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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

営業誹謗

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

令和4(ワ)13396    不正競争  民事訴訟 令和6年1月17日  東京地方裁判所

発注した業務に関してインターネット上で行った投稿が、営業上の信用を害する虚偽の事実を流布するもので、不競法2条1項21号所定の不正競争に該当するかが争われました。
裁判所は、これを認めて50万円の損害賠償および投稿削除を命じました。

(イ) 前記(ア)の各事実を前提として、本件投稿部分1が摘示する「何度やり とりしても、原告は、被告担当者からの質問に明確に回答しない」との 事実が客観的真実に反するものであるか否かについて検討する。 a 前記(ア)aのとおり、本件アナライザー案件において、被告が仕様の 確定を行うべきとされていたことについては、当事者間に争いがない。 また、本件全証拠によっても、原告が、被告の作成した仕様を評価す る立場にあったと認めることはできない。
そして、前記(ア)cの原告と被告担当者とのやりとりの内容に照らせ ば、原告は、被告担当者からの質問に対し、一貫して、原告が「課題 管理表」の項番13において指摘した事項の趣旨を説明しつつ、本件アナライザー案件において原告が受注していない業務である仕様の評 価にわたる事項については回答することができないとの趣旨を明確に 回答していると認めるのが相当である。
b また、原告が、被告担当者に対し、「なんで答える必要あるの?」と の文言どおりの回答をしていないことも当事者間に争いがない。 この点に関し、被告は、当該回答は、「今回当方へのご依頼は管理画 面の開発で、くじら IT サービス様でご用意される資料の評価は含まれ ていないという認識です。」との原告の回答を簡潔にまとめた表現であると主張する。
そこで検討すると、不競法2条1項21号所定の告知又は流布の内 容は、その相手方の普通の注意と読み方・聞き方を基準として判断す べきと解されるところ、本件サイトは、ソフトウェアやITシステムの開発業務を営んでいる者や、このような開発業務を依頼しようとす る者が専ら閲覧していると考えられる。そして、これらの者の普通の 注意と読み方を基準とすると、「なんで答える必要あるの?」との表現は、理由を一切説明することなく、回答を拒否したとの意味に理解で きるものである。これに対し、被告が指摘する原告の上記回答は、原 告が受注した業務の内容について説明した上、被告が用意する資料の 評価にわたる事項については回答することができないとの趣旨を回答 するものといえる。 したがって、「なんで答える必要あるの?」との表現は、原告の上記回答を要約したものとはいえず、被告の上記主張を採用することはで きない。
(ウ) 以上によれば、本件投稿部分1が摘示する「何度やりとりしても、原 告は、被告担当者からの質問に明確に回答しない」との事実は、客観的 真実に反するもの、すなわち虚偽のものと認められる。
・・・
(1) 無形損害について
前記1(2)のとおり、ソフトウェアやITシステムの開発において、受注者が、発注者との質疑応答に適切に対応できる資質や能力を備えているか否かは、受注の可否にも直結する重要な事柄であると考えられるところ、本件投 稿部分1が摘示する事実は、これを閲覧した者に対し、原告がそのような資 質や能力を欠くとの印象を与えるといえるから、本件投稿は、原告の営業上の信用を大きく毀損するものと認められる。 そして、前記1(1)イのとおり、原告の納品した成果物が、被告と合意した 仕様に合致するものであることについての立証がされているとはいえず、本 件投稿部分2及び3について不正競争及び不法行為が成立するとは認められ ないものの、被告は、成果物が仕様に合致していないことを意味する他の表現を採用することは極めて容易であると考えられるのに、「ゴミを納品され、 捨てました。」と、原告による作業や成果物が有する価値のすべてを否定する かのような表現を敢えて用い、同業者が多数閲覧する可能性のあるインター ネット上のマッチングサイトの評価画面に本件投稿をしたものであるところ、 不正競争に該当する本件投稿部分1と上記の表現とが一連一体のものとして本件投稿を構成している以上、無形損害の額を算定するに当たり、この事情も考慮することができるというべきである。 以上の事情によれば、本件投稿によって原告に生じた無形損害の額につい ては、50万円と認めるのが相当である。

◆判決本文

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令和3(ワ)11472  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年5月11日  大阪地方裁判所

被告がAmazonに対して、著作権侵害申告をした行為が不競法2条1項21号の不正競争行為に該当すると判断されました。裁判所は、正面から商品を撮影した画像について、そもそも著作物ではないと判断しました。\n

前記(1)アのとおり、被告各画像のうち、写真集又は卓上カレンダーに 係る画像である被告画像1、2及び4ないし10は、販売する商品がどの ようなものかを紹介するために、平面的な商品を、できるだけ忠実に再現 することを目的として正面から撮影された商品全体の画像である。被告は、 商品の状態が視覚的に伝わるようほぼ真上から撮影し、商品の状態を的確 に伝え、需要者の購買意欲を促進するという観点から被告が独自に工夫を 凝らしているなどと主張するが、具体的なその工夫の痕跡は看取できない 上、撮影の結果として当該各画像に表現されているものは、写真集等とい\nう本件各商品の性質や、正確に商品の態様を購入希望者に伝達するという 役割に照らして、商品の写真自体(ないしそれ自体は別途著作物である写 真集のコンテンツとしての写真)をより忠実に反映・再現したものにすぎ ない。
(イ) 単語帳に係る画像である被告画像3は、前記同様に商品をできるだけ 忠実に再現することを目的として正面から撮影された商品全体を撮影し た平面的な画像2点と、扇型に広げた商品の画像1点を配置したものであ り、当該配置・構図・カメラアングル等は同種の商品を紹介する画像とし\nてありふれたものであるといえ、被告独自のものとはいえない。
(ウ) 以上より、被告各画像は、被告自身の思想又は感情を創作的に表現し\nたものとはいえず、著作物とは認められない。 (エ) また、商品名については、前記(1)イのとおり、いずれも商品自体に付 された商品名をそのまま使用するか、欧文字をカタカナ表記に変更したり、\n大文字表記を小文字表\記にしたり、単に商品の内容を一般的に説明したに とどまるありふれたものであって、著作物とは認められない。 そのほか、被告は、本件各申告には被告サイト上の商品の説明文に関す\nる著作権侵害も含まれるかのように主張するが、具体性を欠く上、その説 明が創作性を有するとは想定できず、失当である。

◆判決本文

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令和4(ネ)10111 不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和5年4月27日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

特殊形状の靴紐について、1審は「通知人らが保有する本件特許権を侵害していると考えております」と取引先に流布した行為が、不競法2条1項21号の不正競争行為にあたると判断しました。知財高裁も同様です。

控訴人らは、本件通知書に記載されたキャタピラン+等が本件特許権を侵 害していると考えている旨の見解に関し、仮にこれが不正競争防止法2条1項21 号にいう「虚偽の事実」に該当するのであれば、特許権者としては、特許権の被疑 侵害者を発見した場合であっても、後日裁判所により特許権の侵害はない旨の判断 がされ、損害賠償を命じられるとのリスクを回避するため、被疑侵害者に対し訴訟 提起前に警告書を送付することがおよそできなくなるから、上記の見解が同号にい う「虚偽の事実」に該当するとの判断は誤りであると主張する。
しかしながら、特許権者が特許権の被疑侵害者を発見し、訴訟提起に先立って当 該被疑侵害者に対し警告書を送付したが、後日裁判所により特許権の侵害がない旨 の判断がされた場合であっても、当該警告書の送付が特許権者の正当な権利行使の 範囲内の行為であると評価されるときは、同送付は違法性を欠き、当該特許権者が 同送付を理由として損害賠償責任を負うことはないのであるから、特許権者が被疑 侵害者に対し訴訟提起前に警告書を送付することがおよそできなくなることを前提 とする控訴人らの上記主張は、前提を誤るものとして採用することができない。
(5) 控訴人らは、本件告知行為の違法性の有無に関し、1)控訴人らと被控訴人 との間の紛争の発端は、被控訴人が控訴人Xらとの間で締結した共同出願契約(乙 30の1及び2)における約定(事前の協議・承諾なく本件特許権に関わる製品を 販売した場合には、本件特許権を剥奪できるとするもの)に違反し、単独でキャタ ピラン等の製造・販売を開始したことであること、2)控訴人Xは、本件通知書にお いて、キャタピラン等とキャタピラン+等が別の商品であり、これらが異なる状況 にあることを分かりやすく明記していること、3)本件通知書の記載は、キャタピラ ン+等がキャタピラン等と同様に本件特許権を侵害するおそれがあるとの強い印象 を与えるものではないことを根拠に、本件告知行為の目的は被控訴人の取引先が過 去に販売したキャタピラン等について損害賠償請求をすることであり、同目的が 「裁判所によって本件特許権を侵害する旨の判断が確定したキャタピラン等の存在 を奇貨として、本件特許権を侵害しないように改良されたキャタピラン+等につい ても、裁判所による判断がされる前に、本件特許権を侵害する趣旨を告知し、被控 訴人の取引先に対する信用を毀損することによってキャタピラン+等を早期に「結 ばない靴紐」の市場から排斥し、競業する事業者間の競争において控訴人会社が優 位に立つこと」であるとの認定は誤りであると主張する。
しかしながら、控訴人Xは、本件告知行為をした時点において、被控訴人がその 製造・販売する商品をキャタピラン等からキャタピラン+等に入れ替え、「結ばな い靴紐」の市場においてキャタピラン等の販売が縮小していることを十分に認識し\nていたこと(補正して引用する原判決第4の4(2)イ)、被控訴人は、令和2年1 2月22日、前訴の控訴審判決において命じられたキャタピラン等に係る損害賠償 金(平成28年4月1日から平成30年8月31日までに生じたもの)を支払った ものと認められること(乙7の3、弁論の全趣旨)、キャタピラン等に係る損害賠 償金(平成30年9月1日から令和3年4月30日までに生じたもの)についても、 遅くとも本件告知行為の前までには、その額の確定等の手続が終了し、被控訴人か らその支払がされるのを待つ状況となっていたものと認められること(甲60、7 7、弁論の全趣旨)、控訴人Xは、本件包括協議において、直接又は間接に、被控 訴人が「結ばない靴紐」の市場から撤退することを一貫して求めていたと認められ ること(甲59ないし67、70ないし74)、本件通知書の送付を受けた被控訴 人の取引先は、キャタピラン等と同様にキャタピラン+等についても本件特許権を 侵害するおそれがあるとの強い印象を受けたこと(補正して引用する原判決第4の 4(2)イ及びウ)、その他、補正して引用する原判決第4の4(1)において認定した 各事実に照らすと、控訴人らが主張する上記1)の事情や本件通知書の記載内容を考 慮してもなお、本件通知書においてされたキャタピラン等に係る本件特許権の行使 等についての言及は、あくまで名目的なものであったといわざるを得ず、本件告知 行為の真の目的は、補正して引用する原判決第4の4(2)イのとおり、キャタピラ ン等と同様にキャタピラン+等も本件特許権を侵害する趣旨を告知し、被控訴人の 取引先に対する信用を毀損することによってキャタピラン+等を早期に「結ばない 靴紐」の市場から排斥し、競業する事業者間の競争において控訴人会社が優位に立 つことであったと認めるのが相当である。
この点に関し、控訴人らは、キャタピラン+等の取扱いを停止した4社のうち2 社(株式会社シューマート及び株式会社チヨダ)は当初本件通知書に対して反論を したのであるから、両社は本件告知行為によりキャタピラン+等が本件特許権を侵 害するおそれがあるとの強い印象を受けたものではないと主張する。確かに、本件 通知書の送付を受けた株式会社シューマートは、「キャタピラン+等が本件発明の 技術的範囲に属するというのであれば、その説明をしていただきたい」旨の回答 (乙A2)をし、本件通知書の送付を受けた株式会社チヨダも、「株式会社チヨダ は、入手済みの弁理士の見解書を踏まえ、キャタピラン+等については本件発明の 技術的範囲に属しないと判断している」旨の回答(乙A6)をしたものと認められ るが、結局、両社は、本件告知行為の約4か月後に、それぞれ本件通知書において 求められたとおりにキャタピラン+等の取扱いを停止したものと認められるのであ り(弁論の全趣旨)、加えて、本件通知書の記載内容も併せ考慮すると、両社が本 件通知書の送付を受けた際に上記のような回答をしたことは、両社において本件告 知行為によりキャタピラン+等が本件特許権を侵害するおそれがあるとの強い印象 を受けたとの認定を左右するものではない。
また、控訴人らは、キャタピラン+等の取扱いを停止した4社のうちその余の2 社(朝日ゴルフ株式会社及び株式会社Olympicグループ)は控訴人らと被控 訴人との間に紛争が生じていることを理由に、紛争が解決するまでキャタピラン+ 等の取扱いを一時的に停止したにすぎず、キャタピラン+等が本件特許権を侵害す ると認識してその取扱いを中止したものではないと主張するが、本件通知書の記載 内容及び両社が本件通知書の送付を受けた後速やかにキャタピラン+等の取扱いを 停止したものと認められること(弁論の全趣旨)に照らすと、株式会社Olymp icグループの回答書(乙A12)に「キャタピラン等及びキャタピラン+等に関 する控訴人Xと被控訴人との間の紛争が解決するまで、これらの商品の販売をしな い方針である」旨の記載があることを考慮しても、両社は、本件告知行為によりキ ャタピラン+等が本件特許権を侵害するおそれがあるとの強い印象を受けたものと 認めるのが相当である。 以上のとおりであるから、控訴人らの主張を採用することはできない。
(6) 控訴人らは、本件告知行為に係る過失の有無に関し、被控訴人の第1主張 書面(本件仮処分の手続において提出されたもの)に記載された本件発明の構成要\n件B1)の「非伸縮性素材からなり」に係るクレーム解釈は特許請求の範囲及び本件 明細書等の記載から大きく外れた荒唐無稽なものであり、同主張書面を見てもキャ タピラン+等が本件特許権を侵害していないと判断することはできなかったから、 本件告知行為について控訴人らに過失はない旨の主張をする。
しかしながら、補正して引用する原判決第4の2及び前記(1)ないし(3)において 説示したところに照らすと、被控訴人が上記第1主張書面においてした主張(本件 発明の「非伸縮性素材からな(る)中心ひも」は「伸縮性素材からなるひも本体と 比較して伸縮性が乏しいもの」をいうところ、キャタピラン+等のひも本体(外層) と中心ひも(芯材)の伸縮性を比較した試験結果によると、キャタピラン+等は本 件特許権を侵害しない旨の主張(補正して引用する原判決第4の4(2)イ))は、 十分な説得性を有する相当なものであるといえ、加えて、補正して引用する原判決\n第4の4(2)イにおいて指摘した各事情も併せ考慮すると、控訴人らは、遅くとも 同主張書面を受領した時点で、キャタピラン+等の製造・販売が本件特許権を侵害 しない可能性が相当程度にあることを容易に認識し得たと認められるから、そのよ\nうな認識可能性があったにもかかわらず本件告知行為に及んだ控訴人らには、過失\nがあると認めるのが相当である。

◆判決本文

1審はこちら

◆令和3(ワ)22940

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令和2(ワ)1129 債務不存在確認等請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年8月31日  東京地方裁判所

特許権侵害をしているとの告知メールが不競法2条1項21号の不正競争行為に該当するとして、約35万円の損害賠償が認められました。

原告シプソルが、原告機械の製造、販売や、原告製品の製造等について\n被告の特許権ないし本件特許権を侵害しているとの内容は、原告シプソル\nの営業上の信用を害するものであることは明らかであるから、被告が送付 ないし送信した甲3通知及び甲21メールは、原告シプソルの営業上の信\n用を害する虚偽の事実の告知に当たる。 そして、原告シプソルと被告とは改正前不競法2条1項15号所定の\n「競争関係」にある(前提事実(1)ウ)。 したがって、被告による甲3通知及び甲21メールの送付ないし送信は、 いずれも同号所定の不正競争行為に当たる。
イ 原告シプソルの被告に対する差止請求について\n
前記アによれば、原告機械又は原告機械の製造する梱包体が本件特許権 を侵害する又は侵害するおそれがあるとの事実の告知又は流布の差止めを 求める原告シプソルの請求は理由がある。\n
ウ 原告シプソルの被告に対する損害賠償請求について\n
被告は、包装機器の設計、開発、製造及び販売等を目的とする株式会社 であるから(前提事実(1)イ)、この目的からうかがわれる業務内容に照ら せば、原告機械ないし原告シプソルの販売する自動梱包ラインが被告の保\n有する特許権を侵害するか否かを調査することは必ずしも困難とはいえな いから、被告には、甲3通知及び甲21メールを送付ないし送信したこと について、少なくとも過失があったというべきである。
争点5(原告シプソルに生じた損害の有無及びその額)について\n
無形損害について
前記4(1)及び(2)のとおり、甲3通知及び甲21メールの内容は、原告シ プソルが本件特許権を侵害している旨及びMYTHが原告シプソ\ルから購入 することを予定している自動梱包ラインが被告の保有する特許権を侵害する\n旨を告知するものである。そして、原告シプソルは、自動梱包ラインの専門\n会社であると認められるから(甲20、23)、主力商品ともいえる自動梱包 ラインが他社の保有する特許権を侵害するとの事実が告知されたことにより、 原告シプソルの信用が毀損されたことは明らかであり、その程度も必ずしも\n小さいとはいえない。
しかし、被告から原告シプソルの取引先に対して虚偽事実の告知がされた\n回数は、本件全証拠によっても、甲3通知及び甲21メールの送付ないし送 信の合計2回を超えて認められない。また、これらの通知等がされたことに より、原告M・Kロジ及びMYTHが原告シプソルとの取引を取り止めたと\n認めるに足りる的確な証拠はない(原告らは、原告M・Kロジが、甲3通知 を受領した後、自動梱包ラインを他社に発注したと主張し、この点に関連し て福岡パッケージ株式会社が発行した自動制函機、シュリンク包装装置等に 係る見積書を証拠(甲26)として提出するが、原告M・Kロジが、これに 相当する機械を原告シプソルに発注する予\定であったことを認めるに足りる 証拠はないから、原告シプソルが甲3通知を契機として原告M・Kロジから\nの受注を失ったとまで認めることはできない。)。 これらの事情を含む本件に現れた諸事情を総合考慮すると、原告シプソル\nに生じた無形損害の額は30万円と認めるのが相当である。
弁護士費用について
被告の不正競争行為と相当因果関係にある弁護士費用の額は5万円と認められる。

◆判決本文

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令和3(ワ)22940  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和4年10月28日  東京地方裁判所

特殊形状の靴紐について、「通知人らが保有する本件特許権を侵害していると考えております」と取引先に流布した行為が、不競法2条1項21号の不正競争行為にあたると判断されました。

これを本件についてみると、前記前提事実によれば、キャタピラン+等は、 裁判所が本件特許権を侵害すると判断したキャタピラン等を設計変更したも のであり、前記2のとおり、少なくともキャタピラン+等については裁判所 が本件特許権を侵害するものではないと判断するにもかかわらず、本件通知 書には、キャタピラン+等は本件特許権を侵害していると考えているなどと 記載されていることが認められる。そうすると、本件通知書の内容は、裁判 所においてキャタピラン+等が本件特許権を侵害しない旨の判断を示す前に 当該判断とは異なる法的な見解を事前に告知するものとして、不正競争防止 法2条1項21号にいう「虚偽の事実」を含むものと認めるのが相当である。
これに対し、被告らは、本件通知書は、「通知人らが保有する本件特許権 を侵害していると考えております。」として単に被告Aの主観的見解を述べ たものにすぎないから、不正競争防止法2条1項21号にいう「虚偽の事実」 を含まないと主張する。しかしながら、法的な見解を述べるものであっても、 公正な競争を阻害するものであり、上記にいう「虚偽の事実」に含まれると 解すべきことは、上記において説示したとおりである。そもそも、本件通知 書では、キャタピラン+等についても販売の即時停止及び損害賠償額の算定 に関する資料の開示まで求めているのであるから、単に主観的見解を述べた という被告らの主張は、当を得ないものである。そうすると、被告らの主張 は、後記4において違法性判断の考慮事情とされるのは格別、上記判断を左 右するに至らない。

◆判決本文

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平成30(ワ)22428  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和2年7月10日  東京地方裁判所

 「偽造品である」との通知が信用毀損行為(不競法2条1項21号)に該当するとして、60万円の損害賠償が認められました。

争点1(本件申告が虚偽事実の告知に当たるか)について\n
(1) 本件申告の趣旨\n
本件申告の内容は,第2の2(5)ウ記載のとおりであるが,1)本件サービス の利用に当たり,被告は,被告各商標権を登録していること,2)被告は本件 申告に当たって被告各商標を入力した上で申\告内容について記載しているこ と,3)アマゾン社からバルジャノ社へのメール(甲8,9,12)にも「商 標権を侵害しているとの主張が権利者から届きました」と記載され,更に同 各メールには「侵害の種類」として「商標権」と記載されるとともに,被告 各商標権等の登録番号が記載されていることなどの事実によれば,本件申告\nは原告商品が被告各商標権を侵害していることを趣旨とするものであると認 めるのが相当である。 これに対し,被告は,本件申告の申\告内容は「偽造品であること」である ので,本件申告は被告各商標権の侵害を趣旨とするものではないと主張する\nが,偽造品であるということには,他人の信用が化体した標章を商標権等の 正当な法的権原なく商品に付すことが含まれるのであり,上記のとおり,被 告が本件サービスの利用に当たり被告各商標を登録し,本件申告に際しても\n同各商標を入力していることを併せ考えると,被告が本件申告の申\告内容と して「偽造品であること」と入力したとしても,そのことは,本件申告の趣\n旨が被告各商標権の侵害を趣旨にあるとの上記判断を左右しないというべき である。
(2) 原告が被告各商標権を侵害している旨の摘示について
原告各商標は,別紙原告商標目録記載のとおり,標準文字の「COMAX」 から構成されるものなどであり,いずれも「第20類 マットレス,まくら, クッション,座布団,家具」を商品区分とするものであるところ,原告商品 は,いずれも第20類に属する枕,マットレス等であって,原告各商標を付 したものである。これに対し,被告各商標は,いずれも,商品区分を「第1 7類 天然ゴム ゴム」とするものであるから,原告商品は被告各商標権を 侵害するものではない。 なお,本件申告内容の「偽造品であること」という入力内容が,被告各商\n標権の侵害を意味するものではなく,他の商標権等の侵害を意味するもので あるとしても,原告は,原告商品に自らの商標を表示して販売しているので\nあり,シンガポール・コマックス等の他人の使用する標章等を使用し,その 真正品と偽って表示しているものではないので,被告の入力した上記申\告内 容はいずれにしても虚偽であるということができる。 そうすると,本件申告の内容は,被告と競争関係にある原告の営業上の信\n用を害する虚偽の事実であるということができる。
(3) 原告が被告の独占販売権を侵害している旨の摘示について
ア 被告は,1)シンガポール・コマックスとの間で特約販売店契約(乙1) を締結し,本件申告当時,同社から「COMAX Natural La tex」の商標を付した枕等の独占的販売権を得ていた,2)原告は,シン ガポール・コマックスの子会社であるラテックスシステムズから「COM AX」商標等に関する使用許諾を受けたが(乙2),同使用許諾契約は平 成27年11月10日をもって解除されたので(乙3),本件申告当時,\n原告商品を販売すべき正当な権原を有していなかったと主張する。 しかし,原告は,原告各商標権を取得した上で,同各商標を付した原告 商品を我が国において販売しているのであるから,原告商品を販売するに 当たり,シンガポール・コマックス等から「COMAX」商標の使用許諾 を得る必要はなく,そもそもシンガポール・コマックスがいかなる権利を 有しているかも証拠上明らかではない。 また,原告は,乙2書面及び乙3通知書の作成に関与したことを否定す るところ,乙2書面及び乙3通知書は,いずれもラテックスシステムズが 作成した書面であり,原告がその内容に同意していたことを示す証拠は存 在しない。そうすると,「COMAX」商標の使用許諾契約が原告とラテ ックスシステムズ間で締結され,これが解除されたとの事実を認めること もできない。 このように,原告は,原告各商標を使用して,原告商品を販売すべき権 原を有しているので,被告がシンガポール・コマックスの「COMAX N atural Latexの枕及びマットレス」の独占的販売権を有して いるとしても,原告商品の販売は被告の独占販売権を侵害するものではな い。 なお,被告は,原告が「COMAX」商標の正当な使用権原がないこと を前提として,原告が原告各商標権を被告に行使することは権利の濫用に 当たると主張するが,同主張は,その前提を欠くものであって失当である。
イ そうすると,本件申告が,被告がシンガポール・コマックスから許諾さ\nれた独占販売権を侵害するという趣旨である場合においても,その申告内\n容は,被告と競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実であ るということができる。
(4) 原告商品とシンガポール・コマックスの商品との間の混同に関する主張に ついて
被告は,原告商品とシンガポール・コマックスの商品との間に混同が生じ ていたことから,その是正を求めるために本件申告に及んだと主張するが,\n原告による原告商品の販売が正当な商標権に基づくものであることは前記判 示のとおりであり,仮に,需要者の間において,海外で販売されているシン ガポール・コマックスの商品と原告商品との混同が生じているとしても,そ のことについて,原告が法的責任を負うべき理由はなく,被告が虚偽の告知 をすることを正当化するものでもない。
(5) 小括
以上のとおり,本件申告は,原告商品が本件各商標権を侵害していること を趣旨とするものであり,その内容は,被告と競争関係にある原告の営業上 の信用を害する虚偽の事実であり,不競法2条1項21号の不正競争行為に 該当するので,原告は,被告に対し,原告商品の販売が被告の有する商標権 を侵害するとの虚偽の事実を第三者に告知又は流布することの差止めを求め ることができる。 なお,被告が本件申告において権利が侵害されているとして通知した商品\nは,原告商品の全てではないが,同通知に係る商品以外の原告商品にも原告 各商標が使用され,本件サイトに出品されていたことに照らすと,被告が, 需要者及び原告の取引関係者その他の第三者に対し,これらの原告商品が被 告各商標権を侵害する旨を告知・流布するおそれはあるというべきであるの で,これらの商品についても虚偽の告知を差し止めるべき必要性があると認 められる。 また,前記判示の本件申告の内容及び態様に照らせば,被告が本件申\告を するにつき,少なくとも過失が認められる。
2 争点2(原告の損害の有無及びその額)について
(1) 不競法5条2項に基づく損害
ア 原告は,本件サイトにおける原告商品の出品が停止された令和元年8月 までの15か月間に,被告は,被告商品の販売により,少なくとも月間8 万5000円程度の利益を得ていたはずであるから,不競法5条2項に基 づき,被告に対し,8万5000円に15月を乗じた127万5000円 の損害賠償を求めることができると主張する。 しかし,被告は,本件申告の前後を通じて,特に販売態様等を変えるこ\nとなく被告商品を販売していたと認められるところ,証拠(乙22〜24) によれば,被告商品の売上全体(別紙1)及び本件サイトに限定した被告 商品の売上げ(別紙2)のいずれについても,本件申告後の売上げは,む\nしろ減少しているものと認められる。 そうすると,被告は,本件申告に係る不正競争行為により,営業上の利\n益を得たということはできず,本件申告とその後の被告商品の販売による\n利益との間に相当因果関係があると認めることはできない。
イ これに対し,原告は,不競法5条2項は,損害額のみならず,侵害行為 と損害との間の因果関係も推定する規定であると主張するが,同項は損害 額の推定に関する規定であり,損害の発生や相当因果関係の存在までも推 定するものではなく,これらの点については原告に立証責任があると解さ れる。本件においては,本件申告と本件申\告後に被告が得た販売利益との 間に相当因果関係が存在すると認めるに足りる証拠はない。 ウ したがって,原告の不競法5条2項に基づく損害賠償の主張には理由が ない。
(2) 無形損害
前記判示のとおり,被告による本件申告は,原告が被告の商標権等を侵害\nしているというものであり,その内容は,原告及び原告商品の信頼を低下さ せるものであり,本件申告の申\告先であるアマゾン社は全世界的なインター ネット通販サイトを運営する企業である。加えて,本件申告は,原告が自ら\nの商標を商品に付していることを容易に知り得たにもかかわらず,これを「偽 造品」と称するものであって,その態様は悪質であることにも照らすと,原 告の営業上の信用を毀損する程度は小さくないというべきである。 しかし,他方で,本件申告は,アマゾン社に対するもののみであり,イン\nターネットなどを通じて,不特定の需要者,取引者に対して告知したもので はないことなどの事情も認められ,こうした事情も含め,本件に現れた諸事 情を総合的に考慮すると,原告に生じた無形損害は,50万円であると認め るのが相当である。

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平成31(ネ)10023  不正競争行為差止請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和元年8月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁は、1審(東京地裁29部)の判断を維持し、意匠権の消尽を認めました。原告は、被告からイヤーパッドを購入し、これを含んだセット物を製造・販売しました。被告は、この行為が、当該イヤーパッドの意匠権侵害だと、拡布しました。原告は、かかる拡布は、不正競争行為に該当すると主張しました。

 (1) 前記1(3)のとおり,控訴人は,本件覚書により,本件子会社との間で,(ア) 本件子会社に対し,控訴人の保有するインコア及びイヤーパッドに係る一切の特許 の使用を許諾し(第5条前段),その許諾に係る対価を請求せず(同条後段),(イ) 本件子会社に対し,控訴人のイヤーパッドを使用した商品の開発及び販売を許諾し, イヤーパッドの供給に協力する(第6条)旨合意したことが認められる。 また,前記1(4)のとおり,原告製品は,控訴人の供給するイヤーパッドを使用し て本件子会社において開発された商品であるものと認められる。 そして,被控訴人は,前記1(5)のとおり,平成28年11月15日付けで原告製 品の製造,販売に係る事業を本件子会社から譲り受け,同事業を継続したというの であり,このことは,本件覚書第9条において控訴人によりあらかじめ承諾された ものである。 そうすると,被控訴人は,本件覚書においてされた本件特許権1に係る特許発明 の実施の許諾に基づいて原告製品を製造し販売していたものと認められる。 また,上記の実施許諾の趣旨が原告製品の製造販売にあることに照らせば,本件 特許権1に係る特許発明の実施許諾の際に,本件意匠権についても黙示に許諾があ ったものと推認される。 以上によれば,被控訴人の原告製品の製造販売は,控訴人の許諾の範囲であり, 控訴人の本件知的財産権を侵害していないというべきである。
(2) 控訴人の主張について
ア 控訴人は,本件覚書が,平成22年に控訴人と本件子会社との間で締結され た本件実施許諾契約と一体のものとして,作成・合意されたものであると解した上, 被控訴人は,同契約の第6条により,原告製品の開発,販売に関して控訴人に報告 する義務を負っていたにもかかわらず,これを履行しないので,平成29年4月3 日付けの文書(乙7)で催告をし,同月12日に控訴人代表者から本件子会社の代\n表者であるAに宛てて送信されたメール(乙6)により同契約を解除する旨の意思\n表示をし,その結果,本件覚書における許諾の合意も失効した旨主張する。\nしかしながら,前記1で認定した事実関係に照らせば,本件覚書は,平成22年 4月から平成28年3月までに生じた事情を踏まえた上,後の事業譲渡も視野に入 れた上で,控訴人と本件子会社との間に新たな権利関係を設定するために作成され たものというべきであり,その合意の内容に照らしても,本件覚書が本件実施許諾 契約と一体のものとして作成・合意されたものと解することは困難である。 以上の次第であるから,本件実施許諾契約を解除する旨の意思表示をしたことに\nより本件覚書における合意も失効した旨をいう控訴人の主張は,その前提を欠き, 理由がない。
イ 控訴人は,本件覚書と本件実施許諾契約とが一体で,本件子会社又は被控訴 人が同契約に基づく本件報告義務を負うものと認識していたことから,本件覚書に 係る合意には要素の錯誤があるので無効であると主張し,また,法的拘束力のある 契約としては本件実施許諾契約があるだけで,本件覚書に契約としての拘束力はな いという認識の下に本件覚書に押印したものであり,相手方である本件子会社にお いてもこのような控訴人の真意を知っていたから,本件覚書に係る合意は心裡留保 により無効であるとも主張する。 しかしながら,本件覚書による合意においては,当事者双方の意思表示が書面に\nよってされている。控訴人のいう認識の内容は本件覚書の内容との関係では意思表\n示の動機に当たり,この動機が表示され,法律行為の要素になっているとは認めら\nれないから,錯誤無効の主張は理由がない。また,前記アで説示したところに照ら せば,本件覚書の当事者双方において,本件覚書に契約としての拘束力はないとの 認識があったとは認められないから,心裡留保による無効の主張も理由がない。
(3) 小括
以上によれば,被控訴人の原告製品の製造販売は,控訴人の許諾の範囲であり, 控訴人の本件知的財産権を侵害していない。 よって,本件行為において告知され,流布されている事実は,虚偽であると認め られる。
3 本件知的財産権に係る消尽の成否について
念のため,消尽の成否についても検討を加える。
(1) 特許権者が我が国の国内において特許製品を譲渡した場合には,当該特許製 品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し,もはや特許権の効力 は,当該特許製品を使用し,譲渡し,又は貸し渡す行為等には及ばず,特許権者は, 当該製品について特許権を行使することは許されないものと解される(最高裁平成 7年(オ)第1988号同9年7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299 頁,最高裁平成18年(受)第826号同19年11月8日第一小法廷判決・民集6 1巻8号2989頁参照)。このように解するのは,特許製品について譲渡を行う都 度特許権者の許諾を要するとすると,市場における特許製品の円滑な流通が妨げら れ,かえって特許権者自身の利益を害し,ひいては特許法1条所定の特許法の目的 にも反することになる一方,特許権者は,特許発明の公開の代償を確保する機会が 既に保障されているものということができ,特許権者から譲渡された特許製品につ いて,特許権者がその流通過程において二重に利得を得ることを認める必要性は存 在しないためである。そして,この趣旨は,意匠権についても当てはまるから,意匠 権の消尽についてもこれと同様に解するのが相当である。
(2)前記1(6)のとおり,被控訴人は,本件知的財産権を有する控訴人から,本件 知的財産権の実施品である被告製品(イヤーパッド)を購入し,これを,原告製品で あるイヤホン,無線機本体,原告製品を媒介するコネクターケーブル及びPTTス イッチボックスと併せて,それぞれ別個のチャック付ポリ袋に入れ,原告製品の保 証書及び取扱説明書とともに一つの紙箱の中に封かんした上で販売しているという のである。 このような事実関係に照らすと,被控訴人は,原告製品に被告製品を付属させて 販売していたものであり,被告製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたも のとはいえず,控訴人から被控訴人に対する被告製品の譲渡によって,被告製品に ついては本件知的財産権は消尽するものと解される。そうすると,控訴人において は,もはや被控訴人に対して本件知的財産権を行使することは許されないから,被 控訴人において原告製品を製造等する行為は,控訴人の有する本件知的財産権を侵 害するものではないというべきである。
(3) 控訴人の主張について
ア 控訴人は,消尽の根拠となる特許製品の「譲渡」とは,典型的には,権利者が 特許製品を市場の流通に置くことをいい,特許製品が市場の流通に置かれたといえ るか否かは,1)権利者である特許製品の譲渡人が十分な対価を得ているか,2)当該 特許製品が転々流通することを権利者が想定していると認められるか,3)権利者で ある特許製品の譲渡人と譲受人との関係,4)特許製品の性質等を考慮して,個々の 譲渡内容を精査して判断する必要があると主張する。そして,本件事実関係の下に おいては,特許製品が市場の流通に置かれたものではないので,消尽の根拠となる 特許製品の「譲渡」がないと主張する。 しかしながら,特許権者が我が国の国内において特許製品を譲渡した場合におい て消尽が認められ,特許権者は,当該製品について特許権を行使することは許され ないものと解されることの根拠は,前記のとおり,第一義的には,特許製品につい て譲渡を行う都度特許権者の許諾を要するとすると,市場における特許製品の円滑 な流通が妨げられ,かえって特許権者自身の利益を害し,ひいては特許法1条所定 の特許法の目的にも反することになるということにある。そうだとすると,消尽の 効果が生じるか否かを,第三者には知り得ない,譲渡人と譲受人間における事情に 係らせることは,消尽を認める趣旨に沿わないものというべきである。控訴人の主 張は理由がない。
イ なお,控訴人は,譲渡により消尽の効果が生じた場合であっても,譲渡に錯 誤無効があり,又は解除がされたときは,消尽の効果は失われるとも主張し,本件 がそのような場合に当たるとも主張する。 しかし,本件において控訴人が錯誤無効や解除を主張しているのは本件覚書につ いてであり,消尽の根拠となっている被告製品の譲渡についてではないから,消尽 の効果を争う主張としては,それ自体失当というべきである。

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平成30(ネ)10068等  損害賠償請求控訴事件同附帯控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成31年4月18日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴人(一審原告)は、米国法人の製造する医薬部外品を日本にネット販売していました。被控訴人(一審被告)は、日本における独占販売代理店でしたが、原告の商品が真正品ではなく,その販売が薬事法に違反しているなどとホームページに掲載しました。 控訴人(一審原告)は、不競法2条1項15号の不正競争行為であるとして、損害賠償を求めました。
一審の東京地裁(40部)は、33万円の請求を認めましたが、双方が控訴しました。知財高裁(2部)は、被控訴人(一審被告)敗訴部分を取り消していますが、損害額は妥当としました。取り消した原因は、被控訴人(一審被告)は原告に対して弁済をしたとので、損害賠償債権は消滅したというものです。

 ア 本件記載1〜3は,平成27年記事中の記載であるところ,平成27年 記事の内容からすると,同記事を閲読した者が,普通の注意と読み方によって本件 記載1,2の部分を理解すると,同部分には,控訴人が,本件サイトにおいてジョ レン本社の商品を販売しているが,同商品はジョレン本社の商品の真正品ではない こと(同事実を,以下「本件事実1)」という。)が摘示されており,本件事実1)と 共に,控訴人の商品の仕入先が不明であること,控訴人は,ジョレン本社と取引が ないこと,控訴人が販売している商品の価格は極端に安価であること,被控訴人は, ジョレン本社に報告し,控訴人は,販売の中止を求められたが,販売を継続してい ること,控訴人の店舗は,本件サイト上に記載された住所にはないこと,ジョレン 本社では控訴人には大変困っていること(これらの事実を併せて,以下「本件事実 2)」という。)が摘示されており,また,控訴人は,厚生労働省の許認可を受けず に上記商品を販売しており,同行為は薬事法に違反すること(以下「本件事実3)」 という。)が摘示されていると理解するものと認められる。 そして,本件事実1),3)は,同記載を閲読した者に対し,控訴人は,ジョレン社 の商品の真正品でない商品を販売しており,また,同販売行為は薬事法に違反して いると認識させるのであるから,本件記載1,2の掲載によって,控訴人の社会的 評価は低下し,控訴人の信用,名誉が毀損されたというべきである。
・・・
本件記載4は,平成26年記事中の記載であるところ,平成26年記 事を閲読した者が,普通の注意と読み方によって,本件記載4を理解すると,同記 載部分には,最近,顧客からの報告で,商品を,香港経由でアメリカに入れ,本件 商品の真正品と告知して,カリフォルニアなどから,発送している業者を発見した ことが摘示されていると理解するものと認められる。そして,本件記載4では,そ のような業者が控訴人であるとは特定されておらず,また,平成26年記事全体の 記載を考慮しても,上記業者が控訴人であると認識することはできない。 したがって,本件記載4が掲載されたことによって,控訴人の社会的評価が低下 するということはできないから,本件記載4の掲載は控訴人の信用,名誉を毀損す るとは認められない。
(イ) 本件記載5は,平成26年記事中の記載であるところ,平成26年記 事を閲読した者が,普通の注意と読み方によって,本件記載5を理解すると,同記 載部分には,パッケージ,説明書,容器が日本語表記であり,国内発送であること\nを確認し,ジョレンジャパン,日本真正品などの表記のある店舗で本件商品の真正\n品を購入すべきことが摘示されていると理解するものと認められる。 ところで,平成26年記事には,「たとえ,アメリカ真正品であってもパッケー ジが英語表記の物は,保証は致しかねます。」との記載もあり,同記載からすると,\n本件商品については,「アメリカ真正品」も販売されており,パッケージや説明書 等が英語表記であったり,また,日本の正規代理店以外の店舗で販売された本件商\n品の中には「アメリカ真正品」も含まれていると理解することができる。そうする と,平成26年記事を閲読した者は,控訴人商品が,パッケージや説明書等が英語 表記であったり,日本の正規代理店で販売されていないとしても,「アメリカ真正\n品」であると認識することが考えられるから,本件記載5から,直ちに控訴人商品 が真正品ではないと認識するとは認められないし,他に,本件記載5について控訴 人の社会的評価を低下させる記載があるとは認められない。 したがって,本件記載5が掲載されたことによって,控訴人の社会的評価が低下 するということはできないから,本件記載5の掲載は控訴人の信用,名誉を毀損す るとは認められない。
・・・・
ア 本件記載6は,薬事法上の許認可を有しない者が,インターネット等で, 本件商品を並行輸入により販売することは薬事法違反となるという内容であり,同 記事を閲読した者も,そのように理解するものと認められる。 そして,本件記載6が含まれる冒頭記事には,控訴人が薬事法上の許認可を有し ていないことについては一切記載されておらず,控訴人が薬事法上の許認可を有し ないことが本件ウェブページの閲読者に知られていると認めるに足りる証拠もない から,冒頭記事を閲読した者に,控訴人が控訴人商品を販売することが薬事法に違 反することになると認識されることはなく,したがって,本件記載6の掲載により, 控訴人の信用,名誉が毀損されたと認めることはできない。
・・・
本件記載1,2を掲載して本件事実3)を摘示した行為によって,控訴人が被った 損害の額は,上記掲載がインターネット上に公開する方法で行われたこと,その公 開された期間(約1年4か月間)等諸般の事情を考慮すると,30万円と認めるの が相当であり,また,上記行為と相当因果関係の認められる弁護士費用は3万円と 認めるのが相当である。

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◆平成28(ワ)15812

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平成30(ワ)6962  不正競争行為差止請求事件  不正競争  民事訴訟 平成31年2月20日  東京地方裁判所(29部)

 原告は、被告からイヤーパッドを購入し、これを含んだセット物を製造・販売しました。被告は、この行為が、当該イヤーパッドの意匠権侵害だと、拡布しました。原告は、かかる拡布は、不正競争行為に該当すると主張しました。東京地裁29部は、権利は消尽しているので、侵害ではないとして不正競争行為に該当すると判断しました。争点は、報告義務に違反して被告製品を販売した場合は、正当行為でないので消尽するのか?という点です。
 特許権者が我が国の国内において特許製品を譲渡した場合には,当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し,もはや特許権の効力は,当該特許製品を使用し,譲渡し,又は貸し渡す行為等には及ばず,特許権者は,当該特許製品がそのままの形態を維持する限りにおいては,当該製品について特許権を行使することは許されないものと解される(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁,最高裁平成18年(受)第826号同19年11月8日第一小法廷判決・民集61巻8号2989頁参照)。そして,このように解するのは,特許製品について譲渡を行う都度特許権者の許諾を要するとすると,市場における特許製品の円滑な流通が妨げられ,かえって特許権者自身の利益を害し,ひいては特許法1条所定の特許法の目的にも反することになる一方,特許権者は,特許発明の公開の代償を確保する機会が既に保障されているものということができ,特許権者から譲渡された特許製品について,特許権者がその流通過程において二重に利得を得ることを認める必要性は存在しないためであり,この趣旨は,意匠権についても当てはまるから,意匠権の消尽についてもこれと同様に解するのが相当である。
(2)前記第2の2の前提事実(3)のとおり,原告は,本件知的財産権を有する被告か ら,本件知的財産権の実施品である被告製品を購入しているところ,証拠(甲12〜 15)によれば,原告は,被告から購入したイヤーパッドである被告製品を,原告製 品であるイヤホン,無線機本体,原告製品を媒介するコネクターケーブル及びPTT スイッチボックスと併せて,それぞれ別個のチャック付ポリ袋に入れ,原告製品の保 証書及び取扱説明書とともに一つの紙箱の中に封かんした上で販売していると認め られ,そうであれば,原告製品に被告製品を付属させて販売していたにすぎないと認 められるのであり,被告による被告製品の譲渡によって被告製品については本件知的 財産権は消尽すると解される。 よって,原告が原告製品を製造等する行為は,被告の有する本件知的財産権を侵害 しない。
(3)この点,被告は,原告は,本件報告義務に違反して被告製品を販売したものであって,当該販売は不適法な拡布に当たるから,本件知的財産権は消尽しないと主張 する。しかしながら,本件報告義務違反によって消尽の効果が直ちに覆されるといえるかについての判断は措くとして,被告の上記の主張は,原告による契約上の義務違反を いうものにすぎず,本件知的財産権を有する被告によって被告製品が拡布,すなわち 適法に流通に置かれた事実を争うものではないから,被告の上記主張は,その前提を 欠き,採用することができない。
(4)そうすると,原告は,本件知的財産権を侵害していないから,本件行為におい て告知され,流布されている原告が本件知的財産権を侵害している旨の事実は,虚偽 であると認められる。

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平成29(ワ)9834  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成31年1月31日  大阪地方裁判所

 ウェブサイトにおける表現が、不正競争行為(営業誹謗)であると判断されました。\n
 ア 本件ウェブページ1及び2の閲覧者について
 本件ウェブページ1及び2が掲載された被告ウェブサイトは,不特定多数の一般 人に対して公開されているが,本件ウェブページ1及び2を含む本件連載が「50 周年記念サイト」内のコンテンツであること,被告代表者の自伝であること,社内\n報における連載記事の再掲であること等から,本件ウェブページ1及び2の閲覧者 の多くは,被告の事業内容,あるいは被告代表者の業績や人柄に関心を抱く者,具\n体的には被告の関係者や取引業者,競争相手,油圧式杭圧入引抜機を使用した工事 を行う工事業者といった当該業界の者が中心になると考えられる。 したがって,これらの者が,本件掲載文1ないし3に接した際,本件連載中の他 の記事と合わせてどのような認識を持つかについて検討すべきことになる。
イ 当該業界の認識について
平成29年当時,油圧式杭圧入引抜機の製造販売事業を行う会社は,高知県 内においては原告及び被告以外には存在しなかったこと,昭和54年から55年頃 まで,土佐機械工業がサイレントパイラーの部品の製造の下請けをしていたこと,P3が垣内商店でサイレントパイラーの図面作成等に関与した後,土佐機械工業を 経て原告に勤務していること,被告が土佐機械工業に対し同社の製品は被告の発明 の技術的範囲に属する旨を通告したことは前記1で認定したとおりであり,原告の 資本金が2300万円であるのに対し,被告の資本金が80億5567万0215 円であること(甲1,5)を考慮すると,被告代表者であるP1が,本件掲載文1\nないし3として,「当社の下請けで加工を任せていた高知の小さな会社」,「この 会社は平然とコピー機を製造している」,「当社の機械のコピー機をせっせとつく っている件の会社」と記載した際に,土佐機械工業又は原告を指す意図でしたこと は明らかである。 そして,上記各事情は,当該業界の者にとっては知り得ることであったと考えら れるし,前記1で認定したところによれば,被告と土佐機械工業及び原告との間に は,長年にわたって特許権等に関する紛争があり,これらの事情は,当該業界の者 にとって周知であったとされるのであるから,当該業界の者は,本件掲載文1ない し3に記載されている会社が土佐機械工業及びその事業を承継した原告を指すとい うことを容易に理解するものと解されるし,現に,原告の取引先は,本件ウェブペ ージ1及び2に接して原告のことを指すものと理解し,原告に連絡しているのであ る。
(イ)被告は,本件掲載文3について,原告ではなく中央自動車興業を指すもので あると主張する。しかし,「件の会社」という表現は,以前に言及された会社を指す表\現であると解するのが当然であるところ,中央自動車興業は本件連載において本件掲載文3以前に一度も言及されておらず(乙35,被告代表者),中央自動車興業が高知県内\nに本店又は支店を有していたことはないことから(甲28),第28回である本件 ウェブページ2の「件の会社」については,直前の第27回である本件ウェブペー ジ1にある「平然とコピー機を製造販売している高知の小さな会社」を受けた表現\nと解するのが相当であり,逆に,これを中央自動車興業と解する余地はないといわ ざるを得ない。
(2)「コピー機」との表現について\n
ア 「コピー」という表現は,一般には,同一性を保ちつつ,転写,複製,演奏\n等を行うことと解され,権利者の許諾を得ずに著作物,商標,意匠あるいは商品形 態についてのコピーをした場合,多くの場合に権利侵害が成立することから,コピ ー品の製造販売や輸入が違法であることは,一般的な警告の対象とされている(甲 21ないし26,33ないし35,乙22)。 特許権との関係でコピーという表現が使われることは多くはないが,上述した同\n一性の保持を前提とすると,相手方の製品が自身の製品のコピーであると表現する\nことができるのは,外観,構造等が同一,あるいは区別し得ない程度に類似してい\nるような場合か,少なくとも,相手方の製品が,自身の有する特許発明の技術的範 囲に属し,特許権侵害が肯定されるような場合に限られると解される。 そうすると,外観等が類似はしていても,全体としては同一とはいえない場合や,機能や基本となる原理が類似していても,特許発明の技術的範囲に属するのではな\nい場合に,これをコピーと表現した場合,本来は特許法その他の法律により違法と\nされる範囲外の行為について,違法との印象を与える内容を告知することになる。
イ 本件について見るに,原告の製品は,被告のサイレントパイラーと同じ圧入 原理を利用する油圧式杭圧入引抜機であるが,この基本原理自体は,サイレントパ イラーの開発以前である昭和35年から公知であったものであるし,原告の製品の 形状は,サイレントパイラーの形状と一部類似することが認められるが,油圧式杭 圧入引抜機という機械の機能を発揮するためにはある程度決まった構\造・形状を採 らざるを得ないと合理的に推測できるのであって,他の会社がかつて製造していた 油圧式杭圧入引抜機も,サイレントパイラーと主要な構造や形状が類似していたこ\nとが認められる。また,サイレントパイラーの図面作成に携わったことのあるP3 らが,その後土佐機械工業へ転職したことが認められるが,同社は油圧式杭圧入引 抜機の開発に際し,被告の有する特許権等の権利を侵害するおそれがないか弁理士 と相談して調査したとされることは前記認定のとおりである。 そして,被告の特許申請については拒絶査定が確定し,土佐機械工業において杭\n打込引抜機についての特許を取得していることは既に認定したとおりであって,本 件において,土佐機械工業または原告が自らの杭打込引抜機を製造販売することが, 特許権を含む被告の何らかの排他的権利を侵害すると認めるに足りる事実の主張, 立証はなされていない。
ウ 以上によれば,被告は,原告の製品が,被告の製品をコピーしたものである と表現し得る場合ではないにもかかわらず,本件掲載文1ないし3において,原告\nの製品を「コピー機」と記載したものであるから,これは,虚偽の事実に当たると いうべきであるし,既に検討したところに照らし,競争関係にある原告の営業上の 信用を害する行為に当たるというべきである。
エ 被告は,本件連載が被告代表者の自伝であるという性質から,主観的であり\n価値判断を含む記載であることが考慮されるべきであって,本件ウェブページ1及 び2の全体の表現ぶりや,本件掲載文2の「当社が発明した機械ではあるが,一社\nで市場を完全に独占するのはやはり罪悪である。」,「業界の小さな“鬼っ子”にむしろ感謝している。」等の表現から,「コピー機」を作っているとする会社を否\n定的に評価するものではないと主張する。 しかし,本件連載を通じ,被告代表者がサイレントパイラーを発明したことが強\n調されており,本件ウェブページ1においても,「世界ではじめて杭圧入機を実用 化し,世の中になかった「圧入業界」をつくり」との記載がある中で,本件掲載文 2及び3においては,「平然とコピー機を製造している」,「当社の機械のコピー 機をせっせとつくっている」との表現がなされているのであるから,「コピー機」\nという表現が,被告の発明品であるサイレントパイラーの技術を,被告の権利を侵\n害し,あるいは,違法な手段で盗用・模倣したという否定的な文脈で用いられてい ることは明らかであり,この表現に接した者は,原告の製品が被告の製品の模造品や模倣品,違法な権利侵害品であるとの印象を受けるものと認められる。\n上記被告の主張を採用することはできない。
(3) 「引き抜かれた」との表現について\n
本件ウェブページ2の前半は,昭和58年頃,被告の取引先の一つが会社更生手 続開始決定を受けたことをきっかけに,被告代表者が被告の営業担当者に対して社\n外への外出を禁止するという措置を執り,これに反発した営業幹部の多くが退職し, その一部は「件の会社」に引き抜かれたというものであり,被告代表者の措置に反\n発した営業幹部の退職が先行し,引抜きにより退職したとするものではない。 しかしながら,本件ウェブページ1の記載を前提に本件ウェブページ2を見た場 合,本件掲載文3の「当社の機械のコピー機をせっせと作っている件の会社」は土 佐機械工業又はその事業を承継した原告と解されることは前記認定のとおりである し,「コピー機をせっせと作っている件の会社」という否定的表現の中で「引き抜\nかれた」という表現が用いられれば,これに接する者は,土佐機械工業又は原告が,\n違法,不当な手段を用いて,被告の従業員を転籍させたとの印象を抱くものと解さ れる。 本件において,昭和58年1月31日付けで退職した被告の従業員が,土佐機械 工業に転職したとの事実は認められないし,土佐機械工業又は原告が被告の従業員 に対して違法・不当なはたらきかけをしたという事実も認められないから,被告が,本件掲載文3に「件の会社に引き抜かれた」と記載したことは,競争関係にある原 告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したことになる。

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平成28(ワ)15812 不正競争 民事訴訟 平成30年8月17日 東京地方裁判所(40部)

 amazonで並行輸入品を販売していた並行輸入業者に対して、日本の総代理店はamazonに出品停止させました。このことが、営業誹謗行為として損害賠償請求をしました。裁判所は一部の記載について信用毀損行為であると判断しました。
 前記認定のとおり,アマゾン社は,平成27年12月4日に購入者 より本件商品1に関する真贋に関する連絡があったことを理由として, 原告商品の出品を停止し(甲20〜22),同月6日,複数の購入者か ら本件商品1及び3に関する真贋に関する連絡があったことなどを理 由として,原告の出品アカウントを停止した(甲5)。 他方,アマゾン社は,同様にジョレン本社から出品停止の要求を受け たセレブスタイルについては出品停止措置を採ったものの,出品アカ ウントの停止は行わず,カリフォルニアマートについては何らの措置 も採らなかったことは前記認定のとおりである。
原告商品の購入者のアマゾン社に対する連絡内容及び同社の調査内 容は明らかではないものの,前記のとおり,平成27年8月27日付 けのジョレン本社からアマゾン社への連絡文書(乙1の1)には本件 商品1(真正品)の外箱,容器等の写真が添付されており,アマゾン社 は真正品の外箱や容器等の外観を把握した上で原告商品に対する審査 を行ったと考えられることや,同種の製品を販売する上記三社のうち 原告に対して最も厳しい措置が採られていることを考慮すると,アマ ゾン社は,購入者からの連絡内容等を慎重に審査した上で原告商品が 真正品ではないとの判断に至ったものと考えられる。
 これに対し,原告は,アマゾン社は,被告又はジョレン本社からの通 知内容に依拠してアカウント停止に及んだと主張するが,アマゾン社 が自社の運営・管理する本件サイトの利用者に対して出品アカウント 停止という厳しい措置を講じるに当たって,被告又はジョレン本社の 通知内容にそのまま依拠したとは考え難く,その基準に照らして慎重 に審査を行ったと推認するのが相当である。  そうすると,アマゾン社が原告に対し原告のアカウント利用停止措 置を講じたとの事実も,原告商品が真正品ではないことを示す事情で あるということができる。
e 以上を総合すると,原告商品はジョレン本社が製造,販売する本件 商品の真正品ではないものと推認するのが相当であり,これを覆すに 足りる証拠はない。 したがって,原告商品がジョレン本社の販売している真正品ではな い旨の本件記載1の記載が虚偽であるということはできない。
・・・・
被告は,原告が厚生労働省から必要な許認可を得ることなく原告商品 の販売を行っている旨の記載が,原告の営業上の信用を害する虚偽の事 実の摘示であると主張するところ,調査嘱託の結果によれば,カリフォ ルニア州法に基づいて設立された法人である原告が,日本国内の消費者 に対し,米国内で仕入れた医薬部外品である本件商品を直接送付するこ とにより販売する行為は,医薬品医療機器法2条13項所定の「製造販 売」に該当しないため,同法12条1項所定の医薬部外品製造販売業許 可を得る必要はないものと認められる。そうすると,上記記載は,虚偽 の事実を摘示したものであり,これに接した一般人は,原告が関連法令 に違反している業者であるとの印象を受けると考えられるので,原告の 営業上の信用を害するものであるということができる。 これに対し,被告は,調査嘱託先と原告が事前に折衝を行い,事実と 異なる情報が提供されたことから,これを前提とする回答内容の信用性 を低いと主張するが,上記調査嘱託の回答者は嘱託書に記載された事実 に基づき,所管法令の解釈に関する見解を示したものであり,原告との 事前の折衝が当該回答に影響を及ぼしたとの被告主張は理由がない。
ウ 競争関係の有無について
原告商品と被告の販売する商品は,原告商品が真正品であるかどうかに かかわらず,いずれも日本国内の消費者を対象とし,その内容はクリーム ブリーチであることから,競争関係にあることは明らかである。
エ 小括
以上によれば,上記イ1)〜4)の各事実のうち,原告が厚生労働省から必 要な許認可を得ることなく原告商品の販売を行っている旨の事実(上記4)) の摘示は不競法2条1項15号にいう「他人の営業上の信用を害する虚偽 の事実の流布」に該当するが,その余の事実の摘示は同号の不正競争行為 には該当しないというべきである。

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平成29(ネ)10089  虚偽事実の告知・流布差止等本訴請求,特許権侵害差止等反訴請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年2月22日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 プロバイダー宛ての特許侵害であるとの通知書の送付が、営業誹謗行為かが争われました。知財高裁(3部)は公然実施の無効理由があるとして、営業誹謗行為であると判断しました。
 控訴人は,縷々理由を述べて,控訴人による本件ニフティ宛文書の送付は, 社会通念上必要と認められる範囲のものであり,正当な権利行使の一環とし て違法性が阻却されるべき行為であるとか,これについて控訴人に過失はな いなどと主張する。 しかしながら,控訴人が本件ニフティ宛文書の送付に当たり無効理由の有 無について何ら調査検討を行っていないことは,控訴人自身が認めていると ころ,本件特許権1等の出願の経緯や,NTTコムのプロジェクト(本件サ ービスの開発に係る本件プロジェクト)に控訴人自身が参画していた経緯に 照らせば,本件発明1については,本件サービスや甲11発明等の関係で拡 大先願(特許法29条の2)や公然実施(特許法29条1項2号)などの無 効理由が主張され得ることは容易に予測できることであって,たまたま被控\n訴人との間の事前交渉において,かかる無効主張がなされなかったとしても, そのことだけで直ちにかかる無効理由についての調査検討を全く行わなくて もよいということにはならないというべきである。 また,証拠(甲12の1,15の1,16の1,18等)及び弁論の全趣 旨によれば,控訴人は,本件ニフティ宛文書の送付に先立つ平成22年11 月頃から平成23年5月頃にかけて,数か月にわたり,被控訴人との間で, 弁護士・弁理士等の専門家を交えて,被控訴人製品の使用等が本件特許1等 に抵触するものであるか否かについて交渉を行っており,その後,抵触を否 定する被控訴人との間で交渉が暗礁に乗り上げていたにもかかわらず,被控 訴人に対して再度交渉を求めたり,あるいは,訴訟提起を行ったりすること なく,平成26年3月頃から,被控訴人の顧客等に対して控訴人とのライセ ンスを持ちかける文書を送付するようになり,被控訴人から同文書の送付を 直ちに中止するよう求められても,これを中止するどころか,ニフティに対 し,明示的な侵害警告文書である本件ニフティ宛文書を送付するに至ったも のと認められる。 上記のような事情に照らせば,本件ニフティ宛文書の送付は,特許権侵害 の有無について十分な法的検討を行った上でしたものとは認められず,その\n経過も,要するに,被控訴人との交渉では埒が明かないことから,その取引 先に対し警告文書を送ることによって,事態の打開を図ろうとした(すなわ ち,侵害の成否について公権的な判断を経ることなく,いわば既成事実化す ることによって,競争上優位に立とうとした)ものであるといえる(なお, 控訴人は,本件書状3を送った時点では,ニフティが被控訴人の取引先であ るとは知らなかったとも主張するが,事実経過に照らして直ちに信用するこ とはできないし,少なくとも,本件書状4及び本件メールを送った時点では, 既にこれを明確に認識していた〔甲16〕のであるから,かかる事由をもっ て,違法性がないとか,過失がないということもできない。)。 このような控訴人の行為が,社会通念上必要と認められる範囲のものであ り,正当な権利行使の一環として違法性が阻却されるべき行為であるといえ ないことは明らかであり,また,これについて控訴人に過失が認められるこ とも明らかである。 したがって,本件ニフティ宛文書の送付は違法であり,かつ,控訴人には 少なくとも過失が認められるというべきであるから,これに反する控訴人の 主張は採用できない。

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平成27(ワ)36981等  虚偽事実の告知・流布差止等本訴請求事件特許権侵害差止等反訴請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年8月31日  東京地方裁判所(47部)

 CS関連発明について、29条の2違反の無効理由あり、技術的範囲に属しないので、訴外ニフティへのライセンス契約の申し出通知は、不競法の営業誹謗に該当すると判断されました。29条の2の無効については発明者の例外適用も関係しています。
 上記(ア)の認定事実によれば,本件プロジェクトには,NTTコム のプロジェクトチームメンバーの他,Cをはじめとするベース社のメン バーやAをはじめとする被告のメンバーが関与し,A以外の者(例えば, C)からも新たなパスワード登録方法に関するアイデアが出される中で, 同プロジェクトの成果物として甲11発明が完成し,発明者をBとする 特許出願がされたことが認められる。 そして,甲11発明のパスワードの初期登録に係る部分は,1)認証サ ーバがウェブサーバを介してアクセス元の端末装置に初期ワンタイムパ スワード情報登録URLを通知する電子メールを送信し,2)端末装置の ユーザは,上記URLにおいて,認証サーバからウェブサーバを介して 送られたウェブページを見て,縦4個×横12個のランダムパスワード の中から選択し,選択したパスワードを入力し,3)認証サーバから送ら れた2回目のランダムパスワードに対し,端末装置のユーザがランダム パスワードを入力し,4)認証サーバが,2回の入力によりユーザにより 選択されて確定されたランダムパスワードの位置情報をユーザ情報とし てデータベースに登録し,5)認証サーバが,URLを通知する電子メー ルをウェブサーバを介してアクセス元の端末装置に送信する,というも のであると認められる(甲11発明に係る明細書の段落【0018】な いし【0021】参照)ところ,上記部分を具体的に着想,提示した主 体(甲11発明のパスワードの発明者)がAのみであると認めるに足り る証拠はないから,本件発明1と甲11発明の発明者が同一であるとは 認められない。
(ウ) これに対し,被告は,甲11発明の特徴的部分は「位置情報が確定 されるまで,縦4個×横12個の新たなランダムパスワードを端末装置 1が表示する処理を繰り返し行い,これにより,縦4個×横12個の新\nたなランダムパスワードについての特定の座標位置に配置されているパ スワード(すなわち数字)の入力を促す処理を繰り返すこと」にあると ころ,これと同一の特徴的部分を有する方式Cの記載された本件手順案 をAが作成し,NTTコムに送付したことに照らせば,甲11発明の発 明者はAである旨主張する。 この点,本件手順案のデータに係るプロパティには作成者として 「(省略)」と記載されている(乙31の3)が,これをもって直ちにA のみが本件手順案の内容を着想したと推認することはできず,かえって, 本件手順案より前にCにより作成された本件C文書にも,「3)認証後, OFFICのワンタイムパスワードを登録する画面において,自分のパ スワード位置と順序を指定し,確認後,登録する。4)ワンタイムパスワ ード登録完了したことを,URLと共にe−mailで利用者の携帯端 末へ通知する。(このURLは本番用)」といった記載があることによれ ば,本件手順案の内容の一部は,Aが本件手順案を作成するよりも前に 既に本件プロジェクト内において着想されていたものと認められる。し たがって,被告の上記主張を採用することはできない。
ウ 小括
以上によれば,本件発明1は特許法29条の2によって特許を受けられ ないから,本件特許1には無効理由が認められる。

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平成28(ワ)298等  特許権侵害差止等請求事件,債務不存在確認等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年4月20日  大阪地方裁判所(21民)

 特許権侵害事件で、新規性喪失の例外主張における証明書では提出されていなかった証拠がある(関連したものでない)として、無効(特104-3)と判断されました。商品形態模倣(不競法2条1項3号)も否定されました。よって、取引先への告知は、営業誹謗行為(不競法2条1項15号)が成立すると判断されました。
 1 争点2(本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものか)について
(1) 証拠(乙2の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,本件発明の実施品で ある原告製品は,本件発明の原出願である実用新案の出願日(平成26年11月2 6日)より前である同年9月22日以前に,Q2コープ連合に対して納品され,ま たQ2コープ連合においてそのチラシに掲載されて販売され,さらに同年10月1 0日には,被告において市場で取得された事実が認められるから,本件発明は,出 願前に日本国内において公然実施された (特許法29条1項2号)というべきこと になる。
(2) 上記(1)の事由は,本件特許を特許無効審判により無効とすべき事由となるが, 原告は,本件発明の原出願において原告が行った手続により,特許法30条2項に 定める新規性喪失の例外が認められる旨主張する。 そこで検討するに,特許法30条2項による新規性喪失の例外が認められるため には,同条3項により定める,同法29条1項各号のいずれかに該当するに至った 発明が,同法30条2項の規定を受けることができる発明であることを証明する書 面(以下「証明書」という。)を提出する必要があるところ,証拠(甲3)によれば, 原告は,本件発明の原出願(実願2014−6265,出願日:同年11月26日) の手続において,同年12月2日,実用新案法11条,特許法30条2項に定める 新規性喪失の例外の適用を受けるための証明書を提出した事実が認められる(特許 法46条の2,44条4項の規定により,特許出願と同時に提出されたものとみな される。)。 しかし,同証明書は,公開の事実として,平成26年6月2日,原告を公開者, Q1生活協同組合を販売した場所とし,原告が一般消費者にQ1生活協同組合のチ ラシ記載の「ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ(商品名:「ドラム式洗濯機の毛ゴ ミフィルター」)を販売した事実を記載しているだけであって,上記Q2コープ連合 における販売の事実については記載されていないものである。 この点,原告は,上記Q2コープ連合における販売につき,実質的に同一の原告 製品についての,日本生活協同組合連合会の傘下の生活協同組合を通しての一連の 販売行為であるから,新規性喪失の例外規定の適用を受けるために手続を行った販 売行為と実質的に同一の範疇にある密接に関連するものであり,原告が提出した上 記証明書により要件を満たし,特許法30条2項の適用を受ける旨主張する。 しかし,同項が,新規性喪失の例外を認める手続として特に定められたものであ ることからすると,権利者の行為に起因して公開された発明が複数存在するような 場合には,本来,それぞれにつき同項の適用を受ける手続を行う必要があるが,手 続を行った発明の公開行為と実質的に同一とみることができるような密接に関連す る公開行為によって公開された場合については,別個の手続を要することなく同項 の適用を受けることができるものと解するのが相当であるところ,これにより本件 についてみると,証拠(乙16の1,2)によれば,Q2コープ連合及びQ1生活 協同組合は,いずれも日本生活協同組合連合会の傘下にあるが,それぞれ別個の法 人格を有し,販売地域が異なっているばかりでなく,それぞれが異なる商品を取り 扱っていることが認められる。すなわち,上記証明書に記載された原告のQ1生活 協同組合における販売行為とQ2コープ連合における販売行為とは,実質的に同一 の販売行為とみることができるような密接に関連するものであるということはでき ず,そうであれば,同項により上記Q1生活協同組合における販売行為についての 証明書に記載されたものとみることはできないことになる。
・・・・
上記検討した両製品において同一といえる形態的特徴のうち,本体部の形態 が長方形であるという点は,ドラム式洗濯機のリントフィルタに装着して用いる商 品である原告製品及び被告製品にとっては,リントフィルタの内面に沿って装着す るために必然的にもたらされる形態であるといえ,したがってこれは,その機能を\n確保するために不可欠なことであると認められる。また,もう一つの同一といえる 形態的特徴である本体部にスリットが存在するという点も,本件発明の効果をもた らすことに直接関係した形態であることからすると(上記第2の2(2)(10)),これも 両製品に共通する機能を確保するために不可欠な形態であるといえる。\nしたがって,これらの基本的形態で両製品の形態の同一性が認められたとしても, これによって両製品の形態が実質的に同一ということはできないというべきである (なお被告は,これらの形態の特徴をとらえて原告製品はありふた形態であって保 護されないと主張するが,原告製品が市販される以前に,同種の製品が市場に存し た事実は認められないから,商品の形態がありふれていることで保護されないわけ ではなく,機能確保に不可欠な形態として保護の限界が検討されるべきである。)。\n他方,上記検討したとおり,原告製品と被告製品は,機能確保のため必要とされ\nる形態的特徴以外の部分の細部における特徴的な形態というべき部分において形態 の差異が多数あるというのであるから,両製品の形態が酷似しているとはおよそい えず,結局,原告製品と被告製品は形態が実質的に同一であるとはいえないという べきである。
(5) これに対して原告は,両製品は主として通信販売されており,需要者が商品 を手に取って詳細に観察することがなければ両者の違いを認識し得ないから,両製 品の形態の差異は微細な差異で形態が実質的に同一であるということを妨げないよ うに主張するが,不正競争防止法2条4項に「商品の形態」は「需要者が通常の用 法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の 形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう。」と定義されてい ることに明らかなように,本件で問題とすべき原告製品及び被告製品の形態とは, 上記検討したような包装袋から取り出された商品そのものの形態であって,これと 異なる前提に立つ原告の主張は失当である。 さらに,原告は,両製品の包装におけるチラシが共通することも指摘するが,原 告製品及び被告製品は,包装と一体となって切り離し得ないものではないから,原 告が指摘する包装のチラシは「商品の形態」とはいえず,原告の指摘は当たらない。
(6) 以上からすると,原告製品と被告製品とは,その形態が実質的に同一とはい えないから,被告製品は原告製品を模倣した商品とはいえず,被告が不正競争防止 法2条1項3号の不正競争をしたことを前提とする原告の請求はその余の判断に及 ぶまでもなく理由がない。
・・・・
(1) 原告は,平成27年6月11日頃,被告の取引先であるP1に対し,被告製 品は原告製品の形態を模倣した商品であり被告製品を販売する行為は不正競争防止 法2条1項3号に該当するとして,被告製品の販売の停止及び廃棄を求める内容を 記載した「申入書」と題する書面を内容証明郵便で送付している(本件告知行為)。\n上記2のとおり,被告製品は原告製品の模倣商品でないから,上記「申入書」の\n記載内容は虚偽の事実であるとともに,被告の営業上の信用を害する事実であると いうべきである。そして,原告と被告は競争関係にあるから,本件告知行為は,「競 争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知」する行為といえ,不 正競争防止法2条1項15号所定の不正競争に該当する。
(2) そのほか被告は,原告がした不正競争防止法2条1項15号該当の不正競争 行為として,原告が生活協同組合に対して被告の権利侵害の事実を理由として被告 製品の取扱いをすべきでない旨申し入れた旨主張する。\n確かに証拠(乙14の1ないし3,乙15,乙30)によれば,被告は,P2か ら被告製品の販売を中止された事実,及び,P2が被告に対し,被告製品の販売を 中止する理由として,原告の営業担当者から被告製品の販売企画を中止した方がよ いとの要望を受けたという生活協同組合のバイヤーから,そのことを理由に被告製 品の差替えの要望を受けたことを挙げていたことが認められる。 したがって,これらの事実によれば,P2における被告製品の販売中止が,原告 の営業担当の従業員がもたらした行為に起因することが認められそうであるが,前 掲証拠によれば,原告の営業担当者が生活協同組合のバイヤーに伝えた内容という のは「企画を中止した方が良い的な要望」というにとどまるというのであって,そ れだけでは原告が被告の権利を侵害したといった虚偽の事実が告知されたと認める に足りないものである。また,そもそも原告の営業担当の従業員が何らかの接触を したという生活協同組合のバイヤーは,どの生活協同組合であるかを含めて特定さ れておらず,その生活協同組合のバイヤーが実際に原告の営業担当の従業員から直 接働きかけを受けたのかを確かめようがないものである。これらのことからすれば, 原告の営業担当者の行為に起因してP2が被告製品の販売を中止したとしても,そ れをもって原告の不正競争行為を認定することは困難であるといわなければならな い。
(3) したがって,被告主張に係る原告がした不正競争防止法2条1項15号該当 の不正競争については,原告が,平成27年6月11日頃,被告の取引先であるP 1に対し,被告製品は原告製品の形態を模倣した商品であり被告製品を販売する行 為は不正競争防止法2条1項3号に該当する旨記載した「申入書」と題する書面を\n内容証明郵便で送付した事実の限度で認めるのが相当であって,それ以外の生活協 同組合に対する関係では同号の不正競争のみならず不法行為を構成する事実は認め\nられない。

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平成28(ワ)12829  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年3月30日  東京地方裁判所(47部)

 正規代理店がネット上で並行輸入業者に対して中傷するような行為を行いました。並行輸入業者は、不正競争防止法2条1項15号の「「虚偽」の事実の告知・流布」だと主張しましたが、真正商品ではないと判断され、虚偽には該当しないと判断されました。弁論の再開申し出についても認められませんでした。
 ア 商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品に つき,その登録商標と同一の商標を付したものを輸入する行為は,許諾を 受けない限り,商標権を侵害するが(商標法2条3項,25条),そのよ うな商品の輸入であっても,1)当該商標が外国における商標権者又は当該 商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり(第1 要件),2)当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが,同一人で あるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係がある ことにより,当該商標が,我が国の登録商標と同一の出所を表示するもの\nであって(第2要件),3)我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該 商品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該商品と我が国の商標 権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実 質的に差異がないと評価される場合(第3要件)には,いわゆる真正商品 の並行輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠くものと解する のが相当である(最高裁判所平成15年2月27日第一小法廷判決・民集 57巻2号125頁)。
イ 原告は,NIC社製のセラコート塗料を購入した米国協力業者から国際 航空貨物運送業者を介して同塗料の送付を受けた国内協力業者から購入し ており,このことは証拠(甲23ないし28,37ないし40)から明ら かであるから,原告の輸入行為は第1要件を充足する旨主張するので,検 討する。 なお,本件発言等3は平成27年11月18日頃にされたものであるか ら,ここで第1要件を充足することが立証されるべき原告の輸入行為は, 上記時点より前のものであることは当然であり,かかる観点から検討を行 うこととする。 まず,上記各証拠は作成時期が1年以上異なるものも含まれているから, これらを一体として一連の輸出入等に関する証拠であると解することはで きない。 そして,証拠(甲23,24)及び弁論の全趣旨によれば,米国に所在 する氏名不詳の者(以下「A」という。)が,平成28年4月,NIC社 に同社製のセラコート塗料を注文してこれを購入したこと,及び,米国に 所在する氏名不詳の者が,同年5月5日,品名「PAINTS.VARN ISHES & SOLUTIONS,N.E.S」について,日本に所 在する氏名不詳の者に対する輸入許可を受けたことが認められる。しかし ながら,これらは,そもそもいずれも本件発言等3より約4月以上も後の 事実であるから,本件発言等3の内容が虚偽であるか否かの点に直接関係 を有しない上,輸入許可を受けた主体がAであるかは不明であり(甲24 は公正証書〔甲39〕の確認対象になっていない。),輸入許可に係る貨 物がNIC社製のセラコート塗料であるかも不明であり,原告が上記の日 本に所在する氏名不詳の者から上記荷物を受領したと認めるに足りる証拠 もない。 次に,証拠(甲25ないし28,39)及び弁論の全趣旨によれば,A が,平成27年7月25日付けで,日本に所在する氏名不詳の者(以下 「B」という。)に対し,品名「塗料」,総個数「3」を内容とする国際 航空貨物(運送状番号808486953648)を発送して同月27日 に輸出し,同月30日付けで,品名「液体入りプラスチック容器 Cer akote」「0.8kg H−168×1pce」とする内容点検確認 を受けたことが認められる。しかしながら,上記輸出入に係る荷物がNI C社製のセラコート塗料であるかは不明であり,原告がBから上記荷物を 受領したと認めるに足りる証拠もない。 さらに,証拠(甲39,40)によれば,原告が,平成28年5月25 日付けで,Bから品名を「セラコート」とする代金の請求を受けたことは 認められるが,これは本件発言等3より約6月も後の事実であり,上記代 金の対象が本件発言等3より前の取引に係るものであることも認めるに足 りないから,本件発言等3の内容が虚偽であるか否かの点に直接関係を有 しないし,そもそも,当該「セラコート」がNIC社製のセラコート塗料 であるか自体も不明である。 そうすると,原告の提出する上記各証拠をもって,原告が,本件各発言 等の前から,米国協力業者及び国内協力業者を介して,NIC社製のセラ コート塗料を継続的に輸入したと認めることはできず,他に当該事実を認 めるに足りる証拠はない。加えて,本件全証拠を検討しても,日本国内に おいて流通するセラコート塗料にNIC社製ではない非真正品が存在しな いと認めるに足りる証拠もない。 以上によれば,原告の輸入行為が第1要件を充足すると認めることはで きない。
・・・
 (なお,原告は,平成29年2月28日付及び同年3月13日付で弁論再開 を求める上申書を当裁判所に提出したところ,その中には,前記第1要件について「追加証明は十\分可能,かつ,容易であると考えている」とか「この点に\nついて,さらに的確な立証活動を予定している」との記載がある。しかしながら,攻撃防御方法について適時提出主義が採られていることはいうまでもない\nところ(民訴法156条),原告は,自らの行為がいわゆる真正商品の並行輸 入として適法である旨主張して,平成28年4月20日に本件訴訟を自ら提起 したものであり,かつ,訴訟の当初から上記主張の成否は重要な争点となって いたのであるから,原告は早期に必要な立証活動を十分に行うことが当然できたはずである(原告が上申\書で述べるように,この点の証明が容易であるならば,尚更である。)。しかも,原告は,同年10月4日の第3回弁論準備手続 期日において「次回までに主張及び立証を尽くす」と述べ,同年12月1日の 第4回弁論準備手続期日において「並行輸入の第1要件について,他に主張及 び立証はない」と述べている。さらに,上記各上申書の内容を見ても,本判決の結論を左右するに足りるような記載はない。これらの事情に照らして,当裁\n判所は,本件口頭弁論を再開しないこととしたものである。)

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平成28(ネ)10094  損害賠償請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成29年3月22日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 不競法の営業誹謗行為かについて、知財高裁(3部)は、形式的には不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当するが、正当行為として違法性が阻却されると判断しました。結論は一審と同じです。一審判決はアップされていません。
 控訴人コスメディは,原判決が,被控訴人バイオが別件侵害訴訟の訴 訟手続を通じて控訴人ら製品が本件特許権の侵害品であるとの事実を岩 城製薬に告知した面はあると認定しながら,不正競争防止法2条1項1 4号の不正競争(虚偽事実の告知)に該当しないと結論付けた論旨が不 明であると主張する。 よって検討するに,確かに,別件侵害訴訟は,控訴人コスメディのみ ならず,その取引先である岩城製薬をも共同被告(侵害者)として提起 されたものであるところ,同訴訟においては,本件特許の無効を理由に, 本件特許権の侵害を理由とする被控訴人バイオの請求が認められず,同 請求を棄却した一審判決が控訴棄却により確定したのであるから,結果 として,同訴訟において被控訴人バイオが主張していた事実(控訴人ら 製品が本件特許権の侵害品であるとの事実)は,虚偽であったことにな り,また,かかる訴訟手続を通じて,その虚偽の事実が岩城製薬に告知 されたことになる。したがって,かかる岩城製薬に対する告知は,形式 的には不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当する。 しかしながら,かかる告知は岩城製薬に対する訴訟提起によってなさ れたものであるから,これを違法とするかどうかは,別の観点からの考 察も必要である。すなわち,訴えの提起が相手方に対する違法な行為と なるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実 的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者がそのことを知りながら又 は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを 提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当 性を欠くと認められるときに限られる(最高裁第三小法廷昭和63年1 月26日判決・民集42巻1号1頁参照)。 かかる要件を満たさないの に,訴訟提起という形による虚偽事実の告知が形式的に不正競争に当た ることを理由として,これを違法とすることは,たとえ訴訟提起の相手 方(本件では岩城製薬)との関係で違法と評価するものではなかったと しても(不正競争かどうかは,飽くまで競業者である控訴人コスメディ との関係において問題となるものである。),結局はこれを不当提訴で あると断じるに等しく,裁判制度の自由な利用を著しく阻害することと なり妥当でない(むしろ,特許権者が自己の権利を侵害されているとの 認識の下に,当該侵害者を相手方として訴訟を提起することは,当該訴 訟が不当訴訟と評価されるような特段の事情がない限り,裁判を受ける 権利の行使として当然許される行為であるというべきである。)。 したがって,かかる制度的観点からは,特許権者が,競業者ないしそ の取引先に対する関係でおよそ請求が成り立たないことを知りながら, あるいは,当然そのことを知り得たはずであるのに,あえて当該取引先 をも共同被告として訴訟を提起するなど,訴訟制度を濫用的に利用した と評価し得るような特別な事情が存する場合は格別として,そのような 場合でなければ,外形的には不正競争に当たり得るとしても,訴訟提起 自体を違法と評価することはできないというべきである。 これを本件についてみるに,控訴人コスメディは,控訴人ら製品を製 造して資生堂に販売し,資生堂において商品として完成させて岩城製薬 に販売し,岩城製薬において市販していたというのであるから,仮に控 訴人ら製品が本件特許権の侵害品に当たるとすれば,岩城製薬の行為自 体が本件発明の実施行為として本件特許権の侵害に当たるものであるこ とは明らかである。また,別件侵害訴訟においては,結果的に新規性欠 如の無効理由によって本件特許が無効にされるべきものであるとの判断 が確定しているが,被控訴人バイオが,あらかじめ本件特許にかかる無 効理由が存することを知りながら,あるいは,これを当然知り得たはず であるのに,あえて(無理を承知で)同訴訟を提訴したというような事 情はうかがわれないし(別件侵害訴訟の提起に先立ち控訴人コスメディ から無効審判請求がなされていたが,被控訴人バイオとしては,これを 争っており,かつ,提訴の時点ではまだ確定的な判断は示されていなか ったのであるから,それだけでは,被控訴人バイオが無効理由の存在を 知り,あるいは,当然知り得たというには足りない。),被控訴人バイ オに,専ら控訴人コスメディの信用を毀損する目的など,訴訟制度を濫 用的に利用したと評価されるべき不当な目的があったことを認めるに足 りる的確な証拠もない。
以上によれば,被控訴人バイオが岩城製薬を共同被告として別件侵害 訴訟を提起したのは,正当な権利行使の一環というべきであって,それ が外形的には不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当し得る行 為であったとしても,正当行為として違法性が阻却されるものと認める のが相当である。原判決の認定判断もかかる趣旨を述べるものと理解す ることが可能であって,論旨不明との指摘は当たらない。よって,これに反する控訴人コスメディの主張は採用できない。
(イ) 控訴人コスメディは,資生堂に対する告知行為の有無に関して,被控 訴人バイオは,別件侵害訴訟の被告商品の中間流通段階に位置する資生 堂をあえて飛ばして,控訴人コスメディと岩城製薬とを被告にしたもの であって,当然,別件侵害訴訟の顛末は控訴人らから資生堂にも伝わる ことを知悉していたものであるから,被控訴人バイオは,控訴人らを介 して,資生堂に伝達した(告知した)と評価すべきものであると主張す る。 しかしながら,原判決が指摘するとおり,不正競争防止法2条1項1 4号における告知とは,自己が関知した一定の事実を特定の人に知らせ る伝達行為をいうものと解されるところ,別件侵害訴訟は飽くまで控訴 人コスメディと岩城製薬を被告とするものであって資生堂を被告とする ものではないから,同訴訟の提起とその後の訴訟手続をもって資生堂に 対する告知行為と評価することは相当でないし,被控訴人バイオにその 意図があったと認めるに足りる証拠もない。
したがって,資生堂に対する告知行為を認めなかった原判決の認定判 断は正当であり,これに反する控訴人コスメディの主張は採用できない。
イ 研究成果盗用の事実を告知したとの点について
控訴人コスメディは,原判決添付の別紙一覧表(別紙問題記載箇所一覧表\)記載の各記載内容(以下「本件各記載内容」という。)は,誰がみても,一貫して,被控訴人Y2の研究室から,控訴人Xが技術情報を盗取し た(アクセスして控訴人らの事業に使用するなどしている)ことと読み取 れるし,被控訴人バイオにおいても,そのような点における悪質性を謳い あげて,別件侵害訴訟で裁判所の侵害心証を形成したかったものであるこ とは明らかであるところ,結局,被控訴人バイオにおいては,客観的証拠 に基づく具体的事実の指摘ができずに,言いっ放しになっているとして, 上記の点について不正競争(虚偽事実の告知)の成立を認めなかった原判 決の認定判断は誤りであると主張する。
しかしながら,かかる控訴人コスメディの主張も採用できない。 すなわち,不正競争防止法2条1項14号の不正競争の成立を主張する 以上,不正競争を構成する具体的事実の主張立証責任は,飽くまで不正競争の存在を主張する側にあるというべきであるから,本件各記載内容に含\nまれる研究成果盗用の指摘が虚偽事実の告知に当たると主張するのであれ ば,これを主張する控訴人コスメディの側において,かかる指摘が虚偽の 事実であることを具体的に主張立証する必要がある。 さらにいえば,本件においては,被控訴人バイオの側から,控訴人Xは, 京都薬大在籍時に被控訴人Y2の研究成果にアクセス可能であったことや,同大学在籍中に控訴人コスメディの前身となる会社を設立し,その後,本\n件特許権の登録前に,控訴人コスメディが控訴人ら製品を製造販売し始め た経緯があったこと,控訴人Xが発明者の一人となって控訴人コスメディ が平成20年に出願した特許(乙9)に係る発明は,被控訴人Y2の発明 に係る自己溶解性マイクロニードルの基材物質の一つであるヒアルロン酸 を使用していることなど,控訴人Xが何らかの形で被控訴人Y2の研究成 果にアクセスしてこれを取得し,利用したことを推認させる方向に働く具 体的事情の存在が指摘されているのであるから,控訴人コスメディにおい ても,上記推認を弱める方向に働く事実を具体的に主張立証しようとする のが通常の対応であるという余地もある。 そして,これらの主張立証の方法として最も効果的であり,かつ,控訴 人Xにとって容易であるのは,控訴人Xが控訴人ら製品を独自に開発した 過程を明らかにすることであると考えられるところ,控訴人コスメディは, 本件訴訟の控訴審に至るまで,これを全く行っていないのであるから,こ のような控訴人らの対応も含めて考えると,本件各記載内容が虚偽の事実 であると断定することには疑問があるといわざるを得ない。 したがって,上記の点(研究成果盗用の事実を告知したとの点)につい て,不正競争防止法2条1項14号における不正競争(虚偽事実の告知) の成立を認めなかった原判決の認定判断に誤りはないというべきであり, これに反する控訴人コスメディの主張は採用できない。

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平成26(ワ)8922  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年2月17日  東京地方裁判所

 輸入会社が輸入している商品について、特許権侵害であるとの警告について、最終的に侵害でなかった場合、製造会社の信用毀損行為(不競法2条1項14号(改正前))に該当すると判断されました。
 甲4書簡には,原告製品について「本製品は添付の弊社保有特許(特許第 4444410号,発明の名称:歯列矯正ブラケットおよび歯列矯正ブラケ ット用ツール)の請求項1に関連するものと思料しております。」と記載さ れているところ,本件発明に係る特許に「関連する」という文言は,本件発 明の技術的範囲に属する可能性があることを指摘するものと理解するのが素\n直である。そして,被告の常務取締役であるAが,バイオデントに送付した 甲23メールには,本件発明に係る特許について「使用許諾をすべきでない との意見が大勢を占めました。」と記載されており,被告がバイオデントに 対し,本件発明に係る特許の実施許諾をする意思がないことが明らかにされ ている。これらの事実を考慮すると,被告は,バイオデントに対し,原告製 品が本件発明の技術的範囲に属しているという事実及び被告が本件発明に係 る特許について実施許諾をする意思がないという事実を通知したということ ができる。そして,特許権は独占的排他的権利であり,特許権者において実 施許諾をする意思がない場合には,当該特許を業として実施している者は実 施行為を中止するほかないところ,実際にバイオデントは原告製品の販売を 中止しているから,バイオデントも,本件各告知は原告製品の輸入及び販売 の中止を求めるものと認識していたものと認められることからすれば,甲4 書簡による本件告知1の意義がやや不明瞭であるとしても,甲23メールに よる本件告知2を併せてみれば,本件各告知は,被告が,バイオデントに対 し,本件特許権侵害を理由として本件発明の実施行為である原告製品の輸入 及び販売の中止を求める侵害警告に当たると認めるのが相当である。 そして,被告の上記侵害警告は,バイオデントが原告から輸入して販売す る原告製品が特許侵害品である旨の告知であるから,原告の営業上の信用を 害する事実の告知であると認められる。 ところで,本件発明に係る特許については,冒認出願であることを理由と して,これを無効とすべき旨の審決が確定しており,同特許権は初めから存 在しなかったものとみなされるので(特許法125条),バイオデントによ る原告製品の輸入及び販売は,被告の特許権を侵害しないし,また,被告は 特許権に基づいて権利行使することはできない。 したがって,被告のバイオデントに対する本件各告知は,本件発明に係る 特許が存在しないにもかかわらず,原告製品の輸入及び販売がその特許権を 侵害するという事実を告知したものであって,虚偽の事実の告知に当たると 認めるのが相当である。
・・・・
被告は,権利侵害を疑われる行為を行う本人に対して権利侵害の事実を申\n述する行為は,不競法2条1項14号の不正競争行為に当たらないと主張す る。 しかし,バイオデントは権利侵害を疑われる行為を行う本人ではあるもの の,バイオデントに対し,本件各告知がされることにより,バイオデントで はなく,原告製品の製造元である原告の営業上の信用が害されるのであるか ら,上記告知は,「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知」に当た るというべきである。この点に関して被告は,バイオデントは原告と同一視 されるべき地位にあるなどとも主張するが,これを認めるに足りる証拠は ない。 また,被告は,本件各告知は正当な権利行使であり違法性が阻却されると も主張するが,上記(2)で説示したとおり,被告のバイオデントに対する本件 各告知行為には,登録された権利に基づく権利行使の範囲を逸脱する違法が あるというべきであるから,本件各告知は,正当な権利行使には当たらない というほかない。したがって,被告の上記主張はいずれも採用することができない。

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平成27(ネ)10109  損害賠償請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成28年2月9日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 不競法の信用毀損行為について、過失なしと判断されました。
 特許法2条3項1号は,物の発明について,その物の生産,譲渡,輸入又は譲渡 等の申出をする行為を,実施行為と定義している。\n本件においては,一審原告がE&E社等を経由してエバーライト社から本件製品 を輸入,販売したことを認めるに足りる証拠はない。また,上記認定事実によれば, 一審被告も,本件プレスリリース当時,一審原告による本件製品の輸入,販売を立 証し得る直接的な証拠を有していたわけではない。 しかし,譲渡等の申出については,製品のカタログやパンフレット等を示して販\n売の申出をする行為がその典型的な例であると解されており,製品のカタログ等に\nついては,商社や代理店等がこれを作成する場合があるとしても,製造メーカーが これを作成し,販売会社がそのカタログを利用して譲渡の申出をする場合等が多い\nと推認される。 そして,現代の社会においては,カタログだけではなく,インターネットのウェ ブサイトに製品を掲載してこれを宣伝広告し,販売することも多いことからすれば, 仮に一審原告のような商社が,自社のウェブサイトに,取扱製品と同製品の販売に 必要な情報を直接掲載し,その販売をする趣旨の記載をしていれば,同製品につい て,譲渡等の申出をしていることになると解されるところである。また,そうでな\nくとも,一審原告のような商社が,自社のホームページにおいて,特定の複数の製 造メーカーを紹介した上で,その製品を販売する旨を記載し,その趣旨で当該製造 メーカーのウェブサイトにリンクを貼り,同サイトにおいて各製品の種類と仕様等\nの販売に必要なデータが説明されている場合にも,製造メーカーのウェブサイトを 利用する形での同製品について譲渡の申出をしているものと解される。すなわち,\n商社がそのウェブサイトにおいて製造メーカーのウェブサイトにリンクを貼るだけ\nで,同メーカーのウェブサイトに掲載されている製品のすべてについて常に譲渡の 申出をしていると解することはできないけれども,その商社と製造メーカーとが取\n引関係にあることが記載され,当該商社に問い合わせれば当該製造メーカーの製品 を購入することができる趣旨の記載があり,かつ,製造メーカーのウェブサイトに は,製品の種類や仕様等の販売に必要な情報が開示されているなどの状況があれば, 製造メーカーのウェブサイトにリンクを貼り,これを利用している場合でも,製造\nメーカー作成のカタログを利用する場合と同様に,製造メーカーのウェブサイト掲 載の製品について,譲渡の申出をしていると解される。\nこれを本件についてみるに,一審原告のウェブサイトは,商社である一審原告が, 「半導体 規格品からユーザー仕様まで,ニーズに合わせた半導体やデバイス製品 を豊富な製品ラインアップから提供いたします。」との記載とともに,エバーライト 社を含めた複数の取扱メーカーの名称を列記し,これによりこれらの製造メーカー と一審原告とが取引関係にあることを示した上で,各メーカー紹介のページの中で で,エバーライト社の事業内容がLEDパッケージ等であること等を個別に紹介し, その上でエバーライト社のウェブサイトにリンクを貼り,そのウェブサイトにおい\nて同社が製造販売する各製品とその製品の詳しい仕様をみることができるようにな っているというものである。LEDパッケージは,製品の部品として購入されるも のであるから,これを購入するのは,製造メーカーやその代理店等の取引業者であ ると推認されるところ,一審原告のウェブサイトを見た取引業者は,一審原告が商 社としてエバーライト社の製品(その主力は,前記認定のとおり白色LED製品で あり,本件製品はその一部である。)を取り扱っており,一審原告に問い合わせれば, エバーライト社から白色LED製品等を購入することができると理解するものであ り,また,製品の詳細については,リンクが貼られているエバーライト社のウェブ\nサイトから,その詳しい仕様も見ることができるものである。そして,一審原告の ウェブサイトにおいては,エバーライト社の製品について,一部取扱ができない製 品がある等の記載はない。 上記の状況によれば,一審被告は,一審原告のウェブサイト及びこれとリンクさ れているエバーライト社のウェブサイトを見て,一審原告がエバーライト社のウェ ブサイトに掲載されている白色LED製品等を取り扱っており,取引業者からその 商品を購入したいとの申込みがあり,価格等の条件が合致すれば,これを販売する\nと理解したものであり,一審原告がエバーライト社のウェブサイトに掲載されてい る本件製品を含む白色LED製品について譲渡の申出をしていると理解したとして\nも,無理からぬところである。 そして,一審被告は,その後本件製品と本件製品に使用されているLEDチップ の構造,構\成材料等を分析し,本件特許発明の当時の請求項1の技術的範囲に属す ることなどを確認した上で,先行訴訟を提起し,本件プレスリリースを掲載したの であり,一審被告が本件プレスリリースを掲載したとしても,一審被告には過失が あったものとは認められない。 なお,本件特許発明の請求項1については,その後訂正がなされているものの, 一審原告は,本件訴訟において,仮に一審原告が本件製品の譲渡等をしていたとし ても,本件製品は本件特許権を侵害するものではないから,一審被告による本件プ レスリリースの掲載は,不正競争行為に当たる,等の主張はしていないのであるか ら,本件の不正競争行為の過失の判断において,本件製品が本件特許発明の訂正後 の請求項1の技術的範囲に属するか否かに関し,これ以上詳しく判断する必要はな い。
ウ 一審原告の主張について
一審原告は,単に商社がメーカーのカタログを店舗に備え置いているだけで,譲 渡の申出が認められるとは限らない(カタログの内容や備え置きの態様や利用態様\nにより個別に判断されるべき問題である。),第三者(エバーライト社)の行為や顧 客の行為(クリック行為)を,一審原告の行為と評価することができる法的・事実 的根拠など存在しない,と主張する。 確かに,商社がメーカーのカタログを店舗に備え置いただけで,常に譲渡の申出\nがあると認められるわけではなく,カタログの内容やその備え置きの態様及び利用 態様により,個別に決められるべきであるというのは,一審原告主張のとおりであ る。しかし,一審原告のウェブサイトの記載からは,一審原告がエバーライト社と 取引関係にあり,エバーライト社のウェブサイトに詳細に記載されているLED製 品を販売すると理解することができるのであるから,一審被告が,一審原告のウェ ブサイト及びこれとリンクされているエバーライト社のウェブサイトを見て,一審 原告がエバーライト社のウェブサイトに掲載されている白色LED製品等を取り扱 っており,取引業者からその商品を購入したいとの申込みがあれば,これを販売す\nると理解し,一審原告が,エバーライト社のウェブサイトに掲載されている本件製 品を含む白色LED製品について譲渡の申出をしていると判断したとしても,無理\nからぬところであるのは前記認定のとおりである。 また,一審原告は,一審被告が一審原告による本件製品の輸入,販売及び譲渡の 申出があったと主張することは,事実上先行訴訟の蒸し返しである,先行訴訟と本\n件訴訟とは訴訟物が異なるものの,訴訟経済の観点から,一審被告の上記主張は信 義則に反する,と主張する。 しかし,先行訴訟と本件訴訟とは訴訟物が異なるものであり,のみならず,先行 訴訟の被告であった一審原告が本件訴訟を提起しているものであって,先行訴訟の 原告であった一審被告は,本件訴訟において被告としてその防御活動をしているに すぎず,積極的に先行訴訟の蒸し返しを行っているわけではない。また,本件訴訟 では,一審被告の本件プレスリリースが不正競争行為に当たるか否かのみならず, その行為に過失があるのか,あるいは正当行為として違法性阻却事由があるのかな ども争点になるのであり,一審被告のこれらの主張が信義則に反するということも できない。
エ 結論
以上によれば,一審被告の本件プレスリリースの掲載については,一審被告が, 一審原告のウェブサイトから,一審原告が本件製品について譲渡等の申出をしてい\nると判断したことは無理からぬところである。そして,一審被告は,その後本件製 品と本件製品に使用されているLEDチップの構造,構\成材料等を分析し,本件特 許発明の当時の請求項1の技術的範囲に属することなどを確認した上で,先行訴訟 を提起し,本件プレスリリースを掲載したのであり,一審被告が本件プレスリリー スを掲載したとしても,一審被告には不正競争防止法4条の過失があったものとは 認められない。 よって,一審原告による同法4条に基づく損害賠償請求は理由がない。

◆判決本文

◆1審はこちら。平成26(ワ)3119

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平成27(ワ)2587等  不正競争防止法違反行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成27年12月10日  東京地方裁判所

 不競法2条1項1号に該当するとする流布行為は、営業誹謗行為であると認定されました。
 上記事実関係によれば,原告各製品の形態は,従来の同種製品に比し,無色透明のガラス製で,パイプに多数のスリットを並設した点においてそれなりの独自性を有するということができるが,原告各製品が大量に販売されたとは認められず(年間平均900本程度であり,市場規模や占有率は証拠上明らかでないが,これを多数と評価すべき事情があることはうかがわれない。),原告各製品の形態上の特徴を強調した宣伝広告ないし販売活動がされたと認めるべき証拠もない。そうすると,原告各製品の形態が需要者の間においてその出所を表示するものとして認識されていたとは認められないから、原告の主張する前記(1)1)〜3)の形態が法2条1項1号にいう商品等表示に当たるということはできない。\n
・・・・
 被告は,原告による本件文書の送付により被告各製品の売上げが激減し,逸失利益は100万円を下らない旨主張する。 そこで判断するに,証拠(甲1,乙12,13,28,29)及び弁論の全趣旨によれば,1) 本件文書は平成26年11月頃に原告各製品を取り扱う問屋十数件及び小売店約400店に送付されたこと,2) 上記問屋及び小売店の多くは被告の製品も取り扱っていること,3) 被告各製品の販売本数は,平成26年9月及び10月には合計約500本(月250本程度)であったが,同年11月から平成27年7月までの販売本数は合計約300本(月33本程度)であったこと,4) 平成26年9月に複数回被告各製品を購入しながら,その後一切の購入を止めたり,数か月間注文を控えたりした取引先が複数あること,5) 被告における被告各製品の仕入れ及び販売価格は,被告製品1が約640円及び約1000円,被告製品2が約610円及び約950円であること,以上の事実が認められる。 上記事実関係によれば,上記3)の本件文書の送付前後での販売本数の減少の少なくとも一部は本件文書の送付を原因とするものとみるのが相当である。そして,これによる被告の損害額は20万円(販売本数の減少1000本,1本当たりの利益200円)と認めることができ,これを上回る損害額を認めるに足りる証拠はない。

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平成24(ワ)31523  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年12月18日  東京地方裁判所

 均等侵害が認められました。また、不競法2条1項14号に該当するとして、損害賠償が認めれました。
 被告製品3は,本件発明の構成要件A1)〜C及びEを充足するものであるが,本件発明が制水駒を接合金具に内嵌するブッシュを介して通水室に内設するものであるのに対し(構成要件D),ブッシュを設けることなく制水駒を接合金具に形成されたV型のテーパに圧入することによって通水室に内設する構\成を採用しているから,構成要件Dを文言上充足しない。\n原告らは,被告製品3は上記のとおり特許請求の範囲に記載された構成と異なるが,1) ブッシュを介して内設することは本件発明の本質的部分ではなく,2)これを被告製品3のように置き換えても本件発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,3)そのように置き換えることに本件発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が被告製品3の製造時点において容易に想到することができたものであり,4) 被告製品3が本件特許権の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから出願時に容易に推考することができたものではなく,かつ,5) 被告製品3が特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないから,被告製品3は特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして本件発明の技術的範囲に属する(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)と主張するのに対し,被告らは原告らの主張のうち上記3)の点のみを争っている。
イ そこで判断するに,本件発明における通水室は,水栓の口端に接合される接合金具と水を吐出する吐出金具との間に形成され(構成要件A1)〜3),上端(入水側)と下端(出水側)が開口された筒状の空間を指すものと解される(明細書(甲8)の段落【0007】,【図2】参照)。また,構成要件Dの「ブッシュ」は,特許請求の範囲の文言上,接合金具に内嵌され,上記通水室に制水駒を内設させるものとされているが,明細書の発明の詳細な説明の欄をみてもその具体的な構\成やブッシュを設けることによる作用効果に関する記載は見当たらない。そして,構成要件Cに記載の構\成から成る制水駒を通水室に内設することにより,1個の制水駒によって多様の流量制御に対応することができるという本件発明の技術的意義(明細書の段落【0003】〜【0005】参照)に照らすと,制水駒は,上記形状の通水室内に下端から落ちることなく止まるよう,また,制水駒と通水室の間から水漏れがしないよう,通水室内に固定されていることを要すると解すべきものとなる。 ところで,通水室に制水駒を固定するに当たっては,これらを直接結合するか,他の部材を介して間接的に結合するかのいずれかであるところ,本件発明は後者を採用したものであるが,ブッシュを介在させることの技術的意義は明細書に記載されていない。また,物を製造するに当たり,製造原価を削減する,工程を減らし工期を短くするなどの目的で部品の数を減らすことは,当業者であれば当然に考慮すべき事柄と解される。そうすると,本件発明の特許請求の範囲及び明細書の詳細な説明の記載に接した当業者であれば,ブッシュを省略し,制水駒を通水室に直接結合する構成への設計変更を試みるものと考えられる。そして,本件発明の実施例に示されたとおり,通水室の断面及び制水駒の形状が円形であること,通水室には上端から下端方向に水が流れることからすれば,制水駒が下端から落ちることなく,かつ,制水駒と通水室の間から水が漏れないように両者を\n固定するため,接合金具の内側を下端側が狭まったV型のテーパ状に形成し,その円周部分に円盤状の制水駒を直接圧入するように構成することは,当業者にとって容易に想到できた\n
・・・・
上記事実関係によれば,甲17書面及び甲18書面は,「被告2社には本件発明を実施する権利がなく,被告2社による節水装置の製造販売は特許権侵害になる」旨の警告や通知をした原告らの行為が被告2社に対する誹謗中傷に当たる旨の事実を告知するものということができる。ところで,被告2社による本件特許権の侵害行為が認められることは前記1において認定判断したとおりであり,特許権侵害に関する請求につき説示したところによれば,原告らによる上記警告等は特許権者又は専用実施権者として登録された者による正当な権利行使の範囲を出るものではないと解される。そうすると,これが誹謗中傷であるとする被告2社による上記告知は虚偽であるといわざるを得ない。そして,このような記載内容に照らせば,これが原告らの営業上の信用を害することは明らかと解される。 したがって,上記1)の告知行為は不正競争防止法2条1項14号に該当すると認められる。
・・・
したがって,原告らは,被告らに対し,被告らが甲17書面及び甲18書面においてD及び原告アースアンドウォーターが被告らを「誹謗中傷」した旨を告知したことにつき,不正競争防止法2条1項14号,4条に基づき,原告ごとに35万円及びこれに対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めることができる。

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平成23(ワ)40428等 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成26年05月16日 東京地方裁判所

 営業誹謗行為(不競法2条1項14号)として、差止および損害賠償が認められました。
 原告は,本件報告書を,平成22年頃,J.フロントリテイリング株式会社及び株式会社鉄道会館に,平成23年1月頃,鹿島建設株式会社に対し各提出し,これらの企業等に対し,被告商品の脱臭性能に関する説明が虚偽であり,脱臭性能\がない旨の説明を行った(乙42,44,弁論の全趣旨)。
・・・
そこで,上記企業等に対し,本件記載1ないし3のある本件報告書を交付し,又は被告商品の脱臭方法に関する説明が虚偽であり,被告商品には脱臭機能がない旨の説明をすることが,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」を告知等する行為(不競法2条1項14号)に該当するか否かについて検討する。\n
・・・・
したがって,本件報告書1の本件記載1及び2は,いずれも「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」の記載に当たるものであり,このような記載を含む本件報告書1を,被告カルモアの取引先である鉄道会館等や鹿島建設株式会社に交付する行為は,不競法2条1項14号所定の不正競争に該当する。

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平成25(ワ)30183 発信者情報開示請求事件 不正競争 民事訴訟 平成26年06月04日 東京地方裁判所

  英会話教材「スピードラーニング」を販売している会社が、不競法2条1項14号に基づく発信者情報の開示を求めました。裁判所は、これを認めました。
 (1) 本件表示は,「スピードラーニングの口コミって嘘でしょ。効果の無い英会話教材」と表\示したタイトル部分と,冒頭に「スピードラーニングの口コミって嘘でしょ。効果の無い英会話教材」と大きく表示し,その下部に「スピードラーニングの口コミは嘘としか思えません。今話題のステマと言わんばかりの高評価に呆れます。」とやや小さく表\示した説明部分を含むものである(甲1の1)。ここで,「ステマ」とはステルスマーケティングの略であり,消費者に宣伝と気付かれないように宣伝行為を行うことを意味するものである(甲2の3)。(2) 上記(1)の表示は,本件サイトの管理者において,原告教材が口コミにおいて高評価であるにもかかわらず,原告教材に効果を感じられなかったこと及び上記高評価はステルスマーケティングによるものとも思われるほどであり,呆れる旨を表\示したものと解される。しかし,当該表示が名誉又は信用を毀損するものに当たるか否かは,一般読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきところ,一般読者の普通の注意と読み方によった場合,上記(1)の表示は,原告教材の口コミが原告教材を実際に購入し,使用した者によって作成されたものではなく,原告がステルスマーケティングによって作成した嘘のもの,すなわち原告が自ら又は第三者に依頼して意図的に作出したものの可能\性があるとの印象を与えるものであるということができる。原告が外国語教材の企画・開発及び販売等を業とする法人であることは前記前提事実(1)アのとおりであるところ,原告が,その販売する商品である原告教材につき,高評価の口コミを自ら作出している可能性があるということは,原告の名誉,信用等の社会的評価を低下させるものであるというべきである。(3) 本件表示は,上記(1)の表示に続けて,「実際の購入者しか分からないと思いますが,スピードラーニングの教材内容じゃ,英会話は上達しませんし,効果もありません。」と表\示した説明部分をも含むものであるから(甲1の1),上記(1)の表示は,本件サイトの管理者において,原告教材に効果が感じられなかったことに基づいて記載されているものと認められるところ,本件サイトの体裁等(甲1の1)に照らし,本件サイト管理者は一個人であることがうかがわれるのであるから,このような個人において,原告教材に効果を感じられなかったことは,原告が原告教材につき高評価の口コミを自ら作成している可能\性があることを裏付けるに足るものではない。したがって,本件において,本件表示が真実であり,又は真実であると信ずるにつき相当の理由があるものとは認められず,本件表\示に違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情は存在しないものと認められる。 (4) したがって,本件表示の掲載は,原告の名誉・信用等の社会的評価を低下させるものであって,原告人格権を侵害するものであることが明らかである。\n

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平成23(ワ)38799 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成26年01月30日 東京地方裁判所

本件訂正後特許についてこれを無効とする審決がされることが見込まれるということはできないとして、営業誹謗行為ではないと判断されました。
 原告は,本件訂正後発明はフォトルミネセンス蛍光体の組成を限定していないのに対し,本件原出願明細書には組成が限定されていないフォトルミネセンス蛍光体を用いることが記載されていないから,本件訂正後特許は分割要件に違反すると主張する。そこで判断するに,前記前提事実(4)に加え,証拠(乙30,38)及び弁論の全趣旨によれば,本件特許については分割要件違反を理由とする無効審判請求がされ,特許庁がこれを不成立とする審決をしたところ,これを取り消す旨の本件審決取消判決がされたこと,被告はこれを受けて訂正審判を請求し,特許庁は,本件訂正後特許には分割要件違反その他無効理由が存在しないと判断して,本件訂正を認める旨の審決をしたことが認められる。また,証拠(甲45,47,乙24,25,31)及び弁論の全趣旨によれば,本件原出願明細書には実施形態又は実施例として組成が限定された蛍光体のみが記載されているとはいえないと解することが可能であって,この趣旨をいう専門家の意見書も提出されている。これらの事情を総合すると,分割要件違反の有無については第1次的には専門的知識経験を有する特許庁の審判手続により判断されるべきところ(特許法178条6項参照),本件訂正後特許についてこれを無効とする審決がされることが見込まれるということはできない。そうすると,不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為の有無が争われている本件訴訟において,分割要件違反を理由として本件プレスリリース1により告知流布された前記事実が虚偽であると解することはできないというべきである。\n

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平成24(ネ)10044 損害賠償請求等控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成25年09月10日 知的財産高等裁判所

 不競法2条1項14号(営業誹謗行為)による損害賠償請求について、一審は棄却しましたが、控訴審は認めました。
 控訴人は,平成24年11月5日付け控訴人準備書面(1)各別表及び控訴人執行役員経営企画室長σの報告書(甲222)を提出し,兼松については月額46万9233円,日本エイサーについては月額49万8737円,第一エージェンシーについては月額49万7316円,ファーストプロモーションについては月額266万7775円,KDDIについては月額94万8659円と主張する。確かに,σの報告書(甲222)には売上原価欄は各社ごとのスタッフ賃金等の内訳が記載されていないが,少なくともその合計額は記載されているし,同業他社と比較して高すぎるともいえず(甲242の2),平成20年10月当時の議事録で記載された相当高い利益率(乙132)に基づく数値を下回っている。また,粗利率が予\算と食い違っていても(乙132,137),結果的に予算を上回る利益を上げたのであれば,それは売上げが当初の予\定よりも大きかったないし経費を削減できたということを意味するだけで,σの報告書自体が直ちに不自然ということにはならないともいえる。しかしながら,売上原価が黒塗りされており,控訴人の平均粗利率の計算根拠が必ずしも明確でない部分が多々あるといわざるを得ない。また,控訴人が15〜17%程度の利益率を前提に予算を組んでいたという事情(乙137)自体は,取引先ごとに多少のばらつきがあるとしても,控訴人が利益を確保できる最低限のものと評価できる合理的な内容であったと推認するのが相当である。加えて,控訴人が原価から差し引いているのはスタッフ賃金,交通費,社会保険料,諸経費等のみであるところ,諸経費の内訳は不明であり,少なくとも営業経費が差し引かれている記載とはうかがわれないし,さらに通信費等の営業経費は差し引いた上で損害を算定するのが相当であるから,利益率は控訴人の主張を更に下回ると認めるのが相当である。このようにしてみると,取引先各社について平均利益率を15%とみるのが相当であり,かつ,各社の売上げについては,甲222における各月の売上げの平均や推移等を参考にすると,兼松については月額の売上げが180万円程度,日本エイサーは200万円程度,第一エージェンシーは180万円程度,NTTアドは1000万円程度,KDDIは350万円程度と認めるのが相当であり,各社の月額の利益は,兼松27万円,日本エイサー30万円,第一エージェンシー27万円,NTTアド150万円,KDDI52万5000円となる。\n
(3) 損害の算定兼松については,月額の利益27万円に,契約継続期間がそれぞれ4か月,7か月,10か月半,20か月と異なるから,月額の利益の4分の1ずつを乗ずることとし,日本エイサーについては,月額の利益30万円に契約継続期間7か月を乗じ,第一エージェンシーについては,月額の利益27万円に契約継続期間36か月を乗じ,NTTアドについては,月額の利益150万円に契約継続期間36か月を乗じ,KDDIについては,月額の利益52万5000円に契約継続期間21か月を乗ずると,合計額は7964万6250円となる。うち,原審での請求に当たる1年分の合計は3244万1250円である。控訴人は,平成21年8月11日,被控訴会社に対し,本件不正競争に基づく損害賠償請求権を自働債権とし,本件業務委託料の支払債務を受働債権として対当額で相殺するとの意思表示をしたが,被控訴会社の控訴人に対する債権額の元本額が1946万8170円であることに当事者間で争いがない。本件損害賠償請求権の弁済期が平成21年8月26日,本件業務委託料債権の弁済期が同年7月31日であり,相殺適状時期は遅い方の同年8月26日となる。まず,同日をもって,充当の順序として不利益を被る控訴人が指定したように双方の債権元本を対当額で充当すると,元本対当額は消滅し,それ以降の対応遅延損害金の発生はない。それまでの遅延損害金については,1946万8170円に対し,相殺適状の時点で,控訴人の本件業務委託料債務の遅延損害金として発生していた平成21年8月1日から同月26日までの商事法定利率年6分の8万3206円(1946万8170円×0.06×26/365≒8万3206円〔一円未満四捨五入〕)が発生しているが,これも相殺により消滅したことになる。したがって,第1事件の請求が認められるのは,本件業務委託料1946万8170円及び8万3206円を控除した額であり,全体の合計額は6009万4874円となり,原審での請求分は1288万9874円となる。\n

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平成25(ネ)10018 特許権侵害差止等請求権不存在確認等請求控訴 特許権 民事訴訟 平成25年08月28日 知的財産高等裁判所

 1審では、特許権侵害として取引先に告知した行為について、先使用権が認められました。その結果、虚偽の事実の流布として、不正競争行為として差止および損害賠償が認められました。2審では損害額が減額されました。
 控訴人らの前記信用毀損行為により被控訴人らが被った無形損害は,控訴人らの 信用毀損行為の態様,回数,内容に加えて,本件口紅は本件特許訂正発明の技術的 範囲に属するものの,被控訴人らに先使用権が発生する結果,本件特許権の侵害と ならないことなど本件における諸般の事情を総合考慮し,被控訴人ら各自につき1 00万円と認めるのが相当である。

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◆原審はこちらです。平成23(ワ)7407

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平成21(ワ)34497 損害賠償等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成25年03月28日 東京地方裁判所

 元社員による不競法の営業誹謗行為が認定されました。
 前記前提事実によれば,1)平成15年5月に,原告の販売する植物ミネラル水(ロット番号2185B)について,福岡市城南区保健所に健康被害(下痢)の苦情が寄せられたことを端緒として,新宿区保健所が,調査を開始し,ロット番号2185Bの植物ミネラル水と同日にロックランド社から輸入されたロット番号2185Cの植物ミネラル水について成分規格及び細菌検査を実施した結果,「カドミウム」が検出されたことから,同年6月20日,ロット番号2185Cの商品について旧食品衛生法7条2項違反の認定をし,原告に対し,その旨を伝え,上記商品の回収指示をしたこと,2)原告は,上記回収指示を受けて,原告の会員に対し,ロット番号2185Cの商品について開封及び未開封の商品の本数を原告に連絡するよう求め,さらには,同年7月16日付け「商品回収のお願い」と題する書面(甲17の2)を送付し,同書面において,保健所から未開封商品の回収指示があったこと,会員の手持ちの未開封商品については代替商品と交換し,既に開封してある商品については新たな「飲み方のラベル」の記載に従って愛飲するようお願いする旨を述べていること,3)原告が新宿区保健所長に提出した答申書(甲17の1)によれば,新たな「飲み方のラベル」には,原液を「10倍程度希釈」して飲む旨の注意書きが記載されていること,4)原告が,同年10月ころ,原告の会員から,原告の販売するロット番号3109Aの植物ミネラル水の商品について,開封した後あまり時間が経過しないうちに,黒い浮遊物や濁りが出てくるという問合せを受け,製造元に確認し,それは酵母のようなものである旨の回答をし,また,原告による原因調査の結果,かびが検出されたこともあったので,その旨を原告の会員に伝えたこともあったが,この黒い浮遊物や濁りの問題について,原告が保健所から行政指導や行政処分を受けたことはなかったことが認められる。上記1)ないし4)によれば,甲5文書及び甲6文書に記載された,原告が黒かびをはじめバクテリアが原因と思われる汚染商品が出回ったことを理由に販売停止処分を受けたが,販売停止処分の対象となった汚染商品のロット商品番号を顧客に告知せず,隠蔽したという事実は,真実に反するものであり,「虚偽の事実」(不正競争防止法2条1項14号)に該当することが認められる。

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平成23(ワ)7407 特許権侵害差止等請求権不存在確認等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年01月31日 大阪地方裁判所

 特許権侵害として取引先に告知した行為について、先使用権が認められました。その結果、虚偽の事実の流布として、不正競争行為として差止および損害賠償が認められました。
 以上のとおり,原告らは,本件特許発明につき,「特許出願に係る発明を知らないでその発明をした者から知得して,特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者」に当たるから,少なくとも本件容器の実施形式の範囲で先使用権を有するものである。したがって,原告らが本件口紅を販売等することは,被告P1の有する本件特許権の侵害にはあたらないというべきである。
・・・・
前記判断の基礎となる事実(第1の1(5))記載のとおり,被告P1は,原告らの取引先に書面を送付して,原告らによる本件口紅の販売等が被告P1の本件特許権を侵害する旨の事実を,それぞれ告げたものであり,被告atooは,これに沿う記事及び原告らと被告らの紛争の経過をそのウェブサイトに掲載したものである。しかし,前記のとおり,原告らによる本件口紅の販売等は,被告P1の本件特許権を侵害するものとは認められないのであるから,被告らの上記行為は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布」するものとして,不正競争防止法2条1項14号の定める不正競争行為(信用毀損行為)に該当するといえる。そして,上記書面の送付は被告P1の名によるもの,ウェブサイトへの掲載は被告atooによるものであるが,内容的に一体のものとして行われていること,前記第1の1(3)のとおり,原告らは「ロレアル」のブランドの下に一体で事業を行っていることを考慮すると,上記信用毀損行為は,被告らが共同して,原告ら各々に対し行ったものと認めるのが相当である。

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平成24(ワ)11119  不正競争 民事訴訟 平成24年12月06日 東京地方裁判所

 原告が弁護士で、被告が行政書士です。双方とも代理人ついてません。裁判所は、信用毀損として50万円の損害を認めました。
 不正競争防止法2条1項14号の「競争関係」とは,事業者間の公正な競争を確保するという同法の目的に照らすと(同法1条),現実の市場における競合が存在しなくとも,市場における競合が生じるおそれがあれば足りると解するのが相当である。弁護士法3条1項が弁護士の職務として定める「その他一般の法律事務」とは,法律に関する事務全般をいい,行政書士法1条の2第1項が行政書士の業務として定める「権利義務…に関する書類…を作成すること」を含むものであり,前記の前提事実に証拠(甲1,2,11の1・2)を総合すれば,現実に,原告と被告のいずれもが東京都において示談書等の権利義務に関する書類を作成する役務を提供していることが認められる。そうであれば,原告と被告とは,権利義務に関する書類を作成する業務において,市場における競合が生じるおそれがあるということができる。被告は,不正競争防止法2条1項14号が同項1ないし9号や13号に該当するような他人への信用毀損行為を前提としている旨主張するが,そのように解すべき根拠はない。したがって,原告と被告とは,競争関係にあるというべきである。
・・・・
 本件各記事のうち原告が削除を求める部分は,直接的に特定の事実を摘示するものの外,意見ないし論評を表明するものがある。しかしながら,意見ないし論評の表\明に当たるかのような語を用いている場合であっても,一般の閲覧者の普通の注意と読み方とを基準に,前後の文脈や記事の公開当時に閲覧者が有していた知識ないし経験等を考慮すると,証拠等をもってその存否を決することが可能な原告に関する特定の事項を主張するものと理解されるときは,上記事項についての事実の摘示を含むというべきである。そして,その特定の事実若しくは事項が虚偽であって,原告の営業上の社会的評価を低下させるものであれば,信用毀損が成立するものである。
(2) そこで,本件各記事について検討する。
ア 本件第1記事について
本件第1記事のうち原告が削除を求める部分は,推論の結果として,南洋が初めから法的手段を望んでいたにもかかわらず,原告が,被告の利益に配慮したり内容証明郵便の作成料を余計に稼ごうとした結果,南洋の意思を無視して内容証明郵便を送付したとの事実や,南洋が初めからは法的手段を望んでいなかったにもかかわらず,原告が,弁護士の肩書きと「法的手段」とさえ記載すれば被告は恐れて本件各先行記事を削除するだろうと考えたりわざと交渉を決裂させて報酬を余計に稼ごうとした結果,内容証明郵便でも電話でも具体的な理由を示さなかったとの事実を摘示して,前者の場合であれば弁護過誤であり,後者の場合であればごう慢,手抜きであるなどと被告の意見を表明するものである。前記前提事実(2)イに証拠(甲11の1・2)及び弁論の全趣旨を総合すれば,原告は,平成23年10月1日ころ,南洋から本件各先行記事の削除を依頼され,南洋と協議して,被告に必要以上の情報を与えるべきでないと判断し,南洋との間で,まずは任意の削除に期待して,具体的な理由を示さない内容証明郵便を被告に送付し,任意に削除されないときには,直ちに本件各先行記事の削除を求める仮処分命令の申立てをすることを合意したことが認められる。そうとすれば,本件第1記事のうち原告が削除を求める部分は,直接的に特定の事実を摘示するものであって,かつ,前記認定の事実に照らすと,その特定の事実は原告の営業上の信用を害する虚偽の事実であると認められる。
・・・
 前記前提事実に証拠(甲3の1ないし10各A・B,8,9の1ないし4)を総合すれば,原告は,テレビコマーシャルやインターネット上の動画,イベントブースへの出展等で広告・宣伝を行い,これらと連動したインターネット上のホームページを検索して閲覧させることにより,顧客の獲得に努めていたが,平成23年10月以降,原告のホームページを検索すると,検索結果として,原告の営業上の信用を害する前記9件の記事の一部が10位以内に表示されるようになり,閲覧者も相当数に及ぶことが認められ,これによれば,原告は,被告の信用毀損行為により,弁護士としての信用を毀損されたものと認められる。しかしながら,原告の売上高が減少するなどの実害が生じた形跡は格別窺えないし,被告は,南洋から投資の勧誘を受けた者からの相談に応じていて,原告が「手抜き」や「詐欺\的取引の助長」,「スラップ」,「批判者の口封じ」をしているように見える面もあったものであり,原告自身も,原告ブログ等に本件かなめくじ記事等を投稿して,被告の感情を害していたのである。これらの事情に本件に顕れた諸般の事情を併せ考慮すれば,原告の信用毀損による損害額は50万円とするのが相当である。

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平成23(ワ)12270 損害賠償等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年11月08日 大阪地方裁判所

 本件顧客情報は、営業秘密ではないと判断されました。
 原告は,本件顧客情報,つまり,本件顧客に関する1)社名,2)住所,3)代表者・担当者の名前,4) 販売価格,5) 売上額といった情報が,原告の「営業秘密」(不正競争防止法2条6項)に当たる旨主張する。しかし,原告自身が認めるとおり,本件顧客情報は,原告の事務所内にあるサーバーで管理されていたが,パスワードは設定されておらず,原告の従業員であれば,その職務内容及び地位にかかわらず,誰でもアクセス可能であったものである。また,原告の主張を前提としても,原告においては,従業員に対し,本件顧客情報の社外持ち出しやUSB保存を禁じる旨口頭で注意喚起していたというにとどまり,それを超えて本件顧客情報が営業秘密であることを認識できるような措置が採られていたわけではない。このような事情からすれば,弁論の全趣旨からうかがわれる原告の事業規模を考慮しても,本件顧客情報が秘密として管理されていたとは到底いえない。\n

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平成22(ワ)5719 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年05月29日 東京地方裁判所

 訂正審判で特許に無効理由が治癒された場合に、営業誹謗に該当するかが争われました。裁判所は、被告に過失はないと判断されました。
 特許権侵害の警告等の告知行為を行った告知者は,仮に告知行為時点の特許請求の範囲記載の発明に無効理由があるとしても,告知行為後の訂正審判請求又は特許無効審判における訂正請求によって特許請求の範囲を訂正し,その無効理由を解消できるものと考えるのが通常であるから,告知行為後に訂正審判請求がされた場合において,当該訂正審判請求が同法126条1項,3項,4項の訂正要件を満たし,かつ,告知の対象となった製品が訂正後の特許請求の範囲記載の発明の技術的範囲に属するときは,その発明が独立特許要件(同法126条5項)を欠くとする理由(無効理由に相当)について告知行為を行った時点における過失の有無を判断するのが相当である。しかるところ,本件においては,i)別件判決1が別件無効審決がした本件特許に進歩性欠如の無効理由があるとの判断に誤りがないとして別件無効審決を維持する判断をし,別件判決1の確定に伴って別件無効審決が確定したことにより,本件特許が無効となったこと,ii)その間,被告は,別件無効審決の取消しを求める審決取消訴訟(別件審決取消訴訟1)を提起する一方で,上記無効理由を解消することを目的として訂正審判請求(第2次訂正)をしたが,別件訂正不成立審決は,第2次訂正について上記訂正要件を満たすものと判断し,その上で,第2次訂正後の発明は進歩性の欠如により独立特許要件欠くと判断し,第2次訂正を認めなかったこと,iii)別件判決2が別件訂正不成立審決の判断に誤りがないとしてこれを維持する判断をし,これに伴って別件訂正不成立審決が確定したことは,前記(1)認定のとおりである。そして,●(省略)●SDI社製の燐光発光有機EL素子は,本件発明1及び5の技術的範囲に属すること(前記(3)ア),第2次訂正における本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)についての訂正は,「一般式(I)で表されるアミン誘導体」を「化合物3」に限定するとともに,化合物3が含有される層を正孔輸送層に限定し,また,重金属を含有する有機金属錯体からなる燐光性の発光材料を有機Ir錯体からなる燐光性の発光材料に限定するとともに,有機Ir錯体が構\造式「(A)」で表される2−フェニルピリジン又はその置換誘導体を配位子として有するものに限定することなどを訂正事項とするものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとであること(甲7)及び弁論の全趣旨によれば,SDI社製の上記燐光発光有機EL素子は,第2次訂正発明1(第2次訂正後の請求項1)の技術的範囲に属するものと認められる。以上を総合すると,被告の本件告知行為i),iii)及びVi)による不正競争行為についての過失の有無は,各告知行為の時点で,別件判決2が判断した第2次訂正後の発明の進歩性欠如の理由(無効理由に相当)を前提に判断すべきである。これに反する原告の上記主張は,採用することができない。
・・・
 以上を前提とすると,被告の過失の有無は,被告が,本件告知行為i),iii)を行った時点において,別件判決2が認定判断する第2次訂正発明1の進歩性欠如の理由,すなわち,「第2次訂正発明1の構成の容易想到性」及び「第2次訂正発明1の作用効果が顕著でないこと」の両方について調査確認すべき注意義務に違反したかどうかによって判断すべきである。そこで,まず,第2次訂正発明1の作用効果が顕著でない点に関する注意義務違反の有無について判断することとする。
・・・
 本件告知行為i),iii)の時点では,別件無効審判事件に係る無効審判請求がされておらず,被告は,原告が行った実験結果である甲15の1,5を見ておらず,その内容を認識していないこと,一般に,自己の採用する方法が当業者の技術水準であると考えるのは自然であることからすれば,被告が,本件告知行為i),iii)の時点で,甲15の1,5のような実験条件での発明の効果についても検討し,あるいは調査確認することにより,第2次訂正発明1に顕著な作用効果を奏さない部分があることを認識し,又はこれを予測することは困難であったというべきである\n

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平成21(ワ)25324等 損害賠償 不正競争 民事訴訟 平成24年04月18日 東京地方裁判所

 不競法2条1項14号の営業誹謗行為には該当しないと判断されました。
 被告Y1は,このとき,本件告知5−1に係る「スタッフも,自分に同調して原告を退職する。」旨の発言したことは否定しているところ,被告Y1が上記発言を行ったことを認めるに足りる的確な証拠はない(N作成の陳述書〔甲18〕には,G課長から聴取した内容として,被告Y1がそのような発言をした旨の記載があるが,同陳述書が信用できないことは前記のとおりである。)。また,被告Y1は,同月27日付けで退職する旨の退職届(甲68)を原告に提出し,実際に原告を退職しているから,原告を退職する旨告げたこと自体は,虚偽の事実の告知には当たらない。したがって,同月19日に被告Y1が本件告知5−1に係る虚偽の事実の告知を行ったと認めることはできない。
 c 本件告知5−2について,被告Y6は,平成21年6月22日にNTTアドを訪問し,G課長に対し,「7月1日からのヨドバシ運営について,現状の主要メンバーが6月末日で退社するに当たり,代要員が今現在いない状態である。」,「代要員を手配しても今までどおりのクオリティを担保することは難しく,ファーストプロモーションで今までどおりの運営を行うことは難しい。」と説明したことは認めている。しかし,上記告知内容が虚偽であったこと,すなわち,同年6月の時点で,被告Y1及び同月の時点で18人いたフレッツブース運営業務に従事するスタッフの大半が同月末に原告を退社しても,原告において,直ちに代替要員を手配し,同年7月以降も滞りなく同業務を履行できる態勢にあったとは認められない。原告は,スタッフの管理,指導,掌握は,人材派遣業者にとって,さしたる経験,専門的知識,スキルを要する業務ではなく,同業務に携わる従業員を全国で100人以上有していたから,代替要員に欠けることはなかったと主張する。しかし,i)ヨドバシカメラ梅田店は全国有数の大型家電量販店であり,フレッツブース運営業務は,対象商品(フレッツ光,フレッツADSL)の商品説明から,各種イベント企画運営等,各種ツールのデザイン,製作,各種プレミアムの製作等に至るまで広範な業務を行うことが要求されていたこと(甲5の1,弁論の全趣旨),ii)被告Y1は,上記時点で約4年間,1人でフレッツブース運営業務に関するスタッフの管理及び各種イベントの企画運営等を行ってきたこと(甲71,72,被告Y6,弁論の全趣旨),iii)同人は,同年6月初め頃には被告Y6を通じて原告及びファーストプロモーションに退職の意向を示していたにもかかわらず,原告及びファーストプロモーションは被告Y6に対し引き留めるよう説得を指示したのみで,上記業務を滞りなく履行するための具体的な対応を何ら講じていなかったこと(乙14,15,被告Y6,弁論の全趣旨)からすると,原告が,約1週間の期間で,代替要員として上記業務を滞りなく履行するに足りる能力と経験を有する従業員及び従前のスタッフと同様の能\力,経験を有する16名前後のスタッフを現実に他の現場から融通し,かつ,前任者からの十分な引継ぎがないまま,従前同様にフレッツブースを運営して上記各種業務を行うことができたとは認められない。現に,NTTアドからは,「クライアントからは店舗における現在の運営態勢の変更は困ると言われており,ノウハウがあるといってもスタッフの総入替えでは今までどおりの運営は事実上,無理ではないかと危惧している」旨の懸念が表\明され,「そこまで言うなら,7月以降の運営態勢案を提示して欲しい」と迫られ,同月28日,原告及びファーストプロモーションは,NTTアドに対し,現運営態勢を維持することは困難でありNTTアドの要求する業務の質を確保できないことから,契約を継続できない旨を伝えたことは,前記認定のとおりである。また,被告Y6は,その後も原告にとどまり懲戒解雇処分を受けており,当時,人事上の不満を抱えていたとはいえ,原告大阪支店長代理という職にありながら,あえて職を失うリスクを冒してまで,取引先に対し虚偽の事実を告知する動機があったとも認め難い。以上によれば,本件告知5−2の内容が虚偽の事実であったと認めることはできない。

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平成22(ワ)145等 損害賠償等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年03月21日 東京地方裁判所

 虚偽の事実の流布として、営業誹謗行為と認定されました。
 証拠(甲11,40の1〜4,乙74,75,83,検証の結果)によれば,被告製品の車種別専用ハーネスのうち,1Aタイプ,1Bタイプ,1Cタイプ,1Dタイプ,2Aタイプ,THR−BM用,THR−VW用の車種別専用ハーネスのオスコネクターは,端子の数,形状,設置位置,端子保護部材の形状,寸法,材質,色及び質感において,自動車メーカーの純正品として自動車のアクセル部に設置されているオスコネクターとほぼ同一であると認められる。両者は,寸法において数mm程度の若干の相違は認められるものの,形状の同一性を否定するほどのものではない。したがって,被告製品の車種別専用ハーネス(1Aタイプ,1Bタイプ,1Cタイプ,1Dタイプ,2Aタイプ,THR−BM用,THR−VW用)のオスコネクターの上記各点は,自動車のアクセル部に接続して使用するという商品の機能及び効用を確保するために選択された不可欠な形態というべきであり,不競法2条1項3号の「商品の形態」には当たらない。また,被告製品の6Aタイプの車種別専用ハーネスのオスコネクターについては,端子の数,形状及び設置位置は,自動車メーカーの純正品として自動車のアクセル部に設置されているオスコネクターとほぼ同一であると認められる(乙75,83)。したがって,同形態は,自動車のアクセル部に接続して使用するという商品の機能\を確保するために不可欠な形態と認められ,不競法2条1項3号の「商品の形態」には当たらない。端子保護部材の形状,材質,色及び質感は,純正品のオスコネクターとは異なるものの,同業他社の同種製品のオスコネクターの端子保護部材とほぼ同一であり(甲11,乙84,91),同種製品における標準的な形態の一つであると認められる。したがって,同形態は,同種製品の一般的な形態の一つにすぎず,被告独自の形態と認めることはできないから,不競法2条1項3号の「商品の形態」には当たらない。さらに,被告製品のTHR−VW用の車種別専用ハーネスのメスコネクターについては,端子の数や形状,設置位置については,市販品の端子を使用しているため(争いのない事実),また,端子保護部材の形状,寸法,材質,色,質感については,同業他社の同種製品のメスコネクターの端子保護部材と類似していると認められるため(甲14,乙30,93),いずれも同種製品における標準的な形態の一つであると認められる。したがって,上記各形態は,同種製品の一般的な形態の一つにすぎず,被告独自の形態と認めることはできないから,不競法2条1項3号の「商品の形態」には当たらない。・・・・
上記1,2で説示したとおり,原告製品は被告製品の形態を模倣したものと認めることはできず,原告製品の販売は不競法2条1項3号,1号の不正競争には該当しないのであるから,本件文書1,2記載の上記事実は,虚偽の事実である。そして,前記第2の2(1),(3)の事実によれば,原告は,被告にとって,「競争関係にある他人」に当たると認めることができ,被告が,原告製品は被告製品の形態を模倣した違法なものである旨記載した本件文書1を,ホームページに掲載した本件掲載行為は,競争関係にある他人である原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布する行為(不競法2条1項14号)に,原告製品は被告製品の形態を模倣した違法なものである旨記載した本件文書2を原告の取引先である多数の販売店等にファクシミリ送信するなどした本件送信行為は,競争関係にある他人である原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する行為(不競法2条1項14号)に,それぞれ該当する。したがって,本件掲載行為及び本件送信行為は,いずれも不競法2条1項14号に該当する。

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平成22(ワ)5536 不正競争行為差止等請求 平成23年10月20日 大阪地方裁判所 

 原告の取引先に対して「原告の行為は商標権侵害である」と通知することについて、被告である商標権者に、差止と損害賠償が請求されました。裁判所は商標権侵害ではないが、不正競争行為とはいえないとして請求棄却されました。
 ・・・別件訴訟において,被告は,JR九州に対しても,原告商品を販売することによって本件各商標権を侵害していることを理由として差止め及び損害賠償を請求しているのであるから,原告に対する訴えを併合していなくとも,JR九州に対する関係での訴訟において請求を理由あらしめるためには,原告各標章を付した商品(原告商品)の販売が本件各商標権を侵害する旨の,原告に対する訴訟の請求原因となる事実を主張することは避けられないのである。したがって,これが反射的に原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知するのと同じ効果を奏しているとしても,その点をとらえて,直ちに不正競争防止法2条1項14号に該当する不正競争であるということはできない。原告の主張は,商標権侵害の場合における流通業者に対する訴訟提起行為は,商標権侵害となる標章を商品に付して流通に置いた業者に対する関係において不正競争防止法2条1項14号の不正競争を構成する潜在的可能\性があることから,これを差し控えるべきことをいうに等しく採用できない。なお,JR九州に対する別件訴訟において,被告が主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであるうえ,被告がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときには,JR九州に対する別件訴訟提起そのものが違法と評価され,同訴訟提起は,適法行為を装って,実質は原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を原告の取引先であるJR九州に告知する効果を意図したものであって,不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当すると解する余地はある。しかしながら,上記1のとおり,原告各標章は本件各商標と類似しているといえるし,被告が本件各商標権の商標権者であり,原告が原告各標章を付した商品(原告商品)をJR九州に販売し,JR九州もまた原告商品を販売している事実は明らかである。また,原告及びJR九州による販売行為が商標権侵害に当たるかについては,原告に対する別件訴訟の受訴裁判所は非類似と判断し,他方,当裁判所は,類似であると認めるものの,商法26条1項2号により商標権侵害といえない旨の判断をしており,結論的には被告の商標権侵害の主張に法律的根拠を欠く点で両裁判所の判断が一致しているとしても,被告がそのことを知りながらであったといえないことはもとより,通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められる場合でないことは明らかである。

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平成22(ワ)5114 損害賠償等請求反訴事件 平成23年08月19日 東京地方裁判所 

 著作権侵害、不競法違反が存在しないとして、営業誹謗行為(不競法2条1項14号)であると判断されました。
 前記前提事実オの本件注意書の記載内容のうち,(ア),(イ),(エ),(ク)及び(ケ)の記載は,反訴被告による反訴被告事業の実施が,反訴原告装置に関する反訴原告の著作権等の権利を侵害する違法なものであることを内容とする記載であると解されるところ,反訴被告による反訴被告事業の実施が,反訴原告の著作権若しくは著作者人格権侵害,不正競争行為又は秘密保持義務違反(債務不履行)のいずれにも当たらないことは前記のとおりであるから,前記(ア),(イ),(エ),(ク)及び(ケ)の記載は虚偽の部分を含むものである。
イ また,本件注意書の記載内容のうち,前記オ(ウ)の記載中で「スペースチューブからの盗作である」と記載された本件イラストは,反訴原告と反訴被告の共同事業として実施された前記前提事実ア記載のイベントにおいて撮影された写真を基に,反訴被告の依頼に基づき描かれたものであると認められるが(甲10の1・2),本件イラストの表現内容が前記前提事実カのとおりのものであることに照らし,本件イラストが反訴原告装置を複製したものに当たらないことは明らかであり,他に本件イラストが反訴原告の権利を侵害するものであることを認めるに足りる証拠はない(なお,反訴原告は,本件イラストが上記のとおり反訴原告装置を撮影した写真を基にして描かれたものであることから,本件イラストが反訴原告の反訴原告装置についての著作権を侵害する旨主張するものであると解されるが,本件イラストは,前記前提事実カのとおり,4人の子供及びその指先や膝先,手首の先などに曲線が描かれたものであり,本件イラストは反訴原告装置を有形的に再製したものでも,反訴原告装置の本質的特徴を感得することができるものでもないことは明らかである。)。したがって,前記(ウ)の記載も虚偽のものに当たる。
ウ さらに,前記オ(オ),(カ)及び(キ)に記載された本件契約の解除の経緯等に関する記載のうち,反訴被告が反訴原告を脅した旨の記載は,前記前提事実イ及びウの反訴原告と反訴被告との間における通知及び回答の各内容に照らし,事実経過に沿わないものであるというべきである。エ 反訴原告と反訴被告は,体験型の展示装置を使用したイベントの実施を行う点で競争関係にあるものと認められるところ,以上のとおり,本件注意書は,前記アないしウの点で,虚偽の内容を含むものであると認められる。そして,本件注意書の前記記載は,反訴被告事業が反訴原告の権利を侵害する違法なものであり,又は,反訴被告が反訴原告を脅すなど不当な経緯により事業をするに至った旨を,本件注意書を見る不特定多数の者に印象付けるものであって,反訴被告の営業上の信用を害するものである。よって,反訴原告による本件注意書のアップロードは,虚偽の事実を流布する行為(不正競争防止法2条1項14号)に当たるものであると認められる。

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平成21(ワ)7781 損害賠償等請求事件 平成23年04月28日 大阪地方裁判所 

 不競法2条1項14号の営業誹謗行為に該当するかが争われました。裁判所は、取引先に対し,原告が粉飾決算をしている旨述べた事実については侵害毀損があるとして10万円の賠償を認めました。
 以上まとめると,被告らが第三者に告知したと原告の主張する告知行為目録記載の各事実のうち,被告P1が同目録記載3の事実を取引先一,二社に告知したことは認められるが,その余の事実を認めることはできないから,その余の事実を告知したことを内容とする不正競争防止法2条1項14号該当を理由とする不正競争防止法に基づく請求はその余の判断に及ぶまでもなく理由がない。・・・原告が営業秘密であると主張する本件顧客情報は,その一部については存在そのものを認めることができないし,証拠(甲9,甲10)により存在が認定できる認定顧客情報の限度においても,個人被告らとの関係においても,また被告会社との関係においても明確な形で営業秘密として管理されていたものとは認められないから,原告主張に係る本件顧客情報をもって不正競争防止法2条6項にいう「営業秘密」とは認められず,これが営業秘密であることを前提とする不正競争防止法に基づく原告の請求は,その余の判断に及ぶまでもなく理由がないというべきである。・・・ 原告が主張する被告らの不正競争行為のうち認められるのは,被告P1が別紙告知行為目録記載3の事実を取引先の一,二社に告知した事実だけであるが,その告知先が限定されていることに加え,そのことによって原告の取引に具体的に支障が生じたことをうかがわせる事実を認めるに足りる証拠はないから,これによって生じた原告の信用毀損に対する損害賠償の額としては10万円の限度で認定するのが相当である。

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平成21(ワ)2310 不正競争行為差止等請求事件 平成23年03月24日 大阪地方裁判所

 取引先に、特許権侵害告知を行った行為について、不競法2条1項14号の営業誹謗行為に該当するとして、1000万円を超える損害賠償が認められました。
 上記認定してきたとおり,被告は,原告商品のブラシ単体,あるいはその製造方法が本件各特許権の技術的範囲に属することを前提に本件各告知行為をしたものであるが,その当時,そのように判断するに至った根拠は明らかにされておらず,またその経緯を認めるに足りる証拠もない。しかも,被告は,本件各告知書面中において,弁理士等の専門家の協力により原告商品が本件各特許権に抵触することが判明したなど,原告商品が本件各特許権の侵害品であることが専門家の判断によって裏付けられたかのような記載しているにもかからず,本件において,現実に専門家に依頼して,その旨の検討をした事実についての具体的な立証を全くしないのであるから,専門家の協力を得たという記載部分でさえ虚偽であった可能性を否定できない。(2) 被告は,原告との従前の取引経緯から原告が本件各特許権を侵害していた可能性に言及して本件各告知行為によって原告に損害を与えたことについて無過失である旨主張しているが,被告のいうところは,結局のところ侵害の可能\性をいうにとどまっていて,それ以上のものではなく,かえって証拠(甲28〜甲31,甲34,甲37〜甲39.甲40の1・2,甲51,原告代表者)及び弁論の全趣旨により認められる取引の経緯からは,被告が原告との取引が打ち切られたことに関連したトラブルを巡って,原告に圧力をかけて交渉を有利に進めるために,原告の警告にもかかわらず,具体的根拠のないまま,本件各告知行為に踏み切ったことさえ認められるところである。(3) そうすると,被告は,本件各告知行為という不正競争防止法2条1項14号に該当する不正競争をするに当たり,それが原告の営業そのものに深刻な影響を与え重大な損害をもたらすことは容易に予見できていたにも関わらず,その点に配慮することなく,むしろ損害を与えることを意図していた疑いさえあると認められるのであるから,原告に損害を与えたことについて過失があることはむしろ明らかであり,被告は,原告に生じた損害を賠償する責任を免れないというべきである。\n

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平成22(ネ)10074 特許権差止請求権不存在確認等請求本訴,損害賠償等請求反訴控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成23年02月24日 知的財産高等裁判所

 最終的に無効となった特許権侵害について、営業誹謗行為には該当しないと判断されました。
 以上のように,特許権者である1審被告が,特許発明を実施するミヤガワらに対し,本件特許権の侵害である旨の告知をしたことについては,特許権者の権利行使というべきものであるところ,本件訴訟において,本件特許の有効性が争われ,結果的に本件特許が無効にされるべきものとして権利行使が許されないとされるため,1審原告の営業上の信用を害する結果となる場合であっても,このような場合における1審被告の1審原告に対する不競法2条1項14号による損害賠償責任の有無を検討するに当たっては,特許権者の権利行使を不必要に萎縮させるおそれの有無や,営業上の信用を害される競業者の利益を総合的に考慮した上で,違法性や故意過失の有無を判断すべきものと解される。しかるところ,前記認定のとおり,本件特許の無効理由については,本件告知行為の時点において明らかなものではなく,新規性欠如といった明確なものではなかったことに照らすと,前記認定の無効理由について1審被告が十分な検討をしなかったという注意義務違反を認めることはできない。そして,結果的に,旭化成建材の取引のルートが1審原告から1審被告に変更されたとしても,本件告知行為は,その時点においてみれば,内容ないし態様においても社会通念上著しく不相当であるとはいえず,本件特許権に基づく権利行使の範囲を逸脱するものとまではいうこともできない。\n

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平成22(ワ)18769等 特許権差止請求権本訴事件,損害賠償等請求反訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年09月17日 東京地方裁判所

 1つの争点が、特許権侵害であるとの取引先への警告が不競法の営業誹謗行為(2条1項14号)に該当するか否かでしたが、裁判所はこれを認めました。
 本件特許発明は,当業者が引用発明,甲18の2刊行物及び甲19の2刊行物の記載に基づき容易に発明することができたものであって進歩性を欠くものであるが,i)引用発明が記載された甲22刊行物は,本件特許出願の3年以上前の平成11年1月に旭化成建材がパワーボードの施工をする業者向けに発行した技術情報パンフレットであり,相当の部数が当業者に配布されたことが推認できること,ii)副引用例である甲18の2刊行物及び甲19の2刊行物は本件特許権の出願審査の過程でされた平成19年4月24日付け拒絶理由通知において引用文献として指摘されていたこと(乙5),iii)それにもかかわらず,被告が甲3及び甲4の書面を送付するに当たり,本件特許の無効事由の有無につき検討したのか否か,したとすればどのような検討を行ったのかについて,被告は何ら主張立証をしていないこと等に照らすと,被告が本件告知行為を行うに当たって上記注意義務を尽くしたと認めることはできず,被告には過失があるというべきである。

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平成20(ワ)10879 損害賠償請求事件 不正競争 民事訴訟 平成22年01月28日 大阪地方裁判所

 被告製品と原告製品の費用と機能を比較した比較表\を配布したことが不正競争行為に(2条1項14号)に該当するのかが争われました。裁判所は、機能変更があったことにより、事実と反することになったとして、損害賠償を認めました。
 商品の需要者等に配布された文書の記載内容が不正競争防止法2条1項14号の「虚偽」にあたるかどうかは,文書の受け手が,記載された事実について真実と反するような誤解をするかどうかによって決すべきであり,具体的には,受け手がどのような者であって,どの程度の予備知識を有していたか,当該文書の記載内容をどのような状況の下で了知したか等の点を踏まえつつ,当該受け手の普通の注意と読み方を基準として判断されるべきである。以下,本件について検討する。・・・他社の製品と自社の製品の性能\や機能を比較する文書を配布する場合には,虚偽の記載をすることのないよう,十\分に他社の製品の性能や機能\を調査すべきであるところ,被告は,前記(1)イのとおり,原告サービスに含まれる「クラリネット」に「ネットde 明細」が備わり,本件機能が備わることとなったことを容易に知ることができたにもかかわらず,リリースの事実や時期を十\分確認することなく,本件比較表を作成し,被告製品の説明会において,来場者に配布したのであって(前提事実(4)),被告が,前記1(1)ア(イ)のとおり,平成20年3月17日以降,事実と符合しなくなった本件比較表を配布したことについては,少なくとも過失があったというべきである。被告は,原告が給与明細インターネット配信システムを平成20年3月17日にリリースすると告知していたため,本件比較表\の配布を開始する同月5日の直前に,上記リリース予定について問い合わせたが,同月17日のリリースについて,原告からの宣伝・告知はなかったと主張する。しかし,この主張は,被告が,上記リリース予\定を知りながら,同月5日の直前に問い合わせをしたのみで,その後は,リリースの実施について調査・確認をしていなかったことを意味しており,調査の不十分性を示すものといえる。(3) したがって,被告は,平成20年3月17日以降,虚偽の内容を含む本件比較表を配布することについて,少なくとも過失があったものと認められる。\n

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◆平成18(ワ)4490 謝罪広告等請求事件 不正競争民事訴訟 平成19年07月26日 大阪地方裁判所

  中国法人の日本語版ウェブサイトのウェブページに,原告らが同法人の代理店であるかのような表示がなされ,さらに同ページに原告会社が開設するウェブサイトにリンクを設定された原告らが,上記中国法人及び被告による上記行為は,原告会社との関係では不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為に該当するかが1つの争点となりました。裁判所は、該当すると判断しました。
  「不正競争防止法2条1項14号にいう「虚偽」とは客観的な真実に反す ることをいうところ,告知又は流布された事実が虚偽であるか否かは,その事実について,受け手が真実と反するような誤解をするかどうかを,受け手の普通の注意と読み方を基準として判断すべきである。そこで検討するに,一般に,代理店とは,製造業者や卸売商など特定の商品供給者のために,取引の代理又は媒介をする商人(代理商)の営業する店を意味するものと解され,その態様は一様ではないものの,その多くは,ブランド等一定の信用力を有する商品供給者との間で,商標等の使用許諾販売地域の指定競業,避止義務の合意等を内容とする代理店契約(特約店契約)を締結し,上記代理店契約上の種々の拘束を受け,経済的には商品供給者の系列下に置かれ,これに従属する地位にある場合が多く,通常はそのように認識されているものと解される。したがって,本件ウェブページを閲覧した日本国内の美容業者の普通の注意と読み方を基準とすれば,エステクリス及び原告Xが,被告を含む北京泰富グループの系列下にあり,これに従属する地位にあると認識するのが通常であると認められる。・・・本件表示行為は,エステクリス及びこれを経営する原告会社が北京泰富グループの代理店であって,その系列下にあり,これに従属する地位にあるとの認識を生じさせ得るものであって,受け手に真実と反するような誤解をさせるものであるから,虚偽の事実の流布に該当するというべきである。」

◆平成18(ワ)4490 謝罪広告等請求事件 不正競争民事訴訟 平成19年07月26日 大阪地方裁判所

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◆平成18(ワ)15425等 特許権差止請求権不存在確認請求事件 特許権民事訴訟 平成19年03月20日 東京地方裁判所

  特許権侵害をしている旨の文書を配布する行為が、不正競争防止法2条1項14号には該当しないと判断されました。
  「当該告知,流布の内容が同条項の「虚偽の事実」に当たるか否かは,当該事実の告知,流布を受けた受け手に真実と反するような誤解を生じさせるか否かという観点から判断すべきである。具体的には受け手がどのような者であってどの程度の予備知識を有していたか,当該陳述が行われた具体的状況を踏まえつつ,当該受け手を基準として判断されるべきである。これを本件についてみると,・・・原告は,被告から原告各製品が本件特許権を侵害している旨の警告を受けたため,被告による甲14文書の配布に先立ち,その取引先に対して,原告各製品は本件特許権を侵害せず,かつ,本件特許権が無効理由を有する旨の乙6文書を配布していること,及び,甲14文書の配布に先立ち,全国紙において,原告が被告に対して原告各製品が本件特許権を侵害していないことの確認を求める訴訟を提起した旨の記事が掲載されたことが認められる。・・・原告と被告の取引先は,甲14文書の配布を受けたとしても,被告が原告各製品の製造販売行為が本件特許権を侵害するものと認識していると解釈することはあっても,原告各製品が客観的にみて本件特許権を侵害しているものと解するとまでいうことはできない。したがって,甲14文書の配布行為を不正競争防止法2条1項14号の虚偽事実の告知,流布行為ということはできない。」

◆平成18(ワ)15425等 特許権差止請求権不存在確認請求事件 特許権民事訴訟 平成19年03月20日 東京地方裁判所

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◆平成17(ワ)3056 損害賠償等請求事件 平成18年08月08日 東京地方裁判所

  特許権侵害の警告を当該製品の販売先に行った被告(特許権者)の行為が、不競法2条1項14号の不正競争行為に該当するが争われました。裁判所は違法性がないとして請求棄却しました。
  「一般に,特許の進歩性に関する判断は,微妙な判断を要することが少なくない。本件においても,本件特許権は,別件侵害訴訟及び審決取消訴訟において,進歩性欠如を理由に無効とされたとはいえ,いずれも原告及び被告らの主張を踏まえた慎重な判断の結果であり,丸田屋発明の存在を踏まえても,明らかな無効理由が存在したとまではいえない。この事実と上記アに掲げた諸事情を併せ考慮すれば,被告らが,カルフールに対して本件各警告書を送付するに当たり,特許権侵害訴訟を提起するために通常必要とされる事実調査及び法律的検討をすれば,本件特許権が無効であることを容易に知り得たのに,あえて警告をしたものと認めることもできない。・・・被告らには,本件特許権が無効であることを知らなかったことにつき,慎重さを欠いた面があることが認められるが,本件特許権が無効であることを通常人であれば容易に知り得たにもかかわらず,あえて権利侵害の告知を行ったものとまで認めることはできない。また,前提事実(3)ないし(6)及び上記(2)アないしカの事実を総合的に考慮すれば,本件各警告書の送付は,いずれも本件特許権の権利行使の一環としてされたものというべきであり,形式的に権利行使の外形を取っているが,社会通念上必要と認められる範囲を超えた内容,態様となっていたものとは認められない。」

◆平成17(ワ)3056 損害賠償等請求事件 平成18年08月08日 東京地方裁判所

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◆H16. 1.28 東京地裁 平成14(ワ)18628 不正競争 民事訴訟事件

1)製品名「携帯接楽7」は、登録商標「常時接楽」と類似するのか、また、2)かかる商標権侵害であるとして警告したことを取引業者に通知したことは不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に該当するのか(虚偽事実の告知行為)、3)プログラム「携帯接楽7」は、プログラム「常時接楽」の著作権を侵害しているのか、4)かかる著作権侵害であるとして警告したことを取引業者に通知したことは不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に該当するのか(虚偽事実の告知行為)に該当するのかが争点となりました。

裁判所は、1)については全体として識別力発揮するものであるとして非類似、2)については該当せずとしましたが、3)については著作権侵害無し、4)については、著作権を有していないのにおこなった警告とのことで不正競争行為に該当すると判断しました。

「当裁判所は,以下の理由から,被告の上記告知行為は不正競争行為には当たらないと解する。 すなわち,?@前示のとおり,原告標章は本件商標に類似するものではないが,「常時接楽」(本件商標)と「携帯接楽」(原告標章)とは,両者とも造語である「接楽」の部分が共通し,異なるのはいずれも一般名詞である「常時」及び「携帯」の部分であることからすれば,被告が,原告標章が本件商標に類似するとして,原告商品1の発売が本件商標権の侵害となると判断したことには,相応の根拠があること,?A被告の上記告知行為は,本件通知書を原告に送付した後に,その内容を特定の取引先に説明するために行われたものであること,告知の内容は,被告が本件商標権を有すること及び本件商標と原告標章とを具体的に示して両者が類似する点を指摘し,概要その点に限られていたことに照らすと,被告の上記の告知行為は,その態様及び内容において,社会通念上,著しく不相当と解することはできないこと,?B被告の上記告知行為の対象は,多数の小売店に対してではなく,大手の流通卸業者であるソフトバンクコマース社等の2社に限られていたこと,?C同2社は,いずれも,大手のパソコンソ\フト製品の流通卸業者であるため,上記告知に係る商標権侵害に関しては,当然に訴訟の相手方になることも想定できる立場の者であること等の諸事情が認められる。これらの諸事情を総合考慮すると,被告が行った上記告知行為は,本件商標権に基づく権利行使の目的で行われた行為であると評価して差し支えない。したがって,被告の上記告知行為は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為には当たらないと解される。・・・  ・・・前記(1)認定のとおり,原告商品2のプログラムは,AMI社が携快電話6のプログラムのソースコードに改良を加えて製作したものであるが,本件合意書3項によれば,携快電話6のソ\ースコードの著作権はAMI社に帰属し,AMI社は,携快電話6のソースコードを「自由に付加開発し,他に開示することができる」のであるから,被告が携快電話6のプログラム(オブジェクトコード)の著作権を有するとしても,原告商品2のプログラムが被告の著作権を侵害して製作されたものということはできない。」

   

◆H16. 1.28 東京地裁 平成14(ワ)18628 不正競争 民事訴訟事件

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◆H14. 8.29 東京高裁 平成13(ネ)5555 不正競争 民事訴訟事件

営業誹謗行為に該当するかについて東京高裁の判断基準が示されています。
 

 

◆H14. 8.29 東京高裁 平成13(ネ)5555 不正競争 民事訴訟事件

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