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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

補正・訂正

平成26(ネ)10109  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年10月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 訂正主張は時機に後れたとはないと判断されたものの、実質上変更に該当すると判断されました。
 被控訴人らは,控訴人による本件訂正に係る訂正の対抗主張は時機 に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)に当たり,却下されるべきで ある旨主張するが,控訴人が,無効2012−800073号の無効審判請 求事件において,本件訂正に係る訂正請求を行うに至った経過(前記第2の 2の「前提事実」(3))及び原判決の判断内容等に鑑みれば,控訴人が,当審 で提出した平成27年3月20日付け控訴人第2準備書面において初めて本 件訂正に係る訂正の対抗主張を行ったことが,時機に後れたものということ はできないから,被控訴人らの上記主張は理由がない。
・・・
そこで,以上を踏まえて検討するに,本件訂正における訂正事項1)は,本件訂正前の請求項1について,同請求項の「水溶性かつ生体 内溶解性の高分子物質」の前に「シート状の支持体の少なくとも一方 の面に経皮吸収製剤が1又は2個以上保持され,皮膚に押し当てられ ることにより前記皮膚吸収製剤が皮膚に挿入される経皮吸収製剤保持 シートであって,」(構成要件O)を新たに加え,同請求項の「経皮\n吸収剤。」(構成要件G)を「である,経皮吸収製剤保持シート。」\n(構成要件H’)に訂正するというものであり,発明の対象を「経皮\n吸収製剤」という物の発明から「経皮吸収製剤保持シート」という物 の発明に変更するものといえる。 そして,1)本件訂正前の特許請求の範囲中には,請求項19として, 「シート状の支持体の少なくとも一方の面に請求項1〜17のいずれ かに記載の経皮吸収製剤が1又は2個以上保持され,皮膚に押し当て られることにより前記皮膚吸収製剤が皮膚に挿入される経皮吸収製剤 保持シート」との記載があり,「経皮吸収製剤」の発明とは別に, 「経皮吸収製剤保持シート」の発明の記載があること,2)本件明細書 には,「経皮吸収製剤」の発明は,「難経皮吸収性の薬物等であって も高い効率で皮膚から目的物質を吸収させることができる」という効 果(段落【0059】)を奏することが,「経皮吸収製剤保持シート」 の発明は,「本発明の経皮吸収製剤を簡便かつ効率的に投与すること ができる」という効果(段落【0060】)を奏することが記載され るなど,「経皮吸収製剤」の発明と「経皮吸収製剤保持シート」の発 明とは,構成及び効果を異にする別個の発明として開示されているこ\nとを併せ考慮すると,本件訂正前の請求項1の「経皮吸収製剤」とい う物の発明を「経皮吸収製剤保持シート」という物の発明に変更する 訂正事項1)に係る訂正は,実質上特許請求の範囲を変更するものとし て,特許法134条の2第9項において準用する同法126条6項に 違反するものと認められる。仮にこのような物の発明の対象を変更す る訂正が許されるとすれば,「その物の生産にのみ用いる物」又は 「その物の生産に用いる物」の生産等の行為による間接侵害(同法1 01条1号ないし3号)が成立する範囲も異なるものとなり,特許請 求の範囲の記載を信頼する一般第三者の利益を害するおそれがあると いえるから,前記(イ)で述べた同法126条6項の規定の趣旨に反す るといわざるを得ない。他方で,本件においては,請求項19の「経 皮吸収製剤保持シート」の発明について,発明の対象を変更すること なく必要な訂正を行い,当該請求項に基づいて特許権を行使すること も可能であるから,請求項1について,発明の対象の変更となるよう\nな訂正をあえて認めなければ,特許権者である控訴人の権利保護に欠 けるという特段の事情もない。

◆判決本文

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平成26(行ケ)10227  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年7月29日  知的財産高等裁判所

 補正が新規事項であるとした審決が維持されました
 これに対し原告は,1)当初明細書等の段落【0041】には,ミキサの 「混合信号」が,「m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)) (3)」の式( 式(3)」)で示されており,式(3)中の「cos(2πfct)」は送信信号,「cos (2πfct+φ(t))」は受信信号(甲15の1,2),「φ(t)」は,「送信お よび受信信号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合)」で あること(段落【0041】),2)当初明細書等の段落【0039】には, 「パルス波形」の「無線周波数信号」である送信信号が「s(t)=u(t)cos(2 πfct+θ) (1)」の式(式(1))で示されており,式(1)(送信信号s(t)) と式(3)(混合信号m(t))とを対比すると,式(1)中の位相角θと式(3)中の 経路差φ(t)が形式的に同等であることは明確であるから,位相角θと経路 差φ(t)は,いずれも,余弦関数の引数の中の瞬時位相として現れており, 信号の位相に関する情報を伝えるものであること,3)「φ(t)」は,一般に 「位相シフト」,「位相オフセット」,「位相差」(甲17の1,2)と呼 ばれていることからすると,「φ(t)」は,「位相シフト」,すなわち,「 位相差信号」を意味すること,4)送信された信号が反射して帰ってくると, その経路距離,すなわち経路差に応じて位相がずれており,「経路差」と「 位相差」は同じものを別の表現で表\したものであることは,当業者にとって 自明であり(甲20の1,2),「経路差(path difference)」と「位相差 (phase difference)」が密接に関連していることは,本願の優先権主張日 当時,一般的な技術常識であったこと,5)当初明細書等の段落【0072】 には,「反射信号に送信信号を乗じ,それより呼吸,心活動,および身体 機能または動作を示すベースバンド信号を出力するように乗算回路を設け\nてもよい。」との記載があること,及び6)当初明細書等の段落【0041 】及び図1(別紙明細書図面参照)の記載によれば,当初明細書等には, 式(3)中の「φ(t)」は,「送信および受信信号の経路差(単一の反射体に より反射が決定される場合)」を表すものであるが,「ベースバンド信号」\nから得ることのできる「位相差信号」でもあり,また,ローパスフィルタ のフィルタリングにより混合信号から2fcを中心とする成分が除去された 後の出力信号は,位相差信号である「φ(t)」となり,この位相差信号に「 動作,呼吸,および心活動に関する情報」を含んでいることが開示されて いるといえるから,位相差信号である「φ(t)」から,「動作,呼吸,およ び心活動に関する情報」を導出できることが記載されているなどとして, 当初明細書等に,補正発明の本件構成に係る技術が記載されている旨主張\nする。 しかしながら,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
(ア) 当初明細書等の段落【0041】中には, 「受信信号と送信信号は,ミキサと呼ばれる一般的な電子機器(アナロ グあるいはデジタル方式)により混合することができる。たとえばCW の場合,混合信号は以下に等しい。 【数3】 m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)) (3) ここでφ(t)は送信および受信信号の経路差(単一の反射体により反射が 決定される場合),γは反射信号の減衰量である。反射体が一定の場合 φ(t)およびm(t)は一定となる。我々に該当する例では,反射体(胸部な ど)が動作しており,m(t)が時間とともに変化する。簡単な例として, 呼吸により胸部が正弦動作している場合, 【数4】 resp(t)=cos(2πfmt) (4) 混合信号は,fm成分(およびフィルタリングにより簡単に除去可能な2f cを中心とする成分)を含んでいる。混合後のローパスフィルタの出力側 の信号を未処理センサ信号と称し,動作,呼吸,および心活動に関する 情報を含んでいる。」との記載があり,「φ(t)」は「送信および受信信 号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合)」であること が示されている。 しかるところ,「位相差」とは,同じ周波数を有し,同じ時点に属す るとされる二つの波の位相の差を意味し,0°〜360°の角度に相当 する値で示されるのに対し(甲17の1(訳文甲17の2),乙2), 「経路差」とは,二つの波の間における波の源と干渉が起きる点との間 の経路の長さの違いを意味するものであり,「経路差」は「位相差」が 生じる一般的な要因となるが(甲22の1(訳文甲22の2)),「位 相差」と「経路差」は,概念的に異なるものである。 また,当初明細書等には,補正発明の特許請求の範囲(本件補正後の 請求項1)の「位相差信号」が「経路差」と同義であることについての 記載はなく,「φ(t)」が本件補正後の請求項1の「位相差信号」あるい は「前記生体対象から反射された前記反射信号と前記生体対象に向けて 送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相 差信号」に相当することについての記載も示唆もない。もっとも,原告 が主張するように,式(1)(送信信号s(t))(当初明細書等の段落【00 39】)と式(3)(混合信号m(t))(同段落【0041】)とを対比する と,式(1)中の位相角θと式(3)中の経路差φ(t)が形式的に同等のもので あり,いずれも,余弦関数の引数の中の瞬時位相として信号の位相に関 する情報を伝えるという点で共通するといえるとしても,このことから 直ちに「φ(t)」が本件補正後の請求項1の「位相差信号」に相当するこ とを認めることはできない。
(イ) 仮に「φ(t)」が送信信号及び受信信号の「経路差」を表すとともに,\nその位相差を示す「位相差信号」を表したものと解する余地があるとし\nても,式(3)(m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)))は,ミキサから 出力された混合信号m(t)に位相差信号としての「φ(t)」の成分が含まれ ていることを示したものにすぎず,プロセッサが「ベースバンド信号」 を分析し,「φ(t)」を決定したことを示したものとはいえないし,当初 明細書等の記載事項全体をみても,プロセッサが「ベースバンド信号」 を分析し,「φ(t)」を決定し,又は決定することができることを示す記 載はない。 また,当初明細書等には,プロセッサが,「φ(t)」又は「位相差信号」 から「呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上の測定\n結果を導出」し,又は導出することができることについての記載はない。 (ウ) 以上によれば,当初明細書等には,式(3)中の「φ(t)」が,本件補 正後の請求項1の「位相差信号」あるいは「前記生体対象から反射され た前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(R F)のパルス信号との位相差を示す位相差信号」に相当することについ ての開示があるものとはいえないし,また,プロセッサが「ベースバン ド信号」を分析し,「φ(t)」を決定し,「φ(t)」から「呼吸,心活動, および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出」すること\nについての開示があるものともいえないから,当初明細書等に補正発明 の本件構成に係る技術が記載されているとの原告の主張は,理由がない。\n

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平成26(行ケ)10158  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年7月16日  知的財産高等裁判所

 審判請求時にした補正書に該当するか否かが争われました。裁判所は実質的に判断して補正書に該当すると認定し、拒絶審決を取り消しました。
 特許法17条の2第1項4号は,特許出願人は,拒絶査定不服審判を請 求する場合には,その審判請求と同時に願書に添付した明細書,特許請求 の範囲又は図面について補正をすることができる旨規定し,同法17条4 項は,手続の補正(手数料の納付を除く。)をするには,手続補正書を提 出しなければならない旨規定し,また,特許法施行規則11条1項は,手 続補正書の様式に関し,手続の補正は,「様式13」によりしなければな らない旨規定している。 そこで,本件書面1が様式13に適合するかどうかについて検討するに, 様式13は,「【書類名】」欄に「手続補正書」,「【あて先】」欄に「特 許長官 殿」とそれぞれ記載し,「【事件の表示】」の「【出願番号】」\n欄,【補正をする者】の「【識別番号】」欄,「【住所又は居所】」欄及 び【氏名又は名称】」欄,【代理人】の「【識別番号】」欄,「【住所又 は居所】」欄及び「【氏名又は名称】」欄,「【発送番号】」欄」,「【手 続補正1】」の「【補正対象書類名】」欄,「【補正対象項目名】」欄, 「【補正方法】」欄及び「【補正の内容】」欄を設け,その各欄に具体的 に記載すべき旨定めているところ,前記ア(ウ)によれば,本件書面1は, 「【補正対象項目名】」欄と記載すべきところを「【補正対象項目】」欄 と記載し,「【代理人】」の「【識別番号】」欄の記載がないほかは,様 式13の定めに従った記載がされているものと認められる。 しかるところ,「【補正対象項目名】」欄の欄名を「【補正対象項目】」 と記載したことは,単なる誤記にすぎず,職権訂正の対象となる事柄であ るものと認められる。 次に,様式13の「[備考]」の「2」に「識別ラベルをはり付けるこ とにより印を省略するときは,識別ラベルは「「【氏名又は名称】」(法 人にあつては「【代表?】」)の横にはるものとする。」との記載がある ことからすると,【代理人】の「【識別番号】」欄は識別ラベルを貼付す\nる方法によって記載することができ,また,代理人がその押印をすること により「【識別番号】」欄の記載を要しないものと認められる。本件書面 1には,【代理人】の「【氏名又は名称】」欄に記載されたCの押印はな く,「【識別番号】」欄の記載も,識別ラベルの貼付もないが,前記ア(ア )のとおり,Cは特許庁の窓口(出願支援課窓口)に訪れて,本件審判請求 書とともに,本件書面1を含む書類を提出していること,本件審判請求書 の【代理人】の「【氏名又は名称】」欄には,Cの氏名が記載され,その 押印がされていること(乙6の1枚目)に鑑みると,上記の点は,窓口の 担当者がCに本件書面1への押印を求めることなどにより補正可能な軽微\nな瑕疵にすぎないものと認められる。 さらに,様式13には,「【提出日】」について,括弧書きで「(【提 出日】 平成 年 月 日)」と記載され,それが任意的記載事項であっ て,必要的記載事項に当たらないことが示されている。この点に関し,本 件書面1には,「【提出日】」欄に「平成22年12月 日」との記載が あるが,この記載は具体的な日を特定するものではなく,「【提出日】」 の記載に当たらないといえるから,本件書面1には,具体的な「【提出日 】」の記載がないものとして取り扱うべきものといえる。 以上によれば,本件書面1は,本願の特許請求の範囲の補正を内容とす る書面であって,様式13に適合する手続補正書と認めるのが相当である。
ウ そして,本件審判請求書の「3・立証の趣旨」に,「拒絶されるべきで ない理由」として記載されている主たる理由は,平成20年10月10日 付け手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし16につい て補正をすることで拒絶理由を解消するという内容のものであり(乙6の 5頁ないし9頁記載の「(拒絶理由1)」ないし「(拒絶理由4)」に対 する反論部分を参照),しかも,本件審判請求書の「4・むすび」には, 「したがって,本願発明は引用文献1〜10に記載された発明の内容に関 項を2つにまとめ, よって原査定を取り消す,この出願の発明はこれを特許すべきものとする, との審決をもとめる.」(乙6の10頁〜11頁)との記載がある。これ らの記載は,本願の特許請求の範囲が平成20年10月10日付け手続補 正による補正後の請求項1ないし16から本件書面1記載の請求項1及び 2に補正されたことを前提としたものであることは明らかである。 もっとも,本件審判請求書の「【提出物件の目録】」欄には,「【物件 名】」として,「1・手続補正書 1」及び「7・手続補正書 1」との 記載があり,「1・手続補正書 1」に対応するものとして本件書面1が, 「1・手続補正書 7」に対応するものとして本件書面2が提出されてい るが(前記第2の1(2)ウ),本件書面2(甲45,乙6)には,「【提出 日】」欄に平成22年10月5日,「【補正の内容】」欄に請求項1ない し3がそれぞれ記載され,「22.10.6」と刻印された特許庁国際出 願課名義の日付印が押印されていることに照らすと,本件書面2は,本件 審判請求書の提出日(平成23年12月26日)より前に提出された手続 補正書であり,本件審判請求書の前提とする「請求項を2つにまとめ」る 手続補正に係る手続補正書に当たらないことは明らかである。 さらに,本件においては,拒絶査定不服審判請求書の「【提出物件の目 録】」欄に,拒絶査定不服審判請求と同時にする「手続補正書」を記載し てはならないことを定めた法令が存在することや特許庁がそのような運用 基準を定めて公表していることについての主張立証はない。
エ 前記イ及びウによれば,本件書面1は,本件審判請求書と同時に特許庁 に提出された,本願の特許請求の範囲の補正を内容とする様式13に適合 する手続補正書であるから,特許法17条の2第1項4号に基づく補正に 係る手続補正書に該当するものと認められる。 そうすると,本件審判手続においては,本件書面による補正が特許法1 7条の2第3項ないし5項所定の補正の要件に適合するかどうかについて 審理判断を行い,適法であれば,本件書面による補正後の特許請求の範囲 (請求項1及び2)の記載に基づいて発明の要旨認定を行い,その特許要 件について審理判断を行うべきであったものであるが,本件審決には,本 件書面1による補正がされたことを看過し,上記審理判断を行うことなく, 本件書面による補正前の特許請求の範囲の記載に基づいて発明の要旨認定 を行った誤りがあり,この誤りは,審決の結論に影響を及ぼすべきものと 認められる。

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平成26(行ケ)10242  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月10日  知的財産高等裁判所

 補正が新規事項とした審決が取り消されました。争点となった文言は、「(8) シュレッダ−補助器の横幅は,約35cmであるが,これはメ−カ−や機種により,シュレッダ−機本体の刃部分の横幅が異なる為,約35cmとしたが,A3用紙が余裕を持って縦に入る位の横幅であり,」を「(8) シュレッダ−補助器の横幅は,メ−カ−や機種により,シュレッダ−機本体の刃部分の横幅が異なる為,各メ−カ−の各機種の刃部分の横幅に入る様に対応させた横幅の長さとする。」とした補正です。
 公報を見ると、実案を基礎とした特許出願ですが、代理人無しの本人出願です。
 前記第2の2(1)のとおりの当初請求項1の内容及び前記1のとおりの明細 書及び図面の内容によれば,当初明細書等には,シュレッダー機本体の刃部分 による幼児の指切断等の怪我を未然に防ぐために,シュレッダー機本体の刃部 分の上方に取り付けて,幼児の指がシュレッダー機本体の刃部分に届かないよ うにするシュレッダー補助器が開示されており,その具体的な構成は,シュレ\nッダー補助器本体,ストッパー及び金属製爪部分から成り,シュレッダー機本 体紙差込口を金属製爪部分で挟み込むことによって,シュレッダー補助器本体 がストッパーによって同差込口を覆うように取り付けられ,これによって,シ ュレッダー機本体の刃部分に幼児の指が届かなくなるというものであると認め られる。 そして,当初請求項1の(8)にも「メ−カ−や機種により,シュレッダ−機 本体の刃部分の横幅が異なる」と記載されているとおり,シュレッダーは,処 理する紙の大きさ,メーカーや機種により,刃部分の横幅が異なることは明ら かであるが,仮に,本願に係るシュレッダー補助器の横幅がシュレッダー機本 体の紙差込口の横幅に満たないものであるとすれば,シュレッダー補助器によ ってシュレッダー機本体の紙差込口を覆うことのできない領域が生じることと なり,同領域において,幼児の指がシュレッダー機本体の当該刃部分に届くこ とを許し,幼児の指切断等の怪我が生じ得ることとなる。 他方,上記のとおりのシュレッダー補助器の具体的な構成や,図1及び2に\n開示されたその具体的な形状,さらに図4に開示されたシュレッダー機本体へ の装着状況に照らすと,本願に係るシュレッダー補助器は,シュレッダー機本 体の紙差込口が凹んだ溝状となっているものを対象とし,その凹んだ溝状の部 分にストッパーを配置し,ストッパー底部と金属製爪部分とで紙差込口の凹み を形成する壁状の部分を挟み込むように装着するものであると認められるが, 仮に,シュレッダー補助器の横幅がシュレッダー機本体の紙差込口の横幅を超 えた長さであるとすれば,シュレッダー機本体の紙差込口の横幅に合わせて伸 縮可能であるような構\造とするなど,補助器の横幅とシュレッダー機本体の紙 差込口の横幅に違いがあっても(場合によっては大きな違いが生じても),補 助器の装着が可能なように調整する工夫が当然に要求されるはずであるにもか\nかわらず,その点に関する示唆は何らされていないことから,ストッパーが引 っ掛かるなどして凹んだ溝状の部分に配置することができなくなり,シュレッ ダー補助器を装着することができず,発明の技術的課題を解決することができ ないこととなる。 このような当初明細書等に開示された発明の技術的課題及び作用効果,さら にはこれらに開示されたシュレッダー補助器の具体的な形状等に照らすと,当 初明細書等に開示されたシュレッダー補助器の横幅が1つのものに固定されて いたと理解するのは困難であり,むしろ,シュレッダー機本体の紙差込口の横 幅,すなわち,これに相応する刃部分の横幅に対応するものとすることが想定 されていたものと理解すべきことは明らかであるから,本件補正2における補 正事項,すなわち,請求項1の「(8) シュレッダ−補助器の横幅は,メ−カ −や機種により,シュレッダ−機本体の刃部分の横幅が異なる為,各メ−カ− の各機種の刃部分の横幅に入る様に対応させた横幅の長さとする。」との事項, 並びに,明細書【0010】の「「(ネ) シュレッダ−補助器の横幅は,各メ −カ−の各機種の刃部分の横幅に,入るように対応した横幅の長さとし,」及 び「(ヨ) シュレッダ−補助器の横幅は,各メ−カ−の,各機種の刃部分の横 幅に入るように対応した横幅の長さとし,」との事項は,いずれも,当初明細 書等の記載から自明な事項であるというべきである。

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平成26(行ケ)10105等  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年4月23日  知的財産高等裁判所

 判決文が全部で230頁あります。争点の一つが訂正要件違反(「映像番組を代表する情報を出力するカメラ」が「番組情報を出力するカメラ」への訂正)が、実質上の拡張に当たるかです。知財高裁は、実質上の拡張であると判断しました。
 上記記載によれば,本件発明22の「デジタル映像記録装置」は,「映像番組を代表する情報を出力するカメラ」を備えることを理解することができる。\nしかるところ,本件訂正前の請求項22には,「映像番組を代表する情\n報」について,その具体的構成を特に規定する記載はなく,また,本件明細書(甲33)の発明の詳細な説明においても,「映像番組を代表\する情報」の具体的構成について述べた記載はない。\n一方で,本件訂正により削除された本件訂正前の請求項34は,・・・というものであり(甲24,33),その記載中には,「映像番組を代表する情報」と「前記映像番組の情報」の用語が区別して用いられている。\n以上によれば,本件訂正前の請求項22の「映像番組を代表する情報」は,その文理上,「映像番組」の情報あるいは「映像番組」に係る情報のうちの「代表\する」情報を意味するものと解される。 次に,本件訂正前の請求項22には,「番組情報をデジタル圧縮する手段」,「前記パーソナルコンピューターを使用したオフライン編集に合った番組情報」,「オンライン編集に合った番組情報」,「前記番組情報」\nとの記載があり,「番組情報」の用語が用いられている。 しかるところ,本件訂正前の請求項22には,「番組情報」について,その具体的構成を特に規定する記載はなく,また,本件明細書の発明の詳細な説明においても,「番組情報」の具体的構\成について述べた記載はない。 本件訂正前の請求項22の記載を全体としてみると,「番組情報」にいう「番組」とは,「映像番組」を意味するものであり,「番組情報」は,「映像番組」の情報あるいは「映像番組」に係る情報をいうものと解される。 そうすると,本件訂正前の請求項22の「映像番組を代表する情報」は,「番組情報」に含まれる情報であって,「番組情報」と上位概念・下位概念の関係にあるものと解される。
イ ・・・上記請求項22の記載によれば,訂正事項2に係る本件訂正により,「映 像番組を代表する情報を出力するカメラ」が「番組情報を出力するカメラ」と訂正されたものであり,この訂正により,「カメラ」が出力する対象が「映像番組を代表\する情報」から「番組情報」に変更されたことを理解することができる。 しかるところ,前記アのとおり,「映像番組を代表する情報」は,「番組情報」に含まれる情報であって,「番組情報」と上位概念・下位概念の関係にあるものと解されるから,本件訂正前の請求項22の「カメラ」が出力する対象は,「映像番組を代表\する情報」であったのが,本件訂正後の請求項22の「カメラ」が出力する対象は,「映像番組を代表する情報」以外の「番組情報」に含まれる情報をも含むものとなり,この点において,本件訂正は,本件訂正前の請求項22について,実質上特許請求の範囲を拡張するものであると認められる。\n

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平成25(行ケ)10131  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年2月5日  知的財産高等裁判所

 審判請求時の補正が独立特許要件を欠く場合には,拒絶理由通知をしなくとも常に補正を却下することができるとする主張は採用できないと判断されました。ただ本件における補正却下は問題なしと判断されました。
 そこで検討するに,平成18年法律第55号による改正前の特許法50条本文は,拒絶査定をしようとする場合は,出願人に対し拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと規定し,同法17条の2第1項1号に基づき,出願人には指定された期間内に補正をする機会が与えられ,これらの規定は,同法159条2項により,拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合にも準用される。この準用の趣旨は,審査段階で示されなかった拒絶理由に基づいて直ちに請求不成立の審決を行うことは,審査段階と異なりその後の補正の機会も設けられていない(もとより審決取消訴訟においては補正をする余地はない。)以上,出願人である審判請求人にとって不意打ちとなり,過酷であるからである。そこで,手続保障の観点から,出願人に意見書の提出の機会を与えて適正な審判の実現を図るとともに,補正の機会を与えることにより,出願された特許発明の保護を図ったものと理解される。この適正な審判の実現と特許発明の保護との調和は,拒絶査定不服審判において審判請求時の補正が行われ,補正後の特許請求の範囲の記載について拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合にも当然妥当するものであって,その後の補正の機会のない審判請求人の手続保障は,同様に重視されるべきものといえる。
以上の点を考慮すると,拒絶査定不服審判において,本件のように審判請求時の補正として限定的減縮がなされ独立特許要件が判断される場合に,仮に査定の理由と全く異なる拒絶の理由を発見したときには,審判請求人に対し拒絶の理由を通知し,意見書の提出及び補正をする機会を与えなければならないと解される。これに対し,当該補正が他の補正の要件を欠いているような場合は,当然,補正を却下すべきであるし,当該補正が限定的減縮に該当するような場合であっても,当業者にとっての周知の技術や技術常識を適用したような限定である場合には,査定の理由と全く異なる拒絶の理由とはいえず,その周知技術や技術常識に関して改めて意見書の提出及び補正をする機会を与えることなく進歩性を否定して補正を却下しても,当業者である審判請求人に過酷とはいえず,手続保障の面で欠けることはないといえよう。そうすると,審判請求時の補正が独立特許要件を欠く場合には,拒絶理由通知をしなくとも常に補正を却下することができるとする被告の主位的主張は,上記の説示に反する限度で採用することができない。
(2) 以上の点を踏まえて更に検討するに,本件において,拒絶査定の理由は,「補正前発明は,当業者が,引用文献1に記載された発明に対して,引用文献2に開示された技術及び周知技術を適用して容易に発明をすることができた」というものであるのに対し,審決の補正却下の理由は,「補正発明は,当業者が,引用文献1に記載された発明に対して周知技術を適用して容易に発明することができた」というものである。そうすると,両者の相違は,引用文献2に開示された技術について,拒絶査定ではこれを公知技術としたのに対し,審決ではこれを周知技術と評価して例示したのであって,審判請求人である原告にとって不意打ちとはいえないから,審判段階の独立特許要件の判断において改めてこの点について意見書の提出及び補正をする機会を与えなくとも,手続保障の面から審決に違背はないといえる。この点について原告は,審決が,拒絶理由通知書及び拒絶査定において引用されなかった参考文献1ないし3を引用しており,これらに対して補正できないことにかんがみれば十分な反論を行うことは困難であり,審理手続を尽くすことができたとはいえないと主張する。しかし,参考文献1ないし3は,審決において周知技術や常套手段を示すものとして引用されたものであり,後記3(2)及び(3)のとおり,いずれも実際に当業者にとっての周知の技術や常套手段を示したものと認められるのであるから,これに対する補正の機会が与えられなくとも(参考文献1及び2は,審判の審尋において示されたものであり,原告からこれらに対する反論として回答書(甲14)が提出されている。),当業者である審査請求人にとって格別の不利益はないものと解され,原告の主張には理由がない。また,原告は,審決が,引用文献1及び2の記載の中から拒絶理由通知書及び拒絶査定で引用した箇所とは異なる箇所を引用しており,審理手続を尽くすことができなかったと主張する。しかし,拒絶理由通知書(甲7)及び拒絶査定(甲10)では,引用文献1の一部を適示して,引用発明の本質的部分である「Internet Explorerのツールバーのボタンからワンクリックで表示中のWebページのサーバのWhois情報を表\\示させるシステム」という技術事項が開示されていることを示したのに対し,審決では,当該摘示箇所を示した上で,引用発明の背景や目的効果等を示すために別途の箇所を摘記したもの認められるから,原告にとって不利益がないことは明らかであり,原告の主張には理由がない。したがって,審決が,補正発明は独立特許要件を満たさないことを理由として,審判段階で改めて拒絶理由通知をすることなく本件補正を却下したことに誤りはなく,原告の主張する取消事由1は理由がない。

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平成26(行ケ)10204  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年3月11日  知的財産高等裁判所

 訂正を認めた審決が取り消されました。理由ですが、使用態様の限定は、経皮吸収製剤という物の発明を減縮するものではないというものです。本件は、無効理由なしとした第1次審決について、知財高裁で取り消され、審判に係属した後、訂正がなされ、訂正を認める、無効理由なしとした審決についての取消訴訟でした。
 原告は,本件発明は「経皮吸収製剤」という物の発明であるから,訂正事項3が特許請求の範囲の減縮に該当するというためには,訂正前の特許請求の範囲から,一定の構成・態様の経皮吸収製剤を除外するものでなければならないのに,訂正事項3は,経皮吸収製剤という医療用針の使用方法を限定したものにすぎず,一定の構\成・態様の経皮吸収製剤を除外するものではないから,特許請求の範囲の減縮には該当しないと主張する(前記第3の1)ので,以下,検討する。 特許法134条の2第1項ただし書は,特許無効審判における訂正は,特許請求の範囲の減縮(1号),誤記又は誤訳の訂正(2号),明瞭でない記載の釈明(3号),他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること(4号)を目的とする場合に限って許容される旨を定めているところ,訂正が特許請求の範囲の減縮(1号)を目的とするものということができるためには,訂正前後の特許請求の範囲の広狭を論じる前提として,訂正前後の特許請求の範囲の記載がそれぞれ技術的に明確であることが必要であるというべきである。 これを訂正事項3について見ると,訂正事項3は,訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「皮膚に挿入される,経皮吸収製剤」とあるのを,「皮膚に挿入される,経皮吸収製剤(但し,・・・及び経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能\に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される経皮吸収製剤を除く)」に訂正するものである。 そうすると,本件発明は,「経皮吸収製剤」という物の発明であるから,本件訂正発明も,「経皮吸収製剤」という物の発明として技術的に明確であることが必要であり,そのためには,訂正事項3によって除かれる「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能\に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される経皮吸収製剤」も,「経皮吸収製剤」という物として技術的に明確であること,言い換えれば,「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能\に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される」という使用態様が,経皮吸収製剤の形状,構造,組成,物性等により経皮吸収製剤自体を特定するものであることが必要というべきである。\nしかし,「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能\に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される」という使用態様によっても,経皮吸収製剤保持用具の構造が変われば,それに応じて経皮吸収製剤の形状や構\造も変わり得るものである。また,「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能\に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される」という使用態様によるか否かによって,経皮吸収製剤自体の組成や物性が決まるというものでもない。 したがって,上記の「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能\に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される」という使用態様は,経皮吸収製剤の形状,構造,組成,物性等により経皮吸収製剤自体を特定するものとはいえない。\n以上のとおり,訂正事項3によって除かれる「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能\に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される経皮吸収製剤」は,「経皮吸収製剤」という物として技術的に明確であるとはいえない。 そうすると,訂正事項3による訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,技術的に明確であるとはいえないから,訂正事項3は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められない。

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平成25(行ケ)10330  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年3月11日  知的財産高等裁判所

 無効理由なしとした審決が取り消されました。理由は新規事項違反の無効理由ありというものです。
 そこで,本件技術を前記1)型及び2)型に適用できるか否かについて検討すると,本件補正前発明は,伝動歯車が「外歯」に限定されているのであるから,伝動外歯歯車は,偏心歯車との噛み合わせの位置関係から各偏心体軸歯車の内側に位置することとなる。ここで,本件当初明細書には,本件発明の構成要件である「伝動外歯歯車は単一の歯車からなり,出力軸(出力部材)に軸受を介して支持され」る構\成が開示されており,伝動外歯歯車と出力軸との関係についてその余の構成は開示されていないところ,伝動外歯歯車と出力軸との上記位置関係を前提とすると,2)型においては,出力部材が内側となることから,「伝動外歯歯車は単一の歯車からなり,出力軸(出力部材)に軸受を介して支持され」る構成を想定できるとしても,1)型においては,下記模式図のとおり,伝動外歯歯車は,減速機の一番外側に位置する出力軸とはかけ離れた位置に存在することとなる。 そうすると,このようなかけ離れた位置にある伝動外歯歯車を出力軸に軸受を介して支持する構成については,当業者であっても明らかではないから,本件技術を外歯揺動型遊星歯車装置に直ちに適用できるということはできない。\nしたがって,本件補正は,新たな技術的事項を導入するものであると認められることから特許法17条の2第3項に違反するものであって,これを適法とした審決の判断には誤りがある。
・・・・
(ア) 被告は,駆動源側のピニオンの回転を複数の偏心体軸に振り分けて伝達する構造に着目すると,本件当初明細書には,駆動源側のピニオンと伝動外歯歯車と偏心体軸歯車との関係が特定された発明が記載されており,「使用用途に応じて装置の中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保することができると共に,動力伝達の更なる円滑化を図ることができる」装置として,「内歯揺動型」の構\成は不可欠ではない「揺動型遊星歯車装置」が記載されているといえる旨主張する。 確かに,本件当初明細書を抽象化して読めば,駆動源側のピニオンと伝動外歯歯車と偏心体軸歯車との関係が特定された発明が記載され,「使用用途に応じて装置の中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保することができると共に,動力伝達の更なる円滑化を図ることができる」装置として,「揺動型遊星歯車装置」が記載されていると解することはできる。 しかし,前記イで判示したとおり,本件当初明細書において開示されている本件 技術は,「複数の偏心体軸の各々に配置された偏心体を介して揺動歯車を揺動回転させる揺動型遊星歯車装置において,前記複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と,該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と,該伝動外歯歯車の回転中心軸と異なる位置に平行に配置されると共に該駆動源側のピニオンが組込まれた中間軸と,を備え,前記中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを回転させ,前記伝動外歯歯車を介して該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達されるように構成する」ものであるところ,これを外歯揺動型遊星歯車装置について適用しようとすると,当業者であっても1)型で実現する方法が不明であって,外歯揺動型遊星歯車装置を含めた技術が本件当初明細書に実質的に記載されているということはできない。

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平成26(行ケ)10057  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年2月18日  知的財産高等裁判所

 いわゆる限定的減縮について、補正前後で1対1対応である必要はなく、「,1)特許請求の範囲の減縮であること,2)補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであること,3)補正前の当該請求項に記載された発明と補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であること」を満たせばよいとの判断基準が示されました。本件では、「請求項1の補正は,補正前の請求項には存在しなかった構成を付加するものというべきである」として、審決が維持されました。\n
 ア 原告は,いわゆる増項補正が特許法17条の2第5項2号所定の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するか否かについては,請求項の数から外形的,抽象的に判断すべきではなく,補正前後の請求項の内容に基づいて,新たに審査すべき必要を生じさせるものであるか否かを個別的,具体的に検討して判断すべきであると主張する(前記第3の1。これに対し,被告は,同項の趣旨が,出願人の便宜と迅速,的確かつ公平な審査との調整の趣旨に基づき,例外的に一定の範囲に限って補正を認めたものであることに照らすと,同項2号は,補正前の請求項と補正後の請求項とが一対一の対応関係にあることを前提としているというべきであり,一対一の対応関係にないような請求項を増加させる補正は,同号かっこ書の規定に該当しないと主張する。そこで,まず,この点について検討する。
イ 特許法17条の2第5項は,「前2項に規定するもののほか,第1項第1号,第3号及び第4号に掲げる場合(同項第1号に掲げる場合にあっては,拒絶理由通知と併せて第50条の2の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は,次に掲げる事項を目的とするものに限る。」と規定し,同項2号は,「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために 必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」と規定している。 特許法17条の2第5項の趣旨は,特許請求の範囲について補正が行われると,審査官は補正後の特許請求の範囲について再度審査を行う必要があるところ,審査の長期化防止及び円滑化のため,最後の拒絶理由通知以降に行う特許請求の範囲の補正について,既に審査においてなされた先行技術文献の調査などの審査結果を有効に活用することができる範囲内に限り補正を認めることにあるものと解される。 そして,同項2号は,単に「特許請求の範囲の減縮」とのみ規定するのではなく,「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの・・・に限る。)」と規定している。その趣旨は,単に「特許請求の範囲の減縮」とのみ規定したのでは,出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内において,請求項に新たな構成要素を付加することにより,特許請求の範囲の減縮を行う補正も「特許請求の範囲の減縮」に含まれることとなることから,このような補正を許容すると,既に審査においてなされた先行技術文献の調査などの審査結果を有効に活用することができなくなり,再度審査を行う必要が生じ,上記17条の2第5項の趣旨に反することになるため,同法36条5項が,「特許請求の範囲には,請求項に区分して,特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。」と規定していることを受けて,請求項に記載したすべての事項のうちの個々の事項を上記規定の趣旨で限定する補正に限る旨を明確化することにあると解される。
ウ 以上のような特許法17条の2第5項2号の規定振り及びその趣旨に照らすと,同号に該当する補正は,多くの場合,補正前の請求項の発明特定事項を限定して減縮補正することにより,補正前の請求項と補正後の請求項とが一対一の対応関係にあるようなものになることが考えられる。しかし,同号が,補正により,単に形式的に請求項の数が増加することがないという意味を含めて,補正前の請求項と補正後の請求項が一対一の対応関係にあることを定めていると解すべき根拠はない。 したがって,被告の前記主張の趣旨が,補正により請求項の数が増加するものはすべからく同号かっこ書の規定に該当しないというのであれば,そのような主張には法的根拠がなく,採用の限りではない。 同号は,かっこ書を含めてその要件を明確に規定しているのであるから,問題となる補正が同号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するといえるためには,それがいわゆる増項補正であるかどうかではなく,1)特許請求の範囲の減縮であること,2)補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであること,3)補正前の当該請求項に記載された発明と補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であること,という要件(以下,上記各要件を単に「1)の要件」のようにいう。)を満たすことが必要であり,かつそれで十分であるというべきである。\nしたがって,原告の前記主張中,これと異なり,補正前後の請求項の内容に基づいて,新たに審査すべき必要を生じさせるものであるか否かを個別的,具体的に判断すべきであるとする部分も採用することができない。
エ ところで,審決は,請求項2を新たに追加する補正は,特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項も目的とするものではない旨を述べるのみであり,上記1)から3)のいずれの要件を欠くことをその判断の理由としたのかは明らかではない。仮に,審決が,請求項2を新たに追加する補正は当然に同項2号所定の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しないと判断したのであるとすれば,判断の手法として,不適当なも のといわざるを得ない。 そこで,項を改めて,請求項1の補正及び請求項2を追加する補正が,原告の主張する特許法17条の2第5項2号所定の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するか否かについて,更に検討する。

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平成26(行ケ)10087  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年1月28日  知的財産高等裁判所

 訂正要件(新規事項)を満たしていないとした審決が取り消されました。
 以上のような本件明細書の記載,特に本件発明7に関する記載とその技術的意義からすれば,本件明細書の記載を見た当業者であれば,可動アームに測定ユニットをどのように取り付けるかは本件発明における本質的な事項ではなく,測定ユニットは,その機能を発揮できるような態様で可動アームに保持されていれば十\分であると理解するものであり,そして,本件特許の出願時における上記技術常識を考慮すれば,可動アームに測定ユニットを取り付ける態様を,「懸下」以外の「埋設」等の態様とすることについても,本件明細書から自明のものであったと認められる。 したがって,本件明細書の記載を総合すれば,測定ユニットを「保持」する可動アームを含む本件訂正は新たな技術的事項を導入するものではなく,本件明細書に記載された事項から自明のものであると認められる。
(2) 審決の判断及び被告の主張について 審決は,測定ユニットを可動アームに取り付ける態様として,「保持」が上位概念,「懸下」,「埋設」及び「立設」がその下位概念であり,本件訂正は,「懸下」に加えて「埋設」や「立設」等の取付態様を含むものであり,本件明細書には「保持」について直接の記載はなく,「保持」が本件明細書における「懸下」の記載から自明な事項でもない理由として,次のアないしウのとおり述べている。しかし,審決のアないしウにおいて述べることは,次のとおり,理由がない。
ア 審決は,測定ユニットを可動アームに埋設した場合,「懸下」に比して「埋設」の態様によって,より速度の速い移動に対応できるとともに,懸下部材が不要となり,部品点数が少なくなるなどの一応の作用効果が生じることについて当事者間に争いがないから,「懸下」に比して「埋設」の態様が自明な事項,すなわち新たな技術的事項を導入しないものとまでいうことができない旨判断した(被告も同旨の主張をする。)。 しかし,審尋(甲32)に対する原告の平成26年1月23日付け回答書(甲34)の記載をみても,原告が上記作用効果が生じることを争っていないと認めることはできない。また,測定ユニットの可動アームへの「懸下」や「埋設」は,その具体的態様によって作用効果が異なるのであるから,測定ユニットの「懸下」を「埋設」にしたからといって,直ちに,より速度の速い移動に対応できるとともに,懸下部材が不要となり,部品点数が少なくなるなどの一応の作用効果が生じると認めることもできない。さらに,測定ユニットの「懸下」と「埋設」に関して,その作用効果において具体的な差異が生じるとしても,そのことは,本件明細書に記載された本件発明7の前記技術的意義とは直接関係のないことであり,また,本件特許の出願時における前記技術常識を考慮すれば,本件訂正発明2が本件明細書に記載された事項から自明であるとの前記認定判断を左右するものではない。 したがって,審決の上記理由から,本件訂正は新たな技術的事項を導入するものであるということはできない。
イ(ア) 審決は,測定ユニットが光照射によるものであれば,通常の構成では「埋設」した場合は原理的には測定ができないことになるが,特別の「配置,構\成」を用いるか,「撮像素子」等の手法を用いて測定することにより,測定が必ずしも不可能ではないということができるから,「測定可能\」な「埋設」の態様は,限定的なものであり,自明な事項であるとはいいきれず,新たな技術的事項を導入しないものとまでいうことはできない旨判断した(被告も同旨の主張をする。)。 しかし,前記(1)で判示したとおり,甲42文献ないし甲45文献によれば,バー コードラベルを斜め方向から読み取ったり,撮像素子で読み取ったりすることは,本件特許の出願当時,技術常識であったと認められる。 そうすると,当業者であれば,可動アームに測定ユニットを「埋設」した場合であっても,測定ユニットの機能が発揮することができるよう,光照射部がバーコードラベルの方向に向くように設置するものと認められ,このような「埋設」の態様は,本件明細書の記載と前記技術常識から自明であるから,「懸下」を「埋設」の態様にしたとしても,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。\n

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平成26(行ケ)10114  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年1月28日  知的財産高等裁判所

 構成要件の一部のみ取り出して特定事項とし,当該特定事項を含む補正発明が発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内にあるかを検討することは、間違いであるとして、拒絶審決が取り消されました。
 審決は,「当該最終レンズの射出側の一部に,前記射出面が他の部分に対して突出して形成される突出部を有し」との特定事項を含む補正発明は,発明の詳細な説明に記載された事項を超えた事項を含むと判断した。 これに対し,原告は,審決が突出部に関する要件の一部を看過したと主張する(前記第3の1)。そこで,当該突出部の構成要件の内容について,以下,検討する。 補正発明は,「前記最終レンズは,前記液体と接する面であって前記照明光が通過する射出領域を一部に含む射出面と,当該最終レンズの射出側の一部に,前記射出面が他の部分に対して突出して形成される突出部を有し,前記第1方向の幅に基づいて規定される,前記突出部の中心は,前記第1方向に関して前記光軸から離れており,前記光軸に対して前記投影領域の中心と同じ側にある」との構成要件(以下「突出部の構\成要件」という。)を備えている。 ここで,「最終レンズ」に形成される「前記突出部の中心は,前記第1方向に関して前記光軸から離れており,前記光軸に対して前記投影領域の中心と同じ側にある」から,その突出部(射出面)は,その形状がどのようなものであれ,光軸から第1方向に関して投影領域の中心と同じ側に離れた位置に中心を有する。さらに,「第1方向」とは,「投影領域の中心は,前記光軸と直交する第1方向に関して前記光軸から離れて」いるという補正発明の構成要件における「第1方向」であり,投影領域の中心が光軸から離れる方向のことである。したがって,光軸から第1方向に関して投影領域の中心と同じ側に離れた位置とは,要するに,光軸から投影領域の中心に向かって離れた位置のことである。\n そうすると,突出部の構成要件は,全体として,最終レンズの突出部(射出面)が,それ自体の形状を問わず,光軸から投影領域の中心に向かって離れた位置に中心を有するという一つの事項を特定するものであるということができる。\n補正発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか否かを判断するに当たっては,突出部の構成要件が全体として特定する上記の一つの事項が発明の詳細な説明に記載されているかどうかを検討すべきである。\nこれに対して,審決は,前記のとおり,突出部の構成要件の一部のみ取り出して特定事項とし,当該特定事項を含む補正発明が発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内にあるかを検討している。したがって,その判断手法には誤りがあるといわざるを得ない。\n

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