するのが相当である。反訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文 字が反訴被告の店舗で使用等をするために様々な工夫を凝らしたものであ ることは反訴原告が主張するとおりであるとしても,それらの工夫による反 訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文字は,いずれも「オフハ ウス」という名称をよりよく周知,伝達するという実用的な機能を有するも\nのであることを離れて,それらが鑑賞の対象となり得るような美的特性を備 えるに至っているとは認められない。また,その余の共通点については,い ずれもアイデアが共通するにとどまるというべきであり,仮にアイデアの組 合せを新たな表現として評価する余地があるとしても,それらはありふれた\nものであるといわざるを得ないから創作性は認められない。 したがって,反訴原告標章1と反訴被告標章1は,表現それ自体でない部\n分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないから,\n仮に反訴原告標章1が著作物であるとしても,反訴被告標章1を作成等する 行為は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものとはいえない。また,上 記と同様の理由から,反訴被告標章2及び5を作成等する行為についても反 訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものではない。
ウ 反訴被告ピクトグラムの作成,使用等により反訴原告ピクトグラムについ ての反訴原告の著作権が侵害されるか否かを検討するため,反訴原告ピクト グラムと反訴被告ピクトグラムが同一性を有する部分についてみると,反訴 原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは,いずれも,反訴被告で取り扱 う商品である具体的な工業製品の外観を示した図といえるものである。そし て,これらは,Tシャツの前部中央に表示された表\現が異なる反訴原告ピク トグラム4−01ないし4−03及び反訴被告ピクトグラム4−01ない し4−03を除く全てについて,具体的な形状が異なる製品を選択してこれ を表現したものである。したがって,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピク\nトグラムは,基本的に,同じジャンルの製品を選択してその外観を表してい\nる点において共通するにとどまるといえるものである。また,反訴原告ピク トグラムと反訴被告ピクトグラムにおいて,選択された製品の配置の角度, 複数の製品の種類の選択,レイアウトにおいて共通するものはあるが,これ らは,いずれも,アイデアであるか同種の表現を行うに当たり通常考え得る\nありふれた表現といえるものであり,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピク\nトグラムが創作性のある部分において共通するとはいえない。また,反訴原 告ピクトグラム4−01ないし4−03及び反訴被告ピクトグラム4−0 1ないし4−03におけるTシャツの形状は概ね同じであるが,これらは極 めてありふれたTシャツの形状であり,その形状についての表現に創作性が\nあるとは認められない。 これらを考慮すると,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは, 表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない部分において同一性を 有するにすぎないから,仮に反訴原告ピクトグラムの全部又はその一部が著 作物であるとしても,反訴被告ピクトグラムを作成等する行為は反訴原告の 複製権又は翻案権を侵害するものではない。

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平成31(ネ)10026  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年8月7日  知的財産高等裁判所  横浜地方裁判所  川崎支部

 書籍における素材の配列について,創作性を有する行為ではないとして、編集著作物に該当しないと判断されました。原審はアップされていません。

 控訴人は,編集著作物において素材の選択,配列を決定した者は問題 とならず,配列を行ったのは控訴人であるなどと主張する。しかしなが ら,控訴人の主張が,決定権限を持たずに素材の配列に関与した者,例 えば,単なる原案,参考案の作成者や,相談を受けて参考意見を述べた 者までがおよそ編集著作者となるというものであるとすれば,そのよう な主張は,著作者の概念を過度に拡張するものであって,採用すること はできない。また,本件において本件書籍の分類項目を設け,選択され た作品をこれらの分類項目に従って配列することを決定したのが被控訴 人であることは先に引用した原判決認定のとおりであって,当審におけ る控訴人の主張を踏まえてもかかる認定は左右されない。
イ また,控訴人は,被控訴人の前件訴訟における訴訟行為を捉えて,本 件において被控訴人は自分自身が編集著作者であると主張することは許 されないなどと主張する。 しかしながら,そもそも控訴人が前提とするところの,前件訴訟にお いて被控訴人が編集著作者でないと自白し,本件書籍が編集著作物であ れば控訴人が編集著作者であると認めたなどとする事実関係を裏付ける 証拠はないから,控訴人の主張はその前提を欠くものである。かえって, 控訴人による本件訴訟は,前件訴訟においてAが敗訴したことを受けて, 原告を控訴人とするとともに,Aは控訴人の代理人であったなどとして, 実質的には前件訴訟と同様の事実関係の主張を繰り返すものに過ぎず, 前件訴訟の蒸し返しであるといわざるを得ない。 上記の控訴人の主張は採用できない。
(3) 以上によれば,控訴人が決定し,Aに行わせたとする事務自体,本件書 籍における素材の配列について,創作性を有する行為であったとはいえな いから,控訴人が本件書籍の編集著作者であるとは認められない。

◆判決本文

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平成28(ワ)8552  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年4月18日  大阪地方裁判所(21部)

 Tシャツに描かれた猫のイラストについて、著作権侵害が認められました。損害額について「法114条3項の著作権の行使につき受けるべき金銭の額を算定するに当たっては,特段の事情のない限り,販売店に対する卸売価格ではなく,販売店における小売価格を基準とするのが相当である・・」と判断しています。
 まず,原告イラストと被告イラスト1ないし4は,丸まって眠っている猫を 上方から円形状にほぼ収まるように描くとともに,片前足と片後ろ足と尻尾をほぼ 同じ位置でまとめて描きつつ,耳や片後ろ足を若干円形状から突出して描いている 点で共通している。これらの共通点は,前記1で認定した原告イラストの創作性が 認められる表現上の特徴部分そのものであり,上記各被告イラストの表\現上の特徴 は,原告イラストのそれと共通しているといえる。 他方,原告イラストでは猫の目の周囲が黒いのに,上記各被告イラストはそうで はないが,全体からすると微差にとどまるものというべきである。 また,上記各被告イラストでは,猫の胴体部分に波様の紋様が描かれており,原 告イラストの雲様の紋様とは異なっているが,前述のとおり,原告イラストの表現\n上の特徴は,上半分に猫と分かるよう描かれた模様が徐々に変化して抽象的な紋様 につながり,猫の片前足の付け根の模様が,下半分の紋様にも使われるなど,猫を 描いた部分と抽象的な紋様とが連続的,一体的に構成され,全体として略円形状の\nマークのような印象を与える点にあると解され,上記各被告イラストは,これらを すべて有していると認められるが,下半分の抽象的な紋様にどのようなものを用い るかは表現上の本質的特徴といえるものではない。\n以上より,原告イラストと上記各被告イラストとの上記共通点に照らせば,上記 各被告イラストは,原告イラストを有形的に再製したものと認めることができる。
イ 被告イラスト5ないし8について
上記アで認定した原告イラストと被告イラスト1ないし4の共通点は,被告 イラスト5ないし8にも認められる。 他方,被告イラスト5ないし8には,猫の前足が2本とも描かれる一方で,ひげ が描かれておらず,抽象的な紋様が唐草様であるといった相違点もみられるが,そ れらの前足は片後ろ足や尻尾とほぼ同じ場所にまとめて描かれており,前記1で認 定した原告イラストの表現上の特徴は維持されているといえるし,ひげの有無等の\n相違点は微差であり,抽象的な紋様の相違は本質的ではない。 以上より,上記各被告イラストは,原告イラストを有形的に再製したものと認め ることができる。
ウ 被告イラスト9ないし12について
上記アで認定した原告イラストと被告イラスト1ないし4の共通点は,被告 イラスト9ないし12にも認められる。 他方,被告イラスト9ないし12には,猫の前足が2本とも描かれ,そのうち左 前足が円形状の外に突出しているという相違点や,足裏(肉球)が見えるように描 かれている(したがって,猫が両前足を上げているように描かれている)という相 違点等が認められる。 しかし,右前足は片後ろ足や尻尾とほぼ同じ場所にまとめて描かれており,前記 1で認定した原告イラストの表現上の特徴が基本的に維持されているということが\nできるし,左前足が円形状から突出しているものの,耳や片後ろ足の円形状からの 突出の程度は原告イラストと同程度にすぎず,丸まって眠っている猫を上方から描 き,猫を描いた部分と抽象的紋様の部分が連続的,一体的に構成され,全体として\n略円形状のマークのように見えるという原告イラストの基本的な特徴は維持されて おり,上記相違点によって,原告イラストの表現上の本質的な特徴を感得できなく\nなるものとは認められない。 以上より,上記各被告イラストは,原告イラストの表現上の本質的な特徴の同一\n性を維持しつつ,一部を変更したものと認めることができる。
エ 被告イラスト13ないし16について
被告イラスト13ないし16は,被告イラスト5ないし8と類似している点 が多く,被告イラスト13ないし16では,顔の傾きや2本の前足の重ね具合,片 後ろ足が円形状の中に収められている点等が異なっているものの,ひげが描かれて いる点で原告イラストに近く,全体として前記イの判断が妥当するといえる。 したがって,上記各被告イラストは,原告イラストを有形的に再製したものと認 めることができる。
オ 被告イラスト17ないし20について
被告イラスト17ないし20は,そもそも丸まって眠っている猫を描いたも のではなく,前記1で認定した原告イラストの表現上の特徴との共通点がみられな\nい。したがって,上記各被告イラストは原告イラストを有形的に再製したものとは 認められないし,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持していると認めること\nもできない。
・・・・
 原告は,要旨,被告の卸売先である販売店の小売価格に,原告が利用するT シャツ販売サイトに準じた使用料率を乗じて,著作権法114条3項の損害の額を 算定すべきであると主張するのに対し,被告は,被告の販売店に対する販売金額(基 準卸値,卸売価格)に,より一般的な使用料率を乗じ,さらに販売店から返品され たものについては控除して,これを算定すべきであると主張する。
イ 被告に販売店から返品された商品の売上げを含むことの当否 著作権法114条3項に基づく損害を算定する基礎となる譲渡数量に,被告 が販売店から返品を受けた商品の数を含むべきか,換言すれば,使用料率を乗じる 売上額から返品分に係る売上額を控除すべきかについて,当事者間に争いがある。 しかし,被告は返品を受けた被告商品を含めて製造し,その時点で原告イラスト についての原告の複製権又は翻案権の侵害が発生し,それを販売店に販売すること によって一旦売上げが計上されたのであるから,被告が製造し,販売店に販売した 被告商品の数をもって上記譲渡数量と認めるのが相当であり,返品を受けた商品の 数(売上げ)を控除すべき旨の被告の主張は採用することができない。 この点については,被告が提出する乙14の第6条において,ジャージやTシャ ツに関する商品化権許諾契約の対価(使用料)は使用料単価に「製造数量」を乗じ て算定することとされ,その「製造数量」には見本品,試供品その他販売,頒布を 目的としない商品についても含まれるものとされており(同1条3項),まさに製 造された商品の数量によって使用料を算定することが定められている。被告商品は 上記契約の対象とされるジャージやTシャツと同じ種類の物品であるから,乙14 の上記条項は,被告商品についても,製造され,販売店に販売された商品の数量(売 上げ)をもとに使用料を算定することを正当化する根拠になると考えられる。
ウ 使用料率
(ア) 原告の主張について
まず,原告は自らがデザイナー登録してTシャツ等を販売しているサイト における報酬割合(甲24の2)や報酬パーセンテージ(甲45)を引用したり, 原告が実際に支払を受けていた報酬額と販売価格とを対比したりして,本件では少 なくとも25%の使用料率が相当であると主張している。 しかし,原告がデザイナー登録しているサイトは,前記1(1)で認定したとおり, デザイナー等を応援することをコンセプトとしたものであったり,デザイナーが自 らデザインしたイラストを付したTシャツを販売したりするためのサイトとしての 性質も有しており,原告イラストあるいは原告の作品自体を入手することを目的と して購入する者が多いと考えられるのに対し,被告による商品の販売態様は,主と して,ショッピングモールに店舗を構えるなどして,多種多様な商品を販売する販\n売店(量販店)に対して商品を販売するというものであり,販売態様が大きく異な っている。 また,原告がデザイナー登録しているサイトにおいては,上記性質上,必ずしも 一般的に,商品登録の際に多くの販売(売上げ)が見込まれるという性質のものと まで認めることはできないのに対し,被告は上記のような量販店に商品を販売する ことから,被告商品の製造販売を開始する時点で,ある程度の販売数(売上げ)が 見込まれるのが一般的と推認される。 このように,商品の販売実態も,原告が引用している販売サイトの例と,被告の 例とでは大きく異なっているから,上記のように著作物が複製等された商品が量販 店に対して販売され,かつ,ある程度の販売数(売上げ)が見込まれる本件におい て,「著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」を算定するに当た り,商品の販売態様や販売実態の異なる原告主張の販売サイトの報酬割合等を参考 にすることは相当でないといわざるを得ない。なお,原告は甲46ないし48の例 も引用しているが,その実態は以上検討した例と変わるものではなく,甲46ない し48にも以上の判示が同じく妥当する。
(イ) 本件の使用料率
a 上記(ア)の判示を踏まえると,本件では,著作物が複製等された商品 が量販店に対して販売され,かつ,ある程度の販売数(売上げ)が見込まれる場合 を前提とした使用料率によるのが相当であるところ,そのような契約の例としては, 被告が引用している乙14の契約の例が挙げられ,被告商品の販売態様・販売実態 と同じ例と認められるから,本件の使用料率を算定にするに当たって,これを参考 にするのが相当である。
b また,乙14の契約は,乙17ないし19(甲54の1ないし3も 参照)の各商品について商品化権を許諾した契約であるから,これらとは商品にお ける著作物の使用割合等が異なれば,当然,使用料単価(使用料率)も異なってく るものと考えられる。したがって,本件において乙14の契約の例を参考にするに 当たっては,被告商品における原告イラストを複製又は翻案した被告イラスト(被 告イラスト17ないし20を除く。以下同じ。)の使用割合,ないし売上げへの寄 与を考慮すべきである。 そのような観点から被告商品を見てみると,被告商品においては,被告イラスト のみを単独で付したようなものはなく,被告において作成した他のデザイン,他の 紋様と組み合わせる形で,全体的なデザインの一部として被告イラストが使用され ており,例えば,被告商品4,16,18及び21のように,被告イラストが比較 的目立つように付されている商品がある一方で,被告商品5のように被告イラスト が見えにくい商品や,被告商品19のように別のイラストの方が相当目立つ形で付 されている商品等があり,商品における被告イラストの使用割合は相当異なってい る。 したがって,本件の使用料率を認定するに当たっては,原告イラストを複製又は 翻案した被告イラストの商品における使用割合(大きさや数)を考慮するのが相当 であり,その際には,乙14で使用料単価(使用料率)が定められた乙17ないし 19の各商品においては,キャラクターが比較的大きく描かれていることを踏まえ つつ,相当な使用料率を認定すべきと考えられる。
c 被告の主張について
被告は,被告商品では被告のオリジナルな図柄も描かれていることを指 摘しているが,そのことは乙17ないし19の各商品においても同じであるから, 乙14を参考にする場合には,上記bで述べた被告商品における被告イラストの使 用割合の中で考慮すれば足りると考えられる。 また,被告は,被告イラストごとに,原告イラストと関連する程度に応じて使用 料率を考慮すべき旨を主張しているが,被告イラストは原告イラストを複製又は翻 案したもので,前記2の判示によれば,原告イラストの表現上の本質的な特徴を強\nく感得することができるものと認められるから,上記被告が主張する点を,使用料 率の認定に当たり考慮する必要はないというべきである。 さらに,被告は乙14の契約の例が国民的人気を誇るキャラクターについての契 約であることを強調しているが,乙14の契約においてどのような点を考慮して使 用料単価(使用料率)が定められたのかは不明であるし,また乙14の契約は商品 の小売価格が1万1000円ないし1万7000円であることを前提としたもので あるところ,被告商品の小売価格は,一部1万円を超えるものがあるものの,大半 は7000円程度であり,安い商品では5000円を下回っている(甲6ないし1 4,16ないし18,弁論の全趣旨)から,乙14の契約の例では,結果的に使用 料単価が高く設定されているとみることもでき,本件で乙14の契約の例よりも使 用料率を低くすべき事情があるとまでいうことはできない。
d 小売価格と卸売金額のいずれをもとに算定すべきか 著作権法114条3項の著作権の行使につき受けるべき金銭の額を算定 するに当たっては,特段の事情のない限り,販売店に対する卸売価格ではなく,販 売店における小売価格を基準とするのが相当であるが,その場合においても,被告 が当初販売店に卸売りした際に予定していた価格(定価,標準価格)に固定するの\nではなく(原告はそれを前提とする主張をする。),被告商品においては,季節の 変わり目に被告商品を値下げして販売することもやむを得ないと解されるから,販 売店が値下げして販売した場合には,その値下げ後の価格をもとに算定するのが相 当である。 そして,本件では,被告商品が販売店において,実際にいくらで販売されたかを 認めるに足りる証拠はないが,被告の卸売金額から逆算して販売店での販売価格を 認定することができ,被告は,販売店がこの金額で被告商品を販売することを前提 に,販売店に卸売りしたのであるから,この販売店での販売価格に基づき,原告が 受けるべき金銭の額を算定するのが相当である。 被告が販売店に対して卸売りした被告商品に係る卸売金額(返品分を含む。)は, 別紙「損害額(販売店関係)計算表(裁判所認定)」の「販売店関係の売上額(円) …4)」欄記載のとおりであるところ(乙12,13),被告は販売店に卸売りする に当たり,原則として小売価格を基準卸値の2倍の金額に設定していること(弁論 の全趣旨)を踏まえると,販売店における販売額は,その金額の2倍に相当する金 額(同別紙の「販売店における販売額(円)」欄記載のとおり)と認めることができ る。 以上に対し,被告が通販サイトにおいて小売りした被告商品については,被告が 実際に販売した金額(別紙「損害額(通販サイト関係)計算表(裁判所認定)」の\n「通販サイト関係の売上額(円)」欄記載の金額。乙13)をもとに算定することに なる。
e 上記a及びbで判示した諸事情を考慮しつつ,乙14を参考にする と,本件の使用料率は次の通り認定するのが相当である(別紙「損害額(販売店関 係)計算表(裁判所認定)」及び「損害額(通販サイト関係)計算表\(裁判所認定)」 の「使用料率」欄参照)。
(a) 被告イラストの使用割合,ないし売上げへの寄与が比較的高いもの 小売価格の5%被告商品4,16,18,21
(b) 被告イラストの使用割合,ないし売上げへの寄与が比較的小さいもの 小売価格の3%
被告商品19
(c) 被告イラストの使用割合,ないし売上げへの寄与が極めて小さい もの 小売価格の2%
被告商品5
(d) 被告イラストの使用割合,ないし売上げへの寄与が平均的なもの 小売価格の4%
上記(a)ないし(c)記載の商品以外のもの
f 上記d及びeをもとに著作権法114条3項に基づく損害の額を算 定すると,次のとおりとなる。
(a) 被告が販売店に販売した商品に係る分 別紙「損害額(販売店関係)計算表(裁判所認定)」の右下欄記載の\nとおり,合計121万9681円となる。
(b) 被告が通販サイトにおいて小売価格で販売した商品に係る分 別紙「損害額(通販サイト関係)計算表(裁判所認定)」の右下欄記\n載のとおり,合計3889円となる。
(c) 以上より,著作権法114条3項に基づく損害は,合計122万 3570円である。
(2) 慰謝料
本件で認定した被告の行為態様が,原告イラストを複製又は翻案した被告イラ ストを多種多様な衣類等に付して幅広く販売し,被告商品の写真を被告が運営する ホームページにアップロードするというものであること,原告イラストと被告イラ ストとが類似又は酷似しているにもかかわらず,被告は,本件訴訟で著作権侵害等 を争っていること,他方で,被告は,被告イラストを商業的に利用しているのであ って,原告イラストを揶揄したりすることを目的に翻案等しているのではないこと, 以上の点を指摘することができるのであり,その他の本件に現れた一切の事情を総 合すると,原告の著作者人格権侵害による慰謝料は30万円と認めるのが相当であ る。 原告イラストは以下です http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/670/088670_option1.pdf 被告イラストおよび対比は以下です http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/670/088670_option2.pdf

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平成31(ネ)500  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年7月25日  大阪高等裁判所  棄却

 チラシの著作物性について1審と同様に著作物性無しと判断されました。 競業避止義務についても、合意なしとした原審を維持しました。

 控訴人は,被控訴人が旧大阪駅前店等の運営を控訴人に委託していたとい う両者の関係に照らし,被控訴人は控訴人に対し信義則上競業避止義務を負 うとも主張する。
被控訴人が旧大阪駅前店等の運営を控訴人に委託することになったのは, 眼科医であるP4が,その経営する会社においてコンタクトレンズ販売店を 営もうと考え,当時提携関係にあり,コンタクトレンズ販売店経営の豊富な 経験を有するP1に相談したことがきっかけであった(甲28,30,乙3 0,31)。この時P4は,控訴人への運営委託を通じて販売店経営のノウ ハウを蓄積し,いずれは独力で販売店経営を行うことを当然想定しており, P1もこれを当然承知していたと認められる。その意味で,控訴人と被控訴 人は,いずれもコンタクトレンズ販売店の経営を行う会社として,旧大阪駅 前店等の運営委託関係があった当時から競業関係にあったといえる。 競業者同士が提携関係にある状況においては,提携によって利益を得つつ, 一方が他方を出し抜いて自己の営業上の利益のみを追求する行動に出ること は,信義則に反すると評価される場合があり得ると考えられる。そのような 場合,信義則上相互に競業避止義務を負うと説明することもできるであろう。 しかし,提携関係が解消された後においては,両者とも営業の自由を有する のであるから,競業避止義務について特に合意をしたのでない限り,自由競 争の範囲内において自己の営業上の利益を追求して競業することが妨げられ ることはないのであって,一方が他方に対し信義則上競業避止義務を負うと いうことはできない。
控訴人と被控訴人は,平成28年6月までには提携関係を解消しており, また,上記(1)において判断したとおり,その間に競業避止義務についての 合意があったとは認められない。したがって,その後,被控訴人が控訴人に 対し信義則上競業避止義務を負っていたということはできない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)6322

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平成30(ワ)16791  著作権に基づく差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和元年5月15日  東京地方裁判所

 問題集は、編集著作物に該当する、解説は著作物と判断されましたが、本件解説の本質的特徴の同一性に欠けるとして、著作権侵害ではないと判断されました。 複製については、「被告は,実名は明らかにできないが,原告の経営する塾に在籍する複数の生徒から問題の原本を入手し解説講義を行っており,被告が本件問題を複製した事実は一切なく,生徒から任意に本件問題の原本を入手したものである。」と主張しています。

争点(1)(本件問題及び本件解説の著作物性の有無)について
(1) 証拠(甲4の1,5の1)によれば,本件問題のうち,国語Aの1は物語 文の,同2は論説文の読解問題であり,いずれも問1〜10から構成され,\n国語Bの1は物語文の,同2は説明文の読解問題であり,いずれも問1〜5 から構成されていることが認められる。\n また,証拠(甲4の2,5の2)によれば,本件解説には,解答部分,配 点部分,解説部分から構成され,解説部分には,設問ごとに,問題の出題意図,\n題材とされた文章のうち着目すべき箇所,当該箇所に係る文章の理解方法, 正解を導き出すための留意点等が記載されている。 他方,被告ライブ解説(甲1)は,本件問題について,同問題に係るテス トの終了後に,被告の担当者等がウェブ上の動画において口頭でその解説を するものであり,本件問題及び本件解説が画面上に表示されることはない。\n
(2) 著作権法12条は,「編集物…でその素材の選択又は配列によって創作性 を有するものは,著作物として保護する。」と規定するところ,被告は,本 件問題について,「どの部分を問題とするのか」,「何を問うのか」は問題 作成におけるアイデアにすぎないとして,本件問題は編集著作物に該当しな いと主張する。 しかし,国語の問題を作成する場合において,数多くの作品のうちから問 題の題材となる文章を選択した上で,当該文章から設問を作成するに当たっ ては,題材とされる文章のいずれの部分を取り上げ,どのような内容の設問 として構成し,その設問をどのような順序で配置するかについては,作問者\nが,問題作成に関する原告の基本方針,最新の入試動向等に基づき,様々な 選択肢の中から取捨選択し得るものであり,そこには作問者の個性や思想が 発揮されているということができる。本件問題についても,題材となる作品 の選択,題材とされた文章のうち設問に取り上げる文又は箇所の選択,設問 の内容,設問の配列・順序について,作問者の個性が発揮され,その素材の 選択又は配列に創作性があると認めることができる。 したがって,本件問題は編集著作物に該当する。
(3) 本件解説は,前記のとおり,本件問題の各設問について,問題の出題意図, 正解を導き出すための留意点等について説明するものであり,各設問につい て,一定程度の分量の記載がされているところ,その記載内容は,各設問の 解説としての性質上,表現の独自性は一定程度制約されるものの,同一の設\n問に対して,受験者に理解しやすいように上記の諸点を説明するための表現\n方法や説明の流れ等は様々であり,本件解説についても,受験者に理解しや すいように表現や説明の流れが工夫されるなどしており,そこには作成者の\n個性等が発揮されているということができる。 したがって,本件解説は創作性を有し,言語の著作物に該当するというべ きである。
2 争点(2)(複製又は翻案該当性)について
(1) 複製について
原告は,被告が本件問題及び本件解説の複製を自ら行っているか,仮に, 自ら複製行為を行っていないとしても,保護者又は生徒をいわば手足のよう に利用して複製をさせているのであるから,被告自身が複製を行ったと同視 し得ると主張する。 しかし,被告は,複数の原告学習塾の生徒から問題の原本を入手し解説を 行っている事実は認めるものの,問題を複製した事実は否認するところ,本 件においては,被告が自ら本件問題及び本件解説文を複製したと認めるに足 りる証拠はない。 また,被告が,指導者としての強い立場を利用し,保護者又は生徒に本件 問題等の複製を依頼し,あるいは,複製の費用を負担し,金銭や便宜を供与 するなどの働きかけをして保護者や生徒に本件問題等の複製を依頼したとの 事実を認めるに足りる証拠もない。そうすると,仮に,保護者又は生徒が本 件問題等の複製を行い,複製した本件問題の写しを被告に交付したとしても, そのことから直ちに被告自身が複製を行ったと同視することはできない。 したがって,被告が原告の有する複製権を侵害したとの主張は理由がない。
(2) 翻案について
ア 著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ, その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的な表\現に修正, 増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することによ\nり,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得す\nることのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成11年(受) 第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁 参照)。
イ 被告ライブ解説においては,前記1(1)のとおり,本件問題の全部又は一 部の画像を表示しておらず,また,口頭で本件問題の全部又は一部を読み\n上げるなどの行為もしていない。そうすると,被告ライブ解説は本件問題 の本質的な特徴の同一性を維持しているということはできず,被告ライブ 解説に接する者が本件問題の素材の選択又は配列に係る本質的な特徴を直 接感得することができるということはできない。 したがって,被告ライブ解説が本件問題を翻案したものであるとは認め られない。
ウ 本件解説に関し,原告は,被告ライブ解説と本件解説は同様の問題につ いて,同じ視点から解説したものであり,同じ目的の下,同じ解答に至る 考え方を説明したものであるから,その本質的な特徴は同一であると主張 する。 しかし,原告が翻案権侵害を主張する設問について,本件解説と被告ラ イブ解説の対応する記載を対比しても,表現が共通する部分はほとんどな\nい。例えば,国語Aの1の問5に関する本件解説と被告ライブ解説を比較 しても,共通する表現は「険のある」,「祐介」など,ごくわずかな部分に\nすぎず,被告ライブ解説が本件解説の本質的特徴の同一性を維持している ということはできない。本件解説の他の設問に係る部分についても,本件 解説と被告ライブ解説とで表現が共通する部分はほとんど存在せず,当該\n各設問に係る被告ライブ解説が本件解説の本質的特徴の同一性を維持して いるということはできない。 したがって,本件ライブ解説が本件解説を翻案したものであるとは認め られない。

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平成29(ワ)31572  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和元年6月18日  東京地方裁判所

 イッセイミヤケデザインのバッグなどについて、周知商品等表示・著名商品等表\示であると判断されました。なお、あわせて、著作権侵害かも争われましたが、「実用目的で工業的に製作された製品について,その製品を実用目的で使用するためのものといえる特徴から離れ,・・・上記特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できる場合には,美術の著作物として保護される場合がある」と一般基準を述べましたが、本ケースでは著作物性無しと判断されました。
判決文の最後にバックなど形状を示す写真があります。

 原告商品は, で述べたとおり,わずかな例外を除いて本件形態 1´を備え,メッシュ生地又は柔らかな織物生地に,相当多数の硬質な三角 形のピースが,2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰めるよ うに配置されることにより,中に入れる荷物の形状に応じてピースに覆われ た表面が基本的にピースの形を保った状態で様々な角度に折れ曲がり,立体\n的で変化のある形状を作り出す。一般的な女性用の鞄等の表面は,布製の鞄\nのように中に入れる荷物に応じてなめらかに形を変えるか,あるいは硬い革 製の鞄のように中に入れる荷物に応じてほとんど形が変わらないことから すれば,原告商品の形態は,従来の女性用の鞄等の形態とは明らかに異なる 特徴を有していたといえる。このことは,新聞や雑誌といったメディアにおいて「画期的なデザインのバッグ」(前記(1)カウ),「シンプルなピースが集 まって 自在に変化するユニークな形」前記(1)カカ),「三角形のパーツをつなぎあわせたフューチャリスティックなデザイン(前記(1)カテ),「特徴 がはっきりしているので販売企業がイッセイミヤケだとすぐ判別でき」る 前記(1)カセ)などと,そのデザインの独特さ,斬新さが取り上げられ,平 成19年秋にはデザイン性と機能性を併せ持ったアイテムだけを厳選して\n掲載するニューヨーク近代美術館のデザインショップ・カタログの表紙に採\n用されたことからも裏付けられ,原告商品の形態は,これに接する需要者に 対し,強い印象を与えるものであったといえる。 したがって,原告商品の本件形態1´は,客観的に他の同種商品とは異な る顕著な特徴を有していたといえ,特別顕著性が認められる。
・・・
 原告商品1ないし6は,ショルダーバッグ,携帯用化粧道具入れ,リュック サック及びトートバッグであり,いずれも物品を持ち運ぶという実用に供され る目的で同一の製品が多数製作されたものであると認められる。  著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について,「思想又は感情を 創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するも\nのをいう」(同法2条1項1号)と規定しているところ,その定義や著作権法の 目的(同法1条)等に照らし,実用目的で工業的に製作された製品について, その製品を実用目的で使用するためのものといえる特徴から離れ,その特徴と は別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できないもの は,「思想又は感情を創作的に表現した美術の著作物」ということはできず著\n作物として保護されないが,上記特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性 を備えている部分を把握できる場合には,美術の著作物として保護される場合 があると解される。
(3) これを原告商品1ないし6についてみるに, のとおり,原告商品1な いし6は,物品を持ち運ぶという実用に供されることが想定されて多数製作さ れたものである。
そして,原告らが美的鑑賞の対象となる美的特性を備える部分と主張する原 告商品1ないし6の本件形態1は,鞄の表面に一定程度の硬質な質感を有する\n三角形のピースが2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰める ように配置され,これが中に入れる荷物の形状に応じてピースの境界部分が折 れ曲がることにより様々な角度がつき,荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変 形するという特徴を有するものである。ここで,中に入れる荷物に応じて外形 が立体的に変形すること自体は物品を持ち運ぶという鞄としての実用目的に 応じた構成そのものといえるものであるところ,原告商品における荷物の形状\nに応じてピースの境界部分が折れ曲がることによってさまざまな角度が付き, 鞄の外観が変形する程度に照らせば,機能的にはその変化等は物品を持ち運ぶ\nために鞄が変形しているといえる範囲の変化であるといえる。上記の特徴は, 著作物性を判断するに当たっては,実用目的で使用するためのものといえる特 徴の範囲内というべきものであり,原告商品において,実用目的で使用するた めの特徴から離れ,その特徴とは別に美的鑑賞の対象となり得る美的構成を備\nえた部分を把握することはできないとするのが相当である。 したがって,原告商品1ないし6は美術の著作物又はそれと客観的に同一な ものとみることができず,著作物性は認められないから,その余の点について 判断するまでもなく,原告らの著作権侵害に基づく請求には理由がない。

◆判決本文

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平成30年(ワ)第466号 著作権に基づく差止等請求事件 令和元年7月11日 奈良地方裁判所

 電話ボックスを金魚鉢にみたてた現代アートについて、著作物性は認めましたが、 複製ではないと判断されました。問題の作品については判決文よりも下記写真の方がわかりやすいです。https://this.kiji.is/521862833728078945?fbclid=IwAR3SJE_DfyKsf9UNjJTXiLG1XrQs9kzhhkcDdj6XMD9DBeFvihaoK9tcon8

 著作権法は,著作権の対象である著作物の定義について「思想又は感情を 創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属する\nものをいう。」(同法2条1項1号)と規定しており,作品等に思想又は感情 が創作的に表現されている場合には,当該作品等は著作物に該当するものと\nして同法による保護の対象となる一方,思想,感情若しくはアイディアなど 表現それ自体ではないもの又は表\現上の創作性がないものは,著作物に該当 せず,同法による保護の対象とはならないと解される。 また,アイディアが決まればそれを実現するための方法の選択肢が限られ る場合,そのような限られた方法に同法上の保護を与えるとアイディアの独 占を招くこととなるから,この点については創作性が認められず,同法上の 保護の対象とはならないと解される。
(2)そこで,原告作品の基本的な特徴に着目すると,1)公衆電話ボックス様の 造形物を水槽に仕立て,その内部に公衆電話機を設置した状態で金魚を泳が せていること,2)金魚の生育環境を維持するために,公衆電話機の受話器部 分を利用して気泡を出す仕組みであることが特徴として挙げることができる。 このうち,1)については,確かに公衆電話ボックスという日常的なものに, その内部で金魚が泳ぐ、という非日常的な風景を織り込むという原告の発想自 体は斬新で独創的なものではあるが,これ自体はアイディアにほかならず, 表現それ自体ではないから,著作権法上保護の対象とはならない。\nまた,2)についても,多数の金魚を公衆電話ボックスの大きさ及び形状の 造作物内で泳がせるというアイディアを実現するには,水中に空気を注入す ることが必須となることは明らかであるところ,公衆電話ボックス内に通常 存在する物から気泡を発生させようとすれば,もともと穴が開いている受話 器から発生させるのが合理的かつ自然な発想である。すなわち,アイディア が決まればそれを実現するための方法の選択肢が限られることとなるから, この点について創作性を認めることはできない。 そうすると,上記1),2)の特徴について,著作物性を認めることはできな いというべきである。
(3)他方,原告作品について,公衆電話ボックス様の造作物の色・形状,内部に 設置された公衆電話機の種類・色・配置等の具体的な表現においては,作者\n独自の思想又は感情が表現されているということができ,創作性を認めるこ\nとができるから,著作物に当たるものと認めることができる。
2 争点2(被告作品による原告作品の著作権侵害の有無)について
(1)被告作品と原告作品の対比
被告作品と原告作品を対比すると,次の点を指摘することができる(甲7, 22,25,26,51の1.2)。
 ア 公衆電話ボックス様の造作物
原告作品と被告作品は,いずれも我が国で見られる一般的な公衆電話ボ ックスを模した,垂直方向に長い直方体で,側面の4面がガラス張りの造 作物内部に水を満たし,その中に金魚を泳がせている。 しかしながら,原告作品は屋根部分が黄緑色様であるのに対し,被告作 品は屋根部分が赤色である。また,被告作品は実際に使用されていた公衆 電話ボックスの部材を利用しているのに対し,原告作品はこれを使用せず, アルミサッシや鉄枠等を組み合わせて制作されている。 イ造作物内部に設置された公衆電話機 原告作品と被告作品は,いずれも上記造作物内部に棚板を二枚設置し, 上段に公衆電話機が設置されている。 しかしながら,原告作品の公衆電話機は黄緑色様であるのに対し,被告 作品の公衆電話機は灰色であり,公衆電話機のタイプも異なっている。ま た,棚板について,原告作品は水色で,形は二段とも正方形であるのに対 し,被告作品は銀色で,下段の形は三角形である。
ウ 受話器部分
原告作品と被告作品は,いずれも受話器がハンガー部分又は本体から外 された状態で水中に浮かんでおり,受話器の受話部分から気泡が発生して いる。
(2)検討
ア 著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであり,既存\nの著作物に依拠して作成,創作された著作物が,思想,感情若しくはアイ ディア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表\現上の創作 性がない部分において既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合に は,著作物の複製には当たらないものと解される。
イ 前記1で判示したところによれば,原告が同一性を主張する点(前記第 2の3(2)ア(ア))は著作権法上の保護の及ばないアイディアに対する主張で あるから,原告の同一性に関する上記主張はそもそも理由がない。 なお,事案に鑑み,具体的表現内容について原告作品と被告作品との間\nに同一性が認められるか否かについて検討するに,前記(1)で指摘したとお り,原告作品と被告作品は,1)造作物内部に二段の棚板が設置され,その 上段に公衆電話機が設置されている点,2)同受話器が水中に浮かんでいる 点は共通している。しかしながら,1)については,我が国の公衆電話ボッ クスでは,上段に公衆電話機,下段に電話帳等を据え置くため,二段の棚 板が設置されているのが一般的であり,二段の棚板を設置してその上段に 公衆電話機を設置するという表現は,公衆電話ボックス様の造作物を用い\nるという原告のアイディアに必然的に生じる表現であるから,この点につ\nいて創作性が認められるものではない。また,2)については,具体的表現\n内容は共通しているといえるものの,原告作品と被告作品の具体的表現と\nしての共通点は2)の点のみであり,この点を除いては相違しているのであ って,被告作品から原告作品を直接感得することはできないから,原告作 品と被告作品との同一性を認めることはできない。

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平成30(ワ)38579    著作権  民事訴訟 平成31年4月26日  東京地方裁判所

 原告の発言が含まれているDVDを販売したとして著作権侵害と争いましたが、著作物性無しと判断されました。本人訴訟です。

 そこで検討するに,被告株式会社フジテレビジョン作成のDVDに収録されている 音声には,「A」(甲57の1),「ストップ。ははははは。」(甲61の1),「あたた」(甲62の1)と認識される可能性が否定できないものがあるが,これらの音声はいずれもその発言者が上記のように認識される可能\性がある音声を偶々発言したにす ぎないものと認められるから,その意味内容や表現として,原告の名前を発言したも\nのとも,原告の平穏生活権を侵害する発言とも,原告作品を発言したものとも認めら れない。そして,原告が提出する映像(甲1ないし68の各1)には,上記以外に, その反訳書(甲1ないし68の各2)において原告が指摘する発言が収録されている とは認められないから,被告らにおいて,原告の著作権(複製権,翻案権,同一性保 持権又は公表権),名誉権,プライバシー又は平穏生活権を侵害し,又は脅迫若しく\nは侮辱に該当する発言が収録された映像を放送したこと又はそのDVDを販売する などしたことを認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。そうす ると,原告の被告らに対する請求はいずれも理由がない。

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平成30(ネ)10081等  不正競争行為差止等請求控訴事件等  不正競争  民事訴訟 令和元年5月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(2部)は、マリカー事件について、中間判決をしました。論点は色々ありますが、1審の判断がほぼそのままとなっています。

 一審被告らは,一審被告会社は,「マリカー」の標準文字からなる本件商標を 有しており,「マリカー」という標章を使用する正当な権限を有するから,仮に 被告標章第1の使用行為が不正競争行為に該当するとしても,差止請求や損害賠 償請求は認められない旨主張する。 しかし,本件商標の登録出願がされたのは平成27年5月13日であるところ, 前記4(2)で検討したとおり,その頃までには,原告文字表示マリオカート及び「M ARIO KART」表示は日本国内で著名となっており,かつ原告文字表\示マリカーも, 「マリオカート」を示すものとして,日本国内の本件需要者の間で周知になってい て,かつ後記8のとおり,一審被告会社の代表者である一審被告Yはそのことを知\nっていたものと認められる。
これに加え,1)一審被告会社が設立当初の商号を敢えて「株式会社マリカー」と していたこと,2)平成28年11月15日当時に品川第1号店において配布されて いた本件チラシには,「マリオのコスプレをして乗ればリアルマリオカート状 態!!」と記載されていたこと(甲3,4),3)平成28年8月12日当時に品川 第1号店サイト1には,「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ 倍増」と記載されるとともに,「マリオ」のコスチュームを着用した人物の写真が 同記載に併せて掲載され,また,平成29年2月23日当時に品川第1号店サイト 1に「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ倍増」と記載されて いたこと(甲6の1,甲35),4)平成29年2月23日当時に,河口湖店サイト に「スーパーマリオのコスプレをして乗れば,まさにリアルマリオカート状態!!」 と記載されていたこと(甲6の2),5)後記6認定のとおり,一審原告の著名な商 品等表示である原告表\現物に類似する被告標章第2のコスチュームを用いた宣伝行 為や本件各コスチュームを用いた本件貸与行為が行われ,特に,平成27年11月 2日にアップロードされた本件動画1(甲42の1,甲43の1)の0:05秒時 点には「MARIOKART」という英語の音声が収録され,かつ同音声について,「マリ オカート」の日本語字幕が付けられていたことも考え併せると,一審被告会社は, 周知又は著名な原告文字表示及び「MARIO KART」表示が持つ顧客吸引力を不当に利\n用しようとする意図をもって本件商標に関する権利をゼント社より取得したものと 推認することができる。
したがって,一審被告会社が,一審原告に対し,本件商標に係る権利を有すると 主張することは権利の濫用として許されないというべきであり,一審被告らの上記 主張は理由がない。
なお,一審被告らは,原告文字表示マリカーは本件需要者である訪日外国人の間\nでは周知ではないと主張するが,これまで検討してきたとおり,本件需要者は訪日 外国人に限られないから,一審被告らの主張はその前提を欠いており,採用するこ とができない。

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1審はこちらです。

◆平成29(ワ)6293

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平成28(ワ)11067  著作権侵害差止請求事件 令和元年5月21日  大阪地方裁判所

 飲食店におけるオーダ管理、および売り上げ管理をおこなうプログラムについて、「原告プログラムの作成日以前から一般的に使用されている指令であり,変数や条件等の文字列の場所が決まっているため独創的な表現形式を採る余地のないものであって,インターネット上に使用例が公開されている」として、著作物性が否定されました。

 プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこ\nれに対する指令を組み合せたものとして表現したもの」(著作権法2条1項10号\nの2)であり,所定のプログラム言語,規約及び解法に制約されつつ,コンピュー ターに対する指令をどのように表現するか,その指令の表\現をどのように組合せ, どのような表現順序とするかなどについて,著作権法により保護されるべき作成者\nの個性が表れることになる。\nしたがって,プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,そ\nの指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり, かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表\現上の創作性 が表れていることを要するといわなければならない(前掲知財高裁平成24年1月\n25日判決)。
(2) 原告プログラムのソースコードの創作性について\n
ア 原告プログラムのソースコードのうち創作性が認められ得る部分\n前記1のとおり,原告プログラムは,原告が作成していたレジアプリケーション ソフトを基に,原告と被告が協議しつつ,原告がソ\ースコードを書くことにより完 成したものであって,顧客の携帯電話端末を注文端末として使用することができる 点や,店舗において入力した情報を店舗(クライアント)側ではなくサーバー側プ ログラムを介してデータベースに保持し,主要な演算処理を行う点等について,従 来の飲食店において使用されていた注文システムとは異なる新規なものであったと 一応推測することができる。また,原告の書いた原告プログラムのソースコード(甲\n3)は,印刷すると1万頁を超える分量であって,相応に複雑なものであると推測 できる(原告本人)。 そして,6)データベースにおける正規化されたデータの格納方法や,注文テーブ ル及び注文明細テーブルに全てのアプリケーションからの注文情報を集約するため の記述(甲18)等に,原告の創作性が認められる可能性もある。\n
イ コンピュータに対する指令の創作性について 前記(1)のとおり,プログラムの著作物性が認められるためには,プログラムによ り特定の機能を実現するための指令の表\現,表現の組合せ,表\現順序等に選択の幅 があり,ありふれた表現ではないことを主張立証することが必要であって,これら\nの主張立証がなされなければ,プログラムにより実現される機能自体は新規なもの\nであったり,複雑なものであったとしても,直ちに,当該プログラムをもって作成 者の個性の発現と認めることはできないといわざるを得ない。
コンピュータに対する指令(命令文)の記述の仕方の中には,コンピュータに特 定の単純な処理をさせるための定型の指令,その定型の指令の組合せ及びその中で の細かい変形,コンピュータに複雑な処理をさせるための上記定型の指令の比較的 複雑な組合せ等があるところ,単純な定型の指令や,特定の処理をさせるために定 型の指令を組合せた記述方法等は,一般書籍やインターネット上の記載に見出すこ とができ,また,ある程度のプログラミングの知識と経験を有する者であれば,特 定の処理をさせるための表現形式として相当程度似通った記述をすることが多くな\nるものと考えられる(乙12,被告代表者)。\nそうすると,ソースコードに創作性が認められるというためには,上記のような,\n定型の指令やありふれた指令の組合せを超えた,独創性のあるプログラム全体の構\n造や処理手順,構成を備える部分があることが必要であり,原告は,原告プログラ\nムの具体的記述の中のどの部分に,これが認められるかを主張立証する必要がある。
ウ 本件における主張立証
被告は,原告プログラムについて,1)レジ,2)キッチンモニター及び3)マスタメ ンテナンスの各プログラムのソースコードは,汎用性のあるソ\ースコードであり創 作性が認められないと主張し,被告代表者の陳述書(乙12)において,上記1)〜 3)の各プログラムのソースコード(甲4〜6)の大部分について,指令の表\現に選 択の幅がなく,一般書籍(乙6)やインターネット上にも記載のあるありふれたも のであることを指摘する。また,被告は,原告プログラムのうち他の構成について\nも,指令の組合せがありふれたものであると主張する。 これに対し,原告は,4)スタッフオーダー等によって入力された情報を,5)サー バー側プログラムを経由して飲食店用に最適化された6)データベースにおいて一括 管理し,レジやキッチンに出力する機能が一体となる点に創作性が認められる旨主\n張するが,これは,プログラムにより実現される機能が新規なもの,複雑なもので\nあることをいうにとどまり,それだけでプログラムに創作性が認められることには ならないことは前述のとおりであるところ,原告は,具体的にどの指令の組合せに 選択の幅があり,いかなる記述がプログラム制作者である原告の個性の発現である のかを,具体的に主張立証しない。 むしろ,乙6,12によれば,原告が開示した原告プログラムの1)レジ,2)キッ チンモニター及び3)マスタメンテナンスのソースコード(甲4〜6)に表\れる指令 の組合せのうちの多くは,原告プログラムの作成日以前から一般的に使用されてい る指令であり,変数や条件等の文字列の場所が決まっているため独創的な表現形式\nを採る余地のないものであって,インターネット上に使用例が公開されているもの も多いことが認められる。
エ まとめ
前記認定したところによれば,原告は,平成23年3月の時点で,一定のレ ジアプリケーションを完成していたが,これは「でんちゅ〜」そのものではなく, 「でんちゅ〜」を事業化しようとする被告代表者と協議しながら,「でんちゅ〜」\nのプログラムを開発したこと,平成24年12月までの原告と被告との法的関係は 不明であるが,「でんちゅ〜」の事業化の主体は被告であり,原告は,被告の依頼 又は内容に関するおおまかな指示を受けてプログラムの開発を行ったこと,「でん ちゅ〜」は平成23年に飲食店に試験導入され,平成24年以降本格導入されたこ と,原告は,少なくとも同年12月から平成27年7月の退社までの2年半余り, 被告の被用者として被告の指示を受け,前記導入の結果を踏まえ,「でんちゅ〜」 の改良,修正等に従事したこと,以上の事実が認められる。 上記事実の中で,平成24年5月22日の時点における原告プログラムの構\n成が,ありふれた指令を組み合わせたものであるには止まらず,原告の個性の発現 としての著作物性を有していたと認めるに足りるものであることの立証がなされて いないことは,既に述べたところから明らかである。 また,平成23年の導入以降,「でんちゅ〜」については,段階的に改良や 修正が施され,原告自身も,少なくとも2年半余り被告の従業員としてその開発, 修正に従事しており,前記認定のとおり,原告プログラムと被告プログラムには相 当程度の差異が認められるのであるから,仮に原告プログラムの一部に,原告の個 性の発現としての創作性が認められる部分が存したとしても,その部分と同一又は 類似の内容が被告プログラムに存すると認めるに足りる証拠はなく,結局のところ, 平成24年5月22日時点の原告プログラムの著作権に基づいて,現在頒布されて いる被告プログラムに対し,権利を行使し得る理由はないといわざるを得ない。

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平成28(ワ)8552  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年4月18日  大阪地方裁判所

 猫のイラストについて著作物性ありと認定されました。

ウ 原告イラストの表現上の特徴\n
原告イラストについては,以下の表現上の特徴を看取することができる。\n
(ア) 原告イラストは,丸まって眠っている猫を上方から描くに当たり,円 形状の上部に配された猫の顔のあごの下から片前足を出して,その片前足を片後ろ 足や尻尾とほぼ同じ場所でまとめて描くことによって,ほぼ全体を略円形状の輪郭 の中に収める一方で,輪郭より外の部分等は描いていないため,全体が一個のマー ク(原告は家紋と表現する。)であるかのような印象を与える。\n
(イ) 原告イラストの基本的輪郭は円形状であるが,耳や片後ろ足が円から 若干突出して描かれているほか,猫の後頭部から肩にかけての部位は若干ふくらむ ように描かれ,機械的な真円ではないことから,猫がきれいに丸まっているという 基本的な印象を維持しつつも,柔らかく自然な印象を与える。
(ウ) 略円形状の上半分には,猫の頭部,片前足,片後ろ足及び尻尾が猫と 分かるように描かれているのに対し,略円形状の下半分は,雲を想わせる抽象的な 紋様となっているところ,略円形状の輪郭に沿って右回りにたどると,猫の顔や首 の白黒の模様が徐々に変化して雲を想わせる紋様となり,さらにたどると,猫の片 後ろ足と尻尾になるという形で連続的に変化しており,また,猫の片前足の付け根 は渦巻状になっているが,これを白黒反転させた紋様が下半分の雲を想わせる紋様 の中に三個存在するため,全体として,猫を描いた部分と抽象的な紋様の部分とが, うまく一体化している。
(2) 被告の主張について
被告は,平成23年9月以前から,原告イラストと同種のイラスト又は写真(乙 1ないし4)が存在していたことを理由に,原告イラストはありふれたものであっ て創作性がなく,美術の著作物に該当しないことを主張する趣旨と解される。 しかしながら,乙1及び2は,実物の猫が鍋の中で丸まって眠っている様子を上 方又は横から撮影した写真であるが,原告イラストは,実物の猫をそのまま忠実に デッサンしたものではないから,これらの写真によって原告イラストの創作性が否 定されるとはいえない。 また,乙3及び4は猫が丸まって眠っている様子を上方から描いたイラストであ るが,乙3及び4の絵には原告イラストとは異なる点が相当数みられ,これらによ っても,原告イラストがありふれたものであると認めることはできない。 なお,被告は,被告イラストを作成する過程で乙5を入手し,被告デザイナーに 渡した旨主張しているが,これが原告において原告イラストを作成した平成23年 9月までの時点で存在していたことを認めるに足りる証拠はない(甲31,32参 照)。
(3) 争点1についての判断
原告イラストは,前記(1)ウで述べたとおり,表現上の特徴を有するところ,前\n記(2)で検討したとおり,これらはありふれたものということはできず,創作性が認 められるから,原告イラストは,原告がこれを作成した時点で,美術の著作物とし て創作されたものと認められる。原告は,前記(1)ア及びイで認定した経緯により,原告イラスト作成後,それを広めるために,あるいは商業的に利用するために,Tシャツ販売サイトを介して,原告イラストを付したTシャツを販売したことが認められるが,これは原告が創作した美術の著作物を用いたTシャツを販売したにすぎないから,このことは,原告イラストの著作物性を否定する理由とはならず,原告イラストが応用美術に属するものとして,その著作物性を否定する被告の主張は,採用できない。

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原告表現、被告製品は以下です。

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平成29(ワ)27741  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年2月28日  東京地方裁判所(47部)

 タイプフェイスが著作物性を有するかが争われました。東京地裁47部は著作物ではないと判断しました。

 著作権法2条1項1号は,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,\n文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」を著作物と定めるところ,印 刷用書体がここにいう著作物に該当するというためには,それが従来の印刷用 書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であり, かつ,それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければなら ないと解するのが相当である(最高裁判所平成10年(受)第332号平成1 2年9月7日第一小法廷判決・民集54巻7号2481頁)。
 (2) そこで,本件タイプフェイスにつき検討する。 この点,原告は,本件タイプフェイスが著作物性を有するかどうかの判断を するにあたっては,タイプフェイスがそれぞれの文字相互に統一感を持たせる ように大きさや太さをデザインしているものであるから,個々の文字をそれぞ れ独立に見て判断するべきではない旨を主張する。しかしながら,複製権等の 侵害の成否は,現に複製等がされた部分に係る著作物性の有無によって判断す べきであること,タイプフェイスは各文字が可分なものとして制作されている ことからすれば,被告により現に利用された文字につき著作物性を判断するの が相当である。したがって,以下では本件タイプフェイスのうち,被告により 利用された文字に限って判断する。 ア 対比表記載の本件タイプフェイス以外の各タイプフェイス(以下「対比タ\nイプフェイス」という。)欄の括弧内に記載された各証拠及び弁論の全趣旨 によれば,対比タイプフェイス欄に記載された制作年に対比タイプフェイス がそれぞれ制作されたことが認められるところ,原告の主張に係る本件タイ プフェイスの制作年である平成12年(2000年)までに制作された対比 タイプフェイスに限って対比した場合においても,被告により使用された文 字のうち,「シ」,「ッ」,及び「ギ」「ジ」「デ」「ド」「バ」「ブ」「ベ」「ボ」における濁点「゛」の部分(以下,単に「濁点」という。)以外の文字について は,本件タイプフェイスに類似する対比タイプフェイスの存在が認められ, 本件タイプフェイスの制作時以前から存在する各タイプフェイスのデザイ ンから大きく外れるものとは認めがたい。
イ 他方,本件タイプフェイスにおける「シ」,「ッ」,及び濁点の各文字につい ては,2つの点をアルファベットの「U」の字に繋げた形状にしている点に おいて従来のタイプフェイスにはない特徴を一応有しているということは できる。しかしながら,2つの点が繋げられた形状のタイプフェイス(CL EAR KANATYPE(乙17,97)及び曲水M(乙15))の存在を 考慮すれば,顕著な特徴を有するといった独創性を備えているとまでは認め がたい。
ウ 以上からすれば,本件タイプフェイスが,前記の独創性を備えているとい うことはできないし,また,それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性 を備えているということもできないから,著作物に当たると認めることはで きない。
(3) これに対し,原告は,1)本件タイプフェイスのうち,「シ」「ッ」などの文字 は,2つの点を繋いで1本の曲がったラインで表現することにより文字の流れ\nを演出しているものであること,2)「ス」については,構成するラインを水平\n及び垂直に交わるように組み立てをし,全体を20度傾けることでカタカナの 「ス」であることがよく分かる構造となっていること,3)その他の文字につい ては,線が交わる部分を曲線にする手法,及び横画に細い線,縦画に太い線を 用いるという手法を巧みに組み合わせて全体の統一感を持たせたこと等を主 張する。 しかしながら,1)の点については,前記のとおり,従来のタイプフェイスに 比して,顕著な特徴を有するといった独創性を備えているという評価にまで至 るものではない。また,2)の点については,構成するラインを水平及び垂直に\n交わるように組み立てたものとしてMOULDISM Katakana(乙 14,102),全体を20度傾けたものとしてOVERLOADER(乙1 4,28の2)等の対比フォントが存在し,さらに3)の点については,Tec hnopolish(乙14,57)及びHappy Frame(乙14,7 2)等の対比フォントが存在することを考慮すれば,上記各点をもって本件タ イプフェイスが,従来のタイプフェイスに比して特徴を有するとは認められない。

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平成30(ワ)19731  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年2月28日  東京地方裁判所

 脚を写した写真について著作物性ありとして、東京地裁47部は発信者情報の開示を認めました。該当写真は、判決文中にあります。

 写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャ\nッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),陰影 の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合してなる一 つの表現であり,そこに撮影者等の個性が何らかの形で表\れていれば創作性が 認められ,著作物に当たるというべきである。 これを本件についてみると,本件写真2は,別紙写真目録2記載のとおりで あるところ,フローリング上にスリッパを履いて真っすぐに伸ばした状態の両 脚とテーブルの一部を主たる被写体とし,大腿部の上方から足先に向けたアン グルで,右斜め前方からの光を取り入れることで陰影を作り出すとともに脚の 一部を白っぽく見せ,また,当該光線の白色と,テーブル,スリッパ及びショ ートパンツの白色とが組み合わさることで,脚全体が白っぽくきれいに映るよ うに撮影されたカラー写真であり,被写体の選択・組合せ,被写体と光線との 関係,陰影の付け方,色彩の配合等の総合的な表現において,撮影者の個性が\n表れているものといえる。したがって,本件写真2は,創作的表\現として,写真の著作物であると認められる。これに反する被告の主張は採用できない。
2 争点2(公衆送信権侵害の成否)
(1) 本質的特徴を感得できるかについて
著作物の公衆送信権侵害が成立するためには,これに接する者が既存の著 作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができることを要する。\nこれを本件についてみると,証拠(甲3の2,9)及び弁論の全趣旨によ れば,本件画像には,本件写真2の下側の一部がほんの僅かに切り落とされ ているほかは,本件写真2がそのまま用いられていることが認められる。そ して,本件画像は,解像度が低く,本件写真と比較して全体的にぼやけたも のとなっているものの,依然として,上記1で説示した,本件写真2の被写 体の選択・組合せ,被写体と光線との関係,陰影の付け方,色彩の配合等の 総合的な表現の同一性が維持されていると認められる。\nしたがって,本件画像は,これに接する者が,本件写真2の表現上の本質\n的な特徴を直接感得することができるものであると認められる。これに反す る被告の主張は採用できない。
(2) 本件画像アップロードと本件投稿の関係について
ア 前記前提事実(3),証拠(甲3,5,6,11ないし13)及び弁論の 全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 「たぬピク」は,「up@vpic(省略)」宛てに画像を添付したメール を送信すると,当該画像がインターネット上にアップロードされたUR Lが,送信元のメールアドレス宛てに返信され,当該URLを第三者に 送るなどして,当該画像を第三者と共有することができるサービスであ る。
(イ) 本件掲示板を含むたぬき掲示板(2ch2(省略))をスマートフォンで 表示する場合には,「たぬピク」により取得した,画像のURLが投稿されると,当該URLが表\示されるのではなく,当該URLにアップロ ードされている画像自体が表示される仕組みとなっている。これにより,\n当該URLをクリックしなくても,たぬき掲示板上において,他の利用 者と画像を共有することが可能となっている。\n
(ウ) 本件画像は,平成30年3月22日午後11時53分41秒に,「up @vpic(省略)」宛てにメール送信され,本件画像URL上にアップロ ードされた(本件画像アップロード)。
(エ) 本件画像URLは,同日午後11時54分46秒に,被告の提供する インターネット接続サービスを利用して,本件掲示板に投稿された(本 件投稿)。
イ 以上の事実関係を前提に,本件投稿によって公衆送信権の侵害が成立す るか検討する。
まず,本件画像は,前記ア(ウ)のとおり,本件投稿に先立って,インター ネット上にアップロードされているが,この段階では,本件画像URLは 「up@vpic(省略)」にメールを送信した者しか知らない状態にあり,いま だ公衆によって受信され得るものとはなっていないため,本件画像を「up @vpic(省略)」宛てにメール送信してアップロードする行為(本件画像ア ップロード)のみでは,公衆送信権の侵害にはならないというべきである。 もっとも,本件においては,前記ア(ウ)及び(エ)のとおり,メール送信に よる本件画像のアップロード行為(本件画像アップロード)と,本件画像 URLを本件掲示板に投稿する行為(本件投稿)が1分05秒のうちに行 われているところ,本件画像URLは本件画像をメール送信によりアップ ロードした者にしか返信されないという仕組み(前記ア(ア))を前提とすれ ば,1分05秒というごく短時間のうちに無関係の第三者が当該URLを 入手してこれを本件掲示板に書き込むといったことは想定し難いから,本 件画像アップロードを行った者と本件投稿を行った者は同一人物であると 認めるのが相当である。そして,前記ア(イ)のとおり,本件画像URLが本 件掲示板に投稿されることにより,本件掲示板をスマートフォンで閲覧し た者は,本件画像URL上にアップロードされている本件画像を本件掲示板上で見ることができるようになる。そうすると,本件投稿自体は,UR Lを書き込む行為にすぎないとしても,本件投稿をした者は,本件画像を アップロードし,そのURLを本件掲示板に書き込むことで,本件画像の データが公衆によって受信され得る状態にしたものであるから,これを全 体としてみれば,本件投稿により,原告の本件写真2に係る公衆送信権が 侵害されたものということができる。以上の認定に反する被告の主張は採 用できない。
3 小括
以上からすれば,本件投稿により,原告の本件写真2に係る著作権(公衆送 信権)が侵害されたことが明らかであると認められる。また,原告がかかる著 作権侵害の不法行為による損害賠償請求権を行使するためには,被告が保有す る別紙発信者情報目録記載の情報が必要であると認められる。

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平成27(ワ)16423    不正競争  民事訴訟 平成30年11月29日  東京地方裁判所(46部)

 漏れてましたのでアップしました。ソフトウェアのソ\ースコードを流用したことが、不正競争行為に該当すると判断されました。問題となったのは、原告ソフトウェアについて、原告外部の技術者としてその開発,制作に携わり,その後,被告から委託を受け,被告ソ\フトウェアの実際の開発,制作を担当したBの行為です。前訴で著作権侵害を争いましたが、1審、2審とも著作権を侵害しないと判断されています。損害認定については、原告の利益*被告の譲渡数量をベースとして95%の滅失事由があると認定されました。

 本件鑑定で用いられたソースコードの分析の手法及びその鑑定結果の概要\nは以下のとおりである。(鑑定の結果〔4頁ないし12頁,17頁,24頁ない し27頁〕)
ア 本件鑑定においては,原告の意見等も踏まえ,本件ソースコードのうち1\n14種類のソースファイルが鑑定対象とされ,本件ソ\ースコードのうち一つ または複数のソースコードに対して被告ソ\フトウェアの複数のソースコー\nドを比較すべき場合があることから,300組のソースコードのペアについ\nて,一致点の有無等が判断された。
イ 前記の300組のソースコードのペアについて,類似性や共通性を判断す\nるため,8種類のコードクローン検出(コードクローンとはソースコード中に相互に一致又は類似したコード断片をいう。)を実施した。\n8種類のコードクローン検出の方法の概要は,1)識別子とリテラルのオー バーラップ係数を用いて名前の包含度合いを確認する,2)識別子とリテラル のコサイン係数を用いて名前の一致度合いを確認する,3)識別子とリテラル の部分文字列のオーバーラップ係数を用いて名前の文字並びの包含度合い を確認する,4)識別子とリテラルの部分文字列のコサイン係数を用いて名前 の文字並びの一致度合いを確認する,5)コメントの部分文字列のオーバーラ ップ係数を用いてコメントの文字並びの包含度合いを確認する,6)コメント の文字列のコサイン係数を用いてコメントの文字並びの一致度合いを確認 する,7)キーワードや記号の系列にSmith−Watermanアルゴリ ズムを適用してソースコードの文字並びの一致度合いを確認する,8)前記ア ルゴリズムをソースコードの長さで正規化してソ\ースコードの構造の一致\n度合いを確認するというものであった。
ウ 前記イの8種類のコードクローン検出を実施し,1種類以上の方法で類似 性についての一定の閾値を超えたものを要注意コード・ペアとして取り扱っ た。この要注意コード・ペアは,300組中57組存在した。
エ 前記ウの結果を参考にしつつ,鑑定人が300組全てのソースコードのペ\nアについて目視確認を行い,共通性や類似性が疑われるソースコードのペア\nを選んだ。その結果,原告ソフトウェアのソ\ースファイルと被告ソフトウェアのソ\ースファイルには,1)「GlobalSettings.h」と「S ourceDefault.h」(順に,原告ソフトウェアのソ\ースファイル と被告ソフトウェアのソ\ースファイル。以下,同じ。),2)「GlobalS ettings.cpp」と「SourceDefault.cpp」,3)「S STDB.cpp」と「Mdb.cpp」,4)「AutoLocker.h」 と「SafeLocker.h」,5)「AutoLocker.cpp」と「S afeLocker.cpp」につき,共通性や類似性が疑われる箇所が発見された(類似箇所1ないし5)。
・・・・
鑑定人は,類似箇所1ないし4について原告と被告のソースコードが不自\n然に類似・共通する箇所が存在すると判断し,類似箇所5については原告と 被告のソースコードに類似性や共通性が見られるがその理由が不自然であ\nるとまではいえないと判断した。
・・・
キ 鑑定人は,類似箇所1ないし5について,原告ソフトウェアを参照せずに\n被告らが独自に作成することが可能であるか否かにつき,以下のとおり判断\nした。
類似箇所1について
原告ソフトウェアのソ\ースコードの一部がサンプルで公開されていた などといった外部要因がないことを前提とすれば,原告ソフトウェアと被\n告ソフトウェアの開発者は必ず同一人物である。被告ソ\フトウェアを開発 する際に原告ソフトウェアを参照した可能\性が高いが,参照せずに開発す ることが全く不可能であるとまでは言い切れない。\nもっとも,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの開発者が同一人物で あり,その人物の記憶を手掛かりとしても,原告ソフトウェアのソ\ースコ ードを参照せずに類似箇所1で見られるような細かい特徴まで一致させ ることは難しいと考えることが自然である。
・・・
類似箇所1ないし3について,本件ソースコードの被告\nらによる使用等があったと認められる。そして,Bが,原告ソフトウェアの開\n発に携わった者の一人であり,被告ソフトウェアについて実際の開発,制作を\n担当したこと(前提事実 )及び弁論の全趣旨から,Bは,被告ソフトウェア\nの開発の際,本件ソースコードの類似箇所1ないし3に対応する部分を使用し\nて被告ソフトウェアを制作等し,もって,類似箇所1ないし3を被告フェイス\nに対して開示し,また,被告フェイスにおいてそれを取得して使用したと認め られる。
類似箇所4について
前記1(1)によれば,類似箇所4については,被告ソフトウェアのデータベー\nスで用いられている52件のフィールドの名前が原告ソフトウェアのデータ\nベースで用いられているものと同じであると指摘されており,被告らもTem plate.mdbの複製について認めていることに照らせば,類似箇所4に ついては,類似箇所1ないし3についてと同様の理由から,Bから被告フェイ スに対する開示及び被告フェイスによるその使用があったと認められる。
・・・
イ 原告ソフトウェアが開発されるに至った経緯や原告ソ\フトウェアの開発 の際のBの勤務の形態等に照らしても,原告ソフトウェアの開発,制作は原\n告の指示に基づきされたといえるものであり,本件ソースコードは原告が保\n有すると認められる。そして,原告ソフトウェアの開発,制作に携わった者\nの一人であるBは,類似箇所1ないし3が本件ソースコードの一部であるこ\nとや,販売用ソフトウェアのソ\ースコードという本件ソースコードの性質や\nその開発等の経緯等から,それが原告が保有する営業秘密であることを認識 できたといえる。 これらを考慮すると,Bが原告ソフトウェアと販売上も競合する被告ソ\フ トウェアを開発,制作するに当たって類似箇所1ないし3を使用したことは原告から示された営業秘密を,図利加害目的をもって被告フェイスに開示し たものと認めることが相当である(不競法2条1項7号)。 被告フェイスは,被告ソフトウェアが原告ソ\フトウェアと同種の製品であ り,字幕データファイル等について互換性を有するという特徴を有するもの であることや,上記のような機能を有する被告ソ\フトウェアの開発を具体的 に行うBが原告ソフトウェアの開発に携わった者の一人であったことは認\n識していたと認められる。これらのことから,被告フェイスは,被告ソフト\nウェアの具体的な開発を委託したBによる被告ソフトウェアの開発過程等\nにおいて違法行為が行われないよう特に注意を払うべき立場にあった。不競 法2条1項8号にいう重過失とは,取引上要求される注意義務を尽くせば容易に不正開示行為等が判明するにもかかわらずその義務に違反した場合を いうところ,被告フェイスにおいて,前記の事情に照らせば,前記の注意義 務を尽くせば被告ソフトウェアの開発過程等においてBの不正開示行為が\n介在したことが容易に判明したといえ,被告フェイスは,少なくとも重過失 により,原告の営業秘密である類似箇所1ないし3をBから取得し,それら を被告ソフトウェアに用いて販売したと認めるのが相当である(不競法2条\n1項8号)。 Aについて,被告ソフトウェアの開発,制作に当たって,具体的な本件ソ\ ースコードを被告フェイスに開示した事実を認めるには足りないし,その他, Aにおいて,不正競争行為となる事実を認めるに足りる証拠はない。したが って,Aについて,不正競争行為は認められない。
イ 被告らは,類似箇所1ないし3が被告ソフトウェアのソ\ースコードと一致 ないし類似するに至った原因は,Bが,原告ソフトウェアを開発するに際し\nてライブラリの選択等のために独自に自らのパソコンで作成し,そのパソ\コ ンに残っていた簡易な評価プログラムやそのプログラムに含まれる変数定 義部分を被告ソフトウェアの開発の際にも参照したことにあり,そのような\n行為は非難されるべきものではないなどと主張する。しかしながら,同事実関係を裏付ける証拠はない。また,前記の評価プロ グラムは,それが作成,使用されたとしても,その評価の対象となる本件ソ\nースコードの存在を前提として作成,使用されたものと考えられ,変数定義 部分が前記評価プログラムの作成又は使用によってBのパソコンに残って\nいたとしても,それが本件ソースコードの一部である以上,前記に述べたと\nころと同様の理由により,原告から示された営業秘密であるとするのが相当 であり,また,Bにおいて,そのことを認識することができたといえる。こ れらに照らせば,被告らの主張は,Bにおいて類似箇所1ないし3を被告ソ\nフトウェアの開発の際に使用する行為が不競法2条1項7号にいう不正競 争に該当するなどの前記結論を左右するものではない。
・・・
前記(1)アのとおり,被告ソフトウェアの販売数は,主として業務用として\n利用されるドングル版が●(省略)● ここで,オンライン版とスクール版の前記個数については同一顧客によっ て更新された回数が含まれているところ,オンライン版とスクール版につい ては,価格(更新の価格も含む。)がドングル版に比較して相当安価に設定さ れていて,同一顧客による同内容のソフトウェアの継続利用とその更新を前\n提としている部分があると認められる。このことに原告ソフトウェアの価格\nから推測されるその利用方法を考慮すると,本件においては,オンライン版 とスクール版については,不競法5条1項にいう「譲渡数量」としては,同 一顧客に対する販売を1個とすることが相当であるというべきである。 したがって,不競法5条1項における被告ソフトウェアの譲渡数量は,ド\nングル版が●(省略)●であると認めるのが相当である。
イ 原告ソフトウェアの単位数量当たりの利益の額\n
前記 ウのとおり,主として業務用に利用される原告ソフトウェアの価格は,基本編集機能\を搭載したもので28万円である。また,前記 オのとお り,主として教育用に利用される原告ソフトウェアの価格は,割引を考慮し\nない場合は2万4800円である。 そして,平成21年から平成23年までの間及び平成27年について,減 価償却費や人件費を控除して算出された原告商品の利益率は,最も利益率が 低い期間の利益率においても53.2パーセントを超えること(甲38の2, 甲133)及び弁論の全趣旨から,原告ソフトウェアの限界利益の利益率は,\n少なくとも40パーセントであると認められる。 以上によれば,主として業務用に利用される原告ソフトウェアの前記利益\nの額は11万2000円(28万円×0.4),主として教育用に利用される 原告ソフトウェアの前記利益の額は9920円(2万4800円×0.4)\nであると認められる。 これに対し,原告は,原告ソフトウェアの価格は90万7200円である\nと主張する。しかしながら,前記 廉価版である「SSTG1 Lite」を14万2000円で販売している。 また,90万7200円という金額は高等機能オプションやデータのインポ\nート/エクスポートオプション等の大部分を搭載した場合における金額で あるところ,前記 のとおり,原告ソフトウェアを利用する顧客の中には\n個人の顧客もかなりの割合で存在しており,そのような個人の顧客が基本編 集機能に加えてそれらのオプションを搭載したものを購入しているか否か\nは証拠上明らかではなく,むしろ,証拠(乙5,42)によれば個人の顧客 の97パーセントは基本編集機能のみを購入していることがうかがわれる。\nしたがって,原告の前記主張は採用できない。
ウ 小括
前記ア及びイによれば,以下の計算式のとおり,主として業務用に利用さ れるソフトウェアの関係では2654万4000円が原告の損害額と推定\nされ,主として教育用に利用されるソフトウェアの関係では1123万93\n60円が原告の損害額と推定される(合計3778万3360円)。
(計算式)
●(省略)●
エ 推定覆滅事由についての検討
前記3のとおり,被告ソフトウェアに関連し,原告の営業秘密である類似\n箇所1ないし3についてB及び被告フェイスの不正競争行為が認められる。 ここで,類似箇所1ないし3はいずれも変数定義部分等であり,ソフトウェ\nアの動作に不可欠な有用な部分ではあるが,ソフトウェアの画面表\示,イン ターフェイスや動作といったソフトウェアの利用者に関係する機能\等の制 御に直接的に関係する部分ではなく,また,類似箇所1ないし3の内容に照 らし,それらが被告ソフトウェアに対して他のソ\フトウェアでは一般的とは いえない特別の動作をもたらすものであるとは認められない。他方,前記1 とおり,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアのソースコードは,類似\n箇所1ないし5以外に類似している箇所があるとは認められず,ソフトウェアの利用者に関係する機能\等の制御に直接的に関係する部分については原 告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの間に共通する部分は存在していない ともいえる。 これらを考慮すると,被告らの不正競争行為が被告ソフトウェアの利用者\nに関係する機能を同種のソ\フトウェアに関する機能と大きく異なるものに\nしたとは直ちにはいえず,被告ソフトウェアの売上げは,基本的には,被告\nソフトウェアの不正競争行為ではない行為により作成された機能\に基づく 商品としての価値や被告フェイスの営業努力等によって実現されていたと するのが相当である。
以上によれば,被告ソフトウェアの譲渡数量のうちの相当程度の数量の原\n告ソフトウェアについて,原告が販売することができなかった事情があると\n認めるのが相当であり,以上のほか,本件にあらわれた一切の事情を総合的 に勘案すれば前記ウの推定は95パーセントの限度で覆滅し,被告フェイス 及びBによる不正競争によって原告に生じた損害は,前記ウ記載の損害の5 パーセントであると認めるのが相当である。また,弁護士費用としては,10万円をもって相当と認める。 なお,被告らは,「おこ助」と称する字幕ソフトウェアがシェアを拡大して\nおり,原告ソフトウェアとの競合品が存在していることが推定覆滅事由に該\n当するなど主張するが,前記「おこ助」の販売台数や機能等の詳細は明らか\nでなく,むしろ,証拠(乙38,39)によれば前記「おこ助」は主として 聴覚障がい者向けの字幕制作のためのソフトウェアであることがうかがわ\nれることに照らせば,前記「おこ助」が原告ソフトウェアの競合品であるこ\nとを理由とした被告らの前記主張は認められない。

◆判決本文

前訴はこちらです。

◆平成25(ワ)181

◆平成27(ネ)10102

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平成29(ワ)16958  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年2月28日  東京地方裁判所

 英会話のDVDが複製・翻案が争われた事件です。東京地裁46部は、一部の表現については創作性を認め、36万円の損害賠償を認めました。
 原告DVDと被告DVDの項目アにおける共通点である動画に社名を 表示することは,アイデアである。\n他方,項目イ及びウにおける原告DVDと被告DVDの共通点は,白い 扉を抜け,その先に英会話を学ぶ動機となるフレーズと共に写真が現れる というもので密接に関係するものといえるところ,英会話の宣伝,紹介用 のDVDにおいて,教材を利用することで新しい状況となることについて, 紺色の背景とする白い扉やその奥に広がる宇宙で表現するとともに,教材\nにより達成できる状況について,扉の奥に,その状況を表しているともいえる写真を英会話を学習する動機を示すフレーズとともに複数回示すこ\nとで表現しているものといえ,その表\現は,全体として,個性があり,創 作性があるといえる。 項目エにおける原告DVDと被告DVDの共通点のうち,英会話の宣伝, 紹介用のDVDにおいて,外国人と話している様子を用いる点はアイデア であり,そこにおける問いかけの表現は通常よく使用される,ありふれた\n表現といえる。\n項目オにおける原告DVDと被告DVDの共通点は,教材を学ぶことで 状況が変わることを,二度にわたる太陽の光を含む空の情景で示し,また, 自社の商品を用いることで交流の範囲が広がることなどを人物が写った 多数の写真を自社商品の周りを回転させることなどで表現しているもの\nといえ,その表現は,全体として,個性があり,創作性があるといえる。\n以上によれば,イントロダクションの部分の原告DVDと被告DVDは, 少なくとも,項目イ,ウ及びオにおいて表現上の創作性がある部分におい\nて共通するといえる。そして,上記共通する内容に項目イ,ウ及びオの内 容等を考慮すれば,上記部分の原告DVDの表現上の本質的な特徴を被告\nDVDから直接感得することができると認められる。
イ 受講者インタビュー(その1)(項目カ)
前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVD は,当該部分において,「(商品名)を始めた人の中にはすでに新しいステー ジへと人生を開いていった人たちがたくさんいらっしゃいます」という音声 が流れ,その後,海外で活躍する女性を紹介し,その女性へのインタビュー の様子となる点,「英語を話す原点になったのが(商品名)だったのです」と いう音声が流れるとともに,同趣旨が赤色の文字テキストで表示される点な\nどが共通する。 他方,原告DVDと被告DVDの当該部分において,登場人物やインタビューの内容,表現は異なっている。\n上記共通点のうち,英会話教材の宣伝,紹介用の動画において,海外で活 躍する受講者を紹介した上でその受講者へのインタビューの様子を用いる ことや,その受講者の活躍の契機となったのが自社の教材であるという説明 をすることは,アイデアであるといえるし,また,それらを上記のような順 序で構成することは,通常行われることといえ,これらをもって表\現上の創 作性があるとはいえない。また,「(商品名)を始めた人の中にはすでに新し いステージへと人生を開いていった人たちがたくさんいらっしゃいます」, 「英語を話す原点になったのが(商品名)だったのです」との部分について, 英会話教材を宣伝,紹介する際に,教材による学習によって自らの状況が変 わったことを新たなステージへと人生を開くと表現することや,その契機等\nとなった商品を原点と表現することはありふれたものであるといえ,いずれ\nも創作性があるとは認められない。 したがって,受講者インタビュー(その1)の部分の原告DVDと被告D VDの共通点は,いずれもアイデアなどの表現それ自体でない部分又は表\現 上の創作性が認められない部分に関するものであるといえる。
・・・・
エ その他受講者インタビュー(項目ク)
前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVD は,当該部分において,受講者への複数のインタビューの様子である点,「人 生が変わりました」との文字テキストが表示される点で共通している。\n 他方,原告DVDと被告DVDの当該部分において,登場人物やインタビ ューの内容,表現は異なっている。\n上記共通点のうち,英会話教材の宣伝,紹介用の動画において,受講者と される人物のインタビューの様子を用いることはアイデアであるといえる。 また,「人生が変わりました」という文字テキストは,表現であるということ\nができるとしても,教材を宣伝,紹介する場面で,教材による学習によって 自らの状況が変わったことを人生が変わると表現することは,ありふれた表\ 現であるといえ,創作性があるとは認められない。そして,インタビューの 様子に文字テキストを組み合わせることについても,普通に行われることで あり,このことをもって表現上の創作性があるとはいえない。\nしたがって,その他受講者インタビューの部分の原告DVDと被告DVD の共通点は,いずれもアイデアなどの表現それ自体でない部分又は表\現上の 創作性が認められない部分に関するものであるといえる。
オ 商品紹介(項目ケ)
前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVDは,当該部分において,まず,画面上部が光り,雲が浮かんでいる空の 様子となった後,画面の上方から階段が伸びてきて,階段を下から見上げ る構図となり,その後,空を背景に,最下段の階段の側面に英語学習のス\nテップのフレーズが表示され,そのフレーズの読み上げが終わると一段上\nの階段の側面が拡大されると同時に,その階段の側面に次の英語学習のス テップのフレーズが右からスライドして表示されるとともに,そのフレー\nズがナレーションされ,それを7回繰り返して,7つ目の英語学習のステ ップが表示されると,側面にフレーズが記載された階段が最下段まで表\示 されるという点で共通している。また,各階段の側面に表示されるフレー\nズは,原告DVDでは1)「聞くことを習慣化する」,2)「単語やフレーズの 音がキャッチできるようになる」,3)「言っていることが理解でき短い言 葉で反応できるようになる」,4)「短い言葉で自分の意思を伝えられるよ うになる」,5)「簡単な会話のキャッチボールができるようになる」,6)「言 葉のキャッチボールが長く続くようになる」,7)「意識せずに自然に外国 人との会話が楽しめるようになる」であるのに対し,被告DVDでは1)「流 して聞くことを習慣化する」,2)「単語,フレーズの音が聞き取れるように なる」,3)「言っていることが分かり,短いフレーズで返事ができるように なる」,4)「短いフレーズで自分の言いたいことが伝えられるようになる」, 5)「簡単な会話のキャッチボールができるようになる」,6)「言 葉のキャッチボールが長く続くようになる」,7)「意識せずに自然に外国 人との会話が楽しめるようになる」であるのに対し,被告DVDでは1)「流 して聞くことを習慣化する」,2)「単語,フレーズの音が聞き取れるように なる」,3)「言っていることが分かり,短いフレーズで返事ができるように なる」,4)「短いフレーズで自分の言いたいことが伝えられるようになる」, 5)「簡単な会話のキャッチボールができるようになる」,6)「言葉のキャッ チボールが長く続けられる」,7)「意識せず,自然に外国人との会話が楽し めるようになる」であり,その内容,表現はほぼ共通している。\n 他方,原告DVDでは,階段は側面も含めて青色であり,フレーズが白 色の文字で表示されるのに対し,被告DVDでは,階段は側面を含めて白\n色であり,フレーズが青色の文字で表示される。また,原告DVDと被告\nDVDにおいて,階段の背景はいずれも白色の雲がある青空であるが,具 体的な光景は異なる。
(イ)項目ケの部分の原告DVDと被告DVDの上記 の共通点は,空に浮か んだ階段を下から見上げる構図とすることによって,階段を上っていくイ\nメージを抱かせ,階段と英語学習のステップが結び付くものであり,原告 DVDと被告DVDでほぼ共通するフレーズの内容に照らしても,一定の 段階を踏んで英語学習を進めることができるなどのイメージを与えるも のである。そのようなステップが7段階あり,その内容がほぼ同一である ことをも考慮すると,この共通点は,作成者の個性が現れており,全体と して創作的な表現であると認められる。\nそして,上記共通する内容に項目ケの内容等を考慮すれば,項目ケの原 告DVDの表現上の本質的な特徴を被告DVDから直接感得することが\nできると認められる。
・・・・
原告は,原告DVDと被告DVDが,1)イントロダクション,2)受講者イン タビュー,3)商品紹介,4)商品特徴の説明,5)開発者等のインタビュー,6)商 品特徴の説明,7)エンディングという全体的な構成が類似することも主張する\nので,以下,検討する。
ア 前記前提事実 及び証拠(甲5,6)によれば,原告DVDと被告DVD は,いずれも,1)イントロダクション(項目アないしオ),2)受講者インタビ ュー(項目カないしク),3)商品紹介(項目ケ),4)商品特徴の説明(項目コ ないしシ),5)開発者等のインタビュー(項目ス),6)商品特徴の説明(項目 チ及びツ),7)エンディング(項目テ,ト)という構成を有するということが\nできる。なお,上記各項目においては, 基 本的に,使われている写真,光景,登場人物やインタビューを受けた者が話 す内容などは異なる。
イ 原告DVDと被告DVDは,いずれも英会話教材の宣伝,紹介用のもので あり,このようなDVDにおいて,宣伝の対象である商品の購入等を促すと いう目的のために,商品の内容や特徴,商品を利用した場合の効果,サポー ト体制の説明をすることは,ごく一般的であるといえる。そして,商品の内 容,特徴や商品を利用した場合の効果を説明するために,受講者や開発者に 対するインタビューを用いることも,一般的であるといえる。 原告DVDと被告DVDの全体的な構成は,前記アのとおり,原告が主張\nする7つという少なくない要素において一致するが,その各要素は,上記の とおり,同種の目的を有するDVDにおいては,いずれもごく一般的といえ るものである。また,原告DVD及び被告DVDにおけるそれらの各要素の 順序について,特別の印象を与えるようなものであるとはいえない。これら を考慮すると,原告DVDと被告DVDの原告主張の全体的な構成について,\nそその各要素が共通する点をもって創作的な表現であるとは認められない。\nまた,前記 のとおり,被告DVDは,複数の部分において,原告DVD の表現上の本質的な特徴を感得することができる。しかし,それらの本質的\nな特徴を感得することができる表現について,英会話教材の宣伝,広告用の\n動画における表現としては関連するとはいえるが,それ以上にそれらが表\現 上及び内容上,相互に密接に関連しているものとはいえない。このことに, 全体的な構成の各要素が同種の目的を有するDVDにおいてごく一般的な\nものであること,被告DVDには,原告DVDの表現上の本質的な特徴を感\n得することができるとはいえない部分も多いこと(前記 )を考慮すると, 被告DVDに原告DVDの表現上の本質的な特徴を感得することができる\n部分があるとしても,原告DVD全体についての表現上の本質的な特徴を被\n告DVDから感得することができるとまではいえない。
(4)小括
以上によれば,被告DVDは,少なくとも,項目イ,ウ,オ,ケ,テ及びト において,原告DVDの表現上の本質的特徴を被告DVDから直接感得するこ\nとができる。 そして,対照表」及び「DVDスクリプト内容対照表\」における共通点の内容等及び弁 論の全趣旨に照らし,被告DVDは,原告DVDに依拠して作成されたものと いえる。 これらのことに,前記のとおり,原告DVDと被告DVDでは,画面自体は 異なり,原告DVDの表現に一定の修正,増減,変更等が加えられて別の表\現 となっていることなどから,被告DVDは,少なくとも,上記各項目において, 原告DVDを翻案したものと認められる。
2 争点2(編集著作物としての複製権,翻案権侵害の有無)及び争点3(言語の 著作物としての複製権,翻案権及び譲渡権侵害の有無)について
原告の主位的な主張のうち,編集著作物としての侵害の主張は,別紙「DVD の内容の対照表」の「イントロダクション」などの標題によって区切られた部分\nを一つの素材として,その選択と配列について創作性を有すると主張するもので ある。しかし,この主張は,少なくとも,前記1(3)の全体的な構成に関する類似\nの主張において述べたところと同様の理由により,理由がない。また,原告は, 予備的に,原告DVDに含まれるスクリプト部分の言語の著作物の侵害を主張す\nるところ,共通するスクリプトは,事実を述べるものか,英会話教材の宣伝,紹 介用の動画において,ありふれたものということができ,その順序にも表現上の\n創作性があるとは認められないから,原告の主張は理由がない。

◆判決本文

両当事者は、宣伝のキャッチフレーズについて著作権侵害を争っていましたが、こちらは1審、2審とも著作物性無しと判断しています。

◆平成27(ネ)10049

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平成29(ワ)6322  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成31年1月24日  大阪地方裁判所

 販促チラシについて著作物性が争われました。大阪地裁は著作物性を否定しました。
ア 原告は,本件チラシの表現のうち,1)「検査時間 受診代金[注:各文 言の上に『×』の記号あり]」や「検査なし スグ買える!」という宣伝文句(キャ ッチフレーズ)(上記(1)のア及びイ),2)「コンタクトレンズの買い方比較」という 表(同ア)及び3)「なぜ検査なしで購入できるの?」という箇所における説明文言 (同ア)の3点について,創作性があるとして,本件チラシに著作物性が認められ ると主張している。
イ しかし,まず上記1)は,旧大阪駅前店において採用された眼科での受診 (検査)なしでコンタクトレンズを購入することができるという特徴を表現したも\nのであり,眼科での受診(検査)が不要であると,検査時間や受診代金が不要とな り,また検査が不要である結果,コンタクトレンズをすぐ買えることになると認め られる。そして,上記1)の宣伝文句は,以上のビジネスモデルによる顧客の利便性を消費者に分かりやすく表現しようとしたものと認められるが,不要になる事項を\n文字(単語)で抽出し,その文字(単語)の上に「×」を付すことはありふれた表\n現方法であるし,「検査なし スグ買える!」という表現は,眼科での受診(検査)\nなしでコンタクトレンズをすぐ買えるという旧大阪駅前店のビジネスモデルによる 利便性を,文章を若干省略しつつそのまま記載したものにすぎず,そこに個性が現 れているということはできない上に,強調したい部分に着色等したり,「!」を付し たりするなどして強調することもありふれた表現方法にすぎない。以上より,上記\n1)に創作性があるとは認められない。 また,上記2)はマトリックスの表形式にすることによって,旧大阪駅前店と他の\n店舗や他の販売方法との違いを分かりやすく表現したものである。確かに,表\現方 法としては文章で伝えるなどの別の方法が存することは原告主張のとおりであるが, 本件チラシは販売宣伝のために作成されたものであるから,その性質上,表現が記\n載されるスペースは限られ,また見た者が一目で認識,理解し得るような表現をす\nべきことも求められるから,表現方法の選択の幅はそれほど広いとは認められない。\nそして,文字で表現しようと思えばできる事項を表\形式にまとめることは通常行わ れる手法であり(例えば,甲5の1枚目の料金表,甲23の1頁目の略歴の表\,乙 12の表,反訴状と題する書面の15頁の表\,反訴状訂正申立書の1ないし2頁の\n表参照),表\形式で比較するに当たり,縦の欄に旧大阪駅前店と他の店舗や他の販売方法を並べ,横の欄に複数の事項を列記し,マトリックス形式でまとめるというの も,ありふれた手法にすぎない(例えば,甲11,14,乙13及び14の表,反\n訴状と題する書面の12ないし13頁の表2つ参照)。そしてまた,ここで比較の対\n象としている事項の選択も,眼科での受診(検査)を不要とし,店舗に来店して購 入するという旧大阪駅前店でのビジネスモデルから自ずと導き出されるものばかり である。以上より,上記2)に創作性があるとは認められない。 さらに,上記3)の説明文言は,旧大阪駅前店では眼科での受診(検査)なしでコ ンタクトレンズを購入することができる理由を文章で説明したもので,その内容は 法規の内容や運用を説明した上で,旧大阪駅前店では,顧客の経済的・時間的な負 担の観点から,販売時に処方箋の有無を前提としていないことを説明したものにすぎない。これは上記のビジネスモデルの客観的な背景や方針をそのまま文章で記載 したものにすぎず,文章表現自体に特段の工夫があるとはいえない上,その記載方\n法も相当の文字数を使用して,しかも小さな文字で記載したものにすぎないから, その表現方法に何らかの工夫がみられるわけでもない。以上より,上記3)に創作性 があるとは認められない。 以上より,上記1)ないし3)の各記載について,創作性は認められない。
ウ 以上の点につき原告は,提携眼科を設けないでコンタクトレンズ販売店 をオープンさせるというのは,かなり思い切った試みであったとか,検査なしでコ ンタクトレンズを購入できる理由を書いた説明文言は適法性を支える要素となって いるなどと主張しているが,旧大阪駅前店におけるビジネスモデル自体が著作権に よる保護の対象になるわけではなく,そのビジネスモデルを表現した本件チラシに\nおける各表現方法自体がありふれたものにすぎないことなどは,上記認定・判示の\nとおりである。したがって,原告の上記主張によって,上記判断は左右されない。
(3) 本件チラシの各表現の組合せによる著作物性
原告は上記(2)の1)ないし3)等の組合せに著作物性が認められるべきであるとも 主張している。 確かに,上記1)ないし3)は,眼科での受診(検査)を不要とし,コンタクトレン ズをすぐ買えるという旧大阪駅前店でのビジネスモデルを強調するために,それが可能な理由等を小さな文字で説明する(上記3))とともに,当該ビジネスモデルに よって不要となる事項を文字(単語)で抽出し,その上に「×」を付すなどしてキ ャッチフレーズを用いたり(上記1)),マトリックスの表形式で他の店舗や他の販売\n方法と比較したりした(上記2))もので,それらを組み合わせることによって当該 ビジネスモデルを強調し,読み手に分かりやすく説明しようとしたものということ はできる。しかし,何かを強調し,分かりやすく伝えるために,説明文とキャッチ フレーズと表形式のものを組み合わせることそれ自体は,特徴的な手法とは認めら\nれないから,上記(2)で判示したとおり上記1)ないし3)の各表現に創作性が認められ\nないことを踏まえると,これらの組合せ自体にも創作性は認められない。 なお,本件チラシでは,さらに視力検査をしている男の子のイラストが組み合わ されているが,原告はイラスト自体の著作物性を主張するものではない上,広告宣 伝において適宜関連するイラストを配することもありふれた表現方法にすぎないか\nら,このイラストと組み合わせることによって,創作性が基礎付けられるとはいえ ない。 また,原告は当初,被告チラシの各商品の配列等が本件チラシとほとんど同一で あることを主張していた。しかし,本件チラシにおいては商品の写真を掲げつつ, その下側に商品名や値段等を記載し,適宜商品の説明やアピールポイント等を付加 しているところ,そのような各商品の配列等は,コンタクトレンズ販売店の広告と してありふれたものであると認められるから(乙1ないし6),創作性は認められず,原告の上記主張によって本件チラシの著作物性は基礎付けられない。
(4) 以上より,本件チラシに著作物性は認められないから,その余の争点につ いて判断するまでもなく,被告の行為に著作権・著作者人格権侵害が成立するとは いえない。したがって,被告の著作権・著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害 賠償請求には理由がない。

◆判決本文

原告、被告のチラシはこちらです。

◆チラシ

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平成30(ワ)6943  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年12月26日  東京地方裁判所(29部)

手書きの文章をデータ入力するソフトウェアのマニュアルについて、個性があらわれておらず、著作物ではないと判断されました。
 著作物は,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又\nは音楽の範囲に属するものをいう(著作権法2条1項1号)ところ,創作的に表現さ\nれたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではな く,作成者の何らかの個性が表現されたもので足りるというべきであるが,他方,文\n章自体がごく短く,又は表現上制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現\nが平凡かつありふれたものである場合には,作成者の個性が表現されたものとはいえ\nないから,創作的な表現であるということはできない。\n
イ これを本件についてみるに,前記第2の2前提事実(2)及び前記(1)に認定したと おり,本件マニュアルは,本件システムの機能や操作方法の説明を目的として作成さ\nれたものであり,その作成目的に従い,本件コメントは,各頁に表示された本件シス\nテムの画面の内容を説明し,同画面に関連する本件システムの機能を説明し,又は同\n画面に関連する本件システムの操作といった客観的事実を説明することを目的とし て作成されており,その性質により,機能や操作方法を分かりやすく,一般的に用い\nられるありふれた表現で示すことが求められることから,表\現の選択の幅は狭いもの である。そして,本件コメントでは,本件システムの機能等を説明するためにコンピ\nュータに関する用語が選択されているものの,当該説明において他の表現を用いるこ\nとは想定し難く,また,その他の表現も操作等を説明するものとして特徴的な言い回\nしが存するともいえない。 そうすると,本件コメントに原告の個性が表現されているとはいえないのであって,\n本件マニュアルに著作物性があるということはできない。これに反する原告の主張は 採用することができない。

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平成28(ワ)6539  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 平成30年10月18日  大阪地方裁判所

 ゴミ箱について、意匠権侵害、著作権侵害、不競法違反、不法行為などを主張しました。裁判所は、意匠権侵害については認め(被告自認)、差止・損害賠償を認めました。ただ、その他に請求は棄却しました。
 被告ごみ箱の意匠は本件意匠に類似する(争いがない)から,被告ごみ箱を販売 する行為については,本件意匠権を侵害する行為である。
・・・
被告ごみ箱の形態が原告ごみ箱のそれと実質的に同一であり(争いがない),こ の形態同一性は依拠の事実も推認させるところ,この推認を覆す事情は認められな いから,被告ごみ箱は原告ごみ箱の形態を模倣した商品であると認められる。した がって,被告が平成27年1月31日までに被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ 箱販売1)については,不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為に当たる。 他方,被告が同年2月1日以降に被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ箱販売2及 び3)については,原告ごみ箱が最初に販売された日から3年が経過しており,同 号所定の不正競争行為に当たらない(同法19条1項5号イ)。
上記(1)イのとおり,被告が平成27年2月1日から同年6月14日まで の間に被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ箱販売2)については,不正競争行為 に当たらないし,本件意匠権侵害について過失があったとは認められないところ, 原告は,被告ごみ箱販売2については公正な自由競争秩序を著しく害するものであ るから,一般不法行為を構成すると主張する。\nしかし,現行法上,創作されたデザインの利用に関しては,著作権法, 意匠法及び不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律がその排他的な使用権等の 及ぶ範囲,限界を明確にしていることに鑑みると,創作されたデザインの利用行為 は,各法律が規律の対象とする創作物の利用による利益とは異なる法的に保護され た利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではない\nと解するのが相当である。 したがって,原告の主張が,被告が原告ごみ箱の商品形態を模倣した被告ごみ箱 を販売したことが不法行為を構成するという趣旨であれば,不正競争防止法で保護\nされた利益と同様の保護利益が侵害された旨を主張しているにすぎないから,採用 することはできない。
ウ また,これと異なり,原告の主張が,被告が被告ごみ箱を販売すること によって原告の原告ごみ箱に係る営業が妨害され,その営業上の利益が侵害された という趣旨であれば,上記の知的財産権関係の各法律が規律の対象とする創作物の 利用による利益とは異なる法的に保護された利益を主張するものであるということ ができる。しかし,我が国では憲法上営業の自由が保障され,各人が自由競争原理 の下で営業活動を行うことが保障されていることからすると,他人の営業上の行為 によって自己の営業上の利益が害されたことをもって,直ちに不法行為上違法と評 価するのは相当ではなく,他人の行為が,殊更に相手方に損害を与えることのみを 目的としてなされた場合のように,自由競争の範囲を逸脱し,営業の自由を濫用し たものといえるような特段の事情が認められる場合に限り,違法性を有するとして 不法行為の成立が認められると解するのが相当である。 そして,本件では,原告の主張を前提としても上記特段の事情があるとは認めら れない。
・・・
被告は,上記(1)アのとおり,平成27年10月8日頃,原告から,被告ごみ箱を 輸入,販売する行為が本件意匠権を侵害するとの指摘を受けたことから,同月22 日付けで,被告に対し,被告ごみ箱を販売する行為は本件意匠権を侵害する可能性\nがあると判断して直ちに販売を中止した旨回答した(甲5)だけでなく,現に販売 を中止し,本件訴訟においても被告ごみ箱を販売する行為が本件意匠権を侵害する ことになることを争っていない(弁論の全趣旨)。したがって,被告がさらに被告 ごみ箱を輸入するおそれは認められず,また,被告は中国の業者から被告ごみ箱を 輸入して販売しているにすぎない(乙19)から,被告ごみ箱を自ら製造するおそ れも認められない。 しかし,被告は,被告ごみ箱を平成26年7月に合計3024個輸入し(乙1 6),それを平成27年10月22日の販売中止までに合計774個販売した(乙 10)と認められるから,多数の在庫を保有していると推認されるところ,被告が それら在庫を廃棄したことをうかがわせる証拠はない。そうすると,被告は,現在 も被告ごみ箱の在庫を保有していると考えざるを得ず,そうである以上,被告が被 告ごみ箱を販売するおそれを否定することはできない。したがって,被告ごみ箱の 差止請求については,その販売及び広告宣伝の差止めを求める限度で理由がある。
・・・
a 被告の過失ある本件意匠権侵害行為の期間は,被告ごみ箱販売1に 係る平成27年6月15日から同年10月21日までと認められるところ,被告ご み箱の単位数量当たりの仕入原価が205.543円であることは当事者間に争い がなく,この期間の被告による被告ごみ箱の合計販売数量は前記のとおり666個 と認められる。そして,被告がこの期間に被告ごみ箱を666個販売して得た売上 高が16万0380円であること(乙11)に照らせば,被告ごみ箱の販売の単位 数量当たりの売上高は240.811円(小数点第4位以下四捨五入)である。した がって,被告が被告ごみ箱を666個販売して得た利益は,2万3488円(1円 未満四捨五入)であると認められる。
(240.811−205.543)×666≒23,488
そうすると,2万3488円が意匠権者である原告の受けた損害の額と推定され るところ,上記推定を覆滅する事由に関する主張,立証はないから,原告の損害額 は,2万3488円であると認められる。
b これに対し,原告は,被告の平成27年7月及び同年10月におけ るインテリア計画メガマックス千葉NT店に対する販売については,販売額が仕入 原価を下回っており,独占禁止法第2条第9項に基づく不公正な取引方法第6項に 規定する不当廉売に当たるから,被告ごみ箱の販売の単位数量当たりの売上高を算 定するに当たっては,上記販売における売上額に基づくべきではなく,平成26年 8月における販売の売上額に基づくべきである(これに従えば,単位数量当たりの 売上高は540円となる。)と主張する。 しかし,販売額が仕入原価を下回るからといって直ちに独占禁止法が禁止する不 当廉売に当たるわけではない上,意匠法39条2項は,侵害者が実際に得た利益の 額をもって意匠権者の損害の額と推定する規定であるから,侵害者が原価以下で販 売した場合でも,それが実質的に見て侵害物の廃棄処分と同視し得るといった事情 のない限り,実際の販売額に基づいて侵害者の利益を算定すべきものである(意匠 権者がそれにとどまらない損害額の賠償を求めるためには,同条1項による損害額 を主張立証する道が用意されている。)。そして,上記で原告が指摘するインテリ ア計画メガマックス千葉NT店に対する販売のうち平成27年7月のものについて は,被告が原告から通知書(甲4)を受領する前の時期であるから,通常の取引行 為によるものと見るべきであり,その販売単価と同年10月の販売単価は同額であ る(甲10)から,それらの販売を実質的に見て侵害物の廃棄処分と同視すること はできない。 また,原告が被告ごみ箱の販売の単位数量当たりの売上高を算定するに当たって 基礎とすべきであるという平成26年10月における被告の販売(被告ごみ箱販売 1における販売)については,上記(1)イのとおり,被告が不法行為(本件意匠権侵 害)に基づく損害賠償責任を負うものではない。

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平成27(ワ)2570  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年9月20日  大阪地方裁判所

 フラダンスの振り付けについて、一部については創作性が認められました。
 これらのフラダンスの特徴からすると,特定の楽曲の振付けにおいて, 各歌詞に対応する箇所で,当該歌詞から想定されるハンドモーションがとられてい るにすぎない場合には,既定のハンドモーションを歌詞に合わせて当てはめたにす ぎないから,その箇所の振付けを作者の個性の表れと認めることはできない。\nまた,フラダンスのハンドモーションが歌詞を表現するものであることからする\nと,ある歌詞部分の振付けについて,既定のハンドモーションどおりの動作がとら れていない場合や,決まったハンドモーションがない場合であっても,同じ楽曲又 は他の楽曲での同様の歌詞部分について他の振付けでとられている動作と同じもの である場合には,同様の歌詞の表現として同様の振付けがされた例が他にあるので\nあるから,当該歌詞の表現として同様の動作をとることについて,作者の個性が表\ れていると認めることはできない。 さらに,ある歌詞部分の振付けが,既定のハンドモーションや他の類例と差異が あるものであっても,それらとの差異が動作の細かな部分や目立たない部分での差 異にすぎない場合には,観衆から見た踊りの印象への影響が小さい上,他の振付け との境界も明確でないから,そのような差異をもって作者の個性の表れと認めるこ\nとは相当でない。また,既定のハンドモーションや他の類例との差異が,例えば動 作を行うのが片手か両手かとか,左右いずれの手で行うかなど,ありふれた変更に すぎない場合にも,それを作者の個性の表れと認めることはできない。\nもっとも,一つの歌詞に対応するハンドモーションや類例の動作が複数存する場 合には,その中から特定の動作を選択して振付けを作ることになり,歌詞部分ごと にそのような選択が累積した結果,踊り全体のハンドモーションの組合せが,他の 類例に見られないものとなる場合もあり得る。そして,フラダンスの作者は,前後 のつながりや身体動作のメリハリ,流麗さ等の舞踊的効果を考慮して,各動作の組 合せを工夫すると考えられる。しかし,その場合であっても,それらのハンドモー ションが既存の限られたものと同一であるか又は有意な差異がなく,その意味でそ れらの限られた中から選択されたにすぎないと評価し得る場合には,その選択の組 合せを作者の個性の表れと認めることはできないし,配列についても,歌詞の順に\nよるのであるから,同様に作者の個性の表れと認めることはできない。\n
エ 他方,上記で述べたのと異なり,ある歌詞に対応する振付けの動作が, 歌詞から想定される既定のハンドモーションでも,他の類例に見られるものでも, それらと有意な差異がないものでもない場合には,その動作は,当該歌詞部分の振 付けの動作として,当該振付けに独自のものであるか又は既存の動作に有意なアレ ンジを加えたものいうことができるから,作者の個性が表れていると認めるのが相\n当である。 もっとも,そのような動作も,フラダンス一般の振付けの動作として,さらには 舞踊一般の振付けの動作として見れば,ありふれたものである場合もあり得る。そ して,被告は,そのような場合にはその動作はありふれたものであると主張する。 しかし,フラダンスのハンドモーションが歌詞を表現するものであることからする\nと,たとえ動作自体はありふれたものであったとしても,それを当該歌詞の箇所に 振り付けることが他に見られないのであれば,当該歌詞の表現として作者の個性が\n表れていると認めるのが相当であり,このように解しても,特定の楽曲の特定の歌\n詞を離れて動作自体に作者の個性を認めるものではないから,個性の発現と認める 範囲が不当に拡がることはないと考えられる。
オ ところで,フラダンスのハンドモーションが歌詞を表現するものである\nことからすると,歌詞に動作を振り付けるに当たっては,歌詞の意味を解釈するこ とが前提になり,普通は言葉の通常の意味に従って解釈すると思われるが,作者に よっては,歌詞に言葉の通常の意味を離れた独自の解釈を施した上で振付けの動作 を作ることもあり得る。そして,原告は,その場合には解釈の独自性自体に作者の 個性を認めるべきであると主張する趣旨のように思われる。しかし,著作権法は具 体的な表現の創作性を保護するものであるから,解釈が独自であっても,その結果\nとしての具体的な振付けの動作が上記ウで述べたようなものである場合には,やは りその振付けの動作を作者の個性の表れと認めることはできない。\n他方,被告は,たとえ歌詞の解釈が独自であり,そのために振付けの動作が他と 異なるものとなっているとしても,当該解釈の下では当該振付けとすることがあり ふれている場合には,当該振付けを著作権法の保護の対象とすることは結局楽曲の 歌詞の解釈を保護の対象とすることにほかならず許されないと主張する。しかし, 歌詞の解釈が独自であり,そのために振付けの動作が他と異なるものとなっている 場合には,そのような振付けの動作に至る契機が他の作者には存しないのであるか ら,当該歌詞部分に当該動作を振り付けたことについて,作者の個性が表れている\nと認めるのが相当である。そして,このように解しても,個性の表れと認めるのは\n飽くまで具体的表現である振付けの動作であって,同様の解釈の下に他の動作を振\nり付けることは妨げられないのであるから,解釈自体を独占させることにはならな い。 これに対し,歌詞の解釈が言葉の通常の意味からは外れるものの,同様の解釈の 下に動作を振り付けている例が他に見られる場合には,そのような解釈の下に動作 を振り付ける契機は他の作者にもあったのであるから,当該解釈の下では当該振付 けとすることがありふれている場合には,当該歌詞部分に当該動作を振り付けたこ とについて,作者の個性が表れていると認めることはできない。\n
カ 以上のハンドモーションに対し,ステップについては,上記のとおり典 型的なものが存在しており,入門書でも,覚えたら自由に組み合わせて自分のスタ イルを作ることができるとされているとおり,これによって歌詞を表現するもので\nもないから,曲想や舞踊的効果を考慮して適宜選択して組み合わせるものと考えら れ,その選択の幅もさして広いものではない。そうすると,ステップについては, 基本的にありふれた選択と組合せにすぎないというべきであり,そこに作者の個性 が表れていると認めることはできない。しかし,ステップが既存のものと顕著に異\nなる新規なものである場合には,ステップ自体の表現に作者の個性が表\れていると 認めるべきである(なお,ステップが何らかの点で既存のものと差異があるという だけで作者の個性を認めると,僅かに異なるだけで個性が認められるステップが乱 立することになり,フラダンスの上演に支障を生じかねないから,ステップ自体に 作者の個性を認めるためには,既存のものと顕著に異なることを要すると解するの が相当である。)。また,ハンドモーションにステップを組み合わせることにより, 歌詞の表現を顕著に増幅したり,舞踊的効果を顕著に高めたりしていると認められ\nる場合には,ハンドモーションとステップを一体のものとして,当該振付けの動作 に作者の個性が表れていると認めるのが相当である。\n
キ 以上のようにして,特定の歌詞部分の振付けの動作に作者の個性が表れ\nているとしても,それらの歌詞部分の長さは長くても数秒間程度のものにすぎず, そのような一瞬の動作のみで舞踊が成立するものではないから,被告が主張すると おり,特定の歌詞部分の振付けの動作に個別に舞踊の著作物性を認めることはでき ない。しかし,楽曲の振付けとしてのフラダンスは,そのような作者の個性が表れ\nている部分やそうとは認められない部分が相俟った一連の流れとして成立するもの であるから,そのようなひとまとまりとしての動作の流れを対象とする場合には, 舞踊として成立するものであり,その中で,作者の個性が表れている部分が一定程\n度にわたる場合には,そのひとまとまりの流れの全体について舞踊の著作物性を認 めるのが相当である。そして,本件では,原告は,楽曲に対する振付けの全体とし ての著作物性を主張しているから,以上のことを振付け全体を対象として検討すべ きである。 そしてまた,このような見地からすれば,フラダンスに舞踊の著作物性が認めら れる場合に,その侵害が認められるためには,侵害対象とされたひとまとまりの上 演内容に,作者の個性が認められる特定の歌詞対応部分の振付けの動作が含まれる ことが必要なことは当然であるが,それだけでは足りず,作者の個性が表れている\nとはいえない部分も含めて,当該ひとまとまりの上演内容について,当該フラダン スの一連の流れの動作たる舞踊としての特徴が感得されることを要すると解するの が相当である。
・・・
本件振付け6では,大きく分けて,1)両手の掌を下に返して右肘を 少し曲げ,そのまま両腕を下ろしながら胸の高さまで持って行き,胸の前で体に沿 うように両腕を交差させて両手の掌を内側に向け,一連の動作は右に270度ター ンするステップの中で行われる,2)次に,ターンにより左斜め後ろを向いたまま, 両腕を伸ばしきるまで下ろしながら左斜め後ろへ左足右足を交互に2歩ずつ前進す る,という2つのパートからなる動作をしている。 まず,1)の動作についてみると,原告は,右回りに回転しながら両腕を下ろし胸 の前で交差させることで,暗い夜が続き,暗く寒くなっていることを表していると\n主張する。この点,甲25の他の振付け及び乙12の他の振付けはいずれも,手の 動きについては本件振付け6と同様の動きをしているものの,その際にターンする ものはない。ターンは通常のステップの一種ではある(乙5のスピンターン)が, 「夜」や「寒い」といった静的な歌詞からターンすることはが通常想定されない上, 両腕を降ろしながらターンすることによって体全体の躍動感を高めていることから, なお有意な差異があるというべきである。
これに対し,被告は,手の動作が既存の ハンドモーションであり,足の動作が既存のステップであり,これらを組み合わせ た動作はありふれたものであると主張するが,上記のとおり採用できない。 次に,2)の動作について見ると,原告は,聴衆と反対(後ろ)に向かって歩いて いくことで彼が孤独であることを表し,両腕を下ろすことで抱きしめる者がおらず\n一人で寒い夜を過ごしていることを表していると主張する。そして,この動作は,\nここでの歌詞から想定されるものでない上,これと同様の動作を行っている類例は 認められないから,本件振付け6独自のものであると認められる。これに対し,被 告は,このような動作があらゆる舞踊においてありふれた動作であることを指摘す るが,こうした被告の主張が採用できないことは,上記(1)エのとおりである。
c したがって,ここの歌詞に対応する振付けは,原告の個性が表現さ\nれていると評価できる。

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平成28(ワ)32742  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月19日  東京地方裁判所(47部)

 いろいろ争点はありますが、写真について、著作物性が否定されました。ただ、文章について複製権・翻案権侵害が認められました。損害額は、販売不可事情を考慮して、114条1項(原告単価利益*被告販売数)の7割と認定されました。
 制作工程写真は,別紙「制作工程写真目録」記載のとおり,故一竹によ る「辻が花染」の制作工程の各場面を撮影したものであるところ,これら 制作工程写真の目的は,その性質上,いずれも制作工程の一場面を忠実に 撮影することにあり,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光\n線との関係等といった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとな\nらざるを得ず,誰が撮影しても同じように撮影されるべきものであって, 撮影者の個性が表れないものというべきである。したがって,制作工程写\n真は,いずれも著作物とは認められない。これに反する原告らの主張は採 用できない。
イ 美術館写真について
美術館写真は,別紙「美術館写真目録」記載のとおり,一竹美術館の外 観又は内部を撮影したものであるところ,これら美術館写真の目的は,そ の性質上,いずれも一竹美術館の外観又は内部を忠実に撮影することにあ り,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光線との関係等とい\nった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとならざるを得ず,誰\nが撮影しても同じように撮影されるべきものであって,撮影者の個性が表\nれないものである。したがって,美術館写真は,いずれも著作物とは認め られない。これに反する原告らの主張は採用できない。
(2) 制作工程文章の著作物性について
制作工程文章は,別紙「制作工程文章目録」記載のとおり,「辻が花染」 の各制作工程を説明したものである。その目的は,各制作工程を説明するこ とにあるため,表現上一定の制約はあるものの,制作工程文章が,同様に「辻\nが花染」の制作工程について説明した故一竹作成の文章(甲41)とも異な っていることに照らしても,各制作工程文章の具体的表現は,その作成者の\n経験を踏まえた独自のものとなっており,作成者の個性が表現されていると\nいえるから,制作工程文章は全体として創作性があり,著作物と認められる。 これに反する被告の主張は採用できない。
(3) 旧HPコンテンツの著作物性について
旧HPコンテンツは,別紙「旧HPコンテンツ目録」記載のとおりであり, 旧HPコンテンツ1は「辻が花染」の歴史的説明,旧HPコンテンツ2は故 一竹と「辻が花染」との関わり,旧HPコンテンツ3はフランス芸術文化勲 章シュヴァリエ章勲章メッセージの和訳,旧HPコンテンツ4はスミソニア\nン国立自然史博物館からの感謝状の和訳である。旧HPコンテンツ1及び2 はいずれも歴史的事実に関する記述ではあるものの,その事実の取捨選択, 表現の仕方には様々なものがあり得,その具体的表\現には筆者の個性が表れ\nているといえるから,創作性があり,著作物と認められる。また,旧HPコ ンテンツ3及び4はいずれも仏語ないし英語の翻訳であるが,翻訳の表現に\nは幅があり,用語の選択や訳し方等その具体的表現に翻訳者の個性が表\れて いるといえるから,創作性があり,著作物と認められる。これに反する被告 の主張は採用できない。
複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再 製することをいうところ(著作権法2条1項15号参照),著作物の複製と は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現\nに修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現する\nことなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が\n既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作\n成する行為をいうものと解すべきである。また,翻案とは,既存の著作物に 依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\ 現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現する\nことにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接\n感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解すべきであ る(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷 判決・民集55巻4号837頁参照)。 被告作品集130−131頁(甲9)と制作工程文章を別紙「原被告作品 対比表」記載1のとおり比較対照すると,被告作品集130−131頁の制\n作工程に関する各文章は,制作工程文章1ないし7及び9の各文章と全く同 一か,又はほとんど同一であり,一部改変され,相違点はあるものの,全体 として制作工程文章の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。\nよって,被告は被告作品集130−131頁において制作工程文章1ないし 7及び9を複製ないし翻案したものと認められ,複製権ないし翻案権を侵害 する。そして,上記改変は著作者の意に反する改変といえるから,同一性保 持権を侵害する。 これに対して,被告は,両各文章は創作性のない部分について同一性を有 するにすぎず,複製にも翻案にも当たらないと主張するが,上記のとおり, 制作工程文章の創作的部分において同一性が認められるから,被告の主張は 採用できない。
原告らは,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集の利益額 に基づき114条1項の適用があると主張するのに対し,被告はこれを争 うため,以下検討する。
(ア) 原告作品集の販売主体及び原告らの販売能力
原告作品集の奥付には「(C)1998 (株)一竹辻が花」と記載され,原告作 品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおいて販売されていることが認 められる(甲8,29)ところ,訴外一竹辻が花(昭和59年5月8日 に「株式会社オピューレンス」から商号変更)は平成22年まで原告A が代表者を務めていた会社であり(甲50の1及び2),原告工房も含\nめて実質的には原告Aらの経営によるものと認められ,その販売主体は 実質的には原告らとみることができる。また,原告作品集の制作には, 故一竹を引き継いで「辻が花染」を制作する原告Aの関与が大きいもの と考えられることも併せ考慮すれば,原告らには原告作品集の販売能力\nがあると認められる。 これに対し,被告は,そもそも原告らが原告作品集を販売しておらず, 販売能力がないから,被告作品集への114条1項の適用の基礎を欠く\nと主張するが,上記説示に照らして採用できない(なお,被告は,原告 作品集の奥付に「制作(株)便利堂」と記載されていること(甲8)も 指摘するが,この点は販売能力とは関係がない。)。
(イ) 原告作品集と被告作品集の代替性
原告作品集と被告作品集は,その大部分において,着物作品(部分を 含む。)を1頁に大きく配置して紹介するとともに,観賞の対象とする ものであり,そのほかの部分においても,故一竹の略歴,制作工程の説 明,美術館の紹介が記載されており,内容は類似するものと認められる (甲9,51)。また,上記内容の共通性に照らして,着物作品の観賞 を主としつつ,故一竹と「辻が花染」について理解を深めるという利用 目的・利用態様も基本的には同一であると認められる。そうすると,後 記のとおり,販売ルートの違いはあるものの,両作品集には代替性が認 められる。被告は,内容,利用目的・利用態様及び販売ルートの相違か ら,原告作品集と被告作品集には代替性がないと主張するが,上記説示 に照らして採用できない。
(ウ) 以上からすれば,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集 の利益額に基づき著作権法114条1項の適用があるというべきである。
イ 原告らが販売することができないとする事情(推定覆滅事情)
被告は,販売市場の相違,被告の営業努力,被告作品集の顧客吸引力に より,被告作品集の譲渡数量の全数について販売することができないとす る事情があると主張する。 そこで検討するに,原告作品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおい てインターネット上で販売されている(甲29)のに対し,被告作品集は 一竹美術館のショップ内で販売されており(前記前提事実(4)ア),顧客層 に一定の違いがあると考えられること,また,被告作品集は,美術館のシ ョップにおいてまさに一竹作品等を観賞した者に対して販売されているこ とにより,販売態様の異なる原告作品集とは顧客誘引力に違いがあると考 えられること,以上の事情を踏まえると,被告作品集の30%については, 原告らが販売することができないとする事情があったと認めるのが相当で ある。

◆判決本文

問題となった著作物は以下です。

◆別紙1

◆別紙2

◆別紙3

◆別紙4

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平成29(ネ)10103等  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ラダー図による表記したプログラムについて創作性無しと判断されました。
 ア 著作権法2条1項1号所定の「創作的に表現したもの」というためには,\n作成者の何らかの個性が表れている必要があり,表\現方法がありふれている場合な ど,作成者の個性が何ら表れていない場合は,「創作的に表\現したもの」というこ とはできないと解するのが相当である。
ラダー図は,電機の配線図を模式化したシーケンス図をさらに模式化したもので あるから,ラダー図は配線図に対応し,配線図が決まれば,ラダー図の内容も決ま ることとなり(乙ロ1),したがって,その表現方法の制約は大きい。ラダー図に\nおいては,接点等の順番やリレー回路の使用の仕方を変更することにより,理論的 には,同一の内容のものを無数の方法により表現できるが,作成者自身にとってそ\nの内容を把握しやすいものとし,また,作成者以外の者もその内容を容易に把握で きるようにするには,ラダー図全体を簡潔なものとし,また,接点等の順番やリレ ー回路の使用方法について一定の規則性を持たせる必要があり,実際のラダー図の 作成においては,ラダー図がいたずらに冗長なものとならないようにし,また,接 点等の順番やリレー回路の使用方法も規則性を持たせているのが通常である(乙ロ 1,3)。
イ 控訴人プログラム1)は,控訴人19年車両の車両制御を行うためのラダ ー図であるが,共通ブロックの各ブロックは,いずれも,各接点や回路等の記号を 規則に従って使用して,当該命令に係る条件と出力とを簡潔に記載しているもので あり,また,接点の順番やリレー回路の使用方法も一般的なものであると考えられ る。
すなわち,例えば,ブロックY09は,リモコンモード,タッチパネルモード及 びメンテナンスモードという三つのモードのモジュールを開始する条件を規定した ブロックであるところ,同ブロックでは,一つのスイッチに上記三つのモードが対 応し,モードごとの動作を実行するため,上記各モードに応じて二つの接点からな るAND回路を設け,スイッチに係るa接点と各AND回路をAND回路で接続し ているが,このような回路の描き方は一般的であると考えられる。また,同ブロッ クでは,上段にリモコンモード,中段にタッチパネルモード,下段にメンテナンス モードを記載しているが,控訴人プログラム1)の他のブロック(Y11,Y23, Y24,Y25,Y26)の記載から明らかなように,控訴人プログラム1)では, リモコンモード(RM),タッチパネルモード(TP),メンテナンスモード(M M)の順番で記載されている(なお,これらにリモコンオンリーモード(RO)が 加わる場合は,同モードが一番先に記載される。)から,ブロックY09において も,それらの順番と同じ順番にしたものであり,また,メンテナンスモードを最後 に配置した点も,同モードがメンテナンス時に使用される特殊なモードであること を考慮すると,一般的なものであると評価できる。さらに,「これだけ!シーケン ス制御」との題名の書籍に,「動作条件は一番左側」と記載されている(乙ロ3) ように,ラダー図においては,通常,動作条件となる接点は左側に記載されるもの と認められるところ,ブロックY09の上記各段の左側の接点は,各モードを開始 するための接点であり,同接点がONとなることを動作条件とするものであるから, 通常,上記左側の各接点は左側に記載され,これと右側の接点とを入れ替えるとい うことはしないというべきであり,したがって,上記各段における接点の順番も一 般的なものである。したがって,同ブロックの表現方法に作成者の個性が表\れてい るということはできない。
また,ブロックY17は,拡幅待機中であることを規定するブロックであるとこ ろ,拡幅待機中をONにする条件として,10個のb接点をすべてAND回路で接 続しているが,上記条件を表現する回路として,関係する接点を全てAND回路で\n接続することは一般的なものであると考えられる。また,上記各接点の順番も,リ モコンオンリーモード,リモコンモード,タッチパネルモード及びメンテナンスモ ードの順番にし,各モードごとに開の動作条件と閉の動作条件の順番としたもので あるところ,前記のとおり,上記各モードの順番は,他のブロックの順番と同じに したものであり,開の動作条件と閉の動作条件の順番も一般的なものである。した がって,同ブロックの表現方法に作成者の個性が表\れているということはできない。 さらに,ブロックY25は,ポップアップフロアを上昇させる動作を実行するた めのブロックであるが,拡幅フロアの上昇又は下降に関しては,拡幅フロア上昇に 関する接点及び拡幅フロア下降に関する接点がそれぞれ四つずつ存在するという状 況下において,同ブロックでは,拡幅フロア上昇に関する接点をa接点,拡幅フロ ア下降に関する接点をb接点とした上で,四つのa接点及び四つのb接点をそれぞ れOR回路とし,これら二つのOR回路をAND回路で接続している。拡幅フロア の上昇と下降という相反する動作に関する接点が存在する場合において,目的とす る動作のスイッチが入り,目的に反する動作のスイッチが入っていないときに,目 的とする動作が実行されるために,目的とする動作の接点をa接点,これと反する 動作の接点をb接点としてAND回路で接続し,命令をONとする回路で表現する\nことは,a接点及びb接点の役割に照らすと,ありふれたものといえる。また,同 一の動作に関する接点が複数あり,目的とする動作の接点であるa接点のいずれか がONとなったときに目的とする動作が実行されるようにするため,それらの接点 をOR回路で表現することもありふれたものといえる。さらに,OR回路で接続さ\nれた四つの段においては,リモコンオンリーモード,リモコンモード,タッチパネ ルモード及びメンテナンスモードの順番としているが,前記のとおり,この順番は, 他のブロックの順番と同じにしたものである。ブロックY26は,ポップアップフ ロアを下降させる動作を実行するためのブロックであり,上記のブロックY25で 述べたのと同様のことをいうことができる。加えて,ブロックY25及びブロック Y26のAND回路で接続された各二つの列においては,上昇又は下降のa接点, 下降又は上昇のb接点の順番としているが,前記のとおり,ラダー図においては動 作条件となる接点は左側に記載されるところ,ブロックY25及びブロックY26 の各1列目は,「拡幅フロア上昇」又は「拡幅フロア下降」の動作条件となる接点 であると認められるから,通常,同ブロックのとおりの順番で接続され,1列目と 2列目を入れ替えるということはしないものということができる。したがって,こ れらのブロックの表現方法に作成者の個性が表\れているということはできない。

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1審はこちらです。

◆平成28(ワ)19080

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平成30(ネ)10009  損害賠償等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成30年6月7日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 不競法の商品形態模倣、著作権侵害などが争われました。知財高裁は、不競法については特徴部分は異なる形状であり、また、著作物性なしとして、1審の判断を維持しました。
 控訴人は,原告商品は,直針状の出口ノズルがフィーダ本体部の先端か ら突き出た形状で,配線チューブ等がフィーダ本体上部後端からまっすぐ に伸びている上,小型かつ軽量である点に特徴があるところ,被告各製品 もこの点において共通する形態及び構成を有していると主張する。\n この点につき検討するに,半田フィーダは,径の小さい半田(直径が1 ミリメートルに満たないものもある)を,半田付けしようとする位置に案 内するために用いられるものであるから,正確に位置決めをしたり,他の 機器との干渉を防いだりするために,供給する半田の出口に当たる出口ノ ズルを細長い直針状の形態とすることは,半田フィーダとしての機能を確\n保するために不可欠な形態というべきである。このことは,他社の半田フ ィーダが同様の形態を採用していることからも明らかである(乙11,1 2)。 また,出口ノズルに向けて半田を供給する際には,チューブ等の供給・ 支持部材と半田とが接触して,半田が曲がったり,摩擦による抵抗が生じ たりすることをできるだけ抑制し,安定して半田を供給する必要があると 考えられるところ,そのために,半田フィーダにおいて,半田の供給口に 当たる部材を出口ノズルの反対側の位置に出口ノズルに対してまっすぐに 取り付ける構成を採用することは,ごく自然な着想といえる。このことは,\n同様の構成を有する他社の半田フィーダが存在することによっても裏付け\nられているというべきである(乙12,15〜17)。 さらに,配線チューブがフィーダ本体上部後端からまっすぐに伸びてい る点についても,ある機器に何らかのチューブが取り付けられている場合 に,取り回し等の観点から複数のチューブをまとめて同方向に取り出すこ とは,他社の半田フィーダにおいても同様の構成が採用されていることが\n認められるように(乙15〜17),極めて容易に着想し得る一般的な構\n成というべきである。 なお,商品の重量そのものは,不競法2条4項が定める「商品の形態」 に当たるとはいえない。 以上によれば,控訴人が原告商品の特徴的形状であると主張する形態は, いずれも半田フィーダという商品が通常有する形態にすぎないというべき である。
・・・
著作権法上の美術の著作物として保護される ためには,仮にそれが産業用の利用を目的とするものであったとしても, 美的観点を全く捨象してしまうことは相当でなく,何らかの形で美的鑑賞 の対象となり得るような創作的特性を備えていなければならないというべ きである。 控訴人が主張するように,原告商品は,ステッピングモータの一部分が 飛び出している点を除き,出口ノズルから配線チューブ等に至るまで,各 構成が概ね直線状にコンパクトにまとめられた形態を有していることが認\nめられる。しかし,原告商品の外観からは,社会通念上,この機器を動作 させるために必要な部材を機能的観点に基づいて組み合わせたもの,すな\nわち技術的思想が表現されたものであるということ以上に,端整とか鋭敏,\n優雅といったような何かしらの審美的要素を見て取ることは困難であると いわざるを得ず,原告商品が美的鑑賞の対象となり得るような創作的特性 を備えているということはできない。

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◆平成27(ワ)33412

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平成27(ワ)21897等  著作権侵害行為差止等請求事件,損害賠償請求反訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月28日  東京地方裁判所

 データが入れられる前のデータベースシステムは、著作権法で保護されるデータベースではないと判断されました。
 原告は,原告が平成16年8月10日に完成させた同日版「eBASEserv er」は,1)合計22個の辞書がそれぞれ様々な辞書情報を備えており,データベ ースの体系的な構成の中で各データ項目と紐付けられて辞書網を構\成している点に 創作性が認められ,2)個々の辞書が,それ単独でも,体系的構成及び情報の選択に\nおいて創作性が認められるから,それ自体が,データベースの著作物と認められる べき旨主張する。 原告の主張によれば,「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事 業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデ\nータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることに\nよりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,この\nような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアであ\nる「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著 作権法2条1項10号の3)とは認められない。 原告は,「eBASEserver」に搭載されている辞書情報を「情報」と捉 え,この集合物をもって「データベース」と主張するものとも解されるが,原告の 主張によっても,これらの辞書ファイルは,商品情報の登録に際して,当該商品情 報のうち特定のデータ項目を入力する際に参照されるものにすぎないのであって, 辞書ファイルが備える個々の項目が,「電子計算機を用いて検索することができる ように体系的に構成」(著作権法2条1項10号の3)されていると認めることは\n困難である。 したがって,「eBASEserver」は,著作権法上の「データベース」に 当たるものとは認められないから,その創作性につき検討するまでもなく,データ ベースの著作物ということはできない。

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平成29(ワ)672等  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年3月29日  東京地方裁判所

 イラストが写真の翻案かがあらそわれました。写真の著作物性は認められましたが、翻案ではないと判断されました。
 写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),\n陰影の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合して なる一つの表現であり,そこに撮影者等の個性が何らかの形で表\れていれば 創作性が認められ,著作物に当たるというべきである。 (2) これを本件についてみると,本件写真素材は,別紙1のとおりであるとこ ろ,右手にコーヒーカップを持ち,やや左にうつむきながらコーヒーカップ を口元付近に保持している男性を被写体とし,被写体に左前面上方から光を 当てつつ焦点を合わせ,背景の一部に柱や植物を取り入れながら全体として 白っぽくぼかすことで,赤色基調のシャツを着た被写体人物が自然と強調さ れたカラー写真であり,被写体の配置や構図,被写体と光線の関係,色彩の配合,被写体と背景のコントラスト等の総合的な表\現において撮影者の個性が表れているものといえる。したがって,本件写真素材は上記の総合的表\現 を全体としてみれば創作性が認められ,著作物に当たる。 (3) これに対し,被告は,本件写真素材は,背景,照明・光量,色合いのいず れにおいても多くの類例がみられる平凡かつありふれた表現であり,創作性が存在しないため,著作物とは認められないと主張する。しかし,写真の創\n作性は,写真を構成する諸要素を総合して判断されるべきものであるところ,背景,照明・光量,色合い等の各要素において,それぞれ似たような例が存\n在するとしても,そのことは直ちに創作性を否定する理由とはならない。本 件写真素材の総合的表現を全体としてみればそこに創作性が認められることは前記(2)のとおりであるから,被告の主張は採用できない。 原告は,被告が本件写真素材を原告に無断でトレースし,小説同人誌の裏 表紙のイラストに使用して,当該小説同人誌を販売した行為は,原告の本件写真素材に係る著作権(複製権,翻案権及び譲渡権)を侵害していると主張\nする。
(2) 複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再 製することをいうところ(著作権法2条1項15号参照),著作物の複製と は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表\現することなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうものと解すべきである。また,翻案とは,既存の著作物に 依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\ 現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解すべきであ る(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷 判決・民集55巻4号837頁参照)。
(3) 本件イラストは,別紙2のとおりのものであり,A5版の小説同人誌の裏 表紙にある3つのイラストスペースのうちの一つにおいて,ある人物が持つ雑誌の裏表\紙として,2.6センチメートル四方のスペースに描かれている白黒のイラストであって,背景は無地の白ないし灰色となっており,薄い白 い線(雑誌を開いた際の歪みによって表紙に生じる反射光を表\現したもの) が人物の顔面中央部を縦断して加入され,また,文字も加入されているもの である。
(4) 前記1(2)で説示した本件写真素材の創作性を踏まえれば,本件写真素材 の表現上の本質的特徴は,被写体の配置や構\図,被写体と光線の関係,色彩 の配合,被写体と背景のコントラスト等の総合的な表現に認められる。一方,前記前提事実(3)のとおり,本件イラストは本件写真素材に依拠して作成さ れているものの,本件イラストと本件写真素材を比較対照すると,両者が共 通するのは,右手にコーヒーカップを持って口元付近に保持している被写体 の男性の,右手及びコーヒーカップを含む頭部から胸部までの輪郭の部分の みであり,他方,本件イラストと本件写真素材の相違点としては,1)本件イ ラストはわずか2.6センチメートル四方のスペースに描かれているにすぎ ないこともあって,本件写真素材における被写体と光線の関係(被写体に左 前面上方から光を当てつつ焦点を合わせるなど)は表現されておらず,かえって,本件写真素材にはない薄い白い線(雑誌を開いた際の歪みによって表\紙に生じる反射光を表現したもの)が人物の顔面中央部を縦断して加入されている,2)本件イラストは白黒のイラストであることから,本件写真素材に おける色彩の配合は表現されていない,3)本件イラストはその背景が無地の 白ないし灰色となっており,本件写真素材における被写体と背景のコントラ スト(背景の一部に柱や植物を取り入れながら全体として白っぽくぼかすこ とで,赤色基調のシャツを着た被写体人物が自然と強調されているなど)は 表現されていない,4)本件イラストは上記のとおり小さなスペースに描かれ ていることから,頭髪も全体が黒く塗られ,本件写真素材における被写体の 頭髪の流れやそこへの光の当たり具合は再現されておらず,また,本件イラ ストには上記の薄い白い線が人物の顔面中央部を縦断して加入されているこ とから,鼻が完全に隠れ,口もほとんどが隠れており,本件写真素材におけ る被写体の鼻や口は再現されておらず,さらに,本件イラストでは本件写真 素材における被写体のシャツの柄も異なっていること等が認められる。これ らの事実を踏まえると,本件イラストは,本件写真素材の総合的表現全体における表\現上の本質的特徴(被写体と光線の関係,色彩の配合,被写体と背景のコントラスト等)を備えているとはいえず,本件イラストは,本件写真 素材の表現上の本質的な特徴を直接感得させるものとはいえない。
(5) したがって,本件イラストは,本件写真素材の複製にも翻案にも当たらず, 被告は本件写真素材に係る著作権を侵害したものとは認められない。なお, 原告は,譲渡権侵害も主張するが,本件イラストが本件写真素材の複製及び 翻案には当たらないため,本件イラストを掲載した小説同人誌を頒布しても 譲渡権の侵害とはならない。

◆判決本文

◆本件写真素材

◆本件イラスト

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平成27(ワ)21897等  著作権侵害行為差止等請求事件,損害賠償請求反訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月28日  東京地方裁判所

 データが蓄積される前のプログラムについては、データベースの著作物とは認められませんでした。
 原告は,原告が平成16年8月10日に完成させた同日版「eBASEserv er」は,1)合計22個の辞書がそれぞれ様々な辞書情報を備えており,データベ ースの体系的な構成の中で各データ項目と紐付けられて辞書網を構\成している点に 創作性が認められ,2)個々の辞書が,それ単独でも,体系的構成及び情報の選択に\nおいて創作性が認められるから,それ自体が,データベースの著作物と認められる べき旨主張する。 原告の主張によれば,「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事 業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデ\nータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることに\nよりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,この\nような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアであ\nる「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著 作権法2条1項10号の3)とは認められない。 原告は,「eBASEserver」に搭載されている辞書情報を「情報」と捉 え,この集合物をもって「データベース」と主張するものとも解されるが,原告の 主張によっても,これらの辞書ファイルは,商品情報の登録に際して,当該商品情 報のうち特定のデータ項目を入力する際に参照されるものにすぎないのであって, 辞書ファイルが備える個々の項目が,「電子計算機を用いて検索することができる ように体系的に構成」(著作権法2条1項10号の3)されていると認めることは\n困難である。 したがって,「eBASEserver」は,著作権法上の「データベース」に 当たるものとは認められないから,その創作性につき検討するまでもなく,データ ベースの著作物ということはできない。

◆判決本文

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平成28(ワ)23604  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成29年11月30日  東京地方裁判所

 お菓子などの商品パッケージデザインについて、改変については承諾があったと判断されました。
 上記(1)ア及びウの認定事実によれば,被告が原告に依頼したのは食品製造 会社等が商品の包装において使用するデザインであること,そのような包装 デザインについては,原告が被告に提出した後に被告が顧客である食品製造 会社等にデザインを提案するが,その後,顧客が被告に対して修正等の指示 を出すことがあり,その場合,被告は顧客の承諾等を得るまでデザインを修 正し,複数回の修正がされることも多いこと,原告は被告から包装デザイン の依頼を受けるようになる前から,デザイン会社から顧客に包装デザインが 提出された後に顧客の指示によりデザインの修正が必要となることがあるこ とやこうした場合に原告に連絡がなければ,原告以外の者が修正を行うこと になることを認識していたことを認めることができる。また,前記(1) 認定事実によれば,原告が被告に提出したデザインはその後被告が修正する ことができた。そうすると,原告が作成し被告に提出していた包装デザイン については,その提出後に顧客の指示等により修正が必要となることが当然 にあり得るというものであったのであり,かつ,原告は,このことを認識し, また,原告以外の者が上記デザインの修正をすることができることも認識し ていたといえる。他方,原告と被告間で,原告が被告にデザインを提出した 後の顧客の指示等による上記修正について,何らかの話がされたり,合意が されたりしたことを認めるに足りる証拠はない。 そして,前記(1)オの認定事実によれば,原告は,写真の使用権につき意識 していて,一般に著作権に関する権利関係が生じ得ることを理解していたこ とがうかがわれるところ,前記(1)エ,カ〜コの認定事実のとおり,原告は, 原告以外の者によって原告デザインに何らかの改変がされたことを認識して いながら,被告から依頼されて継続的に包装デザインを作成して被告に提出 し,更には被告に対して新たな仕事を依頼し,デザイン料の改定を求めるな どの要求はしたものの,改変について何らの異議を唱えず,又は,被告にお いてデザインを改変したことを明示的に承諾するなどしていた。原告が改変 を承諾していなかったにもかかわらず原告デザインの改変に対して被告に異 議を唱えることができなかった事情やデザインの改変を真意に反して承諾し なければならなかった事情を認めるに足りる証拠はない。 以上によれば,原告は,被告からの依頼に基づいて作成された原告デザイ ンにつき,被告による使用及び改変を当初から包括的に承諾していたと認め ることが相当である。
(3) これに対し,原告は,1)原告と被告の間で契約書を作成しておらず,注文 書,請求書等においても著作権に関する記載がないこと,2)デザイン料は1 点当たり1万5000円程度であって改変の許諾を前提とするものと考え難 いこと,3)原告はデザイン作成のたびに修正等がある場合は依頼をするよう に伝えていたこと,4)被告が原告の著作権を侵害した包装デザインを見つけ る都度,原告がこれを購入して写真撮影して証拠化していたこと,5)原告が 異議を述べなかったのは,早く納品するため,仕事の依頼を減らされた状況 において原告が被告との関係を悪化させないようにするためという事情によ ることを主張し,また,6)デザインの作成等の仕事を多数依頼することを条 件に承諾していたとの趣旨を供述し(原告本人〔22〜24〕),包括的な改 変の承諾を否定する。 上記1)については,著作権に関する承諾等は必ずしも文書によりされるも のとは限らないから,そうした記載がされた文書がなければ改変の承諾がな いと解することはできない。上記2)については,本件の証拠上,改変を前提 とする場合の通常のデザイン料が明らかでなく,原告の主張する評価を採用 し難い。上記3)については,前記(1)イ及びウの認定事実によれば,原告は, 被告にデザインの原案を提出した段階で修正等があれば連絡するよう伝えて いたものであって,顧客に対する提示案が固まるまでの間に修正等がある場 合にその作業を原告に依頼するよう求めていたにすぎないから,上記提示案 が固まった後の改変についても原告の承諾が必要であったと直ちに認めるこ とはできない。上記4)については,仮にそのとおりであるとしても,前記(1) エの認定事実によれば,原告以外の者による改変を平成25年8月〜9月頃 までに把握したのであるから,原告が改変を問題と考えていたのであれば, その証拠化後に何らかの異議を唱えるのが通常であるというべきであるとこ ろ,前記(1)エ〜コの認定事実のとおり,本件訴訟の提起に至るまで,原告は 改変について何らの異議を唱えていない。上記5)及び6)については,前記(1) エの認定事実によれば,平成25年8〜9月頃から仕事量が激減してその状 況が好転しなかったものであり,また,証拠(乙106の1及び2)によれ ば,遅くとも平成28年1月頃からは仕事量とデザイン料の不均衡を理由に 被告からの依頼を断るようになったと認められ,異議を述べる障害となる事 由が解消ないし軽減したということができるにもかかわらず,原告は,デザ イン料の改定を求めるなど被告に対して書面をもって一定の要求をする一方 で,原告デザインの改変について本件訴訟の提起に至るまで何らの異議も唱 えていない。

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平成29(ネ)10061  著作者人格権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成29年10月13日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 建築の著作物について、共同著作者とは認定できないとした1審判断が維持されました。
 控訴人は,原判決が,本件建物外観(外装スクリーン部分に限られない。 以下同じ。)の設計に関し,控訴人代表者の創作的関与並びに共同創作の意\n思及び事実を認めず,また,本件建物外観を控訴人外観設計の二次的著作物 とも認めなかったのは誤りであるとして,要旨,次のとおり主張する。 ア 控訴人設計資料(甲7,7の2)及び控訴人模型(甲8)から成る控訴 人外観設計(外装スクリーン部分に限られない。以下同じ。)は,控訴人 設計資料により平面上で具体的に表現され,かつ,控訴人模型により立体\n物として具体的に表現されており,二次元での平面表\現としても,当該平 面及び模型から観念される立体表現としても,単なるアイデアではなく,\n具体的な表現である。
イ そして,控訴人外観設計は,具体的な立体形状の組亀甲柄を建築物の外 観に適用したことその他多くの点(本質的特徴部分)において,表現上の\n個性が発揮されているから,創作性を有するものであり,表現としてあり\nふれているとはいえない。
ウ したがって,控訴人外観設計は,それ自体,「建築の著作物」(著作権 法10条1項5号)であるとともに,形状,色彩,線及び明暗で思想又は 感情を表現したものであるから,「美術の著作物」(同項4号)又は単な\nる「美術」(同法2条1項1号)の範囲に属する「著作物」にも該当する。 エ 本件建物外観は,控訴人外観設計に表現された建物の本質的特徴を感得\nすることができるものであって,控訴人外観設計に基づいて制作されたも のであるところ,控訴人と被控訴人竹中工務店は,控訴人の設計を被控訴 人竹中工務店が引き継ぐ形において,共同で本件建物の外観を設計したと いえるので,本件建物外観は共同著作物である。万が一,共同著作物では ないとしても,被控訴人竹中工務店は,控訴人外観設計の本質的特徴を複 製又は翻案する形で本件建物外観を設計したから,本件建物外観は控訴人 外観設計を原著作物とする二次的著作物に当たる。
(2) しかしながら,控訴人の主張は採用できない。理由は次のとおりである。 ア まず,控訴人(控訴人代表者)は,控訴人設計資料を作成するに当たり,\n外装スクリーン部分以外は全て被控訴人竹中工務店作成に係る資料を流用 しており,手を加えていない事実を自認している。したがって,控訴人外 観設計のうち外装スクリーンを除くその余の部分については,そもそも控 訴人代表者の創作的関与を認める余地がない。\nイ 次に,外装スクリーン部分について,控訴人設計資料及び控訴人模型に 基づく控訴人代表者の提案内容が「建築の著作物」の創作に関与したと認\nめ得るだけの具体性ある表現といえないことは,原判決が指摘するとおり\nであって,控訴理由を踏まえてもその認定判断は覆らない。 控訴人は,控訴人代表者の上記提案が「実際建築される建物に用いられ\nる組亀甲柄より大きいイメージ」として作成されていた点に関し,たとえ そうであったとしても,「具体的な建物の外観が視覚的に,一般人にとっ て看取可能な形で図面上表\現されていれば,それは具体的な表現である(か\nら,上記提案がアイデアにすぎないことの根拠にはならない)」などとも 主張するが,格子の大きさ一つ取っても,その大きさ次第で,いくらでも 集合体としての外観デザインが変わり得ることは後記のとおりであるから, 控訴人が想定していた現実の外観は,控訴人設計資料及び控訴人模型をも ってしては,いまだ「視覚的に,一般人にとって看取可能な形で図面上表\ 現されていた」といえず,その主張はやはり採用できないといわざるを得 ない。
ウ また,仮に,控訴人設計資料及び控訴人模型に現れた外装スクリーン部 分の表現そのもの(図案)に関して,「建築の著作物」に限らず,何らか\nの著作物性(創作性)を認め得るとしても,(外装スクリーンに関する) 控訴人代表者の提案と現実に完成した本件建物の外観とでは,2層3方向\nの連続的な立体格子構造(組亀甲柄)が採用されている点と,せいぜい色\n(白色)が共通するのみであり,少なくとも立体格子の柄や向き,ピッチ, 幅,隙間,方向が相違することは原判決が認定するとおりであるところ, 実際に本件建物の外観を撮影した写真(甲5の1・2)と控訴人設計資料 及び控訴人模型とを見比べてみても(あるいは,乙2の比較図面を参照し ても),例えば,個々の格子を意識させるものであるかどうか(本件建物 は全体として細かい編み込み模様になっており,遠目に見ると個々の格子 をそれほど意識させない態様であるのに対し,控訴人代表者の提案は,個々\nの格子が大きく,格子を構成する直線も際立っており,遠目に見てもその\n存在を意識させるとともに,六角形のデザインがより強調される態様とな っている。),編み込み模様の編み目の向き(本件建物は横方向を意識さ せるのに対し,控訴人代表者の提案は縦方向を意識させる。),外装スク\nリーンの裏側にある建物自体の骨格を意識させるかどうか(本件建物の外 装スクリーンは編み目が細かく,裏側にある建物自体の骨格を意識させな いのに対し,控訴人代表者の提案のそれは編み目が粗く,裏側にある建物\n自体の骨格が透けて見えてその存在を意識させる。)などの点において大 きく異なっており,全体としての表現や見る者に与える印象が全く異なる\nことは明らかといえる。 この点,控訴人は,控訴理由書等において,立体格子のピッチ,幅,隙 間や,向き,方向などの相違は,いずれも本件建物の外観(見た目)に特 段の違いをもたらすとはいえず,表現の本質的特徴を違えるほどの違いと\nはいえない旨主張するが,同じ組亀甲柄を採用したデザインでも,上記の 諸要素等の違い(格子自体のデザインはもちろん,その大きさや配置,組 み合わせ方等の違い)により,様々な表現があり得ることは,本件で提出\nされている関係各証拠(甲30〜34,乙12,13など。乙号証は枝番 号を含む。)からも明らかといえるし,実際に本件建物外観と控訴人代表\n者の提案とで表現が大きく異なることは前記のとおりであるから,採用で\nきない。
エ そうすると,結局のところ,外装スクリーン部分に関し本件建物外観と 控訴人代表者の提案とで共通するのは,ほぼ2層3方向の連続的な立体格\n子構造(組亀甲柄)を採用した点に尽きるのであって,それ自体はアイデ\nアにすぎない(前記のとおり,建物の外観デザインに組亀甲柄を採用する としても,その具体的表現は様々なものがあり得るのであるから,組亀甲\n柄を採用するということ自体は,抽象的なアイデアにすぎない。)という べきであるから,控訴人代表者が本件建物外観について創作的に関与した\nとは認められないし,控訴人代表者の提案が本件建物の原著作物に当たる\nとも認められない。
(3) 以上によれば,原判決が,本件建物外観の設計に関し,控訴人代表者の創\n作的関与並びに共同創作の意思及び事実を認めず,かつ,本件建物外観を控 訴人外観設計の二次的著作物とも認めなかったことは相当であり,その認定 判断に誤りはない。

◆判決本文

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平成29(ネ)10042  損害賠償請求控訴事件(本訴),著作権侵害差止等請求控訴事件(反訴)  著作権  民事訴訟 平成29年10月5日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審でも、アンケート項目について、著作物性(編集著作物を含む)が否定されました。
 著作権法は思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(著作\n権法2条1項1号),複製に該当するためには,既存の著作物とこれに依拠して作 成された物の共通する部分が著作権法によって保護される思想又は感情の創作的な 表現に当たることが必要である。
1審原告追加部分は,本件1審被告ファイルに対し,1)「ご希望時間」欄 を新設して同欄内に午前10時から午後5時30分までの30分刻みの表示をし,\n2)「住所・TEL」欄を「住所」欄と「電話番号」欄に分け,住所欄に「〒」の表\n示をし,3)「事故発生状況」欄の空白部分の代わりに「□その他」を新設し,4)「 あなた」欄の「□自動車運転」「□自動車同乗」を併せて「□自動車(□運転,□ 同乗)」とするとともに,「□バイク運転」「□バイク同乗」を併せて「□バイク (□運転,□同乗)」とし,5)「初診治療先」「治療先2」「治療先3」欄をそれ ぞれ「治療先1/通院回数」「治療先2/通院回数」「治療先3/通院回数」とした 上で,それぞれの欄内に「病院名: /通院回数: 回」の表示をし,6)「自賠責 後遺障害等級」「簡単な事故状況図をお書きください。」「受傷部位に印をつけて ください。」の各欄を設けた上,「受傷部位に印をつけてください。」欄に人体の 正面視図及び後面視図を設け,7)相談者の「保険会社・共済名」欄内のチェックボ ックス及び選択肢を削除し,「加害者の保険」「保険会社名」の各欄を「加害者の 保険会社名」欄にするとともに同欄内のチェックボックス及び選択肢を削除したも のである。これに対し,1審被告アンケート1及び2は,いずれも上記6)の人体の 正面視図及び後面視図のデザインが1審原告追加部分と異なるが,その他の点は上 記1)から7)の点において1審原告追加部分と同一の記載がされている。 まず,1審原告追加部分と1審被告アンケート1及び2に共通する上記1) の点については,相談希望者から必要な情報を聴取するという本件1審原告ファイ ルの目的上,相談の希望時間を聴取することは一般的に行われることで,そのため に「ご希望時間」欄を設けて欄内に一定の時間を30分ごとに区切った時刻を掲記 することは一般的にみられるありふれた表現であるから,著作者の思想又は感情が\n創作的に表現されているということはできない。\nまた,1審原告追加部分と1審被告アンケート1及び2に共通する上記2)〜5)及 び7)の点は,いずれも,本件1審被告ファイルの質問事項欄を統合又は分割し,あ るいは,各質問事項欄内の選択肢やチェックボックスなどを相談者が記載しやすい ように追加又は変更したものであり,いずれも一般的にみられるありふれた表現で\nあるから,著作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。\nさらに,1審原告追加部分と1審被告アンケート1及び2に共通する上記6)の点 については,相談希望者から必要な情報を聴取するという本件1審原告ファイルの 目的に照らすと,事故状況や被害状況を聴取するために,自賠責後遺障害等級を質 問事項に設け,事故状況図や受傷部位を質問事項に入れ,受傷部位について正面視 及び後面視の各人体図を設けて印を付けるよう求めたことは,いずれも一般的に見 られるありふれた表現であるから,著作者の思想又は感情が創作的に表\現されてい るということはできない。 以上によると,1審原告追加部分と1審被告アンケート1及び2の共通する部分 は,いずれも著作権法によって保護される思想又は感情の創作的な表現には当たら\nないから,1審被告アンケート1及び2は1審原告追加部分の複製には該当しない というべきである。なお,1審原告追加部分と1審被告アンケート1及び2では, 正面視及び後面視の各人体図のデザインが異なるから,人体図について1審被告ア ンケート1及び2が1審原告追加部分の複製に該当することはない。 1審原告は,1審被告において1審原告追加部分に著作物性があることを認めて いるから,この点について裁判上の自白が成立し,裁判所を拘束すると主張するが, 本件訴訟において,1審被告が1審原告追加部分の著作物性を自認したものとは認 めることができないから,1審原告の上記主張は失当である。
5 争点8(本件1審被告ファイルの編集著作物性の有無)について
ある編集物が編集著作物として著作権法上の保護を受けるためには,素材 の選択又は配列によって創作性を有することが必要である(著作権法12条1項)。
(2) 本件1審被告ファイルには,「氏名・フリガナ」,「年齢・性別・職業」, 「住所・TEL」,「メールアドレス」,「事故日」,「事故発生状況」,「あな た」(判決注:相談希望者),「加害者」,「受傷部位」,「傷病名」,「症状」, 「治療経過」,「初診治療先」,「治療先2」,「治療先3」,「あなたの保険」, 「保険会社・共済名」,「加害者の保険」,「保険会社名」の欄が順に設けられ, それぞれ左欄には上記の各項目タイトルが,右欄には各項目に対応する情報を記載 する体裁となっていること,これらの各欄に引き続いて,「相談内容・お問い合わ せ」欄が設けられ,その下に情報を記載するための空白が設けられていることが認 められる。また,本件1審被告ファイルの「事故発生状況」,「あなた」,「加害 者」,「受傷部位」,「傷病名」,「治療経過」,「あなたの保険」,「保険会社 ・共済名」,「加害者の保険」,「保険会社名」の右欄には,複数の選択肢とそれ に対応したチェックボックスが設けられていることが認められる。
(3) まず,相談者から相談に先立ち交通事故に関する必要な情報を把握すると いう本件1審被告ファイルの性質上,1)相談者個人特定情報,2)交通事故の具体的 状況,3)相談者の受傷及び治療の状況並びに4)事故関係者の保険加入状況に関する 情報のほか,5)具体的な相談希望内容についての情報を収集する必要があることは, 当然のことであると考えられる。本件1審被告ファイルは,「氏名・フリガナ」, 「年齢・性別・職業」,「住所・TEL」,「メールアドレス」,「事故日」,「 事故発生状況」,「あなた」,「加害者」,「受傷部位」,「傷病名」,「症状」, 「治療経過」,「初診治療先」,「治療先2」,「治療先3」,「あなたの保険」, 「保険会社・共済名」,「加害者の保険」,「保険会社名」の欄を順に設け,これ らの各欄に引き続いて,「相談内容・お問い合わせ」欄を設け,その下に情報を記 載するための空白を設けているが,これらの事項は,上記の本件1審被告ファイル の性質上,当然に設けられるべき項目であって,その順番も,上記1)から5)の順に, それぞれの必要項目を適宜並べたに過ぎないというほかないから,これらの項目を 上記のとおり設けたことによって,素材の選択又は配列による創作性があるという ことはできない。 また,上記のような本件1審被告ファイルの性質上,これらの事項に関連する具 体的な項目の選択についても自ずと限定されるところ,本件1審被告ファイルのチ ェックボックスを付した各項目は,いずれもありふれたものというほかなく,その ような項目を適宜並べたものというほかないから,素材の選択又は配列による創作 性があるということはできない。この点について,1審被告は,特に,「事故発生 状況」及び「傷病名」の項目の選択について主張するが,「事故発生状況」につい ての「□追突」,「□正面衝突」,「□出合い頭衝突」,「□信号無視」,「□無 免許」,「□飲酒」という項目及び「傷病名」についての「□脳挫傷」,「□捻挫 挫傷」,「□打撲」,「□脱臼」,「□骨折」,「□靱帯損傷」,「□醜状痕」, 「□偽関節変形」,「□神経症状」,「□CRPS」,「□機能障害」,「□神経\n麻痺」,「□筋損傷,「□その他( )」という項目は,交通事故において は通常見られる事故態様及び傷病名であって,素材の選択又は配列による創作性が あるということはできない。なお,1審被告が主張するように,事故現場の図面や 「事故当日の天候」,「道路の見とおしの状況」,「道路状況」,「標識や信号機 の有無や場所」,「交通量」などを記載させることも考えられるが,これらの項目 は,事故態様そのものである「□追突」,「□正面衝突」,「□出合い頭衝突」, 「□信号無視」,「□無免許」,「□飲酒」といった項目に比べて必要性が高いと はいえず,上記の事故現場の図面や「事故当日の天候」等の項目がないことは,素 材の選択又は配列による創作性があることを基礎づけるということはできない。 さらに,チェックボックスを,上記のような項目と組み合わせて配置したからと いって,素材の選択又は配列による創作性が認められるものではない。 そして,他に本件1審被告ファイルにおいて素材の選択又は配列による創作性が あると認めるに足りる証拠はないから,本件1審被告ファイルが編集著作物に当た るとは認められない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成28(ワ)12608、平成28(ワ)27280

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平成18(ワ)16899  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成20年7月4日  東京地方裁判所

 かなり前の事件ですが、漏れていたのでアップします。  イラストに著作物性は認めました。しかし、両者の関係について、似ているのはアイデアレベルだと判断しました。判決文の後ろに原告と被告のイラストが対比されています。
 被告は,原告博士絵柄は(被告博士絵柄とともに),博士をイメージした 人物としての一般的要素を取り入れ,顔の表情や色調に工夫を加えて作成さ\nれているものの,著作物としての創作性が認められないありふれた表現であ\nる旨主張する。 そこで,この点についてみるに,証拠(乙1〜8)及び弁論の全趣旨によ れば,原告博士絵柄及び被告博士絵柄以外の博士をイメージした人物として, 法務省の商業登記Q&Aに用いられている博士(乙第1号証),中央出版株 式会社のさんすうおまかせビデオに用いられている博士(乙第2号証),独 立行政法人水資源機構のホームページに用いられているものしり博士(乙第\n3号証),株式会社新学社の社会科資料集6年に用いられている歴史博士 (乙第4号証),証券クエストのホームページに用いられている博士(乙第 5号証),DEX WEBのイラスト・クリップアートに表示されている3\nDCGの博士(乙第6号証),株式会社パルスのおもしろ実験室のパッケー ジに用いられている博士(乙第7号証,ただし,乙第6号証の博士と同一の もの)及び株式会社UYEKIの防虫ダニ用スプレーの宣伝に用いられてい る博士(乙第8号証)の絵柄があること,これらの絵柄の共通の要素として, 角帽を被り,丸い鼻から髭を生やし,比較的ふくよかな体型の年配の男性で あることなどを挙げることができること,が認められる。しかしながら,こ れらの博士のそれぞれの絵柄を見れば,共通の要素としての角帽,鼻,髭, 体型等の描き方にしても様々であり,まして,色づかいやタッチなどの全体 の印象を含めれば,博士をイメージさせる要素が類似するとしても,これら の博士の絵柄相互間において,表現物としての共通性があって,いずれもが\nありふれていると言い切ることはできないものというべきである。そして, 原告博士絵柄については,上記の各博士のそれぞれの絵柄と対比して,なお 博士絵柄の表現としてありふれているとまでは言えないものと認められる。
(3)したがって,原告博士絵柄は,全体としてみたとき,前記(1)のような 特徴を備えた博士の絵柄の一つの表現であって,そこに作成者の個性の反映\nされた創作性があるというべきであり,原告商品の一部を構成する原告博士\n絵柄の登場する画像の著作物として,創作的な表現とみることができるもの\nと認められる。
・・・・
原告博士絵柄と被告博士絵柄とを対比すると,原告博士絵柄と被告博士絵 柄とは,前記(1)アのとおりの共通点があり,また,同ウの由来を考慮す れば,元来,被告博士絵柄は,原告博士絵柄に似せて製作されたものという ことができるものの,同イの相違点に照らすと,絵柄として酷似していると は,言い難いものと認められる。
そして,原告博士絵柄のような博士の絵柄については,前記1(2)の乙 第1ないし第8号証でみた博士の絵柄のように,角帽やガウンをまとい髭な どを生やしたふっくらとした年配の男性とするという点はアイデアにすぎず, 前記(1)アの原告博士絵柄と被告博士絵柄との共通点として挙げられてい るその余の具体的表現(ほぼ2頭身で,頭部を含む上半身が強調されて,下\n半身がガウンの裾から見える大きな靴で描かれていること,顔のつくりが下 ぶくれの台形状であって,両頬が丸く,中央部に鼻が位置し,そこからカイ ゼル髭が伸びていること,目が鼻と横幅がほぼ同じで縦方向に長い楕円であ って,その両目の真上に眉があり,首と耳は描かれず,左右の側頭部にふく らんだ髪が生えていること)は,きわめてありふれたもので表現上の創作性\nがあるということはできず,両者は表現でないアイデアあるいは表\現上の創 作性が認められない部分において同一性を有するにすぎない。また,被告博 士絵柄全体をみても,前記(1)イの相違点に照らすと,これに接する者が 原告博士絵柄を表現する固有の本質的特徴を看取することはできないものと\nいうべきである(なお,原告商品に登場する原告博士絵柄と被告各商品に登 場する被告博士絵柄は,ともにそれぞれの商品の一部を構成する画像として\n存在するところ,動きのある映像として見たとき,原告博士絵柄と被告博士 絵柄との違いは明白である。)。 したがって,被告各商品の一部を構成する被告博士絵柄の登場する画像が\n原告商品の一部を構成する原告博士絵柄の登場する画像の複製権や翻案権を\n侵害していると認めることはできない

◆判決本文

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平成28(ワ)12608  損害賠償請求事件,著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟平成29年2月28日  東京地方裁判所

 交通事故被害者相談会の広告チラシについて、著作権侵害か争われました。裁判所は、著作物性を否定しました。少し前の事件ですが、もれていたのでアップします。
 著作権法は思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(著\n作権法2条1項1号),複製に該当するためには,既存の著作物とこれに依 拠して作成された対象物件の共通する部分が著作権法によって保護される 思想又は感情の創作的な表現に当たることが必要というべきであり,被告\nアンケート1又は2が原告追加部分に依拠して作成されたものであるとし ても,思想,感情若しくはアイディア,事実,学術的知見など表現それ自\n体でない部分や,表現上の創作性がない部分において原告追加部分の表\現 と共通するにすぎない場合には,複製に当たらないと解するのが相当であ る。
(2) 原告追加部分は,本件被告ファイルに対し,(1)「ご希望時間」欄を新設 して同欄内に午前10時から午後5時30分までの30分刻みの表示をし,\n(2)「住所・TEL」欄を「住所」欄と「電話番号」欄に分け,住所欄に「〒」 の表示をし,(3)「事故発生状況」欄の空白部分の代わりに「□その他」を 新設し,(4)「あなた」欄の「□自動車運転」「□自動車同乗」を併せて「□ 自動車(□運転,□同乗)」とするとともに,「□バイク運転」「□バイク同 乗」を併せて「□バイク(□運転,□同乗)」とし,(5)「初診治療先」「治 療先 2」「治療先 3」欄をそれぞれ「治療先 1/通院回数」「治療先 2/通院回 数」「治療先 3/通院回数」とした上で,それぞれの欄内に「病院名: /通 院回数: 回」の表示をし,(6)「自賠責後遺障害等級」「簡単な事故状況図 をお書きください。」「受傷部位に印をつけてください。」の各欄を設けた上, 「受傷部位に印をつけてください。」欄に人体の正面視図及び後面視図を設 け,(7)相談者の「保険会社・共済名」欄内のチェックボックス及び選択肢 を削除し,「加害者の保険」「保険会社名」の各欄を「加害者の保険会社名」 欄にするとともに同欄内のチェックボックス及び選択肢を削除したもので ある。これに対し,被告アンケート1及び2は,いずれも上記(6)の人体の 正面視図及び後面視図が原告追加部分とやや異なるが,その他の点は上記 (1)から(7)の点において原告追加部分と同一の記載がされている。
(3) そこで検討するに,まず,原告追加部分と被告アンケート1及び2に共 通する上記(1)の点については,相談希望者から必要な情報を聴取するとい うファイルの目的上,相談の希望時間を聴取することは一般的に行われる ことで,そのために「ご希望時間」欄を設けて欄内に一定の時間を30分 ごとに区切った時刻を掲記することは一般的にみられるありふれた表現で\nあるから,著作者の思想又は感情が創作的に表現されているということは\nできない。 また,原告追加部分と被告アンケート1及び2に共通する上記(2)〜(5)及 び(7)の点は,いずれも,本件被告ファイルの質問事項欄を前提にそれを統 合又は分割し,あるいは,各質問事項欄内の選択肢やチェックボックスを 相談者が記載しやすいように追加又は変更したものであり,いずれもアイ ディアに属する事柄にすぎないから、著作権法上の保護の対象となるもの とはいえない。 次に,原告追加部分と被告アンケート1及び2に共通する上記(6)の点(な お,原告追加部分と本件各アンケートでは,正面視及び後面視の各人体図 の具体的なデザインが異なる。)については,相談希望者から必要な情報を 聴取するという本件原告ファイルの目的に照らせば,事故状況や被害状況 を聴取するために,自賠責後遺障害等級を質問事項に設け,事故状況図や 受傷部位を質問事項に入れること,受傷部位を聴取するために,正面視及 び後面視の各人体図を設けて印を付けるよう求めたことは,いずれもアイ ディアにとどまり,あるいは一般的に見られるありふれた表現形式であっ\nて,著作者の思想又は感情が創作的に表現されていると見ることはできな\nい。
以上によれば,原告追加部分と被告アンケート1及び2の共通する部分 は,いずれも著作権法によって保護される思想又は感情の創作的な表現に\nは当たらないから,被告アンケート1及び2は原告追加部分の複製には該 当しないというべきである。 なお,原告は,被告において原告追加部分に著作物性があることを認め ているから,この点について裁判上の自白が成立し,裁判所を拘束するな どとも主張するが,本件全記録によっても被告が原告追加部分の著作物性 を自認したものとは認めることができないから,原告の上記主張は失当と いうほかない。

◆判決本文

◆こちらに、問題となったチラシがあります。

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平成27(ワ)23694  著作者人格権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成29年4月27日  東京地方裁判所(47民)

 建物の著作物の創作者が争われました。原告は共同著作者ではないと判断され、また、原告模型の創作性も否定されました。
「建築の著作物」(同法10条1項5号)とは,現に存在する 建築物又はその設計図に表現される観念的な建物であるから,当該設計\n図には,当該建築の著作物が観念的に現れているといえる程度の表現が\n記載されている必要があると解すべきである。 (イ) 上記1(認定事実)(2)のとおり,原告代表者は,乙から本件建物の\n外観に関する設計の依頼を受け,日本の伝統柄をデザインの源泉とし, 一見洗練された現代的なデザインのように見えるが「日本」を暗喩でき るものとするとの設計思想に基づいて,原告設計資料及び原告模型を作 成し,平成25年9月6日,乙に対し,本件建物の外装スクリーンの上 部部分(2階及びR階部分)を立体形状の組亀甲とすることを含めた設 計案を提示している。そして,この時点において,被告竹中工務店は, 上記部分を立体形状の組亀甲とすることに着想していなかった(争いの ない事実)。 しかしながら,上記1(認定事実)(2)のとおり,原告設計資料及び原 告模型に基づく原告代表者の上記提案は,上記1(認定事実)(1)イの内 容が記載された被告竹中工務店設計資料を前提に,当該資料のうちの外 装スクリーンの上部部分のみを変更したものであり,上記提案には,伝 統的な和柄である組亀甲柄を立体形状とし,同一サイズの白色として等 間隔で同一方向に配置,配列することは示されているが,実際建築され る建物に用いられる組亀甲柄より大きいイメージとして作成されたもの であるため,実際建築される建物に用いられる具体的な配置や配列は示 されておらず,他に,具体的なピッチや密度,幅,厚さ,断面形状も示 されていない。一方で,上記1(認定事実)(6)のとおり,組亀甲柄は, 伝統的な和柄であり,平面形状のみならず,建築物を含めて立体形状と して用いられている例が複数存在し,建築物の図案集にも掲載されてい る。 そうすると,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提案は,\n被告竹中工務店設計資料を前提として,その外装スクリーンの上部部分 に,白色の同一形状の立体的な組亀甲柄を等間隔で同一方向に配置,配 列するとのアイデアを提供したものにすぎないというべきであり,仮に, 表現であるとしても,その表\現はありふれた表現の域を出るものとはい\nえず,要するに,建築の著作物に必要な創作性の程度に係る見解の如何 にかかわらず,創作的な表現であると認めることはできない。更に付言\nすると,原告代表者の上記提案は,実際建築される建物に用いられる組\n亀甲柄の具体的な配置や配列は示されていないから,観念的な建築物が 現されていると認めるに足りる程度の表現であるともいえない。\n以上によれば,本件建物の外観設計について原告代表者の共同著作者\nとしての創作的関与があるとは認められない。 (ウ) これに対し,原告は,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表\n者の上記提案は,建物の外観に用いられることが多くない組亀甲柄を選 択し,組亀甲柄を用いるというアイデアから想定される複数の表現から\n特定の表現を選択して決定するものであることや,組亀甲柄部分の光の\n表現についても具体的に決定されているものであることをもって,創作\n的な表現である旨主張する。\n しかしながら,組亀甲柄は,建築物の図案集にも掲載され,実際に建 築物に用いられている例が複数存在することは上記(イ)のとおりであり, 建物の外観に組亀甲柄を用いること自体がありふれていないということ はできない。また,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提\n案は,上記(イ)のとおり,組亀甲柄の大まかな色,形状,配置,配列が 決定されているにすぎず,一般的な組亀甲柄として紹介されている例 (乙11の1ないし4,12の1)と比較しても,個性の発露があると 認めるに足りる程度の創作性のある表現であるということはできない。\nさらに,原告の主張する光の表現は,具体的に明らかではなく,この点\nをもって創作性を認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用できない。 イ 「共同して創作した」といえるかについて 仮に,本件建物の外観設計における原告代表者の創作的関与の有無の\n点を措いても,前記第2の1(前提事実)(2)エ及び上記1(認定事実) (3)・(4)のとおり,被告竹中工務店の設計担当者は,本件打合せで原告代 表者から原告設計資料及び原告模型に基づく提案内容の説明を聞いたこ\nとはあるが,原告との共同設計の提案を断り,その後,原告代表者と接\n触ないし協議したことはない。 また,上記1(認定事実)(2)・(4)のとおり,原告代表者の設計思想は,\n本件建物のファサードを,日本の伝統柄をデザインの源泉とし,一見洗 練された現代的なデザインのように見えるが「日本」を暗喩できるもの とするなどというものであるのに対し,被告竹中工務店の設計思想は, 組亀甲柄のもつ2層3方向の幾何学構造に着目した編込み様のデザイン\nなどというものであって,原告代表者と被告竹中工務店の設計思想は異\nなる上,上記1(認定事実)(2)・(5)のとおり,原告代表者の提案内容と\n完成後の本件建物は,外装スクリーンの上部部分に2層3方向の立体格 子構造が採用されている点は共通するが,少なくとも立体格子の柄や向\nき,ピッチ,幅,隙間,方向が相違しており(具体的には,原告設計資 料及び原告模型には,本件建物の外装の上部に同じ形状及びサイズの白 色の組亀甲柄を等間隔で同一方向に配置,配列することとすること,ピ ッチを「@≒500mm」,巾を「≒150mm」,向きを鉛直,隙間 を「△辺≒200mm」とする格子が記載されており,この他に,外装 スクリーンの寸法や,格子のピッチ,密度,隙間,幅,厚さ,断面形状, 表面処理に関する具体的な記載はないのに対し,本件建物においては,\nその2階以上の外装部分は,アルミキャストを素材とする白色の三次元 曲面による2層3方向の立体格子構造とされ,ピッチは「@250m\nm」,巾は「90mm」,向きは斜光,隙間は「△辺94mm」の格子 が用いられ,横方向が強調された配列とされている。),建物の外観に 関する表現上の重要な部分,すなわち本質的特徴といえる点において多\nくの相違点がある。 これらの事情に照らせば,原告と被告竹中工務店の間に共同創作の意 思や事実があったとは認められず,両者が本件建物の外観設計を「共同 して創作」したと認めることはできない。
・・・・
ア 原著作物性について
上記(1)アのとおり,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提\n案は創作的な表現であるとはいえないから,これに著作物性を認めること\nはできない(更に付言すると,建物の著作物性を認めることもできない。)。
イ 被告竹中工務店による翻案について
また,仮に,原告設計資料及び原告模型に係る原告代表者の提案につい\nての著作物性の有無の点を措いても,上記(1)イのとおり,原告設計資料及 び原告模型と本件建物とは,その表現上の重要な部分において多くの相違\n点があり,本件建物から原告設計資料及び原告模型における表現上の本質\n的特徴を感得することはできない。

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平成28(ネ)10102  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成29年3月14日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 一審と同様に、HTML文には創作性無しと判断されました。
 プログラムの著作物性が認められるためには,指令の表現自体,同表\現の組合せ, 同表現の順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十\分にあり,かつ,それがあ りふれた表現ではなく,作成者の個性が表\れているものであることを要するという ことができる。プログラムの表現に選択の余地がないか,あるいは,選択の幅が著\nしく狭い場合には,作成者の個性の表れる余地がなくなり,著作物性は認められな\nくなる。 前記1のとおり,本件HTMLは,被控訴人が決定した内容を,被控訴人が指示 した文字の大きさや配列等の形式に従って表現するものであり,そもそも,表\現の 選択の幅は著しく狭いものということができる。
・・・
(ア) 〈form name="frm_member" action="compliance.php?ts=%ts%" method="post"〉 (甲27の1右欄)は,online.html において,新規会員登録の画面下部の「上記を全 て満たすので会員登録手続きへ進む。」のボタンをクリックすると,compliance.php に アクセスすることに関するものと解される。 HTMLに関する事典ないし辞典において,1)「
」は,後出の「
」 との間の範囲が入力フォームであることを示すこと(乙35),2)フォームの送信先 や送信方法等は,上記「form」タグの属性で指定し,属性="属性値"で表すこと(乙\n20,35,36),3)「name」は,フォームに名前を付与する属性であること(乙 36),4)「action」は,フォームに入力されたデータを処理するプログラムのURL を指定する属性であること(乙35),5)「method」は,入力されたデータの送信形 式を指定する属性であり,フォームのデータのみを本文として送信する「post」と 「action」属性で指定したURLフォームのデータを追加して送信する「get」のいず れかを選択するものとされていること(乙35)が記載されている。 したがって,上記記述は,その大半が,HTMLに関する事典ないし辞典に記載 された記述のルールに従ったものであり,作成者の個性の余地があるとは考え難い。 よって,控訴人主張に係る上記の記述において作成者の個性が表れているという\nことはできない。
(イ) 〈form name="frm_member" action="./compl_check.php?ts=%ts%" method="post"〉 (甲27の2右欄)は,compliance.html において,登録申請時確認テストの画面の問\n題に全問回答した後に,下部の「確認」ボタンをクリックすると,compl_check.php に アクセスすることに関するものと解されるが,前記(ア)と同様に,作成者の個性が表\nれているということはできない。
(ウ)
と表されること\n(乙19)が記載されており,また,3)HTMLにおいて長さを指定する方法とし てピクセル数を単位に整数で指定する方法があること(乙35),4)「submit」は「送 信ボタン」を意味する語として用いられていること(乙37)が記載されている。こ れらの記載によれば,「"margin:0px;"」は,余白0ピクセルを意味するもの,「onsubmit」は送信ボタンに関するものと解される。また,「"return false;"」は,実行中止を意味するものである。以上に加え,前記(ア)にも鑑みると,控訴人主張に係る上記記述は,HTMLに関する教本及び辞典に記載された記述のルールに従った,作成者の個性の表れる余地があるとは考え難いものや,語義からその内容が明らかなありふれたものから成り,したがって,作成者の個性が表\れているということはできない。

◆判決本文

◆一審はこちらです。所平成27年(ワ)第5619号

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平成28(ネ)10054  著作権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成28年12月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ゴルフクラブのシャフトの原画デザインについて1審(46民)と同様に著作物性なしと判断されました(第2部)。
 控訴人は,1)本件シャフトデザイン等の縞模様を含むベース部分は,トルネード (竜巻)をイメージし,人間のパワーの源である赤から,シャフトのカーボンを表\nす黒に昇華していく表現であり,ゴルフ界に嵐を巻き起こすという意味を込めてい\nる,2)ブランドロゴの横字画部の右側を鋭角に伸ばすことでボールの弾道やエネル ギーの伸びと指向性を表現している,3)ブランドロゴをトルネード模様(縞模様) の上に配置することでシャフト縦方向へのパワーを表現する工夫を凝らしているか\nら,本件シャフトデザイン等には創作性が認められるべきである,と主張する。 しかし,1)縞模様は,本件シャフトデザイン及び被告シャフト以外にもシャフト のデザインに用いられた例がある(乙1の添付資料8)上に,様々な物のデザイン として頻繁に用いられ,縞の幅を一定とせずに徐々に変更させていく表現も一般に\n見られるところである。ゴルフシャフトの色として,赤,黒及びグレーの3色を用 いた例は証拠上複数見られる(甲30の3の中央の画像の真ん中のシャフト,甲3 0の4の中央の画像の一番上のシャフト,甲30の5の中央の画像の後ろのシャフ ト)。よって,本件シャフトデザイン等を縞模様とし,縞の幅を変化させ,縞の色と して赤,黒及びグレーを選択したことは,ありふれている。 また,2)いわゆるデザイン書体は,文字の字体を基礎として,これにデザインを 施したものであるところ,文字は,本来的には情報伝達という実用的機能から生じ\nたものであり,社会的に共有されるべき文化的所産でもあるから,文字の字体を基 礎として含むデザイン書体の表現形態に著作権としての保護を与えるべき創作性を\n認めることは,一般的には困難であると考えられる。しかも,本件において,「To ur AD」のブランドロゴは,上記ア(エ)のとおり,既存のフォントを利用した上 で,「T」の横字画部を右に長く鋭角に伸ばしたものであるところ,文字として可読 であるという機能を維持しつつデザインするに当たって,文字の一字画のみを当該\n文字及び他の文字の字画を妨げない範囲で伸ばすことは一般によく行われる表現で\nあること,文字の一字画を伸ばした先を単に鋭角とすることも,平凡であることか らすれば,この表現が個性的なものとは認められない。\nさらに,3)ブランドロゴをトルネード模様の上に配置したことに関しては,シャ フトのデザインに製品等のロゴを目立つように配置することは,他のゴルフクラブ のシャフトにも頻繁に見られる(甲29,甲30の1〜5)表現であり,細長いシ\nャフトに文字を大書して目立たせる配置をすることの選択の幅は狭いから,ブラン ドロゴをトルネード模様の上に配置したことが個性的な表現とはいえない。\nよって,本件シャフトデザイン等に,創作的な表現は認められず,著作物性は認\nめられない。
控訴人は,本件シャフトデザイン等に著作物性が認められる場合であっても,複 製権等の侵害は主張せず,著作権(翻案権,二次的著作物の譲渡権)及び著作者人 格権(同一性保持権)の侵害を主張するので,下記においては,念のため,仮に, 本件シャフトデザイン等に著作物性が認められるとした場合に,被告シャフトが本 件シャフトデザイン等を翻案したものであり,被控訴人が,控訴人の著作権(翻案 権,二次的著作物の譲渡権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害したといえ るか,について判断する。
・・・
上記1(2)アの認定事実に基づけば,仮に,本件シャフトデザイン等に著 作物性が認められるとした場合には,その本質的特徴は,赤と黒を基調にし,グレ ーをリングに用い,グリップ側に血液を象徴する赤,ヘッド側にカーボンを象徴す る黒を用いて,縞模様を構成する赤と黒の幅を徐々に変化させつつ,赤と黒とが馴\n染むぼかし部分を入れて,グリップ側からヘッド側へと人間の血液を象徴する赤色 部分が減少しカーボンを象徴する黒が増加していくことを具体的に表現した点にあ\nるものと認められる。
ウ これに対し,控訴人は,本件シャフトデザイン等の本質的特徴を以下のとおり主張する。 「シャフトのグリップ側の端を占める色を「色A」とし,ヘッド側の端を占める 色を「色B」とする。 シャフトには複数本のリングを等間隔に配置する。等間隔に配置されたリング間 を,色 A と色 B で塗り分け,当該2色の境目がリングと並行になるように色分けす る。リング間においては,シャフト全体で見た色の塗り分けとは逆に,グリップ寄 りに色Bを,ヘッド寄りに色Aが配置される。リング間における各色の割合である が,最もグリップ側に近いリング間は,色Aがその多くを占める。2番目にグリッ プ側に近いリング間は,色Aの占める割合が少し減り,色Bの割合が増える。3番 目にグリップ側に近いリング間は,さらに色Aが占める割合が減り,色Bの割合が 増える。これを繰り返し,最もヘッド側にあるリング間においては,色Bがほとん どの割合を占めることとなり,色Aが占める割合はわずかになる。 また,各リングのグリップ側に接する部分にはぼかし部分を入れる。ぼかし部分 の面積は,各リングそれぞれで異なっており,最もグリップに近いリング脇のぼか し部分が最も面積が大きく,ヘッド側に近いリングほどぼかし部分の面積は小さく なっていく。」 しかし,具体的な配色を捨象した,幅を変えながら縞模様が変化していくという 表現では,本件シャフトデザイン等において,人間の血液を象徴する赤とカーボン\nを象徴する黒をシャフトの地色として選択し,グリップ側からヘッド側にかけて徐々 に赤色部分が減少し黒色部分が増加していくという特徴的な表現が感得できない。\nしかも,配色を問わない上記控訴人の主張は,自身の制作意図とも矛盾しており, いずれにしても採用し得ない。
(2) 被告シャフトとの対比
ア 本件シャフトデザイン等の本質的特徴は上記(1)イのとおりであり,上記 1(2)ア(シ)で認定した被告シャフト対照表に係る色Aが赤,色B及びDが黒,色Cが\nグレーという配色になる。そうすると,1)全く同じ配色の被告シャフトはないから, 被告シャフトは,いずれも,本件シャフトデザイン等の本質的特徴である配色を備 えていない。また,2)本件シャフトデザイン等の色Aが赤であるのは,人間の血液 を象徴したものであるところ,被告シャフト1〜50(42〜46のMJカラーを 除く。),55〜68,73の色Aは白系,被告シャフト51〜54の色Aはシルバ ー系,被告シャフト74〜77,79〜81の色Aはグレー,被告シャフト42〜 46のMJカラー,82,83の色Aは黄色と,いずれも,血液をイメージしにく い色である。さらに,3)本件シャフトデザイン等の色B及びDは共に黒であり,黒 と彩度のみを異にするグレーを用いることによって,グリップ側からヘッド側へ連 続した印象を与える表現となっているものと解されるところ,被告シャフト5〜8,\n13,14,16〜19,61〜64(42〜46のMTカラー),65〜68,6 9〜72(42〜46のMJカラー),83,並びに被告シャフト9,10及び41 のブルーの色B及びD,並びに,被告シャフト5〜31,37〜64,69〜83 の色B及びCは,同系色ですらない異なる色である。 したがって,被告シャフトはいずれも,上記1)の特徴を備えないことに加え,被 告シャフト1〜4は上記2)の特徴を備えず,被告シャフト5〜31は上記2)及び3) の特徴を備えず,被告シャフト32〜36は上記2)の特徴を備えず,被告シャフト 37〜68は上記2)及び3)の特徴を備えず,被告シャフト69〜72は上記3)の特 徴を備えず,被告シャフト73〜77は上記2)及び3)の特徴を備えず,被告シャフ ト78は上記3)の特徴を備えず,被告シャフト79〜83は上記2)及び3)の特徴を 備えない。よって,被告シャフトはいずれも,本件シャフトデザイン等の本質的特 徴を直接感得させるとはいえない。 なお,被告シャフト78は,上記被告シャフト対照表の色Aが赤,色B及びDが\nメタリック黒及び黒であるから,本件シャフトデザイン等の表現上の本質的特徴の\n一部を備えているともいえる。しかし,被告シャフト78の色Cは,はっきりした 白であって,赤と黒の配色部分をくっきりと区切り,濃色である赤と黒を背景にリ ズミカルに配置されている印象があり,被告シャフト78全体の赤から黒へと徐々 に変化していくという動きを阻害しているから,血液を象徴する赤色部分がグリッ プ側からヘッド側へと減少し,カーボンを象徴する黒色部分がグリップ側からヘッ ド側へと増加していくというイメージを想起させる構成ではない。\nよって,被告シャフト78からは,本件シャフトデザイン等の表現上の本質的特\n徴を直接感得することはできない。
イ これに対して,控訴人は,被告シャフトは,色Aが色Bに遷移していく 描写がされているから,その表現には,本件シャフトデザイン等の本質的特徴が維\n持されており,直接感得できる,と主張する。 しかし,控訴人の上記主張は,本件シャフトデザイン等の表現上の本質的特徴を,\n上記第2,2(2)(控訴人の主張)アのとおりとらえることを前提としており,上記 (1)ウのとおり,その前提が誤っているから,控訴人の主張には,理由がない。
(3) 小括
よって,仮に,本件シャフトデザイン等に著作物性が認められるとしても,被告 シャフトは,本件シャフトデザイン等の表現上の本質的特徴を直接感得できるもの\nではないから,仮に,被告シャフトに創作性がある場合には,別個の著作物である こととなる。したがって,被控訴人による被告シャフト製造,頒布が,本件シャフ トデザイン等に係る控訴人の著作権(翻案権,二次的著作物の譲渡権)を侵害した とは認められない。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成27(ワ)21304

◆原画と実際に採用されたデザインはこちら

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平成28(ネ)10018  不正競争差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成28年11月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 加湿器に関して、1審は不競法の商品形態模倣(3号)における商品でないと判断しましたが、知財高裁2部は、流通過程に置かれていなくても商品であるとと判断しました。 なお、量産品について著作物ではないとの判断は維持されています。
 不正競争防止法1条は,「事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確 な実施を確保するため,不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置 等を講じ,もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」と定め,同 法2条1項3号は,「他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な\n形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し,貸し渡し,譲渡若しくは貸渡しのために展 示し,輸出し,又は輸入する行為」を不正競争と定めている。 不正競争防止法が形態模倣を不正競争であるとした趣旨は,商品開発者が商品化 に当たって資金又は労力を投下した成果が模倣されたならば,商品開発者の市場先 行の利益は著しく減少し,一方,模倣者は,開発,商品化に伴う危険負担を大幅に 軽減して市場に参入でき,これを放置すれば,商品開発,市場開拓の意欲が阻害さ れることから,先行開発者の商品の創作性や権利登録の有無を問うことなく,簡易 迅速な保護手段を先行開発者に付与することにより,事業者間の公正な商品開発競 争を促進し,もって,同法1条の目的である,国民経済の健全な発展を図ろうとし たところにあると認められる。 ところで,不正競争防止法は,形態模倣について,「日本国内において最初に販売 された日から起算して3年を経過した商品」については,当該商品を譲渡等する行 為に形態模倣の規定は適用しないと定めるが(同法19条1項5号イ),この規定に おける「最初に販売された日」が,「他人の商品」の保護期間の終期を定めるための 起算日にすぎないことは,条文の文言や,形態模倣を新設した平成5年法律第47 号による不正競争防止法の全部改正当時の立法者意思から明らかである(なお,上 記規定は,同改正時は同法2条1項3号括弧書中に規定されていたが,同括弧書が 平成17年法律第75号により同法19条1項5号イに移設された際も,この点に 変わりはない。)。また,不正競争防止法2条1項3号において,「他人の商品」とは, 取引の対象となり得る物品でなければならないが,現に当該物品が販売されている ことを要するとする規定はなく,そのほか,同法には,「他人の商品」の保護期間の 始期を定める明示的な規定は見当たらない。したがって,同法は,取引の対象とな り得る物品が現に販売されていることを「他人の商品」であることの要件として求 めているとはいえない。 そこで,商品開発者が商品化に当たって資金又は労力を投下した成果を保護する との上記の形態模倣の禁止の趣旨にかんがみて,「他人の商品」を解釈すると,それ は,資金又は労力を投下して取引の対象となし得ること,すなわち,「商品化」を完 了した物品であると解するのが相当であり,当該物品が販売されているまでの必要 はないものと解される。このように解さないと,開発,商品化は完了したものの, 販売される前に他者に当該物品の形態を模倣され先行して販売された場合,開発, 商品化を行った者の物品が未だ「他人の商品」でなかったことを理由として,模倣 者は,開発,商品化のための資金又は労力を投下することなく,模倣品を自由に販 売することができることになってしまう。このような事態は,開発,商品化を行っ た者の競争上の地位を危うくさせるものであって,これに対して何らの保護も付与 しないことは,上記不正競争防止法の趣旨に大きくもとるものである。 もっとも,不正競争防止法は,事業者間の公正な競争を確保することによって事 業者の営業上の利益を保護するものであるから(同法3条,4条参照),取引の対象 とし得る商品化は,客観的に確認できるものであって,かつ,販売に向けたもので あるべきであり,量産品製造又は量産態勢の整備をする段階に至っているまでの必 要はないとしても,商品としての本来の機能が発揮できるなど販売を可能\とする段 階に至っており,かつ,それが外見的に明らかになっている必要があると解される。 以上を前提に控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2が,「他人の商品」であるか否か を検討する。 (2) 控訴人加湿器1について
前記第2,2(3)1)のとおり,控訴人らは,平成23年11月,商品展示会に控訴 人加湿器1を出展している。商品展示会は,商品を陳列して,商品の宣伝,紹介を 行い,商品の販売又は商品取引の相手を探す機会を提供する場なのであるから,商 品展示会に出展された商品は,特段の事情のない限り,開発,商品化を完了し,販 売を可能とする段階に至ったことが外見的に明らかになったものと認めるのが相当\nである。なお,上記商品展示会において撮影された写真(甲3の2,25)には, 水の入ったガラスコップに入れられた控訴人加湿器1の上部から蒸気が噴き出して いることが明瞭に写されているから,控訴人加湿器1が,上記商品展示会に展示中, 加湿器としての本来の機能を発揮していたことは明白である。\nところで,前記第2,2(2)3)のとおり,控訴人加湿器1は,被覆されていない銅 線によって超音波振動子に電力が供給されており,この形態そのままで販売される ものでないことは明らかである。 しかしながら,商品としてのモデルが完成したとしても,販売に当たっては,量 産化などのために,それに適した形態への多少の改変が必要となるのは通常のこと と考えられ,事後的にそのような改変の余地があるからといって,当該モデルが販 売可能な段階に至っているとの結果を左右するものではない。\n上記のような控訴人加湿器1の被覆されていない銅線を,被覆されたコード線な どに置き換えて超音波振動子に電源を供給するようにすること自体,事業者にとっ てみれば極めて容易なことと考えられるところ,控訴人加湿器1は,外部のUSB ケーブルの先に銅線を接続して,その銅線をキャップ部の中に引きこんでいたもの であるから(甲24),商品化のために置換えが必要となるのは,この銅線から超音 波振動子までの間だけである。そして,実際に市販に供された控訴人加湿器3の電 源供給態様をみると,USBケーブル自体が,キャップ部の小孔からキャップ部内 側に導かれ,中子に設けられた切り欠きと嵌合するケーブル保護部の中を通って, 超音波振動子と接続されているという簡易な構造で置換えがされていることが認め\nられるから(乙イ4,弁論の全趣旨),控訴人加湿器1についても,このように容易 に電源供給態様を置き換えられることは明らかである。そうすると,控訴人加湿器 1が,被覆されていない銅線によって電源を供給されていることは,控訴人加湿器 1が販売可能な段階に至っていると認めることを妨げるものではない。\n以上からすると,控訴人加湿器1は,「他人の商品」に該当するものと認められる。 (3) 控訴人加湿器2について 控訴人加湿器2は,控訴人加湿器1よりもやや全長が短く,円筒部が,控訴人加 湿器1よりもわずかに太いという差異があるほかは,控訴人加湿器1と同様の形態 を有するところ,実質的に同一の形態を有する控訴人加湿器1が「他人の商品」で ある以上,その後に開発され,国際見本市に出展された控訴人加湿器2が,販売可 能な状態に至ったことが外見的に明らかなものであることは,当然である。\nしたがって,控訴人加湿器2は,「他人の商品」に該当するものと認められる。
(4) 被控訴人の主張について
被控訴人は,控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2が未完成であり,また,商品化 する具体的な開発についても未着手の状態である,そもそも,電源の供給方法も定 まっておらず商品として販売できないものであるなど,るる主張する。 しかしながら,上記(2)にて説示のとおり,控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2は, そのままの形態で販売することが想定されておらず,電源供給部分の具体的な形状 についての改変は必要であるとしても,商品化は完了しているといえ,未完成であ るわけではない。その電源供給の具体的手段について将来的な変更の余地はあった としても,控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2自体は,実際の形態どおりに外部電 源を引きこむものとして確定している。 そして,控訴人X1は,平成24年7月,雑貨店の店舗経営等を業とするスタイ リングライフにおいて商品仕入れを担当しているA(A)から,メールにて,控訴 人加湿器2の製品化の具体的な日程を問い合わせられた際,Aに対し,次のような メールを返信している(甲7)。 「 『Stick Humidifier』の製品化につきましては,具体的な日程は決まっており ません。製品化のお話はいくつかのメーカーさんから頂いてはおりますが,我々 の考えと合致するパートナーさんが見つかっておらず,開発がやや順延している のが現状です。購入や買い付けに関する問い合わせを多数頂いている故,1日も 早く開発を行いたいところです。」 上記記載の「製品化」は,量産のことを意味していることは明らかであり,「開発」 はそれに応じた設計変更をいうものと解され,上記記載が,控訴人加湿器2や控訴 人加湿器1が未完成で販売可能な状態ではないことをいう趣旨とは解されない。い\nったん商品化が完了した商品について,販売相手に応じて更なる改良の余地があっ たとか,その意図を有していたからといって,遡って,当該商品が商品化未了とな るものではない。上記メールの内容は,控訴人加湿器1が商品化されていないこと を裏付けるものではない。 そのほかに被控訴人がるる主張するところも,上記(1)(2)の認定判断に照らして, 採用することができない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成27(ワ)7033

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平成28(ラ)10009  保全異議申立決定に対する保全抗告事件  著作権  民事仮処分 平成28年11月11日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 判例百選について、編集著作物の著作者かが争われました。知財高裁は、著作者であるとした判断を破棄しました。第3部の判断です。
著作者とは著作物を創作する者をいい(法2条1項2号),著作物とは, 思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は\n音楽の範囲に属するものをいう(同項1号)。編集著作物とは,編集物 (データベースに該当するものを除く。)でその素材の選択又は配列に よって創作性を有するものであるところ(法12条1項),著作物とし て保護されるものである以上,その創作性については他の著作物の場合 と同様に理解される。 そうである以上,素材につき上記の意味での創作性のある選択及び配 列を行った者が編集著作物の著作者に当たることは当然である。 また,本件のように共同編集著作物の著作者の認定が問題となる場合, 例えば,素材の選択,配列は一定の編集方針に従って行われるものであ るから,編集方針を決定することは,素材の選択,配列を行うことと密 接不可分の関係にあって素材の選択,配列の創作性に寄与するものとい うことができる。そうである以上,編集方針を決定した者も,当該編集 著作物の著作者となり得るというべきである。 他方,編集に関するそれ以外の行為として,編集方針や素材の選択, 配列について相談を受け,意見を述べることや,他人の行った編集方針 の決定,素材の選択,配列を消極的に容認することは,いずれも直接創 作に携わる行為とはいい難いことから,これらの行為をしたにとどまる 者は当該編集著作物の著作者とはなり得ないというべきである。
イ もっとも,共同編集著作物の作成過程において行われたある者の行為が, 上記のいずれの場合に該当するかは,当該行為を行った者の当該共同編 集著作物の作成過程における地位や権限等を捨象した当該行為の客観的 ないし具体的な側面のみによっては判断し難い例があることは明らかで ある。すなわち,行為そのものは同様のものであったとしても,これを 行った者の地位,権限や当該行為が行われた時期,状況等により当該行 為の意味ないし位置付けが異なることは,世上往々にして経験する事態 である。 そうである以上,創作性のあるもの,ないものを問わず複数の者によ る様々な関与の下で共同編集著作物が作成された場合に,ある者の行為 につき著作者となり得る程度の創作性を認めることができるか否かは, 当該行為の具体的内容を踏まえるべきことは当然として,さらに,当該 行為者の当該著作物作成過程における地位,権限,当該行為のされた時 期,状況等に鑑みて理解,把握される当該行為の当該著作物作成過程に おける意味ないし位置付けをも考慮して判断されるべきである。 これに対し,抗告人は,著作者性の判断に当たっては,当該行為が行 われた状況や立場といった背景事情を捨象し,もっぱら創作的表現のみ\nに着目して判断されなければならない旨主張するけれども,複数人の関 与の下に著作物が作成される場合の実情にそぐわないというべきであり, この点に関する抗告人の主張は採用し得ない。
ウ 以上を踏まえ,前記認定事実に基づき,以下検討する。
・・・
エ このように,少なくとも本件著作物の編集に当たり中心的役割を果たし たB教授,その編集過程で内容面につき意見を述べるにとどまらず,作 業の進め方等についても編集開始当初からE及びB教授にしばしば助言 等を与えることを通じて重要な役割を果たしたというべきA教授及び抗 告人担当者であるEとの間では,相手方につき,本件著作物の編集方針 及び内容を決定する実質的権限を与えず,又は著しく制限することを相 互に了解していた上,相手方も,抗告人から「編者」への就任を求めら れ,これを受諾したものの,実質的には抗告人等のそのような意図を正 しく理解し,少なくとも表向きはこれに異議を唱えなかったことから,\nこの点については,相手方と,本件著作物の編集過程に関与した主要な 関係者との間に共通認識が形成されていたものといえる。しかも,相手 方が本件原案の作成作業には具体的に関与せず,本件原案の提示を受け た後もおおむね受動的な関与にとどまり,また,具体的な意見等を述べ て関与した場面でも,その内容は,仮に創作性を認め得るとしても必ず しも高いとはいえない程度のものであったことに鑑みると,相手方とし ても,上記共通認識を踏まえ,自らの関与を謙抑的な関与にとどめる考 えであったことがうかがわれる。 これらの事情を総合的に考慮すると,本件著作物の編集過程において, 相手方は,その「編者」の一人とされてはいたものの,実質的にはむし ろアイデアの提供や助言を期待されるにとどまるいわばアドバイザーの 地位に置かれ,相手方自身もこれに沿った関与を行ったにとどまるもの と理解するのが,本件著作物の編集過程全体の実態に適すると思われる。
(4) そうである以上,法14条による推定にもかかわらず,相手方をもって 本件著作物の著作者ということはできない。

◆判決本文

◆前審はこちら 平成28年(モ)第40004号

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平成28(ネ)10059  著作権侵害行為差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成28年10月13日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 練習用箸について、著作物性が否定されました。判断としては1審と同じですが理由が詳細になっています。
 第三に,原告各製品は,幼児が食事をしながら正しい箸の持ち方を簡 単に覚えられるようにするための練習用箸であって,その目的を実現す るために,2本の箸を連結する,あるいは,箸を持つ指の全部又は一部 を固定するというのは,いずれもありふれた着想にすぎず,このことは 甲16〜26の各製品や,乙5〜12の各公報に描かれたデザインを見 ても明らかである。また,かかる着想を具体的な商品形態として実現し ようとすれば,箸という物品自体の持つ機能や性質に加え,練習用箸と\nしての実用性が求められることからしても,選択し得る表現の幅は自ら\n相当程度制約されるのであって,美術の著作物としての創作性を発揮す る余地は極めて限られているものといえる。 (エ) 以上に基づいて検討するに,まず,箸を連結すること自体はアイデア であって表現ではない(なお,連結部分にキャラクターを表\現すること も,それ自体はアイデアであって,著作権法上保護すべき表現には当た\nらない。)し,その具体的な連結の態様を見ても,原告各製品が他社製 品(甲16〜26)と比較して特徴的であるとまではいえず,まして美 的鑑賞の対象となり得るような何らかの創作的工夫がなされているとは 認め難い。よって,前記1)の点に美術の著作物としての創作性を認める ことはできない。 次に,箸を持つ指やその位置が決まっている以上,これを固定しよう と考えれば,固定部材を置く位置は自ずと決まるものであるし,人差し 指,中指,親指の3指を固定することや固定部材として指挿入用のリン グを設けることも,例えば,原告各製品が製造販売されるより前に刊行 された乙5,7,8の各公報においても類似の構成が図示されている(す\nなわち,乙5及び乙7には,一対の箸のうち1本が人差し指と中指を入 れる2つのリングを有し,他方の1本が親指と薬指を入れる2つのリン グを有するものが図示されている。乙8には,一対の箸のうち1本が人 差し指と中指を入れる2つのリングを有し,他方の1本が薬指を入れる 1つのリングを有するものが図示されている。)ように,特段目新しい ことではない。原告各製品も通常指を置く位置によくあるリングを設け たにすぎず,その配置や角度等に実用的観点からの工夫があったとして も,美的鑑賞の対象となり得るような何らかの創作的工夫がなされてい るとは認め難い。よって,前記2)の点についても,美術の著作物として の創作性を認めることはできない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成27(ワ)27220

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平成27(ワ)5619  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成28年9月29日  東京地方裁判所

 HTMLで記載された部分について創作性が否定されました。
 証拠(乙18ないし24)によれば,HTML(言語)に関しては,教 科書や辞典(乙19ないし20,22ないし24)が多数存在し,多くの 約束ごとが定められていること,HTML(言語)は,プログラミング言 語ではあるが,集計・演算等の処理をするためのものではなく,ブラウザ の表示,装飾をするための言語であり,ウェブ画面のレイアウトと記載内容が定まっているときは,HTMLの表\現もほぼ同様となり,誰が作成しても似たようなものになることが認められる。
イ それにもかかわらず,本件において,原告は,甲19の表の右側(本件HTML)のうち青色で囲った部分はAが創作性を発揮して制作した部分\nであると主張した後,主張を若干変遷させて,甲25の2ないし4頁にお いて青枠部分を除いた部分が,Aが創作性を発揮した部分である旨主張し たものの,いずれにしても,以上のような抽象的な主張をするにとどまり, 本件HTMLにおいて,誰が作成しても同様の表現になるとはいえない程度に創作性のある表\現(表現者の個性が何らかの形で表\れている部分)があるかについて個別具体的な主張立証をしていない。

◆判決本文

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平成27(ワ)13258  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成28年7月27日  東京地方裁判所

 商品の説明文については著作物性(創作性)なしと判断されました。ただ、一部の挿絵についての侵害を認めました。判決文の最後に問題となった説明文と挿絵が表記されています。
 ア 被告説明文による原告説明文に係る著作権侵害の成否の判断について
原告は,原告説明文は創作性を有する表現たる著作物であり,被告説明文は原告\n説明文を複製したものであって,原告の著作権に対する侵害が成立する旨主張する。 そこで検討するに,上記著作権侵害が認められるためには,まず,1)原告説明 文と被告説明文とで共通する表現部分について,創作性が認められなければならな\nい。そして,原告説明文と被告説明文は,いずれも本件商品の取扱説明書における 説明文であるところ,製品の取扱説明書としての性質上,当該製品の使用方法や使 用上の注意事項等について消費者に告知すべき記載内容はある程度決まっており, その記載の仕方も含めて表現の選択の幅は限られている。これに対し,原告は,我\nが国においては,原告が初めて本件商品を販売した際,高い品質と安全性が求めら れる日本市場向けに幼児用首浮き輪の安全適切な使用方法等を分かりやすく理解さ せるための取扱説明書は存在していなかった旨指摘するけれども,そのような状況 にあっても,本件商品の使用方法や使用上の注意事項等については,それ自体はア イデアであって表現ではなく,これを具体的に表\現したものが一般の製品取扱説明 書に普通に見られる表現方法・表\現形式を採っている場合には創作性を認め難いと いわざるを得ない。本件商品の取扱説明書において,幼児のどのような行動に着目 した注意事項を記載しておくか,どのような文章で注意喚起を行うかといった点に ついても,選択肢の幅は限られているとみられる。 次に,前記前提事実に証拠(甲4,13)及び弁論の全趣旨を総合すると,原告 説明文は,モントリー説明書の英語の説明文を日本語に翻訳した上でこれを修正し て作成されたものであり,同説明文に依拠して作成されたものと認められる。二次 的著作物の著作権は,二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみにつ いて生じ,原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないこと(最高裁 平成4年(オ)第1443号同9年7月17日第一小法廷判決・民集51巻6号2 714頁〔ポパイ事件〕)に照らすと,上記1)で創作性が認められる表現部分につ\nいても,2)モントリー説明書の説明文と共通しその実質を同じくする部分には原 告の著作権は生じ得ず,原告の著作権は原告説明文において新たに付与された創作 的部分のみについて生じ得るものというべきである。そして,本件においては,上 記1)で原告説明文(日本語)と被告説明文(日本語)とで共通する表現部分につい\nて創作性が認められるとすれば,その理由は,もとより翻訳の仕方に関わるもので はなく,英文か日本文かに関わらない表現内容等によるものと考えられるから,上\n記2)では,モントリー説明書の英文を日本語に翻訳したその訳し方に創作性があっ たとしても,被告による原告の著作権侵害を基礎付ける理由にはなり得ず,表現内\n容等について原告説明文において新たに追加・変更された部分でなければ,上記「原 告説明文において新たに付与された創作的部分」には当たらないというべきである。 また,原告説明文において本件ガイドラインと共通しその実質を同じくする部分 についても,原告説明文がこれに依拠したと認められる場合には,上記2)と同様, 原告の著作権は生じないというべきである。

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平成27(ワ)27220  著作権侵害行為差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成28年4月27日  東京地方裁判所

 幼児用のお箸について、別訴で特許権侵害、意匠権侵害、不競法の商品形態模倣も請求棄却されたあとの、著作権侵害の訴訟です。著作物ではないと判断されました。
 (3) 前記前提事実に証拠(甲6,乙1,4)及び弁論の全趣旨を総合すると,原 告各製品については,1)幼児が食事をしながら箸の正しい持ち方を簡単に覚えられ ることを目的とした幼児の練習用箸であり,このような用途・機能を有する実用品\nとして量産される工業製品であること,2)一方の箸には,人差し指挿入用のリング 及び中指挿入用のリングが設けられ,他方の箸には,これら2つのリングよりは大 きな,やや縦長楕円形の,親指挿入用のリングが設けられているところ,これら各 リングが配置されている位置及び向きは,リングが上記3指の位置を固定して,正 しい箸の持ち方の手の形になるようにするという目的に適った位置及び向きであり, 人体工学に基づいて設計されたものであること,3)箸本体を上部の円形部材等で連 結させているところ,これは1本1本の箸を固定して箸先の交差を防止するという 機能を果たす目的によるものであることが認められる。これら各点に照らせば,上\n記2)のリングの個数,配置,形状等及び上記3)の連結箸である点は,いずれも上記 1)の幼児の練習用箸としての実用的機能を実現するための形状ないし構\造であるに すぎず,他に,原告各製品の外観のうち,原告が被告各商品と共通し同一性がある と主張する部分を見ても,際立った形態的特徴があるものとはうかがわれない。そ うすると,原告各製品が,上記実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得るよう\nな美的特性を備えているということはできない(もとより純粋美術と同視し得る程 度の美的特性を備えているということもできない。)。 なお,原告各製品について原告が保護を求めているところのものは,結局のとこ ろ,前示のとおり意匠法が意匠として保護を予定している量産され工業上利用可能\ な物品の形状等そのものであり,原告製品9と同一の形状とみられる意匠について 現に意匠登録もされている(ただ,被告各商品の販売開始時期に比してその出願・ 登録が遅かったにすぎない。)ものである。 (4) 以上によると,原告各製品は,著作権法2条1項1号所定の著作物には当た らないというべきである。

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平成27(ワ)18469  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 平成28年4月28日  東京地方裁判所

 ブログの表現が、記事に複製されたと著作権侵害を主張しましたが、著作物性なしと判断されました。元の表\現は、「私はEMの本質的な効果は,B先生が確認した重力波と想定される縦波の波動によるものと考えています。」です。これに対して、「本件記事1 EM菌の効果について,開発者のA・琉球大名誉教授は”重力波と想定される波動によるもの”と主張する。」でした。
 著作権法において保護の対象となるのは思想又は感情を創作的に表現したものであり(同法2条1項1号参照),思想や感情そのものではない。本件において本件原告記載と本件被告記載1及び2が表\現上共通するのは「重力波と想定される」「波動による(もの)」との部分のみであるが,この部分はEMの効果に関する原告の学術的見解を簡潔に示したものであり,原告の思想そのものということができるから,著作権法において保護の対象となる著作物に当たらないと解するのが相当である。

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平成28年(モ)第40004号保全異議申立事件(基本事件・平成27年(ヨ)第22071号仮処分命令申\\立事件)

 編集著作物の翻案が争われました。翻案であるとして仮処分を認めた決定を認可しました。対象は判例百選です。この事件も将来、判例百選に載るんでしょうね。
 そこで,上記イの判断を前提に,本件において,債権者が本件著作物の編集 著作者であるとの推定を覆す事情が疎明されているか否かについて検討する。 前記1(4)で認定した事実によると,1)債権者は,執筆者について,特定の実務家 1名を削除するとともに新たに別の特定の実務家3名を選択することを独自に発案 してその旨の意見を述べ,これがそのまま採用されて,本件著作物に具現されてい ること,2)本件著作物については,当初から債権者ら4名を編者として『著作権判 例百選[第4版]』を創作するとの共同の意思の下に編集作業が進められ,編集協 力者として関わったD教授の原案作成作業も,編者の納得を得られるものとするよ うに行われ,本件原案については,債権者による修正があり得るという前提でその 意見が聴取,確認されたこと,3)このような経緯の下で,債権者は,編者としての 立場に基づき,本件原案やその修正案の内容について検討した上,最終的に,本件 編者会合に出席し,他の編者と共に,判例113件の選択・配列と執筆者113名 の割当てを項目立ても含めて決定,確定する行為をし,その後の修正についても, メールで具体的な意見を述べ,編者が意見を出し合って判例及び執筆者を修正決定, 再確定していくやりとりに参画したことを指摘することができる。そして,執筆者 の執筆する解説は,本件著作物の素材をなしているところ,その執筆者の選定につ いては,とりわけ実務家を含めると選択の幅が小さくないこと,債権者が推挙した 当該3名の人選について,誰が選択しても同じ人選になるようなものとはいえない ことに照らせば,債権者による上記1)の素材の選択には創作性があるというべきで ある。その上,上記3)の確定行為の対象となった判例,執筆者及び両者の組合せの 選択並びにこれらの配列には,もとより創作性のあるものが多く含まれているとこ ろ,債権者が編者としての確定行為によりこれに関与したとみられるのである。そ うすると,上記1)ないし3)を総合しただけでも(その余の債権者主張事実の有無に ついて認定・判断するまでもなく),他の共同著作者の範囲はともかくとして,債 権者が本件著作物の編集著作者の一人であるとの評価を導き得るところ,本件にお いて,前記イの推定を覆す事情が疎明されているということはできない。 したがって,債権者は,編集著作物たる本件著作物の著作者の一人であるという べきである。

エ これに対し,債務者は,前記ウ1)に関し,(ア) 執筆者を推挙しただけでその 執筆者に判例を割り当てていない段階では,編集著作物の素材である解説の特定を していないから,素材の原料の提案にすぎず,素材の選択には当たらない,(イ) 債 権者の推挙した上記3名は,東京地裁知財部の部総括判事,元知財高裁判事の弁護 士及び著作権分野で高い実績を有し第3版においても執筆者になっていた弁護士で あるから,極めて「ありふれた」人選であって,創作性は全くない,(ウ) 仮に3名 の候補者を選択したのみで創作的な表現として著作権が生じるとすると,以後,同\n一の3名を選択することが複製に当たり著作権侵害となってしまう旨,前記ウ2)に 関し,(エ) 共同創作の「意思」があっても,何ら著作者性を基礎付ける事情とはな らない旨,前記ウ3)に関し,(オ) 著作権法においては,自ら物理的に創作的表現を\n表出していない者は,著作者たり得ないところ,著作者の認定においては,あくま\nでそのような客観的な創作的表現行為の有無のみが問題となるのであり,「立場」\nや「肩書」は何の意味も持たないし,「最終的な確定権限を有する者」というよう な行為者の権限を考慮することも許されない(当該権限を要件とするような解釈に 基づいて著作者の認定をすることは,同法2条1項2号,1号に反する。),(カ) 本 件編者会合における決定に参加したことは,他人が世に現出した表現について最終\n的に公表すべき表\\現であることを事後的に承認したにすぎず,本件著作物の作成に 創作的関与をしたとの評価にはつながらない,(キ) 本件編者会合後の修正について は,債権者は他者のした提案を一部事後承認したにすぎず,上記(カ)と同様に,本件 著作物の作成に創作的関与をしたとの評価にはつながらない,(ク) 債権者の前記ウ 3)の行為を債権者が本件著作物の編集著作者の一人であることの根拠とすることは, 「それまで表現されたものとして存在しなかったものを初めてつくり出す行為」を\nしていない者を著作者とすることであるから,同法2条1項2号,1号の文理に反 するし,著作物が創作され公表されるまでの間に関与する多数の者(学術論文の査\n読者から果てはマスコット・キャラクターを採択する会議に至るまでありとあらゆ る「確定者」)にいたずらに著作者の外延が拡大されてしまいかねない,(ケ) 債権 者の本件編者会合における承認及びその後の一部承認を創作的関与に含めて考える ことは,智恵子抄事件最高裁判決に反する旨をそれぞれ主張した上,(コ) 本件著作 物の編集に関し,債権者は,極めて限定的な関与しかしていないから,債権者が本 件著作物の編集著作者の一人であるとの評価は導き得ない,(サ) 債権者の関与して いない部分は,債権者の関与した箇所と分離して利用することができるから,同項 12号の共同著作物の要件(分離利用不可能性の要件)を満たさないなどと主張す\nる。
しかしながら,上記(ア)の点については,本件著作物において,執筆者の執筆する 解説が本件著作物の素材をなしていることは前記ウで説示したとおりであるところ, 本件著作物においてそのような解説を執筆する者を,いずれの判例を割り当てるか とは独立に選定することは可能であり,その場合,執筆者を推挙した段階で,「当\n該執筆者がいずれかの判例について執筆する解説」が観念されるから,これが素材 の選択におよそ当たらないということはできない。また,いずれにせよ,判例と執 筆者の組合せが特定されていなかったからといって,本件著作物における「執筆者 の執筆する解説」という素材の選択に関して債権者が寄与したことが否定されるも のではない。
上記(イ)の点については,本件著作物における解説の執筆者として,学者を選ぶか 実務家を選ぶか,実務家にしても裁判官にするか弁護士にするかについて,選択の 幅は大きく,裁判官や裁判官OBについても知財高裁・地裁知財部経験者の人数は 決して少なくないこと,現に第4版に関するそれまでの執筆者の案(本件原案のほ か,A教授が列挙した候補者の案なども含む。)では当該3名が含まれていなかっ たこと(前記1(4)ウないしカ),第3版や本件雑誌にもa判事とb弁護士は入って いないこと(別紙「著作権判例百選判例変遷表」,甲2の3),B教授は,当初,\nb弁護士を執筆者として追加することに消極の意見を表明していたこと(前記1(4) ク)などに照らすと,当該3名について,誰が選択しても同じ人選になるようなも のとはいえず,「ありふれた」人選などということもできない。
上記(ウ)の点については,ここでの執筆者3名というのは,本件著作物の執筆者と なった113名の中の一部であるところ,前記ウの判断は,当該3名を選択したの みで直ちに創作的な表現として独立の編集著作権が生じるとするものではなく,あ\nくまでも本件著作物全体の表現(素材の選択及び配列)について創作性が認められ\nる場合に,これを構成する一部の創作への関与(換言すれば,債権者が関与した部\n分が上記創作性を有する表現を形成する一部をなしているか)を問題とするもので\nあるし,また,債権者の当該行為時点について見ても,執筆者110名から1名を 削除し3名を加えて112名とする場合の当該3名の選択が問題となっているので ある。さらに,前記ウの判断は,必ずしも同1)の行為のみで編集著作者となり得る と判断しているわけではなく,同1)ないし3)を総合して編集著作者となり得ると判 断しているのであって,債権者が,同3)の行為をしているほかに,自ら同1)の行為 もしていることを,全体として評価すべきところである。
上記(エ)の点については,前記ウ2)の事情は,同3)の債権者の行為の前提となるも のであるから,同1)ないし3)があいまって全体として債権者の編集著作者性を基礎 付ける事情になるということができる。
上記(オ)の点については,本件のように共同編集著作物の著作者の認定が問題となる事案においては,編集著作物の完成に向けられた表現(素材の選択・配列)の創\n作に係る複数の者の一連の行為(一瞬の物理的な行為のみではない。)を全体とし て観察し,そのような一連の編集過程への実質的な関与の有無やその位置付け等を 総合的に検討して,一定の規範的な評価をすることは,避けられないものと解され る。そして,それ自体としては同じように見える行為についても,どのような状況 (コンテクスト)において,どのような立場(一貫して編集の主体とされ,内容に ついて決定権や責任を有する者としての行為なのか,アドバイスを求められた外部 の第三者としての行為なのか,事務的な補助者としての行為なのか等々)でそれを 行ったのかということにより,その行為の社会的な意味合いや位置付けは異なり得 るのであって,そのことが事実認定及び法的評価にも影響するのは当然というべき である。上記のような意味での行為者の立場を全く捨象して単純に裸の作為(「物 理的な」創作的表現表\\出行為)のみを取り出すことは,実態にそぐわない編集著作 者の認定をすることにつながりかねず,相当ではない。既に認定,説示したところ からすれば,本件著作物の編集過程において,債権者が,素材の選択及び配列に関 する実質的な権限を有しそれに基づき実質的な関与をしたことは明らかであって, 単に名義を貸しただけとか,単に名目的な「肩書」のみを有して形だけ関わったと いったケースとは明らかに異なる。なお,編集著作物の素材の選択・配列の確定に 関し行為者がどのような権限を有していたかという点も,編集著作者の認定に当たっ て一つの事情となり得るものであって,これを考慮すること(もとよりこれを「要 件」とするものではない。)が許されないということはない。 上記(カ)ないし(ク)の点については,当該編集著作物の編集過程において,当該者自 身が当該創作的表現を「物理的にこの世に現出させる」独自の提案作成行為をしな\nかった場合においても,当初から当該者を含めた複数の者を編者として当該編集著 作物を創作するとの共同の意思の下に共同作業をしている他の者が先行して「物理 的にこの世に現出させる」提案をした部分について,当該者が,それを修正するこ ともできたのに検討の上修正せずに,当該部分をそのとおり採用する決定に加わっ たという行為は,創作への関与として一概に無視することはできない。前記1(4) で認定した事実経過に照らすと,債権者は,本件著作物の編集過程に客観的・外形 的に関与しているのみならず,素材の選択及び配列について実質的な中身を思考し これに基づき上記行為をしているとみられるものであって,前記ウ3)の債権者の行 為は,著作物の形成ないし創作性の形成への「客観的な事実行為としての実質的な 関与」に当たるということができる。本件著作物の「創作」については,本件著作 物の完成に向けた一連の編集過程が開始される前には「それまで表現されたものと\nして存在しなかったもの」を,同編集過程が完了し本件著作物が完成した時点で「初 めてつくり出す行為」であり,その「創作」の主体が債権者を含めた複数の者とな るとみられるのであって,これが著作権法2条1項2号,1号の文理に反するとい うことにはならない。また,既に認定,説示したところに従って,債権者の同3)の 行為を債権者が本件著作物の編集著作者の一人であることの根拠としたとしても, 著作物が創作され公表されるまでの間に関与する多数の者にいたずらに著作者の外\n延が拡大することにはならない(単に名前を貸して形式的に権威付けをしただけの 者や,債務者が例に挙げる「学術論文の査読者」等,もともと創作する側の主体と は異なる立場から関与したり,表現内容の形成・変更の直接の決定権を有していな\nい者などは,共同著作者の一人とは認められない。)。「認定」ということの性質上, 個々の事案に合致した認定をして「共同編集著作者」の範囲を適切に画するほかは ないし,かえって,常に「最も早く物理的に表出した者が誰か」のみに着目すると\nいうことでは,本件のような事案で実態にそぐわない結論を導いてしまいかねない。 上記(ケ)の点については,智恵子抄事件最高裁判決は,当該個別事案における認定 を示した事例判例であって,本件における債権者のような者を編集著作者と認めて はならないとの判断を何ら含意しているものではないから,前記ウ3)に係る判断が 同最高裁判決に「反する」ということはない。 上記(コ)の点については,前記ウ1)の行為と,同2)を前提とした同3)の行為を総合 した場合に,債権者の関与が「極めて限定的」で編集著作者の一人との評価を導き 得ないものであるということはできない。 上記(サ)の点については,前記ウ3)の債権者の行為は,本件著作物全体に係ってい るし,同1)の債権者による素材の選択も,前示のとおり,他の素材の選択及び組合 せとあいまって全体の編集著作物を構成しているものであるから,債権者の関与部\n分のみを分離して個別に利用することはできない。本件著作物は,著作権法2条1 項12号の「二人以上の者が共同して創作した著作物であって,その各人の寄与を 分離して個別的に利用することができないもの」に当たるというべきである。 以上によると,債務者の上記各主張によって,債権者が本件著作物の編集著作者 であるとの推定を覆すことはできない。
(2) 翻案該当性ないし直接感得性(争点2)について
ア 前記1(5),(6)で認定した事実によると,1)判例の選択については,本件著作 物の収録判例と本件雑誌の収録判例とで97件が一致しており(そのうち94件は 審級も含めて全く同一であり,3件は審級のみ異なり対象事件が同一である。), 割合的には,本件著作物の収録判例113件のうち約86%が本件雑誌にも維持さ れ,かつ,当該一致部分が本件雑誌の収録判例116件のうち約84%を占めてい ること,2)執筆者(執筆者の執筆する解説)の選択については,本件著作物におけ る執筆者と本件雑誌における執筆者とで93名が一致しており,割合的には,本件 著作物の執筆者113名のうち約82%が本件雑誌にも維持され,かつ,当該一致 部分が本件雑誌の執筆者117名のうち約79%を占めていること,3)判例と執筆 者(執筆者の執筆する解説)の組合せの選択については,本件著作物における組合 せと本件雑誌における組合せとで83件が一致しており,割合的には,本件著作物 における判例と執筆者の組合せ113件のうち約73%が本件雑誌にも維持され, かつ,当該一致部分が本件雑誌における判例と執筆者の組合せ117件のうち約7 1%を占めていること,4)判例及びその解説(以下,併せて「判例等」という。) の配列については,本件著作物の判例等と本件雑誌の判例等とで合計83件の配列 (順序)が一致しており,割合的には,本件著作物の判例等113件のうち約73% の判例等の配列(順序)が本件雑誌にも維持され,かつ,当該一致部分が本件雑誌 の判例等117件のうち約71%を占めていること,5)判例等の配列を位置付ける 項目立てについても,本件著作物の大項目及び小項目の立て方と本件雑誌の大項目 及び小項目の立て方とでその大半が一致していることを指摘することができる。そ うすると,本件著作物と本件雑誌とで判例等の選択及び配列が全体として類似して いることは明らかであって,本件著作物の判例等の選択・配列の大部分が本件雑誌 にも維持されていることが確認できるとともに,本件雑誌の判例等の選択・配列を 見たときに本件著作物のそれに由来する上記各一致部分の全部又は一部を優に感得 することができる。 そして,本件著作物及び本件雑誌に掲載される判例と執筆者の執筆する解説が編 集著作物たる本件著作物及び本件雑誌の素材であるところ,その表現(素材の選択\n又は配列)の選択の幅(個性を発揮する余地)を考えると,『判例百選』の性格上, 判例の選択や判例等の配列に係る選択の幅はある程度限られるものの,執筆者の選 択すなわち誰が執筆する解説を載せるかという選択の幅は決して小さくない上,ど の判例の解説の執筆者として誰を選ぶかに係る選択の幅は極めて広いというべきで ある。そうすると,上記1)ないし5)で指摘した,本件著作物と本件雑誌とで表現(素\n材の選択又は配列)上共通する部分には,創作性を有する表現部分が相当程度ある\nものということができる(なお,編集著作物における素材の選択及び配列に係る上 記各一致部分の組合せ全体に創作性を認めることもできると考えられる。)。 以上の事情を総合すれば,本件著作物と本件雑誌とで創作的表現が共通し同一性\nがある部分が相当程度認められる一方,本件雑誌が,新たに付加された創作的な表\n現部分により,本件著作物とは別個独立の著作物になっているとはいい難い。 このように検討したところによると,本件雑誌の表現からは,本件著作物の表\\現 上の本質的特徴を直接感得することができるというべきである。
イ そして,前記1で認定したとおり,本件雑誌が本件著作物の改訂版として作 成されているものであることなどに照らすと,編集著作物たる本件雑誌が本件著作 物に依拠して編集されたことは明らかである。
ウ 以上によれば,編集著作物たる本件雑誌を創作する行為は,本件著作物に依 拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\\現に修正, 増減,変更等を加えて,新たに思想を創作的に表現することにより,これに接する\n者が本件著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を\n創作する行為,すなわち本件著作物の翻案に該当し,本件雑誌は本件著作物を原著 作物とする二次的著作物に該当する。 また,他人の著作物を素材として利用しても,その表現上の本質的な特徴を感得\nさせないような態様においてこれを利用する行為は,原著作物の同一性保持権を侵 害しないと解すべきであるが(最高裁平成6年(オ)第1028号同10年7月1 7日第二小法廷判決・判時1651号56頁等参照),本件雑誌における本件著作 物の利用は,このような同一性保持権侵害の要件をも満たすということができる。 (3) 本件著作物を本件原案の二次的著作物とする主張の当否(争点3)について 債務者は,本件著作物は本件原案を原著作物とする二次的著作物にすぎないとし た上で,二次的著作物の著作権者が権利を主張できるのは新たに付加された創作的 部分に限られるところ,本件著作物において本件原案に新たに付加された創作的表\n現が本件雑誌において再製されているとは認められない旨主張する。 しかしながら,前記1で認定した事実に前記(1)で説示したところを総合すると, 本件原案は,最終的な編集著作物たる雑誌『著作権判例百選[第4版]』の完成に 向けた一連の編集過程の途中段階において準備的に作成された一覧表の一つであり,\nまさしく原案にすぎないものであって,その後編者により修正,確定等がされるこ とを当然に予定していたもの(編者が検討するための叩き台,提案)であったこと\nは明らかであり,実際,本件原案作成後,その予定どおり,債権者を含む編者によ\nりその修正等がされ,最終的に編集著作物の素材の選択・配列が確定されて本件著 作物として完成されるに至ったものである。そうすると,本件においては,その完 成の段階で,債権者を共同著作者の一人に含む共同著作物が成立したとみるのが相 当である一方,途中の段階で本件原案が独立の編集著作物として成立したとみた上 で本件著作物について本件原案を原著作物とする二次的著作物にすぎないとするこ とは相当ではない(なお,債務者は,最終作品の作成過程において準備的に作成さ れたものが,第三者によりコピーされ,最終作品の完成後に無断でネット上で公開 されてしまった場合に,当該準備的に作成されたものも最終作品とは別個の著作物 としての保護を受けることを指摘する。しかし,そのような事例において,第三者 によるコピーの時点で,当該準備的に作成されたものがそれ自体著作物性を肯定し 得るものであったならば,それを著作物とする著作権又は著作者人格権の行使を第 三者との関係で肯認することができるとしても,本件のように,既に完成された最 終作品の翻案が問題となっているケースにおいて,当該最終作品を,同作品の完成 に向けて準備的に作成されていた原案の一つを原著作物とする二次的著作物にすぎ ないとして,最終作品に基づく権利行使を制約することは,相当でないことに変わ りはない。)。 したがって,債務者の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。

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平成27(ネ)10102  損害賠償等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成28年3月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 プログラムが利用するテンプレートデータについて、著作物に該当しないとした1審判断が維持されました。
 プログラムの著作物の複製権又は翻案権を侵害したといえるためには,既存のプ ログラムの具体的表現中の創作性を有する部分について,これに依拠し,この内容\n及び形式を覚知させるに足りるものを再製するか,又は,その表現上の本質的な特\n徴の同一性を維持しつつ,これに修正,増減,変更等を加えて,新たな思想を創作 的に表現し,新たな表\現に接する者が従来の表現の本質的な特徴を直接感得するこ\nとのできるものを創作したといえることが必要であり,単にプログラムが実現する 機能や処理内容が共通するだけでは,複製又は翻案とはならない。\n本件においては,控訴人プログラム及び被控訴人プログラムのいずれについても, 極めてわずかな部分を除いては,適式にソースコードが開示されておらず,それぞ\nれのプログラムの具体的表現は不明というほかなく,控訴人プログラムの創作性の\nある具体的表現内容やこれに対応する被控訴人プログラムの具体的表\現内容も不明 である。もっとも,控訴人プログラムのソースコードは,約19万行と認められるから(弁論の全趣旨),その全部に創作性がないことは考えにくく,仮に,被控訴人\nプログラムが,控訴人プログラムにおいて創作性を有する蓋然性の高い部分のコー ドの全部又は大多数をコピーして作成されたものといえる事情があるならば,被控 訴人プログラムは,控訴人プログラムを複製又は翻案したものと推認することがで きる。
以下,この観点から,控訴人の指摘する点に沿って検討を加える。
(2) 控訴人の主張について
1) 被控訴人が控訴人プログラムのTemplate.mdbを複製したことは,当事者間に争いがない。 しかしながら,被控訴人がTemplate.mdbを複製したのは,専ら旧SSTとの互換性を確保するためであると認められるところ,上記のとおり,Template.mdbに格納するデータはTemplate.mdb以外のプログラムが処理をするものであり,当該データを定義するコードを除いて,Template.mdbを複製したからその余のプログラムも複製されたと推認される関係にはない。また,Template.mdbに格納するデータは,前記1(1)のとおり,作成された文字情報や各種設定情報であるから,これを定義するコードの表現に選択の幅はないか,ほぼないと認められるから,このコード自体に創作性を認めることも困難である。たがって,Template.mdbが複製されているとしても,そのことは,被控訴人プログラムが控訴人プログラムにおいて創作性を有する蓋然性の高い部分のコードの全部又は大多数をコピーしたことを推認させる事情とはいえない。
2) 控訴人プログラムには,xlsx形式(Excel2007)で出力された字幕ファイルであっても,その拡張子に「xls」(Excel2003)が付されてしまう事象が生じていたところ,平成25年にリリースされた本件プログラムでも同様の事象が生じていたたことが認められる(甲36,37,157,159)。上記事象の原因が,控訴人が主張するように,この事象に関係するコードがExcel2007が頒布開始された平成19年(2007年)より前に作成されたことによるのか,被控訴人が主張するように開発環境にExcel2007がなかったことによるのか, あるいは,単なるバグであるのか(平成25年にリリースされた製品でもそれ以前 に販売されたソフトウェアに対応する必要性はある。),いずれとも確定し難い。し\nたがって,上記事象が,控訴人プログラムのソースコードと被控訴人プログラムの\nソースコードとの特異な一致ということもできない。\nしたがって,上記事象があるとしても,そのことは,被控訴人プログラムが控訴 人プログラムにおいて創作性を有する蓋然性の高い部分のコードの全部又は大多数 をコピーしたことを推認させる事情とはいえない。
3) 控訴人は,本件プログラムには,字幕ウィンドウのハコ全体に対する表示属\n性の設定がハコ内に入力される字幕すべてに適用されないという,控訴人プログラ ムと同様のバグがあると主張する。しかしながら,テキストを全選択して属性設定をしても,その選択範囲よりも前の部分に新たに挿入した文字にその属性が反映されないのは,プログラムとして普通のことである。しかるに,そもそも本件プログラムにはハコ全体に対する表示属性設定機能\がないとの被控訴人の主張や,被控訴人プログラムのマニュアルにおける「全て個別設定になります。」との記載(甲23添付の別紙マニュアルの37頁)にかんがみると,控訴人提出の証拠(甲43〜46)によって示されているのは単なるテキストの全選択にすぎないものと認めるほかなく,本件プログラムに控訴人プログラムと同様のバグがあることを認めるには足りない。

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◆1審判決はこちち。平成25(ワ)18110

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平成27(ワ)7033  不正競争差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成28年1月14日  東京地方裁判所

 対象の加湿器の形状は不競法の商品でない、著作物でもないと判断されました。
 原告らの不正競争防止法2条1項3号に基づく請求に対し,被告らは,原告加湿器1及び2は同号により形態が保護される「商品」に当たらない旨主張する。 そこで判断するに,同号が他人の「商品」の形態の模倣に係る不正競争を規定した趣旨は,市場において商品化するために資金,労力等を投下した当該他人を保護することにあると解される。そして,事業者間の公正な競争を確保するという同法の目的(1条参照)に照らせば,上記「商品」に当たるというためには,市場における流通の対象となる物(現に流通し,又は少なくとも流通の準備段階にある物)をいうと解するのが相当である。 論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア 原告加湿器1及び2は加湿器として開発されたものであり,使用するためには電源が必要になるところ,原告が平成23年11月及び平成24年6月に展示会に出品した際には,いずれも加湿器の本体を外部電源に銅線で接続することにより電気の供給を受ける構成となっていた。(甲3,5,20)\n
イ 原告らは,平成24年7月,被告スタイリングライフの担当従業員から原告加湿器2の製品化について問合せを受けたのに対し,原告らと考えの合致する製造業者が見つかっておらず,製品化の具体的な日程は決まって いない旨回答した。(甲7)
ウ 原告らは,平成27年1月5日頃,原告らのウェブサイトで原告加湿器3の販売を開始した。原告加湿器3は,加湿器本体とUSB端子がケーブルで接続され,これにより電気の供給を受ける構成となっている。(甲16,17)\n上記事実関係によれば,原告加湿器1及び2は,上記各展示会の当時の構成では一般の家庭等において容易に使用し得ないものであって,開発途中の試作品というべきものであり,被告製品の輸入及び販売が開始された平成25年秋頃の時点でも,原告らにおいて原告加湿器1及び2のような形態の加湿器を製品化して販売する具体的な予\\定はなかったということができる。そうすると,原告加湿器1及び2は,市場における流通の対象となる物とは認められないから,不正競争防止法2条1項3号にいう「商品」に当たらないと解すべきである。
・・・
そこで判断するに,同法2条1項1号は「著作物」とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」旨,同条2項は「この法律にいう『美術の著作物』には,美術\n工芸品を含むものとする」旨規定している。これらの規定に加え,同法が文化の発展に寄与することを目的とするものであること(1条),工業上利用することのできる意匠については所定の要件の下で意匠法による保護を受けることができることに照らせば,純粋な美術ではなくいわゆる応用美術の領域に属するもの,すなわち,実用に供され,産業上利用される製品のデザイン等は,実用的な機能を離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えている場合を除き,著作権法上の著作物に含まれないものと解される。
(3)これを本件についてみるに,証拠(甲3,5,20)及び弁論の全趣旨によれば,原告加湿器1及び2は,試験管様のスティック形状の加湿器であって,本体の円筒状部の下端に内部に水を取り込むための吸水口が,本体の上部に取り付けられたキャップの上端に噴霧口がそれぞれ取り付けられており,この吸水口から内部に取り込んだ水を蒸気にして噴霧口から噴出される構造となっていることが認められる。そして,以上の点で原告加湿器1及び2が従来の加湿器にない外観上の特徴を有しているとしても,これらは加湿器としての機能\\を実現するための構造と解されるのであって,その実用的な機能\\を離れて見た場合には,原告加湿器1及び2は細長い試験管形状の構造物であるにとどまり,美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えていると認めることはできない。\n

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平成26(ワ)22400  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年11月30日  東京地方裁判所

 英単語の語呂合わせについて、著作物性なしと判断されました。問題となった表現は、beard「ビヤーッ、どっとはえる( )」。というものです。
 このことからすると,確かに,原告書籍に接する読者は,原告語呂合わせ中の括 弧付きの空欄部分に,同語呂合わせの下部に記載されている当該英単語の日本語訳 を適宜読み込んで認識するものといえ,当該括弧付きの空欄部分は,当該英単語の 日本語訳を読み込むことが予定されていることは明らかである。\nしかしながら,上記のとおり,原告は,「原告語呂合わせ」として主張する具体 的表現を別紙語呂合わせ対照表\の「原告書籍」欄各記載の英単語の語呂合わせ,す なわち,英単語の語呂合わせ内に括弧付きの空欄部分を含む表現として特定するに\nとどまり(上記画像の赤枠部分参照),例えば括弧付きの空欄部分を含む語呂合わ せと当該英単語の日本語訳との組み合わせがまとまりのある著作物であるなどとの 主張はしていない(当然,被告において,原告が捨象した部分も含めて具体的表現\nを対比すべきとの反論は行われていない。)のであるから(知財高裁平成24年(ネ) 第10027号同年8月8日判決・判時2165号42頁参照),被告語呂合わせ と対照して共通部分を認定すべき原告語呂合わせの具体的表現は,括弧付きの空欄\n部分を含むものというほかなく,当該括弧付きの空欄部分に,対象となった英単語 の日本語訳を読み込んだものを具体的表現とすべきではない。
イ なお,原告語呂合わせと被告語呂合わせとは,フォント,コンマ,色,強調 点の有無,読み仮名の有無の点で相違する部分があるが,これらの点は,上記に認 定した原告書籍と被告書籍の具体的体裁の下では,共通部分の認定に直ちに影響す るものとは認め難いので,ひとまず,これらの点を捨象して,原告語呂合わせと被 告語呂合わせの共通部分を認定することとする。 (3) 個別の語呂合わせについての検討
[1] 原告語呂合わせ1及び被告語呂合わせ1について
原告語呂合わせ1と被告語呂合わせ1とは,「びあー」様の記述に続けて「,どっと」と記述する点において共通している。 しかしながら,上記共通部分はごく短い上,共に「beard」という英単語とよく似た発音を有する語句を主要な構成要素とするものであるが,特定の英単語を語呂合わせにしようとすること自体はアイデアであって著作権法上の保護を受け得ないところ,同アイデアを表\現する上では,当該英単語とよく似た発音を有し,かつ,当該英単語の日本語訳と意味が通じる日本語の語句を選択した上,この語句と,当該英単語の日本語訳とをつなげることが不可欠な要素となり,これらの要素は,特定の英単語を語呂合わせにしようというアイデアを表現する上で不可欠な表\現上の制約であるというべきである。そして,「beard」の発音をカタカナ読みして「ビアード」とし,これと日本語訳(あごひげ)とを「どっと」というありふれた語句を付加してつなげることは,誰が行っても必然的に同一の表現になるものではないとしても,上記表\現上の制約により相当程度限定された選択肢の中でされた表現の域を出るものではなく,かかる意味においてありふれた表\現と言わざるを得ないから,思想又は感情を創作的に表現したものと認めることは困難である。\nしたがって,原告語呂合わせ1と被告語呂合わせ1とは,表現上の創作性のない部分において同一性を有するにすぎないから,被告語呂合わせ1は,原告語呂合わせ1を複製又は翻案したものには当たらない。\n
・・・
なお,本件では,被告書籍を執筆したBが原告語呂合わせに依拠して被告語呂合わせを作成したことは,優に認められるところ(甲1ないし5,弁論の全趣旨),Bにおいて,著作権等の侵害を否定しつつも,被告から同人に支払われる印税の半分を原告及びアクティブ・ブレイン協会に支払う旨の申し出をし,合意書の案まで作成していたという経緯が存在する(甲6,7,弁論の全趣旨)。しかるに,被告は,被告書籍の発行に先立って,被告書籍が原告書籍と類似しているとして,訴訟など何らかの措置をとる可能\性があることを示唆する手紙を原告から受領した後(乙11,14),単に被告書籍の発行を中止しなかったにとどまらず,Bが原告との間で合意書を取り交わした場合には,Bに法的手段をとることを辞さない構えであること等を通知したのであって(甲8,乙13,14),原告がかような被告の対応を心外に感じ,法的手続をとるに至ったことにも無理からぬところがあると思われるが,著作権法に基づく原告の請求を認めることが困難であることは,上述したとおりである。\n 515/085515

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平成27(ネ)10049  著作権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成27年11月10日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審と同様に、知財高裁は本件のキャッチフレーズについては創作性なしと判断しました。
 控訴人は,創作性の問題の本質は長さの点になく,創作者の何らかの個性 が現れていれば足りるし,短い表現であっても,選択の幅が狭いとはいえない以上,\n控訴人キャッチフレーズ2について,著作物性が肯定されるべきである,控訴人キ ャッチフレーズ2は,五七調の利用や人物を主語としない表現という意味で,需要\n者に強く印象を与えるものであり,従業員が試行錯誤して完成させた,他の英会話 教材の宣伝文句にはない,独自のものである旨主張する。 しかしながら,許容される表現の長さによって,個性の表\れと評価できる部分の 分量は異なるし,選択できる表現の幅もまた異なることは自明である。特に,広告\nにおけるキャッチフレーズのように,商品や業務等を的確に宣伝することが大前提 となる上,紙面,画面の制約等から簡潔な表現が求められ,必然的に字数制限を伴\nう場合は,そのような大前提や制限がない場合と比較すると,一般的に,個性の表\nれと評価できる部分の分量は少なくなるし,その表現の幅は小さなものとならざる\nを得ない。さらに,その具体的な字数制限が,控訴人キャッチフレーズ2のように, 20字前後であれば,その表現の幅はかなり小さなものとなる。そして,アイデア\nや事実を保護する必要性がないことからすると,他の表現の選択肢が残されている\nからといって,常に創作性が肯定されるべきではない。すなわち,キャッチフレー ズのような宣伝広告文言の著作物性の判断においては,個性の有無を問題にすると しても,他の表現の選択肢がそれほど多くなく,個性が表\れる余地が小さい場合に は,創作性が否定される場合があるというべきである。 本件において,控訴人商品は,リスニングを中心にすえた英会話教材中,集中し て聞き入るという方法ではなく,聞き流す方法を採用した教材であり,控訴人キャ ッチフレーズ2は,控訴人商品を英会話教材として利用した場合に,自然に流暢に 英語を話すことができるようになるという効果があることを謳ったものであるが, その使用方法や効果自体は,事実であるし,消費者に印象を与えるための五七調風 の語調の利用や,商品を主語とした表現の採用自体は,アイデアにすぎない。また,\n劇的に学習効果が現れる印象を与えるための「ある日突然」という語句の組合せの 利用や,ダイナミックな印象を与えるための「飛び出した」という語句の利用に関 しても,上記アイデアを表現する上で一定の副詞や動詞を使用することは不可欠で\nあるから,他の表現の選択肢はそれほど多くないといわざるを得ない。現に,同様\nのアイデアを表現する上で,控訴人自身が過去に採用したキャッチフレーズにおい\nて,「・・・英語が口から飛び出す!」,「ある日突然,・・・(英語が話せてびっくり した!)」,「ある日突然,・・・(自然と英語が口をついて出てくる!)」,「ある日突 然,英語が口から飛び出して」,「・・・突然,英語が口から飛び出す」(いずれも甲 5)という控訴人キャッチフレーズ2と共通する部分が存在する。また,キャッチ フレーズではないが,控訴人キャッチフレーズ2の公表後に発表\された英会話の上 達方法に関するウェブサイトにおいて,無意識に自然と流暢に英語を話せるように なるという劇的な効果を説明するために,「ある日突然に,・・・口から飛び出る」 (乙15),「ある日突然,・・・英語のフレーズが口から飛び出してきます。」(乙1 7),「ある日突然「するっと英語が話せる」ようになった」(乙18)といった語句 が使用され,控訴人キャッチフレーズ2と同じ副詞や動詞が選択されているのであ って,これらは,控訴人商品と同様の学習効果を表現する上で,他の表\現の選択肢 が限られていることをうかがわせるものである。このような意味において,控訴人 キャッチフレーズ2における語句の選択は,ありふれたものということができる。 したがって,控訴人キャッチフレーズ2に著作物性が認められないとした原判決 の判断に,誤りはないというべきである。

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平成25(ワ)1074  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年9月24日  大阪地方裁判所

 ピクトグラムについて著作物性が認められました。ただし、一部変更したものは複製・翻案ではないと判断されました。認められたのは修正費用の22万円です。
 本件ピクトグラムは,実在する施設をグラフィックデザインの技法で描き,これを,四隅を丸めた四角で囲い,下部に施設名を記載したものである。本件ピクトグラムは,これが掲載された観光案内図等を見る者に視覚的に対象施設を認識させることを目的に制作され,実際にも相当数の観光案内図等に記載されて実用に供されているものであるから,いわゆる応用美術の範囲に属するものであるといえる。 応用美術の著作物性については,種々の見解があるが,実用性を兼ねた美的創作物においても,「美術工芸品」は著作物に含むと定められており(著作権法2条2項),印刷用書体についても一定の場合には著作物性が肯定されていること(最高裁判所平成12年9月7日判決・民集54巻7号2481頁参照)からすれば,それが実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えている場合には,美術の著作物として保護の対象となると解するのが相当である。
イ 本件ピクトグラムについてこれをみると(侵害が問題となっている別紙1の19個に限る。),ピクトグラムというものが,指し示す対象の形状を使用して,その概念を理解させる記号(サインシンボル)である(甲15)以上,その実用的目的から,客観的に存在する対象施設の外観に依拠した図柄となることは必然であり,その意味で,創作性の幅は限定されるものである。しかし,それぞれの施設の特徴を拾い上げどこを強調するのか,そのためにもどの角度からみた施設を描くのか,また,どの程度,どのように簡略化して描くのか,どこにどのような色を配するか等の美的表現において,実用的機能\を離れた創作性の幅は十分に認められる。このような図柄としての美的表\現において制作者の思想,個性が表現された結果,それ自体が実用的機能\を離れて美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている場合には,その著作物性を肯定し得るものといえる。 この観点からすると,それぞれの本件ピクトグラムは,以下のとおり,その美的表現において,制作者であるP1の個性が表\現されており,その結果,実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているといえるから,それぞれの本件ピクトグラムは著作物であると認められる(弁論の全趣旨)
・・・・
天保山運河の形状については,別紙4案内図では,港区は八幡屋3丁目と海岸通り3丁目を結ぶ浮島橋の取付部(八幡屋側)の凸部,及び福崎3丁目と海岸通り4丁目を結ぶ新福崎橋が表記されているが,本件地図デザインにおいては,いずれの表\記もなく,すっきりした直線となっている点で異なっている。
エ 判断
以上の事実関係を前提に別紙4案内図が本件地図デザインの複製あるいは翻案かについて検討する。
別紙4案内図は,上記イ(ア)及び(ウ)のとおり,本件地図デザインと,咲州の北側の形状,第二寝屋川から南方向に記載された二本の川の形状において共通し,この点は,被告大阪市が別紙4案内図を作成する際に参考したとする公社図面及び大阪市全図や昭和62年の全体案内図と異なっている。しかし,上記の二本の川の形状についても,一部については上記地図と似ているほか,同イ(イ)及び(エ)のとおり,別紙4案内図と 本件地図デザインとは,淀川や木津川の川筋は似ているものの,これは他の公社地図及び大阪市全図においてもほぼ同様であり,地形的に存在する川筋を客観的に記載したためにすぎず,これを形状において共通すると評価することはできない。むしろ,その余の点については,両者は異なっている。さらに,別紙4案内図は,前記ウの点で,本件地図デザインとは異なっており,かえって公社地図あるいは大阪市全図と似通っている。 このように,原告が主張する共通点のうち,別紙4案内図が本件地図デザインの特徴と共通する部分は咲州及びごく一部の川の形状についてのみであるところ,他に多数の点で相違していること,本件地図デザインが全体的に直線的な線ですっきりと描かれているのに対し,別紙4案内図がある程度地理的な曲線を簡略にせず描いていることからすれば,本件地図デザインの表現において認められるP1の個性が,別紙4案内図においてこれを感得することはできないと言わざるを得ない。\nそうすると,仮に,原告が指摘するように,ジェネシスが別紙4案内図を作成するにあたり,本件地図デザインの一部を参考にした事実があったとしても,別紙4案内図が,本件地図デザインの複製又は翻案ということはできないから,原告の本件地図デザインの著作権及び著作権侵害に基づく請求は理由がない。

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平成26(ワ)26770  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年7月16日  東京地方裁判所

 資格試験の予備校が発行しているテキストについて、著作権侵害か否かが争われました。東京地裁は、複製や翻案ではないと判断しました。
 原告表現1は,原告書籍1に掲載された平成8年一級建築士本試験の製図問題(設計課題「景勝地に建つ研修所」)中の図面であり,原告書籍1には次の1)ないし3)の点を除いて上記問題がそのまま掲載されている(甲1,18の3,乙1)。 原告は,原告表現1と上記問題の図面とは,1)湖を表す部分,2)等高線の描き方,3)方角表示が異なっており,これらの点については原告が独自の表\現をしたものであるから,原告表現1には創作性が認められると主張する。\nそこで判断するに,1)の湖を表す部分が,上記問題の図面ではまだら状の模様であったのを,一部を切り欠いた横線とし,切り欠き部分が斜め方向に連なるような模様としている点,2)の等高線の描き方が,線の曲がり方が同図面より緩やかになっている点,3)の方角表示が同図面より細い矢印を用いている点で原告表\現1は同図面と異なっているが(別紙侵害部分対照表1参照),これらのうち水面を横線で表\示することはありふれた表現方法であると解される。また,等高線の曲がり方の相違は僅かなものであるし(同上),方角表\示を矢印で表現することは,矢印の太さにかかわらずありふれたことであり,その表\現に作成者の個性が表れているとみることは困難である。これに加え,原告書籍1は過去の本試験問題を掲載したものであり,事柄の性質上,図面を含めて問題を忠実に再現することが求められることを考慮すると,上記の各相違点を総合しても,原告表\現1につき著作権法上保護すべき創作性を認めることはできない。したがって,被告表現1が原告表\現1を機械的に複写したものであるとしても,原告の著作権を侵害することはないと解すべきである。

◆判決本文

◆表現対比資料1

◆表現対比資料2

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平成26(ネ)10130  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成27年5月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 マンションの設計図が著作権侵害かが争われました。知財高裁は、著作物性無しとした原審を維持しました。
 控訴人図面は,本件建物の設計図面であるから,著作権法10条1項 に例示される著作物中の「地図又は学術的な性質を有する図面,図表,模型その\n他の図形の著作物」(著作権法10条1項6号)にいう「学術的な性質を有する 図面」に該当するものと解されるところ,建築物の設計図は,設計士としての専 門的知識に基づき,依頼者からの様々な要望,及び,立地その他の環境的条件と 法的規制等の条件を総合的に勘案して決定される設計事項をベースとして作成さ れるものであり,その創作性は,作図上の表現方法やその具体的な表\現内容に作 成者の個性が発揮されている場合に認められると解すべきである。もっとも,そ の作図上の表現方法や建築物の具体的な表\現内容が,実用的,機能的で,ありふ\nれたものであったり,選択の余地がほとんどないような場合には,創作的な表現\nとはいえないというべきである。 (2) これを本件についてみると,まず,作図上の表現方法については,一般\nに建築設計図面は,建物の建築を施工する工務店等が設計者の意図したとおり施 工できるように建物の具体的な構造を通常の製図法によって表\現したものであっ て,建築に関する基本的な知識を有する施工担当者であれば誰でも理解できる共 通のルールに従って表現されているのが通常であり,作図上の表\現方法の選択の 幅はほとんどないといわざるを得ない。そして,控訴人図面をみても,その表現方\n法自体は,そのような通常の基本設計図の表記法に従って作成された平面的な図\n面であるから,表現方法における個性の発揮があるとは認められず,この点に創作\n性があるとはいえない。 もっとも,上記住民の希望に沿った建物の全体形状,寸法及び敷地における建 物配置並びに建物内部の住戸配置,既存杭を前提とした場合の合理的な位置の選 択の幅は狭いとはいえ,各部屋や通路等の具体的な形状や組合せ等も含めた具体 的な設計については,その限定的な範囲で設計者による個性が発揮される余地は 残されているといえるから,控訴人の一級建築士としての専門的知識及び技術に 基づいてこれらが具体的に表現された控訴人図面全体については,これに作成者\nの個性が発揮されていると解することができ,創作性が認められる。ただし,以 上に説示したところからすれば,本件においては設計者による選択の幅が限定さ れている状況下において作成者の個性が発揮されているだけであるから,その創 作性は,その具体的に表現された図面について極めて限定的な範囲で認められる\nにすぎず,その著作物性を肯定するとしても,そのデッドコピーのような場合に 限って,これを保護し得るものであると解される。
・・・
以上のとおり,控訴人図面と被控訴人図面とを比較すると,建物の全体 形状に所以する各階全体の構造や,Aと基本的に同様の配置とすることに所以す\nる内部の各部屋の概略的な配置は類似するものの,各部屋や通路等の具体的な形 状及び組合せは異なる点が多くあり,もともと控訴人図面の各部屋や通路の具体 的な形状及び組合せも,通常のマンションにおいてみられるありふれた形状や組 合せと大きく相違するものではないことを考慮すれば,控訴人図面及び被控訴人 図面が実質的に同一であるということはできない。そうすると,控訴人図面と被 控訴人図面とが,その基本となる設計与条件において共通する点があるとしても, 具体的に表現された図面としては異なるものであるといわざるを得ず,被控訴人\n図面が控訴人図面の複製権又は翻案権を侵害しているとは認められない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成25年(ワ)2728

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平成26(ワ)7527  著作権確認等請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年3月27日  東京地方裁判所

 別の文献を要約した部分について、著作物性有りと認定されました。「被告Bは,被告Aを指導教授として研究を行っていた」とあるので、学生とその指導教官および学校法人が訴えられたんですね。著作権を学会に譲渡するという学会規定も問題を複雑にしています。
 別紙著作物対照表のとおり,被告表\現1と原告表現1のうちそれぞれ「の基本原則として」以下の部分の記述は,接続詞の「次に」が「さらに」となっている点で異なる以外は,誤字(「地域姓」)を含めて,全く同一の文章といえるものであるから,被告表\現1が原告表現1に依拠して,その記述を複製したものであることは明らかである。この点に関して被告らは,原告表\現1は丁1文献を要約して引用したものにすぎず,創作性がないと主張する。しかし,著作権法2条1項1号所定の「創作的」に表現されたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,作者の何らかの個性が表\れたものであれば足りるというべきであるところ,証拠(略)によれば,原告表現1は,9頁にわたる丁1文献を,「再送信同意の基本原則」,「具体的な技術要件」,「再送信同意の手続き」の3部に分けて簡潔に要約したものであり,各部において丁1文献の該当項の冒頭部分を中心に抜き出してはいるものの,必ずしも冒頭部分をそのまま抜き出したものでないことが認められるから,そこには選択の範囲,記述の順序,文章の運び及び具体的な文章表\現等の点において原告なりの工夫がされていると認めることができ,その限度で作者の個性が表れていると認められるのであり,表\現上の創作性がないということはできない。そして,被告表現1は,原告表\現1との共通部分において,単に素材となる事実が同一であるというだけでなく,具体的表現を含めた記述のデッドコピーというべきものであるから,原告表\現1の複製に当たると認めるのが相当である。

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平成26(ネ)10063  著作権侵害行為差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成27年4月14日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 応用美術について著作物でないとした地裁の判断に対して、知財高裁は「著作物である」と認めました。ただ、創作性のある部分が類似していないとして、著作権侵害ではないと判断されました。
 d 以上によれば,控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は,1)「左右一対の部材A」の2本脚であり,かつ,「部材Aの内側」に形成された「溝 に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ込んで固定し」て いる点,2)「部材A」が,「部材B」前方の斜めに切断された端面でのみ結合されて 直接床面に接している点及び両部材が約66度の鋭い角度を成している点において, 作成者である控訴人オプスヴィック社代表者の個性が発揮されており,「創作的」な\n表現というべきである。\nしたがって,控訴人製品は,前記の点において著作物性が認められ,「美術の著作 物」に該当する。
(ウ)a 被控訴人は,応用美術の著作物性が肯定されるためには,著作権 法による保護と意匠法による保護との適切な調和を図る見地から,実用的な機能を\n離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えてい ることを要する旨主張する。
(a) しかしながら,前述したとおり,応用美術には様々なものがあり, 表現態様も多様であるから,明文の規定なく,応用美術に一律に適用すべきものと\nして,「美的」という観点からの高い創作性の判断基準を設定することは,相当とは いえない。 また,特に,実用品自体が応用美術である場合,当該表現物につき,実用的な機\n能に係る部分とそれ以外の部分とを分けることは,相当に困難を伴うことが多いも\nのと解されるところ,上記両部分を区別できないものについては,常に著作物性を 認めないと考えることは,実用品自体が応用美術であるものの大半について著作物 性を否定することにつながる可能性があり,相当とはいえない。\n加えて,「美的」という概念は,多分に主観的な評価に係るものであり,何をも って「美」ととらえるかについては個人差も大きく,客観的観察をしてもなお一定 の共通した認識を形成することが困難な場合が多いから,判断基準になじみにくい ものといえる。
(b)被控訴人は,前記主張の根拠として,1)著作権法及び意匠法の重 複適用は相当ではないこと,2)応用美術とされる商品に著作権法を適用することに ついては,それによって,当該商品の分野の生産的側面及び利用的側面において弊 害を招く可能性を考慮して判断すべきであり,この点に鑑みると,純粋美術が,何\nらの制約を受けることなく美を表現するために制作されるのに対し,応用美術は,\n実用目的又は産業上の利用目的という制約の下で制作されることから,著作権法上 保護されることによって当該応用美術の利用,流通に係る支障が生じることを甘受 してもなお,著作権法を適用する必要性が高いものに限り,著作物性を認めるべき である旨を述べる。
i  確かに,応用美術に関しては,現行著作権法の制定過程におい ても,意匠法との関係が重要な論点になり,両法の重複適用による弊害のおそれが 指摘されるなどし,特に,美術工芸品以外の応用美術を著作権法により保護するこ とについては反対意見もあり,著作権法と意匠法との調整,すみ分けの必要性を前 提とした議論が進められていたものと推認できる(甲90,甲91,甲93,甲9 4)。 しかしながら,現行著作権法の成立に際し,衆議院及び参議院の各文教委員会附 帯決議において,それぞれ「三 今後の新しい課題の検討にあたっては,時代の進 展に伴う変化に即応して,(中略)応用美術の保護等についても積極的に検討を加 えるべきである。」,「三 (中略)応用美術の保護問題,(中略)について,早 急に検討を加え速やかに制度の改善を図ること。」と記載され(甲92),応用美 術の保護の問題は,今後検討すべき課題の1つに掲げられていたことに鑑みると, 上記成立当時,応用美術に関する著作権法及び意匠法の適用に関する問題も,以後 の検討にゆだねられたものと推認できる。 そして,著作権法と意匠法とは,趣旨,目的を異にするものであり(著作権法1 条,意匠法1条),いずれか一方のみが排他的又は優先的に適用され,他方の適用 を不可能又は劣後とするという関係は,明文上認められず,そのように解し得る合\n理的根拠も見出し難い。 加えて,著作権が,その創作時に発生して,何らの手続等を要しないのに対し(著 作権法51条1項),意匠権は,設定の登録により発生し(意匠法20条1項), 権利の取得にはより困難を伴うものではあるが,反面,意匠権は,他人が当該意匠 に依拠することなく独自に同一又は類似の意匠を実施した場合であっても,その権 利侵害を追及し得るという点において,著作権よりも強い保護を与えられていると みることができる。これらの点に鑑みると,一定範囲の物品に限定して両法の重複 適用を認めることによって,意匠法の存在意義や意匠登録のインセンティブが一律 に失われるといった弊害が生じることも,考え難い。 以上によれば,応用美術につき,意匠法によって保護され得ることを根拠として, 著作物としての認定を格別厳格にすべき合理的理由は,見出し難いというべきであ る。 かえって,応用美術につき,著作物としての認定を格別厳格にすれば,他の表現\n物であれば個性の発揮という観点から著作物性を肯定し得るものにつき,著作権法 によって保護されないという事態を招くおそれもあり得るものと考えられる。
ii また,応用美術は,実用に供され,あるいは産業上の利用を目 的とするものであるから,当該実用目的又は産業上の利用目的にかなう一定の機能\nを実現する必要があるので,その表現については,同機能\を発揮し得る範囲内のも のでなければならない。応用美術の表現については,このような制約が課されるこ\nとから,作成者の個性が発揮される選択の幅が限定され,したがって,応用美術は, 通常,創作性を備えているものとして著作物性を認められる余地が,上記制約を課 されない他の表現物に比して狭く,また,著作物性を認められても,その著作権保\n護の範囲は,比較的狭いものにとどまることが想定される。 以上に鑑みると,応用美術につき,他の表現物と同様に,表\現に作成者の何らか の個性が発揮されていれば,創作性があるものとして著作物性を認めても,一般社 会における利用,流通に関し,実用目的又は産業上の利用目的の実現を妨げるほど の制約が生じる事態を招くことまでは,考え難い。
・・・・
ア 前述したとおり,控訴人製品は,控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態 的特徴につき,1)「左右一対の部材A」の2本脚であり,かつ,「部材Aの内側」 に形成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ 込んで固定し」ている点並びに2)「部材A」が,「部材B」前方の斜めに切断された 端面でのみ結合されて直接床面に接している点及び両部材が約66度の鋭い角度を 成している点において著作物性が認められる。 このことから,控訴人オプスヴィック社の著作権及び控訴人ストッケ社の独占的 利用権の侵害の有無を判断するに当たっては,控訴人製品において著作物性が認め られる前記の点につき,控訴人製品と被控訴人製品との類否を検討すべきである。 イ(ア) 前記のとおり,控訴人製品は,控訴人ら主張に係る控訴人製品の形 態的特徴につき,1)「左右一対の部材A」の2本脚であり,かつ,2)「部材Aの内 側」に形成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「は め込んで固定し」ている点に著作物性が認められるところ,被控訴人製品は,いず れも4本脚であるから,上記1の点に関して,控訴人製品と相違することは明らか といえる。 他方,被控訴人製品は,4本ある脚部のうち前方の2本,すなわち,控訴人製品 における「左右一対の部材A」に相当する部材の「内側に床面と平行な溝が複数形 成され,その溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)をはめ込んで固定」 しており,上記2)の点に関しては,控訴人製品と共通している。また,被控訴人製 品3,4及び6は,「部材A」と「部材B」との結合態様において,控訴人製品との 類似性が認められる。 しかしながら,脚部の本数に係る前記相違は,椅子の基本的構造に関わる大きな\n相違といえ,その余の点に係る共通点を凌駕するものというべきである。 以上によれば,被控訴人製品は,控訴人製品の著作物性が認められる部分と類似 しているとはいえない。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成25年(ワ)第8040号

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平成26(ワ)21237  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年3月20日  東京地方裁判所

 17文字程度のキャッチフレーズが著作物でないと判断されました。
 著作物といえるためには,「思想又は感情を創作的に表現したもの」であることが必要である(著作権法2条1項柱書き)。「創作的に表\現したもの」というためには,当該作品が,厳密な意味で,独創性の発揮されたものであることまでは求められないが,作成者の何らかの個性が表現されたものであることが必要である。文章表\現による作品において,ごく短かく,又は表現に制約があって,他の表\現が想定できない場合や,表現が平凡でありふれたものである場合には,作成者の個性が現れていないものとして,創作的に表\現したものということはできない。
イ 原告キャッチフレーズ1は,「音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/英語がどんどん好きになる」というものであり,17文字の第1文と12文字の第2文からなるものであるが,いずれもありふれた言葉の組合せであり,それぞれの文章を単独で見ても,2文の組合せとしてみても,平凡かつありふれた表現というほかなく,作成者の思想・感情を創作的に表\現したものとは認められない。
ウ 原告キャッチフレーズ2は,「ある日突然,英語が口から飛び出した!」というもの,原告キャッチフレーズ3は,「ある日突然,英語が口から飛び出した」というものであるが,17文字(原告キャッチフレーズ3)あるいはそれに感嘆符を加えた18文字(原告キャッチフレーズ2)のごく短い文章であり,表現としても平凡かつありふれた表\現というべきであって,作成者の思想・感情を創作的に表現したものとは認められない。\n(2) 以上によれば,原告キャッチフレーズには著作物性が認められないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の著作権に基づく請求は認められない。

◆判決本文

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平成24(ワ)33981  不正競争  民事訴訟 平成27年2月27日  東京地方裁判所

 長嶋氏関連の取材メモやインタビューに基づく原稿について、著作権侵害は認めましたが、営業秘密については否定されました。
 ここで,「創作的」に表現されたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,作者の何らかの個性が表\れたものであれば足りるというべきであるが,文章自体がごく短く又は表現の選択の幅に制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合には,作者の個性が表\れたものとはいえないから,創作的な表現であるということはできない。\n他方,インタビューを素材としこれを文章としたものであっても,取り上げる素材の選択,配列や具体的な用語の選択,言い回しその他の表現方法に幅があり,かつその選択された具体的表\現が平凡かつありふれた表現ではなく,そこに作者の個性が表\れていたり,作成者の評価,批評等の思想,感情が表現されていれば,創作性のある表\現として著作物に該当するということができる。 以上の観点から検討するに,本件送信原稿1ないし6(甲46の1ないし6)は,Dの付した別紙第一目録記載1ないし6の表題に内容が要約されているとおり,これらはいずれも長嶋氏の生い立ちからプロ野球選手として活躍し,選手としての引退後も読売ジャイアンツの監督として活動した時期について,本件送信原稿8(甲46の8)は「長嶋21世紀の巨人」との表\題に示されるとおり,将来にわたる読売ジャイアンツの展望等について,それぞれインタビューを受けた長嶋氏の返答を素材とし,これを一連の文章としたものである。また,本件送信原稿7(甲46の7)には「長嶋王さん語る」との表題が付されているが,読売ジャイアンツの同僚選手であった王貞治氏が長嶋氏について語っている部分,監督としての両氏についてのほか,王貞治氏自身について天覧試合での出来事やホームラン一般に関してインタ\nビューを受けた際の王貞治氏の返答を素材とし,これを一連の文章としたものである。これらは,前記1(2)で一部認定した公表済みの同旨の文章と対比しても,また文章自体からしても,インタビューに対する応答をそのまま筆記したものではなく,用語の選択,表\現や,文章としてのまとめ方等にそれなりの創意工夫があるものと認められるから,著作物性が認められるというべきである。 また,本件送信原稿12ないし14及び同16(甲46の12なしい14及び同16)については,長嶋氏がメジャーリーグのボンズ選手,柔道家の井上康生氏との対談や,長嶋氏が五輪についてインタビューを受けた内容,長嶋氏が折りにふれ取材記者等に語った内容を文章に表現したものであり,これらについても同様に,前記1(3)で一部認定した公表済みの同旨の文章と対比しても,また文章自体からしても,インタビューに対する応答をそのまま筆記したものではなく,用語の選択,表\現や,文章としてのまとめ方等にそれなりの創意工夫があるものと認められるから,これらについても著作物性が認められるというべきである。 以上によれば,本件送信原稿1ないし8,同12ないし14及び同16については,いずれも著作物性が認められる。
・・・・
不競法2条6項にいう「公然と知られていない」とは,当該情報が刊行物に記載されていない等,保有者の管理下以外では一般に入手することができない状態にあることをいうものと解される。 これを本件についてみると,前記1(2)で認定したとおり,原告は,本件営業秘密とされる内容と同一であるとするDのメモにつき,特段の秘密保持に関する契約等も締結することなく,日本経済新聞社に「私の履歴書」として連載することを予定して提供している。そして,原告が本件営業秘密であると主張する内容の一部につき,これとほぼ同旨の内容が日本経済新聞の「私の履歴書」に連載され,これは「野球は人生そのものだ」として単行本化もされているほか,前記1(3)で認定したとおり,東京読売新聞を含む全国紙の報道により公知となっている内容も存するものである。 そして,原告は,長嶋氏関連原稿は,いずれも原告の営業秘密に該当するものとして記事編集機に保存されたものであるとするところ,前記1(2),(3)で認定したとおり,記事編集機に保存された内容には既に公知となったものも多数含まれていることからすると,記事編集機に保存された内容の全てが非公知であるとは認められないこととなる。 これらを踏まえれば,本件営業秘密のうちの川上氏関連原稿に係る部分に ついても,平成25年10月31日にその一部が新聞記事として公表されるまでの分について非公知であるとの立証がないことに帰するほか,川上氏関連原稿につき,川上氏に対する取材を全く行っていないDにおいて,なぜ本件送信原稿15(甲46の15)の10行の文章を付加することができたのかについても合理的な説明がされていないことからしても,川上氏関連原稿の非公知性については原告による立証がされたものとは認め難い。\n以上の検討によれば,本件営業秘密が不競法2条6項所定の秘密管理性及び有用性を有するか否かはともかく,少なくとも非公知であるとの立証はないというべきである。

◆判決本文

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平成25(ワ)8146  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年1月29日  東京地方裁判所

 イラストについて著作物性が認められました。どんなイラストなのか興味ありますがでてないのでわからないですね。
 本件目録記載の本件諸イラストは,いずれも,オリジナルのキャラクターを使用して,日常生活の様々な状況等を,年齢や性別等が分かるように書き分けて表現したものであるから,創作性があり,著作物であると認められる。\n被告は,物体を擬人化するというアイデアの範疇を超えないとの主張をするが,本件諸イラストには上記のような工夫が凝らされており,本件諸イラストに用いられているのと類似のキャラクターが存在するという証拠もないから,被告の主張を採用することはできない。

◆判決本文

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平成25(ワ)9673  書籍出版差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成26年12月19日  東京地方裁判所

 歴史教科書の記述が翻案であるとは認定されませんでした。
 したがって,例えば,ある歴史教科書の一単元において選択された複数の事項の組合せが,他の歴史教科書の同じ単元において選択された事項の組合せと異なる場合であっても,当該歴史教科書で取り上げられた個々の事項が,いずれも他の歴史教科書にも記載されているような一般的な歴史上の事実又は歴史認識にすぎないときは,通常,それらの事項の組合せは,歴史教科書に記載され得る一般的な事項の中から,著者が適宜選択をした結果であるといえ,そこに著者独自の創意工夫が表れているということはできないから,その組合せの相違をもって歴史教科書の個性であるということはできないと解される。\nまた,ある歴史教科書に,他の歴史教科書には記載のない事項が取り上げられて記載されている場合でも,その事項が歴史文献等に記載されている一般的な歴史上の事実又は歴史認識にすぎないときは,それを当該歴史教科書の中の関連する単元で取り上げ,一般的に歴史教科書に記載される歴史的事項に関連して,その説明のために,又はそれを敷衍するものとして,付加して記述することは,歴史学習のための教科書としては通常のことであるから,当該歴史教科書にそのような他の歴史教科書に記載のない事項があるというだけでは,そこに歴史教科書としての個性が表れていると解することはできないというべきである。
エ 原告は「表現の順序(論理構\成)」の創作性を主張するところ,事項の選択において取り上げられた複数の事柄をどのような順序で配列して記載するかという点には,著者の創意や工夫が発揮されることがあるから,一般論としては,そこに何らかの表現上の創作性を認める余地はあるということができる。\nもっとも,前記(2)のような歴史教科書の性質上,一つの単元で取り上げることが可能な事項の数は限られており,しかも,それらの事項は,系統的に配列されて,生徒が理解しやすいように記述されることが求められて\n いるといえるから,特に歴史教科書においては,ある単元において取り上げられた複数の歴史的事実をどのような順序で配列するかについての選択の幅は限られており,そこに著者の個性が表れていると認められる場合は少ないものといわざるを得ない。\nこの点,例えば,歴史的事実を単に時系列に沿って配列するような場合は,そこに著者の創意や工夫があるということはできない。また,複数の関連する事項を,通常の歴史教科書において考慮されるような,歴史的な因果関係,相互の関連性,歴史学習における重要性などの観点に従って,生徒の読みやすさや理解のしやすさに配慮しつつ,論理的な文章として,適宜,配列して表現したにすぎないような場合も,それは歴史教科書としてありふれた配列というべきであるから,仮にその配列がたまたま他の歴史教科書の配列と異なっているとしても,そこに著者の個性が表\れているということはできない。それゆえ,そのような場合は,その配列の差異をもって,著作権法によって保護される著作物としての創作性を基礎付けることはできないというべきである。
オ 表現の視点に当たるアイデア,制作意図・編集方針又は歴史観などは,前記イのとおり,それ自体は表\現ではなく,著作権法によって保護されるものではないのであるから,仮にその表現の視点が独自のものといい得るとしても,その表\現の視点に基づいて記述された具体的な表現内容が,単に著者のアイデア,制作意図・編集方針又は歴史観などをそのまま文章にして記述したにすぎない場合や,その表\現の視点に基づけば,誰が書いてもそのような文章としてしか表現できず,あるいは,その文章表\現が平凡なものにとどまるときは,その文章は,表現の視点という著作権法で保護されない点において独自性があるというにすぎず,その具体的な表\現内容において,著作権で保護されるべき表現上の創作性を有するものということはできない。\n また,歴史教科書において取り上げられ,その表現の素材とされている歴史上の事実又は歴史認識も,前記ウのとおり,それ自体は著作権法で保護されるべき表\現には当たらないのであるから,上記と同様に,仮に取り上げられた歴史上の事実あるいは歴史認識がそれ自体として独自性を有するものであるとしても,そのような事実あるいは認識を,ありふれた構文や一般的な言い回しで,生徒が理解しやすいような文章として記述したというだけでは,その具体的な表\現内容において創作性があるというということはできない。 したがって,二つの歴史教科書が,その具体的な記述の内容において共通する部分があるとしても,その共通部分が上記のように表現上の創作性が認められないものである場合には,それを翻案の根拠とすることはできないというべきである。\n

◆判決本文

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平成22(ワ)38369  著作権侵害差止請求事件  著作権  民事訴訟 平成26年12月18日  東京地方裁判所

 復元江戸図を江戸東京重ね地図について、著作物性が争われました。裁判所は、一部について著作物性を認め、差止及び60万円の損害賠償を認めました。
 Yらが行った作業のうち隣接するグリッド間等の補正(上記(2)ウ(イ)a)について創作的な表現を付加したと認められないことは,本件江戸図につき前述したところと同様である。一方,地名その他の情報及び地番等の記載(同b及びc)については,地図に掲載すべき情報を独自の基準で選択した上で,その配置,文字の色,大きさ等にそれなりの工夫をして地図面上に記載したものであり,著作権の発生根拠となる創作的な表\現行為に当たるということができる。そして,Yらの行為については本件江戸図と同様に職務著作が成立すると認められるから,原告に著作権が発生すると解される。

◆判決本文

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平成24(ワ)24628  著作権に基づく差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成26年9月30日  東京地方裁判所

 プログラムの著作物について、本件テンプレートはデータベースの著作物とは認められないと判断されました。
 証拠(甲1,2,6,7,9)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件テンプレートは,販売,購買,在庫,会計及び現金出納の5つの主要プロセスについて,サブプロセスを含めると82の標準的な業務フローが登録されており,各プロセスには関連する勘定科目が定義され,364個の標準的,典型的なリスクがアサーションの定義とともに登録されていて,被告製品を購入したユーザーがこれをサンプルテンプレートとして利用することで必要な情報をデータベースに随時登録し,プロセス記述書,RCM等として引き出すことにより,内部統制に関する情報を容易に利用することが可能となるものであると認められる。しかしながら,本件テンプレートの実体や存在形式は判然としないし,具体的にどのような情報がいかなる体系で構\成されているのかについては,本件全証拠によってもその詳細が判然としないから,仮に本件テンプレートがデータベースに該当するものであるとしても,その情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものであるとは認め難い。\nしたがって,本件テンプレートがデータベースの著作物であると認めることはできないから,これを前提とした原告の請求は理由がない。

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平成25(ワ)28434  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟  平成26年7月30日  東京地方裁判所

 時計修理の規約について著作物性が認められました。
 規約であることから,当然に著作物性がないと断ずることは相当ではなく,その規約の表現に全体として作成者の個性が表\れているような特別な場合には,当該規約全体について,これを創作的な表現と認め,著作物として保護すべき場合もあり得るものと解するのが相当というべきである。\nこれを本件についてみるに,原告規約文言は,疑義が生じないよう同一の事項を多面的な角度から繰り返し記述するなどしている点(例えば,腐食や損壊の場合に保証できないことがあることを重ねて規定した箇所がみられる原告規約文言4と同7,浸水の場合には有償修理となることを重ねて規定した箇所が見られる原告規約文言5の1の部分と同54,修理に当たっては時計の誤差を日差±15秒以内を基準とするが,±15秒以内にならない場合もあり,その場合も責任を負わないことについて重ねて規定した箇所がみられる原告規約文言17と同44など)において,原告の個性が表れていると認められ,その限りで特徴的な表\現がされているというべきであるから,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号),すなわち著作物と認めるのが相当というべきである。\nそして,被告規約文言全体についてみると,見出しの項目,各項目に掲げられた表現,記載順序などは,すべて原告規約文言と同一であるか,実質的に同一であると認められる(表\現上異なる点として,原告規約文言の「当社」が被告規約文言では「当店」にすべて置き換えられている点,助詞の使い方の違い,記載順序を一部入れ替えている箇所(別紙4の番号5,38),表現をまとめている箇所(同別紙の番号36),「千年堂オリジナル超音波洗浄」「千年堂オリジナルクリーニング」を「銀座櫻風堂オリジナル超音波洗浄」「銀座櫻風堂オリジナルクリーニング」としている箇所(同別紙の番号50,52)などがあるが,これらは,極めて些細な相違点にすぎず,全体として実質的に同一と解するのが相当である。また,原告規約文言と被告規約文言の相違点が上記のとおりであることは,被告が,原告規約文言に依拠して,被告規約文言を作成したことを強く推認させる事情というべきである。)。\nしたがって,被告は,被告規約文言を作成したことにより,原告規約文言を複製したものというべきである。

◆判決本文

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平成25(ネ)10068  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟  平成26年8月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 既製服などをコーディネートした衣服及びアクセサリーの選択及び組み合わせ方は、著作物性があるかについて、無しとした1審が維持されました。
 もっとも,本件ファッションショーにおいて用いられた衣服やアクセサリーは,主として,大量生産されるファストファッションのブランドのものであり(甲1ないし13,丙1,弁論の全趣旨),これらは,その性質上,実用に供される目的で製作されたものであることが明らかである。そして,控訴人らも,本件ファッションショーにつき,シティとリゾートのパーティースタイル(都会的な女性のドレスアップコーディネートと,リゾートラグジュアリーパーティースタイル)をコンセプトとしたものであるなどと主張しており,本件ファッションショーが上記の各場面における実用を想定したファッションに関するショーであることがうかがえることに照らすと,上記の化粧,髪型,衣服及びアクセサリーを組み合わせたものである前記イ記載の・・は,美的創作物に該当するとしても,芸術作品等と同様の展示等を目的としたものではなく,あくまで,実用に供されることを目的としたものであると認められる。そして,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されている美的創作物(いわゆる応用美術)が美術の著作物に該当するかどうかについては,著作権法上,美術工芸品が美術の著作物に含まれることは明らかである(著作権法2条2項)ものの,美術工芸品等の鑑賞を目的とするもの以外の応用美術に関しては,著作権法上,明文の規定が存在せず,著作物として保護されるか否かが著作権法の文言上明らかではない。この点は専ら解釈に委ねられるものと解されるところ,応用美術に関するこれまでの多数の下級審裁判例の存在とタイプフェイスに関する最高裁の判例(決・民集54巻7号2481頁)によれば,まず,上記著作権法2条2項は,単なる例示規定であると解すべきであり,そして,一品制作の美術工芸品と量産される美術工芸品との間に客観的に見た場合の差異は存しないのであるから,著作権法2条1項1号の定義規定からすれば,量産される美術工芸品であっても,全体が美的鑑賞目的のために制作されるものであれば,美術の著作物として保護されると解すべきである。また,著作権法2条1項1号の上記定義規定からすれば,実用目的の応用美術であっても,実用目的に必要な構\成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できるものについては,上記2条1項1号に含まれることが明らかな「思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみることができるのであるから,当該部分を上記2条1項1号の美術の著作物として保護すべきであると解すべきである。他方,実用目的の応用美術であっても,実用目的に必要な構\成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握することができないものについては,上記2条1項1号に含まれる「思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみることはできないのであるから,これは同号における著作物として保護されないと解すべきである。\n

◆判決本文

◆原審はこちら。東京地裁平成24年(ワ)第16694号

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平成19(ワ)19275 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成20年07月04日 東京地方裁判所 

 かなり前の事件ですが、あげておきます。動物のぬいぐるみと小物入れを組み合わせた「プチホルダー」という名称のシリーズ商品について、不競法2条1項3号の商品形態模倣であるとは認められましたが、善意かつ無重過失として損害賠償は否定されました。著作物かについても争われましたが著作物性なしと判断されました。
 前記認定に係る事実によれば,被告における商品の仕入れは,商品の仕入れを担当する部門に所属するバイヤーが,仕入先が行う多数の企画提案の中から,特定の商品の企画提案を採用し,その販売数量や価格等を決定して行うというものであり,また,被告商品の仕入れを担当する部門が1年間に取り扱う商品数だけでも約12万点に及び,仕入先が被告に対して行う企画提案の数も極めて多数に及ぶものと推測されることからすると,被告は,被告商品の仕入れを行うに当たり,被告商品の企画や生産の過程に関与することはなく,被告商品の選定やその販売数量及び価格等の決定のみを行っていたものと認められる。また,上記の膨大な数量の商品すべてについて,その開発過程を確認するとともに,形態が実質的に同一である同種商品がないかどうかを調査することは,著しく困難であるということができる。一方,原告商品は,これまでの販売金額が合計19万0487円,販売数量も合計330個にとどまり,その宣伝,広告も,原告ベストエバージャパンのウェブページや商品カタログに写真が掲載されている程度であって,一般に広く認知された商品とは認められないことからすると,被告は,被告商品を平成化成から購入するに当たり,取引上要求される通常の注意を払ったとしても,原告商品の存在を知り,被告商品が原告商品の形態を模倣した事実を認識することはできなかったものというべきである。以上によれば,被告は,被告商品の購入時にそれが原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らなかったことにつき重大な過失はなかったものと認められる。
・・・
 これらの規定は,意匠法等の産業財産権制度との関係から,著作権法により著作物として保護されるのは,純粋美術の領域に属するものや美術工芸品であり,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されているものは,それが純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美術性を備えている場合に限り,著作権法による保護の対象になるという趣旨であると解するのが相当である。原告商品は,小物入れにプードルのぬいぐるみを組み合わせたもので,小物入れの機能\を備えた実用品であることは明らかである。そして,原告が主張する,ペットとしてのかわいらしさや癒し等の点は,プードルのぬいぐるみ自体から当然に生じる感情というべきであり,原告商品において表現されているプードルの顔の表\情や手足の格好等の点に,純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美術性を認めることは困難である。また,東京ギフトショーにおいて審査員特別賞を受賞した事実が,原告商品の美術性を基礎付けるに足るものでないことは明らかである。したがって,原告商品は,著作権法によって保護される著作物に当たらない。

◆判決本文

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平成25(ワ)8040 著作権侵害行為差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成26年04月17日 東京地方裁判所

 デザインチェアーについて著作権による保護、および不競法の周知営業表示による保護、いずれも否定されました。
 原告製品は工業的に大量に生産され,幼児用の椅子として実用に供されるものであるから(弁論の全趣旨),そのデザインはいわゆる応用美術の範囲に属するものである。そうすると,原告製品のデザインが思想又は感情を創作的に表現した著作物(著作権法2条1項1号)に当たるといえるためには,著作権法による保護と意匠法による保護との適切な調和を図る見地から,実用的な機能\を離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えていることを要すると解するのが相当である。本件についてこれをみると,原告製品は,証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,幼児の成長に合わせて,部材G(座面)及び部材F(足置き台)の固定位置を,左右一対の部材Aの内側に床面と平行に形成された溝で調整することができるように設計された椅子であって,その形態を特徴付ける部材A及び部材Bの形状等の構成(なお,原告製品の形態的特徴については後記2参照)も,このような実用的な機能\を離れて見た場合に,美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えているとは認め難い。したがって,そのデザインは著作権法の保護を受ける著作物に当たらないと解される。また,応用美術に関し,ベルヌ条約2条7項,7条4項は,著作物としての保護の条件等を同盟国の法令の定めに委ねているから,著作権法の解釈上,上記の解釈以上の保護が同条約により与えられるものではない。よって,原告らの著作権又はその独占的利用権の侵害に基づく請求は理由がない。
2 争点(2)(不競法2条1項1号の不正競争行為該当性)について
(1) 争点(2)ア(周知性のある商品等表示該当性)について
ア 不競法2条1項1号は,商品等表示として商品の形態を例示していないところ,それは,商品の形態は,一次的には商品の機能\・効用の発揮や美観の向上等の見地から選択されるものであって,商品の出所を表示することを目的として選択されるものではないことによるものと解される。そうすると,商品の形態であっても,それが他の同種商品と識別し得る顕著な特徴を有している場合には,二次的に商品の出所を表\示する機能を有することもあり,それが,長期間継続的かつ独占的に使用されたり,短期間であっても強力に宣伝広告されたりした結果,出所識別機能\を獲得した場合には,周知性のある商品等表示に当たるものと解される。イ この見地から,まず,原告製品が他の同種製品と識別し得る顕著な形態的特徴を有するか否かについて検討する。
・・・
これに対し,原告製品は,部材Aが部材B前方の斜めに切断された端面でのみ結合されており,座面から部材Aに伝えられる力が,上記端面のみにかかり,視覚的に不安定さを感じさせる構成となっている。それだけに,原告製品の形態は,必要最小限の部材以外の部材は使用しないという,シンプル,スタイリッシュかつシャープな印象を与えるものである。このように,原告製品の第1の形態的特徴が視覚的にシンプルな印象を与えることは,別紙4「原告製品についての宣伝広告等」の「原告製品の特徴に関する記載内容」欄のとおり,原告製品を紹介する記事においても多く言及されているところであり,原告製品の重要な形態的特徴ということができる。一方,証拠(乙12,13,15)及び弁論の全趣旨によれば,座面を4本の脚で支えるのではなく,左右一対の略L字状ないしそれに近い形状をした側面の部材をもって座面を支え,その上方に背もたれを設けた椅子が市販等されていたことが認められる。ただし,これらの椅子は,原告製品ほどシンプルな印象を与えるものではなく,また,側面の部材に床面と平行な溝を形成したものでもない。そうすると,第1の形態的特徴及び第2の形態的特徴のいずれか一方ないしそれに近い形態的特徴を備えた椅子は他に存在するものの,これら双方を兼ね備えたものが原告製品以外に存在すると認めることはできない。
(ウ) 以上によれば,原告製品は,第1の形態的特徴と第2の形態的特徴とを組み合せた点において,従来の椅子には見られない顕著な形態的特徴を有しているから,原告製品の形態が需要者の間に広く認識されているものであれば(なお,被告は周知性について争うものの,具体的な反論はしていない。),その形態は不競法2条1項1号にいう周知性のある商品等表示に当たり,同号所定の不正競争行為の成立を認める余地があるので,以下,被告製品の形態が原告製品の形態に類似するか否かについて検討する。\n

◆問題のデザインチェアーです

◆判決本文

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平成25(ワ)5210 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成26年03月25日 東京地方裁判所

 指令の表現の組合せ,表\現順序等について,具体的にどのような表現上の創作性を有しているのか、を主張立証しなかったため、プログラムの著作物について、法上の著作物ではないと判断されました。原告は代理人無しの本人訴訟です。
 著作権法上保護される「著作物」というためには,思想又は感情を創作的に表現したものであることを要する(著作権法2条1項1号)ところ,プログラムは,「電子計算機を機能\させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(同項10号の2)であり,所定のプログラム言語,規約及び解法(同法10条3項)に制約を受けながら,コンピュータに対する指令をどのように表\現するか,その指令の表現をどのように組み合わせ,どのような表\現順序とするかなどについて,保護されるべき作成者の個性(創作性)が表れることになる。以上によれば,プログラムに創作性があるというためには,指令の表\現自体,その指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,プログラム作成者の個性,すなわち,表\現上の創作性が表れていることを要するものと解される。(2) 原告は,原告各プログラムについて,BSS−PACKシステムを構成する各部分の働きをコントロールしてシステム全体を稼動させる特別なプログラムであって,定型性のない原告の創作プログラムであり,極めて画期的なものであると主張するが,原告の主張からは,指令の表\現自体,指令の表現の組合せ,表\現順序等について,具体的にどのような表現上の創作性が表\れているのかが明らかではないし,本件全証拠によっても,原告各プログラムに表現上の創作性があると認めることはできない。(3) したがって,原告各プログラムが「著作物」に当たるということはできない。

◆判決本文

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平成25(ネ)10066 不正競争防止法,著作権侵害・損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成26年01月22日 知的財産高等裁判所

 1審同様、ワインの図柄について著作物性が否定されました。
 控訴人は,本件図柄が被控訴人からの依頼で作成したものであることを否定するととともに(乙5・2頁),広告看板用の図柄であることを否定するが(甲228),本件図柄は芸術作品としてではなく,あくまでも広告業におけるマーケティングの一環として作成されたものであるし(乙5・1,2頁),芸術作品として展示や販売に供されたというように,広告看板以外の目的に使用されたことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,本件図柄は,あくまでも広告看板用のものであり,実用に供され,あるいは,産業上利用される応用美術の範ちゅうに属するというべきものであるところ,応用美術であることから当然に著作物性が否定されるものではないが,応用美術に著作物性を認めるためには,客観的外形的に観察して見る者の審美的要素に働きかける創作性があり,これが純粋美術と同視し得る程度のものでなければならないと解するのが相当である。このような観点から見ると,本件図柄のグラスの形状には,通常のワイングラスと比べて足の長さが短いといった特徴も認められるものの,それ以外にグラスとしての個性的な表現は見出せない。また,ワイナリーの広告としてワイングラス自体が用いられること自体は珍しいものではない上に,図柄が看板の大部分を占めている点も,ワイナリーの広告としてありふれた表\現にすぎない。そして,本件図柄を全体的に観察すると,上記ワイングラスの大きさや形状に加えて,被控訴人の商号及びワイナリーや工場の見学の勧誘文言が目立つような文字の配置と配色がなされていることが特徴的であるが,これも,一般的な道路看板に用いられているようなありふれた青系統の色と補色に近い黄色ないし白色のコントラストがなされているにとどまる。そうすると,本件図柄には色彩選択の点や文字のアーチ状の配置など控訴人なりの感性に基づく一定の工夫が看取されるとはいえ,見る者にとっては宣伝広告の領域を超えるものではなく,純粋美術と同視できる程度の審美的要素への働きかけを肯定することは困難である。控訴人が著作物性の根拠として強調する点は,宣伝広告の効果を向上させるための工夫とも共通するものであって,必ずしも芸術性を高めるものではない。また,控訴人が主張するように,現代における芸術分野の区分の流動化が認められるとしても,本件図柄はあくまでも広告看板用に作成されたものであって,応用美術の範囲に属することに変わりはないというべきであるから,上記で判示した著作物性を認める判断基準が変わるわけではなく,本件図柄の著作物性を否定した上記判断を左右するものではない。さらに,控訴人主張のとおり,ペンチという道具を単純化してその一部を平面的にデフォルメして構図化したデザイン(甲221)や四角いキャンバスを二つの三角形に分けてそれぞれ単色で色づけしたデザイン(甲222)のように,一見ありふれた表\現方法が用いられているものが芸術作品として取り扱われている例があるとしても,これらは,いずれも美術作品として一点限りで制作されるのであって,広告のために複数が作成される商業的作品とは相違する上,作成時期も本件図柄と違っていずれも昭和40年代の作品で美術史的な位置付けも異なり,あくまでも純粋に審美性を追求する見地からシンプルな配色やデザインがあえて使用されたとも評価できる。そうすると,遠方から確認しやすく,一般消費者である通行人や通行車両の注意を惹き,広告対象物への興味をわき上がらせる形態が一次的に要求される広告看板用の本件図柄とは,その配色や構図の目的や意味合いは自ずと異なり,著作物性の前提となる作成者の創作性の反映や見る者に対する審美的要素への働きかけの有無や程度も当然に異なってくるというべきである。したがって,上記のような美術作品の存在は,本件図柄につき純粋美術と同視できる程度の審美的要素への働きかけを否定した上記判断を左右するものではない。よって,本件図柄には著作物性は認められないというべきであり,その帰属について判断する必要もない。\n

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◆関連事件はこちらです。平成25年(ネ)第10057号

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平成25(ネ)10057 著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載料未払請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成25年12月17日 知的財産高等裁判所

 背景色の中に,白色のグラスを大きく配置した図柄が、著作物ではないとした、一審判断が維持されました。
 控訴人は,本件図柄を一体として鑑賞した場合,本件図柄における文字は,思想,感情を表現するものとして,絵柄に融合しており,絵柄の美術性に含まれているし,本件図柄は,画面いっぱいに,大胆にグラスを描き,構\図的バランスは,ずしりと重量感を与え,色彩感覚豊かで美的に表現され,見る人の心を惹きつけてやまないのであって,ありふれた平凡な絵柄ではなく,美術性と創作性を兼ね備えていると主張する。本件図柄は,あくまでも広告看板用のものであり,実用に供され,あるいは,産業上利用される応用美術の範ちゅうに属するというべきものであるところ,応用美術であることから当然に著作物性が否定されるものではないが,応用美術に著作物性を認めるためには,客観的外形的に観察して見る者の審美的要素に働きかける創作性があり,純粋美術と同視し得る程度のものでなければならないと解するのが相当である。かかる観点から見ると,本件図柄のグラスの形状には,通常のワイングラスと比べて足の長さが短いといった特徴も認められるものの,それ以外にグラスとしての個性的な表\現は見出せない。また,ワイナリーの広告としてワイングラス自体が用いられること自体は珍しいものではない上に,図柄が看板の大部分を占めている点も,ワイナリーの広告としてありふれた表現にすぎない。そして,本件図柄を全体的に観察すると,上記ワイングラスの大きさや形状に加えて,控訴人の商号及びワイナリーや工場の見学の勧誘文言が目立つような文字の配置と配色がなされていることが特徴的であるが,これも,一般的な道路看板に用いられているようなありふれた青系統の色と補色に近い黄色ないし白色のコントラストがなされているにとどまる。そうすると,本件図柄には色彩選択の点や文字のアーチ状の配置など控訴人なりの感性に基づく一定の工夫が看取されるとはいえ,見る者にとっては宣伝広告の領域を超えるものではなく,純粋美術と同視できる程度の審美的要素への働きかけを肯定することは困難である。控訴人が著作物性の根拠として強調する点は,宣伝広告の効果を向上させるための工夫とも共通するものであって,必ずしも芸術性を高めるものではなく,また,現代における芸術分野の区分の流動化が認められるとしても,上記に判示した純粋美術と同視できる程度の審美的要素への働きかけを否定した判断を左右するものではない。したがって,本件図柄には著作物性は認められないというべきであり,その帰属について判断する必要もない。\n

◆判決本文

◆原審はこちら平成24年(ワ)第9468号

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平成24(ワ)25843 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年07月18日 東京地方裁判所

 書籍内に記載された表についた、著作物性無しと判断されました。\n
 原告は,本件書籍の著作物性は本件書籍の各表が創作性を有することに基礎付けられている旨主張し,その創作性の具体的な内容として,本件書籍の各表\が,自動車に用いられるプラスチック部品につき最適の選択と配列を行い,その採用プラスチックについて原告の実務経験に基づく情報を掲載しているため,他の資料にはない正確かつ詳細な最新情報が記述され,読者に今後の技術開発・市場開発の将来展望を与えるものとして,原告の個性と独創性が発揮されていることを挙げている。しかしながら,原告の上記主張は,本件書籍の各表を作成するに当たってのアイデアの独創性や,本件各表\に記載されている情報そのものの価値を主張するものにすぎず,これらは著作権法による保護の対象となるものではない。したがって,原告の上記主張はそれ自体失当というほかない。さらに,本件書籍の各表の記載内容は別紙対照表\のとおりであって,例えば,その1番目に記載の表には,「表\1.3 バンパーモジュールのプラスチック採用例」との表題の下,モジュールの分類として「バンパーモジュール」が記載され,その「構\成部品」(バンパー,フェーシア等)ごとに,これに使用されている「プラスチック」の種類及びその成形法が列挙されている。そして,証拠(甲1,乙1,4,10の1〜3・5・7・8・10〜12)及び弁論の全趣旨によれば,同表は,本件書籍の執筆段階において自動車に用いられていたプラスチックの種類,採用部位,成形法等を当該分類項目に従って整理したものであること,このような事項を整理した表\は本件書籍の発行以前にも多数みられたことが認められ,この点は本件書籍の各表のうち他のものについても同様ということができる。そうすると,本件書籍の各表\は,自動車に採用されているプラスチックに関する事実をごく一般的な表の形式に整理したものにすぎないから,その表\現自体は平凡かつありふれたものというべきであって,これに著作物性を認めることはできないと判断するのが相当である。

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平成24(ワ)16694 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟  平成25年07月19日 東京地方裁判所

 既製服などをコーディネートした衣服及びアクセサリーの選択及び組み合わせ方は、著作物性無しと判断されました。
 著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項1号)と規定しているのであって,当該作品等に思想又は感情が創作的に表\現されている場合には,当該作品等は著作物に該当するものとして同法による保護の対象となる一方,思想,感情若しくはアイデアなど表現それ自体ではないもの又は表\現上の創作性がないものについては,著作物に該当せず,同法による保護の対象とはならない。そして,当該作品等が「創作的」に表現されたものであるというためには,厳密な意味での作成者の独創性が表\現として表れていることまでを要するものではないが,作成者の何らかの個性が表\現として表れていることを要するものであって,表\現が平凡かつありふれたものである場合には,作成者の個性が表現されたものとはいえず,「創作的」な表\現ということはできないというべきである。イ また,著作権侵害を主張するためには,当該作品等の全体において上記意味における表現上の創作性があるのみでは足りず,侵害を主張する部分に思想又は感情の創作的表\現があり,当該部分が著作物性を有することが必要となる。本件において,原告らは,本件映像部分の放送により,本件ファッションショーの1)個々のモデルに施された化粧や髪型のスタイリング,2)着用する衣服の選択及び相互のコーディネート,3)装着させるアクセサリーの選択及び相互のコーディネート,4)舞台上の一定の位置で決めるポーズの振り付け,5)舞台上の一定の位置で衣服を脱ぐ動作の振り付け,6)これら化粧,衣服,アクセサリー,ポーズ及び動作のコーディネート,7)モデルの出演順序及び背景に流される映像に係る著作権が侵害された旨主張するものであるから,上記1)〜7)の各要素のうち,本件映像部分に表れているものについて,侵害を主張する趣旨であると解される。したがって,上記1)〜7)の各要素のうち,本件映像部分に表れているものについて,著作物性が認められることが必要となる。\n
ウ 原告らがどのような権利につき侵害を主張する趣旨であるかについては明確ではない点があるが,本件番組の放送により,原告会社の著作権(公衆送信権・著作権法23条1項)及び著作隣接権(放送権・同法92条1項)(いずれも,原告会社が原告Aから譲渡を受けたと主張するもの。)並びに原告Aの著作者及び実演家としての氏名表示権(著作者としての氏名表\示権につき同法19条1項,実演家としての氏名表示権につき同法90条の2第1項)が侵害されたと主張する趣旨であると解される。このうち,公衆送信権侵害が認められるためには,「その著作物について」公衆送信が行われることを要するのであるから(同法23条1項),上記公衆送信は,当該著作物の創作的表\現を感得できる態様で行われていることを要するものと解するのが相当である。そして,当該著作物の創作的表現を感得できない態様で公衆送信が行われている場合には,当該著作物について公衆送信が行われていると評価することができないとともに,「その著作物の公衆への提供若しくは提示」(同法19条1項)がされているものと評価することもできないから,公衆送信権侵害及び著作者としての氏名表\示権の侵害は,いずれも認められないものというべきである。エ 以上を前提に,まず,公衆送信権及び著作者としての氏名表示権の侵害の成否について検討する。\n
(2) 公衆送信権(著作権法23条1項),氏名表示権(同法19条1項)侵\n害の成否

ア 1)個々のモデルに施された化粧や髪型のスタイリングについて
(ア) 本件映像部分の各場面におけるモデルの化粧及び髪型は,別紙映像目録添付の各写真のとおりであり,「Iline1着目」は下ろした髪全体を後ろに流した髪型,「Anna1着目」及び「Anna2着目」は緩やかにカールを付けた髪を下ろした髪型,「Izabella2着目」は耳上の髪をまとめ,耳下の髪にカールを付けて下ろした髪型,「Tamra2着目」は全体に強めにカールを付けて下ろした髪型であり,また,いずれのモデルにも,アイシャドーやアイライン,口紅等を用いて華やかな化粧が施されているものということができる。(イ) しかし,上記化粧及び髪型は,いずれも一般的なものというべきであり,作成者の個性が創作的に表現されているものとは認め難い。また,本件映像部分における各場面は,約2秒ないし9秒間のごく短いものである上,動くモデルを様々な角度から撮影したものであることから,各モデルの顔及び髪型が映る時間は極めて短いものであるということができる。これに加えて,本件映像部分は,暗い室内において,局所的に強い照明を当てながら撮影されたものであるため,本件映像部分から,各モデルの化粧及び髪型の細部を見て取ることは困難であるというべきであり,原告らが主張するような,細部におけるアイラインの引き方やまつ毛の流し方,目元,唇等における微妙な色の工夫等(甲4〜甲7)を看取することはできないものである。そうすると,仮にこれらの点に創作性が認められるとしても,本件映像部分において,上記創作的表\現を感得できる態様で公衆送信が行われているものとは認められない。
(ウ) したがって,これらの点には著作物性がなく,また,仮に著作物性が認められる点があるとしても,これが本件映像部分において公衆送信されているものとは認められない。
・・・
以上によれば,本件ファッションショーのうち,本件映像部分に表れた点に著作物性は認められず,又は本件映像部分において,その創作的表\現を感得できる態様で公衆送信が行われているものと認められないから,本件映像部分を放送することが,原告会社の著作権(公衆送信権・著作権法23条1項)又は原告Aの著作者人格権(氏名表示権・同法19条1項)を侵害するものとは認められない。\n

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平成24(ワ)25843 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年07月18日 東京地方裁判所

 著作物でないと判断されました。
 著作権法の保護の対象となる著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)をいうのであって,表\現の内容とされた思想,感情若しくはアイデアなどそれ自体又は表現ではあっても表\現上の創作性がないものについては,著作権法による保護は及ばない。そして,表現上の創作性があるというためには,作成者の独創性が現れていることを要するものではないが,作成者の何らかの個性が表\現として現れていることを要するものであって,表現が平凡かつありふれたものである場合は,これに当たらないというべきである。 これを本件についてみると,原告は,本件書籍の著作物性は本件書籍の各表が創作性を有することに基礎付けられている旨主張し,その創作性の具体的な内容として,本件書籍の各表\が,自動車に用いられるプラスチック部品につき最適の選択と配列を行い,その採用プラスチックについて原告の実務経験に基づく情報を掲載しているため,他の資料にはない正確かつ詳細な最新情報が記述され,読者に今後の技術開発・市場開発の将来展望を与えるものとして,原告の個性と独創性が発揮されていることを挙げている。 しかしながら,原告の上記主張は,本件書籍の各表を作成するに当たってのアイデアの独創性や,本件各表\に記載されている情報そのものの価値を主張するものにすぎず,これらは著作権法による保護の対象となるものではない。したがって,原告の上記主張はそれ自体失当というほかない。 さらに,本件書籍の各表の記載内容は別紙対照表\のとおりであって,例えば,その1番目に記載の表には,「表\1.3 バンパーモジュールのプラスチック採用例」との表題の下,モジュールの分類として「バンパーモジュール」が記載され,その「構\成部品」(バンパー,フェーシア等)ごとに,これに使用されている「プラスチック」の種類及びその成形法が列挙されている。そして,証拠(甲1,乙1,4,10の1〜3・5・7・8・10〜12)及び弁論の全趣旨によれば,同表は,本件書籍の執筆段階において自動車に用いられていたプラスチックの種類,採用部位,成形法等を当該分類項目に従って整理したものであること,このような事項を整理した表\は本件書籍の発行以前にも多数みられたことが認められ,この点は本件書籍の各表のうち他のものについても同様ということができる。そうすると,本件書籍の各表\は,自動車に採用されているプラスチックに関する事実をごく一般的な表の形式に整理したものにすぎないから,その表\現自体は平凡かつありふれたものというべきであって,これに著作物性を認めることはできないと判断するのが相当である。

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平成24(ワ)25843 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年07月18日 東京地方裁判所

 アイデアの独創性や,本件各表に記載されている情報は、著作物ではないと判断されました。
 著作権法の保護の対象となる著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)をいうのであって,表\現の内容とされた思想,感情若しくはアイデアなどそれ自体又は表現ではあっても表\現上の創作性がないものについては,著作権法による保護は及ばない。そして,表現上の創作性があるというためには,作成者の独創性が現れていることを要するものではないが,作成者の何らかの個性が表\現として現れていることを要するものであって,表現が平凡かつありふれたものである場合は,これに当たらないというべきである。 これを本件についてみると,原告は,本件書籍の著作物性は本件書籍の各表\が創作性を有することに基礎付けられている旨主張し,その創作性の具体的な内容として,本件書籍の各表が,自動車に用いられるプラスチック部品につき最適の選択と配列を行い,その採用プラスチックについて原告の実務経験に基づく情報を掲載しているため,他の資料にはない正確かつ詳細な最新情報が記述され,読者に今後の技術開発・市場開発の将来展望を与えるものとして,原告の個性と独創性が発揮されていることを挙げている。しかしながら,原告の上記主張は,本件書籍の各表\を作成するに当たってのアイデアの独創性や,本件各表に記載されている情報そのものの価値を主張するものにすぎず,これらは著作権法による保護の対象となるものではない。したがって,原告の上記主張はそれ自体失当というほかない。さらに,本件書籍の各表\の記載内容は別紙対照表のとおりであって,例えば,その1番目に記載の表\には,「表1.3 バンパーモジュールのプラスチック採用例」との表題の下,モジュールの分類として「バンパーモジュール」が記載され,その「構\成部品」(バンパー,フェーシア等)ごとに,これに使用されている「プラスチック」の種類及びその成形法が列挙されている。そして,証拠(甲1,乙1,4,10の1〜3・5・7・8・10〜12)及び弁論の全趣旨によれば,同表は,本件書籍の執筆段階において自動車に用いられていたプラスチックの種類,採用部位,成形法等を当該分類項目に従って整理したものであること,このような事項を整理した表\は本件書籍の発行以前にも多数みられたことが認められ,この点は本件書籍の各表のうち他のものについても同様ということができる。そうすると,本件書籍の各表\は,自動車に採用されているプラスチックに関する事実をごく一般的な表の形式に整理したものにすぎないから,その表\現自体は平凡かつありふれたものというべきであって,これに著作物性を認めることはできないと判断するのが相当である。

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平成24(ワ)13494 著作者人格権等侵害行為差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年06月28日 東京地方裁判所

 警告書、苦情申告書、答弁書をブログに掲載されたことが、公衆送信権侵害となるのかが争われました。苦情申\告書、答弁書については著作物性が認められました。ただし、差止のみで、損害賠償請求については認められませんでした。
 (ア) 前記前提事実(2)アのとおり,原告文書1は,原告が,南洋株式会社(通知人)の代理人として,平成23年10月4日,被告Y1に宛てて送付した通知書であり,表題,日付等の記載の後に,通知人の代理人として通知を行う旨及び被告Y1の作成するブログ内に通知人に関し事実に反する内容の記事が掲載されている旨を記載し,上記記事のURLを表\示し,さらに,上記記事の内容が事実に反し通知人の名誉・信用を著しく害し多大な損害が発生しているものである旨,上記記事の削除を求め,削除に応じない場合には仮処分申立てや損害賠償請求等の必要な法的措置をとらざるを得ない旨,以後問合せは通知人本人ではなく通知人代理人にされたい旨を記載したものである。上記原告文書1の本文部分は,上記URLの表\示部分を含めても17行,URLの表示部分を除けば13行からなるものである。
(イ) 原告文書1は,上記のとおり,前提となる事実関係を簡潔に摘示した上で,これに対する法的評価及び請求の内容等を短い表現で記載したものにすぎない。原告文書1の体裁,記載内容,記載順序,文章表\現は,いずれも内容証明郵便による通知書として一般的にみられるものであり,ありふれたものというべきであるから,原告文書1において何らかの思想又は感情が表現されているとしても,上記思想又は感情が創作的に表\現されているものとは認められない。この点,原告は,原告文書1は,用語や言い回しを厳選し,最も適切な表現を慎重に吟味して作成されたものであり,作成者の個性が表\れていると主張するが,原告の主張するような点を原告文書1から表現として感得することはできず,上記主張を採用することはできない。
(ウ) したがって,原告文書1に著作物性は認められない。
イ 原告文書2について
(ア) 前記前提事実(2)イのとおり,原告文書2は,原告が東京行政書士会会長宛てに提出した平成23年10月17日付けの苦情申告書であり,A4版5ページからなる文書である。原告文書2は,表\題,日付等の記載の後に,苦情の趣旨及び苦情の理由を記載し,さらに「第3 最後に」として,「申告者は,…多くの行政書士の方々が本当に真摯に依頼者のために業務に取り組まれていることをよく存じあげております。そのような中で,本件の苦情対象行政書士のごとく,行政書士法違反の非違行為を行う行政書士がごく少数でも存在することは,行政書士全体の社会的信用を貶めるものであり,適正に業務をされておられる大多数の行政書士の方々にも多大な悪影響を及ぼすものであると思います。」などと記載し,東京行政書士会に調査,対応を求める旨と,状況の改善がない場合には対象行政書士の東京都知事に対する懲戒を申\し立てる所存である旨などを記載したものである。
(イ) 原告文書2は,上記のとおり,行政書士会に対する苦情申告書であり,その文書の性質上,当然に記載すべき項目(日付,申\告者等の形式的記載事項や,申告すべき苦情の内容,事実関係の記載,上記事実関係の法的評価,非違行為に該当する考える理由等)を含むものであるということができる。しかし,苦情の内容,事実関係,その法的評価等に関する点については,記載すべき内容が形式的かつ一律に定まるものではなく,これらをどのような順序で,どのような表\現により,どの程度記載するかについては,様々な可能性があるものというべきである。そうすると,原告文書2は,上記のとおり表\現について様々な可能性がある中で,記載の順序や内容,文章表\現を工夫したものということができるのであって,このような点に,作成者の個性の表出がみられるものというべきであり,思想又は感情を創作的に表\現したものに当たるということができる。
(ウ) したがって,原告文書2には著作物性が認められる。 ウ 原告文書3
(ア) 前記前提事実(2)ウのとおり,原告文書3は,被告Y1が東京弁護士会に対し請求した原告の懲戒請求につき,原告が,平成23年11月16日,東京弁護士会綱紀委員会宛てに提出した答弁書であり,事件番号,表題,日付等の形式的記載事項の表\示の後に,請求の趣旨に対する答弁,懲戒請求に至る経緯及び理由に対する認否,被調査人(原告)の主張を記載したものである。被調査人(原告)の主張においては,同人が作成した「かなめくじ」に関するブログ記事が,請求者(被告Y1)の事務所(「かなめ行政書士事務所」)を指したものではないことなどを示す事情として,「かなめくじ」というキャラクターを制作した経緯(「かなめくじ」とは有機物的な気色悪いキャラクターであり,これを「くそキモキャラ」と呼ぶこと,「かなめくじ」とは,「蚊」と「なめくじ」を合体させたものであること,人に嫌悪感をもよおす生き物のうちから,制作が容易でシンプルなデザインであり,かつ,グッズ化に向きやすい形状・性質のものであって,動作や動きの再現が容易であるなどの条件を満たすものとして,軟体動物をモチーフに選んだ上で,これに蚊の羽を合体させることにしたこと,「蚊」と種々の軟体動物の名称を組み合わせてみた結果,語感の響き等から「かなめくじ」を選ぶに至ったことなど)が詳細に記載されている。
(イ) 原告文書3は,上記のとおり,懲戒請求手続において東京弁護士会綱紀委員会宛てに提出された答弁書であり,その文書の性質上,当然に記載すべき項目(表題,日付等の形式的記載事項や,懲戒請求理由に対する認否等)を含むものであるということができる。しかし,これらのうち,懲戒請求に至る経緯及び理由に対する認否,被調査人(原告)の主張については,記載すべき内容が形式的かつ一律に定まるものではなく,どのような順序で,どのような表\現により,どの程度記載するかにつき様々な可能性があり得ることは原告文書2と同様であるところ,原告文書3は,これらの点について工夫がみられ,特に被調査人(原告)の主張の内容及び表\現はこの種文書において一般的なものとはいい難いものというべきである。そうすると,原告文書3には,作成者の個性が 表現として表\れているものとみることができる。
(ウ) したがって,原告文書3は思想又は感情を創作的に表現したものに当たり,著作物性が認められる。
(3) 小括
以上のとおり,原告文書1には著作物性が認められないから,原告文書1に係る原告の請求(被告各ブログにおける原告文書1を掲載して使用することの差止請求及び損害賠償請求)については,その余の点について検討するまでもなく理由がない。したがって,原告文書2及び3についてのみ,以下の争点につき検討する。

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平成24(ワ)9449 不正競争防止法,著作権侵害・損害賠償 不正競争 民事訴訟 平成25年07月02日 東京地方裁判所

 ワインの図柄について創作性無しとして請求棄却されました。不正競争行為(1号)にも該当しないと判断されました。
 著作権法2条1項1号は,著作物について「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定し,同条2項は「この法律にいう『美術の著作物』には,美術工芸品を含むものとする。」と規定している。これらの規定に加え,著作権法が文化の発展に寄与することを目的とするものであること(同法1条),工業上利用することのできる意匠については所定の要件の下で意匠法による保護を受けることができるとされていることに照らせば,純粋な美術の領域に属しないいわゆる応用美術の領域に属するもの,すなわち,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予\定されている図案やひな型などは,鑑賞の対象として絵画,彫刻等の純粋美術と同視し得るといえるような場合を除いては,著作権法上の著作物に含まれないものと解される。これを本件についてみると,本件図柄は,その外形上明らかに被告のワイナリーの広告等の図柄として作成されたものであり,また,本件各原告看板は,本件図柄を利用して製作された広告看板そのものであって,いずれもいわゆる応用美術の領域に属するものと認められる。そして,本件図柄及び本件各原告看板は,訴求力のある広告効果を持たせるような配色,図柄の形状,字体の選択,各素材の配置等について一定の工夫がされているとはいい得るものの,広告の対象となる被告の名称及び施設の種類を表す文字とグラスの図柄の単純な組合せからなるもので,これらが,社会通念上,鑑賞の対象とされ,純粋美術と同視し得るものであると認めることは困難である。
イ さらに,著作権法上の著作物として保護されるためには「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法2条1項1号)であることを要するが,前記著作権法の趣旨に鑑み,ありふれた表\現にすぎないものは,「創作的に表現したもの」には当たらないというべきである。これを本件図柄及び本件各原告看板についてみると,1)ワイナリーの広告看板に「ワイナリー」や「工場見学」という文字,ワイナリーへの方向を示す矢印及び距離,ワイングラスを想起させる図形を表示することは,一般的であると解されること,2)グラスの上及び中に配置した文字のバランスに工夫があるとしても,素材を用いて図柄を作成する上での配置としてありふれたものの域を出ないし,グラスの形状にも,格別の創作性は認められないこと,3)文字のうち「シャトー勝沼」の部分は毛筆体を思わせるやや角張った特徴のある書体であるが,書体の形態は文字の有する情報伝達機能を発揮するため必然的に一定の制約を受けるものであるから,書体に著作物性を認めるためには書体が顕著な特徴を有するといった独創性があることを要するところ,上記文字の書体にそのような独創性があるとは認められないこと,4)広告看板の背景や素材に濃い青色と白色と黄色,あるいはこれらの色と赤色を採用して組み合わせることは,他の看板においても見られるものであって(乙3),ありふれたものにすぎないこと,5)本件図柄及び本件各原告看板を一体として見たとしても,文字と図柄の単純な組合せにすぎず,全体として一つのまとまりのある表現物として創作性を有しているとは認められないことからすれば,著作権法上保護されるに足りる創作性があるということはできないと解される。\n
ウ 以上のとおりであるから,本件図柄及び本件各原告看板は著作権法上の著作物に当たらないと判断することが相当である。

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◆関連事件はこちらです。平成24(ワ)9468

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平成24(ワ)9468 著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載料未払請求事件 著作権 平成25年06月05日 東京地方裁判所

 ワインの図柄について創作性無しとして請求棄却されました。
 本件図柄について,上記意味における創作性の有無について検討するに,本件図柄は,やや紫がかった青色の横長の長方形の中に,縦横の長さがそれぞれその3分の2程度を占める大きさの白色のグラスを配置し,上記グラスのボウル内に,背景色と同色で,「シャトー勝沼」の文字を上下二段に分けて横書きし,さらに,グラス上方に,「シャトー勝沼」よりもやや小さい黄色の丸ゴシック文字で,アーチ状に「ワイナリー/工場見学」の文字を横書きしたものである。ウ 本件図柄は,上記のとおり,背景色の中に,白色のグラスを大きく配置したものであるが,本件図柄が,被告の運営するワイナリー等への案内看板の図柄として制作されたものであること(前記前提事実(2))を考慮すれば,その図柄にグラスの形状を採用することはありふれたものというべきである。また,上記グラスの形状は,通常のワイングラスよりもプレート部分がやや大きく,軸が短いものであるということができるが(乙11),上記形状は,グラスとして通常見られるものの域を出るものではないというべきであって,このような点に,作成者の個性の表出は認められない。また,本件図柄は,上記のとおり,グラスのボウル内に「シャトー勝沼」の文字を上下二段に分けて横書きで配置し,グラスの上方に,アーチ状に「ワイナリー/工場見学」の文字を配置したものであり,これらの文字は,見やすく分かりやすいよう配置され,表\示されているものということができる。しかし,本件図柄の案内看板としての性質上,本件図柄の中に,被告の社名である「シャトー勝沼」の文字や,「ワイナリー/工場見学」の文字を含むことは当然のことであり,これらを見やすく,分かりやすい位置に配置することも,その性質から当然に要求されるものというべきである。また,文字をグラスのボウル内に配置することや,アーチ状に配置することもありふれたものであり,作成者の個性の表出を感じられるものではない。そうすると,上記文字の配置・表\示は,案内看板における文字の配置・表示としてありふれたものというべきであり,創作性は認められない。なお,上記文字のうち,「シャトー勝沼」部分は,文字の太さや端部の形状に変化を持たせた,毛筆体に近い書体で描かれているものであるということができる。しかし,文字は情報伝達という実用的機能\を有することをその本質というべきものであるから,文字の書体に著作物としての保護を与えるべき創作性を認めることは一般的には困難であり,当該書体のデザイン的要素が,見る者に特別な美的感興を呼び起こすに足りる程度の美的創作性を備えているような例外的場合に限り,創作性を認め得るにとどまるものというべきところ,本件図柄における「シャトー勝沼」の文字が,上記程度の美的創作性を有するものとは認められない。また,上記文字のうち,「ワイナリー/工場見学」部分は,丸ゴシック体で描かれているものであり,上記程度の美的創作性を認めることのできないものであることは明らかである。さらに,本件図柄の配色(やや紫がかった青色,白,黄色)については,他の看板にも見られるものであり,ありふれたものというべきである上(乙11),本件図柄が被告の案内看板に採用される以前の被告看板においても,同様の配色が採用されていたことが認められるのであって(甲20の1の1,20の2の1,20の3の1),上記配色が,本件図柄の作成に当たり新たに創作されたものとも認められない。エ 原告は,本件図柄は全体として美術性を有し,美術の著作物に該当するとも主張する。しかし,本件図柄におけるグラスや文字の配置,色の選択,字体の選択等の各要素を全体として見ても,本件図柄が,全体として一つのまとまりのある絵画的な表現物として,見る者に特別な美的感興を呼び起こすに足りるだけの美的創作性があるものとは認められず,また,その構\成において作者の個性が表れているものとも認められない。したがって,本件図柄に美術の著作物としての創作性を認めることはできない。\n

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平成24(ネ)10076 出版差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成25年04月18日 知的財産高等裁判所

 編集著作物性について、原審は著作物性無しとしましたが、一部についてこれを認めました。
 エ 認定のとおり,控訴人書籍漢方薬便覧部分においては,148の処方名,1000個以上の商品名の漢方薬から,臨床現場での重要性や使用頻度等を踏まえて,148の処方名,307の商品名の漢方薬を選択するとともに,195の処方名,1900個以上の商品名の生薬並びに生薬及び漢方処方に基づく医薬品の中から1の処方名(「ヨクイニンエキス」),2の商品名の生薬を選択した上で,これを「漢方薬」の大分類の中に含めたものである。控訴人は,「ヨクイニンエキス」について,漢方薬ではなく生薬であるにもかかわらず,これを漢方薬として選択したものである(甲59,69)。そして,生薬である「ヨクイニンエキス」については,「ポケット判治療薬Up-To-Date(2008年版)」(乙2)及び「ポケット医薬品集2008年版」(乙3)では,皮膚科用薬の章に掲載され,「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5)では,「漢方製剤」ではなく「その他の生薬製剤」の章に掲載され,「日本医薬品集 医療薬 2008年版」(乙6)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においては,「漢方製剤」ではなく「その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品」に掲載されているのであって,これを「漢方製剤」の分類に選択した類書は,控訴人書籍の発行後に発行された「ポケット版臨床医薬品集2008」(乙9)以外に見られないところ,同書における漢方薬の選択及び配列については,控訴人書籍と全く同一の148の処方名,307の商品名の漢方製剤に加えて「ヨクイニンエキス」が選択され,控訴人書籍と50音順を崩した4箇所を含め,全く同一の配列がされていること,同書が控訴人書籍の発行後に発行されたこと等に照らし,同書をもってありふれていることの根拠とすることはできない。以上によれば,前記の漢方薬の薬剤の選択,特に「ヨクイニンエキス」を漢方製剤として選択したことには,控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているということができる。
イ 薬剤の配列について
控訴人書籍及び被控訴人書籍の漢方薬便覧部分は,「処方名」(漢方処方名)を原則として50音順とし,例外的に,1)・・・4箇所のみ50音順を崩して配列している点において同一である。このうち,控訴人は,4)の「ヨクイニンエキス」について,漢方薬ではなく生薬であるところから,全く別個に配列し,これを漢方薬の最後に配列したものである。また,上記2)の配列については,「桔梗湯」及び「桔梗石膏」は,いずれも生薬「桔梗」を含む漢方製剤であり,咽喉における症状に用いられる点で共通しているところ,「桔梗湯」は,・・・に記載された漢の時代から伝わる生薬の配合及び分量についての歴史的な処方であり,喉痛等に対して処方する機会が極めて多いのに対し,「桔梗石膏」は,原典を有しない比較的新しい処方であるため,まず「桔梗湯」の処方を考えることが臨床現場においては通常であること,また,「桔梗湯」は,単体で処方されることが多い漢方製剤であるが,「桔梗石膏」は,他の漢方製剤と共に処方されることが多い漢方製剤であるため,まず単体で処方することのできる「桔梗湯」を前にもってくることが臨床現場における使用に資することから,臨床現場の使用実態に即した配列にしたものである(甲76,弁論の全趣旨)。さらに,上記3)の配列も,「桂枝加竜骨牡蛎湯」が,前記のとおり・・・に記載された漢の時代から伝わる歴史的な処方であるのに対し,・・・が,江戸時代に日本で書かれた「方機」という書物に記載された処方であるところ,歴史が深い処方の方が信頼が高く,臨床現場においてより頻繁に用いられているところから,・・を先に配列することとしたものである(甲76,弁論の全趣旨)。このように,控訴人書籍における薬剤の配列は,漢方処方が,歴史的,経験的な実証に基づく薬効,中心的な役割を果たす主薬,基本方剤等,複数の分類基準によって区別される上に,基本方剤に新たな薬効を持つ生薬が加味されることで,多くの漢方処方に派生するという関係にあるところから,そのような歴史的,経験的な実証に基づく生薬の薬効及び基本方剤分類を考慮した配列にしたものである。そして,控訴人書籍の発行後に発行された「ポケット版臨床医薬品集2008」(乙9)以外に,上記1)ないし4)について控訴人書籍と同一の配列をしたものは見当たらない。被控訴人が発行した「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5),「日本医薬品集 医療薬 2008年版」(乙6)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においてすら,「ヨクイニンエキス」は,「漢方製剤」の分類の中には選択されず,それとは別の「その他の生薬製剤」又は「その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品」等に分類されていたものである。また,被控訴人が控訴人書籍の発行より前に発行した「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においては,控訴人書籍及び被控訴人書籍とは異なり,上記1)ないし3)を含め,全て50音順に配列されていたものである。
ウ 以上によれば,控訴人書籍漢方薬便覧部分は,漢方薬の148の処方名を掲載したほか,多数の生薬の中から「ヨクイニンエキス」のみを大分類「漢方薬」に分類するものとして選択した上,漢方3社が製造販売する薬剤がある漢方処方名については,当該漢方処方名に属する漢方3社の薬剤を全て選択し,漢方3社が薬剤を製造販売していない漢方処方名については,臨床現場における重要性や使用頻度等に鑑みて個別に薬剤を選択したというのであるから,薬剤の選択に控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているということができ,上記のような考慮から薬剤を選択した上,歴史的,経験的な実証に基づきあえて50音順の原則を崩して配列をした控訴人書籍漢方薬便覧部分の薬剤の配列には,控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているから,一定の創作性があり,これと完全に同一の選択及び配列を行った被控訴人書籍漢方薬便覧部分の薬剤の選択及び配列は,控訴人書籍のそれの複製に当たるといわざるを得ない。

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◆原審はこちら。平成20(ワ)29705
 

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平成24(ウ)9969 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年04月18日 大阪地方裁判所

 本件、星座板は著作物ではないと判断されました。
 そもそも,原告が著作者としての個性が現れているとして指摘する上記修正・変更の目的は,前記のとおり,実際に観測できる星の位置関係(星座の形状)と星座板上に描かれる星の位置関係(星座の形状)の違いを少なくするように調整をするものであったり,特徴点をやや強調するものであったりするものである。このようなことは,星座板の使用目的からすれば当然に行われる事柄であって,多かれ少なかれ,他社も行っていることである(甲16〜23〔枝番省略〕)。このような目的のもと,修正作業が行われた結果,異なる表現となりうるとしても,前記のとおり,共通する部分の方が圧倒的に多くならざるをえず,異なる表\\現とすることのできる部分はわずかであって,星座板の作成者の個性が表れるような表\\現となることは考えがたい。むしろ,一定の目的がある以上,選択の幅は,むしろ収束する方向へ働くのであり,現に,上記のとおり,その結果には大差がないことからすれば,平凡かつありふれたものと評価するほかない。したがって,これらの点についても,創作性のある表現ということはできない。\n
カ 星の形
原告は,星を表現するに当たり,点の大きさ,形を星ごとに異なるものとすることも可能\\であるから,表現の幅がある旨主張する。しかしながら,星を表\\現するに当たって,原告星座板で用いられている丸や星印の表現は特段の特徴があるものではないし,等級に応じて大きさを変えたり,色分けをしたりしている点も平凡かつありふれたものというほかない(なお,1等星から3等星までの色分けは,相違している。)。\n
キ 天の川
原告は,天の川をイメージとして描く方法が無限にあり,原告星座板の天の川も作成者のイメージに従って描いたものであるから,創作性がある旨主張する。しかしながら,証拠(甲8の1・2,甲18の1〜5,乙1〜4)によると,他社の作成する星座板には,原告星座板と同様に,天空と同系色(白っぽくしたもの)で天の川を描いたものが複数ある。また,それらの星座板と原告星座板に描かれた天の川の各形状(輪郭)は,細部で異なるものの,似通っていることが認められる。そして,原告星座板と他社の作成する星座板に描かれた天の川の各形状(輪郭)に係る細部の相違点について,何らかの特徴や表現上の個性が表\\れているとする具体的な主張立証はない。むしろ,天空で観測できる天の川に近いイメージを星座板上に再現しようとすると,その色彩や輪郭などを含む表現が,結果として,一定の範囲に収束しているものというべきである。これらのことからすると,原告星座板に描かれた天の川の表\\現についても,平凡かつありふれたものというべきである。
ク 銀河の北極
原告は,星座板を作成する際に銀河の北極を示すことは通常なく,原告星座板に銀河の北極部分を×印で描いている点に創作性がある旨主張する。しかしながら,そもそも原告星座板の商品カタログ,商品パッケージ及び商品自体(甲4の1〜4)を見ても,星座板に表示された×印(天の川で囲まれた領域のほぼ中央に位置する。)が銀河の北極を示していることに関する説明が見当たらない。その点を置くとしても,銀河の北極は特定の恒星を指すものでもなく,天球上で観測可能\\な点でもないのであって,前記アで述べた星座板の使用目的からしても特段の注意を引くものではない。仮に,これを選択して表現した点に何らかの作成者の個性が認められうるとしても,星座板の表\\現全体に占める割合が著しく僅少であり,特徴のある表現として感得することも困難であることからすれば,この部分のみをもって著作物性を認めるのは相当でないというべきである。\n(5)まとめ
前記(4)で検討したところによれば,被告星座板は,表現上の創作性を認めがたい部分において,原告星座板と同一性を有するにすぎないから,被告の行為は複製に当たらないというべきである。なお,原告は,原告星座板に高度の創作性が認められないとしても,実質的に同一のもの(デッドコピー)についてのみ複製権侵害が成立すると解釈することで,第三者の表\\現に対する不当な制約となることは避けられるから,原告星座板の著作物性を肯定すべきであると主張する。しかしながら,そもそも創作性のない表現は著作権法上の著作物として保護を受けることはできないものであり,これと実質的に同一のもの(デッドコピー)を複製したとしても著作権(複製権)侵害が成立することはないというべきであり,上記主張を採用することはできない。\n

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平成23(ワ)40129 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年01月31日 東京地方裁判所

 著作権登録してあるにもかかわらず、著作物性無しと裁判所に認定されたと、文化庁長官を訴えました。当然、請求棄却です。
 原告は,原告が本件各登録申請を行った際,文化庁長官は,本件担当職員をして,原告に対し,本件各登録をしたからといって著作権の権利者という地位は保証されない等の説明をさせるべき職務上の法的義務を負っていたのに,これを怠った違法があると主張する。しかしながら,文化庁長官がかかる義務を負うことにつき定めた法令はないし,仮に文化庁長官が「著作物でないもの」や「著作物かどうか不明なもの」を著作権登録しているという事実を認識しているとしても,これにより文化庁長官が上記のような義務を負うこととなるわけではなく,その他文化庁長官がかかる義務を負うことを認め得る根拠もない。したがって,原告の主張は,前提を欠くものであって,採用することができない。
(2) 原告は,文化庁長官の行為が違法であるとして,文化庁長官が著作物ではない本件図柄について著作権登録原簿に登録をした,文化庁長官が原告に告知,弁解,防御の機会を与えることなく原告の著作権を没収した,などと主張するが,原告の主張は,独自の見解に立つものであって,失当というほかない。

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平成21(ワ)26053 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年12月26日 東京地方裁判所

 一部の仏画について、創作性あり(著作物あり)・翻案されたと認定されました。
 被告仏画2(14)は白黒画であり,構図は原告仏画2(14)とほぼ同一であって,菩薩の姿態,髪や宝冠,装飾品の形状,着衣の流れ,冠帯の流れや翻り方をみても,原告仏画2(14)におけるものとほぼ同一であると認められる。また,菩薩の表情については,眼や鼻にやや丸みが加えられているが,やや視線を下向きにした祈りの表\情という点では同一であるということができ,構図や細部における表\現が上記のとおり原告仏画2(14)とほぼ同一であることとも相俟って,原告仏画2(14)と同様に,柔らかな祈りの雰囲気が伝わってくるものと認められる。他方,被告仏画2(14)は,原告仏画2(14)に比べてやや線が太く,薄墨でぼかしたように着色がされ,胸や腕の飾りの一部,宝冠から肩にかかる飾りの一部が省略されていることにより,原告仏画2(14)に比べて素朴な印象が加えられているものということができ,このような点は,被告によって付加された創作的表現であると認められる。ウ したがって,被告仏画2(14)は,原告仏画2(14)の柔らかな祈りの雰囲気を伝える表現上の本質的特徴を直接感得させるものであるが,新たな創作的要素を加えた別の著作物に該当するものであり,原告仏画2(14)を複製したものとはいえず,これを翻案したものに当たる。
・・・
以上のとおりであって,被告仏画2(1)1),2(5)1),2(7),2(12),2(13)1),2(14)(以下,これらを併せて「被告侵害仏画」という。)は,それぞれ原告仏画2(1),2(5),2(7),2(12)ないし(14)を翻案したものに当たる。

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平成22(ワ)47569 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年12月27日 東京地方裁判所

ウェブページの著作物性が否定されました。
 本件画面1は,別紙原告画面目録1のとおり,画面上中央に「大道芸研究会」と太文字のタイトルを配置し,そのタイトルの下に更新内容の掲載欄を配置し,画面中央やや上に,「都合によりしばらくメールの送受信ができません。お急ぎの方は,下記へご連絡をお願いします。」と記載した文章及び横長の長方形の枠内に大道芸研究会・事務局への連絡先を掲載し,画面下中央部に写真の画像を掲載し,全体の背景に花柄模様の画像を使用したものである。上記写真の画像は,大道芸研究会の会員のCが撮影した写真を素材とするものであり(甲9,原告本人),また,前記ア認定のとおり,文字のフォントや背景の画像は,フロントページエクスプレスに添付のもの又は原告以外の第三者が作成したものを素材とするものであるから,これらの素材自体は,原告の著作物であるとはいえない。b 原告は,本件画面1の画面構成は,画面上中央に「大道芸研究会」と黒い太文字のタイトルを,タイトルの下に更新内容の掲載欄を,画面中央やや上,赤色の四角い枠内に大道芸研究会・事務局への連絡先を掲載した点,タイトルの背景は桃色で電話とFAX欄の背景は黄色である点,画面下中央部に大きく写真を貼\っている点,背景に花柄模様の画像を使用している点において,原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり,画面全体として創作性がある旨主張する。そこで検討するに,著作権法が保護の対象とする「著作物」は,「思想又は感情を創作的に表\現したもの」(同法2条1項1号)をいい,アイデアなど表現それ自体でないもの又はありふれた表\現など表現上の創作性がないものには,同法による保護は及ばない。ところで,団体に関する各種の情報を掲載し,広報等の目的で開設された団体のウェブサイトのホームページ(ウェブページ)の画面構\成においては,1)団体名を画面の上に太文字で配置すること,2)各ページの掲載内容を示すタイトル欄をページごとに設けること,3)各記載内容にタイトルを設けること,4)タイトルを枠や図形の中に配置すること,5)画面上に,各種の大きさの枠を設けてその中に,あるいは枠を設けずに,更新内容,団体の連絡先,団体の説明,団体の活動内容及び入会に関する情報等の団体のホームページとして必要な内容を掲載すること,6)写真を中央に大きく掲載したり,小さめの写真複数枚を並べて掲載すること,7)写真に近接して写真の説明等を配置すること,8)画面内に他のページへのリンクの案内ボタンを複数並べて配列し,あるいは,単独で配置すること,9)図柄の背景や単色の背景を使用すること,10)文字・枠・背景に各種の色や柄を用いることは,いずれも一般的に行われていることであり(乙11ないし15,弁論の全趣旨),ありふれた表現であるといえる。しかるところ,原告が本件画面1に表\現上の創作性があることの根拠として挙げる上記諸点は,上記1),5),6),9)及び10)のとおり,団体のウェブサイトのウェブページの画面構成としては,一般的なものであって,ありふれたものであり,表\現上の創作性があるものと認めることはできない。また,原告が挙げる本件画面1の色合いの点については,これを認めるに足りる証拠はない(本件においては,モノクロの書証しか提出されていない。)。

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平成24(ワ)5771 著作権侵害差止請求権不存在確認等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年12月18日 東京地方裁判所

 差止不存在確認訴訟で、プログラムについて該当部分は著作物ではないと判断されました。
 上記共通する箇所は,原告が主張するように,第三者(Baidu社)が提供しているオープンソースソ\フトウェアを利用した記述や,マイクロソフト社の「Visual Studio」が自動生成するソースコードを利用した記述, マイクロソフト社が公開している関数の名称( 「OnSize 」,「AddString 」, 「LoadBitMap 」, 「SetTimer 」, 「AddPage 」,「GetDlgItem 」, 「IMPLEMENT_DYNCREATE 」, 「AfxMessageBox 」,「IMPLEMENT_DYNAMIC」等)の記述,コンピュータプログラムの文法上一般的に使用される表現を用いたもの(「While」文等)など,いずれもありふれた表現であって(甲8ないし20,22,弁論の全趣旨),作成者の個性が表\れているものとはいえない。以上によれば,被告が本件ソフトウェアのプログラムのソ\ースコードの記述における表現上の創作性を有すると主張する部分は,そもそも表\現上創作性を認めることはできないし,また,被告が主張する原告ソフトウェアのプログラムの具体的記述から本件ソ\フトウェアのプログラムの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできない。したがって,本件ソ\フトウェアのプログラムのソースコードの記述における表\現上の創作性を有する部分と原告ソフトウェアのプログラムのソ\ースコードの記述とが表現上の本質的な特徴が同一であるとの被告の主張は採用することはできない。\n

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平成24(ネ)10061 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年12月11日 知的財産高等裁判所

 著作権侵害を認めなかった1審判決が維持されました。一審判決はアップロードされていません。一審は下記のように認定していました。
 本件原稿の表現についてみると,インターネット上の記事の表\現を引用している部分があるものの,いずれも1)環境関連法令などの目的・由来や成立の経緯等,2)法令の内容や定義,3)化学物質等の定義,特性・特質,用途,影響,4)統計や数値,客観的な事実,5)書籍の著者や概要,6)その他環境用語の定義を,図表などを用いることなく簡潔に記載したもので,これらの表\現はありふれた表現であり,第三者の著作物の著作権を侵害していると認めることはできない・・\n

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平成24(ワ)15034 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年11月30日 東京地方裁判所

 プログラムの著作物について、本件プログラムに基づいて生成された画像は、プログラムの著作物の複製ではないと判断しました。
   被告は,同一事案について既に判決が確定しているから,一事不再理の原則からみても本件訴えは却下されるべきであると主張する。しかし,別件訴訟は,原告が,被告に対し,主位的には,ウェブサイト制作作業等の請負代金等296万円及び遅延損害金の支払を,予備的には,被告が原告作成のウェブサイト等に不正にアクセスしたことによってウェブサイト制作費,コンサルティング料金等相当額である286万円を不当に利得したとして同額及び法定利息金の支払を求めたものである(甲3の1・2。なお,原告は,別件訴訟控訴審において,主位的請求及び予\備的請求とも100万円及びこれに対する附帯請求の限度に請求を減縮した。)。これに対し,本件訴訟は,原告が,被告に対し,本件プログラムの著作権(複製権)侵害(予備的に一般不法行為)に基づき,損害賠償金合計1120万円の一部請求として280万円の支払を求める事案である。別件訴訟と本件訴訟とは当事者を同一にし,事実関係に重なるところがあるとはいえ,訴訟物も争点も異なるものであるから,本件訴えが一事不再理の原則により不適法であるとはいえない。
2 別件乙3の印刷による複製権侵害による不法行為について
(1) 原告は,別件乙3の印刷物は,原告が著作権を有するプログラムの著作物である本件プログラムを紙に印刷して複製したものであり,複製権侵害であると主張するので,この点について検討する。
(2) 原告は,本件プログラムは原告が創作した「プログラムの著作物」(法10条1項9号)であると主張する。プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表\現したもの」(法2条1項10号の2)であり,所定のプログラム言語,規約及び解法(法10条3項)に制約されつつ,コンピュータに対する指令をどのように表現するか,その指令の表\現をどのように組み合わせ,どのような表現順序とするかなどについて,法により保護されるべき作成者の個性(創作性)が表\れることになる。したがって,プログラムに著作物性(法2条1項1号)があるというためには,指令の表現自体,その指令の表\現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表\現ではなく,プログラム制作者の個性,すなわち,表現上の創作性が表\れていることを要する(知財高裁平成21年(ネ)第10024号平成24年1月25日判決・裁判所ウェブサイト)。原告は,本件プログラムのソースコード(甲6の1。A4用紙7枚(1枚当たり36行。全部で232行)のもの。)を提出するものの,本件プログラムのうちどの部分が既存のソ\ースコードを利用したもので,どの部分が原告の制作したものか,原告制作部分につき他に選択可能な表\現が存在したか等は明らかでなく,原告制作部分が,選択の幅がある中から原告が選択したものであり,かつ,それがありふれた表現ではなく,原告の個性,すなわち表\現上の創作性が発揮されているものといえるかも明らかでない。・・・
 原告は,被告がブラウザを用いて本件プログラムにアクセスし,その情報を被告のパソコンのモニタに表\示させ,表示された情報のスクリーンショットを撮り,当該スクリーンショットの画像ファイルを紙である別件乙3(甲1の1,乙2)に印刷したことが,プログラムの著作物である本件プログラムの複製に当たると主張する。法にいう「複製」とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製することをいうが(法2条1項15号),著作物を有形的に再製したというためには,既存の著作物の創作性のある部分が再製物に再現されていることが必要である。これを本件についてみると,紙である別件乙3(甲1の1,乙2)に記載されているのは画像であって,その画像からは本件プログラムの創作性のある部分(指令の表\現自体,その指令の表現の組合せ,その表\現順序からなる部分)を読み取ることはできず,本件プログラムの創作性のある部分が画像に再現されているということはできないから,別件乙3の印刷が本件プログラムの複製に当たるということはできない。

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平成23(ワ)14347 著作権侵害停止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年09月28日 東京地方裁判所

 司法書士試験の予備校で使用する教科書について、著作物性が否定されました。競業避止義務違反の債務不履行も否定されました。
 ア 著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項1号)と規定しているのであって,当該作品等に思想又は感情が創作的に表\現されている場合には,当該作品等は著作物に該当するものとして同法による保護の対象となる一方,思想,感情若しくはアイデアなど表現それ自体ではないもの又は表\現上の創作性がないものについては,著作物に該当せず,同法による保護の対象とはならない。そして,当該作品等が,「創作的」に表現されたものであるというためには,厳密な意味で作成者の独創性が表\現として現れていることまでを要するものではないが,作成者の何らかの個性が表現として現れていることを要するものであって,表\現が平凡かつありふれたものである場合には,作成者の個性が表現されたものとはいえず,「創作的」な表\現ということはできないというべきである。イ 前記(1)ア(ア)ないし(ウ)のとおり,原告書籍は,司法書士試験合格を目指す初学者向けのいわゆる受験対策本であり,同試験のために必要な範囲で民法の基本的概念を説明するものであるから,民法の該当条文の内容や趣旨,同条文の判例又は学説によって当然に導かれる一般的解釈等を簡潔に整理して記述することが,その性質上不可避であるというべきであり,その記載内容,表現ぶり,記述の順序等の点において,上記のとおり民法の該当条文の内容等を簡潔に整理した記述という範囲にとどまらない,作成者の独自の個性の表\れとみることができるような特徴的な点がない限り,創作性がないものとして著作物性が否定されるものと解される。
ウ(ア) 以上を前提に,まず,原告書籍のうち,別紙対比表1の記述内容についてみると,前記(1)イ(ア)のとおり,別紙対比表1は,失踪宣告取消の効果について解説したものであり,具体的には,「失踪宣告取消の効果/失踪宣告が取消されると,その宣告は初めからなかったものと扱われる/→死亡したものとみなされたことから発生した法律関係は/原則,全部復元する(失踪宣告前の状態に戻す)/→相続財産・生命保険金の返還,婚姻関係の復活/→しかし/これを貫くと失踪宣告を信じていた者は不測の損害を被る/→そこで/復元に一定の制限を設ける/a失踪宣告を直接の原因として財産を取得した者/→「現に利益を受ける限度」で返還すればよい(32II)/ex.相続人・生命保険金受取人・受遺者(遺贈を受けた者)」(判決注:「/」は改行を示す。以下同じ。)などと記述し,その具体例を図示するなどして説明したものである。(イ) 上記記述は,内容において,該当条文(ここでは民法32条)の規定内容,趣旨,効果等として一般的に理解されるところを記載したものにすぎない。また,表現ぶりにおいても,簡潔かつ平易な表\現であるということができるものの,上記イでみた原告書籍の性質上,このような表現ぶりは,ありふれたものであるというべきである。さらに,その記述の順序をみても,失踪宣告取消に関する原則論について述べた上で,上記原則を貫いた場合に生じる不都合について述べ,上記原則の修正としての例外規定の内容及び具体例について述べたものであり,格別の特徴があるものとはいうことができない。また,上記説明において具体例を挙げることも,原告書籍の性質上ありふれたものであるところ,上記具体例の内容をみても,父の失踪宣告が取り消された場合において,子が失踪宣告により得た相続財産1000万円中,残存500万円,生活費300万円,競馬等の遊興費200万円のどの範囲を現存利益として返還すべきかを示すというものであり,上記具体例の内容に,「1000万」を長方形で囲み,財産の流れを矢印で示すなどという表\現上の工夫点を加えて見たとしても,独自の工夫といえる点はなく,ありふれたものというべきである。
(ウ) これに加えて,原告は,太字,アンダーライン,付点等による強調,枠囲み,矢印の使用,余白の取り方,イラストの使用等に表現上の特徴があるとも主張する。この点,原告は,原告書籍中,被告書籍と実質的に同一であると考える部分を,原告書籍マーカー部分として特定した旨主張しており,請求の趣旨において,被告書籍マーカー部分の複製等の差止めを求めていることなども考慮すれば,原告書籍マーカー部分につき,著作権侵害を主張するものであると解される。そもそも,ある作品等の一部につき,複製等がされたとして著作権侵害を主張する場合においては,当該作品等の全体が上記の意味における著作物に該当するのみでは足りず,侵害を主張する部分自体が思想又は感情を表\現したものに当たり,かつ,当該部分のみから,作成者の個性が表現として感得できるものであることを要するものと解するべきであるから,原告書籍においても,その全体が著作物に該当するのみでは足りず,侵害を主張する部分(原告書籍マーカー部分)について,著作物に該当することを主張すべきものと解される。そうすると,原告書籍マーカー部分に含まれない部分である余白の取り方等に関し,著作物性を主張することは,原告の請求内容とは整合しないものというべきであるが,この点を措くとしても,強調のために太字,アンダーライン等を使用し,区切りやまとまりを示すために枠囲みや矢印を使用するということ自体はありふれたものである。また,具体的に強調されている部分等をみても,原告書籍は,「ただし,現存利益で足りるのは善意者のみ」との記述中の「善意者」の部分を強調するなど,作成者において,司法書士試験対策として重要であると考えた記述部分を強調していると思われるものであるところ,どの部分を重要であると考え,強調するかという点は思想又はアイデアに属するものであると考えられる上,これを表\現であるとみたとしても,原告書籍の性質上,その記述の一部を強調するということはありふれたものであるというべきである。また,どの部分を強調するかという強調部分の選択においても,一般に重要であると解されるところを選択したものにすぎず,特段,特徴的なところは見いだせない。区切り,囲みについても同様であり,問題意識,理由付け,結論等,それぞれ分けることができると考えられる部分を区切り,又は一定のまとまりがあると考える部分を囲むということ自体は思想又はアイデアに属するものであると考えられる上,これを表現であるとみたとしても,その選択及び方法に特徴的なところは見出すことができない。
・・・
本件競業避止義務条項の内容は前記前提事実(2)エのとおりであって,被告につき,業務委託契約期間終了後1年間,原告と競合関係に立つ企業等への一切の関与及び競業事業の開業を禁ずるものであるところ,前記前提事実(2)アのとおり,被告は,原告との間で業務委託関係にあった者にすぎず,業務委託関係終了後は,本来,他企業への関与又は事業の実施を自由に行うことができるべきものである。そうすると,本件競業避止義務条項は,業務委託関係終了後における被告の職業選択の自由に重大な制約を新たに加えようとするものということができるから,このような条項が有効とされるためには,原告が確保しようとする利益の性質及び内容に照らし,競業行為の制約の内容が必要最小限度にとどまっており,かつ,これにより被告が受ける不利益に対し,十分な代償措置が執られていることを要するものと解するのが相当である。(2) そこで本件につき,これらの点を検討すると,原告は,本件競業避止義務条項により保護されるべき原告の利益として,原告の構築した受験指導方法・体制(「LEC体系」)に係るノウハウ,多大な投資を行うことによって育成した講師という無形資産,原告の貢献によって作成された著作物の著作権を挙げる。しかし,上記各利益のうち,ノウハウに関する点については,その具体的内容自体明白ではなく,競業避止義務により保護されるべき利益に当たると認めるに足りない。原告代表\者作成の書籍においては,「LEC体系」という文言が用いられ,「LECでは合格自体が目的」,「講師に『身分・肩書き』はいらない」などの記載があるが(甲66),上記書籍によっても,ノウハウの具体的内容は明らかではない。また,原告が講師の育成に努めたものであるとしても,これにより当該講師が習得した知識・技能等が,原告の営業秘密たる技術又はノウハウ等に係るものである場合は別論,一般的な知識・技能\にとどまる場合には,当該講師が原告との関係終了後に上記知識・技能を使用することは本来自由であるから,これを制限することは,自由競争を制限することに他ならず不当なものというべきであるところ,本件において,原告が被告に対し,原告の営業秘密たる技術又はノウハウ等を開示し,被告がこれを習得したと認めるに足りる主張及び立証はない。更に,著作権については,これを保護するために必ずしも競業避止義務による必要はないものであり,これを保護利益とするためには,その必要を基礎づけるだけの特段の事情が必要であると解されるところ,その特段の事情についての主張立証もない。そうすると,原告の主張する保護利益については,いずれも競業避止義務により保護されるべきものと認めるだけの,主張立証がない(前提事実(4)のとおり,被告は被告サイト上において,被告書籍マーカーを含む被告書籍を無償で配信しているものであるが,被告書籍マーカー部分に相当する原告書籍マーカー部分に著作物性が認められないことは前記のとおりであり,上記の点を,著作権を保護利益とみるべき根拠とすることはできない。)他方,本件競業避止義務による制約の内容は,前記前提事実(2)エのとおり,本件契約終了後1年間であって,一般的な競業避止義務条項に比較して長期とは認められないものの,競業が禁止される地理的範囲を問わず,原告と競合関係に立つ企業への一切の関与及び起業を禁ずるというものである。これは,原告と被告との関係が,契約の更新期間を1年間とする業務委託契約に基づくものにすぎず,前記のとおり,原告に保護利益が存することの主張立証がないことも考慮すれば,広範にすぎ,かつ,被告に対し重大な不利益を課すものであるということができる。それにもかかわらず,被告に対し,契約関係終了前後を通じて,何らの代償措置も執られていないことは,原告も自認するところである(被告に対し,年額約1100万円の報酬が払われた時期があったとしても,これは,主として被告の実施した講義の対価〔1時間当たり6000円ないし1万円〕であって,その中には本件講義ノートの著作権が原告に譲渡されることの対価が含まれていることにも照らせば,これをもって競業避止義務の代償措置と認めることはできない。)。
(3) そうすると,本件競業避止義務条項による制約が,必要最小限度のものとは認められず,代償措置も執られていない以上,本件競業避止義務条項は,合理的理由なく過大な負担を被告に一方的に課すものとして,公序良俗に反し,無効であると認められる。(4) したがって,被告は原告に対し競業避止義務を負うものではなく,被告に,本件競業避止義務違反の債務不履行は認められない。

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平成20(ワ)29705 出版差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年08月31日 東京地方裁判所 

 臨床現場で有用な薬剤便覧が編集著作物に該当するのかが争われました。裁判所は、薬剤の選択の方針はありふれたものであるとして、編集著作物性を否定しました。
 前記ア(ウ)a認定のとおり,原告書籍便覧部分に掲載する個々の具体的な薬剤の選択の方針は,「2007年1月現在市販されている医家向け薬剤(一部未発売を含む)のうち,日常よく使用されているもの,使用頻度は少ないが重要なものは全て含み」,一方,「市販されているものであっても,経過措置品,近い将来再評価などにより発売中止になる可能性のあるものは一部省略」するというものであり,要するに,市販されている薬剤の中から,日常よく使用されているもの及び使用頻度は少ないが重要なものと認めた薬剤を全て選択するというものであり,その方針自体は,臨床現場で有用な薬剤便覧を編集することを目的とするものである以上,ありふれたものである。一方で,「日常よく使用されているもの」あるいは「使用頻度は少ないが重要なもの」に該当するかどうかを判定するには,編者によって「重要」の捉え方が必ずしも一様ではないなど選択の幅があり,上記方針に従ってされた個々の具体的な薬剤の選択結果においては,編者の個性が表\れていると認めることができる場合があるものといえる。また,臨床現場で迅速に必要かつ十分な薬剤情報を得られることを目的とし,個々の具体的な薬剤を分類体系に従って分類して掲載する薬剤便覧においては,コンパクト化の要請と薬剤情報の網羅性の要請を踏まえ,分類体系の分類項目を前提に,その項目ごとに該当する薬剤を選択し,それらを配列することになるので,掲載する薬剤を検討することと分類体系とは密接な関係にあるといえる。そのため,薬剤便覧の分類体系自体の独自性は,薬剤の配列のみならず,薬剤の選択においても影響を及ぼし得るものであり,また,その分類体系に従って行われた個々の具体的な薬剤の選択結果において,編者の個性が表\れていると認めることができる場合があるものといえる。もっとも,分類体系の分類項目が定まれば当該分類項目に掲載される薬剤が機械的にあるいは一義的に定まるのであれば格別,当該分類項目を前提に諸要素を考慮して個々の具体的な薬剤が選択されるのであれば,分類体系が同一又は類似するものであっても,その分類体系に従って行われた個々の具体的な薬剤の選択結果が異なるものとなり,その選択結果において薬剤の選択における表現の創作性がそもそも認められない場合や,複数の選択結果同士においてその表\現が類似するものと認められない場合も当然あり得るものといえるものであり,このような意味において,薬剤便覧の分類体系の独自性がその分類体系に従って選択された薬剤の選択の創作性に及ぼし得る影響は,限定的なものといわざるを得ない。
・・・
しかるところ,原告の上記主張によれば,原告書籍一般薬便覧部分においては,本件分類体系を前提としてこれに関連付けて,当該薬剤が本件分類体系のいずれに分類されるかという観点を考慮し,臨床現場での重要性や使用頻度,原告書籍の執筆者の学識や経験等に基づく意向,読者の要望等の基準に従って選択を行い,かつ,選択された薬剤を配列したというものであるから,原告書籍一般薬便覧部分において掲載された個々の具体的な薬剤の選択は,分類項目ごとに機械的にあるいは一義的に定められたものではないといえる。そうすると,仮に原告が主張するように被告書籍一般薬便覧部分に掲載された個々の薬剤が原告書籍一般薬便覧部分の本件分類体系と類似する5層の分類体系に関連付けられて選択されているとしても,そのことから直ちに原告主張の類似性が認められるものではなく,原告書籍一般薬便覧部分に掲載された薬剤の具体的な選択結果と被告書籍一般薬便覧部分に掲載された薬剤の具体的な選択結果とを対比し,原告が主張する原告書籍一般薬便覧部分の個々の具体的な薬剤の選択における創作的表現が被告書籍一般薬便覧部分において利用されているかどうかを検討する必要がある。
・・・
(ウ) 以上のとおり,仮に原告が主張するように原告書籍一般薬便覧部分の個々の具体的な薬剤の選択において創作性が認められるとしても,被告書籍一般薬便覧部分における個々の具体的な薬剤の選択における表現は,原告書籍一般薬便覧部分の創作的表\現と類似しているものと認められないから,その余の点について判断するまでもなく,被告書籍一般薬便覧部分が素材である個々の具体的な薬剤の選択に創作性を有する編集著作物である原告書籍一般薬便覧部分を複製又は翻案したものと認めることはできない。・・・このように原告書籍一般薬便覧部分と被告書籍一般薬便覧部分は,掲載された薬剤の具体的な配列順序(掲載順序)が明らかに相違するものであるから,仮に原告が主張するように原告書籍一般薬便覧部分の個々の具体的な薬剤の配列において創作性が認められるとしても,その創作的表現が被告書籍一般薬便覧部分の薬剤の配列に利用されているものと認めることはできない。
・・・
(ウ) 以上のとおり,仮に原告が主張するように原告書籍一般薬便覧部分の個々の具体的な薬剤の配列において創作性が認められるとしても,被告書籍一般薬便覧部分における個々の具体的な薬剤の配列における表現は,原告書籍一般薬便覧部分の創作的表\現と類似しているものと認められないから,その余の点について判断するまでもなく,被告書籍一般薬便覧部分が素材である個々の具体的な薬剤の配列に創作性を有する編集著作物である原告書籍一般薬便覧部分を複製又は翻案したものと認めることはできない。

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平成24(ネ)10027 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年08月08日 知的財産高等裁判所

 グリー vs DeNAの釣りゲームについて、知財高裁は、釣りゲームの画面は、表現といえるまで具体化されていないとして、著作権侵害ではないと判断しました。
 原告作品と被告作品とは,いずれも携帯電話機向けに配信されるソーシャルネットワークシステムの釣りゲームであり,両作品の魚の引き寄せ画面は,水面より上の様子が画面から捨象され,水中のみが真横から水平方向に描かれている点,水中の画像には,画面のほぼ中央に,中心からほぼ等間隔である三重の同心円と,黒色の魚影及び釣り糸が描かれ,水中の画像の背景は,水の色を含め全体的に青色で,下方に岩陰が描かれている点,釣り針にかかった魚影は,水中全体を動き回るが,背景の画像は静止している点において,共通する。イ しかしながら,そもそも,釣りゲームにおいて,まず,水中のみを描くことや,水中の画像に魚影,釣り糸及び岩陰を描くこと,水中の画像の配色が全体的に青色であることは,前記(2)ウのとおり,他の釣りゲームにも存在するものである上,実際の水中の影像と比較しても,ありふれた表現といわざるを得ない。次に,水中を真横から水平方向に描き,魚影が動き回る際にも背景の画像は静止していることは,原告作品の特徴の1つでもあるが,このような手法で水中の様子を描くこと自体は,アイデアというべきものである。また,三重の同心円を採用することは,従前の釣りゲームにはみられなかったものであるが,弓道,射撃及びダーツ等における同心円を釣りゲームに応用したものというべきものであって,釣りゲームに同心円を採用すること自体は,アイデアの範疇に属するものである。そして,同心円の態様は,いずれも画面のほぼ中央に描かれ,中心からほぼ等間隔の三重の同心円であるという点においては,共通するものの,両者の画面における水中の影像が占める部分が,原告作品では全体の約5分の3にすぎない横長の長方形で,そのために同心円が上下両端にややはみ出して接しており,大きさ等も変化がないのに対し,被告作品においては,水中の影像が画面全体のほぼ全部を占める略正方形で,大きさが変化する同心円が最大になった場合であっても両端に接することはなく,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,配色及び中央の円の部分の画像が変化するといった具体的表\現において,相違する。しかも,原告作品における同心円の配色が,最も外側のドーナツ形状部分及び中心の円の部分には,水中を表現する青色よりも薄い色を用い,上記ドーナツ形状部分と中心の円部分の間の部分には,背景の水中画面がそのまま表\示されているために,同心円が強調されているものではないのに対し,被告作品においては,放射状に仕切られた11個のパネルの,中心の円を除いた部分に,緑色と紫色が配色され,同心円の存在が強調されている点,同心円のパネルの配色部分の数及び場所も,魚の引き寄せ画面ごとに異なり,同一画面内でも変化する点,また,同心円の中心の円の部分は,コインが回転するような動きをし,緑色無地,銀色の背景に金色の釣り針,鮮やかな緑の背景に黄色の星マーク,金色の背景に銀色の銛,黒色の背景に赤字の×印の5種類に変化する点等において,相違する。そのため,原告作品及び被告作品ともに,「三重の同心円」が表示されるといっても,具体的表\現が異なることから,これに接する者の印象は必ずしも同一のものとはいえない。さらに,黒色の魚影と釣り糸を表現している点についても,釣り上げに成功するまでの魚の姿を魚影で描き,釣り糸も描いているゲームは,前記(2)ウのとおり,従前から存在していたものであり,ありふれた表現というべきである。しかも,その具体的表\現も,原告作品の魚影は魚を側面からみたものであるのに対し,被告作品の魚影は前面からみたものである点等において,異なる。
ウ 以上のとおり,抽象的にいえば,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面とは,水面より上の様子が画面から捨象され,水中のみが真横から水平方向に描かれている点,水中の画像には,画面のほぼ中央に,中心からほぼ等間隔である三重の同心円と,黒色の魚影及び釣り糸が描かれ,水中の画像の背景は,水の色を含め全体的に青色で,下方に岩陰が描かれている点,釣り針にかかった魚影は,水中全体を動き回るが,背景の画像は静止している点において共通するとはいうものの,上記共通する部分は,表現それ自体ではない部分又は表\現上の創作性がない部分にすぎず,また,その具体的表現においても異なるものである。そして,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面の全体について,同心円が表\示された以降の画面をみても,被告作品においては,まず,水中が描かれる部分が,画面下の細い部分を除くほぼ全体を占める略正方形であって,横長の長方形である原告作品の水中が描かれた部分とは輪郭が異なり,そのため,同心円が占める大きさや位置関係が異なる。また,被告作品においては,同心円が両端に接することはない上,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,パネルの配色及び中心の円の部分の図柄が変化するため,同心円が画面の上下端に接して大きさ等が変わることもない原告作品のものとは異なる。さらに,被告作品において,引き寄せメーターの位置及び態様,魚影の描き方及び魚影と同心円との前後関係や,中央の円の部分に魚影がある際に決定キーを押すと,円の中心部分の表示に応じてアニメーションが表\示され,その後の表示も異なってくるなどの点において,原告作品と相違するものである。その他,後記エ(カ)のとおり,同心円と魚影の位置関係に応じて決定キーを押した際の具体的表現においても相違する。なお,被告作品においては,同心円が表\示される前に,水中の画面を魚影が移動する場面が存在する。以上のような原告作品の魚の引き寄せ画面との共通部分と相違部分の内容や創作性の有無又は程度に鑑みると,被告作品の魚の引き寄せ画面に接する者が,その全体から受ける印象を異にし,原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得できるということはできない。\n

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成23(ワ)13060

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平成23(ネ)10089 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年04月25日 知的財産高等裁判所

 マンモスCT画像について、著作物性ありとした1審判決が維持されました。
 加えて,本件画像1では,半透明の三次元画像の中に配置する本件マンモスの水平断面像とし,これらの水平断面像を並べる間隔について,本件マンモスの頭蓋骨内にある「エアセル」の構造が見える部分は,当該構\造が見やすいように他の部分よりも広い間隔で配置している点,画像のアングルとして,本件マンモスの頭部を正面やや斜め右上の方向から見るアングルを選択している点において,作者の個性が表現されている。とりわけ,全体の色彩を深い青色としている点,色調の明暗について,頭蓋骨内にある「エアセル」の構\造が見える部分は青色が濃く暗めの色調としているのに対し,キバの部分は白っぽく明るい色調としている点などにおいても,様々な表現の可能\性があり得る中で,美術的又は学術的な観点に基づく特定の選択が行われて,その選択に従った表現が行われ,作者の個性が表\現されているということができる。

◆判決本文


◆原審(平成22年(ワ)第28962号)はこちら

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平成24(ネ)10004 損害賠償等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年04月25日 知的財産高等裁判所 

 編み物について、知財高裁でも著作物性が否定されました。
 当裁判所も,「形の最小単位は直角三角形であり,この三角形二つの各最大辺を線対称的に合わせて四角形を構成し,この四角形五つを円環的につなげた形二つをさらにつなげた形」と表\現される原判決最末尾別紙図面記載の構成は,表\現ではなく,そのような構成を有する衣服を作成する抽象的な構\想又はアイデアにとどまるものと解されるから,上記構成を根拠として原告編み物に著作物性を認めることはできず,原告編み図についても著作物性を認めることはできないと判断する。その理由は,原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」記載のとおりである。
・・・
上記構成におけるB線をとじ目として見て取ることができるとしても,原告編み物においては,編み目の方向の変化,編み目の重なり,各モチーフの色の選択,編み地の選択等の点が,その表\現を基礎付ける具体的構成となっているということができるのであって(原判決23頁6行目以下),これらの具体的構\成を捨象した「線」から成る上記構成は,そのような構\成を有する衣服を作成する場合の構想又はアイデアにとどまり,著作物性の根拠となるものではないことに変わりはないというべきである。\n

◆判決本文


◆原審はこちらです。平成22(ワ)39994

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平成20(ワ)9300 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年02月28日 東京地方裁判所

 社交ダンスの振り付けについて、裁判所は、著作物性無しと認定しました。
 社交ダンスが,原則として,基本ステップやPVのステップ等の既存のステップを自由に組み合わせて踊られるものであることは前記(1)アのとおりであり,基本ステップやPVのステップ等の既存のステップは,ごく短いものであり,かつ,社交ダンスで一般的に用いられるごくありふれたものであるから,これらに著作物性は認められない。また,基本ステップの諸要素にアレンジを加えることも一般的に行われていることであり,前記のとおり基本ステップがごく短いものでありふれたものであるといえることに照らすと,基本ステップにアレンジを加えたとしても,アレンジの対象となった基本ステップを認識することができるようなものは,基本ステップの範ちゅうに属するありふれたものとして著作物性は認められない。社交ダンスの振り付けにおいて,既存のステップにはない新たなステップや身体の動きを取り入れることがあることは前記(1)アのとおりであるが,このような新しいステップや身体の動きは,既存のステップと組み合わされて社交ダンスの振り付け全体を構成する一部分となる短いものにとどまるということができる。このような短い身体の動き自体に著作物性を認め,特定の者にその独占を認めることは,本来自由であるべき人の身体の動きを過度に制約することになりかねず,妥当でない。以上によれば,社交ダンスの振り付けを構\成する要素である個々のステップや身体の動き自体には,著作物性は認められないというべきである。
 イ 前記(1)アのとおり,社交ダンスの振り付けとは,基本ステップやPVのステップ等の既存のステップを組み合わせ,これに適宜アレンジを加えるなどして一つの流れのあるダンスを作り出すことである。このような既存のステップの組合せを基本とする社交ダンスの振り付けが著作物に該当するというためには,それが単なる既存のステップの組合せにとどまらない顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であると解するのが相当である。なぜなら,社交ダンスは,そもそも既存のステップを適宜自由に組み合わせて踊られることが前提とされているものであり,競技者のみならず一般の愛好家にも広く踊られていることにかんがみると,振り付けについての独創性を緩和し,組合せに何らかの特徴があれば著作物性が認められるとすると,わずかな差異を有するにすぎない無数の振り付けについて著作権が成立し,特定の者の独占が許されることになる結果,振り付けの自由度が過度に制約されることになりかねないからである。このことは,既存のステップの組合せに加えて,アレンジを加えたステップや,既存のステップにはない新たなステップや身体の動きを組み合わせた場合であっても同様であるというべきである。

◆判決本文

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平成23(ネ)10063 プログラム著作権使用料等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年02月29日 知的財産高等裁判所

 裁判所は、プログラムの著作物性について「疑義はあるが、争点ではないので」と、損害額のみについて判断しました。1審と同じく、双方本人訴訟です。
 プログラムに著作物性があるというためには,プログラムの全体に選択の幅が十分にあり,かつ,それがありふれた表\現でなく,作成者の個性,すなわち,表現上の創作性が表\れていることを要するところ,本件証拠上,本件プログラムが著作物性を備えるものであるといえるかについては疑義がある。しかし,前記のとおり,当審における争点は,専ら損害の額であるので,本件プログラムに著作物性があることを前提として,損害の額について検討すると,本件プログラムは,平成18年以前に作製されたものであること(甲1),本件契約に基づく本件プログラムの利用料等は,1か月2万8380円であったこと,本件プログラムと同様の機能を有する他のプログラムについて,インターネットで無料配布されたり,相当低廉な価格で提供されるものもあること(弁論の全趣旨),被控訴人が同社のインターネットホームページ上で本件プログラムを利用したのは,平成22年5月28日頃から同年6月頃までと平成23年3月28日頃から同年4月7日までの比較的短期間であることなどからすれば,本件で控訴人が被った損害の額は,原判決が認容した合計10万円を超えるものとは認められない。この点に関し,控訴人は,本件プログラムは無料若しくは安価である同様のプログラムにはない,初心者でも容易に設置でき,改造もしやすく,頻繁に変更される上位ドメイン管理データベースに追随しやすく設計されているという特徴があると主張するが,無料若しくは安価である同様のプログラムに比して,本件プログラムが控訴人が主張する優位性を備えていると認めるに足りる客観的な証拠はない。また,被控訴人の申\出により本件契約が締結され,本件プログラムの使用が特別に許諾されたという控訴人主張の事実は,損害の額に係る上記認定を左右するに足りるものではないし,本件での控訴人の損害の額が,被控訴人の平成22年度の売上額の1%に相当するとみるべき根拠もない。

◆判決本文

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平成23(ネ)10041等 損害賠償等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年01月31日 知的財産高等裁判所

  元社員が別の会社で作成したプログラムについて複製・翻案権侵害と認定された著作権侵害事件の控訴審です。知財高裁は1審の判断を維持しました。
 上記事実関係によれば,被告プログラムのうち36個のファイルが原告プログラムの35個のファイルとほぼ1対1で対応し,かつ,被告プログラムの上記36個のファイルにおけるソースコードが原告プログラムの35個のファイルにおけるソ\ースコードと,記述内容の大部分において同一又は実質的に同一である。このように,測量業務に必要な機能を抽出・分類し,これをファイル形式に区分して,関連付け,使用する関数を選択し,各ファイルにおいてサブルーチン化する処理機能\を選択し,共通処理のためのソースコードを作成し,また,各ファイルにおいてデータベースに構\造化して格納するデータを選択するなど,原告プログラムのうち作成者の個性が現れている多くの部分において,被告プログラムのソースコードは原告プログラムのソ\ースコードと同一又は実質的に同一であり,被告プログラムは原告プログラムとその表現が同一ないし実質的に同一であるか,又は表\現の本質的な特徴を直接感得できるものといえる。

◆判決本文

◆原審はこちら 平成19(ワ)24698平成23年05月26日東京地裁

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平成21(ワ)3102等 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年01月12日 大阪地方裁判所

著作物なしと認定されました。
 原告は,本件デザイン画の著作物性の根拠について,写真,背景の色や文字を,商品のイメージ,アイデア,コンセプト等に合わせて,独自の発想に基づいてデザイン,レイアウト,配色,仕上げ作業等を行って制作したことを理由として述べる。しかし,商品イメージやキャッチフレーズ,モデルの写真などの素材は,被告らから提供されたものであって,原告が制作過程において行った作業(製造過程における作業を除く。)は,デザイン,レイアウト(素材のレイアウト),配色,仕上げの各作業に過ぎず,本件デザイン画に著作物性を認めることはできない。イ これをもう少し詳しく述べると,次のとおりである。(ア) エステサポート,スタイリング満足について原告は,エステサポートに関する08AWツールのデザインポイントとして,i) ブランド名を強調し,棚に飾った際に見やすい位置にしたこと,ii)デニール数(繊維の太さ)を見やすい位置にしたこと,iii)部分的にマットニス仕上げを使用するなどして,上質感を出したこと,iv)さらには,透明感や品質(締め付け感)を演出するほか,いろいろな画像処理を施したことなどを挙げる。また,スタイリング満足に関する08AWツールのデザインポイントについても,上記i),ii)のほか,V)Rラインに擬似的に銀色に見える処理をするなどして,高級感を出したこと,vi) 脚が美しく見えるよう写真の角度を調整したことなどを挙げる。しかし,これらはいずれも,もっぱら顧客の注意を引き,購入意欲を喚起するために,被告らから提供された素材をどのようにレイアウトしたかということや,仕上がりに高級感を持たせるためにいかなる処理をしたかをいうものに過ぎない。また,レイアウト自体は,他の同種の販促ツールと比べ,特徴的なものがあるとはいえない。
・・・
以上によると,本件各デザイン画のうちエステサポート,スタイリング満足に関する部分の作成に際し,原告の行った作業の結果について,著作物性を認めることのできる表現部分があるとはいえず(原告が主張する上記デザインポイントを,著作権を理由に原告に独占させるべき表\現方法ということはできない。),他に著作物性を認めることのできる表現部分の主張,立証はない。\n

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平成22(受)1884 著作権侵害差止等請求事件 平成24年01月17日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻し 知的財産高等裁判所

原審は、映画の著作物について、著作権存続期間が満了した判断して複製したことについて、高裁は過失無しとして損害賠償請求を棄却しました。これに対して最高裁は、この過失なしとの判断は誤りと判断しました。
 原審は,要旨,次のとおり判断して,上告人の損害賠償請求を棄却した。旧法下の映画については,映画を製作した団体が著作者になり得るのか,どのような要件があれば団体も著作者になり得るのかをめぐって,学説は分かれ,指導的な裁判例もなく,本件各監督が著作者の一人であったといえるか否かも考え方が分かれ得るところである。このような場合に,結果的に著作者の判定を誤り,著作権の存続期間が満了したと誤信したとしても,被上告人に過失があったとして損害賠償責任を問うべきではない。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 旧法下の映画の著作者については,その全体的形成に創作的に寄与した者が誰であるかを基準として判断すべきであるところ(最高裁平成20年(受)第889号同21年10月8日第一小法廷判決・裁判集民事232号25頁),一般に,監督を担当する者は,映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与し得る者であり,本件各監督について,本件各映画の全体的形成に創作的に寄与したことを疑わせる事情はなく,かえって,本件各映画の冒頭部分やポスターにおいて,監督として個別に表示されたり,その氏名を付して監督作品と表\\示されたりしていることからすれば,本件各映画に相当程度創作的に寄与したと認識され得る状況にあったということができる。他方,被上告人が,旧法下の映画の著作権の存続期間に関し,上記の2(7)アないしウの考え方を採ったことに相当な理由があるとは認められないことは次のとおりである。すなわち,独創性を有する旧法下の映画の著作権の存続期間については,旧法3条〜6条,9条の規定が適用される(旧法22条ノ3)ところ,旧法3条は,著作者が自然人であることを前提として,当該著作者の死亡の時点を基準にその著作物の著作権の存続期間を定めるとしているのである。旧法3条が著作者の死亡の時点を基準に著作物の著作権の存続期間を定めることを想定している以上,映画の著作物について,一律に旧法6条が適用されるとして,興行の時点を基準にその著作物の著作権の存続期間が定まるとの解釈を採ることは困難であり,上記のような解釈を示す公的見解,有力な学説,裁判例があったこともうかがわれない。また,団体名義で興行された映画は,自然人が著作者である旨が実名をもって表示されているか否かを問うことなく,全て団体の著作名義をもって公表\\された著作物として,旧法6条が適用されるとする見解についても同様である。最高裁平成19年(受)第1105号同年12月18日第三小法廷判決・民集61巻9号3460頁は,自然人が著作者である旨がその実名をもって表示されたことを前提とするものではなく,上記判断を左右するものではない。そして,旧法下の映画について,職務著作となる場合があり得るとしても,これが,原則として職務著作となることや,映画製作者の名義で興行したものは当然に職務著作となることを定めた規定はなく,その旨を示す公的見解等があったこともうかがわれない。加えて,被上告人は,本件各映画が職務著作であることを基礎付ける具体的事実を主張しておらず,本件各映画が職務著作であると判断する相当な根拠に基づいて本件行為に及んだものでないことが明らかである。そうすると,被上告人は,本件行為の時点において,本件各映画の著作権の存続期間について,少なくとも本件各監督が著作者の一人であるとして旧法3条が適用されることを認識し得たというべきであり,そうであれば,本件各監督の死亡した時期などの必要な調査を行うことによって,本件各映画の著作権が存続していたことも認識し得たというべきである。以上の事情からすれば,被上告人が本件各映画の著作権の存続期間が満了したと誤信していたとしても,本件行為について被上告人に少なくとも過失があったというほかはない。\n

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◆原審はこちらです。平成21(ネ)10050

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平成22(ワ)11439 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成23年12月15日 大阪地方裁判所

 取扱説明書が編集著作物かが争われました。裁判所は、創作性なしと判断しました。また、デッドコピーの不法行為についても否定しました。
 もっとも,本件のような製品の取扱説明書においては,その性質上,次のような内容や表記方法が要求され,かつ,広く採用されていると考えられる。したがって,製品の取扱説明書に係る編集著作物性を判断するにあたっては,これらの内容や表\記方法は,原則としてありふれた表記であるということができる。(ア) 製品の概要(機能,構\造,部品やその名称),取扱方法,発生しうるトラブルやその対処方法,注意ないし禁止事項などを,文章や図面・イラストによって説明する。(イ) 説明内容を示すタイトルを付けたり,説明内容の重要度に応じて,文字の大きさや太さに変化を付ける,強調のための文字飾りを付す,注意を促すマークを付すなどする。(ウ) 説明内容を理解しやすくするため,説明文の近くに,製品を簡単にデフォルメしたイラストや,製品そのものの写真を掲載する。(2) 原告各取扱説明書の創意工夫について原告は,原告各取扱説明書に表現された創意工夫として,i)図面,記号,マーク,具体例の使用,ii)各種団体公認の表記,iii)取扱説明書の趣旨及び安全上の遵守事項の記載の先行,iv)文字サイズ,文字飾り,インパクトのある単語,マークによる強調,v) イラスト図面・記号の使用,記載場所,大きさ等の工夫を挙げる。しかしながら,取扱説明書においては,一般に,わかりやすく伝える,安全性を図るといった点が要求されるため,前記(1)イのような内容・表記が広く採用されているものであるから,上記i),iv),v)の工夫は,通常行われているありふれたものといえる。また,上記i)及びiv)と,v)のうち記載場所以外の要素は,既に選択・配列された要素に係る表記上の工夫であって,そもそも,「素材の選択」にも「素材の配列」にも該当しない。また,上記ii)については,原告各製品のアピールポイントの1つであるが,アピールすべきポイントが限られると,これらの要素を取扱説明書に記載する素材として選択することやその配列は,自ずと限定されることになり,創作性があるとは認められない。さらに,上記iii)については,設置方法,使用方法,取扱説明書の趣旨(取扱説明書の説明),安全上の遵守事項を,どのような順序で配列するかについてであるが,まず,取扱説明書の趣旨が最初に述べられることは当然である。取扱説明書の中心となるべき,設置方法と使用方法については,製品は使用の前に設置する必要があることから,上記の順に配列されるべきである。安全上の遵守事項の記載位置については選択の余地があるが,通常,設置方法,使用方法の前か後という選択しか考えられず,しかも,その内容が重要であることから,前に記載されることはむしろ普通であると考えられる。
・・・・
原告は,原告各取扱説明書が,様々な創意工夫をし,多大な時間と労力を費やして作成されたものであるから,これらをデッドコピーした被告各取扱説明書を,原告が営業活動を行う地域で頒布することは,取引における公正かつ自由な競争として許される範囲を逸脱し,法的保護に値する原告の営業活動を侵害するものだと主張する。しかしながら,被告各取扱説明書は,対象製品から独立して頒布されるものではなく,その点は原告各取扱説明書も同様であるところ,被告らが,既に取引が成立した製品に取扱説明書を付して交付することが,同様の行為を行っている原告との関係において,自由な競争の範囲を超える行為であるとは認めがたい。

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平成23(ネ)10008 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成23年12月22日 知的財産高等裁判所

 折り紙の折り図についての著作物性のある部分を複製していないとした1審判決が維持されました。
 「原告は,本件折り図の「32の折り工程のうち,どの折り工程を選択し,一連の折り図として表現するか,何個の説明図を用いて説明するか」は,アイデアではなく,表\現であるとして,被告折り図と本件折り図とは,上記の点において共通するので,被告が被告折り図を作成する行為は,本件折り図について有する原告の複製権ないし翻案権を侵害すると主張する。しかし,原告の主張は,主張自体失当である。すなわち,著作権法により,保護の対象とされるのは,「思想又は感情」を創作的に表現したものであって,思想や感情そのものではない(著作権法2条1項1号参照)。原告の主張に係る「32の折り工程のうち,10個の図面によって行うとの説明の手法」それ自体は,著作権法による保護の対象とされるものではない。上記アのとおり,被告折り図と本件折り図とを対比すると,i)32の折り工程からなる折り方について,10個の図面(説明図)及び完成形を示した図面(説明図)による説明手法,ii)いくつかの工程をまとめた説明手法及び内容,iii)各説明図は,紙の上下左右の向きを一定方向に固定し,折り筋を付ける箇所を点線で,付けられた折筋を実線で,折り筋を付ける手順を矢印で示しているという説明手法等において共通する。しかし,これらは,読者に対し,わかりやすく説明するための手法上の共通点であって,具体的表現における共通点ではない。そして,具体的表\現態様について対比すると,本件折り図と被告折り図とは,上記アのとおり,数多くの相違点が存在する。被告折り図は本件折り図の有形的な再製には当たらず,また,被告折り図から本件折り図の表現上の本質的特徴が直接感得できるともいえない。したがって,被告が,被告折り図を作成することによって本件折り図を複製ないし翻案した旨の原告の主張は採用できない。\n  

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◆原審はこちらです。平成22(ワ)18968平成23年05月20日東京地裁

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平成22(ワ)36616 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成23年12月22日 東京地方裁判所

 損害保険の代理店業等を営む原告が,損害保険会社である被告に対し,被告が,原告と被告間の損害保険代理店契約が解除された後に,原告の著作物である別紙1の「平成22年1月1日付け火災保険改定のお知らせ」と題する説明書面を複製し,これを含む案内資料を原告の顧客である社会福祉法人に送付し,被告との火災保険契約の締結を勧誘した行為が,複製権侵害であると判断されました。
 本件説明書面(甲2)は,別紙1のとおりのものであり,「平成22年1月1日付け火災保険改定のお知らせ」と題して,本件改定の内容を顧客向けに文章で説明する本文部分(1枚目)と,地域別に建物の構造級別区分ごとの保険料率の改定幅を数値で示した一覧表\及び本件改定の前後それぞれにおける建物の構造級別区分の判定の仕方をフローチャート方式で示した図表\などが記載された別添資料部分(2枚目)とからなるものである。そして,本件説明書面のうち,上記本文部分においては,「主な改定の内容」が,「1.火災保険上の建物構造級別の判定方法の簡素化」,「2.火災保険料率の大幅な改定」,「3.保険法の改定による対応」の3点に整理されて,それぞれの内容が数行程度の簡略な文章で紹介されるとともに,特に内容的に重要な部分については,太文字で表\記されたり,下線が付されるなど,一見して本件改定のポイントが把握しやすいような構成とされている。また,上記別添資料部分においては,本件改定による建物の構\造級別区分の判定方法の変更点について,一見して理解しやすいように,フローチャート方式の図表を用いた説明がされ,しかも,当該フローチャート図の中に,楕円で囲った白抜きの文字や太い矢印を適宜用いるなど,視覚的にも分かりやすくするための工夫が施されている。以上で述べたような本件説明書面の構\成やデザインは,本件改定の内容を説明するための表現方法として様々な可能\性があり得る中で(甲3ないし5,弁論の全趣旨),本件説明書面の作成者が,本件改定の内容を分かりやすく説明するという観点から特定の選択を行い,その選択に従った表現を行ったものといえるのであり,これらを総合した成果物である本件説明書面の中に作成者の個性が表\現されているものと認めることができる。

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平成22(ワ)28962 平成23年11月29日 東京地方裁判所 

 著作物性ありと認定しました。
 本件画像1は,本件CTデータからコンピュータソフトウェアの機能\により自動的に生成される本件三次元再構築モデルとは異なり,本件CTデータを素材としながらも,半透明にした本件マンモスの頭部の三次元画像の中に,本件マンモスの水平断面像を並べて配置する構\成としている点において,美術的又は学術的観点からの作者の個性が表現されているものということができる。加えて,本件画像1では,半透明の三次元画像の中に配置する本件マンモスの水平断面像として,本件CTデータ中の531枚の水平断面像の中から31枚の画像を選択している点,これらの水平断面像を並べる間隔について,本件マンモスの頭蓋骨内にある「エアセル」の構\造が見える部分は,当該構造が見やすいように他の部分よりも広い間隔で配置している点,画像のアングルとして,本件マンモスの頭部を正面やや斜め右上の方向から見るアングルを選択している点,全体の色彩を深い青色としている点,色調の明暗について,頭蓋骨内にある「エアセル」の構\造が見える部分は青色が濃く暗めの色調としているのに対し,キバの部分は白っぽく明るい色調としている点などにおいても,様々な表現の可能\性があり得る中で,美術的又は学術的な観点に基づく特定の選択が行われて,その選択に従った表現が行われているのであり,これらを総合した成果物である本件画像1の中に作者の個性が表\現されていることを認めることができる。
・・・
 これに対し被告は,本件各画像における上記の各点について,いずれもありふれた表現方法や画像を見やすくするための技術的調整等にすぎず,本件各画像に創作性を認める根拠とはならない旨を主張する。しかしながら,被告の主張は,要するに,本件各画像における表\現の要素を個別に取り上げて,それぞれが独創性のある表現とまではいえない旨を述べているものにすぎないものであり,前述のとおり,著作物としての創作性が認められるためには,必ずしも表\現の独創性が求められるものではなく,作者の個性が表現されていれば足りるのであり,本件各画像にそのような意味での創作性が認められることは,上記(ア)及び(イ)で述べたとおりであるから,被告の上記主張は採用することができない。

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平成21(ワ)4998 著作権侵害等に基づく損害賠償等請求事件 平成23年09月15日 名古屋地方裁判所

 創作性の認められない部分については著作物性なしと判断しました。
 本件における原告各書籍及び本件各書籍のような法律問題の解説書においては,関連する法令の内容や法律用語の意味を整理して説明したり,法令又は判例,学説によって当然に導かれる一般的な法律解釈や実務の運用等を解説するなどし,それらを踏まえた見解を記述することが不可避である。しかるに,既存の著作物とこれに依拠して創作された著作物との同一性を有する部分が,法令や通達,判決,決定等である場合には,これが著作権の目的とすることができないものである以上(同法13条参照),当該法令等の記述そのものが複製,翻案となることはないのはもちろん,同一性を有する部分が,法令や判決等によって当然に導かれる事柄である場合にも,創作的に表現した部分において同一性を有するとはいえないから,当該部分に係る記述も複製,翻案には当たらないと解すべきである。また,手続の流れや法令の内容等を法令の規定や実務の取扱いに従って図示したり図表\にすること,さらには,手続上通常用いられる書面の書式を掲載することはアイデアの範ちゅうに属することであり,これを独自の観点から分類し,整理要約したなどの個性的表現がされているといった格別の場合でない限り,そのような図示,図表\や書式は,創作的に表現した部分において同一性を有するものとはいえないから,複製,翻案に当たらないと解すべきである。さらに,同一性を有する部分が,ある法律問題に関する筆者の見解又は一般的な見解である場合にも,思想ないしアイデアにおいて同一性を有するにすぎないから,一般の法律書等に記載されていない独自の観点からそれを説明する上で通常用いられる表\現にとらわれず,独自の表現を用いて整理要約したなど表\現上の格別の工夫がある場合でない限り,複製,翻案に当たらないと解される。そして,ある法律問題について,関連する法令等の内容や法律用語の意味を説明し,一般的な法律解釈や実務の運用等を記述する場合には,確立した法律用語をあらかじめ定義された用法で使用し,法令等又は判例等によって当然に導かれる一般的な法律解釈を説明しなければならないという表現上の制約がある。そのため,これらの事項について説明する場合に,条文の順序にとらわれずに,独自の観点から分類し,通常用いられる表\現にとらわれず,独自の表現を用いて整理要約したなど表\現上の格別の工夫がある場合でない限り,筆者の個性が表れているとはいえないから,著作権法によって保護される著作物としての創作性を認めることはできず,複製にも翻案にも当たらないと解すべきである。
・・・
以上のとおり,原告各表現と本件各表\現とは,表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性のない部分において同一性を有するにすぎないから,本件各表現は,いずれも原告各表\現を複製,翻案したものとは認められない。

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平成22(ワ)5114 損害賠償等請求反訴事件 平成23年08月19日 東京地方裁判所 

 著作権侵害、不競法違反が存在しないとして、営業誹謗行為(不競法2条1項14号)であると判断されました。
 前記前提事実オの本件注意書の記載内容のうち,(ア),(イ),(エ),(ク)及び(ケ)の記載は,反訴被告による反訴被告事業の実施が,反訴原告装置に関する反訴原告の著作権等の権利を侵害する違法なものであることを内容とする記載であると解されるところ,反訴被告による反訴被告事業の実施が,反訴原告の著作権若しくは著作者人格権侵害,不正競争行為又は秘密保持義務違反(債務不履行)のいずれにも当たらないことは前記のとおりであるから,前記(ア),(イ),(エ),(ク)及び(ケ)の記載は虚偽の部分を含むものである。
イ また,本件注意書の記載内容のうち,前記オ(ウ)の記載中で「スペースチューブからの盗作である」と記載された本件イラストは,反訴原告と反訴被告の共同事業として実施された前記前提事実ア記載のイベントにおいて撮影された写真を基に,反訴被告の依頼に基づき描かれたものであると認められるが(甲10の1・2),本件イラストの表現内容が前記前提事実カのとおりのものであることに照らし,本件イラストが反訴原告装置を複製したものに当たらないことは明らかであり,他に本件イラストが反訴原告の権利を侵害するものであることを認めるに足りる証拠はない(なお,反訴原告は,本件イラストが上記のとおり反訴原告装置を撮影した写真を基にして描かれたものであることから,本件イラストが反訴原告の反訴原告装置についての著作権を侵害する旨主張するものであると解されるが,本件イラストは,前記前提事実カのとおり,4人の子供及びその指先や膝先,手首の先などに曲線が描かれたものであり,本件イラストは反訴原告装置を有形的に再製したものでも,反訴原告装置の本質的特徴を感得することができるものでもないことは明らかである。)。したがって,前記(ウ)の記載も虚偽のものに当たる。
ウ さらに,前記オ(オ),(カ)及び(キ)に記載された本件契約の解除の経緯等に関する記載のうち,反訴被告が反訴原告を脅した旨の記載は,前記前提事実イ及びウの反訴原告と反訴被告との間における通知及び回答の各内容に照らし,事実経過に沿わないものであるというべきである。エ 反訴原告と反訴被告は,体験型の展示装置を使用したイベントの実施を行う点で競争関係にあるものと認められるところ,以上のとおり,本件注意書は,前記アないしウの点で,虚偽の内容を含むものであると認められる。そして,本件注意書の前記記載は,反訴被告事業が反訴原告の権利を侵害する違法なものであり,又は,反訴被告が反訴原告を脅すなど不当な経緯により事業をするに至った旨を,本件注意書を見る不特定多数の者に印象付けるものであって,反訴被告の営業上の信用を害するものである。よって,反訴原告による本件注意書のアップロードは,虚偽の事実を流布する行為(不正競争防止法2条1項14号)に当たるものであると認められる。

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平成21(ワ)31755 損害賠償請求事件 平成23年07月29日 東京地方裁判所

 入れ墨が著作物として認定されました。なぜか著作者人格権だけが争われています。
 本件仏像写真(甲16の2)は,本件仏像の全身を向かって左斜め前から撮影したカラー写真であり,本件仏像の表情や黒色ないし焦げ茶色の色合いがほぼそのままに再現されている。これに対し,本件入れ墨(甲8の3)は,本件仏像写真をモデルにしながらも,本件仏像の胸部より上の部分に絞り,顔の向きを右向きから左向きに変え,顔の表\\情は,眉,目などを穏やかな表情に変えるなどの変更を加えていること,本件仏像写真は,平面での表\\現であり,仏像の色合いも実物そのままに表現されているのに対し,本件入れ墨は,人間の大腿部の丸味を利用した立体的な表\\現であり,色合いも人間の肌の色を基調としながら,墨の濃淡で独特の立体感が表現されていることなど,本件仏像写真との間には表\\現上の相違が見て取れる。そして,上記表現上の相違は,本件入れ墨の作成者である原告が,下絵の作成に際して構\\図の取り方や仏像の表情等に創意工夫を凝らし,輪郭線の筋彫りや描線の墨入れ,ぼかしの墨入れ等に際しても様々の道具を使用し,技法を凝らして入れ墨を施したことによるものと認められ,そこには原告の思想,感情が創作的に表\\現されていると評価することができる。したがって,本件入れ墨について,著作物性を肯定することができる。
(4) 被告らは,本件入れ墨は本件仏像写真の単なる機械的な模写又は単なる模倣にすぎないから著作物性が認められないと主張し,その理由として,i)本件下絵は本件仏像写真の上にトレーシングペーパーを重ね,上から鉛筆で描線をトレースして作成したものにすぎないこと,ii)本件下絵から貼り絵を作成し,これを入れ墨施術部位に貼\\り付け,裏側のインクを皮膚に定着される過程は,全て機械的転位にすぎず,そこには創作性の入る余地はないこと,iii)輪郭線の描写は,全て本件下絵に基づくか,本件下絵になかったとしても基となる本件仏像写真に表われているか,彫物師なら誰でも思い付く程度のもので創作性を認めるに値しないこと,iV)ぼかしについても,本件入れ墨の場合,ほぼ本件仏像写真の陰影と同一であって,これは写真の模倣にすぎず,創作性を認めることができないことを挙げる。しかしながら,上記i)は前提とする事実が誤りである。そして,原告は,本件入れ墨の制作に当たり,i)下絵の作成に際して構図の取り方や仏像の表\\情等に創意工夫を凝らしたこと,ii)入れ墨を施すに際しては,輪郭線の筋彫りや描線の墨入れ,ぼかしの墨入れ等に際しても様々の道具を使用し,技法を凝らしたこと,これにより本件入れ墨と本件仏像写真との間には表現上の相違があり,そこには原告の思想,感情が創作的に表\\現されていると評価することができることは上記説示のとおりであり,本件入れ墨が本件仏像写真の単なる機械的な模写又は単なる模倣にすぎないということはできず,被告らの上記主張は採用することができない。

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平成22(ワ)31663 損害賠償請求事件 平成23年06月10日 東京地方裁判所

 著作物性が否定されました。
 著作権法上の保護を受ける著作物とは,思想又は感情を創作的に表現したものであって,アイデアや着想がそれ自体として著作権法の保護の対象となるものではない。そして,本件システム及び本件ビジネスプランや,その内容である「自分を起点にグループ全体が拡大していくこと」及び「小さい方のグループが報酬計算の算出基準となること」は,アイデアないし着想というべきであるから,それ自体は著作権法によって保護されるべき対象とはならない。\n

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平成19(ワ)24698 損害賠償等請求事件 平成23年05月26日 東京地方裁判所

 元社員が別の会社で作成したプログラムについて複製・翻案権侵害と認定されました。114条2項による侵害額の推定も認められました。
 証拠(乙11の1,3〜5)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年8月31日終了事業年度(1期)から平成21年8月31日終了事業年度(4期)までの間における,被告YKSC社の売上高の合計額は4億2 1 4 3 万1 3 8 4 円( 20,138,050 + 121,484,073 + 137,885,662 +141,923,599=421,431,384 円)であり,変動経費として売上高から控除すべき費用(材料費,外注加工費,旅費交通費)の合計額は1億3611万8708円(2,664,896+43,659,701+49,072,556+40,721,555=13,618,708 円)であると認められるから,上記期間における被告YKSC社の限界利益の合計額は2億8531万2676円であり,売上高に占める変動経費の比率は約32%であると認められる。本件では,上記のとおり,別紙売上集計表記載の一般測量,丁張測量,位置郎リース,成果(データ作成,図面・他成果)業務の売上高の一部について,被告ソ\フトを使用したことによる売上高であると認められるところ,上記認定に係るこれらの業務の性質や,被告YKSC社の業務のうち被告ソフトを使用したものと認められなかった業務の性質等を考慮すると,上記限界利益を算定するに当たって売上高から控除すべき変動経費は,売上高の30%と認めるのが相当である。したがって,上記(ア)a,b,同(イ)a,同(ウ)認定の売上高の合計額から3 0 % を控除した2 2 6 4 万5 6 6 5 円( { 6,560,430 +17,942,240+3,535,450+2,319,200+1,993,630}円×0.7=22,645,665円)が,被告YKSC社が被告ソフトを使用したことによる利益であると認められる。\n

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平成20(ワ)11762 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成23年01月28日 東京地方裁判所

 プログラム著作物について、差止、損害賠償が認められました。問題となったプログラムは、被告が原告在職中に作成したものでした。なお、翻案の差止は認められず、実施料相当額は10%と判断されました。
ウ これに対し,被告らは,原告プログラムにおいては,画面上の構成要素を貼\り付け,ボタン等を配置するために必要なプログラムなど,開発ツールであるMicrosoft社の「Visual Studio.net」によって自動生成された部分が相当の分量に及んでおり,これらの部分には創作性がないとした上で,原告プログラムのうちのMainForm.csの原告ソースコードに含まれる各関数を分析すると,別紙5において☆,○又は□の印を記載したものについては,自動生成コードが相当割合を占めることから,創作性が認められない旨を主張する。しかしながら,MainForm.csの原告ソースコードについては,そこに含まれる各関数における自動生成コードの占める割合が被告ら主張のとおりであることを前提にしたとしても,少なくとも別紙5において△の印が記載された合計10の関数については,被告ら自身が汎用的でないコードからなるものであることを認めており,創作性が認められることに実質的な争いはないものといえる。また,別紙5において□の印が記載された合計164の関数についても,被告らは,自動生成コードの割合が1割程度にすぎないこと,すなわち,9割程度が自動生成コードではないことを認めているのであり,これらの関数については,少なくとも自動生成コードが相当割合を占めることを理由として創作性を否定することはできないというべきである。この点,被告らは,これらの関数について,汎用的プログラムの組合せであることを理由として創作性が否定されるかのごとく主張するが,汎用的プログラムの組合せであったとしても,それらの選択と組合せが一義的に定まるものでない以上,このような選択と組合せにはプログラム作成者の個性が発揮されるのが通常というべきであるから,被告らの上記主張は採用できない。してみると,被告らの上記主張を前提としても,MainForm.csの原告ソースコードについては,そこに含まれる298の関数のうちの約6割(174/298)において,自動生成コードが1割以下にとどまっており,それ以外のコードは,その選択と組合せにおいてプログラム作成者の個性が発揮されていることが推認できるというべきであるから,プログラム著作物としての創作性を優に肯定することができる。エさらに,後記(2)イで認定するとおり,原告プログラムは,主として被告A1がその開発及びプログラミング作業を行ったものであるから,原告プログラムの内容等を最も知悉する者は被告A1にほかならないところ,それにもかかわらず,被告らは,原告プログラムの一部であるMainForm.csの原告ソースコードについて,別紙5に記載した印に基づいて前記第3の1(2)ア記載の程度の概括的な主張をしてその創作性を争うにとどまっており,それ以外の原告プログラムの創作性については,具体的理由に基づいてこれを争う旨の主張は行っていない。しかも,被告A1は,その本人尋問において,自らが行った原告プログラムにおけるソースコードの記述方法について,様々な創意工夫がされていることを自認する供述もしている。前記イ及びウで述べたことに加え,上記のような被告らの訴訟対応や被告A1の本人尋問における供述をも総合すれば,原告プログラムが,全体として創作性の認められるプログラム著作物であることは,優にこれを認めることができる。
・・・
原告は,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づき,被告プログラムの翻案の差止めを求めている。そこで,被告らが,被告プログラムの翻案行為を現に行い,又は,これを行うおそれがあると認められるか否かにつき検討するに,まず,被告らが,被告プログラムを改変する行為を現に行っているとの事実を認めるに足りる証拠はない。また,被告プログラムを翻案する行為には,広範かつ多様な態様があり得るものと考えられる。ところが,原告の上記請求は,差止めの対象となる行為を具体的に特定することなく,上記のとおり広範かつ多様な態様を含み得る「翻案」に当たる行為のすべてを差止めの対象とするものであるところ,このように無限定な内容の行為について,被告らがこれを行うおそれがあるものとして差止めの必要性を認めることはできないというべきである。したがって,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づいて被告プログラムの翻案の差止めを求める原告の請求は理由がない。
・・・
そこで,上記会費収入を前提として,原告が原告プログラムについての著作権の行使につき受けるべき金銭の額(使用料相当額)を算定するに,i)社団法人発明協会発行の「実施料率【第5版】」(甲24)に記載されたソフトウェアを含む「電子計算機・その他の電子応用装置」の技術分野における外国技術導入契約において定められた実施料率に関する統計データによれば,平成4年度から平成10年度までのイニシャル・ペイメント条件がない契約における実施料率の平均は33.2パーセントとされ,特にソ\フトウェアにおいて高率契約の割合が高いとされていること,ii)原告プログラムは,原告において,多大な時間と労力をかけて開発されたものであり,かつ,原告の業務の中核となる重要な知的財産であって,競業他社にその使用を許諾することは,通常考え難いものであること,iii)他方,証拠(乙13,被告A1)によれば,被告会社においては,その会員に対し,被告ソフトを公衆送信して使用させることのみならず,被告会社が野村総研から購入した株価や銘柄に関するデータに種々の処理を施したものを提供するサービスや会員に対して電子メールで種々のアドバイスを送信するメールサービスも行っていることから,会員から得られる会費の中には,これらのサービスに対する対価に相当する部分も含まれており,本来,上記会費収入の全額が実施料率算定の基礎となるものではないことといった事情のほか,原告ソ\フト及び被告ソフトの内容,被告らによる侵害行為の態様及びそれに至る経緯,原告と被告らとの関係など本件に現れた一切の事情を総合考慮すれば,被告らによる平成19年1月から平成22年8月までの著作権侵害について,原告が受けるべき使用料相当額は,上記(ア)の会費収入合計額2045万1200円の約10パーセントに当たる200万円と認めるのが相当である(なお,被告らによる著作権侵害について,原告が受けるべき使用料相当額は,原告の原告ソフトの表\示画面に係る著作権侵害の主張が認められる場合でも,上記金額を超えるものとはいえない。)。

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平成20(ワ)27432 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成12年12月10日 東京地方裁判所

 ウェブページにおける説明について、著作物性が否定されました。
 原告は,本件コンテンツは,ウェブページとして視覚的にも操作性の面でも分かりやすくなるよう「サービスメニュー」ボタンが設けられ,その配置,分類及び表現(「HDD」,「サーバ/RAID」,「デジカメ/フラッシュメモリ」,「FD/MO/CD/DVD」)にも配慮がなされ,タブメニューも設置された上,その構成,分類及び表\現(「ホーム」→「データSOS とは」→「サービスの流れ」→「よくある質問」)にも配慮がなされていると主張するが,原告が本件コンテンツとして特定したウェブページ,すなわち,甲3の1の3枚目から5枚目には,「サービスメニュー」ボタン,及び「HDD」,「サーバ/RAID」,「デジカメ/フラッシュメモリ」,「FD/MO/CD/DVD」との表現は存在しない。仮に,これらが本件コンテンツに含まれるとしても,これらの分類,配置及び表\現は,ごくありふれたものであり,作成者の個性が現れているとはいえないから,これらを著作物と認めることはできない。したがって,この点においても,原告の本件コンテンツに係る著作権侵害の主張は失当というほかない。 ・・・ 原告は,別紙文章対比表の原告文章欄記載の下線部分を一まとまりとした全体的な構\成,記載順序,配列,小見出し等の具体的な表現において,被告文章は原告文章と表\現上の同一性を有しており複製に当たると主張する。確かに,原告文章と被告文章とは,別紙文章対比表のとおり,全体的な構\成,記載の順序,小見出しを有することにおいて共通するといえる。しかし,別紙文章対比表の原告文章欄記載の各下線部分は,当時,広く一般的には知られていなかったデータ復旧サービスについての一般消費者向けの広告用文章として,データ復旧サービスの基本的な内容を説明するものである。このような一般消費者向けの広告用文章においては,広告の対象となる商品やサービスを分かりやすく説明するため,平易で簡潔な表\現を用いることや,各項目ごとに端的な小見出しを付すること,説明の対象となるサービスとはどのようなものか,どのような場合に利用するものなのか,異なる商品やサービスとの相違点は何かをこのような構成,順序で記載することなどは,広告用文章で広く用いられている一般的な表\現手法といえ,原告主張の上記の全体的な表現に作成者の個性が現れているということはできない。\n

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平成21(ワ)1193  著作権 民事訴訟 平成22年11月18日 東京地方裁判所

 赤ん坊の椅子について、著作物性は否定されましたが、不競法の商品形態に該当するとして請求が認められました。
 著作権法2条1項1号は,著作物を,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定し,同条2項において,「この法律にいう「美術の著作物」には,美術工芸品を含むものとする。」と規定する。これらの規定は,意匠法等の産業財産権制度との関係から,著作権法により美術の著作物として保護されるのは,純粋美術の領域に属するものや美術工芸品であり,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予\定されているもの(いわゆる応用美術)は,それが純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美術性を備えている場合に限り,著作権法による保護の対象になるという趣旨であると解するのが相当である。本件デザインは,いすのデザインであって,実用品のデザインであることは明らかであり,その外観において純粋美術や美術工芸品と同視し得るような美術性を備えていると認めることはできないから,著作権法による保護の対象とはならないというべきである(なお,原告らは,ベルヌ条約加盟国では応用美術が保護されるから,本件デザインは我が国においても著作権法による保護の対象となる旨主張する。しかしながら,同条約は,応用美術の著作物に関する法令の適用範囲及び保護の条件について各国の法令の定めるところによるとしており(同条約2条7項,我が) 国の著作権法における応用美術の保護の範囲の解釈は上記のとおりであるから,我が国以外のベルヌ条約加盟国中に応用美術を保護の対象とする国があったとしても,本件デザインは我が国の著作権法による保護の対象とはならないというべきである。)。・・・・
 被告は,原告製品の形態のうち,特に,脚板と側面板との角度が約66度であることと,側面板に彫られた多数の溝があることは,技術・機能に由来するものであるから,これらの形態に自他識別力や出所表\示力を認めるのは相当でないと主張する。しかし,そもそも,原告製品が側面部分について側面板と脚板とから成る形態を採用していること自体は,何ら技術・機能に由来するものではなく,子供用のいすの側面部分の構\成としては様々な形態が採用可能であるから(甲12,27参照),原告製品のような形態を採用した結果として,側面板と脚板とが形成する角度を70度前後に設計することが適切となる(乙18)としても,そのことによって,上記形態自体が技術・機能\に由来するものとなるわけではない。また,座板や足のせ板の位置を調節する方法としては,ねじ等の留め具で留めたり,バネで調節したりするなど様々な方法が考えられるのであるから,側面板に多数の溝を設けることが技術・機能に由来するものであるとはいえない。\n

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平成21(ワ)35164 著作権移転登録請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年09月03日 東京地方裁判所

 プログラム著作権の帰属が争われました。権利の特定はSOFTICの登録番号でなされていました。権利の特定が容易となるというプログラム登録制度の意義が活用されています。

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平成22(ネ)10017等 著作権侵害差止等反訴請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年07月14日 知的財産高等裁判所

 神奈川県知事が著者である「破天荒力・・・」について、地裁は著作権侵害を認めましたが、高裁は逆転判断。
 既に説示したとおり,著作権法は,思想又は感情の創作的表現を著作物として保護するものである(著作権法2条1項1号)から,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体ではない部分又は表\\現上の創作性がない部分は,著作権法による保護が及ばない。すなわち,歴史的事実の発見やそれに基づく推論等のアイデアは,それらの発見やアイデア自体に独自性があっても,著作に当たってそれらを事実又は思想として選択することは,それ自体,著作権による保護の対象とはなり得ない。そのようにして選択された事実又は思想の配列は,それ自体としてひとつの表現を構\\成することがあり得るとしても,以上のとおり,原判決添付別紙対比表2記載の各被控訴人書籍記述部分の事実又は思想の選択及び配列自体には,いずれも表\\現上の格別な工夫があるとまでいうことはできないばかりか,上記各被控訴人書籍記述部分とこれに対応する各控訴人書籍記述部分とでは,事実又は思想の選択及び配列が異なっているのである。したがって,上記各控訴人書籍記述部分は,これに対応する各被控訴人書籍記述部分と単に記述されている事実又は思想が共通するにとどまるから,これについて各被控訴人書籍記述部分の複製又は翻案に当たるものと認めることができないことは明らかである。

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◆1審はこちら・東京地裁平成20(ワ)1586

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平成21(ワ)27691 損害賠償 著作権 民事訴訟 平成22年06月17日 東京地方裁判所 

 出版物の図表の著作物性が争われました。裁判所は、ありふれた選択手法であり、編集著作物としての創作性がないと判断しました。

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平成22(ネ)10004 著作権侵害確認等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

 論文の著作権侵害について、原審は複製翻案権侵害と認定しましたが、知財高裁は該当箇所は創作性無しとしてこれを取り消しました。
 第1論文の当該表記部分は,判断を含めた事実について,ごく普通の構\文を用いた英文で表記したものであって,全体として,個性的な表\現であるということはできず創作性はなく,また表現の本質的な特徴部分も認められないから,第2論文該当箇所は,第1論文該当箇所を複製したものということはできず,また翻案ということもできない。この点について,原告は,「Discussion」には,多数の書き方が存在するから,第1論文の当該表記部分は,創作性を有すると主張する。しかし,ある内容を表\現するに当たり,他の表現の選択が可能\であったとしても,そのことから,当然に,当該表記部分に創作性が生じると解すべきではなく,創作性を有するとするためには,表\現に個性が発揮されていることを要する。第1論文該当箇所は,いずれも,語句の選択,順序,配列を含めて格別の個性の発揮された表現であるということはできないから,原告の主張は理由がない。なお,第2論文は,第1論文と対比すると,表\現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において共通する部分が存在するが,「Results」及び「Conclusion」の各章は,記載内容において相違すること,第2論文は,第1論文の全体記述及び個々の記述を総合勘案しても,第1論文の表現の本質的特徴を感得できるものではない点については,既に述べたとおりである。\n

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◆原審はこちらです。平成18(ワ)2591平成21年11月27日東京地方裁判所

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平成22(行コ)10001 情報非開示処分取消等請求控訴事件 その他 行政訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

 委託者には著作権は譲渡されていないと判断されました。
 一般的に,著作権は,不動産の所有者や預金の権利者が権利発生等についての出捐等によって客観的に判断されるのと異なり,著作物を創作した者に原始的に帰属するものであるから(著作権法2条1項2号,同法17条),ソフトウェアの著作権の帰属は,原則として,それを創作した著作者に帰属するものであって,開発費の負担によって決せられるものではなく,システム開発委託契約に基づき受託会社によって開発されたプログラムの著作権は,原始的には受託会社に帰属するものと解される。また,旧岡三証券とOISとの間の本件委託業務基本契約(甲22)に基づくデータ処理業務は,上記認定の内容からすれば,情報処理委託契約であると解されるところ,情報処理委託契約は,委託者が情報の処理を委託し,受託者がこれを受託し,計算センターが行う様々な情報処理に対し,顧客が対価を支払う約定によって成立する契約であって,著作権の利用許諾契約的要素は含まれないと解される。本件においては,前記認定のとおり,旧岡三証券とOIS間において,昭和55年7月1日に締結された本件委託業務基本契約にも,著作権の利用許諾要素は全く含まれていないが,それは上記の理由によりいわば当然であり,また,証拠(甲61,62,70ないし73)によれば,そのような場合でも,委託者が,受託者に対し,システム開発料として多額の支出をすることは,一般的にあり得ることと認められるから,単に開発したソ\\フトウェアが主に委託者の業務に使用されるものであるとの理由で,委託者がその開発料を支払っていれば,直ちにその開発料に対応して改変された著作物の著作権が委託者に移転されるということにはならないことは明らかである。著作権はあくまで著作物を創作した者に原始的に帰属するものであるから,例えば,日本ユニシスとOISとの間の平成15年10月1日付「アウトソーシング・サービス委託契約書」(乙61)において,その第9条2項に,日本ユニシスが保有するプログラムをOISが改良した場合の改良後のプログラムの著作権法27条及び28条の権利を含む著作権が日本ユニシスに帰属する旨が合意されているように,その譲渡にはその旨の意思表\\示を要することは,他の財産権と異なるものではない。したがって,本件においても,上記のような明示の特約があるか,又はそれと等価値といえるような黙示の合意があるなどの特段の事情がない限り,旧岡三証券が本件ソフトウェアの開発費を負担したという事実があったとしても,そのことをもって,直ちに,その開発費を負担した部分のソ\\フトウェアの著作権が,その都度,委託者である旧岡三証券に移転することはないというべきである。そして,本件全証拠を精査しても,一度原始的にOISに帰属した本件ソフトウェアの著作権が,旧岡三証券がその開発費用を支出した都度,本件譲渡契約前にOISから旧岡三証券に対して黙示的に譲渡されていたことなどの特段の事情を認めるに足りる証拠はない。\n

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平成20(ワ)32147 損害賠償請求事件 著作権 平成22年02月25日 東京地方裁判所

 図表が編集著作物に該当するかが争われました。裁判所は創作性なしとしました。
 原告は,原告図表は本件調査によって収集したデータないし原告が根拠ある推測をしたデータに基づき作成されたものであり,同データは原告独自の工夫と能\力によってのみ収集し得るものであるから,編集著作物性の判断に当たっては,このような素材の収集に要した労力等も考慮すべきであると主張する。しかしながら,著作権法により編集著作物として保護されるのは,著作権法12条1項に規定するとおり,編集物に具現された素材の選択又は配列における創作性であって,素材それ自体の価値や素材を収集するために費やした労力は,それ自体が著作権法によって保護されるものではない。したがって,仮に,原告が本件調査のために相当の労力を費やし,本件調査によって得られた情報ないし原告において算定した各種の推測値に高い価値を認め得るとしても,そのことをもって原告図表の創作性の根拠とすることはできず,原告の上記主張を採用することはできない。\n

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平成21(ワ)6411 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年02月25日 大阪地方裁判所

 ぬいぐるみの著作物性について争われました。裁判所は、本質的部分が類似しないとして翻案権侵害を認めませんでした。
 「著作物のどの点に本質的特徴があるかは,当該著作物の著作者の創作的意図をも踏まえながらも,それのみならず,創作の対象となったモデル自体との対比や,同一のモデルを対象とした他の著作物との対比等も参考にしながら,法的保護に値する創作的な特徴を客観的な観点から認定するのが相当である。・・・他方,ぬいぐるみを観賞して愛でるにしろ,触れて遊ぶにしろ,その顔の表情はぬいぐるみの印象を決定づける重要な要素の1つであるところ,原告作品I群では,胴体に比べて頭部が横方向にはみ出しており,正面視の顔の輪郭形状は水平方向に扁平な楕円形である(なお,トムキャットでは,正面から見た場合の頭部の横幅は胴体と同じである。)。また,原告作品I群では,両目の間隔が離れており,鼻が両目を結んだ直線上にあって,目鼻が頭部のやや上部に位置することに加え,前脚と後脚の長さがほぼ同じで,前傾姿勢を取っていないことからすると,原告作品I群をそれぞれ全体としてみれば,見る者に優しく,ほのぼのとした印象を与えるものということができる。したがって,これらの形態は原告作品I群の印象を決定付ける本質的特徴というべきである。なお,原告作品I群の耳は,頂角が鋭角をなす二等辺三角形に近く,頭部から大きく突き出ており,この点も,原告作品I群を特徴づける要素といえる。・・・・そうすると,被告各製品は,原告各作品の本質的特徴を備えているとは認められず,また,前脚を短くした前傾姿勢を取ることによって,原告各作品とは異なり,今にも飛びかかってきそうな子猫の無邪気な印象を与えるものであり,原告作品I群の見る者に優しくほのぼのとした印象や,原告作品II群の上目遣いでのんきな印象とも大きく異なるといえる。そうすると,被告各製品からは,原告作品I群及びII群の本質的特徴を直接感得することはできないというべきであり,被告各製品は,原告各作品を翻案したと認められるほどに類似しているとは認められない。」\n

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平成20(ワ)32148 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年01月27日 東京地方裁判所 

 編集著作物であることが否定されました。
 原告は,原告各図表が,原告が長年の実績と経験を基に相当の労力を費やして初めて取得することができるデータを,原告が独自の創意工夫を凝らして編集して作成したものであるから,編集著作物に該当すると主張する。しかしながら,原告は,原告が編集著作物と主張する原告各図表\に凝らしたとする「素材の選択又は配列」についての「独自の創意工夫」の具体的な内容について,主張立証するものでなく,前記(1)ないし(9)において認定したとおり,原告各図表と同様の素材を選択し,原告各図表\と同様の配列をした図表は,従前から数多く存在していることが認められる。そうすると,当該データの収集に相当の労力を要したり困難性が認められるか否かはさておくとしても,原告各図表\自体は,いずれもありふれた一般的な素材を選択し,一般的な配列をしたものにすぎないといわざるを得ず,これらが編集著作物であると認めることはできない。したがって,原告の前記主張は,採用することができない。なお,原告は,原告各図表で使用したデータが,収集に相当な労力を伴うものであり,たやすく収集できるものではない旨るる主張するところ,仮に,編集著作物における素材それ自体に価値が認められたり,素材の収集に労力を要するものであったとしても,素材それ自体が著作物として保護されるような場合を除き,それらの素材や労力が著作権法により保護されるものではない。したがって,仮に,原告がデータの収集に相当の労力を費やし,その保有するデータに一定の価値を認め得るものであるとしても,当該データ自体に著作物性が認められるものでない以上,それらの労力やデータが,原告各図表\の編集著作物としての著作物性を根拠付けるものとはなり得ず,原告の前記主張は,失当である。

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平成20(ワ)1586 著作権侵害差止等請求反訴事件 著作権 民事訴訟

 ノンフィクション書籍について、一部複製が認められました。
 原告書籍のように,歴史的事実を素材として叙述されたノンフィクション作品においては,基礎資料からどのような歴史的事実を取捨選択し,その歴史的事実をどのように評価し,どのような視点から,どのような筋の運び,ストーリー展開,言い回し,語句等を用いて具体的に叙述したかといった点に筆者の個性が現れるものといえるが,著作権法は,思想又は感情の創作的表現を保護するものであり(同法2条1項1号参照),思想,感情又はアイデア,事実又は事件など表\現それ自体でないものや,表現であっても,表\現上の創作性がない部分は保護の対象とするものではないから,ノンフィクション作品においても,叙述された表現のうち,表\現上の創作性を有する部分のみが著作権法の保護の対象となるものであり,素材である歴史的事実そのものや特定の歴史的事実を取捨選択したことそれ自体には著作権法の保護が及ぶものではないものと解される。そして,複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により著作物を有形的に再製することをいい(著作権法2条1項15号参照),また,言語の著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解されるから(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照),被告書籍記述部分がこれに対応する原告書籍記述部分の複製又は翻案に当たるか否かを判断するに当たっては,被告書籍記述部分において,原告書籍記述部分における創作的表現を再製したかどうか,あるいは,原告書籍記述部分の表\現上の本質的特徴を直接感得することができるかどうかを検討する必要がある。そこで,以下においては,上記のような観点から,別紙対比表1ないし3,仙之助及び正造を主人公とした章全体の各原告書籍記述部分と各被告書籍記述部分を対比し,後者が前者の複製又は翻案に当たるか否かについて順次判断する。・・・・・・・・の記述に引き続いて,孝子は正造と離婚した後スコットランド人実業家と再婚したのに対し,正造は再婚することがなかった事実を指摘し,「正造が結婚したのは,最初から孝子というより富士屋ホテルだったのかもしれない。」と述べている記述である。そして,原告書籍記述部分は,上記のエピソ\ードを経て,婿であった正造が孝子と離婚後も富士屋ホテルにとどまり,生涯再婚することなく,富士屋ホテルの経営に精力を注いだ事実について,「富士屋ホテル」を正造の結婚相手に喩えて,正造が「結婚した」のは「富士屋ホテルだったのかもしれない」と表現した点において,筆者の個性が現れており,創作性が認められる。この点について被告らは,「〜と結婚したようなもの」という表\現は,何かに一心不乱に打ち込む状態を表すありきたりな言い回しにすぎないから,原告書籍記述部分は,原告による個性的表\現とはいえない旨主張する。しかしながら,原告書籍記述部分のように短い文章の表現の創作性の有無を判断するに当たっては,当該記述部分の前後の記述をも踏まえて,当該記述部分がいかなる脈絡の下で,どのような内容を表\現しようとしたものかをも勘案して総合的に判断すべきであり,また,語句や言い回しそのものはよく用いられるものであっても,ある思想又は感情を表現をしようとする場合に多様な具体的表\現が可能な中で,特に当該語句や言い回しを選んで用い,当該語句や言い回しを含む表\現がありふれたものといえない場合には,表現上の創作性を有するというべきである。\n

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平成18(ワ)2591 著作権侵害確認等請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年11月27日 東京地方裁判所

 論文について複製権侵害、翻案権侵害が争われました。裁判所は、複製権侵害であると認定しました。
 以上によれば,第1論文は,原告が,被告が作成した原稿について,原稿への書き込み及び口頭により,英語表現の訂正,付加や,記載の順序,内容等について指示をし,その指示を受けた被告が原稿の修文をしたり,新たに作成した文章を書き入れて,完成するに至ったものであって,第1論文は,原告と被告が共同で創作し,原告と被告の寄与を分離して個別的に利用することができないものというべきであるから,第1論文は原告と被告の共同著作物(著作権法2条1項12号)であると認められる。したがって,原告は,第1論文の共同著作者である。・・・・以上によれば,被告は,第1論文に依拠し,第1論文の「Abstract」の一部(別紙対比表1の2ないし4の各項)及び「Discussion」の一部(別紙対比表2のcないしlの各項)について,その創作的表\現を有形的に再製して第2論文を作成したものであるから,被告による第2論文の作成は,上記の限度において複製に当たるものと認められる。そして,被告は,第1論文の共同著作者である原告の同意を得ずに,第2論文を作成しているから,被告による第2論文の作成は,原告の第1論文の一部についての複製権の侵害に当たる。・・・・・原告は,第2論文は,第1論文に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,「Results」及び「Conclusion」の章のみを書き替えたものであり,両論文の読者は,その余の部分についての酷似を容易に感得できるから,第2論文は,第1論文を全体として翻案したものである旨主張する。ところで,言語の著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。これを本件についてみるに,前記(1)のとおり,第2論文において第1論文の創作的表現が有形的に再製されている部分は,「Abstract」の一部(別紙対比表1の2ないし4の各項)及び「Discussion」の一部(別紙対比表2のcないしlの各項)であって,しかも,両論文の「Results」及び「Conclusion」の各章は,記載内容が異なり,その表現において類似する箇所は存しないことに照らすならば,上記部分から第1論文全体の表\現上の本質的特徴な特徴を直接感得することができるものではないから,第2論文は,第1論文を全体として翻案したものと認めることはできない。

◆判決本文

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◆平成20(ワ)4874  著作権 民事訴訟 平成21年03月30日 東京地方裁判所

 法的書類(催告書)が著作物か、著作者は誰かが争われました。裁判所は、著作者は弁護士であり、また、著作物でないと認定しました。
 「上記の認定事実によれば,本件催告書には,読売新聞西部本社の法務室長の肩書きを付して原告の名前が表示されているものの,その実質的な作成者(本件催告書が著作物と認められる場合は,著作者)は,原告とは認められず,原告代理人(又は同代理人事務所の者)である可能\性が極めて高いものと認められる。・・・以上の諸点を考慮すると,本件催告書は,原告が作成したものではないと認められる。
 「本件催告書の構成は,本件第1文において,本件催告書によって中止を求める対象となる被告の行為を指摘し,本件第2文において,原告の権利内容の主張をし,本件第3文において,本件第1文で指摘した被告の行為は,本件第2文で示した原告の権利を侵害する違法な行為であることを主張し,本件第4文において,被告に対して,本件第1文で指摘した行為の中止を求め,本件第5文において,本件第4文の催告に従わない場合に,原告が法的措置を採ることを示すというものである。被告サイトに掲載されている本件回答書の削除を,本件回答書の公表\権に基づき請求するという内容の催告書を作成する場合,種々の構成が考えられるが,上記の構\成を採ることは自然であり,実際,代理人催告書も,上記と同じ構成を採っており,各種の催告書の文例にも,上記の構\成と同様の構成を採っているものがある(乙1,3)。したがって,本件催告書全体の構\成に,原告の個性が現れているということはできないと解される。」

◆平成20(ワ)4874  著作権 民事訴訟 平成21年03月30日 東京地方裁判所

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◆平成17(ワ)2641 著作権確認等請求事件 著作権民事訴訟 平成21年02月26日 大阪地方裁判所

 争点の1つがプログラムが著作物性を有するかでした。裁判所は本件プログラムは著作物性であると認定しました。

 「プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表\ 現したもの」であり(著作権法2条1項10号の2),所定のプログラム言語,規約及び解法に制約されつつ,コンピュータに対する指令をどのように表現するか,その指令の表\ 現をどのように組み合わせ,どのような表現順序とするかなどといったところに,法により保護されるべき作成者の個性が表\ れることになる。したがって,プログラムに著作物性があるというには,指令の表現自体,その指令の表\ 現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十\ 分にあり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表\ れていることを要する。
 (3) 本件プログラムの著作物性の有無 

 本件プログラム全体について本件プログラムは,DHL車にTC車が複数両一挙に連結された場合に,何両のTC車が連結されたのかはDHL車に予め示されておらず,かつ各TC車の連結操作番号も決められていない状態から,DHL車の最寄り側から順次整然と連結操作番号が決定される等の特徴(前記(1)エ(キ))を,DHL車とTC車の部分が相まって初めて発揮するものであるから,全体としてひとまとまりの著作物というべきである。前記(1)において認定したとおり,本件プログラムの内容は,DHL車から連結されている複数のTC車に対し,任意の連結操作番号を付与し,常時電気信号を送信し,その受信状態により,連結状況・異常の有無を確認したり,ブレーキの解放・緊締のための信号を送信するもので,作業自体は,複数の種類がある上に,その作業の一つ一つについて相当程度の数の段階・順序を踏むものであり,その方法も,各車両の対向する部分に設置された搬送コイルの電磁信号送受信装置を用いるもので,非接触方式であり,搬送コイルによる非接触方式によるこのような車両の連結・解放・ブレーキ操作の方法・装置は,特許を取得する程度に新規なものであったことから,これに対応するプログラムも,当時およそ世の中に存在しなかった新規な内容のものであるということができる。したがって,本件プログラムは,DHL車の部分及びTC車の部分を併せた全体として新規な表現であり,しかも,その分量(ソ\ースリストでみると,DHL車の部分は1300行以上,TC車の部分は約1000行)も多く,選択配列の幅が十分にある中から選択配列されたものということができるから,その表\ 現には全体として作成者の個性が表れているものと推認することができる。」

◆判決本文

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◆平成19(ワ)18724 損害賠償請求事件 著作権民事訴訟 平成20年12月25日 東京地方裁判所

   静止画の連続するゲームプログラムが映画の著作物に該当するかが争われました。裁判所は、該当しないと判断しました。
 「本件ゲームソフトの影像は,多数の静止画像の組合せによって構\成されており,静止画像の画面ごとに音楽や台詞が加えられ,台詞の終了ごとに所定の位置をクリックすること等をきっかけとして画面が変わること,主人公が登場人物と会話する場面の影像は,画面全体に「総帥室」,「エレツィオーネ厨房」など百貨店内の特定の場所を示す静止画像が表示されるとともに,画面上部中央に「零式真琴」などその登場人物の静止画像が表\示され,画面下部に主人公とその登場人物の会話等が順次表示されることで構\成されていること,プレイヤーが画面に表示された複数のコマンドの一つを選択するに従ってストーリーが展開し,コマンドの選び方によってストーリーが変化することが認められる。他方で,甲3からは,本件ゲームソ\フトの影像中に,動きのある連続影像が存することを認めることはできない。もっとも,甲3には,設定場面が変わる際に主人公等のキャラクターが静止画像で表示されているマップ上を移動する場面があるが,同場面は,本件ゲームソ\フトの影像のものではなく,被告ゲームソフトの影像の一部であると認められる。他に本件ゲームソ\フトの影像中に動きのある連続影像が存することを認めるに足りる証拠はない。・・・本件ゲームソフトの影像は,多数の静止画像の組合せによって表\現されているにとどまり,動きのある連続影像として表現されている部分は認められないから,映画の著作物の要件のうち,「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表\現されていること」の要件を充足しない。したがって,本件ゲームソフトは,映画の著作物に該当するものとは認められない。」

◆平成19(ワ)18724 損害賠償請求事件 著作権民事訴訟 平成20年12月25日 東京地方裁判所

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◆平成17(ワ)16218 損害賠償請求事件 平成20年01月31日 東京地方裁判所

 各法務局に備え置かれた土地宝典を貸出し、設置されたコインコピー機により複製行為を繰り返せしめたことは、不特定多数の一般人による複製行為について,共同侵害主体であるとし、国に対して、600万弱の支払いを認めました。
 「土地宝典」とは、公図を主要な素材の一つとするものではあるものの,地域の特徴に応じて,隣接する複数の公図を選択した上でこれらを接合して一葉内に収録し,より広範囲の地図として一覧性を高めて公図に記載された情報を表示する地図です。

◆平成17(ワ)16218 損害賠償請求事件 平成20年01月31日 東京地方裁判所

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◆平成18(ワ)13706 損害賠償請求事件 著作権民事訴訟 平成19年01月31日 東京地方裁判所

  少し前の事件です。プレイ・バイ・ウェブ(PBW)と呼ばれる形式のロールプレイングゲームのパロディサイトを運営していた被告に対して、著作権侵害および不法行為が成立するかが争われました。裁判所は、いずれも請求棄却しました。
  「本件原告記載は,いずれも,一単語又は二,三の単語を組み合わせたごく短い表現であり,かつ,平凡で,ありふれた表\現であるから,創作性が認められないことは明らかである。なお,仮に,本件原告記載中の「里見学園八剣伝」及び「里見学園」の各記載に何らかの創作性があるものと解しても,原告は,前記1(2)で認定したとおり,被告らに対し,「里見学園八剣伝」という名称の原告サイトのパロディ・イベント(サイト)の開設を許諾したものであるから,被告サイトにおける上記各記載の使用が,複製権の侵害となるものでないことも明らかである。・・・単に,原告サイトの上記のような構造と同様の構\造のウェブサイトを開設することは,ことさら原告に損害を与えることを目的としたり,そのような態様で行うといった特段の事情が存在しない限り,不法行為を構成するものではないというべきである。そして,本件においては,被告らが原告サイトの上記構\造と同様の構造の被告サイトを開設することが不法行為を構\成するといえるまでの特段の事情の存在を認めることはできない。」

◆平成18(ワ)13706 損害賠償請求事件 著作権民事訴訟 平成19年01月31日 東京地方裁判所

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◆H17.11.17 東京地裁 平成16(ワ)19816 著作権 民事訴訟事件

  図表の著作物性が争われました。
  「原告チャート(1) 及び(2) は,左縦軸と右縦軸と横軸に目盛りを設定した方眼状の図表であり,原告チャート(3-1) ,(4-1) 及び(5-1) は,その図表に使用例を記載したものである。このような図表\又は図表の使用例に示される思想ないしアイデアそのものは,著作権法によって保護されるものではない。また,このような図表\又は図表の使用例は,次に述べるとおり,かかる思想ないしアイデアを表\現する際にその個性が表れず,定型的な一般的にありふれた表\現としかならないような場合には,著作権法によって保護し得る表現上の創作性があるということはできない」と著作物性を否定しました。

◆H17.11.17 東京地裁 平成16(ワ)19816 著作権 民事訴訟事件

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◆H17.10. 6 知財高裁 平成17(ネ)10049 著作権 民事訴訟事件

  新聞記事の見出しが著作物かどうか、著作物でないとしても不法行為として損害賠償が認められるかが争われました。
  知財高裁は、著作物でないとしても、不法行為として損害賠償が認められると判断しました。
  著作物性については、「上記365個のYOL見出しは,その性質上,表現の選択の幅は広いとはいい難く,創作性を発揮する余地が比較的少ないことは否定し難いところである上,個別にみても,・・いずれも事実関係を客観的にありふれた表\現で構成したものであり,見出しに対応するYOL記事本文との関係をも考慮しつつ検討するとしても,これらのYOL見出しの表\現に創作性があるとは到底いえない。」と判断しました。
 一方、「とりわけ,本件YOL見出しは,控訴人の多大の労力,費用をかけた報道機関としての一連の活動が結実したものといえること,著作権法による保護の下にあるとまでは認められないものの,相応の苦労・工夫により作成されたものであって,簡潔な表現により,それ自体から報道される事件等のニュースの概要について一応の理解ができるようになっていること,YOL見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情があることなどに照らせば,YOL見出しは,法的保護に値する利益となり得るものというべきである。」と不法行為であることを認めました。

   原審です。H16. 3.24 東京地裁 平成14(ワ)28035 著作権 民事訴訟事件

◆H17.10. 6 知財高裁 平成17(ネ)10049 著作権 民事訴訟事件

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◆H17. 5.12 東京地裁 平成16(ワ)10223 著作権 民事訴訟事件

 いくつか争点はありますが、1つの争点は、空港案内図について著作物性が認められるかでした。
  裁判所は「上記両空港案内図は,共通している部分については,空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法であって,OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とは言い難く,むしろ,施設名称の具体的表\記方法や全体の配色等によって,異なる印象を与えるものであるから,本件空港案内図を見る者がOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。」と判断しました。

◆H17. 5.12 東京地裁 平成16(ワ)10223 著作権 民事訴訟事件

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◆H17. 5.17 東京地裁 平成15(ワ)12551等 著作権 民事訴訟事件

 法律問題の解説書の記述を模倣することが、複製等に該当するのかが争われました。
 裁判所は、「手続の流れや法令の内容等を法令の規定に従って図示することはアイデアであり,一定の工夫が必要ではあるが,これを独自の観点から分類し整理要約したなどの個性的表現がされている場合は格別,法令の内容に従って整理したにすぎない図表\については,誰が作成しても同じような表現にならざるを得ない。よって,図表\において同一性を有する部分が単に法令の内容を整理したにすぎないものである場合にも,思想又は感情を創作的に表現した部分において同一性を有するとはいえないから,複製にも翻案にも当たらないと解すべきである。そのように解さなければ,ある者が手続の流れ等を図示した後は,他の者が同じ手続の流れ等を法令の規定に従って図示すること自体を禁じることになりかねないからである。」と、複製にも翻案にも当たらないと判断しました。

◆H17. 5.17 東京地裁 平成15(ワ)12551等 著作権 民事訴訟事件

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◆H16.11. 4 大阪地裁 平成15(ワ)6252 著作権 民事訴訟事件

 自然科学に関する論文の著作物性が争われました。
 裁判所は「論文に同一の自然科学上の知見が記載されているとしても、自然科学上の知見それ自体は表現ではないから、同じ知見が記載されていることをもって著作権の侵害とすることはできない。・・・もっとも、自然科学上の知見を記載した論文に一切創作性がないというものではなく、例えば、論文全体として、あるいは論文中のある程度まとまった文章で構\成される段落について、論文全体として、あるいは論文中のある程度まとまった文章として捉えた上で、個々の文における表現に加え、論述の構\成や文章の配列をも合わせて見たときに作成者の個性が現れている場合には、その単位全体の表現として創作的なものということができるから、その限りで著作物性を認めることはあり得るところである。」と述べました。

◆H16.11. 4 大阪地裁 平成15(ワ)6252 著作権 民事訴訟事件

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◆H16. 6.30 東京地裁 平成15(ワ)15478 著作権 民事訴訟事件

 プログラムの画面の著作物性が争われました。裁判所は、「画面の著作物性はナシ」と判断しました。
 同じような画面の表示および画面構\成が争われたサイボウズ事件(H14. 9. 5 東京地裁 平成13(ワ)16440 著作権 民事訴訟事件)では、著作物性については判断せず、複製ではないと判断しました。 また、積算くん事件(H12. 3.30 大阪地裁 平成10(ワ)13577 著作権 民事訴訟事件)でも、プログラムの画面配置が争われましたが、この事件でも共通する部分については、著作物性が否定されています。この判決では、「積算くんの表示画面とWARPの表\示画面との間には、表現が共通する部分が存在するものの、異なる表\現も多々存在するのであり、しかも、両表示画面において表\現が共通する部分に、積算くんの著作者の思想又は感情の創作的な表現があるとみることはできない。」と判断されました。

◆H16. 6.30 東京地裁 平成15(ワ)15478 著作権 民事訴訟事件

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◆H16. 1.15 大阪地裁 平成14(ワ)1919等 著作権 民事訴訟事件

 少し前の事件です。
   訴外Aの社員と被告が共同で開発したパチスロ機の関する著作権の帰属および商標権侵害が争われました。原告Bは、訴外Aの破産管財人から知的財産権の譲渡を受け、自己が権利者であると主張しました。
 具体的には、著作物に該当するのか、著作者は誰か、商標の使用に該当するのか等が争われました。裁判所はパチスロ機の液晶画面について美術の著作物に当たり、また、共同著作物ではないと判断しました。
 また、商標権については、「ソフトウエアは、一般に、その記憶媒体のいかんにかかわらず、プログラム自体が商品の本質をなすという特質を有するものである。そして、ソ\フトウエアを実行した場合にその導入部で表示される標章は、需要者に認識され、出所識別機能\を果たすものであるから、商標として使用されているというべきであり、これをプログラムに組み込むことも、商品に標章を付することに当たるというべきものである。・・・したがって、同ソフトウエアの「隠しムービー」で別紙標章目録2記載の標章が表\示されるように同ソフトウエアに組み込むことは、本件商標に類似する標章を商品に付して使用することに当たるというべきである。」と判断しました。

 

◆H16. 1.15 大阪地裁 平成14(ワ)1919等 著作権 民事訴訟事件

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◆H16. 3.30 東京地裁 平成15(ワ)285 著作権 民事訴訟事件

 講座情報の分類・配列方針が、編集著作物として保護されるかが争われました。
裁判所は、「著作権法12条に規定する編集著作物は,あくまでも具体的な編集物に具現化された編集方法を保護するものであって,具体的な編集対象物を離れた,編集方法それ自体をアイデアとして保護するものではない。原告は,抽象的な「学ぶ内容」(カプセルとして設定された項目),あるいはツメ見出しの項目及びカプセルの項目がそれぞれ編集著作物の素材となり得るものと主張するが,これらの項目は,あくまでも具体的な広告記事を分類配列するための指標にすぎず,これらを関連付けしたものは,抽象的な体系的構成ということはできるにしても,編集著作物ということはできない。具体的な編集対象物を離れた体系的な構\成は,データベースの著作物(著作権法12条の2)として保護されることがあるとしても,編集著作物として保護されることはない。」と述べました。

◆H16. 3.30 東京地裁 平成15(ワ)285 著作権 民事訴訟事件

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◆H16. 3.24 東京地裁 平成14(ワ)28035 著作権 民事訴訟事件

 ニュースの見出しが著作物か否かが争われました。事件は、あるポータルサイトは、新聞社が作成したニュースを有料で提供を受け、これを無料公表していた。被告は、自社のサイトで、そのポータルサイトへのリンクをする際に、そのポータルサイトのニュースの見出しをそのまま使用したというものです。
東京地裁は「原告が創作的表現の具体例として挙げたYOL見出しは,いずれも客観的な事実を記述したものであるか,又はこれにごく短い修飾語等を付加したにすぎないものであって,創作的表現とは認められない。・・・?@YOL見出しは,その性質上,簡潔な表現により,報道の対象となるニュース記事の内容を読者に伝えるために表\記されるものであり,表現の選択の幅は広いとはいえないこと,?AYOL見出しは25字という字数の制限の中で作成され,多くは20字未満の字数で構成されており,この点からも選択の幅は広いとはいえないこと,?BYOL見出しは,YOL記事中の言葉をそのまま用いたり,これを短縮した表現やごく短い修飾語を付加したものにすぎないことが認められ,これらの事実に照らすならば,YOL見出しは,YOL記事で記載された事実を抜きだして記述したものと解すべきであり,著作権法10条2項所定の「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(著作権法10条2項)に該当するものと認められる。以上を総合すると,原告の挙げる具体的なYOL見出しはいずれも創作的表現とは認められないこと,また,本件全証拠によるもYOL見出しが,YOL記事で記載された事実と離れて格別の工夫が凝らされた表現が用いられていると認めることはできないから,YOL見出しは著作物であるとはいえない。」と述べました。

◆H16. 3.24 東京地裁 平成14(ワ)28035 著作権 民事訴訟事件

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◆H15.10.30 大阪地裁 平成14(ワ)1989等 著作権 民事訴訟事件

 高級注文住宅が建物の著作物または不競法に規定する商品形態か、また、そのパンフレットは写真の著作物かが争われました。
 裁判所は、建物の著作権侵害、不競法による保護は認めませんでした。
  「原告建物は、前記認定によれば、通常の一般住宅が備える美的要素を超える美的な創作性を有し、建築芸術といえるような美術性、芸術性を有するとはいえないから、著作権法上の「建築の著作物」に該当するということはできない。」「原告建物と被告建物は、その外観において相違があり、形態が同一ないし実質的に同一であるとはいえないから、被告建物が原告建物を模倣した商品であると認めることはできない」。
   なお、パンフレットについては「被告写真は原告写真に依拠して原告写真を複製して作成されたものである」と写真の著作権侵害と判断しました。  

◆H15.10.30 大阪地裁 平成14(ワ)1989等 著作権 民事訴訟事件

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◆H15. 7.11 東京地裁 平成14(ワ)12640 著作権 民事訴訟事件

 封筒や便箋に表示した動物や植物のカットが著作物であるか、著作物だとして、複製等に該当するかが争われました。
 裁判所は、著作物性については、「その複製物をこれらの分野の商品の絵柄等として用いることを予め想定して作成される作品であっても,当該作品が独立して美的鑑賞の対象となり得る程度の美的創作性を備えている場合には,著作権法上の著作物として同法による保護の対象となり得るものと解するのが相当である。」と認めましたが、「被告著作物から原告著作物(1)の創作的特徴が直ちに感得できるとはいえない。・・・類似すると認めることはできない。」と原告著作物の複製であることを否定しました。
 また、「・・・単純化は,多くの絵画に見られるありふれた表現方法というべきであるから,原告著作物(1)において創作性の存する特徴的な部分は,あくまで金魚と水草(緑色円形)の具体的配置や,細部の表現方法にあるというべきである。また,原告著作物(1)と被告著作物(1)の1,2は,いずれも,封筒及び便箋に用いるためのデザインという性質上,中央部に筆記用の空白をとらざるを得ないという制約を有するものである。上記によれば,上記?@ないし?Bの点は,原告著作物(1)と被告著作物(1)の1,2の類似性を肯定する根拠となるものではない」とも述べました。

 

◆H15. 7.11 東京地裁 平成14(ワ)12640 著作権 民事訴訟事件

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◆H15. 7.18 東京高裁 平成14(ネ)3136 著作権 民事訴訟事件

 テキストの説明部分が,著作物性を有するのかが争われた事件です。
  裁判所は、「文章,写真及び図を一体不可分のものとして,ほぐしの各類型を初学者にも分かりやすく説明するものであり,「思想又は感情を創作的に表現したもの」として創作性を認めることができることは上記のとおりであって,本件著作物の一般的注意事項も,文章によってほぐしの一般的注意事項を分かりやすく説明したものとして創作性を認めることができる」と述べました。
原審はこちらです。◆H14. 4.16 東京地裁 平成12(ワ)15123 著作権 民事訴訟事件  

◆H15. 7.18 東京高裁 平成14(ネ)3136 著作権 民事訴訟事件

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◆H15. 2.26 東京地裁 平成13(ワ)12339 著作権 民事訴訟事件

  宗教法人の代表の上半身の撮影した写真をビラに掲載した行為が、写真の著作権を侵害か否かについて争われました。
当該写真は著作物を有するか、また、その著作物性があるとして引用として認められるかが争点となりました。
 裁判所は、「スーツの上から本件ローブ及び式帽を着用したDを,背景,構図,照明,光量,絞り等に工夫を加えて撮影していることが認められるから,・・・写真1は,Cの思想又は感情を創作的に表\現したものということができ,著作物性を有する。」と著作物性を認定し、また、「本件写真ビラは,専ら,・・・批判する内容が記載された宣伝用のビラであること,・・・本件写真ビラ全体の約15パーセントを占める大きさで掲載し,これに吹き出しを付け加えていること等の掲載態様に照らすならば,原告の写真の著作物を引用して利用することが,前記批判等の目的との関係で,社会通念に照らして正当な範囲内の利用であると解することはできず,また,このような態様で引用して利用することが公正な慣行に合致すると解することもできない。」と引用を否定しました。

 

◆H15. 2.26 東京地裁 平成13(ワ)12339 著作権 民事訴訟事件

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◆H15. 2.26 東京地裁 平成13(ワ)20223 著作権 民事訴訟事件

  争点の1つは、設計図の著作物性です。
  裁判所は、「設計者が自由に選択できる事項としては,「各部屋及び通路の具体的形状」及び「全体の配置」などに限られていたこと,?A原告設計図における表現方法は,極く一般の設計図において用いられる平面的な表\現方法であって,表現方法における格別の個性の発揮はないこと,?B本件事務所を,南側壁面に沿った3つのエリアと,西側壁面に沿った細長いエリアに分けるという発想は,正にアイディアそのものであって,この点が著作権法上の保護の対象となり得る表現とはいえないこと等の点を総合考慮すると,原告設計図において,創作性のある部分は,FTJ,日本研究所及びエトラリの各専用部分や各部屋及び通路等の具体的な形状及び具体的な配置の組合せにあるということができる。・・・原告設計図は,著作権法上の保護の対象となる著作物といえるが,その創作性のある部分は上記の点に限られるというべきである」と著作物性は認めましたが、著作物性のない部分の複製であるとして、著作権侵害を否定しました。

 

◆H15. 2.26 東京地裁 平成13(ワ)20223 著作権 民事訴訟事件

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◆H14.12.19 東京地裁 平成14(ワ)2978 著作権 民事訴訟事件

  建築設計図面の著作物性が争われた事例です。
  裁判所は、「原告設計図書は,・・・設計者の意図したとおりに施工できるように建物の具体的な構造を通常の製図法によって表\現したものであって,建築に関する基本的な知識を有する施工担当者であればだれでも理解できる共通のルールに従って表現されているのが通常であり,その表\現方法そのものに独創性を見いだす余地はない。・・・このような個人住宅は,敷地の面積・形状や,道路・近隣建物等との位置関係,建ぺい率,容積率,高さ,日影等に関する法令上の各種の制約が存在するほか,間取りについても家族構成等に基づく施主の要望を採り入れる必要があることから,建物面積や建物構\造等,間取り,各部屋の寸法等について,設計者による独自の工夫の入る余地はほとんどない。・・・原告は,原告設計図書における工夫として,?@ 1尺(303?o)の標準寸法を利用しなかったこと,?A 駐車場を建物の斜め方向に設けたこと,?B 小屋裏を居間・食堂と一体的に計画したこと,?C バルコニーをロフト部分に設けたことを挙げて,これらの具体的な工夫については創作性が認められる旨主張する。しかし,・・・?@は建物の設計において他に例がないわけではなく,独創性のある表現方法とまではいえないし,?A?B?Cについても,建物の間取りや構造上独創性のあるものとまではいえない。」と判断しました。

 

◆H14.12.19 東京地裁 平成14(ワ)2978 著作権 民事訴訟事件

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◆H14.11.14 東京高裁 平成12(ネ)5964等 著作権 民事訴訟事件

  著作物の創作性が争われました。
 「著作権法は,発見や仮説そのものを保護し,これらを発見者や仮説の提唱者に独占させようとするものではない。控訴人ら主張のように,素材の取捨選択等の内容の重視を押し進めて,それが独創的であるとの一事をもって,表現に創作性がある,としたり,あるいは内容が同一であることから,表\現にも同一性がある,としたりすると,その背後にある発見(発見された事実)や仮説の他者による表明が,事実上極めて困難となり,結局,発見や仮説そのものを保護し,発見者や提唱者によるその独占を認めることにならざるを得ない。このような結果は,著作権法の立場と両立し得ないことが明らかであり,このような結果をもたらす控訴人らの解釈を採用することはできない。」

 

◆H14.11.14 東京高裁 平成12(ネ)5964等 著作権 民事訴訟事件

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◆H14.11.15 東京地裁 平成14(ワ)4677 著作権 民事訴訟事件

  この事件もQシートというテストにもいる質問用紙の著作物が争われました。編集著作物として争わなかったのはなぜでしょうか?
裁判所は「1つ1つの質問文は,いずれも前述のとおり短文である上,一般的かつ日常的でありふれた表現が用いられており,特徴的な言い回しがあるとも認められない。・・・原告が工夫したとする点は,質問ではなく肯定文又は否定文にしたことや性格の傾向ではなく経験を尋ねる内容にしたことや具体的な場面をイメージしやすい言葉を選択したこと等であって,一般的かつ日常的でありふれた表\現の域を出るものではない。・・・著作権法は表現を保護するものであって,思想やアイディアを保護するものではないから,いずれの質問文の表\現にも創作性が認められない以上,著作物性は認められない。・・・個々の質問文に著作物性が認められない以上,これらの独立した質問文を80問集めたものであるQシートの質問文全体についても,それが編集著作物として著作物性を認められるかどうかという点を別にすると,著作物性は認められない」と述べました。  

 

◆H14.11.15 東京地裁 平成14(ワ)4677 著作権 民事訴訟事件

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