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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

補正・訂正

◆平成20(行ケ)10254 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年12月25日 知的財産高等裁判所

 訂正要件について新規事項か否かが一つの争点でしたが、知財高裁は、審決を維持しました。
   「特定図柄の半透明に形成された部分以外の部分は,種類ごとに異なる色に着色されると共に,遮光性が付された」との訂正事項(訂正事項2)が新規事項の追加に当たるかについて判断する。(1) まず,特許法126条3項にいう「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内において」との文言について,「明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項」とは,当業者によって,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,訂正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内において」するものということができる。もっとも,明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項は,通常,当該明細書,特許請求の範囲又は図面によって開示された技術的思想に関するものであるから,例えば,特許請求の範囲の減縮を目的として,特許請求の範囲に限定を付加する訂正を行う場合において,付加される訂正事項が当該明細書,特許請求の範囲又は図面に明示的に記載されている場合や,その記載から自明である事項である場合には,そのような訂正は,特段の事情のない限り,新たな技術的事項を導入しないものであると認められ,「明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内において」するものであるということができる。・・・・訂正前明細書(甲13)の段落【0025】には,「各シンボルは上記実施形態と同様にリール帯31を形成する透明フィルム材の裏面に光透過性有色インキが印刷されて描かれているが,各半透明部分32aおよび33aにはこの有色インキが印刷されていない。その後の光透過性白色インキによる背景印刷は全面に対して行われ,最後の遮光性銀色インキによるマスク処理は各半透明部分32aおよび33aを除く領域に対して行われている。」との記載があるが,これも,各シンボルがリール帯31を形成する透明フィルム材の裏面に光透過性有色インキが印刷されて描かれていることを示すものにすぎない。したがって,訂正前明細書,特許請求の範囲又は図面(甲13)の記載を総合しても,当業者が,本件訂正発明のように,異なる種類の複数の特定図柄の一部分に半透明部分を形成するという構成において,「種類ごとに異なる色に着色」するという構\成を採用することの技術的意義について導くことができるとはいえず,本件訂正発明のように,異なる種類の複数の特定図柄の一部分に半透明部分を形成するという構成において,「種類ごとに異なる色に着色」するという構\成を採用することの技術的意義は不明というほかない。そうすると,たとえ属性ごとに各図柄を色で塗り分けること自体は周知の事項であるとしても,そのような技術的意義が不明である構成を新たに導入することについてまで,同様に周知の事項であるということはできない。」

◆平成20(行ケ)10254 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年12月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10350 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年12月10日 知的財産高等裁判所

  補正が限定的減縮でないとした審決が取り消されました。
   「被告は,特許法旧17条の2第4項2号「特許請求の範囲の減縮」にいう「減縮」とは,発明を特定するために必要な事項を「限定する」ことであり,これに該当するといえるためには,補正後の一つ以上の発明を特定するための事項が補正前の発明を特定するための事項に対して,概念的に下位になっていることを要するものであると主張するところ,同主張は,補正が「特許請求の範囲の減縮」(特許法旧17条の2第4項2号)に該当するためには,これに該当する個々の補正事項のすべてにおいて下位概念に変更されることを要するとの趣旨を含むものと解される。しかし,特許請求の範囲の減縮は当該請求項の解釈において減縮の有無を判断すべきものであって,当該請求項の範囲内における各補正事項のみを個別にみて決すべきものではないのであるから,被告の上記主張が減縮の場合を後者の場合に限定する趣旨であれば,その主張は前提において誤りであるといわざるを得ない。また,特許請求の範囲の一部を減縮する場合に,当該部分とそれ以外の部分との整合性を担保するため,当該減縮部分以外の事項について字句の変更を行う必要性が生じる場合のあることは明らかであって,このような趣旨に基づく変更は,これにより特許請求の範囲を拡大ないし不明瞭にする等,補正の他の要件に抵触するものでない限り排除されるべきものではなく,この場合に当該補正部分の文言自体には減縮が存しなかったとしても,これが特許法旧17条の2第4項2号と矛盾するものではない。

◆平成19(行ケ)10350 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年12月10日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10168 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

  補正要件を満たしているかが争われました。知財高裁は、限定的減縮でない、新規事項であるとした審決を維持しました。
  「前記本件出願当初明細書の記載,とりわけその記載中に円形,四角形,三角形等のシンボル等が例示されていること(【0014】)に照らすならば,本願発明における「ケース(12)上の目印(32,36,40)に一致する目印(34,38,42)を備えること」との事項の「目印を備える」とは,ケースそのものを目印として用いることを含むものではなく,ケース上に,ケースとは別個のシンボル等を目印として用いることを指すものと理解するのが相当である。これに対し,本願補正発明における「異なる注射器の目印として異なる目印あるいはケースが設けられ(る)」との事項は,「ケース」と記載されていることに照らすと,目印として,すなわち視覚を通じて区別する手段として使用されるものが,「異なる目印」ばかりでなく「異なるケース」(「異なる」との語が「目印」のみならず「ケース」をも修飾していることは当然である。)をも含み,ケースそのものを目印として使用する場合を含んでいることは明らかである。そうすると,本件補正は,本願発明における,ケースそのものを「目印」として使用しない態様から,本願補正発明における,ケースそのものを「目印」として使用する態様に,その範囲を拡張したものといえる。・・・前記(1),(2)で認定判断したとおり,本件出願当初明細書には,ケースそのものを目印として使用することの記載ないし開示はない。すなわち,ケースは,本来的には,物品などを収容するためのものであるのに対し,目印は,外部から視覚を通じて区別するための手段であるから,両者はその意義及び機能において相違するところ,本件出願当初明細書及び図面のいずれにおいても,ケースの形状や色彩等を,視覚を通じて区別する機能\を有するものとして使用することを記載,示唆する記載はない。」

◆平成20(行ケ)10168 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年11月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10335 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月30日 知的財産高等裁判所

 請求項を追加する補正が限定的減縮には該当しないと判断されました。
   なお、面接審査をして、補正案について拒絶理由解消と見解したにもかかわらず、意見を述べる機会を与えることなく、補正要件を満たしていないとして補正却下したことは手続き違反として取り消しました。

◆平成19(行ケ)10335 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10283 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月29日 知的財産高等裁判所

   最高裁第一小法廷判決(平成19年(行ヒ)第318号)を受けた知財高裁の判断です。
  「平成6年法律第116号附則6条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下「平成6年改正前」という。)の特許法126条3項は「第一項ただし書第一号の場合は,訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。」と規定し,同条1項ただし書第1号は「特許請求の範囲の減縮」を掲記するところ,同条3項の上記「訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構\成される発明」とは,「特許請求の範囲の減縮をした後の発明」であって,「減縮されていない発明」を含むものではないというべきである。もっとも,上記文言は,文理上,「訂正後における特許請求の範囲に記載されている全ての事項により構成される全ての発明」と解釈する余地があるが,特許法における訂正の審判の位置付けに照らすと,このように解釈することはできないというべきである。すなわち,平成6年改正前の特許法126条が定める訂正の審判は,主として特許の一部に瑕疵がある場合に,その瑕疵のあることを理由に全部について無効審判請求されるおそれがあるので,そうした攻撃に対して備える意味において瑕疵のある部分を自発的に事前に取り除いておくための制度である。他方,特許法153条3項は「審判においては,請求人が申\し立てない請求の趣旨については,審理することができない。」と規定しており,訂正の審判においては,訂正を許すべきか否かが判断の対象となり,(その限度で同条1項及び2項に基づいて職権で広範囲に審理できるものの,)求められた訂正の可否を超えて判断することは許されないのである。仮に,特許権者が,複数の請求項の一部の請求項について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を求めて訂正審判を請求した場合において,その訂正の可否を,一旦査定・登録された,訂正を求めていない他の請求項に係る発明についての独立特許要件の具備の有無にも係らしめるというのであれば,訂正審判請求がされるたびに,特許庁は,全請求項について審査を繰り返すことになってしまうほか,特許権者が権利行使の準備等のために必要と考えている訂正について,適時に判断を得ることができない結果ともなり得るし,制度についてのこのような理解は,ひいては,特許権者が訂正したいと考えている請求項のみについて,第三者をして形式的な無効審判を請求させた上,当該審判手続において訂正請求をすることによって実質的に必要な訂正の効果を確保しようとするなど,制度の不健全な利用を招来するおそれすらある。したがって,平成6年改正前の特許法126条3項において,独立特許要件の存在が求められる発明は,「特許請求の範囲の減縮をした後の発明」であるというべきであり,審決の判断中,本件訂正において訂正の対象とされていない請求項3,4に記載された発明について独立特許要件の有無を検討した部分は,審決の結論を導くために必要なものではなく,そもそも本訴における審理の対象となり得ないものであったというべきである。  なお,平成20年7月10日最高裁第一小法廷判決(平成19年(行ヒ)第318号)は「特許異議申立事件の係属中に複数の請求項に係る訂正請求がされた場合,特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正については,訂正の対象となっている請求項ごとに個別にその許否を判断すべきであり,一部の請求項に係る訂正事項が訂正の要件に適合しないことのみを理由として,他の請求項に係る訂正事項を含む訂正の全部を認めないとすることは許されない。」と判断したものであるが,その前提として,特許査定及び訂正審判請求と訂正請求の法的性質が異なることを示すために,「訂正審判に関しては,特許法旧113条柱書き後段,特許法123条1項柱書き後段に相当するような請求項ごとに可分的な取扱いを定める明文の規定が存しない上,訂正審判請求は一種の新規出願としての実質を有すること(特許法126条5項,128条参照)にも照らすと,複数の請求項について訂正を求める訂正審判請求は,複数の請求項に係る特許出願の手続と同様,その全体を一体不可分のものとして取り扱うことが予定されているといえる。」と説示するほか,「訂正請求の中でも,本件訂正のように特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とするものについては,いわゆる独立特許要件が要求されない(特許法旧120条の4第3項,旧126条4項)など,訂正審判手続とは異なる取扱いが予定されており,訂正審判請求のように新規出願に準ずる実質を有するということはできない。」と判示している。しかしながら,上記判示中において「一体不可分」とされているのは,あくまでも「複数の請求項について訂正を求める訂正審判請求」であり,「新規出願に準ずる実質を有する」との判示も,訂正が求められている請求項については,訂正後の特許請求の範囲の記載に基づく新たな特許出願があったのと同様に考えることができることを述べていると理解すべきものであって,訂正が求められていない請求項を含む全ての請求項について特許性の有無を再審査することまで求められるものでないことは明らかである。」

取り消された判決はこちらです
    ◆平成18(行ケ)10314 特許取消決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年06月29日 知的財産高等裁判所
  知財高裁は、「願書に添付した明細書又は図面の記載を複数箇所にわたって訂正することを求める訂正審判の請求又は訂正請求において,その訂正が特許請求の範囲に実質的影響を及ぼすものである場合(すなわち訂正が単なる誤記の訂正であるような形式的なものでない場合)には,請求人において訂正(審判)請求書の訂正事項を補正する等して複数の訂正箇所のうち一部の箇所について訂正を求める趣旨を特定して明示しない限り,複数の訂正箇所の全部につき一体として訂正を許すか許さないかの審決又は決定をしなければならず,たとえ客観的には複数の訂正箇所のうちの一部が他の部分と技術的にみて一体不可分の関係になく,かつ,一部の訂正を許すことが請求人にとって実益のあるときであっても,その箇所についてのみ訂正を許す審決又は決定をすることはできないと解するのが相当である(前記最高裁昭和55年判決参照)。そしてこの理は,原告のいう改善多項制の下でも同様に妥当するというべきである。」と判断しました。
◆平成19(行ケ)10283 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成16(行ケ)4 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成16年06月28日 東京高等裁判所

 古い判決ですが、新規事項に関する判断ですのでアップしました。 東京高裁は、”クレームの用語を削除する補正は新規事項である”とした審決を取り消しました。
 「しかしながら,【0005】【作用】には,「上方階のベランダの下面と下方階 のベランダの立上がり壁部の上端部との間にサポート部材を設置する場合には、そ のサポート部材の下端部を前記横部材の上面に形成した係止部に係合することによ り極めて容易に設置することができる」との記載があり,この記載からみると,横 部材の上部にサポート部材を係止することは,本願発明にとって付加的な要素にす ぎないものと認められる。上記【0004】,【0010】の記載もこの付加的な 要素についての手段及び効果について触れたものと認めることができる。  当初明細書には,実施例の説明においてもサポート部材に関する記載があるが, あくまでも実施例に関するものにすぎず,上記認定を妨げるものではない。  3 そして,立上がり壁部の開口部を塞ぐ防護用のパイプを設置するに当たり, 壁部の側面を締め付けるために,横部材の上部にサポート部材を上方から係止する 構成が,技術的視点から見て必然的に伴うものと認めることはできないから,「出願当初の明細書の記載によれば,「横部材」は,その上面にサポート部材を係合さ\nせるための「係止部」を形成したものについてしか記載されておらず,そのような 「係止部」を有しない「横部材」については何らの記載も示唆もない。」とした審 決の認定は誤りである。」

◆平成16(行ケ)4 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成16年06月28日 東京高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10431 補正却下決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月30日 知的財産高等裁判所

出願当初の明細書に記載されていた事項が、ある装置が当然の前提であるとして、その前提を削除する補正は要旨変更であるとした補正却下不服審決を維持しました。
 「以上によれば,本願の出願当初明細書における本願発明は,遊技球の通過を検出し,これに基づく特典の付与を可能とする始動ゲート装置を備えた遊技機に関するものであり,遊技機の遊技盤に形成された遊技領域に設けられる始動ゲート装置(これは,従来,遊技球の通過に基づき可変表\示ゲームの始動条件を付与可能な通過チャッカとして多用されていたものである。)について,従来技術においては単に球検出部を遊技盤面に突出させ,その球検出部の周りをシンプルなゲート部材で囲った程度の構\成であり,球が一瞬の間に球検出部を通り抜け,後は遊技盤面にごく普通に落下していくという単調さであったものを,球の通過を検知し,これに基づいて可変表示ゲームの始動等の特典を付与することを可能\としつつ,通過した球の挙動を変化させて遊技者の興趣を増大させるという意義を有するものである。そして,本願の出願当初明細書には,ここでの「特別可変表示装置」につき,可変表\示ゲーム,すなわち,始動口にパチンコ玉が入賞すると3箇所の特別図柄表示部における図柄が所定時間変動表\示された後に停止表示され,その際3箇所の図柄が揃うと特賞遊技状態(大当たり)となるゲームの表\示を可能とするため遊技領域に設けられた表\示装置である旨,また,「特別変動入賞装置」につき,このようにして特賞遊技状態となった場合に開閉扉が所定時間ずつ開放されるという特別遊技を可能とするための装置である旨の記載があると認められるものの,「特別可変表\示装置」が上記のように特別変動入賞装置の作動を決定する特別可変表示ゲームを実施する以外,他の目的があるとの記載はない。そうすると,本件出願当初の明細書に記載された特別可変表\示装置は,特別変動入賞装置の作動を決定する目的を有する装置であって,特別入賞装置とともに存在することに技術的意義を有する装置であると認められる。(4) これに対し,本件補正後の請求項1の記載は前記第3,1,(2)ウのとおりであるところ,これによると,「特別可変表示装置」については,「普通変動入賞装置への遊技球の入賞に基づき特別可変表\示ゲームを表示可能\な特別可変表示装置」と特定されているものの,「特別変動入賞装置」については規定するところがないから,本願補正発明は,特別可変表\示装置を有しつつ特別変動入賞装置を有しない遊技機,換言すれば,特別変動入賞装置の作動を決定する目的を持たず特別入賞装置とともに存在することを要しない特別可変表示装置をも,その請求の範囲に含むものである。そして,本願の出願当時におけるパチンコに代表\される遊技機の技術分野において,特別変動入賞装置と無関係な特別可変表示装置が遊技機に単体で存在することが自明であったとは認め難いから,このような遊技機(特別変動装置の作動との関係から切り離された「特別可変表\示装置」が単体で存在する遊技機)を出願当初の明細書から把握することは自明のことではないというべきである。そうすると,本件補正は,明細書の中に新たに遊技機に単体で存在する特別可変表示装置という技術的事項を導入するものであるから,明細書の要旨を変更するものといわなければならない。」
◆平成19(行ケ)10431 補正却下決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10432 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月17日 知的財産高等裁判所

   争点の一つが新規事項か否かです。裁判所は、新規事項であるとした審決を維持しました。
 「以上のとおり,本願において,「ばね掛けに係合されたラッチばねの端部を耐摩部片に掛け止める」との構成における「掛け止められる」は,「引っ掛けて離れないようにする,固定する」との意味に理解するのが相当であるが,そのような構\成が付加されることは,例えば,ラッチばねの横ずれ防止効果や「はずれにくくする」との効果やラッチとラッチばねの設置の位置関係の自由度の拡大効果など技術的な観点から新たな事項が付加されるものと解される余地が生ずる。ところで,上記のとおり,本件出願当初明細書には,ラッチばねで付勢させた平板状のラッチを備えたダイヤル錠において,「『高分子材料から成る耐摩部片』を用いること」,及び「『金属材料製のラッチ本体』と『高分子材料から成る耐摩部片』との固着方法」についての記載はあるものの,専らその点の開示に尽きるのであって,「ラッチばねの端部」と「耐摩部片」との位置関係について開示又は示唆する記載がないことはもとより,図3においても,「ラッチばね」のラッチ本体側の端部が「ばね掛け」(ばね止め)の周囲に位置することが示されているが,「ラッチばね」のラッチ本体側の端部と「ばね掛け」(ばね止め)との位置関係,係合の有無,態様は何ら示されていない。そうすると,「ばね掛けに係合させたラッチばねの端部を耐摩部片に掛け止める」との構成は,本件出願当初明細書及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との対比において,新たに導入された技術的事項であるというべきである。この点について,原告は,本件出願当初明細書添付の図4及び図5(同各図から原告が描いた斜視図である甲14の図を含む。)によれば,「ラッチばねの端部を耐摩部片に掛け止めするようにしている」ことが示されていると主張する。しかし,上記各図のいずれによるも,ばね掛けに係合されたラッチばねの端部が耐摩部片に引っ掛けて離れないようにする,固定するとの技術的事項が示されているとはいえない。以上のとおり,本件補正は,本件出願当初明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてされたものではないとした審決の判断に誤りはない。」

◆平成19(行ケ)10432 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月17日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ヒ)318 特許取消決定取消請求事件 平成20年07月10日 最高裁判所第一小法廷

   最高裁は、訂正請求の一部が訂正要件を満たさないという理由で、当該訂正全体を認めなかった審決を取り消しました。
 「特許法旧120条の4第2項の規定に基づく訂正の請求(以下「訂正請求」という。)は,特許異議申立事件における付随的手続であり,独立した審判手続である訂正審判の請求とは,特許法上の位置付けを異にするものである。訂正請求の中でも,本件訂正のように特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とするものについては,いわゆる独立特許要件が要求されない(特許法旧120条の4第3項,旧126条4項)など,訂正審判手続とは異なる取扱いが予定されており,訂正審判請求のように新規出願に準ずる実質を有するということはできない。そして,特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正請求は,請求項ごとに申立てをすることができる特許異議に対する防御手段としての実質を有するものであるから,このような訂正請求をする特許権者は,各請求項ごとに個別に訂正を求めるものと理解するのが相当であり,また,このような各請求項ごとの個別の訂正が認められないと,特許異議事件における攻撃防御の均衡を著しく欠くことになる。以上の諸点にかんがみると,特許異議の申\立てについては,各請求項ごとに個別に特許異議の申立てをすることが許されており,各請求項ごとに特許取消しの当否が個別に判断されることに対応して,特許異議の申\立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正請求についても,各請求項ごとに個別に訂正請求をすることが許容され,その許否も各請求項ごとに個別に判断されるものと考えるのが合理的である。」

原審はこちらです
    ◆平成18(行ケ)10314 特許取消決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年06月29日 知的財産高等裁判所
  知財高裁は、「願書に添付した明細書又は図面の記載を複数箇所にわたって訂正することを求める訂正審判の請求又は訂正請求において,その訂正が特許請求の範囲に実質的影響を及ぼすものである場合(すなわち訂正が単なる誤記の訂正であるような形式的なものでない場合)には,請求人において訂正(審判)請求書の訂正事項を補正する等して複数の訂正箇所のうち一部の箇所について訂正を求める趣旨を特定して明示しない限り,複数の訂正箇所の全部につき一体として訂正を許すか許さないかの審決又は決定をしなければならず,たとえ客観的には複数の訂正箇所のうちの一部が他の部分と技術的にみて一体不可分の関係になく,かつ,一部の訂正を許すことが請求人にとって実益のあるときであっても,その箇所についてのみ訂正を許す審決又は決定をすることはできないと解するのが相当である(前記最高裁昭和55年判決参照)。そしてこの理は,原告のいう改善多項制の下でも同様に妥当するというべきである。」と判断しました。
◆平成19(行ヒ)318 特許取消決定取消請求事件 平成20年07月10日 最高裁判所第一小法廷

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◆平成19(行ケ)10409 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月23日 知的財産高等裁判所

 請求項1に『ダイオキシン類の含有量を飲料水レベルにまで浄化する』という事項を追加したことが新規事項か否かが争われました。裁判所は、新規事項であるとした審決を取り消しました。
 「以上の各記載によれば,本願補正発明による汚水の高度水処理方法は,オゾン処理を基本とした高度水処理技術の提供であり,処理対象水の汚染の程度に応じて,オゾン処理に加えて,過酸化水素水処理,電気分解処理,紫外線照射処理,炭化濾材処理等の各種の浄化工程を予定しているものであることは明らかというべきである。そうすると,これらの記載を総合すると,本願補正発明は連続処理方式の高度水処理方法の技術分野における基本工程としてのオゾン処理に関する発明であると認めるのが相当であり,同補正発明に係る特許請求の範囲の請求項1の前段の記載があるからといって,オゾン処理のみで前段の浄化レベルを達成する発明を包含することになったものでないことは明らかというべきである。もとより,上記認定の記載中にもあるとおり,浄化の対象となる処理対象水によって汚染レベルは様々であり,汚染レベルの低い処理対象水については,オゾン処理を行うことによって,「所望の浄化レベル」に到達することもあり得るところである。しかしながら,このことは,本願補正発明のように「飲料水レベルまで浄化」する場合だけでなく,本願発明のように「浄化」する場合においても起こり得ることであり,前者の場合において,「所望の浄化レベル」の内容が若干具体的に記載されているにすぎないものである。」

◆平成19(行ケ)10409 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月23日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10053 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月12日 知的財産高等裁判所

 訂正要件を満たしていないとした審決を取り消しました。
  「特許法134条の2第5項で準用する同法126条3項該当性についてア訂正が,当業者によって,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができ,特許請求の範囲の減縮を目的として,特許請求の範囲に限定を付加する訂正を行う場合において,付加される訂正事項が当該明細書又は図面に明示的に記載されている場合や,その記載から自明である事項である場合には,そのような訂正は,特段の事情のない限り,新たな技術的事項を導入しないものであると認められ,「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された範囲内において」するものであるということができる(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10563号事件・平成20年5月30日判決参照)。以上を前提として,訂正事項1及び5について,「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」するものであるか否かを検討する。・・・・・ウ 本件明細書の前記イの各記載によれば,【請求項1】には,衣服の身頃,襟,襟口,ポケット又はポケットフラップの周縁に沿って袋を形成することが記載されており(前記イ(ア)),段落【0017】には,ワイヤの取付位置として,襟,襟口(襟の開き部分),袖の下部,身頃の下部,ポケットの縁,ポケットフラップの縁が記載されており(前記イ(イ)),段落【0019】には,ワイヤの取付構造(方法)として,衣服の表\側を構成する主布の裏側に,別布を縫合して袋を形成し,この袋の内部にワイヤを挿通させることが記載されており(前記イ(ウ)),段落【0021】には,ワイヤの取付位置として,襟の周縁,襟口の周縁が記載されており(前記イ(エ)),段落【0022】には,ワイヤの取付位置として,ポケットの開口の周縁,ポケットフラップの周縁が,それぞれ記載されている(前記イ(オ))と認められる。すなわち,本件明細書には,?@「衣服の襟,ポケット又はポケットフラップの周縁に沿って袋を形成」することが記載され(【請求項1】),?Aワイヤの取付位置として,「衣服の襟,ポケット又はポケットフラップの周縁」が記載され(段落【0017】,【0021】及び【0022】),?Bワイヤの取付構造(方法)として,「衣服の表\側を構成する主布の裏側に別布を縫合して,袋を形成」すること,この袋の内部にワイヤを挿通させることが記載されている(段落【0019】)といえる。そうすると,「衣服の襟,ポケット又はポケットフラップの周縁に沿って袋を形成」して,「衣服の襟,ポケット又はポケットフラップの周縁」にワイヤを取り付けるに当たり,「衣服の表\側を構成する主布の裏側に別布を縫合して,袋を形成」し,この袋の内部にワイヤを挿通させるようにすることは,本件明細書の記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,当業者であれば,本件明細書の記載から自明である事項として,認識することができるというべきである。」

◆平成20(行ケ)10053 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月12日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10110 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月11日 知的財産高等裁判所

 『仙骨上又は仙骨に沿って力を集中させる』を『骨盤内の腰骨稜間の仙骨の上方部分上又は上部分に沿って力を集中させる』とする補正が、限定的減縮に該当するかが1つの争点でした。裁判所は、限定的減縮要件違反とした審決を取り消しました。
  「しかしながら,上記部分の補正に係る,「それらが骨盤内の腰骨稜間の仙骨の上 方部分上又は上部分に沿って力を集中させる」との記載は,「上方部分」に付加された「上」との文言と「上部分」に付加された「に沿って」との文言とが対応して用いられていると考えられるから,「『それらが骨盤内の腰骨稜間の仙骨の上方部分上に力を集中させる』又は『それらが骨盤内の腰骨稜間の仙骨の上部分に沿って力を集中させる』」という趣旨であると考えることができ,そうであれば,「上方部分」及び「上部分」が,それ自体は同じ部分(仙骨そのものの一部であって,その上下方向の中央よりも上の部分)を意味するとしても,力を集中させる対象である部位としては,前者は,仙骨自体を,後者は,仙骨の近傍をそれぞれ意味するものと理解することができるから,上記両表現が意味するところは異なることとなって,格別不自然ということはできない(なお,原告は,「上部分」が「上方部分」の誤記であると主張するところ,そうであれば,このことはより明確であるが,仮に,「上部分」が「上方部分」の誤記であるとは認められないとしても,上記のように考えることの妨げとはならない。)。したがって,「上部分」との文言が,「仙骨上の何れかの部分」ないし「仙骨の上下方向の中央よりも上の部分」を意味するとすれば,「上方部分」との文言が同じ部分を意味するのは不自然であるとして,「仙骨の上方部分」との文言が,仙骨を含まない,それよりも上方の部分であるとする審決の判断は,直ちに是認できるものではない。
    (3) そこで,発明の詳細な説明の記載を参酌するに,本件特許出願に係る公表特許公報(甲第1号証。なお,平成16年3月16日付け手続補正(甲第4号証)及び本件補正(甲第2号証)ともに,発明の詳細な説明の部分に係る補正はない。)によれば,発明の詳細な説明には,本願発明の支持部材が力を及ぼす作用に関連して,以下の各記載がある。・・・(4) 上記(3)の各記載によれば,発明の詳細な説明においては,本願発明は,特定の仙骨圧を創造することによって所望の姿勢位置を確立する背骨支持システムであり,本願発明の支持部材ないしブロック部材44は,仙骨に対し,とりわけ仙骨の上方3分の1の領域である仙骨基部に対し,圧力を加えるものとされており,また,上記(3)のクには,当該圧力を仙骨上に,又は仙骨に沿って,集中させるようにすることも記載されている。これに対し,仙骨そのものではなく,仙骨よりも上方に存在する他の部位に圧力を加える旨の記載は,発明の詳細な説明中に,見当たらない。そうすると,かかる発明の詳細な説明の記載を参酌すれば,請求項1についての上記(2)の部分の補正に係る「それらが骨盤内の腰骨稜間の仙骨の上方部分上又は上部分に沿って力を集中させる」との記載は,「『それらが骨盤内の腰骨稜間の仙骨の上方領域(仙骨自体の一部であって,その上下方向の中央よりも上の部分)に力を集中させる』又は『それらが骨盤内の腰骨稜間の上記仙骨の上方領域に沿って力を集中させる』」という趣旨であるものと,すなわち,「仙骨の上方部分」も仙骨の「上部分」も,ともに仙骨自体の一部であって,その上下方向の中央よりも上の部分を意味するものと理解されることは明らかである。」

◆平成19(行ケ)10110 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月11日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10300 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年05月30日 知的財産高等裁判所

  「"磁束一定条件を満たすように"という要件を追加することが新規事項であるので訂正要件を満たさない」とした審決が取り消されました。
   (3)ア 審決は,本件明細書(甲1の1,2)の段落【0042】及び【0055】の記載は「電圧指令と周波数指令を所定値に設定するにあたって,磁束一定条件を満たすように設定することを開示するものではない。」(6頁14行〜16行)とし,段落【0055】には,「上記所定値を,誘導電動機の磁束一定条件を満たすように設定するものとは記載されていない。」(6頁20行〜21行)と認定した。しかし,訂正発明は,その特許請求の範囲の記載全体からすれば,ステップ(a’)の「前記誘導電動機の磁束一定条件を満たすように」との記載は,続くステップ(b’)の「無負荷状態において,前記所定値に基づいて前記インバータから出力される交流電圧を前記誘導電動機に印加することにより,前記誘導電動機を回転させるステップ」及びステップ(c’)の「前記回転している誘導電動機に流れる電流を検出するステップ」における運転条件を限定していることは明らかといえる。訂正発明は,ステップ(b’)及び(c’)における誘導電動機の回転が,「前記誘導電動機の磁束一定条件を満たすように」運転され,その後のステップ(d’)の「前記所定値に設定された電圧指令,前記所定値に設定された周波数指令,及び前記検出された電流に基づいて,前記コンピュータにより,前記誘導電動機の1次インダクタンスと関係する,前記制御装置の制御定数を設定するステップ」において,所望の制御定数を得ることができるように,「前記電圧指令および前記誘導電動機の周波数指令を所定値に設定」する〔ステップ(a’)〕ものであると理解することができる。そして,磁束一定条件を満たすように誘導電動機を運転し,所望の制御定数を得ることができるように,「前記電圧指令および前記誘導電動機の周波数指令を所定値に設定」することは,上記(2)において説示したとおり,明細書又は図面に記載されているから,本件訂正は,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。そうすると,審決が「電圧指令と周波数指令を所定値に設定するにあたって,磁束一定条件を満たすように設定することを開示するものではない」(6頁14行〜16行)として本件訂正を明細書又は図面に記載された事項の範囲内でなされたものではないと判断したことは誤りである。」

◆平成19(行ケ)10300 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年05月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10563 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年05月30日 知的財産高等裁判所

  大合議判決です。除くクレームによる消極的限定について、訂正要件を満たしているかが争われました。裁判所は、「願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」の意義について一般論を述べた上、本件は上記範囲内の訂正であると認めました。
  「このような特許法の趣旨を踏まえると,平成6年改正前の特許法17条2項にいう「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」との文言については,次のように解するべきである。すなわち,「明細書又は図面に記載した事項」とは,技術的思想の高度の創作である発明について,特許権による独占を得る前提として,第三者に対して開示されるものであるから,ここでいう「事項」とは明細書又は図面によって開示された発明に関する技術的事項であることが前提となるところ,「明細書又は図面に記載した事項」とは,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。そして,同法134条2項ただし書における同様の文言についても,同様に解するべきであり,訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。もっとも,明細書又は図面に記載された事項は,通常,当該明細書又は図面によって開示された技術的思想に関するものであるから,例えば,特許請求の範囲の減縮を目的として,特許請求の範囲に限定を付加する訂正を行う場合において,付加される訂正事項が当該明細書又は図面に明示的に記載されている場合や,その記載から自明である事項である場合には,そのような訂正は,特段の事情のない限り,新たな技術的事項を導入しないものであると認められ,「明細書又は図面に記載された範囲内において」するものであるということができるのであり,実務上このような判断手法が妥当する事例が多いものと考えられる。
・・・・上記アのとおり,訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができるというべきところ,上記イによると,本件各訂正による訂正後の発明についても,成分(A)〜(D)及び同(A)〜(E)の組合せのうち,引用発明の内容となっている特定の組合せを除いたすべての組合せに係る構成において,使用する希釈剤に難溶性で微粒状のエポキシ樹脂を熱硬化性成分として用いたことを最大の特徴とし,このようなエポキシ樹脂の粒子を感光性プレポリマーが包み込む状態となるため,感光性プレポリマーの溶解性を低下させず,エポキシ樹脂と硬化剤との反応性も低いので現像性を低下させず,露光部も現像液に侵されにくくなるとともに組成物の保存寿命も長くなるという効果を奏するものと認められ,引用発明の内容となっている特定の組合せを除外することによって,本件明細書に記載された本件訂正前の各発明に関する技術的事項に何らかの変更を生じさせているものとはいえないから,本件各訂正が本件明細書に開示された技術的事項に新たな技術的事項を付加したものでないことは明らかであり,本件各訂正は,当業者によって,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかであるということができる。したがって,本件各訂正は,平成6年改正前の特許法134条2項ただし書にいう「願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものであると認められる」

◆平成18(行ケ)10563 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年05月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10163 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年05月28日 知的財産高等裁判所

 訂正審判について、一部の請求項の削除を行う補正をしたところ、審判官は、このような補正は、審判請求書の要旨変更に当たるから許されないとし、その削除しようとした請求項についてだけ独立特許要件の有無を判断して訂正を否定しました。知財高裁は、この審決を取り消しました。
 「上記(1)及び(2)によれば,原告からなされた平成18年9月13日付けの本件訂正審判請求(甲4)は,旧請求項1〜7を新請求項1〜7等に訂正しようとしたものであるところ,その後原告から平成19年1月15日付けでなされた上記訂正審判請求書の補正(甲7)の内容は新請求項3・5・7を削除しようとするものであり,同じく原告の平成19年1月15日付け意見書(甲6)にも新請求項1・2・4・6の訂正は認容し新請求項3・5・7の訂正は棄却するとの判断を示すべきであるとの記載もあることから,審判請求書の補正として適法かどうかはともかく,原告は,残部である新請求項1・2・4・6についての訂正を求める趣旨を特に明示したときに該当すると認めるのが相当である。本件における上記のような扱いは,原告が削除を求めた新請求項3・5・7は,その他の請求項とは異なる実施例(「本発明の異なる形態」,「実施例2」)に基づく一群の発明であり,発明の詳細な説明も他の請求項に関する記載とは截然と区別されており,仮に原告が上記手続補正書で削除を求めた部分を削除したとしても,残余の部分は訂正後の請求項1・2・4・6とその説明,実施例の記載として欠けるところがないことからも裏付けられるというべきである。そうすると,本件訂正に関しては,請求人(原告)が先願との関係でこれを除く意思を明示しかつ発明の内容として一体として把握でき判断することが可能な新請求項3・5・7に関する訂正事項と,新請求項1・2・4・6に係わるものとでは,少なくともこれを分けて判断すべきであったものであり,これをせず,原告が削除しようとした新請求項3・5・7についてだけ独立特許要件の有無を判断して,新請求項1・2・4・6について何らの判断を示さなかった審決の手続は誤りで,その誤りは審決の結論に影響を及ぼす違法なものというほかない。」

◆平成19(行ケ)10163 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年05月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10333 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年04月24日 知的財産高等裁判所

 新規事項であるとして訂正を認めないことを要因とする無効判断が取り消されました。
 「そうすると,本件特許明細書に接した当業者であれば,「膨縮袋群の内側 他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起さ せ」ることにより,「肘掛部上に人体手部を安定的に保持させ」ることがで きることが容易に把握できるものというべきであるから,本件特許明細書 には,「膨縮袋群の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内 側の先端部を隆起させ」ることと「肘掛部上に人体手部を安定的に保持さ せ」ることの因果関係が示されているというべきである。」

◆平成19(行ケ)10333 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年04月24日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10237 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年03月25日 知的財産高等裁判所

  訂正要件を満たさないとして訂正を認めなかった審決が取り消されました。
 「本件訂正が,平成6年法律第116号による改正前の特許法126条1項ただし書きの「ただし,その訂正は,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならず,・・・」との規定に違反していると判断しており,その理由は,転記した訂正拒絶理由と示したものと同じとしている。そして,審決は,前記1(2)エ(ア)ないし(ウ)を転記しているので,訂正発明が,「文章が日本語として明確でなく,かつ意味不明である。」から,「それ自体意味不明な訂正発明は,特許明細書に記載がなく,また,特許明細書の記載から自明なものとは認められない。」として,本件訂正が,明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないと判断したものと認められる。そして,そのように認定判断した理由は,訂正拒絶理由通知書に記載した(1)ないし(7)の理由であると認められる。そこで,(1)ないし(7)の理由について検討する。・・・したがって,上記(7)の理由も失当である。(5) 以上によれば,本件訂正が,明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないと判断した審決の判断は誤りであり,原告主張の取消事由2は理由がある。」

◆平成19(行ケ)10237 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年03月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10055 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月27日 知的財産高等裁判所

  特許法17条の2第4項2号限定的減縮の要件について、本件補正を却下した審決の判断に誤りはないと判断しました。
    「(1) 本件出願の請求項19は,前記第2の2のとおりであるところ,アノードの「ホスト材料の中にリチウム金属を分散する」こと及び「ホスト材料中とその中に分散された前記リチウム金属」は記載されているが,「アノード内のリチウム金属の量」については,全く記載されていない。原告は,特許請求の範囲中の記載に「(アノード内の)リチウム金属」に関する言及がある場合には,その量に関する事項は,「(アノード内の)リチウム金属」という概念に内在する特定事項であると主張する。しかし,「リチウム金属」という記載では,物質の種類を特定したにすぎず,その「量」については,何らの言及がないのであるから,上記の「(アノード内の)リチウム金属」なる記載が「リチウム金属の量」についての特定を含むものではないことは一般的な用語法に照らして明らかであるというべきであって,原告の主張を採用することはできない。そうすると,本願発明19の特定事項として,「アノード内のリチウム金属の量」が含まれていない以上,請求項19に係る本件補正は,発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。」

◆平成19(行ケ)10055 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10439 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月21日 知的財産高等裁判所 

 訂正要件適合とした審決を取り消しました。
  「確かに,訂正明細書に記載された実施例には,ラッチレバー32aを内側に押し込み,ラッチ爪32eとラッチ爪係合穴60jとの係合を解除することによって,インクタンクが持ち上がることが記載されている(原告の主張に合わせ「ポップアップ機能」との語を用いる場合がある。)。しかし,同記載に係る「ポップアップ機能\」は,あくまでも,ホルダの内壁が,その下端部から外側上方に向かって傾斜した側断面形状を有し,ラッチレバー32aの傾斜はホルダの壁よりも大きくなっていること等,ラッチ爪を含むラッチレバーの具体的形状やホルダの内壁の具体的形状等の相互関係に依存するものであって,インクタンクとして規定された構成のみによって,常に実現するというものではなく,インクタンクとホルダとの間に一定の条件が成立することによってはじめて実現するものにすぎない。以上のとおり,訂正事項hは,記載自体が明確でないのみならず,発明の詳細な説明欄における実施例に関する記載及び図面を参照してみてもなお,ポップアップ機能\を実現する事項に係る構成を明確に示したものと解することはできない。したがって,訂正事項hにおいて,ホルダとの相互関係ないし協働関係を不明確なまま要素として含んだことによって,本件訂正は全体として,インクタンクの発明であるにもかかわらず,特許請求の範囲の記載(請求項1)を不明確にするものとなったから,特許請求の範囲の減縮に当たるか否かを判断することすらできないものであって,結局,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正ということはできない。」

◆平成18(行ケ)10439 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月21日 知的財産高等裁判所 

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◆平成18(行ケ)10455 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月12日 知的財産高等裁判所

 改善多項制下における訂正請求の確定時期について、判断されました。
  「イ 特許無効審判の手続において,無効審判請求の対象とされていない請求項について訂正請求がされ(特許法134条の2第5項後段参照),当該訂正請求につき「訂正を認める」との審決がされた場合は,審決のうち,当該請求項について「訂正を認める」とした部分は,無効審判請求の双方当事者の提起する取消訴訟の対象となるものではないから,審決の送達により効力を生じ,当該請求項は,審決送達時に,当該訂正された内容のものとして確定すると解するのが相当である。特許無効審判の手続において,無効審判請求の対象とされている請求項及び無効審判請求の対象とされていない請求項の双方について訂正請求がされた場合においては,審判合議体は,無効審判請求の対象とされていない請求項についての訂正請求が独立特許要件を欠く等の理由により許されないことを理由として,無効審判請求の対象とされている請求項についての訂正請求の許否に対する判断を行わずに,訂正請求を一体として許されないと判断することは,特段の事情のない限り,特許法上許されないというべきである。また,この場合において,無効審判請求の対象とされている請求項についての訂正請求が許されないことを理由として,無効審判請求の対象とされていない請求項についての訂正請求の許否に対する判断を行わずに,訂正請求を一体として許されないと判断することも,特段の事情のない限り,特許法上許されないものである。」

◆平成18(行ケ)10455 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月12日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10177 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年01月17日 知的財産高等裁判所

 補正は新規事項であると判断した審決が維持されました。
 「原告は,当初明細書の段落【0018】,【0020】及び【0036】に,ネガは顧客に返却されるものであることが記載されており,段落【0019】には,ネガ返却後に行うサービスが記載されているとし,結局,当初明細書に記載されている一連の技術の中から,ネガを返却した後,画像ファイルを保存しておいた場合に行うサービスに関する部分,すなわち,「低解像度の画像ファイルをデータ転送の対象とし,高解像度の画像ファイルから印画を行うという発明」を取り出して,画像ファイルの由来によらない発明であると主張しているものということができる。ところで,発明は,技術的思想の創作であるが(特許法2条),ここに「技術」とは,一般に,「?@物事を巧みにしとげるわざ。技芸。?A自然に人為を加えて人間の生活に役立てるようにする手段。また,そのために開発された科学を実際に応用する手段。科学技術。」(大辞林第3版),「?@物事をたくみに行うわざ。技巧。技芸。?A(technique)科学を実地に応用して自然の事物を改変・加工し,人間生活に役立てるわざ。」(広辞苑第5版)などとされているとおり,科学を現実に応用して人間生活に役立てるという目的を達成するための具体的手段であるから,発明における創作は,所期の目的すなわち技術課題を達成するための手段としての技術的思想でなければならないものと解すべきである。本件についてみると,ネガ又はスライドを返却した後の,画像ファイルを保存しておいた場合に行うサービスに関する部分,すなわち,原告が「低解像度の画像ファイルをデータ転送の対象とし,高解像度の画像ファイルから印画を行うという発明」と主張するものは,前記のとおり,当初明細書中に,従来技術との関係で技術課題が設定されているわけではないから,単に,そのサービスに関する部分のみを取り出しても,そこに出願人による技術的思想の創作である発明が存在すると認めることはできない。当初明細書の上記記載からいえることは,ネガを返却した後の,画像ファイルを保存しておいた場合に行うサービスに関する技術が当業者に開示されているというのみであって,それ以上のものではない。」

◆平成19(行ケ)10177 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年01月17日 知的財産高等裁判所

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