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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

明瞭性要件

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成29(行ケ)10189  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年9月4日  知的財産高等裁判所(3部)

 「概ね面一」との用語が不明確性(36条6項2号)違反が争われました。第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確ではないとして、無効理由なしとした審決が維持されました。判決の最後に図面があります。
 特許法36条6項2号の趣旨は,特許請求の範囲に記載された発明が明確 でない場合に,特許が付与された発明の技術的範囲が不明確となることによ り生じ得る第三者の不測の不利益を防止することにある。そこで,特許を受 けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載のみならず, 願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時に おける技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不 利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであ る。
(2) この点,原告は,審決が,特許請求の範囲の「カバーが水槽の底部面に概 ね面一」について,「面一」とは,止水時において,水槽の底部面とカバー の頂部とがつまずくことを防止できる程度にほぼ同じ高さになることを意味 するものと解釈できると説示したのに対して,「止水時において,水槽の底 部面とカバーの頂部とがつまずくことを防止できる程度」というのは,排水 口のために水槽の底部面に形成された円筒状陥没部のR面を含む傾斜面の形 状等やカバー自体の形状でも異なるほか,当該傾斜面の形状や傾斜角度とカ バーの形状の組合せによっても異なり,さらには,使用者の年齢や性別,体 格等によっても異なる以上,「カバー(特にカバーの頂部)が水槽の底部面 に概ね面一」が「つまずくことを防止できる程度」という趣旨であるとすれ ば,権利の及ぶ範囲が不明確であり,本件発明に接した第三者は不測の不利 益を被る,などと主張する。 しかしながら,本件明細書の【0013】には,「カバーにつまづくこと を防止するため,カバーの頂面60が水槽の底部1面と概ね面一になるよう 円筒状陥没部10の縁とカバー6の縁との位置を略一致させることがよい。」 との記載があるものの,【0008】には,「カバーが水槽の底部面と概ね 面一にされ,排水口部を覆うことになって排水口部内の汚れを覆い隠すこと ができ,見栄え良くできる。」との記載もあり,かかる記載を根拠にすると, 「概ね面一」とは,「排水口部を覆うことになって排水口部内の汚れを覆い 隠すことができ,見栄え良くできる程度」と定義していると理解することも 可能である。\nそもそも,本件発明の排水栓装置は,洗面化粧台,浴槽,流し台などあら ゆる水槽が含まれるところ,「カバーにつまづくことを防止できる程度」と いうのは,飽くまで浴槽の観点からみた理解であるから(この定義が明確と いえるかどうかの点はひとまず措く。),このように理解できたとしても, 浴槽以外の,例えば,洗面化粧台における「概ね面一」の範囲が直ちに明ら かになるわけではない。 したがって,原告の主張は,「カバー(特にカバーの頂部)が水槽の底部 面に概ね面一」が「つまずくことを防止できる程度」を意味するとの理解を 前提とする限りにおいて正当な指摘を含んでいるが,それでは足りないとい うべきである。
(3) そこで,さらに進んで検討するに,本件明細書には,「概ね面一」の意味 するところを説明する確たる定義はないけれども,本件明細書の図1には, 水槽の底部面とカバーの頂部(頂面60)とがほぼ同じ高さになる状態が示 されており,この状態をもって「カバーが水槽の底部面に概ね面一」と理解 することは自然である。そして,寸法誤差,設計誤差等により,水槽の底部 面とカバーの頂部(頂面60)とが完全に同じ高さとならない場合が存する ことは技術常識であるといえるから,カバーと水槽の底部面との高さの差が, このような範囲にとどまるものを「概ね面一」と理解するなら,洗面化粧台, 浴槽,流し台などあらゆる水槽について,「カバーが水槽の底部面に概ね面 一」の意味内容を統一的に理解することができる。 審決の,「概ね面一」とは,「止水時に,カバーを水槽の底部面に対し積 極的に出没させた位置に設けようとするものではない」との説示もこうした 趣旨と理解できる。 そうとすれば,「概ね面一」の語を用いているがゆえに特許請求の範囲の 記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず,これ に反する原告の主張は採用できない。

◆判決本文

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平成29(行ケ)10210  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年9月6日  知的財産高等裁判所(3部)

 経緯がややこしいです。無効理由無しの第1次審決が第1次審取で取り消され、本件原告は訂正をしました。第2次審決は訂正を認めた上、無効と判断しました。裁判所は、明確性違反なしと判断しました。
 本件訂正後の特許請求の範囲にいう「平均分子量が2万〜4万のコンド ロイチン硫酸或いはその塩」にいう平均分子量が,本件出願日当時,重量 平均分子量,粘度平均分子量,数平均分子量等のいずれを示すものである かについては,本件訂正明細書において,これを明らかにする記載は存在 しない。もっとも,このような場合であっても,本件訂正明細書における コンドロイチン硫酸又はその塩及びその他の高分子化合物に関する記載を 合理的に解釈し,当業者の技術常識も参酌して,その平均分子量が何であ るかを合理的に推認することができるときには,そのように解釈すべきで ある。
イ 上記1(2)カのとおり,本件訂正明細書には,「本発明に用いるコンドロ イチン硫酸又はその塩は公知の高分子化合物であり,平均分子量が0.5 万〜50万のものを用いる。より好ましくは0.5万〜20万,さらに好 ましくは平均分子量0.5万〜10万,特に好ましくは0.5万〜4万の コンドロイチン硫酸又はその塩を用いる。かかるコンドロイチン硫酸又は その塩は市販のものを利用することができ,例えば,生化学工業株式会社 から販売されている,コンドロイチン硫酸ナトリウム(平均分子量約1万, 平均分子量約2万,平均分子量約4万等)が利用できる。」(段落【00 21】)と記載されている。 上記の「生化学工業株式会社から販売されているコンドロイチン硫酸ナ トリウム(平均分子量約1万,平均分子量約2万,平均分子量約4万等)」 については,本件出願日当時,生化学工業株式会社は,同社製のコンドロ イチン硫酸ナトリウムの平均分子量について重量平均分子量の数値を提供 しており,同社製のコンドロイチン硫酸ナトリウムの平均分子量として当 業者に公然に知られた数値は重量平均分子量の数値であったこと(上記(3) イ(ア))からすれば,その「平均分子量」は重量平均分子量であると合理的 に理解することができ,そうだとすると,本件訂正後の特許請求の範囲の 「平均分子量が2万〜4万のコンドロイチン硫酸或いはその塩」にいう平 均分子量も重量平均分子量を意味するものと推認することができる。加え て,本件訂正明細書の上記段落に先立つ段落に記載された他の高分子化合 物の平均分子量は重量平均分子量であると合理的に理解できること(上記 (2)イ),高分子化合物の平均分子量につき一般に重量平均分子量によって 明記されていたというのが本件出願日当時の技術常識であること(上記(2) ウ)も,本件訂正後の特許請求の範囲の「平均分子量が2万〜4万のコン ドロイチン硫酸或いはその塩」にいう平均分子量が重量平均分子量である という上記の結論を裏付けるに足りる十分な事情であるということができ\nる。
ウ よって,本件訂正後の特許請求の範囲の記載は明確性要件を充足するも のと認めるのが相当である。

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平成29(行ケ)10178  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年6月27日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反、サポート要件違反、明確性違反の無効主張について、「無効理由無し」とした審決が維持されました。
(1) サポート要件の適合性について
ア 本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明1に関し,「医薬品や食品 のような経口投与用組成物等の品質を損なわずに優れた識別性を有する経 口投与用組成物を得ることができ,かつ,生産性にも優れたマーキング方 法を開発するという課題」を解決するための手段として,「本発明」は,酸 化チタン,黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される少な くとも1種の変色誘起酸化物を分散させた経口投与用組成物の表面に,所\n定のレーザー光を走査することにより,変色誘起酸化物を凝集させること に起因した変色が生じるようにした構成を採用したことの記載があること\nは,前記1(1)イ認定のとおりである。
イ 次に,本件明細書の発明の詳細な説明には,1)実施例1ないし16にお いて,表1のレーザー装置及び照射条件(波長355nm,平均出力8W),\n表3のレーザー装置及び照射条件(波長266nm,平均出力3W)又は表\ 4のレーザー装置及び照射条件(波長532nm,平均出力12W)で,酸 化チタン,黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄錠剤を配合した,フィルムコー ト錠等に対し,文字又は中心線をマーキングしたこと(【0038】〜【0 056】,表1,表\3及び表4),2)表1のレーザー装置及び照射条件かつ\n走査速度1000mm/secで,実施例13のフィルム錠にレーザー照 射を行い,レーザー照射前後の二酸化チタンの粒子の状態を透過型電子顕 微鏡(TEM)により観測した結果,レーザー照射後に二酸化チタンの粒子 が凝集していることが確認されたこと(【0057】〜【0059】,図3, 図4),3)レーザー波長に関し,レーザーは,その波長が200〜1100 nmを有するものを用いることができ,好ましくは1060〜1064n m,527〜532nm,351〜355nm,263〜266nm又は2 10〜216nmの波長であり,より好ましくは527〜532nm,3 51〜355nm又は263〜266nmの波長であること(【0022】), 4)レーザー出力に関し,レーザーを走査する際の平均出力は,対象とする 経口投与用組成物の表面がほとんど食刻されない範囲で使用することがで\nき,例えば,その平均出力は,0.1W〜50Wであり,好ましくは1W〜 35Wであり,より好ましくは5W〜25Wであるが,単位時間あたりの レーザー照射エネルギーが強すぎると,アブレーションにより錠剤表面で\n食刻が発生し,変色部分まで剥がれてしまい,また,出力が弱いと変色が十\n分ではないこと(【0023】),5)レーザーの走査速度(スキャニング速 度)に関し,スキャニング速度は,特に限定されるものではないが,20m m/sec〜20000mm/secであり,また,スキャニング速度は, 高いほどマークの識別性に影響を与えることなく生産性を上げることがで きることから,例えば,レーザー出力5Wでは,スキャニング速度は,80 mm/sec〜10000mm/sec,好ましくは90mm/sec〜 10000mm/sec,より好ましくは100mm/sec〜1000 0mm/secであり,レーザー出力が8Wの場合には,スキャニング速 度は,250mm/sec〜20000mm/sec,好ましくは500 mm/sec〜15000mm/sec,より好ましくは1000mm/ sec〜10000mm/secであること(【0024】),6)単位面積 当たりのエネルギーに関し,単位面積当たりのレーザーのエネルギーは, マーキングの可否及び経口投与用組成物の食刻の有無の観点から,390 〜21000mJ/cm2であり,好ましくは400〜20000mJ/c m2,より好ましくは450〜18000mJ/cm2であり,また,390 mJ/cm2より低い場合には,マークを施すことができないのに対し,2 1000mJ/cm2より大きい場合には,食刻が生じるため,好ましくな いこと(【0025】)の記載がある。 上記1)ないし6)の記載を総合すると,本件明細書に接した当業者は,請 求項1記載の波長(200nm〜1100nm),平均出力(0.1W〜5 0W)及び走査工程の走査速度(80mm/sec〜8000mm/se c)の各数値範囲内で,波長,平均出力及び走査速度を適宜設定したレーザ ー光で,酸化チタン,黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択 される少なくとも1種の変色誘起酸化物を分散させた経口投与用組成物の 表面を走査することにより,変色誘起酸化物の粒子を凝集させて変色させ\nてマーキングを行い,「医薬品や食品のような経口投与用組成物等の品質 を損なわずに優れた識別性を有する経口投与用組成物を得ることができ, かつ,生産性にも優れたマーキング方法を開発する」という本件発明1の 課題を解決できることを認識できるものと認められる。 したがって,本件発明1は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載され たものといえるから,請求項1の記載は,サポート要件に適合するものと 認められる。同様に,請求項2ないし22の記載も,サポート要件に適合す るものと認められる。

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平成29(行ケ)10153  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年6月19日  知的財産高等裁判所

 「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」の明確性、本件発明の課題が解決できるのかについてサポート要件違反が争われました。
 上記記載事項によれば,めっき処理を行った亜鉛又は亜鉛系め っき鋼板において,酸化性雰囲気中で加熱を行うことによって,亜鉛の蒸 発を阻止するバリア層として酸化皮膜層が形成されるが,亜鉛又は亜鉛系 めっきの共通成分は亜鉛であり,亜鉛又は亜鉛系めっき鋼板がいずれも均 一な酸化皮膜を形成し,塗膜密着性,耐食性が良好という共通の性質を有 することが理解できる。そうだとすれば,当業者であれば,当然,本件発 明1の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」は「亜鉛の酸化皮膜」 であると理解すると認められる。 してみると,本件発明1の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」 が,亜鉛系めっきに由来する亜鉛の酸化皮膜を意味することは明確である といえる。このことは,本件発明1を引用する本件発明2ないし6及び(同 様の文言を有する)本件発明7についても同様である。
ウ 原告の主張について
原告は,本件訂正によって,特許請求の範囲の記載にあった「亜鉛また は亜鉛系合金のめっき層」に代えて,「スズ−亜鉛合金めっき層」などの 具体的な合金めっき層が記載されたこと,本件明細書においては,「スズ −亜鉛合金めっき」の具体例としては,「スズ−8%亜鉛合金めっき」の みが記載されている(【0038】)こと,「スズ−8%亜鉛合金めっき」 を加熱した場合に生ずる変化については本件明細書に全く記載がないこと などを挙げて,「亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」が亜鉛の酸化皮膜でな ければならないと当然に解釈できるとはいえないから,金属酸化物の種類 が不明確であると主張する。 しかしながら,本件明細書の記載から,亜鉛又は亜鉛系めっき鋼板がい ずれも均一な酸化皮膜を形成し,塗膜密着性,耐食性が良好という共通の 性質を有することが理解でき,当業者であれば,本件発明1の「加熱時の 亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」は「亜鉛の酸化皮膜」であると理解する と認められることは,前記ア,イのとおりである。他方,「スズ−8%亜 鉛合金めっき」についてのみ,これと異なる理解をすると認めるべき合理 的事情はない。
したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(2) 酸化皮膜の形成時期について
ア 原告は,本件訴訟におけるのと同様に,先行事件訴訟においても,「亜 鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」の形成時期が明らかでないと主張して明確 性要件を争っており,その結果,原告の主張を排斥する先行事件判決がな され,同判決は既に確定しているものである(当裁判所に顕著な事実)。 そうすると,原告が本件訴訟において再びこの点を争うことは,実質的 に前訴の蒸し返しに当たり,訴訟上の信義則に反するものとして許されな いというべきである。
よって,この点に関する原告の主張も採用できない。
イ 念のため,中身について検討してみても,この点に関しては,先行事件 判決が示すとおり,本件明細書の【0018】には,酸化皮膜は熱間プレ スに先立つ加熱前にある程度形成されることが必要で,その後熱間プレス 加工のための700〜1000℃の加熱によっても形成が進むと推測され ることが記載され,【0042】及び【0043】には,酸化皮膜は,熱 間プレス加工のため700〜1000℃に加熱する前に,予め形成されて\nいる場合と形成されていない場合があることを前提として,予め酸化皮膜\nが形成されている材料の場合には,酸化皮膜の維持に悪影響がない限り熱 間プレスのための加熱方法については特に制限がないことが記載され,さ らに,【0064】及び【表5】には,実施例No.2,3として,電気\nめっきを施した後,熱間プレスに先立つ加熱を大気炉で850℃,3分間 行ったものについて均一な酸化皮膜が形成されたことが記載されていると ころ,電気めっきにおいては,めっき層は加熱されないことから,上記実 施例はいずれも熱間プレスに先立つ加熱前に予め酸化皮膜が形成されてい\nない場合であって,この場合の酸化皮膜は,熱間プレスのための加熱(大 気炉で850℃,3分間)により形成されたものと理解することができる。 そうすると,本件発明の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」は, 熱間プレスの加熱前に,予め形成されている場合,ある程度形成されてい\nてその後熱間プレスの加熱時に形成が進む場合,予め形成されていないが\n熱間プレスの加熱により形成される場合のいずれでもよいことから,その 形成時期は熱間プレスの直前までであればよいと解するのが相当である。 したがって,本件発明1及びこれを引用する本件発明2ないし6並びに 本件発明7の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」の形成時期は, 本件明細書の発明の詳細な説明を参照すれば明確というべきであるから, 原告の主張はいずれにしても失当である。
(3) 「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れされる熱間プレス 用」について
ア 本件明細書の【0016】ないし【0018】,【0029】,【00 34】,【0042】,【0044】,【0048】,【0050】及び 【0064】には,熱間プレスは700〜1000℃という温度で加熱す ることを意味すること,熱間プレス成形の特徴として成形と同時に焼き入 れを行うことから,そのような焼き入れを可能とする鋼種を用いること,\n熱間成形後に急冷して高強度,高硬度となる焼き入れ鋼,例えば表1にあ\nるような鋼化学成分(鋼種A等)の高張力鋼板が実用上は特に好ましいこ と,700〜1000℃の温度で加熱してから熱間プレスを行い,めっき 層表面に亜鉛の酸化皮膜が,下層の亜鉛の蒸発を防止する一種のバリア層\nとして全面的に形成されていること,具体的には,表1に示す鋼種Aを,\n大気雰囲気の加熱炉内で950℃×5分加熱して,加熱炉より取り出し, このままの高温状態で円筒絞りの熱間プレス成形を行うこと,また,熱間 プレスに先立つ加熱を,大気炉で850℃,3分間行うことが記載されて いる。 そして,これらの記載によれば,本件発明1の「700〜1000℃に 加熱されてプレスされ焼き入れされる熱間プレス用」という文言において, 1)「700〜1000℃に加熱されて」は,熱間プレスの加熱条件であり, 2)「プレスされ焼き入れされる」は,成形と同時に焼き入れを行う熱間プ レス成形の特徴であり,3)「用」という文言の意味は,「(接尾語的に) …に使うためのものの意を表す」(広辞苑第六版)であることからすると,\n「熱間プレス用」は,後に続く,本件発明1の「鋼板」を修飾し,鋼板が 熱間プレスに使うためのものであることを意味するものと理解できる。 してみれば,「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れさ れる」は,「熱間プレス」の加熱条件及び特徴を表現するものと理解でき\nるから,本件発明1の「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き 入れされる熱間プレス用」という文言は明確である。このことは,本件発 明1を引用する本件発明2〜6及び(同様の文言を有する)本件発明7に ついても同様である。
イ 原告の主張について
原告は,本件発明は用途発明であるとした上で,種々理由を述べて,「7 00〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れされる熱間プレス用」 という記載の意味が不明確であると主張する。 しかしながら,前記アのとおり,「700〜1000℃に加熱されてプ レスされ焼き入れされる」は,「熱間プレス」の加熱条件及び特徴を表現\nするものと認められるから,その余の点について判断するまでもなく,本 件発明1の「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れされる 熱間プレス用」という文言の意味は明確である。 また,本件発明1が用途発明であるか否かは,その結論を左右するもの ではない。

◆判決本文

関連事件は以下です。

◆平成26(行ケ)10201

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平成29(行ケ)10127  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所

 明確性違反および実施可能要件違反の無効を主張しましたが、審決、知財高裁とも無効理由無しと判断しました。
 原告は,平成13年(2001年)以降でさえ,先行技術(甲20)と 技術常識に基づいて,外部から侵入した水分による劣化を防止しているとはいえ ない程度に蛍光体の沈降が抑えられた濃度分布の実現は不可能であったのであり,\n本件明細書の「フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材,形成温度,粘度やフ ォトルミネセンス蛍光体の形状,粒度分布などを調整することによって種々の分 布を実現することができ」(【0047】)との記載は,本件構成に対応する技\n術的手段が単に抽象的に記載されているだけで,当業者が発明の実施をすること ができない記載にすぎないことを意味するものに他ならないから,実施可能要件\nを欠くというべきであって,審決の結論には明らかな違法がある旨主張する。 明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者がその実施をすることができ る程度に明確かつ十分に記載したものであることを要する(特許法36条4項1号)。\n本件発明は,「発光装置と表示装置」(発光ダイオード)という物の発明であるとこ\nろ,物の発明における発明の「実施」とは,その物の生産,使用等をする行為をい うから(特許法2条3項1号),物の発明について実施をすることができるとは,そ の物を生産することができ,かつ,その物を使用することができることであると解 される。 本件明細書には,「蛍光体の分布は,フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材, 形成温度,粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状,粒度分布などを調整すること によって種々の分布を実現することができ,発光ダイオードの使用条件などを考慮 して分布状態が設定される。」(【0047】)との記載があることから,蛍光体の濃 度分布を適宜調整することにより,本件発明の「コーティング樹脂中のガーネット 系蛍光体の濃度が,コーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に向かって高く\nなっている」発光ダイオードを生産することができ,かつ,使用することができる ことは,本件明細書に接した当業者にとって明らかであると認められる。 したがって,発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明を実施することがで きる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められるから,その旨の審決の\n判断に誤りはない。 これに対し,原告が主張する,外部から侵入した水分による劣化を防止している とはいえない程度に蛍光体の沈降が抑えられた濃度分布とは,本件構成に係る「コ\nーティング樹脂中のガーネット系蛍光体の濃度が,コーティング樹脂の表面側から\nLEDチップ側に向かって高くなっている」ものではない状態を示すものである。 そうすると,仮に,このような濃度分布について,発明の詳細な説明や出願時の 技術常識を考慮しても実現することができない,又は,その実現に過度の試行錯誤 を要するとしても,このことは,本件明細書の発明の詳細な説明が,当業者が本件 発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとの前記認定を左右するも\nのではない(発光ダイオードの製造工程において,蛍光体がコーティング樹脂中を 沈降することによって,本件構成を満足するものを製造することができることにつ\nいては,当事者間に争いがないものと解される。)

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平成29(行ケ)10085  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月26日  知的財産高等裁判所(4部)

 異議理由ありとした審決が取り消されました。訂正は新規事項であるとした審決の判断は維持されましたが、訂正前の発明について、明確性違反および進歩性違反との判断は取り消されました。
 本件決定は,本件発明1の特許請求の範囲のうち「寄生ダイオード(131)の 立ち上がり電圧」は「上記ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高」いとの記載が, いかなる電流が流れる場合のことを表したものであるか不明であるから,明確性要\n件に適合しないと判断した。
(2) 前記2(3)イのとおり,請求項1において,寄生ダイオード(131)の「立 ち上がり電圧は,上記ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高く」と特定されてい るのは,本件発明1の構成として,同期整流を行う際,寄生ダイオード(131)\nの立ち上がり電圧を,ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高くするという技術的 事項を採用する旨特定するものである。 そして,本件発明1に係る電力変換装置において使用される還流電流の程度が限 定されていないことと,同期整流を行う際には,常に,寄生ダイオード(131) の立ち上がり電圧を,ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高くすることとは,関 係がない。
(3) したがって,「寄生ダイオード(131)の立ち上がり電圧」は「上記ユニ ポーラ素子本体のオン電圧よりも高」いとの本件発明1の特許請求の範囲の記載が, 第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。同記載 が明確ではないから,本件各発明の特許請求の範囲の記載は,明確性要件に適合し ないとする本件決定の判断は誤りである。
・・・・
引用発明は,モータの回生モードにおいて,回生電力の消費能力を高めると\nいう課題に対して,順方向電圧降下が高いボディダイオードに電流を流し,回生電 力を消費させるというものである。 このように,引用発明は,モータの回生モードにおいて,ボディダイオードに電 流を流し,ボディダイオードにおいて回生電力を損失させるという課題解決手段を 採用したものである。一方,本件周知技術は,寄生ダイオード側に電流を流さず, 発熱損失を低減させるというものであるから,引用発明の課題解決手段と正反対の 技術思想を有するものである。したがって,当業者は,引用発明におけるモータの 回生モードにおいて,正反対の技術思想を有する本件周知技術を適用することはな い。 そして,引用例には,引用発明の電力変換装置において,力行モードを回生モー ドから切り離し,力行モードの動作のみを変更することを示唆するような記載はな いから,当業者は,力行モードにおける動作のみを変更することを容易に想到する ことはない。 したがって,引用発明に本件周知技術を適用する動機付けはないというべきであ る。

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平成29(行ケ)10083  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年12月21日  知的財産高等裁判所

 「摩擦式精米機により搗精され」という用語について、クレームが明確でない(36条6項2号)とした審決が取り消されました。
 以上のような特許請求の範囲及び本件明細書の記載によれば,本件訂正後の 特許請求の範囲請求項1の「摩擦式精米機により搗精され」という記載は,本件発 明に係る無洗米の前段階である前記ウ(a)(b)の構造又は特性を有する精白米を製造す\nる際に摩擦式精米機を用いることを意味するものであり,「無洗米機(21)にて」 という記載は,上記精白米から前記ウ(c)の構造又は特性を有する無洗米を製造する\n際に無洗米機を用いることを意味するものであって,前記ウ(a)ないし(c)のほかに本 件発明に係る無洗米の構造又は特性を表\すものではないと解するのが相当である。 そして,本件発明に係る無洗米とは,玄米粒の表層部から糊粉細胞層までが除去さ\nれ,亜糊粉細胞層が米粒の表面に露出し,米粒の50%以上に「胚芽の表\面部を削 りとられた胚芽」又は「胚盤」が残っており,糊粉細胞層の中の糊粉顆粒が米肌に 粘り付けられた状態で米粒の表面に付着している「肌ヌカ」が分離除去された米で\nあるといえる。 そうすると,請求項1に「摩擦式精米機により搗精され」及び「無洗米機(21) にて」という製造方法が記載されているとしても,本件発明に係る無洗米のどのよ うな構造又は特性を表\しているのかは,特許請求の範囲及び本件明細書の記載から 一義的に明らかである。よって,請求項1の上記記載が明確性要件に違反するとい うことはできない。

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平成28(行ケ)10236  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年9月21日  知的財産高等裁判所(第2部)

   「無洗米の製造装置」の発明について、審決は明瞭、知財高裁はこれを取消しました。請求項のほとんどの部分が精米方法あるいは装置の使用方法若しくは精米装置の製造方法で表されているので、不明瞭というものです。
 以上の記載事項A〜Iについての検討を総合すると,本件発明1の無洗米 の製造装置は,少なくとも,摩擦式精米機(記載事項F)と無洗米機(記載事項C) をその構成の一部とするものであり,その摩擦式精米機は,全精白構\成の終末寄り から少なくとも3分の2以上の工程に用いられているものである(記載事項E)上, 精白除糠網筒(記載事項F)と精白ロール(記載事項G)をその構成の一部とする\nものであり,その精白除糠網筒の内面は,ほぼ滑面状であって(記載事項F),精白ロ ールの回転数は毎分900回以上の高速回転とするものである(記載事項 G)と認 められる。 したがって,上記の無洗米の製造装置の構造又は特性は,記載事項A〜Iから理\n解することができる。
しかしながら,請求項1の無洗米の製造装置の特定は,上記の装置の構造又は特\n性にとどまるものではなく,精米機により,亜糊粉細胞層を米粒表面に露出させ,\n米粒の50%以上について胚盤又は表面部を削り取られた胚芽を残し,白度37前\n後に仕上がるように搗精し(記載事項B),白米の表面に付着する肌ヌカを無洗米機\nにより分離除去する無洗米処理を行う(記載事項C)ものであり,旨味成分と栄養 成分を保持した無洗米を製造するもの(記載事項D,I)である。 このうち,亜糊粉細胞層を米粒表面に露出させ,米粒の50%以上について胚盤\n又は表面部を削り取られた胚芽を残し,白度37前後に仕上がるように搗精する(記\n載事項B)ことについては,本件明細書の発明の詳細な説明において,本件発明に 係る無洗米の製造装置のミニチュア機で,白度37前後の各白度に搗精した精米を, 洗米するか,公知の無洗米機によって通常の無洗化処理を行い,炊飯器によって炊 飯し,その黄色度を黄色度計で計り,黄色度11〜18の内の好みの供試米の白度 に合わせて搗精を終わらせる時を調整して,本格搗精をすることにより行うこと (【0035】),このようにして仕上がった精白米は,亜糊粉細胞層が米粒表面をほ\nとんど覆っていて,かつ,全米粒のうち,表面が除去された胚芽と胚盤が残った米\n粒の合計数が,少なくとも50%以上を占めていること(【0036】)が記載され ており,結局のところ,ミニチュア機で実際に搗精を行うことにより,本格搗精を 終わらせる時を調整することにより実現されるものであることが記載されている。 したがって,本件明細書には,本件発明1の無洗米の製造装置につき,その特定の 構造又は特性のみによって,玄米を前記のような精白米に精米することができるこ\nとは記載されておらず,その運転条件を調整することにより,そのような精米がで きるものとされている。そして,その運転条件は,本件明細書において,毎分90 0回以上の高速回転で精白ロールを回転させること以外の特定はなく,実際に上記 のような精米ができる精白ロールの回転数や,精米機に供給される玄米の供給速度, 精米機の運転時間などの運転条件の特定はなく,本件出願時の技術常識からして, これが明らかであると認めることもできない。
ところで,本件明細書の発明の詳細な説明において,亜糊粉細胞層(5)につい ては,「糊粉細胞層4に接して,糊粉細胞層4より一段深層に位置して僅かに薄黄色 をした」,「厚みも薄く1層しかない」ものであり(【0015】),「亜糊粉細胞5は・・・整然と目立って並んでいる個所は少なく,ほとんどは顕微鏡でも確認しにくいほど糊粉細胞層4に複雑に貼り付いた微細な細胞であり,それも平均厚さが約5ミクロ\nン程度の極薄のものである」(【0018】)と記載され,胚芽(8)及び胚盤(9) については,「胚芽7の表面部を除去された」ものが胚芽(8)であり,それを更に\n削り取ると胚盤(9)になる(【0023】)と記載されている。しかるところ,本 件明細書の発明の詳細な説明には,米粒に亜糊粉細胞層(5)と胚芽(8)及び胚 盤(9)を残し,それより外側の部分を除去することをもって,米粒に「旨み成分 と栄養成分を保持」させることができる旨が記載されており(【0017】〜【00 23】),玄米をこのような精白米に精米する方法については,「従来から,飯米用の 精米手段は摩擦式精米機にて行うことが常識とされている」が,その搗精方法では, 必然的に,米粒から亜糊粉細胞層(5)や胚芽(8)及び胚盤(9)も除去されて しまうこと(【0024】,【0025】)が記載されている。また,本件明細書の発 明の詳細な説明には,「摩擦式精米機では米粒に高圧がかかり,胚芽は根こそぎ脱落 する」から,胚芽を残存させるには,研削式精米機による精米が不可欠とされてい た(【0029】)ところ,研削式精米機により精米すると,むらが生じ,高白度に なると,亜糊粉細胞層(5)の内側の澱粉細胞層(6)も削ぎ落とされている個所 もあれば,糊粉細胞層(4)だけでなく,それより表層の糠層が残ったままの部分\nもあるという状態になること(【0027】)が記載されている。 そうすると,精米機により,亜糊粉細胞層を米粒表面に露出させ,米粒の50%\n以上において胚盤又は表面を削り取られた胚芽を残し,白度37前後に仕上がるよ\nうに搗精することは,従来の技術では容易ではなかったことがうかがわれ,上記の とおり,本件明細書に具体的な記載がない場合に,これを実現することが当業者に とって明らかであると認めることはできない。 本件発明1は,無洗米の製造装置の発明であるが,このような物の発明にあって は,特許請求の範囲において,当該物の構造又は特性を明記して,直接物を特定す\nることが原則であるところ(最高裁判所平成27年6月5日第二小法廷判決・民集 69巻4号904頁参照),上記のとおり,本件発明1は,物の構造又は特性から当\n該物を特定することができず,本件明細書の記載や技術常識を考慮しても,当該物 を特定することができないから,特許を受けようとする発明が明確であるというこ とはできない。

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平成28(行ケ)10187  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年8月30日  知的財産高等裁判所(第1部)

 明確性違反として無効とされた審決が維持されました。問題となった記載は「平均粒子径は,0.5〜2.0μmの範囲にあり」というものです。
 しかし,仮に「イリュージョン」については測定誤差の範囲内といえるとしても, それは,実際に製造販売された製品である「イリュージョン」のマイクロカプセル 顔料の形状が比較的球形に近かったという一事例を示すにとどまるものであり,本 件発明におけるマイクロカプセル顔料一般の形状が比較的球形に近いことを裏付け るに足りない(なお,前記「第4 被告の反論」の1(1)のとおり,他の原告ら製品 (「フリクション」)には球形とは相当異なった粒子が一定数含まれていたと認めら れる。)。現に,本件発明の想定する技術的範囲には,甲24の図1〜3に示される ような形状のマイクロカプセル顔料も含まれることは前記(1)アのとおりであり,例 えば全てが甲24文献の図3のような形状のマイクロカプセル顔料の場合には,粒 子径(代表径)の規定のし方による差が相当大きくなるものと推認される。\n
・・・・
本件特許請求の範囲及び本件明細書には,粒子径(代表径)の定義に関す\nる明示の記載はない。 当業者の技術常識を検討すると,平成11年11月1日から平成14年10月3 1日までの間に,筆記具用インクの平均粒子径の測定方法が記載された特許出願の 公開特許公報58件のうち,レーザ回折法で測定したものが23件,遠心沈降法で 測定したものが6件,画像解析法で測定したものが8件,動的光散乱法で測定した ものが22件(うち1件は遠心沈降法と動的光散乱法を併用)であった一方,等体 積球相当径を求めることができる電気的検知帯法で測定しているものはなかったこ と(甲20),平成14年6月1日から平成17年5月31日までの間の特許出願に ついて,審判官が職権により甲20と同様の調査したところ,原告ら及び被告以外 の当業者では,電子顕微鏡法,レーザ回折・散乱法,遠心沈降法により平均粒子径 を測定している例があった一方,電気的検知帯法が用いられた例は発見されていな いこと(弁論の全趣旨)が認められる。また,種々の測定方法で得た値から,再度 計算して,等体積球相当径を粒子径(代表径)とする平均粒子径に換算していると\nも考え難い。そうすると,粒子径(代表径)について,等体積球相当径又はそれ以\n外の特定の定義によることが技術常識となっていたとは認められない。 以上のとおり,技術常識を踏まえて本件特許請求の範囲及び本件明細書の記載を 検討しても,粒子径(代表径)を特定することはできない。\n
(3) 原告らは,本件発明が粒度分布を体積基準で表していること,測定方法の\n記載がないこと,マイクロカプセル顔料の大きさに着目するという本件発明の特徴, 測定の難易から,本件発明の粒子径(代表径)として,光散乱相当径やストークス\n径は不適当である一方,等体積球相当径は適当である旨主張する。 しかし,粒度分布の表し方を体積基準又はそれと等価である質量基準とするのが\n通常である粒子径(代表径)には,審決が指摘するとおり,等体積球相当径の他に\nも,光散乱法による光散乱相当径,光回折法による光の回折相当径,沈降法による ストークス径があると認められる。そして,前記(2)のとおり,筆記具用インキの粒 子の大きさの測定に関する公知発明において,これらの粒子径(代表径)又は測定\n方法が相当程度採用されていたことに照らせば,これらの粒子径(代表径)又は測\n定方法も,マイクロカプセル顔料の大きさに着目する技術分野において,当業者が 採用を検討し得る有用な測定基準であると推認される。なお,原告パイロットイン キによる特許出願でも,インキの吐出性を考慮して粒子の大きさを限定するため, 遠心沈降式の測定装置を用いて体積基準の粒度分布を求めている例がみられる(乙 11【0016】【0040】)。 また,測定方法の記載がない場合に,特定の測定方法に対応しない粒子径(代表\n径)の定義を採用したものと考えるという技術常識を認めるに足りる証拠はない。

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平成29(行ケ)10006等  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年8月22日  知的財産高等裁判所

 一部のクレームについては無効とした審決について、双方がその取消を求めました。審判では、請求項6〜13については、サポート要件違反、進歩性違反等は無し、請求項1〜4は明確性違反で無効と判断されていました。前者について無効審判請求人がその部分の取消しを求める訴訟(甲事件)を提起し、後者について、特許権者がその取消しを求める訴訟(乙事件)を提起しました。裁判所は、後者については取り消すと判断しました。
 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だ けではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願 当時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者の利益が不 当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 原告は,本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載のうち,「急激な降下」, 「急激な降下部分の外挿線」及び「ほぼ直線的な変化を示す部分の外挿線」との各 記載が不明確であると主張するから,以下検討する。
(2) 「急激な降下」,「急激な降下部分の外挿線」との記載
ア 請求項1及び2の記載のうち「急激な降下」部分とは,動的貯蔵弾性率の温 度による変化を示す図において,左から右に向かって降下の傾きの最も大きい部分 を意味することは明らかである(【図2】)。また,傾きの最も大きい部分の傾き の程度は一義的に定まるから,「急激な降下部分の外挿線」の引き方も明確に定ま るものである。
イ これに対し,原告は,動的貯蔵弾性率の傾きが具体的にどのような値以上に なったときに「急激な降下」と判断すればよいか分からない旨主張する。しかし, 「急激な降下」とは,相対的に定まるものであって,傾きの程度の絶対値をもって 特定されるものではないから,同主張は失当である。
(3) 「ほぼ直線的な変化を示す部分の外挿線」との記載
ア ASTM規格(乙31)は,世界最大規模の標準化団体である米国試験材料 協会が策定・発行する規格であるところ,ASTM規格においては,温度上昇に伴 って変化する物性値のグラフから,ポリマーのガラス転移温度を算出するに当たり, ほぼ直線的に変化する部分を特段定義しないまま,同部分の外挿線を引いている。 また,JIS規格(乙13)は,温度上昇に伴って変化する物性値のグラフから, プラスチックのガラス転移温度を算出するに当たり,「狭い温度領域では直線とみ なせる場合もある」「ベースライン」を延長した直線を,外挿線としている。 そうすると,ポリマーやプラスチックのガラス転移温度の算出に当たり,温度上 昇に伴って変化する物性値のグラフから,特定の温度範囲における傾きの変化の条 件を規定せずに,ほぼ直線的な変化を示す部分を把握することは,技術常識であっ たというべきである。 そして,ポリマー,プラスチック及びゴムは,いずれも高分子に関連するもので あるから,ゴム組成物の耐熱性に関する技術分野における当業者は,その主成分で ある高分子に関する上記技術常識を当然有している。 したがって,ゴム組成物の耐熱性に関する技術分野における当業者は,上記技術 常識をもとに,昇温条件で測定したときの動的貯蔵弾性率の温度による変化を示す 図において,特定の温度範囲における傾きの変化の条件が規定されていなくても, 「ほぼ直線的な変化を示す部分」を把握した上で,同部分の外挿線を引くことがで きる。
・・・
このように,外挿線Aと外挿線Bの交点温度として特定された170℃という温 度は,補強用ゴム組成物の180℃から200℃までの動的貯蔵弾性率の変動に着 目したことから導かれたものであって,かかる交点温度は,その引き方によっても 1℃の差が生ずるにとどまる。そうすると,外挿線Aと外挿線Bの交点温度によっ て,ゴム組成物の構成を特定するという特許請求の範囲の記載は,第三者の利益が\n不当に害されるほどに不明確なものとはいえない。
(4) 小括
したがって,本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載のうち,「急激な降 下」,「急激な降下部分の外挿線」及び「ほぼ直線的な変化を示す部分の外挿線」 との各記載は明確であって,本件特許の特許請求の範囲請求項1及び2の記載が明 確性要件に違反するということはできない。請求項3及び4の各記載も同様である から,明確性要件に違反するということはできない。 よって,取消事由1は理由がある。

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平成28(行ケ)10059  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年4月12日  知的財産高等裁判所(3部)

 原審は、一部の請求項のみ無効と判断しましたが、知財高裁は無効理由なしとした請求項についても無効(明確性・サポート要件違反)と判断しました。
このような一部認容・一部非認容の場合に、双方が不服がある場合、実際の提訴はどうやるのでしょうか?、第1、第2事件みたいにはなってないし。。。
 以上の検討結果を併せ考えれば,文言解釈のみによるのでは,構成要件\nC−2の「ファンの径方向外側」なる記載は多義的に解釈し得るもので あるというべきである。
(2) 特許発明1の構成要件C−2の技術的意義に基づく解釈
ア 上記(1)のとおり,文言解釈のみによるのでは,構成要件C−2の「フ\nァンの径方向外側」なる記載は多義的に解釈し得るものであるとすれば, 当該構成要件の技術的意義に基づきその解釈を検討すべきこととなる。
イ 本件特許発明は,小型軽量化,高効率化を目的としてブラシレスモータ を使用した携帯用電気切断機において,その回路基板の配置スペースの 確保及び冷却が問題となっていること,また,操作性を妨げないハウジ ング形状である必要があることを背景に,モータを収容するハウジング の形状を大きく変更せず,かつ,操作性を損なわずに,モータ駆動用の 回路基板の配置スペースを確保するとともにその冷却を良好に行うこと を目的とするものである(前記1(3)イ,ウ)。 このような目的を達成するために,本件特許発明は,本件実施例にお いて,ハンドルを把持する作業者による作業の妨げとならないように, 回路基板収容部をハンドルとベースとの間の高さ位置に設け,かつ,フ ァンの回転によりファンガイド内側が負圧になることを利用して回路基 板冷却用窓からファンガイド内側に至る冷却風を発生させるために,回 路基板収容部をファンの径方向外側に配置している(前記1(3)エ,オ)。 このうち前者が小型化の目的を達成するための手段,後者が冷却の目的 を達成するための手段として把握される。
ウ(ア) しかし,これらの手段のみによって実際に上記各目的が達成される か否かは,以下のとおり,本件明細書等の記載からは必ずしも明らかで ない。
(イ) 小型化の目的に関しては,本件明細書には従来の携帯用電気丸鋸の 具体的な構造についての言及がないため,本件実施例の構\造との比較 において目的達成の有無ないし程度を評価することはできない。本件 実施例の構造それ自体から,これらが小型化の目的を達成しているか\n否かを客観的に評価することもできない。 また,仮に本件実施例の構造が小型化の目的を達成しているとしても,\n回路基板収容部をハンドルとベースとの間の高さ位置に設けさえすれば 自ずと目的が達成されるものではなく,前提として当該スペースを有効 活用し得るような合理的な構造を有することが必要と思われるが,本件\n明細書にはこの点に関する説明はない。
(ウ) 冷却の目的に関しては,上記手段により当該目的を達成する上で, 回路基板が冷却風の通路に配置されることは必須と思われるけれども, その具体的方法として回路基板をファンの径方向外側に配置すること は,ファンの径方向外側が冷却風の通路となるような構造を一体的に\n伴わない限り,回路基板の冷却とは直接関係しない。このことは,回 路基板がファンの径方向外側である真横にあったとしても,隔壁その 他により回路基板とファンとの間の冷却風の移動が遮断されているよ うな場合を考えれば明らかである。 ここで,本件実施例においては,回路基板収容部の4側面のうち,そ の2側面に回路基板冷却用風窓が多数形成され,これらとは別の側面に 風通路となる間隔が1つ設けられ,それら以外の側面は隔壁により囲ま れる構造となっている。このうち,上記間隔は,ファンガイドの背面と\nハウジングの外壁部との間に設けられ,これによってモータ収容部と回 路基板収容部とが連通している。このような構造とともに,モータ収容\n部とファンの位置とがファンガイドによって連通する構造が採用されて\nいるからこそ,回路基板収容部内に設置された回路基板がファン風の通 路に位置して冷却の目的が達成されることとなっている。このような回 路基板収容部からファンに至る連通構造が,回路基板の一部が(a)領域 に位置することと無関係に実現し得ることは明らかといってよい。
(エ) これらの点を踏まえると,本件特許発明の目的を達成するための手 段は,本件実施例においてすら合理的に説明されているとはいえない。 そうすると,本件実施例を上位概念化したものである本件特許発明に おいてはなおさら,その目的を達成し得るとは認められないことにな る。したがって,構成要件C−2が本件特許発明の目的を達成するた\nめの構成であるとして,その技術的意義から同構\成要件の示す意味内 容を把握することはできない。 そもそも,小型化の目的に関し,本件実施例における小型化の目的達 成手段である「回路基板収容部をハンドルとベースとの間の高さ位置に 設けること」は,特許発明3及び4並びにその従属発明である特許発明 5にしか具体的には表れておらず,また,構\成要件C−2とは無関係で ある。冷却の目的に関しても,上記(ウ)を踏まえると,その目的を達成 する構成としては,端的に構\成要件C−3「前記回路基板の少なくとも 一部は,前記ファン風の通路内に配置されており,」が設けられている 以上,構成要件C−2は無関係と見られる。
(3) 以上によれば,構成要件C−2の「ファンの径方向外側」は,特許請求\nの範囲の文言によれば(a)領域又は(b)領域のいずれとも解釈し得るものであ り,また,その技術的意義に鑑みてもいずれの解釈が正しいのか判断し得な いものということができる。 したがって,構成要件C−2は不明確というべきである。そうである以\n上,この点に関する本件審決の認定・判断には誤りがあり,取消事由2には 理由がある。
3 取消事由1(記載要件(特許発明6〜8及び10に関するサポート要件)に関する認定,判断の誤り(無効理由1の2))について
更に進んで,取消事由1についても検討する。
(1) 特許発明6は,「モータの側方位置において,前記モータの回転軸と平 行に延びるように配置されている」回路基板(構成要件I)のみを有したも\nのであり,当該回路基板は,さらに,「前記回路基板の少なくとも一部は, 前記ファンの回転軸に直交する方向を径方向としたとき,前記ファンの径方 向外側に配置され」る(構成要件C−2)ものである。\n本件明細書の発明の詳細な説明において,「モータの側方位置」に配置 された回路基板(縦置き基板)としては,第2の実施の形態の第2の回路基 板60B及び第3の実施の形態の第1の回路基板60C(いずれも,モータ 収容部2aの内壁面とモータ1の固定子1B間の隙間に配置されたもの)が 記載されているが(前記1(2)カ),縦置き基板のみを有する発明は明示的 に記載されていない。そこで,縦置き基板のみを有する構成が,本件特許発\n明の課題(前記2(2)イ)を解決できると当業者が認識し得る程度に,本件 明細書の発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討する。
(2) 第2の実施の形態について
ア 第2の実施の形態の縦置き基板(第2の回路基板60B)による効果は, 以下の3点に集約される(前記1(3)キ)。
1) 制御回路30を別基板(縦置き基板)としたことで,駆動回路20 及び整流平滑回路40を搭載した第1の回路基板60Aの面積を小さ くし,ハウジング2のソーカバー5側への突出量を少なくでき,操作\n性の面で有利となる。
2)制御回路30を別基板(縦置き基板)としたことで,駆動回路20 や整流平滑回路40の発熱部品の影響を受けないようにできる。
3) 制御回路30を搭載した第2の回路基板60B(縦置き基板)をセ ンサ基板51の近くに配置することで,回転位置検出素子52と制御 回路30との電気接続を短縮して,ノイズ等の影響を受けにくい構造\nにできる。
イ(ア) このうち,前記1)の効果は,ハウジング2に設けられた凸部69A (ソーカバー5側へ突出)が小さくなることをいうものである。しかし,\nこのとき,一方で縦置き基板を収容するためにモータ収容部2aが大き くならざるを得ないことを考えると,前記1)の効果は,一概に小型化に 寄与するといってよいか定かではない。また,凸部69A及びモータ収 容部2aの形状のこのような変化が,それぞれ携帯用電気切断機の操作 性に及ぼす影響については,本件明細書の発明の詳細な説明に記載され ていない。 したがって,第2の実施の形態においては,縦置き基板を設けること により小型化の目的を達成できるとは必ずしも認識し得ないし,まして, 縦置き基板のみとした場合に,携帯用電気切断機の操作性の面で有利で あることないし操作性が損なわれないことを認識することもできない。
(イ) 前記2)の効果は,冷却の目的に関わるものである。この目的の観点 から見ると,制御回路30を別基板である縦置き基板とすることで, 前記2)の効果を期待できるとしても,ブラシレスモータの固定子が熱 源となることは技術常識であるところ,そのモータの側方に縦置き基 板を設置することにより,かえってモータの固定子の発熱の影響を受 けやすくなることも予想される。そうすると,制御回路30を縦置き\n基板としたとしても,必ずしも冷却の目的を達成できるとは認識し得 ない。まして,駆動回路と制御回路の両者を搭載した縦置き基板のみ とした場合に,基板の冷却を効果的に実現し得ると認識することもで きない。
(ウ) 前記3)の効果は,小型化の目的とも冷却の目的とも独立したもので あり,本件特許発明の課題解決に寄与しないことは明らかである。
・・・
(4) そうすると,特許発明6〜8及び10は,本件明細書の発明の詳細な説 明に記載されたものではなく,また,特許発明6〜8及び10が,その課題 を解決できると当業者が認識し得る程度に,本件明細書の発明の詳細な説明 に記載されているともいえない(なお,この点は,本件特許発明において横 置き基板が必須であるか否かとは関わりない。)。 したがって,特許発明6〜8及び10は,いわゆるサポート要件を満た しているとはいえない。

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平成28(行ケ)10190  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年5月30日  知的財産高等裁判所(4部)

 特36条、29条2項の無効理由はそれぞれ無効理由無しと判断されました。なお、「明確性を満たしているかについても、クレームだけでなく明細書を考慮する」との判断基準を示しています。かかる判断基準は、平成21(行ケ)10434(3部)、平成25(行ケ)10335(4部) でも言及されてます。
 (1) 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だ けではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願 当時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者の利益が不 当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 原告は,本件特許の特許請求の範囲請求項1の記載のうち,「当該分離して使用 するもの(4)の上部,下部,左側部(右側部)の内側及び外側に該当する部分(5, 6)((7,8))」の各部分が明確ではない旨主張する。
(2)「内側及び外側に該当する部分」の明確性
ア 「内側及び外側」の範囲
(ア) 請求項1には,分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部(右側 部)の「内側及び外側」に該当する部分との記載がある。 請求項1の記載によれば,印刷物の中央面部(1)の所定の箇所に,所定の大き さを有する分離して使用するもの(4)が印刷されており,分離して使用するもの (4)は,周囲に切り込みが入っているものである。そして,請求項1には,「内 側及び外側」の範囲を直接特定する記載はない。 したがって,分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部(右側部)の「内 側及び外側」に該当する部分とは,印刷物の中央面部(1)における,分離して使 用するものの周囲に設けられた切り込みの「内側及び外側」に該当する部分と特定 され,その範囲は特定されていないものである。 (イ) なお,本件明細書の【0014】ないし【0017】の記載によれば,本 件発明1を実施する際には,一過性の粘着剤が塗布されている部分となる「内側及 び外側」の範囲について,分離して使用するものが欠落することなく,また左側面 部と右側面部を中央面部からはがして開いた場合には左側面部又は右側面部の一方 に分離して使用するものが貼着されるなどして,これを自動的に手にすることがで\nきる程度の範囲に限定されることになる。しかし,当該範囲は,中央面部(1), 左側面部(2),右側面部(3)及び分離して使用するもの(4)の形状や材質, 分離して使用するもの(4)の周囲の切り込みの程度,粘着剤の強度等に応じて, 適宜決定されるにすぎないから,特許を受けようとする発明において,「内側及び 外側」の範囲を特定していないからといって,それが明確性を欠くことにはならな い。
・・・
(4) 小括
以上によれば,本件特許の特許請求の範囲請求項1の記載のうち,「当該分離し て使用するもの(4)の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分(5, 6)」とは,印刷物の中央面部の所定の箇所に印刷された所定の大きさを有する, その外形は特定されない分離して使用するもの(4)の,上部,下部又は左側部の いずれかのうち,その周囲に設けられた切り込みの内側及び外側であって,その範 囲は具体的には特定されない部分に該当する部分であって,請求項1の記載のうち, 「当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当す る部分(7,8)」も同様であって,これらの記載が,第三者の利益が不当に害さ れるほどに不明確であるということはできない。 したがって,「当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部(右側部) の内側及び外側に該当する部分(5,6)((7,8))」との各記載は明確であ るから,本件特許の特許請求の範囲請求項1の記載が明確性要件に違反するという ことはできない。請求項2及び請求項3の各記載も同様であるから,明確性要件に 違反するということはできない。 よって,取消事由1は理由がない。
(1) 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲 の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が, 発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当 該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,発明の詳 細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課 題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと 解される。 そして,原告は,一過性の粘着剤が塗布される位置について,分離して使用する ものの上部,下部,左(右)側部の内側及び外側に該当する部分のいずれかでよい とすると,サポート要件に違反すると主張する。
(2) 前記2(4)のとおり,特許請求の範囲請求項1に記載された発明において,左 側面部(2)の裏面の「一過性の粘着剤が塗布されている」部分は,分離して使用 するものの,上部,下部又は左側部のいずれかのうち,その周囲に設けられた切り 込みの内側及び外側であって,その範囲は特定されない部分に該当する部分であっ て,右側面部(3)の裏面についても同様である。 そして,前記1(2)イのとおり,本件発明1は,分離して使用するものについて, その周囲に切り込みが入っているにもかかわらず,広告等の印刷物に付いていて紛 失させることなく,しかも,広告等の印刷物より切り取る手間をかけずに利用する ことができる印刷物を提供することを課題とするものである。そして,前記2(2)イ のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明の記載(【0014】〜【0017】) により,当業者は,一過性の粘着剤の塗布が,左側面部2の裏側のうち,分離して 使用するものの上部,下部,左側部の少なくともいずれかに該当する部分であって, 分離して使用するものの内側及び外側のいずれにも該当する部分にされれば,本件 発明1の上記課題を解決できると認識できるものといえ,右側面部3についても同 様である。 そうすると,一過性の粘着剤が塗布される位置において,本件発明1は,発明の 詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明 1の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。

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平成27(行ケ)10242  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年9月20日  知的財産高等裁判所

 審決、知財高裁ともにPBPクレームでないと判断しました。「細いテープ状部材に,粘着剤を塗着する」との記載は、経時的要素を表現したものではなく,状態を示すことにより構\造又は特性を特定しているにすぎないとい判断されました。
 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法 が記載されている場合(いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレ ームの場合)において,当該特許請求の範囲の記載が法36条6項2 号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるの は,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定するこ\nとが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在する\nときに限られると解される(最高裁判所第二小法廷平成27年6月5 日判決・民集69巻4号700頁)ところ,本件発明1に係る上記記 載は,これを形式的に見ると,確かに経時的な要素を記載するものと いうこともでき,プロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当する と見る余地もないではない。 しかし,プロダクト・バイ・プロセス・クレームが発明の明確性との 関係で問題とされるのは,物の発明についての特許に係る特許請求の範 囲にその物の製造方法が記載されているあらゆる場合に,その特許権の 効力が当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物\nに及ぶものとして特許発明の技術的範囲を確定するとするならば,その 製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表\しているのかが不明で あることなどから,第三者の利益が不当に害されることが生じかねない ことによるところ,特許請求の範囲の記載を形式的に見ると経時的であ ることから物の製造方法の記載があるといい得るとしても,当該製造方 法による物の構造又は特性等が明細書の記載及び技術常識を加えて判断\nすれば一義的に明らかである場合には,上記問題は生じないといってよ い。そうすると,このような場合は,法36条6項2号との関係で問題 とすべきプロダクト・バイ・プロセス・クレームと見る必要はないと思 われる。
(ウ) ここで,本件明細書の記載を参酌すると,本件明細書には「二重瞼 形成用テープは,図2に示すように,弾性的に伸縮するX方向に任意 長のシート状部材11の表裏前面に粘着剤12を塗着…し,これを多\n数の切断面Lに沿って細片状に切断することにより,極めて容易に製 造することができる。」(甲1の段落【0013】)という態様,す なわち,粘着剤を塗着した後,細いテープ状部材を形成する態様を含 めて「図1及び図2に示す実施例では,弾性的に伸縮する細いテープ 状部材の表裏両面に粘着剤2を塗着している」(同段落【0014】)\nと記載されている。また,本件発明1は,「テープ状部材の形成」と 「粘着剤の塗着」の先後関係に関わらず,テープ状部材に粘着剤が塗 着された状態のものであれば二重瞼を形成し得ること,すなわちその 作用効果を奏し得ることは明らかである。 そうすると,本件発明1の「…細いテープ状部材に,粘着剤を塗着す る」との記載は,細いテープ状部材に形成した後に粘着剤を塗着すると いう経時的要素を表現したものではなく,単にテープ状部材に粘着剤が\n塗着された状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎな\nいものと理解するのが相当であり,物の製造方法の記載には当たらない というべきである。

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平成27(行ケ)10184  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年9月29日  知的財産高等裁判所

 審決、知財高裁ともにPBPクレームでないと判断しました。 「ワックスの残存率が19%〜33%となるようこそぎ落とし又は溶融除去することにより前記燃焼芯を露出させる」が製法が記載されているかどうかでした。
 オ 原告らは,本件発明の「こそぎ落とし又は溶融除去することにより」との記 載は,物の製造方法が記載されているプロダクト・バイ・プロセス・クレームであ るから,明確性要件に適合しないなどと主張する。 しかし,証拠(甲25)及び弁論の全趣旨によれば,原告らの上記主張は,本件 の特許無効審判において無効理由として主張されたものではなく,当該審判の審理 判断の対象とはされていないものと認められるから,もとより本件訴訟の審理判断 の対象となるものではなく(最高裁判所昭和42年(行ツ)第28号同51年3月 10日大法廷判決・民集30巻2号79頁参照),失当というほかない。 なお,この点につき付言するに,PBP最高裁判決は,物の発明についての特許 に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合に,出願時におい て当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能\であるか又はおよそ 実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という。)が存在するとき\nに限り,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう明確性要件に適 合する旨判示するものである。このように,PBP最高裁判決が上記事情の主張立 証を要するとしたのは,同判決の判旨によれば,物の発明の特許に係る特許請求の 範囲にその物の製造方法が記載されている場合には,製造方法の記載が物のどのよ うな構造又は特性を表\しているのかが不明であり,特許請求の範囲等の記載を読む 者において,当該発明の内容を明確に理解することができないことによると解され る。そうすると,特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっ ても,当該製造方法の記載が物の構造又は特性を明確に表\しているときは,当該発 明の内容をもとより明確に理解することができるのであるから,このような特段の 事情がある場合には不可能・非実際的事情の主張立証を要しないと解するのが相当\nである。 これを本件についてみるに,本件発明の「該燃焼芯にワックスが被覆され,かつ 該燃焼芯の・・・先端部に被覆されたワックスを,該燃焼芯の先端部以外の部分に 被覆されたワックスの被覆量に対し,ワックスの残存率が19%〜33%となるよ うこそぎ落とし又は溶融除去することにより前記燃焼芯を露出させる・・・ことを 特徴とするローソク」という記載は,その物の製造に関し,経時的要素の記載があ\nるとはいえるものの,ローソクの燃焼芯の先端部の構\造につき,ワックスがこそぎ 落とされて又は溶融除去されてワックスの残存率が19%ないし33%となった状 態であることを示すものにすぎず,仮に上記記載が物の製造方法の記載であると解 したとしても,本件発明のローソクの構\造又は特性を明確に表しているといえるか\nら,このような特段の事情がある場合には,PBP最高裁判決にいう不可能・非実\n際的事情の主張立証を要しないというべきである。 したがって,原告らの主張は,PBP最高裁判決を正解しないものであり,採用 することができない。

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平成28(行ケ)10207  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年3月28日  知的財産高等裁判所(4部)

 明確性違反および進歩性無しについて、拒絶審決が維持されました。出願人は株式会社ドクター中松創研です。
【0009】には,前記(3)のとおり,本願発明が,耳より後ろのバッテ リー11の重さや電子回路12の重さW1と,前方のディスプレイ16やカメラ1 8の重量W2とを,「つる」の13を支点として,バランス(釣合い)をとるよう にし,天秤の原理でディスプレイ16やカメラ18が,装着者の顔が動いても水平 になるものであることが記載されているところ,このような,天秤の原理による支 点より前方側と後方側のモーメントのバランス(釣合い)は,一般に「スタティッ クバランス(静的な釣合い)」といわれるものであり,「スタティックバランス」 をとることが,必ずしも「ダイナミックバランス」(運動状態にある物体について, その運動状態によって発生している力をも考慮した釣合い)をもとることにはなら ないことは,技術常識に照らして明らかである。それにもかかわらず,本願明細書 には,【0009】を含め,耳より後ろのバッテリー11の重さや電子回路12の 重さW1と,前方のディスプレイ16やカメラ18の重量W2とを,「つる」の1 3を支点として,バランス(釣合い)をとるようにすることや天秤の原理と,「ダ イナミックバランス」(動的釣合い)がとれることとの関係については,何らの記 載もない。 したがって,本願明細書の記載によっても,耳より後ろの錘W1を「ダイナミッ クバランサー」とすることや本願発明が「ダイナミックバランスドスマホ,PC」 であることの技術的意義を明確に理解することはできず,第三者の利益が不当に害 されるといわざるを得ない。
・・・
原告は,引用発明は,メガネのモーメントWLを,耳の後方に固定するしゃ もじ状部4で吸収するものであるが,引用発明において,引用例2に記載された技 術事項を適用し,PC機能や通話機能\を付加すると,アイウェア側の重さWが重く なるので,モーメントWLは大きくなり,しゃもじ状部4はこのモーメントWLに 耐えることが必要となって,しゃもじ状部4を支える耳の負担を増やしてしまうと いう不具合が生じるから,引用発明において,引用例2に記載された技術事項を適 用し,相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは容易に想到できたこ\nとではない旨主張する。 しかし,引用例1には,レンズ1に液晶層を設けたときにその電源となる電池を しゃもじ状部4に埋め込んでもよいことが記載されているから,引用発明において, 引用例1の上記記載に従い,液晶層に情報を表示するために,アイウェア(メガ\nネ)という同一の分野に係る技術である引用例2に記載された技術事項を適用する ことには動機付けがある。 なお,本願発明は,耳の位置を支点として,その後方のバッテリー11や電子回 路12の重さW1と,その前方のディスプレイ16やカメラ18の重さW2とのバ ランスをとるものであるとの原告の主張によれば,本願発明も,引用発明のメガネ も,支点である耳より後の錘をW1として天秤機能をさせ,前方の重さをW2とし\nて顔が止まっても動いてもW1とW2のバランスをとり,鼻などの顔部に荷重がか からないものである点で共通するから,支点である耳に「耳かけダイナミックバラ ンスドスマホ,PC」,又は引用例2に記載された技術事項を適用したアイウェア 11の全荷重がかかるという点で異ならない。よって,この点においても,しゃも じ状部4を支える耳の負担が増えることを問題にする原告の上記主張は,失当であ る。
イ 原告は,引用例2に記載されているのは,単なるディスプレイメガネであっ て,本願発明のようにカウンタウェイトとしてのバッテリーを備えておらず,耳を 支点としてその前後のバランスをとるというような発明ではなく,本願発明とは関 係がないから,引用発明において,引用例2に記載された技術事項を適用し,相違 点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは容易に想到できたことではない\n旨主張する。 しかし,前記アと同様に,引用例1には,レンズ1に液晶層を設けたときにその 電源となる電池をしゃもじ状部4に埋め込んでもよいことが記載されているから, 引用発明において,引用例1の上記記載に従い,液晶層に情報を表示するために,\nアイウェア(メガネ)という同一の分野に係る技術である引用例2に記載された技 術事項を適用することには動機付けがある。

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平成28(行ケ)10200  審決取消請求事件  実用新案権  行政訴訟 平成29年3月14日  知的財産高等裁判所

 実用新案について、記載要件および進歩性違反が争われました。知財高裁は無効理由なしとした審決を維持しました。
 構成要件B1,B9,C1及びC2は,1)コンデンシングユニット(20)が「第 一のリード角」を備え,「第一のリード角」が,コンデンシングユニット(20)の 内縁壁(205)周りに環設されること,2)コンデンシングユニットワッシャー(3 0)が,「第二のリード角」を有し,「第二のリード角」が,「第一のリード角」に対 応し,「第一のリード角」に当接することを規定する。 「第一のリード角」は,コンデンシングユニット(20)に「備え」られ,「環設」 されるものであり(構成要件B1,B9),また,「第二のリード角」は,コンデン\nシングユニットワッシャー(30)が「有し」(構成要件C1),さらに,「第一のリ\nード角」と「第二のリード角」とは,「当接」するものである(構成要件C2)から,\nこれらが,コンデンシングユニット(20)又はコンデンシングユニットワッシャ ー(30)の構成部位を示す用語であることは,明らかである。\nもっとも,「…角が…壁周りに環設される」「…角に対応する…角」「…角が…角に 当接している」とあるのは,「角」の通常の用い方とは明らかに異なるから,構成要\n件B1,B9,C1及びC2における「リード角」の意義は,実用新案登録請求の 範囲の記載からは,直ちに明らかにはならない。 そこで,本件明細書の記載を参酌すると,1)本件考案は,従来のワッシャーは, スチームトラップとの密接の度合が劣るため蒸気が漏えいしやすい問題があったこ とから(【0002】),コンデンシングユニットとコンデンシングユニットワッシャ ーとの結合箇所に,それぞれ,「第一のリード角」及び「第二のリード角」を設けて, 互いを密接させることで蒸気の漏えいを防ぐこととし(【0004】【0011】【0 013】),また,2)「図1〜図4に示すように,…第一のリード角206がコンデ ンシングユニット20の内縁壁205周りに環設され,コンデンシングユニットワ ッシャー30は第一のリード角206に対応する第二のリード角301を有する。」 (【0011】)と記載され,図3の断面図において,「206」及び「301」が, 接合方向に対して傾斜する傾斜面として示され,当接していることが認められる。 そうすると,当業者は,構成要件B1,B9,C1及びC2の「第一のリード角」\n「第二のリード角」は,コンデンシングユニットとコンデンシングユニットワッシ ャーとの結合面に互いに対応する角度を有してそれぞれ設けられた傾斜面であり, これにより,従来のワッシャーに比べて相互の密接性を高め ,蒸気の漏えいを防ぐ ものであると理解することができる。 したがって,構成要件B1,B9,C1及びC2の記載は,不明確なものとはい\nえない。

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平成27(行ケ)10226  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年11月24日  知的財産高等裁判所

 発明未完成、明確性違反、実施可能性違反として拒絶された出願について、審決取消訴訟が提起されました。知財高裁(第1部)は、実施可能要件違反として審決を維持しました。
 ア 前記(2)の認定事実によれば,本願明細書の実施例(例1)では,本願マトリ ックスを通過した白昼光に対し蒸留水を24時間常温で暴露する実験を行ったとこ\nろ,水が同期化したことが認められ,この点については当事者間に争いがないとこ ろである。しかしながら,上記実験は,実験条件の詳細が明らかではなく,本願明 細書の表1における「基準」に関する実験条件も具体的に記載されていないことか\nらすると,本願マトリックスを使用した場合とこれを使用しなかった場合における 比較実験を行ったものと認めることはできない。のみならず,水の同期化の理論的 なメカニズムは十分に解明されていない上,特開2004−2514985)公報(乙 2の【要約】,【0006】,【0011】)によれば,かえって,マイクロウェーブ,超音波,マイクロ波超音波,赤外線(遠赤外線,中間赤外線,近赤外線を含む。)な どを使用することによって,水分子の回転運動を促進し,本願水特性のように,凝 固点における水温をマイナス10度以下に降下させることが可能になるとされてお\nり,しかも,上記近赤外線(780nm〜2500nm)は,本願発明にいう入射光の 範囲(360nm〜3600nm)に含まれるのであるから,本願マトリックスを通過 しない入射光であっても水を一定程度同期化し得ることが認められ,水の同期化が 本願マトリックス以外の実験条件によって生じた可能性も残るといわざるを得ない。\nそうすると,本願明細書にいう上記実験は,水が同期化された原因が,その他の実 験条件によるものではなく,専ら入射光が本願マトリックスを通過したことによる ことまでを立証するものとはいえない。 したがって,立証事項Aが立証されたということはできない。
イ また,前記(2)の認定事実によれば,本願明細書の実施例(例14)では,男 性2名及び女性2名に対し,本願マトリックスを耳鳴り症状を示す耳の後部の頭蓋 基底部に,皮膚に穏やかな接着剤で局所的に配置する実験を行ったところ,このう ち3名の耳鳴り症状が24時間以内に消失し,1名の耳鳴り症状が1週間以内に消 失したことが認められる。しかしながら,上記実験における被験者は僅か4名にと どまり,しかも本願マトリックスを使用しない場合との比較試験を行うものではな いことからすれば,耳鳴り症状が自然治癒又はいわゆるプラセボ効果(乙11)に より消失した可能性も残るというほかない。のみならず,証拠(乙6ないし9)及\nび弁論の全趣旨によれば,キセノンが発する光のうち近赤外線を利用した耳鳴り治 療法(いわゆるキセノン光線療法)が現に実施されていることが認められることか らすれば,上記実施例における実験においても,被験者の耳の後部に照らされた光 が耳鳴り治療に一定程度有効に作用した可能性も残ることが認められる。したがっ\nて,本願明細書にいう上記実験は,耳鳴り症状が本願マトリックス自体によって消 失したものであることまでを立証するものとはいえない。 したがって,立証事項Bが立証されたものとはいえない。
ウ 以上によれば,本件立証事項が立証されたものと認めることはできず,本願 明細書は,当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載\nたものとはいえない。
(4) 原告の主張について
ア 原告は,本願明細書にいう上記各実験結果はA宣誓書によって裏付けられて いる旨主張する。しかしながら,本願マトリックスを使用した実験がA教授の研究 室で行われたことはうかがわれないことからすれば,A宣誓書は,本願明細書にい う実験によって同期化された水の性質が,A教授の研究室での実験結果と同一であ るというにとどまり,水を同期化するとされる入射電磁エネルギーが本願マトリッ クスによって形成されることまでを裏付けるものとはいえない。したがって,原告 の上記主張は,A宣誓書を正解しないものであって,採用することができない。
イ 原告は,人に対する治療を目的とする発明に対し,特許出願前のごく僅かな 期間に厳格な実験を行うことを求めるのは困難を強いるものであって現実的ではな く,また,本願明細書の耳鳴り治療に関する実験はA宣誓書によっても裏付けられ ている旨主張する。しかしながら,比較実験の被験者となる耳鳴り患者の人数が少 ないことを認めるに足りる証拠はなく,耳鳴り症状の比較実験の方法についても, 例えば耳鳴り症状を示す両耳のうち片耳に限り本願マトリックスを配置すれば足り るのであるから,格別困難を強いるものとはいえず,原告の主張は,その前提を欠 く。また,A宣誓書は,「例14は,パイロット臨床実験におけるTGMの適用が4 人のヒト被験者における耳鳴り症状に対して有利な効果を有したことを実証してい る」(甲11〔53頁4行目ないし5行目〕参照)として,単に実験結果を追認する ものにすぎず,A教授の研究室で本願マトリックスによる耳鳴り症状の改善に関す る実験が行われていない以上,A宣誓書によっても本願マトリックスによって耳鳴 り症状の改善効果があることを認めることはできない。さらに,原告主張に係る報 告書(甲22)における実験も,上記(3)イで説示するところと同様に,比較試験を 行うものではなく,本件立証事項を裏付けるものとして適切ではない。したがって, 原告の主張は,その裏付けを欠くというほかなく,採用することができない。 (5) まとめ
上記によれば,本願明細書は当業者が本願発明の実施をすることができる程度に 明確かつ十分に記載したものではないとした審決の判断に誤りはなく,原告の主張\nする取消事由3(特許法36条4項15)〔実施可能要件〕に関する判断の誤り)は\n理由がない。

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平成28(行ケ)10025  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年11月8日  知的財産高等裁判所

 審決は、請求項1,2は、製造方法が記載されているので、PBPクレームには該当し、明確性違反と判断しました。裁判所は、製法が記載されていても、この場合は、PBPクレームには該当しないと判断されました。ただ、他の請求項についての明確性違反が残っているので、結論に影響しないとして、拒絶審決が維持されました。
 そこで検討するに,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその 物の製造方法が記載されている場合(いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・ クレームの場合)において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項 2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは, 出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能\ であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると 解するのが相当であるところ(最高裁判所第二小法廷平成27年6月5日判 決・民集69巻4号700頁参照),本願補正発明1及び2に係る前記の各 記載は,いずれも,形式的にみれば,経時的な要素を記載するものといえ, 「物の製造方法の記載」がある,すなわち,プロダクト・バイ・プロセス・ クレームに該当するということができそうである。 しかしながら,前記最高裁判決が,前記事情がない限り明確性要件違反に なるとした趣旨は,プロダクト・バイ・プロセス・クレームの技術的範囲は, 当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定\nされるが,そのような特許請求の範囲の記載は,一般的には,当該製造方法 が当該物のどのような構造又は特性を表\しているのかが不明であり,権利範 囲についての予測可能\性を奪う結果となることから,これを無制約に許すの ではなく,前記事情が存するときに限って認めるとした点にある。 そうすると,特許請求の範囲に物の製造方法が記載されている場合であっ ても,前記の一般的な場合と異なり,当該製造方法が当該物のどのような構\n造又は特性を表しているのかが,特許請求の範囲,明細書,図面の記載や技\n術常識から明確であれば,あえて特許法36条6項2号との関係で問題とす べきプロダクト・バイ・プロセス・クレームに当たるとみる必要はない。
この点,本願補正発明1に係る特許請求の範囲(請求項1)は,1)透光性 あるシート・フィルムを,80〜100cm長さの稲育苗箱の巻取り開始縁 以外の3方の縁からはみ出させる,2)これを稲育苗箱底面に根切りシートと して敷く,3)その上に籾殻マット等の軽い稲育苗培土代替資材をはめ込む, 4)この表面に綿不織布等を敷いて種籾の芒,棘毛を絡ませて固定し,根上が\nりを防止して,覆土も極少なくする,5)1)ないし4)のとおり育苗した軽量稲 苗マットを,根切りシートと一緒に巻いて,細い円筒とする,という手順を 示すことにより,「内部導光ロール苗」の構造,特性を明らかにしたものと\n理解することが十分に可能\である。 また,本願補正発明2に係る特許請求の範囲(請求項2)も,1)80〜1 00cm長さの稲育苗箱にはめ込んだ,成型した籾殻マット等の軽い稲育苗 培土代替資材の表面に,2)綿不織布等を敷いて種籾の芒,棘毛を絡ませて固 定し,根上がりを防止し,覆土も極少なくして育苗した,軽量稲苗マットに, 3)透光性あるシート・フィルムを,稲育苗箱の巻取り開始縁以外の3方の縁 からはみ出させて被せ一緒に巻いて,細い円筒とする,というように,やは り手順を示すことより,「内部導光ロール苗」の構造,特性を明らかにした\nものということができる。 そうすると,本願補正発明1及び2に係る前記特定事項は,いずれも,物 の構造,特性を明確に表\しており,発明の内容を明確に理解することができ るものである。 したがって,本願補正発明1及び2は,いずれも,特許法36条6項2号 との関係で問題とされるべきプロダクト・バイ・プロセス・クレームとみる 必要はなく,この点を理由に請求項の記載が明確でない(不可能・非実際的\n事情がなく,同号の要件を満たさない)とした本件審決の判断は誤りである。
(3) 以上によれば,取消事由1に関する原告の主張は正当であり,これに反す る被告の主張は採用できない(ただし,この点に関する本件審決の判断の誤 りが,本件審決の結論に影響を及ぼすものでないことについては,後記4の とおりである。)。

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平成27(行ケ)10098  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年2月8日  知的財産高等裁判所

 審決について、明確性違反ありとして判断は取り消されました。ただ、進歩性なしとの判断は維持されたので、無効であるとした審決は維持されました。
 審決は,本件発明の「地盤に起因する欠点」という用語は,通常「地震,地崩れ, 局所的な液状化」以外の欠点も含むものと解されるところ,本件明細書においては 通常の意義と異なる「地震,地崩れ,局所的な液状化」のみが記載されており,本 件明細書全体をみてもこの「地震,地崩れ,局所的な液状化」以外の欠点を含むか 否かが不明であるため,本件発明が不明確なものとなっていると認定した。 そこで,検討するに,本件特許の請求項1には,「鉄骨などの構造材で強化,形成\nされたテーブルを地盤上に設置し,・・・前記テーブルと地盤の中間に介在する緩衝 材を設け,前記テーブルが既存の地盤との関連を断って,地盤に起因する欠点に対 応するようにしたことを特徴とする地盤強化工法。」と記載されていることからすれ ば,「地盤に起因する欠点」とは,地盤を弱体化させテーブルに影響を及ぼす原因と なり得る事由をいうものと推測できるものの,必ずしも明らかではない。そこで, 本件明細書の記載を参酌すると,【産業上の利用分野】として,「本発明は,地盤強 化工法に関し,特に,地震動や液状化から建築構造物などを保護するための地盤強\n化工法に関するものである。」(【0001】),「・・・テーブルが既存の地盤の関連を絶って,用地固有の欠点を解消することによって,地層,地形,地質,人工造成 地に起因する地震,地崩れ,局所的な液状化から都市,街区,埋立地を改善できる。」 (【0005】),「地形が変動して平衡を欠いても」(【0014】),「【発明の効果】 本発明に係わる地盤強化工法によれば,地盤の地層,地形,地質,造成による欠点, 地震,地崩れによる危険から都市,街区,施設を保護することができる。」(【001 5】)との各記載があり,これらによれば,「地盤に起因する欠点」とは,「地震,地 崩れ,局所的な液状化」や「地形が変動して平衡を欠いた状態」をいうものと理解 することができる。 したがって,請求項1の「地盤に起因する欠点」との記載が明確性要件を欠くと 認めることはできない。 
(2) 「緩衝材」について
審決は,「緩衝材」について,耐震性に関しては,緩衝剤が既存の地盤の振動がテ ーブルに直接伝わらないように関連を断つという技術的意義が導き出せるものの, 「地形が変動して平衡を欠いても,流動性を有する緩衝材を使用することによって, また緩衝材を低い箇所に補うことによって平準化が容易にできる」(【0014】)こ とについては,緩衝材のみで「テーブルが既存の地盤との関連を断」つ機能を生ず\nる,本件発明の「緩衝材」を想定することができないため,本件発明が不明確であ る旨認定した。 しかし,【0012】の記載から,緩衝材は,「砕石,ゴム,発泡スチロール,砂 など」からなることが明らかにされており,【0014】の記載からみて,「地形が 変動して平衡を欠いた状態」において,流動性を持つ緩衝材を使用したり,低い箇 所に緩衝材を補ったりすることが示されていることからすれば,「緩衝材」は,これ により「平準化」することが実施可能であるかはともかく,前記技術思想を実現す\nるための構成部材の一つとして把握される限りにおいて,その文言自体として明確\n性要件を欠くものではない。
(3) したがって,本件特許の請求項1の記載が明確性要件を欠くとした審決の 判断には誤りがあり,原告らの取消事由1には理由がある。

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平成26(行ケ)10047    特許権  行政訴訟 平成27年7月16日  知的財産高等裁判所

 審決は、明確性違反なしとしましたが、知財高裁はこれを取り消しました。理由は、本件発明の作用効果を奏するためには,〜との関係でその方向が限定されていなければならないというものです。
 ここで,本件訂正発明1の炭化珪素質複合体は,反り量について, 「穴間方向(X方向)の長さ10cmに対する反り量(Cx;μm)と, それに垂直な方向(Y方向)の長さ10cmに対する反り量(Cy;μ m)の関係が,|Cx|≧|Cy|,50≦Cx≦250,且つ−50 ≦Cy≦200である(Cy=0を除く)こと」を発明特定事項とする ものであるが,「穴間方向(X方向)」とはどのような方向を意味する のかについては,特許請求の範囲(請求項1)の記載からは,一義的に 明らかであるとはいえない。 (イ) そこで,本件明細書の記載を参酌すると,本件明細書には,「穴間方 向(X方向)」又は「穴間」につき,「一般にここで,前記穴間方向 (X方向)とは,図9(a)〜(d)に例示した,放熱板表面の一方向\nを示し,Y方向は,前記表面内のX方向と垂直な方向を示している。」\n(段落【0031】)との記載がある。 上記記載から,「穴間方向(X方向)」には,図9に例示されたX方 向が含まれることは理解できるが,「穴間方向(X方向)」は「放熱板 表面の一方向を示」すとしか記載されていないから,図9に例示された\nX方向以外にどのような方向が含まれるのか判然としない。 また,図9に例示されたX方向については,穴と穴とを結ぶ直線とX 方向を示す直線が明らかにずれているもの(図9の左から2番目の図) があるが,このような場合に穴間方向とX方向がどのような関係にある のかについては,これを明らかにする記載も見当たらない。 (ウ) ところで,本件訂正発明1は,「穴間方向」であるX方向の長さ1 0cmに対する反り量(Cx)と,X方向と直交する方向であるY方向 における長さ10cmに対する反り量(Cy)の数値範囲をそれぞれ定 め,さらに,Cxの絶対値とCyの絶対値の関係を,|Cx|≧|Cy |と定めたものである。 そして,本件明細書の段落【0032】に,「本発明者らは,従来技 術における前記課題の解決を図り,いろいろ実験的に検討した結果,反 り量(Cx;μm,並びにCy;μm)が前記特定の範囲にあるときに, 複合体から成る放熱板を他の放熱部品に密着性良くネジ止め固定するこ とができるという知見を得て,本発明に至ったものである。本発明の複 合体から成る放熱板を他の放熱部品に密着性良くネジ止め固定する場合, 一般には,放熱板と放熱部品との間に放熱グリス等を介して固定される。 このため,Y方向の反り量(Cy)に関しては,その絶対値が放熱グリス 厚より小さいことが好ましい。また,締め付け時の放熱板の変形を考慮 した場合,Y方向の反り量(Cy)はX方向の反り量(Cx)より小さ い方が好ましい。前記の反り量が前記特定範囲を満足できないときには, 必ずしも密着性良く放熱板を他の放熱部品にネジ止め固定することがで きないことがある。」と記載され,段落【0035】に「また,板状複 合体の主面内に他の放熱部品にネジ止め固定できように,穴部を有して いる場合,その穴間距離が10cm以下の小型形状では,密着性良く放 熱板を他の放熱部品にネジ止め固定するためには,複合体の主面の長さ 10cmに対しての反り量が100μm以下であることが好ましい。」 と記載されているように,反り量を規定する上記条件は,本件訂正発明 1に係る板状複合体を他の放熱部品に密着性良くネジ止め固定するため の条件であると認められる。 ここで,本件訂正発明の複合体は,特定量の反りを有していて,例え ば,放熱板として用いた場合に,セラミックス基板を放熱フィン等の放 熱部品に密着性良くネジ止め固定することができ,放熱性が安定した, 高信頼性のモジュールを形成することができるという効果を奏するもの であるところ(段落【0081】),板状複合体(放熱板)を放熱部品 に密着性よくネジ止め固定できる長さ10cmに対する反り量であるC x及びCyについて異なる数値範囲が規定されている本件訂正発明1に おいて,本件明細書の段落【0035】の記載から,本件訂正発明にお ける好ましい長さ10cmに対する反り量は穴間距離の影響を受けるも のと解され,X方向(ひいては,Y方向)が,放熱板表面の一方向であ\nればどの方向であっても他の放熱部品と密着性良くネジ止め固定できる とは考えられないことからすると,本件訂正発明1が上記作用効果を奏 するためには,「穴間方向(X方向)」は,板状複合体のネジ穴または 外形との関係でどの方向を示すものであるかが定義されていることを要 するものというべきである。 (エ) しかるに,前記(ア)及び(イ)のとおり,特許請求の範囲(請求項 1)にも,また,本件明細書にも,「穴間方向(X方向)」について, 板状複合体のネジ穴または外形との関係でどのような方向をいうものか が明確に記載されていないことから,「穴間方向」であるX方向の長さ 10cmに対する反り量(Cx)と,X方向と直交する方向であるY方 向における長さ10cmに対する反り量(Cy)の数値範囲をそれぞれ 定め,さらに,Cxの絶対値とCyの絶対値の関係を定めた本件訂正発 明1の技術的意義を理解できないものにしているといわざるを得ない。

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平成26(行ケ)10243  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年7月28日  知的財産高等裁判所

36条違反ではないとした審決が維持されました。その一つが、水洗便器における「棚」という用語です。裁判所は、明細書の記載に基づき合理的に解釈しました。
 「棚」とは,一般的には,「平らで物を載せる機能を有するもの」を意味するが,\n本件発明の「棚」が,これとは異なり,洗浄水を載せて流すとともにその一部を流 下させることを目的としていることは自明であり,また,「棚」が,本件発明の属す る大便器の分野で一般的に使用される用語とも認められない。 そこで,前記1(1)に認定の本件発明の内容を踏まえて,本件明細書の記載全体や 技術常識などにかんがみて,「棚」の意義を合理的に解釈するとすれば,本件発明の 「棚」は,ボウル内面上部に設けられて段差などにより他と区別できる部分があっ て,平らで洗浄水を載せる機能を有し,ノズルより吐出された洗浄水をボウル部の\n全周に導く経路といった程度の意味を有するものと認められる。 原告は,本件発明の「棚」が平らなものである必要はない旨を主張するが,棚の 形状をもって発明特定事項としている以上,その形状を全く考慮しない用語の解釈, すなわち,物を載せる部分が平らである必要はないとする解釈は,相当とはいえな い。また,上記2(2)に判断のとおり,本件発明2の「棚」は,その幅がゼロとなる 場合もあるが,ボウル側の前方部で「棚」の一部をなくすという構成をしたからと\nいって,その余の部分が棚でなくなるものではない(本件発明1の特定事項は,洗 浄水を全周に導くことを規定しているが,棚を全周にわたり設けることは規定して いない。)。 原告の上記主張は,採用することができない。
イ 「棚」及びその構成の開示
上記アにおける「棚」の技術的意義にし照らすと,甲1発明には,本件発明1の 「棚」に相当するものは見当たらない。 原告は,境界部3の下側の乾燥面12の上側部分(領域A)が,本件発明の「棚」 に相当する旨を主張するが,本件発明1の「棚」が,ノズルより吐出された洗浄水 をボウル部の全周に導く経路であればよいとの解釈を前提とするものであるから, その主張は,前提において誤りがある。領域Aに相当する部分は,汚物受け面10 からボウル部導水路16にかけての滑らかに連続する湾曲面の一部にすぎず(明細 書9頁20〜23行目),何らかの段差を有していなければならない「棚」とは,相 容れない形状である。 原告の上記主張は,採用することができない。

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平成24(受)1204  特許権侵害差止請求事件 平成27年6月5日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  知的財産高等裁判

 一部の構成を製法で特定した物の発明について、知財高裁は「発明の要旨は,当該物をその構\造又は特性により直接特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するときでない限り,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物に限定して認定されるべき」としましたが、最高裁はこれを破棄差戻しました。
 特許法36条6項2号によれば,特許請求の範囲の記載は,「発明が明確であること」という要件に適合するものでなければならない。特許制度は,発明を公開した者に独占的な権利である特許権を付与することによって,特許権者についてはその発明を保護し,一方で第三者については特許に係る発明の内容を把握させることにより,その発明の利用を図ることを通じて,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とするものであるところ(特許法1条参照),同法36条6項2号が特許請求の範囲の記載において発明の明確性を要求しているのは,この目的を踏まえたものであると解することができる。この観点からみると,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているあらゆる場合に,その特許権の効力が当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物に及ぶものとして発明の要旨を認定するとするならば,これにより,第三者の利益が不当に害されることが生じかねず,問題がある。すなわち,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲において,その製造方法が記載されていると,一般的には,当該製造方法が当該物のどのような構\\造若しくは特性を表しているのか,又は物の発明であってもその発明の要旨を当該製造方法により製造された物に限定しているのかが不明であり,特許請求の範囲等の記載を読む者において,当該発明の内容を明確に理解することができず,権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予\測可能性を奪うことになり,適当ではない。他方,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲においては,通常,当該物についてその構\造又は特性を明記して直接特定することになるが,その具体的内容,性質等によっては,出願時において当該物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能\であったり,特許出願の性質上,迅速性等を必要とすることに鑑みて,特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要するなど,出願人にこのような特定を要求することがおよそ実際的でない場合もあり得るところである。そうすると,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法を記載することを一切認めないとすべきではなく,上記のような事情がある場合には,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として発明の要旨を認定しても,第三者の利益を不当に害することがないというべきである。
以上によれば,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能\\であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁平成24年(受)第1204号平成27年6月5日第二小法廷判決・裁判所時報1629号登載予定参照)。 以上と異なり,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,そのような特許請求の範囲の記載を一般的に許容しつつ,その発明の要旨は,原則として,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造された物に限定して認定されるべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本判決の示すところに従い,本件発明の要旨を認定し,更に本件特許請求の範囲の記載が上記4(2)の事情が存在するものとして「発明が明確であること」という要件に適合し認められるものであるか否か等について審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

◆判決本文

◆原審はこちらです。 平成22(ネ)10043

◆関連訴訟です。平成24(受)2658

◆関連事件の原審はこちらです。平成23(ネ)10057

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平成25(行ケ)10271  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年11月10日  知的財産高等裁判所

 「アルコールの軽やか風味」という用語が不明瞭として、36条に違反すると判断されました。審決は明瞭性違反はないと判断していました。
被告は,1)「アルコールの軽やか風味を生かしたまま,アルコールに起因する苦味やバーニング感を抑えて風味を向上させる」(本件明細書【0007】)とは,「アルコールの軽やか風味」,すなわち,単物質であるアルコールの単一の風味を希釈等により損なうことなく,苦味やバーニング感という不快な感覚のみを特異的に抑えて,その結果として,アルコール飲料全体の風味を向上させることを意味するものといえ,その内容は,明瞭である,2)当業者も,「アルコールの軽やか風味を生かす」ことは,すなわち,「苦味やバーニング感などの不快な感覚を抑制又は除去してアルコール本来の風味を生かす」ことを意味するものと,容易に理解できるはずである旨主張する。 b しかしながら,前記(ア)のとおり,アルコールは,甘味,苦味,酸味,その混合,「灼く(やく)ような味」など複数の風味を有するところ,本件明細書においては,シュクラロースの添加がアルコールの苦味及びバーニング感を抑えることは確認されているものの,アルコールの有する複数の風味のうちそれら2つの風味のみを特異的に抑えることまでは確認されておらず,しかも,「アルコールの軽やか風味を生かしたまま」であるか否かは明らかにされていない。 また,前記アのとおり,本件明細書は,「アルコールの軽やか風味」を,アルコールに起因する「苦味」及び「バーニング感」と併存するものとして位置付けているものと認められるところ,本件明細書上,これらの関係は不明であり,したがっ て,「苦味」及び「バーニング感」の抑制によって,「アルコールの軽やか風味を生かす」という効果がもたらされるか否かも,不明といわざるを得ない。被告は,「苦味」及び「バーニング感」を抑制することが「アルコールの軽やか風味」の向上であるかのような主張をするが,これは,本件明細書の客観的記載に反する解釈である。 以上によれば,被告の前記主張は,採用できない。
エ 小括
以上によれば,「アルコールの軽やか風味」という用語の意味は,不明瞭といわざるを得ない。そして,前述のとおり,当業者は,本件発明の実施に当たり,「軽やか風味」については「生かしたまま」,すなわち,減殺することなく,アルコール飲料全体の風味を向上させられるか,という点を確認する必要があるところ,「軽やか風味」の意味が不明瞭である以上,上記確認は不可能であるから,本件特許の発明の詳細な説明は,「アルコールの軽やか風味」という用語に関し,実施可能\性を欠くというべきである。 したがって,「アルコールの軽やか風味」の意味するところは明瞭といえる旨の本件審決の判断は,誤りである。
2 取消事由2(シュクラロースの添加量及び試行錯誤に係る実施可能要件違反〔平成6年改正前特許法36条4項違反〕並びに一般化に係るサポート要件違反〔同条5項1号違反〕に関する判断の誤り)について
 前記1において前述したとおり,「アルコールの軽やか風味」という用語の意味が不明瞭であることから,当業者において,「アルコールの軽やか風味を生かしたまま,アルコールに起因する苦味やバーニング感を抑えて,アルコール飲料の風味を向上する」ために必要なシュクラロースの添加量を決めることは不可能といわざるを得ない。\nしたがって,本件明細書は,添加量に関して実施可能性を欠くものといえるから,\n当業者は,本件明細書の記載に基づき,多種多様なアルコール飲料についてシュクラロースの添加量を決めることができるという本件審決の判断は,誤りである。

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平成25(行ケ)10172 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月26日 知的財産高等裁判所

 訂正後の発明が明確性違反として、特許庁の判断を取り消しました。特許庁は無効理由無しと判断していました。
 審決が引用した文献である甲10(審判甲10,「スクラロースの味覚特性と他の高甘味度甘味料との比較」日本食品化学学会誌,Vol.2(2),1995,110−114頁),甲26(審判乙15,「新版 官能検査ハンドブック」,398−403頁),甲27(審判乙16,「新甘味料アスパルテームについて」,精糖技術研究会誌第26号,7−17頁)には,閾値の測定法として極限法が記載されていることからみて,「極限法」は,閾値の測定方法として広く一般的に用いられているものと認められ,また,被告が提出した実験報告書である甲25においても極限法が用いられている。しかし,甲51(「新版 官能検査ハンドブック」,395−423頁)及び甲52(「工業における官能\検査ハンドブック」, 333−343頁)には,閾値の測定法として,実験者あるいは被験者自身が刺激を一定のステップで徐々に変化させ,その1ステップごとに被験者の判断を求め,判断の切り替わる点を決定する「極限法」以外にも,実験者あるいは被験者自身が,刺激を任意に変化させながら,被験者に対し特定の感覚を与える刺激の値を探し出し決定する「調整法」や,一組の変化刺激を用意しておき,確率的に1つずつ提示し,それに対し被験者に予め定められた判断範疇のいずれかで反応してもらう「恒常刺激法」等が記載されており,閾値の測定法としては,極限法だけでなく,調整法,恒常刺激法等の複数の一般的な方法が存在していることが認められる。また,甲53(「甘味,酸味,塩から味,苦味刺激閾値の測定」,J. Brew. Soc.Japan, Vol.79,No.9,656−658頁)においては,「刺激閾値の測定法には,Aらの順位法による刺激テスト,調整法,極限法,1対比較法などが報告されているが,本実験ではPfaffmann らの1点識別法により行った。」と記載されていることから,甘味の閾値の測定に当たり極限法以外の方法を採用することもあることが理解できる。そうしてみると,甘味閾値は,他の方法ではなく極限法により測定するものであることが自明であるという技術常識が存在していたとまではいえず,訂正明細書における甘味閾値の測定方法が極限法であると当業者が確定的に認識するとはいえない。一方,甘味閾値の測定法は,人間の感覚によって甘味を判定する方法であって,判定のばらつきを統計処理し感覚を数量化して客観的に表現する官能\検査の一種であり,適切な多数の被験者を用いることにより,主観的な判断や個人による差を極力抑えるものではあるが,一般に,官能検査とは,被験者の習熟度,測定法,データの解析法等により数値が異なるものであり,相互の数値の比較は困難であることが多いものと解される。そこで,スクラロース水溶液におけるスクラロースの甘味閾値が記載されている甲10及び甲54をみると,甲10では,初めにスクラロース溶液の薄い方から濃い方へ(上昇系列)試験した可知の刺激価と,次に濃い方から薄い方へ(下降系列)試験した不可知の刺激価の平均値より算出する極限法により評価した数値は,0.0006±0.00014%であったことが記載され,甲54(「PROGRESS INSWEETENERS」,131−132頁)では,41人の被験者の集団を使用して「上昇濃度系列の極限法」に従い評価したスクラロースの甘味閾値は,0.00038%w/v と記載され,同じ極限法を用いて測定したスクラロース水溶液の甘味閾値として,甲10と甲54とでは約1.6倍異なる数値を記載している。また,甲10と甲54は,水にスクラロースを添加したスクラロース水溶液において甘味閾値を測定したものであるが,本件明細書の段落【0013】に記載するように,飲料中のスクラロースの甘味閾値は,苦味などの他の味覚や製品の保存あるいは使用温度などの条件により変動するものであるから,各種飲料における甘味閾値を正確に測定することは,単なるスクラロース水溶液に比べて,より困難であると認められる。しかも,甘味閾値の測定は,人間の感覚による官能検査であるから,測定方法の違いが甘味閾値に影響する可能\性が否定できないことは,上記のとおりである。そうすると,当業者は,同一の測定方法を用いた極限法によるスクラロース水溶液の甘味閾値であっても,2つの文献で約1.6倍異なる数値が記載されている上,訂正発明における各種飲料における甘味閾値の測定は,スクラロース水溶液に比べてより困難であるから,測定方法が異なれば,甘味閾値はより大きく変動する蓋然性が高いとの認識のもとに訂正明細書の記載を読むと解するのが相当である。したがって,甘味閾値の測定方法が訂正明細書に記載されていなくとも,極限法で測定したと当業者が認識するほど,極限法が甘味の閾値の測定方法として一般的であるとまではいえず,また,極限法は人の感覚による官能検査であるから,測定方法等により閾値が異なる蓋然性が高いことを考慮するならば,特許請求の範囲に記載されたスクラロース量の範囲である0.0012〜0.003重量%は,上下限値が2.5倍であって,甘味閾値の変動範囲(ばらつき)は無視できないほど大きく,「甘味の閾値以下の量」すなわち「甘味を呈さない量」とは,0.0012〜0.003重量%との関係でどの範囲の量を意味するのか不明確であると認められるから,結局,「甘味を呈さない量」とは,特許法36条6項2号の明確性の要件を満たさないものといえる。\n(2) 被告は,「甘味閾値は,一般的で確立した試験方法である極限法によって測定できるものであり,他にもよく知られた試験方法が存在するからといって甘味閾値が不明確になるものではない。極限法でも恒常刺激法でも,試験の原理上,同等の結果が得られることは明白である。測定には,常に誤差が伴い,各条件に応じて適した測定方法が異なるという常識があるが,だからといってこれによって測定される物理量の値が不明確などということもない。したがって,訂正発明は,不明確ではない。」旨主張する。そこで検討するに,被告による試験結果である甲25には,訂正明細書の実施例4を追試した際のコーヒーにおけるスクラロースの甘味閾値は0.00169%と記載されており,この値は,訂正発明の「0.0012〜0.003重量%」の範囲内の数値であるが,渋味のマスキング効果を確認したスクラロースの添加量は0.0016%であり,甘味の閾値と非常に接近している。そうすると,上記のように「0.0012〜0.003重量%」の範囲に甘味閾値が存在する場合には,特に正確に甘味閾値を測定する必要があり,誰が測定しても「甘味を呈さない量」であるか否かが正確に判別できるものでなければならない。しかし,甘味閾値の測定は人の感覚による官能検査である以上,被告が主張するように,測定方法等が異なっても同等の結果が得られることは明白であるとする客観的根拠は存在せず,測定方法の違い等の種々の要因により,甘味閾値は異なる蓋然性が高く,被験者の人数や習熟度等に注意を払ったとしても,当業者が測定した場合に,「甘味を呈さない量」であるか否かの判断が常に同じとなるとはいえない。したがって,被告の主張は採用できない。\n

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平成25(行ケ)10117 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月10日 知的財産高等裁判所

 明確性要件及び実施可能要件違反とした審決が取り消されました。\n
 ア 本願発明は,一般式(1)における各原子の組成比が,不定比となる場合を含むものであり,その組成比は変数y,z,u,wを用いて特定されているが,これらの各変数が相互にどのように連関するかは特定されていない。しかし,無機化合物において,格子欠陥等のため,その組成比が不定比となる(自然数でない)ものが存在することは,技術常識であって(甲21),このことは,無機化合物からなる蛍光体についても同様である(乙1,2)。そして,無機化合物は,定常状態では,その全体の電荷バランスが中性であり,無機化合物を構成する各原子の原子価と組成比との積の総和が,実質的にゼロとなっていることは,技術常識である(乙2【0015】,【0016】)。このような技術常識を踏まえると,組成比が不定比となる場合には,各原子の原子価が自然数とはならないことは明らかである。また,不定比を具体的な状況に応じて確定するのは困難である上,一定の数値をとるかどうかも不明である。そうすると,一般式(1)における各原子の組成比が不定比となる場合を含む本願発明においては,上記の各変数が相互にどのように連関するかを特定することは,相当程度困難である。本願明細書(甲1)の段落【0039】,【0040】,【0047】,【0049】,【0059】によると,実施例1,5,7(表\\2)で,実際に不定比組成である蛍光体が合成されている。これらの蛍光体は不定比組成であり,各原子の原子価は自然数ではなく,その具体的な数値は不明であるが,蛍光体の電荷バランスが中性となるように組成比が選択され,化学量論的に成立したものとなっていると解される。以上によれば,本願発明においては,上記の各変数が相互にどのように連関するか特定されていないとしても,一般式(1)における各原子の組成比は,一般式(1)に示される各原子の組成範囲内において,蛍光体の電荷バランスが中性となるように選択され,化学量論的に成立したものとなると認められるから,審決が認定するように,一般式(1)における各原子の組成比が化学量論的に成立するためには,上記の各変数が連関することが必要であるとはいえない。また,一般式(1)が,いかなる化合物を意味するのか不明であるともいえない。

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平成25(行ケ)10063 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年11月28日 知的財産高等裁判所

 36条6項2号違反(明確性)とした拒絶審決が取り消されました。
 本件審決は,本願発明1において,実測炉壁間距離の平準化変位線を求めるために行う「カーボン付着や欠損による炉壁表面の変位を均す」との記載は明確であるとはいえないから,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に適合せず,同条項に規定する要件を満たしていない旨判断し,被告も同旨の主張をする。しかし,「均す」という言葉自体は「たいらにする。高低やでこぼこのないようにする。」と,「平準」という言葉自体も「物価の均一をはかって,でこぼこのないようにすること。」と一般に理解されており(岩波書店「広辞苑第6版」。甲12),また,いずれの言葉も多数の特許請求の範囲の記載で使用されている技術用語であること(甲13〜23)は当事者間に争いがないことを考慮すれば,本願発明1における「平準化変位線」について,当業者は,実測炉壁間距離変位線に基づいて「カーボン付着や欠損による炉壁表\面の変位」を「たいらにする。高低やでこぼこのないようにする。」ことによって求めるものであると認識し,かつ,本願発明1が,こうして求めた平準化変位線と実測炉壁間距離変位線とによって囲まれた面積の総和をコークス製造毎に求め,上記面積の総和の変化に基づいて,炉壁状態の変遷を診断するものであることを理解することができるから,本願発明1の「カーボン付着や欠損による炉壁表面の変位を均す」との記載の技術内容自体は明確である。したがって,本願発明1の特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明が明確であるということができる。
(2) 被告は,この点について,本願明細書の段落【0003】にあるように,炉壁の様々な劣化状態を詳細に観察することやその状態を特定する手段がなかったというこの分野における従来の状況を踏まえれば,「カーボン付着や欠損による炉壁表面の変位を均す」際の均し方の方法や基本的な指標等を何ら特定することなく,単に「カーボン付着や欠損による炉壁表\面の変位を均す」と記載しただけでは,本件出願当時の技術常識を考慮しても,具体的にどのような方法,指標・指針・考え方に基づいて行われるのかが明らかではなく,技術的に十分に特定されているということはできない旨主張する。しかし,本願発明1の「カーボン付着や欠損による炉壁表\面の変位を均す」との記載の技術内容自体は明確であり,本願発明1の特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明が明確であるということができることは,前記のとおりである。そして,「カーボン付着や欠損による炉壁表面の変位を均す」ための具体的な方法,指標・指針・考え方を発明特定事項としていないからといって,本願発明1が不明確となるものではない。発明の解決課題及びその解決手段,その他当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項(特許法施行規則24条の2)は,特許法36条4項の実施可能\要件の適合性において考慮されるべきものであって,発明の明確性要件の問題ではないと解される。

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平成25(行ケ)10061 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年11月12日 知的財産高等裁判所

 切り餅事件とは別の特許です。こちらは無効理由無しとした審決が維持されました。
 相対的に強度が低い部分(切り込みが存在する部分)は,一定程度の圧力がかかると,変形して伸びやすいともいえる。切餅の内部空間の圧力は,切り込みが存在する部分に限らず,全方向,例えば上下方向にもかかるから,切り込みが存在する部分が変形して伸びることにより,切り込みの上側が下側に対して持ち上がることになる。その持ち上がりにより,最中やサンドウィッチのような上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態(上下の焼板状部が平行に近い対称な状態で持ち上がる場合もあるが,非平行な片持ち状態に持ち上がる場合も多い。)に自動的に膨化変形する。このような膨化変形によれば,切餅の内部空間の体積は大きくなり,その分だけ圧力が高くなるのを抑えられること,また,それにより,膨化による噴出力(噴出圧)が大きくなるのも抑えられることは明らかであるから,上記のように膨化変形することでも,焼き網へ垂れ落ちるほどの噴き出しを一定程度抑制できることは,当業者にとって明らかといえる。 ウ 以上によれば,本件発明における「焼き上げるに際して前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり,最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制する」について,以下のとおり認めることができる。側周表面に所定の切り込みを設けた切餅をオーブントースターで焼くと,切餅の内部が軟化するとともに,切餅の内部に含まれる水分が蒸発して水蒸気となる等により,切餅の内部空間の圧力が高くなり,膨化するが,その圧力によって切り込みが存在する部分が変形して伸びることにより,切り込みの上側が下側に対して持ち上がる。その持ち上がりにより,最中やサンドウィッチのような上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態(やや片持ち状態に持ち上がる場合も多い。以下同じ。)に自動的に膨化変形する。切餅の側周表\面に所定の切り込みを設けたことにより,膨化による噴出力(噴出圧)を小さくすることができるため,上記切り込みを設けない場合と比べて,焼き網へ垂れ落ちるほどの噴き出しを抑制できるが,上記のように膨化変形することでも,膨化による噴出力(噴出圧)が大きくなるのを抑えられるため,上記切り込みを設けない場合と比べて,焼き網へ垂れ落ちるほどの噴き出しを一定程度抑制できる。

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◆関連事件です。平成25(行ケ)10062

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平成25(行ケ)10015 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年10月30日 知的財産高等裁判所

特36条は争点になっていませんが裁判所は下記を付言しています。
この程度の誇張が不適切というのはなぜなんでしょう?
付言
本願明細書には,従来技術の一つとして,引用文献が挙げられており(甲1 1の【0005】),図2は,その従来技術のエレベータ用ロープ13を示す ものである(同【0013】)との記載があり,そこには別紙Cの図2のとお り,ロープ被覆が相当厚く,またその断面形状はいびつに変形しており,到底 円とはいいがたい形状のものが記載されている。しかし,実際の引用文献に示 された図1は,別紙BのFIG.1のとおりであり,そこに描かれたロープ被 覆は薄く,その断面の形状は円である。本願明細書の【0013】には「明確- 32 - のため,ポリウレタン層15の厚さおよびロープ断面の変形をやや誇張して示 している。」との記載があるが,本願明細書における従来技術の記載は,「や や誇張」にとどまるものではなく,著しく不正確であり,特許法36条4項2 号の趣旨に照らしても,明細書としては不適切な記載である。

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平成23(行ケ)10418 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年12月25日 知的財産高等裁判所

 実施可能性要件および明確性要件違反とした審決が維持されました。
まず,実施例1(P/V比:10/100)と比較例2(P/V比:2.6/1 00)をみると,P及びVの屈折率差と溶剤を同一にして,P/V比を減少させる と,内部ヘイズ値は7から1に,表面ヘイズ値は19から14にそれぞれ減少して\nいることが示されているので,P/V比を減少させると,内部ヘイズ値及び表面ヘ\nイズ値の双方が減少する関係にあると推認される。 しかし,実施例1と2をみると,P及びVの屈折率差を同一にして,P/V比を 減少させ,溶剤を変化させると,内部ヘイズ値は7から5に減少し,表面ヘイズ値\nは19から25に増加している。他方,実施例2と比較例2をみると,P及びVの 屈折率差を同一にして,P/V比を減少させ,溶剤を変化させると,内部ヘイズ値 は5から1に,表面ヘイズ値は25から14に減少している。前記の実施例1と比\n較例2での変化の傾向に加えて,これらの比較からは,表面ヘイズ値と内部ヘイズ\n値は溶剤の種類による影響が大きいことが推認されるが,溶剤の種類とP/V比が, 協働して表面ヘイズ値・内部ヘイズ値の値に影響を与えているのか,それぞれ独立\nして影響を与えているのかは,全く不明である。 また,実施例1とこれに対して溶剤のみを変えた比較例5を比較すると,内部ヘ イズ値は7から9に増加するのに対して,表面ヘイズ値は19から3に減少し,実\n施例2とこれに対して溶剤のみを変えた比較例4を比較しても,内部ヘイズ値は5 から3に減少するのに対して,表面ヘイズ値は25から47に増加している。上記\nの対比結果によれば,溶剤の種類が,表面ヘイズ値・内部ヘイズ値の双方に影響を\n与える重要なファクターであり,溶剤には,表面ヘイズ値を増加させ内部ヘイズを\n減少させる作用を有するものや表面ヘイズ値を減少させ内部ヘイズを増加させる作\n用を有するもの等,様々な種類があると認識できるが,そのような知見を超えて, いかなる種類の溶剤を用いれば表面ヘイズ値・内部ヘイズ値を所望の数値に設定で\nきるかについて,当業者において認識・理解することはできない。 さらに,実施例2と比較例1をみると,P/V比と溶剤を同一にして,P及びV の屈折率差を変化させると,内部ヘイズ値は5から0.7に減少し,表面ヘイズ値\nは25から30に増加していることが示されているが,他の比較例はなく,P及び Vの屈折率差が表面ヘイズ値・内部ヘイズ値にどのような影響を与えるかは不明で\nある。 そうすると,発明の詳細な説明の記載において示された実施例及び比較例に基づ いて,当業者は,表面ヘイズ値・内部ヘイズ値が,P/V比,P及びVの屈折率差,\n 溶剤の種類の3つの要素により,何らかの影響を受けることまでは理解することが できるが,これを超えて,三つの要素と表面ヘイズ値・内部ヘイズ値の間の定性的\nな関係や相関的な関係や三つの要素以外の要素(例えば,溶剤の量,光硬化開始剤 の量,硬化特性,粘性,透光性拡散剤の粒径等)によって影響を受けるか否かを認 識,理解することはできない。
ウ 以上のとおり,発明の詳細な説明には,当業者において,これらの3つの要 素をどのように設定すれば,所望の表面ヘイズ値・内部ヘイズ値が得ることができ\nるかについての開示はないというべきである(ただし,発明の詳細な説明中の実施 例に係る本件発明9ないし11を除く。)。したがって,発明の詳細な説明には,当 業者が,本件発明1ないし8,12ないし16を実施することができる程度に明確 かつ十分な記載がされているとはいえない。
・・・・
しかし,「屈折率の異なる透光性拡散剤を含有する透光性樹脂からなる防眩層」に おいては,透光性拡散剤が透光性樹脂によって実効的に覆われていないことが想定 され,そのような場合,透光性樹脂と同一の屈折率を有する物質を用いて凹凸を除 去すると,前記凹凸を除去するために用いた透光性樹脂と同一の屈折率の物質と, 透光性樹脂によって実効的に覆われていない透光性拡散剤との界面で新たな内部ヘ イズが生じることになり,新たに生じた内部ヘイズを補償する必要性が生じる。 なお,発明の詳細な説明には,「又,表1において,ヘイズ値は,村上色彩技術研\n究所の製品番号HR−100の測定器により測定し,反射率は,島津製作所製の分 光反射率測定機MPC−3100で測定し,波長380〜780nm光での平均反 射率をとった。」(【0131】)と記載されている。同記載によれば,表面ヘイズ値・内部ヘイズ値とも,HR−100の測定器によって測定されることが説明されてい\nるが,内部ヘイズ値の測定方法に関する具体的な説明はない。また,HR−100 の取扱説明書(甲14)にも,「屈折率の異なる透光性拡散剤を含有する透光性樹脂 からなる防眩層」の内部ヘイズ値の測定方法に関する具体的な説明はない。また, この点についての何らかの技術常識が存在すると認めるに足りる証拠もない。 そうすると,「屈折率の異なる透光性拡散剤を含有する透光性樹脂からなる防眩 層」の内部ヘイズ値を測定する方法は,発明の詳細な説明の記載,及び本件特許の 出願当時の技術常識によって,明らかであるとはいえない。内部ヘイズ値が一義的 に定まらない以上,総ヘイズ値から内部ヘイズ値を減じた値である表面ヘイズ値も\n一義的には定まることはない。内部ヘイズ値・表面ヘイズ値を一義的に定める方法\nが明確ではないから,本件特許発明に係る特許請求の範囲の記載は,特許法36条 6項2号の「特許を受けようとする発明が明確であること。」との要件を充足しない というべきである。

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平成24(行ケ)10040 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月15日 知的財産高等裁判所

 明確性違反であるとした審決が取り消されました。問題の請求項5は「ロール(110)が反らされていることを特徴とする請求項1記載の製造方法。」です。
 発明の詳細な説明を理解するに際しては,特定の段落の表現のみにこだわるべきではなく,全体を通読して吟味する必要がある。「反らされている」との請求項の文言において,これが技術的意味においてどのような限定をしているのかを特定するに際しても,同様である。上記2で分析したところによれば,請求項5における「ロール(110)が反らされている」について,特許請求の範囲の記載のみでは,具体的にどのように反らされているのか明らかでないものの,発明の詳細な説明の記載及び技術常識を考慮すれば,その意味は明確であるというべきである。発明の詳細な説明に記載された「“反り”の定義」が誤りであるとしても,当業者は,上記「“反り”の定義」が誤りであることを理解し,その上で,本願発明5における「ロール(110)が反らされている」の意味を正しく理解すると解することができるというべきである。上記「“反り”の定義」が誤りであるからといって,請求項5が明確でないということはできない。
・・・・
なお,審査,審判の過程において,出願代理人が本願発明の技術的意味を理解していなかったために,段落【0040】を正確に日本語化しなかった事情がある。(2) すなわち,本件出願の審査・審判の過程につき,以下の事実を認めることができる。ア 平成19年12月25日付け拒絶理由通知書(甲5)において,審査官から本願発明(請求項6)の「反らされている」に関し,「ロールが反らされている」とは,どの方向に反っているのか不明であり,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないとの指摘がなされたのに対し,原告は,請求項の該当箇所については補正することなく(甲7),平成20年6月3日付け意見書(甲6)において,「請求項6(新しい請求項5)の『ロールが反らされている』,ドイツ語で『Walzebombiert ist.』とは,『ロールの縁が丸くなっている』ことを意味します。」と回答した。イ 平成21年3月6日付け拒絶査定(甲8)において,「本願発明6の「反らされている」に関して,「請求項6の『ロールが反らされている』の意味が不明である。意見書では『ロールの縁が丸くなっている』としているが,日本語で『反らされている』と『縁が丸くなっている』とは全く別の意味である。」との指摘がなされたのに対し,原告は,審判請求後の指定期間内になされた平成21年7月9日付け手続補正書(甲11)において,請求項の「ロール(110)が反らされている」を「ロール(110)の縁が丸くなっている」と補正するとともに,発明の詳細な説明において「“反り”の定義 中心に対するロール縁部の放物線状直径増大」を「“反り”の定義 ロール縁部から中心に向かっての放物線上直径の増大」と補正し,平成21年7月9日付け手続補正書(甲10)により補正された審判請求書において,「請求項5(新しい請求項1)の『ロールが反らされている』という意味は,実際には,放物線状のロールがロール縁部からロール中心部に向かって放物線上の直径が増大していることを意味します。」と主張した。なお,審判請求書(甲9)において,補正の根拠については言及されていない。
ウ 平成23年4月14日付け審尋(甲12)において,審判長は,平成21年8月18日付け前置報告書の下記の内容を原告に通知した。「(1)新規事項について(1−1)請求項1の『ロール(110)の縁が丸くなっている』は外国語書面の翻訳文(以下『翻訳文』)に記載した事項ではない。『ロール(110)の縁が丸くなっている』については文言上翻訳文には記載されていない。そして,関連すると考えられる記載として,補正前の請求項5では『ロール(110)が反らされている』とあり,また,【0039】,【0040】にも『反り』について記載されている。しかし,これらの『反り』と『縁が丸い』とは明らかに異なる意味であり,しかも,『反り』は【0039】にあるようにフィルムの全幅にわたり均一な厚さ分布を与えるための形状として記載されていたのに対し,『ロール(110)の縁が丸くなっている』には,ロールの縁部のみが丸くなっているようなものも含まれ,そのようなものは,フィルムの全幅にわたり均一な厚さ分布を与えるという機能を果たさないことは明らかであるから,『ロール(110)の縁が丸くなっている』は『ロール(110)が反らされている』に含まれない範囲を含むものといえる。」上記の指摘に対して,原告は,平成23年7月8日付け回答書(甲13)において,請求項1を「つや出し圧延法を用いて105〜250μmの厚さ範囲の熱可塑性プラスチックからなる両面光沢フィルムを製造する方法において,熱可塑性プラスチックの溶融物を,つや出し機内の2つのロールの間に形成され,かつ,型締め圧力がかけられたロールギャップに供給し,該型締め圧力により,溶融物により惹起される圧力によるロールギャップの開きが阻止されることを特徴とする方法。」とする補正案を提示した。
(3) 上記の経緯によれば,原告は,平成21年7月9日付け手続補正書(甲11)及び平成21年7月9日付け手続補正書(甲10)により補正された審判請求書においてようやく,「ロールが反らされている」の意味は,実際には,放物線状のロールがロール縁部からロール中心部に向かって放物線上の直径が増大していることを意味する旨を主張するに至ったものである。それまでにおいて,原告は,「ロールが反らされている」の意味を平成20年6月3日付け意見書(甲6)において,「ロールが反らされている」(ドイツ語で『Walze bombiert ist.』)とは,「ロールの縁が丸くなっている」ことを意味すると主張していたなど,その主張は一貫していなかった。(4) このような出願代理人の対応の稚拙さが審査官,審判官の判断を正しい方向に導かず,審決の判断を誤ったものと理解される。平成21年7月9日付けの補正(甲11)に至って段落【0040】の記載を「“反り”の定義 ロール縁部から中心に向かっての放物線上直径の増大」とすることによって,明細書の記載が文言上においても矛盾のないものとなったものである。このように出願代理人の対応の稚拙さはあるにしても,請求項5における「ロール(110)が反らされている」の技術的意味については上記2のとおりに解釈すべきであって,上記補正の前にあっても不明確な点はないというべきである。
被告は,原文に基づいて誤訳を訂正するには特許法17条の2第2項の誤訳訂正書によらなければならないと主張するが,明細書における発明の詳細な説明を通読して理解される技術的内容が前記3のとおりである以上,誤訳訂正がなくとも,請求項5における「ロール10が反らされている」についての解釈が上記のとおりとなることに変わりはない。被告の上記主張は理由がない。

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平成23(行ケ)10176 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年02月29日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反および記載不備違反があるとした拒絶審決が維持されました。記載不備については、違反無しとされたものの、進歩性なしが維持されて、審決維持です。
 ちなみに、記載不備の理由は「磁性筒と磁石板まで含めて『回転軸』と称する」ことはできないというものでした。
 明確性要件違反の判断の誤り)について  確かに,請求項1(本願発明)の特許請求の範囲の記載は「可搬式水中電動ポンプ用DCブラシレスモータの回転軸」で結ばれているが,上記特許請求の範囲の記載を全体的に把握すれば,原告がDCブラシレスモータの回転軸体のみを発明の対象としているのではなく,回転軸体に磁性筒や磁石を取り付けた構成物(いわゆる回転子,ロータ)の全体を発明の対象としていることは明らかであって,原告が特定する「回転軸」も日常用語にいうそれ(軸体)ではなく,上記のとおりの概念で特定されるものをいうと解される。したがって,本願発明の特許請求の範囲の記載が一貫しないとして不明確であるとする審決の判断には誤りがある。もっとも,前記1のとおり,本願発明は進歩性を欠き,原告の不服審判請求を不成立とした審決は,その結論において正当であるから,上記判断の誤りによって審決を取り消すべきものとはならない。\n

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平成23(行ケ)10097 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年11月15日 知的財産高等裁判所

 明確性違反(36条6項2号)の審決が維持されました。代理人無しの本人出願です。
 請求項1は,「歯科治療を行う時上下顎の石膏模型や義歯等を咬合器にマウントしなければいけませんが,其のとき上下,左右,前後の位置,又咬合平面の角度を手早く調整すること。」というものであるが,その文言や内容に照らすと,「歯科治療を行う時上下顎の石膏模型や義歯等を咬合器にマウントしなければいけませんが,」の部分は,「手早く調整すること」がいかなる場面で行われるかという前提事項を説明したものと解される。また,「其のとき上下,左右,前後の位置,又咬合平面の角度を手早く調整すること。」の部分も,上記1で認定した,「時間と精密度を大きく改善出来る」や「下顎位を変えたいときなど手短に行なうことが出来る」などの記載と同趣旨であって,本願明細書に記載された発明の効果に対応する記載であると解される。そうすると,請求項1には,前提事項と発明の効果に対応する記載がされるのみで,いかなる装置又は方法によって「手早く調整すること」を実現するか,すなわち課題を解決するための手段が一切記載されていないことになるから,特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。

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平成21(行ケ)10244等  特許権 行政訴訟 平成22年07月20日 知的財産高等裁判所 

 記載不備について争われましたが、裁判所は無効理由無しとした審決を維持しました。この事件は進歩性違反で一旦無効審決がなされ、訂正によりこれを回避した案件です。
 本件特許発明は,いずれも平成20年1月11日付け訂正審判請求が認められたことにより,ハッチや貫通孔といった構成が加えられ,それによって,進歩性が認められたものである。上記各構\成が加えられる前の本件特許発明は,原告が本訴で問題としている,流路の有効内径の数値限定部分等を発明の本質的事項の一部としていたといえるが,上記訂正により,同部分は,それによって進歩性が認められる事項ではなく,単に望ましい構成を開示しているにすぎないといえる。ウ以上を前提として,本件特許発明につき実施可能\要件違反の有無を検討するに,本件特許発明の目的の1つと解される「溶融金属を容器内から導出するために必要な圧力を小さくすること」を達成するためには,溶融金属の重量,流路の粘性抵抗等の条件を設定する必要があり,そのうち粘性抵抗については,溶融金属の性状,ライニングの性質,表面粗さ等のパラメータによって決定され,溶融金属の重量やそれによる影響は,金属の種類や流路の長さ,流速等のパラメータによって決定されるものである。そうすると,単に「溶融金属を導出するために必要な圧力を小さくする」との目的のみを達成するためであれば,流路の有効内径以外のパラメータも設定する必要があることは自明であり,その限りにおいて,原告の主張は誤りではない。しかしながら,「導出圧力の最小化」は,本件特許発明においては付随的な目的にすぎない。この点を措くとしても,被告が主張するように,公道を介して搬送する取鍋の内径は,取鍋を搬送するトラックの車幅との関係で,一定の限度内に収まらざるを得ないのであり,また,そのトラックの車幅も,公道の幅員等により,自ずから相当の限度内になるものということができる。この点につき,原告は,公道搬送可能\な取鍋の大きさは千差万別である旨主張するが,取鍋の標準的な大きさは一定の範囲で自ずから存在するものであり,逆に,単に「望ましい」事項を記載しているにすぎない部分においても,あらゆる大きさや種類のトラックに対して有効なすべてのパラメータを提供しなければならないとするのでは,特許権者や出願人に過大な要求をするものであって,相当ではない。また,作業に慣れた当業者(本件においては,溶融金属を取鍋等を用いて運搬する者)が出湯を行う場合であれば,その出湯時間や速度に,大きな差があるとは考えられない。そして,溶融アルミニウムを流路や配管を通じて排出する場合に粘性抵抗があること自体は,当業者にとって自明であり,望ましいとされる流路の有効内径が提供されれば,それを最大限に生かすべく,他の条件を設定するよう努めるのは当然であって,ここで必要とされる試行錯誤が過度なものであるとは認められない。また,導出圧力の最小化のみを目的とする場合の数値限定と,これが単に付随的な目的にすぎない場合の数値限定では,必然的に相違が生じ,後者の場合には,他の条件との兼ね合いにより,当該目的達成の程度が変化することは明らかである。
 エ 以上からすれば,本件特許発明における,流路の有効内径に関する数値限定部分において,他のパラメータにつき記載がないことをもって,実施可能要件に違\n反するということはできず,原告の主張は理由がない。
(2) 明確性要件について 原告は,本件特許の明細書において,「溶融金属を導入する圧力を小さくする」との効果を達成する上で必要な条件がすべて記載されていないから,本件特許発明は不明確であると主張するが,前述の訂正によって「溶融金属を導入する圧力を小さくする」ことは,既に本件特許発明の主たる目的ではなくなっている上,特許請求の範囲や発明の詳細な説明に記載すべき事項については,特許出願人において適宜選択すべきものであって,本件特許発明についても,その効果が実際に存在するかどうかはともかくとして,特許請求の範囲に記載された流路の有効内径の記載自体は明確であって,他のパラメータの記載がないからといって直ちに,同発明が不明確になるとはいえない。・・・原告は,本件特許発明が,ストーク等の部品交換を行う必要のない容器を提供することを目的としながら(段落【0005】参照),他方で,配管474は「ストーク」に相当するものと解され(段落【0123】,図11参照),以上からすれば,特許を受けようとする発明が明確ではなく,特許法36条4項違反であると主張する。確かに,明細書の段落【0123】や図11において,「ストーク」に相当する配管474が記載されており,これは,段落【0005】の記載とは整合しないといえる。しかし,本件特許発明は,その特許請求の範囲の記載からすれば,いずれも流路を内在するものを指すことが一義的に明らかであって,流路を有さずストークにより溶湯を外部に供給するものは,本件特許発明の対象に含まれない。そもそも,特許出願人において,必ずしも,発明の詳細な説明に記載したものすべてにつき,特許として出願しなくてはならないものではない上,本件での特許請求の範囲の記載が,この点に関して明確であることからすれば,本件において,発明の詳細な説明の段落【0123】の記載や図11が存在することによって,実施可能要件に違反するとはいえず,原告の主張は理由がない。\n

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◆関連事件です。平成21(行ケ)10024

◆関連事件です。平成21(行ケ)10245

◆関連事件です。平成21(行ケ)10246

◆関連事件です。平成19(ネ)10032

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平成21(行ケ)10222 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年06月29日 知的財産高等裁判所

CS関連発明について、記載不備があるとの審決が取り消されました。
 この点について,被告は,本願発明における「発明を展開している度合いを示す」という記載が明確でない旨主張する。確かに,被告が指摘するとおり,クレーム中の用語「発明を展開している度合い」だけを,単独で解釈すれば,用語の定義が不明確であるとする余地があるともいえないわけでない。しかし,「発明を展開している度合いを示す発明展開度」との請求項2の記載を,全体として解釈すれば,各用語(「発明」,「展開」,「度合い(度)」)の対応関係から,この部分は,本件独自の用語である「発明展開度」を,単に分かりやすく言い換えて説明しているにすぎないと認めるのが自然である。したがって,「発明を展開している度合いを示す」という記載のみを取り出して,それが不明確であるということは適切ではなく,上記のとおり解釈すれば,「発明を展開している度合いを示す」との記載が含まれているとしても,別段請求項2の記載が不明確であるとはいえない。

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平成21(行ケ)10321 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について新規事項、不明瞭であるとした審決が取り消されました。
 前記当初明細書の記載によれば,サーバ及び端末がそのハードウエア構成として中央処理装置(CPU)を有すること,CPU312は,データの処理又は演算を行うと共に,バス311を介して接続された各種構\成要素を制御するものであること,サーバ又は端末のCPUの処理や制御により図37(A)〜(D)の処理を行うことが示されている。このように,当初明細書においては,サーバ及びその端末の構成が共通性を有するものとして記載されており,補正明細書の各請求項の冒頭に記載された「コンピュータを用いたゲーム情報供給装置であって」との部分は,サーバと端末を含んだ全体の構\成を意味するものと解するのが合理的である。・・・そうすると,当初明細書には,「ゲーム情報供給装置」において,サーバが,「ネットワークを介して端末装置からのアクセスを受信すると,前記記憶手段からクイズ形式の広告情報を読み出して前記端末装置に送信し表示させる表\示手段」を有するとの技術事項が記載されていると解すべきである。本件補正が,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないとした本審決の判断は,誤りである。

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平成21(行ケ)10158 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月30日 知的財産高等裁判所

 明確性違反および実施可能性違反とした審決が維持されました。
 当裁判所は,本願明細書の発明の詳細な説明には,請求項1,11に係る発明の「補助エステル」の特定に関し,当業者が,同発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分な記載はないので,本件審決には,少なくとも,原告の主張に係る取消事由2及び5の違法はないと判断する。その理由は,以下のとおりである。・・・本願明細書には,本願発明による課題解決をするに当たり,当業者において,本願発明で規定したLogP値の範囲内の化合物群の中から,どのような補助エステルを選定すべきかについて,明確かつ十\分な記載がされていないと解される。その理由は,以下のとおりである。すなわち,エステル化合物については,原告が書証として提出する皮膚外用剤に関する文献について見ただけでも,例えば,甲4の10には,パラヒドロキシ安息香酸エステル類の例が挙げられ,アルコール残基の炭素数1ないし12のエステルとしてメチルパラベン等12種類のエステル化合物が示され,甲4の8には,皮膚軟化剤(25頁,26頁),浸透向上剤(26頁〜29頁),乳化剤(30頁〜34頁),他の化粧品用添加剤(43頁,44頁)として,多種のエステル化合物が示されているように,多種多様なものを含む。なお,本願発明の「補助エステル」について,親油性に関してLogP値がニコチン酸アルキルエステルのLogP値より小さく,その差がLogP値において0.5ないし1.5との条件を充足するエステルとの限定がされている。しかし,本願明細書の【0026】【表1】記載の,微量栄養素としてのニコチン酸アルキルエステルだけでも,LogP値1.0の幅の中に複数の炭素原子数のニコチン酸アルキルエステルが含まれることから明らかなように,本願明細書の補助エステルに関するLogP値(0.5〜1.5)を満たすエステル化合物は,膨大な種類のものを含む。ところで,発明の詳細な説明の【0020】では,「栄養素をヒトに送達する」という解決課題を達成するためには,補助エステルは,i)プロ栄養素の角質層からのフラックス(透過性)が類似するという性質と,ii)生物変換に関してプロ栄養素と効果的に競合するという性質の両者が必要であると記載されている。このうち,ii)の生物変換に関して微量栄養素(プロ栄養素)と効果的に競合するという性質は,請求項1,11で規定されたLogP値の範囲の補助エステルのすべてが当然に備えているものではなく,当業者が,試行錯誤を繰り返して,生物変換に関して微量栄養素と効果的に競合する補助エステルを選別しない限り,本願発明の目的を達成することができず,本願明細書には,その選別を容易にするための記載はない。この点について,原告は,補助エステルが,LogP値の範囲内であれば,すべて,前記ii)の性質を有するように主張するが,同主張は根拠を欠くものであって,採用できない。・・・・以上のとおり,本願発明1,2を実施しようとする当業者は,本願発明のLogP値を満たし,かつ生物変換に関して微量栄養素(プロ栄養素)と効果的に競合する補助エステルを選択するためには,過度の試行錯誤を要することになる。本願明細書の発明の詳細な説明は,当業者が,発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。\n

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平成21(行ケ)10281 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月24日 知的財産高等裁判所

 実施可能要件違反、明確性違反を理由として無効とした審決が取り消されました。
 ところで被告は,本件発明1・2に関する特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない旨主張するが,特許法36条6項2号にいう「特許を受けようとする発明が明確であること」とは,特許請求の範囲における構成の記載からその構\成を一義的に知ることができれば特定の問題としては必要にして十分であると解すべきところ,上記イで認められる技術常識及び上記アの記載に照らせば,本件発明1・2における,フェライト中に体積率で3%以上20%以下のマルテンサイトおよび残留オーステナイトが混在するとの点は,加工性を担うフェライト中におけるマルテンサイトおよびマルテンサイト化せずオーステナイトのまま残った残留オーステナイトの体積率を規定したものであり,強度を担うマルテンサイトと,加工時の変形性及びマルテンサイト化した後の強度を担う残留オーステナイトについて,それらの技術的意義は明確であるから,本件発明1・2の特許請求の範囲の記載において,特許法36条6項2号にいう明確性要件違反はないというべきである。エ この点審決は,「訂正明細書には,金属組織としてフェライトに注目し,これが存在することの技術的意義が,高強度とプレス加工性の良いことの両立にあるとは,記載されていない。…」(17頁4行〜6行)とし,「してみると,訂正明細書には,高強度とプレス加工性の良いことの両立という技術的意義は,本来的に,マルテンサイト及び残留オーステナイトを体積率で3〜20%含む金属組織としたことによるものとして記載していると認められる。」(17頁16行〜19行)とした上で,「してみると,高強度とプレス加工性の良いことの両立という技術的意義は,本来的に,マルテンサイト及び残留オーステナイトを3〜20%含む金属組織としたことによるものであるとの技術的内容を認めることはできず,結局のところ,訂正明細書の記載からは,金属組織として,フェライト中に『体積率で3%以上20%以下のマルテンサイトおよび残留オーステナイトが混在する』としたことの技術的意義を見出すことができない。」(18頁23行〜28行)として,本件発明1・2は不明確であると判断した。しかし,上記ア(イ)で摘記したとおり,訂正明細書(甲41の2)には,「鋼帯は焼鈍後,引き続きめっき浴へ浸漬する過程で冷却されるが,この場合の冷却速度は…650℃までを平均0.5〜10℃/秒とするのは加工性を改善するためにフェライトの体積率を増す…」(段落【0023】),「本発明では…むしろフェライトが緩慢に成長することにより,鋼板の引張強さを安定させている。…」(段落【0027】)等の記載があり,フェライトが鋼板の加工性に寄与している旨が示されていることになる。以上の検討によれば,審決の本件発明1・2の明確性要件に関する判断は誤りというべきである。

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平成21(行ケ)10041 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

 ”研磨しうる弾性体”という用語の明瞭性が争われました。知財高裁は、不明瞭とした審決を維持しました。
 「・・原告は,本願補正発明は,除くクレームであり,除くクレームにおいて,引用発明を除くために挿入された用語は,引用発明の記載された特許公報等で使用されたとおりの内容のものとして理解すべきであるとして,大合議判決の判示を引用する。そして,本願補正発明の「研磨しうる弾性体」の語は,特公平3−74380号公報(甲7)記載の発明を除くために挿入されたものであるから,甲7の特許請求の範囲に記載された「研磨しうる弾性体」を意味するものであり,その意味は明確であり,本願補正発明にいう「研磨しうる弾性体」でない「金属板又は合成樹脂板」及び「樹脂凸版を構成するその他の材料」の意味も,明確であると主張する。しかし,原告の主張は,以下の理由により,採用することができない。すなわち,本願補正発明が特許法36条6項1,2号の要件を充足するか否かは,本件補正後の特許請求の範囲の記載及び本願補正明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて判断されるべきである。原告(出願人)が,本願補正発明から甲7記載の発明を除く意図で,「研磨しうる弾性体」の語を用いたものであったとしても,本願補正発明における,「研磨しうる弾性体」の語が甲7記載のとおりの技術内容を有するものと理解すべき根拠はない。したがって,この点において,原告の主張は,理由がない。のみならず,仮に甲7を参照したとしても,「研磨しうる弾性体」との文言の意味が明確であるとはいえない。すなわち,甲7の特許請求の範囲の請求項1では,「研磨しうる弾性体」は,定義されることも限定されることもなく用いられ,請求項3ないし7では,「研磨しうる弾性体」が,請求項1等を引用した上で材質,硬度,厚さ等をより限定した内容で示されている。甲7の発明の詳細な説明の6欄3ないし25行には,「研磨しうる弾性体」について,「通常に入手しうるゴム,例えばポリブタジエン,ブタジエン−アクリロニトリル,ブタジエン−スチレン,イソ\プレン−スチレン,シリコーン,又はポリスルフイドゴムのいずれかであつてよい。好ましくは弾性体は天然ゴム,ポリクロルプレンゴム又はポリウレタンゴムである。弾性体は,より容易に研磨しうるために通常の充填剤を含有しうる。弾性体は少くとも30,但し80 を越えないシヨアA硬度を有すべきである。好ましくはその硬度は40 〜 60 シヨアAである。・・・・好ましくは,弾性体は100〜500ミクロンの厚さを有し,最も好ましくは厚さが約400ミクロンである。」と,「研磨しうる弾性体」の材質,硬度,厚さ等の性質から,好ましい実施態様は挙げられているものの,「研磨しうる弾性体」の意義・外延について,これを明確にする定義・規定はない。したがって,甲7を参照してもなお,「研磨しうる弾性体」の意味・外延は明確ではないので,「研磨しうる弾性体ではない」との意味も明確とはいえない。原告の主張は,この点においても,採用することができない。」

◆平成21(行ケ)10041 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10107 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月30日 知的財産高等裁判所

   CS関連発明について、記載不備、進歩性なしとした審決を維持しました。ただ、36条の記載不備については下記のような付言がなされています。
  「なお,審決が特許法36条6項2号該当性の有無について判断した点について付言する。特許法36条6項2号は,特許請求の範囲の記載において,特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨を規定する。同号がこのように規定した趣旨は,特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には,特許発明の技術的範囲,すなわち,特許によって付与された独占の範囲が不明となり,第三者に不測の不利益を及ぼすことがあるので,そのような不都合な結果を防止することにある。そして,特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載のみならず,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるかという観点から判断されるべきである。
 ところで,審決は,請求項1(1)についての「コード番号を付してコード化し」,「暗号化し」,「転送する」などの記載,請求項1(2)についての「平文化できる範囲を設定し」などの記載,請求項1(3)についての「顧客個人情報を登録し」,「再暗号化して登録する」,「階層別に管理する」などの記載,請求項1(5)についての「登録してデーターベース化し」などの記載が,「人間がPCを操作して行う処理であるとも,PCが人間を介さず自動的に行う処理であるとも解することができ,そのいずれを意味しているのかが不明であるため,その特定しようとする事項が明確でないから,特許法36条6項2号に規定する要件を満たさない」と判断した。
 しかし,審決の上記判断は,その判断それ自体に矛盾があり,特許法36条6項2号の解釈,適用を誤ったものといえる。すなわち,審決は,本願発明の請求項1における上記各記載について,「人間がPCを操作して行う処理であるとも,PCが人間を介さず自動的に行う処理であるとも解することができ(る)」との確定的な解釈ができるとしているのであるから,そうである以上,「そのいずれを意味しているのかが不明であるため,その特定しようとする事項が明確でない」とすることとは矛盾する。のみならず,審決のした解釈を前提としても,特許請求の範囲の記載は,第三者に不測の不利益を招くほどに不明確であるということはできない。むしろ,審決においては,自らがした広義の解釈(それが正しい解釈であるか否かはさておき)を基礎として,特許請求の範囲に記載された本願発明が,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものといえるか否か(特許法2条1項),産業上利用することができる発明に当たるか否か(29条1項柱書)等の特許要件を含めて,その充足性の有無に関する実質的な判断をすべきであって,特許法36条6項2号の要件を充足しているか否かの形式的な判断をすべきではない。前記のとおり,その判断の結果にも誤りがあるといえる。」

◆平成20(行ケ)10107 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10299 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年08月26日 知的財産高等裁判所

  特許法36条6項2号違反のみを理由とした拒絶審決が取り消されました。
   「現明細書の【0033】によれば,「撚成されたモノフィラメント撚糸」について,「撚成されたモノフィラメント」が2本以上で撚られて「シングル撚糸」となったものであると定義されている。そして,これに続く,【0034】ないし【0035】の各記載は,【0033】で定義された趣旨を前提として,「撚成されたモノフィラメントからなるシングル撚糸」の内容の詳細を説明している。そうすると,現明細書の記載によれば,?@「撚成された」の語はそれに続く「モノフィラメント」を修飾し,?A「モノフィラメント」は複数本を意味すると,それぞれ理解するのが合理的である。(イ) この点,請求項1において「撚成されたモノフィラメント」が複数本であることは明示的に示されていない。しかし,上記ア記載のとおり,「撚成されたモノフィラメント」は「モノフィラメント」に撚りをかけたものであるところ,「モノフィラメント」は「1本の繊維」(甲1,乙3)を意味し,また,「シングル撚糸」は1本又は2本以上の糸で撚られたものを意味することは明らかである(甲2,甲3,乙2)。そうすると,「撚成されたモノフィラメント」について,更に撚りをかけて「シングル撚糸」とする場合,仮に「撚成されたモノフィラメント」が1本であることを前提として,その1本のモノフィラメントを対象として再度撚りをかけるということは,およそ技術常識に照らして,意味のない解釈となるから,当業者は,請求項1記載の「シングル撚糸」について,複数本の「撚成されたモノフィラメント」に撚りをかけたものであると理解するのが合理的であるといえる。すなわち,請求項1項の「シングル撚糸」の意義について,「撚成されたモノフィラメントが1本である場合」は,およそ技術常識から離れた解釈であるから,そのような場合を含まないと理解して差し支えない。以上のとおり,請求項1記載の「撚成された・・・シングル撚糸」とは,「撚成されたモノフィラメント」を複数本集めて撚られたシングル撚糸を指すものと理解されるべきである。」

◆平成19(行ケ)10299 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年08月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10403 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月23日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明(?)について、「〜手段」の記載がサポート要件違反(36条6項1号)、不明瞭(同2号)、29−2違反が争われましたが、裁判所は、36条6項1号、2号については、審決の判断は誤りであると認定し、一部の審決を取り消しました。  
  「本件請求項1の記載のうち「ROM又は読み書き可能な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する手段」という文言の解釈につき当事者間に争いがあるので,まずこの点について検討する。ア 本件請求項1の記載を全体として捉えると,本件請求項1の「着脱式デバイス」は,「所定の種類の機器が接続されると,その機器に記憶された自動起動スクリプトを実行するコンピュータ」の汎用周辺機器インタフェースに着脱されるものであって,前記汎用周辺機器インタフェースに接続された際に「前記コンピュータからの機器の種類の問い合わせ信号に対し,前記所定の種類の機器である旨の信号を返信」するなどして,「前記コンピュータに前記自動起動スクリプトを起動させる手段」を備えるものである。したがって,「自動起動スクリプト」は,「所定の種類の機器」を用いる場合にはその機器に記憶され,コンピュータによって起動されるものであり,同様に,本件請求項1の「着脱式デバイス」を用いる場合には,着脱式デバイスに記憶され,コンピュータによって起動されるものである。そして,本件請求項1の「着脱式デバイス」は,「主な記憶装置としてROM又は読み書き可能\な記憶装置を備え」るものであり,「前記ROM又は読み書き可能な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する」と記載されていることに照らせば,「自動起動スクリプト」は着脱式デバイスの主な記憶装置であるROM又は読み書き可能\な記憶装置に記憶されるものである。イ ところで,一般に「手段」とは,「目的を達するための具体的なやり方」を意味するものである(広辞苑第6版)ところ,本件請求項1における「ROM又は読み書き可能な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する手段」との記載が,「前記コンピュータに前記自動起動スクリプトを起動させる手段」,「前記コンピュータから前記ROM又は読み書き可能\な記憶装置へのアクセスを受ける手段」とともに併記されたものであることからすれば,上記「記憶する手段」が,「ROM又は読み書き可能な記憶装置に前記自動起動スクリプトを記憶する」という目的を達するための具体的なやり方を意味するのか,それとも本件特許発明1全体の目的を達するための構\成要素の一つを意味するのか,いずれに解することも可能であって,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができない場合に当たる。ウそこで,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,本件請求項1の「ROM又は読み書き可能\な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する手段」の解釈につき検討する(なお,被告は,特許法36条6項1号該当性の判断をするに当たって発明の詳細な説明の記載を参酌すべきではないと主張するが,最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決〔民集45巻3号123頁〕も判示するように,特許を受けようとする発明の要旨を認定するのに特許請求の範囲の記載のみではその技術的意義が一義的に明確に理解することができない場合には,発明の詳細な説明の記載を参酌することは許されると解する。・・・以上の記載によれば,本件特許発明1は,USBメモリ等の着脱式デバイスをコンピュータに接続した際に,煩雑な手動操作を要することなく自動起動スクリプトに記述された所定のプログラムを自動実行させることを課題とするものであり,かかる課題の解決手段として,自動起動スクリプトを着脱式デバイスの記憶装置内に予め記憶し,コンピュータからの問い合わせに対してCD−ROMドライブなど自動起動スクリプト実行の対象機器である旨の信号(擬似信号)を返信することによって,コンピュータが着脱式デバイスの記憶装置内に記憶された自動起動スクリプトを起動させるという構\成を備えたものであることが認められる。そして,かかる解決手段を実現するためには,自動起動スクリプトは,着脱式デバイスがコンピュータに接続されたときにコンピュータから読み出すことが可能な状態でデバイスの記憶装置内に記憶されていることが必要であり,かつ,それで足りる。そうすると,ROM等の記憶装置が,その製造時に自動起動スクリプトを記憶するものであっても,上記解決手段を実現するのに何ら差し支えなく,また,ROM等の記憶装置の製造後に自動起動スクリプトを記憶させなければならないとすることは,上記解決手段の実現にとって特段の意味を有しないものである。(ウ) したがって,本件請求項1の「ROM又は読み書き可能な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する手段」という文言は,「ROM又は読み書き可能\な記憶装置に自動起動スクリプトを記憶する」という目的を達するための具体的なやり方を意味するものと解すべきではなく,本件特許発明1の目的を達するための構成要素の一つとして「自動起動スクリプトがROM又は読み書き可能\な記憶装置に記憶されている状態であること」を意味するものと解釈すべきである。」

◆平成19(行ケ)10403 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月23日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10704 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年10月04日 知的財産高等裁判所

  ビジスネモデル発明(CS関連)について、記載不備が争われました。知財高裁は、不明瞭とした審決を維持しました。
  「これらの記載によれば,本願明細書の発明の詳細な説明には,実施例の説明として,キャッシュの割引率・・・との2つに分離し,【数10】により定式化すること,[0,1]を100等分した各ρの値で,一般化最小2乗法による演算を実行し,100個の平均割引関数オーバーバーD (s)を計測すること,一般化最小2乗和が最小となtるρを求め,その下での平均割引関数を最適解とすることが,開示されている。したがって,本願発明の「国債市場価格と国債理論価格との差額を算出」する手法の一つとして,一般化最小2乗法による演算を実行して,一般化最小2乗和を求めるという手法があり,その場合,請求項1の「複数の国債間の相関を表現するパラメータの最適値を該差額を用いて算出」するとは,一般化最小2乗和が最小となるρを求めることを意味することは,明らかである。しかしながら,一般化最小2乗法は,回帰分析の一手法にすぎず,本願発明の特許請求の範囲の記載は,回帰分析の手法を一般化最小2乗法に限定するものではない。また,一般化最小2乗法のみに限定して解釈するとしても,請求項1は,「複数の国債間の相関」としてどのようなものを想定するかを特定するものではない。しかるに,本願明細書には,一般化最小2乗法以外の回帰分析の手法や,実施例に例示された「λ 」「φ 」以外の相関構造について,全くght ght.jr」記載されていない。また,公知技術や周知技術を参酌することによって,一般化最小2乗法以外の回帰分析の手法や,「λ 」「φ 」以外の相ght ght.jr関構造を採用した場合について,「企業の倒産確率及び回収率を正確に計測する」という本願発明の効果を奏することの立証もされていない。そうすると,一般化最小2乗法以外の回帰分析の手法や,「λ 」「φ 」以ght ght.jr外の相関構造を構\成として含む本願発明は,明確でないというべきである。」

◆平成17(行ケ)10704 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年10月04日 知的財産高等裁判所

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◆H18. 2.27 知財高裁 平成17(行ケ)10067 特許権 行政訴訟事件

  36条4項、6項違反に関して無効であるとした審決が取り消されました。
  「出願が平成12年6月5日である本件特許に適用される平成11年法律第160号による改正前の特許法36条4項は,「前項第3号の発明の詳細な説明は,通商産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に,記載しなければならない。」と規定し,同法36条6項は,「第3項第4号の特許請求の範囲の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」とし,1号は「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」,2号は「特許を受けようとする発明が明確であること。」,3号は「請求項ごとの記載が簡潔であること。」,4号は「その他通商産業省令で定めるところにより記載されていること。」と規定している。そして,特許法36条4項の趣旨は,発明の詳細な説明が発明を公開する機能\を有することから,発明の詳細な説明の記載は,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)がその発明を実施することができる程度に明確かつ十分なものでなければならないとしたことにあり,また,同法36条6項の趣旨は,特許請求の範囲は対世的な絶対権たる特許請求の効力範囲を明確にするためのもので,その記載は正確なものでなければならないことから,特許請求の範囲は,発明の詳細な説明に記載して公開した発明の範囲を超えた部分について記載したものであってはならず(1号),特許を受けようとする発明が明確でなければならない(2号)としたことにあるものと解される。そうすると,明細書の発明の詳細な説明に,当業者がその発明を実施することができる程度に明確かつ十\分に記載されているのであれば,特許法36条4項所定の発明の詳細な説明の記載要件を充足するものであり,明細書に「発明における課題を解決すべき手段をその作用効果が関連づけて記載されてい」ないからといって直ちに発明の詳細な説明の記載要件に適合しないものとなるものではなく,これによって特許を受けようとする発明が不明確となり特許請求の範囲の記載要件(特許法36条6項2号)に適合しないことになるものということもできないから,本件審決の前記判断は,この点において是認することができない。」

◆H18. 2.27 知財高裁 平成17(行ケ)10067 特許権 行政訴訟事件

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◆H17.12.20 知財高裁 平成17(行ケ)10451 特許権 行政訴訟事件

   特許請求の範囲が不明瞭か否かが争われました。裁判所は、不明瞭とした審決を取り消しました。
   「確かに,「符号化パターン」について,訂正明細書には,バーコードなどであることのほかに格別の記載はない。しかし,上記1の訂正明細書の記載によれば,被告が主張する「所定情報,所定の情報,付加情報,付加する情報又は固有の情報と表現され,画像形成装置ごとの固有の情報であるとして,画像形成装置の設置場所,管理者,シリアルナンバー,日付又は地域コードが例示されている」ものは,「2次元ビットマップ情報」ではなく,「画像形成に用いた画像形成装置を特定するために,少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を含んだ」ものであって,バーコードなどの「符号化パターン」は,その一つに相当するものである。そして,上記2のとおり,本件発明の「2次元ビットマップ情報」は,「符号化パターン」に対応した画素データであり,「符号化パターンの一部」は,「2次元ビットマップ情報」の黒画素であるから,訂正明細書には,「符号化パターンの一部」がどのような部分であるのかについての説明があるということができる。」

◆H17.12.20 知財高裁 平成17(行ケ)10451 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 1.31 東京高裁 平成16(行ケ)175 実用新案権 行政訴訟事件

 実施例に記載した効果を奏する構成を請求項に記載していないことが無効理由となるかについて争われました。裁判所は、「無効理由に当たらない」とした審決を維持しました。
  「仮に,考案の詳細な説明中に記載された効果(イ)を奏するために必要不可欠な上記各構成が,訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載されていないとしても,そのこと自体は,旧実用新案法5条4項2号の規定に違反するものではなく,単に,当該効果が本件訂正考案の効果ではないことを意味するにすぎない。」

◆H17. 1.31 東京高裁 平成16(行ケ)175 実用新案権 行政訴訟事件

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◆H17. 1.18 東京高裁 平成15(行ケ)166 特許権 行政訴訟事件

 薬品に関する発明について、特許庁では無効理由無しと判断されましたが、裁判所はこれを取り消しました。
  「本件発明の技術内容(技術手段)によってその目的とする技術効果を挙げることができるものであることを推認することはできないのであるから,本件発明とされるものは,発明として未完成であり,特許法29条1項柱書きにいう「発明」に当たらず,特許を受けることができないものというべきである。」と判断しました。

◆H17. 1.18 東京高裁 平成15(行ケ)166 特許権 行政訴訟事件

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◆H16.12.27 東京高裁 平成16(行ケ)209 特許権 行政訴訟事件

  CS関連発明についての記載不備が争われました。争点は、「一括変換して再登録する再登録手段」について技術的な矛盾があるかでした。裁判所は、36条4項及び6項違反とした審決を取り消しました。
 

◆H16.12.27 東京高裁 平成16(行ケ)209 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 9.30 東京高裁 平成16(行ケ)37 特許権 行政訴訟事件

 「暗号モード」という文言が不明瞭として36条4項、6項違反として拒絶した審決が維持されました。その他、新規事項に該当するかも争点となっていましたが、こちらについては判断することなく、請求が棄却されました。
  裁判所は「本願明細書の特許請求の範囲に記載される「暗号モード」は、その意味・内容をそれ独自で規定することができないばかりでなく、「暗号」や「暗号等」を手がかりとしても規定することができないことから、不明瞭な記載であると解さざるを得ないところ、本願発明は、この「暗号モード」が適正と判断されると、「監視手段で捕捉したデータを中継側である前記管理コンピュータへセンシング情報として送信するステップ」へと進むものであるから、この「暗号モード」が不明瞭なままでは、該ステップも不明確であって、結局、本願発明の要旨を特定することはできないというべきである」と述べました。

◆H16. 9.30 東京高裁 平成16(行ケ)37 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 9. 6 東京高裁 平成15(行ケ)325 特許権 行政訴訟事件

  プログラムによるデータ演算処理が具体的でないという理由で拒絶した審決が裁判所でも維持されました。
 裁判所は、「”商品に基づく商品コード,商品サイズデータ,デザインデータの一以上と自己の身体のサイズデータをコンピュータにて演算,比較”という記載では,商品コードを用いてどのように演算し,あるいは比較するのか,その処理が不明であるというほかはない」と述べました。  

◆H16. 9. 6 東京高裁 平成15(行ケ)325 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 2. 4 東京高裁 平成15(行ケ)330 特許権 行政訴訟事件

「・・・水性塗料用低汚染化剤」を「・・・水性塗料用低汚染化剤(水溶化されたものを除く)」とする訂正が、訂正要件を満たしているのかが争われました。
 裁判所は、「本件訂正事項に係る「水溶化されたもの」の意義については,訂正明細書の特許請求の範囲の記載だけからは,文言上一義的に明確に理解することができるとはいえない。イ そこで,本件訂正事項の意義を解釈するため,訂正明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌する。・・・被告主張のように,「水溶化されたもの」が「水溶化という反応処理を施したものであれば,その反応処理の程度を問わず,すべて含む」ものであると解釈したとすると,本件訂正発明1の水性塗料用低汚染化剤は,「(水溶化されたものを除く)」という本件訂正事項を付加することによって,エマルションを形成する化合物になる場合を含め,規定した物質がすべて除かれてしまうか,又は,登録明細書に記載されていない全く別の方法によって当該低汚染化剤を生成するという新規事項を付加したことによって,本件訂正発明1それ自体が無に帰してしまうという極めて不合理な結果を生ずることになる。これに対し,原告主張のように,「水溶化されたもの」が「水溶性化合物」と同義であると解すれば,上記のアルコキシシランの縮合物とポリオキシアルキレン基を含有する化合物とを反応させる方法によって得られた生成物のうち,水溶性化合物となった場合を除外し,特許請求の範囲を,当該生成物がエマルションを形成する化合物となる場合のみに限定するとの趣旨であると合理的に理解することができ,以上の点は,訂正明細書に接した当業者が容易に理解するところであると認められる。以上によれば,本件訂正事項に係る「(水溶化されたものを除く)」とは,「(水溶性化合物を除く)」の意味であると解するのが相当である。」と訂正を認めなかった審決を取り消しました。

 

◆H16. 2. 4 東京高裁 平成15(行ケ)330 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 3.13 東京高裁 平成13(行ケ)346 特許権 行政訴訟事件

  請求項1で用いた文言「所定の筬打ち角」および「筬打ち角」が、発明の詳細な説明で定義されているにもかかわらず、不明瞭とした審決が維持されました。
 裁判所は、「特許発明の構成に欠くことができない事項を明確に記載することが容易にできるにもかかわらず,殊更に不明確あるいは不明りょうな用語を使用して特許請求の範囲を記載し,特許発明に欠くことができない構\成を不明確なものとするようなことが許されないのは,当然のことというべきである。」と判断しました。
 問題となった請求項
「織機停止信号により,緯入れを阻止しながら制動停止した織機を再起動するに際し,筬が所定の筬打ち角以上となるようなクランク角に織機を停止し,開口装置を主軸から切り離し,主軸の1回転相当だけ開口装置を逆転し,開口装置を主軸に連結することを特徴とする織機の再起動準備方法」というものです。
 審決では以下のように表示するべきであったと述べ、裁判所の上記理由からすると、これを維持したこととなります。
「織機停止信号により,緯入れを阻止しながら制動停止した織機を再起動するに際し,筬が,スレイ上に搭載するサブノズルまたはエアガイドが経糸開口から抜け出るときの筬打ち角以上となるようなクランク角に織機を停止し,開口装置を主軸から切り離し,主軸の1回転相当だけ開口装置を逆転し,開口装置を主軸に連結することを特徴とする織機の再起動準備方法。」

 

◆H15. 3.13 東京高裁 平成13(行ケ)346 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 3. 6 東京高裁 平成12(行ケ)352 特許権 行政訴訟事件

  ブラックスボックス化されたチップの実施例が開示不十分か否かが争われました。
裁判所は「第1実施例における各回路要素の動作及び集積回路チップの動作は,明確であり,ブラックボックスであることをもって,各回路要素の製作,実施が不可能であるとはいえない。したがって,本願明細書の第1実施例に係る記載において,同実施例が不明瞭であるとする点があるとはいえない。」として、審決を取り消しました。

 

◆H15. 3. 6 東京高裁 平成12(行ケ)352 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 1.29 東京高裁 平成13(行ケ)96 特許権 行政訴訟事件

    明細書の文言が特定されているかについて争われましたが、裁判所は、本件発明の技術的意義を考慮して、特定されていると判断しました。
 「確かに,本件明細書の特許請求の範囲中「前方」の記載は,それ自体一義的に明確ということはできないが,本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することにより,上記のとおり「カートリッジタンクの前方」の意味であると解釈することができる。また,本件発明は,気化器によって加熱して発生した灯油蒸気をバーナーで燃焼させるものであるから,気化器とバーナーは隣接して配置されることが技術常識であり,この技術常識を無視し,気化器の位置をバーナーから離れたものとして解釈することは不合理である。」と述べました。

 

◆H15. 1.29 東京高裁 平成13(行ケ)96 特許権 行政訴訟事件

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