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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

誤認・混同

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

令和5(ワ)893  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年3月18日  大阪地方裁判所

 商標権侵害であるとAmazonに申告することは、不正競争行為に該当すると判断されました。\n

不競法2条1項21号の「虚偽」とは、客観的事実に反する事実であるところ、 本件各申告の内容は、原告各標章を付した原告各商品の販売が被告商標権を侵害\nするというものであるから、以下、当該内容が客観的事実に反するか、すなわち、 原告各標章の使用が被告商標権を侵害しないといえるかにつき検討する。
なお、商標権侵害の判断の前提となる商標の類否は、対比される両商標が同一 又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混 同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、使用され た商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、 連想等を総合して全体的に考察すべきであり、かつ、その商品又は役務に係る取 引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断される (最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民 集22巻2号399頁参照)。また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と\n解されるものについて、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は\n役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、 それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場 合等、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると\n思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合には、その構成部\n分の一部を抽出し、当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断する ことも許される(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小 法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同 5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年 (行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号56 1頁参照)。
(1) 原告標章1ないし同10と被告商標との対比
ア 原告標章1ないし同10について
原告標章1ないし同10は、「Qbit」、「いつでも」、「簡単」、「トイレ」 の文字(同1、4、5、7、8)及びこれらの文字と丸い絵柄(円の外から 中央右下に向けて濃紺から淡い青を経て白色にグラデーションが施され、円 の内部に「Q」の字を模した白抜きがされたもの)から構成される結合商標\nである。これらの標章のうち、「いつでも」、「簡単」の文字部分は、順に、商 品の使用の時期、使用の方法又は効能を表\示するものにすぎず、「トイレ」部 分は普通名称であるから、これらが「いつでも簡単トイレ」と一体として表\n示されていることを踏まえても、これらの文字部分が商品の出所識別機能を\n有しているとはいえず、「Qbit」又は「Qbit」と上記丸い絵柄部分が 強い出所識別機能を有しているといえる。よって、被告商標との類否の判断\nにあたっては、文字部分を抽出するのは相当でなく、上記「Qbit」と丸 い絵柄の部分を抽出して対比することが相当である(なお、これらの標章の 中には、Qbitや上記絵柄部分と他の文字部分が、横並びになる構成のも\nのや上下の構成のものもあるが、これらの構\成の相違は、上記結論に影響し ないというべきである。)。 そして、「Qbit」及び丸い絵柄からは「きゅーびっと」との称呼が生 じ、特定の観念は生じない。
イ 被告商標について
被告商標は、片手で長い布様のものを所持する赤ちゃん様の絵柄と「いつ でも」、「どこでも」、「簡単」、「トイレ」との各文字部分から構成される。こ\nのうち、文字部分は、前記長い布様のものの上に「いつでもどこでも」と「簡 単トイレ」が2段に配置され、「いつ」「どこ」がロゴ化され、「トイレ」のレ の字には、用が足される様子を模式的に示す絵柄が付加されているものの、 商品の使用時期、提供の場所、使用の方法又は効能を表\示するものにすぎず、 「トイレ」部分は普通名称であるから、これらが一体として表示されている\nことをも踏まえても、これらの文字部分が商品の出所識別機能を有している\nとはいえず、赤ちゃん様の絵柄部分が強い出所識別機能を有しているという\nべきである(仮に文字部分の識別力を考慮するとしても、前記の配置やロゴ 化、絵柄の付加といった要素を捨象して考えることはできない。)。よって、 原告標章1ないし同10との類否の判断にあたっては、(標準文字としての) 文字部分を抽出するのは相当でなく、上記赤ちゃん様の絵柄を抽出して対比 することが相当である。そして、当該部分からは特定の称呼、観念は生じない。
ウ 対比
原告標章1ないし同10の「Qbit」又は「Qbit」と丸い絵柄部分 と被告標章の赤ちゃん様の絵柄部分とを比較すると、外観、称呼、観念のい ずれにおいても類似しない(双方の標章の文字部分と上記図柄の組合せを全 体として観察しても同様である。)。この点、被告商標の商標登録後に出願さ れた原告商標1及び原告商標2がいずれも商標登録されるに至ったことは、 上記判断と整合する。
(2) 原告標章11ないし同15について
これらの標章は、「いつでも」、「簡単」、「トイレ」の文字から構成されている\nが、上記のとおり、これらの文字部分は、商品の使用の方法や効能を表\示する ものや普通名称であり、出所識別機能を有しているとはいえないから、商標法\n26条1項2号の商標に該当すると認められる。よって、これらの標章に被告 商標権の効力は及ばない。
(3) 小括
したがって、原告各標章を付した商品の販売は、被告商標権を侵害する行為 に当たらないから、これに反する本件各申告の内容は「虚偽」であると認めら\nれる。
(4) 争点1のまとめ
以上に加え、前記1、2を総合すると、本件各申告は、不競法2条1項21\n号の不正競争に当たる。

◆判決本文

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令和4(ワ)16062  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和6年1月17日  東京地方裁判所

医薬品について、旧字の商標の類似範囲が争われました。 本件登録商標「仙脩」、被告標章「仙修」「仙修六神丸」「御所 仙修」「御所仙修」です。
裁判所は、「御所仙修」は非類似、それ以外は類似すると判断しました。

(1) 被告標章1について
本件商標と被告標章1の外観についてみると、いずれも漢字二文字で一文 字目の字が「仙」の字で同一であり、二文字目の字も本件商標が「脩」、被 告標章1が「修」の字であり、右側下部のみが、本件商標が「月」と同じ形 状をしているのに対し、被告商標1が「彡」の形状をしており、異なってい るものの、それ以外の左側及び右側上部は同一形状をしており、似た形状を している。そうすると、本件商標と被告標章1の外観は類似しているといえ る。
本件商標と被告標章1の称呼についてみると、両者はいずれも「せんしゅ う」で同一である。 そして、観念についてみると、本件商標も被告標章1もいずれも「せんし ゅう」としては広辞苑(第7版)に掲載されていない。もっとも広辞苑(第 7版)によれば、「仙」の部分は「仙人」の意味とされる。「脩」は、前記 1(3)のとおり、本来の意味は干し肉を指すものであったが、現代では音が同 じ被告標章1の二文字目の「修」と同じ「おさめる」の意味をも有している とされ、「修」の簡体字ないし異字体として使用されることもあるものであ る。これらの事実に照らすと、本件商標も被告標章1も、いずれもそれ自体 で特定の観念を有するとはいえないが、それぞれを構成する漢字は、共通す\nるものと、共通する意味を有するものであり、それらの漢字から想起される 観念も類似していると評価することができる。
被告は、特に医薬品の需要者からは、「脩」の字は乾燥させた生薬や原料 を想起させる文字であり、医薬品として「虎脩六神丸」と「虎修六神丸」の 両商品名を販売している会社も存在していることなどを指摘する。しかし、 「脩」の字には「修」と同じ「おさめる」の意味も有しているとされる。ま た、原告は医薬品の小売業であり(前記第2の1(1)及び(4))、被告の卸売の 販売先が、被告各商品をインターネット上のサイトで販売していること(前 記第2の1(6))からすると、被告各商品の市場は全国に及び、かつその対象 も消費者に及ぶといえ、被告各商品の需要者には消費者も含まれ、また、医 薬品に精通する者のみが需要者であるとはいえないので、この点に関する被 告の主張は採用できない。 これらの事情を総合的にみれば、本件商標と被告標章1は類似している といえる。
(2) 被告標章2について
本件商標と被告標章2の外観についてみると、本件商標は漢字二文字であ るのに対し、被告標章2は漢字5文字であり、「仙」の字が同一であり、 「脩」と「修」の字が類似しているとしても、全体として外観が類似してい るとはいえない。また、本件商標と被告標章2の称呼についてみても、「せ んしゅう」と「せんしゅうろくしんがん」であり、一部共通するとしても、 全体として称呼が類似しているともいえない。 もっとも、被告標章2のうちの「六神丸」の部分は、前記1(1)のとおり、 古くから特定の漢方薬を指す用語であるとされ、広辞苑(第7版)において も「漢方薬の一つ」として説明されているものであり、その他想起される意 味はなく、実際にも、漢方薬として、多くの会社から六神丸という名称の商 品が販売されている。そうすると、需要者にとって、「六神丸」の部分は、 特定の内容の漢方薬を指すものといえる。 そうすると、被告標章2において、「六神丸」の部分は出所識別力を有さ ず、主に出所識別力を有するのは、「仙修」の部分であるといえる。そこで、 本件商標と被告標章2の「仙修」の部分を被告して商標の類否を検討すると、 本件商標と被告標章2の「仙修」の部分については、前記 のとおり、外観 が類似し、称呼が同一である。また、観念についても、本件商標の「仙修」 と被告標章2の「仙脩」のそれぞれの漢字から想起される観念は類似すると いえる。 これらの事情を総合的にみれば、本件商標と被告標章2は類似していると するのが相当である。
(3) 被告標章3について
本件商標と被告標章3の外観についてみると、本件商標は漢字二文字であ るのに対し、被告標章3は漢字4文字であり、「仙」の字が同一であり、 「脩」と「修」の字が類似しているとしても、全体として観察した場合は、 外観が類似しているとはいえない。 もっとも、被告標章3は、「御所」と「仙修」の間に空白があり、かつ 「御所」の文字は、四角形の枠で囲まれていて、そのような枠がない「仙修」 の部分と「御所」の部分は、外観上、明確に分離して観察することができる ものといえる。そして、本件商標と被告標章3の「仙修」部分の外観が類似 しているのは、前記アで述べたとおりである。 また、本件商標と被告標章3の称呼についてみても、「せんしゅう」と 「ごせせんしゅう」又は「ごしょせんしゅう」であり、全体の称呼は異なる ものの、分離して観察することができる「御所」部分を除いた「せんしゅう」 の部分は同一である。 本件商標と被告標章3の観念についてみると、「御所」は、前記1(2)のと おり、古くからの薬の生産地である奈良県の被告所在地の市を意味するもの であり、文献等において言及されることはあるが、本件証拠上、言及されて いる文献は奈良県に関する文献か医薬品に関する論文等の専門誌であり、 「御所」が、需要者に特に広く知られていて、需要者が当然に特定の市を想 起するとまでは認めるに足りない。そして、「御所」は、広辞苑(第7版) においても、「ごせ」と読ませる場合、「奈良県西部、大阪市に接する市」 と記載されている一方で、「ごしょ」と読ませる場合、「天皇の座所を意味 する」と記載されている。これらの事実からすると、「御所」は、「ごせ」 と読ませる場合は奈良県の市名として理解されるものの、需要者が必ずその ように理解するとまでは認めるに足りず、「ごしょ」と読む天皇の座所の意 味を想起する者もいるといえる。もっとも、被告標章3では、前記のとおり 「御所」と「仙修」は外観上明確に分離しているところ、本件商標の「仙修」 と被告標章2のうちの「仙脩」のそれぞれの漢字から想起される観念は類似 するといえる。
以上の事情をみると、被告標章3は、全体として不可分一体のものとはい えず、その構成上、被告標章3の「仙修」の部分も出所識別標識となるもの\nであり、この部分と本件商標との類否を判断することができるというべきで ある。そして、前記 に述べたのと同じ理由により、本件商標と「仙修」の 部分は類似しているといえるから、本件商標と被告標章3は類似していると いえる。
(4) 被告標章4について
本件商標と被告標章4の外観についてみると、本件商標は漢字二文字であ るのに対し、被告標章3は漢字4文字であり、「仙」の字が同一であり、 「脩」と「修」の字が類似しているとしても、全体として観察した場合は、 外観が類似しているとはいえない。そして、被告標章4は、被告標章3とは 異なり、「御所」と「仙修」の間に空白もなく、かつ「御所」の部分も四角 形の枠で囲まれるなどしていないから、外観上、「御所」の部分と「仙修」 とが分離して観察されることはない。
また、本件商標と被告標章4の称呼についてみても、「せんしゅう」と 「ごせせんしゅう」又は「ごしょせんしゅう」であり、一部重なる部分はあ るものの、全体として観察した場合、称呼は異なる。 そして、本件商標と被告標章4の観念についてみると、前記ウで述べたと おり、「御所」について、「ごせ」と読ませる場合は奈良県の市名として理 解されるものの、需要者が必ずそのように理解するとまでは認めるに足りず、 「ごしょ」と読む天皇の座所の意味を想起する者もいるといえるものであり、 「御所」の部分にも一定の観念が生ずるものといえる。 そして、被告標章4の「御所仙修」が外観上分離されない一連のものであ るところ、そのうちの「御所」の部分に出所識別標識としての機能がないと\nは直ちにはいえないし、「仙修」の部分が出所識別標識として強く支配的な 印象を与えるとはいえない。 これらの事情を総合的にみれば、本件商標と被告商標4は類似していると はいえない。

◆判決本文

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令和4(ワ)19876    商標権  民事訴訟 令和5年8月24日  東京地方裁判所

 商標権侵害訴訟にて、9類「電子印刷物」と16類「印刷物」は類似商品と認定されました。

2 商品の類否(争点 2)について
(1) 本件商標 1 と被告各標章について
本件商標 1 の指定商品は、第 16 類「印刷物」(ただし、別件審判に係る予告登録の日までに限る。)のほか、第 9 類「電子印刷物」であるのに対し、被告各標章は紙媒体である雑誌すなわち印刷物に付して使用されるものである。
指定商品「電子印刷物」と商品「印刷物」とは、媒体を異にすることなどから、同一とはいえない。しかし、本件商標 1 の商標登録出願がされた平成28 年当時において既に、雑誌その他の出版物につき、同一人が同一内容の出版物を紙媒体及び電子版として出版することが広く行われていたことは、顕著な事実である。こうした事情等に鑑みると、被告各標章を印刷物に付して使用する行為は、少なくとも、本件商標 1 の指定商品である第 9 類「電子印刷物」に類似する商品についての使用ということができる。これに反する被告らの主張は採用できない。
(2) 本件商標 2 と被告各標章について
本件商標 2 の指定商品は第 16 類「印刷物」であることから、被告各標章を印刷物に付して使用する行為は、本件商標 2 の指定商品についての使用ということができる。
(3) 小括
以上より、被告各出版物に被告各標章を付して使用する被告らの行為は、指定商品に類似する商品についての登録商標に類似する商標の使用(本件商標1との関係)及び指定商品についての登録商標に類似する商標の使用(本件商標2との関係)に該当し、本件各商標権の侵害と見なされる(商標法37条1号)。

◆判決本文

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令和4(行ケ)10035 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和5年7月19日  知的財産高等裁判所

 ニュースで取り上げられた「GUZZILLA」vs「GODZILLA」の商標登録無効事件について判決文がアップされました。  本件は、下記のうち、新規出願をして登録となった商標(6143667号)の無効審判(無効2019−890064)に関する審決取消訴訟事件です。詳細はnoteにて記載しているので参照してください。

◆令4(行ケ)10035号(GUZZILLA)事件まとめ


以上によれば、引用商標は周知著名であって、「ゴジラ」を欧文字表記したにとどまらない点を含め、その独創性の程度も高いというべきであ\nる。
(4) 商品の関連性の程度、取引者及び需要者の共通性
ア 商品の関連性の程度
本件商標の指定商品は、第7類「パワーショベル用の破砕機・切断機・ 掴み機・穿孔機等のアタッチメント」であり、土木機械の一種である動力 ショベル用の附属装置(アッタッチメント)であって、示された破砕、切 断、掴み、穿孔等の土木作業の用途によって交換される動力ショベル専 用の装置であり、土木に関する専門的・職業的な分野において使用され る機械器具である。
これに対し、被告の主な業務は、映画の制作・配給、演劇の制作・興行、 不動産経営等のほか、キャラクター商品等の企画・制作・販売・賃貸、著 作権・商品化権・商標権その他の知的財産権の取得・使用・利用許諾その 他の管理であり(甲159)、多角化している。被告は、百社近くの企業 に対し、引用商標の使用を許諾しているところ、その対象商品は、人形や ぬいぐるみなどの玩具、文房具、衣料品、食料品、雑貨、遊戯具等、多岐 にわたるほか、宣伝広告等にも使用を許諾している(甲12、83、85 〜102、169〜181(枝番を含む。))。 また、被告は、平成17年以降、複数の大手ゼネコンから、工事現場や 工事中の壁面に引用商標を含むゴジラの表示やロゴ等を使用することにつき許諾を求められたり、あるいは実際にその許諾をするなど、本件商\n標の指定商品である作業現場で使用される動力ショベルのアタッチメン トと同じか、あるいはこれに近い分野である、産廃業、解体業及び建築業 等について引用商標の使用許諾を行うなどしてきた(甲195〜212、 乙1、2、6〜17(枝番を含む。))。 その中には、住宅やビルの解体を手掛ける業者において、「ゴジラvs コング(GODZILLA vs KONG)」として、「GODZIL LA」を「破壊神」としてタイアップCMを放送したり、クレーン車が建 築物を運搬する場面が映画「ゴジラvsコング(GODZILLA v s KONG)」の映像とともにCMとして放送するなどの企画もあった(乙6〜9、12、13)。
被告が引用商標の使用を許諾した商品等のうち、玩具、文房具、衣料 品、食料品、雑貨等については、日常生活で、一般消費者によって使用さ れる物であるから、性質、用途及び目的における関連性の程度は高くは ないものの、被告は、産廃業、解体業及び建築業等の業種にも引用商標の 使用を許諾するなどしているところ、これらは、本件商標の指定商品の 取引者・需要者と同じかこれと近い分野ないし業態であり、本件商標の 指定商品と共通する取引者・需要者も一定数存するものというべきであ る。 よって、本件商標の指定商品は、被告の業務に係る商品等と比較した場 合、性質、用途又は目的において一定の関連性を有するものが含まれて いるというべきである。
イ 取引者及び需要者の共通性
本件商標の指定商品は、第7類「パワーショベル用の破砕機・切断機・ 掴み機・穿孔機等のアタッチメント」であり、土木機械の一種である動力 ショベル用の附属装置(アタッチメント)であって、示された破砕、切 断、掴み、穿孔等の土木作業の用途によって交換される動力ショベル専 用の装置であり、土木に関する専門的・職業的な分野において使用され る機械器具である。なお、土木に関する機械器具においても、レンタルが 行われているものであるから(乙33、34、41〜49)、その取引者 は、これらの器具の製造販売や小売り、レンタル等を行う者である。 また、被告が引用商標の使用を許諾した玩具、雑貨、遊戯具等について は、その需要者は一般消費者であり、その取引者は、これらの商品の製造 販売や小売り等を行う者であるが、被告が引用商標の使用を許諾した産 廃業、解体業及び建築業等については、本件商標の指定商品の取引者・需 要者と同じかこれと近い分野ないし業態であり、本件商標の指定商品の 取引者及び需要者の中には、被告から使用許諾を受けて事業を営む者の 業務に係る商品等の取引者及び需要者と共通する者が含まれる。そして、 商品の性質、用途又は目的を考慮しても、これら共通する取引者及び需 要者は、商品の性能や品質のみを重視するとまでいうことはできず、使用許諾関係も含む商品等に付された商標に表\れる業務上の信用をも考慮して取引を行うというべきである。
(5) 出所混同のおそれ
以上のとおり、「混同を生ずるおそれ」の有無を判断するに当たっての 各事情について、取引の実情などに照らして考慮すれば、本件商標の指定 商品に含まれる専門的・職業的な分野において使用される機械器具と、被 告の業務にかかる商品等との関連性の程度が非常に高いとはいえない。 しかし、本件商標と引用商標とは、称呼において相紛らわしいものであ って、外観においても相紛らわしい点を含むものであることから、その類 似性の程度は高く、引用商標は周知著名であって、その独創性の程度も高 い。さらに、被告の業務は多角化しており、本件商標の指定商品に含まれ る商品の中には、被告の使用許諾に係る商品及び業務等と比較した場合、 性質、用途又は目的において一定の関連性を有するものが含まれる。加え て、これらの商品の取引者及び需要者と、被告の業務に係る商品の取引者 及び需要者とは共通し、これらの取引者及び需要者は、取引の際に、商品 の性能や品質のみではなく、商品等に付された商標に表\れる業務上の信用 をも考慮して取引を行うものということができる。 そうすると、本件商標の指定商品についても、本件商標を使用したとき に、当該商品が被告又は被告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊 密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあ\nるものが含まれるというべきである。 よって、本件商標は、法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれ」 のある商標として、法46条1項の規定により無効とされるべきである。
(6) 原告の主張に対する補足的判断
ア 取消事由1(引用商標が周知著名な商標に当たるとした認定及びこれ に基づく判断の誤り)について
原告は、本件商標の指定商品は「第7類 パワーショベル用の破砕機・ 切断機・掴み機・穿孔機等のアタッチメント」であるから、その取引者及 び需要者は、土木機械の一種である動力ショベル用の附属装置(アタッ チメント)を使用する土木関連分野の業務に従事する専門業者及び当該 機械器具の製造販売やリースを行う者であり、特殊特定分野の業務に従 事する専門業者であるところ、被告及びそのライセンシーは、引用商標 を使用して本件商標の指定商品である「第7類 パワーショベル用の破 砕機・切断機・掴み機・穿孔機等のアタッチメント」を製造販売しておら ず、引用商標が日本国内の広範囲にわたって本件商標の指定商品を使用 する土木関連分野の業務に従事する専門業者及び当該機械器具の製造販 売やリースを行う者の間に知られるようになったということはできない から、本件審決の判断は誤りである旨を主張する。 しかし、引用商標の周知著名性についての認定及び判断は前記(3)のと おりであり、これが本件商標の指定商品の取引者及び需要者について変 わるところがあるものとは認められず、引用商標は周知著名であるとい うことができる。

◆判決本文

関連事件です。
別訴

◆令和1(行ケ)10167

不競法の侵害訴訟事件 1審

◆令和1(ワ)26105
控訴審

◆令和4(ネ)10063

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令和3(ワ)13895 損害賠償等請求事件  商標権  民事訴訟 令和5年4月27日  東京地方裁判所

ビクトリノックスの黒字に白十字を二重の外枠で囲った登録商標についての、商標権侵害訴訟です。東京地裁は約1400万円の支払い(3項侵害で使用料4%)を命じました。

2 争点2(商標法4条1項1号該当事由の有無)について
被告は、本件商標はスイスの国旗と類似するから、商標法4条1項1号に該当 する事由があると主張する。 しかしながら、本件商標は、前記1(2)認定のとおりであるのに対し、スイスの 国旗は、正方形と、その内部(中央)に位置する幅広で白色の十字から成り、正\n方形の内部は、白色である上記十字部分を除いて赤色である。そうすると、本件\n商標及びスイスの国旗は、幅広の十字を内部に有するという点において共通する\nものの、スイスの国旗は、正方形であって白色の外縁部分がなく、内部の十字部\n分を除いた部分が鮮やかな赤色である点において相違するものと認められる。 上記共通点及び相違点の形状及び色彩を踏まえると、本件商標とスイスの国旗 は、中心的かつ全体的構成を占める図形の形状及び色彩において明らかに相違す\nるものであることが認められる。そうすると、本件商標は、スイスの国旗と同一 又は類似の商標に該当するものと認めることはできない。
・・・
(3) 使用料率について
本件商標の実施に対し受けるべき料率を検討するに、前提事実、後掲各証拠 及び弁論の全趣旨によれば、1)経済産業省知的財産政策室「ロイヤルティ料率 データハンドブック」(平成22年)において、商標権におけるロイヤルティ 料率の平均値は2.6%であること(なお、商標分類の18類については、サ ンプル数は0とされている。)(乙32)、2)原告は、長年の間、「WENG ER」ブランドとして世界的に著名なアーミーナイフを製造販売していたが、 現在は同ブランドとして時計やバッグを製造販売し、本件商標を付したかばん 製品を販売していること(甲24ないし27)、3)インターネット上のショッ ピングサイトにおいて、本件商標が付された原告商品(かばん製品)が販売さ れており、原告商品と被告商品とは競合すること(甲16)、以上の事実が認 められる。
そして、商標法38条3項による「受けるべき利益」の算定の基礎となる相 当使用料率は、侵害があったことを前提として合意されるべきものであるから、 通常の料率よりも自ずと高くなることに鑑み、上記認定事実を含め本件に現れ た一切の事情を総合考慮すると、その料率は売上高の4%であると認めるのが 相当である。 なお、被告は、損害不発生の抗弁も主張するが、上記において説示したとこ ろによれば、その主張は、採用の限りではない。
(4) 損害額について
ア 商標法38条3項に基づく損害額
したがって、商標法38条3項に基づく損害額は、次の計算式のとおり、 1254万7659円となる(小数点第一位で四捨五入)。 (計算式) 3億1369万1471円×4%≒1254万7659円
イ 弁護士費用
本件事案の内容、難易度、審理経過及び認容額等に鑑みると、これと相当 因果関係があると認められる弁護士費用相当損害額は、1254万7659 円の1割(小数点第一位で四捨五入)である125万4766円の限度で認 めるのが相当である。
ウ 合計額
以上によれば、本件の損害額は、1380万2425円となる。

◆判決本文

関連事件です。

◆令和2(ネ)10060

本件商標の不使用取消審判の審取です。

◆平成29年(行ケ)10033

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令和2(ワ)31524  販売差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和5年3月24日  東京地方裁判所

ブーツ「Dr.Martens」について、商標権侵害と不競法の周知商品等表示に該当するとして、差止が認められました。商標は「AirWair WITH Bouncing SOLES」(ロゴ化)「WITH BOUNCING SOLES」(標準文字)です。商標はブーツの足入れ口にタグのようにつけられてました。

2 争点1−1(原告商標1と被告標章が同一又は類似であるか)について
(1) 原告商標1について
原告商標1の外観は、別紙商標権目録1の登録商標欄記載のとおりであり、 黒地に、左半分部分に手書き風の字体で「AirWair」と、右半分部分の上部に 約4文字分の間隔を空けてゴシック体で「WITH」及び「SOLES」と、右半分部 分の下部に下向きの弧を描くように丸みを帯びた字体で「Bouncing」と、い ずれもオレンジ色がかった黄色の英文字が配されて構成されるものである。\n原告商標1の上記記載から、「エアウェアウィズバウンシングソールズ」と\nの称呼が生じると認められる。 また、「AirWair」は原告の社名であるものの造語と解されるから、原告の 社名を知っている者においては当該部分から原告の社名である「AirWair」と の観念が生じるものの、原告の社名を知らない者においては当該部分から特 定の観念が生じない。そして、「Bouncing」及び「SOLES」は、それぞれ英語 で「弾む」及び「靴底(ソール)」との意味を有することからすると、原告商\n標1の上記記載から、「弾む履き心地のソールを持つ AirWair」又は「弾む履 き心地のソールを持つ」との観念が生じると認められる。\n
(2) 被告標章について
被告標章は、別紙被告標章目録記載のとおり、黒地に、左半分部分に手書 き風の字体で「AirWair」と、右半分部分の上部に約1ないし2文字分の間隔 を空けてゴシック体風の字体で「WITH」及び「SOLES」と、右半分部分の下部 に概ね水平に「Bouncing」と、いずれも黄色の英文字が配されて構成される\nものである。もっとも、被告標章は、被告商品1のヒールループに付されて いるものであるところ、当該ヒールループが履き口の踵部分に深く縫い付け られているため、需要者が通常の使用状況において視認できるのは、 「AirWair」の「Ai」を除いた部分に限られる(甲44・1、5頁)。したが って、原告商標1との類否を判断するに当たっては、被告標章のうち「Ai」 を除いた部分(以下「被告標章対比部分」という。)を対象として対比するの が相当である。被告標章対比部分の記載から「アールウェアウィズバウンシングソールズ」との称呼が生じると認められる。\n
また、「rWair」のうち、「Wair」は「用いる」や「費やす」との意味を有す る英単語であるが、我が国の一般人にとってなじみのある語ではない上、冒 頭に「r」が付されているため、「rWair」が何かしらの意味を有する語である と理解できないと解されるから、当該部分から特定の観念が生じない。そし て、前記(1)のとおり、「Bouncing」及び「SOLES」は、それぞれ英語で「弾む」 及び「靴底(ソール)」との意味を有することからすると、被告標章対比部分\nの記載から、「弾む履き心地のソールを持つ」との観念が生じると認められる。\n
(3) 原告商標1と被告標章対比部分との対比
原告商標1と被告標章対比部分の外観を比較すると、文字の色味に違いが あるほか、「Ai」の有無、「WITH」と「SOLES」との間隔の幅、「Bouncing」の 字体と配置に差異があるものの、いずれも黒地に黄色味の文字で「rWair」、 「WITH Bouncing SOLES」と記載されている点において共通しており、両者 の外観は類似していると認められる。
また、原告商標1と被告標章対比部分の称呼を比較すると、両者は、「ウェ アウィズバウンシングソールズ」の点において共通しているものの、原告商\n標1の冒頭が「エア」であるのに対し、被告標章対比部分の冒頭が「アール」 である点に差異がある。もっとも、原告商標1及び被告標章対比部分の文字 部分はいずれも英語で表記されており、「エア」も「アール」も英語風に発音\nするものと理解できるから、「エア」と「アール」の称呼上の違いは実質的に 「エ」の有無にとどまり、両者の差異はほとんどないといえる。したがって、 原告商標1と被告標章対比部分の称呼は類似していると認められる。 さらに、原告商標1と被告標章対比部分の観念を比較すると、前者は「弾 む履き心地のソールを持つ AirWair」との観念も生じるものの、両者とも「弾 む履き心地のソールを持つ」との観念が生じる点で共通している。したがっ\nて、原告商標1と被告標章対比部分の観念は類似していると認められる。
(4) 小括
以上のとおり、原告商標1と被告標章対比部分は、外観、称呼及び観念に おいて類似するものと認められ、原告商標1と被告標章対比部分を含む被告 標章とが同一又は類似の商品に使用された場合には、商品の出所について混 同を生じるおそれがあるといえるから、両者は類似しているものと認められ る。また、前提事実(5)のとおり、被告商品1は、ブーツであることから、原告 商標権1の指定商品に含まれる第25類「履物」と同一であると認められる。したがって、被告標章が付された被告商品1を販売等した被告の行為は、原告商標権1を侵害するというべきである。
3 争点2−1(原告商品の形態が原告の周知な商品等表示であるか)について\n
(1) 商品の形態と商品等表示該当性\n
・・・
以上によれば、靴の外周に沿って、アッパーとウェルトを縫合してい る糸がウェルトの表面に一つ一つの縫い目が比較的長い形状で露出し、\nかつ、ウェルトステッチに明るい黄色の糸が使用されており、黒色のウ ェルトとのコントラストによって黄色のウェルトステッチが明瞭に視認 できるという原告商品の形態(ア)は、少なくとも被告が被告商品2を販売 した令和2年の時点において、原告の商品等表示として周知となってい\nたと認められる。

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令和3(ワ)22287  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和5年3月9日  東京地方裁判所

バーキン、ケリーバッグの立体商標について、権利侵害が認定されました。損害額は被告の利益のうち2割覆滅されました。 商標権の一つがこれです。

◆登録5438059

ア 前提事実(6)のとおり、被告は、被告商品の販売によって合計515万0140円の利益 を得たことから、同金額が被告の商標権侵害によって原告が受けた損害の額と推定される (商標法 38 条 2 項)。
イ もっとも、原告商品は、その販売価格がバーキンにおいては 100 万円を、ケリーに おいては 50 万円を超えるものが大半という高級ハンドバッグである(前提事実(2))。他方、被告商品の販売価格はいずれも 1 万 5180 円であり(前提事実(6))、その価格差が大きいことは多言を要しない。また、証拠(甲 23、乙 1)及び弁論の全趣旨によれば、バーキンには複数のサイズのものがあるものの、最も小さいサイズのものの横幅は 25cm であるのに対し、被告商品 1 の横幅は 20cm であることが認められる(なお、ケリーも、横幅が cmのものを最小として複数のサイズのものが販売されており、他方、被告商品 2 の横幅は20cm である。甲 1、52)。
商標権は、特許権等の他の工業所有権とは異なり、それ自体に創作的価値があるもので はなく、商品又は役務の出所である事業者の営業上の信用等と結びつくことによってはじめて一定の価値が生じるという性質を有する。このため、商標権が侵害された場合に、侵害者の得た利益が当該商標権に係る登録商標の顧客吸引力のみによって得られたものとは必ずしもいえない場合が多い。本件のようなハンドバッグの場合、需要者の購買動機の形成に当たっては、当該商品の属するブランドはもとより、その販売価格も考慮され、また全体のデザイン及びサイズといった要素も、デザイン性ないしファッション性の側面のみならず機能面からも考慮されると考えられる。これらの点を踏まえると、原告商標ないし原告商品の周知著名性からそのブランド及び全体のデザインが需要者の購買動機形成に及ぼす影響は相当に大きいとみられるものの、販売価格並びにデザイン及びサイズにおける相違が及ぼす影響もなお無視し得ず、上記推定を覆滅すべき事情として考慮するのが相当である。また、被告商品と同じ価格帯で「バーキン風」、「ケリー風」などと称するハンバッグが市場において取引されている事実が認められるところ(乙 17〜20、28、29)、これらの全てが原告商標権の侵害品であるとは必ずしも考えられず、侵害品でないものが含まれる可能性も少なからずうかがわれる。このうち原告商標権の侵害に当たるものがどの程度存在するかは必ずしも判然としないところ、他に原告商標権の侵害品が存在することを推定覆滅事由として考慮することは相当でないものの、上記事情は推定覆滅事由として一応考慮するのが相当である。さらに、バーキンの内側には、被告商品 1 にはないファスナーポケットが設けられていることが認められるところ(弁論の全趣旨)、その有無は、デザイン性という点では需要者の購買動機の形成に必ずしも寄与しないとしても、収納性という機能面の一要素としては考慮し得るものといえる。他方、被告は、ファッションショーへの出展、独自ブランドの商品販売、全国の主要都\n市への出店、SNS での宣伝活動等の営業努力をしていることが認められる(乙 21〜27)。 もっとも、これらの営業努力は、通常の営業努力の範囲を超える特別なものとまではいえないことから、この点を推定覆滅事由として考慮するのは相当でない。
ウ 以上の事情を総合的に考慮すると、被告商品の利益の額に対する原告商標の貢献割 合については、いずれも8 割と認めるのが相当である。これに反する原告の主張は採用できない。 したがって、本件における上記損害額の推定は 2 割の限度で覆滅されるから、被告の原 告商標権侵害による原告の損害額は、被告商品 1 及び 2 の各販売利益の額(276 万 2740 円及び 238 万 7400 円)のそれぞれ 8 割に相当する 221 万 0192 円及び 190 万 99円の合計412万0112 円と認められる。
エ これに対し、被告は、原告商品と被告商品との価格差、被告商品と同じ価格帯の原 告商品を模した商品の存在、被告商品の販売利益に対する被告の営業努力の貢献、原告商品と被告商品とのサイズやファスナーポケットの有無といった機能性の違い等を指摘し、被告商品の販売によって原告に損害が発生することはなく、仮に損害が発生したとしても少なくとも 95%の推定覆滅が認められる旨主張する。 しかし、原告商品と被告商品は、いずれも主に女性を需要者とするハンドバッグであり、販売方法には共通点があり、かつ、需要者にとってその形状(全体のデザイン)は購買動機を形成する主な要素の 1 つであるところ、原告商品と被告商品は形状が類似している いった事情を踏まえると、被告が主張する上記各事情を踏まえても、原告商品と被告商品の顧客層には一定の重なり合いが認められるのであって、被告商品の販売によって原告に損害が発生すると認められる。また、これらの事情が商標法 38 条 2 項による推定を覆滅する程度については、上記のとおりである。 したがって、この点に関する被告の主張は採用できない。
(2) 信用毀損による無形損害の額
原告は、高級ハンドバッグである原告商品の大半を、バーキンについては 100 万円以上、ケリーについては 50 万円以上という価格で販売している(前提事実(2))。他方、被告は、原告商品と形状において類似するものの、原告商品には使用されない安価な合成皮革等を用いて製作された被告商品を、1 個 1 万 5180 円で、百貨店の店舗や自社の運営する EC サイト等を通じて、令和元年 12 月 日から令和 3 年 2 月 13 日までの 1 年余りの間に、合計398 個(被告商品 1 が 214 個、被告商品 2 が 184 個)販売した(前提事実(6))。このような被告の行為は、高級ハンドバッグとしての原告商品及びこれを製造販売する原告のブランド価値すなわち信用を毀損するものであり、これによる原告の無形損害の額は 100 万円を下らない。無形損害の額に関する原告の主張は採用できない。 また、被告は、原告商品と被告商品との購買層の違いや、原告商品を模したハンドバッ グが全国各地で廉価で販売されているのは周知の事実であることなどを指摘して、原告の信用毀損はない旨を主張する。しかし、仮にこれらの事情があるとしても、原告商標及び原告商品の周知著名性を考慮すると、その違いゆえに原告の信用が毀損されないという関係にはない。この点に関する被告の主張は採用できない。

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令和4(ワ)70046    商標権  民事訴訟 令和5年1月31日  東京地方裁判所

 登録商標「MG996R」(標準文字)の侵害として、約5万円の損害賠償が認められました。損害額として、権利取得のための出願時印紙代および登録料が認めされました。

関係法令の定めに照らせば、本件商標権の取得に通常要する費 用は1万2000円(特許法等関係手数料令4条2項の一)、維持に通常要 する費用は3万2900円(商標法40条1項、商標法施行令4条1項) と認められる。 したがって、商標法38条5項に基づく損害額は合計4万4900円と なる。
(2) 侵害行為差止めのための通知に要した費用
証拠(甲7、8、10)によれば、原告は、令和4年6月11日、被告に 対し、特定記録郵便により、本件ウェブページの削除のほか、本件商品の輸 入及び販売の停止並びに回収を求める内容の本件文書を発送したこと、被告 は、その頃、本件文書を受領したこと、その郵便料金が244円であったこ とがそれぞれ認められる。これらの認定事実に照らせば、本件文書の送付は、被告による違法な行為を排除するためのものといえるから、その送付に要した費用は、被告の不法 行為と相当因果関係がある損害というべきである。

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令和1(ワ)34096  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年3月18日  東京地方裁判所

 「ぼてぢゅう総本家」は登録商標「ぼてぢゅう」に類似するとして、原告らに対して約1000万円の損害賠償が認められました。

そこで、前記1(結合商標の類否の判断基準)に基づき本件商標1と被告 標章I)の類否を検討するに、被告標章I)は、暖簾を模した図案の上に2段書 きされた文字を記載しており、図案と文字との結合商標であるといえる。そ して、図案部分についてみると、現実の暖簾には文字が記載されることも少 なくないという実情を踏まえると、単なる背景や文字枠として認識されるも のであり、図案部分自体には、出所を識別する機能があるとはいえない。\n他方、被告標章I)の文字部分についてみると、2段書きされており、各段 の文字を結合したものであるといえるところ、全体的に見て、上段の「宗右 衛門町趣味のお好み焼」が下段の「ぼてぢゅう総本家」に対し、小さい文字 で付されたものであることからすれば、その内容に照らしても、需要者は、 上段部分が、下段部分の説明書きであると理解するといえるから、上段部分 には出所を識別する機能があるとはいえない。\nそして、被告標章I)の下段の文字部分についてみると、「ぼてぢゅう」と 「総本家」とを結合したものであるといえるところ、前者は、お好み焼き店 のために創作された極めて特徴的な造語であるのに対し、後者は、「おおも との本家」を意味する一般的な日本語であって(甲28)、その前後に接続 する語句がある場合には、その語句に関連する「総本家」であると理解され るのが通常であるから、下段の文字部分中「総本家」の文字部分から出所識 別標識としての称呼、観念が生ずるものとはいえない。そうすると、「ぼて ぢゅう」の文字部分が、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として 強く支配的な印象を与えるものと認めるのが相当である。
(3) したがって、被告標章I)は、その構成中の「ぼてぢゅう」の文字部分を抽\n出し、この部分だけを本件商標1と比較して商標そのものの類否を判断する ことが許されるというべきである。そして、被告標章I)は、筆書きによる平 仮名「ぼてぢゅう」を同大同間隔に左横書きした外観を有するのに対し、本 件商標1は、別紙商標目録記載1のとおり、筆書きの「ぼてぢゅう」の文字 を同大同間隔で左横書きにした外観を有するのであるから、両者は、その外 観において類似するものであり、両者の称呼及び観念が同一であることも明 らかである。以上によれば、本件商標1と被告標章I)とは、類似するものと認めるのが 相当である。
(4) これに対し、被告は、「宗右衛門町」が著名であり、「趣味」が特徴的な 言葉であることを理由として、出所識別機能を有すると主張するが、「宗右\n衛門町趣味のお好み焼」という部分は、地理的名称、商品の性質、商品の種 類を示すものと理解されるのであるから、「ぼてぢゅう」が強く支配的な印 象を与えるという上記認定を左右するものとはいえない。 また、被告は、「総本家」が出所識別機能を有しないとする根拠は存在せ\nず、被告標章I)の2段の文字部分の1段に記載され、まとまりのある「ぼて ぢゅう総本家」という9音を分離観察する理由もないなどと主張する。しか し、「総本家」の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生ずるものと はいえないことは、上記において説示したとおりである。のみならず、「ぼ てぢゅう」の5字は、「総本家」の3字に比し、大きく書かれ、視覚的にも それ自体十分区別し得る上、前者の文言は、後者の文言に対し、強く支配的\nな印象を与えるものといえる。これらの事情を踏まえると、「ぼてぢゅう」 と「総本家」とを分離して観察することが、取引上不自然であると思われる ほど不可分的に結合しているものともいえないのであるから、被告の主張は、 上記結論を左右するものとはいえない。
・・・
商標法38条2項は、民法の原則の下では、商標権侵害によって商標権者 が被った損害の賠償を求めるためには、商標権者において、損害の発生及び 額、これと商標権侵害行為との間の因果関係を主張、立証しなければならな いところ、その立証等には困難が伴い、その結果、妥当な損害の填補がされ ないという不都合が生じ得ることに照らして、侵害者が侵害行為によって利 益を受けているときは、その利益の額を商標権者の損害額と推定するとして、 立証の困難性の軽減を図った規定である。そして、商標権者に侵害者による 商標権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在 する場合には、商標法38条2項の適用が認められると解すべきである。 これを本件についてみると、証拠(甲81ないし83)及び弁論の全趣旨 によれば、原告らの店舗は、外食市場が伸び悩む現状を踏まえ、コンビニや スーパーの弁当や惣菜を中心として着実に成長しているいわゆる中食市場に 進出することとし、平成29年11月又は12月以降、焼きそばやお好み焼 き等のテイクアウト販売及びデリバリー販売の事業を展開していることが認 められる。そうすると、原告らの事業に係る焼きそばやお好み焼き等の商品 が被告商品1)及び4)と同じ種類の商品であることを踏まえると、被告商品1) 及び4)が一定の調理を要することを考慮しても、少なくとも中食市場におけ る原告らの事業は、被告商品1)及び4)を販売等する被告事業と競業関係にあ るものといえる。 したがって、原告らに、被告による商標権侵害行為がなかったならば利益 が得られたであろうという事情が存在することが認められ、商標法38条2 項の適用が認められる。
・・・
商標法38条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額は、侵害 者の侵害品の売上高から、侵害者において侵害品を製造販売することにより その製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益 の額であり、その主張立証責任は商標権者側にあるものと解すべきである。 そして、原告が、被告商品1)及び4)の限界利益の額を売上高の3割である と主張するのに対し、当該商品を実際に製造する被告は、その割合は24% であると主張するにとどまり、これを裏付ける証拠を何ら提出していない事 情を踏まえると、限界利益の額は、原告らの主張する上記3割を下回らない と認めるのが相当である。 そうすると、商標法38条2項の損害額と推定される侵害品の限界利益の 額は、原告東京フードについては、前記10(2)で認定した売上高2億482 0万8219円の3割に相当する7446万2465円であると認めるのが 相当であり、原告BGHDについては、前記10(2)で認定した売上高654 6万8493円の3割に相当する1964万0547円であると認めるのが 相当である。
(2) 商標法38条2項における推定の覆滅については、侵害者が主張立証責任 を負うものであり、侵害者が得た利益と商標権者が受けた損害との相当因果 関係を阻害する事情がこれに当たるものと解される。
これを本件についてみると、前記10(2)のとおり、原告らは、「ぼてぢゅ う」の名を付した店舗を出店し、主としてお好み焼きや焼きそばなどを提供 する事業を行っているところ、平成29年11月又は12月以降テイクアウ ト販売及びデリバリー販売の事業を展開しているものの、その事業規模は明 らかではなく、原告の業務態様は、基本的にはスーパーマーケットなどで商 品を販売するという被告の業務態様とは、大きく異なるものであること、他 方、前記前提事実、証拠(乙1、2、4)及び弁論の全趣旨によれば、被告 は、平成23年3月19日、最初に「ぼてぢゅう」のお好み焼き店を開業し た者が設立した株式会社ぼてぢゆう総本家から、被告保有商標1の譲渡を受 けてこれを使用し、被告保有商標1が失効した後も、被告保有商標2及び3 を保有して、お好み焼きや焼そば等を販売してきたことが認められ、被告は、 元祖「ぼてぢゅう」の信用をも引き継ぎつつ、相応の営業努力をして商品を 販売等してきたことが認められること、以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば、原告らと被告の業務態様等には大きな相違が存在 する上、被告も通常の範囲を超える格別の営業努力をして商品を販売等して きたことが認められ、その他に本件に現れた事情を総合考慮すると、原告ら に生じた損害については、商標38条2項による推定を覆滅する事情がある というべきであり、その推定の覆滅の割合は、上記諸事情を踏まえ、9割と 認めるのが相当である。
(3)これに対し、原告らは、「ぼてぢゅう監修」などと表記した商品(甲18\nないし25、62)を販売しており、被告による商標権侵害行為により、当 該商品の売上げも減少し、原告らに損害が生じた旨主張する。 しかし、証拠(甲18ないし25、62)及び弁論の全趣旨によれば、上 記商品の販売減による原告らの利益の減少は、ライセンス収入の減少に相当 するものにすぎず、しかも、原告らは、上記減少に係る具体的な額について 何ら主張立証していないことからすれば、原告らの主張は、上記判断を左右 するものとはいえない。したがって、原告らの主張は、採用することができない。
(4) 以上によれば、原告東京フードに生じた商標法38条3項で推定される損 害額は、前記(1)の限界利益の額7446万2465円の1割である744万 6246円と算定され、当該事案の内容、難易度、審理経過及び認容額等に 鑑み、これと相当因果関係あると認められる弁護士費用相当損害74万46 24円との合計819万0870円となり、原告BGHDに生じた商標法3 8条3項による損害額は、前記(1)の限界利益の額1964万0547円の1 割である196万4054円と算定され、当該事案の内容、難易度、審理経 過及び認容額等に鑑み、これと相当因果関係あると認められる弁護士費用相 当損害19万6405円との合計額は216万0459円となる。

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令和2(ワ)31138等  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年1月28日  東京地方裁判所

 原告は、登録商標「ライスパワー」「RICE POWER」を、被告は登録商標「いいべさーホワイトライスパワー」をそれぞれ保有していました。被告は「ホワイトライスパワー」「WHITE RICE POWER」を使用しており、これらが商標権侵害・不正競争行為に該当するのかが争われました。裁判所は商標権侵害・不正競争行為であるとして、差止および17万円の損害賠償を認めました。

被告主張表示1について\n
被告主張表示1は,「IIBESA」,「いいべさー」,「ホワイトライ\nスパワー」の3段の文字列からなり,「ホワイトライスパワー」の部分 は,黒字の背景に白文字の表示となっており,「いいべさー」,「いいべ\nさー」,「ほわいとらいすぱわー」との称呼が生じる。そして,「いいべ さー」とは,東北地方の方言で「いいでしょう」という意味を持ち, 「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白い米の力」との観念が生じるも のといえる。
このように,被告主張表示1の外観において,「IIBESA」,「い\nいべさー」,「ホワイトライスパワー」の部分は3段に分かれて表示され\nており,「ホワイトライスパワー」の部分は黒字の背景に白文字の表示\nになっており,他とは区別されている。そして,その観念については, 「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白い米の力」というものであり, 「いいでしょう」は「白い米の力」(ホワイトライスパワーの文字部分) を修飾しており,「白い米の力」の部分が需要者の注意を引きつけるも のといえる。また,その称呼についても「いいべさー」,「いいべさー」, 「ほわいとらいすぱわー」というものであり,これを一連のものと一読 するのは冗長であり,各部分について格別に称呼が生じるといえる。 加えて,被告主張表示1の「ホワイトライスパワー」のうち「ライス\nパワー」部分は,需要者である化粧品に関心のある一般の消費者に原告 勇心酒造の出所を示すものとして周知の表示であった(前記3(1))。そ して,原告商品及び被告各商品は,ともに化粧品の部類に属するものと いえるところ,化粧品類の取引においては,一般に,「ホワイト」とは, その商品の色彩を表示するもの又は肌の美白効果を謳う品質や効能\表示\nに用いられるものとして,広く使用されているといえ,このような化粧 品類の取引の実情に鑑みれば,「ホワイト」の部分は,その商品の品質, 効能,色彩を表\示するものと理解し得るものといえる。これらによれば, 本件においては,「ホワイトライスパワー」のうち,「ライスパワー」の 部分が周知の表示として需要者に強い印象を与え,このこととの関係に\nおいて,「ホワイト」の部分は,その「ライスパワー」の品質,効能,\n色彩を示すものと理解し得て,その場合には識別力を有しないか,又は 識別力の弱い部分であるというべきであり,一般の消費者は,「ライス パワー」部分に着目するといえる。
このように,被告主張表示1の外観や観念,称呼に加えて,「ライス\nパワー」部分が需要者に周知の表示といえることや化粧品類の取引の実\n情に照らせば,被告主張表示1において強く支配的な印象を与えるのは,\n「ホワイトライスパワー」の文字部分のうちの「ライスパワー」部分で あるというべきである。 したがって,被告主張表示1については,原告各表\示と被告主張表示\n1の「ライスパワー」部分の類似性を検討するのが相当である。 そうすると,原告表示1と,被告主張表\示1の「ライスパワー」部分 は,外観,称呼,観念において同一であり,原告表示2及び3と被告主\n張表示1の「ライスパワー」部分は,称呼,観念において同一であると\nいえるから,原告各表示と被告主張表\示1は,両者を全体的に類似のも のとして受け取るおそれがあるといえ,類似しているといえる。
・・・
原告各表示と被告各表\示が類似していることに加えて,原告商品及び被告各 商品はいずれ化粧品の部類に属し,取引者及び需要者は共通のものといえる ことなどに照らせば,被告が原告各表示と類似する被告各表\示を付して被告 各商品の販売等することは,需要者に他人である原告の商品と混同を生じさ せる行為といえる。 したがって,被告が被告各表示を使用した商品を販売等する行為は,不競法\n2条1項1号の不正競争に該当する行為といえる。
・・・
被告主張標章1について
被告主張標章1は,被告主張表示1と同一の構\成であり,「IBESA」,「いいべさー」,「ホワイトライスパワー」の3段の文字列からなり, 「ホワイトライスパワー」の部分は,黒字の背景に白文字の表示となっ\nており,「いいべさー」,「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」との 称呼が生じる。そして,「いいべさー」とは,東北地方の方言で「いい でしょう」という意味を持ち,「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白 い米の力」との観念が生じるものといえる。 このように,被告主張標章1の外観において,「IIBESA」,「い いべさー」,「ホワイトライスパワー」の部分は3段に分かれて表示され\nており,「ホワイトライスパワー」の部分は黒字の背景に白文字の表示\nになっており,他とは区別されている。そして,その観念については, 「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白い米の力」というものであり, 「いいでしょう」は「白い米の力」(ホワイトライスパワーの文字部分) を修飾しており,「ホワイトライスパワー」の文字部分が需要者の注意 を引きつけるものといえる。また,その称呼についても「いいべさー」, 「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」というものであり,これを一 連のものと一読するのは冗長であり,各部分について格別に称呼が生じ るといえる。
加えて,被告主張標章1の「ホワイトライスパワー」のうち「ライス パワー」部分は,化粧品に関心のある一般の消費者に,原告勇心酒造の 出所を示す表示として周知の表\示といえ,需要者に強い印象を与えると いえる(前記3(1))。また,原告商品及び被告各商品は,ともに化粧品 の部類に属するものといえるところ,化粧品類の取引においては,「ホ ワイト」とは,一般に,その商品の色彩を表示するもの又は肌の美白効\n果を謳う品質や効能表\示に用いられるものとして,広く使用されている といえ,このような化粧品類の取引の実情に鑑みれば,「ホワイト」の 部分は,その商品の品質,効能,色彩を表\示するものと理解し得るもの といえる。これらによれば,本件においては,「ホワイトライスパワー」 のうち,「ライスパワー」の部分が周知の表示として需要者に強い印象\nを与え,このこととの関係において,「ホワイト」の部分は,その「ラ イスパワー」の品質,効能,色彩を示すものと理解し得て,その場合に\nは識別力を有しないか,又は識別力の弱い部分であるというべきであり, 一般の消費者は,「ライスパワー」部分に着目するといえる。
このように,被告主張標章1の外観や観念,称呼に加えて,「ライス パワー」の部分が需要者に周知の表示といえることや化粧品類の取引の\n実情に照らせば,被告主張標章1で強く支配的な印象を与える部分は, 「ホワイトライスパワー」の文字部分のうちの「ライスパワー」部分で あるというべきである。 したがって,被告主張標章1については,原告各表示と,被告主張標\n章1の「ライスパワー」部分との類否を検討するのが相当である。そう すると,原告商標1と,被告主張標章1の「ライスパワー」部分は,外 観,称呼,観念において同一であり,原告商標2と被告主張標章1の 「ライスパワー」部分は,称呼,観念において同一であるといえる。そ して,原告勇心酒造と原告創研は,原告各商標の持つ出所識別機能等を\n保護発展させるという共通の目的のもとに結束しているものと評価する ことができ(前記認定事実(4)),実質的には同一の表示による商品化事\n業を一体として営む関係にあるといえることに鑑みれば,上記「ライス パワー」部分が同一である場合,原告各商標と被告主張標章1は,類似 しているということが相当である。
・・・
カ 被告は,1)被告主張標章1ないし4が全体としてまとまりよく表示され\nており,称呼も冗長ではなく,よどみなく一連に称呼できることから,全 体を一体として理解すべきである,2)「ホワイトライスパワー」のうち 「ホワイトライス」とは白米を指すことから,「ホワイト」の部分だけを 分離して判断することはできないなどと主張するが,これらの被告の主張 を採用することができないのは,前記4(3)キのとおりである。
キ 以上のとおり,原告各商標と被告主張標章1ないし4及び被告標章5な いし8は類似しているといえる。そして,被告主張標章1ないし4は, 「ホワイトライスパワー」又は「White Rice Power」と いう被告標章1ないし4の文字列を含むことからすれば,原告各商標と被 告標章1ないし4は類似しているといえる。したがって,原告各商標と被 告各標章は類似しているといえる。

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令和2(ワ)1160  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年1月31日  東京地方裁判所

 商標権侵害事件です。3段併記の商標「KENT/MARINE SPIRIT/BROS.」、2段併記の商標「KENT/BROS.」、が、原告商標「Kent」に類似すると判断されました。被告は、2段併記の登録商標「KENT BROS/ケントブロス」を保有していましたが専用権の範囲外の使用と判断されています。

 ア 被告標章1の分離観察の可否
 被告標章1の外観は別紙被告標章目録記載1のとおりである。すなわち, 上段に横書きの「KENT」,中段に横書きの「MARINE SPIR IT」,下段に横書きの「BROS.」を,いずれもほぼ同じ列幅で,か つ,上段と中段との行間及び中段と下段との行間をほとんど空けること なく三段に配して成る結合商標であって,全体としてまとまりよく構成\nされている。 もっとも,欧文字は左から右に順次目線を移して読解するものであるか ら,二段以上にまたがって欧文字が配された場合には,横一列に配され た場合と比較して結合の度合いは相当弱くなるといえる。特に,上段と 下段でそれぞれ独立した単語となり得る場合には,なおさらである。さ らに,上段と下段を構成する欧文字はいずれもおおむね同じ大きさであ\nる上,黒地に白抜きで記載されている点及び手書き風の字体である点に おいても共通するのに対し,中段を構成する欧文字の大きさは上段及び\n下段の欧文字より相当小さく,その行の高さは上段及び下段の行の高さ の3分の1程度にすぎない上,白地に黒い字で記載されている。しかも, 中段を構成する欧文字は,水平方向に平行に延びる2本の直線と垂直方\n向の弦を有する2つの半円とを組み合わせた横長の角丸長方形様の図形 によって囲まれ,当該図形部分は白く着色されており(そのため,中段 を構成する欧文字は,上段及び下段とは異なり,黒字で記載されてい\nる。),中段の全体が一本の白い横棒のような外観を呈している。このよ うに,中段の外観は上段及び下段と大きく異なる上,横棒のような外観 を有しているから,中段を境に,上段と下段が分離されたような外観を 有しているということができる。
そして,前記(2)アのとおり,イトーヨーカドーは,平成21年度以降, 約10年という相当長期間にわたって,168回もの多数回,チラシに 「Kent」ブランドのシャツ,パーカー,パンツ,靴下,コート,セ ーター,下着,手袋等の広告を掲載しており,前記(2)ウのとおり,「K ent」ブランドの商品については,イトーヨーカドーにおいて,平成 21年度から平成30年度までの間に●(省略)●もの売上げがあった もので,年によって増減はあるものの,平均すれば年間約50億円を売 り上げてきたこと,前記(2)イのとおり,限られた期間及び回数ながら, 著名人を起用した「Kent」ブランドのテレビCMが全国に放映され たことに照らせば,「Kent」ブランドは,令和元年当時,被服の分野 において,相応の周知性を有しており,取引者及び需要者に対し,商品 の出所識別標識として相当強い印象を与えていたものと認めるのが相当 である。そうすると,被告標章1の上段の「KENT」は,上記「Ke nt」の二文字目以降を大文字で記載したほかは,つづりが同一である ことから,「KENT」の標章が被服に用いられた場合には,取引者及び 需要者において「Kent」ブランドを想起するものと認めることがで きる。
他方,「BROS.」についてみれば,25類・被服を指定商品とする 「BROS ブロス」との登録商標が存在すると認められるものの(乙 3),本件全証拠によっても,被服に関する「BROS」の実際の使用例 としては,男性用下着のサブブランドとしてのものが認められるのみで あって,「BROS」がどの程度の周知性を有するのかは明らかではない。 そうすると,上記の登録商標の存在を根拠に「BROS.」から出所識別 標識としての称呼,観念が生ずると認めることはできず,その点につい ては,本件証拠上,明らかではないというべきである。以上の事情を総 合すれば,被告標章1の構成部分のうち,「BROS.」から出所識別標\n識としての称呼,観念が生じないとまでは認められないものの,上段の 「KENT」と下段の「BROS.」は,二段以上にまたがって配され, かつ,それぞれが独立した単語となり得ることにより,横一列に配され た場合と比較して結合の度合いは相当弱くなることに加え,一本の白い 横棒のような外観を有する中段の「MARINE SPIRIT」によ り上下に分離されている上,「KENT」に対応する「Kent」ブラン ドが,被服の分野において,相応の周知性を有しており,取引者及び需 要者に対し,商品の出所識別標識として相当強い印象を与え得ることか らすれば,上段の「KENT」と下段の「BROS.」とを分離して観察 することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合している とまではいえない。したがって,被告標章1については,上段の「KE NT」のみを分離して観察することができると認めるのが相当である。 その結果,被告標章1については,「ケント」との称呼が生じ,かつ,原 告が使用権を設定し,イトーヨーカドーが使用する「Kent」ブラン ドの商品であるとの観念が生じるものと認められる。
イ 被告標章2の分離観察の可否
被告標章2の外観は別紙被告標章目録記載2のとおりである。すなわち, 上段に横書きの「KENT」,下段に横書きの「BROS.」を,いずれ もほぼ同じ列幅で,かつ,上段と下段との行間をほとんど空けることな く二段に配して成る結合商標であって,全体としてまとまりよく構成さ\nれている。 もっとも,欧文字は左から右に順次目線を移して読解するものであるか ら,上記の「KENT」と「BROS.」のように,二段以上にまたがっ て欧文字が配された場合には,横一列に配された場合と比較して結合の 度合いは弱くなり,上段と下段でそれぞれ独立した単語となり得る場合, その結合の度合いがより弱くなることは,被告標章1の場合と同様であ る。
そして,前記アのとおり,「BROS.」から出所識別標識としての称呼, 観念が生じないとは認められないものの,他方で,「Kent」は商品の 出所識別標識として取引者及び需要者に相当強い印象を与えていたもの と認められ,かつ,「KENT」の標章が被服に用いられた場合には,取 引者及び需要者において「Kent」ブランドを想起するものと認めら れる。 そうすると,被告標章2においては,被告標章1の中段に相当する部分 が存在しないものの,そもそも「KENT」と「BROS.」の結合の度 合いが弱い上,「KENT」に対応する「Kent」ブランドが商品の出 所識別標識として相当強い印象を与え得ることからして,被告標章2の 各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思わ\nれるほど不可分的に結合しているものとは認められないというべきであ り,上段の「KENT」を分離観察することができるというべきである。 その結果,被告標章2についても,被告標章1と同様,「ケント」との称 呼及び「Kent」ブランドの商品の観念が生じるものと認められる。

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令和3(行ケ)10071  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年10月14日  知的財産高等裁判所

 無効審判の審決取消訴訟です。争点は、商標「pum’s」がpumaと類似(11号)または混同するか(15号)です。指定商品は18類「折り畳み式傘,晴雨兼用傘,ビーチパラソル,日傘」及び第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」です。知財高裁は類似・混同しないとした審決を維持しました。\n

(1) 本件商標と引用商標の類否判断について
ア 外観
(ア) 本件商標は,「pum’s」の文字を太字の斜体の書体で表し,末尾\nの「s」の文字の下端を語頭の「p」の文字の下部まで横一直線に延伸 し,下線のように表されて構\成されている。原告は,本件商標の1文字 目と4文字目は,大文字「P」「S」と認識されると主張するが,1文 字目の左側の縦棒が下に突き出しているのは小文字であるからなのは明 らかであり,4文字目も上端が他の小文字と同じ高さに位置しているか ら,大文字とは認識されない。また,原告は,本件商標の2文字目は, 右側の縦棒がないため,大文字「U」と捉えられると主張するが,2文 字目は他の小文字と同じ大きさであって,直ちに採用できない。 一方,引用商標は,「PUmA」の文字を縦線を太く垂直に,横線を 細く描く書体で表し,各文字は,小文字である「m」も含めて,同じ高\nさで構成されている。\n両者は,語頭を含めた「pum(PUm)」の文字を共通にするが, 末尾において本件商標が小文字の「s」であるのに引用商標が大文字の 「A」であるという文字の相違,アポストロフィの有無,下線のように 表されたものの有無,書体が斜体であるか否か及び文字の横線が細いか\n否かといった点において明らかに異なり,外観においては,相紛れるお それはない。
(イ) 原告は,第3の1(1)ア(ア)cのとおり,るる主張するが,前記(ア)で 認定したとおり,本件商標と引用商標の外観上の相違は明白であり,仮 に,原告が主張する個別の点につき一定の類似が認められるとしても, そのことから,外観において相紛れるおそれがあるということはできな い。 なお,念のために判断すれば,上記c(a)については,引用商標は文字 の横線が細いことが明確であるのに対し,本件商標では縦線と横線の太 さの違いは子細に見なければ看取できず,逆に,本件商標では角部の丸 みは明確であるが,引用商標では明らかでないし,同(b)については,本 件商標が斜体であるのに対し,引用商標は各文字が垂直かつ同じ高さで, 長方形の範囲に収まって全体として整然とした印象を与えるものであっ て,両者の印象が異なることは明らかであるし,同(c)については,いず れにしても本件商標における「s」の文字の下端の延伸された部分が引 用商標との相違点として着目されないということにはならないし,同? については,相違する最後の「A」と「S」の文字が相似た文字に看取 される場合があるとは認め難いし,同(e)については,特段の意味内容を 想起させない「pum」の欧文字部分が本件商標の要部であるとは到底 いえず,原告の各主張は個別にみても採用し得ない。 そうすると,本件商標と引用商標の外観は大きく異なるものであって, 前記1の引用商標の周知著名性を勘案しても,両者の外観が類似すると の原告の主張は採用できない。
イ 称呼
(ア) 本件商標からは「パムズ」,「パムス」,「プムズ」又は「プムス」 の称呼が生じるのに対し,引用商標からは「プーマ」又は「ピューマ」 の称呼が生じ,語頭の「pu」ないし「PU」を「プ」と読んだ場合に 音を共通にする場合があるとしても,いずれも3音という短い音数にお いては,2音目及び3音目における音の相違,特に,3音目の「ズ」な いし「ス」(本件商標)と「マ」(引用商標)の相違は大きいものであ って,相紛れるおそれはない。
(イ) 原告は,前記第3の1(1)ア(イ)のとおり,本件審決が,本件商標の要 部である「PUm」の欧文字部分から生ずる「プム」の称呼と引用商標 から生ずる称呼とを対比していないと主張するが,本件商標における 「pum」の欧文字部分が要部であるという主張が到底採用できないこ とは前記アのとおりである上,仮に同部分を本件商標の要部とし,これ を「プム」と称呼し,引用商標を「プーマ」と称呼したとしても,短音 と長音の違い,「ム」と「マ」の違いは,短い標章の中では大きな差異 として認識されるものというべきである。
ウ 観念
本件商標が造語であることから,特定の観念を生じないのに対し,引用 商標が周知著名であることから,「原告のブランド」との観念を生じ,両 者は明確に区別することができ,相紛れるおそれがない。
エ その他
原告は,前記第3の1(1)ア(エ)のとおり,本件商標と引用商標の需要者 である一般消費者は,衣類や靴等に商標をワンポイントマークとして小さ く表示された場合,些細な相違点に気付かないことも多いと主張する。\nしかし,商標が小さく表示された場合をことさら取り上げることの当否\nは措くとしても,そもそも本件商標と引用商標は全体的な印象においても 明らかに異なることは前記アのとおりであり,小さく表示された場合でも,\nその相違は明白であるから,原告の主張は採用できない。 また,原告は,前記第3の1(1)ア(オ)のとおり,本件消費者調査の結果を 理由に,本件商標と引用商標の類似性を主張する。 しかし,本件消費者調査は,本件商標の登録査定時よりも後に実施され たものであること,本件商標について助成想起(本件商標の指定商品〔ス ポーツ関連用品〕の出所標識という前提〔ヒント〕を与えて自由回答形式 で聴取するもの)による質問について原告を連想した15%という数値は 大きいとはいえない上,スポーツ関連用品というヒントを与えられれば, 多少とも本件商標と共通点のあるブランドを想起しようと努めると考え られることを考慮すると,この数値すらそのまま受け取ることはできない こと,本件商標と引用商標を並べた場合に両商標が類似するという回答も, このような限界のある質問の後にされたものであることを考慮すれば,本 件商標と引用商標の類似性を裏付ける資料とはいえない。したがって,こ の点に係る原告の主張も採用し得ない。
(2) 小括
以上によれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれに おいても相紛れるおそれがなく,類似しないものと認められる。 そうすると,本件商標の指定商品と同一又は類似する商品が引用商標7, 8及び10の指定商品中に含まれているとしても,本件商標は,商標法4条 1項11号に該当せず,本件審決の判断に誤りはない。
3 取消事由2(本件商標の商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)につい て
(1) 混同のおそれについて
「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程\n度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度,当該商標の指定商品等と他\n人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並 びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし,当該 商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準 として,総合的に判断すべきである。 これを本件につき検討するに,前記2において判断したとおり,本件商標 と引用商標とは,引用商標の周知著名性を勘案しても,外観,称呼及び観念 のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,その類似 性は極めて低いというべきであるから,本件商標の指定商品には「運動用特 殊衣服,運動用特殊靴」が含まれており,原告の業務に係る商品との間の関 連性や,取引者や需要者の共通性が高く,また,そのような商品はいずれも 注意力が高いとはいえない一般消費者も需要者とするものであることを考慮 しても,本件商標に接する取引者及び需要者が,原告又は引用商標を連想又 は想起することはないというべきである。これに反する原告の主張は,前記 2において判断したのと同様の理由によりいずれも採用し得ない。そうする と,本件商標は,これをその指定商品に使用をしても,その取引者及び需要 者をして,当該商品が原告の商品に係るものであると誤信させるおそれがあ るものとはいえない。

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平成31(ワ)11130  商標権侵害差止請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年6月17日  東京地方裁判所

 東京地裁46部は、富富富」という標章,「ふふふ」という読み仮名を付した「富富富」という標章は、登録商標「ふふふ」と非類似として、侵害を否定しました。

 被告標章2と本件商標を比較すると,これらは外観において明らかに異 なる。他方,被告標章2と本件商標は,「フフフ」の称呼を共通にする場 合がある。もっとも,被告標章2は特定の観念を生じないのに対し,本件 商標は軽く笑う声等の観念を生じ,これらは観念において異なる。
そうすると,被告標章2と本件商標は,称呼において類似する場合があ るとしても,外観,観念において相違しており,その出所について誤認混 同を生じさせるような取引の実情があるとは認められず,同一又は類似の 商品等に使用された場合に,商品等の出所につき誤認混同を生ずるおそれ があるとは認められない。
したがって,被告標章2は本件商標と同一又は類似のものではない。 なお,「富富富」は,被告富山県によって育成された本件米の品種名で あり(前記1(1),(6)),被告富山県は,特に,平成30年秋頃以降,本 件米について積極的に広告,宣伝しており(同(5)),「富富富」が米の 品種名であることは相当程度知られていたと認められる。被告標章2は, この品種名を普通に用いられる方法で表示したものである。\n

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◆令和2(行ケ)10014

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平成30(ワ)16422等  商標使用差止等請求事件 損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年4月23日  東京地方裁判所

 登録商標「舞豚」があり、このアルファベット表記「maiton」の使用は商標権侵害と判断されました。本件は、「舞豚」はブランド豚肉で、使用許諾契約終了後の標章の使用という特殊事情があります。損害論では38条2項による算定は地理的に離れているということで否定されましたが、飲食物の提供の通常のライセンス料の約2倍の8%が認められました。

 ア 商標法38条2項は,商標権者は,故意又は過失により自己の商標権を 侵害した者に対してその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場 合において,その者がその侵害の行為により利益を受けているときは,そ の利益の額は,商標権者が受けた損害の額と推定すると規定しているとこ ろ,同項が損害額の立証の困難性を軽減する趣旨で設けられた規定である ことに照らせば,商標権者に,侵害者による商標権侵害行為がなかったな らば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,商標法38 条2項の適用が認められると解すべきである。
イ 本件において,被告は,本件商標1と類似する被告各使用標章を本件商 標1と同一の指定役務である飲食物の提供に使用している。しかしながら, 原告が本件商標1を用いて経営する原告店舗は長崎県島原市に所在してい るところ,しゃぶしゃぶ料理の提供という原告の業務に係る顧客は,飲食 店の一般的な顧客の範囲からすると,同市及びその周辺に在住の者である と推認され,本件において,これと異なる事実を認めるに足りる証拠はな い。他方,被告が経営していた本件店舗は東京都台東区に所在しており, 本件店舗の業務に係る顧客は,東京都内及びその周辺に在住の者であると 推認され,本件において,これと異なる事実を認めるに足りる証拠はない。 原告店舗における事業との関係で被告による商標権侵害行為がなければ原 告が利益を得られたといえるためには,それらが競合関係にある必要があ ると解されるところ,原告店舗及び本件店舗の事業の性質から,原告店舗 に対する需要者と本件店舗に対する需要者とは重ならず,原告店舗と本件 店舗が競合関係にあるとは認められない。
ウ 原告は,本件に商標法38条2項が適用されると主張するに当たり,オ ンラインショップや東京都中央区所在のアンテナショップ(以下,これら を併せて「原告オンラインショップ等」という。)において,本件各商標 を付して本件豚肉等を販売しているところ,被告が本件店舗において被告 各標章を使用して飲食物を提供しなければ,豚肉舞豚を食べたいという顧 客の需要は,原告オンラインショップ等に向かうというべきであり,これ により原告は利益を得られたなどと主張する。 ここで,被告による商標権侵害行為がなければ,原告オンラインショッ プ等において原告が利益を得られたというためには,少なくとも本件店舗 における業務と原告オンラインショップ等における業務が競合関係にある といえる必要があるとするのが相当である。そして,原告オンラインショ ップ等においては,本件豚肉等が販売されているのに対し,本件店舗では 豚肉のしゃぶしゃぶ料理が提供されており,これらの事業の形態は大きく 異なる。また,顧客についてみても,本件店舗においては,店舗において 豚肉舞豚を用いたしゃぶしゃぶ料理の提供を受けたいという顧客が主であ るのに対し,原告オンラインショップ等においては,本件豚肉等を購入し 自宅で食べたいという顧客が主である。本件店舗における業務と原告オン ラインショップ等における業務にはこのような相違があるところ,本件に おいて,店舗において豚肉舞豚を用いた料理を食べたいと考える顧客の需 要が原告オンラインショップ等に向かうことを裏付ける的確な証拠はない。 そうすると,本件店舗と原告オンラインショップ等とでは,類型的に事業 の形態が相違しており,本件でその顧客等が重なる事情も認められず,本 件店舗における業務と原告オンラインショップ等における業務が競合関係 にあるとはいえないと認めるのが相当である。原告の上記主張を採用する ことはできない。
なお,原告は,被告が本件店舗を閉店したと主張する平成30年8月を 基準に,閉店後の平成30年9月から平成31年2月までとその前年同期 (平成29年9月から平成30年2月まで)の原告オンラインショップ等 の売上げを比較し,本件店舗閉店後の前者の売上げが閉店前年同期の後者 の売上げから約125%増額しており,被告による商標権侵害行為により 原告は得られる利益を逸していたなどと主張する。しかしながら,証拠 (甲38,39)及び弁論の全趣旨によれば,原告オンラインショッピン グ等の平成30年9月から平成31年2月までの売上げが974万074 3円(内訳:ふるさと納税に係る売上げ964万6895円,それ以外の 売上げ9万3848円)であり,平成29年9月から平成30年2月まで の売上げが776万8833円(内訳:ふるさと納税に係る売上げ757 万6000円,それ以外の売上げ19万2833円)であることが認めら れ,本件店舗の閉店前と閉店後の同時期の売上げを比較すると,本件店舗 の閉店後の期間の売上げが増加しているとはいえるものの,それはふるさ と納税による売上げが増加したことに伴うものといえる。そして,ふるさ と納税制度を利用して商品を購入する動機は,ふるさとへの貢献や返礼品 を受領することなど多種多様であることに鑑みれば,上記の売上額の増加 をもって,原告の主張を裏付けるものということはできず,他に原告の上 記主張を認めるに足りる証拠もない。
エ 以上によれば,原告の業務と被告各使用標章の使用に係る被告の業務と の間で市場における競合関係があるとはいえず,被告による商標権侵害行 為がなかったならば,原告が利益を得られたであろうと認めることはでき ない。したがって,原告の本件商標権1の侵害による損害額の算定に当た って,商標法38条2項を適用する前提を欠き,同項の適用は認められな い。
(2)商標法38条3項の損害額について
ア 本件店舗は,「舞豚」というブランドの豚肉のしゃぶしゃぶ料理を提供 することを特徴とする飲食店であるところ,被告は,被告各使用標章を本 件店舗の名称,店舗の外観や料理のメニュー表などに広く用いていたこと(前記前提事実(3)アイ)からすれば,商標法38条3項による損害額の算 定に当たっては,本件店舗の売上げに対して,本件商標1の使用に対し受 けるべき料率を乗じて算定するのが相当である。
イ 次に,本件商標1の使用に対し受けるべき金銭の料率について検討する。 証拠(甲36)によれば,株式会社帝国データバンク作成の「知的財産 の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査報告書」におい て,「商標権に関する分類別ロイヤルティ料率の平均値」について全体 (205件)では2.6%であり,「商標の分類」が「第43類 飲食物 の提供及び宿泊施設の提供」については3件の例があり,最大値5.5%, 最小値1.5%,平均値3.8%であるとの記載が認められ,飲食物の提 供についての商標権のロイヤルティ料率は,全体の平均値より相当程度高 いといえる。 また,証拠(後掲)及び弁論の全趣旨によれば,豚肉舞豚は平成7年1 0月19日の第39回長崎県種豚共進会において農林水産大臣賞を受賞し たこと(甲37),本件店舗の開店時に長崎新聞には「島原産ブランド豚 提供「舞豚」」という見出しの記事が,島原新聞には「「舞豚」が東京進出」 という見出しの記事がそれぞれ掲載されたこと(乙4)が認められる。こ れらの事実に照らせば,豚肉舞豚に対して一定の評価が与えられていたこ とがうかがえる。 そして,本件店舗は,豚肉舞豚をしゃぶしゃぶ料理として提供すること を大きな特徴とする店舗であるところ,被告は,店舗の名称や看板,メニ ュー表等に被告各使用標章を使用していた。他方,本件店舗には,他に顧客を特に引き付けるような標章等が使用されていたともいえない。そうす\nると,被告は,一定の評価が与えられていた豚肉舞豚と同じ呼称等を有す る被告各使用標章を,店舗の名称も含めて積極的に活用して本件店舗を営 業していたといえ,被告各使用標章の使用は被告の売上げにも貢献するも のであったといえる。
これらの事情に加えて,被告は,本件各商標の使用許諾契約が被告によ る信頼関係を破壊する行為により解除された後も,被告各使用標章の使用 を継続していたなど本件訴訟に現れた一切の事情を併せて考えれば,商標 権を侵害した者に対して事後的に定められるべき商標の使用に対し受ける べき料率は,8%と認めるのが相当である。
ウ 以上によれば,被告による商標権侵害について,商標法38条3項によ り算定される損害額は,本件店舗の売上高(平成29年12月から平成3 0年8月)1189万7246円(争いのない事実)に8%を乗じた金額 である95万1779円となる。
(3) 損害不発生の抗弁について
被告は,原告に使用料相当額の損害は発生しておらず,商標法38条3項 は適用されないと主張する。 しかし,被告は,店舗の名称や看板,メニュー表等に被告各使用標章を使用した一方,本件店舗において他に強く顧客を誘引する標章等が使用されて\nいたものではない。被告各使用標章の使用が被告の売上げに貢献していたと いえることは前記(2)のとおりであるから,被告が被告各使用標章を使用した ことにより原告に使用料相当額の損害が生じないとは認められない。被告の 損害不発生の抗弁についての主張は理由がない。

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令和2(ネ)10060 商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和3年4月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ビクトリノックスの黒字に白十字を二重の外枠で囲った登録商標についての、商標権侵害訴訟です。侵害被疑者は赤十\字が登録できない(商標法4条)ので、十字部分は要部ではないと争いましたが、知財高裁は侵害とした東京地裁の判決を維持しました。\n

(1) 十字部分の色彩等に基づく類否の主張について\n
控訴人は,標章において色彩が類否に大きく影響すること,十字部分を有\nする標章は特に十字部分の色彩が類否に大きく影響することを前提として,\n被控訴人商標と控訴人標章1,3は外観,称呼,観念が異なり,類似しない と主張するが,控訴人の主張を採用することはできない。以下,詳述する。
ア 標章において色彩が類否に大きく影響するという控訴人の主張について 控訴人は,例えば,国旗において色彩が重要な要素であるように,標章 は,同一の文字や図形の結合等であっても,色彩の相違によって印象が異 なるものであり,現に,商標法70条1項は,色彩を登録商標と同一にす れば登録商標と同一の商標となる場合であっても,色彩が異なれば登録商 標に類似しない商標があることを前提としており,このことは,色彩以外 が同一であり色彩だけが異なっている商標が非類似になることを示して いるとし,そのため,商標の類否判断に色彩が大きく影響すると主張する。 しかし,国旗において色彩が重要な要素であるとしても,国旗の例が直 ちに商標に当てはまるものではない。また,標章において,文字や図形は 色彩に劣らず重要な要素であり,商標法70条1項が,色彩を登録商標と 同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるもの を,登録商標に類似の商標にとどまるとするのではなく,登録商標に含ま れるとしていることからすれば,文字や図形が同一であって色彩のみが異 なる商標は,登録商標と同一の商標と認められる場合が多いといえる。そ のため,控訴人の上記条項の理解は不適切であり,同条項に基づき,標章 において色彩のみが類否に大きく影響するということはできない。なお, 色彩が識別性等の観点から大きな意味を有しており,色彩のみが異なるこ とにより全く違う商標となってしまうような例外的な場合について商標 法70条1項が適用されないとする余地があるとしても,上記の認定は左 右されない。したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。
イ 十字部分を有する標章は特に十\字部分の色彩が類否に大きく影響すると いう控訴人の主張について 控訴人は,商標法4条1項4号は,赤十字の標章と同一又は類似の商標\nについて商標登録を受けることができないと定めており,赤十字の標章及\nび名称等の使用の制限に関する法律1条は,白地に赤十字の標章若しくは\n赤十字の名称又はこれらに類似する記章若しくは名称をみだりに用いる\nことを禁じていること,緑と白で構成された十\字の標章は,安全標識とし て定められていることから,十字部分を有する標章においては特に十\字部 分の色彩が類否に大きく影響すると主張する。 しかし,赤十字の標章や安全標識について上記の事実があるとしても,\n赤十字の標章と同一又は類似の商標でなければ,十\字部分を含む商標の登 録は認められる余地があり,十字部分を含む商標において十\字部分の色彩 が識別性等の観点からどのような意味を有するかは,その商標の具体的な 構成等に照らして判断されるべき事柄であって,一概に,十\字部分を有す る標章において特に十字部分の色彩が類否に大きく影響するということ\nはできず,控訴人の上記主張は,採用することができない。
ウ 被控訴人商標と控訴人標章1,3の類否について 控訴人は,被控訴人商標と控訴人標章1,3は,外観,称呼,観念が異 なり,類似しないと主張する。 しかし,原判決の説示するとおり(原判決9頁6行目ないし10頁10 行目),被控訴人商標と控訴人標章1は,外観が類似しており,いずれも 「ジュウジ」「クロス」などの同一の称呼及び「十字」「クロス」などの\n同一の観念が生じ,取引の実情を踏まえると,被控訴人商標と控訴人標章 1は,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあり,両者は類似する と認められる。また,原判決の説示するとおり(原判決11頁5行目ない し12頁14行目),被控訴人商標と控訴人標章3は,外観が類似してお り,同一の称呼及び観念が生じ,取引の実情を踏まえると,被控訴人商標 と控訴人標章3は,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあり,両 者は類似すると認められる。したがって,控訴人の上記主張は採用するこ とができない。
(2) 十字以外の部分等に基づく類否の主張について\n
控訴人は,商標法4条1項1号が,国旗と同一又は類似の商標は商標登録 を受けることができないと定めていることからすると,被控訴人商標が登録 されているのは,スイス国旗と類似していないからであり,そうであるとす ると,被控訴人商標のうち,スイス国旗と似ている十字部分は要部ではなく,\n円弧からなるループ状図形が要部であるとした上で,被控訴人商標の円弧か らなるループ状図形の外周と控訴人各標章の正方形部分の外周は,形状,色 彩,観念が異なるとし,被控訴人商標の指定商品と同一又は類似の商品に使 用された控訴人各標章が外観,観念等によって取引者,需要者に与える印象, 記憶,連想等は,被控訴人商標とは全く異なるものであるから,被控訴人商 標と控訴人各標章は類似しないと主張する。 しかしながら,被控訴人商標が登録されているのは,スイス国旗と類似し ていないからであるとしても,そのことから直ちに,被控訴人商標のうち, 十字部分以外の円弧からなるループ状図形が要部であるとして,その部分の\n比較に基づいて商標の類否を判断すべきであるとはいえない。商標の類否は, 外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を 総合して,その商品に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきもの であるところ,被控訴人商標と控訴人各標章は,いずれも十字部分と外周部\n分からなり,十字部分は被控訴人商標及び控訴人各標章の中心にあって目立\nつ位置にあるから,類否判断に当たっては,十字部分も含めて被控訴人商標\nと控訴人各標章のそれぞれの全体を比較考察すべきである。そのため,十字\n部分以外の周囲の部分の比較により被控訴人商標と控訴人各標章は非類似で あるとする控訴人の上記主張を採用することはできない。

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1審は東京地裁ですがなぜかアップされていません。 こちらは同商標権に対する不使用審決取消訴訟です。審決は不使用と認定しましたが、知財高裁はこれを取り消しています。

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令和2(行ケ)10107  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年4月14日  知的財産高等裁判所

 商標「ざんまい」が「すしざんまい」と混同するかが争われました。指定商品・役務は「すし」「すしを主とする飲食物の提供」です。審決・判決とも「すしざんまい」は著名、混同する」と判断しました。

 本件商標は,別紙1記載のとおり,「ざんまい」の文字を横書きに書 してなる商標である。本件商標から「ザンマイ」の称呼が生じる。 「ざんまい」の語は,「一心不乱に事をするさま。」(広辞苑第七版)の 意味を有するから,本件商標から,このような意味合いの観念を生じる。 また,前記2(2)ア認定のとおり,「すしざんまい」の表示は,本件商標 の登録出願時及び登録査定時において,被告が店舗展開する「すしざん\nまい」チェーン店の名称として,需要者である一般消費者の間に広く認 識され,被告の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表示する ものとして,著名であったこと,「すし」に関連する登録商標の使用にお\nいては,「すし」又は「寿司」の表示を登録商標の前後に付加して使用す ることが普通に行われており,現に,原告においても,本件商標の「ざ\nんまい」の前に「寿司」の文字を付加した「寿司ざんまい」の商標を使 用していること(前記1(4))に鑑みると,本件商標が指定商品「すし」 に使用されたときは,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店 を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念をも生じるものと 認めるのが相当である。
(イ) 引用商標1は,別紙2記載のとおり,上段に筆文字風で記載された 「つきじ喜代村」の文字を,中段に大きく筆文字風で記載された「すし ざんまい」の文字を,下段に小さくゴシック体で記載された「SUSH IZANMAI」の文字を3段に配した構成からなる結合商標であり, このうち,「すしざんまい」の文字は,引用商標1の中央に他の文字より\nも大きく,かつ,太く記載されており,「すし」の部分は,「し」が「す」 の左下に位置し,縦書きのように記載されている。 そうすると,引用商標1を構成する「つきじ喜代村」の文字部分,「すしざんまい」の文字部分及び「SUSHIZANMAI」の文字部分は,\n外観上,それぞれが分離して観察することが取引上不自然と思われるほ ど不可分的に結合しているものとはいえない。 そして,「すしざんまい」の文字部分の上記構成態様に照らすと,引用 商標1の構\成中の「すしざんまい」の文字部分は,取引者,需要者に対 し,「すしを主とする飲食物の提供」の役務の出所識別標識として強く支 配的な印象を与えるものと認められるから,要部として抽出できるもの と認めるのが相当である。 しかるところ,引用商標1の要部である「すしざんまい」の文字部分 及び「すしざんまい」の標準文字からなる引用商標2から,いずれも「ス シザンマイ」の称呼が生じる。 また,前記2(2)ア認定のとおり,「すしざんまい」の表示は,本件商標の登録出願時及び登録査定時においては,被告が店舗展開する「すしざ\nんまい」チェーン店の名称として,需要者である一般消費者の間に広く 認識され,被告の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表示す るものとして,著名であったことに鑑みると, 引用商標1の要部である 「すしざんまい」の文字部分及び引用商標2から,被告が店舗展開する 「すしざんまい」チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんま い」の観念を生じるものと認めるのが相当である。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)によれば,本件商標と引用商標1及び2は,外観 及び称呼が異なるが,観念においては,本件商標が指定商品「すし」に 使用されたときは,本件商標から被告が店舗展開する「すしざんまい」 チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念をも生 じるのに対し,引用商標1の要部である「すしざんまい」の文字部分及 び引用商標2からも,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店 を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念を生じる点で共通 するものと認められる。
イ 以上のとおり,1)「すしざんまい」の表示は,本件商標の登録出願時及 び登録査定時において,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店\nの名称として,需要者である一般消費者の間に広く認識され,被告の業務 に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表示するものとして,著名であ ったこと(前記2(2)ア),2)本件商標と引用商標1の要部である「すしざ んまい」の文字部分及び引用商標2から,いずれも被告が店舗展開する「す しざんまい」チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんまい」の 観念を生じる点で共通すること(前記ア(ウ)),3)本件商標の指定商品であ る「すし」と被告の業務に係る役務である「すしを主とする飲食物の提供」 は,需要者が一般消費者である点で共通し(前記2(1)ア),販売の対象とな る商品又は提供の対象となる商品がいずれも「すし」である点で共通する ことを総合考慮すると,本件商標をその指定商品の「すし」に使用すると きは,その取引者,需要者において,被告が店舗展開する「すしざんまい」 チェーン店の名称として著名な「すしざんまい」の表示を想起し,当該商 品を被告又は被告と緊密な営業上の関係又は同一の表\示による商品化事業 を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であるかのよ うに,その出所について混同を生ずるおそれがあるものと認められる。 したがって,本件商標は,引用商標1及び2との関係において,商標法 4条1項15号に該当するものと認められる。 これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
(2) 原告の主張について
原告は,1)引用商標1及び2の指定役務「すしを主とする飲食物の提供」 にいう「すし」と本件商標の指定商品「すし」とは,握り寿司等3種類を除 き,「すし」の内容が一致せず,需要者が異なる,2)「すし」の販売にいう「す し」は,弁当と同じような用途であるのに対し,「すしを主とする飲食物の提 供」にいう「すし」の提供は,すし職人と会話を楽しむといった別の要素が あり,極めて人間的であり,しかも,魚の鮮度が勝負であり,鮮度が比較的 短時間で落ちる商品を鮮度の良い状態で提供していること,回転ずしや着席 スタイルのすし店等でも,テイクアウトは行われているが,全体のごく一部 であり,特に着席スタイルのすし店は鮮度にこだわり,テイクアウトは拒否 されるのは周知の事実であることからすると,「すし」と「すしを主とする飲 食物の提供」とは,その性質,用途又は目的において密接な関連性を有する とはいえない,3)原告の業態は,宅配寿司であり,ウェブサイト又は電話に よる注文を受けてから寿司を盛り,スピーディな配達をするというものであ るのに対し,被告の業態は,カウンター方式及び個室方式をとり,会食・接 待・結納などにも利用できる料亭をイメージした落ち着いた雰囲気の個室を 用意しており,テイクアウトはあくまで「お持ち帰り」としての利用であり, 原告の業態と被告の業態が相違するなどとして,本件商標の登録出願時及び 登録査定時において,本件商標をその指定商品「すし」に使用した場合,こ れに接する需要者が引用商標を想起,連想し,当該商品を被告あるいは被告 と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの ように,その出所について混同を生ずるおそれがあるとはいえないから,本 件商標が商標法4条1項15号に該当するものとはいえない旨主張する。 しかしながら,1)については,前記2(1)イで説示したとおり,本件商標の 指定商品「すし」と引用商標1及び2の指定役務「すしを主とする飲食物の 提供」とは,需要者が異なるものと認めることはできない。 2)については,「すしを主とする飲食物の提供」の提供の場所を原告が主張 するような着席スタイルのすし店に限定すべき合理性はない。 3)については,原告が主張する原告の業態と被告の業態の相違は,本件商 標をその指定商品「すし」に使用した場合,これに接する需要者が,当該商 品を被告又は被告と緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を 営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であるかのように,\nその出所について混同を生ずるおそれがあるとの前記(1)の判断を左右するも のではない。

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こちらは関連事件です。

◆令和2(行ケ)10108

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令和3(行ケ)10118  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年3月11日  知的財産高等裁判所

 「SMS」+図形商標から、「SMS」を分離観察できるかが、争われました。知財高裁(2部)は分離可能とした審決を維持しました。判決文の最後に本件および引用商標が掲載されています。\n

 (1) 本件商標は,別紙1のとおりであり(甲1),三つのハート形の図形を横に 重なるように並べた本件図形部分と,その下に配置された横書きにした「SMS」 のありふれた書体の欧文字(本件文字部分)とからなる商標である。 本件図形部分は,ハートの形を縁取った線を横に二つ描き,その二つのハートの 形の内側の二つの半円部分を用いて,中央部分に三つ目のハートの形を描いたもの で,一筆書きによって描くことができるようになっている。 本件図形部分及び本件文字部分のいずれにも色彩はなく,本件図形部分の高さは, 本件文字部分の高さの3倍弱であり,本件図形部分の横幅は,本件文字部分の横幅 の2倍弱である。
(2) 本件商標の上記(1)の外観からすると,本件商標においては,本件図形部分 と本件文字部分とを明確に区別することができ,それらの各部分を分離して観察す ることが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとは認められな いから,本件商標から,本件文字部分を抽出し,同部分を他人の商標と比較して商 標の類否を判断することができるというべきである。 そして,本件文字部分からは,「エスエムエス」との称呼が生じるが,「SMS」 の語は,「広辞苑 第六版」には掲載されておらず(甲19),他に一般的な辞書に 掲載されている例があるとも認められないから,造語であると認められ,特定の観 念は生じないというべきである。
3 引用商標1及び2について
(1) 引用商標1及び2は,別紙2,3のとおりであり(甲2,3),オレンジ色 の小さな円をL字型に並べた形状と,同様の黄色のL字型の形状とを組み合わせた 正方形を45度傾けた形状の図形部分(引用1及び引用2図形部分)と,その右側 に配置された,横書きにした「SMS」の欧文字と横書きにした「Best ma tching Best value」の欧文字を上下二段に配置した部分(引用 1及び引用2文字部分)からなる商標である。 引用1及び引用2図形部分の高さは,「SMS」の文字部分の高さの2倍程度であ り,引用1及び引用2図形部分の横幅は,「SMS」の文字部分の横幅の6割程度で ある。また,「Best matching Best value」の文字部分は, 「SMS」の文字部分と同じ横幅で,「SMS」の文字部分に比較して,極めて小さ く書かれている。
(2) 引用商標1及び2の上記(1)の外観からすると,引用商標1及び2において は,引用1及び引用2図形部分と引用1及び引用2文字部分とを明確に区別するこ とができる。また,引用1及び引用2文字部分については,「SMS」の文字部分と, 「Best matching Best value」の文字部分は2段に分か れていて,大きさも顕著に異なるのであるから,両者を明確に区別することができ る。 したがって,引用商標1及び2において,「SMS」の文字部分が他の部分と分離 して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとは 認められないから,「SMS」の文字部分を抽出し,同部分を他人の商標と比較して 商標の類否を判断することができるというべきである。 そして,前記2(2)のとおり,「SMS」の文字部分からは,「エスエムエス」との 称呼が生じるが,特定の観念は生じないというべきである。
・・・・
原告は,「SMS」とは,携帯電話でのメッセージ送受信サービスである 「Short Message Service(ショートメッセージサービス)」の 略語であり,本件審決がされた令和2年の時点で,「ショートメッセージサービス」 の略語としての「SMS」は,通信分野に限らず,一般に周知されていると主張し, その証拠として,甲25,26を提出する。 甲25によると,「SMS」が「ショートメッセージサービス」の略語であること を説明したウェブサイトが存在することが認められるが,前記2(2)のとおり,「S MS」の語が一般的な辞書に掲載されている例があるとは認められないことからす ると,上記ウェブサイトの存在から,「SMS」が「ショートメッセージサービス」 の略語を意味することが一般的に認識されていたということはできないというべき である。

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令和2(行ケ)10088  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年2月22日  知的財産高等裁判所

 文字商標「ホームズくん」が、「ホームズ君」を含む図形商標と類似するとして拒絶されました。知財高裁は審決を維持しました。

 原告は,1)原告キャラクターと本願商標との密接不可分的なつながり,2) 原告キャラクター及び原告ウェブサイトの周知著名性,3)不動産業界の取引 の実情を考慮すると,本願商標からは,原告キャラクターの観念,さらには 原告による各種不動産情報の提供の役務という観念が生じる旨主張する。こ の主張は,取引の実情を考慮すると,本願商標から,上記の各観念が生じる と主張しているものと解される。 しかしながら,証拠(甲34〜39,41)によれば,原告が,原告キャ ラクターを利用した宣伝広告活動や営業活動を展開しており,原告キャラク ターやその愛称である「ホームズくん」がそれなりの知名度を有するに至っ ていることは認められるものの,他方で,参加人も,引用商標1やそれに類 似した標章,「ホームズ君」という名称等を利用して宣伝広告活動や営業活 動を行っており,相応の知名度を得るに至っていること(丙20〜323) 等の事情に照らしてみると,本願商標の指定役務に係る取引分野において, 「ホームズくん」といえば原告キャラクター,ひいては原告の営業を表すと\n取引者,需要者の誰もが理解するといえるほどの一般的,普遍的な観念が成 立するに至っているとまで認めることはできない。そして,単に,原告が「 ホームズくん」という愛称の原告キャラクターを利用しており,それが,一 定程度の知名度を有しているという程度のことであれば,それは,せいぜい 本願商標に係る個別的な事情であるにとどまり,取引の実情として考慮する ことが許される,指定商品・役務全般についての一般的・恒常的事情(最高 裁昭和47年(行ツ)第33号同49年4月25日第一小法廷判決・審決取消 訴訟判決集昭和49年443頁参照)には当たらない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
3 引用商標1の外観・観念・称呼について
(1) 引用商標1は,別紙審決書写しの別掲2のとおり,「ホームズ君」部分, 「耐震フォーラム」部分,引用図形部分から成る結合商標である。 ア 引用商標1は,外観上,「ホームズ君」部分,「耐震フォーラム」部分 及び引用図形部分の三つが分離されないような態様で構成されているもの\nではない。そして,「ホームズ君」部分及び「耐震フォーラム」部分と引 用図形部分とは,文字と図形との違いに加え,色彩においても大きく異な っており,外観上密接不可分な関係にないことは明らかである。他方,「 ホームズ君」部分と「耐震フォーラム」部分とは,色彩が青色で統一され ており,字体も共通するようにみられるものの,改行により二列になって いて一体性に乏しい上,前者は文字が青であるのに対し,後者は,青の背 景に白抜きで文字が表されている点でも異なり,更に文字の大きさも異な\nるため,やはり外観上密接不可分な関係にあるとはいい難い。 また,「ホームズ君」部分,「耐震フォーラム」部分,引用図形部分の 三者が,称呼,観念において密接不可分の関係性を有していると認めるだ けの根拠を見出すこともできない(なお,後のイで述べるとおり,「ホー ムズ君」部分と引用図形部分には,観念において一定の関係があると理解 することも可能であるが,そうであるとしても,「ホームズ君」部分を要\n部として抽出し得るという結論に変わりがないことは,後に述べるとおり である。)。 したがって,引用商標1は,各構成部分を分離して観察することが,取\n引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないか ら,各部分を分離して観察することも許されるものというべきである。
イ そして,「ホームズ君」の文字は,それ自体としてみれば,商品・役務 の出所識別標識としての機能を十\分に果たし得るものであるといえること, 「ホームズ君」部分は,引用商標1の他の部分に比べると小さいとはいえ, 十分に認識可能\な形で記載されており,出所識別標識としての機能を果た\nし得ないほどに他の部分に埋没してしまっているとはいえないこと等の事 情に照らしてみると,「ホームズ君」部分を,引用商標1の要部として抽 出することは十分に可能\であるということができる。 他方「耐震フォーラム」部分を構成する「耐震」及び「フォーラム」は\nいずれも普通名詞であって(乙7・8(大辞林第三版)),これらを結合 した「耐震フォーラム」の語は,建築物等の耐震性に関する講演会・討論 会を指称するためしばしば使用されていること(乙9〜19(各種の専門 新聞・一般日刊新聞))に照らすと,引用商標1が例えば「不動産に関す るセミナーの企画・運営」に用いられた場合には,「耐震フォーラム」部 分は,「建物の耐震性に関する講演会・討論会」程度の意味合いを認識さ せるにすぎず,出所識別標識としての称呼・観念を生じさせるとはいえな い。
また,引用図形部分は,全体としてみると,探偵風の装束をした人物が 家を観察している場面を描いたものと受け取れ,横にある「ホームズ君」 部分を併せ見ることにより,家を観察する名探偵ホームズといった観念を 生ずる余地があるが,仮にそうであるとしても,それは,「ホームズ君」 のイメージを視覚的に描き出したものであって,「ホームズ君」部分を補 完するものにすぎないと理解すべきであるから,独立して出所識別機能を\n果たすとまで見ることはできない。 以上によれば,本件においては,引用商標1から抽出した「ホームズ君 」部分と本願商標との比較によって類否を判断すべきである。

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令和2(行ケ)10104  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年2月22日  知的財産高等裁判所

 商標「旬/JAPAN SHUN」について、先行商標「市場365/旬/SYUN RAKU ZEN」と類似するかが争われました。審決、知財高裁とも、分離解釈可能として類似すると判断しました。\n

 商標の類否は,対比される商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された 場合に,その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否か によって決すべきであるが,それには,使用された商標がその外観,観念,称 呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべ く,しかも,その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り,その 具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行 ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁, 最高裁平成6年(オ)第1102号同9年3月11日第三小法廷判決・民集5 1巻3号1055頁参照)。
また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構\成部 分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分 的に結合していると認められる場合においては,その構成部分の一部を抽出し,\nこの部分だけを他人の商標と比較して類否を判断することは,原則として許さ れないが,その場合であっても,商標の構成部分の一部が取引者又は需要者に\n対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合や, それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じない場合などには, 商標の構成部分の一部だけを取り出して,他人の商標と比較し,その類否を判\n断することが許されるものと解される(最高裁昭和37年(オ)第953号同 38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成 3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5 009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷 判決・裁判集民事228号561頁参照)。 以下,上記の判断枠組みに沿って,本願商標及び引用商標の類否について検 討する。
2 原告の主張1(分離観察の可否)について
(1) 本願商標について
ア 商標の構成\n
(ア) 本願商標は,黒色の長方形図形を背景として,左側から順に,本願 漢字部分及び本願欧文字部分が配置された結合商標であり,両部分は, ほぼ同じ高さで横一列に,重なり合うことなく配置されている。
(イ) 本願漢字部分は,「旬」の漢字1文字からなる。この文字は,赤色の 毛筆体で描かれており,本願欧文字部分の各文字の4倍程度の大きさで ある。また,本願漢字部分は,やや図案化されているものの,その程度 は低いといえる。
(ウ) 本願欧文字部分は,同じ幅で上下2段に配置された「JAPAN」 及び「SHuN」の欧文字からなり,これらの文字は,いずれも白色の 毛筆体で描かれている。また,本願欧文字部分は,本願商標のうち2分 の1程度の幅を占めている。
イ 分離観察の可否
(ア) 本願漢字部分は,漢字1文字が赤色で大きく描かれているのに対し, 本願欧文字部分は,上下2段に配置された複数の欧文字が白色で描かれ ており,両部分の文字の大きさや色彩,文字種,構成等は,明らかに異\nなるといえる。また,本願漢字部分及び本願欧文字部分は,ほぼ同じ高 さで横一列に配置されてはいるものの,重なり合うことなく配置されて いる。そうすると,本願漢字部分及び本願欧文字部分は,それぞれが独 立したものであるとの印象を与え,視覚上分離して認識されるものとい える。 また,本願欧文字部分は,本願商標のうち2分の1程度の幅を占めて おり,看者の目を引きやすいとはいえるものの,他方で,本願漢字部分 は,その色彩や大きさからすれば,相応に目立つ態様で表示されている\nといえるから,本願商標に接した者は,本願欧文字部分のみならず,本 願漢字部分にも注意を引かれるものといえる。なお,黒色の背景部分は, 視覚上,特段の印象を与えるようなものではない。
(イ) また,本願漢字部分は,平易な漢字である「旬」の文字を表したも\nのであるから,同部分からは,「シュン」との称呼が生じるとともに,日 常用語として「魚介・野菜・果物などがよくとれて味の最もよい時」等 (乙2)を意味する「旬」の観念が生じるものといえる。 他方で,本願欧文字部分は,上下2段に配置された「JAPAN」及 び「SHuN」の欧文字からなるものであるところ,平易な英語である 「JAPAN」の文字からは,「ジャパン」との称呼が生じるとともに, 「日本」の観念が生じるが,「SHuN」の文字は,外国語の成語である とは認められず,特定の意味合いを表す語であるとも認められないから,\n同文字からは,いわゆるローマ字読みによって「シュン」との称呼が生 じ得るとはいえるものの,特定の観念は生じないというべきである。そ うすると,本願欧文字部分からは,特定の観念が生じるものではないと いうべきである。
以上のとおり,本願漢字部分は,本願欧文字部分との間において,「S HuN」の文字部分と称呼が共通し得るのみであり,これ以外の部分と は,称呼の面からみても,観念の面からみても,共通するところはない から,本願漢字部分及び本願欧文字部分は,統一性のある称呼又は観念 によって結び付けられているものではないというべきである。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)で検討したところによれば,本願漢字部分及び本 願欧文字部分は,それぞれが独立したものであるとの印象を与え,視覚 上分離して認識されるものといえる上,称呼又は観念上の関連性がある ものとはいえない。 そうすると,本願漢字部分及び本願欧文字部分は,本願漢字部分のみ を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的 に結合しているものとは認められない。そして,前記のとおり,本願漢 字部分は,相応に目立つ態様で表示されているといえることからすれば,\n本件においては,本願商標から本願漢字部分を抽出し,同部分のみを他 人の商標と比較して類否を判断することが許されるというべきである。

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平成30(ワ)11672  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年1月12日  大阪地方裁判所

 被告標章「リシュ活」が商標「Re 就活」の侵害となるかが争われました。大阪地裁(21部)は、称呼から類似すると判断しました。ドメインの差止も認められました。

 前記のとおり,本件商標は,欧文字2文字と漢字2文字からなっており, カタカナ3文字と漢字1文字からなる被告標章1とは,語尾の「活」の一文字のみ が共通しているに過ぎず,欧文字とカタカナから受ける印象も相応に異なるから, 外観は同一ではなく,類似するものとも認め難い。 また,被告標章1からは特定の観念を生じないため,観念の点において,両者が 同一又は類似ということはできない。 しかしながら,称呼においては,両者は長音の有無が異なるに過ぎず,長音は他 の明確な発音と比べて比較的印象に残りにくいことから,離隔的に観察した場合, 同一のものと誤認しやすく,極めて類似しているといえる。被告は,アクセントが 異なると主張するが,本件商標も被告標章1も造語であるため,固定したアクセン トがあるわけではなく,時と場所を異にしてもアクセントの違いで区別できるほ ど,印象が異なるものとは認め難い。
(イ) 取引の実情を踏まえて検討するに,需要者である求人企業においては,前 記認定のとおり,本件商標に係る役務についても,被告役務についても,役務利用 に当たっては文書による申込みを要し,役務のプランを選択し,相応の料金を支払\nうものであり,新規に正社員を採用するという企業にとって日常の営業活動とは異 なる重要な活動の一環として行われる取引であるから,求人に係る媒体の事業者が 多数ある中で(乙17,33),どの程度の経費を投じていかなる媒体でいかなる 広告や勧誘を行うかは,各事業者の役務内容等を考慮して慎重に検討するものと考 えられ,外観や観念が類似しない本件商標と被告標章1について,需要者である求 人企業が,称呼の類似性により誤認混同するおそれがあるとは認め難い。 しかしながら,求職者についてみると,前記認定のとおり,本件商標に係る役務 も被告役務も,利用のための会員登録は簡易であり,無料で利用できる上,証拠 (乙13,18ないし27,34。各枝番を含む。)によれば,多数の他の求人情 報ウェブサイトでも会員登録無料をうたっており,気軽に利用できるように簡単に 会員登録ができることを宣伝しているところ,情報を得て就職先の選択肢を広げる 意味で複数のサイトに会員登録する動機がある一方で,複数のサイトに会員登録す ることに何らの制約もなく,現実に多数の大学生が複数の就職情報サイトに登録し ていることが認められる。そうすると,求職者については,必ずしも役務内容を事 前に精査して比較検討するのではなく,会員登録が無料で簡易であるため,役務の 名称を見てとりあえず会員登録してみることがあるものと考えられる。 そして,本件商標も被告標章1も短く平易な文字列であり,発音も容易であるこ と,本件商標に係る役務や被告役務はインターネット上で提供されているところ, インターネット上のウェブサイトやアプリケーションにアクセスする方法として は,検索エンジン等を利用した文字列による検索が一般的であり,正確な表記では\nなく,称呼に基づくひらがなやカタカナでの検索も一般に行われており,ウェブサ イトや検索エンジン側においてもあいまいな表記による検索にも対応できるように\nしていることが広く知られていることからすれば,需要者である求職者は,外観よ りも称呼をより強く記憶し,称呼によって役務の利用に至ることが多いものという べきである。
そうすると,求職者が需要者に含まれるという取引の実情にかんがみれば,需要 者に与える印象や記憶においては,本件商標と被告標章1とでは,前記外観の差異 よりも,称呼の類似性の影響が大きく,被告標章1は特定の観念を生じず,観念の 点から称呼の類似性の影響を覆すほどの印象を受けるものではないから,前述のと おり必ずしも事前に精査の上会員登録するわけではない学生等の求職者において, 被告標章1を本件商標に係る役務の名称と誤認混同したり,本件商標に係る役務と 被告役務とが,同一の主体により提供されるものと誤信するおそれがあると認めら れる。
(ウ) 被告は,ウェブサイトでの役務の提供においては,役務主体の識別はウェ ブサイトの上部等の目立つところに付されたロゴにより行われるのが通常であると 主張するが,前記のとおり,インターネット上においても,文字列で構成された商\n標については,称呼で記憶してアクセスすることが多いのであり,称呼の重要性が 低いものとはいえない。また,被告は,求職者がサービス内容を確認して会員規約 に同意し,所定の情報を入力して会員登録するまでの過程で多くの画面に接するこ とにより視覚で役務の内容や運営主体を理解すると主張するが,証拠(乙3,36 の1,2)によれば,被告は,ウェブサイト上で,被告役務につき「まずは会員登 録してください。メールアドレスと属性の登録のみで約1分で完了します。」など と記載し,会員登録フォームのページには被告役務の内容を説明する特段の記載は なく,メールアドレスや学校名等の登録のみで会員登録が完了し,会員規約はスク ロールしなければ内容を確認できないものであることが認められる。他方,被告役 務の会員登録に当たって,学生に役務の内容や運営主体を理解させ,本件商標に係 る役務との誤認混同を生じさせないようにする識別表示については,存するとは認\nめられない。

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令和2(行ケ)10101  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年1月19日  知的財産高等裁判所

 商標「庵治石工衆」は,地域団体商標「庵治石」と出所混同する(15号)とした審決が維持されました。

 前記1に認定した事実によると,「庵治石」との文字は,「香川県高松市 庵治町・牟礼町産の花崗岩」を意味するものであり,これを用いた石材又は この石材を加工した石製品は,「庵治石(あじいし)」と呼ばれ,古くから 我が国において品質の高い石製品として広く知られており,香川県の伝統工 芸品となっていることが認められる。 一方,引用商標権者及びその構成員を含む高松市庵治町及び牟礼町内の採\n掘業者や石材業者らは,昭和20年から40年代にかけて組合を結成し,昭 和45年(1970)からは毎年,庵治石を用いた石製品の展示即売会を行 ってきており,平成19年3月9日には,地域団体商標として引用商標の設 定登録を受け,庵治石を用いた石製品に「庵治石(R)登録証」や「庵治石(R)プ レート」を発行したり,「庵治石(R)」のシールを付したりして,ブランドの 維持に努め,さらに,庵治石の知名度向上や庵治石を用いた石製品の販路拡 大等を目的とした様々な展示会やイベントを開催し,引用商標の普及活動の ための各種事業を長年継続して現在まで実施しているところ,その模様が相 当数の来場者や新聞,雑誌等への記事掲載を通じて,相応の程度に広告され ている。加えて,引用商標は,地域団体商標の登録を受けていることから, 経済産業省特許庁が年1回発行する冊子及び同庁のホームページに毎回掲載 され,地域団体商標の普及事業において紹介されている。 これらの事情を考慮すると,引用商標は,本願商標の登録出願時及び本件 審判時において,「香川県高松市庵治町・牟礼町で採掘され加工された製品 に係る引用商標権者の伝統的工芸品ないし地域ブランド」との引用商標権者 又はその構成員の業務を示すものとして,需要者の間に広く認識されており,\n相当程度高い周知性を有していたものと認めるのが相当である。
(2) 原告の主張について
原告は,「庵治石」の文字は「香川県庵治町産の石」及び「香川県庵治町 産の石を加工して製作された石塔・墓石等」を表示するものとして我が国に\nおいて広く知られていたものであり,全体として石材の一種を示す普通名称 であって石材関連の商品及び役務との関係において自他商品役務識別機能及\nび出所表示機能\を有しない語であり,そうであれば,「庵治石」を標準文字 で表してなる引用商標が引用商標権者の業務を想起させるものとして周知性\nを有することはない旨を主張する。 しかしながら,「庵治石」の文字が「香川県高松市庵治町・牟礼町産の花 崗岩」を意味すると認められることは,前記のとおりであり,原告も自認し ているところ,「庵治石」がその本来の産地以外の産地から産出される同種 同等の石材の呼称にも用いられるなど,石材の種類を示す普通名称になった ことを示す証拠はなく,また,庵治地方以外の業者が「庵治石」を産地を示 すためではなく自己の商標として使用していたことを認めるに足りる証拠も ない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
3 出所の混同のおそれに係る判断の誤りの存否について
(1) 検討
前記2(1)のとおり,「庵治石」の文字は,「香川県高松市庵治町・牟礼町 産の花崗岩」を意味するが,同時に,広く知られた「香川県高松市庵治町・ 牟礼町で採掘され加工された製品に係る引用商標権者の伝統的工芸品ないし 地域ブランド」をも意味し,その文字部分のみで特定の意味合いを有するよ く知られた語であるから,本願商標の「庵治石工衆」は,「庵治石」の文字 部分と「工衆」の文字部分とを分離して観察することが取引上不自然である と思われるほど両者が不可分的に結合しているものとはいい難いといえる。 そして,本願商標の構成から「庵治石」の文字を除いた「工衆」の文字部分\nは,辞書等に載録された成語ではなく,「ものを作ることを職とする人々」 程の意味合いを連想させるにとどまるから,本願商標の指定役務との関係で は出所識別標識としての機能は必ずしも強くなく,本願商標の構\成中の「庵 治石」の文字部分が出所識別標識を果たし得る要部として看取されるという べきである。
本願商標の要部である「庵治石」の文字部分と引用商標とを対比すると, いずれも標準文字で「庵治石」の文字を書してなる点で外観が同一であり, また,「アジイシ」の称呼が生じる点で,称呼が同一である。そして,本願 商標をその指定役務に使用した場合は,本願商標の要部から「香川県高松市 庵治町・牟礼町産の花崗岩」という観念だけでなく,「香川県高松市庵治町・ 牟礼町で採掘され加工された製品に係る引用商標権者の伝統的工芸品ないし 地域ブランド」という観念も生じるものであり,本願商標の観念は,引用商 標から生じる観念と同一である。そうすると,本願商標と引用商標の類似性 は極めて高いというべきである。
また,本願商標の指定役務は,その加工又は情報提供の対象物を,引用商 標の指定商品を含む墓用石材や墓石等とするものであるから,本願商標の指 定役務と引用商標の指定商品とは,密接な関連性を有するとともに,取引 者,需要者も相当程度で共通にするものといえる。そして,本願商標の指定 役務の需要者に含まれる一般需要者は,必ずしも石材等について専門的な知 識や経験を有するものではない者も含まれており,高度の注意力をもって役 務の提供を受けるとは限らない。
以上を考慮すると,本願商標をその指定役務に使用した場合には,これに 接する取引者,需要者は,出所識別標識としての機能を果たし得る要部であ\nる「庵治石」の文字部分に着目して,地域ブランド名として周知である引用 商標を連想,想起し,当該役務が引用商標権者又はその構成員との間に緊密\nな営業上の関係又は同一の表示による商品役務化事業を営むグループに属す\nる関係にある営業主の業務に係る役務であると誤信し,役務の出所につき誤 認を生じさせるおそれがあるものというべきである。 そうすると,本願商標は,他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずる おそれがある商標であるから,商標法4条1項15号に該当する。
(2)原告の主張について
原告は,1)取引者,需要者は,本願商標を「庵治石」の産地である庵治地 域を表す「庵治」と「石工」及び「衆」からなるものであると認識し,取引\n者,需要者に対して「香川県庵治地域において,石を切り出したり,それを 細工したりする職人の集団」ほどの観念を想起させ「アジイシクシュウ」又 は「アジセッコウシュウ」の称呼を生じさせるから,引用商標と混同のおそ れはない,2)仮に,取引者,需要者が本願商標を「庵治石」と「工衆」とか らなる商標であると認識するとしても,「庵治石」の文字には自他商品役務 識別機能及び出所表\示機能がないから,本願商標は,引用商標と識別力のな\nい部分で共通するにすぎず,引用商標権者の業務と何らかの関係性があると 認識させるものでない旨主張する。 しかしながら,上記1)の主張については,本願商標を「庵治」と「石工」 及び「衆」からなるものであると認識するのが通常であるとはいい難く,ま た,仮に,そのような認識が生じるとしても,それと並んで,庵治石を要部 とした前記(1)記載の観念が生じることは明らかであるし,上記2)の主張の 前提が成り立たないことは,前記(1)に認定判断したとおりであるから,原 告の上記主張は,採用することができない。

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平成30(ワ)35053  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和2年10月22日  東京地方裁判所

 真性商品の並行輸入かが争われました。商標「2UNDR」(標準文字)です。

(3)事実認定の補足説明
原告らは,被告らがMゴルフ社から本件商品を購入した当時,本件代理店契 約は解除されていてMゴルフ社は2UNDR商品の販売代理店ではなかった と主張するのに対し,被告らはそのような事実はないと主張する。
 上記(2)イ(ウ)のとおり,原告ハリス及びランピョン社の代表者は平成28年5\n月上旬にMゴルフ社に本件代理店契約を解除する旨のメールを送信した。そし て同ウのとおり,同月6日を最後に,各国の販売代理店に送信されていた原告 ハリスの商品に関する一斉送信メールがMゴルフ社に送信されなくなってお り,その後,令和元年5月3日まで両社の間で連絡が取られた形跡がないこと に照らせば,本件代理店契約は平成28年5月上旬に解除され,被告ブライト がMゴルフ社から初めて本件商品を購入した同月27日には,本件代理店契約 は解除されていたと認めるのが相当である(上記(2)イ(ウ)) 。
(4) 本件輸入行為の違法性について
ア 商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品につ き,その登録商標と同一又は類似の商標を付したものを輸入する行為は,許 諾を受けない限り,商標権を侵害する。しかし,そのような商品の輸入であ っても,1)当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾 を受けた者により適法に付されたものであり(以下「第1要件」という。), 2)当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は 法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより, 当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって(以下\n「第2要件」という。),3)我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商 品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該商品と我が国の商標権者 が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的 に差異がないと評価される場合(以下「第3要件」という。)には,いわゆる 真正商品の並行輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠く(最高 裁平成14年(受)第1100号同15年2月27日第一小法廷判決・民集 57巻2号125頁)。
イ 本件商品は,ランピョン社から2UNDR商品の販売代理店であったMゴ ルフ社に販売されたものであった。 上記(2)イ、ウによれば、本件代理店契約 において,代理店契約の解除後の販売代理店における販売や在庫の処分等に ついての定めはなく,また,本件代理店契約の解除後,ランピョン社又は原 告ハリスがMゴルフ社に対して在庫の処分等について指示をしたことはな かった。他方,各国の販売代理店に対して同じ2UNDR商品のカタログや 注文のための商品のリストが送付されていたこと(同ウ)から,我が国で販 売される2UNDR商品が他国で販売される2UNDR商品と比べて格別 の品質等を有していたとは認められず,2UNDR商品の販売代理店の販売 地域の制限が,販売政策上の合意を超えて,2UNDR商品の品質の維持や 管理等と関係することをうかがわせる事情は見当たらない。また,本件商品 は箱型のパッケージに包装された男性用下着であり,通常は流通の過程でパ ッケージ内の商品自体の品質が劣化するものではなく,また,本件で,流通 の過程で商品の品質を変化させるおそれが存在したことを認めるに足りる 証拠はない。 そして前提事実(1)、上記(2)イ(ア)および弁論の全趣旨によれば、ランピョン 社と原告ハリスとは実質的には一体であるともいえる。
ウ 第1要件について
本件標章が付されていた本件商品は,ランピョン社が代理店契約に基づい てMゴルフ社に販売したものであった。 本件商品を被告ブライトがMゴルフ社から購入したのは,上記(2)、(3)のと おり本件代理店契約の解除後であるが,ランピョン社がMゴルフ社に販売し た2UNDR商品に対する上記イのとおりのランピョン社の管理内容等に 照らし,このことによって,原告商標の出所表示機能\が害されることになる とはいえない。また,本件代理店契約では,Mゴルフ社の販売地域はシンガ ポールに限定されていたが,上記イのとおり,そもそも我が国で販売される 2UNDR商品が他国で販売される2UNDR商品と比べて格別の品質等 を有していたとは認められず,販売地域の制限が本件商品の品質の維持や管 理等と関係していたとも認められないから,Mゴルフ社の販売地域が限定さ れていたことによって原告商標の出所表示機能\が害されることになるとは いえない。 これらによれば,本件商品に付された本件標章は,外国における商標権者 である原告ハリスから使用許諾を受けたランピョン社又はランピョン社と 実質的には一体ともいえる原告ハリスによって,適法に付されたものである ということが相当である。 したがって,本件輸入行為は第1要件を具備するものと認められる。
エ 第2要件について
前提事実(1)のとおり、原告商標についてのカナダなどの海外における商標権者と日本における商標権者はいずれも原告ハリスであり,本件標章は原告 商標と同一又は類似のものであるから(上記1),それらは同一の出所を表\n示するものであるといえる。 したがって,本件輸入行為は第2要件を具備するものと認められる。
オ 第3要件について
本件標章が付された本件商品は,本件代理店契約に基づきランピョン社に よってMゴルフ社に販売されたものである。そして,ランピョン社と原告ハ リスは実質的には一体ともいえた。 本件商品が被告ブライトによりMゴルフ社から購入されたのは,本件代理 店契約の解除後であるが,ランピョン社がMゴルフ社に販売した2UNDR 商品に対する上記イのとおりのランピョン社の管理内容等に照らし,このこ とによって,原告商標の品質保証機能が害されることになるとはいえない。\nまた,本件代理店契約では,Mゴルフ社の販売地域はシンガポールに限定さ れていたが,上記イのとおり,そもそも我が国で販売される2UNDR商品 が他国で販売される2UNDR商品と比べて格別の品質等を有していたと は認められないこと,Mゴルフ社の販売地域の制限が本件商品の品質の維持 や管理等と関係するとも認められないこと,本件商品が運送中に品質が直ち に劣化するものではない男性用下着であることなどから,そのことによって 原告商標の品質保証機能が害されることになるとはいえない。\nこれらによれば,我が国の商標権者である原告ハリスは,直接的に又は少 なくともランピョン社を通じて本件商品の品質管理を行い得る立場にあっ て,本件商品と2UNDR商品の日本における販売代理店が販売する商品と は登録商標の保証する品質において実質的に差異がないといえる。 したがって,本件輸入行為は,第3要件を具備するものと認められる。
カ 原告らは,被告ブライトが本件商品を購入したのが本件代理店契約の解除 後であること,本件代理店契約には販売地をシンガポールとする販売地制限 条項があることを挙げて,本件輸入行為が違法性を欠くことにはならない旨 主張するが,上記ウ,オに照らし理由がない。 また,原告らは,被告ブライトの広告に「訳あり/パッケージ汚れ」など という表示があり,本件商品の包装が汚れており,シールをはがしたような\n跡があり,本件商品は原告アイインザスカイが販売する2UNDR商品に比 して著しく安価であることから,本件輸入行為は原告商標や本件標章の出所 表示機能\及び品質保証機能を害すると主張する。しかし,本件商品の需要者\nは,本件標章が付されることによる通常期待される品質を前提として,安価 になっているのは上記事情によるものであると認識すると考えられ,上記事 情によって原告商標の出所表示機能\や品質保証機能が害されるとはいえず,\n上記主張は採用できない。
さらに,原告らは,Mゴルフ社は本件代理店契約の解除により正規の販売 代理店ではなくなったため,本件商品は欠陥等があっても原告ハリスから保 証を受けられないから,原告商標の出所表示機能\や品質保証機能が害される\nと主張する。しかし,商標権者から保証を受けられるか否かが並行輸入の場 面における商標の出所表示機能\や品質保証機能に直ちに影響するとはいえ\nないし,本件において,特定の商品について欠陥等の保証をすることについ て原告ハリスが日本国内で独自の信用を構築していたと認めるに足りる証\n拠もない。原告ら主張の事情によって原告商標の出所表示機能\や品質保証機 能が害されるとはいえず,原告らの主張は採用できない。\n
キ 小括
以上によれば,被告ブライトの本件輸入行為は,いわゆる真正商品の並行 輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠く適法なものであると認 められる。

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令和2(行ケ)10021  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和2年10月8日  知的財産高等裁判所

 翻訳支援ツール及び翻訳ソフトが類似商品かが争われました。知財高裁は、類似商品であるとした審決を維持しました。

ウ そして,本願指定商品である翻訳支援ツールも,コンピュータプログラ ムである以上,引用指定商品である「電子計算機用プログラム」に含まれ るから(原告は,この点を争っているようであるが,引用指定商品の「電 子計算機用プログラム」は,特に限定がない以上,コンピュータプログラ ム一般を含むものと解される。そして,翻訳支援ツールも,用途がやや特 殊であるとはいえ,コンピュータを動作させて一定の作業を行うためのプ ログラムである以上,コンピュータプログラムにほかならないのであるか ら,引用指定商品に含まれることを否定することはできない。),本願指定 商品と引用指定商品とは同一であるということになる。 したがって,原告の主張は,既にこの点において失当というべきである が,当事者双方が,本願指定商品である翻訳支援ツールと引用指定商品で ある翻訳ソフトとが類似するかどうかについて争っていることにかんが\nみ,念のため,この点についても判断することとする。
(2) 生産部門及び販売部門について
ア 上記(1)アによれば,翻訳支援ツールは,主に翻訳事業者又は翻訳者が使 用することが想定されている商品であるといえるところ,実際の取引例を みても,翻訳事業者が生産,販売をしている例が多く見受けられる(乙2, 3,7,14)。
イ また,翻訳ソフトは,自動翻訳をすることを主な機能\とするコンピュー タソフトウェアであること(乙6)からすれば,翻訳事業者又は翻訳者の\nみならず,他の事業者や一般の消費者も使用することが想定されている商 品であるといえるところ,実際の取引例をみても,翻訳事業者ではない一 般のソフトウェアメーカーが生産している例や,当該ソ\フトウェアメーカ ー又は家電量販店が販売している例が多く見受けられる(乙8ないし10, 15,16)。
ウ そうすると,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトは,生産部門及び販売部門\nが異なることが多いものといえる。 しかしながら,他方で,上記ア及びイで挙げた取引例とは異なり,一般 のソフトウェアメーカーが翻訳支援ツールを生産,販売している例や,翻\n訳事業者が翻訳ソフトを生産,販売している例も見受けられる(乙11な\nいし13)。また,翻訳支援ツールと類似した機能を含む翻訳ソ\フトが,家 電量販店又はそのウェブサイトにおいて販売されている例も見受けられ る(乙13,15,16)。 これらの事情を考慮すると,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトの生産部門\n及び販売部門は,必ずしも明確に区別されるものではないというべきであ る。
エ 以上によれば,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトは,生産部門及び販売部\n門を共通にする場合があるといえる。
(3) 用途及び機能について\n
ア 上記(1)及び(2)によれば,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトは,翻訳者に\nよる翻訳作業を効率化等するためのものであるか,それとも自動翻訳をす るものであるかという点で,主たる用途や機能が異なるものといえる。\n
イ しかしながら,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトは,いずれも翻訳作業を\n行うことを目的とし,コンピュータを動作させるためのプログラムである という点においては,用途及び機能を共通にするものといえる。また,翻\n訳支援ツールは,その多くが自動翻訳の機能も有していると認められ(乙\n7,11),他方で,翻訳ソフトには,翻訳支援ツールと類似した機能\や翻 訳支援ツールと連携する機能を含むものがあると認められる(乙8,13)。\nこれらの事情を考慮すると,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトの用途や機\n能を厳密に区別するのは困難であるというべきである。\n
ウ 以上によれば,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトの用途及び機能\には,共 通する部分があるといえる。
(4) 需要者について
ア 上記(1)アによれば,翻訳支援ツールは,主に翻訳事業者又は翻訳者が使 用することが想定されている商品であるといえるから,その主な需要者は, 翻訳事業者又は翻訳者であるといえる。
イ また,上記(2)イのとおり,翻訳ソフトは,自動翻訳をすることを主な機\n能とするコンピュータソ\フトウェアであることからすれば,翻訳事業者又 は翻訳者のみならず,他の事業者や一般の消費者も使用することが想定さ れている商品であるといえるから,その主な需要者には,広く一般の事業 者及び消費者が含まれるものといえる。
ウ そうすると,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトは,主な需要者が異なるこ\nとが多いものといえる。 しかしながら,上記(2)及び(3)で検討したとおり,翻訳支援ツール及び 翻訳ソフトは生産部門及び販売部門を共通にする場合があり,また,用途\n及び機能に共通する部分があるといえることからすれば,翻訳事業者又は\n翻訳者ではない一般の事業者又は消費者が翻訳支援ツールを購入するこ ともあり得るし,これとは逆に翻訳事業者又は翻訳者が翻訳ソフトを購入\nすることもあり得るといえる。そうすると,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトの需要者については,上記の範囲で共通することがあるというべきである。\n
エ 以上によれば,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトは,需要者の範囲が一致\nすることがあるといえる。
(5) 小括
ア 上記(2)ないし(4)で検討したとおり,翻訳支援ツール及び翻訳ソフトは,\n生産部門及び販売部門を共通にする場合があるといえること,用途及び機 能に共通する部分があるといえること,需要者の範囲が一致することがあ\nるといえることからすれば,両者に同一又は類似の商標が使用された場合 には,同一の営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認されるおそれ があるというべきである。
イ したがって,翻訳支援ツールである本願指定商品と翻訳ソフトを含む引\n用指定商品は,商標法4条1項11号にいう「類似する商品」に当たるも のと認められる。
(6) 原告の主張について
ア 原告は,翻訳支援ツールである本願指定商品は汎用性のある「電子計算 機用プログラム」ではなく,翻訳ソフトとは根本的に異なるものである旨\n主張する。
イ しかしながら,これまで検討したところに照らすと,翻訳支援ツールが, 自動翻訳を主な機能とするものではなく,翻訳者による翻訳作業を支援す\nるためのものであり,主に翻訳事業者又は翻訳者が使用することが想定さ れている商品であるからといって,直ちに翻訳ソフトとの類似性が否定さ\nれるものではないというべきである。

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令和1(行ケ)10170  審決取消請求  商標権  行政訴訟 令和2年9月16日  知的財産高等裁判所

 商標法4条1項11号、同15号違反の無効理由無しと判断されました。無効審判請求人(原告)はスターバックスコーヒーです。緑のドーナッツ状の中央に図形が周辺に文字があるという構成(緑色円環配置構\成)について、混同すると主張しましたが、知財高裁も特許庁と同様に混同しないと判断しました。判決文の最後に両者の商標があります。

 しかるところ,1)引用商標の構成中の本件円環部分と本件図形部分と\nは分離観察し得るものであること,2)本件円環部分のうち,緑色の太い 帯状の円環内に白抜きで表された「STARBUCKS」及び「COF\nFEE」の文字部分全体から「スターバックスコーヒー」の称呼が生じ, また,本件円環部分は外側の緑色の細い円環と内側の白色の細い円環と によって全体の領域が明確に画されており,本件円環部分の外観は全体 として記憶に残りやすいものと認められることからすると,引用商標の 構成中の本件円環部分は全体として需要者に対して強い印象を与えるも\nのといえる。
しかしながら,他方で,原告が主張する引用商標における本件緑色円 環配置構成は,引用商標中の具体的な構\成部分そのものではなく,本件 円環部分から抽出した上位概念化した要素としての構成及び配置の態様\nをいうものであり,緑色の帯状の円環内における白抜きの文字が「ST ARBUCKS」及び「COFFEE」の文字とは異なる文字である場 合や白抜きの図形が星印以外の図形であっても,本件緑色円環配置構成\nに含まれることになるが,引用商標に接した需要者において,このよう な上位概念化した要素としての構成及び配置の態様をイメージし,それ\nが記憶に残るものと認めることは困難である。
(イ) そうすると,引用商標が平成23年3月末当時に著名であったから といってそのことから直ちに引用商標における本件緑色円環配置構成が\n原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く\n認識されていたものと認めることはできない。ましてや,上記時点から約4年後の本件商標の登録出願時(登録出願 日平成28年3月9日)及び登録査定時(登録査定日同年11月1日) において,本件緑色円環配置構成が原告の業務に係る商品及び役務を表\ 示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることは できない。
ウ 本件アンケート調査について
(ア) 原告は,1)本件アンケート調査の調査対象者の抽出方法が適切であ ること,2)本件アンケート調査は,週末の2日間にインターネットを通 じて行われたものであり,調査期間は特段短いものではないこと,3)本 件アンケート調査における552名というサンプル数は,アンケート調 査の信頼性を確保するのに合理的であること,4)仮に緑色の二重円環を 示して調査を行ったとしても,そこから得られる結果は引用商標を含む 原告の商標を日常生活で目にする需要者の実際の認識を反映するもので はないから,本件緑色円環配置構成に関する需要者の認識を適切に測る\nためには,本件標章を対象に質問を行うべきであり,かつ上記注意事項 を示さなければならないから,本件アンケート調査の質問内容は適切で あること,5)本件アンケート調査は,本件商標の登録出願時及び登録査 定時から1年後の平成29年に実施されたものであり,本件アンケート 調査の結果は,上記各時点における需要者の認識を反映したものといえ ることからすると,本件アンケート調査は適切に実施されたものであり, 本件アンケート調査の結果は,上記各時点における本件緑色円環配置構\n成の周知著名性を示すものである旨主張する。
(イ) そこで検討するに,前記(1)イの認定事実によれば,本件アンケート 調査は,引用商標の「緑色の円環部分(ただし,文字・記号は判読不能\nに加工したもの)」である本件標章の著名性を検証することを目的とし て,調査対象者に対し,本件標章の画像について,「ある会社」,「外 食産業に属する会社」又は「あるコーヒーショップの会社」が運営する お店の設備やお店で販売する商品の図柄の一部を抜き出して加工したも のである旨,元々の図柄では,円の中心部に絵があり,緑色の輪の部分 には会社名が特定できる白い文字が表示されていたが,本件標章の画像\nでは,絵の部分を白く塗りつぶし,文字部分にはモザイク処理を施し, 会社名が読み取れないようにしてある旨の説明を付して示した上で,「こ の画像を見て,何と言う会社またはお店の名前を思い浮かべましたか。 以下の回答欄に思い浮かべた会社またはお店の名前をお書きください。 わからない場合は「わからない」とお書きください。」との質問に対す る回答を求めたものであることが認められる。
しかるところ,前記イ(ア)のとおり,原告が主張する引用商標におけ る本件緑色円環配置構成は,本件円環部分から抽出した上位概念化した\n要素としての構成及び配置の態様をいうものであるが,引用商標に接し\nた需要者において,このような上位概念化した要素としての構成及び配\n置の態様をイメージし,それが記憶に残るものと認めることは困難であ ることに照らすと,本件緑色円環配置構成の認識度ひいては著名性を適\n切に調査することは,その性質上困難を伴うものといえる。 そして,本件標章は,別紙3のとおり,外側から順に緑色の細い円環, 白色の細い円環,白色のモザイク模様が付された緑色の太い帯状の円環 から構成されるドーナツ形状の図形からなるものであり,本件標章と引\n用商標における本件円環部分は,緑色の細い円環,白色の細い円環,緑 色の太い帯状の円環を有するドーナツ形状である点では共通するが,緑 色の太い帯状の円環内の構成態様及び内側の白色の細い円環の有無の点\nにおいて異なる態様の標章であることに照らすと,本件標章から本件円 環部分を想起するものと認めることはできないし,ましてや,本件標章 から本件緑色円環配置構成を認識できるものと認めることはできない。\nこの点に関し,本件アンケート調査には,本件標章について,元々の図 柄では,円の中心部に絵があり,緑色の輪の部分には会社名が特定でき る白い文字が表示されていたが,本件標章の画像では,絵の部分を白く\n塗りつぶし,文字部分にはモザイク処理を施し,会社名が読み取れない ようにしてある旨の説明が付されているところ,上記説明は,本件標章 に接した需要者が視覚によって認識し,又は想起することができない内 容を文章によって誘導するものであって適切なものではない。 そうすると,本件アンケート調査は,本件緑色円環配置構成の認識度\nひいては著名性を調査することを目的とする調査方法として適切である と認めることはできないから,原告の前記主張は,理由がない。
エ まとめ
以上によれば,引用商標が,平成23年3月末当時において原告の業務 に係る商品及び役務を表示するものとして著名であり,引用商標の構\成中 の本件円環部分は全体として需要者に対して強い印象を与えるものであっ たことは認められるが,このことと本件アンケート調査の結果から,引用 商標における本件緑色円環配置構成が,本件商標の登録出願時及び登録査\n定時において,原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需\n要者の間に広く認識されており,周知著名であったものと認めることはで きない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。

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令和1(ワ)32646  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和2年3月25日  東京地方裁判所

 商標権侵害を理由に3402円の損害賠償が認められました。原告・被告とも代理人なしです。元々の請求額も12万円ほどですが、侵害の損害額としては約1万円です。ただ、原告商標は共有で1/3の持ち分としての計算で上記額となってます。

 指定商品の類似性の有無については,それらの商品が通常同一営業主に より製造又は販売されている等の事情により,それらの商品に同一又は類 似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認さ れるおそれがあると認められるか否かにより判断すべきと解される。
本件商標権の指定商品は,「モーターを組み込んだ小型模型,モーター を組み込んだ小型模型の部品及び付属品,ラジオコントロール式模型おも ちゃ,ラジオコントロール式模型の部品及び付属品,乗物模型おもちゃ」 であり,モーターそのものではないが,モーターと,これを動力として組 み込み動く小型模型は密接な関係があり,被告自身,モーターを組み込ん だ車の小型模型のキットである「Arduino用UCTRONICS IRスマートロボットカーキット」(甲20)をはじめとする商品を複数 販売していることが認められる(甲12〜19,21〜25)。そうする と,モーター及びこれを動力として組み込んで動く小型模型は,通常同一 営業主により製造又は販売されていると推認できる。 本件商品1,2,5〜7,9〜15は,いずれもマイクロサーボモータ ーであり,これと指定商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営 業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる から,本件商標権の指定商品と類似する。
・・・
原告は,原告のライセンス料に係る規定(甲30,31)に基づき,販売 等の数量の算定が困難な場合,あるいは,SG9系列の商品1個の販売につ き,250円又は侵害品の売価(税込単価)から250円を控除した金額の うち,いずれか多い金額で計算した場合の合計が11万2000円に満たな い場合の11万2000円の使用許諾料相当額を請求するものと解される。 しかし,原告が同規定に基づき実際にライセンスを行った実績があること を認めるに足りる証拠はないから,同規定に基づき使用料相当額を算定する ことは相当ではない。本件に係る諸般の事情を総合考慮すると,本件商標の使用料率は10%と するのが相当であるから,上記の10万2087円に10%を乗じた1万0 208円(小数点以下切り捨て)が,本件商標権の権利者が本件商標の使用 に対し受けるべき金銭の額に相当する価額と認められる。
(5) 上記第2の2請求原因(2)のとおり,本件商標権は,原告及び外国法人2社 によって共有されていることが認められ,具体的な共有持分を認めるに足り る証拠はないから,それぞれの持分は3分の1と推定される(民法250条)。 原告は,日本国内における原告商標の管理,使用許諾等のライセンスは専 ら原告が行っていると主張するが,それを認めるに足りる証拠はない。 上記(4)の損害賠償請求権は,可分債権であるから,原告に帰属する損害賠 償請求権は,1万0208円を三分した3402円(小数点以下切り捨て) と認められる。なお,本件商品1に係る損害額は2907円であり,その余 の商品に係る損害額は495円となる。

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平成29(ワ)15776  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成31年2月22日  東京地方裁判所

 スマートウォッチと時計は類似商品と判断されました。

そこで検討するに,本件においては,以下の事実を認めることができる。
(ア) 時計としての機能\nスマートウォッチ及び被告商品が時計としての機能を有することにつ\nいては,当事者間に争いがない。
(イ) 製造業者
いわゆるスマートウォッチと呼ばれる商品は,アップル社,韓国LG 電子,サムスンなどのIT企業に限らず,セイコーウォッチ,フォッシ ル,タグ・ホイヤー,シチズン,スカーゲン,フレデリック・コンスタ ント,カシオ計算機などの時計メーカーによっても製造,販売されてい る(甲30,43,47,52,乙173)。 そして,スマートウォッチ市場には,平成28年頃から時計メーカー の参入が続き(甲43〜46),平成28年9月21日付け東京読売新 聞(甲52)は,「時計メーカー 参入続々 スマートウォッチ IT 企業と差別化」との表題の下,「米アップルなどのIT企業だけでなく,\n腕時計メーカーが相次いで参入している」と報じている。
(ウ) 販売状況
a 小売店における商品の展示状況
平成29年7月から10月の時点において,ビックカメラ有楽町店 の3階健康家電売場にウェアラブルウォッチのコーナーが,6階に時 計売場がそれぞれ設けられているが,シチズン,カシオ,タグ・ホイ ヤー,フォッシルなどのブランドの商品が展示された6階時計売場の ショーケースでは,同ブランドのスマートウォッチとそれ以外の腕時 計が並べて陳列されている(甲53,109,乙19)。他方,同年 6月の時点において,被告店舗では,被告商品は8階の携帯電話用品 売場で販売され,腕時計は10階の腕時計売場で販売されていた(乙 2)。 原告及び被告の行った調査を総合すると,平成29年9月及び10 月の時点において,東京,神奈川,千葉,埼玉,大阪,京都に所在す る28の時計店のうち,スマートウォッチと通常の腕時計の両方を取 り扱っている店舗は17店であった(甲109,乙19。なお,タイ ムステーションNEOの堺鉄砲町店とトレッサ横浜店は同一店舗とし て計算している。)。
b ネットショッピングにおける商品の区分
平成29年7月の時点において,ビックカメラのインターネット通 販サイトでは,カシオのスマートウォッチが「国内メーカー腕時計(男 性向け)」のカテゴリーで,通常の腕時計とともに販売されている(甲 54)。また,アマゾンのウェブサイトにおいて,被告商品は「家電・ カメラ・AV機器」というカテゴリーで扱われている(なお,腕時計 は「Amazon Fashion」というカテゴリーで扱われてい る。)が,「moto 腕時計」で検索すると被告商品が表示される\n(甲11〜13,81〜88,乙21)。さらに,ヤフーショッピン グのウェブサイトでは,被告商品は「腕時計・アクセサリー」カテゴ リーの中の「スマートウォッチ」に分類され(甲89〜93),楽天 市場のウェブサイトには被告商品を「腕時計」と分類している店舗が ある(甲96)。上記の3つのウェブサイトには,被告商品を「スマ ートウォッチ 腕時計」と表示しているものがある(甲82,83,\n89〜95)。
(エ) 被告商品の説明,使途等
a 被告商品を製造したモトローラ・モビリティのウェブサイト(平成 28年当時)には,時計表示の被告商品の写真が掲載されるとともに,\n「あなたの時間を刻む時計を選ぶ」などと表記されている(甲7,1\n0,11)。
b モトローラ・モビリティが作成した被告商品のユーザーガイドの表\n紙には時計表示がされた被告商品の写真が掲載されるとともに,その\n「概要」ページには,被告商品を「新型の時計Moto360(第2世 代)」と紹介した上で,その初期画面が時計表示であることが説明さ\nれ,さらに,「卓上時計としても使えます」,「お客様の時計は」,「時 計にどのような機能があるのか探索してみてください」,「1台の時\n計にさまざまな表情」などの記載が存在する(甲15)。\n
c シネックスインフォテック,Amazon,楽天ブックス等の正規 販売店及び正規販売店以外の販売業者による被告商品の広告には,全 て時計表示の被告商品の写真が掲載されている(甲8〜13,81〜\n96)。また,シネックスインフォテックは,被告商品について,「ス マートフォンに対応しており,腕に付けた時計に必要な情報をタイム リーにお知らせします」,「ウォッチフェイスを自由に変更して時計 の雰囲気を変え」などと紹介している(甲8)。
(オ) 原材料及び品質
被告商品は,1.56インチLCDゴリラガラス3採用のディスプレ イ,筐体(本体ステンレススチール,裏面プラスチック),心拍センサ ー,光センサー,バッテリーと,Android WearというOS, CPU,RAM,ROMなどから構成される(乙22)。\n通常のアナログ時計は,地板,歯車,電池,コイルブロック,巻真等 で構成され,デジタル時計は地板,液晶パネル,反射板,回路スペーサ\nー回路ブロック,電池絶縁版等から構成される(乙23)。\n
(カ) 需要者の範囲
a 雑誌における取扱い
スマートウォッチの雑誌における取扱いについてみると,スマート ウォッチは,「Men’s JOKER WATCH」,「時計 F INEBOYS」,「WATCH NAVI」といった腕時計専門雑 誌,「Men‘s NON−NO」,「AERA STYLE MA GAZINE」などのファッション雑誌や,「mono(モノ・マガ ジン)」,「MonoMax(モノマックス)」,「日経TREND Y」などの雑誌における腕時計特集において,通常の腕時計とともに 紹介されている(甲30〜42,44〜49)。 また,「時計 FINEBOYS VOL.12」(平成29年5 月発行)の「ゼロからわかる!腕時計の100識」という小冊子の「時 計のタイプを知る。」という項目において,スマートウォッチは,デ ジタルウォッチ,デザインウォッチ等と並び,腕時計のタイプの一つ として紹介されている(甲31)ほか,「AERA STYLE M AGAZINE Vol.35」(平成29年7月発行)の腕時計に 関するアンケートでは,「どの種類の時計が欲しい?」という質問の 選択肢として,機械式時計,クォーツ等と並び,スマートウォッチが 挙げられている(甲33)。
b 価格
被告商品は,アマゾンのウェブサイトで3万8000円から4万4 000円程度の価格帯で販売されているが(甲10〜13),スマー トウォッチ一般の値段は商品によって様々であり(甲32,37,4 3,45,51,105),高価格のものは30万円を超えている(甲 51)。他方,通常の腕時計の価格も,数千円台のもの(甲31)か ら100万円を超えるもの(甲33)まで様々である。
ウ 上記認定事実によれば,スマートウォッチの市場には時計メーカーも参 入し,IT企業のみならず,時計メーカーも腕時計等の時計に加えてスマ ートウォッチを製造,販売しているとの事実が認められる。このように, 腕時計とスマートウォッチでは製造業者が共通し,時計メーカーが時計製 造で培った技術を活かし,スマートウォッチ市場に参入している状況が看 取される。 また,販売状況を見ても,ビックカメラ有楽町店の例に見られるように, スマートウォッチと時計の売り場が共通している店舗もあり,原告及び被 告の行った調査結果によれば,時計店の中にはスマートウォッチと腕時計 の両方を取り扱っている店が相当程度あることがうかがわれ,ネットショ ッピングにおいても,スマートウォッチと腕時計のカテゴリーの区別は截 然とせず,スマートウォッチを「腕時計・アクセサリー」の一つに分類し ているショッピングサイトも存在する。そうすると,スマートウォッチと 腕時計は,その販売分野においても共通若しくは近接しており,同一のウ ェブサイトや売り場で一緒に販売されていることも少なくないというこ とができる。
さらに,上記のとおり,スマートウォッチが時計としての機能を備えて\nいることは争いがないところ,証拠に現れているスマートウォッチの初期 画面はいずれも時計であり,被告商品を製造したモトローラ・モビリティ のウェブサイト及び同商品の取扱説明書においても,時計表示の被告商品\nの写真が掲載されるとともに,同商品が「時計」である旨の記載がされ, 同商品を販売するインターネットサイトにおいても同様の説明がされて いると認められる。そうすると,スマートウォッチは,時計表示が付随的\nな機能にすぎない他の家電製品とは異なり,その主たる用途・使途は時計\nとして使用することにあるというべきである。 加えて,上記イ(カ)によれば,スマートウォッチの購入者は特定の層では なく,時計に関心を有する一般消費者であり,ネットショッピングや小売 店などで腕時計を購入しようとする一般の消費者にとって,スマートウォ ッチは,通常の腕時計等と並んで購入対象となるものであると認められる。 また,スマートウォッチと時計とで販売価格が大きく異なるとは認められ ないことも考え併せると,スマートウォッチと腕時計の需要者層は重複し ているということができる。
エ 以上のとおり,スマートウォッチと腕時計の製造業者の同一性,商品の 広告・販売状況,商品の用途,需要者の範囲等の事情を総合的に考慮する と,原告商標の指定商品である腕時計及び被告商品に同一又は類似の商標 を使用した場合には,同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認される おそれがあるというべきである。 したがって,被告商品は,原告商標の指定商品のうち「腕時計」と類似 の商品であるということができる。
3 争点(3)(モトローラ商標使用の抗弁の成否)について
前記1及び2で判示したとおり,原告商標と被告各標章は類似し,かつ,原 告商標の指定商品である腕時計と,モトローラ商標の指定商品である第9類に 属する被告商品とは類似する。そして,前記前提事実のとおり,モトローラ商 標の出願日又は優先日は,いずれも原告商標の出願日に後れているから,モト ローラ商標は,商標法4条1項11号,46条1項1号により,いずれも無効 にされるべきものである。このような無効事由のある登録商標に基づく専有権 の主張は,権利の濫用であって理由がなく,被告が主張するモトローラ商標使 用の抗弁は,成立しない。
4 争点(4)(権利濫用の抗弁の成否)について
原告は,被告が第二次不使用取消審判請求の登録日(平成29年6月23日) 前3年以内の要証期間内に原告商標を腕時計について使用していないので,原 告商標の指定商品のうち「腕時計」は不使用取消審判によって取り消されるべ きものであり,そのような原告商標権に基づく権利行使は権利の濫用として許 されないと主張するので,以下,検討する。
(1) 認定事実
ア 原告は,平成29年1月23日から6月23日までの間,自社のウェブ サイト内の「moto時計」のページ上部に,左側から中央にかけて縦に 並ぶような形で4本の腕時計の写真を掲載し,その右端に原告商標等を表\n示した。同ウェブサイトには,写真が掲載された腕時計の商品名,商品番 号,値段等の情報は表示されておらず,これらの時計の広告や商品説明,\n
同各商品を購入するための表示等も存在しない(甲62,120,乙17)。\nイ モトローラ・モビリティは,平成29年3月17日付け「ご回答」(乙 15)を原告代理人に送付し,同書面において,「当職らは,モトデザイ ン株式会社が商標「MOTO」を用いて腕時計の販売を行っていることに ついて疑いがあると考えています。モトデザイン株式会社のウェブサイト では腕時計の画像と共に「moto」の語が使用されていますが,当該使 用は本件対応のみを目的とする不自然かつ名目的なものに見受けられ…」 などと主張した。モトローラ・トレードマークは,同年6月8日,特許庁 審判官に対し,第二次不使用取消審判請求をした。
ウ 原告は,平成29年5月12日,A社宛てに,「見積及び腕時計サンプ ル発送致します」との件名のメール(甲63の1)を送信した。同メール には,「moto腕時計について,本日サンプルを送付致しますので,併 せてご確認のうえご検討下さい。」,「添付ファイルにて,先に商品写真 を送付致します。」と記載され,文字盤に「moto」の表記がある腕時\n計の写真及び腕時計とは別の商品についての見積書が添付されていた。ま た,同日受付で,品名に「moto腕手時×1点サンプル」と記載された 宅配伝票(甲63の2)が作成されている。
エ 原告の従業員であるFは,平成29年5月19日,自己の個人IDを用 いて,商品名が「moto時計 腕時計」であり,腕時計の画像が付され た商品を5000円でヤフーオークションに出品したところ,同年6月2 1日,氏名不詳者が同金額で落札し,同月22日,同人から支払がなされ た(甲64)。

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平成29(ワ)3428  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和元年12月24日  東京地方裁判所

 旧2CHの元管理人による新2CH(5チャンネル)に対する商標権侵害・不競法防止法事件です。裁判所は一部の商標について商標権侵害を認めました。

 前記認定事実によれば,本件電子掲示板は,(1)平成11年に開設され,平 成12年に西鉄バスジャック事件の犯人とされる少年が同掲示板に犯行予告\nを書き込むなどの出来事もあって社会的に注目を集めるようになり,平成1 4年頃には利用者が急激に増加し(前記2(2)ア,ウ,エ),(2)平成16年及 び平成17年には本件電子掲示板に掲載された投稿をほぼそのまま出版した 「電車男」が話題となり,インターネットに係る複数の賞を受賞し,これが ネットニュースで報道され(前記2(2)カ),(3)平成18年頃には,本件電子 掲示板の名称である「2ちゃんねる」という言葉がマスコミにおいて頻繁に 登場したり,本件電子掲示板内において使用される用語が一般の雑誌におい ても使われたり,電子掲示板を利用しない一般人の間でも本件電子掲示板が 話題に上ったりするようになった(前記2(2)キ)。 これらによれば,本件電子掲示板のトップページ等に表示されていた被告\n標章1及び2は,遅くとも,平成18年には,本件電子掲示板に係る役務を 表示するものとして,全国の需要者の間に広く認識されるに至ったと認める\nことができる。そして,平成25年3月当時,本件電子掲示板の月間の閲覧 数が29億にのぼるとして「日本語圏最大級のネットコミュニティ」などと 宣伝されていたことに照らせば(前記2(2)ス),原告商標1及び2が出願さ れた平成25年1月25日及び平成26年3月27日においても,上記周知 性が維持,継続していたものと認められる。
(4)ア
本件電子掲示板に係る役務を誰が提供していたかについてみると,原告 は,本件電子掲示板を開設した者であり,管理人と呼ばれたこともあり, 平成26年3月まで,本件電子掲示板の広告収入を間接又は直接に受領し ていた(前記2(2)ア,カ,キ,セ)。また,そのように受領した広告収入 の一部をNTテクノロジー社に渡していた(前記2(2)エ)。他方,原告は, 平成21年以降,ブログや「僕が2ちゃんねるを捨てた理由」と題する書 籍等において,自ら積極的に,本件電子掲示板を第三者に譲渡したとか, 本件電子掲示板の管理人を退き,アドバイザーか1ユーザーであるなどと 公言していた(前記2(2)ク,コ,シ)。また,平成21年1月2日以降, 本件ドメイン名に係るWhois 情報において,本件証拠上,原告に特に関係 が深いと考えられる会社(東京プラス社やブラジル社)や原告は,登録者 や運営名に関する連絡先,登録サービス提供者等のいずれにも登録されて いない(前記2(3))。 NTテクノロジー社は,平成11年頃から本件電子掲示板のサーバの提 供や関係する掲示板の開設を新たに行うなどしており,その後も,利用者 が増大した本件電子掲示板のサーバの管理や関係するソフトウェアのプロ\nグラミング等を単独で又は被告と共にしていた(前記2(2)イ,エ,オ)。 また,NTテクノロジー社は,平成14年頃には本件電子掲示板の閲覧の 利便性を向上させるソフトウェアを開発してこれを本件電子掲示板の利用\n者に販売し,その多額の売上げを原告を介さずに自ら取得していた(前記 2(2)イ,エ)。NTテクノロジー社は東京プラス社を介して原告から本件 電子掲示板の広告料の一部の送金を受けていて,その送金額は平成14年 頃は少なくとも当面は月額2万ドルとされていたところ,それに関する契 約書はなく,送金額は変動し,実際に送金された総額は相当の多額であり, また,NTテクノロジー社が求めた増額に任意に応じてその送金がされた こともうかがわれる(前記2(2)エ,テ)。そして,少なくとも平成17年 5月以降,本件ドメイン名に係るWhois 情報において,NTテクノロジー 社(NTテクノロジー社の設立者のジムを含む。)は,単に技術面に関す る連絡先としてだけでなく,継続して,運営面に関する連絡先や登録サー ビス提供者として登録されていた(前記2(3))。被告は,平成16年頃よ り,本件電子掲示板の管理に直接携わるソフトウェアのプログラミング等\nの業務を担うようになり(前記2(2)オ),平成24年5月3日に本件ドメ イン名を取得して本件ドメイン名の登録者となり,遅くとも平成26年2 月19日から本件電子掲示板のトップページ等に被告標章1及び2を表示\nして使用し,その使用は平成29年9月30日まで継続し(前提事実(5), 前記2(3)カ),本件証拠上,平成26年3月5日には,本件電子掲示板の トップページの下に会社名,所在地等が表示され,平成30年4月当時の\n「5ちゃんねる」と題する電子掲示板のトップページには,本件電子掲示 板を被告から譲り受けたと解される記載が表示されていた(前記2(2)タ, ツ)。
本件電子掲示板は,多種の掲示板から構成された巨大掲示板サイトであ\nり,その性質上,サーバの管理,新たな掲示板や機能の導入,それらの維\n持,改善等の運営は極めて重要である。また,平成14年頃には利用者が 急激に増加していたのであり,遅くともその頃以降,それらの管理,運営 等が占める役割には非常に大きいものがあった。そして,それらの管理, 運営等は,平成11年以降,NTテクノロジー社が単独で又は被告と共に 担っていた。この点について,原告が前記2(2)テ記載の別件訴訟において 提出した陳述書中には,NTテクノロジー社は東京プラス社からサーバの 管理業務を受託したにすぎない旨の記載があるが(甲21),上記の事実 関係に照らせば,NTテクノロジー社が単に原告等の委託を受けてその指 示等に基づいて管理業務を行っていたのみであるというのは不合理という ほかない。原告が平成26年2月19日まで本件電子掲示板の役務の提供 を行っていたといえるかは措くとして,少なくとも,NTテクノロジー社 は,遅くとも平成14年以降は,自ら主体的に本件電子掲示板に係る役務 の提供を行っており,本件電子掲示板に係る役務を自己の役務として提供 していたと認めるのが相当である。そして,被告も,平成16年以降,N Tテクノロジー社とともに本件電子掲示板の役務の提供をしており,少な くとも平成26年2月19日から平成29年9月30日までの間,本件電 子掲示板に係る役務を自己の役務として提供しており,遅くとも被告が本 件ドメイン名を取得した平成24年5月3日頃に,NTテクノロジー社か ら,本件電子掲示板の運営に係る事業の譲渡等を受けるなどして,その地 位を承継したと認めるのが相当である。
イ 商標法32条の先使用権は,識別性を備えるに至った商標の先使用者に よる使用状態を保護し,もって,先使用者が当該商標に蓄積した信用を同 人において享受することを可能にするものである。前記先使用権の趣旨に\n照らせば,当該商標を主体的に自己の業務として提供する役務を表示する\nものとして使用してその商標の持つ出所,品質等について信用を蓄積した 者やその者から当該事業の承継を受けた者は,先使用権の他の要件を満た せば先使用権を有するといえる。 被告標章1及び2は,遅くとも平成14年頃以降は,少なくとも,NT テクノロジー社において主体的に自己の業務として提供していたといえる 本件電子掲示板に係る役務を表示するものとして使用され,遅くとも平成\n18年頃には周知性を獲得し,その後も,NTテクノロジー社は被告標章 1及び2を表示して同役務の提供を継続したため,上記周知性が維持・継\n続されたといえる。被告は,遅くとも平成24年5月3日頃に,NTテク ノロジー社から本件電子掲示板の運営に係る事業の承継を受けるなどして その地位を承継し,本件商標1及び2の登録出願当時(本件商標1につき 平成25年1月25日,本件商標2につき平成26年3月27日),継続 して被告標章1及び2を使用して本件電子掲示板に係る役務を自己の業務 として提供していたから,被告標章1及び2は,上記時点において,被告 の業務である本件電子掲示板に係る役務を表示するものとして周知であっ\nたと認められる。また,被告は,平成29年9月30日まで,自己の業務 を行う意図で被告標章1及び2を表示した本件電子掲示板に係る役務を提\n供したと認めることが相当である。
ウ 不正競争の目的なくある特定の標章を表示する役務を複数の者が共同し\nて提供していた場合,その複数の者の間で紛争が生じた後であっても,少 なくとも,主体的に自己の役務として自ら役務を提供して当該表示の持つ\n出所,品質等について信用を蓄積するために果たした役割が主要といえる 者が,紛争後も提供した当該役務が従前と同様のものであった場合,その 者による当該標章の使用は,前記の先使用権の制度趣旨に照らし,不正競 争の目的なくされているとするのが相当である。そして,前記に照らせば, NTテクノロジー社は,不正競争の目的なく本件電子掲示板に係る役務を 主体的に自らの役務として提供して,当該表示の持つ出所,品質等につい\nて信用を蓄積するために主要な役割を果たしたといえる。平成26年2月 19日にはそれまで本件電子掲示板に関与していた東京プラス社及び原告 が本件電子版のサーバにアクセスできなくなったところ,東京プラス社及 び原告の同時点までの本件電子掲示板への関与の内容には不明な部分もあ るが,NTテクノロジー社と共に上記提供を行ったか,NTテクノロジー 社から本件電子掲示板に係る事業の承継を受けるなどしてその地位を承継 した被告は,平成26年2月19日以降も本件電子掲示板に係る役務をそ れまでと同様に提供していたことがうかがえ,NTテクノロジー社の果た した上記の役割に照らせば,同日以降平成29年9月30日までの間,被 告標章1及び2を本件電子掲示板に係る役務を表示するものとして,不正\n競争の目的なく使用したと認めることが相当である。
エ 以上によれば,平成26年2月19日から平成29年9月30日までの 間,被告は,本件商標1及び2を本件電子掲示板に係る役務を表示するも\nのとして使用することについて,先使用権を主張することができる。

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平成30(ワ)15781  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和2年2月20日  東京地方裁判所

 登録商標「サクラホテル」と、「SAKURA HOTEL」などが類似すると判断されました。損害額について商39条2項が適用されましたが、9割覆滅されて約330万円が認定されました。

需要者について
原告は,外国人をターゲットとしてホテル事業を展開していることから, 本件商標と被告の標章の類否を判断するに当たり,需要者は都内近郊の宿泊 施設を利用しようとする外国人観光客であると主張する。しかし,前記1(5) で認定したとおり,平成29年の原告宿泊施設の宿泊客の国籍をみると,日 本が最も多かったものであり,その他本件全証拠に照らしても,原告宿泊施 設が外国人観光客のみを対象としているものとは認められず,本件の需要者 は,外国人観光客に限定されるものではなく,およそ宿泊施設を利用しよう とする者であるというべきである。
(2) 類否について
ア 被告使用標章
(ア) 別紙被告標章目録1記載(1),(7)及び(8)の標章 別紙被告標章目録1記載(1),(7)及び(8)の標章は,桜の花びらのマーク 及び「桜」の漢字,横書きの「SAKURA」,横書きの「HOTEL」 の各文字をこの順番に縦に並べた外観を有し,「サクラホテル」との称呼, 及び桜の花をそのイメージとする宿泊施設という観念が生ずる。 ・・・ イ 本件商標と被告使用標章の対比
本件商標は,カタカナの「サクラホテル」との外観を有し,「サクラホテル」との称呼,及び桜の花をそのイメージとする宿泊施設という観念が生 ずるところ,被告使用標章の各標章から生ずる称呼及び観念は上記アで説 示したとおりであるから,本件商標と被告使用標章の各標章は,称呼及び 観念が同一ないし極めて類似しているといえる。一方で,本件商標と被告 使用標章の各標章はいずれも外観において異なるものの,被告使用標章は 「サクラホテル」を漢字やローマ字などで表記したものの組合せであるか,\nそれらに加えて桜の花びらのマークなどを組み合わせたものにすぎないか ら,その取引の実情に照らし,日本人を始めとする需要者にとって,両者 の外観の差異は大きいものとはいえないというべきであり,両者が称呼及 び観念において同一ないし極めて類似していることに照らせば,本件商標 と被告使用標章は類似しているというべきである。 ・・・ ア 商標法38条2項の適用
原告は,商標法38条2項に基づき,本件商標権侵害により原告に生じ た損害を主張するところ,被告は,原告宿泊施設と被告宿泊施設は競合関 係にない,第三者の競業が存在する,被告の営業努力が著しい,ホームペ ージの記載から運営主体が異なることは明らかであるなどとして,原告に 損害が発生していないから,商標法38条2項の適用がないと主張する。 しかし,被告は,本件商標に類似する被告使用標章を,本件商標の指定 役務である宿泊施設の提供に使用しているところ,原告宿泊施設と被告宿 泊施設はいずれも東京23区内に存在しており,提供するサービスの価格 に差はあるものの,需要者が全く異なるとまではいえないから,被告によ る被告使用標章の使用により原告に損害が発生していないと認めることは できない。また,被告は,「第三者」の競業や被告の著しい営業努力,ホー ムページの記載なども主張するが,これらに関し,上記認定を左右するに 足りるような具体的事情を客観的に認めるに足りる証拠はない。 以上によれば,被告の上記主張は採用することはできず,商標法38条 2項の適用があるというべきである。
イ 被告の利益
(ア) 被告使用標章の使用により被告の得た利益は,被告が被告使用標章を 使用していた平成29年9月15日の営業開始から平成30年3月5日 までの被告宿泊施設の売上げから,いわゆる変動費を控除した限界利益 がこれに当たると解すべきである。そして,宿泊業という被告の業種に 鑑みれば,水道光熱費及び消耗品費が変動費に当たることが認められる ところ,本件全証拠を精査しても,その他控除すべき費用は認められな い。
(イ) 証拠(乙27)によれば,上記期間の被告宿泊施設の売上げ,水道光 熱費,消耗品費は次のとおりであると認められる(ただし,平成30年 3月分はいずれも5日間の日割り計算である。1000円未満切捨て。)。
i 売上げ
平成29年9月分 251万9000円
平成29年10月分 645万7000円
平成29年11月分 600万3000円
平成29年12月分 684万9000円
平成30年1月分 587万円
平成30年2月分 760万9000円
平成30年3月分 138万3000円
合計 3669万円
ii 水道光熱費
平成29年9月分 7万3000円
平成29年10月分 23万9000円
平成29年11月分 27万7000円
平成29年12月分 30万9000円
平成30年1月分 38万円
平成30年2月分 26万4000円
平成30年3月分 10万8000円
合計 165万円
iii消耗品費
平成29年8月分 138万9000円
平成29年9月分 236万1000円
平成29年10月分 10万6000円
平成29年11月分 37万4000円
平成29年12月分 2万2000円
平成30年1月分 1万円
平成30年2月分 4万9000円
平成30年3月分 5000円
合計 431万6000円
(ウ) 以上によれば,上記期間の被告の限界利益は3072万4000円で あると認められる。
ウ 推定覆滅
原告は,平成11年頃から「サクラホテル」との名称を用いて宿泊施設 を提供している旨主張する。しかし,本件商標である「サクラホテル」は, 普通名詞である2つの単語を単純に組み合わせたものであり,そのうちの 1つは提供する役務の内容である「ホテル」であること,証拠(乙17) によれば,日本において「桜」,「さくら」,「Sakura」又は「サクラ」 を名称に使用した宿泊施設は多数存在することが認められ,宿泊施設の名 称に桜という単語を使用すること自体,強い自他識別力を付与するものと は言い難い。これらによれば,本件商標の顧客吸引力は強いものであると はいえず,これに類似する被告使用標章が,被告の売上げに寄与した程度 は極めて限定的であるというほかない。そして,前記1(6)及び(7)で認定 したとおり,原告宿泊施設と被告宿泊施設において提供するサービスに相 応の価格差があることも併せ考慮すれば,被告の限界利益額の相当大きな 部分について,損害の推定が覆滅されるというほかなく,その覆滅割合は, 上記のほか,本件に顕れた諸般の事情に照らし,9割と認めるのが相当で ある。
エ 損害額
以上によれば,被告の本件商標権の侵害につき,商標法38条2項によ って推定される原告の損害は,被告の限界利益である3072万4000 円の1割に相当する307万2400円であると認められる。
(2) 対応費用
原告は,本事案に係る被告の不誠実な対応により,原告に法律家による対 応の費用等の損害が発生したと主張する。 しかし,本件全証拠に照らしても,本訴訟提起前の交渉経緯における被告 の対応が殊更に不誠実であったとは認められず,本訴訟における和解協議に 係る原告の主張も,客観的にみれば,原告の期待が裏切られたというにとど まるものといわざるを得ない。 もっとも,原告が請求する対応費用の趣旨に鑑みれば,この費用には本訴 訟に係る弁護士費用も含まれていると解されることから,弁護士費用相当額 については,原告の損害として認めるのが相当であるが,その他については, 本件商標権の侵害により,被告が賠償すべき原告の損害を認めることはでき ないというべきである。しかして,本訴訟に係る弁護士費用については,上 記(1)の損害額に照らし,30万円が相当であると認められる。

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平成29(ワ)38481  商標権に基づく差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和元年10月2日  東京地方裁判所

 登録商標「MMPI」第44類 心理検査について、「MMPI−1 性格検査」としての使用は、みなし侵害行為であると認定されましたが、商26条によって効力が及ばないと判断されました。

(2)ア 前記(1)ウ(被験者がパソコン画面を見ながら回答)の場合について\n
心理検査は,被験者が質問に回答し,その回答を基準に照らして判定(診 断及び解釈)し,判定結果を一定の目的のために利用するものであるから, 心理検査を役務としてみた場合,その中核は,同検査の実施主体(心理検査 の役務を提供する主体)による回答の判定(診断及び解釈)部分にあると解 される。 前記(1)ウの場合,心理検査の役務を提供するのは被告ソフトの購入者で\nあり,被告ソフトは,同役務の提供を受ける者(被験者)の利用に供する物\nに当たるところ,被告ソフトのパッケージにはそれぞれ本件商標と類似する\n被告標章3が付されており,被告は購入者をして同役務の提供をさせるため に被告ソフトを販売しているのであるから,かかる被告の行為は,少なくと\nも法37条4号のみなし侵害行為に当たる。
イ 前記(1)イ(1)(購入者が被告質問用紙等及び被告ソフトを使用)の場合\n この場合,心理検査の役務を提供する主体は被告各商品の購入者であり, 被告質問用紙等は,同役務の提供を受ける者(被験者)の利用に供する物に 当たるところ,被告質問用紙等にはそれぞれ本件商標と類似する被告標章1 又は2が付されており,被告は上記購入者をして同役務の提供をさせるため に被告質問用紙等を販売しているのであるから,かかる被告の行為は,少な くとも法37条4号のみなし侵害行為に当たる。
ウ 前記(1)イ(2)(被告サービスを利用)の場合につき検討する。 この場合も,心理検査の役務を提供する主体は被験者に受検をさせる被告 回答用紙等の購入者(被告サービスの委託者)と解されるが,上記委託者は, 検査結果の判定部分を被告に委託して心理検査を行っており,被告は,被告 サービスを受託することにより心理検査の役務の一部であるが中核たる判 定業務を実行しているといえるから,被告が被告サービスを提供する行為は, 委託者による心理検査の役務の一部をなす。一方,被告が被告サービスとい う役務を提供する直接の相手方は上記委託者であるが,同委託者は心理検査 の役務の需要者に含まれるし,被告の上記役務があってこそ同委託者の役務 が遂行される関係のものである。そうすると,被告による被告サービスの提 供は,心理検査の役務又はこれに類似する役務に当たるというべきである。 したがって,被告が被告サービスに基づいて委託者に交付する被告診断結 果書に本件商標に類似する被告標章4を付する行為は,「役務の提供に当た りその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務 を提供する行為」(法2条3項4号)に該当するから,かかる行為は,指定 役務又はこれに類似する役務についての登録商標に類似する商標の使用に 当たり,法37条1号のみなし侵害行為に該当する。
エ 広告について 被告は,心理検査の役務に類似する役務に当たる被告サービスの提供に係 る被告ウェブサイト上の広告に被告標章5を掲載しているのであるから,役 務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供す る行為(法2条3項8号)をしているということができる。かかる行為は, 指定役務たる心理検査の役務に類似する役務についての本件商標に類似す る商標の使用に当たるから,法37条1号のみなし侵害行為に該当する。
・・・
(1) 法26条1項3号にいう役務の「質」とは,その語義からして,役務の内容, 中身,価値,性質などを意味するものと解されるところ,「MMPI」は,前 記1のとおり,質問紙法検査に基づいて性格傾向を把握する心理検査の名称で ある「Minnesota Multiphasic Personality Inventory」(ミネソタ多面的人\n格目録)の略称であり,本件商標の指定役務である心理検査の需要者,取引者 において,心理検査の一手法である本件心理検査又はその略称を示すものとし て周知であると認められるから,心理検査の内容,すなわち「質」を表すもの\nということができる。 また,被告各標章は,いずれも,明朝体様やゴシック体様といったありふれ た書体で構成されているものである。\n そうすると,「MMPI」を含む被告各標章は,いずれも本件商標の指定役 務である心理検査又はこれに類似する役務ないし商品の「質」を,普通に用い られる方法で表示するものということができるから,被告各標章は,法26条\n1項3号に該当し,本件商標権の効力は及ばない。
(2) これに対し,原告は,「MMPI」は,役務の普通名称又は質を表示するも\nのではなく,原告が長年にわたり独占的に提供してきた心理検査等役務を表す\nものとして識別力を獲得していたものであって,被告は,自他を識別する態様 で本件商標に類似する被告各標章を使用していると主張する。 ア この点について,確かに,証拠によれば,原告が,昭和38年以降,原告 版の質問票や回答用紙に「MMPI」の標章を用いていること(甲43〜5 3,74,75),「MMPI」の標章を用いた原告版のカタログを毎年発 行していること(甲39〜42),「MMPI」の標章を用いた原告版のマ ニュアルを販売していること(甲32),原告が精神医学,心理学等の専門 誌,学会誌等に「MMPI」の標章を用いた広告を多数掲載してきたこと(甲 55〜60,100〜145),精神医学,心理学等の専門書等には,原告 版を本件心理検査の日本語版である趣旨の紹介をするものが多数あること (甲7〜9,81〜95)などの事実が認められる。
イ(ア) しかし,原告が昭和38年(1963年)から平成4年(1992年) まで使用していた質問票(甲43)は,表紙上部に「日本版MMPI質問\n票」と記載され,その下に原著がハサウェイとマッキンレーであることな どが記載されているから,「MMPI」の表示は,当該質問票を用いて行\nわれる心理検査の種類・方法としての本件心理検査を示しており,需要者, 取引者にもそのように理解されるものというべきである。 また,平成27年(2015年)以降の新版質問票(甲44〜47,7 4)は,表紙左上部に「Minnesota」,「Multiphasic」,「Personality」, 「Inventory」と4段組みに記載されており,その直下にはハサウェイら の名前が記載され,その右側には「MMPI新日本版研究会」と記載され ているものであるが,同記載も,同様に行われる心理検査の種類・方法と しての本件心理検査を示しており,需要者,取引者にもそのように理解さ れるものというべきである。 新版回答用紙(甲48〜53,75)には,「MMPI III型 回答用 紙」などとあるだけで,原著作者の記載等はないが,回答用紙が通常は質 問票とセットで利用されるものであることからすると,需要者,取引者は 「MMPI」が行われる心理検査の種類・方法としての本件心理検査を意 味するものと理解するものと考えられる。
(イ) 次に,原告版のカタログ(甲39〜42)につきみると,「MMPI」 が単独で表記されている部分もあるものの,昭和43年(1968年),\n昭和48年(1973年),平成5年(1993年)の各カタログ(甲3 9〜41)には,「MMPI」がハサウェイ教授らによって発表された心\n理検査である旨の解説が付されており,平成30年(2018年)のカタ ログ(甲42)にも「MMPIの実施法・まとめ」,「MMPI新日本版」 などと記載されている。これらの記載は,「MMPI」を心理検査の種類・ 方法としての本件心理検査を表示するものであり,需要者,取引者もその\nように理解するものというべきである。
(ウ) さらに,原告のマニュアル(平成5年(1993年)版。甲32)の表\n紙には前記の新版質問票と同様の記載があり,扉の部分には「新日本版M MPIマニュアル」と記載され,本文部分においても,「第1章 MMP Iの概要」に本件心理検査についての説明がされているのであるから,同 マニュアルにおいても,「MMPI」の表示は本件心理検査を意味するも\nのとして用いられているということができる。
(エ) その他,専門誌,学会誌等への広告(甲55〜60,100〜145) 及び精神医学,心理学等の専門書等(甲7〜9,81〜95)においても, 「MMPI」は心理検査の種類・方法であることを前提とした記載がされ ているにすぎず,これが原告の役務であることを示す記載は見当たらない。
(オ) 以上のとおり,原告作成に係る質問票,回答用紙,カタログ及びマニュ アル並びに広告や専門書における「MMPI」の使用は,いずれもこれが 心理検査の種類・方法としての本件心理検査を表示するものにすぎず,他\nに「MMPI」が,原告が提供する心理検査等役務を表すものとして識別\n力を獲得したと認めるに足りる証拠はない。 そうすると,原告が長年にわたり「MMPI」の商標を用いて独占的に 心理検査等役務を提供しており,その質問票,回答用紙,カタログ及びマ ニュアル並びに広告や専門書において「MMPI」との表示をしてきたと\nしても,それをもって,原告が提供する役務を表すものとして識別力を獲\n得したということはできない。 ウ 原告は,原告が行う心理検査等役務は,本件心理検査に由来・関連するが, 質問項目の言語,項目数及び配列,採点基準,実施方式において本件心理検 査と異なる原告独自のものであり,原告の提供する役務として識別力を獲得 したと主張するが,上記のとおり,原告は,質問票やカタログ等において, 「MMPI」の日本版であることを表示し,また,「MMPI」についてミ\nネソタ大学のハサウェイ教授等により発表\された人格目録テストであるな どの説明をしている上,質問項目数の差異も重複した質問を含むかどうかの 違いにすぎない。そうすると,原告が行う心理検査等役務は,我が国の社会, 文化等に合わせて「MMPI」を翻訳・標準化したものであって,原告が独 自に開発した心理検査であるということはできず,また需要者,取引者が原 告の提供する心理検査等役務を原告独自のものと認識していたことを示す 証拠もない。
エ 他方,被告が使用する各標章についてみると,(1)被告標章1は,被告質問 用紙の表紙上部に「MMPI−1 性格検査」と記載されたもの,(2)被告標 章2は,被告回答用紙に「MMPI−1 回答用紙」と記載されたもの,(3) 被告標章3は,被告ソフトのパッケージの表\紙に「MMPI−1性格検査」 と記載されたもの,(4)被告標章4は,診断結果書の1枚目に「MMPI−1 自動診断システム」と記載されたもの,(5)被告標章5は,被告のウェブサイ ト上の被告各商品や被告サービス等の広告において,「MMPI−1性格検 査」と記載されたものである。 原告は,被告各標章が自他の役務を識別する態様で使用されていると主張 するが,上記の被告各標章の表示内容及び態様によれば,被告各標章は,本\n件心理検査による「性格検査」,本件心理検査の質問項目に対する「回答用 紙」,本件心理検査を利用した「自動診断システム」を意味し,いずれも被 告各商品や被告サービスに係る心理検査の種類・方法が本件心理検査である ことを題号等において表示しているにすぎないというべきである。このよう\nに,被告各標章における「MMPI」は,本件心理検査を意味するものとし て使用されているのであるから,これを被告が識別力を有する態様で使用し たものであるということはできない。
(3) 以上のとおり,被告各標章は,いずれも本件商標の指定役務である心理検査 又はこれに類似する役務ないし商品の「質」を,普通に用いられる方法で表示\nするものということができるから,法26条1項3号に該当し,本件商標権の 効力が及ばない。

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平成31(ワ)256  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和元年10月3日  大阪地方裁判所

 商標権侵害事件です。大阪地裁21部は、(「COCO♡Ballet School」が、原告商標「CoCoバレエ」に類似すると判断しました。原告代理人なしで、保佐人弁理士がついてます。

 ア 本件商標は,欧文字の「CoCo」とカタカナの「バレエ」という標準文字 の文字列が横並びに配置されており,これから生ずる称呼は「ココバレエ」であり (争いなし。),バレエに関連する役務という観念を生じる。 被告各標章の外観及び称呼(「ココバレエスクール」)について,原告が要部と 主張する点以外に争いはない。 被告各標章からは,バレエスクールに関連する役務という観念を生じる。被告は, 被告各標章から,「『STUDIO COCO』のバレエスクール」という観念を 生じると主張するところ,バレエスクールの需要者(バレエを習おうとする者やそ の保護者)が,被告の家族が経営し,ほぼ売上のない事業である「STUDIO C OCO」を認識しているとは考えることはできないから(乙4,5),そのような 特定のバレエスクールとの観念を生じるという上記被告の主張は採用できない。
イ 本件商標及び被告各標章は,「CoCo」,「COCO」又は「ココ」の部 分とこれ以外の部分の結合により構成されている。\nもっとも,本件商標において,「CoCo」と「バレエ」は横並びで同じ大きさ の標準文字で記載されており,被告各標章の「COCO」又は「ココ」とそれ以外 の部分も,いずれも横並びで類似の字体・色・装飾・大きさであり,その間に挿入 される「♡」又は「❤」(被告標章1,3,5,6)もそれぞれ上記文字列と同じ色・ 大きさで記載されていることから,本件商標及び被告各商標の構成部分の一部がと\nりわけ強く需要者の注意を惹くとは考えられず,あえて分離して観察することは適 切ではないと解される。
ウ これを前提に,本件商標と被告各標章の全体について,外観・称呼・観念の 類否を検討する。
本件商標と被告各標章(被告標章2を除く。)の外観は,いずれも横並びで 同じ文字色の「CoCo」(本件商標)又は「COCO」(被告標章2を除く被告 各標章)と「バレエ」(本件商標),「バレエスクール」,「Ballet Sc hool」,「BALLET SCHOOL」(被告標章2を除く被告各標章)と いう文字で構成されており,「スクール」,「School」,「SCHOOL」\nには「学校」や「(バレエ)教室」という以外の特段の意味がないことに鑑みれば, 本件商標と被告標章2を除く被告各標章は,その字体,欧文字について大小文字の 区別,装飾,文字色及び間にハートマークが挿入されるか否かという小さな相違点 はあるものの,全体として外観が類似しているということができる。 また,被告標章2の外観は,「ココバレエスクール」という横並びのカタカナで あるところ,本件商標とは,「CoCo」と「ココ」という欧文字とカタカナの部 分が異なるが,「バレエ」というカタカナは一致しており,外観はある程度類似し ているといえる。 本件商標と被告各標章の称呼は,それぞれ「ココバレエ」と「ココバレエス クール」であり,上記のとおり「スクール」には特段の意味がないことに鑑みれば, 本件商標と被告各標章の称呼も類似しているということができる。 本件商標と被告各標章の観念について,いずれも「ココ」という称呼の部分 は特定の観念を持たないため,それぞれ,「バレエに関連する役務」と「バレエス クールに関連する役務」という観念となり,類似しているということができる。 以上より,本件商標と被告各標章を全体として観察すると,外観,称呼,観 念が類似するものと認められる。
(2) 出所混同のおそれ
ア 双方の使用の態様,経緯
被告は,平成13年より,相模原市,町田市において,教室を借りて被告ス クールを営むようになり,当初は「●略●」,平成13年より「●略●」の名称を 使用していた。被告の父であるP3は,平成20年8月,被告のために,バレエレ ッスン用のスタジオである「Studio CoCo」を町田市●略●に建て,以 後,被告は,同スタジオで被告スクールを営んだ。被告は,平成28年に病気をし たことを契機に,●略●の通称を使用するようになり,そのころ,これに伴って被 告スクールの名称も,スタジオの名称をとって「COCO♡Ballet Scho ol」に改め,以後これを使用するようになった。被告スクールは,地元だけで活 動してきた小さな教室とされる(甲3,13,15,乙4,5)。 被告は,被告ウェブサイト1のヘッダー及びフッター部分において被告標章 1を,ヘッダー部分及び「About」という項目の下の文章中において被告標章 2を,「News」という項目の下の文章中において被告標章3を,「Sched ule」という項目の下のスケジュール表のファイル名として被告標章4を,被告\nウェブサイト2のヘッダー部分において被告標章5を,問合わせ用のページにおい て被告標章6を使用していた(甲4,5)。 原告は,平成元年から大阪市内において原告スクールを運営し,自らのウェ ブサイトや定期発表公演のパンフレットにおいて本件商標を使用している。原告ス\nクールは被告スクールに比して規模が大きく,知名度においても上回っていると認 められる(甲9〜11)。 平成31年1月11日以前は,インターネット上の検索エンジンにおいて, 「ココバレエスクール」又は「COCOバレエ」を検索語として用いて検索した場 合,検索結果において,原告スクールと被告スクールが上下に並んで表示された(甲\n6,8)。
イ 検討
このような本件商標及び被告各標章の使用態様からすれば,需要者である,バレ エを習おうとする者やその保護者が,インターネットを利用して検索等した場合, 原告スクールと被告スクールとの間に何らかのつながりや提携関係があるものと誤 認する可能性があったというべきであり,本件商標と被告各標章には,出所混同の\nおそれがあったと認められる。
(3)被告の主張について
被告は,「COCO♡Ballet School」という被告スクールの名称や, これに由来する被告各標章は,P3が被告スクールと同じ場所で経営する「STU DIO COCO」の名称からとったものであり,被告スクールは小規模な地元密 着の教室であって,その旨は被告ウェブサイトにおいて明示されているから,出所 混同のおそれはないと主張し,被告本人及びP3は,これに沿う陳述書(乙4,5) を証拠として提出する。 しかし,P3の経営する「STUDIO COCO」は,バレエのレッスンや貸 しスタジオとして使用する小規模な教室であり,格別の周知性を有するとは認めら れないから(甲3,乙5),被告各標章に接した需要者が,「STUDIO CO CO」より派生した事業であると認識するとは考え難い。また,被告ウェブサイト において,被告スクールが東京都町田市所在であることや,生徒募集の範囲が町田 市及び相模原地域であることは記載されているものの,離れた地域にあるバレエ教 室が互いに提携関係にある可能性もあるから,被告ウェブサイトにおいて被告各標\n章に接した需要者が,原告スクールとつながりがあるものと誤認する可能性を否定\nすることはできない。 したがって,上記被告の主張を採用することはできない。
(4) まとめ
以上より,本件商標と被告各標章は,外観・称呼・観念が類似し,出所混同のお それがあり,前記前提事実のとおり指定役務が同一であると認められるから,全体 として,被告各標章は本件商標に類似するというべきである。
・・・
ア 使用料相当額
原告は,本件商標の使用料相当額について1か月あたり6万円と主張し,原 告スクールがニューヨーク市所在のバレエスクールと提携関係にあるとして(甲1 6),同スクールへの留学を希望する生徒の募集を目的とした首都圏のバレエスク ールとの提携や,そのために本件商標の使用を許諾して使用料を徴収することを構\n想している旨を主張するが,実際にそのような使用料額の支出を内容とする契約が 締結されたことの主張・立証はない。 前記認定のとおり,本件商標と被告各標章の誤認混同のおそれは,インター ネット上で生じるものと解されるが,本件商標が表象するのは,インターネット上\nの物品の販売又はサービスの提供ではなく,バレエの教授という現実に提供する役 務である。そして,原告スクールは大阪市に,被告スクールは町田市にあって地理 的に全く離れているから,原告スクールの会員が,被告各標章を見たことで被告ス クールに移籍したり,原告スクールに入会しようとした者が,被告各標章を見たこ とで被告スクールに入会するといった形で誤認混同が生じ,原告に経済的損失が生 じたとの事実は,主張も立証もされていない。 また,前記認定したところによれば,被告は,被告各標章を,本件商標の登 録以前より使用しており,P3が建てたスタジオの名称をとって被告各標章を定め たものであり,平成30年6月に原告に警告されて初めて本件商標の存在を知った と認められるから,本件商標の顧客吸引力や信用を利用することを目的として,被 告各標章を使用したものでないことは明らかである。 以上を総合すると,原告に 経済的損失が認められず, 被告各 抽象的に誤認混同のおそれのある被告各標章が排除されなかったことによる損害が認められるにすぎないから,これに対する損害金としては,1か月1万円をもって相当と認める。したがって,商標法38条3項により,原告の損害となるべき平成29年9月12日から平成31年1月11日までの使用料相当額は,16万円(1万円×16か 月)となる。
イ 弁理士費用相当額
本件訴訟提起に至る経緯,前記認定した被告の商標権侵害となる行為の態様等を 総合すると,被告の行為と,補佐人である弁理士の費用との間に,相当因果関係を 認めることはできない。

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平成30(行ケ)1008 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年12月20日  知的財産高等裁判所

 商品と小売サービスが類似するとした審決が維持されました。
 本願商標の指定商品は,第9類「電子出版物」及び第16類「雑誌,書 籍」(本願指定商品)を含むところ,近年,「従来は本や雑誌の形で提供 されていた情報を,デジタル化したソフトの形で,あるいはパソ\コン,タ ブレット端末,スマートホン,電子書籍リーダーなどを使ってアクセスで きる形で提供する出版」である電子出版が盛んになり,現に,紙に印刷さ れた商品「印刷物」の一種である「雑誌」や「書籍」の内容(コンテンツ) が,電子化された「電子出版物」として需要者へ広く配信(販売)される など,両者は相互に密接な関連性を有している。 そして,本願指定商品はいずれも,主に書籍や雑誌,電子出版物などの 出版を行う事業所である出版社により制作,販売される商品であり,多岐 にわたる年代層の個人から各種教育機関等の幅広い需要者に対して,書店 又はオンライン書店を通じて販売されている。 イ 引用商標の指定役務中,第35類「印刷物の小売又は卸売の業務におい て行われる顧客に対する便益の提供」(以下,この役務中,小売と関連す る役務を「引用小売役務」という。)は,雑誌や書籍等の印刷物及び印刷 物と密接な関連性を有する電子出版物を取り扱う小売又は卸売の業務にお いて行われる顧客に対する便益の提供である。 そして,引用小売役務は,主に書籍や雑誌,電子出版物を小売する書店 により提供される役務であり,多岐にわたる年代層の個人から各種教育機 関等の幅広い需要者に対して,主として書店又はオンライン書店において 提供される。
(3) 本願指定商品と引用小売役務との関連性について
本願指定商品と引用小売役務は,いずれも電子出版物又は印刷物を取り扱 う商品又は役務であるところ,その商品の販売場所及び役務の提供場所が一 致し(書店又はオンライン書店),需要者の範囲も一致(幅広い需要者層) する。 さらに,本願指定商品と引用小売役務は,主に出版社又は書店により製造, 販売又は提供されているとはいえ,同一営業主により製造,販売又は提供さ れている実情があり,いわゆる出版社が自己又はそのグループ会社が運営す るウェブサイト又は店舗において,電子出版物,書籍又は雑誌を販売(小売) している事例に加え,書店として小売事業を展開する事業者が,書籍や雑誌 の制作,出版をする事例も複数挙げることができる(乙8〜20)。
(4) 以上のとおり,本願指定商品と引用小売役務は,その商品の販売場所及び 役務の提供場所,並びに需要者の範囲が一致するため,相互に密接な関連性 を有する。さらに,これらは同一の営業主によって製造,販売又は提供され ている実情がある。このような取引の実情を踏まえると,これら商品及び役 務に同一又は類似の商標を使用するときは,同一営業主の製造,販売又は提 供に係る商品又は役務と誤認混同を生じるおそれがあるというべきである。 したがって,本願指定商品は引用小売役務と類似する。

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平成30(行ケ)10067  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年12月10日  知的財産高等裁判所

 ラルフ社の商品との出所混同が生ずるかが争われました。本件商標は「POLO」です。裁判所は、15号違反とした拒絶審決を維持しました。
(4) 混同の有無
 ア 後掲証拠によると,以下の事実が認められる。
(ア) 株式会社高石洋服店のウェブサイトでは,「非常に残念なことですが,多くの方がデパートの主力ブランドのpolo ralph laurenの偽物だと認識しているようです。ブランド名,ロゴマークは似ておりますが,実際は全く別のライセンスをキッチリ取得して生産されたブランドになります。」との記載とともに,原告製の衣服の写真を掲載し,同衣服の広告をしている(乙69の1)。
・・・
「Rakutenラクマ」のウェブサイトの「ポロベビー」という題 名の出品ページに,「ブランド」として「POLO RALPH LAUREN」と 記載された商品が出品され,同商品の写真には,原告使用商標と類似した商標が付 されている(乙74の1)。
イ 前記アの事実によると,原告製の衣服をラルフ社製の衣服と誤認して, その中古品をウェブサイトに出品している事例が少なからずあり,また,原告製の 衣服をラルフ社製の衣服と誤認して購入したり,原告製の衣服をラルフ社製の衣服 と誤認してウェブサイトで紹介したりする事例もあることが認められる。 さらに,原告製の衣服を販売している会社が,その広告において,わざわざ,多 くの人は,原告製の衣服はラルフ社製の偽物であると認識しているようであるが, 実際は,ラルフ社製の偽物ではなく,別のライセンスを取得している旨説明してい る。 以上の事実からすると,多くの者が,原告製の商品をラルフ社製の商品と誤解し て購入等しているものと推認される。 したがって,原告使用商標又は,それに似た商標を付している商品とラルフ社製 の商品との間に,現実に出所の混同が生じていることは明らかであるから,本願商 標についても出所の混同が生じるものと認められる。
ウ 原告の主張について (ア) 原告は,前記アで認定したメルカリへの出品について,買い手を意図 的に誤認させる悪意の出品である旨の主張をしているが,原告の主張は,前記アで 認定した各出品者が詐欺行為をしたことについての具体的な裏付けを伴うものでは\nなく,憶測にすぎないことから,採用できない。また,原告は,メルカリにおいて は,ブランドタグの選択肢に「ラルフローレン」しかない旨の主張をするが,そう であるとしても,前記イ記載の誤認混同が生じていることの理由とは認め難い。
(イ) 原告は,ヤフオクにおいては,原告製の商品とラルフ社製の商品との 間に混同が生じた事例はなく,また,業者と一般消費者間の取引においては,原告 製の商品とラルフ社製の商品との間に混同は生じていないと主張し,その証拠とし て,甲47,甲53の1〜8を提出するが,同証拠から直ちに,原告の上記主張事 実を認めることはできず,前記イの認定を左右するに足りるものではない。
(ウ) 原告は,甲40の1、3から,消費者が,原告製の商品をラルフ社製 の商品と区別して購入する事実がある旨主張する。 しかし,甲40の1の記事は,写真に掲載した原告製の商品がラルフ社製の商品 ではないことを注意喚起するものであり,甲40の3の記事は,一見したところラ ルフ社製の商品であると思ったが,よく確認すると,原告製の商品であることが分 かったというものであるから,原告製の商品をラルフ社製の商品と誤認する可能性\nが高いことを示すものである。したがって,上記記載は,原告製の商品とラルフ社 製の商品との間に混同が生じやすいことを裏付けるものといえる。
(5)以上からすると,引用商標の独創性の程度が造語による商標に比して低い ことを考慮しても,本願商標をその指定商品に使用した場合,当該商品がラルフ社 の業務に係る商品であると誤信され,出所の混同を生ずるおそれがあることは明ら かである。

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平成30(ネ)10045等  商標権侵害行為差止請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成30年11月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 日本酒の商標「白砂青松」の商標権侵害控訴事件です。1審では、要部が2つあるとして侵害と判断されました。知財高裁も「不可分的に結合しているとはいえない」として、1審判断を維持しました。なお、訴えの交換的変更により,差止の対象が変更されています。
 控訴人標章1は,別紙控訴人標章目録記載1のとおり,図形部分と, その上方に毛筆体で横書きした「大観」の文字部分及び「白砂青松」の 文字部分とからなる結合商標である。 図形部分は,長方形の黒色の枠線の中に,背後に白い山が見える,白 い砂浜に松林の続く海岸の風景画を図形化したものであり,図形部分の 大きさは,控訴人標章1全体の約5分の4を占めている。 しかるところ,「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分は, 図形部分と重なっていないこと,「大観」の文字部分は図形部分の長方 形の黒色の枠線からやや離れた上方に配置されていることから,長方形 の黒色の枠線で囲まれた図形部分と「大観」の文字部分及び「白砂青 松」の文字部分は,明瞭に区別して認識することができる。 また,図形部分の左下部には毛筆体で縦書きした「大観」の署名及び 落款印の印影が表記されており,図形部分は,横山大観作の「白砂青\n松」という作品名の絵画を図形化したものであることが認められるが (乙68ないし82),横山大観作の上記絵画が,原告商標の指定商品 「日本酒」の需要者である一般消費者の間に広く認識されるに至ってい るものと認めるに足りる証拠はないことに照らすと,需要者の多くは, 図形部分の風景画は,「白砂青松」の文字部分から連想,想起させる風 景を描いたものと認識することはあっても,横山大観作の上記絵画 景を描いたものと認識することはあっても,横山大観作の上記絵画であ ると認識するものと認めることはできないし,「大観」の文字部分及び 「白砂青松」の文字部分は,図形部分の絵画の作者が横山大観であり, その作品名が「白砂青松」であることを表示するものとして図形部分と\n一体的な関係にあると認識するものと認めることもできない。 そうすると,図形部分と「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字 部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的 に結合しているものとは認められない。 次に,「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分から全体とし て「タイカンハクサセイショウ」又は「タイカンハクシャセイショウ」 の称呼が生じるが,「大観」の文字部分は,控訴人標章1の上方左端に, 「白砂青松」の部分は,「大観」の文字部分よりも大きな文字で控訴人 標章1の上方中央にそれぞれ表示され,「大観」の文字部分は「白砂青\n松」の文字部分よりもやや上方に位置していること,「大観」の文字部 分を構成する文字と「白砂青松」の文字部分を構\成する文字は,字体が 異なり,文字の間隔は「白砂青松」の文字部分の方が広いことに照らす と,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,明瞭に区別して 認識することができるから,分離して観察することが取引上不自然と思 われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。 そして,「白砂青松」の文字部分は,控訴人標章1の上方中央に毛筆 体の大きな文字で表示され,「白砂青松」の文字部分から「ハクサセイ\nショウ」又は「ハクシャセイショウ」の称呼が自然に生じること,「白 砂青松」の文字部分の下方に表示された図形部分は,需要者の多くによ\nって「白砂青松」の文字部分から連想,想起させる風景を描いたものと 認識されることからすると,控訴人標章1が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,控訴人標章1の構成中の「白砂青松」の\n文字部分は,取引者,需要者に対し,被告商品の出所識別標識として強 く支配的な印象を与えるものと認められる。 以上によれば,控訴人標章1から「白砂青松」の文字部分を要部とし て抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断する ことも,許されるというべきである。
(イ) これに対し控訴人は,1)控訴人標章1は,被告商品の瓶のラベルに 使用されているところ,需要者が店頭で日本酒を購入する場合,日本酒 の瓶のラベルにどのような絵柄や文字が記載されているかを確認して商 品を識別するから,ラベルに表示されている文字や絵柄は,全体として\n自他商品識別機能を有しており,しかも,被告商品の瓶のラベルに占め\nる上記絵画部分は,非常に大きいこと,2)「大観 白砂青松」の文字部 分は,横山大観の自筆のものであり,この文字部分から,通常,横山大 観が描いた「白砂青松」という作品名の絵画を連想させるところ,絵画 部分は横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画であることからす れば,上記文字部分と上記絵画部分は,分離して観察することが取引上 不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえるから,控訴人標 章1から「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較し て商標そのものの類否を判断することは許されない旨主張する。 しかしながら,控訴人標章1を構成する図形部分と「大観」の文字部\n分及び「白砂青松」の文字部分とを明瞭に区別して認識することができ ることは,前記(ア)認定のとおりである。 また,上記1)の点については,日本酒を購入する場合,瓶のラベルに どのような絵柄や文字が記載されているかを確認することがあるからと いって,一般に,ラベルに表示されている文字や絵柄が全体としてのみ\n自他商品識別機能を有しているということはできない。\nさらに,上記2)の点については,仮に控訴人標章1の「大観」の文字 部分及び「白砂青松」の文字部分が横山大観の自筆のものであったとし ても,そのことが需要者である一般の消費者の間に広く認識されるに至 っているものと認めるに足りる証拠はない。また,前記(ア)認定のとお り,需要者の多くは,控訴人標章1の図形部分から,その図形部分の風 景画が横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画であると認識する ものと認めることはできない。

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◆原審はこちらです。平成29(ワ)9779

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平成29(行ケ)10214  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月12日  知的財産高等裁判所

 デザイン化された「GUZZILLA」が、引用商標「GODZILLA」から混同生ずるか?(4条1項15号)が争われました。審判では無効理由無しと判断されましたが、知財高裁はかかる審決を取り消しました。両者は、商品・役務がかなり異なりますが、一部の商品について一般消費者によって使用されるとして、混同が認められました。

 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,称呼において相紛らわしいものであっ て,外観においても相紛らわしい点を含むものということができる。
(3) 引用商標の周知著名性及び独創性の程度
ア 怪獣映画に登場する怪獣である「ゴジラ」は,原告によって創作されたもの であり(甲4),「ゴジラ」が著名であることは当事者間に争いがない。 イ 怪獣映画に登場する怪獣である「ゴジラ」には,昭和30年,欧文字表記として引用商標が当てられ,その後,引用商標が「ゴジラ」を示すものとして使用さ\nれるようになったものである(甲7,8)。欧文字表記の引用商標は,我が国において,遅くとも昭和32年以降,映画の広告や当該映画中に頻繁に使用され(甲7,\n8,21,39〜43,46〜50,55,79,80,81の1〜3,82,8 4),遅くとも昭和58年以降,怪獣である「ゴジラ」を紹介する書籍や,これを 基にした物品に多数使用されていること(甲17,18,21,22,26,45, 52〜54,56〜61,63〜73,77,78,86の1,92,101の3, 102の4,162),さらに,怪獣である「ゴジラ」の英語表記として多くの辞書にも掲載されていること(甲125〜129,143〜153)からすれば,引\n用商標は著名であるということができる。
ウ 語頭が「G」で始まり,語尾が「ZILLA」で終わる登録商標は,引用商 標の他には,本件商標を除き見当たらない。架空の怪獣の名称において,語頭が濁 音で始まり,語尾が「ラ」で終わる3文字のものが多いとしても,これらは怪獣「ゴ ジラ」が著名であることの影響によるものと認められ(甲173,174),さら に,欧文字表記において,引用商標と類似するものも見当たらない。エ 以上によれば,引用商標は周知著名であって,その独創性の程度も高いとい うべきである。
(4) 商品の関連性の程度,取引者及び需要者の共通性
ア 商品の関連性の程度
本件指定商品は,第7類「鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,農業用 機械器具,廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置」である。本件指定商品には,専門的・ 職業的な分野において使用される機械器具が含まれる。また,これに加えて,本件 指定商品のうち,「荷役機械器具」には,油圧式ジャッキ,電動ジャッキ,チェー ンブロック,ウインチが,「農業用機械器具」には,刈払機,電動式高枝ハサミ, ヘッジトリマ,草刈機が,含まれる(甲225,226,231〜234,243, 253,乙18)。
これに対し,原告の主な業務は,映画の制作・配給,演劇の制作・興行,不動産 経営等のほか,キャラクター商品等の企画・制作・販売・賃貸,著作権・商品化権・ 商標権その他の知的財産権の取得・使用・利用許諾その他の管理であり(甲135), 多角化している。原告は,百社近くの企業に対し,引用商標の使用を許諾している ところ,その対象商品は,人形やぬいぐるみなどの玩具,文房具,衣料品,食料品, 雑貨等であるなど,多岐にわたる(甲12,83〜96,98〜102,199〜 211(枝番を含む。))。
本件指定商品のうち専門的・職業的な分野において使用される機械器具と,原告 が引用商標の使用を許諾した玩具,文房具,衣料品,食料品,雑貨等とは,前者が, 工場や事業所などの産業現場で,人間の業務を補助する機械であって,専らその性 能や品質などが商品選択の基準とされるのに対し,後者は,日常生活で,一般消費者によって使用される物であって,同種製品との差別化が難しいものであるから,\n性質,用途及び目的における関連性の程度は高くない。 一方,本件指定商品に含まれる油圧式ジャッキ,電動ジャッキ,チェーンブロッ ク,ウインチ,刈払機,電動式高枝ハサミ,ヘッジトリマ,草刈機等の商品は,ホ ームセンター等の店舗やオンラインショッピング,テレビショッピングにおいて, 一般消費者に比較的安価で販売され得るものである(甲235〜242,244〜 252,254(枝番を含む。))。そうすると,これらの商品は,日常生活で, 一般消費者によって使用される物であって,同種製品との差別化が難しいものとい うことができる。これらの商品は,一般的な玩具等とは異なり,使用方法によって は,身体・財産に危険が生じるものではあるが,比較的小型の機械器具であって, その操作方法も比較的単純であるから,専門的な業務用途に限られるものではなく, 特別な知識,能力を有する者のみにその使用が限定されるものでもない。したがって,本件指定商品に含まれる油圧式ジャッキ,電動ジャッキ,チェーンブロック,\nウインチ,刈払機,電動式高枝ハサミ,ヘッジトリマ,草刈機等と,原告が引用商 標の使用を許諾した玩具,雑貨等とは,ホームセンター等の店舗やオンラインショ ッピング,テレビショッピングにおいて,一般消費者に比較的安価で販売され得る ものであり,日常生活で,一般消費者によって使用されるなど,性質,用途又は目 的において一定の関連性を有しているといわざるを得ない。 よって,本件指定商品に含まれる商品の中には,原告の業務に係る商品と比較し た場合,性質,用途又は目的において一定の関連性を有するものが含まれていると いうべきである。
イ 取引者及び需要者の共通性
本件指定商品に含まれる前記油圧式ジャッキ等の,比較的小型で,操作方法も比 較的単純な荷役機械器具及び農業用機械器具の需要者は一般消費者であり,その取 引者は,これらの器具の製造販売や小売り等を行う者である。また,原告が引用商 標の使用を許諾した玩具,雑貨等の需要者は一般消費者であり,その取引者は,こ れらの商品の製造販売や小売り等を行う者である。本件指定商品の取引者及び需要 者の中には,原告の業務に係る商品の取引者及び需要者と共通する者が含まれる。 そして,商品の性質,用途又は目的からすれば,これら共通する取引者及び需要者 は,商品の性能や品質のみを重視するということはできず,商品に付された商標に表\れる業務上の信用をも考慮して取引を行うというべきである。(5) 出所混同のおそれ 以上のとおり,「混同を生じるおそれ」の有無を判断するに当たっての各事情に ついて,取引の実情などに照らして考慮すれば,本件指定商品に含まれる専門的・ 職業的な分野において使用される機械器具と,原告の業務にかかる商品との関連性 の程度は高くない。
しかし,本件商標と引用商標とは,称呼において相紛らわしいものであって,外 観においても相紛らわしい点を含む。また,引用商標は周知著名であって,その独 創性の程度も高い。さらに,原告の業務は多角化しており,本件指定商品に含まれ る商品の中には,原告の業務に係る商品と比較した場合,性質,用途又は目的にお いて一定の関連性を有するものが含まれる。加えて,これらの商品の取引者及び需 要者と,原告の業務に係る商品の取引者及び需要者とは共通し,これらの取引者及 び需要者は,取引の際に,商品の性能や品質のみではなく,商品に付された商標に表\れる業務上の信用をも考慮して取引を行うものということができる。そうすると,本件指定商品に含まれる商品の中には,本件商標を使用したときに, 当該商品が原告又は原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の 関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるものが含まれるといわざるを得な\nい。
ウ 被告は,本件商標は引用商標にただ乗りするものではないし,本件商標を使 用しても引用商標の希釈化は生じないと主張する。 しかし,前記イのとおり,本件指定商品に含まれる油圧式ジャッキ等の取引者及 び需要者は,引用商標が有する力強いイメージに誘引されて,取引を行うことが十分に考えられるから,本件指定商品に本件商標が使用されれば,引用商標の持つ顧\n客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリュ ージョン)を招く結果を生じかねない。
また,被告は,平成8年頃から,コンクリート等を圧搾する機能を有する被告アタッチメントに本件商標を付して使用していることからすれば(甲130,167\n〜170),被告は,引用商標が有する力強いイメージを想起させることを企図し て,被告アタッチメントに,引用商標と称呼において相紛らわしく,外観において も相紛らわしい点を含む本件商標を付していたものといわざるを得ない。さらに, 被告は,本件商標の商標出願日である平成23年11月21日以降ではあるものの, 原告が使用していた「SUPER GODZILLA」「SPACE GOZIL LA」と相紛らわしい「SUPER GUZZILLA」「SPACE GUZZ ILLA」を使用している(甲30,55,62,131,132,136〜13 8,155〜158,161〜165,198)。また,被告は,本件商標の商標 出願日以降ではあるものの,本件商標をタオル,腕時計,手袋,帽子,Tシャツ, パーカー等に付して,広く無償配布及び販売している(甲178〜188,218, 228,229)。加えて,被告は,本件商標の商標登録日以降ではあるものの, 我が国における周知著名な商標と相紛らわしい「ガリガリ君」や「STUDIO G ABULLI」との文字から成る商標につき商標登録出願もしている(甲139〜 142)。これらの被告の行為は,本件商標の商標登録出願時において,本件指定 商品に本件商標が使用されれば,引用商標の持つ顧客吸引力へのただ乗りやその希 釈化を招く結果を生じかねなかったことを間接的に裏付けるものといえる。 このように,本件指定商品に本件商標が使用されれば,引用商標の持つ顧客吸引 力へのただ乗りやその希釈化を招く結果を生じかねないから,被告の主張は採用で きない。

◆判決本文

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平成29(ワ)9779  商標権侵害行為差止請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年4月27日  東京地方裁判所

 日本酒の商標「白砂青松」の商標権侵害事件です。被告は「大観 白砂青松」ですが、書体も文字の大きさも異なり、2段表記されていることから、要部が2つあると判断されました。
 前記認定のとおり,被告商品に貼付されたラベルには,その中央上方に\n「白砂青松」の各文字が,上部左側に「大観」の各文字が配されているが, 「白砂青松」と「大観」は同じ毛筆体でも異なる字体であり,文字の大き さは明らかに「白砂青松」の各文字の方が大きく,文字間の間隔について も「白砂青松」の文字の方が広い。そして,同ラベルの下方には横山大観 の日本画の絵柄が付されている。 上記ラベルの下部に配された絵柄については,被告製品を収める外箱に は付されておらず(乙11,41),被告商品の商品名も「大観 白砂青 松」として販売されていること(乙3〜7)に照らすと,商品に貼付され\nたラベルのデザインというべきものであり,自他識別標識としての機能を\n有するものではないというべきである。また,同絵柄が上記各文字部分と 一体となって被告商品の出所を示すものとして需要者に認識されていた ことをうかがわせる証拠もない。そうすると,上記ラベルのうち,被告標 章として自他商品の識別標識としての機能を有するのは「大観」及び「白\n砂青松」の各文字部分であると認められる。
ウ 対比
そこで,原告商標と,被告標章として自他商品の識別標識としての機能\nを有する「大観」及び「白砂青松」の各文字部分を対比する。 前記のとおり,被告商品に貼付されたラベルにおいて,「白砂青松」と\n「大観」の各文字部分は,文字の大きさ,字体などが異なり,視覚上,両 部分は一体不可分のものではなく,分離して看取することができる。そし て,「白砂青松」と「大観」の各文字部分を比較すると,「白砂青松」を 構成する各文字の方が大きく,中央に記載されており,各文字間の間隔も\n「白砂青松」の方が広いことは明らかである。 また,被告商品を納める外箱においても,「白砂青松」と「大観」の各 文字部分は容易に分離して看取することができ,「白砂青松」を構成する\n各文字の方が相当程度大きく,中央に記載されており,各文字間の間隔も 「白砂青松」の方が広い。 そうすると,被告標章において,需要者に対して商品の出所識別標識と して強く支配的な印象を与えるのは,「白砂青松」の文字部分であるとい そこで,原告商標と被告標章の「白砂青松」との文字部分を対比すると, いずれもその称呼は「ハクサセイショウ」であり,「白い砂と青い松」と の観念が生じる。また,その文字の字体は異なるが,構成される文字は同\n一であることから,その外観も類似する。

◆判決本文

被告の商品は下記ですが、削除される可能性があります。\n

◆大観 白砂青松

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平成29(ワ)39594  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年2月28日  東京地方裁判所

 論点としては、特にありませんが、レアな防護標章に関する侵害事件なので、あげておきます。被告は代理人無しです。
 被告は,本件登録防護標章と同一の標章が付され,本件防護標章登録の指定商品に該当するステッカーである被告各商品をネット通販サイトから入手した上で,平成29年6月19日,「ヤフオク!」に,被告各商品合計4枚が一枚の台紙に付されたものを1800円で出品し,同月21日,これを落札した原告従業員に対して売り渡したとの事実が認められる。被告の上記行為は,商標法67条1号及び2号に該当し,本件商標権を侵害する。

◆判決本文

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平成29(行ケ)10109  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年11月14日  知的財産高等裁判所

 商標登録の無効が争われました。審決は無効理由無し、知財高裁は4条1項15号違反と判断しました。争点は「化粧品」と「男性ファッション誌」との間で、混同を生ずるおそれがあるか否かです。
(ア) 前記(1)ウのとおり,本件雑誌には,少なくとも最近約10年間にわたり, ほぼ毎号,化粧品についての記事が掲載されている。男性ファッション誌の主な対 象は服飾品であるものの,化粧品はファッション全般に関するものとして,男性フ ァッション誌の対象とされているというべきである。 したがって,男性化粧品と男性ファッション誌は,共にファッションに関するも のとして少なからぬ関連性を有するというべきである。
(イ) 男性化粧品と男性ファッション誌の需要者は,いずれも男性向けファッシ ョンに関心のある者と考えられ,共通するというべきである。男性化粧品と男性フ ァッション誌の取引者が異なるからといって,需要者の共通性は何ら否定されない。 したがって,男性化粧品と男性ファッション誌については,需要者が共通する。
(ウ) 本件商標の指定商品は,日常的に消費される性質の商品であり,その需要 者は特別の専門的知識経験を有する者ではないことからすると,これを購入するに 際して払われる注意力は,さほど高いものでないというべきである。
(3) 商標法4条1項15号該当性
以上のとおり,1)本件商標は,引用商標と外観において極めて類似し,観念及び 称呼において共通するのであって,本件商標と引用商標は,極めて類似したもので あること,2)引用商標は,独創性が高いとはいえないものの,数十年にわたり,需\n要者の間に広く認識されていること,3)本件商標の指定商品(男性用化粧品)は, 原告の業務に係る本件雑誌(男性ファッション誌)の対象として,少なからぬ関連 性を有するもので,本件雑誌と需要者が共通することその他需要者の注意力等を総 合的に考慮すれば,本件商標を指定商品に使用した場合は,これに接した需要者に 対し,引用商標を連想させて,当該商品が原告あるいは原告との間に緊密な営業上 の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主\nの業務に係る商品であると誤信され,商品の出所につき誤認を生じさせるおそれが あるものと認められる。 そうすると,本件商標は,商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれが ある商標」に当たると解するのが相当である。
・・・
イ 被告は,本件雑誌の一部に掲載されているにすぎない化粧品について雑誌と の強い関連性を認めるのは,本件雑誌で紹介される全ての商品について雑誌との強 い関連性を認めることとなり,ひいては指定商品「雑誌」について不当に広い権利 範囲を認めることとなり,不合理であると主張する。 しかし,前記(2)ウのとおり,本件雑誌にはほぼ毎号化粧品に関する記事が掲載さ れ,化粧品自体,本件雑誌の対象であることが明らかな服飾品と少なからぬ関連性 を有するものである。そして,引用商標は長期間にわたって周知のものであること に加え,原告がコラボレーション企画等を行っていることをも併せ考慮すれば,い わゆる広義の混同が生じるおそれが認められる。 したがって,指定商品を男性用化粧品とする本件商標を15号該当とすることが 不合理であるとはいえない。

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平成29(行ケ)10094  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年10月24日  知的財産高等裁判所

 地域団体商標を観念させるとして、15号違反に基づく無効を主張しました。審決は理由無し、知財高裁は理由ありと判断しました。本件商標は「豊岡柳(2段併記)」で、地域団体商標は「豊岡杞柳細工」です。
 原告は,平成6年に,伝統的工芸品産業振興協会の伝統工芸士認定事業に 参加し,構成員10名が伝統工芸士の認定を受け,伝統的工芸品表\示事業を開始し て,伝統証紙(経済産業大臣が指定した技術・技法,原材料で製作され,産地検査 に合格した製品に貼られる,「伝統マーク」をデザインした証紙)の表\示を始めた。 そして,原告は,その頃から,原告の商標として「豊岡杞柳細工」の使用を開始し, 平成13年には,更に構成員5名が伝統工芸士の認定を受けた。(甲6の9,7,\n8,9の4)
(ウ) 平成18年4月1日,地域団体商標制度が導入されたことから,原告は, 別紙引用商標目録記載のとおり,「豊岡杞柳細工」の文字からなる引用商標を出願 し,平成19年3月9日,指定商品を兵庫県豊岡市及び周辺地域で生産された杞柳 細工を施したこうり,柳・籐製のかご及び柳・籐製の買い物かごとする地域団体商 標として,設定登録を受けた。(甲2) なお,地域団体商標の制度は,従前,地域の名称と商品(役務)の名称等からな る文字商標について登録を受けるには,使用により識別力を取得して商標法3条2 項の要件を満たす必要があったため,事業者の商標が全国的に相当程度知られるよ うになるまでの間は他人の便乗使用を排除できず,また,他人により使用されるこ とによって事業者の商標としての識別力の獲得がますます困難になるという問題が あったことから,地域の産品等についての事業者の信用の維持を図り,地域ブラン ドの保護による我が国の産業競争力の強化と地域経済の活性化を目的として,いわ ゆる「地域ブランド」として用いられることが多い上記文字商標について,その商 標が使用された結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表\示するもの として需要者の間に広く認識されているときは,商標登録を受けることができると するものである。また,地域団体商標は,事業者を構成員に有する団体がその構\成 員に使用をさせる商標であり,商品又は役務の出所が当該団体又はその構成員であ\nることを明らかにするものである。
・・・・
(オ) 前記(イ)のとおり,「豊岡杞柳細工」は,伝統的工芸品に指定されている ため,通商産業省伝統的工芸品産業室が監修し伝統的工芸品産業振興協会が編集し て年1回発行される冊子「伝統的工芸品の本」に毎回掲載され,豊岡杞柳細工の歴 史,特徴,製法等について,原告商品の写真と一緒に紹介されている。また,前記(ウ) のとおり,引用商標は,地域団体商標として設定登録されているため,経済産業省・ 特許庁が年1回発行する冊子「地域団体商標」に毎回掲載され,引用商標の構成,\n権利者,指定商品,原告商品の写真,連絡先及び関連ホームページのアドレスなど が紹介されている。(甲6の9,21,22)
・・・
イ 前記アの認定事実によれば,豊岡杞柳細工は,豊岡地方において古くから製 作されてきたものであり,経済産業大臣により伝統的工芸品に指定され,「豊岡杞 柳細工」という引用商標が,地域団体商標として設定登録されているものである。 また,引用商標を付した原告商品は,豊岡地方に所在する店舗やミュージアム等の 施設で展示・販売されるほか,東京都内の百貨店等で展示会を開催し,インターネ ットを介した通信販売をするなどして,豊岡地方以外でも販売されている。さらに, 原告商品は,伝統的工芸品に指定され,地域団体商標の登録を受けていることから, 経済産業省がそれぞれ年1回発行する冊子に毎年掲載されているほか,多数の書籍, 雑誌,テレビ等において,豊岡地方の伝統的工芸品であることや,その歴史,製法, 特徴等が紹介されている。これらの事情を考慮すると,引用商標を付した原告商品 は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告又はその構成員の業務を\n示すものとして,需要者の間に広く認識されており,一定の周知性を有していたも のと認められる。 なお,引用商標は,地域の名称である「豊岡」と商品の普通名称である「杞柳細 工」を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる地域団体商標であるから,\nその構成自体は,独創的なものとはいえない。
(4) 商品の関連性その他取引の実情
ア 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 被告は,京都府に在住し,「拓心」の屋号で,かばんの企画,製造,販売 等の事業を営む者である。被告は,平成20年に,伝統的工芸品の作り手とデザイ ナーやプロデューサーなど様々な分野の専門家が交流を図り,パートナーを選択し て新商品開発研究を行って試作品を作り,発表し意見を求める展示会に参加する本\n件事業に加わり,原告のパートナーとなったが,新商品の開発には至らず,同事業 は終了した。(甲13の1〜5,23の2) しかし,被告は,杞柳細工に商品価値を見出したことから,平成22年に本件商 標を出願し,平成23年に本件商標の設定登録を受けた。そして,被告は,本件商 標を付した柳細工のかばん(バッグ,アタッシュケース等。以下,被告の販売する 上記かばんを総称して「被告商品」ということがある。)の製造を開始した。(甲 1,12,23の2・5)
(イ) 被告商品は,豊岡地方のほか,京都府に所在する被告の店舗や百貨店等で 販売されている。また,平成25年及び平成26年に,社団法人京都国際工芸セン ターにおいて,「豊岡柳KAGO展」などと題する展示会が1週間開催されるなど した。(甲23の3・4) さらに,被告商品は,被告が開設したウェブページや他のインターネットのサイ トを介するなどして,通信販売も行われている。(甲23の1)
(ウ) 被告が作成した被告商品のパンフレットや,被告商品の展示会を紹介する ウェブページには,本件商標及び被告商品の写真が掲載されている。そして,上記 パンフレット等に掲載された被告商品の写真は,原告のパンフレット等に掲載され た,原告商品である杞柳細工のかばん類や籠類と外観が類似するものも少なくない。 (甲9の1〜5,10の1〜3,23の1,23の3〜6) イ 本件商標の指定商品は,第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具 入れ,かばん金具」である。一方,前記(3)のとおり,原告商品は,引用商標の指定 商品であるこうり(第18類),かご及び買い物かご(第20類)のほかに,ハン ドバッグ,アタッシュケース等のかばん類も含むものである。 したがって,本件商標の指定商品と原告商品とは,商品の用途や目的,原材料, 販売場所等において共通し,同一又は密接な関連性を有するものであり,取引者及 び需要者が共通する。 また,前記アのとおり,被告商品のパンフレット等に掲載されている被告商品の 写真は,原告商品と外観が類似するものも少なくない。そして,本件商標の指定商 品である「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具」が日常的に 使用される性質の商品であることや,その需要者が特別の専門的知識経験を有する 者ではないことからすると,これを購入するに際して払われる注意力は,さほど高 いものではない。 このような被告の本件商標の使用態様及び需要者の注意力の程度に照らすと,被 告が本件商標を指定商品に使用した場合,これに接した需要者は,前記(2)のとおり 周知性を有する「豊岡杞柳細工」の表示を連想する可能\性がある。
(5) 小括
以上のとおり,1)本件商標は,外観や称呼において引用商標と相違するものの, 本件商標からは,豊岡市で生産された柳細工を施した製品という観念も生じ得るも のであり,かかる観念は,引用商標の観念と類似すること,2)引用商標の表示は,\n独創性が高いとはいえないものの,引用商標を付した原告商品は,原告の業務を示 すものとして周知性を有しており,伝統的工芸品の指定を受け,引用商標が地域団 体商標として登録されていること,3)本件商標の指定商品は,原告商品と同一又は 密接な関連性を有するもので,原告商品と取引者及び需要者が共通することその他 被告の本件商標の使用態様及び需要者の注意力等を総合的に考慮すれば,本件商標 を指定商品に使用した場合は,これに接した取引者及び需要者に対し,原告の業務 に係る「豊岡杞柳細工」の表示を連想させて,当該商品が原告の構\成員又は原告と の間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属す\nる関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され,商品の出所につき誤認を 生じさせるとともに,地域団体商標を取得し通商産業大臣から伝統的工芸品に指定 された原告の表示の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその\n希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を生じかねない。 そうすると,本件商標は,商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれが ある商標」に当たると解するのが相当である。

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平成28(行ケ)10262  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年9月13日  知的財産高等裁判所(1部)

 ワンポイントの図形商標について、知財高裁は「著名であるので混同する」と判断し(15号違反)、混同しないとした審決を取り消しました。
 このように,本件商標がワンポイントマークとして表示される場合などを考える\nと,ワンポイントマークは,比較的小さいものであるから,そもそも,そのような 態様で付された商標の構成は視認しにくい場合があるといえる。また,マーク自体\nに詳細な図柄を表現することは容易であるとはいえないから,スポーツシャツ等に\n刺繍やプリントなどを施すときは,むしろその図形の輪郭全体が見る者の注意を惹 き,内側における差異が目立たなくなることが十分に考えられるのであって,その\n全体的な配置や輪郭等が引用商標と比較的類似していることから,ワンポイントマ ークとして使用された場合などに,本件商標は,引用商標とより類似して認識され るとみるのが相当である(本件商標と引用商標の差異のうち,比較的特徴的である といえる白抜きの逆三角形部分についても,外観において紛れる場合が見受けられ る。)。さらに,多数の商品が掲載されたカタログ等や,スポーツの試合観戦の場合 などにおいては,その視認状況等を考慮すると,特に,外観において紛れる可能性\nが高くなるものといえる。 また,本件商標の指定商品は,「被服」を始め「帽子,メリヤス靴下,スカーフ, サンダル靴,ティーシャツ」等であり,日常的に消費される性質の商品が含まれ, スポーツ用品(運動用具)関連商品を含む本件商標が使用される商品の主たる需要 者は,スポーツの愛好家を始めとして,広く一般の消費者を含むものということが できる。そして,このような一般の消費者には,必ずしも商標やブランドについて 正確又は詳細な知識を持たない者も多数含まれているといえ,商品の購入に際し, メーカー名やハウスマークなどについて常に注意深く確認するとは限らず,小売店 の店頭などで短時間のうちに購入商品を決定するということも少なくないと考えら れる。
(6) 混同を生ずるおそれについて
本件商標と引用商標は,全体的な構図として,配置や輪郭等の基本的構\成を共通 にするものであり,本件商標が使用される商品である被服等の商品の主たる需要者 が,商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない者を含む一般の消費者 であり,商品の購入に際して払われる注意力はさほど高いものとはいえないことな どの実情や,引用商標が我が国において高い周知著名性を有していることなどを考 慮すると,本件商標が,特にその指定商品にワンポイントマークとして使用された 場合などには,これに接した需要者(一般消費者)は,それが引用商標と全体的な 配置や輪郭等が類似する図形であることに着目し,本件商標における細部の形状(内 側における差異等)などの差異に気付かないおそれがあるといい得る。 また,引用商標は,スポーツ用品(運動用具)関連の商品分野において,原告の 商品を表示するものとして,需要者の間において著名であるところ,本件商標の指\n定商品には,引用商標の著名性が需要者に認識されているスポーツ用品(運動用具) 関連の商品を含むものであるから,本件商標をその指定商品に使用した場合には, これに接する需要者は,著名商標である引用商標を連想,想起して,当該商品が原 告又は原告との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグ\nループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれがあるもの というべきである。 したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するものとして商標登録 を受けることができないというべきであるから,これと異なり,本件商標が同号に 該当しないとした審決の判断には誤りがあるといわざるを得ない。
(7) 被告の主張について
ア 被告は,本件商標と引用商標とは,審決が認定した差異以外に,商標の 縦横比の相違,左端頂部の高さの相違,左上部の左傾斜直線の長さの相違を有する ものであり,看者に与える印象が大きく異なるというのが相当であるから,外観に おいて混同を生ずるおそれはない旨主張する。 確かに,本件商標と引用商標とを対比すると,前記のとおり,具体的な構成にお\nいていくつかの相違点が認められるものである。しかしながら,前記認定のとおり, 引用商標は,前記のような図柄であって,原告の商品を表示するものとして,いわ\nゆるスポーツ用品関連の商品分野において,高い著名性を有していたことに照らせ ば,被告が指摘するような具体的構成における差異が存在するとしても,引用商標\nと全体的な輪郭等の構成が共通していると認められる本件商標をスポーツ用品関連\nの商品を含む本件商標の指定商品に付して使用した場合には,これに接する需要者 において,当該商品が原告又は原告との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示に\nよる商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤 信するおそれがあるものというべきである。 また,具体的な構成において引用商標と相違する点があるとしても,その全体的\nな輪郭等の構成が引用商標と客観的に類似性の高いものとなっており,これをワン\nポイントマークとして使用した場合などには,一般の消費者の注意力などをも考慮 すると,出所の混同を生ずるおそれがあることは前記のとおりである。 なお,商標法4条1項15号該当性の判断は,当該商標をその指定商品等に使用 したときに,当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営 業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営\n業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれが存するかどうかを問題とする ものであって,当該商標が他人の商標等に類似するかどうかは,上記判断における 考慮要素の一つにすぎないものである。被告が主張するような差異が存在するとし ても,その点については,本件商標の構成において格別の出所識別機能\を発揮する ものとまではいえないし,単に本件商標と引用商標の外観上の類否のみによって, 混同を生じるおそれがあるか否かを判断することはできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。

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平成28(ネ)10106  商標権侵害行為差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成29年4月25日  知的財産高等裁判所(4部)  東京地方裁判所

 侵害事件において、商標「フェルガード」と「フェルゴッド」が非類似と判断されました。
 まず,本件商標と被告各標章「フェルゴッド」との部分からは,いずれも特定の 観念を生じないものである。 次に,本件商標からは「フェルガード」の称呼を生じ,被告各標章の「フェルゴ ッド」の部分からは「フェルゴッド」の称呼を生じるところ,両称呼は,「フェル」 で始まり「ド」で終わるとの点において共通するが,両称呼を一連に称呼した場合 には,称呼全体の語調,語感において異なる印象を与えるものというべきである。 さらに,本件商標と被告各標章の「フェルゴッド」の部分の外観についてみても, 同様に「フェル」で始まり「ド」で終わるとの点において共通するが,本件商標は 「フェルガード」(標準文字)から成り,「フェル」や「ド」の部分が特に強調さ れているということもなく,この点は被告各標章の「フェルゴッド」の部分につい ても同様であるから,本件商標と被告各標章の「フェルゴッド」の部分とを一体的 に観察すれば,両者の外観は異なる印象を与えるものというべきである。 以上によれば,本件商標が付された原告商品と被告各標章が付された被告各商品 とがいずれもフェルラ酸とガーデンアンゼリカを主成分とする健康補助食品であり, いずれも白色系統色を基調とする外箱を包装とする点,通信販売により販売されて いる点,認知症の患者及びその家族を需要者とする点などにおいて共通すること, 本件商標が付された原告商品について紹介する書籍,論文,記事等が複数存在する ことを考慮しても,なお,本件商標と被告各標章とを対比したときに,需要者にお いて,商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあると認めることはできない から,被告各標章は,本件商標に類似しないというべきである。
・・・
ア 原告は,本件商標を付した原告商品が,フェルラ酸を使用した認知症サプリ メントの先駆け的な商品であって,「フェルラ酸含有食品」といえばまず本件商標 を想起するというほど,本件商標は,医師,認知症患者及びその家族のみならず, 全国的に周知された著名な商標であると主張する。 そこで検討するに,前記4(ア)のとおり,確かに,原告商品を紹介する書籍,論文, 記事等が複数存在することが認められる。しかしながら,上記各書籍の発行部数等 は明らかではないし,論文や会議での発表についてはその対象が相当程度限定され\nたものであることが推認できるほか,上記雑誌等の紹介記事をもっても,本件商標 が具体的にどの程度認知されているのかは判然としないというほかはない。現に, 原告自身が提出する証拠によっても,原告商品の利用者数は5000人ないし60 00人というのであって,我が国の人口や,そのうち認知症に罹患していると推定 される患者数やその家族の人数との比較からしても,本件商標が全国的に周知され た著名な商標であるとは認め難いというほかはない。よって,本件商標の周知性, 著名性を前提として本件商標と被告各標章との対比を行うべきかのような原告の主 張は採用することができない。

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◆原審はこちら。平成28(ワ)8027

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平成28(ワ)17092  損害賠償等請求事件 平成29年1月26日  東京地方裁判所

 図形商標「図形(舞妓さん)+京都赤帽」が、文字商標「赤帽」と非類似と判断されました。
 以上に基づき,原告商標1と被告標章1の類否についてみるに,これら を全体的に観察した場合には,外観,称呼及び観念がいずれも大きく相違 する。また,被告標章1のうちその構成上その余の部分と識別可能\な「京 都赤帽」との文字部分のみをみた場合でも,原告商標1とは「京都」の有 無並びに文字数(2字か4字か)及び音数(4音か7音か)が異なってお り,外観,称呼及び観念共に明確に区別し得ると解される。さらに,原告 商標1と被告標章1は,被告標章1に「赤帽」の文字が含まれることから 称呼等の一部に共通点があるが,被告標章1の構成上この2字のみに着目\nすることは困難と解される上,「赤帽」の語は前記意味を有する普通名詞 であることに照らすと,上記共通点を類否の判断において重視することは 相当でない(なお,原告商標1が周知であるとの原告の主張については後 述する。)。 これに加えて,取引の実情をみるに,本件の証拠上,被告標章1の使用 により原告と被告の提供する役務の間に出所の混同ないしそのおそれが 生じていること,例えば,原告商標1の指定役務の需要者において,地名 と「赤帽」の語を組み合わせた名称が原告(その組合員を含む。以下同じ。) の提供する役務を示すものとして広く認識されていること,被告の提供す る役務が「あかぼう」と略称されていること,原告が舞妓を想起させる図 形を被告による使用開始前から用いていることなどの事情はうかがわれ ない。 以上によれば,原告商標1と被告標章1は類似しないと判断するのが相 当である。
エ これに対し,原告は,被告標章1のうち「赤帽」以外の部分が識別力を 有しないこと,原告商標1が周知であることを理由に,「赤帽」の部分が 被告標章1の要部であり,これが原告商標1と同一であるので,被告標章 1は原告商標1に類似する旨主張する。 そこで判断するに,被告標章1の構成は前記イのとおりであり,「赤帽」\nの文字は「京都赤帽」という一連表記された文字列の一部に存するにとど\nまる一方,舞妓の図形が中央上部に大きく配置されており,これが被告標 章1に接する者の注意を引くことに照らすと,被告標章1のうち「赤帽」 の部分のみが識別力を有し,その余の部分から出所識別機能としての称呼\n又は観念が生じないとは認められない。 また,原告商標1の周知性を裏付ける証拠として原告が提出するのは, 昭和52年〜56年の新聞記事(甲53〜59,60の1),原告作成の 機関誌等(甲60の2〜5)のほか,一部(平成20年発行のサンデー毎 日。甲68)を除いては広く頒布されているか定かでない雑誌の記事等や 放映地域が限られたテレビ報道等(甲70〜75,78,79),専ら子 供向けと解される書籍又は玩具(甲69の1及び2,76,77)にとど まる。さらに,これらの証拠上も,原告が常に「赤帽」と略称されるので はなく,「Akabou」,「あかぼう」等の表示も用いられていること\nが認められる。そうすると,「赤帽」の表示が原告の提供する役務を示す\nものとして原告商標1の指定役務の取引者又は需要者に広く認識されて いると認めるに足りないから,被告標章1のうち「赤帽」の部分が役務の 出所識別標識として強く支配的な印象を与えると解することは困難であ る。 したがって,本件において被告標章1の構成から「赤帽」の部分を抽出\nしてこの部分だけを原告商標1と比較して商標の類否を判断することは 相当でなく(最高裁平成20年9月8日判決・裁判集民事228号561 頁参照),原告の上記主張を採用することはできない。

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平成28(ネ)10073  商標権侵害行為差止請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成28年11月30日  知的財産高等裁判所  横浜地方裁判所

 商標「がばいよか石けん」が登録商標「よか」と非類似との地裁判断が、知財高裁(第4部)でも維持されました。
 これらの事実によれば,「がばい」は,主に佐賀県において,程度が著しいことを 意味する語として使用される方言であるが,前記のとおり平成18年に「佐賀のが ばいばあちゃん」という題名の映画が全国で放映されたのを1つの契機として,前 記アのとおり形容詞「よい」を意味する九州地方の方言である「よか」に接頭語とし て付され,非常によいという意味合いを有する「がばいよか」という語として佐賀 県に関する広告・宣伝に多用されるようになり,現在では,一般に,程度が著しいこ とを意味する佐賀県ないし九州地方の方言として知られるようになったものと推認 することができる。 以上によれば,被告標章1は,全体として,佐賀県ないし九州地方と関連性のあ る,非常に良質な石けんであるとの観念を生じるものというべきである。
(ウ) 「よか」の文字部分の抽出の可否について
前記(ア)のとおり,被告標章1は,全ての構成文字が黒色で同様の書体によって表\ されており,大きさもほぼ同じくらいで,特に目立つ文字はなく,また,文字の配置 により,全体としてまとまった印象を与えるものであるから,下段を構成する5文\n字のうちの2文字である「よか」を分離して観察することは,取引上不自然である といわざるを得ない。 さらに,前記アのとおり,「よか」については,全国的に広く用いられている国語 辞典である広辞苑及び大辞林のいずれにも,形容詞「よい」を意味する九州地方の 方言である旨が記載されていることから,取引者,需要者に対して商品又は役務の 出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということはできない。 以上によれば,被告標章1のうち「よか」の文字部分のみを抽出し,本件商標1と 比較して類否を判断することは相当ではない。 なお,前記(ア)の外観に加え,「よか」と共に下段を構成する「石けん」の文字は,\n本件商標権1の指定商品の1つを示す普通名詞であるから,下段の「よか石けん」 も,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということはできず,した がって,被告標章1のうち下段の文字部分のみを抽出することも,相当ではない。 以上によれば,被告標章1については,全体として一体的に観察して,本件商標 1との類否を判断するのが相当である。
ウ 本件商標1と被告標章1との類否について
前記ア及びイのとおり,本件商標1と被告標章1は,外観において異なることは 明らかであり,本件商標1は,「ヨカ」との称呼及び形容詞「よい」を意味する九州 地方の方言との観念を生じるのに対し,被告標章1は,「ガバイヨカセッケン」との 称呼及び佐賀県ないし九州地方と関連性のある,非常に良質な石けんであるとの観 念を生じるのであるから,称呼及び観念においても異なる。 よって,本件商標1と被告標章1は,類似するものではない。
エ 控訴人らの主張について
控訴人らは,1)一般に,上下二段に表記される商標については,各段から個別の\n称呼が生じるものであること,2)上段の「がばい」は,日本全国の取引者,需要者間 において,出所識別標識として十分に認識されているものとはいい難く,無意義な\n語であること,「よか」には,否定的な意味もあり,「よか石けん」には,「どうでも よい石けん」という否定的な意味もあることから,「がばい」と「よか」を併せて, ものすごく良いといった意味を生ずるとは限らないことに加え,被告標章1は,下 段の「よか石けん」の部分から独立して称呼を生ずるが,「石けん」は,普通名詞で あり,また,「よ」の文字がほかの文字よりも一段と大きく太く記載されており,見 る者の注意を引きつける態様であることから,「よか」が要部となる旨主張する。 しかし,上下二段に表記される商標からどのような称呼が生ずるかは,商標全体\nの構成,各段の構\成等によって様々であり,各段から個別の称呼が生じると一般的 にいうことはできない。また,前記イ(イ)のとおり,「がばい」は,主に佐賀県にお いて使用される方言であるが,平成18年に同語を題名に含む映画が全国で放映さ れたのを1つの契機として,「がばいよか」という語として佐賀県に関する広告・宣 伝に多用されるようになり,現在では,一般に,程度が著しいことを意味する佐賀 県ないし九州地方の方言として知られるようになったものと推認することができる。 「よか」については,広辞苑(乙7)及び大辞林(乙8)のいずれにも,否定的な意 味の記載は,見られない。さらに,前記イ(ア)のとおり,被告標章1の上段の「が」 の文字は,下段の「よ」及び「石」の各文字と共に,ほかの文字よりも若干大きいも のの,目立つほどではなく,見る者の注意を引きつけるものということはできない。 以上によれば,控訴人らの主張は,採用できない。

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平成28(ワ)8027  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成28年10月12日  東京地方裁判所

 「フェルゴッド」と「フェルガード」が非類似と判断されました。双方とも登録されてましたが、商標権侵害として訴訟が提起されました。東京地裁は非類似と判断しました。指定商品が「フェルラ酸,ガーデンアンゼリカ抽出物及びカジメ等を原材料とする健康補助食品」というサプリメントです。
 まず,本件商標と被告各標章「フェルゴッド」との部分からは,いずれも特定の 観念を生じないものである。 次に,本件商標からは「フェルガード」の称呼を生じ,被告各標章の「フェルゴ ッド」の部分からは「フェルゴッド」の称呼を生じるところ,両称呼は,「フェル」 で始まり「ド」で終わるとの点において共通するが,両称呼を一連に称呼した場合 には,称呼全体の語調,語感において異なる印象を与えるものというべきである。 さらに,本件商標と被告各標章の「フェルゴッド」の部分の外観についてみても, 同様に「フェル」で始まり「ド」で終わるとの点において共通するが,本件商標は 「フェルガード」(標準文字)から成り,「フェル」や「ド」の部分が特に強調さ れているということもなく,この点は被告各標章の「フェルゴッド」の部分につい ても同様であるから,本件商標と被告各標章の「フェルゴッド」の部分とを一体的 に観察すれば,両者の外観は異なる印象を与えるものというべきである。 以上によれば,本件商標が付された原告商品と被告各標章が付された被告各商品 とがいずれもフェルラ酸とガーデンアンゼリカを主成分とする健康補助食品であり, いずれも白色系統色を基調とする外箱を包装とする点,通信販売により販売されて いる点,認知症の患者及びその家族を需要者とする点などにおいて共通すること, 本件商標が付された原告商品について紹介する書籍,論文,記事等が複数存在する ことを考慮しても,なお,本件商標と被告各標章とを対比したときに,需要者にお いて,商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあると認めることはできない から,被告各標章は,本件商標に類似しないというべきである。
(6) 原告の主張について
ア 原告は,本件商標を付した原告商品が,フェルラ酸を使用した認知症サプリ メントの先駆け的な商品であって,「フェルラ酸含有食品」といえばまず本件商標 を想起するというほど,本件商標は,医師,認知症患者及びその家族のみならず, 全国的に周知された著名な商標であると主張する。 そこで検討するに,前記4(ア)のとおり,確かに,原告商品を紹介する書籍,論文, 記事等が複数存在することが認められる。しかしながら,上記各書籍の発行部数等 は明らかではないし,論文や会議での発表についてはその対象が相当程度限定され\nたものであることが推認できるほか,上記雑誌等の紹介記事をもっても,本件商標 が具体的にどの程度認知されているのかは判然としないというほかはない。現に, 原告自身が提出する証拠によっても,原告商品の利用者数は5000人ないし60 00人というのであって,我が国の人口や,そのうち認知症に罹患していると推定 される患者数やその家族の人数との比較からしても,本件商標が全国的に周知され た著名な商標であるとは認め難いというほかはない。よって,本件商標の周知性, 著名性を前提として本件商標と被告各標章との対比を行うべきかのような原告の主 張は採用することができない。

◆判決本文

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平成27(行ケ)10174  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年3月23日  知的財産高等裁判所

「チャッカマン」は周知ではあるが、「チャッカボー」と非類似、また、混同もなしとした審決が維持されました。
本件商標と原告使用商標とが非類似の商標であって,両商標において共通する「チ ャッカ」の文字部分も,本件指定商品及び原告商品との関係において,その需要者 に「着火」の語を直ちに想起させるものであって,格別に独創性が高いものではな いから,本件商標は,これに接する需要者をして,原告使用商標を連想させて商品 の出所について誤認,混同を生じさせるおそれある商標とはいえず,かつ,フリー ライド又はダイリューションを招くとまでもいえない。

◆判決本文

◆関連判決はこちち。平成27(行ケ)10173

◆関連判決はこちち。平成27(行ケ)10172

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平成26(ワ)11616  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成28年2月26日  東京地方裁判所

 崩し文字の「楽天」と「皇朝」の間に小籠包の図形があるので、読み「コウチョウ」は抽出されないと判断しました。なお、「皇朝小籠包」とのメニュー表示は商標権侵害とは認めたものの、損害は生じていないと判断されました。なお、下記箇所では、崩し文字ではなく「楽」表\記しています。
 そうすると,被告標章1からは,「ラクテンコーチョー」及び「コーチョー」のほか,「パラダイス ダイナシティ」及び「レジェンド オブ シャオ ロン ボー」という称呼が生じ得るものと解される。 この点に関して原告は,被告標章1は,図形及び文字により構成される標章であり,被告標章2は文字から成る標章であるところ,これらにおいては「楽天」及び「皇朝」の文字が大きく記載され,標章としての強い印象を与え,「楽」は「楽」の簡体字であるがこれを需要者において称呼することはできないから,被告標章1及び2の要部は「皇朝」の文字部分であり,「PARADISE DYNASTY」及び「LEGEND OF XIAO LONG BAO」の部分からは称呼が生じないから,被告標章1及び2からは「コーチョー」の称呼のみが生じる旨主張する。 しかし,被告標章1及び2において,「楽天」及び「皇朝」の黒い文字の間には湯気を上げた小籠包様の図形が茶色で表記されているものの,「楽天」と「皇朝」との間はそれほど離れておらず,「楽」の文字と「天」の文字,「皇」の文字と「朝」の文字の間隔とそれほど異ならず,\n一つのまとまりとしてみれること,「楽」が「楽」の崩し字として辞典類にも記載されていること,右下の落款様の部分は「楽天」と読むことが可能なこと,一般に,「楽天地」といえば「楽しさに満ちた天国のような土地」(広辞苑第6版2924頁)あるいは「楽園」(大辞林第3版2643頁)を意味するところ,「楽天皇朝」の文字部分と欧文字部分「PARADISE DYNASTY」との位置関係から,「楽天」が「PARADISE」に,「皇朝」が「DYNASTY」にそれぞれ対応していることが容易にうかがえることからすると,被告標章1及び2の漢字部分からは「ラクテンコーチョー」との称呼も生じ得るものと認めるのが相当である。
・・・・
前記(2)アのとおり,前提として,「皇朝」が「我が国の朝廷」との意味を有する普通名詞であることからすると,これを商品名である「小籠包」に付したとしても,もとよりその「皇朝」の部分の自他識別力は極めて弱いものというべきである。 そして,前記(2)イのとおり,被告店舗における「皇朝小籠包」の表示の使用方法は,被告店内におけるメニューに「皇朝小龍包」と表\示するものであるところ,被告店舗は,シンガポール発の小籠包専門店と宣伝されているとおり,小籠包をメニューの中心に据えた料理店であること,その他被告店舗の外観や,店内のメニュー等の記載内容からすれば,被告店舗内の小籠包のメニュー表示に「皇朝」との表\記をしても,それは被告店舗のメニューである小籠包を意味することは明らかであるから,被告店舗において供される「皇朝小籠包」につき,原告との出所の誤認を招来するものとは認められない。また,被告店舗で入手可能なリーフレット(甲6の2)においても,被告標章2が付されていること,「皇朝小籠包」の前に被告標章における「湯気を上げた小籠包様の図形」様の小さな図形が記載されていることを併せて見れば,「皇朝小籠包」との記載は,本来「楽天皇朝小籠包」と表\記すべきところをその一部を省略した表記とみることができ,前記(2)イのとおりのリーフレットのその他の記載内容からすると,被告店舗内で使用される限り,需要者である顧客は,「皇朝小籠包」との表示はあくまで被告店舗である「楽天皇朝」の「小籠包」の意味で使用されていると認識するにすぎないというべきであるから,原告との出所の誤認を招来するものとは認められない。\nさらに,前記(2)ウのとおり,原告の提出する証拠によっても,被告のウェブサイトには「皇朝小籠包」と表示するものはなく,その他原告との関連を伺わせる記載ないし表\示や,原告との関連を誤認したレストランガイド等の ウェブサイトの記載ないし表示も証拠上認められない。\n一方,原告は,前記(2)エのとおり,「皇朝」本店の名称を「明朝」と変更しているほか,同オのとおり,原告は「横浜中華街」ないし「中国料理世界チャンピオン」との表示と共に「皇朝」の文字を使用する場合が多く,原告を紹介するウェブサイトの記載もこれら「横浜中華街」ないし「中国料理世界チャンピオン」を強調するものとなっている。\n以上からすると,被告店舗において用いられた「皇朝小籠包」とのメニュー表示のうち,「皇朝」の部分そのものには顧客吸引力が認められず,「皇朝小籠包」との記載が被告店舗内で使用されている限り,当該標章の使用が被告店舗における売上げに全く寄与していないことは明らかであり,その使用によって原告に損害が発生しているものとは認められない。\nそうすると,原告は,被告に対し,法38条3項に基づく実施料相当額の損害を請求することができないというべきである。

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平成27(行ケ)10134  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年2月17日  知的財産高等裁判所

 新聞をにぎわしたタニタとオムロンヘルスケアの争いです。商標「dualscan」について、知財高裁は、類似群コードは異なるけれども、類似する商品と判断し、無効理由なしとした審決を取り消しました。
   商標法施行令は,商標法6条2項に係る区分を定める政令別表において,\n第10類として「医療用機械器具及び医療用品」を挙げているところ,省令別表で\nは,第10類の項目において,「医療用機械器具」が,「手術用キャットガット」や 「人工鼓膜用材料」,「医療用手袋」等とともに列挙されているから,第10類の「医 療用機械器具」とは,本来,医療行為に供することが予定されている商品を指すも\nのと解される。 そうすると,引用商標の指定商品である「体脂肪測定器,体組成計」とは,医療 行為に供する程度の品質,性能を保有することが予\定されている体脂肪率,筋肉量, 基礎代謝量等の体組成の測定機器を指すものというべきである。 確かに,省令別表の第10類には,「おしゃぶり」,「哺乳用具」,「綿棒」,「指サッ\nク」,「業務用美容マッサージ器」,「家庭用電気マッサージ器」や「耳かき」なども 列挙されており,医師による診断,治療の場面以外での使用が想定されているもの や,小型で安価で個人でも入手可能であり,病院以外に家庭での使用が想定されて\nいるもの,機能的に高度とはいえないものが含まれている。しかしながら,これら\nの物品は,いずれも美容,健康に関連する商品という意味において,医療行為の範 ちゅうに属する行為ないし医療行為に関連する行為に供されるものと認められるし, 高度な機能が不要であるとしても,医療行為に供されること,そのために必要な品\n質,性能が求められていることは同様であるから,当該物品に関する省令別表\の分 類は,上記判断を左右しない。
ウ これに対し,政令別表では,第9類として「科学用,航海用,測量用,\n写真用,音響用,映像用,計量用,信号用,検査用,救命用,教育用,計算用又は 情報処理用の機械器具,光学式の機械器具及び電気の伝導用,電気回路の開閉用, 変圧用,蓄電用,電圧調整用又は電気制御用の機械器具」が列挙されているところ, 省令別表では,第9類の項目において,「測定機械器具」として,温度計,圧力計,\n金属材料圧縮試験機,気象観測用機械等の種々のものが列挙されているものの,い ずれも,医療行為に供することを予定したものではないから,省令別表\の「測定機 械器具」が属する第9類の「測量用・・・の機械器具」は,元々,医療行為に供す ることが予定されていない商品を指すものと解される。\nそうすると,本件商標の指定商品である「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重 計,体重計」とは,体脂肪率,筋肉量,基礎代謝量等の体組成や体重の測定機器を 指すというべきである。そして,測定の対象自体は引用商標の指定商品と重なる部 分があるが,医療行為に供することが予定されていないという意味において,医療\n行為に供する場合よりも,品質や性能が劣るものを予\定しているというべきである。 エ なお,原告は,第9類への帰属と第10類への帰属が択一関係にあるこ とを否定すべき旨主張する。しかしながら,商標法6条1項及び2項が,商標登録 出願の際に商品の指定をすること,同商品の指定は,政令で定めた区分に従って行 うことを要求し,これに基づいて政令別表が作成されていること,政令別表\はニー ス協定の規定した国際分類に即して作成されているが,国際分類でも類別表又はア\nルファベット順の一覧表において,多数の多種多様な商品及びサービスが概括的,\n網羅的に記載されていること,政令別表を再区分化した省令別表\では,別表に商品\n名の記載がない場合を例外的な場合と取り扱っていることからすると,政令別表は,\n指定商品を指定するに当たって,可能な限りその中から選択できるように,世上存\nする多数の商品を全て列挙することを目指すものであり,そのうち,同種企業が取 り扱う可能性のある商品の類型ごとに1つの区分を設けたと考えられる。\nしたがって,省令別表は,特定の商品が多数の類型に同時に属することを,本来,\n予定していないと解するのが相当というべきである。「商品及び役務の区分解説」(乙\n3,4)においても,医院又は病院で専ら使用される電子応用の機械器具は,例外 的に,第9類の電子応用機械器具及びその部品に含まれないこと,第9類の「測定 機械器具」に該当する器具でも,専ら医療用に使用する測定機械器具については, 第10類の「医療用機械器具」に含まれることが記載されており,第9類と第10 類の商品を区別し,いずれかに分類できることを前提としている。 確かに,特定の商品がどの分類に属するかが不明な場合があることや,特定の分 類に属していた商品が,品質向上に伴って他の分類の属すると評価するのが相当な ことはあり得るといえるが,上記の指定商品の区分を設けた趣旨からして,同時に 複数の類型に帰属することは予定されていないとの前記解釈が左右されるものでは\nない。よって,本件商標の指定商品は,第9類に属するとされている以上,第10 類にも属するとの前提に立つことはできない。
・・・
確かに,「医療用機械器具」に属する具体的な商品では,大型で高額であり,医師 等の専門家でなければ入手し,使用することができないようなものが多く,このよ うな商品については,一般的な消費者が自ら購入することは考えにくく,上記推定 が及ぶものと解される。もっとも,「医療用機械器具」に属する具体的な商品の中に は,上記のような多種多様なものが含まれ,必ずしも一般消費者には入手困難とは いえない類型のものも存在するし,今後,技術革新や取引形態の変化によって,高 性能の低価格帯の製品が普及し,一般消費者も,医療用として使用されている機械\n器具を購入し,使用するようになれば,事後的に,出所について誤認混同するおそ れが生じ得ることになるから,実際に商標が使用されている具体的な商品の使用状 況,取引の実情等によっては,上記推定を及ぼすことが相当でない場合もあるとい うべきである。「類似商品・役務審査基準」において,商取引,経済界等の実情の推 移から,類似と推定した場合でも非類似と認められること,基準上は類似とならな い場合であっても類似と認められることがあると注記しているのも(甲64),例外 を許容する趣旨と解され,上記見解と整合するものである。 (2) 体脂肪計,体組成計,体重計の取引状況
そこで,以下,本件商標の指定商品とこれに関連した引用商標の指定商品の取引 の実情を,具体的に検討することにする。
・・・
以上によれば,本件査定時において,本件商標と引用商標の指定商品に関連する 体脂肪計,体組成計,体重計等の取引の実情に関し,次のことがいえる。
ア まず,業務用として販売されている体組成計及び体重計は,医療用とし て使用することを想定した機能や性能\を有し,医療用製品に該当するといえるとこ ろ,家庭用の体組成計及び体重計のシェアが極めて高い原告と被告は,医療用製品 の製造者でもある。また,医療用の体組成計しか製造していないメーカーが存在す る一方,医療用の体組成計を製造していない家電メーカーも存在し,家庭用の製品 と医療用の製品に関し,シェアが一致しているとは認められない。
イ 次に,メーカーによって,販売用のカタログの種類,掲載対象は異なる が,家庭用の体組成計や体重計のシェアが高い被告は,家庭用と業務用の両方を掲 載したカタログを用意している。また,多数の医療機器販売メーカーのカタログに おいて,小型の体脂肪計,体組成計,体重計が掲載され,販売されているが,その 中には,原告や被告の製品で,業務用のものと家庭用のものの両方が含まれている ため,医療関係者は,医療用機器の購入時に家庭用機器も併せて購入対象として検 討することになる。 小売店における体脂肪計,体組成計,体重計の販売では,業務用の大型のものは 展示されていないが,健康意識の向上に伴い,血圧計や体温計といったヘルスケア に関する製品と一緒に展示されており,一般消費者は,家庭用体組成計,体脂肪計 及び体重計を,健康維持や病気予防の目的で使用できる製品と近い性質のものと認\n識し得る。 また,近時は,ネット販売の増加もうかがわれるところ,体脂肪計,体組成計, 体重計のネット販売は,家電メーカー,医療機器メーカーに限られず,オフィス用 品取扱会社などにおいても取り扱われており,医療関係者の購入を前提とし,医療 用製品を主に取り扱うウェブサイトもあれば,一般消費者の購入を前提とし,家庭 用製品を主に取り扱うウェブサイトもある。前者では,医療用機器として大型の体 重計,体組成計以外に小型の製品も掲載され,医療用に限定されず,家庭用の体組 成計,体重計が販売されていることが多いため,主たる需要者である医療関係者に とって,医療用機器と同様に,家庭用機器が購入検討対象となる。しかも,医療用 製品を主として取り扱うウェブサイトであっても,一般消費者がアクセスすること 自体に制限はなく,購入も禁止されていないため,一般消費者も需要者となること があり,その場合の購入対象は,家庭用機器に必ずしも限られず,医療用機器も候 補となる。他方,一般消費者向けのウェブサイトであっても,業務用体重計が販売 される場合もあり,医療用製品が購入候補になることもあるし,リンクが貼られた\n業務用製品販売通販サイトへアクセスすることで,他の医療用製品等が購入候補と なることもある。
ウ さらに,医療用と家庭用の体脂肪計,体組成計,体重計において,そ の品質及び価格は様々であるが,医療用と同程度の品質及び価格が用意されている 業務用のものは,医療現場以外の学校やフィットネスクラブ等でも使用され,学生 やフィットネスクラブの会員である一般消費者が,直接接する場合がある。 具体的には,医療現場に設置されることが多いと考えられる業務用の製品は,価 格が100万円を超えるものや,一般住宅内での設定が想定できないほど大型のも のがあるが,一方,業務用の体重計であっても,価格が3万円程度で,一般家庭で の購入が十分可能\な製品もある(被告のWB−260A)。 他方,家庭用の体脂肪計,体組成計,体重計であっても,多数の機能が付加され\nていることが通常であり,1万円を超えることも珍しくない。これらの家庭用の体 重計等は,家庭用計量器の基準しか満たさないものとはいえ,その測定対象や測定 単位が医療用のものと同様のことがあり,医療関係の研究論文で使用される程度の 精度を備えていて,医療現場で購入される場合もある。
エ このように,家庭用の体重計の需要者である一般消費者は,医療用の 体組成計,体重計も入手可能な状況となっていたといえる上に,医療用の体組成計,\n体重計は,医療現場での利用に限定されず,学校やフィットネスクラブ,企業等で も利用されるから,その需要者は,医療関係者に限定されず,学校関係者やフィッ トネス関係会社,企業の物品購入部門,健康管理部門の従業員も含まれる。そして, 医療用の体組成計及び体重計のシェアの正確な数値は不明であるが,被告の医療用 の体組成計の販売台数は相当数に及び,販売シェアも小さくないから,これらの需 要者は,家庭等で被告の家庭用の体組成計を目にするだけでなく,学校やフィット ネスクラブ等で被告の医療用の体組成計を目にする機会もあることが推認される。 また,一般消費者の一部を構成する医療従事者は,一般消費者よりも高い注意力\nをもって商品を観察するとはいえ,医療用と家庭用の両方の製品を製造し,家庭用 のシェアの大半を占める原告と被告の製品に日常的に接することになるから,医療 用製品の出所について,家庭用製品の出所と区別して認識することが困難な状況と いえる。 さらに,その他の学校関係者,フィットネス関係会社や企業の物品購入部門,健 康管理部門の従業員には,一般的な消費者も含まれており,しかも,医療用と家庭 用の体重計,体組成計の測定対象は同じであり,性能等が近づきつつあるといえる\n上に,精度の違いは一般消費者には識別し難い場合があることから,性能による明\n確な区別も困難である。
オ よって,本件査定時においては,医療用の「体脂肪測定器,体組成計」 と家庭用の「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」は,誤認混同のお それがある類似した商品に属するというべきである。したがって,審決の指定商品 の類否判断の誤りをいう原告の取消事由3は,理由がある。

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平成27(ワ)8132  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 平成28年2月9日  東京地方裁判所

 商標「エアウィーヴ四季布団【和】(なごみ)」が登録商標「なごみ」と類似するかが争われました。裁判所は類似すると判断しました。ただ4億円の売り上げに対する損害としては300万円と1%以下の損害額となりました。
イ 被告ら各標章については,その全体から,「エアウィーヴシキフトンナゴミ」ないし「エアウィーヴシキブトンナゴミ」の称呼が生じ,「エアウィーヴ」の語の周知性及び「四季布団」の漢字の意義から「被告らの製造販売に係るマットレス類であって,年間を通じて使用し得る敷き布団であり,穏やかな気持ち,くつろいだ気分にさせるもの」といった観念が生じると認められる。 一方,被告ら各標章は,称呼上は13音,外観上は14文字及び記号4個又は2個(被告ら標章4は更に縦線)からなる比較的長いものであり,必ずしも一息で発音され,一目で視認され得るものでない。これに加え,被告ら標章1及び2については,「和」の文字が隅付き括弧で囲まれて目立つようになっており,その後ろに括弧付きで「なごみ」と表記されているため,被告ら標章3及び4については,「エアウィーヴ四季布団」の部分と振り仮名付きの「和」の文字部分ないし「【和】(なごみ)」の部分を分けて2段又は2列に表\記され,しかも「和」の文字等が大きいため,いずれもその外観上「和」の読み方を示すものと理解される「なごみ」の部分が,「エアウィーヴ四季布団」の部分から独立 して,被告ら各標章に接した需要者の関心を引くとみることができる。そうすると,被告ら各標章からは,上記の標章全体から生じる称呼及び観念だけでなく,「なごみ」の部分から「ナゴミ」の称呼及びこれに伴う観念が生じると認められる。
ウ 上記ア及びイによれば,本件商標と被告ら各標章は,称呼及び観念を共通にするということができる。
エ さらに取引の実情についてみるに、前記(2)イ認定の通り,本件商標は,被告ら商品の発売の少なくとも約10年前から原告によって本件商標の指定商品に含まれるタオルケット等の商品に使用されている。また,原告は大手の寝具類の製造卸売業者であり,マットレス,敷き布団等も販売している。その上,「なごみ」の語は他社の商品名を含め一般に広く使われる名詞であり,本件商標の指定商品である寝具類を使用した者が穏やかな気持ち,くつろいだ気分になることがあり得るが,これは使用者が主観的に感得するものであり,「なごみ」自体は上記指定商品の効能(保温,吸汗等)を直接表\示するものでない。そうすると,本件商標はその指定商品につき相応の出所表示機能\を有しており,「ナゴミ」と称呼される標章が原告以外のマットレスや敷き布団に使用された場合には,原告の「なごみ」という名称の商品の存在を知っている需要者において,これを原告の商品と誤認するおそれがあるということができる。 一方,被告ら各標章は,被告らの製造販売する商品の名称として広く知られた「エアウィーヴ」の文字及び被告ら商品の特徴を示す造語「四季布団」を含むものであり,これらの部分から「エアウィーヴシキフトン」ないし「エアウィーヴシキブトン」との称呼及び「被告らの製造販売に係るマットレス類であって,年間を通じて使用し得る敷き布団」と ら商品の名称のうち「【和】」の文字等は,被告ら各標章の外観上「エアウィーヴ四季布団」の部分と区別され需要者の関心を引く部分であり,シリーズ商品である「エアウィーヴ四季布団」と区別する指標ともなるから,被告ら商品を指称するに当たり「なごみ」の部分が常に省略されるとは解し難い。そうすると,「エアウィーヴ」が周知であることを考慮しても,被告ら各標章から「ナゴミ」の称呼及びこれに伴う観念が生じることがないとみることはできない。 オ 以上によれば,被告らの前記主張を採用することはできず,被告ら各標章はいずれも本件商標に類似すると判断するのが相当である。
・・・
一方,本件商標を構成する「なごみ」の語は普通名詞であって,複数の業者が各種の商品件商標を使用するタオルケット等と被告らが被告ら各標章を使用する被告ら商品は具体的な用途,機能\等が異なること(同イ及びエ),被告ら各標章中の「エアウィーヴ」の語が被告らのブランドとして周知であり(同エ),被告らは被告ら商品についても各種メディアを通じて宣伝広告活動を行ったこと(甲6〜9,乙4)に照らすと,発売から約2か月で4億円という売上額に達したことについては被告らの営業努力に起因する部分が 大きいと解される。 これらの事情を総合すると,本件における上記金銭の額は,300万円と認めるのが相当である。

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平成27(行ケ)10096  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年1月13日  知的財産高等裁判所

 特許庁の審査基準では、備考類似の商品役務については、第三者から申立があった場合に、判断されます。「プログラムの提供等」と「プログラム」が類似関係にあると判決も認めました。
 本件において,引用商標の指定商品「電子応用機械器具及びその部品」には,「電 子計算機用プログラム」が含まれるところ,遅くとも本件商標の出願時には,電子 計算機用プログラムは,記録媒体に記録された電子計算機用プログラムとして店頭 にて販売されていたのみならず,インターネットを通じたダウンロードにより流通 されており,さらには,インターネット等の通信回線を通じ,サーバ上に保管され た電子計算機用プログラムを使用させる役務として提供されていたものと認められ る(甲132)。 一方,本件商標の指定役務中「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プロ グラムの提供等」の役務で提供される内容は,いずれも「電子計算機用プログラム」 であるから,商品「電子計算機用プログラム」の製造・販売者がかかる役務の提供 を行うことも少なくないものと考えられる。また,商品「電子計算機用プログラム」 の需要者と,役務「電子計算機用プログラムの提供」の需要者は,いずれも,コン ピュータ等を用いて電子計算機用プログラムを使用する者であるから,共通すると いえる。さらに,上記認定のとおり,電子計算機用プログラム自体の流通と,電子 計算機用プログラムの提供とは,共にインターネット等の通信回線を通じて行われ ることもあると解されるから,取引形態も共通する。そして,これらの事情は,電 子計算機用プログラムの用途の内容,例えば,ウェブログの運用管理,オンライン によるブログ作成,インターネット上の情報閲覧などに限られるか否かによって異 なるものとは認められない。 したがって,商品「電子計算機用プログラム」と役務「ウェブログの運用管理の ための電子計算機用プログラムの提供等」とに同一又は類似の商標を使用する場合 は,同一営業主の製造若しくは販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそ れがあると認められる関係があるといえる。
(2) これに対して,原告は,引用商標の指定商品「電子応用機械器具及びその 部品」に含まれる「電子計算機用プログラム」はあくまでも電子応用機械器具の部 品としてのプログラムに限られるから,ウェブサイト上でのコンピュータプログラ ムの提供などとは類似しない,と主張する。 しかし,仮に,特定分野の電子計算機用プログラムが商品としてのみ流通してお り,ウェブサイト上などでは提供されてはいないという状況があったとしても,一 般的には,前記認定のとおり,電子計算機用プログラムが,インターネット等を通 じてダウンロードにより流通されると同時に,サーバ上に保管された電子計算機用 プログラムをインターネット等の通信回線を通じて使用させる役務として提供され ていたものと認められる。商品としてのみ流通している電子計算機用プログラムと, ウェブサイト上などでも電子計算機用プログラムが提供されている場合とで,その 製造・販売・提供者や商品・役務の内容,それぞれの需要者が異なると認めるに足 りる証拠はない。したがって,商品「電子計算機用プログラム」と役務「ウェブロ グの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供等」とに同一又は類似の商標 を使用する場合は,同一営業主の製造若しくは販売又は提供に係る商品又は役務と 誤認されるおそれがあると認められる関係があるといえる。

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平成27(行ケ)10074  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年10月29日  知的財産高等裁判所

 商標「養命青汁」が,「養命酒」と出所混同生ずるか(4条1項15号)が争われました。知財高裁は、混同するとした審決を維持しました。
 引用商標の外観は,前記第2,1のとおり,「養命酒」を漢字で横書きにしたやや デザイン化された毛筆体から成るものであるが,一語一語は同じ大きさの同一書体 である。この構成中の「酒」は,普通名称としての酒(薬用のものを含む。)を示す\nものとして認識され,この「酒」部分の自他商品の出所識別力は乏しく,出所識別 標識として支配的な印象を与えるものではない。一方,引用商標中の「養命」の部 分は,その漢字の意義から,「命を養う」との意味合いを生じさせるものであり,「養 命酒」が薬用酒の中でも極めて著名なブランドとして通用していたことに照らすと, 引用商標中の「養命」部分は,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印 象を与えるものと認められる。そうすると,引用商標が,「養命酒」として著名であ って,「養命」として著名性を獲得しているものでないとしても,引用商標が一連一 体の「養命酒」(ヨウメイシュ)としてのみ観念されるとはいえず,「養命」部分を 基幹部分として認識するものと認められる。したがって,「ヨウメイシュ」のほかに 「ヨウメイ」との称呼も生じる。 他方,本件商標について見ると,本件商標は,漢字横書きの標準文字から成るも のである。「青汁」との語は,「緑色の生野菜をしぼった汁」(広辞苑第6版,株式会 社岩波新書)を意味する普通名称として親しまれたものであり,本件商標中の「青 汁」の部分は,指定商品である,野菜又は野菜及び茶を主原料とする液状の加工食 品,調理用野菜ジュース,飲料用野菜ジュースにおいて使用される際には,単に, 指定商品そのものを示す普通名称であると捉えられ,第5類の野菜を主原料とする 粉状,ゼリー状等の加工食品,サプリメントや,第29類の「乳製品,冷凍野菜…」 や,第32類の「ビール,清涼飲料,果実飲料…」等に用いられた場合には,品質 (原材料)を示すものと捉えられるのであるから,単なる普通名称,あるいは,商 品の品質,性状を示すにすぎないものであって,自他商品の出所識別力は乏しく, 出所識別標識として支配的な印象を与えるものではない。また,簡易迅速性を重ん ずる商品取引の実際においては,その商品に付された商標の一部分だけによって簡 略に呼称,観念することがあるから,本件商標においても,「養命」部分を呼称,観 念することもあり得るものである。 そうすると,本件商標は,「養命」の文字と商品の普通名称の文字によって構成さ\nれるものとして把握され,このような商標に接する取引者,需要者は,本件商標の 全体をもって取引に資するほか,前半の「養命」の文字部分に着目することが少な くない。したがって,「ヨウメイアオジル」のほか,「ヨウメイ」との称呼も生じる。 そうすると,本件商標と引用商標とは,その基幹部分である「養命」において, 外観上実質的に同一であり,称呼「ヨウメイ」においても同一の商標であるといえ る。そして,「養命」の観念においては,「養生」や「健康」を連想させる「命を養 う」との観念が生ずるほか,後記のとおり,被告商品と関連性のある指定商品に用 いられた場合には,極めて著名な薬用酒である「養命酒」と同一又は緊密な関係に ある営業主の業務に係る商品との観念も生ずるものと解される。 以上によれば,引用商標と本件商標は,冒頭の2文字を上記のとおり基幹部分と いえる「養命」が占める点で共通し,この冒頭の「養命」部分は,引用商標では3 文字の漢字のうち2文字,本件商標では4文字の漢字のうち,半分の2文字を占め る点で,看者に強い印象を与え,外観において近似した印象を与える。称呼につい ては,「ヨウメイ」部分の称呼が共通しているが,末尾に付された語は「シュ」と「ア オジル」と差異があるものであり,全体の称呼として,必ずしも類似するとはいえ ない。しかし,引用商標は「命を養う酒」,本件商標は「命を養う青汁」という観念 が生じ,両商標とも「命を養う」飲料のイメージで共通し,上記のとおり,極めて 著名な引用商標の基幹部分を含んでいることから,本件商標について,「養命酒」と 同一又は緊密な関係にある事業主の製造販売に係る青汁,又は,緑の野菜を原料と した飲料といった観念が生じ,観念においても近似するといえる。 したがって,引用商標と本件商標は,ある程度類似しているといえる。
(2) 本件商標の指定商品等には,野菜又は野菜及び茶を主原料とする液状の加 工食品,飲料用野菜ジュース,ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース などの飲料となるものが含まれる一方,被告商品は,薬草等を原料とする薬用酒で あり,健康志向の飲料という点において共通しており,また,本件商標の指定商品 のうちには青汁を原料とする加工品が含まれ,健康維持に関心のある者を需要者層 とするものであって,これらの商品は,薬局や,薬品を中心に雑貨などを取り扱う ドラッグストアにおいて取り扱われる商品であるから,取引者層を共通にするもの であって,本件商標の指定商品と被告商品とは密接な関係を有するといえる。 そして,これらの商品の購入者が,特別な専門的知識経験を有しない一般消費者 であることからすると,当該商品を購入するに際して払われる注意力は,さほど高 いものではない。 以上のとおり,本件商標は,引用商標の基幹部分である「養命」をその構成の一部\nに含むものであり,当該部分の自他商品識別機能が高いと認められる一方,「養命」\n部分の末尾に普通名称が付加されたにすぎないことに照らすと,前記のとおり,原 告が取引者及び需用者を被告商品と共通する本件商標を指定商品に使用した場合, これに接した取引者,需要者は,極めて高い著名性を有する「養命酒」の表示を連\n想し,「青汁」という飲料,原料に用いられる「養命青汁」が,著名な養命酒に配合 された生薬と同一の成分が含有されているなどの養命酒の姉妹商品として,被告の 出所に係るものと誤認するか,あるいは,当該商品が被告との間にいわゆる親子会 社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグル\nープに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され,商品の出所に つき誤認を生じさせるものと認められる。

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◆関連案件です。平成27(行ケ)10073

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平成27(ネ)10037  商標権侵害行為差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成27年11月5日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 商標「湯〜トピアかんなみ」は、「ラドン健康パレス」+「湯〜とぴあ」とは非類似と判断されました。1審では類似するとの判断でした。
 もっとも,原告商標は,その外観上,上段の「ラドン健康パレス」の部分と 下段の「湯〜とぴあ」の部分とから成る結合商標と認められるところ,その文字の色 及び大きさの違い,その配置態様によって,一見して明瞭に区分して認識されるもの であるから,これらの二つの部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われ るほど不可分に結合しているものということはできない。
・・・・
以上の認定事実によれば,「ゆうとぴあ」(「ユートピア」)と称呼される語は,「湯」の漢字を含む場合であると,「湯」の漢字を含まない場合であると,いずれの場合で あっても,入浴施設の提供という役務においては,全国的に広く使用されているとい うことができる。 したがって,原告商標のうち,下段の「湯〜とぴあ」の部分は,入浴施設の提供と いう指定役務との関係では,自他役務の識別力が弱いというべきであるから,取引者 又は需要者をして役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるということ はできず,この「湯〜とぴあ」の部分だけを抽出して,被告標章と比較して類否を判 断することは相当ではない。
(ウ) また,上段の「ラドン健康パレス」の部分は,前記アのとおり,「ラドン」, 「健康」及び「パレス」といういずれも一般的な単語を繋げたものであり,温泉施設 の名称の中で用いられた場合には,それらの単語が持つ個々の意味合いを併せた「ラ ドンを用いた健康によい温泉施設」という程度の一般名称的な意味を示すにすぎず, 入浴施設の提供という指定役務との関係では,自他役務の識別力が弱いというべきで ある。
(エ) そうすると,原告商標の上段部分の「ラドン健康パレス」及び下段部分の「湯 〜とぴあ」の各部分は,指定役務との関係では,いずれも出所識別力が弱いものであ って,両者が結合することによってはじめて,「ラドンを用いた健康によい温泉施設 であって,理想的で快適な入浴施設」であることが明確になるものであるから,原告 商標における「ラドン健康パレス」と「湯〜とぴあ」は不可分一体として理解される べきものである。したがって,原告商標については,上段部分の「ラドン健康パレス」 と下段部分の「湯〜とぴあ」の部分を分離観察せずに,全体として一体的に観察して, 被告標章との類否を判断するのが相当である。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成25(ワ)12646

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平成26(ワ)8869  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成27年9月29日  大阪地方裁判所  棄却

 被告表示「モーノマスター」が「モーノポンプ」と混同が生じているかが争われました。裁判所は、「モーノポンプ」については周知であると認めたものの、混同生じていないと判断しました。
 「モーノポンプ」(原告表示3)について検討するに,上記認定の事実によれば,原告は,原告商品について,「ヘイシン」あるいは「ヘイシン」とともに「モーノポンプ」の表\示(原告表示3)を使用するほか,原告の取扱商品が原告表\示3の商品であるとして長期間販売,広告を続けてきたこと,一軸偏心ねじポンプ市場において原告商品が占める割合は90%を占め,他方,原告以外の一軸偏心ねじポンプを製造販売している会社が,「モーノポンプ」を含む商品名を用いず,それ以外の商品名を使用していたことからすれば,一軸偏心ねじポンプの需要者間においては,「モーノポンプ」は代表的な一軸偏心ポンプの商品名として,すなわち,その製造販売者の原告の商品の出所表\示として,周知になっているものと認められる。
・・・・
「モーノポンプ」と被告表示1「モーノマスター」は,その称呼において異なっている。しかし,「モーノポンプ」のうち,ポンプは機械としてのポンプと認識されるから,原告表\示は,「モーノ」に普通名詞であるポンプという語を結合した商標と認識されるし,他方,被告表示1「モーノマスター」についても,「マスター」は,たとえば被告商品にも多くに見られるように(乙1),ある商品名の末尾に付加して,同商品の優秀性を強調するためによく用いられる用語であるから,連続して記載されていたとしても独立した1語とは認識されず,「モーノポンプ」同様に,「モーノ」に上記意味での「マスター」という語を結合した商標であると認識される。\nそして,「モーノ」は,通常の日本人にとっては,普通名詞とは認識されないものといえるから,原告と被告の両表示に共通する「モーノ」部分が,両表\示のいずれにとってもその要部足り得るものとして注目されることになるはずである。
(2) しかし,上記2(2)のとおり,一軸偏心ねじポンプの需要者間では,「モーノ」は,一軸偏心ねじポンプの発明者と結びつき,一軸偏心ねじポンプの発明者自身,あるいは,その発明した一軸偏心ねじポンプの原理を示すものと認識されるものであって,それ自体としては,出所表示機能\を果たす自他識別力を有さないものである。そうすると,上記需要者の認識を前提とする限り,「モーノポンプ」及び「モーノマスター」とも,「モーノ」部分は要部となり得ないということになり,結局,両表示とも一体の語として観念を比較すべきであることになるから,両表\示の観念は異なるものといわなければならない。したがって,原告表示「モーノポンプ」と「モーノマスター」は類似しているものとは認められないというべきである。\n

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平成25(行ケ)10011  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年5月14日  知的財産高等裁判所

 「DHC ディープクレンジングオイル」は周知であっても「ディープクレンジングオイル」は他社からの販売されていたので、周知性なしとした審決が維持されました。なお、被告は,答弁書その他の準備書面も提出しなかったので、(1)特許庁における手続の経緯等,(2)本件審決の内容の各事実は自白と認められたものの、法的評価は審決のままでした。
 前記(2)のとおり,原告は,平成7年12月に,「DHC ディープクレンジングオイル」という商品名の本件商品を,包装容器の上部に引用商標1を付して販売を開始して以降,通信販売,ホテル等への出荷,全国各地の小売店等で販売を継続し,販売数量については,平成7年12月から平成24年2月までの累計が7935万8050本であったこと,全国紙である日刊新聞への広告の掲載,女性向け雑誌への広告の掲載,原告の販売製品の愛用者向けの月刊会報誌への広告の掲載,新聞への折り込みチラシによる広告や街頭配布のチラシ広告,テレビコマーシャル,電車内の中吊り広告・広告用ステッカー,渋谷駅,名古屋駅及び梅田駅構内の広告等により,大量かつ継続的に本件商品の宣伝広告を行ない,平成11年以降平成21年までの間,継続的に新聞広告に多額の費用をかけ,殊に平成16年以降平成21年までの間のテレビコマーシャルについては,年度によっては数億円単位の広告費用をかけていること,化粧品業界における各化粧品メーカーのディープクレンジングオイルを含むクレンジングの販売について,原告は平成12年以降平成20年に至るまで販売実績及びシェアにおいて第1位であったこと,本件\n 商品は平成15年以降平成20年まで女性向け雑誌の読者が選ぶランキング等において,クレンジング部門で第1位に度々選ばれていることなど,原告による本件商品の販売実績及び宣伝広告実績並びにこれらを通じて得られた知名度によれば,本件商品の商品名を表す引用商標と社会通念上同一と認められる「DEEP CLEANSING OIL」及び「ディープクレンジングオイル」の各商標は,本件商品の販売開始以来,平成13年以降に他の多数の化粧品メーカーが相次いで「ディープクレンジングオイル」を製品名とし,又は製品名に含むクレンジングオイル商品を多数市場に投入するまでは,原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた(周知となっていた)といえる余地がある。
しかしながら,前記(3)のとおり,遅くとも平成13年2月頃から平成22年1月5日までの間に,本件商標及び引用商標に係る指定商品である「クレンジングオイル」を取り扱う化粧品業界において,「ディープクレンジングオイル」の語は,少なくとも他の11社の化粧品メーカーから13以上のブランドで,「主に毛穴の汚れを落としたり余分な角質を取り除いたりするクレンジングオイル」の製品名又は製品名に含まれる語として使用され,これら「ディープクレンジングオイル」の商標を使用したクレンジングオイル商品が市場に出回り続けている。しかも,このように「ディープクレンジングオイル」の商標を使用したクレンジングオイル商品が他の化粧品メーカーから販売され,多数,市場に出回ることについて,本件商標登録の出願時(平成21年11月6日)及び査定時(平成22年7月6日)に至るまで,原告から他の化粧品メーカーに対して,自己の権利を侵害するものとしてその使用の中止を求めたり,権利侵害である旨の警告をしたとの主張立証はなく,また,原告自ら商標登録出願をしたこともなかったのである。その結果,前記(2)ウのとおり,化粧品業界における原告を含めた各メーカーのクレンジングの販売実績及びシェアにおいて,平成17年頃までは原告の販売高は9 0億円前後であるものの,化粧品業界におけるシェアとしては20%に届かず,その後,平成18年以降は販売高及びシェアも漸減し,本件商標登録の査定がされた平成22年は,販売高が64億5000万円,化粧品業界におけるシェアも12.8%にすぎない。また,前記(1)のとおり,もともと「DEEP CLEANSING OIL」及び「ディープクレンジングオイル」は,その用語からして,「皮膚の深部又は深いところからきれいにするクレンジングオイル」という程度の意味合いを有する語として,取引者・需要者によって一般に認識され得るものであるから,上記のように多数の化粧品メーカーから「ディープクレンジングオイル」の商標を使用したクレンジングオイル商品が市場に出回ることにより,クレンジングオイルの取引者・需要者において,当該商標が原告の業務に係る商品を表示するものというよりも,「皮膚の深部又は深いところからきれいにするクレンジングオイル」という上記程度の意味合いを有する商品一般を指すものと認識するに至ることも自然なことというべきである。\nこのように,原告が平成7年12月に本件商品の販売を開始して以降,他の多数の化粧品メーカーが相次いで「ディープクレンジングオイル」を製品名とし,又は製品名に含むクレンジングオイル商品を多数市場に投入するまでは,「DEEP CLEANSING OIL」及び「ディープクレンジングオイル」の各商標は,原告の業務に係る商品を表示するものとして周知となっていたといえる余地があるものの,平成13年以降,多数の化粧品メーカーがクレンジングオイル市場に参入し,「ディープクレンジングオイル」を製品名又は製品名に含むクレンジングオイル商品が多数市場に出回り,これに対して原告から化粧品メーカーに対して,差止請求及び権利侵害の警告等をすることなく,また,同商標について商標登録出願をすることもなく推移することによって,本件商標登録の出願時(平成21年11月6日)及び査定時(平成22年7月6日)においては,「ディープクレンジングオイ\nル」及び「DEEP CLEANSING OIL」の各商標は,クレンジングオイルの取引者・需要者の間において,「皮膚の深部又は深いところからきれいにするクレンジングオイル」というクレンジングオイル商品の品質ないし用途を表示するものとして認識され使用されていたものというべく,そうすると,本件商標登録の出願時及び査定時においては,もはや,「ディープクレンジングオイル」又は「DEEP CLEANSING OIL」の商標の使用された商品に接した取引者・需要者にとって,それが原告の業務に係る商品を表示するものとして周知されていたとまでいうことはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。\n

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平成25(ワ)12646  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成27年2月20日  東京地方裁判所

 商標「湯〜トピアかんなみ」が「ラドン健康パレス/湯〜とぴあ」の権利を侵害するすると判断されました。いずれもロゴ化された商標で、いずれも特許庁に登録されていました。
 前記(2)及び(3)のとおり,原告商標のうち強く支配的な印象を与える部分である「湯〜とぴあ」と,被告標章のうち強く支配的な印象を与える部分である「湯〜トピア」とを対比すると,原告商標の「湯〜とぴあ」の部分から,「ユートピア」の称呼及び「理想的で快適な入浴施設」という程度の観念が生じ,被告標章の「湯〜トピア」の部分からも,「ユートピア」の称呼及び「理想的で快適な入浴施設」という程度の観念が生じることが認められるから,原告商標と被告標章とは,強く支配的な印象を与える部分において同一の称呼及び観念を有するものということができ,また,外観においても,いずれも「湯〜とぴあ」ないし「湯〜トピア」の文字を含み,平仮名か片仮名かの違いがあるにすぎず,実質的に同じ語をその構成に含んでいるということができる。一方で,原告商標と被告標章とは,その文字の字体が異なるほか,原告商標には,「湯〜とぴあ」の文字のほかに「ラドン健康パレス」との文字があり,また,被告標章には,「湯〜トピア」の文字のほか,「かんなみ」の文字,「IZU KANNAMI」及び「SPA」の欧文字並びに花の図形が含まれているが,前記(2)及び(3)のとおり,それらの構成部分は,原告商標又は被告標章において,「湯〜とぴあ」ないし「湯〜トピア」の部分と比べて目立つ部分であるとはいえず,出所識別標識としての機能\を有しているとは認められないので,それらの相違は類否判断に影響を与えるものではない。 そうすると,原告商標及び被告標章からは同一の称呼及び観念が生じること,その外観上も上記のとおり類似性を有することに加えて,前記(4)のとおり,全国の入浴施設については,同一の経営主体が各地において同様の名称を用いて複数の施設を運営することがあることも考慮すると,原告商標と被告標章との外観上の相違点,原告施設と被告施設の所在地,施設の性格及び利用者の層が異なること,原告施設及び被告施設のほかにも「湯ーとぴあ」又はこれに類する名称を用いた施設が全国に複数存在することなどの事情を斟酌したとしても,原告商標と被告標章が,入浴施設の提供という同一の役務に使用された場合には,その需要者において,その役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあると認めるのが相当というべきである。
・・・
同一又は類似の商標であっても,原則として,商標法4条1項11号,同法8条1項,2項の先願や同日出願の規定による制限を受けないものであり(上記改正法の改正附則4条2項,3項,5条1項,3項),また,上記3)ないし6)の登録商標は,いずれも「UTOPIA」,「ユートピア」又は「湯とぴあ」の文字を含むが,「湯ートピア」ないし「湯ーとぴあ」の文字を含むものではなく,そして,上記5)ないし7)の登録商標は,いずれも標準文字から成るものであって,各文字の大きさ及び書体は同一であり,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから,そのうちの一部の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構\成されているということはできないものである。したがって,これら7件の登録商標があるからといって,それらとの比較から,原告商標のうち「湯〜とぴあ」の部分が出所識別機能を果たしていないということはできない。\n

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平成24(行ケ)10454 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年06月27日 知的財産高等裁判所 

 pumaのパロディ商標について、4条1項15号(出所混同)違反、および同7号違反の審決が維持されました。
 原告は日本観光商事社のライセンス管理会社であるが(弁論の全趣旨),日本観光商事社は,本件商標以外にも,欧文字4つのロゴにピューマの代わりに馬や豚を用いた商標や,他の著名商標の基本的な構成を保持しながら変更を加えた商標を多数登録出願し(甲4,5,14),商品販売について著作権侵害の警告を受けたこともあること(甲15,16)が認められる。これらの事実を総合考慮すると,日本観光商事社は引用商標の著名であることを知り,意図的に引用商標と略同様の態様による4個の欧文字を用い,引用商標のピューマの図形を熊の図形に置き換え,全体として引用商標に酷似した構\成態様に仕上げることにより,本件商標に接する取引者,需要者に引用商標を連想,想起させ,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受け,原告は上記の事情を知りながら本件商標の登録を譲り受けたものと認めることができる。そして,本件商標をその指定商品に使用する場合には,引用商標の出所表示機能\が希釈化(ダイリューション)され,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力,ひいては被告の業務上の信用を毀損させるおそれがあるということができる。そうすると,本件商標は,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって引用商標の特徴を模倣して出願し登録を受けたもので,商標を保護することにより,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法1条)に反するものであり,公正な取引秩序を乱し,商道徳に反するものというべきである。

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平成20(ワ)19774 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成22年07月16日 東京地方裁判所

 有料老人ホームについて、被告商標「シルバーヴィラ揖保川」が登録商標「シルバーヴィラ」と類似すると判断されました。なお、損害については、0.5%と判断されました。
 原告登録商標を含む原告標章を付した原告施設は老人福祉法29条に定める有料老人ホームであって(甲116),「老人の福祉を図る」(同法1条)という同法の目的に従った活動をすることが期待されており,被告,被告各施設及び原告施設は,いずれも,営利を主目的とするものではないこと等を考慮すれば,原告登録商標の使用料相当額は,被告各施設の売上額の0.5%とするのが相当である。したがって,前記(3)の被告各施設の売上額11億5351万1363円に対する使用料相当額は,576万7557円となる。

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昭和21(行ケ)10152 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年04月27日 知的財産高等裁判所

 先行商標に類似するして無効とした審決が取り消されました。アンケート結果に対しても言及しました。
 以上からすれば,本件商標において,「POLO」部分のみが,取引者,需要者に対し,商品や役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとか,「RALPHLAUREN」部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないとはいい難い。そうすると,単に「POLO JEANS CO.」とあるだけでなく,その下に「RALPH LAUREN」との赤字部分がある本件商標において,その要部を「POLO」のみと解することは,その外観のみならず,取引の実情(「POLO」は本来普通名詞であるが,「RALPH LAUREN」と結びつくことによって,ラルフローレンのデザインに係る商品としての強い自他識別力が生じており,これを取引者,需要者も理解していること)にも反し,相当ではなく,本件商標における要部は,「POLO」部分及び「RALPH LAUREN」部分を併せたものというべきである。・・・・当裁判所は,前記2のとおり,本件商標の客観的構成や,本件アンケートの結果を除く取引の実情等から,本件商標と引用商標A及びCとは類似しない旨の結論を導いているものであって,当裁判所の上記判断は本件アンケートの結果に依存するものではない。ただ,本件アンケートは,上述したように,その手法等において手堅く合理性の高いものであり,したがって,そのアンケートの結果も,公正で控え目な結論を導こうとしているものとして,首肯しやすいものがあるところ,アンケートの結果によれば,本件商標に接した需要者には,被告の会社やブランドの存在を正確に知っている者は極めて少ないといえるのであるから,この点からも,当裁判所の上記判断は裏付けられるものということができる。\n

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平成21(行ケ)10206 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年01月13日 知的財産高等裁判所 

 図形商標について53条の取り消しが請求されました。混同生じないとして請求理由なしとした審決が維持されました。
 原告商標1は,「HASEKO」の文字部分を有するからこそ,長谷工グループ又は原告その他の同グループに属する各企業を示す商標として周知性を獲得したものであるし,また,長谷工グループ又は原告その他の同グループに属する各企業において,原告商標1から当該文字部分を除いた商標を使用した実績はないのであるから,原告商標1に「HASEKO」の文字部分が存在するのに対し,被告使用商標2には文字部分が存在しないことは,同商標の使用が原告商標1との関係で出所の混同を生じさせる具体的なおそれがないことの極めて重要な根拠となるものというべきである。この点に関し,原告は,原告商標1の文字部分の存在を重視すべきでないとする根拠として,同商標においては,その図形部分が独立して出所識別機能を果たし,文字部分よりも強く取引者及び需要者の印象に残ると主張するが,既に繰り返し説示したとおり,同商標が長谷工グループ又は原告その他の同グループに属する各企業を示す商標として広く認識されるようになったのは,「HASEKO」の文字部分の存在によるというべきであるから,原告の主張を採用することはできない。\n

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平成21(ネ)10031 商標権侵害差止等請求控訴事件 商標権 民事訴訟 平成21年10月13日 知的財産高等裁判所

 商標「Agatha Naomi」が、アクセサリー分野で周知の「Agatha」と類似するかが争われました。1審は一体としてとらえて非類似と認定しましたが、知財高裁は類似するとして、差し止め請求を認めました。
 「被控訴人標章1の各冒頭の文字は,装飾されているが,被控訴人ウェブサイトの名称が「www.agathanaomi.com」である上,同一の画面に被控訴人標章2が表示されることから,その文字が「A」「N」であると理解することが可能\\である。そして,被控訴人各標章は,その外観上,2個の英単語から成るものであって,「Agatha」の語と「Naomi」の語とを組み合わせた結合商標である。このように,被控訴人各標章は,「Agatha」と「Naomi」の2つの語から構成され,それぞれの冒頭は大文字であり,2つの語の間には空白があることにもかんがみると,被控訴人各標章の各構\\成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとまでいうことはできない。そして,上記アのとおり,アクセサリーの分野において「AGATHA」が周知性を有し,取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えることに照らすと,被控訴人各標章からは,「Agatha Naomi」という一連の称呼・観念が生じるとしても,それだけでなく,「Agatha」という称呼・観念も生じ得るものと解するのが相当である。」

◆平成21(ネ)10031 商標権侵害差止等請求控訴事件 商標権 民事訴訟 平成21年10月13日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10363 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成21年04月08日 知的財産高等裁判所

  「印刷物や電子出版物の取引者又は需要者において,「○○+ウォーカー(walker/Walker/WALKER)」との名称が,原告又はその関連会社の発行する出版物等に付される商標と認識されるかが争われました。裁判所は、無効理由無しとした審決を維持しました。
  「原告は,原告が,雑誌「東京ウォーカー/Tokyo Walker」を旗艦誌とし,「情報を示す語」と「ウォーカー/Walker」を含む構成からなる商標を中心に使用することによって事業を展開しており,この原告の使用実績から,取引者及び需要者間において,原告の「○○ウォーカー/Walker」から構\成される商標は,雑誌の内容・テーマ・対象によって,「○○」が異なるということが十分に認識され,そのような商標を原告が使用してシリーズ化した商品展開やそれに関連するサービス展開を行っていることは,広く認識されている,したがって,取引者及び需要者が,「(都市名又は地域名以外の)情報を示す語+ウォーカー/walker」との雑誌等に接すれば,原告関連の商品と認識する,と主張する。しかしながら,このような「情報を示す語」との名詞等は無限といってよいほどに存在するものであるところ,原告が発行した「(都市名又は地域名以外の)情報を示す語+ウォーカー/walker」との雑誌等については,上記のとおり,そのそれぞれの発行の時期,対象地域,対象読者層,情報の内容が異なり,発行も単発的なものも少なくなかったこと,その発行時期も本件商標出願後のものが少なくないこと,後記3のとおり,現在に至るまで,原告とは無関係の第三者が,指定商品に出版物や電子出版物を含む多数の「情報を示す語+ウォーカー/walker」との商標を出願登録していることや,原告とは無関係の第三者が出版する「情報を示す語+ウォーカー/walker」の書籍等が流通していることなどからすると,本件商標の出願時である平成12年12月及び登録査定時である平成14年5月の時点において,そのような無限といってよいほどの「情報を示す語+ウォーカー/walker」との商標について,原告と関連するものであると取引者及び需要者が認識することがあったと認めることはできない。」

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    ◆平成21(行ケ)10014号
    ◆平成21(行ケ)10013号
    ◆平成20(行ケ)10362号
    ◆平成20(行ケ)10361号
◆平成20(行ケ)10363 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成21年04月08日 知的財産高等裁判所

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