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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

創作容易性

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

令和5(行ケ)10001  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 令和5年5月31日  知的財産高等裁判所

先行意匠と類似又は、創作容易として無効審判が請求されました。特許庁、裁判所とも、非類似・創作非容易と判断しました。

◆本件意匠はこれです。


ア 本件意匠と甲1意匠とで、意匠に係る物品は、共に生活雑貨などの 家庭用品を収納する容器であって共通するところ、いずれも使用者が 家庭において日常的に使用することを主目的とするものであるから、 その需要者は、個人消費者であると認められる。 そして需要者である個人消費者は、意匠に係る物品の性質、用途及 び使用態様の観点からは、収納容器として物を収納した際の使用のし やすさや持ち運ぶ際の便利さから、物を収納して置いた際と物を収納 せず、単体であるいは複数個を重ねて置いた際には、その美観等の観 点から、両意匠に係る物品を観察し、選択するものということができ る。
そうすると、収納容器として物を収納した際の使用のしやすさや持 ち運ぶ際の便利さの観点からは、収納容器全体の形状等(基本的構成態様)が需要者の注意を惹く部分であるとともに、物を収納して置い\nた際や物を収納せず重ね置いた際の美観等の観点からは、収納容器と しての外形を特徴付ける部分の形態が、最も強く需要者の注意を惹く 部分であるということができる。 そこで、これらを前提に、両意匠が需要者である個人消費者の視覚 を通じて起こさせる美観が類似するか否かについて検討する。
イ 収納容器全体の形状等について、需要者である個人消費者の観点から みると、両意匠は、いずれも上部が開口して下端が水平面状の略逆円 錐台形状である本体部と、一対の紐状の把手部から成るものであって、 本体部の径が下方にいくにつれてしだいに小さくなっており、本体部 の上部に把手部が設けられているとの点(全体の形状、共通点1)、正 面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広が っており、最小横幅と縦幅は、ほぼ同じ長さであるとの点(全体の形 状、共通点2)、及び、右側面から見て、本体部の左右両端は上部にい くにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約95°であ り、最大横幅及び最小横幅の長さは、縦幅よりも小さいとの点(全体 の形状、共通点3)につきいずれも共通するところ、その態様自体は ありふれたものであり、需要者の注意を強く惹くものとはいえない。
しかし、全体の形状のうち、把手部が本体部の長手方向の両側面に設 けられているか(本件意匠の態様c(前記(1)イ(ア)))、把手部が本体部 の短手方向の正面及び背面に設けられているか(甲1意匠の態様c(前 記(1)エ(ア)))の相違(相違点1)については、需要者である個人消費 者が収納容器を持ち運ぶ際の使いやすさや、置いた際の美観の観点か ら、強く注意を惹く部分であって、視覚を通じて起こさせる美観に大 きな影響を与えるものである。
また、各部の形状のうち、正面から見て、本件意匠では、本体部の上 端は倒弓状に形成されて、中央部は略平坦状に現わされており、左端 寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなって、本体部の左右両端の 上端付近との間が先尖り状に現わされている(本件意匠の態様d及び e(前記(1)イ(イ)))のと、本体部の上端は水平状に現されている(甲 1意匠の態様d(前記(1)エ(イ)))との相違、及び、右側面から見て、 本体部の上端はなだらかな略山状に形成されている(本件意匠の態様 e(前記(1)イ(イ)))のと、本体部の上端は水平状に現されている(甲 1意匠の態様e(前記(1)エ(イ)))との相違(相違点3)は、物を収納 して置いた際や、物を収納せず単体で、あるいは複数個重ね置いた際 の美観等の観点からは、収納容器としての外形を特徴付ける部分の形 態であり、強く需要者の注意を惹く部分であるということができると ころ、この相違点が両意匠の美観に与える影響にも大きいものがある ということができる。
さらに、把手部の態様について、本件意匠では、右側面視略U字状に 現わされており、かつ、太めの荒縄状で、軸方向に注連縄状に現わされ ている(本件意匠の態様f(前記(1)イ(イ)))のに対し、甲1意匠では、 正面視略放物線状に現されており、かつ細い紐状で、軸方向に注連縄 状に現されている(甲1意匠の態様g(前記(1)エ(イ)))との相違(相 違点4)は、収納容器を持ち運ぶ際の使いやすさや、置いた際の美観の 観点から、本体部と把手部との視覚的なバランスにおいて、強く注意 を惹く部分であって、この相違点が両意匠の美観に与える影響にも大 きいものがあるということができる。
ウ 本件意匠と甲1意匠では、需要者の注意を惹く基本的構成態様のその余の相違点や、具体的構\成たる各部の形状においてその他にも異なる点があり、これらが美観に与える影響があるところではあるが、少なくと も前記イの相違が両意匠の類否判断に及ぼす影響には大きなものがあ るということができる。 そうすると、本件意匠と甲1意匠は、意匠に係る物品が共通するもの の、その形態においては、需要者に与える美感の観点から、本件意匠と 甲1意匠とは別異のものと印象付けるものであるから、本件意匠は、甲 1意匠に類似するものではない。
・・・・
(2) 本件意匠の当業者については、収納容器に係る分野における通常の知識を 有する者であると認められるところ、本件意匠と甲1意匠及び甲各意匠とを 比較すると、以下のとおりである。 なお、被告は、本件訴訟において提出された甲76号証ないし78号証は、 審決で認定された相違点に関する新たな公知意匠を追加するものであって、 それに基づく主張は直ちに排斥されるべきである旨主張する。 しかし、原告は、これらの書証に係る主張を、いずれも本件意匠の出願当 時の当業者の常識等を認定するための周知例を示す証拠に係る主張として行 っているものと解され、これらの記載内容との対比において新たな無効理由 が存することを主張するものではない。よって、これら証拠に基づく主張は、 審決取消訴訟において認められないものには当たらず、被告の主張は採用で きない(最高裁昭和54年(行ツ)第2号同55年1月24日第一小法廷判 決・民集34巻1号80頁参照)。
ア 甲各意匠の物品等の用途及び機能並びに形態について、以下のとおり認められる。\n
(ア) 甲15(特許庁意匠課平成22年受入れの公知資料番号第HJ22 079731号)の意匠に係る物品は「収納かご」であり、写真中にタ オルを入れている事例が示されていることから、家庭用品を収納する容 器であると認められる。甲15意匠は、全体につき、上部が開口して下 端が水平面状の略逆円錐台形状であって、長手方向の両側面上部に一対 の把手部が設けられており、正面及び左側面から見て左右両端は上部に いくにつれて逆ハ字状に広がっている。
(イ) 甲20(平成20年9月10日公告(公開)の中国発行の公報(CN 300826894D))の意匠に係る物品は「氷はち」であるから、氷 のほか家庭用品を入れる容器であるものと認められる。甲20意匠は、 全体につき、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状である本 体部と、一対の線材の把手部から成るものであり、正面及び左側面から 見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、 底面となす角度は約104°である。
イ 前記1(1)エ(ア)及び(イ)及び前記ア(ア)及び(イ)によれば、家庭用品等を 入れる収納容器の物品分野において、本件意匠の全体の形状のうち、上部 が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状として、径を下方にいくにつ れて次第に小さくし、長手方向の両側面上部に一対の把手部を設けること (本件意匠の態様a及びc(前記1(1)イ(ア)))については、本件意匠の出 願前に公然知られていたものと認められる。
ウ 一方、正面から見た本体部の上端の形状につきみると、甲各意匠につき、 以下のとおり認められる(正面については、本件意匠と同じく本体部の長 手方向を正面とする。)。
・・・
エ 前記ウ(ア)ないし(オ)によれば、これらはいずれも本体部(甲18意匠に ついては左右側面から見た状態も含む)の上端の形状が、略ないし緩やか な凹弧状(甲18については若干非対称)に形成されている。これらは、 本件意匠の正面から見た本体部の上端の形状のうち、上端が倒弓状に形成 され、中央部は略平坦状に現わされて、左端寄り及び右端寄りの曲率が次 第に大きくなり本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状になって いる形状(本件意匠の態様d(前記1(1)イ(イ)))とは異なるものであり、 こうした形状については原告の提出する甲1意匠、甲各意匠及び甲76号 証ないし78号証に示された意匠には認められないところである。 そして、前記1(4)イのとおり、この上端の形状は、収納容器としての外 観を特徴付ける部分の形態であり、最も需要者の注意を強く惹く部分であ る。
オ 本体部開口端部及び本体部底面の外周形状につきみると、甲各意匠につ き、以下のとおり認められる(正面については、本件意匠と同じく本体部 の長手方向を正面とする。)。
・・・
カ 前記オ(ア)ないし(エ)によれば、これらの本体部開口端部及び本体部底面 の外周形状は、不明である(甲15)か、いずれも略円形状(甲17)ない し略楕円形状(甲21)であるか、一方が略楕円形状(甲20)であり、本 件意匠の、本体部開口端部と本体部底面の外周形状が共に略横長トラック形 状である(本件意匠の態様a(前記1(1)イ(ア)))のとは異なるものであり、 これについては、甲1意匠、甲各意匠及び甲76号証ないし78号証に示さ れた意匠には見られないものである。
キ 把手部の形状につきみると、甲各意匠につき、以下のとおり認められる(い ずれも把手部が現れている面を正面とする。)。
・・・
ク 前記キ(ア)ないし(エ)によれば、これらの把手部の紐は軸方向に注連縄状 に現されているが、これらはいずれも本体部開口端部及び本体部底面の外 周形状は略長方形状で、全体に箱状である(甲8ないし10)か、略円形 状で、全体に円筒形状(甲11)であり、本件意匠の、全体に水平面状の 略逆円錐台形状であり、一対の紐状の把手部(本件意匠の態様a(前記1 (1)イ(ア)))が本体部の長手方向の両側面上部に設けられ(同c)、右側面 から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がり、底 面となす角度は約95°で(同e(前記1(1)イ(イ)))、把手部は右側面視 略U字状に現わされており、かつ、太めの荒縄状で、軸方向に注連縄状に 現わされ(同f)、把手部は、本体部の最大縦幅を上から約1:2:2に、 最大横幅を左から約4:5:4に内分した中央の位置にある(同g)のと は異なるものであり、これについては、甲1意匠、甲各意匠及び甲76号 証ないし78号証に示された意匠には見られないものである。 ケ そして、前記エ、カ及びクの、上端が倒弓状に形成され、中央部は略平 坦状に現わされて、左端寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなり本体 部の左右両端の上端付近との間が先尖り状になっているとの点、本件意匠 の、本体部開口端部と本体部底面の外周形状が共に略横長トラック形状で あるとの点、及び、把手部が、右側面視略U字状に現わされており、かつ、 太めの荒縄状で、軸方向に注連縄状に現わされているとの点は、公知の意 匠にはみられない独自のものであり、本件意匠に独特の美観をもたらすも のということができる。
コ 以上の検討によれば、本件意匠の本体部の上端の形状、本体部開口端部 及び本体部底面の形状並びに把手部の形状は、甲1意匠、甲各意匠及び甲 76号証ないし78号証に示された意匠とは異なるものであり、これらが ありふれた手法により変更可能なものあるいは軽微な改変又は単なる寄せ集めではなく、略逆円錐台形状で、正面及び側面から見た本体部の左右\n両端が上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっている全体の形状とまとま り感のある一体の美観を形成している点に、着想の新しさないし独創性が 認められないものではないから、本件意匠は前記意匠から創作容易である とはいえず、審決の判断に誤りはない。

◆判決本文

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令和3(行ケ)10158  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 令和4年6月28日  知的財産高等裁判所

『Wayback Machine』に保存・公開されている意匠を引用意匠として拒絶審決が成されました。知財高裁は審決を維持しました。争点は、本願意匠の意匠に係る物品は、『工具の落下防止コード』であり、部分意匠です。引用意匠はヨット用ハーネスライン(安全ベルト)ですが、創作容易か否かです。

ア 創作容易性の判断方法
・・・
さらに、出願された意匠が、物品等の部分について意匠登録を受けよ うとするものである場合は、その創作非容易性の判断に当たり、「意匠登 録を受けようとする部分」の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの 結合や、用途及び機能を考慮するとともに、「意匠登録を受けようとする部分」を、当該物品等の全体の形状、模様若しくは色彩若しくはこれら\nの結合の中において、その位置、その大きさ、その範囲とすることが、 当業者にとって容易であるか否かについても考慮して判断すべきである。 そして、意匠法3条2項は、物品との関係を離れた抽象的なモチーフ を基準として、それから当業者が容易に創作することができる意匠でな いことを登録要件としたものであって、創作非容易というためには、物 品の同一又は類似という制限をはずし、上記周知のモチーフを基準とし て、当業者の立場からみた意匠の着想の新しさや独創性を要すると解す べきであり(最判昭和49年3月19日同45年(行ツ)第45号民集 28巻2号308頁、最判昭和50年2月28日同48年(行ツ)第8 2号最高裁裁判集民事114号287頁参照)、本願意匠に係る物品と厳 密には同一といえなくても、それと目的又は機能を共通にし、製造又は販売等する業者が共通している物品は、本願意匠に係る物品の当業者が\nその形状等を当然に目にするものと推認されるから、同一の物品分野に 属するものとして、創作容易性を判断する際の資料となるものと解すべ きである。
イ 本件審決における創作容易性の判断の適否
(ア) 物品分野について
a 本願意匠に係る物品である「工具の落下防止コード」は、一方を 人側に、他方を各種工具に取り付けて、人が所持する工具の落下を 防止するものであり、他方、引用意匠2に係る物品である「ハーネ スライン」(安全ベルト)は、一方をヨットのフレーム等側に、他方 を人側に取り付けて、ヨットから人が落下するのを防止するもので あって、落下防止を図るという目的において共通する。また、いず れも、全体が帯状で両端に取付具を有するという形状は共通してお り、一方の端を、落下の防止を図ろうとする目的物に取り付け、他 方の端を、固定された物の側に取り付け、固定された物から目的物 が落下するのを防止するという機能も共通する。いずれの材質・形態についても、目的物の落下を防ぐために必要十\分な強度を有し、取付けや落下の防止が確実・容易にできることが要請される。この ように、本願意匠に係る物品である「工具の落下防止コード」と引 用意匠2に係る物品である「ハーネスライン」(安全ベルト)は、目 的、機能、材質・形態に要請される事項が共通する。
b 本願意匠に係る物品等の製造販売の実態は、次のとおり認められ る。
(a)甲1(本件審決別紙第2)、乙6の1、2によれば、「播州三木 の道具屋『アルデ』」(以下「アルデ」という。)のウェブサイトに おいて、その一番上に「大工さんの道具箱!大工道具・金物の専 門通販なら三木金物オンラインショップ『アルデ』」との記載があ り、「カテゴリー一覧」の中に、「鋸(のこぎり)」、「ハンマー」、 「マリン」等とともに「安全用品・ロープ」の項目があり、「安全 用品・ロープ」の項目の中に、「その他」、「墜落制止用器具」等の 項目があり、「その他」の中に引用意匠1の「【NRK】布製安全コ ード 赤 3kg(落下防止コード)」が掲載されており、「墜落制 止用器具」の中にランヤード、安全帯などが掲載されている。 そうすると、アルデのウェブサイトでは、工具の落下防止コー ドと、人の落下を防ぐ安全用コードが販売されていることが認め られる。
(b)甲4(本件審決別紙第5)は、「【プロ志向】職人の為の安全帯 ハーネス・作業用品専門店 梅春 いちや 総本店」(以下「いち や」という。)のウェブサイトであり、「CATEGORIES」(カテゴ リーズ)の中に、「ハーネス」、「ハーネス+ランヤードセット」、 「ハーネス対応ランヤード」、「1本つり安全帯」、「ランヤード」、 「安全帯胴ベルト・付属品」等の項目があり、「安全帯胴ベルト・ 付属品」の項目の中の「落下防止対策」、「安全コード」の細項目 の中に「【NRK】布製 安全コード 3kg 【セーフティコード】 落下防止コード」が掲載されている。 そうすると、いちやのウェブサイトでは、工具の落下防止コー ドと、ハーネスやランヤードなどの人の落下を防ぐ安全用コード が販売されていることが認められる。
(c) 乙7は、作業服・作業用品専門店「ZOOM」(以下「ZOOM」と いう。)のウェブサイトであり、「Category」(カテゴリー)の中に、 「フルハーネス」、「安全帯」等とともに「ランヤード」、「落下防 止対策用品」の項目があり、「落下防止対策用品」の項目の中に、 工具の落下防止コードが掲載されている。 そうすると、ZOOM のウェブサイトでは、工具の落下防止コー ドと、ハーネスや安全帯などの人の落下を防ぐ安全用コードが販 売されていることが認められる。
(d) 乙8は、「第55回全国建設業労働災害防止大会 in 横浜」、「安 全衛生保護具・測定機器・安全標識等 展示会」のパンフレット であり、出展企業の一つである「スリーエム ジャパン(株)」の主 な取扱品目として、「工具落下防止用製品」とともに「ハーネス型 安全帯」、「ランヤード」が記載されており、工具の落下防止コー ドと、ハーネス、安全帯、ランヤードなどの人の落下を防ぐ安全 用コードの双方を製造又は販売している会社があることが認めら れる。
(e)甲5(本件審決別紙第6)は、株式会社 TOWA のウェブサイト であり、「高所作業&ガラスクリーニング」、「レスキュー&タクテ ィカル」、「マリン」の項目に分けられている。また、甲7(本件 審決別紙第8)は、株式会社 TOWA のカタログであり、「ツール ランヤード」(落下防止用ランヤード)が掲載されていることが認 められる(「ランヤード」という用語は、人の体を支えるものを指 すために用いられる場合が多いが、甲7(本件審決別紙第8)に 示されたものは、「ツールランヤード」と記載されているので、工 具の落下防止コードであると認められる。)。 本願意匠の「工具の落下防止コード」は、高所作業やガラスク リーニングで使われるものであり、他方、引用意匠2の「ハーネ スライン」は、ヨット用で、マリンスポーツで使われるものであ るところ、甲5(本件審決別紙第6)によれば、株式会社 TOWA でヨット用ハーネスが販売されているか否かは定かでないが、高 所作業やガラスクリーニングで使われるものとマリンスポーツで 使われるものが同一の業者により販売されていることは認められ る。 また、乙10、11によれば、コードとフック等による構成により落下防止が配慮された安全用のコードに係るものとして、工\n具の落下防止用のコードと人の落下防止用のコードが、高所作業 において同時に使用されていることが認められる。
c(a) さらに、甲9公報の【考案の詳細な説明】、【背景技術】、【00 02】には、「工具連結用索具として、従来、例えば実用新案登録 第3156504号の工具用安全策具や、特開2012−248 70号の工具用安全索具や、特開2012−200310号のラ ンヤードなどが提案されている。これらは、いずれも作業範囲に 余裕をもって届く範囲の長さで伸縮自在なスプリングに可撓性を 有する被覆体を被せ、その両端をフックやリングに連結した構成からなっている。」と記載されている。上記「特開2012−20\n0310号のランヤード」は、人体を吊下し得る強度を有するラ ンヤードであり(乙5)、引用意匠2の「ハーネスライン」と同様 に人の落下を防止する安全用コードであると認められる。上記甲 9公報の記載は、工具の落下防止コードである上記「実用新案登 録第3156504号の工具用安全策具」(乙3)及び上記「特開 2012−24870号の工具用安全索具」(乙4)と、人の落下 を防止するランヤードである「特開2012−200310号の ランヤード」(乙5)を、同様の構成を有するものとして同列に記載しており、これによっても、工具の落下防止コードと、人の落\n下を防止するハーネスライン等の安全用コードが、同じ種類の物 品として認識されていることが認められる。
(b) 乙9公報の考案は、【背景技術】【0002】及び【0003】 等の記載によれば、工具用落下防止安全ロープを実施対象の一つ にあげている安全用ロープに係る考案であることが認められ、【考 案の概要】、【考案が解決しようとする課題】、【0018】に、「図 7に示すのは、該連結部の両端がエクササイズハンドル80に設 けられる実施形態で、また、弾力ロープはそれぞれ、複数の連結 で使用される場合であり、本考案の弾力ロープの特性によって、 筋力トレーニング器具として用いられ、または、本考案の弾力ロ ープを海上でのサーフィンボードの安全ロープ(図示省略)とし て用いられてもよいが、弾力ロープの両端をそれぞれサーフィン ボードとプレヤーの踝につなぐことにより、プレヤーの安全性を 守り、サーフィンボードの漂流などを防ぐ効果がある。」と記載さ れていることから、マリンスポーツも危険を伴う分野の一つとし て、コードとフック等による構成により落下防止が配慮された、安全用のコードに係る物品が用いられる分野の一つとして想定さ\nれていることが認められる。
d(a) 本願意匠に係る物品である「工具の落下防止コード」と引用意 匠2に係る物品である「ハーネスライン」(安全ベルト)は、落下 を防止する対象において、工具と人体という違いがあり、対象の 重量等の違いに応じて、構成部材の寸法、材質、強度などが異なる場合があると推認される。また、本願意匠に係る物品である「工\n具の落下防止コード」は、主として高所作業において用いられる のに対し、引用意匠2に係る物品である「ハーネスライン」(安全 ベルト)はヨット用であり、マリンスポーツにおいて使用される ものである。そのため、本願意匠に係る物品と引用意匠2に係る 物品は、厳密には同一の商品とはいい難い面がある。
(b) しかし、本願意匠に係る物品である「工具の落下防止コード」 と引用意匠2に係る物品である「ハーネスライン」(安全ベルト) は、前記aのとおり、目的、機能、材質・形態に要請される事項が共通し、前記b(a)ないし(c)のとおり、工具の落下防止コードと、 人の落下を防ぐハーネスやランヤードなどの安全用コードが同じ 業者のウェブサイトで販売されていることが認められ、前記b(d) のとおり、工具の落下防止コードと、ハーネス、安全帯、ランヤ ードなどの人の落下を防ぐ安全用コードの双方を製造又は販売し ている会社があることが認められる。また、前記c(a)、(b)のとお り、工具の落下防止コードと、ハーネスライン、ランヤードなど の人の落下を防止する安全用コードが、同じ種類の物品として認 識されていることなども認められる。
そして、前記b(e)のとおり、高所作業やガラスクリーニングで 使われるものとマリンスポーツで使われるものが同一の業者によ り販売されていることが認められ、前記c(b)のとおり、マリンス ポーツも危険を伴う分野の一つとして、コードとフック等による 構成により落下防止が配慮された、安全用のコードに係る物品が用いられる分野の一つとして想定されていることが認められるこ\nとからすると、用途において、高所作業とマリンスポーツという 違いがあったとしても、それ故に、本願意匠に係る物品を取り扱 う当業者が引用意匠2に係る物品を目にすることが否定されるこ とはない。
そうすると、本願意匠に係る物品である工具の落下防止コード を取り扱う当業者は、人の落下を防ぐ安全用コードの形状等を当 然に目にするものと認められ、人の落下を防ぐ安全用コードに属 する引用意匠2に係る物品である「ハーネスライン」(安全ベルト) についても、その形状等を当然に目にするものと推認されるから、 引用意匠2に係る物品は、同一の物品分野に属するものとして、 本願意匠の創作容易性を判断する際の資料となるものと認められ る。
e 以上によれば、本願意匠に係る物品である「工具の落下防止コー ド」と引用意匠2に係る物品である「ハーネスライン」(安全ベルト) は同一分野の物品であるとして、引用意匠2に基づいて本願意匠の 容易想到性を判断することができるものと認めた本件審決の判断に 誤りはない。
(イ) 創作容易性について
a 引用意匠1及び参考意匠(本件審決別紙第4)は、本願意匠に係 る物品である「工具の落下防止コード」に係るものであり、本願意 匠に係る物品について当業者に該当する者は、引用意匠1及び参考 意匠を当然に目にするものと認められる。また、上記(ア)eのとお り、引用意匠2に基づいて本願意匠の容易想到性を判断することが できるものと認められる。
b 本願意匠に係る物品である「工具の落下防止コード」を含む安全 用のコードという物品の分野において、コードの長手方向の一端を ナスカン状のフックとすることはごく普通に見られ、本願部分にお けるフック部の形状も、本願意匠に係る物品と同じ物品の公知意匠 である引用意匠1に示されていた。また、安全用のコードの物品の 分野において、二又に分岐する構造のものも、公知意匠である引用意匠2に示されていた。さらに、薄いテープをDカンに巻いて帯部\nとし、フック部の先端側と略同じ長さとする態様も、帯部より先を 蛇腹タイプの波形伸縮コードとする態様も、引用意匠1及び引用意 匠2に表れていた。甲2(3枚目)、乙12によれば、引用意匠2の分岐根元部において、蛇腹タイプの波形伸縮コードは、内側に一山、\n外側に一山の波打った形態を示していることが認められる。本願意 匠に係る物品である「工具の落下防止コード」において、帯部につ いて、引用意匠1のように糸を同色として目立たないようにしたも のもあり、また、縫い目を有さないようにしたものも、参考意匠(本 件審決別紙第4(図5、7))(甲3)のとおり公知であった。 そうすると、引用意匠2のフック部を、引用意匠1の形状のもの とし、帯部より先の二又に分岐した2方向のコードのうち、平たい テープ状のコードを蛇腹タイプの波形伸縮コードとし、分岐根元部 について、上下共に内側に一山、外側に一山の波打った形態とし、 帯部を縫い目がないようにして、本願意匠を創作することは、本願 意匠に係る物品と同じ安全用のコードの分野の公知の意匠(引用意 匠2)をもとに、その構成要素の一部を、同じ物品の分野で公知であった意匠と置き換え、又は同じ物品の分野で公知であった意匠を\n寄せ集めたにすぎないものであり、そのような置き換え又は寄せ集 めに関して、当業者の立場からみて意匠の着想の新しさや独創性が あるとは認められず、そのため、本願意匠は、その意匠の属する分 野におけるありふれた手法により創作されたものであると認めら れる。
以上に検討したところによれば、本願意匠は、当業者が、本願意 匠の出願前に公知であった引用意匠1及び引用意匠2に基づいて 容易に創作をすることができたものであると認められ、同旨の本件 審決の判断に誤りはない。

◆判決本文
関連事件です。

◆令和3(行ケ)10159

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令和2(行ケ)10136  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 令和3年6月16日  知的財産高等裁判所

 意匠法における創作容易性の判断について、意匠の類似範囲が狭い分野においては,形状のわずかな相違であっても,その中に少なくとも一つの「意匠が非類似になる意匠上の要素」があれば,非類似の意匠となり,しかも創作非容易と認められるべきと主張しましたが認められませんでした。

 意匠法3条1項3号における類否の判断は,出願された意 匠と類似する意匠とが,出願意匠に係る物品と同一又は類似の物品につき一 般需要者に対して出願意匠と類似の美感を生じさせるかどうかを基準として なされるべきであるのに対し,同法3条2項は,物品との関係を離れた抽象 的なモチーフとして日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若し くは色彩又はこれらの結合(公然知られた形態)を基準として,それからそ の意匠の属する分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に創作 することができた意匠でないことを登録要件としたものであり,上記公然知 られた形態を基準として,当業者の立場から見た意匠の着想の新しさないし 独創性を問題とするから(平成10年法律第51号による改正前の法3条2 項につき,最高裁昭和49年3月19日第三小法廷判決・民集28巻2号3 08頁,最高裁昭和50年2月28日第二小法廷判決・裁判集民事114号 287頁参照),意匠の類似性と創作容易性とは判断主体や判断手法を全く 異にしている。 したがって,原告の上記主張は,両者の違いを無視した独自の見解といわ ざるを得ないものであって,採用することができない。
(2) 原告は,本願分野の登録意匠について自ら作成した別掲4を用いるなどし て,原告の挙げる7要素のうち少なくとも一つの「意匠が非類似になる意匠 上の要素」があれば,形状のわずかな相違であっても創作非容易と認められ るべき旨主張する。 しかしながら,まず,別掲4の多数の登録意匠のうち,出願人及び登録日 を同じくする複数の意匠は,互いに部分意匠や関連意匠の関係にある可能性\nが高く,その場合は形状の差異がわずかであっても登録されているのは当然 のことにすぎないから,原告の分析は,その前提に問題があるといわざるを 得ない。 そして,既に述べたとおり,本願意匠は,引用意匠1の凹陥の数と位置を 引用意匠2のそれに置き換えたのにすぎず,何ら意匠としての着想の新しさ や独創性を認めることはできないのであるから,原告のいう登録済意匠の存 在を考慮したとしても,本願意匠は創作容易であるとの結論が左右されるも のではない。

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令和1(行ケ)10089  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 令和元年11月26日  知的財産高等裁判所

 知財高裁4部は、「星形の抜き穴を,薄い円形板に千鳥状の配置態様になるように19個形成する」ことは、創作性無しとの審決を維持しました

 意匠法3条2項は,物品との関係を離れた抽象的モチーフとして意匠登 録出願前に日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色 彩又はこれらの結合を基準として,当業者が容易に創作をすることができ る意匠でないことを登録要件としたものであることに照らすと,意匠登録 出願に係る意匠について,上記モチーフを基準として,その創作に当業者 の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性があるものと認められな い場合には,当業者が容易に創作をすることができた意匠に当たるものと して,同項の規定により意匠登録を受けることができないものと解するの が相当である(最高裁昭和45年(行ツ)第45号同49年3月19日第 三小法廷判決・民集28巻2号308頁,最高裁昭和48年(行ツ)第8 2号同50年2月28日第二小法廷判決・裁判集民事114号287頁参 照)。
これを本願意匠についてみるに,前記1認定のとおり,本願意匠は,薄 い円形板に,角部に面取りを施した5つの凸部からなる星形の抜き穴を, 同一の方向性に向きを揃え,各抜き穴の中心部を結んだ線のなす角度が6 0°となるような千鳥状(「60°千鳥」)の配置態様で19個形成した 「押出し食品用の口金」の意匠であり,また,本願意匠に係る「押出し食 品用の口金」は,主にステンレス製の薄板で作成され,ハンディーマッシ ャー(押し潰し器)等に装着して使用され,抜き穴から食品を棒状に押し 出すことができるものであり,略円筒形状の底面部内周部分に環状縁部を 設けた上記調理器具に装着して使用されるものである。 しかるところ,前記(1)ア及びイの認定事実によれば,本願意匠に係る「押 出し食品用の口金板」の物品分野においては,抜き穴から食品を棒状に押 し出す調理器具に使用される金属製の円形板の口金板に設けられた,角部 に面取りを施した5つ又は6つの凸部からなる星形の抜き穴の形状は,本 願の出願当時,公然知られていたことが認められる。 加えて,前記(1)エ(エ)認定のとおり,板状の金属材料にデザイン性を持 たせるため,60°千鳥の配置態様で,複数個の「抜き孔」を設けること は,本願の出願当時,ごく普通に行われていたことであり,当業者にとっ てありふれた手法であったこと,19個の抜き穴を千鳥状に配置する形状 は公然知られていたこと(例えば,意匠3)に照らすと,本願意匠は,本 願の出願当時,円形板の抜き穴の形状として公然知られていた角部に面取 りを施した5つの凸部からなる星形の抜き穴(例えば,意匠1)を,当業 者にとってありふれた手法により,薄い円形板に,同一の方向性に向きを 揃えて,60°千鳥の配置態様で19個形成して創作したにすぎないもの といえるから,本願意匠の創作には当業者の立場からみた意匠の着想の新 しさないし独創性があるものとは認められない。 したがって,本願意匠は,本願の出願前に公然知られた形状の結合に基 づいて,当業者が容易に創作をすることができたものと認められる。 これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
イ これに対し原告は,本願意匠は,星形の抜き穴を1枚の無垢の円形板 に複数個,均等に穿設する際に,円形板と,整列した抜き穴が構成す\nる図形と,抜き穴のない周縁部分が,唯一無二の美感を与えるように, 個々の抜き穴のサイズを決定し,抜き穴の数を19個とし,これを千 鳥状に配置したものであり,本願意匠は,抜き穴のうち外側に配置され た抜き穴が形成する正六角形と,その外側の蒲鉾状の周縁部分及び円 形板の円形の全てが,円形板の中心点を中心として均等に整然と配置 され,落ち着きと,併せてリズム感ないし安定性を表現している,こ\nれにより,本願意匠は,独特の美感をもたらし,これまでにない美感 を看者に与えるものであるから,本願意匠の創作には当業者の立場から みた意匠の着想の新しさないし独創性があるとして,本願意匠は,本願の 出願前に公然知られた形状の結合に基づいて当業者が容易に創作をするこ とができたものとはいえない旨主張する。 しかしながら,前記ア認定のとおり,本願意匠は,本願の出願当時,円 形板の抜き穴の形状として公然知られていた角部に面取りを施した5つの 凸部からなる星形の抜き穴(例えば,意匠1)を,当業者にとってありふ れた手法により,薄い円形板に,同一の方向性に向きを揃えて,60°千 鳥の配置態様で19個形成して創作したにすぎないものである。 そして,前記1(2)認定のとおり,本願意匠に係る物品「押出し食品用の 口金」は,略円筒形状の底面部内周部分に環状縁部を設けた調理器具に装 着して使用され,抜き穴から食品を棒状に押し出すことができるものであ ることに照らすと,調理器具の環状縁部と当接する口金の周縁部分に抜き 穴を形成することができない余白部分が生じ得ることは,当業者であれば, 当然想定するものといえる。また,円形板の口金に,角部に面取りを施し た5つの凸部からなる星形の抜き穴を,同一の方向性に向きを揃えて,6 0°千鳥の配置態様で19個配置する場合には,円形板の直径と円形板に 配置する星形の抜き穴に外接する円形の直径の比率,抜き穴と抜き穴の中 心間隔(ピッチ)等に応じて,口金の周縁部分の余白部分の大きさは一定 の範囲内のものに収まること,円形板の中心に星形の抜き穴を配置し,こ れを中心点として19個の星形の抜き穴を60°千鳥に配置した場合,外 側に配置された星形の抜き穴の周縁部側の凸部先端をそれぞれ直線で結ん だ図形は正六角形となり,この図形と円形板の外周とで形成される余白部 分が蒲鉾状となることは自明であることに照らすと,別紙第1記載の本願 意匠の余白部分の形状の創作に着想の新しさないし独創性は認められない。

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平成30(行ケ)10148  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成31年4月18日  知的財産高等裁判所(2部)

 審決、裁判所とも「盆茣蓙」から「卓上敷マット」への転用が創作容易(3条2項)と判断しました。

イ 次に,本願意匠に係る物品である「卓上敷マット」の物品分野の当業者 が,慶弔用品の分野における意匠1及び意匠2の形態を「卓上敷マット」に転用す ることを容易に想到するかどうかについて検討する。
(ア) 「卓上敷マット」は一般のテーブルや机に敷かれるものを含む日常生 活に用いられる物品である一方,証拠(乙2〜4,17,18)及び弁論の全趣旨 によると,意匠1の「マット」や意匠2の「盆茣蓙」は,現在では主として盆の時 期に精霊棚や仏壇の前に置く経机や小机の上に敷き,上に位牌やお供え物などを置 く慶弔用品の分野の物品であり,その物品分野は「卓上敷マット」とは異なるもの である。 しかし,いずれもテーブルや机という「卓」(乙1によると,「卓」にはテーブル や机が含まれると認められる。)の上に敷かれて使用されるものであるという点で その用途が共通している。また,意匠1の「マット」や意匠2の「盆茣蓙」の形状 は,いずれも「卓上敷マット」と同じマット状であり,上に物を載置することがで きる点においてその機能が共通している。\n
(イ) そして,証拠(乙5〜8,12〜15)及び弁論の全趣旨によると, 本願の出願日前において,「盆茣蓙」のような慶弔用品と「卓上敷マット」を含むテ ーブル掛けなどの物品が,同一の見本市などに出品されることがあり,「卓上敷マッ ト」を含むテーブル掛けなどの物品分野の当業者が,「盆茣蓙」のような慶弔用品の 形態に接する機会は十分あったものと認められる。\n
(ウ) 以上を考え併せると「卓上敷マット」を含むテーブル掛けなどの物品 分野の当業者は,物品分野は異なるものの,意匠1から着想を得て,真菰を並べて 形成された「卓上敷マット」を想到し,更に真菰を並べて形成された慶弔用品の「盆 茣蓙」である意匠2の形態を本願意匠に係る物品である「卓上敷マット」に転用す ることを容易に想到することができたと認められる。 なお,「卓上マット」を含むテーブル掛けなどの物品分野と「盆茣蓙」などの慶弔 用品の物品分野では,常に物が載置されるかどうかや一定の時期にのみ使用される かどうかに違いがあるとしても,これらの違いは,上記認定の用途や機能の共通性\nに比べるとささいな違いというほかなく,上記判断が左右されることはない。
ウ 原告は,1)「盆茣蓙」と「卓上敷マット」とは,用途や機能が異なって\nいて非類似であること,2)意匠1や意匠2のような真菰で形成されたマットは,慶 弔用品で仏具の上に敷かれるものであるところ,日常生活で使用されている机に慶 弔用品を祀ることは,浄・不浄の概念からもあり得ないこと,3)前記ギフトショー についての審決の論理を前提とすると,百貨店などであらゆる商品が同スペースで 展示されていることから,全てのあらゆる物品分野間で創作容易性が肯定されてし まうこと,4)自らの商品デザインにつき異業種商品のデザインを盗用することは信 義に反すること,5)慶弔用品としての真菰で形成された「盆茣蓙」に接した取引者, 需要者は,「盆茣蓙」の上にあるお供え物に注目することなどを理由として,「盆茣 蓙」についての形態を「卓上敷マット」に転用することを考えないと主張する。
(ア) 上記1)について,前記1で説示したとおり,意匠法3条2項は,物品 との関係を離れた抽象的な公然知られたモチーフを基準として,当業者の立場から みた意匠の着想の新しさや独創性を問題とするものであるから,物品が非類似であ ることが直ちに創作が容易でないことに結びつくものではない。そして,本件で転 用を容易に想到できることは前記イのとおりである。
(イ) 上記2)について,原告の主張は,「盆茣蓙」が慶弔用品であって,宗教 的感情によって転用が妨げられるというものであると解されるが,証拠(乙2)に よると,「盆茣蓙」について,かつては,「丁半博打で,壺を伏せる場所へ敷くござ」 という慶弔用品以外の用途もあったと認められる上,前記イ(ア)認定の用途や機能の\n共通性に照らすと,宗教的感情によって当業者における意匠1及び意匠2の形態の 転用が妨げられるとは解されない。
(ウ) 上記3)について,前記イの判断は,見本市などにおいて,慶弔用品と 「卓上敷マット」を含む物品が出品されていることのみを理由とするものではなく, 前記イ(ア)認定の用途や機能の共通性も理由としているから,全てのあらゆる物品分\n野間で形態の創作容易性が認定されてしまうことにはならない。
(エ) 上記4)について,本願意匠に創作容易性を認めたからといって,デザ インの盗用を認めることにはならず,デザインの盗用とは関係がない。
(オ) 上記5)について,創作容易性の基準となるは取引者,需要者ではなく, 「卓上敷マット」を含むテーブル掛けなどの物品分野の当業者であって,その視点 や着眼点が取引者,需要者と同じとはいえず,また,当業者において転用を容易に 想到できることは前記イのとおりである。
(カ) 以上からすると,原告の上記主張は採用することができない。
(2) 相違点1,2についての判断
前記(1)のとおり,意匠2の形態を本願意匠に係る物品である「卓上敷マット」に 転用することは容易であると認められるから,次に,前記4で認定した意匠2と本 願意匠との相違点1,2について,創作が容易であるかについて検討する。
ア 相違点1について,証拠(乙9,10)及び弁論の全趣旨によると,「卓 上敷マット」を含むテーブル掛けなどの物品分野の当業者にとって,「卓上敷マット」 の縦横比を必要に応じて適宜調整することはありふれた手法であると認められる。 したがって,意匠2の平面視略横長長方形の縦横比を本願意匠の縦横比に変更す ることについて,意匠の着想の新しさや独創性があるとはいえない。
イ 相違点2について,本願意匠と意匠2で用いられている編み糸の色彩自 体に違いはなく,本願意匠の構成は,意匠2の構\成から紫色の糸と赤色の糸の配置 を入れ替えたにすぎないものである。また,証拠(乙9)及び弁論の全趣旨による と,「卓上敷マット」を含むテーブル掛けなどの物品分野において,色彩を適宜変更 することはよく見られる手法であると認められる。 そうすると,意匠2の5本の編み糸のうち,紫色の糸と赤色の糸の配置を入れ替 えて本願意匠の構成にすることについて,意匠の着想の新しさや独創性があるとは\nいえない。
ウ 以上からすると,本願意匠は,意匠2の形態に基づいて,当業者におい て容易に創作できたものと認められる。
エ 原告は,本願意匠と意匠2との間には,縦横比や5本の編み糸の色彩と いった,共通点を凌駕し得る非常に重要かつ大きな特徴的相違があるから,本願意 匠と意匠2は非類似であり,意匠2の形態に基づいたとしても,本願意匠は,当業 者において容易に創作できないと主張する。 しかし,前記1のとおり,意匠法3条2項は,公然知られたモチーフを基準とし て,当業者の立場からみた意匠の着想の新しさや独創性を問題とする規定であって, 物品の意匠について一般需要者の立場からみた美感の類否を問題とする同条1項3 号とは考え方の基礎を異にするものである。したがって,意匠法3条1項3号の類 似性の判断と同条2項の創作容易性の判断とは必ずしも一致しないものである。そ して,これまでに検討してきたところに照らすと,本願意匠と意匠2の相違点1, 2は,いずれも「卓上敷マット」を含むテーブル掛けなどの物品分野の当業者であれ ば容易に創作できたものであるといえ,これに反する原告の主張を採用することは できない。

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◆平成30(行ケ)10147

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平成30(行ケ)10181  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 令和元年7月3日  知的財産高等裁判所(1部)

 部分意匠について、新規性無しの無効審判が請求されましたが、審決・裁判所とも非類似と判断しました。

 本件意匠は,3枚のフィンが垂直方向に並べて設けられているのに対し,タワ ー型ヒートシンクである引用意匠1では,4枚のフィンが水平方向に並べて設けら れており,両意匠は,縦横の位置関係が異なる。 そこで,仮に引用意匠1を右に90°回転させて対比してみると,本件意匠と の共通点及び相違点は,次のとおりである。 前記の認定(1(1)(2))によれば,本件意匠と引用意匠1とは,aのうち,ともに機 器に設けられる放熱部であるという限度で重なり合うところがあり,また,bその中 心に支持軸体が設けられ,c支持軸体の中間及び後端に,薄い円柱状の,支持軸体よ りも径の大きい,同一径のフィンが複数枚,間隔を空けて設けられ,f各フィンが, 中心軸を合致させ,互いに等しい間隔で設置されているという点,j各フィンの各面 が,支持軸体の通過部分以外は平滑である点においても共通する。 他方,aについても,本件意匠が前端面に発光部のある検査用照明器具に設けられ た後方部材(放熱部)であるのに対し,引用意匠1は汎用的なタワー型ヒートシンク であるという点では相違し,また,eフィンの枚数について,本件意匠では中間フィ ンと後端フィンを合わせて3枚であるのに対し,引用意匠1では4枚である点,gフ ィンの厚みについて,本件意匠ではフィンの上下で差がないのに対し,引用意匠1の フィンは中央部の厚みが最も大きく,上下にいくにつれて次第に薄くなっている点, i本件意匠の支持軸体の直径がフィンの直径の約5分の1であるのに対し,引用意 匠1では約3分の1である点においても相違する。
ウ 本件意匠と引用意匠1との類否
(ア)前記イ(ア)のとおり、本件意匠と引用意匠1は視覚を通じて起こさせる美観が 縦横の位置関係からして,全く異なる。
(イ)また,仮に引用意匠1を右に90°回転させて対比してみたとしても,1)本件 意匠が,前端面に発光部のある検査用照明器具に設けられた後方部材(放熱部)であ るのに対し,引用意匠1はそうでなく,汎用的なタワー型ヒートシンクであるという 点,2)本件意匠のフィンが3枚で,後端フィンの厚みが中間フィンの厚みの約2倍で あるのに対し,引用意匠1のフィンでは4枚がほぼ同形同大のものであるという点, 3)本件意匠ではフィンの上下で厚みに差がないのに対し,引用意匠1のフィンは中 央部の厚みが最も大きく,上下にいくにつれて次第に薄くなっている点,4)支持軸体 の直径が本件意匠では細いのに対し,引用意匠1ではやや太い点において相違し,こ れらの相違点が前記の共通点を凌駕するというべきであり,本件意匠と引用意匠1 とでは,視覚を通じて起こさせる美感が異なるものと認められる。 したがって,本件意匠と引用意匠1とは類似しないというべきである。
エ よって,取消事由1は理由がない。
(2) 取消事由2(引用意匠1に基づく創作容易性判断の誤り) ア 意匠法3条2項は,物品との関係を離れた抽象的なモチーフとして日本国内 又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を基準と して,そこからその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(当業者)が容 易に創作することができた意匠でないことを登録要件としたものであり,その要件 の該当性を判断するときには,上記の公知のモチーフを基準として,当業者の立場か らみた意匠の着想の新しさないし独創性が問題となる(最高裁昭和45年(行ツ)第 45号同49年3月19日第三小法廷判決・民集28巻2号308頁,最高裁昭和4 8年(行ツ)第82号同50年2月28日第二小法廷判決・裁判集民事114号28 7頁参照)。
イ 検討
これを本件についてみると,複数のフィンが水平方向に並べて設けられてい る,「タワー型」の引用意匠1には,それらを垂直方向に並べることの動機付けを認 めるに足りる証拠はないから,引用意匠1に基づいて本件意匠を創作することが容 易であるとはいえない。 また,引用意匠1を右に90°回転させて対比した場合の前記((1)イ)の各相 違点に係る本件意匠の構成が,周知のもの又はありふれたものと認めるに足りる証\n拠もないから,引用意匠1のみに基づいて当業者が本件意匠を創作することが容易 であったとは認められない。
ウ よって,取消事由2は理由がない。
(3) 取消事由3(引用意匠1及び同2に基づく創作容易性判断の誤り)及び取消事 由4(引用意匠1及び同3に基づく創作容易性判断の誤り)
ア 原告は,引用意匠1に同2又は同3をそれぞれ組み合わせれば,それらに基づ き本件意匠を容易に創作することができたとも主張する。
イ 検討
しかしながら,本件意匠は,3枚のフィンが垂直方向に並べて設けられている のに対し,タワー型ヒートシンクである引用意匠1では,4枚のフィンが水平方向に 並べて設けられているところ,タワー型の引用意匠1には,それらを垂直方向に並べ ることの動機付けを認めるに足りる証拠はないから,引用意匠1及び同2又は同3 に基づいて本件意匠を創作することが容易であるとはいえない。 また,仮に引用意匠1を右に90°回転させて対比してみても,1)本件意匠が, 前端面に発光部のある検査用照明器具に設けられた後方部材(放熱部)であるのに対 し,引用意匠1はそうでなく,汎用的なタワー型ヒートシンクであるという点,2)本 件意匠のフィンが3枚で,後端フィンの厚みが中間フィンの厚みの約2倍であるの に対し,引用意匠1のフィンでは4枚がほぼ同形同大のものであるという点,3)本件 意匠ではフィンの上下で厚みに差がないのに対し,引用意匠1のフィンは中央部の 厚みが最も大きく,上下にいくにつれて次第に薄くなっている点,4)支持軸体の直径 が本件意匠では細いのに対し,引用意匠1ではやや太い点において相違し,これらの 相違点が前記の共通点を凌駕することは,前記(1)のとおりである。そして,タワー型 ヒートシンクである引用意匠1に検査用照明器具に係る引用意匠2又は同3を組み 合わせる動機付けを認めるに足りる証拠はない。また,少なくとも相違点4)に係る本 件意匠の構成が引用意匠2又は同3にあらわれているということができないことか\nらすれば,引用意匠1に引用意匠2又は同3を組み合わせてみても,本件意匠には至 らない。したがって,それらに基づき当業者において本件意匠を創作することが容易 であったとは認められない。

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◆平成28(ワ)12791

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平成30(行ケ)10148  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成31年4月18日  知的財産高等裁判所

 意匠法3条2項が争われました。争点は、慶弔用品の分野における意匠の形態を「卓上敷マット」に転用できるか否かでした。知財高裁(2部)は、「転用できる」とした審決を維持しました。

 本願意匠に係る物品である「卓上敷マット」の物品分野の当業者 が,慶弔用品の分野における意匠1及び意匠2の形態を「卓上敷マット」に転用す ることを容易に想到するかどうかについて検討する。
(ア) 「卓上敷マット」は一般のテーブルや机に敷かれるものを含む日常生 活に用いられる物品である一方,証拠(乙2〜4,17,18)及び弁論の全趣旨 によると,意匠1の「マット」や意匠2の「盆茣蓙」は,現在では主として盆の時 期に精霊棚や仏壇の前に置く経机や小机の上に敷き,上に位牌やお供え物などを置 く慶弔用品の分野の物品であり,その物品分野は「卓上敷マット」とは異なるもの である。 しかし,いずれもテーブルや机という「卓」(乙1によると,「卓」にはテーブル や机が含まれると認められる。)の上に敷かれて使用されるものであるという点で その用途が共通している。また,意匠1の「マット」や意匠2の「盆茣蓙」の形状 は,いずれも「卓上敷マット」と同じマット状であり,上に物を載置することがで きる点においてその機能が共通している。\n
(イ) そして,証拠(乙5〜8,12〜15)及び弁論の全趣旨によると, 本願の出願日前において,「盆茣蓙」のような慶弔用品と「卓上敷マット」を含むテ ーブル掛けなどの物品が,同一の見本市などに出品されることがあり,「卓上敷マッ ト」を含むテーブル掛けなどの物品分野の当業者が,「盆茣蓙」のような慶弔用品の 形態に接する機会は十分あったものと認められる。\n
(ウ) 以上を考え併せると「卓上敷マット」を含むテーブル掛けなどの物品 分野の当業者は,物品分野は異なるものの,意匠1から着想を得て,真菰を並べて 形成された「卓上敷マット」を想到し,更に真菰を並べて形成された慶弔用品の「盆 茣蓙」である意匠2の形態を本願意匠に係る物品である「卓上敷マット」に転用す ることを容易に想到することができたと認められる。 なお,「卓上マット」を含むテーブル掛けなどの物品分野と「盆茣蓙」などの慶弔 用品の物品分野では,常に物が載置されるかどうかや一定の時期にのみ使用される かどうかに違いがあるとしても,これらの違いは,上記認定の用途や機能の共通性\nに比べるとささいな違いというほかなく,上記判断が左右されることはない。
ウ 原告は,1)「盆茣蓙」と「卓上敷マット」とは,用途や機能が異なって\nいて非類似であること,2)意匠1や意匠2のような真菰で形成されたマットは,慶 弔用品で仏具の上に敷かれるものであるところ,日常生活で使用されている机に慶 弔用品を祀ることは,浄・不浄の概念からもあり得ないこと,3)前記ギフトショー についての審決の論理を前提とすると,百貨店などであらゆる商品が同スペースで 展示されていることから,全てのあらゆる物品分野間で創作容易性が肯定されてし まうこと,4)自らの商品デザインにつき異業種商品のデザインを盗用することは信 義に反すること,5)慶弔用品としての真菰で形成された「盆茣蓙」に接した取引者, 需要者は,「盆茣蓙」の上にあるお供え物に注目することなどを理由として,「盆茣 蓙」についての形態を「卓上敷マット」に転用することを考えないと主張する。
(ア) 上記1)について,前記1で説示したとおり,意匠法3条2項は,物品 との関係を離れた抽象的な公然知られたモチーフを基準として,当業者の立場から みた意匠の着想の新しさや独創性を問題とするものであるから,物品が非類似であ ることが直ちに創作が容易でないことに結びつくものではない。そして,本件で転 用を容易に想到できることは前記イのとおりである。
(イ) 上記2)について,原告の主張は,「盆茣蓙」が慶弔用品であって,宗教 的感情によって転用が妨げられるというものであると解されるが,証拠(乙2)に よると,「盆茣蓙」について,かつては,「丁半博打で,壺を伏せる場所へ敷くござ」 という慶弔用品以外の用途もあったと認められる上,前記イ(ア)認定の用途や機能の\n共通性に照らすと,宗教的感情によって当業者における意匠1及び意匠2の形態の 転用が妨げられるとは解されない。
(ウ) 上記3)について,前記イの判断は,見本市などにおいて,慶弔用品と 「卓上敷マット」を含む物品が出品されていることのみを理由とするものではなく, 前記イ(ア)認定の用途や機能の共通性も理由としているから,全てのあらゆる物品分\n野間で形態の創作容易性が認定されてしまうことにはならない。
(エ) 上記4)について,本願意匠に創作容易性を認めたからといって,デザ インの盗用を認めることにはならず,デザインの盗用とは関係がない。
(オ) 上記5)について,創作容易性の基準となるは取引者,需要者ではなく, 「卓上敷マット」を含むテーブル掛けなどの物品分野の当業者であって,その視点 や着眼点が取引者,需要者と同じとはいえず,また,当業者において転用を容易に 想到できることは前記イのとおりである。
(カ) 以上からすると,原告の上記主張は採用することができない。
(2) 相違点1,2についての判断
前記(1)のとおり,意匠2の形態を本願意匠に係る物品である「卓上敷マット」に 転用することは容易であると認められるから,次に,前記4で認定した意匠2と本 願意匠との相違点1,2について,創作が容易であるかについて検討する。
ア 相違点1について,証拠(乙9,10)及び弁論の全趣旨によると,「卓 上敷マット」を含むテーブル掛けなどの物品分野の当業者にとって,「卓上敷マット」 の縦横比を必要に応じて適宜調整することはありふれた手法であると認められる。 したがって,意匠2の平面視略横長長方形の縦横比を本願意匠の縦横比に変更す ることについて,意匠の着想の新しさや独創性があるとはいえない。
イ 相違点2について,本願意匠と意匠2で用いられている編み糸の色彩自 体に違いはなく,本願意匠の構成は,意匠2の構\成から紫色の糸と赤色の糸の配置 を入れ替えたにすぎないものである。また,証拠(乙9)及び弁論の全趣旨による と,「卓上敷マット」を含むテーブル掛けなどの物品分野において,色彩を適宜変更 することはよく見られる手法であると認められる。 そうすると,意匠2の5本の編み糸のうち,紫色の糸と赤色の糸の配置を入れ替 えて本願意匠の構成にすることについて,意匠の着想の新しさや独創性があるとは\nいえない。
ウ 以上からすると,本願意匠は,意匠2の形態に基づいて,当業者におい て容易に創作できたものと認められる。

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◆平成30(行ケ)10147

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平成30(行ケ)10010  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成30年5月30日  知的財産高等裁判所

 特許公報(実案公報)に記載された形状が、意匠法の創作容易性の基礎となる「公然知られた意匠」に該当するのかが争われました。知財高裁は、特許庁発行の公報の目的、および公表の期間、不特定又は多数の者に知られた事実を優に推認できると判断しました。
 意匠法3条2項は,公然知られた形状等に基づいて容易に意匠の創作をする ことができたときは,意匠登録を受けることができない旨を規定している。公然「知 られた」との文言や,同条1項が,刊行物に記載された意匠(同条1項2号)と区別 して「公然知られた意匠」(同条1項1号)を規定していることと対比すれば,「公然 知られた」というためには,意匠登録出願前に,日本国内又は外国において,現実に 不特定又は多数の者に知られたという事実が必要であると解すべきである。
イ 引用意匠1は,昭和54年に公開された公開実用新案公報に記載された意匠 であり,引用意匠2は,昭和61年に公開された公開実用新案公報に記載された意 匠である。したがって,引用意匠1の記載された公報は,本願意匠の登録出願時ま でに37年が,引用意匠2の記載された公報は,同じく30年が,それぞれ経過し ている。 特許庁発行の公報は,閲覧・頒布等によりその内容を周知する目的のものであり, 多数の公共機関に対し交付され,これらの機関の多くにおいて一般の閲覧に供され ている。引用意匠1の記載された公報が発行された翌年の昭和55年当初における 交付先施設数は225か所で,このうち,一般の公開に供している地方閲覧所は1 15か所であり,昭和54年の一般地方閲覧所の公報類の閲覧者数は23万387 9人である(乙1の1・2)。引用意匠2の記載された公報が発行された昭和61年 当初における交付先施設数は211か所で,このうち,一般の公開に供している地 方閲覧所は109か所であり,同年の一般地方閲覧所の公報類の閲覧者数は17万 1665人である(乙2)。 さらに,特許庁では,平成11年3月にインターネットを通じて産業財産権情報 を無料で提供する「特許電子図書館(IPDL)」サービスを開始した。また,その 後,その運営の移管を受けた独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)に おいて,平成27年3月から「特許情報プラットフォーム(J−PlatPat)」 の提供を開始している。J−PlatPatでは,明治以降発行された1億件を超 える公報類や諸外国で発行された公報を蓄積しており,文献番号,各種分類,キー ワード等により検索することが可能である(乙3)。\n
ウ 以上の事実を総合すると,引用意匠1及び引用意匠2の記載された公報が, いずれも,本願意匠の登録出願時まで長期にわたって公然知られ得る状態にあって, 現実に不特定又は多数の者の閲覧に供されたことが認められる。そして,これらの 事実によれば,これら公報に記載された引用意匠1及び引用意匠2に係る形状が, 現実に不特定又は多数の者に知られた事実を,優に推認することができる。
(2) 創作容易性について
本願意匠は,意匠に係る物品を「中空鋼管材におけるボルト被套具」とし,その形 状は,正面視をハット状,平面視を縦長長方形の板状としたものである。 引用意匠1は,建築構成材や建築構\造材に固定される横長長方形板状の支持具の 表面に現れるボルトの頭部を,支持具全体を被覆して保護するボルトカバーに係る\n意匠であり,横長長方形板の左側端部を内側にコ字状に屈曲させ,右側端部をL字 状に屈曲させた形状のものである(甲1)。 引用意匠2は,建築用の支持材に係る意匠であり,全体形状を,長手方向に垂直 な断面をハット状に形成した板状の長尺材としたものである(甲2)。 引用例1によれば,引用意匠1のボルトカバー(7)は,固定板(1)の係止リブ (8a)(8b)に形合するように,その端部の形状が形成されているものであり, 端部の形状は,ボルトカバーを取り付ける箇所等に応じて,当業者が任意に選択で きるものと解される。また,ボルトカバーの幅や長さも,当業者が適宜選択できる ものである。そうすると,建築部材の分野における当業者であれば,引用意匠1の ボルトカバーに,引用意匠2の形状を適用して,ボルトカバーの端部の形状を変更 するとともに,その幅及び長さを変更して,正面視をハット状,平面視を縦長長方 形の板状とすることは,容易になし得ることであるから,本願意匠は,当業者が,引 用意匠1に,引用意匠2を適用して,容易に創作することができたものと認められ る。

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◆平成30(行ケ)10009

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平成29(行ケ)10188  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成30年3月12日  知的財産高等裁判所

 創作容易であるとした審決が維持されました。
 前記(1)によれば,意匠の創作非容易性は,その意匠の属する分野における通 常の知識を有する者(当業者)を基準に,公然知られた形状,模様若しくは色彩又 はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたか否かを判断して 決するのが相当である(意匠法3条2項)。 本願意匠の「アクセサリーケース型カメラ」は,アクセサリーケースとしての用 途と機能を有し,併せて相手に分からないように撮影し,録画するという隠しカメ\nラとしての用途と機能を有するものである。アクセサリーケースに隠しカメラを設\n置する場合,多種多様な隠しカメラの撮像部の配置を参考にして,適切な設置場所 を決定すると考えられるから,本願意匠に係る当業者は,アクセサリーケースの分 野における通常の知識と,隠しカメラの分野における通常の知識を併せて有する者 である。 前記1(4)のとおり,引用意匠3は,ガム等の収納容器の内部に撮影機能を組み込\nんだ「撮影機能付ボトルケース」であり,引用意匠4は,ティッシュボックスの収\n納容器の内部に撮影機能を組み込んだ「撮影機能\付ティッシュボックス」である。 したがって,「アクセサリーケース型カメラ」の当業者にとって,隠しカメラで ある引用意匠3及び4は,出願前に公然知られた形態といえるから,本願意匠にお ける撮像部の設置場所を決定するに当たり,引用意匠3及び4を参考にすることが できる。
イ 原告は,1)本件審決の認定と異なり,本願意匠と引用意匠3及び4は同じ分 野に属さない,2)本願意匠に係る当業者には,防犯用隠しカメラの分野に関する意 匠を転用する習慣などなく,防犯用隠しカメラの形態が広く知られていたとはいえ ない,などとして,引用意匠3及び4を相違点Aの創作容易性の根拠とすることは, 誤りであると主張する。 しかし,1)本件審決は,本願意匠に係る当業者が,アクセサリーケースと隠しカ メラの双方について,通常の知識を有するものと判断しているのであって,本願意 匠と引用意匠3及び4が同一の分野に属すると判断しているのではないから,原告 の上記主張は前提を異にするものである。また,2)アクセサリーケースに隠しカメ ラを設置する場合,隠しカメラの分野においていかなる形態で撮像部が設置されて いるかを参考にすると考えられるから,本願意匠に係る物品の当業者にとって,公 然知られた隠しカメラの形態は,公知というべきである。 したがって,本件審決が,引用意匠3及び4を相違点Aの創作容易性の根拠とし たことに誤りはない。
(3) 相違点AないしCの創作容易性
ア 引用意匠3(別紙4。甲4)及び4(別紙5。甲5)の形状からすれば,こ れに接した当業者は,隠しカメラの撮像部を収納部とすることを示唆されている。 引用意匠1は,アクセサリーケースを開いて指輪を見せ,ひざまずいた状態でプ ロポーズを行うというアメリカの風習(甲13)に適するよう,撮像部を上蓋部に 設けたものである(甲2)。そこで,これと異なる形で,アクセサリーケースを使 用する場合にも適するよう,撮像部の位置を変更する動機付けが認められる。した がって,撮像部を収納部に設置した引用意匠3及び4を参考にしつつ,引用意匠1 の撮像部を上蓋部から収納部に変更することは,当業者が,容易に創作することが できたものである。 また,一つの要素をある箇所に設ける際に,その箇所の上下左右対称の中心部分 に配置する造形処理は,工業デザイン一般において通常行われていることであるか ら,撮像部を収納部の中央部分に配置することは,特段困難なことではない。そし て,カメラの撮像部の形態を円形とすることはごく普通にみられる広く知られた形 状であり,撮像部の直径を13%から15%に大きくすることは,多少の改変にす ぎない。 したがって,相違点Aに係る本願意匠の形態には着想の新しさ・独創性があると はいえず,引用意匠1に引用意匠3及び4を組み合わせることによって,当業者が 容易に創作することができたものである。
イ 相違点Bについて,引用意匠1の上蓋部の形態を,引用意匠2(甲3。別紙 3)の上蓋部のように,上蓋上面が平坦な略直方体状とすることに,着想の新し さ・独創性があるとはいえず,当業者が,容易に創作することができたものである。
ウ そして,相違点Cについて,スイッチ等の操作部を大きくするような変更は, 操作性の向上等のために行われる特段特徴のない変更である。そうすると,引用意 匠1のスイッチの形態を,特段特徴のない変更をして広く知られた形態である略円 柱状にすることに,着想の新しさ・独創性があるとはいえず,当業者が容易に創作 することができたものである。

◆判決本文

◆本件意匠はこちら。意願2015−24653号

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平成28(行ケ)10054  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成28年11月7日  知的財産高等裁判所

手すりの部分意匠について、創作容易であるとした審決が維持されました。判決文中に本件意匠および引用意匠が提示されています。平面部の透明度がグラデーションで変化するというものです。
 (ウ) 透明の面板を手摺の構成部分に使用する場合において,下を白く着色\nして透明度を低く,上の透明度を高く,下から上にグラデーションにより透明度を 高く変化させることは,公然知られた模様又は色彩であり,これを合わせガラス面 板の模様又は色彩として手摺の構成部分である合わせガラス面板に付することは,\n当業者にとってありふれた手法であることは,前記(1)ウ(イ)のとおりである。 また,着色された部分の色調や透明度をどの程度とするか,透明度がグラデーシ ョンにより変化している部分をどの位置にするか,透明度がグラデーションにより 変化する幅をどの程度にするかについては,構成比率を変更するものにすぎず,こ\nれらの比率を,前記第2の2の甲1の透過率を説明する参考図や使用状態を示す参 考図のようにすることは,当業者にとってありふれた設定であることも,前記(1)ウ (イ)のとおりである。
そして,前記(イ)によれば,平板の合わせガラスを着色するに当たり,合わせガラ スを構成する2枚のガラス板の間の中間膜ないし樹脂層のみに着色し,2枚のガラ\nス板をその全面において透明にすることは,当業者にとってありふれた手法である。 したがって,仮に,グラデーション模様の配されている部位が,ガラス面板であ る合わせガラスを構成する2枚のガラス板の間の中間膜ないし樹脂層に特定されて\nいることを前提としても,本件部分意匠は,意匠登録出願前に当業者が日本国内に おいて公然知られた形状と模様又は色彩の結合に基づいて容易に創作をすることが できたものといえ,意匠法3条2項に該当する。

◆判決本文

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平成27(行ケ)10004  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成27年7月9日  知的財産高等裁判所

 パチンコ、スロットマシンなど画面の意匠(部分意匠)について、創作容易でないとした審決が維持されました。
上記のとおり,差異点(エ)とは,大型数字表示部の下側から右側にかけて倒L\n字状に設けられた2〜3桁の小型数字表示部の配列の差異をいうところ,この小型\n数字表示部は,表\示画面中央上辺寄りに設けられた3桁の大型数字表示部(差異点\n(イ)),表示画面左側上辺寄りに設けられた4桁の中型数字表\示部(差異点(ウ)), 表示画面左側下辺寄りに設けられたドット表\示部と共に,本件部分意匠の美感上の 特徴の一部,すなわち,極めて目立つ大型数字表示部を上辺の中心に置き,その周\n囲に比較的小さな各種データ表示部を配置するという特徴を構\成している要素であ る。 ところが,この差異点(エ)に係る倒L字状の数字表示部群,すなわち,小型数\n字表示部の形態は,引用部分意匠2〜5のいずれにも見られないものであり,また,\n通常の需要者の視覚を通じて生じる美感を基準とする限り,引用部分意匠1の区域 4)〜8)を倒L字状の数字表示部群ととらえることもできない。そして,この倒L字\n状の形態が,ありふれた手法に基づくものであるとか,又は特段の創意を要さない で創作できるとは認め難い(シンプルであるからといって,直ちに,創作が容易で あるとか,美感への影響が微弱であるとはいえない。)。 原告の主張するように,数字表示部の桁数,数字表\示部の大きさ,又は数字表示\n部の配置を多少変更させることは,個別に分断して検討すれば,それほどの創意工 夫とはいえないであろうが,これらを全体的に観察すると,大型数字表示部に隣接\nして配置された多数の数字よりなる小型数字表示部が,倒L字状のものとして,一\n体の美感を形成しているのである。
(2) 差異点(イ)について
前記のとおり,差異点(イ)とは,表示画面中央上辺寄りに設けられた3桁の大\n型数字表示部の有無をいうところ,この形態は,引用部分意匠2〜5のいずれにも\n見られない。また,この形態が,ありふれた手法に基づくものであるとか,又は特 段の創意を要さないで創作できるとは認め難い。 原告は,引用部分意匠2に差異点(イ)に係る構成が顕れている旨を主張する。\nしかしながら,本件部分意匠の大型数字表示部は,表\示画面の最上段に配置され ているところ,引用部分意匠の3桁の大型数字表示部は,表\示画面上方寄りには配 置されているものの,最上段のドット表示部よりは下に配置されているのであり,\n大型数字表示部の配置された位置は,両者で異なるものである(このような数字表\ 示部の配置の入替え〔左右上下前後反転のようなものは含まない。〕と,上記(1)に 説示した数字表示部の単なる配置の変更とは区別されなければならない。)。しかも,\n本件部分意匠では,小型数字表示部及び中型数字表\示部という二段階の対象数字表\n示部との比較において,大型数字表示部の大きさがより強調されているものである。\n数字を大きくすること自体がありふれた手法であるとしても,ありふれた手法に 基づく複数の構成要素を組み合わせることによっても新たな美感は生じ得るのであ\nり,そして,その組合せにこそ創意が発揮されるのである。したがって,意匠の構\n成要素の位置を異にする意匠から,その位置を捨象した構成要素のみを取り出して\nその創意を論じることは,相当ではない。

◆判決本文

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平成26(行ケ)10078 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成26年9月11日  知的財産高等裁判所

 創作容易であるので登録できないとした審決が維持されました。「複数表示された静止画や動画等の選択表\示枠をクリックすることにより当該画像等を拡大表示したり,静止画や動画等の選択表\示枠を左右又は上下の移動操作に合わせて移動させることは,携帯情報端末の当業者にとって本願の出願前に極めて広く知られた手法であるから,審決がこれを顕著な事実と認め,その手法を理由中に提示しなかった点に,拒絶理由を通知しなかった違法や判断遺脱の違法はない」との被告の主張が認められました。
 原告は,審決が,態様(D)及び(E)について何らの証拠を示すことなく,この種物品分野において広く知られた手法であるとして創作非容易性を否定した点で,拒絶理由を通知することなく審決をした違法及び判断遺脱の違法があると主張する(前記第3の3)。しかるに,当該物品分野において広く知られた手法については,発明の属する技術の分野における周知技術と同様,当業者が熟知している事項であるため,本来,審決においてその認定根拠を示すまでもないのであり,このような認定根拠となる文献を示さなかったとしても,意匠法50条3項の準用する特許法50条に違反するということはできない。 そして,態様(D)及び(E)に係る手法が携帯情報端末の当業者にとって広く知られた手法であると認められることは,前記3のとおりであるから,審決において,特段の証拠を示すことなく同旨の判断を示したことは,意匠法50条3項の準用する特許法50条に違反するものではない。また,この点に関して判断の遺脱があったということもできないから,意匠法52条の準用する特許法157条に違反するということもできない。 よって,原告の上記主張は採用することができない。

◆判決本文

◆関連事件はこちらです。平成26(行ケ)10077

◆平成26(行ケ)10076

◆平成26(行ケ)10075

◆平成26(行ケ)10074

◆平成26(行ケ)10073

◆平成26(行ケ)10072

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平成25(行ケ)10287 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成26年03月27日 知的財産高等裁判所

 意匠法3条1項3号に該当するとした審決が取り消されました。最後に3条2項の適用について付言されています。
 被告は,タッチパネルを湾曲させたスマートフォンは本願出願前より既に公知となっており,本願意匠のみの新規な特徴とはいえないし,スマートフォンは使用時に片手に持ったり,画面を指で操作する関係から,筐体全体の形態はもとより,機能キーの形状や配置,カメラレンズの配置等,詳細に確認されるものであって,それら全てが,意匠の特徴部分となり得るのであり,タッチパネルを湾曲させたことのみを過大評価することはできないし,そもそも本願意匠の湾曲の程度はごく僅かなものでしかないので,両意匠の筐体の形態における相違点が類否判断に及ぼす影響は微弱なものにとどまる旨主張する。そして,前記1(3)認定のとおり,携帯電話の意匠において,筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾曲板形状を呈する筐体の形態,及び,正面視すると,上下辺はごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線で,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まる形態は,それぞれ優先日前に公知である。しかし,乙第1号証によれば,携帯電話の意匠においては,本願意匠のような筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾曲板形状を呈する筐体の形態ではなく,むしろ,正面及び背面の大部分が平坦面でかつそれぞれが平行な平坦面をなす平板形状の筐体の形態も多数見受けられることが認められる。そうすると,本願意匠の上記形態は,スマートフォンの形態としてありふれたものであるとまでいうことはできない。しかも,上記認定のとおり,上記の形態は,本願意匠の全体の形状という最も需要者の注意を惹きやすい部分の一つを構成する形態であることも併せ考えると,上記認定のとおり,筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾曲板形状を呈する筐体の形態が公知のものであるとしても,直ちに本願意匠の上記形態が,共通点(A)の形態に埋没してしまい,需要者の注意を惹くものでないということはできない。また,上記の点に照らすと,タッチパネルが湾曲した形態を有すること自体が全体の形状の美観に与える影響が大きいものであるというべきであり,その程度が僅かであるとしても,やはり,需要者の注意を惹くものでないということはできない。なお,被告は,画像を表示するための画面を凹面として湾曲させることは,スマートフォンを含む画面(液晶画面等)を使用する物品においては,本願出願前よりごく普通に見受けられるものであった(乙2ないし6)とか,スマートフォンにおいて,画面を湾曲させたものも本願出願前に既に公知となっているものが見受けられる(乙7ないし11)とも主張する。しかし,スマートフォン以外の物品において画像を表\示するための画面を凹面として湾曲させる形態が公知であったとしても,用途や使用方法が大きく異なる以上,そのことをもって直ちにスマートフォンにおいて画像を表示するための画面を凹面として湾曲させる形態が需要者の注意を惹くものでないことの根拠とすることはできない。また,スマートフォンにおけるものについても,本願意匠とはその形態が大きく異なるもの(乙10,11)も存在する以上,上記乙号各証に示されたスマートフォンないしはその意匠に画面を湾曲させた形態のものが存在するからといって,直ちに上記認定が左右されるものとはいえない。また,乙第1号証によれば,正面視における上下辺の形態や,正面周囲枠の形態についても種々のものが見られることが認められる。そうすると,本願意匠の筐体正面の四隅を曲率半径のやや大きな隅丸とし,上下辺はともにごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線であり,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まっている形態がありふれたものであるとまでいうことはできない。その上,上記形態は,本願意匠の最も需要者の注意を惹きやすい部分の一つを構\成するものであることも併せ考えると,正面視すると,上下辺はごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線で,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まる形態が本願出願前に公知であるとしても,本願意匠の上記形態が共通点(A)の形態に埋没してしまい,需要者の注意を惹くものではないということはできない。
・・・・
以上によれば,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえず,意匠法3条1項3号に該当しないから,審決の判断は誤りであり,原告主張の取消事由は理由がある(なお,当裁判所の前記判断は,本願意匠の意匠法3条1項3号該当性についての審決の判断に対するものであり,当然ながら,本願意匠の同法3条2項について何ら判断するものではない。)。

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平成25(行ケ)10315 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成26年03月27日 知的財産高等裁判所

 意匠法において、インターネット上で公開された公報について、現実に合計41回ダウンロードされていることから、「公然知られた」に該当するとして、審決が維持されました。意匠法は、特許法と異なり、創作非容易性については、「公然知られた」を要件とするので、このような問題が生じます。
 意匠法3条2項所定の「公然知られた」とは,一般第三者たる不特定人又は多数者に,単に知り得る状態になったことでは足りず,現実に知られている状態になったことを要すると解するのが相当である。すなわち,意匠法3条1項は,意匠登録を受けることができない意匠として,1)出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠(同項1号),2)出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された意匠,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(同項2号)等を別個に列挙している。また,同条2項は,出願前に当業者が日本国内又は外国において「公然知られた」模様等に基づいて容易に創作することができた意匠は,同条1項の規定にかかわらず,意匠登録を受けることができない旨定める。仮に同条1項1号の「公然知られた」意匠の意義を,不特定人又は多数の者が知り得る状態になったことで足りると解した場合には,同項1号を2号と別個に規定した意味が失われてしまうから,同項1号の「公然知られた」意匠とは,不特定人又は多数の者が知り得る状態になったことでは足りず,現実に知られている状態に至ったことを要すると解するのが相当である。そうだとすると,同条2項の「公然知られた」模様等についても,同様に,不特定人又は多数の者が知り得る状態になったことでは足りず,現実に知られている状態に至ったことを要すると解するのが相当である。
・・・・・
イ 判断
引用文献に記載された引用商標からなる模様が本願前に「公然知られた」模様に該当するかにつき検討するに,引用文献は,平成23年4月21日,インターネット公報としてインターネット上で発行されたことにより,一般第三者である不特定人又は多数の者が知り得る状態となったと認められる。のみならず,引用文献は,同月21日から同月末日までの間に,現実に合計41回ダウンロードされており,本願がなされた同年5月16日までにはダウンロードされた回数はさらに増えていたと推測されること,インターネット公報は第三者が自由に閲覧することができるためのものであり,本願は引用文献がインターネット公報として発行された日の25日後になされたものであることに照らすならば,引用文献は,本願時までに,不特定人又は多数の者に現実に知られている状態にあったことに疑いの余地はない。したがって,引用文献に記載された引用商標からなる模様は,「公然知られた」模様に該当し,この点において審決の判断に誤りはない。
(3) 原告の主張に対して
原告は,本願時,インターネット公報の情報を知ることができたのは,前記OSを搭載した高性能,大容量のPC機器を入手し得るか,又は,市販PC機器にウィルス防御ソ\フトを搭載せずにインターネット通信を行う,特定の者に限られ,不特定の者はその情報を知ることはできなかったと主張する。しかし,以下のとおり,原告の主張は失当である。本願時には,上記OSよりも新機種のOSが搭載されたPC機器が既に発売されていたとしても,日本国内において,上記OSが搭載されたPC機器が多数使用されていたと推認される。また,上記OSが搭載された市販PC機器にウィルス防御ソフトを搭載すると,通信が実質的に不可能\であったと認めるに足りる証拠はない。現実に,平成23年4月1日から同月末日までの間に,引用文献は合計41回ダウンロードされており,これらの利用者は,上記OS及びウィルス防御ソフトを搭載した通常の市販PC機器を利用した者であると推認され,一般第三者である不特定人又は多数の者はインターネット公報の情報を入手可能\な状態であったと認められる。
(4) 小括
以上のとおりであるから,引用文献に記載された引用商標からなる模様は,「公然知られた」模様に該当し,原告主張の取消事由1ないし7はいずれも理由がない。2 本願意匠の創作容易性の認定の誤り(取消事由8)について本願意匠は,略横長長方形のシールの正面左側の略正方形の枠の中に,上下を反対にした数字の「7」を2つ,欧文字の「Z」と見えるように並べ,そのほぼ真ん中に「∞」の記号を配置した模様からなる部分意匠である。本願意匠の略正方形の枠の中の模様は,引用商標からなる模様と実質的に同一であり,当業者が引用商標からなる模様に基づいて本願意匠を創作することは容易であると認められる。

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平成25(行ケ)10160  意匠権 行政訴訟 平成25年11月14日 知的財産高等裁判所

 意匠の創作容易性について、容易であるとした拒絶審決が維持されました。
 原告は,本願意匠及び引用意匠2は,枕状から形成する包装システムの容器に関する意匠であり,当該包装システムの容器では引用意匠1の「容器下側のパネルを底に折り曲げる態様」を採用することはできないのに対し,引用意匠1は,ブランクから形成する包装システムの容器に関する意匠であり,当該包装システムの容器では,生産技術の観点から「容器下側のパネルを底に折り曲げる態様」を採用せざるを得ないのみならず,上下対称にすることはできないから,本件審決は,物品の形状を創作する場合に考慮すべき当該物品の生産技術を無視したものであるなどと主張する。しかしながら,本願意匠の創作非容易性の判断は,引用意匠1及び2に基づいて当業者が容易に創作することができたか否かの観点から決せられるべきであって,生産技術が異なることをもって,直ちに当該形態が容易に創作することができないと判断することは相当ではない。本願意匠及び引用意匠2において,容器下側のパネルを底に折り曲げる態様を採用することが技術的に不可能であるとしても,そのことをもって,引用意匠1において,引用意匠2のフィン及びフラップの上下対称の形態を採用することについて,格別の技術的な障害を認めることはできない。\n

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平成24(行ケ)10449 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成25年06月27日 知的財産高等裁判所

 部分意匠について創作非容易性要件違反とした審決が維持されました。
 原告は,審決が本件登録意匠部分の個々の部分を分断してそれぞれに創作性を判断した誤りがある旨を主張する。しかしながら,全体的な創作性を判断するに当たり,まず部分の構成の創作性を判断する分析的手法をとることは当然にされるべきことであって,この点に係る原告の主張は失当である。確かに,意匠は,部分的な構\成が他の構成部分と有機的に結合して全体的に美感を生み出すものであるところ,創作性のないありふれた態様のみをまとめあげたものが,その構\成部分との組み合わせや関連において全体として新規な美感を形成する場合もあり得る。しかしながら,審決は,構成【A】〜【E】の個々の創作性の有無等の判断を踏まえた上で,本件登録意匠部分の全体の創作性の判断を加え,なお創作容易性が認められると判断したのであり(審決7頁9〜14行目),原告の上記主張は,審決を正解しないものであり,失当である。\n
(4) 創作容易性について 原告は,本件登録意匠部分は,従来例の遊技機用表示装置の表\示面に左右の視認可能性の向上を図る創作をしたのであり,創作容易性はない旨を主張する。しかしながら,甲3文献には,「【0022】しかしながら、通常、遊技機設置島間に構\成される通路の幅は比較的狭く、さらに遊技用椅子が設置されているために各遊技機49の遊技状況を把握するのは容易ではない。・・・・・得点付与式の遊技機の場合には得点数が遊技者の手元にデジタル表示されるため、概ねの遊技状況を一瞥で把握できないからである。・・・・・得点付与式の遊技機は・・・・・遊技状況を他の遊技客にアピ−ルするアピール度が低いという欠点を有する。つまり、得点が多く付与されている遊技状態にある遊技機を遊技客に見せつけることにより、遊技を行なうべきか否か決めかねている者の遊技意欲を駆り立てる効果が低く、いわゆる客寄せ効果が低いと言える。【0023】アナログ表示部51はかかる得点付与式の遊技機の欠点を補うべく、遊技客に各遊技機49の遊技状況を一瞥で把握させることができるとともに、・・・・・遊技状況を遊技客に存分にアピールすることができることを主目的として設けられている。特にかかる目的を簡易かつ効果的に達成すべく、このアナログ表示部51は、取付面に対して突出する態様で設けられている点にその特徴を有する。・・・・・アナログ表示部51は、山型に突出したその両面に表\示面を有しており、この左右の表示面に同一内容の表\示が行なわれる。・・・・・【0054】・・・・・アナログ表示部51は、遊技機設置島1の幕板部2表\面の所定の取付面72に取付けられている。アナログ表示部51は、取付面72より山型に突出する態様で構\成されており、図5に示すように取付面72に対して所定の傾斜をもって2つの表示面71が設けられている。2つの表\示面71には、それぞれ4つずつランプ73が配置されており、各ランプ73は長方形のカラーレンズ74に覆われている。カラーレンズ74は色付きの透明なプラスチック樹脂でできたものである。また、2つの表示面71は、図6に示すように、左右対称に構\成されている。・・・・・【0057】このように遊技者の持点がレベル基準値に達するごとに2つの表示面71それぞれにおいて対称となる位置にランプ73が1つずつ点灯するため、アナログ表\示部51を左右いずれの方向から見ても遊技者の持点所有状況について大まかに把握可能となる。・・・・・【0058】一方、遊技途中の遊技者も視線を少しずらすだけで他の遊技者の遊技状況を容易に把握できるという利点がある。・・・・・」との記載がある。したがって,本件登録意匠部分と甲3意匠の表示面(71)とは,その視認可能\性という面において用途又は機能を同じくするものというほかない。審決が本件登録意匠部分を甲3意匠の表\示面(71)の形状を基にわずかな微差が加えられたものとして創作容易性を認めた点に誤りはない。

◆判決本文

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平成24(行ケ)10042 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成24年07月18日 知的財産高等裁判所

 二輪車のタイヤの意匠について、類似するとした審決が取り消されました。
 被告は,いずれも略同方向に傾斜した長,中,短の三つの溝を1単位とし,これを,赤道を中心として,左右の斜めに向けて,千鳥配置状に配設した点に加え,各溝が並ぶ順番,長中二つの傾斜溝の形状と屈曲の方向,中傾斜溝の長さと位置を一体の共通点Aとして捉え,これらのすべてを満たす公知意匠が存在しないことから,それらを一体として審決が認定した共通点Aは,引用意匠との対比において類否判断に支配的な影響を及ぼすと主張する。しかしながら,「いずれも略同方向に傾斜した長,中,短の三つの溝を1単位とし,これを,赤道を中心として,左右の斜めに向けて,千鳥配置状に配設した点」は,特定の単位の繰返しという意匠全体の構成に関する基本的な態様であるということができるものの,上記のとおり,それだけでは取引者・需要者の注意を引きやすい特徴的な形態であるとはいえず,各溝の並ぶ順番(溝の長さは相対的な評価なので,溝の長さが変化すると,溝の並ぶ順番も変化し得る関係にある。)や,長傾斜溝,中傾斜溝の形状等については,繰返しの単位内における個別的な形状に関するものとして,取引者・需要者の注意を引く特徴的な形態となり得るものである。
(2) 両意匠の類否判断
 上記観点から両意匠を対比するに,本願意匠は,全体として,三つの溝が略等距離を保ち,整然と配置されている印象を与える点に特徴がある。個別的には,長傾斜溝と中傾斜溝につき,溝間の距離に大きな変化はなく,また,いずれも端部と折曲部との間の長い辺部分が略直線状で,サイドウォール寄り端部も斜辺状,すなわち直線状であって,赤道寄り端部は小半円弧状であるものの,端部に向けて溝幅が狭くなることから鋭角的な印象を与え,折曲部の角部も明確であり,短溝についても,長さが短いため,中傾斜溝との溝間の距離の変化を感じさせず,また,端部及び端部を結ぶ辺部分がいずれも略直線状である点に特徴がある。これに対し,引用意匠は,本願意匠と対比してみるときには三つの溝が1単位となっているように観察されるものの,引用意匠それ自体を観察する限りにおいては,全体として,三つの溝がまとまりなく,雑然と配置されている印象を与える点に特徴がある。個別的には,長傾斜溝と中傾斜溝との溝間の距離の変化が大きく,また,三つの溝につき,いずれも一方の端部が毛筆書体における横棒の入り様とした形態であって,足のかかと様に出っ張った部分があり,かつ,この部分の溝幅が広がっていることなどから,当該端部がねじれている印象を与え,さらに,長傾斜溝は他方の端部も丸みを帯びた斜辺の突端をわずかに屈曲させた形状であり,中傾斜溝は溝全体が緩やかに湾曲した形状であり,短溝は毛筆書体における横棒の入り様とした形態が溝全体の約3分の1を占め,他方の端部もわずかに丸みを帯びた斜辺状であって,統一感なくねじれた印象を与える点に特徴がある。上記のとおり,本願意匠の三つの溝は,溝縁が直線であり,端部に向けて溝幅が細くなることから,看者に対し,一方の先端がとがった細い直線により構成され,無機的であり,かつ,非常にすっきりとして,サイドウォールから赤道に向けて流れる印象を与えるような美感を生じさせるものといえる。これに対し,引用意匠の三つの溝は,全体として,基本的に溝幅に変化がないことも相まって,看者に対し,同じ幅の溝が曲線的にねじ曲がった印象,例えていえば,先端の丸まった筒状の細菌あるいは細胞をまとまりなく配した印象を与えるような美感を生じさせるものといえる。\n

◆判決本文

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平成21(行ケ)10051 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成21年08月31日 知的財産高等裁判所

 類似する意匠であるとした審決を取り消しました。
「審決は,差異点を5つ挙げるものの,それらは,いずれも,「僅かな差異」であると判断する。すなわち,差異点(a)については,凹部が1条の螺旋状に形成されているとしても,「僅かな差異」というべきであり,差異点(b)については,凹部が1つずれたことによる平坦面の形状のみに着目すべきでなく,凹部の集合を全体として観察すると「僅かな差異」というべきであり,差異点(c)については,凹部の集合を全体として観察すると,「僅かな差異」というべきであり,差異点(d)については,起点,終点は,注視して探せば発見できる程度のものであって,「僅かな差異」というべきであり,差異点(e)については,本願の凹部が接して配置されていない点は,微差にすぎないというものである。要するに,凹部については,全体の集合のみを対比の対象にすべきであって,凹部相互の配置関係を対比の対象にすべきではないとして,類似するとの結論を導いている。しかし,審決は,「引用意匠」における「意匠としての特徴」や「類似の範囲」について,何らの説明することなく結論を導いており,凹部相互の配置関係を対比の対象にすべきではない点の論証がされているとは到底いえない。また,その結論も上記のとおり誤りがある。」

◆平成21(行ケ)10051 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成21年08月31日 知的財産高等裁判所

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平成21(行ケ)10051 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成21年08月31日 知的財産高等裁判所

 類似する意匠であるとした審決を取り消しました。
「審決は,差異点を5つ挙げるものの,それらは,いずれも,「僅かな差異」であると判断する。すなわち,差異点(a)については,凹部が1条の螺旋状に形成されているとしても,「僅かな差異」というべきであり,差異点(b)については,凹部が1つずれたことによる平坦面の形状のみに着目すべきでなく,凹部の集合を全体として観察すると「僅かな差異」というべきであり,差異点(c)については,凹部の集合を全体として観察すると,「僅かな差異」というべきであり,差異点(d)については,起点,終点は,注視して探せば発見できる程度のものであって,「僅かな差異」というべきであり,差異点(e)については,本願の凹部が接して配置されていない点は,微差にすぎないというものである。要するに,凹部については,全体の集合のみを対比の対象にすべきであって,凹部相互の配置関係を対比の対象にすべきではないとして,類似するとの結論を導いている。しかし,審決は,「引用意匠」における「意匠としての特徴」や「類似の範囲」について,何らの説明することなく結論を導いており,凹部相互の配置関係を対比の対象にすべきではない点の論証がされているとは到底いえない。また,その結論も上記のとおり誤りがある。」

◆平成21(行ケ)10051 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成21年08月31日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10069 審決取消請求事件 意匠権行政訴訟 平成20年08月28日 知的財産高等裁判所

 創作容易であるとした審決が取り消されました。
  「意匠が創作容易であるか否かは,出願意匠の全体構成によって生じる美感について,公知の意匠の内容,本願意匠と公知意匠の属する分野の関連性等を総合考慮した上で判断すべきである。審決は,本願意匠の溝の形状である「三角波状ジグザグ線模様」,「相互90度の位置関係それぞれにおいて同じ構\成とした溝を多数等間隔に配列して交叉させ,間隔を両方同じとする線の配列」等について,これらの構成と共通する公知の文様,配列方法が存在することを理由として(前記第2,2(2)イ,ウ参照),本願意匠は,広く知られた形状,模様により創作容易であると判断した。しかし,審決は,前記1のとおり,本願意匠の構成(基本的態様及び具体的態様)について認定上の誤りがあり,これを前提として創作容易性についての判断をしているから,審決の創作容易性の判断結果も当然に誤りがあるというべきである。・・・・三角波ジグザグ線模様のうちにも,線の太さや各直線部の長さ・形成角度が様々なものがあり,その選択の余地がある上,一種類の三角波ジグザグ線模様を用いて,配列が縦横同じ構\成となるように配列した場合でも,溝間隔の幅によって,ジグザグ線に囲まれて形成される形状は様々であり,それぞれの場合において,当該意匠から受ける印象は異なる可能性がある。したがって,どのような溝間隔の幅を選択するかということは,当該意匠から受ける印象などをも考慮して決定されるものであり,その決定の過程においても相当程度の創作性を要するものと認められ,配列が縦横同じ構\成となるように配列したことから直ちに,意匠の創作について当業者であれば格別の創意・工夫を要しないものと断定することはできない。本願意匠は全体として,溝によって区切られる各研磨面が,前記1(2)?Cのとおりの特有の形状を呈していることから,見る者に対して,繊細さ,鋭さ,不安定さなどを印象づけるものであるといえる。審決の理由が正当であるとする被告の主張は採用できない。(4) 審決には,本願意匠について,意匠法3条2項に規定する意匠に該当し,意匠登録を受けることができないとした点において誤りがあるというべきである。取消事由2は理由がある。」

◆平成20(行ケ)10069 審決取消請求事件 意匠権行政訴訟 平成20年08月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10209等 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟

 創作容易であるとした審決が、取り消されました。裁判所は、下記の付言を呈しました。
  「付言(審判の審理構造及び審理対象に関して)
 意匠登録出願に係る拒絶査定に対する審判の審理の対象は,意匠法17条所定の意匠登録を拒絶すべき事由が存在するか否かである。審判の対象は,審査の過程で審査官が発した「拒絶理由の通知」の当否でもなく,また,拒絶査定に係る拒絶理由の当否でもなく,さらに,請求人の主張の当否でもない。この点は,審判体において,自ら意匠登録をすべき旨の審決ができること(意匠法50条2項),拒絶査定の理由と異なる理由で拒絶すべき旨の審決をすることができること(同条3項)等の法条が設けられていることから明らかである。審判体において,拒絶査定不服審判の請求が成り立たないとの結論を導くためには,意匠法17条所定の条項(例えば同法3条1項,2項など)のいずれかに該当する理由(該当するとの判断に至った論理の過程)を明示することを要する。そして,同条項に該当すると判断するに至った論理の過程を明示するということは,審判体において,?@前提となる法律の解釈に疑義がある場合には,当該法条の解釈を示すこと,?A法条の要件に該当する事実が存在することを明らかにすること,?B事実を法条に適用した結果として,意匠法17条所定の条項(例えば同法3条1項,2項など)に該当するとの論理の過程が成り立つ点を明示することを含む。審判体は,この論理過程を説明する責任を負担し,文書をもって明示することを要する(意匠法52条,特許法157条)。
 ところで,審決書(1)及び(2)を見ると,その「理由」には,「原審の拒絶理由」欄で,拒絶査定に係る拒絶理由の要旨が記載され,「請求人の主張」欄で,拒絶査定を不服とする請求人の主張が記載され,「当審の判断」欄の「請求人の主張の採否について」との項目で,請求人の主張の当否が記載され,同欄の「原審の拒絶理由の妥当性について」との項目で,拒絶理由の当否が記載されてはいるものの,審判体の判断の論理過程を直接的に示した記載部分はなく,結論として,同欄の「本願意匠の創作の容易性について」との項目において,「以上の検討によれば,請求人の主張は採用することができず,原審の拒絶理由は妥当であるから,本願意匠は,出願前に当業者が公然知られた形状に基づいて容易に創作をすることができなものであるといわなければならない」との記載がされているのみである。
 このような審決書(1)及び(2)の理由記載は,その体裁だけで直ちに審決の違法を来すとの結論を導くものであるか否かはさておき,審判体が,本願部分意匠又は本願全体意匠が意匠法3条2項に該当すると判断した論理の過程を的確に示したものということはできない。すなわち,審決書(1)及び(2)の理由は,論理付けの根拠とは無関係かつ不要な事項を含み,審判体の判断の基礎となる論理付けが明りょうでなく,審判の構造に対する誤った認識に基づいた判断であるとの疑念を生じさせるという意味において,妥当を欠くものといえる(特に本件では,少なくとも拒絶理由通知における理由部分は,僅か5行ないし7行からなる,ごく簡単で定型的な記載にすぎないから〔甲13の1,2〕,審判体において,そのような理由が妥当であるとの判断に至ったからといって,当然に,審判体としての結論に至る論理付けとして十\分であるとすることはできない。)。上記の趣旨は,一般の審決書における理由記載においても,同様に留意を要すべき点であるといえる。」

◆平成19(行ケ)10209等 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成19年12月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10078 審決取消請求事件 意匠権行政訴訟 平成19年06月13日 知的財産高等裁判所

   先行意匠から創作容易であるとして拒絶した審決が取り消されました。
  「被告は,?@細長い棒状のピンの中央部の上側に左右対称状に向かい合う一対の小突起をロープ止め突起として形成した態様のものが多数見られること,?A連結紐を2本一対として一体状に形成することも普通に行われること,?B2本の連結紐の間隔を適宜変更して形成することはありふれた手法であることを理由に,連結紐部分を2本一対の連結紐に置き換えることは容易であるから,本願意匠も,当業者にとって容易に創作できたと主張する。しかし,本願意匠のうち個々の構成態様が,ありふれているものであっても,本願意匠は,2本の連結紐をロープ止め突起近くに配設し,その結果それぞれの連結紐とロープ止め突起との間にほぼ三角形に空間を形成すると共に,2本の連結紐の間隔を広くして2本の連結紐と上下のピンの間にロープを配置できる広さを有する横長長方形空間を形成したものであって,その全体の印象として,特有のまとまり感のある,本願意匠の特徴を選択することは,当業者が容易に創作し得たとはいえないから,被告の上記主張は理由がない。もっとも,本願意匠は,例示意匠1,例示意匠2やその他の公知意匠との相違点に照らすと,その登録意匠の範囲(意匠法24条)は,広範なものとはいえないと考えられる。 以上のとおり,本願意匠は,例示意匠1及び例示意匠2によって当業者が容易に創作することができたということはできない。」

◆平成19(行ケ)10078 審決取消請求事件 意匠権行政訴訟 平成19年06月13日 知的財産高等裁判所

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