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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

創作容易性

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成30(行ケ)10010  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成30年5月30日  知的財産高等裁判所

 特許公報(実案公報)に記載された形状が、意匠法の創作容易性の基礎となる「公然知られた意匠」に該当するのかが争われました。知財高裁は、特許庁発行の公報の目的、および公表の期間、不特定又は多数の者に知られた事実を優に推認できると判断しました。
 意匠法3条2項は,公然知られた形状等に基づいて容易に意匠の創作をする ことができたときは,意匠登録を受けることができない旨を規定している。公然「知 られた」との文言や,同条1項が,刊行物に記載された意匠(同条1項2号)と区別 して「公然知られた意匠」(同条1項1号)を規定していることと対比すれば,「公然 知られた」というためには,意匠登録出願前に,日本国内又は外国において,現実に 不特定又は多数の者に知られたという事実が必要であると解すべきである。
イ 引用意匠1は,昭和54年に公開された公開実用新案公報に記載された意匠 であり,引用意匠2は,昭和61年に公開された公開実用新案公報に記載された意 匠である。したがって,引用意匠1の記載された公報は,本願意匠の登録出願時ま でに37年が,引用意匠2の記載された公報は,同じく30年が,それぞれ経過し ている。 特許庁発行の公報は,閲覧・頒布等によりその内容を周知する目的のものであり, 多数の公共機関に対し交付され,これらの機関の多くにおいて一般の閲覧に供され ている。引用意匠1の記載された公報が発行された翌年の昭和55年当初における 交付先施設数は225か所で,このうち,一般の公開に供している地方閲覧所は1 15か所であり,昭和54年の一般地方閲覧所の公報類の閲覧者数は23万387 9人である(乙1の1・2)。引用意匠2の記載された公報が発行された昭和61年 当初における交付先施設数は211か所で,このうち,一般の公開に供している地 方閲覧所は109か所であり,同年の一般地方閲覧所の公報類の閲覧者数は17万 1665人である(乙2)。 さらに,特許庁では,平成11年3月にインターネットを通じて産業財産権情報 を無料で提供する「特許電子図書館(IPDL)」サービスを開始した。また,その 後,その運営の移管を受けた独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)に おいて,平成27年3月から「特許情報プラットフォーム(J−PlatPat)」 の提供を開始している。J−PlatPatでは,明治以降発行された1億件を超 える公報類や諸外国で発行された公報を蓄積しており,文献番号,各種分類,キー ワード等により検索することが可能である(乙3)。\n
ウ 以上の事実を総合すると,引用意匠1及び引用意匠2の記載された公報が, いずれも,本願意匠の登録出願時まで長期にわたって公然知られ得る状態にあって, 現実に不特定又は多数の者の閲覧に供されたことが認められる。そして,これらの 事実によれば,これら公報に記載された引用意匠1及び引用意匠2に係る形状が, 現実に不特定又は多数の者に知られた事実を,優に推認することができる。
(2) 創作容易性について
本願意匠は,意匠に係る物品を「中空鋼管材におけるボルト被套具」とし,その形 状は,正面視をハット状,平面視を縦長長方形の板状としたものである。 引用意匠1は,建築構成材や建築構\造材に固定される横長長方形板状の支持具の 表面に現れるボルトの頭部を,支持具全体を被覆して保護するボルトカバーに係る\n意匠であり,横長長方形板の左側端部を内側にコ字状に屈曲させ,右側端部をL字 状に屈曲させた形状のものである(甲1)。 引用意匠2は,建築用の支持材に係る意匠であり,全体形状を,長手方向に垂直 な断面をハット状に形成した板状の長尺材としたものである(甲2)。 引用例1によれば,引用意匠1のボルトカバー(7)は,固定板(1)の係止リブ (8a)(8b)に形合するように,その端部の形状が形成されているものであり, 端部の形状は,ボルトカバーを取り付ける箇所等に応じて,当業者が任意に選択で きるものと解される。また,ボルトカバーの幅や長さも,当業者が適宜選択できる ものである。そうすると,建築部材の分野における当業者であれば,引用意匠1の ボルトカバーに,引用意匠2の形状を適用して,ボルトカバーの端部の形状を変更 するとともに,その幅及び長さを変更して,正面視をハット状,平面視を縦長長方 形の板状とすることは,容易になし得ることであるから,本願意匠は,当業者が,引 用意匠1に,引用意匠2を適用して,容易に創作することができたものと認められ る。

◆判決本文

関連事件です。

◆平成30(行ケ)10009

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平成29(行ケ)10188  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成30年3月12日  知的財産高等裁判所

 創作容易であるとした審決が維持されました。
 前記(1)によれば,意匠の創作非容易性は,その意匠の属する分野における通 常の知識を有する者(当業者)を基準に,公然知られた形状,模様若しくは色彩又 はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたか否かを判断して 決するのが相当である(意匠法3条2項)。 本願意匠の「アクセサリーケース型カメラ」は,アクセサリーケースとしての用 途と機能を有し,併せて相手に分からないように撮影し,録画するという隠しカメ\nラとしての用途と機能を有するものである。アクセサリーケースに隠しカメラを設\n置する場合,多種多様な隠しカメラの撮像部の配置を参考にして,適切な設置場所 を決定すると考えられるから,本願意匠に係る当業者は,アクセサリーケースの分 野における通常の知識と,隠しカメラの分野における通常の知識を併せて有する者 である。 前記1(4)のとおり,引用意匠3は,ガム等の収納容器の内部に撮影機能を組み込\nんだ「撮影機能付ボトルケース」であり,引用意匠4は,ティッシュボックスの収\n納容器の内部に撮影機能を組み込んだ「撮影機能\付ティッシュボックス」である。 したがって,「アクセサリーケース型カメラ」の当業者にとって,隠しカメラで ある引用意匠3及び4は,出願前に公然知られた形態といえるから,本願意匠にお ける撮像部の設置場所を決定するに当たり,引用意匠3及び4を参考にすることが できる。
イ 原告は,1)本件審決の認定と異なり,本願意匠と引用意匠3及び4は同じ分 野に属さない,2)本願意匠に係る当業者には,防犯用隠しカメラの分野に関する意 匠を転用する習慣などなく,防犯用隠しカメラの形態が広く知られていたとはいえ ない,などとして,引用意匠3及び4を相違点Aの創作容易性の根拠とすることは, 誤りであると主張する。 しかし,1)本件審決は,本願意匠に係る当業者が,アクセサリーケースと隠しカ メラの双方について,通常の知識を有するものと判断しているのであって,本願意 匠と引用意匠3及び4が同一の分野に属すると判断しているのではないから,原告 の上記主張は前提を異にするものである。また,2)アクセサリーケースに隠しカメ ラを設置する場合,隠しカメラの分野においていかなる形態で撮像部が設置されて いるかを参考にすると考えられるから,本願意匠に係る物品の当業者にとって,公 然知られた隠しカメラの形態は,公知というべきである。 したがって,本件審決が,引用意匠3及び4を相違点Aの創作容易性の根拠とし たことに誤りはない。
(3) 相違点AないしCの創作容易性
ア 引用意匠3(別紙4。甲4)及び4(別紙5。甲5)の形状からすれば,こ れに接した当業者は,隠しカメラの撮像部を収納部とすることを示唆されている。 引用意匠1は,アクセサリーケースを開いて指輪を見せ,ひざまずいた状態でプ ロポーズを行うというアメリカの風習(甲13)に適するよう,撮像部を上蓋部に 設けたものである(甲2)。そこで,これと異なる形で,アクセサリーケースを使 用する場合にも適するよう,撮像部の位置を変更する動機付けが認められる。した がって,撮像部を収納部に設置した引用意匠3及び4を参考にしつつ,引用意匠1 の撮像部を上蓋部から収納部に変更することは,当業者が,容易に創作することが できたものである。 また,一つの要素をある箇所に設ける際に,その箇所の上下左右対称の中心部分 に配置する造形処理は,工業デザイン一般において通常行われていることであるか ら,撮像部を収納部の中央部分に配置することは,特段困難なことではない。そし て,カメラの撮像部の形態を円形とすることはごく普通にみられる広く知られた形 状であり,撮像部の直径を13%から15%に大きくすることは,多少の改変にす ぎない。 したがって,相違点Aに係る本願意匠の形態には着想の新しさ・独創性があると はいえず,引用意匠1に引用意匠3及び4を組み合わせることによって,当業者が 容易に創作することができたものである。
イ 相違点Bについて,引用意匠1の上蓋部の形態を,引用意匠2(甲3。別紙 3)の上蓋部のように,上蓋上面が平坦な略直方体状とすることに,着想の新し さ・独創性があるとはいえず,当業者が,容易に創作することができたものである。
ウ そして,相違点Cについて,スイッチ等の操作部を大きくするような変更は, 操作性の向上等のために行われる特段特徴のない変更である。そうすると,引用意 匠1のスイッチの形態を,特段特徴のない変更をして広く知られた形態である略円 柱状にすることに,着想の新しさ・独創性があるとはいえず,当業者が容易に創作 することができたものである。

◆判決本文

◆本件意匠はこちら。意願2015−24653号

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平成28(行ケ)10054  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成28年11月7日  知的財産高等裁判所

手すりの部分意匠について、創作容易であるとした審決が維持されました。判決文中に本件意匠および引用意匠が提示されています。平面部の透明度がグラデーションで変化するというものです。
 (ウ) 透明の面板を手摺の構成部分に使用する場合において,下を白く着色\nして透明度を低く,上の透明度を高く,下から上にグラデーションにより透明度を 高く変化させることは,公然知られた模様又は色彩であり,これを合わせガラス面 板の模様又は色彩として手摺の構成部分である合わせガラス面板に付することは,\n当業者にとってありふれた手法であることは,前記(1)ウ(イ)のとおりである。 また,着色された部分の色調や透明度をどの程度とするか,透明度がグラデーシ ョンにより変化している部分をどの位置にするか,透明度がグラデーションにより 変化する幅をどの程度にするかについては,構成比率を変更するものにすぎず,こ\nれらの比率を,前記第2の2の甲1の透過率を説明する参考図や使用状態を示す参 考図のようにすることは,当業者にとってありふれた設定であることも,前記(1)ウ (イ)のとおりである。
そして,前記(イ)によれば,平板の合わせガラスを着色するに当たり,合わせガラ スを構成する2枚のガラス板の間の中間膜ないし樹脂層のみに着色し,2枚のガラ\nス板をその全面において透明にすることは,当業者にとってありふれた手法である。 したがって,仮に,グラデーション模様の配されている部位が,ガラス面板であ る合わせガラスを構成する2枚のガラス板の間の中間膜ないし樹脂層に特定されて\nいることを前提としても,本件部分意匠は,意匠登録出願前に当業者が日本国内に おいて公然知られた形状と模様又は色彩の結合に基づいて容易に創作をすることが できたものといえ,意匠法3条2項に該当する。

◆判決本文

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平成27(行ケ)10004  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成27年7月9日  知的財産高等裁判所

 パチンコ、スロットマシンなど画面の意匠(部分意匠)について、創作容易でないとした審決が維持されました。
上記のとおり,差異点(エ)とは,大型数字表示部の下側から右側にかけて倒L\n字状に設けられた2〜3桁の小型数字表示部の配列の差異をいうところ,この小型\n数字表示部は,表\示画面中央上辺寄りに設けられた3桁の大型数字表示部(差異点\n(イ)),表示画面左側上辺寄りに設けられた4桁の中型数字表\示部(差異点(ウ)), 表示画面左側下辺寄りに設けられたドット表\示部と共に,本件部分意匠の美感上の 特徴の一部,すなわち,極めて目立つ大型数字表示部を上辺の中心に置き,その周\n囲に比較的小さな各種データ表示部を配置するという特徴を構\成している要素であ る。 ところが,この差異点(エ)に係る倒L字状の数字表示部群,すなわち,小型数\n字表示部の形態は,引用部分意匠2〜5のいずれにも見られないものであり,また,\n通常の需要者の視覚を通じて生じる美感を基準とする限り,引用部分意匠1の区域 4)〜8)を倒L字状の数字表示部群ととらえることもできない。そして,この倒L字\n状の形態が,ありふれた手法に基づくものであるとか,又は特段の創意を要さない で創作できるとは認め難い(シンプルであるからといって,直ちに,創作が容易で あるとか,美感への影響が微弱であるとはいえない。)。 原告の主張するように,数字表示部の桁数,数字表\示部の大きさ,又は数字表示\n部の配置を多少変更させることは,個別に分断して検討すれば,それほどの創意工 夫とはいえないであろうが,これらを全体的に観察すると,大型数字表示部に隣接\nして配置された多数の数字よりなる小型数字表示部が,倒L字状のものとして,一\n体の美感を形成しているのである。
(2) 差異点(イ)について
前記のとおり,差異点(イ)とは,表示画面中央上辺寄りに設けられた3桁の大\n型数字表示部の有無をいうところ,この形態は,引用部分意匠2〜5のいずれにも\n見られない。また,この形態が,ありふれた手法に基づくものであるとか,又は特 段の創意を要さないで創作できるとは認め難い。 原告は,引用部分意匠2に差異点(イ)に係る構成が顕れている旨を主張する。\nしかしながら,本件部分意匠の大型数字表示部は,表\示画面の最上段に配置され ているところ,引用部分意匠の3桁の大型数字表示部は,表\示画面上方寄りには配 置されているものの,最上段のドット表示部よりは下に配置されているのであり,\n大型数字表示部の配置された位置は,両者で異なるものである(このような数字表\ 示部の配置の入替え〔左右上下前後反転のようなものは含まない。〕と,上記(1)に 説示した数字表示部の単なる配置の変更とは区別されなければならない。)。しかも,\n本件部分意匠では,小型数字表示部及び中型数字表\示部という二段階の対象数字表\n示部との比較において,大型数字表示部の大きさがより強調されているものである。\n数字を大きくすること自体がありふれた手法であるとしても,ありふれた手法に 基づく複数の構成要素を組み合わせることによっても新たな美感は生じ得るのであ\nり,そして,その組合せにこそ創意が発揮されるのである。したがって,意匠の構\n成要素の位置を異にする意匠から,その位置を捨象した構成要素のみを取り出して\nその創意を論じることは,相当ではない。

◆判決本文

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平成26(行ケ)10078 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成26年9月11日  知的財産高等裁判所

 創作容易であるので登録できないとした審決が維持されました。「複数表示された静止画や動画等の選択表\示枠をクリックすることにより当該画像等を拡大表示したり,静止画や動画等の選択表\示枠を左右又は上下の移動操作に合わせて移動させることは,携帯情報端末の当業者にとって本願の出願前に極めて広く知られた手法であるから,審決がこれを顕著な事実と認め,その手法を理由中に提示しなかった点に,拒絶理由を通知しなかった違法や判断遺脱の違法はない」との被告の主張が認められました。
 原告は,審決が,態様(D)及び(E)について何らの証拠を示すことなく,この種物品分野において広く知られた手法であるとして創作非容易性を否定した点で,拒絶理由を通知することなく審決をした違法及び判断遺脱の違法があると主張する(前記第3の3)。しかるに,当該物品分野において広く知られた手法については,発明の属する技術の分野における周知技術と同様,当業者が熟知している事項であるため,本来,審決においてその認定根拠を示すまでもないのであり,このような認定根拠となる文献を示さなかったとしても,意匠法50条3項の準用する特許法50条に違反するということはできない。 そして,態様(D)及び(E)に係る手法が携帯情報端末の当業者にとって広く知られた手法であると認められることは,前記3のとおりであるから,審決において,特段の証拠を示すことなく同旨の判断を示したことは,意匠法50条3項の準用する特許法50条に違反するものではない。また,この点に関して判断の遺脱があったということもできないから,意匠法52条の準用する特許法157条に違反するということもできない。 よって,原告の上記主張は採用することができない。

◆判決本文

◆関連事件はこちらです。平成26(行ケ)10077

◆平成26(行ケ)10076

◆平成26(行ケ)10075

◆平成26(行ケ)10074

◆平成26(行ケ)10073

◆平成26(行ケ)10072

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平成25(行ケ)10287 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成26年03月27日 知的財産高等裁判所

 意匠法3条1項3号に該当するとした審決が取り消されました。最後に3条2項の適用について付言されています。
 被告は,タッチパネルを湾曲させたスマートフォンは本願出願前より既に公知となっており,本願意匠のみの新規な特徴とはいえないし,スマートフォンは使用時に片手に持ったり,画面を指で操作する関係から,筐体全体の形態はもとより,機能キーの形状や配置,カメラレンズの配置等,詳細に確認されるものであって,それら全てが,意匠の特徴部分となり得るのであり,タッチパネルを湾曲させたことのみを過大評価することはできないし,そもそも本願意匠の湾曲の程度はごく僅かなものでしかないので,両意匠の筐体の形態における相違点が類否判断に及ぼす影響は微弱なものにとどまる旨主張する。そして,前記1(3)認定のとおり,携帯電話の意匠において,筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾曲板形状を呈する筐体の形態,及び,正面視すると,上下辺はごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線で,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まる形態は,それぞれ優先日前に公知である。しかし,乙第1号証によれば,携帯電話の意匠においては,本願意匠のような筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾曲板形状を呈する筐体の形態ではなく,むしろ,正面及び背面の大部分が平坦面でかつそれぞれが平行な平坦面をなす平板形状の筐体の形態も多数見受けられることが認められる。そうすると,本願意匠の上記形態は,スマートフォンの形態としてありふれたものであるとまでいうことはできない。しかも,上記認定のとおり,上記の形態は,本願意匠の全体の形状という最も需要者の注意を惹きやすい部分の一つを構成する形態であることも併せ考えると,上記認定のとおり,筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾曲板形状を呈する筐体の形態が公知のものであるとしても,直ちに本願意匠の上記形態が,共通点(A)の形態に埋没してしまい,需要者の注意を惹くものでないということはできない。また,上記の点に照らすと,タッチパネルが湾曲した形態を有すること自体が全体の形状の美観に与える影響が大きいものであるというべきであり,その程度が僅かであるとしても,やはり,需要者の注意を惹くものでないということはできない。なお,被告は,画像を表示するための画面を凹面として湾曲させることは,スマートフォンを含む画面(液晶画面等)を使用する物品においては,本願出願前よりごく普通に見受けられるものであった(乙2ないし6)とか,スマートフォンにおいて,画面を湾曲させたものも本願出願前に既に公知となっているものが見受けられる(乙7ないし11)とも主張する。しかし,スマートフォン以外の物品において画像を表\示するための画面を凹面として湾曲させる形態が公知であったとしても,用途や使用方法が大きく異なる以上,そのことをもって直ちにスマートフォンにおいて画像を表示するための画面を凹面として湾曲させる形態が需要者の注意を惹くものでないことの根拠とすることはできない。また,スマートフォンにおけるものについても,本願意匠とはその形態が大きく異なるもの(乙10,11)も存在する以上,上記乙号各証に示されたスマートフォンないしはその意匠に画面を湾曲させた形態のものが存在するからといって,直ちに上記認定が左右されるものとはいえない。また,乙第1号証によれば,正面視における上下辺の形態や,正面周囲枠の形態についても種々のものが見られることが認められる。そうすると,本願意匠の筐体正面の四隅を曲率半径のやや大きな隅丸とし,上下辺はともにごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線であり,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まっている形態がありふれたものであるとまでいうことはできない。その上,上記形態は,本願意匠の最も需要者の注意を惹きやすい部分の一つを構\成するものであることも併せ考えると,正面視すると,上下辺はごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線で,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まる形態が本願出願前に公知であるとしても,本願意匠の上記形態が共通点(A)の形態に埋没してしまい,需要者の注意を惹くものではないということはできない。
・・・・
以上によれば,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえず,意匠法3条1項3号に該当しないから,審決の判断は誤りであり,原告主張の取消事由は理由がある(なお,当裁判所の前記判断は,本願意匠の意匠法3条1項3号該当性についての審決の判断に対するものであり,当然ながら,本願意匠の同法3条2項について何ら判断するものではない。)。

◆判決本文

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平成25(行ケ)10315 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成26年03月27日 知的財産高等裁判所

 意匠法において、インターネット上で公開された公報について、現実に合計41回ダウンロードされていることから、「公然知られた」に該当するとして、審決が維持されました。意匠法は、特許法と異なり、創作非容易性については、「公然知られた」を要件とするので、このような問題が生じます。
 意匠法3条2項所定の「公然知られた」とは,一般第三者たる不特定人又は多数者に,単に知り得る状態になったことでは足りず,現実に知られている状態になったことを要すると解するのが相当である。すなわち,意匠法3条1項は,意匠登録を受けることができない意匠として,1)出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠(同項1号),2)出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された意匠,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(同項2号)等を別個に列挙している。また,同条2項は,出願前に当業者が日本国内又は外国において「公然知られた」模様等に基づいて容易に創作することができた意匠は,同条1項の規定にかかわらず,意匠登録を受けることができない旨定める。仮に同条1項1号の「公然知られた」意匠の意義を,不特定人又は多数の者が知り得る状態になったことで足りると解した場合には,同項1号を2号と別個に規定した意味が失われてしまうから,同項1号の「公然知られた」意匠とは,不特定人又は多数の者が知り得る状態になったことでは足りず,現実に知られている状態に至ったことを要すると解するのが相当である。そうだとすると,同条2項の「公然知られた」模様等についても,同様に,不特定人又は多数の者が知り得る状態になったことでは足りず,現実に知られている状態に至ったことを要すると解するのが相当である。
・・・・・
イ 判断
引用文献に記載された引用商標からなる模様が本願前に「公然知られた」模様に該当するかにつき検討するに,引用文献は,平成23年4月21日,インターネット公報としてインターネット上で発行されたことにより,一般第三者である不特定人又は多数の者が知り得る状態となったと認められる。のみならず,引用文献は,同月21日から同月末日までの間に,現実に合計41回ダウンロードされており,本願がなされた同年5月16日までにはダウンロードされた回数はさらに増えていたと推測されること,インターネット公報は第三者が自由に閲覧することができるためのものであり,本願は引用文献がインターネット公報として発行された日の25日後になされたものであることに照らすならば,引用文献は,本願時までに,不特定人又は多数の者に現実に知られている状態にあったことに疑いの余地はない。したがって,引用文献に記載された引用商標からなる模様は,「公然知られた」模様に該当し,この点において審決の判断に誤りはない。
(3) 原告の主張に対して
原告は,本願時,インターネット公報の情報を知ることができたのは,前記OSを搭載した高性能,大容量のPC機器を入手し得るか,又は,市販PC機器にウィルス防御ソ\フトを搭載せずにインターネット通信を行う,特定の者に限られ,不特定の者はその情報を知ることはできなかったと主張する。しかし,以下のとおり,原告の主張は失当である。本願時には,上記OSよりも新機種のOSが搭載されたPC機器が既に発売されていたとしても,日本国内において,上記OSが搭載されたPC機器が多数使用されていたと推認される。また,上記OSが搭載された市販PC機器にウィルス防御ソフトを搭載すると,通信が実質的に不可能\であったと認めるに足りる証拠はない。現実に,平成23年4月1日から同月末日までの間に,引用文献は合計41回ダウンロードされており,これらの利用者は,上記OS及びウィルス防御ソフトを搭載した通常の市販PC機器を利用した者であると推認され,一般第三者である不特定人又は多数の者はインターネット公報の情報を入手可能\な状態であったと認められる。
(4) 小括
以上のとおりであるから,引用文献に記載された引用商標からなる模様は,「公然知られた」模様に該当し,原告主張の取消事由1ないし7はいずれも理由がない。2 本願意匠の創作容易性の認定の誤り(取消事由8)について本願意匠は,略横長長方形のシールの正面左側の略正方形の枠の中に,上下を反対にした数字の「7」を2つ,欧文字の「Z」と見えるように並べ,そのほぼ真ん中に「∞」の記号を配置した模様からなる部分意匠である。本願意匠の略正方形の枠の中の模様は,引用商標からなる模様と実質的に同一であり,当業者が引用商標からなる模様に基づいて本願意匠を創作することは容易であると認められる。

◆判決本文

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平成25(行ケ)10160  意匠権 行政訴訟 平成25年11月14日 知的財産高等裁判所

 意匠の創作容易性について、容易であるとした拒絶審決が維持されました。
 原告は,本願意匠及び引用意匠2は,枕状から形成する包装システムの容器に関する意匠であり,当該包装システムの容器では引用意匠1の「容器下側のパネルを底に折り曲げる態様」を採用することはできないのに対し,引用意匠1は,ブランクから形成する包装システムの容器に関する意匠であり,当該包装システムの容器では,生産技術の観点から「容器下側のパネルを底に折り曲げる態様」を採用せざるを得ないのみならず,上下対称にすることはできないから,本件審決は,物品の形状を創作する場合に考慮すべき当該物品の生産技術を無視したものであるなどと主張する。しかしながら,本願意匠の創作非容易性の判断は,引用意匠1及び2に基づいて当業者が容易に創作することができたか否かの観点から決せられるべきであって,生産技術が異なることをもって,直ちに当該形態が容易に創作することができないと判断することは相当ではない。本願意匠及び引用意匠2において,容器下側のパネルを底に折り曲げる態様を採用することが技術的に不可能であるとしても,そのことをもって,引用意匠1において,引用意匠2のフィン及びフラップの上下対称の形態を採用することについて,格別の技術的な障害を認めることはできない。\n

◆判決本文

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平成24(行ケ)10449 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成25年06月27日 知的財産高等裁判所

 部分意匠について創作非容易性要件違反とした審決が維持されました。
 原告は,審決が本件登録意匠部分の個々の部分を分断してそれぞれに創作性を判断した誤りがある旨を主張する。しかしながら,全体的な創作性を判断するに当たり,まず部分の構成の創作性を判断する分析的手法をとることは当然にされるべきことであって,この点に係る原告の主張は失当である。確かに,意匠は,部分的な構\成が他の構成部分と有機的に結合して全体的に美感を生み出すものであるところ,創作性のないありふれた態様のみをまとめあげたものが,その構\成部分との組み合わせや関連において全体として新規な美感を形成する場合もあり得る。しかしながら,審決は,構成【A】〜【E】の個々の創作性の有無等の判断を踏まえた上で,本件登録意匠部分の全体の創作性の判断を加え,なお創作容易性が認められると判断したのであり(審決7頁9〜14行目),原告の上記主張は,審決を正解しないものであり,失当である。\n
(4) 創作容易性について 原告は,本件登録意匠部分は,従来例の遊技機用表示装置の表\示面に左右の視認可能性の向上を図る創作をしたのであり,創作容易性はない旨を主張する。しかしながら,甲3文献には,「【0022】しかしながら、通常、遊技機設置島間に構\成される通路の幅は比較的狭く、さらに遊技用椅子が設置されているために各遊技機49の遊技状況を把握するのは容易ではない。・・・・・得点付与式の遊技機の場合には得点数が遊技者の手元にデジタル表示されるため、概ねの遊技状況を一瞥で把握できないからである。・・・・・得点付与式の遊技機は・・・・・遊技状況を他の遊技客にアピ−ルするアピール度が低いという欠点を有する。つまり、得点が多く付与されている遊技状態にある遊技機を遊技客に見せつけることにより、遊技を行なうべきか否か決めかねている者の遊技意欲を駆り立てる効果が低く、いわゆる客寄せ効果が低いと言える。【0023】アナログ表示部51はかかる得点付与式の遊技機の欠点を補うべく、遊技客に各遊技機49の遊技状況を一瞥で把握させることができるとともに、・・・・・遊技状況を遊技客に存分にアピールすることができることを主目的として設けられている。特にかかる目的を簡易かつ効果的に達成すべく、このアナログ表示部51は、取付面に対して突出する態様で設けられている点にその特徴を有する。・・・・・アナログ表示部51は、山型に突出したその両面に表\示面を有しており、この左右の表示面に同一内容の表\示が行なわれる。・・・・・【0054】・・・・・アナログ表示部51は、遊技機設置島1の幕板部2表\面の所定の取付面72に取付けられている。アナログ表示部51は、取付面72より山型に突出する態様で構\成されており、図5に示すように取付面72に対して所定の傾斜をもって2つの表示面71が設けられている。2つの表\示面71には、それぞれ4つずつランプ73が配置されており、各ランプ73は長方形のカラーレンズ74に覆われている。カラーレンズ74は色付きの透明なプラスチック樹脂でできたものである。また、2つの表示面71は、図6に示すように、左右対称に構\成されている。・・・・・【0057】このように遊技者の持点がレベル基準値に達するごとに2つの表示面71それぞれにおいて対称となる位置にランプ73が1つずつ点灯するため、アナログ表\示部51を左右いずれの方向から見ても遊技者の持点所有状況について大まかに把握可能となる。・・・・・【0058】一方、遊技途中の遊技者も視線を少しずらすだけで他の遊技者の遊技状況を容易に把握できるという利点がある。・・・・・」との記載がある。したがって,本件登録意匠部分と甲3意匠の表示面(71)とは,その視認可能\性という面において用途又は機能を同じくするものというほかない。審決が本件登録意匠部分を甲3意匠の表\示面(71)の形状を基にわずかな微差が加えられたものとして創作容易性を認めた点に誤りはない。

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平成24(行ケ)10042 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成24年07月18日 知的財産高等裁判所

 二輪車のタイヤの意匠について、類似するとした審決が取り消されました。
 被告は,いずれも略同方向に傾斜した長,中,短の三つの溝を1単位とし,これを,赤道を中心として,左右の斜めに向けて,千鳥配置状に配設した点に加え,各溝が並ぶ順番,長中二つの傾斜溝の形状と屈曲の方向,中傾斜溝の長さと位置を一体の共通点Aとして捉え,これらのすべてを満たす公知意匠が存在しないことから,それらを一体として審決が認定した共通点Aは,引用意匠との対比において類否判断に支配的な影響を及ぼすと主張する。しかしながら,「いずれも略同方向に傾斜した長,中,短の三つの溝を1単位とし,これを,赤道を中心として,左右の斜めに向けて,千鳥配置状に配設した点」は,特定の単位の繰返しという意匠全体の構成に関する基本的な態様であるということができるものの,上記のとおり,それだけでは取引者・需要者の注意を引きやすい特徴的な形態であるとはいえず,各溝の並ぶ順番(溝の長さは相対的な評価なので,溝の長さが変化すると,溝の並ぶ順番も変化し得る関係にある。)や,長傾斜溝,中傾斜溝の形状等については,繰返しの単位内における個別的な形状に関するものとして,取引者・需要者の注意を引く特徴的な形態となり得るものである。
(2) 両意匠の類否判断
 上記観点から両意匠を対比するに,本願意匠は,全体として,三つの溝が略等距離を保ち,整然と配置されている印象を与える点に特徴がある。個別的には,長傾斜溝と中傾斜溝につき,溝間の距離に大きな変化はなく,また,いずれも端部と折曲部との間の長い辺部分が略直線状で,サイドウォール寄り端部も斜辺状,すなわち直線状であって,赤道寄り端部は小半円弧状であるものの,端部に向けて溝幅が狭くなることから鋭角的な印象を与え,折曲部の角部も明確であり,短溝についても,長さが短いため,中傾斜溝との溝間の距離の変化を感じさせず,また,端部及び端部を結ぶ辺部分がいずれも略直線状である点に特徴がある。これに対し,引用意匠は,本願意匠と対比してみるときには三つの溝が1単位となっているように観察されるものの,引用意匠それ自体を観察する限りにおいては,全体として,三つの溝がまとまりなく,雑然と配置されている印象を与える点に特徴がある。個別的には,長傾斜溝と中傾斜溝との溝間の距離の変化が大きく,また,三つの溝につき,いずれも一方の端部が毛筆書体における横棒の入り様とした形態であって,足のかかと様に出っ張った部分があり,かつ,この部分の溝幅が広がっていることなどから,当該端部がねじれている印象を与え,さらに,長傾斜溝は他方の端部も丸みを帯びた斜辺の突端をわずかに屈曲させた形状であり,中傾斜溝は溝全体が緩やかに湾曲した形状であり,短溝は毛筆書体における横棒の入り様とした形態が溝全体の約3分の1を占め,他方の端部もわずかに丸みを帯びた斜辺状であって,統一感なくねじれた印象を与える点に特徴がある。上記のとおり,本願意匠の三つの溝は,溝縁が直線であり,端部に向けて溝幅が細くなることから,看者に対し,一方の先端がとがった細い直線により構成され,無機的であり,かつ,非常にすっきりとして,サイドウォールから赤道に向けて流れる印象を与えるような美感を生じさせるものといえる。これに対し,引用意匠の三つの溝は,全体として,基本的に溝幅に変化がないことも相まって,看者に対し,同じ幅の溝が曲線的にねじ曲がった印象,例えていえば,先端の丸まった筒状の細菌あるいは細胞をまとまりなく配した印象を与えるような美感を生じさせるものといえる。\n

◆判決本文

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平成21(行ケ)10051 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成21年08月31日 知的財産高等裁判所

 類似する意匠であるとした審決を取り消しました。
「審決は,差異点を5つ挙げるものの,それらは,いずれも,「僅かな差異」であると判断する。すなわち,差異点(a)については,凹部が1条の螺旋状に形成されているとしても,「僅かな差異」というべきであり,差異点(b)については,凹部が1つずれたことによる平坦面の形状のみに着目すべきでなく,凹部の集合を全体として観察すると「僅かな差異」というべきであり,差異点(c)については,凹部の集合を全体として観察すると,「僅かな差異」というべきであり,差異点(d)については,起点,終点は,注視して探せば発見できる程度のものであって,「僅かな差異」というべきであり,差異点(e)については,本願の凹部が接して配置されていない点は,微差にすぎないというものである。要するに,凹部については,全体の集合のみを対比の対象にすべきであって,凹部相互の配置関係を対比の対象にすべきではないとして,類似するとの結論を導いている。しかし,審決は,「引用意匠」における「意匠としての特徴」や「類似の範囲」について,何らの説明することなく結論を導いており,凹部相互の配置関係を対比の対象にすべきではない点の論証がされているとは到底いえない。また,その結論も上記のとおり誤りがある。」

◆平成21(行ケ)10051 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成21年08月31日 知的財産高等裁判所

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平成21(行ケ)10051 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成21年08月31日 知的財産高等裁判所

 類似する意匠であるとした審決を取り消しました。
「審決は,差異点を5つ挙げるものの,それらは,いずれも,「僅かな差異」であると判断する。すなわち,差異点(a)については,凹部が1条の螺旋状に形成されているとしても,「僅かな差異」というべきであり,差異点(b)については,凹部が1つずれたことによる平坦面の形状のみに着目すべきでなく,凹部の集合を全体として観察すると「僅かな差異」というべきであり,差異点(c)については,凹部の集合を全体として観察すると,「僅かな差異」というべきであり,差異点(d)については,起点,終点は,注視して探せば発見できる程度のものであって,「僅かな差異」というべきであり,差異点(e)については,本願の凹部が接して配置されていない点は,微差にすぎないというものである。要するに,凹部については,全体の集合のみを対比の対象にすべきであって,凹部相互の配置関係を対比の対象にすべきではないとして,類似するとの結論を導いている。しかし,審決は,「引用意匠」における「意匠としての特徴」や「類似の範囲」について,何らの説明することなく結論を導いており,凹部相互の配置関係を対比の対象にすべきではない点の論証がされているとは到底いえない。また,その結論も上記のとおり誤りがある。」

◆平成21(行ケ)10051 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成21年08月31日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10069 審決取消請求事件 意匠権行政訴訟 平成20年08月28日 知的財産高等裁判所

 創作容易であるとした審決が取り消されました。
  「意匠が創作容易であるか否かは,出願意匠の全体構成によって生じる美感について,公知の意匠の内容,本願意匠と公知意匠の属する分野の関連性等を総合考慮した上で判断すべきである。審決は,本願意匠の溝の形状である「三角波状ジグザグ線模様」,「相互90度の位置関係それぞれにおいて同じ構\成とした溝を多数等間隔に配列して交叉させ,間隔を両方同じとする線の配列」等について,これらの構成と共通する公知の文様,配列方法が存在することを理由として(前記第2,2(2)イ,ウ参照),本願意匠は,広く知られた形状,模様により創作容易であると判断した。しかし,審決は,前記1のとおり,本願意匠の構成(基本的態様及び具体的態様)について認定上の誤りがあり,これを前提として創作容易性についての判断をしているから,審決の創作容易性の判断結果も当然に誤りがあるというべきである。・・・・三角波ジグザグ線模様のうちにも,線の太さや各直線部の長さ・形成角度が様々なものがあり,その選択の余地がある上,一種類の三角波ジグザグ線模様を用いて,配列が縦横同じ構\成となるように配列した場合でも,溝間隔の幅によって,ジグザグ線に囲まれて形成される形状は様々であり,それぞれの場合において,当該意匠から受ける印象は異なる可能性がある。したがって,どのような溝間隔の幅を選択するかということは,当該意匠から受ける印象などをも考慮して決定されるものであり,その決定の過程においても相当程度の創作性を要するものと認められ,配列が縦横同じ構\成となるように配列したことから直ちに,意匠の創作について当業者であれば格別の創意・工夫を要しないものと断定することはできない。本願意匠は全体として,溝によって区切られる各研磨面が,前記1(2)?Cのとおりの特有の形状を呈していることから,見る者に対して,繊細さ,鋭さ,不安定さなどを印象づけるものであるといえる。審決の理由が正当であるとする被告の主張は採用できない。(4) 審決には,本願意匠について,意匠法3条2項に規定する意匠に該当し,意匠登録を受けることができないとした点において誤りがあるというべきである。取消事由2は理由がある。」

◆平成20(行ケ)10069 審決取消請求事件 意匠権行政訴訟 平成20年08月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10209等 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟

 創作容易であるとした審決が、取り消されました。裁判所は、下記の付言を呈しました。
  「付言(審判の審理構造及び審理対象に関して)
 意匠登録出願に係る拒絶査定に対する審判の審理の対象は,意匠法17条所定の意匠登録を拒絶すべき事由が存在するか否かである。審判の対象は,審査の過程で審査官が発した「拒絶理由の通知」の当否でもなく,また,拒絶査定に係る拒絶理由の当否でもなく,さらに,請求人の主張の当否でもない。この点は,審判体において,自ら意匠登録をすべき旨の審決ができること(意匠法50条2項),拒絶査定の理由と異なる理由で拒絶すべき旨の審決をすることができること(同条3項)等の法条が設けられていることから明らかである。審判体において,拒絶査定不服審判の請求が成り立たないとの結論を導くためには,意匠法17条所定の条項(例えば同法3条1項,2項など)のいずれかに該当する理由(該当するとの判断に至った論理の過程)を明示することを要する。そして,同条項に該当すると判断するに至った論理の過程を明示するということは,審判体において,?@前提となる法律の解釈に疑義がある場合には,当該法条の解釈を示すこと,?A法条の要件に該当する事実が存在することを明らかにすること,?B事実を法条に適用した結果として,意匠法17条所定の条項(例えば同法3条1項,2項など)に該当するとの論理の過程が成り立つ点を明示することを含む。審判体は,この論理過程を説明する責任を負担し,文書をもって明示することを要する(意匠法52条,特許法157条)。
 ところで,審決書(1)及び(2)を見ると,その「理由」には,「原審の拒絶理由」欄で,拒絶査定に係る拒絶理由の要旨が記載され,「請求人の主張」欄で,拒絶査定を不服とする請求人の主張が記載され,「当審の判断」欄の「請求人の主張の採否について」との項目で,請求人の主張の当否が記載され,同欄の「原審の拒絶理由の妥当性について」との項目で,拒絶理由の当否が記載されてはいるものの,審判体の判断の論理過程を直接的に示した記載部分はなく,結論として,同欄の「本願意匠の創作の容易性について」との項目において,「以上の検討によれば,請求人の主張は採用することができず,原審の拒絶理由は妥当であるから,本願意匠は,出願前に当業者が公然知られた形状に基づいて容易に創作をすることができなものであるといわなければならない」との記載がされているのみである。
 このような審決書(1)及び(2)の理由記載は,その体裁だけで直ちに審決の違法を来すとの結論を導くものであるか否かはさておき,審判体が,本願部分意匠又は本願全体意匠が意匠法3条2項に該当すると判断した論理の過程を的確に示したものということはできない。すなわち,審決書(1)及び(2)の理由は,論理付けの根拠とは無関係かつ不要な事項を含み,審判体の判断の基礎となる論理付けが明りょうでなく,審判の構造に対する誤った認識に基づいた判断であるとの疑念を生じさせるという意味において,妥当を欠くものといえる(特に本件では,少なくとも拒絶理由通知における理由部分は,僅か5行ないし7行からなる,ごく簡単で定型的な記載にすぎないから〔甲13の1,2〕,審判体において,そのような理由が妥当であるとの判断に至ったからといって,当然に,審判体としての結論に至る論理付けとして十\分であるとすることはできない。)。上記の趣旨は,一般の審決書における理由記載においても,同様に留意を要すべき点であるといえる。」

◆平成19(行ケ)10209等 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成19年12月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10078 審決取消請求事件 意匠権行政訴訟 平成19年06月13日 知的財産高等裁判所

   先行意匠から創作容易であるとして拒絶した審決が取り消されました。
  「被告は,?@細長い棒状のピンの中央部の上側に左右対称状に向かい合う一対の小突起をロープ止め突起として形成した態様のものが多数見られること,?A連結紐を2本一対として一体状に形成することも普通に行われること,?B2本の連結紐の間隔を適宜変更して形成することはありふれた手法であることを理由に,連結紐部分を2本一対の連結紐に置き換えることは容易であるから,本願意匠も,当業者にとって容易に創作できたと主張する。しかし,本願意匠のうち個々の構成態様が,ありふれているものであっても,本願意匠は,2本の連結紐をロープ止め突起近くに配設し,その結果それぞれの連結紐とロープ止め突起との間にほぼ三角形に空間を形成すると共に,2本の連結紐の間隔を広くして2本の連結紐と上下のピンの間にロープを配置できる広さを有する横長長方形空間を形成したものであって,その全体の印象として,特有のまとまり感のある,本願意匠の特徴を選択することは,当業者が容易に創作し得たとはいえないから,被告の上記主張は理由がない。もっとも,本願意匠は,例示意匠1,例示意匠2やその他の公知意匠との相違点に照らすと,その登録意匠の範囲(意匠法24条)は,広範なものとはいえないと考えられる。 以上のとおり,本願意匠は,例示意匠1及び例示意匠2によって当業者が容易に創作することができたということはできない。」

◆平成19(行ケ)10078 審決取消請求事件 意匠権行政訴訟 平成19年06月13日 知的財産高等裁判所

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