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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

記載要件

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成29(行ケ)10143  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年7月5日  知的財産高等裁判所

 実施可能要件およびサポート要件に違反するとした無効審決が維持されました。\n
 ところで,本件訂正発明のような有機アンモニウム化合物を含有するレジ スト除去・洗浄剤では,レジスト除去は塩基の作用によるものであって,塩 基の濃度が高い,あるいは,pHが高いほど,その除去作用が強いという傾向 にあることは当業者における技術常識である(弁論の全趣旨)。また,回路 に用いられる代表的な導電性金属である銅やアルミニウムの腐食性が,接触\nする組成物・溶液の種類とそのpHに依存することも,当業者における技術常 識であり,例えば,アルミニウムは,接触する溶液の種類によるものの, pH が12以上で不安定化する傾向にあることは周知の技術常識である(甲48)。
これらの技術常識に照らせば,当業者は,一般論として,塩基の濃度とpH を調整することにより,レジスト除去に代表されるポリマー,エッチング・\nアッシング残渣の除去作用の強弱と,回路材料である金属の腐食作用の強弱 とを変化させることが可能であると一応理解できるというべきである。さら\nに,当業者は,本件明細書の段落【0089】の記載から,レジスト除去を より高温で,より長時間行うと,より完全となる傾向があることも理解する ことができる。 しかし,本件明細書の発明の詳細な説明には,実際のpHが明らかにされた 具体的な組成物の記載は一切存在しないし(例えば,W3,W11〜W13 はpH<7,W5及びW6はpH>12であることが記載されているものの,具体的に pHがいかなる値であったのかは明らかでない。),上記(3)において説示した とおり,訂正後発明1に係る成分を含有し,基板からのポリマー,エッチン グ・アッシング残渣除去と金属で形成された回路の損傷量を許容し得る範囲 に抑えることが両立している具体的な組成物の例も記載されていない。 また,本件明細書に記載されているその余の組成物についても,基板から のポリマー,エッチング・アッシング残渣の除去作用と回路材料である金属 の腐食作用の各程度を,同一の組成物について具体的に評価した例は発明の 詳細な説明に記載されておらず,実際のpHの値が具体的に明らかにされた組 成物すら記載されていない。
(5) 以上検討したところによれば,本件明細書に接した当業者は,塩基の濃度 及びpHと,基板からのポリマー,エッチング・アッシング残渣の除去作用, 及び回路材料である金属の腐食作用との間に関係性があるとの技術常識を考 慮して,pHを調整することにより,ポリマー,エッチング・アッシング残渣 の除去と金属で形成された回路の損傷量を許容し得る範囲に抑えることの両 立が可能であることを一応理解できるとはいえるものの,反面,本件明細書\nの発明の詳細な説明においては,当該調整の出発点となるべき具体的組成物 の実際のpHの値が一切明らかにされていない上,基板からのポリマー,エッ チング・アッシング残渣の除去作用と回路材料である金属の腐食作用との関 係において,どの程度のpHの調整が必要であるのかについての具体的な情報 が余りにも不足しているといわざるを得ない。そのため,当業者が,本件明 細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて,本件訂正発明に係る組成物を生 産しようとする場合,具体的に使用するレジストや回路材料等を念頭に置い て,基板からのポリマー,エッチング・アッシング残渣の除去と回路の損傷 量を許容し得る範囲に抑えることとが両立した適切な組成物を得るためには, 的確な手掛かりもないまま,試行錯誤によって各成分の配合量を探索せざる を得ないところ,このような試行錯誤は過度の負担を強いるものというべき である。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,訂正後発明1〜7 の組成物を生産でき,かつ,使用することができるように具体的に記載され ているものとはいえない。
・・・
しかし,上記2において説示したとおり,本件明細書の発明の詳細な説明 には,上記2つの性質が両立していると具体的に評価された実施例に関する 記載はなく,技術常識を併せ考慮したとしても,当業者が本件訂正発明に係 る組成物を生産しようとする場合,過度の試行錯誤によって各成分の配合量 を探索せざるを得ない。 したがって,本件訂正発明1〜7に係る特許請求の範囲の記載は,技術常 識を考慮しても,当業者が,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,集 積回路基板等から,ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれ らの組合せの除去と回路の損傷量を許容し得る範囲に抑えることとを両立さ せることのできる組成物と認識できる範囲内のものであるとはいえない。

◆判決本文

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平成29(行ケ)10178  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年6月27日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反、サポート要件違反、明確性違反の無効主張について、「無効理由無し」とした審決が維持されました。
(1) サポート要件の適合性について
ア 本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明1に関し,「医薬品や食品 のような経口投与用組成物等の品質を損なわずに優れた識別性を有する経 口投与用組成物を得ることができ,かつ,生産性にも優れたマーキング方 法を開発するという課題」を解決するための手段として,「本発明」は,酸 化チタン,黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される少な くとも1種の変色誘起酸化物を分散させた経口投与用組成物の表面に,所\n定のレーザー光を走査することにより,変色誘起酸化物を凝集させること に起因した変色が生じるようにした構成を採用したことの記載があること\nは,前記1(1)イ認定のとおりである。
イ 次に,本件明細書の発明の詳細な説明には,1)実施例1ないし16にお いて,表1のレーザー装置及び照射条件(波長355nm,平均出力8W),\n表3のレーザー装置及び照射条件(波長266nm,平均出力3W)又は表\ 4のレーザー装置及び照射条件(波長532nm,平均出力12W)で,酸 化チタン,黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄錠剤を配合した,フィルムコー ト錠等に対し,文字又は中心線をマーキングしたこと(【0038】〜【0 056】,表1,表\3及び表4),2)表1のレーザー装置及び照射条件かつ\n走査速度1000mm/secで,実施例13のフィルム錠にレーザー照 射を行い,レーザー照射前後の二酸化チタンの粒子の状態を透過型電子顕 微鏡(TEM)により観測した結果,レーザー照射後に二酸化チタンの粒子 が凝集していることが確認されたこと(【0057】〜【0059】,図3, 図4),3)レーザー波長に関し,レーザーは,その波長が200〜1100 nmを有するものを用いることができ,好ましくは1060〜1064n m,527〜532nm,351〜355nm,263〜266nm又は2 10〜216nmの波長であり,より好ましくは527〜532nm,3 51〜355nm又は263〜266nmの波長であること(【0022】), 4)レーザー出力に関し,レーザーを走査する際の平均出力は,対象とする 経口投与用組成物の表面がほとんど食刻されない範囲で使用することがで\nき,例えば,その平均出力は,0.1W〜50Wであり,好ましくは1W〜 35Wであり,より好ましくは5W〜25Wであるが,単位時間あたりの レーザー照射エネルギーが強すぎると,アブレーションにより錠剤表面で\n食刻が発生し,変色部分まで剥がれてしまい,また,出力が弱いと変色が十\n分ではないこと(【0023】),5)レーザーの走査速度(スキャニング速 度)に関し,スキャニング速度は,特に限定されるものではないが,20m m/sec〜20000mm/secであり,また,スキャニング速度は, 高いほどマークの識別性に影響を与えることなく生産性を上げることがで きることから,例えば,レーザー出力5Wでは,スキャニング速度は,80 mm/sec〜10000mm/sec,好ましくは90mm/sec〜 10000mm/sec,より好ましくは100mm/sec〜1000 0mm/secであり,レーザー出力が8Wの場合には,スキャニング速 度は,250mm/sec〜20000mm/sec,好ましくは500 mm/sec〜15000mm/sec,より好ましくは1000mm/ sec〜10000mm/secであること(【0024】),6)単位面積 当たりのエネルギーに関し,単位面積当たりのレーザーのエネルギーは, マーキングの可否及び経口投与用組成物の食刻の有無の観点から,390 〜21000mJ/cm2であり,好ましくは400〜20000mJ/c m2,より好ましくは450〜18000mJ/cm2であり,また,390 mJ/cm2より低い場合には,マークを施すことができないのに対し,2 1000mJ/cm2より大きい場合には,食刻が生じるため,好ましくな いこと(【0025】)の記載がある。 上記1)ないし6)の記載を総合すると,本件明細書に接した当業者は,請 求項1記載の波長(200nm〜1100nm),平均出力(0.1W〜5 0W)及び走査工程の走査速度(80mm/sec〜8000mm/se c)の各数値範囲内で,波長,平均出力及び走査速度を適宜設定したレーザ ー光で,酸化チタン,黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択 される少なくとも1種の変色誘起酸化物を分散させた経口投与用組成物の 表面を走査することにより,変色誘起酸化物の粒子を凝集させて変色させ\nてマーキングを行い,「医薬品や食品のような経口投与用組成物等の品質 を損なわずに優れた識別性を有する経口投与用組成物を得ることができ, かつ,生産性にも優れたマーキング方法を開発する」という本件発明1の 課題を解決できることを認識できるものと認められる。 したがって,本件発明1は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載され たものといえるから,請求項1の記載は,サポート要件に適合するものと 認められる。同様に,請求項2ないし22の記載も,サポート要件に適合す るものと認められる。

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平成29(行ケ)10153  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年6月19日  知的財産高等裁判所

 「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」の明確性、本件発明の課題が解決できるのかについてサポート要件違反が争われました。
 上記記載事項によれば,めっき処理を行った亜鉛又は亜鉛系め っき鋼板において,酸化性雰囲気中で加熱を行うことによって,亜鉛の蒸 発を阻止するバリア層として酸化皮膜層が形成されるが,亜鉛又は亜鉛系 めっきの共通成分は亜鉛であり,亜鉛又は亜鉛系めっき鋼板がいずれも均 一な酸化皮膜を形成し,塗膜密着性,耐食性が良好という共通の性質を有 することが理解できる。そうだとすれば,当業者であれば,当然,本件発 明1の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」は「亜鉛の酸化皮膜」 であると理解すると認められる。 してみると,本件発明1の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」 が,亜鉛系めっきに由来する亜鉛の酸化皮膜を意味することは明確である といえる。このことは,本件発明1を引用する本件発明2ないし6及び(同 様の文言を有する)本件発明7についても同様である。
ウ 原告の主張について
原告は,本件訂正によって,特許請求の範囲の記載にあった「亜鉛また は亜鉛系合金のめっき層」に代えて,「スズ−亜鉛合金めっき層」などの 具体的な合金めっき層が記載されたこと,本件明細書においては,「スズ −亜鉛合金めっき」の具体例としては,「スズ−8%亜鉛合金めっき」の みが記載されている(【0038】)こと,「スズ−8%亜鉛合金めっき」 を加熱した場合に生ずる変化については本件明細書に全く記載がないこと などを挙げて,「亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」が亜鉛の酸化皮膜でな ければならないと当然に解釈できるとはいえないから,金属酸化物の種類 が不明確であると主張する。 しかしながら,本件明細書の記載から,亜鉛又は亜鉛系めっき鋼板がい ずれも均一な酸化皮膜を形成し,塗膜密着性,耐食性が良好という共通の 性質を有することが理解でき,当業者であれば,本件発明1の「加熱時の 亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」は「亜鉛の酸化皮膜」であると理解する と認められることは,前記ア,イのとおりである。他方,「スズ−8%亜 鉛合金めっき」についてのみ,これと異なる理解をすると認めるべき合理 的事情はない。
したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(2) 酸化皮膜の形成時期について
ア 原告は,本件訴訟におけるのと同様に,先行事件訴訟においても,「亜 鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」の形成時期が明らかでないと主張して明確 性要件を争っており,その結果,原告の主張を排斥する先行事件判決がな され,同判決は既に確定しているものである(当裁判所に顕著な事実)。 そうすると,原告が本件訴訟において再びこの点を争うことは,実質的 に前訴の蒸し返しに当たり,訴訟上の信義則に反するものとして許されな いというべきである。
よって,この点に関する原告の主張も採用できない。
イ 念のため,中身について検討してみても,この点に関しては,先行事件 判決が示すとおり,本件明細書の【0018】には,酸化皮膜は熱間プレ スに先立つ加熱前にある程度形成されることが必要で,その後熱間プレス 加工のための700〜1000℃の加熱によっても形成が進むと推測され ることが記載され,【0042】及び【0043】には,酸化皮膜は,熱 間プレス加工のため700〜1000℃に加熱する前に,予め形成されて\nいる場合と形成されていない場合があることを前提として,予め酸化皮膜\nが形成されている材料の場合には,酸化皮膜の維持に悪影響がない限り熱 間プレスのための加熱方法については特に制限がないことが記載され,さ らに,【0064】及び【表5】には,実施例No.2,3として,電気\nめっきを施した後,熱間プレスに先立つ加熱を大気炉で850℃,3分間 行ったものについて均一な酸化皮膜が形成されたことが記載されていると ころ,電気めっきにおいては,めっき層は加熱されないことから,上記実 施例はいずれも熱間プレスに先立つ加熱前に予め酸化皮膜が形成されてい\nない場合であって,この場合の酸化皮膜は,熱間プレスのための加熱(大 気炉で850℃,3分間)により形成されたものと理解することができる。 そうすると,本件発明の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」は, 熱間プレスの加熱前に,予め形成されている場合,ある程度形成されてい\nてその後熱間プレスの加熱時に形成が進む場合,予め形成されていないが\n熱間プレスの加熱により形成される場合のいずれでもよいことから,その 形成時期は熱間プレスの直前までであればよいと解するのが相当である。 したがって,本件発明1及びこれを引用する本件発明2ないし6並びに 本件発明7の「加熱時の亜鉛の蒸発を防止する酸化皮膜」の形成時期は, 本件明細書の発明の詳細な説明を参照すれば明確というべきであるから, 原告の主張はいずれにしても失当である。
(3) 「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れされる熱間プレス 用」について
ア 本件明細書の【0016】ないし【0018】,【0029】,【00 34】,【0042】,【0044】,【0048】,【0050】及び 【0064】には,熱間プレスは700〜1000℃という温度で加熱す ることを意味すること,熱間プレス成形の特徴として成形と同時に焼き入 れを行うことから,そのような焼き入れを可能とする鋼種を用いること,\n熱間成形後に急冷して高強度,高硬度となる焼き入れ鋼,例えば表1にあ\nるような鋼化学成分(鋼種A等)の高張力鋼板が実用上は特に好ましいこ と,700〜1000℃の温度で加熱してから熱間プレスを行い,めっき 層表面に亜鉛の酸化皮膜が,下層の亜鉛の蒸発を防止する一種のバリア層\nとして全面的に形成されていること,具体的には,表1に示す鋼種Aを,\n大気雰囲気の加熱炉内で950℃×5分加熱して,加熱炉より取り出し, このままの高温状態で円筒絞りの熱間プレス成形を行うこと,また,熱間 プレスに先立つ加熱を,大気炉で850℃,3分間行うことが記載されて いる。 そして,これらの記載によれば,本件発明1の「700〜1000℃に 加熱されてプレスされ焼き入れされる熱間プレス用」という文言において, 1)「700〜1000℃に加熱されて」は,熱間プレスの加熱条件であり, 2)「プレスされ焼き入れされる」は,成形と同時に焼き入れを行う熱間プ レス成形の特徴であり,3)「用」という文言の意味は,「(接尾語的に) …に使うためのものの意を表す」(広辞苑第六版)であることからすると,\n「熱間プレス用」は,後に続く,本件発明1の「鋼板」を修飾し,鋼板が 熱間プレスに使うためのものであることを意味するものと理解できる。 してみれば,「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れさ れる」は,「熱間プレス」の加熱条件及び特徴を表現するものと理解でき\nるから,本件発明1の「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き 入れされる熱間プレス用」という文言は明確である。このことは,本件発 明1を引用する本件発明2〜6及び(同様の文言を有する)本件発明7に ついても同様である。
イ 原告の主張について
原告は,本件発明は用途発明であるとした上で,種々理由を述べて,「7 00〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れされる熱間プレス用」 という記載の意味が不明確であると主張する。 しかしながら,前記アのとおり,「700〜1000℃に加熱されてプ レスされ焼き入れされる」は,「熱間プレス」の加熱条件及び特徴を表現\nするものと認められるから,その余の点について判断するまでもなく,本 件発明1の「700〜1000℃に加熱されてプレスされ焼き入れされる 熱間プレス用」という文言の意味は明確である。 また,本件発明1が用途発明であるか否かは,その結論を左右するもの ではない。

◆判決本文

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◆平成26(行ケ)10201

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平成29(行ケ)10129  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年5月24日  知的財産高等裁判所

 知財高裁(3部)は、サポート要件の判断の前提となる課題の認定自体を誤ったとして、サポート要件違反の異議理由ありとした審決を取り消しました。
 前記のとおり,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否か は,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請 求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発 明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決 できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がな くとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると 認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 また,発明の詳細な説明は,「発明が解決しようとする課題及びその解 決手段」その他当業者が発明の意義を理解するために必要な事項の記載が 義務付けられているものである(特許法施行規則24条の2)。 以上を踏まえれば,サポート要件の適否を判断する前提としての当該発 明の課題についても,原則として,技術常識を参酌しつつ,発明の詳細な 説明の記載に基づいてこれを認定するのが相当である。
かかる観点から本件発明について検討するに,本件明細書の発明の詳細 な説明には,米糖化物含有食品であるライスミルクの製造時に各種酵素を 制御することなく加えると,プロテアーゼによりアミノ酸,オリゴペプチ ドが生成し,うまみ調味料様の雑味がついてしまい,用途が限られたこと (【0002】),食感が滑らかで雑味がなくすっきりした味を持つ米糖 化液としてアミノ酸濃度が一定範囲である米糖化液が開発されたが,甘味, コク(ミルク感)等の風味は十分に改善されておらず,必ずしも満足できるものではなかったこと,さらに,グラノーラ,パンケーキ等が流行する一方,牛乳アレルギー,大豆アレルギーの人口は増加傾向にあり,風味が改善された牛乳や豆乳の代用品が求められていたこと(【0003】)などが背景技術として記載されている。その上で,発明の詳細な説明には,発明が解決しようとする課題として,「本発明は,米糖化物含有食品のコ\nク,甘味,美味しさ等を改善するという課題を解決すべく鋭意研究を重ね た結果見出されたものである。すなわち,本発明は,コク,甘味,美味し さ等を有する米糖化物含有食品を提供することを目的とする。さらに,従 来牛乳や大豆を用いて製造又は調理されていた多数の食品を作ることを可 能にする食品を提供することも目的とする。」との記載がある(【000\n6】)。
これらの記載からすれば,本件発明は,「コク,甘味,美味しさ等を有 する米糖化物含有食品を提供すること」それ自体を課題とするものである ことが明確に読み取れるといえる。
イ これに対し,異議決定は,「本件発明1の課題は,本件特許明細書の『コ ク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供すること』(【0 006】)との記載及び実施例(【0031】〜【0043】)において, 『コク(ミルク感)』,『甘み』及び『美味しさ』の各評価項目について 評価を行っていることから,『コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物 含有食品を提供すること』と認められる。」と,一旦は上記アと同様に本 件発明1の課題を認定しながら,最終的なサポート要件の適否判断に際し ては,「本件発明1の課題は,上記aのとおり,具体的には,実施例1− 1のライスミルクに比べてコク(ミルク感),甘味及び美味しさについて 優位な差を有するものを提供することであ(る)」とその課題を認定し直 し,課題の解決手段についても,「本件発明1が課題を解決できると認識 できるためには,…実施例1−1のライスミルクに比べてコク(ミルク感), 甘味及び美味しさについて優位な差を有することを認識できることが必要 である。」としている(異議決定12頁16〜25行)。
この点について,被告は,発明が解決しようとする課題とは,出願時の 技術水準に照らして未解決であった課題であるから,本件発明1の「コク, 甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供すること」という課題 は,本件出願時の技術水準を構成する米糖化物含有食品(具体的には,実\n施例1−1のライスミルク)に比べて,コク,甘味,美味しさ等を有する 米糖化物含有食品を提供することであり, したがって,異議決定において は,本件発明1の課題について,「具体的には,実施例1−1のライスミ ルクに比べてコク(ミルク感),甘味及び美味しさについて優位な差を有 するものを提供すること」としたものである(したがって,異議決定の課 題の認定に誤りはない)と主張する。 確かに,発明が解決しようとする課題は,一般的には,出願時の技術水 準に照らして未解決であった課題であるから,発明の詳細な説明に,課題 に関する記載が全くないといった例外的な事情がある場合においては,技 術水準から課題を認定するなどしてこれを補うことも全く許されないでは ないと考えられる。
しかしながら,記載要件の適否は,特許請求の範囲と発明の詳細な説明 の記載に関する問題であるから,その判断は,第一次的にはこれらの記載 に基づいてなされるべきであり,課題の認定,抽出に関しても,上記のよ うな例外的な事情がある場合でない限りは同様であるといえる。 したがって,出願時の技術水準等は,飽くまでその記載内容を理解する ために補助的に参酌されるべき事項にすぎず,本来的には,課題を抽出す るための事項として扱われるべきものではない(換言すれば,サポート要 件の適否に関しては,発明の詳細な説明から当該発明の課題が読み取れる 以上は,これに従って判断すれば十分なのであって,出願時の技術水準を\n考慮するなどという名目で,あえて周知技術や公知技術を取り込み,発明 の詳細な説明に記載された課題とは異なる課題を認定することは必要でな いし,相当でもない。出願時の技術水準等との比較は,行うとすれば進歩 性の問題として行うべきものである。)。
これを本件発明に関していえば,異議決定も一旦は発明の詳細な説明の 記載から,その課題を「コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食 品を提供すること」と認定したように,発明の詳細な説明から課題が明確 に把握できるのであるから,あえて,「出願時の技術水準」に基づいて, 課題を認定し直す(更に限定する)必要性は全くない(さらにいえば,異 議決定が技術水準であるとした実施例1−1は,そもそも公知の組成物で はない。)。 したがって,異議決定が課題を「実施例1−1のライスミルクに比べて コク(ミルク感),甘味及び美味しさについて有意な差を有するものを提 供すること」と認定し直したことは,発明の詳細な説明から発明の課題が 明確に読み取れるにもかかわらず,その記載を離れて(解決すべき水準を 上げて)課題を再設定するものであり,相当でない。 以上によれば,異議決定における課題の認定は妥当なものとはいえず, 被告の主張は採用できない。
(2) 課題を解決できると認識できる範囲について
ア 上記のとおり,本件発明の課題は,コク,甘味,美味しさ等を有する米 糖化物含有食品を提供することであると認められるので,本件発明が,発 明の詳細な説明の記載から,「コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物 含有食品を提供する」という課題を解決することができると認識可能な範\n囲のものであるか否かについて検討する。
・・・
(エ) そして,上記試験例1,2及び4の結果を総合すれば,本件発明4に ついても,課題が解決できる範囲のものであることが裏付けられている といえる。
エ 以上によれば,本件発明は,いずれも,発明の詳細な説明の記載から, 「コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供する」という 課題を解決することができると認識可能な範囲のものであるといえる。\n

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平成27(ワ)21684  特許権  民事訴訟 平成30年4月20日  東京地方裁判所(40部)

 特許権侵害事件です。争点は、本件発明「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法」は製造方法の発明か、サポート要件違反、実施可能要件違反などです。製造会社だけでなく、商社、コンビニが被告とされています。裁判所は、製造方法の発明かについては判断することなく、サポート要件違反・実施可能\要件違反として無効と判断しました。
 ところで,耐食コーティングに用いる材料の種類や成分の違いにより, 缶内の飲料に与える影響に大きな差があることは,本件特許の出願日当時, 当業者に周知であるということができる(乙34〜36)。例えば,特開平 7−232737号公開特許公報(乙36)には,「エポキシ系樹脂組成物 を被覆した場合,ワイン系飲料に含まれる亜硫酸ガス(SO2)をはじめと するガスに対するガスバリヤー性が劣っており,かつフレーバー成分の収 着性が高い。例えば,ワイン系飲料等を充填した場合,含有する亜硫酸ガ ス(SO2)が塗膜を通過して下地の金属面を腐食する虞があり,場合によ っては内容物が漏洩することもある。この亜硫酸ガスは下地の金属と反応 して硫化水素(H2S)を発生させるが,この硫化水素(H2S)は悪臭の 主要因となるばかりでなく,飲料の品質保持のため必要な亜硫酸ガス(S O2)を消費するため飲料の品質を劣化させフレーバーを損なうこととな る。また,この樹脂組成物は飲料中のフレーバーを特徴付ける成分を収着 しやすく,飲料用金属容器の内面に被覆するには官能的に充分満足のでき\nるものではない。」(段落【0004】),「一方,ビニル系樹脂組成物を被覆 した場合,…エポキシ系樹脂組成物と同様に亜硫酸ガス(SO2)等に対す るガスバリヤー性に乏しく,やはり腐食や漏洩の危険性及び官能的な問題\nがある。」(段落【0005】)との記載がある。これによれば,耐食コーテ ィングに用いる材料や成分が,ワイン中の成分と反応してワインの味質等 に大きな影響を及ぼすことは,本件特許の出願日当時の技術常識であった ということができる。
上記のとおり,耐食コーティングに用いる材料の成分が,ワイン中の成 分と反応してワインの味質等に大きな影響を及ぼし得ることに照らすと, 本件明細書に記載された「エポキシ樹脂」以外の組成の耐食コーティング についても本件発明の効果を実現できることを具体例等に基づいて当業 者が認識し得るように記載することを要するというべきである。 この点,原告は,本件発明の課題は,ワイン中の遊離SO2,塩化物及び スルフェートの含有量を所定値以下にすることにより達成されるのであ り,耐食コーティングの種類によりその効果は左右されない旨主張する。 しかし,塗膜組成物の組成を変えることにより塗膜の物性が大きく変動し, 缶内の飲料に大きな影響を及ぼすことは周知であり(乙34の第1表,乙\n35の第2,3表等),ワイン中の遊離SO2,塩化物及びスルフェートの\n含有量を所定値以下にすれば,コーティングの種類にかかわらず同様の効 果を奏すると認めるに足りる証拠はない。
(4) 以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,具体例の開示がなく とも当業者が本件発明の課題が解決できると認識するに十分な記載があると\nいうことはできない。そこで,本件明細書に記載された具体例(試験)によ り当業者が本件発明の課題を解決できると認識し得たかについて,以下検討 する。
ア 本件明細書には,「パッケージングされたワインを,周囲条件下で6ヶ 月間,30℃で6ヶ月間保存する。50%の缶を直立状態で,50%の缶 を倒立状態で保存する。」(段落【0038】)との方法で試験が行われ た旨の記載がある。しかし,本件明細書には,当該「パッケージングされ たワイン」の「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の濃度,そ の他の成分の濃度,耐食コーティングに用いる材料や成分等については何 ら記載がなく,その記載からは,当該「パッケージングされたワイン」が 本件発明に係るワインであることも確認できない。
イ また,本件明細書には,試験方法について,「製品を2ヶ月の間隔を置 いて,Al,pH,°ブリックス(Brix),頭隙酸素及び缶の目視検査に関 してチェックする。…目視検査は,ラッカー状態,ラッカーの汚染,シー ム状態を含む。…官能試験は,味覚パネルによる認識客観システムを用い\nる。」(段落【0039】)との記載がある。「頭隙酸素」については, 乙29文献(4頁下から2行〜末行)に「ヘッドスペースの酸素は,アル ミニウムの放出に関して非常に重大である」との記載があるとおり,ワイ ンの品質に大きな影響を与え得る因子であり,「官能試験」はワインの味\n質の検査であるから,いずれもその方法や結果は効果の有無を認識する上 で重要である。しかし,本件明細書には,「頭隙酸素」のチェック結果や 「目視検査」の結果についての記載はなく,「官能試験」についても「味\n覚パネルによる認識客観システム」についての説明や試験結果についての 記載は存在しない。
ウ さらに,本件発明に係る特許請求の範囲はワイン中の三つの成分を特定 した上でその濃度の範囲を規定するものであるから,比較試験を行わない と本件発明に係る方法により所望の効果が生じることが確認できないが, 本件明細書の発明の詳細な説明には比較試験についての記載は存在しな い。このため,当業者は,本件発明で特定されている「遊離SO2」,「塩 化物」及び「スルフェート」以外の成分や条件を同程度としつつ,「遊離 SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の濃度を特許請求の範囲に記載 された数値の範囲外とした場合には所望の効果を得ることができないか どうかを認識することができない。 加えて,耐食コーティングについては,試験で用いられたものが本件明 細書に記載されている「エポキシ樹脂」かどうかも明らかではなく,まし て,エポキシ樹脂以外の材料や成分においても同様の効果を奏することを 具体的に示す試験結果は開示されていない。
エ 以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された「試験」は, ワインの組成や耐食コーティングの種類や成分など,基本的な数値,条件 等が開示されていないなど不十分のものであり,比較試験に関する記載も\n一切存在しない。また,当該試験の結果,所定の効果が得られるとしても, それが本件発明に係る「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の 濃度によるのか,それ以外の成分の影響によるのか,耐食コーティングの 成分の影響によるのかなどの点について,当業者が認識することはできな い。 そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明に実施例として記載された 「試験」に関する記載は,本件発明の課題を解決できると認識するに足り る具体性,客観性を有するものではなく,その記載を参酌したとしても, 当業者は本件発明の課題を解決できるとは認識し得ないというべきであ る。
オ この点,原告は,本件発明の特徴的な部分は,従来存在しなかった技術 思想であり,「塩化物」等の濃度には臨界的な意義もないので,その裏付 けとなる実験結果等の記載がないとしてもサポート要件には違反しない と主張する。 しかし,前記判示のとおり,特許請求の範囲に記載された構成の技術的\nな意義に関する本件明細書の記載は不十分であり,具体例の開示がなくて\nも技術常識から所望の効果が生じることが当業者に明らかであるという ことはできない。また,「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」 に係る濃度については,その範囲が数値により限定されている以上,その 範囲内において所望の効果が生じ,その範囲外の場合には同様の効果が得 られないことを比較試験等に基づいて具体的に示す必要があるというべ きである。
・・・
(5) 以上のとおり,本件発明に係るワインを製造することは困難ではないが, 本件発明の効果に影響を及ぼし得る耐食コーティングの種類やワインの組成 成分について,本件明細書の発明の詳細な説明には十分な開示がされている\nとはいい難いことに照らすと,本件明細書の発明の詳細の記載は,当業者が 実施できる程度に明確かつ十分に記載されているということはできず,特許\n法36条4項1号に違反するというべきである。

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平成29(行ケ)10138  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年4月18日  知的財産高等裁判所

 サポート要件、実施可能要件について、無効理由なしとした審決が維持されました。\n
 原告は,図1に示された気体溶解装置は,加圧型気体溶解手段3によって生成さ れ,溶存槽4に貯留された水素水を気体溶解装置の内部で循環させるようには構成\nされておらず,図3に示された気体溶解装置は,その内部に,「溶存槽4(41,4 2)」に貯留された水素水を「加圧型気体溶解手段3」に送出する「加圧送水通路」 を備えてはいないから,本件発明1は,図1に示された気体溶解装置,図3に示さ れた気体溶解装置のいずれによってもサポートされていない旨主張する。 しかし,本件明細書には,図1に示された気体溶解装置について,「溶存槽4に保 存された液体は,降圧移送手段5である細管5a内で層流状態を維持して流れるこ とで降圧され(S6),水素水吐出口10から外部へ吐出される(S7)。」(【003 4】)との記載がある一方で,「本発明の気体溶解装置1は,加圧型気体溶解手段3 で加圧して気体を溶解した液体を,排出せずに循環して加圧型気体溶解手段3に送 り,循環した後に,降圧移送手段5に送る」(【0037】)との記載がある。したが って,図1に示された気体溶解装置は,加圧型気体溶解手段3によって生成され, 溶存槽4に貯留された水素水を気体溶解装置の内部で循環させるように構成されて\nいると認められる。 また,本件明細書には,前記イのとおり,本件発明1の「溶存槽」と「加圧型気体 溶解手段」との間に水素水を循環させる経路として,ウォーターサーバーを用いる 場合,水槽を用いる場合,加圧型気体溶解手段で加圧して気体を溶解した液体を, 排出せずに循環して加圧型気体溶解手段に送る経路を用いる場合の開示がある一方, これらの場合に循環の経路が限定されるとの記載や示唆はない。したがって,当業 者であれば,本件発明1においては,水素水が,これらの場合を含む何らかの経路 で循環すればよく,図3に示された気体溶解装置は,水素水を「送出し加圧送水し て循環させ」る経路の例示にすぎないことを理解できる。 よって,原告の主張は採用することができない。
・・・
原告は,請求項1及び8はウォーターサーバーを発明特定事項としていないが, 実施例1,3ないし13には,図3に示すウォーターサーバーに気体溶解装置を接 続した場合の実験条件しか記載されていない,また,実施例2は,図1に示す気体 溶解装置を用いたものであるが,どのように水素水を生成,循環させたのか不明で あるから,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件発明1及び8を実施できる程度 に明確かつ十分に記載されているとはいえない旨主張する。\nしかしながら,本件発明1及び8は,本件明細書に例示された,ウォーターサー バーを用いる場合,水槽を用いる場合,加圧型気体溶解手段で加圧して気体を溶解 した液体を,排出せずに循環して加圧型気体溶解手段に送る場合を含む,何らかの 経路により水素水を循環させるものであることは,前記2(3),(4)で検討したとおり である。そして,本件明細書には,ウォーターサーバーを用いた実施例1,3ないし 13の実験条件が,他の経路により循環させる構成について当てはまらないと解す\nべき根拠となる記載はない。 また,実施例2についても,加圧型気体溶解手段で加圧して気体を溶解した液体 を,排出せずに循環して加圧型気体溶解手段に送る場合を含む,何らかの経路によ り水素水を循環させるものであると理解することができる。 そうすると,当業者は,本件明細書の発明の詳細な説明を参考にして,本件発明 1及び8を実施することができるといえるから,原告の主張は採用できない。

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平成29(行ケ)10051  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年4月12日  知的財産高等裁判所(3部)

 暗号化回路について、実施可能要件違反とした審決が維持されました。\n
 そうすると,本願発明の目的である「サイドチャネルを利用した攻撃 から回路を保護すること」は,段落【0009】,【0010】及び 【0041】で言及されているサイドチャネルを利用した攻撃から関数 鍵 kc を保護することを意味し,この保護は関数鍵 kc を第2の鍵(又は 非機能の鍵)ki でマスクする,すなわち kc と ki を XOR 演算することに よって達成されるものと理解される。換言すれば,本願発明の暗号回路 においてサイドチャネルを利用した攻撃の目標として想定されているの は関数鍵 kc であり,この関数鍵 kc をそのような攻撃から保護するため に第2の鍵 ki を必要とし,関数鍵 kc を第2の鍵 ki と XOR 演算すること によってマスクする(マスク鍵 kc(+)ki とする)という方法によって,関 数鍵 kc の保護が達成されるものと把握される。 さらに,本願明細書等には,サイドチャネルを利用した攻撃の具体的 な目標として関数鍵 kc 以外のものは記載されていない。 このように,本願発明が想定している攻撃目標は関数鍵 kc であり, それ以外の攻撃目標を想定しない以上,本願発明の暗号回路が出力する 暗号文 y の秘密性は関数鍵 kcに依拠し,暗号文の計算手順(すなわち本 願発明の「暗号化アルゴリズム」)に依拠するものではないと認められ る。そうであれば,関数鍵 kc が判明すれば,本願発明により出力され る暗号文 y を解読し得ることになる。これは,本願発明の暗号回路が出 力する暗号文 y の暗号鍵が関数鍵 kcであることを意味する。すなわち, 本願発明は,秘密情報である関数鍵 kcを用いて平文 x から暗号文 y を計 算する関数を F で表したとき,y=F(x,kc)を満たす暗号文 y を出力す る暗号回路であると認められる(以下,この技術思想を「本願技術思想 1)」という。)。 このように理解することは,本願明細書等の「関数鍵 kc が回路21 の暗号化を実施する役割を果たす。この暗号化は例えばレジスタ22の 内部で入力変数 x を暗号化された変数 y=DES(x,kc)に変換する DES アルゴリズム23である。」(【0040】)との記載とも整合する。
・・・
上記本願技術思想1)及び2)によれば,本願発明の暗号回路を具現化 するためには,暗号回路によって実際に計算された暗号文と,暗号化ア ルゴリズム F に基づいて計算された暗号文とが等しいこと,すなわち G(x,kc(+)ki)=F(x,kc) を満たすことが要求される(以下,この要求を「本願発明の技術的要求」 という。)。 しかし,本願発明の技術的要求を満たす関数 G を構成する計算方法\nが,当業者の技術常識に鑑みて自明であると認めるに足りる証拠はない。 そこで,G(x,kc(+)ki)の具体的な計算方法が本願明細書等に示されて いるかについて,以下検討する。
・・・
以上のとおり,本願明細書等の図1及び2に示される回路において は,そもそもマスク鍵 kc(+)ki が計算されているとは認められないこと から,両図の回路をもって関数 G(x,kc(+)ki)の具体的態様を開示し たものということはできない。 d また,段落【0028】記載の「【数2】K(+)M」は,2つの値が XOR 演算されているという点で本願発明のマスク鍵と共通するもの の,記号が異なることから,本願発明を説明したものとは認められな い。

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平成29(行ケ)10127  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所

 明確性違反および実施可能要件違反の無効を主張しましたが、審決、知財高裁とも無効理由無しと判断しました。
 原告は,平成13年(2001年)以降でさえ,先行技術(甲20)と 技術常識に基づいて,外部から侵入した水分による劣化を防止しているとはいえ ない程度に蛍光体の沈降が抑えられた濃度分布の実現は不可能であったのであり,\n本件明細書の「フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材,形成温度,粘度やフ ォトルミネセンス蛍光体の形状,粒度分布などを調整することによって種々の分 布を実現することができ」(【0047】)との記載は,本件構成に対応する技\n術的手段が単に抽象的に記載されているだけで,当業者が発明の実施をすること ができない記載にすぎないことを意味するものに他ならないから,実施可能要件\nを欠くというべきであって,審決の結論には明らかな違法がある旨主張する。 明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者がその実施をすることができ る程度に明確かつ十分に記載したものであることを要する(特許法36条4項1号)。\n本件発明は,「発光装置と表示装置」(発光ダイオード)という物の発明であるとこ\nろ,物の発明における発明の「実施」とは,その物の生産,使用等をする行為をい うから(特許法2条3項1号),物の発明について実施をすることができるとは,そ の物を生産することができ,かつ,その物を使用することができることであると解 される。 本件明細書には,「蛍光体の分布は,フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材, 形成温度,粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状,粒度分布などを調整すること によって種々の分布を実現することができ,発光ダイオードの使用条件などを考慮 して分布状態が設定される。」(【0047】)との記載があることから,蛍光体の濃 度分布を適宜調整することにより,本件発明の「コーティング樹脂中のガーネット 系蛍光体の濃度が,コーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に向かって高く\nなっている」発光ダイオードを生産することができ,かつ,使用することができる ことは,本件明細書に接した当業者にとって明らかであると認められる。 したがって,発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明を実施することがで きる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められるから,その旨の審決の\n判断に誤りはない。 これに対し,原告が主張する,外部から侵入した水分による劣化を防止している とはいえない程度に蛍光体の沈降が抑えられた濃度分布とは,本件構成に係る「コ\nーティング樹脂中のガーネット系蛍光体の濃度が,コーティング樹脂の表面側から\nLEDチップ側に向かって高くなっている」ものではない状態を示すものである。 そうすると,仮に,このような濃度分布について,発明の詳細な説明や出願時の 技術常識を考慮しても実現することができない,又は,その実現に過度の試行錯誤 を要するとしても,このことは,本件明細書の発明の詳細な説明が,当業者が本件 発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとの前記認定を左右するも\nのではない(発光ダイオードの製造工程において,蛍光体がコーティング樹脂中を 沈降することによって,本件構成を満足するものを製造することができることにつ\nいては,当事者間に争いがないものと解される。)

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平成29(行ケ)10085  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月26日  知的財産高等裁判所(4部)

 異議理由ありとした審決が取り消されました。訂正は新規事項であるとした審決の判断は維持されましたが、訂正前の発明について、明確性違反および進歩性違反との判断は取り消されました。
 本件決定は,本件発明1の特許請求の範囲のうち「寄生ダイオード(131)の 立ち上がり電圧」は「上記ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高」いとの記載が, いかなる電流が流れる場合のことを表したものであるか不明であるから,明確性要\n件に適合しないと判断した。
(2) 前記2(3)イのとおり,請求項1において,寄生ダイオード(131)の「立 ち上がり電圧は,上記ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高く」と特定されてい るのは,本件発明1の構成として,同期整流を行う際,寄生ダイオード(131)\nの立ち上がり電圧を,ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高くするという技術的 事項を採用する旨特定するものである。 そして,本件発明1に係る電力変換装置において使用される還流電流の程度が限 定されていないことと,同期整流を行う際には,常に,寄生ダイオード(131) の立ち上がり電圧を,ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高くすることとは,関 係がない。
(3) したがって,「寄生ダイオード(131)の立ち上がり電圧」は「上記ユニ ポーラ素子本体のオン電圧よりも高」いとの本件発明1の特許請求の範囲の記載が, 第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。同記載 が明確ではないから,本件各発明の特許請求の範囲の記載は,明確性要件に適合し ないとする本件決定の判断は誤りである。
・・・・
引用発明は,モータの回生モードにおいて,回生電力の消費能力を高めると\nいう課題に対して,順方向電圧降下が高いボディダイオードに電流を流し,回生電 力を消費させるというものである。 このように,引用発明は,モータの回生モードにおいて,ボディダイオードに電 流を流し,ボディダイオードにおいて回生電力を損失させるという課題解決手段を 採用したものである。一方,本件周知技術は,寄生ダイオード側に電流を流さず, 発熱損失を低減させるというものであるから,引用発明の課題解決手段と正反対の 技術思想を有するものである。したがって,当業者は,引用発明におけるモータの 回生モードにおいて,正反対の技術思想を有する本件周知技術を適用することはな い。 そして,引用例には,引用発明の電力変換装置において,力行モードを回生モー ドから切り離し,力行モードの動作のみを変更することを示唆するような記載はな いから,当業者は,力行モードにおける動作のみを変更することを容易に想到する ことはない。 したがって,引用発明に本件周知技術を適用する動機付けはないというべきであ る。

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平成28(行ケ)10218  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年1月30日  知的財産高等裁判所

 実施可能要件、サポート要件違反とした拒絶審決が取り消されました。なお、意見を述べる機会を与えなかった点について、手続違背もありと認定されています。
 本願明細書の上記記載によれば,同配列アンタゴニスト化合物は, アゴニスト作用を示していたIMOについて,「GACG」部分に化学修飾を導入し て同部分をN2N1CGモチーフにすることにより,アンタゴニスト作用を示すに至 ったことが認められる(以下,当該作用変化を「本件反転作用」という。)。 このような記載に接した当業者は,本件反転作用を生じさせた原因となる部分は, その他の配列が同一である以上,化学修飾を導入したN2N1CGモチーフに存在す るものと理解するのが自然である。のみならず,本願明細書の前記a(c)の記載に接 した当業者は,細菌性及び合成DNAの塩基配列には様々なものがあるにもかかわ らず,TLR9がそれらに存在する非メチル化CpGモチーフを認識するのである から,IMOの「GACG」部分にある非メチル化CpGモチーフがTLR9に結 合するものと理解するといえる。そのため,本件反転作用の原因は,TLR9に結 合する「GACG」部分に化学修飾を導入し,これをN2N1CGモチーフとするこ とによって,上記の結合部分に何らかの変化が生じたことによるものと理解するの が自然である。 そうすると,12種類化合物の配列は,N2N1CGモチーフの5’末端側に隣接 するオリゴヌクレオチド部分配列(以下「5’末端側隣接配列」という。)が全て「C TATCT」という一つの配列のみであり,かつ,N2N1CGモチーフの3’末端 側に隣接するオリゴヌクレオチド部分配列(以下「3’末端側隣接配列」という。) が「TTCTCTGT」又は「TTCTCUGU」という類似する二つの配列のみ であるものの,当業者は,本件反転作用を生じさせた部分は,N2N1CGモチーフ 自体であって,5’末端側隣接配列又は3’末端側隣接配列ではないと理解するの であるから,N2N1CGモチーフを有する本願IRO化合物も,12種類化合物と 同様に,アンタゴニスト作用を奏する蓋然性が高いものと論理的に理解するのが自 然である。そして,当業者は,TLR9のアンタゴニストとして作用し得る本願I RO化合物が,少なくともTLR9のアゴニスト作用が原因となる癌,自己免疫疾 患,気道炎症,炎症性疾患,感染症,皮膚疾患,アレルギー,ぜんそく又は病原体 により引き起こされる疾患を有する脊椎動物を治療的に処置し得ることを十分に理\n解することができるといえる。 したがって,本願明細書に接した当業者は,本願IRO化合物が高い蓋然性をも ってTLR9のアンタゴニスト作用を奏し,かつ,TLR9のアンタゴニストとし て作用し得る本願IRO化合物がTLR9のアゴニスト作用を原因とする上記各疾 患を治療的に処置し得ることを理解することができるのであるから,本願明細書中 の発明の詳細な説明の記載は,当業者によって本願出願当時に通常有する技術常識 に基づき本願発明の実施をすることができる程度の記載であると認めるのが相当で ある。
以上によれば,本願明細書の記載により,本願IRO化合物が全て,TLR9の アンタゴニスト作用を有するものであることを当業者が認識できるとはいえないな どとして,本願発明が実施可能要件に適合するものではないとした審決の判断には\n誤りがあり,TLR9についての原告の取消事由3は,理由がある。
c これに対し,被告は,実施例11に示されている同配列アンタゴニス ト化合物につき,5’末端側隣接配列が「CTATCT」であり,かつ,「N1N2N 3−Nm」が「TTCTCTGT」である化合物が示されるのみであって,それ以外 の本願IRO化合物は示されていないことからすると,アンタゴニスト作用が「C pGジヌクレオチド」に結合した結果であるのか,あるいは,それ以外の共通する 部分に結合した結果であるのかは定かでなく,また,本願明細書の発明の詳細な説 明には,本願IRO化合物のうち,実施例11に示された化合物以外のものが,実 施例11に示された化合物と同様にアンタゴニスト作用を有することを示唆する記 載もなく,この点が技術常識であるともいえないなどと主張する。 しかしながら,同配列アンタゴニスト化合物は,上記bにおいて説示するとおり, アゴニスト作用を示していたIMOについて,「GACG」部分についてのみ化学修 飾を導入して同部分をN2N1CGモチーフにすることにより,本件反転作用を奏す るに至ったのであるから,このような記載に接した当業者は,本件反転作用を生じ させた部分は,化学修飾を導入したN2N1CGモチーフに存在するものと論理的に 理解するのが自然であるといえる。そうすると,当業者は,実施例11に示された 化合物以外のものであっても,少なくともTLR9については,N2N1CGモチー フが存在すれば,高い蓋然性をもってアンタゴニスト作用を示すものと理解すると 認めるのが相当である。 したがって,被告の主張は,その他の主張を含め,本件反転作用の技術的意義を 正解しないものに帰し,採用することができない。
このような適正な審判の実現と特許発明の保護との調和は,複数の発明が同時に 出願されている場合の拒絶査定不服審判において,従前の拒絶査定の理由が解消さ れている一方,複数の発明に対する上記拒絶査定の理由とは異なる拒絶理由につい て,一方の発明に対してはこれを通知したものの,他方の発明に対しては実質的に これを通知しなかったため,審判請求人が補正により特許要件を欠く上記他方の発 明を削除する可能性が認められたのにこれを削除することができず,特許要件を充\n足する上記一方の発明についてまで拒絶査定不服審判の不成立審決を最終的に免れ る機会を失ったといえるときにも,当然妥当するものであって,このようなときに は,当該審決に,特許法50条を準用する同法159条2項に規定する手続違背の 違法があるというべきである。 イ これを本件についてみると,前提となる事実に後掲各証拠及び弁論の全 趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
・・・
(ウ) 原告は,本件拒絶査定不服審判において,平成27年9月16日付け の拒絶理由通知(甲16)を受けた(以下,当該拒絶理由通知を「本件拒絶理由通 知」といい,本件拒絶理由通知に係る拒絶理由を「本件拒絶理由」という。)。請求 項1,請求項8及び請求項13に対する本件拒絶理由は,大要次のとおりである。 a 請求項1,3,4及び7ないし17(請求項3を追加する前のもの) 証拠(甲16)及び弁論の全趣旨によれば,本件拒絶理由通知では,実施例にお いてアンタゴニスト作用を有することが証明された化合物のうち,本願IRO化合 物に含まれるものは,IRO5,10,17,25,26,33,34,37,3 9,41,43及び98であるとして,これらの12種類化合物に限定して検討を 加えていること,12種類化合物は,いずれもTLR9に対してアンタゴニスト作 用を有するものであるが,IRO5に限り,TLR9のほか,TLR7及び8に対 してもアンタゴニスト作用を有するものであること,本件拒絶理由通知では,12 種類化合物を全体として比較して,N2N1CGモチーフの5’末端側に隣接する部分 の塩基配列及びN2N1CGモチーフの3’末端側に隣接する部分の塩基配列が,それ ぞれ類似の二通りのみであることを根拠として,請求項1,3,4及び7ないし1 7に係る各発明の実施可能要件及びサポート要件違反を示していること,そのため,\n本件拒絶理由通知では,IRO5に固有の問題を検討するものではなく,TLR9 に対するアンタゴニスト作用を有する12種類化合物のみの問題を検討しているこ と,以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば,本件拒絶理由通知は,TLR9に対してアンタゴニスト 作用を有する12種類化合物のみの問題を検討するにとどまり,TLR7及び8に 対してもアンタゴニスト作用を有するIRO5に固有の問題を検討した上で拒絶理 由を通知するものではないから,実質的にはTLR7及び8に対する拒絶理由を示 すものではないと認めるのが相当である。
b 請求項8,13,16及び17(請求項3を追加する前のもの) 証拠(甲16)及び弁論の全趣旨によれば,本件拒絶理由通知は,請求項8に係 る発明につき,「本願明細書ではTLRとして「TLR7」,「TLR8」及び「TL R9」に対する各種IROのアンタゴニスト作用を確認しただけであって,他のT LRに対してもアンタゴニスト作用を有することは確認されていない。」,「請求項 8の「TLR媒介免疫反応」のうち,「TLR7」,「TLR8」又は「TLR9」の 媒介免疫反応以外の免疫反応については,本願発明のIRO化合物が阻害効果を示 すことが確認できない。」と記載し,また,請求項13に係る発明につき,「請求項 13の「TLRにより媒介される疾患」のうち,「TLR7」,「TLR8」又は「T LR9」によって媒介される疾患以外の疾患については,本願発明のIRO化合物 が治療効果を示すことが確認できない。」と,それぞれ記載していることが認められ る。 上記認定事実によれば,本件拒絶理由通知は,文言上,少なくとも,TLR7な いし9については,アンタゴニスト作用及びその治療効果を有することが確認され たことをいうものと理解するのが自然である。
・・・
(オ) その後,特許庁は,原告に対し,改めて拒絶理由を通知することなく, 平成28年5月20日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした。 ウ 前記イ(ウ)aによれば,本件拒絶理由通知は,TLR9に対してアンタゴ ニスト作用を有する12種類化合物のみの問題を検討するにとどまり,TLR7及 び8に対してアンタゴニスト作用を有するIRO5に固有の問題を検討した上で拒 絶理由を通知するものではないから,実質的にはTLR7及び8に対する拒絶理由 を示すものではないことが認められる。のみならず,TLR7及び8については, 本件反転作用を裏付ける実施例はない上,そもそも認識するアゴニストの対象が, TLR9とは異なり,一本鎖RNAウイルスであると認められるのであるから,T LR7及び8の拒絶理由には,TLR9の拒絶理由とは異なる固有の理由が存在す ることは明らかであるにもかかわらず,本件拒絶理由通知は,これを通知していな いことが認められる。
そして,前記イ(エ)によれば,原告は,本件拒絶理由を受けて,その理由を解消す るために,TLR1ないし6に係る発明部分を削除しているのであり,このような 経緯に鑑みると,原告は,TLR7及び8についても拒絶理由を実質的に通知され ていた場合には,TLR7及び8に係る発明部分についても,TLR1ないし6に 係る発明部分と併せて補正によって削除した可能性が高いものと認められる。\nのみならず,前記イ(ウ)bによれば,請求項8,13,16及び17に係る各発明 に対する本件拒絶理由通知は,文言上,少なくとも,TLR7ないし9については, アンタゴニスト作用及びその治療効果を有することが確認されたことをいうものと 理解するのが自然であるから,このような記載に接した原告が,少なくともTLR 7ないし9については,アンタゴニスト作用を有することが確認されたため,実施 可能要件及びサポート要件違反はないものと理解したのもやむを得ないところであ\nる。現に,原告は,前記イ(エ)によれば,本件拒絶理由通知を踏まえ,請求項9及び 14においては,TLR1ないし6を削除して,TLR7ないし9に限定する補正 をしている事実が認められるのであるから,このような事実からも,上記の原告の 理解が十分に裏付けられるといえる。そうすると,TLR7ないし9についてもア\nンタゴニスト作用を有するものであるとすることはできないとして,本願発明が実 施可能要件及びサポート要件に適合しないとした審決の判断は,実質的にみれば,\n上記の経過に照らし,原告にとっては,不意打ちというほかなく,不当であるとい うほかない。
これらの事情の下においては,本件拒絶査定不服審判において,従前の拒絶査定 の理由とは異なる拒絶理由について,TLR9に係る発明に対してはこれを通知し たものの,TLR7及び8に係る各発明に対しては実質的にこれを通知しなかった ため,原告が補正により特許要件を欠くTLR7及び8に係る各発明を削除する可 能性が認められたのにこれを削除することができず,特許要件を充足するTLR9\nに係る発明についてまで本件拒絶査定不服審判の不成立審決を最終的に免れる機会 を失ったものと認められる。 したがって,審決には,特許法50条を準用する同法159条2項に規定する手 続違背の違法があるというべきであり,当該手続違背の違法は,審決の結論に影響 を及ぼすというべきであるから,取消事由1は,理由があるものと認められる。
エ これに対し,被告は,前記イ(ウ)aのとおり,サポート要件違反と実施可能\n要件違反をいう請求項1に係る本件拒絶理由は,旧請求項3及び4,7なしい17 についても存在する旨通知されているのであるから,審決が本件拒絶理由とは異な る新たな拒絶理由に基づき実施可能要件及びサポート要件に適合しないと判断した\nとする原告の主張は,前提を欠くものであるなどと主張する。 しかしながら,上記ウで説示したとおり,本件拒絶査定不服審判において,本件 拒絶理由通知では,TLR9に関する拒絶理由のみを通知し,実質的にはTLR7 及び8に関する拒絶理由を通知しなかったため,原告はTLR7及び8に係る各発 明を削除するなどの補正をする機会を失うことになり,実施可能要件及びサポート\n要件をいずれも充足するTLR9に係る発明まで最終的に特許を受けることができ ないことになったものと認められる。このような結果は,原告にとって,不意打ち となるため,原告に過酷というほかなく,審判請求人の手続保障を規定する特許法 159条2項の趣旨に照らし,相当ではないというべきである。 かえって,被告は,本件訴訟に至っては,そもそもTLR7及び8が認識するも のと,TLR9が認識するものが異なるという技術常識に基づけば,TLR9に対 して本願IRO化合物がアンタゴニスト作用を奏するとする原告の作用機序の説明 が,TLR7及び8には妥当し得ないことは明らかであるなどとして,現にTLR 7及び8に固有の拒絶理由を具体的に主張しているのであるから(準備書面(第1 回)13頁),実質的にみても,上記のように,本件拒絶査定不服審判においてTL R7及び8に固有の拒絶理由を通知することが,審判合議体にとって困難なもので あったとは認められない。 したがって,被告の主張は,審判請求人の手続保障を規定する特許法159条2 項の意義を正解しないものに帰し,採用することができない。
なお付言するに,本願IRO化合物が治療効果を有するかどうかの点につき,本 件拒絶理由では,TLR7ないし9によって媒介される疾患以外の疾患については 治療効果を示すことが確認できないとしているところ,原告は,本件拒絶査定不服 審判においては,TLR7ないし9によって媒介される疾患については治療効果を 示すことが確認されたものと理解した上,本件拒絶理由を踏まえてTLR1ないし 6を削除する補正をし,さらに,その後の意見書において,この点に係る拒絶理由 が解消されたとまで述べているのであるから,審決においてTLR7ないし9によ って媒介される疾患についても治療的に処置することができるといえる根拠がない と判断するのであれば,審判請求人の手続保障を規定する特許法159条2項の法 意に照らすと,本件拒絶査定不服審判において,この点についても改めて拒絶理由 を通知することが相当であったものと認められる。

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平成28(行ケ)10278  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年1月15日  知的財産高等裁判所(4部)

 異議理由ありとした審決が取り消されました。理由は、新規事項か、サポート要件違反か、実施可能要件違反かです。知財高裁は、当初明細書の範囲内と判断しました。\n
ア 本件出願当初明細書等の記載
結晶多形Aについて,本件出願当初明細書等には,おおむね,次のとおり記載が ある。
・・・・
イ 本件出願当初明細書等に開示された結晶多形Aに関する技術的事項
(ア) 本件出願当初明細書等にいう結晶多形Aは,本件出願当初明細書等におい て名付けられたものである(【0007】)。
(イ) そして,本件出願当初明細書等【0008】には,結晶多形Aに該当する具体的な結晶多形として,【0008】(1)は,本件出願時の特許請求の範囲【請求 項1】で特定される結晶多形を挙げるほか,【0008】(5)は,2θで表して,構\ 成要件Eで特定されるのと同様の26個の角度において,ピークを有する特徴的な X線回析図形を示し,FT−IR分光法と結合した熱重量法により測定した含水量 が3〜15%であるピタバスタチンカルシウムの結晶多形を挙げており,後者の結 晶多形は,構成要件Eで特定される結晶多形を含むものである。このように,本件\n出願当初明細書等【0008】の記載は,結晶多形Aには,構成要件Eで特定され\nる結晶多形だけではなく,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特定される 結晶多形も,該当する旨説明するものである。
(ウ) また,本件出願当初明細書等【0009】は,「結晶多形Aの一つの具体 的形態」として,2θで表して,構\成要件Eで特定されるのと同様の26個無偏差 相対強度図形を示す結晶多形を例示しており,この結晶多形は,構成要件Eで特定\nされる結晶多形を含むものである。そうすると,本件出願当初明細書等【0009】 の記載は,構成要件Eで特定される結晶多形は,結晶多形Aの具体的な態様の一つ\nである旨説明するものである。
(エ) さらに,本願出願当初明細書等【0047】には,【0047】に記載さ れた製造方法によって,結晶多形Aが得られること,当該結晶多形AのX線粉末回 析図形は,構成要件Eと同様の26個無偏差相対強度図形を示したことが記載され\nている。本件出願当初明細書等【0047】の記載は,特定の製造方法によって生 成された結晶多形AのX線粉末回析図形を説明するにとどまり,構成要件Eで特定\nされる結晶多形のみが結晶多形Aである旨説明するものではない。
(オ) したがって,本件出願当初明細書等の記載を総合すれば,構成要件Eで特\n定される結晶多形Aだけではなく,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特 定される結晶多形Aも,導くことができる。
(4) 新規事項の追加の有無
本件出願当初明細書等の記載を総合すれば,構成要件Eで特定される結晶多形A\nだけではなく,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特定される結晶多形A も,導くことができるから,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特定され る結晶多形Aから,構成要件Eで特定される結晶多形Aを除くものを,本件出願当\n初明細書等の全ての記載を総合することにより導くことができるというべきである。 したがって,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】に,構成要件Eを追加す\nる本件補正は,新たな技術的事項を導入するものではなく,本件出願当初明細書等 に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。
(5) 被告の主張について
被告は,本件出願当初明細書等に記載された結晶多形Aを,26個のピークの回 折角2θ及びその相対強度で特定しなくても,6個のピークの回析角2θ等によっ て特定し得るということは技術常識ではないと主張する。 しかし,本件出願当初明細書等の記載を総合すれば,26個のピークの回折角2 θ及びその相対強度で特定される結晶多形Aだけではなく,6個のピークの回析角 2θ等によって特定される結晶多形Aも導くことができる。本件補正は,26個の ピークの回折角2θ及びその相対強度で特定される結晶多形を,6個のピークの回 析角2θ等によって特定することを前提としてなされたものではないから,被告の 上記主張は,前提を欠く。
(6) 小括
以上のとおり,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】に,構成要件Eを追加\nする本件補正は,新たな技術的事項を導入するものではない。そして,本件補正の その余の部分について,被告は,新たな技術的事項を導入するものではなく,本件 出願当初明細書等に記載した範囲内においてしたものであることを争わない。した がって,本件補正は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たす。

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平成29(ネ)10027  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年12月21日  知的財産高等裁判所(2部)  東京地方裁判所

CS関連発明について、控訴審で差止請求が認められました。無効理由については「時機に後れた」として採用されませんでした。1審は、均等侵害も第1、第2、第3要件を満たさない、分割要件違反、および一部のクレームについてサポート要件違反があると判断していました。
 引用発明1は,前記ア(イ)のとおり,「毎度の自動売買では自動売買テーブルでの 約定価より真下の安値の買取り及び約定価より真上の高値の売込みが同時に発注さ れるよう設定されたものであって,それにより,先に約定した注文と同種の注文を 含む売込み注文と買取り注文を同時に発注することで,株価が最初の売買価の値段 の範囲から上下に変動する場合に,所定の収益を発生させることに加え,口座の残 高及び持ち株の範囲において,株の現在価を無視して株の値段への変動を一向に予\n測することなく,従前の株の買取り値より株価が下落すると所定量を買い取り,買 取り値より株価が上がると所定量を売り込むこと」を特徴とするものである。 このように,引用発明1において,従前の株の買取り値より株価が下落すると所 定量を買い取り,買取り値より株価が上がると所定量を売り込む,という,連続し た買取り又は売込みによる口座の残高又は持ち株の増大をも目的とするものである から,このような設定に係る構成を,約定価と同じ価格の注文を含む注文を発注対\n象に含めるようにし,それを「繰り返し行わせる」設定に変更することは,「約定価 より真下の安値の買取り」及び「約定価より真上の高値の売込み」を同時に発注す ることにより,「従前の株の買取り値より株価が下落すると所定量を買取り,買取り 値より株価が上がると所定量を売込む」という,引用発明1の特徴を損なわせるこ とになる。 そうすると,引用発明1を本件発明の構成1Hに係る構\成の如く変更する動機付 けあるといえないから,構成1Hに相当する構\成は,引用発明1から当業者が容易 に想到し得たものとはいえない。
エ 被控訴人の主張について
被控訴人は,本件発明1と引用発明1との相違点は,引用発明1が本件発明1の 構成1Fのうち「前記一の注文価格を一の最高価格として設定し」ていない点であ\nり,その余の点では一致していることを前提に,本件発明1は,引用発明1から容 易想到である,と主張する。 しかし,前記イのとおり,本件発明1と引用発明1とは,引用発明1が本件発明 1の構成1Hの構\成を有していない点について相違している。被控訴人の主張は, その前提を欠き,理由がない。
・・・・
4 なお,被控訴人は,口頭弁論終結後に,本件発明1が無効とされるべきであ ることが明白である事由があるとして,口頭弁論再開を申し立てるが,無効事由の\n根拠となるべき資料は10年以上前に作成されていたものであり,上記無効事由は, 被控訴人が重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法であって, これによって訴訟の完結を遅延させることとなるから,却下されるべきものである から,口頭弁論を再開しない。

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◆1審はこちらです。平成27(ワ)4461

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平成29(行ケ)10029  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年12月26日  知的財産高等裁判所

 無効理由無しとした審決が取り消されました。理由は、サポート要件違反・委任省令違反、進歩性違反です。委任省令違反である以上、サポート要件違反でもあるという理由です。
   前記アのとおり,本件明細書には,「EVOH層の界面での乱れに起因す るゲル」は,ロングラン成形により発生するゲルとは異なる原因で発生するゲルで あると記載されているものの,本件明細書には,「EVOH層の界面での乱れに起因 するゲル」が,乙15における「ゲル状ブツ」の原因となるゲルと,その形状,構\n造等がどのように異なるのかを明らかにする記載は見当たらない。 また,本件明細書においては,前記イのとおり,「EVOH層の界面での乱れに起 因するゲル」は,目視観察できるものであるとされ,乙15における「ゲル状ブツ」 は,前記ウのとおり,肉眼で見ることができるものとされているところ,本件明細 書には,「目視観察」の定義は見当たらず,後者は肉眼で見分けられ,前者は肉眼で 見分けられないものを含む旨の特段の記載はないから,本件発明における「EVO H層の界面での乱れに起因するゲル」と背景技術(乙15)における「ゲル」を, 観察方法において区別することができるとは,理解できない。 このように,本件明細書には,本件発明における「EVOH層の界面での乱れに 起因するゲル」は,本件特許出願前の技術により抑制することができるとされてい るロングラン成形により発生するゲルとは異なる原因で発生する旨の記載があるも のの,その記載のみでは,ロングラン成形により発生するゲルと区別できるかどう かは,明らかでないというほかない。 この点について,被告は,「不完全溶融EVOH」が発生する機序について主張し, これは,従来から知られていた「熱架橋ゲル」とは異なる旨主張する。しかし,本 件明細書には,被告が本訴において主張するようなことは何ら記載されておらず, 被告が本訴において主張するような技術常識が存したとも認められないから,本件 発明における「EVOH層の界面での乱れに起因するゲル」が被告が本訴において 主張するようなものと認めることはできない。 そうすると,本件発明における「EVOH層の界面での乱れに起因するゲル」の 意義は明らかでないというほかなく,本件特許出願時の技術常識を考慮しても,「成 形物に溶融成形したときにEVOH層の界面での乱れに起因するゲルの発生がなく, 良好な成形物が得られ」るという本件発明の課題は,理解できないというほかない。 オ したがって,本件明細書の記載には,本件発明の課題について,当業者 が理解できるように記載されていないから,「特許法第三十六条第四項第一号の経\n済産業省令で定めるところによる記載は,発明が解決しようとする課題及びその解 決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明 の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければなら ない。」と定める特許法施行規則24条の2の規定に適合するものではない。
(2) 以上のとおり,本件発明についての本件明細書の発明の詳細の説明の記 載は,特許法36条4項1号の規定に適合しないから,審決のこの点に係る判断に は誤りがあり,取消事由3には理由がある。
・・・
前記2(1)オのとおり,本件明細書には,本件発明の課題について,当業者が理解 できるように記載されていないから,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の 詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲の ものであると認めることはできないし,発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも, 当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲 のものであるとも認められない。 この点について,被告は,「本件発明は,粒径500μm(0.5mm)未満の微 粉の含有量を0.1重量%以下に制御すること(新規な解決手段)により,『不完全 溶融EVOH』に起因する界面での乱れによるゲル(点状に分布する透明な粒状の 不完全溶融ゲルであり,EVOHの一部が極端な場合には他の樹脂層に突出するよ うな形態)の発生(斬新な課題)を抑制することができる(新規課題解決効果の奏 効)という特別な効果を得る」ものであると主張するが,前記2(1)のとおり,この 課題は,本件明細書及び技術常識から理解することができない。

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平成29(行ケ)10083  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年12月21日  知的財産高等裁判所

 「摩擦式精米機により搗精され」という用語について、クレームが明確でない(36条6項2号)とした審決が取り消されました。
 以上のような特許請求の範囲及び本件明細書の記載によれば,本件訂正後の 特許請求の範囲請求項1の「摩擦式精米機により搗精され」という記載は,本件発 明に係る無洗米の前段階である前記ウ(a)(b)の構造又は特性を有する精白米を製造す\nる際に摩擦式精米機を用いることを意味するものであり,「無洗米機(21)にて」 という記載は,上記精白米から前記ウ(c)の構造又は特性を有する無洗米を製造する\n際に無洗米機を用いることを意味するものであって,前記ウ(a)ないし(c)のほかに本 件発明に係る無洗米の構造又は特性を表\すものではないと解するのが相当である。 そして,本件発明に係る無洗米とは,玄米粒の表層部から糊粉細胞層までが除去さ\nれ,亜糊粉細胞層が米粒の表面に露出し,米粒の50%以上に「胚芽の表\面部を削 りとられた胚芽」又は「胚盤」が残っており,糊粉細胞層の中の糊粉顆粒が米肌に 粘り付けられた状態で米粒の表面に付着している「肌ヌカ」が分離除去された米で\nあるといえる。 そうすると,請求項1に「摩擦式精米機により搗精され」及び「無洗米機(21) にて」という製造方法が記載されているとしても,本件発明に係る無洗米のどのよ うな構造又は特性を表\しているのかは,特許請求の範囲及び本件明細書の記載から 一義的に明らかである。よって,請求項1の上記記載が明確性要件に違反するとい うことはできない。

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平成27(ワ)23087  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年12月6日  東京地方裁判所

 医薬品について、薬理データが記載されていないとして、実施可能性違反、サポート要件違反で無効と判断されました。\n
 特許法36条4項1号は,明細書の発明の詳細な説明の記載は「その発明 の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることが できる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定めると\nころ,この規定にいう「実施」とは,物の発明においては,当該発明にかか る物の生産,使用等をいうものであるから,実施可能要件を満たすためには,\n明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が当該発明に係る物を生産し, 使用することができる程度のものでなければならない。 そして,医薬の用途発明においては,一般に,物質名,化学構造等が示さ\nれることのみによっては,当該用途の有用性及びそのための当該医薬の有効 量を予測することは困難であり,当該医薬を当該用途に使用することができ\nないから,医薬の用途発明において実施可能要件を満たすためには,明細書\nの発明の詳細な説明は,その医薬を製造することができるだけでなく,出願 時の技術常識に照らして,医薬としての有用性を当業者が理解できるように 記載される必要がある。
(2) 本件の検討
本件についてこれをみるに,本件発明1では,式(I)のRAが−NHC O−(アミド結合)を有する構成(構\成要件B)を有するものであるところ, そのようなRAを有する化合物で本件明細書に記載されているものは,「化 合物C−71」(本件明細書214頁)のみである。そして,本件発明1は インテグラーゼ阻害剤(構成要件H)としてインテグラーゼ阻害活性を有す\nるものとされているところ,「化合物C−71」がインテグラーゼ阻害活性 を有することを示す具体的な薬理データ等は本件明細書に存在しないことに ついては,当事者間に争いがない。 したがって,本件明細書の記載は,医薬としての有用性を当業者が理解で きるように記載されたものではなく,その実施をすることができる程度に明 確かつ十分に記載されたものではないというべきであり,以下に判示すると\nおり,本件出願(平成14年(2002年)8月8日。なお,特許法41条 2項は同法36条を引用していない。)当時の技術常識及び本件明細書の記 載を参酌しても,本件特許化合物がインテグラーゼ阻害活性を有したと当業 者が理解し得たということもできない。
・・・
すなわち,上記各文献からうかがわれる本件優先日当時の技術常識と しては,ある種の化合物(ヒドロキシル化芳香族化合物等)がインテグ ラーゼ阻害活性を示すのは,同化合物がキレーター構造を有しているこ\nとが理由となっている可能性があるという程度の認識にとどまり,具体\n的にどのようなキレーター構造を備えた化合物がインテグラーゼ阻害活\n性を有するのか,また当該化合物がどのように作用してインテグラーゼ 活性が阻害されるのかについての技術常識が存在したと認めるに足りる 証拠はない。
・・・
以上の認定は本件優先日当時の技術常識に係るものであるが,その ほぼ1年後の本件出願時にこれと異なる技術常識が存在したことを認め るに足りる証拠はなく,本件出願当時における技術常識はこれと同様と 認められる。このことに加え,そもそも本件明細書には,本件特許化合 物を含めた本件発明化合物がインテグラーゼの活性部位に存在する二つ の金属イオンに配位結合することによりインテグラーゼ活性を阻害する 2核架橋型3座配位子(2メタルキレーター)タイプの阻害剤であると の記載はないことや,本件特許化合物がキレート構造を有していたとし\nても,本件出願当時インテグラーゼ阻害活性を有するとされていたヒド ロキシル化芳香族化合物等とは異なる化合物であることなどに照らすと, 本件明細書に接した当業者が,本件明細書に開示された種々の本件発明 化合物が,背面の環状構造により配位原子が同方向に連立した2核架橋\n型3座配位子構造(2メタルキレーター構\造)と末端に環構造を有する\n置換基とを特徴として,インテグラーゼの活性中心に存在する二つの金 属イオンに配位結合する化合物であると認識したと認めることはできな い。 以上によれば,本件出願当時の技術常識及び本件明細書の記載を参酌して も,本件特許化合物がインテグラーゼ阻害活性を有したと当業者が理解し得 たということもできない。 したがって,本件明細書の記載は本件発明1を当業者が実施できる程度に 明確かつ十分に記載したものではなく,本件発明1に係る特許は特許法36\n条4項1号の規定に違反してされたものであるので,本件発明1に係る特許 は特許法123条1項4号に基づき特許無効審判により無効にされるべきも のである。
3 争点(1)イ(イ)(サポート要件違反)について
上記2で説示したところに照らせば,本件明細書の発明の詳細な説明に本件 発明1が記載されているとはいえず,本件発明1に係る特許は特許法36条6 項1号の規定に違反してされたものというべきである。

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平成28(行ケ)10222  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年11月29日  知的財産高等裁判所(3部)

 サポート要件違反とした無効審決が取り消されました。
 前記(2(1)〜(3))のとおり,本件各発明は,焼鈍分離剤用の酸化マグネ シウム及び方向性電磁鋼板に関するものであるところ,方向性電磁鋼板の磁 気特性及び絶縁特性,並びに市場価値は,脱炭焼鈍により鋼板表面に SiO2被 膜を形成し,その表面に焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを含むスラリーを塗\n布して乾燥させ,コイル状に巻き取った後に仕上げ焼鈍することにより, SiO2 と MgO が反応して形成されるフォルステライト(MgSiO4)被膜の性能,\n具体的には,その生成しやすさ(フォルステライト被膜生成率),被膜の外 観及びその密着性並びに未反応酸化マグネシウムの酸除去性の4点に左右さ れるものであり,このフォルステライト被膜の性能は,これを形成する焼鈍\n分離剤用酸化マグネシウムの性能に依存するものということができる。\nそこで,焼鈍分離剤用酸化マグネシウム及びこれに含有される微量成分 についての研究が行われ,複数の物性値を制御し,フォルステライト被膜の 形成促進効果を一定化させ,かつフォルステライト被膜の品質を改善する試 みが多く行われてきたが,焼鈍分離剤用酸化マグネシウムに課せられた要求 を完全に満たす結果は得られていない。 このような状況の下,本件各発明は,磁気特性及び絶縁特性,更にフォ ルステライト被膜生成率,被膜の外観及びその密着性並びに未反応酸化マグ ネシウムの酸除去性に優れたフォルステライト被膜を形成でき,かつ性能が\n一定な酸化マグネシウム焼鈍分離剤を提供すること,更に本件各発明の方向 性電磁鋼板用焼鈍分離剤を用いて得られる方向性電磁鋼板を提供することを 目的としたものである。
(3) 検討
ア 本件各発明は,上記のとおり,方向性電磁鋼板に適用される焼鈍分離剤 用酸化マグネシウム粉末粒子を提供するものであるところ,本件課題を 解決するための手段として,焼鈍分離剤用酸化マグネシウム中に含まれ る微量元素の量を,Ca,P 及び B の成分の量で定義し,更に Ca,Si,P 及 び S のモル含有比率により定義して(前記2(4)イ),本件特許の特許請求 の範囲請求項1に記載された本件微量成分含有量及び本件モル比の範囲 内に制御するものである。 そして,焼鈍分離剤用酸化マグネシウムに含有される上記各微量元素 の量を本件微量成分含有量及び本件モル比の範囲内に制御することによ り,本件課題を解決し得ることは,本件明細書記載の実施例(1〜19) 及び比較例(1〜17)の実験データ(前記2(5)〜(11))により裏付けら れているということができる。 そうすると,当業者であれば,本件明細書の発明の詳細な説明の記載 に基づき,焼鈍分離剤用酸化マグネシウムにおいて,本件特許の特許請 求の範囲請求項1に記載のとおり Ca,P,B,Si 及び S の含有量等を制御 することによって本件課題を解決できると認識し得るものということが できる。
・・・
これらの記載によれば,焼 鈍分離剤用酸化マグネシウムの CAA とサブスケールの活性度とのバラ ンスが取れていない場合,フォルステライト被膜は良好に形成されない こととなるのは事実であるといえる。
(イ) しかし,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から把握し得る発明 は,焼鈍分離剤用酸化マグネシウムに含有される Ca,Si,B,P,S の含 有量に注目し,それらの含有量を増減させて実験(実施例1〜19及 び比較例1〜17)を行うことにより,最適範囲を本件特許の特許請 求の範囲請求項1に規定されるもの(本件微量成分含有量及び本件モ ル比)に定めたというものである。その理論的根拠は,Ca,Si,B,P 及び S の含有量を所定の数値範囲内とすることにより,ホウ素が MgO に侵入可能な条件を整えたことにあると理解される(本件明細書の\n【0016】。前記2(4)カ)。
他方,本件明細書の発明の詳細な説明の記載を見ても,CAA 値を調 整することにより本件課題の解決を図る発明を読み取ることはできない。 むしろ,これらの記載によれば,本件明細書の発明の詳細な説明中に CAA 値に関する記載があるのは,第1の系統及び第2の系統それぞれ において,実施例及び比較例に係る実験条件が CAA 値の点で同一であ ることを示すためであって,フォルステライト被膜を良好にするために CAA 値をコントロールしたものではないことが理解される。 そして,CAA の調整は,最終焼成工程の焼成条件により可能である\n(特開平9−71811号公報(甲7)「この発明の MgO では40% クエン酸活性度を30〜90秒の範囲とする。…かかる水和量,活性度 のコントロールは最終焼成の焼成時間を調整することにより行う。」 (【0026】)との記載参照。)から,焼鈍分離剤用酸化マグネシウ ムにおいて,本件微量成分含有量及び本件モル比のとおりに Ca,P,B, Si 及び S の含有量等を制御し,かつ,焼成条件を調整することによって, 本件各発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムにおいても,実施例におけ る110〜140秒以外の CAA 値を取り得ることは,技術常識から明 らかといってよい。 したがって,本件審決は,本件各発明の課題が解決されているのは CAA40%が前記数値の範囲内にされた場合でしかないと判断した点に おいて,その前提に誤りがある。
(ウ) そもそも,本件明細書によれば,本件特許の出願当時,焼鈍分離剤 用酸化マグネシウムについては,被膜不良の発生を完全には防止でき ていないことなど,十分な性能\を有するものはいまだ見出されておら ず,焼鈍分離剤用酸化マグネシウム及び含有される微量成分について 研究が行われ,制御が検討されている微量成分として CaO,B,SO3,F, Cl等が挙げられ,また,微量成分の含有量だけでなく,微量成分元素を 含む化合物の構造を検討する試みも行われていたことがうかがわれる\n(前記2(2))。
・・・・
そうすると,本件特許の出願当時,フォルステライト被膜の性能改善\nという課題の解決を図るに当たり,焼鈍分離剤用酸化マグネシウムに含 有される微量元素の含有量に着目することと,CAA 値に着目すること とが考えられるところ,当業者にとって,いずれか一方を選択すること も,両者を重畳的に選択することも可能であったと見るのが相当である\n(なお,微量元素の含有量に着目する発明にあっても,焼鈍分離剤用酸 化マグネシウムの CAA 値とサブスケールの活性度とのバランスが取れ ていない場合には,その実施に支障が生じる可能性があることは前示の\nとおりであるが,この点の調整は,甲1,5〜7,67,乙4等によっ て認められる技術常識に基づいて,当業者が十分に行うことができるも\nのと認められる。)。
(エ) 以上を総合的に考慮すると,当業者であれば,本件明細書の発明の 詳細な説明には,本件微量成分含有量及び本件モル比を有する焼鈍分 離剤用酸化マグネシウムにより本件課題を解決し得る旨が開示されて いるものと理解し得ると見るのが相当である。
ウ 以上によれば,CAA 値について何ら特定がない酸化マグネシウムにお いて,本件微量成分含有量及び本件モル比のみの特定をもってしては, 直ちに本件課題を解決し得るとは認められないとした本件審決には誤り があるというべきである。

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平成28(行ケ)10215  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年10月26日  知的財産高等裁判所(2部)

 審決は、36条違反の無効理由無しと判断しましたが、知財高裁はサポート要件違反として審決を取り消しました。
 前記第2の2の認定事実及び前記(1)の本件明細書の記載によると,本件 発明について,以下のとおり認められる。 高速連続鋳造において,鋳造速度が大きくなると,凝固シェル厚みが薄くなり, これに伴って,バルジングが大きくなることから,バルジング性湯面変動が発生し, モールドパウダーの巻き込みが発生する原因となっている。鋳片表面にモールドパ\nウダーが付着していない方が二次冷却における冷却効率が良く,凝固シェル厚みが 厚くなるので,バルジング性湯面変動を抑制するには,鋳片からの剥離性の良いモ ールドパウダーが望ましい。 そこで,本件発明は,二次冷却帯における鋳片の冷却能を高めることを可能\とす る,鋳片表面からの剥離性に優れる,鋼の連続鋳造用モールドパウダーを提供する\nことを,その目的とするものである。
2 取消事由1(サポート要件についての判断の誤り)について
・・・・ (2) 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比すると,前記 1(1)ウの【0010】及び【0011】における第1の発明についての記載は,請 求項1の記載と一致する。 また,同【0012】の記載のうち,「前記モールドパウダー・・・特徴とする」 という部分は,請求項2において,本件発明1をさらに特定する事項の記載と一致 する。
(3)ア 前記1(1)イのとおり,本件発明の課題は,二次冷却帯における鋳片の 冷却能を高めることを可能\とする,鋳片表面からの剥離性に優れる,鋼の連続鋳造\n用モールドパウダーを提供することである(【0009】)。 イ そして,前記(2)のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明【0010】, 【0011】及び【0012】には,課題を解決する手段として,「第1の発明」及 び「第2の発明」のモールドパウダー,すなわち,本件発明が記載され,また,前 記1(1)オのとおり,剥離性の試験結果を示した図1及び図2に基づき,請求項1に 記載された式(1)及び(2)を満たすモールドパウダーが,剥離性に優れること が分かったとされている(同【0018】〜【0024】)。
具体的には,
・・・・
この記載は,モデル実験の結果を示す図1及び図2から導かれ た式(1)及び(2)を満たすモールドパウダーは,連続鋳造に用いた場合に,実 際に鋳片からの剥離性に優れ,二次冷却帯における鋳片の冷却能を高めることを可\n能とするものであるかどうかを,バルジング湯面変動の抑制効果によって評価する\nことを意図したものであると認められる。
ウ 実施例について
(ア) 証拠(甲3,5,7,8,10,19)及び弁論の全趣旨によると, 次の技術常識が認められる。
a バルジング性湯面変動は凝固シェルの厚みが薄くなることに起因し て激しくなる。凝固シェルは溶鋼が鋳型内で冷却されて形成されるものであり,鋳 型内抜熱強度が低い場合(鋳型に抜けていく熱が少なく,鋳型内が冷却されにくい 場合)には凝固シェルの厚みが薄くなる。
b 鋳型内における冷却強度の指標としてモールドパウダーの凝固温度 が用いられる。このパウダーの凝固温度は,一定温度に保持した坩堝中において円 筒を回転するなどして粘性を求め,測定温度に対し粘性をプロットした図において, 温度の低下に伴って急激に粘性が高くなる温度とされている。この急激な粘性の変 化は温度の低下に伴いパウダーが結晶化し,見掛けの粘性が高くなるためであると 考えられており,この凝固温度が高い場合はパウダーフィルム内の結晶相(固着相) 厚みが厚いため鋳型−凝固シェル間の熱抵抗が大きくなり,緩冷却が実現されると されている。
c モールドパウダーの凝固温度は,その組成によって変化する。
(イ) これらの技術常識を考え合わせると,凝固シェルの厚みは,鋳型直下 でのモールドパウダーの鋳片表面からの剥離性及びそれに伴う二次冷却帯での冷却\n効率のみによって決まるものではなく,モールドパウダーの組成によって異なる凝 固温度にも影響されると認められる。
(ウ) 本件明細書記載の実施例において,モールドパウダーBとモールド パウダーAについて,鋳型内における冷却強度の指標となる凝固シェルの厚みに影 響を与え得る凝固温度は記載されていない。また,モールドパウダーAとモールド パウダーBの組成が記載された表1には,化学成分として,SiO2,Al2O3,C\naO,MgO,Na2Oのみが挙げられ,それらの量を合計しても,モールドパウダ ーAで80.6%,モールドパウダーBで78.7%であり,残りの成分が何であ ったのか不明であるから,その組成から凝固温度を推測することもできない。 また,本件明細書記載の実施例において,(1)式及び(2)式を満たすものと満 たさないものについての連続鋳造の際のバルジング性湯面変動の測定は,それぞれ, モールドパウダーBとモールドパウダーAの一つずつで行われたにとどまる。 これらのことから,本件明細書の発明の詳細な説明において,モールドパウダー BがモールドパウダーAよりもバルジング性湯面変動を抑制できたことが示されて いても,モールドパウダーBがモールドパウダーAと比較してバルジング性湯面変 動を抑制することができたのは,モールドパウダーが(1)式及び(2)式を満た す組成であることによるのか否かは,本件明細書の発明の詳細な説明からは,不明 であるといわざるを得ない。

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平成28(行ケ)10189  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年10月25日  知的財産高等裁判所(3部)

 サポート要件違反とした審決が取り消されました。
 ・・・以上のような発明の詳細な説明の記載を総合してみれば, 本願発明における本願組成要件と本願物性要件との関係に関して,次のよ うな理解が可能といえる。すなわち,まず,Nb2O5成分は,屈折率を高\nめ,分散を大きくしつつ部分分散比を小さくし,化学的耐久性及び耐失透性 を改善するのに有効な必須の成分であること(段落【0033】)から,本 願組成要件において,その含有量が40%超65%以下とされ,組成物中で 最も含有量の多い成分とされていることが理解できる。また,ZrO2成分 は,屈折率を高め,部分分散比を小さくする効果があり(段落【0031】), 他方,TiO2成分は,屈折率を高め,分散を大きくする効果がある反面, その量が多すぎると部分分散比が大きくなること(段落【0029】)から, 「部分分散比が小さい光学ガラス」を得るためには,ZrO2及びNb2O5 の含有量に対してTiO2の含有量が多くなりすぎることを避ける必要が あり,そのために,TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値を一定以下とす るものであること(段落【0073】)が理解でき,これが,本願組成要件 において,各成分の含有量とともに規定される「TiO2/(ZrO2+N b2O5)が0.2以下であり」との特定に反映され,本願発明の課題の解決 (高屈折率高分散であって,かつ,部分分散比が小さい光学ガラスを提供す ること)にとって重要な構成となっていることが理解できる。
ウ 他方,本願明細書の発明の詳細な説明における実施例の記載をみると,本 願組成要件を満たす実施例(No.8,9,21,24〜38,41,44, 45,48〜57,60〜66)に係る組成物が,本願物性要件の全てを満 たすことが示されているが,これらの組成物の組成は,本願組成要件に規定 された各成分の含有比率,「TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値」及び 「SiO2,B2O3,TiO2,ZrO2,Nb2O5,WO3,ZnO,Sr O,Li2O,Na2Oの合計含有量」の各数値範囲の一部のもの(具体的に は,別紙審決書4頁23行目から5頁8行目までに記載のとおりである。) でしかなく,上限から下限までの数値範囲を網羅するというものではない。 すなわち,本願組成要件に規定された各数値範囲は,実施例によって本願物 性要件を満たすことが具体的に確認された組成の数値範囲に比して広い数 値範囲となっており,そのため,本願組成要件で特定される光学ガラスのう ち,実施例に示された数値範囲を超える組成に係る光学ガラスについても, 本願物性要件を満たし得るものであることを当業者が認識できるか否かが 問題となる。
そこで検討するに,まず,光学ガラスの製造に関しては,ガラスの物性が 多くの成分の総合的な作用により決定されるものであるため,個々の成分 の含有量の範囲等と物性との因果関係を明確にして,所望の物性のための 必要十分な配合組成を明らかにすることは現実には不可能\であり,そのた め,ターゲットとされる物性を有する光学ガラスを製造するに当たり,当該 物性を有する光学ガラスの配合組成を明らかにするためには,既知の光学 ガラスの配合組成を基本にして,その成分の一部を,当該物性に寄与するこ とが知られている成分に置き換える作業を行い,ターゲットではない他の 物性に支障が出ないよう複数の成分の混合比を変更するなどして試行錯誤 を繰り返すことで当該配合組成を見出すのが通常行われる手順であること が認められ,このことは,本願出願時において,光学ガラスの技術分野の技 術常識であったものと認められる(甲5,6,17,18,21,22。以 上のような技術常識の存在については,当事者間に争いがない。)。 そして,上記のような技術常識からすれば,光学ガラスの製造に当たっ て,基本となる既知の光学ガラスの成分の一部を,物性の変化を調整しなが ら,他の成分に置き換えるなどの作業を試行錯誤的に行うことは,当業者が 通常行うことということができるから,光学ガラス分野の当業者であれば, 本願明細書の実施例に示された組成物を基本にして,特定の成分の含有量 をある程度変化させた場合であっても,これに応じて他の成分を適宜増減 させることにより,当該特定の成分の増減による物性の変化を調整して,も との組成物と同様に本願物性要件を満たす光学ガラスを得ることも可能で\nあることを理解できるものといえる。そして,前記イのとおり,当業者は, 本願明細書の発明の詳細な説明の記載から,本願物性要件を満たす光学ガ ラスを得るには,「Nb2O5成分を40%超65%以下の範囲で含有し, かつ,TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を0.2以下とする」ことが特に 重要であることを理解するものといえるから,これらの条件を維持しなが ら,光学ガラスの製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で上記のよ うな成分調整を行うことにより,高い蓋然性をもって本願物性要件を満た す光学ガラスを得ることが可能であることも理解し得るというべきであ\nる。なお,これを具体的な成分に即して説明するに,例えば,本願発明の最 多含有成分であるNb2O5についてみると,当業者であれば,実施例中最 多の含有量(53.61%)を有する実施例50において,TiO2/(Z rO2+Nb2O5)を0.2以下とする条件を維持しながら,必須成分であ るTiO2(6.48%),ZrO2(1.85%)又は任意成分であるNa 2O(9.26%)から適宜置換することによって,本願物性要件を満たし つつ,Nb2O5を増やす調整を行うことも可能であることを理解するもの\nと考えられ,同様に,実施例中Nb2O5の含有量が最少(43.71%)で ある実施例24において,TiO2/(ZrO2+Nb2O5)を0.2以下 とする条件を維持しながら,もう1つの主成分であるSiO2(24.76 %),必須成分であるZrO2(10.48%)又は任意成分であるLi2O (4.76%)への置換により,本願物性要件を満たしつつ,Nb2O5を減 らす調整を行うことも可能であることを理解するものと考えられる(以上\nのことは,本願組成要件に係るNb2O5以外の成分についても,同様にい えることであり,この点については,原告の前記第3の2⑵記載の主張が参 考となる。)。 してみると,本願明細書の実施例に係る組成物の組成が,本願組成要件に 規定された各成分の含有比率,「TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値」 及び「SiO2,B2O3,TiO2,ZrO2,Nb2O5,WO3,ZnO, SrO,Li2O,Na2Oの合計含有量」の各数値範囲の一部のものにす ぎないとしても,本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願出願時に おける光学ガラス分野の技術常識に鑑みれば,当業者は,本願組成要件に規 定された各数値範囲のうち,実施例として具体的に示された組成物に係る 数値範囲を超える組成を有するものであっても,高い蓋然性をもって本願 物性要件を満たす光学ガラスを得ることができることを認識し得るという べきであり,更に,そのように認識し得る範囲が,本願組成要件に規定され た各成分の各数値範囲の全体(上限値や下限値)にまで及ぶものといえるか 否かについては,成分ごとに,その効果や特性を踏まえた具体的な検討を行 うことによって判断される必要があるものといえる。
エ これに対し,本件審決は,本願明細書の実施例に記載されたガラス組成の 数値範囲については,本願物性要件を満たす光学ガラスが得られることを 確認することができるが,実施例に記載されたガラス組成の数値範囲を超 える部分については,本願物性要件を満たす光学ガラスが得られることが, 実施例の記載により裏付けられているとはいえないとし,また,その他の発 明の詳細な説明のうち,部分分散比に影響を与える成分であるTiO2,Z rO2,Nb2O5,WO3及びLi2Oの記載(段落【0029】等)につい ても,好ましい範囲等として記載される数値範囲が実施例に記載されたガ ラス組成の数値範囲より広い範囲となっていることから,実施例の数値範 囲を超える部分について,本願物性要件を満たす光学ガラスが得られるこ とを裏付けるとはいえないとし,更に,本願出願時の技術常識(光学ガラス の物性は,ガラスの組成に依存するが,構成成分と物性との因果関係が明確\nに導かれない場合の方が多いことなど)に照らしても,本願組成要件の数値 範囲にわたって,本願物性要件を満たす光学ガラスが得られることを当業 者が認識し得るとはいえないと判断したものである。 このように,本件審決の判断は,本願組成要件に規定された各成分の含有 比率,「TiO2/(ZrO2+Nb2O5)の値」及び「SiO2,B2O3, TiO2,ZrO2,Nb2O5,WO3,ZnO,SrO,Li2O,Na2O の合計含有量」の各数値範囲のうち,当業者が本願物性要件を満たす光学ガ ラスが得られるものと認識できる範囲を,実施例として具体的に示された ガラス組成の各数値範囲に限定するものにほかならないところ,上記ウで 述べたところからすれば,このような判断は誤りというべきである。本件審 決は,上記ウのとおり,本願のサポート要件充足性を判断するに当たって必 要とされる,本願物性要件を満たす光学ガラスを得ることができることを 認識し得る範囲が本願組成要件に規定された各成分における数値範囲の全 体に及ぶものといえるか否かについての具体的な検討を行うことなく,実 施例として示された各数値範囲が本願組成要件に規定された各数値範囲の 一部にとどまることをもって,直ちに本願のサポート要件充足性を否定し たものであるから,そのような判断は誤りといわざるを得ず(更に言えば, 上記のような具体的な検討の結果に基づく拒絶理由通知がされるべきであ ったともいえる。),また,その誤りは審決の結論に影響を及ぼすものとい える。

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平成28(行ケ)10236  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年9月21日  知的財産高等裁判所(第2部)

   「無洗米の製造装置」の発明について、審決は明瞭、知財高裁はこれを取消しました。請求項のほとんどの部分が精米方法あるいは装置の使用方法若しくは精米装置の製造方法で表されているので、不明瞭というものです。
 以上の記載事項A〜Iについての検討を総合すると,本件発明1の無洗米 の製造装置は,少なくとも,摩擦式精米機(記載事項F)と無洗米機(記載事項C) をその構成の一部とするものであり,その摩擦式精米機は,全精白構\成の終末寄り から少なくとも3分の2以上の工程に用いられているものである(記載事項E)上, 精白除糠網筒(記載事項F)と精白ロール(記載事項G)をその構成の一部とする\nものであり,その精白除糠網筒の内面は,ほぼ滑面状であって(記載事項F),精白ロ ールの回転数は毎分900回以上の高速回転とするものである(記載事項 G)と認 められる。 したがって,上記の無洗米の製造装置の構造又は特性は,記載事項A〜Iから理\n解することができる。
しかしながら,請求項1の無洗米の製造装置の特定は,上記の装置の構造又は特\n性にとどまるものではなく,精米機により,亜糊粉細胞層を米粒表面に露出させ,\n米粒の50%以上について胚盤又は表面部を削り取られた胚芽を残し,白度37前\n後に仕上がるように搗精し(記載事項B),白米の表面に付着する肌ヌカを無洗米機\nにより分離除去する無洗米処理を行う(記載事項C)ものであり,旨味成分と栄養 成分を保持した無洗米を製造するもの(記載事項D,I)である。 このうち,亜糊粉細胞層を米粒表面に露出させ,米粒の50%以上について胚盤\n又は表面部を削り取られた胚芽を残し,白度37前後に仕上がるように搗精する(記\n載事項B)ことについては,本件明細書の発明の詳細な説明において,本件発明に 係る無洗米の製造装置のミニチュア機で,白度37前後の各白度に搗精した精米を, 洗米するか,公知の無洗米機によって通常の無洗化処理を行い,炊飯器によって炊 飯し,その黄色度を黄色度計で計り,黄色度11〜18の内の好みの供試米の白度 に合わせて搗精を終わらせる時を調整して,本格搗精をすることにより行うこと (【0035】),このようにして仕上がった精白米は,亜糊粉細胞層が米粒表面をほ\nとんど覆っていて,かつ,全米粒のうち,表面が除去された胚芽と胚盤が残った米\n粒の合計数が,少なくとも50%以上を占めていること(【0036】)が記載され ており,結局のところ,ミニチュア機で実際に搗精を行うことにより,本格搗精を 終わらせる時を調整することにより実現されるものであることが記載されている。 したがって,本件明細書には,本件発明1の無洗米の製造装置につき,その特定の 構造又は特性のみによって,玄米を前記のような精白米に精米することができるこ\nとは記載されておらず,その運転条件を調整することにより,そのような精米がで きるものとされている。そして,その運転条件は,本件明細書において,毎分90 0回以上の高速回転で精白ロールを回転させること以外の特定はなく,実際に上記 のような精米ができる精白ロールの回転数や,精米機に供給される玄米の供給速度, 精米機の運転時間などの運転条件の特定はなく,本件出願時の技術常識からして, これが明らかであると認めることもできない。
ところで,本件明細書の発明の詳細な説明において,亜糊粉細胞層(5)につい ては,「糊粉細胞層4に接して,糊粉細胞層4より一段深層に位置して僅かに薄黄色 をした」,「厚みも薄く1層しかない」ものであり(【0015】),「亜糊粉細胞5は・・・整然と目立って並んでいる個所は少なく,ほとんどは顕微鏡でも確認しにくいほど糊粉細胞層4に複雑に貼り付いた微細な細胞であり,それも平均厚さが約5ミクロ\nン程度の極薄のものである」(【0018】)と記載され,胚芽(8)及び胚盤(9) については,「胚芽7の表面部を除去された」ものが胚芽(8)であり,それを更に\n削り取ると胚盤(9)になる(【0023】)と記載されている。しかるところ,本 件明細書の発明の詳細な説明には,米粒に亜糊粉細胞層(5)と胚芽(8)及び胚 盤(9)を残し,それより外側の部分を除去することをもって,米粒に「旨み成分 と栄養成分を保持」させることができる旨が記載されており(【0017】〜【00 23】),玄米をこのような精白米に精米する方法については,「従来から,飯米用の 精米手段は摩擦式精米機にて行うことが常識とされている」が,その搗精方法では, 必然的に,米粒から亜糊粉細胞層(5)や胚芽(8)及び胚盤(9)も除去されて しまうこと(【0024】,【0025】)が記載されている。また,本件明細書の発 明の詳細な説明には,「摩擦式精米機では米粒に高圧がかかり,胚芽は根こそぎ脱落 する」から,胚芽を残存させるには,研削式精米機による精米が不可欠とされてい た(【0029】)ところ,研削式精米機により精米すると,むらが生じ,高白度に なると,亜糊粉細胞層(5)の内側の澱粉細胞層(6)も削ぎ落とされている個所 もあれば,糊粉細胞層(4)だけでなく,それより表層の糠層が残ったままの部分\nもあるという状態になること(【0027】)が記載されている。 そうすると,精米機により,亜糊粉細胞層を米粒表面に露出させ,米粒の50%\n以上において胚盤又は表面を削り取られた胚芽を残し,白度37前後に仕上がるよ\nうに搗精することは,従来の技術では容易ではなかったことがうかがわれ,上記の とおり,本件明細書に具体的な記載がない場合に,これを実現することが当業者に とって明らかであると認めることはできない。 本件発明1は,無洗米の製造装置の発明であるが,このような物の発明にあって は,特許請求の範囲において,当該物の構造又は特性を明記して,直接物を特定す\nることが原則であるところ(最高裁判所平成27年6月5日第二小法廷判決・民集 69巻4号904頁参照),上記のとおり,本件発明1は,物の構造又は特性から当\n該物を特定することができず,本件明細書の記載や技術常識を考慮しても,当該物 を特定することができないから,特許を受けようとする発明が明確であるというこ とはできない。

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平成28(行ケ)10187  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年8月30日  知的財産高等裁判所(第1部)

 明確性違反として無効とされた審決が維持されました。問題となった記載は「平均粒子径は,0.5〜2.0μmの範囲にあり」というものです。
 しかし,仮に「イリュージョン」については測定誤差の範囲内といえるとしても, それは,実際に製造販売された製品である「イリュージョン」のマイクロカプセル 顔料の形状が比較的球形に近かったという一事例を示すにとどまるものであり,本 件発明におけるマイクロカプセル顔料一般の形状が比較的球形に近いことを裏付け るに足りない(なお,前記「第4 被告の反論」の1(1)のとおり,他の原告ら製品 (「フリクション」)には球形とは相当異なった粒子が一定数含まれていたと認めら れる。)。現に,本件発明の想定する技術的範囲には,甲24の図1〜3に示される ような形状のマイクロカプセル顔料も含まれることは前記(1)アのとおりであり,例 えば全てが甲24文献の図3のような形状のマイクロカプセル顔料の場合には,粒 子径(代表径)の規定のし方による差が相当大きくなるものと推認される。\n
・・・・
本件特許請求の範囲及び本件明細書には,粒子径(代表径)の定義に関す\nる明示の記載はない。 当業者の技術常識を検討すると,平成11年11月1日から平成14年10月3 1日までの間に,筆記具用インクの平均粒子径の測定方法が記載された特許出願の 公開特許公報58件のうち,レーザ回折法で測定したものが23件,遠心沈降法で 測定したものが6件,画像解析法で測定したものが8件,動的光散乱法で測定した ものが22件(うち1件は遠心沈降法と動的光散乱法を併用)であった一方,等体 積球相当径を求めることができる電気的検知帯法で測定しているものはなかったこ と(甲20),平成14年6月1日から平成17年5月31日までの間の特許出願に ついて,審判官が職権により甲20と同様の調査したところ,原告ら及び被告以外 の当業者では,電子顕微鏡法,レーザ回折・散乱法,遠心沈降法により平均粒子径 を測定している例があった一方,電気的検知帯法が用いられた例は発見されていな いこと(弁論の全趣旨)が認められる。また,種々の測定方法で得た値から,再度 計算して,等体積球相当径を粒子径(代表径)とする平均粒子径に換算していると\nも考え難い。そうすると,粒子径(代表径)について,等体積球相当径又はそれ以\n外の特定の定義によることが技術常識となっていたとは認められない。 以上のとおり,技術常識を踏まえて本件特許請求の範囲及び本件明細書の記載を 検討しても,粒子径(代表径)を特定することはできない。\n
(3) 原告らは,本件発明が粒度分布を体積基準で表していること,測定方法の\n記載がないこと,マイクロカプセル顔料の大きさに着目するという本件発明の特徴, 測定の難易から,本件発明の粒子径(代表径)として,光散乱相当径やストークス\n径は不適当である一方,等体積球相当径は適当である旨主張する。 しかし,粒度分布の表し方を体積基準又はそれと等価である質量基準とするのが\n通常である粒子径(代表径)には,審決が指摘するとおり,等体積球相当径の他に\nも,光散乱法による光散乱相当径,光回折法による光の回折相当径,沈降法による ストークス径があると認められる。そして,前記(2)のとおり,筆記具用インキの粒 子の大きさの測定に関する公知発明において,これらの粒子径(代表径)又は測定\n方法が相当程度採用されていたことに照らせば,これらの粒子径(代表径)又は測\n定方法も,マイクロカプセル顔料の大きさに着目する技術分野において,当業者が 採用を検討し得る有用な測定基準であると推認される。なお,原告パイロットイン キによる特許出願でも,インキの吐出性を考慮して粒子の大きさを限定するため, 遠心沈降式の測定装置を用いて体積基準の粒度分布を求めている例がみられる(乙 11【0016】【0040】)。 また,測定方法の記載がない場合に,特定の測定方法に対応しない粒子径(代表\n径)の定義を採用したものと考えるという技術常識を認めるに足りる証拠はない。

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平成29(行ケ)10006等  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年8月22日  知的財産高等裁判所

 一部のクレームについては無効とした審決について、双方がその取消を求めました。審判では、請求項6〜13については、サポート要件違反、進歩性違反等は無し、請求項1〜4は明確性違反で無効と判断されていました。前者について無効審判請求人がその部分の取消しを求める訴訟(甲事件)を提起し、後者について、特許権者がその取消しを求める訴訟(乙事件)を提起しました。裁判所は、後者については取り消すと判断しました。
 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だ けではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願 当時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者の利益が不 当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 原告は,本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載のうち,「急激な降下」, 「急激な降下部分の外挿線」及び「ほぼ直線的な変化を示す部分の外挿線」との各 記載が不明確であると主張するから,以下検討する。
(2) 「急激な降下」,「急激な降下部分の外挿線」との記載
ア 請求項1及び2の記載のうち「急激な降下」部分とは,動的貯蔵弾性率の温 度による変化を示す図において,左から右に向かって降下の傾きの最も大きい部分 を意味することは明らかである(【図2】)。また,傾きの最も大きい部分の傾き の程度は一義的に定まるから,「急激な降下部分の外挿線」の引き方も明確に定ま るものである。
イ これに対し,原告は,動的貯蔵弾性率の傾きが具体的にどのような値以上に なったときに「急激な降下」と判断すればよいか分からない旨主張する。しかし, 「急激な降下」とは,相対的に定まるものであって,傾きの程度の絶対値をもって 特定されるものではないから,同主張は失当である。
(3) 「ほぼ直線的な変化を示す部分の外挿線」との記載
ア ASTM規格(乙31)は,世界最大規模の標準化団体である米国試験材料 協会が策定・発行する規格であるところ,ASTM規格においては,温度上昇に伴 って変化する物性値のグラフから,ポリマーのガラス転移温度を算出するに当たり, ほぼ直線的に変化する部分を特段定義しないまま,同部分の外挿線を引いている。 また,JIS規格(乙13)は,温度上昇に伴って変化する物性値のグラフから, プラスチックのガラス転移温度を算出するに当たり,「狭い温度領域では直線とみ なせる場合もある」「ベースライン」を延長した直線を,外挿線としている。 そうすると,ポリマーやプラスチックのガラス転移温度の算出に当たり,温度上 昇に伴って変化する物性値のグラフから,特定の温度範囲における傾きの変化の条 件を規定せずに,ほぼ直線的な変化を示す部分を把握することは,技術常識であっ たというべきである。 そして,ポリマー,プラスチック及びゴムは,いずれも高分子に関連するもので あるから,ゴム組成物の耐熱性に関する技術分野における当業者は,その主成分で ある高分子に関する上記技術常識を当然有している。 したがって,ゴム組成物の耐熱性に関する技術分野における当業者は,上記技術 常識をもとに,昇温条件で測定したときの動的貯蔵弾性率の温度による変化を示す 図において,特定の温度範囲における傾きの変化の条件が規定されていなくても, 「ほぼ直線的な変化を示す部分」を把握した上で,同部分の外挿線を引くことがで きる。
・・・
このように,外挿線Aと外挿線Bの交点温度として特定された170℃という温 度は,補強用ゴム組成物の180℃から200℃までの動的貯蔵弾性率の変動に着 目したことから導かれたものであって,かかる交点温度は,その引き方によっても 1℃の差が生ずるにとどまる。そうすると,外挿線Aと外挿線Bの交点温度によっ て,ゴム組成物の構成を特定するという特許請求の範囲の記載は,第三者の利益が\n不当に害されるほどに不明確なものとはいえない。
(4) 小括
したがって,本件発明1及び2に係る特許請求の範囲の記載のうち,「急激な降 下」,「急激な降下部分の外挿線」及び「ほぼ直線的な変化を示す部分の外挿線」 との各記載は明確であって,本件特許の特許請求の範囲請求項1及び2の記載が明 確性要件に違反するということはできない。請求項3及び4の各記載も同様である から,明確性要件に違反するということはできない。 よって,取消事由1は理由がある。

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平成28(ネ)10047  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年10月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 少し前の事件ですが、漏れていたのでアップします。特許侵害事件において、無効理由無かつ技術的範囲に属するとした1審判断を維持しました。同一特許に係る審決取消請求事件の判決の理由中の判断は,侵害訴訟における技術的範囲の確定に対して拘束力を持たないとも言及しました。
 ところで,特許発明の技術的範囲の確定の場面におけるクレーム解釈と,当該特 許の新規性,進歩性等を判断する前提としての発明の要旨認定の場面におけるクレ ーム解釈とは整合するのが望ましいところ,確かに,本件特許2に係る審決取消請 求事件の判決(甲12)には,控訴人が指摘するとおり,「本件特許発明2は,ケ ーブルコネクタの回転のみによって,すなわち,ケーブルコネクタとレセプタクル コネクタ間のスライドなどによる相対位置の変化なしに,ロック突部の最後方位置 が突出部に対して位置変化を起こす構成に限定されていると解される。」旨の記載\nがある(39頁)。しかし,上記判決は,主引用例(本件における乙3)の嵌合過 程について,「…肩部56で形成される溝部49の底面に回転中心突起53が当た り,ここで停止する状態となる。…この状態で相手コネクタ33を回転させるので はなく,回転中心突起53を肩部56に沿って動かすことで,相手コネクタ33を コネクタ31に対してコネクタ突合方向のケーブル44側にずらした状態にして, 相手コネクタ33をコネクタ突合方向に直交する溝部方向に動かすことができない ようにし,その後,回転中心突起53を中心に相手コネクタ33を回転させている」 (36〜37頁)との認定を前提に,本件特許発明2と乙3発明とを対比するに当 たり,乙3発明には,「回転によって,回転中心突起53の最後方位置が回転前に 比較して後方に位置するという技術思想が記載されているとはいえない」,「回転 中心突起53の上方に肩部56の上面が位置するように,相手コネクタ33が傾斜 している状態で肩部56の前側から後側(ケーブル側)へ回転中心突起53を移動 させているものであって,相手コネクタ33の回転により回転中心突起56の最後 方位置が後方(ケーブル側)へ移動するものではない」(38頁)として,乙3発 明は,「コネクタ嵌合過程にて上記ケーブルコネクタの前端がもち上がって該ケー ブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるとき,上記ロック突部の突部後縁の最後方位 置が,上記ケーブルコネクタがコネクタ嵌合終了姿勢にあるときと比較して前方に 位置するものではないという点において,本件特許発明2と相違する。」旨認定し ている(38頁)。上記のように,乙3発明においては,ロック突部の突部後縁の 最後方位置の変化に,ケーブルコネクタの上向き傾斜姿勢からコネクタ嵌合終了姿 勢への回転を伴う姿勢の変化が関係していないこと(「回転によって,回転中心突 起53の最後方位置が回転前に比較して後方に位置するという技術思想が記載され ているとはいえない」こと)に照らせば,本件特許発明2と乙3発明とが相違する ことを認定するについては,本件特許発明2におけるロック突部の突部後縁の最後 方位置の変化が,ケーブルコネクタの上向き傾斜姿勢からコネクタ嵌合終了姿勢へ の回転を伴う姿勢の変化によって生じるものであれば足り,「回転のみによって」 生じること,言い換えれば,ケーブルコネクタを上向き傾斜姿勢からコネクタ嵌合 終了姿勢へと変化させる際に,姿勢方向を回転させることに伴って生じる「ケーブ ルコネクタとレセプタクルコネクタ間のスライドなどによる相対位置の変位」が一 切あってはならないことを要するものではないというべきである。なお,同一特許 に係る審決取消請求事件の判決の理由中の判断は,侵害訴訟における技術的範囲の 確定に対して拘束力を持つものではない。 したがって,控訴人の上記限定解釈に係る主張は,理由がない。
(イ) 控訴人は,被控訴人が,特許の無効を回避するために,自ら,「本件特許 発明2は,「ロック突部の突部後縁の最後方位置」が,「ケーブルコネクタが上向 き傾斜姿勢にあるとき」はロック溝部の溝部後縁から溝内方に突出する突出部の最 前方位置よりも前方に位置し,また,「ケーブルコネクタがコネクタ嵌合終了姿勢 にあるとき」は上記突出部の最前方位置よりも後方に位置することを規定している」 旨構成要件e及びfを限定解釈すべきことを主張しているのであるから,その技術\n的範囲の解釈に際しては,被控訴人の上記主張が前提にされるべきである旨主張す る。 しかし,特許発明の技術的範囲を解釈するについて,相手方の無効主張に対する 反論として述べた当事者の主張は,必ずしも裁判所の判断を拘束するものではない。 そして,本件特許発明2に係る特許請求の範囲には,控訴人が主張するような限 定は規定されていないし,前記(1)イ記載の本件特許発明2の課題及び作用効果は, ロック突部の突部後縁の最後方位置が,ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にある とき,すなわち,コネクタ嵌合終了姿勢に至る前は,常にロック溝部の溝部後縁か ら溝内方に突出する突出部の最前方位置よりも前方に位置しているのでなければ奏 し得ないというものではない。また,そもそも,本件明細書2には,本件特許発明 2に係る実施例の嵌合動作について,「ロック突部21’の下部傾斜部21’B− 2が,ロック溝部57’の後縁突出部59’Bの位置まで達すると,該後縁突出部 59’Bに対して下部傾斜部21’B−2が該後縁突出部59’Bの下方に向けて 滑動しながらケーブルコネクタ10はその前端が時計方向に回転して水平姿勢とな って嵌合終了の姿勢に至る。」(【0053】)と記載されているように,ケーブ ルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるときであっても,嵌合終了姿勢(水平姿勢)に 近づくと,ロック突部の突部後縁の最後方位置が,ロック溝部の溝部後縁から溝内 方に突出する突出部の最前方位置よりも後方に位置することが開示されているとい えるから,構成要件eを,「ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるときは,ロ\nック突部の突部後縁の最後方位置が,ロック溝部の溝部後縁から溝内方に突出する 突出部の最前方位置よりも前方に位置する」ことを規定したものと解釈することは, 誤りである。
・・・・・
 ア 控訴人の明確性要件違反並びに新規性及び進歩性欠如に係る主張は,控訴人 が請求した無効審判請求(無効2014−800015)と同一の事実及び同一の 証拠に基づくものであるところ,上記無効審判請求については,請求不成立審決が, 既に確定した(甲8,12)。したがって,控訴人において,本件特許2が,上記 明確性要件違反並びに新規性及び進歩性の欠如を理由として,特許無効審判により 無効にされるべきものと主張することは,紛争の蒸し返しに当たり,訴訟上の信義 則によって,許されない(同法167条,104条の3第1項)。
イ なお,控訴人は,本件特許発明2が「ケーブルコネクタの回転のみによって, すなわち,ケーブルコネクタとレセプタクルコネクタ間のスライドなどによる相対 位置の変化なしに,ロック突部の最後方位置が突出部に対して位置変化を起こす構\n成に限定されている」ものと解釈されないとすれば,本件特許発明2は進歩性を欠 く旨主張する。 しかし,本件特許発明2の要旨を上記のように限定的に認定しない場合であって も,乙3発明における嵌合動作は,相手コネクタ33の回転中心突起53をコネク タ31の溝部49に肩部56で停止する深さまで挿入し,次いで,回転中心突起5 3を肩部56に沿って動かし,回転中心突起53が溝部49に形成された肩部56 のケーブル44側に当接している状態にして,その後,回転中心突起53を中心に 相手コネクタ33を回転させ,嵌合終了姿勢に至るというものであり,本件特許発 明2と乙3発明とは,本件特許発明2では,「コネクタ嵌合過程にて上記ケーブル コネクタの前端がもち上がって該ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるとき, 上記ロック突部の突部後縁の最後方位置が,上記ケーブルコネクタがコネクタ嵌合 終了姿勢にあるときと比較して前方に位置し」ているのに対し,乙3発明では,コ ネクタ嵌合過程にて相手コネクタ33の前端がもち上がって該相手コネクタ33が 上向き傾斜姿勢にあるときのうち,少なくとも,コネクタ突合方向のケーブル44 側の端までずらした状態で回転中心突起53を中心に相手コネクタ33を回転させ るとき,回転中心突起の突部後縁の最後方位置が,相手コネクタ33がコネクタ嵌 合終了姿勢にあるときと同一の地点に位置している点,すなわち構成要件eの点で\n相違する。そして,乙3には,乙3発明の上記嵌合動作に関し,回転によって,回 転中心突起53の最後方位置が回転前に比較して後方に位置するという技術的思想 が記載されているとはいえず(甲12・38頁),また,乙3発明と乙7ないし1 0に記載された各コネクタとでは,その構造や形状が大きく異なるから,乙3発明\nにおいて,上記各コネクタの嵌合過程における突起部と突出部との位置関係を適用 しようとする動機付けがあるということはできないし,仮に適用を試みたとしても, 乙3発明において,上記相違点に係る本件特許発明2の構成を備えることが容易に\n想到できたとは認められない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成26(ワ)14006

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平成28(行ケ)10147  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年6月8日  知的財産高等裁判所

 伊藤園のトマトジュース製造方法に関する特許に対して、カゴメが無効と争いました。審決は、全ての請求項について無効理由なしと判断しましたが、知財高裁は全ての請求項について、サポート要件違反の無効理由ありとして、審決を取り消しました。
 前記(3)で検討したとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,濃 厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制された, 新規なトマト含有飲料及びその製造方法,並びに,トマト含有飲料の酸味抑制方法 を提供するための手段として,本件発明1,8及び11に記載された糖度,糖酸比 及びグルタミン酸等含有量の数値範囲,すなわち,糖度について「9.4〜10. 0」,糖酸比について「19.0〜30.0」,及びグルタミン酸等含有量について 「0.36〜0.42重量%」とすることを採用したことが記載されている。 そして,本件明細書の発明の詳細な説明に開示された具体例というべき実施例1 〜3,比較例1及び2並びに参考例1〜10(【0088】〜【0090】,【表1】)には,各実施例,比較例及び参考例のトマト含有飲料のpH,Brix,酸度,糖\n酸比,酸度/総アミノ酸,粘度,総アミノ酸量,グルタミン酸量,アスパラギン酸 量,及びクエン酸量という成分及び物性の全て又は一部を測定したこと,及び該ト マト含有飲料の「甘み」,「酸味」及び「濃厚」という風味の評価試験をしたことが 記載されている。
(イ) 一般に,飲食品の風味には,甘味,酸味以外に,塩味,苦味,うま 味,辛味,渋味,こく,香り等,様々な要素が関与し,粘性(粘度)などの物理的 な感覚も風味に影響を及ぼすといえる(甲3,4,62)から,飲食品の風味は, 飲食品中における上記要素に影響を及ぼす様々な成分及び飲食品の物性によって左 右されることが本件出願日当時の技術常識であるといえる。また,トマト含有飲料 中には,様々な成分が含有されていることも本件出願日当時の技術常識であるとい える(甲25の193頁の表−5−196参照)から,本件明細書の発明の詳細な\n説明に記載された風味の評価試験で測定された成分及び物性以外の成分及び物性も, 本件発明のトマト含有飲料の風味に影響を及ぼすと当業者は考えるのが通常という ことができる。したがって,「甘み」,「酸味」及び「濃厚」という風味の評価試験を するに当たり,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量を変化させて,これら三つ の要素の数値範囲と風味との関連を測定するに当たっては,少なくとも,1)「甘み」, 「酸味」及び「濃厚」の風味に見るべき影響を与えるのが,これら三つの要素のみ である場合や,影響を与える要素はあるが,その条件をそろえる必要がない場合に は,そのことを技術的に説明した上で上記三要素を変化させて風味評価試験をする か,2)「甘み」,「酸味」及び「濃厚」の風味に見るべき影響を与える要素は上記三 つ以外にも存在し,その条件をそろえる必要がないとはいえない場合には,当該他 の要素を一定にした上で上記三要素の含有量を変化させて風味評価試験をするとい う方法がとられるべきである。 前記(3)のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,糖度及び糖酸比を規定す ることにより,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みを有しつつも,トマト の酸味が抑制されたものになるが,この効果が奏される作用機構の詳細は未だ明ら\nかではなく,グルタミン酸等含有量を規定することにより,トマト含有飲料の旨味 (コク)を過度に損なうことなくトマトの酸味が抑制されて,トマト本来の甘味が より一層際立つ傾向となることが記載されているものの,「甘み」,「酸味」及び「濃 厚」の風味に見るべき影響を与えるのが,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量 のみであることは記載されていない。また,実施例に対して,比較例及び参考例が, 糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量以外の成分や物性の条件をそろえたものと して記載されておらず,それらの各種成分や各種物性が,「甘み」,「酸味」及び「濃 厚」の風味に見るべき影響を与えるものではないことや,影響を与えるがその条件 をそろえる必要がないことが記載されているわけでもない。そうすると,濃厚な味 わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制されたとの風味 を得るために,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量の範囲を特定すれば足り, 他の成分及び物性の特定は要しないことを,当業者が理解できるとはいえず,本件 明細書の発明の詳細な説明に記載された風味評価試験の結果から,直ちに,糖度, 糖酸比及びグルタミン酸等含有量について規定される範囲と,得られる効果という べき,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制 されたという風味との関係の技術的な意味を,当業者が理解できるとはいえない。
(ウ) また,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された風味の評価試験の 方法は,前記(3)のとおりであるところ,評価の基準となる0点である「感じない又 はどちらでもない」については,基準となるトマトジュースを示すことによって揃 えるとしても,「甘み」,「酸味」又は「濃厚」という風味を1点上げるにはどの程度 その風味が強くなればよいのかをパネラー間で共通にするなどの手順が踏まれたこ とや,各パネラーの個別の評点が記載されていない。したがって,少しの風味変化 で加点又は減点の幅を大きくとらえるパネラーや,大きな風味変化でも加点又は減 点の幅を小さくとらえるパネラーが存在する可能性が否定できず,各飲料の風味の\n評点を全パネラーの平均値でのみ示すことで当該風味を客観的に正確に評価したも のととらえることも困難である。また,「甘み」,「酸味」及び「濃厚」は異なる風味 であるから,各風味の変化と加点又は減点の幅を等しくとらえるためには何らかの 評価基準が示される必要があるものと考えられるところ,そのような手順が踏まれ たことも記載されていない。そうすると,「甘み」,「酸味」及び「濃厚」の各風味が 本件発明の課題を解決するために奏功する程度を等しくとらえて,各風味について の全パネラーの評点の平均を単純に足し合わせて総合評価する,前記(3)の風味を評 価する際の方法が合理的であったと当業者が推認することもできないといえる。 以上述べたところからすると,この風味の評価試験からでは,実施例1〜3のト マト含有飲料が,実際に,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつ トマトの酸味が抑制されたという風味が得られたことを当業者が理解できるとはい えない。

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平成28(行ケ)10205  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年6月14日  知的財産高等裁判所

 実施可能要件を満たしていないとして、異議理由ありとした審決が維持されました。
 明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者がその実施をすることができる程度 に明確かつ十分に記載したものであることを要する(特許法36条4項1号)。本件\n発明は,「加工飲食品」という物の発明であるところ,物の発明における発明の「実 施」とは,その物の生産,使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号),物 の発明について実施をすることができるとは,その物を生産することができ,かつ, その物を使用することができることであると解される。 したがって,本件において,当業者が,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及 び出願当時の技術常識に基づいて,本件発明に係る加工飲食品を生産し,使用する ことができるのであれば,特許法36条4項1号に規定する要件を満たすというこ とができるところ,本件発明に係る加工飲食品は,不溶性固形分の割合が本件条件 (6.5メッシュの篩を通過し,かつ16メッシュの篩を通過しない前記不溶性固 形分の割合が10重量%以上であり,16メッシュの篩を通過し,かつ35メッシ ュの篩を通過しない前記不溶性固形分の割合が5重量%以上25重量%以下である) を満たす加工飲食品であるから,当業者が,本件明細書の発明の詳細な説明の記載 及び出願当時の技術常識に基づいて,このような加工飲食品を生産することができ るか否かが問題となる。
前記認定のとおり,本件明細書には,不溶性固形分の割合が本件条件を満たすか どうかを判断する際の測定について,「日本農林規格のえのきたけ缶詰又はえのきた け瓶詰の固形分の測定方法に準じて,サンプル100グラムを水200グラムで希 釈し,16メッシュの篩等の各メッシュサイズの篩に均等に広げて,10分間放置 後の各篩上の残分重量」を測定すること(段落【0036】。以下「本件測定方法」 ということがある。)が記載されている。さらに,「篩上の残存物は,基本的には不 溶性固形分であるが,サンプルを上述のように水で3倍希釈してもなお粘度を有し ている場合は,たとえメッシュ目開きよりも細かい不溶性固形分であっても篩上に 残存する場合があり,その場合は適宜水洗しメッシュ目開きに相当する大きさの不 溶性固形分を正しく測定する必要がある。」(段落【0038】)とも記載されている。
本件明細書の上記記載によれば,本件明細書には,測定対象のサンプルが水で3 倍希釈しても「なお粘度を有している場合」であって,メッシュ目開きよりも細か い不溶性固形分が篩上に塊となって残存している場合には,適宜,水洗することに よって塊をほぐし,メッシュ目開きに相当する大きさの不溶性固形分の重量,すな わち「日本農林規格のえのきたけ缶詰又はえのきたけ瓶詰の固形分の測定方法に準 じて,サンプル100グラムを水200グラムで希釈し,各メッシュサイズの篩に 均等に広げて,10分間放置後の篩上の残分重量」(段落【0036】)に相当する 重量を正しく測定する必要があることが開示されているものと解される。 そして,本件明細書の「より一層,粗ごしした野菜感,果実感,または濃厚な食 感を呈する。」(段落【0009】),「加工飲食品は,ペースト状の食品,又は飲料の形態を有する。」(段落【0030】)との記載によれば,本件発明に係る加工飲食品 は一定程度の粘度を有するものと認められるから,段落【0036】に記載された 本件測定方法によると,実際に,各篩のメッシュ目開きよりも細かい不溶性固形分 により形成される塊が篩上に残存する場合も想定されるところである。 しかしながら,メッシュ目開きよりも細かい不溶性固形分が篩上に塊となって残 存している場合に追加的に水洗をすると(段落【0038】),本件明細書の段落【0 036】に記載された本件測定方法(測定対象サンプル100グラムを水200グ ラムで希釈し,各メッシュサイズの篩に均等に広げて,10分間放置するという測 定手順のもの)とは全く異なる手順が追加されることになるのであるから,このよ うな水洗を追加的に行った場合の測定結果は,本件測定方法による測定結果と有意 に異なるものになることは容易に推認される。このように,本件明細書に記載され た各測定方法によって測定結果が異なることなどに照らすと,少なくとも,水洗を 要する「なお粘度を有する場合」であって,「メッシュ目開きよりも細かい不溶性固 形分が篩上に塊となって残存している場合」であるか否か,すなわち,仮に,篩上 に何らかの固形分が残存する場合に,その固形物にメッシュ目開きよりも細かい不 溶性固形分が含まれているのか,メッシュ目開きよりも大きな不溶性固形分である のかについて,本件明細書の記載及び本件特許の出願時の技術常識に基づいて判別 することができる必要があるといえる(本件条件を満たす本件発明に係る加工飲食 品を生産することができるといえるためには,各篩のメッシュ目開きよりも細かい 不溶性固形分により形成される塊が篩上に残存する場合であるか否かを判別するこ とができることを要する。)。 しかしながら,本件測定方法によって不溶性固形分を測定した際に,篩上に残存 しているものについて,メッシュ目開きよりも細かい不溶性固形分が含まれている のか否かを判別する方法は,本件明細書には開示されておらず,また,当業者であ っても,本件明細書の記載及び本件特許の出願時の技術常識に照らし,特定の方法 によって判別することが理解できるともいえない(篩上に残存しているものが,メ ッシュ目開きよりも細かい不溶性固形分を含むものであるのか否かについて,一般 的な判別方法があるわけではなく,証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば,測定 に使用される篩は,目開きが16メッシュ(1.00mm)又は35メッシュ(0. 425mm)のものと認められるから,篩上に残った微小な不溶性固形分について, 単に目視しただけでは明らかではないといわざるを得ない。)。 そうすると,当業者であっても,本件明細書の記載及び本件特許の出願時の技術 常識に基づいて,その後の水洗の要否を判断することができないことになる。 したがって,本件発明の態様として想定される,「測定したいサンプル100グラ ムを水200グラムで希釈」しても「なお粘度を有している場合」(段落【0038】)も含めて,当業者が,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願時 の技術常識に基づいて,本件条件を満たす本件発明に係る加工飲食品を生産するこ とができると認めることはできない。 以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件発明を当業者が実施でき るように明確かつ十分に記載されているものと認めることはできない。\n

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平成28(行ケ)10059  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年4月12日  知的財産高等裁判所(3部)

 原審は、一部の請求項のみ無効と判断しましたが、知財高裁は無効理由なしとした請求項についても無効(明確性・サポート要件違反)と判断しました。
このような一部認容・一部非認容の場合に、双方が不服がある場合、実際の提訴はどうやるのでしょうか?、第1、第2事件みたいにはなってないし。。。
 以上の検討結果を併せ考えれば,文言解釈のみによるのでは,構成要件\nC−2の「ファンの径方向外側」なる記載は多義的に解釈し得るもので あるというべきである。
(2) 特許発明1の構成要件C−2の技術的意義に基づく解釈
ア 上記(1)のとおり,文言解釈のみによるのでは,構成要件C−2の「フ\nァンの径方向外側」なる記載は多義的に解釈し得るものであるとすれば, 当該構成要件の技術的意義に基づきその解釈を検討すべきこととなる。
イ 本件特許発明は,小型軽量化,高効率化を目的としてブラシレスモータ を使用した携帯用電気切断機において,その回路基板の配置スペースの 確保及び冷却が問題となっていること,また,操作性を妨げないハウジ ング形状である必要があることを背景に,モータを収容するハウジング の形状を大きく変更せず,かつ,操作性を損なわずに,モータ駆動用の 回路基板の配置スペースを確保するとともにその冷却を良好に行うこと を目的とするものである(前記1(3)イ,ウ)。 このような目的を達成するために,本件特許発明は,本件実施例にお いて,ハンドルを把持する作業者による作業の妨げとならないように, 回路基板収容部をハンドルとベースとの間の高さ位置に設け,かつ,フ ァンの回転によりファンガイド内側が負圧になることを利用して回路基 板冷却用窓からファンガイド内側に至る冷却風を発生させるために,回 路基板収容部をファンの径方向外側に配置している(前記1(3)エ,オ)。 このうち前者が小型化の目的を達成するための手段,後者が冷却の目的 を達成するための手段として把握される。
ウ(ア) しかし,これらの手段のみによって実際に上記各目的が達成される か否かは,以下のとおり,本件明細書等の記載からは必ずしも明らかで ない。
(イ) 小型化の目的に関しては,本件明細書には従来の携帯用電気丸鋸の 具体的な構造についての言及がないため,本件実施例の構\造との比較 において目的達成の有無ないし程度を評価することはできない。本件 実施例の構造それ自体から,これらが小型化の目的を達成しているか\n否かを客観的に評価することもできない。 また,仮に本件実施例の構造が小型化の目的を達成しているとしても,\n回路基板収容部をハンドルとベースとの間の高さ位置に設けさえすれば 自ずと目的が達成されるものではなく,前提として当該スペースを有効 活用し得るような合理的な構造を有することが必要と思われるが,本件\n明細書にはこの点に関する説明はない。
(ウ) 冷却の目的に関しては,上記手段により当該目的を達成する上で, 回路基板が冷却風の通路に配置されることは必須と思われるけれども, その具体的方法として回路基板をファンの径方向外側に配置すること は,ファンの径方向外側が冷却風の通路となるような構造を一体的に\n伴わない限り,回路基板の冷却とは直接関係しない。このことは,回 路基板がファンの径方向外側である真横にあったとしても,隔壁その 他により回路基板とファンとの間の冷却風の移動が遮断されているよ うな場合を考えれば明らかである。 ここで,本件実施例においては,回路基板収容部の4側面のうち,そ の2側面に回路基板冷却用風窓が多数形成され,これらとは別の側面に 風通路となる間隔が1つ設けられ,それら以外の側面は隔壁により囲ま れる構造となっている。このうち,上記間隔は,ファンガイドの背面と\nハウジングの外壁部との間に設けられ,これによってモータ収容部と回 路基板収容部とが連通している。このような構造とともに,モータ収容\n部とファンの位置とがファンガイドによって連通する構造が採用されて\nいるからこそ,回路基板収容部内に設置された回路基板がファン風の通 路に位置して冷却の目的が達成されることとなっている。このような回 路基板収容部からファンに至る連通構造が,回路基板の一部が(a)領域 に位置することと無関係に実現し得ることは明らかといってよい。
(エ) これらの点を踏まえると,本件特許発明の目的を達成するための手 段は,本件実施例においてすら合理的に説明されているとはいえない。 そうすると,本件実施例を上位概念化したものである本件特許発明に おいてはなおさら,その目的を達成し得るとは認められないことにな る。したがって,構成要件C−2が本件特許発明の目的を達成するた\nめの構成であるとして,その技術的意義から同構\成要件の示す意味内 容を把握することはできない。 そもそも,小型化の目的に関し,本件実施例における小型化の目的達 成手段である「回路基板収容部をハンドルとベースとの間の高さ位置に 設けること」は,特許発明3及び4並びにその従属発明である特許発明 5にしか具体的には表れておらず,また,構\成要件C−2とは無関係で ある。冷却の目的に関しても,上記(ウ)を踏まえると,その目的を達成 する構成としては,端的に構\成要件C−3「前記回路基板の少なくとも 一部は,前記ファン風の通路内に配置されており,」が設けられている 以上,構成要件C−2は無関係と見られる。
(3) 以上によれば,構成要件C−2の「ファンの径方向外側」は,特許請求\nの範囲の文言によれば(a)領域又は(b)領域のいずれとも解釈し得るものであ り,また,その技術的意義に鑑みてもいずれの解釈が正しいのか判断し得な いものということができる。 したがって,構成要件C−2は不明確というべきである。そうである以\n上,この点に関する本件審決の認定・判断には誤りがあり,取消事由2には 理由がある。
3 取消事由1(記載要件(特許発明6〜8及び10に関するサポート要件)に関する認定,判断の誤り(無効理由1の2))について
更に進んで,取消事由1についても検討する。
(1) 特許発明6は,「モータの側方位置において,前記モータの回転軸と平 行に延びるように配置されている」回路基板(構成要件I)のみを有したも\nのであり,当該回路基板は,さらに,「前記回路基板の少なくとも一部は, 前記ファンの回転軸に直交する方向を径方向としたとき,前記ファンの径方 向外側に配置され」る(構成要件C−2)ものである。\n本件明細書の発明の詳細な説明において,「モータの側方位置」に配置 された回路基板(縦置き基板)としては,第2の実施の形態の第2の回路基 板60B及び第3の実施の形態の第1の回路基板60C(いずれも,モータ 収容部2aの内壁面とモータ1の固定子1B間の隙間に配置されたもの)が 記載されているが(前記1(2)カ),縦置き基板のみを有する発明は明示的 に記載されていない。そこで,縦置き基板のみを有する構成が,本件特許発\n明の課題(前記2(2)イ)を解決できると当業者が認識し得る程度に,本件 明細書の発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討する。
(2) 第2の実施の形態について
ア 第2の実施の形態の縦置き基板(第2の回路基板60B)による効果は, 以下の3点に集約される(前記1(3)キ)。
1) 制御回路30を別基板(縦置き基板)としたことで,駆動回路20 及び整流平滑回路40を搭載した第1の回路基板60Aの面積を小さ くし,ハウジング2のソーカバー5側への突出量を少なくでき,操作\n性の面で有利となる。
2)制御回路30を別基板(縦置き基板)としたことで,駆動回路20 や整流平滑回路40の発熱部品の影響を受けないようにできる。
3) 制御回路30を搭載した第2の回路基板60B(縦置き基板)をセ ンサ基板51の近くに配置することで,回転位置検出素子52と制御 回路30との電気接続を短縮して,ノイズ等の影響を受けにくい構造\nにできる。
イ(ア) このうち,前記1)の効果は,ハウジング2に設けられた凸部69A (ソーカバー5側へ突出)が小さくなることをいうものである。しかし,\nこのとき,一方で縦置き基板を収容するためにモータ収容部2aが大き くならざるを得ないことを考えると,前記1)の効果は,一概に小型化に 寄与するといってよいか定かではない。また,凸部69A及びモータ収 容部2aの形状のこのような変化が,それぞれ携帯用電気切断機の操作 性に及ぼす影響については,本件明細書の発明の詳細な説明に記載され ていない。 したがって,第2の実施の形態においては,縦置き基板を設けること により小型化の目的を達成できるとは必ずしも認識し得ないし,まして, 縦置き基板のみとした場合に,携帯用電気切断機の操作性の面で有利で あることないし操作性が損なわれないことを認識することもできない。
(イ) 前記2)の効果は,冷却の目的に関わるものである。この目的の観点 から見ると,制御回路30を別基板である縦置き基板とすることで, 前記2)の効果を期待できるとしても,ブラシレスモータの固定子が熱 源となることは技術常識であるところ,そのモータの側方に縦置き基 板を設置することにより,かえってモータの固定子の発熱の影響を受 けやすくなることも予想される。そうすると,制御回路30を縦置き\n基板としたとしても,必ずしも冷却の目的を達成できるとは認識し得 ない。まして,駆動回路と制御回路の両者を搭載した縦置き基板のみ とした場合に,基板の冷却を効果的に実現し得ると認識することもで きない。
(ウ) 前記3)の効果は,小型化の目的とも冷却の目的とも独立したもので あり,本件特許発明の課題解決に寄与しないことは明らかである。
・・・
(4) そうすると,特許発明6〜8及び10は,本件明細書の発明の詳細な説 明に記載されたものではなく,また,特許発明6〜8及び10が,その課題 を解決できると当業者が認識し得る程度に,本件明細書の発明の詳細な説明 に記載されているともいえない(なお,この点は,本件特許発明において横 置き基板が必須であるか否かとは関わりない。)。 したがって,特許発明6〜8及び10は,いわゆるサポート要件を満た しているとはいえない。

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平成28(行ケ)10190  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年5月30日  知的財産高等裁判所(4部)

 特36条、29条2項の無効理由はそれぞれ無効理由無しと判断されました。なお、「明確性を満たしているかについても、クレームだけでなく明細書を考慮する」との判断基準を示しています。かかる判断基準は、平成21(行ケ)10434(3部)、平成25(行ケ)10335(4部) でも言及されてます。
 (1) 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だ けではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願 当時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者の利益が不 当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 原告は,本件特許の特許請求の範囲請求項1の記載のうち,「当該分離して使用 するもの(4)の上部,下部,左側部(右側部)の内側及び外側に該当する部分(5, 6)((7,8))」の各部分が明確ではない旨主張する。
(2)「内側及び外側に該当する部分」の明確性
ア 「内側及び外側」の範囲
(ア) 請求項1には,分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部(右側 部)の「内側及び外側」に該当する部分との記載がある。 請求項1の記載によれば,印刷物の中央面部(1)の所定の箇所に,所定の大き さを有する分離して使用するもの(4)が印刷されており,分離して使用するもの (4)は,周囲に切り込みが入っているものである。そして,請求項1には,「内 側及び外側」の範囲を直接特定する記載はない。 したがって,分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部(右側部)の「内 側及び外側」に該当する部分とは,印刷物の中央面部(1)における,分離して使 用するものの周囲に設けられた切り込みの「内側及び外側」に該当する部分と特定 され,その範囲は特定されていないものである。 (イ) なお,本件明細書の【0014】ないし【0017】の記載によれば,本 件発明1を実施する際には,一過性の粘着剤が塗布されている部分となる「内側及 び外側」の範囲について,分離して使用するものが欠落することなく,また左側面 部と右側面部を中央面部からはがして開いた場合には左側面部又は右側面部の一方 に分離して使用するものが貼着されるなどして,これを自動的に手にすることがで\nきる程度の範囲に限定されることになる。しかし,当該範囲は,中央面部(1), 左側面部(2),右側面部(3)及び分離して使用するもの(4)の形状や材質, 分離して使用するもの(4)の周囲の切り込みの程度,粘着剤の強度等に応じて, 適宜決定されるにすぎないから,特許を受けようとする発明において,「内側及び 外側」の範囲を特定していないからといって,それが明確性を欠くことにはならな い。
・・・
(4) 小括
以上によれば,本件特許の特許請求の範囲請求項1の記載のうち,「当該分離し て使用するもの(4)の上部,下部,左側部の内側及び外側に該当する部分(5, 6)」とは,印刷物の中央面部の所定の箇所に印刷された所定の大きさを有する, その外形は特定されない分離して使用するもの(4)の,上部,下部又は左側部の いずれかのうち,その周囲に設けられた切り込みの内側及び外側であって,その範 囲は具体的には特定されない部分に該当する部分であって,請求項1の記載のうち, 「当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,右側部の内側及び外側に該当す る部分(7,8)」も同様であって,これらの記載が,第三者の利益が不当に害さ れるほどに不明確であるということはできない。 したがって,「当該分離して使用するもの(4)の上部,下部,左側部(右側部) の内側及び外側に該当する部分(5,6)((7,8))」との各記載は明確であ るから,本件特許の特許請求の範囲請求項1の記載が明確性要件に違反するという ことはできない。請求項2及び請求項3の各記載も同様であるから,明確性要件に 違反するということはできない。 よって,取消事由1は理由がない。
(1) 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲 の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が, 発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当 該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,発明の詳 細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課 題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと 解される。 そして,原告は,一過性の粘着剤が塗布される位置について,分離して使用する ものの上部,下部,左(右)側部の内側及び外側に該当する部分のいずれかでよい とすると,サポート要件に違反すると主張する。
(2) 前記2(4)のとおり,特許請求の範囲請求項1に記載された発明において,左 側面部(2)の裏面の「一過性の粘着剤が塗布されている」部分は,分離して使用 するものの,上部,下部又は左側部のいずれかのうち,その周囲に設けられた切り 込みの内側及び外側であって,その範囲は特定されない部分に該当する部分であっ て,右側面部(3)の裏面についても同様である。 そして,前記1(2)イのとおり,本件発明1は,分離して使用するものについて, その周囲に切り込みが入っているにもかかわらず,広告等の印刷物に付いていて紛 失させることなく,しかも,広告等の印刷物より切り取る手間をかけずに利用する ことができる印刷物を提供することを課題とするものである。そして,前記2(2)イ のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明の記載(【0014】〜【0017】) により,当業者は,一過性の粘着剤の塗布が,左側面部2の裏側のうち,分離して 使用するものの上部,下部,左側部の少なくともいずれかに該当する部分であって, 分離して使用するものの内側及び外側のいずれにも該当する部分にされれば,本件 発明1の上記課題を解決できると認識できるものといえ,右側面部3についても同 様である。 そうすると,一過性の粘着剤が塗布される位置において,本件発明1は,発明の 詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明 1の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。

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平成28(ワ)20818  特許権侵害差止請求事件  特許権 平成29年4月19日  東京地方裁判所(29部)

 差止請求が認められました。サポート要件違反もなしと判断されました。
 被告らは,仮に,構成要件1Gの「切り残し突起(16)」が,本件明細書等の【図8】(b)に示す形態に限られず,例えば下図(平成23年6月27日付\nけ意見書〔乙19〕の参考図1)の符号16のような形態のものまでも含むという のであれば,かかる形態は,発明の詳細な説明に記載されたものでも示唆されたも のでもないから,本件発明1(並びに本件発明1の構成要件を発明特定事項として引用する本件発明2及び同3)についての特許は,発明の詳細な説明に記載されて\nいない発明についてされたものとして,サポート要件違反の無効理由があると主張 する。
イ 特許請求の範囲の記載が,発明の詳細な説明に記載したもの(特許法36条 6項1号)といえるか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載と を対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発 明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識 できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時 の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか 否かを検討して判断すべきものである(知財高裁平成17年(行ケ)第10042 号同年11月11日特別部判決参照)。
ウ 本件特許の特許請求の範囲の請求項1には,前記前提事実(2)のとおり,連続 貝係止具において,「隣接する基材(1)同士はロープ止め突起(3)の外側が可 撓性連結材(13)で連結されず,ロープ止め突起(3)の内側が2本の可撓性連 結材(13)と一体に樹脂成型されて連結され,可撓性連結材(13)はロープ止 め突起(3)よりも細く且つロール状に巻き取り可能な可撓性を備えた細紐状であり,前記2本の可撓性連結材(13)による連結箇所は,2本のロープ止め突起(3)\nの夫々から内側に離れた箇所であり且つ前記2本のロープ止め突起(3)間の中心 よりも夫々のロープ止め突起(3)寄りの箇所として,2本の可撓性連結材(13) を切断すると,その切り残し突起(16)が2本のロープ止め突起(3)の内側に 残るようにした」旨が記載されている。
エ 本件明細書等の発明の詳細な説明には,次の記載がある(末尾の【】は,段 落番号を示す。)。 「本発明の連続貝係止具は,隣接する貝係止具11の2本のロープ止め突起3間 が2本の可撓性連結材13で連結され,2本の可撓性連結材13は貝係止具11が 差し込まれる縦ロープCの直径よりも広い間隔で2本のロープ止め突起3寄り箇所 を連結するので,貝係止具11を一本ずつ切断するときに可撓性連結材13の一部 が図8(b)のように切り残し突起16となって基材1に残って基材1から突出し ても,図8(a)のように貝係止具11を縦ロープCへ差し込むときに切り残し突 起16が邪魔にならず,縦ロープCが2本のロープ止め突起3間におさまり安定す る。又,貝係止具11を手で持って貝へ差し込むときに手(指)が切り残し突起1 6に当たらないため手が損傷したり,薄い手袋を手に嵌めて前記差込作業をしても 手袋が破れたりしにくい。」【0008】 「(連続貝係止具の実施形態1)本発明の連続貝係止具は図8(a)のように前 記実施形態の貝係止具11を間隔をあけて数千〜数万本平行に配置し,上下に隣接 する貝係止具11の基材1間を丸紐状の可撓性連結材13で連結して樹脂成型して 図12(a)(b)のようにロール状に巻くことができるようにしたものである。 図8(a)の場合はハ字状の2本のロープ止め突起3の間を2本の可撓性連結材1 3で連結してあり,しかも,2本の可撓性連結材13をロープ止め突起3寄り箇所 に配置して,2本の可撓性連結材13の間隔を縦ロープCの直径よりも広くしてあ る。このようにすると貝係止具11を一本ずつ切断する場合に可撓性連結材13の 一部が切り残されて図8(b)のように基材1に切り残し突起16が発生しても, それが縦ロープCへの差込時に邪魔になることがない。また,一本ずつ切断された 貝係止具11を貝の孔に差し込むために手で持っても切り残し突起16の部分が手 に当たらないため手が怪我したり,手に嵌めた作業用手袋が破れたりしにくい。」 【0026】
オ 上記に認定したところによれば,本件明細書等の発明の詳細な説明には,2 本の可撓性連結材による連結箇所を,2本のロープ止め突起の間で,かつ,2本の ロープ止め突起寄りの箇所とする構成により,可撓性連結材を切断したときに切り残し突起が残ったとしても,貝係止具を縦ロープへ差し込むときに切り残し突起が\n邪魔にならず,また,貝係止具を手で持って貝へ差し込むときに手(指)が切り残 し突起に当たらないため手が損傷したり,薄い手袋を手に嵌めて前記差込作業をし ても手袋が破れたりしにくいとの作用効果を奏することが明確に記載されている。 そうすると,本件明細書等の発明の詳細な説明に接した当業者において,本件発 明1に係る特許請求の範囲に記載された構成,すなわち,2本の可撓性連結材(13)による連結箇所を,2本のロープ止め突起(3)のそれぞれから内側に離れた\n箇所であり,かつ,2本のロープ止め突起(3)間の中心よりもそれぞれのロープ 止め突起(3)寄りの箇所とする構成を採用することにより,可撓性連結材(13)を切断した際の切り残し突起(16)の高さにかかわらず,本件発明1に係る課題\nを解決できると認識できることは明らかであるから,本件発明1が,発明の詳細な 説明に記載されていないものということはできない。同様の理由により,本件発明 2及び同3が,発明の詳細な説明に記載されていないものということはできない。 したがって,被告らの主張する無効理由2は認められない。

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平成28(行ケ)10249  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年3月23日  知的財産高等裁判所

 永久機関について、発明の成立性違反、実施可能要件違反とした審決が維持されました。本人訴訟です。
 本願明細書を参酌すると,本願発明は,バッテリの電力をDCモータに給電し, 起電コイルから生じた電力の一部をバッテリに充電しながらDCモータに再給電し てDCモータを永久に稼働させ,起電コイルから生じた電力の残りを外部に永久に 供給するとしたものであり,入力した以上の電力(エネルギー)を出力するとした ものであって,明らかに永久機関とみられるものである(なお,本願発明に係る特 許請求の範囲には,トルク脈動レス発電機を「連続的」に稼働させ続ける,電力を 「連続的」に給電し続けるとの記載があるが,この「連続的」が「永久」を意味す ることは,前記1に認定の本願明細書の記載から明らかである。)。 したがって,原告が自認するとおり,本願発明は,エネルギー保存の法則という 物理法則に反するものであるから,自然法則を利用したものではなく,特許法29 条1項柱書の「発明」ではない。
(イ) 原告の主張について
原告は,本願発明がエネルギー保存の法則を破るものであると主張するが,DC モータの銅損若しくは鉄損等の損失又は起動コイルの銅損の損失,あるいは,ネオ ジム磁石と起電コイルとの間で作用する力などを全く考慮しておらず,その主張は 失当である。 また,原告は,DCモータに給電した直流電圧よりも高い交流電圧が起電コイル に発生していると主張し,本願明細書の図4の記載を援用するが,起電コイルから の出力電圧が上がったからといって,DCモータに供給される電力(消費電力)よ りも起電コイルから出力される電力が上回るということはできないから,その主張 は失当である。
(ウ) 小括
以上から,本願発明は,特許法29条1項柱書の「発明」に該当しないから,発 明該当性を欠くとした審決の判断には,誤りはない。
ウ 実施可能要件について
本願発明は,自然法則に反するものであるから,本願明細書の発明の詳細な説明 のいかなる記載をもってしても,当業者が本願発明を実施できないことは明らかで ある。 したがって,本願明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法36条4項1号の実 施可能要件を欠くとした審決の判断には,誤りはない。\n

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平成27(行ケ)10242  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年9月20日  知的財産高等裁判所

 審決、知財高裁ともにPBPクレームでないと判断しました。「細いテープ状部材に,粘着剤を塗着する」との記載は、経時的要素を表現したものではなく,状態を示すことにより構\造又は特性を特定しているにすぎないとい判断されました。
 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法 が記載されている場合(いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレ ームの場合)において,当該特許請求の範囲の記載が法36条6項2 号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるの は,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定するこ\nとが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在する\nときに限られると解される(最高裁判所第二小法廷平成27年6月5 日判決・民集69巻4号700頁)ところ,本件発明1に係る上記記 載は,これを形式的に見ると,確かに経時的な要素を記載するものと いうこともでき,プロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当する と見る余地もないではない。 しかし,プロダクト・バイ・プロセス・クレームが発明の明確性との 関係で問題とされるのは,物の発明についての特許に係る特許請求の範 囲にその物の製造方法が記載されているあらゆる場合に,その特許権の 効力が当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物\nに及ぶものとして特許発明の技術的範囲を確定するとするならば,その 製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表\しているのかが不明で あることなどから,第三者の利益が不当に害されることが生じかねない ことによるところ,特許請求の範囲の記載を形式的に見ると経時的であ ることから物の製造方法の記載があるといい得るとしても,当該製造方 法による物の構造又は特性等が明細書の記載及び技術常識を加えて判断\nすれば一義的に明らかである場合には,上記問題は生じないといってよ い。そうすると,このような場合は,法36条6項2号との関係で問題 とすべきプロダクト・バイ・プロセス・クレームと見る必要はないと思 われる。
(ウ) ここで,本件明細書の記載を参酌すると,本件明細書には「二重瞼 形成用テープは,図2に示すように,弾性的に伸縮するX方向に任意 長のシート状部材11の表裏前面に粘着剤12を塗着…し,これを多\n数の切断面Lに沿って細片状に切断することにより,極めて容易に製 造することができる。」(甲1の段落【0013】)という態様,す なわち,粘着剤を塗着した後,細いテープ状部材を形成する態様を含 めて「図1及び図2に示す実施例では,弾性的に伸縮する細いテープ 状部材の表裏両面に粘着剤2を塗着している」(同段落【0014】)\nと記載されている。また,本件発明1は,「テープ状部材の形成」と 「粘着剤の塗着」の先後関係に関わらず,テープ状部材に粘着剤が塗 着された状態のものであれば二重瞼を形成し得ること,すなわちその 作用効果を奏し得ることは明らかである。 そうすると,本件発明1の「…細いテープ状部材に,粘着剤を塗着す る」との記載は,細いテープ状部材に形成した後に粘着剤を塗着すると いう経時的要素を表現したものではなく,単にテープ状部材に粘着剤が\n塗着された状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎな\nいものと理解するのが相当であり,物の製造方法の記載には当たらない というべきである。

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平成27(行ケ)10184  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年9月29日  知的財産高等裁判所

 審決、知財高裁ともにPBPクレームでないと判断しました。 「ワックスの残存率が19%〜33%となるようこそぎ落とし又は溶融除去することにより前記燃焼芯を露出させる」が製法が記載されているかどうかでした。
 オ 原告らは,本件発明の「こそぎ落とし又は溶融除去することにより」との記 載は,物の製造方法が記載されているプロダクト・バイ・プロセス・クレームであ るから,明確性要件に適合しないなどと主張する。 しかし,証拠(甲25)及び弁論の全趣旨によれば,原告らの上記主張は,本件 の特許無効審判において無効理由として主張されたものではなく,当該審判の審理 判断の対象とはされていないものと認められるから,もとより本件訴訟の審理判断 の対象となるものではなく(最高裁判所昭和42年(行ツ)第28号同51年3月 10日大法廷判決・民集30巻2号79頁参照),失当というほかない。 なお,この点につき付言するに,PBP最高裁判決は,物の発明についての特許 に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合に,出願時におい て当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能\であるか又はおよそ 実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という。)が存在するとき\nに限り,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう明確性要件に適 合する旨判示するものである。このように,PBP最高裁判決が上記事情の主張立 証を要するとしたのは,同判決の判旨によれば,物の発明の特許に係る特許請求の 範囲にその物の製造方法が記載されている場合には,製造方法の記載が物のどのよ うな構造又は特性を表\しているのかが不明であり,特許請求の範囲等の記載を読む 者において,当該発明の内容を明確に理解することができないことによると解され る。そうすると,特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっ ても,当該製造方法の記載が物の構造又は特性を明確に表\しているときは,当該発 明の内容をもとより明確に理解することができるのであるから,このような特段の 事情がある場合には不可能・非実際的事情の主張立証を要しないと解するのが相当\nである。 これを本件についてみるに,本件発明の「該燃焼芯にワックスが被覆され,かつ 該燃焼芯の・・・先端部に被覆されたワックスを,該燃焼芯の先端部以外の部分に 被覆されたワックスの被覆量に対し,ワックスの残存率が19%〜33%となるよ うこそぎ落とし又は溶融除去することにより前記燃焼芯を露出させる・・・ことを 特徴とするローソク」という記載は,その物の製造に関し,経時的要素の記載があ\nるとはいえるものの,ローソクの燃焼芯の先端部の構\造につき,ワックスがこそぎ 落とされて又は溶融除去されてワックスの残存率が19%ないし33%となった状 態であることを示すものにすぎず,仮に上記記載が物の製造方法の記載であると解 したとしても,本件発明のローソクの構\造又は特性を明確に表しているといえるか\nら,このような特段の事情がある場合には,PBP最高裁判決にいう不可能・非実\n際的事情の主張立証を要しないというべきである。 したがって,原告らの主張は,PBP最高裁判決を正解しないものであり,採用 することができない。

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平成28(行ケ)10207  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年3月28日  知的財産高等裁判所(4部)

 明確性違反および進歩性無しについて、拒絶審決が維持されました。出願人は株式会社ドクター中松創研です。
【0009】には,前記(3)のとおり,本願発明が,耳より後ろのバッテ リー11の重さや電子回路12の重さW1と,前方のディスプレイ16やカメラ1 8の重量W2とを,「つる」の13を支点として,バランス(釣合い)をとるよう にし,天秤の原理でディスプレイ16やカメラ18が,装着者の顔が動いても水平 になるものであることが記載されているところ,このような,天秤の原理による支 点より前方側と後方側のモーメントのバランス(釣合い)は,一般に「スタティッ クバランス(静的な釣合い)」といわれるものであり,「スタティックバランス」 をとることが,必ずしも「ダイナミックバランス」(運動状態にある物体について, その運動状態によって発生している力をも考慮した釣合い)をもとることにはなら ないことは,技術常識に照らして明らかである。それにもかかわらず,本願明細書 には,【0009】を含め,耳より後ろのバッテリー11の重さや電子回路12の 重さW1と,前方のディスプレイ16やカメラ18の重量W2とを,「つる」の1 3を支点として,バランス(釣合い)をとるようにすることや天秤の原理と,「ダ イナミックバランス」(動的釣合い)がとれることとの関係については,何らの記 載もない。 したがって,本願明細書の記載によっても,耳より後ろの錘W1を「ダイナミッ クバランサー」とすることや本願発明が「ダイナミックバランスドスマホ,PC」 であることの技術的意義を明確に理解することはできず,第三者の利益が不当に害 されるといわざるを得ない。
・・・
原告は,引用発明は,メガネのモーメントWLを,耳の後方に固定するしゃ もじ状部4で吸収するものであるが,引用発明において,引用例2に記載された技 術事項を適用し,PC機能や通話機能\を付加すると,アイウェア側の重さWが重く なるので,モーメントWLは大きくなり,しゃもじ状部4はこのモーメントWLに 耐えることが必要となって,しゃもじ状部4を支える耳の負担を増やしてしまうと いう不具合が生じるから,引用発明において,引用例2に記載された技術事項を適 用し,相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは容易に想到できたこ\nとではない旨主張する。 しかし,引用例1には,レンズ1に液晶層を設けたときにその電源となる電池を しゃもじ状部4に埋め込んでもよいことが記載されているから,引用発明において, 引用例1の上記記載に従い,液晶層に情報を表示するために,アイウェア(メガ\nネ)という同一の分野に係る技術である引用例2に記載された技術事項を適用する ことには動機付けがある。 なお,本願発明は,耳の位置を支点として,その後方のバッテリー11や電子回 路12の重さW1と,その前方のディスプレイ16やカメラ18の重さW2とのバ ランスをとるものであるとの原告の主張によれば,本願発明も,引用発明のメガネ も,支点である耳より後の錘をW1として天秤機能をさせ,前方の重さをW2とし\nて顔が止まっても動いてもW1とW2のバランスをとり,鼻などの顔部に荷重がか からないものである点で共通するから,支点である耳に「耳かけダイナミックバラ ンスドスマホ,PC」,又は引用例2に記載された技術事項を適用したアイウェア 11の全荷重がかかるという点で異ならない。よって,この点においても,しゃも じ状部4を支える耳の負担が増えることを問題にする原告の上記主張は,失当であ る。
イ 原告は,引用例2に記載されているのは,単なるディスプレイメガネであっ て,本願発明のようにカウンタウェイトとしてのバッテリーを備えておらず,耳を 支点としてその前後のバランスをとるというような発明ではなく,本願発明とは関 係がないから,引用発明において,引用例2に記載された技術事項を適用し,相違 点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは容易に想到できたことではない\n旨主張する。 しかし,前記アと同様に,引用例1には,レンズ1に液晶層を設けたときにその 電源となる電池をしゃもじ状部4に埋め込んでもよいことが記載されているから, 引用発明において,引用例1の上記記載に従い,液晶層に情報を表示するために,\nアイウェア(メガネ)という同一の分野に係る技術である引用例2に記載された技 術事項を適用することには動機付けがある。

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平成28(行ケ)10200  審決取消請求事件  実用新案権  行政訴訟 平成29年3月14日  知的財産高等裁判所

 実用新案について、記載要件および進歩性違反が争われました。知財高裁は無効理由なしとした審決を維持しました。
 構成要件B1,B9,C1及びC2は,1)コンデンシングユニット(20)が「第 一のリード角」を備え,「第一のリード角」が,コンデンシングユニット(20)の 内縁壁(205)周りに環設されること,2)コンデンシングユニットワッシャー(3 0)が,「第二のリード角」を有し,「第二のリード角」が,「第一のリード角」に対 応し,「第一のリード角」に当接することを規定する。 「第一のリード角」は,コンデンシングユニット(20)に「備え」られ,「環設」 されるものであり(構成要件B1,B9),また,「第二のリード角」は,コンデン\nシングユニットワッシャー(30)が「有し」(構成要件C1),さらに,「第一のリ\nード角」と「第二のリード角」とは,「当接」するものである(構成要件C2)から,\nこれらが,コンデンシングユニット(20)又はコンデンシングユニットワッシャ ー(30)の構成部位を示す用語であることは,明らかである。\nもっとも,「…角が…壁周りに環設される」「…角に対応する…角」「…角が…角に 当接している」とあるのは,「角」の通常の用い方とは明らかに異なるから,構成要\n件B1,B9,C1及びC2における「リード角」の意義は,実用新案登録請求の 範囲の記載からは,直ちに明らかにはならない。 そこで,本件明細書の記載を参酌すると,1)本件考案は,従来のワッシャーは, スチームトラップとの密接の度合が劣るため蒸気が漏えいしやすい問題があったこ とから(【0002】),コンデンシングユニットとコンデンシングユニットワッシャ ーとの結合箇所に,それぞれ,「第一のリード角」及び「第二のリード角」を設けて, 互いを密接させることで蒸気の漏えいを防ぐこととし(【0004】【0011】【0 013】),また,2)「図1〜図4に示すように,…第一のリード角206がコンデ ンシングユニット20の内縁壁205周りに環設され,コンデンシングユニットワ ッシャー30は第一のリード角206に対応する第二のリード角301を有する。」 (【0011】)と記載され,図3の断面図において,「206」及び「301」が, 接合方向に対して傾斜する傾斜面として示され,当接していることが認められる。 そうすると,当業者は,構成要件B1,B9,C1及びC2の「第一のリード角」\n「第二のリード角」は,コンデンシングユニットとコンデンシングユニットワッシ ャーとの結合面に互いに対応する角度を有してそれぞれ設けられた傾斜面であり, これにより,従来のワッシャーに比べて相互の密接性を高め ,蒸気の漏えいを防ぐ ものであると理解することができる。 したがって,構成要件B1,B9,C1及びC2の記載は,不明確なものとはい\nえない。

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平成27(行ケ)10231  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年2月22日  知的財産高等裁判所(3部)

 サポート要件違反なしとした審決が取り消されました。
 これらの記載によれば,本件明細書は,「油脂を含むコート剤」の材 質,被覆方法,被覆の量や程度について,好ましいあるいは望ましい例 を示しているものの,それ以外の構成をとることも特に制限していない\nものと認められる。 したがって,「油脂を含むコート剤」については,材質に特に制限が ない以上,従来例のように吸収促進のための成分が含まれているものと は異なる態様のものも包含されているというべきである。 (ウ) 以上を前提に本件明細書の実施例(段落【0044】〜【0054】, 表1及び図1)の記載をみると,実施例1として,パーム油でコートし\nた黒ショウガの根茎の乾燥粉末(黒ショウガ原末)をコーン油と混合し て150mg/mLとし,懸濁することにより調製した被験物質(以下 「実施例1被験物質」という。),実施例2として,黒ショウガ原末を ナタネ油でコートした以外は,実施例1と同様にして調製した被験物質 (以下「実施例2被験物質」という。),及び比較例1として,黒ショ ウガ原末をコーン油と混合して150mg/mLとし,懸濁することに より調製した被験物質(以下「比較例1被験物質」という。)を,それ ぞれ,6週齢のSD雄性ラットに,10mL/kgとなるように,ゾン デで強制経口投与し,投与の1,4,8時間後(コントロールはブラン クとして投与1時間後のみ)に採血して,血中の総ポリフェノール量を 測定したところ,実施例1被験物質及び実施例2被験物質を摂取した群 の血中ポリフェノール量は,いずれも比較例1被験物質を摂取させたも のに比べて高い値を示したことが記載されている。 ここで,本件明細書の段落【0028】に,「油脂」の具体例として, パーム油,ナタネ油と並んで「とうもろこし」から得られる油脂,すな わち「コーン油」も記載されていることからすれば,上記実施例で用い たコーン油についても,黒ショウガ成分に含まれるポリフェノール類の 体内への吸収性を高める効果を期待し得る一方で,上記実施例の結果か らは,単にコーン油に混合,懸濁しただけの比較例1被験物質では,そ のような効果がないことも認識し得るといえる。 したがって,当業者は,本件明細書の実施例の記載から,「黒ショウ ガ成分を含有する粒子」が,パーム油あるいはナタネ油と混合,懸濁さ れた状態とするのではなく,パーム油あるいはナタネ油により被覆され た状態とすることにより,本件発明の課題を解決することができると認 識するものと認められる。
(エ) そして,本件出願当時,一般に摂取されたポリフェノールの生体内に 取り込まれる量は少ないという技術常識があるにもかかわらず(前記(2) エ),本件発明には,「黒ショウガ成分を含有する粒子」自体に吸収性 を高める特段の工夫がなされていない態様が包含されており(前記(ア)), また,「油脂を含むコート剤」にも吸収促進のための成分が含まれてい ない態様が包含されている(前記(イ))ことからすれば,当業者は,本件 発明の課題を解決するためには,パーム油あるいはナタネ油のような油 脂を含むコート剤にて被覆することが肝要であると認識するといえる。 しかし,その一方,ある効果を発揮し得る物質(成分)があったとして も,その量が僅かであれば,その効果を発揮し得ないと考えるのが通常 であることからすれば,当業者は,たとえ,「黒ショウガ成分を含有す る粒子」の表面を「油脂を含むコート剤」で被覆することにより,本件\n発明の課題が解決できると認識し得たとしても,その量や程度が不十分\nである場合には,本件発明の課題を解決することが困難であろうことも 予測するといえる。
(オ) ところが,本件明細書においては,実施例1の「パーム油でコートし た黒ショウガ原末」の被覆の量や程度について具体的な記載がなされて おらず,実施例2についても同様であるから,これらの実施例によって コート剤による被覆の量や程度が不十分である場合においても本件発明\nの課題を解決できることが示されているとはいえず,ほかにそのような 記載や示唆も見当たらない。すなわち,コート剤による被覆の量や程度 が不十分である場合には,本件発明の課題を解決することが困難であろ\nうとの当業者の予測を覆すに足りる十\分な記載が本件明細書になされて いるものとは認められないのであり,また,これを補うだけの技術常識 が本件出願当時に存在したことを認めるに足りる証拠もない。 したがって,本件明細書の記載(ないし示唆)はもとより,本件出願 当時の技術常識に照らしても,当業者は,「黒ショウガ成分を含有する 粒子」の表面の僅かな部分を「油脂を含むコート剤」で被覆した状態が\n本件発明の課題を解決できると認識することはできないというべきであ る。
ウ 以上のとおり,本件発明は,黒ショウガ成分を含有する粒子の表面の一\n部を,ナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤にて被覆する態様,すな わち,「黒ショウガ成分を含有する粒子」の表面の僅かな部分を「油脂を\n含むコート剤」で被覆した態様も包含していると解されるところ,本件明 細書の記載(ないし示唆)はもとより,本件出願当時の技術常識に照らし ても,当業者は,そのような態様が本件発明の課題を解決できるとまでは 認識することはできないというべきである。 そうすると,本件発明の特許請求の範囲の記載は,いずれも,本件明細 書の発明の詳細な説明の記載及び本件出願当時の技術常識に照らして,当 業者が,本件明細書に記載された本件発明の課題を解決できると認識でき る範囲を超えており,サポート要件に適合しないものというべきである。

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平成27(行ケ)10163  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年1月18日  知的財産高等裁判所

 争点は、サポート要件違反、進歩性違反など多数ありますが、訂正時における通常実施権者の承諾について、知財部長のハンコ押印が、承諾に当たるのかが争われました。 知財高裁(1部)は、これを認めました。
 原告は,本件特許を含む被告保有の知的財産権について,被告は, ●●●●・・●●●に対し,通常実施権を許諾しているところ,本件訂正について,上記各社から承諾(特許法134条の2第5項で準用する同法127条)を得ていないから,本件訂正は認められない旨主張する。これに対し,被告は,ライセンスの内容について秘密保持義務を負っているから,その内容について明らかにすることはできないと主張する。そこで,検討するに,●●●●・・●●●
以上の事実によれば,被告との間で,提携,クロスライセンス及び和解等をした 企業は,●●●●・・●●●であると認められる。 そして,証拠(乙9,10)及び弁論の全趣旨によれば, ●●●●・・●●●について,本件特許に ついて,最初の訂正審判請求(甲49の1)がされた平成24年12月17日より も前に,被告が保有する特許の訂正に関して包括的な承諾を得ていたものと認めら れる。また, ●●●●・・●●●についても,被告が保有する特許の訂正に関して包括的な承諾を得ていたものと認められる。 ●●●●・・●●● 原告は,事実実験公正証書(乙10)において, ●●●●・・●●●については,いずれも代 表取締役等代表\権を有する者の記名押印はなく,訂正に関する承諾権限があること の立証はない旨主張する。しかし,本件訂正のような特許請求の範囲を減縮する訂 正は,特許権者が特許の無効理由を避けるために,その必要に応じてなすのが通例 であり,訂正の内容は,特許の専門的,技術的事項に関するものが多く,これを承 諾するか否かは,各社の代表取締役等の代表\権者が知的財産部長等に委任してその 判断に委ねるのが合理的であり,通例であると解されるところである。そして,上 記事実実験公正証書は,上記各社が訂正に関し承諾したことを上記各社の知的財産 部長等の担当者が確認した旨をその内容とするものであるから,これによれば,上 記各社とも,その知的財産担当部長等の担当者が訂正に関する承諾という事項につ いて,その代表者から委任を受けており,その上でこれを承諾したと推認するのが\n合理的であり,これらの者が各社代表取締役等の代表\権を有する者でなかったとし ても,それによって上記各社が訂正に関し承諾したとの認定が左右されるものでは ない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 また,本件特許が●●●●の契約の対象になっているか否かは明らかではないと いわざるを得ないものの,本件特許は,白色LEDを実現するために重要な技術的 意義を有するものと認められ(弁論の全趣旨),これを対象から除外して契約を行う ことは考えにくい(合理的根拠はない。)ものと認められるから,本件特許が,原告 が主張するように●●●●の契約の対象となっているものと推認することができる。 そして,●●●●の各承諾は,いかなる訂正を目的とするかまで明確にした承諾で あるということはできないものの,いずれも訂正審判を請求することを承諾すると いう趣旨でなされたものと解される。
以上によれば,被告は,本件特許の訂正について,●●●●から特許法127条 の承諾を得ていたものと認められる。

◆判決本文

◆関連事件です。平成26(ネ)10032

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平成27(行ケ)10201  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年1月31日  知的財産高等裁判所

 サポート要件違反なしとした審決が取り消されました。
 このような技術常識を有する当業者が,本件明細書の記載に接した際には,【00 07】に記載された「顕在化した色調変化」,すなわち,比較例において観察された b*値の変化(Δb*)は,L−アスコルビン酸の褐変に起因する色調変化を含む可 能性があると理解し,イソ\クエルシトリン及びその糖付加物の色調変化のみを反映 したものであると理解することはできないと解される。 そうすると,実施例において,アルコール類を特定量添加しpHを調整すること により,比較例に比べて飲料の色調変化が抑制されていることに接しても,当業者 は,比較例の飲料の色調変化がL−アスコルビン酸の褐変に起因する色調変化を含 む可能性がある以上,イソ\クエルシトリン及びその糖付加物の色調変化が抑制され ていることを直ちには認識することはできないというべきである。 そして,本件明細書の実施例のb*値の変化(Δb*)は,0.9〜2.0であっ て,0ではないことから,L−アスコルビン酸に起因するb*値の変化(Δb*)は アルコール類の添加によってもマイナスに転じること(製造直後よりも黄色方向の 彩度が減じて青色方向に傾くこと)がないものと仮定しても,当業者は,実施例に おける飲料全体の色調変化の抑制という結果から,イソクエルシトリン及びその糖\n付加物の色調変化の抑制を認識することはできないというほかない。 また,前記(1)イ(オ),(カ)bのとおり,本件出願日当時,イソクエルシトリン及びそ\nの糖付加物が水溶液中のL−アスコルビン酸の分解を抑制することが知られていた ものと認められる。しかし,乙18によれば,イソクエルシトリン及びその糖付加\n物に相当するフラボノイド配糖体A又はBの配合によるアスコルビン酸を含む3 0%エタノール水溶液のL値の減少率の抑制の程度は,これらを配合しない場合を 100%として41.5%又は39.5%に止まり,L値の減少率を0%としたも のではない(すなわち,L値の減少が解消していない。)し,明度を示すL値(L* 値)の変化を示すものであって,本件明細書で測定している黄色方向の彩度を示す b*値の変化を示すものでもなく,また,エタノールの含有量も本件明細書の実施 例・比較例(0.01〜0.50質量%)とは大きく異なるから,当業者において, 本件明細書の実施例・比較例の条件において,L−アスコルビン酸に加え,イソク\nエルシトリン及びその糖付加物が配合されていることから,L−アスコルビン酸の 褐変が生じない(したがって,本件明細書の実施例・比較例の飲料の色調変化には, L−アスコルビン酸の褐変に起因する色調変化は含まれない。)と理解するものとは いえない。
ウ 以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件出願日当 時の技術常識に照らして,本件訂正発明9〜16は,容器詰飲料に含まれるイソク\nエルシトリン及びその糖付加物の色調変化を抑制することにより,当該容器詰飲料 の色調変化を抑制する方法を提供するという課題を解決できるものと,当業者が認 識することができるとはいえない。
エ 被告は,甲40及び甲69は,審判手続において審理判断されなかった 事実に関する新たな証拠であるから,本件訴訟において,これらの証拠に基づく審 決の違法性を主張することは許されず,取消事由3−4は,本件訴訟の審理の対象 にはならないと主張する。 しかしながら,被告も自認するとおり(前記第4の1(1)),原告は,審判事件弁 駁書(乙8)において「アスコルビン酸が酸化により黄色となることは周知の技術 的事項である」ことを指摘して本件訂正発明9〜16がサポート要件及び実施可能\n要件を欠くと主張しているから(20〜21頁),「アスコルビン酸が酸化により黄色 となることは周知の技術的事項である」ことを根拠として,本件訂正発明9〜16 がサポート要件及び実施可能要件を満たす旨の審決の判断が誤りであることを主張\nすることは当然に認められ,取消事由3−4は,そのような主張を含むものと認め られる。 そして,本件訂正発明9〜16は,被告も自認する「L−アスコルビン酸を含有 する飲料が経時変化により褐変すること」という事実(被告第2準備書面3頁,被 告第3準備書面16頁)を考慮すると,甲40及び甲69を検討するまでもなく, 被告が立証責任を負担するサポート要件の充足を認めることができないことは,前 示のとおりである。なお,被告は,「イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有す\nる容器詰飲料が,L−アスコルビン酸の非存在下においても色調変化を生じ,その 色調変化がアルコールによって抑制されること」を立証趣旨として,乙14の実験 成績証明書を提出するが,乙15(技術説明資料)及び本件訴訟の経過に照らすと, 乙2の実験成績証明書と同様に,甲69の信用性を弾劾する趣旨であり,本件明細 書において開示が不十分な発明の効果を実験結果によって補充しようというもので\nはないと解される(仮に,乙14が,甲69の信用性を弾劾するにとどまらず,こ れによりイソクエルシトリン及びその糖付加物を含有し,L−アスコルビン酸を含\n有しない容器詰飲料の色調変化を立証する趣旨であったとしても,そのような立証 は,本件明細書の記載から当業者が認識できない事項を明細書の記載外で補足する ものとして許されない。)。被告の主張は,理由がない。
オ 被告は,「アスコルビン酸を含む」という条件において実施例と比較例は 同一であることを理由として,サポート要件の充足を認めた審決の趣旨は,アスコ ルビン酸を除けば,実施例と比較例のb*値やΔb*値の絶対値は変わるかもしれな いけれども,アスコルビン酸の有無にかかわらず,アルコールの添加によってイソ\nクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化が抑制されるという傾向自体は不変で あることを当業者が理解できると判断したものであり,その判断に誤りはないと主 張する。 この点について,審決は,アルコールを添加した実施例と,アルコールを添加し ない比較例の双方に,L−アスコルビン酸が含まれているとしても,このような実 施例と比較例の色調変化によって,L−アスコルビン酸の非存在下におけるイソク\nエルシトリン及びその糖付加物の色調変化に対するアルコール添加の影響を理解す ることができると判断するところ,L−アスコルビン酸が褐変し,容器詰飲料の色 調変化に影響を与え得るという本件出願日当時の技術常識を踏まえると,このよう に判断するためには,少なくともL−アスコルビン酸の褐変(色調変化)はアルコ ール添加の影響を受けないという前提が成り立つ場合に限られることは明らかであ るが,そのような前提が本件出願日当時の当業者の技術常識となっていたことを示 す証拠はない。したがって,本件明細書の実施例と比較例の実験結果をまとめた【表\n1】により,イソクエルシトリン及びその糖付加物に起因する色調変化の抑制とい\nう本件訂正発明9〜16の効果を確認することはできない。なお,念のため付言す れば,以上の検討は,特許権者である被告が,本件明細書において,イソクエルシ\nトリン及びその糖付加物の色調変化がアルコールにより抑制されることを示す実験 結果を開示するに当たり,同様に経時的な色調変化を示すことが知られていたL− アスコルビン酸という不純物が含まれる実験系による実験結果のみを開示したこと に起因するものであり,そのような不十分な実験結果の開示により,本件明細書に\nイソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化がアルコールにより抑制されるこ\nとが開示されているというためには,容器詰飲料の色調変化に影響を与える可能性\nがあるL−アスコルビン酸の褐変(色調変化)はアルコール添加の影響を受けない ということが,本件明細書において別途開示されているか,その記載や示唆がなく ても本件出願日当時の当業者が前提とすることができる技術常識になっている必要 がある。したがって,特許権者である被告において,本件明細書にこれらの開示を しておらず,また,当該技術常識の存在が立証できない以上,本件明細書にL−ア スコルビン酸という不純物を含む実験系による実験結果のみを開示したことによる 不利益を負うことは,やむを得ないものというべきである。
カ 以上によれば,取消事由3−4のうち,サポート要件の判断の誤りをい う点は,理由がある(実施可能要件の判断の誤りをいう点は,必要がないから,判\n断しない。)。

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平成28(行ケ)10001等  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年2月2日  知的財産高等裁判所

 サポート要件違反および実施可能要件違反はないとした審決が維持されました。裁判所は、実施可能\要件とは、物を作れるかどうかが判断基準であるとも判断しました。
 本件発明1から10は,物の発明であり,本件発明11から17は,方法の発明 であるところ,物の発明の実施とは,その物の生産,使用等をする行為であり(特 許法2条3項1号),方法の発明の実施とは,その方法の使用をする行為であるか ら(同項2号),上記実施可能要件を充足するためには,明細書の発明の詳細な説明において,当業者が,明細書の発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき,\n過度の試行錯誤を要することなく,物の発明については,その物を生産し,かつ, 使用することができる程度の記載があること,方法の発明については,その方法を 使用することができる程度の記載があることを要する。
イ 本件特許請求の範囲は,前記第2の2のとおりであるところ,前記3(1)イ (ア)のとおり,当業者は,葉酸の補充によってMTA等の葉酸代謝拮抗薬の抗腫瘍 活性を維持しながら投与に関連する毒性を低下させることができるという技術常識 の下,MTA等の葉酸代謝拮抗薬の投与に関連する毒性の低下及び抗腫瘍活性の維 持のために,患者の年齢,体重等の属性や身体状態等に応じて適宜の用量・時期・ 方法により葉酸を投与していた。また,ビタミンB12自体は,出願時において既知 の物質であり,筋肉内注射等の投与の方法も,技術常識として確立していた(甲7, 36等)。これらの技術常識に加え,前記3(1)イ(イ)のとおり,本件明細書の発明 の詳細な説明には,葉酸及びビタミンB12の投与の具体的内容についての記載があ ることから(【0028】【0034】【0039】),当業者は,上記記載及び出願 時の技術常識に基づき,過度の試行錯誤を要することなく,本件特許請求の範囲に 記載された投与の量・時期・方法に係る葉酸とビタミンB12をMTAと組み合わせ て投与することを特徴とする医薬を生産することができ,また,方法を使用するこ とができるものというべきである。 そして,1)葉酸代謝拮抗薬の抗腫瘍活性を維持しながら投与に関連する毒性を低 下させるために必要な葉酸の用量は広範囲にわたること及び2)葉酸は,葉酸代謝拮 抗薬と並行して投与すればよく,葉酸代謝拮抗薬よりも先に投与することは必須で はないことは,出願時における技術常識であったことに加え(前記3(2)ア (ア)(イ)),本件明細書の発明の詳細な説明に,乳腺がん腫のC3H菌株に感染さ せたマウスに対し,ビタミンB12を用いて前処置し,次いで葉酸代謝拮抗薬を投与 する前に葉酸を投与することにより,毒性の著しい低下が見られ,葉酸代謝拮抗薬 の毒性をほとんど完全に除くとの記載があり(【0049】【0052】),ヒトにお ける臨床トライアルに関し,ALIMTA(MTA)ないしシスプラチンと併用す る葉酸及びビタミンB12の投与の用量・時期・方法並びに葉酸とビタミンB12の 組合せが薬物関連毒性を低下させたことが具体的に記載されていること(【005 5】〜【0060】【0064】【0065】【表1】)に鑑みれば,本件特許請求の\n範囲に記載された投与の量・時期・方法に係る葉酸とビタミンB12をMTAと組み 合わせて投与することを特徴とする上記医薬ないし方法は,MTA毒性の低下及び 抗腫瘍活性維持のためのものということができる。 以上によれば,当業者は,本件明細書の発明の詳細な説明及び出願時の技術常識 に基づいて,本件発明1から10に係る医薬を生産し,使用することができ,また, 本件発明11から17に係る方法を使用することができる。
(2)甲事件原告及び丙事件原告の主張について
ア 甲事件原告は,本件明細書の【0039】記載の葉酸の投与によってMTA 毒性及び抗腫瘍活性がどのようなものになるかについては言及されていない,実施 例においても,MTA毒性の低下と抗腫瘍活性の維持を両立し得るような葉酸の投 与の時期及び方法は示されていない旨主張する。 しかし,前記(1)のとおり,当業者は,出願時の技術常識及び本件明細書の発明の 詳細な説明の記載から,過度の試行錯誤を要することなく,本件特許請求の範囲に 記載された投与の量・時期・方法に係る葉酸とビタミンB12をMTAと組み合わせ て投与することを特徴とする医薬を生産し,また,方法を使用することができ,そ の医薬ないし方法は,葉酸を本件明細書の【0039】記載の方法で投与するもの も含め,MTA毒性の低下及び抗腫瘍活性維持のためのものということができる。 イ 甲事件原告は,本件明細書の【0039】において葉酸の投与時期とされる MTA投与の約1時間前から約24時間前という短時間のうちにベースラインのホ モシステインレベルが低下することは,当業者一般に知られていなかった旨主張す る。 しかし,証拠上,出願時において,ホモシステインレベルを低下させること自体 によって葉酸代謝拮抗薬の投与に関連する毒性ないしそのリスクが軽減するという 技術常識が存在したことは認めるに足りないこと(前記2(2)ウ(オ)参照)から,短 時間のうちにベースラインのホモシステインレベルが低下することが当業者一般に 知られていなかったとしても,それは,実施可能要件違反の有無を左右するものではない。\nウ 丙事件原告は,サポート要件違反と同じ理由により,本件明細書の記載は実 施可能要件に反する旨主張するが,本件明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能\要件を充足するか否かは,当業者が,同記載及び出願時の技術常識に基づき,過度の試行錯誤を要することなく,その物を生産し,かつ,使用することができる程 度の記載があるか否かの問題である。他方,サポート要件は,特許請求の範囲の記 載要件であり,本件特許請求の範囲の記載がサポート要件を充足するか否かは,本 件特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された説明であり, 同記載及び出願時の技術常識により当業者が本件発明の課題を解決できると認識し 得るか否かの問題であり,実施可能要件とは異なる。よって,丙事件原告の上記主張は,それ自体失当である。\n

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平成28(ネ)10010  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年12月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(第4部)は、サポート要件違反として無効とした原審を維持しました。
 以上のとおり,Crの濃度変動があるか否か不明であるだけではなく,さらに, その濃度変動の程度も何ら特定されていない球形の合金相(B)を含むターゲット は,当業者が本件発明2の課題を解決できると認識できる範囲のものということは できないから,Crの濃度変動の有無及びその程度を何ら特定しない球形の合金相 (B)を含む特許請求の範囲請求項2に記載された本件発明2は,発明の詳細な 説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題 を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。また,このような球形 の合金相(B)を含むターゲットが,当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明 の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということもできない。 したがって,本件発明2に係る請求項2の記載は,サポート要件を満たしている とはいえないから,本件発明2に係る特許は特許無効審判により無効にされるべき ものと認められる。

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関連事件です。こちらでは、請求項4はサポート要件を満たしていると判断されています。

◆平成27(行ケ)10261

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平成27(行ケ)10150  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年12月6日  知的財産高等裁判所

 数値限定発明について、実施可能性違反なしとした審決が維持されました(知財高裁3部)。
特許法36条4項1号は,明細書の発明の詳細な説明の記載は,「その発 明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすること ができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定める。\nその趣旨は,特許制度が,発明を公開する代償として,一定期間発明者に当 該発明の実施につき独占的な権利を付与するものであることに鑑み,その制 度趣旨が損なわれることがないよう,発明の詳細な説明に当該請求項に係る 発明について当業者が実施できる程度に明確かつ十分な記載を求めるとした\n点にある。 そして,特許法上の実施とは,1)物の発明にあっては,その物の生産,使 用等をする行為であり,2)物を生産する方法の発明にあっては,その方法に より生産した物の使用等をする行為であるから(特許法2条3項1号,3号), 実施可能要件を満たすためには,それぞれ,明細書及び図面の記載並びに出\n願当時の技術常識に基づき,当業者が,1)当該物を生産できかつ使用できる ように具体的に記載すること,2)当該方法により物を生産できかつ使用でき るように具体的に記載することが必要である。 本件訂正発明は,同1,3,5,7,8が炭酸飲料という物の発明であり, 同9が炭酸飲料の製造方法という物の生産方法に関する発明であるから,こ れらの発明が実施可能要件を満たすためには,それぞれ,上記1)又は2)を満 たす必要がある。
(2) かかる実施可能要件に関し,原告は,「可溶性固形分」,「高甘味度甘味\n料によって付与される甘味の全量」及び「甘味量」の技術的意義が本件訂正 明細書の記載から把握できず,また,甘味の相対比が不明確であるため,甘 味の相対比に基づいた本件訂正発明における「全甘味量」,「高甘味度甘味 料によって付与される甘味の全量」及び「スクラロースによって付与される 甘味量」の数値範囲も不明確であって,そのような不明確な数値範囲の技術 的意義も理解できないため,実施例で用いられている甘味料以外の甘味料を 使用して,植物成分を10〜80重量%,及び炭酸ガスを2ガスボリューム より多く含む炭酸飲料を調製する場合に,甘味料をどの程度の量添加すれば, 「植物成分由来の重い口当たりと炭酸ガスに起因する苦味や刺激を軽減」し た炭酸飲料が得られるのか不明であるから,本件訂正発明を実施する際に, 本件訂正明細書の記載及び本件出願時の技術常識を考慮しても,当業者に期 待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を必要とするものであり, 実施可能要件が満たされていないと主張する。\n(3) そこで検討するに,まず,本件訂正発明の「砂糖甘味換算」及び「砂糖甘 味換算量」という文言の意味が不明確であるとはいえず,本件訂正発明にお ける砂糖甘味換算量は,必要に応じて,換算又は測定可能なものといえるこ\nとは,前記1(取消事由5)で検討したとおりである。 また,植物成分,炭酸ガス及び可溶性固形分の含量,甘味量,並びに高甘 味度甘味料によって付与される甘味の全量については,それぞれの数値範囲 を逸脱した場合に,本件訂正発明の課題が解決できない旨が本件訂正明細書 に十分記載されており,換言すれば,それらの数値範囲内であれば,当業者\nは,本件訂正発明の課題が解決できると理解するものといえ,また,そのよ うな理解を妨げるような本件出願当時の技術常識があったとは認められない こと,他方で,スクラロースによって付与される甘味量については,その数 値範囲を逸脱した場合に,本件訂正発明の課題が解決できないことまでが本 件訂正明細書に記載されているわけではなく,単に,その数値範囲が好まし い旨が本件訂正明細書に記載されているのみであるが,この記載に接した当 業者は,その数値範囲を少々逸脱した場合でも本件訂正発明の課題が解決で きるであろうと理解するといえること,換言すれば,その数値範囲内であれ ば,当業者は,本件訂正発明の課題が当然解決できると理解するといえ,ま た,そのような理解を妨げるような本件出願当時の技術常識があったともい えないことは,前記4(取消事由3)で検討したとおりである。 そして,本件出願時の技術常識からみて,本件訂正発明の炭酸飲料を調製 するに当たり,果物又は野菜の搾汁を10〜80重量%の割合とすること(請 求項1の構成要件(1)),炭酸ガスを2ガスボリュームより多くすること(同 (2)),全甘味量を砂糖甘味換算で8〜14重量%とすること(同(4)),高 甘味度甘味料によって付与される甘味の全量を,砂糖甘味換算で全甘味量の 25重量%以上とすること(同(6)),全ての高甘味度甘味料によって付与さ れる甘味の全量100重量%のうち,スクラロースによって付与される甘味 量を,砂糖甘味換算量で50重量%以上とすること(同(7))自体が,当業者 にとって困難なことであるとは認められず,可溶性固形分含量を屈折糖度計 で測定して4〜8度のものとすること(同(3))も,当業者にとって困難な操 作であるとは認められない。 さらに,前記のとおり,本件訂正明細書には,実施例1として,ぶどう果 汁含有量50重量%,炭酸ガス3.0ガスボリューム,スクラロース0.0 065重量%,可溶性固形分含量5.1度の「グレープ炭酸飲料」を,実施 例2として,りんご果汁,レモン果汁及び人参の搾汁を合わせて31重量%, 炭酸ガス2.5ガスボリューム,スクラロース0.0075重量%及びアセ スルファムカリウム0.0035重量%,可溶性固形分含量4.5度の「果 汁入り炭酸飲料」を,実施例4として,リンゴ果汁33重量%,炭酸ガス2. 6ガスボリューム,スクラロース0.0067重量%,可溶性固形分含量6. 0度の「アップル炭酸アルコール飲料」を,それぞれ調製したことが,具体 的に記載されている(前記1(1)ス〜ソ)。また,本件訂正明細書には,甘味\n料について多数の例示があるとはいえ(同ケ),スクラロースと組み合わせ る高甘味度甘味料について具体的に例示されており(同)コ),搾汁とすべき 果物や野菜についても具体的に例示されている(同カ)。 以上を考慮すれば,本件訂正発明の(方法で)炭酸飲料を調製するに当た り,当業者が特段の困難な操作を要するとは認められず,また,その調製に 当業者の過度の試行錯誤を要するとも認められない。 よって,当業者は,本件訂正発明の(方法で)炭酸飲料を作ることができ るというべきであり,「(当該方法により)物を生産でき…る」の要件を満 たすといえる。
(4) また,そのようにして作られた本件訂正発明の数値範囲を満たす炭酸飲料 は,本件訂正発明の課題を解決する,すなわち,果汁等の植物成分と炭酸ガ スの両者を含有する飲料であって,植物成分の豊かな味わいと炭酸ガスの爽 やかな刺激感(爽快感)をバランス良く備えた植物成分含有炭酸飲料である といえる一方,そのような理解を妨げるような本件出願当時の技術常識があ ったとも認められない。 よって,本件訂正発明の数値範囲を満たす炭酸飲料は,技術上の意義のあ る態様で使用することができるというべきであり,「物を…使用できる」の 要件も満たすといえる。

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平成28(行ケ)10117  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年11月30日  知的財産高等裁判所

 加圧トレーニングに関する特許について、新規性なし・公序良俗違反・記載要件違反なしとの審決が維持されました(知財高裁2部)。
 原告は,1)本件発明が本来的に治療行為,美容行為等を含んだ筋力トレーニング であること,2)本件発明が自然法則それ自体に特許を認めていること,から,本件 発明は,社会的妥当性を欠くので特許法32条に反すると主張する。 しかしながら,前記1(1)に認定のとおり,本件発明は,特定的に増強しようとす る目的の筋肉部位への血行を緊締具を用いて適度に阻害してやることにより,疲労 を効率的に発生させて,目的筋肉をより特定的に増強できるとともに,関節や筋肉 の損傷がより少なくて済み,更にトレーニング期間を短縮できるようにしたもので ある。 そうすると,本件発明は一義的に人体に重大な危険を及ぼすものではない上,本 件発明を治療方法等にも用いる場合においては,所要の行政取締法規等で対応すべ きであり,そのことを理由に,本件発明が特許を受けることが許されなくなるわけ ではない。また,特許を取得しても,当該特許を治療行為等の所要の公的資格を有 する行為において利用する場合には,当該資格を有しなければ当該行為を行うこと ができないことは,当然である。したがって,本件発明に特許を認めること自体が 社会的妥当性を欠くものとして,特許法32条に反するものとはいえない(なお, 産業上の利用可能性の有無については,前件審判・前件判決で既に取消事由とされ\nたものであり,本件は,専ら,特許法32条該当性のみを審理するものである。)。 また,本件発明は,「筋肉に締めつけ力を付与するための緊締具を筋肉の所定部位 に巻付け,その緊締具の周の長さを減少させ」ることにより,「筋肉に与える負荷が, 筋肉に流れる血流を止めることなく阻害する」ものであるから,自然法則を利用し たものであるが,人体の生理現象そのもののような自然法則それ自体を発明の対象 とするものではない。そもそも,特許権は,業として発明を実施する権利を専有す るものであり(特許法68条),業として行わなければ,本件発明の筋力トレーニン グ方法は誰でも自由になし得るのであり,本件特許はそれを制限するものではない。 そうすると,原告の上記主張は,いずれも採用することができず,本件発明は, 公の秩序,善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明とすることはでき ない。 したがって,取消事由4は,理由がない。
6 取消事由5(無効理由5−2に関する判断の誤り)について
(1) 検討
旧特許法36条5項2号は,特許請求の範囲の記載について,「特許を受けようと する発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項(以下「請求項」とい\nう。)に区分してあること」との要件に適合するものでなければならないと規定して いた。これは,発明の構成に欠くことができない事項(必須要件)を全て記載する\nことを求めるとともに,必須要件でないものを記載しないことを求めることにより, 請求項の構成要件的機能\を担保したものであり,特許請求の範囲には,必要かつ十\n分な構成要件を記載することを求めたものといえる。\n前記1(1)のとおり,本件発明1の技術的意義は,筋力トレーニング方法において, 筋肉に与える負荷が,筋肉に流れる血流を止めることなく阻害するものとすること, すなわち,目的の筋肉部位への血行を緊締具により継続的に適度に阻害することに より,疲労を効率的に発生させることにある。このような技術的意義にかんがみれ ば,特許請求の範囲に,「筋肉に締めつけ力を付与するための緊締具を筋肉の所定部 位に巻付け,その緊締具の周の長さを減少させ」ることにより,「筋肉に疲労を生じ させるために筋肉に与える負荷が,筋肉に流れる血流を止めることなく阻害するも のである」ことが記載されていれば,本件発明の技術的課題を解決するために必要 かつ十分な解決手段が記載されているというべきである。
(2) 原告の主張について
1) 原告は,本件発明1の課題・効果を得るためには,所要の加圧条件を特許請 求の範囲に記載する必要があると主張する。 しかしながら,上記(1)のとおり,本件発明の課題解決手段は,本件発明1の記載 で明らかとされている一方,筋肉増大の程度は,トレーニングの態様,対象者,対 象部位等に応じて異なり,一義的に決まるものではないから,所要の加圧条件を特 許請求の範囲に記載しないことが,必須要件を記載していないことになるとまでは いえない。
2) 原告は,本件発明1が,筋肉への血流を止めることなく阻害し,これによっ て筋肉に疲労を生じさせること自体を筋力トレーニング方法と称しているのか,そ れ以外の何らかのトレーニングをすることを必須としているかも不明確であると主 張する。 本件発明の筋力トレーニング方法が,緊締具を用いて更にトレーニングを行うこ とを前提にしていることは,発明の詳細な説明から明らかであり(本件訂正明細書 の【0004】【0017】【図1】参照),そのような方法であるか否かが不明確で あるということはない。本件発明1は,そのうち,締結具によって筋肉への血流を 止めることなく阻害し,これによって筋肉に疲労を生じさせるとの部分を特許請求 の範囲に掲げたものと理解される。どのようなトレーニングがされるかは,トレー ニングの態様,対象者,対象部位等に応じて異なる上に,単なる技術常識の適用に すぎないことは自明であり,本件発明の筋力トレーニング方法を技術的に特徴付け るものではない。したがって,そのような事項は,本件発明の必須の要件ではない。 3) 以上のとおり,原告の主張は,いずれも採用することができない。
(3) 小括
以上から,本件発明1の特許請求の範囲の記載は,旧特許法36条5項2号の要 件を満たすと認められる。

◆判決本文

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平成28(行ケ)10042  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年11月30日  知的財産高等裁判所

 特36条のサポート要件に係る審決の判断は,結論において誤りはないと判断しました(知財高裁第4部)。
 3 取消事由2(サポート要件に係る判断の誤り)について
(1) 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲 の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が, 発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当 該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,発明の詳 細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課 題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと 解される。
(2) 特許請求の範囲の記載
本願発明の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2記載のとおりである。すなわ ち,本願発明は,潤滑油基油と粘度指数向上剤を含み,「100℃における動粘度 が4〜12mm2/sであり,粘度指数が140〜300である」潤滑油組成物であ って,当該潤滑油基油は,「尿素アダクト値が2.5質量%以下,40℃における 動粘度が18mm2/s以下,粘度指数が125以上,且つ,90%留出温度から5 %留出温度を減じた値が70℃以下である潤滑油基油成分」(本発明に係る潤滑油 基油成分)を,「基油全量基準で10質量%〜100質量%」含有することが特定 されたものである。
(3) 発明の詳細な説明の記載
ア 本願明細書の発明の詳細な説明には,前記1(2)のとおり,本願発明は,従来 の潤滑油が,実用性能(150℃HTHS粘度)を維持しながら,さらに省燃費性\n(40℃動粘度,100℃動粘度,100℃HTHS粘度の低減)と低温粘度特性 (CCS粘度やMRV粘度の低減)とを両立するという点で,いまだ改善の余地が あったという事情に鑑みて,省燃費性,低蒸発性と低温粘度に優れ,ポリ−α−オ レフィン系基油やエステル系基油等の合成油や低粘度鉱油系基油を用いずとも,1 50℃における高温高せん断粘度を維持しながら,省燃費性,NOACKにおける 低蒸発性と−35℃以下における低温粘度とを両立させることができ,特に潤滑油 の40℃及び100℃における動粘度並びに100℃におけるHTHS粘度を低減 し,粘度指数を向上し,−35℃におけるCCS粘度,(−40℃におけるMRV 粘度)を著しく改善できる潤滑油組成物を提供することを目的とし,特許請求の範 囲の請求項1に記載の構成を採用することにより,省燃費性と低蒸発性及び低温粘\n度特性に優れており,ポリ−α−オレフィン系基油やエステル系基油等の合成油や 低粘度鉱油系基油を用いずとも,150℃におけるHTHS粘度を維持しながら, 省燃費性とNOACK蒸発量及び−35℃以下における低温粘度とを両立させるこ とができ,特に潤滑油の40℃及び100℃の動粘度と100℃におけるHTHS 粘度を低減し,−35℃におけるCCS粘度,(−40℃におけるMRV粘度)を 著しく改善することができるという効果を奏するものであることが記載されている。 イ また,【0021】ないし【0026】には,「本発明に係る潤滑油基油成 分」の尿素アダクト値,40℃動粘度,粘度指数及び90%留出温度から5%留出 温度を減じた値は,本願発明に係る潤滑油組成物の低温粘度特性,省燃費性,低蒸 発性,粘度−温度特性などと密接な関係があることが記載されていることから, 「本発明に係る潤滑油基油成分」と「その他の潤滑油基油成分」を混合した「潤滑 油基油」全体の尿素アダクト値,40℃動粘度,粘度指数及び90%留出温度から 5%留出温度を減じた値などの物性値も,同様に,本願発明に係る潤滑油組成物の 低温粘度特性,省燃費性,低蒸発性,粘度−温度特性などの物性と密接な関係があ ることが理解できる。
ウ 前記アによれば,本願発明の課題に関連する潤滑油組成物の物性は,150 ℃HTHS粘度,40℃動粘度,100℃動粘度,100℃HTHS粘度,NOA CK蒸発量,−35℃CCS粘度,−40℃におけるMRV粘度及び粘度指数であ るところ,本願明細書には,150℃HTHS粘度が2.55〜2.65の範囲内 となるように調製した実施例1ないし6及び比較例1ないし3の各潤滑油組成物に ついて,40℃動粘度(mm2/s),100℃動粘度(mm2/s),粘度指数, 100℃HTHS粘度(mPa・s),150℃HTHS粘度(mPa・s),N OACK蒸発量(1h,250℃),−35℃CCS粘度(mPa・s),−40 ℃MRV粘度(mPa・s)を測定した結果が示されている(【0117】,【表\n3】)。 そして,【0122】には,実施例1ないし6は,比較例1ないし3に比べて, 40℃動粘度,100℃動粘度,100℃HTHS粘度及びCCS粘度が低く,低 温粘度及び粘度温度特性が良好であったこと,実施例1ないし6の上記評価結果に 基づき,本願発明の潤滑油組成物が,省燃費性と低温粘度に優れ,ポリ−α−オレ フィン系基油やエステル系基油等の合成油や低粘度鉱油系基油を用いずとも,15 0℃における高温高せん断粘度を維持しながら,省燃費性と−35℃以下における 低温粘度とを両立させることができ,特に潤滑油の40℃及び100℃における動 粘度を低減し,粘度指数を向上し,−35℃におけるCCS粘度を著しく改善でき る潤滑油組成物であることが分かることが記載されているから,上記記載から,実 施例1ないし6は,本願発明の課題を解決できるものであるのに対し,比較例1な いし3は,本願発明の課題を解決できないものであることが理解できる。 エ また,実施例と比較例は全て,潤滑油としての実用性能を表\す150℃HT HS粘度が「2.60〜2.61」となるように調製されたものである(【011 7】,【表3】)。そこで,実施例1〜6と比較例1〜3において,150℃HT\nHS粘度以外の物性値をみると,1)本願明細書には,潤滑油組成物のNOACK蒸 発量は,好ましくは8質量%以上,さらに好ましくは18質量%以上であり,好ま しくは30質量%以下,特に好ましくは22質量%以下であり,18〜20質量% とすることで,蒸発損失の防止と低温特性,さらには省燃費性能をバランスよく達\n成することができることが記載されているところ(【0114】),NOACK蒸 発量は,実施例1ないし6では「10.8〜19.4」の範囲に,比較例1ないし 3では「12.2〜14.0」の範囲にあり,2)本願明細書には,潤滑油組成物の 100℃動粘度は,4〜12mm2/sであることが必要であり,特に好ましくは, 6mm2/s以上,8mm2/s以下であることが記載されているところ(【010 6】),100℃動粘度は,実施例1ないし6では「7.2〜9.0」の範囲に, 比較例1ないし3では「8.6〜8.9」の範囲にあって,これらの物性値におい て,両者の数値範囲は重なることが分かる。 他方,3)本願明細書には,潤滑油組成物の40℃動粘度は,4〜50mm2/sで あることが好ましく,特に好ましくは25mm2/s以上,30mm2/s以下であ ることが記載されているところ(【0109】),40℃動粘度は,実施例1ない し6では「25.6〜37.3」の範囲に,比較例1ないし3では「38.9〜4 0.4」の範囲にあり,4)本願明細書には,潤滑油組成物の粘度指数は,140〜 300の範囲であることが必要であり,最も好ましくは250〜300であること が記載されているところ(【0107】),粘度指数は,実施例1ないし6では 「224〜269」の範囲に,比較例1ないし3では「209〜211」の範囲に あり,5)本願明細書には,潤滑油組成物の100℃におけるHTHS粘度は,6. 0mPa・s以下であることが好ましく,最も好ましくは4.5mPa・s以下で あり,3.0mPa・s以上であることが好ましく,最も好ましくは4.2mPa ・s以上であることが記載されているところ(【0110】),100℃HTHS 粘度は,実施例1ないし6では「4.29〜5.26」の範囲に,比較例1ないし 3では「5.35〜5.49」の範囲にあり,6)本願明細書には,−35℃CCS 粘度に関し,「例えば,本発明の潤滑油組成物によれば,−35℃におけるCCS 粘度を4500mPa・s以下とすることができる。」と記載されているところ (【0115】),−35℃CCS粘度は,実施例1ないし6では「1800〜4 000」の範囲に,比較例1ないし3では「4850〜7700」の範囲にあり, 7)本願明細書には,−40℃MRV粘度に関し,「本発明の潤滑油組成物によれば, −40℃におけるMRV粘度を10000mPa・s以下とすることができる。」 と記載されているところ(【0115】),実施例1ないし6では「3700〜9 300」の範囲に,比較例1ないし3では「12500〜28000」の範囲にあ り,これらの物性値において,実施例1ないし6の数値の方が,比較例1ないし3 の数値よりも優れていることが分かる。 そうすると,前記ウのとおり,実施例1ないし6は,本願発明の課題を解決でき るものであるのに対し,比較例1ないし3は,本願発明の課題を解決できないもの であるところ,本願発明の課題を解決することができるというためには,150℃ HTHS粘度が2.60〜2.61程度となるように潤滑油組成物を調製した場合 に,40℃動粘度,100℃動粘度,100℃HTHS粘度,NOACK蒸発量, −35℃CCS粘度,(−40℃におけるMRV粘度)及び粘度指数の数値を総合 的に検討した結果,比較例1ないし3で代表される従来の技術水準を超えて,実施\n例1ないし6と同程度に優れたものとなることが必要であることを理解できる。 オ さらに,【表3】をみると,実施例1ないし6及び比較例1ないし3は,い\nずれも粘度指数向上剤を含有するものであり,「100℃動粘度が4〜12mm2/ s,粘度指数が140〜300」という本願発明の発明特定事項を満たすものであ るが,前記ウのとおり,実施例1ないし6は,本願発明の課題を解決できるもので あるのに対し,比較例1ないし3は,本願発明の課題を解決できないものであると されていることから,実施例1ないし6と比較例1ないし3の各潤滑油組成物の物 性の違いは,主として,含有する「潤滑油基油」の物性の違いによるものであるこ とが理解できる。 そして,【表1】ないし【表\3】によれば,本願発明の特許請求の範囲に含まれ る実施例1ないし5の「潤滑油基油」は,「本発明に係る潤滑油基油成分」である 基油1又は2を100質量%含有する潤滑油基油(実施例1,2,4),あるいは, 基油1又は2を70質量%と比較例2,3で用いた基油4を30質量%含有する潤 滑油基油(実施例3,5)であることから,「潤滑油基油」が「本発明に係る潤滑 油基油成分」を70〜100重量%含むものについて,「本発明に係る潤滑油基油 成分」と同じかそれに近い物性を有し,本願発明の課題を解決できることを理解す ることができる。
(4) 本願発明の課題を解決できると認識できる範囲
前記(3)によれば,本願明細書の記載に接した当業者は,「本発明に係る潤滑油基 油成分」を70質量%〜100質量%程度多量に含む,「本発明に係る潤滑油基油 成分」と同じかそれに近い物性の「潤滑油基油」を使用し,粘度指数向上剤を添加 して,100℃における動粘度を4〜12mm2/sとし,粘度指数を140〜30 0とした潤滑油組成物は,本願発明の課題を解決できるものと認識できる。 他方,本願発明は,「本発明に係る潤滑油基油成分以外の潤滑油基油成分として は,特に制限されない」ものであるところ(【0051】),一般に,複数の潤滑 油基油成分を混合して潤滑油基油とする場合,少量の潤滑油基油成分の物性から, 潤滑油基油全体の物性を予測することは困難であるという技術常識に照らすと,本\n願明細書の【0050】や【0054】の記載から,直ちに当業者において,「本 発明に係る潤滑油基油成分」の基油全量基準の含有割合が少なく,特許請求の範囲 に記載された「基油全量基準で10質量%〜100質量%」という数値範囲の下限 値により近いような「潤滑油基油」であっても,その含有割合が70質量%〜10 0質量%程度と多い「潤滑油基油」と,本願発明の課題との関連において同等な物 性を有すると認識することができるということはできない。しかるに,本願明細書 には,この点について,合理的な説明は何ら記載されていない。 (5) 本願発明のサポート要件適合性
本願発明は,前記(2)のとおり,「本発明に係る潤滑油基油成分」を,「基油全量 基準で10質量%〜100質量%」含有することが特定されたものであるが,前記 (4)のとおり,当業者において,本願明細書の発明の詳細な説明の記載から,「本発 明に係る潤滑油基油成分」の基油全量基準の含有割合が少なく,特許請求の範囲に 記載された「基油全量基準で10質量%〜100質量%」という数値範囲の下限値 により近いような「潤滑油基油」であっても,本願発明の課題を解決できると認識 するということはできない。 また,「本発明に係る潤滑油基油成分」の基油全量基準の含有割合が少なく,特 許請求の範囲に記載された「基油全量基準で10質量%〜100質量%」という数 値範囲の下限値により近いような「潤滑油基油」であっても,本願発明の課題を解 決できることを示す,本願の出願当時の技術常識の存在を認めるに足りる証拠はな い。 したがって,本願発明の特許請求の範囲は,本願明細書の発明の詳細な説明の記 載により,当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものという ことはできず,サポート要件を充足しないといわざるを得ない。

◆判決本文

◆関連事件です。平成28(行ケ)10043

◆平成28(行ケ)10057

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平成28(行ケ)10036  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年11月28日  知的財産高等裁判所(2部)

 無効理由なしとした審決が維持されました。分割要件、訂正要件、サポート要件など各種争われていますが、中心争点は明細書における発明の開示です。
 前記(1)によれば,本件明細書には,1)技術分野につき,【0002】に は,「この開示は全体的に,リンクされたアイテムを作成するための方法とデバイス に関する。より特定には,この開示は,リンクされた装着可能なアイテムを弾性バ\nンドから作成するための方法とデバイスに関する。」と記載され,2)背景技術につき, 【0003】には,「独自に色付けされたブレスレットまたはネックレスを作るため の材料を含むキットは,常にいくらかの人気を博してきた。しかしながら,そのよ うなキットは通常,異なる色に色付けされた糸およびビーズのような原材料を含む だけで,使用可能で望ましいアイテムを構\\築することは個人の技量と才能に依存す\n る。従って,独自の装着可能なアイテムを作成するための材料を提供するのみでな\nく,望ましく耐久性のある装着可能なアイテムを成功裡に作成することを多くの技\n量および芸術的レベルの人々にとって容易するする(原文ママ)ように構築を簡略化\nもするキットについての必要と願望がある。」と記載され,そして,これに対応して, 3)発明の概要として,【0004】には,「ブルニアンリンク(Brunnian link)とは,チ ェインを形成するために,別の閉じたループを捕捉するようにそれ自体上で二重化 された閉じたループから形成されたリンクである。そのようなリンクを望ましいや り方で形成するのに,弾性バンドが利用されることができる。例示的キットおよび デバイスは,複雑な構成のブルニアンリンク物品の作成を提供する。しかも,例示\n的キットは,ブルニアンリンク組み立て技術を使って独自の装着可能な物品の成功\nする作成を提供する。」と記載されるとともに,4)発明を実施するための形態の説明 の総括として,【0027】には,「従って,例示的キットおよび方法は,ブレスレ ット,ネックレスおよびその他の装着可能なアイテムの作成のためにブルニアンリ\nンクの多くの異なる組み合わせおよび構成の作成を提供する。しかも,例示的キッ\nトは,潜在的なブルニアンリンク作成の能力を更に作り出して拡張するために拡張\n可能である。更には,例示的キットは,そのようなリンクおよびアイテムの簡単な\nやり方での作成を提供して,様々な技量レベルの人々に独自の装着可能なアイテム\nを成功裡に作成することを許容する。」と記載されている。 これらの記載によれば,本件明細書には,ブレスレットやネックレスなどの「独 自の装着可能なアイテム」を作成するキットは,通常,異なる色に色付けされた糸\n及びビーズのような原材料を含むだけであり,アイテムを構築することは個人の技\n量と才能に依存するため,このように材料を提供するのみでなく,アイテムを成功\n裡に作成することを多くの技量及び芸術的レベルの人々にとって容易にするように 構築を簡略化もするキットについての必要と願望があったことに鑑み,アイテムを\nブルニアンリンクアイテムとし,ブルニアンリンク組み立て技術を使ってブルニア ンリンクアイテムを簡単な方法で作成し,様々な技量レベルの人々にブルニアンリ ンクアイテムを成功裡に作成することを許容するキットを提供することが記載され ていると認められる。
イ また,本件明細書において,発明を実施するための形態として,次の(ア) 〜(エ)といった複数のキットが記載されているととともに,前記アのとおり,いずれ のキットによっても,ブルニアンリンクアイテムを簡単な方法で作成し,様々な技 量レベルの人々にブルニアンリンクアイテムを成功裡に作成することを許容するこ とが記載されている(【0027】)
(ア) 単一の列に規定された複数のピン26を有し,各ピン26に,リンク の作成中にゴムバンドの誤った開放を防止するために外向きにフレアー状になった フランジ状上部38と,ピン26の間でゴムバンドの端部を動かすために利用され るフックツール16の挿入のための間隙を提供する前方アクセス溝40が形成され たピンバー14を,3つ横並びに揃えてベース12上にサポートさせて一体構造と\nしたキット(【0009】〜【0015】,【0020】〜【0022】)
(イ) (ア)のキットに対しピンバー14を追加して,例えば5つのピンバー1 4を横並びに揃えてベース12上にサポートさせて一体構造としたキット(【001\n9】)
(ウ) 6つのピンバー14を横並びに揃えてベーステンプレート66上にサ ポートさせて一体構造としたキット(【0024】)
(エ) ベーステンプレート66のサイドに形成されたジョイント80,82 を用いて,例えば2つの(ウ)のキットを縦方向あるいは横方向に連結させて一体構造\nとしたキット(【0025】及び【0026】)
ウ そして,いずれのキットも,複数のピンバー14をベース12ないしベ ーステンプレート66上にサポートさせて一体構造としたものは,ピンバー14及\nびベース12ないしベーステンプレート66が一体をなして複数のピン26をサポ ートする構造にほかならず,このことは,段落【0011】に,「ピン26を望まし\nい揃えでサポートするために,・・・1つまたはいくつかのピンバー14がいくつか のベース12に載置されている。」との記載,すなわち,「ピン26」をサポート対 象とする旨の記載があることからも明らかである。そして,ベーステンプレート6 6も「ベース」の概念であると認められることから,いずれのキットも,複数のピ ンバー14をベース12ないしベーステンプレート66上にサポートさせて一体構\n造としたものは,ブルニアンリンクアイテムを簡単な方法で作成し,様々な技量レ ベルの人々にブルニアンリンクアイテムを成功裡に作成するための,複数のピンが (ピンバーの本体部を介して)ベースに(間接的に)サポートされた構造のもので\nあると理解できる。 そうすると,いずれのキットも,特に「ピンバー」の限定がない,本件発明1の 「一連のリンクからなるアイテムを作成するための装置であって,/ベースと,/ ベース上にサポートされた複数のピンと,を備え,/前記複数のピンの各々は,リ ンクを望ましい向きに保持するための上部部分と,当該複数のピンの各々の前面側 の開口部とを有し,複数のピンは,複数の列に配置され,相互に離間され,且つ, 前記ベースから上方に伸びている/装置。」,又は,本件発明6の「一連のリンクか らなるアイテムを作成するためのキットであって,/リンクを望ましい向きに保持 するための上部部分と,複数のピンの各々の前面側の開口部を含み,ベースにより お互いに対してサポートされた複数のピンを備え,/前記複数のピンは,複数の列 に配置され,相互に離間され,且つ,前記ベースから上方に伸びている,/キット。」 の構成を充足するものであり,いずれのキットも本件発明の実施形態であると認め\nられる。
エ 以上によれば,本件発明の課題は,審決が認定するとおり,個人の技量 に依存することなく,様々な技量レベルの人々に,「ブルニアンリンクアイテム」を 簡単に作成するキットを提供することにあると認められる。
オ そして,本件訂正により,本件明細書は訂正されておらず,前記ア〜エ に記載の点は,本件訂正発明についても該当するものと認められる。 したがって,本件訂正によって本件発明の課題が変更されたとは認められないか ら,これを根拠とする原告の主張は理由がない。
カ これに対し,原告は,本件訂正の前後を問わず,本件発明及び本件訂正 発明〔全部〕の本質は,「ベースとピンバーを様々な向きに組み合わせることにより, 無尽のバリエーションの編み物製品を容易に作成することができる編み機を提供す ること」にあるが,仮に,本件訂正後の発明の本質が審決認定のとおり「個人の技 量に依存することのない『ブルニアンリンク』作成方法を『提供』する」ことに発 明の本質があるのであれば,本件訂正により発明の本質が変更され,特許請求の範 囲を実質的に変更するものであると主張する。 しかしながら,前記のとおり,本件明細書の背景技術(【0003】)には,「独自 に色付けされたブレスレットまたはネックレスを作るための材料を含むキット は,・・・原材料を含むだけで,使用可能で望ましいアイテムを構\\築することは個人 の技量と才能に依存する」という課題があり,「望ましく耐久性のある装着可能\\なア イテムを成功裡に作成することを多くの技量および芸術的レベルの人々にとって容 易」となるように,「構築を簡略化もするキットについての必要と願望がある」こと\nのみが記載されており,原告主張の編み物製品のバリエーションに関する課題(バ リエーションに乏しいこと)は記載されていない。また,発明の概要についてみて も,その冒頭(【0004】)には,ブルニアンリンクの説明や,その作成に弾性バ ンドが利用可能であることに続けて,「例示的キットは,ブルニアンリンク組み立て\n技術を使って独自の装着可能な物品の成功する作成を提供する。」として,「原材料\nを含むだけで,使用可能で望ましいアイテムを構\\築することは個人の技量と才能に\n依存する」という前記課題を解決したことが記載され,原告主張の編み物製品のバ リエーションについて記載されているものではない。 そうすると,本件明細書には,発明の概要に「ベースとピンバーは,完成された リンクの向きの無尽のバリエーションを提供するように,様々な組み合わせおよび 向きに組み立てられ得る。」と記載され(【0005】),また,ベース12ないしベ ーステンプレート66とピンバー14との組合せにより,前記イ(ア)〜(エ)のいず れのキットをも構成し得ることが記載されていることを考慮しても,これらは拡張\n的な機能であって,ベース12とピンバー14を様々な向きに組み合わせることに\nより,無尽のバリエーションを提供することは,本件明細書において必須の技術事 項であるとは認められない。

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平成27(行ケ)10226  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年11月24日  知的財産高等裁判所

 発明未完成、明確性違反、実施可能性違反として拒絶された出願について、審決取消訴訟が提起されました。知財高裁(第1部)は、実施可能要件違反として審決を維持しました。
 ア 前記(2)の認定事実によれば,本願明細書の実施例(例1)では,本願マトリ ックスを通過した白昼光に対し蒸留水を24時間常温で暴露する実験を行ったとこ\nろ,水が同期化したことが認められ,この点については当事者間に争いがないとこ ろである。しかしながら,上記実験は,実験条件の詳細が明らかではなく,本願明 細書の表1における「基準」に関する実験条件も具体的に記載されていないことか\nらすると,本願マトリックスを使用した場合とこれを使用しなかった場合における 比較実験を行ったものと認めることはできない。のみならず,水の同期化の理論的 なメカニズムは十分に解明されていない上,特開2004−2514985)公報(乙 2の【要約】,【0006】,【0011】)によれば,かえって,マイクロウェーブ,超音波,マイクロ波超音波,赤外線(遠赤外線,中間赤外線,近赤外線を含む。)な どを使用することによって,水分子の回転運動を促進し,本願水特性のように,凝 固点における水温をマイナス10度以下に降下させることが可能になるとされてお\nり,しかも,上記近赤外線(780nm〜2500nm)は,本願発明にいう入射光の 範囲(360nm〜3600nm)に含まれるのであるから,本願マトリックスを通過 しない入射光であっても水を一定程度同期化し得ることが認められ,水の同期化が 本願マトリックス以外の実験条件によって生じた可能性も残るといわざるを得ない。\nそうすると,本願明細書にいう上記実験は,水が同期化された原因が,その他の実 験条件によるものではなく,専ら入射光が本願マトリックスを通過したことによる ことまでを立証するものとはいえない。 したがって,立証事項Aが立証されたということはできない。
イ また,前記(2)の認定事実によれば,本願明細書の実施例(例14)では,男 性2名及び女性2名に対し,本願マトリックスを耳鳴り症状を示す耳の後部の頭蓋 基底部に,皮膚に穏やかな接着剤で局所的に配置する実験を行ったところ,このう ち3名の耳鳴り症状が24時間以内に消失し,1名の耳鳴り症状が1週間以内に消 失したことが認められる。しかしながら,上記実験における被験者は僅か4名にと どまり,しかも本願マトリックスを使用しない場合との比較試験を行うものではな いことからすれば,耳鳴り症状が自然治癒又はいわゆるプラセボ効果(乙11)に より消失した可能性も残るというほかない。のみならず,証拠(乙6ないし9)及\nび弁論の全趣旨によれば,キセノンが発する光のうち近赤外線を利用した耳鳴り治 療法(いわゆるキセノン光線療法)が現に実施されていることが認められることか らすれば,上記実施例における実験においても,被験者の耳の後部に照らされた光 が耳鳴り治療に一定程度有効に作用した可能性も残ることが認められる。したがっ\nて,本願明細書にいう上記実験は,耳鳴り症状が本願マトリックス自体によって消 失したものであることまでを立証するものとはいえない。 したがって,立証事項Bが立証されたものとはいえない。
ウ 以上によれば,本件立証事項が立証されたものと認めることはできず,本願 明細書は,当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載\nたものとはいえない。
(4) 原告の主張について
ア 原告は,本願明細書にいう上記各実験結果はA宣誓書によって裏付けられて いる旨主張する。しかしながら,本願マトリックスを使用した実験がA教授の研究 室で行われたことはうかがわれないことからすれば,A宣誓書は,本願明細書にい う実験によって同期化された水の性質が,A教授の研究室での実験結果と同一であ るというにとどまり,水を同期化するとされる入射電磁エネルギーが本願マトリッ クスによって形成されることまでを裏付けるものとはいえない。したがって,原告 の上記主張は,A宣誓書を正解しないものであって,採用することができない。
イ 原告は,人に対する治療を目的とする発明に対し,特許出願前のごく僅かな 期間に厳格な実験を行うことを求めるのは困難を強いるものであって現実的ではな く,また,本願明細書の耳鳴り治療に関する実験はA宣誓書によっても裏付けられ ている旨主張する。しかしながら,比較実験の被験者となる耳鳴り患者の人数が少 ないことを認めるに足りる証拠はなく,耳鳴り症状の比較実験の方法についても, 例えば耳鳴り症状を示す両耳のうち片耳に限り本願マトリックスを配置すれば足り るのであるから,格別困難を強いるものとはいえず,原告の主張は,その前提を欠 く。また,A宣誓書は,「例14は,パイロット臨床実験におけるTGMの適用が4 人のヒト被験者における耳鳴り症状に対して有利な効果を有したことを実証してい る」(甲11〔53頁4行目ないし5行目〕参照)として,単に実験結果を追認する ものにすぎず,A教授の研究室で本願マトリックスによる耳鳴り症状の改善に関す る実験が行われていない以上,A宣誓書によっても本願マトリックスによって耳鳴 り症状の改善効果があることを認めることはできない。さらに,原告主張に係る報 告書(甲22)における実験も,上記(3)イで説示するところと同様に,比較試験を 行うものではなく,本件立証事項を裏付けるものとして適切ではない。したがって, 原告の主張は,その裏付けを欠くというほかなく,採用することができない。 (5) まとめ
上記によれば,本願明細書は当業者が本願発明の実施をすることができる程度に 明確かつ十分に記載したものではないとした審決の判断に誤りはなく,原告の主張\nする取消事由3(特許法36条4項15)〔実施可能要件〕に関する判断の誤り)は\n理由がない。

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平成28(行ケ)10025  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年11月8日  知的財産高等裁判所

 審決は、請求項1,2は、製造方法が記載されているので、PBPクレームには該当し、明確性違反と判断しました。裁判所は、製法が記載されていても、この場合は、PBPクレームには該当しないと判断されました。ただ、他の請求項についての明確性違反が残っているので、結論に影響しないとして、拒絶審決が維持されました。
 そこで検討するに,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその 物の製造方法が記載されている場合(いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・ クレームの場合)において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項 2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは, 出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能\ であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると 解するのが相当であるところ(最高裁判所第二小法廷平成27年6月5日判 決・民集69巻4号700頁参照),本願補正発明1及び2に係る前記の各 記載は,いずれも,形式的にみれば,経時的な要素を記載するものといえ, 「物の製造方法の記載」がある,すなわち,プロダクト・バイ・プロセス・ クレームに該当するということができそうである。 しかしながら,前記最高裁判決が,前記事情がない限り明確性要件違反に なるとした趣旨は,プロダクト・バイ・プロセス・クレームの技術的範囲は, 当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定\nされるが,そのような特許請求の範囲の記載は,一般的には,当該製造方法 が当該物のどのような構造又は特性を表\しているのかが不明であり,権利範 囲についての予測可能\性を奪う結果となることから,これを無制約に許すの ではなく,前記事情が存するときに限って認めるとした点にある。 そうすると,特許請求の範囲に物の製造方法が記載されている場合であっ ても,前記の一般的な場合と異なり,当該製造方法が当該物のどのような構\n造又は特性を表しているのかが,特許請求の範囲,明細書,図面の記載や技\n術常識から明確であれば,あえて特許法36条6項2号との関係で問題とす べきプロダクト・バイ・プロセス・クレームに当たるとみる必要はない。
この点,本願補正発明1に係る特許請求の範囲(請求項1)は,1)透光性 あるシート・フィルムを,80〜100cm長さの稲育苗箱の巻取り開始縁 以外の3方の縁からはみ出させる,2)これを稲育苗箱底面に根切りシートと して敷く,3)その上に籾殻マット等の軽い稲育苗培土代替資材をはめ込む, 4)この表面に綿不織布等を敷いて種籾の芒,棘毛を絡ませて固定し,根上が\nりを防止して,覆土も極少なくする,5)1)ないし4)のとおり育苗した軽量稲 苗マットを,根切りシートと一緒に巻いて,細い円筒とする,という手順を 示すことにより,「内部導光ロール苗」の構造,特性を明らかにしたものと\n理解することが十分に可能\である。 また,本願補正発明2に係る特許請求の範囲(請求項2)も,1)80〜1 00cm長さの稲育苗箱にはめ込んだ,成型した籾殻マット等の軽い稲育苗 培土代替資材の表面に,2)綿不織布等を敷いて種籾の芒,棘毛を絡ませて固 定し,根上がりを防止し,覆土も極少なくして育苗した,軽量稲苗マットに, 3)透光性あるシート・フィルムを,稲育苗箱の巻取り開始縁以外の3方の縁 からはみ出させて被せ一緒に巻いて,細い円筒とする,というように,やは り手順を示すことより,「内部導光ロール苗」の構造,特性を明らかにした\nものということができる。 そうすると,本願補正発明1及び2に係る前記特定事項は,いずれも,物 の構造,特性を明確に表\しており,発明の内容を明確に理解することができ るものである。 したがって,本願補正発明1及び2は,いずれも,特許法36条6項2号 との関係で問題とされるべきプロダクト・バイ・プロセス・クレームとみる 必要はなく,この点を理由に請求項の記載が明確でない(不可能・非実際的\n事情がなく,同号の要件を満たさない)とした本件審決の判断は誤りである。
(3) 以上によれば,取消事由1に関する原告の主張は正当であり,これに反す る被告の主張は採用できない(ただし,この点に関する本件審決の判断の誤 りが,本件審決の結論に影響を及ぼすものでないことについては,後記4の とおりである。)。

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平成26(行ケ)10155  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年10月19日  知的財産高等裁判所(第2部)

 サポート要件違反なしとした審決が取り消されました。裁判所は原告のした実験については言及しませんでした。
 上記の実施例と比較例によれば,食塩濃度9.0w/w%の場合には,窒素濃度 が本件発明1の範囲に含まれる1.94〜2.15w/v%の範囲であれば,本件 発明1の範囲から外れるものに比べて,塩味が向上すること,また,苦みはカリウ ム濃度が上限の3.7w/w%であっても苦み3に抑えられることが理解できる。 しかしながら,本件発明1の窒素濃度の範囲内で,窒素濃度がより高くなると, 塩味が強くなる,苦みが抑えられるという傾向があるとは認められない。 また,窒素/カリウムの重量比のみが本件発明1の範囲から外れる例は記載され ていないから,窒素/カリウムの重量比が官能評価に与える影響を,直ちに理解す\nることはできない。
・・・
e 以上によれば,本件発明1に関し,本件明細書の実施例・比較例か ら,課題を解決できることが認識できることが直接示されているのは,食塩濃度が 9.0w/w%の場合のみである。
・・・
以上によれば,本件発明1のうち,少なくとも食塩が7w/w%である減塩醤油 について,本件出願日当時の技術常識及び本件明細書の記載から,本件発明1の課 題が解決できることを当業者は認識することはできず,サポート要件を満たしてい るとはいえない。
・・・
ア 被告は,本件明細書の発明の詳細な説明に「本発明の減塩醤油類の食塩 濃度は・・・7〜9w/w%であることが好ましく」(【0009】)と記載され,具 体的には,実施例において,数値範囲を満たす減塩醤油が,塩味が強く感じられ, 味が良好であって苦みも低減されることが記載されているから,サポート要件違反 はない旨主張する。 しかしながら,本件発明のうち,当該発明の課題を解決できることを具体的に示 しているのは,上記(1)エのとおり,食塩濃度が9w/w%の場合のみである。食塩 濃度が7w/w%まで低下した場合の塩味や苦みを推認するための技術的な根拠が, 本件明細書に記載されておらず,また,どの程度になるかということについての技 術常識もない以上,【0009】の「7〜9w/w%であることが好ましく」という 一般的な記載のみをもって,食塩濃度の全範囲において発明の課題を解決できるこ とについての技術的な裏付けある記載があると認めることはできない。

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平成27(行ケ)10176  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年10月12日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、請求項1,2及び4の数値範囲について、実施可能要件を満たしていないと判断しました。また、請求項3について、審判では主張していなかったサポート要件は、本来審理の対象とはならないが、念のため判断するとして、最終的にはサポート要件を満たしていると判断しました。\n
 (カ) 以上によれば,本件出願日当時,パルスレーザー蒸着法により,アモ ルファスのInGaO3(ZnO)m(m=1〜4)を形成することが可能であるこ\nとは確認できるものの(甲3,4,6,7),mが5以上の場合は開示されておらず, mが5以上のZnOに近い組成ではアモルファス相は得られないとの指摘もされて いた(甲3)から,当業者は,mが5以上の薄膜の作成は極めて困難と認識してい たものと認められる。
エ そして,本件明細書には,かかる当業者の認識にもかかわらず,mが5 以上50未満であるアモルファスの本件化合物薄膜を作成する方法についての記載 はない。
(3) したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,mが5以上50未 満の整数である場合を含む本件発明1,2及び4について,当業者が,アモルファ スの本件化合物薄膜を形成することができる程度に明確かつ十分に記載されたもの\nであるということはできないから,実施可能要件を欠くものと認められる。\nそうすると,その余の点について検討するまでもなく,取消事由3には,理由が ある。
(4) これに対して,被告は,本件発明は,InGaO3(ZnO)m膜につい て電界効果トランジスタの活性層に適するという未知の属性を発見し,その属性は アモルファスでも奏されることを見出したものであり,mの値の数値限定にのみ意 義のある発明ではないから,透明薄膜電界効果型トランジスタという物品の活性層 を構成する材料についてmの値の全範囲にわたって物品を作製する実施例の記載が\n必要であるということにはならない,と主張する。 しかし,被告の主張するとおり,本件発明がmの値の数値限定にのみ意義がある のではないとしても,本件発明の請求項の記載には,mが5以上のアモルファス薄 膜も含まれているから,かかるアモルファス薄膜を形成することができる程度の記 載が,本件明細書に求められるというべきである。しかも,上記(2)のとおり,本 件出願日当時には,mが5以上の組成ではアモルファス相は得ることが極めて困難 であるという当業者の認識があったにもかかわらず,本件明細書にはmが5以上5 0未満であるアモルファスの本件化合物薄膜の作成方法についての記載がない以上, 本件発明1,2及び4について,当業者が,アモルファスの本件化合物薄膜を形成 することができる程度に,その作成方法が明確かつ十分に記載されたものであると\nいうことはできない。
・・・・
(2) 原告は,本件発明3に関しては,本件明細書の発明の詳細な説明に記載さ れている実施例は,単結晶のInGaO3(ZnO)5に関するものたった 1 つであ り,本件明細書の発明の詳細な説明には,MがIn,Fe,Alの場合の本件化合 物も,m=5以外の場合の本件化合物も開示されていないから,サポート要件を欠 く,と主張する。これに対し,被告は,原告は上記主張を無効審判請求時にしていなかったから,本件訴訟において主張するのは不適法である,と反論する。
(3)ア 特許法は,特許無効の審判について,そこで争われる特許無効の原因が 特定されて当事者らに明確にされることを要求し,審判手続においては,上記特定 された無効原因をめぐって攻防が行われ,かつ,審判官による審理判断もこの争点 に限定してされるという手続構造を採用していることが明らかである。したがって,\n特許無効審判の審決に対する取消しの訴えにおいて,その判断の違法が争われる場 合には,専ら審判手続において現実に争われ,かつ,審理判断された特定の無効原 因に関するもののみが審理の対象とされるべきである(最大判昭和51年3月10 日,民集30巻2号79頁参照)。
イ 本件において,審判段階では,原告が主張していた本件発明3に関する 無効理由6の概要は,以下のとおりである(甲40)。 本件明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載に接した当業者は,高温で反応性 固相エピタキシャル成長させて形成した本件化合物単結晶薄膜を,活性層に用いる と,ノーマリーオフの透明薄膜電界効果型トランジスタを得ることができると認識 する。一方,本件発明3には,YSZなどの酸化物単結晶基板上のZnOエピタキ シャル薄膜上に,高温である800℃以上,1600℃以下で反応性固相エピタキ シャル成長して形成した本件化合物単結晶薄膜を,活性層に用いたことが規定され ていない。そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は, 本件発明3がノーマリーオフになると認識できないというべきである。
ウ そうすると,原告が本件訴訟において取消事由4と主張する,本件明細 書の発明の詳細な説明には,MがIn,Fe,Alの場合の本件化合物も,m=5 以外の場合の本件化合物も開示されていないことが,サポート要件を欠くというべ きか否かについては,審判においては現実に争われたものではなく,審理判断され たものではないといわざるを得ない。
(4) これに対して,原告は,サポート要件があることの立証責任は特許権者で ある被告にあるから,審判請求人である原告はサポート要件違反があるという争点 を指摘すれば足り,取消事由4に係る主張は不適法ではない,と主張する。 しかし,上記(3)アのとおり,審決取消訴訟における審理範囲は,立証責任の所在 ではなく,実際に審理判断された特定の無効原因といえるか否かによって画される のである。原告の主張には,理由がない。
(5) 以上のとおり,原告の取消事由4の主張は,主張自体失当であるが,念の ため,原告主張の理由により,本件発明3はサポート要件を欠くかについて判断す る。
ア 本件明細書の発明の詳細な説明には,単結晶の本件化合物薄膜を形成す る方法について,「YSZ(イットリア安定化ジルコニア)基板上に育成したZnO 単結晶極薄膜上に,アモルファスのホモロガス化合物薄膜を堆積し,得られた多層 膜を高温で加熱拡散処理する「反応性固相エピタキシャル法」により,ホモロガス 単結晶薄膜を育成する」(【0007】),「上記のホモロガス単結晶薄膜の製造方法と 同様に,ZnO薄膜上にエピタキシャル成長した複合酸化物薄膜を加熱拡散する手 段を用いる」(【0008】)と記載され,ZnO薄膜上に形成する本件化合物薄膜に ついては,「MBE法,パルスレーザー蒸着法(PLD法)等により成長させる。」 (【0019】),「得られた薄膜は,単結晶膜である必要はなく,多結晶膜でも,ア モルファス膜でも良い。」(【0020】)との記載がある。 そして,実施例1として,単結晶InGaO3(ZnO)5薄膜(m=5の場合) を活性層としたトップゲート型MISFET素子の作製方法が記載されている(【0 028】〜【0031】,図1〜4)。 エ したがって,本件発明3は,サポート要件を満たしているものと認めら れ,いずれにしても,取消事由4には,理由がない。

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平成25(ワ)3167等  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年8月31日  東京地方裁判所

公知技術と同一であるので新規性なし、さらにサポート要件違反もあるとして、被侵害と判断されました。訂正の再抗弁も否定されました。
 これを本件についてみると,原告の主張によれば,本件発明の構成要件C\n及びDの「上部,下部,左(右)側部」とは「上部,下部又は左(右)側 部」を意味するのであり,左右側面部の裏面において一過性の粘着剤が塗布 される位置を,当該分離して使用するものの上部,下部又は左(右)側部の 内側のいずれか及び上部,下部又は左(右)側部の外側に該当する部分のい ずれかであればよいというのである。 これに対し,本件明細書等の発明の詳細な説明の欄には,一過性の粘着剤 を塗布する部分の具体例として,分離して使用するもの4と中央面部1の上 部境界,下部境界,左側部(右側部)境界の各境界の内側近傍と外側近傍に 接着剤を塗布したものしか記載されていない。そのため,特許請求の範囲に 記載された発明は,発明の詳細な説明及び図面に記載されたものより広い。 しかるに,このように,本件明細書等の発明の詳細な説明の欄を超えて, 一過性の粘着剤が塗布される位置を原告の上記主張のとおりでよいとすると, このうちどの部分に粘着剤を塗布すれば「葉書,チケット,クーポン券等の 分離して使用するものを広告等の印刷物より切り取る必要がなく,かつその 周囲に切り込みが入っているにもかかわらず,広告等の印刷物に付いていて 紛失させることなく,しかも手間がかからず葉書,チケット,クーポン券等 の分離して使用するものを利用することが出来る印刷物を提供すること」 (本件明細書等の段落【0006】)という本件発明の課題を解決すること ができ,また「印刷物に付いている葉書,チケット,クーポン券等を切り取 ろうとする意思を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にすることにな る。」(同段落【0012】)の作用効果を奏することになるのか,必ずし も明らかとはいえない(乙B11及び乙B12も参照)。 したがって,当業者において,本件発明の課題解決手段や,発明を理解す るための技術的事項が,発明の詳細な説明に記載されているものとはいい難 い。
(3) 以上によれば,本件発明は特許法36条6項1号に規定するサポート要件 を充たしていないから,本件特許は同法123条1項4号により特許無効審 判により無効にされるべきものである。
・・・・
以上によれば,乙B1文献には引用発明1'が記載されており,このうち 「情報記録体」の具体例として「レスポンス用葉書」が記載されているに等 しく,引用発明1'は本件訂正発明の構成要件A\ないしI\の全てを備えて\nいるから,引用発明1’は本件訂正発明と同一である。なお,この点に関し て原告は,引用発明1'と本件訂正発明はさらに相違点があると主張するが (相違点1−1及び1−2),前記2(4)の争点(3)ア(無効理由1)におい て説示したところに照らし,いずれも採用することができない。 そうすると,本件訂正発明は引用発明1'と同一であって,なお新規性を 欠くものであるから,本件訂正に係る原告の再抗弁は,前記(1)で説示した 3)の要件を充たしていないというほかない。

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平成27(行ケ)10245  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年8月24日  知的財産高等裁判所

 新規事項違反なし、サポート要件違反なしとした審決が取り消されました。
 当初明細書等の記載には,前記1(1)のとおり,便器と便座との間隙を形成する手 段としては便座昇降装置が記載されているが,他の手段は,何の記載も示唆もない。 すなわち,補正前発明は,便器と便座との間隙を形成する手段として,便座昇降 装置のみをその技術的要素として特定するものである。 そうすると,便座と便器との間に間隙を設けるための手段として便座昇降装置以 外の手段を導入することは,新たな技術的事項を追加することにほかならず,しか も,上記のとおり,その手段は当初明細書等には記載されていないのであるから, 本件補正は,新規事項を追加するものと認められる。
(3) 被告の主張について
1) 被告は,当初明細書等に接した当業者にとって,便器と便座との間に拭き取 りアームを移動させるための間隙さえ形成されていればよく,その手段が当初明細 書等に例示されたもの限られないということは,自明の事項であると主張する。 しかしながら,便器と便座との間の間隙を形成する手段が自明な事項というには, その手段が明細書に記載されているに等しいと認められるものでなければならず, 単に,他にも手段があり得るという程度では足りない。上記のとおり,当初明細書 等には,便座昇降装置以外の手段については何らの記載も示唆もないのであり,他 の手段が,当業者であれば一義的に導けるほど明らかであるとする根拠も見当たら ない。
2) また,被告は,公開特許公報には,便座昇降装置以外の手段で便器と便座と の間に間隙を設ける技術が開示されているから,当初明細書等に便座昇降装置以外 の手段で便器と便座との間に間隙を設けることは,当初明細書等に実質的に記載さ れていると主張する。 しかしながら,上記の自明な事項の解釈からいって,他に公知技術があるからと いって当該公知技術が明細書に実質的に記載されていることになるものでないこと は,明らかである。のみならず,上記公報に記載された技術は,容器6と座部3と の間に介護者が手を入れられる隙間を設けることを開示しているだけであり,便器 と便座との間に機械的な拭き取りアームが通過する間隙を設けることとは,全く技 術的意義を異にしている。
3) 被告の上記各主張は,いずれも採用することはできない。
・・・
3 取消事由2(サポート要件充足の有無に対する判断の誤り)について
上記2に説示のとおり,当初明細書等には,便座昇降装置により便座が上昇され た際に生じる便器と便座との間の間隙以外の間隙を設ける手段の記載はないところ, 本件発明に係る本件補正後の明細書及び図面(以下「本件明細書」という。甲4。) は,当初明細書等の発明の詳細な説明及び図面と同旨であり,本件明細書にも,便 座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間の間隙以外の間隙 を設ける手段の記載はない。そして,本件発明15のような機械式拭き取り装置の 設置を前提として,便器と便座との間の間隙をどのように形成するかに関して何ら かの技術常識があるとは認められない。 そうすると,便器と便座との間の間隙を形成するに際して,便座昇降装置を用い るものに限定されない本件発明15は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載した ものではなく,サポート要件を充足しないものである。したがって,本件発明15 の発明特定事項を全て含む本件発明23,本件発明25ないし本件発明29,及び 本件発明30(15)もまた,サポート要件を充足しないものである。 以上から,審決のサポート要件充足の有無に対する判断には,誤りがある。

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平成27(行ケ)10148  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年8月3日  知的財産高等裁判所

 コンピュータにおける処理について、実施可能性違反とした審決が維持されました。最後に審判手続きについて付言がなされています。
 本願明細書には,「複数のプロセッサコア」という分散された環境に備えられた 「プレディケート予測器」において行われる「プレディケート命令の出力」の「予\ 測」処理の内容に関し,【0026】ないし【0029】の記載があり,ここには, 「概略プレディケート経路情報」を用いて,2つの履歴レジスタ,すなわち,コア ローカル履歴レジスタとグローバル分岐履歴レジスタを生成し,それを用いて「プ レディケート命令の出力」の予測を行うこと(【0026】,【0027】),並\nびに,上記グローバル分岐履歴レジスタに対応するグローバル履歴レジスタとして, 「コアローカルプレディケート履歴レジスタ」を用いる実施例(【0028】,図 6A)及び「グローバルブロック履歴レジスタ」を用いる実施例(【0029】, 図6B)が記載されている。 しかし,上記記載からは,「概略プレディケート経路情報」からコアローカル履 歴レジスタとグローバル分岐履歴レジスタという二つの履歴レジスタをどのような 処理により分けて生成するのか,また,当該二つの履歴レジスタをどのような処理 により「プレディケート命令の出力」の「予測」において使い分けるのか,さらに,\n上記二つの履歴レジスタを用いた「プレディケート命令の出力」の「予測」を信頼\n性の高く正確なものとするために「概略プレディケート経路情報」として具体的に どのような内容が必要とされるのか,把握することはできない。 したがって,本願明細書の上記記載から,「複数のプロセッサコア」という分散 された環境に備えられた「プレディケート予測器」において,信頼性の高いプレデ\nィケートの正確な予測に役立ち得るプレディケート履歴を生成し,コア間の通信を\n最小にするために,「概略プレディケート経路を表す情報」に基づく「予\測」の処 理が具体的にどのように行われているのか明らかであるということはできない。 そして,当業者にとって,本願の優先日当時の技術常識に基づき,「複数のプロ セッサコア」という分散された環境に備えられた「プレディケート予測器」におい\nて,信頼性の高いプレディケートの正確な予測に役立ち得るプレディケート履歴を\n生成し,コア間の通信を最小にするために,「概略プレディケート経路を表す情\n報」に基づいて行われる「予測」の処理内容が自明であることを認めるに足りる証\n拠はない。 そうすると,本願明細書の発明の詳細な説明は,当業者が,「複数のプロセッサ コア」という分散された環境に備えられた「プレディケート予測器」において,信\n頼性の高いプレディケートの正確な予測に役立ち得るプレディケート履歴を生成し,\nコア間の通信を最小にするために,「概略プレディケート経路を表す情報」に基づ\nいて行われる「予測」の処理内容を理解することができるように記載されていると\nいうことはできない。 エ 以上によれば,本願明細書の発明の詳細な説明は,「複数のプロセッサコ ア」という分散された環境において,「プレディケート予測器」が「概略プレディ\nケート経路を表す情報」に基づいて「プレディケート命令の出力を予\測する」とい う処理を行うことにより,信頼性の高いプレディケートの正確な予測に役立ち得る\nプレディケート履歴を生成することができ,同時にコア間の通信を最小にするとい う作用効果を奏するコンピューティングシステムを製造し,使用することができる 程度に記載されていない。 したがって,本願明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本願発明1の実施をす ることができる程度に明確かつ十分に記載したものということはできない。\n
(3) 原告の主張について
ア 原告は,本願明細書には,1)対象のアーキテクチャは,EDGEアーキテク チャのようなハイブリッドなデータフローのアーキテクチャであること,2)コンパ イラが,各ブロックの分岐命令に,プログラム内での分岐命令の順序にしたがって, 3ビットの「終了コード」(「出口コード」ともいう。)を割り当てること,3) 「概略プレディケート経路情報」は,コンパイラによって,分岐命令に符号化され, 特定のブロックの具体的な分岐を識別可能であること,4)予測器が,分岐命令に符\n号化された「概略プレディケート経路情報」を用いてプレディケート予測を行うこ\nとが記載されているところ,EDGEアーキテクチャにおいて,分岐命令に出口を 識別する例えば3ビットの識別子を割り当て,それを分岐命令に符号化することは, 本願の優先日前に技術常識であったから,当業者であれば,本願の「概略プレディ ケート経路情報」は,出口を識別する例えば3ビットの「終了コード」として分岐 命令に符号化された情報であると理解し,コンパイルのタイミングでコンパイラに よって,分岐命令の分岐先を,例えば3ビットの終了コードで表した形式で,分岐\n命令に符号化された情報であり,予測器によってプレディケート予\測に用いられる 情報であると理解する旨主張する。 イ しかし,原告が挙げる甲9(「Analysis of the TRIP S Prototype Block Predictor」平成21年4月)及 び甲10(「Distributed Microarchitectural Protocols in the TRIPS Prototype Proc essor」平成18年12月)は,EDGEアーキテクチャの一例である「TR IPS」という特定のアーキテクチャについて,「分岐命令に出口を識別する例え ば3ビットの識別子を割り当て,それを分岐命令に符号化すること」を記載したも のにすぎず,EDGEアーキテクチャ一般について記載したものではない。したが って,上記証拠(甲9,10)から,本願の優先日前に「EDGEアーキテクチャ において,分岐命令に出口を識別する例えば3ビットの識別子を割り当て,それを 分岐命令に符号化すること」が技術常識であったと認めるに足りず,他にこれを認 めるに足りる証拠はない。 ウ また,前記イの点を措き,仮に当業者において,本願明細書の「概略プレデ ィケート経路情報」は,出口を識別する例えば3ビットの「終了コード」として分 岐命令に符号化された情報であると理解し,コンパイルのタイミングでコンパイラ によって,分岐命令の分岐先を,例えば3ビットの終了コードで表した形式で,分\n岐命令に符号化された情報であり,予測器によってプレディケート予\測に用いられ る情報であると理解したとしても,本願発明1の「概略プレディケート経路を表す\n情報」に相当する「概略プレディケート経路情報」について,1)そのデータ形式, 2)その形式に「終了コード(出口コード)」という,本願明細書全体の記載から見 ても内容が不明なコードが関連していること,3)分岐命令への符号化という処理が コンパイラによってされること,4)予測器によるプレディケート予\測に用いられる ことが把握できるにすぎず,「出口を識別する例えば3ビットの「終了コード」と して分岐命令に符号化された情報」が,「プレディケート命令の出力」の「予測」\nを信頼性が高く,正確なものとする上で,具体的にどのような内容のものであるの かを把握することはできない。 したがって,「複数のプロセッサコア」という分散された環境に備えられた「プ レディケート予測器」において,信頼性の高いプレディケートの正確な予\測に役立 ち得るプレディケート履歴を生成し,コア間の通信を最小にするために,「概略プ レディケート経路を表す情報」に基づく「予\測」の処理が具体的にどのように行わ れているのかが,明らかであるということはできない。
(4) 小括
以上によれば,本願明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本願発明1の実施を することができる程度に明確かつ十分に記載したものということはできないから,\n本願発明1を特許請求の範囲に含む本願は,拒絶すべきものである。
・・・・
以上によれば,原告の本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,理 由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 本件審決は,最終的な結論において誤りはなかったことから,取り消すべきもの とはされなかったが,以下の問題があるから,事案に鑑み,本件審決書について付 言する。まず,本件審決は,その判断において,平成25年9月6日付けで通知し た拒絶理由及び同年12月27日付けでした拒絶査定の内容を引用した上で,本願 発明が,拒絶査定で示された理由を解消しているか否かを判断するという体裁で, しかも,前記第2の3のとおり,本件補正前の請求項と本件補正後の請求項が混在 したまま,審決の理由を示している。しかし,本件審決における判断対象は,本件 補正後の請求項であり,本件補正後の本願発明に拒絶理由が存在するか否かを判断 すべきである。また,本件審決におけるサポート要件に係る判断は,その結論部分 において,本件補正後の請求項の全てについてサポート要件を満たさない旨判断し ていながら,本件補正後の請求項1についてしかその具体的理由が言及されておら ず,実施態様の異なる他の請求項についても,サポート要件を満たさないことにな る理由は,何ら具体的に述べられていない。以上のとおり,本件審決書は,適切と はいい難いものであって,判断対象を明確にして,結論を導くに足りる理由を示す ことが望まれる。

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平成27(行ケ)10052  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年3月31日  知的財産高等裁判所

 医薬品の効果について、客観的な裏付けとなる記載を伴わない場合には、36条違反の拒絶理由が存在すると判断されました。
 一般に本願発明のような医薬用途発明においては,一定の予防又は治療すべき状\n態に対して,特定の医薬を投与するという用途を記載するのみで,その作用効果に ついて何ら客観的な裏付けとなる記載を伴わず,そのような技術常識もない場合に は,当業者において,実際に有用性を有するか,すなわち,課題を解決できるかど うかを予測することは困難である。\nそうすると,本願明細書の発明の詳細な説明には,式R−A−Xの化合物が, 「B型肝炎より選択された,ウィルス性の感染を予防又は治療するための医薬」と\nいう医薬用途において使用できること,すなわちヒト又は動物の生体内におけるB 型肝炎ウィルスの増殖抑制作用を有することを当業者が理解できるように記載され ているとはいえない。 したがって,本願発明は,発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識により 当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず,特許法 36条6項1号の規定を満たさない。
(4) 特許法36条4項1号(実施可能要件)について
発明の詳細な説明の記載は,「経済産業省令で定めるところにより,その発明の 属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程 度に明確かつ十分に記載したものであること」を要する(特許法36条4項1号)。\n前記(3)で判示したところによれば,本願明細書の発明の詳細な説明には,式R− A−Xの化合物を「B型肝炎より選択された,ウィルス性の感染を予防又は治療す\nるための医薬」として使用できることが,当業者が理解できるように記載されてい るとはいえない。 したがって,本願明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本願発明の実施をする ことができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
(5) 原告の主張について
ア 審決の判断手法の誤りについて
原告は,審決が,審判請求書添付の試験結果及び基礎出願の試験結果について, これらの各試験結果の記載が,本願の出願当初の明細書等の開示範囲を超えたもの であるか,又は本願発明の効果の範囲内での補充にすぎないものであるかの判断を 行うべきであり,当該判断を怠って,実施可能要件及びサポート要件に規定する要\n件を満たさないと判断した審決には,判断手法に誤りがあると主張する。 しかし,一般に明細書に薬理試験結果等が記載されており,その補充等のため に,出願後に意見書や薬理試験結果等を提出することが許される場合はあるとして も,前記(3)のとおり,本願明細書の発明の詳細な説明には,式R−A−Xの化合 物を,B型肝炎ウィルスの感染を予防又は治療するために用いるという用途が記載\nされているのみで,当該用途における化合物の有用性について客観的な裏付けとな る記載が全くないのであり,このような場合にまで,出願後に提出した薬理試験結 果や基礎出願の試験結果を考慮することは,前記(3)アで述べた特許制度の趣旨か ら許されないというべきである。 そうすると,原告が,審判手続において,審判請求書添付の試験結果及び基礎出 願の試験結果を参酌すべき旨を主張していたことからすれば(甲11,13),審 決において,同主張を明示的に排斥することが相当であったとはいえるとしても, 出願後に提出された薬理試験結果である審判請求書添付の試験結果や,基礎出願の 試験結果は,本願明細書に記載された本願発明の効果の範囲内で試験結果を補充す るものということはできないから(その上,後記イのとおり,これらの試験結果を 考慮したとしても,式R−A−Xの化合物のB型肝炎ウィルスの感染の予防又は治\n療に対する有用性を裏付けるものとは認められない。),これらの資料を考慮しな いで,サポート要件及び実施可能要件を満たさないとの判断をした審決の判断手法\nが違法であるということはできない。また,その点が審決の判断を左右するものと は認められないから,審決の取消事由には当たらない。 なお,原告は,本願明細書の記載は,本願の出願人による実証に基づいて導き出 されたものである旨をも主張している。しかし,仮にそうであったとしても,その ことは上記判断を左右するものではないし,そもそも,後記イのとおり,本訴にお いても,本願発明の「式R−A−X」に当たる化合物のB型肝炎ウィルスの感染の 予防又は治療に対する有用性を裏付ける客観的資料は何ら提出されていないことか\nらすれば,同主張を認めることはできない。

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平成27(行ケ)10105  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年3月9日  知的財産高等裁判所

 「からなる」という用語が不明瞭か争われました。知財高裁は不明瞭でないとした審決を維持しました。
 (2) まず,「オキサリプラティヌムの水溶液からなり」中の「からなる」との 文言について,「から」という格助詞と「なる(成る)」という動詞とから成り立つ もので,「から」は,直前に記載されたものが素材,材料,構成要素となることを示\nす語であり,「なる(成る)」は,成立する,構成するを意味する語であることは明\nらかである。そうすると,「Aからなる」ものは,Aを「素材・材料・構成要素」と\nして「成立する・構成されている」ものを意味すると解される。\nしたがって,「(A)からなる」という場合には,Aを必須の構成要素とすること\nは明確であるものの,それ以上に,Aのみで構成され,他の成分を含まないものか,\nAのほかに他の成分を許容するか否かについて規定するものではなく,「Aのみから なる」場合をも包含する概念であると認められ,このこと自体に当事者間に実質的 な争いはない。 そして,例えば,含有する金属が一部異なると,特質が全く異なるものとなる一 部の合金における分野等と異なり,医薬液体製剤については,pHの調整や,安定 性,保存性を高めるために何らかの添加剤が含有される場合が多いことは,原告も 認めるとおり,周知のことである。 そうすると,明細書において,「からなる」の前に摘示された素材,構成要素以外\nの成分を排除することが明らかでない限り,「Aからなる」とは,Aを必須の構成要\n素とするものである以上に,他の成分については規定しておらず,単に「Aを含む」 ものがその技術範囲に含まれると理解することになるものと解され,また,他の成 分を排除するか否か規定していないからといって,「Aからなる」の語が,特段不明 確な用語と理解されるものでもない。 次に,本件明細書を見るに,その記載は,前記(1)のとおりであって,オキサリプ ラティヌムを水に溶解したオキサリプラティヌム水溶液を構成要素とする製剤であ\nることは明らかであるが,本件発明1の「オキサリプラティヌム水溶液」に他の成 分を含んではならないことを示す記載はなく,他の構成要素を含有することが排除\nされているとまではいえない。 したがって,当業者は,本件発明1は,「濃度が1ないし5mg/mlでpHが4. 5ないし6のオキサリプラティヌムの水溶液」を必須の構成要素とすることだけが\n特定された製剤であって,該製剤に他の構成要素が含まれることが排除されてはお\nらず,かつ,「医薬的に許容される期間の貯蔵後,製剤中のオキサリプラティヌム含 量が当初含量の少なくとも95%であり,該水溶液が澄明,無色,沈殿不含有のま まである,腸管外経路投与用のオキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤」に係 る発明と一義的に理解することが可能であるといえる。\nよって,本件発明1は明確であり,同様の理由により,本件発明2〜9も明確で ある。
(3) 原告の主張について
ア 原告は,審決が,不純物や溶存酸素・窒素が許容された例の記載がある ことを本件発明が他の成分を許容する根拠の一つとしたことについて,本件明細書 の中に,これらが許容された例の記載があったとしても,それによって「からなる」 の意味が明確となるわけではなく,むしろ,発明の詳細な説明の記載を踏まえれば, 当業者は,「からなる」を,少なくとも,「酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もし くはその他の添加剤」を排除する意味と解することは極めて明確であるから,この 点を踏まえずに明確性を認めた審決は,誤りであると主張する。 確かに,医薬製剤において,通常,不純物がその製剤の構成要素とみなされると\nはいえないから,不純物に関する記載をもって,当該製剤が他の成分を排除するも のであるかどうかは判明するものでないとする点については,原告の主張するとお りである。 しかし,後記2において詳述するとおり,本件明細書を見ても,原告の主張する ように,本件発明が「酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくはその他の添加剤」 を排除することが明らかであるとはいえない。また,仮に,原告主張のように本件 明細書から,本件発明が,これら添加剤を排除することが明確であり,「オキサリプ ラティヌムの水溶液からなる」とは,オキサリプラティヌムと水のみから構成され\nる,すなわち,「オキサリプラティヌムの水溶液のみからなる」ことが明らかである とするならば,いずれにせよ,明確性要件を欠くことにはならない。
イ 次に,原告は,本件明細書には,「からなる」の意義を解釈するに当たり, 「酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくはその他の添加剤」を含んでいても安 定な製剤が得られることを示唆する記載はない旨主張する。 しかし,上記記載がないことが,上記添加物を排除することを意味するとはいえ ない上,前記のとおり,本件発明1には,「オキサリプラティヌムの水溶液」を構成\n要素とすることのみが規定されており,他の成分については規定されていないので あるから,原告主張の添加剤が含まれる例が記載されていないことは,明確性要件 を何ら左右するものではない。
ウ また,原告は,審決が,本件の国際出願におけるフランス語の原文を斟 酌しておらず,その結果,本件明細書の記載事項の判断を誤った旨主張する。 しかし,特許法184条の6第2項は,外国語特許出願に係る国際出願日におけ る明細書及び請求の範囲の翻訳文が,同法36条2項の規定により願書に添付して 提出した明細書及び特許請求の範囲とみなされる旨を規定しており,以降の審査に おいてすべて翻訳文を基準とすることが明らかにされている。したがって,本件発 明の明確性要件を判断する際に,外国語特許出願に係る国際出願日における特許請 求の範囲及び明細書の各翻訳文を考慮すれば足り,それらの翻訳文の記載から離れ て,本件の国際出願におけるフランス語の原文の記載を考慮することはできない。
エ さらに,原告は,拒絶理由通知に対する意見書(甲2)及び審判事件答 弁書(甲6)における被告の主張からみて,「からなる」が,酸性又はアルカリ性薬 剤,緩衝剤を排除する閉鎖的な意味で用いられていたとの解釈が可能であることが\n裏付けられると主張する。 しかし,特許法36条6項2号は,前記のとおり,特許請求の範囲が不明確とな る場合には,特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となって第三者に不測の 不利益を及ぼすことがあり得ることから,これを防止するために要求されるもので あり,あくまで明細書の記載要件である以上,その適否は,当該記載から客観的に 判断されるべきであって,出願経過や審判における対応を斟酌することは,かえっ て,特許が付与された権利範囲を不明確にするものといわざるを得ない。特許権の 行使場面において,その技術的範囲を判断する際に,出願経過等の事情を斟酌する ことはともかくとして,本件発明の明確性要件の判断をする際に,これらを考慮す ることは相当ではなく,原告の上記主張は採用できない。 オ 加えて,原告は,「からなる」が多義的であることを前提として,その解 釈に当たっては明細書を参酌することが必要であるが,本件明細書の記載を参酌し てもなお,「酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくはその他の添加剤」を含み得 るかどうかが確定できないがゆえに,特許請求の範囲が不明確である旨の主張もす る。 しかし,原告は,一方で,前記アのとおり,本件明細書の記載によれば,本件発 明に上記添加剤が含まれないことは明確であるとも述べており,その主張は一貫し ないものである。また,前記のとおり,「オキサリプラティヌムの水溶液からなる」 とは,「オキサリプラティヌム」と「水」を必須の構成要素として含むことを規定す\nるものであるが,その他の成分については何ら定めがない製剤と理解することがで きるのであるから,その他の成分について含有するかしないかを確定することは必 要ではなく,原告の主張は失当である。

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平成27(行ケ)10098  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年2月8日  知的財産高等裁判所

 審決について、明確性違反ありとして判断は取り消されました。ただ、進歩性なしとの判断は維持されたので、無効であるとした審決は維持されました。
 審決は,本件発明の「地盤に起因する欠点」という用語は,通常「地震,地崩れ, 局所的な液状化」以外の欠点も含むものと解されるところ,本件明細書においては 通常の意義と異なる「地震,地崩れ,局所的な液状化」のみが記載されており,本 件明細書全体をみてもこの「地震,地崩れ,局所的な液状化」以外の欠点を含むか 否かが不明であるため,本件発明が不明確なものとなっていると認定した。 そこで,検討するに,本件特許の請求項1には,「鉄骨などの構造材で強化,形成\nされたテーブルを地盤上に設置し,・・・前記テーブルと地盤の中間に介在する緩衝 材を設け,前記テーブルが既存の地盤との関連を断って,地盤に起因する欠点に対 応するようにしたことを特徴とする地盤強化工法。」と記載されていることからすれ ば,「地盤に起因する欠点」とは,地盤を弱体化させテーブルに影響を及ぼす原因と なり得る事由をいうものと推測できるものの,必ずしも明らかではない。そこで, 本件明細書の記載を参酌すると,【産業上の利用分野】として,「本発明は,地盤強 化工法に関し,特に,地震動や液状化から建築構造物などを保護するための地盤強\n化工法に関するものである。」(【0001】),「・・・テーブルが既存の地盤の関連を絶って,用地固有の欠点を解消することによって,地層,地形,地質,人工造成 地に起因する地震,地崩れ,局所的な液状化から都市,街区,埋立地を改善できる。」 (【0005】),「地形が変動して平衡を欠いても」(【0014】),「【発明の効果】 本発明に係わる地盤強化工法によれば,地盤の地層,地形,地質,造成による欠点, 地震,地崩れによる危険から都市,街区,施設を保護することができる。」(【001 5】)との各記載があり,これらによれば,「地盤に起因する欠点」とは,「地震,地 崩れ,局所的な液状化」や「地形が変動して平衡を欠いた状態」をいうものと理解 することができる。 したがって,請求項1の「地盤に起因する欠点」との記載が明確性要件を欠くと 認めることはできない。 
(2) 「緩衝材」について
審決は,「緩衝材」について,耐震性に関しては,緩衝剤が既存の地盤の振動がテ ーブルに直接伝わらないように関連を断つという技術的意義が導き出せるものの, 「地形が変動して平衡を欠いても,流動性を有する緩衝材を使用することによって, また緩衝材を低い箇所に補うことによって平準化が容易にできる」(【0014】)こ とについては,緩衝材のみで「テーブルが既存の地盤との関連を断」つ機能を生ず\nる,本件発明の「緩衝材」を想定することができないため,本件発明が不明確であ る旨認定した。 しかし,【0012】の記載から,緩衝材は,「砕石,ゴム,発泡スチロール,砂 など」からなることが明らかにされており,【0014】の記載からみて,「地形が 変動して平衡を欠いた状態」において,流動性を持つ緩衝材を使用したり,低い箇 所に緩衝材を補ったりすることが示されていることからすれば,「緩衝材」は,これ により「平準化」することが実施可能であるかはともかく,前記技術思想を実現す\nるための構成部材の一つとして把握される限りにおいて,その文言自体として明確\n性要件を欠くものではない。
(3) したがって,本件特許の請求項1の記載が明確性要件を欠くとした審決の 判断には誤りがあり,原告らの取消事由1には理由がある。

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平成25(ワ)3357  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年12月25日  東京地方裁判所

 サポート要件違反の無効理由ありとして、特許権侵害が否定されました。訂正による解消も認められませんでした。
 特許制度は,明細書に開示された発明を特許として保護するものであり,明細書に開示されていない発明までも特許として保護することは特許制度の趣旨に反することから,特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件が定められたものである。したがって,同号の要件については,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明の欄の記載によって十分に裏付けられ,開示されていることが求められるものであり,同要件に適合するものであるかどうかは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか,すなわち,発明の詳細な説明の記載と当業者の出願時の技術常識に照らし,当該発明における課題とその解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な技術的事項が発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討して判断すべきものと解される。\n(2) これを本件についてみると,本件明細書等においては,「ターゲット組織に含まれる球形の合金相(B)が,中心付近にCrが25mol%以上濃縮し,外周部にかけてCrの含有量が中心部より低くなる組成の合金相を形成していることが有効である。本願発明は,このようなターゲットを提供する。すなわち,このようなターゲットでは,球形の合金相(B)は,中心部と外周部にかけて顕著な不均一性を有している。・・・球形の合金相(B)の存在は,本願発明ターゲットの独特の組織構造を示すものであり,本願ターゲットの漏洩磁束を高める大きな要因となっている。」(段落【0015】),「球形の合金相(B)の存在による漏洩磁束を高めるメカニズムは,必ずしも明確ではないが,・・・球形の合金相(B)には,少なからずCrの濃度が低い領域と高い領域が存在し,このような濃度変動の大きな場所では格子歪みが存在すると考えられる。」(段落【0016】),「第二に,球形の合金相(B)中のCr濃度の高い領域は,析出物として磁壁の移動を妨げていると考えられる。その結果,ターゲットの透磁率が低くなり漏洩磁束が増す。・・・Cr濃度の高い領域の存在が漏洩磁束に影響を与えている可能\性が考えられる。」(段落【0017】),「合金相(B)が球形であると,・・・周囲の金属粉(Co粉,Pt粉など)との拡散が進みにくく,組成不均一な相(B),すなわち中心付近にCrが25mol%以上濃縮し,外周部にかけてCrの含有量が中心部より低くなる組成の合金相が容易に形成されるようになる。」(段落【0018】)と記載され,少なくとも「球形の合金相(B)」中のCr濃度の高い領域の存在が漏洩磁束を高める効果に影響を与えていることが記載されていること,実施例においても,第1の実施例につき,「球形の合金相の部分においてCoとCrの濃度が高くなっており,特にCrは周辺部から中心部に向かって,より濃度が高く(白っぽく)なっている。EPMAの測定結果から球形の合金相では,Crが25mol%以上濃縮されたCrリッチ相が中心付近に存在し,外周に近づくにつれてCrの濃度が低くなっていることが確認された。一方,同図において,球形の合金相の領域では,SiとOについては黒くなっており,この合金相中に殆ど存在していないことが分かる。」(段落【0035】。第2,第3の実施例に関する段落【0043】及び【0051】の記載も同旨〔前記1(1)ウにおける摘記は省略〕)と,第4の実施例につき,「球形の合金相の部分において CoとCrの濃度が高くなっており,特にCrは周辺部から中心部に向かって,より濃度が高くなっていることが確認された。」(段落【0059】。第5ないし第9の実施例に関する段落【0067】,【0075】,【0083】,【0091】及び【0099】の記載も同旨〔前記1(1)ウにおける摘記は省略〕)としており,いずれの実施例においても,上記「球形の合金相(B)」の部分においてCoとCrの濃度が高くなり,Crは周辺部から中心部に向かってより濃度が高くなっているとの態様でしか,漏洩磁束を高める作用効果を奏することが記載されていないことからすれば,当業者において,前記1(2)記載の本件各発明の課題解決手段や,発明を理解するための技術的事項が,発明の詳細な説明に記載されているものとは言い難い。 したがって,本件特許には,サポート要件(特許法36条6項1号)違反の無効理由があるものと認めるのが相当である。
・・・
また,原告は,本件訂正によりサポート要件違反の無効理由が解消する旨も主張する。 しかし,前記6で検討したところから明らかなとおり,本件各訂正発明は,いずれもサポート要件違反の無効理由を解消するものとは認められない。 すなわち,原告は,本件明細書等には「相(A)」の中に「球形の合金相(B)」を含有させることにより,Crの濃度の高い領域と低い領域を作り出すことで,均一な組織と比べて,漏洩磁束を高めることが記載されていると主張するところ,なるほど本件明細書等の段落【0015】ないし【0017】には,漏洩磁束を高めるメカニズムに関する記載はあるものの,本件訂正に係るCr,Coの濃度分布に濃淡があるだけで,スパッタリングターゲットにおいて漏洩磁束を高める理由として記載された,「格子歪み」(段落【0016】)を生じさせ,「磁壁の移動を妨げ・・・母相である強磁性相内の磁気的相互作用を遮断する」(段落【0017】)ことができるものとは認め難く,前記のとおり,本件明細書等の実施例においては,一定の態様でしか効果を奏することが示されていないから,本件各訂正発明においても,依然としてサポート要件違反の無効理由が存するというべきである。

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平成27(行ケ)10026  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年11月24日  知的財産高等裁判所

 審決はサポート要件違反なしと判断しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
 ア 審決は,磁気検出素子の位置について,「図8に示されるように,スロッ トルボディー1及びその下側部に組み付けられたモータ4を一括して覆う縦長の形 状をしたカバー9において,ホールICを固定したステータコアが,カバーの中心 から所定距離だけ長手方向にずれた位置にモールド成形されている」として,磁気 検出素子がカバーの中心から所定距離だけ長手方向にずれた位置にあることを前提 とし,これを前提に,横すべりが短尺方向よりも長手方向に大きいのであれば,磁 気検出素子と磁石との位置ずれも生じるとする。 しかし,前記のとおり,訂正発明1に係る特許請求の範囲には,磁気検出素子の 位置を特定するような記載はない。また,カバーの形状自体,特許請求の範囲には, 縦長形状であることの特定はあるものの,長方形とは限定されておらず,左右非対 称の形状も含むのであるから,「カバーの中心から所定距離だけ長手方向にずれた位 置」を特定できるものでなく,さらに,その位置が磁気検出素子と磁石との間の位 置ずれを生じさせるか否かも明らかとならない。しかも,訂正発明1の回転角検出 装置は,自動車のスロットルバルブの回転角の検出に利用される旨の特定もないか ら,自動車の回転角検出装置におけるカバーに関する技術常識を補って解釈するこ ともできない。 なお,訂正明細書の発明の詳細な説明には,磁気検出素子の位置を特定する本文 中の記載はなく,図2,7,8のカバ−の図によっても,磁気検出素子と磁石との 位置ずれが生じる範囲を認識することはできない。
イ また,審決は,カバーの長手方向と短尺方向でどのような熱変形が生ず るかは,カバーの全体形状や各部の形状,各部の肉厚,凹凸の有無やその形状,ス テータコアが設けられる位置等の諸条件に依拠するが,あらゆる条件を検討して, カバーの長手方向の位置ずれが短尺方向の位置ずれより大きい条件をもれなく特定 することは事実上不可能であり,そのような条件をすべて特定しなくても,訂正発\n明1は,カバーの長手方向の位置ずれが短尺方向より大きいものを前提としており, その前提に係る構成も特許請求の範囲に記載されているのであるから,上記諸条件\nのうちこの前提を満たすもののみが訂正発明1に含まれるのであり,このような前 提が満たされれば,特許請求の範囲に記載されている上記配置に係る構成により,\n訂正発明1の課題は解決されるとする。 しかし,訂正発明1に係る特許請求の範囲は,縦長形状のカバーであることを特 定しているのみであり,前記(3)ウのとおり,カバーが均質組成の長方形で内部温度 分布は均一であり,3次元的変形を2次元的に均一に膨脹したと仮定し,長手方向 が短尺方向よりも熱変形(延び)するとしても,磁気検出素子と磁石の位置ずれが 起こるとは限らないのであるから,特許請求の範囲の記載が,審決が述べるように 「カバーの長手方向の位置ずれが短尺方向の位置ずれより大きいものを前提」とし ているとはいえず,特許請求の範囲に記載されている配置に係る構成から,訂正発\n明1の課題を認識しこれが解決されると理解することはできない。
ウ 審決は,あらゆる条件を検討して,位置ずれが不可避に生じる条件をも れなく特定することは不可能であるから,あらゆる条件を検討することは,過度の\n試行錯誤を強いるものではあるが,上記構成において,ある条件,例えば,訂正明\n細書に従来の技術として記載されたものを参考に立てた条件について,上記位置ず れが生じるか否かを,当該条件を設定した上で実験を行ったり計算をしたりするこ とにより確認はできるから,これらの条件について記載されていなくても,発明の 詳細な説明や特許請求の範囲に上記構成が記載されていれば,位置ずれが生じる前\n提となる構成が記載されているといえるとする。\n確かに,特許請求の範囲において,位置ずれが不可避的に生じる条件をすべて特 定して記載することまでは要しないとしても,訂正発明1に係る特許請求の範囲の 記載では,上記に述べたとおり,当業者が,磁気検出素子と磁石との位置ずれが生 じる場合が理解できるものでないことは明らかである。 また,審決は,参考資料2(甲10)における各メーカーの製品写真に示されて いるように,カバーの四隅等の周縁部においてスロットルボディーにボルトで固定 することが一般的であるとして,これを前提として技術理解をするようであるが, 訂正発明1の特許請求の範囲には,自動車のスロットルバルブの回転角を検出する 発明であることは記載されておらず,特定の製品を参考に前提条件を限定して技術 理解を行うこと自体が誤りである。
エ 被告は,計算により課題に直面するか否かが判断できるとし,審決が被 告の主張を支持して,ボルト固定力がカバー内力を下回る可能性に関して,ボルト\n軸線と直角方向の荷重を受けた場合にすべりが生じる可能性があることは技術常識\nに反するものではなく,熱応力によってカバーがボルトを押す力F とボルト固定力 L とを具体的に検討したことは合理的であり,この検討に用いた数式は力学の法則 に基づき,パラメータの数値は実際のカバー,スロットルボディー,ボルトの特性, 寸法等に即したものであって,合理的なものであると主張する。 しかし,審決は,以下の数式を基礎に検討しているところ,これは,ボルトに対 する固定力とカバーに生じる熱応力とを比較し,単に,カバーに生じる熱応力がボ ルトの固定力を上回る場合があり得ることを計算上,導けるというにすぎない。
・・・
この計算式には,ボルトの位置は反映されておらず,当該ボルト付近において横 すべりが生ずる可能性の有無を示すにすぎないのであり,熱変形がどの方向に向か\nって生じるかは明らかではない。また,カバーに熱応力による変形が均一に生じ, 固定された磁力検出素子が位置ずれを起こすと仮定しても,磁力検出素子が固定さ れた箇所における位置ずれは,長手方向が短尺方向と比較して大きくなければなら ないところ,どの部分がどのように変形し,磁気検出素子と磁石との位置ずれに影 響するかは,ボルト固定の数や位置,磁気検出素子の位置,ボルトまでの距離など を具体的に検討しなければ,明らかにならない。すなわち,上記計算によっても, 訂正発明1の課題は一義的に導かれるものではない。 また,審決は,この計算において,ボルト及びカラーには亜鉛メッキがされてお りこのメッキにより摩擦係数μが低下すること,エンジンルーム内での使用環境を 考えると摩擦面に水分,油分,又は異物が入り込むおそれも無視はできず,その場 合は摩擦係数μが低下すること,エンジンの振動により機械設計便覧(甲15)に 示されるようにボルト軸直角方向に振動外力が作用するおそれがあることを考慮し て,すべりの発生の可能性があると認定しているところ,前記のとおり,訂正発明\n1がエンジンルーム内の使用に限定されるものではない上,このような摩擦に影響 を及ぼす事情は,すべてのボルトについて,一様に,しかも,均一に生じるとは考 え難い。そうすると,訂正発明1が,長手方向において,短尺方向に比して,なお, 磁石と磁気検出素子の位置ずれが大きいといえるのか,必ずしも明らかではない。
(5) 小括
以上によれば,当業者は,訂正発明1に係る特許請求の範囲の記載から,いかな る場合において課題に直面するかを理解できないのであり,したがって,特許請求 の範囲に記載された発明は,発明の詳細な説明の記載等や,出願当時の技術常識に 照らしても,当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えたもの である。

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平成27(行ケ)10017  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年11月24日  知的財産高等裁判所

 審決は36条違反(実施可能要件、サポート要件)としましたが、知財高裁はこの判断については取り消しました。ただ、審決が進歩性なしとした判断については維持され、結局審決は維持されました。
 審決は,本願発明のうち,間隔保持部材を有さない構成において,各分\n離ディスク間に精度よく間隔を形成する方法が,発明の詳細な説明に,当業者が実 施可能な程度に記載されていない,とする。\nイ しかしながら,複数の部材を相互にはんだ付け又は溶接により接合する 場合に,当該複数の部材は,一定の時間相互に近接保持される必要があるが,様々 な治具等によって空間内の特定の位置に固定されることは,技術常識といえる。例 えば,従来,・・・が開示されており,このことは,本件発明のように,多数の分離ディスクが含 まれる場合も同様である。そして,当業者にとって,各分離ディスクの間隔をどの 程度とするか,また,その間隔の精度をどの程度とするかは,各分離ディスクの固 定手段により適宜調整可能なことである。\nしたがって,審決の特許法36条4項1号に関する判断には,誤りがある。 ウ これに対して,被告は,本願発明において,間隔保持部材を設けること なしに,はんだ付け又は溶接するだけで,遠心分離機の分離ディスクとして回転す る場合でも回転に関して動的に安定したものとすること,及び,適切に遠心分離を 行うために必要な薄い流動空間を正確に形成できることまでは,明細書の記載から 明らかではなく,技術常識でもない,と主張する。しかしながら,本願発明のよう な遠心分離機において,間隔保持部材を設けることが必須であるといった技術的知 見の存在を裏付けるに足る適切な証拠は提出されていない。 ・・・ ア 審決は,本願発明のうち,間隔保持部材を有さない構成が発明の詳細な\n説明に記載されていない,とする。 イ 確かに,発明の詳細な説明中,実施例においては,間隔保持部材を有さ ない構成は挙げられておらず,かかる構\成が含まれることは明示されてはいない。 しかしながら,本願発明は,分離ディスクの凹部内に配置されている封止部材によ る摩耗などに起因するディスク強度の問題や(【0003】),これを回避するためね じ接続を採用し,さらに,分離ディスクを圧縮する構成によった場合の各分離ディ\nスクの対称性や相互の位置合わせへの悪影響といった問題(【0004】)を解消す るために,金属製のディスクをはんだ付け又は溶接によって接合するという構成を\n採用したものであるところ,間隔保持部材の有無は,上記各課題の解決には関連し ないのであるから,間隔保持部材がない構成が記載されていないと解することはで\nきない。 よって,審決の特許法36条6項1号に関する判断には,誤りがある。 ウ 被告は,遠心分離機においては遠心分離を受ける液体用に分離室を多く の薄い流動空間に分け,分離ディスク間の隔離部材(間隔保持部材)を配置するこ とが一般的であり,適切に遠心分離を行うために分離ディスク間の薄い流動空間を 正確に形成する必要があることは明らかである,と主張する。 しかしながら,被告の摘示する特表平11−506385号公報(甲2)には,\n間隔保持部材を機能させる場合,すなわち,間隔保持部材が必要な場合には,分離\nディスクに固定するとの記載しかなく,間隔保持部材が必須ということは読み取れ ないし,他にこの点を認めるに足る証拠もない。

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平成26(行ケ)10238  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年8月5日  知的財産高等裁判所

 薬剤投与に用いる活性発泡体について、実施可能要件違反であるとした審決が取り消されました。
 特許法36条4項1号は,明細書の発明の詳細な説明の記載は,「その発 明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすること ができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定める。\n特許制度は,発明を公開する代償として,一定期間発明者に当該発明の実 施につき独占的な権利を付与するものであるから,明細書には,当該発明の 技術的内容を一般に開示する内容を記載しなければならない。特許法36条 4項1号が上記のとおり規定する趣旨は,明細書の発明の詳細な説明に,当 業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に発明が記載されて\nいない場合には,発明が公開されていないことに帰し,発明者に対して特許 法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことにあると解される。 そして,物の発明における発明の実施とは,その物の生産,使用等をする 行為をいうから(特許法2条3項1号),同法36条4項1号の「その実施 をすることができる」とは,その物を作ることができ,かつ,その物を使用 できることであり,物の発明については,明細書にその物を生産する方法及 び使用する方法についての具体的な記載が必要であるが,そのような記載が なくても,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき,当業 者がその物を作ることができ,かつ,その物を使用できるのであれば,上記 の実施可能要件を満たすということができる。\n さらに,ここにいう「使用できる」といえるためには,特許発明に係る物 について,例えば発明が目的とする作用効果等を奏する態様で用いることが できるなど,少なくとも何らかの技術上の意義のある態様で使用することが できることを要するというべきである。 これを本願発明についてみると,本願発明は,前記第2の2に記載のとお りの活性発泡体であるから,本願発明は物の発明であり,本願発明が実施可 能であるというためには,本願明細書及び図面の記載並びに本願出願当時の\n技術常識に基づき,当業者が,本願発明に係る活性発泡体を作ることができ, かつ,当該活性発泡体を使用できる必要があるとともに,それで足りるとい うべきである。
(2) 活性発泡体を作ることができるかについて
まず,当業者において,本願明細書の記載に基づいて,本願発明に係る活 性発泡体を作ることができるかどうかを検討する。 前記1によれば,
・・・・
これらの記載に接した当業者であれば,本願明細書に記載された各種 のゴム又は合成樹脂と,各種のジルコニウム化合物及び/又はゲルマニ ウム化合物とを組み合わせ,実施例に記載された製造方法に従って,本 願発明の「天然若しくは合成ゴム又は合成樹脂製で独立気泡構造の気泡シ\nートを備えた活性発泡体であって,前記気泡シートは,ジルコニウム化合物 及び/又はゲルマニウム化合物を含有」する活性発泡体を製造することがで きるというべきであり,また,当該活性発泡体を,例えば,敷きマットのよ うな,「薬剤投与の際に人体に直接又は間接的に接触させて用いる」ことが できる形態とすることもできるというべきである。
(3) 活性発泡体を使用できるかについて
次に,当業者において,本願明細書の記載及び本願出願当時の技術常識に 基づいて,本願発明に係る活性発泡体を使用できるかどうかについては,活 性発泡体を前記(2)のとおりの形態とすることができる以上,当該活性発泡 体を「薬剤投与の際に人体に直接又は間接的に接触させて用いる」こと自体 は当然にできると考えられることから,かかる用い方にどのような技術上の 意義があるのかについて検討する。
ア 本願明細書には,本願発明が解決しようとする課題として,「血行を促 進し,体質改善や,癌等の病気の治癒を促進することができる活性発泡体 を提供すること」との記載がある([0007])。しかしながら,これ らの効果については「そのメカニズムは解明されていない」とあり([0 009]),その作用機序に関しても,ジルコニウム化合物及びゲルマニ ウム化合物によって活性発泡体外へ発生させた特定波長の赤外線と人体の 波長とが共振する結果,人間の自然の治癒力が増進される旨の記載はある ([0010])ものの,これも本願明細書自体が認めるとおり,推測の 域を出るものではない。
イ そして,本願明細書では,<試験1>として,被験者1名が活性発泡体 を敷いた椅子の上に30分間静止状態で座った後の血流量,血液量,血流 速度及び体圧を,活性発泡体を敷いていない椅子の上に30分間静止状態 で座った後のそれらと比較した結果を踏まえ,「本活性発泡体を使用すれ ば,血行がよくなり,体圧が下がることが分かる。」と結論付けている ([0035]ないし[0040])。 しかしながら,この試験は,活性発泡体を「人体に直接又は間接的に接 触させて用いる」態様で行われた試験ではあるものの,この試験において 用いられた活性発泡体がどのようなものであるのか(特に,ジルコニウム 化合物及びゲルマニウム化合物のどちらを,あるいはその両方を,どの程 度含有するのか)については,本願明細書に記載がなく定かではない。ま た,本願出願当時の当業者の技術常識に照らしても,被験者は50代の女 性1名のみであるから,その試験結果を人体一般に妥当する客観的なもの として評価することが可能であるともいい難いし,試験条件の詳細も明ら\nかではないから,この試験における血流量や体圧の計測結果から導かれる とされる「本活性発泡体を使用すれば,血行がよくなり,体圧が下がる」 との効果が,活性発泡体を使用したことによるものであるのか,それ以外 の要因に基づくものであるのかどうかについても,直ちに検証することは できない。 そうすると,<試験1>の結果のみから,活性発泡体を「人体に直接又 は間接的に接触させて用いる」ことに,人体の血行を促進することが期待 できるという技術上の意義があるというのには疑問がある。とはいえ,例 えば,<試験1>に係る諸条件の説明や,他の試験結果の存否及びその内 容次第では,本願発明に係る活性発泡体の使用に,かかる技術上の意義が あることが裏付けられたということのできる余地もあるというべきである。
ウ また,本願明細書は,<試験2>に基づき,「活性発泡体は,ガン細胞 のアポトーシス回路を立ち上げ,ガン細胞の働きを弱体化する作用を促進 する。」とする([0051])。 しかしながら,<試験2>は,前立腺癌細胞を培養した培養皿を上下か ら活性発泡体で挟んだ状態で培養し,活性発泡体なしの状態で培養したも のとの比較を行ったというものであり,活性発泡体を,「人体に直接又は 間接的に接触させて用いる」場合として想定されるような態様とはおよそ 異なる態様で用いているから,本願出願当時の当業者の技術常識を踏まえ ても,かかる試験結果から,活性発泡体を「人体に直接又は間接的に接触 させて用いる」ことに,癌細胞の弱体化を期待できるという技術上の意義 があるということはできない。
エ さらに,本願明細書には,本願発明の効果や産業上の利用可能性に関し\nて,「本活性発泡体は,薬剤投与の際に,人体に直接又は間接的に接触さ せて用いれば,その薬剤の効果を上げることができる。また,大量に使え ば副作用のある薬剤であっても,本活性発泡体を併用すれば少量ですむの で,副作用を抑えることができる。」との記載がある([0024], [0061])。そして,これらの効果に関して,<試験3>に基づき, 「活性発泡体とHDACIとを同時に用いることにより,活性発泡体は, HDACIのヒト前立腺癌細胞の増殖抑制効果を促進することができる。 原理的には,この方法は全ての癌に有効な治療法と考えられる。」とする ([0059])。 しかるに,<試験3>についても,前立腺癌細胞を培養したマイクロプ レートにSB(酪酸ナトリウム)を添加し,プレートを活性発泡体で上下 から挟んだものと,活性発泡体を用いずに前立腺癌細胞を培養し,SBを 添加したものとの比較を行ったというものであり,活性発泡体を,「人体 に直接又は間接的に接触させて用いる」場合として想定されるような態様 とはおよそ異なる態様で用いているから,本願出願当時の当業者の技術常 識を踏まえても,これらの試験結果から,活性発泡体を「人体に直接又は 間接的に接触させて用いる」ことに,薬剤の効果を増強させることが期待 できるという技術上の意義があるということはできない。
(4) 審決の判断について
以上を踏まえて,審決の判断の適否を検討する。 審決は,活性発泡体の薬剤との併用効果について当業者が理解し認識でき るような記載がないことを理由に,本願明細書が特許法36条4項1号所定 の要件を満たしていないと結論付けている。 しかしながら,本願発明の請求項における「薬剤投与の際に」とは,その 文言からして,活性発泡体を用いる時期を特定するものにすぎず,その請求 項において,薬剤の効果を高めるとか,病気の治癒を促進するなどの目的な いし用途が特定されているものではない。よって,本願明細書に,活性発泡 体の薬剤との併用効果についての開示が十分にされていないとしても,活性\n発泡体を「薬剤投与の際に人体に直接又は間接的に接触させて用いる」こと に,それ以外の技術上の意義があるということができるのであれば,少なく とも実施可能要件に関する限り,本願明細書の記載及び本願出願当時の技術\n常識に基づき,本願発明に係る活性発泡体を「使用できる」というべきであ る。そして,検討次第では,少なくとも,本願発明に係る活性発泡体を,血 行促進効果を発揮させることができるような形で「使用できる」と認める余 地があり得ることは,前記(3)イにおいて説示したとおりである。 よって,審決には,かかる点についての検討を十分に行うことなく,上記\nのような理由により本願明細書が特許法36条4項1号所定の要件を満たし ていないと結論付けた点で,誤りがあるといわざるを得ず,審決は,取消し を免れない。

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平成26(行ケ)10047    特許権  行政訴訟 平成27年7月16日  知的財産高等裁判所

 審決は、明確性違反なしとしましたが、知財高裁はこれを取り消しました。理由は、本件発明の作用効果を奏するためには,〜との関係でその方向が限定されていなければならないというものです。
 ここで,本件訂正発明1の炭化珪素質複合体は,反り量について, 「穴間方向(X方向)の長さ10cmに対する反り量(Cx;μm)と, それに垂直な方向(Y方向)の長さ10cmに対する反り量(Cy;μ m)の関係が,|Cx|≧|Cy|,50≦Cx≦250,且つ−50 ≦Cy≦200である(Cy=0を除く)こと」を発明特定事項とする ものであるが,「穴間方向(X方向)」とはどのような方向を意味する のかについては,特許請求の範囲(請求項1)の記載からは,一義的に 明らかであるとはいえない。 (イ) そこで,本件明細書の記載を参酌すると,本件明細書には,「穴間方 向(X方向)」又は「穴間」につき,「一般にここで,前記穴間方向 (X方向)とは,図9(a)〜(d)に例示した,放熱板表面の一方向\nを示し,Y方向は,前記表面内のX方向と垂直な方向を示している。」\n(段落【0031】)との記載がある。 上記記載から,「穴間方向(X方向)」には,図9に例示されたX方 向が含まれることは理解できるが,「穴間方向(X方向)」は「放熱板 表面の一方向を示」すとしか記載されていないから,図9に例示された\nX方向以外にどのような方向が含まれるのか判然としない。 また,図9に例示されたX方向については,穴と穴とを結ぶ直線とX 方向を示す直線が明らかにずれているもの(図9の左から2番目の図) があるが,このような場合に穴間方向とX方向がどのような関係にある のかについては,これを明らかにする記載も見当たらない。 (ウ) ところで,本件訂正発明1は,「穴間方向」であるX方向の長さ1 0cmに対する反り量(Cx)と,X方向と直交する方向であるY方向 における長さ10cmに対する反り量(Cy)の数値範囲をそれぞれ定 め,さらに,Cxの絶対値とCyの絶対値の関係を,|Cx|≧|Cy |と定めたものである。 そして,本件明細書の段落【0032】に,「本発明者らは,従来技 術における前記課題の解決を図り,いろいろ実験的に検討した結果,反 り量(Cx;μm,並びにCy;μm)が前記特定の範囲にあるときに, 複合体から成る放熱板を他の放熱部品に密着性良くネジ止め固定するこ とができるという知見を得て,本発明に至ったものである。本発明の複 合体から成る放熱板を他の放熱部品に密着性良くネジ止め固定する場合, 一般には,放熱板と放熱部品との間に放熱グリス等を介して固定される。 このため,Y方向の反り量(Cy)に関しては,その絶対値が放熱グリス 厚より小さいことが好ましい。また,締め付け時の放熱板の変形を考慮 した場合,Y方向の反り量(Cy)はX方向の反り量(Cx)より小さ い方が好ましい。前記の反り量が前記特定範囲を満足できないときには, 必ずしも密着性良く放熱板を他の放熱部品にネジ止め固定することがで きないことがある。」と記載され,段落【0035】に「また,板状複 合体の主面内に他の放熱部品にネジ止め固定できように,穴部を有して いる場合,その穴間距離が10cm以下の小型形状では,密着性良く放 熱板を他の放熱部品にネジ止め固定するためには,複合体の主面の長さ 10cmに対しての反り量が100μm以下であることが好ましい。」 と記載されているように,反り量を規定する上記条件は,本件訂正発明 1に係る板状複合体を他の放熱部品に密着性良くネジ止め固定するため の条件であると認められる。 ここで,本件訂正発明の複合体は,特定量の反りを有していて,例え ば,放熱板として用いた場合に,セラミックス基板を放熱フィン等の放 熱部品に密着性良くネジ止め固定することができ,放熱性が安定した, 高信頼性のモジュールを形成することができるという効果を奏するもの であるところ(段落【0081】),板状複合体(放熱板)を放熱部品 に密着性よくネジ止め固定できる長さ10cmに対する反り量であるC x及びCyについて異なる数値範囲が規定されている本件訂正発明1に おいて,本件明細書の段落【0035】の記載から,本件訂正発明にお ける好ましい長さ10cmに対する反り量は穴間距離の影響を受けるも のと解され,X方向(ひいては,Y方向)が,放熱板表面の一方向であ\nればどの方向であっても他の放熱部品と密着性良くネジ止め固定できる とは考えられないことからすると,本件訂正発明1が上記作用効果を奏 するためには,「穴間方向(X方向)」は,板状複合体のネジ穴または 外形との関係でどの方向を示すものであるかが定義されていることを要 するものというべきである。 (エ) しかるに,前記(ア)及び(イ)のとおり,特許請求の範囲(請求項 1)にも,また,本件明細書にも,「穴間方向(X方向)」について, 板状複合体のネジ穴または外形との関係でどのような方向をいうものか が明確に記載されていないことから,「穴間方向」であるX方向の長さ 10cmに対する反り量(Cx)と,X方向と直交する方向であるY方 向における長さ10cmに対する反り量(Cy)の数値範囲をそれぞれ 定め,さらに,Cxの絶対値とCyの絶対値の関係を定めた本件訂正発 明1の技術的意義を理解できないものにしているといわざるを得ない。

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平成26(行ケ)10243  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年7月28日  知的財産高等裁判所

36条違反ではないとした審決が維持されました。その一つが、水洗便器における「棚」という用語です。裁判所は、明細書の記載に基づき合理的に解釈しました。
 「棚」とは,一般的には,「平らで物を載せる機能を有するもの」を意味するが,\n本件発明の「棚」が,これとは異なり,洗浄水を載せて流すとともにその一部を流 下させることを目的としていることは自明であり,また,「棚」が,本件発明の属す る大便器の分野で一般的に使用される用語とも認められない。 そこで,前記1(1)に認定の本件発明の内容を踏まえて,本件明細書の記載全体や 技術常識などにかんがみて,「棚」の意義を合理的に解釈するとすれば,本件発明の 「棚」は,ボウル内面上部に設けられて段差などにより他と区別できる部分があっ て,平らで洗浄水を載せる機能を有し,ノズルより吐出された洗浄水をボウル部の\n全周に導く経路といった程度の意味を有するものと認められる。 原告は,本件発明の「棚」が平らなものである必要はない旨を主張するが,棚の 形状をもって発明特定事項としている以上,その形状を全く考慮しない用語の解釈, すなわち,物を載せる部分が平らである必要はないとする解釈は,相当とはいえな い。また,上記2(2)に判断のとおり,本件発明2の「棚」は,その幅がゼロとなる 場合もあるが,ボウル側の前方部で「棚」の一部をなくすという構成をしたからと\nいって,その余の部分が棚でなくなるものではない(本件発明1の特定事項は,洗 浄水を全周に導くことを規定しているが,棚を全周にわたり設けることは規定して いない。)。 原告の上記主張は,採用することができない。
イ 「棚」及びその構成の開示
上記アにおける「棚」の技術的意義にし照らすと,甲1発明には,本件発明1の 「棚」に相当するものは見当たらない。 原告は,境界部3の下側の乾燥面12の上側部分(領域A)が,本件発明の「棚」 に相当する旨を主張するが,本件発明1の「棚」が,ノズルより吐出された洗浄水 をボウル部の全周に導く経路であればよいとの解釈を前提とするものであるから, その主張は,前提において誤りがある。領域Aに相当する部分は,汚物受け面10 からボウル部導水路16にかけての滑らかに連続する湾曲面の一部にすぎず(明細 書9頁20〜23行目),何らかの段差を有していなければならない「棚」とは,相 容れない形状である。 原告の上記主張は,採用することができない。

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平成24(受)1204  特許権侵害差止請求事件 平成27年6月5日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  知的財産高等裁判

 一部の構成を製法で特定した物の発明について、知財高裁は「発明の要旨は,当該物をその構\造又は特性により直接特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するときでない限り,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物に限定して認定されるべき」としましたが、最高裁はこれを破棄差戻しました。
 特許法36条6項2号によれば,特許請求の範囲の記載は,「発明が明確であること」という要件に適合するものでなければならない。特許制度は,発明を公開した者に独占的な権利である特許権を付与することによって,特許権者についてはその発明を保護し,一方で第三者については特許に係る発明の内容を把握させることにより,その発明の利用を図ることを通じて,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とするものであるところ(特許法1条参照),同法36条6項2号が特許請求の範囲の記載において発明の明確性を要求しているのは,この目的を踏まえたものであると解することができる。この観点からみると,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているあらゆる場合に,その特許権の効力が当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物に及ぶものとして発明の要旨を認定するとするならば,これにより,第三者の利益が不当に害されることが生じかねず,問題がある。すなわち,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲において,その製造方法が記載されていると,一般的には,当該製造方法が当該物のどのような構\\造若しくは特性を表しているのか,又は物の発明であってもその発明の要旨を当該製造方法により製造された物に限定しているのかが不明であり,特許請求の範囲等の記載を読む者において,当該発明の内容を明確に理解することができず,権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予\測可能性を奪うことになり,適当ではない。他方,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲においては,通常,当該物についてその構\造又は特性を明記して直接特定することになるが,その具体的内容,性質等によっては,出願時において当該物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能\であったり,特許出願の性質上,迅速性等を必要とすることに鑑みて,特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要するなど,出願人にこのような特定を要求することがおよそ実際的でない場合もあり得るところである。そうすると,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法を記載することを一切認めないとすべきではなく,上記のような事情がある場合には,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として発明の要旨を認定しても,第三者の利益を不当に害することがないというべきである。
以上によれば,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能\\であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁平成24年(受)第1204号平成27年6月5日第二小法廷判決・裁判所時報1629号登載予定参照)。 以上と異なり,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,そのような特許請求の範囲の記載を一般的に許容しつつ,その発明の要旨は,原則として,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造された物に限定して認定されるべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本判決の示すところに従い,本件発明の要旨を認定し,更に本件特許請求の範囲の記載が上記4(2)の事情が存在するものとして「発明が明確であること」という要件に適合し認められるものであるか否か等について審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

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平成25(行ケ)10250  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年4月28日  知的財産高等裁判所

 実施可能要件を満たしていない範囲について、サポート要件違反が成立すると判断されました。
 一般に,膜厚を薄くすると熱膨張係数が小さくなることが知られているから(甲9。訳文1頁),甲8及び甲10のような熱イミド化によるポリイミドフィルムにおいて,膜厚を薄くすることでさらに熱膨張係数を下げることが可能であるとはいえるものの,どの程度まで下げることができるのかについて,本件明細書には具体的な指摘がされていない。\nまた,熱イミド化によるポリイミドフィルムの場合には,固形分量が多くなり延伸することが困難とされている(甲13の段落【0018】)。そして,甲29の実施例5のように,約1.04倍程度の延伸が可能であるとしても,45.6ppm/°Cの熱膨張係数を3〜7ppm/°Cという低い数値まで下げることが可能であるとする根拠はなく,本件明細書にも何ら具体的な指摘がない。\nさらに,4,4’−ODA/BPDAの2成分系ポリイミドフィルムを化学イミド化により製造して,膜厚や延伸倍率等を調節したとしても,3〜7ppm/°Cという低い数値まで下げることが可能であるとする根拠はなく,本件明細書にも何ら具体的な指摘がない。\n被告は,この点について,ポリイミドフィルムについて最終的に得られる熱膨張係数は,延伸倍率に大きく影響されるほかに,延伸に際しての,溶媒含量,温度条件,延伸速度等多くの条件に影響され,またフィルムの厚さにも影響されることが甲9に記載されているから,ODA/BPDAの2成分系について,甲8のデータのみに基づいて,本件発明9の熱膨張係数の数値範囲を実現することができないと断定することはできない旨主張する。しかし,本件明細書は,具体的に溶媒含量,温度条件,延伸速度等をどのように制御すれば熱膨張係数が本件発明9の程度まで小さくできるのかについて具体的な指針を何ら示していない。本来,実施可能要件の主張立証責任は出願人である被告にあるにもかかわらず,被告は,本件発明9の熱膨張係数の範囲を充足するODA/BPDAの2成分系ポリイミドフィルムの製造が可能\であることについて何ら具体的な主張立証をしない。 したがって,本件明細書の記載及び本件優先日当時の技術常識を考慮しても,4,4’−ODA/BPDAの2成分系フィルムについては,本件発明9の熱膨張係数の範囲とすることは,当業者が実施可能であったということはできない。\n
・・・・
しかし,前記2(5)のとおり,少なくともODA/BPDAの2成分系ポリイミドフィルムについては,当業者が,本件明細書の記載及び本件優先日当時の技術常識に基づき,これを実施することができない。そ うすると,上記2成分系のポリイミドフィルムの構成に係る本件発明9は,本件明細書の記載及び本件優先日当時の技術常識によっては,当業者が本件発明9の上記課題を解決できると認識できる範囲のものということはできず,サポート要件を充足しないというべきである。\n

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平成26(行ケ)10052  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年11月20日  知的財産高等裁判所

 サポート要件違反ありとした審決が維持されました。 
 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 イ 本願発明の課題について検討すると,前記イのとおり,洗濯用・クリーニング用製品におけるより効率的で効果的な芳香の送出,特に布地への長持ちする芳香の付与についての改良が,引き続き急務となっているところ(【0003】),いまだに有効成分,特に香料成分の遅延放出をもたらす化合物が必要とされており(【0006】),かつ,清々しい香りを特徴とする香料成分,すなわちアルデヒド類やケトン類の香料成分について は,揮発性も非常に高く,布地のような処理しようとする表面上での残留性は低いことから,その必要性がより深刻であった(【0007】)。そこで,本願発明は,このような香料成分の遅延放出をもたらし,布地における清々しい香りの残留性を改良するという課題を解決することを目的として,アミン化合物と活性アルデヒド又はケトンとの,イミン化合物のような特定の反応生成物が香料のような有効成分の遅延放出をもたらすことを見いだした(【0008】,【0009】),というのである。\nそして,前記第2の2のとおり,本願請求項1には,上記反応生成物に関し,「第一及び/又は第二アミン化合物と,香料ケトン,香料アルデヒド,及びそれらの混合物から選ばれる有効成分との間の反応生成物」と特定され,さらに上記アミン化合物についてその種類が列挙されて特定され,かつ,上記アミン化合物のうち,その臭気度が,ジプロピレングリコールに溶かしたアントラニル酸メチルの1%溶液のそれよりも低いものに限定されている(前記)。他方,香料ケトン及び香料アルデヒドの種類については何ら特定されていない。 一般に,化合物の分解速度は,化合物が置かれた温度,湿度等の環境条件のみならず,化合物自体の構造や電子状態等に複合的に依存して,化合物ごとに,分解を受ける部位や分解の機序に応じて異なるものであるから,通常,当業者といえども,実際に実験をしない限り予\測し得るものではない。このことは,本願請求項1の反応生成物からの香料成分の放出についても同様であると解され,本願請求項1のアミン化合物が様々なものを包含するものである以上,一定の環境下であっても,本願請求項1に列挙されたアミン化合物を用いて生成されるイミン化合物につき,その一般式においてR,R’,及びR’’がどのような基であるかに応じてC=N結合が分解を受けて香料成分を放出する速度はそれぞれ異なるし,本願請求項1に列挙されたアミン化合物を用いて生成されるβアミノケトン化合物 についても,その一般式においてR,R’,及びR’’がどのような基であるかに応じてCH−NH結合が分解を受けて香料成分を放出する速度はそれぞれ異なるものと解される。 しかし,本願明細書の【発明の詳細な説明】には,前記エのとおり,本願発明によるとされる布地柔軟化組成物等の具体的な配合例の記載はあるものの,成分の記載があるにとどまり,これらの組成物等の香料成分の遅延放出の程度や香りの残留性の程度等,本願発明の課題の解決に必要な程度に望ましい香料成分の遅延放出をもたらすことや,布地における清々しい香りの残留性を改良できることを示す具体的な記載はされていない。 また,前記ウのとおり,本願明細書【0125】ないし【0130】には,香料成分の基となるイミン等の生成過程,及び,それが分解して芳香物質を生成するまでの反応の一般的な説明は記載されている。しかし,上記の一般的な説明のほかには,本願明細書の【発明の詳細な説明】には,本願請求項1の発明特定事項である列挙された特定のアミン化合物で,かつ,その臭気度が,ジプロピレングリコールに溶かしたアントラニル酸メチルの1%溶液のそれよりも低いものにつき,任意の香料ケトン又は香料アルデヒドと反応させて得たイミン化合物又はβアミノケトン化合物であれば,望ましく遅延した速度で香料を放出し,清々しい香りの残留性を改良するという本願発明の上記課題を解決できることについては何ら理論的な説明はされていない。 以上によれば,当業者といえども,本願明細書の発明の詳細な説明の記載から,本願請求項1において規定された反応生成物の全てが,望ましく遅延した速度で香料を放出し,清々しい香りの残留性を改良するという本願発明の課題を解決できるものであると認識することはできないものというべきである。

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平成25(行ケ)10271  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年11月10日  知的財産高等裁判所

 「アルコールの軽やか風味」という用語が不明瞭として、36条に違反すると判断されました。審決は明瞭性違反はないと判断していました。
被告は,1)「アルコールの軽やか風味を生かしたまま,アルコールに起因する苦味やバーニング感を抑えて風味を向上させる」(本件明細書【0007】)とは,「アルコールの軽やか風味」,すなわち,単物質であるアルコールの単一の風味を希釈等により損なうことなく,苦味やバーニング感という不快な感覚のみを特異的に抑えて,その結果として,アルコール飲料全体の風味を向上させることを意味するものといえ,その内容は,明瞭である,2)当業者も,「アルコールの軽やか風味を生かす」ことは,すなわち,「苦味やバーニング感などの不快な感覚を抑制又は除去してアルコール本来の風味を生かす」ことを意味するものと,容易に理解できるはずである旨主張する。 b しかしながら,前記(ア)のとおり,アルコールは,甘味,苦味,酸味,その混合,「灼く(やく)ような味」など複数の風味を有するところ,本件明細書においては,シュクラロースの添加がアルコールの苦味及びバーニング感を抑えることは確認されているものの,アルコールの有する複数の風味のうちそれら2つの風味のみを特異的に抑えることまでは確認されておらず,しかも,「アルコールの軽やか風味を生かしたまま」であるか否かは明らかにされていない。 また,前記アのとおり,本件明細書は,「アルコールの軽やか風味」を,アルコールに起因する「苦味」及び「バーニング感」と併存するものとして位置付けているものと認められるところ,本件明細書上,これらの関係は不明であり,したがっ て,「苦味」及び「バーニング感」の抑制によって,「アルコールの軽やか風味を生かす」という効果がもたらされるか否かも,不明といわざるを得ない。被告は,「苦味」及び「バーニング感」を抑制することが「アルコールの軽やか風味」の向上であるかのような主張をするが,これは,本件明細書の客観的記載に反する解釈である。 以上によれば,被告の前記主張は,採用できない。
エ 小括
以上によれば,「アルコールの軽やか風味」という用語の意味は,不明瞭といわざるを得ない。そして,前述のとおり,当業者は,本件発明の実施に当たり,「軽やか風味」については「生かしたまま」,すなわち,減殺することなく,アルコール飲料全体の風味を向上させられるか,という点を確認する必要があるところ,「軽やか風味」の意味が不明瞭である以上,上記確認は不可能であるから,本件特許の発明の詳細な説明は,「アルコールの軽やか風味」という用語に関し,実施可能\性を欠くというべきである。 したがって,「アルコールの軽やか風味」の意味するところは明瞭といえる旨の本件審決の判断は,誤りである。
2 取消事由2(シュクラロースの添加量及び試行錯誤に係る実施可能要件違反〔平成6年改正前特許法36条4項違反〕並びに一般化に係るサポート要件違反〔同条5項1号違反〕に関する判断の誤り)について
 前記1において前述したとおり,「アルコールの軽やか風味」という用語の意味が不明瞭であることから,当業者において,「アルコールの軽やか風味を生かしたまま,アルコールに起因する苦味やバーニング感を抑えて,アルコール飲料の風味を向上する」ために必要なシュクラロースの添加量を決めることは不可能といわざるを得ない。\nしたがって,本件明細書は,添加量に関して実施可能性を欠くものといえるから,\n当業者は,本件明細書の記載に基づき,多種多様なアルコール飲料についてシュクラロースの添加量を決めることができるという本件審決の判断は,誤りである。

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平成26(行ケ)10018  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年10月16日  知的財産高等裁判所

 コンピュータにおける処理について、クレームの”記憶装置”には、揮発性のRAMは含まないとして、審決を取り消しました。 
 審決は,本願発明の「記憶装置」は,その記憶するデータ内容や記憶構造を限定しない「記憶装置」と捉えることができることから,引用発明の「主記憶装置」に相当するとして一致点を認定した。しかし,前記1(2)及び(3)ウで判示したとおり,本願発明の「記憶装置」は,システム内に含まれ,ファイル・システムを含む記憶装置であるところ(請求項1),本願明細書の発明の詳細な説明に照らして,その技術的意義を理解すると,ハード・ディスク等の不揮発性の大容量記憶手段であり,少なくとも揮発性のRAMはこれに含まれないものと解される。これに対し,引用発明の「主記憶装置」は,「オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムをプログラム格納手段から読み出して一時的に記憶する揮発性の主記憶装置」(【請求項1】)で,【発明の実施の形態】の図1の「RAM103」(【0037】)に相当するものであって,「RAM103はCPU101がプログラムを実行するとき,必要なデータを一時的に記憶させる作業領域として使用される揮発性の記憶装置であり,例えばDRAMからなる。」(【0038】)と記載されており,ファイル・システムによって,プログラム等のファイルをフォルダやディレクトリを作成することにより管理したり,ファイルの移動や削除等の操作方法を定めたりすることは記載されていない。そうすると,本願発明の「記憶装置」と,引用発明の「主記憶装置」は相違するものであるから,両者を一致するとした審決の認定は誤りである。そして,引用発明が,「プログラム起動時,起動時間を短縮できる演算装置および演算装置を利用した電子回路装置を提供することを目的」(【0015】)とし,前回終了時に,主記憶装置に記憶されているデータを不揮発性記憶装置に待避させ,演算装置の再起動時に,当該データを主記憶装置に転送することによって,前回の電源オフ時のオペレーティング・システム及びアプリケーション・プログラムの実行状態を再現するものであることからすれば,引用発明における演算装置の再起動時の不揮発性装置からのデータの転送先は,必ず主記憶装置でなければならず,引用発明における揮発性の「主記憶装置」をファイル・システムを含む不揮発性の記憶装置に置き換えることには阻害要因があるというべきである。したがって,審決には,「記憶装置」に関して,本願発明は「ファイル・システム」が含まれる不揮発性の記憶装置であるのに対し,引用発明は,揮発性の「主記憶装置」であるという相違点を看過した誤りがあり,同相違点の看過は,容易想到性の判断の結論を左右するものである。
(3) 被告の主張について
被告は,請求項1を引用する請求項5には,揮発性か不揮発性か限定されていない「固形メモリ装置」(solid state memory),すなわち,RAMのように揮発性だが高速な固形メモリ装置,及び,メモリカードのように不揮発性だが低速の固形メモリ装置の双方が含まれることが記載されているから,本願発明の「記憶装置」にはあらゆる記憶装置が含まれる旨主張する。しかし,そもそも本願明細書には,「固形メモリ装置」について,「RAMのように揮発性だが高速な固形メモリ装置」が含まれるとの記載はないから,被告の主張は理由がない。

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平成24(ワ)15612  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年10月9日  東京地方裁判所

 特許権侵害訴訟です。開示不十分として、特104条3により権利行使不能と判断されました。
 証拠(甲2)によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,「ここで本発明において「介在物」とは,鋳造時の凝固過程に生じる一般に粗大である晶出物並びに溶解時の溶湯内での反応により生じる酸化物,硫化物等,更には,鋳造時の凝固過程以降,すなわち凝固後の冷却過程,熱間圧延後,溶体化処理後の冷却過程及び時効処理時に固相のマトリックス中に析出反応で生じる析出物であり,本銅合金のSEM観察によりマトリックス中に観察される粒子を包括するものである。」(段落【0009】),介在物のうち晶出物及び析出物について,「時効処理は所望の強度及び電気伝導性を得るために行うが,時効処理温度は300〜650℃にする必要がある。300℃未満では時効処理に時間がかかり経済的でなく,650℃を越えるとNi−Si粒子は粗大化し,更に700℃を超えるとNi及びSiが固溶してしまい,強度及び電気伝導性が向上しないためである。300〜650℃の範囲で時効処理する際,時効処理時間は,1〜10時間であれば十分な強度,電気伝導性が得られる。」(段落【0019】)との記載があることが認められ,これによれば,時効処理温度及び時間につき,粗大な晶出物及び析出物の個数を低減させる方法についての一定の開示があるということができる。\nしかしながら,溶解時の溶湯内での反応により生じる酸化物,硫化物等については,本件明細書の発明の詳細な説明に,直径4μm以上の介在物個数を低減させる方法の開示は全くない。
(3) そして,本件明細書の記載内容及び弁論の全趣旨からすれば,原告が本件特許出願時において直径4μm以上の全ての介在物個数を0個/mm2とするCu−Ni−Si系合金部材を製造することができたと認めるに足りず,技術的な説明がなくても,当業者が出願時の技術常識に基づいてその物を製造できたと認めることもできない。 そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明には,特許請求の範囲に記載された数値範囲全体についての実施例の開示がなく,かつ,実施例のない部 分について実施可能であることが理解できる程度の技術的な説明もないものといわざるを得ない。
(4) したがって,本件発明は,特許請求の範囲で,粗大な介在物が存在しないものも含めて特定しながら,明細書の発明の詳細の説明では,粗大な介在物の個数が最小で25個/mm2である発明例を記載するのみで0個/mm2の発明例を記載せず,かつ,全ての粗大な介在物の個数を低減する方法について記載されていないことなどからすれば,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件発明の少なくとも一部につき,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。\n3 以上のとおりであって,被告製品のうち亜鉛の含有量が1.5%以下のものは本件発明の技術的範囲に属するが,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,特許法104条の3第1項により,本件特許権を行使することができない。そうすると,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。

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平成25(行ケ)10321  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年9月11日  知的財産高等裁判所

 サポート要件違反でないとした審決が維持されました。
 特許制度は,明細書に開示された発明を特許として保護するものであり,明細書に開示されていない発明までも特許として保護することは特許制度の趣旨に反することから,特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件が定められたものである。したがって,同号の要件については,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明の欄の記載によって十分に裏付けられ,開示されていることが求められるものであり,同要件に適合するものであるかどうかは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか,すなわち,発明の詳細な説明の記載と当業者の出願時の技術常識に照らし,当該発明における課題とその解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な技術的事項が発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討して判断すべきものと解される。\nイ 前記(1)の本件明細書の記載によれば,本件発明は,従来技術において,(ア) 改修用下枠が既設下枠に載置された状態で既設下枠に固定されるので,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題と,(イ) 改修用下枠の下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載され,その案内レールを基準として固定されているから改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅がより小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題(課題)があったため,これらの問題(課題)を,1)既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去する(構成1),2)既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し,取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付ける(構成2)ことにより解決したものであり,構\成1及び2を採ることにより,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,広い開口面積を確保でき,構成2とすることにより,既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできるという効果(本件効果)を奏するものであると認められる。\nそして,本件発明の「改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持」(請求項1ないし3)する,又は「改修用下枠の室内寄りが,取付け補助部材で支持され」(請求項4ないし6)る具体的な構成として,取付け補助部材106の上壁部10\n9において改修用下枠69の室内側脚部分91及び支持壁89とを支持する場合における構成1及び2の具体的な構\成(実施形態)は,本件明細書の段落【0070】(ただし,構成2のうち,取付け補助部材を既設下枠の室内側端部に連なる背後壁の立面にビスで固着する構\成部分については,【0100】)に記載されている。 ウ 以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,当業者において,特許請求の範囲に記載された本件発明の課題とその解決手段その他当業者が本件発明を理解するために必要な技術的事項が記載されているものといえる。

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平成25(行ケ)10236  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年9月24日  知的財産高等裁判所

 36条違反とした審決が取り消されました。
 前記本件審決は,a及びbの各記載部分においては,本件発明1の要旨を本件訂正後の請求項1の記載に従い,「インジウムおよびガリウムを含む窒化物半導体よりなり,第1および第2の面を有する活性層を備え,該活性層の第1の面に接してInxGa1−xN(0<x<1)よりなるn型窒化物半導体層を備え,該活性層の第2の面に接してAlyGa1−yN(0<y<1)よりなるp型窒化物半導体層を備え,該n型窒化物半導体層に接してAlaGa1−aN(0≦a<1)よりなる第2のn型窒化物半導体層を備え,該活性層を量子井戸構造とし,活性層を構\成する窒化物半導体の本来のバンドギャップエネルギーよりも低いエネルギーの光を発光することを特徴とする窒化物半導体発光素子。」と記載しているものの,これに続く部分では何らの根拠も示さないまま,請求項及び明細書の記載について,本件訂正を認めているにもかかわらず,本件発明1の発明特定事項から,「n型窒化物半導体層に接してAlaGa1−aN(0≦a<1)よりなる第2のn型窒化物半導体層を備え」る点を除外し,本件発明1を「活性層の第1の面に接してInxGa1−xN(0<x<1)よりなるn型窒化物半導体層を備え,該活性層の第2の面に接してAlyGa1−yN(0<y<1)よりなるp型窒化物半導体層を備え,活性層を構成する窒化物半導体の本来のバンドギャップエネルギーよりも低いエネルギーの光を発光する,窒化物半導体発光素子」と言い換え,その後は,hの記載部分に至るまで一貫して,本件発明1が「活性層の第1の面にn型InGaN層が接し,該活性層の第2の面にp型AlGaN層が接し,該活性層を構\成する窒化物半導体の本来のバンドギャップエネルギーよりも低いエネルギーの光を発光する窒化物半導体発光素子」であることを前提に,本件明細書の発明の詳細な説明の記載が,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるか否か,すなわち,実施可能\要件を充たすものであるか否かを判断している。
以上によれば,本件審決は,本件発明1の要旨を,その発明特定事項から「n型窒化物半導体層に接してAlaGa1−aN(0≦a<1)よりなる第2のn型窒化物半導体層」を備える点を除外した構成,すなわち,「活性層の第1の面に接してInxGa1−xN(0<x<1)よりなるn型窒化物半導体層を備え,該活性層の第2の面に接してAlyGa1−yN(0<y<1)よりなるp型窒化物半導体層を備え,活性層を構\成する窒化物半導体の本来のバンドギャップエネルギーよりも低いエネルギーの光を発光する,窒化物半導体発光素子」と認定し,これを前提に本件明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を充たすものであるか否かを判断しているといえる。 一方,本件発明1の要旨は,前記イ求項1の記載,すなわち,その発明特定事項に基づいて,「インジウムおよびガリウムを含む窒化物半導体よりなり,第1および第2の面を有する活性層を備え,該活性層の第1の面に接してInxGa1−xN(0<x<1)よりなるn型窒化物半導体層を備え,該活性層の第2の面に接してAlyGa1−yN(0<y<1)よりなるp型窒化物半導体層を備え,該n型窒化物半導体層に接してAlaGa1−aN(0≦a<1)よりなる第2のn型窒化物半導体層を備え,該活性層を量子井戸構造とし,活性層を構\成する窒化物半導体の本来のバンドギャップエネルギーよりも低いエネルギーの光を発光することを特徴とする窒化物半導体発光素子」であると認められるから,本件審決は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載が本件発明1について実施可能要件を充たすものであるか否かを判断するに際し,本件発明1の要旨の認定を誤ったものというべきである。 ところで,本件審決は,前記のとおり,形式的には,本件発明1の要旨を本件訂正後の請求項1の記載に従って記載した上で,その「特徴的構成」が「活性層の第1の面にn型InGaN層が接し,該活性層の第2の面にp型AlGaN層が接し,該活性層を構\成する窒化物半導体の本来のバンドギャップエネルギーよりも低いエネルギーの光を発光する窒化物半導体発光素子」であるとして,当該構成について,実施可能\要件を判断している。 前記イ認定のとおり,本件発明1は,LED素子の発光波長は,その活性層のInGaNのInの組成比を大きくするか又は活性層にドープする不純物の種類を変えることにより,紫外領域から赤色まで変化させることが可能であるが,LED素子には発光波長が長くなるに従って発光出力が大きく低下するという問題があり,また,不純物がドープされたInGaN活性層には,In含有量が増えると結晶性が悪くなり発光出力が大きく低下するという問題があったことから,本件発明1は,上記課題を解決し,窒化物半導体発光素子の長波長域の出力を向上させることにより,窒化物半導体で全ての可視領域の波長での発光が実現することを目的とし,その解決手段として本件訂正後の請求項1記載のとおりの構\成を採用し,熱膨張係数の小さいクラッド層で熱膨張係数の大きい活性層を挟むことで,両クラッド層と活性層の界面に引っ張り応力を発生させ,かつ,活性層を量子井戸構造とすることで,引っ張り応力を活性層に弾性的に作用させ,これにより活性層のバンドギャップエネルギーを本来のそれより小さくして活性層の発光波長を長波長化し,しかも,Inを含む窒化物半導体よりなる活性層に接して,熱膨張係数の小さいInを含む窒化物半導体又はGaNよりなる第1のクラッド層を備えることで,この第1のクラッド層が新たなバッファ層として作用することにより,活性層が弾性的に変形して結晶性が良くなり発光出力が格段に向上するという効果を奏するものである。\nそして,本件明細書の段落【0037】の「窒化物半導体において,AlNの熱膨張係数は4.2×10−6/Kであり,GaNの膨張係数は5.59×10−6/Kであることが知られている。InNに関しては,完全な結晶が得られていないため熱膨張係数は不明であるが,仮にInNの熱膨張係数がいちばん大きいと仮定すると,熱膨張係数の順序はInN>GaN>AlNとなる。」との記載によれば,熱膨張係数の順序は,InGaN>AlGaNとなること,段落【0039】及び【0040】の記載によれば,InGaNを主とする活性層をAlGaNを主とする2つのクラッド層で挟んだ構造を有する従来の窒化物半導体発光素子では,Alを含むクラッド層が結晶の性質上非常に硬い性質を有しており,薄い膜厚のInGaN活性層のみではAlGaNクラッド層との界面から生じる格子不整合と,熱膨張係数差から生じる歪をInGaN活性層で弾性的に緩和できないことから,活性層の厚さを薄くするに従って,InGaN活性層,AlGaNクラッド層にクラックが生じるという傾向があったが,本件発明1では,InとGaとを含む活性層6に接する層として,新たに第1のn型クラッド層5を形成し,この第1のn型クラッド層5が,活性層とAlを含む第2のn型クラッド層4の間のバッファ層として作用し,活性層を薄くしても活性層6,第2のn型クラッド層4にクラックが入りにくいと推察され,活性層の膜厚が薄い状態においても活性層の結晶性が良くなるので,発光出力が増大するとされていることからすれば,本件発明1が「n型窒化物半導体層に接してAlaGa1−aN(0≦a<1)よりなる第2のn型窒化物半導体層」を備える点は,その発明の特徴を構\成するものであるというべきであり,これを「特徴的構成」から除外する点においても,本件審決の上記認定は誤りであるといわざるを得ない。\n

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平成25(行ケ)10172 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月26日 知的財産高等裁判所

 訂正後の発明が明確性違反として、特許庁の判断を取り消しました。特許庁は無効理由無しと判断していました。
 審決が引用した文献である甲10(審判甲10,「スクラロースの味覚特性と他の高甘味度甘味料との比較」日本食品化学学会誌,Vol.2(2),1995,110−114頁),甲26(審判乙15,「新版 官能検査ハンドブック」,398−403頁),甲27(審判乙16,「新甘味料アスパルテームについて」,精糖技術研究会誌第26号,7−17頁)には,閾値の測定法として極限法が記載されていることからみて,「極限法」は,閾値の測定方法として広く一般的に用いられているものと認められ,また,被告が提出した実験報告書である甲25においても極限法が用いられている。しかし,甲51(「新版 官能検査ハンドブック」,395−423頁)及び甲52(「工業における官能\検査ハンドブック」, 333−343頁)には,閾値の測定法として,実験者あるいは被験者自身が刺激を一定のステップで徐々に変化させ,その1ステップごとに被験者の判断を求め,判断の切り替わる点を決定する「極限法」以外にも,実験者あるいは被験者自身が,刺激を任意に変化させながら,被験者に対し特定の感覚を与える刺激の値を探し出し決定する「調整法」や,一組の変化刺激を用意しておき,確率的に1つずつ提示し,それに対し被験者に予め定められた判断範疇のいずれかで反応してもらう「恒常刺激法」等が記載されており,閾値の測定法としては,極限法だけでなく,調整法,恒常刺激法等の複数の一般的な方法が存在していることが認められる。また,甲53(「甘味,酸味,塩から味,苦味刺激閾値の測定」,J. Brew. Soc.Japan, Vol.79,No.9,656−658頁)においては,「刺激閾値の測定法には,Aらの順位法による刺激テスト,調整法,極限法,1対比較法などが報告されているが,本実験ではPfaffmann らの1点識別法により行った。」と記載されていることから,甘味の閾値の測定に当たり極限法以外の方法を採用することもあることが理解できる。そうしてみると,甘味閾値は,他の方法ではなく極限法により測定するものであることが自明であるという技術常識が存在していたとまではいえず,訂正明細書における甘味閾値の測定方法が極限法であると当業者が確定的に認識するとはいえない。一方,甘味閾値の測定法は,人間の感覚によって甘味を判定する方法であって,判定のばらつきを統計処理し感覚を数量化して客観的に表現する官能\検査の一種であり,適切な多数の被験者を用いることにより,主観的な判断や個人による差を極力抑えるものではあるが,一般に,官能検査とは,被験者の習熟度,測定法,データの解析法等により数値が異なるものであり,相互の数値の比較は困難であることが多いものと解される。そこで,スクラロース水溶液におけるスクラロースの甘味閾値が記載されている甲10及び甲54をみると,甲10では,初めにスクラロース溶液の薄い方から濃い方へ(上昇系列)試験した可知の刺激価と,次に濃い方から薄い方へ(下降系列)試験した不可知の刺激価の平均値より算出する極限法により評価した数値は,0.0006±0.00014%であったことが記載され,甲54(「PROGRESS INSWEETENERS」,131−132頁)では,41人の被験者の集団を使用して「上昇濃度系列の極限法」に従い評価したスクラロースの甘味閾値は,0.00038%w/v と記載され,同じ極限法を用いて測定したスクラロース水溶液の甘味閾値として,甲10と甲54とでは約1.6倍異なる数値を記載している。また,甲10と甲54は,水にスクラロースを添加したスクラロース水溶液において甘味閾値を測定したものであるが,本件明細書の段落【0013】に記載するように,飲料中のスクラロースの甘味閾値は,苦味などの他の味覚や製品の保存あるいは使用温度などの条件により変動するものであるから,各種飲料における甘味閾値を正確に測定することは,単なるスクラロース水溶液に比べて,より困難であると認められる。しかも,甘味閾値の測定は,人間の感覚による官能検査であるから,測定方法の違いが甘味閾値に影響する可能\性が否定できないことは,上記のとおりである。そうすると,当業者は,同一の測定方法を用いた極限法によるスクラロース水溶液の甘味閾値であっても,2つの文献で約1.6倍異なる数値が記載されている上,訂正発明における各種飲料における甘味閾値の測定は,スクラロース水溶液に比べてより困難であるから,測定方法が異なれば,甘味閾値はより大きく変動する蓋然性が高いとの認識のもとに訂正明細書の記載を読むと解するのが相当である。したがって,甘味閾値の測定方法が訂正明細書に記載されていなくとも,極限法で測定したと当業者が認識するほど,極限法が甘味の閾値の測定方法として一般的であるとまではいえず,また,極限法は人の感覚による官能検査であるから,測定方法等により閾値が異なる蓋然性が高いことを考慮するならば,特許請求の範囲に記載されたスクラロース量の範囲である0.0012〜0.003重量%は,上下限値が2.5倍であって,甘味閾値の変動範囲(ばらつき)は無視できないほど大きく,「甘味の閾値以下の量」すなわち「甘味を呈さない量」とは,0.0012〜0.003重量%との関係でどの範囲の量を意味するのか不明確であると認められるから,結局,「甘味を呈さない量」とは,特許法36条6項2号の明確性の要件を満たさないものといえる。\n(2) 被告は,「甘味閾値は,一般的で確立した試験方法である極限法によって測定できるものであり,他にもよく知られた試験方法が存在するからといって甘味閾値が不明確になるものではない。極限法でも恒常刺激法でも,試験の原理上,同等の結果が得られることは明白である。測定には,常に誤差が伴い,各条件に応じて適した測定方法が異なるという常識があるが,だからといってこれによって測定される物理量の値が不明確などということもない。したがって,訂正発明は,不明確ではない。」旨主張する。そこで検討するに,被告による試験結果である甲25には,訂正明細書の実施例4を追試した際のコーヒーにおけるスクラロースの甘味閾値は0.00169%と記載されており,この値は,訂正発明の「0.0012〜0.003重量%」の範囲内の数値であるが,渋味のマスキング効果を確認したスクラロースの添加量は0.0016%であり,甘味の閾値と非常に接近している。そうすると,上記のように「0.0012〜0.003重量%」の範囲に甘味閾値が存在する場合には,特に正確に甘味閾値を測定する必要があり,誰が測定しても「甘味を呈さない量」であるか否かが正確に判別できるものでなければならない。しかし,甘味閾値の測定は人の感覚による官能検査である以上,被告が主張するように,測定方法等が異なっても同等の結果が得られることは明白であるとする客観的根拠は存在せず,測定方法の違い等の種々の要因により,甘味閾値は異なる蓋然性が高く,被験者の人数や習熟度等に注意を払ったとしても,当業者が測定した場合に,「甘味を呈さない量」であるか否かの判断が常に同じとなるとはいえない。したがって,被告の主張は採用できない。\n

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平成25(行ケ)10117 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月10日 知的財産高等裁判所

 明確性要件及び実施可能要件違反とした審決が取り消されました。\n
 ア 本願発明は,一般式(1)における各原子の組成比が,不定比となる場合を含むものであり,その組成比は変数y,z,u,wを用いて特定されているが,これらの各変数が相互にどのように連関するかは特定されていない。しかし,無機化合物において,格子欠陥等のため,その組成比が不定比となる(自然数でない)ものが存在することは,技術常識であって(甲21),このことは,無機化合物からなる蛍光体についても同様である(乙1,2)。そして,無機化合物は,定常状態では,その全体の電荷バランスが中性であり,無機化合物を構成する各原子の原子価と組成比との積の総和が,実質的にゼロとなっていることは,技術常識である(乙2【0015】,【0016】)。このような技術常識を踏まえると,組成比が不定比となる場合には,各原子の原子価が自然数とはならないことは明らかである。また,不定比を具体的な状況に応じて確定するのは困難である上,一定の数値をとるかどうかも不明である。そうすると,一般式(1)における各原子の組成比が不定比となる場合を含む本願発明においては,上記の各変数が相互にどのように連関するかを特定することは,相当程度困難である。本願明細書(甲1)の段落【0039】,【0040】,【0047】,【0049】,【0059】によると,実施例1,5,7(表\\2)で,実際に不定比組成である蛍光体が合成されている。これらの蛍光体は不定比組成であり,各原子の原子価は自然数ではなく,その具体的な数値は不明であるが,蛍光体の電荷バランスが中性となるように組成比が選択され,化学量論的に成立したものとなっていると解される。以上によれば,本願発明においては,上記の各変数が相互にどのように連関するか特定されていないとしても,一般式(1)における各原子の組成比は,一般式(1)に示される各原子の組成範囲内において,蛍光体の電荷バランスが中性となるように選択され,化学量論的に成立したものとなると認められるから,審決が認定するように,一般式(1)における各原子の組成比が化学量論的に成立するためには,上記の各変数が連関することが必要であるとはいえない。また,一般式(1)が,いかなる化合物を意味するのか不明であるともいえない。

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◆関連事件です。平成25(行ケ)10118

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平成25(行ケ)10063 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年11月28日 知的財産高等裁判所

 36条6項2号違反(明確性)とした拒絶審決が取り消されました。
 本件審決は,本願発明1において,実測炉壁間距離の平準化変位線を求めるために行う「カーボン付着や欠損による炉壁表面の変位を均す」との記載は明確であるとはいえないから,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に適合せず,同条項に規定する要件を満たしていない旨判断し,被告も同旨の主張をする。しかし,「均す」という言葉自体は「たいらにする。高低やでこぼこのないようにする。」と,「平準」という言葉自体も「物価の均一をはかって,でこぼこのないようにすること。」と一般に理解されており(岩波書店「広辞苑第6版」。甲12),また,いずれの言葉も多数の特許請求の範囲の記載で使用されている技術用語であること(甲13〜23)は当事者間に争いがないことを考慮すれば,本願発明1における「平準化変位線」について,当業者は,実測炉壁間距離変位線に基づいて「カーボン付着や欠損による炉壁表\面の変位」を「たいらにする。高低やでこぼこのないようにする。」ことによって求めるものであると認識し,かつ,本願発明1が,こうして求めた平準化変位線と実測炉壁間距離変位線とによって囲まれた面積の総和をコークス製造毎に求め,上記面積の総和の変化に基づいて,炉壁状態の変遷を診断するものであることを理解することができるから,本願発明1の「カーボン付着や欠損による炉壁表面の変位を均す」との記載の技術内容自体は明確である。したがって,本願発明1の特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明が明確であるということができる。
(2) 被告は,この点について,本願明細書の段落【0003】にあるように,炉壁の様々な劣化状態を詳細に観察することやその状態を特定する手段がなかったというこの分野における従来の状況を踏まえれば,「カーボン付着や欠損による炉壁表面の変位を均す」際の均し方の方法や基本的な指標等を何ら特定することなく,単に「カーボン付着や欠損による炉壁表\面の変位を均す」と記載しただけでは,本件出願当時の技術常識を考慮しても,具体的にどのような方法,指標・指針・考え方に基づいて行われるのかが明らかではなく,技術的に十分に特定されているということはできない旨主張する。しかし,本願発明1の「カーボン付着や欠損による炉壁表\面の変位を均す」との記載の技術内容自体は明確であり,本願発明1の特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明が明確であるということができることは,前記のとおりである。そして,「カーボン付着や欠損による炉壁表面の変位を均す」ための具体的な方法,指標・指針・考え方を発明特定事項としていないからといって,本願発明1が不明確となるものではない。発明の解決課題及びその解決手段,その他当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項(特許法施行規則24条の2)は,特許法36条4項の実施可能\要件の適合性において考慮されるべきものであって,発明の明確性要件の問題ではないと解される。

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平成25(行ケ)10061 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年11月12日 知的財産高等裁判所

 切り餅事件とは別の特許です。こちらは無効理由無しとした審決が維持されました。
 相対的に強度が低い部分(切り込みが存在する部分)は,一定程度の圧力がかかると,変形して伸びやすいともいえる。切餅の内部空間の圧力は,切り込みが存在する部分に限らず,全方向,例えば上下方向にもかかるから,切り込みが存在する部分が変形して伸びることにより,切り込みの上側が下側に対して持ち上がることになる。その持ち上がりにより,最中やサンドウィッチのような上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態(上下の焼板状部が平行に近い対称な状態で持ち上がる場合もあるが,非平行な片持ち状態に持ち上がる場合も多い。)に自動的に膨化変形する。このような膨化変形によれば,切餅の内部空間の体積は大きくなり,その分だけ圧力が高くなるのを抑えられること,また,それにより,膨化による噴出力(噴出圧)が大きくなるのも抑えられることは明らかであるから,上記のように膨化変形することでも,焼き網へ垂れ落ちるほどの噴き出しを一定程度抑制できることは,当業者にとって明らかといえる。 ウ 以上によれば,本件発明における「焼き上げるに際して前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり,最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制する」について,以下のとおり認めることができる。側周表面に所定の切り込みを設けた切餅をオーブントースターで焼くと,切餅の内部が軟化するとともに,切餅の内部に含まれる水分が蒸発して水蒸気となる等により,切餅の内部空間の圧力が高くなり,膨化するが,その圧力によって切り込みが存在する部分が変形して伸びることにより,切り込みの上側が下側に対して持ち上がる。その持ち上がりにより,最中やサンドウィッチのような上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態(やや片持ち状態に持ち上がる場合も多い。以下同じ。)に自動的に膨化変形する。切餅の側周表\面に所定の切り込みを設けたことにより,膨化による噴出力(噴出圧)を小さくすることができるため,上記切り込みを設けない場合と比べて,焼き網へ垂れ落ちるほどの噴き出しを抑制できるが,上記のように膨化変形することでも,膨化による噴出力(噴出圧)が大きくなるのを抑えられるため,上記切り込みを設けない場合と比べて,焼き網へ垂れ落ちるほどの噴き出しを一定程度抑制できる。

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◆関連事件です。平成25(行ケ)10062

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平成25(行ケ)10015 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年10月30日 知的財産高等裁判所

特36条は争点になっていませんが裁判所は下記を付言しています。
この程度の誇張が不適切というのはなぜなんでしょう?
付言
本願明細書には,従来技術の一つとして,引用文献が挙げられており(甲1 1の【0005】),図2は,その従来技術のエレベータ用ロープ13を示す ものである(同【0013】)との記載があり,そこには別紙Cの図2のとお り,ロープ被覆が相当厚く,またその断面形状はいびつに変形しており,到底 円とはいいがたい形状のものが記載されている。しかし,実際の引用文献に示 された図1は,別紙BのFIG.1のとおりであり,そこに描かれたロープ被 覆は薄く,その断面の形状は円である。本願明細書の【0013】には「明確- 32 - のため,ポリウレタン層15の厚さおよびロープ断面の変形をやや誇張して示 している。」との記載があるが,本願明細書における従来技術の記載は,「や や誇張」にとどまるものではなく,著しく不正確であり,特許法36条4項2 号の趣旨に照らしても,明細書としては不適切な記載である。

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平成24(行ケ)10300 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年07月17日 知的財産高等裁判所

 サポート要件に違反する(36条6項1号)、新規性なし(29条1項3号)とした審決が、取り消されました。
 審決は,1)引用発明のポリウレタンは,ショア硬度が10より低いものであるから,技術常識から,本願発明1におけるポリウレタンの性質である「94未満のショアA硬度」の要件(構成e)と重複一致し,また,2)引用発明のポリウレタンは,ショア硬度が十分に低い(つまり,軟らかい)ことから,本願発明1の構\成c及び構成dを満たす蓋然性が高いと解され,相違点1は実質的な相違点ではないと判断する。しかし,以下のとおり,審決の実質的な相違点でないとした判断には誤りがある。ポリウレタンには,「ショア10Aから90D」までの硬度(硬さ)があるとされている(乙1)。他方,前記のとおり,引用発明のポリウレタンは,「シヨア硬度が10より低い」と記載されているが,同記載における「シヨア硬度」が「ショアA硬度」を指すか否か,「シヨア硬度10」がどの程度の硬度であるか明確でない。したがって,引用発明のポリウレタンが「シヨア硬度が10より低い」と記載されていることのみから,本願発明1におけるポリウレタンの性質である「94未満のショアA硬度」の要件と重複一致し,また,本願発明1の構\成c及びdを満たす蓋然性が高く,相違点1は実質的な相違点でないと判断したことには,誤りがあるというべきである。
(4) 小括
以上のとおり,引用発明のポリウレタンが,本願発明1の構成eと一致し,また,構\成c及び構成dを満たす蓋然性が高く,相違点1が実質的な相違点でないとした審決の判断には,十\分な根拠がなく,是認することができない。
3 記載要件不備についての判断の誤り(取消事由2)について
本願発明1の構成要件を再載すると,次のとおりである。
「a 第1級脂肪族イソシアネート架橋を有し,\nb また,少なくとも25重量%の第1級ポリイソシアネート架橋を有しており,\nc かつ1.0×108パスカル以下の曲げ弾性率, d 1.0×108パスカル以下の貯蔵弾性率, e および94未満のショアA硬度を呈する f ポリウレタンであって, g さらにそのポリウレタンは, h 2以下のホフマン引掻硬度試験結果, i および1ΔE以内のカラーシフト(熱老化試験ASTM D2244−79に準拠)のj いずれか一方または両方の性質を呈するか,または呈しない k ポリウレタン。」
しかるに,審決は,以下のとおり判断する。すなわち,特許請求の範囲の記載において,本願発明1におけるポリウレタンは,「構成gないし構\成k」の部分に係る「要件a及び/又は要件b」,あるいは,「要件c」を満たすことが必要であるところ,本願明細書の発明の詳細な説明には,「要件a及び要件b」を満足する具体例,並びに「要件a」を満足する具体例の記載はあるが,「要件bのみ」及び19「要件c」を満足する具体例の記載がなく,当業者が,本願明細書の記載に基づいて,「要件bのみ」及び「要件c」を満足するポリウレタンがその発明の課題を解決できると認識できるとは認められないから,特許法36条6項1号を充足しないと判断した。しかし,審決の判断には,以下のとおり誤りがある。本願発明1に係る特許請求の範囲の記載は,「構成aないし構\成f」と「構成gないし構\成k」からなる。このうち「構成gないし構\成k」の部分は,「2以下のホフマン引掻硬度試験結果,および1ΔE以内のカラーシフト(熱老化試験ASTM D2244−79に準拠)のいずれか一方または両方の性質を呈するか,または呈しない」と記載されており,その記載振りからも明らかなように,同記載部分は,発明の専有権の範囲を限定する何らの文言を含むものではないので,格別の意味を有するものではない。「構成gないし構\成k」の部分は,限定的な意味を有するものではないことから,本願発明1の技術的範囲は,「構成aないし構\成f」の記載によって限定される範囲であると合理的に解釈される。そして,本願明細書の段落【0049】【0050】【0059】ないし【0061】並びに表3,表\5及び表6には,本願発明1の構\成aないし構成fを充足する実施例1,13及び14が記載されていると理解される。以上のとおりであるから,本願発明1については,本願明細書の発明の詳細な説明において,「構\成gないし構成k」の部分に係る「要件bのみ」及び「要件c」を満足する具体例を記載開示しなかったことが,少なくとも,特許法36条6項1号の規定に反すると評価することはできない。したがって,「要件bのみ」及び「要件c」を満足する具体例の記載がないことを理由として,特許法36条6項1号の要件を充足しないとした審決の判断には,誤りがある。\n

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平成24(行ケ)10178 審決取消請求事件  特許権 行政訴訟 平成25年07月23日 知的財産高等裁判所

 36条違反(実施可能要件)とした審決が維持されました。\n
 そこで,本願明細書の発明の詳細な説明がかかる要件を満たすかにつき検討するに,まず,本願発明の優先日当時の技術常識は上記3のとおりである。しかるに,本願発明におけるサファイア基板の上部表面は,「光を散乱または回折するための突出部及び/または陥凹部が含まれるように」「粗面にされ,突出部及び/または陥凹部はLEDによって生じる光の前記第1の層における波長より大きいか,あるいは,その程度の大きさ」というものであるところ,本願明細書に記載の上記突出部又は陥凹部の形成方法(【0018】〜【0020】),及び公知の可視光線に相当する電磁波の波長(下界が360〜400nm,上界が760〜830nm)に照らすと,本願発明におけるサファイア基板の上部表\面は,突出部又は陥凹部が不規則に存在し,かつ,研磨により表面粗さが1nm程度の極めて平滑な状態にされたサファイア基板に比して極めて高い表\面粗さを有することになる。そうすると,半導体の技術分野における上記の技術常識に照らせば,本願発明におけるサファイア基板の上部表面にエピタキシャル成長により半導体材料の第1の層を堆積しようとしても,サファイア基板の不規則な凹凸を結晶核生成の元とした島状結晶の形成や不規則な凹凸の斜面による異種結晶粒の生成が著しく増大するために,半導体材料の結晶を一定の方位関係をもって成長(エピタキシャル成長)させることは技術常識からは困難と理解される。しかるに,上記2に認定のとおり,本願発明の発明の詳細な説明には,実質的には,『サファイア基板の上部表\面上に陥凹部又は突出部を被うように半導体材料の層をエピタキシャル成長させる。』との記載があるだけであり,半導体材料の層をエピタキシャル成長させる際の手順及び条件を示した具体的な説明が記載されていない。したがって,本願発明の優先日当時の技術常識に照らして,本願明細書の発明の詳細な説明の記載から本願発明を実施し(本願発明のLEDの生産),本願発明にいう「改善されたLED」を得ることは,当業者に期待し得る程度を超える過度の試行錯誤を強いるものといわざるを得ない。以上によれば,本願明細書の発明の詳細な説明は実施可能要件を満たさないというべきであり,これと同旨の審決の判断に誤りはない。\n

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平成24(行ケ)10332 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年07月16日 知的財産高等裁判所

 36条違反(サポート要件)とした審決が取り消されました。
 この点,審決は,本願発明について「第1側面における第1スリットの開口部と,第2側面における第2スリットの開口部との間のみが,アーク放電領域となることを特定するものではない」と判断した。構成eは,一見すると,第1側面における第1スリットの開口部と,第2側面における第2スリットの開口部との間がアーク放電領域となれば,そこに包含されることになり,アーク放電領域に限定がないといえなくもない。すなわち,構\成eには,他の領域もアーク放電領域となっていながら,これに加えて当該領域がアーク放電領域となる場合と,当該領域のみがアーク放電領域となる場合両方が含まれていると解される余地がないではないが,一般的には当該領域がアーク放電領域になった場合に同時に他の領域でアーク放電が起きることは考えにくい。また,他の領域がアーク放電領域になった場合には当該領域はアーク放電領域とならないから,発明の詳細な説明に照らすと,「【0015】スリット部分から容易に電子が多量に電離用気体に向けて供給されることになり,容易に安定したアーク放電を得ること」により,アーク放電が安定して継続したアーク放電を得るとともに,発光点をスリットの端点からの発光とすることで,ごく微少な点光源を得るという課題を解決することにならない。したがって,構成eはアーク放電領域を限定したものというべきである。また,なるほど,被告の指摘するとおり,本願発明の請求項1はスリットの幅や長さ等を数値によって特定していない。しかしながら,「スリット」という用語自体に「細長い切れ目」という意味が存在するし,技術的思想として,第1側面における第1スリットの開口部と,第2側面における第2スリットの開口部との間でアーク放電が安定的に得ることが,本願明細書の発明な詳細な説明に記載されているから,本願発明におけるスリットは,そのような目的を実現できるだけの幅や長さに自ずと限定されるものと解すべきである。すなわち,請求項1における「スリット」とは,基本的には,グロー放電を生起させるために設けられていて,ひいては,そのグロー放電によって放出された電子が供給されて,アーク放電電極となる幅や長さを有するスリットと解すべきであって,このことは当業者が出願時の技術常識に照らして実施可能\である。したがって,本願発明が上記争いある技術的事項を含むもの,すなわち,その技術的事項にまで及んでいるものであるとする被告の主張は採用できない。
(3) 他方,本願発明の詳細な発明には,発明が解決しようとする課題の記載等から,本願発明は,発光スペクトルの範囲が幅広いアーク放電を用いて,プラズマ中のラジカル量の測定ができるようにマイクロアークを発生させる電極を得ることを目的としていることがわかるととともに,第1スリットが形成された陰極と,第1スリットに対応する位置にスペーサスリットと第2スリットがそれぞれ形成されたスペーサと陽極に電圧を印加すると,電離した陽イオンがこのスリットを形成する側壁に衝突して,側壁から電子が放出され,その放出された電子が気体原子と衝突して陽イオンを生成し,その陽イオンが,再度,スリットの側壁に衝突して電子を放出させるという過程が繰り返されて,グロー放電に至り,その後電流を増加させると,スリットの開放付近における,陰極10の側面141a,141bと,陽極20の側面201aと201bとの間でアーク放電が開始されることが記載されているといえる。前述のとおり,特許請求の範囲の請求項1に記載された本願発明は,陰極と陽極とスペーサにスリットを設け,陰極のスリットの開口部と陽極のスリットの開口部との間がアーク放電領域となるアーク放電電極であるところ,発明の詳細な説明にも,同様に陰極に第1スリットを設け,陽極に第2スリットを設け,スペーサにスペーサスリットを設けたアーク電極について記載されており,この第1スリットの開口部と第2スリットの開口部との間がアーク放電領域となることが記載されているから,本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されている。さらに,陰極のスリットの開口部と陽極のスリットの開口部との間がアーク放電領域となるアーク放電電極という本願発明においては,マイクロアークを発生させることが発明の詳細な説明からわかることから,本願発明の課題を解決するものであるといえる。すなわち,本願発明の詳細な説明には「アーク放電による微少な点光源を得るため,グロー放電を生起することができ,生起したグロー放電によって生成された電子を供給するためのスリットを設け,前記スリットの開口部の近傍にアーク放電領域を形成したアーク放電」に関する技術的思想の開示はあるものの,争いある「各スリットがグロー放電を生起するために設けられていて,ひいては,そのグロー放電によって放出された電子が供給されて,アーク放電と結びつくことについて何ら特定されないスリットを有するアーク放電電極」との技術的事項までを,本願発明が含むものとは認められない。したがって,これに関する記載が発明の詳細な説明になされていなくとも,サポート要件違反があるということにはならず,請求項1に記載された本願発明は,発明の詳細な説明に記載されたものとして,本願明細書の記載は特許法36条6項1号の要件を充足するものであるといえる。

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平成24(行ケ)10292 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年06月27日 知的財産高等裁判所

 サポート要件違反について、知財高裁大合議部判決(知財高裁平成17年(行ケ)第10042号同年11月11日特別部判決)の判断基準を用いて、サポート要件違反とした審決が維持されました。
 (1) 法36条6項は,「第三項四号の特許請求の範囲の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し,その1号において,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。特許制度は,発明を公開させることを前提に,当該発明に特許を付与して,一定期間その発明を業として独占的,排他的に実施することを保障し,もって,発明を奨励し,産業の発達に寄与することを趣旨とするものである。そして,ある発明について特許を受けようとする者が願書に添付すべき明細書は,本来,当該発明の技術内容を一般に開示するとともに,特許権として成立した後にその効力の及ぶ範囲(特許発明の技術的範囲)を明らかにするという役割を有するものであるから,特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには,明細書の発明の詳細な説明に,当該発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載しなければならないというべきである。法36条6項1号が,特許請求の範囲の記載を上記規定のように限定したのは,発明の詳細な説明に記載していない発明を特許請求の範囲に記載すると,公開されていない発明について独占的,排他的な権利が発生することになり,一般公衆からその自由利用の利益を奪い,ひいては産業の発達を阻害するおそれを生じ,上記の特許制度の趣旨に反することになるからである。そして,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり(前記知財大合議判決参照),この点に関する原告の主張は,採用することができない。
(2) そこで,上記の観点に立って,以下,本件について検討する。
ア 前記第2の2のとおり,本願発明は,「(a)n−ブチルアクリレートを50重量部以上,カルボキシル基を持つビニルモノマー及び/又は窒素含有ビニルモノマーの一種以上を1〜5重量部,水酸基含有ビニルモノマー0.01〜5重量部を必須成分として調製されるアクリル共重合体100重量部と,(b)粘着付与樹脂10〜40重量部からなる粘着剤組成物を架橋した」という組成であり,かつ,周波数1Hzにて測定されるtanδのピークが5℃以下にあり,50℃での貯蔵弾性率G’が7.0×104〜9.0×104(Pa),130℃でのtanδが0.6〜0.8であるという粘弾特性を満たす粘着剤を基材の少なくとも片面に設けてなる粘着テープとして記載されている。他方,前記1のとおり,本願明細書の発明の詳細な説明には,発明の実施の態様として,炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(請求項1のn−ブチルアクリレート),高極性ビニルモノマー(請求項1のカルボキシル基を持つビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマー)及び架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマー(請求項1の水酸基含有ビニルモノマー)の配合量が請求項1に記載された範囲外では粘着特性の点で劣ることが記載(【0016】【0017】)され,また,カルボキシル基を持つビニルモノマー,窒素含有ビニルモノマー,水酸基含有ビニルモノマー及び粘着付与樹脂や架橋剤の具体例(【0012】〜【0020】)が列挙されるとともに,【表\1】には,実施例1ないし4及び比較例1及び2として,請求項1に記載された粘弾特性を満たす粘着剤及び満たさない粘着剤の具体的組成が記載されている。また,前記1のとおり,本願明細書の発明の詳細な説明(【0021】)には,発明の実施の形態として,「tanδのピークが5℃を超える場合は,低温性が悪化する。50℃での貯蔵弾性率G’が6×104(Pa)以下では,再剥離性が悪化し,2×105(Pa)を超える場合は耐反撥性,定荷重性が悪化する。また130℃でのtanδが1を超える場合は,再剥離性が低下する。」と,粘弾特性の各パラメータの値が請求項1に記載された範囲を外れる場合には,再剥離性,耐反発性,定荷重性等の粘着特性が悪化する傾向にあることが記載されている。さらに,実施例1ないし4及び比較例1及び2には,tanδのピークが−7℃以下で,50℃での貯蔵弾性率G’及び130℃でのtanδが請求項1に記載された範囲(実施例1ないし4)であれば,再剥離性やエーテル系ウレタンフォームあるいはステンレス等に対する接着力において,優れた粘着特性が発揮されるのに対して,tanδのピーク(−7℃)が請求項1に記載された数値の範囲内であっても,50℃での貯蔵弾性率G’(5×104(Pa))及び130℃でのtanδ(1.05)が請求項1に記載された数値範囲を外れると,再剥離性が劣り(比較例1),また,tanδのピーク(0℃)及び130℃でのtanδ(0.6)が請求項1に記載された数値の範囲内であっても,50℃での貯蔵弾性率G’(15×104(Pa))が請求項1に記載された数値の範囲を外れると,定荷重性が劣ること(比較例2)が記載されている。そして,甲17(「粘着技術ハンドブック」196頁,平成9年3月31日,日刊工業新聞社発行)によれば,tanδのピークが5℃以下であることは,一般の粘着剤が備える粘弾特性であると認められるから,これら実施例及び比較例のデータは,発明の実施の形態として粘着特性の傾向が定性的に記載された粘弾特性の範囲の中でも,特に請求項1に記載された50℃での貯蔵弾性率G’及び130℃でのtanδの範囲の粘着剤は,優れた粘着特性を有すること及び請求項1に記載された粘弾特性を外れると,発明の実施の形態(【0021】)に記載されたとおり,粘着特性が劣るものとなることを示すものであるといえる。
イ しかしながら,実施例1ないし4は,いずれも,n−ブチルアクリレート(表1のBA)を90重量部程度有し,任意モノマーとして酢酸ビニル(同VAc),カルボキシル基を持つビニルモノマーとしてアクリル酸(同AA),窒素含有ビニルモノマーとしてNビニルピロリドン(同NVP),水酸基含有ビニルモノマーとしてヒドロキシエチルアクリレート(同HEA),粘着付与樹脂としてロジンエステル系樹脂A−100(荒川化学社製)及び重合ロジンエステル系樹脂D−135(荒川化学社製)を用いたものであって,請求項1に記載された組成の中のごく一部のものにすぎない。\n

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平成24(行ケ)10365 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年06月06日 知的財産高等裁判所

 実施可能性違反およびサポート要件違反を主張しましたが、無効理由無しと判断した審決が維持されました。
 なお,仮に原告の主張の趣旨が,本件各具体例の個々の構成について本件明細書の発明の詳細な説明に記載がないことのみを問題とするのではなく,請求項2及び3の記載が本件各具体例の構\成を全て備えた特定の発明を含むものであることを前提として,発明の詳細な説明には当該発明の記載がない上,本件具体例6の構成(「完全には溶着されていないものの部分的に又は工程進行的に溶着されつつある状態」で切除するもの(「溶着ヘッドが素線を台座とで挟んで密着した位置にあるときに,溶着機による溶着部分の中心部を台座の下側から切除するもの」))を有する当該発明においては本件各発明の課題を解決することができないことを理由に,本件各発明はサポート要件に違反する旨を主張するものであるとしても,以下に述べるとおり,原告の主張は理由がない。\n・・・・
ところで,本件明細書の上記各段落が示す実施例は,回転ブラシに回転軸を挿入するためのブラシ単体の孔を形成するために,溶着機6による溶着の動作が終了した後に,ノズル4の先端に形成した切除手段7が下動し,台座に固定された開かれた素線群1の溶着部の中心部分を台座の上側から切除する構成のものであるのに対し,本件具体例6は,ブラシ単体の孔を形成するために,台座に固定された開かれた素線群に対する溶着機による溶着動作の進行中に台座の下側から切除の動作を開始し,溶着部分の中心部を台座の下側から切除する構\成のものであり,本件明細書には,本件具体例6の構成に関する記載はないのみならず,本件各発明において台座の下側から切除することができることを明示した記載もない。しかしながら,回転ブラシに回転軸を挿入するためのブラシ単体の孔を形成するために,開かれた素線群を台座に固定した状態でその素線群の中央部分を切除する場合における切除の方向は,通常は,台座の上側から下側に向けて切除するか,台座の下側から上側に向けて切除するかのいずれかであるから,本件明細書に接した当業者であれば,本件各発明の「切除する第4の工程」(請求項2)及び「切除する切除手段」(請求項3)における切除の方向は,本件明細書の実施例の構\成のほかに,台座の下側から上側に向けて切除する構成をも含むことを容易に理解するものといえる。加えて,当業者であれば,ブラシ単体の孔を形成するために溶着された部分を切除する切除手段として先端が円形又は円筒状の切除刃,治具等を用いることができ,この切除手段を挿通孔を介して上下にスライドすることでブラシ単体の孔を形成することができることを容易に理解するものといえるから,本件各発明において,本件具体例6のような台座の下側から切除する切除手段を設けることには格別の困難はないものと認められる。そして,前記のとおり,本件各発明において溶着による固化がされた状態で切除が行われるのはブラシ単体の孔を均一の形状に保つ必要があることからすると,本件明細書に接した当業者であれば,開かれた素線群の中央部分を溶着する工程を開始し,溶着による固化がある程度の範囲で進行し,切除後に中心部分に形成される孔(本件審決にいう「環状部」)が維持される程度に固化している段階であれば,当該固化している部分を切除することができることを理解し,固化の進行状況,切除手段の動作速度,切除手段を構\成する部材の強度等を考慮し,切除のタイミングを適宜設定することにより,切除により形成される孔を一定の形状(均一の形状)に保つように当該固化している部分を切除することに格別の困難はないものと認識するものと認められる(原告が指摘するように溶着機の振動構造と切除刃との接触による切除刃の摩耗等が生じ得るとしても,それは切除刃の寿命等の問題であって,切除刃の部材の強度を高めること等によって対処し得るものであり,当該固化している部分を切除すること自体ができなくなるものではない。)。以上によれば,本件明細書に接した当業者は,請求項2及び3の記載に含まれる本件具体例6の構\成を有する上記発明においても,従来のブラシ単体の製造方法のようにブラシ単体の厚みを均一とするのに熟練を要することなく,均一な厚さのブラシ単体の量産化を可能とし,しかも素線の重なりを少なくしたブラシ単体を高速度で効率良く製造することができるという本件各発明の課題を解決できると認識できるものと認められるから,原告の上記主張は,理由がない。\n

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平成24(行ケ)10321 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年04月16日 知的財産高等裁判所 

 実施可能性を満たしていないとした審決が取り消されました。\n
 このとおり,訂正明細書では,吸湿による中間膜の白化の原因となるアルカリ(土類)金属塩の「粒子径」を一定値以下に保つことや(段落【0024】,【0042】),この「粒子径」をTOF−SIMS(Time of flight secondary ion mass spectrometry,飛行時間型二次イオン質量分析装置)の二次イオン像イメージングで計測することが記載されているだけで,測定条件等の詳細は開示されていない。しかしながら,A大学理工学部物質生命理工学科教授B作成の意見書(甲1)によれば,TOF−SIMSは,超真空下に試料を置き,この試料に対してガリウムイオン等の一次イオンのパルス化されたビームを照射し,一次イオンが試料表面の原子等と衝突した結果,試料表\面から空間に向けて発生,放出される二次イオン(試料表面の原子によるイオン)を質量分析計にかけ,二次イオンが検出器に到達するまでの飛行時間に応じて,二次イオンの質量を測定した上で,一次イオンビームの被照射位置の情報に照らして二次イオンの質量分布(質量スペクトル)を画像処理し,地図状の画像データを得る装置であると認められるところ,0.1μm(原告主張によると,本件優先日当時でも0.2μm)の面的解像度を有しているものであって,本件発明の「粒子径」の上限3μmに比して十\分に細かな分析ができるものである。そして,訂正明細書の段落【0093】には,炭素数6ないし10のカルボン酸等のマグネシウム塩は,中間膜中で電離せず塩の形で存在し,かつ凝集することなく膜表面に高濃度で分布していることが記載されている。そうすると,訂正明細書に接した当業者において,TOF−SIMSを用いて中間膜表\面のアルカリ(土類)金属塩の粒子の大きさを測定すること,より具体的には二次イオン像のイメージングにより粒子の最大径を測定することが可能であったことは明らかである。\n
(2)
審決は,TOF−SIMSでアルカリ(土類)金属塩ばかりでなくアルカリ(土類)金属イオンをも検出していることを実施可能要件違反の根拠の1つとするが,まず,前記のとおり,訂正明細書の段落【0093】では,例えばアルカリ土類金属塩の1種であるマグネシウム塩が中間膜中で電離せず塩の形で存在することが示されているから,本件発明において,アルカリ(土類)金属塩が相当程度(相当割合)電離してイオンを生成することが予\定されているものではない。そして,原告のグローバルテクニカルセンターのC作成の実験成績証明書(甲64)によれば,中間膜表面の赤外線分光法測定で,本件発明の技術的範囲に属する中間膜(実験例3)では,遊離している酢酸(イオン)に特有の吸収スペクトルが確認されなかったから,添加された酢酸マグネシウムの電離(解離)の度合いはごく低水準であったものと認めることができる(なお,添加された酢酸マグネシウムの量が多かったとしても,解離する酢酸マグネシウムの絶対量が少なくなるわけではないから,検出すべき吸収スペクトルの観点では問題がない。)。そして,上記Cが作成した別の実験成績証明書(甲28)によれば,中間膜をFE−TEM(電界放射型透過電子顕微鏡)で撮影した写真でみられる凝集物の像とEDS(エネルギー分散型X線分析)で撮影した写真でみられるマグネシウム,酸素の像とが位置的に符合するから,酢酸マグネシウムは中間膜表\面で凝集していることが認められる。これらのとおり,本件発明の中間膜,とりわけその表面では,ポリビニルアセタール樹脂を製造するときに中和工程に用いる薬剤あるいは接着力調整剤に起因する残留アルカリ(土類)金属塩の大部分が電離せず塩の形で残っており,電離してアルカリ(土類)金属イオンとなる割合はごく小さい。そうすると,TOF−SIMSの二次イオン像のイメージングの分析において,アルカリ(土類)金属イオンの存在を考慮外としても差し支えないというべきである。したがって,TOF−SIMSがアルカリ(土類)金属イオンをも検出していること,ないしその可能\性があることを根拠に,当業者において本件発明を実施可能でないとはいえない。\n
この点,被告は,本件発明の中間膜の含水率がナトリウム等の含有率に比して十分大きいことから,アルカリ(土類)金属塩は溶解,電離(解離)してイオンの形で高濃度に存在し得ると主張する。しかしながら,本件発明のような合わせガラス用中間膜は,吸湿による白化の問題を解決するために,耐湿性を確保することが課題とされており(段落【0003】〜【0019】),含水率を小さくすることが予\定されている。本件発明の中間膜も,その水分の含有率(含水率)は,ナトリウムやカリウムの含有率よりは相当大きいが,0.5重量%以下にすぎないのであって,ごく微量のものと評価することができる。したがって,製造時の含水率で考えれば,中間膜中の水分がアルカリ(土類)金属塩の電離に与える影響は必ずしも大きいものとはいえない。また,上記Cが作成した実験成績証明書(甲82)では,酢酸マグネシウムを添加した中間膜と酢酸マグネシウムを添加していない中間膜とで,電気伝導度に差がみられないことが示されているが,この実験結果は,中間膜中のアルカリ(土類)金属塩が電離する割合がごく小さいことを裏付けるものである。なお,アルカリ(土類)金属イオンがTOF−SIMSの二次イオンイメージング画像上の連続した領域にまたがるように存在するときに,この連続した領域分の大きさの輝点として検出されることが原理的にあり得るとしても,本件発明の中間膜のアルカリ(土類)金属塩の含有率程度の含有率でも,本件発明で特定される「3μm」との最大径の基準に比して,上記イオンが有意な大きさを占める輝点の像を実際に示すことを認めるに足りる証拠はない。アルカリ(土類)金属塩とそのイオンとが,2次イオンイメージング画像の連続した領域にわたって接続して存在し,両者があたかも1つの粒子のようにみえる可能性に関しても,実際にかかる事態が生じ,凝集物の大きさが相当の規模において過大に大きくみえる事態が生ずる蓋然性(なお,小さな輝点が塩粒子の周囲に付着してみえる程度であれば,粒子の最大径の測定に影響を与えない。)があることを証拠上認めることができない。結局,TOF−SIMSがアルカリ(土類)金属イオンをも検出していることを根拠に,本件発明に実施可能\要件違反があるとした審決の判断は誤りである。
(3)審決は,輝点として検出される二次イオンとサンプル中の金属量とが一般には比例せず,中間膜のTOF−SIMSによる粒子径の測定には定量性がないことを実施可能要件違反の根拠の1つとするが(17,18頁),本件発明の特許請求の範囲上,アルカリ(土類)金属(塩)の量(金属量)が特定事項となっているわけではなく,アルカリ(土類)金属塩の粒子の大きさが特定されているにすぎないから,上記の定量性をもって本件発明に係る実施可能\要件違反の裏付けとすることはできない。
(4)審決は,閾値の設定により測定値が変化すること等を根拠に,本件発明には実施可能要件違反があると判断するが,前記甲第1号証の資料1や,甲第35ないし第43,第76号証によれば,TOF−SIMSを用いた測定は,一般にバックグラウンド(1次イオンビームを照射しないときに検出される値)が低く,絶対感度がごく高いため,通常,2次イオンビームの測定結果(カウント数)を輝点と評価するかに関する設定値である閾値をゼロにして測定することは,当業者に広く行われている取扱いであると認められる(技術常識。審決も19頁でこの旨認定する。)。そして,本件発明の中間膜のTOF−SIMSを用いた測定では,かかる通常の取扱いと異なる取扱いを採用する理由は存しない。そうすると,訂正明細書にTOF−SIMSの閾値に関する記載がないからといって,当業者が本件発明を実施することができないとすることはできず,閾値を変化させたときに2次イオンのイメージング画像が異なり得る可能\性をもって実施可能要件違反があるということはできない。なお,TOF−SIMSの2次イオンの検出には,2次イオンの個数をカウントする上限である飽和点があるところ,TOF−SIMSでは試料の損傷を抑えるために,単位時間当たりに照射する1次イオンビームの強度を大きくしないのが通常であるから,かような飽和点は問題となりにくい(乙4)。仮に飽和点が問題となるとしても,当業者であれば,可能\な限り飽和点に近いが,飽和点を超えない積算回数を採用して試験を実施することが容易であり,かつかような手法で試験することが当業者に一般的である(甲79)。したがって,訂正明細書にTOF−SIMSの1次イオンビームの照射回数ないし積算回数に関する記載がないからといって,当業者が本件発明を実施することができないものではない。また,被告のPVB研究開発グループのD作成に係る実験報告書(甲18)は,2次イオンイメージングのドット(輝点)の大きさが1μmと大きすぎ,積算回数等に係る発明の実施の困難性の論拠として採用し難い。結局,「ポリマーのTOF−SIMS分析では閾値をゼロにすることが当業者の技術常識であるとしても,合わせガラス用中間膜中のアルカリ(土類)金属塩の粒子径の測定において,閾値をゼロとすることが当業者にとって技術常識であるとすることはできない。」との審決の認定,判断は誤りであり,測定条件の詳細が訂正明細書に明示的に記載されていないことを根拠に,本件発明に実施可能要件違反があるとした審決の判断は誤りである。\n

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平成24(行ケ)10299 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年04月11日 知的財産高等裁判所

 無効理由無しとした審決が、サポート要件違反ありとして取り消されました。
 被告は,本件明細書には液体調味料に対するACE阻害ペプチドの配合量について,「血圧降下作用及び風味の点から液体調味料中0.5〜20%,更に1〜10%,特に2〜5%が好ましい。」との具体的な数値の記載があり(【0030】),これがACE阻害ペプチドを配合した場合に風味変化が改善されることを確認した結果に基づくものであると主張する。しかしながら,本件明細書の発明の詳細な説明によれば,前記1オに記載のとおり,本件発明1ないし5及び9に利用可能なACE阻害ペプチドは,乳,穀物又は魚肉等の食品原料由来のものであり,かつ,その種類も多岐にわたるところ,これらの多種類の原料に由来するACE阻害ペプチドの風味が共通し,かつ,加熱処理によって同等の風味変化を生じ,あるいは生じないという技術常識が存在することを認めるに足りる証拠はない。しかも,ACE阻害ペプチドの配合量の数値に関する上記記載も,概括的なものであるから,仮にこれがACE阻害ペプチドを配合した場合の風味変化の改善を確認した結果に基づくものであるとしても,上記多種類の原料に由来するACE阻害ペプチドのいずれについて風味がどの程度改善されたのかを明らかにするものとは到底いえない。したがって,上記配合量の数値の記載があるからといって,本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者は,血圧降下作用を有する物質としてACE阻害ペプチドを液体調味料に混合して加熱処理した場合に,風味変化の改善という本件発明の課題を解決できると認識することはできず,サポート要件を満たすことになるものではない。\n
・・・・
以上によれば,血圧降下作用を有する物質として専らコーヒー豆抽出物を使用した本件発明6ないし8は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者がその課題を解決できると認識できるものであるから,サポート要件を満たすものといえる一方,血圧降下作用を有する物質として,コーヒー豆抽出物に加えてACE阻害ペプチドを使用する場合を包含する本件発明1ないし5及び9は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるといえるが,発明の詳細な説明の記載により当業者がその課題を解決できると認識できるものではなく,また,当業者が本件出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できるものであるともいえないから,サポート要件を満たすものとはいえない。

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平成24(行ケ)10200 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年02月27日 知的財産高等裁判所

 実施可能要件違反とした審決が取り消されました。\n
 審決は,1)本願明細書の発明の詳細な説明(段落【0031】)に記載された「表面が黒く処理された」金属は,例えば,顔料の素材のように導電性を持たないものを含むところ,そのような物質では,「電磁波遮断機能\を効率的に具現することができる」との効果を発揮することができない,2)本願明細書の発明の詳細な説明には,「表面が黒く処理された」金属を金属粉末として樹脂に添加した後も,「黒色の金属」という物理的性質を保持するための具体的手段が開示されていないとして,本願明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十\分に記載されたものではなく,特許法36条4項1号に違反すると判断する。しかし,審決の上記判断には,以下のとおり,誤りがある。すなわち,上記のとおり,本願発明は,特許請求の範囲において,「前記金属粉末は,黒色の金属である」とし,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された「表面が黒く処理された」金属と「黒色の金属」のうち,「黒色の金属」に特定したものと解される。そして,上記のとおり,金属粉末として黒色のものが存在することは,技術常識というべきであり,当業者は,黒色の金属粉末が具体的にどのようなものであるか理解することができるものと認められる。そうすると,「金属粉末の表\面が黒く処理された」金属について実施可能要件を満たすか否かにかかわらず,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された「黒色の金属」については,特許法36条4項1号に違反しないものと認められる。
イ 被告の主張についてこれに対し,被告は,1)鉄やコバルト,ニッケル,クロム等の白い光沢を持つ金属の金属粉末は,外光遮断機能を具現化することができない,2)本願明細書の発明11の詳細な説明に記載された「金属粉末の表面が黒く処理された」金属について,「12〜20μm」よりはるかに小さな微粒子とした場合にも,依然として電磁波遮断機能\及び外光遮断機能を備えた「黒色の金属」として存在し得るのかが明らかでなく,その表\面処理の方法も明らかでないと主張する。しかし,上記のとおり,本願発明は,樹脂に添加される金属粉末が,黒色の金属粉末であるとするものにすぎず,金属の種類(鉄など)を特定するものではない。また,本願発明は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された「表面が黒く処理された」金属と「黒色の金属」のうち,「黒色の金属」に特定したものと解される。したがって,被告の上記主張は,その前提に誤りがあり,採用することができない。\n

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平成24(行ケ)10151 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年02月20日 知的財産高等裁判所

 知財高裁は、鋼板の成分および鋼板の全伸びに関してサポート要件を満たしているとした審決を取り消しました。
 審決は,本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比すれば,特許請求の範囲に記載された発明が,Si,Mn,P,S,Al及びNの含有量について特定がないとしても,発明の詳細な説明に記載された発明であって,発明の詳細な説明に記載された課題を解決することができると認識し得ると判断する。
しかし,審決の上記判断には,以下のとおり,誤りがある。
ア 本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載は,前記第2の2記載のとおりであるところ,鋼板の成分について,「C:0.005〜0.040%を含有」すること以外,何ら特定していないから,C以外の様々な成分を様々な組合せ・含有量で含有する鋼を包含するものといえる。また,本件訂正発明は,鋼板の用途を「容器用」とするものであるが,これにより具体的にどのような成分及び組成範囲を有する鋼板であるのか,一義的に定まるともいえない(本件訂正発明に係る「容器」には,飲料缶,食品缶のほか,各種の容器が包含されるものと解され,ブリキ製品はこのような容器の一例にすぎないから,ブリキ製品についての標準的な規格であるASTM規格によって,成分及び組成範囲が一義的に定まるともいえない。)。したがって,本件訂正発明に係る容器用鋼板は,C:0.005〜0.040%を含有し,容器に用いられるものである限り,各種の成分及び組成範囲を有する鋼板を包含するものと解される。
イ 他方,訂正明細書の発明の詳細な説明には,上記のとおり,1)素材の薄手化に伴う缶強度の低下を補うため,鋼板自体を高強度化することが必要であるが,Si,Mn,P,Nb,Tiなどの元素の添加は好ましくないこと(段落【0002】),2)焼鈍時には目的の板厚より厚い鋼板を通板し,その後再冷延(2CR)を施し,目的とする板厚を得る方法は,缶強度を確保する観点で,極薄材の適用による強度低下分を加工硬化により補うので都合のよい製造法であること(段落【0003】),3)本件訂正発明では,鋼板の強度は,Si,Mn,Pなどの添加によらず,主として2CRによる加工硬化を想定していること(段落【0019】)が記載されている。また,訂正明細書の発明の詳細な説明には,具体的な鋼板の成分として,C:0.005〜0.040%のほか,Si:0.001〜0.1%,Mn:0.01〜0.5%,P:0.002〜0.04%,S:0.002〜0.04%,Al:0.010〜0.100%,N:0.0005〜0.0060%を含有するものが開示され(段落【0010】,【0011】),6種の鋼(表1のaないしf)を用いて,所定の製造方法(段落【0009】,【0017】,【0018】,【0024】)により鋼板を製造したところ,「JIS5号試験片による引張試験における0.2%耐力が430MPa以上,全伸びが15%以下」及び「10%の冷間圧延前後のJIS5号試験片による引張試験における0.2%耐力の差が120MPa以下で,引張強度と0.2%耐力の差が20MPa以上」を満たし,鋼板のフランジ成形性が良好なものが複数あったことが記載されている(表\2)。以上のとおり,訂正明細書の発明の詳細な説明には,添加が好ましくないSi,Mn,P,Nb,Tiなどの元素の添加によらず,主として2CRによる加工硬化により高強度化を達成することを前提として,C:0.005〜0.040%,Si:0.001〜0.1%,Mn:0.01〜0.5%,P:0.002〜0.04%,S:0.002〜0.04%,Al:0.010〜0.100%,N:0.0005〜0.0060%を含有する(残部はFe及び不可避的不純物である)鋼を用いて,所定の製造方法により鋼板を製造すること,製造された鋼板が,「JIS5号試験片による引張試験における0.2%耐力が430MPa以上,全伸びが15%以下」及び「10%の冷間圧延前後のJIS5号試験片による引張試験における0.2%耐力の差が120MPa以下で,引張強度と0.2%耐力の差が20MPa以上」を満たし,良好なフランジ成形性を有するものであることが開示されていると認められる。ウ 以上によれば,本件訂正発明に係る特許請求の範囲に記載された鋼板は,上記アのとおり,C:0.005〜0.040%を含有し,容器に用いられるものである限り,各種の成分及び組成範囲を有する鋼板を包含するものであるのに対し,訂正明細書の発明の詳細な説明には,上記イ以外の成分及び組成範囲を有する鋼(例えば,上記の鋼に,更にCr,Cu,Ni等を添加したものなど)を用いて製造された鋼板が,「JIS5号試験片による引張試験における0.2%耐力が430MPa以上,全伸びが15%以下」及び「10%の冷間圧延前後のJIS5号試験片による引張試験における0.2%耐力の差が120MPa以下で,引張強度と0.2%耐力の差が20MPa以上」を満たし,良好なフランジ成形性を有することについては,何ら開示されていない。のみならず,そもそも,合金は,通常,その構成(成分及び組成範囲等)から,どのような特性を有するか予\測することは困難であり,また,ある成分の含有量を増減したり,その他の成分を更に添加したりすると,その特性が大きく変わるものであって,合金の成分及び組成範囲が異なれば,同じ製造方法により製造したとしても,その特性は異なることが通常であると解される。そして,訂正明細書の発明の詳細な説明に開示された鋼の組成についてみると,含有する成分として,C:0.005〜0.040%のほか,Si:0.001〜0.1%,Mn:0.01〜0.5%,P:0.002〜0.04%,S:0.002〜0.04%,Al:0.010〜0.100%,N:0.0005〜0.0060%と特定しているところ,上記以外の成分及び組成範囲を有する鋼を用いる場合においても,上記の所定の製造方法により製造された鋼板が,良好なフランジ成形性を有するものであるとは,当業者が認識することはできないというべきであり,また,そのように認識することができると認めるに足りる証拠もない。そうすると,鋼の組成について,「C:0.005〜0.040%を含有」することを特定するのみで,C以外の成分について何ら特定していない本件訂正発明は,訂正明細書の発明の詳細な説明に開示された技術事項を超える広い特許請求の範囲を記載していることになるから,訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
・・・・
オ 以上のとおり,本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載は,鋼板の成分に関し,特許法36条6項1号(サポート要件)に適合しない。
(2) 取消事由3(サポート要件に関する判断の誤り2)−鋼板の全伸び)について
審決は,本件訂正発明において,高延性は全伸びだけで評価されるものではなく,全伸びの下限を厳密に限定する必要もないから,本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載は,鋼板の全伸びに関し,特許法36条6項1号(サポート要件)に適合すると判断する。しかし,審決の上記判断には,以下のとおり,誤りがある。
ア 本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載は,前記第2の2記載のとおりであるところ,全伸びについて,「15%以下」と特定するものであり,その下限値を特定しないものである。他方,上記のとおり,訂正明細書の発明の詳細な説明には,「鋼板の全伸びは本発明鋼では15%以下に限定する。これは,原板の全伸びがこれ以上であれば本発明によらなくともフランジ成形性の良好な鋼板が製造可能なためである。」(段落【0013】)との記載があるところ,かかる記載は,鋼板の全伸びが15%以下であっても,「10%の冷間圧延前後のJIS5号試験片による引張試験における0.2%耐力の差が120MPa以下」及び「引張強度と0.2%耐力の差が20MPa以上」の各要件を満たすことにより,フランジ成形性が良好となることを意味するものと解される。しかし,一般に,鋼板の延性が低いほど加工性が劣ることは,当業者にとって自明の事項であるから,全伸びが相当程度小さい場合には,フランジ成形性は相当程度劣るものと解されるところ,「10%の冷間圧延前後のJIS5号試験片による引張試験における0.2%耐力の差が120MPa以下」との要件は,加工硬化の程度が小さく,フランジ成形性があまり劣化しないということを意味するものにすぎず,上記要件を満たしたとしても,それによりフランジ成形性が向上するものとは解されない。また,「引張強度と0.2%耐力の差が20MPa以上」との要件は,引張強度と0.2%耐力の差が大きいほど,弾性変形の限界を超えて塑性変形する量が大きくなることを意味するものと解されるが,その量は全伸びを超えることはないから,全伸びが小さい場合には,塑性変形する量も相当程度小さいものになると解され,上記要件を満たしたとしても,フランジ成形性が相当程度劣ることに変わりはない。さらに,訂正明細書の発明の詳細な説明には,鋼板の全伸びが10%以上で,「10%の冷間圧延前後のJIS5号試験片による引張試験における0.2%耐力の差が120MPa以下」及び「引張強度と0.2%耐力の差が20MPa以上」の各要件を満たし,フランジ成形性が良好である実施例(表\1,2)が開示されているが,鋼板の全伸びが10%未満で,上記の各要件を満たし,フランジ成形性が良好である実施例は開示されていない。そうすると,鋼板の全伸びが10%未満でも,上記の各要件を満たすことによりフランジ成形性が良好となるか否かは,発明の詳細な説明の記載からは不明であり,本件特許出願時の技術常識を考慮しても,当業者がそのようなことを理解できるともいえない。以上によれば,訂正明細書の発明の詳細な説明には,鋼板の全伸びが10%未満でも,「10%の冷間圧延前後のJIS5号試験片による引張試験における0.2%耐力の差が120MPa以下」及び「引張強度と0.2%耐力の差が20MPa以上」の各要件を満たすことによりフランジ成形性が良好となることが開示されているとはいえないところ,本件訂正発明は,鋼板の全伸びについて,「15%以下」と特定するのみで,その下限値を特定せず,10%未満である場合をも包含するものであるから,発明の詳細な説明に開示されたものとはいえない。
イ これに対し,被告は,本件訂正発明において,鋼板の全伸びが15%以下であっても,「10%の冷間圧延前後のJIS5号試験片による引張試験における0.2%耐力の差が120MPa以下」及び「引張強度と0.2%耐力の差が20MPa以上」の各要件の数値が充足されていれば,フランジ成形性は良好となると主張する。しかし,上記のとおり,鋼板の全伸びが相当程度小さい場合においても,上記の各要件を満たすことによりフランジ成形性が良好になるとはいえず,そのような発明が,訂正明細書の発明の詳細な説明に開示されていると解することもできないから,被告の上記主張は,採用の限りでない。
ウ 以上のとおり,本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載は,鋼板の全伸びに関しても,特許法36条6項1号(サポート要件)に適合しない。

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平成24(行ケ)10071 審決取消請求事件  特許権 行政訴訟 平成25年02月12日 知的財産高等裁判所

 実施可能性要件を満たしていないと判断されました。出願人は、MITです。
 請求項7に係る本願発明は,(a)ウリジン,ウリジン塩,リン酸ウリジン又はアシル化ウリジン化合物,及び,(b)コリン又はコリン塩,の2成分を組み合わせた組成物が人の脳シチジンレベルを上昇させるという薬理作用を示す経口投与用医薬についての発明である。そうすると,本願明細書の発明の詳細な説明に当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したといえるためには,薬理試験の結果等により,当該有効成分がその属性を有していることを実証するか,又は合理的に説明する必要がある。本願明細書には,例2として,アレチネズミに前記(a)成分であるウリジンを単独で経口投与した場合に,脳におけるシチジンのレベルが上昇したことが記載されているものの,(a)成分と(b)成分を組み合わせて使用した場合に,脳のシチジンレベルが上昇したことを示す実験の結果は示されておらず,(b)成分単独で脳のシチジンレベルが上昇したことを示す実験結果も示されていない。また,(b)成分であるコリン又はコリン塩を(a)成分と併用して投与した場合,又は(b)成分単独で投与した場合に,脳のシチジンレベルを上昇させるという技術常識が本願発明の優先日前に存在したと推認できるような記載は本願明細書にはない。そうすると,詳細な説明には,本願発明の有効成分である(a)及び(b)の2成分の組合せが脳シチジンレベルを上昇させるという属性が記載されていないので,発明の詳細な説明は,当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十\分に記載したということはできない。したがって,本願明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法36条4項に規定する要件を満たさない。この趣旨を説示する審決の判断に誤りはない。
(2) 原告は,取消事由1において,本願明細書の記載を援用するが,いずれも上記判断を左右するものではない。取消事由1における原告のその余の主張も,脳シチジンレベルを上昇させるという薬理作用に関して裏付けるものではない。

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平成24(行ケ)10052 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年01月31日 知的財産高等裁判所

 開示要件を満たしていないとした審決が維持されました。
 本件発明2の特許請求の範囲において,昇温結晶化温度が128度以上,かつ,結晶化熱量が20mJ/mg以上という数値範囲は,いずれもシート層,すなわち,容器成形前の状態における物性値を規定したものと認められる。これに対し,本件明細書においては,上記1で認定したとおり,昇温結晶化温度及び結晶化熱量の数値は,いずれも容器成形後の容器切り出し片を対象として測定されたものであり,明細書において,特許請求の範囲に記載された容器成形前のシート層に関する記載は認められない。このように,本件明細書には,昇温結晶化温度及び結晶化熱量について,特許請求の範囲に記載された「シート層」の数値範囲を満たすことによって課題の解決が可能であることを示す直接的な実施例等の記載がなく,これとは異なる測定対象に係る数値しか記載されていないところ,本件明細書の比較例2(上記1の【表\2】)には,容器成形後の容器切り出し片について,昇温結晶化温度が127度,結晶化熱量が19mJ/mgの場合であっても容器側面の光沢がないと記載されている,すなわち,特許請求の範囲で構成する数値範囲から,容器成形によって,昇温結晶化温度が1 度,結晶化熱量が1mJ/mg外れただけでも課題が解決できないことになるのであるから,本件発明2が本件明細書に記載されている,あるいは,本件発明2の「光沢」黒色系容器が本件明細書に実施可能に記載されているというためには,昇温結晶化温度及び結晶化熱量の物性値について,容器成形前のシート層と容器成形後の容器切り出し片との間で,当業者が通常採用する条件であればこれらの物性値が不変であるか,当業者が通常なし得る操作によりこれらの物性値の変化を正確に制御し得るか,あるいは,これらの物性値が変化しないような成形方法や条件が本件明細書に記載される必要があるというべきである。そこで検討するに,PETを主成分とするシートから容器を成形するには,本件明細書の段落【0013】にも記載されるように,一般的に熱成形法が用いられるところ,原告提出に係る実験結果報告書には,成形前後で昇温結晶化温度及び結晶化熱量の物性値が全く変化しないものもある(甲37の1及び3,38の2及び4。ただし,この報告書では成形条件は明らかにされていない。)。これに対し,原告提出に係る実験結果報告書であっても,成形前後で結晶化熱量が1mJ/mg低下するもの(甲37の2及び4)や,昇温結晶化温度が1度上昇し,結晶化熱量も2mJ/mg上昇するもの(甲38の1及び3)もあるし,被告提出に係る実験結果報告書(甲14,15,20,22)には,成形前後で,昇温結晶化温度が5度以上低下,結晶化熱量も5mJ/mg以上低下するものが複数記載されている。これらの記載を総合すると,成形前後で昇温結晶化温度及び結晶化熱量の物性値がほとんど変化しない場合もあれば,成形後に大きく低下する場合もあると認めるのが相当であり,当業者が通常採用する成形条件の下において,これらの物性値が不変であるとは認められない。これに加えて,加熱時間が長くなるほどこれらの物性値がより大きく低下することを示す実験結果報告書の記載(甲65,68)や,容器深さが深くなるほどこれらの物性値がより大きく低下する傾向を示す実験結果報告書の記載(甲22)に照らすと,成形温度のみならず,成形時間や延伸の程度によっても,上記の物性値は変化するものと認められるのであって,当業者であっても,それらの物性値の変化を正確に予測したり,制御したりすることは容易ではないと認められる。さらに,上記の物性値が変化しないような成形方法や条件について,本件明細書には記載も示唆も認めない。以上のとおりであるから,本件発明2は,技術常識を参酌しても,発明の詳細な説明によりサポートされているとは認められず,特許法36条6項1号の要件を満たさない。
 また,本件明細書に,成形条件による上記の物性値の制御について記載や示唆がないことからすると,当業者といえども,本件発明2に係る光沢黒色系の包装用容器を製造することは容易ではないというべきであるから,本件発明2は,平成14年法律第24号による改正前の特許法36条4項の要件を満たさない。3 原告は,熱成形の際に,成形時間を短時間に設定すること,あるいは,シートの温度を約70〜100度とすることは技術常識であり,そうであれば,成形前後において,昇温結晶化温度及び結晶化熱量は同等である旨主張する。しかしながら,原告主張の技術常識を認めるに足りるに的確な証拠はなく,また,原告の知財チーム作成に係る甲68の実験結果報告書において,加熱時間4秒間で,シート表面温度が98度の場合に,結晶化熱量が2mJ/mg上昇する旨の実験結果の記載があることに照らすと,原告主張の成形条件が採用されているからといって,昇温結晶化温度及び結晶化熱量が不変であるとまでは認められない。\n原告は,昇温結晶化温度及び結晶化熱量が成形により低下するとすれば,低下が予想される分だけ昇温結晶化温度及び結晶化熱量の数値が大きい多層シートを用いて容器を形成すればよく,本件発明2はサポート要件と実施可能\要件を充足する旨主張する。このような原告の主張は,当業者がこれらの物性値の変化を正確に予測したり,制御したりすることができることを前提とするものというべきところ,当業者であっても,そのような予\測や制御が容易でないことは,上記2で説示したとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。

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平成24(行ケ)10020 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年01月31日 知的財産高等裁判所

 開示不十分とした審決が取り消されました。
 確かに,前記2(2)アのとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,赤色蛍光体及び緑色蛍光体として使用できる具体的な物質が,内部量子効率を含む各特性を含めて記載されているところ,本件明細書に開示されている緑色蛍光体の内部量子効率は80%以上であるが,赤色蛍光体の内部量子効率は80%未満であり,したがって,本件明細書には,内部量子効率が80%以上の緑色蛍光体については記載されているが,内部量子効率が80%以上の赤色蛍光体については,直接記載されていないというほかない。しかしながら,前記1(8)のとおり,本件明細書には,赤色蛍光体及び緑色蛍光体の製造方法について,その原料,反応促進剤の有無,焼成条件(温度,時間)なども含めて具体的に記載されているのみならず,赤色蛍光体の製造方法については,本件出願時には製造条件が未だ最適化されていないため,内部量子効率が低いものしか得られていないが,製造条件の最適化により改善されることまで記載されているものである。そうすると,研究段階においても,赤色蛍光体について60ないし70%の内部量子効率が実現されているのであるから,今後,製造条件が十分最適化されることにより,内部量子効率が高いものを得ることができることが記載されている以上,当業者は,今後,製造条件が十\分最適化されることにより,内部量子効率が80%以上の高い赤色蛍光体が得られると理解するものというべきである。
イ 証拠(甲5,12〜17)によれば,蛍光体の製造方法において,製造条件の最適化として,結晶中の不純物を除去すること,結晶格子の欠陥を減らすこと,結晶粒径を制御すること,発光中心となる付活剤の濃度を最適化すること等により,蛍光体の効率を低下させる要因を除去することは,本件出願時において当業者に周知の事項であったと認められる。したがって,本件明細書の発明の詳細な説明に内部量子効率が80%未満の赤色蛍光体が記載されているにすぎなかったとしても,当業者は,蛍光体の製造方法において,製造条件の最適化を行うことにより,赤色蛍光体についても,その内部量子効率が80%以上のものを容易に製造することができるものと解される。実際,証拠(甲18)によれば,本件出願後ではあるが,平成18年3月22日,内部量子効率が86ないし87%のCaAlSiN3:Euの赤色蛍光体が製造された旨が発表されたことが認められる。
 ウ 以上によると,本件明細書の発明の詳細な説明には,当業者が内部量子効率80%以上の赤色蛍光体を製造することができる程度の開示が存在するものというべきである。 

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平成23(行ケ)10418 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年12月25日 知的財産高等裁判所

 実施可能性要件および明確性要件違反とした審決が維持されました。
まず,実施例1(P/V比:10/100)と比較例2(P/V比:2.6/1 00)をみると,P及びVの屈折率差と溶剤を同一にして,P/V比を減少させる と,内部ヘイズ値は7から1に,表面ヘイズ値は19から14にそれぞれ減少して\nいることが示されているので,P/V比を減少させると,内部ヘイズ値及び表面ヘ\nイズ値の双方が減少する関係にあると推認される。 しかし,実施例1と2をみると,P及びVの屈折率差を同一にして,P/V比を 減少させ,溶剤を変化させると,内部ヘイズ値は7から5に減少し,表面ヘイズ値\nは19から25に増加している。他方,実施例2と比較例2をみると,P及びVの 屈折率差を同一にして,P/V比を減少させ,溶剤を変化させると,内部ヘイズ値 は5から1に,表面ヘイズ値は25から14に減少している。前記の実施例1と比\n較例2での変化の傾向に加えて,これらの比較からは,表面ヘイズ値と内部ヘイズ\n値は溶剤の種類による影響が大きいことが推認されるが,溶剤の種類とP/V比が, 協働して表面ヘイズ値・内部ヘイズ値の値に影響を与えているのか,それぞれ独立\nして影響を与えているのかは,全く不明である。 また,実施例1とこれに対して溶剤のみを変えた比較例5を比較すると,内部ヘ イズ値は7から9に増加するのに対して,表面ヘイズ値は19から3に減少し,実\n施例2とこれに対して溶剤のみを変えた比較例4を比較しても,内部ヘイズ値は5 から3に減少するのに対して,表面ヘイズ値は25から47に増加している。上記\nの対比結果によれば,溶剤の種類が,表面ヘイズ値・内部ヘイズ値の双方に影響を\n与える重要なファクターであり,溶剤には,表面ヘイズ値を増加させ内部ヘイズを\n減少させる作用を有するものや表面ヘイズ値を減少させ内部ヘイズを増加させる作\n用を有するもの等,様々な種類があると認識できるが,そのような知見を超えて, いかなる種類の溶剤を用いれば表面ヘイズ値・内部ヘイズ値を所望の数値に設定で\nきるかについて,当業者において認識・理解することはできない。 さらに,実施例2と比較例1をみると,P/V比と溶剤を同一にして,P及びV の屈折率差を変化させると,内部ヘイズ値は5から0.7に減少し,表面ヘイズ値\nは25から30に増加していることが示されているが,他の比較例はなく,P及び Vの屈折率差が表面ヘイズ値・内部ヘイズ値にどのような影響を与えるかは不明で\nある。 そうすると,発明の詳細な説明の記載において示された実施例及び比較例に基づ いて,当業者は,表面ヘイズ値・内部ヘイズ値が,P/V比,P及びVの屈折率差,\n 溶剤の種類の3つの要素により,何らかの影響を受けることまでは理解することが できるが,これを超えて,三つの要素と表面ヘイズ値・内部ヘイズ値の間の定性的\nな関係や相関的な関係や三つの要素以外の要素(例えば,溶剤の量,光硬化開始剤 の量,硬化特性,粘性,透光性拡散剤の粒径等)によって影響を受けるか否かを認 識,理解することはできない。
ウ 以上のとおり,発明の詳細な説明には,当業者において,これらの3つの要 素をどのように設定すれば,所望の表面ヘイズ値・内部ヘイズ値が得ることができ\nるかについての開示はないというべきである(ただし,発明の詳細な説明中の実施 例に係る本件発明9ないし11を除く。)。したがって,発明の詳細な説明には,当 業者が,本件発明1ないし8,12ないし16を実施することができる程度に明確 かつ十分な記載がされているとはいえない。
・・・・
しかし,「屈折率の異なる透光性拡散剤を含有する透光性樹脂からなる防眩層」に おいては,透光性拡散剤が透光性樹脂によって実効的に覆われていないことが想定 され,そのような場合,透光性樹脂と同一の屈折率を有する物質を用いて凹凸を除 去すると,前記凹凸を除去するために用いた透光性樹脂と同一の屈折率の物質と, 透光性樹脂によって実効的に覆われていない透光性拡散剤との界面で新たな内部ヘ イズが生じることになり,新たに生じた内部ヘイズを補償する必要性が生じる。 なお,発明の詳細な説明には,「又,表1において,ヘイズ値は,村上色彩技術研\n究所の製品番号HR−100の測定器により測定し,反射率は,島津製作所製の分 光反射率測定機MPC−3100で測定し,波長380〜780nm光での平均反 射率をとった。」(【0131】)と記載されている。同記載によれば,表面ヘイズ値・内部ヘイズ値とも,HR−100の測定器によって測定されることが説明されてい\nるが,内部ヘイズ値の測定方法に関する具体的な説明はない。また,HR−100 の取扱説明書(甲14)にも,「屈折率の異なる透光性拡散剤を含有する透光性樹脂 からなる防眩層」の内部ヘイズ値の測定方法に関する具体的な説明はない。また, この点についての何らかの技術常識が存在すると認めるに足りる証拠もない。 そうすると,「屈折率の異なる透光性拡散剤を含有する透光性樹脂からなる防眩 層」の内部ヘイズ値を測定する方法は,発明の詳細な説明の記載,及び本件特許の 出願当時の技術常識によって,明らかであるとはいえない。内部ヘイズ値が一義的 に定まらない以上,総ヘイズ値から内部ヘイズ値を減じた値である表面ヘイズ値も\n一義的には定まることはない。内部ヘイズ値・表面ヘイズ値を一義的に定める方法\nが明確ではないから,本件特許発明に係る特許請求の範囲の記載は,特許法36条 6項2号の「特許を受けようとする発明が明確であること。」との要件を充足しない というべきである。

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平成24(行ケ)10053 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年12月25日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について記載要件違反とした審決が維持されました。
 上記記載によれば,本願発明1の構成2において,「伝送ネットワークに,当該移動無線機器においてデータに対するメモリスペースを使用できないことを指示」することの主体は,移動無線機器であり,当該移動無線機器は,伝送ネットワークの記憶手段に中間記憶されたプッシュサービスデータの量を知り,それにより「当該移動無線機器においてデータに対するメモリスペースを使用できないこと」を検知し,このことを伝送ネットワークのネットワークコンピュータに指示するものと解される。しかし,本願明細書の発明の詳細な説明には,移動無線機器が,伝送ネットワークの記憶手段に中間記憶されたプッシュサービスデータの量を知り,「当該移動無線機器においてデータに対するメモリスペースを使用できないこと」を検知するための構\成及び方法について何ら具体的な記載はない。また,当該技術分野の技術常識を参酌しても,移動無線機器が,伝送ネットワークの記憶手段に中間記憶されたプッシュサービスデータの量を知り,「当該移動無線機器においてデータに対するメモリスペースを使用できないこと」を検知するための構成及び方法が,本願明細書の発明の詳細な説明の記載から当業者に自明な事項であるとも認められない。そうすると,本願明細書の発明の詳細な説明には,「伝送ネットワークに,当該移動無線機器においてデータに対するメモリスペースを使用できないことを指示」することについて,当業者が実施することができる程度に明確かつ十\分に記載されているとは認められない。したがって,本願明細書の発明の詳細な説明の記載は,本願発明1の構成2について,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十\分に記載したものであるとは認められない。

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平成23(行ケ)10339 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年12月13日 知的財産高等裁判所

 審決の認定には誤りがあるが、結論に影響しないとして、サポート要件違反でないとした審決が維持されました。
 ウ 本件明細書の上記アの記載によれば,食塩の過多な摂取は高血圧症等に悪影響を及ぼすことから,減塩醤油を始めとする減塩された液体調味料の使用が望まれているが,例えば,食塩含有量が9w/w%以下と定められている減塩醤油は食塩含有量が低いので,これを使用した場合,いわゆる塩味が十分感じられず,味がもの足りないと感じる人が多く,その使用量は増加していないという問題があったという背景技術の下,食塩含有量が低いにもかかわらず塩味のある液体調味料を提供するという目的で,食塩含有量を9質量%以下にしても塩味を感じさせる手段について検討した結果,食塩9質量%以下とし,かつカリウムを0.5〜4.2質量%とした系で,特定の風味改善成分を含有させることによって,塩味がより強く感じられ,味の良好な液体調味料が得られることを見いだし,その発明を特許出願したものであると認められる。したがって,本件特許発明1は,食塩含有量が低いにもかかわらず塩味のある減塩醤油を提供するという目的で,塩味がより強く感じられ,味の良好な液体調味料が得られるというものであるから,食塩を9質量%以下に低下させた場合であっても,通常の醤油に近い塩味を感じる減塩醤油を提供することが解決しようとする課題の1つとするものである。しかしながら,上記イで述べたように,塩化カリウムを食塩の塩味を代替する成分として使用した場合に苦味に代表\される不快な味を有することは,本件特許の出願時における当業者の技術常識であったのであるから,当業者であれば,カリウムを食塩の塩味の代替成分として使用する本件特許発明1においても,カリウムによる苦味等の不快な味を低減するという課題が存在することを認識するものと認められる。本件明細書の発明の詳細な説明に,「カリウムは塩味があり,かつ異味が少ない点から塩化カリウムであることが好ましい」(【0012】),「この結果,種々の風味改良剤の添加により,塩味が増強し,カリウムの苦味が抑制され,好ましい風味となった」(【0044】)と記載されており,また,実施例に記載の2点識別試験法では,塩味と苦味の両者について官能評価していることからも,本件特許発明1の減塩醤油では,通常の醤油に近い塩味を感じさせる点と,カリウムの配合による苦味等の不快な味を低減する点が,共に解決すべき課題であると理解できる。したがって,本件特許発明1の課題を,「少なくとも,食塩濃度が低いにもかかわらず塩味のある減塩醤油を得ること」(審決8頁19行〜20行)とした本件審決の認定は,カリウムの配合による苦味等の不快な味を低減するとの課題を看過した点に誤りがあるというべきである。\n エ しかしながら,本件特許発明1は,上記2つの課題をいずれも解決していると認められるから,この誤りは本件審決の結論に影響を及ぼすものではない。その理由は,以下のとおりである。・・・
(イ) 苦味に代表される不快な味について
実施例に記載の,「醤油としての風味の好ましさ」の判断基準は,「5:……味の調和に優れている」,「4:……味の調和がとれている」,「3:……味の調和がとれている」,「2:味の調和に若干欠ける」,「1:味の調和に欠け,苦味や異味を感じる」とあるので(【0040】),苦味に代表される不快な味についても,「醤油としての風味の好ましさ」として5段階で評価を行ったと認められる。そして,この評価が3〜5の場合に,試験品は苦味に代表\される不快な味を呈さず,本件特許発明1の課題が解決されているものと評価することができる。
(ウ) 上記を前提に,本件明細書の発明の詳細な説明の記載について検討する。a 本件明細書の表1・・・この結果より,食塩を8.11質量%,コハク酸をコハク酸二ナトリウム0.05質量%の遊離コハク酸換算量を含有する減塩醤油では,カリウムが0.78ないし3.91質量%の場合に,本件特許発明1の課題が解決できるものと理解できる。b 乙3の表2の試験品D〜Iは,食塩含有量が7.04質量%(表\中のナトリウム含有量の数値より換算)である対照品2)の減塩醤油に,塩化カリウムを1.63,3.56又は7.65質量%添加し(カリウム含有量は1.01,2.02,4.16質量%と変化),それぞれの場合において,コハク酸二ナトリウムを添加しないか,0.10質量%(遊離のコハク酸換算で0.07質量%)を添加したものである。その結果,減塩醤油中にコハク酸二ナトリウムを0.10質量%添加した場合に,総合評価が3又は4であったことが示されている。この結果より,食塩を7.04質量%,コハク酸をコハク酸二ナトリウム0.10質量%(遊離のコハク酸換算で0.07質量%)含有する減塩醤油では,カリウムが1.01ないし4.16質量%の場合に,本件特許発明1の課題が解決できるものと理解できる。
・・・
 上記試験品は,いずれも食塩含有量がほぼ等しく,また,カリウム含有量が等しい減塩醤油であることから,これらの総合評価の結果を総合すると,コハク酸をコハク酸二ナトリウム0.005〜1.30質量%の遊離コハク酸換算量(遊離のコハク酸換算で0.0036〜0.93質量%)の場合に,本件発明の課題が解決できるものと理解できる。d 前記aのとおり,食塩の含有量8.11質量%では,カリウムが0.78〜3.91質量%と,特許請求の範囲において特定される範囲のほぼ全域で本件発明の課題が解決でき,また,食塩の含有量が特許請求の範囲で特定される範囲の下限付近とした場合にも,乙3に示される試験結果より,コハク酸を配合することによって,本件特許発明1の課題が解決できるということができる。一方,食塩の含有量を8.11質量%よりも増加させた場合には,塩味が増加するので,塩味についての問題が生じるとは考えられず,また,カリウムの含有量は増やさないので,苦味に代表される不快な味についての問題も生じることはない。したがって,本件特許発明1の食塩及びカリウムの含有量の範囲において,その課題が解決できるものと認められる。一方,コハク酸については,前記cで述べたように,コハク酸をコハク酸二ナトリウム0.005〜1.30質量%の遊離コハク酸換算量(遊離のコハク酸換算で0.0036〜0.93質量%)の場合に,本件特許発明1の課題が解決できるということができる。ここに示された値は,下限値は本件特許発明1の範囲内であるし,上限値も本件特許発明1が限定する上限に近いことから,本件特許発明1は,コハク酸含有量の全ての範囲において,減塩醤油の塩味についての課題を解決できるものと認められる。以上に述べたとおりであるから,本件特許発明1は,その全ての範囲において,減塩醤油についての本件特許発明1が有する課題を解決できるものと認められる。\n

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平成23(行ケ)10445 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年12月05日 知的財産高等裁判所

 実施可能要件違反ではないとした審決が取り消されました。
 平成8年6月12日法律第68号による改正前の特許法36条4項が実施可能要件を定める趣旨は,明細書の発明の詳細な説明に,当業者がその実施をすることができる程度に発明の構\成等が記載されていない場合には,発明が公開されていないことに帰し,発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことになるからであると解される。そして,物の発明における発明の実施とは,その物の生産,使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号),物の発明について上記の実施可能要件を充足するためには,明細書にその物を製造する方法についての具体的な記載が必要であるが,そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができるのであれば,上記の実施可能\要件を満たすということができる。
(2) 本件審決は,本件明細書の方法2の実施可能性についてのみ検討した上で,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,実施可能\要件を充足するものとする。そこで検討するに,方法2は,前記1(3)ア(イ)のとおり,補助溶剤を含む水中にアトルバスタチンを懸濁するというごく一般的な結晶化方法であるものの,補助溶剤としてメタノール等を例示し,その含有率が特に好ましくは約5ないし15v/v%であることを特定するのみであり,結晶化に対して一般的に影響を及ぼすpH,スラリー濃度,温度,その他の添加物などの諸因子について具体的な特定を欠くものであるから,これらの諸因子の設定状況によっては,本件明細書において概括的に記載されている方法2に含まれる方法であっても,結晶性形態Iが得られない場合があるものと解される。そうだとすると,結晶化に対して特に強く影響を及ぼすpHやスラリー濃度を含め,温度,その他の添加物などの諸因子が一切特定されていない方法2の記載をもってしては,本件明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識を併せ考慮しても,当業者が過度な負担なしに具体的な条件を決定し,結晶性形態Iを得ることができるものということはできない。
(3) この点に関し,被告は,1)当業者であれば,撹拌により懸濁状態を維持するのに適した程度のスラリー濃度を採用することに何ら困難はなく,本件実験における懸濁物中の約15%の試料量も常識的な選択である,2)方法2において,補助溶剤を使用しないこと自体は,本件明細書に記載された範囲内であるし,好ましい条件であるメタノール濃度(5〜15%)において,より短時間で確実に結晶性形態Iが得られることも確認されている,3)方法2において,撹拌温度は明示的に特定されていないが,温度の規定がなければ,室温付近で行うのが技術常識である,4)本件明細書の実施例では,種晶を加えても17時間の撹拌が必要であったから,種晶を加えない場合,その数倍程度の時間が必要であると予測することは合理的であるなどと主張する。しかしながら,スラリー濃度は,結晶化の実現に関する重要な因子である以上,物の発明において,当該物の製造方法を開示するに当たり,具体的に記載される必要がある事項というべきところ,方法2については,補助溶剤の種類と好ましい濃度程度しか記載されていないのであるから,当該記載から,結晶性形態Iが得られるスラリー濃度(例えば,本件実験の設定である試料約10g,溶媒56m)を当業者が見いだすことは困難であるというほかない。しかも,方法2において具体的な条件として記載されている補助溶剤の種類と好ましい濃度についても,被告の依頼により行われた本件実験(甲16)においては,補助溶剤を用いずに実験が行われているものである。確かに,方法2において,補助溶剤を用いなくてもよいとされていることは,被告が主張するとおりであるが,好ましい条件であるメタノール濃度において,より短時間で確実に結晶性形態Iが得られることが確認されているのであれば,方法2が具体的に開示した好ましい条件に基づくことなく,本件実験が行われたことは不合理であるというほかない。さらに,本件審決は,方法2に対応する前記1(3)エ(イ)の方法Bにおいて,撹拌温度が約40°Cとされていることから,方法2においても,室温又はその前後において行われたものと理解されるとするが,約40°Cという温度について,これを「室温又はその前後」と理解することは困難である。本件実験においても,室温とのみ記載され,具体的な撹拌温度が明示されていないから,当業者が,撹拌の要否すら特定していない本件明細書の方法2に係る記載をもって,そのほかの諸因子との相関関係において決定されるべき最適な撹拌温度を過度の負担なしに設定することができるものということはできない。加えて,結晶化に要する撹拌時間は,pH,スラリー濃度,温度,その他の添加物などの諸因子によって異なるものであるから,本件明細書に特定の条件下における撹拌時間が開示されていたとしても,当業者が方法2における撹拌時間を合理的に予測することができるとまでいうことはできない。したがって,被告の主張はいずれも採用できない。
(4) 以上のとおり,本件明細書における方法2に係る記載は,結晶性形態Iを得るための諸因子の設定について当業者に過度の負担を強いるものというべきであって,実施可能要件を満たすものということはできない。もっとも,本件明細書には,本件審決が判断した方法2のほかにも,方法1及び3として,結晶性形態Iの具体的製造方法が開示されているところ,本件審決は,本件明細書の方法2について検討するのみで,本件明細書のその余の記載により実施可能\要件を充足するか否かについて審理を尽くしていないものというほかない。よって,実施可能要件について更に審理を尽くさせるために,本件審決を取り消すのが相当である。\n

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平成23(行ケ)10415 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年11月29日 知的財産高等裁判所

 新規事項およびサポート要件違反でないとした審決が維持されました。
 本件補正によって当初明細書の請求項1(請求項1を引用するその他の請求項も同様である)に「Ag3Sn金属間化合物を有する無鉛ハンダ合金であって」,「前記Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成して相互に連結されている」との事項が追加された(前記第2,2(1)で下線を付した部分のとおり。)。
イ 当裁判所の判断
 当初明細書の【0017】には,「Sn−Ag系合金においては,凝固組織の中にAg3Sn金属間化合物のネットワークが生成し」ていること,Sn−Ag系ハンダ合金にCuを0.3質量%以上添加したハンダ合金においても同様に,「Ag3Sn金属間化合物のリング状ネットワーク」が存し,これが「密にな(る)」ことが記載されている(前記1(1)イ)。また,Sn−Ag系ハンダ合金において,Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成すること,そのネットワークがリング状であること,その他合金元素が数%添加された場合でも基本的にAg3Snの組織は維持されることは,いずれも技術常識と認められるものでもある(前記1(3)アないしウ)。このような当初明細書の【0017】の記載及び技術常識によれば,当初明細書の請求項1に係る合金が「Ag3Sn金属間化合物を有する無鉛ハンダ合金であ(る)」こと,「前記Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成して相互に連結されている」ことは,いずれも自明な事項として把握できる。また,Sn−Ag合金に,他の元素を添加した場合にも,Ag3Snの微細分散組織が維持されることは技術常識(前記1(3)アないしウ)と認められるから,請求項1の合金に,Ni,Sb及びZnをさらに添加する請求項2,3に係る合金についても,「Ag3Sn金属間化合物を有する無鉛ハンダ合金であ(る)」こと,「前記Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成して相互に連結されている」ことは自明である。以上よりすると,本件補正は,当初明細書の【0017】に記載した事項の範囲内においてしたものといえるのであって,この点に関する審決の判断に誤りはない。
ウ 原告の主張について
原告は,当初明細書には,「Ag3Sn金属間化合物を有する無鉛ハンダ合金であって」という明示的な記載はなく,当該補正は,「Ag3Sn金属間化合物」を「有する」として,上位概念化をしたものであるから,当初明細書の記載から自明ではない新たな技術的事項を導入するものであると主張する。しかし,上記イのとおり,Sn−Ag合金においては,Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成するのであって,「Ag3Sn金属間化合物」を「有する」との補正は,その前提として,当該合金にAg3Sn金属間化合物が存することを確認的に示したにすぎないと解される。また,原告は,「前記Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成して相互に連結されている」との補正は,当初明細書の【0017】の「Ag3Sn金属間化合物のリング状ネットワークが密になり」との記載から,「リング状」という形状の規定を削除して上位概念化するものであると主張する。しかし,上記イのとおり,Sn−Ag系ハンダ合金において,Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成すること,そのネットワークがリング状であることは,技術常識と認められるから,請求項1に「リング状」という形状の規定が存在しないからといって,上位概念化されているということはできない。さらに,原告は,当初明細書には本件発明2,3について合金の組織がどのようなものであるかについては一切開示がないとも主張するが,上記イのとおり,Sn−Ag合金に,他の元素を添加した場合にも,基本的にはAg3Snの微細分散組織が維持されることは技術常識であるから,原告の主張は採用の限りではない。

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平成23(行ケ)10234 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年11月07日 知的財産高等裁判所

 サポート要件違反(36条6項1号)とした審決が取り消されました。
 特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否かを検討して判断すべきものである。(2) したがって,本件においても,サポート要件に係る判断の前提として本件発明の課題について認定する必要があり,その上で,本件発明の特許請求の範囲の記載と本件明細書の発明の詳細な説明の記載を対比し,本件発明として特許請求の範囲に記載された発明が本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で,当該発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の当該課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明の当該課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否かを検討する必要があるというべきである。
・・・
したがって,本件明細書は,本件発明に当たり,理論上,燐光を発する有機金属化合物を発光材料として発光層に使用することにより,有機発光デバイスの発光効率を改善することができるにもかかわらず,極めて多数にわたる有機金属化合物のうち当該発光材料として発光層に使用できるものが,ごく限られた特定のものしか知られていないという本件出願日当時の当時の技術水準(前記2(7))を前提としているものと認められる。 ・・・
そして,本件明細書には,本件発明の課題が必ずしも明確に記載されていないが,本件明細書は,上記技術水準を前提として,本件発明について,本件出願日当時に知られていた有機金属化合物とは異なるものを発光層に使用した有機発光デバイスに関するものとして説明しているものであるから,本件発明の課題は,「有機発光デバイスの発光層に使用した場合に燐光を発する新たな有機金属化合物を得ること」であると認めるのが相当である。・・・
4 本件発明のサポート要件の充足について
・・・
 したがって,当業者は,以上の本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,そこに記載の発明が電気エネルギー(電圧)を印加した場合に燐光を発するものであって,アノード,カソード及び発光層を含み,式L2MXで表される有機イリジウム錯体を発光層に含む燐光有機発光デバイス又はこれが組み込まれた表\\示装置という本件発明が,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているものと理解することができる。
(4) 以上に加えて,本件発明の課題は,前記(1)に説示のとおり,「有機発光デバイスの発光層に使用した場合に燐光を発する新たな有機金属化合物を得ること」であるところ,本件明細書の発明の詳細な説明には,前記(2)に説示のとおり,本件出願日前に燐光を発することが知られていなかった特定の有機イリジウム錯体が,その製造方法及び本件発明の他の構成とともに具体的に記載されているばかりか,前記(3)に説示のとおり,当該有機イリジウム錯体を有機発光デバイスの発光層に使用した場合に燐光を発することが,その作用機序とともに具体的に記載されているといえる。したがって,本件発明として特許請求の範囲に記載された発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるというべきであって,本件発明の特許請求の範囲の記載は,法36条6項1号にいう「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである」ということができる。
(5) 被告の主張について
ア 被告は,本件明細書の発明の詳細な説明ではBTIrという特定のイリジウム錯体の効果のみが確認されており,式L2MXで表される有機イリジウム錯体全体の効果が確認されていない旨を主張する。しかしながら,前記(3)に説示のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,BTIrを発光層に含めた有機発光デバイスに加えて,式L2MXで表される様々な有機イリジウム錯体の製造方法や,これらの有機イリジウム錯体による燐光の発光スペクトルが示されているばかりか,有機イリジウム錯体を採用することによって燐光が発生する作用機序も記載があるのであって,BTIrという特定のイリジウム錯体の効果のみを確認したものではない。よって,被告の上記主張は,これを採用できない。
イ 被告は,本件明細書には式L2MXで表される有機イリジウム錯体が発光しない場合がある旨の記載がある(【0114】)から,これと類似したものを用いれば全く発光しなくなると当業者が認識する旨を主張する。しかしながら,前記1(4)ケに記載のとおり,本件明細書の【0114】は,特定の2種類のX配位子を用いた場合に理由不明のクエンチが生じるために非常に弱い発光を与えるか,または発光を全く示さない旨を記載しているにとどまり,特定の作用機序によって全く発光しなくなる旨を記載しているわけではないから,この記載から直ちに,当業者が当該2種類のX配位子に類似したものを用いれば全く発光しなくなると認識するとまではいえない。

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◆平成23(行ケ)10235

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平成24(行ケ)10076 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月29日 知的財産高等裁判所

 サポート要件違反ではないとして、拒絶審決を取り消しました。
 発明の詳細な説明には,「これらの単環ヒンダードフェノール化合物は水溶性であり,そして多環ヒンダードフェノール性酸化防止剤よりも揮発性である。多環ヒンダードフェノール性酸化防止剤はそのより高い分子量により,水溶性が一層低く,しかも揮発性が低い。」(段落【0008】)と記載されているが,この記載は,単環フェノールがメチレン架橋化多環フェノールよりも,より揮発性であり,より水溶性であり,油溶解性が低いという当業者の技術常識に沿った記載である。また,発明の詳細な説明には,「低揮発性成分は,潤滑剤の使用期間中に蒸発により失われないのでより効果的な酸化防止剤である。それゆえにそれら(判決注:酸化防止剤組成物のこと)は潤滑剤中に留まり,潤滑剤を…酸化の悪影響から保護する。」(段落【0022】)と記載されているところ,酸化防止作用を示す成分が揮発することによって減少すれば,組成物の酸化防止能も減少するので,組成物中の揮発性の成分の量を減らすことにより組成物の酸化防止能\が向上することも,当業者の技術常識に沿った記載である。このように,発明の詳細な説明には,非常に低レベルのOTBP,DTBP及びTTBPの単環ヒンダードフェノール化合物を含有することによって,従来のメチレン架橋化多環ヒンダードフェノール性酸化防止剤組成物よりも向上した油溶解性を有する組成物を得ることができ,また,低い揮発性を有し,その結果,向上した酸化安定性を有する組成物を得ることができる点が記載されているということができるから,発明の詳細な説明の記載から,本願発明の構成を採用することにより本願発明の課題が解決できると当業者は認識することができる。したがって,発明の詳細な説明は,請求項1に係る発明について,その発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとして記載されているということができるから,請求項1に係る発明は発明の詳細に記載されているということができる。これとは異なるサポート要件に関する審決の判断には誤りがある。
3 被告の主張に対する個別的判断
(1) 被告は,従来のヒンダードフェノール系酸化防止剤に不純物として含まれる単環化合物は,ごく少量であるところ,もともとごく少量しか含まれていない単環化合物の量をさらに低減したからといって,従来のものと比較して,向上した油- 11 -溶解性及び低い揮発性について,有意な差異をもたらし得る程の効果を奏するとまでは認識できないし,本願発明の組成物は,潤滑剤等の組成物に添加されてその機能を発揮するものなので,組成物に添加されることにより希釈された状態では,単環化合物の含有量の減少による影響もさらに薄まると解されるなどと主張する。被告の主張は,従来のヒンダードフェノール系酸化防止剤に不純物として含まれる単環化合物(DTBP,OTBP及びTTBP)がごく少量であることを前提とするものである。しかし,発明の詳細な説明には,「従来のヒンダードフェノール系酸化防止剤は,DTBPおよびOTBPの混合物をホルムアルデヒド源と,反応溶媒中で,そしてアルキル化触媒の存在下で反応させることにより調製される。・・・これら酸化防止剤の調製物中の混入物には,以下に示す単環フェノール化合物:DTBP,TTBPが含まれる。」旨の記載があり(段落【0005】【0007】),また,「OTBPおよびDTBPは,製造後の生成物中に残る多環ヒンダードフェノール性酸化防止剤の出発材料である。TTBPは一般に,多環ヒンダードフェノール性酸化防止剤を調製するために使用されるOTBPおよびDTBP中に混入物として見いだされる。・・・」(段落【0008】)との記載があるところ,これらの記載からすると,従来のヒンダードフェノール系酸化防止剤は,TTBPを不純物として含有するDTBP及びOTBPをその製造原料として使用するものなので,その調製物には一定量以上の未反応のDTBP及びOTBPや不純物のTTBPを含んでいるものと認められる。そうすると,従来のヒンダードフェノール系酸化防止剤が不純物として含む単環化合物(DTBP,OTBP及びTTBP)がごく少量であるとまではいえないというべきであって,従来のヒンダードフェノール系酸化防止剤に不純物として含まれる単環化合物はごく少量であることを前提とする被告の主張は採用することはできない。\n
(2) 被告は,発明の詳細な説明には,向上した酸化安定性及び低い生物蓄積性という課題を達成し得ることの技術的裏付けが記載されておらず,また,向上した酸化安定性及び低い生物蓄積性の課題を達成し得ることが技術常識により当然に予- 12 -想できるとする技術的根拠も記載されていないと主張する。しかし,技術常識を参酌して発明の詳細な説明の記載をみた当業者が,本願発明の構成を採用することにより,向上した酸化安定性という本願発明の課題が解決できると認識できることは前記のとおりである。また,発明の詳細な説明には,生物蓄積性についての課題が解決できることを示す記載はない。しかし,発明の詳細な説明の記載から,本願発明についての複数の課題を把握することができる場合,当該発明におけるその課題の重要性を問わず,発明の詳細な説明の記載から把握できる複数の課題のすべてが解決されると認識できなければ,サポート要件を満たさないとするのは相当でない。\n
(3) 被告は,本件出願時の技術常識を考慮すると,010ppm のトリ-tert-ブチルフェノールの混入物を含むDTBP単量体,すなわち本願発明の原料成分を入手することは困難なものであったから,該DTBP単量体の具体的入手手段について何ら明らかにされていない発明の詳細な説明の記載に基づいて,本願発明の組成物を具体的に製造できるとは到底いえないとか,本願発明の組成物の具体的な製造を確認した例は記載されておらず,これらが技術常識により当然に予想できるとする技術的根拠も記載されていないのであるから,「特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明」であるということはできないと主張する。しかし,発明の詳細な説明の記載と出願時の技術常識からは本願発明に係る組成物を製造することはできないというのであれば,これは特許法36条4項1号(実施可能\要件)の問題として扱うべきものである。審決は,本件出願が特許法36条6項1号(サポート要件)に規定する要件を満たしていないことを根拠に拒絶の査定を維持し,請求不成立との結論を出したものであるから,被告の上記主張は,審決の判断を是認するものとしては採用することができない。なお,被告は本願発明の具体的な製造を確認した例の記載はないと主張するが,サポート要件が充足されるには,具体的な製造の確認例が発明の詳細な説明に記載されていることまでの必要はない。

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平成24(行ケ)10016 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月11日 知的財産高等裁判所

 サポート要件違反とした審決が取り消されました。
 すなわち,本願明細書には,本願発明の課題は,選ばれた新規種類の好ましい発泡剤を用いてポリウレタン硬質発泡材料を製造するための方法を記載すること等であり,特定の発泡剤,すなわち,HFC−365mfcと一定の他の発泡剤との混合物を用いてポリウレタン硬質フォームを製造するための方法により製造されたポリウレタン硬質フォームは,約15度を下回る温度において,熱伝導率が低く,熱遮断能を有するという効果を有することが判明したこと,この方法で用いる発泡剤組成物は,成分a)HFC−365mfcと成分b)低沸点の脂肪族炭化水素等とを含むものであるが,有利な組合せの一つとして,本願発明で用いる発泡剤組成物である,成分a)HFC−365mfc及び成分b)HFC−245faの組合せがあることが記載されているといえる。また,本願明細書には,本願発明で用いる発泡剤組成物を用いてポリウレタン硬質フォームを製造したことを示す実施例は記載されていないものの,成分a)HFC−365mfcと組み合わせる成分b)として,HFC−152a(例1a),HFC−32(例1b),及びHFC−152aとCO2(例1c)を用いてポリウレタン硬質フォームを製造したことが,具体的に開示されているといえる。そうすると,本願発明で用いる発泡剤の成分b)であるHFC−245faは,上記のとおり,ひとまとまりの一定の発泡剤のひとつとして記載されている上,本願明細書の実施例で使用された成分b)であるHFC−152aやHFC−32と同様に低沸点であり,技術的観点からすると化学構\造及び理化学的性質が類似するといえることも併せ考慮すると,実施例1a)〜c)と同様にHFC−245faを使用することによりポリウレタン硬質フォームを製造する方法が開示されていると解するのが相当である。以上のとおり,本願発明の課題及び課題解決手段,並びに,その効果が,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものと認めるべきである。

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平成24(行ケ)10040 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月15日 知的財産高等裁判所

 明確性違反であるとした審決が取り消されました。問題の請求項5は「ロール(110)が反らされていることを特徴とする請求項1記載の製造方法。」です。
 発明の詳細な説明を理解するに際しては,特定の段落の表現のみにこだわるべきではなく,全体を通読して吟味する必要がある。「反らされている」との請求項の文言において,これが技術的意味においてどのような限定をしているのかを特定するに際しても,同様である。上記2で分析したところによれば,請求項5における「ロール(110)が反らされている」について,特許請求の範囲の記載のみでは,具体的にどのように反らされているのか明らかでないものの,発明の詳細な説明の記載及び技術常識を考慮すれば,その意味は明確であるというべきである。発明の詳細な説明に記載された「“反り”の定義」が誤りであるとしても,当業者は,上記「“反り”の定義」が誤りであることを理解し,その上で,本願発明5における「ロール(110)が反らされている」の意味を正しく理解すると解することができるというべきである。上記「“反り”の定義」が誤りであるからといって,請求項5が明確でないということはできない。
・・・・
なお,審査,審判の過程において,出願代理人が本願発明の技術的意味を理解していなかったために,段落【0040】を正確に日本語化しなかった事情がある。(2) すなわち,本件出願の審査・審判の過程につき,以下の事実を認めることができる。ア 平成19年12月25日付け拒絶理由通知書(甲5)において,審査官から本願発明(請求項6)の「反らされている」に関し,「ロールが反らされている」とは,どの方向に反っているのか不明であり,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないとの指摘がなされたのに対し,原告は,請求項の該当箇所については補正することなく(甲7),平成20年6月3日付け意見書(甲6)において,「請求項6(新しい請求項5)の『ロールが反らされている』,ドイツ語で『Walzebombiert ist.』とは,『ロールの縁が丸くなっている』ことを意味します。」と回答した。イ 平成21年3月6日付け拒絶査定(甲8)において,「本願発明6の「反らされている」に関して,「請求項6の『ロールが反らされている』の意味が不明である。意見書では『ロールの縁が丸くなっている』としているが,日本語で『反らされている』と『縁が丸くなっている』とは全く別の意味である。」との指摘がなされたのに対し,原告は,審判請求後の指定期間内になされた平成21年7月9日付け手続補正書(甲11)において,請求項の「ロール(110)が反らされている」を「ロール(110)の縁が丸くなっている」と補正するとともに,発明の詳細な説明において「“反り”の定義 中心に対するロール縁部の放物線状直径増大」を「“反り”の定義 ロール縁部から中心に向かっての放物線上直径の増大」と補正し,平成21年7月9日付け手続補正書(甲10)により補正された審判請求書において,「請求項5(新しい請求項1)の『ロールが反らされている』という意味は,実際には,放物線状のロールがロール縁部からロール中心部に向かって放物線上の直径が増大していることを意味します。」と主張した。なお,審判請求書(甲9)において,補正の根拠については言及されていない。
ウ 平成23年4月14日付け審尋(甲12)において,審判長は,平成21年8月18日付け前置報告書の下記の内容を原告に通知した。「(1)新規事項について(1−1)請求項1の『ロール(110)の縁が丸くなっている』は外国語書面の翻訳文(以下『翻訳文』)に記載した事項ではない。『ロール(110)の縁が丸くなっている』については文言上翻訳文には記載されていない。そして,関連すると考えられる記載として,補正前の請求項5では『ロール(110)が反らされている』とあり,また,【0039】,【0040】にも『反り』について記載されている。しかし,これらの『反り』と『縁が丸い』とは明らかに異なる意味であり,しかも,『反り』は【0039】にあるようにフィルムの全幅にわたり均一な厚さ分布を与えるための形状として記載されていたのに対し,『ロール(110)の縁が丸くなっている』には,ロールの縁部のみが丸くなっているようなものも含まれ,そのようなものは,フィルムの全幅にわたり均一な厚さ分布を与えるという機能を果たさないことは明らかであるから,『ロール(110)の縁が丸くなっている』は『ロール(110)が反らされている』に含まれない範囲を含むものといえる。」上記の指摘に対して,原告は,平成23年7月8日付け回答書(甲13)において,請求項1を「つや出し圧延法を用いて105〜250μmの厚さ範囲の熱可塑性プラスチックからなる両面光沢フィルムを製造する方法において,熱可塑性プラスチックの溶融物を,つや出し機内の2つのロールの間に形成され,かつ,型締め圧力がかけられたロールギャップに供給し,該型締め圧力により,溶融物により惹起される圧力によるロールギャップの開きが阻止されることを特徴とする方法。」とする補正案を提示した。
(3) 上記の経緯によれば,原告は,平成21年7月9日付け手続補正書(甲11)及び平成21年7月9日付け手続補正書(甲10)により補正された審判請求書においてようやく,「ロールが反らされている」の意味は,実際には,放物線状のロールがロール縁部からロール中心部に向かって放物線上の直径が増大していることを意味する旨を主張するに至ったものである。それまでにおいて,原告は,「ロールが反らされている」の意味を平成20年6月3日付け意見書(甲6)において,「ロールが反らされている」(ドイツ語で『Walze bombiert ist.』)とは,「ロールの縁が丸くなっている」ことを意味すると主張していたなど,その主張は一貫していなかった。(4) このような出願代理人の対応の稚拙さが審査官,審判官の判断を正しい方向に導かず,審決の判断を誤ったものと理解される。平成21年7月9日付けの補正(甲11)に至って段落【0040】の記載を「“反り”の定義 ロール縁部から中心に向かっての放物線上直径の増大」とすることによって,明細書の記載が文言上においても矛盾のないものとなったものである。このように出願代理人の対応の稚拙さはあるにしても,請求項5における「ロール(110)が反らされている」の技術的意味については上記2のとおりに解釈すべきであって,上記補正の前にあっても不明確な点はないというべきである。
被告は,原文に基づいて誤訳を訂正するには特許法17条の2第2項の誤訳訂正書によらなければならないと主張するが,明細書における発明の詳細な説明を通読して理解される技術的内容が前記3のとおりである以上,誤訳訂正がなくとも,請求項5における「ロール10が反らされている」についての解釈が上記のとおりとなることに変わりはない。被告の上記主張は理由がない。

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平成23(行ケ)10364 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年06月13日 知的財産高等裁判所 

 実施可能要件違反とした審決が取り消されました。
 本願明細書には,本願発明の巻線間には空気が充填されたキャビティが存在するとした上で,そこに「ポリマー材料」を充填する製造方法について真空状態と加圧状態とを組み合わせてドレンチングにより又はキャスティングにより適切に行われる旨の記載がある(前記1(2)カ。【0008】)。したがって,当該記載部分を前記(1)に引用の本願明細書【0025】の記載部分と併せて参照すれば,当業者は,上記製造方法で固定子コイル同士の隙間に形成されるキャビティに「ポリマー材料」が完全に充填されることで,少なくともコイルの内面がコイルと「ポリマー材料」により隙間なく充填された面となり,その上に滑らかな被覆をさらに設けることが可能となることを容易に認識することができたというべきである。したがって,当業者は,本願明細書の上記記載に基づき,コイルの内面に滑らかで絶縁性のあるコイル被覆を設け,もって本願発明6を容易に実施することができたものと認められる。以上のとおり,前記(1)の引用に係る記載部分は,それ自体,明瞭であるといえるから,法36条4項に違反するものではなく,原告の前記(1)の主張には理由がある一方,これに反する被告の主張は,いずれも前提を欠くものとして採用できない。

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平成23(行ケ)10136 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年04月25日 知的財産高等裁判所

 データ圧縮特許について、記載不備、進歩性なしを主張していましたが、無効理由無しとした審決が維持されました。
 引用発明2は,「1つの楽音を生成するためのデータのうち先頭部分とその他の部分とで,異なる圧縮方法を用いて圧縮された楽音データを用いることにより,または,伸張処理されたデータのうち,一部を記憶するようにすることにより,発音要求から発音されるまでの遅延時間をなくし,かつ,高効率符号化音声圧(縮)方式を用いることができるようにするもの」であり,「圧縮されていないか,または伸張処理に要する時間が短い第1の圧縮方法により圧縮された第1のデータと,前記第1の圧縮方法より伸張処理に要する時間が長い第2の圧縮方法により圧縮された第2のデータから構成される楽音データを読み出す」ものであるから,「圧縮楽音データの後部に非圧縮楽音データを配置して再生する」ものではない。したがって,引用発明2は,繰り返し再生において曲の終端部と先頭部との間の無音部分が生じてしまうという課題を解決するために,無音部分を作ることなくループ再生を行うことができる楽音データ再生装置を提供するという,本件発明の課題を開示するものではない。しかも,引用発明2は,上記のとおり,圧縮楽音データの後部に非圧縮楽音データを配置して再生するものではないから,引用発明1に,引用発明2を組み合わせることにより,本件発明の読み出し順を採用することが容易に想到し得るものということもできない。

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◆こちらは関連事件です。平成23(行ケ)10267

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平成23(行ケ)10251 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年03月14日 知的財産高等裁判所

 記載不備(36条違反)について、実施可能性違反とした審決が維持されました。
 以上のとおり,本願明細書の発明の詳細な説明の記載には,当業者の技術常識を踏まえても,硬化層のかしめ側端部の位置を本件関係式に基づいて規定することにより,内輪と中空軸との間に普遍的に隙間が発生しないこととなる理由が明らかにされておらず,当業者が本願発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないものといわざるを得ない。ところで,法36条4項において,明細書の発明の詳細な説明について,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しなければならないと規定した趣旨は,発明の詳細な説明に基づいて当業者が実施できない発明に対して独占的な権利を付与することは,発明を公開したことの代償として独占権を付与するという特許制度の趣旨に反する結果を生ずるためであるところ,本願明細書の発明の詳細な説明には,当業者が本願発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がない以上,当業者は,出願時の技術水準に照らしても,硬化層のかしめ側端部の位置を本件関係式に基づいて規定することにより内輪と中空軸との間に普遍的に隙間が発生しないという技術上の意義を有するものとしての本願発明を実施することができないのであるから,その記載は,発明の詳細な説明に基づいて当業者が当該発明を実施できることを求めるという法36条4項の上記趣旨に適合しないものである。したがって,このような本願明細書の発明の詳細な説明の記載について,通常の知識を有する者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十\分に記載したものとはいえないとして,法36条4項の要件を満たさないと判断した本件審決に誤りがあるということはできない。

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平成23(行ケ)10176 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年02月29日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反および記載不備違反があるとした拒絶審決が維持されました。記載不備については、違反無しとされたものの、進歩性なしが維持されて、審決維持です。
 ちなみに、記載不備の理由は「磁性筒と磁石板まで含めて『回転軸』と称する」ことはできないというものでした。
 明確性要件違反の判断の誤り)について  確かに,請求項1(本願発明)の特許請求の範囲の記載は「可搬式水中電動ポンプ用DCブラシレスモータの回転軸」で結ばれているが,上記特許請求の範囲の記載を全体的に把握すれば,原告がDCブラシレスモータの回転軸体のみを発明の対象としているのではなく,回転軸体に磁性筒や磁石を取り付けた構成物(いわゆる回転子,ロータ)の全体を発明の対象としていることは明らかであって,原告が特定する「回転軸」も日常用語にいうそれ(軸体)ではなく,上記のとおりの概念で特定されるものをいうと解される。したがって,本願発明の特許請求の範囲の記載が一貫しないとして不明確であるとする審決の判断には誤りがある。もっとも,前記1のとおり,本願発明は進歩性を欠き,原告の不服審判請求を不成立とした審決は,その結論において正当であるから,上記判断の誤りによって審決を取り消すべきものとはならない。\n

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平成22(行ケ)10097 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月22日 知的財産高等裁判所 

 記載不備違反、進歩性違反なしとした審決が維持されました。裁判所が実施可能要件およびサポート要件についての一般論を述べています。
 特許制度は,発明を公開する代償として,一定期間発明者に当該発明の実施につき独占的な権利を付与するものであるから,明細書には,当該発明の技術的内容を一般に開示する内容を記載しなければならない。法36条4項が上記のとおり規定する趣旨は,明細書の発明の詳細な説明に,当業者が容易にその実施をすることができる程度に発明の構成等が記載されていない場合には,発明が公開されていないことに帰し,発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことになるからであると解される。そして,物の発明における発明の実施とは,その物を生産,使用等をすることをいうから(特許法2条3項1号),物の発明については,明細書にその物を製造する方法についての具体的な記載が必要があるが,そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができるのであれば,上記の実施可能\要件を満たすということができる。これを本件発明についてみると,本件発明は,いずれも物の発明であるが,その特許請求の範囲(前記第2の2)に記載のとおり,本件各化合物(ピペラジン−N−カルボジチオ酸(本件化合物1)若しくはピペラジン−N,N′−ビスカルボジチオ酸(本件化合物2)のいずれか一方若しくはこれらの混合物又はこれらの塩)が飛灰中の重金属を固定化できるということをその技術思想としている。したがって,本件発明が実施可能であるというためには,本件明細書の発明の詳細な説明に本件発明を構\成する本件各化合物を製造する方法についての具体的な記載があるか,あるいはそのような記載がなくても,本件明細書の記載及び本件出願日当時の技術常識に基づき当業者が本件各化合物を製造することができる必要があるというべきである。
・・・・
 特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。(2) 本件明細書のサポート要件の充足性についてこれを本件発明についてみると,本件発明の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2に記載のとおりであるところ,本件出願日当時,そこに記載の本件各化合物の製造方法が当業者に周知の技術であったことは,前記1(3)に認定のとおりである。また,前記1(2)エ(エ)に認定のとおり,本件明細書には,BF灰に,水と本件化合物2の塩を0.4ないし0.8重量%加え,混練したものから重金属の溶出が抑制されていることが記載されている(重金属固定化能試験)。したがって,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件各化合物が飛灰中の重金属の固定化処理剤として使用できる旨の記載があるといえる。そして,前記1(2)ウに認定のとおり,本件発明の目的は,飛灰中に含まれる重金属を安定性の高いキレート剤を用いることにより簡便に固定化できる方法を提供することであり,上記のとおり,重金属固定化能試験に関する発明の詳細な説明の記載により,当業者は,本件発明の課題を解決できると認識できるものといえる。以上によれば,本件発明の特許請求の範囲の記載は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるということができる。
・・・・
 特許法は,発明の公開を代償として独占権を付与するものであるから,ある発明が特許出願又は優先権主張日前に頒布された刊行物に記載されているか,当時の技術常識を参酌することにより刊行物に記載されているに等しいといえる場合には,その発明については特許を受けることができない(特許法29条1項3号)。

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平成22(行ケ)10402 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月26日 知的財産高等裁判所

 新規事項、且つ、サポート要件違反ありとした審決が維持されました。
 原告は,「1,2−ジヒドロキノン」や「1,4−ジヒドロキノン」などの「ヒドロキノン」は容易に酸化されて「1,2−ベンゾキノン(オルソベンゾキノン)」や「1,4−ベンゾキノン(パラベンゾキノン)」などの「ベンゾキノン」に変化し,「ベンゾキノン」が還元されると「ヒドロキノン」に変化するという関係に鑑みれば,「ヒドロキノン」,すなわち「1,2−ジヒドロキノン」や「1,4−ジヒドロキノン」はキノン類に属することは明らかであるとも主張する。しかし,特許法17条の2第3項の「明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項」とは,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができるというべきところ,当初明細書等の全ての記載を総合しても,本願補正発明の抗菌,抗ウイルス及び抗真菌組成物において,酸化能\力を有する試剤である過酸化水素やアズレンキノン等のキノンが,さらに酸化を受けた後に組成物中でその作用を発揮するということはできないので,当初明細書等に,酸化を受けて酸化能力を有する試剤に変換される物質を酸化能\力を有する試剤に含めることが記載されているということはできない。
・・・
 本願の当初明細書には,「抗菌,抗ウィルス,及び抗真菌組成物に用いられる(A)は,触媒機能を有する金属イオン化合物で,一般式は,M+aX−bで,Mは,ニッケル(Ni),コバルト(Co),・・・クロム(Cr),・・・鉄(Fe),銅(Cu),チタン(Ti),・・・白金(Pt),バラジウム(Pd),…からなる群から選択された金属元素・・・である・・・」(段落【0005】)と記載されているものの,M+aX−bで表\される成分(A)のMとして「銅」以外の金属を使用する組成物については,発明の詳細な説明に具体的データの記載がなく,また,本願の組成物が脂肪酸やDNAを分解するメカニズムを説明する記載もなく,脂肪酸やDNAの分解において組成物中の各成分が果たす役割を実証する記載もない。他方,本件補正後の請求項1の記載によって特定される3つの成分を組み合わせることにより,脂肪酸やDNAが分解でき,その結果,バクテリア,ウイルス及び真菌類を破壊,殺菌できることについて,具体例をもって示さなくとも当業者が理解できると認めるに足りる技術常識はない。そうすると,本願の組成物の成分(A)のMとして「銅」以外の金属を使用するものが,脂肪酸やDNAを分解でき,バクテリア等を破壊,殺菌するという課題を解決できるということはできないので,本願における発明の詳細な説明は,本件補正の請求項1の記載によって特定される成分(A)のMの全ての範囲において所期の効果が得られると当業者において認識できる程度に記載されているということができない。したがって,本件補正後の請求項1(本願補正発明)の記載は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである」(サポート要件充足)ということはできない。

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平成23(行ケ)10063 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月08日 知的財産高等裁判所

「天然鉱物であって,海道の浅茅野層,ポンニタチナイ層, 17線川層のいずれかから産する天然鉱物」を追加する訂正について、明確性違反無し、独立特許要件(進歩性)を有するとした審決が維持されました。
 原告は,堆積した時代も層相も異なる浅茅野層等について,それぞれの地層が地質図幅に基づき認識可能であるから,天然鉱物の範囲は明確であるとの判断に基づき,本件訂正発明を明確であるとする本件審決には根拠がないと主張する。しかしながら,浅茅野層等の堆積した時代も層相も異なることが,直ちに浅茅野層等から産出される天然鉱物に共通性がないことを示すものということはできない。本件訂正発明は,オパーリンシリカとスメクタイトを主成分とし,調湿性や自硬性における特性を共通とする天然鉱物が浅茅野層,ポンニタチナイ層及び17線川層等に広く分布していることを前提とした上で(【0013】【0015】),その産地を浅茅野層等に特定したものであり,かつ,浅茅野層等は,それぞれの地層が地質図幅(甲25の1等)に基づき認識することができるのであるから,特許請求の範囲の記載は,明確性に欠けるものとは認められない(特許法36条6項2号)。\n

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平成23(行ケ)10097 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年11月15日 知的財産高等裁判所

 明確性違反(36条6項2号)の審決が維持されました。代理人無しの本人出願です。
 請求項1は,「歯科治療を行う時上下顎の石膏模型や義歯等を咬合器にマウントしなければいけませんが,其のとき上下,左右,前後の位置,又咬合平面の角度を手早く調整すること。」というものであるが,その文言や内容に照らすと,「歯科治療を行う時上下顎の石膏模型や義歯等を咬合器にマウントしなければいけませんが,」の部分は,「手早く調整すること」がいかなる場面で行われるかという前提事項を説明したものと解される。また,「其のとき上下,左右,前後の位置,又咬合平面の角度を手早く調整すること。」の部分も,上記1で認定した,「時間と精密度を大きく改善出来る」や「下顎位を変えたいときなど手短に行なうことが出来る」などの記載と同趣旨であって,本願明細書に記載された発明の効果に対応する記載であると解される。そうすると,請求項1には,前提事項と発明の効果に対応する記載がされるのみで,いかなる装置又は方法によって「手早く調整すること」を実現するか,すなわち課題を解決するための手段が一切記載されていないことになるから,特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。

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平成23(行ケ)10043 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月11日 知的財産高等裁判所

 無効理由無しとした審決が維持されました。一つの争点が、クレームの「係合」の意味でした。
   ところで,特許明細書で用いられる一般的な用語を搭載した「特許技術用語集(第2版)」44頁(乙2)には,「係合」の用例として「左右の歯車が係合し,回転が伝達される。受け具と可動突起が係合してドアが閉鎖される。」との記載があるから,特許明細書において「係合」の語が使用される場合には,「2つの部材が,互いに噛み合わされたり,突出部と対応して凹部が引っ掛かったりして,『係合』される両部材の位置(関係)が相対的に動かないようにする」という意味で用いられることがあるということができ,かかる用語の意味な理解は一般的なものである。そうすると,本件発明1にいう「係合」も,「ごみ貯蔵カセット」を外部から支持し,かつ「ごみ貯蔵カセット」を小室内で回転できるようにするべく,「ごみ貯蔵カセット」の外側壁突出部分(構成)とごみ貯蔵カセット回転装置の一部が互いに噛み合うなどして,「ごみ貯蔵カセット」とごみ貯蔵カセット回転装置の相対的な位置関係が変わらないように(動かないように)することをいうと解される。審決は,上記の特許明細書作成上の一般的な用語の理解に従い,かつ請求項9の特許請求の範囲の記載を合理的に理解して,「係合」の意義につき「2つの物が,互いにかみ合うことにより,またはその突出部と対応する凹部がひっかかることにより,連動したり,両者の相対的位置が固定されたりするような構\成をとることをいう。」とする解釈を採用したものと解され,審決のかかる判断に誤りがあるとはいえない。

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平成22(行ケ)10348 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月15日 知的財産高等裁判所 

 記載不備および進歩性違反ともに、理由無しとした審決が維持されました。
 前記2(2)エに認定のとおり,引用例4に記載の上記各化合物は,いずれも鎖状のアミンにジチオカルバミン酸が結合した化合物であり,環状アミンにジチオカルバミン酸基が結合した本件化合物1及び2とは化学構造が異なる。したがって,引用例4に上記各化合物の記載があるからといって,これと化学構\造を異にする本件化合物1及び2が飛灰中の重金属を固定化できることを示唆することにはならない。また,前記2(2)アに認定のとおり,引用例1には,ジチオカルバミン酸基を有する低分子量の化合物の中から,飛灰中の重金属固定化剤として本件各化合物を想起させるに足りる記載又は示唆があるとはいえず,前記2(2)イに認定のとおり,引用例2には,そこに記載の化合物又は本件各化合物が廃棄物等の焼却により生じる飛灰を水やpH調整剤と混練するという環境下で,そこに含まれる多様な物質の中で鉛等の重金属と錯体を形成し,これを固定化するものであることについては何らの記載も示唆もない。さらに,前記2(2)ウに認定のとおり,引用例3に記載のピペラジンジチオカルバメート(I)及びピペラジンビスジチオカルバメート(II)は,それぞれ本件発明における本件化合物1及び2に相当し,引用例3は,本件化合物1及び2のようなジチオカルバミン酸基を有するキレート剤が白金属元素と錯体を形成することを明らかにしているものの,それが廃棄物等の焼却により生じる飛灰を水やpH調整剤と混練するという環境下で,そこに含まれる多様な物質の中で鉛等の重金属と錯体を形成し,これを固定化するものであることについては何らの記載も示唆もない。したがって,引用例3には,本件化合物1及び2のキレート剤が飛灰中の重金属固定化剤として利用できることについてまで記載や示唆がなく,引用発明4と引用例3の記載を組み合わせて本件発明1の相違点3に係る構成を想起させるに足りる動機付けがないというほかない。\n

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平成22(行ケ)10252 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月26日 知的財産高等裁判所

 記載不備ありとした審決が維持されました。
 上記5つの具体例を照らし合わせると,ZrO2及びSrOの含有量が増えるほど減衰係数が小さくなる傾向が認められるものの,比較例1,比較例2及び参考例1は,いずれもZrO2及びSrOの含有量が共に0重量%であるが,減衰係数は様々な異なる値となっている上,参考例1はZrO2及びSrOの含有量が共に0重量%であるにもかかわらず,「低音響波損ガラス」である「0.25dB/cm以下」の条件を充たしている。また,それぞれの具体例では,その他の成分についても変更されていることから,ZrO2及びSrO以外の成分による影響が生じている可能性があり,ZrO2及びSrOの含有量と減衰係数の関係が正確に導出されているのか不明といわざるを得ない。むしろ,上記具体例からは,ZrO2及びSrOの含有量のみから音響波減衰への作用・効果を予\測することは困難であって,ZrO2及びSrOの含有量が請求項1で特定される所定の範囲であっても,他の成分等により所定の効果(音響波減衰の低減)を得られない場合があることを示唆する結果であるといえる。よって,ガラスの成分と音響波減衰係数との関係について,原告が主張する出願時の技術常識を参酌したとしても,上記の5つの具体例から,音響波減衰を低減できるという本願発明の効果が得られる範囲として,ZrO2及びSrOのうち少なくとも一方の成分を1重量%以上含むことが裏付けられているとはいえない。(6) そうすると,本願明細書の発明の詳細な説明は,出願時の技術常識を参酌したとしても,ZrO2及びSrOのうち少なくとも一方の成分を1重量%以上含むのであれば音響波減衰を低減できるという効果が得られると,当業者において認識できる程度に具体例を開示して記載されたものではない。

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平成22(行ケ)10016 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月14日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反,記載不備違反無しとした審決が維持されました。
 以上の本件明細書の記載によると,本件発明1は,ガラスカッターホイールの刃先に形成した所定形状の突起により,ガラスカッターホイールの転動時,ガラス板に打点衝撃を与え,更に突起がガラス板に深く食い込むために,ガラス板を,不要な水平クラックが発生しないまま,板厚を貫通するほどの極めて長い垂直クラックを発生させて,ガラス面をスクライブすることをその技術内容とするものである。ウ 「打点衝撃を与える所定形状の突起」の意義について前記イの本件発明1の技術内容によると,特許請求の範囲における「打点衝撃を与える所定形状の突起」の技術的意義は,不要な水平クラックを発生させずに,ガラス板に板厚を貫通するほどの極めて長い垂直クラックを発生させることを可能とする形状の突起を意味するものと理解することができる。この点について,原告は,本件発明1の「打点衝撃を与える」という文言自体は,一義的に明確に理解されるべきものであるから,本件明細書を参酌することは許されないなどと主張する。しかしながら,「打点衝撃を与える」という用語自体が明確であったとしても,本件発明1と引用発明1ないし3との対比の際,「打点衝撃を与える所定形状の突起」という一連の記載の技術的意義を明らかにするために,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された技術的事項を参照して認定することに問題はなく,原告の主張は採用できない。本件審決は,本件明細書において,刃先ではなく,両傾斜面に条痕を形成した従来技術の刃先によっては,本件発明の作用効果を奏しないとされている(【0005】)から,上記対比の際,【0009】の記載を参酌して,「打点衝撃を与える所定形状の突起」の技術的意義を明らかにしたものにすぎない。\n

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平成22(行ケ)10247 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月14日 知的財産高等裁判所

 物の製造方法が記載されていないとして実施可能要件を満たさないとした審決が取り消されました。
 本件審決は,i)本願発明1で用いられる炭素膜の製造工程は,上記イの(ア)(イ)(エ)が必須の製造工程であるが,同(ウ)(オ)(カ)は選択的なものであること,ii)本願発明の製造工程は,従来の「ダイアモンド状の炭素あるいはCVDダイアモンド膜」の製造方法として甲1刊行物及び甲2刊行物に記載されている製造工程と実質的に同じものであり,その製造条件は,従来の「ダイアモンド状の炭素あるいはCVDダイアモンド膜」の製造方法として上記刊行物に記載されている製造条件を含むから,発明の詳細な説明に記載されている炭素膜の製造工程は,当該製造工程により従来のダイアモンド状の炭素あるいはCVDダイアモンド膜が製造できても,それを超える本願発明1に係る炭素膜の製造を保証するものではないこと,iii)炭素膜の製造方法における温度,圧力等の製造パラメータが多数あり,かつ,その数値範囲もCVDダイアモンド膜が製造できる数値を含んでいることから,当業者は,種々の製造パラメータにおける適正な範囲やそれらの組合せ,その他の製造パラメータについて更に特定して,所望の特性を有する炭素膜を製造する方法を見つけ出さなくてはならず,当業者が過度の試行錯誤を強いられること,iv)したがって,本願発明1の電子放出デバイスが有する「炭素膜」を実施するための製造方法に関して,発明の詳細な説明には,従来のダイアモンド膜を含む一般の「炭素膜」を製造する方法が記載されているにすぎず,請求項1に記載したUVラマンバンドに関する特性を有する特定の炭素膜を実施するための製造方法が,明確かつ十分に記載されているものとはいえないし,本願発明1の「炭素膜」を得るための具体的な製造方法が,当業者の技術常識であったともいえないと判断した。イ しかしながら,本件審決の上記i)ないしiii)の判断は,以下のとおり,誤りである。

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平成22(行ケ)10249等 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月07日 知的財産高等裁判所

 実施可能要件違反ありとした無効審決が取り消されました。
 審決は,「訂正明細書の実施例4はタイプIの透明ガラス製アンプルにセボフルランと水を入れてフレームシールしたものであるから,そこで問題となるルイス酸は,そのほとんどがガラス容器に由来するものであると認められ,セボフルランの製造,輸送,貯蔵工程等,セボフルランがさらされる環境下において存在し得るガラス容器に由来するルイス酸以外のルイス酸が及ぼす影響を考慮に入れたものではない。・・・訂正明細書の各実施例はガラス製の容器に関するものだけである。そうすると,本件数値範囲・・・の下限である206ppmの水が存在する場合について,・・・実施例4において,40°Cの恒温装置に200時間置くとの条件下にセボフルランの分解が抑制することができた1例があることをもって,セボフルランを含有する麻酔薬組成物中の水の量を本件数値範囲・・・とすることによって,セボフルランがルイス酸によってフッ化水素酸等の分解産物に分解されることを防止し,安定した麻酔薬組成物を実現するという所期の作用効果を奏するものと当業者が理解し得ると認めることはできない。」と説示する。確かに,訂正明細書の2頁10行ないし17行には,容器であるガラスの成分である酸化アルミニウムがルイス酸としてフルオロエーテルを分解する旨が記載されているから,訂正明細書は,ガラス由来のルイス酸を念頭に置いて記載されているとも評価し得る。しかしながら,前記のとおり,訂正明細書の実施例の記載は,各訂正発明のような麻酔薬が通常使用される方法である,ガラス製アンプルに封入して保管する方法を想定してされたものであることが明らかであって,上記の通常の方法を想定したがために実施例の態様が一定のものになっているにすぎない(なお,上記の通常の方法を当業者が選択する限り,当業者が訂正明細書の発明の詳細な説明に記載の手順を踏むことによって,各訂正発明の作用効果を奏し得ることは明らかである。)。また,訂正明細書には「本明細書で用いる『容器』という用語は,物品を保持するために使用することができる,ガラス,プラスチック,スチール,または他の材料でできた入れ物を意味している。」との記載(11頁末行ないし12頁2行)があるから,ガラス以外の材料からなる容器内にルイス酸が存在する態様が除外されていないことは明らかである(なお,訂正明細書の2頁13,14行でも,「ルイス酸のソースは・・・酸化アルミニウムであり得る。」と記載されているにすぎず,ルイス酸の源が酸化アルミニウムであるとか,容器のガラス由来の物質であると必ずしも断定されているわけではない。)。そして,訂正明細書の発明の詳細な説明の記載の内容に照らせば,ガラス以外の材料から成る容器内にルイス酸が存在する場合においても,当業者において,上記記載に従って手順を踏むことによって,各訂正発明の構\成を実施することが可能であると解して差し支えない。したがって,審決の上記説示は誤りであり,実施可能\要件の充足の有無に係る前記結論が左右されるものではない。

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平成22(行ケ)10109 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年02月28日 知的財産高等裁判所

 サポート要件(36条6項1号)違反であるとされた審決が取り消されました。
 36条6項1号は,「特許請求の範囲」の記載は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」を要するとしている。同条同号は,同条4項が「発明の詳細な説明」に関する記載要件を定めたものであるのに対し,「特許請求の範囲」に関する記載要件を定めたものである点において,その対象を異にする。特許権者は,業として特許発明の実施をする権利を専有すると規定され,特許発明の技術的範囲は,願書に添付した「特許請求の範囲」の記載に基づいて定められる旨規定されていることから明らかなように,特許権者の専有権の及ぶ範囲は,「特許請求の範囲」の記載によって画される(特許法68条,70条)。もし仮に,「発明の詳細な説明」に記載・開示がされている技術的事項の範囲を超えて,「特許請求の範囲」の記載がされるような場合があれば,特許権者が開示していない広範な技術的範囲にまで独占権を付与することになり,当該技術を公開した範囲で,公開の代償として独占権を付与するという特許制度の目的を逸脱することになる。36条6項1号は,そのような「特許請求の範囲」の記載を許さないものとするために設けられた規定である。したがって,「発明の詳細な説明」において,「実施例」として記載された実施態様やその他の記載を参照しても,限定的かつ狭い範囲の技術的事項しか開示されていないと解されるにもかかわらず,「特許請求の範囲」に,「発明の詳細な説明」において開示された技術的範囲を超えた,広範な技術的範囲を含む記載がされているような場合は,同号に違反するものとして許されない(もとより,「発明の詳細な説明」において,技術的事項が実質的に全く記載・開示されていないと解されるような場合に,同号に違反するものとして許されないことになるのは,いうまでもない。)。以上のとおり,36条6項1号への適合性を判断するに当たっては,「特許請求の範囲」と「発明の詳細な説明」とを対比することから,同号への適合性を判断するためには,その前提として,「特許請求の範囲」の記載に基づく技術的範囲を適切に把握すること,及び「発明の詳細な説明」に記載・開示された技術的事項を適切に把握することの両者が必要となる。・・・・前記のとおり,本願発明の特徴は,先行技術と比較して,「アミノシリコーンミクロエマルジョンを含む前処理用化粧料組成物(但し,非イオン性両親媒性脂質を含まない)」を適用するという前処理工程を付加した点にある。そして,i)特許請求の範囲において,前処理工程を付加したとの構成が明確に記載されていること,ii)本願明細書においても,発明の詳細な説明の【0011】で,前処理工程を付加したとの構成に特徴がある点が説明されていること,iii)本願明細書に記載された実施例1における実験は,前処理工程を付加した本願発明と前処理工程を付加しない従来技術との作用効果を示す目的で実施されたものであることが明らかであること等を総合考慮するならば,本願明細書に接した当業者であれば,上記実施例の実験において,還元用組成物として用いられたDV2が「アミノシリコーンを含有する還元用組成物」との明示的な記載がなくとも,当然に,「アミノシリコーンを含有する還元用組成物」の一例としてDV2 を用いたと認識するものというべきである。確かに,前記3(3)記載のとおり,原告は,本願発明の還元用組成物について,アミノシリコーンを含有しない還元用組成物である旨の意見を述べている。しかし,原告が,このような意見を述べたのは,本願発明が,先行技術との関係で進歩性の要件を充足することを強調するためと推測され,手続過程でこのような意見を述べたことは,信義に悖るものというべきであるが,そのような経緯があったからといって,DV2が「アミノシリコーンを含有しない還元用組成物」であることにはならない。なお,甲14ないし16によれば,DV2は,アミノシリコーンを含有しているものと推認される。イまた,実施例2,3においても,アミノシリコーンミクロエマルジョンを含有する前処理用化粧料組成物を毛髪に適用した場合とそうでない場合が比較され,本願発明の効果が示されているということができる。(4) 小括以上のとおりであり,審決が,i)本願発明について,「還元処理の前にアミノシリコーンミクロエマルジョンを含有する前処理用化粧料組成物を毛髪に適用して前処理をし,その後アミノシリコーンを含有しない還元用組成物により還元処理をする」との構成に係る発明であると限定的に解釈したと解される点,ii)「前処理をせずに,アミノシリコーンを含む還元用組成物により還元処理をした従来技術」とを比較した場合の本願発明の効果が示されていないと判断した点,及びiii)本願発明1ないし9について,「特許請求の範囲」の記載と「発明の詳細な説明」の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるということはできないと判断した点に,誤りがある。

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平成22(行ケ)10153 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年02月10日 知的財産高等裁判所

 数値限定発明について、サポート要件違反とした審決を取り消しました。
 この点について,被告は,本件発明における(A−1):(A−2)のGPCの面積比と実施例における面積比の上限はかけ離れていること,本件発明の構成が定める面積比とその効果との因果関係や技術的意義が全く記載されていないことなどから,本件明細書の記載によっては,当業者は,GPCの面積比「(A−1):(A−2)=100:1〜100」の全ての範囲について,本件発明の課題を解決できるとは認識できないなどと主張する。しかしながら,本件明細書には,数値範囲の下限及び上限について,数値範囲の意義((A−1):(A−2)=100:1未満である場合,実質的なオリゴマーの効果が発現しない傾向があり,100:100を超える場合,接着剤の接着強度の低下や,接着剤の保存安定性が低下する傾向がある。)が記載されており,その範囲内の効果についても,「A−1とA−2とが,GPCの面積比で,(A−1):(A−2)=100:1ないし100であることが好ましく,(A−1):(A−2)=100:1.1ないし80であることがより好ましく,(A−1):(A−2)=100:1.2ないし60であることがさらに好ましく,(A−1):(A−2)=100:1.3ないし40であることが最も好ましい。」と指摘し,さらに,上記数値内における適宜の構\成を選択した実施例において,接着強度等の効果についての試験結果が明示されているのであるから,被告が指摘する実施例による開示が少ない点は,上記結論を左右するものではない。・・・本件審決は,本件発明1の課題について,i)高接着力でロットばらつきが発生せず,高い歩留まりで良品を量産可能となる接着剤が提供されたこと及びii)保管時や使用時のシランカップリング剤の劣化を最小限とし,長期の保存安定性を与える接着剤が提供されたこと認定しており,本件発明1の課題に関する認定については,何らの誤りはない。しかしながら,本件審決は,サポート要件の判断において,ii)接着剤の保管時や使用時のシランカップリング剤の劣化を最小限とし,長期の保存安定性を与える接着剤の提供という課題についてのみ,当業者が認識することができるか否かについて判断を行い,i)の「高接着力で信頼性が高い接着剤」の提供なる解決課題が解決できるか否かについての判断を行っていない。また,先に指摘したとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明1に係る接着剤の接着力について,その効果が実施例として具体的に開示されているのであるから,本件審決のサポート要件の判断には,本件明細書の発明の詳細な説明の記載内容に関する認定自体に誤りがあるものというほかない。
イ 本件審決は,本件発明1について説示した理由と実質的に同一の理由により,本件発明6ないし8及び10がサポート要件に違反すると判断しているところ,本件審決における本件発明1のサポート要件に係る判断が誤りである以上,本件発明6ないし8及び10についても,本件審決のサポート要件に係る判断が誤りであることは明らかである。なお,原告の主張に鑑み付言すると,本件審決は,サポート要件の判断について,「シランカップリング剤とオリゴマーとの割合」の点について判断をするとした上で,本件発明は,サポート要件を欠くものと判断しているところ,本件発明6ないし8及び10は,いずれも「シランカップリング剤とオリゴマーとの割合」について何らかの特定を有する発明ではないから,「シランカップリング剤とオリゴマーとの割合」についてのみ検討した上で,本件発明1ないし5及び9と実質的に同一の理由により,本件発明6ないし8及び10についてもサポート要件を満たさないとした本件審決の判断は,それ自体誤りであるというべきである。

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平成22(行ケ)10105 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年01月25日 知的財産高等裁判所

 実施可能要件を満たしていないとした審決が維持されました。
 そもそも,本願明細書の「発明の詳細な説明」における「発明を実施するための最良の形態」の項において,発明を具体的に説明している段落【0016】ないし【0052】及び全8図の図面のうち,「等容積プロセス」を経た後の「定圧力プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うという本願発明に関して具体的に記載している部分は明細書の段落【0050】と図8のみであって,それ以外の部分は「等容積プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うことを前提としたものについて記載したものであり,本願発明の実施例とはできないものである。そして,本願発明のような「等容積プロセス」を経た後の「定圧力プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うものと,「等容積プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うものとでは,燃焼プロセスが異なるものであって,燃料の導入タイミング及び導入量等の条件は当然異なるものになるから,「等容積プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うものについての条件を,本願発明のような「等容積プロセス」を経た後の「定圧力プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うものに用いることはできないと考えられる。・・・原告が主張するように本願発明の燃焼サイクルの各プロセスにおける容積V,圧力P,温度T,及びタイミング(クランク角)が計算できたとしても,依然として,各プロセスを生じさせる燃焼噴射タイミングや,各噴射タイミングにおける燃料噴射量をどのように決定するのかが不明である。なぜならば,噴射された燃料が燃焼して熱が生じるには時間的なずれが生じており,燃料噴射タイミングと各プロセスの発生タイミングとは必ずしも一致しないことから,各プロセスにおける容積V,圧力P,温度T,及びタイミング(クランク角)が決まっても,各プロセスを行うための各燃料噴射タイミングと各燃料噴射タイミングにおける噴射量を決定することはできないからである。すなわち,本願発明の各プロセスでの容積V,圧力P,温度T,及びタイミング(クランク角)については,所望する値を算出することは窺い知ることができたとしても,そのような値となる各プロセスを実現するための各燃料噴射タイミングと各燃料噴射タイミングにおける噴射量を決定することについては,当業者に過度の試行錯誤を強いる。
 (3) 以上より,発明の詳細な説明に当業者が容易に本願発明を実施をすることができる程度に発明の構成が記載されているとはいえないとした審決の判断に誤りはない。\n

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平成22(行ケ)10060 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年11月29日 知的財産高等裁判所

 記載不備違反については無しとしたものの、当該構成については容易として、進歩性違反なしとの審決が、取り消されました。
 遺体の肛門筋が弛緩することは,例えば特開2003−111830号公報(甲48)に記載されるように,当業者にとって自明の事柄又は技術常識であるといえる。そうすると,遺体の肛門内に吸液剤を挿入することで体液の漏出を防止しようとする場合,筋が弛緩する肛門部分にのみ吸液剤を挿入したのでは,吸液剤が漏出してしまうことになるから,吸液剤を肛門の奥の直腸まで挿入するようにすることは,当業者であれば容易に想到し得るものというべきである。そして,実用新案登録第3056825号公報(甲5)には,吸液剤供給管を肛門内に挿入しやすいように形成するとの記載があるから(段落【0006】),上記の自明の事項や技術常識を勘案し,甲5発明の吸液剤収納容器の一端開口部側に当たる吸液剤供給管を「肛門から直腸に挿入されるように形成される」ようにすることは,当業者にとって適宜なし得る事項というべきである。・・・本件発明の構成e2については,上記1(2)で説示したとおり,肛門への挿入前,すなわち遺体処置装置の使用前に吸水剤が案内部材の外部に出ることが抑制されていれば,どのような形状・構造であってもよいと解され,これには別部材を用いて抑制する場合も含まれると解される。そして,吸水剤を収容する容器に漏出防止用のキャップを用いることは特開2001−288001号公報(甲6)の請求項17に記載されるように周知であるか,当業者にとって適宜なし得る事項であるといえる。また,特開2001−288001号公報(甲6)記載の体液漏出防止装置も甲5発明も,遺体の肛門等から体液が漏出するのを防止するため,肛門等から吸水剤を充填するという同一の技術分野に関するものである。したがって,甲5発明に上記の技術事項を付加して,「肛門への挿入前に吸水剤が案内部材の外部に出るのを抑制するように構\成する」ことは,当業者にとって容易に想到し得るというべきである。審決は,(無効理由5の判断部分ではあるが,)本件発明の構成e2については,別部材により吸水剤が外部に出るのを抑制する構\成が含まれることを認めていながら,原告主張の文献である特開2001−288001号公報(甲6),特開平10−298001号公報(甲7)及び特開平7−265367号公報(甲8)に関しては,別部材による抑制が容易かどうかの検討を行っておらず,誤りがある。

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平成22(行ケ)10036 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年09月28日 知的財産高等裁判所

 記載要件について「発明の詳細な説明」の記載がどのような技術的事項を開示しているかを把握することが必要」と言及されました。
 旧法36条5項1号は,「特許請求の範囲」の記載について,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」を要件としている。同号は,特許権者は,業として特許発明の実施をする権利を専有すると規定され,特許発明の技術的範囲は,願書に添付した明細書の「特許請求の範囲の記載」に基づいて定めなければならないと規定されていること(特許法68条,旧法70条)を実効ならしめるために設けられた規定である。同号は,「特許請求の範囲」の記載が,「発明の詳細な説明」に記載・開示された技術的事項の範囲を超えるような場合に,そのような広範な技術的範囲にまで独占権を付与するならば,当該技術を公開した範囲で,公開の代償として独占権を付与するという特許制度の目的を逸脱することになるため,そのような特許請求の範囲の記載を許容しないものとした規定である。例えば,「発明の詳細な説明」における「実施例」として記載された実施態様等に照らして,限定的で狭い範囲の技術的事項のみが開示されているにもかかわらず,「特許請求の範囲」に,その技術的事項を超えた,広範な技術的範囲を含む記載がされているような場合には,同号に違反することになる。このように,旧法36条5項1号の規定は,「特許請求の範囲」の記載について,「発明の詳細な説明」の記載と対比して,広すぎる独占権の付与を排除する趣旨で設けられたものである。以上の趣旨に照らすならば,旧法36条5項1号所定の「特許請求の範囲の記載が,・・・特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである」か否かを判断するに当たっては,その前提として「発明の詳細な説明」の記載がどのような技術的事項を開示しているかを把握することが必要となる。なお,上記のとおり,「特許請求の範囲」に,発明の詳細な説明に記載,開示がされていない技術的事項を含む記載は許されないが,そのことは,「特許請求の範囲」に,およそ機能的な文言が用いられることが,一切許されないことを意味するものでない。上記の観点から,本件特許発明1の内容と発明の詳細な説明の記載において開示された技術的事項とを対比・検討する。・・・上記(ア)ないし(ウ)の記載によれば,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,挿入針の中心軸又は延長線が環状部材の内部を貫通するという構\成を実現するための技術的手段が,具体的に記載されており,特許請求の範囲(請求項1)に記載された技術内容は,発明の詳細な説明に開示された技術的事項を超えるものではない。よって,本件特許発明1に係る特許請求の範囲の記載が旧法36条5項1号の要件に適合するとした審決の判断に誤りはない。ウ これに対し,原告らは,中央部又は中央部より若干先端側部分が底部となる湾曲形状の湾曲をやや強くする構成を採った場合には,環状部材が縫合糸把持用穿刺針から押し出されたときに,環状部材縫合糸挿入用穿刺針の側面に衝突してしまい,環状部材の円環平面内部に縫合糸挿入用穿刺針を位置させる目的(縫合糸挿入用穿刺針の「中心軸」が環状部材の内部を貫通する目的)を達成できない場合がある旨主張する。しかし,原告らの主張は採用の限りでない。すなわち,本件特許明細書の前記各記載の技術的事項に照らせば,縫合糸挿入用穿刺針の中心軸が該環状部材の内部を貫通するように,該環状部材が該縫合糸挿入用穿刺針方向に延びることは十\分にあり得ることであり,当業者にとっては,そのことが発明の詳細な説明において記載されていると理解されるから,原告らの主張は,採用の限りでない。

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平成21(行ケ)10304 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年07月28日 知的財産高等裁判所

 実施可能要件(旧特36条4項)、サポート要件(旧36条6項1号)違反を理由に訂正を認めなかった審決が取り消されました。\n
上記(2)アの本件詳細説明の記載によれば,本件発明の課題は優れた光沢を出すことにあり,光沢を出すためには昇温結晶化温度が非常に重要とされる一方で,固有粘度は,容器の強度,形状,成形のしやすさの観点から設けられた条件であると認められる。そして,【表2】における実施例と比較例との比較においても,光沢の有無は検討されているが,容器の強度等については触れられていないのであって,固有粘度の差による影響は必ずしも明らかではない。そうすると,フェノールとテトラクロロエタンとの混合割合が50対50,60対40,75対25(3対1)のいずれであっても,固有粘度に最大で0.02程度の差しか生じないとすれば,そのような差が生じるからといって,直ちに当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が光沢を有する容器の製造を目的とする訂正前発明2を実施することができないとまではいえないというべきである。ところで,実施可能\要件に関しては,当業者が,発明の詳細な説明の記載から,成形時の熱履歴等の諸条件を考慮して,昇温結晶化温度128度以上,結晶化熱量20mJ/mg以上のシート層を含む本件発明を実施することが可能かどうかに関する議論は尽くされていないが,少なくとも,上記の点に関する審決の判断は誤りであり,取消事由4は理由がある。イなお,被告は,本件発明の発明特定事項である固有粘度0.55以上の数値に対して,比較例1では固有粘度0.54であって,0.01の差により発明の目的を達成できなくなるのであるから,0.02は大きな差であると主張する。しかし,上記アのとおり,実施例と比較例とは光沢の有無により比較されているのに対し,固有粘度は容器の強度等に関する数値であるから,固有粘度が0.54である比較例1で発明の目的を達成していないとしても,その原因が固有粘度にあるとは断定しがたく,被告の上記主張は採用することができない。
・・・上記(1)のとおり,実施例におけるシート層と外層シートとの厚さの割合は,シート層(中間層)が8μmであるのに対し,その両面に積層された外層シートは各1μmであって(【表1】の「層構\成」欄),外層シートの厚さはシート層の厚さに比べて薄い。したがって,実施例における固有粘度等の数値が多層シートについて測定されたとしても,これらの数値は,厚いシート層の影響を大きく受けるものと解される。(ウ) また,上記(1)のとおり,実施例においては,シート層の97(実施例1),86(同2),95(同3)重量パーセントがポリエチレンテレフタレート(「RE565」)により構成され,外層シートも100重量パーセントがポリエチレンテレフタレート(「RE565」)により構\成されていることから,シート層と外層シートとは,その材料の大部分が共通することになる。加えて,実施例では,シート層と外層シートとを一つの押出機でシート成形し,また,一つの成形機で成形している(段落【0022】)。このように,シート層と外層シートとで材料の大部分が共通し,かつ,同一の機械で成形等が行われていることからすると,シート押出の際の熱履歴や,成形加工時の加熱温度,延伸の程度,冷却条件等については,シート層も外層シートもほぼ同じになるものと解される。(エ) そうすると,実施例における固有粘度,昇温結晶化温度及び結晶化熱量の各数値が多層シートについて測定されたものであっても,それらの数値は,シート層単独で測定された場合と近似した数値になる蓋然性が高いといえる。(オ) 以上のとおりであるから,実施例における固有粘度,昇温結晶化温度及び結晶化熱量の各数値が多層シートについて測定されているからといって,訂正前発明2が本件詳細説明に記載されていないとまではいえず,この点に関する審決の判断には誤りがあり,取消事由5は理由がある。

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平成21(行ケ)10244等  特許権 行政訴訟 平成22年07月20日 知的財産高等裁判所 

 記載不備について争われましたが、裁判所は無効理由無しとした審決を維持しました。この事件は進歩性違反で一旦無効審決がなされ、訂正によりこれを回避した案件です。
 本件特許発明は,いずれも平成20年1月11日付け訂正審判請求が認められたことにより,ハッチや貫通孔といった構成が加えられ,それによって,進歩性が認められたものである。上記各構\成が加えられる前の本件特許発明は,原告が本訴で問題としている,流路の有効内径の数値限定部分等を発明の本質的事項の一部としていたといえるが,上記訂正により,同部分は,それによって進歩性が認められる事項ではなく,単に望ましい構成を開示しているにすぎないといえる。ウ以上を前提として,本件特許発明につき実施可能\要件違反の有無を検討するに,本件特許発明の目的の1つと解される「溶融金属を容器内から導出するために必要な圧力を小さくすること」を達成するためには,溶融金属の重量,流路の粘性抵抗等の条件を設定する必要があり,そのうち粘性抵抗については,溶融金属の性状,ライニングの性質,表面粗さ等のパラメータによって決定され,溶融金属の重量やそれによる影響は,金属の種類や流路の長さ,流速等のパラメータによって決定されるものである。そうすると,単に「溶融金属を導出するために必要な圧力を小さくする」との目的のみを達成するためであれば,流路の有効内径以外のパラメータも設定する必要があることは自明であり,その限りにおいて,原告の主張は誤りではない。しかしながら,「導出圧力の最小化」は,本件特許発明においては付随的な目的にすぎない。この点を措くとしても,被告が主張するように,公道を介して搬送する取鍋の内径は,取鍋を搬送するトラックの車幅との関係で,一定の限度内に収まらざるを得ないのであり,また,そのトラックの車幅も,公道の幅員等により,自ずから相当の限度内になるものということができる。この点につき,原告は,公道搬送可能\な取鍋の大きさは千差万別である旨主張するが,取鍋の標準的な大きさは一定の範囲で自ずから存在するものであり,逆に,単に「望ましい」事項を記載しているにすぎない部分においても,あらゆる大きさや種類のトラックに対して有効なすべてのパラメータを提供しなければならないとするのでは,特許権者や出願人に過大な要求をするものであって,相当ではない。また,作業に慣れた当業者(本件においては,溶融金属を取鍋等を用いて運搬する者)が出湯を行う場合であれば,その出湯時間や速度に,大きな差があるとは考えられない。そして,溶融アルミニウムを流路や配管を通じて排出する場合に粘性抵抗があること自体は,当業者にとって自明であり,望ましいとされる流路の有効内径が提供されれば,それを最大限に生かすべく,他の条件を設定するよう努めるのは当然であって,ここで必要とされる試行錯誤が過度なものであるとは認められない。また,導出圧力の最小化のみを目的とする場合の数値限定と,これが単に付随的な目的にすぎない場合の数値限定では,必然的に相違が生じ,後者の場合には,他の条件との兼ね合いにより,当該目的達成の程度が変化することは明らかである。
 エ 以上からすれば,本件特許発明における,流路の有効内径に関する数値限定部分において,他のパラメータにつき記載がないことをもって,実施可能要件に違\n反するということはできず,原告の主張は理由がない。
(2) 明確性要件について 原告は,本件特許の明細書において,「溶融金属を導入する圧力を小さくする」との効果を達成する上で必要な条件がすべて記載されていないから,本件特許発明は不明確であると主張するが,前述の訂正によって「溶融金属を導入する圧力を小さくする」ことは,既に本件特許発明の主たる目的ではなくなっている上,特許請求の範囲や発明の詳細な説明に記載すべき事項については,特許出願人において適宜選択すべきものであって,本件特許発明についても,その効果が実際に存在するかどうかはともかくとして,特許請求の範囲に記載された流路の有効内径の記載自体は明確であって,他のパラメータの記載がないからといって直ちに,同発明が不明確になるとはいえない。・・・原告は,本件特許発明が,ストーク等の部品交換を行う必要のない容器を提供することを目的としながら(段落【0005】参照),他方で,配管474は「ストーク」に相当するものと解され(段落【0123】,図11参照),以上からすれば,特許を受けようとする発明が明確ではなく,特許法36条4項違反であると主張する。確かに,明細書の段落【0123】や図11において,「ストーク」に相当する配管474が記載されており,これは,段落【0005】の記載とは整合しないといえる。しかし,本件特許発明は,その特許請求の範囲の記載からすれば,いずれも流路を内在するものを指すことが一義的に明らかであって,流路を有さずストークにより溶湯を外部に供給するものは,本件特許発明の対象に含まれない。そもそも,特許出願人において,必ずしも,発明の詳細な説明に記載したものすべてにつき,特許として出願しなくてはならないものではない上,本件での特許請求の範囲の記載が,この点に関して明確であることからすれば,本件において,発明の詳細な説明の段落【0123】の記載や図11が存在することによって,実施可能要件に違反するとはいえず,原告の主張は理由がない。\n

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◆関連事件です。平成21(行ケ)10024

◆関連事件です。平成21(行ケ)10245

◆関連事件です。平成21(行ケ)10246

◆関連事件です。平成19(ネ)10032

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平成21(行ケ)10222 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年06月29日 知的財産高等裁判所

CS関連発明について、記載不備があるとの審決が取り消されました。
 この点について,被告は,本願発明における「発明を展開している度合いを示す」という記載が明確でない旨主張する。確かに,被告が指摘するとおり,クレーム中の用語「発明を展開している度合い」だけを,単独で解釈すれば,用語の定義が不明確であるとする余地があるともいえないわけでない。しかし,「発明を展開している度合いを示す発明展開度」との請求項2の記載を,全体として解釈すれば,各用語(「発明」,「展開」,「度合い(度)」)の対応関係から,この部分は,本件独自の用語である「発明展開度」を,単に分かりやすく言い換えて説明しているにすぎないと認めるのが自然である。したがって,「発明を展開している度合いを示す」という記載のみを取り出して,それが不明確であるということは適切ではなく,上記のとおり解釈すれば,「発明を展開している度合いを示す」との記載が含まれているとしても,別段請求項2の記載が不明確であるとはいえない。

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平成21(行ケ)10321 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について新規事項、不明瞭であるとした審決が取り消されました。
 前記当初明細書の記載によれば,サーバ及び端末がそのハードウエア構成として中央処理装置(CPU)を有すること,CPU312は,データの処理又は演算を行うと共に,バス311を介して接続された各種構\成要素を制御するものであること,サーバ又は端末のCPUの処理や制御により図37(A)〜(D)の処理を行うことが示されている。このように,当初明細書においては,サーバ及びその端末の構成が共通性を有するものとして記載されており,補正明細書の各請求項の冒頭に記載された「コンピュータを用いたゲーム情報供給装置であって」との部分は,サーバと端末を含んだ全体の構\成を意味するものと解するのが合理的である。・・・そうすると,当初明細書には,「ゲーム情報供給装置」において,サーバが,「ネットワークを介して端末装置からのアクセスを受信すると,前記記憶手段からクイズ形式の広告情報を読み出して前記端末装置に送信し表示させる表\示手段」を有するとの技術事項が記載されていると解すべきである。本件補正が,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないとした本審決の判断は,誤りである。

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平成21(行ケ)10170 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年05月10日 知的財産高等裁判所

 実施可能要件(特36条4項)違反であるとした審決が維持されました。
 そこで,これを本願についてみると,本願請求項の構成は,前記のとおり,「(A)・(B)・(C)の定める各検出方法いずれか又はこれらを組み合わせたことによるADP受容体P2T アンタゴニスト等を検出すACる工程」と「製造化工程」と含む「抗血小板用医薬組成物の製造方法」とするものである。上記構成は,概ね,原告が前記特許第3519078号(甲13)により取得した特許権請求項1〜4の記載に「製造化工程」を付加し「抗血小板用医薬組成物の製造方法」としたものである。そして,検出方法(A)・(B)・(C)については具体的な技術内容が特定されているものの,その余の「製造化工程」・「医薬組成物の製造方法」には具体的な技術内容の記載が見当たらない。一方,本願請求項1は,その記載内容からして,末尾にある「医薬組成物の製造方法」であるから,「製造方法」の観点か,又は「物」の観点,すなわち製造原料の観点や製造された医薬組成物の観点若しくはその組み合わせに発明的な特徴があるのが通例であるが,本願請求項1には上記発明的特徴を窺わせる記載が見当たらない。上記によれば,本願請求項1は旧36条6項2号にいう「特許を受けようとする発明が明確であること」(明確性要件)の要件を満たすか問題となる余地があるが,審決は本願につき旧36条4項の実施可能\要件についてのみ判断しているので,以下その当否に限って検討する。エ(ア) 本願請求項1(本願発明)の場合,「製造される物」は有効成分である化合物と製剤化に必要な汎用の成分とからなる「抗血小板用医薬組成物」であるから,当業者がかかる医薬組成物を製造するためには,明細書の記載から有効成分たる化合物が何であるかを理解・把握する必要があり,その際は,有効成分たる化合物を化学構造の観点から化合物自体として把握する必要があるというべきである。すなわち,本願発明の製造方法において製剤化工程を行うためには,その前提として,抗血小板用医薬組成物における有効成分となるものを化合物自体として特定して把握する必要があるというべきである。そうすると,審決が「当該製造方法において,製剤化工程を行うには,当該製剤化工程に先立って,当該(A)〜(C)のいずれか1つの検出方法,又は,それらの組み合わせによるスクリーニングでもって,公知のものに限ってみても,種々の化合物,ペプチド等の,広範かつ無数に近い試験化合物の中より,抗血小板剤として有用なものを化合物自体として特定して把握する必要がある。」(5頁30行〜6頁1行)としたことに誤りはない。(イ) そこで,かかる見地から本願発明をみるに,本願明細書(甲3)には,(A)〜(C)として特定される検出方法によって抗血小板医薬となり得る化合物たるADP受容体P2T アンタゴニストをスクリーニACングすることができること,すなわち抗血小板医薬の有効成分となる可能性のある化合物を選び出すことが可能\であること,抗血小板作用を示す物質として知られている化合物(具体的には2MeSAMP又はAR−C69931MX)が,(A)〜(C)として特定される検出方法によってアンタゴニスト活性を示すことが確認できたことが記載されている(段落【0012】)。また,抗血小板剤として公知のチクロピジンやクロピドグレルの体内での代謝物がADP受容体P2T を阻害するACことで効果をもたらしていると考えられていることなどが紹介され,血小板のADP受容体P2T に対する拮抗薬は,抗血小板剤となる期待ACのあることが記載されている(段落【0007】,【0008】)。そして,実施例では,上記2つの化合物(2MeSAMP,AR−C69931MX)についての検出実験が行なわれている(段落【0114】〜【0121】)。しかし,上記2つの化合物は抗血小板作用を示すことが知られていたものであるからADP受容体P2T のアンタゴニストである蓋然性ACが高く,これらがアンタゴニスト活性を示すことが確認されたという結果は,単に(A)〜(C)として特定される検出方法が有効な検出方法であることの証左になるにすぎない。しかも,実施例は単に上記2つの化合物からADP受容体P2T アンタゴニスト活性が検出されたことACを示すのみで,検出される化合物が共通して持つ化学構造や物性など「物」の観点からの説明はなく,このような実施例の記載から他にいかなる化合物が検出されるか当業者が理解することはできない。すなわち,この2つの化合物以外にどのような化学構\造や物性の化合物が(A)〜(C)として特定される検出方法によって有効成分として検出されるか,当業者は理解することができない。そして,本願明細書(甲3)には,何ら新規な化合物からなるリガンド,アンタゴニスト,アゴニストを発見したことは記載されておらず,したがって,新規な医薬組成物を製造することも記載されていない。以上のとおり,本願明細書(甲3)は,実施例で検出が行われた個別の2つの物質に関してADP受容体P2TACアンタゴニスト活性が確認された旨の記載があるに止まるものであり,どのような化学構造や物性の化合物が有効成分となるかについての具体的な記載はない。したがって,当業者は,本願明細書の記載からある化学構\造の化合物を含む組成物が本願発明に該当するかどうかを認識・判断することはできない。そして,本願発明の特許請求の範囲全体を実施するためには,特定されていない無数の化合物を無作為に製造し,特許請求の範囲に記載された検出方法を適用して試験化合物からADP受容体P2TACリガンド,アンタゴニスト又はアゴニストが検出されるかどうかを確かめ,ADP受容体P2T アンタゴニスAC トたる化合物を見つけ出さなければならないが,このことは当業者に過度の試行錯誤を強いるものというべきである。すなわち,本願明細書の記載からは,スクリーニング工程を経てアンタゴニストとなる化合物が発見された場合に限り,その化合物を用いた抗血小板用医薬組成物を認識できるということが示唆されているのみであり,このことは特定の医薬組成物を認識しうることの単なる期待を示しているにすぎないのであるから,アンタゴニストとなる化合物を発見し,その化合物を用いた抗血小板用医薬組成物を認識するまでにはなお当業者に過度の負担を強いるものである。(ウ) これに対し,原告は,本願優先日(平成12年11月1日又は平成13年1月11日)時点での技術水準を正確に認識し,本願明細書の発明の詳細な説明の記載からHORK3タンパク質が有する特徴的な結合特性を正確に把握すれば,HORK3タンパク質をGPCRとして用いる本願発明において「特定の医薬組成物を認識しうること」には極めて高い蓋然性が認められるから,当業者はHORK3タンパク質をGPCRとして用いる本願発明方法によって「特定の医薬組成物を認識しうること」が極めて高い蓋然性を有することは自明であると主張する。しかし,前記のとおり,本願発明の場合,「製造する物」は有効成分である化合物と製剤化に必要な汎用の成分とからなる抗血小板用医薬組成物であるから,当業者は明細書の記載自体から抗血小板用医薬組成物における有効成分となるものを化合物自体として特定して把握することができること,いいかえれば,明細書の記載自体からある化学構造の化合物を含む組成物が本願発明に該当するかどうかを認識・判断することができなければならないというべきである。そうすると,当業者がスクリーニング工程を含む検出過程を経なければ有効成分となる化合物を把握することができないという点において,候補化合物の多寡,スクリーニング対象となる化合物群ないしライブラリーの入手のしやすさ,検出に要する時間の長短,スクリーニング操作が簡便であるかなどにかかわらず,本願明細書の発明の詳細な説明は,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十\分に記載されているとはいえない,即ち本願における発明の詳細な説明は実施可能要件(旧36条4項)を充足していないと認めるのが相当である。\n

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平成21(行ケ)10296 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月27日 知的財産高等裁判所

 サポート要件違反を理由として無効とした審決が維持されました。
 「特許法36条6項は,その柱書きにおいて「第2項の特許請求の範囲の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」とし,その第1号において,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している(以下「サポート要件」ともいう。)。そして,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,サポート要件の存在は,特許出願人又は特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である。(2) そこで,本件特許に係る特許請求の範囲の記載(甲36参照)が,明細書のサポート要件に適合するか否かにつき,以下検討する。・・・・そうすれば,上記発明の詳細な説明において実施例とされた記載のうち,実施例1ないし3は,ガスの充填工程及び低温処理工程のいずれについても,実際の実験結果を伴う実施例の記載とはいえず,実施例4についても,低温処理工程については,実際の実験結果を伴う実施例の記載であるとはいえず,実施例1ないし4以外に,実施例の記載と評価し得る記載もない。このように,本件においては,前記一連の工程に該当する具体的な実験条件及び前記課題を解決したことを示す実験結果を伴う実施例の記載に基づき,前記課題が解決できることが明らかにされていない。以上からすれば,特許請求の範囲に記載された本件特許発明は,明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が前記課題を解決できると認識できる範囲のものではなく,明細書のサポート要件に適合するとはいえない。

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平成21(行ケ)10158 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月30日 知的財産高等裁判所

 明確性違反および実施可能性違反とした審決が維持されました。
 当裁判所は,本願明細書の発明の詳細な説明には,請求項1,11に係る発明の「補助エステル」の特定に関し,当業者が,同発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分な記載はないので,本件審決には,少なくとも,原告の主張に係る取消事由2及び5の違法はないと判断する。その理由は,以下のとおりである。・・・本願明細書には,本願発明による課題解決をするに当たり,当業者において,本願発明で規定したLogP値の範囲内の化合物群の中から,どのような補助エステルを選定すべきかについて,明確かつ十\分な記載がされていないと解される。その理由は,以下のとおりである。すなわち,エステル化合物については,原告が書証として提出する皮膚外用剤に関する文献について見ただけでも,例えば,甲4の10には,パラヒドロキシ安息香酸エステル類の例が挙げられ,アルコール残基の炭素数1ないし12のエステルとしてメチルパラベン等12種類のエステル化合物が示され,甲4の8には,皮膚軟化剤(25頁,26頁),浸透向上剤(26頁〜29頁),乳化剤(30頁〜34頁),他の化粧品用添加剤(43頁,44頁)として,多種のエステル化合物が示されているように,多種多様なものを含む。なお,本願発明の「補助エステル」について,親油性に関してLogP値がニコチン酸アルキルエステルのLogP値より小さく,その差がLogP値において0.5ないし1.5との条件を充足するエステルとの限定がされている。しかし,本願明細書の【0026】【表1】記載の,微量栄養素としてのニコチン酸アルキルエステルだけでも,LogP値1.0の幅の中に複数の炭素原子数のニコチン酸アルキルエステルが含まれることから明らかなように,本願明細書の補助エステルに関するLogP値(0.5〜1.5)を満たすエステル化合物は,膨大な種類のものを含む。ところで,発明の詳細な説明の【0020】では,「栄養素をヒトに送達する」という解決課題を達成するためには,補助エステルは,i)プロ栄養素の角質層からのフラックス(透過性)が類似するという性質と,ii)生物変換に関してプロ栄養素と効果的に競合するという性質の両者が必要であると記載されている。このうち,ii)の生物変換に関して微量栄養素(プロ栄養素)と効果的に競合するという性質は,請求項1,11で規定されたLogP値の範囲の補助エステルのすべてが当然に備えているものではなく,当業者が,試行錯誤を繰り返して,生物変換に関して微量栄養素と効果的に競合する補助エステルを選別しない限り,本願発明の目的を達成することができず,本願明細書には,その選別を容易にするための記載はない。この点について,原告は,補助エステルが,LogP値の範囲内であれば,すべて,前記ii)の性質を有するように主張するが,同主張は根拠を欠くものであって,採用できない。・・・・以上のとおり,本願発明1,2を実施しようとする当業者は,本願発明のLogP値を満たし,かつ生物変換に関して微量栄養素(プロ栄養素)と効果的に競合する補助エステルを選択するためには,過度の試行錯誤を要することになる。本願明細書の発明の詳細な説明は,当業者が,発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。\n

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平成21(行ケ)10281 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月24日 知的財産高等裁判所

 実施可能要件違反、明確性違反を理由として無効とした審決が取り消されました。
 ところで被告は,本件発明1・2に関する特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない旨主張するが,特許法36条6項2号にいう「特許を受けようとする発明が明確であること」とは,特許請求の範囲における構成の記載からその構\成を一義的に知ることができれば特定の問題としては必要にして十分であると解すべきところ,上記イで認められる技術常識及び上記アの記載に照らせば,本件発明1・2における,フェライト中に体積率で3%以上20%以下のマルテンサイトおよび残留オーステナイトが混在するとの点は,加工性を担うフェライト中におけるマルテンサイトおよびマルテンサイト化せずオーステナイトのまま残った残留オーステナイトの体積率を規定したものであり,強度を担うマルテンサイトと,加工時の変形性及びマルテンサイト化した後の強度を担う残留オーステナイトについて,それらの技術的意義は明確であるから,本件発明1・2の特許請求の範囲の記載において,特許法36条6項2号にいう明確性要件違反はないというべきである。エ この点審決は,「訂正明細書には,金属組織としてフェライトに注目し,これが存在することの技術的意義が,高強度とプレス加工性の良いことの両立にあるとは,記載されていない。…」(17頁4行〜6行)とし,「してみると,訂正明細書には,高強度とプレス加工性の良いことの両立という技術的意義は,本来的に,マルテンサイト及び残留オーステナイトを体積率で3〜20%含む金属組織としたことによるものとして記載していると認められる。」(17頁16行〜19行)とした上で,「してみると,高強度とプレス加工性の良いことの両立という技術的意義は,本来的に,マルテンサイト及び残留オーステナイトを3〜20%含む金属組織としたことによるものであるとの技術的内容を認めることはできず,結局のところ,訂正明細書の記載からは,金属組織として,フェライト中に『体積率で3%以上20%以下のマルテンサイトおよび残留オーステナイトが混在する』としたことの技術的意義を見出すことができない。」(18頁23行〜28行)として,本件発明1・2は不明確であると判断した。しかし,上記ア(イ)で摘記したとおり,訂正明細書(甲41の2)には,「鋼帯は焼鈍後,引き続きめっき浴へ浸漬する過程で冷却されるが,この場合の冷却速度は…650℃までを平均0.5〜10℃/秒とするのは加工性を改善するためにフェライトの体積率を増す…」(段落【0023】),「本発明では…むしろフェライトが緩慢に成長することにより,鋼板の引張強さを安定させている。…」(段落【0027】)等の記載があり,フェライトが鋼板の加工性に寄与している旨が示されていることになる。以上の検討によれば,審決の本件発明1・2の明確性要件に関する判断は誤りというべきである。

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平成20(行ケ)10235 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月14日 知的財産高等裁判所 

 36条違反により無効であるとした審決が取り消されました。リパーゼ最高裁判決にも触れています。
 以上のとおり,当業者であれば,本件訂正明細書の記載から,本件発明に係る共沸混合物様組成物の全範囲が空調用又はヒートポンプ用の冷媒として使用できることが理解可能であって,実施例4として記載されていた具体例が本件訂正によって本件発明の対象外となってもなお,本件発明が実施可能\要件に欠けることはないというべきである。(5) 審決は,実施例4の記載からは,訂正後の請求項1に記載された共沸混合物様組成物について,すべての範囲に渡ってCOP 等の性能が同等又は優れているとはいえず,また他に具体的な性能\評価の記載もないから,本件訂正明細書には,本件発明について当業者が実施することができる程度に発明の目的,構成及び効果が発明の詳細な説明中に記載されているとすることはできないとしている。しかし,本件発明は,前記(1) ウ記載のとおり,その組成範囲が限定された組成物であって,本件訂正明細書において,同組成物が共沸混合物様に挙動し,かつ,同組成物が空調用又はヒートポンプ用の冷媒として使用可能であることが開示されている。本件発明は,共沸混合物様に挙動する組成物の組成範囲を開示した点において既に新規性があるものであって,「すべての範囲に渡ってCOP 等の性能が同等又は優れている」ことの開示が必要であるとまではいえない。(6) 被告は,本件訂正明細書には,本件発明の具体的な性能評価(温度勾配が0.3°C未満であること,難燃性を有すること,空調用又はヒートポンプ用に適した熱力学的性能\を有すること)は記載されていない旨主張する。しかし,そもそも,温度勾配については,本件発明を特定するために必要な記載事項とはいえない。・・・・・・被告は,最高裁平成3年3月8日判決(いわゆるリパーゼ事件判決)を引用して,請求項1の後段の「32°Fにて約119.0 psia の蒸気圧」について,それが誤記であるとしても,それは同判決が判示するような「一見して誤記であることが明らかな場合」には当たらないと主張し,また,誤記ではないとしても,「特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができない」場合にも当たらないと主張するので,念のために,所論の判例との関係につき付言することとする。上記判示のとおり,本件発明の請求項1の文言は,前段では,組成物の物質の名称が特定の数値(重量パーセント)とともに記載され,後段では,特定の温度における特定の数値の蒸気圧が記載されており,それぞれの用語自体としては疑義を生じる余地のない明瞭なものであるが,組成物の発明であるから,構成としては前段の記載で必要かつ十\分であるのに,後者は,さらにこれを限定しているようにも見えるものの,真実,要件ないし権利の範囲として更に付された限定であるとすれば,その帰結するところ,権利範囲が極めて限定され,特許として有用性がほとんどない組成物となり,極限的な,いわば点でしか成立しない構成の発明であるという不可思議な理解に,当業者であれば容易に想到することが必定である。そうすると,本件発明の請求項1の記載に接した当業者は,前段と後段との関係,特に後段の意味内容を理解するために,明細書の関係部分の記載を直ちに参照しようとするはずである。そうであってみれば,本件発明の請求項1の記載に接した当業者は,後段の「32°Fにて約119.0 psia の蒸気圧を有する」の記載に接し,その技術的な意義を一義的に明確に理解することができないため,明細書の記載を参照する必要に迫られ,これを参照した結果,その意味内容を上記判示のように理解するに至るものということができる。したがって,本件発明の請求項1の解釈に当たって明細書の記載を参照することは許され,上記の判断には,所論のような,判例の趣旨に反するところはなく,被告のこの点に関する主張は採用することができない。 (3) 以上のとおり,本件発明における請求項1の「32°Fにて約119.0 psiaの蒸気圧を有する」との記載(後段記載)は,「真の共沸混合物が有する蒸気圧」を記載したにとどまり,本件発明の対象はあくまで「約35.7〜約50.0重量%のペンタフルオロエタンと約64.3〜約50.0重量%のジフルオロメタン」との組成範囲の記載(前段記載)によって定まると解釈すべきことになるから,本件発明の前段記載と後段記載は実質的に矛盾しないことになり,本件特許には,審決が説示したような実施可能要件違反はない。\n

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平成21(行ケ)10033 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月28日 知的財産高等裁判所

 サポート要件違反とした審決が取り消されました。
 当裁判所は,審決が,法36条6項1号所定の「特許請求の範囲の記載は,・・・特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」との要件を満たすためには,医薬の用途発明では「薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載をする」ことが必要であると同項を解釈し,本願の特許請求の範囲は,同項1号の要件を満たさないとした点には,誤りがあると判断する。その理由は,以下のとおりである。・・・「特許請求の範囲の記載」が法36条6項1号に適合するか否か,すなわち「特許請求の範囲の記載」が「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである」か否かを判断するに当たっては,その前提として「発明の詳細な説明」がどのような技術的事項を開示しているかを把握することが必要となる。そして,法36条6項1号の規定は,「特許請求の範囲」の記載に関してその要件を定めた規定であること,及び,発明の詳細な説明において開示された技術的事項と対比して広すぎる独占権の付与を排除するために設けられた規定であることに照らすならば,同号の要件の適合性を判断する前提としての「発明の詳細な説明」の開示内容の理解の在り方は,上記の点を判断するのに必要かつ合理的な方法によるべきである。他方,「発明の詳細な説明」の記載に関しては,法36条4項1号が,独立して「発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の・・・技術上の意義を理解するために必要な事項」及び「(発明の)実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載した」との要件を定めているので,同項所定の要件への適合性を欠く場合は,そのこと自体で,その出願は拒絶理由を有し,又は,独立の無効理由(特許法123条1項4号)となる筋合いである。そうであるところ,法36条6項1号の規定の解釈に当たり,「発明の詳細な説明において開示された技術的事項と対比して広すぎる独占権の付与を排除する」という同号の趣旨から離れて,法36条4項1号の要件適合性を判断するのと全く同様の手法によって解釈,判断することは,同一事項を二重に判断することになりかねない。仮に,発明の詳細な説明の記載が法36条4項1号所定の要件を欠く場合に,常に同条6項1号の要件を欠くという関係に立つような解釈を許容するとしたならば,同条4項1号の規定を,同条6項1号のほかに別個独立の特許要件として設けた存在意義が失われることになる。したがって,法36条6項1号の規定の解釈に当たっては,特許請求の範囲の記載が,発明の詳細な説明の記載の範囲と対比して,前者の範囲が後者の範囲を超えているか否かを必要かつ合目的的な解釈手法によって判断すれば足り,例えば,特許請求の範囲が特異な形式で記載されているため,法36条6項1号の判断の前提として,「発明の詳細な説明」を上記のような手法により解釈しない限り,特許制度の趣旨に著しく反するなど特段の事情のある場合はさておき,そのような事情がない限りは,同条4項1号の要件適合性を判断するのと全く同様の手法によって解釈,判断することは許されないというべきである。・・・・審決は,その理由中において,「医薬についての用途発明においては,一般に,有効成分の物質名,化学構\造だけからその有用性を予測することは困難であり,発明の詳細な説明に有効量,投与方法,製剤化のための事項がある程度記載されている場合であっても,それだけでは当業者が当該医薬が実際にその用途において有用性があるか否かを知ることができないから,特許を受けようとする発明が,発明の詳細な説明に記載したものであるというためには,発明の詳細な説明において,薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載をすることにより,その用途の有用性が裏付けられている必要があ(る)」(審決書2頁22行〜29行)と述べている。同部分は,法36条4項1号の要件充足性を判断する前提との関係では,同号の趣旨に照らし,妥当する場合があることは否定できない。すなわち,法36条4項1号は,特許を受けることによって独占権を得るためには,第三者に対し,発明が解決しようとする課題,解決手段,その他の発明の技術上の意義を理解するために必要な情報を開示し,発明を実施するための明確でかつ十\分な情報を提供することが必要であるとの観点から,これに必要と認められる事項を「発明の詳細な説明」に記載すべき旨を課した規定である。そして,一般に,医薬品の用途発明が認められる我が国の特許法の下においては,「発明の詳細な説明」の記載に,用途の有用性を客観的に検証する過程が明らかにされることが,多くの場合に妥当すると解すべきであって,検証過程を明らかにするためには,医薬品と用途との関連性を示したデータによることが,最も有効,適切かつ合理的な方法であるといえるから,そのようなデータが記載されていないときには,その発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとされる場合は多いといえるであろう。しかし,審決が,法36条6項1号の要件充足性との関係で,「発明の詳細な説明において,薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載をすることにより,その用途の有用性が裏付けられている必要があ(る)」と述べている部分は,特段の事情のない限り,薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載をすることが,必要不可欠な条件(要件)ということはできない。法36条6項1号は,前記のとおり,「特許請求の範囲」と「発明の詳細な説明」とを対比して,「特許請求の範囲」の記載が「発明の詳細な説明」に記載された技術的事項の範囲を超えるような広範な範囲にまで独占権を付与することを防止する趣旨で設けられた規定である。そうすると,「発明の詳細な説明」の記載内容に関する解釈の手法は,同規定の趣旨に照らして,「特許請求の範囲」が「発明の詳細な説明」に記載された技術的事項の範囲のものであるか否かを判断するのに,必要かつ合目的的な解釈手法によるべきであって,特段の事情のない限りは,「発明の詳細な説明」において実施例等で記載・開示された技術的事項を形式的に理解することで足りるというべきである。したがって,審決が,発明の詳細な説明に「薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載をすることにより,その用途の有用性が裏付けられている」ように記載されていない限り,特許請求の範囲の記載は,法36条6項1号に規定する要件を満たさないとした部分は,常に妥当するものではなく,そのことのみを理由として,法36条6項1号に反するとした判断は,特段の事情があればさておき,このような特段の事情がない限りは,理由不備があるというべきである。イ そして,審決は,理由中において,発明の詳細な説明の具体的な記載の検討をし,「本願明細書の発明の詳細な説明には,本願発明の医薬としての有用性を裏付ける薬理データも薬理データと同視すべき程度の記載もなされていない。」として,本願は,法36条6項1号所定の要件を満たさないと結論付けた。しかし,審決は,発明の詳細な説明の記載によって理解される技術的事項の範囲を,特許請求の範囲との対比において,検討したのではなく,「薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載」があるか否かのみを検討して,そのような記載がないことを理由として,法36条6項1号の要件充足性がないとしたものであって,本願の特許請求の範囲の記載が,どのような理由により,発明の詳細な説明で記載された技術的事項の範囲を超えているかの具体的な検討をすることなく,同条6項1号所定の要件を満たさないとした点において,理由不備の違法があるというべきである。また,本件においては,「特許請求の範囲」が特異な形式で記載され,法36条6項1号の要件を充足しないと解さない限り,産業の発展を阻害するおそれが生じるなど特段の事情は存在しない。ウ 被告は,知財高裁大合議部判決が,特性値を表\す複数の技術的な変数(パラメータ)を用いた一定の数式により示される範囲をもって特定した物を含む発明に係る「特許請求の範囲の記載」に関して,平成6年法律第116号による改正前の特許法36条5項1号(現行法36条6項1号)の規定に適合しないとした判決の理由を,医薬用途発明に適用するならば,発明の詳細な説明に「薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載」をすることが,法36条6項1号の適合性を充足するための要件になると主張する。しかし,被告の主張は,以下のとおり,採用できない。すなわち,知財高裁大合議部判決は,前記のとおり,特性値を表す複数の技術的な変数(パラメータ)を用いた一定の数式により示される範囲をもって特定した物を含む発明に係る「特許請求の範囲の記載」が,平成6年法律第116号による改正前の特許法36条5項1号所定(現行法36条6項1号)の要件に適合するか否かについて,同争点に対して判示した事案である。同判決は,判決理由中の第6の1(4)において,「発明の詳細な説明に記載された発明と特許請求の範囲に記載された発明との対比」との項目を設けて,「発明の詳細な説明の記載」で示された実施例と比較例とを検討した上で,「当該数式が示す範囲内であれば,所望の効果(性能)が得られると当業者において認識できる程度に,具体例を開示して記載しているとはいえ」ないと判示し,さらに,同判決理由中の第6の1(5)において,「特許請求の範囲に記載された発明の範囲まで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないのに,・・・その内容を特許請求の範囲に記載された発明の範囲まで拡張ないし一般化し,明細書のサポート要件に適合させることは,発明の公開を前提に特許を付与するという特許制度の趣旨に反し許されない」と判示した。以上のとおり,知財高裁大合議部判決の判示は,i)「特許請求の範囲」が,複数のパラメータで特定された記載であり,その解釈が争点となっていること,ii)「特許請求の範囲」の記載が「発明の詳細な説明」の記載による開示内容と対比し,「発明の詳細な説明」に記載,開示された技術内容を超えているかどうかが争点とされた事案においてされたものである。これに対し,本件は,i)「特許請求の範囲」が特異な形式で記載されたがために,その技術的範囲についての解釈に疑義があると審決において判断された事案ではなく,また,ii)「特許請求の範囲」の記載と「発明の詳細な説明」の記載とを対比して,前者の範囲が後者の範囲を超えていると審決において判断された事案でもない。知財高裁大合議部判決と本件とは,上記各点において,その前提を異にする。したがって,被告が,知財高裁大合議部判決の判示内容を医薬用途発明に適用すれば,発明の詳細な説明に「薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載」をすることが,法36条6項1号の適合性を充足するための要件になると主張する点は,本件において,同様に適用されるための前提を欠く。したがって,知財高裁大合議部判決の判示を論拠として,医薬品の用途発明である本件について,発明の詳細の記載に薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載がないから,法36条6項1号の要件を満たさないとすべきであるとの被告の主張は,採用の限りでない。エ 以上検討したとおり,審決は,法36条6項1号の要件を満たすためには,常に「薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載がないこと」が必要であるとの前提に立って,本願では,「薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載がないこと」のみを理由に,同条6項1号の要件を充足しないとしたものであって,審決の判断には,理由不備の違法がある。(2) 以上のとおり,審決の判断には,法36条6項1号についての誤った前提に基づいて,その要件を満たさないとした点において理由不備の違法がある。のみならず,具体的な事案に照らしても,以下のとおり,法36条6項1号に適合しないとした審決の判断には誤りがある。

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平成20(行ケ)10276 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月19日 知的財産高等裁判所

 無効理由として、記載不備違反、進歩性違反、分割要件違反が争われた無効審判について、審決はすべて請求理由なしとしました。裁判所は、記載不備要件違反、分割要件違反については理由ありとして審決を取り消しました。
 「ところが,上記認定のとおり,「ルイス酸」とは,G.N.ルイスによって提唱された酸・塩基の概念であるが,特定の酸を指すものではなく広範な化合物を含む概念であり,自然界においてさまざまな形で存在し,化合物によってはルイス酸とルイス塩基のいずれの性質をも有する場合もあり,上記認定の文献,意見書及び法廷証言にみられるとおり,ルイス酸及びルイス塩基の種類・範囲,その作用及び反応の形態についてはさまざまな見解があり,現時点においてもその外延は確定していないといわざるを得ない。したがって,本件明細書の記載を参考にしても,そこに記載された上記のわずかな化合物や成分に関する記載から,当業者が,貯蔵方法や使用される容器など特定の条件下において,セボフルランを分解する「ルイス酸」の範囲を想定することは極めて困難であるといわざるを得ない。また,上記認定のとおり,一口に「ルイス酸」といっても,その中には,強いルイス酸・ルイス塩基,弱いルイス酸・ルイス塩基のように,ルイス酸,ルイス塩基にはその強さに差があり,また,それらの酸と塩基の反応の成否や速度は,さまざまな要素及び条件に影響されることが認められるから,酸化アルミニウム,ガラス,Si−OHが「ルイス酸」に該当するからといって,「ルイス酸」に該当する他の化合物のすべてがセボフルランに対してこれらと同様に作用すると認めることもできない。確かに,本件明細書の段落【0007】には,セボフルランのSi−OHによる分解メカニズムが記載されているが,このような分解メカニズムが理解できたとしても,そもそも,どのようなルイス酸化合物がこのような分解を生じさせるかについては,当業者は具体的に理解することはできない。以上のとおり,本件発明における「ルイス酸」の概念は極めて不明確であるといわざるを得ず,「ルイス酸」の概念が不明確である以上,その「ルイス酸」の空軌道に電子を供与する「ルイス酸抑制剤」なる概念もまた不明確であるといわざるを得ない。したがって,本件発明を実施しようとする当業者は,貯蔵中のセボフルランの貯蔵状況に応じたあらゆる事態を想定した実験をしない限り,本件発明を実施することは容易ではないと認められる。そうである以上,本件明細書には,当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に「ルイス酸」及び「ルイス酸抑制剤」が記載されていると認めることはできない。(イ) この点に関し,被告らは,前記第4の2(2) ア(オ) のとおり,本件明細書の記載に当業者の技術常識を加味すれば,本件特許が特段の過度の試験をするまでもなく容易に実施可能であると主張する。しかしながら,セボフルランのルイス酸による分解という事象については,前述のとおり,本件特許の優先日当時,当業者はセボフルランのルイス酸による分解という現象そのものを理解していなかったのであるから,そもそも加味すべき「当業者の技術常識」と呼べるものは当時存在していなかったというほかない。したがって,当業者が,どのような化合物がセボフルランを分解する「ルイス酸」に該当するかについて,実験を繰り返すことなく,その内容を具体的に理解することは非常に困難であったといわざるを得ない。」\n

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平成21(行ケ)10134 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月20日 知的財産高等裁判所

 審決は、補正が新規事項、サポート要件違反、進歩性なしとしました。これに対して裁判所は、いずれも否定して上記審決を取り消しました。
 以上によると,当初明細書に記載される抗酸化作用を有する組成物は,単なる焼酎蒸留廃液からなる抗酸化物質と比べて,優れたヒドロキシラジカル消去活性を有するものであること,同組成物は,それ故,老化や動脈硬化等の種々の生活習慣病の予防に極めて良好であることが記載されているものであって,そうすると,本件補正による新請求項1に係る組成物が,補正事項(b)「活性酸素によって誘発される生活習慣病に対して有効である」ものであって,また,同(c)「ヒドロキシラジカル消去剤」との用途に用い得るものであることは,当初明細書に記載された事項の範囲内のものというべきである。エもっとも,被告は,当初明細書には,「ヒドロキシラジカル消去剤」との文言は存在せず,単に「抗酸化剤」又は「抗酸化作用」と「活性酸素によって誘発される生活習慣病」との関係に係る従来技術が示されたものにすぎないから,当初明細書の記載では,本願補正発明に係る「組成物」からなる「ヒドロキシラジカル消去剤」について実体的に記載されたものではないと主張する。しかしながら,上記イのとおり,当初明細書の【0040】には,ヒドロキシラジカル消去活性を有する抗酸化作用を有する組成物及びこれが活性酸素によって誘発される種々の生活習慣病の予防に有効であることが記載されているのであって,被告の主張は採用することができない。また,被告は,当初明細書の記載においては,本願補正発明に係る「組成物」の「活性酸素によって誘発される生活習慣病」に対する有効性についても全く確認されておらず,有効性が不明であるとして,新請求項1には新規事項の追加があると主張するが,これは,記載不備や進歩性の判断における発明の効果の問題であって,新規事項の追加の有無の問題ではないから,被告の主張は採用し得ない。オしたがって,新請求項1に係る本件補正について,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものということができないとした本件審決の判断は誤りである。\n・・・,特許請求の範囲が,特許法36条6項1号に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。・・・オ 以上によると,上記ウのとおり,当業者が,ヒドロキシラジカル消去活性の大小や本願発明の抗酸化作用を有する組成物が強力なヒドロキシラジカル消去活性からなる抗酸化作用を有して種々の生活習慣病の予防に好適であること等を記載する本願明細書に接し,上記エの公知の知見をも加味すると,本件補正発明の組成物が,活性酸素によって誘発される生活習慣病の予\防に対して効果を有することを認識することができるものであって,本件補正発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,その記載によって,生活習慣病などの疾患に対して有効である抗酸化物質を提供しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであるということができる。カ この点に関し,本件審決は,本願明細書の発明の詳細な説明には,(活性酸素によって誘発される)生活習慣病(の予防)に対する効果の有無及び当該効果とヒドロキシラジカル消去活性などの抗酸化作用の大小との対応関係(例えば,どの程度の抗酸化作用を有していれば,生活習慣病(の予\防)に対する効果を有するとするのかなど)に係る記載又はそれらを示唆する記載はないと説示する。しかしながら,本願明細書には,本件補正発明の組成物が活性酸素によって誘発される生活習慣病の予防に対して効果を有することを当業者が認識することができる記載があることは上記のとおりであり,また,新請求項1には,どの程度の抗酸化作用を有していれば生活習慣病(の予\防)に対する効果を有するかなどの生活習慣病の予防に対する効果とヒドロキシラジカル消去活性などの抗酸化作用の大小との対応関係についてまで記載されておらず,このような対応関係について発明の詳細な説明中に記載されている必要があると解されるものでもない。\n

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平成20(行ケ)10235 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月14日 知的財産高等裁判所

 実施可能要件違反ありとした審決が取り消されました。
 本件発明は,「約35.7〜約50.0重量%のペンタフルオロエタンと約64.3〜約50.0重量%のジフルオロメタンとからなり,32°Fにて約119.0psia の蒸気圧を有する,空調用又はヒートポンプ用の冷媒としての共沸混合物様組成物。」と特定されており,「空調用又はヒートポンプ用の冷媒としての共沸混合物様組成物」が「32°Fにて約119.0 psia の蒸気圧を有する」ことが明確に特定されているため,これが訂正前の請求項1の発明と全く同一内容の発明であるということはできず,訂正に伴う相応の変更があったものといわざるを得ない。しかしながら,本件発明は,訂正前と同様,共沸混合物様組成物に関するものであって,本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載された発明の技術的意義についても,訂正前と実質的な変更はないものというべきであるが,本件訂正による特許請求の範囲の減縮は,発明の用途を限定するとともに,ペンタフルオロエタンとジフルオロメタンからなる組成物の組成範囲を減縮することを目的としてされているものの,後段記載の部分がそのまま維持されたこともあって,前段記載と後段記載の矛盾関係が発生したものといえる。そうであれば,本件訂正後の本件発明は,発明の用途や組成範囲が限定された点を除けば,本件訂正前の発明と基本的に同一であるが,本件訂正明細書の発明の詳細な説明を参照しつつ,上記のような矛盾が生じないように解釈すべきであるから,「空調用又はヒートポンプ用の冷媒としての組成物であり,約35.7〜約50.0重量%のペンタフルオロエタンと約64.3〜約50.0重量%のジフルオロメタンからなり,32°Fにて約119.0 psia の蒸気圧を有する共沸混合物のような組成物」(ここで「共沸混合物のような組成物」とは「共沸混合物のように挙動する組成物」であるという意義)であると解するのが相当である。すなわち,本件発明の後段における蒸気圧の記載は,「真の共沸混合物」が有する属性を記載したものにすぎないと解すべきであって,本件訂正明細書の発明の詳細な説明を参照した当業者であれば,本件発明が上記認定どおりの組成物であると理解することができるものと認められる。そして,前記アで検討したとおり,本件訂正明細書には,本件発明の特徴について記載されており,当業者がこれらの記載を見れば,本件発明が「空調用又はヒートポンプ用の冷媒としての組成物であって,約35.7〜約50.0重量%のペンタフルオロエタンと約64.3〜約50.0重量%のジフルオロメタンとからなり,『32°Fにて約119.0 psia という真の共沸混合物の蒸気圧を有する,共沸混合物』のように挙動する組成物」であるものと理解し,その旨実施することができるものと認められる。したがって,本件発明の前段記載と後段記載とは実質的に矛盾するものではなく,両者が矛盾するものであると解釈し,これを根拠に本件発明につき実施可能要件違反があるとした審決の認定判断には誤りがある。・・・エ 被告は,最高裁平成3年3月8日判決(いわゆるリパーゼ事件判決)を引用して,請求項1の後段の「32°Fにて約119.0 psia の蒸気圧」について,それが誤記であるとしても,それは同判決が判示するような「一見して誤記であることが明らかな場合」には当たらないと主張し,また,誤記ではないとしても,「特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができない」場合にも当たらないと主張するので,念のために,所論の判例との関係につき付言することとする。上記判示のとおり,本件発明の請求項1の文言は,前段では,組成物の物質の名称が特定の数値(重量パーセント)とともに記載され,後段では,特定の温度における特定の数値の蒸気圧が記載されており,それぞれの用語自体としては疑義を生じる余地のない明瞭なものであるが,組成物の発明であるから,構成としては前段の記載で必要かつ十\分であるのに,後者は,さらにこれを限定しているようにも見えるものの,真実,要件ないし権利の範囲として更に付された限定であるとすれば,その帰結するところ,権利範囲が極めて限定され,特許として有用性がほとんどない組成物となり,極限的な,いわば点でしか成立しない構成の発明であるという不可思議な理解に,当業者であれば容易に想到することが必定である。そうすると,本件発明の請求項1の記載に接した当業者は,前段と後段との関係,特に後段の意味内容を理解するために,明細書の関係部分の記載を直ちに参照しようとするはずである。そうであってみれば,本件発明の請求項1の記載に接した当業者は,後段の「32°Fにて約119.0 psia の蒸気圧を有する」の記載に接し,その技術的な意義を一義的に明確に理解することができないため,明細書の記載を参照する必要に迫られ,これを参照した結果,その意味内容を上記判示のように理解するに至るものということができる。したがって,本件発明の請求項1の解釈に当たって明細書の記載を参照することは許され,上記の判断には,所論のような,判例の趣旨に反するところはなく,被告のこの点に関する主張は採用することができない。(3) 以上のとおり,本件発明における請求項1の「32°Fにて約119.0 psiaの蒸気圧を有する」との記載(後段記載)は,「真の共沸混合物が有する蒸気圧」を記載したにとどまり,本件発明の対象はあくまで「約35.7〜約50.0重量%のペンタフルオロエタンと約64.3〜約50.0重量%のジフルオロメタン」との組成範囲の記載(前段記載)によって定まると解釈すべきことになるから,本件発明の前段記載と後段記載は実質的に矛盾しないことになり,本件特許には,審決が説示したような実施可能要件違反はない。\n

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平成20(ワ)10854 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月24日 大阪地方裁判所

 サポート要件違反を理由にして104条の3により権利行使不能と認定されました。
 旧特許法36条5項1号は1 ,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」と規定し,特許請求の範囲の記載がこれに適合することを求めている(明細書のサポート要件)。その趣旨は,発明を公開させることを前提に,その発明に特許を付与して一定期間その発明を業として独占的,排他的に実施することを保障し,もって,発明を奨励し,産業の発達に寄与することを目的とする特許制度の趣旨に基づき,願書に添付すべき明細書に,発明の技術内容を一般に開示させるとともに,その効力の及ぶ範囲(特許発明の技術的範囲)を明らかにするという役割を果たさせるため,明細書の発明の詳細な説明に,その発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載することを要求し,公開されていない発明について独占的,排他的な権利が発生することにより,一般公衆からその自由利用の利益を奪い,ひいては産業の発達を阻害することを防ぐことにある。そして,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10042号同年11月11日特別部判決・判例タイムズ1192号164頁参照)。以下,かかる観点から,本件特許に係る特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものであるかについて検討する。・・・そうすると,本件特許発明が解決する課題(目的)は,環境に危険な材料を含まず,かつ,動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けてもスイッチが確実に作動するよう設計されたレベル・センサを得ることにあると認められる。そして,上記のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明の【実施例】の項に「水位レベルが上昇し始めると,レベルセンサは遂には傾き始め,…主水平位置に到達する。容積と重量の適切な選択により,水位レベルがセンサより上に如何に上昇するかに関係なく,センサはこの水平位置を取る(段落【0014 「。」】) センサがその水平位置近くからスタートすると,そのとき重心10がベアリング6,8の下で且つ右にある平衡重り9はベアリング6,8のまわりを時計方向に回転する。この回転は平衡重り9の表面の一つが中空本体1の内面と接触することによって制限される。このように移動している間,平衡重りの表\面13は接続円板5および弾性ヨーク16との接触を失っている。それからマイクロスイッチはスイッチが接続されるか又は切離されることを意味する他の位置をとるように作動される。」(段落【0015】)と記載されていることからすれば,本件特許発明の上記課題である,動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けてもスイッチが確実に作動するよう設計されたレベル・センサを得るため,本件特許発明のレベル・センサは,液中にある状態で,概ね主水平位置を安定的に維持するような構成を採用したものと解され,その具体的構\成の一つが,構成要件E,すなわち,平衡重りの重量を,センサが空気によって囲まれている時そのセンサの全重量の少なくとも30%とするとの数値限定したものと解される。ところで,そのような数値限定をする構\成を採用したことについて,本件明細書の発明の詳細な説明には,【実施例】の項に「マイクロスイッチを確実に停止させるため,平衡重り9は相対的に重く,レベル・センサの全重量の可成りの部分を構成する。しかしながら同時に,センサは製造上の理由のために重過ぎてはならない。受入れ可能\な安全性を得る最小値は全重量の30%であるが,適切な値は50から80%の間である。」(段落【0016】)と記載されており,この記載によれば,平衡重りの重量をセンサが空気によって囲まれている時そのセンサ全重量の少なくとも30%とすることが,本件特許発明の上記課題(その動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けても,概ね主水平位置を安定的に維持し,もってスイッチが確実に作動するよう設計されたレベル・センサを得る)を解決するために不可欠な構成とされていることが明らかである(上記数値限定を内容とする構\成が,本件特許発明が解決する課題のうち「環境に危険な材料を含ま」ないレベル・センサを得ることを解決するものでないことは明らかである。)。・・・以上によれば,「レベル・センサを液中において概ね主水平位置に安定的に維持する」という効果との関係において,平衡重りとセンサ全体の重量比が影響を及ぼすとの技術常識を認めることはできない。エ以上によれば,本件特許に係る出願時の技術常識に照らして,本件明細書の上記記載から,「動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける外力を受けてもスイッチが確実に作動する」との効果を得るために,平衡重りの重量をセンサ全重量の30%以上にすることの技術的意義ばかりでなく,平衡重りの重量をセンサ全重量の一定割合を超えるように設定することの技術的な意味を当業者が理解することができないというべきである。他に,平衡重りの重量をセンサ全重量の一定割合を超えるように設定することの技術的な意味を示唆するような記載も見当たらない。したがって,本件特許の特許請求の範囲の記載は,明細書のサポート要件に違反するというべきである。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10041 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

 ”研磨しうる弾性体”という用語の明瞭性が争われました。知財高裁は、不明瞭とした審決を維持しました。
 「・・原告は,本願補正発明は,除くクレームであり,除くクレームにおいて,引用発明を除くために挿入された用語は,引用発明の記載された特許公報等で使用されたとおりの内容のものとして理解すべきであるとして,大合議判決の判示を引用する。そして,本願補正発明の「研磨しうる弾性体」の語は,特公平3−74380号公報(甲7)記載の発明を除くために挿入されたものであるから,甲7の特許請求の範囲に記載された「研磨しうる弾性体」を意味するものであり,その意味は明確であり,本願補正発明にいう「研磨しうる弾性体」でない「金属板又は合成樹脂板」及び「樹脂凸版を構成するその他の材料」の意味も,明確であると主張する。しかし,原告の主張は,以下の理由により,採用することができない。すなわち,本願補正発明が特許法36条6項1,2号の要件を充足するか否かは,本件補正後の特許請求の範囲の記載及び本願補正明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて判断されるべきである。原告(出願人)が,本願補正発明から甲7記載の発明を除く意図で,「研磨しうる弾性体」の語を用いたものであったとしても,本願補正発明における,「研磨しうる弾性体」の語が甲7記載のとおりの技術内容を有するものと理解すべき根拠はない。したがって,この点において,原告の主張は,理由がない。のみならず,仮に甲7を参照したとしても,「研磨しうる弾性体」との文言の意味が明確であるとはいえない。すなわち,甲7の特許請求の範囲の請求項1では,「研磨しうる弾性体」は,定義されることも限定されることもなく用いられ,請求項3ないし7では,「研磨しうる弾性体」が,請求項1等を引用した上で材質,硬度,厚さ等をより限定した内容で示されている。甲7の発明の詳細な説明の6欄3ないし25行には,「研磨しうる弾性体」について,「通常に入手しうるゴム,例えばポリブタジエン,ブタジエン−アクリロニトリル,ブタジエン−スチレン,イソ\プレン−スチレン,シリコーン,又はポリスルフイドゴムのいずれかであつてよい。好ましくは弾性体は天然ゴム,ポリクロルプレンゴム又はポリウレタンゴムである。弾性体は,より容易に研磨しうるために通常の充填剤を含有しうる。弾性体は少くとも30,但し80 を越えないシヨアA硬度を有すべきである。好ましくはその硬度は40 〜 60 シヨアAである。・・・・好ましくは,弾性体は100〜500ミクロンの厚さを有し,最も好ましくは厚さが約400ミクロンである。」と,「研磨しうる弾性体」の材質,硬度,厚さ等の性質から,好ましい実施態様は挙げられているものの,「研磨しうる弾性体」の意義・外延について,これを明確にする定義・規定はない。したがって,甲7を参照してもなお,「研磨しうる弾性体」の意味・外延は明確ではないので,「研磨しうる弾性体ではない」との意味も明確とはいえない。原告の主張は,この点においても,採用することができない。」

◆平成21(行ケ)10041 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10423 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月17日 知的財産高等裁判所

 36条4項(実施可能性違反)を理由に拒絶審決が維持されました。
 「上記第4項は特許出願における実施可能要件と称されているものであるが,特許制度は,発明を公開する代償として,一定期間発明者に当該発明の実施につき独占的権利を付与するものであるから,明細書に記載される発明の詳細な説明は,当業者(その発明の属する分野における通常の知識を有する者)が容易にその実施をすることができる程度に発明の構成が記載されていることを要するとしたものであるところ,上記のような法の趣旨に鑑みると,明細書の発明の詳細な説明の欄に当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十\分に記載されていること,ひいては当該発明が実施可能であることは,出願人が特許庁長官に対し立証する責任があると解される。」\n

◆平成20(行ケ)10423 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月17日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10304 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年08月18日 知的財産高等裁判所

実施可能性違反ではないとした無効審決が取り消されました。
 「特許法36条4項は,「前項第三号の発明の詳細な説明には,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果を記載しなければならない。」と定めるところ,本件発明のように,特定の用途(樹脂配合用)に使用される組成物であって,一定の組成割合を有する公知の物質から成るものに係る発明においては,一般に,当該組成物を構\成する物質の名称及びその組成割合が示されたとしても,それのみによっては,当業者が当該用途の有用性を予測することは困難であり,当該組成物を当該用途に容易に実施することができないから,そのような発明について実施可能\要件を満たすといい得るには,発明の詳細な説明に,当該用途の有用性を裏付ける程度に当該発明の目的,構成及び効果が記載されていることを要すると解するのが相当である。さらに,本件発明は,その用途として,単に「樹脂配合用」と規定するのみであるから,本件発明について実施可能\要件を満たす記載がされるべきである以上,発明の詳細な説明に,酸素吸収剤を適用する樹脂一般について,本件発明の酸素吸収剤を適用することが有用であること,すなわち,当該樹脂一般について,本件発明が所期する作用効果を奏することを裏付ける程度の記載がされていることを要すると解すべきである。そこで,以下,上記観点に立ち,発明の詳細な説明に,本件発明の酸素吸収剤を適用する樹脂一般について,本件発明が所期する作用効果を奏することを裏付ける程度の記載があるか否かについて検討する。・・・しかしながら,i),iii)及びvi)の各記載の実質は,単に結論(相違点に係る構成を採用した本件発明が本件作用効果を奏する旨)を述べるものすぎない。また,ii)iv)及びv)の各記載をみても,これを,酸素吸収剤を適用する樹脂の特性(化学構造等)を念頭に置いたものとみることはできないから,当業者において,これらの記載の内容が,エチレン−ビニルアルコール共重合体以外の樹脂一般についても,そのまま妥当するものと容易に理解することができるとみることはできない。さらに,発明の詳細な説明には,当業者において,銅及び硫黄が過大に存在することによる樹脂のゲル化及び分解並びに異味・異臭成分の発生を考える上で,エチレン−ビニルアルコール共重合体とそれ以外の樹脂一般とを同視し得るものと容易に理解することができるような記載は全くない。以上からすると,発明の詳細な説明に,エチレン−ビニルアルコール共重合体以外の樹脂一般について,本件発明が本件作用効果を奏することを裏付ける程度の記載がされているものと認めることはできず,その他,そのように認めるに足りる証拠はない。」

◆平成20(行ケ)10304 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年08月18日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10286 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月30日 知的財産高等裁判所

 サポート要件違反とした審決が維持されました。
   特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定するいわゆるサポート要件に適合するものであるか否かについては,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,発明の詳細な説明に,当業者において,特許請求の範囲に記載された発明の課題が解決されるものと認識することができる程度の記載ないし示唆があるか否か,又は,その程度の記載や示唆がなくても,特許出願時(優先権主張があるときは優先日当時)の技術常識に照らし,当業者において,当該発明の課題が解決されるものと認識することができるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。そこで,上記観点に立って,以下,本件について検討することとする。・・・・イ そこで,発明の詳細な説明に,当業者において,本願発明の上記課題が解決されるものと認識することができる程度の記載ないし示唆があるか否かについて検討すると,前記(3)のとおり,発明の詳細な説明には,金属層を透明にするため,これを,下部の有機層を保護することができる程度の十分な厚さを保ちつつ,できる限り薄くすることにより,所望の透明度を得た上,さらに,金属層を保護し,また,電気抵抗を減少させるため,金属層の上部に,許容される透明度を保持しつつ,できる限り厚いITO層(本願発明の「第2の導電性層」に相当する。)を付着する旨の記載はみられるものの,この層(「ITO層312」)がITO以外の透明導電性酸化物である場合に上記課題が解決されることについての記載ないし示唆は一切みられないから,発明の詳細な説明に,当業者において,本願発明の上記課題が解決されるものと認識することができる程度の記載ないし示唆があるとまで認めることはできない。

◆平成20(行ケ)10286 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10237 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月29日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした無効審決に対して、i)手続き違背、ii)新規事項ではない、iii)実施可能要件違反なし等を理由として審決が取り消されました。
  「審判手続等の経緯のアないしウによれば,請求項2に係る特許発明について,請求人(被告)から,甲1を引用例とした進歩性欠如を理由による無効審判が請求され,その後,請求人(被告)により,口頭審理手続において甲6を主引用例とした無効理由が主張された。これに対して,審決は,甲1及び甲6に基づいて進歩性を欠くとの理由により無効とすべきであると判断した。そうすると,審決の判断の基礎となった無効理由について,被請求人である原告には,意見を申し述べる機会(特許法134条2項,153条2項)及び訂正請求をする機会(同法134条の2第1項)が付与されていなかったものというべきである。」
「上記によれば,メインCPU31が実行した内部抽選処理の結果に基づいて内部抽選データISDの当選フラグがセットされ,また,サブCPU55に開始情報Aが入力されてから停止操作情報Bが入力されるまでの期間T1(すなわち,メインリールの回転中の期間)において,第1処理を選択するか第2処理を選択するかを,サブCPU55が制御プログラムに従って決定することが記載されているということができる。また,このサブCPU55が第1処理を選択するか第2処理を選択するかを決定する処理の例示として,メインCPU31から送信される内部抽選データISDに含まれる所定の当選フラグがセットされている場合に第2処理を選択して実行してもよいことが記載されているということができる。イそして,「メインCPU31が実行した内部抽選処理の結果に基づいて当選フラグがセットされた内部抽選データISD」が「抽選手段の抽選結果」に相当するといえることに照らせば,本件特許明細書(甲18,段落【0216】)の「内部抽選データISDに含まれる所定の当選フラグがセットされている場合に第2処理を選択して実行してもよい」との記載部分に,「抽選手段の抽選結果に基づいて第2処理を選択的に実行する」との事項が明確に示されていると解される。そして,本件特許明細書(甲18)には,第1処理を選択して実行することを妨げる記載はないのであるから,「第2処理を選択して実行してもよい」との記載部分を見た当業者は,第1処理の選択と第2処理の選択を決定する処理に関して,「第1処理を選択して実行してもよい」と理解するのが自然である。そうすると,「抽選手段の抽選結果基づいて第1処理を選択的に実行する」ことが,本件特許明細書(甲18)に,実質的に記載されているということができる。」
「特許法36条4項は,「発明の詳細な説明の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」と定め,同条同項1号において,「一経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と定めている。そして,上記の「経済産業省令」に当たる特許法施行規則24条の2は,「特許法第三十\六条第四項第一号の経済産業省令で定めるところによる記載は,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と定めている。特許法36条4項1号において,「通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること」(いわゆる「実施可能\要件」)を規定した趣旨は,通常の知識を有する者(当業者)がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したといえない発明に対して,独占権を付与することになるならば,発明を公開したことの代償として独占権を付与するという特許制度の趣旨に反する結果を生ずるからである。ところで,そのような,いわゆる実施可能\要件を定めた特許法36条4項1号の下において,特許法施行規則24条の2が,(明細書には)「発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を記載すべきとしたのは,特許法が,いわゆる実施可能要件を設けた前記の趣旨の実効性を,実質的に確保するためであるということができる。そのような趣旨に照らすならば,特許法施行規則24条の2の規定した「技術上の意義を理解するために必要な事項」は,実施可能\要件の有無を判断するに当たっての間接的な判断要素として活用されるよう解釈適用されるべきであって,実施可能要件と別個の独立した要件として,形式的に解釈適用されるべきではない。」

◆平成20(行ケ)10237 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10286 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月30日 知的財産高等裁判所

 サポート要件違反とした拒絶審決が維持されました。
  「特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定するいわゆるサポート要件に適合するものであるか否かについては,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,発明の詳細な説明に,当業者において,特許請求の範囲に記載された発明の課題が解決されるものと認識することができる程度の記載ないし示唆があるか否か,又は,その程度の記載や示唆がなくても,特許出願時(優先権主張があるときは優先日当時)の技術常識に照らし,当業者において,当該発明の課題が解決されるものと認識することができるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。そこで,上記観点に立って,以下,本件について検討することとする。・・・・発明の詳細な説明に,当業者において,本願発明の上記課題が解決されるものと認識することができる程度の記載ないし示唆があるか否かについて検討すると,前記(3)のとおり,発明の詳細な説明には,金属層を透明にするため,これを,下部の有機層を保護することができる程度の十分な厚さを保ちつつ,できる限り薄くすることにより,所望の透明度を得た上,さらに,金属層を保護し,また,電気抵抗を減少させるため,金属層の上部に,許容される透明度を保持しつつ,できる限り厚いITO層(本願発明の「第2の導電性層」に相当する。)を付着する旨の記載はみられるものの,この層(「ITO層312」)がITO以外の透明導電性酸化物である場合に上記課題が解決されることについての記載ないし示唆は一切みられないから,発明の詳細な説明に,当業者において,本願発明の上記課題が解決されるものと認識することができる程度の記載ないし示唆があるとまで認めることはできない。」

◆平成20(行ケ)10286 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10489 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年04月23日 知的財産高等裁判所

 実施可能性要件を満たしているとした審決が取り消されました。
    「旧特許法36条4項は,「・・・発明の詳細な説明は,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に,記載しなければならない。」と定めるところ,この規定にいう「実施」とは,物(麻酔薬組成物)の発明である本件発明1にあっては当該物の生産,使用等を,物を生産する方法(麻酔薬組成物の調製法)の発明である本件発明2及び3にあっては当該方法の使用,当該方法により生産した物の使用等を,方法(一定量のセボフルランのルイス酸による分解を防止する方法)の発明である本件発明4にあっては当該方法の使用をそれぞれいうものであるから,本件各発明について実施可能\要件を満たすというためには,発明の詳細な説明の記載が,本件発明1については当業者が同発明に係る麻酔薬組成物を,本件発明2及び3については当業者が同各発明に係る麻酔薬組成物の調製法を,本件発明4については当業者が同発明に係る一定量のセボフルランのルイス酸による分解を防止する方法をそれぞれ使用することができる程度のものでなければならない。そして,本件発明1のような組成物の発明においては,当業者にとって,当該組成物を構成する各物質名及びその組成割合が示されたとしても,それのみによっては,当該組成物がその所期する作用効果を奏するか否かを予\測することが困難であるため,当該組成物を容易に使用することができないから,そのような発明において実施可能要件を満たすためには,発明の詳細な説明に,当該組成物がその所期する作用効果を奏することを裏付ける記載を要するものと解するのが相当である。また,上述したところは,本件発明2及び3のような組成物の調製法の発明並びに本件発明4のような物質間の化学反応を防止する方法の発明においても,同様に妥当するものというべきである。・・・以上によれば,発明の詳細な説明には,本件各発明について,本件数値の水を含有させることにより所期の作用効果を奏することを裏付ける記載があるものと認めることはできず,その他,そのように認めるに足りる証拠はないから,発明の詳細な説明には,本件各発明の少なくとも各一部につき,当業者がその実施をすることができる程度の記載があるとはいえないというべきである。」

◆平成18(行ケ)10489 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年04月23日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10107 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月30日 知的財産高等裁判所

   CS関連発明について、記載不備、進歩性なしとした審決を維持しました。ただ、36条の記載不備については下記のような付言がなされています。
  「なお,審決が特許法36条6項2号該当性の有無について判断した点について付言する。特許法36条6項2号は,特許請求の範囲の記載において,特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨を規定する。同号がこのように規定した趣旨は,特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には,特許発明の技術的範囲,すなわち,特許によって付与された独占の範囲が不明となり,第三者に不測の不利益を及ぼすことがあるので,そのような不都合な結果を防止することにある。そして,特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載のみならず,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるかという観点から判断されるべきである。
 ところで,審決は,請求項1(1)についての「コード番号を付してコード化し」,「暗号化し」,「転送する」などの記載,請求項1(2)についての「平文化できる範囲を設定し」などの記載,請求項1(3)についての「顧客個人情報を登録し」,「再暗号化して登録する」,「階層別に管理する」などの記載,請求項1(5)についての「登録してデーターベース化し」などの記載が,「人間がPCを操作して行う処理であるとも,PCが人間を介さず自動的に行う処理であるとも解することができ,そのいずれを意味しているのかが不明であるため,その特定しようとする事項が明確でないから,特許法36条6項2号に規定する要件を満たさない」と判断した。
 しかし,審決の上記判断は,その判断それ自体に矛盾があり,特許法36条6項2号の解釈,適用を誤ったものといえる。すなわち,審決は,本願発明の請求項1における上記各記載について,「人間がPCを操作して行う処理であるとも,PCが人間を介さず自動的に行う処理であるとも解することができ(る)」との確定的な解釈ができるとしているのであるから,そうである以上,「そのいずれを意味しているのかが不明であるため,その特定しようとする事項が明確でない」とすることとは矛盾する。のみならず,審決のした解釈を前提としても,特許請求の範囲の記載は,第三者に不測の不利益を招くほどに不明確であるということはできない。むしろ,審決においては,自らがした広義の解釈(それが正しい解釈であるか否かはさておき)を基礎として,特許請求の範囲に記載された本願発明が,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものといえるか否か(特許法2条1項),産業上利用することができる発明に当たるか否か(29条1項柱書)等の特許要件を含めて,その充足性の有無に関する実質的な判断をすべきであって,特許法36条6項2号の要件を充足しているか否かの形式的な判断をすべきではない。前記のとおり,その判断の結果にも誤りがあるといえる。」

◆平成20(行ケ)10107 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10367 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月16日 知的財産高等裁判所

 請求項1についてサポート要件違反の無効については、無効であるとした審決を維持し、請求項2−5に対する進歩性違反の無効については、引用例の認定誤りを理由に、取消しました。
  「以上によれば,詳細な説明は,本件特許発明1において,光触媒とアモルファス型過酸化チタンゾルとを混合し,コーティングした後,乾燥させ,固化させる温度を「80℃以下」と規定していることと,これにより得られる効果との関係の技術的意義について,具体例を欠くものであり,また,具体例の開示がなくとも当業者が理解できる程度に記載されているということもできない。したがって,本件特許発明1は,詳細な説明に記載されたものであるということができないものというべきである。・・・
 被告の主張(その1)は,要するに,甲1公報の「・・・過酸化水素水・・・を添加し,80℃で1時間加熱することにより,透明な黄色のペルオキソポリチタン酸水溶液を得た」(段落【0052】)との記載において,「アモルファス型過酸化チタンゾル」は「加熱前のペルオキソ\ポリチタン酸」と同義であるから,原告らは本件特許発明1の「アモルファス型過酸化チタンゾル」と対比すべき対象を誤っているというものである。しかし,甲1公報の「・・・過酸化水素水・・・を添加し,80℃で1時間加熱することにより,・・・ペルオキソポリチタン酸水溶液を得た。」(段落【0052】)との記載に照らし,「80℃で1時間加熱」を行う前の段階において「ペルオキソ\ポリチタン酸」が生成したことが,同公報に開示されているとは認められない。また,本件特許明細書(甲4)及び甲1公報(甲1)の記載に照らし,被膜形成のバインダーとして使用されているのは,本件特許発明1では「アモルファス型過酸化チタンゾル」,甲第1発明では「ペルオキソポリチタン酸液」であることが認められるから,本件特許発明1と甲第1発明との対比においては,本件特許発明1の「アモルファス型過酸化チタンゾル」と甲1公報の「(加熱後の)ペルオキソ\ポリチタン酸液」とを対比すべきものである。審決における相違点1の認定も,上記対応関係を前提とするものである。」

◆平成19(行ケ)10367 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月16日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10213 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年09月29日 知的財産高等裁判所

  クレームにおける「1〜6時間の期間に亘り熱処理」との記載がサポート要件違反(36条6項1号)であるとした拒絶審決が取り消されました
  「そして,上記のような当業者の技術常識を踏まえると,本願明細書には熱処理の時間を具体的に限定する必要がない発明が開示されているということができるのであり,本願発明2において熱処理の時間を「1〜6時間」と限定したのは,本来,具体的に限定する必要がない熱処理の時間について,一般的に採用されるであろうと考えられる範囲に限定して特許を受けようとしたものと解するべきであるし,前記の公知技術の状況からすると,当業者においてもそのような技術的意義を有するものとして理解するであろうと推認されるから,本願明細書の実施例において熱処理の時間が記載されていないことを理由として,本願発明2がサポート要件を満たさないとすることはできない。」

◆平成19(行ケ)10213 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年09月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10066 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年09月29日 知的財産高等裁判所

  サポート要検討を満たしていないとして無効とした審決について、「ゼリー」の用語を詳細な説明を参酌して解釈して、無効とはいえないと判断しました。
 「ところで,明細書で用いる技術用語は,学術用語を用いるべきもの(特許法施行規則24条には「願書に添附すべき明細書は,様式第29により作成しなければならない。」とされ,その様式第29の備考〔7〕には,「技術用語は,学術用語を用いる。」とされている)であるから,学術用語どおりに解釈すべきである。しかし,上記甲2の記載のみが学術用語としての定義であると断定することはできないのみならず,「ゼリー」に関しては一般の用語法の影響を受けてか,上記甲2の定義とは異なる言葉の用い方が本件特許出願前から一般的になされているところからすれば,本件の場合においては上記甲2(化学大辞典)に記載された意味のみから特許請求の範囲の記載を解釈するのは適切とはいえず,本件発明1にいう「ゼリー」が「流動性を失ったかたまり状の弾性体」をいうのか「粘液状」のものをいうのかについては,特許請求の範囲の記載のみからはその意味が一義的に明確に理解することができないというべきである。そうすると,本件発明1の「ゼリー」の意味については,本件明細書(甲74)の発明の詳細な説明の記載をも参酌してその意味を判断する必要があると解される(最判平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁参照)。・・・以上の検討によれば,本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,本件発明1の「ゼリー」とは,「流動性を失い,弾性的な固まりとなった状態」をいうのではなく,粘性を有し流動性を失っていない物質,すなわち「粘液」と解するのが相当である。」

◆平成20(行ケ)10066 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年09月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10401 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年09月10日 知的財産高等裁判所

  サポート要件違反を理由として無効とした審決が維持されました。裁判所は、パラメータ発明に関する大合議判決◆平成17年(行ケ)第10042号を引用し、サポート要件を具備していることは出願人側に立証責任があると述べました。

  「そうすると,本件発明1がサポート要件を満たすというためには,本件発明1の物品の溶剤清浄化方法による清浄化機能が従来の溶剤であるフロンを使用したものとおおむね同等か,それ以上のものであること,及び,アルミニウム存在下において安定していることが,発明の詳細な説明に記載されている必要があるというべきである(なお,原告は「フロン代替物としてのオゾン層破壊防止効果」が本件発明の効果であるかのように主張するが,上記に説示したところに照らし,採用することはできない。)。しかしながら,本件明細書の発明の詳細な説明に実施例として記載されている例1〜11のうち,例1〜9は,上記(4)のエのとおり,使用されているフッ素化エーテルが本件発明1のフッ素化エーテルの構成を備えていないものであり,また,例10,11は,これに使用されているフッ素化エーテルが本件発明1のフッ素化エーテルの構\成を備えているものであるとしても,上記(4)のカのとおり,清浄化試験及びアルミニウム存在下における安定性試験の結果がいずれも記載されていないのであるから,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件発明1の実施例に相当する例の記載を欠いたものといわざるを得ない。そして,本件明細書の他の記載において,本件発明1が上記の作用効果を奏することについて具体的に触れた部分はない。この点に関して,原告は,例10及び11に先立って記載されている例1〜4(塩素原子を含むフッ素化エーテル)や例5〜9(低沸点のフッ素化エーテル)には,「具体的に回路板から融剤残渣を清浄化し,イオン系融剤残渣の除去割合を測定した例が記載されて」おり,例10及び11はいずれも,これら例1〜9に具体的に記載されているものと同様の効果(回路板からの融剤残渣の清浄化,イオン系融剤残渣の除去割合)が得られる「特定の低沸点のフッ素化エーテルに該当する化合物」の代表的な例としての「テトラフルオロエチルエチルエーテル」を記載したものであると主張するが,本件明細書中に原告主張のように理解する根拠となるような記載は認められず,そうであれば,当業者が明細書の記載を理解する上において,本件発明1のフッ素化エーテルの構\成を備えていないフッ素化エーテルを使用した場合の作用効果についての記載が,本件発明1のフッ素化エーテルの構成を備えたフッ素化エーテルを使用した場合についても当然に及ぶものと認識するようなことは,期待すべくもないといわざるを得ない。このことは,異議時訂正の経過を参酌してもなお同様である。したがって,原告の主張を採用することはできず,本件発明1に係る物品清浄化方法は,当業者が,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,その課題を解決することができると認識できる範囲に含まれているということはできないというべきであり,本件発明1がサポート要件を満たしているということはできない。(6) 本件発明2〜9は本件発明1を直接又は間接に引用するものであり,本件発明1に係る溶剤組成物を必須の構成要件とするものであるから,本件発明1と同様の理由により,サポート要件を満たしているということはできない。」

◆平成19(行ケ)10401 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年09月10日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10307 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年09月08日 知的財産高等裁判所

  「Cu 0.3〜0.7重量%,Ni 0.04〜0.1重量%,残部Snからなる,金属間化合物の発生を抑制し,流動性が向上したことを特徴とする無鉛はんだ合金。」という請求項が記載要件を満たしているのかが争われました。裁判所は、無効とはいえないとした審決を取り消しました。
 「特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号が規定するいわゆるサポート要件に適合するものであるか否かについては,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,発明の詳細な説明の記載が,当業者において当該発明の課題が解決されるものと認識することができる程度のものであるか否か,又は,その程度の記載や示唆がなくても,特許出願時の技術常識に照らし,当業者において当該発明の課題が解決されるものと認識することができる程度のものであるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。
・・・・・
甲9実験報告書には,上記a(a)iiのとおり,・・・記載がある。しかしながら,B甲9実験報告書は,本件出願の日(平成11年3月15日)から7年以上が経過した平成18年6月6日付けで作成されたものであり,しかも,上記aの各記載によれば,上記見解は,「同月の時点で最もその分野に明るく,その能力を有するB」が,「同月当時に存在した学術データを基に,当時の知見から考え得るすべてのメカニズムを検討して得た」,「最大限でき得る限りの」,「先見性」を有する「私見」ないし「個人的見解」であり,しかも,上記見解は,「議論」であり,「まだよく分かっていないので,これから調べる必要がある」,「今後の学術研究によりさらに詳しく解明されることが期待される」などというものにすぎず,・・・、甲9実験報告書に上記見解を示した記載があるからといって,本件出願当時ないしは本件出願に係る優先日(平成10年3月26日,同年10月28日)当時,「CuとNiは互いにあらゆる割合で溶け合う全固溶の関係にあるため,NiはSn−Cu金属間化合物の発生を抑制する作用をする」ことが当業者の技術常識であったものとは到底認められず,その他,そのような事実を認めるに足りる証拠はない。
イ 上記アにおいて検討したところによれば,本件「発明の詳細な説明」が,当業者において,無鉛はんだ合金が本件組成を有することにより,本件構成A及びBの機能\ないし性質が得られるものと認識することができる程度に記載されたものでないことは明らかであり,かつ,本件出願(優先日)当時の技術常識を参酌しても,当業者において,そのように認識することができる程度に記載されたものでないことは明らかであるといわざるを得ない。したがって,本件発明1に係る特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものと認めることはできない。」

◆平成19(行ケ)10307 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年09月08日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10299 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年08月26日 知的財産高等裁判所

  特許法36条6項2号違反のみを理由とした拒絶審決が取り消されました。
   「現明細書の【0033】によれば,「撚成されたモノフィラメント撚糸」について,「撚成されたモノフィラメント」が2本以上で撚られて「シングル撚糸」となったものであると定義されている。そして,これに続く,【0034】ないし【0035】の各記載は,【0033】で定義された趣旨を前提として,「撚成されたモノフィラメントからなるシングル撚糸」の内容の詳細を説明している。そうすると,現明細書の記載によれば,?@「撚成された」の語はそれに続く「モノフィラメント」を修飾し,?A「モノフィラメント」は複数本を意味すると,それぞれ理解するのが合理的である。(イ) この点,請求項1において「撚成されたモノフィラメント」が複数本であることは明示的に示されていない。しかし,上記ア記載のとおり,「撚成されたモノフィラメント」は「モノフィラメント」に撚りをかけたものであるところ,「モノフィラメント」は「1本の繊維」(甲1,乙3)を意味し,また,「シングル撚糸」は1本又は2本以上の糸で撚られたものを意味することは明らかである(甲2,甲3,乙2)。そうすると,「撚成されたモノフィラメント」について,更に撚りをかけて「シングル撚糸」とする場合,仮に「撚成されたモノフィラメント」が1本であることを前提として,その1本のモノフィラメントを対象として再度撚りをかけるということは,およそ技術常識に照らして,意味のない解釈となるから,当業者は,請求項1記載の「シングル撚糸」について,複数本の「撚成されたモノフィラメント」に撚りをかけたものであると理解するのが合理的であるといえる。すなわち,請求項1項の「シングル撚糸」の意義について,「撚成されたモノフィラメントが1本である場合」は,およそ技術常識から離れた解釈であるから,そのような場合を含まないと理解して差し支えない。以上のとおり,請求項1記載の「撚成された・・・シングル撚糸」とは,「撚成されたモノフィラメント」を複数本集めて撚られたシングル撚糸を指すものと理解されるべきである。」

◆平成19(行ケ)10299 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年08月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10332 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年08月06日 知的財産高等裁判所

  36条の要件を満たさないとして補正を却下した審決が、取り消されました。
 「前記第2の3(1)のとおり,審決は,「補正事項2に記載された『顔面接触部』は『端部領域(15)(30)』に相当し,『顔面接触部の隣接部分』は『後部領域(16)(31)』に相当するものと解することができるのに対し,補正事項1に記載された『顔面接触部』は,『後部領域(16)(31)』を意味するか,『後部領域(16)(31)』及び『端部領域(15)(30)』から成るものを意味するかのいずれかであるから,補正事項1に記載された『顔面接触部』と同2に記載された『顔面接触部』の意味が整合しておらず,したがって,本願第1補正発明における『顔面接触部』の意味は,不明確である。そうすると,本件第1補正は,請求項1に係る発明を不明確にする補正であって,特許法17条の2第4項所定の事項を目的とするものではない。仮に,本件第1補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても,本願は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。」旨説示して,本件第1補正を却下した。
  イ しかしながら,補正事項1及び2に記載された「顔面接触部」が「顔面接触部全体(「端部領域(15)(30)」及び「後部領域(16)(31)」を含むもの)を指すことは,前記(1)イ及びオのとおりであるから,本願第1補正発明における「顔面接触部」の意義は明確であるといえる。そうすると,本件第1補正を却下した審決の上記判断は誤りであるから,同補正を却下した結果,本願の請求項1に係る発明の要旨を,本件原補正後の請求項1の記載に基づいて認定した審決には,発明の要旨認定を誤った違法があるといわざるを得ない。」

◆平成19(行ケ)10332 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年08月06日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10403 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月23日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明(?)について、「〜手段」の記載がサポート要件違反(36条6項1号)、不明瞭(同2号)、29−2違反が争われましたが、裁判所は、36条6項1号、2号については、審決の判断は誤りであると認定し、一部の審決を取り消しました。  
  「本件請求項1の記載のうち「ROM又は読み書き可能な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する手段」という文言の解釈につき当事者間に争いがあるので,まずこの点について検討する。ア 本件請求項1の記載を全体として捉えると,本件請求項1の「着脱式デバイス」は,「所定の種類の機器が接続されると,その機器に記憶された自動起動スクリプトを実行するコンピュータ」の汎用周辺機器インタフェースに着脱されるものであって,前記汎用周辺機器インタフェースに接続された際に「前記コンピュータからの機器の種類の問い合わせ信号に対し,前記所定の種類の機器である旨の信号を返信」するなどして,「前記コンピュータに前記自動起動スクリプトを起動させる手段」を備えるものである。したがって,「自動起動スクリプト」は,「所定の種類の機器」を用いる場合にはその機器に記憶され,コンピュータによって起動されるものであり,同様に,本件請求項1の「着脱式デバイス」を用いる場合には,着脱式デバイスに記憶され,コンピュータによって起動されるものである。そして,本件請求項1の「着脱式デバイス」は,「主な記憶装置としてROM又は読み書き可能\な記憶装置を備え」るものであり,「前記ROM又は読み書き可能な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する」と記載されていることに照らせば,「自動起動スクリプト」は着脱式デバイスの主な記憶装置であるROM又は読み書き可能\な記憶装置に記憶されるものである。イ ところで,一般に「手段」とは,「目的を達するための具体的なやり方」を意味するものである(広辞苑第6版)ところ,本件請求項1における「ROM又は読み書き可能な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する手段」との記載が,「前記コンピュータに前記自動起動スクリプトを起動させる手段」,「前記コンピュータから前記ROM又は読み書き可能\な記憶装置へのアクセスを受ける手段」とともに併記されたものであることからすれば,上記「記憶する手段」が,「ROM又は読み書き可能な記憶装置に前記自動起動スクリプトを記憶する」という目的を達するための具体的なやり方を意味するのか,それとも本件特許発明1全体の目的を達するための構\成要素の一つを意味するのか,いずれに解することも可能であって,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができない場合に当たる。ウそこで,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,本件請求項1の「ROM又は読み書き可能\な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する手段」の解釈につき検討する(なお,被告は,特許法36条6項1号該当性の判断をするに当たって発明の詳細な説明の記載を参酌すべきではないと主張するが,最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決〔民集45巻3号123頁〕も判示するように,特許を受けようとする発明の要旨を認定するのに特許請求の範囲の記載のみではその技術的意義が一義的に明確に理解することができない場合には,発明の詳細な説明の記載を参酌することは許されると解する。・・・以上の記載によれば,本件特許発明1は,USBメモリ等の着脱式デバイスをコンピュータに接続した際に,煩雑な手動操作を要することなく自動起動スクリプトに記述された所定のプログラムを自動実行させることを課題とするものであり,かかる課題の解決手段として,自動起動スクリプトを着脱式デバイスの記憶装置内に予め記憶し,コンピュータからの問い合わせに対してCD−ROMドライブなど自動起動スクリプト実行の対象機器である旨の信号(擬似信号)を返信することによって,コンピュータが着脱式デバイスの記憶装置内に記憶された自動起動スクリプトを起動させるという構\成を備えたものであることが認められる。そして,かかる解決手段を実現するためには,自動起動スクリプトは,着脱式デバイスがコンピュータに接続されたときにコンピュータから読み出すことが可能な状態でデバイスの記憶装置内に記憶されていることが必要であり,かつ,それで足りる。そうすると,ROM等の記憶装置が,その製造時に自動起動スクリプトを記憶するものであっても,上記解決手段を実現するのに何ら差し支えなく,また,ROM等の記憶装置の製造後に自動起動スクリプトを記憶させなければならないとすることは,上記解決手段の実現にとって特段の意味を有しないものである。(ウ) したがって,本件請求項1の「ROM又は読み書き可能な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する手段」という文言は,「ROM又は読み書き可能\な記憶装置に自動起動スクリプトを記憶する」という目的を達するための具体的なやり方を意味するものと解すべきではなく,本件特許発明1の目的を達するための構成要素の一つとして「自動起動スクリプトがROM又は読み書き可能\な記憶装置に記憶されている状態であること」を意味するものと解釈すべきである。」

◆平成19(行ケ)10403 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月23日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10308 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月12日 知的財産高等裁判所

  サポート要件違反(36条5項)とした審決が維持されました。
  「一方,本件明細書においては,当該被覆硬質部材の皮膜につきIa値を2.3以上とすることで,発明の課題を解決し発明の目的を達成することができることが,上記実施例の記載があることを除き,見当たらない。 (3) ところで,旧36条5項は,「第3項4号の特許請求の範囲の記載は,次の 各号に適合するものでなければならない。」と規定し,その1号において,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」と規定している(なお,平成6年法律第116号による改正により,同号は,同一文言のまま特許法36条6項1号として規定され,現在に至っている。以下「明細書のサポート要件」という。)。・・・そして,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁平成17年(行ケ)第10042号同年11月11日判決参照)。以下,上記の観点に立って,本件について検討する。
 (4) 本件発明1の課題は,上記(1)及び(2)のとおり,(Ti,Al)N膜については皮膜の結晶配向性について検討されたことはなく,皮膜と基体との密着性に問題があるところ,硬質部材上にTiとTi以外の周期律表4a,5a,6a族,Alの中から選ばれる2元系,ないし3元系の炭化物,窒化物,炭窒化物を被覆させる場合において,皮膜の結晶配向性を最適にすることにより皮膜と基体との密着性を向上させて耐摩耗性,耐欠損性に優れた被覆硬質部材の提供を目的とするところにあると認められ,当該被覆硬質部材の皮膜につきIa値を2.3以上とすることが同目的を達成するために有効であることが客観的に開示される必要があるというべきである。この点,本件発明の場合,これまで知られていなかった被覆硬質部材の皮膜におけるX線回折パターンにおけるI(200)とI(111)面の強度比に着目し,その比率であるIa=I(200)/I(111)と皮膜の強度・剥離特性の間に相関があることを見い出したものであり,その結果として,Ia値が2.3以上の皮膜が良い性能\を持つとしたものであるが,何ゆえ,そのような値であると皮膜の特性が良くなるのかにつき,因果関係,メカニズムは一切記載されておらず,またそれが当業者にとって明らかなものといえるような証拠も見当たらない。また,「Ia値が2.3以上」といえば,その数値が(200)面と(111)面の比をいうだけのものであるから,上限なく高い値の比が想定でき,かつ,その比の値に制限があるとする特段の事情も存在しないことから,当該Ia値の数値としては,2.3を大きく超える高い数値をも含み得るものであって,実際にも,原告作成の実験結果報告書(乙18)によれば,Ia値が10を超える値の被覆も存在することが示されている。これに対し,本件明細書では,Ia値について,本件発明の実施例として開示されたIa値は,上記(1)オの【表1】における本発明例7ないし10の2.3から3.1までという非常に限られた範囲の4例だけであり,これらの実施例をもって,上限の定まらないIa値2.3以上の全範囲にわたって,本件発明の課題を解決し目的を達成できることを裏付けているとは到底いうことができない。・・・(6) もっとも,原告は,通常,本件発明のような場合,実施例の数としては数例が一般的であり,それらにより発明の目的,課題解決の方向が示されておれば,実施例以外の箇所ではIa値の条件を満たされていることで十分当業者が理解できると考えられると主張する。確かに,数例の実施例によってもサポート要件違反とされない事例も存在するであろうが,そのような事例は,明細書の特許請求の範囲に記載された発明によって課題解決若しくは目的達成等が可能\となる因果関係又はメカニズムが,明細書に開示されているか又は当業者にとって明らかであるなどの場合といえる。ところが,本件発明1の場合,上記のとおり,本件明細書には,何ゆえIa値が2.3以上であると皮膜の特性が良くなるのかにつき,因果関係,メカニズムは一切記載されておらず,また,それが当業者にとって明らかなものといえるような証拠も見当たらないものであるから,原告の上記主張は採用することはできない。」

◆平成19(行ケ)10308 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月12日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10308 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月12日 知的財産高等裁判所

 特許法36条の記載要件についての判断です。36条違反とした審決を維持しました。
 「そして,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは, 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁平成17年(行ケ)第10042号同年11月11日判決参照)。以下,上記の観点に立って,本件について検討する。(4) 本件発明1の課題は,上記(1)及び(2)のとおり,(Ti,Al)N膜については皮膜の結晶配向性について検討されたことはなく,皮膜と基体との密着性に問題があるところ,硬質部材上にTiとTi以外の周期律表4a,5a,6a族,Alの中から選ばれる2元系,ないし3元系の炭化物,窒化物,炭窒化物を被覆させる場合において,皮膜の結晶配向性を最適にすることにより皮膜と基体との密着性を向上させて耐摩耗性,耐欠損性に優れた被覆硬質部材の提供を目的とするところにあると認められ,当該被覆硬質部材の皮膜につきIa値を2.3以上とすることが同目的を達成するために有効であることが客観的に開示される必要があるというべきである。この点,本件発明の場合,これまで知られていなかった被覆硬質部材の皮膜におけるX線回折パターンにおけるI(200)とI(111)面の強度比に着目し,その比率であるIa=I(200)/I(111)と皮膜の強度・剥離特性の間に相関があることを見い出したものであり,その結果として,Ia値が2.3以上の皮膜が良い性能\を持つとしたものであるが,何ゆえ,そのような値であると皮膜の特性が良くなるのかにつき,因果関係,メカニズムは一切記載されておらず,またそれが当業者にとって明らかなものといえるような証拠も見当たらない。また,「Ia値が2.3以上」といえば,その数値が(200)面と(111)面の比をいうだけのものであるから,上限なく高い値の比が想定でき,かつ,その比の値に制限があるとする特段の事情も存在しないことから,当該Ia値の数値としては,2.3を大きく超える高い数値をも含み得るものであって,実際にも,原告作成の実験結果報告書(乙18)によれば,Ia値が10を超える値の被覆も存在することが示されている。これに対し,本件明細書では,Ia値について,本件発明の実施例として開示されたIa値は,上記(1)オの【表1】における本発明例7ないし10の2.3から3.1までという非常に限られた範囲の4例だけであり,これらの実施例をもって,上限の定まらないIa値2.3以上の全範囲にわたって,本件発明の課題を解決し目的を達成できることを裏付けているとは到底いうことができない。(5) 以上述べたところに照らせば,本件明細書に接する当業者において,本件発明1に記載される構成を採択することによって皮膜と基体との密着性を向上させて耐摩耗性,耐欠損性に優れた被覆硬質部材を提供するとの課題を解決できると認識することは,本件出願時の技術常識を参酌しても,不可能\というべきであり,本件明細書における本件発明1に関する記載が,明細書のサポート要件に適合するということはできない。そうすると,本件発明1の特許請求の範囲の記載を引用して構成される本件発明2についても,本件発明1と同様にサポート要件に適合していないと解すべきことになる。(6) もっとも,原告は,通常,本件発明のような場合,実施例の数としては数例が一般的であり,それらにより発明の目的,課題解決の方向が示されておれば,実施例以外の箇所ではIa値の条件を満たされていることで十分当業者が理解できると考えられると主張する。確かに,数例の実施例によってもサポート要件違反とされない事例も存在するであろうが,そのような事例は,明細書の特許請求の範囲に記載された発明によって課題解決若しくは目的達成等が可能\となる因果関係又はメカニズムが,明細書に開示されているか又は当業者にとって明らかであるなどの場合といえる。ところが,本件発明1の場合,上記のとおり,本件明細書には,何ゆえIa値が2.3以上であると皮膜の特性が良くなるのかにつき,因果関係,メカニズムは一切記載されておらず,また,それが当業者にとって明らかなものといえるような証拠も見当たらないものであるから,原告の上記主張は採用することはできない。」

◆平成19(行ケ)10308 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月12日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10171 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年04月07日 知的財産高等裁判所 

  実施可能要件違反(36条4項)として拒絶した審決が維持されました。
  「本願明細書(甲2,5)における開示事項が,本願発明の実施可能要件を満たすといえるためには,上記比Hdd/Hdeが4以上を呈する優れた磁気損失特性を有する複合磁性体を得るための手段としての,各製造方法において扁平状の形状を有する軟磁性体粉末をできる限り同じ方向に並べるようにしてその配向度を改善するために設定する条件等についての技術的事項が,本願明細書(甲2,5)において,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていることを要するというべきである・・・そうすると,本願発明を実施するためには,比Hdd/Hdeが4以上を呈する優れた磁気損失特性を有する複合磁性体を得るため,出発粗原料粉末の平均粒径の特定に加えて,本願発明の効果に密接にかかわる延伸・引裂加工により生じる残留歪みの大きさを考慮し,同加工等により扁平化する際の加工手段及び加工条件の設定が必要であることになるところ,この点については,本願明細書(甲2,5)には,「アトライタ及びピンミルを用い様々な条件下にて粉砕,延伸・引裂加工を行い」との記載(段落【0033】)が存するにすぎず,実施例にも「磁歪の大きさ」の記載が存するにすぎないから,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に上記加工手段及び加工条件が記載されているものとは認められない。」

◆平成19(行ケ)10171 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年04月07日 知的財産高等裁判所 

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◆平成19(行ケ)10181 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月27日 知的財産高等裁判所

  実施可能性要件違反か否かが争われました。裁判所は要件を満たしていないとした審決を取り消しました。
    「被告は,刷紙区分装置8,刷紙区分部材9,支持要素10は動作のための具体的な装置が図示されておらず,その記載もないため,当業者が本願発明を容易に実施することができる程度に記載されているものであるとはいえないと主張する。しかし,前記(3)ウのとおり,本願発明における刷紙区分部材9,支持要素10の動作は,堆積体の形成速度に従い堆積体に沿って前後に移動することと,堆積体を分離・支持するために上昇し,又は終端板と入れ替わるために降下するという上下動に尽きるのであって,それ自体決して複雑なものとはいい難い。 イ 被告は,マガジン13が具体的構造や動作について記載がないため不明である旨,また,その点について本願明細書の図1と他の図面(【図2】〜【図6】)との整合性がないなどと主張する。しかし,本願発明において,マガジン13は,その内に堆積体7の端部を形成する終端板5,12が支承されており,担持機構\4,11がその終端板を収容するように形成されているものとして規定されているにすぎず(本願発明10),担持機構4,11がマガジン13の終端板取り出し位置において,マガジン13から終端板を取り出すことが可能\であればその具体的構造を問うものではないし,可動性のものであることさえ必要でないことは容易に理解できる。したがって,当業者が本願発明を実施できないとまでは認めることができない。」

◆平成19(行ケ)10181 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10236 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月29日 知的財産高等裁判所

  サポート要件違反とした審決が維持されました。
  「ところで,小腸は,初部約25センチメートルを十二指腸といい,その余の部分のうちの前半5分の2が空腸で後半5分の3が回腸であるから,カプセルの小腸内の通過速度が一定だとすると,小腸通過時間の30%にあたる時間では,カプセルはまだ空腸の中にある。これは,上記のとおり絶食患者を前提とした最短の時間で通過することを仮定した場合である。この位置で,既にコーティングの崩壊後15分が経過して,カプセルも崩壊し,カプセルの内容物は既に放出されていると考えられ,これより遠位の回腸においてカプセルの内容物が放出されるとは考えられない。そうすると,原告の主張する本願明細書の実施例2においても,本願発明の「前記酸が,回腸内において放出される」ものに該当するとはいえない。ウ以上の検討によれば,実施例2は本願発明の実施例ということはできず,また本願明細書(甲4)のそのほかの部分にもこれが記載されているとはいえないから,審決が本願発明は明細書の発明の詳細な説明に記載した発明ということはできないとした認定に誤りはない。」

◆平成19(行ケ)10236 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10511 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年09月27日 知的財産高等裁判所

  CS関連発明について、実施可能要件違反として拒絶された審決が維持されました。
   「しかるところ,1個の発明は,通常,まとまりのある複数の部分に区分することができ,この場合には,区分されたそれぞれのまとまりのある部分を構成する各構\成要件が,それぞれの部分を特定する発明特定事項となるところ,そのようにして特定された各部分は,必ずしも,特許出願人又は特許権者が,当該発明において重要と考える構成要件を含むものとは限らないが,そのような構\成要件を含むと否とに関わらず,一つでも実施可能ではない部分があれば,当該発明は,全体として実施可能\でないことになる。本件についていえば,審決が特定した発明特定事項は,「複数種類のデジタルコンテンツと制御プログラムとを一つの時間帯に一斉に配信すること,制御プログラムの実行環境を形成して実行することにより,複数種類のデジタルコンテンツのいずれかを選択して再生すること」というものであり,これに,原告の挙げる「デジタルコンテンツを,・・・コンテンツ提供者が望む再生内容を表す再生ルールに従って関連付けて編集する」との要件が含まれていないとしても,この発明特定事項によって特定される部分が実施可能\でなければ,本願発明全体が実施可能でないことになることは明らかである。そして,審決は,上記発明特定事項によって特定される部分が実施可能\でないと判断するものであるところ,そうであれば,他の発明特定事項(例えば,原告の挙げる要件を含む発明特定事項)によって特定される部分が実施可能であるか否かは,審決の結論に影響を及ぼすものではないから,当該他の発明特定事項によって特定される部分を摘示し,これについて,実施可能\であるか否かを判断する必要がないことも明白である。」 

◆平成18(行ケ)10511 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年09月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10487 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年07月19日 知的財産高等裁判所

 36条4項(実施可能性要件)に違反するとした審決が維持されました。
  「訂正発明1は,上記のとおり,水性接着剤を構成する酢酸ビニル樹脂系エマルジョンとしてはシード重合により得られるものであれば特に制限はないとされているところ,上記ウの請求項3,4の限定的構\成の説明についての記載から明らかなとおり,酢酸ビニル樹脂系エマルジョンを形成する際に用いうるモノマーには多種多様なものがあり,実施例1ないし3で用いられているn−ブチルアクリレートはその1つにすぎない(下線部参照。)。しかし,訂正明細書には,訂正発明1の接着剤を製造する方法につき,実施例1ないし3の製造方法以外に,貯蔵弾性率G′とずり応力τを所定の値に調整した酢酸ビニル樹脂系エマルジョンを製造する具体的な方法の記載は全くない。そうすると,シード重合により得られるものであれば特に制限はないとされる訂正発明1の酢酸ビニル樹脂系エマルジョンについて,酢酸ビニルのみを用いて製造されるエマルジョンの場合及びn−ブチルアクリレート以外のモノマーを酢酸ビニルに併用する場合に,貯蔵弾性率G′及びずり応力τについて所定の値を満たす水性接着剤を製造する方法についての記載はないということになる。」

◆平成18(行ケ)10487 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年07月19日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10661 特許取消決定取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成19年02月21日 知的財産高等裁判所

  測定方法が開示されていないとして記載不備とした審決が取り消されました。
   決定は,「本件発明1〜4の特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項として,触媒担体及びグラニュラー状物の平均粒径を特定の範囲に限定している。しかしながら,特許明細書において,この平均粒径については,数値は記載されてはいるものの,その測定法についてはなんらの記載もない。」(決定謄本3頁第1ないし第2段落)とするが,本件明細書において,この平均粒径の測定法についての記載があるか否かのみを問題にしており,平均粒径の測定の前提となる原理,試料の性質,測定の目的,必要な測定精度等の検討は,全くしておらず,それにもかかわらず,短絡的に,「平均粒径には・・・長さ平均径,面積長さ平均径,体面積平均径,重量平均径,面積平均径,体積平均径と様々な種類があり,同一の分布の粉体の系でもその数値は異なるものとなる。さらに,その平均粒径の計算の基礎となる,粒度の測定法にも・・・顕微鏡法,コールカウンター,ふるい分け法,沈降法,沈降分級法,遠心沈降法,慣性力法,電磁波散乱法,その他,多数のものが知られている。・・・単に平均粒径と記載しただけでは,いずれの粒度の測定法によるもので,いずれの意味の平均粒径かは不明であり一義的に決まるものではない。」(同頁第3ないし第5段落)と結論付けているのみであるから,判断手法において,そもそも失当であるというほかない。

◆平成17(行ケ)10661 特許取消決定取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成19年02月21日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10704 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年10月04日 知的財産高等裁判所

  ビジスネモデル発明(CS関連)について、記載不備が争われました。知財高裁は、不明瞭とした審決を維持しました。
  「これらの記載によれば,本願明細書の発明の詳細な説明には,実施例の説明として,キャッシュの割引率・・・との2つに分離し,【数10】により定式化すること,[0,1]を100等分した各ρの値で,一般化最小2乗法による演算を実行し,100個の平均割引関数オーバーバーD (s)を計測すること,一般化最小2乗和が最小となtるρを求め,その下での平均割引関数を最適解とすることが,開示されている。したがって,本願発明の「国債市場価格と国債理論価格との差額を算出」する手法の一つとして,一般化最小2乗法による演算を実行して,一般化最小2乗和を求めるという手法があり,その場合,請求項1の「複数の国債間の相関を表現するパラメータの最適値を該差額を用いて算出」するとは,一般化最小2乗和が最小となるρを求めることを意味することは,明らかである。しかしながら,一般化最小2乗法は,回帰分析の一手法にすぎず,本願発明の特許請求の範囲の記載は,回帰分析の手法を一般化最小2乗法に限定するものではない。また,一般化最小2乗法のみに限定して解釈するとしても,請求項1は,「複数の国債間の相関」としてどのようなものを想定するかを特定するものではない。しかるに,本願明細書には,一般化最小2乗法以外の回帰分析の手法や,実施例に例示された「λ 」「φ 」以外の相関構造について,全くght ght.jr」記載されていない。また,公知技術や周知技術を参酌することによって,一般化最小2乗法以外の回帰分析の手法や,「λ 」「φ 」以外の相ght ght.jr関構造を採用した場合について,「企業の倒産確率及び回収率を正確に計測する」という本願発明の効果を奏することの立証もされていない。そうすると,一般化最小2乗法以外の回帰分析の手法や,「λ 」「φ 」以ght ght.jr外の相関構造を構\成として含む本願発明は,明確でないというべきである。」

◆平成17(行ケ)10704 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年10月04日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10425 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年09月26日 知的財産高等裁判所

 パチンコホールで得た景品の換金システム(CS関連発明)について、記載不備(36条4項、6項)および進歩性(29条2項)無しとした審決について、記載不備については取消理由ありとの判断がなされましたが、進歩性については取消理由無しとの判断がなされました。

◆平成17(行ケ)10425 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年09月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10035 審決取消請求事件 平成18年07月19日 知的財産高等裁判所

  「明細書全体の記載をみても,訂正後の発明である「織物上の油剤量を織物重量に対し0.06重量%以上5重量%以下」の範囲が結局は不明であり,特許法36条5項及び6項に規定する要件を満たしていないから,独立特許要件を欠くとして、訂正は認められない」とした審決が維持されました。
  36条違反で訂正が認められないとの判断は珍しいと思います。

◆平成18(行ケ)10035 審決取消請求事件 平成18年07月19日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10514 審決取消請求事件 平成18年06月21日 知的財産高等裁判所

ゲーム機(CS関連発明?)について、進歩性および記載不備が争われました。裁判所は、進歩性無しおよび記載要件違反とした拒絶審決を取り消しました。
 1)進歩性については以下のように認定しました。
 「リーチ目による演出においては,「演出が実行されている場合に・・・演出を強制的に終了させる」ことは想定できず,審決が「リーチ目による演出の場合,メダルが投入された時に,前記演出が実行されている場合には,リールが回転することにより前記演出が強制的に終了させられることは自明である。」と認定したことは誤りである」
 2)記載不備については以下のように認定しました。
 「本願発明においては,演出の実行途中であってもこれを強制的に終了させることができるため,同じ演出が繰り返されるたびに一定時間待つ必要がなくなり,ゲームの次の操作へスムーズに移行できること,が記載されているものと認められる。 以上のとおり,本願発明において演出を強制的に終了させることが所定の効果を奏することについては,本願明細書に十分に記載されているということができ,審決が「実行されている演出を強制的に終了させることが,なぜ,ゲームの流れが阻害されることはなく,遊戯者の趣向を損なわない,遊戯意欲の高い遊戯台を提供することができるという効果を奏するのか不明である。」と判断したことは,誤りである。」

◆平成17(行ケ)10514 審決取消請求事件 平成18年06月21日 知的財産高等裁判所

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◆H18. 2.27 知財高裁 平成17(行ケ)10067 特許権 行政訴訟事件

  36条4項、6項違反に関して無効であるとした審決が取り消されました。
  「出願が平成12年6月5日である本件特許に適用される平成11年法律第160号による改正前の特許法36条4項は,「前項第3号の発明の詳細な説明は,通商産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に,記載しなければならない。」と規定し,同法36条6項は,「第3項第4号の特許請求の範囲の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」とし,1号は「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」,2号は「特許を受けようとする発明が明確であること。」,3号は「請求項ごとの記載が簡潔であること。」,4号は「その他通商産業省令で定めるところにより記載されていること。」と規定している。そして,特許法36条4項の趣旨は,発明の詳細な説明が発明を公開する機能\を有することから,発明の詳細な説明の記載は,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)がその発明を実施することができる程度に明確かつ十分なものでなければならないとしたことにあり,また,同法36条6項の趣旨は,特許請求の範囲は対世的な絶対権たる特許請求の効力範囲を明確にするためのもので,その記載は正確なものでなければならないことから,特許請求の範囲は,発明の詳細な説明に記載して公開した発明の範囲を超えた部分について記載したものであってはならず(1号),特許を受けようとする発明が明確でなければならない(2号)としたことにあるものと解される。そうすると,明細書の発明の詳細な説明に,当業者がその発明を実施することができる程度に明確かつ十\分に記載されているのであれば,特許法36条4項所定の発明の詳細な説明の記載要件を充足するものであり,明細書に「発明における課題を解決すべき手段をその作用効果が関連づけて記載されてい」ないからといって直ちに発明の詳細な説明の記載要件に適合しないものとなるものではなく,これによって特許を受けようとする発明が不明確となり特許請求の範囲の記載要件(特許法36条6項2号)に適合しないことになるものということもできないから,本件審決の前記判断は,この点において是認することができない。」

◆H18. 2.27 知財高裁 平成17(行ケ)10067 特許権 行政訴訟事件

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◆H17.12.20 知財高裁 平成17(行ケ)10451 特許権 行政訴訟事件

   特許請求の範囲が不明瞭か否かが争われました。裁判所は、不明瞭とした審決を取り消しました。
   「確かに,「符号化パターン」について,訂正明細書には,バーコードなどであることのほかに格別の記載はない。しかし,上記1の訂正明細書の記載によれば,被告が主張する「所定情報,所定の情報,付加情報,付加する情報又は固有の情報と表現され,画像形成装置ごとの固有の情報であるとして,画像形成装置の設置場所,管理者,シリアルナンバー,日付又は地域コードが例示されている」ものは,「2次元ビットマップ情報」ではなく,「画像形成に用いた画像形成装置を特定するために,少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を含んだ」ものであって,バーコードなどの「符号化パターン」は,その一つに相当するものである。そして,上記2のとおり,本件発明の「2次元ビットマップ情報」は,「符号化パターン」に対応した画素データであり,「符号化パターンの一部」は,「2次元ビットマップ情報」の黒画素であるから,訂正明細書には,「符号化パターンの一部」がどのような部分であるのかについての説明があるということができる。」

◆H17.12.20 知財高裁 平成17(行ケ)10451 特許権 行政訴訟事件

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◆H17.11.24 知財高裁 平成17(行ケ)10170 特許権 行政訴訟事件

  CS関連発明について、発明の成立性および記載不備が争われました。
  裁判所は、前者については、「こうしたソフトウエアを利用するソ\フトウエア関連発明が,”自然法則を利用した技術的思想の創作”であるためには,発明はそもそもが一定の技術的課題の解決手段になっていなければならないことから,ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって,技術的課題を解決できるような特有の構\成が具体的に提示されている必要がある。」として、審決を維持しました。
 また、後者については、特許庁の「サーバーコンピュータのハードウェア(データベース)に記憶された情報をどのように読み出し,ハードウェア資源を利用してどのような情報処理を行うことにより,当該(オ)の「前記複合投資受益権を前記特定目的会社に譲渡することで,受託者において再投資資金を調達し,これを新たに複数の委託者に再投資する出資金の再運用によって収益力を高めることを可能とする」ことができ,「コンピュータネットワークによる証券化システム」を実現できるのかという点については,一切記載がなく不明である。」とした審決を維持しました。

◆H17.11.24 知財高裁 平成17(行ケ)10170 特許権 行政訴訟事件

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◆H17.11.11 知財高裁 平成17(行ケ)10042 特許権 行政訴訟事件

  一太郎判決に続く、知財高裁の大合議判断です。
  特許法36条の要件について、1)明細書のいわゆるサポート要件ないし実施可能要件の適合性の有無,2)実験データの事後的な提出による明細書の記載内容の記載外での補足の可否,3)特許・実用新案審査基準の遡及適用の可否が主な争点となりました。裁判所は、36条違反とした審決を維持しました。特に、1)についての立証責任は特許権者側にあると判断しました。
 「特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人(特許拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟の原告)又は特許権者(平成15年法律第47号附則2条9項に基づく特許取消決定取消訴訟又は特許無効審判請求を認容した審決の取消訴訟の原告,特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟の被告)が証明責任を負うと解するのが相当である」

◆H17.11.11 知財高裁 平成17(行ケ)10042 特許権 行政訴訟事件

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◆H17.10.19 知財高裁 平成17(行ケ)10013 特許権 行政訴訟事件

 DNA関連発明について記載不備が争われました。
 裁判所は、「本件明細書の発明の詳細な説明には,特許請求の範囲記載の構成を満たす,すべての「核酸分子」について,その有用性,すなわち,プローブやプライマーとして利用して本件OB遺伝子を特異的に検出,増幅することができることが明らかであるように記載されていなければならないところ,上記(2)のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明において,上記50余りの実施例の結果から,当業者にその有用性,すなわち,明白な識別性が認識できる程度のものとなっているものと認めるに足りず,また,上記(3)のとおり,一部の核酸分子について,本件OB遺伝子との特異的なハイブリダイズを期待することができない,すなわち,有用性を有しないという客観的な事情が存在するのであるから,本件明細書の発明の詳細な説明が,当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえないことは明らかであって,特許法旧36条4項の記載要件を満たしていない。」として、36条違反とした審決を維持しました。

◆H17.10.19 知財高裁 平成17(行ケ)10013 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 3.30 東京高裁 平成15(行ケ)272 特許権 行政訴訟事件

 化関係の発明について、記載不備を理由に取消決定された特許につき、裁判所は審決を維持しました。
 「1で述べたとおり,本件明細書には,平均粒径の意義,測定方法の特定がなく,また,メーカー名・商品名を明示することにより用いる不活性微粒子を特定してもいない。そうすると,当業者は,どのような不活性微粒子を用いればよいか分からないのであるから,本件明細書は,当業者が発明を実施できるように明確に記載されていないことになる。原告は,市販品を入手して追試ができると主張する。しかし,この追試をするためには,当業者は,すべての平均粒径の意義・測定方法について,これらを網羅して,平均粒径を測定して本件発明の数値範囲に当てはまるものを用い,本件発明の効果を奏するものかを検証する必要がある。特許は,産業上意義ある技術の開示に対して与えられるものであるから,当業者にそのような過度の追試を強いる本件明細書の開示をもって,特許に値するものということはできない」

◆H17. 3.30 東京高裁 平成15(行ケ)272 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 1.31 東京高裁 平成16(行ケ)175 実用新案権 行政訴訟事件

 実施例に記載した効果を奏する構成を請求項に記載していないことが無効理由となるかについて争われました。裁判所は、「無効理由に当たらない」とした審決を維持しました。
  「仮に,考案の詳細な説明中に記載された効果(イ)を奏するために必要不可欠な上記各構成が,訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載されていないとしても,そのこと自体は,旧実用新案法5条4項2号の規定に違反するものではなく,単に,当該効果が本件訂正考案の効果ではないことを意味するにすぎない。」

◆H17. 1.31 東京高裁 平成16(行ケ)175 実用新案権 行政訴訟事件

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◆H16.12.27 東京高裁 平成16(行ケ)209 特許権 行政訴訟事件

 CS関連発明において、クレームの用語が特許法36条4項1号の要件を満たしているかが争われました争われました。裁判所は、「36条違反である」とした審判を取り消しました。
  「訂正発明1が,カルテ作成やレセプト処理の機能を備える歯科情報処理装置のエラー項目の訂正を容易にするものであり,例えば,レセプト作成時に,同じ処置部位に対して重複して行われることのない処置が入力されている場合をエラーとして検出し,訂正を可能\にするものであることは上記(1)のとおりであり,レセプト処理のために歯科情報処理装置へ治療情報を入力する場合には,保険報酬を適法に請求するために歯科診療報酬点数表に従った入力がされることが必要であることは,上記(2)のとおり,歯科情報処理装置の分野における当業者の技術常識である。そうすると,訂正明細書(甲3添付)の特許請求の範囲【請求項1】記載の「同じ処置部位に対する過去の処置からして同じ処置部位に対して重複して行われることのない不適切な処置情報」の判別ないし発明の詳細な説明の段落【0072】の「同じ処置部位に対して重複して行われる事の無い処置」の抽出は,当業者の技術常識を参酌すれば,算定ルールに従って判断されるものと理解すべきものと認められる。」   

◆H16.12.27 東京高裁 平成16(行ケ)209 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 1.18 東京高裁 平成15(行ケ)166 特許権 行政訴訟事件

 薬品に関する発明について、特許庁では無効理由無しと判断されましたが、裁判所はこれを取り消しました。
  「本件発明の技術内容(技術手段)によってその目的とする技術効果を挙げることができるものであることを推認することはできないのであるから,本件発明とされるものは,発明として未完成であり,特許法29条1項柱書きにいう「発明」に当たらず,特許を受けることができないものというべきである。」と判断しました。

◆H17. 1.18 東京高裁 平成15(行ケ)166 特許権 行政訴訟事件

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◆H16.12.28 東京地裁 平成15(ワ)19733等 特許権 民事訴訟事件

  機能的な表\現で記載されているクレーム関する技術的範囲についての判断が為されました。なお、本件は明らかな無効理由も存在するとされてます。
 問題となったクレームは、以下の通りです。「芯のくり抜かれた新鮮な苺の中にアイスクリームが充填され,全体が冷凍されているアイスクリーム充填苺であって,該アイスクリームは,外側の苺が解凍された時点で,柔軟性を有し且つクリームが流れ出ない程度の形態保持性を有していることを特徴とするアイスクリーム充填苺」
 裁判所は、「この「外側の苺が解凍された時点で,柔軟性を有し且つクリームが流れ出ない程度の形態保持性を有していることを特徴とする」との記載は,「新鮮な苺のままの外観と風味を残し,苺が食べ頃に解凍し始めても内部に充填されたアイスクリームが開口部から流れ出すことがなく,食するのに便利であ」る(本件明細書【0008】。本件公報3欄38行ないし41行)という本件特許発明の目的そのものであり,かつ,「柔軟性を有し且つクリームが流れ出ない程度の形態保持性」という文言は,本件特許発明におけるアイスクリーム充填苺の機能ないし作用効果を表\現しているだけであって,本件特許発明の目的ないし効果を達成するために必要な具体的な構成を明らかにするものではない。 このように,特許請求の範囲に記載された発明の構成が作用的,機能\的な表現で記載されている場合において,当該機能\ないし作用効果を果たし得る構成であれば,すべてその技術的範囲に含まれると解すると,明細書に開示されていない技術思想に属する構\成までもが発明の技術的範囲に含まれ得ることとなり,出願人が発明した範囲を超えて特許権による保護を与える結果となりかねない。しかし,このような結果が生ずることは,特許権に基づく発明者の独占権は当該発明を公衆に対して開示することの代償として与えられるという特許法の理念に反することになる。 したがって,特許請求の範囲が,上記のような作用的,機能的な表\現で記載されている場合には,その記載のみによって発明の技術的範囲を明らかにすることはできず,当該記載に加えて明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌し,そこに開示された具体的な構成に示されている技術思想に基づいて当該発明の技術的範囲を確定すべきものと解するのが相当である。」と述べました。

◆H16.12.28 東京地裁 平成15(ワ)19733等 特許権 民事訴訟事件

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◆H16.12.27 東京高裁 平成16(行ケ)209 特許権 行政訴訟事件

  CS関連発明についての記載不備が争われました。争点は、「一括変換して再登録する再登録手段」について技術的な矛盾があるかでした。裁判所は、36条4項及び6項違反とした審決を取り消しました。
 

◆H16.12.27 東京高裁 平成16(行ケ)209 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 9.30 東京高裁 平成16(行ケ)37 特許権 行政訴訟事件

 「暗号モード」という文言が不明瞭として36条4項、6項違反として拒絶した審決が維持されました。その他、新規事項に該当するかも争点となっていましたが、こちらについては判断することなく、請求が棄却されました。
  裁判所は「本願明細書の特許請求の範囲に記載される「暗号モード」は、その意味・内容をそれ独自で規定することができないばかりでなく、「暗号」や「暗号等」を手がかりとしても規定することができないことから、不明瞭な記載であると解さざるを得ないところ、本願発明は、この「暗号モード」が適正と判断されると、「監視手段で捕捉したデータを中継側である前記管理コンピュータへセンシング情報として送信するステップ」へと進むものであるから、この「暗号モード」が不明瞭なままでは、該ステップも不明確であって、結局、本願発明の要旨を特定することはできないというべきである」と述べました。

◆H16. 9.30 東京高裁 平成16(行ケ)37 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 9. 6 東京高裁 平成15(行ケ)325 特許権 行政訴訟事件

  プログラムによるデータ演算処理が具体的でないという理由で拒絶した審決が裁判所でも維持されました。
 裁判所は、「”商品に基づく商品コード,商品サイズデータ,デザインデータの一以上と自己の身体のサイズデータをコンピュータにて演算,比較”という記載では,商品コードを用いてどのように演算し,あるいは比較するのか,その処理が不明であるというほかはない」と述べました。  

◆H16. 9. 6 東京高裁 平成15(行ケ)325 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 2. 4 東京高裁 平成15(行ケ)330 特許権 行政訴訟事件

「・・・水性塗料用低汚染化剤」を「・・・水性塗料用低汚染化剤(水溶化されたものを除く)」とする訂正が、訂正要件を満たしているのかが争われました。
 裁判所は、「本件訂正事項に係る「水溶化されたもの」の意義については,訂正明細書の特許請求の範囲の記載だけからは,文言上一義的に明確に理解することができるとはいえない。イ そこで,本件訂正事項の意義を解釈するため,訂正明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌する。・・・被告主張のように,「水溶化されたもの」が「水溶化という反応処理を施したものであれば,その反応処理の程度を問わず,すべて含む」ものであると解釈したとすると,本件訂正発明1の水性塗料用低汚染化剤は,「(水溶化されたものを除く)」という本件訂正事項を付加することによって,エマルションを形成する化合物になる場合を含め,規定した物質がすべて除かれてしまうか,又は,登録明細書に記載されていない全く別の方法によって当該低汚染化剤を生成するという新規事項を付加したことによって,本件訂正発明1それ自体が無に帰してしまうという極めて不合理な結果を生ずることになる。これに対し,原告主張のように,「水溶化されたもの」が「水溶性化合物」と同義であると解すれば,上記のアルコキシシランの縮合物とポリオキシアルキレン基を含有する化合物とを反応させる方法によって得られた生成物のうち,水溶性化合物となった場合を除外し,特許請求の範囲を,当該生成物がエマルションを形成する化合物となる場合のみに限定するとの趣旨であると合理的に理解することができ,以上の点は,訂正明細書に接した当業者が容易に理解するところであると認められる。以上によれば,本件訂正事項に係る「(水溶化されたものを除く)」とは,「(水溶性化合物を除く)」の意味であると解するのが相当である。」と訂正を認めなかった審決を取り消しました。

 

◆H16. 2. 4 東京高裁 平成15(行ケ)330 特許権 行政訴訟事件

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◆H15.12.22 東京高裁 平成13(行ケ)99 特許権 行政訴訟事件

 改正前の特許法36条3項違反として拒絶した審決に対する審決取消訴訟です。特許庁は、「本件明細書に,当業者が容易にその実施をすることができる程度に,本願発明の目的,構成及び効果が記載されているとはいえない」として、拒絶審決をしました。裁判所は、記載不備との審決を維持しました。訴訟では、専門家による鑑定書が複数提出されましたが、本件出願前に容易に実施できるとはいえないとされました。 

     

◆H15.12.22 東京高裁 平成13(行ケ)99 特許権 行政訴訟事件

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◆H15.11.18 東京高裁 平成15(行ケ)218 特許権 行政訴訟事件

裁判所は、無効理由無しとした審決を取り消しました。争点は、進歩性(29条2項)と記載不備(36条)です。当該特許は、無効審判中の訂正により「伴奏に合わせて歌詞を歌うために、文字情報としてあらかじめ記録された歌詞の文字を表示器の画面に表\示しておき、この文字情報と同期するようにあらかじめ記録された音声情報からの伴奏の進行に伴って、この文字情報としての歌詞の歌うべき文字の色を変化させることを特徴とする歌唱個所指示方法。」とされています。
 裁判所は、「伴奏の進行に伴って映像と共に表示されている歌詞の文字の中の歌うべき部分の光強度を変化させることにより歌唱個所を表\示(指示)するという、歌唱個所指示方法の従来技術を基礎とし、歌唱個所の指示を文字の明暗(白黒)ではなく色の変化によって行うこととし(この点が容易に想到し得ることは審決も認めるとおりである。)、これを、その後に普及して周知となったカラオケビデオの「文字情報と同期するようにあらかじめ記録された音声情報からの伴奏の進行に伴って、文字情報としての歌詞を表示する」という技術と組み合わせることによって、「文字情報と同期するようにあらかじめ記録された音声情報からの伴奏の進行に伴って、文字情報としての歌詞を表\示し、その表示された歌詞の歌うべき文字の色を変化させる」歌唱個所指示方法とすることは、当業者が容易に考えつく程度のことというべきである。そして、映像に重ねて表\示される文字に着色をすることが本件特許出願当時、ビデオ編集における周知技術であったことは前示のとおりであるから、文字情報と音声情報とを同期させて記録したものにおいて表示される文字が適切なタイミングで着色される(変わる)ようにすることも、上記周知技術を前提とするとき、当業者であれば容易になし得たことであるということができる。 (7) 以上によれば、文字情報と同期するようにあらかじめ記録された音声情報からの伴奏の進行に伴って、歌詞の歌うべき文字の色を変化させる、という被告主張の相違点Aに関わる本件発明の構成は、その着想及び実現手段のいずれの点からみても、当業者が容易に想到し得たものというべきである」と取消理由を述べました。

      

◆H15.11.18 東京高裁 平成15(行ケ)218 特許権 行政訴訟事件

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◆H15.11. 5 東京高裁 平成14(行ケ)513 特許権 行政訴訟事件

 特許庁、裁判所とも、実施可能要件を満たしていないと認定しました。
「審決は,「消費資源要素と生産資源要素との間の製造関係を示すデジタル信号」についての本件明細書の記載を摘記(審決謄本3頁4行目〜30行目)した上,「これらの記載からは,具体的に,消費資源と生産資源との間の製造関係を示すデジタル信号が,どのような構成の信号として入力され,その結果,どのようにして,消費資源及び生産資源を表\すデジタル信号とそれらの製造関係を表すデジタル信号とが処理されて,生産モデルが作成されるのか,理解できない」(同頁30行目〜34行目)と判断したものであり,本件明細書には,審決が指摘するとおり,製造関係を示すデジタル信号がどのような構\成の信号として入力されるのか,また,どのようにして生産モデルが作成されるのか,その記載のみにより当業者が理解可能な程度に明りょうに記載されていない。そうであれば,特許出願人である原告としては,本件特許出願当時の技術水準を示すなどして本件明細書の記載から当業者が理解可能\であることを証明すべき必要があるところ,本件説明書は上記技術水準を示すものではなく,また,その記載から審決が不明であるとした点を明らかにするものでもないし,他に,上記技術水準を示すこともなく,審決が摘記した記載と同一の記載を引用して単に当業者が理解し得ると主張するにとどまるのであるから,その主張は理由がないものといわざるを得ない。なお,原告は,審決の判断脱漏の違法も主張するが,その理由のないことは,以上の説示に照らして明らかである。(6) したがって,本願発明に係る本件明細書の詳細な説明には,「消費資源要素と生産資源要素との間の製造関係を表すデジタル信号を入力すること」に関して,当業者が容易にその実施をすることができる程度に,その構\成が記載されているということはできないから,旧法36条3項に規定する要件を満たしていないとした審決の判断に誤りはないというべきである。」 

◆H15.11. 5 東京高裁 平成14(行ケ)513 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 4. 8 東京高裁 平成13(行ケ)332 実用新案権 行政訴訟事件

 明細書における実施可能要件が争われました。
無効審判では実施可能要件を満たしていると判断されましたが、裁判所は、”ドアの端面に露出する側板からボルトを出し入れしてドアロックを開閉するアクチュエータ”との構\成について,当業者がこれを容易に実施することができる程度に,その構成についての記載がないと判断しました。 当業者が実施できる程度について、裁判所は「本件考案は,上記のようなものである以上,単に,乙1文献及び乙2文献等から,ドア用電気錠において,ドアの内部に収容することができる往復の駆動力を発生するソ\レノイド,及び,ソレノイドの駆動力をボルトに伝達してボルトを出し入れする伝達機構\が周知であることを示すだけでは足りないのであり,これらのソレノイド及びソ\レノイドの駆動力をボルトに伝達してボルトを出し入れする伝達機構が,ドアの内部に収納することができる程度の数量の電池による小さな電力によって,ドア用電気錠のボルトの出し入れに必要な力を発揮することができるものである必要があり,かつ,このような小電力用のソ\レノイド及び伝達機構が,本件出願時において,当業者にとって,本件明細書の考案の詳細な説明に記載するまでもなく明らかな技術常識となっている事項であることが少なくとも必要なのである(このような場合でも,考案の詳細な説明に十\分な記載がなければ旧実用新案法5条4項に反するとの考え方もあり得る。この考え方は採用しないとしても,少なくとも,上記のような小電力用のソレノイドとその伝達機構\が本件出願時において当業者にとって技術常識となっているといえるものでなければ,本件明細書の考案の詳細な説明の記載は,同条項に反することが明らかである。)。」

◆H15. 4. 8 東京高裁 平成13(行ケ)332 実用新案権 行政訴訟事件

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◆H15. 3.13 東京高裁 平成13(行ケ)346 特許権 行政訴訟事件

  請求項1で用いた文言「所定の筬打ち角」および「筬打ち角」が、発明の詳細な説明で定義されているにもかかわらず、不明瞭とした審決が維持されました。
 裁判所は、「特許発明の構成に欠くことができない事項を明確に記載することが容易にできるにもかかわらず,殊更に不明確あるいは不明りょうな用語を使用して特許請求の範囲を記載し,特許発明に欠くことができない構\成を不明確なものとするようなことが許されないのは,当然のことというべきである。」と判断しました。
 問題となった請求項
「織機停止信号により,緯入れを阻止しながら制動停止した織機を再起動するに際し,筬が所定の筬打ち角以上となるようなクランク角に織機を停止し,開口装置を主軸から切り離し,主軸の1回転相当だけ開口装置を逆転し,開口装置を主軸に連結することを特徴とする織機の再起動準備方法」というものです。
 審決では以下のように表示するべきであったと述べ、裁判所の上記理由からすると、これを維持したこととなります。
「織機停止信号により,緯入れを阻止しながら制動停止した織機を再起動するに際し,筬が,スレイ上に搭載するサブノズルまたはエアガイドが経糸開口から抜け出るときの筬打ち角以上となるようなクランク角に織機を停止し,開口装置を主軸から切り離し,主軸の1回転相当だけ開口装置を逆転し,開口装置を主軸に連結することを特徴とする織機の再起動準備方法。」

 

◆H15. 3.13 東京高裁 平成13(行ケ)346 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 3.10 東京高裁 平成13(行ケ)140 特許権 行政訴訟事件

  実施可能要件を満たしているか否かが争われました。無効審判では審判請求理由無しと判断されましたが、裁判所は「請求項1発明が特許されたのは,構\成要件Aが,従来の畳縫着機にない新規な構成であり,かつ,当業者が容易に想到することができないことによると解される。このように,構\成要件Aが請求項1発明の進歩性を基礎付ける本質的な構成である以上,本件明細書の発明の詳細な説明において,その実施を可能\とすべき記載がない限り,当業者が容易にこれを実施することは不可能なはずであり,逆に,このような記載がないにもかかわらず,当業者の技術常識を参酌することのみにより構\成要件Aの容易な実施が可能となるならば,請求項1発明の進歩性は否定されざるを得ないこととなる。」と、審決を取消しました。

 

◆H15. 3.10 東京高裁 平成13(行ケ)140 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 3. 6 東京高裁 平成12(行ケ)352 特許権 行政訴訟事件

  ブラックスボックス化されたチップの実施例が開示不十分か否かが争われました。
裁判所は「第1実施例における各回路要素の動作及び集積回路チップの動作は,明確であり,ブラックボックスであることをもって,各回路要素の製作,実施が不可能であるとはいえない。したがって,本願明細書の第1実施例に係る記載において,同実施例が不明瞭であるとする点があるとはいえない。」として、審決を取り消しました。

 

◆H15. 3. 6 東京高裁 平成12(行ケ)352 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 1.29 東京高裁 平成13(行ケ)96 特許権 行政訴訟事件

    明細書の文言が特定されているかについて争われましたが、裁判所は、本件発明の技術的意義を考慮して、特定されていると判断しました。
 「確かに,本件明細書の特許請求の範囲中「前方」の記載は,それ自体一義的に明確ということはできないが,本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することにより,上記のとおり「カートリッジタンクの前方」の意味であると解釈することができる。また,本件発明は,気化器によって加熱して発生した灯油蒸気をバーナーで燃焼させるものであるから,気化器とバーナーは隣接して配置されることが技術常識であり,この技術常識を無視し,気化器の位置をバーナーから離れたものとして解釈することは不合理である。」と述べました。

 

◆H15. 1.29 東京高裁 平成13(行ケ)96 特許権 行政訴訟事件

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