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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商4条1項各号

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

令和5(行ケ)10131  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和6年3月27日  知的財産高等裁判所

商標「hololive Indonesia」について、「インドネシアで生産された商品」あるいは「インドネシアに関連する役務」等と認識されるとして、4条1項16号(品質誤認)違反の拒絶理由があるとして、拒絶審決となりました。知財高裁は審決を維持しました。

(1) 商標法4条1項16号について
商標法4条1項16号の趣旨は、商標を構成する文字、図形等が直接的に 特定の商品の特性を表示したものであるため、当該商標が特定の商品以外の 商品に使用された場合に、取引者、需要者が商品の品質を誤認して、商品を 購入することがないように取引者、需要者の保護を図ることにある。取引者 又は需要者において、本願商標の構成から将来を含め一般に認識される特性 を有する特定の商品と指定商品とが関連し、かつ、本願商標が表示している 特定の商品の特性と指定商品が有する特性が異なるため、本願商標を指定商 品に使用した場合に、本願商標が使用された「商品の品質の誤認を生ずるお それ」があることになる。
(2) 本願商標について
ア 本願商標は、「hololive Indonesia」の文字を標準 文字で表してなるものであり、「hololive」の文字と「Indo nesia」の文字との間には、1文字分の空白があり、「hololi ve」の文字と「Indonesia」の文字を組み合わせたものと理解 される。 「hololive」の文字は辞書に載っていない造語であり、自他商 品の識別力を有するものである。「Indonesia」の部分は、我が 国における英語ないしローマ字の普及度からみて、需要者において、「イ ンドネシア」と読むこと、「東南アジア群島部にある共和国」(乙1)で あるインドネシアを欧文表記したものであることが容易に理解できるも のと認められる。 そして、我が国において、国名としてのインドネシアは広く知られてい る(乙2〜4)。
イ 各種ウェブサイトによれば、自他商品又は自他役務の識別力を有する文 字と、「インドネシア」あるいは「Indonesia」の文字を組み合 わせたものとして、「(Zalora Indonesia ザローラ・ インドネシア)」(乙8、ファッション)、「(Reebonz Ind onesia リーボンツ・インドネシア)」(乙8、主にバッグ、靴、 ジュエリー)、「(Ree Indonesia リー・インドネシア)」 (乙8、インドネシアのデザイナーが製作した衣料ブランドを取り扱う。)、 「マクドナルドインドネシア」(乙9、ファストフード)、「丸亀インド ネシア」(乙10、うどん)がある。そして、これらは、いずれも、イン ドネシアで生産される物又はインドネシアで提供される役務に関するも のである。
ウ 本願の指定商品及び指定役務には、例えば、第3類「化粧品」「香料」、 第9類「スマートフォン用ストラップ」「コンピュータ用ゲームソフトウ ェア(記憶されたもの)」「コンピュータ用ゲームソフトウェア(電気通 信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの)」「眼鏡の部品及び 附属品」、第14類「貴金属,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品」「キ ーホルダー」「身飾品」「時計」、第16類「文房具類」、第18類「か ばん類」「傘」、第21類「貯金箱」「お守り」、第24類「布製身の回 り品」「布団」、第25類「被服」「履物」、第26類「頭飾品」、第3 5類「織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対す る便益の提供」「おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務にお いて行われる顧客に対する便益の提供」「楽器及びレコードの小売又は卸 売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」、第41類「電子出 版物の提供」「インターネットを利用して行う映像の提供、映画の上映・ 制作又は配給、オンラインによる映像の提供(ダウンロードできないもの に限る。)」「ビデオオンデマンドによるダウンロード不可能な映画の配 給、映画の演出(広告用映画の演出を除く。)」「オンラインによるゲー ムの提供」及び第43類「飲食物の提供」等、一般消費者が需要者となる ものが含まれている。
各種ウェブサイトには、これらの指定商品又は指定役務に対応する商品 又は役務であって、インドネシアで生産等されたもの、あるいはインドネ シアに由来するものとして、例えば、化粧品、香水(乙31)、香油(乙 35)、携帯ストラップ(乙38)、コンピュータゲーム(乙32、36)、 眼鏡スタンド(乙37)、宝石(乙39)、キーホルダー(乙24)、宝 飾品(乙28)、時計(乙29)、ペンケース(乙27)、かごバッグ(乙 26)、傘(乙40)、貯金箱(乙43)、お守り石(乙41)、ブラン ケット、タペストリー、テーブルクロス(乙30)、布製インテリア(乙 42)、クッションカバー(乙44)、被服(乙25)、パンプス(乙4 6)、ヘアアクセサリー(乙47)、電気敷毛布(乙45)、置物(乙4 9)、楽器(乙48)、インドネシア制作の映画(乙34)、インドネシ ア料理(乙33)等が、我が国で販売ないし提供されていることが示され ている。
エ 以上のとおり、1)本願商標のうち「hololive」の部分は造語で あり自他商品又は自他役務の識別力を有するのに対し、「Indones ia」の部分は、一般に知られた東南アジアの共和国であるインドネシア を意味することは需要者において容易に理解できること、2)自他商品又は 自他役務の識別力を有する文字と、「インドネシア」あるいは「Indo nesia」の文字を組み合わせたものがインドネシアで生産される物又 はインドネシアで提供される役務に関して使用されていること、3)本願の 指定商品及び指定役務には一般消費者が需要者となるものが含まれ、これ に対応する商品又は役務でインドネシアで生産等されたもの、ないしはイ ンドネシアに由来するものが我が国で販売ないし提供されていることが 認められるのであって、そうすると、本願商標をその指定商品及び指定役 務について使用するときは、これに接する需要者は、その構成中の「In donesia」の文字から、インドネシアで生産又は販売された商品や、 インドネシアに関する役務といった商品の品質又は役務の質を通常理解 するものというべきである。 一方、本願の指定商品及び指定役務は、インドネシアに関するものに限 定されていないから、インドネシアで生産又は販売された商品以外の商品 やインドネシアに関する役務以外の役務も含むことになる。 以上によると、本願商標をその指定商品及び指定役務中、インドネシア で生産又は販売された商品以外の商品や、インドネシアに関する役務以外 の役務に使用した場合には、商品又は役務の質の誤認を生じさせるおそれ があるから、本願商標は、商標法4条1項16号に該当するというべきで ある。
(3) 原告の主張について
ア 原告は、本願商標の使用に係る指定商品及び指定役務は、バーチャルア イドルであるVTuberグループ関連の商品及び役務、いわゆるキャラ クターグッズ等であり、当該グループ又はその構成員キャラクターのファ ン以外の者が、本願商標を構成する「Indonesia」の文字が前記 グループ及びキャラクターの活動拠点であることを知らずに、「インドネ シアで生産された商品」あるいは「インドネシアに関連する役務」等と認 識して購入することは考えられず、本願商標の使用に係る指定商品及び指 定役務は、原告のウェブサイトを中心に提供されていることからも、上記 ファン以外の者が本願商標に触れることは考えにくい旨主張する。 しかし、本願商標の指定商品及び指定役務の需要者はVTuberグ ループのファンに限られるものではなく、また、原告の主張からしても、 原告のウェブサイトのみでこれらの商品が提供されているわけではない のであって、原告の主張は採用できない。
イ 原告は、本願商標は、仮想的アイドルグループの名称として使用され、 かつ、当該仮想的アイドルグループ関連の商品及び役務に使用されるもの であるところ、地域的名称を含む芸能人グループの名称の使用に係る商品 等において、当該地域的名称は、当該商品の生産地等とは認識され得ない 旨主張する。 しかし、一般需要者において、本願商標が芸能人グループの名称である と認識するような事情は認められず、原告の主張は前提を欠くものである。
ウ 原告は、YouTubeにおける「hololive」、「holol ive Indonesia」及び「hololive Indones ia」に属する個々のVTuberのチャンネルの登録者は延べ806万 人以上になるから(甲14〜24)、本願商標は原告のVTuberのア バターであるキャラクターのグループ名称を表すものとして需要者に広 く認識されている旨主張する。
しかし、「hololive」のチャンネルの登録者は185万人である (甲14)ものの、その他の各チャンネル(甲15〜24)については、映 像等の多くが欧文字で投稿されていることから、登録者のうちどの程度が 日本の需要者であるのかの裏付けはないというべきで、「hololiv e」、「hololive Indonesia」が原告のVTuberの アバターであるキャラクターのグループ名称を表すものとして我が国の需 要者に広く認識されていると認めることはできない。
エ 原告は、商標に国名が含まれる場合に直ちに誤認混同を生じると認定す る国は日本のみであり、不当である旨主張する。 しかし、本件審決は、商標に「Indonesia」の文字が含まれるこ との一事をもって本願商標が商標法4条1項16号に該当すると認めたわ けではなく、本願の指定商品及び指定役務に係る需要者の範囲とその認識 等について個別に検討・判断しているところ、その判断手法は相当である から、原告の主張は採用できない。

◆判決本文

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令和5(行ケ)10068 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和6年3月27日  知的財産高等裁判所

商標「O!OiMAIN」が、マルイの商標「〇|〇|」とは非類似、混同なしと審決が、前者の非類似との判断が間違っているとして、取り消されました。

別紙登録商標目録記載のとおり、本件商標は、「O」、「!」、「O」、「i」、 「M」、「A」、「I」及び「N」の各文字又は符号を同じ書体(やや斜字のゴシ ック体様の黒の書体)、同じ大きさ及び等しい間隔で一連に横書きしてなるもので あり、これらの文字又は符号は、まとまりよく一体的に構成されている。もっとも、\nその中の「M」、「A」、「I」及び「N」の各文字は、「主要な」等の意味を有 し、我が国において日常的に広く用いられる「メイン」の語に相当する英単語であ る「MAIN」の語を構成するものであるから、この「MAIN」の語は、ひとま\nとまりの単語として強く認識されるというべきである。
(ウ) O!Oi部分
「O!Oi」が辞書等に搭載された語であり、又は一般的に用いられている語で あると認めるに足りる証拠はないから、O!Oi部分は、特定の意味合いを有しな い一種の造語であり、それゆえに、平易な英単語のみからなるMAIN部分との対 比において視覚的に目立つものである。そして、前記(ア)のとおり、被告が代表者\nを務めるファインドフォーム社は、その製品に「OIOI」、「OiOi」、 「O!Oi」等の標章を付して販売するなどしている。このような取引の実情(な お、「OIOI」又は「OiOi」の標章と「O!Oi」の標章とが変わりのない ものと理解し得ることについては、後記ウ(ア)のとおりである。)を併せ考慮する と、O!Oi部分は、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識としての印象を強 く与えるものであると認めるのが相当である。
(エ) MAIN部分
「MAIN」の語は、前記(イ)のとおり、「主要な」等という意味を有する英単 語であり、かつ、それが多くの場合、形容詞として他の語を修飾するために広く用 いられている語であることは、公知の事実である。「O!Oi」の語が特定の意味 合いを有しない一種の造語であり、視覚的に目立つものであって(前記(ウ))、前 記(ア)の取引の実情において商品の出所識別標識としての印象を強く与えるような 形で使用されているのに対し、「MAIN」の語については、そのような事情は見 当たらない。すなわち、MAIN部分は、「MAIN」の語の通常の意味に照らし ても、取引の実情においても、商品の出所識別標識としての印象は、O!Oi部分 が与えるそれと比較して、相当程度に弱いというべきである。
(オ) 本件商標の分離観察の可否についての小括
以上によると、本件商標のO!Oi部分は、取引者、需要者に対し商品の出所識 別標識として強く支配的な印象を与えるといえ、前記(イ)の本件商標の構成を考慮\nしても、本件商標の各構成部分(O!Oi部分及びMAIN部分)は、それらを分\n離して観察することが取引上不自然であると思われるほどに不可分的に結合してい ると認められないから、本件商標については、その構成部分の一部であるO!Oi\n部分を抽出し、O!Oi部分だけを各引用商標と比較して商標の類否を判断するこ とも許されると解するのが相当である。
ウ 本件商標のO!Oi部分と引用商標3の類否 事案に鑑み、本件商標との類否判断の対象として、引用商標3を取り上げる。
(ア) 外観
別紙登録商標目録記載のとおり、本件商標のO!Oi部分は、「O」、「!」、 「O」及び「i」の各文字又は符号を同じ書体(やや斜字のゴシック体様の黒の書 体)、同じ大きさ及び等しい間隔で一連に横書きしてなるものであり、これらの文 字又は符号は、まとまりよく一体的に構成されている。\n別紙引用商標目録記載3のとおり、引用商標3は、「〇」、「|」、「〇」及び 「|」の各記号を同じ書体(ゴシック体様の赤の書体)、同じ大きさ及び等しい間 隔で一連に横書きしてなるものであり、これらの記号は、まとまりよく一体的に構\n成されている。
ここで、引用商標3の「|」の記号は、「I」の文字を図案化したものとして、 両者は実質的には変わりのないものとの印象を与え得るものであり、また、「I」 の文字と「i」の文字は、互いにアルファベットの大文字・小文字の関係にあるに すぎないから、これらも、実質的には変わりのないものと理解され得るといえる。 さらに、証拠(甲65〜77)及び弁論の全趣旨によると、企業名、ブランド名、 サービス名、芸名等を表すロゴや文字列の中で、「I」の文字又は「i」の文字に\n代えて「!」の符号又は縦若しくは斜めの棒状の図形の下部に「●」、「■」、 「★」等の図形を配した記号を用いる例が多数あるものと認められ、「!」の符号 も、アルファベットの文字列の中に配されたときは、「I」の文字又は「i」の文 字と変わりのない文字であると理解され得るものである。加えて、「〇」の記号も、 「O」の文字を図案化したものとして、両者は実質的には変わりのないものとの印 象を与え得ること、前記説示したところを踏まえると、その取引者、需要者からみ れば、本件商標のO!Oi部分と引用商標3の字体の相違(色彩の相違を含む。) が類否判断に当たって大きな意味合いを有するものとは認め難いことを併せ考慮す ると、取引者、需要者は、本件商標のO!Oi部分を見た場合、これが「〇|〇|」 と実質的には変わりのないものを指すと理解し得るということができるから、本件 商標のO!Oi部分の構成と引用商標3の構\成との間に厳密には前記のような相違 があるとしても、隔離観察を前提とすると、両者は、外観上極めて相紛らわしいも のであると認めるのが相当である。 被告は、「F!T」等の文字列の場合と異なり、「O!Oi」の文字列について は、「!」の符号を「I」の文字等に置換して認識すべきことが強く示唆されてい ないなどと主張するが、迅速を貴ぶ商取引において、アルファベットの文字列の中 に配された「!」の符号は、その形状(縦棒上の図形とその下部に小さく点様の図 形を配してなるもの)に照らし、当該文字列からの示唆の大小にかかわらず、「I」 の文字等と変わりのないものと理解され得るというべきである。被告の主張を採用 することはできない。
(イ) 称呼
本件商標のO!Oi部分は、途中に感嘆符を含む一種の造語であるが、証拠(甲 37〜41、45、52〜54、56、58)及び弁論の全趣旨によると、O!O i部分からは、「オーアイオーアイ」又は「オアイオアイ」の称呼が生じるものと 一応認められる。 別紙引用商標目録記載3及び別紙ハウスマーク目録記載のとおり、引用商標3は、 原告標章と外観上同一視し得る形状のものであるところ、前記1のとおり、原告標 章が原告らのロゴマークとして取引者、需要者の間に広く認識されているものであ ることからすると、引用商標3からは、「マルイ」の称呼が生ずるものと認めるの が相当である(この点は、当事者間に争いがない。)。そして、本件商標のO!O i部分と引用商標3とが、前記のとおり、外観上極めて相紛らわしいことを踏まえ ると、O!Oi部分についても「マルイ」の称呼が生じ得るというべきである。
(ウ) 観念
本件商標のO!Oi部分は、特定の意味合いを有しない一種の造語である。 別紙引用商標目録記載3及び別紙ハウスマーク目録記載のとおり、引用商標3は、 原告標章と外観上同一視し得る形状のものであるところ、前記1のとおり、原告標 章が原告らのロゴマークとして取引者、需要者の間に広く認識されているものであ ることからすると、引用商標3からは、「丸井又はマルイのロゴマーク」などの観 念が生ずるものと認めるのが相当である(この点は、当事者間に争いがない。)。 そうすると、本件商標のO!Oi部分が特定の意味合いを有しないとしても、同部 分は引用商標3と外観上極めて相紛らわしいから、同部分からは、引用商標3と同 様の観念が生じ得るものということができる。
(エ) 検討
以上のとおり、本件商標のO!Oi部分と引用商標3は、外観、称呼及び観念の 点で極めて相紛らわしいものであり、加えて、前記1のとおり、引用商標3と外観 上同一視し得る形状を有する原告標章が原告らのロゴマークとして取引者、需要者 の間に広く認識されていることなどを併せ考慮すると、本件商標のO!Oi部分と 引用商標3については、両者が同一の商品又は役務について使用された場合、その 商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるものと認めるのが相当で ある。したがって、本件商標のO!Oi部分と引用商標3は、取引の実情に基づき、 外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し て全体的に考察すると、互いに類似するものと認められる。

◆判決本文

関連です。
こちらは商標「5252byO!Oi」と「OIOI」の類否です。こちらも商標類似と判断されました。

◆令和5(行ケ)10067

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令和5(行ケ)10112  商標登録取消決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和6年3月14日  知的財産高等裁判所

審決(異議申立)は、販売代理店による商標取得行為が、公序良俗に反すると判断しました。指定商品は「動物用のハーネス」です。知財高裁も同様です。

ア 引用商標に関する原告の認識について
原告は、ハキハナ社の販売代理店として本件商品を含む同社の商品を販 売していたのであるから、同社が本件商品を含む同社の商品に引用商標を 使用していることを認識しながら、引用商標と構成文字を共通にする本件\n商標について、引用商標が用いられている商品と同種の商品である第18 類「愛玩動物用引きひも、愛玩動物用のハーネス」を指定商品として、商 標登録出願を行い、登録を受けたものと認められる。
イ 原告が本件商標の登録出願を行った意図及び目的について
(ア) 前記(1)の認定事実によれば、原告がハキハナ社との間で締結した本件 契約は原告に独占的販売権を与える内容ではなかったが、原告は、自ら が行った本件商品の広告宣伝や、本件商品の販売促進のための方策によ って、日本国内における本件商品の知名度が上がり、販売が増えたもの であって、このような貢献を行った原告にはハキハナ社の商品に係る独 占的販売権などの契約条件や待遇が同社から与えられるべきと考えて いたが、同社はそのような意向を有さず、原告以外の者が並行輸入によ り入手したハキハナ社の商品を日本において販売することを問題視し ない販売戦略を採っており、原告にもこれを伝えていたこと、その後、 アブレイズが原告よりも安価で本件商品を販売するようになり、原告は、 アブレイズの販売活動は、原告の宣伝活動や方策によって向上した知名 度にただ乗りするものであって、アブレイズへの対応が必要であると考 え、ハキハナ社に対し、一時的な独占的販売権を原告に与えるなどの手 段によって、原告がアブレイズに対応することに協力するよう求めたが、 ハキハナ社がこれを拒絶したこと、そのわずか数日後、原告は、ハキハ ナ社が引用商標又はこれに類似する商標につき国際商標登録出願をし ていたものの、我が国においては商標登録していないことを奇貨として、 同社に一切知らせることなく、秘密裏に本件商標の登録を出願したこと が認められる。
原告が本件商標の登録を得た後、ハキハナ社が原告との取引を打ち切 ると伝えてきた際、原告は、本件商品が日本の市場に出なくなることは 残念であるとハキハナ社に伝えている。これは、原告が、原告以外の者 による日本国内における本件商品の販売を認めないこと、すなわち、こ のような者による本件商品の販売を妨害、阻止する意向を有しているこ とを示したものといえる。 以上の事情に加え、原告が、本件商標の登録を取得したのと近接した 時期に、本件商標権に基づき、アブレイズに対して本件商品の販売を中 止するよう実際に求めたことも考慮すれば、原告は、本件商標の登録出 願の時点から、本件商標の登録を得た後、本件商標権に基づき、アブレ イズによる本件商品の販売を差し止めるとともに、将来的に、並行輸入 等で入手した本件商品等のハキハナ社の商品を日本国内で販売する者が 現れたときに、その販売活動を差し止めるなどして、原告以外の者が日 本国内においてハキハナ社の商品を販売することを妨害、阻止する意図 を有していたものと認めることができる。
(イ) 原告が本件商標の登録出願をする以前に伝えられていたハキハナ社 の意向の内容からすれば、原告は、ハキハナ社の意向に反して無断で本 件商標の登録を得れば、ハキハナ社が原告に対する信頼関係を喪失し、 原告との取引を打ち切る可能性があることを容易に認識することがで\nきたといえる。
そして、原告は、ハキハナ社から、本件商標権をわずかな費用でハキ ハナ社に譲渡することなどの条件を満たさない限り原告との取引を打ち 切る旨伝えられたが、これに対する原告の応答(前記(1)ス)は、ハキハ ナ社との契約あるいは取引の継続を模索するものではなく、原告の貢献 に報いる内容の条件を出すようハキハナ社に迫る内容であるといえ、ハ キハナ社が原告との取引を終了すると伝えてきたことに対しても、契約 や取引の継続のための交渉を行おうとしなかった。 また、本件商標は引用商標と同一の文字で構成されているから、原告\nは、原告が本件商標の登録を受けた場合、本件商標権をハキハナ社に譲 渡しなければ、同社が、本件商品など引用商標を用いた商品を日本国内 で販売することができなくなると認識していたものと認められる。 これらの事情を総合すれば、原告は、本件商標の登録出願を行った時 点で、原告が本件商標の登録を受ければハキハナ社が引用商標を用いた 本件商品等を日本国内で販売することができなくなる事態が生じ得るこ とを認識し、そのような事態が生じても構わないと考えていたと認めら\nれ、かつ、原告の本件商標の登録出願は、ハキハナ社との契約関係や取 引における原告の利益を守ることよりも、むしろ原告以外の者による本 件商品の販売を妨害、阻止することに主たる目的があったと認めること ができる。
ウ 上記ア及びイの事情を総合すると、原告は、ハキハナ社が本件商品を含 む同社の商品に引用商標を使用していることを認識し、かつ、原告が本件 商標の登録を受ければ、ハキハナ社が引用商標を用いた本件商品等を販売 することができなくなることも認識しつつ、そのような事態が生じても構\nわないと考えて、原告以外の者が日本国内で本件商品を販売することを許 容するハキハナ社の意図ないし販売戦略に反し、本件商標権に基づいてア ブレイズによる本件商品の販売を差し止め、将来的にも、並行輸入等で入 手したハキハナ社の商品を日本国内で販売しようとする者の販売活動を 妨害、阻止することを主たる目的として、本件商標の登録出願を行ったも のと認められる。
このような原告の本件商標の登録出願は、商標登録出願について先願主 義を採用している我が国の法制度を前提としても、「商標を保護すること により、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の 発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」という商標法の目的(同 法1条)に反し、公正な商標秩序を乱すものというべきであり、かつ、健 全な法感情に照らし条理上も許されないというべきであるから、本件商標 は同法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商 標」に該当するというべきである。

◆判決本文

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令和5(行ケ)10108  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和6年2月27日  知的財産高等裁判所

 株式会社アクネスラボが、他社が保有している二段併記商標「アクネスラボ/ACNES LABO」に対して、無効審判を請求しました。審決は、「せっけん類については無効、それ以外の商品(5類 サプリメントなど)ついては理由無し」と判断しました。知財高裁は、審決を維持しました。

証拠(甲7の1〜63)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件商標が 登録出願される前から、使用商標を原告の製造、販売に係る「せっけん類」 及び「化粧品」に用いていることが認められる。 このうち、「せっけん類」については、本件審決が、本件商標の指定商品及 び指定役務のうち第3類「せっけん類」について、商標法4条1項10号に 該当すると判断している。 原告は、本件商標の指定商品及び指定役務のうち第5類「サプリメント」 についても、同号に該当すると主張するので、使用商標が用いられる商品が 上記のとおりであることを前提に、以下検討する。
(3) 特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説〔国際分類第10版対応〕」(乙 1)は、指定商品の分類において第5類とされる「サプリメント」について、 「この商品は、人体に欠乏しやすいビタミン・ミネラル・アミノ酸・不飽和 脂肪酸などを、錠剤・カプセル・飲料などの形にしたもので、『医薬品』に該 当しない商品です。」と説明している。また、内閣府消費者委員会による「消 費者の『健康食品』の利用に関する実態調査(アンケート調査)」(甲17) では、「サプリメント」は「健康食品のうち、錠剤型、カプセル型、又は粉状 のもの」と定義され、「健康食品」は「健康の保持増進に資する食品として販 売・利用される食品(野菜、果物、菓子、調理品等その他外観、形状等から 明らかに食品と認識される物を除く。)」と定義されている。
これに対し、「商品及び役務の区分解説〔国際分類第10版対応〕」は、指 定商品の分類において第3類とされる「化粧品」について、「この商品には、 薬事法(昭和35年法律第145号)に規定する『化粧品』の大部分及び『医 薬部外品』のうち『人体に対する作用が緩和なものであって、身体を清潔に し、美化し、魅力を増し、容貌を変え又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保 つことを目的として、身体に塗擦、散布等の方法で使用するもの』が含まれ ます。『化粧品』は、女性用のみならず、男性用又は乳児用の商品も含まれま す。」と説明している。薬事法は、平成25年法律第84号によってその名称 が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」 (薬機法)に改められたところ、薬機法2条3項は、「この法律で『化粧品』 とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若 しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似す る方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和 なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三 号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部 外品を除く。」と定義している。
これらの説明及び法律上の定義によれば、「サプリメント」は、人体に欠乏 しやすいビタミン・ミネラル等の栄養素を経口投与によって体内に摂取する ための食品であり、その使用の目的は健康の保持増進にあると認められる。 これに対し、「化粧品」は、身体に対して塗擦、散布等をする方法で使用する ものであり、その使用の目的は人の身体を清潔にし、美化し、容貌を変え、 又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つことにあると認められるから、「サプ リメント」と「化粧品」とはその使用方法及び使用目的の根本的部分におい て明確に異なっていると認められる。
(4) 「サプリメント」と「化粧品」については、これら双方を製造する会社及 び双方を販売する会社が複数存在することは認められるものの(甲13の1・ 2、14の1〜13、甲20の1〜72)、通常同一の営業主により製造又は 販売されているとの事情があるとは認められない。 また、前記(3)のとおり、「サプリメント」が経口投与によって体内に摂取す る方法で使用し、「化粧品」が身体に塗擦、散布等をする方法で使用するとい う違いがあることからすれば、「化粧品」には経口投与による体内への摂取に は適しない成分を使用することも可能であると認められ、「サプリメント」と\n「化粧品」について、同一の成分を含む商品が存在するとしても、その原材 料が通常一致するといった関係にあるとは認められない。 需要者については、それぞれの使用目的から、「サプリメント」の需要者は 健康の保持増進に関心のある一般消費者であり、「化粧品」の需要者は身体を 清潔にし、美化し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つこと に関心のある一般消費者であって、これらは一部において一致すると考えら れるが、完全に一致するとは認められない。
(5) 上記(3)及び(4)の事情を総合すると、本件商標の指定商品のうち第5類「サ プリメント」と、使用商標が用いられている商品のうち「化粧品」とは、こ れらの商品に同一又は類似の商標を使用する場合に、同一営業主の製造又は 販売に係る商品と誤認されるおそれがあるとは認められず、商標法4条1項 10号にいう「類似する商品」に当たるとは認められない。
・・・
イ 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕(2)のとおり、本件商標の指定商品 のうち「サプリメント」と原告が製造・販売する「化粧品」に同一又は類 似の商標を使用するときは、同一営業主の製造・販売又は提供に係る商品 又は役務と誤認が生じるから、本件商標の指定商品のうち第5類「サプリ メント」は商標法4条1項10号に該当すると主張する。 しかし、「サプリメント」と「化粧品」の両方を製造又は販売している企 業が複数存在しており(前記(4))、その中には、当該企業が運営する同一の ウェブサイトで「サプリメント」と「化粧品」を販売する企業や、「サプリ メント」と「化粧品」に同一のブランド名を付して販売している企業があ ることが認められるが(甲13の1・2、甲14の1〜13等)、「サプリ メント」と「化粧品」が通常同一の営業主により製造又は販売されている との事情があるとは認められないことは前記(4)のとおりであり、「サプリ メント」を販売する企業の多くが化粧品を製造又は販売している、あるい は「化粧品」を販売している企業の多くが「サプリメント」を販売してい るといった事情があるとも認められない。そうすると、「サプリメント」と 「化粧品」について、使用の目的及び方法の双方について相違があること (前記(3))からすれば、上記のとおり認められる事実の限度では、これら の商品に同一又は類似の商標を使用する場合に、同一営業主の製造又は販 売に係る商品と誤認されるおそれがあるとは認めるに足りない。
「サプリメント」と「化粧品」とにおいて、同一の成分を含む商品が販 売されているとしても、通常成分が一致するといった関係にあるとは認め られず、「サプリメント」は経口投与によって体内に摂取する食品であり、 「化粧品」は身体に塗擦、散布等をする方法で使用するという違いがある ことによって、含まれる成分にも差異があると考えられる。
「化粧品」の使用の目的は、前記(3)のとおり、人の身体を清潔にし、美 化し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つことにあるので あり、これらを達成することによって心身の健康維持の効果があると説か れることがあるとしても、そのような効果はあくまで間接的なものである といえる。これに対し、「サプリメント」は健康の保持増進が使用の直接の 目的であるといえるから、「サプリメント」と「化粧品」で使用の目的や用 途が一致するとはいえない。
「サプリメント」の需要者と「化粧品」の需要者は、その使用の目的が 異なることからすれば、一部において一致する者があるとしても、完全に 一致しているという事情は認められない(前記(4))。
以上によれば、原告が前記第3の1〔原告の主張〕(2)のとおり主張する 事情を考慮しても、「サプリメント」と「化粧品」について、同一又は類似 の商標を使用する場合には、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認 されるおそれがあると認められる関係があるとは認められない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。

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令和5(行ケ)10050 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和6年2月5日  知的財産高等裁判所

商標「美容医局」が周知であるとして商標法4条1項10号違反の無効理由ありとした審決が維持されました。

ア 被告は、平成24年8月29日、「biyou-ikyoku.com」のドメイン名を取得し、 その頃、「美容医局」の商標(引用商標)が表示された美容クリニック専門の医師転\n職サイトを開設して、本件サービスの事業を開始し、以後、現在に至るまで本件サ ービスの事業を継続している。(甲5、乙8、11)
イ 令和元年度における医師向けの有料職業紹介事業の総売上高が約212億円 (乙19の1中の「職業紹介事業 運営状況(令和元年度)」の16頁)であり、医 師総数に対する美容外科医及び皮膚科医の数の割合が約4.7%(=(平成30年 12月31日現在の皮膚科医数1万4244人+同日現在の美容外科数1176人 の合計1万5420人)÷同日現在の医師総数32万7210人。乙20の1の4 頁及び11頁。以下、各年の美容外科医及び皮膚科医向けの有料職業紹介事業の売 上高を推計する際の医師数は、同日現在の数字を用いる。)であることからすると、 美容外科医及び皮膚科医向けの有料職業紹介事業の売上高は10億円程度と推計さ れる。(乙19の1、乙20の1) そして、令和元年の本件サービスの売上高は●●●●●●万円(乙23の1)で あるから、美容外科医及び皮膚科医向けの有料職業紹介事業における本件サービス のシェアは●割近いものであると推認される。(乙23の1)
ウ 同様に令和2年度の医師向けの有料職業紹介事業の総売上高が約227億円 (乙19の6中の「職業紹介事業 運営状況(令和2年度)」の16頁)であること から、前記美容外科医及び皮膚科医の数の割合を乗ずると、美容外科医及び皮膚科 医向けの有料職業紹介事業の売上高は10億6700万円程度と推計されるところ、 令和2年の本件サービスの売上高は●●●●●●万円(乙23の1)であるから、 そのシェアは●割近いものと推認される。(乙19の6、乙23の1)
エ 平成27年度から平成30年度までの各年の医師向けの有料職業紹介事業の 総売上高は、約154億円、約174億円、約166億円、約197億円であるの に対し、平成27年から平成30年までの各年の本件サービスの売上高は●●●● 万円、●●●●万円、●●●●●●万円、●●●●●●万円であるから、本件サー ビスは、医師向けの有料職業紹介事業全体の総売上高の増加率よりも大きな増加率 をもって、売上げが上昇した。(乙19、23)
オ 平成25年から令和2年までの各年において、本件サービスに新規登録した 医師の数は、●●人、●●●人、●●●人、●●●人、●●●人、●●●人、●● ●人、●●●●人であった(令和2年における累計●●●●人)。なお、平成30年 12月31日現在の美容外科又は皮膚科の診療科に従事する医師の数は前記のとお り合計1万5420人である。(乙20の1、乙25)
カ 被告は、本件サービスの一環として、平成24年9月に、第1回の医師転職 支援セミナーを実施した後、たびたび転職セミナーを開催し、令和2年度には「転 科不安解消セミナー」「研修医向けノウハウセミナー」など合計30回のセミナーを 実施し、令和3年度には「初期研修医のための就活ガイダンス」など合計32回の セミナーを実施した。被告は、「美容医局」に登録した美容医療関係者のためのスキ ルアップセミナー、オペ見学・解説セミナーの提供といった役務も行っている。(甲 5の2、甲15、甲18、甲51、甲62の1、2、18及び19)
キ 被告は、Yahoo!ディスプレイアドネットワーク、Facebook、Twitter といっ たインターネットにおいて、引用商標を用いた本件サービスの広告を出稿しており、 令和2年5月から7月までの間に、●●●万回を超える表示がされ、●万を超える\nクリックがされた。(甲51)
ク 令和3年8月2日付けのインターネット上の「【転職のプロが教える】美容外 科おすすめ医師転職エージェントランキング」と題する記事において、本件サービ スが、美容外科・美容皮膚科転職エージェントおすすめ求人数ランキングで、全1 2エージェント中1位として掲載されている。同記事によれば、「美容医局」の求人 数3692件は、全12エージェントの合計求人数1万1682件の約31.6% を占めている。(甲13)。
(3) 前記(2)を総合すると、本件サービスは、遅くとも令和2年頃までには、美容 外科及び美容皮膚科に転職しようとする医師並びに医師を求める美容外科及び美容 皮膚科の医療施設にとって多く利用されているサービスとなっていたということが でき、本件サービスを表すものとして使用されている引用商標は、本件商標の出願\n時である令和2年7月31日及び登録査定時である令和3年6月2日において、本 件サービスを表すものとして、その需要者である美容外科医、美容皮膚科医及びそ\nの医療施設関係者の間で広く認識されていたと認めるのが相当である。
原告は、医師全体の有料職業紹介事業に対するシェアからすると、本件サービス に周知性があるとはいえないと主張するが、そもそも本件サービスの対象とする美 容外科又は美容皮膚科の医師の数の医師全体数に占める割合が前記のとおり約4. 7%にすぎないことからすると、本件サービスの医師全体の有料職業紹介事業に対 するシェアが少ないことをもって、本件商標の知名度が低いということはできない。 そして、「美容医局」との商標が本件商標の指定役務である「職業のあっせん、求人 情報の提供、人材派遣による職業のあっせん、人材派遣による求人情報の提供」に おいて用いられる場合には、美容外科又は美容皮膚科に関係する医療関係者以外を 対象とするものとは考え難いのであるから、美容外科又は美容皮膚科に転職する可 能性のない医師までを需要者とみるのは相当ではなく、上記原告の主張は採用する\nことができない。

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令和5(ネ)10070  損害賠償等請求控訴、同附帯控訴事件  商標権  民事訴訟 令和5年12月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

商標権侵害事件です。原審は約1400万円の損害賠償を認めました。知財高裁も同様です。論点は、スイスの国旗に似ている商標として無効理由ありかどうかです。

控訴人は、本件商標はスイスの国旗に類似しており、商標法4条1項1号 違反の無効理由があると主張する。
しかし、本件商標の形状は原判決「事実及び理由」第4の1(2)のとおりで あり、やや丸みを帯びた縁(辺)を有する略四角形(略正方形)と、これに 囲まれた略相似形であるやや丸みを帯びた縁(辺)を有する略四角形と、そ の内部(中央)に位置する幅広の十字からなり、前者の略四角形の縁と後者\nの略四角形の縁とがなす部分(外縁部分)と、上記十字部分は、いずれも白\n色であり、後者の略四角形の内部は、上記十字部分を除き黒色であり、上記\n十字の幅は外縁部分の3倍程度である。
これに対し、スイスの国旗は、原判決「事実及び理由」第4の2のとおり、 正方形と、その内部(中央)に位置する幅広で白色の十字からなり、正方形\nの内部は、白色である上記十字部分を除いて赤色である。\nしたがって、スイスの国旗は、正方形であって白色の外縁部分がなく、内 部の十字部分を除いた部分が赤色である点において、本件商標と相違してお\nり、本件商標とスイスの国旗は、控訴人が指摘する共通点を考慮しても、中 心的かつ全体的構成を占める図形の形状及び色彩において明らかに相違する。\n被控訴人が、本件商標と同様の形状であるが、地色が赤色で十字部分が白\n色の標章を使用したことがあるとしても、そのことをもって、地色が赤色で 十字部分が白色のものも本件商標に含まれることにはならず、本件商標とス\nイスの国旗がその色において共通するとはいえない。

◆判決本文
原審はこちら。

◆令和3(ワ)13895

当事者が同じ関連訴訟です。

◆令和2(ネ)10060

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令和5(行ケ)10079  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年12月26日  知的財産高等裁判所

 商標「地球グミ」に対して、正式名称「Planet Gummi」が、「地球グミ」として周知であるとして、無効審判を請求しました。特許庁は理由無しと判断しましたが、知財高裁は、4条1項10号違反の無効理由有りと判断しました。

ア 前記1において認定した事実によると、引用標章1の周知性に関し、次の事 情が認められるというべきである。
すなわち、原告商品は、外国の会社が製造する菓子であり、その名称を「Tro lli Planet Gummi」、「Planet Gummi」などとする ものであって、原告商品又はその包装若しくは個包装には、日本語からなる「地球 グミ」との文字は記載されていない。しかしながら、原告商品は、平成30年頃、 動画投稿者及びその閲覧者を中心に韓国において大流行したところ、この流行が日 本にも飛び火し、原告商品は、令和2年頃からは、日本においても、動画投稿者及 びその閲覧者を中心に大流行し、遅くとも原告が原告商品の輸入販売を開始した同 年10月までには、全国に店舗を展開する小売業者の中に、原告商品を「地球グミ」 と称してこれを宣伝する者が現れるようになった。原告が原告商品の輸入販売を開 始した後についてみても、原告商品は、大人気を誇り、小売業者の店舗における販 売開始後すぐに完売となるという事態が相次ぎ、その入手が極めて困難な商品とな った。原告が原告商品の輸入販売を開始して以来、全国に店舗を展開する小売業者 らは、原告商品を「地球グミ」と称してこれを繰り返し宣伝し、また、原告商品は、 動画投稿サイトにおいても、「地球グミ」と称する商品として大人気を博していた。 そのような原告商品は、令和3年6月、「地球グミ」と称する大人気商品として、 全国紙による新聞報道及び在阪の準キー局によるテレビ報道がされるまでに至り、 同テレビ報道においては、同年上半期にはやった飲食物としてZ世代が選ぶランキ ングにランクインした。原告商品は、翌7月、同様の人気商品として、在京のキー 局によるテレビ報道がされるに至り、20代前半の若者が皆知っていることとして 紹介された(なお、原告は、遅くとも同年6月には、テレビ番組において、原告商 品を「地球グミ」と称しており、また、遅くとも同年9月には、原告商品を「地球 グミ」と称する宣伝をするようになった。)。
さらに、「地球グミ」と称する原告商品は、同年11月、動画投稿サイトへの投稿がきっかけで人気となった作品又は商品の例として、著名作家の小説、有名シンガーソングライターの楽曲等と並べて紹介されるとともに、渋谷区にある著名な商業施設の運営会社による調査(15歳から24歳までの女性545名を対象としたもの)の結果である「SHIBUYA109lab.トレンド大賞2021」なる賞においても、その「カフェ・グルメ部門」の2位に入賞した。このような「地球グミ」と称する原告商品の令和3年までの動向を踏まえ、令和4年1月に発行された「現代用語の基礎知識2022」においては、令和3年中に注目された物(食に係るヒット商品)として、原告商品の俗称たる「地球グミ」の語が取り上げられるに至った。\n
以上の事情に照らすと、「地球グミ」の語(引用標章1)は、遅くとも本件査定 日(令和4年2月22日)までには、原告又は原告商品の製造業者の業務に係る商 品(原告商品)を表示するものとして、需要者(引用標章1が使用される商品の内\n容及び性質並びに前記1の事実に照らすと、若者を始めとするグミキャンディの消 費者であると認められる。)の間に広く認識されている商標に該当していたものと 認めるのが相当である。

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令和5(行ケ)10079  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年12月26日  知的財産高等裁判所

知財高裁(2部)は、未登録周知商標に類似する商標であると認定し、無効理由無しとした審決を取り消しました。

ア 前記1において認定した事実によると、引用標章1の周知性に関し、次の事 情が認められるというべきである。 すなわち、原告商品は、外国の会社が製造する菓子であり、その名称を「Tro lli Planet Gummi」、「Planet Gummi」などとする ものであって、原告商品又はその包装若しくは個包装には、日本語からなる「地球 グミ」との文字は記載されていない。しかしながら、原告商品は、平成30年頃、 動画投稿者及びその閲覧者を中心に韓国において大流行したところ、この流行が日 本にも飛び火し、原告商品は、令和2年頃からは、日本においても、動画投稿者及 びその閲覧者を中心に大流行し、遅くとも原告が原告商品の輸入販売を開始した同 年10月までには、全国に店舗を展開する小売業者の中に、原告商品を「地球グミ」 と称してこれを宣伝する者が現れるようになった。原告が原告商品の輸入販売を開 始した後についてみても、原告商品は、大人気を誇り、小売業者の店舗における販 売開始後すぐに完売となるという事態が相次ぎ、その入手が極めて困難な商品とな った。原告が原告商品の輸入販売を開始して以来、全国に店舗を展開する小売業者 らは、原告商品を「地球グミ」と称してこれを繰り返し宣伝し、また、原告商品は、 動画投稿サイトにおいても、「地球グミ」と称する商品として大人気を博していた。 そのような原告商品は、令和3年6月、「地球グミ」と称する大人気商品として、 全国紙による新聞報道及び在阪の準キー局によるテレビ報道がされるまでに至り、 同テレビ報道においては、同年上半期にはやった飲食物としてZ世代が選ぶランキ ングにランクインした。原告商品は、翌7月、同様の人気商品として、在京のキー 局によるテレビ報道がされるに至り、20代前半の若者が皆知っていることとして 紹介された(なお、原告は、遅くとも同年6月には、テレビ番組において、原告商 品を「地球グミ」と称しており、また、遅くとも同年9月には、原告商品を「地球 グミ」と称する宣伝をするようになった。)。さらに、「地球グミ」と称する原告 商品は、同年11月、動画投稿サイトへの投稿がきっかけで人気となった作品又は 商品の例として、著名作家の小説、有名シンガーソングライターの楽曲等と並べて\n紹介されるとともに、渋谷区にある著名な商業施設の運営会社による調査(15歳 から24歳までの女性545名を対象としたもの)の結果である「SHIBUYA 109lab.トレンド大賞2021」なる賞においても、その「カフェ・グルメ 部門」の2位に入賞した。このような「地球グミ」と称する原告商品の令和3年ま での動向を踏まえ、令和4年1月に発行された「現代用語の基礎知識2022」に おいては、令和3年中に注目された物(食に係るヒット商品)として、原告商品の 俗称たる「地球グミ」の語が取り上げられるに至った。 以上の事情に照らすと、「地球グミ」の語(引用標章1)は、遅くとも本件査定 日(令和4年2月22日)までには、原告又は原告商品の製造業者の業務に係る商 品(原告商品)を表示するものとして、需要者(引用標章1が使用される商品の内\n容及び性質並びに前記1の事実に照らすと、若者を始めとするグミキャンディの消 費者であると認められる。)の間に広く認識されている商標に該当していたものと 認めるのが相当である。
イ なお、被告は、引用標章1は商標として使用されていなかったと主張するが、 前記1(13)、(15)、(16)及び(25)によると、原告は、原告商品に関する広告を内容 とする情報に引用標章1を付して電磁的方法により提供していたと認められるから、 被告の主張を採用することはできない。
(2) 本件商標と引用標章1の類否
前記第2の1(5)のとおり、本件商標は、「地球グミ」の文字を標準文字で表し\nてなるものである。これに対し、前記第2の3(1)ア(ア)のとおり、引用標章1は、 「地球グミ」の文字を書してなるものである。 このように、本件商標と引用標章1は、その外観において、極めて相紛らわしい ものである。 また、本件商標及び引用標章1からは、いずれも「チキュウグミ」の称呼が生じ るから、両者は、称呼を同じくする。 さらに、前記(1)アにおいて説示したところに照らすと、「地球グミ」は、需要 者の間において原告商品を指す語であると認識されるといえるから、本件商標及び 引用標章1からは、いずれも、「地球のグミキャンディ」などの観念のほか、「原 告商品」(商品名を「Trolli Planet Gummi」、「Plane t Gummi」などとするグミキャンディ)の観念が生じるといえ、両者は、観 念を同じくする。 以上によると、本件商標は、引用標章1と称呼及び観念を同じくし、外観におい て極めて相紛らわしいから、引用標章1に類似する商標であると認めるのが相当で ある。

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令和5(行ケ)10067  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年12月4日  知的財産高等裁判所

商標「5252byO!Oi」が、黒色の丸ゴシック体で表した商標「OIOI」と類似するかが争われました。知財高裁は、商標「OIOI」は著名であったとして分離抽出を認め、非類似とした審決を取り消しました。\n

ア 本件商標は、前記第2の1(1)のとおり、「5252byO!Oi」の数字、 欧文字及び感嘆符を黒色のゴシック体にて同じ大きさ、等しい間隔で一連に横書き してなるものである。もっとも、このうち「by」という語は、一般に「by 〇 〇〇」との用法により「商品や役務の出所が〇〇〇」であることを表す英語の前置\n詞として我が国において広く用いられ、親しまれていることや、「by」が小文字で 書されていることからすると、本件商標は、全体として、「by」の後の「O!Oi」 の部分を、独立して、見る者の注意を引くように構成されているといい得るもので\nある。また、本件商標のうち「5252」の部分は単に数字を羅列するものであっ て格別の識別力を有しないのに対し、「O!Oi」の部分は、欧文字を用いながらも 辞書等に載録される語ではない上、「オーオイ」又は「オーオーアイ」との称呼を生 じ得るものではあるが、感嘆符を用いていることからその称呼も一様に定まるもの ではなく、丸と縦線とが交互に用いられている点において視覚的に際立った印象を 与え、造語とも図形とも理解できる特徴的なものといえる。これらに加えて、上記 のとおり、「商品や役務の出所が○○〇」であることを示すものとして「by〇〇〇」 との用法が広く用いられ、親しまれていることからすると、「by」の後に配された 「O!Oi」の部分は、本件商標の構成の中でも、出所識別標識として強く支配的\nな印象を与えるというべきである。そうすると、「O!Oi」の部分は、本件商標の 一部分ではあるものの、商標全体の出所識別標識としての機能を果たしていると認\nめられるから、この部分を本件商標の要部として抽出し、この部分(以下「本件要 部」という。)だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されると いうべきである。
被告は、前掲最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決を引用し、同じ書体、同 じ大きさで隙間なく一連に横書きしてなる本件商標の構成部分の一部である本件要\n部のみを他人の商標と比較することは許されない旨主張する。しかし、上記のとお り、本件要部は、その後に続く語が商品等の出所であることを示す英語の前置詞と して我が国で広く用いられ、親しまれている「by」の後に配されていることによ り、独立して、商品等の出所を示すものとして、見る者の注意を引くように構成さ\nれているといい得るものである上、造語とも図形とも理解できる特徴的な形状を有 し、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる一方、本件商 標の他の部分である「5252」「by」の部分は格別の識別力を有しないのである から、本件要部だけを他人の商標と比較することは許されるというべきである。被 告の主張は採用することができない。
イ 本件要部は、「O!Oi」の欧文字及び感嘆符を黒色のゴシック体にて同じ大 きさ、等しい間隔で一連に横書きしてなるものである。また、本件要部からは、そ の構成文字に相応して「オーオイ」「オーオーアイ」の称呼を生じ得る。他方、これ\nらの欧文字の配列は辞書等に載録されている語等を構成するものではなく、上記の\nとおり生じ得る称呼からも特段の意味合いを見いだせないことからすれば、本件要 部からは特定の観念を生じないものといえる。
ウ 本件商標の指定商品は前記第2の1(1)のとおりであり、被服やかばん類等 のファッション・アパレル関連商品や、携帯電話機用アクセサリー、ヘッドフォン、 眼鏡等の一般消費者が身に付ける物が中心となっている。
(3) 引用商標3について
ア 引用商標のうち、引用商標3の構成は別紙2の3の「商標の構\成」のとおり であり、赤色の丸ゴシック体にて同じ大きさ、等しい間隔で「OIOI」と書して なるものである。引用商標3からは、その構成文字に相応して「オーアイオーアイ」\n「オイオイ」の称呼を生じるほか、前記1に認定した事実関係によると、原告標章 は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、一般消費者を含むファッショ ン・アパレル関係の取引者、需要者において著名な商標であったと認められるから、 色彩のほかは原告標章と同一の構成を有する引用商標3からは、「マルイ」との称呼\nも生じ、「マルイのロゴマーク」との観念も生じるものと認められる。
イ 引用商標3の指定商品には、被服やかばん類等のファッション・アパレル関 連商品や、キーホルダーや眼鏡等の一般消費者が身に付ける物が含まれている。
(4) 本件商標と引用商標3の類否について
本件要部からは特段の観念を生じないのに対して、引用商標3からは「マルイの ロゴマーク」との観念を生じるので、両者の観念は同一とはいい難い。 次に、本件要部からは「オーオイ」「オーオーアイ」の称呼を生じ得るのに対し、 引用商標3からは「オーアイオーアイ」「オイオイ」及び「マルイ」の称呼を生じ得 るところ、本件要部に「!」が含まれていることの関係で厳密には称呼が異なるも のの、多くの音を共通にしており、相応に類似しているというべきである。 また、両者の外観についてみると、本件要部及び引用商標3は、いずれもゴシッ ク体にて四つの文字又は記号を書してなり、1字目と3字目はいずれも「O」で共 通している。2字目は「!」と「I」、4字目は「i」と「I」と異なる文字又は記 号が使用されているが、いずれも1本の縦線又は1本の縦線とその延長線上にある 点により構成される点において形状が類似している。加えて、各文字の字間を含め\nた配列も近似している。そうすると、両者の外観は、子細にみると異なる部分はあ るが、時と場所とを異にする隔離的観察の下では、互いに相紛らわしいというべき である。
以上に加え、本件商標及び引用商標の各指定商品は、いずれもファッション・ア パレル関連商品や一般消費者が身に付ける物であるから、その取引者、需要者には 一般消費者が含まれるところ、本件要部からは特段の観念を生じず、本件要部及び 引用商標3から生じ得る称呼は同一ではないが相応に類似している上、いずれも単 一の確たる称呼が生じるといい難いことから、取引者、需要者にとってみれば称呼 が出所識別標識として決め手とはなりにくいとうかがわれること、一般消費者は、 アパレル・ファッションや身に付ける物の出所につき、主として対象商品やロゴマ ークの外観等に注目するとみられること等も総合すると、上記のとおり、引用商標 3との関係で、称呼について相応に類似し、外観において互いに相紛らわしい本件 要部を持つ本件商標は、その構成全体が引用商標3と同一ではないことを考慮して\nも、両商標が本件商標の各指定商品に使用された場合には、取引者、需要者が両者 の出所を見誤る可能性は否定できず、その商品の出所において誤認混同が生じるお\nそれがあるものと認められる。 したがって、本件商標は、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、 その商品に係る取引の実情を踏まえて全体的に考察すると、引用商標3に類似する 商標と認められる。

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令和5(行ケ)10074  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年11月30日  知的財産高等裁判所

商標「ブランディングDX」(標準文字)が、識別力無しとした審決が維持されました。

本願商標は、「ブランディングDX」の文字を標準文字で表してなると\nころ、構成中の「ブランディング」の文字は、「顧客や消費者にとって価値\nのあるブランドを構築するための活動」等の意味を有する語であり(乙1〜\n7)、「DX」の文字は、「情報通信技術の浸透に伴うビジネスや社会の構造\n的変革」、「デジタル変革」を意味する「デジタルトランスフォーメーション」 を表す語である(乙8〜10)と認められる。\nそして、日本政府によって平成30年5月に「デジタルトランスフォー メーションに向けた研究会」が発足し、同年12月に同研究会によって「D X推進ガイドライン」が発表されて以降、政府による「DX推進指標」が公\n表され(令和元年7月)、閣議決定された「骨太の方針」に「民間における\nDXの加速」が盛り込まれ(令和3年6月)、その頃、総務省によって「自 治体DX推進計画」が策定されるなど、様々な業務や事業活動、業種等にお いて、デジタル技術の活用を促進することによる業務の変革(DX、デジタ ルトランスフォーメーション(化))の取組がなされている(乙11〜22、 28、47〜50)。また、そのような取組を表す際に、「○○DX」と表\す ことがしばしば行われている実情があり(乙13、14、21〜37)、ブ ランディングに関わる業務においても、こうした取組に対して、端的に「ブ ランディングDX」と称する事例がある(甲28〜40、乙43、44、4 7〜50)。
(3) そうすると、本件関連役務に関し本願商標に接した取引者・需要者は、 「ブランディング」についてのデジタル技術の活用による業務の変革である 「デジタルトランスフォーメンション」であること、すなわち「ブランディ ングのデジタルトランスフォーメーション(化)」を表したものと認識し、\n理解するものというべきである。 よって、本願商標は、役務の特徴、質(内容)を普通に用いられる方法 で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法3条1項3号に該当す\nると解するのが相当である。
(4) これに対し、原告は、「DX」の文字の理解が浸透していないと主張す るが、上記(2)の事実は、本件審決時までに「デジタルトランスフォーメー ション」を意味する「DX」の取組が広く啓発され、用語例として定着・普 及していたことを示すものにほかならず、上記主張は採用できない。原告は、 アンケートにおいて「DX」や「ブランディング」の理解が広がっていない 結果が出ていると主張するが(甲3〜5、18〜20、22、23)、例え ば甲3のアンケートでは、75%の回答者が少なくとも「DX」の言葉の意 味を理解しているとの結果が出ているなど、本件で証拠提出されたアンケー ト結果は必ずしも原告の主張を根拠づけるものとはいえない。 また、原告は、「ブランディングDX」の用語を使用する際、「プラン」 や「ソリューション」などの言葉で意味合いを補足している例がほとんどで\nあると主張するが、そうだとしても、「DX」の用語が本件関連役務の取引 者・需要者に理解されないと解すべき根拠になるものではない。
(5) 以上のとおりであって、本願商標が商標法3条1項3号に該当するとし た本件審決の判断に誤りはない。

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令和5(行ケ)10063  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年11月30日  知的財産高等裁判所

本件商標は標準文字「VENTURE」です。先行商標は「遊」の漢字の下部に「VENTURE」を配した結合商標です。争点は「VENTURE」部分を要部として、類否判断ができるかです。特許庁は要部抽出可能と判断しましたが、裁判所は、分離観察については可能\としましたが、「VENTURE」の文字部分は要部ではないとして、審決を取り消しました。判決文の最後に引用商標があります。

ア 引用商標は、中央上部に筆文字風の書体による「遊」の漢字を大きく配 し、底辺部にゴシック体風の書体による「VENTURE」の欧文字を配 した構成からなる結合商標である。\n
(ア) この外観に着目して具体的に観察すると、中央上部の「遊」の文字 は、「VENTURE」を構成する各文字よりも縦横とも約5倍の大き\nさで、面積にして約25倍相当となる。「遊」の文字と「VENTUR E」文字部分(7文字分)全体の面積を比較しても、前者が後者の約3. 5倍ということになり、「遊」の文字部分が「VENTURE」の文字 部分に対して圧倒的な存在感を示している。
また、「遊」の文字の書体は、勢いのある行書の筆文字風であり、 「遊」の語義と相まって、看者に躍動感と趣味感を印象づける書体で あるのに対し、「VENTURE」は、太目の文字をわずかに右に傾け たゴシック体風の書体という以上の特徴はみられない。
そして、「遊」の文字部分は、中央上部に配置され、これが商標の全 体構成の中心部分をなすとの位置づけを否応なくアピールするのに対\nし、「VENTURE」の文字部分は、底辺部で「遊」を支える台座の ような印象を与える外観となっている。
(イ) 次に、称呼及び観念に着目して検討するに、引用商標の構成中、「V\nENTURE」の文字部分からは、 (2)で述べたところと同様、「ベン チャー」の称呼及び「冒険」の観念を生ずる。そして、「遊」の文字部 分からは、「ゆう」又は「あそ」(び、ぶ)の称呼を生じ、「あちこち 出歩いてあそぶ」等の観念を生ずる(乙5)。 したがって、これを全体として観察した場合、一応は「ユウベンチャ ー」又は「アソベンチャー」の称呼を生ずるといえるが、一義的に明確\nとはいえず、一連一体の文字商標としての読み方は定まらない(よく 分からない)という印象を取引者、需要者に与えることも否定できな い。
また、「遊」の部分から生ずる観念(あちこち出歩いてあそぶ)と 「VENTURE」の部分から生ずる観念(冒険)とを統合する単一の 観念を見出すことは困難であり、造語としての「ユウベンチャー」又は 「アソベンチャー」から特定の観念が生ずるとも認められない。\nこの点、原告は、上記各部分を通じて、「気ままに冒険する」といっ た観念上のつながりが理解される旨主張するが、連想の域を出ない希 薄なつながりにすぎず、ここに商標の出所識別機能の根拠を求めるに\nは無理がある。
イ 以上の認定を踏まえ、上記(1)の3)で例示したところを参考に、引用商 標における分離観察の可否及び要部認定について検討する。
引用商標は、「遊」の文字部分と「VENTURE」の文字部分からな る結合商標であり、原則として全体観察をすべきことは前述のとおりであ るが、上記各構成部分を比較すると、文字の大きさの違いからくる「遊」\nの文字部分の圧倒的な存在感に加え、書体の違いからくる訴求力の差、全 体構成における配置から自ずと導かれる主従関係性といった要素を指摘\nすることができ、称呼及び観念において一連一体の文字商標と理解すべき 根拠も見出せない等の事情を総合すると、引用商標に接した取引者、需要 者は、「遊」の文字部分と「VENTURE」の文字部分を分離して理解 ・把握し、中心的な構成要素として強い存在感と訴求力を発揮する「遊」\nの文字部分を略称等として認識し、これを独立した出所識別標識として理 解することもあり得ると解される。
他方、「VENTURE」の文字部分は、商標全体の構成の中で明らか\nに存在感が希薄であり、従たる構成部分という印象を拭えず、これに接し\nた取引者、需要者が、「VENTURE」の文字部分に着目し、これを引 用商標の略称等として認識するということは、常識的に考え難い。したが って、「VENTURE」の文字部分を引用商標の要部と認定することは できないというべきである。本件審決の判断中、「遊」の文字部分と「VENTURE」の文字部分との分離観察が可能という点は正当であるが、「VENTURE」の文字\n部分を要部と認めた部分は是認できない。
ウ 被告は、「遊」の文字部分が比較的大きく書されているとしても、「V ENTURE」の文字も需要者、取引者が認識するに十分な大きさで書さ\nれており、文字の大きさをもって「VENTURE」の文字部分が要部と なり得ないとはいえない旨主張する。確かに、相対的な文字の大小関係が あるにすぎない場合であれば、被告の上記立論も首肯できるものであるが、 本件における「遊」の文字部分と「VENTURE」の文字部分との大き さの違いは、相対的な大小関係とは次元の異なるものである上、書体の違 いからくる訴求力の差、配置上の位置関係からくる主従関係性などの要素 も総合すれば、被告の立論は本件に妥当するものとはいえない。
なお、「VENTURE」という文字が引用商標の指定商品(被服)と の関係で出所識別標識としての機能を一般的に果たすかどうかという問\n題は、上記判断とは関係がない。

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令和5(行ケ)10060 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年11月15日  知的財産高等裁判所

赤色の図形内部に、「POPPO」の欧文字を白抜きした結合商標から、文字部分だけを抽出して類似判断ができるかが争われました。知財高裁は抽出できるとした審決を維持しました。

イ 本願商標の全体を観察すると、文字部分は、図形部分の内部に配置されてい るものの、図形部分の中央の目立つ位置に、白抜きの読み取りやすい書体で明瞭に 記載されているから、外観上、図形部分とは明確に区別して認識できるものであっ て、図形部分と文字部分がそれぞれ視覚的に分離、独立した印象を与えるものとい える。
ウ 本願商標の図形部分は、一見して何を表すものであるか看取することは困難\nであり、直ちに特定の観念及び称呼が生じると認めることはできない。他方、本願 商標の文字部分は、当該文字は辞書等に掲載のないものであって、特定の意味合い を認識させることのない一種の造語として認識されるものであって、特定の観念を 生じさせず、ローマ字読みした場合、「ポッポ」の称呼を生じるものといえる。 エ 以上を総合すると、本願商標は、図形部分と「POPPO」の文字部分とか らなる結合商標であるところ、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上\n不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められないから、 その構成部分の一部であり、「ポッポ」の称呼を生じる文字部分である「POPPO」の部分を抽出し、当該部分(以下「本願要部」という。)だけを他人の商標と比較し\nて商標の類否を判断することも許されるというべきである。
・・・・
(3) 本願商標の指定役務は第43類「鳥から揚げを主とする飲食物の提供」を含 むものであり、引用商標1の指定役務は第42類「らーめん・お好み焼・たい焼・ フライドポテト・アイスクリーム及び清涼飲料を主とする飲食物の提供」であり、 引用商標2の指定役務は第43類「飲食物の提供」である。しかるところ、これら を提供する者はいずれも飲食サービス業者であって業種が一致する。また、飲食サー ビス業者においては、同一店舗において、ラーメンと空揚げとフライドポテト、お 好み焼きと空揚げなどを提供することも行われており(乙34〜39)、さらに、提 供する飲食物が相違する様々な店舗を同一経営者が飲食店グループとして運営する ことも一般的に行われているところである。
(4) 以上によると、本願商標と各引用商標は、それぞれの指定役務において使用 された場合、営業主体、すなわち役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあ るというべきであって、互いに類似するものであり、また、本願商標と各引用商標 は、「飲食物の提供」の役務との点で共通するから、指定役務が類似するといえる。

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令和4(行ケ)10035 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 知的財産裁判例 令和5年7月19日  知的財産高等裁判所

「GODZILLA」は周知著名商標であるので、「GUZZILLA」は、4条1項15号違反として、無効であるとした審決が維持されました。

(1) 商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を 生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品又は指定役務に使 用したときに,当該指定商品又は指定役務が他人の業務に係る商品又は役務 であると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該指定商品又は指定役 務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係 又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主\nの業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標を含むもの と解するのが相当である。そして,上記の「混同を生ずるおそれ」の有無は, 当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表\示の周知著名性及び独創 性の程度や,当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は 役務との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務 の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指 定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基 準として,総合的に判断されるべきものである(平成12年最判参照)。 そして、この「同一の表示による商品化事業を営むグループ」には、表\示 を指定された商品に付し役務に用いるなどして商品の販売等の事業を営む他 の営業主のように、他人の表示に係る使用許諾(ライセンス)契約を締結し\nて事業を営む者をも含むと解すべきであるから、そこにいう「誤信されるお それがある商標」(広義の混同のおそれのある商標)には、使用許諾に係る 他人の表示と同一ないし類似の商標であって、これが商品に付され又は役務\nに用いられることにより、他人の表示に関するライセンス契約を締結して事\n業を営むグループに属する関係にある複数の営業主のうちに、この同一ない し類似の商標を用いて事業を営む者に属する関係にあると誤信されるおそれ がある商標を含むものというべきである。 以下、この観点から判断する。
(2) 商標の類似性の程度
ア 外観
本件商標は、「GUZZILLA」と、8文字の欧文字から成る。本件 商標において、「G」と「A」の字体は、やや丸みを帯び、「U」と3文 字目の「Z」の上端及び7文字目の「L」と「A」の下端は、それぞれ結 合し、3文字目及び4文字目の「Z」は、両文字の左下が前下方に鋭く突 尖しているほか、やや縦長の太文字で表されることによって、デザイン化\nされている。 引用商標は、「GODZILLA」と、8文字の欧文字から成る。被告 が引用した引用商標の文字は、標準文字であって、デザイン化されていな いが、実際には、様々な書体で使用されている。 本件商標と引用商標の外観とを対比すると、いずれも8文字の欧文字か らなり、語頭の「G」と語尾の5文字「ZILLA」を共通にする。2文 字目において、本件商標は「U」から成るのに対し、引用商標は「O」か ら成るが、本件商標において「U」と3文字目の「Z」の上端は結合し、 やや縦長の太文字で表されているから、見誤るおそれがある。もっとも、\n本件商標と引用商標は、3文字目において相違するほか、本件商標は前記 のとおりデザイン化され、全体的に外観上まとまりよく表されている。\nそうすると、本件商標と引用商標とは、外観において相紛らわしい点を 含むものということができる。
イ 称呼 本件商標の語頭の2文字「GU」は、ローマ字の表記に従って発音すれ\nば「グ」と称呼され、我が国において、なじみのある「GUM」などの英 単語と同様に発音すれば「ガ」と称呼される。したがって、本件商標は、 「グジラ」又は「ガジラ」と称呼され、語頭音は「グ」と「ガ」の中間音 としても称呼されるものである。
・・・
ウ 観念 本件商標からは特定の観念が生じず、引用商標からは怪獣映画に登場す る怪獣「ゴジラ」との観念が生じる。
エ 本件商標と引用商標の類似性
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼において相紛らわしいも のであって、外観においても相紛らわしい点を含むことから、類似性の程 度は高いものということができる。

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令和5(行ケ)10038  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年10月12日  知的財産高等裁判所

 43類「飲食物の提供等」について、商標「athlete Chiffon」は識別力なしとした審決が維持されました。理由は、本件商標は「運動選手向けのシフォンケーキ」程度の意味合いを認識、理解させるので、役務の質(内容)を表示したものに過ぎないというものです。\n

  本願商標は、「athlete Chiffon」の文字を標準文字で表\nしてなるところ、その構成中の「athlete」の文字は、各種英和辞典\n(乙1〜4)により、「運動選手。スポーツ選手。アスリート。」等の意味 を有するものとして掲載され、その表音を片仮名で表\した「アスリート」の 文字は、国語辞典(乙5)に、「運動選手」を意味するものとして掲載され ている。また、その構成中の「Chiffon」の文字は、各種英和辞典(乙\n1,6)に「シフォン(絹、ナイロンの透けるような布)」「絹またはナイ ロンの軽くて柔らかい織物」を示す名詞や、「軽くてふんわりした。」「〔ケ ーキなどが〕軽くてフワフワした」等の意味を有する形容詞として挙げられ る「chiffon」に由来するものであり、また、その表音を片仮名で表\ した「シフォン」の文字は、国語辞典(乙7)に、「うすくやわらかい絹織 物」との意味の他、複合語として「シフォンケーキ(chiffon ca ke)」(たまごの白身をよく泡立てて加えた、ふんわりして口どけのいい スポンジケーキ。(用例)「紅茶―」)」が掲載されている。これらは、い\nずれも、平易な単語として一般に親しまれているものである。
(3) 各種ウェブサイトや新聞記事(甲4〜9、乙8〜59)によれば、菓子や パン類を含む飲食物や、各種の商品又は役務について、運動選手向けである という商品又は役務の種類を表すものとして「アスリート」「athlet\ne」(欧文字は語頭もしくは全体が大文字のものを含む。以下同じ。)の文 字を語頭に配した「アスリートケーキ」「アスリートパンケーキ」等の語が、 広く使用されている実情が認められる。そうすると、当該「アスリート」の 部分は、後半に続く商品又は役務が「運動選手向け」であることを示すもの として取引者、需要者に認識されるものといえる。 この点、原告は、「athlete」の語からは、「元気」「頑丈」「健 康」等の優れたイメージが想起され、「アスリート」の文字を語頭に配した 商品において、需要者として、運動選手以外の人も想定される旨主張する。
しかし、標章中の「アスリート」「athlete」が取引者・需要者に 「運動選手向け」の商品又は役務を示すものとして認識されるからといって、 その実際の需要者として運動選手のみが想定されることになるものではな く、両者は次元の異なる問題である。 また、原告が援用する「アスリート」「athlete」を含む商標登録 例又は使用例(甲22、30〜54、65〜69)も、上記の認定(語頭の 「アスリート」「athlete」の語は後半に続く商品又は役務が「運動 選手向け」であることを示すものとして取引者、需要者に認識されること) を妨げるものではない。
(4) 各種ウェブサイトや新聞記事(甲10〜12、14、75、乙60〜10 0)において、「シフォン」「chiffon」が「シフォンケーキ」の略 であることを前提に、語頭に、その提供対象を表す語を配した例(「お子様\nシフォン」「お一人さまシフォン」等)、原材料、味を表す語を配した例(「バ\nナナシフォン」「チョコシフォン」等)、行事等の名称を表す語を配した例\n(「バレンタインシフォン」「ひなまつりシフォン」等)が広く使用されて いることが認められる。なお、前掲乙8では、パンと菓子の教室のメニュー で、「アスリートシフォン」というシフォンケーキが提供されている。また、 各種ウェブサイトや新聞記事(甲75,79,80、乙101〜130)に よれば、シフォンケーキ専門の飲食店や店舗の店名に「シフォン」「chi ffon」が用いられていることが認められる。 そうすると、「シフォン」「chiffon」の語頭に、提供対象や原材 料、味を表す語が配された場合、語頭の部分は、後半に続く「シフォン(シ\nフォンケーキの略称)」の種類、内容を表すものであると容易に理解される\nとみるのが相当である。 この点、原告は、多数の商標登録例やグーグルで検索された実例から、飲 食物を販売又は提供する業界でも「Chiffon」がシフォンケーキを意 味しない例が多数存在する旨主張する。 しかし、「chiffon」を含む商標又は店名を使用してシフォンケー キ以外の飲食物を提供している実例があるからといって、飲食物の提供に係 る取引者、需要者の多くが、「chiffon」をシフォンケーキと認識す ることに変わりはないのであって(この認定を覆す反証としては不十分であ\nる。)、原告の主張は上記認定判断を左右するものではない。
(5) 以上によれば、前半に「athlete」の文字と、後半に「Chiff on」の文字とを表し組み合わせた「athlete Chiffon」と の文字からなる本願商標は、これに接する取引者、需要者に、「運動選手向 けのシフォンケーキ」程度の意味合いを認識、理解させるものであるから、 これをその指定役務中、「運動選手向けのシフォンケーキの提供」に使用し ても、これに接する取引者、需要者に、当該役務において提供される飲食物 が運動選手向けのシフォンケーキであること、すなわち、役務の質(内容) を表示したものとして認識させるにとどまり、役務の質(内容)を普通に用\nいられる方法で表示する標章のみからなる商標といえるから、商標法3条1\n項3号に該当するといわざるを得ず、これと同旨の本件審決の判断に誤りは ない。
なお、原告の前記第3の1(1)ウの主張(「athlete Chiffo n」という名の実際の店でシフォンケーキ以外のスイーツも取り扱われ、ア スリートの顧客は4分の1程度であるなど)は、上記判断を左右するもので はない。

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令和5(行ケ)1004 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年9月28日  知的財産高等裁判所

指定商品・役務「産業用ロボット並びにその部品及び付属品」、「荷役用ロボットの貸与など」の商標「ラース/RaaS」は識別力がない(商3条1項3号)、または品質誤認が生ずる(商4条1項16号)とした審決が維持されました。

そして、証拠(乙1〜21)及び弁論の全趣旨によれば、下段の「RaaS」 の欧文字は、ロボット・アズ・ア・サービス(「Robot as a S ervice」又は「Robotics as a Service」)の 略で、「ロボットをサービスとして提供・利用することができるサービスで あり、ロボット本体やロボットを制御するシステムを自社でつくり運用する のではなく、ロボット本体をレンタルし、クラウド上にある制御システムを 利用するしくみ」を意味するものとして、上段の「ラース」の文字はその読 み方として一般に用いられていること、このような意味における「ロボッ ト・アズ・ア・サービス(RaaS)」の概念は、本願の指定商品及び指定 役務に係る物流業界、製造業界、金属加工業界、食品加工業界を含む産業界 において注目を集め、実際に、一部の業界において、「RaaS(ラース)」 と称されてロボットが提供(貸与)されていることが認められる。 そして、本願商標は、上段に「ラース」の片仮名を、下段に「RaaS」 の欧文字を二段に表してなるものであるが、特に図案化がされているもので\nもなく、普通に用いられる方法で表示されたものである。\n
(3) そうすると、「RaaS」の欧文字及びその読み方を表した「ラース」\nの片仮名を二段に表したにすぎない本願商標に接した取引者、需要者は、\n「ロボットをサービスとして提供・利用することができるサービスのための ロボット並びにその部品及び附属品」及び「ロボットをサービスとして提 供・利用することができるサービスのためのロボットの貸与」を意味するも のと理解し、本願の指定商品及び指定役務との関係においては、本願商標は、 商品の品質、用途及び役務の質、提供の用に供する物、提供の方法を表した\nものと認識するにとどまるというべきである。 よって、本願商標は、商品の品質、用途及び役務の質、提供の用に供す る物、提供の方法を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標\nであるから、商標法3条1項3号に該当する。
(4) これに対し、原告は、「RaaS」自体に特定の意味がなく、「RaaS」 から商品又は役務の特徴等を認識できないと主張する。 しかしながら、前記のとおり、本願商標を構成する「RaaS」、「ラー\nス」の文字は、ロボット・アズ・ア・サービス(ロボットをサービスとして 提供・利用することができるサービス)を意味するものとして用いられてい ること、このような意味における「RaaS(ロボット・アズ・ア・サービ ス)」の概念は、本願の指定商品及び指定役務に係る物流業界、製造業界、 金属加工業界、食品加工業界においても注目を集めていることが認められる のであって、「RaaS」が頭文字の集合体であるからといって、それ自体 から特定の意味を認識させないとはいえない。

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令和5(行ケ)10032  商標登録取消決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年8月31日  知的財産高等裁判所

 図形商標について異議申立で類似と判断されました。知財高裁もこれを支持しました。引用商標は、著名なニコちゃんマークです。判決文中に本件商標が提示されています。\n

3 本件商標と引用商標の対比
本件商標と引用商標の外観は、いずれも、黄色の円の中央上部に、黒色の縦 長な楕円形の点を上下左右2個ずつ合計4個配置して、人の目のように描き、 その下方に両端を上向きにした黒色の円弧を人の口のように描いた図柄であり、 4つ目の人の顔を、鼻、耳、髪等を捨象した黄色一色のシンプルな円形と点状 の目及び円弧状の口だけで表現したものである点において外観上共通している。\nなお、観念及び称呼を比較することはできない。 細部をみると、原告の主張する(前記第3の1(1)ア〜ウ)ように、目の形、 位置、口の線の曲がり具合、位置、線の太さ、口元のえくぼを想起させる線の 有無が異なるが、これらの相違は、本件商標と引用商標を並べて対比的に観察 してようやく認識できる程度のものにすぎない。現実の取引の場面においては、 取引者・需要者は、自己の記憶にある商標に基づいて商品・役務を選択するの であるから、時と場所を異にする離隔的観察を基本とすべきであり、このよう な観点からみる限り、本件取消指定商品の取引者・需要者が、その出所を識別 できるほどの相違とはいえない。 なお、引用商標の顔の表情はほほえんでいるように見えるのに対し、本件商\n標の顔の表情はわずかにほほえんでいるようにも、とり澄ましているようにも\n見える点で異なる印象を与える可能性はあるが、相対的、主観的な相違にすぎ\nず、上記の判断を左右するものではない。 そうすると、本件商標は、引用商標と類似するものと認められる。
4 原告のその他の主張に対する判断
(1) 原告は、本件商標及び引用商標は世界的に著名なスマイルマークをベース とするものであり、1)その基本構成は出所識別力・独占適応性を欠く表\示で あるから、原告主張の相違点をもって類似しないというべきである、2)スマ イルマークは数多くのバリエーションが生まれているから、需要者及び取引 者はわずかな差違であっても違いを認識し、出所混同を生ずるおそれはない 旨主張する。 しかし、本件商標と引用商標がいわゆるスマイルマークをベースとする ものだとすると、むしろ、これに接した取引者・需要者は、「4つ目のスマ イル」という本件商標と引用商標の共通点をより強く認識すると考えるのが 自然であり、それ以外のわずかな違いが注意をひくなどと解すべき根拠はな い。原告の主張は採用できない。
(2) 原告は、異議申立人との交渉経緯や本件商標及び引用商標の登録出願の経\n緯等を主張して、本件商標の取消は商標法の目的に反する旨主張する。 しかし、原告主張の経緯があるとしても、引用商標が商標法4条1項1 1号所定の先願に係る他人の登録商標としての適格を失うものではなく、現 在も商標として登録されている以上、これと類似している商標であれば同号 に該当し得るのであって、原告の主張は採用できない。

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令和4(行ケ)10035 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年7月19日  知的財産高等裁判所

 ニュースで取り上げられた「GUZZILLA」vs「GODZILLA」の商標登録無効事件について判決文がアップされました。  本件は、下記のうち、新規出願をして登録となった商標(6143667号)の無効審判(無効2019−890064)に関する審決取消訴訟事件です。詳細はnoteにて記載しているので参照してください。

◆令4(行ケ)10035号(GUZZILLA)事件まとめ


以上によれば、引用商標は周知著名であって、「ゴジラ」を欧文字表記したにとどまらない点を含め、その独創性の程度も高いというべきであ\nる。
(4) 商品の関連性の程度、取引者及び需要者の共通性
ア 商品の関連性の程度
本件商標の指定商品は、第7類「パワーショベル用の破砕機・切断機・ 掴み機・穿孔機等のアタッチメント」であり、土木機械の一種である動力 ショベル用の附属装置(アッタッチメント)であって、示された破砕、切 断、掴み、穿孔等の土木作業の用途によって交換される動力ショベル専 用の装置であり、土木に関する専門的・職業的な分野において使用され る機械器具である。
これに対し、被告の主な業務は、映画の制作・配給、演劇の制作・興行、 不動産経営等のほか、キャラクター商品等の企画・制作・販売・賃貸、著 作権・商品化権・商標権その他の知的財産権の取得・使用・利用許諾その 他の管理であり(甲159)、多角化している。被告は、百社近くの企業 に対し、引用商標の使用を許諾しているところ、その対象商品は、人形や ぬいぐるみなどの玩具、文房具、衣料品、食料品、雑貨、遊戯具等、多岐 にわたるほか、宣伝広告等にも使用を許諾している(甲12、83、85 〜102、169〜181(枝番を含む。))。 また、被告は、平成17年以降、複数の大手ゼネコンから、工事現場や 工事中の壁面に引用商標を含むゴジラの表示やロゴ等を使用することにつき許諾を求められたり、あるいは実際にその許諾をするなど、本件商\n標の指定商品である作業現場で使用される動力ショベルのアタッチメン トと同じか、あるいはこれに近い分野である、産廃業、解体業及び建築業 等について引用商標の使用許諾を行うなどしてきた(甲195〜212、 乙1、2、6〜17(枝番を含む。))。 その中には、住宅やビルの解体を手掛ける業者において、「ゴジラvs コング(GODZILLA vs KONG)」として、「GODZIL LA」を「破壊神」としてタイアップCMを放送したり、クレーン車が建 築物を運搬する場面が映画「ゴジラvsコング(GODZILLA v s KONG)」の映像とともにCMとして放送するなどの企画もあった(乙6〜9、12、13)。
被告が引用商標の使用を許諾した商品等のうち、玩具、文房具、衣料 品、食料品、雑貨等については、日常生活で、一般消費者によって使用さ れる物であるから、性質、用途及び目的における関連性の程度は高くは ないものの、被告は、産廃業、解体業及び建築業等の業種にも引用商標の 使用を許諾するなどしているところ、これらは、本件商標の指定商品の 取引者・需要者と同じかこれと近い分野ないし業態であり、本件商標の 指定商品と共通する取引者・需要者も一定数存するものというべきであ る。 よって、本件商標の指定商品は、被告の業務に係る商品等と比較した場 合、性質、用途又は目的において一定の関連性を有するものが含まれて いるというべきである。
イ 取引者及び需要者の共通性
本件商標の指定商品は、第7類「パワーショベル用の破砕機・切断機・ 掴み機・穿孔機等のアタッチメント」であり、土木機械の一種である動力 ショベル用の附属装置(アタッチメント)であって、示された破砕、切 断、掴み、穿孔等の土木作業の用途によって交換される動力ショベル専 用の装置であり、土木に関する専門的・職業的な分野において使用され る機械器具である。なお、土木に関する機械器具においても、レンタルが 行われているものであるから(乙33、34、41〜49)、その取引者 は、これらの器具の製造販売や小売り、レンタル等を行う者である。 また、被告が引用商標の使用を許諾した玩具、雑貨、遊戯具等について は、その需要者は一般消費者であり、その取引者は、これらの商品の製造 販売や小売り等を行う者であるが、被告が引用商標の使用を許諾した産 廃業、解体業及び建築業等については、本件商標の指定商品の取引者・需 要者と同じかこれと近い分野ないし業態であり、本件商標の指定商品の 取引者及び需要者の中には、被告から使用許諾を受けて事業を営む者の 業務に係る商品等の取引者及び需要者と共通する者が含まれる。そして、 商品の性質、用途又は目的を考慮しても、これら共通する取引者及び需 要者は、商品の性能や品質のみを重視するとまでいうことはできず、使用許諾関係も含む商品等に付された商標に表\れる業務上の信用をも考慮して取引を行うというべきである。
(5) 出所混同のおそれ
以上のとおり、「混同を生ずるおそれ」の有無を判断するに当たっての 各事情について、取引の実情などに照らして考慮すれば、本件商標の指定 商品に含まれる専門的・職業的な分野において使用される機械器具と、被 告の業務にかかる商品等との関連性の程度が非常に高いとはいえない。 しかし、本件商標と引用商標とは、称呼において相紛らわしいものであ って、外観においても相紛らわしい点を含むものであることから、その類 似性の程度は高く、引用商標は周知著名であって、その独創性の程度も高 い。さらに、被告の業務は多角化しており、本件商標の指定商品に含まれ る商品の中には、被告の使用許諾に係る商品及び業務等と比較した場合、 性質、用途又は目的において一定の関連性を有するものが含まれる。加え て、これらの商品の取引者及び需要者と、被告の業務に係る商品の取引者 及び需要者とは共通し、これらの取引者及び需要者は、取引の際に、商品 の性能や品質のみではなく、商品等に付された商標に表\れる業務上の信用 をも考慮して取引を行うものということができる。 そうすると、本件商標の指定商品についても、本件商標を使用したとき に、当該商品が被告又は被告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊 密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあ\nるものが含まれるというべきである。 よって、本件商標は、法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれ」 のある商標として、法46条1項の規定により無効とされるべきである。
(6) 原告の主張に対する補足的判断
ア 取消事由1(引用商標が周知著名な商標に当たるとした認定及びこれ に基づく判断の誤り)について
原告は、本件商標の指定商品は「第7類 パワーショベル用の破砕機・ 切断機・掴み機・穿孔機等のアタッチメント」であるから、その取引者及 び需要者は、土木機械の一種である動力ショベル用の附属装置(アタッ チメント)を使用する土木関連分野の業務に従事する専門業者及び当該 機械器具の製造販売やリースを行う者であり、特殊特定分野の業務に従 事する専門業者であるところ、被告及びそのライセンシーは、引用商標 を使用して本件商標の指定商品である「第7類 パワーショベル用の破 砕機・切断機・掴み機・穿孔機等のアタッチメント」を製造販売しておら ず、引用商標が日本国内の広範囲にわたって本件商標の指定商品を使用 する土木関連分野の業務に従事する専門業者及び当該機械器具の製造販 売やリースを行う者の間に知られるようになったということはできない から、本件審決の判断は誤りである旨を主張する。 しかし、引用商標の周知著名性についての認定及び判断は前記(3)のと おりであり、これが本件商標の指定商品の取引者及び需要者について変 わるところがあるものとは認められず、引用商標は周知著名であるとい うことができる。

◆判決本文

関連事件です。
別訴

◆令和1(行ケ)10167

不競法の侵害訴訟事件 1審

◆令和1(ワ)26105
控訴審

◆令和4(ネ)10063

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令和2(ワ)4272等  商標権侵害差止等請求事件、不正競争行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年12月5日  大阪地方裁判所

 漏れていたのでアップします。大阪地裁26部は、5年の除斥期間経過後は、11号違反については特段の理由が無い限り、無効の抗弁ができないとして、一部請求1000万円を認めました。

しかも、証拠(甲4、35〜44)によれば、被告は、平成27年頃か ら、被告が独自に海外工場に製造させて輸入販売する「LEADER BIKE」が旧 リーダー社製であるかのように装うばかりでなく、「正規代理店」を称して 旧リーダー社との本件販売店契約が存続しているかのように装っていたこと が認められ、原告が製造した旧リーダー社の正規品と酷似した類似商品を旧 リーダー社や原告ないし新リーダー社の許諾なく製造し無断で被告標章を付 して販売し続けた結果、そのような情を知らない需要者において被告標章が 旧リーダー社の商品を表示するものと認識され続けているにすぎないから、到底、被告が本件商標を含む「LEADER」ブランドに関する権利が正当に帰属 すべき者であるとはいえない。
(2) また、被告は、原告が旧リーダー社の破産に乗じて本件商標権を獲得し たことを奇貨として、被告を排除して被告が確立した日本国内の「LEADER」 ブランドを独占的に使用し類似商品を販売することによって利益を得ようと する不当な目的で本件商標権を行使していると主張する。 しかしながら、前記前提事実のとおり、原告は、旧リーダー社の商品の製 造元であったのであり、本件商標権や旧リーダー社の商品のブランド力を利 用して自己の製造する商品の販売を継続するために、旧リーダー社等の破産 手続において管財人を通じて米国の裁判所の許可を受けて本件商標権等を取 得することは、何ら不当であるとはいえない。また、前記(1)のとおり、被 告は、原告が本件商標権を取得する以前から、旧リーダー社の商品ではな く、旧リーダー社に無断で被告標章を付した類似商品を販売し続けており、 証拠(甲25)によれば、原告が本件商標権の移転登録を受けた後も、第2 事件被告の取引先に対し、被告が「LEADER BIKES」製品の輸入総代理店であ ると称して通知書を送付しており、需要者をして被告の販売する被告標章を 付した商品が商標権者の許諾を受けた商品であるかのように誤認させる行動 をしているとの状況のもとでは、原告が被告に対し、本件商標権を行使する ことは、むしろ商標法の趣旨に即した正当な目的に基づくものといえる。
(3) 以上によれば、原告の被告に対する本件商標権の行使が、権利が正当に 帰属すべき者に対する不当な目的による権利行使として権利濫用に当たると はいえない。
  ・・・
商標法47条1項は、商標登録が同法4条1項11号の規定に違反してさ れたときは、商標権の設定登録の日から5年の除斥期間を経過した後はその 商標登録についての無効審判を請求することができない旨を定めており、そ の趣旨は、同号の規定に違反する商標登録は無効とされるべきものである が、商標登録の無効審判が請求されることなく除斥期間が経過したときは、 商標登録がされたことにより生じた既存の継続的な状態を保護するために、 商標登録の有効性を争い得ないものとしたことにあると解される(最高裁平 成15年(行ヒ)第353号同17年7月11日第二小法廷判決・裁判集民 事217号317頁参照)。そして、商標法39条において準用される特許 法104条の3第1項の規定(以下「本件規定」という。)によれば、商標 権侵害訴訟において、商標登録が無効審判により無効にされるべきものと認 められるときは、商標権者は相手方に対しその権利を行使することができな いとされているところ、上記のとおり商標権の設定登録の日から5年を経過 した後は商標法47条1項の規定により同法4条1項11号該当を理由とす る商標登録の無効審判を請求することができないのであるから、この無効審 判が請求されないまま上記の期間を経過した後に商標権侵害訴訟の相手方が 商標登録の無効理由の存在を主張しても、同訴訟において商標登録が無効審 判により無効にされるべきものと認める余地はない。また、上記の期間経過 後であっても商標権侵害訴訟において商標法4条1項11号該当を理由とし て本件規定に係る抗弁を主張し得ることとすると、商標権者は、商標権侵害 訴訟を提起しても、相手方からそのような抗弁を主張されることによって自 らの権利を行使することができなくなり、商標登録がされたことによる既存 の継続的な状態を保護するものとした同法47条1項の上記趣旨が没却され ることとなる。
そうすると、商標法4条1項11号該当を理由とする商標登録の無効審判 が請求されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後において は、商標権侵害訴訟の相手方は、その登録商標が同号に該当することによる 商標登録の無効理由の存在をもって、本件規定に係る抗弁を主張することが 許されないと解するのが相当である(最高裁平成27年(受)第1876号 同29年2月28日第三小法廷判決・民集71巻2号221頁参照)。 同様に、上記の期間経過後であっても商標権侵害訴訟において、登録商標 が同号に該当するものとして何人に対しても商標の使用の差止め等を求める ことが権利の濫用に当たり許されないものと解すると、同法47条1項の趣 旨が没却されることになるから、同法4条1項11号該当を理由とする商標 登録の無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過し た後においては、商標権侵害訴訟の相手方が同項11号該当性に係る「他人 の登録商標」の商標権者であるなどの特段の事情がない限り、その登録商標 が同号に該当することによる商標登録の無効理由の存在をもって、権利濫用 に係る抗弁を主張することが許されないと解するのが相当である。

◆判決本文

なお本件商標、および類似すると主張した商標は、いずれも図形商標(以下参照)です。 仮に無効抗弁が認められたとしても、類似するとの判断になったかは、また別です。

◆本件商標

◆4558386号商標

◆2387164号商標

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令和5(行ケ)10005 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年7月12日  知的財産高等裁判所

標準文字「KAZE」と、Aを図案化した「KAZE」が類似するかについて、知財高裁は類似するとした審決を維持しました。判決の最後に本件商標が掲載されています。

(3) 本願商標の中段の緑色の図形部分は、別紙1記載のとおり、頂点から左右 斜め下方向に同じ長さの二本の直線が二等辺三角形状に伸びるという欧文字 「A」の形状の特徴を備えており、両隣の「K」及び「ZE」の欧文字と、 同じような大きさ、同じような間隔で一連に表されていることからも、「A」\nの文字をデザイン化したものと認識されるから、本願商標に接した取引者、 需要者は、中段の構成部分は、全体として「KAZE」の欧文字を表\したも のと認識するといえる。
しかるところ、我が国においては、欧文字表記をローマ字読み又は英語風\nの読みで称呼するのが一般的であり、「KAZE」の欧文字は、既成の親しま れた英単語でもなく、ローマ字読みで容易に称呼できるものであり、「カゼ」 と読むのが最も自然というべきであるから、当該文字部分からは、「カゼ」の 称呼が生じる。そして、日本語において「カゼ」と称呼する成語から「空気 の流れ」を意味する「風」又は「感冒」を意味する「風邪」(広辞苑 第七版) が一般に想起されるから、「KAZE」の欧文字からは「風(空気の流れ)」 及び「風邪(感冒)」の観念が生じるものというべきである。 加えて、本願商標の構成態様においては、「KAZE」の欧文字部分は、他\nの構成文字に比して大きく顕著に表\され、平行線の間に配されることにより、 視覚的に際立った印象を与えるものであるから、看者の目をひく部分であり、 取引者、需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与え るものと認められる。 そうすると、本願商標から「KAZE」の欧文字部分を要部として抽出し、 これと引用商標とを比較して商標そのものの類否を判断することは許される というべきである。これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
(4) これに対し、原告は、1)本願商標の中段部分の「緑色の麻葉文様図形」は、 格別特異な態様で書されており、また、当該図形が欧文字「A」をデザイン 化したものと容易に看取されることはなく、本願商標の中段部分の表示から\n「KAZE」なる欧文字をそもそも認識することはできない、2)仮に本願商 標の中段部分の表示から「KAZE」なる欧文字を認識することはできると\nしても、本願商標の上段部分の「−PRINTABLE HEMP WEA R−」なる表示は、本願の指定商品「被服」との関係において、原告のブラ\nンドである「PRINTABLE HEMP WEAR」シリーズの商品で あることを認識させるものであって、強い識別機能を有し、また、本願商標\nの構成中、最も強く支配的な印象を与える部分は、中段部分のうちの「緑色\nの麻葉文様図形」であることからすると、「KAZE」なる欧文字(中段部分) が、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与 えるものとはいえないとして、本願商標から「KAZE」を要部として抽出 することはできない旨主張する。
しかしながら、1)については、前記(3)で説示したとおり、本願商標の中段 の緑色の図形部分は「A」の文字をデザイン化したものと認識されるから、 取引者、需要者は、中段の構成部分を全体として「KAZE」の欧文字を表\ したものと認識するといえる。
2)については、「−PRINTABLE HEMP WEAR−」の構成部\n分は、別紙1記載のとおり、外観上、上下2本の平行線の間に配された「K AZE」の欧文字部分よりも小さく表示されており、取引者、需要者に与え\nる印象は、「KAZE」の欧文字部分よりも強いとはいえない。 また、本願の指定商品「被服」の需要者である一般消費者において、上記 構成部分が原告のブランドである「PRINTABLE HEMP WEA R」を示すものとして広く認識されていることを認めるに足りる証拠はない し、仮にこれが認められるとしても、本願商標の構成態様に照らすと、「KA\nZE」の欧文字部分が取引者、需要者に対して商品の出所識別機能として強\nく支配的な印象を与えるとの上記認定を左右するものではない。 さらに、「KAZE」の欧文字中の「A」の文字をデザイン化した部分のみ が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるということもできない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。

◆判決本文

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令和5(行ケ)10010 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年7月6日  知的財産高等裁判所

「リフナビ大阪」が「リフナビ」(リを図案化)と類似するとした審決が維持されました。

以上のとおり、本願商標の構成中の「リフナビ」の文字部分は、役務の出所識別\n標識として強く支配的な印象を与えるものであると認められる一方、本願商標の構\n成中の「大阪」の文字部分からは、出所識別標識としての称呼及び観念が生じない から、本願商標については、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取\n引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。 したがって、本願商標については、その構成中の「リフナビ」の文字部分を抽出し、\n当該文字部分だけを他の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるとい うべきであり、本願商標の要部は、「リフナビ」の文字部分であると認めるのが相 当である。
・・・
 また、引用商標の上側先頭左側部分が原告主張に係るピンマーク(甲25)のよ うな形状(白抜きの円を内包した水滴状の形状)に図案化されたものであり、上側 先頭右側部分が文字(これが文字の全部(片仮名の「ノ」)であると認識されるか、 一部(片仮名の「ソ」又は「リ」の各右側部分)であると認識されるかについては、\n当事者間に争いがある。)を構成する部分であると認識されることも、当事者間に\n争いがない。
そこで、引用商標の上側先頭左側部分が文字(片仮名の「ソ」又は「リ」)を構\ 成する部分であると認識されるか否かにつき検討するに、1)証拠(乙8、24ない し48)及び弁論の全趣旨によると、商取引においては、文字の全部又は一部を図 案化して表示することが広く行われ、その中でも、片仮名の「リ」又は平仮名の\n「り」の各左側部分が図案化されている例や引用商標の上側先頭左側部分に類似す る形状の図形(原告主張に係るピンマークのような形状の図形)が文字の全部又は 一部として使用されている例が多数存在するものと認められること、2)引用商標の 上側先頭部分が一つの文字を表しているものと認識すると、上側部分において、片\n仮名の「ソ」(原告主張に係るもの)又は「リ」(被告主張に係るもの)、「フ」、\n「ナ」及び「ビ」の4文字が同じような高さ及び幅をもって均等に配置されている ように見え、自然であるのに対し、上側先頭左側部分が文字の一部でなく、上側先 頭右側部分のみが文字(片仮名の「ノ」)を表しているものと認識すると、上側先\n頭左側部分と上側先頭右側部分とが接近しているため、上側その余の部分のうち上 側先頭右側部分のみが縦長(細幅)で窮屈に配置されているように見え、上側その 余の部分において、片仮名の「ノ」、「フ」、「ナ」及び「ビ」の4文字の配置が 全体として不自然に見えることからすると、引用商標の上側部分については、上側 先頭右側部分と原告主張に係るピンマークのように図案化された上側先頭左側部分 とが一つの文字を構成し、「フナビ」の文字部分と併せ、全体として4つの文字か\nらなるものと認識されると認めるのが相当である。 そして、引用商標の上側先頭左側部分は、そのうちのとがった部分が略鉛直方向 を向き、真上から真下に向かって縦に下ろしたように配されており、片仮名の「ソ」\nの文字の左側部分(通常は左上方向から右下方向に配されるもの)ではなく、片仮 名の「リ」の文字の左側部分に近い形状をしていると認められることからすると、 大学でノートを取る観点から片仮名の「ソ」と「リ」を形がよく似た字の例として\n挙げるウェブサイト(甲34)及び校正の観点から片仮名の「ソ」と「リ」を字形\nの似た文字の例として挙げるウェブサイト(甲35)が存在することを考慮しても、 引用商標の上側先頭部分は、片仮名の「リ」の文字を表すものと認識されると認め\nるのが相当である。したがって、引用商標の上側部分は、「リフナビ」の文字を表\nすものと認識されるところ、当該部分は、引用商標において出所識別標識としての 機能を強く発揮するものと認められるから、前記(2)にも照らすと、引用商標の要 部は、「リフナビ」の文字部分であるといえる。
イ 原告の主張について
(ア) 原告は、1)文字の一部を図案化して表すことが商取引の実際において行わ\nれているとの事実は、一般的に知られているものではない、2)文字の一部の図案化 が行われていることと図案化された部分が実際に文字の一部であると認識できるこ ととは、次元を異にする問題である、3)文字の一部を図案化したものであることが 分かるのは、当該部分を含む部分の読み方をあらかじめ知っているか、又は前後の 文字を基にした推測が可能であるからであるところ、引用商標においてはそのよう\nにいうことはできないとして、引用商標の上側部分につき、全体として文字を表し\nたものと認識されるとみるのが自然であるとはいえないと主張する。
しかしながら、上記1)については、前記ア(1))において挙示した証拠及び弁論 の全趣旨によると、文字の一部を図案化して表すことが商取引において広く行われ\nているなどの事実は、一般的によく知られているものと優に認めることができる。 また、上記2)及び3)についても、前記アにおいて説示したところに照らすと、具体 的な商標である引用商標の上側部分について、これに接した取引者、需用者は、そ の読み方をあらかじめ知らなくても、これが「リフナビ」の文字を表すものと認識\nすると認めるのが相当である(なお、この点は、引用商標において図案化された部 分(上側先頭左側部分)が文字部分(上側部分)の途中(文字と文字の間)ではな く先頭に配置されていること(当該図案化された部分の前後双方の文字による推測 が働かないこと)により、結論が左右されるものではない。)。 (イ) 原告は、ピンマークは記号として取引者、需用者に広く認識されているご く一般的なものであり、需用者が一見すれば、地図上の位置を示す記号であると認 識できるものであるから、取引者、需用者において、引用商標の上側先頭左側部分 を文字の一部と認識するのは極めて例外的な場合であると主張する。 確かに、前記アのとおり、引用商標の上側先頭左側部分は、原告主張に係るピン マークのような形状に図案化されたものであるが、当該部分は、地図上に描かれた ものではないし、また、前記アにおいて説示したところにも照らすと、引用商標に 接した取引者、需用者が上側先頭左側部分を文字の一部を図案化したものであると 認識するのは普通のことであるといえ、そのように認識するのが極めて例外的な場 合に限られると認めることはできない。 また、原告は、引用商標の上側先頭左側部分(ピンマーク)は線でない形状のも のであるから、上側先頭部分が一つの文字を表すものであるとすると、当該文字は\n線ですらない形状の部分を含むことになるとも主張するが、上記説示したとおり、 引用商標に接した取引者、需用者は、上側先頭左側部分につき、これが文字の一部 を図案化したものであると普通に認識するといえるから、上側先頭左側部分が原告 主張に係るピンマークのような形状に図案化されていることをもって、上側先頭部 分が線ですらない部分を含むことになるということはできない。
(ウ) 原告は、引用商標の上側先頭左側部分の色は上側その余の部分の色よりも 薄くなっており、引用商標に接した需用者は上側先頭左側部分と上側その余の部分 とが別々の構成のものであるとして両者を分離し、上側その余の部分だけが文字を\n表すものと認識するのであり、そのことは引用商標の実際の使用形態によっても裏\n付けられていると主張する。 しかしながら、引用商標を子細に観察しても、上側先頭左側部分の色は、上側そ の余の部分の色と比較して、ほぼ同じ濃さであるか(乙2)、かすかに薄い(甲1 2)としか見て取ることはできず、迅速を尊ぶ商取引において、引用商標に接した 取引者、需用者が上側先頭左側部分と上側その余の部分とを別々の構成のものであ\nるとしてこれらを分離し、上側その余の部分だけが文字を表すものと認識するほど\nに両者の色の濃さに有意な相違があるということはできない。なお、原告は、甲2 6に見られる引用商標の実際の使用形態(上側先頭左側部分及び下側部分並びに上 側部分の右肩に付された「○R 」のマークが緑色で表され、上側その余の部分が黒色\nで表されたもの)も上記主張を裏付けると主張するが、登録商標の範囲は、願書に\n記載した商標に基づいて定めなければならないところ(商標法27条1項)、願書 に記載された引用商標(甲12、乙2)においては、甲26に見られる色分けはさ れていないのであるから、引用商標の実際の使用の場面において当該色分けがされ ていることを根拠に、引用商標に接した取引者、需用者が上側先頭左側部分と上側 その余の部分とを別々の構成のものであるとしてこれらを分離し、上側その余の部\n分だけが文字を表すものと認識すると認めることはできない。\n
(エ) 原告は、引用商標の上側先頭右側部分とほとんど同じ角度及び長さで表記\nされたものが片仮名の「ノ」の文字を示すと認識させる登録商標(甲27)が存在 すると主張する。 しかしながら、原告が主張する事実は、本件における引用商標の上側先頭右側部 分がどのように認識されるかについての判断を左右するものではない。なお、甲2 7に記載された登録商標のうち仮名文字部分の最右端の部分(商標公報に記載され た称呼によると「ノ」と読まれる部分)と引用商標の上側先頭右側部分とを比較し ても、両者がほとんど同じ角度及び長さで表記されていると見て取ることはできな\nい。
(オ) 原告は、1)片仮名の「ソ」の文字は、片仮名の「リ」の文字と似ていると\n認識されていること、2)引用商標の指定役務の中に第35類「電子計算機・タイプ ライター又はこれらに準ずる事務用機器の操作」があること、3)「ソフ」で始まる\n語が多数存在し、これらは、「リフレーション」、「リフレーン」等よりも一般的 な語であることを根拠に、仮に引用商標の上側先頭左側部分が文字の一部を表すも\nのと認識されるとしても、引用商標を見た需用者は、その上側部分から「ソフトウ\nェア」と「ナビゲーション」の略語である「ソフナビ」の語を想起するとみるのが\n自然であると主張する。
しかしながら、上記1)については、前記アのとおり、引用商標の上側先頭左側部 分は、そのうちのとがった部分が略鉛直方向を向き、真上から真下に向かって縦に 下ろしたように配されており、片仮名の「ソ」の文字の左側部分(通常は左上方向\nから右下方向に配されるもの)ではなく、片仮名の「リ」の文字の左側部分に近い 形状をしていると認められることに照らして、当該主張が引用商標に該当するとは いえない。また、上記2)については、引用商標の指定役務には、「ソフトウェア」\nの語とは余り親和性がないと認められる役務(「リラクゼーションマッサージ」等) も含まれており、引用商標の上側部分のうち先頭の2文字を見た取引者、需用者が 普通に「ソフトウェア」の略語としての「ソ\フ」の語を想起すると認めることはで きない。さらに、上記3)についても、確かに、証拠(甲36)及び弁論の全趣旨に よると、「ソフ」で始まる語(「ソ\フトウェア」、「ソフトカバー」等)が複数存\n在することは認められるが、前記アにおいて説示したところに照らすと、これらの 語が存在することをもって、引用商標の上側部分のうち先頭の2文字を見た取引者、 需用者が普通に「ソフトウェア」の略語としての「ソ\フ」の語を想起すると認める ことはできない。そうすると、大学でノートを取る観点から片仮名の「ソ」と「リ」\nを形がよく似た字の例として挙げるウェブサイト(甲34)及び校正の観点から片 仮名の「ソ」と「リ」を字形の似た文字の例として挙げるウェブサイト(甲35)\nが存在するとしても、引用商標を見た取引者、需用者において、その上側部分から 「ソフトウェア」と「ナビゲーション」の略語である「ソ\フナビ」の語を想起する とみるのが自然であると認めることはできない。

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令和3(ワ)13895 損害賠償等請求事件  商標権  民事訴訟 令和5年4月27日  東京地方裁判所

ビクトリノックスの黒字に白十字を二重の外枠で囲った登録商標についての、商標権侵害訴訟です。東京地裁は約1400万円の支払い(3項侵害で使用料4%)を命じました。

2 争点2(商標法4条1項1号該当事由の有無)について
被告は、本件商標はスイスの国旗と類似するから、商標法4条1項1号に該当 する事由があると主張する。 しかしながら、本件商標は、前記1(2)認定のとおりであるのに対し、スイスの 国旗は、正方形と、その内部(中央)に位置する幅広で白色の十字から成り、正\n方形の内部は、白色である上記十字部分を除いて赤色である。そうすると、本件\n商標及びスイスの国旗は、幅広の十字を内部に有するという点において共通する\nものの、スイスの国旗は、正方形であって白色の外縁部分がなく、内部の十字部\n分を除いた部分が鮮やかな赤色である点において相違するものと認められる。 上記共通点及び相違点の形状及び色彩を踏まえると、本件商標とスイスの国旗 は、中心的かつ全体的構成を占める図形の形状及び色彩において明らかに相違す\nるものであることが認められる。そうすると、本件商標は、スイスの国旗と同一 又は類似の商標に該当するものと認めることはできない。
・・・
(3) 使用料率について
本件商標の実施に対し受けるべき料率を検討するに、前提事実、後掲各証拠 及び弁論の全趣旨によれば、1)経済産業省知的財産政策室「ロイヤルティ料率 データハンドブック」(平成22年)において、商標権におけるロイヤルティ 料率の平均値は2.6%であること(なお、商標分類の18類については、サ ンプル数は0とされている。)(乙32)、2)原告は、長年の間、「WENG ER」ブランドとして世界的に著名なアーミーナイフを製造販売していたが、 現在は同ブランドとして時計やバッグを製造販売し、本件商標を付したかばん 製品を販売していること(甲24ないし27)、3)インターネット上のショッ ピングサイトにおいて、本件商標が付された原告商品(かばん製品)が販売さ れており、原告商品と被告商品とは競合すること(甲16)、以上の事実が認 められる。
そして、商標法38条3項による「受けるべき利益」の算定の基礎となる相 当使用料率は、侵害があったことを前提として合意されるべきものであるから、 通常の料率よりも自ずと高くなることに鑑み、上記認定事実を含め本件に現れ た一切の事情を総合考慮すると、その料率は売上高の4%であると認めるのが 相当である。 なお、被告は、損害不発生の抗弁も主張するが、上記において説示したとこ ろによれば、その主張は、採用の限りではない。
(4) 損害額について
ア 商標法38条3項に基づく損害額
したがって、商標法38条3項に基づく損害額は、次の計算式のとおり、 1254万7659円となる(小数点第一位で四捨五入)。 (計算式) 3億1369万1471円×4%≒1254万7659円
イ 弁護士費用
本件事案の内容、難易度、審理経過及び認容額等に鑑みると、これと相当 因果関係があると認められる弁護士費用相当損害額は、1254万7659 円の1割(小数点第一位で四捨五入)である125万4766円の限度で認 めるのが相当である。
ウ 合計額
以上によれば、本件の損害額は、1380万2425円となる。

◆判決本文

関連事件です。

◆令和2(ネ)10060

本件商標の不使用取消審判の審取です。

◆平成29年(行ケ)10033

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令和5(行ケ)10017  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年6月22日  知的財産高等裁判所

「REIGN」の欧文字及び小さく「TOTAL BODY FUEL」の欧文字を二段表記した商標から、「REIGN」だけを抽出できるのか?、およびデザイン化「I」の違いによる類似性について争われました。知財高裁は、特許庁の抽出できる・類似するとした審決を維持しました。\n

ウ 「I」又は「i」と「!」は、外観が類似していることから、日本国民にとって、「!」の文字から「I」又は「i」を連想して「アイ」又は「イ」と読むことが難しいとはいえないことに加え、前記イの各使用例においては、「!」又は「!」の文字をデザイン化(ただし、「!」の文字であることが容易に読み取れる限度におけるデザイン化である。以下同じ。)したものをもって、「I」又は「i」と読ませることを意図しているものであることが明らかであり、名称等を表すロゴや文字列において、「I」又は「i」に代えて「!」又は「!」の文字をデザイン化したものを用いる手法が一般的に用いられていることからすると、このようなロゴや文字列を見た取引者、需要者は、「!」又は「!」の文字をデザイン化したものをもって、「I」又は「i」と読むものと認識、理解すると認めるのが相当である。
エ そうすると、引用商標である「RE!GN」は、取引者、需要者をして「R EIGN」を意味するものと認識、理解されると認めるのが相当である。
・・
3 本願商標と引用商標の類否
(1) 本願要部(「REIGN」の文字部分)と引用商標とを比較すると、その外観はフォントがやや異なっており本願商標の方が太い文字であること及び3文字目が本願要部では欧文字の「I」であるのに対し、引用商標では「I」の下に「★」を配したもので、「!」の文字をデザイン化したものである点において異なるものの、本願要部と引用商標は、それが表す文字列が同一であること、引用商標の3文字目のデザイン化の程度が著しいとはいえず、欧文字の「I」に近いものであることを考慮すると、そのデザインの差異により見る者に与える印象の差異が大きいということはできず、外観において近似しているというべきである。そして、文字列が同一であって、称呼及び観念が共通することからすると、本願要部と引用商標は、外観において近似しており、また、称呼及び観念を共通にし、同一又は類似の商品又は役務について使用するときは、その商品又は役務の出所について誤認混同が生じるおそれがあるというべきであるから、互いに類似する。\n

◆判決本文
#知財 #訴訟 #商標 #結合商標 #抽出 #分離 #類似 #デザイン化

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令和4(行ケ)10074  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年5月31日  知的財産高等裁判所

商標「UNBRAKO」について、4条1項7号、10号及び19号を理由とする無効審判請求がなされました。審判、知財高裁とも無効理由なしと判断しました。被告は「UNBRAKO」の商品を扱っていましたが、代理店ではありませんでした。原告は、2008年にSPS社から商標権の譲渡を受けたものの、移転登録申請の手続を怠っていました。また、更新手続も怠っていました。\n

(2) 日本国内における引用商標の周知性の有無について
ア 原告主張の引用商標が付された「使用商品」は、「ボルト」であるから、 「使用商品」の需要者は、機械部品メーカー等を含む、工業製品を扱う業 者であると認められる。
イ 前記(1)の認定事実によれば、平成17年から平成19年までの間、「U nbrako」の「六角穴付きボルト」の広告が一定程度、業界誌に掲載 されており、その当時、「Unbrako」の欧文字が工業製品を扱う業者 間でPCCジャパン(当時の商号は「エス・ピー・エスアンブラコ株式会 社」(通称「SPSアンブラコ」))の商標として、一定程度認識されていた ことが認められる。他方で、前記(1)の認定事実によれば、平成20年以降、 本件商標の登録査定時(平成31年4月12日)までの間、「Unbrak o」又は「アンブラコ」が原告又はPCCジャパンの「ボルト」等の商品 を表示するものとして使用されていたことが証拠上認められるのは、「金\n属産業新聞」のあいさつ広告(前記(1)イ(シ)、(ス))にとどまり、他に引 用商標が原告又はPCCジャパンの業務に係る商品「ボルト」を表示する\nものとして使用された事実を認めるに足りる証拠はない。
以上によれば、引用商標は、本件商標の登録出願時(平成30年10月 20日)及び登録査定時(平成31年4月12日)において、日本国内に おいて、原告の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして、需要者\nの間に広く認識されていたものと認めることはできない。 これに反する原告の主張は採用することができない。
(3) 小括
したがって、本件商標が商標法4条1項10号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはないから、原告主張の取消事由1は理由がない。

◆判決本文

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令和4(行ケ)10065 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年5月22日  知的財産高等裁判所

IOCが保有している商標「五輪」(標準文字)について、3条、4条6、7、10号違反とする無効審判が請求されました。審判請求は棄却されました。知財高裁も、審決の判断をそのまま維持しました。原告は個人です。審決によると、請求人らは、ブログ及びYouTubeチャンネルを通じて、オリンピック関連商標について多くの情報発信と意見交換をする個人とのことです。

取消事由2(商標法3条1項柱書きの要件の判断の誤り)について
原告らは、被告は、本件商標の全指定商品・役務について、「五輪」が創作・ 使用されて以来現在に至る80年以上という長期間にわたり、本件商標を全く 使用していないこと、当該期間中、被告は、ほぼ間断なくオリンピック競技大 会を開催していたことを考慮すれば、被告が、本件商標の査定・審決時に事業 (オリンピック競技大会)を現に行っていることだけを根拠に、被告が当該事 業の表示として本件商標を使用する意思を有していたことを推認することがで\nきないから、本件商標が商標法3条1項柱書きの要件を具備するとした本件審 決の判断に誤りがある旨主張する。
そこで検討するに、1)被告(IOC)は、国際的な非政府の非営利団体であ って、オリンピック競技大会を運営・統括しており、平和でよりよい世界の実 現に貢献するというオリンピックの理念であるオリンピック憲章に従い、オリ ンピズムを普及させる役割を担っていること(甲5の4、6)、2)オリンピッ ク競技大会は、被告によって、開催都市と開催地の国内オリンピック委員会の 協力の下で開催されている国際的スポーツ競技大会であって、スポーツを通じ た社会一般の利益に資することを目的としていること(甲5の1、6の1)、 3)2019年2月21日付け日本経済新聞ネット版(甲10の4)には、「国 際オリンピック委員会(IOC)が、オリンピックを意味する日本語の「五輪」 について特許庁に商標登録を出願し、認められたことが21日までに分かった。 2020年東京五輪・パラリンピックを控え、公式スポンサー以外の便乗商法 を防ぐのが狙い」、「IOCは東京大会の組織委員会を通じて「日本で『五輪』 はIOCが開催するオリンピックを意味するものとして周知、著名だ。既に不 正競争防止法の保護対象となっているが商標登録で権利の所在をより明確にし、 ブランド保護を確実にしたい」、「今後、組織委はスポンサー以外の企業や団 体などが商品名やサービスとして五輪を使った場合、権利が侵害されているか どうかを判断し、使用中止を求めるという。」との記載があることを総合する と、被告は、「五輪」の俗称でも親しまれているオリンピック競技大会の主催 者であって、本件商標の登録査定時において、オリンピック競技大会を指称す る「五輪」の語を使用する意思を有していたものと認められるから、「五輪」 の標準文字を書してなる本件商標は、被告との関係において、「自己の業務に 係る役務について使用をする商標」(商標法3条1項柱書き)に該当すること が認められる。

◆判決本文

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令和4(行ケ)10119  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年5月18日  知的財産高等裁判所

 図形+「GINZA」+「CLEAR」の3段併記商標について、「CLEAR」の文字部分を抽出して類否判断ができるかが争われました。知財高裁は、抽出できるとした審決を維持しました。

(1) 本願商標
別紙商標目録記載1のとおり、本願商標は、上段に、楕円形の二重線の枠の中に 曲線で構成された欧文字風の2つのモノグラム図形を配するロゴ風の図形(本件図\n形)を表し、中段に、「GINZA」の欧文字をサンセリフ体様の書体で小さく表\ し、下段に、「CLEAR」の欧文字をセリフ体様の書体で大きく表してなるもの\nであり、本件図形及び上記各文字は、いずれも薄い茶色で表されている。\n
(2) 本件図形部分
本願商標の構成中の本件図形部分は、そのうちの欧文字風の2つのモノグラム図\n形を含め、図案化の程度が顕著であり、それ自体、出所識別標識としての称呼及び 観念を生じないものである。
この点に関し、原告は、本願商標の構成中の本件図形部分はカメオを彷彿とさせ\nるものであり、トレードマークとして極めて強い印象を与え、また、面積にして本 願商標全体の70%以上を占めるから、本願商標が全体として与える影響のうち本 件図形部分によるそれが占める割合は大きいと主張する。確かに、別紙商標目録記 載1のとおり、本願商標のうち本件図形部分は、面積にして全体の大きな部分を占 めており、また、ロゴ風の図形として取引者及び需要者の注意を引く面があること は否めない(この点は、被告も争うものではない。)。しかしながら、上記のとお り、本件図形部分は、その図案化の程度が顕著であり、そのうちの2つのモノグラ ム図形についても、取引者及び需要者においてこれが何の文字を図案化したもので あるかを一見して理解することはできないものといわざるを得ないから、本願商標 の構成中の本件図形部分が取引者及び需要者の注意を引く面があるとの点は、本件\n図形部分が出所識別標識としての称呼及び観念を生じないものであるとの判断を左 右しない。
(3) 「GINZA」の文字部分
ア 本願商標の構成中の「GINZA」の文字部分が東京都中央区南西部にある\n地名である「銀座」をローマ字で表記したものであることは、当事者間に争いがな\nい。
イ 証拠(乙24)及び公知の事実によると、「銀座」は、日本を代表する繁華\n街であると認められるところ、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によると、「銀座」に 所在する店舗等については、以下のとおり、「GINZA」の文字が商品の販売地、 役務の提供場所、ブランドの発祥地等に相当する表示として使用されている例が多\n数あるものと認められる。
・・・
ウ 以上によると、本願商標の構成中の「GINZA」の文字部分は、商品の販\n売地、役務の提供場所、ブランドの発祥地等に相当するとの印象を与えるものにす ぎず、当該文字部分からは、出所識別標識としての称呼及び観念が生じないという べきである。
エ この点に関し、原告は、本願商標の構成中の「GINZA」の文字部分から\nは「銀座の地に関連があり、高級感のある事業」の観念が生じると主張する。しか しながら、仮に当該文字部分から「銀座の地に関連がある事業」の観念が生じると しても、それは、商品の販売地、役務の提供場所、ブランドの発祥地等をいうもの にすぎず、出所識別標識としての観念であるということはできない。また、当該文 字部分から「高級感のある事業」の観念が生じるものと認めるに足りる証拠はない。 なお、原告は、その運営するエステティックサロンにおいて本願商標を使用する 際には「CLEAR」の文字部分のみを使用することは決してなく、必ず本件図形 部分を含む本願商標の全体又は「GINZA CLEAR」の文字部分を使用して いると主張するが、仮に、本願商標について原告が主張するような使用実態がある としても、上記ア及びイにおいて認定説示したところに照らすと、そのような使用 実態は、本願商標の構成中の「GINZA」の文字部分から出所識別標識としての\n称呼及び観念が生じないとの判断を左右するものではない。
(4) 「CLEAR」の文字部分
ア 証拠(乙22、23)及び弁論の全趣旨によると、本願商標の構成中の「C\nLEAR」の文字部分を構成する「CLEAR」の語は、「明快な」、「明晰な」、\n「澄んだ」などを意味する形容詞等であり、我が国においてよく親しまれた平易な 英単語であると認められる。そして、「CLEAR」の語は、本願商標の指定商品 又は指定役務との関係で、商品の産地、販売地、品質等や役務の提供の場所、質等 を具体的に表示するものではないから、本願商標の構\成中の「CLEAR」の文字 部分は、取引者及び需要者に対して強い訴求力を有するということができる。以上 に加え、前記(1)のとおり当該文字部分が「GINZA」の文字部分より大きく表\nされていることも併せ考慮すると、「CLEAR」の文字部分は、商品又は役務の 出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであると認められる。
イ この点に関し、原告は、「CLEAR」の語は造語でなく、特別印象的な意 味を有する語でもなく、特徴的な振る舞いをする文字からなる語でもなく、また、 本願商標の指定商品及び指定役務と親和性のある形容詞であるから、本願商標の構\n成中の「CLEAR」の文字部分は商品又は役務の出所識別標識として強く支配的 な印象を与えるものではないと主張する。しかしながら、商標において商品又は役 務の出所識別標識として機能する文字部分は、必ずしも造語、特別印象的な意味を\n有する語、特徴的な振る舞いをする文字からなる語等でなければならないというこ とはない。また、仮に本願商標の指定商品及び指定役務の中に「明快な」、「明晰 な」、「澄んだ」などを意味する「CLEAR」の語によって抽象的に形容され得 るものがあるとしても、そのことは、本願商標の構成中の「CLEAR」の文字部\n分が商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとの判断を左右 するものではない。
なお、原告は、本願商標を付して行っている現在の事業(エステティックサロン) 及び本願商標を付して行う予定である将来の事業(セルフケアを目的としたビュー\nティー系コンテンツの配信及び健康食品や健康グッズの小売等に関するECサイト の運営事業)に係る商品又は役務の需用者は当該商品又は役務の出所を注意深く確 認して取引関係に入るのが一般的であるから、本願商標の構成中の「CLEAR」\nの文字部分は出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではないと主張す るが、原告の現在及び将来の事業に係る商品又は役務の需用者が原告の主張するよ うな者であると認めるに足りる証拠はないし、仮に、当該商品又は役務の需用者が 原告の主張するような者であるとしても、前記(2)及び(3)並びに上記アにおいて認 定説示したところに照らすと、当該商品又は役務の需用者に係るそのような属性も、 本願商標の構成中の「CLEAR」の文字部分が商品又は役務の出所識別標識とし\nて強く支配的な印象を与えるとの判断を左右するものではない。
(5) 小括
以上のとおり、本願商標の構成中の「CLEAR」の文字部分は、商品又は役務\nの出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであると認められる一方、本 願商標の構成中の本件図形部分及び「GINZA」の文字部分からは、出所識別標\n識としての称呼及び観念が生じず、また、本願商標の構成中の本件図形部分は、欧\n文字風の2つのモノグラム図形を含めて図案化の程度が顕著であり、その余の部分 (「GINZA」の欧文字をサンセリフ体様の書体で表してなる「GINZA」の\n文字部分及び「CLEAR」の欧文字をセリフ体様の書体で表してなる「CLEA\nR」の文字部分)と形態を異にするものであって、本件図形部分と上記その余の部 分は、それぞれが視覚上分離、独立した印象を与えるところ、両者を不可分一体に 観察すべきとする取引の実情があるものと認めるに足りる証拠はないから、本願商 標については、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然で\nあると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。したがって、 本願商標については、その構成中の「CLEAR」の文字部分を抽出し、当該文字\n部分だけを他の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきで ある。

◆判決本文

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令和4(行ケ)10120 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年4月25日  知的財産高等裁判所

 商標の類似判断において、結合商標を分離して判断すべきについて争われました。「JULIUS TART OPTICAL」と「TART」です。一部である「TART」が周知とはいえないと判断されて、一体認識で非類似と判断されました。

 前記1の認定事実によれば、【A】氏及び原タート社が販売する眼鏡フレーム等は、米国の著名な俳優等に愛用されてきたが、同社は1990年代には事業を停止していたところ、原告及び原告事業会社は、米国において「TART」の商標を付した眼鏡フレームの販売を開始し、その製造及び販売する眼鏡フレームは、2009年頃から我が国に輸出され、一部の雑誌には、米国の著名人に愛用されてきた【A】氏の事業を承継したブランドに係る眼鏡フレームであると紹介する記事等が掲載されていることが認められる。しかし、我が国に輸出された数量は、証拠上裏付けられる期間(2009年から2016年までの間)で合計約750個程度であって、我が国の眼鏡フレームの市場において主要な割合を占めているとは到底いえず、また、一部の雑誌媒体や眼鏡販売店等のウェブページ等において、原告らが製造販売する眼鏡フレームがかつて著名な俳優が愛用したブランドであり、復活したなどと取り上げられたり、原告らが開設するフェイスブック(ただし、英語版)において米国の著名な俳優や歌手等が愛用していることが取り上げられたりしているものの、頻繁に我が国のファッション関係の雑誌等で原告商品が取り上げられているといった事実や、「TART」ブランドに係る眼鏡フレームが原告らによる商品であるとの効果的な広告宣伝を行っており、これにより我が国の需要者等の認知度が高まっているといった事実を認めるに足りる証拠もない。したがって、少なくとも我が国においては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「TART」の商標を付した眼鏡フレーム(原告商品)が原告らの業務に係る商品を表示するものとして取引者及び需要者の間において広く認識されているものと認めることはできない。\n
本件商標の要部について
ア 複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、その構\成部分全体によって他人の商標と識別されるから、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することは原則として許されないが、取引の実際においては、商標の各構\成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、必ずしも常に構成部分全体によって称呼、観念されるとは限らず、その構\成部分の一部だけによって称呼、観念されることがあることに鑑みると、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、商標の構\成部分の一部を要部として取り出し、これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも、許されると解するのが相当である(最高裁昭和37年 第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
これを前提として本件商標についてみると、本件商標の構成中「JULIUS」、「TART」、「OPTICAL」の単語の間には、それぞれ空白部分があるが、それぞれの文字は同書同大で、「TART」の文字部分は強調されていないのみならず、前記 のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「TART」(引用商標)は、本件商標の指定商品である「眼鏡フレーム」等との関係で周知な商標であるとはいえないから、本件商標の構成のうち「TART」が取引者及び需要者に商品等の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではない。また、「OPTICAL」は、「目の」、「光学上の」と訳される(甲8、9)が、一般になじみのある英語であるとまではいえないから、指定商品との関係で識別力がないとまではいえない。むしろ、本件商標は、「JULIUSTART OPTICAL」の欧文字(標準文字)を同書同大でまとまりよく一体的に構成されているものであり、「ジュリアス タート オプティカル」とよどみなく称呼することが可能である。したがって、「TART」を要部として抽出することはできず、本件商標は一体不可分の構\成の商標としてみるのが相当である。
イ 原告は、前記第3の1 イのとおり、被告が本件商標中の「TART」の部分を強調して被告商品の広告及び宣伝をしている事実(甲4、51ないし55)を挙げて、「TART」が要部であることを示している旨主張するが、そもそも被告のウェブページ(乙3ないし5)では「TART」の文字部分を強調した構成で表\記されていないし、この点を措くとしても、商標の構成を離れて実際の商品の宣伝広告の方法から要部を認定すべきとする原告の主張は当を得たものではなく、本件において、仮に被告が「TART」の文字部分を強調した宣伝等を行っていたとしても、前記認定を左右するものではない。\n

◆判決本文

関連事件です。 令和4(行ケ)10121 こちらは商標が「JULIUS TART」と「TART」です。結論は非類似です。

◆判決本文

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令和4(行ケ)10095 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年2月22日  知的財産高等裁判所

 特許庁は、図形「X」と文字「GAME」の結合商標が、図形「X」と類似するとして拒絶しました。知財高裁も同様です。

(イ) 本願商標は、外観においては、全体として、輪郭線のほとんどが鋸歯 状になった、右下に伸びる帯が左上に伸びる帯より長い「X」型の十字形状といった印象を与えるものということができ、そのような漠然とし\nた印象によって需要者に記憶されるものといえる。そして、本願商標は、 「X」型の十字形状ではあるが、特定の文字又は事物を表\しているとは 直ちに認識できないから、これより特定の称呼及び観念は生じない。 他方、前記1(1)イ及び(2)イのとおり、引用商標1及び引用商標2は、 いずれも「X」型の十字形状ではあるが、特定の文字又は事物を表\して いるとは直ちに認識できないから、これより特定の称呼及び観念が生じ るとは認められない。
そうすると、本願商標と各引用商標は、いずれも特定の称呼及び観念 を生じないため、称呼及び観念において相互に比較することはできない。
(ウ) このように、本願商標と各引用商標は、称呼及び観念において比較で きないが、外観において類似しているから、それによって需要者、取引 者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本願商 標と各引用商標は、これらを同一又は類似の商品について使用するとき は、その商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあり、類似する 商標であると認められる。 したがって、本件審決が、本願商標と各引用商標が類似である(本件 審決3(1)ア(ウ)〔本件審決3頁〕)とした判断に誤りはない。
(エ) なお、前記1(1)イ(ア)及び(2)イ(ア)のとおり、各引用商標は、その外観か ら、全体として、輪郭線のほとんどが鋸歯状になった、右下に伸びる帯 が左上に伸びる帯より長い「X」型の十字形状といった印象を与えるものであるところ、仮に、このような印象のみにより、各引用商標が「エ\nックス」の称呼及び観念を生じるとするならば、本願商標も、全体とし てそのような印象を与える点で共通するといえるから(前記(2)ア)、本願 商標も「エックス」の称呼及び観念を生じるということになる。 したがって、本願商標と各引用商標は、外観において類似し、称呼及 び観念において同一ということになるから、類似するといえる。
イ この点に関して、原告は、「X」をデザインする図形商標は多数存在し、 外観上識別し得るポイントが一つでもあれば、非類似とされている(甲1 4の1〜19、甲15、甲16)と主張するが(前記第3の2〔原告の主 張〕(3))、原告の挙げる証拠によっても、外観上識別し得るポイントが一つ でもあれば、非類似とされているとは認められず、原告の上記主張は採用 することができない。
また、原告は、本願商標と各引用商標を比較すると、本願商標が、組み 合わされた2本の帯状の図形を重ね合わせた幾何学的図形であり、重なり 合った部分に奥行き感があり立体風であるのに対して、各引用商標は、「X」 型十字の白抜きの図形であり平らな印象を与える点、「X」型の十\字の交点 から右下に伸びる部分と左上に伸びる部分の長さの比が大きく異なる点、 本願商標が図形内部に破線を有するのに対し各引用商標は図形内部を空白 で表している点等、外観上識別し得るポイントにおいて多々異なる点がある旨主張する(前記第3の2〔原告の主張〕(3))。 しかし、前記(2)ア及びイで述べたところによれば、本願商標と各引用商 標は、いずれも「X」型の十字が左側(反時計回り方向)に傾いた形で組み合わされた2本の帯の図形からなり、帯の輪郭線のうち、短辺が直線、\n長辺が鋸歯状に表されている点、及び「X」型の十\字の交点から右下に伸 びる部分が左上に伸びる部分よりも長くなっている点において共通して おり、全体として、輪郭線のほとんどが鋸歯状になった、右下に伸びる帯 が左上に伸びる帯より長い「X」型の十字形状といった印象を与え、そのような漠然とした印象によって需要者に記憶されるという点において共\n通するものであり、原告の上記主張に係る相違点は、上記の共通点に比較 してささいな部分であり、殊更強い印象を与えるものではなく、それらの 相違点があることから、本願商標と各引用商標が非類似であるとはいえな い。
さらに、原告は、取引の実情を考慮すると、需要者は商品のデザインに 細部まで注意を払って確認するから、原告主張の外観上の差異は、顕著な 差異として看者に強い印象を与えるものであり、そのため、本願商標と各 引用商標を判然と区別することができ、これらが相紛れるおそれはないと 主張する(前記第3の2〔原告の主張〕(3))。 しかし、前記(3)のとおり、原告の主張する取引の実情は、商品デザイン (意匠)に関するものであり、商標の類否判断に直接影響するものとはい えないし、指定商品全般についての一般的、恒常的な取引の実情ではなく、 商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情に該当すると はいえないから、原告の上記主張は採用することができない。 加えて、原告は、関連商標の登録異議決定(甲6)において、関連商標 が各引用商標と非類似とされていることを指摘し、関連商標と各引用商標 との間の相違点は、本願商標と各引用商標との間にも存在するから、統一 的な解釈の観点からも、本願商標と各引用商標は類似しないと判断すべき であると主張する(前記第3の2〔原告の主張〕(3))。しかし、本願商標と各引用商標が類似することは前記アのとおりであり、関連商標の登録異議決定があるとしても、それにより、この結論が左右されることはない。

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令和4(行ケ)10093  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年2月22日  知的財産高等裁判所

商標「ハートデンキサポート」と「HEART」が類似すると判断されました。

前記イのとおり、本願商標の構成中の「デンキサポート」という部分は、\nその言葉の意味のみからしても、取引者、需要者に、電気器具や電力を使 って運転する機械を含む電気に関する事柄を支え、支持し、支援し、助け ることを意味すると理解される場合が少なくないものと認められ、前記ウ のとおり、実際に、電気及び電気工事に関する業界においては、「でんきサ ポート」又は「電気サポート」の語は、電気に関する工事、修理及びトラ ブル対応といったサービスを表す語として使用されており、それらの語は、\n電力会社、ガス会社などを含めた複数の会社のウェブサイトに掲載されて いることから、一般人を含む取引者、需要者にも、上記サービスを表す語\nとして認識し得る状態で使用されているものといえる。そうすると、本願 商標の構成中の「デンキサポート」という部分は、取引者、需要者により、\n電気に関する工事、修理及びトラブル対応といったサービスを表す語とし\nて認識されるものと認められる。
他方、本願商標の指定役務(前記第2の1(1)イ及び(3))のうち、電気設 備設置工事、家庭用電熱用品類の設置工事、ポンプの修理又は保守、業務 用冷凍機械器具の修理又は保守、電子応用機械器具の修理又は保守、電気 通信機械器具の修理又は保守、民生用電気機械器具の修理又は保守、照明 用器具の修理又は保守、電動機の修理又は保守、配電用又は制御用の機械 器具の修理又は保守、発電機の修理又は保守、業務用食器洗浄機の修理又 は保守、業務用電気洗濯機の修理又は保守は、いずれも電気に関する工事、 修理及びトラブル対応といったサービスに該当するものと認められる。
そうすると、本願商標の構成中の「デンキサポート」という部分は、取\n引者、需要者により、本願商標の役務の内容、質を表しているものとして\n認識されるものと認められ、自他役務識別標識としての機能がないか、又\nは希薄な部分と認識されるものと認められる。 したがって、本件審決の同旨の判断(本件審決3(1))に誤りはない。
オ 原告の主張に対する判断
原告は、「デンキ」からは「電気」、「電器」及び「電機」が想起されると ころ、それらの内容は明確に異なり、「デンキ」の文字からは、その内容を 特定できないし、工事の対象であるとしても、工事の対象物が特定できな いから、本願商標の構成中の「デンキサポート」の部分が役務の内容を示\nしているということはできず、むしろ、その部分は一種の造語として認識 されるとし、したがって、本件審決が、本願商標の構成中の「デンキサポ\nート」の部分は、役務の質を表したものとして、自他役務識別標識として\nの機能がないか、あるいは希薄な部分と理解されるにとどまるというのが\n相当であると判断したのは誤りである旨主張する(前記第3〔原告の主張〕 1(1))。 しかし、「デンキ」は、「電気」、「電器」及び「電機」のいずれにしても、 電気に関する事柄を意味すると理解され(前記イ)、電気及び電気工事に関 する業界における実際の用例(前記ウ)も考慮すると、本願商標の構成中\nの「デンキサポート」の部分は、取引者、需要者により、電気に関する工 事、修理及びトラブル対応といったサービスを表す語として認識され、本\n願の指定役務と照らし合わせると、取引者、需要者により、本願商標の役 務の内容、質を表しているものとして認識され、自他役務識別標識として\nの機能がないか、又は希薄な部分と認識されるものと認められるから(前\n記エ)、原告の上記主張は採用することができない。
(3) 「ハート」の部分の自他識別標識としての機能について\n
ア 本願商標の構成中の「ハート」の部分は、本願の指定役務の内容、質等\nとは関係がないから、本願の指定役務との関係で、自他役務識別標識とし ての機能を発揮するものと認められる。他方、前記(2)エのとおり、本願商 標の構成中の「デンキサポート」という部分は、取引者、需要者により、\n本願商標の役務の内容、質を表しているものとして認識されるものといえ、\n自他役務識別標識としての機能がないか、又は希薄な部分と認識されるも\nのと認められる。そして、本願商標が標準文字からなり、その全体が一連 に表記されていること(前記(1))を考慮しても、本願商標の構成中の「ハ\nート」の部分と「デンキサポート」の部分は、それらを分離して観察する ことが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと は認められず、より強く自他識別標識として認識される「ハート」の部分 に着目し、その部分より生ずる称呼及び観念をもって取引に当たる場合も 少なくないものと認められる。 したがって、本件審決の同旨の判断(本件審決3(1))に誤りはない。
イ 原告は、結合商標について、商標の構成部分の一部を抽出して類否を判\n断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別 標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外 の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合 などを除き、許されないというべきであるとした上で、本願商標は、全体 としてまとまりのある一体的な構成からなることに加えて、「ハー卜」の部\n分は、我が国において親しまれた片仮名語であり、広く使用されているこ とからも、その部分が強く支配的な印象を与えるものとはいい難く、殊更 に「ハート」の部分に着目するというのは不自然でもあり、本願商標は構\n成全体をもって、特定の観念を生じない一体の造語を表したものと認識し、\n把握するというのが自然であるといえるとし、したがって、本件審決が、 本願商標の構成中の「ハート」の部分は、自他役務識別標識としての機能\ を発揮する部分であるから、より強く自他識別標識として認識される「ハ ート」の部分に着目し、この部分より生ずる称呼及び観念をもって取引に 当たる場合も少なくないというのが相当であると判断したのは誤りである 旨主張する(前記第3〔原告の主張〕1(2))。 しかし、仮に本願商標が結合商標であるとしても、前記(2)エのとおり、 本願商標の構成中の「デンキサポート」という部分は、取引者、需要者に\nより、本願商標の役務の内容、質を表しているものとして認識されるもの\nと認められ、自他役務識別標識としての機能がないか、又は希薄な部分と\n認識されるから、本願商標の構成中、「ハート」という部分を抽出し、この\n部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは 許されるというべきである。そして、「ハート」という語が、我が国におい て親しまれた片仮名語であり、広く使用されているとしても、本願商標の 構成中の「ハート」の部分は、本願商標の指定役務の内容、質等とは関係\nがなく、本願の指定役務との関係で、自他役務識別標識としての機能を発\n揮するものと認められるから、原告の上記主張は採用することができない。

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令和4(行ケ)10101  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年3月7日  知的財産高等裁判所

特許庁は、商標法4条1項5号(紋章の保護)違反として拒絶しました。原告はパリ条約6条の3(1)(a)の国内法実施の義務を履行していないと主張しましたが、知財高裁はこれを認めませんでした。パリ条約の改正の経緯などにも触れてます(フランス語の表記は表\示できないため、一部アルファベットに変換しました)

原告は、前記1 のとおり、パリ条約の解釈に相違があるときはフランス文 によるとの条項(29条(1)(c))を前提に、パリ条約6条の3(1)(a) の「a defaut d'autorisation des pouvoirs competents,」(所管官庁の許可 がない場合)が「, par des mesures appropriees,」(適当なる方法に依り禁止 する)だけに係るのではなく、「de refuser ou d'invalider l'enregistrement et d'interdire,」(登録を拒絶し又は無効とし)にまで係るものと解釈される べきであり、同条項の公定訳(「同盟国は、同盟国の国の紋章、旗章その他の 記章、同盟国が採用する監督用及び証明用の公の記号及び印章並びに紋章学上 それらの模倣と認められるものの商標又はその構成部分としての登録を拒絶し\n又は無効とし、また、権限のある官庁の許可を受けずにこれらを商標又はその 構成部分として使用することを適当な方法によつて禁止する。」)は、誤訳で\nあって、これを前提とした商標法4条1項5号は、パリ条約6条の3(1)(a) の国内法実施の義務を履行していない旨主張する。
し か し 、 原 告 が 指 摘 す る 「 a defaut d'autorisation des pouvoirs competents,」(権限のある官庁の許可を受けずに)は、原文上、「l'utilisation,」 と「,」で続けて副詞句として挿入されており、文言において、この「a defaut d'autorisation des pouvoirs competents, 」 が 「 d'interdire ・ ・ ・ l'utilisation」(使用を禁止する)のみに係るものであるのか、「de refuser ou d'invalider l'enregistrement et d'interdire,」(登録を拒絶し又は無効 とする)にも係るものであるのか、文法的には、どちらと読むことも可能であ\nることや、「権限のある官庁の許可を得ていない」という文言が、当初は 「d'interdire・・・l'utilisation」のみに係るものとして起草されていたと ころ、起草委員会が総会に示した条約案では、上記原文に書き換えられ、その まま確定したことにより、文法的には2通りの解釈が可能になったことは、【A】\n意見書も指摘するとおりであるから、日本語公定訳のとおり、「a defaut d'autorisation des pouvoirs competents, 」 が 、 「 d'interdire ・ ・ ・ l'utilisation」のみに係ることを前提としても、パリ条約6条の3(1)(a) の誤訳であると断じることはできない。
また、仮に、原告が指摘するような解釈、すなわち、「権限のある官庁の許 可を受けない」同盟国の紋章等の商標又はその構成部分としての登録を拒絶し、\n又は無効とするとの解釈を採用するとしても、同規定は、「権限のある官庁の 許可」を受けた登録出願をどのように取り扱うについてまで規定するものでは ない(これらの紋章等の「商標又はその構成部分としての登録を拒絶し又は無\n効とし」とされていることの反対解釈として、それ以外の場合は当然に登録を しなければならない義務を本条約が締結国に課したと解することはできない。) から、そもそも同条に基づき、我が国が「権限のある官庁の許可」を受けた登 録出願を拒絶してはならない義務を負うものではないし、同条を根拠として商 標法4条1項5号の適用範囲を狭めて「登録をしなければならない」ものと解 釈されるべきものでもない。
3 その他に原告が種々主張する点を精査しても、権限のある官庁やその許可を 得た者がパリ条約6条の3(1)(a)に規定する監督用・証明用の記号や印 章について登録出願をした場合において、その登録をしなければならないこと を根拠付けるものは見当たらない。したがって、同条に基づく義務の不履行を 理由とする原告の主張は、いずれにしても失当というほかない。

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令和4(行ケ)10122  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年3月9日  知的財産高等裁判所

 「朔北カレー」が「サクホク」と類似するした審決が取り消されました。興味深いのは「朔北カレー」という一体認識で非類似ではなくく、分離自体は認めた上、「朔北」と「サクホク」は非類似と判断したことです。

本願商標は「朔北」と「カレー」からなる結合商標であるところ、前記のとおり、 「カレー」の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じるということはでき ない一方で、「朔北」については、需要者、取引者をして、「北の方角」又は「北方 の地」を表す単語として理解されるにすぎず、具体的な地域を表\すものと理解され るものではないから、指定商品との関係において、出所識別標識としての称呼、観 念が生じ得るといえる。そして、需要者、取引者をして、「朔北カレー」を一連一体 のものとしてのみ使用しているというような取引の実情は認められない。 そうすると、本願商標について、各構成部分がそれを分離して観察することが取\n引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないから、 「朔北」の部分のみを抽出して他人の商標と比較して商標の類否を判断することも 許されるというべきである。
(3) 本願商標と引用商標の類否 以上を踏まえ、本願商標における「朔北」の部分(本願要部)と引用商標を比較 して、類否を検討する。
ア 外観
本願要部は「朔北」という2文字の漢字からなるのに対し、引用商標は「サクホ ク」の4文字の片仮名からなり、外観が明らかに異なる。
イ 称呼 本願要部の称呼は「さくほく」であり、引用商標の称呼も「さくほく」であるか ら、同一である。
ウ 観念
本願要部からは「北の方角」「北方の地」の観念を生じるものであるのに対し、「サ クホク」は、辞書等に掲載されていない造語であって、特定の観念を生じないもの であるから、観念が明らかに異なる。
エ 以上のとおり、本願要部と引用商標は、称呼が共通するものの、外観及び観 念は明確に異なっているところ、需要者、取引者が「朔北」から引用商標である「サ クホク」や引用商標の権利者を想起するというような取引の実情はなく、また、本 願商標及び引用商標の指定商品において、需要者、取引者が、専ら商品の称呼のみ によって商品を識別し、商品の出所を判別するような実情があるものとは認められ ず、称呼による識別性が、外観及び観念による識別性を上回るとはいえないから、 本願商標及び引用商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につ き誤認混同を生ずるおそれがあるとはいえない。

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令和4(行ケ)10073  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年1月19日  知的財産高等裁判所

審決は、標準文字「zhiyun」について、使用意思(3条1項柱書)、公序良俗違反(4条1項7号)で無効としました。知財高裁も同じ判断です。

原告は、本件商標についても使用許諾する旨、知的財産権の取引サイト に出品している(乙1)。 上記114件の商標登録出願中、7件について、商標法3条1項柱書き 違反、同法4条1項7号、10号、15号又は19号該当等を理由として、 第三者から刊行物提出書による情報提供がされ(甲26)、本件商標を含 む12件について、無効審判請求や登録異議の申立てがされている(甲2\n7)。(4条1項7号)
・・・
前記 ア及びイによれば、本件商標の登録出願日である平成30年9月 24日以前に、被告は、引用商標ないしそれに類似する商標を付したスタ ビライザー等の商品について、海外において相当な売上げを得ており、我 が国においても、遅くとも平成28年7月13日以降、引用商標ないしそ れに類似する商標を付したジンバル雲台やスタビライザーがAmazo nジャパンで販売され、平成29年には見本市に参加し、平成30年には 日本市場に本格参入している。
また、同ウによれば、本件商標の登録出願は、平成29年9月25日か ら令和3年5月11日までの間に原告によりされた大量の商標登録出願 の一部であるところ、これらの出願のうち22件については、登録後1、 2年で移転され、そのうち少なくとも18件については原告による登録出 願が、類似する他人の商標の使用に後れるものであり、原告出願に係るこ れらの商標の多くが特徴的な造語で、先行する他人の商標と偶然に一致し たものとは考えられず、また、原告は本件商標についても使用料を得よう としていたことが認められる。
これらの事情によれば、原告は、先願主義に名を借りて、先行して使用 されてきた他人の商標と類似する商標を出願した上、金銭的利益を得るこ とを業とする者と認めざるを得ない。また、本件商標についても、日本語 とも英語とも考えられない造語であり、およそ原告が独自に考え出したも のとは認められないもので、原告は、被告が海外において、引用商標を付 したスタビライザーやジンバル雲台で相当の販売実績を有していること を知りながら、これらの商品と同じ商品を指定商品として、我が国で先に 商標登録を得ることで、金銭的利益を得ようとしていたものと推認し得る ものである。このような本件商標の登録出願に至る経緯等に照らせば、登 録を認めることは、商標法の予定する公正な取引秩序に著しく反するもの\nというべきであるから、本件商標の商標登録は、公序良俗に反するものと いうほかない。
イ 原告は、前記第3の2(1)イのとおり、出所混同のおそれのある商標や、 フリーライド等の不正の目的をもって使用する商標も商標法4条1項7 号に該当するとすれば、同項10号ないし15号や、同項19号の存在意 義がなくなる、あるいは、他人が使用する周知・著名でない商標が、我が 国で出願・登録されていないことを奇貨として、これと同一又は類似の商 標を先取り的に商標登録出願することが、同項7号に該当するとすれば、 先願主義に反する旨主張する。 しかし、公序良俗の維持は法の原則であり、社会秩序や道徳秩序に反す る商標を登録して助長すべきではないところ、剽窃的な商標登録出願が公 正な取引秩序を害するものとなれば、公序良俗を害すると評価されるに至 る場合があり、同項7号はこのような場合も想定しているものというべき である。
本件は、原告が、先願主義に名を借りて、商標権が本来持つべき出所識 別機能とは関係なく、剽窃的な商標出願を大量にした上、金銭的利益を得\nることを業とするという事案であって、単なる特定の当事者間の私的な問 題に止まるものではなく、公正な取引秩序そのものに関わる重大な違反が あると認められるものであるから、商標法が先願主義を採り、また、冒認 者による出願が登録拒絶理由として定められていないことを考慮しても、 その登録が公序良俗に反することは明らかといわざるを得ない。 なお、原告は、前記第3の1(1)ウのとおり、本件商標は、その指定商品 について使用実績がある旨主張する。 しかし、これらは単発的なAmazonジャパンへの出品や、売上げを 示すものにすぎない。また、例えば、原告が使用実績として挙げる甲47 の1には、1頁目に「ブランド:Muzili」、2頁目に「ブランド名 Muzili」及び「メーカー zhiyu」との記載があるが、「Mu zili」はオーディオ製品の専業メーカーの商標であり(乙5,6)、 しかも、前記(1)ウのとおり原告が平成29年9月25日から令和3年5月 11日までの間に大量に出願した商標の1つであって(甲13、商願20 18−122372)、極めて不自然である。 そうすると、原告の挙げる使用実績は、早期審査の認定を受けるためか、 商標登録異議や無効審判の請求に対応する名目的なものというべきで、前 記認定判断を覆すに足りる事情に当たるとは到底いえない。その他に原告 がるる主張する点も本件結論を左右し得ない。

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令和4(行ケ)10087  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年1月17日  知的財産高等裁判所

知財高裁4部は、図形と分離したうえ、文字部分について分離解釈をして、類似すると判断し、拒絶審決が維持されました。引用商標は、「EMPIRE」(標準文字)、本件商標は牛の図形の下に「EMPIRE STEAK HOUSE」です。

ア 本願商標は、左向きの牛の全身を表した図形と、同図形の下側に、「EM\nPIRE STEAK HOUSE」の文字を表してなる結合商標である。\n そして、上記文字部分は同図形部分に比してかなり小さく表されてはい\nるものの、両者は、相互に重なり合うこともなく配置され、文字部分が図 形部分に埋没した印象を与えることもなく、文字として明瞭に認識できる ものであるから、文字の持つ本来的な訴求力の強さに鑑みて、同図形部分 と同文字部分は、それぞれが独立した構成部分として、視覚上十\分に分離 して認識され得るものである。
イ 前記アのように分離して認識される本願商標の構成中、左向きの牛の全\n身を表した図形部分は、何らかの行動をとる前の牛の全身を表\したものと は認識できるが、その様子が象徴的な態様又は具体的行動を表現したもの\nとは看取できず、また、この牛が特定のキャラクター等の主体を表したも\nのとは見受けられず、さらに、比較的写実的に牛を描いていることからそ の色合や形に印象的といえる部分も見受けられず、結局、「牛」の称呼及び 観念を生じさせるにとどまる。
そうすると、本願商標の構成中の牛の図形部分は、本願商標の指定役務\n中「ステーキ料理の提供」との関係においては、提供される料理の食材が 牛であるという印象を与えるにすぎないといえ、実際の取引においても、 ステーキハウスを含む牛肉等に関連した料理を提供する店舗において、食 材である牛の全身又は一部をモチーフとした図形を用いる例が見受けら れ(乙33ないし41)、このようなことは広く一般的に行われていること といえる。したがって、前記牛の図形部分は、本願商標の指定役務中、「ステーキ料 理の提供」との関係において、自他役務識別機能を有しないか又は同機能\ が極めて弱いものである。
ウ 前記アのように分離して認識される本願商標の構成中、「EMPIRE ST EAK HOUSE」の文字部分については、「EMPIRESTEAKHOUSE」な る1語が存在することはうかがわれない一方、「EMPIRE」、「STEAK」及 び「HOUSE」の文字の間に間隔が置かれていることからみて、「EMPIR E」、「STEAK」及び「HOUSE」の3語からなるものと認識されるところ、 「EMPIRE」の文字は、「帝国」を意味する英単語であるが、英和辞典にお いて高校学習単語とされる英単語であり、国語辞典においても「エンパイ ア」の見出し語の下に「帝国」の意味を有する語として掲載されており(乙 2ないし4)、我が国においても容易に意味が理解される親しまれた語と いえる。そして、「EMPIRE」の語から生じる「帝国」の観念や「エンパイ ア」の称呼が、本願商標に係る指定役務について、これら役務の提供の場 所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法又は時期そ\nの他の特徴、数量又は価格と関連性を有することは想定できないから、「E MPIRE」の文字は、「ステーキ料理の提供」を含む本願商標の指定役務と の関係において、自他役務識別機能が強いといえる。\n
他方、「EMPIRE STEAK HOUSE」の文字部分のうち「STEAK」と 「HOUSE」についてみると、「STEAK HOUSE」の文字が「ステーキ専 門店」の意味を有する英語であること(乙5)、この語が飲食物の提供の一 業態を示すものとして一般に用いられていることは当事者間に争いがな いことや、実際の取引においても、本願商標の指定役務のうち、「ステーキ 料理の提供」を行う業界においてこの語が普通に用いられている例が見受 けられこと(乙6ないし16)からみて、広く一般に定着した語と認めら れ、「STEAK」と「HOUSE」の語は、ステーキ専門店を意味する「STE AK HOUSE」を表すると認識されるものと認められる。\n そして、「STEAK HOUSE」の語が本願商標の指定役務中、「ステーキ 料理の提供」に使用される場合には、役務の提供の場所、質を意味するも のといえるから、本願商標の構成中「STEAK HOUSE」の文字部分は、 自他役務識別機能を有しないか又は同機能\が極めて弱いというべきであ る。このような場合、自他役務の識別のためにはそれ以外の部分が重視さ れ、自他役務識別機能を有しないか又は同機能\が極めて弱い部分は省略さ れることがあり得べきところ、実際の取引においても、「STEAK HOUS E」又は「ステーキハウス」を含むステーキ料理の提供を行う店舗名が、「S TEAK HOUSE」又は「ステーキハウス」の文字部分を除いて略称される 例が見受けられるから(乙17ないし31)、我が国において、「STEAK HOUSE」又は「ステーキハウス」の語は、ステーキ専門店を区別して指 示する際には省略されることが普通にあり得ることと認められる。
エ 前記イ及びウを踏まえると、取引者及び需要者の認識に対する影響力と いう点から見れば、本願商標は、「EMPIRE」の文字部分が外観上目立つも のではないにしても、取引者及び需要者に対して自他役務の識別標識とし て強く支配的な印象を与えるといえるから、本願商標より「EMPIRE」の 文字部分を商標の要部として抽出し、これと引用商標とを比較して商標の 類否を判断することが相当であるというべきである。そうすると、本願商標は、その要部の「EMPIRE」に相応して、「エンパ イア」の称呼及び「帝国」の観念が生じるものというべきである。
(2) 引用商標について
引用商標は、「EMPIRE」の文字を標準文字で表してなるものであるから、\nこれより「エンパイア」の称呼及び「帝国」の観念が生じるものである。
(3) 本願商標と引用商標の類否について
本願商標の要部である「EMPIRE」の文字部分と引用商標とを比較すると、 両者は、いずれも普通に用いられる書体で、「EMPIRE」と表してなるもの\nで、外観において紛らわしく、称呼(「エンパイア」)及び観念(「帝国」)は 同一であることから、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛らわしく、 互いに類似するというべきである。 したがって、本願商標全体の外観と引用商標の外観が相違することを考慮 しても、両商標は、同一又は類似の役務に使用された場合には、当該役務の 出所について混同を生じるおそれがある類似の商標と判断すべきである。
(4) 本願商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否について 本願商標の指定役務中、第43類「ステーキ料理の提供」は、引用商標の 指定役務中、第43類「焼肉料理・海鮮料理およびその他の飲食物の提供」 と、役務の提供の場所や質(内容、業種)を共通にすることから、両者は同 一又は類似のものである。
・・・
2 原告の主張について
(1) 原告は、前記第3の1 のとおり、需要者、取引者は飲食店の選別に当た り屋号や店名の全体を注意深く観察するものであるところ、本願商標中の「E MPIRE STEAK HOUSE」の文字は、外観上まとまりよく一体的に配され ており、各語の間隔も同一であり、そこから生じる「エンパイアステーキハ ウス」の称呼もよどみなく一連に称呼され得るものであるから、上記文字部 分は、一連一体のものとして称呼、認識される旨主張する。 しかしながら、ステーキ料理の需要者がどの料理店を選択するかに当たっ ては、「STEAK HOUSE」の部分は当該選択に当たって何ら必要な情報を 与えるものではないから、「EMPIRE STEAK HOUSE」に外観上まとまり があって一体的であろうと、称呼がよどみなく一連に称呼できものであろう と、需要者が着目しているのは「EMPIRE」の部分といえる。 したがって、原告の主張は当を得たものとはいい難く、これを採用するこ とはできない。また、原告は、前記第3の1 のとおり、「EMPIRE」から一義的に「帝国」の観念が生じるとすることは誤りである旨主張するが、前記1(1)ウのとおり、 「EMPIRE」から「帝国」の観念が生じることは明らかであり、「帝国」に加 えて「帝国」以外の観念が生じる可能性があるからといって、「帝国」の観念\nが生じていないとはいえないから、原告の上記主張を採用することはできな い。
以上によれば、上記各主張を前提とする原告の主張(前記第3の1(3))に ついては、その前提に誤りがあるから、採用できないというほかない。 原告は、前記第3の1(3)のとおり、1)「EMPIRE BURGER HOUSE」 との商標の登録例、2)ある文字に「STEAK HOUSE」等が結合された商標 の登録例、3)ある文字からなる商標と当該文字に店名を表示する際の接尾語\nを結合した商標を非類似とする審決等の例からみて、本願商標の登録を認め ない本件審決は不合理である旨を主張するが、商標の類否判断は、商標の構\n成、指定役務、取引の実情等を踏まえて、商標ごとに個別に判断すべきもの であって、原告が指摘するような他の商標登録事例等があるからといって、 本願商標と引用商標の類否判断が影響を受けるものではないから、上記主張 は結論を左右しないものであり、採用することができない。
なお、あえて付言すれば、「EMPIRE BURGER HOUSE」との商標は、 「EMPIRE STEAK HOUSE」との本願商標とは、「BURGER」との語の部分が異なるほかは構成を共通にするものであるが、「BURGER HOUSE」 の語は、「STEAK HOUSE」の語と比してわが国での親和度は低いものと も考えられ、その場合、「EMPIRE」に対する「BURGER HOUSE」との語 の自他役務の識別能力は、「STEAK HOUSE」の場合と比すれば相対的に 高いとみることも可能であるから、語の構\成だけをみて「EMPIRE BURG ER HOUSE」と「EMPIRE STEAK HOUSE」とを同列に論ずることは妥当ではなく、「EMPIRE BURGER HOUSE」との商標が登録され「EM PIRE STEAK HOUSE」との本願商標の登録が拒絶されているからといっ て、これを直ちに不合理な取扱いであるとすることはできない。

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令和4(行ケ)10090  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年1月31日  知的財産高等裁判所

 「heaven」と「インドカレーheaven」とが類似するとした審決が維持されました(4部)。指定役務は、「ホストクラブにおける飲食物の提供又はこれに関する助言・相談若しくは情報の提供」vs「インドカレー・インド料理の提供」ですが、これも類似すると判断されました。

以上によれば、商標法施行規則別表において定められた商品又は役務\nの意義は、商標法施行令別表の区分に付された名称、商標法施行規則別\n表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質、\n国際分類を構成する類別表\注釈において示された商品又は役務について の説明、類似商品・役務審査基準における類似群の同一性等を参酌して 解釈するのが相当である(最高裁判所平成21年(行ヒ)第217号同2 3年12月20日第三小法廷判決・民集65巻9号3568頁)。 そうすると、商標法6条2項の商品及び役務の区分は、商品又は役務 の類似の範囲を定めるものではないが(同条3項)、上記のような観点に 照らして各区分に属する商品又は役務の意義を確定しておくことは、商 品又は役務の類否の判断の前提として必要である。 商標法施行令別表は、第41類として「教育、訓練、娯楽、スポーツ及\nび文化活動」を、第43類として「飲食物の提供及び宿泊施設の提供」を 規定している。
商標法施行規則別表によれば、第41類の中に「十\三 娯楽施設の提 供 囲碁所又は将棋所の提供 カラオケ施設の提供 スロットマシン場 の提供 ダンスホールの提供 ぱちんこホールの提供 ビリヤード場の 提供 マージャン荘の提供 遊園地の提供」が挙げられ、第43類の中 に「二 飲食物の提供 ・・・ (三) 中華料理その他の東洋料理を主と する飲食物の提供 インド料理の提供 広東料理の提供 四川料理の提 供 上海料理の提供 北京料理の提供 (四) アルコール飲料を主とす る飲食物の提供」が挙げられている。 類別表注釈の「第11−2019版」の第43類の項(乙6)によれば、\n同類に属する「飲食物の提供」の役務は、「主として消費のための飲食物 を用意することを目的とする人又事業所が提供するサービス」とされる 一方、国際分類の「第11−2019版」(乙8)には、第41類として 「ナイトクラブの提供」が例示されている。また、類別表注釈の「第11\n−2022版」の第43類の項(乙9)には、「この類には、特に、次の サービスを含まない:」として、「例えば・・・ディスコ及びナイトクラ ブにより提供される、宿泊又は飲食物の提供が付随しうるものを含む、 知識の教授及び指導並びに娯楽の提供(第41類);」が挙げられ、第4 1類の項(乙7)には「娯楽又はレクリエーションを基本的な目的とする サービス」が挙げられている。 以上の点を参酌しつつ、「ホストクラブ」は、「ホスト(クラブなどの 接客係の男性)が主に女性客をもてなす酒場。」(広辞苑第7版、平成3 0年1月12日発行、甲5)であり、飲食物の提供が付随する娯楽を提供 するものとしてナイトクラブと同様であることに鑑みると、本願商標の 指定役務の「ホストクラブにおける飲食物の提供又はこれに関する助言 ・相談若しくは情報の提供」は、娯楽サービスの提供(接待等)の面でな く、飲食物の提供の面から検討するのが相当である。
イ 提供の手段、目的又は場所
本願商標の指定役務と引用商標の指定役務は、いずれも飲食物を提供す る役務であるから、注文により直ちにその場所で料理や飲料を作ったり、 調理済みの料理を用意したりするといった提供手段及び料理や飲料を飲食 させるという目的において一致する。 提供の場所に関しては、引用商標の指定役務では通常インド料理店であ るが、それに限定されるものではない。ホストクラブで、インド料理店勤務 の経験もあるシェフが料理を提供している事例があり(乙13)、また、ホ ストクラブのオープン前の時間帯にカフェを営業する事例もある(乙22) ことからすると、引用商標の指定役務と本願商標の指定役務で提供の場所 が一致することがあることは否定し得ない。
ウ 提供に関連する物品
本願商標の指定役務と引用商標の指定役務に関連する物品は、飲食物の 提供という観点からすると、食材、各種食品、飲料、例えば、おしぼり等の 消耗品や、食器、スプーン、グラス等であり、共通する。
エ 需要者、取引者の範囲
本願商標の指定役務の需要者は、ホストクラブにおいて飲食の提供を受 けようとする女性であり、引用商標の需要者は飲食の提供を受ける者であ って、そこには女性も含まれるから、飲食の提供を受けようとする女性と いう点で共通する。また、前記ウのとおり、本願商標の指定役務及び引用商標の指定役務に関連する物品は共通するので、これらについての業者すなわち取引者も共 通する。
オ 業種
本願商標の指定役務と引用商標の指定役務に係る飲食店は、飲食の提供 という点で共通し、その提供者は食品衛生法3条にいう食品等事業者や、 食品リサイクル法2条4項2号にいう食品関連事業者に当たり、また、日 本標準産業分類において同じ大分類「飲食サービス業」であり、中分類「飲 食店」でも一致するから(乙18)、業種が共通する。
カ 当該役務に関する業務や事業者を規制する法律
本願商標の指定役務と引用商標の指定役務に係る飲食店は、食品衛生法 54条、55条、食品衛生法施行令35条1号により営業許可を受けなけ ればならず、また、食品リサイクル法2条4項2号、8条により、主務大臣 の指導及び助言の対象等となる。 また、本願商標の指定役務の提供は、風営法2条1項1号、3条より公安 委員会の営業許可を受けていることが前提となるが、引用商標の指定役務 も、営業所内の照度や構造によっては風俗営業に当たり得る(同法2条1\n項2号、3号)。
キ 営業主体について
飲食業界においては、提供する飲食物が相違する様々な店舗を同じ経営 者が運営することは珍しくない(乙27、28)。 また、本願商標の指定役務に係るホストクラブの経営者においても、カ フェ、炉端焼き、レストラン、タピオカ店、ピザレストラン、寿司屋、さら にインドカレー店等の飲食店を運営している場合もある(乙22、30な いし33)。
(2) 前記(1)によれば、本願商標の指定役務と引用商標の指定役務とは、飲食物 を提供するという点で共通し、当該役務に関する業務や事業者を規制する法 律も共通し、役務を提供する業種、役務の提供の手段、目的又は場所、役務の 提供に関連する物品、需要者等の範囲が共通し、かつ、同一の事業者が提供す る場合もあるから、これらを総合的に考慮すると、本願商標の指定役務と引 用商標の指定役務に同一又は類似の商標が使用されたときには、同一営業主 の提供に係る役務と誤認されるおそれがあるといえる。原告は、前記第3の1(1)のとおり、本願商標の指定役務と、引用商標の指定 役務は、需要者、宣伝広告、価格帯、店舗の外観及び内装、提供に関連する物 品等において異なる旨主張するが、同主張は、本願商標の指定役務でないホ ストクラブにおける「接待の提供」に着目したものであり、直ちに採用できな い。
(3) そうすると、本願商標の指定役務と引用商標の指定役務は、商標法4条1 項11号にいう類似の役務に当たるというべきである。原告がるる主張する 事情は、いずれも上記結論を左右するものにはなり得ない。
2 本願商標と引用商標の類似性について
(1) 本願商標について
本願商標は、「HEAVEN」の文字を標準文字で表してなるものであり、\n「HEAVEN」は、「天国」を意味する英語である(ベーシックジーニアス 英和辞典第2版。平成29年11月20日発行。乙3)。また、国語辞典(広 辞苑第7版。乙4)においても「ヘブン」(heaven)の語が「天。天国。」 の意味を有する語として掲載されているから、我が国の需要者においても容 易に意味が理解される親しまれた英語といえる。 そうすると、本願商標は、「ヘブン」の称呼及び「天国」の観念を生じるも のである。
(2) 引用商標について
ア 引用商標は、上段に、図形部分すなわち右手に器に入ったカレーを、左手 にナンを持っているインド人らしき人物の図形を配し、中段には、赤茶色 の二本の線の間を黄色で着色した円弧状の帯状図形中に同じ赤茶色で「イ ンドカレーヘブン」の片仮名を配し、下段に、大きく顕著に、黄色の太字を 赤茶色の線で縁取りして「Heaven」を配してなる、図形と文字との結 合商標である。
引用商標は、図形部分、中段及び下段の各文字部分からなるところ、各構\n成部分は重なることなく配置され、商標全体において占める大きさ、態様 が異なっている上に、中段の「インドカレーヘブン」及び下段の「Heav en」の各文字部分においても、書体や文字の大きさ、円弧状の帯状図形の 有無等の態様が異なっており、直ちに、三つの構成部分からなるものと認\n識し得るものであるから、三つの構成部分のそれぞれが、視覚的に分離し\nて把握されるものといえる。
イ 引用商標の構成中、下段の「Heaven」の文字部分は、黄色の太字を\n赤茶色の線で各文字を縁取りし強調するように、大きく表されていること\nに鑑みると、視覚的に、「Heaven」の文字部分を強く印象づける特徴 を備えているといえ、さらに、前記(1)のとおり、「Heaven」の文字は、 我が国においても容易に意味が理解される親しまれた英語である。そして、 「Heaven」の語から生じる「ヘブン」の称呼や「天国」の観念は、本 願商標と引用商標に共通する「飲食物の提供」という役務との関係で、役務 の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法又\nは時期その他の特徴、数量又は価格と関連性を有することは想定できない から、「Heaven」の文字は、自他役務を識別する標識としての機能が\n強いといえる。
これに対し、引用商標の構成中、上段の図形部分は、インドカレーとナン\nを持ったインド人らしき人物を示すものであるであるところ、これは、提 供の対象となる飲食物を示すにとどまり、それを超えて特別な印象を与え るものとはいえないし、また、中段の「インドカレーヘブン」の文字部分は、 下段の「Heaven」の文字部分に比べて小さく、また、「インドカレー」 の部分は提供の対象となる飲食物を示すものであって、自他商品の識別機 能を有するものではなく、現に、引用商標の商標権者のホームページ(甲6\n3)では、「ヘブンで宴会いかがですか」との広告をしたり、店舗を「ヘブ ン深作店」と表示するなどしている。\n
ウ そうすると、引用商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取\n引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものといえず、 下段の「Heaven」の文字部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の 出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえるから、引用商 標の構成から「Heaven」の文字部分を要部として抽出し、他人の商標\nと比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきであ る。

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令和4(行ケ)10078  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年1月17日  知的財産高等裁判所

「AROUSE」が先行商標「Arouge」と類似するかが争われました。知財高裁は類似するとして、無効理由なしとした審決を取り消しました。

(1) 本件商標について
本件商標は、別紙1のとおり「AROUSE」の文字をスクリプト書体風 に表してなるところ(本件審決は「U」が小文字である旨認定するが、「U」\nは大文字と小文字が同一であるところ、本件商標においては他の大文字と等 しい大きさで表されているから、大文字の「U」とみるのが自然である。)、\n同文字は、「アラウズ」と称呼され、「目覚めさせる、刺激する」等を意味す る英単語として英和辞典に載録されているものの、この語が我が国において 一般に広く親しまれた語であるとまではいい難いものであるから、広く一般 には特定の意味を有しない一種の造語として理解、認識されるというのが相 当である。そして、特定の意味を有しない造語にあっては、我が国において 広く親しまれているローマ字読み又は類似の英単語の読みに倣って称呼され るとみるのが自然であるところ、ローマ字読みに倣えば「アロウゼ」と称呼 され、また、「AROU」については、我が国において「around」(〜 の周囲、およそ〜)との語が非常に馴染み深い英単語として定着しているこ とを考慮すると、この英単語の読み「アラウンド」に倣えば「アラウゼ」と 称呼されると認められ、「アラウズ」との称呼は、前示のとおり、一般に広く 親しまれたものとはいい難い。 そうすると、本件商標は、一般には「アロウゼ」又は「アラウゼ」の称呼 を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2) 引用商標2ないし4について
引用商標2ないし4は、別紙2の2ないし4のとおり、いずれも、長方形 の図形の中に、上段に「Arouge」の文字を、下段にリング形状の図形 を配したものであるが、長方形の図形は背景図形として看取され、リング形 状図形部分は、一見して特定の事物を表したものと認識することは困難であ\nり、指定商品との関係においても特定の意味合いを想起させるものではない から、それ自体から直ちに特定の称呼及び観念を生じるものとはいい難い。 そうすると、これらの図形部分からは出所識別標識としての称呼及び観念は 生じないと認められる。
一方で「Arouge」の文字部分については、上段に目立つ態様で配さ れており、文字が本来的に強い訴求力を有することに鑑みると、需要者又は 取引者は、引用商標2ないし4のうち「Arouge」の文字部分に着目す るといえ、この部分が要部と認められるが、この文字は、辞書等に載録され た成語とは認められず、また、特定の意味合いを想起させるものとして一般 に知られているということもできない。もっとも、特定の意味を有しない造 語にあっては、我が国において広く親しまれているローマ字読み又は類似の 英単語の読みに倣って称呼されるとみるのが自然であるところ、ローマ字読 みに倣えば「アロウジェ」又「アロウゲ」と称呼され、また、前記 のとお り、我が国においては「around」(〜の周囲、およそ〜)との語が非常 に馴染み深い英単語として定着していることを考慮すると、「アラウジェ」又 は「アラウゲ」と称呼されると認められ、フランス語風に「アルージュ」と いう称呼が生じ得ないではないとしても、一般的なものとはいい難く、「アル ージェ」という称呼が生じることは、更に想定し難い。 なお、本件審決は、引用商標2ないし4の称呼を「アルージェ」と認定す るが、その理由は審決文からは必ずしも明らかではないものの、同2ないし 5を一体として捉え、同5の上段にカナ文字で併記された「アルージェ」の 文字をもって、同2ないし4についても「アルージェ」の称呼を生じると解 しているかのようにも読める。しかしながら、別個独立の商標についての称 呼等の判断はそれぞれ個別に行われるべきであるし、商標法は、商標のみの 移転を可能とし、同一の範囲のみならず類似の範囲まで商標権に排他的効力\nを付すなど、当該商標の商標権者の本来的使用範囲よりも広い範囲の効力を 付しているから、その認定は需要者又は取引者を基準として客観的にされる べきものであり、同一商標権者が有する他の商標(甲第29号証ないし33 号証によると、引用商標1及び5と引用商標2ないし4の商標権者はいずれ も原告である。)を参酌して、当該商標権者の意図にのみ従ってその認定をす ることは相当ではない。したがって、カナ文字が併記されている引用商標1 及び5が「アルージェ」と称呼されることは明らかであるが、そうであるか らといって、別個独立の商標である引用商標2ないし4の称呼を「アルージ ェ」と認定できるものではない。
そうすると、引用商標2ないし4は、「アロウジェ」若しくは「アロウゲ」 又は「アラウジェ」若しくは「アラウゲ」の称呼を生じ、特定の観念を生じ ないものである。
(3) 商標の類否について
前記(1)及び(2)のとおり、本件商標と引用商標2ないし4の要部の称呼を対 比すると、本件商標が「アロウゼ」と、引用商標2ないし4が「アロウジェ」 と称呼される場合や、本件商標が「アラウゼ」と、引用商標2ないし4が「ア ラウジェ」と称呼される場合があり得る。「ゼ」と「ジェ」はいずれもサ行濁 音で母音「e」を共通にするため、両商標を時と所を異にして全体として一 連に称呼するときは、相似た語韻・語調となり、明確には聴別することがで きず、称呼において酷似するといえる。
また、本件商標と引用商標2ないし4の要部の外観とを対比すると、それ ぞれの書体を異にし、本件商標はその構成文字中の5字が大文字で表\されて いるのに対し、引用商標2ないし4は語頭の文字以外は小文字で表されてい\nるとの差異はあるが、商標の使用に当たっては、書体の相違やアルファベッ トの大文字・小文字の相違があっても同一の称呼を生じる場合は社会通念上 同一の商標とみなされるのであるから(商標法38条5項かっこ書、50条 参照)、上記のとおり両商標が酷似する称呼を生じる場合がある以上、このよ うな相違を殊更に重視すべきものではない。一方で、本件商標及び引用商標 はいずれも6文字と同じ文字数で構成されており、文字数が僅少とはいい難\nいところ、文字の相違は語中の5文字目のみが相違するというのであるから、 5文字目が全体に埋没して、外観上、両商標を見誤ることも多いとみるのが 相当である。
そして、本件商標と引用商標2ないし4の要部は、いずれも特定の観念を 生じないものであるから、観念上、比較することはできない。
・・・
以上からすると、本件商標と引用商標2ないし4の要部は、観念において 比較することができず、外観において見誤ることも少なくないと想定され、 さらに、称呼において酷似するものであるところ、引用商標2ないし4は、 それら要部に出所識別機能を有しない図形部分が加わっているにすぎないも\nのであるから、全体としても要部が与える印象を覆すものではない。そうす ると、本件商標を引用商標2ないし4の指定商品に使用した場合には出所を 混同させるおそれがあり、両商標は、相紛れるおそれのある類似の商標とい うべきである。
したがって、本件商標が商標法4条1項11号に該当しないとした本件審 決の判断には、誤りがある。

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令和4(行ケ)10067  商標登録取消決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年12月26日  知的財産高等裁判所

OLYMBEER」の欧文字と「オリンビアー」の片仮名を2段表記の商標が、異議申\し立てで、「オリンピアード」および「OLYMPIAD」から、4条1項6号違反として取り消されました。知財高裁は、同号が規定する著名性ありとは認められない、非類似商標であるとして、審決を取り消しました。

ア 商標法4条1項6号は、同号に掲げる団体等の公共性に鑑み、その信用 を尊重するとともに、出所の混同を防いで取引者、需要者の利益を保護す ることに趣旨があり、そこでいう著名性は、同号所定の標章が、指定商品 の取引者、需要者の間に広く認識されていることを要するものというべき である。なお、被告は、前記第3の2 アのとおり、ここにいう著名性は、 一商圏以上の取引者、需要者に広く認識されていれば足りる旨主張するが、 引用標章のように地域性が問題とならず、また、指定商品特有の事情が主 張・立証されているわけでもない標章も含めて被告主張のように解すべき 理由はなく、この点が本件において結論に影響を与える事柄であるとも思 えない。
イ 引用標章は、前記(1)アのとおり、1991年には、オリンピック憲章上 独立した項が設けられ、付属細則上各NOCにその名称を保護すべき努力 義務が課され、2004年には、「OLYMPIC」、「オリンピック」 の文字及び五輪の図形と同様に、「オリンピック資産」とされている。 また、前記(1)イのとおり、平成25年1月7日に、招致委員会が、異議 申立人へ提出した立候補ファイルには、我が国において、引用標章が、オ\nリンピック・シンボル、「オリンピック」と並んで、オリンピック競技大 会、異議申立人及びJOCを表\示する著名な標章である旨記載されている。 しかし、前者は、あくまでオリンピック憲章上の規定にすぎず、その邦 訳が出版されるようになったとしても、広く本件商標の指定商品の取引 者・需要者の目に触れる性質のものとは認められない。また、後者につい ても、招致委員会の認識を示すものにすぎず、オリンピック大会を誘致す るために日本の法制度上引用標章が保護されることをアピールするとい う性質のものでもあるから、それが取引者・需要者の認識を反映したもの とは直ちにいえない。
ウ 次に、前記(1)ウのとおり、「Games of the XXXII Ol ympiad」の表示に関し、第32回オリンピック競技大会に関するウ\nェブサイトの記事や、組織委員会の資料に当該表示がされており、昭和3\n9年の東京オリンピックの記念映画のタイトルとして「東京オリンピック」 (Tokyo Olympiad)と併記されているとしても、日本語表記\nと同時にされているもの(乙4、22、28)や、「TOKYO2020」 の大きな表示と共にされているもの(乙20、21、23)であり、看者\nの注意を惹くものとはいい難い。また、同表示が、公式商品で用いられたとしても、英文表\記の必要に伴ってされたものとも考えられ、これにより引用標章が著名となったことを裏付けるに足りるものとまではいい難い。
エ また、前記(1)エのとおり、平成24年以降、「オリンピアード」が、オ リンピック大会が開催される4年毎の暦年であることを解説する趣旨の 新聞記事がみられるものの、そのような解説が必要なこと自体、「オリン ピアード」の意味はもちろん、「オリンピアード」という語そのものが一 般には知られていなかったことを示すものともいえる。昭和39年及び令 和3年に東京で開催されたオリンピック競技大会で、各時点の天皇が、開 会宣言において「オリンピアード」に言及したという記事等についても、 事実を客観的に報道するにとどまる。被告は、前記第3の2(1)キのとおり、日本の家庭の新聞購読率を挙げて、国民一般がこれらの記事により引用標章の意味を広く知るに至った旨主張するが、これらの記事を読む機会があったからといって、需要者の多く が「オリンピアード」に関心を持ち、さらに、これがオリンピック大会と 同義であると認識するに至ると直ちにいえるものではない。また、文化オ リンピアードについても新聞記事とされているところ、これらの記事は、 オリンピック大会に関連した文化行事として「文化オリンピアード」が存 在することを報道するものではあるが、需要者の間で記事の掲載以前から 引用標章が知られていたことを示すものでないことはもちろん、このよう な記事によって、需要者の多くが「文化オリンピアード」に関心を持つと まではいい難く、「オリンピアード」がオリンピック大会と同義と認識す るに至るともいい難い。
オ 前記1(2)の各種辞書における「OLYMPIAD」(「Olympia d」を含む。)及び「オリンピアード」の項では、古代ギリシアのオリュ ンピア紀あるいはこれに類する意味が冒頭に掲載されるものが多数であ り、「オリンピック競技大会」の意味だけが掲載されている英和辞典(乙 9)でも、「Olympic」の語が大きく表示されているのに対し、「O\nlympiad」の語は通常の大きさにとどまっている。 カ 以上の事情を総合すれば、引用標章は、関係者や識者等の間では著名な ものであると認められるが、それを超えて、本件商標の設定登録日におい て、商標法4条1項6号が規定する著名性を有する、すなわち本件商標の 指定商品の取引者、需要者の間で広く認識されているものであると認める ことについては、疑義も残るといわざるを得ず、少なくとも他の商標との 類似性の判断において、著名性が高いことを前提にすることは相当でない というべきである。
3 本件商標と引用標章の類似性について
(1) 検討
ア 本件商標は、「OLYMBEER」の欧文字と「オリンビアー」の片仮 名を2段に表示してなるものである。引用標章は、「OLYMPIAD」の欧文字又は「オリンピアード」の片仮名である。本件商標と引用標章は、2段か1段かという点において異なる。また、欧文字同士、片仮名部分同士を比較しても、欧文字部分では8文字中冒頭の4文字が共通するのみであり、片仮名部分では本件商標が6文字、引用\n標章が7文字であり、冒頭の「オリン」と、5文字目・6文字目の「アー」 が共通するが、これらの文字の間に、本件商標では濁点を付した「ビ」が、 引用標章では半濁点を付した「ピ」がある上、引用商標では語末に濁点を 付した「ド」があるという点で相違する。 以上によれば、本件商標と引用標章は、外観において相紛れるおそれは ない。
イ 本件商標は、欧文字と片仮名が2段となっており、片仮名部分が欧文字 部分の読み仮名となっていると理解されることから、「オリンビアー」の 称呼を生じる。引用標章からは「オリンピアード」の称呼を生じる。 両者は、「オリン」の部分と「アー」の部分を共通にするものの、両者 の間に本件商標では濁音「ビ」が、引用標章では半濁音「ピ」があり、さ らに、語末が、本件商標が長く伸びる母音で終わるのに対し、引用標章が 濁音の「ド」で終わるという点で相違する。 以上によれば、本件商標と引用標章は、称呼において相紛れるおそれは ない。
ウ 本件商標は、辞書に記載されておらず、造語と認められ、特定の観念を 生じない。 引用標章は、前記1(2)のとおり、辞書に記載されている「オリュンピア 紀」、「国際オリンピック競技大会」の観念を生じる。そうすると、両者は観念において比較できない。
エ 本件商標の指定商品の需要者と、引用標章が使用されるオリンピック競 技大会に関心を有する者とは、一般的な消費者ないし国民であるという意 味で共通性を有するが、前記アないしウのとおり、本件商標と引用標章は 外観及び称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できない のであるから、両者は類似しないものというべきである。

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令和4(行ケ)10041  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年10月31日  知的財産高等裁判所

 御守りと記載された御守りの図形商標について、文字商標「おまもり」などの先願有りといして拒絶された審決の取消を求めました。知財高裁は、審決の判断を維持しました。ぐるなびが出願人で、指定商品・役務は35類小売など、39類輸送、41類娯楽情報の提供などです。

原告は、前記第3の 1 のとおり、本願商標の構成中の「御守」の文字は\n御守の内容・種類を表しているにすぎず、全体的なデザインとともに一体的\nに把握されるものであるから、本願商標がその指定役務に使用される場合、 本願商標からは役務の出所識別標識としての「オマモリ」の称呼及び「御守」 の観念は生じない旨主張する。 しかしながら、前記1(1)のとおり、御守袋の上に「御守」と表示されてい\nる本願商標は、御守袋の形状の図案それ自体からして、「御守」の観念を生じ、 「オマモリ」の称呼が生じるものといえるところ、その表面の「御守」の文\n字は、その表面中央にあって文字として記載され、かつ、文字としてはその\n記載しかない以上は、当然のこととして、当該御守袋が何であるかを示すも のというべきであり、そこからも「御守」の観念を生じ、「オマモリ」の称呼 が生じることは明らかである。そして、本願商標に係る指定役務のうち、少 なくとも、おむつ、食品、化粧品、ペット用品、ベビーオイル等を含む第3 5類の商品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 (以下「小売等役務」という。)について、御守が、これら商品の小売等役務 の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法又\nは時期その他の特徴、数量又は価格と関連性を有することは想定できないか ら、上記のように本願商標から生じる「御守」の観念や「オマモリ」の称呼 が本願商標の当該指定役務の内容、対象そのものを示すものとは理解されな い。 このように本願商標から生じる「御守」の観念や「オマモリ」の称呼が本 願商標の当該指定役務の内容、対象を示すものとはいえない以上は、これら の観念や称呼が役務の出所識別標識として生じる可能性を否定することはで\nきないから、原告の上記主張を採用することはできない。
(2) 商標の類否判断の誤りの主張について
本願商標の構成全体から格別の称呼、観念が生ずることはないことを前提\nとする原告の主張(前記第3の 1 ア)については、その前提に誤りがある ことは前記のとおりであるから、採用することができない。 次に、原告は、前記第3の 1 イのとおり、仮に、本願商標から「オマモ リ」の称呼、護符(御守)の観念が生じたとしても、本願商標は、全体とし て「白色の二重叶結びの紐を有し、ピンク色の桜の花弁模様を配し、『御守』 の文字を御守袋の表面に表\した赤色の御守」との印象を強く抱かせるもので あるから、本願商標と引用商標の外観上の顕著な相違から看取できる印象は、 称呼及び観念から看取できる印象を凌駕している旨主張する。
しかしながら、本願図形部分である、「白色の二重叶結びの紐、ピンク色の 花弁模様及び赤色の色彩」のうち、「白色の二重叶結びの紐」は御守袋の特徴 にほかならず、また、「ピンク色の花弁模様及び赤色の色彩」は御守袋として は格別印象に残るような形状・色彩を有するものではないから御守袋を構成\nする地模様と認識されるのがせいぜいのところであり、それらが単独で看者 に強い印象を与えるものではない。 そうすると、本願商標から生じる「オマモリ」の称呼及び護符(御守)の 観念が本願図形部分から看取できる印象に凌駕されることはない。 したがって、原告の上記主張を採用することはできない。
(3) 指定商品・指定役務の類否判断の誤りの主張について
原告は、引用商標1の指定商品の製造・販売と小売等役務の提供が同一事 業者によって行われていることは通常とまではいえないから、引用商標1の 指定商品を同指定商品に係る小売等役務を提供する事業者が製造又は販売す る商品であると誤認するおそれがあるとはいえない旨主張する。 しかしながら、ある製品の製造業者が当該製品の販売場を持つなどして、 当該販売場を置くとともに、同時に、顧客に対する当該製品の品揃え・陳列、 接客等のサービスを提供するなどして小売等役務の提供場所とし、当該製品 の販売行為を促進して最終的には当該製品の販売行為により収益を上げよう とすることは、自然な商業的取引の在り様といえ、これと異なる特殊な事情 がない限りは、通常行われることと推認されるものというべきである。
そして、引用商標1の指定商品について、その製造・販売と小売等役務の 提供が別事業者によって行われていることが通常であるとするような特殊な 事情は本件証拠からは認められず、かえって、本願商標の指定役務である「菓 子、パン、サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットド ッグ、ミートパイ」の小売等役務に係る商品と、これに類似する引用商標1 の指定商品である「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつまめ・ゆであずきを除 く。)、パン」について、自社工場を持つ営業主がそれら製品を自社店舗で販 売するなど、その製造販売と小売等役務が同一営業主によって行われること がよくあるとの実情は公知の事実ともいえ、被告からも、その一例の指摘が ある(乙11ないし17)。

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令和4(行ケ)10033  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年11月21日  知的財産高等裁判所

 商標「MIRAI」(指定商品12類「車」など)が、4条1項15号違反かかが争われました。知財高裁は、分割要件を満たさず、出願日遡及無しとした審決を維持しました。出願人は、印紙代無しの大量出願で業界を騒がせた例の人です。商標は最後にあります。デザイン化されており、そもそもMIRAIと読めるのか?等はあります。同項15号は、出願日に該当しなければ適用がないので、分割要件を満たすのか?も争われています。

商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と 他人の表示との類似性の程度、他人の表\示の周知著名性及び独創性の程度、 当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目 的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取 引の実情等に照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普 通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきである。 商標法4条1項15号に該当する商標であっても、商標登録出願の時にこ れに該当しなければ、同号は適用されないので(同条3項)、本件において商 標登録出願がいつであるかが問題となる。
この点につき、原告は、前記第3の1(1)のとおり、商標法施行規則22条2 項は違憲違法であり、その結果、本願は商標法10条1項による商標登録出 願の要件を満たすものとなり、同条2項が規定する出願日遡及の効果が生ず るから、本件における出願日は、原々商標登録出願がされた平成26年9月 8日になる旨主張するので、以下検討する。
商標法10条1項は、「商標登録出願人は、商標登録出願が審査、審判若し くは再審に係属している場合又は商標登録出願についての拒絶をすべき旨の 審決に対する訴えが裁判所に係属している場合であって、かつ、当該商標登 録出願について第76条第2項の規定により納付すべき手数料を納付してい る場合に限り、2以上の商品又は役務を指定商品又は指定役務とする商標登 録出願の一部を1又は2以上の新たな商標登録出願とすることができる。」 と定めている。
このように、分割出願においては、もとの商標登録出願の指定商品等を2 以上に分けることが当然の前提となっているから、もとの商標登録出願と分 割出願で指定商品等が重複するのを避けるため、もとの商標登録出願から分 割出願に係る指定商品等を削除する必要がある。 この点につき、平成17年最高裁判決は、「商標法10条は、「商標登録出 願の分割」について、新たな商標登録出願をすることができることやその商 標登録出願がもとの商標登録出願の時にしたものとみなされることを規定し ているが、新たな商標登録出願がされた後におけるもとの商標登録出願につ いては何ら規定していないこと、商標法施行規則22条4項は、商標法10 条1項の規定により新たな商標登録出願をしようとする場合においては、新 たな商標登録出願と同時に、もとの商標登録出願の願書を補正しなければな らない旨を規定していることからすると、もとの商標登録出願については、 その願書を補正することによって、新たな商標登録出願がされた指定商品等 が削除される効果が生ずると解するのが相当である。」旨説示して、新たな商 標登録出願がされたことにより、当然にもとの商標登録出願が補正されるも のとはいえないことを明らかにしている。そうすると、上記のように、もとの 商標登録出願と分割出願で指定商品等が重複するのを避けるためには、もと の商標登録出願から分割出願に係る指定商品等を削除する補正が必要となる ことは、商標法10条1項自体が想定しているものということができる。 そして、商標法施行規則22条2項は、特許法施行規則30条を準用し、商 標法10条1項の規定により新たな商標登録出願をしようとする場合におい て、もとの商標登録出願の願書を補正する必要があるときは、その補正は、新 たな商標登録出願と同時にしなければならないとしているところ、これは、 もとの商標登録出願から分割出願に係る指定商品等を削除する必要が生ずる という、同項が想定する事態に対処するものであるというべきであり、上記 最高裁判決も、このような意味で、商標法施行規則22条4項(現2項)が商 標法10条1項に適合することを明らかにしていると理解される。 本件においては、そもそも、本願の商標登録出願時はもとより現在に至る まで、原商標登録出願について、本願に係る指定商品を削除する補正がされ たとは認められず、商標法施行規則22条2項の要件を欠くばかりか、もと の商標登録出願の指定商品等を2以上に分けるという前記 の分割の前提を も欠くものである。そうすると、本願の商標登録出願は、商標法10条1項の 規定による商標登録出願の要件を満たすものではないから、分割出願として 不適法であり、同条2項が規定する出願日遡及の効果は生じないものであり、 これと同旨の本件審決の判断に誤りはなく、出願時は平成27年9月24日 となる。
2 本願商標の商標法4条1項15号該当性について
(1) 引用商標の周知著名性について
トヨタ社は、平成25年11月20日から同年12月1日に開催された第 43回東京モーターショー2013にトヨタ燃料電池車を出展し(乙98)、 平成26年9月6日付けの日本経済新聞(乙34)では、トヨタ社がトヨタ燃 料電池車の名称を「ミライ」とし、米国の特許商標庁に「TOYOTA MI RAI」を商標登録する手続を進めていることが報じられている。 そして、トヨタ社は、同年11月18日、トヨタ燃料電池車を同年12月1 5日に販売し、その名称は「MIRAI(ミライ)」となる旨発表し、新聞各\n紙やウェブサイトで報じられ(乙4ないし6、35、36等)、これらの記事 のうち、写真が掲載されているものについては、モデル車両のボディやナン バープレートに引用商標が表示されている。\nまた、平成27年1月15日には、自動車関係のウェブサイトでトヨタ燃 料電池車が同年の受注目標400台に対し1500台を受注したことが報じ られ(乙9)、同月23日には、産経新聞で、トヨタ燃料電池車の生産能力を\n平成29年に増強することが報じられており(乙10、91)、その他、本件 出願前に、水素と空気中の酸素が反応して走る環境負荷の低い自動車として、 トヨタ燃料電池車が官邸や地方公共団体に納入されたことが報じられている (乙38、87、89、90)。これらの記事のうち、写真が掲載されている ものについては、モデル車両のナンバープレートに引用商標が表示され、そ\nれ以外のものについては、本文で「MIRAI(ミライ)」の表示があること\nが確認できる。
以上によれば、引用商標は、本願商標の商標登録出願時には、自動車の取引 者及び需要者の間で、トヨタ社の取扱に係るトヨタ燃料電池車を表示するも\nのとして周知著名だったものというべきである。 また、本願商標の指定商品「航空機、航空機の部品及び附属品、鉄道車両、 鉄道車両の部品及び附属品」と引用商標が使用される「燃料電池車」は、人や 物品の輸送を目的とするもので、商品の用途や取引者及び需要者に共通性が あるし、大手企業において多角経営が行われることは一般的であり、トヨタ 社の燃料電池車(MIRAI)の技術を応用した水素で走るハイブリッド鉄 道車両開発をトヨタ社、JR東日本及び日立製作所が進めていること(乙6 3、96)も考慮すると、本願商標の指定商品と引用商標が使用される「燃料 電池車」とは、密接な関連性を有しているといえる。このように、本願商標の 指定商品と引用商標が使用される商品の関連性並びに取引者及び需要者の共 通性が認められるから、本願商標の指定商品の取引者、需要者の間において も、引用商標は、トヨタ社の取扱に係るトヨタ燃料電池車を表示するものと\nして周知著名だったものというべきである。 そして、証拠(乙1ないし3、19ないし22、25ないし33、42ない し87等)によれば、本願商標の商標登録出願日以降も、トヨタ社はトヨタ燃 料電池車に引用商標や「MIRAI」の欧文字等を使用し、「MIRAI」や 「ミライ」の文字は、トヨタ社の取扱に係るトヨタ燃料電池車の名称を表示\nする商標として、新聞やウェブサイトに取り上げられており、上記周知著名 性は、現在に至るまで維持されているといえる。 なお、原告は、前記第3の1(2)のとおり、別件商標が平成25年12月25 日に出願され、その後商標登録されていることからすると、引用商標が、トヨ タ燃料電池車を表示するものとして、平成26年9月7日以前より、需要者\nの間においても広く知られていたとの本件審決の認定は疑わしいなどと主張 する。 しかし、別件商標の存在は、トヨタ燃料電池車が上記出願日及びそれ以降 に周知著名性を有するとの判断を左右するものではないから、原告の主張は、 当を得ないものというほかない。
(2) 本願商標と引用商標の類似性の程度について
ア 本願商標
本願商標は標準文字・ローマ字の「MIRAI」からなり、「ミライ」の 称呼を生じる。 また、本願商標は、日本語の「未来」に由来することが容易に理解でき、 同観念を生じるほか、前記(1)のとおり、引用商標がトヨタ燃料電池車を表\n示するものとして、本願商標の指定商品の取引者及び需要者並びに自動車 の取引者及び需要者の間で周知著名であることから、「トヨタ燃料電池車 のブランド名」の観念も生じる。
イ 引用商標
引用商標は「MIRAI」の文字をデザイン化したものと認識すること ができ、引用商標からは「ミライ」の称呼を生じる。 また、引用商標及び「MIRAI」の文字は、引用商標がトヨタ燃料電池 車を表示するものとして、自動車の取引者及び需要者並びに本願商標の指\n定商品の取引者及び需要者の間で周知著名であることから、「未来」の観念 と共に、「トヨタ燃料電池車のブランド名」の観念も生じる。
ウ 類否
引用商標は「MIRAI」の欧文字をデザイン化したものであるから、本 願商標と引用商標は外観上相紛れるものである。本願商標と引用商標は「ミライ」の称呼を共通にする。本願商標と引用商標は、「未来」及び「トヨタ燃料電池車のブランド名」という観念においても共通する。そうすると、本願商標と引用商標は類似し、その類似性の程度は高いものというべきである。
(3) 混同のおそれについて
以上(1)及び(2)において認定したとおり、引用商標は、本願商標の商標登録 出願日である平成27年9月24日には、本願商標の指定商品の取引者及び 需要者並びに自動車の取引者及び需要者の間で、トヨタ社の取扱に係る燃料 電池車を表示するものとして周知著名であり、現在に至っていること、本願\n商標と引用商標は類似し、その類似性の程度は高いことからすると、本願商 標は、原告がこれをその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をし て、引用商標を連想又は想起させ、その商品がトヨタ社あるいは同社と経済 的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのよ うに、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきで ある。

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令和3(行ケ)10081  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年10月18日  知的財産高等裁判所

 原告はもともと「ゴミサー」という登録商標を保有するメーカで、被告は原告の代理店でした。代理店契約消滅後、原告は、商標権の更新をしなかったために、当該商標権は消滅しました。被告は、これを知って、同じ商標を出願しました。原告は周知性違反などを主張しましたが、無効理由なしとした審決が、知財高裁でも維持されました。

(ウ) 上記(イ)のとおり、平成12年度ないし平成18年度の業務用生ごみ 処理機全体の市場における原告商品の占有率は、概ね10%前後で推移 していたといえるところ、弁論の全趣旨によれば、平成19年度ないし 平成26年度も同程度の市場占有率であったと認められる。
(エ) 以上のとおり、平成12年度から平成26年度までの間、原告商品の 市場占有率は、概ね10%前後にとどまっていたことからすれば、本件 商標の出願時以前において、原告商品が高い市場占有率を有していたも のとはいえない。
ウ 原告商品の販売台数について
(ア) 前記1(1)エのとおり、原告商品は、販売を開始した平成4年から本件 商標が出願された前年である平成26年までの間に累計で2514台が 販売されたものの、年間の販売台数は、平成11年の284台をピーク に年々減少し、平成16年に100台を下回って以降は毎年70台前後 で推移していたものである。
(イ) 以上のとおり、原告商品の販売台数は、最も多かった年でも284台 にとどまる上、本件商標の出願時以前の約10年間は毎年70台前後で 推移してきたことからすれば、本件商標の出願時以前において、原告商 品の販売台数が多かったとはいえない。
エ 原告商品に関する報道、広告宣伝等について
(ア) 前記1(2)のとおり、原告は平成6年、平成8年及び平成12年に各種 の賞を受賞し、原告商品は平成9年、平成15年及び平成17年に新聞 報道において取り上げられたことがあったものの、これらはほとんどが 山形県内又は酒田市内における受賞歴又は報道歴である上、その後、本 件商標の出願時までの約10年間において、原告又は原告商品に関する 報道がされたなどの事情は存しない。
(イ) また、原告商品に係る広告宣伝活動についてみても、原告商品につい ては、販売代理店であった被告において通常の営業活動を超える広告宣 伝活動がされていたなどの事情は存せず、また、原告において多額の広 告宣伝費を支出していたなどの事情も存しない。
オ 引用商標の周知性について
(ア) 上記イ及びウのとおり、本件商標の出願時以前において、原告商品が 高い市場占有率を有していたものとはいえず、また、原告商品の販売台 数が多かったとはいえない。これに加え、上記エのとおり、原告の受賞 歴や原告商品に係る報道歴は、ほとんどが山形県内又は酒田市内におけ るものであった上、原告商品に関し、本件商標の出願時以前の約10年 間における報道歴はないこと、原告商品について特別な広告宣伝活動が されていたなどの事情は存しないことも考慮すると、原告商品が平成4 年から20年以上にわたって販売されてきた商品であることや、一般に 業務用生ごみ処理機が相当程度高額な商品であるとうかがわれること (甲7)などを考慮しても、本件商標の出願時及び登録査定時において、 原告商品が高い知名度を有する商品であり、原告商品の名称である引用 商標が周知であったと認めることはできない。

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令和4(行ケ)10041  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年10月31日  知的財産高等裁判所

 審決では、図形商標内にある「御守」の文字について、図形と一体と認識すべきとして、4条1項11号に該当すると判断されました。知財高裁もこれを維持しまし。判決文の最後に本件商標があります。

原告は、前記第3の 1 のとおり、本願商標の構成中の「御守」の文字は\n御守の内容・種類を表しているにすぎず、全体的なデザインとともに一体的\nに把握されるものであるから、本願商標がその指定役務に使用される場合、 本願商標からは役務の出所識別標識としての「オマモリ」の称呼及び「御守」 の観念は生じない旨主張する。
しかしながら、前記1(1)のとおり、御守袋の上に「御守」と表示されてい\nる本願商標は、御守袋の形状の図案それ自体からして、「御守」の観念を生じ、 「オマモリ」の称呼が生じるものといえるところ、その表面の「御守」の文\n字は、その表面中央にあって文字として記載され、かつ、文字としてはその\n記載しかない以上は、当然のこととして、当該御守袋が何であるかを示すも のというべきであり、そこからも「御守」の観念を生じ、「オマモリ」の称呼 が生じることは明らかである。そして、本願商標に係る指定役務のうち、少 なくとも、おむつ、食品、化粧品、ペット用品、ベビーオイル等を含む第3 5類の商品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 (以下「小売等役務」という。)について、御守が、これら商品の小売等役務 の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法又\nは時期その他の特徴、数量又は価格と関連性を有することは想定できないか ら、上記のように本願商標から生じる「御守」の観念や「オマモリ」の称呼 が本願商標の当該指定役務の内容、対象そのものを示すものとは理解されな い。 このように本願商標から生じる「御守」の観念や「オマモリ」の称呼が本 願商標の当該指定役務の内容、対象を示すものとはいえない以上は、これら の観念や称呼が役務の出所識別標識として生じる可能性を否定することはで\nきないから、原告の上記主張を採用することはできない。
(2) 商標の類否判断の誤りの主張について
本願商標の構成全体から格別の称呼、観念が生ずることはないことを前提\nとする原告の主張(前記第3の 1 ア)については、その前提に誤りがある ことは前記のとおりであるから、採用することができない。 次に、原告は、前記第3の 1 イのとおり、仮に、本願商標から「オマモ リ」の称呼、護符(御守)の観念が生じたとしても、本願商標は、全体とし て「白色の二重叶結びの紐を有し、ピンク色の桜の花弁模様を配し、『御守』 の文字を御守袋の表面に表\した赤色の御守」との印象を強く抱かせるもので あるから、本願商標と引用商標の外観上の顕著な相違から看取できる印象は、 称呼及び観念から看取できる印象を凌駕している旨主張する。 しかしながら、本願図形部分である、「白色の二重叶結びの紐、ピンク色の 花弁模様及び赤色の色彩」のうち、「白色の二重叶結びの紐」は御守袋の特徴 にほかならず、また、「ピンク色の花弁模様及び赤色の色彩」は御守袋として は格別印象に残るような形状・色彩を有するものではないから御守袋を構成\nする地模様と認識されるのがせいぜいのところであり、それらが単独で看者 に強い印象を与えるものではない。 そうすると、本願商標から生じる「オマモリ」の称呼及び護符(御守)の 観念が本願図形部分から看取できる印象に凌駕されることはない。 したがって、原告の上記主張を採用することはできない。
(3) 指定商品・指定役務の類否判断の誤りの主張について
原告は、引用商標1の指定商品の製造・販売と小売等役務の提供が同一事 業者によって行われていることは通常とまではいえないから、引用商標1の 指定商品を同指定商品に係る小売等役務を提供する事業者が製造又は販売す る商品であると誤認するおそれがあるとはいえない旨主張する。
しかしながら、ある製品の製造業者が当該製品の販売場を持つなどして、 当該販売場を置くとともに、同時に、顧客に対する当該製品の品揃え・陳列、 接客等のサービスを提供するなどして小売等役務の提供場所とし、当該製品 の販売行為を促進して最終的には当該製品の販売行為により収益を上げよう とすることは、自然な商業的取引の在り様といえ、これと異なる特殊な事情 がない限りは、通常行われることと推認されるものというべきである。 そして、引用商標1の指定商品について、その製造・販売と小売等役務の 提供が別事業者によって行われていることが通常であるとするような特殊な 事情は本件証拠からは認められず、かえって、本願商標の指定役務である「菓 子、パン、サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットド ッグ、ミートパイ」の小売等役務に係る商品と、これに類似する引用商標1 の指定商品である「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつまめ・ゆであずきを除 く。)、パン」について、自社工場を持つ営業主がそれら製品を自社店舗で販 売するなど、その製造販売と小売等役務が同一営業主によって行われること がよくあるとの実情は公知の事実ともいえ、被告からも、その一例の指摘が ある(乙11ないし17)。

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令和4(行ケ)10034  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年9月14日  知的財産高等裁判所

 フランチャイジーが契約解除のわずか4日後に出願した商標について、公序良俗違反(4条1項7号)の無効審決がなされました。知財高裁もかかる判断を維持しました。

本件契約書には、「『XPERIA 修理王』ブランドでの XPERIA 等修理経営 のための FC 契約関係を形成する」(第1条)、「『XPERIA 修理王』の商標… の使用を許諾する。」(第4条1項)とある(前記1 イ 、 )ものの、「本 契約において本部が加盟者に提供する FC サービスの内容は、次の各号とす る。…2)商標・商号・その他の表示の提供」(第2条)、「本部は、加盟者にお\nける XPERIA 等修理業経営について『XPERIA 修理王』の商標・サービスマ ーク、その他営業シンボル・著作物の使用を許諾する。」(第4条1項)、「第 1項に定める許諾に関しては、以下を条件とする。1)加盟者との本契約期間 中ならびに加盟者の事業所内に限る。」(第4条3項)とあり(前記1 イ 、 )、被告は、原告に対し、原告が本件フランチャイズ契約に基づいて運営す る店舗の屋号を「スマホ修理王 新宿店」、「XPERIA 修理王 新宿店」と指 定する旨を通知し(前記1 ウ)、原告は、少なくとも本件フランチャイズ契 約の契約期間中、運営するスマートフォンの修理業に関し「XPERIA 修理王 by スマホ修理王新宿店」の名称を使っていた(前記1 オ)ことからすると、 本件フランチャイズ契約においてフランチャイザーである被告がフランチャ イジーである原告に提供し、許諾の対象となる「商標・商号・その他の表示」\nには、「XPERIA 修理王」だけでなく「スマホ修理王」の商標も含まれるもの と解される(なお、原告は、本件商標(標準文字の「スマホ修理王」)は本件 フランチャイズ契約で規定されていない旨主張するが、上記のとおりである から採用できない。)。
また、原告は、被告が開設する「スマホ修理王 FC 加盟申し込みホームペ\nージ」を利用して本件フランチャイズ契約の申込みをしていること(前記1\nア)、本件フランチャイズ契約終了後、被告より、ウェブサイト等から 「XPERIA 修理王」及び「修理王」の名称を削除するよう求められたのに応 じて、本件ウェブサイトの「XPERIA 修理王 by スマホ修理王新宿店」(スマ ホ修理王の部分は引用商標2)の名称を「新宿駅前 XPERIA 修理専門店」と 変更していること(前記1 ウないしオ)からすると、原告は、「スマホ修理 王」の商標(引用商標1、2)は被告がフランチャイズ事業で使用しており、 その使用のためには被告の許諾が必要であることを十分に認識し、現にその\nような認識の下で、被告のフランチャイジーとして「スマホ修理王」の商標 を使用していたと解するのが相当である。
そうであるにもかかわらず、原告は、本件フランチャイズ契約に関し、平 成30年3月30日付けで、本件解除がされ、WEB サイト等から『XPERIA 修理王』および『修理王』の名称を削除するよう求められたその4日後に本 件商標の登録出願に及び、令和元年8月30日に本件商標の設定登録を受け ると、同年12月20日付けで、フランチャイザーであった被告に対し、被 告が展開するフランチャイズ事業で「スマホ修理王」の商標を使用すること が本件商標の商標権侵害に当たる旨を警告し(前記1 ア、イ)、本件商標の 放棄又は譲渡のために50万円(税別)を支払う用意があると通知した被告 に対し、本件商標の商標権買取価格を含め合計2670万円のライセンス契 約を提案し、代理人間の協議においても100万円から300万円程度では 受け入れられない旨回答した(前記1 イ、ウ)ことが認められる。こうした事実経過等に鑑みれば、本件商標の登録出願は、元フランチャイジーである原告が、被告から本件解除をされたわずか4日後に行ったものであり、これまでと同様の名称を使用することにより被告の顧客吸引力を利用し続けようとしたものと評価せざるを得ず、元フランチャイジーとして遵守すべき信義誠実の原則に大きく反するものであるのみならず、「スマホ修理王」の名称でフランチャイズ事業を営んでいる被告がその名称に係る商標登録を経ていないことを奇貨として、被告によるフランチャイズ事業を妨害する加害目的又は本件商標を高額で被告に買い取らせる不当な目的で行われたものというべきである。
このような本件商標の登録出願の目的や経緯等に鑑みれば、本件商標の出 願登録は、商標制度における先願主義を悪用するものであり、社会通念に照 らして著しく社会的相当性を欠く事情があるというべきであって、こうした 商標の登録出願及び設定登録を許せば、商標を保護することにより商標の使 用する者の業務上の信用を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要 者の利益を保護することを目的とする商標法の目的に反することになりかね ないから、本件商標は、公の秩序に反するものであるというべきであって、 商標法4条1項7号に該当する。 なお、原告は、本件審決は原告が享有すべき職業選択の自由を著しく狭く 解した不当な判断であると主張するが、事業において使用する特定の屋号等 の選択が職業選択の自由に含まれるものとしても、他人がその商標で築き上 げた信用の希釈又は特定の商標との混同等を理由として特定の商標の使用が 制限されることはやむをえないものであるし、もとより本件商標以外の屋号 等を選択することは可能であるから、原告の主張は当を得ないものというべ\nきであり、その他原告が縷々主張するところによっても、上記認定は左右さ れ得ない。

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令和3(行ケ)10110 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年7月14日  知的財産高等裁判所

 商標「ザプレミアムチロリアン(標準文字)」が商標「チロリアン」と類似するかが争われました。知財高裁(1部)は、類似しないとした審決を維持しました。

ア 本件商標は、「ザプレミアムチロリアン」の文字を標準文字で表してなり、\n「ザ」「プレミアム」の文字部分と「チロリアン」の文字部分とから構成さ\nれる結合商標である。本件商標を構成する文字は、外観上、同書、同大、\n同間隔で一連表記されており、構\成文字に相応して、「ザプレミアムチロリ アン」の称呼が生じる。
次に、「ザ」の文字部分は、定冠詞「the」の片仮名表記であり、「プ\nレミアム」の文字部分は、「一段上等・高級であること」(広辞苑第七版) といった意味を有する語として、「チロリアン」の文字部分は、「チロルの 人々。オーストリア西部からイタリア北東部にまたがるチロルの山岳地帯 に住む人々の用いる独特の民族服」(ブリタニカ国際大百科事典)、「チロル 地方の。チロル風の」(広辞苑第七版)といった意味を有する語として一般 に理解されていることが認められる。このような上記各文字部分の観念及 びそれぞれの称呼に照らすと、本件商標を構成する文字は、外観上、同書、\n同大、同間隔で一連表記されていることを勘案しても、本件商標において\n「ザ」「プレミアム」の文字部分と「チロリアン」の文字部分を分離して観 察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合してい るものとは認められない。
そして、前記1(2)認定のとおり、標章「チロリアン」は、本件商標の登 録審決日(令和元年10月1日)当時、福岡県を中心とした九州地方にお いて、菓子の取引者、需要者の間で、特定の菓子(菓子「チロリアン」)の ブランド名として広く認識され、全国的にも相当程度認識されていたこと に照らすと、本件商標がその指定商品中の「菓子」に使用された場合には、 本件商標の構成中の「チロリアン」の文字部分は、菓子のブランド名を示\nすものとして注意を惹き、取引者、需要者に対し、相当程度強い印象を与 えるものと認められる。 そうすると、本件商標の構成中「チロリアン」の文字部分は、独立して\n商品の出所識別標識として機能し得るものと認められるから、本件商標か\nら上記文字部分を要部として抽出し、これと引用商標1とを比較して商標 そのものの類否を判断することも、許されるというべきである。
イ これに対し、被告は、1)本件商標は、「ザプレミアムチロリアン」の標準 文字を表してなり、各文字の大きさ及び書体は同一であって、その全体が\n等間隔に1行でまとまりよく表されており、その文字構\成は一連一体であ ることからすると、「ザ」「プレミアム」の部分と「チロリアン」の部分は、 分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合し ている、2)標章「チロリアン」、「TIROLIAN」は、本件商標の登録 出願時及び登録審決時において、原告の業務に係る商品を表すものとして、\n取引者、需要者の間に広く認識されていたとはいえないから、本件商標の 構成中の「チロリアン」の文字部分が、本件商標の指定商品の取引者、需\n要者に対し、原告の商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える ものとはいえない、3)菓子「チロリアン」については、発売後ほどなくし て、標章「チロリアン」を使用して独自に販売を行う事業主体が複数生じ、 平成8年以降は、標章「チロリアン」を使用する事業主体間で多数の紛争 が生じており、標章「チロリアン」について統一的な管理が行われていな かったことに照らすと、取引者、需要者は、本件商標の構成中の「チロリ\nアン」の文字部分が、複数の事業主体のいずれに係る表示であるかを認識\nすることが困難であるから、「チロリアン」の文字部分は、原告の出所識別 標識として強く支配的な印象を与えるものに該当しない、4)菓子「チロリ アン」を製造販売する複数の事業主体について、経済的・組織的な一体性 を持つグループといったものが形成されたことはないから、「チロリアン」 の文字部分が、上記のようなグループの識別標識として強く支配的な印象 を与えると評価する余地もない、5)「チロリアン」の文字部分に出所識別 機能がないにもかかわらず、これがあるかのように評価して結合商標の分\n離観察を行い、その結果として、標章「チロリアン」について他の事業主 体に比べて不十分な使用実績しか有しない原告に引用商標1ないし3を\n含む「チロリアン」の登録商標を独占させるような帰結は、社会的妥当性 に欠けるなどと主張して、本件商標から「チロリアン」の文字部分を要部 として抽出することは許されない旨主張する。
しかしながら、前記(1)で説示したとおり、商標の各構成部分がそれを分\n離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結 合しているものと認められない商標においては、商標の構成部分の一部が\n取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印 象を与えるものと認められる場合などのほか、商標の構成部分の一部が取\n引者、需要者に対し、相当程度強い印象を与えるものであり、独立して商 品の出所識別標識として機能し得るものと認められる場合においても、商\n標の構成部分の一部を要部として取り出し、これと他人の商標とを比較し\nて商標そのものの類否を判断することも、許されると解するのが相当であ る。
そして、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し、相当程度強い\n印象を与えるものであり、独立して商品の出所識別標識として機能し得る\nか否かについての判断は、商標に接した取引者、需要者において、商標の どのような構成部分について注意を惹き、どのような印象を受けるかなど\nの観点から判断されるべきものであることに照らすと、その判断において は、取引者、需要者が、当該構成部分を何人かの出所識別標識として認識\nし得るものであれば、当該構成部分に係る出所自体(例えば、特定の事業\n主体の名称、事業形態、事業主体が単数か、複数か等)について正確に認 識することまでは要しないと解するのが相当である。
被告主張の1)については、前記アのとおり、「ザ」「プレミアム」の文字 部分の観念及び称呼、「チロリアン」の文字部分の観念及び称呼に照らすと、 本件商標を構成する文字が、外観上、同書、同大、同間隔で一連表\記され ていることを勘案しても、本件商標において、「ザ」「プレミアム」の文字 部分と「チロリアン」の文字部分を分離して観察することが取引上不自然 であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。 被告主張の2)ないし4)は、取引者、需要者において、本件商標の構成中\nの「チロリアン」の文字部分に係る出所自体(特定の事業主体の名称等) について正確に認識することまで必要であることを前提とし、上記文字部 分が原告の出所を示す出所識別標識として認識されることを求めるもの であるから、その前提において採用することができない。 また、被告主張の5)については、結合商標の構成部分の一部を要部とし\nて抽出することができるかどうかの判断は、上記のとおり、当該結合商標 に接した取引者、需要者の認識及び印象に係る問題であって、本件商標と の関係では、原告による標章「チロリアン」の使用実績の規模等によって その判断が左右されるものではないから、その前提において採用すること ができない。

◆判決本文

関連事件です。
いずれも非類似とした審決が維持されています。 「ザリッチチロリアン(標準文字)」


◆令和3(行ケ)10109

「チロリアンホルン」

◆令和3(行ケ)10108

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令和4(行ケ)10002  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年6月16日  知的財産高等裁判所

 商標「温石灸」の識別力について、知財高裁は識別力なしとした審決を維持しました。

原告は、原告が「温石灸」の語を使用して行っている施術は、平成26 年に施術を開始した、温石及びもぐさの両方を用いるオリジナルの施術で あり、「温石灸」の語は、「温石をもぐさの上に置いて行う施術」との意味 合いを有する造語であるから、本願商標の指定役務との関係で出所識別機 能を有する旨主張する(前記第3の1〔原告の主張〕(1))。 そこで検討するに、証拠(甲9、10、33)及び弁論の全趣旨によれ ば、原告は、平成26年10月頃から、温めた石をもぐさの上に置いて患 部を温める施術を「温石灸」との名称で行っていること、原告がこのよう な内容の施術を「温石灸」との名称で行うことを許諾したのは、「MoMo Soはり灸院」のみであることが認められる。 しかしながら、本願商標が商標法3条1項3号に該当するか否かは、本 件審決がされた時点における取引の実情を考慮して判断すべきものであ るところ、上記(4)で検討したとおり、本件審決がされた当時の本件業界に おいて、温石を用いた施術が、火をつけたもぐさの代わりに温めた石を用 いることにより、灸に類似する効果を得ることができる施術として、「温石 灸」との名称でも広く行われている実情があったといえることからすれば、 原告がそれ以前から温石及びもぐさの両方を用いる施術を「温石灸」と称 して行っているなどの事情があるからといって、前記の結論が左右される ものではないというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は、本件業界において「温石」又は「温石灸」の語が使用されてい る例について、「温石」が「温めた石」ほどの意味合いを有するとしても、 施術において「温石」をどのように用いるかや、「温石」と肌にのせたもぐ さに火を点じて焼く施術である「灸」との関係性が明らかではないから、 使用されている「温石灸」の語から直接的かつ具体的な施術の方法及び内 容(効能)等が想起されるものではない旨主張する(前記第3の1〔原告\nの主張〕(2))。しかしながら、原告が指摘するとおり、商標法3条1項3号に該当する というためには、当該商標から具体的な役務の質(内容)が認識されるこ とが必要であると解されるものの、上記(4)で検討したとおり、本件審決が された当時の取引の実情を考慮すると、「温石灸」の語は、「火をつけたも ぐさの代わりに温めた石を患部に置く、灸と同種の施術」を表すものと容\n易に理解されるものであったというべきである。そうすると、「温石灸」の 語からは、施術に用いる道具、施術の方法及び施術によって得られる効果 がいずれも容易に理解されるものといえるから、本願商標の取引者、需要 者は、「温石灸」の語から役務の質(内容)を具体的に認識することができ るものといえる。したがって、原告の上記主張は採用することができない。
ウ 原告は、本件業界において行われている「温石灸」の施術について、1) 「灸」の語の一般的な意味とは異なる内容の施術であり、かつ、様々な施 術の方法及び内容(効能)等を含むものであること、2)「温石」や「温石 療法」等とも表示することができるから、「温石灸」の語は役務の質を表\示 記述するものとして取引に際し必要適切な表示であるとはいえないこと、\n3)全国に存在する「はり及びきゅうを行う施術所」の数からすれば、「温石 灸」の語を使用する事業者はごくわずかであることを理由に、本件業界に おいて「温石灸」が施術されている例があることをもって、「温石灸」の語 が示す役務の内容が一般に理解されるものとはいえない旨主張する(前記 第3の1〔原告の主張〕(3))。 しかしながら、上記1)については、上記(4)で検討したとおり、本件業界 において一般に行われている「温石灸」の施術は、火をつけたもぐさを使 用しない点において、本来的な意味における灸とは異なるものではあるも のの、火をつけたもぐさの代わりに温めた石を用いることにより、灸に類 似する効果を得ることができる施術として行われていることなどからす れば、「温石灸」の語は、このような内容の施術を表すものとして容易に理\n解されるものといえる。 また、上記2)については、上記(4)で検討したとおり、本件審決がされた 当時の本件業界において、温石を用いた施術は、「温石療法」や「温石」等 と呼ばれ、灸とは区別されて取り扱われている実情があったといえるもの の、他方で、必ずしも灸と厳格に区別されていたものではなく、灸に類似 する効果を得ることができる施術として、「温石灸」との名称でも広く行わ れている実情があったといえることからすれば、温石を用いた施術が「温 石療法」や「温石」等とも表示されているからといって、「温石灸」の語が、\n役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表\示であるこ とが否定されるものではないというべきである。 さらに、上記3)については、上記(4)で検討したところに照らせば、全国 に存在する「はり及びきゅうを行う施術所」の数のみを根拠として、前記 のとおりの取引の実情があったことを否定することはできないというべ きである。したがって、原告の上記主張は採用することができない。
エ 原告は、材料等の名称を冠した従来の「味噌灸」等と原告が行っている 「温石灸」とでは施術内容が全く異なるものであり、「温石灸」の語を従来 の「味噌灸」等の語と同様の意味で捉えると、施術の方法及び内容(効能)\n等が理解し難いものとなるから、「味噌灸」等と称する灸が存在するからと いって、「温石灸」の語が、特定の役務の質・内容を直接的かつ具体的に示 すものであるとはいえない旨主張する(前記第3の1〔原告の主張〕(4))。 しかしながら、本件において検討すべきであるのは、本件審決がされた 当時の本件業界において使用されていた「温石灸」の語から認識される内 容であるから、原告が行っている「温石灸」の具体的な施術内容が考慮さ れるものではないというべきである。そして、上記(4)で検討したとおり、 本件審決がされた当時の本件業界において、温石を用いた施術は、施術の 道具として温めた石を用いる灸と同種の施術であることから、「味噌灸」等 と同様に、「温石灸」とも称されるようになったものであり、「温石灸」の 語は、「火をつけたもぐさの代わりに温めた石を患部に置く、灸と同種の施 術」を表す語として容易に理解されるものであったというべきである。\nしたがって、原告の上記主張は採用することができない。
オ 原告は、本件テレビ番組において「温石灸」と称された施術は、従来か ら広く使用されてきた「温石」又は「温石療法」と同義のものとして紹介 されたものにすぎないから、そのような内容の放送がされ、本件業界の関 係者がこれに否定的な意見を述べなかったとの事実をもって、「温石灸」の 語が、灸(施術)の一種を表したものとして、特定の役務の質・内容を示\nすものとして理解されたものとみるのは相当でない旨主張する(前記第3 の1〔原告の主張〕(5))。
しかしながら、上記(4)で検討したところに照らせば、原告が指摘すると ころによって、前記の結論が左右されるものではないというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。

◆判決本文

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令和3(行ケ)10160  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年5月31日  知的財産高等裁判所

 先願商標「一升パン」の商標権者が、本件商標「三橋の森の一升パン」について無効審判を請求しました。審決は類似しないと判断しました。知財高裁(3部)も同様です。先願商標が周知か否かについては、「”一升パン”の語は、それ自体が特徴的又は印象的な語でなく、”一升パン”と称する商品は、少なくとも100を超える事業者によっても製造、販売されていた」として、周知ではないとした審決の判断を維持しました。

 原告は、本件商標について、特定の場所を示すものにすぎない「三 橋の森」の語と、識別力の強い造語である「一升パン」の語とが組み合 わされた結合商標であり、これらは不可分的に結合しているものではな く、また、「一升パン」部分が商品の識別情報として強く支配的な印象を 与えるから、同部分を要部として認定し、引用商標と対比すべきである 旨主張する(前記第3の1〔原告の主張〕(2))。
(イ) そこで検討するに、本件商標の構成全体をみると、「三橋の森」と「一升パン」との間の「の」は、所有や所属等を示す格助詞であるといえる\nから、本件商標は、「三橋の森」の語と「一升パン」の語とが格助詞であ る「の」で結合された結合商標であるといえる。 そして、「三橋の森」の語は、一般の辞書等に掲載されている語ではな く、また特定の地域や森の名称を指すものでもないことからすれば、造 語であるとみるのが相当である。また、証拠(甲27の1ないし3)及 び弁論の全趣旨によれば、「三橋の森」は、埼玉県内に所在する、結婚式 場やフレンチレストラン等が一体となった複合商業施設の名称であると 認められる。これらの事情を考慮すると、「三橋の森」の語は、単に「森 等の緑に囲まれた公園等の地域」を表すものとはいえず、「三橋の森」部分からは、商品の出所識別標識としての称呼、観念が生じるものといえ\nる。
他方で、「一升パン」の語は、前記のとおり、一般の辞書等に掲載され ている語ではないことからすれば、造語であるとみるのが相当である。 また、一般に、「一升」の語は、米や日本酒、醤油の容量を表す単位として用いられるものの、パンの数量を表\す単位として用いられるものとはいえないことからすれば、「一升パン」の語は、通常は組み合わされるこ とのない「一升」の語と「パン」の語とが組み合わされたものといえる。 これらの事情を考慮すると、「一升パン」部分についても、商品の出所識 別標識としての称呼、観念が生じるものといえる。 このように、本件商標の「三橋の森」部分及び「一升パン」部分は、 いずれも商品の出所識別標識として機能する語であるといえる。
(ウ) しかしながら、「一升パン」の語は、旧来から1歳の誕生日を迎えた 子供のお祝いとして用いられてきた「一升餅」の「餅」の語を「パン」 に置き換えたものにすぎないといえる(甲4)上、このような「一升パ ン」と称する商品は、本件商標の登録査定時において、原告以外の少な くとも100を超える事業者によっても製造、販売されていたといえる こと(甲4、乙1ないし147)からすれば、「一升パン」の語は、通常 は組み合わされることのない二つの語を組み合わせた造語であること を考慮しても、それ自体が特徴的又は印象的な語であるとまではいえな い。また、前記のとおり、本件商標は、「三橋の森の一升パン」の文字を 標準文字で書してなるものであり、いずれかの部分が目立つ態様で記載 されているものではない上、後記3(2)で検討するところに照らせば、本 件商標の登録査定時において、「一升パン」の語が、原告商品を表示するものとして、本件商標の取引者及び需要者の間において広く認識されて\nいたものとはいえない。 以上の各事情を考慮すると、本件商標の「一升パン」部分は、取引者、 需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるも のであるとは認められない。
(エ) 以上によれば、本件商標について、「一升パン」部分が取引者、需要 者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと は認められず、また、「一升パン」部分以外の部分である「三橋の森」部 分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないとも認められないか ら、本件商標の「一升パン」の部分を抽出し、この部分だけを引用商標 と比較して商標そのものの類否を判断することは許されないというべ きである。
(オ) したがって、原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は、本件商標のように「○○の△△」という商標出願については、 「の」の前後の語のいずれかが要部として抽出された上で、他の商標と類 似するとして拒絶された例が多数存在する旨主張する(前記第3の1〔原 告の主張〕(5))。しかしながら、商標登録の可否は、商標の構成、指定商品又は指定役務、取引の実情等を踏まえて、具体的な実情に基づき商標ごとに個別に判断すべきものであるから、原告が指摘するような他の例があるからといって、\n前記の結論が左右されるものではないというべきである。

◆判決本文

関連事件です。こちらは、本件原告が、本件被告の「一升パン」は3条1項3号、または4条1項16号違反として無効審判を請求し、無効理由無しと判断されています。知財高裁も同様です。

◆令和3(行ケ)10154

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令和4(行ケ)10006  商標登録取消決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年5月25日  知的財産高等裁判所

 指定商品「時計」に商標「OMECO」が、周知商標「OMEGA」と混同するか、また、公序良俗に反するとして異議申立が成されました。審決、知財高裁とも、公序良俗に反すると判断しました。\n

 本件商標は、その構成文字に相応して「オメコ」の称呼を生じるものであり、\nこの点は当事者間にも争いがないところ、その称呼の語は、「大辞林 第四版」 (2019年 三省堂。乙12)に「俗に、女陰の称」を、「大辞泉 第二版 上巻」(2012年 小学館。乙13)に「女性性器の俗称」を、「国語大辞 典 新装版」(1988年 小学館。乙14)に「女陰の異名」を、「精選版 日本国語大辞典」(小学館。乙15)に「女陰の異名。また、男女の交合」を 意味するとされているものである一方、その称呼から異なる意味合いを直ちに 想起させる語は見当たらない。加えて、現に、本件商標は、ドメイン名を「om eco.buyshop.jp」とする原告の運営に係るウェブサイトのページ上部左上に、「変態高級腕時計」の文字と、女性器を模した、二重丸とその中心を縦断する 縦線及び円の外側の放射状の短い線で構成される円状図形と一体となって、ロ\nゴマーク様の図形を構成する一部として表\示されているほか(甲10の1ない し甲10の3)、このウェブサイトでは、原告の販売に係る腕時計として、上 記円状図形及び本件商標が付された腕時計の画像や(甲10の1ないし甲10 の3)、「パイパンマン」等の性的な意味合いを認識させる表示が付されたT\nシャツの画像等の商品画像が多数掲載されているのであるから(乙22ないし 25)、本件商標は、上記各辞典に掲載されたそのとおりの意味合いで使用さ れていると認められ、それ以外の意味合いのものと理解され得る余地はない。 そうすると、本件商標は、その称呼から、少なくとも需要者に女性器を連想、 想起させるものであるから、その構成自体が卑わい又は他人に不快な印象を与\nえるようなものであって、その余の点について検討するまでもなく、公の秩序 又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきである。したがって、本 件商標は、商標法4条1項7号に該当するものであり、商標登録を受けること ができないものに当たる。
2 原告の主張について
(1) 原告は、本件商標の称呼が女性器等を示す俗語であったとしても、本件商 標は欧文字で表記されているから、女性器等が連想、想起されることはない、\nあるいは、このような俗語は関西地方で用いられる方言、俗語であり、日本 の社会一般で理解されるものであるとはいえない旨主張する。しかしながら、 本件商標の綴りからは自然に女性器が連想、想起される称呼が生じ、それ以 外の称呼が自然と生じるものとはいい難いし、また、仮に、関西地方で用い られる方言、俗語であったとしても、関西地方で用いられているならば、周 知の用語というに十分である。そして、何より、原告自身が女性器等を連想、\n想起させるものとして本件商標を使用していることは、前記1において説示 したとおりであるから、欧文字で表記されていることや関西地方で用いられ\nる方言、俗語であることが女性器を連想、想起させることを何ら妨げるもの ではない。 したがって、原告の上記主張は、いずれにしても採用し得ない。なお、本 件商標と同一の称呼を生じさせる原告の商号が現時点で維持されていること は、商標法に従い商標登録の適否を判断する本件の結論を何ら左右しない。
(2)原告は、本件商標が用いられても、取引の実情からみて、被告補助参加人 の業務との間に誤認混同は生じないから、引用商標の信用等又は被告補助参 加人の業務上の信用を毀損させるおそれはない旨主張するが、本件商標は、 その構成自体から卑わい又は他人に不快な印象を与えるような文字であるか\nら、引用商標の信用等又は被告補助参加人の業務上の信用を毀損させている か否かの点は、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商 標であるとの判断を何ら左右しない。

◆判決本文

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令和3(行ケ)10148  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年4月25日  知的財産高等裁判所

 文字の一部を図形化した商標について、先願文字商標と類似するとした審決が維持されました。判決の末尾に本件商標が添付されています。

 本願商標は、別紙1の1のとおり、1)上段には「natural baby soap」の文 字が、水色の手書き風の書体で、下段部分の文字より小さく、また、下段部 分よりも幅が狭く、上側に湾曲する形で配され、2)下段には、Doodle Pen の 特徴を備えた書体で、上段の欧文字よりも目立つ大きさで「nico」の欧文字 が水色で横書きに表され、「nico」の「o」の上部には「サボテン」のような 図形が配され、「o」の内側には、横並びに2つの点とその下に両端上がりの 弧線が配されて顔を表すように図案化された、結合商標である。\n ところで、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の\n出所識別機能として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、そ\nれ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる 場合等には、商標の構成部分の一部を要部として取り出し、これと他人の商\n標とを比較して商標そのものの類否を判断することも、許されると解するの が相当である。そして、本件においては、要部が本件商標の下段部分である ことについては、当事者間に争いがなく、本願商標が、全体の構成からみる\nと、上段部分と下段部分とを分離して観察することが取引上不自然とはいえ ず、上段部分は下段部分と比して全体の大きさは小さく、出所識別標識とし て特定の称呼、観念を生じさせないものであること等に照らしても、本件商 標の要部は下段部分であるとするのが相当である
次に、本件商標の要部である下段部分について検討する。
前記(1)のとおり、本件商標の要部である下段部分は、「nico」の欧文字が横 書きに表され、「nico」の「o」の上部には「サボテン」のような図形が配さ れ、「o」の内側には、横並びに2つの点とその下に両端上がりの弧線が配さ れて顔を表すように図案化されているところ、店舗名や商品名等に含まれる\n欧文字の「o」の内側に横並びに2つの点とその下に両端上がりの弧線を配し て顔を表すように図案化したり(乙3ないし8、10、11、14)、「o」の 文字上部にイラストを配して図案化する(乙9ないし14)ことは慣用され ていることが認められる。そうすると、本願商標の下段部分に接した取引者 及び需要者は、末尾の欧文字は一般的に慣用されているものと同様に図案化 されたものと理解し、認識するものということができる。そして、この下段 部分からは「nico」の欧文字に相応して「ニコ」の称呼を生じるものである が、「nico」の欧文字は辞書等に載録されているものでなく、特定の観念を生 じさせるものではない。
これに対し、原告は、前記第3の1(1)のとおり、欧文字の称呼「ニコ」と イラスト部分が「にこにこ笑う」との共通の印象を与えるものであり、「nico」 ないし「ニコ」の欧文字は、これを含む商品が多数存在し、登録商標等が合 計30件あることから、必ずしも取引者及び需要者に強い印象を与えるもの ではないのに対し、イラスト部分は、独自性を有するものであり、イラスト 部分からは観念が生じ、出所識別標識として強い支配的な印象を与えること を前提とした類否判断をすべきである旨主張する。
しかし、「nico」ないし「ニコ」の欧文字は、原告が提出する証拠によれば、 本願商標の指定商品と同一又は類似する商品では2件しか使用されておらず (甲9、10)、少なくとも本願商標の指定商品と同一又は類似する分野にお いて、「nico」ないし「ニコ」が出所識別標識としての機能が弱いとまではい\nえない。また、前記(2)のとおり、欧文字の「o」の内側に横並びに2つの点と その下に両端上がりの弧線を配して顔を表すように図案化したり、「o」の文 字上部にイラストを配して図案化することは慣用されているところ、本願商 標の下段部分の「o」の部分も一般的に慣用されている態様と同様であるし、
また、サボテンのようなイラストも特定の観念を生じさせるような特異なも のとはいえず、その大きさや態様において強い印象を与えるものとはいい難 い。そうすると、特に商標の細部にまで注意を払うことがない一般消費者が、 取引に際して、下段部分のうちイラスト部分にことさら着目し、それにより 特異な観念が生じ、出所識別標識として強い支配的な印象を受けるものとは 認め難いから、原告の主張は理由がない。
・・・・
これに対し、原告は、前記第3の1(3)イのとおり、本願商標の下段部分は 特徴的なイラスト部分があるが、引用商標の欧文字はこうした特徴的なもの を備えておらず、また、本願商標と引用商標の字体、イラスト、文字の与え る印象を挙げて、本願商標と引用商標は、外観において、離隔的観察のもと でも称呼における類似性をしのぐほどの差異を取引者及び需要者に与える旨 主張する。
しかし、原告が指摘するイラスト部分は、欧文字の「o」を顔等の図案化す るものとしてこれまで慣用されてきたものと大きく異なるものではなく、イ ラスト部分が強い支配的印象を与えるものではないことは繰り返し説示して きたとおりであり、また、本願商標と引用商標の字体、イラスト、文字の与 える外観上の差異については、離隔的観察のもとでは、取引者及び需要者に 大きく異なる印象を与えるものであるとまではいえない。
また、原告は、前記第3の1(3)ウのとおり、本願商標の下段部分全体から、 「にこにこ笑った」印象を与えるものであるのに対し、引用商標は特定の観 念を生じさせない旨主張するが、前記1(2) において判示したところに照らせ ば、その前提を誤るものというべきである。
さらに、原告は、前記第3の1(3)エのとおり、本願商標を付した原告の商 品について、現在までに本願商標と引用商標その他の第三者の商標と混同し たような内容の問い合わせがないことを「取引の実情」として挙げて、称呼 が共通していても、外観及び観念の相違から誤認混同が生じていない旨主張 するが、商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは、そ の指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すものであつて、該商 標が現在使用されている商品についてのみの特殊的、限定的なそれを指すも のではない(最高裁昭和47年(行ツ)第33号同49年4月25日第一小 法廷判決参照)ところ、原告の上記主張は、本願商標が現在使用されている 商品についての取引の実情をいうものであるから、当を得ない。

◆判決本文
 

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令和3(行ケ)10101  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年2月22日  知的財産高等裁判所

 経過概要は以下です。PUMAが「ジャンピングシーサー」の図形商標につき、4条1項7号、15号違反の無効審判を請求しました。これに対して、被告は商標権放棄をしました。また、5年の除斥期間経過しているとして、却下審決がなされました。原告は除斥期間は不正目的の場合は適用がないとして審決取消を求めました。 原告の主張によると、被告はアダルトグッズに使用し、ブランドイメージ毀損されているとのことです。裁判所は、審決維持しました。

商標法4条1項15号を無効理由とする本件審判の請求について
ア 本件審判の請求は,本件商標権の設定登録の日から5年の除斥期間を経 過した後にされたものであるから,本件審判の請求中,商標法4条1項1 5号を理由とする請求は,本件商標が「不正の目的で商標登録を受けた場 合」(商標法47条1項括弧書き)に限りする
原告は,1)本件商標の動物図形と原告の業務に係る周知著名な引用商標に は高い類似性があり,本件商標と引用商標が同一又は類似の商品に使用され た場合,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあること,2)被告によ る被告標章の商標登録の無効審決の確定後の被告標章の使用及びアダルトグ ッズへの被告標章の使用の事実があること,3)本件審判において,被告の自 白をもとに,被告の不正の目的を推認させる事情を原告が具体的かつ詳細に 立証した後,被告がこれに争わない意向を表明した経緯があることを総合考\n慮すれば,被告は,周知著名な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし, その出所表示機能\を希釈化させ,又はその名声を毀損させる「不正の目的」 で本件商標の登録出願をし,その商標登録を受けたものである旨主張する。
ア そこで検討するに,1)については,引用商標は原告の業務に係る周知著 名な商標ではあるが,前記(1)ウ(イ)認定のとおり,本件商標と引用商標と は,外観,称呼,観念のいずれにおいても異なり,本件商標と引用商標は, 類似しない。 また,本件商標の動物図形と引用商標は,四足動物が右から左に向けて 跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿 でシルエット風に描かれている点で共通し,その基本的姿勢等に似通った 点があることから,本件商標に接した需要者は,本件商標の動物図形は引 用商標を模倣したものと連想,想起するものと一応いい得るが,「JUM PING SHI−SA」の文字部分があることによって,本件商標の動 物図形からは,引用商標から生じる「PUMA」ブランドの観念や「プー マ」の称呼は生じないものと認められること(前記(1)ウ(ア)a)に照らす と,本件商標の動物図形は引用商標を模倣したものと連想,想起するから といって,被告が本件商標の登録出願をし,その商標登録を受けたことに ついて,周知著名な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出 所表示機能\を希釈化させる「不正の目的」があったものと認めることはで きない。
イ 2)については,証拠(甲61ないし63)によれば,知的財産高等裁判 所は,別紙3のとおりの構成からなる被告標章についての商標登録無効審\n判請求を不成立とした審決(無効2016−890014号事件)の審決 を取り消す旨の判決をした後,特許庁が被告標章が商標法4条1項15号 に該当することを理由に被告標章の商標登録を無効とする別件無効審決 をし,別件無効審決は,令和元年9月2日,確定したことが認められる。 しかしながら,本件商標と被告標章の外観は,四足動物が右から左に向 けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見 た姿でシルエット風に描かれている点で共通し,その基本的姿勢等に似通 った点があるものの,被告標章には本件商標において大きな構成部分であ\nる文字部分を有していないという顕著な相違があり,両商標は,外観,称 呼及び観念において異なり,類似しないことに照らすと,原告が主張する 被告による被告標章の商標登録の無効審決の確定後の被告標章の使用及 びアダルトグッズへの被告標章の使用の事実があるからといって,被告が 本件商標の登録出願をし,その商標登録を受けたことについて,周知著名 な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能\を希釈 化させ,又はその名声を毀損させる「不正の目的」があったものと認める ことはできない。
ウ 3)については,商標登録無効審判の審判手続においては,職権で証拠調 べをすることができ,当事者が申し立てない理由についても審理すること\nができるなどの職権探知主義が採用され(商標法56条において準用する 特許法150条1項,153条1項),自白法則は適用されないから(商 標法56条において準用する特許法151条が準用する民事訴訟法17 9条の規定から「当事者が自白した事実は証明することを要しない」とし た部分の準用が除かれている。),商標登録無効審判の請求人は被請求人 が商標登録の無効理由を基礎づける事実について自白した場合であって も,当該事実を証拠によって証明する必要がある。また,被請求人には特 許庁がした審決を取り消す権限がなく,商標登録無効審判に処分権主義の 適用はないから,被請求人は,請求人の請求を認諾することはできないも のと解される。
しかるところ,原告が3)の根拠として挙げる被告作成の令和2年9月2 8日付け上申書(甲104)には,「被請求人は,請求人の主張を認め,\n請求の趣旨に対し,請求人が主張するとおりの審決がなされ,本件商標権 が遡及消滅することを争わない。」との記載があるが,上記記載中の「請 求人の主張を認め」にいう「請求人の主張」を基礎づける具体的な事実が 特定されていないから,上記記載をもって被告が具体的事実について自白 したものと認めることはできないのみならず,具体的事実を証明する供述 証拠として評価することもできない。また,上記記載中の「請求の趣旨に 対し,請求人が主張するとおりの審決がなされ…争わない。」との部分は 請求の認諾の趣旨のものとうかがわれるが,商標登録無効審判においては 請求の認諾はできないから,上記部分を斟酌することはできない。 次に,原告が3)の根拠として挙げる被告作成の平成19年9月12日付 け「商標登録第5040036号について1)」と題する書面(甲41)に は,商標の制作経緯等に関し,「2003年(平成15年)年末ごろ,弊 社も新アイテムとして『シーサー』を分かりやすく,そして現代の若者に も受け入れられるデザインをコンセプトにしようと改めてデザインを構\n想しました。2004年(平成16年)3月ごろ,コンセプトであげた『分 かりやすく・シンプルに』と言うことでデザインに当時では珍しいピクト グラム(道路標識や公共施設,非常口など図柄だけで意味を表現するデザ\nイン)を取り入れてはどうか?と,社内で議論しました。そこで,(スポ ーツブランド)にはシンプルなデザイン(ロゴ)が多数使用されていたこ とから世界的に有名な『ラコステ』『ポロ・ラルフローレン』『マンシン グウェア』『プーマ』など,動物(生物)をモチーフにしたデザインを参 考にして図3)のように大まかなデザインができあがりました。空想上の生 物なので,伝統工芸の焼き物や民芸雑貨などをシルエット(影)にしてみ たものの形状はまだ複雑でシンプルを追求すると(プーマ)風なデザイン になっていました。しかし,デザイン(ロゴ)だけでは『シーサー』を表\n現していると誰も気づかないのでは?等の意見もあり,前述で述べた『獅 子面T-シャツ』のように文字(読み方・言い方)をデザインに組み合わせ てはどうか?ということで図4)になりました」,「その後,何度かデザイ ンを変更して図5)〜7)を経て現在は図8)(平成17年から発売)になって います。」との記載がある。しかし,上記記載中の「『プーマ』など,動 物(生物)をモチーフにしたデザインを参考にし」た,「(プーマ)風な デザインになっていました」旨の部分は,これに引き続きく「デザイン(ロ ゴ)だけでは『シーサー』を表現していると誰も気づかないのでは?等の\n意見もあり,前述で述べた『獅子面T-シャツ』のように文字(読み方・言 い方)をデザインに組み合わせてはどうか?ということで図4)になりまし た」との部分と併せて読めば,本件商標(図6))は,『プーマ』など,動 物(生物)をモチーフにしたデザインを参考にして『シーサー』を表現す\nる意図で作成されたものとうかがわれるから,被告が周知著名な引用商標 に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能\を希釈化させる 「不正の目的」で本件商標(図6))の登録出願をし,その商標登録を受け たことを認め,あるいはこれを裏付ける趣旨の記載であると評価すること はできない。 したがって,上記書面から,被告に上記「不正の目的」があったものと 認めることはできない。
(3) 小括
以上によれば,本件商標は「不正の目的」で商標登録を受けたものに該当 しないとした本件審決の判断に誤りはないから, 原告主張の取消事由1は, 理由がない。

◆判決本文

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令和3(行ケ)10041  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年3月8日  知的財産高等裁判所

 本件商標「BREZTRI」が商標「BREEZHALER」と類似または出所混同するかが争われました。裁判所は、無効理由なしとした審決を維持しました。争点は文理解釈が可能かどうかです。\n

ア 本件商標に係る主張について
(ア) 原告は,本件商標につき,「BREZ」部分を要部として分離観察す ることが可能である旨主張する(前記第3の1〔原告の主張〕(1))。 (イ) しかしながら,前記のとおり,本件商標は,「BREZTRI」の欧 文字を標準文字で書してなるものであり,いずれかの部分が目立つ態様 で記載されているものではない。また,本件商標の構成文字数は7文字\nと少なく,全体を「ブレズトリ」と自然に発音することが可能である。\nさらに,「BREZ」は,辞書等に掲載されていない語であり,後記のと おり,この部分が取引者,需要者に格別の造語として認識されている事 実も認められないことからすれば,独立した単語として認識されるもの とはいえない。加えて,「TRI」は,接頭辞として用いられた場合に「三, 三重の」等を意味する旨が辞書等に掲載されてはいるものの(甲22), 本件商標の「TRI」部分は語尾に位置することからすれば,直ちに「三, 三重の」や「triple」を意味する単語として認識されるものとは いえない。 これらの事情によれば,本件商標は,各構成部分がそれを分離して観\n察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合してい る商標というべきであるから,全体を一連一体のものとして観察するの が相当であり,「BREZ」部分と「TRI」部分とを分離して観察する ことはできないというべきである。
(ウ) 上記の点に関して原告は,「TRI」部分につき,薬剤の名称とし 末尾に「tri」を付すことが多い実情が存するから,識別力が弱い旨 主張する。 確かに,証拠(甲38,39)によれば,原告が主張するような使用 例が複数あることが認められる。しかしながら,本件商標の構成文字数\nが少ないこと,「BREZ」は独立した単語として認識されるものとはい えないことからすれば,「TRI」部分について,単に薬剤の名称の末尾 に付された語であり,「BREZ」部分とは区別すべきものであると直ち に認識されるものとはいい難い。そうすると,原告が主張するような実 情があるからといって,「TRI」部分の識別力が弱いということはでき ない。
(エ) また,原告は,「BREZ」部分につき,需要者の間で広く認識され た引用商標1の「BREZ」部分と同様に,特徴的で識別力の強い部分 である旨主張する。 しかしながら,後記のとおり,引用商標1それ自体はある程度の周知 性を有しているといえるものの,だからといって同商標の「BREZ」 部分も周知であるということはできないから,本件商標の「BREZ」 部分につき,特徴的で識別力の強い部分であるということはできない。
(オ) 以上によれば,本件商標につき,「BREZ」部分を要部として分離 観察することはできないというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない

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令和3(行ケ)10092  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年1月27日  知的財産高等裁判所

 本件商標「hihachi」が「HITACHI」と出所混同するとして異議申立がなされました。知財高裁は、4条1項15号違反とした審決を維持しました。

ア 上記(1)ないし(3)のとおり,本件商標及び引用商標は,観念において類 似するものではないものの,外観及び称呼が互いに相紛らわしいものであ るというべきである。 そして,前記3で検討したとおり,本件商標及び引用商標に係る需要者 には一般消費者が含まれるものであるところ,一般消費者が通常有する注 意力を踏まえると,外観及び称呼が互いに相紛らわしい両商標を取り違え ることは十分にあり得るといえることからすれば,両商標の類似性の程度\nは,相当程度高いというべきである。
イ 原告は,引用商標の取引の実情に関して,商標中の大文字のアルファベ ットを小文字表記に変えて使用することなどは全く行われておらず,この\nことは引用商標においても同様である旨主張する。 しかしながら,上記(1)イのとおり,アルファベットからなる商標の使用 においては,その構成文字について,大文字と小文字とを相互に変換して\n表記することが一般に行われているといえる。また,商標法においても,\n商標登録の取消しの審判について,登録商標と社会通念上同一と認められ る商標(例えば,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更\nするものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標)の使用を証明するこ とによって商標登録の取消しを免れることができる旨が規定されている が(商標法50条1項,2項,38条5項),これは,商標の使用において は,同一の称呼及び観念が生じる範囲内で商標の構成文字の文字種を相互\nに変換して表記したり,デザイン化したりすることが一般によく行われる\nことを前提とした規定であるといえる。これらの事情を考慮すると,商標 中の大文字のアルファベットを小文字表記に変えて使用することが全く\n行われていないということはできない。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。
5 出所混同が生ずるおそれの有無
本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基 準として,前記2ないし4において検討した事情を総合的に考慮すると,注意 力がそれほど高いとはいえない一般消費者が,被告補助参加人及びそのグルー プ会社の業務に係る商品及び役務を表示するものとして極めて高い周知著名性\nを有する引用商標に相当程度類似し,取り扱う商品も密接に関連する本件商標 が付された商品に接した場合には,当該商品が被告補助参加人及びそのグルー プ会社の業務に係る商品であると混同するおそれがあるというべきである。

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令和3(行ケ)10107  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年1月19日  知的財産高等裁判所

 商標「花間堂」が、商標法4条1項10号,15号,19号又は7号の無効理由があるかが争われました。知財高裁は、無効理由無しとした審決を維持しました。

 また,仮に,引用商標の中国における周知性が認められると仮定しても,前 記認定事実によれば,被告は,中国人であるものの,来日してから長らく我が 国に居住し,本件商標の登録出願に先立って「旅程管理業務を行う主任(国内)」 の資格を取得し,本件商標の商標登録後,引用商標が登録出願されるまでに, 実際に本件商標を構成する「花間堂」の文字を含む名称のツアーを主催したこ\nとが認められることからすると,本件商標の指定役務である「宿泊施設の提供, 宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」等のために本件商標を登録出願して 登録を受けたものと推認されるところであり,また,本件商標を構成する文字\nを選択した理由についても具体的に陳述しているところである。このような事 実関係からすれば,被告が本件商標の登録出願をした経緯に,不正の利益を得 る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的があったとは認め難く, 本件全証拠を検討してみても,被告に上記のような目的があったと認めるに足 りる証拠はない(なお,引用商標の中国における周知性についても,原告提出 の書証中には,原告が運営する「花間堂」を「中国大陸で有名な高級チェーン ホテル」(前記1(3)イ(ウ)),「中国の有名な民宿ブランド」(同(エ)),「中 国大陸の有名な高級ホテルブランド」(同(オ)),「中国国内の有名な優れた リゾートホテルブランド花間堂」(同(カ))として紹介するものがあるものの, 該当部分の抄訳であり,当該記事内容やその記事がどういった媒体からによる ものであるのかの詳細が不明であるし,その他のものを併せても,これらの記 事等のみから,引用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において, 中国の需要者の間で原告の業務に係る役務を表示するものとして周知であると\n認定することはできず,また,「花間堂」の中国国内における売上高,利用者 数,旅行業界におけるシェア等に関する証拠もないから,上記中国における周 知性を認めることはできないことを念のため付言する。)。 そうすると,本件商標は,商標法4条1項19号に該当するものとはいえず, これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

◆判決本文

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令和3(行ケ)10036  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年10月6日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、30類に「菓子」について、商標「スイーツパーティー」と「スイートパーティー」が非類似(11号)と判断し、無効理由無しとした審決を維持しました。

ア 国語辞典の記載
本件商標と引用商標(スイートパーティー)は,「スイーツ」という部分 と「スイート」という部分が異なる。 国語辞典には,「スイーツ」という語については,「【sweets】甘いもの。 ケーキ・菓子など。」を意味するものと記載されている(広辞苑第7版,乙 2)。 他方,「スイート」という語については,「【sweet】1)甘いこと,甘口。 2)甘美なこと。快いこと。気持ちよいさま。」を意味するものと記載され, 「スイート」という語を用いた語として,「−・コーン【〜corn】トウモロ コシの一品種。糖分を多く含む。−・スポット【〜spot】ゴルフのクラブ・ フェースやテニスのラケットなどの,球を最も効果的に打つことができる 点。−・ハート【〜heart】恋人(特に女性)。愛人。−・ピー【〜pea】マ メ科の蔓性観賞用一年草。シチリア島原産で,江戸時代末に渡来。葉はエ ンドウに似,先端は巻ひげとなる。桃色・白色・紫色・斑などの蝶形花を つけ,花後に莢を生じる。園芸品種が多い。ジャコウエンドウ。ジャコウ レンリソウ。−・ホーム【〜home】(特に新婚の)楽しい家庭。愛の巣。−・ ポテト【〜potato】1)サツマイモのこと。2)サツマイモで作った洋風菓子。 サツマイモを蒸して裏漉しし,砂糖・卵黄・バターなどを加えて練り,オ ーブンで焼く。」が挙げられている(広辞苑第7版,乙2)。 上記の国語辞典の記載によれば,「スイーツ」と「スイート」は別の語と して一般的に認識されており,また,「スイート」という語は,「1)甘いこ と,甘口。」の他に,「2)甘美なこと。快いこと。気持ちよいさま。」などの 意味を有し,「スイートハート」,「スイートホーム」など,「甘いこと」以 外の,「愛しい」,「楽しい」の意味で用いられる例があることが一般的に認 識されているものと認められる。
イ 実際の使用例
(ア) 「スイーツ」という語の使用例
インターネット上で検索結果の多い「スイーツ」という語を含む用語 の例として「人気スイーツ」があり(検索結果:約 2,060,000 件,乙1 2),「絶対おすすめ!人気スイーツベスト 20!」,「人気スイーツをお取 り寄せ」のように使用されている(乙13,14)。また,「スイーツレ シピ」という用語(検索結果:約 1,780,000 件,乙15)は,「お手軽ス イーツレシピをご紹介」,「『本格チョコ』のスイーツレシピ特集」のよう に使用されている(乙16,17)。「スイーツ食べ放題」(検索結果:約 1,440,000 件,乙18)という用語は,「種類以上のスイーツ食べ放 題!」,「平日限定スイーツ食べ放題プラン」のように使用されている(乙 19,20)。これらの用語において,「スイーツ」という語は,「ケーキ・ 菓子など」の意味で使用されている。
(イ) 「スイート」という語の使用例
「スイート」という語が食料品との関係で使用される例としては,「ス イートワイン」,「スイートチョコレート」,「スイートチリソース」など\nがあり(乙21〜乙23),「スイート」という語は「甘い,甘口」の意 味で使用されている。
(ウ) 「スイーツ」という語と「スイート」という語が同一作成者のウェ ブページで使い分けられている例
・・・
(エ) 「スイーツパーティー」という語の使用例
・・・
(キ) 以上によれば,実際の使用例において,「スイーツ」という語と「ス イート」という語は,それらが他の語と結びつく場合も含めて区別して 使用されており,「スイーツ」という語は,「甘いもの,ケーキ・菓子な ど」の意味で使用され,他方,「スイート」という語は,「甘い,甘口」 の他,「甘美な,快い,愛しい,楽しい」という意味で用いられているも のと認められる。そして,「スイーツパーティー」という語は,スイーツ (甘いもの,ケーキ,菓子など)が提供され,それらを食べるパーティ ーの意味で用いられている。
ウ そうすると,本件商標は,「スイーツ」と「パーティー」を二段書きにし たものであるから,「スイーツ」(甘いもの,ケーキ・菓子など)という名 詞が強調された上で,その全体から,「スイーツパーティー」という語とし て認識され,スイーツ(甘いもの,ケーキ,菓子など)が提供され,それ らを食べるパーティーという観念を生じるものと認められる。 他方,引用商標は,「スイートパーティー」又は「SWEET PART Y」という語として認識され形容詞である「スイート」「SWEET」が必 然的に名詞の「パーティー」を修飾する関係にあるから「スイート」なパ ーティーを意味し,「スイート」という語の意味のうち,パーティーを修飾 する場合に当てはまる意味は,「甘美な,快い,愛しい,楽しい」という意 味であるから,「甘美な,快い,愛しい,楽しいパーティー」という観念を 生じるものと認められる。
・・・・
(5) 類否の判断
以上のとおり,本件商標と引用商標は,外観上明確に区別できるものであ ること,本件商標と引用商標は観念において明確な差異があること,本件商 標と引用商標とは称呼において類似しているものの,その類似性の程度は高 くないことを考慮すると,本件商標と引用商標は,外観,観念,称呼等によ って取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察する場合に は,同一又は類似の商品に使用された場合に,その商品の出所につき誤認混 同を生ずるおそれはないものと認められる。 したがって,本件商標を引用商標の類似商標と解することはできないとい うべきである。
3 原告の主張の検討
(1)ア 原告は,「スイーツパーティー」という語が一般的になればなるほど「ス イートパーティー」,「SWEET PARTY」は,「スイーツパーティー」 と同じような,「甘いものを対象としたパーティー」という類似する観念で 捉えられ,観念としても非常に近い,紛らわしいものとして認識されるお それは十分に生じる旨主張する(前記第3,2(3)イ(ア))。 しかし,前記2(3)のとおり,「スイーツ」という語と「スイート」という 語は,区別して観念されており,それらが他の語と結びつく場合も含めて 区別して使用されているから,「スイーツパーティー」という語が一般的に なっても,「スイートパーティー」,「SWEET PARTY」から類似す る観念が生ずるとはいえず,原告の上記主張は,採用することができない。
イ(ア) 原告は,「スイーツパーティー」と「スイートパーティー」とが混同 を生じるか否かが問題であって,「スイーツ」という語と「スイート」と いう語の違いを強調して商標の類否を判断することは重大な誤りである 旨主張する(前記第3,2(3)イ(イ))。 しかし,前記のとおり,本件商標は,「スイーツ」と「パーティー」を 二段書きにしたものであり,しかも名詞と名詞が結合した商標であるか ら,上段の「スイーツ」を分離して観察することが可能であること,「ス\nイーツ」,「スイート」及び「パーティー」はそれぞれ独立した意味のあ る単語であって,「スイーツパーティー」と「スイートパーティー」は, 「パーティー」の部分において共通し,「スイーツ」,「スイート」は,「パ ーティー」という語を修飾して,どのようなパーティーであるかを示す 部分であるから,「スイーツパーティー」と「スイートパーティー」とが 混同を生じるか否かを明らかにする上で,「スイーツ」という語と「スイ ート」という語の観念等の違いの有無を検討することは必要である。
(イ) また,原告は,「スイート」という語が「すてきな」,「楽しい」,「か わいらしい」といった意味で使用されている例は乙27以外にない旨, 食品,とりわけ菓子について「スイート」という語が用いられた場合, 味覚を表す「甘い」という意味以外の理解をし,わざわざ「甘美な」,「快\nい」という意味を認識する者はいない旨主張する(前記第3,2(3)イ(イ))。 しかし,「スイート」という語が,甘美な,愛しい,楽しいという意味 で使用された例は,乙27(前記2(3)イ(カ))の他,乙8(前記2(3)イ(ウ) d),乙24,乙26(前記2(3)イ(エ)a),乙65(前記2(3)イ(オ))に ある。また,食品,とりわけ菓子について用いられる場合でも,「スイー ト」という語により修飾される語が味覚を生ずるものでない場合は,「ス イート」という語は,甘美な,愛しい,楽しいの意味で使用されるもの と推認され,前記2(3)イ(ウ)dのとおり,菓子について,「スイートなビ ジュアルが本命チョコにお勧め!」(乙8〔2頁〕)として,「スイート」 という語が,甘美な,愛しい,楽しいの意味で用いられている例もある。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
(2)ア 原告は,本件商標及び引用商標の指定商品の需要者は,幼児,老人を含 む大衆であり,本件商標と引用商標のカタカナ表記(外観)及び称呼は,\n同行音の近似音とされる「ツ」と「ト」の一字(一音)が相違するだけで あり,本件商標を英語表記して引用商標の英語表\記と比較しても,「S」一 文字の有無が相違するだけであるから,需要者の通常の注意力を基準とす ると,本件商標と引用商標は相紛らわしく,混同のおそれがあると主張す る(前記第3,2(4)ア)。
しかし,「スイート」,「パーティー」という語は,子供を含めて一般に広 く知られた平易な語であると認められ(弁論の全趣旨),「スイーツ」,「ス イーツパーティー」という語も,子供を対象とするゲーム,玩具,絵本に ついて用いられていることからすれば(乙62〜乙64),広く知られた平 易な語であると認められるから,難解で聞き慣れない語の中の一字(一音) が相違する場合と異なり,本件商標と引用商標は,外観及び称呼において, 「ツ」と「ト」の一字(一音)が相違するだけであっても,その区別は可 能であるものと認められる。そして,本件商標と引用商標とで観念が明確\nに異なることは,前記2(3)ウのとおりである。したがって,需要者を考慮 しても,本件商標と引用商標は混同のおそれがあるとは認められず,原告 の上記主張は,採用することができない。
イ 原告は,菓子等を製造販売する訴外会社の申し入れにより商標使用許諾\n契約を締結し,訴外会社から指摘されて本件無効審判を請求したことから, 本件商標と引用商標とが相紛らわしいことは,菓子等の製造販売業者にお いて認識されていたと主張する(前記第3,2(4)イ)。 しかし,原告と訴外会社との一契約をもって,菓子等の製造業者すべて における認識を判断することは相当ではなく,また,原告が訴外会社と商 標使用許諾契約を締結するに至った経緯や訴外会社の意図は明らかでない から,菓子等の製造販売業者において,一般に,引用商標と「スイーツパ ーティー」という商品名が商標として類似していると認識していたと認め るに足りないというべきである。

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令和3(行ケ)10071  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年10月14日  知的財産高等裁判所

 無効審判の審決取消訴訟です。争点は、商標「pum’s」がpumaと類似(11号)または混同するか(15号)です。指定商品は18類「折り畳み式傘,晴雨兼用傘,ビーチパラソル,日傘」及び第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」です。知財高裁は類似・混同しないとした審決を維持しました。\n

(1) 本件商標と引用商標の類否判断について
ア 外観
(ア) 本件商標は,「pum’s」の文字を太字の斜体の書体で表し,末尾\nの「s」の文字の下端を語頭の「p」の文字の下部まで横一直線に延伸 し,下線のように表されて構\成されている。原告は,本件商標の1文字 目と4文字目は,大文字「P」「S」と認識されると主張するが,1文 字目の左側の縦棒が下に突き出しているのは小文字であるからなのは明 らかであり,4文字目も上端が他の小文字と同じ高さに位置しているか ら,大文字とは認識されない。また,原告は,本件商標の2文字目は, 右側の縦棒がないため,大文字「U」と捉えられると主張するが,2文 字目は他の小文字と同じ大きさであって,直ちに採用できない。 一方,引用商標は,「PUmA」の文字を縦線を太く垂直に,横線を 細く描く書体で表し,各文字は,小文字である「m」も含めて,同じ高\nさで構成されている。\n両者は,語頭を含めた「pum(PUm)」の文字を共通にするが, 末尾において本件商標が小文字の「s」であるのに引用商標が大文字の 「A」であるという文字の相違,アポストロフィの有無,下線のように 表されたものの有無,書体が斜体であるか否か及び文字の横線が細いか\n否かといった点において明らかに異なり,外観においては,相紛れるお それはない。
(イ) 原告は,第3の1(1)ア(ア)cのとおり,るる主張するが,前記(ア)で 認定したとおり,本件商標と引用商標の外観上の相違は明白であり,仮 に,原告が主張する個別の点につき一定の類似が認められるとしても, そのことから,外観において相紛れるおそれがあるということはできな い。 なお,念のために判断すれば,上記c(a)については,引用商標は文字 の横線が細いことが明確であるのに対し,本件商標では縦線と横線の太 さの違いは子細に見なければ看取できず,逆に,本件商標では角部の丸 みは明確であるが,引用商標では明らかでないし,同(b)については,本 件商標が斜体であるのに対し,引用商標は各文字が垂直かつ同じ高さで, 長方形の範囲に収まって全体として整然とした印象を与えるものであっ て,両者の印象が異なることは明らかであるし,同(c)については,いず れにしても本件商標における「s」の文字の下端の延伸された部分が引 用商標との相違点として着目されないということにはならないし,同? については,相違する最後の「A」と「S」の文字が相似た文字に看取 される場合があるとは認め難いし,同(e)については,特段の意味内容を 想起させない「pum」の欧文字部分が本件商標の要部であるとは到底 いえず,原告の各主張は個別にみても採用し得ない。 そうすると,本件商標と引用商標の外観は大きく異なるものであって, 前記1の引用商標の周知著名性を勘案しても,両者の外観が類似すると の原告の主張は採用できない。
イ 称呼
(ア) 本件商標からは「パムズ」,「パムス」,「プムズ」又は「プムス」 の称呼が生じるのに対し,引用商標からは「プーマ」又は「ピューマ」 の称呼が生じ,語頭の「pu」ないし「PU」を「プ」と読んだ場合に 音を共通にする場合があるとしても,いずれも3音という短い音数にお いては,2音目及び3音目における音の相違,特に,3音目の「ズ」な いし「ス」(本件商標)と「マ」(引用商標)の相違は大きいものであ って,相紛れるおそれはない。
(イ) 原告は,前記第3の1(1)ア(イ)のとおり,本件審決が,本件商標の要 部である「PUm」の欧文字部分から生ずる「プム」の称呼と引用商標 から生ずる称呼とを対比していないと主張するが,本件商標における 「pum」の欧文字部分が要部であるという主張が到底採用できないこ とは前記アのとおりである上,仮に同部分を本件商標の要部とし,これ を「プム」と称呼し,引用商標を「プーマ」と称呼したとしても,短音 と長音の違い,「ム」と「マ」の違いは,短い標章の中では大きな差異 として認識されるものというべきである。
ウ 観念
本件商標が造語であることから,特定の観念を生じないのに対し,引用 商標が周知著名であることから,「原告のブランド」との観念を生じ,両 者は明確に区別することができ,相紛れるおそれがない。
エ その他
原告は,前記第3の1(1)ア(エ)のとおり,本件商標と引用商標の需要者 である一般消費者は,衣類や靴等に商標をワンポイントマークとして小さ く表示された場合,些細な相違点に気付かないことも多いと主張する。\nしかし,商標が小さく表示された場合をことさら取り上げることの当否\nは措くとしても,そもそも本件商標と引用商標は全体的な印象においても 明らかに異なることは前記アのとおりであり,小さく表示された場合でも,\nその相違は明白であるから,原告の主張は採用できない。 また,原告は,前記第3の1(1)ア(オ)のとおり,本件消費者調査の結果を 理由に,本件商標と引用商標の類似性を主張する。 しかし,本件消費者調査は,本件商標の登録査定時よりも後に実施され たものであること,本件商標について助成想起(本件商標の指定商品〔ス ポーツ関連用品〕の出所標識という前提〔ヒント〕を与えて自由回答形式 で聴取するもの)による質問について原告を連想した15%という数値は 大きいとはいえない上,スポーツ関連用品というヒントを与えられれば, 多少とも本件商標と共通点のあるブランドを想起しようと努めると考え られることを考慮すると,この数値すらそのまま受け取ることはできない こと,本件商標と引用商標を並べた場合に両商標が類似するという回答も, このような限界のある質問の後にされたものであることを考慮すれば,本 件商標と引用商標の類似性を裏付ける資料とはいえない。したがって,こ の点に係る原告の主張も採用し得ない。
(2) 小括
以上によれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれに おいても相紛れるおそれがなく,類似しないものと認められる。 そうすると,本件商標の指定商品と同一又は類似する商品が引用商標7, 8及び10の指定商品中に含まれているとしても,本件商標は,商標法4条 1項11号に該当せず,本件審決の判断に誤りはない。
3 取消事由2(本件商標の商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)につい て
(1) 混同のおそれについて
「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程\n度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度,当該商標の指定商品等と他\n人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並 びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし,当該 商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準 として,総合的に判断すべきである。 これを本件につき検討するに,前記2において判断したとおり,本件商標 と引用商標とは,引用商標の周知著名性を勘案しても,外観,称呼及び観念 のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,その類似 性は極めて低いというべきであるから,本件商標の指定商品には「運動用特 殊衣服,運動用特殊靴」が含まれており,原告の業務に係る商品との間の関 連性や,取引者や需要者の共通性が高く,また,そのような商品はいずれも 注意力が高いとはいえない一般消費者も需要者とするものであることを考慮 しても,本件商標に接する取引者及び需要者が,原告又は引用商標を連想又 は想起することはないというべきである。これに反する原告の主張は,前記 2において判断したのと同様の理由によりいずれも採用し得ない。そうする と,本件商標は,これをその指定商品に使用をしても,その取引者及び需要 者をして,当該商品が原告の商品に係るものであると誤信させるおそれがあ るものとはいえない。

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令和3(行ケ)10032    商標権  行政訴訟 令和3年10月6日  知的財産高等裁判所

 「ヒルドプレミアム」に対して、先願「ヒルドイド」の商標権者が無効審判を請求しました(4条1項11号、15号)。審決は無効理由無しと判断し、知財高裁も同様の判断をしました。「ヒルドイド」は、医薬品として周知著名だとしても、化粧品としてはそこまではいえないというものです。

 上記事実(ア)ないし(エ)によれば,本件商標の登録出願当時,原告使用商標 は,処方薬としての原告薬剤を表示する商標として,処方薬の需要者であ\nる皮膚科の医師等の医療関係者の間において,広く知られていたものと認 められる。これに対し,化粧品としての用途が,雑誌記事に取り上げられ るなどして一般に知られるようになったのは,証拠上は平成26年以降で ある上(事実(オ)),その紹介記事の内容(別紙2)をみても,「知る人ぞ 知る」という取り上げ方をされており,その時点において既に周知著名で あったとはいえない。そして,これらの記事においては原告薬剤は処方薬 であることへの注意喚起がなされていること(事実(オ)),原告が医師等に 対して美容目的での処方をしないように啓発していること(事実(カ))も踏 まえると,本件商標の登録出願(平成30年1月29日)の時点において, 化粧品の需要者である一般消費者の間で,原告使用商標が周知著名であっ たとまではいえない。
また,事実(キ)ないし(ケ)のとおり,これらの記事が出た後に,複数の事業 者からヘパリン類似物質含有商品が相次いで販売された事実,その広報宣 伝において原告薬剤を引き合いに出すものや,名称に「ヒル」又は「ヒル ド」を含むものが多くみられる事実は,化粧品の分野におけるヘパリン類 似物質含有商品という市場自体が,原告薬剤の美容目的への流用という事 態によって成立したという経緯を反映するものではあるが(例えば甲26 の1(2018(平成30)年12月6日付け「日経doors」記事)の 「『ヒルドイド』で知られる医療用保湿剤の成分,ヘパリン類似物質を配 合した市販薬とコスメが,18年秋に相次いで登場した。背景には,化粧 品代わりに求める女性が増え,健康保険財政を圧迫するまでになったとい う事情がある。」との記載),そのような経緯があるからといって,医療 用医薬品である原告薬剤の名称としての原告使用商標が,化粧品の分野に おいて周知著名性を獲得していたことになるものではない。
なお,本件アンケートにおいてヒルドイドの「認知度」が5割ないし6 割にのぼっていた(事実(コ))としても,これらの「認知度」は,皮膚の乾 燥に起因すると考えられるトラブルを抱えて何らかの皮膚薬を最近になっ て使用していた者の間でのものであるから(事実(コ)のa),原告薬剤が処 方薬の分野で5割以上の高い市場占有率を得ていること(事実(ウ))に照ら して,本件アンケートにおける「認知度」が高くなることはある程度必然 的であり,化粧品の分野における一般消費者の間での周知著名性を明らか にするものではない。
ウ 原告の主張について
原告は,上記アの各事実に基づき,原告使用商標が化粧品の分野におい ても本件商標の登録出願当時に周知著名性を獲得していた旨主張するが, これらの事実を前提としても周知著名性を認定するに足りないことは,上 記イで説示したとおりであるから,原告の主張は採用することができない。 また,原告は,ヘパリン類似物質を含有する一般用医薬品「ヒルマイル ド」につき,原告薬剤を想起している需要者が多数いること(別紙4)や, 「あのヒルドイドが店頭で新発売!」といううたい文句で販売されている ことからも,原告使用商標が広く知られている実態を見て取れる旨主張す るが,そもそも「ヒルマイルド」は被告の販売する商品ではないばかりか, 「ヒルマイルド」は「ヒル」の文字の後に「イ」の文字を含み,「ド」の 文字で終始する点において,原告使用商標との類似性は本件商標よりも更 に高いから需要者に原告薬剤を想起させたとも考えられるところであるし, 「あのヒルドイドが店頭で新発売」という文言は,医療用医薬品であって 店頭では販売されない原告薬剤の代わりとなる商品が発売されたという趣 旨に理解されるから,原告の主張は,上記イの判断を左右しない。

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関連事件です。こちらは医薬品について周知著名と認定されています。

◆令和3(行ケ)10028

◆令和3(行ケ)10029

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令和3(行ケ)10029  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年9月21日  知的財産高等裁判所

 商標 「HIRUDOMILD」について、引用商標1「Hirudoid」及び引用商標2「ヒルドイド」から無効か否かが争われました。審決は非類似、出所混同無し(11,15号違反無し)と判断しましたが、知財高裁は、「HIRUDO」の文字のみを抽出できるとして、審決を取り消しました。

 ア 本件商標は,「HIRUDOMILD」の10文字の標準文字で表してなるものであり,「ヒルドマイルド」の称呼が生じるものである。\nところで,本件商標が10文字からなるものでその一部のみを観察することも想 定可能な程度の長さを有していること,その構\成中の「MILD」の文字部分は, 前記1(5)のとおり,「物事の程度や人の性質・態度などが穏やかなさま。」「刺激の 少ないさま。」などを意味する英単語として広く知られ,また,会話中においても日 常的に使用されており,ひとまとまりの語句として強く認識され得るものであるこ とからすると,本件商標は,「HIRUDO」の構成部分と「MILD」の構\成部分 からなる結合商標であるとみることができる。 そして,「HIRUDO」の構成部分は,我が国において周知されているものではないから一種の造語と理解され,同構\成部分に対応する和名の「ヒルド」は,前記1(1)のとおり長期間にわたって原告商品の他には薬剤の名称には使用されておら ず,薬剤の名称としてありふれたものではないことからしても,需要者に対し,商 品の出所識別標識として強い印象を与えるといえる。これに対し,「MILD」の構成部分は,前記1(5)のとおり,薬剤の分野においては,薬の効果や刺激が弱いこと を意味するものとして理解され,その和名である「マイルド」は薬のブランド名等 とともに商品名に用いられることが相当程度にあるから,指定商品である薬剤との 関係において,自他識別機能は極めて弱いというべきであり,「MILD」の構\成部 分から出所識別標識としての称呼,観念が生じるとはいえない。 そうすると,本件商標については,「HIRUDO」の文字のみを抽出し,この部 分だけを引用商標と比較して類否を判断することも許されるというべきである。
イ したがって,本件商標については,「HIRUDOMILD」の外観及び「ヒ ルドマイルド」の称呼のほか,「HIRUDO」の外観及び「ヒルド」の称呼が生じ るものとして引用商標と比較することが相当である。なお,「HIRUDO」は特定 の意味合いを有しない一種の造語と理解され,本件商標からは特定の観念を生じな いというべきである。もっとも,上記1(5)からすれば,「HIRUDOMILD」 が薬剤に使用された場合には,「薬効又は刺激が弱い『HIRUDO』」という観念 が生じ得ると認めるのが相当である。
(2) 引用商標について
ア 引用商標1は,「Hirudoid」の8文字のアルファベットからなるもの であり,「ヒルドイド」の称呼を生じる。辞書等に採録された既成語ではなく,特定 の意味合いを有しない一種の造語と理解され,特定の観念を生じない。
イ 引用商標2は,「ヒルドイド」の5文字の片仮名からなるもので,「ヒルドイ ド」の称呼を生じる。辞書等に採録された既成語ではなく,特定の意味合いを有し ない一種の造語と理解され,特定の観念を生じない。
4 本件商標と引用商標1の類否
本件商標と引用商標1の類否について検討する。
(1) 本件商標の指定商品は「薬剤」であり,引用商標1の指定商品は「薬剤(蚊 取線香その他の蚊駆除用の薫料・日本薬局方の薬用せっけん・薬用酒を除く。)」を 含むものであって,その指定商品は同一又は類似である。
(2)ア 本件商標は,その10文字中,7文字目の「M」,9文字目の「L」を除 く「HIRUDO(Hirudo)」「I(i)」「D(d)」の8文字が,引用商標1と大文字と小文字の差はあるものの共通し,その並び順も同じである。次に,称呼 についてみると,本件商標と引用商標1は,「ヒルド」「イ」「ド」の5つの構成音が共通し,その並び順も同じであり,本件商標の方が引用商標1よりも「マ」と「ル」\nの2音多いものの,印象の強い語頭の3音と語尾の1音が同じである。そして,前 記3(1)のとおり,本件商標は,薬剤に使用された場合,「薬効又は刺激が弱いHI RUDO」を連想させるものである。 イ 本件商標の「HIRUDO」の構成部分と引用商標1を比較すると,大文字と小文字の差はあるものの,その6文字全てが引用商標1の冒頭6文字と共通し,\nその3つの構成音全てと引用商標1の語頭の3つの構\成音が共通する。「HIRU DO」及び引用商標1はいずれも特定の意味を有しない造語であり,それ自体から 特定の観念は生じない。
(3) 原告商品は医療用医薬品であるものの,その需要者は医療関係者に限られる ものではなく,その最終需要者は患者である上に,前記1(2)のように,記事やオン ラインショップ等で,市販品であるヘパリン類似物質含有製剤について「『ヒルドイ ド』で知られる医療用保湿剤の成分」を配合している旨の説明がされるほどに「ヒ ルドイド」が市販品である保湿剤の購入者に知られていたと推認されることからし ても,原告使用商標が表示された原告商品の需要者には,医師等医療関係者のみならず患者も含まれるというべきである。本件商標の付された商品は存在しないもの\nの,仮に被告が主張するように医療用医薬品のみに使用されるものであったとして も上記需要者の認定を左右しない。 その上で,取引の実情について検討するに,前記1(1)及び(2)のとおり,引用商 標1を表示した原告商品が60年以上にわたり販売されていること,原告が原告商品について一定の宣伝活動を継続していること,平成29年度には原告商品が医療\n用医薬品の年間売上げで19位となるなど非常に高い売上げを有していること,平 成26年度から平成30年度までの間のヘパリン類似物質含有製剤又は血液凝固阻 止剤の分野における原告商品の売上占有率は,徐々に減少しているものの全期間を 通じて金額にして7割,数量にしても5割を超えていたこと,平成29年頃には, アンチエイジングの効果がある又は肌荒れ・乾燥に効果のある保湿クリームとして 女性誌等でも取り上げられ,美容目的で処方を受ける例があることが疑われるなど として問題視されるまでになっていたこと,原告が適正な処方をするよう注意喚起 した後に,原告商品と同じヘパリン類似物質を配合した市販品(医薬品又は医薬部 外品)が複数販売されるようになり,製造者や販売店が,「ヒルドイドで有名な『ヘ パリン類似物質』を配合」などと説明するなどしていたこと及び令和3年2月から 同年3月に実施されたアンケートによると乾燥肌等に対する皮膚薬を使用又は1年 以内に使用した者の44%が「ヒルドイド」を保湿剤であると認識していたことか らすると,平成29年頃までには,需要者の相当割合の者が,「ヒルドイド」という 造語及びこれに対応する欧文字の「Hirudoid」から,「ヘパリン類似物質を 配合した保湿剤」である原告商品を想起するものと認められ,長期間をかけて形成 されたこの状況は,本件商標の出願日及び本件査定日においても継続していたもの と認めるのが相当である。 また,昭和51年から平成11年まで販売されていた「ヒルドシン」を除けば, 語頭に「ヒルド」や「HIRUDO(Hirudo)」が付された薬剤は原告商品の みであったこと,原告が原告商品について適正な処方をするよう注意喚起した後に, 原告商品と同じヘパリン類似物質を配合した市販品(医薬品又は医薬部外品)が複 数販売されるようになり,そのうち医薬部外品の一つは語頭に「ヒルド」を用いて おり,一部の購入者が原告商品の市販品であると誤解して購入するなどしていたこ と等に照らすと,本件商標の出願日及び本件査定日時点において,需要者の間では, 「ヒルド」やこれに対応する欧文字の「HIRUDO」は,「ヒルドイド」及び「H IRUDOID」を意味する単語として認識されており,「ヒルド」に対応する欧文 字の「Hirudo」は「Hirudoid」を意味するものと認識されていたと 認めるのが相当であるから,「HIRUDO」と引用商標1は,いずれも「ヘパリン 類似物質を配合した保湿剤であるヒルドイド」を想起させるということができ,観 念を共通とするものと認められる。
(4) 被告の主張について
被告は,「○○」と「○○MILD」の両方が商標登録されている例が複数ある旨 指摘するが,これらの登録例は,同一権利者による商標出願に係るものか,指定商 品が異なるか,「○○」の部分が「PRECIOUS」など特定の意味を有する単語 であるなどしていて,本件とは事案が異なる(乙1)。また,「ウフェナ」の文字を 標準文字で表してなる商標が,「ウフェナマイルド」の文字と「UFENAMILD」の文字を上下二段に表\してなる構成の引用商標と類似しないと判断した審決例(乙\n2)があるが,当該引用商標の構成が本件商標及び本件の引用商標とは異なる上,同審決においては取引の実情が考慮されていないなど本件とは事案が異なるもので\nある。 次に,被告は,語頭に「ヒルド」を付す名称の薬剤は原告商品のみではない旨主 張するが,「ヒルド」を語頭に付した名称の商品が原告商品の他に複数販売されてい る状況が長期間にわたり継続するなどして「HIRUDO」の構成部分の出所識別機能\が失われたとまで認めるべき事情はないから,これらの商品の存在は,本件商標と引用商標1の類否の判断に影響しない。
(5) 上記を総合すると,本件商標と引用商標1は,指定商品が同一で,外観,観 念,称呼に共通している部分があり,同一又は類似の商品に使用された場合に,商 品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるというほかないから,両商標は類似 すると認めるのが相当である。

◆判決本文
関連事件です。商標がカタカナ表記です。

◆令和3(行ケ)10028
関連事件です。

◆令和3(行ケ)10032

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令和2(行ケ)10126  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年8月30日  知的財産高等裁判所

 音商標「マツモトキヨシ」について、商標法4条1項8号に該当するとした拒絶審決が取り消されました。

 本願商標の商標法4条1項8号該当性について
原告は,1)本願商標の出願当時,本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」\nという言語的要素からなる音から,通常,容易に連想,想起するのは,ドラ ッグストアの店名としての「マツモトキヨシ」又は企業名としての株式会社 マツモトキヨシ,株式会社マツモトキヨシホールディングス(原告)であっ て,「マツモトキヨシ」と読まれる人の氏名であるとはいえないから,本願 商標を構成する「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音は,「マツ\nモトキヨシ」を読みとする人の氏名として客観的に把握されるものではない, 2)したがって,本願商標は,「他人の氏名」を含む商標であるとはいえない から,本願商標が商標法4条1項8号に該当するとした本件審決の判断は誤 りである旨主張するので,以下において判断する。
(1)商標法4条1項8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称 等を含む商標は,その承諾を得ているものを除き,商標登録を受けること ができないと規定した趣旨は,人は,自らの承諾なしに,その氏名,名称 等を商標に使われることがないという人格的利益を保護することにある ものと解される(最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日 第三小法廷判決・裁判集民事214号373頁,最高裁平成16年(行ヒ) 第343号同17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号59 5頁参照)。 このような同号の趣旨に照らせば,音商標を構成する音が,一般に人の\n氏名を指し示すものとして認識される場合には,当該音商標は,「他人の 氏名」を含む商標として,その承諾を得ているものを除き,同号により商 標登録を受けることができないと解される。 また,同号は,出願人の商標登録を受ける利益と他人の氏名,名称等に 係る人格的利益の調整を図る趣旨の規定であり,音商標を構成する音と同\n一の称呼の氏名の者が存在するとしても,当該音が一般に人の氏名を指し 示すものとして認識されない場合にまで,他人の氏名に係る人格的利益を 常に優先させることを規定したものと解することはできない。 そうすると,音商標を構成する音と同一の称呼の氏名の者が存在すると\nしても,取引の実情に照らし,商標登録出願時において,音商標に接した 者が,普通は,音商標を構成する音から人の氏名を連想,想起するものと\n認められないときは,当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識 されるものといえないから,当該音商標は,同号の「他人の氏名」を含む 商標に当たるものと認めることはできないというべきである。
(2)ア これを本願商標についてみるに,前記2の認定事実によれば,1)株式 会社マツモトキヨシが昭和62年にドラッグストア「マツモトキヨシ」 の店舗展開を開始した後,平成29年1月30日に本願の出願がされる までの約30年以上にわたり,株式会社マツモトキヨシ,原告及び原告 のグループ会社が,「マツモトキヨシ」の表示をドラッグストアの店名\n又は自己の企業名として継続して使用したこと,2)同年3月31日現在 で,ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店舗数は,全国45都道府県 で1555店舗,原告のグループ会社のメンバーズカード(ポイントカ ード)の会員数は約2440万人に達しており,また,「マツモトキヨ シ」のブランドは,インターブランド社による2016年度及び201 7年度のブランド価値評価ランキングでドラッグストアとして日本で ナンバーワンブランドの評価を獲得したこと,3)平成8年から開始され たドラッグストア「マツモトキヨシ」のテレビコマーシャルでは,女性 又は男性の声の音色,複数の声の斉唱で本願商標と同一又は類似の音を フレーズに含むコマーシャルソングが相当数使用され,テレビコマーシ\nャルが放映された以降においても,本願商標と同一又は類似の音がドラ ッグストア「マツモトキヨシ」の各小売店の店舗内において使用されて いたことが認められる。 これらの認定事実によれば,本願商標に関する取引の実情として,「マ ツモトキヨシ」の表示は,本願商標の出願当時(出願日平成29年1月\n30日),ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店名や株式会社マツモ トキヨシ,原告又は原告のグループ会社を示すものとして全国的に著名 であったこと,「マツモトキヨシ」という言語的要素を含む本願商標と 同一又は類似の音は,テレビコマーシャル及びドラッグストア「マツモ トキヨシ」の各小売店の店舗内において使用された結果,ドラッグスト ア「マツモトキヨシ」の広告宣伝(CMソングのフレーズ)として広く\n知られていたことが認められる。
イ 前記アの取引の実情の下においては,本願商標の登録出願当時(出願 日平成29年1月30日),本願商標に接した者が,本願商標の構成中\nの「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音から,通常,容易に 連想,想起するのは,ドラッグストアの店名としての「マツモトキヨシ」, 企業名としての株式会社マツモトキヨシ,原告又は原告のグループ会社 であって,普通は,「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」,「松本 潔」,「松本清司」等の人の氏名を連想,想起するものと認められない から,当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものと はいえない。 したがって,本願商標は,商標法4条1項8号の「他人の氏名」を含 む商標に当たるものと認めることはできないというべきである。
(3)ア これに対し被告は,1)ウェブサイト(乙4ないし7)には,原告とは 他人の「松本清」,「松本潔」,「松本清司」等の氏名表示のひとつと\nして,「マツモトキヨシ」の片仮名が表記されており,かつ,これらの\n者は,現存していると推認できること,各地域のハローページ(乙8な いし19)には,「マツモトキヨシ」と読まれる人の氏名として,原告 とは他人の「松本清」,「松本潔」等が掲載されており,かつ,これら の者は,いずれも本願商標の登録出願時から現在まで存在している者で あると推認できること,氏名を片仮名表記することは,各種の商取引に\nおいて,社会一般に行われていること(乙20ないし28)からすると, 本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音は,\n「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」,「松本潔」,「松本清司」 等の人の氏名を容易に連想,想起させるものであり,「マツモトキヨシ」 と読まれる人の氏名として客観的に把握されるものである,2)原告の提 出に係るテレビコマーシャルに関する証拠からは,当該テレビコマーシ ャルの規模が明らかでなく,平成19年以降の放映も確認できないから, 当該テレビコマーシャルが本願商標の音を聞いた者の認識に与える影 響は限定的であること,当該テレビコマーシャルを視聴した者は,視覚 的要素とともに「マツモトキヨシ」の言語的要素からなる音を聴取,把 握し,記憶するものといえるので,当該テレビコマーシャルは,本願商 標に接した者が,「マツモトキヨシ」の言語的要素からなる音を,マツ モトを姓とし,キヨシを名とする人の氏名であると認識することなく, 店舗名又は企業名としてのみ認識することの根拠たり得ないこと,原告 の挙げるブランド価値ランキングは,本願商標の音を聞いた者の認識を 直接反映したものとはいい難く,このほか,「マツモトキヨシ」という 言語的要素からなる音がドラッグストアの店名又は企業名としてのみ 認識されることを裏付ける証拠はないことからすると,1)のとおり,上 記言語的要素からなる音が,「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」, 「松本潔」,「松本清司」等の人の氏名として客観的に把握されること を否定することはできないとして,本願商標は,商標法4条1項8号の 「他人の氏名」を含む商標に当たる旨主張する。 しかしながら,前記(2)ア認定のとおり,「マツモトキヨシ」の表\n示は,本願商標の出願当時,ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店名 や株式会社マツモトキヨシ,原告又は原告のグループ会社を示すものと して全国的に著名であり,「マツモトキヨシ」という言語的要素を含む 本願商標と同一又は類似の音は,テレビコマーシャル及びドラッグスト ア「マツモトキヨシ」の各小売店の店舗内において使用された結果,ド ラッグストア「マツモトキヨシ」の広告宣伝(CMソングのフレーズ)\nとして広く知られていたという取引の実情を踏まえると,本願商標に接 した者が,本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」という言語的要素か\nらなる音から,通常,容易に連想,想起するのは,ドラッグストアの店 名としての「マツモトキヨシ」,企業名としての株式会社マツモトキヨ シ又は原告のグループ企業であって,普通は,「マツモトキヨシ」と読 まれる「松本清」,「松本潔」,「松本清司」等の人の氏名を連想,想 起するものと認められない。
また,甲43によれば,上記テレビコマーシャルの規模は首都圏を中心 にドラッグストア「マツモトキヨシ」の出店のある全国の地域に及んでい たことが認められる上,上記テレビコマーシャルの放映後も,上記テレビ コマーシャルで使用された本願商標と同一又は類似の音がドラッグスト ア「マツモトキヨシ」の各小売店の店舗内で使用されていたものと認めら れるから,当該テレビコマーシャルが本願商標を聞いた者の認識に与える 影響が限定的であるということはできないし,上記テレビコマーシャルが 視覚的要素を伴うことも,上記認定を左右するものではない。 さらに,前記(1)で説示したとおり,同号は,出願人の商標登録を受 ける利益と他人の氏名,名称等に係る人格的利益の調整を図る趣旨の規定 であり,当該音が一般に人の氏名を指し示すものとして認識されない場合 にまで,他人の氏名に係る人格的利益を常に優先させることを規定したも のと解することはできないことに鑑みると,本願商標に接した者が,「マツ モトキヨシ」の言語的要素からなる音をドラッグストアの店名又は企業名 としてのみ認識することがない以上は,本願商標が同号の「他人の氏名」 を含む商標に該当するとの解釈は妥当とはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。
イ 次に,被告は,本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」という言語的要\n素からなる音が,「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」,「松本潔」,「松 本清司」等の人の氏名として客観的に把握され,本願商標は「他人の氏名」 を含む商標である以上,商標法4条1項8号の趣旨に照らせば,上記言語 的要素からなる音が,原告又は株式会社マツモトキヨシが経営するドラッ グストアを指し示すものとして一定程度知られていることや,特定の者の 略称として一定の著名性を有することは,本願商標の同号該当性を左右す るものではない旨主張する。 しかしながら,前記アで説示したとおり,本願商標は「他人の氏名」を 含む商標であるとはいえないから,被告の上記主張は,その前提を欠くも のであり,採用することができない。

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令和3(行ケ)10031  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年8月19日  知的財産高等裁判所

 本件商標 HIRUDOSOFT(標準文字)について、先行商標「Hirudoid」、商標「ヒルドイド」に対して、類似または混同が生ずるかが争われました(4条1項11号、同15号違反)。知財高裁(4部)は、無効理由無しとした審決を維持しました。

前記2(1)のとおり,本件商標と引用商標1及び2は,外観及び称呼にお いて明らかに相違するものであるから,引用商標と同一又は類似である原 告使用商標も,本件商標とは非類似の商標であるといえる。
もっとも,本件商標が原告商標と非類似の商標であっても,その商品の 出所について混同を生じるおそれがある商標については,商標法4条1項 15号に規定する商標に当たる余地もあり得るので,以下,念のためこの 点についても検討する。
イ 前記2(1)アのとおり,本件商標の取引者及び需要者は,先発医薬品につ いては,医師,薬剤師等の医療関係者であり,一般用医薬品及び医薬部外 品については,薬剤師等のほか,一般消費者も含まれることになる。 そして,仮に原告使用商標が周知著名であるとしても,原告使用商標は 「Hirudoid」又は「ヒルドイド」として認知されているのであっ て,「Hirudo」又は「ヒルド」として認知されているわけではなく, また,本件全証拠を精査しても,薬剤の取引の分野において,販売名の語 頭3文字に略して取引されているといった取引の実情を認めるに足りる 証拠はないことからすると,一般消費者を含む取引者及び需要者において 普通に払われる注意力を基準としても,本件商標を付した一般用医薬品又 医薬部外品について,原告が製造販売したものであり,又は原告と経済的 若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの ようにその商品の出所について混同を生じる恐れがあるものと認めるこ とはできない。 なお,前示のとおり,本件商標は先発医薬品にも使用されることもあり 得るところ,その取引者及び需要者は,医療関係従事者であり,薬効も原 告使用商標に付される原告商品と異なるものであるから,その商品の出所 について混同を生じるおそれがあるといえないことはなおさら明らかで ある。

◆判決本文

こちらは関連事件です。「ヒルドソフト」(標準文字)と仮名表\示となった商標です。

◆令和3(行ケ)10030

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令和2(行ケ)10148  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年6月16日  知的財産高等裁判所

 図形と文字の結合商標について、同じ文字構成の先願既登録商標が存在するして、拒絶された審決の取消訴訟で、知財高裁は審決の判断を維持しました。本件商標は、カンガルーをモチーフとしたと思われる図形部分と,その下に「KANGOL」と横書きされた欧文字部分で構\成されてました。指定役務は「洋服・コート・セーター類・ワイシャツ類・・・,寝巻き類・下着・水泳着・水泳帽の小売など・・・」のファッション分野の小売りなどです。先行登録商標は、「KANGOL」の文字を標準文字で表し,指定役務が「帽子の小売等・・・」ですが、小売りサービスとしては同じ35K02の類似群コードが付与されています。

ア 本願商標
(ア) 本願商標は,カンガルーをモチーフとしたと思われる図形部分と, その下に「KANGOL」と横書きされた欧文字部分からなる。
(イ) 上記の図形は,その形状からすれば,カンガルーをモチーフとした 図形であると認識され得るものといえるが,やや抽象化された図形であ ることからすれば,同図形部分から特定の称呼や観念が生じるものとま ではいえない。また,上記の欧文字は,一般的な辞書等に掲載されてい る語ではなく,特段の図案化もされていないことからすれば,同欧文字 部分から特定の観念が生じるものとはいえない。 そうすると,上記の図形部分及び欧文字部分には観念上のつながりが あるとはいえないところ,本願商標全体の構成からすると,同各部分は,\n視覚上分離して看取されるものであって,分離して観察することが取引 上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないか ら,それぞれが要部として認識されるものといえる。
(ウ) そして,上記の欧文字部分についてみるに,同部分からは「KAN GOL」の欧文字に相応して「カンゴール」の称呼が生じるが,特定の 観念は生じないといえる。
イ 引用商標
引用商標は,「KANGOL」の欧文字を標準文字で表したものであると\nころ,本願商標の欧文字部分と同様に,引用商標からは「カンゴール」の 称呼が生じるが,特定の観念は生じないといえる。
ウ 類否判断 上記ア及びイを基に,本願商標の要部である「KANGOL」の欧文字 部分と引用商標とを比較すると,両者は,観念を比較することはできない ものの,欧文字のつづりが同じである上,本願商標の欧文字部分について 特段の図案化はされていないから,外観が極めて類似するものといえる。 また,両者からはいずれも「カンゴール」の称呼が生じるから,両者は称 呼を共通にするものといえる。 以上の事情を総合して全体的に考察すれば,本願商標の要部である「K ANGOL」の欧文字部分及び引用商標については,これらが同一又は類 似の商品又は役務に使用された場合には,その商品又は役務の出所につき 誤認混同を生ずるおそれがあるといえる。
・・・・
上記ア及びイで検討したとおり,本願指定役務及び引用指定役務は,い ずれも衣類を中心とするファッション商品を取扱商品とするものである 上,これらの取扱商品が通信販売ウェブサイトにおいて販売されるなどし ている実情があることからすれば,いずれも一般需要者を広く対象とする ものといえる。また,上記イ(ア)ないし(エ)及び(コ)によれば,特定のブ ランドが付された両役務の取扱商品を,同一の小売業者から購入する需要 者は少なくないと考えられる。 これらの事情を考慮すると,本願指定役務及び引用指定役務は,需要者 の範囲が一致するものといえる。
エ 類否判断
上記アないしウで検討したところによれば,本願指定役務及び引用指定 役務は,具体的な取扱商品は異なるものの,いずれも衣類を中心とするフ ァッション商品を取扱商品とする点において共通するほか,役務を提供す る手段,目的及び業種が共通するものといえる。また,両役務は,役務を 提供する場所が共通する場合があるほか,需要者の範囲が一致するものと いえる。 これらの事情を考慮すると,本願指定役務及び引用指定役務については, これらの役務に同一又は類似の商標を使用する場合には,同一営業主の提 供に係る役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるといえ る。

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令和3(行ケ)10026  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年7月29日  知的財産高等裁判所

 文字「S」を図形化し文字「SANKO」と結合させた商標について、先願商標「SANCO」と類似するとして拒絶審決がなされました。知財高裁も同様に類似すると判断しました。

結合商標の類否判断の方法について
(1) 商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,かつ,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,各構\成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合は,一つの称呼,観念が他人の商標の称呼,観念と同一又は類似であるといえないとしても,他の称呼,観念が他人の商標のそれと類似するときは,両商標はなお類似するものと解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁参照)。
(2) この点について,原告は,結合商標の一部を分離,抽出して商標の類否を判断することは,「商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合」や,「それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合」などの場合に限られるべきであると主張する。しかし,原告が挙げる上記の場合以外にも,「各構\成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合」には,分離して観察することが許されると解するのが相当である。原告が引用する最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁も,このことを否定するものとは解されない。
(3) そして,以上の(2)で述べた事情などを総合的に考慮して,結合商標の一部を分離,抽出して商標の類否を判断することが許されるかどうかを判断することが相当であると解される。
2本願商標について
(1)本願商標は,朱色の半楕円と同色縞模様の半楕円を斜めに接するように組み合わせてなる図形を配した本願図形部分と,その右にやや図案化された「SANKO」の欧文字を本願図形部分と同様の朱色で横書きした本願文字部分からなるところ,図形と文字という構成要素の性質の違いや,本願図形部分の上部が本願文字部分の上部よりも少なからず上にはみ出す形となっていることのほか,本願文字部分については容易に「サンコ」又は「サンコー」という称呼を有する部分として理解されることからすると,本願図形部分と本願文字部分とは,外観上,明確に分離して看取されるものであるといえる。そうすると,本願図形部分及び本願文字部分について,それらの部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものとはいえない。
(2) 上記のとおり容易に特定の称呼を有する部分として理解される本願文字部分は,本願商標の構成の大きな部分(7割以上)を占めている。そして,「SANKO」の文字は,辞書等に載録のない語であるから,特定の観念を生じないものである。そうすると,本願文字部分は,需要者の印象に残りやすく,強い印象を与えるということができる。
(3) これに対し,本願図形部分については,その形状に照らし,称呼を有しない図形であるのか,一定の文字を図案化したものであるのか,一見して直ちに明確なものであるとはいい難いが,商標において,企業等の名称の文字の一部が図案化される例は少なからずあると解されることや,本願文字部分の冒頭の文字が「S」であることからすると,本願図形部分は,「S」を図案化したものであると理解することも可能であるといえ,その場合には本願図形部分から「エス」の称呼が生じ得る。もっとも,本願文字部分の冒頭の文字が「S」であることからすると,本願図形部分が「S」を図案化したものと理解される場合においては,本願文字部分の冒頭の「S」を取り出して特に図案化して配置したものにすぎず,本願文字部分と独立した意味を有するものではないとの理解がされることも多いものとみることができる。\n
(4)上記(1)〜(3)からすると,本願商標については,本願文字部分のみによって商標の類否を判断することも許されるということができる。したがって,本願商標は,その構成文字に相応して,「サンコー」又は「サンコ」の称呼が生じ,特定の観念を生じないものである。
3 引用商標1,2及び4について
(1) 証拠(乙3,5,6)によると,引用商標1,2及び4について,本件審決が認定した前記第2の3(2)ア(ア),(イ)及び(エ)のとおりに認められる。
(2)引用商標1は,やや図案化された「SANCO」の欧文字を横書きしてなるところ,その構成文字に相応して,「サンコー」又は「サンコ」の称呼を生じる。「SANCO」の文字は,辞書等に載録のない語であり,特定の観念を生じない。
(3)引用商標2及び4は,水色の雫を重ねたような図形を配し,その下にやや図案化された「SANCO」の欧文字を青色で横書きしてなるところ,引用商標2及び4を構成する図形部分と,「SANCO」の文字部分は,視覚上,明確に分離して看取されるものであり,それらが常に一体となって特定の観念を生じるものともいえないから,文字部分が独立して自他役務の識別標識としての機能\を果たすものといえる。したがって,引用商標2及び4は,その構成文字に相応して「サンコー」又は「サンコ」の称呼を生じる。「SANCO」の文字は,辞書等に載録のない語であり,特定の観念を生じない。4本願商標と引用商標1,2及び4の類否引用商標1,2及び4の「SANCO」の欧文字は,本願文字部分である「SANKO」と,外観の全体的な印象において近似するものであるといえる。そうすると,本願商標と引用商標1,2及び4は,文字部分の比較において,観念を比較できないとしても,その外観は近似し,いずれも「サンコー」又は「サンーコ」の称呼を共通にするものであるから,これらを総合的に勘案すると,両商標は互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
5 以上のとおり,本願商標は,引用商標1,2及び4と類似する商標であるところ,本願商標が引用商標1,2及び4の指定役務と同一又は類似する役務について使用をするものであることについては,当事者間に争いがない。よって,本願商標は,商標法4条1項11号に該当するとした本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の審決取消事由は認められない。

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令和3(行ケ)10010 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年6月30日  知的財産高等裁判所

 商標「パールアパタイト」を商品1類「化学品」、3類「化粧品,せっけん類・・・」に使用することが、品質誤認(商4条1項16号違反)に該当するかが争われました。知財高裁は、該当しないとした審決の判断を維持しました。

ア 「パールアパタイト」の語が,一般の辞書等に掲載されていることを認 めるに足りる証拠はない。 一方で,本件商標を構成する「パール」の文字部分は,「真珠」の意味\nを有するものと認められる(甲3,11,12)。
イ 原告は,本件商標の登録査定時において,「アパタイト」の語が,取引 者,需要者の間で,歯の再石灰化を促し美白効果のある「ハイドロキシア パタイト」又は光触媒応用製品に適用可能な「アパタイト」を意味する語\nとして,一般的に広く認識されていた旨主張するので,以下において判断 する。
(ア) 証拠(甲23ないし205(枝番のあるものは枝番を含む。特に断 りのない限り,以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認 められる。
a 株式会社サンギ(以下「サンギ」という。)は,平成5年2月,歯 を白くする美白効果のある歯磨き剤として,「薬用ハイドロキシアパ タイト」を含有する「アパガードM」を発売した。 「アパガードM」は,1995年(平成7年)に放映を開始した「芸 能人は歯が命」のキャッチコピーのテレビCMの効果等によって,ヒ\nット商品となり,1996年(平成8年)には,年間売上げが140 億円を記録した。 「アパガードM」の発売後,同年中には,歯磨き業界大手の他の事 業者(サンスター,ライオン)も,美白効果のある歯磨き剤として, 「ハイドロキシアパタイト」又は「フルオロアパタイト」を配合する 歯磨き剤を製造,販売するようになった(甲146ないし155)。 また,「アパガードM」は,FRIDAY,プレジデント,WED GE等の雑誌(甲175ないし181)において,「薬用ハイドロキ シアパタイト」配合のヒット商品として,取り上げられた。 このほか,「アパガードM」及びその後発品に関する記事が,平成 17年6月14日付けの読売新聞(甲160),平成21年9月14 日付け及び平成22年5月3日付けの日経流通新聞(甲169,17 0),同年6月5日付けの朝日新聞(甲171)や,週刊東洋経済, 日経ヘルス等の雑誌(甲182,183等)に掲載された。
b 「ハイドロキシアパタイト」の語の意義に関し,平成21年7月2 7日付けの朝日新聞(甲27)に,「ハイドロキシアパタイト」は, 「骨や歯,貝殻などの成分。人体への害が少なく,なじみやすいこと から,人工骨や人工歯根などの医用材料に使われている。」,平成2 2年5月29日付けの加藤歯科医院のウェブサイト(甲29)に,「ハ イドロキシアパタイトとはリン酸カルシウムでできた歯や骨を構成す\nる成分のことで,エナメル質は97%,象牙質の70%がハイドロキ シアパタイトで構成されています。」などと掲載された。\nまた,香粧品科学研究開発専門誌フレグランスジャーナル2008 年(平成20年)6月号(甲204)に,「ハイドロキシアパタイト (Ca10(PO4)6(OH) 2)は,リン酸カルシウムの一種であり,歯牙 や骨といった硬組織の主成分であって,化学合成品においても生体に 対する安全性の高い化合物である。・・・工業的には,・・・広範囲な用途に 利用されている。化学合成したハイドロキシアパタイトがそのような 用途に利用されるのは,生体硬組織と直接結合するといった高い生体 親和性やタンパク質,核酸および配糖体との吸着特性を有するためで ある。」(20頁右欄)などと掲載された。 さらに,日本化粧品工業連合会作成の医薬部外品の成分表示名称リ\nストにおいて,「成分名 ヒドロキシアパタイト」,「別名 ハイド ロキシアパタイト」,「本品は,主としてヒドロキシアパタイト(・・・)」 と記載されている(甲139,140)。
c 「アパタイト」の語の意義に関し,材料開発・応用専門誌「ニュー セラミックス」1990年(平成2年)7月号(甲59)に,「アパ タイトはアパタイト構造(六方晶系・・・)をもつ結晶群の総称であるか,\n単にアパタイトといった場合は最も代表的なリン酸カルシウムを意味\nすることが多い。水酸アパタイト(以下,単にアパタイトと略称する。) といえば,Ca10(PO4)6(OH)2 であり,生体アパタイトのモデル物 質である。フッ素アパタイトはCa10(PO4)6(PO4)F2 となる。」 (96頁左欄),「PHOSPHORUS LETTER 2000 年6月第38号」(甲135)に,「アパタイトはM10(ZO4)6X2 の組 成を持つ結晶鉱物の総称であり,次の各元素が単独あるいは複数M, ZO4,Xの位置に入る。M:Ca,Ba,Sr,Mg,Na・・・,ZO4: PO4,AsO4・・・,X:F,OH,Cl・・・このようにアパタイト構造に\nは多くの種類の元素が入り得るために,さまざまな固溶体が生成する。」 (8頁左欄),「PHOSPHORUS LETTER 2010年 2月第67号」(甲138)に,「アパタイトはカルシウムヒドロキ シアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2 :Hap)に代表される塩基性\n金属リン酸塩の一種である。」(22頁左欄)などと掲載されている。
d 応用化学,環境化学,触媒化学,生化学等の各種化学分野の文献等 において,「アパタイト」を含む用語が,ハイドロキシアパタイト(ヒ ドロキシアパタイト)のほかに,フッ化アパタイト二酸化チタン光触 媒(甲35),可視光応答型アパタイト被覆二酸化チタンハーフメタ ル(甲39),水酸アパタイト(甲47,58,64,71,111), フッ素アパタイト(甲50),ハロゲン固溶アパタイト(甲53), Pb2+〜Ag+交換水酸アパタイト(甲56),フッ素アパタイト結 晶(甲60),チタンアパタイト(甲86),カルシウムヒドロキシ アパタイト粒子(甲88)などと使用されている。
(イ) 前記(ア)の認定事実によれば,1)歯を白くする美白効果のある歯磨 き剤として広告宣伝された,「薬用ハイドロキシアパタイト」を含有す る「アパガードM」がヒット商品となり,新聞,雑誌等で取り上げられた 結果,「薬用ハイドロキシアパタイト」又は「ハイドロキシアパタイト」 の語は,一般消費者の間でも,歯や骨を構成する成分であることはある\n程度知られるようになったこと,2)「ハイドロキシアパタイト」は,Ca 10(PO4)6(OH)2 の化学式で表される,リン酸カルシウムの一種である\nこと,3)「アパタイト」は,M10(ZO4)6X2 の組成をもつ結晶鉱物の総称 であり,M,Z及びXには複数の種類の元素が入り得るため,特定の化 合物を指すものではなく,「ハイドロキシアパタイト」は,アパタイトの 一種(Mがカルシウム(Ca),Zがリン(P),Xが水酸基(OH)の もの)ではあるが,アパタイトそのものを意味するものではないことが 認められる。 加えて,「アパタイト」の文字は,その称呼から,英単語「appet ite」(「本能的欲望,(特に)食欲」)(甲17)又は「apati\nte」(「燐灰石。ハイドロキシアパタイト」)(甲16)に通じるもの である。
以上の認定事実に照らすと,前記(ア)の冒頭掲記の証拠(甲23ない し205)から,「アパタイト」の語が,本件商標の登録査定時におい て,取引者,需要者の間で,歯の再石灰化を促し美白効果のある「ハイド ロキシアパタイト」又は光触媒応用製品に適用可能な「アパタイト」を\n意味する語として,一般的に広く認識されていたものと認めることはで きず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。かえって,「アパタイト」 は,M10(ZO4)6X2 の組成をもつ結晶鉱物の総称であって,具体的な特定 の物質を表するものではなく,このことからしても「アパタイト」が特\n定の意味合いを理解させるものとはいえない。 したがって,原告の前記主張は,採用することができない。
ウ 前記ア及びイによれば,本件商標は,「真珠」の意味を有する「パール」 の文字と,特定の意味合いを理解させるものとはいえない「アパタイト」 の文字とからなる結合商標であり,その構成全体から,特定の意味合いを\n認識することはできないから,特定の商品の品質を直接的に表示するもの\nと認めることはできない。 したがって,これと同旨の本件審決の認定に誤りはない。
エ これに対し原告は,本件商標の登録査定時において,「アパタイト」の 語が,取引者,需要者の間で,歯の再石灰化を促し美白効果のある「ハイ ドロキシアパタイト」又は光触媒応用製品に適用可能な「アパタイト」を\n意味する語として,一般的に広く認識されており,「アパタイト」という 成分に着目して商品の購入に及ぶといった取引の実情があったことを考 慮すると,「パール」と「アパタイト」とが結合した「パールアパタイト」 の語から構成される本件商標は,「真珠」及び「アパタイト(ハイドロキ\nシアパタイト)」という物質(化学物質)を想起させるものであるから, 「真珠」及び「アパタイト(ハイドロキシアパタイト)」を含有するとい う商品の品質を表示する旨主張する。\nしかしながら,前記イで説示したとおり,「アパタイト」の語が,取引 者,需要者の間で,歯の再石灰化を促し美白効果のある「ハイドロキシア パタイト」又は光触媒応用製品に適用可能な「アパタイト」を意味する語\nとして,一般的に広く認識されていたものと認めることはできない。 また,「パールアパタイト」の語は,一般の辞書等に掲載されていない 造語であって,具体的な特定の商品を示すことを認めるに足りる証拠はな いのみならず,「パールアパタイト」の語から,「真珠」そのものと「ア パタイト(ハイドロキシアパタイト)」とを成分に含有する具体的な商品 を一般に想起することを認めるに足りる証拠はない。

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令和2(行ケ)10148  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年6月16日  知的財産高等裁判所

 本件商標:カンガルーの図形と文字「KANGOL」の結合商標で、指定役務が「織物及び寝具類、洋服の小売・・・など」です。 引用商標は「KANGOL」の文字を標準文字で表し,指定役務を第35類「帽子の小売・・など」です。知財高裁は、類似役務であるとした審決を維持しました。原告とカンゴール社との間で取扱商品及び役務に係る棲み分けがされていることも理由にならないと判断されています。\n

 ア 役務の内容及び取扱商品等
(ア) 本願指定役務及び引用指定役務は,いずれも小売等役務であるから, 商品の品揃え,陳列,接客サービス等といった役務の提供の手段や,小 売又は卸売といった役務の提供の目的が共通するものといえる。 (イ) また,本願指定役務及び引用指定役務は,本願指定役務が主に織物, 衣服,身の回り品等を取扱商品とするのに対し,引用指定役務は帽子を 取扱商品とする点において異なるものの,いずれの取扱商品も衣類を中 心とするファッション商品であるといえるから,この範囲において取扱 商品が共通するものといえる。
(ウ) さらに,本願指定役務及び引用指定役務は,いずれも衣類を中心と するファッション商品を取り扱う卸売業者又は小売業者が提供する役 務であるから,役務を提供する業種が共通するものといえる。 イ 役務の提供の場所 次の各事情によれば,本願指定役務及び引用指定役務は,それぞれの取 扱商品が,同一事業者の通信販売ウェブサイトにおいて,同一の事業者が 提供する一連の商品の一環として,あるいは同一のカテゴリーに属する一 連の商品の一環として販売されるなどしている実情があることが認めら れる。
(ア) 「ZOZOTOWN」の通信販売ウェブサイトにおいて,「NIKE」 ブランドの取扱商品として,パーカー,ティーシャツ,靴,バッグ等が, 帽子と共に掲載されている(乙1)。
・・・
(コ) 「ZOZOTOWN」の通信販売ウェブサイトにおいて,「mari mekko」ブランドの取扱商品として,クッション,靴下,ティーシ ャツ,エプロン,バッグ,財布,タオル等が,帽子と共に掲載されてい る(乙10)。
ウ 需要者の範囲
上記ア及びイで検討したとおり,本願指定役務及び引用指定役務は,い ずれも衣類を中心とするファッション商品を取扱商品とするものである 上,これらの取扱商品が通信販売ウェブサイトにおいて販売されるなどし ている実情があることからすれば,いずれも一般需要者を広く対象とする ものといえる。また,上記イ(ア)ないし(エ)及び(コ)によれば,特定のブ ランドが付された両役務の取扱商品を,同一の小売業者から購入する需要 者は少なくないと考えられる。 これらの事情を考慮すると,本願指定役務及び引用指定役務は,需要者 の範囲が一致するものといえる。
エ 類否判断
上記アないしウで検討したところによれば,本願指定役務及び引用指定 役務は,具体的な取扱商品は異なるものの,いずれも衣類を中心とするフ ァッション商品を取扱商品とする点において共通するほか,役務を提供す る手段,目的及び業種が共通するものといえる。また,両役務は,役務を 提供する場所が共通する場合があるほか,需要者の範囲が一致するものと いえる。 これらの事情を考慮すると,本願指定役務及び引用指定役務については, これらの役務に同一又は類似の商標を使用する場合には,同一営業主の提 供に係る役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるといえ る。
(3) 小括 以上によれば,本願指定役務と引用指定役務は,役務が類似するものと認 められる。
3 原告の主張について
(1) 原告は,原告とカンゴール社との間で本件契約が締結され,その後,原告 とカンゴール社との間で取扱商品及び役務に係る棲み分けがされてきたこと を,現実的かつ具体的な取引の実情として重視すべきである旨主張する。 しかしながら,本件契約それ自体は,原告とカンゴール社との間における 個別の合意にすぎないから,同契約を締結した事実や,同契約に基づいて原 告が本願商標を継続的に使用している事実は,商標の類否判断において考慮 し得る一般的,恒常的な取引の実情(最高裁昭和47年(行ツ)第33号同 49年4月25日第一小法廷判決・審決取消訴訟判決集昭和49年443 頁参照)には当たらないというべきである。 また,原告が提出する証拠(甲30ないし49)は,原告が,本願商標を 用いて衣類等を提供してきたことを裏付けるものであるとはいえても,帽 子(及びそれに係る役務)とそれ以外の衣類(及びそれに係る役務)とで, 原告が主張するような棲み分けがされ,それが需要者に認識されているこ とを認めるに足りるものではなく,むしろ,原告が,本願商標を用いて帽子 を販売している例さえ存在することが認められる。 したがって,原告の主張は,採用することができない。
(2) 原告は,原告とカンゴール社との間においては,カンゴール社が所有す る複数の登録商標につき,帽子類以外の指定商品に係る商標権が原告に分 割移転された例等がある旨主張するが,たとえそうであるとしても,このよ うな個別的な事情によって商標法4条1項11号の適用が排除されるもの ではないと解するのが相当である。

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令和2(ネ)10060 商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和3年4月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ビクトリノックスの黒字に白十字を二重の外枠で囲った登録商標についての、商標権侵害訴訟です。侵害被疑者は赤十\字が登録できない(商標法4条)ので、十字部分は要部ではないと争いましたが、知財高裁は侵害とした東京地裁の判決を維持しました。\n

(1) 十字部分の色彩等に基づく類否の主張について\n
控訴人は,標章において色彩が類否に大きく影響すること,十字部分を有\nする標章は特に十字部分の色彩が類否に大きく影響することを前提として,\n被控訴人商標と控訴人標章1,3は外観,称呼,観念が異なり,類似しない と主張するが,控訴人の主張を採用することはできない。以下,詳述する。
ア 標章において色彩が類否に大きく影響するという控訴人の主張について 控訴人は,例えば,国旗において色彩が重要な要素であるように,標章 は,同一の文字や図形の結合等であっても,色彩の相違によって印象が異 なるものであり,現に,商標法70条1項は,色彩を登録商標と同一にす れば登録商標と同一の商標となる場合であっても,色彩が異なれば登録商 標に類似しない商標があることを前提としており,このことは,色彩以外 が同一であり色彩だけが異なっている商標が非類似になることを示して いるとし,そのため,商標の類否判断に色彩が大きく影響すると主張する。 しかし,国旗において色彩が重要な要素であるとしても,国旗の例が直 ちに商標に当てはまるものではない。また,標章において,文字や図形は 色彩に劣らず重要な要素であり,商標法70条1項が,色彩を登録商標と 同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるもの を,登録商標に類似の商標にとどまるとするのではなく,登録商標に含ま れるとしていることからすれば,文字や図形が同一であって色彩のみが異 なる商標は,登録商標と同一の商標と認められる場合が多いといえる。そ のため,控訴人の上記条項の理解は不適切であり,同条項に基づき,標章 において色彩のみが類否に大きく影響するということはできない。なお, 色彩が識別性等の観点から大きな意味を有しており,色彩のみが異なるこ とにより全く違う商標となってしまうような例外的な場合について商標 法70条1項が適用されないとする余地があるとしても,上記の認定は左 右されない。したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。
イ 十字部分を有する標章は特に十\字部分の色彩が類否に大きく影響すると いう控訴人の主張について 控訴人は,商標法4条1項4号は,赤十字の標章と同一又は類似の商標\nについて商標登録を受けることができないと定めており,赤十字の標章及\nび名称等の使用の制限に関する法律1条は,白地に赤十字の標章若しくは\n赤十字の名称又はこれらに類似する記章若しくは名称をみだりに用いる\nことを禁じていること,緑と白で構成された十\字の標章は,安全標識とし て定められていることから,十字部分を有する標章においては特に十\字部 分の色彩が類否に大きく影響すると主張する。 しかし,赤十字の標章や安全標識について上記の事実があるとしても,\n赤十字の標章と同一又は類似の商標でなければ,十\字部分を含む商標の登 録は認められる余地があり,十字部分を含む商標において十\字部分の色彩 が識別性等の観点からどのような意味を有するかは,その商標の具体的な 構成等に照らして判断されるべき事柄であって,一概に,十\字部分を有す る標章において特に十字部分の色彩が類否に大きく影響するということ\nはできず,控訴人の上記主張は,採用することができない。
ウ 被控訴人商標と控訴人標章1,3の類否について 控訴人は,被控訴人商標と控訴人標章1,3は,外観,称呼,観念が異 なり,類似しないと主張する。 しかし,原判決の説示するとおり(原判決9頁6行目ないし10頁10 行目),被控訴人商標と控訴人標章1は,外観が類似しており,いずれも 「ジュウジ」「クロス」などの同一の称呼及び「十字」「クロス」などの\n同一の観念が生じ,取引の実情を踏まえると,被控訴人商標と控訴人標章 1は,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあり,両者は類似する と認められる。また,原判決の説示するとおり(原判決11頁5行目ない し12頁14行目),被控訴人商標と控訴人標章3は,外観が類似してお り,同一の称呼及び観念が生じ,取引の実情を踏まえると,被控訴人商標 と控訴人標章3は,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあり,両 者は類似すると認められる。したがって,控訴人の上記主張は採用するこ とができない。
(2) 十字以外の部分等に基づく類否の主張について\n
控訴人は,商標法4条1項1号が,国旗と同一又は類似の商標は商標登録 を受けることができないと定めていることからすると,被控訴人商標が登録 されているのは,スイス国旗と類似していないからであり,そうであるとす ると,被控訴人商標のうち,スイス国旗と似ている十字部分は要部ではなく,\n円弧からなるループ状図形が要部であるとした上で,被控訴人商標の円弧か らなるループ状図形の外周と控訴人各標章の正方形部分の外周は,形状,色 彩,観念が異なるとし,被控訴人商標の指定商品と同一又は類似の商品に使 用された控訴人各標章が外観,観念等によって取引者,需要者に与える印象, 記憶,連想等は,被控訴人商標とは全く異なるものであるから,被控訴人商 標と控訴人各標章は類似しないと主張する。 しかしながら,被控訴人商標が登録されているのは,スイス国旗と類似し ていないからであるとしても,そのことから直ちに,被控訴人商標のうち, 十字部分以外の円弧からなるループ状図形が要部であるとして,その部分の\n比較に基づいて商標の類否を判断すべきであるとはいえない。商標の類否は, 外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を 総合して,その商品に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきもの であるところ,被控訴人商標と控訴人各標章は,いずれも十字部分と外周部\n分からなり,十字部分は被控訴人商標及び控訴人各標章の中心にあって目立\nつ位置にあるから,類否判断に当たっては,十字部分も含めて被控訴人商標\nと控訴人各標章のそれぞれの全体を比較考察すべきである。そのため,十字\n部分以外の周囲の部分の比較により被控訴人商標と控訴人各標章は非類似で あるとする控訴人の上記主張を採用することはできない。

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1審は東京地裁ですがなぜかアップされていません。 こちらは同商標権に対する不使用審決取消訴訟です。審決は不使用と認定しましたが、知財高裁はこれを取り消しています。

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令和2(行ケ)10118  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年3月11日  知的財産高等裁判所

 三つのハート形を一筆書き風に表した図形の下に欧文字「SMS」と記載した商標について、別の図形の下部に欧文字「SMS」と記載した商標と類似するとして、無効とされた審決が維持されました。本件と引用商標は判決文の末尾にあります。\n

 前記2〜4のとおり,本件商標及び引用商標の類否判断においては,それぞれ, 「SMS」の文字部分を抽出し,これらを対比することになり,称呼は同一となる。 また,本件商標の「SMS」と引用商標の各「SMS」からは,特定の観念を生 じない。そして,各「SMS」の文字の外観については,本件商標と引用商標とでは,書体が異なるが,特段書体に特徴があるとはいえないから,この差異によって,両文 字の外観に異なる印象が生じるとはいえない。また,本件商標の色彩は黒色である のに対し,引用商標3の色彩は青色を基調にして白色が混入している点で差異があ るが,このような差異は些細な差異であるから,この差異によって,両文字の外観 に異なる印象が生じるとはいえない。したがって,本件商標の「SMS」と引用商 標の各「SMS」とでは,外観も類似しているといえる。
・・・・
原告は,本件商標全体と引用商標全体を対比して,それらの類否判断をす べきであると主張するが,前記2〜4のとおり,本件商標及び引用商標は,いずれ も,外観上,「SMS」の文字部分と他の部分は明確に区別され,これらを分離して 観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合していると認めら れないから,本件商標及び引用商標から「SMS」の文字部分を抽出して,類否判 断をすることは相当であり,原告の上記主張は理由がない。
(2) 原告は,「SMS」とは,携帯電話でのメッセージ送受信サービスである 「Short Message Service(ショートメッセージサービス)」の 略語であり,本件審決がされた令和2年の時点で,「ショートメッセージサービス」 の略語としての「SMS」は,通信分野に限らず,一般に周知されていると主張し, その証拠として,甲25,26を提出する。 甲25によると,「SMS」が「ショートメッセージサービス」の略語であること を説明したウェブサイトが存在することが認められるが,前記2(2)のとおり,「S MS」の語が一般的な辞書に掲載されている例があるとは認められないことからす ると,上記ウェブサイトの存在から,「SMS」が「ショートメッセージサービス」 の略語を意味することが一般的に認識されていたということはできないというべき である。 また,甲26のアンケートは,「SMSという言葉を聞いたことがありますか?」, 「SMSとは何か知っていますか?」,「いつごろからSMSについて知っています か?」の三つの質問について,それぞれ「ある,ない」,「知っている,知らない」, 「 年ごろから」との回答を求めるというアンケートであることが認められるとこ ろ,上記の質問内容からすると,同アンケートにおいて,SMSを知っているとの 回答があったとしても,その回答者が,「SMS」がどのような意味を有するものと 認識していたかは明らかではないから,同アンケートから,「SMS」が「ショート メッセージサービス」の略語を意味することが一般的に認識されていたと認めるこ とはできない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。
(3) 原告は,商標の登録例を考慮すると,本件図形部分は,十分な出所識別力\nを有し,また,本件商標も十分な出所識別力を有すると主張する。\nしかし,本件図形部分や本件商標が十分な出所識別力を有することから直ちに,\n他の商標との類否判断において,本件文字部分を抽出することができないことには ならないから,原告の上記主張は理由がない。
(4) 原告は,「SMS」の文字を含む商標が商標登録された事例を挙げて,「S MS」の文字を含む商標の他の商標との類否判断においては,「SMS」の文字 と他の文字又は図形は一体不可分に判断されるべきであるなどと主張する。 しかし,前記1のとおり,商標の類否判断は,外観,観念,称呼等によって取引 者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合し,かつ,具体的な取引状況に基づ いて行うものであり,事案ごとの具体的な事実に基づく判断となるものであって, 「SMS」の文字を含む他の商標についての特許庁における類否判断の結果によっ て,本件訴訟における本件商標と引用商標の類否判断が左右されることはない。

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令和2(行ケ)10107  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年4月14日  知的財産高等裁判所

 商標「ざんまい」が「すしざんまい」と混同するかが争われました。指定商品・役務は「すし」「すしを主とする飲食物の提供」です。審決・判決とも「すしざんまい」は著名、混同する」と判断しました。

 本件商標は,別紙1記載のとおり,「ざんまい」の文字を横書きに書 してなる商標である。本件商標から「ザンマイ」の称呼が生じる。 「ざんまい」の語は,「一心不乱に事をするさま。」(広辞苑第七版)の 意味を有するから,本件商標から,このような意味合いの観念を生じる。 また,前記2(2)ア認定のとおり,「すしざんまい」の表示は,本件商標 の登録出願時及び登録査定時において,被告が店舗展開する「すしざん\nまい」チェーン店の名称として,需要者である一般消費者の間に広く認 識され,被告の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表示する ものとして,著名であったこと,「すし」に関連する登録商標の使用にお\nいては,「すし」又は「寿司」の表示を登録商標の前後に付加して使用す ることが普通に行われており,現に,原告においても,本件商標の「ざ\nんまい」の前に「寿司」の文字を付加した「寿司ざんまい」の商標を使 用していること(前記1(4))に鑑みると,本件商標が指定商品「すし」 に使用されたときは,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店 を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念をも生じるものと 認めるのが相当である。
(イ) 引用商標1は,別紙2記載のとおり,上段に筆文字風で記載された 「つきじ喜代村」の文字を,中段に大きく筆文字風で記載された「すし ざんまい」の文字を,下段に小さくゴシック体で記載された「SUSH IZANMAI」の文字を3段に配した構成からなる結合商標であり, このうち,「すしざんまい」の文字は,引用商標1の中央に他の文字より\nも大きく,かつ,太く記載されており,「すし」の部分は,「し」が「す」 の左下に位置し,縦書きのように記載されている。 そうすると,引用商標1を構成する「つきじ喜代村」の文字部分,「すしざんまい」の文字部分及び「SUSHIZANMAI」の文字部分は,\n外観上,それぞれが分離して観察することが取引上不自然と思われるほ ど不可分的に結合しているものとはいえない。 そして,「すしざんまい」の文字部分の上記構成態様に照らすと,引用 商標1の構\成中の「すしざんまい」の文字部分は,取引者,需要者に対 し,「すしを主とする飲食物の提供」の役務の出所識別標識として強く支 配的な印象を与えるものと認められるから,要部として抽出できるもの と認めるのが相当である。 しかるところ,引用商標1の要部である「すしざんまい」の文字部分 及び「すしざんまい」の標準文字からなる引用商標2から,いずれも「ス シザンマイ」の称呼が生じる。 また,前記2(2)ア認定のとおり,「すしざんまい」の表示は,本件商標の登録出願時及び登録査定時においては,被告が店舗展開する「すしざ\nんまい」チェーン店の名称として,需要者である一般消費者の間に広く 認識され,被告の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表示す るものとして,著名であったことに鑑みると, 引用商標1の要部である 「すしざんまい」の文字部分及び引用商標2から,被告が店舗展開する 「すしざんまい」チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんま い」の観念を生じるものと認めるのが相当である。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)によれば,本件商標と引用商標1及び2は,外観 及び称呼が異なるが,観念においては,本件商標が指定商品「すし」に 使用されたときは,本件商標から被告が店舗展開する「すしざんまい」 チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念をも生 じるのに対し,引用商標1の要部である「すしざんまい」の文字部分及 び引用商標2からも,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店 を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念を生じる点で共通 するものと認められる。
イ 以上のとおり,1)「すしざんまい」の表示は,本件商標の登録出願時及 び登録査定時において,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店\nの名称として,需要者である一般消費者の間に広く認識され,被告の業務 に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表示するものとして,著名であ ったこと(前記2(2)ア),2)本件商標と引用商標1の要部である「すしざ んまい」の文字部分及び引用商標2から,いずれも被告が店舗展開する「す しざんまい」チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんまい」の 観念を生じる点で共通すること(前記ア(ウ)),3)本件商標の指定商品であ る「すし」と被告の業務に係る役務である「すしを主とする飲食物の提供」 は,需要者が一般消費者である点で共通し(前記2(1)ア),販売の対象とな る商品又は提供の対象となる商品がいずれも「すし」である点で共通する ことを総合考慮すると,本件商標をその指定商品の「すし」に使用すると きは,その取引者,需要者において,被告が店舗展開する「すしざんまい」 チェーン店の名称として著名な「すしざんまい」の表示を想起し,当該商 品を被告又は被告と緊密な営業上の関係又は同一の表\示による商品化事業 を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であるかのよ うに,その出所について混同を生ずるおそれがあるものと認められる。 したがって,本件商標は,引用商標1及び2との関係において,商標法 4条1項15号に該当するものと認められる。 これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
(2) 原告の主張について
原告は,1)引用商標1及び2の指定役務「すしを主とする飲食物の提供」 にいう「すし」と本件商標の指定商品「すし」とは,握り寿司等3種類を除 き,「すし」の内容が一致せず,需要者が異なる,2)「すし」の販売にいう「す し」は,弁当と同じような用途であるのに対し,「すしを主とする飲食物の提 供」にいう「すし」の提供は,すし職人と会話を楽しむといった別の要素が あり,極めて人間的であり,しかも,魚の鮮度が勝負であり,鮮度が比較的 短時間で落ちる商品を鮮度の良い状態で提供していること,回転ずしや着席 スタイルのすし店等でも,テイクアウトは行われているが,全体のごく一部 であり,特に着席スタイルのすし店は鮮度にこだわり,テイクアウトは拒否 されるのは周知の事実であることからすると,「すし」と「すしを主とする飲 食物の提供」とは,その性質,用途又は目的において密接な関連性を有する とはいえない,3)原告の業態は,宅配寿司であり,ウェブサイト又は電話に よる注文を受けてから寿司を盛り,スピーディな配達をするというものであ るのに対し,被告の業態は,カウンター方式及び個室方式をとり,会食・接 待・結納などにも利用できる料亭をイメージした落ち着いた雰囲気の個室を 用意しており,テイクアウトはあくまで「お持ち帰り」としての利用であり, 原告の業態と被告の業態が相違するなどとして,本件商標の登録出願時及び 登録査定時において,本件商標をその指定商品「すし」に使用した場合,こ れに接する需要者が引用商標を想起,連想し,当該商品を被告あるいは被告 と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの ように,その出所について混同を生ずるおそれがあるとはいえないから,本 件商標が商標法4条1項15号に該当するものとはいえない旨主張する。 しかしながら,1)については,前記2(1)イで説示したとおり,本件商標の 指定商品「すし」と引用商標1及び2の指定役務「すしを主とする飲食物の 提供」とは,需要者が異なるものと認めることはできない。 2)については,「すしを主とする飲食物の提供」の提供の場所を原告が主張 するような着席スタイルのすし店に限定すべき合理性はない。 3)については,原告が主張する原告の業態と被告の業態の相違は,本件商 標をその指定商品「すし」に使用した場合,これに接する需要者が,当該商 品を被告又は被告と緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を 営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であるかのように,\nその出所について混同を生ずるおそれがあるとの前記(1)の判断を左右するも のではない。

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◆令和2(行ケ)10108

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令和3(行ケ)10118  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年3月11日  知的財産高等裁判所

 「SMS」+図形商標から、「SMS」を分離観察できるかが、争われました。知財高裁(2部)は分離可能とした審決を維持しました。判決文の最後に本件および引用商標が掲載されています。\n

 (1) 本件商標は,別紙1のとおりであり(甲1),三つのハート形の図形を横に 重なるように並べた本件図形部分と,その下に配置された横書きにした「SMS」 のありふれた書体の欧文字(本件文字部分)とからなる商標である。 本件図形部分は,ハートの形を縁取った線を横に二つ描き,その二つのハートの 形の内側の二つの半円部分を用いて,中央部分に三つ目のハートの形を描いたもの で,一筆書きによって描くことができるようになっている。 本件図形部分及び本件文字部分のいずれにも色彩はなく,本件図形部分の高さは, 本件文字部分の高さの3倍弱であり,本件図形部分の横幅は,本件文字部分の横幅 の2倍弱である。
(2) 本件商標の上記(1)の外観からすると,本件商標においては,本件図形部分 と本件文字部分とを明確に区別することができ,それらの各部分を分離して観察す ることが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとは認められな いから,本件商標から,本件文字部分を抽出し,同部分を他人の商標と比較して商 標の類否を判断することができるというべきである。 そして,本件文字部分からは,「エスエムエス」との称呼が生じるが,「SMS」 の語は,「広辞苑 第六版」には掲載されておらず(甲19),他に一般的な辞書に 掲載されている例があるとも認められないから,造語であると認められ,特定の観 念は生じないというべきである。
3 引用商標1及び2について
(1) 引用商標1及び2は,別紙2,3のとおりであり(甲2,3),オレンジ色 の小さな円をL字型に並べた形状と,同様の黄色のL字型の形状とを組み合わせた 正方形を45度傾けた形状の図形部分(引用1及び引用2図形部分)と,その右側 に配置された,横書きにした「SMS」の欧文字と横書きにした「Best ma tching Best value」の欧文字を上下二段に配置した部分(引用 1及び引用2文字部分)からなる商標である。 引用1及び引用2図形部分の高さは,「SMS」の文字部分の高さの2倍程度であ り,引用1及び引用2図形部分の横幅は,「SMS」の文字部分の横幅の6割程度で ある。また,「Best matching Best value」の文字部分は, 「SMS」の文字部分と同じ横幅で,「SMS」の文字部分に比較して,極めて小さ く書かれている。
(2) 引用商標1及び2の上記(1)の外観からすると,引用商標1及び2において は,引用1及び引用2図形部分と引用1及び引用2文字部分とを明確に区別するこ とができる。また,引用1及び引用2文字部分については,「SMS」の文字部分と, 「Best matching Best value」の文字部分は2段に分か れていて,大きさも顕著に異なるのであるから,両者を明確に区別することができ る。 したがって,引用商標1及び2において,「SMS」の文字部分が他の部分と分離 して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとは 認められないから,「SMS」の文字部分を抽出し,同部分を他人の商標と比較して 商標の類否を判断することができるというべきである。 そして,前記2(2)のとおり,「SMS」の文字部分からは,「エスエムエス」との 称呼が生じるが,特定の観念は生じないというべきである。
・・・・
原告は,「SMS」とは,携帯電話でのメッセージ送受信サービスである 「Short Message Service(ショートメッセージサービス)」の 略語であり,本件審決がされた令和2年の時点で,「ショートメッセージサービス」 の略語としての「SMS」は,通信分野に限らず,一般に周知されていると主張し, その証拠として,甲25,26を提出する。 甲25によると,「SMS」が「ショートメッセージサービス」の略語であること を説明したウェブサイトが存在することが認められるが,前記2(2)のとおり,「S MS」の語が一般的な辞書に掲載されている例があるとは認められないことからす ると,上記ウェブサイトの存在から,「SMS」が「ショートメッセージサービス」 の略語を意味することが一般的に認識されていたということはできないというべき である。

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令和2(行ケ)10088  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年2月22日  知的財産高等裁判所

 文字商標「ホームズくん」が、「ホームズ君」を含む図形商標と類似するとして拒絶されました。知財高裁は審決を維持しました。

 原告は,1)原告キャラクターと本願商標との密接不可分的なつながり,2) 原告キャラクター及び原告ウェブサイトの周知著名性,3)不動産業界の取引 の実情を考慮すると,本願商標からは,原告キャラクターの観念,さらには 原告による各種不動産情報の提供の役務という観念が生じる旨主張する。こ の主張は,取引の実情を考慮すると,本願商標から,上記の各観念が生じる と主張しているものと解される。 しかしながら,証拠(甲34〜39,41)によれば,原告が,原告キャ ラクターを利用した宣伝広告活動や営業活動を展開しており,原告キャラク ターやその愛称である「ホームズくん」がそれなりの知名度を有するに至っ ていることは認められるものの,他方で,参加人も,引用商標1やそれに類 似した標章,「ホームズ君」という名称等を利用して宣伝広告活動や営業活 動を行っており,相応の知名度を得るに至っていること(丙20〜323) 等の事情に照らしてみると,本願商標の指定役務に係る取引分野において, 「ホームズくん」といえば原告キャラクター,ひいては原告の営業を表すと\n取引者,需要者の誰もが理解するといえるほどの一般的,普遍的な観念が成 立するに至っているとまで認めることはできない。そして,単に,原告が「 ホームズくん」という愛称の原告キャラクターを利用しており,それが,一 定程度の知名度を有しているという程度のことであれば,それは,せいぜい 本願商標に係る個別的な事情であるにとどまり,取引の実情として考慮する ことが許される,指定商品・役務全般についての一般的・恒常的事情(最高 裁昭和47年(行ツ)第33号同49年4月25日第一小法廷判決・審決取消 訴訟判決集昭和49年443頁参照)には当たらない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
3 引用商標1の外観・観念・称呼について
(1) 引用商標1は,別紙審決書写しの別掲2のとおり,「ホームズ君」部分, 「耐震フォーラム」部分,引用図形部分から成る結合商標である。 ア 引用商標1は,外観上,「ホームズ君」部分,「耐震フォーラム」部分 及び引用図形部分の三つが分離されないような態様で構成されているもの\nではない。そして,「ホームズ君」部分及び「耐震フォーラム」部分と引 用図形部分とは,文字と図形との違いに加え,色彩においても大きく異な っており,外観上密接不可分な関係にないことは明らかである。他方,「 ホームズ君」部分と「耐震フォーラム」部分とは,色彩が青色で統一され ており,字体も共通するようにみられるものの,改行により二列になって いて一体性に乏しい上,前者は文字が青であるのに対し,後者は,青の背 景に白抜きで文字が表されている点でも異なり,更に文字の大きさも異な\nるため,やはり外観上密接不可分な関係にあるとはいい難い。 また,「ホームズ君」部分,「耐震フォーラム」部分,引用図形部分の 三者が,称呼,観念において密接不可分の関係性を有していると認めるだ けの根拠を見出すこともできない(なお,後のイで述べるとおり,「ホー ムズ君」部分と引用図形部分には,観念において一定の関係があると理解 することも可能であるが,そうであるとしても,「ホームズ君」部分を要\n部として抽出し得るという結論に変わりがないことは,後に述べるとおり である。)。 したがって,引用商標1は,各構成部分を分離して観察することが,取\n引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないか ら,各部分を分離して観察することも許されるものというべきである。
イ そして,「ホームズ君」の文字は,それ自体としてみれば,商品・役務 の出所識別標識としての機能を十\分に果たし得るものであるといえること, 「ホームズ君」部分は,引用商標1の他の部分に比べると小さいとはいえ, 十分に認識可能\な形で記載されており,出所識別標識としての機能を果た\nし得ないほどに他の部分に埋没してしまっているとはいえないこと等の事 情に照らしてみると,「ホームズ君」部分を,引用商標1の要部として抽 出することは十分に可能\であるということができる。 他方「耐震フォーラム」部分を構成する「耐震」及び「フォーラム」は\nいずれも普通名詞であって(乙7・8(大辞林第三版)),これらを結合 した「耐震フォーラム」の語は,建築物等の耐震性に関する講演会・討論 会を指称するためしばしば使用されていること(乙9〜19(各種の専門 新聞・一般日刊新聞))に照らすと,引用商標1が例えば「不動産に関す るセミナーの企画・運営」に用いられた場合には,「耐震フォーラム」部 分は,「建物の耐震性に関する講演会・討論会」程度の意味合いを認識さ せるにすぎず,出所識別標識としての称呼・観念を生じさせるとはいえな い。
また,引用図形部分は,全体としてみると,探偵風の装束をした人物が 家を観察している場面を描いたものと受け取れ,横にある「ホームズ君」 部分を併せ見ることにより,家を観察する名探偵ホームズといった観念を 生ずる余地があるが,仮にそうであるとしても,それは,「ホームズ君」 のイメージを視覚的に描き出したものであって,「ホームズ君」部分を補 完するものにすぎないと理解すべきであるから,独立して出所識別機能を\n果たすとまで見ることはできない。 以上によれば,本件においては,引用商標1から抽出した「ホームズ君 」部分と本願商標との比較によって類否を判断すべきである。

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令和2(行ケ)10104  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年2月22日  知的財産高等裁判所

 商標「旬/JAPAN SHUN」について、先行商標「市場365/旬/SYUN RAKU ZEN」と類似するかが争われました。審決、知財高裁とも、分離解釈可能として類似すると判断しました。\n

 商標の類否は,対比される商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された 場合に,その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否か によって決すべきであるが,それには,使用された商標がその外観,観念,称 呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべ く,しかも,その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り,その 具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行 ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁, 最高裁平成6年(オ)第1102号同9年3月11日第三小法廷判決・民集5 1巻3号1055頁参照)。
また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構\成部 分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分 的に結合していると認められる場合においては,その構成部分の一部を抽出し,\nこの部分だけを他人の商標と比較して類否を判断することは,原則として許さ れないが,その場合であっても,商標の構成部分の一部が取引者又は需要者に\n対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合や, それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じない場合などには, 商標の構成部分の一部だけを取り出して,他人の商標と比較し,その類否を判\n断することが許されるものと解される(最高裁昭和37年(オ)第953号同 38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成 3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5 009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷 判決・裁判集民事228号561頁参照)。 以下,上記の判断枠組みに沿って,本願商標及び引用商標の類否について検 討する。
2 原告の主張1(分離観察の可否)について
(1) 本願商標について
ア 商標の構成\n
(ア) 本願商標は,黒色の長方形図形を背景として,左側から順に,本願 漢字部分及び本願欧文字部分が配置された結合商標であり,両部分は, ほぼ同じ高さで横一列に,重なり合うことなく配置されている。
(イ) 本願漢字部分は,「旬」の漢字1文字からなる。この文字は,赤色の 毛筆体で描かれており,本願欧文字部分の各文字の4倍程度の大きさで ある。また,本願漢字部分は,やや図案化されているものの,その程度 は低いといえる。
(ウ) 本願欧文字部分は,同じ幅で上下2段に配置された「JAPAN」 及び「SHuN」の欧文字からなり,これらの文字は,いずれも白色の 毛筆体で描かれている。また,本願欧文字部分は,本願商標のうち2分 の1程度の幅を占めている。
イ 分離観察の可否
(ア) 本願漢字部分は,漢字1文字が赤色で大きく描かれているのに対し, 本願欧文字部分は,上下2段に配置された複数の欧文字が白色で描かれ ており,両部分の文字の大きさや色彩,文字種,構成等は,明らかに異\nなるといえる。また,本願漢字部分及び本願欧文字部分は,ほぼ同じ高 さで横一列に配置されてはいるものの,重なり合うことなく配置されて いる。そうすると,本願漢字部分及び本願欧文字部分は,それぞれが独 立したものであるとの印象を与え,視覚上分離して認識されるものとい える。 また,本願欧文字部分は,本願商標のうち2分の1程度の幅を占めて おり,看者の目を引きやすいとはいえるものの,他方で,本願漢字部分 は,その色彩や大きさからすれば,相応に目立つ態様で表示されている\nといえるから,本願商標に接した者は,本願欧文字部分のみならず,本 願漢字部分にも注意を引かれるものといえる。なお,黒色の背景部分は, 視覚上,特段の印象を与えるようなものではない。
(イ) また,本願漢字部分は,平易な漢字である「旬」の文字を表したも\nのであるから,同部分からは,「シュン」との称呼が生じるとともに,日 常用語として「魚介・野菜・果物などがよくとれて味の最もよい時」等 (乙2)を意味する「旬」の観念が生じるものといえる。 他方で,本願欧文字部分は,上下2段に配置された「JAPAN」及 び「SHuN」の欧文字からなるものであるところ,平易な英語である 「JAPAN」の文字からは,「ジャパン」との称呼が生じるとともに, 「日本」の観念が生じるが,「SHuN」の文字は,外国語の成語である とは認められず,特定の意味合いを表す語であるとも認められないから,\n同文字からは,いわゆるローマ字読みによって「シュン」との称呼が生 じ得るとはいえるものの,特定の観念は生じないというべきである。そ うすると,本願欧文字部分からは,特定の観念が生じるものではないと いうべきである。
以上のとおり,本願漢字部分は,本願欧文字部分との間において,「S HuN」の文字部分と称呼が共通し得るのみであり,これ以外の部分と は,称呼の面からみても,観念の面からみても,共通するところはない から,本願漢字部分及び本願欧文字部分は,統一性のある称呼又は観念 によって結び付けられているものではないというべきである。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)で検討したところによれば,本願漢字部分及び本 願欧文字部分は,それぞれが独立したものであるとの印象を与え,視覚 上分離して認識されるものといえる上,称呼又は観念上の関連性がある ものとはいえない。 そうすると,本願漢字部分及び本願欧文字部分は,本願漢字部分のみ を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的 に結合しているものとは認められない。そして,前記のとおり,本願漢 字部分は,相応に目立つ態様で表示されているといえることからすれば,\n本件においては,本願商標から本願漢字部分を抽出し,同部分のみを他 人の商標と比較して類否を判断することが許されるというべきである。

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令和2(行ケ)10065 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年1月21日  知的財産高等裁判所

 商標「モンスターストライク」(標準文字)について、先行商標「MONSTER」(標準文字)、および「MONSTER ENERGY」(標準文字)から、無効主張をしました。審決・知財高裁とも無効理由なし(15号、7号)と判断しました。

 原告は,本件商標の登録出願時及び登録査定時までに,原告使用商標1が付された,別紙4の「モンスターエナジー」及び「モンスターエナジーアブソリュートリーゼロ」,原告使用商標4が付された「モンスターカオス」の3商品(原告商品)を発\n売したこと,原告から独占販売権を得たアサヒ飲料は,原告商品について 「モンスターエナジー」ブランドとニュースリリースで紹介していたこと, 原告商品は好調な売上げを記録し,本件商標の登録出願時までに先に我が 国においてエナジードリンクとして認知を得ていたレッドブルに次いで2 位の認知度を獲得したこと,原告及びアサヒ飲料は,新商品の発売,イベン ト等の開催に合わせて原告使用商標を付し,「モンスターエナジー」又は 「MONSTER ENERGY」の名称を付した賞品が当たる様々なキ ャンペーン活動を行ったほか,著名なアスリートを支援して,原告使用商 標が付された競技用スーツを着たアスリートが原告使用商標を付した競技 道具や車両で競技する姿を見てもらい,また,これらの動画をソーシャルメディアにアップするなどしたほか,イベントのスポンサーとなり,会場\n内に原告使用商標を付したブースを設けて,原告使用商標を付したスタッ フ等が来場者に原告使用商標を付した「モンスターエナジー」ドリンクを 無償で配布し,原告使用商標を付した車両を展示し,原告使用商標を付し た車両等を走行させるなどすることを通じて,キャンペーンの応募者,視 聴者や来場者に原告使用商標の浸透を図ったことが認められ,原告使用商 標は,原告商品を愛飲し,また,原告が支援する特定のアスリートに関心を 持ち,あるいは原告がスポンサーとなったイベント会場等に来場した一定 の需用者層には知られていたということはできる。
しかしながら,そもそも上記の認識の対象となったのは,あくまで原告 使用商標である。原告は,「MONSTER」及びその音訳「モンスター」 は,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,原告の業務に係る商品を 表示するものとして需要者の間で広く認識されていた旨主張するが,原告及び原告から我が国において独占販売権を得たアサヒ飲料が本件商標の登\n録出願時及び登録査定時までに販売した「エナジードリンク」に付した商 標,エナジードリンクの販売のための広告及び販売促進活動において使用 した商標は,いずれも原告使用商標であり,少なくとも,「MONSTER」 の標準文字からなる引用商標1のみをその業務において使用したと認める に足りる証拠はない。また,前記認定事実によれば,原告(モンスターエナ ジージャパン合同会社)及びアサヒ飲料は,「MONSTER」あるいはそ の音訳「モンスター」ではなく,原告使用商標と「モンスターエナジー」又 は「MONSTER ENERGY」の名称を用いて,新商品の発売,販売 のための広告及び販売促進活動等を行っているのであり(なお,モンスタ ーエナジージャパン合同会社のウェブページには,一部「モンスターガー ル」,「モンスターファミリー」といった表記も見られるが,「モンスターエナジー ガール」,「モンスターエナジー ファミリー」の略称であると 容易に理解されるものでもあるし,いずれにしても「モンスター」ないし 「MONSTER」の文字を用いてこれらの活動を行ってきたとは認めら れない。),この点からも,「MONSTER」及びその音訳「モンスター」 が本件商標の登録出願時及び登録査定時には,原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されていたといえないことが裏付\nけられる。したがって,この点に関する原告の主張は採用し得ない。 また,前記認定事実(1(4))によれば,エナジードリンクの主要な需要 者層は,30代から50代の男性が中心であり,10代から20代の男女 にも広がりつつあるが,1)エナジードリンクが何か分からないと回答した 人が16.1%,57.0%の人がエナジードリンクを購入して飲んだこと がないと回答し,2)エナジードリンクは,「飲んでいる人と飲んでいない人 と飲んでいない者の二極分化」しており,月に1日以上飲んでいる人で6 割を占め,「好調なエナジードリンクを支えているのは強烈なロイヤルカ スタマーに依るもの」と分析され,3)「61.9%がエナジードリンクの飲 用経験があり,5人に1人は「それを月に1回以上」飲用していることが分 かった」との調査結果があるように,エナジードリンクは,通常の清涼飲料 水のような幅広い需要者層が購入するものではないから,原告商品が,エ ナジードリンクとしてレッドブルに次いで2位の認知度を獲得し,当初の 目標を超える売上げを記録しているとしても,限られた需要者層が繰り返 し愛飲していることがうかがわれる。したがって,原告使用商標は,無効請 求商品の需要者である一般消費者に周知著名であったということはできな い。
以上によれば,「MONSTER」及びその音訳「モンスター」は,上記 のいずれの点においても周知著名性を認めることはできないし,原告使用 商標も,一般消費者に周知著名であったと認めることはできない。
・・・・
原告は,前記第3の2(1)のとおり,本件商標と引用商標の類似性の程度は高 く,本件商標に接した取引者及び需要者が原告及びその「MONSTER」ブラ ンドを直ちに想起,連想することは明らかであり,本件商標の使用は,原告が 「MONSTER」ブランドについて獲得した信用力,顧客吸引力にフリーラ イドするものといわざるを得ず,その経済的な価値を低下させるものであると して,本件商標は,公正な取引秩序の維持を目指す商標法の目的,国際信義の精 神に反するものであり,社会一般の道徳観念に反するものであるから,本件商 標は公の秩序を害するおそれがある商標というべきであり,商標法4条1項7 号に該当する旨主張する。
しかし,1)本件商標と原告使用商標は,外観,称呼及び観念のいずれにおいて も類似するものではないこと,2)原告使用商標はいずれも一般消費者に周知著 名とはいい難いこと,3)無効請求商品に本件商標が使用されたとしても,需要 者において,本件商標から原告使用商標を連想し,原告の業務に係る商品,原告 と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると,そ の商品の出所の混同を生ずるおそれがあるものと認めることはできないことは, 前記2のとおりであるから,原告の上記主張は,その前提を欠くものというほ かない。

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令和2(行ケ)10062  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年1月21日  知的財産高等裁判所

 商標「久保田メソッド(AKANON)」が、商標「久保田メソ\ッド」を含む結合商標から無効(4条1項11号違反)との審決が維持されました。

 本件商標は,前記第2の1(1)のとおり,「久保田メソッド(AKANON)」\nの文字を標準文字で表してなるところ,その構\成中前半部の「久保田メソッ\nド」の文字部分中,「久保田」については,ありふれた姓氏である久保田が まず想起され,「メソッド」が「方法,方式」の意味を有する英語「met\nhod」の片仮名表記であることはよく知られたことであるから,「久保田\nメソッド」の文字部分からは,「(ありふれた姓氏である)久保田という者\nによる方法,方式」といった意味合いを想起させる。また,構成中後半部の\n「(AKANON)」中の欧文字部分の「AKANON」は,辞書等に載録 されていない造語と認められ,ローマ字読みで「アカノン」と称呼されるも のの,これに類する語は想起されず,特定の観念を生じさせないものであり, 「久保田メソッド」の語と括弧内の「AKANON」の語との間に観念上の\n結び付きはない。また,文法上,「( )」(括弧)は,他の部分と区別し その中に他の部分の補充,注釈等を記入するための記号であり,通常,括弧 外の文字が主として,括弧内の文字が従として扱われることに照らせば,本 願商標が,「久保田メソッド」と括弧内の「AKANON」の語とに分離さ\nれて観察され,「久保田メソッド」が主として認識されることは明らかであ\nる。これに加えて,「久保田メソッド」が日本語表\記で先に配置されていて より目立ち,構成文字全体から生ずる「クボタメソ\ッドアカノン」の称呼が やや冗長であって,本件商標は「クボタメソッド」と略して称呼され得るこ\nと,「久保田メソッド」が明確な意味を有するのに対し,「AKANON」\nは造語であって特定の意味を有するものではないことから一般人にはなじみ にくいことも併せて考慮すると,本件商標中,「久保田メソッド」の部分が\n役務の出所識別標識として支配的な印象を与えていることは否定し難いとい うべきである。
そうすると,本件商標の構成中,その前半部に位置する「久保田メソ\ッド」 の部分は独立して自他役務の出所識別機能を果たし得るものと認められ,こ\nの部分を要部として抽出でき,本件商標は,その要部である「久保田メソッ\nド」の文字部分に相応して,「クボタメソッド」の称呼を生じ,「(ありふ\nれた姓氏である)久保田という者による方法,方式」といった観念を生ずる ものである。
・・・・
(3) 対比
本件商標と引用商標とをそれぞれ対比すると,本件商標の要部である「久 保田メソッド」の文字部分と引用商標1の要部である「久保田メソ\ード」及 び「KUBOTA METHOD」並びに引用商標2の要部である「クボタ メソッド」の文字部分とは,表\記方法が異なるのみであり,当該文字部分か ら生じる「クボタメソッド」又は「クボタメソ\ード」との称呼が共通し,又 は聞き誤りのおそれがあり,「(ありふれた姓氏である)久保田(クボタ) という者による方法,方式」の観念をいずれも共通にするものであるから, 本件商標と引用商標とは,互いに相紛れるおそれのある類似の商標であると 認められる。
そうすると,本件商標と引用商標1が本件商標の指定役務中,引用商標1 の指定役務とも類似する「乳幼児のための技芸・スポーツ又は知識の教授, 電子出版物の提供」に使用された場合には,その役務の出所について混同が 生ずるおそれがあり,本件商標と引用商標2が本件商標の指定役務中,引用 商標2の指定役務とも類似する「乳幼児のためのセミナーの企画・運営又は 開催」に使用された場合には,その役務の出所について誤認混同が生じるお それがあるから,本件商標は,「乳幼児のための技芸・スポーツ又は知識の 教授,乳幼児のためのセミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供」 (本件指定役務)ついて,商標法4条1項11号に該当する。
2 原告の主張について
原告は,1)姓氏と方法,方式を意味する「メソッド」又は「メソ\ード」の文 字とを結び付けた商標は「役務の質」を表示するものであるから,「久保田」\nが「(ありふれた姓氏である)久保田」を示すものであろうと幼児教育の分野 における「A」を示すものであろうと,本件商標中の「久保田メソッド」の文\n字部分は,その指定役務との関係において独立して自他役務の出所識別機能を\n有しない,2)同様に引用商標1中の「久保田メソード」及び「KUBOTA M ETHOD」並びに引用商標2中の「クボタメソッド」の部分も,それら指定\n役務との関係において独立して自他役務の出所識別機能を有しない,3)本件商 標も,引用商標1及び引用商標2も,全体が不可分一体のものであるから要部 抽出はできない,仮に要部抽出をするとしても,要部は「久保田メソッド」,\n「久保田メソード」,「KUBOTA METHOD」又は「クボタメソッド」\nのいずれの文字部分でもない,4)そうすると,上記各部分を要部として抽出し て商標を対比し,本件商標と引用商標とが類似すると判断した本件審決の判断 は誤りである旨主張する。
しかしながら,姓氏と「メソッド」とを結び付けた商標が「ある者が発案し\nた方法,方式」の意味をも含む場合があるとしても,当該商標が「ある者によ る(実施される)方法,方式」の意味をも有すること自体は否定し難いから, 当該商標を直ちに「役務の質」のみを表示する商標であるなどということはで\nきない。そして,姓氏又は名称と「メソッド」の文字を繋げた構\成を有する相 当数の商標登録例が現に認められていること(甲97)からも明らかなとおり, たとえありふれた姓氏であるとしても,姓氏と「メソッド」とを結合した商標\nは,その構成から直ちに出所識別機能\を有さない商標といえるものでもない。 そして,本件において,「久保田メソッド」が,その姓氏を有する発案者及び\nその関係者以外の者にも広く用いられるなどした結果,需要者,取引者に,特 定の幼児教育方法としての役務の質を表示するものとのみ認識されるようにな\nっており,特定の役務の出所先を表示するものではないことをうかがわせる証\n拠もない。
したがって,「久保田メソッド」に自他役務の出所識別機能\がないとはいえ ないから,原告の上記主張は,前提を欠くものであって,その余の点について 論じるまでもなく採用することができないものである。 なお,原告は,Aが自らの育児法を幼児教育現場の指導者の間で積極的に採 用させ,これを幼児教育の現場において広く実践させているから,「久保田メ ソッド」の商標的使用を制限することは不当であり,「久保田メソ\ッド」は独 占適応性に乏しい商標であるなど,るる主張する。しかしながら,その主張を 裏付けるに足りる証拠は提出されていない上,そもそも仮に,「久保田メソッ\nド」がAの考案に係る久保田メソッドの名称であるとすれば,原告に本件商標\nの商標権者の地位を保有させ,その名称の独占を認めることは,かえって不当 というべきであるから,いずれにせよ,上記主張を採用する余地はない。

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令和2(行ケ)10101  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年1月19日  知的財産高等裁判所

 商標「庵治石工衆」は,地域団体商標「庵治石」と出所混同する(15号)とした審決が維持されました。

 前記1に認定した事実によると,「庵治石」との文字は,「香川県高松市 庵治町・牟礼町産の花崗岩」を意味するものであり,これを用いた石材又は この石材を加工した石製品は,「庵治石(あじいし)」と呼ばれ,古くから 我が国において品質の高い石製品として広く知られており,香川県の伝統工 芸品となっていることが認められる。 一方,引用商標権者及びその構成員を含む高松市庵治町及び牟礼町内の採\n掘業者や石材業者らは,昭和20年から40年代にかけて組合を結成し,昭 和45年(1970)からは毎年,庵治石を用いた石製品の展示即売会を行 ってきており,平成19年3月9日には,地域団体商標として引用商標の設 定登録を受け,庵治石を用いた石製品に「庵治石(R)登録証」や「庵治石(R)プ レート」を発行したり,「庵治石(R)」のシールを付したりして,ブランドの 維持に努め,さらに,庵治石の知名度向上や庵治石を用いた石製品の販路拡 大等を目的とした様々な展示会やイベントを開催し,引用商標の普及活動の ための各種事業を長年継続して現在まで実施しているところ,その模様が相 当数の来場者や新聞,雑誌等への記事掲載を通じて,相応の程度に広告され ている。加えて,引用商標は,地域団体商標の登録を受けていることから, 経済産業省特許庁が年1回発行する冊子及び同庁のホームページに毎回掲載 され,地域団体商標の普及事業において紹介されている。 これらの事情を考慮すると,引用商標は,本願商標の登録出願時及び本件 審判時において,「香川県高松市庵治町・牟礼町で採掘され加工された製品 に係る引用商標権者の伝統的工芸品ないし地域ブランド」との引用商標権者 又はその構成員の業務を示すものとして,需要者の間に広く認識されており,\n相当程度高い周知性を有していたものと認めるのが相当である。
(2) 原告の主張について
原告は,「庵治石」の文字は「香川県庵治町産の石」及び「香川県庵治町 産の石を加工して製作された石塔・墓石等」を表示するものとして我が国に\nおいて広く知られていたものであり,全体として石材の一種を示す普通名称 であって石材関連の商品及び役務との関係において自他商品役務識別機能及\nび出所表示機能\を有しない語であり,そうであれば,「庵治石」を標準文字 で表してなる引用商標が引用商標権者の業務を想起させるものとして周知性\nを有することはない旨を主張する。 しかしながら,「庵治石」の文字が「香川県高松市庵治町・牟礼町産の花 崗岩」を意味すると認められることは,前記のとおりであり,原告も自認し ているところ,「庵治石」がその本来の産地以外の産地から産出される同種 同等の石材の呼称にも用いられるなど,石材の種類を示す普通名称になった ことを示す証拠はなく,また,庵治地方以外の業者が「庵治石」を産地を示 すためではなく自己の商標として使用していたことを認めるに足りる証拠も ない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
3 出所の混同のおそれに係る判断の誤りの存否について
(1) 検討
前記2(1)のとおり,「庵治石」の文字は,「香川県高松市庵治町・牟礼町 産の花崗岩」を意味するが,同時に,広く知られた「香川県高松市庵治町・ 牟礼町で採掘され加工された製品に係る引用商標権者の伝統的工芸品ないし 地域ブランド」をも意味し,その文字部分のみで特定の意味合いを有するよ く知られた語であるから,本願商標の「庵治石工衆」は,「庵治石」の文字 部分と「工衆」の文字部分とを分離して観察することが取引上不自然である と思われるほど両者が不可分的に結合しているものとはいい難いといえる。 そして,本願商標の構成から「庵治石」の文字を除いた「工衆」の文字部分\nは,辞書等に載録された成語ではなく,「ものを作ることを職とする人々」 程の意味合いを連想させるにとどまるから,本願商標の指定役務との関係で は出所識別標識としての機能は必ずしも強くなく,本願商標の構\成中の「庵 治石」の文字部分が出所識別標識を果たし得る要部として看取されるという べきである。
本願商標の要部である「庵治石」の文字部分と引用商標とを対比すると, いずれも標準文字で「庵治石」の文字を書してなる点で外観が同一であり, また,「アジイシ」の称呼が生じる点で,称呼が同一である。そして,本願 商標をその指定役務に使用した場合は,本願商標の要部から「香川県高松市 庵治町・牟礼町産の花崗岩」という観念だけでなく,「香川県高松市庵治町・ 牟礼町で採掘され加工された製品に係る引用商標権者の伝統的工芸品ないし 地域ブランド」という観念も生じるものであり,本願商標の観念は,引用商 標から生じる観念と同一である。そうすると,本願商標と引用商標の類似性 は極めて高いというべきである。
また,本願商標の指定役務は,その加工又は情報提供の対象物を,引用商 標の指定商品を含む墓用石材や墓石等とするものであるから,本願商標の指 定役務と引用商標の指定商品とは,密接な関連性を有するとともに,取引 者,需要者も相当程度で共通にするものといえる。そして,本願商標の指定 役務の需要者に含まれる一般需要者は,必ずしも石材等について専門的な知 識や経験を有するものではない者も含まれており,高度の注意力をもって役 務の提供を受けるとは限らない。
以上を考慮すると,本願商標をその指定役務に使用した場合には,これに 接する取引者,需要者は,出所識別標識としての機能を果たし得る要部であ\nる「庵治石」の文字部分に着目して,地域ブランド名として周知である引用 商標を連想,想起し,当該役務が引用商標権者又はその構成員との間に緊密\nな営業上の関係又は同一の表示による商品役務化事業を営むグループに属す\nる関係にある営業主の業務に係る役務であると誤信し,役務の出所につき誤 認を生じさせるおそれがあるものというべきである。 そうすると,本願商標は,他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずる おそれがある商標であるから,商標法4条1項15号に該当する。
(2)原告の主張について
原告は,1)取引者,需要者は,本願商標を「庵治石」の産地である庵治地 域を表す「庵治」と「石工」及び「衆」からなるものであると認識し,取引\n者,需要者に対して「香川県庵治地域において,石を切り出したり,それを 細工したりする職人の集団」ほどの観念を想起させ「アジイシクシュウ」又 は「アジセッコウシュウ」の称呼を生じさせるから,引用商標と混同のおそ れはない,2)仮に,取引者,需要者が本願商標を「庵治石」と「工衆」とか らなる商標であると認識するとしても,「庵治石」の文字には自他商品役務 識別機能及び出所表\示機能がないから,本願商標は,引用商標と識別力のな\nい部分で共通するにすぎず,引用商標権者の業務と何らかの関係性があると 認識させるものでない旨主張する。 しかしながら,上記1)の主張については,本願商標を「庵治」と「石工」 及び「衆」からなるものであると認識するのが通常であるとはいい難く,ま た,仮に,そのような認識が生じるとしても,それと並んで,庵治石を要部 とした前記(1)記載の観念が生じることは明らかであるし,上記2)の主張の 前提が成り立たないことは,前記(1)に認定判断したとおりであるから,原 告の上記主張は,採用することができない。

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令和2(行ケ)10047  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年1月20日  知的財産高等裁判所

 商標「KOREKARADA」(標準文字)が「ココカラダ」(標準文字)とは非類似,(11号)出所混同生じない(15号)とした審決が維持されました。

 以上のとおり,本件商標と引用商標は,外観及び称呼において明らかに 相違することに照らすならば,本件商標から「今からだ」ほどの意味合い を連想,想起させ,引用商標から「ここ(この時点)からだ」ほどの意味 合いを連想,想起させる点で観念において類似する面があることを勘案し ても,本件商標と引用商標を本件商標の指定商品「サプリメント」に使用 したときに,その出所について誤認混同を生じるおそれがあるものと認め ることはできないから,本件商標は,引用商標に類似する商標であるとい うことはできない。 したがって,本件商標は,商標法4条1項11号に該当するものとは認 められない。
エ これに対し,原告は,本件商標と引用商標は,外観は相違するが,称呼 が類似し,観念が同一であること,引用商標は,原告の業務に係る商品を 表示するものとして,需要者であるスポーツ愛好家の間に広く認識されて\nいるという取引の実情があることをも考慮して全体的に考察すれば,本件 商標と引用商標が本件商標の指定商品「サプリメント」に使用された場合f には,その商品の出所について誤認混同が生ずるおそれがあるから,本件 商標と引用商標は全体として類似している旨主張する。 しかしながら,前記(1)認定のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願 時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品を表示するものとして,\n需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。 また,前記ウ認定のとおり,本件商標と引用商標は,外観及び称呼にお いて明らかに相違することに照らすならば,観念において類似する面があ ることを勘案しても,本件商標と引用商標を本件商標の指定商品「サプリ メント」に使用したときに,その出所について誤認混同を生じるおそれが あるものと認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することはできない。
・・・・
2 取消事由2(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について
(1) 本件商標の商標法4条1項15号該当性について
原告は,1)引用商標は,「ここからだ」,「まだまだ諦めない」という意味 も含有した造語であり,独創性があること,2)引用商標は,本件商標の登録 出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品を表示するものとし\nて,需要者であるスポーツ愛好家の間に周知であったこと,3)本件商標と引 用商標は,少なくとも称呼や観念において類似する面があること,4)引用商 標を付した原告の商品と本件商標を付した被告の商品は,商品の用途や目的, 成分,用法,販売方法等において共通し,同一又は密接な関連性を有するも のであり,需要者が共通すること,5)本件商標を付した被告の商品のパッケ ージは,原告の商品のパッケージと比べて,形状,図柄,キャッチコピーな どその外観において類似点が多く,広報プロモーション活動の方法も似通っ ていること,6)本件商標の指定商品「サプリメント」は,スポーツ愛好家が 日常的に摂取する性質の商品であり,その需要者が特別の専門的知識経験を 有する者ではないから,これを購入するに際して払われる注意力は,さほど 高いものではないことを総合的に考慮すると,本件商標を上記指定商品に使 用したときは,その商品が原告の商品と誤認混同する可能性があり,本件商\n標は,原告の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であり,商標 法4条1項15号に該当するから,これを否定した本件審決の判断は誤りで ある旨主張する。
しかしながら,前記1(1)認定のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願 時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品を表示するものとして,\n需要者の間に広く認識されていたものとは認められず,また,前記1(2)ウ認 定のとおり,本件商標と引用商標は,観念において類似する面があるといえ るものの,外観及び称呼において明らかに相違する。 そうすると,その余の点について判断するまでもなく,本件商標をその指 定商品「サプリメント」について使用したときに,これに接する需要者がそ の商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の 業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるお それがあるものと認めることはできない。

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令和2(行ケ)10086  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和2年12月23日  知的財産高等裁判所

 商標「AZURE」は,「AZULE」と類似するとした拒絶査定不服審判の審決取消訴訟です。争点は、「AZURE」から「アズレ」という称呼が生ずるか否かです。知財高裁は、審決と同様に、生ずるので類似すると判断しました。

(1) 本願商標は,「AZURE」の欧文字を表してなる。「azure」は,\n「空色,青空」の意味を有し,「アジュア」と発音される英単語として辞書 (乙2。ジーニアス英和辞典 第5版,2014年12月25日発行。)に掲 載されているが,中学生向け(乙2ないし6)や高校生向け(乙7)の学習書 で覚えておくべき単語として挙げられていないことはもちろん,TOEIC の制作機関が提供するボキャブラリーブック(乙8。国際的なビジネスの場 で一般的に使われる語彙を集めている。)でも取り扱われておらず,我が国に おいてその意味が広く一般に知られている語とは認められず,また,本願商 標の指定商品・指定役務の分野において,特定の意味合いを有する語として 知られているとの事情も見いだせない。そうすると,需要者から,一種の造語 として看取されることもあるものといえる。 それ自体あまり知られていない欧文字からなる商標は,一般的には,我が 国において広く親しまれている英語風又はローマ字風の読み方に倣って称呼 されるとみるのが自然であるから,本願商標は,英語風の読み方に倣って「ア ジュア」の称呼を生ずるほか,ローマ字風の読み方に倣って「アズレ」の称呼 をも生ずると認めるのが相当である。
(2) 原告は,本願商標は,「pure」,「cure」,「secure」等 の語尾に「ure」を有する英単語と同様に,英語として自然な文字の並びで あることに加え,広く知られているマイクロソフト社のクラウドプラットフ\nォーム「Microsoft Azure」に使用されているように,我が国 において認知されている語といえるため,英語の読み方に倣って称呼される とみるのが自然であると主張する。 しかし,前記(1)で判断したところに照らせば,「azure」は,「pu re」,「cure」,「secure」等の英単語のように一般に知られて いるとは認められない。そして,マイクロソフト社のクラウドプラットフォ\nーム「Microsoft Azure」については,一般のビジネスにおい て幅広く使われていると認めるに足りる証拠はない上,「Azure」の称呼 も,「アジュア」のほか「アズレ」とされる場合,「アズール」とされる場合 もあり(乙9ないし14,26),大手企業が上記クラウドプラットフォーム を採用する場合に「アズール」と呼んでいる場合もある(乙10,11)。 また,イギリスの自動車のブランド「AZURE」も「アズール」と称呼さ れ(乙15ないし19),ステッドマン医学大辞典第5版(乙21,2002 年2月20日)では一群の異染性塩基性青色メチルチオニン又はフェノチア ジン色素を示す用語「azure」を「アズール」と称呼し,南山堂医学大辞 典第20版(乙22,2015年4月1日)は,「アズール」の語を,英語a zureに由来し,アズール顆粒やギムザ染色を示すものとして挙げている。 したがって,引用商標から「アジュア」の称呼のみが生じるとはいえず,原 告の主張は採用できない。

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令和2(行ケ)10055 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和2年11月4日  知的財産高等裁判所

 商標「織部流」は周知であったとして、10号違反などが理由なしとした審決が取り消されました。

 以上によると,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,引用商標は,本 件不成立役務のうち「図書及び記録の供覧」,「図書の貸与」及び「書籍の制作」 についての原告の業務に係る役務を表示するものとして周知であり,また,「セミ\nナーの企画・運営又は開催」は,引用商標に係る原告の「茶道の教授」の役務と類 似の役務,「興行の企画・運営又は開催」は,引用商標に係る原告の「茶会の企画・ 運営又は開催」の役務と同一又は類似の役務,「電子出版物の提供」は,引用商標 に係る原告の「図書及び記録の供覧」及び「図書の貸与」の役務と類似の役務であ ると認められるから,本件商標の本件不成立役務のうち上記各役務についても,商 標法4条1項10号に該当するものとして,登録を無効とすべきである。 なお,被告は,類似群コードについて主張するが,類似群コードは,それ自体類 似との推定に係るものにすぎない上,審査官の審査の基準であって,裁判所がこれ に拘束されることはないから,上記判断を左右するものではない。
3 商標法4条1項7号該当性について
(1) 商標法4条1項各号は,商標登録を受けることができない商標として,相 当数の類型を規定しているのであって,同項7号において,「公の秩序又は善良の 風俗を害するおそれがある商標」がその一類型として規定されているのは,他の号 に当てはまらなくてもなお商標登録を受けることができないとすべき商標が存在し 得ることを前提に,一般条項をもって,そのような商標の商標登録を認めないこと としたものであると解されるから,同号の適用は,その商標の登録を社会が許容す べきではないといえるだけの反社会性が認められる場合に限られるべきである。
(2) 既に認定判断したとおり,本件商標は,多くの指定役務について,商標法 4条1項10号に該当するものである。また,証拠(甲7,27,28)及び弁論 の全趣旨によると,被告代表者Bは,原告が家元である織部流に入門したことがあ\nると認められるから,被告代表者Bは,本件商標について商標法4条1項10号に\n該当する事由があることを認識していたものと認められる。 しかし,本件商標は,これら商標法4条1項10号に該当するものについては, そのことを理由に無効とされるのであり,その余の指定役務である「美術品の展示」 について,本件商標の登録を許容すべきでないといえるだけの反社会性があるとい うべき事情を認めるに足りる証拠はない。
(3) これに対し,原告は,被告及び被告代表者Bが,古田家や古田織部と何の\n関係もないにもかかわらず,茶道織部流の何百年にもわたる伝統を承継する正当な 根拠も理由もなく,あたかも自己が創設した茶道の流派であるかのように,これを 独占しようとしているなどと主張するが,上記のとおり,「美術品の展示」を除く 役務について本件商標は無効であるので,被告が茶道について織部流を独占するこ とにはならない。 上記に関し,原告は,Lが織部流の茶会を開催しようとした際に織部流の名称の 使用の中止を求める平成30年10月26日付け「お知らせ」と題する書面(甲2 1)が届いたと主張するが,同書面の差出名義人である「A13」が被告又は被告 の意を受けた者であるとは直ちには認め難い。 また,原告は,被告代表者Bが関係した展示会や催し,同人の講演,同人の経歴\nや「織部賞」について主張するが,これらの主張は上記(2)の判断を左右するもので はない。さらに,本件審判請求の際の被告代表者Bの陳述書(甲28)についても,\n審判において被告代表者Bが自己の言い分を記載したものにすぎず,上記(2)の判 断を左右するものではないし,原告が提出する被告代表者Bにだまされていた旨の\n記載のあるKの陳述書(甲40)や,本件審判請求において提出された同人名義の 陳述書(甲29)のほか,被告代表者Bを発行者とする「茶湯手帳」の記載(前記\n1(1)エ)も,上記(2)の判断を左右するに足りるものではなく,その他,本件商標 の登録を許容すべきでないといえるだけの反社会性があるというべき事情を認める に足りる証拠はない。
4 小括
以上によると,本件審決のうち,「セミナーの企画・運営及び開催」,「電子出 版物の提供」,「図書及び記録の供覧」,「図書の貸与」,「書籍の制作」及び「興 行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競 馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」の役務について 商標法4条1項10号に該当しないとした範囲で,原告の主張する取消事由には理 由があると認められる。その余の原告の主張は理由がない。

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令和2(行ケ)10028  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和2年12月9日  知的財産高等裁判所

 キューピー人形の図形と、文字「キューピー」が結合した商標について、無効請求がなされ、特許庁・裁判所とも無効理由無しと判断しました。出願が大正11年なので、旧商標法(大正10年法律第99号)の無効理由です。判決文の中に、関係法令として条文が記述されています。

 上記認定事実によれば,ローズ・オニールが創作したキューピー人形及び その名称の「キューピー」が大正2年(1913年)に我が国に紹介された 後,「キューピー人形」及びその名称の「キューピー」は,本件出願前(出 願日大正11年4月1日)に,日本国内の全国にわたり,広く知られるよう になったことが認められる。原告の挙げる甲6,9ないし14,18ないし 21の記述(前記第3の1(1)ア(イ))は,これを裏付けるものといえる。 しかしながら,一方で,上記認定のとおり,大正5年(1916年)以降, ローズ・オニールが創作に関与したキューピー人形とは異なる「日本なりの キューピー」人形や,日本文化と関わりを持たせて描かれた絵葉書,年賀状 などが発売され,また,日本的な,日本でデザインされたキューピーは,様々 な商品のブランド名,広告類のイラスト等や商品の容器等に広く使用されて きたこと,加えて,甲6には,「その代表たるキューピーちゃんも,最初は\nドイツで作られたものだそうだが,それが日本でも作られるようになり,い つの間にか日本的キューピーとして生れかわった。そのルーツもあまり知ら れずに,そのくせ,最近まで,子供の頃に一度もキューピーを手にしていな い人はなかったというぐらい大衆性が続いたのは,キューピーが子供ばかり でなく大人にも可愛がられる何かを,強力にもっていたからだろう。」,「遠 く太平洋をへだてた島国の日本のこと,生みの親のローズさんのことも,オ リジナルの可愛らしいイラストのキューピーもあまり知られないまま,どん どん日本なりのキューピーが作られ,ますます広く愛されたのである。」(前 記1(3)ア(イ))との記載があることに鑑みると,キューピー人形は,本件出 願当時,キューピー人形の創作者がローズ・オニールであることが認識され ることなく,西洋文化に由来する幼児姿のキャラクターとして誰もが自由に 使用できるものと理解され,全国において,キューピー人形やそれを模した 絵柄や図形等が多数作成され,商品のブランド名や広告宣伝等に広く使用さ れる状況にあったものと認められる。
以上によれば,原告の挙げる甲6,9ないし14,18ないし21の記述 から,キューピー人形及びその名称の「キューピー」が,本件出願前に自他 商品識別機能ないし自他商品識別力を獲得するに至っていたものと認めるこ\nとはできず,他人の業務に係る商品を表示するものとして,日本国内におけ\nる需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。他にこれ を認めるに足りる証拠はない。
・・・
(2) 不正の目的について
原告は,被告の創業者のAは,本件出願前の1915年(大正4年)3月 から同年12月9日までの間米国に滞在中に,米国においてキューピー人形 及びその名称「キューピー」が広く知られていたことを了知したところ,1) 本件商標は,ローズ・オニール創作に係る人形の絵図及び人形の題号「KE WPIE」,「キューピー」のみからなること,2)本件出願以前において, ローズ・オニールの創作したキューピー人形の特徴を備えたキューピー人形 とその名称は,日本国内において,老若男女を問わず,全国津々浦々まで人 気があり,周知著名であったこと,3)被告は,本件商標を指定商品に使用し た実績がないこと(甲65,66),4)被告のウェブページ(甲27の1, 2)には,Aが他人の著名標章を自己のものとして商標登録した経緯が記載 されていること,5)被告は,本件出願後に,本件商標と同様のローズ・オニ ール創作に係る人形の絵図とローズ・オニール創作に係る人形の題号「KE WPIE」,「キューピー」から構成されるキューピー関連商標470件に\nついて広範な指定商品において出願及び登録し,あるいは商標を譲り受けて, 他人の知的創作である「キューピー人形の絵図」,「キューピーの名称」か らなる商標の独占を図ったことからすると,Aは,他人の標章の著名性にた だ乗りし,あるいは他人の知的財産を自己のものとして,権利化を図るとい う「不正の目的」をもって,本件出願を行ったものである旨主張する。
そこで検討するに,本件商標の出願時及び商標登録時において,ローズ・ オニールの創作に由来するキューピー人形及びその名称の「キューピー」は, 日本国内の全国にわたり,広く知られるようになったことは認められるもの の,キューピー人形及びその名称の「キューピー」が自他商品識別機能ない\nし自他商品識別力を獲得するに至っていたものと認めることはできず,他人 の業務に係る商品を表示するものとして,日本国内における需要者の間に広\nく認識されていたものと認めることはできないことは,前記(1)で説示したと おりである。
こうした状況のもとで,Aは,大正11年4月1日,本件商標の出願をし, 商標登録を受けたものであるから,その余の点について判断するまでもなく, Aが本件出願に当たり,他人の標章の著名性にただ乗りし,あるいは他人の 知的財産を自己のものとして,権利化を図るという「不正の目的」を有して いたものと認めることはできない。
・・・・
(3) 国際信義違反について
原告は,1)被告の創業者のAによる本件商標の出願及び登録は,外国の著 名標章を自己のものとすることを目的とするものであり,不正の目的をもっ てされたものである,2)A及び本件商標を承継した被告は,ローズ・オニー ルの創作に係る人形の絵図と類似し,かつ,その創作に係る人形の名称「キ ューピー」の創作者の母国であり,「キューピー人形」の著作物の第1発表\n国であり,意匠登録された米国において,多数のキューピー関連商標を出願, 登録し(甲36),「KEWPIE DOLL」なる商標に対して権利行使 をした(甲37),3)のみならず,被告は,米国を含めた全世界において, 本件商標と同じく,キューピー人形の絵図,「KEWPIE」,「キューピ ー」等の文字商標を多数出願及び登録し,他人の知的創作であるキューピー 人形及びその名称の権利化を図っており,A及び被告による他人の知的創作 の剽窃行為は全世界に及んでいる,4)したがって,本件商標の出願及び登録 は,国際信義に反する旨主張する。 そこで検討するに,証拠(甲30,37,38)によれば,本件商標を承 継した被告は,「KEWPIE(kewpie)」の文字からなり,又は当 該文字を構成中に含む登録商標を米国において合計7件(2018年10月\n13日時点)保有しているほか,既に消滅したもの又は保留中のものを含め て,「KEWPIE(kewpie)」の文字やキューピーの絵図等を含む 商標について,ドイツ,シンガポール,カナダ,フィリピン,オーストラリ ア,マレーシア,フランス,デンマーク,ベトナム,インドネシア,ブルネ イ,メキシコ,カンボジア,モンゴル,イスラエル,ラオス,チリ,アイス ランド,ニュージーランド,欧州連合に出願等をしたこと,被告は,201 6年(平成28年)5月26日,「KEWPIE DOLL」の商標に係る 出願に対して異議の申立てをしたことが認められる。\n
しかしながら,一方で,前記(2)認定のとおり,Aが本件出願に当たり,他 人の標章の著名性にただ乗りし,あるいは他人の知的財産を自己のものとし て,権利化を図るという「不正の目的」を有していたものと認めることはで きないのみならず,被告が「KEWPIE(kewpie)」の文字からな り,当該文字等を含む商標を米国のみならず多数の国に出願し,登録を受け たことは,被告が我が国のみならず世界中で様々な事業を展開する上で,本 件商標と類似する商標の出願及び登録が必要であったことによるものと認め られ,また,被告が「KEWPIE DOLL」の商標に係る出願に対して 異議の申立てをしたことも,米国で保有する「KEWPIE」の文字からな\nる商標と類似する文字が含まれているために権利行使をしたものであり,い ずれも国際信義に照らし,不当であるということはできない。 したがって,本件商標の出願及び登録が国際信義に反するとの原告の上記 主張は理由がない。
(4) 本件商標の「秩序又ハ風俗ヲ紊ルノ虞アルモノ」該当性について
以上によれば,Aが,他人の標章の著名性にただ乗りし,あるいは他人の 知的財産を自己のものとして,権利化を図るという「不正の目的」をもって, 本件出願を行ったものと認めることはできず,また,本件商標の出願及び登 録が国際信義に反するものと認めることはできないから,本件商標権をAか ら承継した被告が保有することが,社会公共の利益に反し,又は社会の一般 道徳観念に反するものと認めることはできない。 したがって,本件商標が旧商標法2条1項4号の「秩序又ハ風俗ヲ紊ルノ 虞アルモノ」に該当するとの原告の主張は採用することができない。 これと同旨の本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は 理由がない。
3 取消事由2(本件商標の旧商標法2条1項11号該当性の判断の誤り)につ いて
(1) 原告は,本件商標は,ローズ・オニールが創作したキューピー人形の絵図 と「KEWPIE」の欧文字とその片仮名から構成されるものであって,本\n件商標を付した商品について,需要者は,著名な「キューピー人形」,「K EWPIE」の名称と関係があるという特定の出所を認識することにより混 同を生じさせるものであるから,旧商標法2条1項11号の「商品ノ混同ヲ 生セシムルノ虞アルモノ」に該当する旨主張する。
しかしながら,前記1(1)で説示したとおり,キューピー人形は,本件出 願当時,キューピー人形の創作者がローズ・オニールであることが認識され ることなく,西洋文化に由来する幼児姿のキャラクターとして誰もが自由に 使用できるものと理解され,全国において,キューピー人形やそれを模した 絵柄や図形等が多数作成され,商品のブランド名や広告宣伝等に広く使用さ れる状況にあったものであり,本件商標の出願時及び商標登録時において, ローズ・オニールの創作に由来するキューピー人形及びその名称の「キュー ピー」が自他商品識別機能ないし自他商品識別力を獲得するに至っていたも\nのと認めることはできず,他人の業務に係る商品を表示するものとして,日\n本国内における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできな いことに照らすと,本件商標をその指定商品に使用しても,これに接する需 要者において,特定の他人(当該他人と緊密な営業上の関係等にある営業主 を含む。)の商品の出所との同一性の誤認を生じるおそれがあったものと認 めることはできない。 したがって,本件商標は,旧商標法2条1項11号の「商品ノ混同ヲ生セ シムルノ虞アルモノ」に該当するものと認められないから,原告の上記主張 は採用することができない。

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令和2(行ケ)10021  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和2年10月8日  知的財産高等裁判所

 翻訳支援ツール及び翻訳ソフトが類似商品かが争われました。知財高裁は、類似商品であるとした審決を維持しました。

ウ そして,本願指定商品である翻訳支援ツールも,コンピュータプログラ ムである以上,引用指定商品である「電子計算機用プログラム」に含まれ るから(原告は,この点を争っているようであるが,引用指定商品の「電 子計算機用プログラム」は,特に限定がない以上,コンピュータプログラ ム一般を含むものと解される。そして,翻訳支援ツールも,用途がやや特 殊であるとはいえ,コンピュータを動作させて一定の作業を行うためのプ ログラムである以上,コンピュータプログラムにほかならないのであるか ら,引用指定商品に含まれることを否定することはできない。),本願指定 商品と引用指定商品とは同一であるということになる。 したがって,原告の主張は,既にこの点において失当というべきである が,当事者双方が,本願指定商品である翻訳支援ツールと引用指定商品で ある翻訳ソフトとが類似するかどうかについて争っていることにかんが\nみ,念のため,この点についても判断することとする。
(2) 生産部門及び販売部門について
ア 上記(1)アによれば,翻訳支援ツールは,主に翻訳事業者又は翻訳者が使 用することが想定されている商品であるといえるところ,実際の取引例を みても,翻訳事業者が生産,販売をしている例が多く見受けられる(乙2, 3,7,14)。
イ また,翻訳ソフトは,自動翻訳をすることを主な機能\とするコンピュー タソフトウェアであること(乙6)からすれば,翻訳事業者又は翻訳者の\nみならず,他の事業者や一般の消費者も使用することが想定されている商 品であるといえるところ,実際の取引例をみても,翻訳事業者ではない一 般のソフトウェアメーカーが生産している例や,当該ソ\フトウェアメーカ ー又は家電量販店が販売している例が多く見受けられる(乙8ないし10, 15,16)。
ウ そうすると,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトは,生産部門及び販売部門\nが異なることが多いものといえる。 しかしながら,他方で,上記ア及びイで挙げた取引例とは異なり,一般 のソフトウェアメーカーが翻訳支援ツールを生産,販売している例や,翻\n訳事業者が翻訳ソフトを生産,販売している例も見受けられる(乙11な\nいし13)。また,翻訳支援ツールと類似した機能を含む翻訳ソ\フトが,家 電量販店又はそのウェブサイトにおいて販売されている例も見受けられ る(乙13,15,16)。 これらの事情を考慮すると,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトの生産部門\n及び販売部門は,必ずしも明確に区別されるものではないというべきであ る。
エ 以上によれば,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトは,生産部門及び販売部\n門を共通にする場合があるといえる。
(3) 用途及び機能について\n
ア 上記(1)及び(2)によれば,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトは,翻訳者に\nよる翻訳作業を効率化等するためのものであるか,それとも自動翻訳をす るものであるかという点で,主たる用途や機能が異なるものといえる。\n
イ しかしながら,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトは,いずれも翻訳作業を\n行うことを目的とし,コンピュータを動作させるためのプログラムである という点においては,用途及び機能を共通にするものといえる。また,翻\n訳支援ツールは,その多くが自動翻訳の機能も有していると認められ(乙\n7,11),他方で,翻訳ソフトには,翻訳支援ツールと類似した機能\や翻 訳支援ツールと連携する機能を含むものがあると認められる(乙8,13)。\nこれらの事情を考慮すると,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトの用途や機\n能を厳密に区別するのは困難であるというべきである。\n
ウ 以上によれば,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトの用途及び機能\には,共 通する部分があるといえる。
(4) 需要者について
ア 上記(1)アによれば,翻訳支援ツールは,主に翻訳事業者又は翻訳者が使 用することが想定されている商品であるといえるから,その主な需要者は, 翻訳事業者又は翻訳者であるといえる。
イ また,上記(2)イのとおり,翻訳ソフトは,自動翻訳をすることを主な機\n能とするコンピュータソ\フトウェアであることからすれば,翻訳事業者又 は翻訳者のみならず,他の事業者や一般の消費者も使用することが想定さ れている商品であるといえるから,その主な需要者には,広く一般の事業 者及び消費者が含まれるものといえる。
ウ そうすると,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトは,主な需要者が異なるこ\nとが多いものといえる。 しかしながら,上記(2)及び(3)で検討したとおり,翻訳支援ツール及び 翻訳ソフトは生産部門及び販売部門を共通にする場合があり,また,用途\n及び機能に共通する部分があるといえることからすれば,翻訳事業者又は\n翻訳者ではない一般の事業者又は消費者が翻訳支援ツールを購入するこ ともあり得るし,これとは逆に翻訳事業者又は翻訳者が翻訳ソフトを購入\nすることもあり得るといえる。そうすると,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトの需要者については,上記の範囲で共通することがあるというべきである。\n
エ 以上によれば,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトは,需要者の範囲が一致\nすることがあるといえる。
(5) 小括
ア 上記(2)ないし(4)で検討したとおり,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトは,\n生産部門及び販売部門を共通にする場合があるといえること,用途及び機 能に共通する部分があるといえること,需要者の範囲が一致することがあ\nるといえることからすれば,両者に同一又は類似の商標が使用された場合 には,同一の営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認されるおそれ があるというべきである。
イ したがって,翻訳支援ツールである本願指定商品と翻訳ソフトを含む引\n用指定商品は,商標法4条1項11号にいう「類似する商品」に当たるも のと認められる。
(6) 原告の主張について
ア 原告は,翻訳支援ツールである本願指定商品は汎用性のある「電子計算 機用プログラム」ではなく,翻訳ソフトとは根本的に異なるものである旨\n主張する。
イ しかしながら,これまで検討したところに照らすと,翻訳支援ツールが, 自動翻訳を主な機能とするものではなく,翻訳者による翻訳作業を支援す\nるためのものであり,主に翻訳事業者又は翻訳者が使用することが想定さ れている商品であるからといって,直ちに翻訳ソフトとの類似性が否定さ\nれるものではないというべきである。

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令和1(行ケ)10171  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和2年9月24日  知的財産高等裁判所

 知財高裁(3部)は、図形と重ねて表示した「おかめ」の文字について、図形と一体不可分とまではいえないとして、先行商標と類似すると判断しました。\n

 商標の類否は,対比される商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された 場合に,その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否か によって決すべきであるが,それには,使用された商標がその外観,観念,称 呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべ く,しかも,その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り,その 具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行 ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁, 最高裁平成6年(オ)第1102号同9年3月11日第三小法廷判決・民集5 1巻3号1055頁参照)。 また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構\成部 分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分 的に結合していると認められる場合においては,その構成部分の一部を抽出し,\nこの部分だけを他人の商標と比較して類否を判断することは,原則として許さ れないが,その場合であっても,商標の構成部分の一部が取引者又は需要者に\n対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合や, それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じない場合などには, 商標の構成部分の一部だけを取り出して,他人の商標と比較し,その類否を判\n断することが許されるものと解される(最高裁昭和37年(オ)第953号同 38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成 3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5 009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷 判決・裁判集民事228号561頁参照)。 なお,出所識別標識としての印象を与える機能を,以下「識別力」という。\n
3 本願商標の要部
原告は,本願商標の構成は,不可分一体のものであって分離観察をすること\nは許されないと主張する。 そこで検討するに,まず本願商標の外観を見ると,同一の色の「甘味」の文 字部分と「おかめ」の文字部分とが,間隔を空けながらも一列に配置され,そ の背景に,上記各文字部分と一部重なるような形で,より淡色ではあるものの, 同系統の色で表された家紋様の図形部分が配置され,一体としてまとまりのあ\nる外観を呈しているといえなくもない。しかし,その一体性はさほど強いもの ではなく,むしろ,「甘味」の文字部分と「おかめ」の文字部分とは,字の大 きさも太さも全く異なっている上,かなり広い間隔を置いて配置されているた め,それほど統一感があるとはいえないし,図形部分も各文字部分を有機的に 結合させるほどの機能を果たしているとは見えず,むしろ,背景の装飾といっ\nた程度の機能を果たしているのにすぎないと見える。そうであるとすると,本\n願商標の外観の構成は,分離観察を不可能\とするほどの一体性を有していると は認められない。
原告は,「おかめ」という屋号の甘味処を経営しているところ,本願商標の 文字部分は「甘味おかめ」という屋号を示し,図形部分は,その家紋を示して いるから,本願商標は,全体として,おかめという屋号の甘味処という観念を 有すると主張し,この主張は,本願商標が上記のような観念において不可分一 体性を有するという趣旨にも受け取れる。しかし,甘味を提供する飲食店にお いて,屋号と家紋を一体的に組み合わせた商標を用いることが一般的に行われ ていると認めるに足りる証拠はないし,本願商標が,原告の屋号と家紋を表し\nた商標として著名であると認めるに足りる証拠もない。そうすると,本願商標 に接した需要者が,本願商標を甘味処の屋号とその家紋を一体として表した商\n標であると観念するとはいえないから,原告の主張は失当である。そして,他 に,本願商標が,分離観察を許さないほど不可分一体であると認めるに足りる 証拠はない。
そうすると,本願商標は分離観察をすることも許されるものというべきとこ ろ,本願商標のうち,「おかめ」の文字部分は,大きな字体の太字で書かれて おり,目立つものである上,自他商品識別力も有するといえるから,この部分 を要部として抽出することも許されるものというべきである。

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平成30(ワ)40314  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和2年1月22日  東京地方裁判所

 ローマ字「SAKURA」下段にひらがな「さくら」を配した商標の商標権者が 「SAKURA SKY HOTEL」、および「SAKURA」,「SKY」,「HOTEL」の三段に配した商標の被告を商標権侵害で訴えました。東京地裁(29部)は、非類似と判断しました。

 原告らは,被告標章においては,被告標章図形部分が最も目を引く部分であり, これと相まって,その直後に記載された文字部分の冒頭部分であり,かつ被告標章 図形部分と観念を共通にする「SAKURA」の文字部分が目に入りやすくなるこ と,被告標章の「SKY」の文字部分も,高層建物の宿泊施設の名称に一般に用い られているものであって,被告標章の「HOTEL」及び被告標章4の「KASH IWA」の各文字部分と同様に提供される役務の性質,場所を示すものであり,自 他識別力が低いこと,被告標章2では,最も目を引く上記図形部分の真横に「SA KURA」の文字部分が配されており,被告標章3及び4では,最も目を引く上記 図形部分の真下に「SAKURA」の文字部分が配され,それ以外の文字部分が改 行して配されていることからして,「SAKURA」の文字部分が一層目を引くこと になることなどを指摘して,被告標章の要部は,「SAKURA」の文字部分,被告 標章図形部分又は「SAKURA」の文字部分及び被告標章図形部分である旨主張 する。
しかしながら,証拠(甲25)によっても,比較的高層の建物の宿泊施設のみな らず,建物の階数が数階程度にとどまる低層の宿泊施設においても「スカイ」の文 字を含む名称が用いられていることが認められる上に,他に高層建物の宿泊施設の 名称において「スカイ」ないしは「SKY」の文字が用いられることが一般的であ ることを裏付ける的確な証拠もないから,「SKY」の文字が,高層建物の宿泊施設 の名称に一般に用いられる,宿泊施設の建物の高さという提供される役務の性質を 表示するとは直ちには認め難く,被告標章の「SKY」の文字部分から出所識別標\n識としての称呼,観念が生じないということはできない。 上記の点に加え,前記 において判示したとおり, 被告標章2ないし4の要部の「SAKURA」の文字部分と「SKY」の文字部分 とが一体のものとして認識し得るものであることのほか,「SAKURA」の文字部 分と「SKY」の文字部分につき,共にほぼ同一の大きさの文字により構成され,\nかつ全体の大きさにもさほど差はないことにも照らすと,被告標章図形部分が目を 引く部分であり,「SAKURA」の文字部分が被告標章2ないし4において被告標 章図形部分の真横又は真下に配されていることをもって,「SKY」の文字部分が被 告標章2ないし4の要部に含まれないということはできない。

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令和2(行ケ)10014  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和2年9月23日  知的財産高等裁判所

 商標「富富富」が商標「ふふふ」とは非類似とした審決(4条1項11号)が維持されました。

 上記(1)〜(3)によると,本件商標と引用商標は,外観において著しく異なってお り,また,称呼や観念を共通にする場合があるものの,それは,本件商標を「フフ フ」と称呼した限られた場合のみである。そして,上記のような差異があるにもか かわらず,本件商標と引用商標が類似しているものと認めるべき取引の実情その他 の事情は認められない。 したがって,本件商標は,引用商標と類似するものとは認められない。
3 原告の主張について
(1) 原告は,本件商標と引用商標からいずれも「おいしさ」や「満足感」に関 する観念を生ずる旨主張するが,以下のとおり,この主張を採用することはできな い。
ア 「ふふふ」の語について
原告は,人が食品を食べたときに軽く笑うのは,その食品に「おいしさ」や「満 足感」を感じたときであるということを,誰もが容易に想像できるから,食品分野 においては,「ふふふ」の語が,「おいしさ」や「満足感」に関する観念をも生ず ると主張する。 しかし,食品分野において,「ふふふ」の語が,特定の態様の笑い声や笑う様子 といった観念を生ずることを前提として,食品について「おいしさ」といった肯定 的な評価を示す直接的な表現として用いられている例(「食卓にふふふな時間を」\n(甲4の5),「ふふふ〜なオヤツ」(甲4の7),「ふふふなモノたち」(甲4 の8),「ふふふなレアチーズ」(甲4の9),「ふふふな食べ比べ」(甲4の1 0)といった用例)があることは認められるものの,それを超えて,「ふふふ」の 語が,食品について,「おいしさ」や「満足感」を示すものとして一般的に用いら れているものというべき事情を認めるに足りる証拠はない。「ふふふ」の語が,食 品について,必ずしも「おいしさ」や「満足感」に関する観念を示すものと直ちに 認められない形で用いられている例(甲28〜33,36,37,42,43,4 5)や,一定の態様の「笑い声」や「笑う様子」を示すものとして用いられている にとどまるというべき例(甲4の1〜4・11,甲12の2・4・11)も認めら れるところである。この点,原告が証拠として提出する辞典(甲3の4・5)にお いても,「ふふふ」の語については,「いたずらっぽく,少々ふざけて,含み笑い をする時などの様子」(甲3の4)を示すものとされたり,「いたずらっぽい笑い, または不敵な笑いを示すことが多い。」(甲3の5)とされたりしているのであっ て,一般的に,必ずしも常に肯定的な意味合いを示すものとはみられない。 上記のように,食品分野においては,「ふふふ」の語が肯定的な意味合いで用い られることが相応にあるということは認められるものの,それを超えて,「おいし さ」や「満足感」に関する観念が一般的に生ずるとまでいうことはできない。
イ 本件商標から生ずる観念について
(ア) 原告は,本件商標の使用態様(甲5の2・3,甲6の1〜4,甲7〜 9,甲10の1・2,甲11の1・2)や被告が策定したマニュアルの記載(甲1 6)から,本件商標が「おいしさ」や「満足感」に関する観念を生ずるものである ことを被告が自認している旨を主張する。 しかし,食品分野において,「ふふふ」の語が「おいしさ」や「満足感」に関す る観念を生ずるという一般的な事情が認められないことは,上記アのとおりである。 証拠(甲5の2・3,甲6の1〜4,甲7〜9,甲10の1・2,甲11の1・2) から認められる本件商標の使用態様や被告の「富富富デザインマニュアル」(甲1 6)の記載を考慮しても,被告が本件商標に係る「フフフ」という称呼を,そこか ら生ずる特定の態様の「笑い」という観念を積極的な評価と結びつける形で用いる ことを超えて,本件商標から「おいしさ」や「満足感」に関する観念を生ずるよう な形で用いているとは認められない。
(イ) 原告は,本件商標に接した需要者の認識についても主張するが,証拠 (甲11の2,甲12の1〜11)から認めることができる事実は,本件商標が「フ フフ」の称呼を生ずることがあることと,「フフフ」の称呼を生じた場合には,本 件商標が特定の態様の「笑い」という観念を生じることがあることの各事実にとど まり,本件商標から「おいしさ」や「満足感」に関する観念を生ずると認めること はできない。
ウ 引用商標から生ずる観念について
原告は,引用商標が「おいしさ」や「満足感」に関する観念を生ずる旨を主張す るが,食品分野において,「ふふふ」の語が「おいしさ」や「満足感」に関する観 念を生ずるという一般的な事情が認められないことは,上記アのとおりである。原 告が指摘する原告のカタログの記載(甲15)についても,あくまで「ふふふ」の 語を笑い声や笑う様子を示すものとして用いるものにすぎないということができ, 引用商標から上記観念が生ずることを上記記載が裏付けるものとはいえない。
エ したがって,本件商標と引用商標とからいずれも「おいしさ」や「満足 感」に関する観念が生ずるとの原告の主張を採用することはできない。
(2) 原告は,本件商標は,引用商標に富山県の「富」で当て字をしたものにす ぎないと主張するが,そのような事実を認めるに足りる証拠はない。原告の主張は, 引用商標と一般的な擬音語・擬態語である「ふふふ」の語を同一視するものであっ て相当でない。一般的な擬音語・擬態語である「ふふふ」の語が有する意味を踏ま えて被告がそのような称呼を有する商標を登録することが,引用商標が存すること で直ちに妨げられるものではない。 また,本件商標と引用商標が「平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互\nに変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」(商標法38条5項括 弧書き)に当たらないことも明らかである。
(3) 原告は,需要者は,本件商標と引用商標を同一のものと認識していると主 張し,事例(甲11の2,甲12の2・5・7〜9)を指摘するが,これらの事例 は,本件商標が「フフフ」という称呼又は笑い声や笑う様子と結びつけられている ことを示すものにとどまり,本件商標と引用商標とが同一のものであるのと誤認等 がされた事実があることを示すものではなく,需要者が本件商標と引用商標を同一 のものと認識していると認めることはできない。

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令和1(行ケ)10170  審決取消請求  商標権  行政訴訟 令和2年9月16日  知的財産高等裁判所

 商標法4条1項11号、同15号違反の無効理由無しと判断されました。無効審判請求人(原告)はスターバックスコーヒーです。緑のドーナッツ状の中央に図形が周辺に文字があるという構成(緑色円環配置構\成)について、混同すると主張しましたが、知財高裁も特許庁と同様に混同しないと判断しました。判決文の最後に両者の商標があります。

 しかるところ,1)引用商標の構成中の本件円環部分と本件図形部分と\nは分離観察し得るものであること,2)本件円環部分のうち,緑色の太い 帯状の円環内に白抜きで表された「STARBUCKS」及び「COF\nFEE」の文字部分全体から「スターバックスコーヒー」の称呼が生じ, また,本件円環部分は外側の緑色の細い円環と内側の白色の細い円環と によって全体の領域が明確に画されており,本件円環部分の外観は全体 として記憶に残りやすいものと認められることからすると,引用商標の 構成中の本件円環部分は全体として需要者に対して強い印象を与えるも\nのといえる。
しかしながら,他方で,原告が主張する引用商標における本件緑色円 環配置構成は,引用商標中の具体的な構\成部分そのものではなく,本件 円環部分から抽出した上位概念化した要素としての構成及び配置の態様\nをいうものであり,緑色の帯状の円環内における白抜きの文字が「ST ARBUCKS」及び「COFFEE」の文字とは異なる文字である場 合や白抜きの図形が星印以外の図形であっても,本件緑色円環配置構成\nに含まれることになるが,引用商標に接した需要者において,このよう な上位概念化した要素としての構成及び配置の態様をイメージし,それ\nが記憶に残るものと認めることは困難である。
(イ) そうすると,引用商標が平成23年3月末当時に著名であったから といってそのことから直ちに引用商標における本件緑色円環配置構成が\n原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く\n認識されていたものと認めることはできない。ましてや,上記時点から約4年後の本件商標の登録出願時(登録出願 日平成28年3月9日)及び登録査定時(登録査定日同年11月1日) において,本件緑色円環配置構成が原告の業務に係る商品及び役務を表\ 示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることは できない。
ウ 本件アンケート調査について
(ア) 原告は,1)本件アンケート調査の調査対象者の抽出方法が適切であ ること,2)本件アンケート調査は,週末の2日間にインターネットを通 じて行われたものであり,調査期間は特段短いものではないこと,3)本 件アンケート調査における552名というサンプル数は,アンケート調 査の信頼性を確保するのに合理的であること,4)仮に緑色の二重円環を 示して調査を行ったとしても,そこから得られる結果は引用商標を含む 原告の商標を日常生活で目にする需要者の実際の認識を反映するもので はないから,本件緑色円環配置構成に関する需要者の認識を適切に測る\nためには,本件標章を対象に質問を行うべきであり,かつ上記注意事項 を示さなければならないから,本件アンケート調査の質問内容は適切で あること,5)本件アンケート調査は,本件商標の登録出願時及び登録査 定時から1年後の平成29年に実施されたものであり,本件アンケート 調査の結果は,上記各時点における需要者の認識を反映したものといえ ることからすると,本件アンケート調査は適切に実施されたものであり, 本件アンケート調査の結果は,上記各時点における本件緑色円環配置構\n成の周知著名性を示すものである旨主張する。
(イ) そこで検討するに,前記(1)イの認定事実によれば,本件アンケート 調査は,引用商標の「緑色の円環部分(ただし,文字・記号は判読不能\nに加工したもの)」である本件標章の著名性を検証することを目的とし て,調査対象者に対し,本件標章の画像について,「ある会社」,「外 食産業に属する会社」又は「あるコーヒーショップの会社」が運営する お店の設備やお店で販売する商品の図柄の一部を抜き出して加工したも のである旨,元々の図柄では,円の中心部に絵があり,緑色の輪の部分 には会社名が特定できる白い文字が表示されていたが,本件標章の画像\nでは,絵の部分を白く塗りつぶし,文字部分にはモザイク処理を施し, 会社名が読み取れないようにしてある旨の説明を付して示した上で,「こ の画像を見て,何と言う会社またはお店の名前を思い浮かべましたか。 以下の回答欄に思い浮かべた会社またはお店の名前をお書きください。 わからない場合は「わからない」とお書きください。」との質問に対す る回答を求めたものであることが認められる。
しかるところ,前記イ(ア)のとおり,原告が主張する引用商標におけ る本件緑色円環配置構成は,本件円環部分から抽出した上位概念化した\n要素としての構成及び配置の態様をいうものであるが,引用商標に接し\nた需要者において,このような上位概念化した要素としての構成及び配\n置の態様をイメージし,それが記憶に残るものと認めることは困難であ ることに照らすと,本件緑色円環配置構成の認識度ひいては著名性を適\n切に調査することは,その性質上困難を伴うものといえる。 そして,本件標章は,別紙3のとおり,外側から順に緑色の細い円環, 白色の細い円環,白色のモザイク模様が付された緑色の太い帯状の円環 から構成されるドーナツ形状の図形からなるものであり,本件標章と引\n用商標における本件円環部分は,緑色の細い円環,白色の細い円環,緑 色の太い帯状の円環を有するドーナツ形状である点では共通するが,緑 色の太い帯状の円環内の構成態様及び内側の白色の細い円環の有無の点\nにおいて異なる態様の標章であることに照らすと,本件標章から本件円 環部分を想起するものと認めることはできないし,ましてや,本件標章 から本件緑色円環配置構成を認識できるものと認めることはできない。\nこの点に関し,本件アンケート調査には,本件標章について,元々の図 柄では,円の中心部に絵があり,緑色の輪の部分には会社名が特定でき る白い文字が表示されていたが,本件標章の画像では,絵の部分を白く\n塗りつぶし,文字部分にはモザイク処理を施し,会社名が読み取れない ようにしてある旨の説明が付されているところ,上記説明は,本件標章 に接した需要者が視覚によって認識し,又は想起することができない内 容を文章によって誘導するものであって適切なものではない。 そうすると,本件アンケート調査は,本件緑色円環配置構成の認識度\nひいては著名性を調査することを目的とする調査方法として適切である と認めることはできないから,原告の前記主張は,理由がない。
エ まとめ
以上によれば,引用商標が,平成23年3月末当時において原告の業務 に係る商品及び役務を表示するものとして著名であり,引用商標の構\成中 の本件円環部分は全体として需要者に対して強い印象を与えるものであっ たことは認められるが,このことと本件アンケート調査の結果から,引用 商標における本件緑色円環配置構成が,本件商標の登録出願時及び登録査\n定時において,原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需\n要者の間に広く認識されており,周知著名であったものと認めることはで きない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。

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令和2(行ケ)10040  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和2年9月10日  知的財産高等裁判所

 図形と文字から構成された商標について、図形部分の先行商標から類似する(4条1項11号)とした審決が維持されました。

ア 本願商標は,左側から順に,本件図形部分,THANKS部分及びAI 部分からなる結合商標であり,各構成部分は,同じ高さで横一列に,重なり合うことなく配置されている。\n
イ 本件図形部分は,太さが均一でない赤色の線で描かれており,下方の1 点で交差する縦長ループを横に2つ並べたような図形である。また,本件 図形部分は,全体としてハート型様の形状となるように,2つの縦長ルー プを一筆書きしたような図形であるとみることも可能である。
ウ THANKS部分は,「T」の欧文字,その右側に配置された同文字より もやや高さが低い「HANKS」の欧文字,その上部に配置された小さめ の「Related to Heart」の欧文字からなり,これらの文 字は,いずれも黒色の線で描かれている。また,THANKS部分は,本 願商標のうち3分の2程度の幅を占めている。
エ AI部分は,赤色の線で描かれた「AI」の欧文字であり,本件図形部 分とほぼ同じ幅である。また,AI部分の「A」の文字の中央の横線は, 横長の楕円形に図案化され,「AI」の文字の中段に同文字を取り巻くよう に描かれている。もっとも,上記図案化の程度は低く,AI部分は,図形 ではなく文字として認識されるものといえる。
(3) 分離観察の可否について
ア 外観からの検討
(ア) 上記(2)のとおり,本願商標においては,左側から順に,赤色の図形 である本件図形部分,黒色の文字であるTHANKS部分及び赤色で多 少図案化された文字であるAI部分が,重なり合うことなく配置されて いるところ,このような色彩や構成の違いからすれば,各構\成部分は, 同じ高さで横一列に配置されてはいるものの,それぞれが独立したもの であるとの印象も与え,視覚上分離して認識され得るものといえる。
(イ) また,上記(2)のとおり,THANKS部分は,目につきやすい中央 部に相当程度の幅で表されており,看者の目を引きやすいとはいえるものの,他方で,一般に,赤色は黒色よりも注意を引きやすい色彩である\nといえることからすれば,本願商標に接した者は,THANKS部分の みならず,赤色の本件図形部分及びAI部分にも注意を引かれるものと いえる。
(ウ) さらに,上記(ア)及び上記(2)エのとおり,AI部分は,他の構成部分と視覚上分離して認識され得るものといえるが,他方で,図形ではな\nく文字として認識されるものといえることからすれば,THANKS部 分と併せて一連の欧文字の列として認識されることもあるといえる。
(エ) 以上の各事情を併せ考慮すると,本願商標に接した者は,各構成部分がそれぞれ独立したものと認識するか,又は図形である本件図形部分\nと文字であるTHANKSAI部分とに分けられるものと認識すると いえる。
イ 称呼及び観念からの検討
(ア) 上記(2)イのとおり,本件図形部分は,2つの縦長ループを横に2つ 並べたか,又は全体としてハート型様の形状となるように一筆書きした 図形であるとみることができるところ,その形状や色彩を見ても,大き な特徴がある図形であるとはいい難く,何らかの意味合いを表すものとして認識されるものとはいえないから,同部分からは,特定の観念は生\nじず,何らの称呼も生じない。
(イ) THANKS部分についてみるに,同部分のうち「THANKS」 の欧文字は,平易な英語である「thank」の複数形であり,「サンク ス」との称呼が生じる上,その訳に従って「感謝」等の観念が生じると いえるものの,それ以上の特定の観念が生じるものとはいえない。 また,「Related to Heart」の欧文字は,比較的平易 な英語であるといえるところ,「リレイテッドトゥーハート」との称呼が 生じる上,その訳に従って「心に関連する」といった観念が生じるとい えるものの,それ以上の特定の観念が生じるものとはいえない。
(ウ) AI部分についてみるに,「AI」の欧文字は,人工知能を意味する略語として広く知られていることからすれば,「エーアイ」との称呼が生\nじる上,「人工知能」の観念が生じるといえるものの,それ以上の特定の観念が生じるものとはいえない。\n
(エ) 以上のとおり,本件図形部分,THANKS部分及びAI部分は, 称呼の面からみても,観念の面からみてもばらばらであり,統一性のあ る称呼ないし観念によって結び付けられているとはいえないから,本願 商標は,称呼,観念の観点から不可分であるということもできない。
ウ まとめ
(ア) 上記ア及びイで検討したとおり,本願商標の各構成部分は,それぞれが独立したものであるとの印象を与え,視覚上分離して認識されるも\nのといえる上,称呼,観念の観点から不可分であるともいえず,他に, その不可分一体性を認めるべき事情も見当たらない。 そうすると,本件図形部分とその他の構成部分とは,本件図形部分のみを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分\n的に結合しているものとは認められない。
(イ) したがって,本件図形部分を分離して観察することは可能であるというべきところ,本件図形部分は,相応の特徴を備えている上,それが,\n看者の注意を引きやすい赤色で描かれた図形であることや,最も左側に 配置されていることなども併せ考慮すると,本願商標に接した者は,本 件図形部分を,単なる装飾ではなく,THANKS部分及びAI部分と は独立したシンボルマークのようなものと認識するものといえるから, これを要部として観察することも許されるというべきである。
(ウ) 以上検討したところによれば,本件においては,本願商標から本件 図形部分を抽出し,同部分のみを他人の商標と比較して類否を判断する ことが許されるというべきである。 したがって,取消事由1及び2は,いずれも理由がない。
2 原告の主張について
(1) 原告は,本願商標は会社名とシンボルマークとを組み合わせた企業ロゴ であり,需要者等はその全体を企業ロゴとして認識するか,又は会社名の表記部分に着目するのが通常であるから,全体を一体的に観察すべきである旨\n主張する。 しかしながら,いわゆる企業ロゴに接した需要者等が,図形やマーク部分 のみに注意を引かれることも当然にあり得るというべきであるから,企業ロ ゴについて,常に全体を一体的に観察すべきであるとはいえない。また,上 記1で検討したとおり,本件図形部分は,本願商標の外観上,他の構成部分と一体のものと認識されるものではなく,また,相応に目立つ態様で表\示されているといえるのであるから,本願商標に接した者が,本件図形部分のみ に注意を引かれることは十分にあり得るというべきである。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
(2) 原告は,THANKSAI部分の称呼及び観念に関して,同部分は原告の グループ名「THANKSAI(サンクスアイ)」を表すものであり,同部分からは「サンクスアイ」等の称呼が生じ,また,原告グループのモットーで\nある「感謝愛」等の観念が生じる上,これに伴って,他の構成部分からも共通する観念が生じる旨主張する。\n そこで検討するに,証拠(甲3ないし7,9の1及び2,甲10,11) 及び弁論の全趣旨によれば,原告が,サンクスアイ株式会社との名称のグル ープ会社を有し,指定商品に係る同社の事業において本願商標を使用してい ることが認められる上,原告は,グループ全体で,「感謝」,「愛」等を企業イ メージとして事業活動を行ってきたことがうかがわれる。 しかしながら,この点が,取引の実情として主張されているのだとすれば, 上記事情は,原告の現状の取引状況に基づく個別的な事情であって,取引状 況として考慮することが許される,その指定商品全般についての一般的,恒 常的事情(最高裁昭和47年(行ツ)第33号同49年4月25日第一小法 廷判決・審決取消訴訟判決集昭和49年443頁参照)といえるかどうかは 疑問である。また,この点を措くとしても,THANKS部分及びAI部分 は,いずれも比較的平易な英語や広く知られた略語であるところ,本件各証 拠をもっても,本願商標の指定商品の取引者や需要者の間において,原告の グループ名や企業イメージが広く知られていたものとまでは認められないこ とからすれば,THANKSAI部分から直ちに原告のグループ名や企業イ メージを表すような特定の称呼や観念が生じるものとはいえない。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
(3) 原告は,原告のグループ名を表すTHANKSAI部分の自他商品識別標識としての機能\は極めて強いのに対して,本件図形部分は,よくあるリボンモチーフを重ねてハート型様にするなどの単純な構成からなる上,同部分から特定の称呼や観念が生じないというのであれば,同部分には自他商品識\n別標識としての機能はないか,極めて弱い識別力しかない旨主張する。 しかしながら,上記(2)で検討したとおり,THANKSAI部分から直ち に原告のグループ名や企業イメージを表すような特定の称呼や観念が生じるものとはいえないことからすれば,同部分が,本願商標の指定商品との関係\nにおいて,殊更に強い出所識別機能を有するものとはいえない。 他方で,上記1で検討したとおり,本件図形部分は,本願商標において相 応に目立つ態様で表示されているといえる上,相応の特徴を備えており,看者の注意を全く引かないほど単純な構\成であるとまではいえないことからすれば,同部分は,本願商標の指定商品との関係において,一定程度の出所識 別機能を有するものというべきである。 そうすると,他の構成部分と比較しても,本件図形部分は,本願商標の指定商品との関係において,これを要部として抽出して同部分のみを他人の商\n標と比較して類否を判断することが許される程度の出所識別機能を有するものといえる。\n

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令和1(行ケ)10167  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和2年8月20日  知的財産高等裁判所

 デザイン化された「GUZZILLA」が、引用商標「GODZILLA」から混同生ずるか?(4条1項15号)が争われました。審判では無効理由無しと判断されましたが、知財高裁はかかる審決を取り消しました。特許庁にて判決の判断に基づく無効判断がなされ、かかる無効判断に対する審決取消訴訟です。ただ、審決取消訴訟の提起と同時に、対象となった商標権を分割し、分割後の商標2についての判断は誤りと主張しました。知財高裁は、分割の効果は将来効であり、また、権利濫用と判断しました。

 商標権は,原告がした令和元年12月12日受付の申請により,\n次の(1)(2)のとおりに分割され,その登録がされた。 (1)指定商品を第7類「鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,農業用機械 器具,廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置但し,パワーショベル用の破砕機・切断機・ 掴み機・穿孔機等のアタッチメントを除く」とするもの(登録第5490432号 の1。甲294。以下,分割後の商標を「本件商標1」という。) (2)指定商品を第7類「パワーショベル用の破砕機・切断機・掴み機・穿孔機等の アタッチメント」とするもの(登録第5490432号の2。甲295。以下,この 商標を「本件商標2」という。)。
・・・・
商標権の分割は,登録しなければ,その効力を生じない(商標法35条,特許 法98条1項1号)。そして,登録によって生じる分割の効果が遡及することを定 めた規定はないから,分割の効果は,登録の時点から将来に向かって生じるものと 解するのが相当である。 この点に関し,原告は,商標法は,商標登録が無効にされるのを回避するために, その24条2項で,商標権の消滅後においてもその分割をすることができると規定 しており,この趣旨を全うするためには,分割の効果が商標登録時まで遡及するか, 遡及したのと同等の利益が維持されるものと解さざるを得ないと主張する。 しかしながら,既に消滅し,存在しない権利関係を分割するということは,本来, 実体としてはあり得ないものである。商標法24条2項がこのようなものを認めた のは,商標権が存続していた当時の権利行使の当否を判断する前提として,必要な 限りにおいて,分割された商標権の存在を擬制するにすぎないというべきである。 このように解したとしても,商標法24条2項の趣旨に反するものとは解されない。
3 原告の主張について
(1) 商標権の分割の効果は,前記2のとおり,登録の時点から将来に向かって生 じること,また,複数の指定商品についてされた1件の審決は,分割後のそれぞれ の指定商品についてされたものと解すべきこと(商標法69条,46条の2参照) からすれば,原告が商標権の分割をしたことそれ自体は,本件審決の効力を左右す るものではなく,その登録以前にされた本件審決の判断の当否に影響することはな いというべきである。
(2) この点を措くとしても,以下に述べるとおり,原告が本件訴訟において商標 権の分割の効果を主張して,審決の取消しを求めることは,原被告間の手続上の信 義則に反し,又は権利を濫用するものとして許されないというべきである。 なるほど商標法24条によれば,商標権の分割は,その商標権が存続している間 は当然行うことができるものと解され,その時期を制限する旨の定めはない。しか しながら,商標法が,商標権の移転を伴わない場合も含めて,商標権を分割するこ とを認めている趣旨は,前記2(2)のとおり,異議申立てや無効審判の請求がされた\n場合に,問題のない商品又は役務に関する商標権を分離して,権利行使を容易にす ることができるというメリットを生かすことにある。そうであるとすれば,商標権 の無効が主張され,異議申立てや無効審判の請求がされたときは,商標権者におい\nて商標権の分割を遅滞なく行うことを期待しても,商標権者に酷であるとは解され ない。他方で,商標権者において商標権の分割がされないまま,異議申立てや無効\n審判の手続が進行すればするほど,商標登録の無効を主張した相手方には,商標権 の分割がされることはないものとの信頼が生じることになる。 また,商標登録無効審決後に商標権が分割された場合に,分割後の指定商品ごと に無効理由を判断し,審決の違法性を判断すべきものとすると,商標権を分割すれ ば実質的に特許庁や裁判所の判断を繰り返し求めることが可能になり,分割の回数\nを増やすことにより,紛争解決を引き延ばすことになる。
商標権の分割をめぐるこのような当事者間の基本的な利害関係に加え,特に本件 においては,本件商標の商標権者である原告において商標権の分割がされることな く,無効審判の手続が進行して請求不成立審決がされ,これを取り消す旨の第1次 判決がされ,原告の上訴を経て第1次判決が確定し,無効審判の審理が更にされて 本件商標の登録を無効とする旨の本件審決がされたという事実経過を経た後に,商 標権の分割がされている。また,原告は,第1次判決後に本件商標2と商標及び指 定商品を同じくする別件商標の出願をして,既にその商標登録を得ていることに照 らせば,遅くとも別件商標の出願時には本件商標の分割をすることができたもので ある。さらに,本件商標2の指定商品は,本件商標の指定商品である商標法施行規 則別表第7類2「鉱山機械器具」,同7類3「土木機械器具」,同7類4「荷役機械\n器具」,同7類18「農業用機械器具」及び同7類27「廃棄物圧縮装置,廃棄物破 砕装置」のうち,同7類3「土木機械器具」に含まれるとされる「パワーショベル」 を用途とするアタッチメントと解されるが,同7類5「化学機械器具」に含まれる とされる「破砕機」や同7類1「金属加工機械器具」に含まれるとされる「切断機」 等も例示するものであって,このように細分化され,本件商標の指定商品に含まれ るか否かが直ちに明らかとはいえないものを含む商品への分割は,予測し難いもの\nである。これらの事情に鑑みると,本件商標について上記のような商標権の分割が されることはないとの被告の信頼の程度は大きいものということができる。 よって,原告が本件訴訟において商標権の分割の効果を主張して,本件審決の取 消しを求めることは,原被告間の手続上の信義則に反し,又は権利を濫用するもの として許されない。

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◆平成29(行ケ)10214

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令和2(行ケ)10006  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和2年7月29日  知的財産高等裁判所

 ローマ字表記で氏名を含む商標について、商標法4条1項8号に該当するとした審決が維持されました。\n

(1) 証拠(乙13〜28)によると,1) 「宮下孝洋」という者が2018年 12月版(掲載情報は同年9月5日現在)及び2016年12月版(掲載情報は同 年9月7日現在)の「ハローページ(新潟県上越版)」に,2) 「宮下隆寛」という 者が2019年3月版(掲載情報は2018年11月28日現在)及び2017年 3月版(掲載情報は2016年12月1日現在)の「ハローページ(長野県飯田版)」 に,3) 「宮下貴博」という者が2019年3月版(掲載情報は2018年11月 28日現在)及び2017年3月版(掲載情報は2016年12月1日現在)の「ハ ローページ(長野県松本版)」に,4) 「宮下孝弘」という者が2019年3月版(掲 載情報は2018年11月28日現在)及び2017年3月版(掲載情報は201 6年12月1日現在)の「ハローページ(長野県木曽版)」に,5) 「宮下高広」と いう者が2019年9月版(掲載情報は同年6月3日現在)及び2017年9月版 (掲載情報は同年6月5日現在)の「ハローページ(長野県長野版)」に,6) 「宮 下高弘」という者と「宮下貴浩」という者がそれぞれ2019年9月版(掲載情報 は同年6月3日現在)及び2017年9月版(掲載情報は同年6月5日現在)の「ハ ローページ(長野県上田版)」に,7) 「宮下孝弘」という者が2019年2月版(掲 載情報は2018年11月1日現在)及び2017年2月版(掲載情報は2016 年11月1日現在)の「ハローページ(小平・西東京・東村山市版)」に,8) 「宮 下貴博」という者が2018年11月版(掲載情報は同年7月26日現在)及び2 016年11月版(掲載情報は同年8月3日現在)の「ハローページ(川崎市川崎・ 幸・中原区版)」に,それぞれ掲載されていることが認められ,上記各事実からする と,上記の者は,いずれも本願商標の登録出願時から本件審決時まで現存している ものと推認できる。そして,上記の者は,いずれもその氏名の読みを「ミヤシタタ カヒロ」とすると考えられる。その他,ウェブページ(乙7,8,10,11,2 9〜32)からも,氏名の読みを「ミヤシタタカヒロ」とする「宮下貴博」,「宮 下敬宏」,「宮下孝洋」,「宮下孝広」又は「宮下貴浩」という者及び氏名の読み を「ミヤシタタカヒロ」とすると考えられる「宮下隆裕」又は「宮下隆博」という 者が存することが認められ,これらの者も,本願商標の登録出願時から本件審決時 まで現存しているものと推認できる。 弁論の全趣旨によると,上記の者は,いずれも原告とは他人であると認められる から,本願商標は,その構成のうちに「他人の氏名」を含む商標であって,かつ,\n上記他人の承諾を得ているとは認められない。 したがって,本願商標は,商標法4条1項8号に該当する。
(2)ア これに対し,原告は,商標法4条1項8号の「他人」については,承諾 を得ないことにより人格権の毀損が客観的に認められるに足りる程度の著名性・希 少性等を必要とすると解すべきであると主張する。 しかし,商標法4条1項8号は,自らの承諾なしに,その氏名,名称等を商標に 使われることがないという人格的利益を保護するものである(最高裁平成15年(行 ヒ)第265号同16年6月8日第三小法廷判決・裁判集民事214号373頁, 最高裁平成16年(行ヒ)第343号同17年7月22日第二小法廷判決・裁判集 民事217号595頁参照)ところ,その規定上,「雅号」,「芸名」,「筆名」 及び「略称」については,「著名な」という限定が付されている一方で,「他人の 氏名」及び「名称」についてはそのような限定が付されていない。同号は,氏名及 び名称については著名でなくとも当然にその主体である他人を指すと認識されるこ とから,当該他人の氏名や名称の著名性や希少性等を要件とすることなく,当該他 人の人格的利益を保護したものと解される。したがって,原告の上記主張は採用す ることができない。
イ また,原告は,ファッションの分野においては,周知,著名なブランド の使用者に独占排他的権利が認められてしかるべきであると主張し,1) 同程度に 周知,著名性を獲得したブランドであるにもかかわらず,他人の現存の有無といっ た出願人(ブランド使用者)の関与し得ない要素によって承諾の要否や承諾が必要 な数が異なり,登録可能性に差異が生じる旨,2) 氏名をローマ字表記する場合は,\n承諾の対象者が広く,他人の承諾を得ることが困難であるから,氏名のローマ字表\n記が相当珍しいものでない限り,商標登録が事実上不可能となる旨,3) 上記のよ うなブランドに係る商標は,それがファッション分野の商品に使用されると,当該 デザイナーのブランド表示として客観的に把握されるから,同じ読みの氏名の他の\n者を想起,連想させるものではなく,当該他人の人格的利益が毀損されるおそれは ない旨を主張する。 しかし,「他人の氏名」を含む商標について原則として商標登録を受けることが できないとし,「その他人の承諾」を得ている場合をその例外と定める商標法4条 1項8号においては,上記1)及び2)のようなことが一定程度生じることは,予定さ\nれているというほかなく,そのことを直ちに公平でないとか商標法1条の目的に反 するということはできない。また,同号が具体的な人格的利益の侵害又はそのおそ れを要件として定めるものではないことからすると,上記3)のような場合には同号 に該当しないと解することはできない。したがって,原告の上記主張は,前記(1)の 判断を左右するものではない。

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令和2(行ケ)10022    商標権  行政訴訟 令和2年7月8日  知的財産高等裁判所

 商標「maharaja」の外観違いについて既登録商標と類似する(4条1項11号違反)として拒絶審決がなけれました。知財高裁は審決を維持しました。原告は、インド料理の店名として「マハラジャ」は一般的に使用されているという取引の実情があり,類否判断においては,外観上の相違が重要であると主張しました。

 原告は,1)原告の調査結果によれば,インド料理等を提供する店舗におい て,「マハラジャ」の片仮名又は「Maharaja」の英文字を構成に含\nみ,「マハラジャ」と称呼される店名の店舗が14店舗存在したこと(甲9 ないし17,21ないし25),2)2019年に開催されたさいたま市内の 複数のカレー店舗を食べ歩き,各店舗でスタンプを集めて競い合うスタンプ ラリーのイベントの名称は,「さいたマハラジャ2019」であり(甲18), このようなイベントの名称中に「マハラジャ 」の語が採用されたことは,「マ ハラジャ 」の語がインド料理と強い関連性を有する単語であることが広く認 識されていることを示すものといえることからすると,インド料理等を提供 する店舗において,「マハラジャ」と称呼される店名の店舗が全国に多数あ り,「マハラジャ」と称呼され,それによって「大王」の観念が生じる商標 が店名として一般的に使用されているという取引の実情があり,このため需 要者は,かかる商標の外観によって店舗を識別していることに鑑みれば,本 願商標と引用商標1なしい3の類否判断においては,称呼及び観念が共通し ているとしても,外観上の相違が重要であるというべきであり,両者を本願 商標の指定役務「インド料理の提供」等に使用した場合に当該役務の出所混 同のおそれはないから,本願商標が引用商標1なしい3に類似する商標であ るということはできない旨主張する。
ア そこで検討するに,原告提出のインド料理店のウェブページ(甲9ない し17,21ないし25)によれば,大阪市内の「インド料理 マハラジ ャ(Maharaja)」の店名の店舗(甲9),群馬県高崎市内の「イ ンド料理 NEWマハラジャ」の店名の店舗(甲10),静岡県富士市内 の「インド料理 マハラジャダイニング 富士店」の店名の店舗(甲11), 東京都武蔵野市内の「マハラジャ(MAHARAJA)」の店名の店舗(甲 12),山梨県都留市内の「インドレストラン マハラジャ」の店名の店 舗(甲13),京都市内の「マハラジャ」,「MAHARAJA」の店名 の店舗(甲14,19),札幌市内の「スープカレー Maharaja 〜マハラジャ〜」の店名の店舗(甲15),静岡市内の「マハラジャダイ ニング」「MAHARAJA」の店名の店舗(甲16),埼玉県川越市内 の「NEW MAHARAJA KAWAGOE ニューマハラジャ川越」 の店名の店舗(甲17)等「マハラジャ」と称呼される文字を店名に含む 店舗が14店舗存在することが認められる。 しかしながら,他方で,NTTタウンページにおける業種分類「インド 料理店」の2017年(平成29年)の登録件数は2162件であったこ と(乙9)に照らすと,本件審決時において,インド料理店のウェブペー ジに「マハラジャ」と称呼される文字を店名に含む店舗が14店舗存在す るからといってインド料理等を提供する店舗において「マハラジャ」と称 呼される店名の店舗が全国に多数あり,「マハラジャ」と称呼される商標 が店名として一般的に使用されているという取引の実情があるものと認め ることはできない。 また,2019年(令和元年)9月から11月にかけてさいたま市内で 「さいたマハラジャ2019」との名称の複数のカレー店舗を食べ歩き, 各店舗でスタンプを集めて競い合うスタンプラリーのイベントが開催され たことが認められるが(甲18),このことからインド料理等を提供する 店舗において「マハラジャ」と称呼される店名の店舗が全国に多数あるこ とを裏付けることはできない。他に原告主張の取引の実情が存在すること を認めるに足りる証拠はない。
イ さらに,仮に原告の主張するようにインド料理等を提供する店舗におい て「マハラジャ」と称呼される店名の店舗が全国に多数存在するとしても, 商標の構成文字は絶えず同じ態様で固定して用いるのではなく,使用場面\nに応じて書体や色彩を変更することが普通に行われていることに照らすと, 「マハラジャ」と称呼される店名の店舗が全国に多数存在するからいって, 需要者がインド料理等を提供する店舗において「マハラジャ」と称呼され る店名に係る商標の外観によって店舗を識別している実情があるものとい うことはできない。

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平成31(ネ)10024  商標権侵害行為差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和2年6月4日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審で商標権侵害として約3万円の損害賠償が認められましたが、差止請求は取消審判の予告登録日には権利消滅するとして、棄却されました。知財高裁はこれを維持しました。\n

 控訴人は,原告ウェブページに,原告商標が付された原告腕時計 4本の画像を掲載した旨主張する。 しかしながら,原告ウェブページの写真である甲62は,そこに 表示された4本の腕時計の画像が不鮮明であるため,同画像からは,\nこれらの腕時計の文字盤にいかなる標章が付されているのかを認識 することはできず,その他に,原告ウェブページに原告商標を付し た腕時計が表示されていることを認めるに足りる証拠はない。\nこれに対し控訴人は,仮に上記画像のみから「moto」の文字をは っきり認識できないとしても,同画像の右横に原告商標が大きく表\n示され,更に「moto」が控訴人の登録商標である旨の記載もあるこ と,腕時計の文字盤に商標が付されることは極めて多いことに鑑み れば,画像の文字盤に付された欧文字が「moto」であることを十分\nに認識できる旨主張する。 しかしながら,そもそも,原告ウェブページに表示された腕時計\nの画像は不鮮明であって,文字盤に欧文字が付されていると認識す ることは困難であるし,腕時計の文字盤に常に商標が付されるもの であるとも認められない。また,前記(1)ア(ア)で認定した原告ウェ ブページにおける画像等の配置や全体の構成に照らしても,「moto」 が登録商標である旨の説明文は,その上方に近接して表示された原\n告商標について説明する文章と理解するのが自然であるから,これ らの表示から,腕時計の画像に「moto」の標章が付されていること を認識するものではないといえる。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 以上によれば,要証期間内に,原告商標が付された腕時計の画像 が原告ウェブページに表示されたと認めることはできない。\n
(イ) 原告商標の表示\n
a 前記(1)ア(ア)のとおり,原告ウェブページには,腕時計の品名, 品番,値段,商品説明等についての記載や,控訴人の腕時計が将 来発売予定であること,個別の商談により購入が可能\であること を説明する記載はない。 そして,かかる原告ウェブページの体裁,記載からは,少なく とも平成30年3月6日頃に原告更新ウェブページが作成され, 腕時計の品名,品番,値段,商品説明等についての具体的な記載 が掲載されるまでの間は,控訴人において,同ウェブページに画 像が表示された腕時計が実際に製造され,商品として購入できる\n実態があったことを推認することはできないというべきである。 以上によれば,原告ウェブページに表示された原告商標や「moto 時計」のウェブページである旨の表示は,商品である「腕時計」\nについて使用されたものとは認められない。
b これに対し控訴人は,(1)原告ウェブページに原告腕時計の商品 名等を表示しなかったのは,原告腕時計の画像を原告ウェブペー\nジに掲載した当時は,原告腕時計の販売や取引先に対する営業活 動の開始前だったからである,(2)原告ウェブページに掲載された 原告腕時計の画像は,控訴人が君園に発注して納品を受けた腕時 計につき,中華撮影が広告用に撮影したものを使用して,原告ウ ェブページ掲載用に作成したものであって,甲121ないし12 3は君園から受領した原告腕時計の見積書及びデザイン画像,甲 126は中華撮影から受領した原告腕時計の写真の納品書,甲1 27は原告ウェブページ用に作成した写真である旨主張し,Fの 第2次審判における証人尋問録音の反訳(乙226)及び同人の 陳述書(甲80。上記反訳と併せて,以下「Fの陳述書等」とい う。),君園の社長の陳述書(甲194)及び中華撮影の写真家の 陳述書(甲195)中には,これに沿う部分がある。 しかしながら,(1)についていえば,控訴人主張の事情は,原告 更新ウェブページが作成されるまでの 1 年以上にわたり,原告ウ ェブページに原告腕時計の品目,品番,商品説明等の一切が表示\nされていないことの説明になるものではない。また,(2)も,以下 の点に照らせば,採用できるものではない。 すなわち,甲122のデザイン画像は,腕時計本体の写真がや や不鮮明であるのと対照的に,文字盤上の「moto」の文字又は文 字盤全体が不自然なほど鮮明で浮き上がっているように見えるも のであり,画像データを加工等して作成された画像であることが うかがえる。また,同画像が添付された電子メール(甲122) には本文がなく,これらの画像の作成目的,作成方法等も証拠上 明らかでない。 そして,甲121の見積書には,「製品明細」(「ステンレス サ ファイアガラス 日本製ムーブメント 手作箱及び説明書」),「注 意事項」(「腕時計サンプル製作」),「数量」(合計16個)等の記 載があるものの,商品の単価やサンプル製作納期の記載がないな ど,不自然な点も少なくなく,「製品明細」に記載されたとおりの 製品が製造されたことを示す写真等の客観的な証拠もない。また, 控訴人は,甲123の見積書は,納品書兼領収書の役割を果たす ものであって,甲121の見積書に対応するものである旨主張す るが,甲123の見積書にも製品の単価等の記載はない。 さらに,甲126の納品書には,中華撮影が控訴人に対して単 価400台湾ドルの写真19枚を納入し,控訴人からその代金を 受領した旨の記載があるものの,納品する写真の画像等は添付さ れていないため,これらの証拠からは,納入された写真が原告腕 時計のものであるかは明らかでない。 加えて,文字盤に「moto」の標章が付されていることが認識で きる4本の腕時計の写真(甲127)も,その作成時期,作成経 緯は明らかでなく,これが原告ウェブページ上の腕時計の画像と 同一のものであることを裏付ける客観的な証拠はない。 以上によれば,控訴人の上記主張を採用することはできないと いうべきである。
(ウ) 原告商標の使用の有無
前記(ア)及び(イ)によれば,控訴人が,原告ウェブページに腕時 計の画像及び原告商標の表示等を表\示したことをもって,原告商標 の使用(商標法2条3項8号)に該当すると認めることはできない。
イ A社との取引について
(ア) 控訴人は,取引先であるA社に対し,原告腕時計の写真及びサ ンプルを送るので,同商品の販売を検討してほしい旨依頼し,平成 29年5月15日頃,原告腕時計を譲渡して,引き渡したものであ り,同月12日付のA社宛メールには,原告商標が付された原告腕 時計1本の画像が添付されており,伝票の品名欄に「moto 腕手時 ×1点 サンプル」と記載されている同日付のA社宛宅配伝票によ り,A社宛に原告腕時計を発送したものである旨を主張し,A氏の 供述,調査嘱託の結果及びFの陳述書等中には,これに沿う部分が ある。 しかしながら,A社宛メールに添付された腕時計の写真(甲20 2)は,文字盤部分の画像が,他の部分(時計のバンド,時計の背 景等)と比べて不鮮明であって,文字盤上の「moto」の文字及び針 のみが浮き上がるように見えるなど不自然なものであって,文字盤 部分について加工が行われたのではないかとの疑いを払拭すること ができない。また,A社宛宅配伝票(甲203)の品名欄に「moto 腕手時×1点サンプル」の記載があるとの事実は,同宅配便によっ て原告腕時計が配送されたことを客観的に裏付けるものではない。 加えて,A社の取扱商品,控訴人とA社との取引実績,控訴人と A社代表者との人的関係等,控訴人とA社との関係に関する認定事\n実(前記(1)イ)に照らすと,控訴人が,控訴人との取引実績も,腕 時計の販売実績も全くないA社に対して,腕時計を販売してもらう ためのサンプルとして原告商標を付した原告腕時計を譲渡したとの 主張には,不自然かつ不合理な点があるといわざるを得ず,せいぜ い,控訴人と親しい関係にあるA社(又はA氏個人)に対し,腕時 計を参考送付して,商品化の可能性等について意見を求める程度の\nことがあったにすぎないものと考えられる。 以上によれば,控訴人がA社に対して原告商標を付した原告腕時 計の譲渡及び引渡しをした事実を認めることはできないし,仮に控 訴人からA社に腕時計が送付された事実があったとしても,それが 「商品」としての腕時計の送付であったと認めることは困難である。 また,上記のとおり,控訴人とA社の間で,原告商標を付した原告 腕時計に係る取引がされたものと認めることはできないことから, A社宛メール及びA社宛宅配伝票に「moto」の表記をしたことは,\n取引書類に原告商標を付したものとはいえない。 したがって,控訴人とA社との連絡に関し,原告商標の使用(商 標法2条3項8号)を認めることはできない。
(イ) なお,控訴人は,前記(ア)のA社との取引以外にも,B社,C 社及びD社に対して原告腕時計の販売を検討してほしい旨依頼し, 原告腕時計のサンプルを送付したり,ギフト・ショーに原告商標を 付した原告腕時計を展示し,同腕時計の写真を掲載したカタログを 頒布したりしたものであり,これらの事実はいずれも要証期間後の ものではあるが,控訴人が要証期間内に腕時計について原告商標を 使用した事実を補強するものである旨主張する。 しかしながら,控訴人の主張する上記事実は,そもそも要証期間 後の事実である上,B社,C社及びD社の実在性や控訴人との関係 も明らかでないこと等に照らし,これらの事実から,要証期間内の 控訴人による原告商標の使用の事実を推認することは到底困難であ る。
・・・
以上によれば,要証期間内において,原告商標が腕時計について使用 されたとは認められず,原告商標の指定商品中「腕時計」は,商標登録 取消審判により取り消されるべきものということができ,実際にも,本 判決前記第2の2のとおり,第2次審判の請求に基づき,商標登録の取 消審判がされている(ただし,審決取消訴訟が係属中)状況にある。 なお,控訴人は,仮に商標登録取消審判が成立したとしても,被告商 品は,「卓上時計(置き時計)」としても使用され,また,携帯型の時計 である点において「懐中時計」と同じであるから,腕時計を除く「時計」 と同一又は類似するものといえ,差止請求が認められることに変わりは ない旨主張する。 しかしながら,前記(引用に係る原判決第4の2(1))のとおり,被告 商品の内容や性質に照らすと,被告商品は,その指定商品の区分として は,第9類の「情報処理用の機械器具」に該当し,第14類の「時計」 には該当しないと解するのが相当である。 また,被告商品はスマートウォッチと呼ばれる商品であるところ,前 記認定(引用に係る原判決第4の2(2)イ)の被告商品の生産,販売,原 材料,品質,用途,需要者等に関する諸事情に照らすと,被告商品が, 原告商標の指定商品「時計」のうち,「腕時計」と類似の商品であるとい うことができるのは格別,その他の指定商品(「腕時計」を除く「時計」) とも類似の商品であるとは認められない(なお,被告商品のユーザーガ イドには,「卓上時計としても使えます」との記載があることは前認定の とおりであるが,これは,卓上に置けば,事実上卓上時計としての機能\nも果たすということを述べているのにすぎないと認められるから,これ によって卓上時計との商品としての類似性が肯定されることになるもの ではない。)。 したがって,控訴人の上記主張は理由がなく,控訴人による差止請求 は,権利の濫用として許されないというべきである。
(4) 一方,商標法54条2項により原告商標権の指定商品中「腕時計」が 消滅する効果が発生するのは,平成29年6月23日(第2次審判の審 判請求登録日)であるところ,控訴人が損害賠償を求めている期間は, 平成28年7月から平成29年2月までであるので,損害賠償請求との 関係では,権利濫用の抗弁は失当である。」

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◆平成29(ワ)15776

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令和1(行ケ)10151  審決(拒絶)取消 令和2年5月20日判決 審決取消(2部) 商標権 ((掲載省略)) 類似性(4条1項11号),商標の類似性

 「CORE ML」が「CORE」類似するとした審決が取り消されました。指定商品は9類、出願人はアップルです。  

 前記(2)アのとおり,「CORE」の語には,「ものの中心部,中核,核心」,「建 物の中央部で,共用施設・設備スペース・構造用耐力壁などが集められたところ」,\n「地球の核」,「試錐(ボーリング)によって採取した円柱状の土壌や岩石の試料」, 「一部のオペレーションシステムでプログラムが不正に終了したとき,メモリの内 容をまるごと保存したファイル(コアファイル,コアダンプ)」,「マイクロプロ セッサのコア」,「Intel社の商品であるCOREシリーズ」等の多様な意味 があるが,前記(2)アのとおり,多くのコンピュータ関連の用語辞典等には,「CO RE」や「コア」の項目が掲載されていない。
上記の意味のうち,「コアファイル」,「コアダンプ」,「マイクロプロセッサ のコア」,「Intel社の商品であるCOREシリーズ」は,コンピュータ関連 の用語であるが,「CORE」の語がコンピュータソフトウェアである本件指定商\n品に使用された場合は,コンピュータハードウェアを意味する「マイクロプロセッ サのコア」やコンピュータハードウェアの商品名である「Intel社の商品であ るCOREシリーズ」を意味するものとは認識されないというべきであるし,「コ アファイル」や「コアダンプ」も一部のオペレーションシステムで用いられている 用語にすぎず,「コアファイル」や「コアダンプ」と認識されるとも認められない。 また,「CORE」の語が本件指定商品に使用された場合,「中心部,中核,核 心」などの一般の辞書に掲載されている意味のどれとも認識されないか,認識され るとしても,せいぜい「中心部,中核,核心」という意味と認識されるにすぎない というべきである。
イ 「ML」について
(ア) 前記(2)イの認定からすると,「ML」の語には,「マシーンラーニン グ(Machine Learning)」,「メーリングリスト(mailin g list)」,「マークアップ言語(MarkupLanguage)」の略語 の意味があることが認められる。 しかし,(1)本件において,一般的な辞書に,「ML」の項目が存在することの証 拠は提出されていないこと,(2)前記(2)イのとおり,「ML」の語が「マシーンラー ニング(Machine Learning)」の略語として使用された例は一定 数存するが,それらの使用例においては,必ず,「機械学習」という語と共に使用 されていること,(3)コンピュータ関連の用語辞典の中には,「ML」の項目が存在 するものがあるものの,同項目が存在しないものもあり(「ウィキペディア」のウ ェブサイトの「コンピュータ略語一覧」),同項目を設けている用語辞典(「IT 用語辞典e−Words」)では,「ML」は「メーリングリスト」の意味である と説明されていることからすると,「ML」の語が何らの説明もなく使用された場 合,「マシーンラーニング(Machine Learning)」の略語を意味 すると認識されるとはいえないというべきである。また,ブランド名と「ML」を 結合し,「ML」を「Machine Learning」として用いる例がある としても,「CORE」のみでは,本件指定商品との関係ではブランド名とは認めら れないから,そのことを根拠に本願商標の「ML」が「Machine Lear ning」と認識されると認めることもできない。 また,上記のとおり,コンピュータ関連の用語辞典には,「ML」を「マークア ップ言語」を意味するものと説明しているものはないこと,本件証拠上,「ML」 の語が「マークアップ言語」の略語の意味として使用されていると認められる例は, 「SGML」,「XML」,「HTML」のみであることからすると,「CORE」の語の次に一文字開けて「ML」の語を配置した場合に,「ML」の語が「マークアップ 言語」と認識されるとはいえないというべきである。 さらに,上記のとおり,「ML」の語が「メーリングリスト(mailing l ist)」の略語の意味を有することは「IT用語辞典e−Words」に記載さ れているが,他に,「ML」の語が「メーリングリスト」の意味で使用されている例 を示す証拠は提出されていないことからすると,「ML」の語が「メーリングリス ト(mailing list)」の略語の意味として認識されるということもで きない。
(イ) 以上からすると,本件指定商品に,「CORE」の語の末尾に1文字開 けて「ML」を配した語が使用された場合,「ML」から,何らかの観念が生じると 認めることはできない。
ウ 以上のア,イで判示したところからすると,本願商標が本件指定商品に 使用された場合,「CORE」の語からは,せいぜい「中心部,中核,核心」とい った一般的な意味が認識されるにすぎず,「CORE」の部分が出所識別標識とし て強く支配的な印象を与えるということはできないのに対し,「ML」の語からは 特定の観念を生じることはなく,「ML」の部分が「CORE」の部分に比べて特 段出所識別標識としての機能が弱いということはできない。\nまた,本願商標の外観上も,「CORE」と「ML」は,いずれも,同じ大きさの 標準文字で構成されており,その間に1文字開いているだけであるから,別個独立\nの商標と認識されるものではない。 さらに,称呼においても,本願商標は,一連に発音されるものと認められる。 したがって,本願商標と引用商標との類否を判断するに当たっては,本願商標全 体と引用商標を対比すべきであり,本願商標から「CORE」の部分を抽出し,こ れを引用商標と対比してその類否を判断することは許されないというべきである。 したがって,原告の主張する取消事由1は理由がある。
2 取消事由2(本願商標と引用商標の類否判断の誤り)について
本願商標からは,「コアエムエル」の称呼が生じ,引用商標1,2からは,「コア」 の称呼が生じるところ,その音数は大きく異なっていることからすると,その差異 は大きいというべきである。 また,本願商標の「CORE ML」と引用商標1の「CORE」及び引用商標 2の「コア」とは,その外観が異なる。 本願商標の「CORE ML」の「CORE」の部分と,引用商標1の「COR E」及び引用商標2の「コア」では,「中心部,中核,核心」といった観念が生じ る点で,観念が共通することがあるものの,上記のとおり,本願商標と引用商標1, 2とは,称呼と外観において異なっており,称呼における差異は大きいことからす ると,本願商標は,引用商標のいずれとも類似していないというべきであり,原告 の主張する取消事由2は理由がある。

◆判決本文
令和1(行ケ)10116  審決(拒絶)取消 令和2年5月20日判決 審決取消(2部) 特許権 (回転ドラム型磁気分離装置) 新規性,進歩性,相違点の判断  相違点の認定誤りを理由として、拒絶審決が取り消されました。  本件補正発明では,第1の回転ドラムと底部材との間にクーラント液の流路を 形成するのに対し,引用発明は,上記のような流路を形成しているか否かが不明な 点 ウ これに対し,被告は,引用文献1においては,タンク17の底部が底部 材に相当し,マグネットドラム27とタンク17の底部との間に混濁液の流路が形 成されるとして,相違点3は存在しないと主張する。 (ア) しかし,本件補正発明に係る特許請求の範囲の記載は,「・・・前記使 用済みクーラント液は,第2の回転ドラムから第1の回転ドラムに向かって流 れ,・・・前記第2の回転ドラムに付着した磁性体を掻き取るスクレパーと,前記第 1の回転ドラム下部の流路を形成する底部材とを備え,前記スクレパーにより掻き 取られた磁性体が大きくなった状態のまま,前記使用済みクーラント液の流れに沿 って前記第1の回転ドラムへ誘導されることを特徴とする回転ドラム型磁気分離装 置。」というものであり,同記載からすると,第2の回転ドラムから第1の回転ドラ ムに向かうクーラント液は,第 1 の回転ドラム下部に第 1 の回転ドラムと底部材と の間に形成された流路を流れるものであって,スクレパーによって掻き取られた磁 性体を第1の回転ドラムに誘導するものであると解される。そして,このことは, 本件明細書に,「スクレパー27は,第1の回転ドラム13の下部の流路を形成する 底部材30に連結されており,掻き取られた不要物(磁性体)は第1の回転ドラム 13へと誘導される。」(段落【0041】),「スクレパー27は,第1の回転ドラム13の下部の流路を形成する底部材に連結されていれば足りるので,第2の回転ド ラム21側から第1の回転ドラム13に向かって下降するよう傾斜していても良 い。」(段落【0053】),「図7に示すように,本実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置は,第2の回転ドラム21の外筒29に当接するスクレパー27が,第 2の回転ドラム21側から第1の回転ドラム13側へ傾斜するよう設けられてい る。」(段落【0054】),「これにより,スクレパー27で書き取られた第2の回転ドラム21に付着した不要物が,傾斜に沿って第1の回転ドラム13側へと流れに 乗って移動しやすく,第1の回転ドラム13により確実に回収することが可能とな\nる。」(段落【0055】)と記載されていることからも,裏付けられているというこ とができる。 したがって,本件補正発明の特許請求の範囲の「流路を形成する」とは,第2の 回転ドラムから第1の回転ドラムに向かうクーラント液の流路を形成するものと解 すべきである。 (イ) 引用文献1には,マグネットドラム27(第1の回転ドラムに相当) とタンク17の底部との間にマグネットドラム25(第2の回転ドラムに相当)か らマグネットドラム27に向かう混濁液の流れが生じていることは記載されていな い(甲1)から,相違点3’は存在し,被告の上記主張は理由がない。 515/089515

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令和1(行ケ)10111  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和2年3月11日  知的財産高等裁判所

 本件商標「総本家駿河屋」が先行商標「駿河屋」と類似するかが争われました。審決は非類似と判断しましたが、知財高裁4部は先行商標「駿河屋」は周知であるとして、分離解釈すると、類似すると判断しました。

 ア 引用商標1及び2は,別紙記載1及び2のとおり,「駿河屋」の漢字3 文字を横書きに書してなり,その構成文字に相応して,「スルガヤ」の称\n呼が生じる。 しかるところ,前記1の認定事実を総合すると,(1)旧駿河屋は,昭和1 9年3月に設立以来,平成26年5月29日に事業を停止するまでの約7 0年間にわたり継続して,「駿河屋」の商標を使用した「羊羹」を販売し, 平成24年3月期時点では,和歌山県に15店舗,京都府に1店舗,大阪 府に3店舗の直営店,百貨店11店舗に販売店を出店し,このほか,百貨 店72店舗及び量販店等532店舗の銘店コーナ等に「駿河屋」の商標を 使用し,同3月期における直営店での売上高は約7億6568万円,百貨 店での売上高は約4億8955万円であったこと,(2)旧駿河屋が販売する 「羊羹」については,「徳川家ゆかりの伝統の味「煉羊羹」」,「駿河屋 は,紀州家御用御菓子司として和歌山に御用本店を置くようになった(現 在でも駿河屋は和歌山と伏見に総本家を置いている。)。」,「駿河屋の 「煉羊羹」は,秀吉の聚楽第茶会に諸侯の引き出ものに用いられ絶賛され たという「伏見羊羹」を発展させたもので,試作に成功したのが慶長4年 (1599)のことである。」,「淡紅色をした「極上本煉煉羊羹」は, みかけとちがいその歯ざわりはずっしり重く,深く厚みのある味が伝わっ てくる。」などと刊行物(甲42の1(「日本の名菓 《和菓子》」)で 紹介されていたこと,(3)旧駿河屋は,昭和32年4月24日,旧駿河屋の 前身の個人営業の「総本家駿河屋」の分家又は「総本家駿河屋」等から暖 簾分けを受けた「別家」等とともに,会員相互の親睦を図るとともに老舗 駿河屋の伝統を守り,商号及び商標権の確保に協力し,共存共栄を図るこ とを目的として,「駿河屋」の商号,商標の保全に必要な協定及びその他 の措置等の事業を行う「駿河屋会」を発足し,「駿河屋会」の会員は,「駿 河屋」の商標を使用した「羊羹」等の和菓子を販売し,平成27年6月2 5日に旧駿河屋の破産手続廃止決定が確定した前後を通じて,ウェブサイ トや取扱商品の「羊羹」の包装等に「駿河屋」の商標の使用を継続してい ること,(4)旧駿河屋の事業停止(平成26年5月29日)から約10か月 後の平成27年3月24日,原告は,旧駿河屋の旧本店店舗において営業 を再開し,「駿河屋」の商標を使用した「羊羹」等の和菓子を販売するよ うになり,旧本店店舗における営業再開時には「駿河屋」の再建として新 聞各誌で大きく報道されたことが認められる。 上記認定事実によれば,本件商標の登録査定時(登録査定日平成29年 4月12日)において,「駿河屋」の商標は,羊羹等の和菓子の取引者, 需要者の間において,近畿地方を中心に, 旧駿河屋又はその分家等が取り 扱う和菓子(特に,羊羹)を表示するブランド名として広く認識され,全\n国的にも相当程度認識されていたものと認められる。 そして,このような「駿河屋」の商標の周知性等に照らすと,「駿河屋」 の文字を横書きに書してなる引用商標1及び2から,「羊羹」等の和菓子 のブランド名としての「駿河屋」の観念が生じるものと認めるのが相当で ある。
イ これに対し被告は,(1)旧駿河屋は,「駿河屋」を単独では使用せず,「総 本家」の文字を付して「総本家駿河屋」を使用し,又は「総本家駿河屋」の 商標と同時に「駿河屋」を使用し,駿河屋会所属の分家との区別を明確に して,出所の混同を防止してきたから,引用商標1及び2が,旧駿河屋が 取り扱う和菓子(特に「羊羹」)を表示するものとして周知著名性を獲得\nしたとはいえない,(2)仮に旧駿河屋が引用商標1及び2について周知著名 性を獲得したとしても,旧駿河屋は,破産手続廃止決定の確定により,そ の法人格が消滅していること,駿河屋会所属の分家は,地名に「駿河屋」 の文字を付して,旧駿河屋との出所の混同を防止してきたこと,原告は, 旧駿河屋から事業譲渡を受けておらず,旧駿河屋が営業していた地で「株 式会社総本家駿河屋」の商号を使用して営業しているだけであり,旧駿河 屋の有していた引用商標1及び2についての周知著名性を引き継いでいる わけではないことからすれば, 旧駿河屋が獲得した引用商標1及び2につ いての周知著名性は,旧駿河屋の法人格の消滅とともに断絶している旨主 張する。 しかしながら,上記(1)の点については,前記1(4)アの認定事実によれば, 旧駿河屋がそのウェブサイトで使用していた「総本家駿河屋」の表示は,旧\n駿河屋が営業主体であることを表示したものと認識することができるが,\n一方で,旧駿河屋の販売する「羊羹」の包装資材,包装紙及び紙袋におい ては,「駿河屋」の文字部分が,同文字部分の右肩等に小さな文字で記載 された「総本家」文字部分と外観上明確に区別される態様で示されている から,「駿河屋」の文字部分は独立した商標として使用されているものと 認められる。 次に,上記(2)の点については,前記ア認定のとおり,「駿河屋」の商標 は,旧駿河屋のみならず,駿河屋会の会員の分家及び別家の経営する店舗 の営業活動を通じて,取引者,需要者の間において,近畿地方を中心に, 旧駿河屋又はその分家等が取り扱う和菓子(特に,羊羹)を表示するブラ\nンド名として広く認識され,全国的にも相当程度認識されていたものと認 められるものであり,このような「駿河屋」の商標のブランド名としての 周知性等は旧駿河屋の破産手続廃止決定の確定による法人格の消滅により 直ちに失われるものとはいえない。
また,前記1(2)イのとおり,駿河屋会は,「駿河屋」の商号,商標を使 用し,煉羊羹,菓子の製造又は販売に従事する個人及びその主宰する会社 等を会員とし,会員相互の親睦を図るとともに老舗駿河屋の伝統を守り, 商号及び商標権の確保に協力し,共存共栄を図ることを目的として,「駿 河屋」の商号,商標の保全に必要な協定及びその他の措置等の事業を行う ために発足したものである上,前記1(4)の認定事実によれば,駿河屋会の 会員の分家及び別家等の取扱商品の羊羹の包装等においては,「駿河屋」 の文字部分が,同文字部分の右肩等に小さな文字で記載された「大阪」, 「伏見」,「京都駅前」又は「宇治」の文字部分と外観上明確に区別され る態様で示されているから,「駿河屋」の文字部分は独立した商標として 使用されているものと認められる。加えて,株式会社大阪の駿河屋のウェ ブサイトでは,「駿河屋のお菓子」の見出しの下に,「伝統の製法で作ら れた羊羹に昔ながらの味わいが楽しめるお菓子。お菓子の老舗,駿河屋の ラインナップです。」,「古来より受け継がれた,駿河屋羊羹の「こころ」」 などと表示していること(前記1(4)イ),株式会社京都駅前駿河屋は,そ の店舗に「駿河屋」と記載された看板及び「SURUGAYA」と記載さ れた看板を掲げていること(前記1(4)オ)に照らすと,駿河屋会の会員の 分家及び別家は,旧駿河屋の破産手続廃止決定の確定後も,「駿河屋」の 商標を取扱商品の羊羹等の和菓子のブランド名として継続して使用してい たことが認められる。
さらには,旧駿河屋の事業停止から約10か月後の平成27年3月24 日,原告は,旧駿河屋の旧本店店舗において営業を再開し,「駿河屋」の 商標を使用した「羊羹」等の和菓子の販売を行っていることに鑑みると, 和菓子のブランド名としての「駿河屋」の周知性等は,本件商標の登録査 定時においても維持されていたものと認められる。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(2) 本件商標の要部抽出の可否について
ア 本件商標は,「総本家駿河屋」の標準文字から構成された,「総本家」\nの文字部分と「駿河屋」の文字部分とからなる結合商標である。 本件商標の構成文字は,外観上,同書,同大,同間隔で表\示されており, 「ソウホンケスルガヤ」の称呼も生じるが,一方で,前記(1)認定のとおり, 「駿河屋」の商標は,本件商標の登録査定日当時,羊羹等の和菓子の取引 者,需要者の間において,近畿地方を中心に, 旧駿河屋又はその分家等が 取り扱う和菓子(特に,羊羹)を表示するブランド名として広く認識され,\n全国的にも相当程度認識されていたものと認められるのに対し,「総本家」 の語は,「多くの分家の分かれ出たもとの家。おおもとの本家。」を意味 する普通名詞であること(甲6)に照らすと,「総本家」の文字部分と「駿 河屋」の文字部分とは,それを分離して観察することが取引上不自然であ ると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。 そして,本件商標がその指定商品の「最中」に使用された場合には,本 件商標の構成中の「駿河屋」の文字部分が和菓子のブランド名として周知\nであったことから,取引者,需要者に対し,上記商品の出所識別標識とし て強く支配的な印象を与えるものと認められる。 そうすると,本件商標の構成中「駿河屋」の文字部分を要部として抽出\nし,これと引用商標1及び2とを比較して商標そのものの類否を判断する ことも,許されるというべきである。
イ これに対し被告は,(1)引用商標1及び2の商標登録がされた後に,指定 商品を「煉羊羹」,「菓子」等とする「駿河屋」の文字を含む9件の商標 (乙5ないし13)が商標登録されていること,(2)商品「菓子」又は「羊 羹」について,主に,地名に「駿河屋」の文字を加えた商標を多数の者が 使用しており,これらの使用者には,「京阪宇治駅前駿河屋」(乙16), 「京三条駿河屋」(乙17),「河内駿河屋」(乙18),「美濃国駿河 屋」(乙25),「京都駅前駿河屋」(乙26)のように,駿河屋会の会 員でない者も含まれていること,(3)引用商標1 及び2の商標権者である株 式会社大阪の駿河屋は「大阪の駿河屋」の商標を,有限会社伏見駿河屋は 「伏見駿河屋」の商標を,株式会社京都駅前駿河屋は「京都駅前駿河屋」 の商標を使用し,互いに出所の混同が生じないようにしていること,(4)引 用商標1及び2の商標権者は,駿河屋会以外の者による「駿河屋」の商標 の使用に対して,商標権侵害を主張することなく,長年放置してきたこと 等の取引の実情によれば,本件商標の登録査定時には,「駿河屋」という 商標だけでは,商品「和菓子」や「羊羹」について,何人の商品の出所を 示すものであるのか,需要者は,認識できない状態になっていたから,本 件商標から「駿河屋」の文字部分を要部として抽出することはできない旨 主張する。
しかしながら,前記(1)認定のとおり,「駿河屋」の商標は,本件商標の 査定日当時,羊羹等の和菓子の取引者,需要者の間において,近畿地方を 中心に, 旧駿河屋又はその分家等が取り扱う和菓子(特に,羊羹)を表示\nするブランド名として広く認識され,全国的にも相当程度認識されていた ものと認められる。 このことは,指定商品を「煉羊羹」,「菓子」等とする「駿河屋」の文 字を含む9件の商標が商標登録されていること(上記(1))や,株式会社大 阪の駿河屋は「大阪の駿河屋」の商標を,有限会社伏見駿河屋は「伏見駿 河屋」の商標を,株式会社京都駅前駿河屋は「京都駅前駿河屋」の商標を, それぞれの営業を表示するものとして使用していること(上記(3))によっ て左右されるものではない。 また,前記1(5)認定のとおり,駿河屋会の会員以外の者が「駿河屋」の 文字を使用している例もみられるが,それが多数であるとはいえない上, 羊羹等の和菓子についての具体的な使用態様も明らかでないから,上記(2) 及び(4)をもって,「駿河屋」の商標が,何人の商品の出所を示すものであ るのか,需要者が認識できない状態になっていたということはできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(3) 本件商標と引用商標1及び2の類否について
本件商標の要部である「駿河屋」の文字部分(標準文字)と別紙記載1及 び2の引用商標1及び2を対比すると,字体は異なるが,「駿河屋」の文字 を書してなる点で外観が共通し,いずれも「スルガヤ」の称呼及び羊羹等の 和菓子のブランド名としての「駿河屋」の観念が生じる点で,称呼及び観念 が同一である。 そうすると,本件商標と引用商標1又は引用商標2が本件商標の指定商品 「最中」に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同が生ずる おそれがあるものと認められるから,本件商標と引用商標1及び2は,それ ぞれ全体として類似しているものと認められる。 したがって,本件商標は,引用商標1及び2に類似する商標であるものと 認められる。

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令和1(行ケ)10152  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和2年3月19日  知的財産高等裁判所

 知財高裁(3部)は、「ベジバリア」の下部に「塩・糖・脂」と二段に記載した結合商標について、先願既登録商標「塩糖脂」と類似しないと判断し、拒絶審決を取り消しました。

 本願商標は,「ベジバリア」の文字及び「塩・糖・脂」の文字を,いずれ も標準的な書体で2段にして成る商標であり,分離して観察することが取引 上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえないか ら,「ベジバリア」の部分と「塩・糖・脂」の部分を分離して観察すること 自体は不可能とはいえない。\nしかし,「ベジバリア」の部分は,自他識別力を有すると考えられるのに 対し,「塩・糖・脂」の部分は,「・」が存在することもあって3つの文字 がそれぞれ独立し,「塩」は塩分を,「糖」は糖分を,「脂」は脂肪分を意 味する一般的,普遍的な意味を有する文字として認識されるものであるとい える。そして,これらの文字は,それが,指定商品であるサプリメント,栄 養補助食品に用いられた場合には,当該商品が塩分,糖分及び脂肪分のコン トロールに良い影響を与えるなどといった記述的,説明的意味を表すのにと\nどまり,取引者,需要者に特定的,限定的な印象を与える自他識別力を有す るものではない(引用商標の「塩糖脂」は,3つの文字が一体となっている ところから,それらが一体の文字として自他識別力を有するという余地が生 ずるが,「塩・糖・脂」の場合には,「・」により分離されているため, 「塩糖脂」と同列に論じることはできないものである。)。このことと, 「塩・糖・脂」の部分は,「ベジバリア」の部分と比べ,明らかに小さい文 字で構成されており,その分目立たなくなっていることを併せ考えれば,こ\nの部分は,自他識別標識としての称呼,観念は生じないものであるというべ きである。 したがって,本願商標は,「ベジバリア塩・糖・脂」全体として,又は 「ベジバリア」の部分としてのみ自他識別標識としての称呼,観念が生じる ということになる。

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令和1(行ケ)10105 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和2年1月29日  知的財産高等裁判所

 公序良俗違反(商4条1項7号)の無効理由無しとした審決が維持されました。

 原告は,被告及び被告と密接な関連性を有するサクラグループは,原告及び その取引先の業務を妨害し,本件商標の商標権を譲渡することにより不正の利 益を得る目的で,本件商標の登録出願をしたものであり,本件商標の出願経緯 等には,適正な商道徳に反し,社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠く 事情があるから,本件商標は,商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風 俗を害するおそれがある商標」に該当する旨主張するので,以下において判断 する。
(1) 業務妨害等の目的について
原告は,被告又はサクラグループは,原告がした繊研新聞の記事に係るハ ワード社に対する抗議行為に対する報復措置の一環として,原告のロゴとほ ぼ同一のロゴをあえて使用して,原告及びその取引先の業務を妨害するとと もに,原告のブランドにフリーライドするという不正の目的で,本件商標の 登録出願をしたものといえる,原告の上記抗議行為は正当なものであり,被 告らから報復措置を受けるいわれがないにもかかわらず,被告らが本件商標 を利用して,業務妨害行為及びフリーライド行為を行ったから,その不当性 は強度である旨主張する。 そこで検討するに,前記1の認定事実によれば,(1)原告と被告は,199 7年(平成9年)から,被告が,高島USAを通じて,「Goodwear」 の商標を付したティーシャツ(原告商品)を輸入し,日本国内で販売すると いう取引関係にあったところ,被告が1999年(平成11年)に原告商品 に係る商標権について調査した結果,原告が日本において「Goodwea r」の商標の商標登録を有しておらず,一方で,ビーグッド社が「good wear」又は「Good Wear」の欧文字を含むビーグッド社商標の 商標権を有していることが判明したことを契機として,原告及び被告がそれ ぞれビーグッド社との間でビーグッド社商標の譲渡交渉を行うようになった 後,被告がビーグッド社からビーグッド社商標の商標権の譲渡を受け,平成 12年1月6日にその移転登録が経由された後,被告が被告の販売する商品 にビーグッド社商標を使用するようになり,原告と被告との取引関係が解消 されたこと,(2)原告は,ビーグッド社商標の譲渡交渉中の平成11年7月2 日,「GoodwearUSA」の欧文字からなる商標について商標登録出願 をし,平成14年3月28日付けで,当該商標が商標法3条1項3号に該当 することを理由に拒絶査定を受けた後,平成15年4月4日,別紙2の構成\nからなる金色で縁取りをした赤色の「Goodwear」の欧文字,図形等 を含む原告登録商標の商標登録を受けたが,原告商品に使用されていた「G oodwear」の欧文字からなる商標(甲3の1)については,商標登録 出願をしなかったこと,(3)被告の関連会社のサクラグループが本件商標の商 標登録出願をしたのは,原告と被告の上記取引関係の解消から約12年を経 過した後の平成24年3月12日であること,(4)サクラグループ及びそのラ イセンシー又は被告は,本件商標の商標登録後,本件商標のうち,「Goo dwear」の欧文字部分を黒色から赤色とした商標をティーシャツ等に使 用するようになったものであり,上記商標は本件商標と社会通念上同一の商 標であると認められることからすると,被告及びサクラグループは,サクラ グループによる本件商標の登録出願時,原告との関係で,「Goodwea r」の欧文字を含む商標の商標登録出願を差し控えるべき信義則上の義務等 を負っていたものとまで認めることはできないし,一方で,サクラグループ 及びそのライセンシー又は被告は,本件商標の商標登録後,本件商標と社会 通念上同一の商標を実際に使用しているのであるから,サクラグループによ る本件商標の商標登録出願が原告及びその取引先の業務を妨害する目的や原 告のブランドにフリーライドする目的をもって行ったものと認めることはで きない。
もっとも,前記1の認定事実によれば,平成22年11月18日付けの繊 研新聞において,サクラグループの取引先のハワード社が米国のカジュアル ブランド「グッドウェア」のライセンス製造販売を始める旨の記事が掲載さ れたことについて,原告は,上記記事中の「米国のカジュアルブランド「グ ッドウェア」」は原告を意味するが,原告とハワード社とは取引も取引交渉 もなかったため,上記記事に誤りがあると考え,繊研新聞社に対して上記記 事の訂正を求めるとともに,原告の代理人弁護士を通じて,ハワード社に対 し,原告とサクラグループとの間には何らの契約関係もないことから,サク ラグループの商標権に基づくライセンスを受けても,原告商品との誤認,混 同を生ずるような商品の販売は許されない旨を通知したことに端を発し,被 告の代表取締役のAが原告代表\者に対して原告と被告との交渉が決裂した場 合には原告の代理人弁護士のハワード社への通知に対する「報復措置」を行 うこと及びその「報復措置」の具体例について言及したメールを送信した後, 被告が原告登録商標について商標法53条1項に基づく不正使用取消審判 (取消2011−300044号事件)及び同法51条1項に基づく不正使 用取消審判(取消2011−300162号事件)を請求するとともに,原 告の取引先に対し,原告登録商標を取り消す旨の審決が確定すれば,現在取 り扱っている商品の法的拠り所を喪失することになるなどと警告する旨の通 知をし,さらに,サクラグループは,赤色の「Goodwear」の欧文字 と「Massachusetts」の欧文字を含む商標,赤色の「Good wear」の欧文字と「Essex」の欧文字を含む商標及び本件商標の商 標登録出願をしたことが認められる。上記認定事実によれば,サクラグルー プによる本件商標の商標登録出願は,原告の代理人弁護士のハワード社への 通知に対する対抗措置の一環として行われた側面があるものと認められる。 しかしながら,上記(1)ないし(4)の事情に照らすと,このような側面がある からといって直ちにサクラグループによる本件商標の商標登録出願が原告及 びその取引先の業務の妨害や原告のブランドにフリーライドする目的をもっ て行ったものと認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(2) 不正の利益を得る目的について
原告は,原告が平成28年12月に本件商標について別件無効審判を請求 した後,被告らは,平成29年1月,原告に対し,本件商標を含むグッドウ ェア関連商標を譲渡する意向がある旨を告げるとともに,もし譲渡交渉が成 功すれば,訴訟や刑事告訴などといった原告と被告らとの間の将来の紛争を 回避できるであろうなどと述べた上で,120万米ドルの譲渡対価を要求し たことは,被告らが,原告が他社による保有を望まない商標(本件商標を含 む。)をあえて選択して商標登録出願をし,商標登録を受けた上で,自己に 有利な交渉材料として本件商標等を利用し,120万米ドルもの極めて高額 な譲渡対価を要求したことを示すこと,本件商標の出願時に原告と被告らと の間では鋭い対立関係があった事情にも鑑みると,被告らは,不正の利益を 得る目的で,本件商標の登録出願をしたものであり,その不当性は強度であ る旨主張する。
そこで検討するに,前記1(4)イ及びウ認定のとおり,被告の代表取締役の\nAは,原告が平成28年12月5日に本件商標について別件無効審判を請求 した後の平成29年1月31日,原告代表者に対し,「私たちは再び衝突し\nそうです。こちらとしては今回でこの一連の紛争を終結させたいと真に望ん でいるので,いったん衝突に至れば,こちらは勝つためにありとあらゆる手 段(訴訟,刑事告訴等を含みます。)をとらざるを得ません。一方で,紛争 には辟易しています。最近,私は,条件が満たされるならばこちらの商標を 誰かに近々譲渡しようかと考えています。そちらはこの譲渡の件に興味をお 持ちではないでしょうか? うまくいけば,私たちは衝突の繰り返しを回避 することができます。…私たちは円満な解決を望んでおります。」などと記 載したメールを送信し,さらに,同年2月6日,原告代表者に対し,「現段\n階での私の考える解決に関してですが,過去のことについては話し合う必要 はありません。話し合うべきことは,譲渡額のみです。私たちの提示額は, 私たちの5年間の利益に基づいて算出された120万米ドルです。あなたの お考えを聞かせてください。」などと記載したメールを送信したことが認め られる。
上記認定事実によれば,被告は,原告に対し,被告又はサクラグループが 保有する本件商標を含む「Goodwear」の欧文字を含む商標の商標権 を120万米ドルで譲渡する旨の提案をしたことが認められるが,一方で, (1)Aの上記各メールの文面によれば,120万米ドルの譲渡対価はあくまで も被告側の希望額の提示であるにすぎないこと,(2)本件においては,Aが上 記提案をした後,原告に対し,本件商標を含む「Goodwear」の欧文 字を含む商標の買取りを求める更なる要求をしたことをうかがわせる証拠は ないこと,(3)サクラグループ及びそのライセンシー又は被告は,本件商標の 商標登録後,本件商標と社会通念上同一の商標を実際に使用していること(前 記1(4)ア)に照らすと,Aが原告に対し上記提案をしたことから直ちにサク ラグループによる本件商標の商標登録出願が不正の利益を得る目的をもって 行ったものと認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(3) 小括
以上のとおり,被告及びサクラグループは,原告及びその取引先の業務を 妨害し,本件商標の商標権を譲渡することにより不正の利益を得る目的で, 本件商標の登録出願をしたものと認めることはできないから,本件商標の出 願経緯等に,適正な商道徳に反し,社会通念に照らして著しく社会的相当性 を欠く事情があるとの原告の前記主張は,その前提を欠くものである。 したがって,本件商標は商標法4条1項7号に該当するものと認めること はできないから,これと同旨の本件審決の判断はその結論において誤りはな く,原告主張の取消事由1は理由がない。
3 取消事由2(理由不備の違法)について
(1) 原告は,本件審決は,本件商標の出願経緯等に不正の利益を得る目的その 他不正の目的があるなど社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くもの があったものと認めることはできないとの結論を示すにとどまり,本件商標 の出願経緯等や出願目的に関する事実認定,法律を事実に適用した判断過程 を示しておらず,重要な争点について実質的な理由を欠いているから,本件 審決には,理由不備(商標法56条,特許法157条2項)の違法がある旨 主張する。
そこで検討するに,本件審決の審決書によれば,本件審決は,(1)原告提出 の全証拠によっても,本件商標の出願経緯等に不正の利益を得る目的その他 不正の目的があるなど社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものが あったものと認めることはできないし,本件商標の登録後,被告が原告に対 して,何らの実質的損害がないにもかかわらず不当な要求をする警告書等を 送付したというような事実も見いだせず,原告主張のビーグッド社とのビー グッド社商標の譲渡交渉経緯や原告登録商標に対する被告による異議申立て\nや取消審判(商標法53条1項,同法51条1項,同法50条1項)等につ いては,いずれの商標も本件商標とは構成態様を異にするものであり,かつ,\n「Goodwear」の文字部分の識別力が弱いことも併せ考慮すれば,当 該経緯等が,本件の審理判断に影響を及ぼすものではないから,本件商標が 同法4条1項7号に該当するということはできない,(2)原告提出の証拠及び 主張を前提とすると,原告は,平成2年(1990年)頃の我が国への進出 にあたって,「Goodwear」の欧文字からなる商標を自ら登録出願す る機会は十分にあったというべきであり,また,平成11年(1999年)\n6月後半の時期においても,原告は,速やかに「Goodwear」の欧文 字からなる商標を登録出願することができたものであるところ,被告が,そ の時期に「Goodwear」の欧文字からなる商標の存在を認識していた ものであるとしても,商標権の帰属等をめぐる問題は,あくまでも,当事者 同士の私的な問題として解決すべきであり,しかも,原告は,この時期にお いても被告に対し,原告の「Goodwear」関連の商標登録出願をしな いことや,出願をした場合には原告へ帰属させる旨の契約や交渉等ができた にもかかわらず,そのような措置を講じた事実は見いだせず,かつ,自ら登 録出願しなかった責めを被告に求めるべき格別な事情を見いだすこともでき ないことからすると,本件商標について,商標法の先願登録主義を上回るよ うな,その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあるというこ とはできないし,そのような場合には,あくまでも,当事者間の私的な問題 として解決すべきであるから,公の秩序又は善良の風俗を害するというよう な事情があるということはできず,本件商標は,同号に該当しない旨判断し たことが認められる。

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令和1(行ケ)10073  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年10月23日  知的財産高等裁判所

 被告からの商品を卸売りをしていた原告に対して、その商標の商標を取得することは公序良俗に反する(商4条1項7号違反)とした審決が維持されました。

 商標法4条1項7号所定の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある 商標」には,健全な商道徳に反し,著しく社会的妥当性を欠く出願行為に係る 商標も含まれると解される。 (1) そこで,まず,原告による本件商標の登録出願が,被告との関係で義務違 反となりうるかについて検討する。 前記1(1)(2)の各事実によれば,原告と被告とは,本件商標の登録出願が行 われた平成28年10月14日時点を含めて,平成11年頃から平成29年 10月12日頃までの間,被告が,原告に対し,独占的に本件被告商品やマ ナマリンなどを卸売りし,原告がこれを薬局薬店等に販売するという長期間 にわたる取引関係にあった。 かかる取引関係に関して,前記1(2)エのとおり,原告と被告とは,被告商 標の登録が完了した直後である平成16年3月25日,本件覚書(甲6)を 締結した。本件覚書の柱書,1条,3条の記載に照らすと,本件覚書は,被 告商標として登録された「仙三七」との商標を,本件被告商品に付して,販 売することを前提とするものであることが明らかである。また,本件覚書に は,被告及び原告は,第三者が被告商標の権利を侵害し又は侵害しようとし ていることを知ったときには互いに遅滞なく報告し合い協力してその排除に 努めるものとすること(第5条)や,被告及び原告は,信義に基づいて本件 覚書を履行するものとし,万一本件覚書に関して疑義が生じた場合には,被 告及び原告はお互いに誠意をもってこれを解決するものとすること(第7 条)とする合意が含まれていた。このように,被告が原告に使用許諾して 「仙三七」との商標を本件被告商品に付して販売することとされ,第三者か らの被告商標に係る商標権の侵害に対する対策も合意された上で,7条にお いて信義に基づいて本件覚書を履行するとされていたことに照らすと,本件
覚書において,原告自身が,三七人参を原材料とした健康食品との関連で 「仙三七」との商標を商標登録することは全く想定されていないといえる。 以上によれば,長期間にわたり,本件被告商品の卸売りを受けて,これに 被告商標と同じ「仙三七」との商標を付して販売し,利益を上げていた原告 は,被告との関係において,被告が「仙三七」との商標の商標権者として, かかる商標を付して本件被告商品を販売することを妨げてはならない信義則 上の義務を負っていたものということができる。 そして,原告による本件商標の登録出願は,被告商標と同じく「仙三七」 を横書きにしてなる商標について,本件被告商品を指定商品に含むものとし て登録出願するものである。かかる登録が認められることになると,被告 は,「仙三七」との商標の商標権者として,第三者に使用許諾をするなどし てかかる商標を付して本件被告商品を販売することはできなくなり,重大な 営業上の不利益を受けるおそれが生じる。 以上によれば,原告の本件商標の登録出願は,上記信義則上の義務に反す るものといわざるを得ない。
(2) 次に,原告の本件商標の登録出願の経緯及び目的についてみる。 前記1(3)イからエのとおり,原告は,上記出願の前後において,被告に対 し,被告商標が本件被告商品を指定商品に含んでいない可能性や自らが本件\n商標を登録出願することについて何ら告げることはなく,本件商標の設定登 録完了から4か月以上経過した後の平成29年8月18日付けの「申し入れ\n書」(甲7)において,初めて,本件商標の商標権者であることを明らかに した上で,原告と被告との本件被告商品の取引終了を一方的に申し入れると\nともに,被告に対し,マナマリンの商標の譲渡やそれを条件とした三七人参 の購入などを提案したものである。 これに対し,上記「申し入れ書」の内容に照らすと,原告自身は,当該\n「申し入れ書」を送付する前に,被告以外の第三者から,本件被告商品と同\n種の競合品を購入する段取りを既に整えていたと認められる。 そして,原告は,その後の被告とのやりとりの中で,原告から被告に対す る営業譲渡の申入れや被告商標の譲渡の依頼に応じてもらえなかったこと,\n被告の本件被告商品の仕入れ価格が高額であるために原告独自の商品を生産 することにしたことなどをも理由として挙げながら,原告としては被告の生 産する本件被告商品が原告の希望仕入れ価格に不適格であると判断し,原告 にて新しいブランドで生産から販売を開始することなどを伝えている。 このような原告の言動に照らすと,原告は,「仙三七」との商標が,本件 被告商品と同種の商品に付されることによって生じる利益を独占するべく, 被告に本件商標と競合する商標を登録出願されないように注意を払った上 で,自らは,同種商品の調達ルートを確立する一方で,被告との取引関係を 終了する準備を計画的に整えながら,本件商標の登録出願及び上記「申し入\nれ書」の送付に及んだものといえる。
(3) 以上によれば,原告による本件商標の登録出願は,被告が「仙三七」との 商標を付して本件被告商品を販売することを妨げてはならない信義則上の義 務を負うにもかかわらず,被告商標が本件被告商品を指定商品として含まな い可能性があることを奇貨として本件商標の登録出願を行い,本件商標を取\n得し,被告が「仙三七」のブランドで健康食品を販売することを妨げて,そ の利益を独占する一方で,その他の商品の取引に関する交渉を有利に進める という不当な利益を得ることを目的としたものということができる。 このような本件商標の登録出願の経緯及び目的に鑑みると,原告による本 件商標の出願行為は,被告との間の信義則上の義務違反となるのみならず, 健全な商道徳に反し,著しく社会的妥当性を欠く行為というべきである。 そうすると,このような出願行為に係る本件商標は,商標法4条1項7号 所定の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するも のといえる。
(4) 原告の主張について
ア 原告は,「仙三七」との商標は原告の努力等によってその信用が築き上 げられたものであり,また取引者等は本件被告商品の出所は原告であると 認識するなどとして,かかる商標は原告のものであるなどと主張する。 しかしながら,原告は,本件覚書に基づいて「仙三七」の商標の使用を 許諾され,この許諾に基づいて,本件被告商品に「仙三七」との商標を付 して,長年にわたり販売してきたものである。その過程において,原告が 努力し,また販売者として表示されたことによって「仙三七」との商標の\n出所であると取引者や需要者に認識されたとしても,それは,あくまでも 被告の許諾を基盤として形成された信用なのであるから,原告が当然に 「仙三七」との商標の権利者として扱われるべきであるとする根拠となる ものではない。 前記のとおり,被告との関係で,原告による本件商標の出願行為が,信 義則上の義務違反となり,健全な商道徳に反し,著しく社会的妥当性を欠 く行為であるとの評価は,原告の主張によっても左右されない。
イ また,原告は,被告商標は本件被告商品を指定商品として含んでいなか ったなどとして,被告は「仙三七」との商標について何らの権利ももって いなかったなどと主張する。 確かに,被告商標について,本件被告商品を指定商品として含んでいな かった可能性が高いことは,被告も認めるところである。\nしかしながら,本件被告商品が,被告商標の指定商品の範囲に含まれて いなかったとしても,本件覚書を締結し,長年にわたりその有効性を前提 として取引関係にあった原告と被告の間においては,問題が生じた場合に は,本件覚書の第7条に基づき,お互いに誠意をもって解決すべきであ る。そして,原告としては,被告が,「仙三七」との商標の商標権者とし て,かかる商標を付して本件被告商品を販売することを妨げてはならない 信義則上の義務を負っていたことは前記(1)に判示したとおりであることを も併せ考えると,原告において,抜け駆け的に本件被告商品を指定商品と するような商標で商標登録をすることが許されるわけではない。 むしろ,本件商標の登録出願の経緯及び目的に鑑みると,原告は,本件 被告商品を指定商品として含んでいなかった可能性や,自らが本件商標の\n登録出願をしようとしていることについては,何ら被告に告げておらず, 却って,前記1(3)アにみたとおり,平成28年9月頃(本件商標の登録出 願の直前頃と考えられる。)には,被告商標の譲渡を持ちかけて,その指 定商品に本件被告商品が含まれることを前提とするかのような言動を示し たものである。これらの原告の行為は,被告商標の保護範囲についての被 告の誤解を解消することなく,むしろ,被告の誤解を奇貨として,被告が 本件商標と同一の商標の登録出願をすることを著しく困難にするものであ ったと評価できる。それにもかかわらず,先願主義をそのまま適用して, 本件商標の有効性を肯定することは,当事者間の衡平を著しく欠くものと いえるから,前述の結論は左右されない。 なお,本件覚書7条は,覚書に関する疑義が生じた場合に誠意を持って 解決するとしていることからもうかがわれるとおり,本件覚書は,被告商 標に係る商標権が本件被告商品を指定商品として含むことを保証ないし当 然の前提とするものであるとまではいえないから,仮にこの点について疑 義が生じたとしても,そのことによって,当然に本件覚書が無効となるも のではない。
ウ また,原告は,被告に被告商標が空虚な権利であることを告げること は,自らを縛る道具を更に継続させるのみであることは明らかであるか ら,本件商標の登録出願を告知する義務はないなどと主張する。 しかしながら,被告商標の有効性に疑問があるというのであれば,それ を告知することによって本件覚書を適切に機能させることが本件覚書の趣\n旨なのであるから,原告の主張は,この趣旨に反し,信義にもとるもので あると言わなければならない。

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令和1(行ケ)10104  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年12月26日  知的財産高等裁判所

 「EMPIRE」の文字部分の下部に二重線があり、その下部に少し小さな文字で「STEAK HOUSE」の文字部分で構成された商標(判決文中にあり)について、「EMPIRE」と類似するとした審決が維持されました。\n

 ア 本願商標は,別紙のとおり,上段に,左向きの金色の牛の全身を表した\n図形を配し,当該図形部分の下方に,「EMPIRE」の黒色の欧文字と 「STEAK HOUSE」の黒色の欧文字を上下2段に横書きに書して なり,上下2段の文字部分の間に文字部分と幅を揃えた赤色の二重線を配 してなる結合商標である。 本願商標は,牛の図形部分,「EMPIRE」の文字部分及び「STE AK HOUSE」の文字部分の各構成部分が相互に一定の間隔を空けて,\n重なり合うことなく配置され,上記各文字部分の間に赤色の二重線が配さ れていることから,各構成部分は,それぞれが独立したものであるとの印\n象を与え,視覚上分離して認識されるものと認められる。
イ 「EMPIRE」の文字部分は,目につきやすい中央部に,「STEA K HOUSE」の文字部分よりも大きく表され,「EMPIRE」の文\n字部分の語頭及び語尾の「E」の文字は当該文字部分を囲って強調するよ うに他の文字よりも大きく表されていること,「EMPIRE」の文字部\n分の下に配された赤色の二重線は,「EMPIRE」の文字部分と「ST EAK HOUSE」の文字部分との区切り線のような印象を与えるとと もに,「EMPIRE」の文字部分を強調する下線のような印象をも与え ていることに鑑みると,本願商標の外観上,「EMPIRE」の文字部分 は,牛の図形部分及び「STEAK HOUSE」の文字部分よりも,強 く印象づける特徴を備えている。 そして,「EMPIRE」の文字部分に相応する「empire」の語 は,「帝国」の意味を有する基本的な英単語として知られており(新英和 中辞典(第7版),広辞苑(第七版),大辞林第三版(甲2)),本願商 標の構成中「EMPIRE」の文字部分から「エンパイア」の称呼が生じ\nる。
ウ(ア) 本願商標の構成中「STEAK HOUSE」の文字部分に相応す る「steakhouse」の語は,「ステーキ専門店」(ジーニアス 英和辞典第5版(乙2)),「ステーキハウス」(新英和中辞典(第7 版))の意味を有する英単語である。 証拠(乙3ないし25,30)によれば,(1)「レストランにおける飲 食物の提供」をする業界において,「STEAK HOUSE」又は「S TEAKHOUSE」(ステーキハウス)の語は,例えば,「WOLF GANG’S STEAKHOUSE」(ウルフギャング・ステーキハ ウス)(乙3),「BENJAMIN STEAK HOUSE」(ベ ンジャミンステーキハウス)(乙4),「MORTON’S THE S TEAKHOUSE」(モートンズ ザ ステーキハウス)(乙5), 「RUTH’S CHRIS STEAK HOUSE」(ルースクリ ス ステーキハウス)(乙6),「OUTBACK STEAKHOU SE」(アウトバックステーキハウス)(乙7),「JACK’S S TEAK HOUSE」(ジャッキーステーキハウス)(乙8),「L a Paysanne(ステーキハウス ラ・ペイザン)」(乙9), 「STEAK HOUSE ライおン」(乙10),「ステーキハウス 牛の松阪」(乙11),「STEAK HOUSE US・6(ステー キハウスUS・6)」(乙12),「Steak House JOY BULL」(ステーキハウス ジョイブル)(乙13),「ステーキハ ウス 柳鳳」(乙14)などのように,「ステーキ専門店」を表す語と\nして用いられ,上記各店舗は,例えば,「ウルフギャング」(乙15), 「ベンジャミン」(乙15),「モートンズ」(乙16),「ルースク リス」(乙17),「アウトバック」(乙18),「ジャッキー」(乙 19),「ラ・ペイザン」(乙20),「ライおン」(乙21),「牛 の松阪」(乙22),「US・6」(乙23),「ジョイブル」(乙2 4),「柳鳳」(乙25)などのように略称される場合があること,(2) 「日本標準産業分類」(総務省,平成25年10月改定,平成26年4 月1日施行。乙30)には,「ステーキハウス」は,「飲食サービス業」 の一業態の「7629 その他の専門料理店」として例示,分類されて いることが認められる。
上記認定事実によれば,我が国において,「STEAK HOUSE」 又は「STEAKHOUSE」(ステーキハウス)の語は,「ステーキ 専門店」を表す語として一般に用いられていること,上記語が「ステー\nキ専門店」の店名の一部に含まれる場合には,上記語を除いて,当該店 名が略称される場合があることも普通であることが認められる。 そうすると,「STEAK HOUSE」の語が本願の指定役務中「レ ストランにおける飲食物の提供」に使用される場合には,「レストラン」 の業態の一つである「ステーキ専門店」を表示する語として一般に認識\nされるものと認められるから,本願商標の構成中「STEAK HOU SE」の文字部分は,自他役務を識別する標識としての機能が微弱であ\nるというべきである。
(イ) これに対し原告は,(1)「STEAK HOUSE」の文字は,「ス テーキ専門店」の意味を有することは否定しないが,もともとは造語で あり,我が国では,ステーキの主流は鉄板焼きステーキであり,牛肉を グリル板や炉で焼くレストランの業態の一つの「ステーキハウス」は, 日本全国でも数えるほどしかなく,「STEAK HOUSE」の文字 は,ごく限られた店が使用しているにすぎない,(2)「STEAK HO USE」の文字を使用する場合であっても,ANAインターコンチネン タルホテル東京のレストラン「THE STEAKHOUSE/ ザ・ス テーキハウス」(甲26,27)のように,「THE」と結合して全体 として特定の店名を指標する造語の成分として使用されている,(3)世界 的に有名な米国のグルメガイド「ZAGAT」(2012年(平成24 年)ニューヨーク版。甲1)のステーキハウスカテゴリーにノミネート されている70のレストランの中で「STEAK HOUSE」の文字 を店名に含む店は原告の店舗「EMPIRE STEAK HOUSE」 のみであるなどとして,「STEAK HOUSE」の文字を役務「飲 食物の提供」の一業態を表すものとして一般に用いられているものとは\nいえない旨主張する。
しかしながら,上記(1)の点については,前記(ア)の認定事実に照らす と,「ステーキ専門店」において,「STEAK HOUSE」の文字 がごく限られた店が使用しているにすぎないということはできない。 また,上記(2)及び(3)の事実があるからといって,「STEAK HO USE」(ステーキハウス)の語が「ステーキ専門店」を表す語として\n我が国において一般に用いられていることを否定すべき理由にはならな い。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
エ 本願商標の構成中牛の図形部分は,別紙記載のとおり,本願商標の上段\nに位置し,下段の「EMPIRE」の文字部分及び「STEAK HOU SE」の文字部分が占める面積と同程度の面積を有し,その金色の色彩は 黒色の上記各文字部分とコントラストをなしている。 他方で,上記牛の図形部分から特定の象徴的な態様や特定のキャラクタ ―を看取できるとまではいえないこと,飲食店などの取引においては,提\n供される料理や食材などをモチーフにした図形を看板や広告などに表示す\nることは,一般的に採択されている手法であって,ステーキハウスを含む 牛肉などに関連した料理を提供する店舗においても,食材である牛の全身 又は一部をモチーフにした図形を用いることは,広く一般的に行われてい ること(乙31ないし40)に照らすと,本願商標に接した需要者は,上 記牛の図形部分は,「STEAK HOUSE」の文字部分と相まって「ス テーキハウス」(ステーキ専門店)で提供される食材の牛をモチーフにし た図形という印象を受けるものと認められる。 そうすると,本願商標の構成中牛の図形部分は,本願の指定役務中「レ\nストランにおける飲食物の提供」との関係においては,自他役務を識別す る標識としての機能が微弱であるというべきである。\n
オ 前記ア認定のとおり,本願商標中,牛の図形部分,「EMPIRE」の 文字部分及び「STEAK HOUSE」の文字部分の各構成部分は,外\n観上それぞれが独立したものであるとの印象を与え,視覚上分離して認識 されるものと認められるから,上記各構成部分を分離して観察することが\n取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認めら れない。 そして,前記イないしエ認定のとおり,本願商標の構成において,目に\nつきやすい中央部に配置された「EMPIRE」の文字部分は,牛の図形 部分及び「STEAK HOUSE」の文字部分よりも,外観上強く印象 づける特徴を備えており,「EMPIRE」の文字部分から「エンパイア」 の称呼及び「帝国」の観念が生じること,他方で,「STEAK HOU SE」の文字部分及び牛の図形部分は,本願の指定役務中「レストランに おける飲食物の提供」との関係においては,自他役務を識別する標識とし ての機能が微弱であることに鑑みると,本願商標は,「EMPIRE」の\n文字部分が,取引者及び需要者に対して上記役務の出所識別標識として強 く支配的な印象を与えるものと認められるから,本願商標から「EMPI RE」の文字部分を要部として抽出し,これと引用商標とを比較して商標 そのものの類否を判断することは許されるというべきである。 これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
(2) これに対し原告は,本願商標のうち,「EMPIRE」の文字部分及び「S TEAK HOUSE」の文字部分は,「EMPIRE STEAK HO USE」の全体をもって造語としての店名を構成して識別の用に供され,「帝\n国のステーキハウス」,「帝政(時代)のステーキハウス」という観念を生 じさせ,そこから高級な,並外れたステーキハウスであることがアピールさ れているから,本願商標から「EMPIRE」の文字部分を分離して観察す ることは不自然であることからすれば,本願商標から「EMPIRE」の文 字部分を要部として抽出することはできないから,「EMPIRE」の文字 部分と引用商標とを比較して,商標そのものの類否を判断することは許され ない旨主張する。 しかしながら,前記(1)ウ認定のとおり,我が国において,「STEAK HOUSE」又は「STEAKHOUSE」(ステーキハウス)の語は,「ス テーキ専門店」を表す語として一般に用いられていること,上記語が「ステ\nーキ専門店」の店名の一部に含まれる場合には,上記語を除いて,当該店名 が略称される場合があることも普通であることに照らすと,本願商標のうち, 「EMPIRE」の文字部分及び「STEAK HOUSE」の文字部分は, 「EMPIRE STEAK HOUSE」の全体をもって造語としての店 名を構成して識別の用に供されているものと認めることはできないから,原\n告の上記主張は,その前提において理由がない。
2 本願商標と引用商標の類否判断の誤りについて
(1) 前記(1)の認定事実を前提に,本願商標の要部である「EMPIRE」の 文字部分と引用商標を対比すると,引用商標は,「EMPIRE」の標準文 字からなるのに対し,本願商標の「EMPIRE」の文字部分は,語頭及び 語尾の「E」の文字は当該文字部分を囲って強調するように他の文字よりも 大きく表されている点において,両者の外観は,同一とはいえないが,紛ら\nわしいものといえること,本願商標の「EMPIRE」の文字部分と引用商 標は,「エンパイア」の称呼及び「帝国」の観念が生じる点において,称呼 及び観念が同一であること,「STEAK HOUSE」の文字部分及び牛 の図形部分は,本願の指定役務中「レストランにおける飲食物の提供」との 関係においては,自他役務を識別する標識としての機能が微弱であることに\n鑑みると,本願商標全体の外観と引用商標の外観が相違することを考慮して も,両商標が上記役務と同一又は類似の役務に使用された場合には,その役 務の出所について誤認混同を生じるおそれがあるものと認められるから,両 商標は全体として類似しているものと認められる。したがって,本願商標は,引用商標と類似する商標である。
(2) これに対し原告は,(1)原告の店舗「EMPIRE STEAK HOU SE」は,2010年(平成22年)に米国のニューヨークで創業された著 名なレストランであり,引用商標の登録出願当時,ニューヨークで2店舗を 営業し,年間売上げ800万米ドルを計上し,例えば,ウォールストリート ジャーナル,ニューヨークポスト,abcニュース,CBSニューヨークな どの著名メデイアに取り上げられて確固たる知名度を獲得し,終始一貫して その文字の全体「EMPIRE STEAK HOUSE」をもって識別さ れており,決して「EMPIRE」として識別されていないこと,(2)原告が 平成29年10月17日に東京都六本木に開店した店舗「EMPIRE S TEAK HOUSE」は,大変な注目を浴びて各種のインターネット記事 (甲7ないし21)で取り上げられ,上記記事では,「EMPIRE」ある いは「エンパイア」と呼ばれることは一切なく,「EMPIRE STEA K HOUSE」あるいは「エンパイアステーキハウス」と呼ばれており, また,上記店舗は,「客単価」1万円を越える敷居の高い高級店であり,客 は,飛び込みで来店することはなく,事前に店舗のことを調べ予約してから\n来店することなどの取引の実情の下においては,上記店舗の店名を「EMP IRE」あるいは「エンパイア」と誤解することは皆無であるという取引の 実情があることを考慮すると,本願商標と引用商標は,同一又は類似の役務 に使用された場合に,当該役務の出所について混同が生じるおそれはない旨 主張する。
しかしながら,上記(1)の点は,米国所在の原告の店舗に関する事情を述べ るものであり,我が国における取引の実情を反映したものとはいえない。 次に,上記(2)の点については,原告が挙げるインターネットの記事(甲7 ないし21)では,「NY人気ステーキハウス上陸 「エンパイアステーキ ハウス」の実力」(「日経トレンディネット」のホームページ。甲7),「N Yの高級ステーキ「エンパイア ステーキ ハウス」が日本初上陸! 今秋、 六本木にオープン」(「asoview! NEWS」のホームページ。甲 9)などのように,原告の六本木の店舗「EMPIRE STEAK HO USE」が「エンパイアステーキハウス」として紹介されていることが認め られるが,上記記事は,本願商標を直接引用して紹介したものではないから, 本願商標に接した需要者,取引者に対し与える印象等と直接結びつくものと はいえない。
加えて,「NY発『東京ステーキ戦争』 人気店が続々出店,熟成肉が売 り」の見出しの下,「昨年には『ベンジャミン』と『エンパイア』が相次ぎ 六本木に出店した。」(2018年9月1日付けの「FujiSankei Business i.」。乙26),「ステーキ激戦区,六本木,熱々, 本場NY発VS.日本発,家族・友達とわいわい,気分はマンハッタン。」 の見出しの下,「六本木通りを挟んで反対側には10月,『エンパイア ス テーキ ハウス』が上陸する。…マンハッタンのエンパイアを訪れたことが あるNY在住の…」(2017年9月18日付け「日経MJ(流通新聞)。 乙27),「六本木ステーキ戦線に異状あり!NY発『エンパイア』上陸で 混戦模様に」(2017年9月5日付け)の見出しの下,「エンパイアは, ジャック,ジェフ,ラスのシナナジ兄弟が2010年に立ち上げたステーキ ハウス。」,「エンパイアが提供する価値とは…店のコンセプトは,ずばり 『NYにあるエンパイアの再現』であり,『本場のNYスタイルを楽しんで 欲しい』とのこと。」(「マイナビニュース」のウェブサイト。乙28), 「六本木が『ステーキの街』に大変身した必然」(2017年10月29日 付け)の見出しの下,「六本木,芋洗坂の中腹に10月17日に開業した『エ ンパイアステーキハウス六本木』」,「エンパイアは今回,初めてとなる海 外進出先に六本木を選んだ。」,「ウルフギャングの後に続くのは冒頭のエ ンパイアだけではない。」(「東洋経済ONLINE」のウェブサイト。乙 29)などと記載したインターネットの記事のように,原告の六本木の店舗 は,「エンパイア」と略称で表示される例も見受けられる。\nしたがって,上記(1)及び(2)の点は,本願商標と引用商標が同一又は類似の 役務に使用された場合に,当該役務の出所について混同が生じるおそれはな いことを基礎付ける取引の実情に当たるものと認めることはできないから, 原告の上記主張は採用することができない。

◆判決本文

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令和1(行ケ)10101  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年12月19日  知的財産高等裁判所

 「南三陸キラキラ丼」が4条1項10号、15号、19号違反の無効理由があるのかが争われました。知財高裁4部は、いずれも無しとした審決を維持しました。

 前記(1)アないしウの認定事実を総合すると,(1)南三陸町飲食店組合の組 合員であるホテル及び飲食店6店舗(原告及び被告を含む。)は,平成2 1年12月から「南三陸キラキラいくら丼」の標章を使用し,イクラを中 心の食材とした南三陸産の具材を含む丼物の提供を開始した後,南三陸キ ラキラ丼シリーズ第2弾として「南三陸キラキラ春つげ丼」の標章を使用 し,春が旬の地元の魚介類や野菜を中心の食材とした丼物の提供を,南三 陸キラキラ丼シリーズ第3弾として「南三陸キラキラうに丼」の標章を使 用し,ウニを中心の食材とした南三陸産の具材を含む丼物の提供を,南三 陸キラキラ丼シリーズ第4弾として「南三陸キラキラ秋旨丼」の標章を使 用し,地元の魚介類と米を中心の食材とした丼物の提供を,提供店を網羅 した共通のパンフレットを作成したり,共同で試食会を行うなど共同で 広告宣伝をしながら,順次行うことによって,南三陸産の具材を含む丼物 の提供を南三陸キラキラ丼シリーズとして観光キャンペーン化し,同月か ら平成22年12月末までの約1年間で合計約4万5000食を売り上 げ,この間提供店は,6店舗から8店舗に増加したが,いずれも南三陸町 飲食店組合の組合員であったこと,(2)提供店は,共通の問合せ先を南三陸 町観光協会内の「南三陸時間旅行サポートセンター」とするなど南三陸町 観光協会から支援を受けながら,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペー ン活動を行い,そのキャンペーン活動は,南三陸町のウェブサイト,南三 陸町観光協会作成のパンフレット,「宮城・仙台」の観光キャンペーン のガイドブック等に掲載され,新聞等の報道や旅行雑誌等による広告宣 伝が行われ,その報道等の中には,南三陸町飲食店組合の取組として紹介 されているものが見られたこと,(3)平成23年3月11日の東日本大震災 により,南三陸町は被災し,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活 動は一時中断したが,平成24年2月25日の仮設商店街のオープンに合 わせて,南三陸町飲食店組合の組合員である同仮設商店街で営業を再開し た店舗及び「南三陸ホテル観洋」など9店舗で,「復活 南三陸キラキラ 丼」と称して,南三陸産の具材を含む丼物の提供を行うようになり,その キャンペーン活動が震災によって大きな被害を受けたと広く知られていた 南三陸地域の復興と関連付けて,新聞やテレビ放送等により報道されたこ とが認められる。
上記認定事実によれば,本件商標の登録出願時(平成24年11月29 日)までに,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動及びその報道, 広告宣伝等により,南三陸キラキラ丼シリーズの丼物は南三陸産の具材を 含む丼物として知名度が高まり,南三陸キラキラ丼の標章は,本件商標の 登録出願時には,少なくとも宮城県及びその近隣県において,南三陸町飲 食店組合の組合員の取扱いに係る丼物の提供を表示するものとして,需要\n者の間に広く認識されていたことが認められる。 そして,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動は,当初は南三 陸町飲食店組合の組合員の有志の団体による取組として始まったが,南三 陸町観光協会から支援を受けて進められ,南三陸キラキラ丼シリーズの丼 物の提供店は震災の前後を通じていずれも南三陸町飲食店組合の組合員で あったことなどから,次第に,南三陸町飲食店組合の取組として受け止め られるようになり,遅くとも本件商標の登録出願時には,南三陸町飲食店 組合は,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動を組合の事業活動 として位置づけていたものと認められるから,本件商標の登録出願時点に おける「南三陸キラキラ丼」の標章の使用主体は,南三陸町飲食店組合で あったものと認めるのが相当である。 これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
イ(ア) これに対し原告は,「南三陸キラキラ丼」の標章は,「原告の発案 したキャンペーンに賛同して参加した南三陸町内のホテルや飲食店の集 まり」によって使用された結果,本件商標の登録出願時には,少なくと も宮城県及びその近隣県において,上記南三陸町内のホテルや飲食店の 集まりの取扱いに係る丼物の提供を表すものとして周知性を獲得したも\nのであるから,上記南三陸町内のホテルや飲食店の集まりが,本件商標 の登録出願時点における「南三陸キラキラ丼」の標章の使用主体である 旨主張する。
そこで検討するに,原告の経営する「南三陸ホテル観洋」が平成21 年11月から,「南三陸キラキラいくら丼と鮑踊り焼プラン」という名 称の一泊二食付き宿泊プランの提供を開始した後に,原告を含む南三陸 町飲食店組合の組合員である6店舗が同年12月から「南三陸キラキラ いくら丼」の提供を開始したこと(前記(1)イ(ア)),原告は,その頃か ら本件商標の登録出願時まで,原告が運営する「南三陸ホテル観洋」の ウェブサイト等で「南三陸キラキラ丼」シリーズのキャンペーン等に関 する広告宣伝を行ってきたこと(甲2,8,9,16,22の1ないし 3,23の1ないし19,25の1ないし5),2010年(平成22 年)5月16日付けの三陸新報(甲7)に,「好評「キラキラ丼シリー ズ」南三陸町」の見出しの下に,「南三陸町飲食店組合の有志が地域産 食材を使って提供している「南三陸キラキラ丼シリーズが好評だ。…テ レビ局の取材も相次いでおり,“日本一の丼のまち”を目指す取り組み がこれからのまちづくりにどう生かされるのか。地域活性化の鍵を握っ ている。」,「「キラキラ丼」シリーズの“火付け役”となったのは, 南三陸ホテル観洋の女将・Aさん。」などと記載した記事が掲載された ことからすると,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動の立ち 上げ当初には,原告の積極的な関与があったことがうかがわれる。 しかしながら,これらの事実から直ちに「南三陸キラキラ丼」の標章 が本件商標の登録出願時において需要者の間で「原告の発案したキャン ペーンに賛同して参加した南三陸町内のホテルや飲食店の集まり」の 取扱いに係る丼物の提供を表すものとして広く認識されていたものと\n認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(イ) また,原告は,関連訴訟判決が「南三陸キラキラ丼」の標章(「引 用商標2」)の使用主体として認定した「南三陸町地域を中心とする 飲食店の団体」には,「南三陸町飲食店組合」だけでなく,「南三陸 町観光協会」,「南三陸商工会」,「南三陸志津川復興名店運営組合」 等の複数の団体が存在するから,「南三陸町飲食店組合」が使用主体で あるとした本件審決の判断は,確定した関連訴訟判決とも矛盾・抵触す るものであって,誤りである旨主張する。 しかしながら,関連訴訟判決は,「南三陸キラキラ丼」の標章を用い た使用主体を,その時期に応じて,第一段階から第三段階に分けて検討 し,そのいずれについても,同一の団体が使用主体である旨を認定した ものであるが,原告が主張する複数の団体のうち,「飲食店」の団体は, 南三陸町飲食店組合のみである。 加えて,前記ア認定のとおり,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペ ーン活動は,当初は南三陸町飲食店組合の組合員の有志の団体による取 組として始まったものが,そのキャンペーン活動が進められる中で,次 第に,南三陸町飲食店組合の取組として受け止められるようになり,遅 くとも本件商標の登録出願時には,南三陸町飲食店組合は,南三陸キラ キラ丼シリーズのキャンペーン活動を組合の事業活動として位置づけて いたものと認められるから,関連訴訟判決がいう「南三陸町地域を中心 とする飲食店の団体」は,本件商標の登録出願時点においては,南三陸 町飲食店組合を指すものとみても不合理ではない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(3) 被告と南三陸町飲食店組合を同一人として取り扱うのが相当であるとし た判断の誤りについて
ア 前記(1)ア(イ)及びウの認定事実によれば,南三陸町飲食店組合は,南三 陸町の地域に住所を有し,料理店,その他飲食店の許可を受けた者を組合 員とし,組合員相互の信頼と親睦の上に経営の安定,公衆衛生の向上に努 め職域を通じて社会に奉仕することを目的とする組合であって,法人格を 有していないが,団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成\n員の変更にかかわらず団体そのものが存続し,代表の方法,総会の運営,\n財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものと認められる から,権利能力のない社団(権利能\力なき社団)であることが認められる。 そして,前記(1)ウ及びエ(ウ)の認定事実によれば,(1)平成24年10月 26日開催の南三陸町飲食店組合の執行部会議において,南三陸町飲食店 組合が「南三陸キラキラ丼」の標章の商標登録を受けることの提案に関し, 南三陸商工会及び宮城県商工会連合会を通じて紹介を受けた宮城県発明協 会の担当者から,南三陸町飲食店組合は任意団体であるため,商標登録出 願は代表者個人で行うこと,出願及び登録費用などについての説明を受け,\nさらに,同年11月13日の会議において,上記担当者から,商標登録制 度の概要等について説明を受けるなどした後,同月16日の会議において, 当時の組合長であった被告個人名義で本件商標の商標登録出願を行うこと が決められたこと,(2)被告は,同月29日,本件商標の商標登録出願をし, 平成25年5月2日,その商標登録を受けたが,その商標登録出願に際し, 本件商標が南三陸町飲食店組合の業務に係る商品又は役務に使用すること を証明するための書類として被告と南三陸町飲食店組合との関係等を示し た被告作成の上申書(甲32の2)及び南三陸商工会E会長作成の平成2\n4年11月28日付けの「南三陸町飲食店組合「南三陸キラキラ丼」の取 組と経緯について(ご説明)」と題する書面(甲32の3)を提出したこ と,(3)平成25年5月17日開催の南三陸町飲食店組合の平成25年度通 常総会において,「南三陸キラキラ丼」について本件商標の商標登録が完 了したことなどの事業報告が行われ,承認されるとともに,「商標登録の 仕様基準」の作成に伴う規約の一部改正の承認の件が議案として提出され, 規約の一部改正について承認された後,同年6月4日に開催された南三陸 町飲食店組合の臨時総会において,仕様基準が承認されたこと,(4)上記仕 様基準には,本件商標について,登録名義人である組合長が退任した場合 には,新たに選任された組合長名義で登録の変更等の申請を行うことの定\nめがあることが認められる。 上記認定事実によれば,被告は,権利能力のない社団である南三陸町飲\n食店組合の代表者として,南三陸町飲食店組合のために本件商標の商標登\n録出願をし,その登録を受けたこと,南三陸町飲食店組合は,本件商標の 商標登録出願及びその商標登録について,総会の決議で承認していること が認められるから,本件商標権は,実質的には南三陸町飲食店組合が有し ているものと認められる。 そうすると,本件商標の商標登録出願及びその商標登録に関しては,被 告と南三陸町飲食店組合とは同一人とみなして取り扱うのが相当であるか ら,前記(2)ア認定の使用主体を南三陸町飲食店組合とする「南三陸キラキ ラ丼」の標章は,本件商標との関係では,「他人」の「業務に係る商品若 しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又\nはこれに類似する商標」に該当するものと認めることはできない。 したがって,本件商標は,その余の点について判断するまでもなく,商 標法4条1項10号に該当しない。 これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
イ これに対し原告は,(1)商標法上,法人格を有することが商標登録を受け るための要件とされており(7条参照),権利能力なき社団が商標登録を\n受けることは認められていないから,被告が「南三陸町飲食店組合」の組 合長であるからといって,被告個人の本件商標の商標登録の効力が,権利 能力なき社団である「南三陸町飲食店組合」の構\成員に及ぶことはあり得 ないこと,(2)本件商標の商標登録出願前に,被告の個人名義で本件商標の 商標登録出願を行うことについての総会決議や本件商標の仕様内容,使 用方法,使用できる者の範囲,企画,広報,予算などの取決めがされて\nおらず,被告は,独断で本件商標の商標登録を受け,事後的な報告をし たというのが実態であること,(3)被告が南三陸町飲食店組合の代表者を\n退任した後においても,未だに被告個人名義で本件商標の商標権を保有 していることからすると,被告は,南三陸町飲食店組合を代表して本件商\n標の商標登録出願をし,その登録を受けたということはできず,南三陸町 飲食店組合の一構成員である被告が個人として本件商標の商標登録出願を\nし,その登録を受けたというべきである旨主張する。 しかしながら,上記(1)の点については,商標法上,法人格を有すること が商標登録を受けるための要件とされており,権利能力のない社団が商標\n登録を受けることは認められていないが,権利能力のない社団の意思決定\nに基づいてその代表者の個人名義で商標登録出願をし,商標登録を受け,\nその登録商標を権利能力のない社団の財産として管理することは許容され\nるものと解される。この場合,実体的には,当該登録商標の商標権は,権 利能力のない社団の構\成員全員に総有的に帰属し,実質的には,当該社団 が有しているとみることができるから,当該登録商標の商標登録の効力が, 権利能力のない社団の構\成員に及ばないとはいえず,本件商標も,これと 同様である。 次に,上記(2)の点については,本件商標については,南三陸町飲食店組 合の執行部会議等による協議を経た上で,本件商標の商標登録出願に至っ たものであり,その商標登録後ではあるが,南三陸町飲食店組合の総会決 議で承認されていること,南三陸町飲食店組合は,本件商標の商標登録後, 総会決議で,本件商標の仕様基準を定めていることに照らすと,被告が, 独断で本件商標の商標登録を受けたということはできない。 さらに,上記(3)の点については,被告と南三陸町飲食店組合は,被告と 南三陸町飲食店組合のF組合長間の令和元年9月26日付け確認書に基づ いて,本件訴訟が終了するまでの間,本件商標の登録名義を被告名義とし ておくことを合意し,被告は,南三陸町飲食店組合に対し,本件訴訟終了 後,本件商標の登録名義を同訴訟終了時の同組合の組合長個人名に移転す ることを約していること(前記(1)エ(ウ))に照らすと,被告が南三陸町 飲食店組合の組合長を退任した後に本件商標の商標権の移転登録をして いないからといって,被告が南三陸町飲食店組合を代表して本件商標の商\n標登録出願をしたとの認定を覆すことはできない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。

◆判決本文

 判決中の拒絶審決が維持された審取は下記です。

◆平成28(行ケ)10245

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令和1(行ケ)10086  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年11月26日  知的財産高等裁判所

 立体商標について、識別力無しとの無効審判請求について、知財高裁(4部)は無効理由なしとした審決を維持しました。

 前記アの認定事実を総合すると,ヘニングセンがデザインした本件商品の立体的形状は,被告による本件商品の販売が日本で開始された1976年(昭和51年)当時,独自の特徴を有しており,しかも,本件商品が上記販売開始後本件商標の登録出願日(平成25年12月13日)までの約40年間の長期間にわたり日本国内において継続して販売され,この間本件商品は,ヘニングセンがデザインした世界のロングセラー商品であり,そのデザインが優れていること及び本件商品は被告(「ルイスポールセン社」)が製造販売元であることを印象づけるような広告宣伝が継続して繰り返し行われた結果,本件商標の登録出願時までには,本件商品が日本国内の広範囲にわたる照明器具,インテリアの取引業者及び照明器具,インテリアに関心のある一般消費者の間で被告が製造販売するランプシェードとして広く知られるようになり,本件商品の立体的形状は,周知著名となり,自他商品識別機能ないし自他商品識別力を獲得するに至ったものと認められる。そうすると,本件商品の立体的形状である本件商標が本件商品に長年使用された結果,本件商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時(登録審決日・平成27年12月15日)において,被告の業務に係る商品であることを表\示するものとして,日本国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められるから,本件商標は,商標法3条2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するものと認められる。
(3) 原告の主張について
ア 原告は,本件商品(「PH5」)は,デンマークのデザイナーであるヘニングセンがデザインした商品として,宣伝され,評価され,販売されてきたものであるから,PH5の立体的形状である本件商標は,ヘニングセンがデザインしたランプシェードの立体的形状として周知であるにとどまり,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,周知であるということはできない旨主張する。\nしかしながら,前記(2)イ認定のとおり,被告は1976年(昭和51年)から本件商標の登録出願日(平成25年12月13日)までの約40年間の長期間にわたり日本国内において本件商品を継続して販売し,その間,本件商品は,ヘニングセンがデザインした世界のロングセラー商品であり,そのデザインが優れていること及び本件商品は被告(「ルイスポールセン社」)が製造販売元であることを印象づけるような広告宣伝が継続して繰り返し行われてきたことに照らすと,本件商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,日本国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められるから,原告の上記主張は採用することができない。\n
イ 原告は,PH5に係る商標権,著作権等の知的財産権は,ヘニングセンに帰属するから,被告は,ヘニングセン及びその相続人から,商標権の譲渡を受け,又は使用許諾を受けていなければ,本件商標の商標登録を受けることはできない,PH5のデザインは,外国において商標登録されておらず,知的財産権の権利者が死亡し,パブリックドメインとなっているから,商標登録をさせてはならず,被告の本件商標の商標登録は無効とすべ きである旨主張する。しかしながら,商標法3条2項は,同条1項3号から5号までに該当する商標であっても,「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」については,商標登録を受けることができる旨を定めたものであるところ,原告の上記主張は,同条2項の文言の解釈に基づかないものであるから,その主張自体理由がないというべきである。

◆判決本文

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令和1(行ケ)10073  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年10月23日  知的財産高等裁判所

 商標法4条1項7号の公序良俗違反の無効理由ありとした審決が維持されました。 「被告が「仙三七」との商標の商標権者として,かかる商標を付して本件被告商品を販売することを妨げてはならない信義則上の義務を負っていた」が理由です。

 商標法4条1項7号所定の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある 商標」には,健全な商道徳に反し,著しく社会的妥当性を欠く出願行為に係る 商標も含まれると解される。
(1) そこで,まず,原告による本件商標の登録出願が,被告との関係で義務違 反となりうるかについて検討する。 前記1(1)(2)の各事実によれば,原告と被告とは,本件商標の登録出願が行 われた平成28年10月14日時点を含めて,平成11年頃から平成29年 10月12日頃までの間,被告が,原告に対し,独占的に本件被告商品やマ ナマリンなどを卸売りし,原告がこれを薬局薬店等に販売するという長期間 にわたる取引関係にあった。 かかる取引関係に関して,前記1(2)エのとおり,原告と被告とは,被告商 標の登録が完了した直後である平成16年3月25日,本件覚書(甲6)を 締結した。本件覚書の柱書,1条,3条の記載に照らすと,本件覚書は,被 告商標として登録された「仙三七」との商標を,本件被告商品に付して,販 売することを前提とするものであることが明らかである。また,本件覚書に は,被告及び原告は,第三者が被告商標の権利を侵害し又は侵害しようとし ていることを知ったときには互いに遅滞なく報告し合い協力してその排除に 努めるものとすること(第5条)や,被告及び原告は,信義に基づいて本件 覚書を履行するものとし,万一本件覚書に関して疑義が生じた場合には,被 告及び原告はお互いに誠意をもってこれを解決するものとすること(第7 条)とする合意が含まれていた。このように,被告が原告に使用許諾して 「仙三七」との商標を本件被告商品に付して販売することとされ,第三者か らの被告商標に係る商標権の侵害に対する対策も合意された上で,7条にお いて信義に基づいて本件覚書を履行するとされていたことに照らすと,本件 覚書において,原告自身が,三七人参を原材料とした健康食品との関連で 「仙三七」との商標を商標登録することは全く想定されていないといえる。 以上によれば,長期間にわたり,本件被告商品の卸売りを受けて,これに 被告商標と同じ「仙三七」との商標を付して販売し,利益を上げていた原告 は,被告との関係において,被告が「仙三七」との商標の商標権者として, かかる商標を付して本件被告商品を販売することを妨げてはならない信義則 上の義務を負っていたものということができる。 そして,原告による本件商標の登録出願は,被告商標と同じく「仙三七」 を横書きにしてなる商標について,本件被告商品を指定商品に含むものとし て登録出願するものである。かかる登録が認められることになると,被告 は,「仙三七」との商標の商標権者として,第三者に使用許諾をするなどし てかかる商標を付して本件被告商品を販売することはできなくなり,重大な 営業上の不利益を受けるおそれが生じる。 以上によれば,原告の本件商標の登録出願は,上記信義則上の義務に反す るものといわざるを得ない。
(2)次に,原告の本件商標の登録出願の経緯及び目的についてみる。 前記1(3)イからエのとおり,原告は,上記出願の前後において,被告に対 し,被告商標が本件被告商品を指定商品に含んでいない可能性や自らが本件\n商標を登録出願することについて何ら告げることはなく,本件商標の設定登 録完了から4か月以上経過した後の平成29年8月18日付けの「申し入れ\n書」(甲7)において,初めて,本件商標の商標権者であることを明らかに した上で,原告と被告との本件被告商品の取引終了を一方的に申し入れると\nともに,被告に対し,マナマリンの商標の譲渡やそれを条件とした三七人参 の購入などを提案したものである。 これに対し,上記「申し入れ書」の内容に照らすと,原告自身は,当該\n「申し入れ書」を送付する前に,被告以外の第三者から,本件被告商品と同\n種の競合品を購入する段取りを既に整えていたと認められる。 そして,原告は,その後の被告とのやりとりの中で,原告から被告に対す る営業譲渡の申入れや被告商標の譲渡の依頼に応じてもらえなかったこと,\n被告の本件被告商品の仕入れ価格が高額であるために原告独自の商品を生産 することにしたことなどをも理由として挙げながら,原告としては被告の生 産する本件被告商品が原告の希望仕入れ価格に不適格であると判断し,原告 にて新しいブランドで生産から販売を開始することなどを伝えている。 このような原告の言動に照らすと,原告は,「仙三七」との商標が,本件 被告商品と同種の商品に付されることによって生じる利益を独占するべく, 被告に本件商標と競合する商標を登録出願されないように注意を払った上 で,自らは,同種商品の調達ルートを確立する一方で,被告との取引関係を 終了する準備を計画的に整えながら,本件商標の登録出願及び上記「申し入\nれ書」の送付に及んだものといえる。
(3) 以上によれば,原告による本件商標の登録出願は,被告が「仙三七」との 商標を付して本件被告商品を販売することを妨げてはならない信義則上の義 務を負うにもかかわらず,被告商標が本件被告商品を指定商品として含まな い可能性があることを奇貨として本件商標の登録出願を行い,本件商標を取\n得し,被告が「仙三七」のブランドで健康食品を販売することを妨げて,そ の利益を独占する一方で,その他の商品の取引に関する交渉を有利に進める という不当な利益を得ることを目的としたものということができる。 このような本件商標の登録出願の経緯及び目的に鑑みると,原告による本 件商標の出願行為は,被告との間の信義則上の義務違反となるのみならず, 健全な商道徳に反し,著しく社会的妥当性を欠く行為というべきである。 そうすると,このような出願行為に係る本件商標は,商標法4条1項7号 所定の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するも のといえる。
(4) 原告の主張について
ア 原告は,「仙三七」との商標は原告の努力等によってその信用が築き上 げられたものであり,また取引者等は本件被告商品の出所は原告であると 認識するなどとして,かかる商標は原告のものであるなどと主張する。 しかしながら,原告は,本件覚書に基づいて「仙三七」の商標の使用を 許諾され,この許諾に基づいて,本件被告商品に「仙三七」との商標を付 して,長年にわたり販売してきたものである。その過程において,原告が 努力し,また販売者として表示されたことによって「仙三七」との商標の\n出所であると取引者や需要者に認識されたとしても,それは,あくまでも 被告の許諾を基盤として形成された信用なのであるから,原告が当然に 「仙三七」との商標の権利者として扱われるべきであるとする根拠となる ものではない。 前記のとおり,被告との関係で,原告による本件商標の出願行為が,信 義則上の義務違反となり,健全な商道徳に反し,著しく社会的妥当性を欠 く行為であるとの評価は,原告の主張によっても左右されない。
イ また,原告は,被告商標は本件被告商品を指定商品として含んでいなか ったなどとして,被告は「仙三七」との商標について何らの権利ももって いなかったなどと主張する。 確かに,被告商標について,本件被告商品を指定商品として含んでいな かった可能性が高いことは,被告も認めるところである。\nしかしながら,本件被告商品が,被告商標の指定商品の範囲に含まれて いなかったとしても,本件覚書を締結し,長年にわたりその有効性を前提 として取引関係にあった原告と被告の間においては,問題が生じた場合に は,本件覚書の第7条に基づき,お互いに誠意をもって解決すべきであ る。そして,原告としては,被告が,「仙三七」との商標の商標権者とし て,かかる商標を付して本件被告商品を販売することを妨げてはならない 信義則上の義務を負っていたことは前記⑴に判示したとおりであることを も併せ考えると,原告において,抜け駆け的に本件被告商品を指定商品と するような商標で商標登録をすることが許されるわけではない。 むしろ,本件商標の登録出願の経緯及び目的に鑑みると,原告は,本件 被告商品を指定商品として含んでいなかった可能性や,自らが本件商標の\n登録出願をしようとしていることについては,何ら被告に告げておらず, 却って,前記1(3)アにみたとおり,平成28年9月頃(本件商標の登録出 願の直前頃と考えられる。)には,被告商標の譲渡を持ちかけて,その指 定商品に本件被告商品が含まれることを前提とするかのような言動を示し たものである。これらの原告の行為は,被告商標の保護範囲についての被 告の誤解を解消することなく,むしろ,被告の誤解を奇貨として,被告が 本件商標と同一の商標の登録出願をすることを著しく困難にするものであ ったと評価できる。それにもかかわらず,先願主義をそのまま適用して, 本件商標の有効性を肯定することは,当事者間の衡平を著しく欠くものと いえるから,前述の結論は左右されない。 なお,本件覚書7条は,覚書に関する疑義が生じた場合に誠意を持って 解決するとしていることからもうかがわれるとおり,本件覚書は,被告商 標に係る商標権が本件被告商品を指定商品として含むことを保証ないし当 然の前提とするものであるとまではいえないから,仮にこの点について疑 義が生じたとしても,そのことによって,当然に本件覚書が無効となるも のではない。
ウ また,原告は,被告に被告商標が空虚な権利であることを告げること は,自らを縛る道具を更に継続させるのみであることは明らかであるか ら,本件商標の登録出願を告知する義務はないなどと主張する。 しかしながら,被告商標の有効性に疑問があるというのであれば,それ を告知することによって本件覚書を適切に機能させることが本件覚書の趣\n旨なのであるから,原告の主張は,この趣旨に反し,信義にもとるもので あると言わなければならない。

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平成31(行ケ)10062  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年10月9日  知的財産高等裁判所(1部)

 商標「らくらく」について4条1項10号違反の無効理由なしとした審決が、維持されました。原告は、「らくらく正座椅子」、「らくらく椅子」、「らくらく万能正座椅子」を使用していましたが、裁判所は、「らくらく」部分を取り出す取引の実情がないと判断しました。

 前記認定事実(2)ア,ウによれば,原告は,昭和63年頃から原告商品の販売を開 始し,30年以上継続して販売していることがうかがわれ,その販売数は,平成1 2年及び平成15年から平成25年の12年間で約75万個に上っていること,平 成14年から平成18年にかけて生活産業新聞に75回にわたり,原告商品の広告が掲載されたほか,各種カタログ,チラシやアマゾンのウェブサイト等にも原告商 品の広告が掲載されたことが認められる。 しかしながら,原告が販売する原告商品の包装箱には,「らくらく椅子」,「らくら く正座椅子」又は「らくらく二段正座椅子」との標章が付されており,「らくらく」 の文字のみが単独で使用されたものはない(前記認定事実(2)イ)。 また,原告商品の広告等には,その多くにおいて「らくらく正座椅子」との標章が 付されており,「らくらく万能座椅子」,「らくらく万能\正座椅子」,「らくらく正座いす」,「らくらく椅子」の標章が付されたものもあるものの,「らくらく」の文字のみ が単独で使用されたものはない(前記認定事実(2)ウ)。 そうすると,原告の主張する引用商標「らくらく」が,本件商標の登録出願時及び 登録査定時において,原告商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されて\nいたものとは認められないというべきである。
(4) 原告の主張について
ア 原告は,「らくらく正座椅子」は,「らくらく」と「正座椅子」とを結合した構\n成から成る結合商標であるが,「らくらく」の文字部分のみが商品の出所識別標識と して強く支配的な印象を与えるものであるから,この部分のみを原告の使用商標と して抽出すべきであると主張する。 しかし,「らくらく」は,「楽」であることを意味する語であり,足の痺れや膝頭の 痛みが緩和され,楽に正座をすることができるとの原告商品の機能を表\している。 また,「正座椅子」は,正座用の椅子を意味する語であり,原告商品の用途又は商品 の種類そのものを表している。よって,いずれも,それぞれの文字部分のみによっ\nて出所識別標識としての機能を発揮するとはいえない。\nそうすると,原告商品の表示から,「らくらく」の文字部分のみが商品の出所識別\n標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえず,「らくらく」の文字部分のみ を要部として抽出することはできない。よって,原告の主張は採用できない。
イ また,原告は,「らくらく正座椅子」から「らくらく」を抽出しているとの取引の実情に照らしても,「らくらく」の部分のみを原告の使用商標として抽出すべき であるとも主張する。 しかし,原告商品が「らくらく」と略称されているなどして,「らくらく正座椅子」 から「らくらく」を抽出していることを認めるに足りる証拠はない。原告は,取引者 である原告と被告が,「らくらく正座椅子」から「らくらく」を抽出していることを 前提に本件審判請求やそれ以前の折衝を行っていたことをもって,「らくらく」を抽 出する取引の実情があるとも主張するが,本件審判手続における当事者の主張内容 をもって,「らくらく正座椅子」から「らくらく」を抽出していることが取引の実情 であると認めることはできず,原告の主張は採用できない。

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平成31(行ケ)10020 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年9月12日  知的財産高等裁判所

 結合商標について、分離解釈がなされて類似するした拒絶審決(11号違反)が維持されました。

(2) 本願商標の外観について

ア 本願商標は,前記第2の2(1)のとおりの外観であり,濃紺色で塗りつぶ した縦長長方形(本願素地)内の最上部中央に「SIGNATURE」の欧文字を 茶色で横書きしてなり,かなり間を空けて,同長方形内の中央部分に,図形と文字 との組合せ部分(本願図柄部分)を配した構成からなる結合商標であるが,本願図柄部分は,茶色の太線で大きく表\された円輪郭内(内部は黒地である。)に,「NO.」,「555」及び「STATE EXPRESS」の各文字(「555」の数字は,他 の文字に比して大きく表されている。)を茶色で三段に横書きした部分(本願円図形)と,本願円図形の上部に,紋章風の図形(本願紋章部分)とをまとまりよく配した\n構成からなり,本願紋章部分は,王冠,円内に「SE」の文字を結合しモノグラム状に表\した図形,2匹の仮想動物風の図形並びに「SEMPER」及び「FIDELIS」の各欧文字の記載がある2本のリボン状の図形等からなり,文字部分は縦 長長方形と同じ濃紺色とし,それ以外を茶色としたものである。
イ 本願商標においては,本願円図形は,本願素地の縦の約4割,横の約6 割の大きさで,ほぼ中央に配置され,本願円図形の直ぐ上に,本願紋章部分が配置 され,本願円図形と本願紋章部分を合わせた縦の長さは,本願素地の約半分となる と認められるから,本願図柄部分は,相当に目立つ態様で表示されているといえる。一方,「SIGNATURE」の文字は,上記のとおり,本願素地の最上部中央\nに,本願図柄部分とは離れて表示されているところ,その大きさは,本願円図形内の「555」の文字と比較すると,横は同程度,縦は半分程度であり,「NO.」や\n「STATE EXPRESS」の文字より若干大きいこと,「SIGNATUR E」の文字と本願図柄部分との間には間隔が空いており,その間隔は,本願図柄部 分の縦の長さの約3分の1,「SIGNATURE」の文字の高さの約5倍,本願 素地の縦の長さの約15%に相当するものであって,両者が一見して離れていると 認識されること,「SIGNATURE」の文字は,本願円図形内の「NO.55 5 STATE EXPRESS」の文字や本願紋章部分と,それ自体で何らかの 関連性があるとは認識されないことを総合考慮すると,「SIGNATURE」の 文字は,本願図柄部分と一体のものとは認識できず,また,相応に目立つ態様で表示されているというべきである。\n
(3) 「NO.555 STATE EXPRESS」のブランドが知られてい る程度について
ア ラリーチームにおける宣伝広告活動について
前記1(3)のとおり,BATは,スバルのラリーレースのレーシングチームのスポ ンサーとなり,同レースに使用されるスバル車には,「555」のロゴが大きく表示されていたところ,同レーシングチームは,平成7年から平成9年にかけて3年連\n続でコンストラクターズタイトルを獲得したことなどからすると,その頃のラリー レースに興味を持つ者の間では,「555」のブランドは相応に知られていたものと 認められる。 しかし,日本において,上記のラリーレースに興味を持っている者がどの程度い たのかは明らかではなく,また,上記のラリーレースがテレビで放映されていたの かやその他のメディアで上記レースの状況がどの程度取り上げられていたかも明ら かではないから,上記のラリーレースでの宣伝広告活動によって,日本において, 「555」のブランドは,ラリーレースに興味を持つ限られた範囲の者には知られ るようになったということはできるが,それ以上に,一般的に,本件指定商品の取 引者や需要者(喫煙者やこれから喫煙をしようとしている成人)に知られるように なったと認めることはできない。 また,前記1(3)のとおり,BATがスバルのレーシングチームのスポンサーとな っていたのは平成15年までであるところ,本件審決時までには,上記のスポンサ ー契約を解消してから約15年経過していることからすると,本件審決時に近い時 期においても,複数のウェブサイトで,「555」のロゴを大きく表示したスバルのレーシングカーの写真が掲載されるなどしていることを考慮しても,本件審決の時\n点では,上記のラリーレースにおける宣伝広告活動の効果は限定的であるというほ かない。
イ F1レースにおける宣伝広告活動について
前記1(3)のとおり,平成11年頃から,BARは,「555」のロゴが大きく表示されたレーシングカーを使用してF1レースに参戦している。\nしかし,同レースがテレビで放映されていたのかやその他のメディアで上記レー スの状況がどの程度取り上げられていたかは明らかではない。また,BARは,「L UCKY STRIKE」のロゴの表示があるレーシングカーも使用しており,ウェブサイトの「Rally−M」には,「また『555』はF1のスポンサーでもあ\nった?そうですが,同会社のラッキーストライクの方が有名みたいです。詳しくは 分かりません」と記載されている。 これらのことからすると,F1レースにおける上記宣伝活動によって,一般的に 「555」ブランドが,本件指定商品の取引者や需要者に知られるようになったと まで認めることはできない。 また,「555」のロゴが大きく表示されたレーシングカーがいつまで使用されていたのかも明らかではない。\n
ウ そして,前記1(3)のとおり,「NO.555 STATE EXPRE SS」のブランドのたばこは,日本において販売されていないことを併せて考慮す ると,日本において,本件指定商品の取引者や需要者の間で,同ブランドが知られ ている程度は相当に低いものと認められる。
(4) 「SIGNATURE」の識別力について
ア 前記1(1)アのとおり,「SIGNATURE」の文字は,「署名,サイ ン,特徴,特徴的な,典型的な,代表的な,特製の」等の多様な意味を有するところ,日本において,「署名,サイン」以外の意味が一般的に知られているとは認め\nられないから,本件指定商品の取引者や需要者は,本願商標の「SIGNATUR E」を「署名,サイン」という意味で理解するか又は「署名,サイン」という意味 が本願商標においてどのような意義を有するかを理解することが困難であることか ら,意味を理解できないものというべきである。本願商標の「SIGNATURE」 が,「シグネチャーブランド」,「特徴的な銘柄」,「代表的な銘柄」などと,指定商品の性質等を説明したものと認識されるとは認められない。\n
イ(ア) 前記1(1)イのとおり,複数のブランドのたばこのパッケージやケース に「SIGNATURE」や「signature」の文字が表示されているが,原告が提出した証拠における使用例は,四つのブランドにおける使用例のみであり,\nまた,これらの使用例を紹介したウェブサイトは,いずれも英語で表示されたウェブサイトであり,上記のたばこが日本において販売されていると認めるに足りる証\n拠もないから,同使用例のみから,日本において,たばこのパッケージ等に「SI GNATURE」の文字が表示された場合に,「SIGNATURE」の語が「シグネチャーブランド」,「特徴的な銘柄」,「代表\的な銘柄」の意味を有すると認めることはできないし,他に,この事実を認めるに足りる証拠はない。
(イ) 前記1(1)ウのとおり,「SIGNATURE」という語について,「シグ ネチャーモデル」の使用例があることが認められ,また,「シグネチャー」という語 について,「シグネチャーモデル」,「シグネチャーブランド」,「シグネチャーアイテム」等の使用例があることを紹介しているウェブサイトがあることが認められる(甲 33,34)ものの,このことから直ちに,日本において,「シグネチャーモデル」, 「シグネチャーブランド」,「シグネチャーアイテム」等の言葉が一般的に知られて いると認めることはできない。 また,「SIGNATURE」という語を,人物の名前等を併記せずに単独で使用 した場合に,「シグネチャーモデル」,「シグネチャーブランド」,「シグネチャーアイテム」等を意味するということはできないし,一般的に,「SIGNATURE」と いう言葉から,「シグネチャーモデル」,「シグネチャーブランド」,「シグネチャーアイテム」等が連想されるということもできない。
(ウ) したがって,上記(ア),(イ)の使用例があることは,上記アの認定を左右 するものではない。
(5) 取引の実情について
ア 前記1(2)で認定したとおり,たばこのパッケージは,概ね,目立つ位置 に目立つ態様で,メインブランドを示す文字や図形が表示されており,当該メインブランドにおいては,味やタール含有量等の違いによって,複数の種類のたばこが\n用意されており,同種類を示す文字(第2表示)が,メインブランドを示す文字の直近や離れた位置に,メインブランドに比べると目立たない態様で表\示されている。そして,第2表示としては,「MENTHOL」や「LIGHTS」といった味やタール量を連想させる文字があるものの,「CABIN RED」,「CASTE R WHITE」,「SPARK」,「Luckies」等,味やタール量と関連しな い文字もあり,これらの文字は,当該たばこの性質等を説明したものではなく,本 件指定商品の取引者や需要者から商標として認識されるものと認められる。 このように,たばこのパッケージに表示される第2表\\示が,必ず商品の性質等を 示す説明的な記載となることはなく,また,本件指定商品の取引者や需要者も,第 2表示が,たばこの性質等を示すものと認識するとは限らないというべきである。この点,原告は,たばこ業界においては,取引者や需要者は,メインブランドが\n出所識別標識であると認識していると主張するが,上記の「CABIN RED」, 「CASTER WHITE」等の第2表示の例からも明らかなように,第2表\\示 が出所識別標識として使用されることもあるのであるから,原告の上記主張は理由 がない。
イ 前記1(4)のとおり,引用商標の商標権者は,メインブランドを「GUD ANG GARAM」とするたばこを販売しており,同たばこには,「Signat ure」,「NUANNTARA」及び「Surya」等の種類があるところ,前記 1(4)で認定した事実からすると,上記のガラムブランドの商品のうちの「Sign ature」の文字は,複数の種類があるガラムブランドの商品のうちの一つの種 類であるガラムシグネチャー商品を示す商標として使用されており,また,同商品 のパッケージを見た取引者や需要者も,そのように認識するものと認められる。 この点,原告は,引用商標の商標権者は,引用商標を,パッケージの上端部に, 小さく「Signature MILD」,「Signature MENTHOL」 と表示して使用しており,商標として使用していない旨主張する。しかし,前記1(4)のとおり,「Signature」の文字は,「MILD」や「M ENTHOL MILD」とは一連に表示されておらず,「MILD」や「MENTHOL MILD」よりも大きく,また,異なる書体や色で表示されているから,「MILD」や「MENTHOL MILD」とは独立した表示として認識されるものであって,出所識別標識として使用されているものと認められる。\nしたがって,原告の上記主張は理由がない。
(6) 結論
ア 以上のとおり,1)本願商標の外観上,「SIGNATURE」の文字は, 本願図柄部分と一体のものとは認識できず,また,相応に目立つ態様で表示されていること,2)日本における「NO.555 STATE EXPRESS」又は「5 55」のブランドが知られている程度は相当に低いこと,3)本願商標の「SIGN ATURE」は,「署名,サイン」という意味に理解されるか又は意味を理解でき ないものであって,「SIGNATURE」が「シグネチャーブランド」,「特徴的 な銘柄」,「代表的な銘柄」の意味で理解されるとは認められないこと,4)たばこの パッケージに表示される第2表\\示は,必ずしも,商品の性質等を示す説明的な記載 となるとは限らないこと,5)引用商標の商標権者の引用商標の使用状況を考慮し得 るとしても,引用商標の商標権者は,「Signature」の文字をたばこのパッ ケージにおいて,出所識別標識として表示していることを総合考慮すると,本願商標に接した者は,通常,「SIGNATURE」の文字を本願図柄部分とは独立し\nて認識するものということができるから,同文字を本願図柄部分から分離して観察 することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認め ることはできないというべきである。 したがって,本願商標と引用商標との類否を検討するに当たっては,「SIGN ATURE」の部分を抽出して,この部分と引用商標との類否を検討し,両者が類 似するときは,両商標は類似するものと解するのが相当である。 そうすると,本願商標の「SIGNATURE」の部分と引用商標とは,称呼, 外観及び観念のいずれにおいても,共通するから,本願商標は,引用商標と類似す る。
イ(ア) 原告は,結合商標の一部を分離,抽出して商標の類否を判断すること は,「その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配 的な印象を与えるものと認められる場合」や「それ以外の部分から出所識別標識と しての称呼,観念が生じないと認められる場合」などの例外的な場合に限られるべ きであると主張する。 しかし,原告が挙げる上記の場合以外にも,各構成部分がそれらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認め\nられない場合には,分離観察が許されると解するのが相当であり,本願商標の「S IGNATURE」の部分を抽出して商標の類否を判断することができることは上 記アのとおりである。 (イ) 原告は,たばこの消費者は,店頭や自動販売機に陳列された商品のパ ッケージを目視し,商品の銘柄,パッケージのデザイン・色等を確認してから購入 するから,たばこに関しては,商標の称呼のみで取引されるケースはほとんどない こと,たばこの購入に当たっては,「主要銘柄」,「種類名」,「商品パッケージのデザイン」という三つの要素が重要となるところ,そのうち,「主要銘柄」と「商品パッ ケージのデザイン」が自他商品識別標識となることからすると,本願商標において 種類名を示す「SIGNATURE」の部分のみに注目して実際の取引が行われる ことは皆無であり,必ず,パッケージ全体のデザイン及び主要銘柄「No.555 STATE EXPRESS」を確認,認識して指定商品の取引がされると主張す る。 しかし,消費者が,たばこを購入するに当たって,「SIGNATURE」に注目 して購入することがないとはいえないから,原告の上記主張は理由がない。
(ウ) 原告は,「SIGNATURE」という言葉が持つ記述的な意味は,英 語を理解する者の観点からすると,ごく一般的な意味の一つであり,このようなご く普通の記述的意味の存在を無視するとすれば,国際企業の商標選択の余地を不当 に妨げ,パッケージデザイン等の自由を過度に阻害すると主張する。 しかし,本願商標の登録出願が認められないのは,引用商標が登録されているに もかかわらず,「SIGNATURE」の文字を,本願図柄部分とは独立した態様で, かつ,相応に目立つ態様で表示していることなど,上記アで判示した諸事情を総合考慮した結果であり,国際企業の商標選択の余地を不当に妨げ,パッケージデザイ\nン等の自由を過度に阻害するということはできない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。
(エ) 原告は,「SIGNATURE」という文字を含む複数の登録商標が, 引用商標と併存していることから,「SIGNATURE」の部分が本願商標の独立 した要部となることはない旨主張する。 前記1(1)エのとおり,たばこ等を指定商品とする登録商標には,「SIGNAT URE」の文字を含むものが複数存在する。 しかし,これらの登録例では,「SIGNATURE」と他の部分との結合の態 様等が本願商標とは異なっている。「SIGNATURE」の文字を含む登録商標 が複数存在することから直ちに,本願商標の「SIGNATURE」の文字を本願 図柄部分と分離して観察することができないことにはならないというべきである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。
(オ) 原告は,「JET」及び「Espresso」の欧文字が表示されたたばこパッケージと目される商標について,特許庁は,「Espresso」の部分\nは識別標識として機能しないと判断したところ,本件審決は,上記の判断と矛盾する旨主張するが,原告が指摘する上記の事例における登録出願商標及び引用商標は,\n本件とは異なるから,本件審決の判断が上記事例における判断と矛盾するというこ とはできない。

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平成31(行ケ)10037  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年8月7日  知的財産高等裁判所

  商標「KENKIKUCHI」は、,「キクチ(氏)ケン(名)」を読みとする人の氏名として把握されるかが争われました。知財高裁(3部)は、4条1項8号違反とした審決を維持しました。

 これに対し原告は,1)商標法4条1項8号の趣旨が第三者の人格権の保 護であるとしても,同法は,同号の「他人の氏名」の該当性を判断するに 当たり,第三者の人格権のみを考慮することは予定していないというべき\nであり,同法の目的である産業発展の寄与ないし需要者の利益保護の観点 から,登録が拒絶されることで受ける者の不利益も十分に考慮しなければ\nならないから,同号の「氏名」に該当するか否かは,特定人の同一性を認 識させるに足りる表記であるか,あるいは,本願商標がブランドとして一\n定の周知性を有するかという観点から総合的に判断されるべきであり,同 号の「他人」に当たるか否かは,その承諾を得ないことにより人格権の毀 損が客観的に認められるに足る程度の著名性・希少性等を有する者かとい う観点から判断すべきである,2)諸外国においても,「他人の氏名」であれ ば,その全てについて,その他人の承諾がない限り商標登録を認めないと いう判断はしておらず,特許庁の過去の審決例においても,自己の氏名を モチーフしたと考えられる多数の商標が登録査定を受けている旨主張する。 しかしながら,上記1)の点について,商標法4条1項8号の趣旨は,前 記アのとおり,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われること がないという人格的利益を保護することにある。そして,同号は,その規 定上,雅号,芸名,筆名,略称については,「著名な雅号,芸名若しくは筆 名若しくはこれらの著名な略称」として,著名なものを含む商標のみを不 登録とする一方で,「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称」については, 著名又は周知なものであることを要するとはしていない。また,同号は, 人格的利益の侵害のおそれがあることそれ自体を要件として規定するもの でもない。したがって,同号の趣旨やその規定ぶりからすると,同号の「他 人の氏名」が,著名性・希少性を有するものに限られるとは解し難く,ま た,「他人の氏名」を含む商標である以上,当該商標がブランドとして一定 の周知性を有するといったことは,考慮する必要がないというべきである。 次に,上記2)の点については,諸外国における他人の氏名を含む商標の 登録に関する法制や取扱いが,直ちに我が国における法解釈に影響を及ぼ すものではないし,特許庁の過去の審決例において,自己の氏名をモチー フしたと考えられる商標が登録査定を受けているとの事実があったとして も,本件審決における本願商標の商標法4条1項8号該当性の判断が,こ れに左右されるものではない。

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平成30(行ケ)10173  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年5月30日  知的財産高等裁判所

 4条1項19号違反とした審決が維持されました。別訴で、侵害訴訟において無効の抗弁がなされて、無効との判断がなされています。

 原告は,平成29年4月11日ころ,D及び国際建機販売を被告として, D及び国際建機販売による被告商標が付された名刺の使用,コンクリート ポンプ車の販売等が本件商標権の侵害に当たるなどと主張して,商標法3 6条等に基づき,被告商標を付したコンクリートポンプ車の販売及び営業 活動の差止め等,謝罪広告の掲載及び不法行為による損害賠償を求める訴 訟(東京地方裁判所平成29年(ワ)第12058号事件。以下「別件訴訟」 という。乙122)を提起した。 被告は,別件訴訟の係属中の同年6月1日,本件審判を請求した。
イ 東京地方裁判所は,平成30年6月28日,別件訴訟について,本件商標 が商標法4条1項19号に該当する旨の無効の抗弁を認め,D及び国際建 機販売に対し,本件商標権に基づく権利行使ができないとして,原告の請 求をいずれも棄却する判決(以下「別件原判決」という。乙142)をした。 原告は,別件原判決のうち,損害賠償請求を棄却した部分のみを不服と して,控訴(知的財産高等裁判所平成30年(ネ)第10057号事件)を提 起した。 その後,特許庁は,同年10月29日,本件商標の商標登録を無効とする 旨の本件審決をした。
ウ 知的財産高等裁判所は,平成31年1月29日,別件原判決と同様の理 由により,原告の損害賠償請求は理由がないと判断し,原告の控訴を棄却 する判決(乙174)をした。その後,同判決は確定した。
・・・
前記1の認定事実を総合すれば,「GSF Inc.」の名称でコンクリ ートポンプ車の輸入,販売等を行っていた原告代表者は,日本国内において,\n原告代表者自らが又は原告が被告からウォンジン産業を通じて仕入れた被告\n製コンクリートポンプ車の販売及びその営業活動を行う中で,本件商標の登 録出願時点までに,被告商標が付された被告製コンクリートポンプ車は,韓 国のトップ商品であること,被告商標が被告製コンクリートポンプ車を表示\nするものとして韓国国内のコンクリート圧送業者の間で広く知られていたこ とを認識していたが,被告が日本に進出してその営業拠点を作り,事業展開 を行うための営業活動に着手したことを知るや,被告商標が商標登録されて いないことを奇貨として,被告の日本国内参入を阻止又は困難にするととも に,本件商標を有償で被告に買い取らせ,あるいは原告が日本における被告 の販売代理店となる販売代理店契約の締結を強制させるなどの不正の目的を もって,原告による本件商標の商標登録出願をしたものと認められる。
(3) 以上によれば,本件商標は,被告の業務に係る被告商品を表示するものと\nして,韓国における需要者の間に広く認識されている被告商標と類似の商標 であって,不正の目的をもって使用をするものといえるから,商標法4条1 項19号に該当するものと認められる。

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平成30(行ケ)10176  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年5月30日  知的財産高等裁判所

 「再起動器を含む電源制御装置」を含む商標(商標「リブーター」)について、審決は無効理由なしと判断しましたが、知財高裁(2部)は、再起動機能有するものは識別力無し、それ以外は品質誤認(4条1項16号違反)と判断しました。
審決は、”「リブーター」は,特定の商品の名称を表すものとして一般に広く使用されているといった事実は認められないから,「リブーター」の文字が,本件商標の指定商品を取り扱う業界において,商品の品質等を具体的に表\すものとして取引上普通に使用されていると認めることはできない”と判断していました。

 前記1のとおり,「リブート」は,「reboot」という英語を片仮名で 表した語であるところ,「reboot」は,再起動するという意味の動詞であり(当\n裁判所に顕著な事実),また,「リブート」は,コンピュータなどを再起動すること を意味する語として,各種の用語辞典(用語事典)に掲載されており,さらに,多 くの雑誌やウェブサイト,さらには公開特許公報にも,上記の意味で使用されてい ることからすると,「リブート」という語は,再起動することを意味する普通名称で あると認められる。そして,前記1(4)で認定した事実からすると,情報・通信の技 術分野では,英語を片仮名で表した言葉が非常に多く存在すること,一般的に,英\n語の動詞の語尾に「er」,「or」等を付することにより,当該動詞が表す動作を\n行う装置等を意味する名詞となり,「エディタ」,「エンコーダ」,「カウンタ」,「デコーダ」,「プリンタ」,「プロセッサ」等,動詞を名詞化した語も多数存在することが認められるから,情報・通信の技術分野に属する者は,「リブーター」から,「re boot」の語尾に「er」を付した語である「rebooter」を容易に思い 浮かべるものと認められる。
さらに,前記1(2),(3)で認定した各事実からすると,コンピュータやルーター 等の機器を再起動する装置の需要があり,実際にそのような装置が販売されている ことが認められるところ,前記1(2)のとおり,このような再起動装置を「リブータ ー」又は「リブータ」と呼ぶ例があることが認められる。これに対し,本件証拠上, 「リブーター」の語が,他の意味を有するものとして使用されているという事実は 認められない。なお,前記1(4)ウ,エで認定したウェブサイトの記載によると,情報・通信の技術分野においては,英語を片仮名表記した場合は,語尾の長音符号を省く慣例があるものと認められるから,語尾の長音符号を有するか否かで別の語になるというこ\nとはできず,上記の「リブータ」も「リブーター」も同一の語であるということが できる。
以上からすると,情報・通信の技術分野においては,通常,「rebooter」 及びこれを片仮名で表した「リブーター」は,再起動をする装置と理解されるもの\nというべきである。 したがって,「リブーター」は,再起動装置の品質,用途を普通に用いられる方法 で表示する語と認められるから,指定商品が再起動装置又は再起動機能\を有する電 源制御装置である場合は,本件商標は,商標法3条1項3号の商標に該当するとい うべきである。 一方,再起動機能を有さない電源制御装置が指定商品である場合は,本件商標は,\n同号の商標には該当しない。
(2)ア これに対し,被告は,「チーター」を,「cheat」に「er」を加え た言葉とはいえず,これと同様に,「リブーター」を,「reboot」に「er」 を加えた言葉と解することはできないと主張する。 しかし,動物である「チーター」の英語は,「cheetah」であるから,語尾 に「er」を加えた言葉ということはできない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。
イ また,被告は,甲4文献及び甲6サイトでは,リブーターの機能等の説\n明もされており,このことは,リブーターという語のみからは,その機能等が理解\nできないことを意味する旨の主張をする。 しかし,前記(1)で判示したとおり,情報・通信の技術分野においては,リブータ ーという語は,再起動する機能を有する装置と理解されるのであり,このことは,\n甲4文献や甲6サイトの記載によって左右されないというべきであるから,被告の 上記主張は理由がない。
 ウ なお,被告は,甲38文献に記載された「リブーター」は何を意味する か理解できないと主張するが,前記1(2)カで認定した甲38文献の記載からすると, 同文献におけるリブーターは,再起動の機能を有する装置であると理解でき,少な\nくとも,再起動の機能を有さない他の装置を意味するものとは認識できないから,\n「リブーター」が再起動装置とは異なる別の物を意味する語として使用されている ということはない。
・・・
(1) 前記2のとおり,情報・通信の技術分野においては,通常,「reboot er」及びこれを片仮名で表した「リブーター」は,再起動をする装置と理解され\nるところ,再起動機能を有さない電源制御装置に,「リブーター」という語を使用す\nると,需要者,取引者は,当該電源制御装置が再起動機能を有しているものと誤解\nするおそれがあるというべきである。 したがって,指定商品が再起動機能を有さない電源制御装置である場合は,本件\n商標は,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあり,商標法4条1項16号の商標に 該当するというべきである。

本件商標は以下の通り
商標 リブーター(標準文字)
登録番号 第5590686号
出願日 平成25年2月8日
登録日 平成25年6月14日
指定商品
第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電気通信機械器具,測定機械器具,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電子応用機械器具及びその部品」

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平成30(ワ)11204  商標権侵害差止請求事件  商標権  民事訴訟 平成31年4月10日  東京地方裁判所(40部)

 被告標章は、上段に「ABCカイロプラクティックセンター」,下段に「乙地整体院」です。本件登録商標は,「ABCカイロプラクティック」(標準文字)です。本件登録商標は、先願商標「ABC」と類似するので、4条1項11号違反の無効理由があるので、権利行使不能と判断されました。争点は、「ABCカイロプラクティック」から「ABC」を要部認定できるかです。

 引用商標と原告商標の類否について
ア 商標の類否は,対比される商標が同一又は類似の商品又は役務に使用さ れた場合に,その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあ るか否かによって決すべきであるが,それには,使用された商標がその外 観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して 全体的に考察すべきであり,かつ,その商品又は役務に係る取引の実情を 明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当 である(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号3 99頁,最高裁平成9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号10 55頁参照)。
この点に関し,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるもの\nについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分のみを他人の商標と\n比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されないが, 商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対して商品又は役務の出所識別\n標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外 の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合 などには,その部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判 断することも許されるも 察し得るところ,「ABC」はアルファベットの最初の三文字を並べたも のであり,「初歩。基本。いろは。」などの観念も生じる語として需要者 に馴染みのある上,「ABC」の文字は役務の内容等を具体的に表すもの\nでもないことからすれば,原告商標の指定役務に係る取引者,需要者に対 し,役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ る。そうすると,原告商標の要部は「ABC」の部分であり,この部分の みを抽出して引用商標と比較して商標の類否の判断をすることが許される というべきである。 原告商標の構成部分である「ABC」と引用商標である「ABC」は,\nその外観,観念及び称呼がいずれも同一であり,整体院等の店舗における 役務の提供に当たり使用されるという実情を踏まえても,原告商標と引用 商標とが同一又は類似の役務に使用された場合に,役務の出所につき誤認 混同を生ずるおそれがあるということができる。
ウ これに対し,原告は,「ABC」の文字には英単語としての意味がない ことから,原告商標の「ABC」の部分はそれのみで役務の出所識別標識 としての機能を有するものではないと主張する。\nしかしながら,「ABC」の文字に英単語として特定の意味を有するも のではないとしても,アルファベットの最初の三文字として需要者にとっ て馴染みがあることは前記判示のとおりであり,「カイロプラクティック」 という部分が,原告商標の指定役務との関係において,役務の種類ないし 内容を表示するものにすぎないのに対し,「ABC」という部分は役務の\n内容等を具体的に表すものでもないことも考慮すると,同部分は,それの\nみで役務の出所識別標識としての機能を有するものということができる。\nまた,原告は,原告商標の「ABC」の部分は,役務の内容や役務を提 供する方針等と関連する略語として使用される実情があるため,原告商標 の「ABC」の部分は「カイロプラクティック」という役務の内容と関連 する何らかの略語という印象を与えるのが自然であると主張する。 しかし,「ABC」という語が役務の内容や役務を提供する方針等の略 語として使用されるのが一般的であるということはできず,むしろ,前記 のとおり,アルファベットの最初の三文字として理解されるのが通常であ るというべきである。そうすると,原告商標の「ABC」の部分が「カイ ロプラクティック」という役務の内容と関連する何らかの略語という印象 を需要者に与えるということはできない。 したがって,原告の主張は理由がない。

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平成30(行ケ)10119  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年2月6日  知的財産高等裁判所

 FC2対ドワンゴが、標章「ブロマガ」が周知か否かを争いました。 知財高裁3部は、周知でないとした審決を維持しました。

 上記1(2)のとおり,4つのウェブメディアにおいて,平成21年1 月に,原告が開始した原告サービスについて「ブロマガ」という名称と 共に紹介する記事が掲載されたことが認められるが,原告が主張する上 記各ウェブメディアの月間PV数(約100万〜2000万PV)から は,上記各記事自体のPV数は明らかではない。また,上記各記事は同 じ日に掲載されたものであり,掲載日から本件出願日までに約3年8か 月以上が経過していることも併せ考えると,上記各記事が掲載された事 実は,本件出願日における引用商標の周知性を裏付けるものとはいえな い。
(イ) 上記1(3)のとおり,複数の書籍に原告サービスに関する記載がある ことが認められるが,各書籍の販売部数は明らかではなく,各書籍が発 行された事実は引用商標の周知性を裏付けるものとはいえない。 また,上記1(3)の1)及び2)からは,平成21年8月から平成22年2 月までの間にFC2ブログの管理画面ないし管理ページの映像面が変更 されたことがうかがわれ,上記書籍の記載のみから,原告が,原告サー ビスの開始時から本件出願日までの期間を通じ,FC2ブログのうちの いかなるウェブサイトにいかなる方法で引用商標を表示していたかは明\nらかではない。したがって,FC2ブログの利用者の間において引用商 標が周知性を獲得したことを認めることは困難である。
(ウ) 上記1(4)のとおり,Qが原告の提供する原告サービスについて言及 したツイートを4回したことが認められる。そのツイッターアカウント のフォロワー数は多いが,多数のユーザーから大量のツイートが投稿さ れ,これらのツイートがタイムラインに順次表示されるというツイッタ\nーの性質上,上記4回のツイートがされたことによって,引用商標が周 知性を獲得したということはできない。また,同人が原告サービスを利 用していたとしても,原告サービスを通じた購読者数は多くないことが 認められるから,購読者を通じて引用商標が周知性を獲得したとはいえ ない。 なお,上記メールマガジンについて報道したITmediaの平成22年11 月30日付け記事(甲21)自体のPV数は不明で,この記事が掲載さ れた事実が周知性を裏付けるものとはいえないのは,上記(ア)に説示した ところと同様である。
(エ) 上記1(5)のとおり,平成24年8月頃の「niconico新サービス発表\n会 in ニコファーレ」において引用商標について質問されたことが認め られるが,発表会における1度の質問が引用商標の周知性を裏付ける事\n実といえないのは明らかである。
(オ) そして,本件出願日までに約3年8か月の間,引用商標が使用されて いたこと,及び本件出願日の属する平成24年9月における原告サービ スの売上げは●●●●●●であったことが認められるものの(上記1(1)), 以上に説示した点や,原告サービスの利用者数や上記売上げに係るブロ グ記事の数量は不明であり,また,原告が提供する原告サービスに関し, 本件出願日までにされた広告の回数,方法及びこれに費消した金額も明 らかではないことからすれば,本件出願日当時,引用商標が原告の業務 に係る役務を表示するものとして需要者の間で周知であったと認めるに\nは足りないというべきである。
ウ したがって,本件商標について商標法4条1項10号に該当する事由が あるとはいえない。
(2) 原告の主張について
原告は,FC2ブログが多数のユーザーが利用する著名なサービスである ことを主張するが,仮にそうであるとしても,直ちに引用商標が周知である ということにはならない。原告は,引用商標がFC2ブログの操作画面等に も表示されるようになったこと,FC2ブログのユーザーが利用する管理画\n面には常に「ブロマガ」の紹介がされ,数百万のユーザーに対して,随時, 「ブロマガ」について周知の措置がとられていたことを主張するが,上記(1) イ(イ)のとおり,このような事実を裏付ける的確な証拠はない。
原告は,原告サービスがインターネット上で大きく取り上げられたこと, 日本有数の発信力を誇るQが原告サービスのユーザーであり,原告サービス についてツイートしていること,「niconico新サービス発表会 in ニコファ ーレ」において引用商標について質問があったことを主張するが,これらの 事実により引用商標が周知性を獲得したといえないのは,上記(1)イに説示し たとおりである。また,原告は,Rの息子として知られ書籍を出版している Sが原告サービスのユーザーであると主張するが,このような事実は引用商 標の周知性を裏付けるものではない。
原告は,平成21年1月から平成25年9月までの原告サービスを利用し たブログの売上げは合計●●●●●●●●●●●●であると主張するが,こ の売上げからは,原告サービスの利用者数も上記売上げに係るブログ記事の 数量も明らかではなく,上記事実があったとしても,引用商標が本件出願日 までに周知性を獲得したことを認めるには足りない。 以上のとおりであるから,原告の主張はいずれも採用できない。
3 商標法4条1項15号該当性について
(1) 商標法4条1項15号の「混同を生ずるおそれがある商標」における「混 同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他\n人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品又は指定役\n務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質,用途又は目的における関 連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実 情などに照らし,当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者にお いて普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである(最 高裁平成10年(行ヒ)第85号平成12年7月11日第三小法廷判決)。 本件においては,引用商標について周知性が認められないのは上記2に説 示したとおりであり,本件商標が,同号にいう「混同を生ずるおそれがある 商標」に当たるということはできない。 よって,本件商標について同号に該当する事由があるとはいえない。
(2) 原告の主張について
原告は,引用商標は相当広範囲で認知されていたものであるところ,周知 性が認められないからといって,商標法4条1項15号「混同を生ずるおそ れがある商標」に当たらないということはできない旨主張する。 しかし,同号の規定は,周知表示又は著名表\示へのただ乗り(いわゆるフ リーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し,\n商標の自他識別機能を保護することにより,商標を使用する者の業務上の信\n用の維持を図り,需要者の利益を保護することを目的とするものであると解 される。また,引用商標が周知でなければ,それが需要者に一般的に認識さ れることはなく,したがって,原告の業務に係る商品又は役務との混同(狭 義の混同,広義の混同のいずれも含む。)のおそれが生じることもないと考 えられるのであって,これらのことを併せ考えれば,引用商標が周知性さえ も備えていないと認められる場合に,商標法4条1項15号が適用される余 地はないというべきであるし,「周知著名性の程度」(したがって,最低限 の周知著名性は備えていることが前提になると解される。)を問題とする上 記最高裁判決も,以上のことを前提にしているものと解される。したがって, 原告の主張は採用できない。

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平成29(行ケ)10206  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年3月26日  知的財産高等裁判所

 シーサーの図形商標について、プーマが無効審判(11号、15号、7号違反)を請求しました。特許庁は無効理由なしと判断しましたが、知財高裁(2部)はこれを取り消しました。争点は、パロディ図形の混同要件です。周知商標については、混同範囲を広くしようという最近の傾向に合致した判決です。

 被告は,沖縄の伝統的な獅子像である「シーサ」の観念を生じさせようとして本 件商標を創造した旨主張する。 「シーサ」は,「シーサー」を指すものと解されるところ,「シーサー」は,「獅子 さん」の意味であり,沖縄で,瓦屋根等にとりつける素朴な焼き物の唐獅子像であ って,魔除けの一種である(広辞苑第六版。甲5)。「シーサー」の形状には,様々 なものがあり,概ねその特徴とされる点としては,たてがみや首飾り,剥き出した 牙,渦巻くような毛並み,太くふっくらとした尻尾等があり,また,頭部が体全体 に占める割合が相当大きく,目や口も大きく,その姿勢としては,上体を起こした 状態で前足をついたものが多いが,四つん這いになったもの,前かがみのもの,後 足だけで立ち上がったもの等,様々な形態があり,多くの場合には尻尾が上空に向 かって炎のように逆立ち,その先端はすぼんでいる(甲6)。 本件商標を上記の一般的な「シーサー」と比べると,首飾りのような模様,前足・ 後足の関節部分における飾り又は巻き毛のような模様,尻尾の全体的に丸みを帯び て先端が尖った形状等は,いずれも一般的な「シーサー」の特徴とされているとこ ろと一致する。しかし,本件商標は,頭部が体全体に占める割合が相当小さく,口 に当たる位置にギザギザの白線の模様はあるが,目に当たる位置に目に見える記載 はなく,四足動物が跳び上がるように前足と後足を大きく開いている姿勢は,「シー サー」の形態として一般的なものとはいえない。 そうすると,本件商標の図形が,四足動物を表現したものと看取することはでき\nても,「シーサー」を表現したものと看取することは困難である。\nしたがって,本件商標から「シーサー」の観念が生じると認めることはできない。
・・・
 前記アのとおり,本件商標と引用商標は,そのシルエット,内部に白 線による模様があるかなどにおいて異なるが,全体のシルエットは,似通っており, 本件商標において,内部の白い線の歯のような模様,首の回りの飾りのような模様, 前足と後足の関節部分の飾り又は巻き毛のような模様及び概ね輪郭線に沿って配さ れている白い線がシルエット全体に占める面積は,比較的小さく,細い白い線の花 柄のような細かい模様は,それほど目立たないものである。 したがって,本件商標と引用商標との間に外観上の差異は認められるものの,外 観全体の印象は,相当似通ったものであるということができる。 また,前記イ及びウのとおり,本件商標と引用商標は,本件商標からは何らかの 四足動物の観念が生じ,特定の称呼は生じないが,引用商標からは,「PUMA」ブ ランドの観念と「プーマ」の称呼が生じる点で異なっているところ,本件商標から 何らかの四足動物以上に特定された観念や,特定の称呼が生じ,それが引用商標の 観念,称呼と類似していない場合と比較して,その違いがより明確であるというこ とはできない。
(イ) 前記(2)イのとおり,引用商標は,原告の業務に係る「PUMA」ブ ランドの被服,帽子等を表示する商標として,我が国の取引者,需要者の間に広く\n認識されて周知著名な商標となっていたものである。 また,本件商標は,「Tシャツ,帽子」を指定商品とするところ,前記(2)イのと おり,「PUMA」ブランドの商品としても,Tシャツ,帽子が存在し,引用商標と 同様の形の図形を付した商品も存在していたのであるから,本件商標の指定商品は, 原告の業務に係る商品と,その性質,用途,目的において関連するということがで き,取引者,需要者にも共通性が認められる。 さらに,本件商標の指定商品である「Tシャツ,帽子」は,一般消費者によって 購入される商品である。
(ウ) これらの事情を総合考慮すると,本件商標の指定商品たるTシャツ, 帽子の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,本件商標を 指定商品に使用したときに,当該商品が原告又は原告と一定の緊密な営業上の関係 若しくは原告と同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営\n業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあると認められる。 したがって,本件商標には,商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれ」 があるといえる。

◆判決本文

関連事件です。
いずれも無効理由なしとの審決維持です。本件と異なり、文字商標が存在しており、 図形がシーサーであるとの観念が生ずるというものです。

7号、11号、15号違反が争点となってますが、いずれも無効理由なしと判断されています。

◆平成29(行ケ)10205

7号違反のみ争点で無効理由なしと判断されています。

◆平成29(行ケ)10204

7号違反のみ争点で無効理由なしと判断されています。

◆平成29(行ケ)10203

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平成30(ワ)4954  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 平成31年3月14日  大阪地方裁判所

 図形+「TeaCoffee」の結合商標についての商標権侵害事件です。被告は、TeaCoffeeと文字部分のみ使用していました。大阪地裁は、文字部分だけでは識別力無しとして、非類似と判断しました。

 原告商標の文字部分,すなわち「TeaCoffee」の語は,頭文字の「T」の文字 だけでなく,「C」の文字も大文字で表記されており(甲2),「Tea」は「茶,紅 茶」を,「Coffee」は「コーヒー」を意味する英単語としていずれも日本社会にお いてよく知られていることに照らせば,取引者,需要者は,これを「Tea」と 「Coffee」の2語を接続した語と認識すると認められる。
b ところで,前記(ア)aで認定した別紙「複数の原材料を組み合わせた飲料の 商品名等一覧表」のとおり,複数の原材料を組み合わせた飲料の商品名等について\nは,原材料を構成する物の名前を接続した語とする例が数多く見られる。そして,\nその中には,「ミルクコーヒー」,「Cafe au Lait」,「ミルクティー」,「レモ ンティー」等のように,既に一つの日本語として定着している語がある。また,特 定の業者ではなく缶飲料やペットボトル飲料を販売する大手各社が,紅茶とその他 の原材料を組み合わせた飲料として「アップルティー」,「梅ティー」,「レッド グレープティー」等,抹茶と牛乳を組み合わせた飲料として「抹茶ラテ」,ほうじ 茶と牛乳を組み合わせた飲料として「ほうじ茶ラテ」等,その他として「ゆずはち みつ」,「はちみつレモン」等のように,様々な組合せの語を使用している。また, 飲料の名前から生じる認識を検討するに当たっては,このような大手各社が販売す る飲料だけでなく,「最新アイスドリンク」(乙32,33),「New Arrange Drink」(乙33)などとして,実際に創作的か否かはともかく,創作的な飲料を 提供しようとしていることがうかがわれるカフェのメニューで使用されている例も 参考になり得るところ,同別紙のとおり,「ハニーレモンティーソーダ」,「ピー\nチゼリーティ−」,「アイスマンゴーティー」があるほか,「抹茶ミルク」,「ゆ ず緑茶」,「ほうじ茶ジンジャエール」,「ソイマンゴー」,「バナナ酢ミルク」\n等のように,メニュー名自体は,原材料を構成する物の名前を単に接続した語が使\n用されている。 これらの多数の例において,各原材料の語自体は,食用又は飲用に供される物の 名前として一般に認識されている語であるから,上記の各商品名等に接した取引者, 需要者は,それらの語の間に,「と」,「+」,「×」などといった,ある物にあ る物を加えるとか,ある物とある物を掛け合わせるといった際に用いられる文字や 記号が使用されていなくても,それらの飲料がそれらの原材料を組み合わせた飲料 であると認識すると推認される。
c 以上は,飲料一般についてのものであるが,茶(日本茶,紅茶)とコーヒー を組み合わせた飲料等については,別紙「茶とコーヒーを組み合わせた飲料等の販 売開始時期や商品名等一覧表」記載のとおり,原告商品が販売される以前からその\nような商品やメニューが少なからず存在し,その中には,「お茶コーヒー」(同別 紙の番号1),「抹茶カフェオレ」(同3),「コーヒーほうじ茶」(同6。ティ ーバッグの形で販売されていた〔乙17〕。),「グリーンティーコーヒー」(同 9),「ほうじ茶カプチーノ〜黒蜜添え〜」(同10),「抹茶カプチーノ」(同 13),「ほうじ茶カプチーノ」(同13),「ほうじ茶珈琲」(同18。ティー バッグの形で販売されていた〔乙16〕。)という,茶を意味する語とコーヒー等 を意味する語を接続しただけの商品名等のものがあったほか,料理レシピとしても, 「緑茶コーヒー」(同14,17)という,茶を意味する語とコーヒーを意味する 語を接続しただけの名前のものがあったと認められる。しかも,このような茶とコ ーヒーを組み合わせた飲料等は,1)大手缶コーヒー業者である日本コカ・コーラ社 (同5,8)やJT社(同7),2)大手コンビニエンスストアチェーンであるファ ミリーマート(同9),3)コーヒー等のドリップバッグ商品の通信販売業者である ブルックス(同12),4)カフェ店であるカフェ・ド・クリエ(同10)という, 飲料等の販売形態を細分化して見れば業界を異にする,それぞれの業界において著 名な業者等から,販売されていただけでなく,日本コカ・コーラ社からは第1弾商 品が販売された約6か月後に第2弾商品を販売されるほどのものであった。 これらからすると,「TeaCoffee」との表記に接した需要者,取引者が,それが\n複数の原材料を組み合わせた他の飲料の商品名等と同様に,「Tea」と「Coffee」 を組み合わせた飲料等を意味すると認識することに妨げはなく,そのように認識す ると認めるのが相当である。
(ウ) 原告の主張について
a 原告は,お茶入りコーヒーについて「TeaCoffee」というネーミングはされ ておらず,取引者,需要者に「Tea」のような「Coffee」であるのか,「Tea」と 「Coffee」を融合させたものであるのかなどという想像を膨らませるものであるか ら,自他商品識別力を有すると主張する。 確かに,原告商品が販売される前から存在した茶とコーヒーを組み合わせた飲料 等の販売等に当たっては,茶とコーヒーを組み合わせることが新しい試みであると いう趣旨の宣伝文句が常套文句になっており,被告商品の販売が開始される際にも 「コーヒーと茶葉の新しい組み合わせ!」などという宣伝文句を用いられているこ と(甲5)に照らせば,被告が被告商品の販売を開始するまでの時点(平成30年 4月)においても,茶とコーヒーを組み合わせた飲料等は定番のものになっていな かったと認められる。また,本件において,原告商品が発売されるまでに,茶とコ ーヒーを組み合わせた飲料等について「TeaCoffee」という名前が使用された例が あるとは認められない。したがって,「TeaCoffee」という名前が,茶とコ 料名を接続した商品名等とすることが一般によく見られるものであることからする と,取引者,需要者がそのような商品名等に接した場合には,そのような原材料の 組合せが飲料等として想定し得ないものでない限り,その飲料等がそれらの原材料 を組み合わせたものであると認識することは自然なことである。そして,茶とコー ヒーの組合せが飲料等として想定し得ないものとはいえない上,それらを組み合わ せた飲料等において,その組合せの新規さをうたいつつ,その商品名等として 「茶」を表す語と「コーヒー」を表\す語を接続したものが多数見られてきたのも, その商品名等によってその飲料等がそれらの原材料を組み合わせたものであると認 識されることを多くの業者が前提としてきたことによるものと解される。 したがって,お茶入りコーヒーのネーミングとして「TeaCoffee」が一般的でな いという原告の主張を前提としても,「TeaCoffee」との語は,原告商標の指定商 品について使用するときには,商品の品質(内容)又は原材料を直接的に示すにす ぎないものとして,自他商品識別力を有しないと認めるのが相当である。
・・・・
(d) このように原告商標の文字部分(「TeaCoffee」)は,それと同じ称呼がさ れ得る「teacoffee」,「TEACOFFEE」及び「ティーコーヒー」を含めて見ても,そ もそも使用されている頻度が低い上に,使用されても,自他商品識別標識であると 認識され得る別の表示(京茶珈琲)とともに使用されていたり,記述的表\示である と認識され得ることにつながりかねない表示(TEA×COFFEE)とともに使用されて いたりするなど,自他商品識別標識であるとは認識されにくい形で使用されてきた ことが多いといえる。 以上の点を踏まえると,「TeaCoffee」の語が,原告による原告商品の販売に伴 って原告商品を指すものとして自他商品識別力を獲得するに至ったとは認められな い。
ウ 以上からすると,「TeaCoffee」の語は,被告が使用する標章の使用時点に おいて,原告商標の指定商品である「茶,コーヒー,茶入りコーヒー,コーヒー 豆」に使用されるときには,茶とコーヒーを組み合わせた飲料等の商品の品質(内 容)又はその原材料を記述的に表示しているものとして,取引者,需要者によって\n一般に認識されるものであって,自他商品識別力を欠くものというべきである。し たがって,原告商標の構成中,「TeaCoffee」の文字部分については,原告商標の 要部ということはできないから,原告商標については,「TeaCoffee」の文字部分 と図形部分から成る全体の構成が一体となって,初めて自他商品識別力を有するに\n至っているものというべきである。

◆判決本文

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平成30(行ケ)10121  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年3月12日  知的財産高等裁判所

 商標「キリンコーン」が、商標「KIRIN」などと類似(4条1項11号違反)すると判断されました。11号違反なので指定商品の類似も争われています。

 (1) 複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについては,商標の\n各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不\n可分的に結合しているものと認められないときには,その構成部分の一部を抽出し,\n当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許される場合が あり,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識\nとして強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出 所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成\n部分の一部だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許される(最 高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻 12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法 廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20 年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。 以下,上記判断枠組みに沿って本件商標について,「キリン」の部分を要部として 抽出することができるかどうかについて検討する。
(2) 本件商標は,前記第2の1のとおり,本件指定商品を第31類「とうもろ こし」とするもので,その構成は,「キリンコーン」の片仮名を茶色で縁取りし,そ\nの内側を黄色で表してなるもので,「キリンコーン」の文字が,同一の書体,色彩で\n横一連に表示されたものである。\nもっとも,1)本件商標の構成中,「コーン」の文字部分が「とうもろこし」の意味\nを有する英語である「corn」 の読みを片仮名で表したものであること(甲9〜\n12,44,45),2)「キリン」の文字部分が,「(a)中国で聖人の出る前に現れ ると称する想像上の動物。(b)最も傑出した人物のたとえ。(c)ウシ目キリン科 の哺乳類。」との意味を有していること(乙24),3)「キリンコーン」が特段の意 味を有しない造語であることからすると,本件商標は,「キリン」と「コーン」とを 結合した結合商標と理解することができるものである。 また,上記のように「コーン」が本件指定商品である「とうもろこし」の意味を 有する英語である「corn」 の読みを片仮名で表したものであることは,わが国\nにおいても広く知られていること(甲44,45,弁論の全趣旨)からすると,本 件指定商品との関係では,本件商標の構成中,「コーン」の文字部分は,本件指定商\n品そのものを意味するものと捉えられ,その識別力は低いものといえる。 他方で,上記のような意味を有する「キリン」は,本件指定商品との関係で,「コーン」よりも識別力が高く,取引者,需要者に対して強く支配的な印象を与えると いうべきである。 そうすると,本件商標の「キリン」の文字部分と「コーン」の文字部分とが,分 離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合している とは認められず,本件商標から「キリン」の文字部分を要部として観察することは 許されるというべきである。
(3) 被告は,1)その構成からして本件商標を「キリン」と「コーン」に区切っ\nて称呼することは明らかに不自然であること,2)「コーン」という用語は,特に食 品業界においては,「スイートコーン」などのように,「○○コーン」,「コーン○○」として商品名や商標に一体的に使用されている実情があることからすると, 本件商標に接した需要者は,これを一体の商標として認識し,称呼すると主張する。 上記1)について, 色彩で横一連に表\n示されたものであるが,「キリン」と「コーン」を統合したものと理解されるので あって,分離して観察することができるものである。 上記2)について,被告が指摘する各例は,いずれも「コーン」と他の語が結合さ れることによって,「○○コーン」や「コーン○○」が,それ自体として,特定の 意味を有する一つの語として機能しているものである。他方,本件商標「キリンコ\nーン」は,前記のように造語であってそれ自体としては一つの語として特段の意味 を有しないものであるから,それらの例をもって本件商標が一体として認識,称呼 されるとはいい難いところである。 以上からすると,被告の上記主張は採用することができず,前記(2)の判断は左右 されない。
2 本件商標と引用商標の類否について
(1) 本件商標から要部である「キリン」の文字部分を抽出した場合,同部分か らは「キリン」との称呼が生じるとともに,「中国で聖人の出る前に現れると称する 想像上の動物」及び「ウシ目キリン科の哺乳類」との観念が生じる。 この点について,本件審決は,本件商標が茶色と黄色で表示されていることから\nすると,「キリン」の文字部分は「ウシ目キリン科の哺乳類」のみを表したものとす\nる。しかし,「中国で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物」の色彩について, これがはっきりと定まっているわけではないことからすると,本件商標の構成中の\n「キリン」の文字部分から「中国で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物」との観念が生じないとはいえない。 (2) 引用商標は,別紙のとおりの構成からなるものであり,いずれからも本件\n商標と同じ「キリン」との称呼が生じる上,引用商標1〜4,6,7からは「中国 で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物」及び「ウシ目キリン科の哺乳類」 との観念が生じ,引用商標5からは「中国で聖人の出る前に現れると称する想像上 の動物」との観念が生じるから,本件商標と引用商標を観念で区別することはでき ない。 また,「キリン」の片仮名を縦又は横に記載した引用商標1,2,6と本件商標と は,「キリン」の文字部分の色彩や書体に違いはあるものの,本件商標の「キリン」 の文字部分とは,「キリン」の文字は同じであるから,外観上,類似するものといえ る。 以上に加え,本件指定商品である第31類「とうもろこし」の需要者に一般消費 者が含まれることも併せて考慮すると,本件商標と引用商標は,出所について誤認 混同を生ずるおそれがある類似する商標というべきである。 3 被告の主張する取引の実情について 被告は,1)実店舗において,「かに太郎」との屋号が表示されており,実店舗にお\nける販売では,近隣にある旭山動物園にちなんで名付けられた本件商標を付した「と うもろこし」が,同様に上記動物園にちなんで名付けられた「ライオンコーン」な どと共に販売されていること,2)インターネットにおける販売でも,同様に「かに 太郎」との屋号が用いられて被告の氏名等がウェブサイトに記載されるなどしてい る上,本件商標を付した「とうもうろこし」が,「ライオンコーン」などと共に販売 されたり,「旭山動物園キリンコーン」などと記載されたりしていて,「とうもろこし」の生産者,販売者が原告であると誤認混同するおそれはないと主張する。 しかし,被告の上記主張は,現在の販売形態について主張するものにすぎず,一 般的,恒常的な事情とまではいい難いものである。 また,「かに太郎」との屋号や被告の氏名等が表示されていたしても,販売されて\nいる商品について,その生産者・製造者と消費者への最終的な販売者が異なること があり得ることからすると,そのことをもって誤認混同のおそれが生じなくなるも のではない。 さらに,「旭山動物園キリンコーン」との表示がされている点や本件商標を付した\n「とうもろこし」が,「ライオンコーン」などと共に販売されている点など被告が主張する点を考慮したとしても,各ウェブサイトにおいて,写真中に「キリンコーン」, 「送料無料」,「10本」とのみ表示した「とうもろこし」の写真が掲載されている\nこと(乙3の1枚目,乙16の2枚目,乙23の2枚目)や本件指定商品の需要者 が一般消費者であって,かつ本件指定商品が比較的安価なものであることからする と,消費者が注意深く観察せずに,本件商標が付された商品を購入することもあり 得るものといえることからすると,被告が主張する点により直ちに誤認混同のおそ れが生じなくなるとはいえないところである。 以上からすると,被告の上記主張は採用することができず,前記2の認定判断を 左右するものではない。 なお,被告は,本件商標登録の出願をした経緯や原告が「とうもろこし」を生産・ 販売していないこと,原告が本件商標と同じ商標を出願して商標登録を得たことを 主張するが,これらは,何ら前記2の認定判断を左右するものではない。
4 商品の類否について
(1) ア 本件指定商品は,「第31類 とうもろこし」であるところ,商標法施 行令別表(以下「政令別表\」という。)は,第31類を「加工していない陸産物,生 きている動植物及び飼料」と定めている。そして,本件商標登録出願時の平成28 年経済産業省令第109号による改正前の商標法施行規則別表(以下「旧省令別表\」 という。)は,第31類に属するものを1から15に分類し,そのうちの1で「1 あ わ きび そば ごま とうもろこし ひえ 麦 籾米 もろこし」として,「とうもろこし」を他の雑穀や穀物と並べて記載していたが,「10 野菜」には,とうも ろこしは記載されていなかった。 また,本件商標登録出願時における特許庁の旧審査基準(甲32)では,「とうも ろこし」は,「あわ きび そば ごま ひえ 麦 籾米 もろこし」,「豆」,「米 脱 穀済みのえん麦 脱穀済みの大麦」と同一の類似群(33A01)に属するとされ ていた。 これらのことからすると,旧省令別表第31類1にいう「とうもろこし」は,「穀\n物」としての「とうもろこし」であったと解するのが相当であり,「第31類 とう もろこし」とする本件指定商品の範囲は,少なくとも「穀物」としての「とうもろこし」に及ぶものである。
イ また,商標法施行規則別表における細分類の表\示は飽くまで例示である ところ,政令別表は,前記のとおり,本件指定商品が含まれる第31類を「加工し\nていない陸産物,生きている動植物及び飼料」と定めており,本件商標の出願後に 施行された平成28年経済産業省令第109号が,商標法施行規則別表の第31類\n1中の「とうもころし」を「とうもろこし(穀物)」とし,同類10「野菜」に「と うもろこし(野菜)」を加えたように,第31類の中には,「穀物」としての「とう もうころし」と「野菜」としての「とうもろこし」の双方が含まれるということが できる。このことに照らすと,本件指定商品「第31類 とうもろこし」は,「穀物」 としての「とうもろこし」だけでなく,「野菜」としての「とうもろこし」も含むと 解することが相当である。本件商標に類似群コードとして「33A01」が付され ていることはこの認定を左右しない。
ウ 以上の検討からすると,本件指定商品の範囲には,「野菜」としての「と うもころし」及び「穀物」としての「とうもろこし」のいずれもが含まれると解さ れるのであり,これを前提にして商品の類否の判断をするのが相当である。
エ 被告は,1)従前から「野菜」である「とうもろこし」を生産,販売して おり,「穀物」である「とうもろこし」は生産,販売したことがないし,今後も生 産,販売するつもりはないこと,2)被告が,「野菜」としての「とうもろこし」に 本件商標を使用する意図で,「野菜」としての「とうもろこし」の資料とともに本件商標の出願をしたこと,3)類似群コードが特許庁により付されたものであることな どから,本件指定商品は,「野菜」としての「とうもろこし」と解すべきであると主 張する。 しかし,本件指定商品は「第31類 とうもろこし」であるから,前記ア〜ウの とおり解されるのであって,上記1)〜3)の事情は,この認定を左右するものではな い。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(2)ア 前記(1)を踏まえて,本件指定商品と引用商標の各指定商品が類似する かどうかを検討するに,指定商品が類似のものであるかどうかは,商品自体が取引 上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判断すべきものではなく,それらの商品 が通常同一営業主により製造・生産又は販売されている等の事情により,それらの 商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一の営業主の製造・生産又は販売に かかる商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にある場合には,たとえ, 商品自体が互いに誤認混同を生ずるおそれがないものであっても,類似の商品に当 たると解するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第1104号同36年6月 27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁参照)。
イ 本件指定商品の範囲に含まれる「穀物」としての「とうもろこし」と, 引用商標1の指定商品中の「米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦」と引用商標 4の指定商品中の「豆」とは,いずれも「穀物」に属するものであって,その生産 者,販売者が一致することが通常あり得るものと認められるし,その需要者にはい ずれも一般消費者が含まれるものである。 したがって,それらの商品に同一又は類似の商標が使用されたときには,同一の営業主の生産又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるということができ,本 件指定商品と,引用商標1の指定商品中の「米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大 麦」及び引用商標4の指定商品中の「豆」は,商標法4条1項11号にいう類似の 商品に当たるというべきである。
ウ 次に,引用商標2の指定商品中の「野菜(「茶の葉」を除く。)」には,「野 菜」としての「とうもろこし」が,引用商標2,4,5の指定商品中の「冷凍野菜」 には「冷凍とうもろこし」が,引用商標4〜7の指定商品中の「加工野菜」には, 「加工済みスイートコーン」のような「加工済みのとうもろこし」が,引用商標3, 5,6の指定商品中の「穀物の加工品」には,「炒ったとうもろこし」がそれぞれ含まれるものと認められる。 本件指定商品には「とうもろこし(野菜)」が含まれているから,本 件指定商品は,この点において,引用商標2の指定商品中の「野菜(「茶の葉」を除 く。)」と同一である。
b また,本件指定商品である「とうもろこし(野菜)」と引用商標2, 4,5の指定商品中の「冷凍野菜」に含まれる「冷凍とうもろこし」とは,同じ「野 菜」としての「とうもろこし」からなるものであって,生産者・製造者,販売者が 同一の場合もあり得るものと認められる。 したがって,本件指定商品である「とうもろこし(野菜)」と引用商標2,4,5 の「冷凍野菜」に同一又は類似の商標が使用されたときには,同一の営業主の生産・ 製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるということができるから,本件 指定商品である「とうもろこし(野菜)」と引用商標2,4,5の指定商品中の「冷 凍野菜」は,商標法4条1項11号にいう類似の商品に当たるというべきである。 本件指定商品である「とうもろこし(穀物)」と引用商標2,4,5の 指定商品中の「冷凍野菜」,引用商標4〜7の指定商品中の「加工野菜」,引用商標 3,5,6の指定商品中の「穀物の加工品」及び引用商標2の指定商品中の「野菜 (「茶の葉」を除く。)」とは,「穀物」か「野菜」か,加工の有無,程度又は方法に ついて差異があるとはいえ,いずれも「とうもろこし」からなるものという点では 変わりがなく,「とうもろこし(穀物)」と引用商標2〜7の上記各指定商品の生産 者・製造者,販売者が一致することもあり得るものと認められる。そして,その需 要者にはいずれも一般消費者が含まれる。したがって,本件指定商品である「とうもろこし(穀物)」と引用商標2〜7の上 記各指定商品に同一又は類似の商標が使用されたときには,同一の営業主の生産・ 製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるということができるから,本件 指定商品である「とうもろこし(穀物)」と引用商標2,4,5の指定商品中の「冷 凍野菜」,引用商標4〜7の指定商品中の「加工野菜」,引用商標3,5,6の指定 商品中の「穀物の加工品」及び引用商標2の指定商品中の「野菜(「茶の葉」を除く。)」は,商標法4条1項11号にいう類似の商品に当たるというべきである。

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平成30(行ケ)10141  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年3月7日  知的財産高等裁判所

 本件商標「BULK AAA(標準文字)」(指定商品 3類化粧品など)が、先行商標1「Barque/バルク」(2段併記)」および先行商標2「Bulk HOMME」と類似するかが争われました。審判ではいずれも非類似であると判断されましたが、知財高裁は先行商標2と類似すると判断しました。

 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると,欧文字「AAA」について, 次のとおり,認められる。
a 欧文字「AAA」は,広辞苑第六版(乙3の1)にも,大辞林第三 版(乙3の2)にも収載されていない。 もっとも,広辞苑第六版付録のアルファベット略語において,「AAA;Aaa; aaa(トリプルエー)」は,「格付けでの最高点」を意味するものとされている。 また,「エー【A・a】」は,「1)アルファベットの最初の文字。2)転じて,第一位。」などを意味する語(広辞苑第六版,岩波書店,平成20年1月11日),あるいは, 「1)英語のアルファベットの第一字。エイ。2)第一の,最上の,の意を表す。」などを意味する語(大辞林第三版,三省堂,平成18年10月27日)として,知られ\nている。
b 金融商品又は企業・政府などについて,その信用状態に関する評価 の結果を記号や数字を用いて表示した等級を信用格付けというが,「AAA」又は「Aaa」は,長期格付の最高位を表\す格付記号である(甲35,88〜91)。長期格付の最高位を表す格付記号としての「AAA」又は「Aaa」は,本件商標の査定日(平成29年2月21日)前においても,多くの新聞記事において広く\n用いられており,そこでは,その意味を特に説明することなく,「トリプルA」など と表記することもされていた(甲92,93)。また,生命保険会社であるアリコジャパンにおいては,世界的な二つの格付け会社から保険財務力が最上級の「AAA」\n又は「Aaa」と評価されていることに基づいて,CMやウェブサイトにおいて, 「アリコは,最上級のトリプルA」というキャッチフレーズを用いていた(甲94 〜96,102)。
c 東洋経済新報社は,平成27年11月24日発売の「CSR企業総 覧2016年版」において,上場企業を中心とする有力・先進1325社について, 人材活用,環境,企業統治,社会性の4指標を各企業のCSR評価として,成長性, 収益性,安全性,規模の4指標を財務評価として,それぞれ「AAA」,「AA」,「A」などの記号で格付けを行った(甲98)。
d 三井住友海上は,平成28年12月現在,最長5年間の研修期間を経て保険代理店経営者として独立後の保険代理店に対する評価制度として,「専属 プロ代理店」の上に「プロ新特級代理店」を設け,売上規模,要員体制等に加え, 「業務品質」「組織管理」「販売力・増収力」といった質を重視した基準を高いレベ ルで満たす代理店に対して,「TGA・AAA・AA・A+・A」の5段階の認定を 行っていた(甲97)。
・・・
(イ) 前記(ア)によると,欧文字「AAA」は,金融商品又は企業・政府など の信用状態に関する評価である長期格付の最高位を表す格付記号として,一般に知られていることが認められる。\nまた,欧文字「AAA」は,信用格付けにおける長期格付だけでなく,CSR(企 業の社会的責任)に関する人材活用,環境,企業統治,社会性の指標における格付 けや,保険代理店における売上規模,要員体制,業務品質,組織管理,販売力・増 収力等に基づく格付けにも用いられていたことが認められる。 さらに,欧文字「AAA」は,本件商標の査定日(平成29年2月21日)前に おいて,データセンターのセキュリティー水準の格付け,食の安全を担保する業務 の達成度の評価,カンパニー制における各カンパニーや工場に対する社内格付け制 度,排出量の削減実績などにおいても,最上級の評価として用いられていたほか, 東京都知事選挙の立候補予定者に対する評価や超大型ゲームに対する評価にも用いられていたことが認められる。\n
(ウ) 前記(イ)認定の事実に,我が国の学校の成績や各種評価においても,A を最上位とするABC評価が一般的な評価手法の一つであることをも考え併せると,最上を意味する「A」を重ねた「AAA」は,本件商標の査定日(平成29年2月 21日)において,信用格付けにおける長期格付にとどまらず,一般に,最上位又 は優良な評価を意味する表示であると認識されていたものと認められる。前記(ア)のとおり,本件商標の査定日後には,化粧品の分野においても,欧文字「A AA」を品質の優良性を示す趣旨で使用した,被告の商品を含む商品が複数のメー カーから販売されているが,これも,化粧品の取引者,需要者において,「AAA」 が最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されることを期待したものであるから,上記認定に沿うものということができる。\n
エ 本件商標の構成部分の一部による類否判断の可否
前記イ,ウによると,本件商標の構成部分である欧文字「BULK」は,本件商標の指定商品の取引者,需要者に,出所識別標識として認識されるものである一方,\n欧文字「AAA」は,最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されるものであるから,欧文字「BULK」の部分が取引者,需要者に対し商品の出所識別\n標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。 したがって,本件商標と引用商標2の類否判断に当たり,本件商標の構成部分である欧文字「BULK」の部分を抽出し,この部分だけを引用商標2と比較して商\n標そのものの類否を判断することが許される。
オ 被告の主張について
(ア) 被告は,「BULK」は通常の辞書に載っている一般的な英単語であ り,これ単独で造語とみなされて強い識別力を発揮することはないし,「BULK」 は,化粧品分野では,化粧品の中身を意味する語として広く一般に使用されている から,より一層識別力の弱い語であるなどと主張する。 しかし,前記イのとおり,欧文字「BULK」は,「船舶のばら積みの貨物」など を意味する英単語として知られていたのであり,本件商標の指定商品である「化粧 品,せっけん類,香料,薫料,歯磨き」に付された本件商標に接した取引者,需要 者において,「化粧品の中身」を意味する語として知られていたことを認めるに足りる証拠はないから,本件商標について出所識別標識としての機能を十\分に果たすも のということができる。
(イ) 被告は,本件商標の構成中「AAA」の文字は,それ単体での商標登録が認められる識別力のある語であるし,「AAA」が本件商標の指定商品において\n品質表示として用いられている事実はないなどと主張する。しかし,欧文字「AAA」が,信用格付けにおける長期格付にとどまらず,一般\nに,最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されていることは,前記ウのとおりである。\n前記ウ(ア)iのとおり,欧文字「AAA」についての商標登録例・査定例も認めら れるが,本件商標が欧文字「AAA」の前に欧文字「BULK」を組み合わせて成 る商標であり,「AAA」による最上位又は優良な評価が「BULK」に対し向けら れているものと容易に認識することができるのに対し,上記商標登録例・査定例は, いずれも,欧文字「AAA」のみ又は片仮名「トリプルエー」と組み合わせて成る 商標であって,欧文字「AAA」の前に異なる単語を組み合わせた商標ではないか ら,上記商標登録例・査定例の存在は,前記エの判断を左右するものではない。
(ウ) 被告は,本件商標は,全体としてまとまりよく一体に表されているし,「バルクトリプルエー」の称呼も無理なく一連に称呼し得るから,一体不可分の商標というべきものであるなどと主張する。\nしかし,前記アのとおり,本件商標は,「BULK」と「AAA」との間に1文字 分の空白があるから,「BULK」と「AAA」との複数の構成部分を組み合わせたものと容易に理解されるところ,前記イのとおり,「BULK」は,出所識別標識と\nして認識されるものである一方,前記ウのとおり,「AAA」は,最上位又は優良な 評価を意味する表示であると認識されるものであるから,本件商標全体がまとまりよく一体に表\されていることや,「バルクトリプルエー」の称呼が無理なく一連に称呼し得ることを考慮しても,本件商標に接した取引者,需要者において,本件商標 を一体不可分の商標と認識するものということはできない。
(3) 引用商標2について
ア 引用商標2の構成態様
引用商標2は,前記2の3(1)イのとおり,上段に「BULKHOMME」と横書 きし(以下,この部分を「上段部分」という。),下段左側に「SIMPLE/LU XURY」と二段に横書きし(以下,この部分を「下段左側部分」という。),縦線 を挟んで,下段右側に「TRUE LUXURY IS ABOUT/SIMPL ICITY.THIS IS WHAT/OUR BRAND IS BASED UPON.」と三段に横書きして(以下,この部分を「下段右側部分」という。) 成るものであり,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解される。そして,その構\成文字の書体や大きさ等を見ると,上段部分は,同じ大きさで等間隔に記載されているが,「BULK」は「HOMME」に比し線幅が略2倍の太文 字で記載されている。また,上段部分と下段左側部分,下段右側部分との縦(上下 方向)の幅は略同一であるから,下段左側部分の文字は,上段部分の文字の略2分 の1の大きさであり,下段右側部分の文字は,上段部分の文字の略3分の1の大き さである。 上記認定の構成態様によると,上段部分は,引用商標2に接した取引者,需要者に対し,下段左側部分,下段右側部分に比し,商品の出所識別標識として強く支配\n的な印象を与えるものと認められる。 もっとも,上記認定のとおり,上段部分においても,欧文字「BULK」が欧文 字「HOMME」に比し線幅が略2倍の太字で記載されているから,上段部分が一 体として商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるの か,欧文字「BULK」又は「HOMME」の一方が商品の出所識別標識として強 く支配的な印象を与えるものと認められるのかを,更に検討する。
イ 欧文字「BULK」について
前記(2)イと同様に,欧文字「BULK」は,本件商標の査定日において,本件商 標の指定商品の取引者,需要者に,引用商標2の指定商品(男性用の化粧品,男性用のおしろい,男性用の化粧水,男性用のクリーム,男性用の紅,男性用の頭髪用 化粧品,男性用の香水類,男性用のせっけん類,男性用の歯みがき,男性用の香料, 男性用の薫料,男性用のつけづめ,男性用のつけまつ毛)に関連する用語として知 られていたものではないから,上記指定商品との関係において,出所識別標識とし て認識されるものということができる。
ウ 欧文字「HOMME」について
(ア) 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると,欧文字「HOMME」につい て,次のとおり,認められる。
a 欧文字「HOMME」と綴りを同じくする「homme」は,「人間, 人類,男,男性」などの意味を有するフランス語である(仏和大辞典,白水社,昭 和56年4月25日)。日本語の辞書にも,「オム【homme】」は,「1)男性。人 間。2)ファッションで男性用。」を意味する語として収載されており(大辞林第三版, 三省堂,平成18年10月27日),また,カタカナ語辞典には,「オム【homm e】」として,「男性。転じて衣服が男性用であることを示す。」(カタカナ語・略語 辞典第三版,旺文社,平成12年8月25日),「1)人間。男。2)男物。」(コンサイ スカタカナ語辞典第3版,三省堂,平成17年1月20日)の意味を有する語とし て収載されている。
・・・
(イ) 前記(ア)によると,欧文字「HOMME」は,「男性」の意味を有する フランス語であるところ,我が国においても,本件商標の査定日(平成29年2月 21日)の10年以上前から,日本語の辞書や複数のカタカナ語辞典において,男 性用のものを意味する語として収載されていたことが認められる。また,化粧品業 界の関係者が,男性用化粧品には女性用化粧品と差別化するために「HOMME」 を商品等に表示することが普通に行われており,一般消費者も「HOMME」を男性用の商品を示す語と理解していると思われる旨陳述しているところ,原告の商品\nのみならず,多数のメーカーにおいて,男性用化粧品や衣料品のブランドに「HO MME」を付加していること(本件商標の査定日後の事実については,上記陳述の 信用性を裏付ける限度で考慮する。)も,上記陳述を裏付けるものである。そうすると,欧文字「HOMME」は,本件商標の査定日において,化粧品等の 分野では,男性用のものを意味する語として知られていたものと認められる。
エ 引用商標2の構成部分の一部による類否判断の可否前記ア〜ウによると,引用商品2の構\成部分である「BULK」は,引用商標2の指定商品との関係において,出所識別標識として認識されるものである一方,欧 文字「HOMME」は,引用商標2の指定商品が含まれる分野では,男性用のもの を意味する語として認識される上,引用商標2の指定商品は男性用のものに限られ ていること,「HOMME」は,「BULK」よりも細い字体で記載されていること を併せて考慮すると,欧文字「BULK」の部分が取引者,需要者に対し商品の出 所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。 したがって,本件商標と引用商標2の類否判断に当たり,引用商標2の構成部分である欧文字「BULK」の部分を抽出し,この部分だけを本件商標(前記(2)のと おり,本件商標の構成部分である欧文字「BULK」の部分)と比較して商標そのものの類否を判断することが許される。\n

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平成30(行ケ)10136  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年2月28日  知的財産高等裁判所

 争点は、商4条1項19号違反です。裁判所は、無効理由なしとした審決を維持しました。

 原告は,Mainmarkグループは,ニュージーランドにおいて,「m ainmark」の欧文字からなる引用商標2を使用して多数の液状化対策 工事を施工し,高い売上高及び市場シェアを得ていること,ニュージーラン ド地震の象徴ともいえる「クライストチャーチ・アート・ギャラリー」の震 災復旧工事を施工したこと,建築関係の専門雑誌においても豊富な経験と高 い技術を持つ企業として紹介されていること,日本の企業からも業務提携の 相手方とされていることなどからすれば,引用商標2は,Mainmark グループの役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時(登録出願日\n平成27年8月25日)及び登録査定時(登録査定日平成28年1月7日) において,ニュージーランドにおいて,需要者である建設業界の関係者又は その工事の注文者の間で,広く認識されていた旨主張するので,以下におい て判断する。
ア ニュージーランドにおける引用商標2の使用態様について
引用商標2が,Mainmarkグループの役務を表示するものとして,\nニュージーランドの需要者の間に広く認識されていたというためには,引 用商標2が,Mainmarkグループの業務に係る役務に使用された結 果,自他役務識別機能ないし自他役務識別力を獲得するに至り,Mainm\narkグループの役務であることを表示するものとして,ニュージーラン\nド国内の需要者の間に広く認識されるに至ったことが必要であり,このこ とは,Mainmarkグループそのものが需要者の間に広く認識されて いたかどうかとは別個の問題である。 しかるところ,本件においては,引用商標2がニュージーランドにおい てMainmarkグループの業務に係る役務について具体的にどのよう に使用されていたのか,その具体的な使用態様を認めるに足りる証拠はな い。
イ ニュージーランドにおける売上高及び市場シェアについて
原告は,Mainmarkグループのニュージーランドにおける売上高 及び市場シェアに照らすと,本件商標の登録出願当時,取引者の間では, 引用商標2はMainmarkグループの業務に係る役務を表示するもの\nとして周知であった旨主張する。 そこで検討するに,原告は,Mainmarkグループのニュージーラ ンドにおける液状化対策事業に係る売上高を記載した書面として,Mainmarkグループのオーストラリア法人のA経理長の作成に係る書面(甲107の1)を提出するところ,同書面には,「Mainmarkの売上高」と題する表に,2003年から2017年までの会計年度ごとに,ニュージーランド及びオーストラリアの売上高とされる数字が記載されている。\nしかしながら,上記書面は,作成日付が記載されていない上に,作成経 緯も明らかではなく,通常業務として作成された会計の資料とは認められ ないものであり,作成に際し依拠した原資料も明らかではなく,記載内容 を裏付けるに足りる資料も提出されていないから,その信用性は低いとい わざるを得ず,同書面がMainmarkグループの売上高を正確に記載 したものであるとは認められない。他にMainmarkグループの売上 高を認めるに足りる証拠はない。 また,仮にMainmarkグループの売上高が上記書面記載のとおり であったとしても,Mainmarkグループによる引用商標2のニュー ジーランドにおける具体的な使用態様を示す証拠はないから,引用商標2 がMainmarkグループの役務であることを表示するものとして需要\n者の間に広く認識されるに至ったことを裏付けることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
・・・・
このほか,ニュージーランドの「Geotech Consulti ng Ltd.」在籍の地盤エンジニア主任B作成の陳述書(甲73・ 訳文甲74)中には,「mainmark」という名称が地盤工学業界 においてよく知られており,この名称は,Mainmarkグループの 同義語として認識されている旨の記載部分があるが,上記記載部分を裏 付ける客観的な証拠はないことに照らすと,上記記載部分を直ちに措信 することはできない。他に引用商標2が本件商標の登録出願時及び登録査定時においてMainmarkグループの業務に係る役務を表示するものとしてニュージーランドの需要者の間に広く認識されていたことを認めるに足りる証拠はない。\n

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◆平成30(行ケ)10135

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平成30(行ケ)10129  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年2月19日  知的財産高等裁判所(4部)

 周知商標と混同する等の無効主張について、知財高裁は、審決と同様に、無効理由なしと判断しました。判決文の最後に原告・被告商標が掲載されています。
 以上のとおり,原告使用商標においては,楕円状リングの図形部分 によって,外側の楕円部分と内側の楕円部分の間の空間に配置された文 字部分と,内側の楕円部分内に配置された文字部分及び図形部分とがま とまりよく配置されており,これらの文字部分及び図形部分はひとまと まりのものとして看取されることに照らすと,原告使用商標に接した需 要者においては,原告使用商標は,ひとまとまりの文字部分及び図形部 分からなる結合商標として認識されるものであって,原告使用商標のう ちの引用商標1の構成に相当する部分(楕円状リングの図形部分,「d\niptyque」の文字部分,「paris5e」の文字部分及び「3 4 boulevard saint germain」の各文字部分) が,独立の商標として認識されるものと認めることはできないい。 したがって,原告による原告使用商標を付した原告商品の販売が引用 商標1の使用に当たるものと認めることはできない。
ウ 以上によれば,原告が原告商品に引用商標1を独立の商標として使用し た事実は認められないから,引用商標1及びその構成中の楕円状リングの\n図形部分が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,使用による 識別力を獲得し,原告の業務に係る原告商品を表示するものとして需要者\nの間に広く認識されていたものと認めることはできない。 エ(ア) これに対し原告は,原告が2008年(平成20年)5月に挙行し た原告商品の新商品発売パーティーに,女性向け雑誌又はファッション 雑誌の編集長や編集者など149名が参加し,これらの雑誌に原告商品 が掲載されたことは,平成20年当時既に原告商品及び引用商標1が周 知であったことを裏付けるものである旨主張する。 しかしながら,上記新商品発売パーティーに女性向け雑誌又はファッ ション雑誌の編集長や編集者が参加した事実から直ちに引用商標1が周 知であったことを裏付けることはできないし,また,原告商品の雑誌へ の掲載についても,引用商標1が単独で付された原告商品が掲載された というものではないから,引用商標1が周知であったことを裏付けるこ とはできない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。
(イ) また,原告は,原告商品の需要者は,原告商品を初めて知り,それ らに接する初期の段階では,原告商品に付された原告使用商標の構成中\nの楕円状リングの図形部分及び「diptyque 34 boule vard saint germain paris5e 34 bo ulevard saint germain」の文字部分(引用商標 1の構成に相当する部分)を見て原告商品と認識するかもしれないが,\n原告使用商標の構成中の上記文字部分の文字は小さく,かつ,楕円状リ\nングの図形部分の内側の文字や図形等は商品ごとにそれぞれ異なること から,やがて上記文字部分又は楕円状リングの図形部分の内側の文字や図形等をいちいち見なくとも,楕円状リングの図形部分を一瞥すること により,原告商品であると認識するといえるから,引用商標1の構成中\nの楕円状リングの図形部分は,本件商標の登録出願時及び登録査定時に おいて,使用による識別力を獲得した旨主張する。 しかしながら,原告使用商標のうちの楕円状リングの図形部分の識別 力は微弱である上(前記イ(イ)),原告が原告商品に引用商標1を独立 の商標として使用した事実は認められないから(前記ウ),ましてや引 用商標1の構成要素である楕円状リングの図形部分のみを独立の商標と\nして使用された事実も認められない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。

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平成30(ネ)10057  商標権侵害行為差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成31年1月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(2部)は、4条1項19号違反の無効理由ありとして権利行使不能とした1審判決を維持しました。
 また,控訴人は,KCP社の売上げは,平成28年以降はほとんどない旨主 張するが,乙18によると,平成28年の売上げは平成25年及び平成26年より も高いことが認められる上に,そもそも,商標法4条1項19号の周知性の判断の 基準時は,登録出願時及び査定時であるところ(商標法4条3項),本件商標の出 願及び査定は,いずれも平成27年にされている以上,KCP社商標の周知性の判 断は,平成28年における売上高に左右されない。
(ウ) さらに,控訴人は,KCP社の英語表記は,「KCEP HEAVY IN DUSTRIES CO.,LTD.」であると主張するので,同主張について,以下検討する。
a 前記(1)アのとおり,KCP社は,設立後,「KCEP」ではなく,「KC P」の文字からなるKCP社商標を,同社の製品に付して販売し,また,型番の一 部にも使用していることからすると,KCP社及び同社の製品を示す表示として,\nKCP社商標が使用されていることは明らかである。 また,控訴人代表者も,代表\者尋問において,本件商標出願の時点で,KCP社 がKCP社商標を使用していたことを認識していた旨供述していること,KCP社 の理事に送信したメールの韓国語の文書に,KCP社を「KCP」と記載している こと(乙90)からすると,控訴人代表者自身も,KCP社の英語表\記をKCPで あると認識しているものと認められる。
b 控訴人は,KCP社の正式な英語表記は「KCEP」であると主張する。\nしかし,前記のとおり,KCP社は,自社製品に「KCP」との英語の表記を\n付しており,また,証拠(乙107,114)によると,KCP社は,外国企業へ の見積もり送り状や外国企業との契約書において,自社を「KCP HEAVY INDUSTRIES CO.,LTD.」と表記していることが認められる。\n一方で,本件証拠上,KCP社が「KCEP」との英語表記を用いた事実は認\nめられない。なお,証拠(甲63,乙130)によると,KCP社の韓国貿易協会 の会員登録における英語表示が,「KCP」から「KCEP」に変更され,その後,\n「KCP」に戻ったことが認められるが,上記の「KCEP」への変更は控訴人の 働きかけによるものであり(乙129),KCP社が関与していたとは認められな いから,同事実によって,KCP社が,自社の英語表示として「KCEP」を使用していたと認めることはできない。\nしたがって,KCP社は,同社の英語表記として「KCP」を選択して使用し\nたものと認められ,このことは,KCP社の商号を韓国語から英語に訳する際の訳 語いかんによって左右されるものではない。 c 以上より,KCP社及び同社の製品を示す表示として,KCP社商標が使\n用されているのであり,前記(ア)の判断は左右されない。

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1審はこちらです。

◆平成29(ワ)12058

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平成30(行ケ)10138  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年2月6日  知的財産高等裁判所

 オーガスタ ナショナルインコーポレイテッドが、商標「コナミスポーツクラブマスターズ」に対して、4条1項15号違反を主張した事件ですが、知財高裁は、無効理由なしと判断した審決を維持しました。経緯がややこしいです。第1次取消訴訟では、無効理由なしとした審決について、「職権証拠調べをしたにも関わらず意見陳述の機会を与えなかった」として取り消されています。
 再開された審判手続において,原告はその請求に係る役務を,”ゴルフ用ビデオの制作等”と一部を取り下げました。これは、商標法においても指定商品役務毎に無効主張ができますが、15号違反の場合、包括概念の一部についてのみ無効理由がある場合があるから、このような無効対象役務を特定する必要があるのでしょうね。
 本件商標は,「コナミスポーツクラブマスターズ」の片仮名15文字を標準文字で表して成る文字商標であって,外観的には,同一の大きさ・書体の文字により,全体が等間隔で一行にまとまりよく配置されており,一連一体のものとして構\成されていることが明らかである。そして,前記のとおり,我が国においては,「コナミスポーツクラブ」は 被告子会社が運営するスポーツクラブの名称として周知であるということが できる一方で,「マスターズ」は原告主催のゴルフ・トーナメントの略称の みならず,熟練者ないし中高年を含む一定年齢以上の年齢層を対象とした各 種スポーツ競技ないし競技大会をも指す語として,スポーツ愛好者等の間に 広く知られており,現にゴルフはもちろん,ゴルフ以外の競技においても, 大会名において「マスターズ」の語が広く使用されている事実が認められる ことからすると,本件商標を目にした者が直ちに「マスターズ」の部分のみ に着目して原告主催のゴルフ・トーナメントを連想するということはできず, むしろ,語頭の「コナミスポーツクラブ」の部分に着目して「コナミスポー ツクラブが関連する何らかのマスターズ競技ないしその競技大会」と理解す ると考える方が合理的である。したがって,外観(文字構成),称呼及び観\n念に照らしても,本件商標と引用商標の類似性の程度はそれほど高いとはい えない。
また,「マスターズ・トーナメント」という大会それ自体は世界的に周知・ 著名なゴルフ競技会であるとしても,元々「masters」が「名人,達 人」を意味する「master」の複数形にすぎず,原告の造語でないこと は原告自身も認めているところであるし,ゴルフというスポーツの技を競い 合う競技会の名称に,技術に長けた人を表す「名人,達人」の語を用いるこ\nとは,語義に忠実な用法であって,特に奇抜性があるとか斬新であるという こともできないから,当該表示や当該表\示を選択したことについて独創性が あるともいえない。
さらに,商品・役務間の関連性や取引者・需要者の共通性という点につい ても,本件商標の指定役務のうち無効請求役務は,いずれもゴルフに関連す る役務であるから,その限りにおいて,原告の役務との間で関連性や需要者の共通性が認められるというべきであるが,他方で,原告はその主催する「マ スターズ・トーナメント」がよく知られているという以外には,特に日本国 内でゴルフ競技会を開催しておらず,また,日本国内でゴルフ関連事業(商 品の販売や役務の提供)がよく知られているとも認められない。すなわち, 原告提出の証拠(甲56〜76など)によれば,原告は,一応,日本国内に おいても,ライセンス等により引用商標を表示したゴルフ用品の販売を行っ\nていることや,「マスターズ・トーナメント」の開催時期に合わせてグッズ や関連商品の販売を行っていることが認められるが,その売上高や広告宣伝 等(事業規模)の詳細は不明であって,この程度の立証では,引用商標が「マ スターズ・トーナメント」以外に原告の提供する商品それ自体の出所識別を 表示するものとしても我が国で周知著名であると認めるには足りない。\n以上のことからすると,本件において,役務の関連性や需要者の共通性は それほど重視すべき事情であるとはいえない。また,原告は経営多角化の可 能性についても言及するが,何ら具体性のある主張立証はなされておらず,\nこの点についても特にみるべき事情があるとはいえない。
(3) 以上によれば,引用商標が原告主催のゴルフ・トーナメントの略称として も周知著名であることや,引用商標と本件商標との間に「ゴルフ」という共 通項があることを踏まえても,本件商標を指定役務(無効請求役務)に使用 したとき,当該役務が,原告の業務に係る役務であるとか,原告との間にい わゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商\n品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務である(4) 原告の主張について 原告は,本件商標について法4条1項15号該当性を認めなかった本件審 決の認定判断は誤っているとして種々主張するが,その主張は要するに,「マ スターズ」の語に原告主催の「マスターズ・トーナメント」以外の意味が認 められないことや,「コナミスポーツクラブ」の周知性が認められないこと を前提とするものであって,その前提自体が採用できないものであることは, 既に説示したとおりである。 また,原告は,本件審決が本件商標と引用商標の類似性の程度が低いと認 定した点や,「マスターズ」及び「Masters」の独創性が高いとはい えないと認定した点についても誤りであると主張するが,その主張が採用で きないことも既に説示したとおりである。

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第1次取消訴訟はこちらです。

◆平成28(行ケ)10083
関連事件(対象が第5712040号)です。

◆平成30(行ケ)10154

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平成30(行ケ)10124  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年2月6日  知的財産高等裁判所

 商標「envie CHAMPAGNE GRAY」が、公序良俗に反するとした審決が維持されました。理由は、「シャンパン」の称呼及び「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」との観念をも生じるというものです。
 (1)本件商標は,指定商品を「眼鏡,電子出版物,アプリケーションソフトウェ\nア」として,別紙「本件商標」記載のとおり,「envie CHAMPAGNE GLAY」の 欧文字と「アンヴィ シャンパングレイ」の片仮名を上下二段に書してなるもので あ る と こ ろ , こ の 欧 文 字 と 片 仮 名 と は , 「 envie 」 と 「 ア ン ヴ ィ 」 ,「CHAMPAGNE」と「シャンパン」,「GLAY」と「グレイ」が,それぞれ対応 する関係にあることは,取引者及び需要者にとって容易に理解できる。 そして,前記認定に係る辞書,事典,雑誌,新聞等の記載内容及び掲載媒体等に 鑑みれば,本件商標のうち「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の表示は,「フ\nランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味する語であって, 生産地域,製法,生産量など所定の条件を備えたぶどう酒にだけ使用できるフラン スの原産地統制名称であって,本件商標の登録査定時以前から,日本において,シ ャンパーニュ地方産スパークリング・ワインの名称としてにとどまらず,発泡性ぶ どう酒の代名詞のようなイメージを持たれるほどに取引者のみならず消費者に広く 認識され,多大な顧客吸引力を有する極めて著名な表示であったことが認められる。\nしかも,商標法4条1項7号に当たるとされたとはいえ,「CHAMPAGNE(シャ ンパン)」の文字をその構成に含む商標や,これを模した商標が様々な指定商品又\nは指定役務につき出願されたことに鑑みると,日本において,上記表示は,ぶどう\n酒という商品分野に限られることなく,取引者及び需要者に対して高い顧客吸引力 を有するものであることがうかがわれる。 他方,本件商標を構成する他の要素のうち「envie」,「アンヴィ」は,フラン ス語で「羨望」を意味するとしても,一般の取引者及び需要者になじみのある語と はいい難い。また,他の要素である「GLAY」,「グレイ」は,「灰色」を意味する英語ないし外来語として広く認識されているということができるものの,これと 「CHAMPAGNE」,「シャンパン」とを一体的に結合した「CHAMPAGNE GRAY」,「シャンパングレイ」については,原告ないし訴外会社の商品及び他社 の商品において色彩を示す表示として使用された例は認められるものの,色彩を表\ 示する語としても,その他の意味を示す語としても,広く一般的に認識されている 語と認めるに足りる証拠はない。まして,これと「envie」,「アンヴィ」を一体 的に結合した「envie CHAMPAGNE GLAY」,「アンヴィ シャンパングレイ」 の語が広く一般的に認識されていると認めるに足りる証拠はない。 これらの事情を踏まえると,本件商標からは,「アンヴィ シャンパングレイ」 の称呼及び観念を生じるのみでなく,「シャンパン」の称呼及び「フランスのシャ ンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」との観念をも生じるということができ る。
(2) 前記各認定事実によれば,本件商標のうち「CHAMPAGNE」,「シャンパ ン」の部分は,フランスのシャンパーニュ地方で作られるスパークリング・ワイン (発泡性ぶどう酒)を意味する語であるところ,フランスにおいて,1908年 (明治41年)には法律により「CHAMPAGNE」という名称が法律上指定され, その後,原産地統制名称法(1935年7月30日付けデクレ)その他の法令により原産地統制名称として保護されていることが認められる。具体的には,公立行政 機関である原産地名称国立研究所(INAO)が定める生産区域,ぶどうの品種,生 産高,最低天然アルコール純度,栽培方法,醸造方法,蒸留方法に関する諸生産条 件を満たすぶどう酒のみがその名称として「CHAMPAGNE」(シャンパン)を使 用する権利を有することとして,シャンパーニュ地方産ワイン製品の品質につき厳 格な管理・統制が行われる一方でその生産者が保護されており,被告は,その製品 の専門的利益を防禦することをその任務とし,フランス国内及び国外において, 「CHAMPAGNE(シャンパン)」の原産地統制名称を保護する等の活動をしてい る。こうした被告をはじめとするシャンパーニュ地方のワイン生産者等の努力の結果,「CHAMPAGNE」,「シャンパン」の表示及びその対象であるシャンパーニ\nュ地方産のスパークリング・ワインは,周知著名性を獲得,維持し,高い名声,信 用ないし評判が形成されている。 これらの事情に鑑みると,「CHAMPAGNE(シャンパン)」の表示及びその対\n象であるシャンパーニュ地方産のスパークリング・ワインは,フランス及びフラン ス国民の文化的所産というべきものとなっており,重要性が極めて高いものである ことが認められる。 また,日本においても,遅くとも第二次世界大戦後,「CHAMPAGNE」(シャ ンパン)の表示につき,フランス国内法が尊重されている。\n
(3) 以上のような本件商標の文字の構成,指定商品の内容,本件商標のうちの\n「CHAMPAGNE」,「シャンパン」の文字がフランスにおいて有する意義や重要 性,日本における周知著名性等を総合的に考慮すると,本件商標をその指定商品に 使用することは,フランスのシャンパーニュ地方におけるぶどう酒製造業者の利益 を代表する被告のみならず,法令により「CHAMPAGNE(シャンパン)」の名声, 信用ないし評判を保護してきたフランス国民の国民感情を害し,日本とフランスと の友好関係にも好ましくない影響を及ぼしかねないものであり,国際信義に反し, 両国の公益を損なうおそれが高いといわざるを得ない。 したがって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当するというべきである。
(4) 原告の主張について
ア 原告は,「envie CHAMPAGNE GLAY」は原告ないし訴外会社が販売する コンタクトレンズブランド「envie」において「シャンパングレイ色」のカラーコ ンタクトレンズを示すものであり,「CHAMPAGNE」,「シャンパン」は色彩を 表示するものであり,これと色彩を示す「GLAY」,「グレイ」とが一体不可分で あることから,色彩以外の意味合いを想起することはないなどと主張する。 イ しかし,前記のとおり,「CHAMPAGNE GLAY」,「シャンパングレイ」 や「envie CHAMPAGNE GLAY」,「アンヴィ シャンパングレイ」が一体不可分のものと認識されているとはいえない。 また,「シャンパン」の語が色彩を意味する例があるといっても,「シャンパン 色(緑黄又は黄褐色)」(甲17),「シャンパン色,淡黄[緑黄]色」・「シャ ンパン(色)の」(甲18),「シャンパン色(緑黄色又は琥珀(こはく)色)」 (甲19),「シャンパン色(緑黄又は黄褐色)」(甲20),「シャンパン色の (淡い黄色)」(甲21)とされ,色彩としての「シャンパン」に相当する色彩の 表現が「緑黄色」,「黄褐色」,「琥珀色」などと必ずしも一致していないことか\nらもうかがわれるとおり,いずれもスパークリング・ワインとしてのシャンパンを 想起させることによって,いわば比喩的に「シャンパン」の語を用いて色彩を表現\nしているものである。このことは,前記のとおり,本件商標が「シャンパン」の称 呼及び「シャンパーニュ地方産のスパークリング・ワイン」の観念を生じることを むしろ裏付けるものといえる。 その他,原告は他の商標との関係や米国での商標登録の実情などをるる指摘する けれども,いずれも本件と直接関係するものではない。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。

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平成30(行ケ)10067  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年12月10日  知的財産高等裁判所

 ラルフ社の商品との出所混同が生ずるかが争われました。本件商標は「POLO」です。裁判所は、15号違反とした拒絶審決を維持しました。
(4) 混同の有無
 ア 後掲証拠によると,以下の事実が認められる。
(ア) 株式会社高石洋服店のウェブサイトでは,「非常に残念なことですが,多くの方がデパートの主力ブランドのpolo ralph laurenの偽物だと認識しているようです。ブランド名,ロゴマークは似ておりますが,実際は全く別のライセンスをキッチリ取得して生産されたブランドになります。」との記載とともに,原告製の衣服の写真を掲載し,同衣服の広告をしている(乙69の1)。
・・・
「Rakutenラクマ」のウェブサイトの「ポロベビー」という題 名の出品ページに,「ブランド」として「POLO RALPH LAUREN」と 記載された商品が出品され,同商品の写真には,原告使用商標と類似した商標が付 されている(乙74の1)。
イ 前記アの事実によると,原告製の衣服をラルフ社製の衣服と誤認して, その中古品をウェブサイトに出品している事例が少なからずあり,また,原告製の 衣服をラルフ社製の衣服と誤認して購入したり,原告製の衣服をラルフ社製の衣服 と誤認してウェブサイトで紹介したりする事例もあることが認められる。 さらに,原告製の衣服を販売している会社が,その広告において,わざわざ,多 くの人は,原告製の衣服はラルフ社製の偽物であると認識しているようであるが, 実際は,ラルフ社製の偽物ではなく,別のライセンスを取得している旨説明してい る。 以上の事実からすると,多くの者が,原告製の商品をラルフ社製の商品と誤解し て購入等しているものと推認される。 したがって,原告使用商標又は,それに似た商標を付している商品とラルフ社製 の商品との間に,現実に出所の混同が生じていることは明らかであるから,本願商 標についても出所の混同が生じるものと認められる。
ウ 原告の主張について (ア) 原告は,前記アで認定したメルカリへの出品について,買い手を意図 的に誤認させる悪意の出品である旨の主張をしているが,原告の主張は,前記アで 認定した各出品者が詐欺行為をしたことについての具体的な裏付けを伴うものでは\nなく,憶測にすぎないことから,採用できない。また,原告は,メルカリにおいて は,ブランドタグの選択肢に「ラルフローレン」しかない旨の主張をするが,そう であるとしても,前記イ記載の誤認混同が生じていることの理由とは認め難い。
(イ) 原告は,ヤフオクにおいては,原告製の商品とラルフ社製の商品との 間に混同が生じた事例はなく,また,業者と一般消費者間の取引においては,原告 製の商品とラルフ社製の商品との間に混同は生じていないと主張し,その証拠とし て,甲47,甲53の1〜8を提出するが,同証拠から直ちに,原告の上記主張事 実を認めることはできず,前記イの認定を左右するに足りるものではない。
(ウ) 原告は,甲40の1、3から,消費者が,原告製の商品をラルフ社製 の商品と区別して購入する事実がある旨主張する。 しかし,甲40の1の記事は,写真に掲載した原告製の商品がラルフ社製の商品 ではないことを注意喚起するものであり,甲40の3の記事は,一見したところラ ルフ社製の商品であると思ったが,よく確認すると,原告製の商品であることが分 かったというものであるから,原告製の商品をラルフ社製の商品と誤認する可能性\nが高いことを示すものである。したがって,上記記載は,原告製の商品とラルフ社 製の商品との間に混同が生じやすいことを裏付けるものといえる。
(5)以上からすると,引用商標の独創性の程度が造語による商標に比して低い ことを考慮しても,本願商標をその指定商品に使用した場合,当該商品がラルフ社 の業務に係る商品であると誤信され,出所の混同を生ずるおそれがあることは明ら かである。

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平成30(行ケ)10063  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年11月7日  知的財産高等裁判所

 片仮名「エナジア」を含む結合商標について、アルファベット商標「EnerGia」と類似するかが争われました。知財高裁は、類似しないとした審決を維持しました。
 また,本件商標は「エナジア」の称呼を生じ,引用商標2は「エネルギア」の称 呼を生じるが,中間音における「ナジ」と「ネルギ」の相違が4音と5音という短 い音構成からなる両称呼全体に及ぼす影響は大きいから,離隔的観察においても,\n称呼上の相違を十分認識することができる。\nさらに,本件商標が特定の観念を生じないのに対し,引用商標2は原告のブラン ドという観念を生じるから,本件商標と引用商標2とは観念において相違する。 以上によると,本件商標と引用商標2とは,外観,称呼,観念のいずれにおいて も相紛れるおそれはないから,本件商標は,引用商標2に類似する商標には当たら ないものと認められる。
・・・
イ 原告は,引用商標1及び2の「EnerGia」の欧文字は,一般的な 辞書等に掲載されていない造語であるが,1)辞書等の記載,2)先行商標採択例,3) 商標使用例,4)被告の本件商標の使用等の一般的,恒常的な取引の実情において「エ ナジア」の称呼をもって使用されているから,少なくとも「エネルギア」と「エナ ジア」の二つの称呼が生じると主張する。 しかし,前記(2)ウ,(3)イのとおり,引用商標1及び2は,中国地方のみならず 全国で,その指定役務である「電気の供給」等のエネルギーに関連する役務におい て,「エネルギア」という称呼により,原告の業務に係る役務を表示するものとして\n取引者,需要者の間に広く認識されているものである。そうすると,引用商標1及 び2に接した取引者,需要者は,そのような認識を有するのであるから,引用商標 1及び2を「エネルギア」と称呼するものということができ,引用商標1及び2を 「エナジア」と称呼するものとは認められない。 そして,このことは,「EnerGia」の欧文字が,英語「energy」(エ ナジー)になぞらえて,英語風に「エナジア」と称呼し得ることや,現に「エナジ ア」と称呼させる先行商標採択例や商標使用例があることによって,左右されるも のではない。 また,本件商標の「エナジア」の片仮名文字が「energia」に由来し,被 告ホームページにおいて本件商標が「energia」の文字とともに使用されて いるといった原告主張の事情については,前記アのとおりである。 ウ(ア) 原告は,審決が,引用商標1及び2が「エネルギア」と「エナジア」 の二つの称呼を生じるなど,二つ以上の称呼,観念を生じる場合と認定したにもか かわらず,一つの称呼,観念を生じると認定したことは,商標法4条1項11号該 当性の判断基準に照らし許されないと主張する。 しかし,引用商標1及び2は,いずれも,「エネルギア」の称呼を生じ,原告のブ ランドの観念を生じることは,前記(2),(3)のとおりであり,引用商標1及び2は, 二つ以上の称呼,観念を生じるものではない。
(イ) 原告は,審決のように,対比商標が二つ以上の称呼,観念を生じる場 合でも,一つの称呼,観念のみを生じると認定することは,あたかも禁止権を放棄 し,類似範囲が収縮し消滅したものと取り扱うことになり,商標制度に沿わない結 果を招来するものであって,許されないなどと主張する。 しかし,商標法4条1項11号の類否判断は,商標登録出願された商標に係る査 定時又は審決時において,この商標が引用商標に類似するか否かを判断すべきもの であるから,上記の基準時において,引用商標に接した取引者,需要者において二 つ以上の称呼,観念を生じると認められるときは,その二つ以上の称呼,観念をも って,類否判断すべきである一方,上記の基準時において,引用商標に接した取引 者,需要者において一つの称呼,観念のみを生じると認められるときは,その称呼, 観念をもって,類否判断すべきものである。このように解しても,引用商標に接し た取引者,需要者において一つの称呼,観念のみを生じると認められるときは,こ の称呼,観念をもって類否判断した結果,引用商標と相紛れるおそれのない非類似 である商標については,引用商標との間において出所の混同を生じるおそれはない から,商標制度に沿わないものとはいえない。
(ウ) 原告は,引用商標1及び2が,「エネルギア」と称呼され,中国地方で 周知著名性を獲得しているという事実は,特殊的,限定的な取引の実情であるから, これを考慮することは許されないと主張する。 しかし,引用商標1及び2が,中国地方のみならず全国で,その指定役務である 「電気の供給」等のエネルギーに関連する役務において,「エネルギア」という称呼 により,原告の業務に係る役務を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認\n識されているという事実は,単にその商標が現在使用されている役務についてのみ の特殊的,限定的な取引の実情ということはできないから,本件商標と引用商標1 及び2の類否判断に当たりこれを考慮すべきものである。
(エ) 原告は,審決が,引用商標1及び2が,中国地方を越え,例えば,関 東地方の「電気の供給」の役務の取引者,需要者の間で周知著名性を獲得していた か否かについて,何ら認定していないにもかかわらず,関東地方など周知著名性を 獲得していない地域まで含めて,一つの称呼,観念のみを生じると認定しているこ とは,自己矛盾であるなどと主張する。 しかし,引用商標1及び2が,中国地方のみならず全国で,その指定役務である 「電気の供給」等のエネルギーに関連する役務において,「エネルギア」という称呼 により,原告の業務に係る役務を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認\n識されていることは,前記(2)ウ,(3)イのとおりである。

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◆平成30(行ケ)10062

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平成29(行ケ)10222  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年10月10日  知的財産高等裁判所

 「ハイパット」の片仮名及び「HIPAT」の欧文字を二段に横書きした商標について、10号違反、15号違反などが主張されました。知財高裁4部は、無効理由無しとした審決を維持しました。もともと、原告が商標権を取得して使用していましたが、更新失念して消滅し、新規出願した被告に登録が認められていたという経緯です。
 引用商標の周知性について検討するに,まず,原告の使用商品の販 売状況をみると,前記ア(ア)の認定事実によれば,1)原告は,昭和59 年から30年以上にわたり,日本国内において,引越業者等に対し,引 用商標を付した原告商品を継続して販売していること,2)平成17年度 から平成25年度の規格品の販売数量は,年平均1万2199個(合計 10万9791個)であること,3)上記販売数量のうち,大手引越業者 に対する販売数量は,平成21年度が1300個,平成22年度が50 24個,平成23年度が3582個,平成24年度が7914個及び平 成25年度が5277個(いずれもサカイ引越センター分)であり,大 手引越業者以外の引越業者等に対する販売数量が半数を超える相当の割 合を占めていることが認められる。 次に,広告宣伝の状況をみると,前記ア(イ)の認定事実によれば,1) 平成18年ころまでは,「流通サービス新聞」,「トラック経営」,「引 越情報 月刊レポート」,「日刊運輸新聞」などの業界紙に引用商標を 付した使用商品の広告が数回掲載されたことがあったが,その後は,平 成24年5月1日発行の「企業概況ニュース」以外には,業界紙におけ る広告掲載の実績がないこと,2)平成20年から平成25年にかけて, 毎年,「工場・作業現場のプロツール総合カタログ」である「オレンジ ブック」に原告の使用商品の広告が掲載されたが,「オレンジブック」 は分野別に1巻ないし10巻に分かれ,約36万アイテムが掲載された カタログ雑誌であり,原告の使用商品が特に目立って掲載されたもので はないことが認められる。 また,原告は,平成11年以降,毎年,引用商標を付した使用商品を 掲載した,自社商品の「総合カタログ」を3000部から5000部作 成し,業界大手4社を含む引越業者等200社程度に対し,送付又は持 参して配布していたことは,前記ア(イ)認定のとおりであるが,一般貨 物自動車運送事業者数は約5万7600であり,このうち,引越専門業 者数は少なくとも4136であること(前記イ)に照らすと,上記「総 合カタログ」の配布先は,引越専門業者の1割にも満たないといえる。 さらに,原告は,引用商標を付した使用商品のチラシを昭和60年及び 平成10年にそれぞれ配布したことが認められるが,その配布数量や具 体的な配布先は明らかではない。 以上によれば,本件商標の登録出願時において,引越業者,運送業者 等の間で,原告による使用商品の前記販売及び広告宣伝によって,引用 商標が原告の業務に係る使用商品を表示するものとして広く認識されて\nいたものと認めることはできない。
(イ) この点に関し,原告は,日刊運輸新聞(平成16年3月3日号)の 記事(甲118)によれば,同紙が引越運送を行っている各社に対し反 復資材の使用などについてアンケート調査を実施したところ,反復資材 としての「梱包用ハイパット」の使用率が80%を超える結果であり, 「梱包用ハイパット」は,引用商標を付した使用商品を指すものである から,上記アンケート調査の結果は,遅くとも平成16年3月時点で, 引用商標は,引越業者の間では原告の業務に係る商品を表示するものと\nして周知著名であったことを示すものといえる旨主張する。 しかしながら,上記アンケート調査におけるアンケートの対象企業数, 回答数,回答方法等のアンケート結果の信頼性を基礎づける事実は明ら かではない。また,仮に原告が主張するように平成16年3月当時にお ける反復資材としての「梱包用ハイパット」の使用率が80%を超えて おり,「梱包用ハイパット」が原告の使用商品を指すものとして,引越 業者に認識されていたとしても,約7年後の本件商標の登録出願時にお いても同様の認識が当然に維持されていたということにはならない。 したがって,原告の上記主張を前提としても,本件商標の登録出願時 において,引越業者,運送業者等の間で,引用商標が原告の業務に係る 使用商品を表示するものとして広く認識されていたということはできな\nい。
このほか,全国引越専門協同組合連合会,引越専門協同組合,アート コーポレーション,セイノー引越株式会社,名鉄運輸株式会社の担当者 作成の平成28年12月付けの各確認書(甲67の1ないし5)中には, 「ハイパット」というマークが原告の「キルティング製梱包用具」につ いて使用されているマークであることを平成23年9月22日以前より 認識していたことを確認する旨の記載部分があり,サカイ引越センター の代表取締役作成の平成30年2月2日付けの陳述書(甲117)中に\nは,サカイ引越センターは昭和59年から継続的に原告の使用商品を購 入して使用しており,遅くとも平成13年には引越業界で「ハイパット」 といえば知らない者はいないくらいによく知られていたのではないかと 思われる旨の記載部分があるが,上記各記載部分は,上記確認書及び陳 述書の作成者の認識を示したものであり,引用商標が,本件商標の登録 出願時において,引越業者,運送業者等の間で,引用商標が原告の業務 に係る使用商品を表示するものとして広く認識されていた事実を客観的\nに裏付けることにはならない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。

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類似案件です。

◆平成29(行ケ)10223

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平成30(行ケ)10065  商標登録取消決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年9月19日  知的財産高等裁判所

 審決は、商4条1項11号の異議申立について類似と判断しました。知財高裁はこれを維持しました。争点は一部を抽出できるか否かです。
 本件商標の構成中,欧文字部分は,AとCがやや図案化されているもの\nの,その形状から,「AiCOM」の文字からなるものと認識できるから,同部分か らは「アイコム」との称呼が生じる。「亜太電信」からなる本件商標の漢字部分から は「アタデンシン」との称呼が生じる。 上記のような両部分から生ずる称呼に加え,欧文字部分と漢字部分が,いずれも 造語であって何らの観念も生じないものであること,欧文字部分と漢字部分が,異 なる種類の文字で,前記のとおり上下に2段に分けて横書きで記載されていること を考え併せると,欧文字部分と漢字部分との間に外観や観念上,何らかの関連性が あるとは認められないものである。また,この両部分を併せた称呼である「アイコ ムアタデンシン」はやや冗長である。 本件商標の構成中,図形部分についても,何らの称呼や観念も生じないものであ\nり,外観,称呼及び観念の各点で欧文字部分及び漢字部分のいずれとも何らの関連 性が認められないものである。 そして,上記のような各構成部分は,いずれも指定商品との関係でその内容,属\n性,品質等を表すものとはいえず,各構\成部分は,指定商品との関係でそれぞれ独 立して出所識別機能を有し得るものといえる。\nさらに,上記アのとおり,「AiCOM」の欧文字部分が,図案化されて漢字部分 よりも大きく記載され,かつ「i」の部分に赤色が用いられている。 そうすると,本件商標の各構成部分が,分離して観察することが取引上不自然で\nあると思われるほど不可分的に結合しているとは認められず,本件商標から「Ai COM」の欧文字部分を要部として観察することが許されるというべきである。 なお,結合商標においては要部が複数生じることもあるのであり,「亜太電信」の 漢字部分が要部となるとしても,そのことによって直ちに「AiCOM」の欧文字部 分が要部とならなくなるものではない。
(2) 原告は,本件商標の欧文字部分の冒頭が「V」を逆にしたものであること などから,欧文字部分は,「AiCOM」とは認識されないと主張する。 しかし,欧文字部分の冒頭の文字について,確かに欧文字の「A」をそのまま記 載したものではないが,同じ長さの2本の直線が上部において鋭角に交差されてい るという外郭の形状は,「A」と同一である。また,本件商標と同様に,「A」の文 字の内側にある直線を省略して図案化している例は,他の企業の標章にも複数見受 けられる(乙20〜26)。一方,欧文字部分の冒頭の文字について,それが原告の 主張するように,欧文字の「V」を逆にしたものであると認識させる契機となるよ うなものは,何ら見当たらない。そうすると,本件商標に接した者が,欧文字部分 の冒頭の文字を「V」を逆にしたものと認識するとは認められず,上記のとおり, 「A」と認識するものと認められる。 また,欧文字部分の3文字目についても,図案化されてはいるものの,円弧の右 側に開口部があり,同開口部が円弧の中央部にあるなどの特徴は欧文字の「C」と 同一である。加えて,他の標章について,本件商標と同じような態様で「C」を図 案化している例や本件商標と同様に「C」の右側開口部に他の欧文字を挟み込んで 図案化している例が見受けられること(乙27〜38)も踏まえると,本件商標に 接した者が,欧文字部分の3文字目を欧文字の「C」と容易に認識するものと認め られる。

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平成30(行ケ)10040  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年9月12日  知的財産高等裁判所

 文字の一部を図案化した商標について、元の読みが生ずるのかが争われました。知財高裁は、生ずるとした審決を維持しました。本件商標は判決文中にあります。
 本願商標は,前記第2の2のとおり,本件図形部分と欧文字「OGGY」 とを横一列に記載して成る。欧文字「OGGY」の高さは,本件図形部分の高さの 半分程度であるが,本件図形部分及び欧文字「OGGY」の下端は概ね同一線上に あり,本件図形部分及び欧文字「OGGY」の間隔は,本件図形部分と「O」との 間隔も含め,概ね等間隔である。
(2) 本件図形部分は,横長の楕円形状を半分にし,その断面に当たる左側の縦 線の上下両端に,左向きに矩形の小さな突起を配した図形の全体を黒塗りにし,そ の中央部に右横向きの四足動物と思しき絵柄をシルエット状に白抜きにしたもので ある。本件図形部分は,左側が縦線,右側が弧線の半楕円形状の輪郭を有し,その 内部の相当部分が白抜きとなっている点において,厚みのあるセリフ(字画末端部 にある爪のような張り出し部)を有する欧文字「D」と共通した形状を有している (乙3,4)。 前記(1)のとおり,本件図形部分及び欧文字「OGGY」は,その下端が概ね同一 線上にあり,概ね等間隔に配置されている上,欧文字「OGGY」は直ちに特定の 意味を有する成語とは認識できないところ,本件図形部分が上記のような形状を有 していることから,本件図形部分を欧文字「D」であるとして,本願商標全体をみ ると,「DOGGY」という構成となる。これが「犬の」という意味を有する英単語\nであることは,我が国においても容易に理解されるものであり(甲13〜23,2 5〜30,乙6),特定の意味を有する平易な英単語として認識することができる。 また,本件図形部分の内側に白抜きされた右横向きの四足動物と思しき絵柄は, 三角形の耳を立てているという形状や,胴体の半分に満たない長さの細い尾を胴体 と略平行に持ち上げているという尾の形状,その他,顔,胴体,足等の各部位の大 きさ,形状,配置等から,「犬」を表したものと容易に理解することができる。\nそこで,本件図形部分を欧文字「D」であるとした場合の本願商標全体の欧文字 の構成と,本件図形部分の内側に白抜きされた絵柄との間にも,関連性があること\nを容易に理解することができる。 そうすると,本願商標に接した需要者は,本件図形部分は,欧文字「D」を図案 化したものであると理解するものと認められる。
(3) 本願商標は,前記(1)のとおり,本件図形部分及び欧文字「OGGY」の下 端を概ね同一線上にして,概ね等間隔で,横一列に記載して成るものであり,また, 前記(2)のとおり,欧文字「D」を図案化した本件図形部分と,欧文字「OGGY」 とは,一体として一つの英単語を構成しているものである。\nそうすると,本願商標は,欧文字「DOGGY」と理解されるその全体の構成か\nら,「ドギー」という称呼を生じ,「犬の」という観念を生じるものと認められる。
・・・
前記1,2のとおり,本願商標と引用商標からは,「ドギー」という同一の称呼及 び「犬の」という同一の観念が生じる。 また,本願商標と引用商標とは,外観において,欧文字「DOGGY」と理解さ れる構成を有する点において共通する。\nそうすると,本願商標と引用商標とは,外観において,「D」の図案化の有無や, 片仮名部分の付加の有無などが相違するが,その図案化の程度や片仮名部分が欧文 字部分の読みを表したものにすぎないこと等を勘案すると,両商標を場所と時間を\n異にして離隔的に観察した場合,両商標の称呼及び観念が同一であり,外観におい ても欧文字「DOGGY」と理解される構成を有する点が共通することから,商品\nの出所を誤認混同するおそれがあるものと認められる。

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平成30(行ケ)10035  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年9月6日  知的財産高等裁判所(3部)

 商標「MONTAGNE.」が先行商標「MONTAIGNE」と類似するとした審決が維持されました。
 以上を前提に本件商標と引用商標の類否について検討する。
(ア) 本件商標と引用商標は,外観において,書体が異なる点,本件商標 の末尾に「.」があるのに引用商標にはこれがない点,引用商標には6 文字目に「I」があるが,本件商標にはこれがない点で異なる。 他方,本件商標及び引用商標は,いずれも9文字のアルファベットか らなり,「.」「I」を除いては,同じM,O,N,T,A,G,N, Eのアルファベットを同じ順序で含んで構成されており,使用される文\n字及びその使用の順序が近似している。また,いずれの商標も等間隔の アルファベットによりひとかたまりでまとまりよく構成されている。そ\nして,本件商標と引用商標の書体が相違するとしても,いずれの書体も デザイン化されていない読みやすい普通に用いられる書体であり,看者 に強い印象を与えるものではない。さらに,本件商標の「.」は末尾に 付され,大きさも小さいこと,引用商標における「I」は6文字目にあ って他の文字より幅がかなり狭いことから,これらの相違する文字は, 看者の印象に残りにくい。 以上によれば,本件商標と引用商標は,外観において,相紛らわしい ものといえる。
(イ) 本件商標及び引用商標は,いずれも特定の観念を想起させない。
(ウ) 本件商標は「モンタグネ」,「モンターニュ」の称呼を,引用商標 は「モンタイグネ」,「モンテーニュ」の称呼を生じる。 このうち,「モンタグネ」と「モンタイグネ」は,5音ないし6音の うち,冒頭の3音が共通しており,また,末尾の「グネ」も共通してい るし,差異音である「イ」の音は弱音であるから,両称呼を一連に称呼 した場合,称呼全体の語調,語感が近似したものとなる。 また,「モンターニュ」と「モンテーニュ」は,いずれも長音を含む 5音よりなり,一連に称呼した場合に,比較的聴別されにくい中間部に おいて「タ」の音と「テ」の音の差異を有するが,この差異音は子音を 共通にし,母音である「a」と「e」の音も近似しているから,両称呼 を一連に称呼した場合,称呼全体の語調,語感が著しく近似したものと なる。 そうすると,本件商標と引用商標は,称呼において相紛らわしいとい える。
(エ) 以上のとおり,本件商標と引用商標は観念において比較できないも のの,外観及び称呼は相紛らわしいものである。 そして,本件取消に係る商品と引用商標の指定商品の需要者である一 般の消費者が通常有する注意力を踏まえると,これらの一般の消費者が 必ずしも商標の構成を細部にわたって記憶して取引するとはいえないこ\nとから,本件商標と引用商標を時と所を異にして隔離的に観察した場合, 商品の出所の誤認混同を生ずるおそれがあるといえる。
(オ) したがって,本件商標は,引用商標に類似する商標であるといえる。
2 原告の主張について
(1) 指定商品の類否について
原告は,本件取消に係る商品のうち「カーボン製のスーツケース」に関し, 引用商標の指定商品とは原材料,商品の性状や外観(カーボン製は硬質感の あるハードタイプであるのに対して,革製又は人工皮革製は軟質のソフトタ\nイプである。)が明確に異なり,生産部門,販売部門,原材料,品質,用途及 び需要者がいずれも異なる非類似の商品であると主張する。 しかし,「カーボン製のスーツケース」と引用商標の指定商品である革製 又は人工皮革製の旅行かばんの用途は同じであり,同一の生産者ないし製造 者により取り扱われることがあり,需要者が共通するのは,上記1(1)説示 のとおりであり,原告の主張は採用できない。
(2) 商標の類否について
ア 原告は,本件商標は「.」部分が,引用商標は「I」の文字が非常に大 きな存在感を示すこと,書体も大きく異なること,本件商標は略長方形の 中に収まるような態様の文字部分から「.」部分が飛び出るような態様で 書されているのに対し,引用商標は「A」の文字を中心として4文字ずつ 左右対称であるかの如くバランス良く配されているから,両商標から受け る印象は大きく相違し,本件商標と引用商標とは,外観上非類似の商標で あると主張する。 しかし,本件商標の「.」の位置や大きさからすれば「.」が大きな存 在感を有するとはいえないし,引用商標の「I」の文字の幅は他の文字よ りかなり細いことから「I」が大きな存在感を有するともいえないことは, 上記1(2)エ(ア)に説示したとおりである。また,本件商標及び引用商標の 書体,文字数,使用されている文字及び語順並びにその配置からすれば, 両商標全体から受ける印象が大きく相違するとはいえないものであり,原 告の主張は採用できない。
イ 原告は,本件商標から生じる観念は,「(何かの末尾としての)山」, 「山(さらに省略されたもの)」ないし「山」であり,引用商標から生じる 観念はフランスの人名(モンテーニュ)であるから,本件商標及び引用商 標からそれぞれ生じる観念は,著しく異なっていると主張する。 しかし,本件取消に係る商品及び引用商標の指定商品の需要者,取引者 がこれらのフランス語を容易に理解すると判断する理由はなく,本件商標 と引用商標はいずれも特定の観念を想起させるものではないというべきで あるから,原告の主張は採用できない。
ウ 原告は,電子メールアドレスやインターネットのURLに日常的に触れ る需要者,取引者にとっては,非常に長い称呼であっても「ドット」の称 呼は省略せずに必ず称呼するのが常識であり,本件商標の「.」から「ド ット」の称呼を生じるから,本件商標からは「モンターニュドット」,「モ ンタグネドット」又は「モンターネドット」の称呼が生じ,「.」を無視 した称呼は生じ得ないと主張し,これを前提に,本件商標と引用商標の称 呼は非類似であると主張する。 しかし,電子メールアドレスやウェブサイトのURLは,アルファベッ トのまとまりが複数あり,そのまとまりとまとまりの間に「.」が配置され るのが通常であるのに対し,本件商標は8文字のアルファベットの末尾に 「.」を付した構成である。これによれば,本件商標に接した需要者,取引\n者が電子メールアドレスやウェブサイトのURLを連想するとはいえず, 本件商標の「.」から「ドット」の称呼が生じるとはいえないから,これを 前提とする原告の主張は採用できない。
エ 原告は,取引の実情として,1) 本件商標は原告オリジナルの商品ブラ ンドを示す商標として需要者,取引者の間で既に認識・理解されており, 他方,引用商標について顧客吸引力を有しているのは「LOUIS VU ITTON」又は「ルイ ヴィトン」ブランドであって引用商標ではなく, 本件商標と引用商標について現実に誤認混同が生じていないこと,2) 大 手百貨店のバイヤーにおいても本件商標と引用商標のブランドが類似して いると認識していないこと,3) 本件商標に関連する家具やキャリーケー ス,アタッシュケース等は十万円前後から数十\万円にわたる価格帯であり, 申立人の商品はさらに高価で類似品や偽物も多いため,需要者,取引者は\n細心の注意を払って慎重に商標を観察して取引にあたることを主張する。 しかし,商標の類否判断において参酌されるべき取引の実情とは,その 指定商品全般についての一般的,恒常的なそれを指すものであって,当該 商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的,限定的なそれを指 すものではない(最高裁昭和47年(行ツ)第33号同年4月25日第一 小法廷判決・審決取消訴訟判決集昭和49年443頁参照)。原告の主張 する上記事情は,いずれも本件商標及び引用商標が現在使用されている商 品についてのみの限定的な事情であることが明らかであるから,これらの 事情は商標の類否の判断を左右するものではない。なお,甲64,79等 は,上記1)の事実を認めるに足りる証拠とはいえず,他にこれを認めるに 足りる証拠はないし,上記2),3)の事実は,直ちに本件商標と引用商標と の類似性を否定するに足りる事情とはいえないのであるから,原告の上記 主張は,内容に立ち入って検討してみても,やはり失当である。 また,原告は,本件取消に係る商品及び引用商標の指定商品は,慎重に 選択する選択性の高い商品であり,需要者,取引者は,自ら商品を手に取 り,ブランド,デザイン,色,サイズ,素材,価格等を確かめて,商品を 購入するか否かを決めるというのが取引の実情であると主張する。 しかし,本件取消に係る商品及び引用商標の指定商品の需要者は一般の 消費者であり,これらの商品はいわゆるブランド品や,デザイン性やファ ッション性が高い商品に限られず,その価格帯も多様であるから,これら の商品の需要者に,上記の取引の実情が一般的,恒常的に当てはまるとは いえない。上記1(2)エに説示したとおりの本件商標と引用商標の類似性の 程度に照らせば,本件商標と引用商標が同一又は類似の商品に使用された 場合には,出所の誤認混同を生ずるというべきである。原告の主張は採用 できない。
3 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念を総合して全 体的に考察すれば,互いに紛れるおそれのある類似の商標というのが相当であ り,また,本件取消に係る商品と引用商標の指定商品は類似すると認められる から,本件取消に係る商品についての商標登録は,商標法4条1項11号に該 当するものである。

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平成30(行ケ)10019  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年9月10日  知的財産高等裁判所

 本件商標「UNITED TOKYO」は引用商標「UNITED」とは類似しないとした審決が維持されました。争点は、「TOKYO」が識別力が無いので分離判断すべきかです。
 複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構\ 成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否 を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識 として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出 所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,原則とし て許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12 月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第 103号平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁 平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事22 8号561頁)。 そこで,本件商標と引用商標との類否の判断に当たって,本件商標の一部である 「UNITED」を抽出して,引用商標と比較することができるかについて検討す る。
・・・
前記のとおり,「UNITED」の語は,「結合した,連合した」などの 意味を有する形容詞であり,「TOKYO」の語は名詞であるから,「UNITED」 の語は「TOKYO」の語を修飾しており,「UNITED TOKYO」という語 は,「結合した東京」,「連合した東京」又は「東京連合」と訳される。その言葉は必 ずしも一般的に用いられているものではないが,東京には,数多くの人が居住し, また,特色,歴史及び文化の異なる多くの地域があることからすると,それらの連 合体を観念することができ,したがって,「結合した東京」,「連合した東京」又は「東 京連合」をそのような意味で理解することも可能であるというべきである。そうす\nると,本件商標は,「結合した東京」,「連合した東京」又は「東京連合」という観念 上一体のものとして理解されることもあり得るというべきである。
ウ 一方,「UNITED」という語は,「結合した,連合した」などの意味 を有する形容詞であるから,他の語と一体となって,その語を修飾するために用い られるのであり,単独では意味を取りにくい語であるといえる。また,前記のとお り,被服又は靴類を指定商品として「UNITED」を含む商標が登録された例は 非常に多いことから,ファッション業界においては,「UNITED」という語はあ りふれているものと認められる。さらに,本件証拠上,「UNITED」が原告の商 品又は営業を示すものとして周知であるといった事情も認められない。
エ 以上からすると,本件商標は,一連一体のものとして理解されるという べきであって,「UNITED」の部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与 えるとか,「TOKYO」の部分から出所識別標識としての称呼,観念を生じないな どということはできないから,引用商標との類否の判断において,「UNITED TOKYO」から「UNITED」の部分を抽出して,同部分と引用商標とを比較 することは相当ではないというべきである。 (3)ア 原告は,「TOKYO」の語が被服等に用いられた場合,そのブランド の発信地を意味するものとして需要者に認識されるのであるから,本件商標のうち 「TOKYO」の部分は商品の品質,産地あるいは役務の提供地を表示するものに\nすぎず,「TOKYO」の部分には識別力がない旨主張する。 しかし,前記(2)のとおり,本件商標のうち,「UNITED」の語は形容詞であ り,これに続く「TOKYO」の語を修飾していること,「UNITED」の語意か らすると,単独では意味を取りにくく,他の語と併せて一つの意味のある言葉とな ること,本件証拠上,「UNITED」が原告の商品や原告の営業を表示するものと\nして,周知であるといった事情も認められないこと,一方,「UNITED TOK YO」の語からは,「結合した東京」,「連合した東京」又は「東京連合」という観念 が生じ得ることなどからすると,「UNITED TOKYO」のうち「TOKYO」 の語が,「UNITED」とは切り離された独立のものとしてブランドの発信地を意 味し,商品の品質,産地あるいは役務の提供地を表示するものにすぎないと理解さ\nれることはないというべきである。 イ 原告は,被告は会社名に「TOKYO」を使用しているほか,ウェブサ イト等において,「UNITED TOKYO」が東京のリアルなモードスタイルを 発信していくブランドであることを強調していることから,本件商標のうち,「TO KYO」の部分は,東京発のブランドであることを示すために用いられていると主 張する。
証拠(甲29〜31,37,38)によると,被告の開設するウェブサイトには, 「TOKYOブランドにこだわり,TOKYOのリアルなモードスタイルを世界へ 発信」,「伝統的なモノ,最先端のモノ,異文化のモノも絶妙なバランス感覚で調和 できる『TOKYO』特有の感性」,「東京のクリエーションと日本の技術のプラッ トホームになれば良いそんな想いと創造を東京/日本から世界へ発信」,「TOKY Oを代表するクリエーターと共に,TOKYOのクリエーションを『UNITED\nTOKYO』のフィルターを通して提案していきます」との記載があり,また,他 のウェブサイトの被告を紹介した記事の中に「東京を拠点とするクリエーターとコ ラボレーションしたアイテムを展開する」との記載があることが認められる。 上記事実からすると,ウェブサイトにおいて,被告のブランドが東京発のブラン ドであるとの記載があることが認められるが,前記(2)イのとおり,「UNITED TOKYO」から東京に居住する人々や東京の各地域の連合体という観念を生じ得 ることからすると,被告のブランドが東京発のブランドであると記載されることは 自然なことであって,被告のブランドが東京発のブランドであるとの記載があるこ とから直ちに,本件商標の「TOKYO」の部分が商品の品質,産地あるいは役務 の提供地を表示しているにすぎないということはできないというべきである。\n

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平成30(行ケ)10026  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年8月29日  知的財産高等裁判所

 商標「VANSNEAKER」(標準文字)から、「VANS」部分のみを分離して解釈可能とした審決が維持されました。\n
 ア 本件商標のように,標準文字で一連に記載されたものであっても,それ がいくつかの文字等を組み合わせた結合商標と解されるもので,かつその一部が需 要者に対して,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの である場合やそれ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認 められる場合などには,当該一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して 商標そのものの類否判断をすることも許される(最高裁昭和37年(オ)第953 号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成 3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号500 9頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁 判集民事228号561頁参照)。
イ これを本件についてみるに, 本件商標である「VANSNEAKER」 は,全体としてみた場合,それ自体としては何の意味もない造語である。そして, 前記1で検討したように,「VANS」の欧文字からなる引用商標が,スニーカーを 中心とした履物の分野で周知であり,出所識別標章として,一般消費者の間で強い 識別力を持つものであることからすると,本件商標の語頭にある「VANS」も本 件商標の指定商品である「履物」との関係では強い識別力を持つものといえる。 他方,本件商標から語頭の「VR」はそれ自体としては何の意味もない語であるところ,そこに直前に置かれた「S」(換言すると,「VANS」に用いられている「S」)を足した「SNEAKER」は,指定商品である履物の一種であるスニーカーを表示する語として,我が国においても広く知られていること,一般消費者向けの商品等に関して,二つの語を結合するときに,一方の語の末尾と他方の語の語頭とで共通する文字を敢えて省略して商品名等をネーミングする手法が見られること(乙76の1,乙77〜81)からすると,「NEAKER」は,直前に「S」を足して,「SNEAKER」と認識される可能\性が高いということができる。しかるところ,「SNEAKER」の語は,指定商品である履物の一種を表す語として,指定商品との関係では,識別力を有さないものであるから,「NEAKER」の部分は,指定商品との関係での識別力は,上記のように周知で識別力の強い「VANS」と比して明らかに弱いものといえる。以上からすると,本件商標からその要部として「VANS」の部分を抽出して,類否判断することが許されるというべきである。\n
(2) 類否判断
本件商標からその要部である「VANS」を抽出した場合,本件商標の要部であ る「VANS」と標準文字で欧文字の「VANS」を横書きしてなる引用商標は, 外観が同一といえる上,両者からは共に「ヴァンズ」との称呼が生じる。 また,前記で認定したように,「VANS」ブランドについて,スニーカーを中心 とした商品が日本において相当多数量販売されており,かつ引用商標や「VANS」 の欧文字をデザイン化した使用商標がスニーカーなどとともにファッション雑誌等 で多数回取り上げられるなど大規模な広告宣伝活動がされているから,本件商標の 要部である「VANS」及び引用商標からは,共に「スニーカーを中心として展開 されている異議申立人の業務に係るVANSブランド」といった観念も生じるもの\nと認められる。 以上のとおり,本件商標の要部と引用商標は,外観,称呼及び観念を共通にして おり,本件商標がその指定商品である「履物」に使用された場合,引用商標と出所 混同のおそれがあるということができるから,本件商標と引用商標は類似している ものと認められる。
(3) 原告の主張について
原告は,1)本件商標に接した者が,明示的な示唆等もないのに,前半部「VAN S」の最後の文字「S」を後半部を認識するためにもう一度使用することはない, 2)本件商標に接した者は,本件商標中の「SNEAKER」から「スニーカー」を 想起するなどし,前半の「VAN」を認識して,本件商標を「ヴァンスニーカー」 などと一体として称呼,認識する,3)本件商標から「VANS」を取り出した残り は「NEAKER」であるが,「NEAKER」が商品の出所識別標識としての機能\nを有していて省略されるべきではないことからすると,本件商標は一体として「ヴ ァンズニ―カー」などと称呼,認識される可能\性もある,4)「VANS」の語は固 有の意味を有しない造語であるから,商品等のネーミング手法の一つとして,二つ の語を各語の構成文字の一部を省略し結合する他の例と同列に論じることはできな\nい,5)「VANS」を含み,指定商品を「靴及び運動用特殊靴」とする「vans ydical」が登録されていることが,被告の主張と反するなどと主張し,本件 商標について「VANS」の部分を抽出して類否判断することは許されない旨を主 張する。 しかし,上記1)〜3)については,上記で検討したように,指定商品に関して使用 された本件商標に接した場合,接した者の注意は,識別力の強い語頭の「VANS」 に向けられるとともに,「VANS」と「SNEAKER」の間で「S」が重なり合 っていると理解し,本件商標について,「VANS」と「SNEAKER」を組み合 わせて構成されたものと認識することが十\分にあり得るところであって,原告の主 張するように常に一体として認識されるとはいえず,原告の主張は採用できない。 また,上記4)についても,前記1のとおり,「VANS」は,指定商品「履物」と の関係では,周知性のある識別力の高い語であって,かつ上記のように「スニーカ ーを中心として展開されている異議申立人の業務に係るVANSブランド」という\n観念が指定商品の需要者である一般消費者の間に生じるものであるから,「VAN S」が固有の意味を有しないということはできず,原告の主張はその前提において 失当である。 さらに,上記5)についても,原告が挙げる商標の構成は,本件商標のそれとは異\nなっているから,原告が挙げる商標が登録されているからといって,それが本件商 標と引用商標との類否の判断に直ちに影響を及ぼすものとはいえず,原告の主張は 採用できない。

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平成30(行ケ)10014  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年8月29日  知的財産高等裁判所

 知財高裁も、審決と同様に、商標「TENRYU」(標準文字)から、「テンリュー」の称呼が生じ、かかる称呼から,「天竜,天龍」を意味するものと理解するのが一般的として、先願「天龍」と類似すると判断しました。
 商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合 に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであ るが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によ って取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきで あり,かつ,その商品の取引の実情を明らかにしうる限り,その具体的な取引状況 に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43 年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。 また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の\n構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支\n配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識と しての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,当該部分だけを他人の商 標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである(最高裁昭和 37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1 621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・ 民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8 日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁)。
(2) 本願商標と引用商標1との類否
ア 本願商標は,前記第2の2(1)のとおり,「TENRYU」の欧文字を標 準文字で表したものであり,「テンリュー」の称呼が生じる。\nまた,上記称呼から,本願商標は,「天竜,天龍」を意味するものと理解するの が一般的であり,「天竜,天龍」からは「天の竜(龍)」の観念が生じるから,本 願商標からは「天の竜(龍)」の観念が生じる。
イ 引用商標1は,前記第2の2(3)のとおり,別紙記載1の商標であり,「テ ンリュー」の称呼が生じ,「天の竜(龍)」の観念が生じる。 ウ 本願商標と引用商標1とは,外観は異なるものの,称呼及び観念は同一 である。 そして,引用商標1は漢字を用いているのに対し,本願商標は欧文字を用いてい るが,引用商標1をローマ字で表記すると本願商標となることは明らかである。我\nが国においては,漢字を同じ称呼のローマ字で表記することは一般的に行われてい\nるという事情を考慮すると,文字種が異なることによる本願商標と引用商標1の外 観の相違は,両商標が別異のものであると認識させるほどの強い印象を与えるもの ではないというべきである。 以上の事情を総合考慮すると,本願商標は引用商標1に類似しているというべき である。

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平成30(行ケ)10007  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月21日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は商標法4条1項7号違反の無効理由無しと判断しました。判決中で、同号違反について、類型化した判断基準を示しました。
(1) 商標法4条1項7号が規定する「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,1)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,2)当該商標の構成自体が用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,3)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されていることにより,同号該当性が認められる場合,4)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合のほか,5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合などが含まれるものと解される。本件商標に関していえば,上記1)ないし4)に該当しないことは明らかであるから,以下,上記5)の場合に該当するか否かについて検討する。
(2) この点につき,原告は,長男Aは親族間で共有していた共有商標1ないし 3を故意に消滅させ,その上で,これを独占する意図で本件商標の登録出願 を行ったものであり,かかる行為は,長男Aと長男A以外の共同権利者との 間の信義則上の義務違反となるのみならず,適正な商道徳に反し,著しく社 会的妥当性を欠く行為というべきであるから,本件商標は商標法4条1項7 号に規定する商標に該当し,その商標登録は同号の規定に違反してされたも のとして無効にされるべきである旨主張する。 確かに,長男Aは,「千鳥屋」のグループ企業を営む経営者同士で共有し その事業で使用していた共有商標1ないし3を事実上代表して管理する立場\nにありながら,存続期間を更新するために必要な手続(書換登録申請)を取\nらずにその権利を消滅させる傍らで,共有商標1ないし3と構成をほぼ同じ\nくする長男商標1ないし4や本件商標を単独で出願してその登録を得ており, かかる行為の外形のみに着目すれば,本件出願は,商標の独占を図った不当 な出願であって,適正な商道徳に反し,著しく社会的妥当性を欠く行為であ るとの評価を行うことも全くあり得ないことではないと考えられる。
(3) しかしながら,他方で,長男Aが単独で本件出願を行った目的や経緯につ いてみると,本件においては,次のような事情が認められる。 すなわち,その目的や経緯について,被告らは,本来であれば,Fの相続 人間で本件商標を含む権利関係を処理する必要があったが,長男Aは,これ までのFの相続に関する紛争の経過や,三男Cによる単独での商標登録出願 の動き等から事前協議による解決は困難であると判断し,自ら単独で権利を 取得した後に改めて「千鳥屋」グループの事業に関連する兄弟及びその関係 者(本件4者)間での共有に移そうと考えたものであり,決して本件商標等 の独占を図ったものではない旨を主張している。 しかるところ,確かに,Fの遺産相続に関しては,「千鳥屋」の事業を行 う長男Aら兄弟4名とそれ以外の相続人3名との間でも,また長男Aら兄弟 間においても,必ずしも円滑に協議が進んでいなかったことがうかがわれ(甲 20及び21は,Fの遺産分割調停に係る調停調書であり,平成9年の調停 申立てから平成15年の調停成立まで約6年を要していることが分かる。ま\nた,乙5及び6は,「千鳥屋」の内紛を報じる報道記事であり,経営者一族 間で「(Fの)遺産相続を巡りトラブルが発生」していることや,「兄弟7 人が骨肉の争いを演じ」ていることが記載されている。),三男Cに関して も,Fの死後,独自に「千鳥屋宗家」の商標登録出願をしたり(乙7),長 男Aが経営する総本家の商号と類似する「千鳥総本家」の商標登録出願をし たり(乙11),長男Aが事業を営む地域(東京)に関連する「江戸千鳥」 (乙12)や,二男B及び四男Dが事業を営む地域(福岡)に関連する「博 多千鳥」(乙13)の商標登録出願を行ったりするなど,実際に,他の兄弟 との間で緊張を生じさせかねない動きがあったことがうかがわれる。 なお,平成13年には,「西村千鳥屋」なる登録商標(登録第19219 33号)につき,Fの持分を長男Aら兄弟4名に移転する持分移転登録申請\nがされ,平成18年には,「チロリアン」なる登録商標(登録第70755 8号)につき,長男Aら兄弟4名の申請で書換登録申\請がされ,いずれもI 弁理士が申請人代理人となっている事実が認められるが(甲13,22),\nこれらは飽くまで共有商標1ないし3とは異なる商標に関する手続であって, 利害関係が全く同一であるとはいえないし,Fの遺産分割に関する相続人間 の協議が全体として円滑に進んでいなかったことは上記のとおりであるから, これらの事実をもってしても,被告らの主張が全面的に信用できないことに はならない。 また,長男Aは,本件商標等の取得後,少なくとも,本件商標に関してい えば,実際に,長男A(総本家)の関係者である被告Y1のみならず,二男 Bの経営する被告総本舗,四男Dの関係者である被告Y2の3者間の共有名 義に移しており,原告に対しても,I弁理士を通じて,他の長男商標等を含 めて,最終的に「J家関係の4者」のみでの共有とする意思があることを表\n明している(これらは,権利の独占とは明らかに反する行動であるといえる。)。 そして,被告総本舗の代表取締役であり二男Bの関係者であるGと,四男D\nの関係者(千鳥屋本家の代表者)である被告Y2が,長男Aの方針に理解を\n示して,長男Aによる本件商標等の出願及び商標登録を承認するとの意向を 示していることも,前記認定のとおりである。 さらに,現時点において本件商標権を共有する被告Y1,被告総本舗及び 被告Y2や,長男商標1ないし4を保有する総本家や長男Aが,原告及びそ の関係者に対し,これらの商標の使用を禁止するような動きは,証拠上一切 うかがわれない。 これらの事情を総合すると,被告らが主張するところもあながち不合理と はいえず,首肯できる面があるというべきである。 そうであるとすれば,原告が主張する点を考慮しても,なお,長男Aによ る本件商標の登録出願(本件出願)が,本件商標の独占を図る意図の下に行 われたと認めるには足りないというべきであり,ほかに本件商標が前記5)の 場合に該当するというべき事情は特に見当たらない。
(4) 以上によれば,本件商標は商標法4条1項7号に該当するとはいえず,こ の点に関する審決の認定判断に誤りがあるとは認められない。

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平成30(行ケ)10004  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年7月25日  知的財産高等裁判所

 知財高裁4部は、4条1項19号違反で無効とした審決を維持しました。原告は意匠権の切れたリプロダクト品を販売していました。問題の商標はランプシェードの立体的形状を2次元として表した形状で、被告商品とともに判決文の最後に挙げられています。\n
 被告商品の雑誌等の出版物への掲載状況をみると,前記(1)ウ(イ) のとおり,被告商品は,1990年(平成2年)から2013年(平成 25年)ころまでの間,家具に関する書籍,照明に関する雑誌・カタロ グ,インテリア雑誌,ファッション雑誌,経済雑誌等の多数の出版物に おいて,被告商品の形態(立体的形状)が認識できるような写真と共に 紹介されており,その基本的な内容は,被告商品は,20世紀を代表す\nるデザイナーであるヘニングセンが1958年にデザインし,被告が販 売する世界のロングセラー商品であり,そのデザインが優れていること を強調するものといえる。
エ 前記イ及びウで認定した被告商品の販売状況及び広告宣伝状況に加えて, 被告商品は,平成9年度通商産業省選定グッド・デザイン外国商品賞(イ ンテリア用品部門)を受賞し,平成24年には高等学校の教科書において, 被告商品の写真と共に,「モダンデザインの代表的ペンダント PH5… ポール・ヘニングセン」として掲載されたこと(前記(1)エ)を総合すると, 被告商品は,その販売が開始された1976年(昭和51年)当時,その 2層目から5層目が組み合わさった形状において,他のランプシェード商 品には見られない独自の特徴を有しており,しかも,被告商品が上記販売 開始後本件商標の登録出願日(平成25年6月14日)までの約40年間 にわたり全国的に継続して販売され,この間被告商品のデザインを印象づ けるような広告宣伝が継続して繰り返し行われた結果,本件商標の登録出 願時までには,被告商品が日本国内の広範囲にわたる照明器具,インテリ アの取引業者及び照明器具,インテリアに関心のある一般消費者の間で被 告が製造販売するランプシェードとして広く知られるようになり,被告商 品の立体的形状(引用商標)は,周知著名となり,自他商品識別機能ない\nし自他商品識別力を獲得するに至ったものと認められる。 そうすると,引用商標が被告商品に長年使用された結果,引用商標は, 本件商標の登録出願時及び登録査定時(登録査定日・同年12月27日) において,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,日本\n国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められる。
・・・
加えて,原告は,平成25年2月当時,被告商品を元にできるだけ忠実 に復刻生産したランプシェードの商品(原告商品)を「ポール・ヘニング センPH5」のリプロダクト品として原告のウェブサイト上で販売してい たこと(前記(1)ア及びイ)を併せ考慮すると,原告は,本件商標の登録出 願時(同年6月14日)において,被告商品は,ヘニングセンがデザイン した被告が製造販売する商品であること及び被告商品の立体的形状(引用 商標)について十分に認識していたことが認められる。\n

◆判決本文

関連事件です。こちらは19号違反なしと判断されました。上記案件とは商標が異なります。

◆平成30(行ケ)10005

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平成30(行ケ)10029  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年7月19日  知的財産高等裁判所

 著名な掲示板「2ちゃんねる」について、4条1項10号違反の無効主張がなされました。知財高裁は無効理由なしとした審決を維持しました。「2ちゃんねる」については譲渡したなどがニュースになっていたので、その関係の事件なのでしょう。裁判所は譲渡されたとは認められないと判断しました。
 電子掲示板に係る事業は,電子掲示板の名称等の商標のほか,ドメイン 名を使用する権利,電子掲示板に表示される広告に関する契約及びインタ\nーネットサービス提供に関する契約を含む複数の財産を用いて行われてい るものであるから,電子掲示板に係る事業を譲渡するに当たっては,これ らの複数の財産を移転し,その対価を支払うことを内容とする合意をする のが通常であるところ,本件事業譲渡の合意の具体的な内容は明らかでは ない。 そして,事業譲渡をするに当たっては,移転の対象となる具体的な財産 を特定し,事業譲渡の対価を定めるほか,対価の履行期及び履行方法,譲 渡の対象となる財産の移転方法(第三者の承諾等を要する場合にはその手 続の履行期及び履行方法等)を定めるのが通常であり,移転の対象となる 財産の内容によっては事業譲渡の基準日時点での債権債務の処理について 定める場合も考えられる。さらに,本件事業譲渡のように,当事者の一方 が法人である場合には,なおさら慎重な手続がとられるのが一般であるし, 本件事業譲渡は渉外法律関係を含むから準拠法の問題を生じ得ることから しても,口頭のみで契約を行うことは考えにくい。以上に照らせば,本件 事業譲渡につき契約書等の書面を作成せずに契約を締結するとはにわかに 考え難いというべきところ,本件事業譲渡に係る契約書等の処分証書の提 出はない。
イ また,本件記事において,1) 平成24年12月に,被告が本件電子掲 示板上の違法薬物に関する書き込みを放置したとして検察庁に送致された 旨,2) 平成25年3月に,本件電子掲示板上の違法薬物に関する書き込 みの削除措置がとられたために被告が不起訴処分となった旨,3) 同年8 月に,被告が本件電子掲示板に係る高額の広告収入をパケットモンスター 社から受領したとして東京国税局から指摘を受けた旨が記載されており(上 記1(7)),これによれば,被告は,平成21年1月以降も本件電子掲示板 の運営を含む本件電子掲示板に係る事業に実質的に関与していたことがう かがわれる。
ウ 以上のとおり,本件事業譲渡の合意の具体的な内容が明らかでないこと, 本件事業譲渡に係る契約書がないのはそれ自体不自然であること,本件事 業譲渡がされたという時期以降も被告が本件電子掲示板に係る事業に実質 的に関与していたことがうかがわれることに照らせば,本件事業譲渡がさ れた事実を認めることはできない。
エ 原告の主張について
(ア) 原告は,平成21年1月2日に本件ドメイン名のWhois情報上の登録 者がパケットモンスター社に変更されたことは,本件ドメイン名を使用 する権利が移転したことを意味し,これは本件事業譲渡を裏付けると主 張する。 しかし,上記1(2)のとおり平成12年から平成21年までの間に本件 ドメイン名のWhois情報上の登録者は何度も変更されているところ,これ らの登録者の変更が本件ドメイン名を使用する権利の実体上の移転を伴 うものであるかどうかは明らかではない(むしろ,登録者の変更が事業 譲渡を反映しているのだとすると,上記1(2)アないしオによれば,平成 12年から平成21年の間に本件事業譲渡を含む3回の事業譲渡が行わ れたことになるが,本件事業譲渡に対応する平成21年1月の登録者変 更以外の登録者変更に関しては,それが事業譲渡に伴うものであったこ とをうかがわせる証拠は全く存しないのであって,このことは,登録者 の変更が,必ずしも事業譲渡に伴うものではないことをうかがわせる事 情であるといえる。)。また,パケットモンスター社の設立時(平成2 0年10月13日)の株主は被告であるから(上記1(6)),パケットモ ンスター社は被告と関連を有する会社であったものとうかがわれる。以 上によれば,本件ドメイン名のWhois情報上の登録者がパケットモンスタ ー社に変更されたことをもって,本件ドメイン名を使用する権利の移転 やこれを伴う本件事業譲渡を直ちに裏付けるものとみることはできない。 なお,平成25年8月18日時点のパケットモンスター社の役員及び株 主が被告でないこと(上記1(6))は,この判断を左右するものではない。
(イ) 次に,原告は,本件ブログ及び本件書籍並びに本件記事における記載 は,本件事業譲渡を裏付けると主張する。 しかし,本件書籍及び本件ブログの「2ちゃんねる(ないし2ch) を譲渡」との記載自体からはこれが法律上の事業譲渡を意味するのかが 不明であるし,本件書籍にはこの「譲渡」の後も被告が「2ちゃんねる アドバイザー」であった旨の記載もある。また,本件記事には,被告を 「元管理人」と称し,被告が「本件電子掲示板を運営管理する権利を譲 渡したと公表した」とする部分があるが,その一方で,被告が平成21\n年1月以降も本件電子掲示板の運営に深く関与していることを示唆する 内容も含まれており,本件記事を事業譲渡を裏付ける証拠と断定するこ とはできない。 以上によれば,本件ブログ及び本件書籍並びに本件記事における記載 から,本件事業譲渡がされた事実を認めることはできない。
(ウ) さらに,原告は,本件電子掲示板上にパケットモンスター社の記載が あることは本件事業譲渡を裏付けると主張するが,本件電子掲示板をパ ケットモンスター社が運営管理している旨の記載(上記1(5))からは, パケットモンスター社が事業主体であるのか,事業主体から電子掲示板 の運営管理の委託を受けているのかが明らかではなく,本件事業譲渡を 裏付けるものとはいえない。

◆判決本文

関連事件です。

◆平成30(行ケ)10028

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平成29(ワ)12058  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年6月28日  東京地方裁判所

 商標権侵害事件です。4条1項19号(海外の著名商標を不正目的で登録した)違反の無効理由があるので権利行使不能と判断されました。
 ア 周知性について
上記アの各事実によれば,KCP社は,平成14年5月15日の 設立以来,14年程度の比較的長期間にわたり,同社の商号の一部と もいえるKCP社商標を同社の製品に付すなどして継続的に使用する とともに,同社製品の販売台数及び売上げを徐々に伸ばし,平成24 年以降,コンクリートポンプ車の韓国国内の市場において,同社の製 品の占有率は3割5分から4割を維持し,1位であったと認められる。そ うすると,KCP社商標は,本件商標の商標登録出願日(平成27年 2月18日)当時において,韓国のコンクリート圧送業者等の需要者 の間において,KCP社の商品を示すものとして広く認識されていた と認められる。 これに対し,原告は,KCP社の売上げ等の根拠となった資料(乙 15ないし18)は同社の社内データにすぎず,信用性は低い旨主張 するが,同資料記載の平成27年の総売上高(1169億8230万 8109ウォン,乙18)は韓国金融監督院の売上公開情報における 売上高(乙99)と一致しており,その他の数字についても,この信 用性を覆すに足りる証拠はない。 したがって,KCP社商標は,「外国における需要者の間に広く認識 されている商標」に当たる。
イ 本件商標とKCP社商標の同一性
本件商標は「KCP」とのアルファベットを標準文字で横書きしたも のであるのに対し,KCP社商標もまた「KCP」とのアルファベット を横書きしたものであるから,両商標は同一または類似の商標といえる。
ウ 不正の目的
上記で認定した各事実によれば,原告代表者は,1)平成24年1 2月から平成27年1月頃まで,日本国内においてKCP社の製品で あるコンクリートポンプ車等を宣伝・販売していたこと(上記イ), 2)平成27年1月頃,KCP社が日本への進出を計画し,被告Yが日 本国内のコンクリート圧送業者への営業活動を行っていることを知る と,直ちにKCP社商標と同一又は類似の本件商標につき登録出願を 行ったこと(同エ及びオ),3)同登録出願後,本件商標につき登録 査定がされる以前である同年4月頃,KCP社に対し,本件商標を無 償で譲渡等することはできない旨述べたこと(同,4)同様に同登 録出願後,登録査定以前である同年5月28日,被告Yに対し,日本 における営業活動をしないように求めるとともに,これをKCP社に 報告するように求め,本件商標の使用には原告の日本におけるこれま での営業活動に対する見返りが必要である旨の発言をしたこと(同オ ,5)同様に同登録出願後,登録査定以前である同年5月29日頃, 原告以外の販売店等がKCP社商標の付されたコンクリートポンプ車 を販売することが商標権侵害に当たることを警告するパンフレットを 作成・配布したこと(同オ(エ),6)本件商標の登録後間もない同年8月 12日,KCPジャパン社及び被告会社に対し,KCP社商標の使用 停止と削除を求める文書を送付したこと(同オ(オ))が認められる。 これらの事実からすれば,原告代表者は,KCP社が日本に進出し\nようとしていることを知ると,未だKCP社商標が商標登録されてい ないことを奇貨として,同社の日本国内参入を阻止・困難にするとと もに,同社に対し本件商標を買い取らせ,あるいは原告との販売代理 店契約の締結を強制するなどの不正の目的のために,KCP社商標と 同一又は類似する本件商標を登録出願し,設定登録を受けたものと推 認せざるを得ない。 したがって,原告は,「不正の目的」をもって本件商標を使用するも のと認めることができる。
これに対し,原告は,KCP社の国内参入を阻止または困難にする 目的等の存在を否定し,原告代表者も,KCP社の日本進出前である\n平成26年秋頃には本件商標の登録を弁理士に依頼した等と述べて, 上記主張に沿う供述をする(原告代表者〔15及び16頁〕)。\nしかしながら,原告代表者が平成26年秋頃に本件商標の登録を計\n画していたことを裏付ける客観的証拠は存在しない上,同人の供述は, 本件商標出願の理由については「別にありません」と述べ,「KCP」 との文字の組み合わせを出願しようと決定した理由については,「コン クリートポンプ車か,コンストラクションプロダクツか,韓国のコン ストラクションプロダクツか,コンクリートポンプ車か,複雑な意味 を持っていますが,はっきりは,表向きには言わなかったです。」と述\nべるなど(原告代表者〔15及び16頁〕),KCP社商標と同一又は\n類似の商標を登録出願した理由を合理的に説明するものではなく,信 用性は低い。 加えて,原告代表者は,本件商標出願以前にKCP社の商品に係る\n営業活動を行っていた2年超の間は,「KCP」との文字を含む商号を 使用することはあったとしても((1)イ(ウ)),「KCP」について排他的 効力を有する商標権を得ようとまではしていなかったにもかかわらず, KCP社の日本進出と同時期にこれを取得したことにつき,正当な理 由は見いだしがたい。 したがって,原告の上記主張は採用できない。
エ 以上によれば,本件商標は,他人の業務に係る商品を表示するものと\nして韓国国内における需要者の間に広く認識されているKCP社商標と 同一または類似の商標であって,不正の目的をもって使用するものであ るから,商標法4条1項19号に該当する。 したがって,本件商標は,商標登録無効審判により無効とされるべきものと認められ,原告は,被告らに対し,その権利を行使することができない(商標法39条,特許法104条の3)。

◆判決本文

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不服2017-012293

判決ではありませんが、ちょっと違和感あるのでアップします。 称呼同じ、観念比較できず、しかし、外観が全く違うので非類似との判断。 この判断基準なら外観がかなり違うのは全て非類似となってしまいます。

◆審決本文

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平成30(行ケ)10001  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月21日  知的財産高等裁判所

 商標「ありがとう」(標準文字)が、招き猫の下部に文字「ありがとう」が混在した図形商標を引例(判決文の最後に引用商標あり)として拒絶されました。
 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,対比される商標が同一又は類 似の商品又は役務に使用された場合に,その商品等の出所につき誤認混同を 生ずるおそれがあるか否かによって決すべきところ,その際には,使用され た商標がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記 憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,しかもその商品等の取引 の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するの が相当である(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2 号399頁参照)。 また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについては,\n商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思\nわれるほど不可分的に結合していると認められる場合は,その構成部分を抽\n出し,当該部分だけを他人 色で縁取りされた白色無地の扇形とで構成される図形と,当該扇形の内側\nに黒色の明朝体風の書体で横一列に「ありがとう」の文字が記載されたも ので,結合商標と解される。
イ 引用商標の構成中,「ありがとう」の文字部分は,図形の内部に記載さ\nれているものの,引用商標の中央下部に位置し,商標の横幅いっぱいの大 きさがある白色無地の扇形の中というひときわ目立つ場所に,当該扇形の 横幅全体を使うほどの大きさで,黒色の読み取りやすい書体で明瞭に記載 されているから,外観上,主として招き猫とそれが支持する扇形とからな る図形部分(招き猫の図形部分)と一見して明確に区別して認識できる。 そして,「ありがとう」の語は,平仮名5文字からなる極めて平易なもの であって,称呼しやすく,感謝の意を表す際に日常的に多用される馴染み\nのある言葉であることを考え合わせると,「ありがとう」の文字部分は, 引用商標を見る者に強い印象を与えるとともに,その注意を強く引くもの であると認めるのが相当である。 これに対し,招き猫の図形部分と「ありがとう」の語とが,観念的に密 接な関連性を有しているとは考え難いし,一連一体となった何かしらの称 呼が生じるともいえない。また,招き猫の図形部分及び「ありがとう」の 文字部分は,指定役務との関係で,当該役務の質等を表すものともいえな\nい上,このほかに各部分が単独では出所識別機能を有しないと認めるに足\nりる的確な証拠も見当たらない。 これらの事情を総合すると,招き猫の図形部分と「ありがとう」の文字 部分とが,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不 可分的に結合していると認めることはできないから,当該図形部分と当該 文字部分は,それぞれが独立して出所識別機能を有する要部であるという\nべきである。
ウ 以上によれば,引用商標においては,その全体から「アリガトウ」の称 呼及び「感謝の意を表す招き猫」といった程度の観念がそれぞれ生じると\n認められる。 そして,招き猫の図形部分からは特定の称呼を生じないものの,「招き 猫」との観念が生じ,また,「ありがとう」の文字部分から,「アリガト ウ」の称呼及び「感謝の意をあらわす挨拶語」といった程度の観念がそれ ぞれ生じると認められる。
(4) 本願商標と引用商標の類否
本願商標と,引用商標の要部である「ありがとう」の文字部分とは,外観 上,書体の相違以外は同一であり,さらに,上記(2)及び(3)において説示し たとおり,両者は称呼上も観念上も同一である。 したがって,本願商標と引用商標とは,出所について誤認混合を生ずるお それがあり,両商標は類似するものというべきである。

◆判決本文

関連事件です。

◆平成30(行ケ)10002

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平成29(行ケ)10214  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月12日  知的財産高等裁判所

 デザイン化された「GUZZILLA」が、引用商標「GODZILLA」から混同生ずるか?(4条1項15号)が争われました。審判では無効理由無しと判断されましたが、知財高裁はかかる審決を取り消しました。両者は、商品・役務がかなり異なりますが、一部の商品について一般消費者によって使用されるとして、混同が認められました。

 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,称呼において相紛らわしいものであっ て,外観においても相紛らわしい点を含むものということができる。
(3) 引用商標の周知著名性及び独創性の程度
ア 怪獣映画に登場する怪獣である「ゴジラ」は,原告によって創作されたもの であり(甲4),「ゴジラ」が著名であることは当事者間に争いがない。 イ 怪獣映画に登場する怪獣である「ゴジラ」には,昭和30年,欧文字表記として引用商標が当てられ,その後,引用商標が「ゴジラ」を示すものとして使用さ\nれるようになったものである(甲7,8)。欧文字表記の引用商標は,我が国において,遅くとも昭和32年以降,映画の広告や当該映画中に頻繁に使用され(甲7,\n8,21,39〜43,46〜50,55,79,80,81の1〜3,82,8 4),遅くとも昭和58年以降,怪獣である「ゴジラ」を紹介する書籍や,これを 基にした物品に多数使用されていること(甲17,18,21,22,26,45, 52〜54,56〜61,63〜73,77,78,86の1,92,101の3, 102の4,162),さらに,怪獣である「ゴジラ」の英語表記として多くの辞書にも掲載されていること(甲125〜129,143〜153)からすれば,引\n用商標は著名であるということができる。
ウ 語頭が「G」で始まり,語尾が「ZILLA」で終わる登録商標は,引用商 標の他には,本件商標を除き見当たらない。架空の怪獣の名称において,語頭が濁 音で始まり,語尾が「ラ」で終わる3文字のものが多いとしても,これらは怪獣「ゴ ジラ」が著名であることの影響によるものと認められ(甲173,174),さら に,欧文字表記において,引用商標と類似するものも見当たらない。エ 以上によれば,引用商標は周知著名であって,その独創性の程度も高いとい うべきである。
(4) 商品の関連性の程度,取引者及び需要者の共通性
ア 商品の関連性の程度
本件指定商品は,第7類「鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,農業用 機械器具,廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置」である。本件指定商品には,専門的・ 職業的な分野において使用される機械器具が含まれる。また,これに加えて,本件 指定商品のうち,「荷役機械器具」には,油圧式ジャッキ,電動ジャッキ,チェー ンブロック,ウインチが,「農業用機械器具」には,刈払機,電動式高枝ハサミ, ヘッジトリマ,草刈機が,含まれる(甲225,226,231〜234,243, 253,乙18)。
これに対し,原告の主な業務は,映画の制作・配給,演劇の制作・興行,不動産 経営等のほか,キャラクター商品等の企画・制作・販売・賃貸,著作権・商品化権・ 商標権その他の知的財産権の取得・使用・利用許諾その他の管理であり(甲135), 多角化している。原告は,百社近くの企業に対し,引用商標の使用を許諾している ところ,その対象商品は,人形やぬいぐるみなどの玩具,文房具,衣料品,食料品, 雑貨等であるなど,多岐にわたる(甲12,83〜96,98〜102,199〜 211(枝番を含む。))。
本件指定商品のうち専門的・職業的な分野において使用される機械器具と,原告 が引用商標の使用を許諾した玩具,文房具,衣料品,食料品,雑貨等とは,前者が, 工場や事業所などの産業現場で,人間の業務を補助する機械であって,専らその性 能や品質などが商品選択の基準とされるのに対し,後者は,日常生活で,一般消費者によって使用される物であって,同種製品との差別化が難しいものであるから,\n性質,用途及び目的における関連性の程度は高くない。 一方,本件指定商品に含まれる油圧式ジャッキ,電動ジャッキ,チェーンブロッ ク,ウインチ,刈払機,電動式高枝ハサミ,ヘッジトリマ,草刈機等の商品は,ホ ームセンター等の店舗やオンラインショッピング,テレビショッピングにおいて, 一般消費者に比較的安価で販売され得るものである(甲235〜242,244〜 252,254(枝番を含む。))。そうすると,これらの商品は,日常生活で, 一般消費者によって使用される物であって,同種製品との差別化が難しいものとい うことができる。これらの商品は,一般的な玩具等とは異なり,使用方法によって は,身体・財産に危険が生じるものではあるが,比較的小型の機械器具であって, その操作方法も比較的単純であるから,専門的な業務用途に限られるものではなく, 特別な知識,能力を有する者のみにその使用が限定されるものでもない。したがって,本件指定商品に含まれる油圧式ジャッキ,電動ジャッキ,チェーンブロック,\nウインチ,刈払機,電動式高枝ハサミ,ヘッジトリマ,草刈機等と,原告が引用商 標の使用を許諾した玩具,雑貨等とは,ホームセンター等の店舗やオンラインショ ッピング,テレビショッピングにおいて,一般消費者に比較的安価で販売され得る ものであり,日常生活で,一般消費者によって使用されるなど,性質,用途又は目 的において一定の関連性を有しているといわざるを得ない。 よって,本件指定商品に含まれる商品の中には,原告の業務に係る商品と比較し た場合,性質,用途又は目的において一定の関連性を有するものが含まれていると いうべきである。
イ 取引者及び需要者の共通性
本件指定商品に含まれる前記油圧式ジャッキ等の,比較的小型で,操作方法も比 較的単純な荷役機械器具及び農業用機械器具の需要者は一般消費者であり,その取 引者は,これらの器具の製造販売や小売り等を行う者である。また,原告が引用商 標の使用を許諾した玩具,雑貨等の需要者は一般消費者であり,その取引者は,こ れらの商品の製造販売や小売り等を行う者である。本件指定商品の取引者及び需要 者の中には,原告の業務に係る商品の取引者及び需要者と共通する者が含まれる。 そして,商品の性質,用途又は目的からすれば,これら共通する取引者及び需要者 は,商品の性能や品質のみを重視するということはできず,商品に付された商標に表\れる業務上の信用をも考慮して取引を行うというべきである。(5) 出所混同のおそれ 以上のとおり,「混同を生じるおそれ」の有無を判断するに当たっての各事情に ついて,取引の実情などに照らして考慮すれば,本件指定商品に含まれる専門的・ 職業的な分野において使用される機械器具と,原告の業務にかかる商品との関連性 の程度は高くない。
しかし,本件商標と引用商標とは,称呼において相紛らわしいものであって,外 観においても相紛らわしい点を含む。また,引用商標は周知著名であって,その独 創性の程度も高い。さらに,原告の業務は多角化しており,本件指定商品に含まれ る商品の中には,原告の業務に係る商品と比較した場合,性質,用途又は目的にお いて一定の関連性を有するものが含まれる。加えて,これらの商品の取引者及び需 要者と,原告の業務に係る商品の取引者及び需要者とは共通し,これらの取引者及 び需要者は,取引の際に,商品の性能や品質のみではなく,商品に付された商標に表\れる業務上の信用をも考慮して取引を行うものということができる。そうすると,本件指定商品に含まれる商品の中には,本件商標を使用したときに, 当該商品が原告又は原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の 関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるものが含まれるといわざるを得な\nい。
ウ 被告は,本件商標は引用商標にただ乗りするものではないし,本件商標を使 用しても引用商標の希釈化は生じないと主張する。 しかし,前記イのとおり,本件指定商品に含まれる油圧式ジャッキ等の取引者及 び需要者は,引用商標が有する力強いイメージに誘引されて,取引を行うことが十分に考えられるから,本件指定商品に本件商標が使用されれば,引用商標の持つ顧\n客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリュ ージョン)を招く結果を生じかねない。
また,被告は,平成8年頃から,コンクリート等を圧搾する機能を有する被告アタッチメントに本件商標を付して使用していることからすれば(甲130,167\n〜170),被告は,引用商標が有する力強いイメージを想起させることを企図し て,被告アタッチメントに,引用商標と称呼において相紛らわしく,外観において も相紛らわしい点を含む本件商標を付していたものといわざるを得ない。さらに, 被告は,本件商標の商標出願日である平成23年11月21日以降ではあるものの, 原告が使用していた「SUPER GODZILLA」「SPACE GOZIL LA」と相紛らわしい「SUPER GUZZILLA」「SPACE GUZZ ILLA」を使用している(甲30,55,62,131,132,136〜13 8,155〜158,161〜165,198)。また,被告は,本件商標の商標 出願日以降ではあるものの,本件商標をタオル,腕時計,手袋,帽子,Tシャツ, パーカー等に付して,広く無償配布及び販売している(甲178〜188,218, 228,229)。加えて,被告は,本件商標の商標登録日以降ではあるものの, 我が国における周知著名な商標と相紛らわしい「ガリガリ君」や「STUDIO G ABULLI」との文字から成る商標につき商標登録出願もしている(甲139〜 142)。これらの被告の行為は,本件商標の商標登録出願時において,本件指定 商品に本件商標が使用されれば,引用商標の持つ顧客吸引力へのただ乗りやその希 釈化を招く結果を生じかねなかったことを間接的に裏付けるものといえる。 このように,本件指定商品に本件商標が使用されれば,引用商標の持つ顧客吸引 力へのただ乗りやその希釈化を招く結果を生じかねないから,被告の主張は採用で きない。

◆判決本文

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平成29(行ケ)10217  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年4月26日  知的財産高等裁判所

 「咲蔵(さくら)」と標準文字の先願「咲蔵」が類似するかが争われました。知財高裁は類似するとした審決を維持しました。判決文の最後に両商標が記載されています。
 引用商標は,別紙記載2のとおり,「咲蔵」の文字を標準文字で表して成る\nものであるところ,引用商標のように「サククラ」などと二つの音が重なる場合,一文字分を省略して「サクラ」と読むことなどは,経験則上,よくあるこ とであって特段珍しいことではない上に,商品名や店舗名などにおいて,「咲」 の文字の訓読みである「サ(ク)」から,「サ」の文字の当て字として「咲」 の漢字を利用することも,取引上よくみられることであって(乙10〜14は, その一例を示すものといえる。),やはり特段珍しいことではない。したがっ て,本願商標のように振り仮名が振られていなくても,「咲蔵」の文字から「サ クラ」の称呼が生じるものということができる。 よって,引用商標からも,本願商標と同様に,「サクラ」の称呼と,「花が 咲く蔵」,あるいは「桜の花」といった観念が生じるものと認められる。
・・・
原告は,国語辞典(甲21:広辞苑第二版補訂版874頁)には,「咲蔵」 と同様に「咲」を語頭に含む漢字2字から成る熟語が「咲分(サキワケ)」 しか記載されておらず,このような熟語において「咲」を「サ」と訓読みす る慣行はないし,「咲蔵」は造語であって常用されている言葉ではないから, 送り仮名が省略されることもないとして,「咲蔵」なる文字部分からは,基 本となる訓読みと訓読みの組合せで「サキクラ」又は「サキグラ」という称 呼しか生じず,「サクラ」という称呼は生じないと主張する。 しかしながら,本願商標のように振り仮名が振られていなくても,「咲蔵」 の文字から「サクラ」の称呼が生じるものということができることは,前記 3のとおりである。したがって,原告の主張は失当である。
(3) 「咲蔵」の文字から生じる観念に関し
原告は,「咲く蔵(クラ)」又は「蔵(クラ)が咲く」なる表現は常識的\nに思い付くような状態を示しておらず,その意味を全く想起することができ ないと主張する。 しかしながら,「咲く」という言葉が,花のつぼみが開くこと,すなわち, 花が咲くことを意味することは,常識に属することであって,かかる意味を 有する「咲」という文字と「蔵」という文字の組合せからは,前記2のとお り,「花が咲く蔵」といった華やか(にぎやか)なイメージを想起すること ができ,その意味するところも十分認識できる。\nしたがって,少なくとも「咲く蔵(クラ)」なる表現は,「花が咲く蔵」\nとして常識的に思い付くような状態を示しており,その意味を想起すること ができるといえるから,原告の主張は失当である。

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平成29(行ケ)10078  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年4月17日  知的財産高等裁判所

 4条8,10、15、19号違反とした審決について、理由に誤りはあるが結論において妥当として審決が維持されました。商標は「戸田派武甲流薙刀術」(標準文字)です。
 前記認定の諸事実及び本件商標の登録出願の経緯によれば,本件商標が,その登 録出願時及び登録査定時に出所として表示するのは,古武道の一流派である本件流\n派そのものであって,原告及び被告もこれに属するものであると認められる(なお, 原告が被告に対し本件流派から破門する旨を通知したことは,上記認定を左右する ものではない。)。 そして,本件商標は,その表記に応じて,本件流派(戸田派武甲流薙刀術)を,\n取引者,需要者に想起させるものであるから,客観的表記に基づく需要者の認識と\n登録出願の経緯等に基づく出所の主体の間にも齟齬はないものと認められる。 他方,審判における原告主張の無効理由のうち,商標法4条1項8号に関して主 張する「他人」とは,「遅くとも昭和10年以降,代表者として宗家を置き,「戸田\n派武甲流薙刀術」との名称で薙刀術の教授等をしている社団」であるから,本件流 派そのものである。同条1項10号に関して主張する「他人」の商標とは,「「戸田 派武甲流薙刀術」の教授等の役務を示すものとして需要者の間で広く認識されてい る商標」であって,本件流派を出所とする商標である。同条1項15号に関して主 張する「他人」とは,「原告が宗家代理を務める本件流派」と記載されるが,実質的 には,原告が宗家代理を務める本件流派に限定されるものではなく,遅くとも昭和 10年以降,代表者として宗家を置き「戸田派武甲流薙刀術」の教授等を行ってき\nた本件流派を「他人」として主張するものと善解される。同条1項19号に関して 主張する「他人」とは,「需要者の間で著名な「戸田派武甲流薙刀術」」であるから, 本件流派そのものである。 以上のとおり,原告が無効理由として主張する商標法4条1項8号,10号,1 5号及び19号における「他人」とは,いずれも本件流派を指すものであるところ, 本件商標がその出所として表示するのも,本件流派そのものであるから,両者は同\n一であるといえる。そうすると,前記各号に関して原告が主張する「他人」が,本 件商標が出所を表示する主体と異なる者とは認められないから,前記(1)のとおり, 商標法4条1項8号,10号,15号及び19号に基づいて,本件商標が商標登録 を受けることができない商標と認めることはできず,原告の主張は,理由がないも のといわざるを得ない。 この点,審決は,先代宗家から,本件流派の運営及び管理等を原告と共に依頼さ れた被告が流儀代表手続をしたことが不当なものとまでいうことができないとした\n上で,被告が,振興会の常任理事会において,本件流派の流儀代表者として了承さ\nれた後,古武道大会等に本件流派の代表者として参加しており,各種新聞,雑誌に\nおいて,本件流派の代表者として掲載されているといった事情を考慮して,被告は,\n本件商標の登録出願時及び登録査定時に本件流派との関係において,商標法4条1 項8号,10号,15号及び19号に規定する「他人」に該当するということはで きないと判断した。 しかしながら,本件商標がその出所として表示するのは,古武道の一流派である\n本件流派そのものであることは前記のとおりであり,被告個人が,本件商標につい て,本件流派との関係において,上記「他人」に該当するか否かは,商標法4条1 項8号,10号,15号及び19号該当性の判断に,直ちに影響を及ぼすものでは ない(原告は,被告が商標登録した本件商標が,「他人」である本件流派との関係で 無効理由があると主張するものと解される。)。 したがって,審決が,本件商標の出所等を検討することなく,被告個人が,本件 流派との関係において,上記「他人」に該当しないことを理由に,商標法4条1項 8号,10号,15号及び19号該当性の判断をした点には誤りがあるといわざる を得ない。しかしながら,本件商標について,商標法4条1項8号,10号,15 号及び19号に該当しないとの審決の判断は,結論において誤りはないといえる。
(3) 原告の主張について
原告は,本件流派の宗家代理の地位にあり次期宗家の決定権限を有する原告が承 認しないにもかかわらず,被告が,本件流派の宗家であると名乗った上で,振興会 等に登録手続を行い,演武大会に出場し,また,原告に無断で本件商標の登録出願 手続をしたなどと主張する。 しかしながら,本件商標がその出所の主体として表示するのは,古武道の一流派\nである本件流派そのものであって,原告が他人として主張する団体と同一のもので あることは前記のとおりであり,本件商標の登録出願の経緯や本件流派の代表者が\n原告であるのか否かなどの点については,本件商標について原告が無効理由として 主張する商標法4条1項8号,10号,15号及び19号該当性に関する前記判断 を左右するものではない。

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平成29(行ケ)10208  審決取消請求事件  行政訴訟 平成30年4月11日  知的財産高等裁判所(4部)

 商標「マイナンバー実務検定」が商標法4条1項6号、11号違反とした審決が維持されました。先願既登録商標として、「マイナンバー」(標準文字)(第5756402号)がありました。
 イ 本願商標の「マイナンバー」の構成部分を類否判断の対象とすることの可否\n本願商標は,「マイナンバー実務検定」というものであり,その全体の構成から,\n「マイナンバージツムケンテイ」との称呼を生じ,「マイナンバーについての実務検 定」との観念を生じる。 また,本願商標の「マイナンバー」の構成部分は,著名な標章である「マイナンバ\nー」とその構成文字を同じくするものであるから,当該構\成部分は,役務の出所識 別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。 他方,本願商標の指定役務には,「検定試験の企画・運営又は実施及びこれらに関 する情報の提供」,「検定試験受験者へのセミナーの開催及びこれらに関する情報の 提供」が含まれるところ,本願商標の「実務検定」の構成部分は,上記指定役務との\n関係では,「実務」の「検定」であることを一般的に表示するものにすぎず,当該構\ 成部分から役務の出所識別標識としての称呼,観念は生じないというべきである。 以上によれば,本願商標からは,「マイナンバージツムケンテイ」との称呼及び「マ イナンバーについての実務検定」との観念のみならず,「マイナンバー」との称呼及 び著名な標章である「マイナンバー」と同一の観念,すなわち,「マイナンバー法に 基づく社会保障・税番号又は個人番号,社会保障・税番号制度であるマイナンバー 制度」との観念も生じ得る。 よって,本願商標のうち,「マイナンバー」という構成部分を抽出し,当該構\成部 分のみを引用商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきであ る。
・・・・
 原告は,本願商標からは,「マイナンバー実務検定」としての一連の称呼,観念の みを生じると主張する。
1)原告が,文部科学大臣の許可法人,文部科学省生涯学習政策局の所管の団体と して,平成11年10月15日に設立が認可された一般財団法人であり(甲67, 129),情報教育に関する技能検定試験を実施し,また,情報教育に関する講習会\nを開催するとともに,情報学習に関する調査研究及び出版物の刊行を行うことによ り,情報に係る生涯学習を推進していること(甲68),2)原告が,産経新聞社,角 川アスキー総合研究所の後援を得て,平成27年8月2日から平成29年12月1 7日までの間に,全国の主要都市の合計138会場において,12回にわたり,「マ イナンバー実務検定」との名称の検定試験を実施しており,その受験申込者は,合\n計4万5968名に達していること(甲69〜71,82〜95,112,133, 134),3)原告が,ウェブサイト「マイナンバー実務検定」を紹介するほか(甲7 0,71),「マイナンバー実務検定」の広告動画を大手動画サイトであるYouT ubeにアップロードし(甲72,74,123〜126),テレビでコマーシャル 映像を合計502回放映し(甲73,116,117の1〜6,127,128,1 35,136の1〜4,137〜143,144の1・2),新聞にも広告記事を掲 載し(甲75,76,133,134),いずれにおいても,「マイナンバー実務検 定」の文字が表示されていること,4)原告が,「マイナンバー実務検定」に関するパ ンフレット,案内ビラ,ポスター等を作成の上,配布又は展示しており(甲77〜9 4,118),これらにおいても,「マイナンバー実務検定」の文字が表示されている\nこと,5)原告が,マイナンバー実務検定のテキストや過去問題集等を発行しており (甲97〜102,131,132),その印刷部数は,平成29年5月の時点で, Web販売のみの7000部を含めて3万部に達し(甲119,120),その全て に「マイナンバー実務検定」の文字が表示されていること等の取引の実情に照らす\nなら,本願商標に,一定の周知性はあるものと認められる。 しかし,本願商標の「マイナンバー」の構成部分が,役務の出所識別標識として強\nい印象を与えるのに対して,「実務検定」の構成部分は,役務の出所識別標識として\nの呼称,観念を生じるものではないことから,「マイナンバー」の構成部分を抽出し,\nこの部分だけを引用商標と比較して商標の類否を判断することが許されることは, 前記イのとおりである。そうすると,本願商標から「マイナンバー実務検定」として の一連の称呼及び観念を生じるほか,「マイナンバー」の構成部分のみを抽出した場\n合には,「マイナンバー」との称呼や,「マイナンバー法に基づく社会保障・税番号又 は個人番号,社会保障・税番号制度であるマイナンバー制度」との観念も生じるか ら,本願商標から,「マイナンバー実務検定」としての一連の称呼,観念のみを生じ るとはいえない。

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平成29(行ケ)10211  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所

 「AMG」を図案化した商標が「AMG」と認識されるかが争われました。知財高裁は認識できるとした審決を維持しました。原告の法人名が「(株)エイエムジー」なので、「AMG」を前提として、本件商標を図案化したものと推測されると裁判所に言及されています。
 本願商標は,前記第2,1 のとおりの構成であり,オレンジ色で,3つの図形\nを横に並べて表記されているものである。本願商標中,左部分は,左下から右斜め\n上に向かって伸びる斜線と,それに比べ2倍程度太い縦線とが,上部で接した図形 (デザイン部分1),中央部分は,アルファベットのM字状の図形(右端の縦線は, 他の直線より2倍程度太い線で表されている。デザイン部分3),右部分は,右中程\nから,上部及び左側に向けて円弧を描き,その円弧の右途中から円の中心に向けて 直線を描くことで,円弧の右側中程の一部を開口した図形(左側曲線部分は一部2 倍程度太く表されている。デザイン部分2)である。そして,本願商標の上記各部\n分は,それぞれ同じ大きさ,同色であり,構成の一部分を他の部分のより2倍程度\n太く表しているなど,デザイン化の手法も類似して,まとまりよく表\されているも のと認められる。 本願商標の構成中,デザイン部分3は,アルファベットの「M」の語とその形状\nを同じくし,「M」をデザイン化した図形であり,これを連想させるものとして表記\nしたものと理解するのが自然である。 また,証拠(乙4〜7)及び弁論の全趣旨によれば,アルファベットの「G」が デザイン部分2のような構成にデザイン化されて表\される事例があることが認めら れる。そうすると,本願商標の構成中,デザイン部分2及び3は,両者相まって,\nデザイン部分3は「M」を,デザイン部分2は「G」をデザイン化して表したもの\nと容易に理解し,認識されるものと認められる。 デザイン部分1は,その右部分に,デザイン化された「M」,「G」のアルファベ ットとともに,均等に配置され,同色で,しかも,構成の一部分を他の部分より2\n倍程度太く表しているなど同じ手法でデザイン化されて表\されていることが認めら れる。そして,デザイン部分1は,三角形の形状であるから,アルファベットの「A」 が想起されるものであり,「A」がデザイン部分1のような構成にデザイン化されて\n表される事例が多数あること(乙8〜18)を考慮すると,デザイン部分1は,「A」\nをデザイン化して表したものと容易に理解し,認識されるものと認められる。\n以上によれば,本願商標は,「AMG」をデザイン化して表したものと認められる\nから,本願商標からは,「エイエムジイ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないもの である。

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平成29(行ケ)10169  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年3月7日  知的財産高等裁判所(2部)

 知財高裁は、商標「ゲンコツコロッケ」について、先願商標「ゲンコツ」(5100230号)と類似するとして、11号違反無しとした審決を取り消しました。
 本件商標は,前記第2,1のとおり,「ゲンコツコロッケ」の片仮名を, 毛筆で書したかのような字体で,「ゲ」「コ」「ケ」をやや大きく,その余の文字をや や小さく一連に書してなり,「ゲンコツコロッケ」の称呼を生じるものである。そし て,本件商標のうち「ゲンコツ」は,「にぎりこぶし。げんこ。」を意味する(甲6)。 証拠(甲54〜58,60,61,63,乙3)及び弁論の全趣旨によると,本件 登録審決日当時,「ゲンコツ」は,食品分野において,ゴツゴツした形状や大きさが にぎりこぶし程度であることを意味する語として用いられることがあったものと認 められる。「コロッケ」は,「揚げ物料理の一つ。あらかじめ調理した挽肉・魚介・ 野菜などを,ゆでてつぶしたジャガイモやベシャメル・ソースと混ぜ合わせて小判\n形などにまとめ,パン粉の衣をつけて油で揚げたもの。」を意味する(甲5)。 本件商標は,「ゲンコツ」と「コロッケ」の結合商標と認められるところ,その全 体は8字8音とやや冗長であること,上記のとおり「コ」の字がやや大きいこと, 「ゲンコツ」も「コロッケ」も上記の意味において一般に広く知られていることか らすると,本件商標は,「ゲンコツ」と「コロッケ」を分離して観察することが取引 上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえないものである。 また,本件商標の指定商品のうち本件訴訟において争われている指定商品は,い ずれも,「コロッケ入り」の食品であるから,本件商標の構成のうち「コロッケ」の\n部分は,指定商品の原材料を意味するものと捉えられ,識別力がかなり低いもので ある。これに対し,上記のとおり,「ゲンコツ」は,食品分野において,ゴツゴツし た形状や大きさがにぎりこぶし程度であることを意味する語として用いられること があることから,「ゲンコツコロッケ」は,「ゴツゴツした,にぎりこぶし大のコロ ッケ」との観念も生じ得るが,常にそのような観念が生ずるとまではいえず,また, 本件商標の指定商品の原材料である「コロッケ」は,ゴツゴツしたものやにぎりこ ぶし大のものに限定されていないのであるから,「ゲンコツ」は,「コロッケ」より も識別力が高く,需要者に対して強く支配的な印象を与えるというべきである。 さらに,証拠(甲51,66〜72)及び弁論の全趣旨によると,被告が,本件 商標を使用して,「ゲンコツコロッケ」の販売を開始したのは,平成26年6月3日 であり,販売開始は新聞の電子版で報道され,「ゲンコツコロッケ」は,人気商品と なって,販売開始から短期間で多数個が販売されたことが認められる。しかし,本 件登録審決日は上記の販売開始から約3か月間経過後であること,コロッケのよう な食品の需要者はきわめて多数にのぼると考えられることからすると,上記のよう な被告による販売の事実があるとしても,「ゲンコツコロッケ」が不可分一体と認識 されると認めることはできない。 以上より,本件商標の要部は「ゲンコツ」の部分であると解すべきである。
イ 本件商標の要部「ゲンコツ」と引用商標とは,外観において類似し,称 呼を共通にし,観念を共通にする。したがって,両者は,類似しているものと認め られる。
(2) 被告の主張について
ア 被告は,1)本件商標は外観上全体として統一感ある印象を与え,2)称呼 も短く,一連に称呼できるから,全体で一体不可分の語として認識,理解されるべ きである,と主張する。 しかし,本件商標が全体として不可分なものであって,「ゲンコツ」と「コロッケ」 を分離して観察することができないといえないことは,前記(1)のとおりである。
イ 被告は,1)本件商標の指定商品は「コロッケ」ではなく,2)「コロッケ」 が商品の原材料を表すものと認識される場合であっても,需要者は「にぎりこぶし\nのような大きさや形状のコロッケ」が入った「パン,サンドイッチ,ハンバーガー, 弁当」等であると認識するから,「ゲンコツコロッケ」を一体的に理解する,と主張 する。 しかし,本件商標の構成のうち「ゲンコツ」の部分が,需要者に対して強く支配\n的な印象を与えることは,前記(1)のとおりであり,需要者が,「ゲンコツコロッケ」 を一体的に理解するとは認められない。
ウ 被告は,本件商標は周知であるから,「ゲンコツコロッケ」は常に一体不 可分のものとして認識される,と主張する。 しかし,この主張を採用することができないことは,前記(1)のとおりである。 2 指定商品の類否について
本件商標の指定商品のうち,第30類「コロッケ入りパン,コロッケ入りサンド イッチ,コロッケ入りハンバーガー,コロッケ入り弁当,コロッケ入りの調理済み 丼物,コロッケ入りの調理済みのカレーライス,コロッケ入りのチャーハン」は, 引用商標の指定商品である第30類「おにぎり,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅう まい,すし,たこ焼き,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパ イ,ラビオリ」に同一又は類似することについて,当事者間に争いはない。
3 以上より,本件商標は,指定商品「コロッケ入りパン,コロッケ入りサンド イッチ,コロッケ入りハンバーガー,コロッケ入り弁当,コロッケ入りの調理済み 丼物,コロッケ入りの調理済みのカレーライス,コロッケ入りのチャーハン」につ き,商標法4条1項11号に該当するから,原告の取消事由の主張には,理由があ る。

◆判決本文

類似事件はこちら。

◆平成28(行ケ)10164
この事件では、商標「ゲンコツメンチ」は商標「ゲンコツ」(5100230号)と非類似と判断されています。

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平成29(行ケ)10168  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年2月20日  知的財産高等裁判所

 商標法4条1項11号に該当するとした審決が維持されました。
 本件商標と引用商標1及び2とでは,外観を異にするものと認められるものの, 称呼としては,本件商標が少なくとも「ミソヤ」との称呼を生じるのに対し,引用\n商標1及び2も「ミソヤ」との称呼を生じるものであると認められる。また,観念\nについても,本件商標からは,全体として「味噌を売る店」との観念を生じるとと もに,本件指定役務との関係においては,味噌味の飲食物を提供する店との観念も 生じ得るものといえるのに対し,引用商標1からは,「味噌を売る店」の観念を生 じるとともに,引用商標1の指定役務との関係においては,味噌味の中華料理を主 とする飲食物を提供する店との観念も生じ得るものといえる。さらに,引用商標2 からも,「味噌を売る店」の観念を生じるとともに,引用商標2の指定役務との関 係においては,味噌味のラーメンを提供する店との観念も生じ得るものといえる。 したがって,本件商標と引用商標1及び2とは,称呼と観念とは共通するものと いうことができる。
オ 取引の実情について
引用商標の指定役務「中華料理を主とする飲食物の提供」及び「ラーメンの提 供」は,前記のとおり,本件指定役務「飲食物の提供」に含まれるものであるとこ ろ,本件指定役務及び引用商標の指定役務は,いずれも基本的には,さほど高価と はいえないものを含む日常的に消費される性質の商品(飲食物)の提供であり,そ の需要者は,高度の注意力をもって役務の提供を受けるとは限らないから,本件指 定役務については,引用商標と同一営業主の提供に係る役務と誤認され,役務の出 所について誤認混同を生じるおそれが否定し難いといえる。また,本件指定役務は 引用商標の指定役務を包含する役務であり,その取引者,需要者には,広く一般の 消費者が含まれるから,役務の同一性を識別するに際して,その名称,称呼の果た す役割は大きく,重要な要素となるというべきである。なお,一般の消費者として は,商標の外観を見て役務の出所を判断することも少なくないと考えられるもの の,我が国において,外来語以外でも同一語の漢字表記と平仮名(又は片仮名)表\ 記又はローマ字表記が併用されることが多く見られる事情があることなどを考慮す\nると,本件指定役務及び引用商標の指定役務の需要者にとって,図形等がほとんど 使用されず,文字のみが主体となる商標において,文字種が異なることは,本件商 標と引用商標が別異のものであることを認識させるほどの強い印象を与えるもので はないといえる(しかも,本件商標が,平仮名,漢字又はローマ字を書してなるも のであるのに対し,引用商標は,漢字を書してなるもの(引用商標2では平仮名を 含む。)であって,「味噌屋」の文字部分については,本件商標と引用商標に共通す るものといえる。)。 そうすると,本件商標と引用商標の類否を判断するに当たっては,上記のような 取引の実情をも考慮すると,外観をさほど重視することはできず,外観及び観念に 比して,称呼を重視すべきであるといえる。
カ まとめ
以上によれば,本件商標と引用商標は,称呼において同一であり,両商標からは 同一又は類似の観念を生じるものといえるから,本件指定役務の需要者にとって, 引用商標と同一の称呼を生じる本件商標を付した役務を,引用商標を付した役務と 誤認混同するおそれがあるものと認められる。

◆判決本文

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平成29(ネ)10053  商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成29年12月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 本件各商標を含む極真関連標章は,Eが死亡した平成6年4月の時点で 既に,Eが主宰する極真会館にとってその活動に密接に関連する重要な財 産及び象徴であり,少なくとも空手及び格闘技に興味を有する者の間では, 極真会館というまとまった一つの団体を出所として表示する標章として広\nく知られていた。また,これらの極真関連標章は,被控訴人らが本件各商 標の登録出願(本件各出願)を行った平成15年から平成24年にかけて の時点でもなお,空手の教授等の活動を行う上で強い顧客吸引力を有する ものであった。
イ Eが主宰する極真会館は,Eの死後,いずれもEの生前の極真会館と同 一性を有しない複数の団体に分裂しており,被控訴人らもその一団体と代 表者にすぎない。この点,被控訴人Yは,自身が極真関連標章の主体たる\n地位,すなわちEが主宰する極真会館の事業を承継した旨主張するが,極 真会館とE個人とが同一であるとはいえない以上,Eの相続人である被控 訴人Yが極真会館の事業を当然に相続したとはいえないし,E死亡当時, 被控訴人Yは極真会館の事業活動に全く関与していなかったこと,Eが後 継者を公式に指定しなかったこと,極真会館において世襲制が採用されて いなかったこと等の事情に鑑みると,被控訴人Yは相続以外の原因で極真 会館の事業を承継した者であるとも認められず,この点を覆すに足る証拠 はない。したがって,被控訴人らを含むいずれの団体とその代表者も,他\nの団体に対し,極真会館の事業承継や極真関連標章の自己への正当な帰属 を直ちに主張し得る立場にはなかった。
ウ 極真関連標章については,従前,Bが複数の標章について商標登録出願 をし,自己名義の商標登録を受けたことがあったが,これに対し,被控訴 人Y自身が商標法4条1項7号違反を理由に商標登録の無効審判を請求し, 商標登録を無効とする審決がなされ,同無効審決はBが提起した審決取消 訴訟を経て確定していた。
なお,前記認定のとおり,上記審決取消訴訟の判決は,Bによる商標登 録が公序良俗等に反する理由として,極真会館にとって極めて重要な財産 である極真関連標章についての商標登録出願を行うに当たっては,(当時 の代表者として)極真会館内部の適正な手続を経る必要があるのに,それ\nを怠った出願が行われ,その後,極真会館が複数の団体に分裂し,極真空 手の道場を運営する各団体が対立競合している状況において,上記の出願 に基づき,極真会館とは同一性を有しない一団体の代表者に商標権が付与\nされるのは,商標法の予定する秩序に反するという点を指摘しているが,\n極真会館内部での適正な手続(分裂後にあっては,他の団体との協議等) を経ないまま商標登録出願が行われている点や,その出願に基づき商標権 が付与されるのが,極真会館とは同一性を有しない一団体の代表者(又は,\n当該代表者が経営する会社)である点では,本件各商標も,上記判決が指\n摘したのと同様の問題点を抱えているものといわざるを得ない。 エ また,被控訴人らは,本件各商標の登録を受ける中で,1審被告Aに対 しては,権利侵害ないし規約違反を理由に極真関連標章の使用禁止と違約 金名目で高額の金員の支払を求める通知を行い,Fらに対しては,極真関 連標章の使用を禁止する旨の警告を行ったばかりか,Bが代表を務める団\n体に対しては,本件各商標権に基づき標章使用の差止めと損害賠償の支払 を求める訴訟を提起し,総極真に対しては,極真関連標章の使用差止めを 求める訴訟を提起するなど,本件各出願を行った後,極真会館の他の団体 やその代表者に対し自らの影響力を強めようとする姿勢が顕著であるとこ\nろ,このような行為は,客観的に見れば,極真会館にとって重要な財産で ある極真関連標章に係る権利を盾に取って,自己の利益を図ろうとするも のと評されてもやむを得ないものといわざるを得ない。
(2) 以上のとおり,本件各出願を行った時点で,被控訴人らは,極真会館関係 者にとって極真関連標章が重要な財産及び象徴であることを当然認識し得る 立場にあり,また,分裂した各団体の中で極真会館の事業の承継を正当に主 張し得る者がない状況にあることも明確に認識し得る立場にあったものと認 められる。そして,被控訴人らによる本件各商標権の取得は,極真会館とは 同一性を持たない分派が多数併存する中で,その一分派にすぎない一団体(そ の代表者や当該代表\者が経営する会社)が,極真会館にとって極めて重要な 財産であり象徴である極真関連標章について,いわば抜け駆け的に商標登録 出願を行い,その権利を独占しようとするという,前記審決取消訴訟判決が, 商標法の予定する秩序に反する旨を指摘したのと同様の状況で行われたもの\nなのであるから,やはり,商標法の予定する秩序に反するものといわなけれ\nばならない。特に,被控訴人らの場合,Bの出願に係る商標登録を公序良俗 等に反するとして無効にする一方で,自らの利益のために,客観的に見れば Bと同様の手法により商標権を取得しているのであるから,その不当性は更 に強度だといわざるを得ないのであって,この点からしても,その商標登録 は認められるべきものではない。 してみると,本件各出願に係る本件各商標は,本件各出願の目的及び経緯 に照らし,商標法4条1項7号所定の「公の秩序又は善良の風俗を害するお それがある商標」に該当するものといえる。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成27(ワ)22521等

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平成29(行ケ)10080  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年12月25日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、レッドブルの図形商標と図柄的に似ている商標について、混同生ずるとして4条1項15号に違反するとして、無効理由なしとした審決を取り消しました。両商標は判決文中にあります。
 本件商標と引用商標は,全体的な構図として,黄色系暖色調の無地の背景図形の\n前に,左向きに描かれて角を突き出した赤色の躍動感のある姿勢をした雄牛の図形 が配置されるなどの基本的構成を共通にするものであり,本件商標が使用される商\n品である自動車用品関連商品等の商品の主たる需要者が,商標やブランドについて 正確又は詳細な知識を持たない者を含む一般の消費者を含み,商品の購入に際して 払われる注意力はさほど高いものとはいえないことなどの実情や,引用商標が高度 の独創性を有するとまではいえないものの我が国において高い周知著名性を有して いることなどを考慮すると,本件商標が,指定商品に使用された場合には,これに 接した需要者(一般消費者)は,それが引用商標と基本的構成が類似する図形であ\nることに着目し,本件商標における細部の形状などの差異に気付かないおそれがあ るといい得る。 また,引用商標は,自動車関連の分野においても,レッドブル社の商品等を表示\nするものとして,取引者,需要者の間において著名であり,引用商標をその構成と\nする使用商標について,多数のライセンスが付与され,自動車関連商品等の多様な 商品について引用商標を含む使用商標が付されて販売されているところ,本件商標 の指定商品には,引用商標の著名性が取引者,需要者に認識されている自動車関連 の商品を含むものといえるのであるから,本件商標をその指定商品に使用した場合 には,これに接する取引者,需要者は,著名商標である引用商標を連想,想起して, 当該商品がレッドブル社又は同社との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示によ\nる商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信 するおそれがあるものというべきである。 したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するものとして商標登録 を受けることができないというべきであるから,これと異なり,本件商標が同号に 該当しないとした審決の判断には誤りがあるといわざるを得ない。
(8) 被告の主張について
ア 被告は,本件商標と引用商標とは,牛の体勢,色彩の差異及び牛以外の 構成物の差異により,その印象が明らかに異なるから,外観において容易に区別し\n得るものであり,いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから,相紛れ ることのない非類似の商標である旨主張する。 確かに,本件商標と引用商標とを直接対比すると,前記(2)イのとおり,具体的な 構成においていくつかの相違点が認められるものである。しかしながら,引用商標\nが高い著名性を有していたことや,本件商標と引用商標からはほぼ同一の観念が生 じることなどに照らせば,被告が指摘するような具体的構成における外観上の差異\nが存在するとしても,引用商標と基本的構成が共通すると認められる本件商標を自\n動車用品関連の商品を含む本件商標の指定商品に付して使用した場合には,これに 接する取引者,需要者において,当該商品がレッドブル社又は同社との間に緊密な 営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある\n者の業務に係る商品であると誤信するおそれがあるものというべきである。 また,本件商標には,外観上,具体的な構成において引用商標と相違する点があ\nるとしても,その基本的構成が引用商標と比較的類似性の高いものであるから,一\n般の消費者の注意力などを考慮すると,出所の混同を生ずるおそれがあることは前 記(6)のとおりである。 なお,商標法4条1項15号該当性の判断は,当該商標をその指定商品等に使用 したときに,当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営 業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営\n業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれが存するかどうかを問題とする ものであって,当該商標が他人の商標等に類似するかどうかは,上記判断における 考慮要素の一つにすぎないものである。被告が主張するような外観上の差異が存在 するとしても,それらの点が,本件商標の構成において格別の出所識別機能\を発揮 するとはいえないし,単に本件商標と引用商標の外観上の類否のみによって,混同 を生じるおそれがあるか否かを判断することはできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。

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平成29(行ケ)10132  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年11月14日  知的財産高等裁判所

 商4条1項11号違反についての拒絶査定不服の審決取消事件です。特許庁審査基準では異なる類似群である理化学装置(10A01)用のソフトと限定して、商品非類似であると争いましたが、特許庁・裁判所とも、類似する商品と判断しました。\n
ウ 前記イの認定事実によると,本願商標の指定商品である「コンピュータソフ\nトウェア」と,引用商標1の指定商品である「半導体チップ,半導体素子」とは, 1)いずれも電子の作用を応用したものであり,コンピュータ等の電子機器を稼働す るために構成上不可欠なものであって,その用途及び機能\において密接な関連を有 するものであること,2)両商品を生産している事業者が相当数存在すること,3)様々 な商品を取り扱っている総合ショッピングサイトや家電量販店だけでなく,半導体 素子等を含む電子部品を専門に扱う相当数の販売店においても,両商品が販売され ていること,4)両商品の需要者は,一般の個人需要者や電子機器等の製造メーカー において共通する場合があることなどの事情に照らすと,両商品の原材料及び品質 が異なること,完成品と部品の関係にないことなどを考慮したとしても,両商品に 同一又は類似の商標が使用されるときは,同一営業主の製造又は販売に係る商品と 誤認混同するおそれがあると認められる関係にあり,商標法4条1項11号にいう 「類似する商品」に当たると解するのが相当である。
エ 原告の主張について
(ア) 原告は,本願商標の指定商品のうち,理化学装置の制御用コンピュータソ\nフトウェア等は,その機能・用途によれば,むしろ第9類の「理化学機械器具」に\n属する商品(専用ソフトウェア)であり,10A01の類似群コードが付される商\n品の範疇であるともいえ,その場合,引用商標1の指定商品である半導体素子等が 含まれる「電子応用機械器具」とは類似群コードが異なり,両商品は,明らかに異 なるものである旨主張する。 しかし,本願商標の指定商品は,理化学装置の制御用コンピュータソフトウェア\n等に限られるものではなく,コンピュータソフトウェア全般を指定商品とするもの\nであり,コンピュータソフトウェアと半導体素子等とが,商標法4条1項11号に\nいう「類似する商品」に当たると解するのが相当であることについては,前記ウの とおりである。
(イ) 原告は,ソフトウェア業界は,巨大企業数社と無数の零細メーカーの二極\n構造であるのに対し,半導体業界は,その製造に大規模かつ最新の設備を必要とす\nる代表的な装置産業であることから,両商品は業界自体が異なるだけでなく,生産\n部門において一致しない旨主張する。 しかし,コンピュータソフトウェアと半導体素子等との両商品を製造する事業者\nが相当数存在することについては,前記イ(イ)のとおりである。また,一般社団法 人電子情報技術産業協会(JEITA)における,コンピュータソフトウェアに関\n連するソフトウェア事業委員会を構\成する8社のうち6社は,半導体事業に関連す る半導体部会の構成企業でもあり,同協会の半導体部会と一般社団法人コンピュー\nタソフトウェア協会の両方の登録会員である企業も存在すること(甲3,7,乙3\n9の1・2)に鑑みても,両商品の生産部門は一致しないものではない。
(ウ) 原告は,コンピュータソフトウェアは,一般消費者向けに取引を展開する\nウェブサイトにおいても,「パソコンソ\フト」のジャンル名で多数取引されている のに対し,半導体素子等は,半導体を専門的に取り扱う商社等を通じて主に販売さ れるものであり,自作パソコンの製作を試みるパソ\コンマニア向けに,一部のパソ\nコンショップやネットショップで半導体素子等が販売されている事実があるとして も,半導体素子等の販売取引市場全体を見れば,ごく僅かな一部の事情を示すにす ぎない旨主張する。 しかし,様々な商品を取り扱っている総合ショッピングサイトや家電量販店だけ でなく,半導体素子等を含む電子部品を専門に扱う相当数の販売店においても,コ ンピュータソフトウェアと半導体素子等の両商品が販売されていることについては,\n前記イ(ウ)のとおりである。また,前記イ(エ)のとおり,一般の個人需要者の中に は,パソコンを自作する者のほか,所有するパソ\コンの性能を向上させること等を\n目的として,半導体素子等に含まれるCPUなどの電子部品及びコンピュータソフ\nトウェア等を購入し使用する者もいるのであって,両商品を購入する者は,自作パ ソコンを製作する一部のパソ\コンマニアに限られるものではない。さらに,一般消 費者向けに取引を展開するウェブサイトである楽天市場の「全てのカテゴリー」に おいて,引用商標1の指定商品に包含される「CPU」,「サーミスタ」,「トラ ンジスタ」及び「ダイオード」を検索すると,それぞれ,17万1333件,1万 1865件,2万1603件及び7万0232件が検出されること(乙41〜44) に鑑みても,両商品の販売部門は一致しないものではない。
(エ) 原告は,コンピュータソフトウェアは,あらゆるビジネス分野の事業者だ\nけでなく,幅広い年齢の個人利用者をその需要者とするのに対し,半導体素子等は, 半導体を組み込んだ各種産業製品を生産する事業者がその主たる需要者であり,ソ\nフトウェア独自のビジネス構造においても顕著な差異を有しており,両商品は需要\n者の範囲において比較し得ない旨主張する。 しかし,両商品の需要者は,一般の個人需要者や電子機器等の製造メーカーにお いて共通する場合があることについては,前記イ(エ)のとおりである。
(オ) 原告は,コンピュータソフトウェアはバージョンアップやアンインストー\nルを容易に行うことができ,半導体素子等にはないソフトウェア特有の特徴を備え\nていることを考慮すると,両商品は用途において顕著に異なる旨主張する。 しかし,両商品は,いずれも電子の作用を応用したものであり,コンピュータ等 の電子機器を稼働するために構成上不可欠なものであって,その用途及び機能\にお いて密接な関連を有するものであることについては,前記イ(ア)のとおりである。 コンピュータソフトウェアのインストール,バーションアップ等は,当該商品の利\n用方法における一つの特徴を述べたものにすぎない。

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平成29(行ケ)10109  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年11月14日  知的財産高等裁判所

 商標登録の無効が争われました。審決は無効理由無し、知財高裁は4条1項15号違反と判断しました。争点は「化粧品」と「男性ファッション誌」との間で、混同を生ずるおそれがあるか否かです。
(ア) 前記(1)ウのとおり,本件雑誌には,少なくとも最近約10年間にわたり, ほぼ毎号,化粧品についての記事が掲載されている。男性ファッション誌の主な対 象は服飾品であるものの,化粧品はファッション全般に関するものとして,男性フ ァッション誌の対象とされているというべきである。 したがって,男性化粧品と男性ファッション誌は,共にファッションに関するも のとして少なからぬ関連性を有するというべきである。
(イ) 男性化粧品と男性ファッション誌の需要者は,いずれも男性向けファッシ ョンに関心のある者と考えられ,共通するというべきである。男性化粧品と男性フ ァッション誌の取引者が異なるからといって,需要者の共通性は何ら否定されない。 したがって,男性化粧品と男性ファッション誌については,需要者が共通する。
(ウ) 本件商標の指定商品は,日常的に消費される性質の商品であり,その需要 者は特別の専門的知識経験を有する者ではないことからすると,これを購入するに 際して払われる注意力は,さほど高いものでないというべきである。
(3) 商標法4条1項15号該当性
以上のとおり,1)本件商標は,引用商標と外観において極めて類似し,観念及び 称呼において共通するのであって,本件商標と引用商標は,極めて類似したもので あること,2)引用商標は,独創性が高いとはいえないものの,数十年にわたり,需\n要者の間に広く認識されていること,3)本件商標の指定商品(男性用化粧品)は, 原告の業務に係る本件雑誌(男性ファッション誌)の対象として,少なからぬ関連 性を有するもので,本件雑誌と需要者が共通することその他需要者の注意力等を総 合的に考慮すれば,本件商標を指定商品に使用した場合は,これに接した需要者に 対し,引用商標を連想させて,当該商品が原告あるいは原告との間に緊密な営業上 の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主\nの業務に係る商品であると誤信され,商品の出所につき誤認を生じさせるおそれが あるものと認められる。 そうすると,本件商標は,商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれが ある商標」に当たると解するのが相当である。
・・・
イ 被告は,本件雑誌の一部に掲載されているにすぎない化粧品について雑誌と の強い関連性を認めるのは,本件雑誌で紹介される全ての商品について雑誌との強 い関連性を認めることとなり,ひいては指定商品「雑誌」について不当に広い権利 範囲を認めることとなり,不合理であると主張する。 しかし,前記(2)ウのとおり,本件雑誌にはほぼ毎号化粧品に関する記事が掲載さ れ,化粧品自体,本件雑誌の対象であることが明らかな服飾品と少なからぬ関連性 を有するものである。そして,引用商標は長期間にわたって周知のものであること に加え,原告がコラボレーション企画等を行っていることをも併せ考慮すれば,い わゆる広義の混同が生じるおそれが認められる。 したがって,指定商品を男性用化粧品とする本件商標を15号該当とすることが 不合理であるとはいえない。

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平成29(行ケ)10128  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年10月26日  知的財産高等裁判所(2部)

 商標「軽スタ」と「軽スタジオ」が非類似とした拒絶審決が維持されました。
 「・・・他方,「スタ」という片仮名部分は,それ自体に特定の意味がないところ,これと結合する「軽」という漢字部分からは指定役務との関係で「軽自動車」が想起され ること,本件商標の査定日である平成27年11月16日以前から,「新しいまちづ くりをスタートさせるスタッフ」を意味するものとして4音の「まちスタ」が使用 されていたほか(乙9),「おはようスタジオ」というテレビ番組を「おはスタ」と 略称する(甲5の1・2)など,「スタ」が略称として用いられることが少なからず あったこと(弁論の全趣旨)からすると,本件商標の指定役務の需要者には,「スタ」 という片仮名部分も特定の単語の略称であると想起されることがあり得るというこ とができる。 しかし,「スタ」という片仮名部分が特定の単語の略称であると想起されるとして も,冒頭2字を略称にするとは限らないし,「スタ」から始まる片仮名の単語につい ては,広辞苑(第6版)掲載のものに限っても,「スター」,「スタート」,「スタイリッシュ」,「スタイル」,「スタジアム」,「スタジオ」,「スタッフ」,「スタディー」のほか(甲4),「スタミナ」,「スタメン」,「スタンダード」,「スタンド」,「スタンバイ」などがあり,いずれも「スタ」と略称される可能性があるということができる(甲5の1・2,甲6〜9,乙6〜9)。そして,本件商標の指定役務との関係や,\n「軽自動車」の略称と考えられる「軽」という漢字部分との組み合わせを考えても, 本件商標の指定役務の需要者において,これらの「スタ」から始まる多数の単語の うち,いずれかのみを強く想起するということはできない。 そうすると,本件商標に接した本件商標の指定役務の需要者は,本件商標が軽自 動車と「スタ」から始まる何らかの単語を組み合わせたものの略称と考えられるこ とまでを想起するとしても,本件商標全体から特定の観念を想起することはできな いというべきである。
3 引用商標は,前記第2の3(2)のとおり,「軽スタジオ」という漢字1字と片 仮名4字を横書きした構成からなるが,これらの文字は,同一の書体,同一の大き\nさ,同一の間隔で表されており,外観上,一体的に看取,把握されるものである。\nまた,引用商標からは,その構成文字に応じて,「ケイスタジオ」の称呼を生じ,\nこの称呼は6音であることから,一気に称呼し得るものである。 さらに,引用商標は,「軽」という漢字と「スタジオ」という片仮名から構成され\nるものであるところ,その指定役務が「自動車及びその部品の小売又は卸売の業務 において行われる顧客に対する便益の提供,自動車リース事業の運営及び管理,自 動車の売買契約の媒介」であること,「軽」が「軽自動車」の略称として用いられて いることからすると,「軽」という漢字部分からは「軽自動車」が想起される。他方, 「スタジオ」は,1)画家,彫刻家,写真家,デザイナーなど芸術家の仕事場,2)映 画や写真の撮影所,3)音楽の録音室・練習室,4)放送局の放送室などといった意味 を有する単語であり(甲4,乙1〜5),引用商標の指定役務と直ちに結びつくもの ではないが,「軽自動車」の略称である「軽」と結合して用いられていることから, 引用商標全体からは,「軽自動車に関する役務の提供が受けられる場所」といった観 念を想起するものと認められる。
4 前記1〜3によると,本件商標と引用商標の外観は,「軽スタ」という文字部 分が共通であるものの,本件商標が3字であるのに対し,引用商標は5字であり, 離隔的観察においても,外観上の相違を十分認識することができる。\nまた,本件商標と引用商標の称呼は,「ケイスタ」が共通であるものの,本件商標 が4音であるのに対し,引用商標は6音である上,差異音である「ジオ」は,濁音 を含む明瞭に発音されるものであるから,離隔的観察においても,称呼上の相違を 十分認識することができる。\nさらに,引用商標からは,「軽自動車に関する役務の提供が受けられる場所」とい った観念が生じるが,本件商標からは,特定の観念を想起することはできないから, 本件商標と引用商標とは,観念が共通するものではない。 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観及び称呼において相紛れるおそれ はなく,観念が共通するものでもないから,これらを総合して判断すると,本件商 標は,引用商標に類似する商標に当たらない。
・・・・
なお,原告は,被告の商号が「軽スタジオ茅ヶ崎株式会社」であること,被告が 「軽スタジオ」に代えて「軽スタ」という本件商標の使用を開始したこと,その後 も被告が「軽スタ」と表記した自己のウェブサイトに誘導するために「軽スタジオ」\nというキーワードメタタグを用いていること,被告は,被告の店舗において,「軽ス タ」と「軽スタジオ」を混在して継続使用することを表明していることなどを指摘\nするが,これらは,いずれも商標権者である被告に係る個別具体的な事情であって, 本件商標の指定役務全般に係る一般的,恒常的な取引の実情ではないから,上記判 断を左右するものではない。また,被告が,「軽スタジオ」と「軽スタ」のいずれの 標章も使用してきたとしても,被告の認識が,本件商標と引用商標を離隔的に(場 所と時間を異にして)観察する需要者の認識と一致するものとする根拠はないから, この点からしても上記判断を左右するものではない。

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平成29(行ケ)10053  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年10月25日  知的財産高等裁判所(1部)

 商標登録無効審決の取消事件です。特許庁は、先願既登録商標1,2とは類似でないと判断しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。本件商標の登録日には前記先願既登録商標1,2(「チドリヤ」、「CHIDORIYA」)は存在しましたが、本件商標(漢字で「千鳥屋」)の登録日の2年後くらいに、存続期間満了で消滅していました。
 そして,本件商標が,漢字を書してなるものであるのに対し,引用商標は,片仮 名又はローマ字を書してなるものであるから,本件商標と引用商標の外観は同一で あるとはいえない。もっとも,本件商標と引用商標は,いずれも格別の特徴を有し ない文字からなる商標であり,我が国において,外来語以外でも同一語の漢字表記\nと片仮名表記又はローマ字表\記が併用されることが多く見られる事情があること, 証拠(甲34〜36)及び弁論の全趣旨によれば,「千鳥屋」をローマ字で表記する\nことも一般的に行われていることが認められることなどを考慮すると,本件指定商 品及び引用商標の指定商品の需要者にとって,文字種が異なることは,本件商標と 引用商標が別異のものであることを認識させるほどの強い印象を与えるものではな いというべきである。 次に,本件商標から,「千鳥屋」という菓子屋の屋号又は商号との観念が生じるこ とについては当事者間に争いがなく,本件商標からは,「千鳥屋」という菓子屋の屋 号又は商号との観念が生じるものと認められる。 また,証拠(甲39)及び弁論の全趣旨によれば,「チドリヤ」という語は,広辞 苑等の辞書に掲載されていないものの,広辞苑第6版には,「チドリ」に関して「千 鳥」の語が掲載され,「1)多くの鳥。2)チドリ目チドリ科の鳥の総称。」などの意味 の記載と共に,「ちどり−あし【千鳥足】」,「ちどり−やき【千鳥焼】」などの例が挙げられていること,「屋」という語が,屋号又は商号を表す際に用いられるものであ\nることなどが認められる。そして,本件商標の登録査定時において,「千鳥屋」が, 九州地区,関西地区,関東地区では著名な菓子屋の屋号及び商号であり,「千鳥屋」 という屋号及び商号が全国的にその名を知られているものであることについては当 事者間に争いがなく,引用商標は,「千鳥屋」の称呼を片仮名又はローマ字で表記し\nたものといえることからすると,本件商標と同様に,引用商標から「千鳥屋」とい う菓子屋の屋号又は商号との観念が生じるものと認めるのが相当である。このこと は,検索サイトの検索結果(甲24)において,「チドリヤ」及び「CHIDOR IYA」の検索結果として,「千鳥屋」が多数検索されることや,「チドリヤ」の 文字を検索した際に,「千鳥屋」の検索の誤りであることを指摘する検索サイトが複 数あることからも裏付けられる。
ウ 本件指定商品及び引用商標の指定商品は,いずれも基本的には,さほど 高価とはいえない日常的に消費される性質の商品(食品)であり,これらは同一の 営業主により製造又は販売されることがあり,同一店舗で取り扱われることも多い ことからすると,本件指定商品については,同一営業主の製造又は販売に係る商品 と誤認され,商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあるといえる。このよ うに,本件指定商品と引用商標の指定商品は類似の商品であり,その取引者,需要 者には,広く一般の消費者が含まれるから,商品の同一性を識別するに際して,そ の名称,称呼の果たす役割は大きく,重要な要素となるというべきである。なお, 一般の消費者としては,商標の外観を見て商品の出所を判断することも少なくない と考えられるものの,前記認定のとおり,本件商標と引用商標の外観については別 異のものであることを認識させるほどの強い印象を与えるものではない。そうする と,本件商標と引用商標の類否を判断するに当たっては,上記のような取引の実情 をも考慮すると,外観及び観念に比して,称呼を重視すべきであるといえる。 以上によれば,本件商標と引用商標は,称呼において同一であり,両商標からは 同一の観念を生じるものといえるから,本件指定商品の需要者にとって,引用商標 と同一の称呼を生じる本件商標を付した商品を,引用商標を付した商品と誤認混同 するおそれがあるものと認められる。

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平成29(行ケ)10094  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年10月24日  知的財産高等裁判所

 地域団体商標を観念させるとして、15号違反に基づく無効を主張しました。審決は理由無し、知財高裁は理由ありと判断しました。本件商標は「豊岡柳(2段併記)」で、地域団体商標は「豊岡杞柳細工」です。
 原告は,平成6年に,伝統的工芸品産業振興協会の伝統工芸士認定事業に 参加し,構成員10名が伝統工芸士の認定を受け,伝統的工芸品表\示事業を開始し て,伝統証紙(経済産業大臣が指定した技術・技法,原材料で製作され,産地検査 に合格した製品に貼られる,「伝統マーク」をデザインした証紙)の表\示を始めた。 そして,原告は,その頃から,原告の商標として「豊岡杞柳細工」の使用を開始し, 平成13年には,更に構成員5名が伝統工芸士の認定を受けた。(甲6の9,7,\n8,9の4)
(ウ) 平成18年4月1日,地域団体商標制度が導入されたことから,原告は, 別紙引用商標目録記載のとおり,「豊岡杞柳細工」の文字からなる引用商標を出願 し,平成19年3月9日,指定商品を兵庫県豊岡市及び周辺地域で生産された杞柳 細工を施したこうり,柳・籐製のかご及び柳・籐製の買い物かごとする地域団体商 標として,設定登録を受けた。(甲2) なお,地域団体商標の制度は,従前,地域の名称と商品(役務)の名称等からな る文字商標について登録を受けるには,使用により識別力を取得して商標法3条2 項の要件を満たす必要があったため,事業者の商標が全国的に相当程度知られるよ うになるまでの間は他人の便乗使用を排除できず,また,他人により使用されるこ とによって事業者の商標としての識別力の獲得がますます困難になるという問題が あったことから,地域の産品等についての事業者の信用の維持を図り,地域ブラン ドの保護による我が国の産業競争力の強化と地域経済の活性化を目的として,いわ ゆる「地域ブランド」として用いられることが多い上記文字商標について,その商 標が使用された結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表\示するもの として需要者の間に広く認識されているときは,商標登録を受けることができると するものである。また,地域団体商標は,事業者を構成員に有する団体がその構\成 員に使用をさせる商標であり,商品又は役務の出所が当該団体又はその構成員であ\nることを明らかにするものである。
・・・・
(オ) 前記(イ)のとおり,「豊岡杞柳細工」は,伝統的工芸品に指定されている ため,通商産業省伝統的工芸品産業室が監修し伝統的工芸品産業振興協会が編集し て年1回発行される冊子「伝統的工芸品の本」に毎回掲載され,豊岡杞柳細工の歴 史,特徴,製法等について,原告商品の写真と一緒に紹介されている。また,前記(ウ) のとおり,引用商標は,地域団体商標として設定登録されているため,経済産業省・ 特許庁が年1回発行する冊子「地域団体商標」に毎回掲載され,引用商標の構成,\n権利者,指定商品,原告商品の写真,連絡先及び関連ホームページのアドレスなど が紹介されている。(甲6の9,21,22)
・・・
イ 前記アの認定事実によれば,豊岡杞柳細工は,豊岡地方において古くから製 作されてきたものであり,経済産業大臣により伝統的工芸品に指定され,「豊岡杞 柳細工」という引用商標が,地域団体商標として設定登録されているものである。 また,引用商標を付した原告商品は,豊岡地方に所在する店舗やミュージアム等の 施設で展示・販売されるほか,東京都内の百貨店等で展示会を開催し,インターネ ットを介した通信販売をするなどして,豊岡地方以外でも販売されている。さらに, 原告商品は,伝統的工芸品に指定され,地域団体商標の登録を受けていることから, 経済産業省がそれぞれ年1回発行する冊子に毎年掲載されているほか,多数の書籍, 雑誌,テレビ等において,豊岡地方の伝統的工芸品であることや,その歴史,製法, 特徴等が紹介されている。これらの事情を考慮すると,引用商標を付した原告商品 は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告又はその構成員の業務を\n示すものとして,需要者の間に広く認識されており,一定の周知性を有していたも のと認められる。 なお,引用商標は,地域の名称である「豊岡」と商品の普通名称である「杞柳細 工」を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる地域団体商標であるから,\nその構成自体は,独創的なものとはいえない。
(4) 商品の関連性その他取引の実情
ア 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 被告は,京都府に在住し,「拓心」の屋号で,かばんの企画,製造,販売 等の事業を営む者である。被告は,平成20年に,伝統的工芸品の作り手とデザイ ナーやプロデューサーなど様々な分野の専門家が交流を図り,パートナーを選択し て新商品開発研究を行って試作品を作り,発表し意見を求める展示会に参加する本\n件事業に加わり,原告のパートナーとなったが,新商品の開発には至らず,同事業 は終了した。(甲13の1〜5,23の2) しかし,被告は,杞柳細工に商品価値を見出したことから,平成22年に本件商 標を出願し,平成23年に本件商標の設定登録を受けた。そして,被告は,本件商 標を付した柳細工のかばん(バッグ,アタッシュケース等。以下,被告の販売する 上記かばんを総称して「被告商品」ということがある。)の製造を開始した。(甲 1,12,23の2・5)
(イ) 被告商品は,豊岡地方のほか,京都府に所在する被告の店舗や百貨店等で 販売されている。また,平成25年及び平成26年に,社団法人京都国際工芸セン ターにおいて,「豊岡柳KAGO展」などと題する展示会が1週間開催されるなど した。(甲23の3・4) さらに,被告商品は,被告が開設したウェブページや他のインターネットのサイ トを介するなどして,通信販売も行われている。(甲23の1)
(ウ) 被告が作成した被告商品のパンフレットや,被告商品の展示会を紹介する ウェブページには,本件商標及び被告商品の写真が掲載されている。そして,上記 パンフレット等に掲載された被告商品の写真は,原告のパンフレット等に掲載され た,原告商品である杞柳細工のかばん類や籠類と外観が類似するものも少なくない。 (甲9の1〜5,10の1〜3,23の1,23の3〜6) イ 本件商標の指定商品は,第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具 入れ,かばん金具」である。一方,前記(3)のとおり,原告商品は,引用商標の指定 商品であるこうり(第18類),かご及び買い物かご(第20類)のほかに,ハン ドバッグ,アタッシュケース等のかばん類も含むものである。 したがって,本件商標の指定商品と原告商品とは,商品の用途や目的,原材料, 販売場所等において共通し,同一又は密接な関連性を有するものであり,取引者及 び需要者が共通する。 また,前記アのとおり,被告商品のパンフレット等に掲載されている被告商品の 写真は,原告商品と外観が類似するものも少なくない。そして,本件商標の指定商 品である「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具」が日常的に 使用される性質の商品であることや,その需要者が特別の専門的知識経験を有する 者ではないことからすると,これを購入するに際して払われる注意力は,さほど高 いものではない。 このような被告の本件商標の使用態様及び需要者の注意力の程度に照らすと,被 告が本件商標を指定商品に使用した場合,これに接した需要者は,前記(2)のとおり 周知性を有する「豊岡杞柳細工」の表示を連想する可能\性がある。
(5) 小括
以上のとおり,1)本件商標は,外観や称呼において引用商標と相違するものの, 本件商標からは,豊岡市で生産された柳細工を施した製品という観念も生じ得るも のであり,かかる観念は,引用商標の観念と類似すること,2)引用商標の表示は,\n独創性が高いとはいえないものの,引用商標を付した原告商品は,原告の業務を示 すものとして周知性を有しており,伝統的工芸品の指定を受け,引用商標が地域団 体商標として登録されていること,3)本件商標の指定商品は,原告商品と同一又は 密接な関連性を有するもので,原告商品と取引者及び需要者が共通することその他 被告の本件商標の使用態様及び需要者の注意力等を総合的に考慮すれば,本件商標 を指定商品に使用した場合は,これに接した取引者及び需要者に対し,原告の業務 に係る「豊岡杞柳細工」の表示を連想させて,当該商品が原告の構\成員又は原告と の間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属す\nる関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され,商品の出所につき誤認を 生じさせるとともに,地域団体商標を取得し通商産業大臣から伝統的工芸品に指定 された原告の表示の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその\n希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を生じかねない。 そうすると,本件商標は,商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれが ある商標」に当たると解するのが相当である。

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平成28(行ケ)10262  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年9月13日  知的財産高等裁判所(1部)

 ワンポイントの図形商標について、知財高裁は「著名であるので混同する」と判断し(15号違反)、混同しないとした審決を取り消しました。
 このように,本件商標がワンポイントマークとして表示される場合などを考える\nと,ワンポイントマークは,比較的小さいものであるから,そもそも,そのような 態様で付された商標の構成は視認しにくい場合があるといえる。また,マーク自体\nに詳細な図柄を表現することは容易であるとはいえないから,スポーツシャツ等に\n刺繍やプリントなどを施すときは,むしろその図形の輪郭全体が見る者の注意を惹 き,内側における差異が目立たなくなることが十分に考えられるのであって,その\n全体的な配置や輪郭等が引用商標と比較的類似していることから,ワンポイントマ ークとして使用された場合などに,本件商標は,引用商標とより類似して認識され るとみるのが相当である(本件商標と引用商標の差異のうち,比較的特徴的である といえる白抜きの逆三角形部分についても,外観において紛れる場合が見受けられ る。)。さらに,多数の商品が掲載されたカタログ等や,スポーツの試合観戦の場合 などにおいては,その視認状況等を考慮すると,特に,外観において紛れる可能性\nが高くなるものといえる。 また,本件商標の指定商品は,「被服」を始め「帽子,メリヤス靴下,スカーフ, サンダル靴,ティーシャツ」等であり,日常的に消費される性質の商品が含まれ, スポーツ用品(運動用具)関連商品を含む本件商標が使用される商品の主たる需要 者は,スポーツの愛好家を始めとして,広く一般の消費者を含むものということが できる。そして,このような一般の消費者には,必ずしも商標やブランドについて 正確又は詳細な知識を持たない者も多数含まれているといえ,商品の購入に際し, メーカー名やハウスマークなどについて常に注意深く確認するとは限らず,小売店 の店頭などで短時間のうちに購入商品を決定するということも少なくないと考えら れる。
(6) 混同を生ずるおそれについて
本件商標と引用商標は,全体的な構図として,配置や輪郭等の基本的構\成を共通 にするものであり,本件商標が使用される商品である被服等の商品の主たる需要者 が,商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない者を含む一般の消費者 であり,商品の購入に際して払われる注意力はさほど高いものとはいえないことな どの実情や,引用商標が我が国において高い周知著名性を有していることなどを考 慮すると,本件商標が,特にその指定商品にワンポイントマークとして使用された 場合などには,これに接した需要者(一般消費者)は,それが引用商標と全体的な 配置や輪郭等が類似する図形であることに着目し,本件商標における細部の形状(内 側における差異等)などの差異に気付かないおそれがあるといい得る。 また,引用商標は,スポーツ用品(運動用具)関連の商品分野において,原告の 商品を表示するものとして,需要者の間において著名であるところ,本件商標の指\n定商品には,引用商標の著名性が需要者に認識されているスポーツ用品(運動用具) 関連の商品を含むものであるから,本件商標をその指定商品に使用した場合には, これに接する需要者は,著名商標である引用商標を連想,想起して,当該商品が原 告又は原告との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグ\nループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれがあるもの というべきである。 したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するものとして商標登録 を受けることができないというべきであるから,これと異なり,本件商標が同号に 該当しないとした審決の判断には誤りがあるといわざるを得ない。
(7) 被告の主張について
ア 被告は,本件商標と引用商標とは,審決が認定した差異以外に,商標の 縦横比の相違,左端頂部の高さの相違,左上部の左傾斜直線の長さの相違を有する ものであり,看者に与える印象が大きく異なるというのが相当であるから,外観に おいて混同を生ずるおそれはない旨主張する。 確かに,本件商標と引用商標とを対比すると,前記のとおり,具体的な構成にお\nいていくつかの相違点が認められるものである。しかしながら,前記認定のとおり, 引用商標は,前記のような図柄であって,原告の商品を表示するものとして,いわ\nゆるスポーツ用品関連の商品分野において,高い著名性を有していたことに照らせ ば,被告が指摘するような具体的構成における差異が存在するとしても,引用商標\nと全体的な輪郭等の構成が共通していると認められる本件商標をスポーツ用品関連\nの商品を含む本件商標の指定商品に付して使用した場合には,これに接する需要者 において,当該商品が原告又は原告との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示に\nよる商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤 信するおそれがあるものというべきである。 また,具体的な構成において引用商標と相違する点があるとしても,その全体的\nな輪郭等の構成が引用商標と客観的に類似性の高いものとなっており,これをワン\nポイントマークとして使用した場合などには,一般の消費者の注意力などをも考慮 すると,出所の混同を生ずるおそれがあることは前記のとおりである。 なお,商標法4条1項15号該当性の判断は,当該商標をその指定商品等に使用 したときに,当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営 業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営\n業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれが存するかどうかを問題とする ものであって,当該商標が他人の商標等に類似するかどうかは,上記判断における 考慮要素の一つにすぎないものである。被告が主張するような差異が存在するとし ても,その点については,本件商標の構成において格別の出所識別機能\を発揮する ものとまではいえないし,単に本件商標と引用商標の外観上の類否のみによって, 混同を生じるおそれがあるか否かを判断することはできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。

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平成29(行ケ)10049  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年9月14日  知的財産高等裁判所

 4条1項7号(公序良俗)違反とした審決が取り消されました。争点は、本件商標が「上級の助産師」の意味を有しており、これを登録すると、国家資格である「助産師」の制度に対する社会的信頼を失わせるか否かです。
 本願商標のうち「Advanced Midwife」の文字部分の「A dvanced」,「Midwife」の各欧文字は,「上級の」,「助産師」をそれぞれ意味する英語である(乙3,4)から,「Advanced Midwife」の 欧文字部分からは,「上級の助産師」の意味が生じるものと認められる。また,本願 商標のうち,「アドバンス助産師」の文字部分からは,「上級の助産師」という意味 が生じるものと認められる。 そうすると,本願商標は,「上級の助産師」の意味が生じる語を日本語表記及び英\n語表記で表\示したものであって,本願商標全体としても,「上級の助産師」の意味を 生じるということができる。 ところで,1)前記1(3)のとおり,「アドバンス助産師」制度は,助産関連5団体 によって創設されたもので,「アドバンス助産師」を認証するための指標は,公益社 団法人日本看護協会が開発したものであるから,その専門的知見が反映されている ものと推認されること,2)前記1(1),(2)のとおり,原告は,専門職大学院の評価 事業のほか,助産師養成機関や助産所の第三者評価事業を行っており,助産分野の 評価を適切に行えるものと推認されること,3)前記1(6)のとおり,「アドバンス助 産師数」は,厚生労働省により周産期医療体制の現状把握のための指標例とされて いること,以上の事実からすると,「アドバンス助産師」認証制度は,一定程度の高 い助産実践能力を有する者を適切に認証する制度であると評価されるべきものと認\nめられる。また,前記1(3),(5)のとおり,「アドバンス助産師」認証制度は,平成 27年から実施され,既に1万人を超える「アドバンス助産師」が存在すること, 前記1(7)のとおり,各病院において,ウェブサイトに「アドバンス助産師」の認証 を受けた助産師が存在することを記載し,充実した周産期医療を提供できることを 広報していることからすると,「アドバンス助産師」は,国家資格である助産師資格 を有する者のうち,一定程度の高い助産実践能力を持つ者を示すものであることが,\n相当程度認知されているものと認められる。 そうすると,本願商標に接する取引者,需要者は,「アドバンス助産師」を,助産 師のうち,一定程度の高い助産実践能力を持つ者であると認識するということがで\nきるところ,その認識自体は,決して誤ったものであるということはない。
(3) 国家資格の中には,知識や技能の難易度等に応じて,同種の資格の中で段\n階的にレベル分けされているものがあることが認められる(乙21〜28)が,上 級の資格を「アドバンス」と称する国家資格があるとは認められないこと(甲28 参照)や前記のとおり「アドバンス助産師」制度が相当程度認知されていることか らすると,「アドバンス助産師」が「助産師」とは異なる国家資格であると認識され るとは認められないし,仮に,そのように認識されることがあったとしても,以上 の(1),(2)で述べたところからすると,本願商標が国家資格等の制度に対する社会 的信用を失わせる「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」というこ とはできない。

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平成29(行ケ)10030  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年7月27日  知的財産高等裁判所

 商標「オルガノサイエンス」が商標「オルガノ」と類似する(11号違反)and混同する(15号違反)と判断されました。、争点は、商標「オルガノ」が著名かです。特許庁・裁判所とも著名であると判断しました。
 以上によると,1)被告は,我が国における総合水処理エンジニアリング分野にお ける最大手企業の一つであり,その設立以来,「オルガノ」及びその英語表記である\n「ORGANO」をハウスマークとして使用していること,2)被告の事業の主力は 水処理装置事業であるが,薬品事業を含む機能商品事業の規模も大きく,被告の主\nな商品の市場占有率は高いこと,3)被告の薬品事業は,水処理薬品を中心にするも ので,水処理装置事業とは密接な関連性を有するということができること,4)被告 は20社以上からなるグループ企業を構成し,その子会社の多くは「オルガノ」の\n文字を冠する社名を用いているほか,幅広い分野で事業を営み,国際的な事業展開 も行っていること,5)被告は,たびたびメディアに取り上げられ,その事業内容が 一般に広く紹介されていること,6)被告は,新聞や雑誌において,「オルガノ」の文 字や使用商標1を使用して継続的に宣伝広告を行い,特に,新聞広告については, 長期間にわたり全国紙に題字広告を掲載するという目立つ態様のものであったこと, 以上の各事実を認めることができる。 これらの事実によると,「オルガノ」及びその英語表記である「ORGANO」の\n表示は,被告の略称又はハウスマークを表\示するものとして,本件商標の登録出願 日前から,取引者,需要者に広く知られるようになっており,それに伴い,「オルガ ノ」又はその英語表記である「ORGANO」を含む使用商標についても,同時点\nまでの間に,取引者,需要者に広く知られて周知,著名となっていたと認めるのが 相当である。 そして,使用商標は,ほぼ同大の図形部分及び「ORGANO」又は「オルガノ」 の文字部分から構成されているところ,このうち図形部分からは特段の観念や称呼\nが生じないのに対し,「ORGANO」及び「オルガノ」という文字部分は,その称 呼が被告の略称及びハウスマークと同一であり,商品及び役務の出所を取引者,需 要者に強く印象付ける部分であると考えられる。そうすると,使用商標のうち,「O RGANO」又は「オルガノ」の文字部分は,図形部分とは独立して出所識別標識 としての機能を果たすものということができる。\nしたがって,使用商標の文字部分からなる被告商標についても,被告の水処理装 置事業及びこれと密接に関係する薬品事業を表示するものとして,本件商標の登録\n出願日前から,周知,著名であり,本件商標の登録査定日においても同様であった と認められる。 原告の告の主張について これに対し,原告は,1)被告商標は,水処理装置事業の分野では周知であるとし ても,薬品の分野においては,周知,著名ではない,2)被告が行ってきた宣伝広告 は一般的な企業活動の一環にすぎず,新聞紙上に掲載した題字広告には「ORGA NO」の表示はなく,被告の取り扱う薬品類を表\示しているものもない,3)取引者, 需要者は,使用商標の「ORGANO」又は「オルガノ」の文字部分よりも水玉模 様の図形に注意をひかれる,4)被告商標は,特許情報プラットフォームの「日本国 周知,著名商標」に掲載されておらず,「ORGANO」又は「オルガノ」について の登録防護標章も存在しないなどと主張し,被告商標が周知,著名であることを争 う。
ア しかし,上記1)については,前記認定のとおり,薬品事業を含む機能商\n品事業は,その事業規模が大きく,水処理装置事業と並ぶ被告の主力事業であると いうことができる上,被告の水処理装置事業と薬品事業は密接な関連性を有してい るのであるから,被告の水処理エンジニアリング事業が広告宣伝等により取引者, 需要者に広く知られるようになるとともに,薬品事業についても,本件商標の登録 出願日前から広く取引者,需要者に知られるようになっていたと認めるのが相当で ある。
イ 上記2)については,一般的に,長期間にわたり継続的に行われる宣伝広 告は,商標が一般に広く知られる上で効果的な方法であり,特に,新聞広告は,全 国紙に題字広告を掲載するという目立つ態様の広告が長期間にわたり行われたもの であって,その間に「ORGANO」又は「オルガノ」という被告商標の表示も一\n般に広く知られるようになったものと認めるのが相当である。 原告は,上記の題字広告には「ORGANO」の表示はなく,薬品類も表\示され ていないと主張するが,前記認定のとおり,被告は,新聞広告に加えて,雑誌にお いて,「ORGANO」の文字を含む使用商標1を表示して広告宣伝を行うとともに,\nその事業内容はメディアにたびたび取り上げられて一般に広く紹介されているので あるから,題字広告に係る「オルガノ」という表示のみならず,「ORGANO」と\nいう表示についても一般に広く知られるようになったと認めるのが相当である。ま\nた,薬品事業については,上記ア判示のとおりであって,題字広告に薬品類の表示\nがないからといってこの認定が左右されることはない。
ウ 上記3)については,前記判示のとおり,使用商標のうち「ORGANO」 又は「オルガノ」の文字は,図形部分とは独立して出所識別標識としての機能を果\nたすものと認めるのが相当である。
エ 上記4)については,特許情報プラットフォームの「日本国周知,著名商 標」に被告商標が掲載されていないこと,及び,「ORGANO」又は「オルガノ」 が防護標章登録されていないことのみをもって,被告商標の周知著名性を認定する 妨げとはなるものではない。

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◆平成28(行ケ)10181

◆平成26(行ケ)10268

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平成28(行ケ)10275  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年7月27日  知的財産高等裁判所(2部)

 商標「ISD個性心理学協会」について、 商標「個性心理学」、商標「個性心理學研究所」から4条1項10号などで無効と主張しました。審決・判決とも無効理由無しと判断しました。
 上記(1)の認定事実によると,「個性心理学」は,「差異心理学」ともい われるもので,心理学のうち個人差の問題を扱う領域として古くから知られており, 国内外でこれを研究対象とする研究者や研究室があったこと,国語に関する辞書や 辞典においても,「個性心理学」についての説明が掲載されていることが認められ る。 そして,これらの事実によると,「個性心理学」という語は,心理学という学問 の一分野を示す普通名称であると認めるのが相当であり,原告の創作した創造標章 であるとは認められない。
(3) これに対し,原告は,本件審決が挙げた証拠は相当過去の事情を示すもの にすぎず,比較的最近の文献で「個性心理学」について言及しているものは甲27 3のみであること,心理学の分野で用いられる用語を説明する一般的な辞典では, 「個性心理学」を説明する項目がないことなどを指摘して,「個性心理学」は普通 名称ではない旨主張し,また,仮に「個性心理学」が普通名称であったとしても, 学問や研究対象としての心理学という極めて限られた範囲のことである旨主張す る。 確かに,近時の心理学の専門的な辞典(事典)では「個性心理学」という語は取 り上げられておらず(甲213〜229),また,近時,「個性心理学」が心理学 の学会等で取り上げられ,議論されていることを示す証拠はない。 しかし,前記のとおり,「個性心理学」が,個人差の問題を扱う心理学として存 在していたことが認められ,現時点でも,国語に関する辞書や辞典にその説明が記 載されている。また,最近の心理学の専門的な辞典には,アドラーが,独自の「個 人心理学」と呼ぶ理論体系を発展させたとして,当該理論体系を心理学の一分野と して紹介するものがあり(甲220),心理学については,一個人が提唱した理論 体系を,心理学の一分野として取り扱う例があることが認められるのであって,「個 性心理学」が,近時,心理学の学会等で取り上げられ,議論されることがなかった としても,心理学の歴史における一つの理論体系としての存在が揺らぐものではな く,それだけでいわゆる死語と化したと認めることはできない。 以上によると,「個性心理学」は,現在においても心理学の一分野を示す普通名 称というべきであり,また,極めて限られた範囲内でしか通用しない用語というこ ともできない。 また,原告は,仮に,「個性心理学」が普通名称であるとすれば,「〇〇心理学」 という語は普通名称として商標登録を受けられないことになるが,実際には,「〇 〇心理学」という語は,多数の商標登録がされていると主張するが,このような他 の商標登録例は,「個性心理学」が普通名称であるとの上記認定を何ら左右するも のではない。

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平成28(行ケ)10272    商標権  行政訴訟 平成29年7月19日  知的財産高等裁判所(1部)

 商標「極肉.com」が「極」と非類似とした審決が維持されました。指定商品には肉製品が含まれています。
商標法4条1項11号に係る商標の類否判断に当たり,複数の構成部分を\n組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察するこ\nとが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる 場合において,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較し\nて商標そのものの類否を判断することは,原則として許されない。他方,商標の構\n成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配 的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識とし ての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけ\nを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるものであ る(最一小判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁,最二小判平成5 年9月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8日集民228 号561頁参照)。 (2) これを本件についてみると,原告が登録無効を主張する本件指定商品等と の関係では,本件商標の構成のうち「肉」の文字部分は,本件指定商品等に関する\n物又は役務の提供の用に供する物をいうものであるから,原告の主張するとおり, それ自体を単独でみれば出所識別標識としての機能は弱いものといえる。\nしかしながら,本件商標は「極肉.com」という文字で構成されるところ,こ\nのうち「極肉」という文字部分は,「.com」という文字部分の前に位置すること から,取引者又は需要者は,これをドメイン名を表示する一体のものとして理解す\nるものと認めるのが相当である。しかも,本件商標の構成のうち「極」は「肉」を\n修飾する形容詞であるから,「極肉」という文字自体,文法構造上分離するのは相当\nではなく,一体のものとして理解するのが自然である。のみならず,「極肉」という 文字は,これ自体から特定の定着した観念を生じさせるものではなく,いわば一体 となって造語を形成するものであるから,その一部のみが強く支配的な印象を与え るものとはいえない。 これらの事情の下においては,本件商標の構成のうち「極」の文字部分を抽出し,\nこの部分だけを引用商標と比較して類否を判断することは,許されないというべき である。
・・・
原告は,本件商標の構成のうち「極」の文字部分を抽出して引用商標と類否判断\nをしなかった審決の判断には,違法があると主張する。 しかしながら,結合商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標\nと比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対 し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる 場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認めら れる場合などに限り,許されるべきである。本件商標は,上記1において説示した とおり,ドメイン名としての役割上も,形容詞と名詞が結合する文法構造上も,特\n定の観念を必ずしも生じさせない造語としての性質上も,一体として理解されると いうべきであるから,上記場合などに該当しないというべきである。その他に原告 が第1準備書面及び第2準備書面で縷々主張するところを改めて検討しても,上記 判断を左右するに至らない。原告の上記主張は,上記1(1)の判例の趣旨を正解しな いものに帰し,採用することができない。

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平成28(行ケ)10270  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年6月28日  知的財産高等裁判所

 「SeaGull−LC」が「SeaGull」と類似するとした拒絶審決が維持されました。理由は、「LC」部分に識別力がないので、「SeaGull」を抽出できるというものです。
 前記のとおり,本願商標は,「SeaGull−LC」の欧文字及び記 号を標準文字で表してなる商標である。\nこのうち,記号「−」(ハイフン)は,一語が二行にまたがるときのつ なぎとして使用される場合を除き「英文等で,二語を連結して一語相当の語 と」する場合(甲29)ないし「英文などで,合成度の浅い複合語の連結, …または一語内の形態素の区切りを明確にする」(乙23)場合に使用され るものである。したがって,それ自体,本願商標の構成において,商品の出\n所識別標識としての機能を有するものでないことは明らかである。\nまた,同記号を基準とした場合の前半部分である「SeaGull」の 欧文字部分は,一般に,「海カモメ」の意味を有し,「シーガル」と発音さ れる英語「sea gull」を表したものと認識されるものといってよい。\nそうすると,当該部分につき,本願商標の指定商品「業務用電子計算機用プ ログラム」との関係で,その商品の普通名称や品質等を表示するものである\nなど,商品の出所識別標識としての機能を果たし得ないと見るべき事情は見\n当たらないというべきである。
 他方,後半部分である「LC」の欧文字部分は,それ自体独立の意味を 持った英語その他の外国語の単語ないし略語として認識されるものと見るべ き事情は見当たらない。また,証拠(乙8の1〜乙22)によれば,欧文字 2字が,商品の管理又は取引の便宜性等の事情から,商品の規格,型式又は 種別等を表示する記号又は符号として使用される例が少なからずあること,\n本願商標の指定商品を含む「電子応用機械器具及びその部品」を取り扱う分 野に特に着目しても,同じブランド名の商品につき,ブランド名に欧文字2 字を付して,当該ブランドのシリーズ商品における型式,種別等を表すもの\nとして使用される取引の実情があることが認められる。そうすると,上記 「LC」の欧文字部分は,本願商標に接した取引者,需要者にとって,独立 の意味を持つものではなく,商品の規格,型式又は種別等を表示する記号又\nは符号として認識されるものと見るのが相当である。そうである以上,当該 部分が,本願商標の指定商品との関係で,商品の出所識別標識としての機能\nを発揮するものと見ることはできない。 さらに,本願商標を構成する「SeaGull」と「LC」の各欧文字\n部分は,上記のとおり前者は英語を表したもの,後者は記号又は符号と認識\nされることから,相互に関連性を有する語ではなく,しかも,両者の間に存 する記号「−」(ハイフン)の上記機能ないし役割を踏まえるとなおさらに,\nこれらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分 的に結合しているとはいえない。 以上を総合すると,本願商標は「SeaGull」の欧文字と「LC」 の欧文字とを記号「−」(ハイフン)を介して結合してなるものであるとこ ろ,本願商標を構成する各部分が分離して観察することが取引上不自然であ\nると思われるほど不可分的に結合しているものとはいい難く,むしろ,本願 商標の前半を構成する「SeaGull」と後半を構\成する「LC」の各欧 文字部分は,記号「−」(ハイフン)を介して視覚上明確に分離して観察さ れるとともに,「SeaGull」の欧文字部分は,取引者,需要者に対し, 商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきであり, 他方,「LC」の欧文字部分からは出所識別標識としての称呼,観念が生じ ないと認められる。 したがって,本願商標については,その構成部分の一部である「Sea\nGull」の欧文字部分を要部として抽出し,この部分のみを他人の商標と 比較して商標そのものの類否を判断することも許されるということができる。 そうすると,本願商標は,その構成全体から生じる「シーガルエルシー」\nの称呼のほか,要部である「SeaGull」の欧文字部分より,「シーガ ル」の称呼及び「海カモメ」の観念を生じるものというべきである。 (

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平成28(行ケ)10227  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年6月14日  知的財産高等裁判所

 商標「JIS」が4条1項6号に該当するとして拒絶審決がなされたので、出願人は取消訴訟を提起しました。裁判所は審決を維持しました。指定役務は「飲食サービスの提供」でした。同号についての審決は珍しいです。
 後掲の各証拠によれば,日本工業規格(JIS)に関して,次の事実が認 められる。
ア 日本工業規格(JIS)は,昭和24年に制定された工業標準化法に基 づき制定される国家規格であり,平成27年3月末現在で,1万0599 件の規格が制定されている(乙3)。
イ 日本工業規格(JIS)の対象は,家電製品や文房具などの生活用品か ら,化学製品や産業機械まで,あらゆる技術分野(土木及び建築,一般機 械など19分野に分類)の製品に及ぶほか,文字コードやプログラムコー ド等の情報処理に関する規格,漢字の規格(JIS漢字水準),商業施設 などで利用される案内用図記号,公共施設等向けの「ピクトグラム」(絵 文字)など,多岐にわたっている(甲1の3,乙9〜23,38,4 3)。
ウ 経済産業省等は,全国の小・中・高校生等を対象に,平成18年度から 「標準化教室」と題する出前授業を実施しており,そのテキストにおい て,日本工業規格(JIS)やその身近な活用事例等を紹介している(乙 24〜27)。 また,同省は,広く一般向けに,日本工業規格(JIS)に関する各種 のパンフレットやリーフレット等を作成し,ウェブサイトに掲載して広告 を行っている(乙24,28〜31)。 エ そのほかにも,「JIS」の語は,「ジス」と称される国家規格である 日本工業規格を表す文字として,広辞苑を含む多くの辞書や書籍(乙\n1,2,20,32〜37),ウェブサイト(乙38〜40),新聞記事 (乙41〜43)に掲載され,更に,中学校の技術・家庭の教科書等にも 掲載されている(乙44〜46)。 オ 最近においても,2020年の東京五輪の開催に向け,海外からの観光 客の受入れに備え,日本工業規格(JIS)が規定する「ピクトグラム」を 国際標準に合わせて見直すことが話題となり,新聞報道されている(乙4 7〜49)。
(2)以上のとおり,「JIS」の文字は,国家規格である日本工業規格を表す\nものとして我が国において長年にわたって利用され,その対象も多数かつ多 岐にわたり,国民生活全般に密接に関わるものであり,加えて,様々な媒体 で広く取り上げられ,広告や報道がされてきたものといえる。 してみると,「JIS」の文字(引用標章)が,日本工業規格を表す標章\nとして我が国の国民一般に広く認識されており,著名な標章といえるもので あることは明らかというべきである。
(3) 原告の主張について
ア 原告は,本願商標の指定役務である「飲食サービスの提供」に当たり,そ の役務を提供する事業者やその提供を受ける需要者が,引用標章を一般に 目にするとは認められず,日本工業規格について注意を払っているという 取引の実情もないから,引用標章が当該分野に係る取引者,需要者に広く 認識されているとは認められない旨主張する。 しかし,引用標章が,我が国の国民生活全般に密接に関わるものであ り,国民一般に広く認識される標章であることは上記(2)で述べたとおりで あり,「飲食サービスの提供」の分野に係る取引者,需要者のみがその例 外とされるべき理由は何ら認められない。原告は,本願商標の指定役務で ある「飲食サービスの提供」の場面において,取引者,需要者が引用標章 を目にし,これに注意を払うという取引の実情がなければ,当該取引者,需 要者が引用標章を広く認識することはないかのごとく主張するが,当該取 引者,需要者が引用標章を認識する機会は,何も「飲食サービスの提供」の 場面に限られるものではないから,原告の上記主張は理由がない。
イ 原告は,1)需要者が日本工業規格を認識する標章は「JISマーク」で あり,「JIS」の文字は定着していない,2)「JIS」の文字が,他の ものを表す略称として使用されている例があり,需要者は,「JIS」の\n文字から直ちに日本工業規格を認識するとはいえないとして,引用標章は 日本工業規格を表す標章として著名ではない旨主張する。\n しかし,「JISマーク」が日本工業規格を表す標章として国民に広く\n知られている事実があるとしても,そのことが,「JIS」の文字が日本 工業規格を表す標章として著名であることを否定する理由となるものでは\nない(両者が共に日本工業規格を表す標章として広く認識されることもあ\nり得る。)。むしろ,「JISマーク」が,「JIS」の文字をデザイン 化したマークであって(乙4の10頁,乙6参照),そこから「JIS」の 文字を読み取ることができることからすれば,「JISマーク」が日本工 業規格を表す標章として広く知られているとの事実は,「JIS」の文字\nも同様に日本工業規格を表す標章として広く知られていることを示すもの\nということができる。 また,原告が,「JIS」の文字が略称として使用されている例として 挙げるのは,「株式会社ジャパンインバウンドソリューションズ(Japan Inbound Solutions)の略称」(甲20),「JIS 香港日本人学校大 埔校」(甲21),「地震情報サイト JIS」(甲22)の3例であ り,いずれも一般に知られた「JIS」の使用例ではなく,引用標章に 接した国民一般がこれらの使用例を想起することは通常考え難いこと であるから,これらの使用例の存在が,引用標章の著名性を否定する理 由となるものではない。

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平成28(行ケ)10089  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年5月15日  知的財産高等裁判所

 商標法4条1項11号違反ではなく、商標法8条1項違反が争われた事例です。知財高裁は登録無効とした審決を維持しました。優先権を使った国際登録が同時期くらいになされると、このようなことはが起きるんですね。
  複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構\成部分が それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的 に結合しているものと認められる場合には,その構成部分の一部を抽出し,\nこの部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは, 原則として許されないが,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商\n品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ 13 る場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じない と認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較\nして商標そのものの類否を判断することも許されるものと解される(最一小 判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁,最二小判平成5年9 月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8日集民22 8号561頁参照)。
(2) これを本件についてみるに,本件商標は,「FINESSENCE」とい うアルファベット10文字を横文字にして成る文字部分(本件文字部分)と, アヤメの花のような図が白抜きされた円形の図形(本件図形)を,上下二段 に組み合わせて構成されるものであるところ,その構\成態様からして,各構\n成部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分 的に結合しているものとは認められない。また,上記のとおり,本件文字部 分はアルファベット10文字を横書きにして成るのに対し,本件図形部分の 横幅は本件文字の3文字分(左から2文字目ないし4文字目)程度しかなく, その大きさの比からして,本件文字部分が本件商標の中心的構成部分に当た\nることは明らかである。加えて,原告も認めるとおり,本件文字部分は,そ れ自体造語であって一般的な用語ではないから,出所識別標識として強く支 配的な印象を与える部分であると認められる。 そうすると,本件商標のうち本件文字部分を要部として抽出し,同部分の みを引用商標と比較して商標の類否を判断することは許されるというべきで あり,この点において,本件審決の認定に誤りがあるとは認められない。

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平成28(行ケ)10208  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年3月23日  知的財産高等裁判所(2部)

 商標「TOMATO」と「TOMATO SYSTEM」が類似する、指定商品役務も商品と小売りサービスで類似するので、商標法4条1項11号違反とした審決が維持されました。原告が「引用商標について識別力がないので引用商標としての適格性に欠ける」という主張についても判断していますが、この主張って法的にどうなんでしょうね。
 原告は,本願商標は,1)「TOMATO」の欧文字部分だけが,独立して,見る者 の注意を惹くように構成されていない,2)「TOMATO」の欧文字部分は,出所識 別表示として強く支配的な印象を与えるものではない,3)「SYSTEM」の語に出 所識別機能がないとまではいえない,と主張する。
本願商標は,「TOMATO」と「SYSTEM」とを同じ字体で同じ大きさで横一 連にまとまりよく表記されているものではあるが,「TOMATO」と「SYSTEM」\nとの間に1文字分のスペースがあり,外観上,「TOMATOSYSTEM」なる一連 の語であるとは認められない。また,本願商標を構成する「TOMATO」及び「S\nYSTEM」の語は,いずれも,我が国において広く慣れ親しまれた英単語であると ころ,「SYSTEM」(システム)の語は,一般に「複数の要素が有機的に関係し あい,全体としてまとまった機能を発揮している要素の集合体」を意味する語であ\nり(乙7),本願指定商品又は本願指定役務と関係する情報処理の分野では,ハー ドウェア又はソフトウェアの組合せを意味する語として用いられているから(乙8\n〜10),商品の品質又は役務の質を表したものとして,出所識別表\示としての機 能がないか又は極めて弱いということができる。一方,「TOMATO」(トマト)\nの語からは,まず,野菜のトマトが想起され,そのことは,本願指定商品又は本願 指定役務の取引者又は需要者においても同様であるところ,野菜のトマトと,本願 指定商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,形状等又は本願指定役務の\n提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途,態様等との関連を想定できな\nいから,非常に強い印象を取引者又は需要者に与えるものである。したがって,本 願商標においては,「TOMATO」の欧文字部分が,取引者又は需要者に対し,商 品又は役務の出所識別標識として,強く支配的な印象を与える。そして,上記説示 から明らかなとおり,「TOMATO」と「SYSTEM」との間の観念的なつながり を見いだすことはできず,本願商標全体で特定の意味合いを想起させるということ はできない。 そうすると,本願商標の要部は「TOMATO」の部分であると認められ,これを 要部として分離抽出した審決の認定に誤りはない。 したがって,原告の上記主張は採用することができず,取消事由1は,理由がな い。
(2) 取消事由2(引用商標の引用適格の欠如)について
原告は,欧文字を標準文字で「TOMATO」と表した引用商標1は,「極めて簡\n単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標」(商標法3条1項5号),又は, 「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない 商標」(同項6号)であるから,無効であると主張する。 しかしながら,「TOMATO」からは,一般に,野菜のトマトが想起されるとこ ろ,このように明確に特定の観念を導く単語で構成された商標が,「極めて簡単で,\nかつ,ありふれた標章のみからなる商標」ということはできないから,引用商標1 が,商標法3条1項5号に規定された商標に該当することはない。また,広く用い られる語であるからといって,直ちに出所識別機能を欠くものではなく,指定商品\n又は指定役務との関係において検討されるべきものであるところ,引用商標1が, 指定役務との関係において,出所識別機能を欠くと直ちに認めることはできないか\nら,商標法3条1項6号に規定された商標に該当することもない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができず,取消事由2は,理由が ない。

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平成27(受)1876  不正競争防止法による差止等請求本訴,商標権侵害行為差止等請求反訴事件 平成29年2月28日  最高裁判所第三小法廷  判決  その他  福岡高等裁判所

 商標権に関する部分が興味深いです。周知商標に基づく無効審判請求(4条1項10号)は、5年の除斥期間があります(商47条)。よって、侵害訴訟において5年経過すると、無効抗弁(特104条の3)ができないかが論点となります。 最高裁は、原則、無効主張できないが、周知にした本人は除かれると判断しました。ただ、本件の場合、不正競争防止法における周知認定を誤っていると判断されていますので、そもそも、周知でないとの判断となるかもしれません。
 そして,商標法39条において準用される特許法104条の3第1項の規定(以下「本件規定」という。)によれば,商標権侵害訴訟において,商標登録が無効審判により無効にされるべきものと認められるときは,商標権者は相手方に対しその権利を行使することができないとされているところ,上記のとおり商標権の設定登録の日から5年を経過した後は商標法47条1項の規定により同法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判を請求することができないのであるから,この無効審判が請求されないまま上記の期間を経過した後に商標権侵害訴訟の相手方が商標登録の無効理由の存在を主張しても,同訴訟において商標登録が無効審判により無効にされるべきものと認める余地はない。また,上記の期間経過後であっても商標権侵害訴訟において商標法4条1項10号該当を理由として本件規定に係る抗弁を主張し得ることとすると,商標権者は,商標権侵害訴訟を提起しても,相手方からそのような抗弁を主張されることによって自らの権利を行使することができなくなり,商標登録がされたことによる既存の継続的な状態を保護するものとした同法47条1項の上記趣旨が没却されることとなる。 そうすると,商標法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後においては,当該商標登録が不正競争の目的で受けたものである場合を除き,商標権侵害訴訟の相手方は,その登録商標が同号に該当することによる商標登録の無効理由の存在をもって,本件規定に係る抗弁を主張することが許されないと解するのが相当である。
・・・・
そこで,商標権侵害訴訟の相手方は,自己の業務に係る商品等を表示するものとして認識されている商標との関係で登録商標が商標法4条1項10号に該当することを理由として,自己に対する商標権の行使が権利の濫用に当たることを抗弁として主張することができるものと解されるところ,かかる抗弁については,商標権の設定登録の日から5年を経過したために本件規定に係る抗弁を主張し得なくなった後においても主張することができるものとしても,同法47条1項の上記(ア)の趣旨を没却するものとはいえない。 したがって,商標法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求 されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後であっても,当該商標登 録が不正競争の目的で受けたものであるか否かにかかわらず,商標権侵害訴訟の相 手方は,その登録商標が自己の業務に係る商品等を表示するものとして当該商標登\n録の出願時において需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標 であるために同号に該当することを理由として,自己に対する商標権の行使が権利 の濫用に当たることを抗弁として主張することが許されると解するのが相当であ る。そして,本件における被上告人の主張は,本件各登録商標が被上告人の業務に 係る商品を表示するものとして商標登録の出願時において需要者の間に広く認識さ\nれている商標又はこれに類似する商標であるために商標法4条1項10号に該当す ることを理由として,被上告人に対する本件各商標権の行使が許されない旨をいう ものであるから,上記のような権利濫用の抗弁の主張を含むものと解される。

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◆関連判決(商標登録無効審判の取消訴訟)はこちらです。平成27年(行ケ)第10083号

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平成28(行ケ)10177  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年2月8日  知的財産高等裁判所

 商標「eTrike」から、称呼「イートライク」が生ずるのかが争われました。知財高裁は、称呼「エトライク」以外にも、称呼「イートライク」が生ずるとした審決を維持しました。
 本願商標は,別紙本願商標目録記載のとおり,「eTrike」の欧文 字を太字で一連に横書きしてなる商標であるところ,商標全体としては,辞 書等に記載された既成の語ではなく,一種の造語として認識されるものと認 められる。 したがって,本願商標からは,欧文字表記をする外国語として我が国にお\nいて最も一般的な英語の読みに従った称呼が生じるものと考えられるとこ ろ,上記一連の欧文字綴りからは,「エトライク」の称呼が自然に生じるも のといえる。
(2) 他方,本願商標は,一連表記された6つの欧文字のうち,冒頭の「e」の\n文字が小文字であり,2番目の「T」の文字のみが大文字である点に特徴が あるところ,英語では一つの語の冒頭の文字のみを大文字で表記することが\n一般的に行われていることからすれば,本願商標に接した取引者,需要者ら は,大文字の「T」以降の文字である「Trike」を一つの語としてとら え,冒頭の「e」の文字と区分して理解することも自然にあり得ることとい える。加えて,上記「Trike」及びその片仮名表記である「トライク」の\n語は,「三輪車」や「三輪の自転車またはオートバイ」を意味する既成の用 語であり(乙3,4),特に,本願商標の指定商品に含まれる「二輪自動車,三 輪自動車,自転車」に係る取引者,需要者らの間では,そのような意味を有 する用語として相応の認識が得られていると考えられること(乙3ないし1 1),他方,例えば,「Eメール」,「eコマース」,「eラーニング」な どのように,「electronic」の頭文字である「e」の文字を既成 語の冒頭に付して,電子化されたものを表す用語として用いるように,既成\n語の前に欧文字を1字置いて,様々な意味やニュアンス等を表すことが我が\n国においても一般的に行われていることといった事情に鑑みれば,本願商標 に接した上記取引者,需要者らにおいては,これを,「三輪の自転車または オートバイ」等を意味する「Trike」の冒頭に「e」の欧文字を付した 造語として認識することも自然にあり得ることであるといえる。 そして,取引者,需要者らが本願商標を上記のように認識することを前提 とすれば,本願商標の冒頭の「e」の文字からは,その自然な英語読みであ る「イー」の称呼が生じ,2文字目以降の「Trike」からは「トライク 」の称呼が生じて,全体からは,上記「Eメール」等と同様に,「イートラ イク」という一連の称呼が生じ得るものといえる。
(3) これに対し,原告は,1)本願商標は,「eTrike」の文字を一つの言 葉として全体が均整のとれた注目される図案化された商標であり,その綴り の中に配された「T」の文字は,語頭文字でもなければ,文頭文字でもない から,本願商標中の「e」と「Trike」を区切って発音することは考え られない旨,2)冒頭の「e」の文字には,長音で発声することを示す記号等 は配されていないから,そこから「イー」の称呼が生じるとはいえない旨,3) 仮に「e」と「Trike」を区切って発音するとしても,「イ」と「トラ イク」を切り離して発音することとなり,「イートライク」のように一連の 称呼は生じない旨を主張する。
しかし,本願商標が欧文字を一つの言葉のように一連表記した商標である\nことを踏まえても,冒頭の「e」の文字と2文字目以降の「Trike」の 語が区分して認識され得ることは上記(2)で述べたとおりである。原告は,本 願商標中の「T」の文字が語頭文字でも,文頭文字でもないことを指摘する が,むしろ,語頭ではなく,2文字目にある「T」が大文字とされているが ゆえに,本願商標に接した取引者,需要者らは,「T」以降の文字である「 Trike」を一つの語としてとらえ,冒頭の「e」の文字と区分して理解 すると考えられるのであるから,原告の上記指摘は当を得たものとはいえな い。 また,取引者,需要者らが本願商標の「e」の文字と「Trike」の語 を区分して認識することを前提とした場合,「e」の文字から,自然な英語 読みとして「イー」の称呼が生じ得ることは,我が国の英語の普及状況に照 らし明らかであり,そのために,必ずしも長音で発声することを示す記号等 を要するものとはいえない。 さらに,取引者,需要者らが本願商標の「e」の文字と「Trike」の 語を区分して認識したからといって,「イ」と「トライク」を切り離して発 音することが通常であるとはいえず,むしろ,わずか6つの欧文字が一連表\n記された「eTrike」の「e」と「Trike」とを殊更切り離して発 音することは不自然であって,「イートライク」の一連の称呼が自然に生じ ることは明らかといえる。

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平成28(行ケ)10164  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年1月24日  知的財産高等裁判所(第2部)

 商標「ゲンコツメンチ」が商標「ゲンコツ」と非類似とした審決が維持されました。前者の指定商品は、「メンチカツを材料として用いたパン,メンチカツ入りのサンドイッチ,メンチカツ入りのハンバーガー,メンチカツ用調味料,メンチカツ入り弁当,メンチカツ入りの調理済み丼物」後者は、「おにぎり,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」です。
 また、本件については、被告(ローソン)は一時期、原告からライセンスを受けていたとのことです。
 (2) 本件商標は,「ゲンコツ」の文字部分と「メンチ」の文字部分がいずれも 辞書に掲載されている語であることから,その組合せであると解されるものではあ るが,文字のみの商標であって,図形などとの組合せではなく,しかも,全ての文 字が,標準文字で,一連に横書きされており,各文字は,同じ字体,大きさ及び間 隔で,一体的に表記されている。また,本件商標の全体の文字数は,7文字で,多くはないところ,その称呼は,\n「ゲ」と「メ」の母音がいずれも「エ」,その次に続く音がいずれも「ン」であり, 韻を踏んだ状態になっており,リズム感があることから,全体として,7文字であ るにしては,簡潔で歯切れのいい印象を与える。 そして,食品,特に単品で販売されることのある加工食品で,一定程度の大きさ と,丸みと厚みのある形状であり得るものについては,その大きさや形状を表すために「げんこつ」,「にじりこぶし」,「こぶし」という語を使用し,これを加工\n食品の名称と組み合わせて,商品の名称とされることがあると解されるのであって, 前記のような加工食品の取引の場面においては,「げんこつ」又は「ゲンコツ」と いう語が,商品の大きさや形状を象徴的に表す語として解されることもあるといえる。\nさらに,「挽肉にみじん切りにした玉葱などを加えて小判型などにまとめ,パン 粉の衣をつけて油で揚げた料理」を,「メンチカツ」ではなく,「ミンチカツ」と いう地域もあり(甲6,7),インターネット上においては,平成27年9月19 日の時点で,「メンチカツ」を「メンチ」と略する旨の記載もある(甲7)が,そ の他に「メンチカツ」を「メンチ」と略することを裏付ける証拠はなく,平成25 年12月頃のコンビニエンスストアのホットスナックの商品名として,「あらびき 牛肉メンチカツ」(セブン−イレブン),「ビーフメンチカツ」(ファミリーマー ト)と,「メンチカツ」を略さずに全体を取り込んだものがある一方,「メンチ」 のみを取り込んだ商品名は,被告の「ゲンコツメンチ」しか見当たらず,これらを 紹介する雑誌の記事においては,これらの商品を包括する表現として「メンチカツ」と記載されていた(甲42)。\nそうすると,メンチカツ同様に挽肉を使った料理である「ハンバーグ・ステーキ」 (挽肉に刻んだ玉葱,パン粉,卵などを加え,平たい円形にまとめて焼いた料理) (広辞苑第6版)が「ハンバーグ」と表現されているのに対し,「メンチ」の語は,挽肉にみじん切りにした玉葱などを加えて小判型などにまとめ,パン粉の衣をつけ\nて油で揚げた料理である「メンチカツ」を表す名詞として,全国の取引者,需用者に,それほど普及しているとはいえない。\n以上によれば,本件商標において,「ゲンコツ」の文字部分だけが,取引者,需 要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは いえないし,「メンチ」の文字部分からは,出所識別標識としての称呼,観念が生 じないともいえない。
(3) したがって,本件商標は,その外観,称呼及び観念のいずれの点において も,引用商標と相違し,取引の実情を考慮しても,引用商標とは類似しておらず, 商標法4条1項11号に該当する商標ではない。

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平成28(行ケ)10181  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年1月24日  知的財産高等裁判所

 商標「オルガノサイエンス」が「オルガノ」と類似するとした先の判決と同様の理由により、無効とするとの審決が維持されました(2部)。
 (4) 本件において,上記(2)イの第1判決の認定判断に照らせば,第1判決の 拘束力は,第1審決を取り消す旨の結論(主文)が導き出されるのに必要な商標法 4条1項11号該当性についての認定判断,すなわち,1)引用商標は,本件商標登 録出願時には被告及び被告の事業ないし商品・役務を示すものとして相当程度周知 となっており,被告の事業は水処理関連事業であるが,これには薬品事業が伴うも のと認識されており,2)本件商標は,「オルガノ」と「サイエンス」の結合商標と認 められ,「オルガノ」部分は上記引用商標の周知性等からすれば,その指定商品及び 指定役務の取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的 な印象を与え,「サイエンス」の部分は指定商品である化合物,薬剤類との関係で出 所識別標識としての称呼,観念が生じにくいと認められることからして,「オルガノ」 部分を要部と解すべきであり,3)本件商標と引用商標とは,類似していると認めら れ,4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは,いずれも,「化学剤」を含ん でいる点で共通する,との認定判断について生ずるものというべきである。したが って,再度の審判手続において,審判官は,第1判決が上記のとおり認定判断した 点につき,第1判決とは別異の認定判断をすることは,取消判決の拘束力により許 されないのであるから,審決が取消判決の拘束力に従ってされた限りにおいては, 再度の審決取消訴訟においてこれを違法とすることはできない。 そして,本件審決は,上記第2,3のとおり,第1判決と同様の理由により,本 件商標と引用商標とが類似し,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは,い ずれも,「化学剤」を含んでいる点で共通するから,本件商標は,商標法4条1項1 1号に違反して登録されたとしたものであり,この認定判断は,上記第1判決の拘 束力に従ったものであることが明らかである。そうすると,再度の審決取消訴訟で ある本件訴訟において,これを違法とすることはできず,原告が,審決の当該認定 判断が誤りであると主張立証することは許されない。 本件訴訟において原告の主張する取消事由を検討すると,本件商標の商標法4条 1項11号該当性を争う部分については,第1判決の拘束力が及ぶ事項につき,こ れを蒸し返すものにほかならず,そもそも審決の取消事由とはなり得ないものと認 められるから,失当である。
・・・
(2) 本件商標と使用商標との類似性の程度
ア 本件商標「オルガノサイエンス」は,「オルガノ」と「サイエンス」の結 合商標と認められるところ,その全体は,9字9音とやや冗長であること,後半の 「サイエンス」が科学を意味する言葉として一般に広く知られていること,前半の 「オルガノ」は,「有機の」を意味する「organo」の読みを表記したものと解\nされるものの,少なくとも本件商標登録出願時に広く普及していた日本語の辞書で ある広辞苑に掲載されていない(甲133)など,「サイエンス」に比べれば一般に その意味合いが十分浸透しているものではないと認められ,さらに,後記(3)アのよ うな使用商標の周知著名性及び独創性からすれば,本件商標のうち「オルガノ」部 分は,その指定商品等の取引者,需要者に対し,商品等の出所識別標識として強く 支配的な印象を与えるものと認められる。他方,「サイエンス」は,一般に知られて いる「科学」を意味し,指定商品である化合物,薬剤類との関係で,出所識別標識 としての称呼,観念が生じにくいと認められる(最高裁平成20年9月8日第2小 法廷判決,裁判集民事228号561頁参照。)。したがって,本件商標については, 前半の「オルガノ」部分がその要部と解すべきである。
イ 本件商標の要部「オルガノ」と,使用商標とは,外観において類似し, 称呼を共通にし,一般には十分浸透しているとはいえないものの,いずれも「有機\nの」という観念を有しているものと認められる。したがって,両者は,類似してい ると認められる。

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◆関連事件です。平成26(行ケ)10268

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平成28(行ケ)10145  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年12月22日  知的財産高等裁判所

 無効審判で一部の役務について、「くれないケアセンター」と「くれない」が類似するとして無効と判断されました。知財高裁もこれを維持しました。指定商品・役務の普通名称が付加されただけでは類似と判断されたわけですが、ここ数年、ケースによって類似非類似が揺れています。
本件商標の「ケアセンター」という構成部分は,\n少なくとも本件指定役務との関係においては介護の提供場所を一般的に表示するも\nのにすぎず,当該構成部分から役務の出所識別標識としての称呼,観念は生じない\nというべきである。他方,「くれない」という構成部分は,そもそも「ケアセンター」\nという構成部分と用語として関連するものではなく,「くれない」という用語は,本\n件指定役務の内容等を具体的に表すものではないから,本件指定役務との関係では,\n需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ る。そうすると,本件商標のうち「くれない」という構成部分を抽出し,当該構\成 部分のみを引用商標と比較して商標の類否を判断することが許されるというべきで ある。
・・・・
原告は,本件商標は「くれないケアセンター」全体が出所識別機能を有するにも\nかかわらず,「くれない」という構成部分のみを抽出して引用商標と類否判断し,こ\nれを肯定した審決の判断には誤りがあるというものである。 しかしながら,上記1において説示したとおり,結合商標の構成部分の一部を抽\n出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは, その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な 印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての 称呼,観念が生じないと認められる場合などは,許されるべきである(前掲最二小 判平成20年9月8日参照)。本件商標のうち「ケアセンター」は,本件指定役務と の関係では「介護施設」という役務の提供場所をいうにとどまり,それ自体出所識 別機能を有するものとは認められないのに対し,「くれない」は,「ケアセンター」\nという用語とは本来的に関連性がなく,需要者に対し役務の出所識別標識として強 く支配的な印象を与えることは明らかである。そうすると,本件商標のうち「くれ ない」という構成部分を抽出して商標の類否判断をすることが許されると認めるの\nが相当である。

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平成28(行ケ)10143  商標登録取消決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年12月8日  知的財産高等裁判所(3部)

 4条1項19号違反の異議理由ありとの審決が維持されました。
 上記1の認定に係る各事実によれば,原告は,平成8年7月頃から共同 事業者として本件事業に関与し,平成18年11月以降は本件委託契約に基 づき受託者として引き続き関与していたところ,平成25年2月時点で,遅 くとも平成26年12月31日までに本件委託契約が終了し,本件事業に係 る業務を東長寺に引き継ぐべき義務を負ったにもかかわらず,本件委託契約 期間中である平成26年2月12日に本件商標の商標登録出願をし,同年1 2月19日に設定登録を受けたものである。 また,本件事業は,「縁の会」会員に対する個人墓の販売終了により事業 が終了するものではなく,会員に対しその生前から死後に至るまで,様々な 宗教的行為等を継続的に提供するものであることに鑑みると,たとえ個人墓 の販売が完了したとしても,東長寺が本件事業の標識として引用商標を引き 続き使用し続ける必要があることは明らかであるし,仮に原告が本件商標の 設定登録をすることにより東長寺が引用商標を使用し得なくなると本件事業 の継続に重大な支障を来すおそれがあることも,容易に予想されるところで\nある。そして,上記のとおり本件事業に関わり,その内容等を熟知している 原告にとっても,これら点は当然予見し得る事情といってよい。\nしかも,原告が本件商標の設定登録を受けることにつき原告と東長寺と の間に合意があったことを裏付けるに足りる証拠はなく,むしろ遅くとも平 成26年5月頃には原告による本件商標の登録出願や他の宗教法人(常在寺) と組んでの「縁の会」の語を用いた類似事業の展開等を巡って東長寺との間 に紛争が生じていたことがうかがわれる(甲106,107)。また,原告 が本件商標権を設定登録し,その使用権を専有することになった場合,同一 商標である引用商標の使用には当然問題が生じ得ることになるのであるから, 本件事業の受託者であり,かつ,本件事業を東長寺に円滑に移行させる旨を 約束していた原告としては,設定登録に当たり,東長寺に対し,引用商標の 使用を許諾するなど,東長寺の地位に不安が生じないような配慮をするのが 当然であったといえるはずであるにもかかわらず,そのような配慮がされた 形跡は認められないのであって(甲107は,日付も入れられていない不完 全な文書であり,これによって引用商標の使用の許諾がされたとは認め難 い。),この点も,原告の背信性を裏付けるものであるといわざるを得ない。 これらの事情に加え,前記のとおり,本件商標と引用商標が同一の商標 といえること,本件商標の登録出願時に既に引用商標が東長寺の展開する本 件事業に係る標章として日本国内における周知性を獲得していたことを併せ 考慮すると,原告は,引用商標がいまだ商標登録されていないことに乗じ, これに化体された信用及び顧客吸引力にただ乗りし,他の宗教法人と展開す る本件事業類似の事業に本件商標を使用することで利益を得,又は本件事業 の継続に支障を生じさせて東長寺に損害を生じさせることを目的として本件 商標を使用するものと合理的に推認される。このことは,原告が真光寺とと もに本件事業類似の「真光寺縁の会」の事業を展開し,これについて東長寺 が了承していたことがうかがわれること(甲12の1〜4,12の8及び9, 12の12〜14,12の16,12の19,12の21〜24,12の2 6,12の28,12の30及び31,乙22,23,25,34,74, 75)を考慮しても異ならない。上記のとおり,原告が常在寺とともに展開 する「常在寺縁の会」の事業を巡っては東長寺と原告との間で紛争を生じて いると見られることに鑑みると,原告が引用商標を用いて本件事業に類似す る事業を展開することを東長寺が広く許容していたとは考え難いからである。 したがって,原告は,不正の目的をもって本件商標を使用するものと認 められる。
(2) これに対し,原告は,不正の目的はないとしてるる主張する。 しかし,原告が,東長寺との合意すなわち本件共同事業契約ないし本件 委託契約に基づき広報・広告活動を行い,その費用を支出し,また,本件事 業における会員組織の事務局の管理運営等を担っていたとしても,それ自体 は本件共同事業契約及び本件委託契約に基づく原告の債務の履行にすぎず, 本件商標の登録出願時及び設定登録時における原告の不正の目的の存在に関 する上記認定を覆すべき事情とは必ずしもいえない。

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平成28(行ケ)10090  商標登録取消決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年10月27日  知的財産高等裁判所

 審決は「Dr.Coo」の下段の「AQUA COLLAGEN GEL」について識別力があるとして、4条1項11号違反として、取り消し決定をしました。知財高裁も、この判断を維持しました。
  認定事実によれば,本件商標の登録査定時(平成26年9月8日) において,申立人は,我が国のスキンケア市場における有力メーカーの一つ\nであり,とりわけドクターズコスメの分野では,パイオニア的な存在である とともに,圧倒的なシェアを誇るトップメーカーであって,スキンケア化粧 品やドクターズコスメの取引者,需要者らに広く知られる存在であったこと, 申立人が製造,販売する商品の中でも,アクアコラーゲンゲル化粧品は,申\ 立人の設立当初から15年以上にわたって継続的に販売される主力商品であ り,全国でのテレビCMをはじめとする大規模かつ長年に及ぶ宣伝・広告等 により,近年においては,年間100億円を超える売上高を維持し,各種の 人気投票等でも常に上位にランクされるなど,人気商品としての地位を確立 し,スキンケア化粧品やドクターズコスメの取引者,需要者らに広く知られ ていたこと,アクアコラーゲンゲル化粧品に係る上記宣伝・広告等の多くに おいては,「アクアコラーゲンゲル」という商品名の片仮名表記とともに,\n当該化粧品容器の画像が表記され,その中には,ドクターシーラボ標章の下\nに「Aqua-Collagen-Gel」の欧文字が組み合わされた標章(引用商標1と実 質的に同一の標章)が表示され,更に,その下に,各種の商品ごとに付加さ\nれた名称(「Super Moisture」など)が表示されていることが認められる。\n そして,これらの事実を総合すると,アクアコラーゲンゲル化粧品の商品 名を片仮名で表記した「アクアコラーゲンゲル」の標章及び引用商標1は,\n本件商標の登録査定時(平成26年9月8日)において,申立人が製造,販\n売するアクアコラーゲンゲル化粧品を表示する商標として,全国のスキンケ\nア化粧品やドクターズコスメの取引者,需要者らの間において広く認識され ていたものと認めることができる。 また,商品の製造,販売を行う企業においては,その企業自体の営業標識 となるロゴやマーク(いわゆるハウスマーク)を用いるほかに,商品のブラ ンド名を表す商標を用いる場合があり,その中でも,シリーズ商品や一定の\nカテゴリーに属する複数の商品群に統一的な商標(いわゆるファミリーマー ク)を使用した上で,その中の個々の商品について,ファミリーマークに付 加して個別の商品を識別するための標章(いわゆるペットマーク)を使用す ることが一般的に行われており,また,これらのマークを組み合わせて使用 することも一般的に行われている(当裁判所に顕著な事実)。そこで,この ような取引の実情を踏まえて考察すれば,前記宣伝・広告等におけるアクア コラーゲンゲル化粧品の容器の画像中の標章に接した取引者,需要者らにお いては,その構成中のドクターシーラボ標章については,企業名である「ド\nクターシーラボ」の欧文字表記に相当する「Dr.Ci:Labo」の文字を含む図形 であり,申立人の広告等の中で単独でも用いられていることから,申\立人の ハウスマークに相当するものとして認識し,また,その下の「AquaCollagen-Gel」の欧文字については,アクアコラーゲンゲル化粧品に共通し て用いられる「アクアコラーゲンゲル」の商品名を欧文字表記したファミリ\nーマークに相当するものとして認識し,更に,その下の「Super Moisture」 などの表示については,アクアコラーゲンゲル化粧品のシリーズにおける個\n別の商品を識別するためのペットマークに相当するものとして認識し,全体 として,これらのマークが組み合わされた商標であると自然に理解するもの と考えられる。してみると,引用商標1は,その全体が,申立人の製造,販\n売するアクアコラーゲンゲル化粧品を表示するというのみならず,その構\成 中の「Aqua-Collagen-Gel」の文字部分のみをとらえても,アクアコラーゲ ンゲル化粧品を示すファミリーマークに相当するものとして独立の商品識別 機能を果たしているというべきであり,引用商標1及びその構\成中の 「Aqua-Collagen-Gel」の文字部分は,全国のスキンケア化粧品やドクター ズコスメの取引者,需要者らの間において,そのようなものとして認識され, 広く知られていたということができる。
2 本件商標と引用商標1及び2の類否について
そこで,以上を踏まえた上で,本件商標と引用商標1及び2との類否につい て判断する。
本件商標について
原告は,本件商標の構成中,「AQUA COLLAGEN GEL」の文字部分が独立し て自他商品の識別標識としての機能を果たし,これから「アクアコラーゲン\nゲル」の称呼が生じるとした本件決定の判断は誤りである旨主張するので, 以下検討する。
ア 本件商標は,別紙1記載のとおり,上段に欧文字の「Dr.Coo」を,下段 に欧文字の「AQUA COLLAGEN GEL」を,それぞれ横書きしてなる結合商標 である。 しかるところ,上記「Dr.Coo」の文字と上記「AQUA COLLAGEN GEL」の 文字とは,上下二段に分けて表記されている上,前者の文字が後者よりや\nや大きいこと,前者が大文字と小文字の組合せであるのに対し,後者は大 文字のみからなること,両者の文字数の違いにより,両者の文字列全体の 幅が大きく異なることといった相違があることからすると,両者は,外観 上明瞭に区別して認識されるものといえる。 また,本件商標から生じる観念についてみても,「Dr.Coo」の文字から は,直ちに特定の観念が生じるとは認められず,他方,「AQUA COLLAGEN GEL」の文字については,「AQUA」は「水」を,「COLLAGEN」は「コラー ゲン(硬たんぱく質の一種)」を,「GEL」は「コロイド溶液がゼリー状 に固化したもの」をそれぞれ意味する外国語として一般的に知られている ことから,これらを組み合わせた観念が生じることが考えられるが, 「Dr.Coo」の文字と結びついた観念が生じるものではないから,両者は, 観念の点においても特段の結びつきがあるものではなく,明瞭に区別して 認識されるものといえる。 加えて,前記1 で述べたとおり,「アクアコラーゲンゲル」の標章及 び引用商標1の構成中の「Aqua-Collagen-Gel」の文字部分が,申立人の\n製造,販売するアクアコラーゲンゲル化粧品を示すものとして,スキンケ ア化粧品やドクターズコスメに係る全国の取引者,需要者らに広く認識さ れている事実からすれば,本件商標がその指定商品である「コラーゲンを 配合したゲル状の化粧品,コラーゲンを配合したゲル状のせっけん類」に 使用された場合,これに接した取引者,需要者が,スキンケア化粧品等の 分野において周知な「アクアコラーゲンゲル」の標章や「Aqua-CollagenGel」の文字と称呼や欧文字の綴りを共通にする下段の「AQUA COLLAGEN GEL」の部分に特に注目することは,自然にあり得ることであるといえる。 以上を総合すれば,本件商標においては,その構成のうち下段の「AQUA COLLAGEN GEL」の文字部分が,取引者,需要者に対し商品の識別標識とし て強く支配的な印象を与える部分として認識されることがあるというべき であるから,当該部分を本件商標の要部として把握することが可能であり,\nそこから,「アクアコラーゲンゲル」の称呼が生じるとともに,申立人の\n製造,販売する人気のシリーズ商品であるアクアコラーゲンゲル化粧品の 観念が生じるものと認めることができる。

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平成28(行ケ)10083  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年10月11日  知的財産高等裁判所

 審判における職権証拠調べに対して、当事者に意見陳述の機会が与えられていないという理由で、無効理由なしとした審決が取り消されました。原告は米国のマスターズナショナルインコーポレーテッド、被告はゲームソフトメーカのコナミです。
 前記認定(第2,3,(2))のとおり,特許庁は,本件審判手続において 本件職権証拠調べを行ったものであるところ,証拠(甲78,79)によれ ば,特許庁は,原告に対し,平成27年11月16日に書面審理通知書(起 案日は同月12日)を発送した上で,同月17日,審理終結通知書(起案日 は同月12日)を発送したことが認められるものの,本件職権証拠調べの結 果を原告に対して通知し,相当の期間を指定して意見を申し立てる機会を与\nえたことをうかがわせる証拠は全くなく,これらの手続は行われなかったこ とが推認される。
(2)ア 法56条が準用する特許法150条は,「審判に関しては,…職権で, 証拠調べをすることができる。」(1項)とする一方で,「審判長は,… 職権で証拠調べ…をしたときは,その結果を当事者…に通知し,相当の期 間を指定して,意見を申し立てる機会を与えなければならない。」(5項)\nと定める。ところが,本件審判手続において,特許庁は,上記(1)のとお り,原告に対し,本件職権証拠調べの結果につき通知し,相当の期間を指 定して意見を申し立てる機会を与えなかったのであり,この点で本件審判\n手続には上記規定に違反するという瑕疵があったものというべきである。 イ また,本件職権証拠調べは,具体的にはインターネットにより「スポー ツクラブ」及び「マスターズ」の語を複合キーワード検索することで 「スポーツクラブ」における「マスターズ」の語の使用例を調査したも のであるが,本件審決は,本件商標の法4条1項15号該当性を論ずる 中で,本件商標の称呼及び観念につき判断するに当たり,本件商標のよ うに「スポーツクラブ」の文字と「マスターズ」の文字が結合した場合 の「マスターズ」の文字部分が持つ出所識別機能の程度を評価する根拠\nの一つとして,このような本件職権証拠調べの結果である5件のスポー ツクラブのホームページに存在する記載を利用している。 さらに,法4条1項19号及び同7号該当性の判断に当たっても,本 件審決は,本件職権証拠調べの結果を利用して,本件商標中の「マスタ ーズ」の文字部分が持つ出所識別機能の程度につき検討している。
ウ そうすると,本件審判手続には瑕疵があり,その瑕疵は,審判の結果で ある審決の結論に一般的に見て影響を及ぼすものであったものというべ きである。このような場合,その瑕疵は,審決の結論に影響を及ぼさな いことが明らかであると認められる特別の事情,すなわち,たとえ職権 証拠調べの結果の通知がなくとも,これに対する反論,反証の機会が実 質的に与えられていたものと評価し得るか,又は当事者に対する不意打 ちとならないと認められる事情がない限り,審決取消事由となるものと 解される(最高裁判所第一小法廷昭和51年5月6日判決・判例時報8 19号35頁,最高裁判所第三小法廷平成14年9月17日判決・判例 時報1801号108頁参照)。 そこで,本件における上記特段の事情の有無を検討すると,本件職権 証拠調べは,上記のとおり具体的にはインターネットによる「スポーツ クラブ」及び「マスターズ」の語の複合キーワード検索であり,その手 法それ自体は必ずしも目新しいものではなく,一般的かつ容易に行われ 得るものではある。しかし,原告において,そのような証拠調べが行わ れることを当然に予期していたとか,予\期すべきであったと認めるに足 りる証拠はない上,そもそも,本件審判事件においては,被告は原告の 主張に対し何ら答弁せず(前記第2の2),また,その審理は職権によ り書面審理とされていた(前記(1))のであるから,本件職権証拠調べの 事実を知らない原告にとっては,何らかの追加主張ないし立証が必要で あること自体,全く予期し得なかったと考えられるのである。また,本\n件職権証拠調べの結果それ自体も,本件審決の引用するホームページ上 の記載の存在そのものはともかく,これを受けた反証活動や本件証拠調 べの結果の評価に関する反論の余地がないとはいい難い。 そうである以上,本件においては本件職権証拠調べの結果に対する反 論,反証の機会が原告に対し実質的に与えられていたものとは評価し得 ず,また,原告に対する不意打ちとならないと認めるべき事情も見当た らない。すなわち,上記特段の事情の存在は認められない。 したがって,本件職権証拠調べの結果の原告に対する通知等を欠くと いう手続上の瑕疵は,本件審決の取消事由となるものというべきである。

◆判決本文

◆平成24(行ケ)10363号 以前に、「Augusta Club」で15号違反が争われた事件です。こちらは15号違反と認定されています。

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平成28(行ケ)10065  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年8月10日  知的財産高等裁判所

 商標「山岸一雄大勝軒」について、創始者以外の同姓同名の他人が存在することを根拠として8号違反とした審決が維持されました。
 上記事実及び弁論の全趣旨によれば,本願商標の登録出願時(平成25年11月 19日)及び本件審決時(平成28年1月29日)において,亡山岸(生前の住所 地は東京都豊島区。甲19)とは別に,「山岸一雄」を氏名とする者が,複数生存 していたものと推認される。
ウ 以上によれば,本願商標は,他人の氏名を含む商標であると認められる。
(2) 「山岸一雄」を氏名とする者の承諾の有無
証拠(甲19,38)及び弁論の全趣旨によれば,原告の取締役であった亡山岸 は,本願商標の登録出願時において,原告が本願商標の登録出願をし,その商標登 録を受けることを承諾していたこと,その後,亡山岸は,平成27年4月1日死亡 したことが認められる。 しかし,前記(1)イのとおり,本願商標の登録出願時及び本件審決時において,亡 山岸とは別に,「山岸一雄」を氏名とする者が,複数生存していたものと推認され るところ,亡山岸以外の「山岸一雄」を氏名とする者が本願商標の登録について承 諾していたとの事実を認めるに足りる証拠はない。
(3) 小括
以上によれば,本願商標は,商標法4条1項8号に該当し,商標登録を受けるこ とができないものというべきである。
3 原告の主張について
(1) 原告は,商標法4条1項8号において,氏名を含む商標の登録が許されない のは,1)他人のパブリシティの権利を侵害する場合(当該他人の氏名等に少なくと も周知性が認められる場合),2)パブリシティの権利以外の氏名専用権の侵害にな る場合(商標出願の願書の記載から客観的類型的に判断し,氏名保持者が不快感を 感じると判断すべき場合)に限られると解すべきところ,本願商標は,上記1)及び 2)のいずれにも該当しない旨主張する。 しかし,商標法4条1項8号の趣旨は,前記1のとおり,人の氏名に対する人格 的利益の保護,すなわち,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われるこ とがないという利益を保護することにある。そして,同号は,その規定上,「著名 な雅号,芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称」とし,これらについては 著名なものを含む商標のみを不登録事由とする一方で,「他人の肖像又は他人の氏 名若しくは名称」については,著名又は周知なものであることを要するとはしてい ない。また,同号は,人格的利益の侵害のおそれがあることそれ自体を要件として 規定するものでもない。したがって,商標法4条1項8号の趣旨やその規定ぶりか らすると,同号にいう「他人の氏名」が,著名又は周知なものに限られるとは解し 難く,また,同号の適用が,他人の氏名を含む商標の登録により,当該他人の人格 的利益が侵害され,又はそのおそれがあるとすべき具体的事情の証明があったこと を要件とするものであるとも解し難い。すなわち,同号は,他人の氏名を含む商標 については,そのこと自体によって,上記人格的利益の侵害のおそれを認め,その 他人の承諾を得た場合でなければ,商標登録を受けることができないとしているも のと解される。 原告の上記主張は,商標法4条1項8号が,その規定上,他人の氏名については 「著名な」ものであることを要するとはしていないこと,他人の人格的利益を侵害 し,又はそのおそれがあるとすべき具体的事情の証明があったことを要件としてい るとも解し難いことに照らし,文理解釈の範囲を超えるものといわざるを得ない。 また,同号の趣旨は,上記のとおり,人の氏名に対する人格的利益の保護にあると ころ,この人格的利益の保護の要否を,顧客吸引力の有無(周知性や著名性の有 無)により分けるというのも,同号が商品又は役務の出所の混同のおそれを要件と していないことに照らし,相当でない。さらに,自己の氏名を含む商標が登録され ることにより氏名保持者が精神的苦痛や不快感を感じるか否かを商標出願の願書の 記載のみから判断すれば足りるというのも,氏名保持者ごとに人格的利益に係る事 情は異なるにもかかわらず,その個別的事情を一切捨象するものであって,相当で ない。なお,他人の氏名を含む商標について,当該氏名を有する他人から登録異議 の申立てや無効審判請求がされたときに初めて,当該商標の商標法4条1項8号該\n当性を判断すれば足りるとするのは,同号が商標の不登録事由として規定されてい ることにそぐわないのみならず,登録異議の申立期間が商標掲載公報の発行の日か\nら2月以内に限られ(同法43条の2),同項8号に違反してされたことを理由と する無効審判は商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は請求することがで きないとされていることから(同法47条1項),人は,自らの承諾なしにその氏 名を商標に使われることがないという利益を確保するために,自己の氏名が含まれ る商標の登録の有無を常に確認しなければならないことになる。かかる解釈は,商 標に含まれる氏名を有する他人に負担を強いるものであって,相当でないといわざ るを得ない。 以上の諸点に照らし,原告の上記主張は,採用することができない。なお,本件 において,亡山岸以外の「山岸一雄」が不快感を感じることがないとまでは認める に足りない。
(2) 原告は,学説の状況及び氏名を含む商標が登録されている例が存在すること を挙げ,商標法4条1項8号について,他人の氏名を含む商標については,そのこ と自体によって,上記人格的利益の侵害のおそれを認め,その他人の承諾を得た場 合でなければ,商標登録を受けることができないものと解釈することは不当である 旨主張する。 しかし,原告の挙げる学説の内容は,当裁判所の判断を拘束するものではないし, 過去に氏名を含む商標が登録されている例があるからといって,本件審決における 本願商標の商標法4条1項8号該当性の判断が,これに左右されるものではない。
(3) 原告は,被告が,NTT「ハローページ」電話帳を検索して同姓同名者を発 見し,これを出願人に通知して,拒絶や審決の根拠とするのは,現実に同姓同名者 が存在する蓋然性が高いにもかかわらず,氏名を含む商標が登録されている例が多 く存在していること,NTT電話帳は,プライバシー保護等の観点から,近時掲載 者数が激減しており,また,戸籍名で登録されている可能性もますます少なくなっ\nていること等に照らし,不当である旨主張する。 しかし,前記2(1)イのとおり,本件においては,NTT「ハローページ」電話帳 の掲載内容によれば,本願商標の登録出願時及び本件審決時において,亡山岸とは 別に,「山岸一雄」を氏名とする者が,複数生存していたものと推認されるのであ るから,本件審決が,本願商標の商標法4条1項8号該当性について,NTT「ハ ローページ」電話帳を検索し,その結果に基づき判断したことが,不当であるとい うことはできない。そして,これら同姓同名者の承諾を得ていないにもかかわらず, 「山岸一雄」の氏名を含む商標が登録されることにより,それらの者の人格的利益 を侵害するおそれがおよそ存在しないとまでいうことはできない。
・・・
(6) 原告は,他人の氏名を含む商標であっても,長年にわたる当該商標の使用や 指定商品又は指定役務と関連付けられた報道等での当該氏名の露出等の結果,需要 者が何人かの業務に係る商品又は役務であると認識することができ,他人の業務に 係るものと認識しない状態となった場合には,商標法4条1項8号の規定にかかわ らず,商標登録を受けることができると解すべきである旨主張する。 しかし,商標法4条1項8号について,同法3条2項に相当する規定は存しない。 原告の上記主張は,独自の見解であって,採用の限りでない。

◆判決本文

◆関連事件です。平成28(行ケ)10066

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平成28(行ケ)10062  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年7月20日  知的財産高等裁判所

FITの3文字が大きく表示され、その周辺に Foxconn Interconnect Technologyと小さく表示した商標について、FITだけを分離抽出できるかが争われました。知財高裁は、分離抽出できるとした審決を維持しました。
 本願商標と引用商標とを対比すると,前記2のとおり,本願商標からは, 「フォックスコン インターコネクト テクノロジー エフ アイ ティー」の称 呼及び鴻海グループに属する企業との観念が生じるとともに,「FIT」の文字部 分から,「エフアイティー」との称呼が生じるほか,その構成文字と同一の英文字\nから成る英単語の「fit」に相応した「フィット」との称呼及び「適した」,「ぴ ったりの」との観念が生じ(乙1,2),これは,原告も自認するところである。 本願商標から生じるこれらの称呼及び観念のうち,「フィット」との称呼及び「適 した」,「ぴったりの」との観念は,前記3の引用商標の称呼及び観念と同一である。 このように,対比に係る商標から2つ以上の称呼,観念が生じる場合,そのうちの 1つの称呼,観念が類似するときは,両商標は類似するというべきである(最高裁 昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12 号1621頁参照)。 本願商標の「FIT」の文字部分と引用商標とは,外観上,文字の彩色や書体等 の相違はあるものの,その相違は,上記の称呼及び観念の同一性をりょうがして上 記類似を覆すほどのものではない。 以上によれば,本願商標と引用商標とは,出所について誤認混同のおそれがあり, 両商標は,類似するものということができる。
(2) 原告は,本願商標の構成文字に,原告のグループ企業のブランドとして広く\n知られた「Foxconn」の文字が含まれ,かつ,原告の商号原語表記である\n「Foxconn Interconnect Technology」が併記さ れているという事実を軽視せず,本願商標の指定商品に係る取引においては商品の 製造主体が重視されるという取引実情にも鑑みれば,本願商標と引用商標は,事実 上,出所の混同が生じることはない旨主張する。 しかし,前記2のとおり,本願商標中,「Foxconn Interconnect Technology」の文字部分は,外観上,「FIT」の文字部分に 比べて明らかに目立たない態様であり,それほど見る者の注意をひくものではなく, 取引者・需要者に対し,本願商標の指定商品の出所識別標識として強く支配的な印 象を与えるのは,「FIT」の文字部分である。したがって,原告主張に係る取引 の実情を考慮しても,本願商標と,本願商標の「FIT」の文字部分と同一の構成\n文字から成り,同一の称呼及び観念を生じる引用商標とは,出所について誤認混同 のおそれがあるものというべきである。

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平成28(行ケ)10045  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟  平成28年6月29日  知的財産高等裁判所

 上方舞の流派である「吉村流」の六世家元が出願した商標「吉村流」が公序良俗に反しないと判断されました。
 被告は,Aが,その設立時社員となって,平成26年7月8日に設立された 一般社団法人であるが,前記1認定のとおり,1)その目的を「法人設立以前の上方 舞吉村流六世家元B(本名A)が,吉村流四世家元F及び吉村流五世家元Gから承 継してきた本邦固有の古典舞踊である,上方舞・地唄舞の技芸と振付を,京都御所 の舞指南・御狂言師たる吉村流の格式と伝統を保持しつつ,これを普及・発展させ, さらに後世に承継させ,以てわが国の文化芸術の振興に寄与すること」とし,上方 舞の実技・理論の教授及び後継者の育成,上方舞の舞踊公演会及び講習会の企画・ 開催等の事業を行うものであり,2)その会員は,師範名取,名取,弟子で構成され\nるが,従前の団体「吉村流」の会員であった者については,被告に会費を納入した 場合,当然に被告の会員とみなされ,従前の名取,師範名取の資格を有するものと され,3)その理事長を吉村流六世家元B(A)が務め,理事長(家元)は,被告を 代表し,吉村流家元としてその業務を執行し,名取試験,師範名取試験を実施し,\n理事会の承認を得て各免状を交付し,名取式,事始め等の吉村流の伝統儀礼を催行 し,各家元の年忌法要及び追善舞踊会等を主催するものとされている。また,実際 にも,前記1認定のとおり,被告の設立以前から「吉村流」の師範名取又は名取で あった者のうち多数の者は,被告に会費を納め,被告の会員として活動しており, 従前の団体「吉村流」において,家元が主体となって行っていた,個々の師範名取 や名取の活動を超えた団体としての主要な活動,すなわち,師範名取や名取の免状 の作成,交付,「上方舞吉村会」や歴代家元の追善公演等の主催などの活動は,被 告が行っている。
イ 前記1認定のとおり,本件商標の商標登録出願時において,「吉村流」は,上 方舞の流派である「吉村流」の舞踏の習得,教授等を行う者を構成員とする団体\n(団体「吉村流」)の名称(略称)又はその役務を表示するものとして,日本舞踊に\n係る需要者の間に広く認識されていたものであるが,前記アの事情に照らせば,被 告は,実質的には,従前の団体「吉村流」を法人化したものであるということがで きるから,被告が本来本件商標の商標登録を受けるべき者でないということはでき ない。 さらに,前記1認定の事実によれば,被告が設立された経緯も,団体「吉村流」 と家元個人との会計とを分別して会計の明朗化を図る必要性を契機とするものであ り,法人化に際し定められた定款(甲16)において,組織運営の明確化が図られ ているのであるから,本件商標の商標登録出願が不正の目的の下に行われたもので あるということもできない。
(4) 小括
以上によれば,本件商標の商標登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くもの があるとはいえず,また,本件商標について商標登録を認めることが商標法の予定\nする秩序に反するものであるともいえない。 したがって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当しない。

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平成28(行ケ)10003  商標登録取消決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年6月23日  知的財産高等裁判所

 「ももいちご」が周知商標であるとして異議申し立てがなされました。知財高裁は、周知商標であるとした審決を維持しました。
 申立人ら商品1は,本件商標の登録出願日である平成21年11月24日の時点において,販売開始から約15年が経過し,毎年の出荷量も数十\トン程度とほぼ安定した状況にあり,また,この間,関西地域において,テレビCMが7年間にわたって放送されたほか,ラジオCM等の各種宣伝広告も多数行われ,更には,申立人ら商品1の粒の大きさや甘さ,特定の地域でしか生産されない希少性,一粒1000円にもなる高価さなど\nが話題となり,テレビ番組,雑誌,新聞,インターネット上の情報記事等で 繰り返し紹介され,これらの宣伝や紹介の際には,常に引用商標1が使用さ れてきたことが認められる。 これらの事実を総合すると,引用商標1は,本件商標の登録出願日当時に おいて,これがいちごに使用された場合,申立人らが生産,販売する申\立人 ら商品1を表示するものとして,少なくとも関西地域及び徳島県における取\n引者,需要者の間において広く認識されていたものと認めることができる。 ・・・ JA徳島市らによるテレビCMやラジオCM等の宣伝・広告は行われていな いものの,平成25年初めころまでは,新聞記事等で引用商標1とともに紹 介されている事実が認められるほか,申立人ら商品2を紹介するテレビ番組,\n新聞記事等において,申立人ら商品2の前身となるブランドのいちごとして,\n引用商標1とともにたびたび紹介されている事実が認められるのであり,こ れらを総合すれば,引用商標1の周知性は,本件商標の登録査定時である平 成25年10月9日当時においても,なお維持されていたものと認めること ができる。 ・・・ 原告らは,申立人ら商品1が「あまおう」などの他の高級いちご\nと比べて,出荷量が圧倒的に少ない事実を指摘する。 しかし,申立人ら商品1は,そもそも徳島県佐那河内村の特定の農家の\nみが生産するいちごであるから,「あまおう」などの一般的な品種のいち ごに比べて,その生産・出荷量が圧倒的に少ないことは当然である。そし て,申立人ら商品1は,上記のような希少性が一つの理由となって話題を\nインターネット上の 情報記事等で繰り返し紹介されてきたものであり,その結果,引用商標1 が周知性を獲得するに至ったのであるから,申立人ら商品1の出荷量が他\nの高級いちごに比べて少ない点は,引用商標1の周知性を否定する事情と なるものではない。 また,申立人ら商品1の平成15年から平成25年3月までの年度ごと\nの出荷量の推移は,・・年まで約69トンから約95トンの間で推移した後,平成21年には約55トン,平成22年には約47トンと徐々に減少傾向が見られるようにな っている。しかし,申立人ら商品1は,本件商標の登録査定時(平成25\n年10月9日)の直近である平成24年12月から平成25年3月までの 出荷シーズンにおいても,約38トンの出荷量を確保しているのであるか ら,本件商標の登録査定時までに申立人ら商品1の流通量が著しく減少し\nたとまではいえず,この程度の減少傾向の存在が,引用商標1の周知性の 喪失に直ちに結びつくものとはいえない。

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平成27(行ケ)10246  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟  平成28年5月18日  知的財産高等裁判所

 「Photomaker Pro」と「Photomaker」が類似すると判断された審決が維持されました。
 本願商標の外観は,横一行で,「Photomaker」と「Pro」の各部分 の間に半角分の間隔を空け,「Photomaker」の各文字は灰色の輪郭のみ で,「Pro」の各文字は黒色で書された文字を灰色で縁取りすることで表されて\nいる。また,「P」の文字は,いずれも右部の弧状の部分が直線で示され,「t」の 文字は,通常の書体では左側に突き出る部分が削除され,「m」の文字は,通常の 書体では左上に突き出る部分が削除され,「a」の文字は,通常の書体では右下に 突き出る部分が削除され,上部の弧状の部分も直線で示され,「e」の文字は,そ の書き出し部分を左斜め上方向へ傾斜させ,「r」の文字は,いずれも通常の書体 では左上に突き出る部分が削除されるなどのデフォルメがされている。 そして,本願商標の全体からは「フォトメーカープロ」との呼称が生じる。また, 「Photo」は「写真」を,「maker」は「作る人」を意味し(乙3,4), 上記のとおり「Pro」の部分は,「より熟練者を対象とした」,又は「より高い機 能を備えた」という意味で理解されるのであるから,本願商標の全体からは,「写\n真を作る専門家」という観念を生じる。 また,上記(1)のとおり,本願商標の構成から「Photomaker」の部分\nを抽出して対比することも許されるところ,同部分からは「フォトメーカー」との 称呼を生じる。そして,同部分からは「写真を作る人」という観念を生じる。 したがって,本願商標は,その全体から「フォトメーカープロ」,「写真を作る専 門家」との称呼,観念を生じるほか,「Photomaker」の部分から「フォ トメーカー」,「写真を作る人」との称呼,観念を生じる。

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平成27(行ケ)10224  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年4月27日  知的財産高等裁判所

 「MAGGIE MILANO」が「MAGGIE」と類似するとした審決が維持されました。指定商品は被服です。「MILANO」がファッション業界では著名といえる地名というのが理由のようです。
 本願商標においては,「MAGGIE」と「MILANO」との間に1文字分に満 たないスペースが設けられていることから,「MAGGIE」と「MILANO」と の2つの単語からなるものであると認識し得る。 前半の「MAGGIE」の欧文字部分は,「『マギー』という女性の名又は愛称」 ほどの意味を有するといえる。そして,後半の「MILANO」の欧文字部分は, 「イタリア北部の都市」を指称する語(甲24,乙8)として広く一般に知られて いるものであり,かつ,ミラノにおいては,毎年,世界中から注目されるデザイナ ーズ・コレクションが開かれており(乙9),ファッション性の高いイメージを有す る都市として周知されているから,本願商標を本願指定商品である衣服や靴,洋品 小物などに使用する場合は,それに接する取引者,需要者は,当該「MILANO」 の欧文字を,イタリア国ミラノでデザイン等された商品であることを表す部分,す\nなわち,当該各商品の品質を表示した部分と認識するものとみるのが相当である。\nしたがって,本願商標は,その構成中,後半の「MILANO」の欧文字が,商\n品の品質を表示した部分として,格別の自他商品識別力を有しないのに対し,前半\nの「MAGGIE」の欧文字は,固有の名称であって,出所識別標識として強く支 配的な印象を与えるものであるから,当該欧文字のみを抽出し,他人の商標と比較 して商標としての類否を判断することが許されるというべきである。
イ 称呼について
(ア) 以上のことからすれば,本願商標は,その全体から「マギーミラノ」 の称呼が生じるほか,「マギー」との称呼をも生じるものと認められる。
(イ) これに対して,原告は,本願商標は,「マギー」と「ミラノ」に区切 って発音すると不自然であるから,「マギーミラノ」のみの称呼が生じると主張する。 しかし,本願商標の外観は,「MAGGIE」と「MILANO」との間にスペー スがあることから,2語から構成されるものと看取され,「マギー」と「ミラノ」と\nに区切って発音することに特段の困難も見い出せない。 原告の主張には,理由がない。 ウ 観念について
(ア) 本願商標は,その全体から「イタリアのミラノという都市の『マギー』 という女性の名又は愛称」の観念が生じるほか,上記アのとおり,その構成中「M\nAGGIE」の欧文字が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるから,「『マ ギー』という女性の名又は愛称」の観念を生じる。
(イ) これに対して,原告は,「ミラノ」は人の姓としても採択されている から,とある外国人の姓名又は愛称としての「マギーミラノ」という観念が生じる こともあり,また,本願商標では,ファッションブランドの一般的な表記とは異な\nり,「MILANO」を発祥地として小さく付記したものではないから,「MILA NO」は商標中の不可分な構成要素であると主張する。しかし,「ミラノ」が人の姓として使用されることがある(甲27,48)としても,これが我が国において,イタリアの都市名としての「ミラノ」を観念する(このことは,原告も認める。)よりも,優先して観念されるとは認められない。また,ファッションブランドがその発祥地を示す場合に,発祥地を小さく付記することがあるとは認められるが(甲41,乙10〜16),当該発祥地を商標中の他の部分と同程度の大きさで表\示することがないとまではいえない(なお,原告主張によれば,本願商標に係るブランドは,もともと,イタリアの「Maggie Jeans」というジーンズブランドであったとされるから,本願商標については,「MILANO」が発祥地を示すことを意図したものであるとも考えられる。)。

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平成27(行ケ)10153  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年4月13日  知的財産高等裁判所

 歴史と伝統を備えた超高級ブランドであるとして特異性を主張しましたが、日本における著名性が認められず、類似と判断されました。
 原告は,歴史と伝統を備えた超高級ブランドについて,十分な知識と経験を備え\nた超富裕層である需要者の間では,「CIFONELLI」ブランドは,「チフォネ リ」の称呼のもと,最高級の紳士スーツについて広く認識された存在となっている から,本願商標と引用商標との類否判断に当たっては,かかる取引実情を考慮すべ きと主張する。 しかし,原告が日本に進出したのは,2000年秋であり(甲7),原告商品が取 り扱われている百貨店は,東京の新宿伊勢丹(甲11),大阪の阪急メンズ大阪(甲 12),東京の銀座三越(甲13)及び東京の日本橋三越(甲14)等の数か所にす ぎない。また,原告の紹介記事等は,2000年8月ころ(甲7)及び2009年 春ころ(甲8)にファッション雑誌に掲載され,2010年2月16日公開のファ ッション情報ウェブサイトに掲載された(甲10)ほかは,原告商品を取り扱う百 貨店のパンフレット(甲9,11〜15)に記載されているだけであり,ウェブサ イト上の質問コーナーの回答中に原告商品への言及(甲16)が認められるにすぎ ない。一般に広く需要者が閲覧する雑誌及びウェブサイトへの記事掲載が,証拠上, 2000年以降現在までわずか4回にすぎないこと,百貨店のパンフレットのうち, 甲9は2011年春物の紹介であるから配布期間が短く手に取る者は限定されてい たであろうし,甲14は紳士服オーダーサロンにおける春のオーダー会の紹介とし て,原告ブランドが他のブランドと並んで紹介されているにすぎず,掲載期間及び 需要者がアクセスした期間は限定されており,甲15は伊勢丹新宿店のウェブペー ジであって,他の取り扱いブランドと同様に原告商品の仕立て料金等を表示してい\nるにすぎず,甲11〜甲13は,百貨店のフロアガイドであって,他のブランドと 同等に原告ブランドが記載されているにすぎず,ウェブサイト上の質問コーナー(甲 16)を閲覧した者が相当多数であったと認めるに足りる証拠もない。原告の日本 における売上げは,2013年及び2014年の3月〜9月(7か月分)で700 0万円近くと認められる(甲32)ものの,かかる金額が,紳士服の1ブランドの 売上げとしてその周知著名性を基礎付けるほど多額であると認めるに足りる証拠も ない。 上記の事実を総合考慮すれば,本願商標が,原告の扱う最高級の紳士服を示すも のとして,本願指定商品の需要者である男性の間で周知又は著名となっていたとは 認められない。したがって,本願商標に係る需要者層が富裕層の男性に限られ,本 願商標に係る商品が高級な男性用スーツ等に限られるとする原告の主張には,理由 がない。

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◆関連事件です。平成27(行ケ)10154

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平成27(ネ)10063  商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成28年3月31日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 バイクのインディアンに関する商標について、権利濫用とした1審判決が維持されました。
 上記(ア)ないし(ウ)のとおりの控訴人の本件各商標の登録出願の経緯,出願 当時の認識及び本件各商標の使用状況ないし控訴人の宣伝広告等の内容を総合考慮 すると,控訴人による本件各商標の商標登録出願は,控訴人が,平成3年頃から旧 インディアン社によるインディアンブランドの潜在的周知性に着目し,旧インディ アン社と控訴人とは関わりがないにもかかわらず,同社との関連性を強調して我が 国でインディアン関連商品の販売をすることを意図し,被控訴人がその頃我が国で 先行してインディアンブランド事業を開始しているのをみて,自らもそのような被 控訴人の事業展開や宣伝広告に便乗するとともに,被控訴人による事業展開を妨げ る目的で行われたものであると認めるのが相当である。
イ 本件各商標に化体された信用性について
前記のとおり,控訴人は,本件各商標についてこれと同一の商標を商品や宣伝広 告に使用したことは全くないのであるから,そもそも本件各商標自体には,控訴人 の独自の信用が化体されているとはいえない。また,前記のとおり,控訴人は, 「Indian」ロゴや本件商標2と類似するカナダインディアン社の商標を使用した商 品を販売していたが,これらについても,自らとは関わりがない旧インディアン社 との関係を強調した宣伝広告を行っていたものである。控訴人のこのような商標の 使用は,自己の商品に係る業務について,旧インディアン社の承継人ないしはライ センシーの業務であるかのような混同を生じさせるものであり,商標法が商標の出 所表示機能\を保護するものであることからすれば,同法上,このような商標の出所 表示機能\は本来保護されるべき性質のものとはいい難く,このような商標の使用に よって形成された控訴人の信用は,控訴人独自のものとはいえず,本件各商標と類 似した商標が使用されることによって,本件各商標の出所表示機能\が実質的に害さ れるものとはいえない。
ウ 控訴人片仮名商標に基づく侵害訴訟との関係について
さらに,本件各商標は,前記1のとおり,被控訴人標章1と類似するものである ところ,そもそも被控訴人の代表者であるCは,被控訴人標章1(Indian/Motocyc le商標)と同一の商標について,本件各商標の登録出願(平成6年9月21日)よ りも先立つ平成4年2月6日の時点で,商標登録出願をしていたものであり,被控 訴人は,平成7年9月29日に被控訴人標章1に係る商標登録がされた後,その商 標権を譲り受けていたものである。 そして,同商標登録は,控訴人が請求した無効審判において,控訴人片仮名商標 と類似し,商標法4条1項11号に違反することを理由として無効審決がされ,平 成14年12月27日,同審決を維持する内容の東京高等裁判所の判決がされ,平 成15年6月12日に同審決は確定したため,遡及的に無効となったものであるけ れども,一方で,同時期に係属していた,控訴人の被控訴人に対する控訴人片仮名 商標に係る商標権に基づく商標権侵害差止等請求訴訟においては,同年12月26 日,控訴人が被控訴人らに対して同商標権に基づいて禁止権を行使することは,商 標権の濫用に当たるものとして許されないとの一審判決が言い渡され,さらに,平 成16年12月21日,前記イと同様の理由により,控訴人片仮名商標に係る商標 権の行使が権利の濫用であるとして,その控訴を棄却する控訴審判決がされ,同判 決が確定したものである。 そうすると,本件片仮名商標は,これに係る商標登録自体は有効であるものの (なお,控訴人片仮名商標に係る商標登録が商標法4条1項7号に違反するとして 被控訴人が請求した無効審判については,上記侵害訴訟の控訴審判決とほぼ同時期 である平成16月12月8日に,同号違反を否定する審決を維持する内容の判決が, 同控訴審判決とは別の裁判体によってされた。),その商標権は,被控訴人に対し ては行使できないものであるところ,仮に控訴人片仮名商標に係る商標登録がされ なければ,商標法4条1項11号違反を理由として被控訴人標章1に係る商標登録 が無効とされることはなく(なお,被控訴人標章1についての商標法4条1項7号 違反を理由とする無効理由は,別の審決取消訴訟において理由がないものと判断さ れている。),むしろ,被控訴人標章1よりも後願である本件各商標(被控訴人標 章1と類似する。)についての商標登録の方が認められなかったはずであり,また, 被控訴人標章2(「Indian」ロゴ商標)も,本件各商標と類似しているとして,商 標法8条1項違反を理由として無効審決が維持されたものであるから,同様に,控 訴人片仮名商標に係る商標登録がなければ,無効とされることはなかったはずのも のである。 そうすると,被控訴人と控訴人との間では,控訴人片仮名商標に係る商標権に基 づく権利行使が許されないとの判決が確定しているにもかかわらず,控訴人片仮名 商標が登録されていることを唯一の理由として商標登録が無効とされた商標と同一 の標章である被控訴人標章1及び2について,被控訴人標章1よりも後に出願され た本件各商標との類似性を理由として本件各商標権に基づく権利行使を認めること は不合理である。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成25(ワ)13862

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平成27(行ケ)10219  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年4月12日  知的財産高等裁判所

パロディーの「フランク三浦」が「フランクミュラー」から無効理由あるかが争われました。知財高裁は、類似するとした審決を取り消しました。侵害事件ではありません。
(ア) 本件商標と引用商標1を対比すると,本件商標より生じる「フラン クミウラ」の称呼と引用商標1から生じる「フランクミュラー」の称呼 は,第4音までの「フ」「ラ」「ン」「ク」においては共通するが,第 5音目以降につき,本件商標が「ミウラ」であり,引用商標1が「ミュ ラー」であって,本件商標の称呼が第5音目と第6音目において 「ミ」「ウ」であり,語尾の長音がないのに対して,引用商標1におい ては,第5音目において「ミュ」であり,語尾に長音がある点で異なっ ている。しかし,第5音目以降において,「ミ」及び「ラ」の音は共通 すること,両者で異なる「ウ」の音と拗音「ュ」の音は母音を共通にす る近似音である上に,いずれも構成全体の中間の位置にあるから,本件\n商標と引用商標1をそれぞれ一連に称呼する場合,聴者は差異音 「ウ」,「ュ」からは特に強い印象を受けないままに聞き流してしまう 可能性が高いこと,引用商標1の称呼中の語尾の長音は,語尾に位置す\nるものである上に,その前音である「ラ」の音に吸収されやすいもので あるから,長音を有するか否かの相違は,明瞭に聴取することが困難で あることに照らすと,両商標を一連に称呼するときは,全体の語感,語 調が近似した紛らわしいものというべきであり,本件商標と引用商標1 は,称呼において類似する。
他方,本件商標は手書き風の片仮名及び漢字を組み合わせた構成から\n成るのに対し,引用商標1は片仮名のみの構成から成るものであるか\nら,本件商標と引用商標1は,その外観において明確に区別し得る。 さらに,本件商標からは,「フランク三浦」との名ないしは名称を用 いる日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じるのに対 し,引用商標1からは,外国の高級ブランドである被告商品の観念が生 じるから,両者は観念において大きく相違する。 そして,本件商標及び引用商標1の指定商品において,専ら商標の称 呼のみによって商標を識別し,商品の出所が判別される実情があること を認めるに足りる証拠はない。 以上によれば,本件商標と引用商標1は,称呼においては類似するも のの,外観において明確に区別し得るものであり,観念においても大き く異なるものである上に,本件商標及び引用商標1の指定商品におい て,商標の称呼のみで出所が識別されるような実情も認められず,称呼 による識別性が,外観及び観念による識別性を上回るともいえないか ら,本件商標及び引用商標1が同一又は類似の商品に使用されたとして も,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとはいえない。 そうすると,本件商標は引用商標1に類似するものということはでき ない。
(イ)a これに対し,被告は,本件商標は,著名ブランドとしての「フラ ンク ミュラー」の観念を想起させる場合があることから,著名ブラ ンドとしての「フランク ミュラー」の観念を生じる引用商標1と は,観念において類似し,称呼においても類似するから,両者は類似 の商標である旨主張する。 確かに,前記(2)アのとおり,被告使用商標ないしは引用商標1が,被 告商品を表示するものとして,本件商標の登録査定時に,我が国にお\nいて,需要者の間に広く認識され,周知となっていたのであるから,前 記(ア)のとおり,本件商標と引用商標1の称呼が類似することと相ま って,本件商標に接した需要者が,本件商標の称呼から,称呼の類似 する周知な被告使用商標ないしは引用商標1を連想することはあり得 るものと考えられる。 しかしながら,本件商標は,その中に「三浦」という明らかに日本 との関連を示す語が用いられており,かつ,その外観は,漢字を含ん だ手書き風の文字から成るなど,外国の高級ブランドである被告商品 を示す引用商標1とは出所として観念される主体が大きく異なるもの である上に,被告がその業務において日本人の姓又は日本の地名に関 連する語を含む商標を用いていることや,そのような語を含む商標な いしは標章を広告宣伝等に使用していたことを裏付ける証拠もないこ とに照らすと,本件商標に接した需要者は,飽くまで本件商標と称呼 が類似するものの,本件商標とは別個の周知な商標として被告使用商 標ないしは引用商標1を連想するにすぎないのであって,本件商標が 被告商品を表示すると認識するものとは認められないし,本件商標か\nら引用商標1と類似の観念が生じるものともいえない。

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平成27(行ケ)10174  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年3月23日  知的財産高等裁判所

「チャッカマン」は周知ではあるが、「チャッカボー」と非類似、また、混同もなしとした審決が維持されました。
本件商標と原告使用商標とが非類似の商標であって,両商標において共通する「チ ャッカ」の文字部分も,本件指定商品及び原告商品との関係において,その需要者 に「着火」の語を直ちに想起させるものであって,格別に独創性が高いものではな いから,本件商標は,これに接する需要者をして,原告使用商標を連想させて商品 の出所について誤認,混同を生じさせるおそれある商標とはいえず,かつ,フリー ライド又はダイリューションを招くとまでもいえない。

◆判決本文

◆関連判決はこちち。平成27(行ケ)10173

◆関連判決はこちち。平成27(行ケ)10172

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平成27(行ケ)10134  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年2月17日  知的財産高等裁判所

 新聞をにぎわしたタニタとオムロンヘルスケアの争いです。商標「dualscan」について、知財高裁は、類似群コードは異なるけれども、類似する商品と判断し、無効理由なしとした審決を取り消しました。
   商標法施行令は,商標法6条2項に係る区分を定める政令別表において,\n第10類として「医療用機械器具及び医療用品」を挙げているところ,省令別表で\nは,第10類の項目において,「医療用機械器具」が,「手術用キャットガット」や 「人工鼓膜用材料」,「医療用手袋」等とともに列挙されているから,第10類の「医 療用機械器具」とは,本来,医療行為に供することが予定されている商品を指すも\nのと解される。 そうすると,引用商標の指定商品である「体脂肪測定器,体組成計」とは,医療 行為に供する程度の品質,性能を保有することが予\定されている体脂肪率,筋肉量, 基礎代謝量等の体組成の測定機器を指すものというべきである。 確かに,省令別表の第10類には,「おしゃぶり」,「哺乳用具」,「綿棒」,「指サッ\nク」,「業務用美容マッサージ器」,「家庭用電気マッサージ器」や「耳かき」なども 列挙されており,医師による診断,治療の場面以外での使用が想定されているもの や,小型で安価で個人でも入手可能であり,病院以外に家庭での使用が想定されて\nいるもの,機能的に高度とはいえないものが含まれている。しかしながら,これら\nの物品は,いずれも美容,健康に関連する商品という意味において,医療行為の範 ちゅうに属する行為ないし医療行為に関連する行為に供されるものと認められるし, 高度な機能が不要であるとしても,医療行為に供されること,そのために必要な品\n質,性能が求められていることは同様であるから,当該物品に関する省令別表\の分 類は,上記判断を左右しない。
ウ これに対し,政令別表では,第9類として「科学用,航海用,測量用,\n写真用,音響用,映像用,計量用,信号用,検査用,救命用,教育用,計算用又は 情報処理用の機械器具,光学式の機械器具及び電気の伝導用,電気回路の開閉用, 変圧用,蓄電用,電圧調整用又は電気制御用の機械器具」が列挙されているところ, 省令別表では,第9類の項目において,「測定機械器具」として,温度計,圧力計,\n金属材料圧縮試験機,気象観測用機械等の種々のものが列挙されているものの,い ずれも,医療行為に供することを予定したものではないから,省令別表\の「測定機 械器具」が属する第9類の「測量用・・・の機械器具」は,元々,医療行為に供す ることが予定されていない商品を指すものと解される。\nそうすると,本件商標の指定商品である「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重 計,体重計」とは,体脂肪率,筋肉量,基礎代謝量等の体組成や体重の測定機器を 指すというべきである。そして,測定の対象自体は引用商標の指定商品と重なる部 分があるが,医療行為に供することが予定されていないという意味において,医療\n行為に供する場合よりも,品質や性能が劣るものを予\定しているというべきである。 エ なお,原告は,第9類への帰属と第10類への帰属が択一関係にあるこ とを否定すべき旨主張する。しかしながら,商標法6条1項及び2項が,商標登録 出願の際に商品の指定をすること,同商品の指定は,政令で定めた区分に従って行 うことを要求し,これに基づいて政令別表が作成されていること,政令別表\はニー ス協定の規定した国際分類に即して作成されているが,国際分類でも類別表又はア\nルファベット順の一覧表において,多数の多種多様な商品及びサービスが概括的,\n網羅的に記載されていること,政令別表を再区分化した省令別表\では,別表に商品\n名の記載がない場合を例外的な場合と取り扱っていることからすると,政令別表は,\n指定商品を指定するに当たって,可能な限りその中から選択できるように,世上存\nする多数の商品を全て列挙することを目指すものであり,そのうち,同種企業が取 り扱う可能性のある商品の類型ごとに1つの区分を設けたと考えられる。\nしたがって,省令別表は,特定の商品が多数の類型に同時に属することを,本来,\n予定していないと解するのが相当というべきである。「商品及び役務の区分解説」(乙\n3,4)においても,医院又は病院で専ら使用される電子応用の機械器具は,例外 的に,第9類の電子応用機械器具及びその部品に含まれないこと,第9類の「測定 機械器具」に該当する器具でも,専ら医療用に使用する測定機械器具については, 第10類の「医療用機械器具」に含まれることが記載されており,第9類と第10 類の商品を区別し,いずれかに分類できることを前提としている。 確かに,特定の商品がどの分類に属するかが不明な場合があることや,特定の分 類に属していた商品が,品質向上に伴って他の分類の属すると評価するのが相当な ことはあり得るといえるが,上記の指定商品の区分を設けた趣旨からして,同時に 複数の類型に帰属することは予定されていないとの前記解釈が左右されるものでは\nない。よって,本件商標の指定商品は,第9類に属するとされている以上,第10 類にも属するとの前提に立つことはできない。
・・・
確かに,「医療用機械器具」に属する具体的な商品では,大型で高額であり,医師 等の専門家でなければ入手し,使用することができないようなものが多く,このよ うな商品については,一般的な消費者が自ら購入することは考えにくく,上記推定 が及ぶものと解される。もっとも,「医療用機械器具」に属する具体的な商品の中に は,上記のような多種多様なものが含まれ,必ずしも一般消費者には入手困難とは いえない類型のものも存在するし,今後,技術革新や取引形態の変化によって,高 性能の低価格帯の製品が普及し,一般消費者も,医療用として使用されている機械\n器具を購入し,使用するようになれば,事後的に,出所について誤認混同するおそ れが生じ得ることになるから,実際に商標が使用されている具体的な商品の使用状 況,取引の実情等によっては,上記推定を及ぼすことが相当でない場合もあるとい うべきである。「類似商品・役務審査基準」において,商取引,経済界等の実情の推 移から,類似と推定した場合でも非類似と認められること,基準上は類似とならな い場合であっても類似と認められることがあると注記しているのも(甲64),例外 を許容する趣旨と解され,上記見解と整合するものである。 (2) 体脂肪計,体組成計,体重計の取引状況
そこで,以下,本件商標の指定商品とこれに関連した引用商標の指定商品の取引 の実情を,具体的に検討することにする。
・・・
以上によれば,本件査定時において,本件商標と引用商標の指定商品に関連する 体脂肪計,体組成計,体重計等の取引の実情に関し,次のことがいえる。
ア まず,業務用として販売されている体組成計及び体重計は,医療用とし て使用することを想定した機能や性能\を有し,医療用製品に該当するといえるとこ ろ,家庭用の体組成計及び体重計のシェアが極めて高い原告と被告は,医療用製品 の製造者でもある。また,医療用の体組成計しか製造していないメーカーが存在す る一方,医療用の体組成計を製造していない家電メーカーも存在し,家庭用の製品 と医療用の製品に関し,シェアが一致しているとは認められない。
イ 次に,メーカーによって,販売用のカタログの種類,掲載対象は異なる が,家庭用の体組成計や体重計のシェアが高い被告は,家庭用と業務用の両方を掲 載したカタログを用意している。また,多数の医療機器販売メーカーのカタログに おいて,小型の体脂肪計,体組成計,体重計が掲載され,販売されているが,その 中には,原告や被告の製品で,業務用のものと家庭用のものの両方が含まれている ため,医療関係者は,医療用機器の購入時に家庭用機器も併せて購入対象として検 討することになる。 小売店における体脂肪計,体組成計,体重計の販売では,業務用の大型のものは 展示されていないが,健康意識の向上に伴い,血圧計や体温計といったヘルスケア に関する製品と一緒に展示されており,一般消費者は,家庭用体組成計,体脂肪計 及び体重計を,健康維持や病気予防の目的で使用できる製品と近い性質のものと認\n識し得る。 また,近時は,ネット販売の増加もうかがわれるところ,体脂肪計,体組成計, 体重計のネット販売は,家電メーカー,医療機器メーカーに限られず,オフィス用 品取扱会社などにおいても取り扱われており,医療関係者の購入を前提とし,医療 用製品を主に取り扱うウェブサイトもあれば,一般消費者の購入を前提とし,家庭 用製品を主に取り扱うウェブサイトもある。前者では,医療用機器として大型の体 重計,体組成計以外に小型の製品も掲載され,医療用に限定されず,家庭用の体組 成計,体重計が販売されていることが多いため,主たる需要者である医療関係者に とって,医療用機器と同様に,家庭用機器が購入検討対象となる。しかも,医療用 製品を主として取り扱うウェブサイトであっても,一般消費者がアクセスすること 自体に制限はなく,購入も禁止されていないため,一般消費者も需要者となること があり,その場合の購入対象は,家庭用機器に必ずしも限られず,医療用機器も候 補となる。他方,一般消費者向けのウェブサイトであっても,業務用体重計が販売 される場合もあり,医療用製品が購入候補になることもあるし,リンクが貼られた\n業務用製品販売通販サイトへアクセスすることで,他の医療用製品等が購入候補と なることもある。
ウ さらに,医療用と家庭用の体脂肪計,体組成計,体重計において,そ の品質及び価格は様々であるが,医療用と同程度の品質及び価格が用意されている 業務用のものは,医療現場以外の学校やフィットネスクラブ等でも使用され,学生 やフィットネスクラブの会員である一般消費者が,直接接する場合がある。 具体的には,医療現場に設置されることが多いと考えられる業務用の製品は,価 格が100万円を超えるものや,一般住宅内での設定が想定できないほど大型のも のがあるが,一方,業務用の体重計であっても,価格が3万円程度で,一般家庭で の購入が十分可能\な製品もある(被告のWB−260A)。 他方,家庭用の体脂肪計,体組成計,体重計であっても,多数の機能が付加され\nていることが通常であり,1万円を超えることも珍しくない。これらの家庭用の体 重計等は,家庭用計量器の基準しか満たさないものとはいえ,その測定対象や測定 単位が医療用のものと同様のことがあり,医療関係の研究論文で使用される程度の 精度を備えていて,医療現場で購入される場合もある。
エ このように,家庭用の体重計の需要者である一般消費者は,医療用の 体組成計,体重計も入手可能な状況となっていたといえる上に,医療用の体組成計,\n体重計は,医療現場での利用に限定されず,学校やフィットネスクラブ,企業等で も利用されるから,その需要者は,医療関係者に限定されず,学校関係者やフィッ トネス関係会社,企業の物品購入部門,健康管理部門の従業員も含まれる。そして, 医療用の体組成計及び体重計のシェアの正確な数値は不明であるが,被告の医療用 の体組成計の販売台数は相当数に及び,販売シェアも小さくないから,これらの需 要者は,家庭等で被告の家庭用の体組成計を目にするだけでなく,学校やフィット ネスクラブ等で被告の医療用の体組成計を目にする機会もあることが推認される。 また,一般消費者の一部を構成する医療従事者は,一般消費者よりも高い注意力\nをもって商品を観察するとはいえ,医療用と家庭用の両方の製品を製造し,家庭用 のシェアの大半を占める原告と被告の製品に日常的に接することになるから,医療 用製品の出所について,家庭用製品の出所と区別して認識することが困難な状況と いえる。 さらに,その他の学校関係者,フィットネス関係会社や企業の物品購入部門,健 康管理部門の従業員には,一般的な消費者も含まれており,しかも,医療用と家庭 用の体重計,体組成計の測定対象は同じであり,性能等が近づきつつあるといえる\n上に,精度の違いは一般消費者には識別し難い場合があることから,性能による明\n確な区別も困難である。
オ よって,本件査定時においては,医療用の「体脂肪測定器,体組成計」 と家庭用の「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」は,誤認混同のお それがある類似した商品に属するというべきである。したがって,審決の指定商品 の類否判断の誤りをいう原告の取消事由3は,理由がある。

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平成27(行ケ)10180  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年2月9日  知的財産高等裁判所

 指定商品「サプリメント」商標「宮古養命草」について、「養命酒」及び「養命」から4条1項15号違反に認定されました。ただ、欠席裁判です。
(1) 被告は,適式の呼出を受けながら,本件口頭弁論期日に出頭しないし,答弁 書その他の準備書面も提出しないから,原告の主張(請求原因事実)を自白したも のとみなされる。 したがって,15号引用商標の「養命酒」及び「養命」の語は,本件商標の登録 出願時及び査定時において,原告商品の名称として周知著名であり,日本全国にお いて,ユニークな造語として広く一般需要者に認識されていたこと,「養命酒」及び 「養命」の語は,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な 印象を与えるものであり,本件商標の要部は「養命」の部分であること,原告は, 原告商品のほか「養命水」の商標を使用したミネラルウォーターや,サプリメント 等を販売していること,本件商標の指定商品「サプリメント」と原告商品である薬 用酒とは,いずれも広い意味でセルフメディケーションの用途で飲用,食用される 商品であり,需要者を共通にするものであることが認められる。
(2) 以上の事実によれば,被告が取引者及び需要者を原告商品と共通する本件商 標を指定商品に使用した場合,これに接した取引者,需要者は,高い周知著名性の ある「養命酒」,「養命」の表示を連想し,原告の出所に係るものであると誤信する\nか,少なくとも,当該商品が原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な 営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある\n営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがあり,商品の出所につき誤認 を生じさせるものと認められる。 そうすると,本件商標は,商標法4条1項15号所定の「混同を生ずるおそれが ある商標」に当たると解される。本件商標が商標法4条1項15号に該当しないと した審決の判断には誤りがある。

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平成27(行ケ)10132  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年2月9日  知的財産高等裁判所

 商標法4条1項7号(公序良俗)違反なしとした審決が維持されました。
 前記認定のとおり,被告は,本件商標が登録されるまで,日本国内において 製造・販売するゴルフクラブに「KAMUI」単体商標を使用することはなかった ことが認められるものの,他方で,原告と被告は,共同企業体であるカムイクラフ トを設立し,製造したゴルフクラブに「KAMUIPRO」の名称を付して販売し ていたこと(「KAMUIPRO」の商標権は原告と被告の共有である。),カムイク ラフト解消後,被告は,ゴルフクラブの名称をカムイプロからカムイツアー(KA MUITOUR)に改めることとしてゴルフクラブの製造販売を継続したこと(「K AMUITOUR(標準文字)」についても商標登録されている。),一時期は,被告 のゴルフクラブが「カムイ」のゴルフクラブとして紹介されることもあったこと, 本件商標の登録出願時においても,「KAMUITOUR」,「カムイツアー」等の標 章を使用してゴルフクラブを販売しており,上記のゴルフクラブの売上本数や売上 高についても原告と同程度のものであったことなどが認められ,被告としても,当 初から,「KAMUI」と文字を共通にする上記各標章をゴルフクラブに付して販売 等しており,継続的に相応の売上げがあったものということができる。 また,前記認定のとおり,原告と被告は,共同企業体であるカムイクラフトを解 消するに当たり,カムイの新製品については,それぞれが権利を有することを合意 したことが認められるものの,この合意のみをもって,被告が原告に対し,原告が 「KAMUI」単体商標の権利を有することを約束したものとはいい難く,本件商 標の登録出願が,原告と被告との間の上記合意に反するとは認められない。その他, カムイクラフト解消後においても,被告が原告に対し「KAMUI」単体商標に関 して法的義務を負う関係にあったということもできず,本件商標の登録出願につき, 被告に何らかの義務違反があるとも認められない。 以上のような経緯等によれば,前記認定の韓国における原告と被告の「KAMU I」に係る商標に関する紛争も契機として,被告が本件商標権に基づく先行訴訟に 至ったことを考慮しても,本件商標について,直ちに本件商標の登録出願の経緯に 著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが到底容認し得ないよう な事情があるとは認められない。

◆判決本文

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平成27(行ケ)10171  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年1月28日  知的財産高等裁判所

 商標「i:na」と「e−na」について、審決では類似すると判断されましたが、知財高裁は「称呼は同じだが、外観において明らかに相違しその相違の程度が顕著である」として、類似しないと判断しました。
 そこで,本願商標の「i:na」と引用商標の「e−na」を対比す ると,いずれも欧文字3字と1つの記号(「:」又は「−」)からなり,後 半の2文字が「na」である点において共通するが(引用商標中の「a」は 「a」にアクサン記号が付されたもの),冒頭の1文字及び記号はいず れも異なる。特に,引用商標においては,冒頭の「e」の文字が他の文 字よりも大きく表記され,最も看者の注意を惹きやすい文字といえると\nころ,これと本願商標の冒頭の「i」の文字とは,その外観が明らかに 異なる。 また,本願商標の「i:na」の欧文字は,同じ大きさのデザイン化 された太い筆記体の文字が横一列に並べられたもので,全体として整然 とした印象を受けるのに対し,引用商標の「e−na」の欧文字は,手書 き風のややくだけた活字体の書体であることに加え,文字の大きさが統 一されておらず,「n」の文字が他の文字よりやや低い位置に表記され,各\n文字が横一列に整然と並べられていないことから,全体としてやや雑然 とした印象を受けるものといえる。 なお,本願商標の下段部分と引用商標は,欧文字に近接してその読み を表記する片仮名又は平仮名が表\記されている点において共通する が,いずれも欧文字部分に比して極めて小さな表記にすぎないから,こ\nの点は,外観の類否に特段の影響を与えないものというべきである。 (エ) 以上のとおり,本願商標の下段部分と引用商標は,それぞれを構成\nする欧文字3字中の2字を共通にするものの,看者の注意を惹きやすい 冒頭の文字が異なる上,文字の書体,配列等の構成も異なっており,全\n体として受ける印象においても相違することによれば,本願商標の下段 部分と引用商標は,外観において明らかに相違し,その相違の程度は顕 著であるものと認められる。
・・・
エ 取引の実情について
本願商標の指定商品である「ティッシュペーパー,トイレットペーパ ー,その他の紙類」に係る取引又は引用商標の指定役務中の「紙類の小売 等役務」及び「壁紙の小売等役務」に係る取引において,本件審決当時,商 標の称呼のみによって取引が行われる実情があることをうかがわせる証拠 はない。 かえって,ティッシュペーパー,トイレットペーパー等の商品について は,スーパーマーケット,ホームセンター,ドラッグストア等の小売店舗 において,展示販売され,商品に付された商標の外観を確認し得る態様で 販売されることが通常であると考えられるところであり,このことは,本 件審決当時,原告が本願商標を使用して製造・販売するティッシュペーパ ー及びトイレットペーパーについても,これらの小売店舗において広く販 売されている事実(甲2,5,19)からも裏付けられる。また,インタ ーネット販売においても,商品名,商品の画像等から,商品に付された商 標の外観を確認し得るのが通常であるといえる。
オ 小括
以上のとおり,本願商標の要部である下段部分と引用商標は,「イーナ」の 称呼が生じる点では共通するものの,観念において比較することができな い上,外観において明らかに相違し,その相違の程度は顕著であること,さ らに,前記エ認定の取引の実情を総合考慮すると,本願商標及び引用商標 が本願商標の指定商品と同一又は類似する商品に使用されたとしても,取 引者,需要者において,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれ があるものといえないから,本願商標と引用商標とは全体として類似して いるものと認めることはできない。 したがって,本願商標が引用商標に類似する商標であるとは認められな いから,本願商標の指定商品と引用商標の指定役務の類否について判断す るまでもなく,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした本件審 決の判断には誤りがある。

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平成27(行ケ)10058  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年1月28日  知的財産高等裁判所

 「Enoteca Italiana」が「ENOTECA」と類似するかが争われました。特許庁審決では類似しないと判断されましたが、知財高裁は類似するとしてこれを取り消しました。
 以上のとおり,本件商標は,「Enoteca」の文字部分と「I taliana」の文字部分とから構成される結合商標であるが,その\n外観上,それぞれの文字部分を明瞭に区別して認識することができるこ と,それぞれの文字部分から別異の観念が生じることに鑑みると,本件 商標の「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部 分は,それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほ ど不可分的に結合しているものと認められないというべきである。 イ 本件商標の登録査定当時には,「ENOTECA」又は「エノテカ」は,原 告及び原告が行うワインの輸入販売,小売,卸売等の事業ないし営業を表\n示するものとして,日本国内において,取引者,需要者である一般消費者 の間に,広く認識され,周知となっていたこと,本件商標の「Enote ca」の文字部分から,取引者,需要者において,原告の周知の営業表示\nとしての「ENOTECA」又は「エノテカ」の観念が生じることは,前 記ア(イ)認定のとおりである。 他方で,前記ア(ウ)認定のとおり,本件商標の「italiana」の 文字部分から「イタリアの」という観念を生じるが,本件商標の指定役務 との関係においては,本件商標の「italiana」の文字部分は,そ の役務の提供の場所,提供の用に供される物等がイタリアに関連すること を示すものと認識されるにとどまるものといえる。 以上を総合すると,本件商標が「ワインの小売又は卸売の業務について 行われる顧客に対する便益の提供」の役務及びワインに関連する役務に使 用された場合には,本件商標の構成中の「Enoteca」の文字部分は,取\n引者,需要者に対し,上記各役務の出所識別標識として強く支配的な印象 を与えるものと認められ,独立して役務の出所識別標識として機能し得る\nものといえる。 そうすると,本件商標から「Enoteca」の文字部分を要部として 抽出し,これと引用商標とを比較して商標そのものの類否を判断すること も,許されるというべきである。 ウ これに対し,被告らは,本件商標は,外観が不可分一体で,称呼も一連 一体であり,観念についても,その構成全体から,ワインを販売・提供す\nる店舗の名称あるいは被告会社の周知な店舗名を表すものであること,本\n件商標の構成中の「Enoteca」の文字部分は強く支配的な印象を与\nえるものはいえないことなどからすると,本件商標から「Enotec a」の文字部分のみを要部として抽出することはできない旨主張する。 しかしながら,被告らの主張は,以下のとおり理由がない。 (ア) 被告らは,本件商標は,縁取りして統一的に図案化されたワインレ ッド色の「Enoteca Italiana」の文字をまとまりよく一 体的に表してなるロゴタイプの商標であり,本件商標から「エノテカイ\nタリアーナ」の一連の称呼がよどみなく生じるから,本件商標は,色彩 や形態によって外観が不可分一体であり,称呼も一連一体である旨主張 する。 しかしながら,前記ア(ア)認定のとおり,本件商標は,その構成全体\nから「エノテカイタリア−ナ」の称呼が生じるが,一方で,本件商標は,そ の構成中の「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文\n字部分との間に空白があること,それぞれの文字部分の冒頭の文字が大 文字で,冒頭以外の文字が小文字であることからすると,本件商標の外 観上,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部 分とを明瞭に区別して認識することができるから,本件商標の外観が不 可分一体であるということはできない。 また,本件商標の構成全体から「エノテカイタリア−ナ」の称呼が自\n然に生じることからといって直ちに本件商標から「Enoteca」の 文字部分を要部として抽出することができないとはいえない。 したがって,被告らの上記主張は,本件商標から「Enoteca」の 文字部分のみを要部として抽出することはできないことの根拠となるも のではない。

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平成27(行ケ)10159  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年1月20日  知的財産高等裁判所

 「Reebok」の文字の下段に極小さく表示した「ROYAL FLAG」から構成された結合商標について、先行商標「ROYAL FLAG」と類似するのかが争われました。知財高裁は、分離できるとした審決を取り消し、非類似と判断しました。判決文の最後に、本件商標があげられています。
 しかしながら,本願商標は,その外観上,「Reebok」の文字部分,図 形部分及び「ROYAL FLAG」の文字部分を組み合わせて成る結合商標であ ると認められるが,前記(1)のとおり,右側に鋭角の頂点を有する黒地の三角形の左 端に縦に白線を表し,当該三角形全体を左から右に波打つように旗状に表\\した図形 を中央に大きく配し,その上段に,「Reebok」の文字を図案化された特徴の ある書体で表し,図形の下段に「ROYAL」及び「FLAG」の各文字を1文字\n程度の間隔を空けて,上段の文字部分よりも小さく,かつ細いゴシック体で表して\n成るものであり,全体としてまとまりよく表されている。これに加え,中央に配さ\nれた図形の大きさ及びその形状並びにその上段に配された「Reebok」の文字 の大きさ及びその図案化された特徴のある書体に比べ,図形部分の下段に配された 「ROYAL FLAG」の文字部分は,小さく,すなわち「ROYAL FLA G」の冒頭の「R」と「Reebok」の冒頭の「R」の文字の大きさを比べると, 前者は後者の10分の1程度の大きさしかなく,かつ細い文字で表され,しかも,\nゴシック体という一般的な書体であるから,その外観上,「ROYAL FLA G」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているというこ\nとはできない。
ウ また,「ROYAL FLAG」という一連の語は,既成語として辞書に掲 載されているものではないが,「ROYAL」及び「FLAG」は,我が国にお ける英語の普及率に照らせば,いずれも一般的な英単語であって,格別のものでは ないこと,「ロイヤル(royal)」が国語辞典に掲載されているだけでなく (甲50),これを付した複合語(例えば,「ロイヤル・ウェディング(roya l wedding)」,「ロイヤル・スマイル(royal smile)」, 「ロイヤル・ファミリー(Royal Family)」,「ロイヤルブルー(r oyal blue)」,「ロイヤル・ボックス(royal box)」,「ロ イヤル・ミルク・ティー(royal milk tea)」など)も,カタカナ ・外来語辞典等に数多く掲載されていること(甲51,52),「フラッグ(f lag)」が国語辞典に掲載されているだけでなく(甲35,41),これと他の 語との複合語(例えば,「チェッカー フラッグ(checker flag)」, 「チャンピオン フラッグ(champion flag)」,「ナショナル フ ラッグ(national flag)」,「ナショナル フラッグ キャリアー (national flag carrier)」,「フラッグ・ショップ(f lag shop)」など)も,外来語辞典等に複数掲載されていること(甲37 〜40,44),「ROYAL」又は「FLAG」の英単語を含む商標登録も数 多く存在すること(甲56〜59)等に照らせば,一般的な英単語をつないだもの にすぎないというべきである。そして,「ROYAL FLAG」の文字部分は, それ自体が自他商品を識別する機能が全くないというわけではないものの,商品の\n出所識別標識として強く支配的な印象を与える「Reebok」の文字部分との対 比においては,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印 象を与えるものであるということはできず,本件全証拠によるも,このようにいえ るだけの事情を認めるに足りない。 エ したがって,本願商標の構成のうち「ROYAL FLAG」の文字部分だ けを抽出して,引用商標と比較して類否を判断することは相当ではない。

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こちらは「REEBOK ROYAL FLAG」と標準文字にて横一行で表した結合商標です。\n

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平成27(行ケ)10096  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年1月13日  知的財産高等裁判所

 特許庁の審査基準では、備考類似の商品役務については、第三者から申立があった場合に、判断されます。「プログラムの提供等」と「プログラム」が類似関係にあると判決も認めました。
 本件において,引用商標の指定商品「電子応用機械器具及びその部品」には,「電 子計算機用プログラム」が含まれるところ,遅くとも本件商標の出願時には,電子 計算機用プログラムは,記録媒体に記録された電子計算機用プログラムとして店頭 にて販売されていたのみならず,インターネットを通じたダウンロードにより流通 されており,さらには,インターネット等の通信回線を通じ,サーバ上に保管され た電子計算機用プログラムを使用させる役務として提供されていたものと認められ る(甲132)。 一方,本件商標の指定役務中「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プロ グラムの提供等」の役務で提供される内容は,いずれも「電子計算機用プログラム」 であるから,商品「電子計算機用プログラム」の製造・販売者がかかる役務の提供 を行うことも少なくないものと考えられる。また,商品「電子計算機用プログラム」 の需要者と,役務「電子計算機用プログラムの提供」の需要者は,いずれも,コン ピュータ等を用いて電子計算機用プログラムを使用する者であるから,共通すると いえる。さらに,上記認定のとおり,電子計算機用プログラム自体の流通と,電子 計算機用プログラムの提供とは,共にインターネット等の通信回線を通じて行われ ることもあると解されるから,取引形態も共通する。そして,これらの事情は,電 子計算機用プログラムの用途の内容,例えば,ウェブログの運用管理,オンライン によるブログ作成,インターネット上の情報閲覧などに限られるか否かによって異 なるものとは認められない。 したがって,商品「電子計算機用プログラム」と役務「ウェブログの運用管理の ための電子計算機用プログラムの提供等」とに同一又は類似の商標を使用する場合 は,同一営業主の製造若しくは販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそ れがあると認められる関係があるといえる。
(2) これに対して,原告は,引用商標の指定商品「電子応用機械器具及びその 部品」に含まれる「電子計算機用プログラム」はあくまでも電子応用機械器具の部 品としてのプログラムに限られるから,ウェブサイト上でのコンピュータプログラ ムの提供などとは類似しない,と主張する。 しかし,仮に,特定分野の電子計算機用プログラムが商品としてのみ流通してお り,ウェブサイト上などでは提供されてはいないという状況があったとしても,一 般的には,前記認定のとおり,電子計算機用プログラムが,インターネット等を通 じてダウンロードにより流通されると同時に,サーバ上に保管された電子計算機用 プログラムをインターネット等の通信回線を通じて使用させる役務として提供され ていたものと認められる。商品としてのみ流通している電子計算機用プログラムと, ウェブサイト上などでも電子計算機用プログラムが提供されている場合とで,その 製造・販売・提供者や商品・役務の内容,それぞれの需要者が異なると認めるに足 りる証拠はない。したがって,商品「電子計算機用プログラム」と役務「ウェブロ グの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供等」とに同一又は類似の商標 を使用する場合は,同一営業主の製造若しくは販売又は提供に係る商品又は役務と 誤認されるおそれがあると認められる関係があるといえる。

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平成27(行ケ)10084  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年12月24日  知的財産高等裁判所

 我が国おいて周知か否かが争われました。知財高裁は、「周知である」とした審決を取り消しました。
 商標法4条1項10号にいう「広く認識されている」とは,業務に係る商品等と これと競合する商品等とを合わせた市場において,その需要者又は取引者として想 定される者に対して,当該業務に係る商品等の出所が周知されていることであり, その周知の程度は,全国的に知られているまでの必要性はないものの,通常,一地 方,すなわち,一県の全域及び隣接の数県を含む程度の地理的範囲で知られている 必要があると解される。 ところで,前記第3の1及び第4の1によれば,本訴当事者間においては,本件 電子瞬間湯沸器の需要者又は取引者として想定すべき者は,電気を熱源とする瞬間 湯沸器の需要者又は取引者に限られるものではなく,ガスを熱源とするものも含む 家庭用の壁掛型の瞬間湯沸器全体の需要者又は取引者であることで争いがないとこ ろ,電気を熱源とする瞬間湯沸器とガスを熱源とする瞬間湯沸器とは,同じ用途に 使用され,熱源の相違によって利用者が異なるとする事情は認められないから,上 記当事者の主張のとおり解すべきものである。また,本件電子瞬間湯沸器が特定の 地方で集中的に又は専属的に販売されるものであるとする事情はないから,引用商 標が,全国のいずれかの地域において,上記に説示した地理的範囲において周知で あるか否かを考慮することになる。 イ 検討 そこで,上記を前提に検討するところ,上記(1)の認定のとおり,被告が本件電子 瞬間湯沸器の販売を開始したと認められる平成7年5月から,本件商標の登録査定 がされた平成17年8月までの間においては,1)被告が,自ら引用商標と共に本件 電子瞬間湯沸器の宣伝広告をしたのは,わずかに2回であること,2)引用商標と共 に本件電子瞬間湯沸器が新聞・雑誌及びテレビ放送に取り上げられたことは8回で あって,必ずしも多数といえないばかりか,それらは,平成6年〜平成9年と平成 14年〜平成16年の2つに分かれるなど,離散して取り上げられたにすぎないこ と,3)被告が引用商標と共に本件電子瞬間湯沸器の実演展示をしたことは31回あ るものの,これは,年平均では約3回にすぎず,その場所もおおむね西日本各地に 散在していること,4)被告による当該期間における本件瞬間湯沸器の販売台数は, 全く明らかにされておらず,新聞記事等から推測される販売台数は年間数百台程度 であり((1)エ1)は,被告の取引先の社内報であり,客観的裏付けを欠くものと解さ れる。),需要者又は取引者の範囲を家庭用の壁掛型の瞬間湯沸器の需要者又は取引 者とした場合,一見して僅少であること(なお,本件電子瞬間湯沸器には,「Eem aX」との引用商標と類似する標章が付されていたことは推認できる。),また,そ の納入先も全国に散在しているとみられ,特定の傾向はないこと,5)被告により開 示された広告宣伝費及び展示会費は,引用商標を付した本件電子瞬間湯沸器に係る 費用に限定されない会社全体としての宣伝広告費及び展示会費である上,金額も, 前者は百万円台,後者は百万円以下が多く,壁掛型瞬間湯沸器という全国的な市場 において需要者又は取引者に印象を残すための費用としては,明らかに少ないもの であること,以上の事実を導くことができる。 そうすると,本件証拠上,被告自身による引用商標に関する宣伝広告等は活発と はいえない上,新聞・雑誌等によりこれが報道された機会も少ないと認められる一 方,引用商標を付した本件電子瞬間湯沸器の販売台数等は明らかではなく,全国的 規模の市場に対する販売実績は極めて少ないものと推測される。このような宣伝広 告及び販売実績等を考慮すると,家庭用の壁掛型の瞬間湯沸器又は電気を熱源とす る同瞬間湯沸器の市場規模を子細に確定するまでもなく,いずれの引用商標も,本 件商標の登録査定時において周知性を有していたとは認め難い。なお,被告が自社 ホームページで宣伝活動をしたことは,ホームページを開設することが誰でも直ち に行える以上,それのみで周知性を裏付けるものとはならない。そのほか被告のる る主張するところも,採用することはできず,上記適示した証拠以外の証拠も,上 記認定を左右するものではない。

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◆関連事件です。平成27(行ケ)10083

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平成27(行ケ)10111  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年11月19日  知的財産高等裁判所

 審決は、LLが重なり表示されている部分について、Lと認識されるとして先願と類似すると判断しましたが、知財高裁は、当該部分は、LLと認識するとして、審決を取り消しました。判決の最後に本件商標が添付されています。
 ・・・本願上段中央文字についても,その2本のL字状の線から成る形態と相まって,下段の文字部分の「Life」,「Learning」の各頭文字「L」,「L」を連想させることに鑑みると,下段の文字部分は,見る者に,あたかも上段の文字部分のルビとして付さ れたものという印象を与えるということができる。以上に加え,複数の単語から構成される英語の熟語や名称については,その略称として,各単語の頭文字の大文字を並べたものを用いることが多いことに鑑みると,上段の文字部分は,下段の文字部分を構\成する各英単語の頭文字である「G」「L」「L」「C」を意味するものとして認識されるというべきである。

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平成27(行ケ)10074  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年10月29日  知的財産高等裁判所

 商標「養命青汁」が,「養命酒」と出所混同生ずるか(4条1項15号)が争われました。知財高裁は、混同するとした審決を維持しました。
 引用商標の外観は,前記第2,1のとおり,「養命酒」を漢字で横書きにしたやや デザイン化された毛筆体から成るものであるが,一語一語は同じ大きさの同一書体 である。この構成中の「酒」は,普通名称としての酒(薬用のものを含む。)を示す\nものとして認識され,この「酒」部分の自他商品の出所識別力は乏しく,出所識別 標識として支配的な印象を与えるものではない。一方,引用商標中の「養命」の部 分は,その漢字の意義から,「命を養う」との意味合いを生じさせるものであり,「養 命酒」が薬用酒の中でも極めて著名なブランドとして通用していたことに照らすと, 引用商標中の「養命」部分は,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印 象を与えるものと認められる。そうすると,引用商標が,「養命酒」として著名であ って,「養命」として著名性を獲得しているものでないとしても,引用商標が一連一 体の「養命酒」(ヨウメイシュ)としてのみ観念されるとはいえず,「養命」部分を 基幹部分として認識するものと認められる。したがって,「ヨウメイシュ」のほかに 「ヨウメイ」との称呼も生じる。 他方,本件商標について見ると,本件商標は,漢字横書きの標準文字から成るも のである。「青汁」との語は,「緑色の生野菜をしぼった汁」(広辞苑第6版,株式会 社岩波新書)を意味する普通名称として親しまれたものであり,本件商標中の「青 汁」の部分は,指定商品である,野菜又は野菜及び茶を主原料とする液状の加工食 品,調理用野菜ジュース,飲料用野菜ジュースにおいて使用される際には,単に, 指定商品そのものを示す普通名称であると捉えられ,第5類の野菜を主原料とする 粉状,ゼリー状等の加工食品,サプリメントや,第29類の「乳製品,冷凍野菜…」 や,第32類の「ビール,清涼飲料,果実飲料…」等に用いられた場合には,品質 (原材料)を示すものと捉えられるのであるから,単なる普通名称,あるいは,商 品の品質,性状を示すにすぎないものであって,自他商品の出所識別力は乏しく, 出所識別標識として支配的な印象を与えるものではない。また,簡易迅速性を重ん ずる商品取引の実際においては,その商品に付された商標の一部分だけによって簡 略に呼称,観念することがあるから,本件商標においても,「養命」部分を呼称,観 念することもあり得るものである。 そうすると,本件商標は,「養命」の文字と商品の普通名称の文字によって構成さ\nれるものとして把握され,このような商標に接する取引者,需要者は,本件商標の 全体をもって取引に資するほか,前半の「養命」の文字部分に着目することが少な くない。したがって,「ヨウメイアオジル」のほか,「ヨウメイ」との称呼も生じる。 そうすると,本件商標と引用商標とは,その基幹部分である「養命」において, 外観上実質的に同一であり,称呼「ヨウメイ」においても同一の商標であるといえ る。そして,「養命」の観念においては,「養生」や「健康」を連想させる「命を養 う」との観念が生ずるほか,後記のとおり,被告商品と関連性のある指定商品に用 いられた場合には,極めて著名な薬用酒である「養命酒」と同一又は緊密な関係に ある営業主の業務に係る商品との観念も生ずるものと解される。 以上によれば,引用商標と本件商標は,冒頭の2文字を上記のとおり基幹部分と いえる「養命」が占める点で共通し,この冒頭の「養命」部分は,引用商標では3 文字の漢字のうち2文字,本件商標では4文字の漢字のうち,半分の2文字を占め る点で,看者に強い印象を与え,外観において近似した印象を与える。称呼につい ては,「ヨウメイ」部分の称呼が共通しているが,末尾に付された語は「シュ」と「ア オジル」と差異があるものであり,全体の称呼として,必ずしも類似するとはいえ ない。しかし,引用商標は「命を養う酒」,本件商標は「命を養う青汁」という観念 が生じ,両商標とも「命を養う」飲料のイメージで共通し,上記のとおり,極めて 著名な引用商標の基幹部分を含んでいることから,本件商標について,「養命酒」と 同一又は緊密な関係にある事業主の製造販売に係る青汁,又は,緑の野菜を原料と した飲料といった観念が生じ,観念においても近似するといえる。 したがって,引用商標と本件商標は,ある程度類似しているといえる。
(2) 本件商標の指定商品等には,野菜又は野菜及び茶を主原料とする液状の加 工食品,飲料用野菜ジュース,ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース などの飲料となるものが含まれる一方,被告商品は,薬草等を原料とする薬用酒で あり,健康志向の飲料という点において共通しており,また,本件商標の指定商品 のうちには青汁を原料とする加工品が含まれ,健康維持に関心のある者を需要者層 とするものであって,これらの商品は,薬局や,薬品を中心に雑貨などを取り扱う ドラッグストアにおいて取り扱われる商品であるから,取引者層を共通にするもの であって,本件商標の指定商品と被告商品とは密接な関係を有するといえる。 そして,これらの商品の購入者が,特別な専門的知識経験を有しない一般消費者 であることからすると,当該商品を購入するに際して払われる注意力は,さほど高 いものではない。 以上のとおり,本件商標は,引用商標の基幹部分である「養命」をその構成の一部\nに含むものであり,当該部分の自他商品識別機能が高いと認められる一方,「養命」\n部分の末尾に普通名称が付加されたにすぎないことに照らすと,前記のとおり,原 告が取引者及び需用者を被告商品と共通する本件商標を指定商品に使用した場合, これに接した取引者,需要者は,極めて高い著名性を有する「養命酒」の表示を連\n想し,「青汁」という飲料,原料に用いられる「養命青汁」が,著名な養命酒に配合 された生薬と同一の成分が含有されているなどの養命酒の姉妹商品として,被告の 出所に係るものと誤認するか,あるいは,当該商品が被告との間にいわゆる親子会 社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグル\nープに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され,商品の出所に つき誤認を生じさせるものと認められる。

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◆関連案件です。平成27(行ケ)10073

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平成27(行ケ)10064  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年9月29日  知的財産高等裁判所

 商標は「Kami No Suna」(第21類「愛玩動物用排泄物処理材」)について、先登録商標「紙の砂」と類似するとした審決が維持されました。
 ・・・商品の原材料の一つとして用いられている「紙」の語,格助詞の「の」及び商品の性状を比喩的に表した「砂」の語を容易に連想,想起し,その構\成全体をもって,「紙の砂」の日本語の音を欧文字を用いてローマ字表記してなるものと理解,認識するといえる。\n

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平成27(行ケ)10025  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年9月15日  知的財産高等裁判所

 商4条1項15号違反なしとした審決が取り消されました。理由は「赤帽」が著名であることによりただ乗りやその希釈化を招くという結果を生じ兼ねないというものです。
 他方,上記認定のとおり,原告の前身団体が,昭和50年5月12日か ら,「赤帽」の標章を貨物軽自動車に付し,運送事業を開始し,昭和51年7月には, 赤帽軽自動車運送共同組合を設立し,その後,全国の京都府を含む各都道府県ごと に,会員組合を設立した上で,昭和53年には各会員組合を連合会組織にして原告 が成立し,その組合員に運送業のノウハウを提供する一方,「赤帽」の文字よりなる 商標を会員組合員の貨物自動車運送事業のサービスマークとして使用することを許 諾する方式の営業を行ってきており,本件商標出願前である平成19年12月には, 原告の組合員数は約1万5000名,車両台数は1万8000台となり,平成22 年8月ころ以降,組合員数1万3000名程度,車両台数1万5000台程度とな った。また,近年においては,原告は,「赤帽」商標の外に,平仮名の「あかぼう」, キャラクターの「あかぼうくん」及び欧文字の「Akabou」をデザイン化した 商標も用いているが,原告ないし原告の営業を簡略に表示する場合には「赤帽」の\n語が用いられ(甲30ないし34),原告の組合員の屋号には「赤帽」の語が冠され るのが通常である。そうすると,「赤帽」商標は,原告の営業を示すものとして,我 が国の貨物自動車及び軽自動車等による輸送の役務において,その取引者及び需要 者の間に広く認識されているものであって,周知著名性の程度が高い表示である。\nもっとも,「赤帽」の語は,造語ではなく,赤い帽子又は駅において乗降客の荷物 を運ぶ人の意味があり,駅において乗降客の荷物を運ぶ人の意味は,本件商標の指 定役務である貨物運送業と関連するといえるから,「赤帽」商標の独創性の程度は, 造語による商標に比して,低いとも考えられる。しかしながら,駅において乗降客 の荷物を運ぶ人を「赤帽」と称することがほとんど見られなくなった現在では,前 記認定の事実に照らせば,「赤帽」といえば駅において乗降客の荷物を運ぶ人より原 告を想起すると考えられるから,「赤帽」の語が,本件商標の指定役務との関係で識 別力が低いとはいえない。そうすると,本件商標の本号該当性の判断をする上で, 「赤帽」商標の独創性の程度が低いことを重視するのは相当でないというべきであ る。
ウ 本件商標を構成する「赤帽」の語以外の部分のうち,「京都」は,地名と\nしての京都府や京都市との観念を生じ,「舞妓図形」及び「舞妓マークの」は,京都 の「舞妓さん」を想起させるものである。そして,原告を構成する組合は,京都府\n にも存在する。 さらに,「赤帽」商標の周知著名性の程度の高さや,本件商標と「赤帽」商標とに おける役務の同一性並びに取引者及び需要者の共通性に照らすと,本件商標が指定 役務に使用されたときは,その構成中の「赤帽」部分がこれに接する取引者及び需\n要者の注意を特に強く引くであろうことは容易に予想できるのであって,本件商標\nからは,原告又は原告と緊密な関係にある営業主の業務に係る役務であるとの観念 も生ずるということができる。 この点につき,被告は,被告の顧客が,原告の営業と被告の営業とを混同したこ とはない旨を証明した「証明願」と題する文書を複数提出する(乙17ないし44)。 しかしながら,これら文書は,被告と取引関係のある顧客のみが被告の依頼に基づ いて提出したものであって,被告と特定の取引のない一般の顧客の認識を証明する ものではないから,上記認定を左右するに足りない。
(3) 以上のとおり,本件商標は,「赤帽」商標と同一の部分をその構成の一部\nに含む結合商標であって,その外観,称呼及び観念上,この同一の部分がその余の 部分から分離して認識され得るものであることに加え,「赤帽」商標の周知著名性の 程度が高く,しかも,本件商標の指定役務と「赤帽」商標の使用されている役務と が重複し,両者の取引者及び需要者も共通している。これらの事情を総合的に判断 すれば,本件商標は,これに接した取引者及び需要者に対し「赤帽」商標を連想さ せて役務の出所につき誤認を生じさせるものであり,その商標登録を維持する場合 には,「赤帽」商標の持つ顧客吸引力へのただ乗りやその希釈化を招くという結果を 生じ兼ねないと考えられる。そうすると,本件商標は,商標法4条1項15号にい う「混同を生ずるおそれがある商標」に当たると判断するのが相当であって,「赤帽」 商標の独創性の程度が造語による商標に比して低いことや,原告が「赤帽」商標以 外の標章も使用していることは,この判断を左右するものでないというべきである (最(二)判平成13年7月6日,裁判集民事202号599頁参照)。

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平成26(行ケ)10268  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年8月6日  知的財産高等裁判所

 審決は、「オルガノ」は薬品業界では、著名ではないと判断しました。これに対して、知財高裁は、水処理関連事業には薬品事業が伴うものと認識されていたとして、審決を取り消しました。
 (1) 原告は,昭和21年に株式会社日本オルガノ商会として設立され,同41 年に現商号である「オルガノ株式会社」に商号変更した。原告は,純水製造装置, 超純水製造装置,排水処理装置,発電所向けの復水脱塩装置,官公需向けの上下水 設備等の製造,納入,メンテナンスといった水処理装置事業と,水処理薬品,イオ ン交換樹脂,食品添加物等の製造,販売といった薬品事業を主に行っており(甲7, 8),本件商標の登録出願時(平成20年)には資本金が約82億円に達し,該期の 売上高は735億9200万円(そのうち,水処理装置事業が581億7200万 円,薬品事業が154億2000万円)に及ぶ(甲10)。特に,超純水製造装置は, 水処理事業の主力商品であり,市場シェアの3割以上を占める(甲15)。また,原 告は,多数の子会社,孫会社を有しており,これら子会社,孫会社のほとんどがそ の商号中に「オルガノ」の文字を含んでいる(甲7)。 原告発行にかかる総合カタログ及び個別商品カタログには,いずれの表紙にも,\n図形と「ORGANO」又は「オルガノ」の文字との組合せからなる標章が表示さ\nれている(甲30ないし79)。そして,かかる図形と「ORGANO」又は「オル ガノ」の文字とは,常に不可分一体のものとして認識し把握されるべき格段の理由 は見いだし難いから,それぞれが独立して出所識別標識としての機能を果たし得る\nものといえる。 昭和39年から現在に至るまで50年以上にわたり,新聞の題字広告(1面の新 聞紙名の真下に表示される広告)として「オルガノ」の文字からなる使用商標が,\n「総合水処理・イオン交換装置」,「純水装置・排水処理装置」,「水の高度処理全シ ステム」,「すべての水は資源」,「水のプラントメーカー」,「水のトータルエンジニ アリング」,「工場の節水支援 排水処理・水リサイクル技術」,「心と技で水の価値 を創造する」等の語句とともに定期的に掲載されており,近年では朝日新聞,読売 新聞及び日本経済新聞の3紙に掲載されている(甲80ないし83)。 図形と「ORGANO」又は「オルガノ」の文字との組合せからなる標章を表示\nした原告の企業広告が,昭和51年頃から平成24年頃まで,日本経済新聞,朝日 新聞等に不定期に掲載されているが,これらは,原告の薬品事業やその製造販売に 係る薬品に限定された広告ではなく,原告の水処理関連技術,装置ないしシステム や,原告の事業全体を抽象的に広告したものと認められる(甲89ないし91)。そ して,原告の広告は,日本工業新聞広告大賞(日本工業新聞),日本産業広告賞(日 刊工業新聞)を度々受賞している(甲86,87)。 原告については,各種雑誌,新聞等の記事に取り上げられ,多くは「オルガノ」 として紹介され,中には,図形と「ORGANO」又は「オルガノ」の文字との組 合せからなる標章を表示した広告が共に掲載されているものもある(甲99ないし\n127)。これらは主に,原告の水処理関連事業ないし装置に言及したものであるが, 超純水の製造には薬剤が使用される場合があるとされ(甲106),また,大手水処 理メーカーとして原告と並び称される栗田工業が,超純水システムを販売した顧客 とメンテナンスや薬品販売で長期関係を築くと紹介される(甲114)など,水処 理事業には薬品販売が伴うものであると認識されていたものと認められる。その他, 2007年に社団法人日本産業機械工業会主催の「第33回優秀環境装置表彰」に\nおいて,原告の電子部品洗浄用機能水製造装置が経済産業大臣賞を受賞し,そのこ\nとが新聞報道された(甲130ないし132)。 以上より,引用商標及び使用商標は,本件商標登録出願時には,原告及び原告の 事業ないし商品・役務を示すものとして相当程度周知となっており,原告の事業は 水処理関連事業であるが,これには薬品事業が伴うものと認識されていたものと認 められる。
(2) これに対して被告は,1)原告ないし原告の関連会社以外を権利者とする, 「オルガノ」を含む登録商標が複数存在し,「ORGANO GOLD」が原告の登 録商標を理由に拒絶通知されておらず,「オルガノ」を含む商標・商号は,ネット上 で原告ら以外も使用しており,これを「有機」の意味で使用しているものもあるこ と,2)特許庁電子図書館の日本国内周知著名商標に,「オルガノ」は含まれておらず, 「オルガノ」が防護標章登録されていないこと,3)原告の国内関連会社7社のうち, 3社の社名は「オルガノ」が付されておらず,原告は,「オルガノ」を含まない商標 も多く登録していること,4)最終需要者が日常触れないような製品を提供している 原告や被告は,衣料品などの会社に比べて周知度は低く,原告の薬品事業の年商を 凌駕する企業は多々あること,5)原告の水処理薬品は,水処理装置と相互に密接に 関連するから,水処理技術に秀でた原告の事業としては,薬品事業は周知著名とは いえないこと,6)新聞等の印刷物の記載は,興味のあるものしか目に入らないもの であるから原告の題字広告によって原告が周知著名であるとはいえないことから, 引用商標及び使用商標は周知著名商標ではないと主張する。 しかし,被告の上記各主張は,以下のとおり,いずれも理由がなく,前記(1)の証 拠に基づく認定事実を左右するに足りるものではない。すなわち,1)第三者の「オ ルガノ」を含む登録商標の存在,それらが原告の登録商標を理由に拒絶査定されて いないことや,第三者の「オルガノ」を含む商標・商号の使用は,それ自体では引 用商標及び使用商標の周知性を否定するものではなく,その周知性の有無は,前記 (1)に認定とおり,引用商標及び使用商標の具体的な使用の程度,内容に基づいて判 定されなければならない。また,「オルガノ」を「有機」の意味で使用することがあ るとしても,後に認定のとおり(第5の2(2)),本件商標登録出願時に「有機」の 意味での使用が一般に浸透していたとは認められない。2)特許庁電子図書館の日本 国内周知著名商標に「オルガノ」が含まれていないこと,及び,「オルガノ」が防護 標章登録されていないことは,それのみでは,引用商標の周知性を認定する妨げと はならない。3)原告は,引用商標ないし使用商標以外の商標も登録しており,また, 使用しているが,これらの登録商標の使用により,引用商標及び使用商標の周知性 が減殺されていると認めるに足る証拠はない。4)薬品事業や水処理事業を営む企業 が,幅広い需要者を有する衣料品などを取り扱う企業より,一般市民に対して相対 的に周知著名性が低くなることはあり得るが,このことが,当該企業の商品又は役 務の需要者に対する周知著名性を否定する根拠となるものではない。原告の年商を 上回る企業が多々あるとしても,原告の年商は相当程度大きく,また,このことが, 引用商標及び使用商標の周知性を否定する理由とはならない。5)原告の水処理事業 が著名であるとしても,上記認定のとおり,そのことにより,薬品事業の周知性が 否定されるものではない。6)印刷物について興味があるものしか目に入らないとす る主張は,印刷物を利用した宣伝効果を否定するものであって,採用できない。原 告による引用商標及び使用商標についての永年にわたる題字広告は,本件商標の指 定商品及び指定役務の取引者・需要者のみならず,一般の消費者に対しても一定の 宣伝効果を有したものと推認される。 (3) したがって,引用商標ないし使用商標は,原告の薬品事業を含む原告の事 業ないし商品・役務を示すものとして相当程度周知であったものと認められる。
2 取消事由1(商標法4条1項11号該当性についての判断の誤り)について (1) 上記のとおり,引用商標「オルガノ」は,本件商標登録出願当時,相当程 度周知であったものと認められる。 (2) 本件商標「オルガノサイエンス」は,「オルガノ」と「サイエンス」の結 合商標と認められるところ,その全体は,9字9音とやや冗長であること,後半の 「サイエンス」が科学を意味する言葉として一般に広く知られていること,前半の 「オルガノ」は,「有機の」を意味する「organo」の読みを表記したものと解\nされるものの,本件商標登録出願時の広辞苑に掲載されていない(甲133)など, 「サイエンス」に比べれば一般にその意味合いが十分浸透しているものとは考えら\nれないことが認められ,さらに,上述のような引用商標の周知性からすれば,本件 商標のうち「オルガノ」部分は,その指定商品及び指定役務の取引者,需要者に対 し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ, 他方,「サイエンス」は,一般に知られている「科学」を意味し,指定商品である化 合物,薬剤類との関係で,出所識別標識としての称呼,観念が生じにくいと認めら れる(最(二)判平成20年9月8日,裁判集民事228号561頁参照。)。した がって,本件商標については,前半の「オルガノ」部分がその要部と解すべきであ る。 (3) 本件商標の要部「オルガノ」と,引用商標とは,外観において類似し,称 呼を共通にし,一般には十分浸透しているとはいえないものの,いずれも「有機の」\nという観念を有しているものと認められる。したがって,両者は,類似していると 認められる。 (4) 本件商標の指定商品と,引用商標の指定商品とは,いずれも「化学剤」を 含んでいる点で共通している。
3 したがって,原告の主張する取消事由1は理由があるから,その余の点を判 断するまでもなく,原告の請求には理由がある。

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平成27(行ケ)10023  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年8月3日  知的財産高等裁判所

 周知商標の更新をライセンサーが失念した場合に、ライセンシーが同じ商標を登録しました。審決は4条1項7号(公序良俗)違反ではないとしましたが、知財高裁は、出願の目的が不当な利益を得ることにあるとして、公序良俗に反すると判断しました。
 以上のとおり,原告チェーン店のフランチャイジーである夢の郷社の 実質的経営者として,原告使用商標の法的な裏付けとなる旧A商標に係る 商標権を尊重し,原告及びAによる当該商標権の保有・管理を妨げてはな らない信義則上の義務を負う立場にある被告が,旧A商標の存続期間が満 了するタイミングに合わせて,原告に重大な営業上の不利益をもたらし得 る本件出願を行い,しかもそのことを原告側に秘匿し続けたという本件出 願に係る経緯からすれば,被告が本件出願を行った目的については,他に 合理的な説明がつかない限りは,何らかの不正な目的によるものであるこ とが強く疑われるというべきである。特に,本件出願が行われた平成23 年9月の直前である同年6月から8月ころの時期においては,原告と夢の 郷社との間で,三国ヶ丘店における本件食材代金等債務の支払遅延が問題 となっており,Aと被告との間でその回収に向けた話し合いが行われてい たことからすれば,被告がこのような原告との金銭的な交渉を想定し,自 己に有利な交渉材料とする目的で本件出願を行うことも,十分考え得るこ\nとといえる。
・・・・
エ まとめ
以上の諸事情を総合考慮すれば,被告による本件出願の目的が,被告 が主張するような第三者による原告使用商標に係る商標登録の取得を防止 するためなどではなく,原告との金銭的な交渉において本件出願又はこれ に基づく商標登録の事実を自己に有利な交渉材料として利用し不当な利益 を得ることにあったことは,優にこれを認定することができる。 (2) 公序良俗違反の有無について
以上のとおり,被告による本件出願は,原告チェーン店のフランチャイジ ーである夢の郷社の実質的経営者として,旧A商標に係る商標権を尊重し, 原告による当該商標権の保有・管理を妨げてはならない信義則上の義務を負 う立場にある被告が,旧A商標に係る商標権が存続期間満了により消滅する ことを奇貨として本件出願を行い,原告使用商標に係る商標権を自ら取得し, その事実を利用して原告との金銭的な交渉を自己に有利に進めることによっ て不当な利益を得ることを目的として行われたものということができる。 そして,このような本件出願の目的及び経緯に鑑みれば,被告による本件 出願は,原告との間の契約上の義務違反となるのみならず,適正な商道徳に 反し,著しく社会的妥当性を欠く行為というべきであり,これに基づいて被 告を権利者とする商標登録を認めることは,公正な取引秩序の維持の観点か らみても不相当であって,「商標を保護することにより,商標の使用をする 者の業務上の信用の維持を図り,もって産業の発達に寄与し,あわせて需要 者の利益を保護する」という商標法の目的(同法1条)にも反するというべ きである。 してみると,本件出願に係る本件商標は,本件出願の目的及び経緯に照ら し,商標法4条1項7号所定の「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれが ある商標」に該当するものといえる。

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◆関連事件です。平成27(行ケ)10022

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平成26(行ケ)10247  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年7月9日  知的財産高等裁判所

 審決は、地方の元気再生事業における名称について、一飲食店が取得するのは、公序良俗違反と判断し、知財高裁もこれを維持しました。
「激馬かなぎ」とする本願商標と激馬かなぎカレーの名称(「激馬かなぎカレー」) とを対比すれば,後者の要部が「激馬かなぎ」との部分と認められる以上,両者が 類似することは明らかであるところ,上記(1)に認定のとおり,1)本件事業は,地域 活性化という公益目的を有する事業の1つとして選定されたものであり,少なから ぬ公費が投入されたものであること,2)激馬かなぎカレーの開発及びその命名は, 本件事業の成果として得られたものであること,3)激馬かなぎカレーとその名称は, 新聞報道がされたほか,公的機関又は公益団体が,イベント,ガイドブック,ウェ ブサイトなどにおいて,五所川原市又は同市金木町区域の特産品として宣伝広告が され,広く知られるに至ったこと,4)原告は,激馬かなぎカレーを提供する店舗を 経営するものであり,上記広報活動でも,激馬かなぎカレーを提供する店として紹 介され,その便益を十分に受けていること,のみならず,原告は,激馬かなぎカレ\nーが,五所川原市金城町区域の特産品として開発されたことを十分に知っており,\nその上で,本願商標の登録出願をした者であること,5)原告は,別件商標について, かなぎ元気倶楽部に対し,有償の通常使用権を設定することを主張したことが認め られる。 そうであれば,上記認定事実からみて,原告は,五所川原市金木町区域の活性化 を図るという公益的な施策に便乗して,公費の投入や公的機関等の広報活動によっ て広く知られるに至った地方特産品との位置付けである「激馬かなぎカレー」の標 章につき,そこから得られる利益の独占を図ろうとする者と同視され,本願商標は, 公正な競業秩序を害するものであって,公序良俗に反するものというべきである。

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平成26(行ケ)10266  商標登録取消審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年6月18日  知的財産高等裁判所

 審決は、商標「こんぴら製麺」が、「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」であるので、4条1項8号違反と認定しました。知財高裁はこの判断を維持しました。
 原告は,「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」は,「金刀比羅宮」又は「こん ぴらさん」であって,「こんぴら」は,「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」の略称, すなわち,俗称,通称,愛称にすぎないから,商標法4条1項8号の「他人の名称」 の「略称」に該当しない旨主張する。 しかし,前記1において述べたとおり,同号の趣旨からすれば,人の名称等の略 称が同号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するには,その略称が本人 を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準とすべきものである。 そして,商標法上「略称」を定義する規定はなく,一般的な意義に従うべきである ところ,略称とは,広辞苑第6版によれば「名前を省略して呼ぶこと。また省略し て呼ぶ名前。」(乙41)を指す。そうすると,「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」は, 「金刀比羅宮」のみに定まるものではなく,仮に,俗称,通称,愛称に該当するも のであっても,「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものとして一般に受け入れられて いる呼称については,略称に当てはまるものである。そして,前記1に述べたとお り,「こんぴら」は,「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものとして一般に受け入れ られているものである以上,「著名な略称」に該当する。したがって,原告の上記主 張は採用できない。
(2) 原告は,名称に地名を含む神社を省略する場合,必ず敬称を付して「こん ぴらさん」や「こんぴら様」のように使用するのが通常であり,敬称を付さない場 合には,単に地名を示すものと認識される旨主張する。 しかし,前記1のとおり,「こんぴら」の語は,多数の辞書,辞典において「金刀 比羅宮」を意味するものと説明されている上,「ことひらぐう【金刀比羅宮】」の見 出しの下に,「こんぴら。」(甲246)と記載されたものがあり,また,金刀比羅宮 の門前には,「こんぴら 参拝入口」との看板が掲げられる(乙22)など,「こん ぴらさん(様)」のように接尾語を使用せず,「こんぴら」との語のみで,「金刀比羅 宮」を指し示すことは明らかである。 しかも,地名としてではなく,宗教法人あるいは宗教団体・財産としての「金刀 比羅宮」を指し示す意味で「こんぴら」と用いられたと認められる例として,「こん ぴらの美」(乙15),「こんぴら展」(乙16,21),「こんぴらに里帰り」,「こん ぴら信仰」(乙17),「こんぴらの宝」(乙18),「こんぴら,行く年見る年『金刀 比羅宮 書院の美』あすから後期公開【大阪】」(乙19),「こんぴらのパリ展」(乙 20)がある。また,金刀比羅宮に参詣することを示して,「こんぴら参(まい)り」 (乙12,19,25〜29),「こんぴら詣で」(乙30〜33),「こんぴら参拝」 (乙34〜36),「こんぴら参詣」(乙37),「こんぴら門前町」(乙38)と用い る例が多数認められ,その他,辞書においても,「こんぴらまいり【金毘羅参】」,「こ んぴらまつり【金毘羅祭】」(乙5)など,地名としてではなく,「金刀比羅宮」を示 すものとして「こんぴら」が用いられることが明らかである。 そうすると,接尾語「さん」,「様(さま)」などを付さずに「こんぴら」と用いる 場合であっても,必ずしも地名を意味するものではなく,原告主張のように「こん ぴら」が地名を指す場合があるとしても,そのことは,「こんぴら」が「宗教法人金 刀比羅宮」の略称に該当することを排斥するものではない。
(3) 原告は,仮に,「こんぴら」の語が,「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すも のであるとしても,被告は,「こんぴら」の語が「宗教法人金刀比羅宮」のみを指し 示すことを何ら立証していないと主張する。 しかし,商標法4条1項8号は,「他人の名称」等について,その「他人」が「名 称」等について排他的な独占を有することを要件としておらず,同じ名称を複数人 が有する場合や,他の意味合いをも併有する場合においても,その該当性を否定す るものではない。本件で,例えば,「こんぴら」が「地名」のみしか認識し得ないた めに,宗教法人金刀比羅宮の「略称」であり得ないという場合であれば格別,本件 においてはそのような事情はなく,「こんぴら」は,「宗教法人金刀比羅宮」を指し 示すものとして一般に受け入れられていると認められるのであるから,原告の上記 主張は失当である。
なお,原告は,「こんぴら」が仮に「地名」だけでなく宗教法人「金刀比羅宮」を 表すとしても,2つの観念が混在する語であるから,どちらか一方の観念のみに限\n定して解釈するのは誤りであると主張するが,審決及び被告は,「こんぴら」が「宗 教法人金刀比羅宮」の略称に該当することを述べるのみであって,地名の観念が生 ずることを否定しているわけではなく,どちらか一方の観念のみに限定して解釈し たものではないから,原告の主張は,審決等を正解しないものであって,採用でき ない。

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◆関連事件です。平成26(行ケ)10267

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平成26(行ケ)10264  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年6月11日  知的財産高等裁判所

 商標「RUNE」と「René」が類似するかが争われました。知財高裁は非類似であるとした審決を維持しました。
 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきであり,しかも,その商品又は役務の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引の実情に基づいて判断すべきものである(前記最高裁昭和43年判決参照)。 原告は,三点観察システムについて,三点のうち一点で類似すると解される以上,類似商標と判断されるべきであるとして,最高裁昭和43年判決の判断基準を批難するが,原告が主張する判断基準は,商標法4条1項11号に係る商標の類否の判断基準としては,狭きに失するものであり,採用できない。 そこで,前記の観点から,本件商標と引用商標の類否について検討する。
・・・
本件商標と引用商標とは,いずれも「ルネ」の称呼を生じる場合がある点では共通である。 また,引用商標から「ルネ」の称呼を生じる場合,前記3(3)記載のとおり,引用商標から「ルネなる男の名」との観念が生じるといえるが,本件商標からは,前記2(3)記載のとおり,必ずしも特段の観念が生じるとはいえないから,本件商標と引用商標とは,観念において類似するとは認められない。 これに対し,外観については,本件商標と引用商標とが,ともに欧文字4文字を横一行に書してなり,語頭が「R」(大文字)から始まる点で共通するが,これに続く3文字は,本件商標では「UNE」であるのに対し,引用商標では「ené」であって,本件商標が全て大文字で表記されているのに対し,引用商標では全て小文字で表\記され,かつ,末尾の「e」の上にはアクセント記号が付されている点で相違しており,本件商標と引用商標とは,外観上明確に相違するといえる。 (2) そして,本件商標と引用商標とで共通する指定商品である「布製身の回り品」,「被服」及び「履物」の取引においては,取引者,需要者は,店頭販売,通信販売及びインターネットを介した販売において,商品の外観を見て購入するのが通常であり,その際に,商品,値札,カタログ,商品情報等に 付された商標の外観や製造販売元を見て商品の出所について相応の注意を払って購入することが多いと考えられ,取引者,需要者が商標の称呼のみをもって商品の出所を識別して商品を購入するとは考えにくい。 (3) 以上検討したところによれば,本件商標と引用商標とは,「ルネ」との称呼が同一である場合が生ずるものの,外観上明確に相違するものであること,観念において類似するとはいえないこと,前記(2)のような取引の実情を踏まえると,取引者,需要者が商品の出所を誤認混同するおそれがあるとはいえない。 したがって,本件商標が引用商標と類似する商標であるとは認められず,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないというべきである。
・・・
加えて,本件商標と引用商標とで共通する指定商品である「布製身の回り品」,「被服」及び「履物」の取引においては,取引者,需要者が商標の称呼のみをもって商品の出所を識別して商品を購入するとは考えにくいことは,前記(2)記載のとおりである。原告は,本件商標と引用商標とで比較すべき指定商品が同一である場合には,取引の実情を考慮するまでもないかのように主張するが,商標法4条1項11号に係る商標の類否を判断するに当たっては,取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきであり,しかも,取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引の実情に基づいて判断すべきものであることは,前記1記載のとおりである。 そうすると,本件商標と引用商標とは,「ルネ」との称呼が同一である場合が生ずるものの,外観上明確に相違するものであること,観念において類 似するとはいえないこと,共通の指定商品に係る取引の実情を踏まえると,取引者,需要者が商品の出所を誤認混同するおそれがあるとはいえないから,原告の上記主張は理由がない。

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平成25(行ケ)10011  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年5月14日  知的財産高等裁判所

 「DHC ディープクレンジングオイル」は周知であっても「ディープクレンジングオイル」は他社からの販売されていたので、周知性なしとした審決が維持されました。なお、被告は,答弁書その他の準備書面も提出しなかったので、(1)特許庁における手続の経緯等,(2)本件審決の内容の各事実は自白と認められたものの、法的評価は審決のままでした。
 前記(2)のとおり,原告は,平成7年12月に,「DHC ディープクレンジングオイル」という商品名の本件商品を,包装容器の上部に引用商標1を付して販売を開始して以降,通信販売,ホテル等への出荷,全国各地の小売店等で販売を継続し,販売数量については,平成7年12月から平成24年2月までの累計が7935万8050本であったこと,全国紙である日刊新聞への広告の掲載,女性向け雑誌への広告の掲載,原告の販売製品の愛用者向けの月刊会報誌への広告の掲載,新聞への折り込みチラシによる広告や街頭配布のチラシ広告,テレビコマーシャル,電車内の中吊り広告・広告用ステッカー,渋谷駅,名古屋駅及び梅田駅構内の広告等により,大量かつ継続的に本件商品の宣伝広告を行ない,平成11年以降平成21年までの間,継続的に新聞広告に多額の費用をかけ,殊に平成16年以降平成21年までの間のテレビコマーシャルについては,年度によっては数億円単位の広告費用をかけていること,化粧品業界における各化粧品メーカーのディープクレンジングオイルを含むクレンジングの販売について,原告は平成12年以降平成20年に至るまで販売実績及びシェアにおいて第1位であったこと,本件\n 商品は平成15年以降平成20年まで女性向け雑誌の読者が選ぶランキング等において,クレンジング部門で第1位に度々選ばれていることなど,原告による本件商品の販売実績及び宣伝広告実績並びにこれらを通じて得られた知名度によれば,本件商品の商品名を表す引用商標と社会通念上同一と認められる「DEEP CLEANSING OIL」及び「ディープクレンジングオイル」の各商標は,本件商品の販売開始以来,平成13年以降に他の多数の化粧品メーカーが相次いで「ディープクレンジングオイル」を製品名とし,又は製品名に含むクレンジングオイル商品を多数市場に投入するまでは,原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた(周知となっていた)といえる余地がある。
しかしながら,前記(3)のとおり,遅くとも平成13年2月頃から平成22年1月5日までの間に,本件商標及び引用商標に係る指定商品である「クレンジングオイル」を取り扱う化粧品業界において,「ディープクレンジングオイル」の語は,少なくとも他の11社の化粧品メーカーから13以上のブランドで,「主に毛穴の汚れを落としたり余分な角質を取り除いたりするクレンジングオイル」の製品名又は製品名に含まれる語として使用され,これら「ディープクレンジングオイル」の商標を使用したクレンジングオイル商品が市場に出回り続けている。しかも,このように「ディープクレンジングオイル」の商標を使用したクレンジングオイル商品が他の化粧品メーカーから販売され,多数,市場に出回ることについて,本件商標登録の出願時(平成21年11月6日)及び査定時(平成22年7月6日)に至るまで,原告から他の化粧品メーカーに対して,自己の権利を侵害するものとしてその使用の中止を求めたり,権利侵害である旨の警告をしたとの主張立証はなく,また,原告自ら商標登録出願をしたこともなかったのである。その結果,前記(2)ウのとおり,化粧品業界における原告を含めた各メーカーのクレンジングの販売実績及びシェアにおいて,平成17年頃までは原告の販売高は9 0億円前後であるものの,化粧品業界におけるシェアとしては20%に届かず,その後,平成18年以降は販売高及びシェアも漸減し,本件商標登録の査定がされた平成22年は,販売高が64億5000万円,化粧品業界におけるシェアも12.8%にすぎない。また,前記(1)のとおり,もともと「DEEP CLEANSING OIL」及び「ディープクレンジングオイル」は,その用語からして,「皮膚の深部又は深いところからきれいにするクレンジングオイル」という程度の意味合いを有する語として,取引者・需要者によって一般に認識され得るものであるから,上記のように多数の化粧品メーカーから「ディープクレンジングオイル」の商標を使用したクレンジングオイル商品が市場に出回ることにより,クレンジングオイルの取引者・需要者において,当該商標が原告の業務に係る商品を表示するものというよりも,「皮膚の深部又は深いところからきれいにするクレンジングオイル」という上記程度の意味合いを有する商品一般を指すものと認識するに至ることも自然なことというべきである。\nこのように,原告が平成7年12月に本件商品の販売を開始して以降,他の多数の化粧品メーカーが相次いで「ディープクレンジングオイル」を製品名とし,又は製品名に含むクレンジングオイル商品を多数市場に投入するまでは,「DEEP CLEANSING OIL」及び「ディープクレンジングオイル」の各商標は,原告の業務に係る商品を表示するものとして周知となっていたといえる余地があるものの,平成13年以降,多数の化粧品メーカーがクレンジングオイル市場に参入し,「ディープクレンジングオイル」を製品名又は製品名に含むクレンジングオイル商品が多数市場に出回り,これに対して原告から化粧品メーカーに対して,差止請求及び権利侵害の警告等をすることなく,また,同商標について商標登録出願をすることもなく推移することによって,本件商標登録の出願時(平成21年11月6日)及び査定時(平成22年7月6日)においては,「ディープクレンジングオイ\nル」及び「DEEP CLEANSING OIL」の各商標は,クレンジングオイルの取引者・需要者の間において,「皮膚の深部又は深いところからきれいにするクレンジングオイル」というクレンジングオイル商品の品質ないし用途を表示するものとして認識され使用されていたものというべく,そうすると,本件商標登録の出願時及び査定時においては,もはや,「ディープクレンジングオイル」又は「DEEP CLEANSING OIL」の商標の使用された商品に接した取引者・需要者にとって,それが原告の業務に係る商品を表示するものとして周知されていたとまでいうことはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。\n

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平成26(行ケ)10217 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成27年2月26日 知的財産高等裁判所

 商標「Le Verger」が「Verger」と類似するとした審決が維持されました。
 本件商標は,別紙1商標目録記載のとおりの外観であって,1)オレンジ色の横長長方形の中央部分に,該長方形の長辺の約半分の直径の白色の真円を配し,2)該白色の真円内の中央部分に,「Le Verger」の欧文字を,オレンジ色の筆記体で,ほぼ該真円の直径と同じ幅の横書きにし, 3)該白色の真円内で,かつ該欧文字中の「ger」の文字の上部に,「ル・ヴェルジェ」の片仮名を,該欧文字に比して相当小さいオレンジ色の文字で横書きにして成るものである。 本件商標の構成態様に鑑みると,本件商標の各構\成部分(上記1)ないし2)の構成部分)は,それぞれこれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとまではいえない。
本件商標の構成部分のうち文字部分は,「Le Verger」の欧文字部分と「ル・ヴェルジェ」の片仮名部分とから成るが,「Le Verger」の欧文字が白色の真円内の中央部分に,真円の直径とほぼ同じ幅で表されているのに対し,「ル・ヴェルジェ」の片仮名は,該欧文字のうち「ger」の文字,すなわち,末尾3字の小文字の上部に,該小文字に比して相当小さな文字で表\されていることなど,「Le Verger」の欧文字部分と「ル・ヴェルジェ」の片仮名部分の文字の大きさやその配置に照らし,「Le Verger」の欧文字部分は,その外観上,見る者の注意を最も強く引く部分であると認められる。他方で,「ル・ヴェルジェ」の片仮名部分は,「Le Verger」の欧文字部分の読みがなを示したものと認められるものであり,その外観上,見る者の注意を引く部分であるとは認められない。 そして,「Le Verger」の欧文字部分は,「L」と「V」の文字は筆記体の大文字で表されているのに対し,それ以外の文字は小文字の筆記体で表\されていること,小文字の「e」と大文字の「V」との間にはやや間隔が空いていることに照らし,視覚上,「Le」と「Verger」との二語から成るものと看取され,しかも,「Le」は,フランス語では定冠詞であって,それ自体に格別の意味がないものであるから,取引者,需要者は,欧文字部分のうち「Verger」の文字部分を出所を示す識別標識として顕著な部分と認識し,これから生ずる称呼をもって取引に当 たる場合も少なくないものと推認し得る。 これに対し,本件商標の構成部分のうち上記1)の図形部分は,オレンジ色の横長長方形の中央部分に,該長方形の長辺の約半分の直径の白色の真円を配したというものであり,格別特徴のある図形ではないから,取引者,需要者に対して商品又は役務の出所を示す識別標識として機能する部分であるとは認められない。\nイ 以上によれば,取引者,需要者は,本件商標を常に一体的に認識するだけでなく,外観上,見る者の注意を最も強く引く部分であり,かつ,より強い出所識別力を有する「Verger」の文字部分をもって,商品又は役務の出所を示す識別標識としてとらえる場合も少なくないものと認められるから,「Verger」の文字部分が,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。 したがって,「Verger」の文字部分を本件商標の要部として抽出し,本件商標と引用商標との類否を判断することができるというべきである。

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平成26(行ケ)10112  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成26年12月8日  知的財産高等裁判所

 「軽井沢浅間高原ビール」が「軽井沢浅間ビール」と混同生ずる(商4条1項15号)とした審決が維持されました。当事者の一方が星野リゾートです。
 以上の認定事実からすると,平成9年に発売を開始した被告商品は,1)少なくとも,新聞の地方紙又は全国紙地方版にたびたび取り上げられたこと,2)地域雑誌や全国を販域とする雑誌にもたびたび紹介されていたこと,3)平成18年時点で,軽井沢を訪れた観光客の77%に認知されており,その観光客の29%が雑誌から被告商品を知ったこと,4)地ビールとしては相当量の販売実績があり,長野県内のみならず主として関東地方を中心に相応の販売実績があったことが認められる(なお,前記2(2)に認定のとおり,引用商標2は専ら文字として識別される商標であるから,刊行物に被告商品の名称のみが引用されている場合であっても,称呼のみならず,外観も直ちに引用商標2が想起される関係にあるといえる。)。 そうすると,被告商品に付された引用商標2は,被告ヤッホーの業務に係るビー ルを表示するものとして,遅くとも,本件商標登録出願前には,長野県内及び関東地方の取引者,需要者の間に広く認識されていたものといえ,その周知性は,本件商標の登録査定時においても継続していたものといえる。\n
・・・
原告商品は,全国で店頭販売されているものであるから,当然の結果,被告商品の主たる販売地域である軽井沢町及びその周辺地域において(甲7),取引者・需要者を共通にする。 のみならず,軽井沢は,関東地方からを中心に(約7〜8割)毎年800万人近くもの観光客が全国から訪れている日本有数の観光地であり(乙239,240),1)被告商品が長野県内で広く取り扱われていること(甲7,乙237),2)前記(2)アd(c)に認定のとおり,被告商品が1kℓ以上出荷された長野県外の業者の所在地が,福島県,群馬県,茨城県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,山梨県にわたっていること,3)被告ヤッホーが,被告商品をインターネットを利用して宣伝し,インターネットを通じて被告商品を販売していること(甲6,84,乙93,248)などにかんがみると,少なくとも,長野県内及び関東地方において,原告商品と被告商品とは,取引者・需要者を共通にしているといえる。
・・・
(4) 混同のおそれ
以上(1)〜(3)のとおり,1)本件商標と引用商標2とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても近似し,また,2)用商標2は,被告ヤッホーの業務に係るビールを表示するものとして,長野県内及び関東地方の取引者・需要者の間に広く認識されていたものといえ,さらに,3)本件商標の指定商品と被告商品とは同一であって,4)長野県内及び関東地方において,本件商標の指定商品と被告商品とは取引者・需要者を共通としているといえる。 以上の事情に照らせば,本件商標をその指定商品に使用するときは,その取引者・需要者において,同商品が被告ヤッホーの業務に係る商品と混同を生じるおそれがあるというべきである。

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平成26(行ケ)10094  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成26年10月29日  知的財産高等裁判所

 一部を構成する「peace」が抽出されて認識されるかが争われました。裁判所は、抽出可能\との審決を維持しました。
   ア(ア) 原告は,本願商標は,ピースマークを含む本願文字部分,図形部分及び黒,白,灰色の色彩を融合させた一体的なロゴマークとして看取されるものであり,構成全体が一体不可分の商品出所識別標識として認識,理解されるものであり,本願上下段文字部分が,強く支配的な印象を与えるものということはできない旨主張する。\n
・・・
b しかしながら,ロゴマークに該当する商標がすべて,外観上,常に一体不可分のものとして認識されるとは限らない。前述したとおり,本願商標においては,本願上段文字及び本願下段文字が,それぞれ,白抜き文字よりも相当に大きく,線も太く,本願商標の面積の半分近くを占めており,白抜き文字に比して強い存在感を醸し出すものといえる。また,本願上段文字及び本願下段文字は,図形部分の上に力強く浮き上がっている印象を与える。 以上に鑑みると,本願上下段文字部分は,本願商標のその余の構成部分である白抜き文字部分及び図形部分に比して,外観上,顕著なものであり,強く看者の注意を引くものといえることから,本願商標の構\成中,突出して強く支配的な印象を与えることは否定し難いというべきである。この結論は,図形部分の一部に黒色の影が付いており,いわゆるシャドウ体(影を付けて立体的な表現を取ったもの〔甲40〕)が用いられていることなど原告指摘の点を考慮しても,左右されるものではない。\nしたがって,原告の前記主張は採用できない。 イ 原告は,「PEACE」の文字は,「平和」を意味する外来語「ピース」として一般に親しまれているものであり,商品の出所識別標識として格別に強い印象を与えるものではない旨主張する。 しかしながら,出所識別力の有無は,当該指定商品又は役務との関係において考えるべきであり,前記のとおり,本願商標中,本願上段文字部分の「PEACE」の文字から生じる称呼及び意味合いは,ありふれたものであるが,本願指定商品の品質等に関わるものではないことなどから,同商品については,一定の出所識別力を有するものと認められ,原告の上記主張は採用できない。
ウ(ア)a 原告は,白抜き文字部分につき,1)その地色及び配置から,看者の 視覚を瞬時にとらえられる顕著な存在といえること,2)我が国においては,「アイスコーヒー(ice coffee)」という呼び方が一般に親しまれており,これを「アイスト・コーヒー(iced coffee)」と呼ぶことはないことから,上記文字部分は,必ずしも本願指定商品の品質表示として直感されるものとはいえない旨主張する。\nb しかしながら,確かに,白抜き文字は,地色が白く,図形部分の中央辺りに存在するものの,前記のとおり,上記文字よりも相当に大きく,より太い黒線で書かれた本願上段文字と本願下段文字との間に挟み込まれるように配置されていることから,あまり目立つとはいえず,看過される可能性も否定しきれない。\n また,辞典類には,外来語である「アイスコーヒー」につき,「ice coffee」と表記するもの(甲41から甲43)があるものの,他方,後述するとおり,「ICED COFFEE」等の文字を「アイスコーヒー」という文字と併記するコーヒー飲料の宣伝広告も存在する。加えて,「iced」は,それ自体,「凍らせた」を意味する比較的平易な英単語であり,また,本願指定商品はコーヒーに関する飲料類であるから,白抜き文字,すなわち,「ICED」の文字に接した取引者,需要者は,直ちに上記英単語を想起し,冷たい飲料類を連想するものと推認できる。 以上によれば,白抜き文字部分は,本願指定商品の品質を表示するものとして理解されるといえ,原告の前記主張は採用できない。
(イ) また,原告は,仮に,白抜き文字部分が本願指定商品の品質表示として認識される場合があるとしても,本願指定商品が含まれる飲料及び食品の分野においては,商品の普通名称や品質表\示等に該当し,一般には出所識別力が弱いと考えられる文字部分についても,同文字部分を含めた構成文字全体が商標(製品名)として機能\し,認識されている例が多く見受けられ,殊更に一部の文字部分を捨象したものが商品出所識別標識として認識される場面は,想定し難く,この理は,本願商標についても当てはまる旨主張する。 しかしながら,原告が掲げる実例(甲134から甲144)を参照しても,本願商標のように,視覚上分離して看取され得るものであり,称呼及び観念においても,常に全体が一体不可分のものとして認識されるものとはいえない結合商標につき,外観上,文字の大きさ,配置等により他の構成部分に比して明らかに印象の弱い構\成部分まで含め,常にすべての構成部分が一体のものとして認識されるとは限らない。特に,後述するとおり,本願指定商品の分野における取引者,需要者には,広く一般の消費者も含まれており,また,簡易,迅速な取引が求められることに鑑みると,本願商標に接する取引者,需要者は,その構\成中,強く看者の注意を引く本願上下段文字部分又は本願上段文字部分をもって,取引に当たる場合も少なくないものというべきである。 以上によれば,原告の前記主張は,採用できない。
⑸ 小括
以上に鑑みると,本願商標に接する取引者,需要者は,本願上下段文字部分及び白抜き文字部分を常に一体的に認識するだけでなく,外観上,強く看者の注意を引く本願上下段文字部分,又は,そのうち出所識別力を有する本願上段文字部分をもって,商品の出所識別標識としてとらえる場合もあるものと認められ,したがって,本願上下段文字部分又は本願上段文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから,本願上下段文字部分又は本願上段文字部分を本願商標の要部として抽出し,他人の商標と比較して類否を判断することができるというべきである。

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平成26(行ケ)10122  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成26年10月27日  知的財産高等裁判所

「VIA」と「SOLUTIONS」の結合商標について、「VIA」が要部であると判断され、後願の「VIA」が拒絶した審決が維持されました。
 「VIA」の文字部分は,上段中央に太いゴシック体で大きく表わされているのに対し,「SOLUTIONS」の文字部分は,「VIA」の文字部分よりも低い位置にあり,同文字部分に比して,線が細く,小さい。また,「VIA」の文字部分は,引用図形と比べると,全体的に色が濃く,線も太い。以上の点から,引用商標を構\\成する構成部分のうち,外観上,「VIA」の文字部分が,単独で最も強く看者の注意を引くものと認められる。\n
・・・
「SOLUTIONS」の文字部分からは,その構成文字に相応した「ソ\\リューションズ」の称呼を生じ,その英単語の「SOLUTION」は,「問題解決又はその方法」を意味する(乙4)。そして,1)「現代用語の基礎知識」(平成25年1月自由国民社発行,乙5)には,「ソリューション〔solution〕1)解決(法)。問題解決。(中略)新しい情報システムやビジネスモデルによる企業の問題解決。」と記載されていること,2)「標準パソコン用語事典 最新2009〜2010年版」(平成21年株式会社秀和システム発行,乙6)には,「ソリューション solution 様々な問題解決の蓄積などから,考えられる問題点と,それに対する解決法をユーザーに提出し,実現すること。」と記載されていること,3)複数の企業が,自社の開発に係る医療関連のシステム等を紹介,宣伝する際,顧客の要望等に係る課題の解決手段を提供するという趣旨で,「ソリューション」又は英単語の「solution」を使用していること(乙7から乙9,乙16)が認められ,これらの事実によれば,上記英単語は,外来語として我が国の日常生活にかなり浸透しており,「SOLUTIONS」は,同英単語の語尾に「S」の文字を付した複数形を表すものとして,広く一般に認識されているものと認めることができる。c 引用図形については,称呼は生じず,また,それ自体としても,両引用文字部分の両方又はいずれか一方と組み合わせても,特に何かを連想させるものとはいえない。d なお,引用商標において,両引用文字部分及び引用図形を常に一体不可分なものと認識しなければならないような称呼上の理由及び意味合い上の関連性は見出せない。(イ) 出所識別力について本願商標の指定商品は,主として歯科用の医療器具であり(甲2),外科用の医療器具を主とする引用商標の指定商品(甲1)と同一又は類似の商品を含むものであるところ,前述したとおり,複数の企業が,自社の開発に係る医療関連のシステム等を紹介,宣伝する際,顧客の要望等に係る課題の解決手段を提供するという趣旨で「医療ソリューション」(乙7),「メディカルソ\\リューション」(乙8),「Solutions」(乙9),「血液管理ソリューション」(乙16)という用語を使っていることに鑑みれば,「SOLUTIONS」の文字部分は,本願商標の指定商品との関係においては,当該商品又はこれに関連する医療システム,医療機器を表\\したものにすぎないと理解され,出所識別力が弱いものといえる。他方,「VIA」の文字部分に係る称呼及び意味合いは,前記のとおりであるところ,いずれも上記指定商品の形状,性質に関わるものではなく,また,日常生活上使われることのない造語として印象的といえるから,上記文字部分は,「SOLUTIONS」の文字部分よりも,上記指定商品との関係における出所識別力を有するものということができる。ウ 小括以上に鑑みると,引用商標に接する取引者,需要者は,両引用文字部分を常に一体的に認識するだけでなく,外観上,単独で最も強く看者の注意を引き,かつ,両引用文字部分のうちより強い出所識別力を有する「VIA」の文字部分をもって,商品の出所識別標識としてとらえる場合もあるものと認められ,したがって,同文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから,同文字部分を引用商標の要部として抽出し,他人の商標と比較して商標の類否を判断することができるというべきである。

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平成26(行ケ)10092  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟  平成26年9月11日  知的財産高等裁判所

 審査段階では、「東京維新の会を本願の指定役務(第41類技芸・スポーツ又は知識の教授等)に使用した場合には,一私人である出願人が政治団体と何らかの関係があるが如く需要者が誤認をするおそれがあり,かつ,商取引の秩序を害するおそれがあるから,本願商標は,商標法4条1項7号に該当する」として拒絶されました。
出願人は審判を請求をしましたが、「東京維新の会」という地域政党が設立され、審判では4条1項6号違反を通知して、拒絶審決がなされました。出願人は、6号に該当するかは査定時であるべきとのして取り消しを求めました。知財高裁は、審決を維持しました。
 これを,本件についてみると,特許庁における手続の経緯は,次のとおりである。 本願に対して,審査官は起案日を平成24年5月10日,発送日を同月18日とする拒絶理由通知(甲2)を発した。その拒絶の理由は,東京維新の会を本願の指定役務(第41類技芸・スポーツ又は知識の教授等)に使用した場合には,一私人である出願人が政治団体と何らかの関係があるが如く需要者が誤認をするおそれがあり,かつ,商取引の秩序を害するおそれがあるから,本願商標は,商標法4条1項7号に該当するというものであった。同年8月16日起案,同月24日発送の拒絶査定における理由も同様であった(甲4)。 そこで,原告が不服審判を申し立てたところ,審判体は,平成25年4月9日を起案日,同月12日を発送日とする拒絶理由通知を発し(商標法55条の2,15条の2。甲6),拒絶の理由は,本願商標は商標法4条1項6号に該当するというものであった。これに対し,原告は,同年5月21日,意見書を提出したが(甲7),本件審決に至った。\nこの手続の経緯からみれば,審査官は商標法4条1項7号の拒絶理由通知を発していたのに対し,審判体は同条1項6号という拒絶査定の理由とは異なる新たな拒絶の理由を発見し,新たな拒絶理由通知を発した上で,異なる拒絶の理由に基づいて審決をしたものである。 そうすると,審査官においては商標法4条1項6号の拒絶理由の存否については全く判断をしておらず,審決において初めて同号の拒絶理由の存否について判断したものであるから,このような場合,審査官の拒絶査定において全く判断の対象とならなかった商標法4条1項6号の判断について,査定時を判断の基準時とする合理性はない。むしろ,同号について初めて特許庁としての判断が示された審判時をもって,判断の基準時とするのが合理的である。 そうすると,審査と拒絶査定不服審判とは続審の関係にあり,本件のように審判において新たな拒絶理由通知が発せられ,審査とは異なる拒絶理由について判断されることもあることを考慮すると,拒絶査定不服審判の審決における商標法4条1項6号の判断の基準時は審決時となるというべきである。本件において審決時を基 準時とすべきであるとした審決の判断に誤りはない。

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◆関連事件です。平成26(行ケ)10090
 

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平成25(行ケ)10298  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟  平成26年8月7日  知的財産高等裁判所

 アラビア語とカタカナの2段併記の商標について、カタカナ部分で類似するとした審決が維持されました。
 以上によれば,本願商標と引用商標1及び3ないし8は,いずれも同一ないし類似の称呼及び観念が生じるものである。そして,本願商標と引用商標1及び3ないし8の外観は類似するとまではいえないが,本願商標と引用商標8の外観は近似するし,引用商標1及び3ないし7は,いずれも本願商標の上段部分の欧文字表記と同じ称呼の片仮名又は欧文字表\示に変更した表記から成る商標又は同表\記部分が需要者の目を惹きやすい構成から成る商標であり,全体として,その書体に,本願商標との差異を取引者,需要者に特段印象づけるほどの著しい特徴があるものではないから,外観の差異は,称呼及び観念の同一性ないし類似性をしのぐものではない。\nしたがって,本願商標とこれらの引用商標とは,互いに商品の出所につき誤認混同が生じるおそれのある類似する商標に当たるものと認められる。 (2) 以上に対し,原告は,1)アラビア文字部分を含めた本願商標全体と引用商標とを比較すれば,両者が外観上相紛れるおそれは全くないし,両者の観念も著しく相違し,称呼における類似性を凌駕しているから,日本の銀座マギーに関連する引用商標と,外国発祥のブランドと認識される本願商標との間で出所混同のおそれが生じることは現実的にはあり得ない,2)アパレル業界における取引の実情として,称呼の一部又は全部が共通することは少なくないが,実際の需要者がこれらのブランドについてその出所を混同することはなく,需要者は,商品の外観上の差異や取扱商品の傾向の違い,需要者層の違いによって,個々のブランドを異なるものとして把握するということを考慮すれば,称呼が共通していることのみをもって需要者等が出所混同することはあり得ないと主張する。 しかし,1)については,本願商標においては,下段部分のアラビア文字が需要者の注意を惹く部分ということはできず,上段部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであることは前記のとおりであるから,アラビア文字部分を含めた本願商標全体と引用商標1及び3ないし8とが外観上相紛れるおそれが全くなく,称呼における類似性を凌駕している旨をいう原告の主張は理由がない。 また,原告は,引用商標のみから日本の銀座マギーとの観念が生じることを前提として,本願商標と引用商標との観念が相違する旨主張する。この点,前記3認定に係る取引の実情等によれば,引用商標の商標権者である株式会社銀座マギーのブランド名である「銀座マギー」やその略称である「maggy(マギー)」は,本願商標の査定時には,少なくともいわゆる熟年層世代の需要者には広く知られていたものと認められる。このような取引の実情等を考慮すると,「ギンザマギー」や「マギー」との称呼や,前記認定の観念が生じ得る引用商標3,4,7のみならず,「マギー」との称呼や前記認定の観念が生じる引用商標1,5,6,8も,いずれも「銀座マギー」あるいはその略称である「maggy(マギー)」ブランドを想起させる商標であるといえる。一方で,本願商標も,同じく「マギー」との称呼や前記認定の観念を生じさせるから,「銀座マギー」あるいはその略称である「maggy(マギー)」ブランドを想起させる商標であるといえる。そうすると,上記取引の実情等を考慮しても,本願商標とこれらの引用商標とは類似するものであり,出所識別標識として区別することは困難である。原告の主張は採用することができない。 また,2)については,称呼が同一又は類似である場合にも,商品の取引の実情によって,需要者等が出所の誤認混同を生じるおそれがない場合には類似性が否定されることは原告の主張するとおりであるけれども,前記3(1)認定の取引の実情のとおり,本願商標は,未だ日本において店舗における被服販売に一切利用されておらず,我が国においては,本願商標が特定の需要者層に向けて使用された事実や,需要者によって特定の被服の趣向や価格帯と関連付けて認識されているという事実は認められないし,仮に本願商標に係る若い女性向けのカジュアルファッションブランドを展開する予定であるとしても,株式会社銀座マギーにおいてもインターネット上において1,2万円前後の価格帯の女性向け商品を販売しており,双方の対象とする需要者層がまったく異なるとも認められない。そうすると,アパレル業界における需要者が商品を選択,購入する際に払う注意力を前提としても,称呼及び観念が同一ないし類似であり,外観が顕著に異なっているわけでもない本願商標について,引用商標1及び3ないし8との関係において,商品の出所の誤認混同を生じるおそれがないということはできない。したがって,この点についての原告の主張も採用することができない。\n(3) 以上によれば,本願商標は引用商標1及び3ないし8と類似する。そして,本願商標の指定商品と引用商標1及び3ないし8の指定商品又は指定役務とが類似することは当事者間に争いがないから,本願商標は,商標法4条1項11号に該当する。

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平成25(行ケ)10336 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年06月25日 知的財産高等裁判所

 判断自体は注目するようなものではないかもしれませんが、被告である特許庁長官に補助参加人がついてるというのが興味深いです。拒絶査定不服審判の審取に補助参加人がついたという判決は珍しいと思います。被告補助参加人はどうやってこの事件を知ったんでしょうか?、もしかしたら別途無効審判とかが提起されているのかもしれませんね。
第5 被告補助参加人の主張
1 引用商標の周知性に係る識別の対象について
(1) ラーメン店「三代目月見軒」の営業状況
ア 被告補助参加人がラーメン店「三代目月見軒」の経営に携わった経緯は,以下のとおりである。昭和33年に創業されたラーメン店「月見軒」が,二代目であるBの体調不良により20年余り休業した後,Dがレシピを受け継ぎ,平成5年頃,「三代目月見軒」という名称でラーメン店を再開した。同人は,長男である原告月見軒代表者と共に同店を経営してきたが,借金が増えて営業の継続が困難になった。他方,被告補助参加人代表\者は,平成15年5月16日に被告補助参加人を設立し,上記のとおりラーメン店「三代目月見軒」が経営難に陥っていたので,被告補助参加人において同年7月1日付けで同店の営業をDから譲り受けた。なお,甲3号証,すなわち,Dがアルコール離脱せん妄状態のために平成15年8月8日から入院治療を受けた旨が記載された証明書は,上記営業譲渡の当時においてDが常時せん妄状態で意思能力を欠いていたことを示すものではない。以後,現在に至るまで,被告補助参加人は,ラーメン店「三代目月見軒」の経営,広告・宣伝活動,物産展等デパートの催事への出展,お土産ラーメンの販売等の営業活動に継続的に従事し,自らが主体となって「三代目月見軒」の商標を使用しており,商域は日本全国に及ぶ。なお,被告補助参加人は,デパートにおける催事に関し,原告月見軒代表\者に対して催事手数料という名目で金員を支払っていたが,これは当該催事に備えた仕込み等の作業の対価である。イ ラーメン店「三代目月見軒」には,本店(札幌),札幌駅北口店,東京店及び平成17年出店の京都駅ビル店があり,本店,東京店及び京都駅ビル店は被告補助参加人の直営であるが,札幌駅北口店については原告アイズが営業に従事している。原告アイズが同店の営業に携わるようになった経緯は,以下のとおりであり,創業者一族からののれん分けによるものではない。すなわち,平成15年7月頃,被告補助参加人は,原告アイズの元代表者に対し,被告補助参加人による「三代目月見軒」営業の傘下に入ることを条件に,前述の営業譲渡により取得した「三代目月見軒」の商標及びレシピを使用してラーメン店を開業することを許諾した。その後,原告アイズの元代表\者は原告アイズを設立し,前記条件に従って札幌駅北口店を開業した。被告補助参加人は,開業に際して開店広告掲載の手続を行うとともに費用も負担し,また,原告アイズに生めんなどを卸していた。・・・

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平成25(行ケ)10322 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年06月18日 知的財産高等裁判所

 商標「Tivoli」が先行商標「チボリ」と類似するかが争われました。知財高裁は、類似するとした審決を維持しました。
 原告は,「Tivoli」の文字は一義的に「ティボリ」と称呼される旨を主張する。しかしながら,そもそも国語辞典にすら「Tivoli」が「チボリ」と称呼されることが記載されているほか(甲33),「Tibet(チベット)」「ticket(チケット)」「Timor(チモール)」「tin(チン〔すず〕)」「tip(チップ)」など一々枚挙するまでもなく,外来語において「Ti」又は「ti」を「チ」と読む例は多数あるのであり,我が国において,「Ti」又は「ti」を「ティ」と発音するか,「チ」と発音するか,いずれかを断定すべき合理的な根拠はない。したがって,少なくとも,「Tivoli」の文字が,一義的に「ティボリ」とのみ称呼されるといい得ないことは明らかである。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。以上から,「Tivoli」の文字から「チボリ」の称呼も生じるとした審決の認定には,誤りはない。
3 取消事由2−1(称呼の類似性判断の誤り)について
原告は,「Tivoli」の称呼である「ティボリ」と引用商標の「チボリ」との称呼が類似しない旨を主張する。上記2に認定のとおり,「Tivoli」が原告は,「Tivoli」の称呼である「ティボリ」と引用商標の「チボリ」との称呼が類似しない旨を主張する。上記2に認定のとおり,「Tivoli」が「チボリ」と称呼され得る以上,本件商標の要部である「Tivoli」と引用商標の「チボリ」は称呼を同一にするものであるから,上記主張は,両商標が称呼上類似するとの審決の結論を左右するものではないが,いずれにせよ,「ティ」の音は一音で発音され,かつ,「チ」と母音(イ)を同じくする近似音であるために,「ティボリ」と「チボリ」をそれぞれ一連に称呼するときは,その語調語感が互いに近似し,発音上は3文字分しかないごく短いものであるから,これらを互いに聴き誤るおそれがあることは明らかである。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。以上から,「Tivoli」の称呼である「ティボリ」と引用商標の「チボリ」との称呼が類似するとした審決の判断には,誤りはない。

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平成26(行ケ)10029 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年06月18日 知的財産高等裁判所 

 商標「粋」が、2段併記の「宝焼酎 粋」とは非類似と判断した審決が維持されました。
 上記イ認定事実によれば,一般に,焼酎を含めた酒類の商品には,漢字一文字の商品名や銘柄を有するものが多数存在し,また,焼酎を含めた酒類を取り扱う業界においては,商品取引において,商品名や銘柄を出所の識別標識として重視するものといい得る。しかしながら,原告が,引用商標を使用した焼酎の商品や「粋」との商品名で識別される焼酎の商品を実際に販売していたことを認めるに足りる証拠はない。加えて,上記イ認定事実によれば,原告の関連会社である宝酒造株式会社は,「宝焼酎」と冠した焼酎の商品については,取引者,需用者に対し,「宝焼酎「純」」,「極上〈宝焼酎〉」,「宝焼酎」,「特撰宝焼酎「マイルド」」と表示紹介していたのであり,これらの商品を,その商品名の一部である「純」,「」,あるいは,「マイルド」などと表\示紹介していたことを認めるに足りる証拠はない。したがって,原告又はその関連会社である宝酒造株式会社の取り扱う商品取引において,「宝焼酎」と冠した焼酎の商品に関し,「宝焼酎」以外の部分のみをその出所の識別標識として使用していたとの事情は認められない。
ウ 以上の検討を総合すると,まず,引用商標の構成中の「宝焼酎」の部分が,上記のとおり,焼酎を取り扱う業界において周知性を有し,取引者,需用者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるから,それとの対比において,「粋」の部分は,自他商品の識別標識としての機能\は弱いものといえる。そして,酒類については,漢字一字の商品が多数存在することが認められるが,「宝焼酎」を冠した焼酎の商品については,「宝焼酎」を冠して表示しており,「宝焼酎」以外の部分のみをその出所の識別標識として使用していたとの事情は認められないことからすると,引用商標の構\成中の「粋」の部分のみでは,出所の識別標識としての称呼,観念を生じることはないというべきである。
4 本件商標と引用商標との類否について
外観について
引用商標は,上段の「宝焼酎」と下段の「粋」とが全体としてまとまりのある外観を呈しており,これを全体として本件商標の「粋」と対比すると,両商標が外観上相違することは明白であるといえる。また,引用商標の「宝焼酎」の文字部分は,焼酎を取り扱う業界において,周知性を有し,取引者,需用者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であることに照らすと,引用商標に接した取引者,需用者は,上段の「宝焼酎」のみを記憶に留めることが考えられ,その場合には,引用商標の上段の「宝焼酎」と本件商標の「粋」とを対比することになるが,この場合にも両商標が外観上相違することは明白であるといえる。
称呼及び観念について
引用商標からは,その全体から「タカラショウチュウスイ」又は「タカラショウチュウイキ」という一連の称呼及び「宝焼酎粋」との観念が生じるほか,「宝焼酎」の部分から「タカラショウチュウ」という称呼及び「宝焼酎」との観念も生じ得る。これに対し,本件商標からは,「イキ」又は「スイ」の称呼を生じ,「粋」の観念を生じる。両商標は,「宝焼酎」の有無により,称呼及び観念上も相違するといえる。

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平成25(行ケ)10342 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年06月11日 知的財産高等裁判所 

「B:MING」と「LIFE STORE」が上下に記載された商標が分離解釈できるのかが争われました。知財高裁は、分離できるとした審決を維持しました。
 以上によれば,本願商標の上段部分である「B:MING」の文字と下段部分である「LIFE STORE」の文字は,少し離れた位置に配置され,青色と赤色という明確な色の違いがある上,その態様も直立と円弧状とで異なっているほか,書体も異なり,上段部分と下段部分には明らかな違いがあること,上段部分である「B:MING」は大きく表示されており見る者の注意を相当程度引く一方で,下段部分である「LIFE STORE」も十分認識できる大きさで,目立つ色,態様で表\示されていること,「B:MING」も「LIFE STORE」も造語であって観念的なつながりはなく,「B:MING」は特定の観念を生じないが,「LIFE STORE」は「生活の店」程度の観念を生じ,いずれも相当程度の識別力を有すると考えられること等に照らすと,上段部分である「B:MING」と下段部分である「LIFE STORE」を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているということはできない。そうすると,本願商標においては,上段部分である「B:MING」と下段部分である「LIFE STORE」は,分離して観察することが可能というべきである。\n

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平成25(行ケ)10345 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年05月21日 知的財産高等裁判所   

 「maximum」の文字部分は右に90度回転させて表され「COTTON」をその下部に横書きした商標から、「maximum」を分離解釈できるかが争われました。\n知財高裁は、分離するとした審決を維持しました。
 「COTTON」の文字部分は,「maximum」とほぼ同じ大きさで配されており,リボン状の図形内に配置されていることもあって,外観上は,目をひくものである。しかし,上記のとおり,「maximum」の文字部分が横書きの文字を右に90度回転させた横向きの状態で配されているのに対し,それ以外の部分は,通常の横書きで配されているため,その構成上,「maximum」の文字部分とそれ以外とは分離して看取されるものである。そして,「COTTON」の文字部分からは,「コットン」,「綿」,「木綿」との観念が生じ(乙4),その下の花実様の絵図部分も,「COTTON」の文字と合わせて見た場合,綿花を連想させる絵図であることから,これを本願指定商品である「木綿を含むティーシャツ,木綿を含むポロシャツ」に使用した場合,これらに接する取引者,需要者は,単に指定商品の材質である「木綿」(製品)を表\したものと認識することが一般的であると推測される。そうすると,「maximum」の文字部分は,「COTTON」の文字部分及び花実様の絵図部分とは,構成上も,その意味の上からも,分離して看取,把握され,本願商標に接した取引者,需要者は,上段に大きく記載された印象的な部分であり,自他識別機能\を有する部分である「maximum」の文字部分を強く意識することが多いものと認められ,この部分が,本願商標の要部をなすというべきである。したがって,本願商標は,「maximum」の文字部分が強く支配的な印象を与えるものとして,本願商標と引用商標との類否判断の際に,本願商標のうち該部分だけを引用商標と比較した審決の判断に誤りがあるとはいえない。

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平成25(行ケ)10233 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年03月26日 知的財産高等裁判所 

 商標「遠山の金さん」の登録が公序良俗に反するかが争われました。裁判所は、該当しないとした審決を維持しました。
 上記認定事実によれば,被告は,「遠山の金さん」という名称をタイトル名ないし主人公名として初めて使用した者とはいえないが,昭和25年以降,「遠山の金さん」と呼ばれる主人公が登場する映画を多数作成し,昭和45年以降は,同名のテレビ番組を長期間にわたって多数制作してきたものと認められ,「遠山の金さん」の呼称やイメージを一般大衆に広めることに一定の寄与をした立場にあるといえる。したがって,被告は,遠山景元と血縁関係を有する者の関連する会社や同人の生育地と地縁を有する団体に当たるものではないが,本件商標の登録出願を剽窃的に行ったものということはできない。
イ 「遠山の金さん」の利用状況と本件商標による影響
「遠山の金さん」という呼称自体は,被告以外の同業他社によりテレビドラマのタイトルや台詞の中で利用されるほか,歌舞伎や講談等においても台詞等で利用され,地方公共団体が遠山景元に関する史跡や文化財において同人を紹介する際に「遠山の金さん」を引き合いに出すことがあるのは,上記認定事実のとおりである。しかしながら,そもそも,「遠山の金さん」がテレビ番組のタイトル名ないし主人公名にすぎないことからすると,本件指定商品における本件商標の使用によって,「遠山景元」という歴史上の人物の名前を独占できるかという公益性のある社会的問題が生じる余地はなく,本件商標によって失われる公益は想定し難い。また,同業他社との関係でいえば,新たな時代劇の制作や放送は,本件指定商品の範囲外であり(商標法施行規則別表第38類,第41類参照),類似商品又は役務に当たるとも考えにくく,直ちに影響があるとはいえない上に,作品制作に関連して行われる,本件指定商品に属する物品の販売等に関する制約は,同業他社に対する経済的活動の制約にすぎず,あくまでも私的な影響にとどまるものといわざるを得ない。歌舞伎等における影響についても,遠山政談物の上演が本件指定商品との関係で当然に禁止されると解することは困難である(同第41類参照)。なお,原告らとの関係では,パチンコ遊技機における本件商標の使用の有無に関して紛争が生じているが,これは私的な領域に関するものであり,公益性と関連のないことは多言を要しない。以上のとおり,現状の「遠山の金さん」の使用状況にかんがみても,本件商標の出願及び使用によって,公益が損なわれることは想定し難いといえる。\n
ウ 本件出願の経緯,目的,理由
上記イのとおり,本件指定商品を前提とする本件商標の登録出願及び使用により公益性が損なわれるものでないということは,被告の登録出願の目的が,公益事業を不当に制約することにあったわけではないことをうかがわせるものといえる。また,被告が「遠山の金さん」シリーズの映画やテレビ番組の制作や配給をしてきたのは上記認定事実のとおりであって,「遠山の金さん」という語を商標登録出願することにより,形成してきたその信用や顧客吸引力を保護しようとすること自体は,商標制度の本質からして非難できるものでもない。なお,被告以外の同業他社も,「遠山の金さん」というタイトル名をつけた時代劇を制作しており原告と同様の立場であると認められ,「遠山の金さん」という文字を商標として登録出願する機会があったといえるから,かかる点においても,被告による本件商標の登録出願につき,先願主義の原則や公正な競争原理から見て,著しく不当と評価されるような側面は見出し難い。
エ 遺族の名誉感情,国民感情
本件商標「遠山の金さん」があくまでも遠山景元をモデルとして作り出された主人公名にすぎないことは,繰り返し述べてきたとおりであるから,そもそも遠山景元の遺族感情や同人に関する国民感情を問題にする余地はない(なお,仮にモデルとなった人物である遠山景元の遺族感情を問題とするとしても,本件においては,遠山景元の遺族の有無は明らかにされていない上に,遺族感情に関する証拠は何ら提出されていない。加えて,国民が「遠山の金さん」について庶民の味方であるヒーローというイメージを抱いているとしても,そのことが直ちに本件商標を被告が登録出願したことに関して反対する意向であることには結び付かないし,本件では被告の本件商標保持に関する国民感情に関する証拠は何ら提出されていない。)。
オ 本件商標の禁止権の範囲
被告が本件商標を登録したことによる法的,社会的影響については,公益的事業において歴史上実在した遠山景元を紹介するに当たって,通称として「遠山の金さん」の表現が併記されることがあるとしても,それは本件指定商品の範囲外で,類似する商品・役務に当たるともいえないから,公益的事業自体に支障が生じるとは考えにくい。確かに,本件商標が標準文字からなることや本件指定商品の種類からすると,遠山景元と関連のある公的機関・団体などが「遠山の金さん」という標章を付しておもちゃ・人形等の土産物や観光物品を作成することについては,一定の支障が生じるおそれは否定できないが,公益性ある文化事業に付随した営業行為に当然に公益性があるとはいえないし,上記のとおり,史跡での紹介等への利用自体は本件指定商品からすれば除外されており,加えて,本件指定商品に含まれる土産物や観光物品に「遠山景元」という歴史上の人物の名称を使用することまで制約されるわけではない。したがって,公益的事業等への影響は,限定的なものにとどまるというほかない。\n

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平成25(行ケ)10226 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年03月13日 知的財産高等裁判所

ゴルフクラブ「KAMUI」について、周知性が否定されました。特許庁は同一証拠ではないとして10号の無効理由ありと判断しましたが、裁判所は同一事実同一証拠に基づくとして、審決を取り消しました。理由は一事不再理の適用誤りです。侵害事件では、本件被告に先使用権が認められています。
 そうすると,無効審判請求においては,「同一の事実」とは,同一の無効理由に係る主張事実を指し,「同一の証拠」とは,当該主張事実を根拠づけるための実質的に同一の証拠を指すものと解するのが相当である。そして,同一の事実(同一の立証命題)を根拠づけるための証拠である以上,証拠方法が相違することは,直ちには,証拠の実質的同一性を否定する理由にはならないと解すべきである。このような理解は,平成23年法律第63号による特許法167条の改正により,確定審決の第三者効を廃止することとし,他方で当事者間(参加人を含む。)においては,紛争の一回的解決を実現させた趣旨に,最も良く合致するものというべきである。
・・・・
(3) 判断
ア 同一事実について
本件商標が商標法4条1項10号に該当するとの事項についての被告の主張事実は,被告が使用する商標は,本件商標登録の出願時には,被告がゴルフクラブに使用する商標として,日本国内の取引者・需要者に広く認識されており,その状態は本件商標の登録査定時においても継続していること,本件商標は被告が使用する商標と類似すること,本件商標の指定商品は被告の商標が使用されているゴルフクラブと類似することであり,その主張事実は,前審判及び本件審判において同一であると評価できる。なお,本件審判では,周知であるとの被告の主張に係る商標が,以下の1)ないし3)のいずれであるか必ずしも明確ではない。1)「KAMUI」単体商標のみ2)「KAMUI」単体商標及び「K∧MUI+くさび図形」商標3)1)又は2)に「KAMUIPRO」,「TYPHOONPRO」及び「KAMUITYPHOONPRO」の各文字からなる商標を含むしかし,本件審判において被告が周知であると主張する商標が上記のいずれであっても,それらは,前審判において判断の対象とした商標に含まれるというべきである。すなわち,1)「KAMUI」単体商標は,前審判における別紙前審判引用商標目録1,2及び4記載の商標に含まれる。2)「K∧MUI+くさび図形」商標は,前審判における別紙前審判引用商標目録4記載の商標に図形を付加した商標である。3)「KAMUIPRO」及び「KAMUI TYPHOONPRO」の各文字からなる商標について原告が周知であると主張する部分は,いずれも「KAMUI」部分であると合理的に解される(「TYPHOONPRO」の文字からなる商標は,本件審決の判断の当否に直接関連するものではない。)。以上によれば,前審判と本件審判とでは,被告が周知性を有すると主張する被告使用の商標は,互いに同一と評価できる。(なお,本件審決は,前審判における無効理由が商標法4条1項10号及び19号該当性であるのに対して,本件審判における無効理由が同項7号又は10号該当性であるから,前審判と本件審判とは「同一の事実」に基づく審判請求ではないと判断する。しかし,同項10号所定の無効理由の存否について判断した審決が確定した後に,それと異なる無効理由を追加さえすれば,同項10号所定の無効理由の存否について判断した審決の確定効がなくなると解する審決の判断が,誤った理解に基づくことは明らかである。)
イ 同一証拠について
前記のとおり,前審判と本件審判とでは,被告が使用する商標の周知性を裏付ける主張事実は,ほとんど同一であり,周知性を立証するための証拠は,そのほとんどが同一である。なお,本件審判では,前審判とは異なり,「被告の2000年版商品カタログ」(甲10),「カムイ社の出荷明細」(甲11−1−1ないし11−1−9),「カムイ社の平成15年度ないし平成18年度の決算報告書」(甲11−2ないし11−5),「使用プロ一覧表」(甲11−31)が,証拠として提出されている。そこで,上記各証拠の性質につき,念のため検討する(なお,本件審判で新たに提出された上記以外の証拠は,商標法4条1項10号該当性に関連するものではない。)。(ア) 「被告の2000年版商品カタログ」(甲10)前審判において,被告は,他のカタログ(甲53,54)を提出したが,前審決において,提出に係る当該カタログは作成年月日が確認できないとされたことから(甲112),本件審判において,作成年月日の確認ができるカタログを提出したと解される。(イ) 「カムイ社の出荷明細及び決算報告書」(甲11−1−1ないし11−1−9,11−2ないし11−5)前審判において,被告は,カムイ社が販売した被告ゴルフクラブの本数の表(甲11−1)を提出したが,前審決において,販売数の裏付けがないことなどから同表\に記載された本数が採用されなかったため,本件審判において,同表の信憑性を裏付けるために提出された証拠と解される。(ウ) 「使用プロ一覧表」(甲11−31)前審判において,被告は,使用プロ一覧表\(甲40)を提出したが,本件審判において,その形式を変更し,被告ゴルフクラブを使用するプロゴルファーの氏名等を追加記載したものを証拠として提出したと解される。上記によれば,本件審判で提出された上記各証拠は,前審決における被告の主張を排斥した判断に対し,同判断を蒸し返す趣旨で提出された証拠の範囲を超えるものではない。
ウ 小括
 以上によると,前審判と本件審判とでは,商標法4条1項10号違反の根拠として主張されている事実において同一であり,また,これを立証するために提出された証拠も実質的に同一であると評価できる。したがって,本件審判における本件商標が同項10号に該当することを理由とする無効審判請求は,前審決の確定効に反するものとして許されないというべきである。本件商標が同項10号に該当するとして本件商標登録が無効であるとした本件審決には,上記の点における誤りがある。なお,被告は,本件商標が同項7号に該当しないとした審決の判断に対して誤りがある旨を指摘する。しかし,この点については取消事由とされておらず,判断しない。

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◆侵害事件はこちらです。平成22(ワ)32483

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平成25(行ケ)10127 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟  平成26年02月05日 知的財産高等裁判所

 商標無効審判における一事不再理が争われました。裁判所は、一事不再理の原則に必ずしも反するものではないと判断しました。また、先頭文字Mを図案化してMとは認識できないとして非類似と判断しました。
 改正前特許法167条を準用した改正前商標法56条1項の趣旨は,商標権者における応訴の繰返しによる煩わしさを避けるとともに,訴訟経済の観点から蒸し返し請求を防止し,無効審判をする者の利益と商標権の安定を図る点にあるところ,本件では,本件審判請求の請求人である原告が第一次審判請求の請求人である明治製菓株式会社の承継人であり実質的に前件と当事者が同一であるという事実関係が認められるから,第三者による再度の審判請求の場合と比較してみると,相対的には,蒸し返し請求防止の要請がより重視され,事実や証拠の同一性についてある程度緩和して解釈されてもやむを得ないというべきである。そうすると,本件審判請求が改正前商標法56条1項に反しないものとして,新たな「証拠」に基づく適法な審判請求といえるためには,形式的に第一次無効審判請求で提出されたものと異なる証拠が提出されてさえいれば許されることとなるわけではなく,新たに提出された証拠が,実質的に見て,これまでの無効原因を基礎付ける事情以外の新たな事実関係を証明する価値を有する証拠といえる必要があるというべきである。以上を前提に本件につき検討するに,本件審判請求では,第一次審判請求で提出なされなかった甲7,8,23ないし27が新たに提出されているところ(弁論の全趣旨),それ以外の大半の証拠は共通しているといわざるを得ない。しかしながら,追加された証拠は,本件商標中の「『二つのだ円形をハート型に重ねた形状に図案化され』た部分」である本件図形がローマ字「M」と認定できるかに関わる証拠(甲7),被告が明治パン株式会社の新工場が設立されることを契機として,そこで使用する伝票や名刺,封筒などに記載される商標として本件商標をデザインし,登録出願したという本件商標の称呼に関わる証拠(甲8)や本件商標の実際の使用態様を明らかにする証拠(甲23ないし27)であるから,実質的には,第一次無効審判請求において商標法4条1項11号,同15号該当性を基礎付けていた事情とは異なる,新たな事実関係を証明する価値を有する証拠が提出されたと評価できるものといえる。したがって,本件証拠関係に鑑みれば,本件審判請求は一事不再理の原則に必ずしも反するものではないというべきであり,本件審決の判断は結論において正当である。被告の主位的な主張は理由がない。
・・・
本件商標は,オレンジ色に彩色した三つの半円をドームのように模した図形の下に,青色に彩色した二つのだ円形をハート型に重ねた本件図形と,その左側に同色に彩色した「eiji」の欧文字とを配した構成態様からなるが,伝票や名刺,封筒にマークとして使用することがあるものの,商品に直接付することはなく,これ自体に発音はない。本件商標を構\成する本件図形は,青色に彩色した二つのだ円形をハート型に重ねて表現した独創的なものと認識し,いずれかの字形を表\現したものかなどと推測して取引に当たるものともいい難く,本件商標からは直ちに「メイジ」の称呼を生じるものということはできない。本来的には発音はないが,強いていえば,普通の書体で表された「eiji」の文字部分から自然に「エイジ」の称呼が生じる。原告は,ローマ字「M」をハート型に図案化することは,図案化の態様として普通に用いられる手法の一つであると主張するが,原告提出の証拠によれば,東京メトロ(甲38)とエムハートツーリスト(甲39)の二例にすぎず,このことのみをもって,図案化の態様として普通に用いられる手法とはいえない。さらに,東京メトロの図形は,ウサギや猫などの動物の耳をモチーフにした図形にも見えるとことから,原告の主張のように,「M」や「ハート」を直ちに看取することはできず,甲37の3頁目の中段の「シンボルマーク」に関する説明書きによって,「メトロ(METRO)」の頭文字「M」をハート型に図案化したものと理解できる程度にすぎない。また,甲39の公報の【ウィーン分類(参考情報)】には,「27.5.1.13」以外にも複数の図形コードが複数付与されている。そうすると,原告が主張するように,当該図形商標から直ちに,ローマ字「M」をハート型に図案化することが,図案化の態様として普通に用いられる手法の一つであるということはできない。したがって,本件商標に接する取引者・需要者は,下段部分を一連の文字列であると理解するのが最も自然であるとはいえず,本件図形は「M」を図案化したものであると比較的容易に理解されることは決してない。

◆判決本文

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平成25(行ケ)10113 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年01月27日 知的財産高等裁判所

 商標「CST方式」と「CST」の類似が争われました。裁判所は、「方式」については識別力がないかあってもきわめて弱いので、「CST」という要部が抽出できるとした審決を維持しました。
 引用商標は,「CST方式」の文字を横書きして成るところ,構成中「CST」と「方式」の文字とは,書体が相違し,視覚上分離して看取し得るものであること,構\成前半の「CST」の欧文字が上記のとおり特定の観念を生じないのに対し,構成後半の「方式」の文字は,「一定の形式または手続」(広辞苑第6版),「〔何かをする上での〕決まった形式・やり方」(乙3)を意味する日常語で,何人も容易に意味を理解でき,コンピュータ関連分野では他の語と組み合わせた複合語が多く用いられ,複合語を形成した場合に「方式」の文字を省略してもよい場合もあること(乙4〜13)からすると,構\成前半の「CST」の欧文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるのに対し,構成後半の「方式」の文字部分は,自他商品の識別標識としての機能\を果たさないか,又はその機能が極めて弱く,引用商標の取引者・需要者は,構\成前半の「CST」の欧文字部分に着目し,当該文字部分をもって取引する場合も少なくないものということができる。したがって,引用商標は,「CST」の欧文字部分をもって要部と認めるのが相当である。そうすると,引用商標は,その全体から「シーエスティーホウシキ」の称呼を生じるほか,「CST」の欧文字部分から「シーエスティー」の称呼をも生じるということができる。

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平成25(行ケ)10165 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年12月18日 知的財産高等裁判所 

 本件商標は、「RAFFINE」、引用商標1は、「ら・フィネ」の文字を,下段に「LA・FINE」の文字を二段書きに配して成る商標、引用商標2は,「LA FINE」の文字と図形から成る商標、引用商標3は,上段に「LA・FINE」の文字を,下段に「ラ・フィネ」の文字を二段書きに配した商標でした。 裁判所は、引用商標と類似する(4条1項11号)とした審決を維持しました。
   引用商標を構成する語のうち,欧文字の「LA・FINE」及び「LAFINE」の部分については,イタリア語で,「la」が子音で始まる女性名詞単数の前に付けられる定冠詞であり,「fine」が「終わり,終点,最後,結果,結末」などを意味する女性名詞であるから(なお,男性名詞として用いられる場合,「目的,意図」などの意味で用いられる。以上につき,小学館「伊和中辞典」,白水社「新伊和辞典」参照),「その終わり,最後,結末」との意味を有することとなる。しかし,引用商標の「LA・FINE」ないし「LA FINE」は,イタリア語であるため,我が国において一般的に知られた語であるとはいえない。そのため,引用商標からは,特段の観念は生じない。もっとも,引用商標1の「ら・フィネ」の部分及び引用商標3の「ラ・フィネ」の部分については,これらに併記された「LA・FINE」の部分がイタリア語で「ラ・フィネ」と発音されることに照らすと,いずれも「LA・FINE」の部分の読みを表したものと解され,その結果,引用商標1及び引用商標3からは,「ラフィネ」という称呼が生じるということができる。かかる読みが併記されていない引用商標2についても,上記のイタリア語の称呼が生じ得るといえる。ただし,「la」の語がフランス語の定冠詞とも理解され,「fine」の語が英語で「みごとな,完成された」などの意味を有する(研究社「リーダーズ英和辞典」参照)ことからすると,これらの語を組み合わせた造語と捉えることもでき,この場合には,「ラファイン」という称呼も生じ得ると考えられる。\n3 本件商標と引用商標の類否について 以上を踏まえ,本件商標と引用商標とを比較すると,両者はいずれも「ラフィネ」の称呼を生じる点では同一であり,また,どちらも我が国において一般的に知られた語ではないため,必ずしも特段の観念が生じるとはいえず,観念上区別することは困難であると考えられる。一方,外観については,本件商標が「R」から始まる一続きの欧文字を一段書きにして成るものであるのに対し,引用商標は,欧文字部分については綴りが「L」から始まり「F」の重複がない上,「・」やスペースによって「LA」の部分と「FINE」の部分とに区分されている点で明確に相違するため,それぞれの欧文字の意味が不明であるとしても,両者は明らかに異なる語として認識される。また,引用商標1及び引用商標3については日本語の文字とともに二段書きにされ,引用商標2については文字部分の下に図形部分が存在するとの差異もある。このように,本件商標と引用商標との間には,外観上顕著な差異があり,取引者及び需要者が引用商標の外観から受ける視覚上の印象は本件商標のそれと明確に異なるものということができる。また,指定商品である化粧品の取引の実情については,取引者及び需要者は,店頭販売,通信販売,あるいはインターネットを介した化粧品の販売においては,商品の外観を見て購入するのが通常であり,その際に商品に付された商標の外観や製造販売元を見て商品の出所について相応の注意を払って購入することが多いと考えられる。また,化粧品については,既に商品自体ないしその出所等を認識している場合には,電話等による取引をすることが考えられるものの,この場合も,取引者及び需要者が商標の称呼のみをもって商品の出所を識別して商品を購入するとは考えにくい。上記のとおり,本件商標と引用商標とは,称呼が同一であるものの,外観上顕著な差異があることや指定商品に係る上記のような取引の実情を踏まえると,取引者及び需要者が商品の出所を誤認混同するおそれがあるとはいえないから,互いに類似するものということはできない。これと同旨の審決の判断に誤りはない。

◆判決本文

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◆平成25(行ケ)10065

◆平成25(行ケ)10167

◆平成25(行ケ)10044

◆平成25(行ケ)10042

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平成25(行ケ)10158 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年12月17日 知的財産高等裁判所

 商標「LADY GAGA」を指定商品「レコードなど」に使用する場合、識別性が無いとした審決が維持されました。出願人はアーチスト自身の会社ですので、4条1項8号は問題になっていません。
 以上によれば,「LADY GAGA」(レディ(ー)・ガガ)は,アメリカ合衆国出身の女性歌手として,我が国を含め世界的に広く知られており,「LADY GAGA」の欧文字からなる本願商標に接する者は,上記歌手名を表示したものと容易に認識することが認められる。そうすると,本願商標を,その指定商品中,本件商品である「レコード,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」に使用した場合,これに接する取引者・需要者は,当該商品に係る収録曲を歌唱する者,又は映像に出演し歌唱している者を表\示したもの,すなわち,その商品の品質(内容)を表示したものと認識するから,本願商標は,自他商品の識別標識としての機能\を果たし得ない。したがって,本願商標は,商標法3条1項3号に該当する。また,本願商標を,本件商品である「レコード,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」のうち「LADY GAGA」(レディ(ー)・ガガ)が歌唱しない品質(内容)の商品に使用した場合,「LADY GAGA」(レディ(ー)・ガガ)が歌唱しているとの誤解を与える可能性があり,商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。したがって,本願商標は,商標法4条1項16号に該当する。\n

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平成25(行ケ)10126 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年10月10日 知的財産高等裁判所

 商標「きょロッケ」は「ギョロッケ」は非類似した審決が維持されました。
 本件商標を一連・全体として見て,これを引用商標と対比すると,両者は外観が著しく異なることが明らかであり,本件商標は特定の観念が生じないものであるのに対し,引用商標は魚に関するものという観念が生ずるか,または特定の観念を生じないものであるから,両者は観念において相違するかあるいはこれを比較することができないものである。また,称呼は構成音及び構\成音数が明らかに相違し,一連に称呼した場合,両者は全く異なるといえる。次に,本件商標の要部たる「きょロッケ」の文字部分と引用商標とを対比すると,「きょロッケ」の文字部分と,引用商標とは,綴り,書体,色,上下2段に表示されているか否かなどの構\成が異なり,外観において相違する。また,「きょロッケ」の文字部分は特定の観念が生じないものであるのに対し,引用商標は魚に関するものという観念が生ずるか,または特定の観念を生じないものであるから,両者は観念において相違するかあるいはこれを比較することができないものである。もっとも,「きょロッケ」はその文字部分に相応する「きょろっけ」の称呼を生じ,引用商標は,その構成文字に相応する「ぎょろっけ」の称呼を生ずるものであるから,両者の称呼は,「きょ」と「ぎょ」において相違するだけであり,比較的近似するものであるといえる。しかし,語頭音である「きょ」と「ぎょ」の称呼上の差異は清音と濁音の違いであり,比較的容易に認識できるものであるといえる。さらに,取引の実情として,外観や観念よりも称呼によって商品の出所を識別しているなど,称呼上の識別性が外観及び観念上の識別性を上回っているような特段の事情も認められない。そうすると,本件商標の要部たる「きょロッケ」の文字部分と引用商標とは,外観が異なる上,観念については相違するかまたは比較することができないものであって,称呼においても上記の程度に区別できるから,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合判断すると,両商標を取り違えて商品の出所の誤認混同を生ずるおそれは考えられず,両者は類似しないものというべきである。\n

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平成25(行ケ)10122 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年09月24日 知的財産高等裁判所

 商標法4条1項10号に該当するとした拒絶審決が維持されました。
 上記(1)ア,イによれば,1)引用商標2を付して電磁的方法により広告が提供されていたファベ社製の枕は,本願商標出願日前から,相当数のウェブサイトで高い人気を得た売れ筋商品として取り上げられていたことが認められ,これによれば,引用商標2は,これらウェブサイトを通じて多数の需要者の目に触れられたものと推認され,また,2)引用商標1を付された同枕は(乙1,2),原告以外の大手通販業者内で販売される寝具類の中での販売ランキングで上位を占め多数の者がこれを購入したものと認められ,これによれば,引用商標1は直接多数の需要者の目に触れられたものと推認される。したがって,引用商標は,遅くとも本願商標出願日までにはファベ社製の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていた商標であると認めるのが相当である。\n
イ 本願商標出願日後の周知性につき
ひとたび周知性を得た商標は,短期間のうちにその周知性を喪失することはないのが通常であるところ,上記(1)ウのとおり,引用商標を付されたファベ社製の枕は,本願商標出願日後も相当数のウェブサイトで高い人気を得た売れ筋商品として取り上げられ続け,また,大手通販業者内で販売される寝具類の中での販売ランキングでも上位を占めている。したがって,引用商標は,現在においてもファベ社製の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められる。
・・・
 原告は,真正商品にのみ本願商標を使用すれば出所の誤認混同を生じない旨を主張するが,当該真正商品を扱う複数の者がその商品についての同一又は類似の商標を自己の商標として使用すれば,特段の取引事情のない限り,誤認混同を生じるおそれが生じ,商標の出所識別機能が害されることは明らかであるところ,そのような特段の取引事情のあることについての主張立証はない。また,原告は,本願商標が商標登録されても真正商品の並行輸入ができる旨を主張するが,真正商品の並行輸入の可否は,当該商標が非登録事由が認められないとして登録された後における商標権の効力の問題であり,非登録事由の存否についての審査において考慮すべきことではない。さらに,原告は,真正商品を取り扱っている業者に対しては権利行使をしない旨を明らかにすれば商標法4条1項10号の非登録事由が回避されると解される主張をするが,独自の見解であって採用することはできない。引用商標1と引用商標2とを二段に併記して成る商標の登録出願をしたファベ社と本願商標を登録出願した原告との間では,現に深刻な紛争が生じている(甲19〜21)。\n

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平成25(行ケ)10030 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年07月18日 知的財産高等裁判所

 「SAMURAI JAPAN」の下段にすこし小さく「Tudo:para futsal」と表示した商標について、「SAMURAI JAPAN」と図形が組み合わされた商標が類似するとした審決が維持されました。
 本願商標は,「SAMURAI JAPAN」の欧文字と「Tudo:parafutsal」の欧文字とを上下2段に書してなる結合商標である。そして,本願商標の構成中,上段の「SAMURAI JAPAN」の文字部分は,全て大文字であって,下段の「Tudo:para futsal」の文字部分と比べて,1文字1文字が大きく,太く表されており,外観上,下段の「Tudo:para futsal」の文字部分と明瞭に区別することができる。また,「SAMURAI」,「JAPAN」の語が広く一般に使用されており,「SAMURAI JAPAN」の文字部分から,「サムライジャパン」の称呼及び「日本の侍」の観念が自然に生じるのに対し,「tudo」,「para」の語は,いずれもポルトガル語であって(甲3),「SAMURAI」,「JAPAN」の語のように広く一般に使用されているものとはいえず,「Tudo:para futsal」の文字部分から,「トゥードパラフットサル」の称呼や,「フットサルのためのあらゆるものごと」といった観念が自然に生じるものとはいい難い。以上によると,本願商標を構成する「SAMURAI JAPAN」の文字部分と「Tudo:para futsal」の文字部分とは,それぞれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえず,本願商標においては,「SAMURAI JAPAN」の文字部分が取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえるから,これを要部と認めるのが相当である。この点に関し,原告は,本願商標は,上段・下段とも使用されている書体が同じで,上段・下段の幅がほぼ同じであり,全体として,まとまりよく一体のものであり,視覚上も一体不可分のものとして看取されるものであること,「SAMURAI JAPAN」あるいは「サムライ ジャパン」の語は,スポーツ業界では親しみやすいことばであって,識別力が弱く,本願商標の上段の「SAMURAI JAPAN」の文字部分も識別力が弱いことからすると,上記文字部分は,本願商標の指定商品との関係において,取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではないなどと主張する。しかしながら,前記のとおり,本願商標の構成中,上段の「SAMURAI JAPAN」の文字部分と下段の「Tudo:para futsal」の文字部分とは明瞭に区別することができるものであって,これらが視覚上一体不可分のものであるとはいえないし,また,「SAMURAI JAPAN」の文字部分は取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。なお,商品の出所識別標識としての機能は,当該商品の指定商品との関係において検討すべきであるところ,「SAMURAI JAPAN」あるいは「サムライ ジャパン」の語が,スポーツ業界では親しみやすいことばであるからといって,本願商標の指定商品(「フットサル用の運動用特殊衣服,フットサル用の運動用特殊靴」)に使用された場合に,商品の出所識別標識としての機能が弱いということはできない。\n

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◆関連事件はこちらです。平成25(行ケ)10029

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平成25(行ケ)10008 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年06月27日 知的財産高等裁判所

 図形商標について、類似するとした審決が維持されました。問題となった商標はドクロマークです。
 上記(2)に認定判断のとおり,本件商標と引用商標とが「正面を向いた頭蓋骨と扁平に交差させた2本の骨を組み合わせた図形をシルエット風(黒塗り)に表した構\図」として共通する一方で両商標における構成上の差異が微差の範囲にとどまる以上,相違点は個々に又は総体として考慮しても上記共通点に凌駕されるものであり,両者を同一又は類似の商品に使用した場合には,需要者がその出所について誤認混同するおそれがあるというべきである。本件商標は引用商標に類似するものと認めるのが相当であり,これと同旨の審決の判断に誤りはない。原告は,本件商標と引用商標とがそれぞれ与える印象に顕著な差異がある旨の主張をするが,上記判断のとおりの共通点を有する両商標が取引者及び需要者に与える印象に,差異があるものとは認められない。\n

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平成24(行ケ)10454 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年06月27日 知的財産高等裁判所 

 pumaのパロディ商標について、4条1項15号(出所混同)違反、および同7号違反の審決が維持されました。
 原告は日本観光商事社のライセンス管理会社であるが(弁論の全趣旨),日本観光商事社は,本件商標以外にも,欧文字4つのロゴにピューマの代わりに馬や豚を用いた商標や,他の著名商標の基本的な構成を保持しながら変更を加えた商標を多数登録出願し(甲4,5,14),商品販売について著作権侵害の警告を受けたこともあること(甲15,16)が認められる。これらの事実を総合考慮すると,日本観光商事社は引用商標の著名であることを知り,意図的に引用商標と略同様の態様による4個の欧文字を用い,引用商標のピューマの図形を熊の図形に置き換え,全体として引用商標に酷似した構\成態様に仕上げることにより,本件商標に接する取引者,需要者に引用商標を連想,想起させ,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受け,原告は上記の事情を知りながら本件商標の登録を譲り受けたものと認めることができる。そして,本件商標をその指定商品に使用する場合には,引用商標の出所表示機能\が希釈化(ダイリューション)され,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力,ひいては被告の業務上の信用を毀損させるおそれがあるということができる。そうすると,本件商標は,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって引用商標の特徴を模倣して出願し登録を受けたもので,商標を保護することにより,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法1条)に反するものであり,公正な取引秩序を乱し,商道徳に反するものというべきである。

◆判決本文

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平成25(行ケ)10028 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年05月30日 知的財産高等裁判所

 商標「御用邸」が公序良俗違反であるとした審決が維持されました。
 甲4,甲5及び弁論の全趣旨によれば,「御用邸」とは皇室の別邸を意味し,天皇又は皇族の静養等に用いられるもので,現在,那須御用邸,葉山御用邸,須崎御用邸の3つがあること,御用邸は国有財産であって,行政財産のうち皇室用財産に属し,宮内庁が管理するものであることが認められる。「御用邸」が皇室の別邸であることは広く知られており,「御用邸」の文字には,皇室と関係があるかのように感じさせる効果があり,顧客誘因力がある(甲6,22)。そうすると,皇室と何らの関係もない者が,自己の業務のために指定商品について「御用邸」の文字を独占使用することは,皇室の尊厳を損ね,国民一般の不快感や反発を招くものであり,相当ではない。このことは,本件商標の登録査定時である平成7年11月16日においても,現在でも同様である。したがって,本件商標は,その登録査定時において既に,指定商品について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものであったと認めることかできる。そうすると,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であり,その登録は,7号に違反してされたものであるから,商標法46条1項1号により登録を無効とした審決に誤りはない。原告は,一般国民は「御用邸」が「皇室の別荘」と理解しても,それが現存する三つの御用邸の総称とまでの理解はないと主張するが,「御用邸」が皇室の別邸を意味することは広く知られていて誰でもが理解することであるから,理由がない。原告は,他にも「御用邸」の文字からなる商標や「御用邸」の文字を含む商標が登録されていること,「御所」の文字からなる商標や「御所」の文字を含む商標が登録されていることを主張するが,それらの商標登録に瑕疵があるか否かは,本件の判断とは別論であるから,理由がない。原告は,原告が経営する株式会社庫やでは,本件商標を用いて永年に亘りチーズケーキ等を製造販売し,那須土産として相当数の販売量を誇る人気商品となって,メディアでも取り上げられているが,皇室の尊厳を損ねる等のクレームを受けたことがないと主張するが,原告が指定商品について「御用邸」の文字を独占していることが国民一般に知られているとはいえないし,そもそもその独占自体が相当でないから,理由がない。

◆判決本文

 

◆関連事件です。平成25(行ケ)10026

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平成24(行ケ)10336 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年04月24日 知的財産高等裁判所

 商標「NINA L’ELIXIR」は「ELIXIR」と混同しないとした審決が維持されました。
 これを本件商標についてみると,外観上,本件商標を構成する各文字の大きさ及び書体は同一の全角で,等間隔でまとまりよく一体的に表\されており,「NINA」と「L’ELIXIR」の間に空白部分があるものの,その広さは,半角程度にすぎず,全体として横に一行でまとまりよく表されているものであり,「L’ELIXIR」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構\成されているということはできず,まして,「ELIXIR」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。
・・・・
 原告は,本件商標「NINA L’ELIXIR」を構成する12文字のうち,「ELIXIR」の文字列が占める割合は半分の6文字にも及ぶことから,「ELIXIR」の部分が「L’ELIXIR」の部分の一部にすぎないものとして捉えられるとは考え難く,さらに,「ELIXIR」の文字列の前部に「’」の記号が配されていることも考慮すると,簡易迅速を尊ぶ取引の場においては,視覚的に「L」との結合性が否定され,「ELIXIR」の部分のみが印象付けられやすいと主張する。しかし,本件商標における「ELIXIR」の文字は,エリジオンにより,一つの語として認識される「L’ELIXIR」の一部に埋没しているものであるから「L’ELIXIR」の部分の一部にすぎないし,「L」のアルファベットとの結合性が否定され「ELIXIR」の部分のみが印象付けられるということもない。簡易迅速を尊ぶ取引の場においては,むしろ無理に分断することなく,1語として理解し一体に把握されるものである。
 イ 原告は,本件商標の実際の使用態様をみると,「NINA」と「L’ELIXIR」の文字とを分離して2段書きにするのに加え,下段の部分を「L’ELIXIR」の全て大文字ではなく,「L’Elixir」と表記していることを根拠として,本件商標が「ELIXIR」を構\成中に含んでいると実際の取引において容易に把握され,本件商標の使用者もその事実を自覚していると主張する。しかし,本件商標が実際の使用態様において,「NINA」と「L’ELIXIR」の文字を2段書きにしているからといって,「NINA」と「L’ELIXIR」に分離して看取されるものではない。また,本件商標における「ELIXIR」の文字は,1つの語として認識される「L‘ELIXIR」の一部に埋没しているものであるから,本件商標が「ELIXIR」を構成中に含んでいると実際の取引において容易に把握されるなどということはなく,まして,本件商標の使用者がその事実を自覚しているなどということもない。このことは,「L’ELIXIR」の全てを大文字ではなく,「L’Elixir」と表\記していても同じことである。

◆判決本文

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平成24(行ケ)10360 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年04月18日 知的財産高等裁判所

 商標「INTEL」は、半導体以外の分野で著名だとは認められないとして、商標「インテルグロー」には商標法4条違反はないとした審決が維持されました。
 原告の略称である「インテル」が,原告の業務に係る商品(半導体・集積回路等)の取引者・需要者を始めとして、相当に広い範囲にわたり知られるに至っていたことは,審決認定のとおりである(甲13〜18,20〜51)。これに対し,本件商標は,「インテルグロー」の片仮名を標準文字で同書,同大,等間隔に書され外観視覚上極めてまとまりよく一体に表され,これより生ずると認められる「インテルグロー」の称呼も冗長でなく無理なく一気一連に称呼し得るものであるから,一体不可分の造語として理解されるとみるのが相当である。したがって,本件商標は,その構\成文字中に「インテル」の文字を有するけれども,一体不可分のものとして認識されるものであるから,「インテル」の文字は,本件商標全体の中に埋没していて,それのみが独立して把握されるものではない。したがって,本件商標は,原告を想起させるものではなく,8号の「他人の略称を含む商標」には当たらないとした審決の判断に誤りはない。原告は,表示「インテル」又は「INTEL」が原告の略称として著名であるから,一般世人は本件商標から原告の著名な略称である「インテル」又は「INTEL」を容易に想起すると主張するけれども,集積回路又は半導体以外の商品分野において,表\示「インテル」又は「INTEL」が原告の略称として著名であるとは認められない。防護標章登録の事実から,当該標章が著名であることを推認することもできない。原告はまた,本件商標における「グロー」が「成長する」を意味する英単語として一般人になじみの深い語であることをもって,「インテル」の部分を「グロー」と分離して認識するというが,「成長する」に対応する英単語“grow”の発音が「グロウ」であることは一般人にとって常識であって(甲55),後記のとおり,被告が「グロー」に「成長」の意味を込めたとしても,「インテルグロー」から「インテル」が「グロウ」すると認識するものとは,一般的には推測しにくい。いずれにしても,「インテルグロー」が一気一連に称呼されるものであることは上記認定のとおりである。本件商標が8号に違反して登録されたものということはできないとの審決の判断に誤りはなく,取消事由1には理由がない
・・・
本件商標と引用商標とが非類似であることは上記1で判示したとおりであるが,引用商標に係る商品の取引実態についてみる。甲2〜54,56,57によれば,原告は,半導体・集積回路等の世界最大の製造販売業者であって,その略称でもある商標「インテル」や「INTEL」が,半導体・集積回路等の取引者・需要者の間では著名であり,他方,原告の業務に係る商品を組み込んだパソコン,サーバや,それらの広告に「intel inside」ロゴを表示するマーケティング手法によって,一般消費者へも認知度を高めており,本件商標の登録出願時において既に,上記商標が半導体・集積回路等の分野での原告商標であるものとして相当に広い範囲にわたり知られるに至っていたことを認めることができる。しかし,原告の業務に係る商品(半導体・集積回路等)は,電子機器の部品であり,ブランド構\築の難易度が高い業界に属し,「intel inside」プログラム等のマーケティング的努力によって,商標「インテル」,「INTEL」が,半導体・集積回路等や,パソコン,サーバの取引分野において,これら商標のブランド力を浸透させるのに成功したことは優に認めることができるものの(甲49など),これらの取引分野を超えて,著名となっていることまで認めるに足りる証拠はない。原告が住宅設備機器・建材商品の販売・施工を行っているとは認められず,原告主張の防護標章登録の事実からは,これら商標が防護標章登録の商品,役務の分野において著名となっていることを推認することはできない。(2) 本件商標の指定商品又は役務は,原告の上記商標「インテル」,「INTEL」が使用して取引される商品又は役務と異なり,商標「インテル」,「INTEL」が,半導体・集積回路等や,パソコン,サーバ以外の取引分野においても著名であるとは認められない。そして,本件商標は前記のとおり「インテルグロー」と一連に称呼されるものであり,イタリアのサッカーチーム「InternazionaleMilano(インターナショナル・ミラノ)が我が国において「インテル」の略称で有名であることは当裁判所にも顕著であり,我が国における一般消費者がパソコン,サーバ以外の取引分野において「インテル」の音を聞いたときに,原告の商標「インテル」,「INTEL」を想起すると限らないものと認められる。これらを合わせ考慮すると,本件商標が指定商品又は役務に使用されることによって,原告又はこれと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように,出所について混同を生じるおそれがあるとは認められない。

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平成24(行ケ)10403 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年03月28日 知的財産高等裁判所

審決では、商標「ボロニアジャパン」は無効理由無しと判断されましたが、裁判所は、フリーライドやダイリューションを招くので、商4条1項15号違反として、審決を取り消しました。
 本件商標は,「ボロニアジャパン」の片仮名からなり,「ボロニア」と「ジャパン」からなる結合商標である。本件商標の構成中「ジャパン」の部分は,我が国の国名「日本」を表\す語であって,日本と何らかの関係性がある会社や商品であることを示すために,商号や商標の一部に含めることが広く一般的に行われており(甲53,54),自他商品の出所識別力は乏しく,出所識別標識として支配的な印象を与えるものではない。他方,本件商標の構成中「ボロニア」の部分は,イタリアの地方・都市名であり,ボロニア地方が起源とされている「ボロニアソ\ーセージ」(ボロニヤソーセージ)が知られている(甲72〜75)。本件商標を構\成する「ボロニア」及び「ジャパン」は,上記のとおりいずれもよく知られた概念であり,簡易迅速性を重んずる取引の実際においては,その一部分のみによって簡略に表記ないし称呼されることもあり得るものである。(イ) 後記イのとおり,「BOLONIYA」又は「ボロニヤ」の表示は,原告又は原告商品を示すものとして一定の周知性を有している。なお,原告の「BOLONIYA」又は「ボロニヤ」は,「ボロニヤソ\\ーセージ」の「ボロニヤ」に由来するものであり,イタリアの地方・都市名である(甲8,9)。(ウ) そうすると,本件商標「ボロニアジャパン」を,指定商品のうち「パン」に使用した場合は,「ボロニアジャパン」のみならず,「ボロニア」という称呼・観念も生じることもあり得る。そして,その場合には,原告又は原告商品を示すものとして周知な「BOLONIYA」又は「ボロニヤ」と類似性を有するものということができる。
イ 「BOLONIYA」及び「ボロニヤ」の周知著名性及び独創性の程度(ア) 前記1(1)認定のとおり,「BOLONIYA」又は「ボロニヤ」の表示は,原告が元々はソ\\ーセージの名称「ボロニヤソーセージ」に用いられていた「ボロニヤ」をパン屋の屋号として採択したものである。そして,「ボロニヤソ\\ーセージ」の「ボロニヤ」は,イタリアの地方・都市名であって,これをソーセージではなくパンに用いる場合には,独創性がないとはいえない。(イ) 前記1(1)認定の事実を総合すれば,平成10年頃までには,原告及びそのフランチャイジーが製造販売するデニッシュ食パンは,「元祖デニッシュ食パン」などとして,全国的に周知となったことが認められる。そして,原告商品には,「BOLONIYA」又は「ボロニヤ」の表示が使用されていたものであり,「BOLONIYA」又は「ボロニヤ」の表\示は,当時,原告又は原告商品を示すものとして周知性を有していたものと認められる。前記1(2)認定のとおり,その後,株式会社ボロニヤによるフランチャイズ契約が解消された結果,店舗数が減少し,株式会社ボロニヤの清算や株式会社東京ボロニヤの破産等があって売上げが低下した時期もあったが,原告は,平成20年9月以降,毎年1億円以上の売上げを上げ,平成22年頃からは再び「伝説のパン」「京都祇園ボロニヤの元祖デニッシュ」などとして雑誌等にも採り上げられ,インターネット販売等でも売上げランキング1位を獲得するなど,「BOLONIYA」又は「ボロニヤ」の表示は,近時も,原告又は原告商品を示すものとして周知性を有しているものと認められる。そして,「BOLONIYA」又は「ボロニヤ」の表\示が,一旦,原告又は原告商品を示すものとして周知性を獲得し,近時も周知性を有していることに照らすと,特段の事情がない限り,その間の期間においても,周知性が継続していたものと推認されるところ,店舗数が減少し売上げが低下した時期もあったものの,インターネットによる通信販売等もあって原告の売上げ自体が大幅に減少したものでもないから,本件商標の登録出願の時点及び登録査定の時点においても,一定の周知性があったものと認められる。
ウ 商品の関連性本件指定商品等には,「パン」が含まれ,原告を示す表示として周知性のある「BOLONIYA」又は「ボロニヤ」の「デニッシュ食パン」を包含するものである。よって,原告商品と本件商標の指定商品は,取引者及び需要者が共通する。
エ 本件商標の使用態様と取引の実情前記1(3)のとおり,被告は,「BOLONIA.JP」というドメインネームを取得して,「BOLONIAJAPAN」(ボロニアジャパン)というウェブサイトにおいて「京都祇園生まれのデニッシュ食パン」と記載した上で,デニッシュパン等を販売し,楽天市場でも,「BOLONIAJAPAN」について「京都祇園生まれのデニッシュ食パン」「京都祇園ボロニア ジャパン」「BOLONIAデニッシュ」などと記載した上で,デニッシュパン等を販売しており,被告のレシートにおいては,「BOLONIA」と大きく記載され,その下に小さく「JAPAN」と記載されている。なお,本件商標の指定商品が日常的に消費される性質の商品であることや,その需要者が特別な専門的知識経験を有しない一般大衆であることからすると,これを購入するに際して払われる注意力はさほど高いものでない。上記のような被告の本件商標の使用態様及び需要者の注意力の程度に照らすと,被告が本件商標を指定商品に使用した場合,これに接した需要者は,かつて周知性を有していた「京都祇園ボロニヤの元祖デニッシュ」や現在も一定の周知性を有する「BOLONIYA」又は「ボロニヤ」の表示を連想する可能\性がある。
オ まとめ前記のとおり,1)本件商標を,指定商品のうち「パン」に使用した場合は,原告又は原告商品を示すものとして周知な「BOLONIYA」又は「ボロニヤ」と類似性を有すること(前記ア),2)「BOLONIYA」又は「ボロニヤ」の表示は,独創性が高いとはいえないものの,「デニッシュ食パン」の分野では,原告又は原告商品を示すものとして一定の周知性を有していること(前記イ),3)本件商標の指定商品は,「デニッシュ食パン」を包含するから,原告商品と取引者及び需要者が共通すること(前記ウ),4)被告の本件商標の使用態様及び需要者の注意力等に照らし,被告が本件商標を指定商品に使用した場合,これに接した需要者が,「BOLONIYA」又は「ボロニヤ」の表示を連想する可能\\性があること(前記エ)を総合的に判断すれば,本件商標を,指定商品のうち「パン」に使用した場合は,これに接した取引者及び需要者に対し,原告使用に係る「BOLONIYA」又は「ボロニヤ」の表示を連想させて,当該商品が原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表\\示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され,商品の出所につき誤認を生じさせるとともに,原告の表示の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を生じかねない。そうすると,本件商標は,商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に当たると解するのが相当である。\n

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平成24(行ケ)10290 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年03月21日 知的財産高等裁判所

 3段分離表示された商標「Baby Mon chouchou」が、「Mon chouchou」と類似するとした審決が維持されました。
 本件商標は,飾り文字で表してなる「Baby」,「Mon」及び,これらよりわずかに小さく表\される「chouchou」の各欧文字を3段に配したものの左側にバラのつぼみの図形を配し,「Baby」の欧文字の左斜め上側に羽根のような図形及び交差部を太く表してなる十\字図形を配してなるものである。この構成態様に照らせば,本件商標は,各欧文字と各図形とを組み合わせてなる結合商標であり,各図形部分は,いずれも飾りとして認識され,出所識別標識としての称呼,観念を生じることはないとみるのが相当である。そうすると,本件商標の構\成中の「Baby」,「Mon」及び「chouchou」の欧文字部分は,これに接する者をして,その構成中の各図形部分から分離して看取,把握され得るものと認めるべきである。\n

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平成24(行ケ)10363 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年03月21日 知的財産高等裁判所

 「Augusta Club」と表示した商標が、4条1項15号違反ではないとした審決が取り消されました。
 本件商標は,その構成中にゴルフスイングをする人物を描いた図形が表\示されていること,「Augusta Club」の欧文字部分が顕著に大きく表されていること,「Club」の語が「政治・社交・娯楽,あるいは学校の課外活動で,共通の目的によって集まった人々の団体。また,その集合所。(会員制の)バー・娯楽場。」を意味すること(広辞苑第六版),「Club」の語が,上記の意味において,片仮名表\記だけでなくアルファベット文字としてもよく知られた英語であって,自他役務の識別機能を有しないか,極めて弱いものといえるものであることに照らすと,本件商標は,全体として,看者に対し,「Augusta Club」という名称のゴルフに関する団体又はバーないし娯楽場(ゴルフの関係ではゴルフ場)を想起させるものであり,また,上記のとおり,「Augusta Club」の欧文字部分は顕著に大きく表されていることに照らすと,本件商標は,そのうちの「Club」以外の「Augusta」の文字部分が独立して識別力を有するものである。
2 「Augusta National Golf Club」(オーガスタナショナル・ゴルフ・クラブ)が,マスターズ・トーナメントが開催されるゴルフ場であって,「Augusta」(オーガスタ)がオーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブの略称として著名であるかについて判断する。
・・・
上記によれば,「オーガスタ」の語は,本件商標の登録出願時及び査定時において,マスターズ・トーナメントが開催される米国ジョージア州オーガスタ所在の被告が経営するゴルフ場である「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」の略称として,また,マスターズ・トーナメントなど,被告経営の上記ゴルフ場において提供される被告の業務に係る役務を表すものとして,日本のゴルフに関連する商品又は役務の取引者・需要者の間で広く認識されるに至っていたものと認めることができる。原告は,「Augusta」(オーガスタ)はマスターズ・トーナメントが開催される土地の名称であって,オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブの略称として周知著名であったものではないなどと主張する。しかし,「Augusta」(オーガスタ)が土地の名称であること,ジョージア州オーガスタに被告経営のゴルフ場以外に「Augusta」の語を冠したゴルフ場や新聞が存在すること,日本国内及び海外に「Augusta」又は「オーガスタ」の語を含むゴルフ・トーナメント,不動産会社,飲食店,医療クリニック等が存在すること(甲1〜42)は上記認定を左右するものではない。原告が援用する判例は,被告の役務が著名でない場合にその適用が問題となりうるのであり,被告の役務が著名である以上,その適用は問題外である。
3 本件商標の指定役務と被告の業務に係る役務は,いずれもゴルフに関連する役務であるから,役務の内容,質,用途,提供の用に供する物等を共通にする関連性が高いものであって,かつ,その取引者,需要者を共通にするものと認めることができる。
4(1)前記認定によれば,「オーガスタ」及びその英語表記である「Augusta」の語は,本件商標の登録出願時及び査定時において,被告が経営するゴルフ場であるオーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブの略称として,また,被告の主催するマスターズ・トーナメントを意味するものとして,日本の取引者・需要者の間で広く認識されるに至っていたものと認められる。そして,本件商標は,全体として,「Augusta Club」という名称のゴルフに関する団体又はバーないし娯楽場(ゴルフ場)を想起させるものであって,その構成中,「Augusta」の欧文字部分が独立して着目され得るものであるところ,本件商標の指定役務と被告の業務に係る役務がいずれもゴルフに関するものであるという高い関連性及び取引者,需要者の共通性等に照らせば,商標権者が本件商標をその指定役務に使用した場合,これに接する者に,「Augusta」の文字部分から,被告が経営するオーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブを連想させ,当該役務を被告自身あるいは被告と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものということができる。n

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平成24(行ケ)10392 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年03月21日 知的財産高等裁判所

  「ROSEO’NEILLKEWPIE」の欧文字と「ローズオニールキューピー」の片仮名文字を2段に横書きした商標について、「キユーピー」と類似すると認めました。
 以上によれば,原告(キユーピー株式会社)は,本件商標の出願日及び登録査定日当時,我が国の食品関係の取引者及び一般消費者の間で,マヨネーズを中心とする調味料や加工食品を製造・販売するほか,飲食物の料理方法を教授する会社として著名であり,引用商標1ないし3は,当該分野における役務の提供について,原告を出所として識別させる商標として著名であったものと認められる。さらに,我が国においては,前記1ウに認定のとおり,食品製造会社がそのブランド名と同一又は類似する店舗名の飲食店を経営している例が多数見られることを併せ考えると,引用商標1ないし3は,加工食品の製造・販売及び飲食物の料理方法の教授という役務と密接に関連する「飲食物の提供」という役務においても,取引者,需要者である食品関係の取引者及び一般消費者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。このことは,前記1オに認定のとおり,本件商標が飲食店の名前として使われた場合に多くの者が原告又は原告の主要商品を製造する会社を想起したとのアンケート調査の結果によっても裏付けられる。そして,本件商標の指定役務は,前記第2の1に記載のとおり,第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」であるところ,本件商標がこれらのうち「飲食物の提供」に使用される場合,「KEWPIE/キューピー」の部分は,上記のとおり,取引者,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える引用商標1ないし3と称呼及び観念が同一のものであるから,当該部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるものというべきである。カ 他方,キューピーのキャラクターは,前記1に認定のとおり,その創作後から高い人気を博しており,原告及び被告を含む複数の企業が広告や商品販売等に使用し続けるなどしてきたものであるところ,引用商標1ないし7は,本件商標の指定役務のうち「飲食物の提供」を除く各役務については,取引者,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるという事情を認めるに足りる証拠はない。また,本件商標のうち「ROSEO’NEILL/ローズオニール」の部分は,本件商標の構成の半分以上を占めるものであって,「KEWPIE/キューピー」の部分に密接に関連する一般的ないし普遍的な文字であると直ちにいうこともできないから,出所識別標識としての称呼,観念が生じないとまでは認められない。\n
キ よって,本件商標は,それが指定役務のうち「飲食物の提供」に使用される場合には,本件商標のうち「KEWPIE/キューピー」の部分だけを他の商標と比較することで類否を判断することができるものというべきであり,この場合,「キューピー」との称呼及びキューピーのキャラクターとの観念を生じるが,上記のような場合でない限り,原則として,その全体をもって他の商標との類否を判断する必要があり,この場合,「ローズオニールキューピー」との称呼及び「ローズ・オニール(という女性)のキューピー」との観念を生じるものというべきである。
・・・・
また,本件全証拠によっても,本件商標の指定役務のうち「飲食物の提供」以外の役務に係る取引に当たり,取引者,需要者が,「ROSEO’NEILL/ローズオニール」との部分が付加された本件商標と,「キューピー」との称呼及び観念が生じる引用商標とで出所について混同を生じる実情があるとは認められない。よって,本件商標は,指定役務のうち「飲食物の提供」以外の役務に使用する場合,引用商標1ないし7とは非類似の商標であるといえる。
・・・・
原告は,本件商標が冗長であり,我が国において広く認識されている3語の名称を結合させたものであるばかりか,本件商標がキャラクターの「キューピー」等と無関係に使用されることがなく,また,訴外会社が本件商標のうち「KEWPIE/キューピー」の部分を強調して使用しているから,当該部分が強い印象を与えることが多々あるほか,アンケート調査の結果がこれを裏付けているとして,本件商標のうち「KEWPIE/キューピー」の部分のみを引用商標1ないし7と比較すべきであると主張する。しかしながら,キャラクターの「キューピー」が我が国で周知である以上,訴外会社が「Rose O’Neill Kwepie」とのロゴの入った商品を販売するに当たり,「Kewpie」の部分を強調したロゴを使用することは,それ自体何ら不自然ではない。また,上記アンケート調査は,前記1オに認定のとおり,専ら本件商標が飲食店の名前として使われた場合を想定しているにとどまるから,「飲食物の提供」以外の役務において「KEWPIE/キューピー」の部分が取引者,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えることを直ちに裏付けるものではない。
・・・・
被告は,本件商標について行われたアンケート調査の結果に証拠能力がなく,また,当該結果からは,「飲食物の提供」という役務において本件商標から「キューピー」の称呼及び観念が生じるとはいえないと主張する。しかしながら,上記アンケート調査の結果は,「飲食物の提供」という役務において本件商標がどのような印象を与えるかを調査したものであって,審判に提出されていないからといって直ちに証拠能\力が否定されるものではないし,前記1オに認定の調査結果に照らせば,「飲食物の提供」という役務に関する限り,「キューピー」との名称が取引者,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えることを裏付けるに足りるものというべきである。

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◆関連事件はこちらです。平成24(行ケ)10394

◆関連事件はこちらです。平成24(行ケ)10393

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平成24(行ケ)10338 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年03月25日 知的財産高等裁判所

 「Monolith Tower」と「Monolith」は非類似とした審決が維持されました。
 本件商標のうち「タワー」の部分は,本件における商標登録の無効審判請求の対象とされている指定役務「宿泊施設の提供,飲食物の提供,会議・集会のための施設の提供」との関係では,直接的な意味を有するものでない。また,「モノリス」及び「Monolith」の部分が,取引者,需要者にとって,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りる証拠もない。さらに,片仮名の「モノリスタワー」は,同じ大きさ及び同じ間隔で,標準文字により表記されていること,「モノリスタワー」や「Monolith Tower」の称呼は「モノリスタワー」と6音で短いことからすると,取引者や需要者は,本件商標における「モノリスタワー」や「Monolith Tower」を一連一体のものと認識するといえる。そうすると,本件商標が上記指定役務に使用された場合,その出所識別機能を有する部分は,「モノリス」及び「Monolith」のみに限られるものではなく,「タワー」及び「Tower」の部分を含めた全体であるというべきである。以上によると,本件商標と引用商標との類否の判断をするに当たっては,「モノリスタワー」及び「Monolith Tower」のそれぞれと引用商標とを対比すべきである。「モノリスタワー」及び「Monolith Tower」のそれぞれと引用商標とを対比すると,上記のとおり,外観,表したものと認識するものといえる。したがって,被告標章は,「na」,本件図形1,称呼,観念のいずれにおいても相違し,本件商標は,引用商標とは類似しない。したがって,本件商標は商標法4条1項11号に該当しない。
(2) 原告の主張に対して原告は,一般に,「親しまれた語」と「親しまれていない語」との組合せからなる商標においては,「親しまれた語」は自他役務の識別力がないか極めて弱いが,「親しまれていない語」は需要者の注意を引き,役務の出所表示として,強く機能\するとして,本件商標のうち需要者の注意を引く部分は,「モノリス」及び「Monolith」の部分のみであると主張する。しかし,結合商標等を構成する部分が「親しまれた語」であったとしても,指定商品又は指定役務の品質(質)や用途等との関連性を欠く場合には,「親しまれた語」は,格別,自他役務等の識別力がないか又は極めて弱いとはいえない。したがって,原告の主張は,主張自体失当である。\n

◆判決本文

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平成24(行ケ)10273 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年02月06日 知的財産高等裁判所

 被告による「数検」の使用が公序良俗に反する(商4条1項7号)かが争われました。裁判所は無効理由ありとした審決を取り消しました。
 ア 上記(1) 認定の事実によれば,本件商標又はこれに類似する標章は,被告が財団法人として認可を受ける前にも,任意団体である日本数学検定協会の数学検定試験に使用されており,財団法人(被告)の設立年度には受検者数が約9万4000人(団体受験校2500校)に達していたこと,被告の設立後,被告の実用数学検定試験の受検者数が大幅に増加し,本件商標もより広く知られるようになったが,原告は,平成22年1月21日に退任するまで被告の理事(理事長)であったこと,原告と被告とは,平成11年,平成21年及び平成23年に商標のパテント料に関する契約を締結し,被告が原告に対し,パテント料の支払(本件商標登録前の分も含む。)を行ったこと,原告が被告の理事を退任した後も,被告が,合意書や誓約書において,原告が本件商標権を有することを前提としていることが認められる。すなわち,本件商標は,当初,原告によって使用されており,被告の設立後,被告によって使用されるようになったが,被告は,上記誓約書を作成した平成23年4月ころまでは原告が本件商標権を有することを前提としており,その後,被告が本件商標権を取得したとか,被告に対し本件商標に関する専用使用権が設定されたとの事実は認められない。上記の事情からすると,被告の設立後,本件商標の周知著名性が高まった事実があるとしても,本件商標が被告によって使用されるべき性格の商標になったということはできない。
 イ また,上記(1) 認定の事実によれば,本件商標権のパテント料支払に関する契約の有効性等につき原告と被告との間に見解の相違があること,本件商標に係るパテント料支払について文部科学省から改善を要する事項について通知を受けたこと,実用数学技能検定事業に関し,原告と被告とが同時期に同様な検定を実施したことから受検者等に混乱が生じた経緯があることが認められる。しかし,上記のような当事者間の民事上の紛争や受検生等の混乱は,もっぱら当事者間の反目や当事者による本件商標の使用態様その他の行動に起因して発生したものというべきであり,本件商標登録によって生じたとは認められない。そうすると,仮に,被告の実用数学技能\\検定事業が何らかの公的性格を有するとしても,民事上の紛争等が発生していることを根拠として,本件商標が被告によって使用されるべき性格の商標になったとか,社会通念に照らして著しく妥当性を欠き,公益を害するようになったということはできない。加えて,本件商標の構成自体も社会的妥当性を欠くとはいえない。したがって,本件商標登録が,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると認めることはできない。\n

◆判決本文

◆こちらは関連事件です。平成24(行ケ)10274

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平成24(行ケ)10334 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年01月31日 知的財産高等裁判所

 商標法4条1項11号違反に該当せずとした審決が取り消されました。
 本件商標は,片方を尖らせた楕円様の青色の輪郭線を左右に2つずつバランスよく組み合わせ,その内の3つに若草色を施した構成からなる図形部分(本件図形部分)の右側に接着して,本件図形部分の下半分を占める高さで,「eams」との欧文字を青色の筆記体で横書きして配置した構\成からなるものである。  イ 本件商標のうち,本件図形部分は,それ自体に着目した場合,これが文字であるとは直ちにいえず,例えば単に植物の葉を図案化したものとみることも可能である。したがって,このように本件図形部分を植物の葉等の何らかの物体を図案化したものと把握した場合,本件商標からは,文字部分に対応する「イームス」又は「イーエーエムエス」との称呼が生じるほか,当該文字部分に対応する英語又は日本語は,直ちに想起し難いから,特定の観念が生じないとみる余地も,ないではない。しかしながら,英語では固有名詞を書き表\す際などに頭文字のみを大文字で書く場合があることは,我が国でも周知であるところ,本件商標の上記文字部分は,いずれも欧文字の小文字で書かれており,本件図形部分の下半分を占める高さで本件図形部分に接着して配置されている。しかも,本件図形部分は,上記文字部分と接着する右側部分が,主に片方をとがらせた2つの楕円様の青色の輪郭線で構成され,その左側部分よりも大きく描かれ,かつ,左側部分とはわずかに離れて配置されているばかりか,本件図形部分の輪郭線及び当該文字部分は,いずれも同じ青色で構\成されている。以上のような本件図形部分と文字部分(「eams」)との配置関係や本件図形部分の構成及び配色に照らすと,本件図形部分は,当該文字部分と一連一体となって,「Beams」という「梁」又は「光線」を意味するものとして我が国でも周知の英単語を書き表\すために,欧文字の大文字である「B」を筆記体ふうに図案化したものであるとみることができる。したがって,このように本件図形部分を欧文字の大文字である「B」を図案化したものと把握した場合,本件商標からは,「ビームス」との称呼が生じるほか,その英語の意味に従い,「梁」又は「光線」との観念が想起されるというべきである。  ウ 以上によれば,本件商標からは,「イームス」又は「イーエーエムエス」との称呼が生じ,特定の観念が生じないとみる余地もあるが,同時に,「ビームス」との称呼が生じ,「梁」又は「光線」との観念が想起されるものと認められる。

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平成24(行ケ)10293 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年01月15日 知的財産高等裁判所

 類似および混同判断について、一連称呼した審決の判断が維持されました。
本件商標は,「Deep Sea Driver」の欧文字を上段に,これより若干小さな「ディープシードライバー」の片仮名文字を下段に,それぞれ横書きで配したものであり,上段の「Deep Sea Driver」部分は,「Deep」,「Sea」及び「Driver」のそれぞれの間に,半角文字分の間隔が空けられている。ここで,下段の「ディープシードライバー」部分が上段の「Deep Sea Driver」部分の日本語表記であることは,その音に照らして明らかであるところ,「Deep Sea Driver」部分と「ディープシードライバー」部分のそれぞれが,普通にある字体で同じ大きさの文字により表記されていること,上段の「Deep Sea Driver」部分については,「Deep」と「Sea」,「Sea」と「Driver」との間に間隔が設けられているものの,2つの間隔は共に英単語を区切るスペース程度のものであって,「Deep Sea」と「Driver」に分けて観察される態様とはなっておらず,全体としてまとまり良く配されていること,また,各英単語は共通して日本人にもなじんでいるもので,特定の単語が特別の印象を持つものでないこと,そして,下段に並記された「ディープシードライバー」部分は全体が一体として表記されていることからすると,本件商標に接した需要者は,少なくとも「Deep Sea Driver」部分と「ディープシードライバー」部分をそれぞれに一体として認識するものと認められる。また,本件商標からは「ディープシードライバー」の称呼を生じるが,この程度であれば冗長であるとはいえず,一気に発音し得るものである。さらに,「Deep」,「Sea」及び「Driver」のそれぞれの部分からは,「深い」,「海」,「運転者」等の観念が生じ得るが,いずれも日本人にもなじみのある一般的な名詞又は形容詞であって,いずれかの部分が需要者に特に強い印象を与えるものではないし,その中の単語が格別に指定商品との関係で識別力の強弱を有するものでもない。なお,原告が主張するように,「Deep Sea」部分から「深海」,「Driver」部分から「運転者」の観念が生じ得るとした場合であっても,これらはいずれも一般的な語にすぎないから,「Deep Sea」部分のみが需要者に強い印象を与えるものとはいえないし,「Driver」部分を除外して識別力を生じるということもできない。以上検討したところを総合すると,本件商標は,少なくとも「Deep SeaDriver」部分及び「ディープシードライバー」部分がそれぞれに一体のものとして認識されるというべきであるから,それらの部分をそれぞれ全体として他の商標と対比すべきであり,その一部である「Deep Sea」あるいは「ディープシー」部分のみを抽出して要部となし,これを他の商標と対比するのは相当でない。
・・・
取消事由2に関する原告の主張は,本件商標と「ROLEX DEEPSEA」の欧文字からなる先願商標の双方について,「ディープシー」の称呼が生じることから,両商標は類似するというものである。しかしながら,取消事由1で説示したとおり,本件商標からは「ディープシードライバー」の称呼が生じるのであって,本件商標の一部を抽出して,そこから「ディープシー」の称呼が生じるとするのは相当でない。したがって,先願商標から「ディープシー」の称呼が生じるかどうかについて検討するまでもなく,両者が「ディープシー」の称呼において類似する旨の原告の主張は理由がない。3 取消事由3(法4条1項15号に関する判断の当否)について証拠(甲7,8,10〜69,71〜121)によれば,審決認定のとおり,本件商標の出願前において,原告使用商標のいずれか,すなわち,「OYSTER PERPETUAL SEA DWELLER DEEPSEA」,「オイスター パーペチュアル シードゥエラー ディープシー」,「SEA−DWELLER DEEPSEA」又は「シードゥエラー ディープシー」が付された,原告の製造又は販売する商品「腕時計」が,多数の雑誌又は新聞の記事で紹介され,あるいは広告として掲載された事実が認められる。他方で,「ディープシー」の語のみによって原告の腕時計が紹介された記事は,甲9,70のわずか2つにすぎない。そのほかに,記事中で「ディープシー」の語が単体で使用されている証拠として,甲26,36,53,61,62,65,66,80が挙げられるが,これらについては,高級時計を紹介するに際して「ディープシー」あるいは「DEEPSEA」の語を含む原告使用商標を商品名として記載した上で,説明記事中で「ディープシー」の語が使用されるにとどまる。さらに,上記の証拠(甲7,8,10〜69,71〜121)によれば,原告使用商標は,全体として同じ字体,同じ大きさの文字で表記され,「DEEPSEA」及び「ディープシー」部分を強調する態様にはなっていないことが認められる。このように,大多数の記事や広告において,原告の腕時計の商品名としては,複数の語の組み合わせからなる原告使用商標が記載されているだけであり,「DEEPSEA」及び「ディープシー」の標章単体で説明されているのは一部だけであるし,商品名についてみても,原告使用商標のうち「DEEPSEA」及び「ディープシー」部分が特に強調される態様にはなっていないのであるから,単体としての「DEEPSEA」又は「ディープシー」標章が,原告の商品に係る商標として需要者に広く認識されていたとは認められない。この点について,原告は,原告使用商標のうち,「DEEPSEA」及び「ディープシー」以外の部分は従来から原告製の製品に使用されていたことから,需要者の注意を惹くのはもっぱら「DEEPSEA」及び「ディープシー」部分であるなどと主張する。しかしながら,原告使用商標が付された腕時計が,1220メートルの深さの潜水に対応可能\な腕時計の後継機であるとする原告の主張に照らすと,当該商品との関係からして,潜水に関係する「深海」を意味し,日本人にとってもこの意味を容易に理解する「DEEPSEA」及び「ディープシー」部分の識別力は,原告使用商標に含まれる他の語との対比において低いというべきであり,この部分のみが原告使用商標の要部として需要者の注意を惹くとする原告の主張は採用することができない。また,原告は,原告使用商標は冗長であるから,「DEEPSEA」及び「ディープシー」部分が要部と認識されるなどと主張する。しかしながら,上記説示のとおり,「DEEPSEA」及び「ディープシー」部分は,原告使用商標が付された商品との関係で識別力が低いというべきであるから,たとえ原告使用商標の称呼が冗長であるとしても,このうち「DEEPSEA」及び「ディープシー」部分のみが,原告の商品を表示する商標として需要者に広く認識されていたとは認められず,原告の上記主張も採用することができない。以上のとおり,「DEEPSEA」及び「ディープシー」が原告の業務に係る商品を表\示する商標として需要者に広く認識されていたとは認められないから,「DEEPSEA」及び「ディープシー」が需要者に広く認識されていたことを前提とする取消事由3も理由がない。

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平成24(行ケ)10267 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年12月19日 知的財産高等裁判所

 公序良俗違反(商標法4条1項7号)とした審決が維持されました。
本件商標は,「シャンパンタワー」なる商標であるところ,そのうち「シャンパン」の語が,上記のとおり,「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして,周知著名であり,当該表示には多大な顧客吸引力が備わっていることに照らすと,本件商標からは,「シャンパンタワー」のみならず「シャンパン」という称呼及び観念も生ずるということができる。(3) そして,フランスの法律に基づいて設立された被告は,INAOとともに,「シャンパン」表示が有する上記のような周知著名性や信頼性を損なわないよう,シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者を厳格に管理・統制し,厳格な品質管理・品質統制を行ってきた。このような,被告を始めとするシャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者らの努力により,「シャンパン」表\示の周知著名性が蓄積・維持され,それに伴って高い名声,信用,評判が形成されているものであり,「シャンパン」という表示は,シャンパーニュ地方のみならず,フランス及びフランス国民の文化的所産というべきものになっている。そして,前記1(4)に掲記の証拠によれば,「シャンパン」という表示は,我が国においても,ぶどう酒という商品分野に限られることなく一般消費者に対しても高い顧客吸引力が化体するに至っていることが認められる。
(4) 以上のような,本件商標の文字の構成,指定役務の内容並びに本件商標のうちの「シャンパン」の表\示がフランスにおいて有する意義や重要性及び我が国における周知著名性等を総合考慮すると,本件商標を飲食物の提供等,発泡性ぶどう酒という飲食物に関連する本件指定役務に使用することは,フランスのシャンパーニュ地方における酒類製造業者の利益を代表する被告のみならず,法律により「CHAMPAGNE」の名声,信用,評判を保護してきたフランス国民の国民感情を害し,我が国とフランスの友好関係にも影響を及ぼしかねないものであり,国際信義に反するものといわざるを得ない。よって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当するというべきである。\n

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平成24(行ケ)10253 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年12月26日 知的財産高等裁判所

 周知(商標法4条1項10号)違反とは認められないとした審決が取り消されました。
 前記認定事実によれば,カレンダーの製造・販売業界においては,販売代理店がカレンダーの流通に当たって重要な役割を果たしているから,カレンダーについては,販売代理店が第一次的な取引者又は需要者であるといえるところ,原告は,平成11年4月頃から,「カラーラインメモ」の片仮名を標準文字で表してなる使用商標について,自社の製造・販売に係るカレンダー(原告カレンダー)の名称として自社商品のカタログに記載して販売代理店に対する頒布という形で使用を開始し,本件商標出願時(平成22年8月2日)及び登録査定時(同年11月1日)に至る約11年間にわたって,原告カレンダーの販売に当たり,毎年使用商標を自社商品のカタログに記載し,販売代理店に対する請求書にも原告カレンダーを意味するものとして使用商標を記載してきたものである。また,原告が上記カタログを頒布し,原告カレンダーを販売した販売代理店は,全国に所在しており,その数も毎年数百箇所に及んでいるばかりか,販売代理店に頒布された当該カタログの数は,毎年おおむね4万冊前後であり,販売代理店に販売された原告カレンダーの数も,平成13年に25万6448部であったものがその後順調に増加を続け,本件商標出願時及び登録査定時の属する平成22年には,合計115万7090部という大部数に及んでいるのであって,これは,全国連合会に所属する会社の中で最大規模である原告が販売する全カレンダー(合計283種類)の中でも,売上げ部数が5番目に多いものであるから,かなりの数量であるといえる。しかも,「カラーラインメモ」との語は,英語の「カラー(色,色彩)」,「ライン(線)」及び「メモ(書き付け,備忘)」を複合した造語であって,カレンダーの名称として使用された場合,強いていえば「色彩」,「線又は線による区切り」及び「メモ余白の存在」を想像させるが,それ以上に特定の観念又はカレンダーとしての構\成を想像させるものではなく,一定の特異性が認められるものであるところ,原告が,平成12年(平成13年版)以降,一貫しておおむね類似した構成の意匠を備えたカレンダー(原告カレンダー)の名称として「カラーラインメモ」との語を使用しており,かつ,「カラーラインメモ」との名称をカレンダー又はこれに類似する商品に付して販売した者が,平成22年まで,原告以外には存在しなかったことは,前記認定のとおりである。
 以上の事情を総合すると,使用商標(「カラーラインメモ」)は,本件商標出願時及び登録査定時において,原告が製造・販売する特定の商品(原告カレンダー)を表示するものとして,全国に所在する多数の販売代理店の間に広く認識されており,原告カレンダーの販売期間,販売数量及び原告以外に「カラーラインメモ」との名称をカレンダー等に使用した者が存在しなかったことなどに照らすと,当該販売代理店を通じてカレンダーを入手する全国の最終消費者の間においても,特定の業者が製造・販売する特定の商品(原告カレンダー)を表\示するものとして広く認識されていたものと認めるのが相当である。

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平成24(行ケ)10143 商標登録取消決定取消請求事件  商標権 行政訴訟 平成24年11月29日 知的財産高等裁判所

 「ECO MINI」が「MINI」から混同を生ずるとして拒絶した審決が維持されました。
 前記1で認定したとおり,引用商標(「MINI」)は,少なくとも自動車に使用された場合,需要者において,BMWの業務に係る本件自動車を表示するものとして,広く認識されている。
エ 類否の判断
引用商標は,需要者の間で,本件自動車及びその出所を表すものとして広く認識されているということができるから,「MINI」の文字からなる標章が自動車に使用された場合には,需要者は,本件自動車及びその出所を認識すると認められる。本件商標は,「ECO」部分と「MINI」部分とに分断して看取することもできるところ,本件商標を指定商品である自動車に使用した場合には,「ECO」部分からは「環境に優しい,環境に配慮した自動車」との観念が生じるにすぎず,「ECO」部分の自他識別力は弱い。そうすると,上記のような「MINI」の文字からなる標章に,自他識別力の弱い「ECO」部分を結合させた本件商標を自動車に使用した場合,これに接した需要者は,本件商標中の「MINI」部分から,本件自動車及びその出所を想起し得ると認められる。以上に加え,原告は,これまで約40年間,本件自動車やその部品・付属品の販売等を行ってきたことも考慮すると(乙4),原告が本件商標を指定商品である自動車に使用した場合には,これに接した需要者が,BMWの業務に係る本件自動車であると誤認し,その出所につき混同を生じるおそれがあると認められる。よって,本件商標は引用商標に類似する商標であるといえる。
(2) 原告の主張に対して
原告は,これまでに,日本国内において,「自動車」を指定商品とする「MINI」又は「ミニ」の文字を含む商標は,90件以上登録されており,それは,それらの商標が引用商標と「MINI」又は「ミニ」の語を共通にするとしても,他の語句との結合により,引用商標とは区別することができるからであると主張する。しかし,他に「MINI」又は「ミニ」の語を含む商標が登録されている例があることをもって,本件商標が引用商標と類似しないということはできない。
(3) 小括
以上のとおり,本件商標は,引用商標と類似する。そして,引用商標は,BMWの業務に係る自動車を表示するものとして,需要者に広く認識されているところ,本件商標の指定商品は「自動車並びにその部品および付属品」であり,引用商標が使用されている商品である「自動車」と同一又は類似する。したがって,本件商標は商標法4条1項10号に該当する。\n

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平成24(行ケ)10069 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年11月15日 知的財産高等裁判所

  商標「漢検」について、後発的に公序良俗違反とした審決が維持されました。原告(商標権者)が元々、「漢検」を開催していました。
 商標法4条1項7号は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」について,不登録事由としているところ,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」とは,当該商標の構成に,非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字,図形等を含む場合のほか,そうでない場合であっても,当該商標を指定商品又は指定役務について使用することが,法律によって禁止されていたり,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳的観念に反していたり,特定の国若しくはその国民を侮辱したり,国際信義に反することになるなど特段の事情が存在するときには,当該商標は同法4条1項7号に該当すると解すべき余地がある。そして,商標法46条1項5号は,商標登録がされた後,当該登録商標が同法4条1項7号に掲げる商標に該当するものとなったことを登録無効事由として規定しているところ,商標登録後であっても,当該商標を指定商品又は指定役務について使用することが,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳的観念に反するなどの特段の事情が生じた場合には,当該商標は同法4条1項7号に該当すると解すべき余地があるといえる。
・・・
上記認定事実によれば,「日本漢字能力検定」は,もともと原告によって創設され,その内部機関である旧協会によって実施されていたものであるが,原告の代表\取締役であったD自身が設立代表者となって,公益法人である被告が設立され,その後,被告が「日本漢字能\力検定」の実施の主体となったこと,「日本漢字能力検定」は,被告設立と共に,文部省(現・文部科学省)の認定(民間技能\審査事業認定制度廃止後は後援)を受け,公的資格と見なされるようになったことなどから,志願者数が急増し,平成5年度には約24万人,平成9年度には約106万人,平成14年度には約204万人,平成20年度には約289万人に達し,我が国有数の検定試験になったことが認められる。また,「日本漢字能力検定」の志願者が増加するのに伴い,被告の名称の一部である「日本漢字能\力検定協会」や,「日本漢字能力検定」の略称である「漢検」は,被告ないし被告の提供する役務を表\すものとして,社会一般に広く知れ渡っているものと認められる。他方,原告は,被告設立後,「日本漢字能力検定」の主体ではなくなっていたにもかかわらず,平成12年ころまで,被告の名称や「日本漢字能\力検定」に係わる商標を出願し,その後も,被告名義で出願した商標(本件商標を含む。)について出願人名義を原告に変更するなどして,商標権者となっていたことが認められる(なお,平成18年ころまで,原告の内部組織である振興会が,小学校1年ないし3年生を対象とした漢字能力検定の主催者とされていたことは認められるものの,乙1,3【6,7頁】,11によれば,実際に上記検定に係る業務を行っていたのは被告の職員であり,振興会は名目上の主催者にすぎなかったものといえる。)。上記のとおり,被告は,文部大臣(当時)による許可を受けて設立された公益法人であり,文部省(現・文部科学省)の認定ないし後援を受けて「日本漢字能\力検定」を実施していたのであるから,これに係わる商標の登録出願も自ら行うべきものであったといえる。にもかかわらず,当時原告の代表取締役であり,被告の理事長でもあったDは,被告理事会の承認等を得ることなく,本件商標を含む,被告の名称ないし「日本漢字能\力検定」に係わる商標を,原告名義で出願したり,出願人名義を被告から原告に変更するなどしていたものであって,そのこと自体,著しく妥当性を欠き,社会公共の利益を害すると評価する余地もある(この点,原告は,被告の資産が乏しかったため,原告名義で上記商標登録出願をしたと主張するが,上記のとおり,被告設立当時,既に「日本漢字能力検定」は相当数の受検者がおり,受検料等による収入が見込まれていたこと,Dは,被告設立直後のみならず,平成12年ころまで,被告の名称ないし「日本漢字能\力検定」に係わる商標を原告名義で出願し続けていたことなどからすれば,上記主張は採用することができない。また,被告の名称や「日本漢字能力検定」に係わる商標権自体が,相当な財産的価値を有するものといえるから,原告が被告に対して無償の商標使用を許諾していたことや,商標権の取得・維持費用を負担していたことがあるとしても,そのことをもって,上記行為を正当化することはできない。)。このような経緯に加えて,Dは,被告に対して文部科学省による行政指導がなされ,新聞報道等で被告と原告関連4社との利益相反取引等が糾弾され,Eと共に背任罪で起訴された上,被告から多額の損害賠償請求訴訟が提起された後,本件商標の登録名義を原告からAらに移転したり,被告に対して被告の名称や「日本漢字能\力検定」に係わる商標等の使用差止請求訴訟を提起したりするに至ったものである。さらに,DないしEは,本件商標等について,権利の取得・維持の実費相当額での被告への譲渡を拒み,これらを原告自ら使用する可能性に言及するなどしている。上記事情に照らすと,原告の前代表\取締役D及び現代表取締役Eは,商標権者等の業務上の信用の維持や需要者の利益保護という商標法の目的に反して,自らの保身を図るため,原告が有する被告の名称ないし「日本漢字能\力検定」に係わる商標を利用しているにすぎず,原告が,本件商標を指定役務について使用することは,被告による「日本漢字能力検定」の実施及びその受検者に対し,混乱を生じさせるものであり,社会通念に照らして著しく妥当性を欠き,社会公共の利益を害するというべきである。\n

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◆関連事件です。平成24(行ケ)10064

 

◆平成24(行ケ)10070

◆平成24(行ケ)10068

◆平成24(行ケ)10067

◆平成24(行ケ)10066

◆平成24(行ケ)10065

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平成24(行ケ)10258 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年11月21日 知的財産高等裁判所

 商標「モンテローザ」について公序良俗違反なしとした審決が維持されました。
 原告は,本件商標は外国の著名な地名であるモンテローザ高峰や外国の著名な商標である「Monte Rosa」の信用,名声,顧客吸引力等にフリーライドしたものであり,このような商標の登録を認めることは,国際信義に反するものであると主張するので,以下検討する。ア モンテローザ高峰の周知,著名性について前記1(2)のとおり,モンテローザ高峰は,アルプス山脈第2の高峰であり,マッターホルン,リンプィッシュホルン,アルプフーベル,ドームなどを含めてモンテ・ローザ山群と呼ばれることがあるものであるから,アルプス山脈のあるスイスやイタリアにおいては,周知,著名な地名であるということができる。しかしながら,本件商標について登録査定がされた平成7年頃までの日本国内においては,モンテローザ高峰については,本件証拠上,百科事典における記載や,大正15年あるいは昭和13年に発行された新聞記事での記載,スイスやイタリアを紹介した旅行用の書籍中での記載,昭和41年に公開された映画の舞台の一部として使用されたことなどが確認されるにとどまるから,スイスやイタリアを訪れる日本人旅行者には知られている地名であったとしても,広く一般の需要者にも知られていたと認めることはできない。
 イ 「Monte Rosa」ホテルの周知,著名性について 前記1(3)で認定したとおり,ツェルマットの「Monte Rosa」ホテルやキアヴァリの「Monte Rosa」ホテルは,いずれも創業から数十年以上の長い歴史を有するものであるから,「Monte Rosa」の語は,本件商標の登録出願当時,少なくともスイスやイタリアでは,ホテルの名称として,周知,著名であったといえる。また,日本国内においても,昭和55年当時,ツェルマットの「Monte Rosa」ホテルは,日本から電話で宿泊等の予約をすることができるホテルとして旅行雑誌に紹介されていたのであるから,海外への旅行者には同ホテルを知る者があったということはできる。しかしながら,上記旅行雑誌の記載のほかに,本件証拠上,本件商標の登録出願時やその登録査定時において,「Monte Rosa」ホテルの名称が日本国内で紹介,宣伝等されていたことをうかがわせる事情は見当たらないから,その当時,これらのホテルの名称が日本国内において周知,著名であったと認めることはできない。
 ウ 以上のとおり,本件商標の登録出願や登録査定の当時,日本国内において,モンテローザ高峰や「Monte Rosa」ホテルの名称は,いずれも周知,著名なものであったということはできない。そうすると,仮に,被告がモンテローザ高峰や「Monte Rosa」ホテルの名称に依拠して本件商標を構成し,これを登録出願したものであったとしても,これらの名称が日本国内において周知,著名であったとはいえない以上,被告が,これらの名称の有している信用,名声,顧客吸引力等にフリーライドしたものとはいえないし,また,本件全証拠によっても,本件商標の出願経緯等に不正の利益を得る目的その他不正の目的があるなど社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあったとも認められない。\n

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◆関連事件です。平成24(行ケ)10257
 

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平成24(行ケ)10222 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年11月07日 知的財産高等裁判所

 公序良俗違反とした審決が取り消されました。
 前記2(1)アに認定したところによれば,本願商標は,その構成自体がきょう激な文字や卑わいな図形等である場合に該当するものとはいえないところ,本件審決は,本願商標は社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものであると判断しているので,以下においては,本願商標を本件指定商品について使用することが社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反するものといえるかどうかについて検討する。(1) まず,前記2(1)アのとおり,本願商標は,「北斎」との筆書風の漢字と,葛飾北斎が用いた落款と同様の形状をした本件図形からなるところ,前記2(4)に認定した審判段階における原告の主張からすると,本願商標が商標登録された場合において,原告が本件指定商品について本願商標に基づき主張することができる禁止権の範囲は,「北斎」との筆書風の漢字と本件図形からなる構成に限定されると考えられることから,例えば,「北斎」との漢字文字のみからなる商標について,これが本願商標の禁止権の範囲に含まれるなどと主張することは,信義誠実の原則に反し許されないといわなければならない。(2) また,前記2(2)のとおり,葛飾北斎の出身地である東京都墨田区や国内各地のゆかりの地においては,当該地域のまちづくりや観光振興のシンボルとして,同人の名を用いた施設の整備や催し物の開催等が行われているところであって,「北斎」の名称は,それぞれの地域における公益的事業の遂行と密接な関係を有している。したがって,原告が本願商標の商標登録を取得し,本件指定商品について,本願商標を独占的に使用する結果となることは,上記のような各地域における公益的事業において,土産物等の販売について支障を生ずる懸念がないとはいえない。しかしながら,前記(1)のとおり,原告が本件指定商品について本願商標に基づき主張することができる禁止権の範囲は,「北斎」との筆書風の漢字と本件図形からなる構成に限定されると考えられることからすれば,当該公益的事業の遂行に生じ得る支障も限定的なものにとどまるというべきである。(3) さらに,前記2(2)のとおり,葛飾北斎は,日本国内外で周知,著名な歴史上の人物であるところ,周知,著名な歴史上の人物名からなる商標について,特定の者が登録出願したような場合に,その出願経緯等の事情いかんによっては,何らかの不正の目的があるなど社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあるため,当該商標の使用が社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反する場合が存在しないわけではない。しかしながら,原告による本願商標の出願について,上記のような公益的事業の遂行を阻害する目的など,何らかの不正の目的があるものと認めるに足りる証拠はないし,その他,本件全証拠によっても,出願経緯等に社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあるとも認められない。
(4) 以上のとおり,本願商標の商標登録によって公益的事業の遂行に生じ得る影響は限定的であり,また,本願商標の出願について,原告に不正の目的があるとはいえず,その他,出願経緯等に社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあるとも認められない本件においては,原告が葛飾北斎と何ら関係を有しない者であったとしても,原告が本件指定商品について本願商標を使用することが,社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反するものとまでいうことはできない。

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平成23(行ケ)10326 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年11月15日 知的財産高等裁判所 

 アディダスの3本線の商標について、細長い4本の台形様ストライプは出所混同を生ずるとして、無効理由無しとした審決が取り消されました。
 上記(2)イに認定した事実によれば,運動靴の甲の両側面(靴底とアイレットステイを結ぶ位置)にサイドラインとして付されたスリーストライプス商標(細部のデザインの相違を捨象した3本線を基調とする商標)は,スリーストライプという語が需要者の間に用語として定着していたかはともかく,本件商標の登録出願時である平成17年5月25日及び登録査定時である同年10月28日において,我が国において運動靴の取引者,需要者に,3本線商標ないしスリーストライプス商標といえばアディダス商品を想起するに至る程度に,アディダスの運動靴を表示するものとして著名であったものと認められる。スリーストライプス商標の具体的な構\成には,使用時期や製品によって,ストライプの長短,幅,間隔,傾斜角度,輪郭線の形状等,細部のデザインが異なる様々なものが存在するが,これら細部の相違は,スリーストライプス商標の基本的な構成である3本のストライプが与える印象と比較して,看者に異なった印象を与えるほどのものではないというべきである。イ 本件商標は,上記(2)アのとおり,細長い4本の台形様ストライプからなるものであるが,その指定商品「履物,運動用特殊靴」に属する運動靴においては,同ウに認定したとおり,靴の甲の側面に商標を付す表示態様が多く採用され,そのような態様で付された場合,商標の上下両端部における構\成が視認しにくく,また,4本線の部分とそれらの間に存在する3つの空白部分につき,4本線か3本線かが紛れる場合が見受けられるのであり,その場合,参考図(別紙記載11a,b)のような構成のものと区別することが困難であるともいえる。そして,4本線商標とスリーストライプス商標との相異の程度について,別の角度から検討すると,本件商標の構\成と同様に4本の長短のある台形様図形をやや傾けて互いに平行に等間隔で配置してなる4本線商標(引用商標1,2の図形部分に似た白色の4本線のもの1件,黒色の4本線のもの3件)の事例について,特許庁において,アディダスの業務に係る商品と出所混同を生ずるおそれがあり,商標法4条1項15号に該当するとの認定がなされ,登録無効審決又は登録取消決定が確定していることが認められる(甲93の1,2,甲94,122〜127)。そうすると,運動靴の甲の側面に付された本件商標に接した取引者,需要者は,本件商標の上下両端部における構成が視認しにくい場合や,本件商標から,4本の細長いストライプではなく,それらの間に存在する空白部分を3本のストライプと認識する場合などがあり,これらのことから,3本のストライプから著名なアディダスのスリーストライプス商標を想起するものと認められる。また,4本線商標かスリーストライプス商標かという相異についても,靴の甲の側面に商標として付された場合,さほど大きな区別のメルクマールになるものとはいえない。さらに,本件商標は,4本線商標というのみならず,台形様図形の向かい合う2辺の各々に沿って表\示された2本のステッチ状の模様とその間に均等間隔に表示された多数の小さな丸点が描かれている点において,引用商標と異なることは確かであるが,アディダスのスリーストライプス商標の付された運動靴において,甲の両側面に付されたスリーストライプス商標の各ストライプの向かいあう2つの長辺に沿ってその内側に2本のステッチ状の模様(これは商標を靴の甲の側面に付す場合の縫い目のようにも見える。)のあるものが多数存在し,3本のストライプ間の中央部又はストライプ中央部にストライプに沿って直線上に多数のパンチング(小さな丸い孔)模様のあるものも存在することを考慮すると,本件商標の「2本のステッチ状の模様」及び「多数の小さな丸点」は,本件商標の構\成において,格別の出所識別機能を発揮するものと認めることはできない。ウ 以上検討したところによれば,単に本件商標と引用各商標との外観上の類否を論ずるだけでは足りないのであって,本件商標と引用各商標(アディダスの著名商標)との構成態様より受ける印象及び両商標が使用される指定商品の取引の実情等を総合勘案すると,本件商標を指定商品「履物,運動用特殊靴」に使用したときは,その取引者,需要者において,当該商品がアディダスの業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものと認められる。\n

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平成24(行ケ)10125 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年10月30日 知的財産高等裁判所

 市章が,公共施設やホームページ等に表示されたからといって,本願商標の指定商品の取引者,需要者にとって、著名であるとはいえない、また、両者は類似しないと、判断されました。4条1項6号での拒絶です。
以上によれば,日南市章は昭和25年12月20日に旧日南市の市章として制定され,日南市もこれを継承していること,日南市章は,日南市を表示するものとして同市の公共施設,ホームページ,広報用パネル,マンホールの蓋などに使用され,大きなイベントの際には,メインとなる舞台や調印式などの背景に日南市章が赤色で表\示された日南市旗が掲げられていること,これらのイベント等を報じる新聞記事やテレビ放送には,背景等に日南市章が写ることも多く,また,日南市の観光や物産を紹介する書籍,ホームページにも,日南市の名称とともに日南市章が掲載されることがあること,が認められる。しかしながら,日南市章が,日南市の公共施設やホームページ等に表示されたからといって,本願商標の指定商品の取引者,需要者が一般に目にするとは認められない。また,イベント等を報じる新聞記事の写真,テレビ放送等に写る日南市章は,背景として小さく写り込んでいるにすぎず,目立つものとは認められない。そして,日南市の観光や物産を紹介する書籍,ホームページも,本願商標の指定商品の取引者,需要者が一般に目にするとは認められない。被告は,本願商標の指定商品に含まれる商品「マンホール」の蓋は自治体の章が刻印されることが少なくなく,公共工事に用いられる建材を提供する事業者は県章や市章等に相当程度注意を払っているという取引の実情が存在すると主張する。しかしながら,マンホールの蓋を扱う取引者,需要者の数は明らかではなく,本願商標の指定商品の取引者,需要者のうちのどの程度を占めるのかは不明というほかない。したがって,被告の主張する上記取引の実情を考慮しても,上記認定の事実から,審決時に,日南市章が本願商標の指定商品「建築用又は構\築用の金属製専用材料,金属製建具,金属製建造物組立てセット」,「セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス」及び「清掃用具及び洗濯用具」に係る一商圏以上の範囲の取引者,需要者に広く認識されていたと認めることは,困難である。
・・・・
光が上下左右に4本伸びた構成(「上下左右に三角形の突起を有する黒塗りの肉太円輪郭」の構\成)は,日立製作所の社章でもよく知られたものである(弁論の全趣旨)。そうすると,本願商標の図形部分は,本願商標の大きな部分を占めるものではあるが,「日」という漢字の古代書体に由来するありふれた図形であって,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとまでは認められない。他方,本願商標の「DAIWA」の文字部分は,図形部分と比して1/5程の大きさにすぎないが,同部分から「ダイワ」の称呼が生じることは明らかである。また,我が国には,「ダイワ」,「大和」を冠した企業名が多数存在する(裁判所に顕著な事実)から,取引者,需要者は,「DAIWA」の文字部分を企業名に関する表示として認識し,同部分からそのような企業名としての観念を生じるものと認められる。したがって,本願商標の「DAIWA」の文字部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認めることはできない。以上によれば,前掲最高裁判決の判断基準に照らして,本願商標の構成から図形部分を抽出し,この部分だけを日南市章と比較して商標そのものの類否を判断することは,許されないというべきである。そして,本願商標と日南市章を全体として対比すると,外観において本願商標の図形部分と日南市章は類似するものの,本願商標が「ダイワ」の称呼を生じ,「ダイワ」ないし「大和」の企業名としての観念を生じるのに対し,日南市章は,特定の称呼,観念を生じるものとは認められないから,全体として類似するとはいえない。\n

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平成24(行ケ)10120 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年10月30日 知的財産高等裁判所 

 1私人に、「富士山世界文化遺産センター」という商標登録は認められない(公序良俗違反)とした拒絶審決が維持されました。
 以上によれば,我が国として,世界遺産条約に基づく世界遺産一覧表への記載に向け,「富士山」を推薦することを決定したこと,「富士山」が世界文化遺産登録に推薦されたことを受け,静岡県及び山梨県は,行政,企業,団体等を中心としてその登録実現に向けた活動を行っていること,静岡県において,現在は仮称であるが,「富士山世界遺産センター」との名称の施設を設置する構\想・基本計画が存し,同施策が具体的に進行していることについては,その都度,新聞報道がなされ,少なくとも静岡県及びその周辺の建設事業等に関連する取引者,需要者に,広く知られているものと認めることができる。5 本願商標の商標法4条1項7号該当性について(1) 本願商標は,「富士山世界文化遺産センター」の標準文字からなるが,「富士山」の文字部分は,静岡県と山梨県との境にそびえる日本一高い山である「富士山」を意味するものとして,「世界文化遺産」の文字部分は,ユネスコの世界遺産登録については一般に広く知られていることから,ユネスコに登録される「世界文化遺産」を意味するものとして,「センター」の文字部分は,「その分野の中心となる機関・施設」を意味するものとして,いずれも容易に理解,認識されるものと認められ,全体として,「富士山の世界文化遺産に関する中心となる施設」程の意味合いを有する商標として認識されるものと認められる。
(2) 他方,上記2,3のとおり,i)世界遺産条約にいう「世界遺産」には,「文化遺産」と「自然遺産」があり,我が国は,世界遺産条約の締約国として,「世界遺産」の保護,保存等をすることが義務付けられていること,ii)我が国の複数の「世界遺産」において,所在地等と「世界遺産センター」とを組合せた「○○世界遺産センター」なる名称の施設が公的機関によって設置され,その世界遺産の保全・管理業務,調査研究,情報提供などの活動の拠点として運営されていること,iii)我が国は,「富士山」を世界文化遺産登録に推薦することとし,国のほか,静岡県及び山梨県も,行政,企業,団体等を中心としてその登録実現に向けた様々の活動を行っていること,iv)上記iii)の事実は,その都度新聞報道がなされ,少なくとも静岡県及びその周辺の建設事業等に関連する取引者,需要者に,広く知られていることが認められるから,これらの事情に照らすと,本願商標は,これに接する取引者,需要者に,「公的機関によって設置・運営される富士山の世界文化遺産に関する施設の名称」であると認識されるものと認められる。(3) そうすると,「公的機関によって設置・運営される富士山の世界文化遺産に関する施設の名称」と認識される本願商標について,一私人である原告の登録を認め,「建物の管理」,「土地の管理」,「建物又は土地の情報の提供」等を含む指定役務について,その使用する権利を専有させることは,国又は地方公共団体等の公的機関による,富士山の「世界遺産」に関連する施策の遂行を阻害するおそれがあると認められる。そして,これら施策の高度の社会公共性に鑑みれば,本願商標の登録を認めることは社会公共の利益に反するというべきであり,本願商標は,商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものと認められる。

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平成23(行ケ)10404 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年07月26日 知的財産高等裁判所

 商標「3ms」が、「3M」と出所混同しないとした審決が取り消されました。
 被告は,原告は本件指定役務に関する業務は行っておらず,本件商標を本件指定役務に使用しても,混同が生じるおそれはない,布地・被服等の加工品に引用商標が表示されたタグ等が付されていても,これらのタグ等は加工業者を示すものとは認識されないと主張する。しかし,以下のとおり,被告の主張は失当である。原告や引用商標1が著名であることに加え,原告の関連会社が販売する商品は,多分野,多種類に及んでいること,引用商標1は原告や関連会社のハウスマークとして使用されていることからすると,たとえ,原告や関連会社が本件指定役務に含まれる業務を実施していないとしても,取引者・需要者において,原告又は原告と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると混同するおそれがあるというべきである。また,衣服等においては,素材の開発から加工技術の開発まで同一の企業や関連会社が行う場合もあることからすると,布地・被服等の加工品に引用商標1が表\示されたタグ等が付されていれば,取引者・需要者が原告又は原告と何らかの関係を有する者がこれらの加工を行ったと認識する可能性はある。

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◆こちらは類似案件です。平成23(行ケ)10403
「sanm's」「サンエムズ」の2段併記の商標については、混同無しと判断しました。

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平成23(行ケ)10436 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年07月18日 知的財産高等裁判所

「COOLBOSS」が「BOSS/HUGO BOSS」から無効理由があるかが争われました。裁判所は、商4条1項15号(出所混同要件)に違反するとして、無効理由無しとした審決を取り消しました。
 上記認定の事実によれば,「BOSS/HUGO BOSS」商標は,フーゴ・ボスAGにかかる紳士服及び紳士用品について使用されるものとして,本件商標登録出願日及び現在において,海外及び我が国で著名となっているものと認められる。ここで,「BOSS」の欧文字は,2段に構成された「BOSS/HUGO BOSS」商標中で上段に顕著に表された部分であり,フーゴ・ボスAGが用いる多数のブランドの大部分で共通する部分であり,「BOSS/HUGO BOSS」商標の要部と認められる。「BOSS」の欧文字からは,「ボス」の称呼を生じ,「親分」「上司」の観念を生じる。
(3) 本件商標の取引の実情をみるに,甲98,甲100〜103によれば,被告は本件商標を付した小型ファン付き作業服を販売し,その開始は,本件商標の出願とほぼ同時期である。そのパンフレット(甲98)には,上方に大書された「クールボス」の文字の下方に,大きな文字で「涼しい」「作業服」との記載があり,「涼しい」の文字と「作業服」の文字は,「涼しい」の文字の下から「作業服」の文字の上にかけて記載された「〜」を反転させた形状の曲線によって区分され2行に表記されている。「涼しい」を英語で「クール」と称することは一般的な認識であるから,この記載を見る者は,「クールボス」の文字中の「クール」の部分が「涼しい」に対応し,「ボス」の部分が「作業服」に対応するとの理解に誘導されることになる。「クール」の文字が説明的で出所表\示機能を有しないのに対し,「ボス」の文字は,これから生じる「親分」「上司」の観念が作業服とは結び付かず,作業服を「ボス」と呼ぶこともないことからすると,本件商標からは,前記のように紳士服及び紳士用品の商品分野において著名な「BOSS/HUGO BOSS」商標を想起する可能性が高いといえる。このように,「BOSS/HUGO BOSS」商標がフーゴ・ボスAGにかかる紳士服及び紳士用品について使用されるものとして我が国において著名となっていること,作業服の購入者に男性が多いであろうことからからすると,「クールボス」の商標が付された作業服が販売されれば,その作業服がフーゴ・ボスAG又はこれと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,出所について混同を生じるおそれがあることになる。

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平成23(行ケ)10375 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年07月19日 知的財産高等裁判所

 商標「POWERWEB」が、引用商標「POWERWAVE」と類似するとした審決が取り消されました。
 本願商標からは「パワーウェブ」,「パワーウエブ」,「パワーウエッブ」といった称呼を生じ,引用商標からは「パワーウェーブ」という称呼を生じるから,両商標の称呼上の差異は,「ウェ」に続く長音「ー」の有無のみであるか,あるいは,「ウ」に続く称呼が「エ」又は「エッ」であるか,「ェー」であるかのみである。しかし,前記のとおり,「POWERWEB」は,「POWER」と「WEB」の2つの単語を組み合わせたものであり,「POWERWAVE」は,「POWER」と「WAVE」の2つの単語を組み合わせたものであることは,一般人にとって容易に理解可能であり,「POWER」,「WEB」,「WAVE」は,いずれも一般人にとって観念を容易に想起し得る単語であること,スポーツ関係の商品に使用される「POWER」の文字の自他商品識別力は,同じくスポーツ関係の商品に使用される「WEB」及び「WAVE」の文字の自他商品識別力よりも強いものとはいえないことからすると,両商標の語調語感は自ずと相異なる。したがって,両商標は,称呼上類似はするものの,両商標を聞き分けることは必ずしも困難なことではない。
エ 両商標の類否
 以上のとおり,本願商標と引用商標とは,外観及び観念において相違し,称呼上類似はするものの,両商標を聞き分けることは必ずしも困難なことではないこと,また,取引の実情として,外観や観念よりも称呼によって商品の出所を識別しているなど,称呼上の識別性が外観及び観念上の識別性を上回っているような事情は認められないことに照らせば,両商標は,外観及び観念上の相違が称呼上の類似性を凌駕するものというべきである。

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平成23(行ケ)10373 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年07月12日 知的財産高等裁判所

 商4条1項11号における類似商標ではないとして、拒絶審決が取り消されました。
 そこで,これを本件についてみると,引用商標は,「fantasy LIFE」の部分と「mabinogi/マビノギ」の部分とからなる結合商標と解されるところ,「mabinogi/マビノギ」の部分は,「fantasy LIFE」の部分よりも大きく(高さは約5倍,幅は約2倍)かつ特徴的な書体で表され,同部分からは特定の観念を生じないか,物語の題号の1つである「マビノギ」の観念を生じさせるから,造語ないし固有名詞として認識され,取引者,需要者に対して商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。また,同部分から「マビノギ」の称呼が生じることは明らかである。他方,「fantasy」の語は,「空想,夢想,ファンタジー」を意味する平易な英語であって,「ファンタジー」の語は,コンピュータゲームの分野においてゲームのジャンル(「空想上の人生・生活を体験することを内容としたゲーム」)を指すものとして使用されているから,引用商標の構成中「fantasy LIFE」の部分は,取引者,需要者にコンピュータゲームのジャンルを示すものと認識されることが多いものと認められ,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとは認められない。上記のとおり,引用商標の構成中,「fantasy LIFE」の部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めることはできず,他方,「mabinogi/マビノギ」の部分から出所識別標識として固有の称呼を生じ,観念を生じ得るのであるから,引用商標の構成中「fantasy LIFE」の部分だけを抽出して本願商標と対比することは許されないというべきである。そして,本願商標と引用商標の構成部分全体を対比すると,両者は外観において著しく異なり,観念,称呼において一部共通するものの,取引の実情を考慮するならば,類似するとはいえない。したがって,本願商標と引用商標の類否について,外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,具体的な取引状況に基づいて全体的に考察すると,本願商標と引用商標が,役務における出所の誤認混同を生じるおそれはなく,両商標は類似しないから,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断には誤りがある。
 (3) 被告は,「ファンタジー」の語が「ファイナルファンタジー」のように他の語と結合して自他商品・役務の識別力を有する造語を形成する場合があると主張する。しかし,コンピュータゲームの商品名に「ファイナルファンタジー」のように「ファンタジー」の語を含むものがあるとしても,「ファイナルファンタジー」は「ファンタジー」のジャンルに属するコンピュータゲームであると認められる(甲23)から,「ファンタジー」の語自体が商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるということはできず,被告の主張は理由がない。また,被告は,商品又は役務に係るゲームソフトウェア及びその他のソ\フトウェアにおいては,その商品又は役務を識別する標章として,ソフトウェアの内容を示すタイトルのほかに,該ソ\フトウェアの制作会社等に係る標章を表示してあることが少なからず存在するものであり,また,該標章は,タイトルよりも小さく表\示されていることが一般的であると主張し,乙6〜14には,ソフトウェアの内容を示すタイトルのほかに該ソ\フトウェアの制作会社等に係る標章をタイトルよりも小さく表示してあることが認められる。しかしながら,そうであるからといって,引用商標において「fantasy LIFE」の部分が,同部分より大きくかつ特徴的な書体で表された「mabinogi/マビノギ」の部分より商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとは認められない。被告は,他にも縷々反論するが,上記判断を左右しない。

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◆こちらは、類似案件です。平成23(行ケ)10372

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平成23(行ケ)10400 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年06月27日 知的財産高等裁判所

 商標「Tarzan」が公序良俗違反かが争われした。特許庁は公序良俗違反でないと判断しましたが、裁判所は、公序良俗違反で無効と判断しました。
 ・・・日本では広く知られていないものの,独特の造語になる「ターザン」は,具体的な人物像を持つ架空の人物の名称として,小説ないし映画,ドラマで米国を中心に世界的に一貫して描写されていて,「ターザン」の語からは,日本語においても他の言語においても他の観念を想起するものとは認められないことからすると,我が国で「ターザン」の語のみから成る本件商標登録を維持することは,たとえその指定商品の関係で「ターザン」の語に顧客吸引力がないとしても,国際信義に反するものというべきである。「ターザン(Tarzan)」の語は,米国の作家バローズの手になる小説シリーズ「ターザン・シリーズ」に登場する主人公の名前であり,本件商標登録査定時(平成22年7月6日)の時点において,日本におけるその著作権は存続していたし,派生的著作物にはなお著作権が存続し続けていたものである。バローズから「ターザン・シリーズ」のすべての書籍に関する権利を譲り受けた原告は,オフィシャル・ウェブサイトを通じ,ターザンに関する諸々の作品及びバローズの業績を伝承・解説するとともに,「ターザン・シリーズ」を含めたバローズに関する小説,パルプ雑誌,映画,ラジオ放送作品,テレビ放送作品,コミックスなどのあらゆる作品を収蔵したオンラインアーカイブを作成・提供するなど,「ターザン」の原作小説及びその派生作品の価値の保存・維持に努めるとともに,米国のみならず世界各国において「ターザン」に関する商標を登録して所有したり,ライセンス契約の締結・管理に関わることによって,その商業的な価値の維持管理にも努めてきた。このように一定の価値を有する標章やキャラクターを生み出した原作小説の著作権が存続し,かつその文化的・経済的価値の維持・管理に努力を払ってきた団体が存在する状況の中で,上記著作権管理団体等と関わりのない第三者が最先の商標出願を行った結果,特定の指定商品又は指定役務との関係で当該商標を独占的に利用できるようになり,上記著作権管理団体による利用を排除できる結果となることは,商標登録の更新が容易に認められており,その権利を半永久的に継続することも可能であることなども考慮すると,公正な取引秩序の維持の観点からみても相当とはいい難い。被告は,「Tarzan」の語の文化的・商業的価値の維持に何ら関わってきたものではないから,指定商品という限定された商品との関係においてではあっても「Tarzan」の語の利用の独占を許すことは相当ではなく,本件商標登録は,公正な取引秩序を乱し,公序良俗を害する行為ということができる。\n

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◆こちらは関連事件です。平成23(行ケ)10399

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平成24(行ケ)10013 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年06月06日 知的財産高等裁判所

 商標「スバリスト」が『スバル』から無効か否かについて、裁判所は、広義の混同が生ずるおそれがあるとして、無効理由無しとした審決を取り消しました。
 前記(2)のとおり,本件商標は,外観や称呼において引用商標1ないし3と相違し,これらが全体として類似する商標であるといえないとしても,本件商標からは,原告が製造する自動車のブランドであるスバルの自動車の愛好家との観念が生じることがあり,他方,引用商標1ないし3からも,原告が製造する自動車のブランドであるスバルとの観念が生じ得るから,観念において関連性があることは否定できない。また,前記(2)アのとおり,本件商標出願当時,自動車やその関連商品の分野では,本件商標を構成する「SUBARIST」「スバリスト」との語は,原告が製造する自動車のブランドであるスバルの自動車の愛好家を意味することが広く知られていたものであるが,この「SUBARIST」「スバリスト」との語が,原告の製造する自動車のブランドである「SUBARU」あるいは「スバル」に由来する造語であることは明らかである。そして,自動車の分野において,引用商標1ないし3が周知著名性を有していることは当事者間に争いがないことや,本件商標の指定商品は,引用商標1ないし3が使用される商品と同一又は関連性を有することなどを併せ考慮すると,本件商標をその指定商品に使用した場合,その需要者及び取引者において,本件商標が使用された商品が,例えば,原告から本件商標についての使用許諾を受けた者など,原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し,商品の出所につきいわゆる広義の混同を生ずるおそれがあることは否定できない。\n

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平成23(行ケ)10426 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年05月31日 知的財産高等裁判所

 商標「Lambormini」が引用商標「LAMBORGHINI」に対して、商標法4条1項10,15,19号違反がないとした審決が取り消されました。
 本件商標は,字体における特徴があり,また図形部分が付加されている点で,引用商標と外観において若干の相違があるものの,全体として類似するといえる。以上によれば,本件商標と引用商標は,本件商標の文字部分10文字中9文字が引用商標と共通すること,称呼において,相違する1音が母音構成を同じくする近8似音であり類似すること,外観においても,若干の相違があるものの,全体として類似することに加え,前記原,被告の各商標の使用状況等取引の実情等を総合して判断すると,本件商標と引用商標は,互いに類似する商標であると解される。(2) 商標法4条1項10号該当性について上記のとおり,引用商標である「LAMBORGHINI」は,本件商標の出願以前から現在に至るまで,イタリアの高級自動車メーカーである原告又は原告の業務に係る商品「自動車(スーパーカー)」を表示するものとして,日本国内の自動車の取引業者や愛好家の間で広く知られているから,他人の業務に係る商品(自動車)を表\示するものとして,需要者の間に広く認識されている商標に該当するものと認められる。また,本件商標は,上記のとおり,引用商標に類似し,本件商標の指定商品には,「自動車」を含んでいる。そうすると,本件商標は,他人の業務に係る商品(自動車)を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって,その商品(自動車)に使用をするものに該当すると認められる。したがって,本件商標は,商標法4条1項10号に該当する。(3) 商標法4条1項15号該当性についてまた,上記のとおり,原告は,本件商標の出願以前から現在に至るまで,引用商標である「LAMBORGHINI」等の商標を使用して,「自動車(スーパーカー)」を製造,販売する業務を行っていること,本件商標は,引用商標と類似する商標であり,その指定商品に引用商標が使用されているのと同一商品(自動車)を含むこと,被告は,「Lambormini」や「ランボルミーニ」との商標を使用して,原告の製造,販売に係る自動車を模したカスタムバギーを製造,販売していること等を総合すると,本件商標は,他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標に該当すると認められる。したがって,仮に本件商標が商標法4条1項10号に該当しないとしても,同条同項15号に該当するものと認められる。
(4) 商標法4条1項19号該当性について
 さらに,被告は,上記のとおり,原告が世界的に著名な自動車メーカーであり,引用商標も原告の業務に係る商品(自動車)を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることや,かかる引用商標と本件商標が類似の商標であることを認識しながら,自動車等を指定商品等とする本件商標登録を行い,実際に「Lambormini」や「ランボルミーニ」との商標を使用して,原告の製造,販売に係る自動車を模したカスタムバギーを製造,販売していることが認められる。そうすると,本件商標は,被告が,不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認められる。したがって,仮に本件商標が商標法4条1項10号,15号に該当しないとしても,同条同項19号に該当するものと認められる。\n

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平成23(行ケ)10323 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年03月28日 知的財産高等裁判所

「KDDI Module Inside」を上下三段併記した商標に対して、インテルが無効審判を請求しました。理由は、「intel inside」と混同するというものです。審判では無効理由無し、裁判所も審決を維持しました。
 原告は,引用各商標における自他商品の識別性を有する商標の要部の一つは,「・・・inside」及び「・・・INSIDE」との表示形式であり,本件商標の「KDDI」「Module」「Inside」の文字を順に上から下へ積み重ねた態様は,「・・・INSIDE」との表示形式と共通しているから,「・・・インサイド」という共通の称呼が生じ,商品の出所に混同を生じるものであると主張する。確かに,引用各商標を構成する「intel inside」との文字が原告又は原告製造に係る製品の表示として広く認識されていることや,テレビ媒体等で使用された「インテル,入っている」というサウンドロゴに接した者は,「intel」の語と「inside」の語との結び付きを強く印象に残すものであることなどからすると,「intel」以外の文字と「inside」の文字を結合した「・・・inside」との表示形式を有する商標に接した者は,当該商標と引用各商標との構\成それ自体の共通性を想起し得ることは否定することができない。しかし,原告は,本件商標の登録出願前では,平成12年3月15日にコンピュータとコンピュータソフトウエアの使用等を指定役務とする「THE JORNEYINSIDE」との商標を出願しているものの(甲50),他に「intel」の文字に代えて,他の文字と「inside」の文字を結合した表示を使用した事実は認められないこと,また,「inside」の文字は,「内側の,内部の」等の意味合いを持つ,一般的な語であり,「intel」以外の文字と結合させることも含め,多様な用法が想定できることからすると,「intel」以外の文字と「inside」の文字を結合した「・・・inside」という商標の構成が,当該商標が使用された商品又は役務が直ちに原告の製造に係る商品又は役務であると誤信するおそれを生じさせるほどの強い出所識別機能\を有しているとまでは認められない。

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平成23(行ケ)10203 商標登録取消決定取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年02月21日 知的財産高等裁判所

 商標「VOSS」(フォスとのふりがなを2段併記)が、「BOSS」と類似するとした審決が取り消されました。
 被告は,「フォス」は「VOSS」の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識し得るものとはいえない旨主張する。しかし,証拠(甲9,10,乙7ないし9)及び弁論の全趣旨によれば,我が国において「フォルクスワーゲン」というドイツ製の自動車が広く知られていること,「フォルクスワーゲン」に対応するドイツ語が「VOLKSWAGEN」であることが認められるところ,「フォ」は「ヴォ」の濁音が清音になっただけであることをも併せ考慮すれば,「フォス」は「VOSS」の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識し得るというべきであり,被告の上記主張は採用することができない。また,被告は,「フォルクスワーゲン」や「フォルクス」は日本においても著名であるから,このような特殊な事例を本件商標の称呼の特定の参考にすべきではない旨主張するが,上記名称が著名であれば,我が国においても「Vo」との綴りを無理なく「フォ」と読み得ることにつながり,被告の上記主張は理由がない。このほか,被告は,我が国においてドイツ語はなじみがなく,「Vo」との綴りが「フォ」と読まれることはないとも主張する。確かに,我が国において,英語と比べてドイツ語になじみがないことは事実であるが,本件商標においては,下段に「フォス」との片仮名が記載されていることからすれば,我が国におけるドイツ語のなじみの程度とはかかわりなく,本件商標からは「フォス」との称呼が生じるものと解される。
(2) 引用各商標における「BOSS」の独立性につき被告は,引用各商標につき,「BOSS」の欧文字部分が独立して取引に資されるとして,分離観察をした上で,引用各商標と本件商標との類否判断をすべき旨主張する。しかし,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構\成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁等参照)。そして,引用各商標において,「パイプをくわえた男性の斜め横顔」のイラスト部分は印象的であって,ここから出所識別標識としての観念が生じないとはいえないため,「BOSS」の欧文字部分が,取引者,需要者に対し,出所識別標識として一定程度の強い印象を与えるとしても,「BOSS」部分のみを抽出して,本件商標との類否を判断することは許されないというべきである。また,被告は,引用各商標において,「パイプをくわえた男性」の図形部分と「BOSS」の欧文字部分とは,称呼や観念において,直接的には関連性のないものであり,ひいては「BOSS」の欧文字部分が独立して自他識別機能を有する旨主張する。しかし,両者に直接的に関連がないとしても,引用各商標においては,いずれも「パイプをくわえた男性」のイラストと「BOSS」の欧文字部分が組み合わせて用いられており,証拠(甲25,乙12)からすれば,サントリー関連会社の缶コーヒーにおいて,両者は常に一体として用いられていること,「BOSSコーヒー」に関するウィキペディア(フリー百科事典)上も,BOSSコーヒーにおいては「パッケージにパイプをくわえた男性のイラストが特徴である」と記載されていることが認められ,以上からしても,両部分は一体というべきであり,被告の上記主張は採用することができない。\n

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平成23(行ケ)10223 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年02月09日 知的財産高等裁判所

 審判では、「戸建マンション」が、識別力なしとして、拒絶されました。知財高裁もこれを維持しました。
 前記(1)アの新聞記事及びインターネット情報によれば,本願の指定役務である建物に関連する役務を提供する業界においては,プライバシーを確保する目的で住戸の独立性を高めたり,戸建のような住居配置で優れた独立性と採光・通風を確保し,また専用の庭,駐車場及び門扉を設置するなどの工夫を施すことによって,戸建てに近い居住性,建築形態を採るマンションが多数取引されている実情にあることが認められる。また,前記(1)イの新聞記事及びインターネット情報によれば,「戸建てマンション」,「戸建型マンション」,「戸建て感覚マンション」及び「戸建て風マンション」の語が,建物に関連する役務を提供する業界において実際に使用されていることが認められる。上記事実によれば,本願商標「戸建マンション」は,上記「戸建てマンション」,「戸建型マンション」,「戸建て感覚マンション」及び「戸建て風マンション」と実質的に同一の語であると認められ,また,戸建てに近い居住性,建築形態を採る戸建てのようなマンションが多数取引されている実情をも併せ考慮すると,それらの語は,「戸建て住宅の機能・特長を併せ持ったマンション」という意味合いを有すると認められる。そうすると,本願商標は,これに接する取引者・需要者をして,「戸建て住宅の機能\・特長を併せ持ったマンション」という意味合いを有する合成語として容易に認識,理解させるとみるのが相当である。したがって,本願商標は,これをその指定役務である建物に関連する役務に使用しても,単に役務の質(内容)等を表示するにすぎず,自他役務の識別標識としての機能\を果たさないものであり,また,前記「戸建マンション」に係る建物に関連する役務以外の役務に使用するときは,役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるといわざるを得ない。
 以上のとおり,結局,本願商標は自他役務識別標識としての機能を果たし得ないものというべきであって,商標法3条1項3号の「その役務の質を普通に用いられる方法で表\示する標章のみからなる商標」に該当し,また,本願商標を前記役務以外の役務に使用するときは,役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるから,同法4条1項16号の「役務の質の誤認を生じるおそれがある商標」に該当するといわざるを得ない。

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平成23(行ケ)10190 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年01月30日 知的財産高等裁判所

 本件商標「メルクス」が「メルク」と類似すると無効主張しましたが、類似しないとした審決が維持されました。
 本件商標より生ずる「メルクス」の称呼と引用商標より生ずる「メルク」の称呼とを比較すると,両称呼は,「メルク」の音を同じくし,末尾において「ス」の音の有無の差異を有する。そして,差異音「ス」(su)の子音(s)は,舌端を前硬口蓋に寄せて発する無声摩擦子音であって,構音上,例えば,破裂音(p.b.t.d.k.g)等の音に比した場合,響きの弱い音として聴取されるものとしても,「ス」の音の有無の差異は,本件商標と引用商標のように4音対3音といった比較的短い構成音からなる称呼に与える影響は大きいこと,そして何よりも,日本語の「ス」は「U」の母音を伴うもので,通常「S+U」と発音され,これが「メ」「ル」「ク」「ス」の4音のみから成り観念を持たない単語において,各音を一つ一つ明確に発音する可能\性が高い音の一つとなっていることからすれば,両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは,全体の語調・語感が異なるものとなる。また,両商標のアルファベット文字部分についてみても,末尾が「クス」と発音される本件商標と末尾が「ク」と発音される引用商標とでは,「X」と「CK」の文字の相違があり,アルファベット発音に慣れてきている日本人にとってこの文字の違いによる発音の相違は一般化しているというべきである。よって,本件商標の片仮名及びアルファベット文字の双方をみても,本件商標は,引用商標と互いに紛れるおそれは少ないと認めるべきである。

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平成22(ワ)32483 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成24年01月26日 東京地方裁判所 

 商標法32条の先使用権が認められました。「KAMUI」のゴルフクラブといえば、ゴルファーの間では、「飛ぶ」と有名でしたね。
 上記(1)イのとおり,被告は,平成12年以降,ゴルフクラブに被告標章3をはじめ,被告標章1やその他「KAMUI」単体の標章を付して製造・販売し,また,キャディバッグにも被告標章3を付して販売しており,これらの各標章は,「KAMUI」の標章として社会通念上同一のものと認められる。そして,上記(1)イ(ク),(ケ)のとおり,上記「KAMUI」の標章が付されたゴルフクラブが,平成12年から本件商標が登録される前年の平成18年までに合計して約4万5000本販売されており,平成16年以降は毎年1億円を超える売上げがあったこと,上記(1)イ(コ)のとおり,複数の雑誌等に上記「KAMUI」の標章が付された被告のゴルフクラブが,場合によっては被告の表示と共に,掲載されていたこと,上記(1)イ(サ)のとおり,上記「KAMUI」の標章が付されたゴルフクラブが100名を超える多数のプロゴルファーに納品されていることを併せ考慮すると,上記「KAMUI」の標章は,本件商標が登録出願された平成19年4月23日の時点において,被告の製造・販売するゴルフクラブ及びその関連用品であるキャディバッグを表示するものとして需要者の間に広く認識されていた(法32条1項)というべきである。そして,上記(1)ア認定の事実経過によれば,被告が「KAMUI」標章を使用することに不正競争の目的は認められないから,被告には,法32条1項により,ゴルフクラブ及びその関連用品であるキャディバッグについて,「KAMUI」の標章として社会通念上同一の標章と認められる被告標章1ないし3の先使用権が認められる。

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平成23(行ケ)10252 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年01月30日 知的財産高等裁判所

 「海葉」は「海陽」とは非類似であると判断されました。
 以上のとおり,本願商標と引用商標とは,その外観,観念において大きく相違し,称呼において基本的に同一であるところ,海の母音である「あい」も,葉や陽の母音である「おう」も,漢字の音読みとしてありふれた読みであり,これに「K」と「Y」の子音を組み合わせた「KあいYおう」との称呼は2文字の漢字のありふれた読みからくるもので,外観,観念の相違に比較すると,識別力が弱いものである。そして,本件において,この判断に反して特に考慮すべき取引の実情は認められないから,本件においては,外観と観念の相違が称呼の共通を凌駕するものというべきであって,指定商品について共通するものがあるとしても,本願商標と引用商標とは類似するものではないというべきである。

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平成22(ワ)10785 商標権侵害差止請求事件 商標権 民事訴訟 平成24年01月12日 東京地方裁判所

 日本郵便の「ゆうメール」の使用が、商標権侵害に該当すると判断されました。ゆうパックが著名であることは認定されましたが、出所混同を起こすとの無効主張は認められませんでした。
 本件商標「ゆうメール」と被告商標「ゆうパック」とを比較すると,外観は「ゆう」のみが共通するだけで全体として異なったものであり,称呼は「ユウメール」と「ユウパック」で異なり,その観念においても,「ゆう」だけではいかなる観念が生じるか直ちに明らかではなく,「メール」からは,郵便,郵便物,電子メール(広辞苑第6版)の観念が生じ,他方「パック」からは,包装すること,包装したもの(広辞苑第6版)の観念が生じるから,両者は観念においても異なる。したがって,そもそも本件商標と被告商標「ゆうパック」とは,その類似性が乏しいといわざるを得ない。その上,被告商標「ゆうパック」は,一般小包郵便物に利用されているが,そのサービスと本件指定役務である「各戸に対する広告物の配布,広告」との関連性も大きいものとはいえない。そうすると,たとえ被告商標「ゆうパック」自体が著名であったとしても,以上説示の点を考慮して総合的に判断すると,本件商標が,その出願時及び登録時において,被告商標「ゆうパック」を使用した被告の役務と出所混同のおそれのある商標であったということはできない。よって,本件商標の登録が法4条1項15号に違反するとは認められない。 エ なお,被告は,「ゆう○○」の構成の商標は,郵便事業に関係する商品・役務については,被告又は日本郵政の使用する商標として需要者に認識されており,「ゆう」は郵便の「郵」を意味する旨主張する。確かに,被告が主張するとおり,上記「ゆうパック」のほか,郵便貯金を意味する「ゆうちょ」(乙58の5,62)や郵便局で郵便物の引受け等を行う「ゆうゆう窓口」(乙58の6及び7,63)など,「ゆう」が「郵」を意味する「ゆう」として使用されていると考えられる商標が複数存在する(乙58の1ないし33)。しかし,「ゆう」自体,ひらがな二文字から構\成される短い言葉であること,「郵」以外にも「ゆう」に対応する漢字が多数考えられること,実際に,郵便の「郵」以外を意味すると考えられる「ゆう」を使用した登録商標も多数存在すること(甲92の1ないし5,93の1,93の3ないし6)からすれば,必ずしも「ゆう」が「郵」を意味するとはいえず,本件指定役務と郵便事業との結び付きの程度をも考慮すれば,被告の主張は失当であるといわざるを得ない。

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平成23(行ケ)10135 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年12月26日 知的財産高等裁判所

 「スーパーみらべる」が「mirabell」と類似するとした審決が取り消されました。
 以上によれば,本願商標と引用商標とは,「ミラベル」との称呼において類似する場合があり得たとしても,外観において著しく相違し,かつ観念において類似するとはいえず,取引の実情等を考慮しても,本願商標がその指定役務「『飲食料品』,『食肉』,『食用水産物』,『野菜及び果実』,『菓子及びパン』,『牛乳』,『清涼飲料及び果実飲料』,『茶・コーヒー及びココア』,『加工食料品』の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用された場合に,引用商標との間で商品ないし役務の出所に誤認混同を生じさせるおそれはないから,両商標は,類似しない。・・・これに対し,被告は,実際の取引においては,スーパーマーケットの名称中「スーパー」の文字部分を捨象する例が多い上,スーパーマーケット等の小売業者が,プライベートブランドを飲食料品等に使用していることが広く一般に行われており,その際,スーパーマーケットの名称やその一部を使用していることがあると主張する。しかし,スーパーマーケットの名称中「スーパー」の文字部分を捨象して使用される場合があるとしても,本願商標と引用商標は,本願商標の「みらべる」の文字部分が平仮名により,白色の縁取りがされた黒色の太文字で,鮮やかで明瞭な配色がされているのに対して,引用商標はいずれも欧文字であり,外観において著しく相違することや原告の取引の実情等を考慮するならば,その出所について誤認混同を生じるおそれがあるとはいえず,被告の主張は採用の限りでない。

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平成23(行ケ)10205 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年11月30日 知的財産高等裁判所

 商標「けんしんスマートカードローン」は引用商標「ケンシン」と非類似であるとして、審決が取り消されました。
 本願商標は,上記のとおり,「けんしんスマートカードローン」の文字を横書きしてなるものであるが,各文字が,ほぼ同一の書体,大きさ,間隔で表記されており,全体がまとまった印象を与えているのに対し,引用商標は,「けんしん」の文字を横書き又は縦書きしたもの,あるいはこれと図形を組み合わせたものであり,両商標は,外観において,相違する。また,本願商標は,上記のとおり,「ケンシンスマートカードローン」との称呼が生じるのに対し,引用商標は,「ケンシン」との称呼が生じ,両者は,類似するとまではいえない。上記のとおり,本願商標の「カードローン」部分は,取引者,需要者にとって,クレジットカードなどを利用した融資との観念が生じ,「スマート」部分は,賢い,頭のよい,体型がよい,質が高いなどの観念が生ずるが,「けんしん」部分は,一義的な観念を生じるとまではいえないのに対し,引用商標も一義的な観念を生じるとまではいえず(もっとも,「県信用組合」の略称であるとの観念を生じることを否定するものではない。),両商標は,観念において,同一ではなく,類似するとまではいえない。さらに,上記のとおり,取引の実情について,県信用組合は,組合員により構\成される協同組合組織の金融機関であり,その営業活動は,県内に限られていること,同一県内に複数の県信用組合が存在しないこと等を総合考慮するならば,取引者,需要者が,その役務の出所について,混同を来すことは想定できない。

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平成23(行ケ)10150 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年10月24日 知的財産高等裁判所

 第1次審取にて、公序良俗違反と認定され、差し戻された審決で同様の判断がなされ、それについて、実質的に理由で審決の取消を求めました。裁判所は拘束力により、原告の主張を退けました。
・・前述した前判決の認定判断に照らすと,前判決の拘束力は,被告の本件商標の出願は,ASUSTeK社若しくはASRock社が商標として使用することを選択し,やがて我が国においても出願されるであろうと認められる商標を,先回りして,不正な目的をもって剽窃的に出願したものであり,出願当時,引用商標及び標章「ASRock」が周知・著名であったか否かにかかわらず,本件商標は商標法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するとの認定判断について生ずるものというべきであるから,「被請求人の本件商標の出願は,ASUSTeK社若しくはASRock社が商標として使用することを選択し,やがて我が国においても出願されるであろうと認められる商標を,先回りして,不正な目的をもって剽窃的に出願したものと認められるから,・・・,出願当時,引用商標及び標章『ASRock』が周知・著名であったか否かにかかわらず,本件商標は『公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標』に該当するというべきである。」とした本件審決の認定判断は,上記前判決の拘束力に従ったものであることが明らかである。そうすると,本件訴訟において原告の主張する本件審決の取消事由は,前判決の拘束力に従った本件審決の上記認定判断が誤りであると主張することに帰着するものであるから,それ自体失当というべきである。

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平成23(行ケ)10093 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年10月24日 知的財産高等裁判所

 2段併記の商標(上段「PAG!」、下段「Point AD Game」)が、「PAG」と類似するとの審決が取り消されました。
 これに対し,被告は,本願商標について,「PAG」の文字部分が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たす特徴的部分であることを前提に,引用商標と外観及び称呼が類似し,取引の実情等を考慮しても,本願商標は引用商標と類似する,と主張する。しかし,被告の上記主張は,以下のとおり,採用できない。すなわち,本願商標は,「P」,「A」,「G」の文字,「!」の符号,足跡状の図形及び下段の「PointAD Game」のすべてが,青色の輪郭線又は塗りつぶされた文字で表記され,全体として,まとまりのある一体的な図形として描かれていること,上段の「PAG」の文字は,下段の「Point AD Game」の頭文字であることが想起されること,足跡状の図形がオレンジ色に塗りつぶされ,アクセントをつけていること等の特徴があることに照らすならば,「PAG」の文字部分のみが,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分と認めることはできない。なお,乙24の1,2によれば,原告のウェブサイトにおいて,商品ないしサービスを説明する図の中で本願商標から「Point AD Game」の文字部分を除いた標章が使用されているが(乙24の1,2),これをもって,「PAG」の文字部分のみが,本願商標の特徴的部分であると認めることはできない。したがって,本願商標について,「PAG」の文字部分が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たす特徴的部分であることを前提に,本願商標と引用商標の対比を行い,これらが類似するとした被告の主張は採用することができない。\n

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平成23(行ケ)10131 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年10月24日 知的財産高等裁判所

 商標「ユニヴァーサル法律事務所」は「ユニヴァーサル」とは非類似と判断されました。
 これに対し,被告は,i)本願商標は,法律事務所の名称を表示したものと理解,認識させるものであるから,「法律事務所」の文字部分からは,称呼,観念は生じない,ii)インターネット等や新聞,雑誌の記事において,弁護士の所属法律事務所等を示す場合に,「法律事務所」の表記を省略する例があること等(乙5ないし乙16)から,本願商標中の「ユニヴァーサル」部分のみが,自他役務の識別機能\を果たし得る部分であると主張する。しかし,被告の主張は,以下のとおり,失当である。すなわち,新聞,雑誌の記事等に,「法律事務所」との表記が省略されている例については,冒頭に「法律事務所」を含んだ名称が表\記されているものや,前後の文脈から,法律事務所ないし弁護士が役務を提供する事務所の名称であることが看取できる場合が例として挙げられたと理解される(甲7の1,乙5ないし乙8,乙9ないし乙15)。むしろ,前記認定のとおり,弁護士はその法律事務所に名称を付するときは事務所名称中に「法律事務所」の文字を用いなければならないとされていることに照らすならば,「法律事務所」の文字を省略する例は,少ないと認められる。以上によれば,「法律事務所」との表記が省略されることを前提として,法律事務所を除いた構\成部分のみが,役務の出所を識別し得るとする被告の主張も,採用することができない。
2 判断
 以上によれば,本願商標と引用商標とは,外観において著しく異なり,観念において相違し,称呼において一部共通するものの,取引の実情を考慮するならば,類似するとはいえない。したがって,本願商標と引用商標の類否について,外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,具体的な取引状況に基づいて全体的に考察すると,本願商標と引用商標が,役務における出所の誤認混同を生じるおそれはなく,両商標は,類似しないから,本願商標が,商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断には誤りがある。

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平成23(行ケ)10174 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年10月11日 知的財産高等裁判所

 商標『炭都饅頭』が、2段併記の「TANTO タント」とは非類似であるとして、拒絶審決が取り消されました。
 本願商標は漢字である「炭都饅頭」の4文字を江戸文字の書体で縦1行にまとまりよく記して成る外観を有する一方,引用商標は大文字の欧文字である「TANTO」の5文字と片仮名である「タント」の3文字とを,ゴシック体ないしこれに類する書体で,横2段書きして成る外観を有するから,両商標の外観は大きく異なる。被告は本願商標に使用されている文字の書体はありふれたものであり,取引者や需要者は筆書き風の書体で記したものと認識するに止まる旨を主張するが,江戸文字は,骨太で威勢のいい江戸歌舞伎の感性を意匠化すべく考案され,千客万来を願って,内へと入る運筆で枠一杯に隙間なく書かれることを特徴とするもので(書体作成会社である株式会社モリサワのホームページにおける解説,甲13),書体自体が見る者に強い印象を与えるためにデザインされたものである。そうすると,さほど注意力が高くない需要者や取引者にとっても,本願商標が通常の筆書きによって記すよりも強い印象を与えるということができ,被告の上記主張を採用して,両商標の外観の相違を小さく評価することはできない。なお,パーソ\ナルコンピュータの普及に伴って江戸文字のフォントが広く使用されるようになってきているとしても,本願商標自体の外観における書体の特徴に照らせば,上記判断は左右されるものではない。
2 本願商標の構成のうち「饅\頭」の部分は,和菓子の一種を示す普通名称であって,「饅頭」の文字だけでは自他商品識別力が希薄であることは否定できないが,前記1のとおり,本願商標は縦1行にまとまりよく記して成る外観を有し,本願商標を構\成する文字の書体も,文字の大きさも相互にほぼ同一であって,例えば「炭都」の部分が特に強調された体裁を有するものではない。そうすると,本願商標からはまず「タントマンジュウ」との称呼が生じるというべきである。被告は,本願商標の「饅頭」以外の部分,すなわち「炭都」の部分が本願商標の要部であるから,本願商標からは「タント」との称呼が生じると主張する。しかしながら,前記のとおり,本願商標は縦1行にまとまりよく記して成る外観を有し,「炭都」の部分が特に強調された外観のものではないから,「饅\頭」の語の自他商品識別力が希薄であるとしても,「炭都」の部分が直ちに要部となるとはいえず,原則として「タントマンジュウ」との称呼が生じるとの上記認定に変わりはない。また,需要者や取引者が本願商標の「炭都」の部分に着目し,「炭都饅頭」(タントマンジュウ)の略称の一つとして「タント」と称呼する可能\性があるとしても,本願商標から「タントマンジュウ」との称呼が生じることを否定できるものではなく,また,「饅頭」において,商品名から「饅\頭,まんじゅう」を除いた部分をローマ字や片仮名で並記することが少なくないとしても,本願商標における4文字を一連にして成る江戸文字書体の強い外観の印象に照らせば,「タント」の称呼を持つ「炭都」の部分が要部となるとすることはできない。他方,引用商標からは,その構成文字,とりわけ片仮名部分に相応して,「タント」との称呼が生じる。そうすると,本願商標と引用商標とは,生じる称呼が異なるということができる。\n

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平成23(行ケ)10081 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年09月27日 知的財産高等裁判所

「モンテローザカフェ」が「モンテローザ」と類似かが争われました。類似するとした審決が維持されました。
 本件商標は,「モンテローザカフェ」の片仮名文字を標準文字で書して成るものであり,「モンテローザ」と「カフェ」の二つの文字部分の結合から成っている。このような文字商標と他の商標との類否判断をする場合,文字商標の一部分の文字だけを抽出することができるのは,その部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるときや,それ以外の部分からは出所識別機能としての称呼,観念が生じないときなどに限られるところ(最高裁平成20年9月8日裁判集民事228号561頁〔つつみおひなっこや事件〕),本件商標構成中の「モンテローザ」の文字部分は,スイス・イタリアの国境にそびえるアルプス山脈中の高峰である「モンテ‐ローザ(Monte Rosa)」(イタリア語で「ばら色の山」の意)を意味する語であり,「カフェ」の文字部分は,「主としてコーヒーその他の飲料を供する店,珈琲店,喫茶店」を意味する語である。そして,「モンテローザカフェ」が「モンテローザ」と「カフェ」の二つの語から成ることは容易に理解できるところ,「カフェ」の語は,我が国に多数存在する「主としてコーヒーその他の飲料を供する店,珈琲店,喫茶店」を意味する語として一般に定着している業態名であって,本件商標の指定役務との関係では役務を提供する場所,あるいは提供する役務の質(業種)を示すものとして,自他役務の識別標識としての機能は弱く,原則としてそこに出所識別機能\としての称呼,観念は生じないと認められる。一方,「モンテローザ」の文字部分は,上記のとおり,アルプス山脈中の山の名前を意味する語であり,外国の自然地名ではあるが,具体的にイタリアの山の名前であることを知らない者にとっても,語感の響きから何となくヨーロッパの地名に由来するような印象を与えるしゃれた語であって,日本に多数存在する喫茶店の別名として定着している「カフェ」の業態を特定ないし識別する部分ということができるから,役務の自他識別標識として強く支配的な印象を与え,その機能を果たし得るものと認められる。そうすると,本件商標は,「モンテローザ」の文字部分と「カフェ」の文字部分を一体として観察することが取引上自然といえるまでに結合していると認めるのは相当でなく,むしろ,自他識別標識としての機能\を果たし得ると認められる「モンテローザ」の部分を抽出して,引用商標との類否判断をするのが相当である。

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平成23(行ケ)10085 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年09月20日 知的財産高等裁判所

 「TVプロテクタ」と「PROTECTOR」が非類似と判断されました。
 外観について,指定商品の関係でみても「プロテクタ」の部分に識別力があるとすべき事情は認められないので,本願商標は欧文字と片仮名文字を組み合わせた「TVプロテクタ」として観察されるのに対し,引用商標は欧文字の「PROTECTOR」として観察され,全体として両者は外観が異なる。観念について,本願商標からは特定の観念が生じず,仮にテレビジョン受信機を保護する何らかの装置との観念が生じ得るとしても,引用商標は,保護する装置,保護者等の観念そのものであるから,保護する装置等の観念部分が共通するとはいっても,全体としてみれば,両者は観念において異なる。称呼についても,本願商標からは「ティーヴィープロテクタ」の称呼が生じるのに対し,引用商標からは「プロテクター」又は「プロテクタ」の称呼が生じるもので,「プロテクタ」の部分は共通するものの,全体としてみれば称呼は異なる。以上のとおり,本願商標と引用商標とは,その外観,観念,称呼において異なるところ,この対比結果につき,取引の実情に関し特に斟酌すべき事実は認められない。したがって,本願商標と引用商標は類似するということはできない。
・・・
イ 被告は,本願商標の観念及び称呼について,本願商標中「TV」部分は,指定商品「電気通信機械器具」に含まれる「テレビジョン受信機」を意味する略語であるから,当該指定商品に使用する場合には出所識別機能を有しないが,「プロテクタ」部分については,商品の品質等を直ちに表\示するものではなく,出所識別機能を有するから,本願商標中「プロテクタ」部分が要部として認識され,この部分からも観念及び称呼が生じると主張する。確かに,本願商標中「TV」部分は,指定商品「電気通信機械器具」に含まれる「テレビジョン受信機」を意味する略語であるから,これを指定商品「テレビジョン受信機」に使用する場合には出所識別機能\を有しないといい得る。しかしながら,テレビジョン受信機は「電気通信機械器具」の一部にすぎないし,他方において,本願商標中「プロテクタ」部分についても,当該部分は「保護する装置」との意味を有する英単語の片仮名表記と解されるところ,指定商品「電気通信機械器具」に含まれる「電気通信機械器具の部品及び附属品」には,その性質上,電気通信機械器具を静電気,電波,磁気,衝撃等から保護するための装置が包含されると解される(特に,「電気通信機械器具の部品及び附属品」に含まれる「保安器」は,雷から電気通信機械器具を「保護する装置」である。)から,「プロテクタ」部分を指定商品「電気通信機械器具」に使用するか,少なくともこれに含まれる「保安器」に使用する場合には,出所識別機能\は極めて低いものといえる。そもそも「TV」も「プロテクタ」も普通名詞として一般に通用している語であることも踏まえ,上記の検討にかんがみると,本願商標中「TV」部分と「プロテクタ」部分は,それぞれ異なる指定商品との関係において出所識別標識としての機能がないか,極めて低いものであって,出所識別標識としての機能\に差異があるとはいえない。したがって,本願商標においては,「TVプロテクタ」全体が一体のものとして把握されると理解するのが自然であり,本願商標中「プロテクタ」部分のみを要部として抽出することは不相当というべきであり,この部分からも称呼及び観念が生じるとする被告の上記主張は採用することができない。

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平成23(行ケ)10086 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年09月14日 知的財産高等裁判所

 商標法4条1項15号,19号違反でないとした審決が維持されました。
 本件商標中の「小売等役務商標の査定ないし商標登録」の効力の及ぶ範囲について検討する。上記のとおり,「小売等役務商標の査定ないし商標登録」行為は,独占権を付与する行政行為等であるから,独占権の範囲に属するものとして指定される「役務」は,例えば,「金融」,「教育」,「スポーツ」,「文化活動」に属する個別的・具体的な役務のように,少なくとも,役務を示す用語それ自体から,役務の内容,態様等が特定されることが必要不可欠であるといえる。ところで,「小売役務商標」は,上記の,独占権の範囲を明確にさせるとの要請からは大きく離れ,「小売の業務過程で行われる」という経時的な限定等は存在するものの,「便益の提供」と規定するのみであって,提供する便益の内容,行為態様,目的等からの明確な限定はされていない。「便益の提供」とは「役務」とおおむね同義であるので,仮に何らの合理的な解釈をしない場合には,「便益の提供」で示される「役務」の内容,行為態様等は,際限なく拡大して理解,認識される余地があり,そのため,商標登録によって付与された独占権の範囲が,際限なく拡大した範囲に及ぶものと解される疑念が生じ,商標権者と第三者との衡平を図り,円滑な取引を促進する観点からも,望ましくない事態を生じかねない。例えば,譲渡し,引渡をする「物」等(小売の対象たる商品,販売促進品,景品,ソフトウエア,コンテンツ等を含む。)に登録商標と同一又は類似の標章を付するような行為態様について,これを,小売等役務商標に係る独占権の範囲から,当然に除外されると解すべきか否かについても,明確な基準はなく,円滑な取引の遂行を妨げる要因となり得るといえる。上記の観点から,本件について検討する。
 まず,「特定小売等役務」においては,取扱商品の種類が特定されていることから,特定された商品の小売等の業務において行われる便益提供たる役務は,その特定された取扱商品の小売等という業務目的(販売促進目的,効率化目的など)によって,特定(明確化)がされているといえる。そうすると,本件においても,本件商標権者が本件特定小売等役務について有する専有権の範囲は,小売等の業務において行われる全ての役務のうち,合理的な取引通念に照らし,特定された取扱商品に係る小売等の業務との間で,目的と手段等の関係にあることが認められる役務態様に限定されると解するのが相当である(侵害行為については類似の役務態様を含む。)。次に,「総合小売等役務」においては,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る各種商品」などとされており,取扱商品の種類からは,何ら特定がされていないが,他方,「各種商品を一括して取り扱う小売」との特定がされていることから,一括的に扱われなければならないという「小売等の類型,態様」からの制約が付されている。したがって,商標権者が総合小売等役務について有する専有権の範囲は,小売等の業務において行われる全ての役務のうち,合理的な取引通念に照らし,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る各種商品」を「一括して取り扱う」小売等の業務との間で,目的と手段等の関係にあることが認められる役務態様に限定されると解するのが相当であり(侵害行為については類似の役務態様を含む。),本件においても,本件商標権者が本件総合小売等役務について有する専有権ないし独占権の範囲は上記のように解すべきである。
 そうだとすると,第三者において,本件商標と同一又は類似のものを使用していた事実があったとしても,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る各種商品」を「一括して取り扱う」小売等の業務の手段としての役務態様(類似を含む。)において使用していない場合,すなわち,i)第三者が,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る」各種商品のうちの一部の商品しか,小売等の取扱いの対象にしていない場合(総合小売等の業務態様でない場合),あるいは,ii)第三者が,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る」各種商品に属する商品を取扱いの対象とする業態を行っている場合であったとして,それが,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う」小売等の一部のみに向けた(例えば,一部の販売促進等に向けた)役務についてであって,各種商品の全体に向けた役務ではない場合には,本件総合小売等役務に係る独占権の範囲に含まれず,商標権者は,独占権を行使することはできないものというべきである(なお,商標登録の取消しの審判における,商標権者等による総合小売等役務商標の「使用」の意義も同様に理解すべきである。)。「総合小売等役務商標」の独占権の範囲を,このように解することによって,はじめて,他の「特定小売等役務商標」の独占権の範囲との重複を避けることができる。

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平成23(行ケ)10040 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年06月29日 知的財産高等裁判所

 類似する商標であるとした審決が取り消されました。
 本件商標と引用商標は,「シュープ」の称呼を生じ得る点で称呼において類似するものの,外観において相違する。また,特定の観念は生じないと解されるから,観念において類否を判断することはできない。また,本件商標に係る取引の実情をみると,原告は,前記1の(4)のとおり,商標「CHOOP」について,長期にわたり,指定商品等への使用を継続してきたこと,雑誌,新聞,テレビや飛行機内での番組提供,テレビCM等を利用して,宣伝広告活動を実施してきたこと,ファションブランド誌や業界誌にも紹介されていること,「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッションブランド」を想起させるものとして,需要者層を開拓してきたこと,その結果,同商標は,ティーン世代の需要者に対して周知となっていることが認められる。他方,引用商標を構成する「Shoop」の欧文字は,「セクシーなB系ファッションブランド」を想起させるものとして,需要者層を開拓してきた,そして,商標「CHOOP」の使用された商品に関心を示す,「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッション」を好む需要者層と,引用商標の使用された商品に関心を示す,いわゆる「セクシーなB系ファッション」を好む需要者層とは,被服の趣向(好み,テイスト)や動機(着用目的,着用場所等)において相違することが認められる。そうすると,本件商標と引用商標とは,外観が明らかに相違し,取引の実情等において,原告による「CHOOP」商標が広く周知されていること,需要者層の被服の趣向(好み,テイスト)や動機(着用目的,着用場所等)が相違することに照らすならば,本件商標が指定商品に使用された場合に取引者,需要者に与える印象,記憶,連想は,引用商標のそれとは大きく異なるものと認められ,称呼を共通にすることによる商品の出所の誤認混同を生じるおそれはないというべきである。\n

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平成23(行ケ)10004 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年06月28日 知的財産高等裁判所

「アイテック阪急阪神」が引用商標「アイテック」に類似するとした審決が取り消されました。
 本願商標は,中央から右端にかけて,やや大きな「アイテック阪急阪神」の文字と小さな「株式会社」の文字が黒色で横書きされ,その左側に,「h」の欧文字を2つ重ねたものと理解することができるか,あるいは,上下の波形のようにも見える青色のやや大きな図形を表し,その図形の左下に,青色で右に少し傾いた小さな「i−TEC」の二重文字を横書きしてなるものである。そして,i)「アイテック阪急阪神」の文字が,同じ大きさで一体として記され,中央の大きな面積を占めていること,他方で,ii)「株式会社」の文字は小さく,会社組織を示す一般的な語であること,iii)「i−TEC」の文字は,小さく左下隅に配されており,しかも,「アイテック」の称呼が生じることからすると,中央の「アイテック阪急阪神」の文字部分のうち「アイテック」の部分を欧文字で表すものとして,「アイテック阪急阪神」の文字部分に従属するものと理解されること,iv)図形部分も一見しただけではいかなる意味を持つか理解しにくいものであることからすると,本願商標に接した需要者等は,中央の「アイテック阪急阪神」の文字部分を一体のものとして強く意識することが多いものと認められる。また,「アイテック阪急阪神」の文字部分からは,「アイテックハンキュウハンシン」の称呼を生じるが,この程度であれば,商標として冗長というほどではない。加えて,「i−TEC」の文字や「アイテック」の文字部分は造語ではあるものの,特徴的な外観,観念,称呼を有するものではない。そして,「i」がインフォメーションの頭文字として多方面で使用される欧文字であり,「TEC」もテクノロジーなる科学技術一般を指す単語を表す3文字の欧文字として思い付きやすく語呂のよい文字群であって我が国で広く使用されていることから,「i−TEC」の文字はこの2つを結び付けたにすぎないものとして,識別力において強い印象を与えないのに対して,「阪急阪神」の文字部分は,関西を本拠とする著名な私鉄である阪急と阪神を中心とし,近時村上ファンドの動きにより実現した企業グループのホールディングスとして世間の耳目を集めた阪急阪神グループの略称であって,特に強い印象を与えるものである。このような本願商標においては,「アイテック阪急阪神」の文字部分が一体として把握され,強い自他商品識別力を有するものと理解し,そこに要部を認めるのが自然であり,「i−TEC」の文字や「アイテック」の文字部分だけを抽出して他人の商標との類否を判断するのは相当ではない。次の3における判断においては,この要部を中心に対比するのが相当である。\n

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平成22(行ケ)10339 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年06月06日 知的財産高等裁判所

 商標について取引の実情を考慮して、非類似と判断されました。
 証拠(甲17の1〜3,甲18の1〜6,甲19の1ないし4,甲20の1ないし4,甲21の1ないし3,乙13)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成20年1月より,本願商標を使用したヒアルロン酸及びコラーゲン配合の健康食品(原告商品)の販売を開始したこと,その商品名は「本草製薬の潤煌」であり,実際の取引において原告は「潤煌」の部分につき「ウルオウ」と称呼して原告商品を販売していること(したがって,電話による取引においても「ホンゾウセイヤクノウルオウ」若しくは「ウルオウ」という称呼で取引されているものと推認される。),原告商品は1包2グラムの粉末であり,20包入りと60包入り等の箱で販売されているが,その箱の表面中央及びスティック状の各包の表\\面に本願商標が使用されており,また,インターネット上の広告においても,本願商標が中央に大きく表示された原告商品の箱の写真を掲載し,商品名を「本草製薬の潤煌」と明記して販売していること,一方,引用商標1のうち「潤甦」の文字が付された商品は,その商標権者が販売する「コンドロビー濃縮液」と称する720ミリリットル瓶(甲21の1,2)に詰められた清涼飲料水(コンドロイチン硫酸含有食品)であり,瓶のラベル及びその瓶を収納する箱に,黒い縁取りのある金色の文字で「潤甦」と大きく表\\示され,その上段に小さく平仮名で「じゅんこう」と表示されており,その全体的な表\\記はほぼ引用商標3と同一であることが認められる。そうすると,本願商標が使用されている原告商品と引用商標1及び3が使用されている商品とは双方とも健康食品であるという点では共通性があるものの,商品の構成及びその販売形態は著しく異なるものと認められるから,実際の取引においては,商品の出所の誤認混同をきたすおそれがあるとはいえない。\n

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平成23(行ケ)10003 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年05月17日 知的財産高等裁判所

 商標「出版大学」を大学以外の者が使用することは、役務の提供主体を誤認させるとして拒絶した審決が維持されました。拒絶根拠条文は4条1項7号です。
 このように,日本においては学問ないし学術分野として「出版学」と称して,出版に関する学術の研究等がなされ,大学における教授の対象となっていること,「教育内容を想起させる語+『大学』」という組合せからなる名称の大学が少なからず存在することからすれば,本願商標を構成する「出版大学」の文字部分は,学校教育法に基づいて設置された大学の名称を表\示したものであるかのように看取され観念される可能性が高いというべきである。そして,本願商標の指定役務には「技芸・スポーツ又は知識の教授」があり,この中には,学校教育法で定める学校において知識等を教授し又は教育する役務が含まれるところ,学校教育法に基づいて設置された大学の名称(出版大学)と看取される可能\性の高い文字部分を含む本願商標を上記役務に使用するときには,これに接する一般需要者に対し,当該役務の提供主体が,あたかも学校教育法に基づいて設置された大学であるかのような誤認を生じさせるおそれがあるというべきである。学校教育法は,1条で「この法律で,学校とは,幼稚園,小学校,中学校,高等学校,中等教育学校,特別支援学校,大学及び高等専門学校とする。」,3条で「学校を設置しようとする者は,学校の種類に応じ,文部科学大臣の定める設備,編制その他に関する設置基準に従い,これを設置しなければならない。」,135条1項で「専修学校,各種学校その他第1条に掲げるもの以外の教育施設は,同条に掲げる学校の名称又は大学院の名称を用いてはならない。」と規定しているところ,これは,一定の教育又は研究上の設置目的を有し,法令に定める設置基準等の条件を具備する同法1条に定める学校の教育を公認するとともに,1条に掲げる学校以外の教育施設が1条掲記の「学校の名称」を用いることによって,これに接した者が当該教育施設の基本的性格について誤った認識を持ち,不利益を被らないようにするためのものと解される。このような学校教育法の規定からすると,「大学」との名称を用いる教育施設は,学校教育法所定の最高学府であると一般に認識されるものであるから,本願商標によって生じる前記のような観念からすると,本願商標が使用される役務次第では,このような意味を持つ「出版」という学問,研究分野についての大学に関連する商標との認識が持たれることになりかねない。原告が主張するところによっても,原告は教育施設を擁するものではないから,「大学」という名称を用いても直ちに学校教育法135条1項の規定に違反するとはいえないかもしれない。しかしそうだとしても,学校教育法に基づいて設置された大学を表示するものと誤認されるおそれのある本願商標をその指定役務に含まれる「技芸・スポーツ又は知識の教授」の役務に使用することになれば,これに接した需要者に対し,役務の提供主体があたかも学校教育法に基づいて設置された大学であるかのように誤認を生じさせることになり,教育施設である「学校」の設置基準を法定した上で,この基準を満たした教育施設にのみその基本的性格を表\示する学校の名称を使用させることによって,学校教育制度についての信頼を維持しようとする学校教育法135条1項の趣旨ないし公的要請に反し,学校教育制度に対する社会的信頼を害することになるというべきである。

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平成22(行ケ)10327 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年04月27日 知的財産高等裁判所

 指定役務「資金の貸し付け」について、取引の実情等を総合考慮して出所混同のおそれはないと判断し、拒絶審決が取り消されました。
 本願商標からは,別紙商標目録1に記載したとおりの「MITSUI SUMITOMO CARD Gold Loan」の外観を呈し,「ミツイスミトモカードゴールドローン」ないし「ゴールドローン」との称呼を生じさせる。本願商標から,特定の観念は生じないというべきであるが,原告である三井住友カード株式会社の提供するローンの種類であるとの観念を生じさせることもあり得るといえる。これに対し,引用商標からは,別紙商標目録2に記載したとおり「CitiGold Loan」の外観を呈し,「シティゴールドローン」ないし「シティゴールド」との称呼を生じさせるが,特定の観念は生じない。なお,「シティゴールド ローン」ないし「シティゴールド」から,需要者,取引者に対して,シティバンク銀行株式会社等が属するシティグループが提供する,ローンないし金融サービスとの観念を生じさせることもあり得るといえる。以上の事実を前提とすれば,本願商標と引用商標とは,その外観,称呼において相違する。また,観念においては,特定の観念が生じないので,対比することはできないが,観念が生じるとすれば,その限りで相違する。さらに,本願商標及び引用商標の指定役務は,いずれも「資金の貸付け」であるところ,一般に,その需要者,取引者である資金の借主にとっては,資金の貸主が誰であるかは,最も重要な要素の一つであるから,契約を締結するに当たり,相応の注意を払った上で,貸主が誰であるかを確認するものと推認されることなど,指定役務の内容を含めた取引の実情等を総合考慮するならば,取引者,需要者において,両商標における役務の出所について混同を来すおそれは認められないと解すべきであって,両商標は類似しない。・・・被告は,本願商標及び引用商標の指定役務である「資金の貸付け」を取り扱う業界においては,商品及び役務の主体を表示する代表\的な出所表示(ハウスマーク)とともに,商品及び役務の種類を個別化して特定するための個別商標(ペットマーク)を使用している実情があり,引用商標についても,「Citi」がハウスマークに相当し,「Gold Loan」がペットマークに相当すると主張する。しかし,前記認定した取引の実情に照らすならば,引用商標は,「CitiGold」の部分が取引者,需要者に対して役務の出所の識別標識として強く支配的な印象を与えるから,「Citi」の部分を除外した「Gold Loan」の文字部分が,自他役務の識別標識としての機能を果たすとすることは考えにくい。のみならず,本件全証拠によるも,引用商標について,「Gold Loan」の文字部分が,独立して自他役務の識別標識としての機能を果たしていると認めるに足りる証拠は存在しない。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。\n

◆判決本文

◆関連事件です。こちらは,「CitiGold Loan」と「Gold Loan」それ自体が非類似と判断されました。平成22(行ケ)10327

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平成22(行ケ)10332 審決取消 商標権 行政訴訟 平成23年04月25日 知的財産高等裁判所

 「天下米」が引用商標「天下」に類似するとして4条1項11号違反とした拒絶審決が維持されました。原告は、「天下米」と原告会社名「土橋商店」を検索エンジンで検索したところ1万2800件ヒットするので、周知であり識別可能と主張しましたが、これも認められませんでした。
 原告は,インターネット上,本願商標の「天下米」と原告名「土橋商店」をキーワードとして検索すると,多数ヒットすることからすれば,本願商標「天下米」と原告は決して無名ではなく,相当広い範囲で周知であると主張するが,広くインターネットが普及した現代社会において,この程度の事実によって,原告と本願商標との結びつきが全国的にみた一般需要者にとって周知であるとまで認めるには足りない。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10257 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年12月22日 知的財産高等裁判所

 標章「EXTRIMA」が引用商標「Exstreamer」と類似するとした審決が維持されました。
 本願商標からは,その構成全体に対応した「エクストリマ」の,引用商標からは,(エクストリーマー)の称呼がそれぞれ生ずるものである。両称呼は,語頭から続く「エ」「ク」「ス」「ト」「リ」「マ」の各音が共通するものであり,第5音の,「リ」と(リー),第6音の,「マ」と(マー)について,いずれも長音(ー)の有無という差異を有するにすぎないものである。引用商標の(リー)及び(マー)の長音は,実際に発音する際,その前音である「リ」又は「マ」の母音に吸収されやすく,しかも,各音は,引用商標の構\成における中間から語尾に位置することから,長音を有するか否かの相違は,明瞭に聴取することが困難ということができる。したがって,本願商標及び引用商標は,それぞれ一連に称呼するときは,その語調,語感が近似するものであって,称呼上類似の商標というべきである。

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平成22(行ケ)10102 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年09月27日 知的財産高等裁判所

引用商標から「WORLD」を分離認定できるかが争われました。裁判所は、分離できないとして、拒絶審決を取り消しました。
 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。そして,複数の構成部分を組み合わせた結合商標を対比の対象とする際には,まずは結合商標の外観,観念,称呼の態様を総合的に観察してみて,一体のものとして対比の対象とするのか分離して対象とするのかを決し,その上で,具体的な取引の実情が認定できる場合には,その状況も踏まえて,不可分なものとするのか,それとも分離しその一部を抽出してみるのかを決すべきである。引用商標2は,茶色の「W」と思しきアルファベット1文字をレタリングしたものに,黄土色の「C」を組み合わせてロゴ化した図形を表\し,その下にややデザイン化された「WORLD」の欧文字を茶色で大きく横書きし,さらにその直下に「collezione」の欧文字を茶色で小さく横書きして成るものである。そして,「WORLD」の文字と「collezione」の文字は大小の差はあるものの,同一の色彩からなる丸みを帯びた文字で近接して書されていること,引用商標2の上部に配された図形は,「WORLD」の頭文字「W」と「collezione」の頭文字「C」をモノグラム化したものと容易に理解できること,「WORLD」の単語は「世界」を意味する日本人にとってなじみが深く,それだけでは商標の印象が薄いのであり,指定商品分野においてイタリア語を使用する頻度が低くないと一般に認められることも合わせると,取引者,需要者は,引用商標2の構成中の「WORLD」の文字と「collezione」の文字を一体のものとして把握することが多いと認めることができる。そして,「collezione」の語が後記のとおりの意味を持つイタリア語であることは別にしても,本願商標及び引用商標の指定商品の分野に関係する者にとって,その語から「コレツィオーネ」との称呼を連想させ,全体として「ワールドコレツィオーネ」と称呼し,しゃれた語感を持つ商標との印象を与えるものということができる。この全体の称呼は短いものではないが,商標として長すぎるものでもなく,「コレツィオーネ」を切り離して引用商標2を把握することは,「WORLD」の語の前記位置づけからすれば,引用商標2それ自体の態様でみる限り,むしろ引用商標2の自他商品識別力を弱めるものといわなければならない。そうすると,引用商標2の少なくとも下部の「WORLD」と「collezione」の文字部分は,一体として把握するのが自然であり,引用商標2の一部である「WORLD」の文字部分だけを抽出しこれを他人の商標と比較して商標の類否を判断するのは相当でない。このように,引用商標2自体の態様において既に引用商標2は一体のものとして対比の対象とすべきであるが,後記(4)に認定の引用商標2の取引の実情にかんがみても,同様の判断となる。

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平成21(行ケ)10262 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年09月14日 知的財産高等裁判所

 スマイルマークの図形商標について、4条1項7号、15号、19号等の違反なしとして審決が維持されました。
 証拠(当裁判所において顕著な事実を含む,当庁平成21年(行ケ)第10267号事件,同第10339号事件)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。(1) 日本においては,昭和45年ころから,アメリカで既に大流行していた「スマイル・マーク」に似た「ニコニコ・マーク」,「ラブ・ピース」が流行した。(2) その後,同マークの流行は収まったが,原告は,米国では米国人H が「スマイル・マーク」の創作者であるとされていたことから,平成10年以降,米国のハーベイ・ボール財団をライセンス元とする「スマイル・マーク」のライセンス契約を締結し,許諾された「スマイル・マーク」に関するサブ・ライセンス契約を締結し,現在まで,日本における同マークの商品化事業を継続してきた。そして,原告は,米国のハーベイ・ボール財団の日本支部として,「スマイル・マーク」に係る事業を行っている有限会社ハーベイ・ボール・スマイル・リミテッドの社会的活動を支援している。(3) 他方,フランス人である被告は,平成9年ころ,来日し,当時の代理人であったイングラム社と共同で記者会見を行い,イングラム社は,平成9年2月11日付け及び同年4月10日付けの日本経済新聞において,「スマイルマークは登録商標です。」「私を勝手に使わないで!」「日本においてスマイルマークを使用される場合は,Y 氏及び弊社の事前承認が必要となります。」などとする全面広告による警告を行った。その後,当時のイングラム社について「詐欺ビジネスを行っている。」旨放送した「エフエム東京」に対し,イングラム社は,営業妨害又は信用棄損に当たるとして東京地方裁判所に提訴したが,2審(東京高等裁判所平成11年(ネ)第5027号事件)において,平成12年1月19日,敗訴判決の言渡しを受けた。同判決は,i)被告は日本において「スマイル・マーク」の出願をしている者にすぎず,第三者に対して差止請求をし得る商標権者ではなく,「スマイル・マーク」の創作者でも著作権者でもない,ii)被告が「スマイル・マーク」の創作者,著作権者であり,「スマイル・マーク」が登録商標であるなどとする広告内容は虚偽であり,イングラム社の許諾なしに「スマイル・マーク」を使用することができないことを前提として,イングラム社が,同人との間でライセンス契約を締結するよう宣伝することは,被告の詐欺的商法に加担したと言われてもやむを得ない,iii)被告又はイングラム社の商法について「国際的詐欺ビジネスの様相を見せ始めている」と形容することも,あながち不当ではないというべきであるなどと認定して,イングラム社の請求を棄却した。同判決は,日本国内において広く新聞報道された。2 商標法4条1項7号に係る判断の誤りについて(1) 原告は,本件商標を構成する図柄が,第三者(故H)の有する著作権の範囲に含まれることを理由に,本件商標は,商標法4条1項7号に該当する商標である旨主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり理由がない。すなわち,登録商標に係る図柄等について,第三者の有する著作物に係る支分権(複製権,翻案権等)の範囲内に含まれることがあったとしても,商標法及び著作権法の趣旨に照らすならば,そのことのみを理由として当然に当該商標が商標法4条1項7号所定の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものということはできない。そうすると,仮に,本件において,原告が主張するとおり,1963年に故Hが引用図形(別紙「商標目録」記載(2)引用図形参照)を著作,創作したものであり,本件商標がその著作権の範囲内に含まれるとしても,そのことのみをもって本件商標が,商標法4条1項7号に該当するとはいえない。また,原告が主張するとおり,1960年代後半から1970年代に,米国で「スマイル・マーク」が流行し,我が国においても「スマイル・マーク」がブームを招いたという事情を併せて考慮しても,i)H 自身は,「スマイル・マーク」について商標登録をする意思もなく,第三者が自由に「スマイル・マーク」を使用することを容認し,金銭的な見返りを求めていなかったものと窺えること(当裁判所に顕著な事実・当庁平成21年(行ケ)第10339号事件),ii)原告が「スマイル・マーク」関連商品の商品化事業を日本で進めるようになったのは,平成10年2月2日にハーベイ・ボール財団との間で「スマイル・マーク」のライセンス契約を締結してから以降のことであり(当裁判所に顕著な事実・当庁平成21年(行ケ)第10267号事件,同第10339号事件),さらに,本件訴訟の原告の主張によっても,原告が支援しているハーベイ・ボール財団の日本支部による慈善活動等が日本国内において行われるようになったのは平成14年以降のことであるから,被告には,平成8年12月17日の本件商標の出願当時において,原告主張の慈善活動等によって形成された「スマイル・マーク」の良好なイメージに便乗する意図はなかったと認められることに照らせば,本件商標が,商標法4条1項7号所定の商標に該当するものであると認めることはできない。

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平成22(行ケ)10094 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年08月19日 知的財産高等裁判所

 「AERIE」が「エアリー」と類似するとした拒絶審決が取り消されました。
 本願商標は,「AERIE」との5文字の欧文字からなるところ,小学館ランダムハウス英和大辞典第2版(乙1)によれば,その英語での発音は「ɛə ri」又は「iə ri」とされる(もっとも,公刊されたいくつかの英和辞典によれば,この英単語にはそのほかに数種類の発音があり,英語を母国語とする者の間でも,これといった定まった発音はないようである。)。そうだとすれば,この英単語を日本語で発音した場合には,「アエリー」ではなく「エアリー」又は「イアリー」と発音するのが,英語の発音に近いということになる。しかしながら,「aerie」は,いわゆる難語というべきであって,我が国において広く親しまれているとはいえない。そうすると,我が国において,常に「aerie」が「エアリー」と英語の発音に近く読まれるとは限らず,この英単語に接した者は何と発音してよいか分からず,ローマ字読みで「アエリー」又は「アエリ」と読まれることもあるものと解される。これに対し,被告は,「エアロビクス」と「Aerobics」,「エアゾール」と「Aerosol」とが,それぞれ併記されて使用されている例があるとして,乙2の1ないし2の4を挙げるところ,これらの証拠からすれば,「Aerobics」と「エアロビクス」,「Aerosol」と「エアゾール」が併記されて使用されている事例が散見されるといえるが,被告の指摘する例は空気を意味する「aero」の場合に限られており,我が国において,「Aer」が通常「エア」と読まれるとか,「Aerie」を「エアリー」と読むのが原則であるなどとはいえない。このほか,被告は,「aerie」が「エアリー」と読まれている事例があるとして,乙3ないし乙6の3を挙げるところ,これらの証拠からは,「aerie」が「エアリー」と読まれたり,両者が併記されている事例があることが認められる。しかし,他方で,証拠(甲9)からすれば,「aerie」を「アエリー」として読んだり,併記したりしている事例も多数ある。以上からすれば,「aerie」については,英語の発音に近く「エアリー」や「エアリ」と読まれる場合と,ローマ字読みで「アエリー」や「アエリ」と読まれる場合のいずれもあり得るというべきである。
・・・・
以上の諸事情を総合的に考慮すると,本願商標と引用商標の外観は大きく異なっている上,称呼上も,同じ場合だけでなく異なる場合もあるから,たとえ両商標が,観念につき比較できないとしても,両商標には誤認混同のおそれがなく,類似していないというべきである。

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平成21(行ケ)10297 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年08月19日 知的財産高等裁判所

 商標法4条1項7号違反でないとした審決が取り消されました。
 以上のとおり,被告の本件商標の出願は,ASUSTeK社若しくはASRock社が商標として使用することを選択し,やがて我が国においても出願されるであろうと認められる商標を,先回りして,不正な目的をもって剽窃的に出願したものと認められるから,商標登録出願について先願主義を採用し,また,現に使用していることを要件としていない我が国の法制度を前提としても,そのような出願は,健全な法感情に照らし条理上許されないというべきであり,また,商標法の目的(商標法1条)にも反し,公正な商標秩序を乱すものというべきであるから,出願当時,引用商標及び標章「ASRock」が周知・著名であったか否かにかかわらず,本件商標は「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである。
エ したがって,本件商標に,商標法4条1項7号を適用することができないとした審決の判断には誤りがある。

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平成21(行ケ)10396 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年07月21日 知的財産高等裁判所

 図形と文字の結合商標について、文字部分の称呼が非類似と判断されました。
 本願商標からは,前記(1)アで認定したとおり,その文字部分全体から・・・の称呼と下段の「ROKICO.,Ltd.」から「ロキシーオーエルティーディー」又は「ロキカンパニーリミテッド」の称呼が生じるとともに,「ロキ」の称呼も生じるものと認められる。他方,引用商標1は,前記(2)アで認定したとおり,「ROKI」の欧文字4字をデザイン化している図形と一応視認できるものと解されるから,「ロキ」の称呼が生じるものと認められるが,本願指定商品の取引者,需要者にあっては,図形の意味が把握できず,必ずしも明確に「ロキ」と称呼できない場合もあるものと推測される。したがって,本願商標と引用商標1とは,その称呼において一応共通するものの,場合によっては相違することもあるものと解される。(エ) 本願商標の使用態様証拠(甲23,73〜110)によれば,原告は,インターネット上での自らのウェブサイト,新聞・雑誌における広告や設置した看板,製造納品する製品及び製品の包装,対外的な取引関係書類等において,本願商標をその図形部分及び文字部分全体を一体として使用するとともに,社報や社内手続書類,社用車,名刺,社員証などの社内物品においても,本願商標全体を一体として使用しているものと認められる。そうすると,本願商標は,その文字部分と図形部分とが切り離されて使用されたり,図形部分中の「ROKI」の部分のみが使用されることは極めて少ないものと解される。(オ) 類否判断以上の本願商標と引用商標1との外観,観念,称呼についての比較検討の結果を踏まえて,全体的に考察すると,両商標は,称呼について共通する場合があるものの,外観において大きく相違し,観念においても比較できないものと認められるところ,「商標の外観,観念または称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,従って,右三点のうちその一において類似するものでも,他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって,なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては,これを類似商標と解すべきではない。」(最高裁昭和39年(行ツ)第110号昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁)といえるから,本願商標がその図形部分と文字部分とが常に一体として使用されているという取引の実情も考慮すれば,本願商標を使用した商品が引用商標1を使用した商品とその出所につき誤認混同を生ずるおそれは極めて少ないものといえる。したがって,審決が,本願商標と引用商標1とが称呼において共通する場合があることのみを重視し,両商標が類似すると判断したことは誤りであり,この点に関する原告の取消事由3には理由がある。

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平成21(行ケ)10409 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年06月28日 知的財産高等裁判所 

 商標「E-watching」と、「watching」が類似するとした審決が維持されました。
 本願商標の前半部の「e」の文字は,「英語アルファベットの第5字,文字eが表す音,electric(電機の)の略語」(新英和大辞典,乙3),「アルファベットの五番目の文字,音名の一つであるホ音,東又は東経を表す符号,自然対数の底,電気素量を表\す記号,電子を表す記号,エネルギーを表\す記号」(広辞苑第六版,乙2の2)といった意味を有する語であり,「電子の,インターネットの」という意味も有するから(現代用語の基礎知識2010年版,乙4の1),電気製品又は電子機器を含む本願指定商品との関係で,「electric(電気の)」の略語,「電子」あるいは「インターネットを介した」といった意味合いで理解されると解される。そして,最近の取引の実情から「e」の文字部分が「エコロジー(環境にやさしい)」(ecology)といったイメージを有することもあると考えられる。そして,インターネットを利用した電気製品又は電子機器,あるいは環境に配慮した電気製品又は電子機器を製造する業者は多数存在する上,「e」の文字部分(1文字)が電気やインターネットを利用すること,あるいは環境に配慮していることを示す略語としてハイフンに続く語に対し接頭語のように使用されていることに照らすと,「e」の文字部分から特定の商品の出所が識別できるとは考えがたい。そうすると「e」の部分からは出所識別標識としての観念は生じないというべきである。また,本願商標は,上記のとおり,前半部の「e」の文字部分と後半部の「watching」の文字部分が「−」(ハイフン)で連結して成るところ,構成中の「−」(ハイフン)は,言語表\記の補助符号であり,英文などで合成度の浅い複合語の連結,1語が行末までに収まりきれず2行にまたがる時のつなぎ,又は,1語内の形態素の区切りを明確にするのに使われるものである(広辞苑第六版,乙2の1)。そうすると,本願商標は,複数の言葉の連結又は1語内の形態素の区切りの明確化というハイフンのなす役割自体からして,「」と「」の各文字部分とを分離して看取することは可能であると考えられる上,「e‐watching」の語が取引社会において一連一体の語句として特定の意味合いをもって一般に親しまれていると認めることもできないから,本願商標の構\成部分である「」の文字部分と「」の文字部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものということはできない。さらに,「watching」の文字部分は,8文字からなっていて,1文字である「watching」の8倍の長さがあるのみならず,英語で「観察,監視」(ポケットプログレッシブ英和辞典〔甲12〕,ランダムハウス英和大辞典〔乙5の1〕)の意味を有する語であって,日本においても比較的親しまれた語であり,本願商標はその一部である「watching」の文字部分だけによって簡略に称呼,観念されることもあると認めることができる。そうすると,本願商標は,複数の構成部分の結合度が浅くそれを分離して観察することが取引上不自然でないと認めるのが相当であるから,本願商標のうち「watching」の文字部分を分離して,本願商標と引用商標との類否判断をすることは許されると解される。

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平成21(行ケ)10411 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年04月28日 知的財産高等裁判所

 非類似であるとして無効理由無しとした審決が、取り消されました。
 本件商標は,「アスリートレーベル」の片仮名文字から成る結合商標である。本件商標を構成する「アスリート」は「運動選手,競技者」等,「レーベル」は「ラベル」と同義で「貼\\り紙,広告や標識のために貼る小さな紙片」等を意味する普通名詞である(岩波書店「広辞苑〔第6版〕」,三省堂「大辞林〔第2版〕」)。そして,前記(2)認定のとおり,本件商標の一部を構成する「アスリート」の部分が,需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者に対し,原告の商品を示すものとして周知性を獲得し,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから,本件商標のうち「アスリート」の部分だけを,原告の使用商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるものというべきである。イそうすると,本件商標からは,「アスリートレーベル」全体としてのみならず,「アスリート」の部分からも称呼,観念が生じるということができる。そして,後者の「アスリート」は,原告の使用商標のうち「アスリート」と同一の片仮名文字から成るものであり,両者とも「アスリート」という同一の称呼が生じ,「運動選手,競技者」という同一の観念が生じるから,その外観を考慮しても,両者は類似する。したがって,本件商標「アスリートレーベル」が医療用腕環に使用されるときは,本件商標中の「アスリート」は,需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者において,周知の原告の使用商標との出所を誤認混同するおそれがあるといわざるを得ない。ウしかるところ,1個の商標から2個以上の呼称,観念を生じる場合には,その1つの称呼,観念が登録商標と類似するときは,それぞれの商標は類似すると解すべきである(前掲最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決参照)。エよって,本件商標から生じる称呼,観念の1つである「アスリート」と原告の使用商標とが類似する以上,本件商標は,原告の使用商標と類似するものである。\n

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昭和21(行ケ)10152 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年04月27日 知的財産高等裁判所

 先行商標に類似するして無効とした審決が取り消されました。アンケート結果に対しても言及しました。
 以上からすれば,本件商標において,「POLO」部分のみが,取引者,需要者に対し,商品や役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとか,「RALPHLAUREN」部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないとはいい難い。そうすると,単に「POLO JEANS CO.」とあるだけでなく,その下に「RALPH LAUREN」との赤字部分がある本件商標において,その要部を「POLO」のみと解することは,その外観のみならず,取引の実情(「POLO」は本来普通名詞であるが,「RALPH LAUREN」と結びつくことによって,ラルフローレンのデザインに係る商品としての強い自他識別力が生じており,これを取引者,需要者も理解していること)にも反し,相当ではなく,本件商標における要部は,「POLO」部分及び「RALPH LAUREN」部分を併せたものというべきである。・・・・当裁判所は,前記2のとおり,本件商標の客観的構成や,本件アンケートの結果を除く取引の実情等から,本件商標と引用商標A及びCとは類似しない旨の結論を導いているものであって,当裁判所の上記判断は本件アンケートの結果に依存するものではない。ただ,本件アンケートは,上述したように,その手法等において手堅く合理性の高いものであり,したがって,そのアンケートの結果も,公正で控え目な結論を導こうとしているものとして,首肯しやすいものがあるところ,アンケートの結果によれば,本件商標に接した需要者には,被告の会社やブランドの存在を正確に知っている者は極めて少ないといえるのであるから,この点からも,当裁判所の上記判断は裏付けられるものということができる。\n

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平成21(行ケ)10228 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟平成22年03月29日 知的財産高等裁判所

 コーヒーの産地表示か否かが争われました。裁判所は、3条1項3号、4条1項16号違反とした審決を一部の指定商品について取り消しました。
 前記(1)認定の事実によれば,i)我が国においては,「YIRGACHEFFE」又は「イルガッチェフェ」(前記(1)のとおり「YIRGACHEFFE」の日本語表記にはいろいろなものがあるが,いずれも「YIRGACHEFFE」の日本語表\\記であると認められるので,以下それらを総称して「イルガッチェフェ」を用いる。)は,これが「コーヒー,コーヒー豆」に用いられる場合,コーヒー又はコーヒー豆の銘柄又は種類を指すものとして用いられることが多いこと,ii)我が国において,「イルガッチェフェ」が,エチオピアにおけるコーヒー豆の産地として用いられる場合があるが,その場合でも,上記銘柄又は種類としての「YIRGACHEFFE」又は「イルガッチェフェ」の産地として用いられていることが多いこと(「イルガッチェフェ」が「シダモ」の産地として用いられることもあったと認められるが,そのような例が多いとは認められない。),iii)上記銘柄又は種類としての「YIRGACHEFFE」又は「イルガッチェフェ」は,エチオピア産の高品質のコーヒー豆又はそれによって製造されたコーヒーについて用いられていることが認められる(なお,前記(1)の事実の中には,本件商標の登録査定日以後の事実が含まれているが,本件商標の登録査定日後1年以内の事実であり,本件商標の登録査定日前の事実と相まって,上記認定に用いることができると認める。)。以上の事実に,証拠(甲6〜8,21の1・2,23の1〜8,24の1・2,25〜27,44〜46,乙36の2,37,41,42)によれば,エチオピアの「イルガッチェフェ」(「YIRGACHEFFE」)という地名は,我が国の学校教育において使用されている地図(小学校,中学校,高校)はもとより,一般の地図にも掲載されておらず,辞書・事典類にも「イルガッチェフェ」(「YIRGACHEFFE」)の項目はないことが認められるから,一般に我が国においては,エチオピアの「イルガッチェフェ」(「YIRGACHEFFE」)という地名の認知度は低いものと認められることを総合すると,本件商標が,その指定商品である「コーヒー,コーヒー豆」について用いられた場合,取引者・需要者は,コーヒー豆の産地そのものというよりは,コーヒー又はコーヒー豆の銘柄又は種類,すなわち,エチオピア産(又はエチオピアのシダモ地方イルガッチェフェ地域産)の高品質のコーヒー豆又はそれによって製造されたコーヒーを指すものと認識すると認められる。そうすると,本件商標は,自他識別力を有するものであるということができる。また,前記(1)認定の事実によれば,上記銘柄又は種類としての「YIRGACHEFFE」又は「イルガッチェフェ」は,いろいろな業者によって使用されているのであるが,それがエチオピア産(又はエチオピアのシダモ地方イルガッチェフェ地域産)の高品質のコーヒー豆又はそれによって製造されたコーヒーについて用いられている限り,原告による品質管理の下でエチオピアから輸出されたコーヒー豆又はそれによって製造されたコーヒーについて用いられていることになるから,商標権者が原告である限り,その独占使用を認めるのを公益上適当としないということもできない。ウ したがって,本件商標登録が商標法3条1項3号が規定する「商品の産地又は品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するということはできないから,取消事由1は理由がある。・・・・前記3(1)ア認定のとおり,エチオピア国において産地によってコーヒーの風味が異なることからすると,産地に由来する本件商標をエチオピアのシダモ地方イルガッチェフェ地域産以外のコーヒー,コーヒー豆に使用した場合には,品質誤認を生ずるおそれがあるというべきである。そして,審決書記載のとおり,特許庁における平成20年10月28日の第1回口頭審理の結果によれば,指定商品中の「コーヒー」は「焙煎後のコーヒー豆及びそれを更に加工した粉状,顆粒状又は液状にした商品(コーヒー製品)」のことであり,「コーヒー豆」は「焙煎前のコーヒー豆」のことである。したがって,本件商標は,これをその指定商品中「エチオピア国YIRGACHEFFE(イルガッチェフェ)地域で生産されたコーヒー豆,エチオピア国YIRGACHEFFE(イルガッチェフェ)地域で生産されたコーヒー豆を原材料としたコーヒー」以外の「コーヒー豆,コーヒー」について使用するときは,商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから,商標法4条1項16号が規定する「商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標」に該当するとの審決の判断に誤りがあるということはできない。また,このように解することが,前記3(2)エ(ア)bのTRIPs協定の規定にも適合するというべきである。・・・・商標法46条1項ただし書は,商標登録の無効審判請求について,「商標登録に係る指定商品又は指定役務が2以上のものについては,指定商品又は指定役務ごとに請求することができる。」と規定していることからすると,商標登録の無効審判請求は,指定商品又は指定役務ごとにすることができるところ,ここでいう「指定商品又は指定役務」は,出願人が願書で記載した「指定商品又は指定役務」に限られることなく,実質的に解すべきである。本件においては,既に述べたとおり,「エチオピア国YIRGACHEFFE(イルガッチェフェ)地域で生産されたコーヒー豆,エチオピア国YIRGACHEFFE(イルガッチェフェ)地域で生産されたコーヒー豆を原材料としたコーヒー」とそれ以外の「コーヒー豆,コーヒー」では,商標法4条1項16号該当性において違いがあり,「指定商品」としても異なると解することができる。したがって,「エチオピア国YIRGACHEFFE(イルガッチェフェ)地域で生産されたコーヒー豆,エチオピア国YIRGACHEFFE(イルガッチェフェ)地域で生産されたコーヒー豆を原材料としたコーヒー」に係る部分には無効事由はないが,それ以外の部分には無効事由があるとの判断をすることができるというべきである。

◆判決本文
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◆平成21(行ケ)10227

◆平成21(行ケ)10226

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平成21(行ケ)10339 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年03月30日 知的財産高等裁判所

 他人の著作権との抵触する商標について、公序良俗違反との主張は認められませんでした。
 原告は,本件商標を構成する図柄が,第三者(故ハーベイボール)の有する著作権の範囲に含まれることを理由に,本件商標は,商標法4条1項7号に該当する商標であると主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり理由がない。すなわち,登録商標に係る図柄等について,第三者の有する著作物に係る支分権(複製権,翻案権等)の範囲内に含まれることがあったとしても,商標法及び著作権法の趣旨に照らすならば,そのことのみを理由として当然に当該商標が商標法4条1項7号所定の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものということはできない。仮に,本件において,原告が主張するとおり,1963年に故ハーベイ・ボールが引用図形(別紙「引用図形」参照,スマイリー・フェイス)を著作,創作したものであったとしても,本件商標が,商標法4条1項7号に該当するとはいえない。すなわち,1960年代後半から1970年代に,米国でスマイル・マークが流行し,また,1970年代後半,我が国においてもスマイル・マークがブームを招いたという事情があったとしても,i)ハーベイ・ボール自身は,スマイリー・フェイスについて商標登録をする意思もなく,第三者が自由にスマイリー・フェイスを使用することを容認し,金銭的な見返りを求めていなかったことが窺えること(甲5,6),ii)原告の主張によっても,原告が多額の費用負担をしてスマイリー・フェイスを慈善活動やボランティア活動に活用し,同マークの社会的イメージを向上させるようになったのは,平成10年ころ以降であることから(原告準備書面(1)10頁G1),被告には,平成3年3月8日の本件商標の登録査定時において,「スマイル・マーク」の良好なイメージに便乗する意図はなかったと解されること,iii)原告の主張によれば,平成3年の本件商標の登録査定当時には,日本でのスマイル・マークのブームは収束し,商標登録をしていた商標権者らもその更新登録をしないで商標権を放棄する傾向があったこと等の事情を総合考慮するならば,本件商標が,商標法4条1項7号所定の商標に該当すると認めることはできない。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10306 商標登録取消決定取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年03月29日 知的財産高等裁判所

 商標「いなば和幸」から「和幸」を分離して、類似と判断した審決が取り消されました。
 しかしながら,前記ア(カ)の紹介記事のほとんど(甲202,203,205,206,乙18〜31,33,34)において,本件3社を区別し,又は明示することなく「とんかつ和幸」ないし「和幸」の紹介がなされ,特に,平成12年4月20日付け日経流通新聞上の「第26回日本の飲食業調査−経常利益額ランキング。」と題する記事(乙30)の「社名」欄においてさえ,1箇所(43位の欄)にのみ単に「和幸」と記載されていることにかんがみると,上記イの記事によっても,「とんかつ和幸」の名称又は「和幸」の文字を含む名称の豚カツ料理店が本件3社ないし複数の別会社により経営されるものであるとの事実が,本件役務に係る取引者及び需要者に広く知られているとまで認めることはできず,その他,そのように認めるに足りる証拠はない。(2) 本件商標から「和幸」の文字部分を抽出して観察することの当否ア 本件商標は,「いなば和幸」の文字を横書きして成るものであり,各文字の大きさ及び書体は同一であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから,「和幸」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構\成されているということはできない。イ また,本件商標の「和幸」の文字部分の出所識別機能についてみると,前記(1)アのとおり,本件3社は,長きにわたって「とんかつ和幸」の名称又は「和幸」の文字を含む名称で豚カツ料理店を経営し,本件役務について引用商標,参考商標1及び2等を使用してきたものであり,また,その経営規模をみても,本件3社は,全国に店舗網を広げ,豚カツ料理業界の中で大きな市場シェアを占めるに至り,さらに,本件3社が経営する「とんかつ和幸」の名称又は「和幸」の文字を含む名称の豚カツ料理店は,各種新聞,雑誌等において広く紹介され,我が国有数の豚カツ料理チェーン店として認知されているということができるのであるから,本件商標が本件役務について使用された場合,取引者及び需要者は,本件商標の「和幸」の文字部分が「とんかつ和幸」の名称又は「和幸」の文字を含む名称の豚カツ料理店を指すと容易に理解するものと認められるが,他方で,前記(1)ウのとおり,「とんかつ和幸」の名称又は「和幸」の文字を含む名称の豚カツ料理店が本件3社ないし複数の別会社により経営されるものであるとの事実が本件役務に係る取引者及び需要者に広く知られているとまで認めることはできないのであるから,引用商標との関係でみると,本件商標の「和幸」の文字部分が,本件役務に係る取引者及び需要者に対し,引用商標の商標権者である補助参加人が当該役務の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものということはできず,その他,そのようにいうことができるに足りる証拠はない。ウ さらに,本件商標の「いなば」の文字部分についてみると,一般的には,当該文字部分からは,氏の1つである「稲葉」が想起されるが,「いなば」には,これが氏を平仮名書きしたものであるとしても,「稲場」,「因幡」などの氏が,また,氏以外に,地名を平仮名書きしたであるとしても,「稲場」,「因幡」などの地名が含まれるから,氏としての「稲葉」以外を想起し得ないものではないところ,前記(1)アの事実に加え,当該文字部分が,氏,地名として想起される「いなば」は1つに限定されないが,そのなかから,本件では,原告を設立したCの氏である「C」から取られたものと認められることをも併せ考慮すると,本件商標が本件役務について使用された場合に,当該文字部分に自他役務を識別する機能が全くなく,当該文字部分から出所識別標識としての称呼及び観念が全く生じないとまでいうのは相当でないというべきである。エ その他,本件商標について,その構成中の「和幸」の文字部分だけを抽出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできないから,本件商標と引用商標との類否を判断するに当たっては,本件商標の構\成部分全体をみるべきであって,同商標の構成中の「和幸」の文字部分だけを引用商標と比較して類否判断を行うことは許されないというべきである。\n

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平成21(行ケ)10328 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月17日 知的財産高等裁判所

 商標「berry mobile」が商標「BlackBerry」と類似するかが争われました。知財高裁は、類似しないとした審決を取り消しました。
 引用商標1及び2の各文字部分は,「BlackBerry」の文字を横書きして成るものであるが,「B」の2文字がいずれも大文字で表されていることにより,「Black」の部分と「Berry」の部分とが連続して記載されていても,別の部分として認識されるほか,我が国において,「black」は,「黒」,「黒い」などを意味するなじみの深い英単語であり,その直後に果物の1つの種類(漿果)を意味する「berry」のような名詞が続く場合,単に色を表\\す形容詞として認識されるのが通常であること,また,「ベリー」が果実の1つの種類を表す言葉として認識されていることからすると,当該各文字部分が「Black」の部分と「Berry」の部分とに分離して観察されることは否定することができない。もとより,「blackberry」は,1つの英単語であるが,同時に,「black」及び「berry」の英単語もそれぞれ存在するのであるから,「blackberry」が1つの英単語であることは,引用商標1及び2の各文字部分が「Black」の部分と「Berry」の部分とに分離して観察され得るとの上記判断を左右するものではない。そうすると,引用商標1及び2からは,その文字部分全体に対応した称呼及び当該文字部分全体と図形部分とに対応した観念が生じるだけでなく,「Berry」の文字部分に対応した「ベリー」の称呼及び当該文字部分とベリー類の果実を図案化したものと認められる図形部分とに対応した「果物のベリー」の観念も生じるといわざるを得ない。・・・上記(1)及び(2)によると,本件商標と引用商標1及び2とは,称呼及び観念において共通するものであるから,本件商標と引用商標1及び2とがその外観を異にすることを考慮しても,本件商標と引用商標1及び2とが同一又は類似の役務に使用された場合には,当該役務の出所について混同が生じるおそれがあるというべきであるから,本件商標は,引用商標1及び2と類似するものと認めるのが相当である。

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平成21(行ケ)10313 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年02月10日 知的財産高等裁判所

 商標「チームルマン」が出所混同を生ずるおそれがあるとして、無効とした審決が維持されました。
 上記2〜4によると,引用商標が被告の自動車レースに係る業務役務を表示するものとして周知著名となっていたこと,本件商標の要部と引用商標とは,外観,称呼,観念において共通する部分が多く,本件商標と引用商標とは類似性の程度が高いこと,本件商標の指定商品及び指定役務と被告が開催する自動車レースに係る役務及び商品とは関連性があり,その需要者において共通するものであることなどが認められ,これらの事情を総合考慮すると,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,本件商標をその指定商品又は指定役務に使用した場合,これに接する需要者が,周知著名な商標である引用商標を連想・想起して,これらの商品又は役務が被告との間に緊密な営業上の関係又は同一の表\示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品又は役務であると誤信するおそれがあるものと認められる。

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平成21(行ケ)10274 商標登録取消決定取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年01月13日 知的財産高等裁判所

 図形商標について、商標法4条1項15号に該当するとして登録を取り消すとの審決が、知財高裁により取り消されました。
上記(2)ないし(6)によると,本件商標と引用商標とは,いずれも,上部に2つの山を重ねたように2か所で盛り上がった赤色系の上唇,開放された人の口から大きく張り出した赤色系の舌,舌の上部配された白色の上前歯状のもの及び黒色の口内が描かれているという点で構成を共通にする。また,引用商標は,音楽関係の商品及び役務分野において,ローリングストーンズに係る商品又は役務を表\示するものとして,取引者・需要者の間において著名で,かつ,独創性がある。しかしながら,本件商標と引用商標とでは,称呼及び観念の共通性がないことに加え,外観においても,本件商標では正面方向から見た平面的な図形であるのに対して,引用商標ではやや右斜め方向から見た立体的な図形である点でかなり印象を異にするものである点,本件商標では舌上に3本の黒色の図形が描かれているのに対して,引用商標ではそのようなものがない点において相違していることも看過し得ない構成の特徴である。そして,引用商標がローリングストーンズの業務に係る商品又は役務を表\示するものとして音楽関係の取引者・需要者の間で周知・著名であることは,また,それ故に,引用商標と本件商標との上記の相違点は,看者にとってより意識されやすいものであると解されるところである。しかも,需要者についてみると,音楽は嗜好性が高いものであって,音楽CD等の購入,演奏会への参加等をしようとする者は,これらの商品又は役務が自らの対象とするもので間違いないかをそれなりの注意力をもって観察することが一般的であると解されること,取引者についてみるに,音楽について通暁していることが一般であるレコード店や音楽業界関係者等である本件指定商品等の取引者が,本件指定商品等において,本件商標をローリングストーンズの業務に係る商品又は役務と混同することは考え難いことなどの事情が認められるのである。これらの事情を総合考慮すると,引用商標に係る商品又は役務は本件商標に係る本件指定商品等に含まれるものであるとしても,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,本件商標を本件指定商品等に使用した場合,これに接する取引者・需要者が,著名な商標である引用商標を連想・想起して,本件指定商品等がローリングストーンズ若しくはローリングストーンズとの間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品又は役務であると誤信するおそれがあるものと認めることはできないといわざるを得ない。
(7) 被告の主張について
被告は,本件指定商品等に係る本件商標とローリングストーンズの業務に係る商品又は役務との誤認混同があるとする理由として,アシッドとローリングストーンズがロック音楽という点で共通していること,ローリングストーンズとアシッドのファンの年齢層にも共通する部分があること,レコードや音楽の公演等の主たる需要者が商標に着目して商品又は役務を選択する可能性の存在があること等を主張するが,上記認定のとおりのロック音楽の多義性からして,「ロック音楽」であるということから直ちに統一的に理解することができるものであるか疑問がなくはないこと,ローリングストーンズとアシッドとの中心的なファン層が異なること,音楽は嗜好性が高いものであって,音楽CD等の購入,演奏会への参加等をしようとする者は,これらの商品又は役務が自らの対象とするもので間違いないかをそれなりの注意力をもって観察することが一般的であると解されるとの取引の実情等に照らすと,被告の主張に係る事情を考慮したとしても,上記判断を覆すに足りるものではない。\n

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平成21(行ケ)10055 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年12月21日 知的財産高等裁判所

 商標「テディベア」が公序良俗違反かが争われました。裁判所は、公序良俗違反ではないとした審決を維持しました。
 「以上のとおり,本件商標の登録査定前にテディベアに関する記載等のある雑誌,書籍,レコード,テレビ番組等があったことを考慮に入れたとしても,本件商標の登録査定時,我が国において,「テディベア」との語が一般的に知られていたとは認められず,また,一説に「teddy bear」の語の由来とされるセオドア・ルーズベルトの逸話も,本件商標の登録査定時,我が国において知られていたとは認められない。本件商標の登録査定時に,我が国において,「テディベア」との語の意味内容及びセオドア・ルーズベルトに関する逸話が広く知られていたと認めることはできないから,商標法4条1項7号に該当するとする原告の主張は,その前提を採用することはできず,主張自体失当というべきである。したがって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当しない。

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類似案件はこちらです◆平成21(行ケ)10057

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平成21(行ケ)10211 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年12月01日 知的財産高等裁判所 

 商標法4条1項19号違反でないとした審決が取り消されました。
「上記事実,ことに本件各米国商標を使用した店舗の数,カタログ頒布部数,ウェブサイトの開設状況及びその利用状況等の事実関係によれば,本件商標の登録出願がなされた平成17年11月2日及び本件商標の登録査定がなされた平成18年6月13日の時点において,本件各米国商標は少なくとも米国において女性用被服及びハンドバッグ等の需用者の間に広く認識されていた商標であると認めることができる。よって,本件各米国商標を「他人の業務にかかる商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需用者の間に広く認識されている商標」には当たらないとした審決の判断は誤りである。・・・そして,前記のとおり,原告は,1989年(平成元年)に「ANTHROPOLOGIE」の商標の使用を始め,1992年(平成4年)10月31日には「ANTH ROPOLOGIE」の商標を使用した店舗を米国で開店していた上,1998年(平成10年)には「ANTHROPOLOGIE」の商標を使用したカタログを発行していたところ,被告は被服のブランドライセンス事業を行っており外国の服飾ブランドについても専門知識を有していたと推認されることからすれば,被告が別件商標を出願した平成10年10月7日の時点で本件各米国商標を知っていた可能性が認められる。まして,被告は平成15年1月には海外ブランドの発掘を目的として米国ニューヨーク市に事務所を設立していたのであるから,本件商標を出願した平成17年11月2日の時点で,当時米国において女性用被服及びハンドバッグ等の需用者の間に広く認識されていた本件各米国商標を知っていたと認めるのが相当である。そして,前記1(2)で認定した被告の応訴態度その他本件において認められる上記各事情を総合すると,被告は,本件商標が米国における周知商標である本件各米国商標と類似することを知りながら,本件商標を自ら使用することによって不当な利益を得るため本件商標の登録出願をしたものと推認するのが相当であり,被告は本件商標を使用するにつき不正の目的を有していたというべきであるから,これと異なる審決の判断には誤りがある。」

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関連事件です◆平成21年(行ケ)第10210

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平成21(行ケ)10071 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年10月28日 知的財産高等裁判所

 取引実情を考慮すると「優肌」と「肌優」とは観念、外観において類似すると判断され、無効理由無しとした審決が取り消されました。
(イ) 対比a 引用商標は,漢字「優」の右に「肌」を配置させて,組み合わせた語からなる商標であって,「優」は,「優しい,優美な,優れた,優雅な,上品な,気品のある」等を意味する語(形容詞的に用いられる。)であり,「肌」は「人の体の表皮,皮膚」等を意味する語(名詞的に用いられる。)であり,既存の語ではないものの,消費者,需要者に対して,「肌に優しい」,「優しい肌」,「優美な肌」等の観念を生じさせる。本件商標も,漢字「肌」の右に「優」配置させて,組み合わせた語からなる商標であって,既存の語ではないものの,消費者,需要者に対して,「肌に優しい」,「優しい肌」,「優美な肌」等の観念を生じさせる。特に,左右の配置は異なるものの,漢字「肌」は名詞として,漢字「優」は修飾語として用いられることに照らすならば,配置の相違が観念の相違を来すことはなく,引用商標と本件商標は,観念において同一であるといえる。\nb 前記(1)で認定した取引の実情を踏まえると,引用商標からは,医療関係者を含む取引者,需要者に対して,「肌に優しい」等の観念を生じさせる。特に,造語であることに照らすならば,引用商標が需要者,取引者に対して,強い印象を与えるものというべきである。本件商標からも,医療関係者を含む取引者,需要者に対して,同様に「肌に優しい」等の観念を生じさせる。なお,指定商品中には,医療関係商品のみならず,衛生関係商品も含まれるが,その多くは肌(皮膚)に接して使用する商品であるといって差し支えないから,「肌に優しい」等の観念を生じる点で,変わりはない。そうすると,本件商標と引用商標は,観念において同一(又は類似)である。
イ 外観における対比 前記アで述べたとおり,引用商標は,漢字「優」の右に「肌」を配置させて,組み合わせた語からなる商標であり,本件商標は,漢字「肌」の右に「優」配置させて,組み合わせた語からなる商標である。他方,本件商標は,引用商標中の漢字2字の左右を入れ替えて,配置,表記したものである。引用商標と本件商標とを対比すると,両者とも,既存の語を利用した商標ではなく,新しく創作された語(造語)であるため,確定した固有の意味を有していないこと,したがって,商標を構\成する文字(漢字)そのものも持つ意味が,重要な判断の要素となること,各商標を構成する2つの漢字,すなわち,「優」と「肌」とが共通すること,「優」,「肌」の漢字は,いずれも指定商品と関連性の強い文字が選択されていること,各商標とも,横書きであるため,取引者,需要者は,語順を正確に記憶して理解することが必ずしも容易でない場合があること等の諸点を総合考慮するならば,離隔的に観察するときには,両商標の外観は,紛らわしいものということができるから,両者は,外観においても,類似する。・・・
オ 小括 以上のとおり,取引の実情を考慮して,本件商標と引用商標とを対比すると,観念及び外観において類似する。本件商標と引用商標がいずれも造語であり,特に本件商標については,複数の称呼が生じ得ることにかんがみると,本件商標と引用商標の類否を判断するに当たり,本件において称呼を重視するのは妥当とはいえない。

◆平成21(行ケ)10071 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年10月28日 知的財産高等裁判所

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平成21(行ケ)10074 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年10月20日 知的財産高等裁判所

 商標「INTELLASSET」が、著名商標「Intel」を含むのか(4条1項8号違反)か否かが争われました。審決は同号違反とされましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
 「本件商標の内容は,前記のとおりであり,文字部分「INTELLASSET」のうち冒頭の5文字は被告の略称である「INTEL」と同一であるから,本件商標は物理的には被告略称を含んでいることになる。しかし,法4条1項8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標はその他人の承諾を得ているものを除き商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護すること,すなわち,人(法人等の団体を含む)は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護することにあるところ(最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁),問題となる商標に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず,当該他人を想起,連想できないのであれば,他人の人格的利益が毀損されるおそれはないと考えられる。そうすると,他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては,単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく,その部分が他人の略称等として客観的に把握され,当該他人を想起・連想させるものであることを要すると解すべきである。イ かかる見地からみると,本件商標は,前記のとおり図形部分と「INTELLASSET」の文字部分から成るものであるところ,図形部分は青い縁取りのある正方形内の中央に欧文字の「I」を白色で表し,「I」の文字の背景には全体として青色と白色とが混ざり合った色彩が施されており,「I」の文字の左側部分は青色が勝っているものの,同右側部分は上部において白色が青色をぼかしたように白色が強調されて描かれており,白色で表\された「I」の文字は右上部から中間部にかけて背景と同じような色から成る図形である。一方,「INTELLASSET」の文字部分は,このような図形の下部に,黒字の活字体で大きく明瞭に,各文字を同一の書体・同一の大きさ・同一の間隔で配置されている。そして,本件商標の文字部分が,黒色の活字体で大きく明瞭に,かつ各文字を同一の書体・同一の大きさ・同一の間隔で表されていることに照らすと,「INTELLASSET」の文字部分は外観上一体として把握されるとみるのが自然である上,「INTELLASSET」が日本においてなじみのない語であり,一見して造語と理解されるものであって,特定の読み方や観念を生じないと解される(本件商標中の図形部分を考慮しても同様である。)。したがって,被告の略称である「INTEL」は,文字列の中に埋没して客観的に把握されず,被告を想起・連想させるものではないと認めるのが相当である。そうすると,本件商標は物理的には被告の略称である「INTEL」を包含するものの,「他人の氏名・・・の著名な略称を含む商標」(法4条1項8号)には当たらないというべきであり,原告主張の取消事由2は理由がある。」\n  

◆平成21(行ケ)10074 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年10月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成21(行ケ)10048 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年07月21日 知的財産高等裁判所

 両商標は類似しないので無効理由無し、とした審決が維持されました。
   「以上によれば,本件商標と引用商標3とは,「P」「E」「Z」の3文字を含む点に共通性があるということはできる。しかし,本件商標においては,「E」の文字と「Z」の文字との間に「’」様の記号が存在し,3文字の大きさも同じではなく,各文字が毛筆で丸味を帯びた態様で書して成り,立体的ではなく平面的であるのに対し,引用商標3では,「P」「E」「Z」の各文字は同じ大きさであり,14〜15個の長方形を組み合わせており,文字自体も「P」の文字の曲線部分以外は直線的で角張った印象を与えるものであり,文字自体に立体的な厚みを感じさせる影が付されている。そうすると,本件商標と引用商標3とは外観上区別することができるというべきである。また,上記のとおり,本件商標からは「ペズ」の称呼が生じるところ,引用商標3からは「ペッツ」の称呼が生じ,称呼においても両者は区別することができる。さらに両商標から生じ得る観念としては,「ジャズバンドのペズ」(本件商標),「原告の販売する上部にキャラクターの付いたディスペンサー入りのキャンデーないしディスペンサー」(引用商標3)との観念が生じ得るものであるから,両者は区別し得るものである。このように,本件商標は,外観,観念,及び称呼のいずれにおいても引用商標3と区別することができるのみならず,前記のように本件商標は音楽活動としてのジャズバンドの演奏会場における商品販売等を中心とするものであるのに対し,引用商標3は菓子販売等に伴うものに使用される等の取引の実情も併せ考慮すると,本件商標は引用商標3と類似するものと認めることはできない。そうすると,本件商標が法4条1項11号に該当しないとした審決の判断は正当として是認できる。」

◆平成21(行ケ)10048 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年07月21日 知的財産高等裁判所

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◆平成21(行ケ)10052 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年07月02日 知的財産高等裁判所

 「天使のスィーツ」と「エンゼルスィーツ」が非類似であるとした審決を取り消しました。
  「本件商標は,「天使のスィーツ」の文字を横書きにし,指定商品を第30類「菓子及びパン」とするものであるから,本件商標が菓子に使用された場合は,菓子と密接に関連する「甘い菓子」を意味する一般的な文字である本件商標中の「スィーツ」の部分からは,出所の識別標識としての称呼,観念は生じず,「天使のスィーツ」全体として又は「天使」の部分としてのみ称呼,観念が生じる。また,引用商標は,「エンゼルスィーツ」の片仮名文字及び「Angel Sweets」の欧文字を上下二段に表し,指定商品に第30類「菓子及びパン」を含むものであるから,引用商標が菓子に使用された場合は,菓子と密接に関連する「甘い菓子」を意味する一般的な文字である本件商標中の「スィーツ」の部分からは,出所の識別標識としての称呼,観念は生じず,「エンゼルスィーツ」「Angel Sweets」全体として又は「エンゼル」「Angel」の部分としてのみ称呼,観念が生じる。よって,本件商標からは,「天使の甘い菓子」,「天使のような甘い菓子」又は「天使」という観念が生じる。また,上記(1)のとおり,「エンゼル」「Angel」が「天使」の意味を有する我が国で親しまれた語であることに照らすと,引用商標からも,「天使の甘い菓子」,「天使のような甘い菓子」又は「天使」という観念が生じる。本件審決は,両商標がいずれも特定の観念を生じないと判断しているが,両商標の観念は,以上のとおり共通するのであって,本件審決の判断は是認することができないといわざるを得ない。」

◆平成21(行ケ)10052 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年07月02日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10380 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年04月27日 知的財産高等裁判所

 裁判所は、標章「ラブコスメ」は、標章「LOVE」、標章「ラブ」とは類似するとした審決を取り消しました。
  「本件商標は,「ラブコスメ」の片仮名文字を標準文字により,一連に表記したものであり,その音数は5音であって短く,本件商標に接した需要者及び取引者は,これを一連一体に認識,理解するものと解するのが相当であるから,本件商標からは,片仮名横書きの「ラブコスメ」との外観及び称呼を生じる。他方,本件各引用商標は,引用商標1ないし6から,順に,欧文字「Love」(Lが大文字,他の文字は小文字)を,特有の書体による横書きで表\\記したものであり,・・・表記した外観を示し,このうち,引用商標2ないし4,6からは,「ラブ」の称呼を生じる。したがって,本件商標と本件各引用商標は,外観及び称呼において,類似しない。・・・被告は,化粧品の取引や需要者間においては,周知・著名商標に,続けて「コスメ」を付加することが慣行的に行われる例があることから,需要者は,本件商標「ラブコスメ」が付された化粧品を見た場合には,「ラブ」の商標を有する被告の化粧品であると認識すると主張する。しかし,本件全証拠によるも,本件商標が出願され,登録査定された,平成18年3月13日ないし平成19年4月20日ころに,本件商標が付された化粧品等に接した場合,取引者が「ラブ」を商標とする化粧品であると認識される程度に,本件各引用商標の「ラブ」の構\\成が周知・著名であったと認めることは到底できず,この点の被告の主張は採用できない。なお,知的財産高等裁判所平成20年5月28日判決(平成20年〔行ケ〕10042号事件)においては,「アンダーラインを挟んで上段に大きく「Love cosmetic」の欧文字及び下段に小さく「for two persons who love」の欧文字とを2段に表し,その下部に「ラブコスメティック」の片仮名文字を横書きし,上部に左方向に横向きのハート状図形を配した図形について,引用商標2ないし6と類似するとの判断がされている(乙101)。しかし,上記商標は「Love cosmetic」の文字部分の「Love」と「cosmetic」との間に間隙が存在すること,一連一体に把握することが困難な商標であること等,本件商標と相違するものであるから,互いに判断の結果が相違しても,齟齬があるものとはいえない。」

◆平成20(行ケ)10380 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年04月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成21(行ケ)10031 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年06月25日 知的財産高等裁判所

 商品の類似が争われましたが、類似するとした審決が維持されました。
  「指定商品が類似のものであるかどうかは,商品自体が取引上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判定すべきものではなく,それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により,それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にある場合には,たとい,商品自体が互いに誤認混同を生ずるおそれがないものであっても,それらの商標は商標法4条1項11号にいう「類似の商品」に当たると解するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第1104号昭和36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁参照)。イこれを本件についてみると,本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」と「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」とは,i)製造業者の一部が食品の製造・加工用の機械メーカーであることにおいて共通していること,ii)両商品を販売する会社もあること,iii)いずれも食品の製造・加工メーカーにおいて使用されていること,以上の諸点に照らせば,両商品の対象とする食品の種類や具体的な目的及び機能ないし用途に,前記(1)ウのような違いがあるとしても,「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」と「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」とに同一又は類似の商標が使用されるときは,同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認・混同するおそれがあると認められる関係にあり,商標法4条1項11号にいう「類似の商品」に当たると解するのが相当である。」

◆平成21(行ケ)10031 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年06月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10351 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年05月28日 知的財産高等裁判所

 4条1項6号違反を理由として拒絶された商標について、拒絶審決が維持されました。
  原告は,免震装置等に係る取引の実情についてるる主張し,両商標が類似しない旨主張するが,前記(1)において説示したところによれば,本願商標のISO部分と引用標章とは,その外観,観念及び称呼において共通するといえ,引用標章が国 際標準化機構を表\示するものとして著名であることにも照らせば,原告が主張する取引の実情を考慮してもなお,本願商標に接した需要者及び取引者は,同商標を付した商品,当該商品を製造・販売するなどする業者等が国際標準化機構が定める国際規格に適合するなどの印象を抱くものと認められるから,両標章は,互いに類似するものと認めるのが相当であり,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないというべきである。

◆平成20(行ケ)10351 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年05月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10439 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年05月28日 知的財産高等裁判所

 商標「Factory900」と「サッポロファクトリー」とが類似するとした審決が取り消されました。
 「そして,証拠(乙2,3)によれば,日本の眼鏡人口は約6000万人であると認められ,その範囲は,被告が主張するように広範かつ重層的であると推認されるが,上記(ア)認定の事実,殊に,上記(ア)bのとおり「メガネの国際総合展」(IOFT)については多くの一般紙でも紹介されていること,上記(ア)cの雑誌は一般の消費者を対象とするものであること,小売店のウェブページも一般の消費者を対象とするものと考えられることなどに照らせば,本願商標は,原告が製造販売する眼鏡を表示するものとして,業界のみならず,広範かつ重層的な需要者の間においても,広く知られていると認めることができるのであって,これに反する被告の主張は採用することができない。・・・(ア) 前記(2)のとおり,商標は,その構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから,商標構\成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されない。(イ) 上記アのとおり,本願商標は,原告が製造販売する眼鏡を表示するものとして,需要者,取引者の間に広く知られているものと認められること,上記イのとおり,本願商標のうち「900」の数字部分は,必ずしも商品の型式,規格等を表\示するための記号,符号と認識されるとは限らないこと,上記ウのとおり,必ずしも本願商標のうち「FACTORY」の部分のみが識別力が高いということはできないこと,及び本願商標は,「Factory900」と同じ書体でかつ同じ大きさの文字で一連に記載したものであることを総合すると,本願商標は,一連一体のものとして認識されると解するのが相当である。そして,本願商標について,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分を他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することができるというべき事情,すなわち,前記(2)の「複数の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合」などの事情が存するとは認められない。」

◆平成20(行ケ)10439 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年05月28日 知的財産高等裁判所

関連判決はこちらです
    ◆平成20年(行ケ)第10439号

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◆平成20(行ケ)10449 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年05月12日 知的財産高等裁判所

 図形商標について、混同生ずるとした審決を維持しました。
「上記のような法4条1項10号ないし15号の趣旨からすると,15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品等に使用したときに,当該商品等が他人の商品等に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(広義の混同を生ずるおそれ)がある商標を含むものと解される。そして,「混同を生ずるおそれ」の有無は,i)当該商標と他人の表示との類似性の程度,ii)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度,iii)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,iv)用途又は目的における関連性の程度,v)商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきものである(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)。そこで,上記の観点から,本件商標登録が法4条1項15号の規定に違反するものであるかどうかについて検討する。・・・・基本的に引用商標1の形状を有する被告バックポケットの表示の周知著名性及び独創性の程度についてみると,被告バックポケットの形状は,ジーンズの元祖ともいえるメーカーによるものとして100年以上にわたり基本的に変化がなく,バックポケットの形状に注意を喚起する旨の多数の宣伝広告がされ,我が国においてもトップレベルの販売実績・シェアを持つこと等により,本件商標の出願時(平成17年6月8日)及び登録時(平成18年1月13日)において,ファッション関連商品の取引者及び一般消費者を含む需要者の間で広く知られており,しかもその周知著名性の程度は極めて高いものであると認めることができる。・・・以上を総合すると,本件商標をその指定商品について使用したときには,引用商標1又は被告バックポケットの形状が強く連想され,本件で想定される一般消費者を含む取引者ないし需要者において普通に払われる注意力を基準とした場合,被告ないし被告と関係のある営業主の業務に係る商品等であると誤信させ被告の商品等との混同を生じさせるおそれがあると認めるのが相当である。そうすると本件商標は,被告の商品と混同を生じさせるおそれがあるものとして,法4条1項15号に該当するということになり,その旨をいう審決の判断に誤りはない。」

◆平成20(行ケ)10449 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年05月12日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10311 商標登録取消決定取消請求事件 商標権行政訴訟 平成21年02月10日 知的財産高等裁判所

 図形商標について、類似するとした審決を取り消しました。
 「これに対して本件商標における動物図形は,たしかにその向きや基本的姿勢,跳躍の角度,前足・後足の縮め具合・伸ばし具合や角度,胸・背中・腹から足にかけての曲線の描き方において上記「PUMA」ブランドの商標と似ている点があるものの,取引者・需要者に印象付けられる特徴は「PUMA」ブランドの商標とは異なるものである。すなわち,本件商標に描かれた動物は,「PUMA」ブランドのピューマに比べて頭部が大きく,頭部と前足の付け根部分とが連なっているために,上半身が重厚でがっしりとした印象を与える。また,「PUMA」ブランドのピューマには模様は描かれず,輪郭のラインやシルエットですっきりと描かれているのに対し,本件商標では首,前足・後足の関節,尻尾に飾りや巻き毛のような模様が描かれている。さらに,「PUMA」ブランドのピューマの特徴である,右上方に高くしなるように伸びた細長い尻尾の代わりに,全体的に丸みを帯びた尻尾が描かれている。このように本件商標の動物図形は,「PUMA」ブランドのピューマとは異なる印象を与えるものである(なお,甲19〜29〔枝番を含む〕によれば,本件商標は主として,原告が代表取締役を務める観光土産品等の販売等を行う有限会社沖縄総合貿易が観光土産品たるTシャツ・エコバッグ・雑貨等を販売する際に使用されている。)。ウそうすると,「PUMA」ブランドのピューマを記憶している取引者・需要者は,本件商標に接したときに「PUMA」ブランドのピューマを連想することがあるとしても,本件商標を「PUMA」ブランドの商標とまで誤って認識するおそれはないというべきである。」

◆平成20(行ケ)10311 商標登録取消決定取消請求事件 商標権行政訴訟 平成21年02月10日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10139 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟

     審決は、「このような比較的写実性の強い幼児の顔部分のみからなる商標から「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念が生ずるものとはいい難く,直ちに特定の確定的な称呼及び観念を生ずることはない」として無効理由無しと判断しましたが、知財高裁は、これを取り消しました。
  「上記のような「キューピー」のキャラクターは,本件商標登録出願時(平成16年11月22日)において,我が国で周知のものとなっていたというべきである。・・・本件商標の構成は,前記第2の1(1)のとおり,頭頂部の髪と思しき部分が尖り,パッチリとした大きな目をした幼児の頭部を描いた図形であるところ,これらの特徴的容姿は上記(2)のとおり我が国においても周知となっていた「キューピー」のキャラクターの特徴と符合するものであるから,本件商標に接した取引者・需要者が,本件商標に係る図形を「キューピー」と認識するであろうことは疑いのないところというべきである。したがって,本件商標からは「キューピー」の称呼を生ずるとともに,頭の先の髪と思しき部分が尖り,目がパッチリと大きい裸体の幼児又はその人形である「キューピー」の観念を生ずるものというべきである。」

◆平成20(行ケ)10139 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成20年12月17日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(ネ)3057等 商標権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件 商標権民事訴訟 平成20年11月07日 大阪高等裁判所

  1審では類似するとされた「love」と「Love cosmetic」について、大阪高裁は両者は非類似標章であると認定しました。
 被控訴人は,「cosmetic」は「化粧品」を意味する英語(普通名称)であり,商品が化粧品であることを示す語として通常用いられ,自他商品識別力がないから,需要者は控訴人標章1を2語に分けて認識し,その要部は「Love」であると主張するが,以下のとおり,採用できない。すなわち,「Love」は,我が国においても極めて周知度の高い英語であり,「愛」「恋愛」という観念から,肯定的に受容され,普遍的に好感を持たれる語ということができ,化粧品に限っても,「Love」「ラブ」の語を含む登録商標は多数に上ることが認められ(乙32,弁論の全趣旨),化粧品以外の商品・役務においても,これらの語を含む商品名やブランド名等が多数存在することは公知である。そして,それゆえに,これらの語は商品等の標章に用いるものとしてはやや陳腐であって,少なくとも「Love」「ラブ」単独では,化粧品に限らず,商品識別・出所表示の機能\は弱く,他の語と連結されることによりそれと一体のものとして商品識別機能を果たす場合も多いものと考えられる。他方,「cosmetic」は,「化粧品」を意味する英語で,比較的周知度が高いとはいえ,日本人にとって必ずしも易しい単語とはいえないから,通常の需要者が,控訴人標章中「cosmetic」の部分を,「化粧品」と同等に,控訴人商品が化粧品であると意味するにすぎないと直ちに理解するとまではいえず,この語に自他商品識別能力がまったくないとはいえない(この点は,「Love cosmetic」ないし「ラブコスメティック」と,これらと観念上はほぼ同一といえる「ラブ化粧品」という表記とを対比すれば明らかである。)。加えて,「Love」と「cosmetic」がいずれもアルファベット表記であることを考慮すると,「Love」と「cosmetic」とを結合した一体の標章として認識されやすく,称呼としても通常「らぶこすめてぃっく」と一連のものとして称呼されるものと考えられるから,必ずしも「Love」のみが要部であるということはできず,むしろ「Love cosmetic」が一体として要部となるとみるのが相当である。そうすると,控訴人標章1は,被控訴人商標と,その外観において控訴人標章1が12字のアルファベットから成るのに対し,被控訴人商標が2字の片仮名又は4字のアルファベット若しくは2字の片仮名及び4字のアルファベットから成る点で異なり,その称呼において「らぶこすめてぃっく」と「らぶ」とで語音,語感が明らかに異なり,その観念において「愛の化粧品」「愛のための化粧品」という即物的意味あいで観念されるのに対し,「愛」「恋愛」「愛情」と抽象的意味あいで観念される点で異なるというべきであるし,また,後にみる控訴人商品の実際の宣伝・販売方法等をもしん酌すれば,控訴人標章1は,被控訴人商標のいずれとも類似するものとはいい難い。

◆平成19(ネ)3057等 商標権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件 商標権民事訴訟 平成20年11月07日 大阪高等裁判所

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◆平成19(ワ)7660 商標権侵害差止等請求事件 商標権 平成20年10月02日 大阪地方裁判所

 被告商標「十二単の招福巻」が、本件商標「招福巻」に類似するとして商標権侵害が認定されました。なお、「招福巻」は、普通名称、慣用商標であるとの被告の抗弁も否定されました。
 「以上の事実に加え,原告が平成19年2月に,被告をはじめ,株式会社サボイ,広越株式会社,株式会社柿の葉すし本舗たなか等,節分用巻きずしに「招福巻」を使用する業者に対して警告を行い,これらの会社から今後「招福巻」を使用した巻きずしを販売しないなどの確約を得ている(甲21ないし22の各1・2)など,本件商標権を守るために一定の対応をしていることも併せ考慮すると,全国のスーパーマーケットやすし店等において,節分用の巻きずしの名称として「招福巻」を含む商品名が用いられている例が多数あるからといって,このことから直ちに,「招福巻」が,節分用の巻きずしの普通名称(商標法26条1項2号)になったものと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。」

◆平成19(ワ)7660 商標権侵害差止等請求事件 商標権 平成20年10月02日 大阪地方裁判所

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◆平成19(行ヒ)223 審決取消請求事件 平成20年09月08日 最高裁判所第二小法廷

  商標の類似についての、土人形を指定商品とする商標「つつみのおひなっこや」と商標「つゝみ」,「堤」について,「つつみ」の文字部分だけを比較してその類否を判断することは許されず,構成部分全体を対比すると,両商標が類似しないとして、原審◆平成18(行ケ)10532 平成19年04月10日を破棄しました。

 「本件商標の構成中には,称呼については引用各商標と同じである「つつみ」という文字部分が含まれているが,本件商標は,「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きして成るものであり,各文字の大きさ及び書体は同一であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表\されているものであるから,「つつみ」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。また,前記事実関係によれば,引用各商標は平成3年に商標登録されたものであるが,上告人の祖父は遅くとも昭和56年には堤人形を製造するようになったというのであるから,本件指定商品の販売業者等の取引者には本件審決当時,堤人形は仙台市堤町で製造される堤焼の人形としてよく知られており,本件商標の構\成中の「つつみ」の文字部分から地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念が生じるとしても,本件審決当時,それを超えて,上記「つつみ」の文字部分が,本件指定商品の取引者や需要者に対し引用各商標の商標権者である被上告人が本件指定商品の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったということはできず,他にこのようにいえるだけの原審認定事実は存しない。さらに,本件商標の構成中の「おひなっこや」の文字部分については,これに接した全国の本件指定商品の取引者,需要者は,ひな人形ないしそれに関係する物品の製造,販売等を営む者を表\す言葉と受け取るとしても,「ひな人形屋」を表すものとして一般に用いられている言葉ではないから,新たに造られた言葉として理解するのが通常であると考えられる。そうすると,上記部分は,土人形等に密接に関連する一般的,普遍的な文字であるとはいえず,自他商品を識別する機能\がないということはできない。このほか,本件商標について,その構成中の「つつみ」の文字部分を取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできないから,本件商標と引用各商標の類否を判断するに当たっては,その構\成部分全体を対比するのが相当であり,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分だけを引用各商標と比較して本件商標と引用各商標の類否を判断することは許されないというべきである。(3) そして,前記事実関係によれば,本件商標と引用各商標は,本件商標を構成する10文字中3文字において共通性を見いだし得るにすぎず,その外観,称呼において異なるものであることは明らかであるから,いずれの商標からも堤人形に関係するものという観念が生じ得るとしても,全体として類似する商標であるということはできない。」

◆平成19(行ヒ)223 審決取消請求事件 平成20年09月08日 最高裁判所第二小法廷

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◆平成20(行ケ)10156 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年08月04日 知的財産高等裁判所

   拒絶審決時には、存続期間満了により消滅していた商標を引用商標として、拒絶審決をしたことは違法として、拒絶審決を取り消しました。
  「商標法4条1項11号は,「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて,その商標登録に係る指定商品…について使用をするもの」については,商標登録を受けることができないと規定している。したがって,審決が本願商標について商標法4条1項11号に該当すると判断することができるためには,引用商標が「他人の登録商標」であること,すなわち,引用商標に係る商標権が審決時に有効に存続するものであることが必要である。(2) ところが引用商標は,平成9年6月27日に商標登録第2722262号として登録され,この日から10年後(商標法19条1項)である平成19年6月27日をもって存続期間が満了し,平成20年3月26日に商標権抹消の登録がなされたことが認められる(当事者間に争いがない。甲12)。(3) したがって,引用商標に係る商標権は,審決時(平成20年3月19日)において既に消滅していたものであるから,審決がこれを引用商標として商標法4条1項11号に該当するとしたことは誤りである。」

◆平成20(行ケ)10156 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年08月04日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10387 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年07月30日 知的財産高等裁判所

指定商品「果実」について商標「オレンジチェリー」が4条1項16号(品質誤認)に違反するかが争われました。裁判所は、該当するとした審決を支持しました。
    「上記(1)ア及びイによれば,「オレンジ」はみかん科の果実の名称又はオレンジ色を指すものとして,「チェリー」もまた果実であるさくらんぼを指すものとして,それぞれ一般に認識されるものであると認められる。そして,上記ウ及びエのとおり,「チェリー」その他の果実を指す語の前に「スイート」,「サワー」,「アメリカン」等,別の語が付加されて使用される例が少なからず見受けられるところ,これら付加される語はいずれも「チェリー」その他の果実を修飾するいわば形容詞として使用されていること,殊に,「ブラック」,「レッド」,「ゴールデン」等,色に関する語が付加された場合には,果実の色自体を指すものとして用いられていることが認められる。そうすると,「オレンジチェリー」とする本願商標に接した場合,取引者及び需要者は果実としての共通性からミカン科の果実であるオレンジとさくらんぼのミックスしたものないしそれに関連した新種の果実を想起したり,また,「オレンジ」がオレンジ色をも意味する語であることからして,上記のような形容詞的な用法として「オレンジ色のチェリー(さくらんぼ)」を想起することがあり得るものと認められる。そうすると,「オレンジチェリー」との本願商標を,その指定商品である「果実」に用いた場合には,取引者及び需要者において当該商品が「さくらんぼ」の一種(例えば,オレンジ色がかったさくらんぼ等)を指すものとして認識されることがあり得るというべきであるから,これを「さくらんぼ」以外の果実に用いた場合には,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるというべきである。」

◆平成19(行ケ)10387 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年07月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10392 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年06月26日 知的財産高等裁判所

 商標法4条1項7号(公序良俗違反)に該当するとした審決を取り消しました。
  「当該出願人が本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して,先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨や,国際調和や不正目的に基づく商標出願を排除する目的で設けられた法4条1項19号の趣旨に照らすならば,それらの趣旨から離れて,法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは,商標登録の適格性に関する予測可能\性及び法的安定性を著しく損なうことになるので,特段の事情のある例外的な場合を除くほか,許されないというべきである。・・・・しかし、?@原告と被告との間の紛争は,本来,当事者間における契約や交渉等によって解決,調整が図られるべき事項であって,一般国民に影響を与える公益とは,関係のない事項であること,?A本件のような私人間の紛争については,正に法4条1項19号が規定する「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的・・・をもって使用をするもの・・・」との要件への該当性の有無によって判断されるべきであること,?B被告が米国において有している商標権は,あくまでも私権であり,被告がそのような権利を有したからといって,原告が,日本において,同商標と類似又は同一の商標に係る出願行為をすることが,当然に「公の秩序又は善良な風俗を害する」という公益に反する事情に該当するものとは解されないこと,?C被告は,スコービル社から承継した「CONMAR」との文字からなる米国商標(第324689号)に係る商標権については,平成8年3月,更新せずに消滅させており,また,ファスナーについて「CONMAR」との文字からなる米国商標の登録を平成13年12月に受けた者から,同米国商標に係る商標権の譲渡を受けているなどの事情があり,その子細は必ずしも明らかでないこと,?D審決において,原告が本件商標の登録を受けたことは認定されているが,それを超えて原告が被告の日本国内への参入を阻止していることを基礎づける具体的な事実は,何ら認定されていないこと,?E原告の本件商標の出願は,後記認定のとおり,法4条1項19号に該当するのみならず,同項10号,15号にも該当する事由が存在するといえること等を総合すると,本件について,原告の出願に係る本件商標が「公の秩序又は善良な風俗を害する」とした審決の判断には,誤りがあるというべきである。したがって,本件商標に法4条1項7号所定の無効事由があるとした審決は取り消すべきものと判断する。」

こちらは関連事件です。
    ◆平成19(行ケ)10391 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年06月26日 知的財産高等裁判所
◆平成19(行ケ)10392 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年06月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10383 商標登録取消決定取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年05月29日 知的財産高等裁判所

 「ルネッサンスホテル創世」が「ルネッサンスホテル」と出所混同が生ずるとした審決が取り消されました。
 「これを本件についてみるに,上記(1),(2)の事実等及び前記1の認定判断によれば,?@本件商標から生ずる「ルネッサンス」との称呼,観念は,申立人商標「RENAISSANCE」又は「ルネッサンス」及び申立人商標3から生ずる「RENAISSANCE」と称呼,観念が同一であること,?A本件商標の指定役務は「宿泊施設の提供」であるのに対し,申立人商標の指定役務は「宿泊施設の提供」等であり,また,申\立人はホテル業者であって,その取引者,需要者に共通性があることが認められるが,他方,?B我が国において,「RENAISSANCE」及び「ルネッサンス」の語は極めて一般的な語であり,類似の「ルネサンス」等も含め,法人名その他の固有名詞等において,単独又は他の語と組み合わせて多数使用されており,その自他識別機能,出所表\示機能は弱いといわざるを得ないこと,?C本件商標の登録出願時である平成16年及び登録査定時である平成17年時点において,申立人が経営にかかわる「ルネッサンスホテル」は全国に散在する5軒しかなく,我が国における「ルネッサンスホテル」の紹介も,海外旅行者向けの出版物等が中心であって,国内所在の「ルネッサンスホテル」に係る全国規模の出版物やウェブページでの紹介等もそれほど一般的で多いものであったとはいえず,国内所在の申\立人関与による「ルネッサンスホテル」の「RENAISSANCE」又は「ルネッサンス」との名を付しての営業期間が平成16年時点までで約17年から約9年というもので長い歴史を有するというほどのものではなかったことなどに照らすと,そもそも,国内に散在した上記5軒のホテルにつき,同一グループに関連するものであるとして広く理解されていたとは考えにくく,国内旅行者等において,申立人が経営にかかわるホテルについての「RENAISSANCE」又は「ルネッサンス」の標章が相当程度認識されていたとまではいえない状況にあったものであること,以上の事情等が認められる。そうすると,本件商標の登録出願時である平成16年9月29日及びその登録査定時である17年12月26日時点において,本件商標を「宿泊施設の提供」に使用することにより,その取引者,需要者である国内旅行者等において,原告の「宿泊施設の提供」という役務が,申立人の「宿泊施設の提供」等という役務と緊密な営業上の関係又は同一の表\示による事業を営むグループに属する営業主の業務に係る役務であると誤信されるおそれ(広義の混同を生ずるおそれ)があったものということはできない。」

◆平成19(行ケ)10383 商標登録取消決定取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年05月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10411 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年05月28日 知的財産高等裁判所

 2段併記の本件商標「トリートメントチャージ」(指定商品 化粧品,せっけん類)が先行商標「チャージ」と類似するかが争われました。
 「証拠(甲9,12〜20,22,26,29〜 93,113,114)及び弁論の全趣旨によれば,「トリートメン ト」は,本件商標の指定商品である「化粧品,せっけん類」との関係 では,「手入れ」,「保護」の意味で使用されているほか,以下のと おり,髪の毛及び頭皮を補修ないしは保護する商品を示す名称として も使用されており,髪の毛及び頭皮を補修ないしは保護する商品を示 す普通名称となっていると認めることができる。
・・・ そうすると,「トリートメント」,「TREATMENT」は,本 件商標の指定商品である「化粧品,せっけん類」に使用された場合に は,識別力の乏しい言葉であるということができる。
・・・ 本件商標のうち上段の「トリートメントチャージ」の部分は,「ト リートメントチャージ」と,間隔を空けずに同一書体,同一の大きさで 表記されている。しかし,上記イのとおり,「トリートメント」と「チャージ」は,別\n個の意義を有する言葉であって,「トリートメントチャージ」という一 つの言葉が存するわけではないから,本件商標のうち「トリートメント チャージ」の部分は,「トリートメント」と「チャージ」に分離して認 識されるというべきである。また,本件商標のうち「トリートメントチ ャージ」の部分が11音から成っていることからすると,常に一連のも のとして称呼されるということもできない。 (イ) 一方,本件商標のうち「TREATMENT CHARGE」の部 分は,同一書体,同一の大きさで表記されているものの,「TREATMENT」と「CHARGE」の間に間隔が空いており,上記イのとお\nり「TREATMENT」と「CHARGE」は別個の意義を有する言 葉であって,「TREATMENTCHARGE」という一つの言葉が 存するわけではないことからすると,本件商標のうち「TREATME NT CHARGE」の部分は,「TREATMENT」と「CHAR GE」に分離して認識されるというべきである。また,本件商標のうち 「TREATMENT CHARGE」の部分が15音から成っている ことからすると,常に一連のものとして称呼されるということもできな い。 (ウ) したがって,本件商標は,「トリートメント」と「チャージ」, 「TREATMENT」と「CHARGE」に分離して印象されるもの であって,全体を一連,一体の商標として把握することができるという ものではない。そして,本件商標の「チャージ」及び「CHARGE」の部分から は,「チャージ」の称呼及び上記イ(イ)認定の観念が生ずるものと認め られる。

◆平成19(行ケ)10411 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年05月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10230 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年02月21日 知的財産高等裁判所

 商標「NUK」と「LUK」が非類似とした審決が維持されました。
  「原告は,欧文字が日常的に用いられ親しまれている今日の取引実情の下 では,本件商標及び各引用商標は,「エヌユーケー」「エルユーケー」とよ どみなく一連に称呼されると主張する。しかし,そもそも,アルファベットに,「a,e」,「c,d,g,t」な ど,これを単独で発音する場合には,音声として相紛らわしい文字が存在す ることは,これを用いる者にとって周知の事項である。本件商標や各引用商 標を口頭で伝達する際,商標を構成する個々の欧文字を誤りなく伝達するためには,文字ごとに区切って明瞭に発音するのが,取引者の通常の態様とい\nうべきである。したがって,ことさら、相互に聞き誤られるような称呼が 生ずることを前提として,両商標が相紛れるおそれがあるとする原告の上 記主張は,その前提において採用できない。」

◆平成19(行ケ)10230 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年02月21日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10172 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年11月28日 知的財産高等裁判所

   周知商標に類似する(4条1項10号違反)として無効とした審決を取り消しました。また、あわせて、審判手続の違法性についても判断しました。
 「本件商標は,「Shoop」の文字を構成とするものであるから,最も自然な「シュープ」の称呼を生ずるものと認められる。他方,引用商標は,前記2(1)のとおり,「シュープ」の文字を併記し,また「シュープ」の音声を用いた広告宣伝活動の結果,引用商標から「シュープ」の称呼が生じ得ることが認定できる(なお,「choop」,「CHOOP」の文字を含む被告の登録商標について,特許庁は,もともと「チュープ」,「チョープ」などを参考称呼としており〔甲67〜69,71,73〜78,80〕,「シュープ」は平成15年9月5日設定登録に係る登録商標の商標公報〔甲70,79〕で初めて挙げられている。)。しかし,引用商標は,「CHOOP」の文字を構成とするものであり,自然な称呼は,「チュープ」あるいは「チョープ」であることに照らすならば,確かに,被告が広告宣伝を行ってきた「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッション」に関心を抱く需要者層に対しては,「シュープ」の称呼を想起させるものといえるが,それ以外の一般消費者に対して,「シュープ」の称呼を想起させるものとはいえないというべきである。したがって,引用商標において,「シュープ」の称呼が,あらゆる需要者層において,広く認識されていたとまで認めることはできない。・・・・商標登録に係る指定商品等が二以上の商標登録について,二以上の指定商品等について無効審判を請求したときは,その請求は指定商品等ごとに取り下げることができること(法56条2項により準用される特許法155条3項),指定商品等が二以上の商標登録又は商標権については,商標権の消滅後の無効審判請求(法46条2項)や商標登録を無効にすべき審決の確定及びその効果(法46条の2)などにつき,指定商品等ごとに商標登録がされ,又は商標権があるものとみなされること(法69条)を併せ考えれば,商標登録に係る指定商品等が二以上のものに係る無効審判請求においては,無効理由の存否は指定商品等ごとに独立して判断されるべきことになる。そして,無効審判請求における「請求の趣旨」は,審判における審理の対象・範囲を画し,被請求人における防御の要否の判断・防御の準備の機会を保障し,無効審決が確定した場合における登録商標の効力の及ぶ指定商品等の範囲を決定するものであるから,その記載は,客観的かつ明確なものであることを要するというべきである。したがって,「請求の趣旨」に,登録を無効とすることを求める指定商品等として,「・・・類似商品」,「・・・類似役務」など,その範囲が不明確な記載をすることは,請求として特定を欠くものであって,許されないというべきである。」

◆平成19(行ケ)10172 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年11月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10205 商標登録取消決定取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年10月25日 知的財産高等裁判所

 4条1項11号違反の先願既登録商標について、審決がなされた後、不使用取消審判で取り消された場合の審決の違法性について争われました。裁判所は、11号の判断時期は査定審決時であるので、その後の取消によっては先願既登録商標であったことについて影響はないとしたものの、類似判断に影響があるとして、審決を取り消しました。
  「そうすると,引用商標に係る商標登録(登録第4442542号)は,上記不使用取消審判請求の予告登録日である平成19年2月28日に消滅したものとみなされることになる(法54条2項)。しかし,商標登録が法4条1項11号に違反するかどうかの判断の基準時は登録査定時であると解されるところ,本件商標登録の登録査定日は,前記のとおり平成17年8月23日である(争いがない)から,そのときには,引用商標に係る商標登録(登録第4442542号)が,いまだ消滅していないことは明らかである。原告は,本件決定の日である平成19年4月19日には引用商標に係る商標登録は消滅していたから同決定は違法であるとか,訴外会社による本件登録異議申\立ては遡及的に申立ての利益がないことになるとか主張するが,本件商標登録が法4条1項11号に違反するかどうかの判断基準時は,前記のとおり登録査定時たる平成17年8月23日であると解されるから,原告の上記主張は採用することができない。もっとも,これらの事情は,後記のとおり,商標の類否判断における取引の実情として斟酌されるべきものである。・・・原告による法50条1項による不使用取消審判請求の登録時前3年以内(平成16年3月1日から平成19年2月28日)に,引用商標を使用していなかったものと認められる。したがって,訴外会社は,本件商標登録の登録査定時(平成17年8月23日)はもとより,その以前から引用商標を使用していなかったものと認められるから,本件商標登録の登録査定時(平成17年8月23日)に,引用商標に何らかの信用が形成されていたとは認めることはできない。(6) 類否の有無以上(2)ないし(5)を総合すると,本件商標と引用商標は,外観は類似せず,観念はある程度類似し,称呼は共通する点があるものの異なる点もある程度であり,これらの諸要素に,取引の実情として,本件商標登録の登録査定時(平成17年8月23日)に本件商標には一定の信用が形成されていたものの引用商標に何らかの信用が形成されていたとはいえないという事実があることを総合勘案すると,本件商標登録の登録査定時たる平成17年8月23日の時点において商品の出所を誤認混同するおそれがあったとは認められないというべきであり,本件商標と引用商標が類似するということはできない。したがって,本件商標と引用商標が類似するとした本件決定の判断には,類似性についての判断を誤った違法があることになる。」

◆平成19(行ケ)10205 商標登録取消決定取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年10月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10042 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年09月26日 知的財産高等裁判所

  商品非類似として無効理由無しとした審決を取り消しました。
   「上記証拠により認定した事実によれば,本件商標の指定商品「豆乳を主原料とするカプセル状の加工食品」及び引用商標の指定商品中の「共棲培養した乳酸菌生成エキスを加味してなる豆乳」は,いずれも,豆乳を主原料とし,健康に効果があるとして,又は効果が期待されるものとして製造販売される,いわゆる健康食品の範疇に属する商品を含む点において共通することに照らすと,両者は,商品の性質,用途,原材料,生産過程,販売過程及び需要者の範囲などの取引の実情において共通する商品であり,さらに,仮に商標法4条1項11号にいう「類似する商標」が使用されることを想定した場合,これに接する取引者,需要者は,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがないとはいえない程度に共通の特徴を有する商品であると解すべきである。

 また、裁判所は、判断の冒頭で、下記のような、一般論を述べています。
   「なお,本件において,主要な争点は,指定商品が類似するか否かではなく,本件商標と引用商標とが類似するか否かである。そして,商標の類似性に影響を及ぼす取引の実情に係る事実関係と,指定商品の類似性に影響を及ぼす取引の実情に係る事実関係とは,考慮要素において共通する点があるものの,前者の方が後者よりも,多様かつ複雑であり,その審理範囲は広範である。審決が主要な争点である商標の類否について判断を省略し,指定商品の類否についてのみ判断をした点は,審理のあり方として適切さを欠いたものといえる。今後,再開される審判手続においては,本件商標と引用商標との類否について審理することになるが,その審理に当たっては,単に称呼,外観,観念のみを対比するのではなく,当事者の主張,立証を尽くさせた上で,確立した判例に沿って,「商品に関する具体的取引状況を可能な限り」明らかにして,それらの事実を総合して,両商標の類似性の有無を対比判断すべきである。」 

◆平成19(行ケ)10042 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年09月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10061 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年08月08日 知的財産高等裁判所

  郭状図形「C」と「UBS」の文字とを合わせた標章について、「UBS」という称呼が生ずるのかが争われました。「UBS」という称呼が生ずるとした審決を取り消しました。
  「以上のとおり,本願商標は,シカゴ・カブスのロゴと同一形状であること,シカゴ・カブスの名称は我が国においてよく知られ,また,シカゴ・カブスのロゴは我が国において相当程度知られていること,英文字等で構成される商標において,先頭の「C」を,他の文字を囲む形状で大きく表\記する例は少なくないこと等に照らすならば,本願商標では,「円輪郭状図形」ないし「C」部分と「UBS」部分とを,一体のものと理解して,「CUBS」すなわち「カブス」と認識するのが自然であり,そうすると,本願商標からは,「カブス」の称呼のみが生じ,「ユービーエス」の称呼は生じないと解するのが相当である。」

◆平成19(行ケ)10061 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年08月08日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10301 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年05月22日 知的財産高等裁判所

  商標法4条1項19号について無効でないとした審決が取り消されました。
   「以上の認定事実を総合すれば,原告ないしジェイマセドグループの「Dona Benta」商標は,ブラジル国内において,・・・本件商標の出願がなされた平成10年〔1998年〕の時点で,原告は,小麦関連商品の製造販売においてブラジル国内で第2位の企業となり,その間,新聞や雑誌等において「Dona Benta」商標を使用した広告も行い,その業務を紹介する記事も新聞等に掲載されていたのであるから,遅くとも本件商標の出願時(平成10年〔1998年〕9月21日)までには,ブラジル国内で需要者の間に広く認識されるようになり,その周知性は,本件商標の登録査定時(平成11年11月5日,甲2)に至るまで継続していたものと認められる。ウ被告は,原告が提出する証拠は,そもそも真偽不明のものがあり,頒布販売に関する事実関係も全く示されていない等と主張する。しかし,上記アに引用した証拠が内容虚偽のものであることを疑わせる事情は全くうかがわれない。また,これらの新聞・雑誌等の頒布販売に関する具体的事実は必ずしも明らかではないが,広告,記事自体の体裁や,原告が小麦関連商品の製造販売においてブラジル国内で第2位の企業であること等にかんがみれば,ブラジル国内の広い範囲にわたって原告の広告がなされ,紹介等もなされてきたことが推認される。」

◆平成18(行ケ)10301 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年05月22日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10497 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年03月12日 知的財産高等裁判所

  「MAGICALSHOESOURCE」と「THE SHOESOURCE」が類似するかが争われました。審決は両者を非類似と判断しましたが、裁判所はこれを取り消しました。
  「本件商標は「MAGICALSHOESOURCE」の欧文字を標準文字で表記してなるものである。同構\成からは,・・・ところで,本件商標「MAGICALSHOESOURCE」のうち,先頭にある「MAGICAL」の部分は,「魔法の,不思議な,魔術的な,神秘的な,魅力的な」等を意味する語として,我が国においてもよく理解され,普通に使用されている英単語であること(乙1,2。この点につき被告は争わない。),「SHOESOURCE」の部分が指定商品との関連で見る者の注意をひくことに照らすならば,「MAGICALSHOESOURCE」につき,「MAGICAL」と「SHOESOURCE」とを一つの区切りと理解できるから,「MAGICAL」と「SHOESOURCE」の2つの部分からなるものととらえる理解が自然である。・・・本件商標について,商品の出所表示機能\を有する特徴的部分に関して検討する。「MAGICAL」の部分は,上記のとおり,「魔法の,不思議な,魔術的な,神秘的な,魅力的な」等を意味する語として,我が国においてもよく理解され,普通に使用されている英単語であり,しかも,商品の内容を説明する修飾語と理解できることからすれば,その自他商品識別機能は小さい。これに対し「SHOESOURCE, 」の部分は,「靴の供給元」なる観念を生ずると理解する余地がないわけではないが,そもそも,「SHOESOURCE」なる語が英単語として存在することを認め得る証拠はなく,少なくとも一般には,「SHOESOURCE」なる表記を目にした者がその意味を理解することは困難であり,仮に当該表\記から靴の製造者・販売者としての観念を読みとり得るとしても,それは辞書等に収録されていない新たな言葉ないし造語であるから,これを見る者の注意をひくものと認められる(靴の製造者・販売者を意味する語としては,通常,「shoe shop」,「shoe store」,「shoemaker」等の語が用いられるものと考えられる。)。上記によれば,本件商標においては,「MAGICALSHOESOURCE」の全体のほか,「SHOESOURCE」の部分が,自他商品識別機能を有する特徴的部分であるというべきである。・・・本件商標と各引用商標とは,いずれも特徴的部分として「SHOESOURCE」ないし「ShoeSource」の部分をとらえることができ,その称呼において共通する(なお,当該部分について外観において共通する。また,当該部分からいかなる観念が生ずるにせよ,観念が生ずる限度で共通する)。上記によれば,本件商標と各引用商標とは類似するというべきである。」

◆平成18(行ケ)10497 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年03月12日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10028 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年12月26日 知的財産高等裁判所

  原告と被告間の私益に関する紛争に,商標法4条1項7号(公序良俗違反)の規定を適用したことは誤りであると争われました。平成17(行ケ)10029号〜平成17(行ケ)10033までも同様の事件です。
 「以上によれば,原告による本件商標の登録出願は,Pの生前の極真会館という膨大な構成員からなる規模の大きなまとまった一つの団体を出所として表\示するものとして広く知られていた標章について,Pの死亡時から間もない当時の代表者である原告が個人名義でしたものであるところ,その登録出願は,極真会館のために,善良な管理者の注意をもって代表\者としての事務を処理すべき義務に違反し,事前に団体内部においてその承認を得ると共に,その経過を直ちに報告するなど,極真会館内部の適正な手続を経るべき義務を怠り,個人的な利益を図る不正の目的で,秘密裏に行ったと評価できるものであり,極真会館としても,その後,それが不適切な行為であると表明していた。また,本件遺言が確認審判申\立ての却下決定の確定により効力が認められず,原告は,少なくとも内部的には,正当な代表者であると主張する根拠を欠くに至っていた。そして,登録査定時において,原告は,X派と呼ばれる極真会館を名乗る団体の代表\者であったのであるが,本件商標は,本来,上記のとおり,Pの生前の極真会館というまとまった一つの団体を出所として表示する標章として広く知られていたものであり,X派は,上記極真会館と同一性を有するものではないから,原告がX派と呼ばれる極真会館を名乗る団体の代表\者であったことが,直ちに,本件商標の登録出願を正当化するものではない。かえって,本件商標の正当な出所といえるPの生前の極真会館が,その死後,複数の団体に分裂し,極真空手の道場を運営する各団体が対立競合している状況下において,Pの死亡時から間もない当時の極真会館の代表者としての原告が重大な義務違反により個人名義で登録出願したことによる本件商標の登録を,登録査定時においてPの生前の極真会館とは同一性を有しない一団体の代表\者である原告にそのまま付与することは,商標法の予定する秩序に反するものといわざるを得ない。」

◆平成17(行ケ)10028 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年12月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10334 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成18年12月25日 知的財産高等裁判所

 図形と文字とを三段に配した組み合わせから構成された「ProMOS/TECHNOLOGIES」が、「プラレス」と類似するかが争われました。裁判所は、類似するとした審決を取り消しました。
 「プロモス」の称呼と「プラモス」の称呼とは,ともに4音構成から成り,そのうち「プ」「モ」「ス」の3音を共通にしている。そして,相違する第2音目の「ロ」と「ラ」についてみると,両音は,ともにラ行に属し子音「r」を共通にしており,異なる母音の「o」と「a」とは,いわゆる母音三角形の隣同士に位置し調音方法も類似する音声であって(1976年8月10日第3版発行「音聲學大辞典」株式会社三修社刊),近似する音として聴取されることが認められる。しかしながら,その一方で,「プロモス」及び「プラモス」のような称呼を一連に発音するときは,語頭の「プ」ではなく第2音の「ロ」又は「ラ」に強勢が置かれるのが一般的であることは,当裁判所に顕著な事実である。そうすると,「プロモス」「プラモス」の両称呼をそれぞれ一連に発音するときは,その語調,語感がある程度は近似するといえるものの,これを耳にする者にとって,両称呼を区別することは多くの場合に可能であると認められる。したがって,審決が,両商標は称呼において類似すると断定したことは,適当ではないといわざるを得ない。」

◆平成18(行ケ)10334 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成18年12月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10344 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年11月29日 知的財産高等裁判所

 1本の毛髪を表した図形商標が、識別性なしとして拒絶された審決が維持されました。
  「本願商標の構成は,前記2(1)において認定したとおり,中心に縦に描かれた黒色の棒状体が,上端から下端に行くにしたがってだんだんと太くなっていき,・・・本願商標の指定商品・指定役務に含まれる商品・役務の広告において,実際に,商品・役務の品質,用途の文章による説明とともに,その理解を助ける補足的な説明として,上記のような図形が多数掲載されていることが認められる。そうすると,本願商標を構成する図形は,その指定商品・指定役務との関係上,その商品・役務の特性そのものを記述するに止まるものであって,それ以上に,特定の者によって製造販売されたことを明らかにするという出所表\示機能を果たしにくいものであり,また,このような図形については,その使用の機会を当該商品を製造販売する多くの事業者に開放しておくことが適当であって,その中の一部の事業者に当該商標の商標登録を許し当該商標の使用を独占させるのは公益上望ましくないというべきである。以上によれば,本願商標を法3条1項3号に該当するものとした審決の判断に誤りはない。」

◆平成18(行ケ)10344 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年11月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10233 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年11月20日 知的財産高等裁判所

  図形と結合した商標について称呼が類似するので類似であるとした審決が取り消されました。
 「本願商標のような,文字部分と図形部分の結合から成る商標(いわゆる「結合商標」)の類否を判断するに当たっては,商標の構成全体が有するデザインとしての有機的関連性をも踏まえて,文字部分と図形部分とを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められるか否か,という観点からの検討が不可欠である。
イ そこで,上記の観点から本願商標の構成をあらためて検討すると,本願商標は,前記のとおり,「X−Pact」の文字部分を囲むように,文字部分の上側左半分から左側,下側を通って右側中程に至るまで,半月刀ないし三日月様の図形が描かれている。そして,「X−Pact」の文字には,標準文字ではなく,ゴシック様の斜字体が用いられているが,当該字体の選択は,半月刀ないし三日月様の図形がもたらす生き生きとした動的な印象との調和を考慮して行われたものであることがうかがわれる。また,文字部分と図形部分との配置関係についても,文字部分を図形部分が包み込むようなものとなっており,かかる配置は,デザインとしての一体性を有するものと認められる。このように,本願商標は,文字部分と図形部分とを「分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合している」とまではいえないにしても,標準文字と図形とを上下又は左右に単純に併記したような商標とは異なり,文字部分と図形部分との間に,デザインとしての有機的な関連性が認められるというべきである。したがって,審決が,文字部分から生ずる称呼の類否についての検討に「その外観に終始し,外観についてはおいて相違するところがあるとしても」(2頁最終段落)と述べるだけで実質的な検討を欠いたまま,本願商標と引用商標とが類似すると判断したことは,本願商標と引用商標とが外観において著しく相違することを看過したものであって,不適切であるといわざるを得ない。・・・前記(1)のとおり,商標の類否は,両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその取引の実情を明らかにしうるかぎり,その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。
イ 上記の点につき,本願の指定商品の冒頭に掲げられている「圧延機,連続鋳造機」についてまず検討すると,これらの商品は,その名称からして,製鉄工場等に設置される大規模な機械装置であって,取引者・需要者は製鉄業等の専門的知識を有する少数の者であり,実際の購入に当たっては,機械の性能やメーカーの信用等についての慎重な検討が行われることが,容易に推認される。そうすると,上記(2),(3)イで認定したとおり,本願商標と引用商標とは外観において相違することや,称呼の類似の程度もさして高くはないことに照らし,取引者・需要者において,出所の混同が生じる可能性は著しく低いというべきである。もっとも,「その他の金属加工機械器具」として動力付き手持工具等を,「電子応用機械器具」としてパーソ\ナルコンピュータ等をそれぞれ想定した場合には,これらは一般の消費者も手にする商品であるから,取引に際して払われる注意力等は,「圧延機,連続鋳造機」等の取引におけるものよりは相対的に低いと推認されるが,これらの商品も日用品とは異なるから,上記(2),(3)イで認定した本願商標と引用商標との相違に照らして,取引者・需要者において出所の混同が生じる可能性は低いというべきである。
ウ したがって,本願商標と引用商標とは,同一または類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとは認められない。」

◆平成18(行ケ)10233 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年11月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10349 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年09月20日 知的財産高等裁判所

 「赤毛のアン」の原題である「ANNE OF GREEN GABLES」の登録が公序良俗に反するとして無効とされた審決が、維持されました。
 結論は同じですが、審決は,「被告を含むカナダ国政府との国際信義に反する」として無効としましたが、知財高裁は詳細な検討をした上で無効としています。
   「ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,?@その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,?A当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,?B他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,?C特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,?D当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである。」
 「題号は,当該著作物の標識というべきものであるから,その著作物を他の著作物から識別する機能を有するとともに,当該著作物の評価や名声がその題号に化体し,著名な著作物についてはその題号自体が大きな経済的価値を有する場合があり,本件著作物のような世界的に著名な題号が有する経済的な価値は,計り知れないものがある。本来万人の共有財産であるべき著作物の題号について,当該著作物と何ら関係のない者が出願した場合,単に先願者であるということだけによって,当該指定商品等について唯一の権利者として独占的に商標を使用することを認めることは相当とはいい難く,商標登録の更新が容易に認められており,その権利行使は半永久的に継続されることになることなども考慮すると,なおさら,かかる商標登録を是認すべき必要性は低いというべきである。そうすると,本件著作物のように世界的に著名で,大きな経済的な価値を有し,かつ,著作物としての評価や名声等を保護,維持することが国際信義上特に要請される場合には,当該著作物と何ら関係のない者が行った当該著作物の題号からなる商標の登録は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当すると解することが相当である。」

◆平成17(行ケ)10349 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年09月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10840 審決取消請求事件 平成18年05月10日 知的財産高等裁判所

  商標「マジカルウェスト」が「マジカルクエスト」と類似するとした審決が維持されました。
 「「クエスト」に接したときにそれが「探索」という意味であると直ちに 理解されるほどの状況になっているということは困難であるのみならず,一 般消費者の英語の理解度からしても,「クエスト」に接したとき,それが 「探索」という意味であると直ちに理解することも困難というべきである。 また,原告が,本願商標及び引用商標から生ずる観念であると主張する 「魔法の腰のくびれ」,「魔法の西域」又は「魔法の探索」という観念自体 が,いずれも一般的な言語表現とはいえず,その具体的意味すら明らかでないものであるから,これを本願商標に係る各指定商品の取引者・需要者であ\nる一般消費者が直ちに想起できるということ自体にも無理がある。 したがって,原告の上記の主張は採用することができない。」

◆平成17(行ケ)10840 審決取消請求事件 平成18年05月10日 知的財産高等裁判所

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◆H18. 2.15 知財高裁 平成17(行ケ)10741 商標権 行政訴訟事件

  14March=π(Pi・Pie)Day」の文字と「14March」の文字の下部に「3.14」の文字を表してなる商標について指定商品「菓子及びパン,即席菓子のもと」が登録されていました。これについて、「指定商品「パイ」については、4条1項11号違反、他の商品については同項16号違反」との無効審判が請求されました。審決では、指定商品「パイ」については、4条1項11号であると判断されましたが、16号違反についは理由無しと判断されました。16号違反について理由無しとした判断について、審判請求人は、審決取消訴訟を提起しました。裁判所は、16号違反であるとして、無効不成立の部分を取消しました。
  「確かに,本件商標は菓子パイそのものを意味するものではなく,「Pie」の文字も本件商標の一部を構成するにすぎない。また,一般的な需要者にとって,本件商標が「3月14日が菓子のパイの日である」との意味を持つと即座に理解することが必ずしも容易ではないことは,甲1のアンケート結果(問12)が示すとおりである。しかしながら,前記判示のとおり,本件商標はホワイトデーという多くの人が限られた期間内に菓子類等を買い求める機会に使用されるものであり,そのことが商標の構\成から明らかであるところ,同商標には,パイ菓子であることを直接的に示す平易な英語である「Pie」という言葉が使われ,さらに「π」「Pi」も「パイ」と呼称されるのであるから,ホワイトデーの贈り物として菓子類やパン類を求めにきた需要者は,本件商標に接した場合,その内容,品質がパイ菓子であって,他の種類の菓子やパンではないと認識するのが自然である。そうすると,本件商標が,パイ菓子以外の「菓子及びパン,即席菓子のもと」に使用された場合には,需要者はその商品の品質,内容がパイ菓子であると誤認するおそれがあるというべきである。」

◆H18. 2.15 知財高裁 平成17(行ケ)10741 商標権 行政訴訟事件

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◆H18. 1.31 知財高裁 平成17(行ケ)10565 商標権 行政訴訟事件

  本件商標「サイクロンドライヤー」が引用商標「Cyclo」に類似するかが争われました。指定商品は、第9類「産業機械器具・・」です。裁判所は、商標「サイクロンドライヤー」からは「サイクロン」という称呼が生じ、「サイクロン」は「Cyclo」と類似するとした審決を維持しました。
 「「サイクロンドライヤー」の称呼は,10音にわたるものであるから,簡易・迅速を尊ぶ取引の実際において,冗長なものとして認識される場合がないということはできないし,上記のとおり,本願商標の構成からみて,「サイクロン」と「ドライヤー」の各文字部分が分離して認識され得るものであり,本願の指定商品中の「乾燥機,乾燥装置」との関係においては,本願商標中の「ドライヤー」の文字部分は,自他商品を識別する標識としての出所表\示機能を有さないものであるから,当該部分を省略して「サイクロン」の称呼が生じることは十\分あり得ることというべきである。なお,原告は,過去の裁判例を引用するが,これらは,商標全体が一連のものとして周知性を獲得しているなど,それぞれ本件と事情を異にする事例に関するものというべきである。したがって,原告の上記主張も採用できない。・・・上記「サイクロン」及び「サイクロ」の各称呼は,「サイクロ」の音を共通にしており,語尾の「ン」の有無の点が異なるのみである。そして,「ン」の音(撥音)は,「子音だけで母音を含まないため,上につく音節といっしょにして一音節と数える」(日本文法用語辞典・初版,乙12)ものであり,鼻音である(広辞苑・第5版,乙13)から,その発音に際しては強調されることがなく,極めて聴取しにくい音といわざるを得ない。・・また,原告は,「サイクロ」が,日本人に何の観念も想起させない造語であるのに対し,「サイクロン」は「熱帯低気圧」の意味を有するので,両者は観念において明確に相違するから,互いに紛れることはない旨主張する。確かに,引用商標は,特定の観念を生じないため,本願商標と引用商標の観念を比較することができず,両商標が観念において類似するとはいえない。しかしながら,前記のとおり,両商標は,その称呼において極めて類似するものであるから,観念において類似するものでなくても,両商標は,互いに紛らわしいものといわざるを得ない。したがって,原告の上記主張も採用できない。」

◆H18. 1.31 知財高裁 平成17(行ケ)10565 商標権 行政訴訟事件

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◆H17.12.27 知財高裁 平成17(行ケ)10613 商標権 行政訴訟事件

 「自由学園」が「学校法人自由学園」の著名な略称であり、「国際自由学園」はかかる略称を含むので商標法4条1項8号により登録を受けられないかが争われました。東京高裁(当時)は同号には該当せずと判断しました(H16(行ケ)168号)が、この判断が最高裁で破棄、差し戻しされました(H16年(行ヒ)343号)。知財高裁は、さらに審理を行い、同号に該当すると判断しました。
 「原告は,大正10年の設立以来,原告略称を教育及びこれに関連する役務に長期間にわたり使用し続け,本件出願時を経て本件審決時に至るまでの間,各種の書籍,新聞,雑誌,テレビ等で度々取り上げられてきており,これらにおいては,原告を示す名称として原告略称が用いられてきたのであるから,原告略称は原告を指し示すものとして一般に受けいられていたものと認めることができ,したがって,上記基準時(本件出願時及び登録査定時)において,原告略称は原告の名称の「著名な略称」であったと認めることができる。・・・人の名称等の略称が8号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するについては,常に,問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく,その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものであるというのでから,「教育関係者を始めとする知識人」ないしこれに「指定役務の需要者である学生等」を加えた限定された層を基準とする被告の上記主張は,採用することができない。

 最高裁の判決はこちらです。 H16年(行ヒ)343号

◆H17.12.27 知財高裁 平成17(行ケ)10613 商標権 行政訴訟事件

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◆H17.12.20 知財高裁 平成17(行ケ)10491 商標権 行政訴訟事件

  商標「FEMMIO VALENTINO」が,「VALENTINO GARAVANI」と出所混同する(4条1項15号違反)かが争われました。裁判所は、15号に該当するとした審決を維持しました。取引形態についての主張については、下記のように述べました。
 「原告は,審決の「商品の需要者もともに主として一般消費者であって,本件商標の指定商品が日常的に消費される性質の商品であり,殊にその需要者は特別な専門的知識経験を有しない一般大衆であって,これを購入するに際して払われる注意はさほど綿密なものではないといえることから,両者はその需要者を共通にするものである」(審決8頁最終段落〜9頁第1段落)との認定に対し,著名ブランドを使用した商品のような高級品を購入する際に払われる注意は相当に綿密なものであるのに対して,本願商標を使用した商品は,現在「ランチシリーズ」商品として100円ショップで販売されており,需要者・消費者,販売経路のいずれにおいても共通するところはないなどと主張する。  しかし,商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれ」を判断するに当たっては,出願に係る商標の指定商品全部,すなわち上記第3の1(2)記載の商品すべてについて,これを一般的に検討すべきであり,出願人固有の取引の実情を混同を否定する方向に斟酌することは許されないというべきである。なぜならば,原告が現在本願商標を上記のように使用していたとしても,それは原告の事業展開の一つにすぎないものであり,事業展開がしばしば変化することは日常よく見られることであって,現在の販売方法が今後も継続し,固定していくとは限らないからである。そして,本願指定商品全体についてこれを一般的に検討すれば,上記審決の認定に誤りはないというべきであるから,原告の上記主張も採用することができない。」

◆H17.12.20 知財高裁 平成17(行ケ)10491 商標権 行政訴訟事件

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◆H17. 4.19 知財高裁 平成17(行ケ)10103 商標権 行政訴訟事件

 「BALMAIN」は、「バルマン」または「Valman」等とは非類似であるとして、特許庁の審決を取り消しました。
 裁判所は「「BALMAIN」ないし「バルマン」の表示は,著名な原告「PIERRE BALMAIN」社に係る「BALMAIN」ブランドを示すものとして,本願商標及び引用商標1〜3に係る取引者,需要者の間において,一般に広く知られるようになっていたものと認められるから,本願商標に接した取引者,需要者は,仮に本願商標自体を知らなくとも,本願商標から,周知の上記「BALMAIN」ブランドを想起するものというべきであり,これに対し,引用商標1〜3から特定の観念が生じないことは当事者間に争いがないから,本願商標と引用商標1〜3とは,観念において著しく相違するものと認めるのが相当である。」と判断しました。

◆H17. 4.19 知財高裁 平成17(行ケ)10103 商標権 行政訴訟事件

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◆H17. 4.13 知財高裁 平成17(行ケ)10225 商標権 行政訴訟事件

 商標の識別力が弱い部分がたとえ、角かっこなどで囲われていても、字体が異なっても、これを抜き出して独立した称呼を認定した審決を取り消しました。本件商標は、「ESI[tronic]」です。引用商標は「AS TRONIC」です。

◆H17. 4.13 知財高裁 平成17(行ケ)10225 商標権 行政訴訟事件

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◆H17. 4.13 東京地裁 平成16(ワ)17735 商標権 民事訴訟事件

 被告の雑誌「Club LEGACY」は、原告の商標「レガシィクラブ」に類似するとして、差止を認めました。
裁判所は理由の1つとして「本件商標の登録に至る経緯において,原告が自ら「レガシィクラブ」を一体不可分にのみ称呼,観念される一種の造語である旨主張したことを認めるに足りる証拠はない」として被告の主張を退けました。特許庁の実務は、かつては、○○クラブであれば、一連称呼とするということでしたが、いまはどうなのでしょうか?

◆H17. 4.13 東京地裁 平成16(ワ)17735 商標権 民事訴訟事件

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◆H17. 4.13 知財高裁 平成17(行ケ)10230 商標権 行政訴訟事件

 周知商標であるポロのマークについて、似た図形標章が4条1項15号に該当すると判断されました。使用形態まで考慮して判断した点は興味深いです。
  裁判所は「本件商標がワンポイントマークとして使用される場合を考えると,そのようなワンポイントマークは,比較的小さいものであり,マーク自体に詳細な模様や図柄を表現することは実際上容易ではないから,・・むしろその図形の輪郭全体が見る者の注意を惹き,内側における差異が目立たなくなることが十\分に予想されるのであって,その全体的な配置,輪郭が引用商標と類似していることから,ワンポイントマークとして使用された場合の本件商標は,引用商標とより類似してくるとみるのが相当である」
 問題となった標章を公告公報から抜き出しました。 こちらです。

 

◆H17. 4.13 知財高裁 平成17(行ケ)10230 商標権 行政訴訟事件

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◆H17. 2.24 東京高裁 平成16(行ケ)256 商標権 行政訴訟事件

 4条1項15号の判断について、出所混同無しと判断した審決を取り消しました。
 「商標法4条1項15号にいう混同の生ずるおそれの有無は,取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準とすべきところ,被告は,医療の現場では,専門家たる医療関係者が「メバロチン」とその後発医薬品は現実の混同を引き起こすことなく使用し,混同のおそれは生じていないと主張する。確かに,医療関係者は医薬の知識を有する専門家であり,患者に処方・調合する薬剤に誤りのないように,薬剤の名称には細心の注意を払っているのが通例であり,医療の現場で「メバロチン」とその後発医薬品が実際に誤用されたことを示す証拠はない。しかしながら,新薬が次々と発売される中で,日常的に数多くの患者に接して様々な薬剤を処方・使用している医療の現場においては,医療関係者といえども名称の似た薬剤を誤って処方することがあり,かかる薬剤の取違え事例が存在することは「医療品・医療用具・諸物品等情報の分析について」(甲54)の記載からも明らかである。また,平成15年9月18日開催にかかる厚生労働省「医薬品・医療用具等対策部会」においては,名称の類似する薬剤の取り違えが全国的な問題となっており,とりわけ後発医薬品によく似た名称が多いとの指摘がなされている(甲52の2,2頁)。本件商標に係る「メバスロリン」は,まさに「メバロチン」とその有効成分,薬効を同一にする後発医薬品であり,医療機関や薬局では先発医薬品と後発医薬品は同時に取り扱われることも少なくないと考えられることや,両商標の類似性の程度,引用商標の著名性を考慮すれば,「メバスロリン」に接した医師や薬剤師は,「メバロチン」を容易に想起し,「メバスロリン」を原告あるいは原告と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品等と混同するおそれがあるというべきである。」

◆H17. 2.24 東京高裁 平成16(行ケ)256 商標権 行政訴訟事件

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◆H17. 1.31 東京高裁 平成16(行ケ)219 商標権 行政訴訟事件

 4条1項7号による無効理由について判断されました。
  「原告による本件商標「COMEX」の商標登録出願は,出願の経緯及び商標登録後の原告の行為に照らし,被告ロレックス社製の「ROLEX/comexダブルネーム」時計の人気及び「comex」,「COMEX」の商標が被告ロレックス社製ダイバーズウォッチの高い性能と信頼性の証とされていることを熟知しながら,我が国において「時計,時計の部品及び付属品」を指定商品とする「COMEX」の商標登録がされていなかったことを奇貨として,先取り的にされたものであり,その商標登録出願に基づいて登録された本件商標「COMEX」を原告の販売する時計に使用すれば,需要者の誤認を招くばかりでなく,そのただ乗り的使用によって,「comex」,「COMEX」の商標について形成された被告ロレックス社の信用が毀損され,また,本件商標「COMEX」が原告の販売する比較的廉価なダイバーズウォッチに使用されれば,ごく少数のサブマリーナ及びシードゥエラーにのみ使用されることによって希少性と名声を保っている「comex」,「COMEX」の商標が希釈化され,その価値が損なわれることになることは明らかである。」

◆H17. 1.31 東京高裁 平成16(行ケ)219 商標権 行政訴訟事件

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◆H16.11.25 東京高裁 平成16(行ケ)129 商標権 行政訴訟事件

 被告標章「メバロチン」は周知商標「メバロカット」と出所混同が生ずると判断されました。
 「確かに,医師や薬剤師が医薬の知識を有する専門家であり,医師が患者に高脂血症用薬剤を投薬する際には,病院等にある1社ないし数社の限られた高脂血症用薬剤の中から医薬を選択するものであることや,病院等が医薬品を購入する際には製薬会社各社のMR(医薬品情報伝達者)などから説明を受ける機会もあることを考慮すれば,一部の医師や薬剤師については,本件商標を使用した高脂血症用薬剤を被告あるいは被告と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と混同する具体的なおそれは少ないとみる余地もないではない。しかし,だからといって,およそ,その取引者・需要者である医師,薬剤師など医療関係者であれば,一般的にそのような混同を生ずるおそれはないということはできないのであり,上記のような医療用医薬品の流通過程,被告の引用商標の高脂血症用薬剤における周知著名性,引用商標と本件商標との類似性の度合い,引用商標と本件商標を使用した両商品の薬効成分が同一であること,並びに,医療用医薬品に関する取引の実情からすれば,医療関係者が医薬の知識を有する専門家であることを考慮しても,多数の種類,品目の医薬品を取り扱っている医薬品卸売業者及び多数の種類,品目の医薬品を取り扱っている調剤薬局,並びに,多数の医師や薬剤師が働く医療機関における医師,薬剤師などにおいて,本件商標を使用した高脂血症用薬剤を被告あるいは被告と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と混同するおそれがあることを否定することはできない。」

◆H16.11.25 東京高裁 平成16(行ケ)129 商標権 行政訴訟事件

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◆H16.11.25 東京高裁 平成16(行ケ)196 商標権 行政訴訟事件

  標章「建設大臣」が公序良俗に反するとした拒絶審決について、裁判所も同判断を行いました。
   裁判所は「”建設大臣”という語が,国の行政組織に係る公的な名称を示すものとして認識され,実際に,取引社会において,一定の商品や役務について公的な基準,規格等を満たしていることを示す表示として用いられていることなどに照らすと,”建設大臣”の文字よりなる本願商標をその指定商品及び指定役務について使用した場合には,その需要者,取引者に対し,それらが従前の建設省の所管事務を統括していた建設大臣と関わりがあるかのように,あるいは建設に関する行政分野を統括する大臣の名称であるかのように,誤信させるおそれがあることは明らかであり,その登録を認め,指定商品及び指定役務について独占使用権,排他権を付与することは,国民の行政に対する信頼を損ねるとともに,取引秩序を乱すおそれがあり,社会公共の利益に反するというべきである。」

   こちらは"福祉大臣”についての判断です。H16.11.25 東京高裁 平成16(行ケ)197 商標権 行政訴訟事件

◆H16.11.25 東京高裁 平成16(行ケ)196 商標権 行政訴訟事件

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◆H16. 9.30 東京高裁 平成16(行ケ)206 商標権 行政訴訟事件

 「秘書士」という標章が4条1項7号(公序良俗)に該当するとした審決が取り消されました。
裁判所は、「一般国民が,末尾に「士」の付された名称に接した場合,一定の国家資格を付与された者を表していると理解することが多いと一般的にはいうことができても,本件においては,前記1のとおり,教育協会の行ってきた「秘書士」の称号認定が,秘書教育の関連分野における取引者,需要者の間において周知となっていたことや,前記(1)のとおり,「秘書士」と「秘書技能検定」の語が類似していないことを考慮すれば,本願商標をその指定役務に使用しても,取引者,需要者をして,秘書技能\検定の他に,秘書職に関する国家資格,公的資格が存するかの如く誤信せしめるものということはできないから,被告の上記主張は理由がない」と述べました。

◆H16. 9.30 東京高裁 平成16(行ケ)206 商標権 行政訴訟事件

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◆H16. 9.16 東京高裁 平成16(行ケ)18 商標権 行政訴訟事件

 菓子に用いられる「ひよ子」が、即席中華そばのめんに用いられる「ひよこ」と混同生ずるかが争われました。審決では4条1項15号に該当するとして拒絶されましたが、裁判所はこれを取り消しました。
 「引用商標「ひよ子」が普通名詞の「ひよこ」と顕著な差がなく,自他識別性が強くはないこと,引用商標「ひよ子」の周知著名性は,お土産品・贈答品に頻繁に利用される,「ひよこの形をしたお菓子」という商品と密接に結合したものであり,当該商品を連想させる商標として周知著名なものであるから,その周知著名性が及ぶのはせいぜい「菓子」の範囲までであり,食肉,野菜,果実などの生鮮食料品から,様々なものが含まれる加工食料品など食品全般にまで広く及ぶと解することはできない。・・・一般消費者が日常的に食する「即席中華そばのめん」とは,商品自体が相当に異なり,販売経路,売場などからも,明りょうに区別することができる食品であることからすれば,「即席中華そばのめん」に本願商標を使用しても,その取引者及び需要者である一般消費者が,同商品を,引用商標「ひよ子」の業務主体又は同社と何らかの関係にある者の業務に係るものと混同するおそれがあるとみることはできない。」と述べました。

◆H16. 9.16 東京高裁 平成16(行ケ)18 商標権 行政訴訟事件

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◆H16. 9. 6 東京高裁 平成15(行ケ)564 商標権 行政訴訟事件

  ポロラルフローレンと出所混同を生ずるおそれがあるとして無効と判断された審決が取り消されました。
 裁判所は、「ファッション関連商品の分野における引用商標の周知・著名性を考慮に入れても,本件商標を指定商品に使用したときに,当該商品が,ラルフ・ローレン又は同人と密接な営業上の関係若しくは同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であるかのように誤信され,商品の出所混同が生ずるおそれがあるということはできないから,その出所混同のおそれを肯定した審決の認定は誤りであるといわなければならない。そして,上記判断は,審決が指摘するように(審決謄本15頁下から第2段落),一般的に,生活関連用品について消費者が有する注意力はさほど高いものではないことを考慮しても,左右されないというべきである・・・」と述べました。

◆H16. 9. 6 東京高裁 平成15(行ケ)564 商標権 行政訴訟事件

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◆H16. 7.26 東京高裁 平成15(行ケ)456 商標権 行政訴訟事件

 1つの争点として、指定商品「半導体ウエハ」が「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く。)」と類似する商品かが争われました。
 裁判所は、下記のように述べて、類似するとした審決を取り消しました。「そして,半導体ウエハは,一般需要者向けの商品ではなく,半導体ウエハの需要者はデバイスメーカー等であること,半導体ウエハや半導体素子の品質及び歩留まりは,・・・その取引当事者は,こうしたクリーン・ルーム設備を保有する者だけに限られることは,当事者間に争いがない。これらの諸事情を総合考慮すれば,半導体ウエハと集積回路等の電子応用機械器具とについて,同一又は類似の商標が使用されたときに,半導体ウエハの需要者であるデバイスメーカー等において,それらの商品が同一営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認混同されるおそれはないというほかはない。」

 

◆H16. 7.26 東京高裁 平成15(行ケ)456 商標権 行政訴訟事件

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◆H16. 6.30 東京高裁 平成16(行ケ)67 商標権 行政訴訟事件

「幻庵」と「GEN AN」の2段併記の商標についての使用が争われました。裁判所は、幻庵を店舗名として使用していることを使用証明として認めました。
 「本件商標は,上記第2の1のとおり,「玄庵」と「GEN AN」の文字を横書き上下2段に書してなるものであるところ,本件商標の構成文字の「GEN AN」が,「玄庵」の称呼である「げんあん」をローマ字でそのまま表\したものであることは明らかであるから,新宿区(以下省略)に所在するステーキ店の営業を表示するものとして壇が使用していた「玄庵」の商標は,本件商標と社会通念上同一の商標ということができる。」

 

◆H16. 6.30 東京高裁 平成16(行ケ)67 商標権 行政訴訟事件

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◆平成16年06月08日 第三小法廷判決 平成15年(行ヒ)第265号 審決取消請求事件

 商標法4条3項にいう「出願時に8号に該当しない商標」が、出願時において8号本文に該当するが8号括弧書の承諾があることにより8号に該当しないとされる商標も含むのかが争われました。特許庁、高裁、最高裁とも同様に、出願時に承諾があっても査定時までに撤回された場合には、登録を受けられないと判断しました。
「3項にいう出願時に8号に該当しない商標とは,出願時に8号本文に該当しない商標をいうと解すべきものであって,出願時において8号本文に該当するが8号括弧書の承諾があることにより8号に該当しないとされる商標については,3項の規定の適用はないというべきである。したがって,出願時に8号本文に該当する商標について商標登録を受けるためには,査定時において8号括弧書の承諾があることを要するのであり,出願時に上記承諾があったとしても,査定時にこれを欠くときは,商標登録を受けることができないと解するのが相当である。  これを本件についてみると,前記事実関係によれば,本願商標は出願時に8号本文に該当するものであり,査定時において上告人が本願商標につき商標登録を受けることについてカムホートの承諾がなかったことは明らかであるから,本件出願は,本願商標が8号に該当することを理由として,拒絶されるべきものである。」

原審は以下の通り。
◆H15. 7.15 東京高裁 平成15(行ケ)183 商標権 行政訴訟事件
 

◆平成16年06月08日 第三小法廷判決 平成15年(行ヒ)第265号 審決取消請求事件

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◆H16. 4.22 大阪地裁 平成15(ワ)10678 商標権 民事訴訟事件

 被告標章「OLIVE Christmas」が登録商標「クリスマス」と類似するかが争われました。指定役務は宿泊施設の提供です。
 大阪地裁は「ホテル営業に関して「Christmas」や「クリスマス」の文字を含む結合商標が用いられている場合には、「Christmas」や「クリスマス」の文字部分は、特別な図案化が施されているような場合は別として、一般に識別力が弱いものというべきであり、被告標章のうちの「Christmas」の部分についても、特に識別力があるような態様のものではないから、商標の類比を判断するに当たって、この部分を分離して捉えることは相当でない。」として非類似と判断しました。

 

◆H16. 4.22 大阪地裁 平成15(ワ)10678 商標権 民事訴訟事件

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◆H16. 3.29 東京高裁 平成15(行ケ)499 商標権 行政訴訟事件

 本件商標「AFTERNOON TEA」が先願の「午後の紅茶」と類似するかが争われました。
 裁判所は、類似するとの審決の判断を維持しました。
この事件は、以前紹介した商標出願に関する判決(H15. 6. 4 東京高裁 平成14(行ケ)596 商標権 行政訴訟事件)の、その後の判断です。4条1項16号違反は回避できたんですが、同11号で拒絶されました。
 

◆H16. 3.29 東京高裁 平成15(行ケ)499 商標権 行政訴訟事件

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◆H16. 3. 9 東京高裁 平成15(行ケ)380 特許権 行政訴訟事件

(タイトルは特許権となってますが、商標権です)
裁判所は、「Dr. Rath's Vita-Cが、ビタシーと類似する」とした審決を取り消しました。「Dr. Rath's」 と「Vita-C」に分離されるが、「Vita-C」の部分は識別性がない部分であるという理由です。

◆H16. 3. 9 東京高裁 平成15(行ケ)380 特許権 行政訴訟事件

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◆H15.10.29 東京高裁 平成15(行ケ)248 商標権 行政訴訟事件

 ”管理食養士”という商標の登録が公序良俗に反するとして認められませんでした。特許庁裁判所とも同じ判断です。管理栄養士という似た名称があったことが理由となってます。
指定商品(役務)が異なる同じ案件です。
    ◆H15.10.29 東京高裁 平成15(行ケ)249 商標権 行政訴訟事件

    ◆H15.10.29 東京高裁 平成15(行ケ)250 商標権 行政訴訟事件

      

◆H15.10.29 東京高裁 平成15(行ケ)248 商標権 行政訴訟事件

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◆H15. 7.17 東京高裁 平成14(行ケ)436 商標権 行政訴訟事件

 著名商標がある文字と結合している場合に、当該ある文字について先行商標とは非類似との判断がなされました。どこまでが射程範囲かは分かりませんが、前記ある文字が一般に親しまれた語であって、それが指定商品との関係で強い識別力を発揮しない場合には、同じような判断がなされる可能性が高いといえるかもしれません。
「本願商標は大きな「TOD'S」の文字を横断するように「COMPETITION」の文字をまとまりよく一体に配した構成であり、このことと併せて前記2に認定した原告の「TOD'S」ブランドの知名度も考慮すれば、本願商標からは、「トッズ」と結合した「トッズ コンペティション」ないし「トッズ」の「コンペティション」という一体の観念が生ずると考えられ、「トッズ」を切り離した「コンペティション」の観念が独立して生ずるとは考えられない。したがって、本願商標とその文字部分から単に「コンペティション」の観念のみが生じる各引用商標とは、観念において相違する。さらに、称呼について検討するに、本願商標が前記のとおり「TOD'S」の文字と「COMPETITION」の文字をまとまりよく一体に配した構成であること、「トッズ」が短くて響きがよく、発音し易い語であることから本願商標は「トッズコンペティション」とよどみなく一連に称呼され得ること、及びブランドとしての「TOD'S」(トッズ)が高い知名度を有していることを考慮するとき、本願商標からは、「トッズ」の称呼又は「トッズコンペティション」の称呼が自然に生じ、かつ、これらの称呼をもって取引者及び需要者に識別されるというべきである。」

 

◆H15. 7.17 東京高裁 平成14(行ケ)436 商標権 行政訴訟事件

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◆H15. 7. 3 東京高裁 平成14(行ケ)377 商標権 行政訴訟事件

「ふぐの子」が先願既登録商標「子ふぐ」と類似か否かが争われました。審決では非類似と判断しましたが、裁判所は以下のように「観念、称呼および外観が似ている」として述べて、審決を取り消しました。
  「本件商標は,その構成文字に相応して「河豚(ふぐ)の子」の観念を生じ,引用A商標は,その構\成文字に相応して「こどもの河豚(ふぐ),小さい河豚」の観念を生じることは,明らかである。両商標は,その観念において,ほぼ同一であるといい得る程度によく似ているというべきである。  本件商標は,その構成文字に相応して「フグノコ」の称呼を生じ,引用A商標は,その構\成文字に相応して「コフグ」の称呼を生じることは,明らかである。両商標の上記各称呼は,「フ」,「グ」,「コ」の3音において共通しており,「ノ」の音の有無と「コ」の音の位置(語尾か語頭か)において異なるにすぎない。「フグ」は「河豚」を,「コ」は「子」を意味する語であり,「ノ」は「河豚」と「子」との関係を示す助詞であることから,実質的には上記各称呼は,「河豚」を意味する語と「子」を意味する語の語順を入れ替えたにすぎないものであるということができる。 上記対比の結果によれば,本件商標と引用A商標とは,その称呼において相当によく似ているというべきである。 称呼について述べた上記のことは,外観についてもほぼ同様に当てはまるということができる。」

◆H15. 7. 3 東京高裁 平成14(行ケ)377 商標権 行政訴訟事件

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◆H15. 6. 4 東京高裁 平成14(行ケ)596 商標権 行政訴訟事件

 指定商品「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」に商標「Afternoon Tea」を使用すると、品質誤認(4条1項16号)が生ずるかが争われました。問題となった出願   

審決では、若い女性の間では周知であるとしても、それ以外の顧客も存在するので、品質誤認が生ずると判断しましたが、裁判所は、以下のように、これを否定しました。
 「また、アフタヌーンティー店舗は、若い女性のみを対象としない全国各地の地域の情報紙でも頻繁に取り上げられており、・・・一般新聞や週刊誌で紹介され、飲食業界や流通業界の業界紙でも多数回にわたり紹介されているから、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」の名称が、アフタヌーンティー店舗のハウスマークであることは、若い女性に限定されず、一般の需要者・消費者にとって、上記時点においてかなりの程度で周知であったものと認められる。  さらに、アフタヌーンティー店舗では、長年にわたり、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」の名称を付し、本願商標を掲載したメニューを使用して紅茶以外のコーヒー・ジュース等の飲み物を提供してきたものと認められるから、このような飲食物の提供形態をとることにより、注文者が品質を誤認するような混乱を生じることはなかったものと推認するのが相当である。・・・・原告の経営方針として、本願商標を付した各種商品は、アフタヌーンティー店舗においてのみ販売されており、一般の需要者・消費者が、他の店舗及び自動販売機等によって本願商標を付した各種商品を購入することは困難な状況にあるものと認められる。  以上の諸事情に加えて、前記説示のとおり、本願商標から「茶」「紅茶」の観念のみが生じるものではなく、「飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事」「午後の茶の会」といった観念も生じるものであり、必ずしも商品の品質のみが想起されるものでないことも併せ考慮すると、本願商標をその指定商品について使用した場合に、商品「茶」であるかのごとく、需要者をして、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認めることはできないといえる。」

 

◆H15. 6. 4 東京高裁 平成14(行ケ)596 商標権 行政訴訟事件

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◆H15. 5.21 東京高裁 平成14(行ケ)285 商標権 行政訴訟事件

足袋の商標として周知の「力王」の商標権者が、「飲食物」を指定する「力王」に対して、4条1項15号違反として、無効を求めていた事件で、無効理由無しとした審決を取り消して差し戻しました。
  裁判所は、広義の混同を認め、以下のように判断しました。「本件商標の指定役務に係る「飲食物の提供」・・・の需要者は,当該役務の性質上,年齢,性別,職種等を問わず,あらゆる分野の広汎な一般消費者であり,その中には,原告商標に係る上記取引者,需要者も当然含まれている。これらの者が,野外で作業をして昼食時を中心に外食する機会も多く,本件商標の指定役務の需要者となりやすい・・・・本件商標の指定役務の需要者と原告商標に係る地下たびの需要者とは,相当程度共通する。そして,このような共通の需要者が本件商標に接して,その指定役務の提供を受ける際に普通に払う注意力の程度について見るに,・・・取引上の経験則に照らせば,一般消費者として,そのような高度の注意を払う行動には出ないのが通常であるといわなければならない。・・・これに接する需要者において,原告商標を連想,想起し,当該役務が原告の業務に係る役務であると誤信するか,あるいは,そうでなくとも,原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務であると誤信し,その出所について広義の混同を生ずるおそれがあるというべきである。」

 

◆H15. 5.21 東京高裁 平成14(行ケ)285 商標権 行政訴訟事件

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◆H15. 5. 8 東京高裁 平成14(行ケ)616 商標権 行政訴訟事件

審決では、「本件商標の出願手続行為は、申立人に対する背信的行為であり、信義誠実の原則に反するものである。そして、かかる商標権者の行為により登録出願された本件商標は、商道徳に反し公正な取引秩序を乱すおそれがあるものというべきである。したがって、本件商標の登録は、商標法4条1項7号に違反してなされたと認められるから、同法43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである」と判断されましたが、裁判所はこれを取り消しました。
  裁判所は、下記のような理由を述べました。
「商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法4条1項7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。・・・・事情の下で、原告が本件商標を登録出願し、商標登録を取得(平成13年8月)したことは、・・・・商標を安定して使用し得る地位を確保するための安全策という要素を持つものであって、・・・その商標登録出願から商標権取得に至る行為をあながち不当、不徳義と評価することはできない。・・・付言するに、前記1に認定した本件の事情の下で、本件商標「ハイパーホテル」の使用関係を原告と申\立人グループとの間でいかに律するかは、当事者間における利害の調整に関わる事柄である。そのような私的な利害の調整は、原則として、公的な秩序の維持に関わる商標法4条1項7号の問題ではないというべきである。」

 

◆H15. 5. 8 東京高裁 平成14(行ケ)616 商標権 行政訴訟事件

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◆ H15. 1.21 東京高裁 平成14(行ケ)190 商標権 行政訴訟事件

   「その類似商品を除く」という記載における類似商品とは何かが争われました。裁判所は、”商品が非類似だから無効理由無し”とした判断は否定しましたが、最終的には、商標非類似として、無効理由なしとした審決の判断は取り消しませんでした。
  商品の類似について裁判所は「審決は、引用商標の指定商品の記載「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」における「その類似商品」の範囲を、商標法4条1項11号にいう「類似する商品」を判断する際に用いられる特許庁の「『商品区分』に基づく類似商品審査基準」をそのまま当てはめることによって解釈していることが明らかであるが、これは誤りであるといわざるを得ない。・・・本件に即して述べると、先願登録商標の指定商品が「A」と記載されている場合には、商標法4条1項11号にいう商品Aに「類似する商品」の範囲を上記審査基準に従って判定することができるが、指定商品の記載が「X 但しA及びその類似商品を除く」となっているときには、「但し・・・を除く」の文言によって、指定商品の範囲は、「XからA及びAの類似商品を除いたもの(X−AとAの類似商品)」となっているのであるから、上記審査基準を適用し得るのは「X−AとAの類似商品」についてであって、除かれる「Aの類似商品」については、上記審査基準に示された判定基準がそのまま妥当するものではないのである。」と述べました。
  標章がローマ字表記された商標権について、同様の判断がなされています(H15. 1.21 東京高裁 平成14(行ケ)266 商標権 行政訴訟事件)。

 

◆ H15. 1.21 東京高裁 平成14(行ケ)190 商標権 行政訴訟事件

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◆H14.11.13 東京高裁 平成14(行ケ)152 商標権 行政訴訟事件

「セレモアつくば」と「セレモアみずき」は類似するとした審決が維持されました。「セレモアつくば」が周知で、これから「セレモア」との称呼も生じる。よって類似するというものです。取引の実情がかなり影響したのだと思われます。
  「セレモアつくば」は,被告の名称の略称として,葬祭業界及びこれに関連する業界において,取引関係者はもとより一般需要者の間においても,よく知られており,「セレモア」の表示も同様であることが認められる。・・本件商標中の中心的な自他役務識別力を有する部分は「セレモア」の文字部分であり,本件商標からは,・・・「セレモア」のみの称呼も生ずるものと認められる。・・・引用商標中の中心的な自他役務識別力を有する部分も「セレモア」の文字部分であり,上記同様の理由により,引用商標からは,・・・「セレモア」のみの称呼が生ずるものと認められる。したがって,本件商標と引用商標とは,称呼において類似する。 ・・・「セレモア」の語は,「セレモニー」を想起させ,「儀式」に関連するものと連想させるところがあるとしても,造語であると認識されるものであり,両商標を全体として観察した場合に,いずれも特定の観念を生じないから,観念において類似するということはできず,また,外観上の区別をすることはさほど困難ではなく,外観において類似するとまでいうこともできないが,これらの点は,要部における称呼の類似性をしのぐほどの特段の差異を取引者,需要者に印象付けるものではない。また,引用商標を構成する「セレモアつくば」の表\示は,本件商標の登録査定時において,既に,被告の名称の略称として,葬祭業界及びこれに関連する業界において,取引関係者はもとより一般需要者の間においても,よく知られていたことは上記認定のとおりであり,本件商標の指定役務中の「飲食物の提供,葬儀の執行,衣服の貸与」は,引用商標の指定役務と同一又は類似の役務と認められるから,このような取引の実情を参酌して両商標の類否を全体的に観察すれば,本件商標の指定役務中の上記役務に係る取引者,需要者において役務の出所を誤認混同するおそれがあり,本件商標は引用商標に類似する商標というべきである。」

 

◆H14.11.13 東京高裁 平成14(行ケ)152 商標権 行政訴訟事件

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◆H14. 8.27 東京高裁 平成13(行ケ)539 商標権 行政訴訟事件

 沖電気が持っている商標「oki」が商標「oki doki」に対して15号違反と訴えていた判決で、無効理由なしとした審決が取り消されました。著名な商標は保護範囲が広いということになりそうです。

 

◆H14. 8.27 東京高裁 平成13(行ケ)539 商標権 行政訴訟事件

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