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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

職務発明

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

令和5(ネ)10090 職務発明対価相当請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和6年3月25日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

職務発明訴訟において、1審(大阪地裁)は、約400万円の損害賠償を認めましたが、知財高裁はこれを取り消しました。理由は、本件発明2の共同発明者ではないといういうものです。

特許法2条1項は、「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想 の創作のうち高度のものをいう。」と定め、「発明」は技術的思想、すなわち、技 術に関する思想でなければならないとしているが、特許制度の趣旨に照らして考え れば、その技術内容は、当該技術が属する技術分野における当業者が反復実施して 目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして 構成されていなければならないものと解するのが相当であるから(最高裁昭和52\n年10月13日第一小法廷判決(昭和49年(行ツ)第107号)民集31巻6号 805頁)、発明者とは、自然法則を利用した高度な技術的思想の創作に関与した 者、すなわち、当業者が当該技術的思想を実施することができる程度にまで具体的 ・客観的なものとして構成するための創作に関与した者を指すというべきである。\nそして、ある者が発明者であるというためには、必ずしも発明に至る全ての過程に 一人で関与することを要するものではなく、当該過程に共同で関与することでも足 りるというべきであるが、当該者が共同発明者であるというためには、課題を解決 するための着想及びその具体化の過程において、発明の特徴的部分の完成に創作的 に寄与したことを要するものと解される。この場合において、発明の特徴的部分と は、特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち従来技術にはみられない部分、\nすなわち、当該発明に特有の課題解決手段を基礎付ける部分を指すものと解するの が相当である。以上を踏まえ、以下、本件について検討する。
(ア) 原告が本件発明2に係る発明者(又は共同発明者)であるというためには、 前記アのとおり、課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、本件 各部分の完成に創作的に寄与することを要するところ、当該着想は、具体的な発明 の完成に向けられたものである以上、単に課題を抽象的に想起するだけでは足りず、 課題及びその解決のための手段又は方法を具体的に認識することを要するものと解 するのが相当である。
・・・
(エ) 検討
a 前記(ウ)のうち、市場調査等に基づいて本件OD錠化を提案するなどした原 告の行為は、その内容に照らし、新製剤の企画や方向性に関する提案であり、経営 判断に資するものではあっても、課題及びその解決のための手段又は方法に関する 具体的提案ではないから、構成3)(塩酸アンブロキソールを含む制御放出微粒子等\nの混合物を配合し、かつ、制御放出微粒子等の平均粒子径を300μm以下とする との構成を満たした上で、OD錠が従来のカプセル剤の溶出規格に合致する溶出特\n性(シグモイド型溶出)を示すように、制御放出微粒子等及びこれらを配合したO D錠の各成分や構造を設定したこと)又は構\成4)(同様の構成を満たした上で、錠\n剤を製造する過程の加圧圧縮操作に対し割れにくいプロテクト層を形成したこと) のいずれに対する関与であるとも認めることはできない(なお、認定事実2による と、本件OD錠化は、塩酸アンブロキソールに係る医薬品の開発に関し、平成19\n年当時に知られていた手法の一つであり、特段新規の開発方針ではなかったという べきである。)。
b また、前記(ウ)のうち、本件OD錠化に関して瀬踏み実験を行った原告の行 為についてみるに、当該瀬踏み実験は、「徐放顆粒の粒子径を200μm以下とし て溶出実験を行ったところ、既存のカプセル剤の溶出に近い徐放顆粒が得られた」 というものにすぎず、原告において、制御放出微粒子等及びこれらを配合したOD 錠の各成分や構造を設定するための具体的な方法を認識するなどしたとはいえない\nから、当該瀬踏み実験の実施をもって、原告が構成3)に係る着想及びその具体化の 過程において創作的な寄与をしたものと認めることはできない。その他、当該瀬踏 み実験の内容に照らし、当該瀬踏み実験を行った原告の行為が本件各部分に対する 関与であると認めることはできない。
c さらに、前記(ウ)のうち、「今後、徐放顆粒に他の原料を混合して打錠し、 錠剤化した場合に溶出に変化が生じるかを検討する」などと発言した原告の行為も、 その発言の内容に照らし、原告において、制御放出微粒子等及びこれらを配合した OD錠の各成分や構造を設定するための具体的な方法を認識するなどしたとはいえ\nないから、当該発言をもって、原告が構成3)に係る着想及びその具体化の過程にお いて創作的な寄与をしたものと認めることはできない。その他、当該発言の内容に 照らし、当該発言を行った原告の行為が本件各部分に対する関与であると認めるこ とはできない。
d なお、本件発明2に係る特許出願をすることを考えている旨の発言をした原 告の行為(前記(ウ)f)及び当該特許出願をするよう提案した原告の行為(認定事 実2エ(オ))が本件各部分に対する原告の関与であると認められないことは明らかで あるし、当該特許出願に係る明細書の案を作成した原告の行為(認定事実2エ(オ)) についても、当該行為のみをもって直ちに、本件各部分に対する原告の関与があっ たものと認めることはできない。
e その他、原告が本件チームの行う試験・実験に関与していたことを認めるに 足りる主張立証はなく、原告が本件各部分に対して関与をしたものと認めるに足り る的確な証拠はない。

◆判決本文

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令和4(ネ)10018  職務発明の対価請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和6年2月8日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

職務発明の報奨金請求事件です。1審と同様「特許による独占的、排他的な実施により超過して利益を得たと認めることはできない」と判断されました。

「(4) 本件発明A2の自己実施による独占の利益の有無及び額についての検討
ア 被控訴人においては、平成13年頃、CODEX5%ルールの認可や、東南ア ジアの経済発展等に伴い、国際的なCBEの需要増加が見込まれる一方、国内製造 拠点の生産能力が限界に達しているとの現状認識のもと、米国に所在する子会社で\nあるFVOにおいて、EE技術を利用してヒマワリ油からSOSパーツを製造する 設備を有する工場を新設し、被控訴人グループ内での安定供給を図る方策を立案し ていたが、当初、当該工場における油脂分別方法としては、溶剤分別法を用いること を想定していた。しかるところ、控訴人を含むNTメンバーが主導となって、本件各 発明を含む改良された乾式分別法によると、SOSパーツの品質は溶剤分別法によ るものと比して大差なく、現にパイロットレベルの試作品においては同等以上とな っていること、分別収率や生産量等の生産効率も溶剤分別法との間にさほどの差は ないこと、コスト面においては設備費及び比例・加工費ともに大幅な削減が可能で\nあること等が報告された。そこで、被控訴人は、平成14年9月頃、本件乾式分別法 を採用した(本件発明A2を実施する)本件設備を備えた本件工場を米国にてFV Oに新設、稼働させる旨を意思決定し、平成15年に着工が始まり、平成16年4月 頃から稼働が始まったものである。(前記(3)イ(ア)〜(カ)) ところが、本件設備及び本件工場に係る設備投資については、●●●●●●●● ●であったのに対し、●(省略)●を要することとなった。しかも、本件工場は、稼 働当初、稼働能力や生産効率に課題を抱えていたほか、品質低下も指摘されており、\nその原因として●●●●●●●●●●●●ことが指摘された。このため、FVOは、 平成18年頃から、品質を確保するため、●(省略)●こととし(ただし、平成27 年以降は、●●●●●●●●●●●●●●こととしたが、これが、品質の改良や生産 効率の改善によるものであるかは不明である。)、また、更に●●●●●●●●を負 担して本件増設工事を行うことを余儀なくされたものである。(前記(3)イ(キ)〜(コ )、ウ(ア)c)
イ FVOパーツ品の品質についてみると、●●●●●●●●●●●●●を予定\nしていたところ、本件増設工事が完了した平成19年3月頃には同程度と報告され ていることや(前記(3)イ(サ))、現実にFVOがFVOパーツ品を被控訴人グループ ●(省略)●世界CBE市場における被控訴人のシェア獲得にも寄与していると認 められること(前記(3)ウ(イ)e、エ)に照らすと、FVOパーツ品が、そもそも販売 に耐えないほど低品質のものであったということはできない。他方で、FVOパー ツ品やFVO品が、溶剤分別法により製造されたSOSパーツやこれらを原料とし たCBEとの比較において、品質面で上回っていることを認めるに足りる証拠もな い。そうすると、本件発明A2を実施したことにより、被控訴人がその実施品である FVOパーツ品やFVO品について、品質面で優位に立ったということはできない。
ウ 次に、本件発明A2を実施したことによりFVOが得た利益についてみると、 そもそも、本件乾式分別法を採用したFVOの●(省略)●は、直ちに分別方法によ る利益の相違を示すものではないが、その算出に際してその時々の相場と過去の実 績等が考慮され、変動費に相当する見込み額として位置付けられるものであり、分 別方法の差異による採算性を考慮する際の参考にすることは妨げられないというべ きである。
さらに進んで、FVO、FOJ及びFOSにおけるSOSパーツの加工費及び比 例費の各試算を比較すると、●(省略)●るのに対し、●(省略)●、大きな差が発 生しているのに、原料コストや収率等を考慮して試算された比例費では、●(省略) ●相対化されている(前記(3)ウ(イ)b)。しかも、この数値は、約9年間にわたり実 際には支払われていた●●●●●●●●●●●●を考慮していない上、FVOの現 実の収率よりも高い収率である●●●を収率として試算されたものであり、実数値 によると更に差は小さくなるものである。 このことに加え、前記アのとおり、被控訴人内部では、当初、本件乾式分別法を採 用することにより設備費においても大幅なコスト削減が見込まれるとの認識(溶剤 分別法による場合の投資試算額●●●●●に対し、●●●●●の投資試算額と見込 まれていた。)の下で、本件施設及び本件工場の新設に踏み切ったものの、現実には これに●●●●●●●●●を要し、加えて、本件設備につき、稼働能力、生産効率、\n品質低下等の課題が指摘されたことから、更に●●●●●●●●●を要する本件増 設工事まで余儀なくされたこと等も併せて考慮すると、FVOが本件乾式分別法を 採用したことによる効果として、当初予定していた溶剤分別法による以上に利益率\nを向上させることができたとか、現実に利益を上げることができたとは認められな い。
エ さらに、本件特許権A2を含む特許権に基づく禁止権の効果により他社を排 除することができたかについてみると、競合他社であったIOFは平成23年に、 LCは平成27年に、それぞれシア脂からSOSパーツを分別できる工場をガーナ に新設し、稼働させたが、いずれの工場においても溶剤分別法が用いられており、本 件各発明に関連する特許による禁止の効力が及ばない地域においても、競合他社は、 いまだ溶剤分別法を採用している上、本件各特許権がいずれも消滅した現在におい ても、被控訴人又は競合他社が、本件乾式分別法を採用した施設若しくは工場を新 設、稼働し、又はその準備をした等の事実は認められないのであって(前記(3)オ)、 控訴人が主張するように、溶剤分別法が危険を伴い、時に重大な事故を引き起こし 得るものであるとしても、被控訴人又は新不二製油が、本件特許権A2を含む特許 権に基づく禁止権の効果により、競合他社による本件乾式分別法の採用を排除し、 これにより使用者として有する通常実施権に基づく実施によって得られる利益を超 えた利益を得たと認めることは困難である。
なお、本件施設の稼働後、CBE市場における被控訴人のシェアが増加したのは、 被控訴人が、規制緩和や経済動向をみて国際的なCBEの需要増加を見込み、FV Oを拠点に生産施設を新設し、これが現実に稼働したことに伴う結果とみられ、本 件乾式分別法を採用したことにより特にシェアを拡大できたことをうかがわせる事 情はないというべきである。 オ 以上を総合すると、被控訴人が、本件特許権A2につき有する通常実施権に 基づいて本件発明A2を実施して得られる利益の額を超えて、特許による独占的、 排他的な実施により超過して利益を得たと認めることはできない。したがって、被 控訴人につき、本件発明A2による独占の利益は認められない。

◆判決本文

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◆平成30年(ワ)866

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令和5(ネ)10069  職務発明対価請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和6年2月1日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

職務発明に基づく対価を請求しましたが、原審(東京地裁)は時効により消滅していると判断しました。知財高裁も同じです。

2 当審における控訴人の補充主張に対する判断
(1) 前記第2の3(1)の主張について
控訴人は、本件就業規則60条(3)は職務発明に関する規定であると解すべ きであり、このような規定に基づいて平成24年6月末にクオカードが交付 されている以上、この時点をもって消滅時効の起算点とすべきであると主張 する。
しかし、本件就業規則60条は、「表彰」に関する規定であると明示され、\nその表彰事由は職務発明に関するものだけでなく業務上の功績と認められる\n事情が広範に表彰の対象とされており、表\彰として経済的利益を供与すると 決められていることはなく、表彰の内容や時期についても同条その他本件就\n業規則において定められていないことからすれば、同条(3)が職務発明の対価 に関する規定であると解することができないのは、補正の上で引用した原判 決「事実及び理由」第3の1(1)ウの説示のとおりであり、被控訴人が本件発 明に基づく利益を得たこと及び被控訴人が控訴人に対して金銭的価値を有す るプリペイドカードの一つであるクオカードを支給したことをもって、同条 (3)を職務発明の対価に関する規定であると解することはできない。
勤務規則等において職務発明に係る対価の支払に関する規定が存在する 場合でも、支払時期の定めがなければ、職務発明について特許を受ける権利 を使用者に承継させた従業者は、権利の承継の時点から使用者に対して職務 発明対価請求権を行使することができるから、原則として同時点が消滅時効 の起算点となる。勤務規則等において支払時期の定めがあるときに、上記支 払請求権の消滅時効の起算点が当該支払時期となるのは、同支払時期までは 権利行使について法律上の障害があり、上記支払請求権を行使することがで きないことによる(補正後の原判決第3の1(1)ア)。これらの事情からすれば、 本件において控訴人の被控訴人に対する相当の対価の支払請求権の消滅時効 が特許を受ける権利の承継の時点から進行すると解することが、発明者に対 するインセンティブを与えるために職務発明対価請求に関する規定を定めた 使用者に比べ、発明者に対するインセンティブを与えない使用者である被控 訴人に対して消滅時効の起算点に関して手厚い保護を与える結果となって不 当であるとはいえない。
被控訴人において、本件就業規則60条に基づく表彰を毎年6月末に行う\n運用又は慣行があったとして、そのことは、同条(3)の規定が職務発明に係る 対価の支払に関する規定であると解する根拠とはならない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
(2) 前記第2の3(2)の主張について
控訴人は、本件において「権利を行使することができる時」(民法166条 1項)とは、控訴人が被控訴人を退職した時点、あるいは、どんなに早くて も、本件同意書の有効性について検討するのに必要な合理的な検討時間であ る捺印後6か月経過後であるから、本件では消滅時効は完成していないと主 張する。 しかし、「権利を行使することができる」とは、その権利の行使につき法律 上の障害がないこととともに、権利の性質上、その権利行使が現実に期待の できるものであることをも必要とすると解されるが(補正の上で引用した原 判決「事実及び理由」第3の1(1)ウ)、権利行使について事実上の障害がある 場合に常に「権利を行使することができる時」に当たらないことにはならな い。
控訴人が被控訴人の従業員であったことをもって直ちに退職前に職務発 明対価請求権の行使が現実に期待できなかったとはいえない。控訴人の陳述 書(甲13)には、被控訴人は典型的なオーナー企業であって、従業員が会 社に自由な意見を言うことができなかった旨の陳述があるが、客観的裏付け がなくこの陳述を採用することはできないことは、補正の上で引用した原判 決「事実及び理由」第3の1(3)の説示のとおりである。したがって、控訴人が主張する内容を考慮しても、控訴人が被控訴人を退職するまで、被控訴人に対して職務発明対価請求権を行使することが現実に期待できなかったと解することはできない。 また、本件同意書の有効性について検討する必要があるために、本件同意 書に控訴人が捺印した後6か月が経過するまで、職務発明対価請求権の行使 が現実に期待できなかったと解すべき根拠となる事情は認められない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
(3) 前記第2の3(3)の主張について
控訴人は、被控訴人の控訴人に対するクオカードの交付は、職務発明対価 の支払債務の一部承認であり、消滅時効が中断すると主張する。 しかし、本件就業規則60条が表彰制度について定めた規定であり、クオ\nカードはこの規定に基づき交付されたものであること、及び、このクオカー ドの交付に先立って控訴人が被控訴人に本件同意書を提出しており、控訴人 及び被控訴人のいずれも、控訴人が職務発明対価請求権を放棄したと認識し ていたのであり、その状況の下でクオカードの交付がされたことからすれば、 クオカードの交付を職務発明の対価の支払であると認めることはできず、職 務発明対価の支払債務の一部承認であると解することもできない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
(4) 前記第2の3(4)の主張について
控訴人は、被控訴人が消滅時効の完成を主張することは権利濫用に当たる と主張する。
しかし、本件同意書の作成に当たり、控訴人が、被控訴人の代表者又は従\n業員から、同意書の作成を強制された事実が認められないこと、控訴人の陳 述書(甲13)には、被控訴人は典型的なオーナー企業であって、従業員が 会社に自由な意見を言うことができなかった旨の陳述があるものの、この陳 述内容について客観的な裏付けはなく、上記陳述の内容を採用することはで きないことは、補正の上で引用した原判決「事実及び理由」第3の1(3)の説 示のとおりであり、被控訴人が従業員である控訴人が在職中に使用者に対し て自由な意思表示をすることが不可能\である等の状況を利用し、被控訴人が 控訴人に対して在職中に本件同意書に捺印させたとは認められない。 控訴人が、被控訴人の従業員であることにより、心理的・精神的に職務発 明対価請求権の行使が困難であると感じていたとしても、そのことをもって、 被控訴人による消滅時効の援用が権利濫用であるとはいえない。 まして、控訴人は、被控訴人を退職した後に被控訴人に対して内容証明郵 便により本件各発明に係る相当の対価の支払を求めており、この支払請求は 被控訴人の令和3年5月14日付け回答書により拒絶されたが(前提事実(6))、 控訴人が上記回答書を受領した時点では、遅くとも控訴人が本件各発明に係 る特許を受ける権利を被控訴人に承継したと認められる平成23年9月13 日から10年を経過していなかったから、控訴人の被控訴人に対する職務発 明対価請求権の消滅時効が完成していたとは認められない。それにもかかわ らず、控訴人は、令和4年6月1日まで本件訴訟を提起しなかった(当裁判 所に顕著な事実)。上記内容証明郵便は弁護士(本件の控訴人訴訟代理人弁護 士)が控訴人の代理人として送付しており(甲3の1)、控訴人が、上記内容 証明郵便の送付の時点までに、被控訴人に対する職務発明対価請求に関して 弁護士に相談していたと認められるのであって、これらの事情によれば、控 訴人が、弁護士にも相談した上で、自らの判断で、前記回答書の送付から約 1年後に本件訴訟を提起したものと認められる。控訴人は、陳述書(甲15) において、本件同意書が無効であるといえるのか自信をもてず、弁護士費用 を払って訴訟を提起することを躊躇していたため、令和4年6月まで訴訟を 提起することができなかったと陳述するが、仮にこの陳述どおりであったと しても、そのことをもって、被控訴人による消滅時効の援用が権利濫用に当 たるとはいえない。

◆判決本文
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◆令和4(ワ)13408

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令和2(ワ)12107  職務発明対価相当請求事件  特許権  民事訴訟 令和5年8月29日  大阪地方裁判所

 大阪地裁(21部)は、薬の職務発明の報奨金として、超過売上高、仮想実施料率、寄与度、使用者貢献度、発明者間における原告の貢献割合から、約400万円を認めました。

イ 超過売上高(超過売上率)
前記前提事実のとおり、被告は、自ら又は本件受託3社に販売委託をして本件製 品2を販売し、本件特許2を実施している。 本件製品2は、先発医薬品Lカプセルの後発医薬品であるが、1回の投与で長時 間シグモイド型の薬物放出を続けるアンブロキソール塩酸塩の徐放OD錠化の技術\nを用いた製品は、本件製品2以外には上市されていない。被告もアンブロキソール\n塩酸塩の徐放カプセル剤及び錠剤(普通錠)を販売し、本件製品2の販売開始後の 平成27年7月に先発医薬品メーカーからアンブロキソール塩酸塩の錠剤(徐放小\n型錠)が販売されたが(乙115)、本件製品2以外にアンブロキソール塩酸塩の\n徐放OD錠の製品が製造販売されている事情は見当たらない。 また、本件製品2は、市場占有率が平成30年に1位となった。 これらの事情を勘案すると、超過売上高(超過売上率)は40%と認めるのが相 当である。
ウ 仮想実施料率
実施料率の判断にあたっては、被告(特許権者)の実施許諾例があればまず検討 し、それがなければ業界相場等や発明の内容等を検討することになるが、被告にお ける実施許諾例がある事情は見当たらない。 医薬品の自己実施に係る実施料率に関する資料によれば、「医薬品では6%前後 の率に…上下1〜2%程度増減した率が大方の相場」とされるもの(乙116)、 「医薬品・その他の化学製品(イニシャル有)」では3〜5%が最も多いとするも の(乙117【図2−5−1】)、3〜5%未満が最も多いとするもの(乙118) が見られる。そして、本件発明2は、1回の投与で長時間シグモイド型の薬物放出 を続けるアンブロキソール塩酸塩の徐放OD錠に関する発明であるが、剤形が異な\nるものの治療学的に同等の有効性、安全性を有する医薬品は他にも存在する。 このような事情を総合考慮すると、本件における仮想実施料率は5%と認めるの が相当である。
エ 本件発明2の貢献度(寄与度)
本件発明2は剤形に関するものであり、服用の利便性から本件製品2の売上げに 貢献しているものと認められる。 他方で、本件製品2は後発医薬品であり、有効成分は先発医薬品(Lカプセル) と同じである。また、本件製品2には、本件発明2に開示されていない製剤化技術 も用いられているものと考えられる。加えて、本件製品2の売上げが好調である要 因は、国のジェネリック医薬品販売促進施策がとられており(乙119、120)、 薬価も先発医薬品に比して格段に安くなっている(乙121、122)ところが大 きい。 これらの諸事情を勘案すると、本件発明2の貢献度は、多くとも60%と認める のが相当である。
オ 共同発明者間における原告の貢献割合
原告は、口腔内崩壊錠の着想をしたのみならず、その具体化の過程である製 造開発の場面においても、自身の知見に基づき、結合剤や徐放被膜のコーティング に用いる添加剤、可塑剤等のあらゆる場面における技術の選定について、本件チー ムのP2らに指示ないし助言し、これを基に本件発明2が完成したことからすれば、 原告の貢献割合は100%に近いなどと主張する。 発明の着想は、課題とその解決手段ないし方法が具体的に認識され、技術に関す る思想として概念化されたものである必要があると解される。また、医薬品の開発 においては、発明を完成させるまでに、試行錯誤を経ながら、添加成分の種類や配 合比率、配合条件等について多数の試作、試験・実験を行い、これから見出される 問題点を改善し、その効能や安全性、利便性等を確立していくことが必要不可欠で\nあると認められる(証人P2、証人P5)。 これらの点を踏まえ、原告の上記主張について、以下検討する。 上記(1)の認定事実によれば、原告が、平成18年頃、アンブロキソール塩酸\n塩の徐放カプセルをOD錠とすれば医療現場から歓迎されると考え、平成19年か らは新製品創出の専属メンバーの一人として、他社製品の調査や技術的検討を行っ た上、OD錠化の発想を一定程度具体化して提案し、瀬踏み実験に関与して、本件 製品2の開発承認決定(平成20年2月)に貢献したことは認められる。 しかしながら、本件発明2は平成23年11月頃に完成したものと認められ るところ(上記(1)ウ m)、添加成分の選定や処方等に関する検討を実際に行った のは、上記(1)のとおり、P2をリーダーとする本件チームであった。すなわち、本 件チームは、本件発明2の特徴的部分の構成を実施可能\な程度に具体化するために 多数の試作、試験・実験を行うなど試行錯誤を繰り返し、その過程において、複数 回にわたって報告(中間報告及び技術説明会)を行い、報告時点における試作実験 の結果及び今後の課題を検討し、課題の解決を目指して3年余りにわたり検討を行 っている。 他方、原告は、本件チームに所属しておらず、開発月例会議等の会議には出席し ていたことが認められるものの、本件チームの行う試験・実験に関与していたとは 認められない。また、原告は、本件チームの発足後、製剤技術部の顧問の地位にあ り、本件チームの職員と接する機会はあったことから、本件チームのメンバーに対 し、その知識及び経験を生かして助言できることがあれば概括的に助言していたも のと認められるが(原告本人、証人P5)、以下のとおり、本件製品2の開発過程 において、具体的な指示に関する客観的な証拠はない。
a 原告は、徐放性微粒子の核粒子として、ハルナールD錠に使用されているセ ルフィアCP−102を用いるよう指示した、他に検討の余地はなかった旨を主張 する。 上記(1)ウ によれば、開発当初は核粒子として用いる添加剤はセルフィア(結晶 セルロース粒)で進めていたが、溶出性に影響する可能性があり、他の添加剤も試\nしてみたが期待した効果は得られなかったことが平成20年11月に報告され、そ の後、結晶セルロース粒の2種のグレードで試作検討した結果、平成21年3月に セルフィアCP−102が選定されたことが認められる。原告が、上記の検討過程 でセルフィアCP−102の使用を指示したことを明らかにする客観的証拠はない。 仮に原告がセルフィアCP−102の検討につき何らかの助言をしたことがあった としても、その選定には上記のような試行錯誤を経て数か月を要していることから すると、原告が他に検討の余地はないものとして選定を具体的に指示したとは認め られない。
b 原告は、薬物レイヤリング工程に関し、溶解法から懸濁法に変更になった際、 文献(甲19、20、22、66〜68等)からの知見に基づき、溶出改善のため 薬物レイヤリング層に崩壊剤を添加すべきこと、また、崩壊剤としてはクロスポビ ドンを検討することを指示した旨主張する。 上記(1)ウ によれば、懸濁法への変更後、平成22年11月から薬物レイヤリン グ層に崩壊剤を添加して、徐放性微粒子の溶出改善を検討し、同年12月には崩壊 剤としてクロスポビドンを添加することが有用と判明したことが認められる。上記 の検討過程において、原告が崩壊剤の添加やクロスポビドンの検討を指示したこと を明らかにする客観的証拠はない。同月の技術検討会の資料(乙55)では、レイ ヤリング層の改良検討の中で、シグモイド曲線を改善する工夫として、クロスポビ ドン等の崩壊剤添加を含むいくつかの工夫案が実験され、その結果としてクロスポ ビドン添加の有用性が報告されている。このような経過の中で、原告が行ったと主 張する指示は内容や経緯が不明確であって、具体的指示の存在を認めることができ ない。
c 原告は、薬物レイヤリングに用いる結合剤として、文献(甲18)を参考に してPVPを用いるよう指示した、他に選択の余地はなかった旨主張する。 上記(1)ウ 及び によれば、平成20年9月の段階では、結合剤としてPVPを 含む4種類が検討されたが、●(省略)●再検討の結果、PVPが選定されたこと が認められる。原告が上記の検討過程でPVPの使用を指示したことを明らかにす る客観的証拠はない。原告は、pH依存性のある化合物が先発製剤(Lカプセル) の中に含まれる場合、これと同じものを使用しなければ同等の溶出率を確保できな いというが、本件チームにおいて、平成20年11月には「結合剤についても先発 の溶出挙動にあわせる組み合わせに目処を得た」、同年12月には「pH依存性の 異なる結合剤を組み合わせることにより、溶出挙動をコントロールすることができ、 標準製剤と合致した溶出性を示す徐放性顆粒を得ることが確認できた」との報告が あり(甲61の1)、原告もそれを知っていたと認められる(甲90)。そうする と、仮に原告がPVPの使用に関する何らかの助言を行ったことがあったとしても、 他の選択の余地がないとして選定を具体的に指示したとは認められない。
d 原告は、平成22年12月頃、徐放性被膜の被覆(放出制御層)に関し、E CとTC−5に類似のグレードの混合被膜を用い、エタノールと水の8:2程度の 混合溶液に溶解して被覆する方法とすることを指示した旨主張する。 上記(1)ウ によれば、懸濁法に変更された後、徐放性被膜のコーティングに関し、 徐放カプセルに用いられている配合を参考にEC及びTC−5のグレードで試作し て溶出性を検討していたところ、平成23年2月の中間報告において、EC(ST D10)とTC−5Rを8:2.5の比率でコーティングすればシグモイド型の溶 出となる旨報告されたことが認められる。上記の検討過程において、原告が被覆の 方法を指示したことを明らかにする客観的証拠はない。また、コーティング剤の処 方につき、AQCを主成分とするものに問題があるとすれば、被告が既に製造販売 していた徐放カプセルの処方を参考としてECを主成分とする試行を行うこと自体 に困難性は認められないし、実際の混合比率は多くの試作,実験を経なければ選択 できないことは明らかである(本件では約50ロットの試作が行われた。)。この ような状況で、原告の主張する指示の内容や経緯は不明確であり、原告が具体的な 指示を行った事実を認めることができない。
e 原告は、文献(甲20)により導かれた知見に基づき、本件製品2の開発当 初から、加圧圧縮により徐放性被膜にひび割れなどの損傷が生じることを防止する ため、ある種の可塑剤が有用であることを認識し、文献(甲23)から得た知見に 基づき、PEG6000(マクロゴール)と薬物を混合して用いることで徐放性被 膜の耐圧性向上が図れると判断して、マクロゴールの添加を指示したと主張する。 しかし、上記(1)ウ によれば、平成21年9月には、プロテクト層(オーバーコ ート第1層)にECとTC−5RにTween80を添加した処方により顆粒の割 れ防止が可能と報告されており、また、上記(1)ウ によれば、平成22年12月か ら徐放層(放出制御層)の主成分をAQCからECに変更することが検討されたの に伴い、プロテクト層の処方も再検討されたことが認められるところ、原告が処方 について提案したことを示す客観的証拠はない。仮に原告もその検討に参加してP EG6000の使用について何らかの言及をしたことがあったとしても、結局は実 験による試行錯誤を経てプロテクト層に配合する薬剤の有効性や処方が明らかにな ったのであるから、原告が具体的な指示をしたとか、それによってマクロゴールの 添加が選定されたとの事実を認めることはできない(原告は「可塑剤」としてPE G6000を用いるというのは誤りであると指摘するが、「可塑剤」の意味合いは ともかく、ここではプロテクト層に配合される薬剤を検討していることに変わりは なく、原告の指摘の点は結論を左右するものではない。)。
f 原告は、崩壊促進層の被覆(粘着防止層)に関し、徐放性被膜に類似のEC を主体とする疎水性被膜を、溶出特性に影響しない程度に薄く被覆して、速崩壊性 を担保するよう指示した旨主張する。 上記(1)ウ によれば、徐放層の主成分がAQCからからECに変更され、オーバ ーコート層にPEG6000(マクロゴール)を用いることとされたところ、PE G6000が露出したままの微粒子を配合して錠剤化すると、水による粘性が生じ、 また崩壊にも悪影響を与えることから、検討の結果、平成23年4月の技術検討会 で、苦味マスキング層と同一処方で薄いコーティング(オーバーコート層第2層) を施すことになったことが認められる。上記の検討過程において、原告が被覆の必 要性や処方について具体的に指示したことを明らかにする客観的証拠はない。また、 原告の主張する指示は、内容が概括的である上、指示が行われた経緯も不明確であ るから、具体的な指示が行われた事実や当該指示の方法で実験が進められた事実を 認めることができない。
g 原告は,他にも本件製品2の開発過程で種々の指示をしたことにより本件発 明2の完成に多大な貢献をした旨主張する。しかし、いずれも原告が具体的に指示 したことを認めるに足りる証拠がなく、原告の上記主張は採用できない。 上記(1)の認定事実、並びに、上記 及び の事情に照らせば、原告のほか、 P2、P3ら本件チームにおいて本件発明2の完成に向けて実験、分析等に主体的 に関与した者も本件発明2の共同発明者というべきである。そして、原告は、アン ブロキソール塩酸塩のOD錠を製することを発想し、それを一定程度具体化して瀬\n踏み実験にも関与し、開発承認を得た点で、本件発明2の特徴的部分の一部につい て着想・具体化し、本件発明2の完成に貢献したといえる。しかし、原告は、その 後は概括的な助言を与えることがあるのみで、発明の具体化に直接的に関与したと は認められないから、本件発明2の特徴的部分の多くについては、着想もその具体 化もしていないといわざるを得ない。 これらの事情を総合すると、原告の共同発明者間における貢献割合は、20%と 認めるのが相当である。
カ 使用者貢献度
被告は、本件製品2の開発設備や費用、製造承認申請に要する費用をすべて負担\nし、本件特許2の出願及びその維持に係る費用もすべて負担している。また、本件 製品2の売上げの拡大に関する営業努力もすべて被告が行っている。さらに、本件 製品2は後発医薬品であり、先発医薬品とは異なって、獲得すべき有効成分や効能\n効果がすでに明らかとなっているところ、後発医薬品は、一般に、先発医薬品に比 べて開発期間は短く、開発費も相対的に少ない反面、薬価も先発医薬品に比べて安 価であって、先発医薬品ほどの利益は必ずしも期待できない。そして、先発医薬品 と治療学的に同等の有効性、安全性を有し、法定の厚生労働大臣の製造販売の承認 を得なければならず、かつ、先発医薬品に求められている改善点にも配慮した競争 力のある医薬品を開発することになる点においては、後発医薬品であっても大きな 開発リスクが生じるというべきであるところ、被告は、このような開発リスクをす べて負担している。 これらの事情に照らせば、使用者貢献度は90%を下ることはないと認めるべき である。
キ 小括
以上の検討によれば、本件発明2に係る相当の対価の額は、次の計算式により算 出された388万8000円となる。
【計算式】 162億円×40%×5%×60%×10%×20%

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令和5(ネ)10030  特許権移転登録手続請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和5年6月22日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 在職中の職務発明であって原告が特許を受ける権利を有しているとして、移転登録を求めましたが、大阪地裁・知財高裁とも、これを認めませんでした。

ところで、控訴人の主張を前提とすると、本件各発明が完成したのは平成3 0年5月頃ということになるが、証拠(乙1)によると、同年5月時点において、 控訴人には就業規則(平成25年4月1日施行)が存在しており、職務発明につい て次のとおり規定されていた。
「(特許、発明、考案等の取扱い)
第84条 社員が自己の現在又は過去における職務に関連して発明、考案をした 場合、会社の要求があれば、特許法、実用新案法、意匠法等により特許、登録を受 ける権利又はその他の権利は、発明者及び会社が協議のうえ定めた額を会社が発明 者である社員に支払うことにより、会社に譲渡又は継承されるものとする。」 上記規定からすると、平成30年5月頃、控訴人とその従業員との間には、職務 発明について、控訴人の要求があるときに、控訴人が発明者である従業員に対し、 協議して定めた額の金員を支払うことにより、特許を受ける権利が発明者から控訴 人に移転する旨の合意があったものと認めるのが相当であり、控訴人とその従業員 の間に、職務発明についての特許を受ける権利を、控訴人が原始取得する旨の合意 があったと認めることはできない。
(3) 控訴人は、前記(2)の就業規則の規定は空文化されており、控訴人と従業員 との間で、職務発明について控訴人に原始取得する旨の黙示の合意があり、そのこ とは、1)控訴人において、就業規則の規定にのっとった手続が行われたことがなか ったこと、2)被控訴人代表者が、平成29年7〜8月に控訴人を出願人として職務\n発明について特許出願をしたが、控訴人は特許を受ける権利の移転を要求しておら ず、また、承継対価の額についての協議や対価の支払を行わなかったこと、3)従前 からの取扱いを確認する形で平成30年9月3日に甲12規程が制定されたこと、 4)本件各発明の共同発明者が、本件各発明についての特許を受ける権利が控訴人に 原始的に帰属する旨認めていること、5)被控訴人代表者が大王製紙と控訴人との間\nの取引を奪うことを目的として、控訴人において本件各発明についての特許出願を したことから、明らかであると主張する。
ア しかしながら、控訴人の就業規則の附則(4)により、同就業規則の改廃は 社員(従業員)の代表者の意見を聴いて行うものとされているところ(乙1)、控\n訴人において、就業規則の規定を変更するための手続が執られたことはなく、控訴 人とその従業員との間で、職務発明について就業規則の規定にかかわらず、特許を 受ける権利を控訴人に原始取得させることについての協議がされた等の事情もうか がえないのであるから、控訴人と従業員との間で上記黙示の合意が成立していたも のと認めることはできず、控訴人と被控訴人代表者との間でも、控訴人の主張する\n黙示の合意がされたことを認めるに足りる証拠はないというほかない。職務発明に 係る特許を受ける権利を使用者である控訴人に原始取得させることは、従業員にと って、就業規則を不利益に変更するものであるところ、控訴人において、職務発明 の出願に関して、就業規則の規定にのっとった手続が行われたことがなかったこと をもって、何らの協議を経ることもなく、直ちに、就業規則が変更されたとか、控 訴人と従業員らとの間で、就業規則とは異なる内容の合意が成立したなどと認める ことはできない(上記1))。
イ また、被控訴人代表者が、職務発明について、特許事務所に対して、控訴人\nを出願人とする特許出願手続を依頼したことがあったという事実については、控訴 人を出願人とする特許出願手続を依頼することにより、被控訴人代表者が、控訴人\nに対して、特許を受ける権利を移転する旨の意思表示をしたとみることもできるの\nであって、上記事実をもって、控訴人と被控訴人代表者との間に、職務発明につい\nての特許を受ける権利を控訴人が原始取得する旨の黙示の合意があったと認めるこ とはできない(上記2))。
ウ そして、甲12規程には、「職務発明については、その発明が完成した時に、 会社が特許を受ける権利を取得する。」との規定があり(第4条)、職務発明につい ての特許を受ける権利が控訴人に原始的に帰属する旨定められているものの、甲1 2規程が適法に制定されたものであったとしても、控訴人の主張する本件各発明の 完成日(平成30年5月頃)よりも後の同年9月3日に制定されたものであるとい うのであるから(甲12)、同日までに既に発生している特許を受ける権利の帰属 を原始的に変更することができるものではなく、このことは、甲12規程において、 平成26年1月1日以降に完成した発明に適用する旨規定されていることを考慮し ても変わりはない(上記3))。
エ さらに、共同発明者であるとされる控訴人従業員の現時点における認識や、 被控訴人代表者の本件各発明の特許出願時の意図について、仮に控訴人の主張する\nとおりであったとしても、これらの事項は、本件各発明の特許を受ける権利の帰属 に影響しない(上記4)及び5))。 そうすると、控訴人の主張はいずれも採用できない。

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◆令和4(ワ)1848

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令和4(ネ)10062  職務発明の対価請求控訴事件、仮執行の原状回復及び損害賠償申立事件  特許権  民事訴訟 令和5年1月23日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

職務発明の対価として、知財高裁にて、約200万円の請求が認められました。額は一審と同じです。

ところで、旧特許法35条4項の「発明により使用者等が受けるべ き利益」は、使用者等が「受けた利益」そのものではなく、「受ける べき利益」であるから、使用者等が職務発明についての特許を受ける 権利を承継した時に客観的に見込まれる利益をいうものと解されると ころ、使用者等は、特許を受ける権利を承継せずに、従業者等が特許 を受けた場合であっても、その特許権について同条1項に基づく無償 の通常実施権を有することに照らすと、「発明により使用者等が受け るべき利益」には、このような法定通常実施権を行使し得ることによ り受けられる利益は含まれず、使用者等が従業者等から特許を受ける 権利を承継し、当該発明の実施を排他的に独占し得る地位を取得する ことによって受けることが客観的に見込まれる利益、すなわち「独占 の利益」をいうものと解される。また、特許を受ける権利の承継の時 点では、将来特許を受けることができるかどうか自体が不確実であり、 その発明により将来いかなる利益を得ることができるのかを具体的に 予測することは困難であることなどに照らすと、発明の実施又は実施\n許諾による使用者等の利益の有無やその額など、特許を受ける権利の 承継後の事情についても、その承継の時点において客観的に見込まれ る利益の額を認定する資料とすることができるものと解される。 そして、使用者等が職務発明についての特許を受ける権利の承継後 に第三者との間のライセンス契約に基づいて当該発明の実施を許諾し ている場合には、その実施料収入が「独占の利益」に該当し、また、 使用者等が、第三者に当該発明を実施許諾することなく、自ら実施 (自己実施)している場合には、特許権が存在することにより、第三 者に当該発明の実施を禁止したことに基づいて使用者が得ることがで きた利益、すなわち、特許権に基づく第三者に対する禁止権の効果と して、使用者等の自己実施による売上高のうち、当該特許権を使用者 等に承継させずに、自ら特許を受けた従業者等が第三者に当該発明を 実施許諾していたと想定した場合に予想される使用者等の売上高を超\nえる分(超過売上高)について得ることができたものと見込まれる利 益(超過利益)が「独占の利益」に該当するものというべきである。 この「超過利益」の額は、従業者等が第三者に当該発明の実施許諾を していたと想定した場合に得られる実施料相当額を下回るものではな いと考えられるので、「超過利益」を「超過売上高」に上記想定に係 る実施料率(仮想実施料率)を乗じて算定する方法にも合理性がある ものと解される。
したがって、かかる「独占の利益」をもって、「その発明により 使用者等が受けるべき利益」とし、これと1審被告の貢献の程度 (「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度」)を考慮し て相当の対価の額を認定することは許されるものと解される。また、 特許法35条3項及び5項に基づく相当の対価請求権、同項の「その 発明により使用者等が受けるべき利益」についても、上記説示したと ころと同様に解すべきである。 以上を前提に、1審原告の本件発明1に係る相当の対価請求権の 存否について判断する。
・・・
「a 本件発明2−1は、空気調和機(ルームエアコン)の室内ユニットに 搭載される熱交換器の配置について、前面熱交換器の設置角度α及びク ロスフローファンの翼の出口角β2を、それぞれ所定の範囲に特定する ことで、室内ユニットから所定風量を得るのに必要なファンモータ入力 や回転数を低減することができ、省エネを図ることができる点にその技 術的意義がある。また、前面熱交換器の設置角度αを65°以上とする ことで、熱交換器からの水滴がファンへ流入して室内ユニットの外部へ 吹き出されること等を防止し、室内ユニットの奥行きをコンパクトにで きるという効果もある(【0024】)。 もっとも、省エネ、ドレン水の確実な処理及び室内ユニットのコンパ クト化という課題自体は、本件発明2−1の特許出願以前から存在する ものであり、上記課題に対して、熱交換器を逆V字状にすること、前面 熱交換器と背面熱交換器との連結部を送風ファンの中心軸よりも前面側 に位置させ、かつ前面熱交換器の傾斜を急な配置にすること、熱交換器 を通過した空気がファンの翼に当たる際の空気の流れ方向の変化を滑ら かにし、空気流の剥離等を防ぐために、翼形状を変更することといった 着想や技術自体は、従来から存在していた(前記(2)ウ)。 したがって、本件発明2−1は、ルームエアコンに備えられる基本的 な構成要素である熱交換器及びクロスフローファンについて、前面熱交\n換器の配置及びクロスフローファンの翼形状(出口角)を、同時に、具 体的な数値範囲をもって特定したところに技術的な意義があるものと認 められる。
b 他方で、ルームエアコンの省エネ性能の向上を図る技術には、室内\n機及び室外機それぞれを見ても、熱交換器、圧縮機、モータ、送風機 等に係る種々の技術が存在する。しかも、1審被告のほか、国内の競 合他社であるパナソニック、ダイキン、東芝、日立等は、それぞれ、\n省エネのための独自の基本的な技術を有しており、●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●1審被告以上又は同等 の市場占有率を保持していたと認められる(上記(2)イ、キ(ウ)、ク (イ)及び(ウ))。 また、本件発明2−1は、前面熱交換器の配置及びクロスフローフ ァンの翼形状(出口角)を特定することによって送風の効率を高める ものであるところ、競合他社が、それぞれ独自に、ユニットの構造、\n熱交換器の配置、ファンの形状等を工夫して製品化をしていることか らすれば、競合他社の製品に本件発明2−1をそのまま実施すること により直ちにその性能が向上するものとは認められない。\n したがって、本件特許権2の存在により第三者に本件発明2−1の 実施を禁止したことに基づいて得ることができた利益は、限られた範 囲内のものと認められる。
c 加えて、1審被告は、対象製品群2の販売に当たり、被告カタログ 2)において、ムーブアイを大々的に取り上げるとともに、そのほかに も脱臭機能、換気機能\、サプリメントエアー機能といった付加価値的\nな機能をも顧客に対し強く訴求していること、対象製品群2が販売さ\nれた当時、既にルームエアコンは家庭に広く普及し、省エネ等に係る 技術は、競合他社の製品においても採用されていたと考えられること を踏まえると、付加価値的なものとはいえ、このような他社製品との 差別化を図る技術は消費者に対する訴求力を高め、対象製品群2の売 上げに大きく貢献したものとみるのが相当である。
(ウ) 小括
以上の事情を総合考慮すると、本件発明2−1に係る超過売上高は、 前記ウの売上高の0.5%と認めるのが相当である。

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◆平成29(ワ)7391等

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令和4(ワ)1848  特許権移転登録手続  特許権  民事訴訟 令和5年2月6日  大阪地方裁判所

 在職中の職務発明であって原告が特許を受ける権利を有しているとして、移転登録を求めましたが、裁判所はこれを認めませんでした。

原告は、訴状とともに提出した令和4年3月4日付証拠説明書において、甲 12規程の作成年月日を平成26年1月1日としていたこと、被告は、令和4 年8月9日付準備書面において、甲12規程の存在を否認し、その根拠として、 甲12規程に用いられる「取得」「相当の利益」との文言は、平成27年7月に 公布され、平成28年4月1日に施行された特許法等の一部を改正する法律 (平成27年法律第55号)で初めて採用されたものであって、平成26年1 月1日時点でこのような文言が使われた規程が存したのは極めて不自然であ ると指摘したこと、原告は、平成4年9月20日付け原告第1準備書面におい て、前記第3「2」【原告の主張】のとおり主張したこと、はいずれも当裁判所 に顕著である。
(2) 本件において、甲12規程は、原告が本件各発明に係る特許を受ける権利 を原始取得する根拠として不可欠のものであって、訴え提起の段階で、甲12 規程が適用されるかどうかについては、その制定過程及び本件各発明の完成時 期や被告代表者の退職時期との関係で慎重に検討されるはずのものである。し\nかも、この経緯は、専ら原告の領域内の事情であり、かかる検討を阻むものは ない。 しかるところ、原告は、当初甲12規程の作成日時を平成26年1月1日と 特定したにもかかわらず、被告から文言の不自然さを指摘されるや、その制定 日は平成30年9月3日であって、平成26年1月1日にさかのぼって適用さ れると主張したものであって、このように主張が変遷した経緯自体、被告代表\n者が原告に在職中に甲12規程が制定されたことを疑わしめるに十分である。\nまた、そのように作成されたのであれば、甲12規程は、制定日を明らかにし た上、同規程の適用を定めた10条は「さかのぼって適用する」と表現するの\nが自然と思われるが、同条にはそのような遡及適用の趣旨は記載されていない し、制定日も書かれていない。遡及の限度が平成26年1月1日である根拠も 何ら示されていない。
加えて、甲12規程が、被告代表者の原告退職時期に近接した平成30年9\n月3日に真実制定されたというのであれば、原告と被告代表者間で当然に退職\n時に本件各発明に係る特許を受ける権利の帰属について協議ないし確認がさ れるものと考えられる。しかし、原告は、被告代表者が原告を退職した後本件\n各発明について特許出願がされたことを知った後も、本件各特許権に係る発明 の実施品と思料されるボックス容器に関する大王製紙、原告、被告の取引に継 続して関与していたことを自認しているのであって、かかる協議や確認がされ たこともうかがえないどころか、被告が権利者であることを前提とした行動を とっているものというべきである。
(3) その他原告の提出する証拠等も、前記認定の経緯に照らすと採用の限りで なく、結局、平成30年9月3日当時を含め、被告代表者が原告に在職する期\n間中に、甲12規程が適法に制定されたと認めるに足りる証拠はないといわざ るをえない。
2 前記1によると、争点1に関わらず、原告が甲12規程により本件各発明に係 る特許を受ける権利を取得したとは認められない。本件各発明に適用される就業 規則(乙1)によっても、原告が特許を受ける権利を承継したとは認められない し、また当該承継の事実を被告に対抗できない(特許法34条1項)。 なお、原告は、当裁判所が口頭弁論を終結する予定の期日として指定した令和\n4年12月16日の期日の直前に、同年11月29日付け準備書面により本件各 発明を原始取得させる旨の黙示の合意が存した旨の主張をした。同主張はそもそ も時機に遅れた攻撃防御方法というべきであるが、前判示のとおり、本件各発明 において適用されるべき就業規則(乙1)が存するところ、かかる明示の合意の ほかに、原告主張の従業員が原告名義の特許出願に異を唱えなかった等の事情か ら特許を受ける権利の移転等に関する黙示の合意が成立する余地はないという べきであって、原告の主張は、それ自体失当である

◆判決本文

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令和3(ネ)10006  職務発明対価請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和4年5月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

CD・DVD装置に関する職務発明に基づく対価請求として、1審は約1227万を認めました。双方控訴し、知財高裁はこれを約2557万に増額しました。

(25) 原判決143頁15行目の「あって、ほかに本件各発明の実施品が存在する と認めるに足る証拠はない。」を「ある。なお、本件発明7の実施品の売上げについ ては、後記3「その余の当審における当事者の補足主張等に対する判断」(3)で検討 する。」と、144頁19行目の「別紙10(判決注:「原判決別紙10」である。) 相当対価計算表(自己実施1)」を「別紙10「相当対価計算表\(自己実施1)」」と、145頁2〜3行目の「本件各発明」を「本件発明1及び2」と、146頁7行目 の「被告保有の特許」を「一審被告を含む同プログラムに参加する特許権者の保有 する特許」とそれぞれ改め、同頁7〜8行目の「ライセンスを求める者に対して、」 の次に「その選択に応じ、フィリップス社の保有する特許又はフィリップス社及び 本件ジョイント・ライセンス・プログラムに参加する特許権者の保有する特許につ いて、」を挿入し、同頁12行目の「本件特許1及び2は」を「本件各特許は」と、 同頁14行目の「被告は、」から同頁18行目末尾までを「一審被告は、上記各製品 カテゴリに属する製品を製造、販売しようとする者が、フィリップス社に対し、ラ イセンスを求めた場合には、フィリップス社における上記ライセンスポリシーに従 って、フィリップス社を通じ、当該製品カテゴリに属する製品を製造、販売するた めに必要とされた他の特許と一括して実施許諾をしていたものと認められる。」と それぞれ改め、同頁20行目冒頭から147頁9行目までを次のとおり改める。 「以上のとおり、本件発明1、2については、CD−R/RW等の規格必須特許 として扱われており、かつ、一審被告も現に実施していたことからすると、CD− R/RWレコーダー及び同機能を有するDVD・BD関連製品並びにCD−R/R\nWディスクを製造・販売していた者に広く実施されていたと考えられ、CD−R/ RW規格に準拠した製品に競合するものとして、CD−R/RWレコーダー機能を\n有しないDVD関連製品等が存在していたとはいえるものの、CD−R/RW規格 に準拠した製品を製造・販売する者にとっては、規格必須特許である本件特許1、 2の代替技術は存在していなかったということができること、一審被告は、本件ジ ョイント・ライセンス・プログラムにより、フィリップス社を通じ、本件特許1及 び2を必須特許として他の特許と一括して実施許諾しており、フィリップス社は、 本件ジョイント・ライセンス・プログラムについて、ライセンスを求める全ての企 業にライセンスを認めることを原則とするライセンスポリシーをとっていたものの、 全ての規格準拠製品を製造・販売する者が、フィリップス社を通じ又は一審被告と 直接、本件特許1、2についてライセンス契約を締結していたものではないこと、 そもそも、一審被告が、CD−R等の規格の策定に関与し、また、本件ジョイント・ ライセンス・プログラムに参加することができたのは、本件各特許を含む規格必須 特許を有していたからであると推認されること、一審被告が、例えば平成12年度 にはCD−R/RWドライブの世界出荷台数について21.3%と高いシェアを有 しており(甲25)、これについては本件各特許を含む規格必須特許を有していたこ とが一審被告の売上げに有利に働いていたものと推認されること等に照らせば、本 件特許1、2について、独占の利益がなかったということはできない。
そして、平成12年にDVD関連製品の販売が開始されるまで、CD−R/RW ディスク以外の光ディスクが広く販売されていたことはうかがわれず、また、フィ リップス社が採用していたライセンスポリシーにおけるライセンス料やライセンス 条件等の内容が明らかでないことなどにも照らせば、一審被告製品1及び2の売上 げの一部は本件発明1及び2を含む特許発明による独占的地位に起因する超過売上 げであったと認めるのが相当であり、本件に顕れた事情を総合的に考慮すると、そ の割合は一審被告製品1及び2の売上げの20%であったと認めるのが相当である。
もっとも、出願公開の後、特許権の設定登録がされる前においては、一定の条件 下での補償金支払請求権が認められ、特許法上の保護が与えられていることから、 独占的地位に起因する超過売上げが存在しないとはいえないものの、設定登録の可 否やその技術的範囲も確定していない上、独占的効力が制限的であることに照らす と、出願公開後登録までの間は、登録後の2分の1の割合で独占の利益を認めるの が相当であるから、当該期間については超過売上割合を10%とする。そうすると、 一審被告のCD−R/RWドライブ及びCD−Rディスクの売上げのうち、本件特 許1が登録された平成12年4月28日までの間の日本国内での売上げについては、 超過売上割合を10%とみることになる。」
(26) 原判決147頁25行目の「被告は、」の次に「本件ジョイント・ライセン ス・プログラムに参加し、フィリップス社を通じて、」を挿入し、148頁1〜2行 目の「フィリップス社が採用していたライセンスポリシー」を「同ライセンスポリ シー」と、同頁26行目〜149頁1行目の「国内同業他社のロイヤルティ料率に 関するアンケート結果に係る特許権のロイヤルティ率の平均値として」を「国内同 業他社に対してライセンスすることを想定するものとして行われたアンケートの結 果として、特許権のロイヤルティ料率の平均値が」とそれぞれ改め、同頁20行目 冒頭から26行目末尾までを削り、150頁8行目の「フィリップス社」を「フィ リップス社ら」と、151頁16行目の「そして、」から同頁20行目末尾までを「そ して、ライセンス対象特許リスト5)ないし7)の各パートに掲載された特許の数は、 58件、67件、144件、144件、119件、121件であるところ(なお、 ライセンス対象特許リスト6)については、前記(3)ウ(ア)bで述べたとおり、各19 件を控除した。)、その平均は108.83件であり、その9割に相当する97.9 4件であったと推認するのが相当である。」と、153頁2行目の「その実施特許は」 を「その実施特許の数は」とそれぞれ改め、同頁11〜12行目の「ことについて は」から同頁12行目の「とおりである」までを削り、同頁15行目の「上記の検 索に係る」から同頁16行目末尾までを「平成8年から平成14年までの間、毎年 同等の数の特許権の存続期間が満了したと仮定した場合の平均特許件数よりも相当 程度に少ないものと考えられ、上記の検索に係る2509件の3割に相当する75 2.7件であったと推認するのが相当である。」と、同頁26行目及び156頁17 行目の「別紙10(判決注:「原判決別紙10」である。)相当対価計算表(自己実\n施1)」を「別紙10「相当対価計算表(自己実施1)」と、155頁9行目の「1\n505.4」を「752.7」と、同頁11行目の「501.8」を「250.9」 と、同頁12行目の「586.86」を「335.96」と、同頁13行目の「6 05.44」を「354.54」と、同頁15行目の「689」を「438.1」 と、同頁16行目の「532.16」を「281.26」と、同頁17行目の「5 16.65」を「265.75」と、156頁9行目の「前記(3)エ(イ)のとおりであ る。」を「前記(3)エ(イ)(aを除く。)のとおりであり、また、音楽用CDに係る特許 については、いずれも平成14年までに存続期間が満了していたものと推認される から、平成15年以降について、それらの特許の貢献があったと認めることはでき ない。」とそれぞれ改め、同頁19行目冒頭から157頁22行目末尾までを次のと おり改める。
「オ 争点2−2についての小括
ところで、後記2「争点1−4(本件発明7の実施の有無)に対する判断」(5)の とおり、一審被告は、本件発明7についても実施している。これを考慮に入れた一 審被告が受けるべき利益の額については、別紙10「相当対価計算表(自己実施1)」\nのとおりと推定され、本件発明1、2及び7の実施により一審被告が受けるべき利 益の額は、同別紙の対象製品欄記載の製品の日本、米国及びオーストラリアでの売 上額に、日本における本件特許1の登録前の売上げについては、超過売上割合を1 0%、その他については超過売上割合を20%とし、仮想実施料率を2.5%とし て、同別紙【B】’欄記載のとおり超過利益が算出され、これを、同別紙【D】欄記 載の補正後の実施特許件数で除して、対象特許1件当たりの利益の額を算出し(同 別紙【E】欄)、これに、同別紙【F】欄記載の本件各特許の数を乗じると、同別紙 【G】欄及び【G】’欄記載のとおり算出され、合計●●●●●●●●●●円である。
なお、同別紙【F】欄記載の本件各特許の数は、ドライブについては本件特許1、 2及び7の3件、ディスクについては本件特許1及び7の2件であるところ、CD −R/RWドライブについては、別紙8「相当対価計算書(ライセンス1)」の【E】 欄と同様に、本件各特許の数を倍とした。また、本件発明7についてはDVDディ スクについても実施品に当たるが、これについては、一審原告がその売上げを相当 対価の算出対象に含めない旨主張するから、上記算定に含めないものとした。 そして、前記(3)オと同様に、別紙10「相当対価計算表(自己実施1)」の対象製\n品欄記載の製品についての全世界の市場に占める日本、米国及びオーストラリアの 市場の割合は、日本が10%、米国が25%、オーストラリアが2%であったと認 めるのが相当であるから、CD−R/RWドライブ、追記書換型DVDドライブ、 CD−R/RWドライブとDVD−ROMドライブの複合ドライブ、BDドライブ について、一審被告が受けるべき利益の合計額における本件発明1、2及び7の内 訳は、上記の市場の割合を踏まえて算定することができ、具体的には、別紙11「相 当対価計算表(自己実施2)」に記載するとおりである。\n

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◆平成28(ワ)29490

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平成31(ネ)10027  職務発明対価支払い請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和4年5月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 職務発明の報奨金について、1審は約800万円でしたが、知財高裁は約3200万円と認定しました。判決文は128ページもあります。

 ところで、旧法35条4項は、職務発明に係る相当対価の額は、その 発明により「使用者等が受けるべき利益の額」及びその発明がされるに ついて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない旨規定 するところ、同項が「使用者等が受けるべき利益の額」と規定したのは、 使用者等に対する権利承継時の客観的に見込まれる利益の額をいうもの であり、発明の実施によって現実に受けた利益に必ずしも限るのではな く、自己実施等の場合を含め、使用者等が本来得ることのできた独占的 利益を指すものと解される。
これを前提として検討するに、SCEは、一審被告とSMEが共同出 資して設立された会社であり(前記1 カ )、一審被告がプレイステ ーションシリーズの製造及び販売に関し、フィリップス社との間で、そ れぞれの保有する特許のクロスライセンスを締結していれば、SCEは 本件ジョイントライセンスプログラムにおいて改めてライセンス料を支 払う必要のない一審被告の関連会社となり、こうしたクロスライセンス 契約における一審被告の得た利益が「使用者等が受けるべき利益の額」 となるといえるが、本件全証拠を検討してみても、一審被告がプレイス テーションシリーズの製造及び販売に関してフィリップス社との間でク ロスライセンスを締結したと認めるに足りず、むしろ、一審被告は、S CEに対し、プレイステーションシリーズの製造、販売又は開発等のた めに有用な一審被告保有の特許権(本件特許権1−5及び同2−1を含 む。)等の実施許諾に関するライセンス契約(SCEライセンス契約) を締結して、SCEを他社ライセンシーより優遇して同社から対価を得 ていることが認められる。
このように、一審被告が、フィリップス社と共に運用する本件ジョイ ントライセンスプログラムのライセンス対象製品であるプレイステーシ ョンシリーズの製造販売に関して、SCEを同プログラムの関連会社と してではなく1ライセンシーとして扱っている以上、同プログラムが開 放的かつ非差別的な条件でライセンスする、いわゆるオープンポリシー を採用している(前記1 エ )ことからすれば、PS1のゲーム機本 体及びゲームディスク、PS2のゲーム機本体の製造及び販売に当たっ て一審被告が本来得ることのできた独占的利益は、SCEがフィリップ ス社との間でプレイステーションシリーズの製造及び販売に関してライ センスを受けたものと仮定した上で、同ライセンスプログラムで定めら れたロイヤルティにより計算された額に一審被告の配分率を乗じたライ センス料額により算定した額(仮想積上げ方式)であるというべきであ り、一審被告がSCEライセンス契約により現実に得た利益に限る必要 はない。
なお、一審被告は、仮想積上げ方式を採用したとしても、資本関係の 全く存在しない第三者(競合他社を含む。)との関係と比較して資本関 係を有するグループ会社に特許ライセンスを行う場合には、ライセンス 料をはじめ条件面をある程度優遇することは当然であり、本件ジョイン トライセンスプログラムにおけるライセンス料がSCEライセンス契約 にそのまま適用されるわけではない旨主張するが、一審原告は、この主 張を受けて、ライセンス料に80%を乗じる範囲までは争わないものと する旨主張しており、当裁判所も、SCEが一審被告と資本関係にある ことに鑑みて、この限度での条件面の優遇の程度は不合理なものではな いものとして、以下試算する。
・・・
また、一審被告は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●CDオーディオ及びCD-ROM ドライブの特許に対するロイヤルティは、独立して請求することがで きない旨主張する。しかし、この契約条項の趣旨については措くにし ても、この契約書は、平成16年(2004年)頃のDVDビデオプ レイヤーに関するライセンス契約に関するひな型であることがうかが われるところ、PS2が発売された平成12年10月26日から本件 特許1−5が満了となる平成17年3月22日までの間、このひな型 のとおりに実際にライセンス契約が締結され、また、DVDプレイヤ ーのロイヤルティにCD-ROMプレイヤーのロイヤルティが含まれ ることを明確に示す証拠は提出されていないから、一審被告の上記主 張を採用することは困難である(なお、前述のとおり、職務発明に係 る相当対価を算定するに当たって考慮すべき「使用者等が受けるべき 利益の額」は、使用者等に対する権利承継時の客観的に見込まれる利 益の額をいうものであり、発明の実施によって現実に受けた利益に必 ずしも限るのではないことに照らせば、仮に、上記条項に基づく形で ロイヤルティの支払がされていたとしても、そのことをもって当然に、 CD-ROMの再生機能に係る一審原告の相当対価請求権が制限され\nるとは認め難い。)。
c PS1のゲームディスクについて、PS1の発売開始日から本件特 許1−5の満了日までの各対象期間における北米販売数は、平成7年 (1995年)9月9日から平成16年(2004年)12月31日 までは3億7100万本であり(甲300)、平成17年(2005 年)1月1日から同年3月22日までは、平成17年1月1日から同 年3月31日までの北米販売数100万本(甲300)を基に日割り 計算すると、90万本であるところ、メキシコ、カナダ分を除いた米 国分を89%と見積もることは当事者間に争いがないから、米国販売 分は、別紙3の表2−1の左欄のとおりであるところ、●●●●●●\n●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●当該期間における平均為替レート (甲296)を乗じると、同表の「一審被告が支払いを受けるべきラ\nイセンス料」欄の記載のとおりとなるが、前記 のとおり、この8割 に相当する金額が各対象期間における一審被告が受けるべきライセン ス料の額となる(別紙4−2の「PS1ゲームディスク(CD-ROM ディスク)(本件発明1−5関係)」の「1)一審被告が受けるべき利 益」欄参照)。
そして、本件ジョイントライセンス契約におけるCD-ROMディス クの対象特許のうち本件特許1−5の貢献割合は、前記ア の「CD -ROM Disc」欄のとおり、平成14年度までは1/9であり、 平成15年度以降は1/3であるので(なお、厳密には、別紙4−2 の「PS1ゲームディスク(CD-ROMディスク)(本件発明1−5 関係)」の「1995.9.9〜2004.12.31」欄のうち、 平成15年度及び平成16年度に当たる期間(2003年4月1日か ら2004年12月31日)は1/3として計算すべきであるが、一 審原告は、「1995.9.9〜2004.12.31」のライセン ス料につき、一括して平成14年度までと同様にその貢献割合を3/ 6.6として計算しているところ(一審原告控訴第12準備書面61 頁参照)、この期間の販売本数を2003年4月1日を境にして区分 けして特定することは困難であり、また、一審被告に不利になる算定 ではないため、一審原告の計算手法を採用して算定する。)、これを 乗じると、一審被告が受けるべき独占の利益は、別紙4−2の「PS 1ゲームディスク(CD-ROMディスク)(本件発明1−5関係)」 の「2)本件特許1−5の一審被告の受けるべき利益」欄のとおりとな る。
・・・
本件発明1−5について一審被告が貢献した程度(争点1−2)
ア 本件ジョイントライセンスプログラム
本件発明1−5は、音楽用CDをコンピュータ分野に応用することを 可能とするためのエラー訂正技術であり、従来の音楽CDの誤り訂正率\nが訂正後10-9〜10-10であったのに対し、10-12まで改善すること ができ、データの信頼性が高まり、コンピュータのデータストレージと しての使用を可能としたものである(前記1 ウ )。本件特許1−5 は、CD-ROM等の規格必須特許に採用される(同1 ウ )など、技 術的価値は高いといえる。
他方で、本件発明1−5は、第1及び第2のクロスインターリーブ・ リード・ソロモン符号による誤り訂正(CIRC)に加えて、第3のリ\nード・ソロモン符号による誤り訂正を行うことを可能\とする発明特定事 項を含むものである(前記1 ウ )ところ、CIRCは、一審被告と フィリップス社が共同で音楽用CDの研究、開発の過程で発明されたも のであり(同1 )、本件発明1−5は、こうした一審被告に蓄積され た先行技術の一部が活用された面があることは否定することができな い。また、本件発明1−5が権利化されるまでの手続において、その優 先権の基礎となる本件特許1−1及び同1−2に係る手続を含め、一審 原告の貢献はなく、米国の事務所に依頼し、米国特許商標庁の拒絶理由 に対して適宜の対応をした点を含め、一審被告の知的財産部が相当の貢 献をしたものである(同1 イ)。
さらに、一審被告とフィリップス社は、非差別的かつ開放的なオープ ンライセンスポリシーを採用して広くライセンスの機会を与える(前記 1 エ )とともに、一審被告とフィリップス社が中心となって、CD -ROMの物理的フォーマットを作成しただけではなく、論理フォーマッ トを統一して互換性を持たせた(同1 オ )ほか、パソコンの周辺機\n器を接続するための伝送データ規格の統一を実現した(同1 オ )こ とにより、パソコンやゲームソ\フトとしてCD-ROMが広く利用される ようになったといえる。
加えて、一審被告は、CD-ROMディスクを受託生産するための製造 工場を設立し、CD-ROM駆動装置の生産能力の増産態勢を整え、また、\nCD-ROMを利用した様々な商品の企画・開発や、他業種との連携等を 行ったほか(前記1 オ )、マーケティングプロモーションとして、 ライセンシー会議の開催、コンテンツ業界への積極的なアプローチ、標 準規格を普及させるための装置の技術開発、ライセンシーに対するテク ニカルサポートを行い(同1 オ )、CD-ROMだけではなくCDR等のCDファミリー規格の改善のための研究開発やプロモーションを 行った(同1 オ )ことが認められる。
以上の諸事情に鑑みれば、本件ジョイントライセンスプログラムにお いて一審被告が得た独占の利益に関し、一審被告の貢献度は、95%と するのが相当である。
これに対して、一審原告は、本件発明1−5に関し、着想から具体的 なフォーマットの完成に至るまで一審原告が1人で検討し、シミュレー ションを行い、一審被告の会社設備を利用することなく就業時間外で発 明を完成させた旨主張し、その旨供述及び陳述(甲165)する。しか し、一審原告本人が供述等するところの発明を完成させるまでの経緯に ついては、これを裏付ける客観的証拠に乏しく、他方、これを否定する 〈B〉の陳述書(乙132)等の関係証拠もあるのであるから、前記1 アで認定した一審原告の関与の限度を超えて、一審原告本人の供述等 のみに沿った認定をすることは相当でない。

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◆平成27(ワ)11651

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令和2(ワ)29897  相当の対価請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年5月27日  東京地方裁判所

 職務発明事件です。一つの争点が、社内の発明規程により報奨金の請求権が消滅するという規定でした。原告は公序良俗に反すると争いましたが、裁判所はこの規定には特35条の報奨金は含まれていないとして、原告の主張を認めませんでした。

原告は、使用者である被告は、従業者であった原告に対し、退職により相 当の対価請求権が消滅したとの誤解を生じさせて相当の対価請求権の行使を 妨害してはならない信義則上の義務を負うところ、原告は、本件退職条項の 存在により、被告を退職したことでもはや何らの請求権も行使することがで きないと誤解していたのであるから、被告は上記の義務に違反したものであ ること、被告は、被告発明規程について、カネカと同様に、実績補償金を支 払う旨の規定を置くべきであったし、これが容易であったことから、被告が 相当の対価請求権及び被告発明規程に基づく登録報奨金請求権について消滅 時効を援用することは、信義則違反又は権利濫用に当たるなどと主張する。
しかし、被告発明規程の本件退職条項においては、発明者である従業員が 退職した場合に「報奨金を受ける権利」が消滅する旨が定められており、こ の「報奨金」が「譲渡報奨金」及び「登録報奨金」(被告発明規程10−1) を指すことは明らかである一方、特許法35条3項に基づく相当の対価請求 権の消長に関する定めは存在しない。したがって、被告発明規程に本件退職 条項が置かれていたからといって、そのことによって直ちに、被告の従業者 に対し、被告を退職した場合に、被告発明規程に基づき支給されるべき報奨 金請求権に加え、特許法35条3項に基づく相当の対価請求権までも行使す ることができなくなるとの誤解を生じさせるものではない。加えて、原告の 陳述書(甲18)の記載からは、被告が、原告に対し、本件退職条項が被告 を退職した後は相当の対価請求権の行使ができないことを定めたものである 旨を積極的に説明したといった事実が存したとはうかがわれず、他の証拠に よっても、当該事実を認めることはできない。したがって、本件において、 被告が原告主張に係る信義則上の義務に違反したとは認められない。
また、使用者が契約や勤務規則において定めを置くか否かにかかわらず、 従業者は、特許法35条3項に基づく相当の対価請求権を行使することがで きるから、被告発明規程に実績に対応する相当の対価支払に関する定めが置 かれていなかったからといって、直ちに、被告の消滅時効の援用が信義に反 するということはできず、権利の濫用になるということもできない。
(2) なお、原告は、被告の親会社であるカネカが、本件各発明の実施品である EDコイルを有望な商品であると考えて、被告の研究者である原告をカネカ における製品開発に専従させたこと、被告から本件各発明に係る特許を受け る権利を譲り受けていること、本件について交渉段階から積極的に関与して いることに照らすと、カネカは、その子会社である被告を現実的統一的に管 理支配しているといえ、そのようなカネカが実績補償に関する規定を置いて いる以上、被告が、相当の対価請求権についての消滅時効を援用し、原告に 実績補償をしないことは、信義則上許されない旨を主張する。 しかし、カネカと被告との間に親会社と子会社の関係が存在するとしても、 それぞれは独立した法人であることに変わりはなく、両者の業種や雇用体系、 業務の実情などは異なり得るから、そうした実情に合わせて、被告が実績補 償に関する規定を設けるか否かを独自に判断したとしても、直ちに、問題視 されるべき事態であるとまではいえない。したがって、原告が主張する上記 の事情は、いずれも、被告による消滅時効の援用が信義則違反であることを 基礎付けるに足りるものではない。
(3) 以上によれば、原告の前記主張はいずれも採用することができず、被告が 原告の被告に対する特許法35条3項に基づく相当の対価請求について消滅 時効を援用することが信義則違反又は権利濫用に当たるということはできな い。

社内規定の該当部分です。
10−1 会社は発明の内、特許、実用新案及び意匠につき、発明者に対し以下に定める報奨金を支払うものとする。ただし、実用新案は自動登録なので登録報償金を支払わないものとする。
(1) 譲渡報奨金
会社が出願した発明1件(発明者が複数の場合でも1件とする)に対して金●(省略)●を支払う。社外発明者には支払わない。
(2) 登録報奨金(実用新案を除く)
登録になった発明1件(発明者が複数の場合でも1件とする)に対して金●(省略)●を支払う。社外発明者には支払わない。
・・・
10−3 発明者である従業員が定年以外の理由で会社を退職した場合、報奨金を受ける権利は、退職と同時に消滅する。

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平成29(ワ)7391等  職務発明の対価請求  特許権  民事訴訟 令和4年3月24日  大阪地方裁判所

 職務発明の報奨金として、約200万円が認められました。なお、使用者と従業者等と間で、十分な意見聴取や説明がなされなかったという原告の主張は、「協議の状況に不合理な点は認められない。」と判断されました。\n

 被告は、本件発明2−1を国内において自ら実施している。 前記(1(2)ア)のとおり、「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」 (同条4項)とは、使用者等が当該発明を実施することによって得られる利益の全 体ではなく、その全体の額から通常実施権の実施によって得られる利益の額を控除 した残額(独占の利益)をいうと解されるところ、特許権者が自ら特許発明を実施 している場合の独占の利益は、使用者等が自ら発明を独占的に実施し、他社に当該 特許発明の実施を禁止したことに基づいて得られた利益に相当する売上額(超過売 上)と解される。この場合、相当の対価は、「対象商品(実施品)の売上合計額× 超過売上の割合×仮想実施料率×対象特許発明の貢献の程度×(1−被告の貢献割 合)×共同発明者間における原告の貢献割合」によって算定するのが相当である。 また、特許の登録前であっても、特許出願人は、出願公開後発明を実施した第三 者に対して一定の要件の下に補償金を請求することができること等を踏まえると、 出願公開以降の売上額には一定の独占的利益があると見るのが相当である。もっと も、出願公開から登録までの期間においては、登録されて排他的な独占権を有する か否かが未確定であることに鑑み、売上の2分の1を独占の利益の検討の基礎とす るのが相当である。
・・・
エ 超過売上の割合
(ア) 対象製品群2の販売による市場占有率の変化等
対象製品群2は、平成16年10月から被告の 200シーズン年度モデルとして 販売され、●(省略)● また、被告のルームエアコンの国内の出荷台数は、2003 冷凍年度から 200冷凍 年度にかけて増加し、国内4位から3位に上昇するだけでなく、1位及び2位との 出荷台数の差が縮小したことを踏まえれば、200冷凍年度においては、その市場 占有率が上昇したものと認められる(前記(2)キ(ウ))。このような被告の市場占有 率の上昇には、当該時期に被告の製造販売する●(省略)●対象製品群2の販売が 直接貢献していることがうかがわれる。 なお、原告は 2004 シーズン年度モデルによる被告の市場占有率の上昇等につい ても指摘するが、本件発明2−1は当該モデルでは実施されていないことから(弁 論の全趣旨)、当該モデルの市場占有率の変動と本件発明2−1との間に関連性は 認められない。
(イ) 本件発明2−1の技術的意義及び代替技術等
a 本件発明2−1は、ルームエアコン室内機に搭載される熱交換器の配置につ いて、前面熱交換器の設置角度 α を特定すると共に、クロスフローファンの翼の出 口角 β2 を特定することで、所定風量を得るのに必要なファンモータ入力や回転数 を低減することができ、省エネを図ることができる点にその技術的意義がある。ま た、設置角度 α を 65°以上とすることで、熱交換器からの水滴がファンへ流入して 室内ユニットの外部へ吹き出されること等を防止し、また、ユニットの奥行きをコ ンパクトにできるという効果もある(前記(1)ア(オ)【0024】)。
b もっとも、省エネ、ドレン水の確実な処理及び室内機ユニットのコンパクト 化という課題自体は本件発明2−1の出願以前から存在するものである。また、当 該課題に対して、熱交換器を逆 V 字状にすること、前面熱交換器と背面熱交換器と の連結部を送風ファンの中心軸よりも前面側に位置させ、かつ前面熱交換器の傾斜 を急な配置にすること、熱交換器を通過した空気がファンの翼に当たる際の空気の 流れを滑らかにし、空気流の剥離等を防ぐために、翼形状を変更することといった 着想やその技術自体も、従来から存在した(前記(2)ウ)。 したがって、本件発明2−1は、熱交換器の配置とクロスフローファンの翼形状 (出口角)の双方を、同時に、具体的な数値をもって特定したところに技術的な意 義があるといえる。
c また、ルームエアコンの省エネ性能の向上を図る技術には、室内機及び室外\n機それぞれを見ても、熱交換器、圧縮機、モータ、送風機等に係る種々の技術が存 在する。しかも、被告のほか、国内の競合他社であるパナソニック、ダイキン、東\n芝、日立等は、それぞれ、省エネのための独自の基本的な技術を有しており、● (省略)●被告以上又は同等の市場占有率を保持していたと認められる(上記(2) イ、キ(ウ)、ク(イ)及び(ウ))。 加えて、本件発明2−1は熱交換器の配置とクロスフローファンの翼形状を特定 するものであるから、それぞれ独自のユニット、熱交換器、ファン等の形状や配置 を工夫して製品化している競合他社において、本件発明2−1をそのまま実施する ことにより直ちに性能が向上するといった性質の技術であるとは思われない。\n
d 以上の事情を総合的に考慮すると、本件発明2−1に係る超過売上の割合は 50%と見るのが相当である。
オ 仮想実施料率
本件発明2−1に係る仮想実施料率を検討するにあたっても、上記エの事情は同 様に考慮されるべきである。 また、経済産業省知的財産政策室編「ロイヤルティ料率データハンドブック」 (平成22年8月31日発行。乙 A4)によれば、技術分類を「機関またはポンプ」 とする対象例(16件)では、平均ロイヤリティ料率 3.1%、標準偏差 1.4%、最大 値 5.5%、最小値 0.5%である。また、技術分類を「照明;加熱」とする対象例(1 6件)では、平均ロイヤリティ料率 3.9%、標準偏差 2.2%、最大値 9.5%、最小値 1.5%である。 ●(省略)●
以上の事情のほか、本件発明2−1がルームエアコン室内機における熱交換器の 配置とクロスフローファンの翼の出口角の数値を限定したものであり、このような 最適な数値を検討する行為自体は当業者が自ずと行うものであること等を踏まえる と、本件発明2−1の仮想実施料率は、3.5%とするのが相当である。
カ 対象特許発明の貢献の程度
(ア) 対象製品群2には、本件発明2−1のほか、●(省略)●特許が実施されて おり(乙 A10、乙 B27)、また、被告カタログ2)で訴求されている代表的な技術に\n関連する特許は、●(省略)●(乙 A35、乙 B59)。 このうち、被告のポキポキモータに係る技術は、従来のモータ以上にコイルを密 に巻き、それによりモータ効率を向上させるという基本的・汎用的な技術である点 で、室外機の圧縮機モータ及び●(省略)●それぞれ重要な技術といえる。
(イ) また、被告は、対象製品群2の販売に当たり、被告カタログ2)においてムー ブアイを大々的に取り上げると共に、そのほかにも脱臭機能、換気機能\、サプリメ ントエアー機能といった付加価値的な部分をも顧客に対し強く訴求している。当時、\n既にルームエアコンは家庭に広く普及し、省エネ等に係る技術も各社製品において 採用されていたと考えられることを踏まえると、付加価値的なものとはいえ、この ような他社製品と差別化を図る技術は消費者に対する訴求力を高め、対象製品群2 の売上に大きく貢献したものと見るのが相当である。もとより、本件発明2−1も、 熱交換器の配置を工夫することで室内機のコンパクト化といった訴求力のある効果 を実現し、また、同時にシロッコファンの翼形状の角度を数値限定することで省エ ネ効果等を実現していることから、対象製品群2の売上に貢献したと見られるもの の、その貢献の程度が他の技術と比較して特に顕著であったことまではうかがわれ ない。
(ウ) 以上の事情のほか、対象製品群2の売上高には、室内機のみならず室外機の 売上高も含まれること等を踏まえると、対象製品群2における本件発明2−1の貢 献の程度としては、1%と見るのが相当である。
キ 使用者の貢献割合
●(省略)●
さらに、対象製品群2の開発にあっては、熱交換器やクロスフローファンの翼形 状のみならず、被告カタログ2)で訴求されたものをはじめとする種々の開発項目や 試験項目があり、これをクリアして製品化に至ることは、被告の有する多くの蓄積 された技術や物的・人的な体制があってこそ可能になるといえる。\nこのほか、量産化及び販売も含めて被告が●(省略)●多額の費用を投入してい ること、長年にわたりルームエアコンを販売してきた被告及び被告ブランドの知名 度が対象製品群2の販売実績に大きく貢献していると見られることなどを踏まえる と、被告の貢献割合は 95%とみるのが相当である。
ク 共同発明者間における原告の貢献割合
本件発明2−1は、熱交換器の配置及びクロスフローファンの出口角の数値を限 定した点に意義があるところ、原告は、流体解析の技術を用いて、その数値解析に 中心的に寄与したことが認められる(前記(2)ア(イ))。 もっとも、発明当時、被告においても既に流体解析の技術及びこれを支援する装 置等が存在し(乙 A16、乙 B44)、●(省略)●これらの事情に加え、●(省略)●(弁論の全趣旨)、●(省略)●などを踏まえると、共同発明者間における原告の貢献割合は 60%とみるのが相当である。
ケ 小括
以上のとおり、対象製品群2の国内実施分に係る●(省略)●、超過売上の割合 50%、仮想実施料率 3.5%、対象特許発明の貢献割合 1%、被告の貢献割合 95%、共 同発明者間における原告の貢献割合 60%と認められる。これに反する原告及び被告 の各主張はいずれも採用できない。 その結果、本件発明2−1に係る相当の対価の額は、●(省略)●となる。 ●(省略)●*50%*3.5%*1%*(100-95%)*60%=●(省略)● もっとも、被告は、本件各発明2について、既に特許を受ける権利の承継を受け た対価として原告に対し●(省略)●を支払済みであることから(前記2の2(7) ウ)、これを差し引くと●(省略)●となる。 したがって、原告は、被告に対し、昭和34年法35条3項に基づき、●(省略) ●の相当対価請求権を有する。
・・・
(ア) 協議の状況
前記(2)のとおり、被告は、●(省略)●従業員側の意見を聴取する機会も十分\nに設け、これに対応した行動を取ったものといってよい。 したがって、●(省略)●原告を含む従業者と被告との間で行われた協議の状況 に不合理な点は認められない。 これに対し、原告は、被告規程が知財部門により一方的に定められ、少なくとも 原告が協議に関与していないなどと主張する。しかし、上記のとおり、●(省略) ●の過程において、被告の従業員に対する説明及び従業員からの意見聴取は十分に\n行われたものと見られることに鑑みると、被告規程●(省略)●が知財部門により 一方的に定められたとの評価は当たらない。また、原告も●(省略)●質問等の機 会を現に与えられていたことから、原告が協議に関与していないということもでき ない。そもそも、使用者等と従業員等との協議として、個々の従業員が規程内容の 作成に個別的ないし直接的に関与する手続を担保することまでが求められていると は解されない。その他原告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する原告 の主張は採用できない。
(イ) 開示の状況
前記(2)及び(3)のとおり、被告は、●(省略)● 以上のような状況を踏まえれば、●(省略)●被告規程の基準の開示の状況に不 合理な点は認められない。 これに対し、原告は、開示された基準では従業員が自ら実績補償金を算定できず、 また、●(省略)●労力を要するため、開示の状況は不合理であるなどと主張する。 しかし、被告において被告規程に係る基準が開示されていることに争いはない。 その上、被告では、●(省略)●が開示されていたのであるから、従業員は、これ と被告規程を照合すれば、実際の実績補償金の算定過程についても一定程度理解可 能であったとうかがわれる。それ以上に、●(省略)●についてまで、基準として\n開示しないことをもって不合理とはいえない。 また、●(省略)●基準の開示として不合理とすべきほどに特段の労力を要する と見るべき具体的な事情も見当たらない。 したがって、この点に関する原告の主張は採用できない。
(ウ) 意見聴取の状況
●(省略)●最終的に、原告と被告との間で意見等の相違は解消されなかったと 見られるものの、原告からの意見聴取の状況という観点からは、被告による原告か らの意見聴取は実質的に尽くされたといってよい状況にあり、被告の一連の対応に つき不合理ないし不誠実と評価すべきものはないというべきである。 これに対し、原告は、十分な意見聴取や説明がなされなかったとして縷々主張す\nる。しかし、その内容は、被告細則の解釈や発明に対する評価の程度に対する不満 を述べるものであって、被告における原告からの意見聴取の手続自体が不合理であ ることを基礎付けるものではない。 したがって、この点に関する原告の主張は採用できない。
・・・
(ウ) 以上のとおりの●(省略)●基準の策定に際して使用者等と従業員等との間 で行われた協議の状況、策定された当該基準の開示状況のほか、●(省略)●の定 めたところにより相当の利益を与えることが不合理であると評価することはできな い。
これに対し、原告は、被告が●(省略)●対して真摯に回答しなかった旨などを 主張する。しかし、被告は、●(省略)●協議が不合理であるとはいえない。その 他原告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用できな い。 なお、原告は、●(省略)●被告規程における実績報奨金の算定基準の内容面及 びその適用の不合理性をも主張する。しかし、●(省略)●これをもって不合理と は必ずしも認められない。この点に関する原告の主張は採用できない。
ウ 小括
以上の事情を総合的に考慮すると、被告の原告に対する●(省略)●支払は、い ずれも不合理であるとは認められない。これに反する原告の主張は採用できない。 したがって、本件各発明3に係る相当の対価支払につき、平成16年法35条5 項は適用されないから、本件発明3−2−2に係る不法行為に基づく損害賠償請求 も含め、その余の争点について判断するまでもなく、同項に基づく原告の請求はい ずれも認められない。

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平成30(ワ)866 職務発明の対価 特許権 民事訴訟 令和3年12月27日 大阪地方裁判所

 職務発明であるとして1億円を越える請求を求めましたが、裁判所は独占的利益を得ていないとして請求を棄却しました。なお、原告は45万円の報奨金を受け取っていました。

ウ コスト面について
(ア) 本件工場の建設に係る設備投資について,実行予算●(省略)●に対し,実\n際には●(省略)●の建設費用を要し,本件増設工事に更に●(省略)●の費用を 要したことで,合計●(省略)●を要したこと(前記(3)ウ(イ)a)に加え,被告に とって,本件工場は本件乾式分別法による設備を導入した初めての事例であるのに 対し,溶剤分別法による設備を設置した事例は既に FOJ 等において存在し,FVO 建設当初における溶剤分別設備に係る投資額の見積もりは本件設備の見積もりに比 して比較的正確になされたと考えられること等を踏まえると,本件工場建設に係る 設備投資額が溶剤分別法による設備を導入する場合と比して安価であったとは考え 難く,少なくともその点は不明と見るほかない。
(イ) 比例費については,平成27年〜平成29年の FVO 等の各 SOS パーツの加 工費に係る試算結果を比較した場合,FVO は FOJ 等に比して大幅に低額である。 また,分別設備に係る最終製品の比例費を見ても,FVO は,●(省略)●FOJ 等 に比して幾分低額である(以上につき,前記(3)ウ(イ)b)。もっとも,具体的な金 額は不明ながら,本件工場の稼働開始から平成26年までは FVO において●(省 略)●ことも考慮に入れる必要がある。
(ウ) 歩留まりについては,当初より乾式分別法による歩留まりが溶剤分別法より も低いことが前提とはされていたものの,本件増設工事を経て更に設計上の分別収 率は●(省略)●に引き下げられ,実際の歩留まりも●(省略)●という状況にあ る(前記(3)ウ(イ)c)。
(エ) これらの事情を総合的に考慮すると,本件乾式分別法は,必ずしも溶剤分別 法に比してコスト面で明確に有利とはいえない。
エ 採算性について
FVO パーツ品の採算性については,販売限利率を見る限り,FVO パーツ品は, CBE として販売されたもの及び SOS パーツ単体で販売されたもののいずれも,総 じて FOJ パーツ品よりも低い(前記(3)ウ(イ)d)。すなわち,FVO 品は,SOS パ ーツ製造の比例費を溶剤分別法により製造された FOJ 品に比して抑えられている にもかかわらず,FOJ 品よりも利益への貢献の程度は低いといえる。 なお,販売限利率は,分別方法による利益率の相違等をそれ自体として表すもの\nでは必ずしもないが,販売限利は,その算出に当たってその時々の相場と過去の実 績等が考慮され,変動費に相当する見込額として位置付けられるものであることな どに鑑みると,販売限利率に基づき収支採算性を評価することには一定程度の合理 性があると考えられる。
オ CBE 販売市場の状況について
CBE の国際的な需要は,平成12年〜平成20年にかけて急激に拡大し,それ 以降も,平成28年まで,緩やかな拡大傾向を示しているところ(前記(3)エ(ア)), 被告グループのシェアが本件工場の稼働によって増大したことを裏付けるに足りる 客観的な資料はない。むしろ,平成19年〜平成28年における被告グループのシ ェアは●(省略)●で増減していると見られると共に,この変動はココアバターと の価格変動との関連性がうかがわれる(前記(3)エ(イ))。これを見る限り,本件各 発明の実施は,被告による競合他社からのシェア奪取にはつながっていないと考え られる。 また,被告との合計で CBE 市場の約8割のシェアを占める AKK 及び LC は, CBE 製造にあたり,いずれもシア脂から SOS パーツを製造・精製する工程におい て,溶剤分別法によっている。本件各発明はシア脂を原料とする分別にも利用でき るとされているものの,実際には,各設備の規模等のほか,本件工場の稼働による 被告のシェア増大といった事情もないことをも踏まえれば,競合他社にとって,多 額の設備投資を行って本件乾式分別法による設備を導入するメリットは乏しいと思 われ,本件各特許権の存在いかんにかかわりなく本件乾式分別法による設備の導入 は容易ではないと考えられるのであって,本件各特許権の存在が競合他社による本 件各発明の実施を回避させているとまではいえない。 このことは,原告との係争が表面化した後とはいえ,被告が特許料不納付により\n本件各特許権を消滅させ,又はその方向で対応する旨の判断を示していることとも 平仄が合うといえる。
なお,油脂分別技術の開発の方向性としては,安全性及びコスト面での問題を抱 える溶剤分別法から,最も持続可能性の高い方法とされる乾式分別法に向かうとし\nても,現状においては乾式分別法もなお問題点を抱えており,溶剤分別法も依然と して選ばれる場面があるとされていることなどに鑑みると,少なくとも本件各特許 権の存続期間においては,油脂分別法として溶剤分別法と乾式分別法はなお選択的 な関係にあるものと見るべきであって,その意味で,溶剤分別法は本件各発明の代 替技術として位置付けられる。
カ 小括
以上の事情を総合的に考慮すると,本件において,本件各特許権に係る通常実施 権の実施によって得られる利益の額を超えて被告が利益を得たと認めるに足りる証 拠はないというべきである。すなわち,被告は,本件各特許権により独占の利益を 得たとはいえない。
キ 原告の主張について
原告は,被告が本件各特許権により独占の利益を得ているとして,縷々主張する。 しかし,FVO パーツ品及び FVO 品の品質については,原告は主にパイロットレ ベルでの乾式分別法による SOS パーツの数値を根拠とするにとどまり,また,実 際に本件設備を用いて製造した FVO パーツ品を用いた分析結果等の信用性につき 疑義を抱くべき事情は見当たらない。また,コスト及び採算性については,前記の とおりである。
さらに,溶剤分別法に係る各種規制の存在も,溶剤分別法による設備の導入の障 害になり得るものではあっても,その新設が不可能ないし著しく困難であるとまで\n見るべき事情はない。このため,前記のとおり,油脂分別法として溶剤分別法はな お乾式分別法の代替技術といえる。 本件発明賞や本件経営賞の受賞等も,FVO における本件乾式分別法による設備 の導入に対する肯定的な評価を裏付けるものではあるものの,必ずしも被告に独占 の利益が生じたことを前提とするものではない。 被告の有価証券報告書に FVO から被告への特許料支払が記載されていること (甲74)についても,その支払が本件各特許権の実施に係るものであるかが明ら かではない上,本件各特許権の特許権者が被告であること,グループ会社とはいえ 被告と FVO とは法人格を異にすることなどに鑑みると,これをもって,被告に本 件各特許権による独占の利益が生じていることを示すものとは必ずしも見られない。 その他原告が縷々指摘する事情を踏まえても,この点に関する原告の主張は採用 できない。

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令和3(ネ)10057  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年11月17日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 原告が、共同発明者か否かかが争われました。1審、控訴審とも発明者ではないと判断しました。

控訴人は,1)平成22年6月24日,3本スリットフィンの風上側 のスリットをなくすことにより座屈強度の向上を図ることができること を着想し,同日,Eに対し,フラットフィンの強度計算をFにしてもら うように指示し,その後,2本スリットフィンの座屈強度計算もFにし てもらうように指示したこと,2)その結果,2本スリットフィンの座屈 強度は当初フィンの2.5倍で,フラットフィンとほぼ同一であったが, Eは,2本スリットでは伝熱性能が低下するとして,3本のスリットを\n風下側に押し込めることを提案し,控訴人はこれを承諾したこと,3)そ の後,控訴人及びEによる試験を経て,同年7月下旬頃,本件発明が完 成したことを主張する(本判決による補正後の原判決4頁21行目から 5頁20行目まで)。
(イ) そこで,前記(ア)の控訴人の主張について検討する。
控訴人は,控訴人メール1において,Eに対し,フラットフィンの座 屈強度の解析を指示し,Eは,Eメールにより,●(省略)●を報告し た。しかし,それらの●(省略)●に記載されていたものであり(前記 (3)ケ(イ)),このうち●(省略)●に提出されたものであり(前記キ),E らが住環研において●(省略)●を示すものであった。
また,控訴人は,Eメールに対して返信した控訴人メール2において, ●(省略)●と記述したが,これは,Eメールに示された●●を見て, 控訴人がその時に,●(省略)●と認識したというにとどまるものと認 められ,それをもって,控訴人が,Eらに先んじて,当初フィンを2本 スリットフィンに変えることを着想したとはいえない。 さらに,控訴人がEに対して2本スリットフィンの座屈強度計算を指 示したことを認めるに足りる証拠はなく,Eが3本のスリットを風下側 に押し込めることを提案し,控訴人がこれを承諾したこと,その後,控 訴人及びEによる試験を経て,平成22年7月下旬頃,本件発明が完成 したことなどの控訴人の主張に係る事実を認めるに足りる証拠もない。 そうすると,仮に,伝熱性能を確保しつつ座屈強度を向上させるため\nに2本スリットフィンとすることが本件発明の特徴的部分に係る着想で あるとしても,控訴人がそれを着想したとは認められず,控訴人は,本 件発明の発明者とは認められない。

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1審はこちら。

◆令和1(ワ)5059

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令和2(ネ)10048  職務発明対価等請求控訴事件,同附帯控訴事件  その他  民事訴訟 令和3年5月31日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 競馬ゲーム発明のうち、出願しなかった部分について、ノウハウに基づく報奨金(特35条)を求めました。知財高裁は1審と同じく否定しました。

 当裁判所も,原審と同様に,本件ノウハウに係る控訴人の被控訴人に対する 対価請求権が存するということはできないと判断する。 その理由は,次のとおりである。
(1) 本件ノウハウは,特許登録がされていない職務発明として主張されてい るものであるところ,特許性を有する発明でなければ,これを実施すること によって独占の利益が生じたものということはできず,特許法35条3項に 基づく相当の対価を請求することはできないと解される。 そこで,以下,控訴人が主張する内容に基づき,本件ノウハウが特許性を 有する発明といえるか否かについて検討する。
(2) 原審及び当審における控訴人の主張によれば,控訴人が主張する本件ノ ウハウの特徴は,次のとおり理解することができる。
ア 完全確率抽選方式の下で,何らの工夫もせずに予想ゲームと馬主ゲーム\nとを組み合わせた競馬ゲームを設計すると,馬主ゲームにおいて購入する 馬の能力値によって馬ごとのメダル獲得の期待値に不公平が生じるため,\nプレイヤーが能力値の高い馬ばかりを購入するようになり,馬主ゲームの\nゲーム性が損なわれてしまう。他方で,各馬の能力値を同一にすることに\nよってこの問題を解消しようとすると,今度は予想ゲームのゲーム性が損\nなわれてしまう。このように,上記のような競馬ゲームの設計においては, 馬主ゲームにおける馬ごとのメダル獲得の期待値の不公平さを解消して 公平性を確保しつつ,現実の競馬同様のゲーム性を持たせる工夫をする必 要があるという課題があった。
イ 本件ノウハウは,上記の課題を解決するために,1)プレイヤー馬につい て,能力値とは別に,一定の割合でメダル数と相互に換算される活力値と\n呼ばれる指標を導入した上で,2)馬主ゲームにおいて,レースに出走する ために消費する活力値(以下「消費活力値」という。)とレース結果に応じ て増加する活力値(以下「増加活力値」という。)の期待値とを等しくする ことにより,馬主ゲームにおける馬ごとのメダル獲得の期待値の不公平さ が生じないようにするものである。 また,消費活力値及び増加活力値の算出においては,3)同じレースに複 数のプレイヤー馬が出走する場合もあるところ,プレイヤー馬の能力値が\n当初は未確定であることから,各プレイヤー馬の増加活力値,消費活力値 及び能力値について,一旦暫定値を用いて計算し,必要に応じて数値を再\n調整する計算方法が採られている。 さらに,4)活力値は,メダルとして目に見える賞金や出走料とは異なり, プレイヤーに認識されない形で増減され,次回以降の競馬ゲームに影響を 与えるように導入されており,これにより,ゲーム性が醸成されている。 (以下,上記1)ないし4)の点を,順に「特徴1)」などという。) (3) 以下,控訴人が主張する本件ノウハウが特許性を有する発明といえるか 否かにつき,特徴1)ないし4)を基に検討する。
ア 特徴1)について
(ア) 予想ゲームのみの競馬ゲームを設計する場合であれば,各馬の能\力 値を定めた上で,能力値に応じた適切なオッズを定めることにより,公\n平性及びゲーム性を確保することができるといえるが,これにゲーム内 容が全く異なる馬主ゲームを組み合わせて新たな競馬ゲームを設計し ようとするのであれば,能力値とは別の指標を導入する必要が生じるこ\nとは,いわば必然のことであるといえる。
(イ) また,上記(2)アによれば,完全確率抽選方式の下で予想ゲームと馬\n主ゲームとを組み合わせた競馬ゲームを設計する場合,馬主ゲームで購 入する馬の能力値に差があることが原因となって馬ごとのメダル獲得\nの期待値に不公平さが生じることにより,馬主ゲームのゲーム性が損な わる事態が生じ得るが,他方で,馬の能力値の差をなくすことによって\nこの問題を解消しようとすると,今度は予想ゲームのゲーム性が損なわ\nれてしまうというのであるから,これらの問題を解決するためには,能\n力値を調整するのみでは足りず,能力値とは別の指標を導入する必要が\nあることは明らかである。
(ウ) 以上によれば,特徴1)における活力値の導入は,完全確率抽選方式 の下で予想ゲームと馬主ゲームとを組み合わせた競馬ゲームを設計す\nる場合において,必然的に必要となる指標を導入したものにすぎないと いうべきである。
・・・・
オ 小括
以上検討したところによれば,本件ノウハウにおける活力値の導入につ いては,必然的に導入すべき指標を用いたものにすぎないというべきであ る上,活力値を用いた期待値の算出等についても,課題解決のために当然 に採られ得る手段であるか,又は通常よく採られる方法を超えるものでは ないというべきである。
(4) なお,控訴人は,本件ノウハウにおいては,ペイアウト率90%のメイン ゲームと同100%のサブゲームとが組み合わされ,ゲームセンターと顧客 との間の利害のバランスがとられている点が画期的であるとも主張する。 しかしながら,ペイアウト率をいくらに設定するかという問題は,それ自 体としては,技術の問題ではなく,取極めの問題にすぎないから,控訴人主 張の点は,本件ノウハウの特許性を根拠付ける事情には当たらない。
(5) 以上検討したところによれば,本件ノウハウは,特許性を有する発明であ るとは認められず,これを実施することによって被控訴人に独占の利益が生 じたということはできないから,本件ノウハウが控訴人によって職務発明と して開発され,被告製品2において実施されたものであったとしても,控訴 人は,被控訴人に対し,本件ノウハウにつき,特許法35条3項に基づく相 当の対価を請求することはできない。

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平成30(ネ)10062  職務発明対価請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和2年6月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 SONYのフェリカ関連の職務発明の対価について、約2959万円が認められました。1審では,約3181万円でしたので、やや減額です。

 超過売上げの割合
(ア) 超過売上げの割合は40%と認めるのが相当である。その理由は,原判決100頁6行目から102頁19行目までの記載のとおりであるからこれを引用する。
(イ) 一審原告は,70ないし100%を主張し,一審被告は10%を主張 する。具体的には,一審原告は,本件各製品のいずれについても,これ らを独自に製造販売し得る技術力を有する著名な大企業が多数存在する から,仮にこれらの競合他社に本件各発明をライセンスした事態を想定 した場合,一審被告が得たであろう仮想の売上高は実際の売上高からい くら少なく見積もっても7割程度は喪失していたことが明らかである旨 主張し,他方,一審被告は,FeliCa事業は,一審被告及びJR東日本の 主導により構築されたインフラストラクチャーの市場影響力及び策定さ\nれた標準規格の通用力等に基づき,特許権の排他的効力を利用すること なく,事業が拡大・維持されてきたのであるから,独占の利益は極めて 小さく1割を超えることはない旨主張する。 そして,これらの主張が前提とする,強力な競合他社の存在や,一審 被告とJR東日本等が構築した強力な市場影響力の存在や標準規格の通\n用力等については,それぞれに裏付けとなる証拠が存在するといえるか ら,本件においては,これらの事情を総合的に考慮した上で,超過売上 げの割合を決定する必要がある。すなわち,双方が主張する事情の一方 のみに基づいて,極端に高い,あるいは極端に低い超過売上げの割合を 決定することはできないのであって,全体としてみれば,原判決が指摘 するとおり,半分をやや下回る40%を超過売上げの割合と認定するの が相当である。
ウ なお,一審被告は,本件各特許の特許権登録前の実施等に関しては,独 占の利益は極めて小さいから,このことを考慮すべきであると主張する。 たしかに,出願公開前の段階においては,特許法上何ら特別な保護は認 められていないのであるから,この段階における特許発明の実施について 独占の利益を肯定することは困難というべきである。しかし,出願公開後 においては,一定の条件の下に補償金支払請求権が認められ,この限度で 特許法上の保護が与えられているのであるから,特許権登録後の2分の1 の限度では独占の利益が認められるというべきである。一審被告は,特許 権登録前の段階では,特許が成立しているかどうかも定かではないと主張 するが,現実に特許が成立している以上,この点を重視するのは相当では ない。
以上を前提に考えると,特許1〜3,5〜7は,対価支払請求権の計算 対象前である平成12年以前に出願公開がされているから(甲1〜3,5 〜7),平成13年以降出願登録までの全期間について2分の1の限度で 独占の利益が認められることになるが,特許4は平成16年12月2日, 特許8は平成20年7月17日,特許9は平成13年7月19日,特許1 0は平成13年10月18日,特許11は平成17年1月27日に出願公 開されているので(甲4,8〜11),出願公開日の翌月である特許4に ついては平成17年1月,特許8については平成20年8月,特許9につ いては平成13年8月,特許10については平成13年11月,特許11 については平成17年2月から各特許権登録までの期間について2分の1 の限度で独占の利益を認めるのが相当である。
エ 仮想実施料率
(ア) 本件実施発明の意義は,原判決102頁21行目から103頁11行 目までに記載のとおりであるからこれを引用する。
(イ) 本件実施発明の実施に係る諸事情を考慮すると,本件実施発明に係る 各発明についてそれぞれ仮想実施料率を定め,その仮想実施料率をいず れも0.3%と認めるのが相当である。この認定に当たって考慮した事 情については,原判決102頁21行目から104頁15行目まで及び 104頁19行目から105頁3行目までの各記載を引用するほか,本 件各証拠(当審で新たに提出された多数の証拠を含む。)に基づき認定 できる事情とそれに基づく判断を次のa以下のとおり補足する。 なお,一審原告は,本件においては仮想実施料率ではなく限界利益率 を用いるべき旨主張するが,限界利益率を用いるべき理由は見当たらず, その主張は採用することができない。
a 当事者双方が提出した資料から認定できる実施料率等のうち,本件 において参考になると思われるものとしては,次のようなものがある。
(a) 経済産業省知的財産政策室編「ロイヤルティ料率データハンドブ ック」(甲98)によれば「器械」分野のロイヤルティ料率の平均 値は3.5%,最大値は9.5%,最小値は0.5%,標準偏差は 1.9%であり,「電気」分野の平均値は2.9%,最大値は9. 5%,最小値は0.5%,標準偏差は1.5%であり,「コンピュ ータテクノロジー」分野の平均値は3.1%,最大値は7.5%, 最小値は0.5%,標準偏差は2.0%であり,「精密機器」分野 の平均値は3.5%,最大値は9.5%,最小値は0.5%,標準 偏差は1.9%である。
(b) IT業界のライセンスの実務においては,必須特許の累積ロイヤ ルティ料率は最大限5%とされていることが多い(乙381,38 2)。
(c) 標準規格であるMPEG(動画圧縮)やデジタルテレビチューナ ーのパテントプールにおいて,きわめて多数の対象特許(ARIB ではピーク時に600件)についてのライセンス料は,最終製品の エンドユーザーに対する販売価格の●●とされた(乙390)。
(d)FeliCa開発の過程で一審被告がフランステレコムから同社保有特 許のライセンスを持ち掛けられた際の同社の当初の申出額は,1件\n当たり●●●●●●●●であった(乙396)。
b 上記aの(b)〜(d)掲記の各証拠はいずれも一審被告が提出したもので あるところ,一審原告は,(b)及び(c)については,FRAND宣言の有 無等の点で本件とは事情が異なること,算定の基礎となる製品価格が 最終製品の価格であるからICチップの価格を基礎とする本件には適 用できないこと等を主張し,(d)については,フランステレコムの有し ていた特許は本件各特許に比してFeliCa事業の実現のための重要性が 格段に劣ること等を主張する。 しかしながら,類似の実施料率に基づいて仮想実施料率を算定しよ うとする場合,仮想実施料率を算定すべき事例と類似事例との間には, 多かれ少なかれ違いが存することは免れないのであるから,違いの存 在を考慮しつつ,仮想実施料率を算定せざるを得ないところ,一審原 告主張の事情が,このような観点から参考資料とするのにも適さない といえるほど決定的な事情であるとは認められない。一審原告の主張 は,採用することができない。
c 両当事者は,aで掲げたもののほかにも,参考とすべき実施料率例 が存在すると主張するが,以下のとおり,その主張を採用することは できない。
(a) 一審原告は,一審被告の内部資料(乙329)においてICチッ プのライセンス単価は2004年度で●●●,2010年度で●● ●とされており,各年度のICチップの単価はそれぞれ●●●●, ●●●●であるから,料率としてみるとそれぞれ25%,20%に なる旨主張する。 しかしながら,上記内部資料は,FN社の設立に先立つ一審被告 内部の会議の資料として同社の事業計画を記載したものであって (乙389),不確実な予測にとどまる。そして,同資料にいう\n「ICチップ」は,携帯電話用に新たに開発されるものであるから 本件各製品とは別の製品であり(乙389),しかも,携帯電話特 有の技術(その多くは共同出資者のNTTドコモが保有するものと 推認される。)も多数用いられるので,本件各特許がどの程度重要 性を持つか定かでない(なお,携帯電話はそれ自体に電源を有する から,少なくとも,リーダライタ等からICチップへ無線で給電す ることに関連する技術である本件特許2及び8が実施されないこと は確かである。)。 よって,上記資料は,本件の仮想実施料率を認定するための資料 として用いるのは適切でない。
(b) 一審原告は,発明協会研究センター編「実施料率(副題)技術契 約のためのデータブック」第5版(甲99)によれば,「電子計算 機・その他の電子応用装置」の実施料率の平均は33%であるから, これも参考にすべき旨主張する。 しかしながら,上記データブックによれば,実施料率は,契約の 件数的に見れば,1%から10%程度の範囲に相当数が集中してい るが,例えば,実施料率40%の契約件数が50件以上あるなど, 高率の実施料率の範囲内で契約件数が突出しているところが数か所 あり,その結果,平均実施料率が高率化していることが認められる ところ(甲99,172頁の図2−20−2参照),高率の実施料 率による契約件数が突出している部分については,特殊な事情が存 在している可能性を否定することができない。そうであるとすると,\n特殊事情を考慮しない単純平均としての平均実施料率にどれだけの 意味があるのかは疑問といわざるを得ず,この数値を参考にするこ とはできない。
(c) 一審被告は,デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー 合同会社作成の報告書(乙53)を根拠として,FeliCa関連事業の 累積利益率は●●●●であるから,これを前提に25%ルール(利 益のうち,知的財産権が貢献している部分はその25%であるとし て,その価値を計算する方法)又は利益三分法(営業利益は,資本 力,営業力,技術力の3つから構成されるとして,営業利益の3分\nの1が技術力=知的財産権の価値であるとする方法)を適用すると, FeliCa関連の知的財産全体の適正実施料率は0.42%(25%ル ール)〜0.56%(三分法)であるところ,FeliCaに用いられた 知的財産権には特許権以外にノウハウもあること,特許権は本件各 特許のほかに少なくとも20件は存在すること(当審における補充 立証により裏付けられる事実)からすれば,本件各特許の適正実施 料率は更に低い旨主張する。 しかしながら,このように仮想実施料率を算定するベースとなる 利率を利益率とする必然性はないし,この方法によった場合,例え ば,何らかの事情によって事業の利益率がマイナスになってしまっ た場合には,事業に用いられた技術の知的財産権の価値がいくら高 くても仮想実施料率を算定し得ないこととなるという不都合が生ず ることも考慮する必要がある。以上の点を考慮すると,FeliCa関連 特許権の価値が営業利益に適正に反映されているかどうかについて 深刻な争いがある本件においては,営業利益率をベースとして仮想 実施料率を算定することは相当ではないというべきである(なお, aで取り上げた実施料率に基づいて検討する場合に比べると,利益 率をベースとした場合には,それだけで実施料率が一桁小さくなる ことになるが,このような大きな違いを正当化するような事情が存 するかどうかは疑問である。)。
d そこで,aで指摘した料率を前提として,本件における適切な仮想 実施料率を検討する。
aで掲げた各料率のうち,(c)のパテントプールに関する事例は,最 終製品の価格に対する実施料率が問題とされている点で,料率が低め に設定されている可能性があり,また,(d)のフランステレコムが申し\n出たライセンス料率は,その対象となる発明の意義等が本件実施発明 と比べてどの程度なのかが明らかではなく,いずれも参考資料として の重要性は高くないものといわざるを得ない。したがって,(a)と(b)を 中心に検討するのが相当である。
まず,(a)を見ると,本件実施発明が関連すると考えられる「器械」 「電気」「コンピュータテクノロジー」「精密機器」の分野における 平均実施料率は,2.9%〜3.5%である。また,(b)によれば,I T業界におけるライセンスの実務においては,必須特許の累積ロイヤ ルティ料率は最大限5%であるというのであるから,平均累積ロイヤ ルティ料率は,上記の平均実施料率とそれほど異ならないであろうこ とが予想される。そして,FeliCa技術は,Suicaを初めとする交通系 カードに採用されたほか,電子マネーカードにも採用されるなど,そ の技術的意義は高いと認められるから,この点は,仮想実施料率を高 める方向に働くと考えられる一方,本件実施発明は,その内容やその 技術的意義に照らし,FeliCa技術の中核的技術に当たると考えられる ものの,FeliCaには本件特許発明以外の技術も用いられており,それ らも相応の意義を有すると考えられるから(一審原告は,他の発明に はほとんど価値がないと主張し,一審被告は,本件実施発明の技術的 意義は極めて低いと主張するが,いずれも極端な主張であって,採用 することはできない。),FeliCa技術に対して支払われるべき実施料 のすべてを本件実施発明に帰属させるべきであると考えることはでき ず,この点は,本件実施発明に対する仮想実施料率を下げる方向に働 く要素であると考えざるを得ない。 これらの点を総合考慮すると,本件実施発明に対して支払われるべ き仮想実施料の料率は,11件の特許発明全体で3.3%,1件当た り0.3%程度と認めるのが相当である。
e 一審原告は,上記a(a)の実施料率を参考にするとしても,本件実施 発明の価値は極めて高いのであるから,「器械」分野における実施料 率の最大値である9.5%を採用すべきであると主張するが,9. 5%という実施料率は,平均実施料率(3.5%)を3標準偏差分 (標準偏差1.9%×3=5.7%)を超えて上回るものであり,こ のような実施料率の主張は非現実的といわざるを得ない(平均値+3 標準偏差=3.5%+5.7%=9.2%であるから,9.5%は, 3標準偏差分を上回る数値である。なお,統計学上,データの99. 7%は平均値の3標準偏差の範囲内に収まるはずであるから,一審原 告の主張は,その範囲をはずれた,通常では考えられないような例外 的な実施料率を主張していると評価せざるを得ない。)。 他方,一審被告は,被告各製品においては,本件実施特許のほかに も一審被告保有の特許及びノウハウ等が実施されているから,被告各 製品の価格に対するライセンス料が高額となりすぎる「スタッキン グ」の問題が生じ得る旨主張するが,上記の計算は,スタッキングの 問題も考慮した上での計算であるから,一審被告の主張は,上記の結 論を左右するものではない。
(3) FN社に対する実施権の現物出資に伴う利益
ア この点に関する認定判断は,原判決106頁17行目の「また,」から 22行目末尾までを次のとおり改めるほか,原判決の認定判断(105頁 14行目から107頁16行目までの記載)のとおりであるからこれを引 用する。 「そして,乙48その他の本件の証拠上,上記の出資に当たり,出資の目 的となった特許出願に係る発明のそれぞれにつきその軽重が考慮された とは認められないものの,これまで認定した諸事情を踏まえると,本件 対象実施権に係る発明の技術的意義は高いと認められる一方,他の出資 の対象となった特許発明は,件数は非常に多いものの,その中に本件対 象実施権に係る発明に匹敵するような技術的価値を有するものが存在し たことを裏付ける的確な証拠は存在しない。そうであるとすると,本件 対象実施権の価値を算出するのに当たり,単純に,件数に応じた計算を するのは相当ではなく,むしろ,本件対象実施権は,現物出資の対象と なった実施権の半分の価値を有するものとみて,その価値は●●●●● ●●●●(●●●●●●●●●×2/3×1/2)であると認めるのが 相当である。」
イ 一審原告は,現物出資後にFN社から一審被告に間接的に還元される利 益の額も考慮に入れるべきであり,具体的には,FN社の売上額のうち本 件各製品の売上げに係るものを抽出した上で,この売上げについて一審被 告がFN社から受領すべき相当なライセンス料を,現物出資に当たっての 評価に基づき計算された価値に加算すべきである旨主張する。 しかしながら,現物出資の後にFN社から一審被告へ利益の還元がなさ れたとしても,それは,一審被告が,FN社へ特許権等の独占実施権を出 資した対価として得たFN社の株式を保有し続け,FN社がその営業努力 により事業利益を上げ,かつその利益の一部を株主である一審被告に還元 することによるものである。かかる利益還元は,あくまで見込みとしてで はあるが,FN社への現物出資の評価に当たって評価され尽くしているも のであるから,これを一審原告の主張のように,現物出資の対価としての 評価額に更に加算するのは相当でない。 したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
(4) 第三者に対する実施許諾に伴う利益
両当事者の当審における主張も踏まえて,次のとおり認定判断する。
ア 証拠(乙334,342,425)及び弁論の全趣旨によれば,次の事 実を認定することができる。
(ア) 2008年(平成20年)以降,JR東日本が販売するSuicaカード のうちには,ICチップを一審被告以外の他社(以下「A社」とい う。)が製造し,最終製品としてのカードのJR東日本への納入までの 商流に一審被告が介在していないものがある。
(イ) そのICチップの製造個数は,2019年(平成31年)3月までの 累計で●●●●●●●●●●である。
(ウ) これらのICチップには,一審被告が開発したFeliCaOSが搭載され ている。
(エ) 一審被告はこれらのICチップ1個当たり●●●●●●●●●●●● ●●をA社から受領している。 イ 一審原告は,FeliCaOSでは本件各発明が実施されていること,OSラ イセンスには本件各発明の実施を許諾する趣旨が含まれていることが明ら かであるから,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●そのまま独占の 利益として算定されるべきものである旨主張する。 しかしながら,●●●●●●●●●●●を本件各特許の実施許諾料と同 視して独占の利益に加算するのは相当でない。なぜなら,弁論の全趣旨に よれば,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●,本件各発明を実施するステップも含まれ てはいるが,ICチップの動作に関連するそれ以外のステップも多数含ま れており,本件各発明を実施するステップに対応する部分は極めて少ない と考えられるからである(一審原告は,これに対して的確な反論反証をし ていない。)。 そして,一審被告が●●●●●●●●●●●●●●,本件各発明を実施 するステップが占める割合を具体的に算定するに足りる資料はないが,そ の割合は極めて少ないと考えられることを考慮し,次のとおり,●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●を第三者に対する実施許諾に伴う独 占の利益と考えることとする。
(計算式)
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
4 争点(3)(本件発明について一審被告が貢献した程度)について
(1) 本件全証拠を総合すると,本件発明について一審被告が貢献した程度を9 5%(発明者らの貢献度を5%)と評価するのが相当である。その理由は, 原判決の108頁5行目から114頁19行目までの記載のとおりであるか らこれを引用する。
(2) 当審において,両当事者はそれぞれ,自己に有利な事実を原判決が適切に 認定し考慮していないと主張する。 しかしながら,例えば,一審原告は,FeliCa事業が一審被告の社内で断念 されかかった時期においても一審原告は開発の継続を進言するとともに独力 で研究を続けたこと等を一審原告の貢献として主張するが,これを一審被告 の側から見れば,一審原告の人件費及び研究費用等の負担を甘受して,実用 化・事業化の目途の立たないFeliCaの研究に注力するのを容認していた,と いうことになる。このように,長期継続的な雇用関係のもとでの従業者の職 務発明においては,従業者が独力で成し遂げた発明に見えるものであっても, 使用者による有形無形の貢献が大きく寄与しているのが常態であり,本件各 発明もその例に漏れない。また,逆に,使用者による貢献がいかに大きくて も,個々の従業者の創意工夫なくしては発明は生まれないのであり,このこ とに対する評価を欠いては職務発明制度そのものが成り立ちえない。 以上の点を踏まえ,当事者双方の主張について更に補足すると以下のとお りである。
まず,一審原告は,1)非接触式ICカードに関し,一審被告の技術的蓄積 は皆無であったから,本件各発明は,一審原告がほぼ独力で行ったものであ る,2)一審原告は,本件各発明を行ったばかりではなく,その事業化につい ても大きな貢献(例えば,香港の主要交通機関におけるFeliCa採用の実現に 当たっては,一審原告は一人で関係者に対する説明等を行ったし,JR東日 本におけるFeliCaの採用に当たっても,一審原告が,関係者に対する説明等 必要な交渉に積極的に関与した。)を行った,3)一審被告は,FeliCaの事業 化に関する経営判断を誤るなど,本件各発明から収益を上げるについて大き なマイナスをもたらしており,その貢献は極めて低いなどといった主張をし ている。しかしながら,1)についていえば,本件各発明は,仮に直接それに 関わる技術は開発されていなかったとしても,原判決が認定するとおり,そ れまでの関連技術や知識の蓄積があって初めて行われたものと認められるの であって,一審原告の主張は,このような技術や知識の継承の重要性を無視 するものであるといわざるを得ない。また,2)についていえば,香港の主要 交通機関におけるFeliCaの採用に当たっては,一審被告の企業規模や財務の 安定性も大きな要素となっていたこと,JR東日本におけるFeliCaの採用に ついても,一審被告とJR東日本との密接な関係が大きな要素となっていた ことは既に指摘したとおりであるし,一審原告の活動に関しても,その背後 には,一審被告の支援やバックアップ等があったことは容易に推認できると ころである。さらに,3)については,経営判断は,表面に出ない事情も含め\nた諸般の事情に基づいて行われるものであって,その当否を軽々に論ずるこ とはできないのであって,一審原告の主張は,これら様々な事情を考慮しな い結果論の嫌いを免れないものといわざるを得ない。以上の点を考慮すると, 一審原告の主張をそのまま採用することは困難である。 他方,本件各発明の重要性も既に指摘したとおりであるし,一審原告が, 関係者に対する技術説明等,単なる技術開発にとどまらない貢献を行ったこ とも事実であると認められる。一審被告の主張は,このような一審原告の貢 献を軽視しているといわざるを得ず,やはり,そのままその主張を採用する ことはできない。 以上の次第であって,両当事者の当審における補充主張は,上記(1)の判断 を左右しない。
5 争点(4)(発明者間における一審原告の貢献の程度)について
本件全証拠を総合すると,各本件実施発明の共同発明者間における一審原告 の貢献の程度は,共同発明者各自の貢献の程度を均等として評価するのが相当 である。その理由及び具体的な割合は,原判決の114頁21行目から115 頁18行目までの記載のとおりであるからこれを引用する。 一審原告は,本件各発明に係る技術的創作を行ったのは一審原告であり,他 の者は,一審原告の指示に基づいてプログラミングをするなど,技術的創作に 該当しない関与を行ったにすぎないという趣旨の主張をし,その陳述書(甲9 0〜92)にもこれに沿う部分があるが,F(乙162),A(乙163)は, これに反する陳述をしており,いずれの陳述が正当であるかは,にわかに決し 難いところがある上に,発明報告書(乙27〜36)等の客観的証拠にも一審 原告の主張を裏付けるに足りる記述は存在しない。したがって,一審原告の主 張は,そのまま採用することは困難であるといわざるを得ない。

◆判決本文

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◆平成27(ワ)1190

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令和1(ネ)10064  職務発明対価請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和2年3月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 職務発明の対価が争われました。1審では約226万円でしたが、2審では約256万と少し高くなりました。理由は伏せ字のため、不明です。

 1審被告は,本件各発明は,●●●●●●●●●●●●●●●●● ●「最たる会社主導事業」であるFAMプロジェクトの中でされたも のであり,本件各発明の1審原告を含む共同発明者らは,かかるプロ ジェクトのメンバーとして,1審被告の業務命令に従って各研究開発 に従事したにすぎないこと,発明者は,給与及び身分等を保障され, 研究開発に係るリスクを負わないのに対し,使用者は事業の失敗のリ スクを負っていることを斟酌すれば,本件各発明により1審被告が受 けるべき利益についての1審被告の貢献度は,原判決認定の95%を 優に超えるものであり,99%と認められてしかるべきである旨主張 する。 しかしながら,前記認定のとおり,1審被告の指摘する諸事情を踏 まえても,本件各発明の内容及びその技術的意義,本件各発明の完成 に至る経過に照らすと,本件各発明は1審原告を含む本件各発明の発 明者らの創意工夫がなければ,発明の完成に至らなかったものであり, 1審被告の貢献度は,95%と認定するのが相当であるから,1審被 告の上記主張は採用することができない。」
・・・
「カ 当審における1審原告の補充主張について
1審原告は,(1)1審原告は,生分解性ポリマーの研究を行っていた こともあり,環境負荷低減に対する意識が高くFAMの実験過程にお いて大量の廃水を生み出す状況を危惧し,FAM生産において廃水リ サイクルを行うことを想起し,廃水リサイクルの方法について具体的 な実験計画を策定し,平成9年12月8日,●●●●技術会議におい て,廃水リサイクルを行うことや,廃水リサイクルの具体的な実験を 今後行っていくことについてプレゼンテーションをし,平成10年1 月頃,オープンセル構造のFAMを調製することに成功し,遅くとも\n同年4月頃までには,1審原告一人による創作活動の結果,3回の廃 水リサイクルを実現し,この時点で,144号特許の請求項1ないし 6,12ないし15,17記載の発明は完成したこと,(2)共同発明者 のBは,1審原告の補助者にすぎず,Bが同年4月から同年8月末頃 まで行った中和技術に関する実験は,1審原告の具体的な指導の下で 行われたものであり,また,Nは,Bの行う実験を一部担当したにす ぎないし,C及びBは,遠心分離に関する実験を行ったものの,実際 の廃液を使用していないため,144号発明等とは無関係であること, (3)1審原告は,144号特許の出願の願書に筆頭発明者として記載さ れ,明細書原案を作成したことからすると,144号発明等の共同発 明者間における1審原告の貢献度は,低く見積もっても90%以上で ある旨主張する。 しかしながら,上記(1)については,前記認定事実に照らすと,1審 原告一人による創作活動の結果,3回の廃水リサイクルを実現した時 点で,144号特許の請求項1ないし6,12ないし15,17記載 の発明が完成したものと認めることはできない。 次に,上記(2)については,前記認定のとおり,1審原告が挙げる共 同発明者のB,N及びCに関する諸事情は認めることはできない。 さらに,上記(3)については,1審原告が明細書原案を作成したこと を裏付ける的確な証拠はないし,また,144号発明等に係る特許出 願において1審原告が筆頭者に記載されたからといって,そのことか ら直ちに1審原告の貢献度が客観的にみて高いことが根拠付けられる ものでもない。

◆判決本文

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平成31(ワ)7788  職務発明対価請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年11月6日  東京地方裁判所

 職務発明の対価請求訴訟です。時効消滅したと判断されました。

1 争点3(消滅時効の成否)について
(1) 消滅時効は「権利を行使することができる時」から起算される(民法16 6条1項)ところ,特許法35条3項は,「従業者等は,契約,勤務規則そ の他の定めにより,職務発明について使用者等に特許を受ける権利…を承継 させ…たときは,相当の対価の支払を受ける権利を有する。」と規定してい るから,同条項に基づく相当の対価の支払請求権は,原則として,特許を受 ける権利を承継させたときに発生し,その時点から,権利を行使することが できることになり,その時点が本件対価請求権の消滅時効の起算点となるも のというべきである。もっとも,勤務規則その他の定めに,使用者等が従業 者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には,その 支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解さ れる(最高裁平成13年(受)第1256号同15年4月22日第三小法廷 判決・民集57巻4号477頁参照)。
(2) これを本件についてみるに,前記のとおり,被告規則には特許出願時及び 特許登録時に譲渡補償金を支払う旨の明示的な規定はあるものの(同9条), いわゆる実績補償金については,「会社が職務発明に基づく発明の実施また は実施権の許諾もしくは処分により相当の利益を得たときは,会社は当該発 明者に褒賞金を支給することがある。」(同10条)と規定するのみで,一 義的に明確な支払時期の定めがあるということはできない。被告規則10条が,前記のとおり,「職務発明に基づく発明の実施または実施権の許諾」等を前提として褒賞金の支給について定めていることに照らすと,発明者である従業者等は,登録された特許に係る発明が実施又は実施 権の許諾等される以前に褒賞金の支払を求めることはできないものの,当該 発明が実施又は実施許諾等された場合には,褒賞金の請求権の行使が可能に\nなるということができる。 そうすると,被告規則に定められた褒賞金の支払時期については,本件発 明の実施又は実施許諾等により利益を取得することが可能になった時点,す\nなわち,特許権の設定登録時又はその実施若しくは実施許諾時のうちいずれ かの遅い時点であると解するのが相当である。
(3) これに対し,原告は,被告規則10条は,本件発明の実施がされる限り, 各事業年度の決算の結果を踏まえ,毎年4月1日に褒賞金を支払う旨を定め たものであることを前提とし,少なくとも平成20年度及び平成21年度の 実施に係る褒賞金については,消滅時効が完成していないと主張する。 しかし,同条は,被告が本件発明の実施等により相当の利益を得たときは, 発明者に褒賞金を支給することがあると規定するのみであり,支払時期につ いては一義的に明らかではないというべきであり,同条に基づき,褒賞金の 支払時期が毎年4月1日に到来すると解することはできず,また,被告にお いてそのような慣行や支払実態があったと認めるに足りる証拠もない。
(4) 第2の2(2)アのとおり,本件特許の登録時は平成7年12月8日であり, また,同(4)アのとおり,被告が平成元年11月頃から本件特許の実施品であ る被告旧製品を第三者に継続的に出荷していたことは当事者間に争いがない から,被告規則10条に基づく褒賞金,すなわち本件対価請求権の支払時期 は,平成7年12月8日となる。そうすると,その翌日である平成7年12月9日が消滅時効の起算日となり,同日から10年後の平成17年12月8日の経過をもって消滅時効が完成したので,本件対価請求権は時効消滅したものと認められる。

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平成29(ワ)1468 職務発明対価請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月11日  東京地方裁判所

 職務発明の対価として約230万円の請求が認められました。

3 争点2(本件各発明に対する被告の貢献度)について
 特許法35条4項は,従業者等と使用者等の利害を調整する趣旨の規定であり, 同項の「使用者等が貢献した程度」を判断するに当たっては,使用者等が「その発明 がされるについて」貢献した事情のほか,特許の取得・維持●(省略)●に要した労 力や費用等を,使用者等がその発明により利益を受けるについて貢献した一切の事情 として考慮し得るものと解するのが相当である。 そこで,検討すると, とおり,被告が,本件各発明に先立 ち,●(省略)●同イ認定のとおり,平成5年には,MらによるHIPEの重合物の 研究を行わせ,その中では,同ウ認定のとおり,平成8年以降の研究開発において用 いられたものと類似する組成の吸水性スポンジを作製するなどするとともに,HIP Eを連続で重合することや二段階で重合することを開示する131号特許を出願す るに至っていること,(2)同ウ認定のとおり,平成8年には,M,N及び原告にHIP Eの研究を指示して平成5年当時よりもより性能の高いFAMの作製を行っており,\n●(省略)●などしていたこと,(3)同エ認定のとおり,●(省略)●平成9年10月 にはFAMプロジェクトを立ち上げ,多数の研究員を研究開発に充てるとともに,同 (6)認定のとおり,FAMの研究に必要な機器や設備の調達を含めた開発費用を提供し, また,特許の取得及び維持の費用を支出し 認定のとおり,●(省 略)●本件各発明についての被告の貢献に係る事情であるといえる。 これに対し,本件各発明の発明者らは,被告の費用負担の下,被告に雇用された後 に得た知識経験に基づき,FAMプロジェクト内で知見を共有しつつ,発明に至った にとどまる。
そうすると,本件各発明が原告ら共同発明者の努力及び創意工夫によって創作され たことは確かであるが,他方で,共同発明者らは,被告による費用負担の下,被告入 社後に得た知識経験に基づき,FAMプロジェクトでの職務を通じて,本件各発明を 完成させるに至ったとみることができる。また,●(省略)●被告が●(省略)●そ のための研究開発を行っていたのみならず,●(省略)●本件各発明の共同発明者の みならず,その他の部署に属する多数の従業員の協力によるものであるということが できる。
以上の事情を総合考慮すると,本件各発明により被告が受けるべき利益につい て,被告の貢献度は高く,その貢献度は95%と認めるのが相当である。
原告の主張について
ア 原告は,(1)被告が平成5年に研究開発していたHIPEの重合物は,FAMと は異なるものであり,しかも,被告は,平成6年2月に同研究開発を中断しているこ と,(2)原告が,平成8年4月から自発的にFAMに関する研究開発を開始してこれを 主導し,同年6月5日,上記の被告の研究開発における原料とは異なるスチレン系の 原料を用いて初めてW/O比が45倍以上のFAMの作製に成功し,実質的な発明者 が原告である2件の特許出願につながっており,かつ上記の成果が,●(省略)●検 討を加速させたのであり,原告の貢献なしに平成9年10月以降のFAMの研究はな し得ないものであって,Mは管理者,Nは補助者として関与したにすぎないこと,(3) FAMプロジェクト立ち上げ後も原告のみがFAMの研究を行っていたこと,(4)原告 が,●(省略)●FAM製造に必要な特殊な攪拌用の羽根の情報を引き出してこれを 特注し,あるいは●(省略)●ほか,平成9年10月以降の被告におけるFAMの研 究に必要な種々の機器・設備の選定,導入等の研究環境の整備も行ったことなどの事 情を指摘して被告の貢献度は50%を超えるものではない旨主張する。
イ しかしながら,次のとおり,原告の指摘する事情は認めることができないか, 左右し得ず,原告の主張を採用することはできない。 原告の指摘する(1)の事情について 確かに131号特許に開示されたHIPE重合物の組成は,平成8年4月以降の研 究開発の対象の組成とは異なるが,前記 のとおり,被告が平成5年当時に得た知 見にも本件各発明に関連するものがある以上,同年当時に行われた研究成果は,その 後の研究開発の基礎となり,本件各発明にも寄与していると推認され,本件各発明に 対する被告の貢献に当たるというべきである。
原告の指摘する(2)の事情について
原告は,FAMの研究開発を自発的に行うこととしたきっかけの一つとして,平成 8年4月19日のミーティングで,Mから,●(省略)●HIPEの供給元を探して いることを聞いたことを認めている(甲23)が,Mがミーティングで●(省略)● 対応をする旨の被告の決定がされていたとみるのが自然であるし,それ以降の被告内 のHIPEの研究状況を見ても, 原告がMの指示を受けて研究 を進めたり,原告のみならずM及びNも,自らHIPE重合物を作製したり,原告と 役割を分担したりするなどして研究を進めるなどし,研究成果を3名で共有するなど もしているほか,これらの研究結果を踏まえてされた特許出願においても,発明者は 原告,M及びNの3名とされている。そうすると,平成8年4月以降に被告において 行われた研究は,被告の指示により上記3名が共同して行ったものというべきであり, 原告が自発的に行い,Mは管理者として,Nは補助者として関与した旨の原告の主張 は認めることができない。
原告の指摘する(3)の事情について
前記1 ないし 認定したとおり,FAMプロジェクト開 始後は,参加した研究員がそれぞれ役割を分担して研究を行い,定期的にミーティン グを行って知見を共有しながら研究を進めていたものということができるから,原告 のみがFAMの研究を行っていた旨の主張は認めることができない。
原告の指摘する(4)の事情について
原告が●(省略)●FAM製造に必要な特殊な攪拌用の羽根の情報を引き出してこ れを特注したり,あるいは●(省略)●が実現したり,原告が,このような情報を得 たことがあったとしても,Mと●(省略)●が話題とされていること(乙26)にも 照らせば,他の被告の従業員も関与する中で,被告の従業員の一員の立場で行われた ものとみるのが自然であり,そうすると,そのことをもって直ちに原告の本件各発明 に対する貢献度が大きいといえるものではない。また,原告が導入すべき機器や設備 を提案していたとしても,最終的にその機器や設備の導入を決定し,その資金を提供 したのは被告である以上,上記の提案の存在をもって,原告の本件各発明に対する貢 献の度合いに大きな影響を与える事情であるとはいえない。
被告の主張について
被告は,●(省略)●全社を挙げてFAMの研究開発を進めたこと,●(省略)● 被告の対応が大きく寄与していることなどを主張して,被告の貢献度は99%を下ら ない旨主張するが,被告の指摘する上記事情が被告の貢献として認められることは前 のとは認められず,被告の主張を採用することはできない。
・・・・
5 相当の対価の額
以上を前提に相当の対価の額を計算すると次のとおりとなる(いずれも1円未 満の端数は切り捨て。)。
ア 144号発明等 各発明につきそれぞれ●(省略)●円(●(省略)●円×0. 05×1/4=●(省略)●円) イ 642号発明等 各発明につきそれぞれ●(省略)●円(●(省略)●円×0. 05×1/9=●(省略)●円) ウ 811号発明等 各発明につきそれぞれ●(省略)●円(●(省略)●円×0. 05×2/5=●(省略)●円) 係る国内
出願及び国内特許登録について,同アの規定に従った出願補償金及び登録補償金の支 払をしている 国内特許に係る発明に係る相当の対価からこれらを控除 する必要がある。そして,同規定の定めに従えば,原告についての支払額は次のとお りと認められる(1円未満の端数があるものはいずれも切り捨て。)。
ア 144号発明 ●(省略)●円 出願補償金 ●(省略)●円(●(省略)●円×2×1/5=●(省略)●円) (乙114の1,2,乙129) 登録補償金 ●(省略)●円(●(省略)●円×1/5=●(省略)●円)
イ 642号発明 ●(省略)●円 出願補償金 ●(省略)●円(●(省略)●円×1/6=●(省略)●円)(乙 120の1,乙130) 登録補償金 ●(省略)●円(●(省略)●万円×1/9=●(省略)●円)
ウ 811号発明 ●(省略)●円 出願補償金 ●(省略)●円(●(省略)●円×1/5=●(省略)●円)(乙 124,131) 登録補償金 ●(省略)●円(●(省略)●円×1/5=●(省略)●円) 国内特許に関し 相当の対価 となる。
ア 144号発明 ●(省略)●円(●(省略)●円−●(省略)●円=●(省略) ●円)
イ 642号発明 ●(省略)●円(●(省略)●円−●(省略)●円=●(省略) ●円)
ウ 811号発明 ●(省略)●円(●(省略)●円−●(省略)●=●(省略) ●円)
以上によれば,相当の対価の額は合計226万4061円である。
ア 144号発明等 ●(省略)●円(●(省略)●円+●(省略)●円×3=● (省略)●円)
イ 642号発明等 ●(省略)●円(●(省略)●円+●(省略)●円×5=● (省略)●円)
ウ 811号発明等 ●(省略)●円(●(省略)●円+●(省略)●円×2=● (省略)●円)
エ アないしウの合計 226万4061円

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平成30(ネ)10090  自由発明対価等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年5月28日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 大学と企業の共同研究の結果生まれた特許について、大学の研究者が、企業に対して職務発明の対価を請求しました。知財高裁(2部)は、1審と同じく、大学に対する職務発明であると判断しました。

 前記(1)のとおり,サントリーがA教授と控訴人に対し,研究期間を平 成15年8月1日から同年12月31日までとして委託した研究については,同年 12月8日に被控訴人に対してその報告書が提出されている(甲2)ところ,その 研究の内容は,健常な日本人成人52名を対象に行った日本版「アーバンス」神経 心理テストを紹介し,同テストが加齢に伴う高次脳機能障害の簡便かつ正確な評価\nに有用であるというものであって,本件発明の内容とは異なる。これに対し,同時 期に,サントリーが控訴人に対して,上記研究とは別の内容の研究を委託したこと を認めるに足りる証拠はない。そして,1)控訴人は,平成15年当時,金沢大学の 助教授として,記憶障害や注意・集中力障害などの高次脳機能障害に関する基礎的\nかつ臨床的研究を行っていたこと,2)後記のとおり,控訴人は,南ヶ丘病院の患者 に対するアラビタ投与の前後における認知機能の比較試験について,兼業許可を受\nけていたとは認められないことに照らすと,上記比較試験に係る研究は,金沢大学 における控訴人の職務であるというべきである。したがって,本件発明は,サント リーが控訴人に対して委託した研究に基づくものではなく,控訴人の金沢大学にお ける職務に属するものというべきである。
イ 前記(1)のとおり,金沢大学とサントリーは,平成16年12月27日, 本件共同研究契約を締結したものと認められる。そして,前記(1)のとおり,本件 共同研究契約書では,研究目的及び内容を「アラキドン酸含有油脂の高次脳機能に\n及ぼす影響を検討する」としているのであるから,本件共同研究契約書の記載と本 件発明の内容とは一致するというべきである。また,本件共同研究契約書では,控 訴人の研究分担を「神経機能の測定」としているが,研究目的及び内容についての\n上記の記載に照らすと,「神経機能の測定」とは,本件発明の効果の検証のために\n被験者に対して認知機能の比較試験を行うことを意味するものと理解することがで\nきる。そうすると,本件発明は,本件共同研究の対象とされたものと認められる。 なお,本件共同研究契約書には,研究実施場所として金沢大学のみを記載し,南 ヶ丘病院は記載されていないが,本件共同研究において,研究の場所を金沢大学に 限定しなければならない理由はなく,本件共同研究契約書も,研究の場所を金沢大 学に限定する趣旨で上記の実施場所の記載をしたものとは認められない。 したがって,本件共同研究を南ヶ丘病院で行うことは禁止されておらず,南ヶ丘 病院で本件発明のための研究を行えば,同研究は,金沢大学における控訴人の職務 に属するものというべきである。 この点,控訴人は,平成16年2月,金沢大学に対して南ヶ丘病院での兼業許可 申請を行い,金沢大学からその許可を得ていると主張する。\nしかし,前記(1)のとおり,控訴人が主張する兼業許可申請に係る申\請書(甲2 3)には,兼業先である南ヶ丘病院で行う職務として,脳神経外科外来及び入院患 者の診療と記載されており,同記載を前提に兼業許可がされているのであるから, 南ヶ丘病院で患者に対するアラビタ投与の前後における認知機能の比較試験を行う\nことについてまで兼業の許可がされているわけではない。
ウ 前記(1)のとおり,金沢大学の職務発明取扱規程においては,●●●●・・・ ●●●●●●●●●,控訴人は,金沢大学知的財産本部長に対し,本件発明の発明届出書を提出し,これを受けて,金沢大学知的財産本部長は,控訴人に対し,本件発明を職務発明であると認定した旨の職務発明認定結果通知書を発送し,控訴人は,上記発明届出書に,共同発明の場合に添付する共同研究契約書として本件共同研究契約書の写しを添付し た。前記アのとおり,本件発明は,控訴人の金沢大学における職務に属する発明であることから,控訴人は,金沢大学に対して,本件発明について,上記職務発明の届出をしたものと認められる。
エ 以上のとおり,控訴人が,金沢大学の職務として本件発明をしたことは 明らかであって,本件発明のうちの控訴人の持分に係る部分を,サントリーを「使 用者等」とした職務発明と認めることはできない。
オ 控訴人は,本件発明のための研究は,本件共同研究契約が締結される前 に事実上終了しており,また,本件原出願は,本件共同研究契約を締結してから半 年程度でされているが,本件発明は,半年程度で完成するものではないと主張する。 しかし,既に認定したとおり,南ヶ丘病院の患者に対するアラビタ投与の前後に おける認知機能の比較試験に係る研究は,金沢大学における控訴人の職務であって,\nその研究の成果を利用して本件発明が完成し,本件原出願がされたのであるから, 本件発明のための研究が,本件共同研究契約締結前にかなりの程度行われており, 本件原出願は,本件共同研究契約を締結してから半年程度でされているとしても, 本件発明は金沢大学の職務発明であるとの認定を何ら左右するものではない。
カ 控訴人は,甲18契約に係る契約書には,本件発明のための研究内容に 沿った記載があるから,甲18契約を締結することによって,本件発明のための研 究が,サントリーと金沢大学との間で締結された共同研究契約に含まれるものにし ようとしたという趣旨の主張をするが,甲18によると,甲18契約は,本件共同 研究の研究期間後の平成18年4月19日に締結され,それ以降の研究を対象とし ていることが認められるから,控訴人の上記主張は理由がない。
キ 控訴人は,原審における本人尋問において,本件発明の発明届出書に本 件共同研究契約書を添付したのは,金沢大学からそのようにするよう言われ,また, 金沢大学の学長からのプレッシャーにより,本件共同研究契約書を添付することを 断れなかったからであり,本件発明が本件共同研究によって発明されたものとは認 識していなかった旨供述する(13,30頁)。 しかし,本件発明が本件共同研究によってされたものではないにもかかわらず, 上記のような理由から,本件共同研究契約書を本件発明の発明届出書に添付するこ とは考え難いというべきである。 控訴人は,金沢大学の学長からプレッシャーをかけられたと供述するが,そのプ レッシャーの内容やプレッシャーがかかる理由が不明であり,また,本件共同研究 契約書の添付について,金沢大学側と交渉をしたこともうかがわれず,控訴人の上 記供述は不自然である。 したがって,控訴人の上記供述は信用することができない。
(3) 控訴人の主位的請求は,本件発明のうちの控訴人の持分に係る部分がサン トリーを「使用者等」とする職務発明であることを前提とするところ,前記(2)の とおり,同部分はサントリーを「使用者等」とする職務発明ではないから,その余 の点(争点2,3)について判断するまでもなく,控訴人の主位的請求は理由がな い。
2 争点4,5(予備的請求1の成否及び額)について\n
(1) 控訴人は,本件発明に係る特許を受ける権利の控訴人の持分をサントリー に譲渡したかについて,以下検討する。
ア 前記1(2)のとおり,控訴人は,金沢大学における控訴人の職務として 本件発明をしたところ,前記1(1)のとおり,控訴人は,金沢大学知的財産本部長 に対し,本件発明の発明届出書を提出し,これを受けて,金沢大学知的財産本部長 は,本件発明のうちの控訴人の持分に係る部分を職務発明と認定した上で,控訴人 に対し,本件発明を職務発明であると認定した旨の職務発明認定結果通知書を発送 しているのであるから,本件発明に係る特許を受ける権利の控訴人の持分は,金沢 大学に承継されたものと認められる。そして,このことは,前記1(1)で判示した とおり,本件共同研究契約において,同契約の成果である発明に係る特許を受ける 権利のうち控訴人の持分は金沢大学が承継する旨記載されていることにも沿うもの ということができる。 なお,特許を受ける権利が共有に係るときは,同権利を譲渡するには,他の共有 者の同意が必要である(特許法33条3項)としても,前記1(1)で判示した本件 共同研究契約における共同研究による発明の取扱いに関する定めからすると,Bは, 本件発明に係る特許を受ける権利の控訴人の持分を金沢大学に承継させることにつ いて同意しているものと推認できるし,実際にも,乙10証書及び甲24証書に よって,Bが上記の同意をしていることが確認されている。 控訴人も,乙11証書を作成して,本件発明に係る特許を受ける権利の控訴人の 持分を金沢大学に承継させたことを確認している。 一方,前記1(2)のとおり,本件発明は,本件共同研究の対象であるところ,前 記1(1)で判示した本件共同研究契約における共同研究による発明の取扱いに関す る定めからすると,サントリーが控訴人から本件共同研究の対象である本件発明に 係る特許を受ける権利の控訴人の持分の譲渡を受けることは予定されておらず,控\n訴人とサントリーとの間で,本件発明に係る特許を受ける権利の控訴人の持分をサ ントリーに譲渡することを内容とする契約が締結されたことを認めるに足りる証拠 はないし,サントリーが本件発明に係る特許を受ける権利の控訴人の持分を譲り受 ける動機その他の事情も認められない。 したがって,本件発明に係る特許を受ける権利の控訴人の持分がサントリーに譲 渡されたと認めることはできない。
イ これに対し,控訴人は,乙10証書を根拠に,本件発明に係る特許を受 ける権利の控訴人の持分がサントリーに譲渡されたと主張する。 しかし,前記1(1)で判示した経緯からすると,乙10証書(乙10,42)及 びこれと同内容の甲24証書(甲24,乙41)は,控訴人とBが本件発明に係る 特許を受ける権利のそれぞれの持分を,控訴人は金沢大学に,Bはサントリーに譲 渡するとともに,控訴人はBの譲渡について,Bは控訴人の譲渡についてそれぞれ 同意したことを確認する趣旨で作成されたものと認められる。なお,控訴人は,ま ず,控訴人が甲24の書式を作成し,これに控訴人及びBが署名した甲24証書を 控訴人が保管し,控訴人は,そのコピーをBに交付し,その後,サントリーにおい て,同コピーを基に乙10の書式を作成し,これに控訴人及びBが署名して乙10 証書が作成された旨主張するが,本件訴訟において控訴人が提出した甲24は写し であり,その原本は被控訴人が乙41として提出していることから,控訴人は,甲 24証書の原本を保管していないものと認められ,したがって,控訴人の上記主張 は事実と異なることは明らかである。

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平成29(ワ)3572  職務発明対価請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年1月17日  大阪地方裁判所

 職務発明の対価請求について、請求が棄却されました。
 本件発明は,前述のとおり,塩素化塩化ビニル系樹脂の洗浄方法について, 装置の小型化や使用水量の削減といった生産性の向上を図ろうとするものであると ころ,原告らがこれについて特許を受ける権利を被告に承継したことによる相当の 対価を検討するに当たっては,前記イで述べたような,被告において単にこれを実施し得ることによる利益を考えるのではなく,本件発明が特許として登録され,そ の禁止的効力によって,競業者は本件発明を実施することができなくなり,被告が 競争上優位な立場に立つことによって得られる利益をもって,算定の基礎とすべき ことになる。 そして,既に検討したとおり,本件特許の登録後,競業者は,本件発明を実施す ることはできないが,公知濾過方式については実施することができるのであるから, 両者にコストや生産性の面で差があり,競業者が本件発明を実施できないことによ って被告が競争上優位な立場に立つのであれば,これによって得られる利益を,相 当の対価算定の基礎とすることができる。
エ 原告らの主張,立証について
 原告らは,公知濾過方式は実用化されておらず,競業者は,本件発明が実施 できなければデカンタ方式によることを余儀なくされるとして,デカンタ方式から 本件洗浄方式に切り替えたことによるコストの削減が,被告の排他的利益の内容で あると主張する。 しかしながら,公知濾過方式が実用化されていることは既に検討したとおりであ るし,本件発明の排他的利益を検討するに当たっては,前述のとおり,本件発明と 構成として共通する面の多い公知濾過方式と対比するのが相当であるから,原告ら\nの主張は失当である。 また,原告らは,前記ウで述べたような形での,公知濾過方式と対比する形での 本件発明による排他的利益については,予備的にも主張しない旨を明示している。\n以上によれば,特許法35条3項の相当の対価が存すると認めるに足りる主張,立証はないといわざるを得ない。

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平成27(ワ)1190  職務発明対価請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年5月29日  東京地方裁判所(46部)

 ソニーのFeliCa関連の発明について、職務発明に基づく報奨金として約3000万円が認められました。新聞で報道はあったのですが、判決アップまでに2ヶ月くらいかかっていました。伏せ字の部分がかなりありました。
 前記前提事実・・によれば,1)本件実施発明が平成8年5月から平成 13年3月までの間に発明の報告がされたこと,2)被告がFN社を設立し, 対象実施権を含む知的財産権のライセンス事業その他のFeliCa関連事 業を行わせていることが明らかである。
(3)ア 使用者が特許を受ける権利を承継して特許が登録された場合に,使用者 が発明の実施等によって利益を受けたことによって相当の対価を算定する 場合には,「使用者等が貢献した程度」(旧法35条4項)として,発明が されるについての使用者の貢献度のほか,実施品の売上げを得たことに対 する使用者の貢献度等の諸事情を総合的に考慮して,相当の対価を算定す ることが相当というべきである。
イ 上記(1)及び(2)の事実関係に加え,前記前提事実(3)及び前記3(2)エ(ア)のと おりの本件実施発明の内容及び意義によれば,本件実施発明は,被告入社 前からコンピュータ等について知見を有していた原告が,その知見を活用 し努力及び創意工夫をすることにより着想した面がある。 もっとも,被告においては昭和60年代から無線ICタグの開発がされ て,A発明がされ,その後もAが率いる無線ICタグの研究チームで研究 が続けられていて,原告も同チームに属していた。上記の着想の背景には, 原告が,被告による費用負担の下で,被告入社後にOSやコンピュータの 開発を行って知識経験を獲得し,また,被告における無線ICタグの開発 チームに所属して,その開発チームによる技術的蓄積に触れていたことが あったともいえる。そして,被告として製品を納入することを検討してい た案件において,発注者から細かな仕様が要求されたところ,本件実施発 明は,それらの要求に応じる製品の開発の過程において着想され,具体化 されたという面もある。
その後,被告製品が鉄道事業者等に多数納入されることとなるが,製品 化に当たっては,新たに各種の開発が必要であったのであり,被告におい ては,相当数の被告の従業員がその開発を行った。また,継続的なシステ ムにも関わり得るという被告製品の性質上,被告製品の導入に当たっては 一般的に発注者がその供給等についての継続性や大量の製品の供給可能性等を重視する場合も多いといえるが,その際には企業としての被告の実績,\n規模等が影響したことが推認できる。その他,被告とJR東日本等との契 約に基づく共同開発その他の過程を経て,被告製品が開発されて被告製品 が多数納入される環境が構築され,また,FN社やビットワレット株式会社の設立及びその後の事業の運用により電子マネーその他の鉄道の改札以\n外の用途が確立し,カードの利便性が高められて被告製品の販売数が向上 したということができる。被告においては,相当額の投資を行い,こうし た需要や顧客の要望に応え得る被告製品の生産体制の確立も行われた。加 えて,FeliCaのシステムは,暗号方式の変更等の改良が継続的に加 えられるなど,被告が継続的に技術的な改良等を行い,被告製品の売上げ が維持されている面もある。これらのことは,発明者以外の被告の従業員 等の関与があって初めて実現し得ることである。
ウ 被告の貢献度に関し,原告は,開発チームの一員として又はFeliC a事業部長として上記発注者や担当者らとの交渉や被告製品の活用方法の 提案等を行っていたこと,被告が原告の提案を受け入れなかったために本 来得られる利益を得られなかったことなどを主張する。 しかし,職務発明の発明者の行動のうち,営業面,販売面における行動 は,発明者しか行うことができない行動であれば格別,基本的には発明者 もその一員である従業員としての貢献として考慮されるものといえる。そ の他,原告は,A発明が被告製品において実施されていない上に特許の無 効理由を有するなどとも主張するが,少なくとも上記に述べた理由により, 本件実施発明がされるまでの間における被告の研究等の活動は,使用者の 貢献として考慮されるといえる。 なお,証拠(乙184)によれば,原告は,平成11年に41歳で統括 部長に,平成13年に事業部長に,平成14年にFeliCa開発・技術 部門の部門長に就任し,平成15年4月から平成17年7月の退職時まで 情報技術研究所の統括部長の地位にあり,また,上記各就任時の原告の年 齢は上記各地位の平均年齢よりも若く,特に部門長に就任した際は5歳以 上若かったと認められ,従業員等としての貢献に対しても相応の待遇を受 け,給与及び退職金についても高い処遇を受けていたといえる。
●省略●
(4) 以上の事情その他本件に現れた全事情を総合考慮すると,本件実施発明の 実施に係る相当の対価の算定に当たっての被告の貢献度は大きなものであり, その割合は95%と認めるのが相当である。

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平成28(ワ)10147  職務発明対価等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年11月15日  東京地方裁判所

 職務発明に基づく報奨金の請求が棄却されました。
(イ) 原告は,平成27年3月31日,被告を定年退職した。Bは,同日,原告に 対し,職務発明に関する規程は半年をめどに作成すること,本件特許権についても それまでは現状のままとさせて欲しいとの内容を含む電子メールを送信した(甲3)。
(ウ) 原告は,平成27年9月18日,Bに対し,経過を報告するよう促したとこ ろ,Bは,同月28日,原告に対し,「特許に関する規定の件ですが,職務発明等 褒賞金規定と知的財産取扱い規定の制定を行いました。…両規定とも27年9月以 降の適用となっておりますが,当社の過去の特許においても該当する案件には今回 の規定を適用することといたしました。/よって,Aさんに対しましても,出願報 奨金10,000円と登録報奨金50,000円が該当いたします。手続きを進め たいと存じますので,振込口座をお教えください。」との記載のある本件メールを 送信した。
これに対し,原告は,ひとまず本件各規程を送付するよう求めたが,Bは,同年 10月13日,原告に対し,「今回制定した社内規定については退職者に対しては 開示できませんのでご了承ください。弊社としては,今回特別にお支払する6万円 でAさんの特許に対する対応は完了とさせていただきます。」との電子メールを送 信した。 原告は,本件各発明に係る対価の支払を被告が拒絶したと解釈し,同日,Bに対 し,法的根拠に基づく手続を始める旨の電子メールを送信した。 (以上につき,甲3,5,6,原告本人,証人B)
(エ) 原告は,平成27年10月30日,被告を相手方とし,本件各発明に係る特 許権を移転した対価5115万1430円の支払を求める民事調停を申し立てたが,\n同調停は平成28年3月17日,不成立により終了した。原告は,同月30日,本 件訴えを提起した。
イ 上記認定事実に関し,事実認定の理由を次に補足説明する。
被告は,Bが,平成27年2月2日に原告と面談した際,本件回答書を原告に交 付し,本件対価請求権については時効が完成している旨説明したと主張し,Bも証 人尋問において同旨の証言をする。 被告は,平成26年12月12日に,原告から本件各発明についての対価の請求 を受け,弁護士に依頼して対応を検討しているところ,弁護士から被告の従業員に 宛てた電子メールが証拠として提出されており(乙4),その記載内容と本件回答 書(乙2)の記載内容が概ね符合していることからすれば,弁護士において本件回 答書を作成して被告に交付したことは認められる。他方,原告は,平成27年2月 2日に本件回答書をBから受け取った事実及び時効の完成について説明を受けたと の事実を否認し,本人尋問においてもその旨供述するところ,原告が本件回答書を 受領したことを示す客観的な証拠はなく,また,Bの証言によっても,Bが原告に 説明した内容については判然としないところがあるから,同日の面談において,B が本件回答書を原告に交付し,また時効の完成について明確に説明したとの事実を 認定するには至らない。もっとも,本件回答書は,原告からの対価の請求への対応 として,弁護士が被告の立場に沿って作成したものであることからすれば,少なく とも,Bは,同日,原告に対し,本件回答書に基づき,被告としては対価の支払に は応じられない旨を説明したとの事実は認めることができる。
(3)上記認定事実に基づき検討する。
本件対価請求権は,原告が本件各発明についての特許を受ける権利を被告に承継 させたことに伴い,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条3項に基 づき発生する相当の対価の支払請求権である。原告が被告に上記特許を受ける権利 を承継させた平成14年当時,被告には,特許を受ける権利の承継に関する「勤務 規則その他の定」は存在しなかったのであるから,上記承継は,原被告間の契約に 基づくものであって,本件対価請求権も,平成27年に被告が策定した本件各規程 に基づき発生したものではない。したがって,Bが,同年9月28日,原告に対し, 本件各規程に基づき6万円を原告に支払う用意がある旨が記載された本件メールを 送付したことのみをもって,被告が本件対価請求権の支払債務を承認したものと評 価することは困難である。 また,前記認定事実((2)ア(ウ))によれば,被告は,原告から本件各発明の対価の 請求を受けた平成26年12月12日以降,被告には対価の支払義務がないとの立 場を示していたのであって,Bが本件メールを送付して原告に6万円の支払をする 用意があると伝えたのは,その後の電子メールに「今回特別にお支払する6万円で Aさんの特許に対する対応は完了とさせて頂きます。」との記載にあるように,本 件各発明に関する原被告間の紛争を全て収束させるための解決金との趣旨で提案さ れたものとみるのが相当である。 この点について,原告は,本件メールに「両規定とも27年9月以降の適用とな っておりますが,当社の過去の特許においても該当する案件には今回の規定を適用 することといたしました。」(判決注:下線を付した。)と記載されていることを 捉えて,被告が支払を提案した6万円は本件対価請求権の一部であることが明白で あるから,被告は本件対価請求権の支払債務を承認したと主張する。しかし,本件 各規程に基づく褒賞金と本件対価請求権とはその発生原因が異なるのであるから, 本件各規程に基づく褒賞金の支払を提案したからといって,当然には本件対価請求 権の支払債務を承認したものとみることはできない。また,前記認定事実((2)ア(ウ), (エ))によれば,原告は,Bから本件各規程に基づく6万円の支払を提案された際も, ひとまず本件各規程を送付するよう求め,Bからこれを拒絶されると直ちに法的手 段を執る旨の電子メールを送信し,現実に法的手続に移行しているのであるから, 原告と被告との間で,本件各規程に基づく6万円の支払をもって,本件対価請求権 に充当する旨の合意等が成立していたとみる余地もないというべきである(なお, 原告本人も,本件メールにより提案された6万円について,対価ではないと理解し た旨供述しているところである。)。
(4)以上のとおり,Bが原告に対して本件メールを送付したことをもって,被告 が本件対価請求権の支払債務を承認したと評価することはできないから,被告が本 件対価請求権に係る消滅時効の時効援用権を放棄したとか,消滅時効の援用が信義 則に反して許されないということはできない。
3 結論
以上によれば,本件対価請求権の消滅時効は,その権利を行使することができる 時である平成14年9月3日から進行するところ,平成16年法律第79号による 改正前の特許法35条3項の規定による相当の対価の支払を求める請求権は,従業 者等と使用者等との衡平を図るために法が特に設けた債権であるから,その消滅時 効期間は10年と解すべきところ(民法167条1項),原告が被告を相手方とし て民事調停を申し立てた平成27年10月30日には,本件対価請求権について1\n0年の消滅時効期間が経過していたことが明らかである。したがって,被告が平成 28年5月18日にした時効援用の意思表示により,本件対価請求権は消滅したと\nいうべきである。

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平成26(ネ)10126  職務発明対価請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年7月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 職務発明の対価請求について、控訴棄却されました。1審は独占的利益は生じていないから,相当対価請求を認めませんでした。
 上記1のとおり,被控訴人発明規程に従って本件発明の対価を算定することは不 合理であると認められるので,次に,特許法35条5項に基づき,相当対価の算定 をする(争点(2)ア〔本件システムの本件発明の構成要件充足性〕については,前記\n1と同旨である。)。
(1) 被控訴人が受けるべき利益の対象について
引用に係る原判決の「事実及び理由」欄の第2,1の前提事実と証拠(甲8,1 1,14,乙12)及び弁論の全趣旨を総合すると,1)証券会社等が米国の証券取 引所でブローカーとして取引を行うためには,証券取引所の会員となる必要がある ところ,被控訴人は,米国の証券取引所の会員ではなく,ノムラ・セキュリティー ズ及びインスティネットがその会員であることから,本件システムは両社により運 用されていたこと,2)被控訴人グループ会社の親会社である野村ホールディングス において,本件発明に係る権利を他の権利と一括して管理していること,3)控訴人 以外の共同発明者とされている者は,本件米国出願に係る発明についての特許を受 ける権利を野村ホールディングスに譲渡しており,被控訴人も,控訴人から承継し た本件発明に係る特許を受ける権利を野村ホールディングスに譲渡していることが 認められる。 野村ホールディングスが本件米国出願に係る発明についての特許を受ける権利を 取得した際に,被控訴人に対価を支払ったことを認めるに足りる証拠はないから, 上記認定事実にかんがみると,野村ホールディングスは,その有する知的財産権を 一括して管理し,その権利を子会社に実施させ,それにより得た利益をグループ会 社間の決算関係を通じて被控訴人グループ内で調整しているものと考えられる。そ うすると,本件システムの運用から得られた利益は,被控訴人グループ全体に帰属 していると評価できる。したがって,相当対価の算定に当たって考慮すべき使用者 等が受けるべき利益としては,被控訴人の下で生じた利益だけではなく,被控訴人 グループ全体に生じた利益を考慮することができる。 一方,控訴人は,被控訴人が野村ホールディングスから本来受けるべき譲渡対価 に基づき相当対価を算定する方法を主張するところ,相当対価の算定方法は,裁判 所が裁量により決する事柄であり,当裁判所は,上記のとおり,自社実施方式を準 用した相当対価の算定方式を採用するものである。 なお,控訴人が主張するような野村ホールディングスから被控訴人に対して支払 われるべき譲渡対価に基づいて相当対価を算定するとしても,野村ホールディング スから被控訴人に実際に対価が支払われたことを認めるに足りる証拠はないのであ るから,相当な譲渡対価は,仮に,本件発明を野村ホールディングスに実施許諾し た場合に,被控訴人が得られる想定実施料収入を基礎にして算定するほかなく,そ して,この想定実施料収入は,野村ホールディングスが被控訴人グループに対して 本件発明を実施させることにより被控訴人グループ全体に生じた利益を基礎に算定 することとなる。そうすると,手順の相違はあっても,上記当裁判所の採る算定方 法と控訴人の主張する算定方法とは,同様のものである。したがって,上記当裁判 所の採る算定方法を採用した場合には,改めて,別途,被控訴人が取得すべき譲渡 対価を算定する必要はないことになる(仮に,野村ホールディングスから被控訴人 に実際の対価の支払があれば,上記当裁判所の採る算定方法により被控訴人が受け るべき利益として算出された額から,当該支払額が差し引かれるにすぎず,被控訴 人が受けるべき利益の総額に変更はない。)。 したがって,上記控訴人の主張は,採用することができない。
(2) 独占的利益の有無について
使用者等は,職務発明について無償の法定通常実施権を有するから(特許法35 条1項),相当対価の算定の基礎となる使用者等が受けるべき利益の額は,特許権を 受ける権利を承継したことにより,他者を排除し,使用者等のみが当該特許権に係 る発明を実施できるという利益,すなわち,独占的利益の額である。この独占的利 益は,法律上のものに限らず,事実上のものも含まれるから,発明が特許権として 成立しておらず,営業秘密又はノウハウとして保持されている場合であっても,生 じ得る。 しかしながら,前記1のとおり,本件発明は,本件システムにおいて実施されて おらず,しかも,本件システムそれ自体が,既に本件発明の代替技術といえる。の みならず,証拠(乙26,28,30,32)及び弁論の全趣旨によれば,本件米 国出願がされた平成22年8月の前後から,1)FPGAを実装することで既存の純 粋なソフトウェアでは不可能\なほど加速された低レイテンシの市場データ配信処理 が可能になるとの論文(乙32)の公表\(平成21年10月),2)リスクアナライザ 等をFPGA等の再構成可能\なハードウェアとして実装する構成を開示した米国特\n許出願公報(乙26)の公開(平成22年4月),3)再構成可能\なハードウェアであ るFPGA上に高頻度・低レイテンシのアルゴリズム取引のために効率的なイベン ト処理プラットフォームを構築することで,レイテンシを2桁近く削減することが\nできたとの研究成果(乙28)の公表(平成22年9月)等が相次いでおり,また,\n4)本件審査期間中にも,業界では高頻度取引における柔軟性又は低レイテンシを損 なうことなくカスタム・ハードウェアのパフォーマンスを提供する方法としてFP GAを実装する方法が検討されており,そのアプローチによると,リスク管理等で 1000倍ものパフォーマンスの高速化が可能になるとの研究成果(乙30)が公\n表されていること(平成24年8月)が認められ,本件米国出願の前後から本件審\n査期間を通じて,FPGAを実装することで格段に加速された低レイテンシの取引 を実現できることを示唆又は開示する研究成果の公表等が相次いでいるといえ,本\n件発明には,本件システム以外に多数の代替技術が存する(これら代替技術が既に 実際の取引に応用されているのかは,本件証拠上不明であるが,本件発明も,現時 点で実施されていない点でこれら代替技術と同様である。)。そうすると,本件発明 が営業秘密として保持されていることによる独占的利益は,およそ観念し難い。 以上によれば,本件発明に基づく独占的利益は生じておらず,かつ,将来的にも 生ずる見込みはないというほかない。

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◆1審はこちらです。平成25(ワ)6158

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平成26(ワ)20279  通常実施権確認請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年4月28日  東京地方裁判所

 特許法35条の通常実施権(職務発明による実施権)が認められました。
 上記認定事実によれば,被告は,伸栄の業務として,本件工事を受注するために必要な鋼管圧入機を発注するための検討をしている際に,本件発明をしたと認められるから,本件発明は,その性質上伸栄の業務範囲に属し,かつ,本件発明をするに至った行為が伸栄における被告の職務に属するものであったと認められる。 なお,仮に被告の主張するように,友人や家族との雑談が本件発明のきっかけとなったとしても,前記1(1)認定の被告の地位によれば,被告には職務上発注する機械の仕様について検討することも求められていたと考えられるから,本件発明をするに至った行為が伸栄における被告の職務に属するものであったことに変わりはないというべきである。 したがって,伸栄を吸収合併した原告は,当然に特許法35条1項に基づく通常実施権を有するものと認められる。

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平成26(ネ)10025  相応の対価請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年2月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁は、職務発明に基づく対価として約2400万円が認定されました。1審では、約2700万円が認定されていました。
 そこで,検討するに,本件合意の内容は,原告の研究成果に係る知的財産全般(将来原告が特許権を取得した場合には,当該特許権に係る発明を含む。)について,その使用を包括的に許諾し,被告が上記許諾につき相応の対価を支払う旨約したものであって,かかる合意に至る経緯やその後の経緯を参酌すると,当事者は,相応の対価は,上記権利の使用に応じ,継続的に発生すると考えていたのではなく,前記に述べた事情を考慮した一時払いを想定していたものと解される。そして,被告には,職務発明の導入効果に対して5年間分を対象として対価を支払う実績報奨制度があり,これが一般的に見受けられる期間であることからすれば,当事者の合理的意思としては,相応の対価の算定の基礎となる期間を5年とするのが相当である。 以上によれば,7共販店におけるコスト削減見込額の合計額は,前記(2)イのとおり8億0050万円であるところ,これに20%を乗じ,5年分のコスト削減額を算出すると,その額は8億0050万円となり,同額が,「相応の対価」の算定の基礎とすべき金額(原告の提供した知的財産の使用料率を乗じるべき金額)となる。 (5) 最後に,原告の提供した知的財産の使用料率について検討する。 ア 本件システムは,前記(2)ア(ア)のとおり,サービスL/T基準を指定してシミュレーションを繰り返し行い,コスト比較を行うことができるというものであり,その内容に照らし,原告の提供した知見のうち,従来の文献(乙7ないし9)に見られない点が反映されていると解することができる。そして,本件システムの基礎となる理論面において,原告が寄与した割合が,アフマ部において71%(甲 21の2),アフマ部と知財部との打合せ資料(甲19)においても後記のとおり約70%と評価されているものであり,これまで,原告は合計7件の特許権を取得している。 しかし,一方で,本件システムは,原告のX理論を出発点としながらも,必要な機能を付加し,更に具体化したものである上,原告の提供した知見を,コンピュータ上で動作させることができるよう,コンピュータが保有すべき機能\を検討・構築し,プログラミングしたものであって,その検討・構\築及びプログラミングのために,原告のほか,被告,東京共販及び富士通の従業員が関与し(原判決第2,1(3)イ),その要件書の完成まで約2年8か月,ソフトウェアの完成まで約3年8か月を要したものである。また,本件システムの基礎データは,共販店全店における事業基幹システムであるTASから導かれるものもある。以上のことに加えて,原告が,本件システム開発に関与したことにより,被告において特段に有利な処遇を受けた等の事実も見当たらないことも併せて考慮すれば,原告の提供した知的財産の使用料率としては,3%が相当である。\n

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成23年(ワ)第34450号

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平成26(ネ)10040  職務発明補償金請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成26年10月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 職務発明の対価として50万円が認められました。
 以上の点を総合すると,一審被告及び関連会社が製造した半導体装置は,他の歩留り向上のための技術や,他のボイド等の抑制技術と併用された本件発明の効果により,コスト削減に有意な影響を与え,これにより他社を排除するという若干の独占的効果を有していたといえ,一審被告が本件発明を自己実施することによって得た半導体装置の売上高に占める超過売上高の割合は,10%であると認めるのが相当である。
・・・
上記(イ)の事情のほか,本件に現れた諸事情を総合的に考慮すると,本件発明の想定実施料率は,2%であると認めるのが相当である。
・・・
そうすると,一審原告は,一審被告から発明の課題を直接には提供されていないものの,着想の契機を提供され,担当業務の延長として,一審被告の研究施設や資機材を用いて本件発明に至ったものということができる。 以上の事情を総合的に考慮すると,本件発明がされるについて一審被告が貢献した程度は,75%であると認めるのが相当である。

◆判決本文

◆1審は下記のような判断です。平成22(ワ)39625
以上の事情を総合的に考慮すると,被告が本件発明を自ら実施することによって向上した歩留り分の半導体装置を含む半導体製品の売上高に占める超過売上高の割合は,20%であると認めるのが相当である。
・・・
以上の事情に,前記(イ)の事情のほか本件に現れた諸事情を総合的に考慮すると,本件発明の想定実施料の率は,2%であると認めるのが相当である。
・・・
以上の事情を総合的に考慮すると,本件発明がされるについて被告が貢献した程度は,75%であると認めるのが相当である。

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平成25(ワ)9255  職務発明対価請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月25日  大阪地方裁判所

 職務発明に基づく報奨金として1億円請求しましたが、当該発明を実施していないとして、請求が棄却されました。
 原告は,実績報奨金として対価を求める職務発明について,別紙1記載の発明(甲1出願)であって,国内外において特許されたものに加え,イオンアシスト法によりハイブリッド層を形成する技術をノウハウとして含む旨を主張する。 前記前提となる事実によれば,被告の新特許規程において実績報奨金の対象となるのは,実体審査を経て登録された特許権が顕著に実施され るか,これに基づいて収入等があった場合とされるから,それ自体特許としては登録されなかった甲1出願や,権利化されずノウハウに止まったにすぎないものは,実績報奨金の根拠にはならない。 原告は,国内で販売されるSFT製品を購入,分析の上,SFT製品が本件職務発明の実施にあたると主張していることから,SFT製品が,国内の特許である本件特許を実施したものと認められるかにつき,まず検討することとする。
・・・
オ 以上,本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書の記載からすると,本件職務発明は,反射防止膜を,本件特許の請求項1で定められた条件下でイオンアシスト法を用いた真空蒸着で形成し,その際,無機物質及び本件特許に所定の有機物質が存在する状態でハイブリッド層を形成することを内容とするものと認められる。
・・・
以上によれば,SFT製品が本件発明を実施したものと認めることはできず,この点についての原告の主張は理由がない。また,外国で販売されているSFT製品が,原告を発明者とする,被告の外国における特許を実施したものと認めるべき証拠もない。

◆判決本文

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平成24(ワ)998等 賃金等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年04月22日 大阪地方裁判所 

 職務発明に基づく報償金の不足分として700万円強の請求が認められました。
 この点,本件譲渡契約では,甲11発明及び甲14発明だけでなく,甲8発明及び甲9発明に係る特許を受ける権利も譲渡対象とされている。甲8発明及び甲9発明に係る特許出願に際しては,被告代表者を発明者とし,被告代表\者個人が出願しているが,仮に,両発明の実質的な発明者が原告であったとしても,両発明に係る特許出願は,既に審査請求をされないままみなし取下げとなっていた上,他に本件譲渡契約の対象となる発明の具体的な主張立証はないから,特許を受ける権利に関する限り,実質的に譲渡の対象となっていたのは,甲11発明及び甲14発明に係る権利であったといえる。一方,本件譲渡契約は,これら特許を受ける権利のみを譲渡の対象とするものではなく,被告が有する取引関係,ノウハウ,備品なども含め,LRPの事業全てを譲渡するものであり(詳細は前提事実記載のとおり),被告はそれらへの対価として5000万円を受領したものである。しかも,本件譲渡契約では,LRP開発の技術面を専ら担い,その技術,ノウハウ等を有する原告が被告から A社 へ移籍することが前提とされていた。このような事情に照らせば,本件譲渡契約において,甲11発明及び甲14発明に係る特許を受ける権利が重要な位置付けにあったことを考慮しても,5000万円の全額をこれらの特許を受ける権利の譲渡への対価と見ることはできない。さらに,甲11発明及び甲14発明に係る特許を受ける権利への対価部分に着目しても,そこには独占への対価のみでなく,実施権取得への対価が含まれているため,独占の利益といえる部分はさらに限定される。これらの事情を考慮すれば,本件譲渡契約に基づく対価として被告が受領した5000万円のうち,甲11発明及び甲14発明の相当対価算定の前提となる使用者利益といえるのは,せいぜい2000万円と認めるのが相当である。
イ 使用者の負担,貢献
甲11発明及び甲14発明に関連して使用者である被告の行う負担,貢献を考える。原告は,被告に就職する前から,LRPの研究開発を長年行っており,甲11発明及び甲14発明も従来の研究開発の延長上に位置付けられること(甲4,6,11,14),被告には被告代表者のほか,原告以外の従業員は存在せず,LRPの研究開発は専ら原告が担っていたことが認められる。しかし,原告が自認するとおり,LRPの研究開発には多額の資金を必要とし,原告の自社事業が資金繰りに窮したのも,その研究開発継続のために被告への就職を要したのも,そのためである(甲25,原告)。原告は,自社事業として研究開発を行っていたときに比べれば,被告で使用した研究開発費用は低額であったとも供述するが,被告の資金負担なくしては研究開発を継続できない状況にあったことは否定できない。被告がLRP事業の譲渡を余儀なくされたのも,研究開発に伴う何千万円単位の経済的負担(乙45,原告,弁論の全趣旨)に耐えられなくなったためとうかがわれる。このような事情に照らせば,その研究開発過程において発明された甲11発明及び甲14発明に関連する被告の負担,貢献は決して小さいものであったとはいえず,原告の貢献度に係る上記事情を考慮してもなお,被告の使用者貢献度は90%と認めるのが相当である。
・・・・
原告は,被告との雇用契約締結に当たり,被告代表者との間で,将来的に被告のLRP事業が成功した場合,その利益を2人で分配しようと約束をした旨主張するが,自身の供述,陳述書(甲25)を除いてこれを裏付ける証拠はない。そもそも,原告は,被告との間で雇用関係があったにとどまり,だからこそ,賃金や職務発明対価などの支払を受けていたものである。これらの支払とは別に,原告が,被告の利益に対して直接その分配を請求できる法的地位にあったとは到底いえない。仮に,原告の供述,陳述書(甲25)を前提にしても,原告が被告代表\者と交わした会話というのは,LRP事業が軌道に乗り,事業全体として利益を上げるに至った場合を想定してのことであるが,実際には被告のLRP事業は行き詰まり,本件譲渡契約及びこれに基づく対価の受領も,その救済策として行われたのであるから,利益が分配されるべきとして想定していた状況と異なることは明らかである。
・・・
原告は被告の一従業員ではあるが,被告には他に従業員はおらず,原告の担う開発と発明が被告のLRP事業の中核を成すという特別な立場から,その処遇について,固定的な賃金を月15万円にとどめる一方,LRP事業の業績との連動性が強い職務発明対価としての支払部分を大きくしたと理解することが可能であり(原告が自身を実質的な共同経営者であったと主張するのは,この限りにおいて理解可能\である。),そのような本件における「従業者等の処遇」(特許法35条5項)の特殊性を考慮すれば,1450万円という職務発明対価の既払額が不相当に高額なものとはいえない。

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平成22(ワ)39625 職務発明補償金請求事件 その他 民事訴訟 平成26年02月27日 東京地方裁判所

 職務発明の報奨金について、既に支払済の分を減額して約29万円の請求が認められました。
職務発明により使用者等が受けるべき利益とは,職務発明の実施や職務発明についての特許を受ける権利等の行使又は処分等により使用者等が得られると客観的に見込まれる利益であって,職務発明と当該利益との間に相当因果関係があるものをいうと解される。具体的には,使用者等において,職務発明を自ら実施することによって得られる利益や,職務発明を他人に実施させることによって得られる実施料,職務発明についての特許を受ける権利等を譲渡することによって得られる譲渡利益等が挙げられる。もっとも,使用者等は,職務発明について従業者等から特許を受ける権利等を承継しなくても,特許法35条1項の趣旨に照らせば,職務発明がされた時から職務発明について通常実施権を有するものと解されるから,使用者等が職務発明を自ら実施することによって得られる利益は,使用者等が通常実施権を行使することによって得られる利益を控除したいわゆる超過利益に限られるというべきである。そして,超過利益は,使用者等が職務発明の実施を法律上又は事実上独占することによって生じるから,補償金支払請求権が生じ得る出願公開の時から特許権の消滅又は処分の時までに生じた利益に限られるものと解される。 そうすると,本件発明は,技術的な優位性に乏しい上,従来技術の問題を完全に解決するものでなく,代替技術も存在したものであるが,半導体製品やその製造方法の改良を受けて,代替技術と共に併用されるようになったから,実施の必要性は相応にあったものということができる。 以上の事情を総合的に考慮すると,被告が本件発明を自ら実施することによって向上した歩留り分の半導体装置を含む半導体製品の売上高に占める超過売上高の割合は,20%であると認めるのが相当である。
(ウ) 想定実施料の額について
証拠(甲1の2,6,15,49の3,乙16,22の2)によれば,本件発明は,表面粗さを調節すれば,離型性や捺印付着性が向上するという副次的効果も有すること,しかし,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明が専らシングルポット方式の樹脂封止金型における問題点を解決するものとして記載され,マルチポット方式の樹脂封止金型における問題点を解決するものとしては明記されていないため,本件発明は,一見するとマルチポット方式の樹脂封止金型には適用されないものと誤解されやすく,実施許諾の申\入れを受けにくいものであったことが認められる。 以上の事情に,前記(イ)の事情のほか本件に現れた諸事情を総合的に考慮すると,本件発明の想定実施料の率は,2%であると認めるのが相当である。そうすると,その額は,次の計算式のとおり,183万7359円となる。
(計算式)4億5933万9961円×0.2×0.02=183万7359円(1円未満切捨て)
イ 実施貢献度から算出した想定実施料について 原告は,被告の評価基準によれば,1等級の実施貢献度を得るには,被告が自ら本件発明を実施することによって得られた3年間の売上高が5億円以上であることが必要であるとして,被告が自ら本件発明を実施することによって得られた売上高は31億5400万円を下らず,想定実施料の額も31億5400万円を下らないと主張する。しかしながら,被告が本件発明を自ら実施することによって得られた売上高は,前記ア(ア)bのとおり,4億5933万9961円であって,これに限られる。原告の上記主張は,採用することができない。
(4) したがって,本件発明により被告が受けるべき利益の額は,183万7359円である。
2 争点2(本件発明がされるについて被告が貢献した程度)について
証拠(甲6,22,37)及び弁論の全趣旨を総合すれば,原告は,昭和58年ころ,EPROM装置の樹脂封止工程において金属細線の変形や断線が多発したことから,その問題を解決するため,樹脂の注入経過を観察していたところ,樹脂の先端に気泡が発生していることを発見し,本件発明を着想したことが認められる。 そうすると,原告は,被告から発明の課題を直接は提供されていないものの,着想の契機を提供され,被告の研究施設や資機材を用いて本件発明に至ったものということができる。以上の事情を総合的に考慮すると,本件発明がされるについて被告が貢献した程度は,75%であると認めるのが相当である。4 以上によれば,相当の対価の額は,次の計算式のとおり,45万9399円となり,支払済みの報奨金16万3000円を控除すれば,未払の相当の対価の額は,29万6399円となる。 (計算式)183万7359円×(1−0.75)=45万9399円

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平成23(ワ)34450 相応の対価請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年02月14日 東京地方裁判所

元社員がした発明について、実施料が削減コストの1%と判断されました。
 そうすると,これらの事情を踏まえれば,上記コスト削減見込額のうち,実際に実現されたものとみることができる部分(被告が実際に得た利益とみることができる部分)は,その半分程度にとどまるものとみるのが相当である。また,被告の発明規定において,導入による効果に対し5年間一定の対価を支払う旨の実績報奨制度が存在するとされること(弁論の全趣旨)を考慮すれば,本件においても,被告が5年間において得た利益(5年分のコスト削減額)を,「相応の対価」の算定の基礎とするのが相当である。(イ) 前記共販店におけるコスト削減見込額の合計額(前記ウ(ウ)aないしgの合計額)は10億8100万円であるところ,これに2分の1を乗じ,5年分のコスト削減額を算出すると,その額は27億0250万円となり,同額が,「相応の対価」の算定の基礎とすべき金額(原告の提供した知的財産の使用料率を乗じるべき金額)となる。(ウ) この点に関し,原告は,本件システムは被告の共販店全店において導入可能なものであったから,原告の得るべき対価額を計算するに当たっては,実際に本件システムを利用した7店舗におけるコスト削減額ではなく,全共販店において見込まれるコスト削減額を基礎とするべきである旨主張する。しかし,上記7共販店以外の共販店らは,本件システムを実際に利用したものではない上,本件システムは,既にその維持契約を解消されているものであって(前記ウ(オ)),今後,上記7共販店以外の共販店が本件システムを利用してコスト削減を達成する可能性も存在しない。そうすると,全共販店において本件システムによってコスト削減が達成されると仮定した上で,上記コスト削減見込額を対価額算定の基礎とすることは相当ではないというべきであって,この点に関する原告の主張は採用できない。\n
カ 原告の提供した知的財産の使用料率について
本件システムは,サービスL/T基準を指定してシミュレーションを繰り返し行い,コスト比較を行うことができるというものであり(前記(1)ウ(ア)),その内容に照らし,前記1(2)ア(エ)でみたとおり,原告の提供した知見のうち,従来の文献(乙7ないし9)にみられない点が反映されているとみることのできるものである。しかし,前記1(2)イ(ウ)でみたとおり,本件システムは,原告の提供した知見(X理論)をその出発点の一つとし,上記理論をその骨格において反映しているものではあるものの,上記知見を具体化するに当たり,上記知見に相当の変容を加えたものであって,本件システムの基礎となる理論面において,原告が寄与した割合が,被告アフマ部において71%と評価されているものである(甲21の2)ことを考慮しても,本件システムを全体としてみた場合において,原告の貢献した割合を,それほど大きなものとみることはできない。加えて,上記コスト削減は,本件システムを用いたシミュレーションのみによって達成されたものではなく,上記シミュレーション結果を踏まえた上で,適切な方策を検討することによって達成されたものであると認められる。これは,本件システムによるシミュレーションの結果,廃止が適切であるとの結果が出た物流施設についても,営業上の必要性があるとの判断から廃止を見送るとの結論となり,方策としてその廃止を提案するに至らなかったものがあること(前記ウ(ウ)g)からも明らかである。また,本件システムは,原告の提供した知見を,コンピュータ上で動作させることができるよう,コンピュータにもたせるべき機能を検討・構\築し,プログラミングしたものであって,その検討・構築及びプログラミングのために,原告のほか,被告,東京共販及び富士通の従業員が関与し(前記前提事実(3)イ),その要件書の完成まで約2年8か月,ソフトウェアの完成まで約3年8か月を要したものである(前記前提事実(3)ウ)。したがって,本件システムの全体の運用及びそれによる利益の増加という実際面も含めて検討すると,原告の提供した知見が寄与した割合を,大きいものとみることはできないというべきである。他方,原告が合計7件の特許権を取得していること(前記前提事実(4)),原告は平成23年7月31日まで被告の名古屋オフィスにおいて勤務していたものであるが(前記前提事実(1)ア(ア)),原告が,本件システム開発に関与したことにより,被告において特段に有利な処遇を受けた等の事実も見当たらないことも総合的に考慮すれば,原告の提供した知的財産の使用料率としては,1パーセントが相当である。キ したがって,本件システムを用いたシミュレーションにより,被告が5年間において得た利益(前記5年分のコスト削減効果である27億0250万円)に,原告が提供した知的財産の使用料率である1パーセントを乗じた額である2702万5000円が,原告の提供した知的財産の使用許諾料の額(「相応の対価」の額)として相当であると認められる。ク したがって,原告は,被告に対し,原告と被告との間の合意に基づき,2702万5000円の支払を求めることができる。

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平成24(ワ)2689 職務発明対価請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年12月13日 東京地方裁判所

 職務発明の対価として900万円が認められました。
 ここで超過売上高とは,仮に第三者に実施許諾された事態を想定した場合に使用者が得たであろう仮想の売上高と現実に使用者が得た売上高とを比較して算出された差額に相当するものというべきであるが,具体的には,職務発明対象特許の価値,使用者等が採用しているライセンスポリシー,ライセンス契約の有無,市場占有率,市場における代替技術の存在等の諸般の事情を考慮して定められる独占的地位に起因する一定の割合(超過売上げの割合)を乗じて算出すべきである。そして,超過利益は,上記方法により算出された超過売上高に,仮想実施料率を乗じて算出するのが相当である。以上を前提として,以下,「独占の利益」の有無及びその額を検討する。
・・・
以上のような本件発明1の技術的意義,代替技術の有無とその技術内容,被告のライセンスポリシー及び市場占有率その他の事情を総合考慮すれば,被告が,本件発明1を自社実施して得ることができた売上げのうち,本件特許1に係る通常実施権の行使を超えて,その禁止権の行使によって被告が得ることができた超過売上高の割合は,30%と認めるのが相当である。
・・・・
第3期の外販において,被告が分譲住宅ビルダーから注文を受けて,MS基礎のうち安定材の部分のみを施工し,その上に,分譲住宅ビルダーがベタ基礎部分を施工していたことは当事者間に争いがないところ,原告は,このような安定材付きベタ基礎の施工の態様について,被告が分譲住宅ビルダーと共同してMS基礎を施工していたといえるから,被告の分譲住宅ビルダーに対する安定材の売上げを自社実施による被告の利益とし,被告が分譲住宅ビルダーから受領した実施料を他社実施による被告の利益として,被告の独占の利益を計算すべきであると主張する。イ 前記1(1)説示のとおり,法35条4項に規定する「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」とは,使用者等が被用者から特許を受ける権利を承継し,当該特許発明を排他的かつ独占的に実施し得る地位を得,その結果,実施許諾を得ていない競業他社に対する禁止権を行使し得ることによって得られる利益(独占の利益)の額をいうから,使用者が,自己の経済的な利益を最大化するために,自ら当該特許発明の全体を実施することなく,その一部のみを実施して,これを第三者に販売して利益を得,さらに,その余の部分の実施を第三者に許諾することによって第三者からその対価となる利益を得ることを選択したような場合についても,使用者が自己の実施分の販売により得た利益及び第三者に実施を許諾したことによって第三者から得た利益は,いずれも当該特許発明を排他的かつ独占的に実施し得る地位に基づいて使用者が受けた利益ということができるから,それらは使用者の独占の利益に含まれると解するのが相当である。
・・・
そうすると,分譲住宅ビルダーが被告から安定材の引渡しを受け,その上にベタ基礎を施工して,本件発明1の構成を有する安定材付きベタ基礎を完成させる行為は,本件発明1の実施行為に当たると認めるのが相当であるから,被告がこれを承知した上で,分譲住宅ビルダーからMS基礎の発注を受け,その代金を受領していたことは,被告が分譲住宅ビルダーに対して,ベタ基礎部分を施工して本件発明1を実施することについての許諾を与えていたものと評価することができる。エ よって,被告が外販において,分譲住宅ビルダーからMS基礎の受注を受け,その安定材部分を施工して分譲住宅ビルダーに販売することによって得た売上げについては,被告の自社実施に係る独占の利益の算定において考慮されるべきであり,また,被告がMS基礎のうちベタ基礎部分を分譲住宅ビルダーに施工させることを許諾したことの対価として受領した額については,第三者に対する実施許諾に係る実施料に相当する収入として被告の独占の利益に算入されるべきである。

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平成25(ネ)10054 特許を受ける権利帰属確認請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年11月21日 知的財産高等裁判所

知財高裁は、職務発明認定における「使用者等の業務範囲」認定は、定款ではなく現実の業務であると判断しました。
 また,控訴人は,本件各発明に基づいて計量器を製造するに際して,テクノリサーチ社が計量法40条1項に基づく届出をしていないことや,履歴事項全部証明書上の『目的』欄に測定器の開発・発明が記載されていないことを理由として,本件各発明はテクノリサーチ社の業務範囲に属しない旨主張する。しかし,職務発明に該当するか否かの基準となる「使用者等の業務範囲」とは,定款及びこれを反映した商業登記簿上の記載や計量法等の行政法規に基づく届出の有無によって判定されるものではなく,使用者が現に行っている,あるいは,将来行うことが具体的に予定されている業務がこれに該当するものと解される。そして,上記1(2)で認定したとおり,傾斜測定器の開発製造は,被控訴人から委託を受けたドラフトサーベイの改善業務と直接関連するものとして,テクノリサーチ社の現に行う業務に属するものであるから,控訴人の上記主張は採用できない。

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平成23(ワ)21757 職務発明対価請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年10月30日 東京地方裁判所

 職務発明に基づく報奨金について時効が成立していると判断されました。
 民法166条1項は,「消滅時効は,権利を行使することができる時から進行する。」と規定し,消滅時効の起算点を定めるが,ここにいう「権利を行使することができる」とは,単にその権利の行使につき法律上の障害がないというだけではなく,さらに権利の性質上,その権利行使が現実に期待のできるものであることをも必要と解するのが相当である(最高裁昭和40年(行ツ)第100号同45年7月15日大法廷判決・民集24巻7号771頁参照)。これを本件についてみるに,原告は,遅くとも昭和63年2月頃までに,日本IBMに対し,本件発明に係る特許を受ける権利を譲渡したが(前提事実(3)),その頃の日本IBMの発明報奨制度において,職務発明の相当対価につき具体的な支払時期を定めた規定は見当たらないから(前記1(1)の平成元年2月1日時点における発明報奨制度参照),本件発明に係る相当対価の支払債務は期限の定めのない債務であったと認めるのが相当である。そうすると,原告は,本件発明に係る特許を受ける権利の譲渡時において,日本IBMに対し,本件発明に係る相当対価の支払を請求することにつき法律上の障害があったとは認められない。また,改正前特許法35条4項は,「前項の対価の額は,その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。」と規定するが,ここにいう「受けるべき利益」とは,特許を受ける権利の譲渡時における客観的な利益であり,使用者等が後に受けた利益ではないと解されるから,職務発明の相当対価は,その譲渡時における客観的な価格である(外国の特許を受ける権利の譲渡に伴う対価請求についても同条3項及び4項が類推適用される。最高裁平成16年(受)第781号同18年10月17日第三小法廷判決・民集60巻8号2853頁参照)。同様に,本件発明に係る相当対価も,特許を受ける権利の譲渡時における客観的な価格であり,その算定は譲渡時に可能であったから,本件発明に係る相当対価の支払請求は,その権利の性質上,その権利行使が現実に期待のできたものである。したがって,本件発明に係る相当対価の支払請求権は,その特許を受ける権利の譲渡時から消滅時効が進行すると解するのが相当である。・・・以上に照らすと,本件発明に係る相当対価の支払請求権は,上記1)の支払の時点から10年が経過した平成10年8月頃に消滅時効が完成し,被告が平成24年4月20日の弁論準備手続期日において消滅時効を援用する旨の意思表示をしたことは当裁判所に顕著であるから,消滅時効の抗弁は理由がある(なお,上記2)の支払の時点における時効中断があるとしてみても,平成12年3月頃に消滅時効が完成したものと認められる。)。

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平成24(ネ)10028等 職務発明の対価請求控訴,同附帯控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年04月18日 知的財産高等裁判所

 金額は1審と同じですが、遅延損害金の起算日が変更されました。
本件で原告が請求する職務発明の相当対価は,発明等取扱規則(乙1の1)9条の褒賞金に関するものであるところ,同条は,「会社が,特許権等に係る発明等を実施し,その効果が顕著であると認められた場合その他これに準ずる場合は,会社は,その職務発明をした従業員に対し,褒賞金を支給する。」としており,同規定は,会社が発明を実施しその効果を判定できるような一定期間の経過をもって,職務発明者が同褒賞金にかかる相当対価の支払を求めることができるようになる旨を定めたものと解するのが相当である。そして,被告の特許報奨取扱い規則(甲9)の6条には職務発明者に「営業利益基準」に基づき一定の報奨金が支払われることが,1条には上記「営業利益基準」が報奨申請時の前会計年度から起算して連続する過去5会計年度における対象事業の営業利益を基準とするものであることが規定されている。しかし,被告の発明等取扱規則又は特許報奨取扱い規則には,褒賞金の支払期限に関する定めはなく,上記の規定が,職務発明者の請求がなくとも被告が上記期間(当裁判所が拘束される第1次控訴審判決の判断における期間は5年である。)の経過をもって直ちに褒賞金の支払の履行がされるべき旨を定めたものと解することはできない。そして他に,褒賞金の支払期限が確定期限であるとの約束がされたことを認めるに足りる証拠もない。したがって,本件各発明に係る相当対価の支払請求債権は期限の定めのないものと認めざるを得ず,原告が主張するように,本件各発明が実施された平成5年10月7日から5年を経過した平成10年10月7日の翌日である同月8日からの遅延損害金の発生は認めることができない。期限の定めのない債権の債務者は,履行の請求を受けた時から遅滞の責めを負うところ,被告が原告から本件各発明に係る相当対価の支払請求債権の履行の催告を受けたのは平成19年2月1日であるから(甲7の1,甲39),被告は同日をもって遅滞に陥る。したがって,本件各発明に係る相当対価の支払請求債権の遅延損害金は,その翌日である平成19年2月2日から発生する。\n

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成21(ワ)17204

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平成24(ネ)10052 職務発明対価支払請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年01月31日 知的財産高等裁判所

 職務発明の報奨金訴訟です。1審は1億を超える支払いを認めましたが、知財高裁はこれを減額しました。発明者の貢献度は1%、発明者割合40%は1審と同じなんですが、総額ではかなり減額されています。
 前記のとおり,欧州物質特許に基づいて算出される第1審被告の欧州子会社による自社販売分に係る平成17年4月1日以降の超過利益の額は,●●●●●●であるから,これに発明者貢献度(1%)及び発明者割合(40%)を乗じて得られる相当対価の額は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●また,前記のとおり,BI社からの本件物質発明について想定される米国(米国物質特許)における平成17年4月1日以降のライセンス収入の額は,同日から平成20年3月31日までの部分が●●●●●●●●●,同年4月1日以降の部分が●●●●●●●●●であり,欧州(欧州物質特許)における平成17年4月1日以降のライセンス収入の額は,●●●●●●●●●であるから,これに発明者貢献度(1%)及び発明者割合(40%)を乗じて得られる相当対価の額は,米国における平成17年4月1日から平成20年3月31日までの部分が●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●,同日以降の部分が●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●であり,欧州において●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●である。以上を合計すると,4788万円となるが,このうち,平成17年4月1日から平成20年3月31日までの第1審被告の欧州子会社による自社販売分に基づく相当対価の額●●●●●,米国●●●●●●●●及び欧州●●●●●●におけるライセンス収入に基づく相当対価の額を合計すると,2876万円となる。そして,第1審被告は,第1審原告に対し,本件支払によって,上記期間の実績に基づく相当対価請求権に対するものとして335万9900円を支払済みであり,このうち上記相当対価に対応する部分は,309万8400円であるから,これを控除して第1審原告に対する上記相当対価の未払分を算定すると,2566万1600円となる。したがって,第1審原告に対する相当対価の未払分の合計は,4478万1600円となる(2566万1600円+1912万円)。

◆判決本文

◆第1審はこちらです。平成21(ワ)34203平成24年04月27日東京地裁

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平成24(ネ)10081 職務発明対価請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年02月14日 知的財産高等裁判所

 職務発明に基づく補償金請求について、知財高裁は第1審の判断を維持しました。
 当裁判所も,1)被告が平成20年6月1日から平成21年5月31日までの間に本件発明の実施によって受けた実施許諾の対価は,188万6400円であり,2)本件特許権の譲渡より前の期間における,被告が本件特許を自ら実施したことにより受けるべき超過利益に関して,超過売上げの割合は30%,仮想実施料率は5%であり,3)被告が本件特許権を譲渡したことにより受けるべき利益の額は800万円であり,4)被告の貢献度は95%である,と認めるのが相当であって,結論として,原告らが相続により承継した職務発明対価請求権の額は,原告 X1 につき28万4944円,原告 X2 及び原告 X3 につき各14万2472円であると判断する。その理由は,次のとおり付加するほかは,原判決20頁16行目以下の「4 当裁判所の判断」のとおりである。以下,当事者双方の当審主張を踏まえて付加判断する。・・・

◆判決本文

◆原審はこちらです。東京地裁平成23年(ワ)第6904号

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平成22(ワ)10176 職務発明対価請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年04月25日 東京地方裁判所

 職務発明に基づく補償金として200万円強が認められました。
 使用者等は職務発明に係る特許権について無償の通常実施権を有するのであるから(特許法35条1項),改正前特許法35条4項に規定する「その発明により使用者等が受けるべき利益」とは,当該発明を実施することにより得るべき利益ではなく,これを超えて発明の実施を排他的に独占することによって得られる利益(独占の利益)をいうと解するのが相当である。そうすると,本件のように使用者等が職務発明に係る特許権を自己実施していた場合には,超過売上高(全売上高−通常実施権による売上高)に,第三者に実施許諾した場合の想定実施料率を乗じることによって,独占の利益(超過利益)の額が算出できるから,これから使用者貢献度に相当する額を控除し,発明者間の寄与割合を乗じれば,相当の対価を算定することができる(当該算定方法については当事者間に争いがない。)。もっとも,「使用者等が受けるべき利益」は,権利承継時において客観的に見込まれる利益をいい,具体的には,特許権の存続期間の終了までの独占の利益を指すから,当該利益の認定に当たっては,口頭弁論終結時までに生じた使用者等における実際の売上高等の一切の事情を考慮することができるというべきである。
・・・
 本件各発明によって圧電セラミックス円柱の振動子を使用する振動ジャイロを独占できたとはいえないのであって,本件各発明はその一態様をそれぞれ技術的範囲とするにすぎない。具体的には,電極の数及び位置について,本件発明1は6以上の偶数個の電極を等間隔に設けたものに,本件発明2は240°の範囲に奇数個の電極を等間隔に設けたものに,本件発明3は120°ごとに設けた3個の電極に加えて2個の電極を有するものに,本件発明5は7個の電極を有するもの,又は1つの面に対してのみ対称となるような位置に配置される6個の電極を有するものに,それぞれ技術的範囲が限定され(前提事実(2)ア〜ウ及びオ),本件発明4は,電極の数及び位置については,限定されないものの,電極の中央部に無電極部を有するものに技術的範囲が限定されている(前提事実(2)エ)。このように,本件各発明は,圧電セラミックス円柱の振動子を使用する振動ジャイロの一態様をそれぞれ技術的範囲とするにすぎないのであるから,圧電セラミックス円柱の振動子を使用する振動ジャイロを独占するものではないし,本件各発明が技術的範囲とする各態様を併せても,圧電セラミックス円柱の振動子を使用する振動ジャイロを事実上独占するものであるとも認められない。

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平成22(ネ)10062 職務発明譲渡対価等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年03月21日 知的財産高等裁判所

 1審では、職務発明の対価として6000万円強が認定されましたが、知財高裁は、約600万円に減額しました。損害額は、特許寄与率3%、被告寄与度95%から認定されました。
 このような包括クロスライセンス契約の締結交渉において,多数の特許の全てについて,逐一,その技術的価値や相手方による実施の有無等を相互に評価し合うことは現実的に不可能であるから,相手方が実施している可能\性が高いと推測している特許や技術的意義が高いと認識している基本特許を,提示特許として相互に一定件数の範囲内で相手方に提示し,それらの特許に相手方の製品が抵触するか否か,当該特許の技術的価値の程度及び実施していると認められた製品の売上高等について具体的に協議し,相手方の製品との抵触性及び技術的価値が確認された特定の特許(代表特許)と対象となる製品の売上高を重視した上で,互いに保有する特許の件数,出願中の特許の件数も比較考慮することにより,包括クロスライセンス契約の諸条件が決定されていることが通常であるということができる。そうすると,多数の特許が対象となる包括クロスライセンス契約においては,相手方への提示特許等として認められた特許以外の個別の対象特許(以下「非提示対象特許」という。)については,多数の特許のうちの1つとして,その他の多数の特許とともに厳密な検討を経ることなく当該契約の対象とされていたものというべきである。したがって,非提示対象特許については,包括クロスライセンス契約の対象特許である以上,同契約締結に対する何らかの寄与度は認められるものの,それは,提示特許等による寄与度を除いた残余の寄与度にすぎないと解される。そして,提示特許等が包括クロスライセンス契約締結に対する寄与度の相当部分を占めるものと評価すべき場合が多いと考えられること,非提示対象特許の数は極めて多いことが通常であることからすれば,非提示対象特許は,多数の特許群を構\成するものとしてその価値を評価すれば足りるものであって,包括クロスライセンス契約に対する特段の寄与度を認めるまでの必要はないものというべきである。もっとも,非提示対象特許であっても,包括クロスライセンス契約締結当時において相手方が実施していたこと又は実施せざるを得ないことが認められるような特許については,当該契約締結時にその存在が相手方に認識されていた可能性があり,また,特許権者が包括クロスライセンス契約の締結を通じて禁止権を行使しているものということができることから,提示特許等に準じるものとして,当該契約締結に対する一定の寄与度を認めるべきである。1審被告も,提示特許等とされなかった特許であっても,相手方が実施している蓋然性が高いと後に判断された場合,実施料の配分を行ったと主張するところである。
 エ 1審被告又はルネサスは,包括クロスライセンス契約に対する本件各特許の寄与を認め,合計約2223万円もの実績報奨金を支払ったものであり,上記実績補償金の金額を算定する際,認定した本件各特許の寄与率又は本件各特許への配分額は,1審被告又はルネサスが,1審原告と1審被告との間で職務発明に係る相当の対価請求について争いが生じる以前に,他の配分の対象となった特許の内容,交渉の経過等を総合的に考慮して算定したものであると推測される。もっとも,包括クロスライセンス契約の対象に含まれる全2万件又は4万件にも及ぶ特許に対して実績報奨金の支払を決定する際,対象とされた各特許発明のそれぞれについて,商業的に実施されている技術や他社製品に採用されている技術との関係や公知例との関係等を厳密かつ客観的に検証することは,時間,手間及びコストのいずれの観点からも非現実的であり,この厳密な検証を行うこと自体,営利企業においては合理的であるとも認めることはできない。そのため,従業員等に対する報奨金の算定に当たり,全従業員等に対する報奨金の総額において合理的範囲内に収まる限りにおいて,厳密な検証を行うことなく,相当の対価の額が算定されていたとしても,不自然とまで,いうことができない。その結果として,使用者等が算定した報奨金の額が,厳密な検証を行った上で算定した額と異なった場合には,その不均衡の是正を求めることが可能であり,報奨金の額が改正前特許法35条4項の規定に従って定められる対価の額に満たないときは,従業者等は,同条3項の規定に基づき,その不足する額に相当する対価の支払を求めることができるものとされるところである(最高裁平成13年(受)第1256号同15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照)。もちろん,実際上,従業者等に対して,本来支払うべき額を超えて相当の対価が支払われることも生じ得る。この点について,1審原告は,1審被告がライセンス交渉の材料として日本967号特許を有効に活用しなかったにもかかわらず,正当な理由もなく,同特許について,平均分配率をはるかに超える高率の分配率を付与し,その対価を1審原告に支払ったのであれば,1審被告の関係取締役及び関係幹部社員は,忠実義務違反又は善管注意義務違反の責任を問われかねないものであるなどとも主張するが,使用者等が,本来支払うべき額を超えて対価を支払った場合に,1審原告の主張する責任を追及される余地があるとしても,厳密な検討に要する費用の節約や発明の奨励等の目的のために,不当利得返還請求などを差し控えることは考えられないわけではないから,1審原告に対し,その返還を求めることがなかったからといって,1審原告に支払った対価の額が相当であったということはできない。以上,要するに,1審被告又はルネサスによる,本件各特許に実施料を配分すべき包括クロスライセンス契約の選択や寄与率に関する認定については,本件における主張立証の内容をふまえ,その認定に明らかな誤りがないか否か,明らかに不公正又は偏った認定となっていないか否か等の観点に基づいて,再検討を要するというべきである。そこで,以下,上記観点をふまえて検討する。
・・・・ 
 前記ア(イ)及び(ウ)の各事実によれば,1審被告において,本件各特許は,ライセンス交渉における提示特許等の候補の1つとして把握されており,平成12年度以降の交渉の際,実際に提示特許等として活用したのみならず,提示特許等として活用しなかった包括クロスライセンス契約についても,貢献を認めるなどしていたものである。他方で,先に争点(1)アについて認定したとおり,本件出願時明細書に記載された発明は,エッジ強調型位相シフトマスク及び補助開口型位相シフトマスクに関するものであって,平成3年度における戦略特許賞「金賞」を受賞したのも,その当時,エッジ強調型位相シフトマスクが有力な技術であると一般的に評価され,雑誌記事において紹介されていたことによるものと推測される。日本967−1発明は,平成7年における補正より現在の内容となったところ,1審被告は,本件各特許発明の技術的範囲にハーフトーン型位相シフトマスクが含まれるとの当時の1審被告又はルネサスの認識(あるいは1審被告又はルネサスにおいて,意図的にそのようなものとして取り扱ったこと)を前提として,本件各特許を高く評価したものにすぎないと認められるところ,客観的には,本件各特許発明の技術的範囲にハーフトーン型位相シフトマスクが含まれるとは認められず,仮に,含まれると解する場合,当該補正は,本件出願時明細書の要旨を変更するものとなってしまうことは,先に争点(1)アについて認定したとおりである。日本967号特許は,ライセンス交渉において,提示特許等として用いられたこともあったが,交渉の相手方が,日本967号発明の技術的範囲にハーフトーン型位相シフトマスクが含まれる等その価値を高く評価して,包括クロスライセンス契約を締結したと認めるに足りる証拠はない。現に,ライセンス交渉の相手方から,日本967号発明の技術的範囲にハーフトーン型位相シフトマスクが含まれることに疑義が示されている例もあることが認められることは,先に説示したとおりである。しかも,日本967号発明の技術内容からすると,日本967号発明の技術的範囲にハーフトーン型位相シフトマスクが含まれないことについて,相手方が指摘することは格別困難であるということはできないから,相手方からその旨の反論がされることは十分予\想できるものである。以上の諸事情からすれば,本件各特許の寄与率については,平成9年度から平成20年11月21日までの各年度を通じて,3%をもって相当と認める。
・・・・
 本件発明それ自体は,1審原告の研究開発によりされたものと認められるが,これにより1審被告が前記の利益を得ることができたのは,日本967号発明にハーフトーン型位相シフトマスクが含まれ得るかのように特許請求の範囲を補正し,かつ,日本967号発明にハーフトーン型位相シフトマスクが含まれることを前提にライセンス交渉が行われたことによるところが大きいものと認められる。そして,このような補正を行い,かつ,ハーフトーン型位相シフトマスクが含まれるものとしてライセンス交渉において積極的に活用したのは,1審被告の貢献によるところであるのに対し,他方で,これらの点における1審原告の貢献は,そのような補正及び活用の基礎となる本件発明をしたという限度にとどまるものと認められる。しかも,1審原告が行った本件当初発明は問題点を包含しており,これを解消するに当たっての1審被告内部における問題点の指摘や,1審被告内部において進められていた位相シフトマスクに関する研究成果の蓄積を無視することはできないこと,本件当初発明に係る請求項は,補正により削除されるに至っていること,1審原告が行った発明には,ハーフトーン型位相シフトマスクは含まれていないこと等の本件発明が特許を取得するに至る経緯及び日本967号発明の本来の技術的範囲等その他の一切の事情を考慮すれば,本件発明により受けるべき利益の額及び本件発明がされるについて1審被告が貢献した程度は,相当程度高いものと解される。もっとも,本件においては,本件各特許が提示特許等とされた包括クロスライセンス契約における実施料及びクロス効果の合計額に基づいて,相当の対価を算定するところ,1審被告は,本件各特許について比較的高率の貢献を認めていることに鑑みて,1審被告が貢献した程度は,95%をもって相当と認める。

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平成21(ワ)17204 職務発明の対価請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年02月17日 東京地方裁判所

 職務発明の補償金について、消滅時効が成立していないとして、1審判決を取り消した知財高裁から差し戻された事件で、東京地裁は、5900万円の支払いを命じました。
 被告は,原告の請求のうち,当初の請求額である150万円を超える部分(増額部分)の消滅時効は平成10年10月7日から進行し,上記150万円の訴訟提起によってもその時効は中断ぜずに進行を続け,平成20年10月6日の経過をもって時効期間が満了し,被告の消滅時効の援用により増額部分の請求債権は時効消滅したと主張する。しかし,数量的に可分な債権の一部につき一部であることを明示して訴えを提起した場合に,当該訴訟手続においてその残部について権利を行使する意思を継続的に表示していると認められる場合には,いわゆる裁判上の催告として,当該残部の請求債権の消滅時効の進行を中断する効力を有するものと解すべきであり,当該訴訟継続中に訴えの変更により残部について請求を拡張した場合には,消滅時効を確定的に中断すると解するのが相当である。
 本件において,原告は,訴状において,相当対価の総額として主張した約20億6300万円から既払額を控除した残額の一部として150万円及びこれに対する遅延損害金の支払を請求するとしつつ,「本件請求については時効の問題は生じないものと考えられるが,被告からいかなる主張がなされるか不明であるので,念のため,一部請求額を「150万円」として本訴を提起したものであり,原告は追って被告の時効の主張を見て請求額を拡張する予定である」として,本件訴訟手続において,残部について権利を行使する意思を明示していたと認められる。したがって,裁判上の催告により,当該残部の請求債権の消滅時効の進行は,遅くとも上記訴状を第1回口頭弁論期日において陳述した平成19年6月26日に中断し,その後,本件訴訟係属中に原告が訴えの変更により残部について請求を拡張したことにより,当該残部の請求債権の消滅時効は確定的に中断したものというべきであるから,被告の主張には理由がない。\n

◆判決本文

◆知財高裁の判決はこちらです。平成20年(ネ)第10039号

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平成21(ワ)9793 特許を受ける権利確認請求事件 特許権 民事訴訟平成22年11月29日 東京地方裁判所

 職務発明および黙示の譲渡も否定されました。
 上記のとおり,乙1の4発明は,本件発明1〜8のすべての構成要件を開示している。そして,本件発明9〜16は,それぞれ本件発明1〜8に対応し,それぞれのねじに対応する形状を備えたドライバビットに関する発明であるから,乙1の4発明が本件発明1〜8を開示していることにより,本件発明9〜16の構\成要件についても開示していると認めるのが相当である。(3) そして,乙1の4発明に関しては,・・・このような甲5発明との対比からすると,本件発明の内容を開示する乙1の4発明は,具体的な設計図や金型のパンチ仕様図が作成されて,製品が特定され,実施が可能な状態となった平成15年3月の時点において,発明として既に完成していたと認めるのが相当である。・・以上によると,乙1の4発明には,本件発明の内容が開示されており,本件発明は,被告が原告に再入社する以前である平成15年3月の段階で,既に発明として完成していたというべきであるから,本件発明は,被告が原告に再入社した後にその職務としてした発明とはいえず,職務発明に該当しないと言わざるをえない。そして,その他,本件発明が職務発明に該当すると認めるに足りる証拠はない。・・・以上のような経緯にかんがみれば,上記(ア)の被告の言動から,原告においては,「CRドライブ」が新たな発明の実施品であって,その発明は原告に帰属すべきものであるとの認識が生じていたとは認められるものの,他方,上記(イ)のとおり,被告においては,原告への再入社前に完成し,再入社後も自ら保有すると認識していた本件発明の特許を受ける権利について,これを原告に譲渡する意思を有していたと認めることはできず,原告,被告の間においては,本件発明がいずれに帰属すべきかについて,認識の差があったものということができる。加えて,原告においても,他のねじの発明(甲5)については,早期に特許出願等の対応を行ったのに対し,本件発明については,平成18年8月27日の時点において,特許出願について何ら言及しなかったこと等からすると,(ア)の認定事実から,同日の時点で,本件発明の特許を受ける権利を被告から原告に譲渡する旨の黙示の譲渡契約が成立していたことを推認することはできないと言わざるをえない。

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平成20(ネ)10082 職務発明対価請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年08月19日 知的財産高等裁判所

 職務発明の報奨金について、1審は請求棄却でしたが、知財高裁は512万円の請求を認めました。
 使用者が被用者から譲り受けた特許発明の実施につき,実施許諾を得ていない競業他社に対する禁止権に基づく独占の利益が生じているといえるためには,当該特許権の保有と競業他社の排除との間に因果関係が認められる必要があるところ,その存否については,i)特許権者が当該特許につき有償実施許諾を求める者には,すべて合理的な実施料率でこれを許諾する方針(開放的ライセンスポリシー)を採用しているか,又は特定の企業にのみ実施許諾をする方針(限定的ライセンスポリシー)を採用しているか,ii)当該特許の実施許諾を得ていない競業他社が一定割合で存在する場合でも,当該競業他社が当該特許発明に代替する技術を使用して同種の製品を製造販売しているか,代替技術と当該特許発明との間に作用効果等の面で技術的に顕著な差異がないか,また,iii)包括ライセンス契約又は包括クロスライセンス契約等を締結している相手方が,当該特許発明を実施しているか又はこれを実施せず代替技術を実施しているか,さらに,iv)特許権者自身が当該特許発明を実施しているのみならず,同時に又は別の時期に,他の代替技術も実施しているか等の一切の事情を考慮して判断すべきである。ところで,当該特許発明の価値が非常に低く,これを使用する者が全く想定し得ない場合や,代替技術が非常に多数あるため,市場全体からみて当該特許の存在が無視できるような特段の事情がある場合を除き,単に開放的ライセンスポリシーが採られており,当該特許発明と同等の代替技術が存在するというだけでは,程度の差はともかく,依然として当該特許発明を譲り受けた使用者に「超過利益」はあるというべきである。また,ある市場において,当該特許発明のほか,代替技術となり得る複数の技術が存在する場合,技術の優劣等の格別の事情が認められなければ,原則として同市場に占める当該特許発明の割合に応じた「超過利益」が認められるというべきである。ちなみに,当該要証事実の性質等によっては,当該特許発明と代替技術との優劣を的確に判断することは,技術内容や市場原理等に対する理解の難しさもあって,困難を極める認定問題であり,安易に立証責任の所在を定めて,悉無律によって決することは,不公正な結果を招来しやすくし,妥当ではない。なお,企業は,経済的に自己の利益を最大化することを目指して行動するものであって,各企業が,当該特許発明を自社実施するか,一部又は全部を他社に実施許諾するかは,利益最大化のための手段として,最良の選択か否かの問題にすぎない。そうであれば,自社実施の場合であっても,それによる利益の一定部分は「超過利益」に該当するものと解すべきである。

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平成18(ワ)23550 職務発明譲渡対価等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年06月23日 東京地方裁判所

 職務発明に基づく報奨金として約6300万円が認められました。
 以上のとおり,本件発明自体は,原告の研究開発によりなされたものと認められるが,これにより被告が前記2の利益を得ることができたのは,日本967号発明にハーフトーン型位相シフトマスクが含まれ得るかのように特許請求の範囲を補正し,かつ,日本967号発明にハーフトーン型位相シフ136トマスクが含まれることを前提にライセンス交渉が行われたことによるところが大きいものと認められる。そして,前記⑵のとおり,このような補正を行い,かつ,ハーフトーン型位相シフトマスクが含まれるものとしてライセンス交渉において積極的に活用したのは,被告の貢献によるところであるのに対し,他方で,これらの点における原告の貢献は,そのような補正及び活用の基礎となる本件発明をしたという限度にとどまるものと認められる。これに加えて,前記⑵のとおり,原告が行った本件当初発明は問題点を包含しており,これを解消するに当たっての被告内部における問題点の指摘や,被告内部において進められていた位相シフトマスクに関する研究成果の蓄積を無視することはできないこと,結局は,本件当初発明に係る請求項は,補正により削除されるに至っていること,原告が行った発明には,ハーフトーン型位相シフトマスクは含まれていないこと等の本件発明が特許を取得するに至る経緯及び日本967号発明の本来の技術的範囲等その他の一切の事情を考慮すれば,本件発明により受けるべき利益の額及び本件発明がされるについて,被告が貢献した程度は,96%とするのが相当である。

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平成18(ワ)27879 補償金請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年07月08日 東京地方裁判所

職務発明の報奨金として228万円が認められました。
 「ところで,被告は,本件発明を自己実施しながら,他社との包括クロスライセンス契約に基づいて本件発明の実施許諾もしているので,本件発明により被告が受けるべき利益の額を算定するに当たっては,被告が包括クロスライセンス契約において本件発明により得た利益の額と被告が本件発明を自己実施したことにより受けるべき利益の額とに分けて検討することとする。・・・
(2) 包括クロスライセンス契約により得た利益の額の算定方法
ア 複数の特許発明等がライセンス契約の対象とされている場合,当該発明を実施許諾したことにより得た利益の額を算定するに当たっては,当該発明が当該ライセンス契約に寄与した程度(寄与度)を考慮すべきである。当事者双方が多数の特許発明等の実施を相互に許諾し合う包括クロスライセンス契約は,相互に無償で実施を許諾する特許発明等とそれが均衡しないときに支払われる実施料の額が総体として相互に均衡すると考えて締結されるものと解されるから,当事者の一方が自己の保有する特許発明等の実施を相手方に許諾することによって得た利益は,相手方が自己の特許発明等を実施することにより,本来,相手方から支払を受けるべきであった実施料の額と相手方から現実に支払われた実施料の額との合計額を基準として算定することも合理的な算定方法の一つであると解される。そして,包括クロスライセンス契約の締結交渉においては,多数の特許発明等のすべてについて,逐一,その技術的価値,実施の有無などを相互に評価し合うことは不可能又は著しく困難であることから,相互に一定件数の相手方が実施している可能\性が高い特許や技術的意義が高い基本特許を相手方に提示し,それらの提示特許に相手方の製品が抵触するかどうか,当該特許の有効性及び実施品の売上高等について協議することにより,提示特許のうち相手方製品との抵触性及び有効性が確認された代表特許と対象製品の売上高を比較考慮すること,互いに保有する特許の件数,出願中の特許の件数も比較考慮することにより,包括クロスライセンス契約におけるバランス調整金の有無などの条件が決定されるのが通常であり,代表\特許は包括クロスライセンス契約に多大な貢献をしているといえる。しかし,代表特許や提示特許でなくとも,包括クロスライセンス契約の対象に含まれ,かつ,その契約締結時に相手方によって実施されていたことが立証された特許については,当該包括クロスライセンス契約に寄与しているものといえるから,その実施許諾により得た利益の額を考慮すべきであり,また,このような相手方実施特許が当該包括クロスライセンス契約に寄与した程度(寄与度)は,その特許発明の技術内容,相手方の実施割合,代替技術の存在及びその実施割合等を総合的に考慮して決するのが相当であると解される。・・・上記(ア)eの認定のとおり,被告はほとんどすべての競合他社との間で包括クロスライセンス契約の一種であるライセンスバック契約を締結していること,ライセンスバック契約の有償部分の実施料率の定めは,被告と各相手方との特許力の差異を反映して契約の相手方ごとに異なる数字となっていることに照らすならば,各相手方とのライセンス契約における各相手方の個別の特許力を具体的に考慮検討することは,その審理に著しい負担を要し,極めて困難であるといわざるを得ない。一方,ライセンスバック契約の無償部分においては,被告が相手方に許諾した特許等と被告が相手方から許諾を受けた特許等が均衡しているものと考えられるが,個々の特許の特許力を具体的に考慮検討することは,同様に,極めて困難であるといわざるを得ない。そこで,本件においては,いくつかの相手方との間における実施料率の平均値をもって有償部分の標準的実施料率とし,無償部分については,個々の特許の特許力を考慮せずに,保有特許数の総和が特許力を示すものとして,算定の基礎とすることも許されるものと解される。以上の諸点に加えて,本件発明を対象とする被告の包括クロスライセンス契約は別件訴訟において判断の基礎とされた被告の包括クロスライセンス契約と重複していることを勘案すると,被告が包括クロスライセンス契約において本件発明により得た利益の額は,別件訴訟の第1審判決及び控訴審判決が採用した算定方法と同様に,被告の全ライセンシーによる本件発明の実施品の譲渡価格に,本件発明の実施料率(「標準包括ライセンス料率」×本件発明の寄与度)を乗じて算定するのが相当である。」

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平成18(ワ)7529 特許権 民事訴訟 平成21年01月27日 大阪地方裁判所

 職務発明に基づく報奨金について、2253万円が認定されました。
「ところで,使用者等が,その時々の経済情勢,市場動向,競業者の動向等,経営状況の変化に対応していかなる経営方針をもって臨むかは,基本的に経営者としての使用者等の経営判断に委ねられた事項である。使用者等がある職務発明を実施するか否かについても,その発明が使用者等の業務の範囲内において従業者が職務として行った職務発明である以上,このような経営判断の一環として決定し得る事項であるから,当該発明を実施するか否か,実施するとしてどの程度の規模で実施するか,将来的にその規模を拡大していくか縮小していくかは,基本的に使用者等がその時々の具体的状況に応じて,その裁量により決定していくべきものである。したがって,使用者等がある職務発明の実施を抑制するような方針をとり,結果として,当該発明の独占的実施による利益あるいは実施料収入が減少したとしても,それが使用者等において,もっぱら発明者である従業者等に対する相当の対価の支払を免れることを目的としたものであるなど,経営判断としての合理性を欠くことが明らかであるといった特段の事情が認められない限り,「相当の対価」の額の算定に際しては,上記方針を採用した結果として実際に使用者等が当該発明の独占的実施によって得た利益あるいは実際に第三者から受けた実施料収入を基礎として算定すべきであって,販売抑制がなかった場合を想定し,かかる場合における当該発明の独占的実施によって得る利益あるいは第三者からの実施料収入を仮に想定して,これを基礎に相当の対価の額を算定するのは相当でない。これを本件についてみると,被告が平成16年9月ころ販売政策を変更し,HMS商品からレディメイド商品へと販売の力点を移し,以後HMS商品の新商品の発売を中止したことは当事者間に争いがなく,弁論の全趣旨によれば,被告は平成20年2月をもってHMS商品の販売を打ち切ったことが認められる。このような被告の販売政策の変更は,基本的には被告の経営判断に委ねられた事項であるから,被告の上記販売抑制策が,原告に対する相当の対価の支払を免れることを目的としたものであるなど,経営判断としての合理性を欠くことが明らかであるといった特段の事情が認められない限り,相当の対価の額はHMS商品の現実の売上高をもとに算定すべきであり,原告が主張するような算定手法,すなわち,被告によるHMS商品の販売抑制がなかったと仮定して,販売抑制以前の売上高を基礎にあるべき売上高を想定してこれに基づいて相当対価の額を算定するという手法は採用すべきではない。」

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平成21(ネ)10017 特許を受ける権利の確認等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年02月24日 知的財産高等裁判所 

 控訴人退職後に被控訴人でした特許出願についての、特許を受ける権利の帰属確認訴訟です。控訴人は特許を受ける権利を放棄していないこと、被控訴人は背信的悪意者であるとして、受ける権利は控訴人にあると認定されました。
 「Fは,Aから本件発明について開示を受けてそのまま特許出願しかつ製品化することは,控訴人の秘密を取得して被控訴人がそれを営業に用いることになると認識していたというべきであり,さらに,本件発明はAが控訴人の従業員としてなしたものであることからすると,通常は,控訴人に承継されているであろうことも認識していたというべきである。このように,被控訴人の特許出願は,控訴人において職務発明としてされた控訴人の秘密である本件発明を取得して,そのことを知りながらそのまま出願したものと評価することができるから,被控訴人は「背信的悪意者」に当たるというべきであり,被控訴人が先に特許出願したからといって,それをもって控訴人に対抗することができるとするのは,信義誠実の原則に反して許されず,控訴人は,本件特許を受ける権利の承継を被控訴人に対抗することができるというべきである。」

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平成20(ワ)14681 補償金請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年01月29日 東京地方裁判所

 超過売上高があったとは認められないとして、特許法35条に基づく報奨金請求が棄却されました。
 上記(1)〜(4)に検討したところによれば,本件サービスは,本件発明を必須の構成とするものではない上,文字認識方法として本件発明は従来技術に比して格別技術的な優位性を有するものではなく,遅くとも本件サービス実施時,認識率において他の製品に比して格別顕著な差を有していたものではないこと,他方,文字認識に係る代替技術は,市場に多く存在していたことが認められるというのであるから,被告と競合する他者は,いつでも,文字認識部分について,本件発明と技術的に同等以上の代替技術を使用して,本件発明を使用することなく,本件サービスと同様のサービスを行うことができたものというべきである。そうすると,被告が,本件発明を排他的に実施していたことによって,すなわち,他者に対する禁止権の効果として,超過売上高を得たという関係を認めることはできない。・・・(ア) 原告は,本件発明はすべて原告が独自に考案したものである旨を主張するが,それが採用できないことは前記(2)において説示したとおりである。(イ) 原告は,本件発明を使用した文字認識の学習処理及び識別処理が高速である旨を主張する。しかしながら,学習処理時間は,既に完成したプログラムを運用する本件サービスにおいて格別の効果を有するとは認め難い。また,本件サービスの開始された平成9年当時,本件発明の文字認識の識別処理時間が,オペレータの待ち時間の有無又はその程度につき,他の技術と比して有意な差があったことを認めるに足りる証拠はない。(ウ) 原告は,すべてのカテゴリーに対する類似度情報を返す本件発明は,誤認識をより高い確率ではじき出すことが可能となるなどと主張するが,すべてのカテゴリーに対して類似度情報を返すことにより原告主張の効果が生じると認めるに足りる証拠はなく,採用することができない。(エ) 原告は,本件発明が大量カテゴリーの識別問題に係る分野に応用できる旨を主張するが,被告がそのような発明を実施していることを認めるに足りる証拠はない。(オ) 原告は,本件発明の認識率は高い旨を主張するが,その主張を採用することができないことは,上記(3),(4)に説示したところから明らかである。・・・(ア) 原告は,本件サービスはOCRを利用することによって初めて成り立つ旨を主張する。しかしながら,被告はいずれにしても職務発明である本件発明を実施できるのであって,その実施による効率化は,本件権利の譲渡を受けて実施する場合と法定通常実施権に基づき実施する場合とで何らの差異を見いだすことができない。原告の上記主張は,本件発明を実施していない場合と本件発明を実施している場合との対比を述べるのみであり,本件発明の譲渡を受けて実施する場合と法定通常実施権に基づき実施する場合においていかなる差異が生じるかを述べているものではない。原告の主張は,前提を誤るものであって,採用することができない。(イ) 原告は,本件サービスは,本件発明を除けば従来技術の単なる組合せにすぎない旨を主張するが,仮にそうであるとしても,本件発明についてもまた代替技術が存する以上,本件サービスの性質が本件発明の排他的実施による利益を基礎付けるものではない。原告の主張は,採用することができない。エ「排他的実施」について原告の主張の趣旨は,必ずしも明らかではないが,いずれにしても,本件サービス実施時に本件発明と同等以上の代替技術が存していた以上,競合他者はその技術を使用して市場に参入すればよく,被告が本件発明を排他的に実施していたことによって超過売上高を得たという関係を認めることができないことは,上記(5)のとおりであるから,原告の上記主張は,採用することができない。

◆判決本文

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平成19(ワ)31700 職務発明対価請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月25日 東京地方裁判所

 共同発明者と認定されて35条に基づく対価が認められました。また、対価についても超過売上高の4割と認定されました。
 そして,上記i)ないしiii)に係る各実験を実際に行い,その実験データを作成したのは,Bであるが,平成2年5月当時,Bは,被告に入社後約2年1か月を経過した時点で,それまでに臨床検査用試薬の開発経験がなかったのに対し,原告は,昭和47年から臨床検査用試薬の開発に従事し,その当時まで約17年間にわたる臨床検査用試薬の開発経験があり,その間に酸化還元反応,界面活性剤等に関する多くの職務発明を行い,被告の特許権の取得に関与するなど,ビリルビン測定試薬を含む臨床検査用試薬について豊富な知識・経験を有していたこと(前記1(1)ア(ア)d,甲9ないし24,26,35,43,44,弁論の全趣旨)によれば,Bは,原告の指示ないし示唆を受けながら上記各実験を行い,その実験結果等の分析評価についても原告が主導的な役割を担っていたものと推認することができる。b これに対し証人Bの供述及び陳述書(乙3,23)中には,Bは,バナジン酸又は三価のマンガンをビリルビンの酸化剤として使用するときに間接ビリルビンの反応抑制剤として添加する添加物のスクリーニング実験を行った際に,原告から,具体的な添加物を挙げて実験を行うよう指示を受けたことはなく,自己の判断で添加物を選択して実験を行った,Bが塩酸ヒドラジンが間接ビリルビンの酸化反応を抑制できることを原告に報告したところ,原告から塩酸ヒドラジンはロケットなどに使う引火性のある物質なので印象がよくないと言われたので,塩酸ヒドラジンと同等の抑制効果が得られる添加物を探すうちに,還元剤として一般に使われている塩酸ヒドロキシルアミンについて実験していなかったことに気付き,平成2年5月17日に実験してみたところ,塩酸ヒドラジンと同等の数値が得られた旨の部分がある。しかし,仮にBが述べるように実験された個々の添加物の選択がBの判断で行われたとしても,本件証拠上,Bが,どの添加物であれば,間接ビリルビンを保護し,あるいは間接ビリルビンの酸化反応を抑制する効果があるかについて,具体的な着想を持って実験を行っていたものとは認められないし,新たなビリルビン測定試薬の開発責任者である原告が,Bから報告を受けた実験データについて分析評価を行わずに,すべてBに試薬の研究開発を委ねていたものとは考え難い。もっとも,被告が主張するように,原告作成の平成2年5月の月報の表紙(乙24の1)には,還元剤である塩酸ヒドロキシルアミンについて何ら言及されておらず,バナジン酸の予\定処方についても,「塩酸ヒドラジン」が挙げられているにとどまるものであるが,原告作成の月報の表紙部分はその月に行った実験,研究成果等の進行状況の概要を記載するもので,原告が行った指示等を具体的に記載することまで予\定されているものではなく,また,B作成の月報用報告書についても原告の指導の下に作成された可能性を否定できるものではないから,原告が間接ビリルビンの反応抑制剤として「ヒドロキシルアミン類」を選択することに関与していなかったと断定することはできない。したがって,証人Bの上記供述及び陳述書の記載部分によって上記推認を妨げるものではない。(ウ) 以上によれば,原告は,本件発明の特徴的部分ii)の着想・具体化に関与したことが認められる。(4) 小括以上のとおり,本件発明の特徴的部分i)についてはBが着想し,具体化したものであって,原告がこれに関与したものとはいえないが,本件発明の特徴的部分ii)については原告がその着想・具体化に際し,主導的な役割を担っていたものと認められるから,原告及びBは,いずれも,本件発明の技術的思想の創作行為に現実に加担した者であって,本件発明の共同発明者であると認められる。・・・・・ところで,特許法旧35条4項の「発明により使用者等が受けるべき利益」は,使用者等が「受けた利益」そのものではなく,「受けるべき利益」であるから,使用者等が職務発明についての特許を受ける権利を承継した時に客観的に見込まれる利益をいうものと解されるところ,使用者等は,特許を受ける権利を承継せずに,従業者等が特許を受けた場合であっても,その特許権について特許法35条1項に基づく無償の通常実施権を有することに照らすと,「発明により使用者等が受けるべき利益」には,このような法定通常実施権を行使し得ることにより受けられる利益は含まず,使用者等が従業者等から特許を受ける権利を承継し,当該発明の実施を排他的に独占し得る地位を取得することによって受けることが客観的に見込まれる利益(独占の利益)をいうものと解される。そして,「発明により使用者等が受けるべき利益」を考慮するに当たっては,発明の実施又は実施許諾による使用者等の利益の有無やその額など,特許を受ける権利の承継後の事情についても,その承継の時点において客観的に見込まれる利益の額を認定する資料とすることができると解するのが相当である。前記1(1)の前提事実と弁論の全趣旨によれば,被告が製造販売する本件試薬は,本件発明の方法の使用にのみ用いる物(専用品)であること,このように被告は,本件発明の方法の使用にのみ用いられる物の製造販売を自ら行い,その製造販売について国内及び国外を問わず第三者に許諾したことはないことが認められる。ところで,特許が方法の発明についてされている場合において,業として,その方法の使用にのみ用いる物の生産,譲渡若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為は,特許権の侵害とみなす行為(特許法101条4号)に該当し,特許権者は,当該物の製造販売を行う者に対して差止請求をすることができること(特許法100条1項)にかんがみれば,特許権者は,特許発明の方法の使用にのみ用いる物の製造販売を事実上排他的に独占する地位を有しているものと解される。そして,特許権者から当該物の製造販売について許諾を受けた者が当該物の製造販売を行うことができるのと同様に,特許法35条1項に基づく通常実施権を有する者も,自ら当該物の製造販売を行うことができるものと解するのが相当である。そうすると,本件発明の使用にのみ用いる本件試薬の売上げを基にして,「発明により使用者等が受けるべき利益」を算定するに当たっては,被告が本件発明の使用にのみ用いる物の製造販売を事実上排他的に独占し,第三者による製造販売を排除したことにより得られたものと認められる本件試薬の売上高,すなわち,特許法35条1項に基づく通常実施権を有することにより販売し得たと認められる売上高を上回る売上高(超過売上高)に係る分について,第三者に本件発明の使用にのみ用いる物の製造販売を許諾した場合に得られる実施料を算定するのが相当であると解される。具体的には,本件試薬の売上高のうち,その排他的,独占的な販売に基づく超過売上高に係る分はいくらであるか,その超過売上高に係る分を第三者に許諾した場合に得られる想定実施料(超過売上高に係る分に想定実施料率を乗じた額)はいくらであるかを認定し,本件試薬の販売による独占の利益を算定するのが相当である。・・・・諸般の事情を考慮すると,被告の本件試薬の売上高のうち,被告が本件発明の使用にのみ用いる物の製造販売を事実上排他的に独占し,第三者による製造販売を排除したことにより得られたものと認められる超過売上高に係る分が占める割合は,40%と認めるのが相当である。」\n

◆判決本文

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◆平成19(ネ)10056 不当利得返還等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月25日 知的財産高等裁判所

 職務発明の報奨金額が増額されました
    「一審原告らの本訴請求は,前記のとおり,特許法旧35条3,4項に基づき(ただし,海外特許についてはその類推適用),本件各発明の譲渡対価としての「相当額」の支払等を求めるものであるが,そのうち,まず使用者たる一審被告が自らその発明を実施した分(自己実施分)について検討する。イ 特許法旧35条4項の「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」は,特許を受ける権利が将来特許を受けることができるか否かも不確実な権利であり,その発明により使用者等が将来得ることができる独占的実施による利益の額をその承継時に算定することが極めて困難であることからすると,当該発明の独占的実施による利益を得た後の時点において,これらの独占的実施による利益をみてその法的独占権に由来する利益の額を認定することも,同条項の文言解釈として許容されると解する。そして使用者等は,職務発明について特許を受ける権利又は特許権を承継することがなくとも当然に当該発明について同条1項が規定する通常実施権を有することに鑑みれば,同条4項にいう「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」は,自己実施の場合は,通常実施権(法定通常実施権)の行使による利益を超えたものより得た利益と解すべきである。したがって,ここでいう「独占的実施による利益」ないし「独占の利益」とは,一般的には,特許権者が他社に実施許諾をせずに当該特許発明を独占的に実施している場合(自己実施の場合)における,他社に当該特許発明の実施を禁止したことに基づいて使用者が挙げた利益,すなわち,他社に対する禁止権の効果として,他社に実施許諾していた場合に予想される売上高と比較してこれを上回る売上高(以下,売上げの差額を「超過売上げ」という。)を得たことに基づく利益(法定通常実施権による減額後のもの)が,これに相当するものということができる。また,特許権者が,当該特許発明を実施しつつ,他社に実施許諾もしている場合において,当該特許発明の自己実施分について,実施許諾を得ていない他社に対する特許権による禁止権を行使したことにより超過売上げが生じているとみるべきかどうかについては,事案により異なるものということができる。すなわち,i)特許権者は特許法旧35条1項により,自己実施分については当然に無償で当該特許発明を実施することができ(法定通常実施権),それを超える実施分についてのみ「超過売上げを得たことに基づく利益」を算定することができるのであり,通常は50〜60%程度の減額をすべきであること,ii)当該特許発明が他社においてどの程度実施されているか,当該特許発明の代替技術又は競合技術としてどのようなものがあり,それらが実施されているか,iii)特許権者が当該特許について有償実施許諾を求める者にはすべて合理的な実施料率でこれを許諾する方針を採用しているか,あるいは,特定の企業にのみ実施許諾をする方針を採用しているか,などの事情を総合的に考慮して,特許権者が当該特許権の禁止権による超過売上げを得ているかどうかを判断すべきである。」

◆平成19(ネ)10056 不当利得返還等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月25日 知的財産高等裁判所
地裁判決はこちらです
    ◆平成17(ワ)11007

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◆平成19(ネ)10021 補償金請求控訴事件 特許権民事訴訟 平成21年02月26日 知的財産高等裁判所

  職務発明に基づく補償金について、知財高裁は、地裁の3350万円から6960万円へ増額しました。判決文が300頁を超えるので、目次が付いてます。
  「ところで,旧35条3項及び4項は,その「対価」という文言や上記の規定の趣旨,対価の額を定めるに当たっては「発明により使用者等が受けるべき利益の額」を考慮すべきとされていること等に照らすと,職務発明の独占的な実施に係る権利が有する価値のうち従業者等に属するものを金銭として請求することを認めるものであって,それを認めることが従業者等のインセンティブとなり,発明を奨励し産業の発展に寄与するということになるものの,そのようなインセンティブという側面のみから上記各項を解釈することはできない。職務発明の独占的な実施に係る権利が有する価値のうち従業者等に属するものを金銭に評価して請求するという,「対価」としての側面を無視することはできない。そうすると,その額は従業者等に対するインセンティブとなるもので足りるということはできず,その旨の一審被告の主張を採用することはできない。一審被告は,旧35条4項の「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」が極めて高額になる場合は,「使用者が貢献した程度」は通常よりも高いものとなり得るのであり,「利益の額」が低額になる場合には,「使用者が貢献した程度」は,通常よりもやや低くなり得ると主張する。しかし,旧35条4項の「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」が高額であるか低額であるかによって,一概に「使用者が貢献した程度」が高いとか低いということはできないものと考えられる。発明自体が非常に価値があるために「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」が高額になることがある。これに対し,発明自体はそれほど価値がなくとも,使用者の営業努力等によって「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」が高額になることもある。また,発明自体は価値があるものであっても,「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」は低額にとどまることがある。これに対し,発明自体それほど価値がなく,「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」も低額にとどまるということもある。これらの場合のうち,発明自体に非常に価値があるときは,従業者等の貢献の程度が高いということがあり得るが,そのような場合は,「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」が高額であるからといって,従業者等の貢献の程度を低く見てもよいということにはならない。これに対し,発明自体がそれほど価値がなくとも,使用者の営業努力等によって「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」が高額になる場合は,「使用者が貢献した程度」を高く見ることになる。「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」が低額にとどまる場合についても,同様に,発明自体に価値がある場合には,従業者等の貢献の程度が高いということがあり得る反面,発明自体にそれほど価値がない場合などには,「使用者が貢献した程度」が高いということもあり得る。したがって,一審被告の上記主張を採用することはできない。」

◆平成19(ネ)10021 補償金請求控訴事件 特許権民事訴訟 平成21年02月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(ワ)29768 補償金請求事件 特許権 民事訴訟 平成20年12月16日 東京地方裁判所

   原告は、発明者でないとして、職務発明に基づく補償金の請求を棄却しました。
  「発明者は,当該特許請求の範囲の記載に基づいて定められた技術的思想の創作行為に現実に関与した者, すなわち,新しい着想をした者,あるいは新しい着想を具体化した者のいずれ かに該当する者でなければならず,技術的思想の創作行為自体に関与しない者, 例えば,部下の研究者に対し,具体的着想を示さずに,単に研究テーマを与え たり,一般的な助言や指導を行ったりしたにすぎない者,研究者の指示に従い, 単にデータをまとめたり,実験を行ったりしたにすぎない者,発明者に資金や 設備を提供するなどし,発明の完成を援助又は委託したにすぎない者は,発明 者とならない。 ・・・原告は,半導体レーザに非点隔差が存在すること,非点隔差の大きさが半導体レーザの種類によって異なること,非点収差により光ディスク等の使用上の問題が生じることを予測し,その問題を解決する必要があるとの着想を有しており,Bに対し,半導体レーザにおける非点隔差の存在の確認及び分析とその使用上の問題の解決という研究テーマを与えたものであり,上記着想を有していなければ,半導体レーザの非点収差の解決手段を見出すことはできなかった,と主張する。しかしながら,本件発明における技術的課題の具体的な解決手段は,上に述べたとおり,開口数NAが,半導体レーザの非点隔差ΔZ及び波長λとの間で本件条件式に規定される関係を有するレンズを挿入することにより,半導体レーザの非点収差を補正する,という点にある。原告が,半導体レーザの非点収差の存在により生じる光ディスク等の使用上の問題を解決する必要があるとの着想を有し,Bに対し上述のような研究テーマを与えたとしても,抽象的な技術的課題を設定したにとどまり,半導体レーザの非点収差を補正するための具体的な解決手段の着想に関与したということはできない。」

◆平成19(ワ)29768 補償金請求事件 特許権 民事訴訟 平成20年12月16日 東京地方裁判所

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◆平成20(ネ)10039 職務発明の対価請求控訴事件 その他民事訴訟 平成20年10月29日 知的財産高等裁判所

  職務発明に関する対価について、時効成立とした1審判決を取り消し、差し戻しました。
   「原審の東京地裁は,平成20年2月29日,控訴人の実績補償に係る相当対価請求権は,本件発明1については実施開始時である平成5年10月7日が,本件発明2については設定登録時である平成6年4月11日がそれぞれ起算点となり,控訴人が履行を請求した平成19年2月1日までに10年以上が経過したから,上記相当対価請求権は時効により消滅したとして,当該相当対価の額について判断することなく,控訴人の本訴請求を棄却した。そこで,これを不服とする控訴人が本件控訴を提起した。 ・・・職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させる旨を定めた勤務規則等がある場合においては,従業者等は,当該勤務規則等により,特許を受ける権利等を使用者等に承継させたときに,相当の対価の支払を受ける権利を取得する(特許法旧35条3項)。対価の額については,同条4項の規定があるので,勤務規則等による額が同項により算定される額に満たないときは同項により算定される額に修正されるが,対価の支払時期についてはそのような規定はない。したがって,勤務規則等に対価の支払時期が定められているときは,勤務規則等の定めによる支払時期が到来するまでの間は,相当の対価の支払を受ける権利の行使につき法律上の障害があるものとして,その支払を求めることができないというべきである。そうすると,勤務規則等に,使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には,その支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解するのが相当である(最高裁平成15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照)。」

◆平成20(ネ)10039 職務発明の対価請求控訴事件 その他民事訴訟 平成20年10月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(ネ)10008 職務発明対価支払等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成20年05月14日 知的財産高等裁判所

 職務発明に基づく対価として4500万が認められました。
 

◆平成19(ネ)10008 職務発明対価支払等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成20年05月14日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(ワ)24193 補償金請求事件 特許権民事訴訟 平成20年02月20日 東京地方裁判所

   職務発明完成における使用者等の貢献度として、95%が認定されました。
 「本件発明が完成した経緯は,上記のとおりであり,本件発明の完成には, 被告が電電公社のファミリー企業の一員であることが大きく貢献しているも のといわなければならない。すなわち,被告が,電電公社がテレフォンカー ド式公衆電話機の開発をしているとの情報を入手したこと,電電公社に社員 を訪問させ,電電公社から,上記開発の内容についての説明及び電電公社発 明の内容の開示を受けたこと,電電公社の上記開発に参加したい旨の被告の 申入れが電電公社に了承されたことが,いずれも本件発明が完成した不可欠の要因と解されるところ,上記の各事実は,被告が電電公社のファミリー企\n業であることによって可能となったものということができる。特に,前記2で判示したように,本件発明は,電電公社発明の改良発明であるから,被告\nが,電電公社から,電電公社発明の内容の開示を受けなければ,原告及び乙 が本件発明を完成させることは困難であったことは明らかであるところ,電 電公社発明の開示を受けられたのは,被告が電電公社との間に,密接な関係 を築き上げてきたことによるのであり(被告は,電電公社から,その特許出 願前に,電電公社発明の開示を受けているが,このようなことは通常では考 え難いことであり,被告と電電公社との関係が相当に密接なものであったこ とが伺われる。),この点の被告の貢献は極めて大きいものといえる。 ・・・以上の事情を総合考慮すると,本件発明に関する被告の貢献度は,95パ ーセントと認めるのが相当である。」

◆平成18(ワ)24193 補償金請求事件 特許権民事訴訟 平成20年02月20日 東京地方裁判所

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◆平成17(ワ)1238 特許権移転登録手続等請求事件 特許権 民事訴訟 平成19年10月30日 大阪地方裁判所

 予備的請求として職務発明における相当の対価として1万0382円が認められました。
 「超過売上高に基づいて,本件特許発明2についての被告の独占の利益を算定することとする。その方法としては,?@被告が上記超過売上高から得る利益を算定する方法と,?A被告が競合する第三者に本件特許発明2の実施を許諾した場合を想定して,その場合に得られることが予想される実施料収入により算定する方法が考えられる。本件においては,上記?@の方法をとるのに必要な本件特許発明2を実施した工事における被告の利益率も不明であり,同方法を採用することはできない。そこで,?Aの方法により,被告の独占の利益を算定することとする。・・・以上によれば,本件特許発明2に係る特許を受ける権利の共有持分を被告に承継させたことによって,原告が被告から受けるべき相当の対価の額は,以下の計算式により1万0382円となる。1億0381万6333円(本件特許発明2の実施による工事売上高)×20%(超過売上高)×2%(実施料率)×(100%−90%)(被告の貢献度控除)×25%(共同発明者間の寄与率)=1万0382円」

◆平成17(ワ)1238 特許権移転登録手続等請求事件 特許権 民事訴訟 平成19年10月30日 大阪地方裁判所

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◆平成17(ワ)2997 特許権譲渡対価請求事件 特許権民事訴訟 平成19年06月27日 東京地方裁判所

  職務発明に基づく対価請求事件です。裁判所は『超過売上高』という概念を用いて、発明の対価を認定しました。
 「本件において,被告は,本件発明を,第三者に実施許諾をしたことはなく,上記第2,1.のとおり,自らこれを実施していたものである。原告は,この場合,被告が本件発明を第三者に実施させて実施料を取得した場合を想定して算定するのが相当であり,第三者に実施させた場合の当該第三者の売上は,被告の売上の2分の1ないし同額であると主張し,他方,被告は,X 線イメージ管に関する実際の市場シェアと,シェア獲得のための条件が同一であると仮定した競業他社との関係で被告が占めることになるシェアとの差が,超過シェアであり,これを基に,独占の利益を算定すべきである旨主張する。本件では,本件発明を第三者に実施させて実施料を取得した場合を想定した際に,当該第三者が取得し得る売上の算出に当たって考慮すべき要素や,市場全体の規模等の事情について,何ら証拠がなく,原告が主張するような,被告の半額又は同額の売上を第三者が得ることを推認させるような事情も認められないから,原告が主張する方法は,その算定方法の当否はおくとしても,これによって独占の利益を算定することは困難というべきである。被告は,被告の市場シェアを算定し,それに基づいて被告の超過シェアを算定する上記の方法を主張しているところ,被告の主張に係る市場シェアについては,被告における線X イメージ管の製造本数及び競業他社の納入推定本数から被告の国内シェアを推測し,被告社内の調査に基づいて被告の国外シェアを推測した被告従業員の報告書(乙81)があることから,これに基づいて,独占の利益を検討することが,本件においては相当な算定方法というべきである」

◆平成17(ワ)2997 特許権譲渡対価請求事件 特許権民事訴訟 平成19年06月27日 東京地方裁判所

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◆平成17(ネ)10125 補償金請求控訴事件 特許権民事訴訟 平成18年11月21日 知的財産高等裁判所

 職務発明に関する対価請求について、一審判断が一部取り消され、用途発明に係る相当対価請求について、約286万円が認められました。
 特許法35条4項所定の「発明により使用者等が受けるべき利益の額」は,使用者等が当該発明の実施を排他的に独占し得る地位を取得することによって受けることが見込まれる利益をいうものであるから,使用者等が特許を受ける権利を承継した後に当該発明を実施したことによる利益を検討するに当たっても,当該発明を実施したことにより得た利益そのものではなく,そのうち使用者等が当該発明を排他的,独占的に実施したことに基づいて,通常実施権の行使による利益をどれだけ上回る利益を得ているかを検討しなければならない。これを本件についてみると,平成12年10月以降における本件用途発明の実施による本件製剤の売上額のうち,その排他的,独占的な実施に基づく売上額はいくらか(競業他社に本件用途発明の実施を禁止していることによって,通常実施権の行使による売上額に比して,これをどれだけ上回る売上額を得ているか),その排他的,独占的な実施に基づく売上額のうち,本件用途発明による利益額はいくらか(その売上げに係る想定実施料収入はどの程度か)を検討して,本件用途発明の排他的,独占的な実施による利益を算定するのが相当である。そこで検討するに,・・上記の独占的な販売の結果,本件物質特許権の消滅後も,被控訴人がシロスタゾールについて競業他社に対して依然として市場での優位な地位を保持していることが窺われ,本件用途発明の実施による本件製剤の売上げには,被控訴人がシロスタゾールについて既に獲得した市場での優位性に基づくところが多分にあるとみることができるから,被控訴人が本件用途発明を独占していること自体に起因する市場での優位性はさほど大きなものとは考えられないことなどを考慮すると,被控訴人の本件用途発明の実施による本件製剤の売上額のうち,競業他社に本件用途発明の実施を禁止していることに起因する分(排他的,独占的な実施による分)は,上記売上額の30%とみるのが相当である。」

◆平成17(ネ)10125 補償金請求控訴事件 特許権民事訴訟 平成18年11月21日 知的財産高等裁判所

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◆平成16(受)781 補償金請求事件 平成18年10月17日 最高裁判所第三小法廷判決

 外国における特許を受ける権利の譲渡について、我が国の35条の規定に基づき補償金を請求できるかについて、できるとした高裁の判断を指示しました。
 「ここでいう外国の特許を受ける権利には,我が国の特許を受ける権利と必ずしも同一の概念とはいえないものもあり得るが,このようなものも含めて,当該発明については,使用者等にその権利があることを認めることによって当該発明をした従業者等と使用者等との間の当該発明に関する法律関係を一元的に処理しようというのが,当事者の通常の意思であると解される。そうすると,同条3項及び4項の規定については,その趣旨を外国の特許を受ける権利にも及ぼすべき状況が存在するというべきである。したがって,従業者等が特許法35条1項所定の職務発明に係る外国の特許を受ける権利を使用者等に譲渡した場合において,当該外国の特許を受ける権利の譲渡に伴う対価請求については,同条3項及び4項の規定が類推適用されると解するのが相当である。」

  控訴審 H16. 1.29 東京高裁 平成14(ネ)6451 特許権 民事訴訟事件
  第1審 H14.11.29 東京地裁 平成10(ワ)16832等 特許権 民事訴訟事件    

◆平成16(受)781 補償金請求事件 平成18年10月17日 最高裁判所第三小法廷判決

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◆平成16(ワ)26283 職務発明対価請求事件 特許権民事訴訟 平成18年09月12日 東京地方裁判所

  職務発明の対価として、240万が認められました。独占による利益を6000万、原告の貢献度を10%、共同発明3名における貢献度を40%として、報償金として240万が認められました。興味深いのは、登録前の利益も含めた点です。
 「特許権の設定登録前においては,使用者の排他的独占権はなく(特許法66条,68条),使用者が通常実施権に基づいて実施していると認められる場合には,その範囲内で実施している限り,特許を受ける権利の承継により使用者が受けるべき利益はないことになる。他方,特許権の設定登録の前であっても,特許出願人は,出願公開後は,発明を実施した第三者に対し一定の要件の下に補償金を請求することができるから(同法65条),出願公開後に事実上当該発明を独占し,第三者の実施を排除して独占的に実施したことにより通常実施権に基づくものを超える利益を上げたときは,当該発明が貢献した程度を勘案して「その発明により使用者等が受けるべき利益」を定めることができる。」

◆平成16(ワ)26283 職務発明対価請求事件 特許権民事訴訟 平成18年09月12日 東京地方裁判所

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◆平成17(ワ)14399 職務発明対価請求事件 平成18年09月08日 東京地方裁判所

  外国における特許を受ける権利について、特許法35条3項が適用されるかが争われました。
 裁判所は、準拠法については日本法であるとしたが、特許法35条3項は適用されないと判断しました。
  「特許法には,外国の特許を受ける権利の承継に基づく対価請求権に関する規定がないだけでなく,外国の特許発明や外国の特許権に関する規定も全く存しない。また,特許法35条と同様に,「特許を受ける権利」について,その移転や担保権の設定,承継等を定める同法33条及び34条が,日本の特許を受ける権利のみを対象とすることは明らかである。さらに,特許法35条1項は,職務発明についての特許を受ける権利の承継の有無を問わず,使用者等が,当該特許権について無償の法定通常実施権を有する旨を定めるところ,特許権についての属地主義の原則,すなわち,各国の特許権は,その成立,移転,効力等につき当該国の法律によって定められ,特許権の効力が当該国の領域内においてのみ認められるとの原則(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁参照)によれば,特許権に対して無償の法定通常実施権のような権利を設定することは,日本の特許権についてのみなし得ることであると解さざるを得ないから,同条1項にいう「特許を受ける権利」及び「特許権」とは,外国の特許を受ける権利及び外国の特許権を含まず,日本の特許を受ける権利及び日本の特許権のみを意味するものと解される。そうすると,外国の特許を受ける権利の承継に基づく対価請求権についても同条3項が適用されるとすれば,同条3項にいう「特許を受ける権利」及び「特許権」には,外国の特許を受ける権利ないし外国の特許権も含まれることになり,同一の条文内で,「特許を受ける権利」あるいは「特許権」について,異なる解釈をするという不整合な事態を生ずることとなる。そもそも,特許法35条は,職務発明について特許を受ける権利が当該発明をした従業者等に原始的に帰属し,これについての通常実施権が使用者等に帰属することを前提に(同条1項),当該職務発明について,特許を受ける権利及び特許権の承継等とその対価の支払に関して,使用者等と従業者等のそれぞれの利益を保護するとともに,両者間の利害を調整することを図った規定である(最高裁平成13年(受)第1256号同15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照)。すなわち,同条は,その1項において,使用者等には,特許を受ける権利の承継の有無を問わず法定の通常実施権が認められることを規定するものであり,そのことを前提として,当該特許を受ける権利等の承継等の対価の算定に当たっても,同条4項において考慮される使用者等が受けるべき利益は,通常実施できる限度を超えた独占の利益であると解するのが一般である。したがって,この前提を欠く外国の特許を受ける権利について,同条3項の規律対象となるとする見解は,同条に関する上記の理解を踏まえると,法解釈上,相当でないといわざるを得ない。」

◆平成17(ワ)14399 職務発明対価請求事件 平成18年09月08日 東京地方裁判所

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◆平成16(ワ)23041 職務発明対価請求事件 平成18年05月29日 東京地方裁判所

  職務発明に基づく請求について、既に支払い済みの約250万の除く約1200万が認められました。
 「被告は、原告と同時期に入社した同年代の従業員に比して・・・特別の待遇を行ったから,この額は,「相当の対価」に含まれると主張する。しかし,給与等が,原告と同時期に入社した同年代の従業員に比して高額であったとしても,それは,原告の行う労務を評価した上でのこれに対する対価であって,本件各発明の対価とは到底認められない。」

◆平成16(ワ)23041 職務発明対価請求事件 平成18年05月29日 東京地方裁判所

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◆H17. 9.26 大阪地裁 平成16(ワ)10584 特許権 民事訴訟事件

 職務発明における相当の対価についての判断です。
  裁判所は、「本件発明が、被告の社内において、被告の資源を用いて行われたこと等、本件に現れた諸事情を総合勘案して、本件発明がされるにあたって、被告と原告らとの関係で、被告が貢献した程度を考慮し、さらに、・・・も加味すると、本件発明について、相当の対価の額を定めるに当たり、被告が本件特許権により受けるべき利益に乗ずべき割合(原告らへの配分割合)は、2パーセントと認めるのが相当である。」と述べました。
  相当な対価の算定方法についても、「一般に、特許を受ける権利の譲渡において、その対価を定めるにあたっては、譲受人がその特許権によって受けることができるであろうと予想する利益と、そのために予\想されるリスク(経費、労力も含む。)が考慮されて定められるものであるから、職務発明について従業者等が受けるべき相当の対価の額を定めるにあたっても、上記のようなリスクを考慮することが必要である。なお、上記の考慮要素については、相当の対価の額の算定にあたって、独立の要素として考慮するか、特許権により使用者等が受けるべき利益の額の算定に含めて考慮するか、発明がされるについて使用者等が貢献した程度と共に考慮するか、そのいずれかによるべきこととなるが、本件においては、発明がされるについて使用者等が貢献した程度と共に考慮することとする。」と述べました。

◆H17. 9.26 大阪地裁 平成16(ワ)10584 特許権 民事訴訟事件

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◆H17. 7.21 大阪地裁 平成16(ワ)10514 特許権 民事訴訟事件

 職務発明の対価請求事件です。貢献度は5%と認定されました。1つの争点として代替手段の存在による価値低下が争われました。
 この点について裁判所は「代替手段となる技術が存在するからといって、それだけで、特許権や実用新案権がその経済的価値を失うというものではなく、代替技術の存在に加え、代替技術の方が、技術的な側面や経費的な側面等において優れているか、少なくとも同等であるなどといった事情があるときにはじめて、その特許権や実用新案権の経済的価値が損なわれるものというべきである。なぜならば、たとえ特許権や実用新案権に係る技術に代替技術が存在するとしても、その代替技術が技術面、経費面等で劣るものであれば、特許権や実用新案権に係る技術を利用する意義は十分に存在するものであるし、あるいは特許権や実用新案権に係る技術を実施した製品が、代替技術を実施した製品に比べて高い競争力を有する蓋然性も高いからである。」と認定しました。

   ◆H17. 7.21 大阪地裁 平成16(ワ)10514 特許権 民事訴訟事件

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◆H17. 1.11 平成16年(ネ)962,2177号特許権 民事訴訟事件

  判決ではありませんが、和解による終了について、東京高裁が見解を発表しました。社会的な影響が大きいからでしょう。一審では対価は600億と認定し、請求額である200億が全額認められましたが、高裁では、対価自体は約6億と判断されました。これは、問題の404特許だけでなく、原告の職務発明分全てを含んでの判断です。
 第1審はこちらです。
◆H16. 1.30 東京地裁 平成13(ワ)17772 特許権 民事訴訟事件
 

 

◆H17. 1.11 平成16年(ネ)962,2177号特許権 民事訴訟事件

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◆H16. 4.27 東京高裁 平成15(ネ)4867 特許権 民事訴訟事件

 職務発明の対価についての控訴審判決です。発明者の貢献度等は原審のままです。
原審は以下の通り。
(◆H14.11.29 東京地裁 平成10(ワ)16832等 特許権 民事訴訟事件
 

◆H16. 4.27 東京高裁 平成15(ネ)4867 特許権 民事訴訟事件

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◆H16. 2.24 東京地裁 平成14(ワ)20521 特許権 民事訴訟事件

 新聞をにぎわした職務発明の対価が争いとなった事件です。少し前に出された中村教授の事件と比べると少ないように思えますが、それを除けば、額としては歴代1位です。本事件は、中村教授の例と異なり、発明者としてのかなり高い評価も受けた従業者が起こした裁判として注目されてました。 争点は、1)外国において特許を受ける権利について特許法35条3項が適用されるか、2)「相当の対価」の額、3)消滅時効、でした。
   1)については、裁判所は、「我が国の特許法は,我が国の産業政策に基づいて定められているものであり,特許法のうち,例えば,特許出願や審判等に関する規定は,行政手続を定めたものとして,また罰則に関する規定は,刑事罰ないし行政罰を定めたものとして,我が国においてのみ適用されるべきものである。しかしながら,特許法35条が職務発明について特許を受ける権利の帰属及びその利用に関して,使用者等と従業者等のそれぞれの利益を保護するとともに,両者間の利害を調整することを図るという性質を有することは前記(3)で判断したとおりであり,このような性質を有する同条について,これらと同列に論じることはできない。」と述べました。
   2)については、「特許を受ける権利の承継についての相当の対価を定めるに当たっては,「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」及び「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度」という2つの要素を考慮すべきであるが,これのみならず,使用者等が特許を受ける権利を承継して特許を受けた結果,現実に利益を受けた場合には,使用者等が上記利益を受けたことについて使用者等が貢献した程度,すなわち,具体的には発明を権利化し,独占的に実施し又はライセンス契約を締結するについて使用者等が貢献した程度その他証拠上認められる諸般の事情を総合的に考慮して,相当の対価を算定することができるものというべきである。・・・本件各発明に対する「相当の対価」の額は,被告が受けるべき利益の額79億7400万円から被告が貢献した程度95%を控除し,共同発明者間における原告の寄与度50%を乗じた1億9935万円となる」と述べました。
   3)については「被告は,平成11年に特許報奨規程(乙9)を定め,「職務発明特許について特許報奨委員会が本規程に基づく報奨の審査・推薦を行う時期は,原則として当該職務発明特許について特許出願した後,10年,15年,20年を経過した時とするが,・・できる。」と規定し(第5条),発明等取扱規程(乙5の2)を改定して,昭和54年(1979年)4月1日以降特許出願された職務発明について遡って適用する旨規定し(第15条?A),平成13年1月17日,特許報奨委員会による審査を経て原告に対し本件各発明に係る特許報奨金を支払ったのである。これらの特許報奨規程の制定と発明等取扱規程の改定及びそれに基づく特許報奨金は,前記3(6)のとおり,いわゆる実績補償の性質を有するものであり,特許法35条3項,4項所定の相当の対価の一部に当たると解される。したがって,その支払は,相当の対価の支払債務について時効が完成した後に当該債務を承認したものというべきであるから,被告が当該債務について消滅時効を援用することは,信義則に照らし許されないものと解するのが相当である。」と述べました。
 以下は同じく職務発明に基づく報償金請求の事案です。 
◆ H16. 1.29 東京高裁 平成14(ネ)6451 特許権 民事訴訟事件
◆H16. 1.30 東京地裁 平成13(ワ)17772 特許権 民事訴訟事件
 

 

◆H16. 2.24 東京地裁 平成14(ワ)20521 特許権 民事訴訟事件

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◆ H16. 1.29 東京高裁 平成14(ネ)6451 特許権 民事訴訟事件

 職務発明における報償金に関する判断です。裁判所は、「特許法35条3項に規定された”特許を受ける権利若しくは特許権”が,外国の特許を受ける権利及び外国の特許権を含む」と判断するとともに、対価についても1審判決を一部取り消して、1億2810万6300円の支払いを命じました。
  「特許法35条は,特許法中に規定されているとはいえ,我が国における従業者と使用者との間の雇用契約上の利害関係の調整を図る強行法規である点に注目すると,特許法を構成すると同時に労働法規としての意味をも有する規定であるということができる。職務発明についての規定がこのようなものであるとすると,職務発明の譲渡についての「相当の対価」は,外国の特許を受ける権利等に関するものも含めて,使用者と従業者が属する国の産業政策に基づき決定された法律により一元的に決定されるべき事柄であり,当該特許が登録される各国の特許法を準拠法として決定されるべき事柄ではないことが明らかである。」

  地裁判決です。
    ◆H14.11.29 東京地裁 平成10(ワ)16832等 特許権 民事訴訟事件

    

◆ H16. 1.29 東京高裁 平成14(ネ)6451 特許権 民事訴訟事件

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◆H16. 1.30 東京地裁 平成13(ワ)17772 特許権 民事訴訟事件

  職務発明の報償金について、過去最高の額が認められました。
 裁判所は、「本件は,当該分野における先行研究に基づいて高度な技術情報を蓄積し,人的にも物的にも豊富な陣容の研究部門を備えた大企業において,他の技術者の高度な知見ないし実験能力に基づく指導や援助に支えられて発明をしたような事例とは全く異なり,小企業の貧弱な研究環境の下で,従業員発明者が個人的能\力と独創的な発想により,競業会社をはじめとする世界中の研究機関に先んじて,産業界待望の世界的発明をなしとげたという,職務発明としては全く稀有な事例である。このような本件の特殊事情にかんがみれば,本件特許発明について,発明者である原告の貢献度は,少なくとも50%を下回らないというべきである。」と認定しました。発明者が受けるべき額は604億と認定し、その一部請求額200億の支払いを命じました。
 本件は上記のように特殊な事情のもとになされた判断なので、今後この事件がリーディングケースとなって、高額判断はなされないとは思われます。

   

◆H16. 1.30 東京地裁 平成13(ワ)17772 特許権 民事訴訟事件

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◆H15.11.26 東京地裁 平成13(ワ)20929 実用新案権 民事訴訟事件

 職務発明の対価請求を求めた事件です。この事件は使用者等のみが実施しており、第三者にライセンスをしていない場合の対価額に関する判断です。
裁判所は、「本件のように,被告が,本件考案を自ら実施するのみで,第三者に実施の許諾をしていない事案においては,考案を独占的に実施する権利を有することによって受ける利益の額は,被告が第三者に対し,本件考案の実施を許諾したと仮定した場合に得ることができる実施料相当額を基準として算定するのが相当である。・・・第三者が本件考案を使用したと仮定した場合に見込まれる売上額については,被告が現実に使用した実績を除いて,他に参考とすべき適切な証拠は存在しない。弁論の全趣旨によれば,被告が調査業務を受注するに当たって,特異な営業活動をしていたとの事実を認めることはできないので,第三者が本件考案を実施したと仮定した場合の売上額は,被告が本件考案を使用した売上額とほぼ同額であると推定することができる。以上の観点を考慮すれば,第三者が実施した場合の仮定的な売上額を800万円と認定するのが相当である。・・・CADAPシステムの内容,本件考案の内容,CADAP.JRの被害予測システム全体との密接な関係や位置づけ等一切の事情を考慮すると,実施料率は,本件考案を使用した業務による売上額に対する5パーセント(CADAPを使用した調査業務による売上額に対するおおむね1.5パーセント)と認めるのが相当である。」と判断しました。

     

◆H15.11.26 東京地裁 平成13(ワ)20929 実用新案権 民事訴訟事件

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◆H15. 8.29 東京地裁 平成14(ワ)16635 特許権 民事訴訟事件

 永久磁石の材料を発明した元従業者が、発明の対価の支払いを求めていた裁判で、東京地裁は、約1100万円を対価として認定しました。
  判決理由の中で、「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」として、まず、「職務発明について使用者等は無償の通常実施権を取得するのであるから,「その発明により使用者等が受けるべき利益」とは,使用者等が,従業者等から特許を受ける権利を承継して特許を受けた結果,特許発明の実施を排他的に独占することによって得られる利益をいうものである。そして,従業者等から特許を受ける権利を承継してこれにつき特許を受けた使用者が,この特許発明を第三者に有償で実施許諾し,実施料を得た場合は,その実施料は,職務発明の実施を排他的に独占することによって得られる利益にほかならないというべきである。」として、合計1億2324万8637円を認定しました。
そして、「使用者等が貢献した程度」については、その発明がされるについての貢献度のほか,その発明を出願し権利化するについての貢献度,実施料を受ける原因となった実施契約を締結するについての貢献度,その他諸般の事情が含まれるものと解するのが相当である。」として、前記利益を受けるについて貢献した程度としては,全体の約90パーセントと認めました。

 

◆H15. 8.29 東京地裁 平成14(ワ)16635 特許権 民事訴訟事件

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◆平成15年04月22日 第三小法廷判決 平成13年(受)第1256号 補償金請求事件

  職務発明をめぐる争いについて最高裁は、「勤務規則などに報償などの規定があっても、特許法が定める『相当な対価』に満たない場合は不足額を請求できる」として、高裁判断を維持する判断を下しました。今後は、相当の対価の決定でいろいろな判断基準が示される可能性がありますね。

 

◆平成15年04月22日 第三小法廷判決 平成13年(受)第1256号 補償金請求事件

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◆H14.11.29 東京地裁 平成10(ワ)16832等 特許権 民事訴訟事件

  日立の元従業者が会社に対して、特許法35条に規定される職務発明規定に基づく”相当の対価”を請求した事件です。
裁判所は、日本特許については、貢献度を30%と認め、約3500万円の支払いを命じました。ただ、外国特許については、「特許法35条は,我が国の特許を受ける権利にのみ適用され,外国における特許を受ける権利に適用又は類推適用されることはないといべきである。したがって,本件請求のうち,外国における特許を受ける権利についての特許法35条3項に基づく対価の請求は理由がない。」と判断しました。

 

◆H14.11.29 東京地裁 平成10(ワ)16832等 特許権 民事訴訟事件

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◆H14. 9.10 東京地裁 平成13(ワ)10442 特許権 民事訴訟事件

職務発明の報酬についてのおもしろい判決がありました。
 認められた額自体は少ないんですが、判決理由が興味深いです。 「使用者は,元来,職務発明については無償の法定通常実施権 を有しているのであるから,同条4項の「使用者等が受ける べき利益の額」とは,単に発明を実施することによって使用 者が受ける利益の額ではなく,それを超えて,特許を受ける権 利を承継し発明の実施を排他的に独占することによって受ける利益の額であると解される。 そして,発明の実施を排他的に独占することによって受ける利益の 額は,被告が第三者に対し有償で発明の実施を許諾した場合 に得られる実施料相当額に基づいて算定することができるというべきである。」

 

◆H14. 9.10 東京地裁 平成13(ワ)10442 特許権 民事訴訟事件

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