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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

技術的範囲

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成29(ワ)24598  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和2年3月26日  東京地方裁判所

 技術的範囲に属しない、サポート要件違反の無効理由ありとして、権利行使できないと判断されました。

原告による測定結果
株式会社東洋環境分析センターが,平成30年2月,原告の依頼によ り,宮崎県食品開発センターが保有するPT−Rを用いて,前記イの記載 に従って,同じロットナンバーの被告製品2について,3回測定した結果 によれば,被告製品2(1ロット)の見掛けタッピング比容積は,いずれ も2.4cm3/g(2.45cm3/g,2.46cm3/g,2.46cm3/g)で あった(甲20の1,20の2)。
オ 被告による測定結果
株式会社住化分析センターが,平成30年2月,被告の依頼により, PT−Xを用いて,前記イの記載に従って,製造時期が異なりロットナ ンバーが異なる5つの被告製品についてそれぞれ1回ずつ測定した結果 によれば,被告製品2(製造時期の異なる5ロット)の見掛けタッピン グ比容積は2.2〜2.3cm3/g(2つの製品について2.2cm3/g, 3つの製品について2.3cm3/g)であった(乙11)。 被告が,平成30年10月頃,宮崎食品開発センターが保有するPT −Rを用いて,前記イの記載に従って,製造時期が異なりロットナンバ ーが異なる5つの被告製品2について,それぞれ3回ずつ測定した結果 によれば,その見掛けタッピング比容積は2.2〜2.3cm3/g(3つ の製品について3回とも2.3cm3/g,1つの製品について2.2cm3/ g,2.2cm3/g,2.3cm3/g),1つの製品について,2.2cm3/ g,2.3cm3/g,2.3cm3/g)であった(乙34)。
(2)本件明細書の特許請求の範囲には見掛けタッピング比容積の測定方法は記 載されていないが,発明の詳細な説明には,前記(1)イのとおり,実施例・比 較例における見掛けタッピング比容積はPT−Rを用いて測定された値であ る旨の記載がある。
原告は,PT−Rを用いて測定した結果(前記(1)エ)によれば,被告製品 2の見掛けタッピング比容積は2.4cm3/gであるから,構成要件1F及び 2Fをいずれも充足すると主張する。 て測定した結果によれば,製造時期の異なる5ロットの被告製品2につき, いずれも見掛けタッピング比容積が2.4cm3/gに達していなかった。その 実験の信用性が否定されることを裏付ける客観的な証拠はない。上記のとお り,5ロットという複数の被告製品2について,それぞれ3回ずつ検査した 結果,いずれも見かけタッピング比容積が構成要件1F・2Fの下限である 2.4cm3/gに達していなかったというのであるから,被告製品2は構成要 定対象,測定方法による測定結果に照らして,原告の同エの測定結果によっ て被告製品2の見掛けタッピング比容積が2.4cm3/gであることを認める に足りない。
・・・
本件発明1及び2は,前記のとおり,2.5N塩酸,15分,沸騰温 度という具体的な本件加水分解条件で測定された重合度(平均重合度) をレベルオフ重合度とするものである(そのような具体的な本件加水分 解条件で測定されることを前提として実施可能要件を充足する。)。した がって,本件では,本件加水分解条件という具体的な条件で加水分解さ れた後に測定されるレベルオフ重合度について,優先日当時,当業者 が,技術常識に基づいて,発明の詳細な説明に記載された原料パルプの レベルオフ重合度と,原料パルプを加水分解して得られたセルロース粉 末のレベルオフ重合度とが同一であると認識することができるかが問題 となるといえる(なお,本件加水分解条件は,レベルオフ重合度を求め るものとして,当該酸濃度温度条件では比較的短時間といえる時間の加 水分解を定めたものであることがうかがえる。)。
ここで,優先日当時,本件加水分解条件で測定されるレベルオフ重合 度について,天然セルロースとそれを加水分解して生成されたセルロー ス粉末とが同じレベルオフ重合度となることを直接的に述べた文献があ ったことを認めるに足りる証拠はない。他方,本件明細書においてレベ ルオフ重合度の説明において現に引用されている文献であり,種々の対 象について本件加水分解条件を含む条件で加水分解をした上で本件加水 分解条件(2.5N塩酸,沸騰温度,15分)を提唱したBATTIS TA論文は,(1)木材パプルについて,温和な加水分解条件での加水分解 を経た後に2.5N塩酸,沸騰という過酷な条件で加水分解した重合度 と,温和な加水分解条件での加水分解を経ずに2.5N塩酸,沸騰温度 という条件で加水分解した重合度を実際に測定して,前者の値が後者の 値より低かったこと,(2)セルロースを加水分解した際には結晶化がされ るという他の複数の研究者による研究成果を紹介した上で,上記(1)等の 実験結果は温和な加水分解は重量減少を伴わない結晶化を誘導すること を示しているようであること,(3)温和な加水分解や過酷な加水分解で起 こるメカニズムを提唱した上で,温和な加水分解を経た後に過酷な加水 分解がされた場合には結晶化された短いセルロース鎖の残渣が保持され るため,温和な加水分解を経ずに過酷な加水分解がされた場合よりもレ ベルオフ重合度が低下すると予想されることなどを述べていた。なお, セルロースの加水分解において再結晶化が起こることは他の文献でも紹 発明の詳細な説明の実施例2ないし7のセルロース粉末は,前記 のとおり,原料パルプを4N塩酸,40°C,48時間という条件,3N 塩酸,40°C,40時間という条件,3N塩酸,40°C,24時間とい う条件などで加水分解したものであり,天然セルロースを温和な条件で 加水分解したものといえる。 前記のとおり,本件では本件加水分解条件によるレベルオフ重合度が問 題となるところ,本件加水分解条件を提唱し,本件明細書でも引用してい るBATTISTA論文は,上記のとおり,他の複数の研究者による研究 成果を紹介した上で,本件加水分解条件によるレベルオフ重合度について は,温和な加水分解を経た場合にはその過程を経ていないものに比べて, 値が低下することが予想されると述べていた。その内容とは異なり,本件 加水分解条件で測定されるレベルオフ重合度について,天然セルロースと, それを温和な条件で加水分解して生成されたセルロース粉末とが同じレ ベルオフ重合度であるという技術常識があったことを認めるに足りる証 拠はない。 に述べられるレベルオフ重合度は本件加水分解 条件により測定されたものではないし,同文献の著者は,優先日頃におい ても,著者が考える「レベルオフ」するためには本件加水分解条件の時間 では足りないと考えられていた旨述べる(同 )。 また,本件明細書に記載された実施例のセルロース粉末は,原料パル プを加水分解した後,攪拌,噴霧乾燥(液供給速度6L/hr、入口温 度180〜220°C、出口温度50〜70°C)して得られたものであ る。当該セルロース粉末の本件加水分解条件の下でのレベルオフ重合度 の明示的な記載が明細書にない以上は,上記加水分解,攪拌,噴霧乾燥 の工程を経た当該セルロース粉末について,本件加水分解条件下でのレ ベルオフ重合度が原料パルプのそれと同じであるという技術常識がある 場合に,当該セルロース粉末のレベルオフ重合度が本件明細書に記載さ れているに等しいといえる。上記の加水分解,攪拌や噴霧乾燥を経たセ ルロース粉末の本件加水分解条件下でのレベルオフ重合度が原料パルプ のそれとの関係でどのような値になるかについての技術常識を認めるに 足りる証拠はない。 これらを考慮すれば,優先日当時,当業者が,本件明細書に記載され た原料パルプのレベルオフ重合度とそこから加水分解して生成されたセ ルロース粉末の本件加水分解条件によるレベルオフ重合度が同じである と認識したと認めることはできない。また,発明の詳細な説明の実施例 は,具体的な原料パルプから明細書記載の特定の条件の加水分解,攪 拌,噴霧乾燥を経て得られたセルロース粉末である。当業者が,優先日 当時,技術常識に基づいて,記載されている当該原料パルプのレベルオ フ重合度に基づいて,上記具体的な条件で得られたセルロース粉末につ いて,本件加水分解条件によるレベルオフ重合度の値を認識することが できたとも認められない。
以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,セルロース粉末 について,本件加水分解条件の下でのレベルオフ重合度の記載があるの に等しいとは認められない。 カ 原告は,非晶質領域が分解されて結晶領域のみが残った状態に達したと きの重合度であるレベルオフ重合度は,途中に原料パルプから本件セルロ ース粉末という加水分解過程を経ると否とに関わらず同じ値となるのであ り,当業者であれば,原料パルプとそこから温和な加水分解によって得ら れる本件セルロース粉末のレベルオフ重合度は等しくなると当然に理解す ることができる旨主張し,また,BATTISTA論文における上記実験 結果における温和な加水分解の条件が,本件の実施例における原料パルプ からセルロース粉末を生成する温和な加水分解の条件と同じものではない ことを指摘する。
しかし,本件においては具体的な本件加水分解条件による加水分解がさ れたセルロースの重合度(平均重合度)が問題となる。本件加水分解条件 を提唱し,発明の詳細な説明でも引用されるBATTISTA論文が,本 件加水分解条件によるレベルオフ重合度について前記のように述べていた ところ,優先日当時,そこに記載されているのと異なる内容の技術常識が あったことを認めるに足りる証拠はない。また,BATTISTA論文 は,セルロースを加水分解した際には結晶化がされるという他の複数の研 究者による研究成果を紹介した上で,前記の予想をしているのであり,そ こに記載されているのと異なる技術常識があったことを認めるに足りる証 拠がない本件で,BATTISTA論文においてされた実験での温和な加 水分解の条件が,本件の実施例における原料パルプから粉末セルロースを 作成する加水分解の条件と全く同じものではないことは上記の結論を直ち に左右するものではない。
なお,原告は,実験をした結果,原料パルプを本件加水分解条件で加水 分解したときの平均重合度と,当該原料パルプを実施例2と同じ加水分解 条件で加水分解して得たセルロース粉末を本件加水分解条件で加水分解し たときの平均重合度は実質的に同じであったとして,平成30年8月頃に 測定された結果を記載した平成31年3月20日付け報告書(甲56の 1)を提出し,また,上記でセルロース粉末を得る際の写真やセルロース 粉末を得た際に80°Cの熱風を当てる工程を含む24時間の乾燥処理をし たことなどが記載された同年4月9日付け報告書(甲57)を提出する。 しかし,本件では,優先日当時,本件明細書に記載された加水分解,攪 拌,噴霧乾燥の工程を経た当該セルロース粉末について,本件加水分解条 件下での重合度が原料パルプのそれと同じであるという技術常識の存否が 問題となるところ,上記時点の上記実験結果によって同技術常識を認める ことはできない。
キ 以上によれば,本件差分要件は,粉末セルロースについての平均重合度 と本件加水分解条件下でのレベルオフ重合度の差に関するものであるとこ ろ,明細書の発明の詳細な説明には,実施例について,粉末セルロースの 本件加水分解条件でのレベルオフ重合度についての明示的な記載はなく, また,優先日当時の技術常識によっても,それが記載されているに等しい とはいえない。したがって,本件明細書の発明な詳細には,本件特許請求 の範囲に記載された要件を満たす実施例の記載はないこととなる。
そうすると,本件明細書の発明な詳細において,特許請求に記載された 本件差分要件の範囲内であれば,所望の効果(性能)が得られると当業者 において認識できる程度に具体的な例が開示して記載されているとはいえ ない。 以上によれば,本件発明1及び2は,発明の詳細な説明の記載により当業 者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないから,特 許法36条6項1号に違反する。

◆判決本文

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令和1(ネ)10082  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和2年3月25日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 技術的範囲に属しないとした1審判決が維持されました。争点は「フリップフロップ現象発生用軸体」の用語の解釈です。

 控訴人は,本件発明1における構成要件E及びFの「フリップフロップ現象発生用軸体」について,「フリップフロップ現象を発生させる軸体を意味す\nる。」との原判決の判断には誤りがあると主張する。 しかし,本件発明1における構成要件E及びFの「フリップフロップ現象発生用\n軸体」は,その文言からフリップフロップ現象を発生させる軸体を意味することは 明らかである。また,本件明細書を見ても,本件発明1はクーランド液が「フリッ プフロップ現象発生用軸体」を通過することによってフリップフロップ現象を発生 させるなどして,その課題を解決するものである(本件明細書の【0006】, 【0007】,【0041】〜【0045】)から,「フリップフロップ現象発生 用軸体」がフリップフロップ現象を発生させる軸体であることは明らかである。 したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。
イ 控訴人は,本件明細書の【0037】は,電子回路の用語を参考に記載 しているだけであるのに,原判決は,本件発明1が「フリップフロップ現象」を解 決原理としていると誤解していると主張する。 しかし,本件明細書の【0037】の記載が,電子回路の用語に基づく参考記載 にすぎないと認めることができないことは,原判決の「事実及び理由」の第4の2(1)イ(カ)bの通りである。
(1) また,上記アのとおり,本件発明1は,「フリップフ ロップ現象」を解決原理としているものである。 したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。
(2) 「フリップフロップ現象」の意味について
ア 控訴人は,本件明細書の【0011】,【0043】及び【0007】 の記載によると,フリップフロップ現象とは,「フリップフロップ現象発生用軸体 を通過することにより当該現象の結果として『クーラント液等』が『乱流となり無 数の微小な渦を発生』した状態」を指すことを基本としていると主張する。 しかし,本件明細書の【0037】に,「フリップフロップ現象(フリップフロ ップ現象とは,流体の流れる方向が周期的に交互に方向変換して流れる現象)」と 記載されている上,本件各発明と共通する技術分野において,本件特許出願前に 「フリップフロップ現象」の語が,おおむね,流体の流れの周期的な振動ないし方 向変換を意味するものとして使用されていること(原判決の「事実及び理由」の第 4の2(1)イ(ウ))からすると,本件発明1におけるフリップフロップ現象は,基本 的には,(1)「流体の流れる方向が周期的に交互に方向変換して流れる現象」を意味 すると解釈することができ,(2)「クーラント液等」が「乱流となり無数の微小な渦 を発生」した状態を指す語としての使用は,上記(1)の意味におけるフリップフロッ プ現象の発生を前提とした,派生的な使用と位置づけられるべきである。控訴人が 指摘する本件明細書の【0011】,【0043】及び【0007】の記載は,こ の判断を左右するものではない。
イ 控訴人は,本件特許の出願当時の当業者の理解について主張する。 まず,乙14〜20は,いずれも公開特許公報であるが,これらの特許において は,A及びBのほか,C(乙16),D(乙17),E(乙18,20),F(乙 19)も共同発明者とされていることが認められるから,単に,A及びBの2名の 研究者,発明者がフリップフロップ現象を「流体の流れの周期的な振動ないし方向 転換を意味するもの」として使用しているとは認められない。 また,控訴人は,本件発明1の構成要件Dの記載によると,当業者は,本件明細\n書の【0037】の括弧内の記載の流れ(流体の流れる方向が周期的に交互に方向 変換して流れること)が生じないことを理解すると主張する。 しかし,本件発明1の構成において,ひし形凸部がフリップフロップ現象発生用\n軸体の軸心に対してどのような傾きをもって設置されているかは特定されておらず, 上記軸心に対してひし形凸部が傾きを持っていて非対称となっているかは明らかで はないから,当業者が,本件明細書の記載や,「フリップフロップ現象」の語につ いての当業者の一般的な理解に反して,本件明細書の【0037】の括弧内記載の 流れ(流体の流れる方向が周期的に交互に方向変換して流れる現象)が生じないこ とを理解すると認めることはできない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)11147

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平成28(ワ)4815 特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和2年1月20日  大阪地方裁判所

 大阪地裁26部で、102条2項により13億を越える損害賠償(代理人費用含む)が認められました。9割覆滅されています。

 特許法102条2項は,民法の原則の下では,特許権侵害によって特許権者 が被った損害の賠償を求めるためには,特許権者において,損害の発生及び額,こ れと特許権侵害行為との間の因果関係を主張,立証しなければならないところ,そ の立証等には困難が伴い,その結果,妥当な損害の填補がされないという不都合が 生じ得ることに照らして,侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは,そ の利益の額を特許権者の損害額と推定するとして,立証の困難性の軽減を図った規 定である。このような趣旨に鑑みると,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為 がなかったならば利益を得られたであろうという事情が存在する場合には,同項の 適用が認められると解すべきであるとともに,同項所定の侵害行為により侵害者が 受けた利益の額とは,原則として,侵害者が得た利益全額であると解するのが相当 であって,このような利益全額について同項による推定が及ぶと解される。
(イ) 証拠(甲13)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,被告による本件特許権 侵害行為の期間(平成20年〜平成28年)において,スクリュ圧縮機に相当する 圧縮機ユニット又はスクリュ圧縮機に凝縮器を備えたものに相当するコンデンシン グユニットである原告各製品を製造し,プラント業者等に販売していたことが認め られる。 他方,証拠(乙39,78,81,82,85,93,99,110)及び弁論 の全趣旨によれば,被告は,平成20年〜平成28年にかけて,油冷式スクリュ圧 縮機である被告製品2−2及び2−3が組み込まれたスクリュ式ガス圧縮システム であるNewTonシステムを使用した冷凍・冷蔵プラントである被告製プラントを販 売した一方,NewTonシステムや被告製品2−2及び2−3を,国内においては別 個独立に販売することはなかったこと(なお,国外向けには,被告のグループ会社 に単体又は単独で販売し,当該グループ会社がシステムを完成させて顧客に販売す ることはあった。)が認められる。 このように,被告は,基本的には,油冷式スクリュ圧縮機である被告製品2−2 及び2−3が組み込まれたNewTonシステムを使用した被告製プラントを販売する という形で本件特許権侵害行為を行っているから,本件特許権侵害行為における侵 害品は,上記NewTonシステムとするのが相当である。 そして,NewTonシステムと原告各製品が組み込まれたシステムとは,上記のと おり,冷凍・冷蔵プラントの需要者を需要者とする点で共通する以上,NewTonシ ステムと原告各製品の需要者も,その面では共通する部分があるといえる。 したがって,本件においては,原告に,被告による本件特許権侵害行為がなかっ たならば利益が得られたであろうという事情が存在するといえることから,特許法 102条2項の適用が認められる。
(ウ) これに対し,被告は,原告各製品がスクリュ圧縮機等であるのに対し,被告 が販売するのは被告製品2−2及び2−3が組み込まれたNewTonシステムを使用し た被告製プラントであることを指摘して,特許法102条2項の適用は認められな いと主張する。 しかし,被告指摘に係る事情は,要するに特許権者である原告と侵害者である被 告との間の業務態様の相違(ひいては市場の非同一性)を指摘するものであるとこ ろ,このような事情を考慮しても,原告各製品と被告製品2−2及び2−3とは, 上記(ア)のような形で市場においてなお競合関係にあると見るのが相当であるから, 特許法102条2項の適用を否定すべき事情とはいえない。被告指摘に係る当該事 情は,同項に基づく損害額の推定を覆滅する事情として考慮すれば足りる。 したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
イ 本件特許権侵害行為により被告が受けた利益の額
(ア) 侵害者がその侵害の行為により受けた「利益の額」(特許法102条2項)は, 侵害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりそ の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であ り,その主張立証責任は特許権者側にあると解される。 前記アのとおり,本件における侵害品は被告製品2−2及び2−3が組み込まれ たNewTonシステムであるから,本件特許権侵害行為により被告が受けた「利益の 額」は,その売上高から,被告においてNewTonシステムの製造販売に直接関連して 追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額を算定するのが相当である。 これに対し,被告は,本件発明が油冷式スクリュ圧縮機に関する発明であること, 原告自身が侵害品を圧縮機として特定していること,NewTonシステムから圧縮機だ けを分離可能であることなどを指摘して,本件の侵害品は,NewTonシステムではな く,圧縮機本体を中核とする被告製品2−2及び2−3であると主張する。 しかし,前記アのとおり,本件の侵害品はNewTonシステムとすることが相当であ り,このことは,本件発明が油冷式スクリュ圧縮機に関する発明であることなどに より左右されない。NewTonシステムから圧縮機を物理的に分離可能であるとしても,\n前記アのとおり,被告においては基本的にこれを別個独立に販売しておらず,この 部分の譲渡による利益を直接的に観念し得ない以上,同様であり,被告製品2−2 及び2−3がNewTonシステムの一部分であることは,損害額の推定を覆滅する事情 として考慮すれば足りる。 したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
(イ) NewTonシステムの販売台数
証拠(乙85,93,110)及び弁論の全趣旨によれば,被告が販売した NewTonシステムの販売台数は,別紙「NewTonシステムの利益額算定表(1)」〜 「NewTonシステムの利益額算定表(6)」の「NewTon台数」欄に各記載のとおりであ ることが認められる。
b これに対し,被告は,被告が販売したNewTonシステムのうち,本件特許権の 存続期間中に受注し,存続期間満了後に製造を終えて納入したものについては,本 件特許権の存続期間中に,存続期間満了後に行われた適法な譲渡についての申出が\n行われたにすぎないから,本件特許権侵害行為による損害賠償の算定の基礎にすべ きではないと主張する。 しかし,被告は,本件特許権の存続期間中に「譲渡の申出」を行った上で受注し\nており,この時点で顧客との間の請負契約が成立している以上,製造及び納入の完 了が本件特許権の存続期間満了後であったとしても,これによる原告の損害は,な お本件特許権の存続期間中の侵害行為である「譲渡の申出」と相当因果関係にある\n損害というべきである。そうすると,これに係る「譲渡」による販売分も,本件特 許権侵害行為による損害賠償の算定の基礎にするのが相当である。 したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
(ウ) NewTonシステム1台ごとの売上額
a NewTonシステムは,前記ア(イ)のとおり,基本的に冷凍・冷蔵プラントとは 別個独立のものとして販売されていないものの,証拠(乙39,92,110)及 び弁論の全趣旨によれば,被告は,被告製品2−2及び2−3が組み込まれた NewTonシステムの「定価」を設定し,そのNewTonシステムを使用した被告製プラ ントを販売するに当たって,当該「定価」を見積書に記載するなどして顧客に対し 見積りを示した上で,被告製プラントを販売していることが認められる。 そうすると,NewTonシステム1台ごとの売上額を算定するに当たり,当該「定 価」に依拠することには合理性がある。
他方,証拠(甲23,乙100,119)及び弁論の全趣旨によれば,被告は, NewTonシステムを使用した被告製プラントの販売に当たり,「出精値引」などと して,冷凍・冷蔵プラントを構成する部品価格の合計額から値引きして販売する例\nがあったことが認められる。もっとも,全ての取引において値引きが行われたこと を認めるに足りる事情はなく,また,プラントを構成するいずれの部品が値引き対\n象とされたかも不明であるから,上記売上額の算定に当たり値引き分を考慮するこ とは合理的でない。 以上を踏まえると,証拠(乙39)及び弁論の全趣旨によれば,NewTonシステ ム1台ごとの売上額は,別紙「NewTonシステムの利益額算定表(1)」〜「NewTon システムの利益額算定表(4)」の「定価(単価)」欄に各記載のとおりであると認め られる。 これに対し,被告は,NewTonシステム1台ごとの売上額は,その実質的な販売 価格に相当する●(省略)●により算定すべきであると主張する。 しかし,証拠(乙39,92,93)及び弁論の全趣旨によれば,NewTonシス テムの●(省略)●は,被告の製造部門が販売部門に販売処理手続を行う際の設定 される価格にすぎず,被告は,この●(省略)●を上回る価格を「定価」として設 定した上で,NewTonシステムを使用した被告製プラントを販売していることが認 められる。すなわち,●(省略)●「定価」においてこれが反映されているものと 理解される。そうすると,顧客に対する関係では,●(省略)●は実質的な販売価 格とはいえない。 したがって,NewTonシステム1台ごとの売上額の算定に当たりその●(省略) ●を基礎とすることは合理性を欠き,相当でない。この点に関する被告の主張は採 用できない。
b 593番代替機及び6048番転用機について
証拠(乙99)及び弁論の全趣旨によれば,別紙「NewTonシステムの利益額算 定表(5)」の対象となっている593番代替機は,106番機の代替機として,顧客 に無償で譲渡されたことが認められる。そうすると,106番機と593番代替機 の販売は一連の取引によるものといえる。このような経緯を踏まえると,106番 機と593番代替機の販売については,106番機1台分の売上額●(省略)●円 をもって2台合計の売上額として算定するのが相当である。 また,証拠(乙99)及び弁論の全趣旨によれば,別紙「NewTonシステムの利 益額算定表(6)」の対象となっている6048番転用機は,同一の顧客に対して61 8番機2台と共に合計3台として納品されたこと,この取引におけるNewTonシステ ムの代金は2台分の代金とされたことが認められる。このような経緯を踏まえると, 2台分の売上額である●(省略)●円(●(省略)●円×2)をもってこれら3台合 計の売上額として算定するのが相当である。 以上に反する原告の主張は採用できない。
(エ) NewTonシステム1台ごとの経費
a 前記(ア)のとおり,控除すべき経費は,侵害品の製造販売に直接関連して追加 的に必要となったものをいい,例えば,侵害品についての原材料費,仕入費用,運 送費等がこれに当たる。これに対し,例えば,管理部門の人件費や交通・通信費等 は,通常,侵害品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費には当たら ない。
b 控除すべき経費
(a) 製造原価
証拠(乙39,93,110)及び弁論の全趣旨によれば,NewTonシステム1 台ごとの製造原価は,別紙「NewTonシステムの利益額算定表(1)」〜「NewTonシ ステムの利益額算定表(4)」の「製造原価(単価)」欄に各記載のとおりであること が認められる。
(b) その余の経費
被告は,上記製造原価のほかに,被告製品2−2及び2−3が組み込まれた NewTonシステムの製造工場に係る間接人件費並びに販売費及び一般管理費を控除 すべき旨を指摘する。 まず,間接人件費についてみると,間接人件費は,正に管理部門の人件費である ところ,被告製品2−2及び2−3が組み込まれたNewTonシステムの製品の製造 販売に直接関連して,間接人件費に相当する費用が追加的に発生したと見るべき事 情は見当たらない。そうすると,被告製品2−2及び2−3が組み込まれた NewTonシステムの製造販売に直接関連して追加的に必要となった費用とはいえず, 控除すべき経費に当たらない。 次に,販売費及び一般管理費についてみると,証拠(乙75,84,109)及 び弁論の全趣旨によれば,上記(a)の製造原価には,社内加工費及び艤装作業費が含 まれていることが認められるところ,これを除くと,証拠(乙78,101)及び 弁論の全趣旨によっても,被告製品2−2及び2−3が組み込まれたNewTonシス テムの製品の製造販売に直接関連して,販売費又は一般管理費に相当する費用が追 加的に発生したと見るべき事情は見当たらない。そうすると,被告指摘に係る販売 費及び一般管理費は,被告製品2−2及び2−3が組み込まれたNewTonシステム の製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった費用とはいえず,控除すべ き経費に当たらない。 したがって,被告の上記指摘は当たらない。
(c) 被告の主張について
そもそも被告は,最小二乗法を用いて限界利益率を算定するのが管理会計学上確 立した方法であるとして,本件特許権侵害行為により被告が受けた利益の額を算定 するに当たっても,最小二乗法を用いるのが合理的であると主張する。 しかし,前記(ア)のとおり,特許法102条2項所定の侵害行為により侵害者が受 けた利益の額として算定すべき額は,侵害者の侵害品の売上高から,侵害者におい て侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要とな った経費を控除した限界利益の額であり,被告主張に係る管理会計学上の限界利益 の額とは必ずしも一致しない。また,算定の目的を異にする以上,侵害者が受けた 「利益の額」(特許法102条2項)の算定に当たり,管理会計学上の限界利益の 額の算定方法である最小二乗法を用いないとしても,不合理であることにはならな い。 したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
・・・
ウ 推定の覆滅について
(ア) 基礎となる事情
a NewTonシステム及び被告製品2−2及び2−3等について
(a) NewTonシステムの特徴及び販売促進活動
NewTonシステムは,平成19年にNewTon3000が商品化され,平成20年以降, 被告製プラントに使用される形で販売されており(甲8の3,乙45),基本的に, 冷凍・冷蔵プラントとは別個独立のものとしては販売されていない。被告製品2− 2及び2−3のみならず,被告製品2は,いずれもNewTonシステム専用の圧縮機で あり(甲3),NewTonシステムを使用した被告製プラントを購入する際には,必然 的に購入することになるところ,これらも,NewTonシステムと同様に,基本的に別 個独立のものとして販売されていない。また,NewTon3000は,IPMモーターを 搭載することなどにより,従来式に比べて20%の省エネを実現するとされ,発売 開始当初は年間200台,10年後には年間800台の販売を目標にしていた(乙 45,116)。 被告は,その後もNewTonシステムの開発を継続し,平成24年にはチルド専用の NewTonC,フリーザー専用のNewTonF等のシリーズ展開が行われ,平成28年ま でに累計●(省略)●台以上を販売した。さらに,被告は,平成28年7月,省エ ネ性を保ちつつ,冷媒充填量の削減,メンテナンス性の向上及び小型・軽量化を達 成したフリーザー専用の機種として,F-300,F-600等の販売を開始した(甲8の3, 乙45)。
NewTonシステムは,被告自ら開発したIPMモーターを搭載することなどによっ て,より高度な経済性と省エネルギー性を実現する点,令和2年に全廃されるフロ ン冷媒対策として,自然冷媒であるアンモニアで二酸化炭素を冷却するという間接 冷却方式を採用するとともに,アンモニアを機械室に閉じ込める構造によりその安\n全な利用を可能とし,さらに,漏洩センサー等を装備するなどしてアンモニアが漏\n洩しても素早い対応が取れるようにしている点,コンパクトなユニット設計を採用 することで導入を容易としている点,遠方監視システム及び保全診断システムなど 24時間365日のサポート体制を設けている点等に特徴があるとされ,これらの 点が強調された形で販売促進活動が行われていた(甲8の3,乙38,45)。 なお,NewTonシステムや被告製品2−2及び2−3の宣伝広告物には,本件明細 書記載の本件発明の作用効果に直接言及し,又はこれを具体的にうかがわせる記載 は見られない(甲3,8の3,乙38,66の1)。
(b) NewTonシステムを導入した業者によるNewTonシステムについての評価 被告は,その作成に係る「Customer’s Point of View」と題する記事において, NewTonシステムを導入した顧客の導入の動機,導入後の成果等を紹介していると ころ,これには,以下のような記載がある。
・・・
(b) 原告各製品の取扱業者による販売促進活動
・・・・
(イ) 検討
a 前記認定のとおり,被告は,基本的には,油冷式スクリュ圧縮機である被告 製品2−2及び2−3を独立して販売しておらず,また,これらを組み込んだ NewTonシステムについても同様であり,被告製品2−2及び2−3を組み込んだ NewTonシステムを使用した被告製プラントを販売している。他方,原告は,スク リュ圧縮機又はこれに凝縮器を付加した原告各製品を販売しているにとどまり,プ ラントという単位でみると,「セットメーカ」などといわれる別の業者が需要者に 対して提案するパッケージに組み込まれて販売されるという関係にある。このよう に両者の業務形態が大幅に異なることは,本件の侵害品であるNewTonシステムへ の需要と原告各製品への需要とが質的に異なる面があることをうかがわせる。この ため,仮に被告製品2−2ないし2−3を組み込んだNewTonシステムが販売され なかったとしても,原告各製品のいずれかが被告製品2−2又は2−3に直接代替 されることは考え難い。他方,そのような場合に,被告製品2−2及び2−3の譲 渡数量に対応する需要の全部又は一部が原告各製品の組み込まれたシステムを使用 したプラントに向かうことはあり得ることから,その場合は,結果的に,上記需要 が原告各製品に向かったことになる。もっとも,原告は,プラントを構成する圧縮\n機を販売するにとどまり,プラント全体の構成及び価格の決定や需要者に対する販\n売促進活動において及ぼし得る影響力には限りがあると思われる。 以下では,このような観点も踏まえて,推定覆滅の有無及び程度を検討する。
b 被告製品2−2及び2−3は,本件発明の技術的範囲に属するものである以 上,基本的には本件発明の作用効果を奏すると考えられるところ,被告製品2−2 及び2−3において,本件発明の作用効果を奏していないという事情はうかがわれ ない。この点,被告は,被告製品2−2及び2−3が本件発明の作用効果を奏する ものではない旨主張するが,採用できない。 もっとも,本件発明の作用効果は,スラスト軸受の負荷容量を大きくすること, バランスピストンの受圧面積を大きくすること,逆スラスト荷重状態の発生をなく すことなど,単純かつコンパクトな構造で,振動,騒音を低減させることができる\nというものであり,技術的にはさておき,本件発明の実施品ないしこれを組み込ん だシステムの経済的価値に強いインパクトを及ぼすような性質のものとは必ずしも いえない。このことは,被告製品2−2及び2−3につき,被告がその販売促進活 動において本件発明の作用効果に直接的に言及していないこと,NewTonシステム に対する外部的な評価においても,本件発明の作用効果に直接的に関わるものは見 当たらず,これを示唆するものもないこと,特許権者である原告自身も,スクリュ 圧縮機等である原告各製品において本件発明を実施していないことによっても裏付 けられる。そうすると,本件発明の作用効果それ自体には,それほど強い顧客吸引 力はないと見るのが相当である。
また,弁論の全趣旨によれば,NewTonシステムは被告製プラントの顧客吸引力 の中核を成す部分であり,被告製品2−2及び2−3は,NewTonシステムを稼働 させるために不可欠な部品であることが認められる。そこで,NewTonシステムの 顧客吸引力を検討すると,被告は,NewTonシステムの販売促進活動において,省 エネ,安全性,サポート体制等を特徴とするものであるとの点を強調している。し かも,被告が強調するNewTonシステムのこれらの特徴は,表彰の受賞理由とされ,\nまた,その導入の動機となり,現にその実績も上がっているとされるなど,第三者 からも積極的に評価されていることがうかがわれる(なお,原告は,省エネや安全 性が本件発明の作用効果であるとも主張するけれども,NewTonシステムにおける 省エネや安全性はIPMモーターや間接冷却方式を採用するなどしたことによるも のであり,本件発明の作用効果とは無関係と見られることから,この点に関する原 告の主張は採用できない。)。
c 被告製品2−2及び2−3の製造原価がNewTonシステムの製造原価に占め る割合は,被告製品2−2及び2−3の技術的・商業的価値を直接的に反映したも のではないが,これを推し測る一事情とはなるところ,被告製品2−2及び2−3 がNewTonシステムを可動させるために不可欠な部分であるといっても,NewTonシ ステムの製造原価における被告製品2−2又は2−3の製造原価の割合は,●(省 略)●にとどまる。
d NewTonシステムを使用した被告製プラントとそれ以外の同様のプラントの 販売実績は,アンモニア/二酸化炭素冷媒・冷凍設備の冷凍機用途の油冷式スクリ ュ圧縮機市場が事実上被告と原告の二社寡占状態であることに鑑みると,原告及び 被告の各製造に係る圧縮機の納入実績におおむね対応するものと推察されることか ら,NewTonシステムを使用した被告製プラントの販売実績の方が右肩上がりであ る●(省略)●。また,被告製プラントで使用されるNewTonシステムに組み込ま れる圧縮機として被告の製造に係るもの以外のもの(おのずと,原告の製造に係る 製品がその候補となる。)が組み込まれるという事態は考え難い。そうすると,被 告が非侵害品を販売していたり,販売することが容易であったりすれば,仮に被告 製品2−2及び2−3が組み込まれたNewTonシステムが販売されなかったとして も,需要の多くは被告の製造に係る非侵害品等を組み込んだNewTonシステムを使 用したプラントに向かったであろうと考えるのが合理的である。 そして,被告は,被告製品2−2及び2−3以外にも,本件発明を侵害しない NewTonシステム専用品として,被告製品2−1を製造しており,これによって被 告製品2−2及び2−3に代替することが考えられる。なお,原告は,被告製品2 −1が組み込まれたNewTonシステムの販売実績が少なかったことを指摘するけれ ども,現に納入実績がある以上,需要者の需要を満たすものである限り,被告製品 2−1による代替に需要が向かう可能性を否定することはできない。\nまた,被告は,本件特許権侵害行為当時,被告製品2以外にはNewTonシステム 専用の油冷式スクリュ圧縮機を製造していなかったものの,弁論の全趣旨によれば, NewTonシステムにおいて,本件特許権の侵害を回避するために,例えば油ポンプ を加えて加圧流路を設けることについての物理的な制約はさほどなく,また,コス ト的にも問題とすべき程度に至るとは見られない。そうすると,被告製プラントを 欲する需要者の要望に対し,既存機種をベースとしたカスタマイズ等の形で対応し, 本件特許権侵害を回避することは比較的容易であったとうかがわれる。実際には, 本件特許権の非侵害品であるNewTonシステム専用の圧縮機としては被告製品2− 1しかなく,また,上記カスタマイズといった対応も取られなかったとはいえ,推 定を覆滅すべき事情としては,この点も考慮するのが合理的である。この点につき, 原告は,競合品として考慮できるのは現実に市場に存在した製品に限られると主張 するが,上記のとおり,これを採用することはできない。
e 被告は,被告のNewTon事業の限界利益率が,原告の圧縮機事業の限界利益 率を上回ることを前提に,特許法102条2項により算定された利益の額が,特許 権者である原告がその実施能力に基づき得られたであろう利益の額を上回る場合は,\nその限度で覆滅されると主張する。 しかし,仮に被告のNewTon事業の限界利益率が原告の圧縮機事業の限界利益率 を上回るとしても,それをもって原告の圧縮機事業の実施能力が被告のNewTon事 業の実施能力に劣ることを意味するものではないから,被告の上記主張は,その前\n提を欠く。 したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
f 以上の事情を総合的に考慮すると,本件においては,被告製品2−2及び2 −3が組み込まれたNewTonシステムを使用した被告製プラントの販売がなかった 場合に,これに対応する需要の全てが原告各製品やこれを組み込んだスクリュ圧縮 機,更にはこれを使用したプラントに向かったであろうと見ることに合理性はなく, むしろ,そのような需要はごく限られると考えられる。そうすると,本件では,9 割の限度で,特許法102条2項による推定を覆滅するのが相当である。 この点に関する原告及び被告の各主張は,いずれも採用できない。
エ 以上によれば,原告の逸失利益の額は,別紙「損害額算定表(裁判所認定)」\nの(3)欄のとおり,合計12億5428万1900円であると認められる。

◆判決本文

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平成29(ワ)27238  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和2年2月28日  東京地方裁判所

 特許を侵害するとして約1800万円の損害賠償が認められました。判決文が200頁を越えてます。論点は技術的範囲の属否、無効の抗弁と多岐に渡ります。平成27年11月以降で1つあたりのライセンス料が1.5倍となっているのは、特許3についても侵害となったためです。

 本件では,本件LED又はその製造方法が特許発明の技術的範囲に属するということだけでなく,白色LEDはそれのみで販売の対象となるものであり,原告は白色LEDの製造,販売を行っていることなどから,特許法102条3項の金額の算定に当たって,まず,上記の平均的な価格の24個分の価格に,主として本件特許権1の侵害が問題 となる平成27年10月までの期間については5パーセントを乗じ,本件特許 権1に加えて本件特許権3(登録日平成27年10月23日)の侵害も問題と なる平成27年11月以降の期間(なお,本件発明2と本件訂正後発明3の内 容に照らし,損害の算定に当たり本件特許権2(登録日平成28年12月16 日)の侵害については特に期間を分けて考慮することをしない。)については 8パーセントを乗じると,それぞれ,10.80円及び17.28円となる(2 16円×5パーセント=10.80円 216円×8パーセント=17.28 円)。
そして,本件で特許権の侵害となるのは本件LEDを使用した被告製品の販 売であること,本件LEDはデジタルハイビジョンテレビである被告製品にと り不可欠のものであり,その機能,性能\において重要な役割を果たしていると いえること,原告の白色LEDの市場におけるシェア,原告が主張するライセ ンスについての方針,その他本件に現れた諸事情を考慮し,本件において,被 告製品1及び2を通じ,特許法102条3項の実施に対し受けるべき金銭の額 は,被告製品1台当たり,消費税相当額を含めて,平成27年10月までの期 間については,20円をもって相当であると認め,平成27年11月以降の期 間については,30円をもって相当であると認める。
以上のとおり,本件において,原告が実施に対し受けるべき実施料として被 告製品1台当たり,20円又は30円とするのが相当であるところ,これらは, それぞれ,被告製品の平均的な販売価格の0.058パーセント又は0.08 7パーセントである(20円÷3万4129円≒0.00058 30円÷3 万4129円≒0.00087)。これらに基づき,特許法102条3項に基づ く損害額は,以下のとおり,1645万6641円とするのが相当と認める。

◆判決本文

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令和1(ネ)10042  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和2年2月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明の侵害事件です。会計ソフトについて非侵害と判断された1審判断が維持されました。均等侵害も第1要件を満たしていないとして否定されました。 該当特許の公報は以下です。

◆公報
該当特許は無効審判もありますが、2020年1月に、特許は有効と判断されています(無効2018-800140)。

3 争点2(均等論)について
控訴人は,仮に本件発明の構成要件Hは「社会保障給付」が「財源措置(C\n2)」に含まれる構成であると解した場合には,被告製品においては,「社会\n保障給付」が,「財源措置(C2)」に含まれておらず,「純経常費用(C1)」 に含まれている点で本件発明と相違することとなるが,被告製品は,均等の第 1要件ないし第3要件を充足するから,本件発明の特許請求の範囲に記載され た構成と均等なものとして,本件発明の技術的範囲に属する旨主張するので,\n以下において判断する。
(1) 前記2(2)認定のとおり,被告製品は,少なくとも構成要件B3及びHを\n充足するものと認められないから,被告製品は,構成要件Hの構\成以外に, 構成要件B3の構\成を備えていない点においても本件発明と相違するものと 認められる。 しかるところ,控訴人の主張は,被告製品に構成要件B3の構\成について も相違部分が存在し,被告製品と本件発明は構成要件B3及びHにおいて相\n違することを前提とするものではないから,その前提において理由がない。
(2)ア 次に,被告製品の第1要件の充足性について,念のため判断する。 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び前記1(2)認定の本件 明細書の開示事項を総合すれば,本件発明は,国民が将来負担すべき負債 や将来利用可能な資源を明確にして,政策レベルの意思決定を支援するこ\nとができる「財務諸表を作成する会計処理のためのコンピュータシステム」\nを提供することを課題とし,この課題を解決するために「純資産の変動計 算書」(「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1〜C4)」) を新たに設定し,当該年度の政策決定による資産変動を明確にできるよう にしたことに技術的意義があり,具体的には,構成要件B1ないしIの構\ 成を採用し,純資産変動額や将来償還すべき負担の増減額を「処分・蓄積 勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1〜C4)」に表示し,当該年\n度の政策決定による資金変動を明確にすることができるようにしたことに より,国民の資産が当期の予算措置で増えるのか又は減るのか,また,そ\nの財源の内訳から将来の国民負担がどの程度増えるのか又は減るのかを一 目で知ることができ,政策決定者は純資産変動額を勘案して政策を遂行す ることができるという効果を奏するようにしたこと(【0002】,【0 005】,【0007】ないし【0010】,【0021】,図1)に技 術的意義があるものと認められる。
そして,本件発明の上記技術的意義に鑑みると,本件発明の本質的部分 は,「資金収支計算書勘定記憶手段及び閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)\n及び損益勘定作成・記録手段」から,国家の政策レベルの意思決定を記録 ・会計処理するために,「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定) (C1〜C4)」を作成・記録する損益外純資産変動計算書勘定作成・記 録手段を備え(構成要件B3),損益外純資産変動計算書勘定作成・記録\n手段の記録は,その期における損益外の純資産増加(C3,C4)と純資 産減少(C1,C2)の2つで構成され,損益勘定(行政コスト計算書勘\n定)の収支尻(貸借差額)である「純経常費用(B7)」が処分・蓄積勘 定(損益外純資産変動計算書勘定)の「純経常費用(C1)」に振替えら れ(構成要件F),「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」\nの貸方と借方の差額(収支尻)が,「当期純資産変動額(C5)」という 形で,最終的には「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)」の「純資産(国民\n持分)(B4)」の部に振り替えられて,「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘\n定)」の借方(左側)と貸方(右側)がバランスし(構成要件G),「処\n分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」の借方側(勘定の左側) の「財源措置(C2)」は,具体的には社会保障給付やインフラ資産を整 備した際の資本的支出のような損益外で財源を費消する取引を指し(構成\n要件H),処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の貸方側(勘 定の右側)の「資産形成充当財源(C4)」は,財源措置として支出がさ れた場合,財源は費消されるが,その一部分は,インフラ資産のように将 来にわたって利用可能な資産形成に充当されるため,その支出の時点で政\n府の純資産(国民持分)が何らかの資源が現金以外の形で会計主体として の政府の内部に残っていると考えることができ,将来世代も利用可能な資\n産が当期どれだけ増加したかを示している(構成要件I)という構\成を採 用することにより,当該年度の政策決定による資金変動を明確にし,国民 の資産が当期の予算措置で増えるのか又は減るのか,また,その財源の内\n訳から将来の国民負担がどの程度増えるのか又は減るのかを一目で知るこ とができ,政策レベルの意思決定を支援することができるようにしたこと にあるものと認めるのが相当である。
しかるところ,被告製品においては,「資金収支計算書勘定記憶手段及 び閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)及び損益勘定作成・記録手段」から「処\n分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1〜C4)」を作成・ 記録する損益外純資産変動計算書勘定作成・記録手段を備えておらず,ま た,「社会保障給付」が「財源措置(C2)」に含まれていないため,構\n成要件B3及びHを充足せず,当該年度の政策決定による資金変動を明確 にし,財源の内訳から将来の国民負担がどの程度増えるのか又は減るのか を一目で知ることができるようにして政策レベルの意思決定を支援するこ とができるようにするという本件発明の効果を奏するものと認めることは できない。 したがって,被告製品は, 本件発明の本質的部分を備えているものと認 めることはできず,被告製品の相違部分は,本件発明の本質的部分でない ということはできないから,均等論の第1要件を充足しない。 よって,その余の点について判断するまでもなく,被告製品は,本件発 明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められない。\n
イ(ア) これに対し控訴人は,本件明細書の記載によれば,本件発明の本質 的部分(課題解決原理)は,(1)(C)の処分・蓄積勘定(純資産変動計 算書勘定)が損益外の純資産増加(C3,C4)(貸方)と純資産減少 (C1,C2)(借方)の2つで構成され(構\成要件F),期末にその 貸方と借方の差額(収支尻)が当期純資産変動額(C5)という形で閉 鎖残高勘定(貸借対照表勘定)の純資産(国民持分)(B4)の部に振\nり替えられる(構成要件G)ことで,国民が将来負担すべき負債を明確\nにするという点,(2)(C)の処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書 勘定)の貸方側において,将来世代も利用可能な資産が当期どれだけ増\n加したかを示している(財源が固定資産などに転化したもの,すなわち 税収等の財源が使用されて減少したが,将来世代が利用可能な資産の形\nで増加したと解釈できるものを計上する)資産形成充当財源(C4)の 金額が,将来利用可能な資源を明確にする(構\成要件I)という点,(3) 処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)と資金勘定(資金収支 計算書勘定),閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定),損益勘定(行政コス\nト計算書勘定)との「勘定連絡(勘定科目間の金額の連動)」がプログ ラムに設定されていることが,政策レベルの意思決定と将来の国民の負 担をコンピュータ・シミュレーションする会計処理を可能にするという\n点にあり,被告製品は,本件発明の本質的部分を備えている旨主張する。 しかしながら,本件発明の本質的部分は前記アのとおり認めるのが相 当であり,また,上記(3)の点については,本件発明は,請求項2に係る 発明とは異なり,「コンピュータ・シミュレーション」を行うことを発 明特定事項とするものではないから,本件発明の本質的部分であるとい うことはできない。 したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(イ) また,控訴人は,「財源措置」とは,将来利用可能な資源の増加を\n伴うか否かにかかわらず,「当期に費消する資源の金額」を意味するも のであり,「純経常費用(C1)」と「財源措置(C2)」を包括する 上位概念であるから,この意味で「純経常費用(C1)」と「財源措置 (C2)」は同質的であり,個別の政府活動が「行政レベルの業務執行 上の意思決定」と「国家の政策レベルの意思決定」のいずれに分類され たとしても,処分・蓄積勘定(純資産変動計算書勘定)の借方の金額, すなわち,「当期に費消する資源の金額」には変化はないから,本件発 明の課題解決原理として不可欠の重要部分である処分・蓄積勘定の収支 尻(貸借差額),すなわち「当期純資産変動額」に影響を及ぼすもので はないことからすると,被告製品の構成要件Hに係る相違部分(被告製\n品においては,「社会保障給付」が,「財源措置(C2)」に含まれて おらず,「純経常費用(C1)」に含まれている点)は,本件発明の本 質的部分とは無関係な些細な相違にすぎない旨主張する。 しかしながら,本件明細書には,(1)処分・蓄積勘定(損益外純資産変 動計算書勘定)の借方の「純経常費用(C1)」は,「損益勘定(行政 コスト計算書勘定)」の収支尻である「純経常費用」が振り替えられて 計上されるところ(【0026】,【0035】,図1),「損益勘定 (行政コスト計算書勘定)」は,主として行政レベルの業務執行上の意 思決定を対象とするもので,行政コスト(損益)計算区分に計上される 行政コスト(計上損益)は少なければ少ないほど効率的な行政運営であ ることを意味するものであること(【0036】),(2)処分・蓄積勘定 (損益外純資産変動計算書勘定)の借方の「財源措置(C2)」は,社 会保障給付やインフラ資産を整備した際の資本的支出のような,「損益 外で財源を費消する取引」を指し(【0027】),「財源の使途」(損 益外財源の減少)に属する勘定科目群は,主として国家の政策レベルの 意思決定の対象として,現役世代によって構成される内閣及び国会が,\n予算編成上,どこにどれだけの資源を配分すべきかを意思決定するもの\nであり(【0037】,図2),社会保障給付は,上記勘定科目群の「移 転支出への財源措置」に計上される非交換性の支出(対価なき移転支出) であること(【0040】)の開示があることに照らすと,本件発明に おいては,「純経常費用(C1)」と「財源措置(C2)」は同質的な ものであるとはいえず,「財源措置(C2)」に含まれる社会保障給付 にいくら財源を配分するのかは国家の政策レベルの意思決定の対象であ るといえるから,控訴人の上記主張は採用することができない。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成30(ワ)10130

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令和1(ネ)10046  特許権侵害行為差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年11月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁3部は、侵害を認めた1審判断を維持しました。なお、判決文がテキストデータになっていないため、OCR処理しましたが、誤字についてはご了承ください。

 当審における補充主張に対する判断
控訴人は,本件明細書等の記載によれば,本件各発明の効果は, ドラ イパビットの翼部の屈曲部l乙ネジの翼係合部の屈曲部が接触することに よるものであるとし,これを前提に,被告製品は本件各発明の効果を奏 しないと主張する。 本件明細書等の段落【0003), 【0004】, 【0008】, 【図1】の記載からは,従来技術においては,食い付き部分を有する ネジを含む従来のネジにおいて,翼係合部とドライパピットの翼部と の引っ掛かりが悪いことやドライパピットがネジに対して傾いた状態 であることにより更ネジを回転させようとするとき,カムアウト現象 が生じ易いという課題が存するところ,本件各発明の「側壁面」の構\n成を採用すると,対応する形状の翼部を有するピットを用いれば,ネ ジに対してドライパピットが傾きにくくなり,また,翼部の屈曲した 側面に,対応する形状に屈曲した翼係合部の側壁面が食い込むので, 前記側面が前記側壁面を確実に把握し,翼部と翼係合部との引っ掛か りがよくなるため, ドライバピットがカムアウトしにくくなり,上記 課題が解決されることが理解できる。 そして「食い込む」とは「他の領域へ入りこんで侵す。侵入す る。」 (乙10 1) ことであるから,本件明細書等の段落【0008】 の「翼部の屈曲した側面に,対応する形状に屈曲した翼係合部の側壁面 が食い込むJとは,回転力を加えることにより, ドライパピットの翼部 とネジの翼係合部が接触する箇所において, ドライパピットの翼部の側 面がネジの翼係合部の側壁面を確実に把握し,引っ掛かりがよくなるこ とを意味するものと解され,本件各発明の効果を奏するために, ドライ パピットの翼部とネジの翼係合部の屈曲部同士が接触することが必須で あるということはできない。また,控訴人の指摘する本件明細書等の段 落【0014], 【0017]及び【0022]にも, ドライバピット の翼部とネジの翼係合部の屈曲部同士が接触することの記載はない。 控訴人は,本件意見書2の図A,B等は, ドライパピットの翼部の屈 曲部にネジの翼係合部の屈曲部が接触することを裏付けると主張するが, 本件明細書等の上記記載に照らせば,本件意見書2の各図は上記判断を 左右するものではない。
(イ) 控訴人の主張によっても,専用ピットの翼部の先端が被告製品の 「先端部内側面Jに点状に接触するというのであるから,被告製品に おいても, ドライパピットに回転力を加えた際に当該接触した箇所で 食い込みが生じ,翼部と翼係合部との引っ掛かりがよくなり, ドライ パビットがカムアウトしにくくなるという効果を奏すると解され,被 告製品において本件各発明の効果を奏しないということはできない。
本件特許に係る無効理由の有無(争点2) について
(1) 本件特許に係る無効理由の有無(争点2) についての判断は,次のとお り補正し,後記のとおり当審における補充主張に対する判断を付加するほか は,原判決第4の・・・記載のとおりであるから,これを引用する。
ア原判決56頁24行目「動機」を「動機付け」と改める。
イ原判決57頁19行目冒頭から25行目末尾までを次のとおり改める。
「しかし,前記判示のとおり,ネジ及びドライパピットの食い付き部分は 周知技術であり,出願当初の明細書等の実施例に当該周知技術について記 載がされていないとしても,それは本件各発明が当該周知技術を備えるこ とを排除する趣旨であるとは解し得ない。そうすると,本件各発明の技術 的範囲に当該周知技術の構成を備えたネジが含まれるとしても,構\成要件 1D及び2Aの「ネジの中心側から外方に向かつて延びる平面状の基端側 部分」との発明特定事項を追加する本件手続補正が新規事項の追加となる ものではない。 また,本件明細書等の段落【0003], 【0004】, 【0008], 【図1】の記載からは,本件各発明の「側壁面」の構成を備えることによ\nり,対応する形状の翼部を有するピットを用いれば,ネジに対してドライ パピットが傾きにくくなり,また,翼部の屈曲した側面に,対応する形状 に屈曲した翼係合部の側壁面が食い込むので,前記側面が前記側壁面を確 実に把握し,翼部と翼係合部との引っ掛かりがよくなるため, ドライパピ ットがカムアウトしにくくなるという本件各発明の効果が得られることが 理解でき(本判決第3の2(3)ウ(7)参照。), 「食い付き部分」の有無は 本件各発明の課題の解決に影響する構成とはいえない。したがって,控訴\n人主張の点は,サポート要件適合性を否定するものではないというべきで ある」
(2) 当審における補充主張に対する判断
ア 乙13考案及び乙5-8公報に開示された周知技術による進歩性の欠如 (争点2- 1) について
控訴人は,食い付き部分に関し,屈曲した二平面とR面を相互に代替す ることは当業者の技術常識であると主張するo しかし,食い付き部分と本 件各発明の「側壁面」は,目的も機能も異なり,食い付き部分の構\成に関 する技術常識を側壁面に適用することはできなし、から,控訴人の主張は採 用できない。
イ 乙13考案並びに乙12考案及び乙5〜8公報に開示された周知技術に よる進歩性の欠知(争点2-2) について
控訴人は,乙12考案の効果は本件各発明の「食い込む」ことにより 「カムアウトがしにくくなる」効果と実質的に同質の効果であるから, 乙13考案と乙12考案とは,実質的な目的・課題及び作用・機能にお\nいて共通し,両者を組み合わせる動機付けがあると主張する。しかし, 乙12考案の「切込溝3Jは錆びついたピスを容易に抜くために設けた ものであるのに対し,乙13考案の「円弧E-Fからなる溝」は, ドラ イパーのねじ込み力を完全に受け止めるために設けられたものであって, これらの考案の課題は全く異なることは,上記引用に係る補正された原 判決第4の5に説示したとおりであり,乙13考案に乙12考案を組み 合わせる動機付けがあるということはできない。
ウ補正要件違反又はサポート要件違反の有無について(争点2-3) につ いて
控訴人は,本件各発明の「屈曲」について,翼部の屈曲した側面に,対 応する形状に屈曲した翼係合部の側壁面が食い込むことが可能な「屈曲J, すなわち, ドライパピットの翼部の屈曲部に,対応する形状に屈曲したネ ジの翼係合部の屈曲部が深く内部に入り込むほど接触することを要すると 限定解釈しないとすると,本件各発明の課題である「ドライパピットがカ ムアウトしにくい(回動部から外れにくい)ネジおよびドライパピットを 提供するJ (【0004】)を解決し得ると当業者が認識し得ないものを 特許請求の範囲に含むことになると主張する。しかし, ドライパビットが カムアウトしにくい(回動部から外れにくし、)ネジとの課題を解決するに つき, ドライパピットの翼部の屈曲部にネジの翼係合部の屈曲部が接触す る(食い込む)ことが必須であるといえないのは前記2(1)イ及び(2)に説 示したとおりでありこれを前提とする控訴人の主張は採用できない。

◆判決本文


1審はこちらです。

◆平成28(ワ)14753
 被告は,本件意見書1における,「引用文献2〜4」のネジと本件各発 明のネジ穴とは構成が異なる旨の記載は,本件各発明の特許請求の範囲か\nら,ネジ穴の中心部に食い付き部分(円弧面状の部分)を有する構成を意\n識的に除外する趣旨であって,食い付き部分を有する構成が本件各発明の\n技術的範囲に属すると主張することは,禁反言の法理に照らして許されな いと主張する。
イ しかし,本件意見書1には,以下の内容の記載がある。
(ア) 本件手続補正は,請求項1について「引用文献2〜4記載の発明との 相違が明確になるように締付側側壁面(10)の形状をより細かく限定 した」ものであり,請求項2について「引用文献2〜4記載の発明との 相違が明確になるようにネジの翼係合部(2)の緩め側側壁面(9)の 形状をより細かく限定したもの」である。(乙10の2頁)
(イ) 「引用文献2」(乙6)記載の発明は,「本来の意味においては,各 翼係合部は屈曲部を有していない。具体的には,引用文献2記載の発明 の場合,各翼係合部の両側壁面は,それぞれ全体が1つの平面状をなし ており,全く屈曲されていない」点で本件各発明と異なる。 引用文献2記載の発明において「強いて回動部の中心部の円弧面状の 部分を翼係合部の側壁面の基端側の部分と解釈したとしても」,本願発 明のような優れた作用効果を全く果たさない。(乙10の4頁)
(ウ) 「引用文献3」(乙7),「同4」(乙8)記載の発明においても, 「本来の意味においては,各翼係合部は屈曲部を有していない。具体的 には,引用文献3,4記載の発明の場合,本来の意味での各翼係合部の 両側壁面は,軸方向から見ると扇形の両辺(直線状部)をなす平面状の 部分のみである」点で本件各発明と異なる。 引用文献3,4記載の発明における「ネジの中央部分において翼係合 部の基端側部分間をつなぐR部分は,円弧面状をなす部分であって,ネ ジへのドライバビットの食い付きをよくするために設けられる所謂食い 付き部を構成する部分」であって,「前記R部分(食い付き部分)は,\nネジの締め付けおよび緩め動作自体には直接関係のない部分」にすぎな い。 「引用文献3,4」記載の発明において,「強いて前記R部分を翼係 合部の側壁面の基端側の部分と解釈したとしても,これらの部分は,平 面状ではなく,円弧面状の部分であり,かつネジの中心側から外方に向 かって延びていない」ので,本件各発明とは構成が異なる。\n 引用文献3,4記載の発明において,「強いて前記R部分を翼係合部 の側壁面の基端側の部分と解釈したとしても」,本件各発明の作用効果 は生じない。(乙10の5頁)
 ウ 本件意見書1の上記記載によれば,原告は同意見書において,「引用文 献2〜4」記載の発明に係る構成と本件各発明に係る構\成が異なることを 説明するとともに,仮に同各文献の構成が対応する本件各発明の構\成に相 当するとしても,同各文献記載の発明が本件各発明の効果を奏しないとい うことを説明しているにすぎないのであって,上記記載をもって,本件各 発明の特許請求の範囲から,ネジ穴の中心部に食い付き部分(円弧面状の 部分)を有する構成を意識的に除外しているということはできない。\n

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平成30(ワ)12609  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月9日  東京地方裁判所

 原告は、ヤマハです。技術的範囲に属する、無効理由無しと判断されました。被告は本件アプリを設計変更して、本件新アプリに変更しましたが、本件アプリについては引き続き差止請求が認められました。

 被告は,(1)乙2公報は,音響IDとインターネットを用いて,放音装置から放音 された音響IDによって識別される識別対象の情報に対し,これと関連する任意の 関連情報をサーバから端末装置に供給できる乙2技術を開示しているところ,本件 発明1も乙2技術を採用するものであり,相違点1−1ないし同1−4は,識別対 象,複数の関連情報の選択条件,関連情報の内容に係る相違にすぎず,当業者が適 宜設定できるものである旨主張するとともに,(2)当業者は,乙2技術を乙4課題の 解決に応用して,相違点1−1ないし同1−4に係る本件発明1の構成を容易に想到し得た旨主張する。\n
しかしながら,まず,被告の上記(1)の主張については,前記1(2)認定のとおり, 本件発明1は,コンピュータを,(i)放音される「案内音声である再生対象音」と 「当該案内音声である再生対象音の識別情報」を含む音響を収音して識別情報を抽 出する情報抽出手段,(ii)サーバに対し,抽出した識別情報とともに「端末装置に て指定された言語を示す言語情報」を含む情報要求を送信する送信手段,(iii)「前 記案内音声である再生対象音の発音内容を表」し,情報要求に含まれる識別情報に対応するとともに「相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求\nの言語情報で指定された言語に対応する関連情報」を受信する受信手段,(iV)受信 手段が受信した関連情報を出力する出力手段として機能させるプログラムの発明であり,乙2公報等に音響IDとインターネットを利用するという点で本件発明1と\n同様の構成を有する情報提供技術が開示されていたとしても,その手順や方法を具体的に特定し,使用言語が相違する多様な利用者が理解可能\な関連情報を提供できるという効果を奏するものとした点において技術的意義が認められるものであるか ら,相違点1−1ないし同1−4に係る本件発明1の構成が当業者において適宜設定できる事項であるということはできない。\nまた,被告の上記(2)の主張については,前記イのとおり,乙4公報に,発明が解 決しようとする課題の一つとして,システムを複数の言語に対応させること(以下, 単に「乙4発明の課題」という。)が記載されているものの,以下のとおり,乙2 発明1を乙4発明の課題に組み合わせる動機付けは認められず,仮に,乙4発明の 課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照するなどして乙2発明1の構\成に変更を加え たとしても相違点1−1ないし同1−4に係る本件発明1の構成に到達しないから,採用することができない。\n
(ア) 乙2発明1を乙4発明の課題を組み合わせる動機付け
a 前記のとおり,乙2発明1は,放送中のテレビ番組に関連した情報を提供す る情報提供システムに用いられる携帯端末装置に関するものであり,放送中のテレ ビ番組の場面を識別する音声信号である音響IDを用い,ID解決サーバを介して 当該場面に関連する情報を取得するものであるのに対し,前記イ(イ)のとおり,乙 4発明は,利用者が携帯する携帯型音声再生受信器を用いた美術館や博物館等の展 示物に係る音声ガイドサービスに関するものであり,展示物に固有のIDを赤外線 等の無線通信波によって発信し,携帯受信器が発信域に入ると上記IDを受信し, 展示物の音声ガイドが自動的に再生されるものであり,サーバに接続してインター ネットを介して情報を取得する構成を有しないから,両発明は,想定される使用場面や発明の基本的な構\成が異なっており,乙2発明1を乙4発明の課題に組み合わせる動機付けは認められない。
b 被告は,(1)乙4発明は,放音装置を利用した情報提供技術という乙2技術と 同じ技術分野に属するものであること,(2)乙2技術は汎用性の高い技術であり, 様々な放音装置を含むシステムに利用されていたこと(乙11ないし13),(3)端 末装置とサーバとの通信システムを利用する情報提供技術は周知のものであったこ と(乙2,5,6,8,11ないし13等)などによれば,当業者において,乙2 技術を乙4課題の解決に応用する動機付けがある旨主張する。 しかしながら,乙2発明1と乙4発明がいずれも放音装置を利用した情報提供技 術であるという限りで技術分野に共通性が認められ,また,本件優先日1当時,音 響IDとインターネットを利用し,又は端末装置とサーバとの通信システムを利用 する情報提供技術が乙2公報以外の公開特許公報に開示されていたとしても,いず れも乙4発明とは想定される使用場面や発明の基本的な構成が異なることは前記のとおりであり,乙4発明の課題の解決のみを取り上げて乙2発明1を適用する動機\n付けがあると認めるに足りない。
(イ) 乙2発明1に対する乙4発明等の適用
また,以下のとおり,乙4発明の課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照するなどして乙2発明1の構\成に変更を加えたとしても,本件発明1の構成に到達しない。\n前記第2の2(2)ア(ウ)認定の特許請求の範囲,前記(1)認定の本件明細書1の発明 の詳細な説明,図面,弁論の全趣旨に照らすと,本件発明1は,概要,以下のとお りのものであると認められる。
ア 本件発明1は,端末装置の利用者に情報を提供する技術に関する(【0001】)。
イ 従来から,美術館や博物館等の展示施設において利用者を案内する各種の技 術が提案されていたが,各展示物の識別符号が電波や赤外線で発信装置から送信さ れるものであったため,電波や赤外線を利用した無線通信のための専用の通信機器 を設置する必要があった。本件発明1は,そのような問題を踏まえてされたもので あり,無線通信のための専用の通信機器を必要とせずに多様な情報を利用者に提供 することを目的とする(【0002】,【0004】)。
ウ 本件発明1は,(1)案内音声である再生対象音を表す音響信号と当該案内音声である再生対象音の識別情報を含む変調信号とを含有する音響信号に応じて放音さ\nれた音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出手段,(2)情報抽出手 段が抽出した識別情報を含む情報要求を送信する送信手段,(3)情報要求に含まれる 識別情報に対応するとともに案内音声である再生対象音に関連する複数の関連情報 のいずれかを受信する受信手段,(4)受信手段が受信した関連情報を出力する出力手 段としてコンピュータを機能させることにより,赤外線や電波を利用した無線通信に専用される通信機器を必要とせずに,案内音声である再生対象音の識別情報に対\n応する関連情報を利用者に提供することを可能とする(【0005】)。
エ 以上に加えて,本件発明1は,前記送信手段が,当該端末装置にて指定され た言語を示す言語情報を含む情報要求を送信し,前記受信手段が,情報要求の識別 情報に対応するとともに相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち情報要求の 言語情報で指定された言語に対応する関連情報を受信するという構成を採用するこ\nとにより,相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち情報要求の言語情報で指 定された言語に対応する関連情報を受信することができ,使用言語が相違する多様 な利用者が理解可能な関連情報を提供できるという効果を奏するものである(【0\n006】等)。
2 本件アプリの広告等について
証拠(甲6,7)によれば,次の事実が認められる。
(1) 被告作成の「Sound Insight(サウンドインサイト)」と題す る本件アプリを用いたシステムに関する広告(甲6。以下「本件広告」という。) には,次のとおり記載されていた。
ア (1)「映像・音声にのせて,情報配信」,(2)「動画・音楽などの音に人間には 聞こえない音波信号(音波ID)を埋め込み,テレビ・サイネージ・スピーカー等 から再生し,スマートフォンアプリで音波信号(音波ID)を受信する事により, 紐づいた情報をスマートフォン上に自動表示」,(3)(音波信号に紐づく情報を表示\nする手順の一つとして)「映像・音声に重畳した音波信号を発する」
イ (1)「音で情報を配信」,(2)「『Sound Insight』は,人には聞 こえない音波信号(音波ID)を使い,映像や音に合わせてアプリを連動できます。 利用者が信号音を意識することなくスマートフォン上に情報を表示します。」\n
ウ 「多言語で配信可能 日本語のほか,英語,中国語,台湾語,韓国語,ロシ ア語など多言語で情報配信できます。」
エ (使用例の一つとして)「バスの車内案内では 多国語で停留所情報や地域 の情報を案内できます。」
(2) 本件アプリのダウンロード用のウェブサイト(甲7。「本件ダウンロードサ イト」という。)には,次のとおり記載されていた。 「『サウンドインサイト』は,空港,駅,電車,バスなどの様々な場所に設置さ れた各種スピーカーから送信された音波を,専用アプリをインストールしたスマー トフォンで受信することで,関連する情報を自動で表示させることのできるサービ\nスです。・・・『サウンドインサイト』の活用により,・・・外国人観光客へ空港・駅などのアナウンスに関連する情報を多言語で情報提供する『言語支援用途』・・・などで活 用いただくことができます。」
3 争点1(本件アプリは本件発明1の技術的範囲に属するか)について
(1)争点1−1(本件アプリは構成要件1Bを充足するか)について\n
ア 構成要件1Bに対応する本件アプリの構\成に係る事実認定
(ア) 前記第2の2(5)ア(ア)のとおり,本件アプリは,スピーカー等の放音装置か ら,識別情報であるIDコードを表す音響IDを含む音響が放音されると,これを\n収音し,当該音響IDからIDコードを検出するものとしてスマートフォンを機能\nさせるものであるところ,前記2(1)のとおり,本件広告には,「映像・音声にのせ て」,「動画・音楽などの音」に埋め込んで,「映像・音声に重畳」させて音響I Dを放音することが記載されているほか,使用例の一つとして,バスの車内案内で は多言語で停留所情報等を提供することができることが記載されていること,同(2) のとおり,本件ダウンロードサイトには,本件アプリは,空港,駅,電車,バス等 に設置された放音装置から送信された音波を,スマートフォンで受信することで, 関連する情報を自動で表示させることのできるサービスを提供するものであること\nが記載されていることなどからすると,被告から音響IDの提供を受けた顧客にお いて,案内音声を識別するものとしてIDコードを使用し,これを案内音声ととも に放音装置から放音することは,本件アプリにつき想定されていた使用形態の一つ であるというべきである。そうすると,本件アプリは「案内音声と当該案内音声を 識別するIDコードを含む音響IDとを含有する音響を収音し,当該音響からID コードを抽出する情報抽出手段」(構成1b)を備えていると認めるのが相当であ\nる。
(イ) 被告は,本件アプリが構成1bを備えていることを否認し,その理由として,\n(1)被告サービスにおいて,被告は,放音される音響やIDコードの識別対象を決定 しておらず,これらを選択,決定しているのは顧客であって,いずれも「案内音声」 に限られるものではないこと,(2)本件アプリの利用場面の中で,最も多くの需要が 見込まれているのは商品説明の場合であるが,商品説明において,放音装置から音 声が発せられることは必須ではなく,かえって,音声が放音されるとスマートフォ ンに表示される情報を理解する妨げになることを主張する。\nしかしながら,被告の上記(1)の主張は,構成要件1B所定の音響が放音されない\n場合があることを指摘するにとどまるものであり,前記(ア)のとおり,本件広告に おいても,案内音声を収音する使用形態を回避させるような記述はなく,むしろ, そのような使用形態を想定したものとなっていたというべきであるから,前記認定 を覆すに足りないというべきである。 また,被告の上記(2)の主張について,本件アプリにつき最も多くの需要が見込ま れていたのが商品説明の場面であったとしても,被告において,そのような使用形 態に特化したものとして本件アプリを広告宣伝していたものでもなく,前記認定を 覆すに足りない。
イ 構成要件1Bに係るあてはめ\n
以上の認定を踏まえて検討すると,構成1bの「案内音声」は,本件発明1の\n「案内音声である再生対象音を表す音響信号」に対応し,構\成1bの「案内音声を 識別するIDコードを含む音響ID」は,本件発明1の「案内音声である再生対象 音の識別情報を含む変調信号とを含有する音響信号」に対応する。 そして,本件発明1は,コンピュータを所定の手段として機能させるプログラム\nに係る発明であり,構成要件1Bは,放音された所定の音響を収音した収音信号か\nら識別情報を抽出する情報抽出手段を規定するものであるから,構成要件1B所定\nの音響が放音された場合に,これを収音し,識別信号を抽出する手段としてコンピ ュータを機能させるプログラムであれば,これと異なる用途でコンピュータを機能\ させ得るとしても,又は音響が放音されない場面があるとしても,同構成要件を充\n足すると解すべきところ,本件アプリは,同所定の音響を収音し,当該音響からI Dコードを抽出するものとしてスマートフォンを機能させるものであるから,放音\nされる音響やIDコードの識別対象を選択しているのが顧客であり,音響が放音さ れない使用方法が選択され得るとしても,構成要件1Bを充足する。\n
(2)争点1−2(本件アプリは構成要件1Dを充足するか)について\n
ア 構成要件1Dの「関連情報」の言語の解釈\n
(ア) 構成要件1Dは,「関連情報」について,「前記案内音声である再生対象音\nの発音内容を表す関連情報であって,前記情報要求に含まれる識別情報に対応する\nとともに相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求の言語情報 で指定された言語に対応する関連情報」と規定しているから,「関連情報」の言語 は,相異なる言語に対応するものの中から情報要求の言語情報で指定された言語に 対応するものと解すべきである。
(イ) 被告は,「関連情報」は,第1言語で発音される案内音声の発音内容を第1 言語で表した文字列であると解すべきであるとし,その理由として,原告が本件訂\n正審判請求1の際に訂正事項が明細書の記載事項の範囲内であることを示す根拠と して本件明細書1の【0041】を挙げていたことを指摘するが,構成要件1Dは\n上記のとおりのものであるから,「関連情報」が案内音声の言語と同一のものであ ると解するのは文言上無理がある。また,同段落には,第2言語に翻訳することな く,第1言語の指定文字列のまま関連情報Qとする実施例が開示されているが,こ れは第1実施形態の変形例の一つ(態様1)にすぎず,原告が本件訂正審判請求1 の際に同段落を指摘したからといって,当該実施例の態様に限定して「関連情報」 の言語について解釈するのは相当でない。
イ 構成要件1Dに対応する本件アプリの構\成に係る事実認定
(ア) 前記第2の2(5)ア(ウ)及び同イのとおり,本件アプリは,管理サーバから, リクエスト情報に含まれるIDコード及びアプリ使用言語の情報に対応する情報の 所在を示すものとして送信されるアクセス先URLを受信するものとしてスマート フォンを機能させるものであり,管理サーバには,1個のIDコードに対応させて,\n6個までのアプリ使用言語に対応するURLを記憶することができるところ,前記 2(1)のとおり,本件広告には,日本語のほか,英語,中国語,台湾語,韓国語,ロ シア語など多言語で情報配信できることが記載されており,使用例の一つとして, バスの車内案内では多言語で停留所情報等を提供することができることが記載され ていること,同(2)のとおり,本件ダウンロードサイトには,外国人観光客に対して, 空港・駅等のアナウンスに関連する情報を多言語で情報提供する用途に用いること ができることが記載されていることなどからすると,顧客において,リクエスト情 報に含まれるIDコードに対応する案内音声の発音内容を表す情報について,当該\n案内音声とは異なる言語に対応する複数の情報を管理サーバに記憶させ,リクエス ト情報に含まれるアプリ使用言語に対応する情報をスマートフォンに送信するよう にすることは,本件アプリにつき想定されていた使用態様の一つであるというべき である。そうすると,本件アプリは,「前記案内音声の発音内容を表す関連情報で\nあって,前記リクエスト情報に含まれるIDコードに対応するとともに,6個まで のアプリ使用言語に対応する複数の情報のうち,前記リクエスト情報のアプリ使用 言語に対応する情報を受信する受信手段」(構成1d)を備えていると認めるのが\n相当である。
(イ) 被告は,本件アプリが構成1dを備えていることを否認し,その理由として,\n
(1)被告サービスにおいて,被告は,本件スマートフォンが受信する情報を決定して おらず,これを選択,決定しているのは顧客であって,構成要件1D所定のものに\n限られないこと,(2)被告は,本件アプリに係る実証実験において,本件アプリを用 いて「案内音声である再生対象音の発音内容」を関連情報として出力したことはな く,外国語に翻訳した内容を関連情報として出力したこともないこと,(3)被告は, 今後,顧客に対し,案内音声である再生対象音の発音内容を表す他国語の関連情報\nを提供することを禁ずる旨の約束をする意思があることを主張する。 しかしながら,被告の上記(1)の主張は,本件スマートフォンの受信する情報が構\n成要件1D所定の情報ではない場合があることを指摘するにとどまるものであり, 前記(ア)のとおり,本件広告及び本件ダウンロードサイトにおいても,案内音声の 発音内容を表し,リクエスト情報に含まれるアプリ使用言語に対応する情報を受信\nする使用形態を回避させるような記述はなく,むしろ,そのような使用形態を想定 したものとなっていたというべきであるから,被告の実証実験では同構成要件所定\nの情報を受信しなかったこと(上記(2)),被告が今後も同構成要件所定の使用態様\nで本件アプリを使用しないことを約束する意思を有していること(上記(3))を併せ 考慮しても,前記認定を覆すに足りないというべきである。
ウ 構成要件1Dに係るあてはめ\n
構成要件1Bにおいて規定するとおりにコンピュータを機能\させるものであれば, 同構成要件を充足するとの前記(1)イにおける検討と同様に,構成要件1D所定の情\n報を受信する手段としてコンピュータを機能させるプログラムであれば,受信する\n情報が同構成要件所定のものではない場面があるとしても,同構\成要件を充足する と解すべきところ,本件アプリは,構成1dを備えており,スマートフォンを「前\n記案内音声の発音内容を表す関連情報であって,前記リクエスト情報に含まれるI\nDコードに対応するとともに,6個までのアプリ使用言語に対応する複数の情報の うち,前記リクエスト情報のアプリ使用言語に対応する情報を受信する受信手段」 として機能させるものであるから,本件スマートフォンが受信する情報を選択して\nいるのが顧客であるとしても,構成要件1Dを充足する。\n
4 争点4(本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものか)につい て
(1) 争点4−1(本件発明1は乙2公報により進歩性を欠くか)について
・・・
(イ) 乙2発明1
前記(ア)によれば,乙2発明1は,放送中のテレビ番組に関連した情報を提供す る情報提供システムに用いられる携帯端末装置に関するものであり(【000 1】),テレビ番組の場面を識別する音声信号である音響IDを用い,ID解決サ ーバを介して当該場面に関連する情報を取得することを容易にした携帯端末装置等 を提供することを目的とするものであって(【0005】等),本件発明1に対応 する構成として,次の各構\成を有すると認められる。
「携帯端末装置を,
放送中のテレビ番組の放送音声と重畳して放音される,当該番組の場面を識別す る音声信号である音響IDを収音し,前記音響IDからIDコードにデコードする 情報抽出手段,
携帯端末装置に記憶されたIDコードをID解決サーバに送信する送信手段,
前記IDコード及び前記ID解決サーバが当該IDコードを受信した時刻に基づ いて当該ID解決サーバによりID/URL対応テーブルにおいて検索された対応 するURLを受信し,放送されたテレビ番組の場面に関連する情報を当該URLで 指示されるコンテンツサーバから受信する受信手段,及び,
前記受信手段が受信した情報を携帯端末装置上で表示する出力手段として機能\させるプログラム。」
(ウ) 乙2発明1と本件発明1の対比
乙2発明1と本件発明1を対比すると,これらは,次のaの点で一致し,少なく とも,次のbの点で相違すると認められる。
a 一致点
「コンピュータを,再生対象音を表す音響信号と識別情報を含む変調信号とを含有する音響信号に応じて放音された音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出手段,前記情報抽出手段が抽出した識別情報を含む情報要求を送信する送信手段,\n前記情報要求に含まれる識別情報に対応する関連情報を受信する受信手段,および, 前記受信手段が受信した関連情報を出力する出力手段として機能させるプログラム。」\n
b 相違点
(a) 相違点1−1(構成要件1B)\n
本件発明1では,「案内音声・・・を表す音響信号」と「当該案内音声である再生対\n象音の識別情報」が放音されるのに対し,乙2発明1では,「放送中のテレビ番組 の放送音声」と「当該番組に対応し,当該番組の場面を識別する音声信号である音 響ID」が放音される点
(b) 相違点1−2(構成要件1C)\n
本件発明1では,端末装置からサーバに送信される「情報要求」に含まれる情報 は,「識別情報」と「当該端末装置にて指定された言語を示す言語情報」であるの に対し,乙2発明1では,携帯端末装置からID解決サーバに送信される情報は 「IDコード」のみであり,「端末装置にて指定された言語を示す言語情報」は含 まれない点
(c) 相違点1−3(構成要件1D(1))
本件発明1では,端末装置が受信する「関連情報」は,「案内音声である再生対 象音の発音内容を表す」のに対し,乙2発明1では,「放送されたテレビ番組の場\n面」に関連する内容を表す点\n
(d) 相違点1−4(構成要件1D(2))
本件発明1では,端末装置が受信する「関連情報」は,「相異なる言語に対応す る複数の関連情報のうち,前記情報要求の言語情報で指定された言語に対応する関 連情報」であるのに対し,乙2発明1では,携帯端末装置がこれに対応する情報を 受信しない点
(エ) 相違点に関する被告の主張について
a 相違点1−1(構成要件1B)\n
被告は,乙2発明1の「IDコード」は,番組と同時に,番組の放送音声という 「再生対象音」も識別しているから,「再生対象音の識別情報」が放音される点で は本件発明1と相違しない旨主張する。 しかしながら,乙2公報に「この音響IDは,放送中の番組に対応するものであ り,放送音声に重畳されて放音される。」(【0014】)と記載されており,I D/URL対応テーブルを示す図4においても,受信時間帯に対応する番組の「シ ーン」が特定されていること(【0025】)などからすると,乙2発明1の「ID コード」は,放送中の番組に対応し,当該番組の場面を識別する音声信号であって, 番組の放送音声を識別するものではないから,本件発明1の「再生対象音の識別情 報」に対応する構成を有するものとは認められない。\n
b 相違点1−2(構成要件1C)\n
被告は,乙2発明1では,ユーザがボタンスイッチを押した時刻は「端末装置に て指定された・・・情報」に該当するから,「端末装置にて指定された・・・情報」が「言 語を示す言語情報」であるか「ボタンスイッチの操作タイミングを示す情報」であ るかの点でのみ本件発明1と相違する旨主張する。 しかしながら,乙2公報に「番組を視聴しているユーザ6は,番組を視聴し興味 ある場面が映し出されると,スマートフォン2を操作する(たとえばボタンを押下 する)。このときの操作により,スマートフォン2は記憶していたIDコードをI D解決サーバ4に送信する。」(【0014】)と記載されていることなどからする と,乙2発明1において,携帯端末装置から送信される情報はIDコードのみであ り,ID解決サーバは当該IDコード及び受信時刻で対応するURLを検索するも のであるから,本件発明1の「端末装置にて指定された・・・情報」に対応する構成を\n有するとは認められないというべきである。
c 相違点1−3(構成要件1D(1))
被告は,乙2発明1で,携帯端末装置が受信する情報は,番組の特定の場面に対 応する放送音声に関連するものであるから,端末装置が受信する「関連情報」が 「再生対象音」である点では本件発明1と相違しない旨主張する。 しかしながら,乙2公報に「この対応するURLは,ユーザ6がスマートフォン 2を操作したときに放送されていた(テレビ1の画面に映し出されていた,または 音声で再生されていた)場面に関連する情報を提供するインターネットサイトのU RLである。」(【0014】)と記載されていることなどからすると,乙2発明1 において,携帯端末装置が受信する情報は,放送されたテレビ番組の場面に関連す るものであり,放送音声に関連する情報であるとは認められない。
d 相違点1−4(構成要件1D(2))
被告は,乙2発明1では,番組中の相異なる場面に対応する「複数の関連情報」 が存在し,そのうち選ばれた情報を受信しているから,「関連情報」が対応してい るのが「言語」であるか「場面」であるかの点でのみ本件発明1と相違する旨主張 する。 しかしながら,乙2発明1において,携帯端末装置が受信する放送中の番組の場 面に関する情報は「相異なる言語に対応する」ものでもないから,ID解決サーバ に番組内の相異なる場面に対応する情報が複数記憶されていたとしても,これを構\n成要件1Dの「相異なる言語に対応する複数の関連情報」との構成に対応するもの\nと認めることはできない。
イ 乙4発明の内容等に係る事実認定
・・・
(イ) 乙4発明の概要 前記(ア)によれば,乙4公報には,概要,次のとおりの内容の乙4発明が開示さ れていると認められる。 すなわち,乙4発明は,利用者が携帯する携帯型音声再生受信器を用いた美術館 や博物館等の展示物に係る音声ガイドサービスに関するものであり(【000 1】),(1)電波によって情報を伝達する従来技術によると,対象物以外のガイド音 声を受信して利用者に誤った情報を提供するおそれがあったこと(【0005】) を踏まえ,展示物に固有のIDを赤外線等の無線通信波によって発信するID発信 機を展示物ごとに一定の間隔で設置し,利用者が携帯する携帯受信器が発信域に入 ると上記IDを受信し,展示物の音声ガイドが自動的に再生される構成を採用する\nことにより,情報提供するIDの受信範囲を限定することが容易になり,隣接する 対象展示物との混信を回避した音声ガイドシステムを可能とするという作用効果を\n奏するものであり(【0008】ないし【0010】,【0014】),また,(2) そのシステムを複数の言語に対応させようとすると,多数のチャンネルの割当てが 必要となり,その選択操作を利用者が行う必要があったこと(【0007】)を踏 まえ,多言語に翻訳された音声ガイドのデータを携帯受信器に蓄積し,その中から 再生する言語を選択するという構成を採用することにより,多くの外国人利用者に\nも携帯受信器を操作することなくガイド音声を提供することができるという作用効 果を奏するものである(【0012】,【0020】)。
ウ 乙5発明の内容等に係る事実認定
・・・
(イ) 乙5発明の概要 前記(ア)によれば,乙5公報には,概要,次のとおりの内容の乙5発明が開示さ れていると認められる。 すなわち,乙5発明は,公共の場所等に掲載された文書等の掲載物を様々な言語 に翻訳して提供する情報提供装置等に関するものであり(【0001】),文書の 内容を様々な言語で利用者に正しく提供することを主たる課題とし(【000 6】),2次元コードと複数の言語に対応する言語コードをその内容として含むコ ード画像をユーザ端末装置によって読み取り,ユーザにおいて所望の言語を選択す るなどして,インターネットを介して,文書等の掲載物の翻訳ファイルにアクセス というものである(【0015】,【0025】,【0035】,【0038】)。
エ 容易想到性についての判断
被告は,(1)乙2公報は,音響IDとインターネットを用いて,放音装置から放音 された音響IDによって識別される識別対象の情報に対し,これと関連する任意の 関連情報をサーバから端末装置に供給できる乙2技術を開示しているところ,本件 発明1も乙2技術を採用するものであり,相違点1−1ないし同1−4は,識別対 象,複数の関連情報の選択条件,関連情報の内容に係る相違にすぎず,当業者が適 宜設定できるものである旨主張するとともに,(2)当業者は,乙2技術を乙4課題の 解決に応用して,相違点1−1ないし同1−4に係る本件発明1の構成を容易に想\n到し得た旨主張する。 しかしながら,まず,被告の上記(1)の主張については,前記1(2)認定のとおり, 本件発明1は,コンピュータを,(i)放音される「案内音声である再生対象音」と 「当該案内音声である再生対象音の識別情報」を含む音響を収音して識別情報を抽 出する情報抽出手段,(ii)サーバに対し,抽出した識別情報とともに「端末装置に て指定された言語を示す言語情報」を含む情報要求を送信する送信手段,(iii)「前 記案内音声である再生対象音の発音内容を表」し,情報要求に含まれる識別情報に\n対応するとともに「相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求 の言語情報で指定された言語に対応する関連情報」を受信する受信手段,(iV)受信 手段が受信した関連情報を出力する出力手段として機能させるプログラムの発明で\nあり,乙2公報等に音響IDとインターネットを利用するという点で本件発明1と 同様の構成を有する情報提供技術が開示されていたとしても,その手順や方法を具\n体的に特定し,使用言語が相違する多様な利用者が理解可能な関連情報を提供でき\nるという効果を奏するものとした点において技術的意義が認められるものであるか ら,相違点1−1ないし同1−4に係る本件発明1の構成が当業者において適宜設\n定できる事項であるということはできない。 また,被告の上記(2)の主張については,前記イのとおり,乙4公報に,発明が解 決しようとする課題の一つとして,システムを複数の言語に対応させること(以下, 単に「乙4発明の課題」という。)が記載されているものの,以下のとおり,乙2 発明1を乙4発明の課題に組み合わせる動機付けは認められず,仮に,乙4発明の 課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照するなどして乙2発明1の構\成に変更を加え たとしても相違点1−1ないし同1−4に係る本件発明1の構成に到達しないから,\n採用することができない。
(ア) 乙2発明1を乙4発明の課題を組み合わせる動機付け
a 前記のとおり,乙2発明1は,放送中のテレビ番組に関連した情報を提供す る情報提供システムに用いられる携帯端末装置に関するものであり,放送中のテレ ビ番組の場面を識別する音声信号である音響IDを用い,ID解決サーバを介して 当該場面に関連する情報を取得するものであるのに対し,前記イ(イ)のとおり,乙 4発明は,利用者が携帯する携帯型音声再生受信器を用いた美術館や博物館等の展 示物に係る音声ガイドサービスに関するものであり,展示物に固有のIDを赤外線 等の無線通信波によって発信し,携帯受信器が発信域に入ると上記IDを受信し, 展示物の音声ガイドが自動的に再生されるものであり,サーバに接続してインター ネットを介して情報を取得する構成を有しないから,両発明は,想定される使用場\n面や発明の基本的な構成が異なっており,乙2発明1を乙4発明の課題に組み合わ\nせる動機付けは認められない。
b 被告は,(1)乙4発明は,放音装置を利用した情報提供技術という乙2技術と 同じ技術分野に属するものであること,(2)乙2技術は汎用性の高い技術であり, 様々な放音装置を含むシステムに利用されていたこと(乙11ないし13),(3)端 末装置とサーバとの通信システムを利用する情報提供技術は周知のものであったこ と(乙2,5,6,8,11ないし13等)などによれば,当業者において,乙2 技術を乙4課題の解決に応用する動機付けがある旨主張する。 しかしながら,乙2発明1と乙4発明がいずれも放音装置を利用した情報提供技 術であるという限りで技術分野に共通性が認められ,また,本件優先日1当時,音 響IDとインターネットを利用し,又は端末装置とサーバとの通信システムを利用 する情報提供技術が乙2公報以外の公開特許公報に開示されていたとしても,いず れも乙4発明とは想定される使用場面や発明の基本的な構成が異なることは前記の\nとおりであり,乙4発明の課題の解決のみを取り上げて乙2発明1を適用する動機 付けがあると認めるに足りない。
(イ) 乙2発明1に対する乙4発明等の適用
また,以下のとおり,乙4発明の課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照するなど\nして乙2発明1の構成に変更を加えたとしても,本件発明1の構\成に到達しない。
a 相違点1−1(構成要件1B)\n
(a) 前記のとおり,乙4発明は,展示物ごとに設置されたID発信機から赤外線 等の無線通信波によって展示物に固有のIDが発信されるものであり,「案内音声 ・・・を表す音響信号」を放音するものではなく,「当該案内音声である再生対象音の\n識別情報」を含む音響信号を放音するものでもないから,乙4発明の構成を参照し\nて乙2発明1の構成に変更を加えたとしても,相違点1−1に係る本件発明1の構\ 成に到達しない。
(b) 被告は,乙4発明の音声ガイドは「案内音声」に相当するから,「案内音声」 を識別する構成を採用することは容易であった旨主張するが,上記のとおり,乙4\n発明のIDは展示物を識別するものであり,当該展示物に係る音声ガイドを識別す るものではないから,乙4発明は「案内音声」を識別する構成を開示するものでは\nない。
b 相違点1−2(構成要件1C)\n
前記のとおり,乙4発明は,サーバに接続してインターネットを介して情報を取 得するという構成を有しないものであり,端末装置からサーバに「識別情報」と\n「当該端末装置にて指定された言語を示す言語情報」が送信されることはないから, 乙4発明の課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照して乙2発明1の構\成に変更を加 えることによって,相違点1−2に係る本件発明1の構成に到達することはない。\n
c 相違点1−3(構成要件1D(1))
前記のとおり,乙4発明は,サーバに接続してインターネットを介して情報を取 得するという構成を有しておらず,IDによって識別される展示物のガイド音声を\n再生するものであって,端末装置が「案内音声である再生対象音の発音内容を表す」\n情報を受信することはないから,乙4発明の課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照\nして乙2発明1の構成に変更を加えることによって,相違点1−3に係る本件発明\n1の構成に到達することはない。\n
d 相違点1−4(構成要件1D(2))
前記のとおり,乙4発明は,多言語に翻訳された音声ガイドのデータを携帯受信 器に蓄積し,その中から再生する言語を選択することによって,IDによって識別 される展示物のガイド音声を所定の言語で再生するという構成を有するものの,サ\nーバに接続してインターネットを介して情報を取得するという構成を有していない\nから,端末装置が「相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求 の言語情報で指定された言語に対応する関連情報」を受信することはなく,乙4発 明の構成を参照して乙2発明1の構\成に変更を加えることによって,相違点1−4 に係る本件発明1の構成に到達することはない。\n
・・・
5 争点6(差止めの必要性は認められるか)について
被告は,本件アプリについて差止めの必要性は認められないとし,その理由とし て,(1)本件口頭弁論終結時点において,本件アプリに係るサービスは実用化されて いなかったこと,(2)被告は,平成30年5月以降,本件アプリの配信を中止し,多 言語で情報配信を行う機能を取り除いた本件新アプリを配信しており,本件訴訟の\n結果によって本件アプリに係る事業を再開するか否かを決定する予定であること,\n(3)被告は,今後,顧客に対し,案内音声である再生対象音の発音内容を表す他国語\nの関連情報を提供することを禁ずる旨の約束や,案内音声である第1言語の再生対 象音が表す発音内容を第2言語で表\現した情報を提供することを禁ずる旨の約束を する意思があることを主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,本件アプリは,本件発明1の技術的範囲に属 し,本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものとは認められないから, 前記第2の2(4)のとおり,被告は,少なくとも,平成29年5月頃から平成30年 6月頃まで,本件アプリを作成し,譲渡等及び譲渡等の申出をし,平成28年6月\nから平成29年3月までの間に3回にわたり本件アプリを使用することによって本 件特許権1を侵害していたものである。 これらに加えて,被告が本件訴訟において本件アプリが本件発明1の技術的範囲 に属することを否認して争い,本件特許1について特許無効審判により無効にされ るべきであると主張していること,弁論の全趣旨によれば,被告は,現在も,ウェ ブサイトに本件アプリの説明や広告を掲載していると認められ,被告が本件アプリ の作成等を再開することが物理的に不可能な状況にあるとは認められないことなど\nも考慮すると,被告は,今後,本件特許権1を侵害するおそれがあるものというべ きであるから,原告が被告に対し,その侵害の予防のため,本件アプリの作成等の\n差止を求める必要性は認められるものというべきである。

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平成28(ワ)10759  特許権に基づく製造販売禁止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月30日  東京地方裁判所(40部)

 石けんの特許権侵害について、1社あたり2億円を越える損害賠償が認められました。102条1項の販売不可事情は否定されました。

(3) 譲渡数量に単位数量当たりの利益を乗じた額
前記(1)の譲渡数量に前記(2)の単位数量当たりの利益を乗じた額は,以下 のとおりとなる。
ア 被告日本生化学について
原告長寿乃里
21万3457個×1225円=2億6148万4825円
原告イング
23万9658個×993円=2億3798万0394円
イ 被告ブレーンコスモスについて
原告長寿乃里
17万0132個×1225円=2億0841万1700円
原告イング
19万1015個×993円=1億8967万7895円
ウ 被告ビーシーリンクについて
原告長寿乃里
135個×1225円=16万5375円
原告イング
152個×993円=15万0936円
(4) 特許法102条1項ただし書の「販売することができないとする事情」の 有無
ア 競合品の存在
証拠(甲8,乙24)によれば,シラスが配合された洗顔料が原告製品 及び被告製品のほかに8銘柄が存在したことが認められるが,販売数が多 いものでも,株式会社メディカルドーズの「お茶!入ったよ〜わっぜ!! 火山灰石けん」が平成22年9月から平成27年12月までに2万754 8個を販売したにとどまり,他の銘柄は,販売数が約1000個から38 00個程度にとどまるか,販売数が明らかではないから,これらの洗顔料 の存在が,「販売することができないとする事情」に当たるということは できない。
イ 原告製品の販売経過
被告日本生化学は,被告製品を販売していない月でも原告製品の販売が 落ちている月があることから,原告製品の販売は被告製品の販売に影響を 受けていなかったと主張するが,原告製品についてそのような販売経過と なった原因としては様々なものが考えられるのであり,上記の販売経過が 直ちに「販売することができないとする事情」に当たるとはいえない。
ウ 薬機法上の区分及び本件発明1の作用効果
被告日本生化学は,原告製品及び被告製品について,薬機法上の区分が 異なること及び宣伝広告の内容から,本件発明1の作用効果は原告製品及 び被告製品の販売に寄与していないと主張する。 しかし,消費者が薬機法上の区分を意識して商品を選択するとは考え難 く,前記判示のとおり,原告製品と被告製品はいずれもシラスが配合され た石けんという同種の商品であり,かつ,被告製品は本件発明1の作用効 果を奏するのであるから,両者は市場で競合する製品であるということが できる。 また,被告ブレーンコスモスは,被告製品の説明において,原告製品は 発売以来700万個以上が売れた大ヒット商品であると紹介するととも に,被告製品には,人工皮膚成分「リピジュア」が配合され,原告製品と 同じ価格だが,内容量が多いという2点が異なることを挙げて,被告製品 の宣伝をしていたことが認められ(甲14),このような宣伝内容によっ て,原告製品ではなく被告製品を購入した消費者も相当数いるものと考え られる。 そうすると,被告日本生化学が主張する上記事情は,「販売することが できないとする事情」に当たるとはいえない。
エ 販売ルートの違いについて
被告ブレーンコスモスらは,原告らは消費者に直接販売する小売である のに対し,被告ブレーンコスモスは販売数のうち95%は企業に対する卸 売りであり,販売ルートが異なるから,競合しないと主張する。 しかし,原告製品及び被告製品はいずれも最終的には一般消費者によっ て購入され,使用される石けんであり,被告製品が一般消費者に販売され る段階では原告製品と競合すると認められるところ,被告製品が存在しな ければ,被告ブレーンコスモスが他の企業に被告製品を卸売りすることも なく,ひいては被告製品が一般消費者に販売されることもないのであるか ら,被告ブレーンコスモスが卸売りを主たる取引形態とするからといって, 原告製品と被告製品が市場において競合することは左右されず,「販売す ることができないとする事情」に当たるとはいえない。
オ 東日本大震災の義援金に充てる旨のアテンションシールについて
被告ブレーンコスモスらは,売上げの一部を東日本大震災の義援金に充 てる旨記載されたアテンションシールを被告製品に貼っていた期間(平成\n23年4月1日から同年9月30日まで)の販売数がそうでない期間の販 売数を上回っており,同シールが被告製品の売上げに寄与した旨主張する。 しかし,平成23年4月1日から同年9月30日まで被告製品に上記シ ールが貼られていたことを認めるに足りる証拠はない上,仮に同シールが\n貼付されていたとしても,平成23年1月から同年9月までの被告製品\n(100gのもの)の販売数は毎月概ね1万個程度で推移しており(丙1, 21),販売数の増加が同シールによるものとは認め難く,被告ブレーン コスモスらの主張はその前提を欠き,採用できない。
カ 海外市場における競合
被告ブレーンコスモスらは,被告ビーシーリンクは専ら海外に被告製品 を販売しているところ,原告製品と被告製品は海外市場において競合しな いと主張する。 しかし,証拠(甲76,77,84〜87,108〜112,丙25〜 28)によれば,被告ビーシーリンクは,平成25年2月から11月にか けて,米国,中国,シンガポール,ラトビアに被告製品を販売していたこ と,原告長寿乃里は,自ら又は株式会社フェローシップ等を介して,以下 のとおり海外に原告商品を出荷したことが認められる。
・・・
以上の事実関係に照らせば,原告製品と被告製品は,少なくとも米国及 び中国の海外市場において競合していたことが認められるから,被告ビー シーリンクが専ら海外において被告製品を販売していることは,「販売す ることができないとする事情」に当たるとはいえない。
キ 以上のとおり,被告らが主張する事情は,いずれも「販売することがで きないとする事情」に当たらないから,特許法102条1項に基づく損害 額の推定は覆滅されない。

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平成30(ワ)8302  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年11月14日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、特許侵害事件です。原告(会社)の本人訴訟です。東京地裁47部は、構成要件Fを充足しないと判断しました。

 前記(1)の記載によると,次のとおり認められる。
ア 本件各発明以前にも,コンピュータシステムにおけるシステム利用者の 入力行為を支援する従来技術としては,マウスを右クリックすることによ り,マウスが指し示している画面上のポインタ位置に応じた操作コマンド のメニューが表示される「コンテキストメニュー」や,画面上でマウスポ\nインタがウィンドウの枠やファイルのアイコンなどに重なった状態でマ ウスの左ボタンを押し,そのままの状態でマウスを移動させ,別の場所で マウスの左ボタンを離すマウス操作である「ドラッグ&ドロップ」などが あった。しかして,「コンテキストメニュー」には,マウスの左クリックを 行うまではメニューが画面に表示され続け,また,利用者が間違って右ク\nリックを押してしまった場合には,利用者の意に反して画面上に表示され\nてしまうので不便であるなどの課題があり,また,「ドラッグ&ドロップ」 には,継続的な動作,例えば,移動させる位置を決めないで徐々に画面を スクロールさせていくような動作に適用させるのが難しいという課題が あったところである(段落【0001】〜【0005】)。
イ 本件各発明は,このような課題を解決するため,入力手段における命令 ボタンが利用者によって押されてから,離されるまでの間に,ポインタの 位置を移動させる命令を受信すると,画像データである操作メニュー情報 を出力手段に表示させ,入力手段における命令ボタンが利用者によって離\nされると,出力手段に表示されていた操作メニュー情報の表\示を終了させ ることにより,普段は画面上に操作メニュー情報を表示させずに,利用者\nにとって必要な場合に簡便に表示させることを可能\にするという構成を\n採用したものといえる(段落【0022】,【0023】,【0051】)。そ して,スムーズな画面操作を可能とするため,操作メニュー情報が表\示さ れている状態において,これをポインタで指定した場合,すなわち,実行 される命令結果を利用者が理解できるように出力手段に表示した画像デ\nータである操作メニュー情報が占める座標位置の範囲にポインタの座標 位置が入った場合に,「操作メニュー情報にポインタが指定された場合に 実行される命令」として特定された,例えば,出力手段に表示される画面\n(ビュー)をスクロールさせるような命令など,コンピュータシステムに 対する命令が実行され,操作メニュー情報が占める座標位置の範囲に,ポ インタの座標位置が入らなくなるまで当該実行を継続するという構成を\n採用したものといえる(段落【0009】,【0012】,【0013】,【0 016】,【0023】,【0051】)。
ウ 以上のような,本件各特許請求の範囲の記載文言及び本件明細書の各記 載によれば,本件各発明は,コンピュータシステムにおけるシステム利用 者の入力行為を支援するため,「コンテキストメニュー」や「ドラッグ&ド ロップ」における,操作メニュー情報が利用者に意に反して表示されるこ\nとに関わる課題や,移動先を決めないで画面をスクロールさせるような継 続的な動作に関わる課題を解決すべく,操作メニュー情報については,普 段は画面上に表示させずに,利用者にとって必要な場合に簡便に表\示させ るという構成を採用し,その上で,物理的に操作メニュー情報が占める座\n標位置の範囲にポインタの座標位置が入っているときに,コンピュータシ ステムに対する命令が実行されるようにして,スムーズな画面操作が可能\nとなるという構成を採用したものといえる。このような構\成を採用した以 上,構成要件B,E,F及びGの「操作メニュー情報」とは,利用者にと\nって,その表示,非表\示を明確に認識できることが前提となっており,物 理的に操作メニュー情報が占める座標位置の範囲が明確になっている必 要があることは明らかである。 そうすると,構成要件B,E,F及びGの「操作メニュー情報」につい\nては,利用者にとっての,視覚的な見地からの,命令内容の表示や実行の\n簡便性を実現する構成を意味するものであるものといえ,そのような見地\nに照らし,同「操作メニュー情報」とは,利用者が,その表示の有無を視\n覚的に認識でき,その表示内容から,所望の命令を実行した結果について\nも理解できるような,画像データである必要があるものと解するのが相当 である。
そして,構成要件Fの,(1)「操作メニュー情報がポインタにより指定さ れる」と「操作メニュー情報に関連付いている命令」を「実行」する,及 び(2)「操作メニュー情報がポインタにより指定されなくなるまで当該実行 を継続する」との文言については,画像データである操作メニュー情報の 座標位置が利用者に視覚的に認識できることを前提に,(1)画面上に表示さ\nれた画像データである操作メニュー情報が占める座標位置の範囲に,ポイ ンタの座標位置が入った場合に,特定の命令を実行し,(2)操作メニュー情 報が占める座標位置の範囲に,ポインタの座標位置が入らなくなるまで当 該実行が継続され,入らなくなった場合には,当該実行が継続されないこ とを意味し,かかる動作状況を満たす命令であることをもって,「操作メニ ューに関連付いている命令」に当たるものと解するのが相当である。
(3) 「操作メニュー情報」(構成要件B,E,F,G)の充足性\n
ア 以上を前提に,まず,「操作メニュー情報」(構成要件B,E,F,G)\nの充足性につき検討するに,被告製品の構成のエ(イ)ないし(エ)及び\nオ(イ)ないし(エ)のとおり,本件ホームアプリにおける上ページ一部 表示及び下ページ一部表\示(以下「上ページ一部表示等」という。)は,画\n像データであり,その内容や表示位置からすれば,これを見た利用者は上\nページ又は下ページにスクロールする結果を理解できるといえるから,利 用者が,その表示の有無を視覚的に認識でき,その表\示内容から,所望の 命令を実行した結果についても理解できるような,画像データに当たるも のというべきであって,「操作メニュー情報」を充足するものと認められる。 イ これに対し,被告は,上ページ一部表示等は,単にホーム画面が縮小表\ 示されることによって当該ホーム画面の隣のホーム画面が見えているに すぎず,実行される命令を表す文字も,矢印表\示等何らかの操作ができる ことを示す絵や記号も表示されておらず,表\示自体から上ページ又は下ペ ージにスクロールするといった実行される命令結果を理解できる画像で はない旨を主張する。 しかし,被告製品の構成エ(イ)及びオ(イ)のとおり,上ページ一部\n表示等が表\示されるのは,利用者が移動させたいショートカットアイコン をロングタッチして,ドラッグ操作をして同アイコンを移動させる等して, 縮小モードになった状態であることからすれば,同アイコンを移動したい 利用者が,1つ上のページ又は1つ下のページの一部を表示した画像であ\nる上ページ一部表示等を見て,上ぺージ又は下ページが存在することのみ\nならず,上ページ一部表示等までドラッグすれば,上ページ又は下ページ\nに画面をスクロールさせることができるものと理解することも可能とい\nうべきである。 以上によれば,被告の上記主張は採用することができない。
ウ 他方,原告は,上ページ一部表示等のみならず,「左上領域」「右上領域」\n又は「左下領域」「右下領域」(以下「左上領域等」という。)も「操作メニ ュー情報」に該当する旨を主張する。 しかし,左上領域等は,被告製品の構成エ(ウ)及びオ(ウ)のとおり,\n特定の座標位置で囲まれた領域にすぎず,利用者が,その表示の有無を視\n覚的に認識でき,その表示内容から,所望の命令を実行した結果について\nも理解できるような,画像データに当たるものとは認められない。前記ア の説示に照らしても,左上領域等が,「操作メニュー情報」に当たるとは認 められず,同説示のとおり,「操作メニュー情報」に該当するのは,上ペー ジ一部表示等に限られるというべきである。\n以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。
(4) 「操作メニュー情報がポインタにより指定される」と「操作メニュー情報 に関連付いている命令」を「実行」する,及び「操作メニュー情報がポイン タにより指定されなくなるまで当該実行を継続する」(構成要件F)の充足性\n ア 被告製品においては,被告製品の構成のエ(ウ)(エ)及びオ(ウ)(エ)\nのとおり,左上領域等の占める座標位置の範囲に,原告が「ポインタの座 標位置」に当たると主張(前記第2の3(2)[原告の主張]イ)する「当該 ショートカットアイコンをドラッグしている指等のタッチパネル上の位 置」又は「当該ショートカットアイコンをドラッグしているマウスカーソ\nルの先端の位置」の座標位置(以下「指等及びマウスカーソルの先端の座\n標位置」という。)が入った場合に「上ページスクロール1」,「上ページス クロール2」,「下ページスクロール1」,「下ページスクロール2」を生じ させる命令(以下,併せて「ページスクロール命令」という。)が実行され, 左上領域等の占める座標位置の範囲に指等及びマウスカーソルの先端の\n座標位置が入らなくなるまでページスクロール命令が継続され,入らなく なった場合には当該実行が継続されないことが認められる。
しかし,前記(3)のとおり,被告製品において,「操作メニュー情報」に 該当するのは上ページ一部表示等であるところ,証拠(甲19,乙11〜\n13)によれば,上ページ一部表示等が占める座標位置の範囲と左上領域\n等の占める座標位置の範囲とは必ずしも一致せず,上ページ一部表示等は,\n左上領域等と一部重なる座標位置に表示されているにすぎないことが認\nめられる。このため,(1)上ページ一部表示等が占める座標位置の範囲に,\n指等及びマウスカーソルの先端の座標位置が入っていても,その位置が左\n上領域等の占める座標位置の範囲外であればページスクロール命令が実 行されず,また,(2)上ページ一部表示等が占める座標位置の範囲に,指等\n及びマウスカーソルの先端の座標位置が入っていなくとも,その位置が左\n上領域等の占める座標位置の範囲内であればページスクロール命令が実 行・継続されることとなる。 このような被告製品の動作状況から検討すると,ページスクロール命令 の実行や継続は,指等及びマウスカーソルの先端の座標位置が,利用者が\nその範囲を視覚的に認識することができない,左上領域等の占める座標位 置の範囲に入っているかどうかによるものであり,これが肯定されれば, 指等及びマウスカーソルの先端の座標位置が上ページ一部表\示等の占め る座標位置の範囲に入っていなくても,ページスクロール命令が実行され 継続されるものである一方,上記が否定されれば,指等及びマウスカーソ\nルの先端の座標位置が上ページ一部表示等の占める座標位置の範囲に入\nっていても,ページスクロール命令は実行され継続されないこととなるも のである。 すなわち,被告製品においては,指等及びマウスカーソルの先端の座標\n位置が,偶々,上ページ一部表示等と左上領域等が重なる部分の占める座\n標位置の範囲に入った場合に限って,ページスクロール命令が実行・継続 されているにすぎないものである。これに照らせば,ページスクロール命 令については,飽くまで利用者が視覚的に認識できない左上領域等の範囲 において実行・継続されるものであって,上ページ一部表示等の範囲にお\nいて実行・継続されるものではないのであるから,上ページ一部表示等に,\nページスクロール命令が関連付いているとまでは認めるに足りないとい うほかない。 したがって,上記のとおりの被告製品の構成は,構\成要件Fの「操作メ ニュー情報がポインタにより指定される」と「操作メニュー情報に関連付 いている命令」を「実行」する,及び「操作メニュー情報がポインタによ り指定されなくなるまで当該実行を継続する」という文言(構成要件F)\nを充足するとは認められない。
イ 原告の主張について
(ア) まず,原告は,上ページ一部表示等のみならず左上領域等も「操作\nメニュー情報」に相当する旨主張するが,前記(3)に説示したとおり,左 上領域等は,「操作メニュー情報」には当たるとはいえない。
(イ) また,原告は,上ページスクロール1が生じるのは,処理手段が上ペ ージスクロール1を行うプログラムを実行していることを意味するとこ ろ,同プログラムは上ページ一部表示が表\示されていないと実行されな いから,上ページ一部表示と同プログラムとは関連付いている旨主張す\nる。 しかし,前記説示のとおり,本件発明の構成要件F(「関連付いている」)\nについては,画像データである操作メニュー情報の座標位置が利用者に 視覚的に認識できることを前提に,(1)画面上に表示された画像データで\nある操作メニュー情報が占める座標位置の範囲に,ポインタの座標位置 が入った場合に,特定の命令を実行し,(2)操作メニュー情報が占める座 標位置の範囲に,ポインタの座標位置が入らなくなるまで当該実行が継 続され,入らなくなった場合には,当該実行が継続されないことを意味 し,かかる動作状況を満たす命令であることをもって,「操作メニューに 関連付いている命令」に当たるものと解するのが相当であるところであ る。しかして,被告製品においては,指等及びマウスカーソルの先端の\n座標位置が,偶々,上ページ一部表示等と左上領域等が重なる部分の占\nめる座標位置の範囲に入った場合に限って,ページスクロール命令が実 行されているにすぎないものであって,ページスクロール命令について は,飽くまで利用者が視覚的に認識できない左上領域等の範囲において 実行・継続されるものであり,上ページ一部表示等の範囲において実行・\n継続されるものではないというのである。 以上によれば,原告の上記指摘をもって,直ちに,上ページ一部表示\nと上記プログラムとが関連付いており,上ページ一部表示等の有無とペ\nージスクロール命令の実行の可否が関連付いているとまで認めることは できず,他に,両者の関連付けを推認させるに足りる事情も見当たらな い。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。
(ウ) 原告は,構成要件Fの「操作メニュー情報がポインタにより指定さ\nれなくなるまで当該実行を継続する」には,「終了」といった記載はない から,操作メニュー情報がポインタにより指定されなくなった際に当該 実行が終了することまで求めてはおらず,実行がいつ終了するかは同構\n成要件とは関係がない旨を主張する。 しかし,上記(2)ウで述べたとおり「操作メニュー情報がポインタによ り指定されなくなるまで当該実行を継続する」とは,操作メニュー情報 がポインタにより指定されている場合に当該実行が継続されることのみ ならず,操作メニュー情報がポインタにより指定されなくなった場合に は当該実行が継続されなくなることまで意味するものと解すべきところ, 前記アで述べたとおり,被告製品において,指等及びマウスカーソルの\n先端の座標位置が上ページ一部表示等の占める座標位置の範囲に入って\nいない場合であっても,左上領域等の占める座標位置に入っていればペ ージスクロール命令の実行が継続されるものである以上,被告製品は上 記の構成要件を充足しないというべきである。なお,原告の主張する「実\n行」の「終了」が何を意味するか必ずしも判然としないが,仮に,上記 構成要件の解釈として,操作メニュー情報がポインタにより指定されて\nいる場合に当該実行を継続することのみを意味し,操作メニュー情報が ポインタにより指定されなくなった場合に当該実行が継続されないこと までは含んでいないとする旨を主張する趣旨であるとしても,そもそも そのような解釈は,本件各特許請求の範囲の文言及び本件明細書の記載 に照らし,上記構成要件の解釈として失当と言わざるを得ない。\n

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平成29(ワ)31544  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年8月30日  東京地方裁判所

 東京地裁40部は、技術的範囲に属すると判断し、102条2項に基づく損害賠償を認めました。

 上記グラフにおけるZn(青線)とPk(赤線)の線形性にほぼ差異はない 上,ZnとXcの差(Zn−Xc)のZnの値に対する比率((Zn−Xc)/Z n)は,Brix値が0%のとき約4.98%,10%のとき約3.82%, 20%のとき約2.75%,30%のとき約1.62%,40%のとき約1. 46%,50%のとき約0.99%であって,ZnとXcの値の差は全体的に かなり小さく,Zn≒Xcと評価しるものであって,そうすると,式(B)は, 重心であるZnの平均値を出しているにすぎないというべきである。 また,式(B)の分子の式(Zn+(Zn−Xc))については,(1)Xc値> Zn値の場合,(2)Xc値=Zn値の場合,(3)Zn値>Xc値の場合があり得るが, (2)の場合にはPkの値は重心位置と一致する上,上記計測結果のような(1)の 場合又は(3)の場合に,式(B)により算出されるPkの値(被告の主張によれ ば臨界角点)が理論上の臨界角点により近似することの合理的な説明はなさ れておらず,そのことを示す的確な証拠もない。そうすると,式(B)が臨 界角点を求めるものとしての技術的意義を有すると認めることはできず,む しろ,前記のとおり,ZnとXcの値の差は全体的にかなり小さく,Zn≒X cと評価し得るものであることを踏まえると,式(B)は重心であるZnの平 均値を出しているものというべきであり,さらに,被告製品において式(B) に基づき複数の試行を行っていることも,同製品が構成要件Eを充足すると\nの結論を左右しない。
ウ 式(C)について
本件発明における式(2)は,「Pc=Pc’+C」というものであると ころ,本件明細書等の段落【0035】〜【0038】,段落【0040】, 【0041】によれば,定数Cは,重心位置Pc’に加算して臨界角点Pc (=Pc’+C)を求めるための定数であり,屈折率が既知である試料を用 いた実験により予め決定された値であると認められる。そして,本件発明は,\nこのように式(1)と式(2)を組み合わせることにより,臨界角点を直接 求めるよりも,同点をより正確に求めることができるとの効果を奏するもの であると認められる。 他方,被告製品の用いている式(C)は,「ΔPc=PCT20−PC0」とい うものであるところ,被告製品説明書,証拠(甲7,8,乙1,9)及び弁 論の全趣旨によれば,PCT20は,式(A)により得られたZn値を式(B) により調整したPk値(前記判示のとおり,重心であるZnの平均値)を,2 0°Cの環境下での値に換算した値であるから,この値は,上記手順により調 整された光量分布曲線の一次微分曲線(あるいは一次差分曲線)の重心位置 のアドレス値(甲7・10頁における「ゼロセット後 10%測定」欄の「Bary T20」の値(30.146))であり,PC0は,20°Cの環境下で濃度0%の 水を用いて計測した重心位置のアドレス値(同頁における「水基準書き込み 後 水」欄の「CAL OffSet」の値(18.54758))であること,また, 水の屈折率は既知であるところ,被告製品の理論上の臨界角点のアドレス値 は18.50000であることが認められる。 そして,甲7によれば,被告製品は,(1)上記PCT20の値(上記「Bary T20」 の値)を入力し,(2)「Bary T20」の値から「CAL OffSet」(水書き込みアド レス値)を差し引いた値を計算する,(3)上記(2)の値をBrix値に換算し, 「Saccharin T20」(Brix値)を算出する,(4)ゼロセットオフセット値を 読み込む,(5)「Saccharin T20」(Brix値)から「ゼロセットオフ値」を 差し引き,その結果を「Brix Value」(Brix値)として算出する,(6)「Brix Value」(Brix値)を「Final Rfact」(屈折率)に換算するという順序 でプログラムが実行されているものと認められる。 上記のプログラム実行過程のうち(2)の計算式は,試料の重心位置のアドレ ス値である「Bary T20」(PCT20)の値から水の重心位置のアドレス値であ る「CAL OffSet」(PC0)の値を差し引くものであり,試料の重心位置のア ドレス値の原点を水の重心位置のアドレス値に改めるとの意味を有するも のであるところ,このPC0値(18.54758)は理論値(水の理論上の 臨界角点のアドレス値である18.50000)との差(0.04758) を含む値であるということができる。そうすると,上記(2)の計算式は,試料 の重心位置のアドレス値から水の重心位置のアドレス値を直接差し引くも のであるが,実質的には,PCT20及びPC0の双方から水の臨界角点の理論 値(18.50000)を控除していったん同理論値を原点とする試料の重 心位置と水の重心位置の各アドレス値を算出し,さらに前者から上記差の値 (0.04758)を調整しているに等しく,試料の重心位置のアドレス値 に,屈折率が既知である水を用いた実験により予め決定された定数(−0.\n04758)を加算する計算をしているのと同義であるということができる。 したがって,式(C)は,式(2)を充足する。
(3) 被告の主張について
ア 被告は,式(1)と式(A)が形式的に異なっているから,被告製品は構\n
成要件Eを文言充足しないと主張する。 しかし,式(1)は,光量分布曲線の一次微分曲線(あるいは一次差分曲 線)の重心位置Pc’を求めるものであって,式(A)と技術的思想を同じ くするものであり,かつ,式(A)は式(1)に変形し得るものであって, 当業者であれば,式(A)と式(1)が実質的に同一の式であると認識し得 るというべきである。 そうすると,式(1)の技術的範囲は式(A)を包含するものと認めるの が相当である。
イ 被告は,被告製品におけるZnは13回算出され,更にPkを5回算出して 臨界角点Pcを算出しているのに対し,本件発明は,重心位置Pc’を1回 算出し,これに定数Cを加えてPcを算出しているのであるから,技術的思 想が異なると主張する。 しかし,Znが重心位置を求める式であると認められるのは前記のとおり であり,これを13回にわたり求めて,平均値を算出するといった手法は当 業者が容易に採用し得る技術常識に属するものと解される。また,前記のと おり,式(B)が臨界角点を求めるものとしての技術的意義を有すると認め ることはできず,むしろ,重心であるZnの平均値を出しているものという べきであることは前記判示のとおりであるから,本件発明と被告製品の技術 的思想が異なるということもできないというべきである。
ウ 被告は,PC0はΔPcを算出するための基準数値にすぎないから定数Cに 対応する概念ではなく,ΔPcも本件発明の式(2)のPcに対応する概念 ではなく,フェーズが異なるなどと主張する。 しかし,ΔPcを算出する式(PCT20−PC0)が有する意義は前記のとお りであって,被告製品においても試料の重心位置につき差分を調整すること で臨界角点を求めている点で本件発明と変わりがないから,式(C)が式(2) と実質的に異なるということはできない。
エ 被告は,本件発明における式(2)に関し,Pc’は特定の装置における 測定値ベースの臨界角点であり,定数Cは当該装置毎の個体差を較正する値 にすぎないなどと主張する。 しかし,前記のとおり,式(1)により得られるPc’は光量分布曲線の 一次微分曲線(あるいは一次差分曲線)の重心位置であるから,臨界角点と は異なるものであって,本件発明がこれに定数Cを加えることで臨界角点を 求めるものであることは,前記判示のとおりである。
(4) 以上のとおり,被告製品は構成要件Eを充足し,また,被告製品が構\成要件 A〜D及びFを充足することは前記前提事実(3)ウのとおりであるから,被告 製品は,本件発明の技術的範囲に属する。
・・・
(1)特許法102条2項に基づく損害額について
ア 被告は,(1)平成28年9月9日から平成30年2月9日までの間に被告製 品を137個販売し,(2)その売上総額は204万4164円であり,(3)被告 製品1個当たりの製造原価は1万0249円であるが,(4)特許法102条2 項所定の被告の利益額を算出するに当たっては,(3)に加えて配送費合計16 00円を控除すべきと主張するところ,(1),(3)及び(4)については,当事者間 に争いがなく,証拠(乙10〜12)によれば,(2)の事実を認めることがで きる。 そうすると,原告の損害額は,特許法102条2項に基づき,63万84 51円(=204万4164円−(137個×1万0249円+1600円)) と推定される。被告がこれを超える利益を得たことを認めるに足りる証拠は ない。
イ 被告は,寄与率を考慮すべきと主張する。しかし,本件発明は,屈折率を 測定するための臨界角点の算定という,屈折計の本質的ないし根幹的技術に 関するものであって,その可分的な一部に関するものではないから,本件で 寄与率を考慮すべきとは認められない。被告主張の諸事情は,この結論を左 右しない。
(2) 弁護士・弁理士費用について
本件事案の難易,請求額及び認容額等の諸般の事情を考慮すると,被告の侵 害行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金として6万円を認めるの が相当である。

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平成30(ワ)13400  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月11日  東京地方裁判所

 文言侵害不成立および、第1要件満たさないとして均等侵害が否定されました。

 原告は,本件発明1のうち,挿入力の増加の防止のための構成がその本\n質的部分であるとした上で,被告製品は少なくともその課題の解決原理を 利用しているのであるから,被告製品のサブアーム部にフック部が付属し ているかどうかにかかわらず,同製品は本件発明1の本質的部分を備えて いると主張する。 しかし,本件発明1は,特に車載用等のアンテナの仮固定用ホルダにつ いて,従来例の仮固定用ホルダでは抜け力が弱いという問題があり,他方, 抜け力を強くするために係止爪の引っ掛かり量を多くすると,挿入力が強 くなり作業性が悪化することから,挿入力は弱いままで,抜け力を強くす るという課題を解決するためのものであると認められる(本件明細書等の 段落【0009】,【0013】〜【0015】)。そうすると,本件発 明1の本質的部分は,挿入力は弱いままで,抜け力を強くするための構成\nにあり,従来技術との対比でいうと,特に抜け力の強化のための構成が重\n要であるというべきである。 そして,本件発明1は,上記課題の解決のため,(1)メインアーム部と, メインアーム部の下端部で繋がったサブアーム部を有し,(2)当該下端部が サブアーム部の撓みの支点となり,(3)サブアーム部の上端部を,上端に向 かって肉厚が増加する係止爪からなるものとすることなどにより,取付孔 への挿入性の向上を図るとともに,アンテナ上方向(抜け方向)に荷重が 加わったときは,係止爪が外側に撓んで拡がることにより抜け力の増大を 可能にするものであると認められる(特許請求の範囲,本件明細書等の段\n落【0017】,【0029】,【0032】,【0033】,【003 6】,【0037】)。
ウ 他方,被告製品においては,サブアーム部の爪部の上部にフック部が設 けられ,当該フック部と車体のルーフ孔の距離が0.3mmであると認め られるから(乙13),抜け方向に荷重が加わった際に,フック部は0. 3mm程度以上は撓むことなくすぐに車体のルーフの内側面に当たり,爪 部がそれ以上に外側に撓ることは抑制されるものと認められる。 そして,被告製品における抜け力に関し,被告が実施した実験結果(乙 5)によれば,本件発明1の実施品の抜け力は186Nであるのに対し, 被告製品の抜け力は,215.8N,227N,271N,295Nであ り,最小でも約30N,最大で約110Nの差が生じたことが認められる。 また,被告が実施した,被告製品のコの字型部材(サンプル(1))と,被告 製品のコの字型部材を加工してフック部を除いたもの(サンプル(2))を用 いた実験結果(乙14)によれば,前者の抜け力の平均値は227.60N,後者の抜け力の平均値は73.51N(いずれも10回実施)であり, フック部を備えたコの字型部材の方が,抜け力において約150N大きい ことが認められる。 前記のとおり,被告製品の爪部は外側への撓みが抑制されていると認め られるところ,これに上記の各実験結果を併せて考慮すると,被告製品は, 本件発明1の実施品に匹敵する抜け力を備えているということができ,そ の抜け力の大きさは,同製品がフック部を備えることに起因しているもの と考えるのが自然であり,少なくとも爪部の外部への撓みによるものでは ないということができる。
なお,原告は,乙14実験はサンプル(2)のフック部のカット加工の際に メインアーム部とサブアーム部の接続部の耐久性が損なわれた可能性が\nあるとして,乙14実験の信用性を争うが,サンプル(2)はフック部を爪部 からカットするものであり,上記接続部の耐久性が損なわれたことをうか がわせる事情は見当たらない。前記判示のとおり,乙14実験はサンプル (1)と(2)のそれぞれについて10回ずつ実験を行っているところ,数値にば らつきはあるものの,サンプル(1)は200N以上であり,サンプル(2)は概 ね60〜100程度であり,全体的に100N以上の差が生じていること に照らすと,その差が誤差や実験方法の不適切さに由来するものとはいう ことはできない。
エ 前記判示のとおり,抜け力の増大という課題を解決するための構成は本\n件発明1の本質的部分ということができるところ,本件発明1はこの課題 をアンテナ上方向(抜け方向)に荷重が加わったときに係止爪が外側に撓 んで拡がることにより解決しているのに対し,被告製品は爪部に加えてフ ック部を備えることにより抜け力を保持しているものと認められ,そうす ると,被告製品は本件発明1と異なる構成により上記課題を解決している\nということができる。
そうすると,本件発明1と被告製品はその課題解決のための特徴的な構\n成において相違し,本件発明1と被告製品との相違点は,この課題解決に 必要な構成に関するものであるから,同相違点は本件発明1の本質的部分\nに関するものであるということができる。
オ したがって,本件発明1と被告製品の相違点は,本件発明1の本質的部 分に関するものではないということはできないので,被告製品は第1要件 を充足しない。

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平成31(ネ)10014  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 少し前のですが、欠落していたのでアップします。薬品特許のクレームが作用的(?)に記載されている場合に、クレーム限定、またはサポート要件・実施可能要件違反が主張されました。知財高裁は、1審と同様に、技術的範囲に属する、無効理由無しと判断しました。

 上記(1)の認定事実によれば,本件発明1は,PCSK9とLDLRタンパク 質の結合を中和し,参照抗体1と競合する,単離されたモノクローナル抗体及びこ れを使用した医薬組成物を,本件発明2は,PCSK9とLDLRタンパク質の結 合を中和し,参照抗体2と競合する,単離されたモノクローナル抗体及びこれを使 用した医薬組成物を,それぞれ提供するものである。そして,本件各発明の課題は, かかる新規の抗体を提供し,これを使用した医薬組成物を作製することをもって, PCSK9とLDLRとの結合を中和し,LDLRの量を増加させることにより, 対象中の血清コレステロールの低下をもたらす効果を奏し,高コレステロール血症 などの上昇したコレステロールレベルが関連する疾患を治療し,又は予防し,疾患\nのリスクを低減することにあると理解することができる。 本件各明細書には,本件各明細書の記載に従って作製された免疫化マウスを使用 してハイブリドーマを作製し,スクリーニングによってPCSK9に結合する抗体 を産生する2441の安定なハイブリドーマが確立され,そのうちの合計39抗体 について,エピトープビニングを行い,21B12と競合するが,31H4と競合 しないもの(ビン1)が19個含まれ,そのうち15個は,中和抗体であること, また,31H4と競合するが,21B12と競合しないもの(ビン3)が10個含 まれ,そのうち7個は,中和抗体であることが,それぞれ確認されたことが開示さ れている。また,本件各明細書には,21B12と31H4は,PCSK9とLD LRのEGFaドメインとの結合を極めて良好に遮断することも開示されている。 21B12は参照抗体1に含まれ,31H4は参照抗体2に含まれるから,21 B12と競合する抗体は参照抗体1と競合する抗体であり,31H4と競合する抗 体は参照抗体2と競合する抗体であることが理解できる。そうすると,本件各明細 書に接した当業者は,上記エピトープビニングアッセイの結果確認された,15個 の本件発明1の具体的抗体,7個の本件発明2の具体的抗体が得られることに加え て,上記2441の安定なハイブリドーマから得られる残りの抗体についても,同 様のエピトープビニングアッセイを行えば,参照抗体1又は2と競合する中和抗体 を得られ,それが対象中の血清コレステロールの低下をもたらす効果を有すると認 識できると認められる。 さらに,本件各明細書には,免疫プログラムの手順及びスケジュールに従った免 疫化マウスの作製,免疫化マウスを使用したハイブリドーマの作製,21B12や 31H4と競合する,PCSK9−LDLRとの結合を強く遮断する抗体を同定す るためのスクリーニング及びエピトープビニングアッセイの方法が記載され,当業 者は,これらの記載に基づき,一連の手順を最初から繰り返し行うことによって, 本件各明細書に具体的に記載された参照抗体と競合する中和抗体以外にも,参照抗 体1又は2と競合する中和抗体を得ることができることを認識できるものと認めら れる。
以上によれば,当業者は,本件各明細書の記載から,PCSK9とLDLRタン パク質の結合を中和し,参照抗体1又は2と競合する,単離されたモノクローナル 抗体を得ることができるため,新規の抗体である本件発明1−1及び2−1のモノ クローナル抗体が提供され,これを使用した本件発明1−2及び2−2の医薬組成 物によって,高コレステロール血症などの上昇したコレステロールレベルが関連す る疾患を治療し,又は予防し,疾患のリスクを低減するとの課題を解決できること\nを認識できるものと認められる。よって,本件各発明は,いずれもサポート要件に 適合するものと認められる。
(3) 控訴人の主張について
控訴人は,本件各発明は,「参照抗体と競合する」というパラメータ要件と,「結 合中和することができる」という解決すべき課題(所望の効果)のみによって特定 される抗体及びこれを使用した医薬組成物の発明であるところ,競合することのみ により課題を解決できるとはいえないから,サポート要件に適合しない旨主張する。 しかし,本件各明細書の記載から,「結合中和することができる」ことと,「参照 抗体と競合する」こととが,課題と解決手段の関係であるということはできないし, 参照抗体と競合するとの構成要件が,パラメータ要件であるということもできない。\nそして,特定の結合特性を有する抗体を同定する過程において,アミノ酸配列が特 定されていくことは技術常識であり,特定の結合特性を有する抗体を得るために, その抗体の構造(アミノ酸配列)をあらかじめ特定することが必須であるとは認め\nられない(甲34,35)。 前記のとおり,本件各発明は,PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和し, 本件各参照抗体と競合する,単離されたモノクローナル抗体を提供するもので,参 照抗体と「競合」する単離されたモノクローナル抗体であること及びPCSK9と LDLR間の相互作用(結合)を遮断(「中和」)することができるものであること を構成要件としているのであるから,控訴人の主張は採用できない。\n
・・・
控訴人は,本件各発明は,抗体の構造を特定することなく,機能\的にのみ定義さ れており,極めて広範な抗体を含むところ,当業者が,実施例抗体以外の,構造が\n特定されていない本件各発明の範囲の全体に含まれる抗体を取得するには,膨大な 時間と労力を要し,過度の試行錯誤を要するのであるから,本件各発明は実施可能\n要件を満たさない旨主張する。 しかし,明細書の発明の詳細な説明の記載について,当業者がその実施をするこ とができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとの要件に適合することが求\nめられるのは,明細書の発明の詳細な説明に,当業者が容易にその実施をできる程 度に発明の構成等が記載されていない場合には,発明が公開されていないことに帰\nし,発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことになる からである。
本件各発明は,PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和することができ, PCSK9との結合に関して,参照抗体と競合する,単離されたモノクローナル抗 体についての技術的思想であり,機能的にのみ定義されているとはいえない。そし\nて,発明の詳細な説明の記載に,PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和す ることができ,PCSK9との結合に関して,参照抗体1又は2と競合する,単離 されたモノクローナル抗体の技術的思想を具体化した抗体を作ることができる程度 の記載があれば,当業者は,その実施をすることが可能というべきであり,特許発\n明の技術的範囲に属し得るあらゆるアミノ酸配列の抗体を全て取得することができ ることまで記載されている必要はない。 また,本件各発明は,抗原上のどのアミノ酸を認識するかについては特定しない 抗体の発明であるから,LDLRが認識するPCSK9上のアミノ酸の大部分を認 識する特定の抗体(EGFaミミック)が発明の詳細な説明の記載から実施可能に\n記載されているかどうかは,実施可能要件とは関係しないというべきである。\nそして,前記(1)のとおり,当業者は,本件各明細書の記載に従って,本件各明細 書に記載された参照抗体と競合する中和抗体以外にも,本件各特許の特許請求の範 囲(請求項1)に含まれる参照抗体と競合する中和抗体を得ることができるのであ るから,本件各発明の技術的範囲に含まれる抗体を得るために,当業者に期待し得 る程度を超える過度の試行錯誤を要するものとはいえない。 よって,控訴人の主張は採用できない

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)16468

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令和1(ネ)10052  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年12月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明についての特許侵害事件です。知財高裁(2部)も、1審と同じく、技術的範囲に属しないと判断しました。

ア 控訴人は,構成要件1Aは,画像情報を取得する機能\の有無に限らず, 「画像情報・・・を対応するパターンに変換するパターン変換器」であると主張する。 本件発明1の構成要件1Aは,「画像情報,音声情報および言語を対応するパター\nンに変換するパターン変換器と,パターンを記録するパターン記録器と,」というも のであるところ,画像情報を取得する機能の有無に限らないという控訴人の主張に\nよると,本件発明1は,パターンに変換する画像情報が取得されたものでない場合 には,パターン変換器は,予め保持している画像情報を対応するパターンに変換す\nるものということになるが,このとき画像情報は,パターンに変換されることも,ま た,パターンとして記録されることもなく,画像情報として予め保持されていたも\nのということになる。 しかし,本件発明1の特許請求の範囲及び本件明細書等1には,画像情報が,パタ ーンに変換されることも,また,パターンとして記録されることもなく,予め保持さ\nれたものであるとは読み取ることができる記載はない上,かえって,本件明細書等 1の段落【0017】には,「【課題を解決するための手段】(請求項1に対応)」 として,「この発明における思考パターン生成機は画像情報,音声情報および言語を パターンに変換する。画像情報は画像検出器により検出され,対象物に応じたパタ ーンに変換される。・・・」と記載され,画像検出器により検出されるものとされて いる。 したがって,本件発明1の構成要件1Aが,画像情報を取得する機能\の有無に限 らないとの控訴人の主張を採用することはできない。 そして,本件装置が,外部から入力された表情等に関する画像をパターンに変換\nする機能を有していると認めるに足りる証拠がないことは,原判決「事実及び理由」\nの第4の2(2)イに判示するとおりである。 よって,本件装置が構成要件1Aを充足していると認めることはできない。\n
イ 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載や被控訴人の主 張によると,本件装置内部で生成したパターン化されている画像に関する情報(画 像情報)からディスプレイに表示するための画素データ(画像パターン)に変換され\nていることが分かると主張する。 しかし,構成要件1Aの「パターン変換器」が行うものとして記載された「画像情\n報・・・を対応するパターンに変換する」処理でいうところの「パターン」とは,画 像,音声及び言語に係る事象の特徴を,計算機たる検出器が識別することができる 「1」,「0」等の何らかの信号の組合せに変換したものを意味すると解されること は,原判決「事実及び理由」の第4の2(1)アが判示するとおりである。 そして,本件装置が,「本件装置内部で生成したパターン化されている画像に関す る情報から,ディスプレイに表示するための画素データを作成する」としても,この\nことが,画像,音声及び言語に係る事象の特徴を,計算機たる検出器が識別すること ができる信号の組合せに変換する処理に当たらないことは明らかである。 したがって,控訴人の主張を採用することはできない。
ウ 以上によると,本件製品が構成1Aを充足すると認めることはできない。\n
(3) 争点2−2(構成要件1Bの充足性)について\n
ア 控訴人は,本件製品の紹介ビデオ(甲79)によると,顧客の銀行口座に 関する情報に対応するデータにパターンの変更が行われているから,本件装置はパ ターンを変更していると主張する。 しかし,「パターン」とは,画像,音声及び言語に係る事象の特徴が計算機たる検 出器が識別することのできる信号の組合せに変換されたものであり,「パターンの 変更」とは,このような信号の組合せ自体を変更するものである(原判決「事実及び 理由」の第4の2(3)ア)。顧客の銀行口座に関する情報に変更が行われているとし ても,このようなことは,パターンとパターンの結合関係を変更することによって も行うことができるから,本件装置の内部において,上記のような意味での「パター ンの変更」が行われていることを示すとは直ちに認められず,控訴人の主張を採用 することはできない。
イ 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載や,本件製品の 紹介ビデオ(甲80)の説明によると,本件装置は「質問」に対し,学習の前と後で 回答内容が更新できるため,「回答内容」についてパターンの変更が実施されている と主張する。 しかし,本件装置が回答内容を更新しているということは,入力された言語情報 に対応する回答が変更されたということになるが,「言語に係る事象の特徴が変換 された信号の組合せ」が変更されたのか否かは明らかではないから,控訴人の主張 を採用することはできない。
ウ 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)や本件製品の紹介ペー ジ(甲81)に,「アメリアが文章をパーツに分解して,各単語の役割と,他の単語 との関係を解釈する」とある点について,本件装置は,「文章(=文,パターン)」 を「パーツ(文要素や単語)」に分解するという「変更」を実施していると主張する。 しかし,本件装置が,「文章(=文,パターン)」を「パーツ(文要素や単語)」 に分解するということは,文章を,文要素や単語に分解して認識していることを意 味しているにすぎないとも考えられ,言語の「パターン」を変更しているとは直ちに 認められない。
エ 以上によると,本件装置が構成要件1Bを充足するとは認められない。\n
(4) 争点2−4(構成要件1Dの充足性)について\n
ア 控訴人は,原判決が構成要件1Dについて,「有用と判断した情報のみを\n記録する」として,「のみ」を含むクレーム解釈をしたことが,請求項に記載のない ことを含めたものであり,誤りがあると主張する。 しかし,「有用と判断した情報のみを記録する」と解釈すべきことは,原判決「事 実及び理由」の第4の2(4)アが判示するとおりであり,控訴人の主張を採用するこ とはできない。
イ 控訴人は,甲31及び38に「業務に特化した情報を学習するため,業務 に不要な情報での不必要な学習や成長はしない」との記載があることから,本件装 置が有用な情報のみを記録するとの機能を備えていると主張する。\nしかし,価値ある入力した情報のみを記録するということをしなくても,入力さ れたそれぞれの情報の結合関係を生成しながら知識体系を構築することは可能\であ る上,本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)には,「全ての質問がアメリアの経験 や知識に加えられる」との説明があるから,「業務に特化した情報を学習するため, 業務に不要な情報での不必要な学習や成長はしない」からといって,本件装置が構\n成要件1Dの「有用な情報のみを記録している」とは認められない。
ウ 控訴人は,本件製品の紹介ビデオの説明(甲12の図5,甲79,80) やパンフレットの記載(甲11の2)によると,本件装置は,入力した情報の価値を 分析し,有用な情報を自律的に記録していると主張する。 しかし,上記の紹介ビデオの説明やパンフレットの記載は,アメリアが同僚と顧 客のやりとりを観察し,処理マップを自分で作成するというものや顧客に必要な質 問を投げかけ,それに対する顧客の回答に応答するというものであり,それから直 ちに有用な情報を取捨選択し有用な情報のみを記録しているとは認められない上, 本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)には,「全ての質問がアメリアの経験や知識 に加えられる」との説明があるから,本件製品が構成要件1Dの「有用な情報のみを\n記録している」とは認められない。
エ 以上によると,本件装置が構成1Dを充足すると認めることはできない。\n
(5) 争点3(構成要件2C等の充足性)について\n
ア 控訴人は,構成要件2C等の「評価」と「自律的に知識を獲得」ないし「自\n律的に知識を構築」の関係は並列であると主張するが,控訴人の上記主張を採用す\nることができないことは,原判決「事実及び理由」の第4の3(2)ア及びイが判示す るとおりである。 したがって,構成要件2C等の「評価」と「自律的に知識を獲得」ないし「自律的\nに知識を構築」の関係が並列であるとの控訴人の主張を採用することはできない。\n
イ 控訴人は,前記関係が直列の関係であるとしても,本件装置が構成要件\n2C等を充足すると主張する。 (ア) 意味の評価について
控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載や本件製品の紹介ビデオ (甲12の図5)の説明などから,本件装置は,「同じ言葉の異なる用法」の中から 「最も文脈にあてはまる用法」がどれかを評価し,知識を構築しており,本件装置\nは,情報(意味)を評価し,知識の獲得を実施していると主張する。 しかし,本件製品のパンフレット(甲11の2の3頁)の「彼女は同じ言葉の異な る用法を見分けるために文脈をあてはめることで,暗示されている意味を完全に理 解します。」との記載は,本件装置が,文脈をあてはめて言葉の用法を見分けている というにすぎず,本件装置が情報(意味)を評価した上で,その評価を踏まえて妥当 性が確認された情報を知識として獲得していることを示していると認めることはで きない。 また,本件製品の説明ビデオ(甲12の図5)によると,「全ての質問がアメリア の経験や知識に加えられる」のであるから,本件装置が,意味を評価した上で,その 評価を踏まえて妥当性が確認された情報を知識として獲得していると認めることは できない。 これに対し,控訴人は,本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)の上記説明につい て,意味を評価し,その結果に基づいて自律的に有益な知識を獲得する機能を有し,\n全ての質問を知識として加えるというケースはあり得ると主張するが,上記の説明 は,単に全ての質問を知識として加えるという意味に理解するほかなく,本件装置 が意味を評価した上で全ての質問を知識として加えるという意味に理解することは できないから,控訴人の主張を採用することはできない。
(イ) 新規性の評価について
a 控訴人は,本件製品のパンフレットの(甲11の2)の記載からする と,本件装置は,遭遇した状況が知識として記録している場面と似ておらず,自分で 問題に対処できないことを識別する機能を有するから,新規性を評価し,知識の獲\n得を実施している旨主張する。 しかし,本件発明2は,「自律的に知識を獲得」するというものであり,人の手を 介することを予定しているものではない。しかるところ,本件製品のパンフレット\n(甲11の2の9頁)には,「自力で問題に対処できない場合,人間の同僚にその問 題を引き継ぎます。」と記載されていて,人間の同僚が介入することが予定されてい\nる上,本件装置がその後同僚の様子を見て特定の状況に対する最善の手順を見つけ ることがあるとしても,本件製品の紹介ビデオ(甲80)では,「生成した処理ステ ップの使用を管理者が了承すると,直ぐに彼女は同様の質問に対して自分自身で対 応できるようになります」と記載されていて,管理者が了承しないと,知識として獲 得されないから,本件装置が「自律的に知識を獲得」するということはできない。 仮に,控訴人が主張するように,新しい処理ステップに関しては,本件装置の管理 者が了承する前に,既に生成し,記録しているとしても,本件装置の管理者が了承し なかった処理ステップまでが知識として獲得されるものではないから,本件装置が 「自律的に知識を獲得」すると認めることはできない。
b なお,本件製品の説明ビデオ(甲12の図5)によると,「全ての質 問がアメリアの経験や知識に加えられる」のであるから,本件装置が,新規性を評価 した上で,その評価を踏まえて妥当性が確認された情報を知識として獲得している と認めることはできないことは,上記(ア)と同様である。
(ウ) 真偽を評価する機能\n
a 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)や紹介ビデオ(甲 12の図5,甲79,80)には,本件装置が的確な質問を発して,「真実を明らか にする」機能(=真偽を評価する機能\)を有していることが示されていると主張す る。 しかし,本件製品のパンフレット(甲11の2)には,「問題の根本を見極めるた めの的確な質問ができる能力を持った」,「問題を明らかにするために必要な質問を\n投げかけることで,答えを提示することができます。」(6頁)との記載や,「事実 を明らかにするための的確な質問を発し,人間と同じように問題の明確な性質を顕 在化させることができるのです。」(11頁)との記載があるところ,これらの記載 と本件製品の紹介ビデオ(甲79,80)によると,本件装置の質問は,顧客の要望 を明らかにするためのものであって,真偽を判断するためのものであるとは認めら れないから,本件装置が,真偽を判断した上で,自律的に知識を獲得していると認め ることはできない。
b 控訴人は,知識に対して論理を当てはめ,プロセス全体の各ステッ プを自律的に進め,論理的な結論を得るためには,本件装置は,何が真であり,何が 偽であるかを評価する必要があると主張する。 しかし,論理的な結論を得るためには,情報間の結合関係を正確にする必要はあ るが,必ずしも入力した言語情報の真偽の妥当性を評価する必要性は認められない。
c なお,本件製品の説明ビデオ(甲12の図5)によると,「全ての質 問がアメリアの経験や知識に加えられる」のであるから,本件装置が,真偽を評価し た上で,その評価を踏まえて妥当性が確認された情報を知識として獲得していると 認めることはできないことは,前記(ア)と同様である。
(エ) 論理の妥当性について
a 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載や,本件製 品の紹介ビデオ(甲79)によると,本件装置は,「積極的に論理を当てはめ」,「事 実を明らかにするための明確な質問を発し」,「問題の明確な性質を顕在化し」,「論 理的な結論を得て」,「事実を明らかにするための的確な質問」及び「回答」を記録 して知識を獲得するという一連の動作を実施していることが分かるから,本件装置 は,情報を評価(論理の妥当性)し,知識の獲得を実施していると主張する。 しかし,「論理的な結論」,「知識に対して積極的に論理を当てはめることにより, アメリアは問題を解決することもできます。彼女が知っている情報の本体に立ち返 ることで,自然言語で述べられた質問を元に事実を明らかにするための的確な質問 を発し,人間と同じように問題の明確な性質を顕在化させることができるのです。」 との本件製品のパンフレット(甲11の2の11頁)の記載や,アメリアの「質問」 に対する顧客の「回答」が記録された本件製品の紹介ビデオ(甲79)からは,本件 装置が入力した言語情報の論理の妥当性を確認しているとまでは読み取れないし, また,論理的な結論を得るためには,情報間の結合関係を正確にする必要はあるが, 必ずしも入力した言語情報の論理の妥当性を評価する必要性は認められないから, 控訴人の主張を採用することはできない。
b 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載によると, 本件装置は,論理を適用し(=論理の妥当性を評価し),経験を通して学習している (=記録している),すなわち,言語情報の論理の妥当性を評価し,経験した内容を 知識として獲得していると主張する。 しかし,本件装置が,「・・・論理を適用し,暗示されている内容を推定し,経験 を通して学び,感情すらも察知」(甲11の2の3頁)するものであるとしても,こ のことから本件装置が入力した言語情報の論理の妥当性を評価しているとは直ちに 認められないから,控訴人の主張は採用できない。
c 控訴人は,本件製品の紹介ビデオ(甲79)には,本件装置が条件付 き処理を実施していることから,論理的に対応し,情報を記録していると主張する。 しかし,本件装置が,顧客の回答が「はい(yes)」なら,受取人リストに追加し, 回答が「いいえ(no)」なら,受取人リストに追加しないという処理をするとしても, このことは,顧客の回答に基づいた処理をしていることを示すにすぎず,本件装置 が論理の妥当性を評価しているとは認められない。 d なお,本件製品の説明ビデオ(甲12の図5)によると,「全ての質 問がアメリアの経験や知識に加えられる」のであるから,本件装置が,論理性を評価 した上で,その評価を踏まえて妥当性が確認された情報を知識として獲得している と認めることはできないことは,前記(ア)と同様である。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)15518

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平成28(ワ)2067等  特許権侵害差止請求権不存在確認等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月28日  大阪地方裁判所

 均等侵害も主張しましたが、第1要件を具備しないと判断されました。

 特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかった 技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想に基 づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にある。したがって,特\n許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従 来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解される。\nこの本質的部分については,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許 発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の 記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何で\nあるかを確定することによって認定するのが相当である。その認定に当たっては, 特許発明の実質的価値がその技術分野における従来技術と比較した貢献の程度に応 じて定められることからすれば,特許請求の範囲及び明細書の記載,特に明細書記 載の従来技術との比較から認定することが相当である。 その上で,第1要件の判断,すなわち,対象製品等との相違部分が非本質的部分 であるかどうかを判断する際には,上記のとおり確定される特許発明の本質的部分 を対象製品等が共通に備えているかどうかを判断し,これを備えていると認められ る場合には,相違部分は本質的部分ではないと判断することが相当である。
イ 本件の場合
(ア) 本件各発明の本質的部分
a 前記1(1)のとおり,本件明細書によれば,本件各発明は,歯に付着したプラ ークの除去及び歯茎のマッサージに好適なロール歯ブラシの製造方法及びその製造 装置に関するものである。上記製造方法等に関する従来技術は,ナイロン等の多数 の素線を束状に集合させてなる素線群の一端を加熱溶着することにより半球形状の 溶着部を形成し,溶着部を加圧して扁平状とし,扁平部の軸孔となる部分をカット して,加圧することにより素線群の全体を略円形とし,かつ扁平部を略円形とし, その後,扁平部の両端を溶着などにより接合させて環状部を形成し,シート状のブ ラシ単体を製作するというものである。この従来技術には,ブラシ単体の厚みを均 一とするには熟練を要し,ブラシ単体の厚みが不均一の場合は回転ブラシの毛足密 度が不均一となり,工程数が多く複雑な工程を要するので,一貫した連続製造が困 難で回転歯ブラシの製造コストも高くなるという課題があった。そこで,これを解 決するため,本件各発明は,回転歯ブラシの製造方法として本件発明1の構成を,\n回転ブラシのブラシ単体の製造方法として本件発明2の構成を採用することで,各\n工程を画一的に処理することが可能となり,高度な熟練を要することなく均一な厚\nさのブラシ単体の製作を可能とし,また,本件発明1及び2の方法を容易に実施で\nきて,所期の目的を達成するため,回転ブラシのブラシ単体の製造装置として本件 発明3の構成を採用したものである。\n前記1(2)及び(3)のとおり,本件発明2及び3は,素線群の突出端の中央に,エア を素線群が突出させられる方向とは反対方向から吹き込んで素線群を放射方向に開 かせることとしている(構成要件G及びN)。これは,これにより,ブラシ単体を\n構成する素線同士の重なりがほとんどなくなり,均一な厚さのブラシ単体を製作す\nることができるとともに,ブラシ単体の製作速度を早くした場合にも素線を傷付け るおそれが少なくなるため,素線群の開きを高速度で行うことが可能となって,効\n率良くブラシ単体を製作することができるからである。この点に鑑みると,本件発 明2及び3の特許請求の範囲の記載のうち「素線群の突出端の中央にエアを吹き込 んで素線群を放射方向に開く」とある部分は,従来技術には見られない特有の技術 的思想を有する本件発明2及び3の特徴的部分であるといえる。
b これに対し,被告らは,本件発明2及び3の本質的部分が,エアを吹き込む ことにより素線群を簡易に均等に開くことができ,その状態で溶着,切除すること によりブラシ単体の製造を簡易かつ高速に行うことができるという点にあり,吹き 込むエアの方向が,素線群を送り出す方向とは逆方向かという相違部分は,本件発 明2及び3の本質的部分ではないと主張する。 しかし,本件発明2及び3は,上記課題の解決方法として,素線群をノズルから のエアを用いて放射方向に開くという構成を採用し,均一な厚さのブラシ単体を効\n率良く製作するために素線群を高速度で放射方向に開かせるため,素線群の突出端 の中央にエアを意図的に吹き込ませるものである。このような工程の所期の目的を 実現するための構成及び機序は,素線群を送り出す方向を基準としてエアを吹き込\nませる方向が順逆異なるのであれば,必然的に異なるものとならざるを得ない。そ の意味で,本件発明2及び3におけるエアを吹き込ませる方向は,本件発明2及び 3の特徴的部分というべきである。したがって,この点に関する被告らの主張は採用できない。
(イ) 前記1のとおり,原告製造方法は,素線群の突出端の中央にエアを吹き込ん で素線群を放射方向に開かせるという工程を備えておらず,また,原告製造装置は, 素線群の突出端の中央にエアを吹き込んで素線群を放射方向に開かせる装置を備え ていない。すなわち,原告製造方法は本件発明2の,原告製造装置は本件発明3の 本質的部分をいずれも備えていない。このように,本件発明2と原告製造方法との 相違部分,本件発明3と原告製造装置との相違部分はいずれも本質的部分であるか ら,原告製造方法及び原告製造装置は,均等の第1要件を充足しない。

◆判決本文

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平成29(ワ)11147  損害賠償請求事件  特許権 令和元年11月11日  大阪地方裁判所

 構成要件を充足しないとして請求棄却されました。

 原告は,被告各製品の「第2の軸体8」が「流体の流れる方向が周期的に交互に 方向変換して流れる現象」の意味での「フリップフロップ現象」を発生させるため に使用される軸体であることを直接的に裏付け,これを認めるに足りる証拠を提出 しない。 かえって,証拠(乙40)によれば,被告が,「第2の軸体8」を通過するクー ラント液の状況を検証するため,被告製品(3/8inch)について,本来金属製である 接続機構6’を含む筒本体2及び入口側接続部材4を,下記【参考写真】のように\n透明プラスチック製のものにした上で(以下「実験対象物」という。),その内部 にクーラント液を通過させる実験を行ったところ,クーラント液につき,実験対象 物の入口側接続部材から流入し始めてから16分22秒の間,「第2の軸体8」の 軸部の外周面に形成された凸部32の間の交差流路を流れる際,その「流れる方向 が周期的に交互に方向変換して流れる現象」すなわち「フリップフロップ現象」の 発生が観察されなかったことが認められる。この実験結果の信用性につき,本来金 属製の部分を透明プラスチック製のものとしたことを考慮しても,疑義を差し挟む べき具体的な事情はない。
また,前記認定によれば,被告各製品の「第2の軸体8」の構成は,主として凸\n部32の形状につき各製品相互間で異なるものと見られる。もっとも,被告製品 (3/8inch)の「第2の軸体8」がフリップフロップ現象を発生させなかったにもか かわらず,他の被告製品(1/4inch,1/2inch,3/4inch,1inch)の「第2の軸体8」 がフリップフロップ現象を発生させるものであると見るべき具体的な事情はない。 原告自身,被告各製品の構成には,本件各発明の構\成要件充足性を検討するに当た って,有意な相違はないと主張しているところでもある。 以上によれば,被告各製品の「第2の軸体8」は,クーラント液を通過させても 「フリップフロップ現象」を発生させ得るものと認めることはできない。そうであ る以上,被告各製品の「第2の軸体8」は,「フリップフロップ現象発生用軸体」 (構成要件E,F)に当たらない(なお,仮に,被告各製品が,別紙「被告各製品\n構成目録(原告主張)」記載のとおりの構\成を有するとしても,その「第2の軸体 8」が,クーラント液を通過させると「フリップフロップ現象」を発生させ得るも のと認めることはできないことに変わりはないから,上記結論が異なるものではな い。)。 したがって,被告各製品の構成は,本件発明1の構\成要件E,Fを充足しない。 また,前記第2の2(4)のとおり,本件において,原告は,被告各製品の構成が本件\n特許の請求項2に係る発明の構成要件を充足するとの主張を撤回した。そうすると,\n被告各製品の構成は,本件発明3の構\成要件Mを充足しない。
(3) 原告の主張について
原告は,被告各製品の「第2の軸体8」が「フリップフロップ現象発生用軸体」 当たるとする根拠として,被告各製品のパンフレット(甲6)及び被告の特許に係 る特許公報(甲18の2及び3)の各記載を指摘する。 このうち,前者については,被告各製品である「ビックスは『フリップフロップ 流れ』を応用しています。水などの流体を菱型の柱を網目状に配列した四角の管に 通すと,管内に生じる渦により,管体から噴出する液体が,左右に規則正しくスイ ッチングする現象のことをフリップフロップ流れと言います。」などという記載が ある。しかし,ある性能等が製品のパンフレットに記載されているからといって,\n真実当該製品が当該性能等を有するとは限らない(そもそも,上記「フリップフロ\nップ現象」の説明は,原告主張に係る本件各発明での「フリップフロップ現象」の 意味とは異なる。)。 他方,後者については,そもそも被告各製品が後者の特許公報に記載された発明 の実施品であることを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,上記実験結果(乙40)にもかかわらず,これらの記載のみをもっ て,被告各製品の「第2の軸体8」がフリップフロップ現象を発生させ得ることを 認めること,ひいては被告各製品の「第2の軸体8」が「フリップフロップ現象発 生用軸体」であること(構成要件E,F)を認めることはできない。\nしたがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(4) 以上より,被告各製品の構成は,本件発明1の構\成要件E及びFを充足せず, 本件発明3の構成要件Mも充足しないから,被告各製品は,本件各発明の技術的範\n囲に属しない。

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平成30(ネ)1008 特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月8日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 外為オンラインVSネースクエアの控訴事件です。1審では差止請求が認められました。知財高裁も同じ判断です。

構成要件Hの「前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,…さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報\nを含む売り注文情報を生成する」の意義について (ア) 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載から,構成要件Dの「注文情報生成手段」は,「前記金融商品の買い注文を行うた\nめの複数の買い注文情報」を生成する「買い注文情報生成手段」(構成要件B)と「前記買い注文の約定によって保有したポジションを,\n約定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を 生成」する「売り注文情報生成手段」とから構成され,「売り注文情報」を生成するのは,構\成要件Dの「注文情報生成手段」のうちの「売り注文情報生成手段」であることを理解できるから,構成要件Gの「注文情報生成手段」及び構\成要件Hの「前記注文情報生成手段」は,いずれも「売り注文情報生成手段」を意味するものと理 解できる。
そうすると,構成要件Hの「前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の\n売り注文が約定されたことを検知すると,前記注文情報生成手段は, 前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記複数の売り注文 のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注 文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」にいう「前記注文情 報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」,「前 記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価 格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」と の記載は,「売り注文情報生成手段」が,「前記約定検知手段」の 「前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が 約定された」との「検知の情報を受けて」,当該「最も高い売り注 文価格」よりも「さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含 む売り注文情報を生成する」ことを規定したものであり,「売り注 文情報生成手段」が行う処理を規定したものと解される。 次に,本件明細書には,「シフト機能」による注文は,「新規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定したのちに,更に新規注文\nや決済注文が発注される際に,先に発注済の注文の価格や価格帯と は異なる価格や価格帯にシフトさせた状態で,新たな注文を発注さ せる態様の注文形態」であること(【0078】),この「シフト 機能」は,「相場価格の変動により,元の第一注文価格や元の第二注文価格よりも相場価格の変動方向側に新たな第一注文価格の第一\n注文情報や新たな第二注文価格の第二注文情報を生成し,相場価格 を反映した注文の発注を行うことができる」(【0018】)とい う効果を奏することの開示がある。そして,構成要件Hの文言及び本件明細書の上記記載から,構\成要件Hは,「シフト機能」のうち,\n更に「決済注文」(売り注文)が発注される際に,先に発注済の「決 済注文」(売り注文)がシフトする構成のものを規定したものであることを理解できる。他方で,本件明細書には,「シフト機能\」のうち,更に「決済注文」(売り注文)が発注される際に,先に発注 済の「決済注文」(売り注文)がシフトする構成の場合において,新たな「買い注文」の発注やその約定によって,「シフト機能\」の効果等が影響を受け得ることについての記載や示唆はない。 以上の本件発明の特許請求の範囲(請求項1)及び本件明細書の 記載を総合すると,構成要件Hの「前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」,「前記複数の売り注文\nのうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注 文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」とは,「売り注文情 報生成手段」(前記注文情報生成手段)が,「前記約定検知手段」 の「前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文 が約定された」との「検知の情報」を受けたことに基づいて,「さ らに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生 成する」構成のものであれば,新たな「買い注文情報」の生成や「買い注文」の約定又はその検知に関わりなく,構\成要件Hに含まれるものと解される。
(イ) これに対し控訴人は,(1)本件発明の特許請求の範囲(請求項1) の記載によれば,構成要件Hの「前記検知の情報を受けて,…さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成\nする」とは,直前の検知の情報を条件として,これに続いて,前記 の売り注文が発生するという意味であって,これらの間に他の処理 が介在する記載はないこと,(2)本件明細書には,従前の新規注文B 1ないしB5及び従前の決済注文S1ないしS5が全部約定したこ とを検知し,この検知の情報を受けて,新たな新規注文B1ないし B5及び新たな決済注文S1ないしS5を一括発注するものであり (【0142】ないし【0154】,図35),「前記検知の情報 を受けて」(構成要件H)と,「さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」(構\成要件H)との間に,他の手続が介在するもの,例えば,新たな新規注文B1ないし B5と新たな決済注文S1ないしS5とを新規に一括発注せずに, まずは新たな新規注文B1ないしB5を発注し,その約定を検知し てから,新たな決済注文S1ないしS5を発注するようなものにつ いての開示はないこと,(3)本件出願の経過において,被控訴人は, 拒絶理由通知を受けて,本件手続補正書及び本件意見書を提出して, 本件出願に係る旧請求項1に構成要件EないしGを新たに加え,構\ 成要件Hを補正する手続補正を行うとともに,本件意見書において, シフトが生じるための条件として,最も高い売り注文の約定状況の みを監視することとし,それ以外の処理を監視することを除外する 旨を主張したことを総合すると,構成要件Hの「前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記複数の\n売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高 い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成すること」にいう 「前記検知の情報を受けて」とは,「前記相場価格が変動して,前 記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文 価格の売り注文が約定されたことを検知すると」,他の処理を何も 介在せずに,直ちに「前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文 価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り 注文情報を生成する」ことを意味するものと解すべきである旨主張 する。
しかしながら,上記(1)の点については,本件発明の特許請求の範 囲(請求項1)の記載中には,構成要件Hの「前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」と「前記複数\nの売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ 高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」との間に, 「他の処理を何も介在せずに」とか「直ちに」との文言は存在しな い。
次に,上記(2)の点については,前記(ア)で説示したとおり,構成要件Hは,「シフト機能\」(【0078】)のうち,更に「決済注文」(売り注文)が発注される際に,先に発注済の「決済注文」(売 り注文)がシフトする構成のものを規定したものであるところ,本件明細書には,「シフト機能\」のうち,更に「決済注文」(売り注文)が発注される際に,先に発注済の「決済注文」(売り注文)が シフトする構成の場合において,新たな「買い注文」の発注やその約定によって,「シフト機能\」の効果等が影響を受け得ることについての記載や示唆はない。また,控訴人が挙げる本件明細書の記載 (【0142】ないし【0154】,図35)は,「発明の実施の 形態の3」に係るものであるが,本件明細書には,「上記の「シフ ト機能」は,上記発明の実施の形態1や,発明の実施の形態2の構\ 成において適用することもできる。」こと(【0151】)及び「上 記各実施の形態は本発明の例示であり,本発明が上記各実施の形態 のみに限定されることを意味するものではないことは,いうまでも ない。」こと【0164】の記載があることに照らすと,控訴人が 挙げる本件明細書の上記記載から構成要件Hを限定解釈すべき理由はない。\n
さらに,上記(3)の点については,被控訴人は,本件手続補正書(乙 14)により,本件出願に係る旧請求項1について,「前記相場価 格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち, 最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると, 前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受 けて,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさら に所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成 する」(下線は,補正箇所を示す。)と補正し,本件意見書(乙1 5)において,「本願発明においては,一の注文手続で生成された 複数の売り注文情報に基づく複数の売り注文よりも高い売り注文情 報の生成…は,一の注文手続で生成された複数の売り注文情報に基 づく複数の売り注文のうちの最も高い売り注文の約定…が検知され たことを基準に行われることになります。そのため,システムにお いては,特定の注文に係る注文情報(相場の移動方向側である,最 も高い買い注文価格の買い注文に係る買い注文情報や,最も低い売 り注文価格の売り注文に係る売り注文情報)の約定状況のみを監視 すれば,新たな注文情報の生成(一の注文手続で生成された中で最 も高い売り注文価格よりも高い売り注文価格の売り注文情報の生成 …を,ただちに生成することができ,システムの情報保持や情報監 視のための負担が大きくなることはありません。これにより,本願 発明においては,新たな注文情報の生成や,その注文情報に基づく 注文の発注等の処理を,システム負荷の軽い,簡易な手順によって 処理することができるという効果を奏します。」と述べたことが認 められるが,他方で,本件手続補正書及び本件意見書は,平成29 年4月11日付けの拒絶理由通知(乙18)において「引用文献1 に記載された発明に引用文献2に記載の技術を適用し,引用文献1 に記載された発明において,繰り返し注文を行う際,相場価格の上 昇傾向に対応して以前の注文価格よりも高い価格の注文情報を生成 するように構成することは,当業者ならば容易に為し得ることである。」との進歩性欠如の指摘を受けて提出されたものであることに\n照らせば,本件手続補正書及び本件意見書は,本件発明が,複数の 売り注文のうち最も高い売り注文価格の売り注文の約定に基づいて, 同注文価格よりも高い価格の売り注文を生成する点に技術的意義を 有し,進歩性を有する旨を主張したものであって,本件意見書の「約 定状況のみを監視すれば」,「ただちに生成する」といった記載か ら,両者の間に他の処理を介在させる構成や時間的間隔が存在する構\成を本件発明から除外したものということはできない。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
ウ 構成要件Hの充足性について
(ア) 前記2(3)イ(イ)のとおり,(1)ないし(4)の売り注文のうち,最も高 い注文価格の番号113の売りの指値注文(指定価格114.90 円)が約定した後に,番号113の注文価格より「0.62円」高 い番号96の売りの指値注文(指定価格115.52円)がされて いることに照らすと,被告サーバにおいては,約定検知手段が複数 の売り注文のうち最も高い売り注文価格の売り注文の約定を検知す ると,注文情報生成手段が,この検知の情報を受けたことに基づい て,約定した最も高い売り注文の売り注文価格よりもさらに所定価 格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成したこと が認められる。 したがって,被告サーバは,構成要件Hを充足するものと認められる。\n
・・・・
控訴人は,本件明細書の発明の詳細な説明には,構成要件Hに対応する「シフト機能\」に係る構成について,「いったんスルー注文」及び「決済トレー\nル注文」と組み合わせた,複数の新規注文の全て及び複数の決済注文の全て がそれぞれ1回ずつ約定した場合に複数の新規注文の全て及び複数の決済注 文の全てに対応する個数の新たな複数の新規注文及び新たな複数の決済注文 を発注させることしか記載されておらず,構成要件Hに含まれる「シフト機能\」を「いったんスルー注文」及び「決済トレール注文」に組み合わせたもの以外の構成のものについては記載されていないことからすれば,構\成要件 Hは,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえないから,特許 法36条6項1号所定の要件(以下「サポート要件」という。)に適合する とはいえない旨主張する。 ア そこで検討するに,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載中に は,構成要件Hの「前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたこ\nとを検知すると,前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知 の情報を受けて,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりも さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成す る」との記載において,「注文情報生成手段」が生成する「所定価格だけ 高い売り注文価格の情報」を含む「売り注文情報」の個数を規定する記載 はないから,当該「売り注文情報」は,複数の場合に限らず,一つの場合 も含むものと理解できる。
イ(ア) 次に,本件明細書の発明の詳細な説明には,(1)「シフト機能」について,「金融商品取引管理装置1や金融商品取引管理システム1Aにお\nいて,既に発注した新規注文と決済注文をそれぞれ約定させたのち,「シ フト機能」による処理を併用した取引を行うことも可能\である。この「シ フト機能」による注文は,上述した,「いったんスルー注文」や「決済トレール注文」や,各種のイフダン注文(例えば後述する「リピートイ\nフダン注文」や「トラップリピートイフダン注文」)等に基づいて,新 規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定したのちに,更に新規注文 や決済注文が発注される際に,先に発注済の注文の価格や価格帯とは異 なる価格や価格帯にシフトさせた状態で,新たな注文を発注させる態様 の注文形態である。」こと(【0078】),(2)「シフト機能」は,「相場価格の変動により,元の第一注文価格や元の第二注文価格よりも相場\n価格の変動方向側に新たな第一注文価格の第一注文情報や新たな第二注 文価格の第二注文情報を生成し,相場価格を反映した注文の発注を行う ことができる」(【0018】)という効果を奏すること,(3)「発明の 実施の形態3」は,「この実施の形態3の金融商品取引管理システムに おいては,「いったんスルー注文」と「決済トレール注文」とを,「ら くトラ」による注文と組み合わせ,さらに「シフト機能」を行わせる状態を示す。」(【0138】)ものであるが,「上記の「シフト機能\」は,上記発明の実施の形態1や,発明の実施の形態2の構成において適用することもできる。」こと(【0151】)及び「上記各実施の形態\nは本発明の例示であり,本発明が上記各実施の形態のみに限定されるこ とを意味するものではないことは,いうまでもない。」こと(【016 4】)の記載がある。 上記(1)の記載から,「シフト機能」は,「新規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定したのちに,更に新規注文や決済注文が発注される\n際に,先に発注済の注文の価格や価格帯とは異なる価格や価格帯にシフ トさせた状態で,新たな注文を発注させる態様の注文形態」であり,シ フトされる先に発注済の注文には,「新規注文」又は「決済注文」の一 方のみの構成又は双方の構\成が含まれること,先に発注済の一つの注文 の「価格」をシフトさせる構成のものと先に発注済の複数の注文の「価格帯」をシフトさせる構\成のものが含まれることを理解できる。また,上記(1)ないし(3)の記載から,「シフト機能」は,「相場価格を反映した注文の発注を行うことができる」という効果を奏し,「いった\nんスルー注文」,「決済トレール注文」や,各種のイフダン注文(例え ば…「リピートイフダン注文」や「トラップリピートイフダン注文」)」 等の注文方法とは別個の処理であること,「シフト機能」にこれらの各種の注文方法のいずれを組み合わせるかは任意であることを理解できる。\n
ウ(ア) 本件明細書の発明の詳細な説明には,図35に示す「実施の形態 3」(【0144】ないし【0148】)として,シフト機能に決済トレール注文を組み合わせたトラップリピートイフダン注文で行われ,\n決済注文S5,S4が約定した後に,元の買い注文と同じ注文価格の 買い注文B5,B4及び元の売り注文S5,S4と同じ注文価格の売 り注文S5,S4が再度生成されるが,この時点ではシフトは発生せ ず,通常のリピートイフダン注文が繰り返され,その後相場価格が変 動して,S1ないしS3の売り注文価格がトレールし,S1ないしS 3が最も高い注文価格の売り注文として同時に約定すると,再度生成 された売り注文S5,S4は約定していないにも関わらずこれをキャ ンセルして,S1ないしS5のシフトが実行されることが記載されて いる。上記記載は,構成要件Hに含まれる,「シフト機能\」に「いっ たんスルー注文」及び「決済トレール注文」を組み合わせた構成の一つであることが認められる。\nまた,シフト機能に決済トレール注文を組み合わせない場合には,図35において,S2及びS3の売り注文価格がトレールしないため,\nそれぞれの注文情報が生成された時点における価格のとおり,それぞ れ別々に約定し,その場合,実施の形態3の取引例でS5,S4が約 定した段階ではシフトが生じていないのと同様に,S3,S2が約定 した段階ではシフトが生じず,その後に最も高い売り注文価格の売り 注文であるところのS1が約定した段階でシフトが生じることになる ことを理解できる。 そうすると,複数の売り注文情報のうち最も高い売り注文価格の売 り注文が約定すると,それよりも所定価格だけ高い売り注文価格の情 報を含む売り注文情報を生成するという構成要件Hに係る構\成は,本 件明細書の上記記載から認識できるから,本件明細書の発明の詳細な 説明に記載されているということができる。
(イ) これに対し控訴人は,図35には,S5,S4が約定した後に再 度S5,S4が生成されることの記載はなく,B5,B4には,直後 に「キャンセル」と記載されていることからすれば,S5,S4が約 定しても,元の買い注文B5,B4と同じ注文価格の買い注文B5, B4がそもそも生成されないか,生成されてもすぐにキャンセルされ ていると理解できること,加えて,本件明細書の【0144】ないし 【0147】にも,新たな新規注文B5及びB4は,個別に生成され るのではなく,(従前の)決済注文の全ての約定((従前の)決済注 文S1ないしS3の約定)を待って,新たな新規注文B1ないしB3 とともに新たな新規注文が一括して生成されることが開示されている ことからすると,図35には,同図右上のS1ないしS3が同時に約 定し,もって,B5ないしB1及びS5ないしS1の全てが1回ずつ 約定した後に,「シフト機能」によるシフトが行われ,新たなB5ないしB1及びS5ないしS1が一括的に生成される場合が示されてい\nるに過ぎず,B5,B4に対応する決済注文S5,S4が約定すると, 元の買い注文B5,B4と同じ注文価格の買い注文B5,B4が再度 生成されることを看取できない旨主張する。 しかしながら,図35には,明示の記載はないが,決済注文S5, S4が約定した後に,元の買い注文と同じ注文価格の買い注文B5, B4及び元の売り注文S5,S4と同じ注文価格の売り注文S5,S 4が再度生成され,通常のリピートイフダン注文が繰り返されること は,「図30に示すように,相場価格64が上昇から下落に転じ,1 ドル=100.60円未満になると,約定情報生成部14は,決済注 文S4,S5を約定させる処理を行う。これにより,(新規注文情報 18114,18115に基づく)新規注文B4,B5と,(決済注 文情報18119,18120に基づく)決済注文S4,S5による イフダン注文の取引がそれぞれ成立する。これにより,注文情報生成 部16は,元の新規注文B4,B5と元の決済注文S4,S5と同じ, 新たな新規注文B4,B5と元の決済注文S4,S5を生成する。」 (【0132】)との記載に照らしても明らかである。 したがって,控訴人の上記主張は,その前提において,採用するこ とができない。
エ 以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,「シフト機能」を「いったんスルー注文」及び「決済トレール注文」に組み合わせた構\成のもの(実施の形態3)のほか,構成要件Hに含まれる,これ以外の構\成の もの(最も高い売り注文価格の特定の一の売り注文が約定されたことを検 知すると,前記注文情報生成手段が,更に所定価格だけ高い「一の売り注 文情報」を生成するもの)についての開示があることが認められる。 したがって,構成要件Hは,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであることが認められ,本件発明はサポート要件に適合するものと認\nめられるから,これと異なる控訴人の前記主張は理由がない。

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平成30(ワ)9909  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月23日  東京地方裁判所

 特許権侵害について、公然実施の無効主張がなされ、東京地裁(40部)は新規性違反(発明1,3)および進歩性違反(発明2,4)の無効主張を認めました。

 被告は,上記ア記載のA邸工事の施工方法又は防水構造は本件各発明の構\ 成要件をすべて具備すると主張するのに対し,原告は,同方法又は構造は構\ 成要件D等を充足せず,本件各発明と相違点1において相違するので新規性 は欠如しないと主張する。
(ア) 構成要件D等における「封止する状態にして固定」の意義\n
そこで,まず,構成要件D等の「封止する状態にして固定」の意義につ\nいて検討する。 本件発明1及び3の特許請求の範囲の記載(構成要件D及びK)によれ\nば,内部水切り部材は,その固定板下面と屋根に設けた開口部周囲の野地 板上面又は防水シート上面との間で液体の流通を封止する状態にして固 定して,水が開口部に侵入することを防止する機能を有するものであるか\nら,ここにいう「封止」とは,液体の流通を封じ,止めること,すなわち, 水等の液体が開口部に侵入しない状態にすることをいうものと解される。 また,本件明細書等の記載をみても,「開口部を固定板で直接的且つ内 外液密的に覆うように内部水切り部材(インナーフラッシング)を配置す る」(段落【0011】),「内部水切り部材の固定板を野地板又は防水 シート上に密着した状態で固定するものとした本発明」(段落【0017】), 「開口部12を完全に覆うことのできるサイズの固定板21を,その下面 端縁側が密着する状態で内部水切り部材20を固定」(段落【0022】), 「密着状態で接着・固定して,固定板21下面と防水シート11上面との 間で水が流通しない状態に封止する。」(段落【0031】),「固定板 21の防水シート11側への密着性(封止性)が極めて高いものとなり優 れた防水機能を実現」(段落【0035】)などとされているから,内部\n水切り部材は,その固定板の下面端縁側を野地板等に密着させることで, 水等の液体の開口部への侵入を防止する機能を有するものであると解さ\nれる。 そうすると,構成要件D等における「封止する状態にして固定」とは,\n内部水切り部材の固定板の下面と野地板等を,水等の液体が開口部に侵入 しない程度に密着させて固定する状態をいうものと解するのが相当であ る。 これに対し,原告は,構成要件D等の「封止」とは,「精密部品などを\n外気に触れないように,隙間なく包むこと。または,その技術。」を意味 すると主張するが,この定義は精密機械等に外気が接することを念頭に置 いたものであり,外気ではなく液体の流通が問題となる本件各発明におい ては妥当しない。
(イ) 構成要件F等における「前記固定板外周に沿って防水テープが貼\付され ている」の意義
更に進んで,構成要件F等における「前記固定板外周に沿って防水テー\nプが貼付されている」の意義について検討する。\n本件発明2及び4に係る特許請求の範囲の記載によれば,内部水切り部 材の固定板外周に沿って防水テープを貼付するのは,同固定板下面と開口\n部周囲の野地板上面等との間で液体の流通を封止する状態にして固定す るためであり,また,構成要件F等においては,「固定板外周に沿って」\n防水テープを貼付するものとされているから,「前記固定板外周に沿って\n防水テープが貼付されている」とは,内部水切り部材の固定板の外周全体\nに防水テープが貼付されていることを意味すると解するのが自然である。\n本件明細書等の記載をみても,防水テープ15で固定板21の外周に沿っ てその全周にわたって貼付する態様の実施例のみが記載されている(段落\n【0032】,【図4】)。 そうすると,構成要件F等の「前記固定板外周に沿って防水テープが貼\ 付されている」とは,内部水切り部材の固定板の外周全体に防水テープが 貼付されていることを意味するものと認められる。\n
(ウ) A邸工事と本件発明1及び3との対比
上記(ア)及び(イ)の解釈を前提として,A邸工事の方法等と本件各発明と を対比すると,A邸工事は,アルミフラッシングの「固定板の下面が開口 部周囲の野地板上面に密着して配置され」,かつ,「上記アルミフラッシ ングの四角形状の固定板の縁部分の棟側及び左右両側には,粘着剤層を有 する防水テープを貼付する」構\成を有するのであるから,A邸工事は,上 記固定板の下面が,野地板上面と,水等の液体が開口部に侵入しない程度 に密着して固定されている構成,すなわち「アルミフラッシングの固定板\n下面と開口部周囲の野地板上面との間で液体の流通を封止する状態にし て固定する」構成を有するものと推認することができる。\n したがって,A邸工事は構成要件D等を具備し,本件発明1及び3は新\n規性を欠くこととなる。
(エ) A邸工事と本件発明2及び4との対比
前記のとおり,本件発明2及び4の構成要件F及びMの「前記固定板外\n周に沿って防水テープが貼付されている」とは,内部水切り部材の固定板\nの外周全体に防水テープが貼付されていることを意味するところ,A邸工\n事においては,アルミフラッシングの四角形状の固定板の縁部分の棟側及 び左右両側には防水テープが貼付されているが,その軒側にはこれが貼\付 されていないから,この点で両者は相違することとなる。 したがって,本件発明2及び4が新規性を欠くということはできない。
ウ 進歩性の有無について
前記判示のとおり,A邸工事の方法と本件発明2及び4の構成要件F等は,\n固定板の外周のうち軒側に防水テープが貼付されているかどうかにおいて\n相違するところ,防水テープは,開口部に水が浸入しないようにするために 内部水切り部材の固定板に貼付するものであるから,四角形状の固定板の縁\n部分の上記3辺に防水テープを貼付した上,更に念を入れて軒側の下辺にも\n防水テープを貼付することについて,当業者であれば当然に想到し得たもの\nと考えられる。 これに対し,原告は,インナーフラッシングの固定板の3辺に防水テープ を貼付して固定していた構\成を,全周にわたり防水テープを貼付する構\成に 置き換えると,部材や工数が増加して過剰なコストや手間を要することにな るから,阻害要因があると主張するが,A邸工事の開口部は1辺が40cm程 度であること(乙12資料3)からして,軒側の1辺に防水テープの貼付す\nる部材のコストや工数の負担はごくわずかなものと考えられるので,原告の 主張するような阻害要因があるということはできない。 したがって,本件発明2及び4は,公然実施されたA邸工事に基づき当業 者が本件特許出願当時に容易に想到し得たものであるというべきである。
エ 小括
前記イのとおり,本件各発明に係る特許出願より前である平成19年6月 28日に公然と実施されたA邸工事は,本件発明1及び3の構成要件を全て\n充足するから,本件発明1及び3は新規性を欠く。 また,前記ウのとおり,A邸工事は,アルミフラッシングの四角形状の固 定板の軒側縁部分に防水テープが貼付されていない点で本件発明2及び4\nと相違するが,当業者は,同部分にも防水テープを貼付する構\成に容易に想 到し得るといえるから,本件発明2及び4は進歩性を欠く。 したがって,本件各発明は,いずれも特許無効審判により無効にされるべ きものと認められる。

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平成30(ワ)12609  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月9日  東京地方裁判所

 スマホ用のアプリについての特許侵害事件です。東京地裁29部は、無効理由無し、差止の必要性ありとして請求を認容しました。原告はヤマハ(株)です。被告アプリの名称から、下記サービスがヒットしましたが、これかどうかは不明です。https://www.cbnet.co.jp/archives/1978

 本件発明1は,(1)案内音声である再生対象音を表す音響信号と当該案内音声である再生対象音の識別情報を含む変調信号とを含有する音響信号に応じて放音さ\nれた音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出手段,(2)情報抽出手 段が抽出した識別情報を含む情報要求を送信する送信手段,(3)情報要求に含まれる 識別情報に対応するとともに案内音声である再生対象音に関連する複数の関連情報 のいずれかを受信する受信手段,(4)受信手段が受信した関連情報を出力する出力手 段としてコンピュータを機能させることにより,赤外線や電波を利用した無線通信に専用される通信機器を必要とせずに,案内音声である再生対象音の識別情報に対\n応する関連情報を利用者に提供することを可能とする(【0005】)。
エ 以上に加えて,本件発明1は,前記送信手段が,当該端末装置にて指定され た言語を示す言語情報を含む情報要求を送信し,前記受信手段が,情報要求の識別 情報に対応するとともに相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち情報要求の 言語情報で指定された言語に対応する関連情報を受信するという構成を採用することにより,相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち情報要求の言語情報で指\n定された言語に対応する関連情報を受信することができ,使用言語が相違する多様 な利用者が理解可能な関連情報を提供できるという効果を奏するものである(【0006】等)。\n
・・・
被告は,(1)乙9公報は,音響IDとインターネットを用いて,放音装置から放音 された音響IDによって識別される識別対象の情報に対し,これと関連する任意の 関連情報をサーバから端末装置に供給できる乙9技術を開示しているところ,本件 発明1も乙9技術を採用するものであり,相違点1−5ないし同1−7は,情報要 求に含まれる情報の内容,複数の関連情報の選択条件,関連情報の内容に係る相違 にすぎず,当業者が適宜設定できるものである旨主張するとともに,(2)当業者は, 乙9発明1に,乙10発明又は乙5公報及び乙10公報記載の周知技術,並びに周 知技術(乙14等)を組み合わせるなどして,相違点1−5ないし同1−7に係る 本件発明1の構成を容易に想到し得た旨主張する。しかしながら,まず,被告の上記(1)の主張については,前記(1)エと同様に,乙9 公報等に音響IDとインターネットを用いた同種の情報提供が開示されていたとし ても,本件発明1は,その手順や方法を具体的に特定し,使用言語が相違する多様 な利用者が理解可能な関連情報を提供できるという効果を奏するものとした点において技術的意義が認められるものであるから,相違点1−5ないし同1−7に係る\n本件発明1の構成が当業者において適宜設定できる事項であるということはできない。\n
・・・
5 争点6(差止めの必要性は認められるか)について 被告は,本件アプリについて差止めの必要性は認められないとし,その理由とし て,(1)本件口頭弁論終結時点において,本件アプリに係るサービスは実用化されて いなかったこと,(2)被告は,平成30年5月以降,本件アプリの配信を中止し,多 言語で情報配信を行う機能を取り除いた本件新アプリを配信しており,本件訴訟の結果によって本件アプリに係る事業を再開するか否かを決定する予\定であること,
(3)被告は,今後,顧客に対し,案内音声である再生対象音の発音内容を表す他国語の関連情報を提供することを禁ずる旨の約束や,案内音声である第1言語の再生対\n象音が表す発音内容を第2言語で表\\現した情報を提供することを禁ずる旨の約束を する意思があることを主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,本件アプリは,本件発明1の技術的範囲に属 し,本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものとは認められないから, 前記第2の2(4)のとおり,被告は,少なくとも,平成29年5月頃から平成30年 6月頃まで,本件アプリを作成し,譲渡等及び譲渡等の申出をし,平成28年6月から平成29年3月までの間に3回にわたり本件アプリを使用することによって本\n件特許権1を侵害していたものである。 これらに加えて,被告が本件訴訟において本件アプリが本件発明1の技術的範囲 に属することを否認して争い,本件特許1について特許無効審判により無効にされ るべきであると主張していること,弁論の全趣旨によれば,被告は,現在も,ウェ ブサイトに本件アプリの説明や広告を掲載していると認められ,被告が本件アプリ の作成等を再開することが物理的に不可能な状況にあるとは認められないことなども考慮すると,被告は,今後,本件特許権1を侵害するおそれがあるものというべ\nきであるから,原告が被告に対し,その侵害の予防のため,本件アプリの作成等の差止を求める必要性は認められるものというべきである。\n

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平成30(ワ)16555  特許権侵害差止等請求事件  民事訴訟 令和元年10月29日  東京地方裁判所

 特許権侵害事件で、技術的範囲に属しないと判断されました。争点は、「プロカルシトニン3−116を測定する」の意義です。

 ア 本件発明の特許請求の範囲の記載は「患者の血清中でプロカルシトニン3 −116を測定することを含む,敗血症及び敗血症様全身性感染を検出する ための方法。」であり,その構成要件Aは「患者の血清中でプロカルシトニン\n3−116を測定することを含む」というものであるところ,特許請求の範 囲には,その意義について規定する記載はないが,「測定」とは,一般的に, 「長さ,重さ,速さなど種々の量を器具や装置を用いてはかること」(大辞林 (第3版))との意味を有する。 そうすると,特許請求の範囲の記載からは,構成要件Aの「プロカルシト\nニン3−116を測定すること」とは,敗血症等を検出するため,血清中に 含まれるプロカルシトニン3−116の量を明らかにすることを意味する ものと解するのが自然である。
イ また,前記1(2)のとおり,本件明細書の記載によれば,敗血症等の患者の 血清中に比較的高濃度で検出可能なプロカルシトニンについて,従前プロシ\nカルシトニン1−116と暫定的,一般的にみなされるなどしていたところ, 本件発明は,敗血症等の患者の血清中に比較的高濃度で検出可能なプロカル\nシトニンが,プロカルシトニン1−116ではなく,プロカルシトニン3− 116であるという発見に基づき,新規な敗血症等の診断方法を提供するこ とを目的とするものである。そして,本件明細書の発明の詳細な説明には, 「プロカルシトニン3−116を測定すること」の意義について,特段の記 載はない。そうすると,本件明細書の記載からも,構成要件Aの「プロカル\nシトニン3−116を測定すること」とは,敗血症の検出のため,上記の発 見に基づきプロカルシトニン3−116の量を明らかにすることを意味し, その測定結果が敗血症等の検出に用いられることと理解できる。
ウ 原告は,構成要件Aの「プロカルシトニン3−116を測定すること」と\nは,プロカルシトニン3−116を敗血症等の検出に必要な精度で測定する ことをいい,プロカルシトニン1−116と区別してプロカルシトニン3− 116を特異的・選択的に測定することを必須とするものではない旨主張し, その根拠として,本件明細書の実施例において,プロカルシトニン3−11 6を特異的・選択的に測定することが困難なイムノアッセイによりプロカル シトニンの濃度を測定することが記載されていること,本件明細書の記載等 を踏まえると,患者の血清中でプロカルシトニン1−116とプロカルシト ニン3−116とを区別することなくプロカルシトニン一般を測定したと しても,その濃度は,おおよそプロカルシトニン3−116の濃度であり, 測定されたプロカルシトニン3−116の濃度は敗血症等の検出に必要な 精度になっていることを指摘する。 しかし,本件明細書のイムノアッセイによる測定に関する記載について, 正常者及び敗血症患者の血清中のプロカルシトニン濃度の測定結果と,これ と同時に行われたこれらの者の血清中のプロホルモン濃度の測定結果と対 比することにより,正常者と敗血症患者の間の濃度の差異がプロカルシトニ ンにおいて際立っていることを示すものである旨の記載があることからす ると(段落【0059】【0062】【0063】【表3】),上記測定は,「敗\n血症及び敗血症様全身性感染を検出するための方法」の実施例であるとは認 められないから,原告の上記主張の根拠となるとは認められない。 また,仮に,敗血症患者の血清中に含まれるプロカルシトニンの大部分が プロカルシトニン3−116であるという関係があるとしても,プロカルシ トニン3−116を測定することとプロカルシトニン一般を測定すること が同義とはいえないことは明らかである,また,敗血症等であるかどうかが 明らかではない患者については,その血清中のプロカルシトニンの大部分が プロカルシトニン3−116であるかどうかは明らかではないといえるほ か,本件明細書には,患者の血清中のプロカルシトニン濃度を測定すること により敗血症等を検出する技術は本件発明の優先日前に従来技術として存 在したところ,本件発明は,従来技術に対して新規のものである旨が記載さ れているのであって,原告の主張は採用することはできない。 以上によれば,原告の主張には理由がなく,これを採用することはできな い。
エ 以上によれば,構成要件Aの「プロカルシトニン3−116を測定する\nこと」とは,プロカルシトニン3−116の量を明らかにすることを意味す るものと解される。
(2)前記前提事実(第2の1(4)のとおり,被告装置及び被告キットを使用する と,プロカルシトニン3−116とプロカルシトニン1−116とを区別する ことなく,いずれをも含み得るプロカルシトニンの濃度を測定することができ, その測定結果に基づき敗血症等の鑑別診断等が行われていると認められる。被 告装置及び被告キットを使用して敗血症等を検出する過程で,プロカルシトニ ン3−116の量が明らかにされているとは認められない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告方法は,構成要\n件Aを充足するものとは認められない。

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平成29(ワ)7576  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月19日  大阪地方裁判所

 特許権侵害の損害について、7割の限度で特許法102条2項による推定が覆滅され、3項で相当実施料率は4%と判断されました(双方争いなし)。

 以上を踏まえ,顧客吸引力の観点から被告第2製品における本件第2 及び第3特許の技術的意義の有無及び程度を検討すると,まず,本件被告カタログ 記載の「6つの特徴」の1つとして,被告第2製品は「素手で持っても痛くありま せん。」との記載がある。「テーパ部」の解釈に関する被告の主張をも考慮すると, これは「テーパ部」の存在をうかがわせるものとも理解し得るものの,いかなる構\n成によって「素手で持っても痛く」ないことを実現しているのかは具体的に示され ていない。当該記載に付された写真では,製品のアンカーボルト挿通用の開口部に 手指を通して握る形で,当該開口部を囲む部材のうち長辺部分をなす部材のうちの 1つを掌全体で把持していること(甲4,乙32)に鑑みると,「テーパ部」の存在 故に「素手で持っても痛く」ないという効果を奏しているとも断じ得ない。また, 本件第2発明の効果2に言及する記載もない。 さらに,本件被告カタログには,「6つの特徴」の1つとして,「スピード施工」 が挙げられているところ,その部分には,被告第2製品の片方の端部の接続部につ いて「連結構造」との説明が付されている。もっとも,「連結構\造」とされる接続部 の構造や接続の仕方ないし効果に関する説明はない。\nむしろ,前記認定のとおり,本件被告カタログでは,被告第2製品の強度や換気 性能,供給・品質・価格の安定性,カットしやすい独自の形状を有する省施工商品\nであること等が強調されている。 この点は,原告や同業他社のカタログ等にも共通する。このうち,原告のカタロ グ等には「テーパ部」や「接続部」に関する記載も見られるものの,その構造は具\n体的に示されておらず,作用効果も,他の記載と比較すると,強調の度合いは低い。 むしろ,全周敷き込みの簡単施工や特殊構造の換気スリット・防鼠材といった点が\n前面に出されて強調されている。 以上の事情に加え,被告第2製品が本件第2発明の効果を奏しない形で使用され ることがあり得ることは否定できないこと(ただし,実務上そのような使用態様が 採られる割合は不明である以上,この事情を推定覆滅に当たって過大視することは できない。),前述のとおり,台輪の幅方向への移動を防止する別の方法もあること を踏まえると,本件第2及び第3発明は,施工容易性の実現という観点から一定の 顧客吸引力を有するといえるものの,本件第2発明の「テーパ部」の構成や本件第\n3発明の構成要件3C〜3Gの構\成を有することによる顧客吸引力は,相対的には 小さいというべきである。 なお,被告は,被告第2製品の形状変更後に売上げが増加したことを指摘してい るが,その裏付けとなる資料(乙60)は形状変更後の4か月の売上額を集計した ものにすぎないし,売上げの変動要因としては様々なものが考えられることから, 上記事情が直ちに本件第2及び第3特許が被告第2製品の需要に与える影響が小さ いことを裏付けると見ることはできない。 これらの事情を総合的に考慮すると,本件では,7割の限度で特許法102条2 項による推定が覆滅されると認めるのが相当である。これに反する原告及び被告の 各主張はいずれも採用できない。
エ ミサワホームに生じた損害
本件第2及び第3特許がいずれも持分2分の1の割合による原告とミサワホ ームの共有であることは当事者間に争いはなく,また,弁論の全趣旨によれば,ミ サワホームが自社施工工事分を除きこれらの特許を実施していないことが認められ る。そして,原告及び被告いずれも,特許法102条3項に基づき損害額を算定す る場合の本件第2及び第3特許の相当実施料率を4%程度とし,これを不合理ない し不相当と見るべき事情もないことから,相当実施料率は4%と認められるところ, 相当実施料率を乗じる対象となる売上額を消費税込の金額とすべき証拠はない。 そうすると,次のとおり,1463万7125円をもってミサワホーム(なお, 同社が本件第2特許の持分を取得する以前の損害賠償請求権を持分譲渡人が有して いるのであれば,その譲渡人を含む。)の損害額と認めるのが相当である。 そして,侵害された特許権が共有であったことにより侵害者の賠償すべき損害額 が単独保有の場合に比較して増額されるいわれはないことなどから,原告との関係 においては,更にこの限度で,特許法102条2項による推定が覆滅されるとする のが相当である。
(計算式) 売上額7億3185万6254円(税抜)×4%×1/2=146 3万7125円
オ 原告の損害額
以上より,特許法102条2項に基づく原告の損害額は,別紙「被告第2製 品に係る損害額(裁判所の認定)」の「原告の損害額」欄記載のとおり,4867万 8376円と認められる。
(計算式) 被告の利益の額2億1105万1670円×0.3−1463万7125円=4867万8376円
(4) 原告の予備的主張について\n
原告は,被告工場製品の製造販売について,特許法102条2項に基づき推定 される損害額が同条3項に基づくそれを下回る場合には,予備的に,同項に基づく\n損害額を主張する。 しかし,前記認定から明らかなとおり,特許法102条3項に基づき推定される 原告の損害額は,同条2項に基づくそれを上回るものではないから,この点に関す る原告の主張は採用できない。 仮に,原告の主張が,被告工場製品を除く被告第2製品の販売による損害につい ては特許法102条2項に基づき賠償請求しつつ,被告工場製品の販売による損害 については,同項に基づき算定される損害額が同条3項に基づくそれを下回る場合 に,予備的に同項に基づく損害額を主張する趣旨であったとしても,前記3(2)ウ (オ)で判示したとおり,被告工場製品とそれ以外の製品とで訴訟物が異なると見るべ き根拠はないから,原告の主張は採用できない。
(5) 弁護士費用(本件第1特許権の侵害分も含む。)について
原告は本件訴訟代理人弁護士に訴訟の提起・追行を委任したところ,被告の本 件第1〜第3特許権侵害の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,510万 円と認めるのが相当である。なお,逸失利益に係る損害の発生状況に照らし,弁護 士費用に係る損害賠償支払債務のうち,平成29年8月17日の時点で遅滞に陥っ ていたのは460万円の損害賠償債務であると認めるのが相当である。また,被告 の不法行為終了時期が平成30年10月末であることを踏まえると,残額の損害賠 償債務の遅滞損害金の起算日は同月31日とするのが相当である。
(6) 原告の逸失利益に対する確定遅延損害金について
原告が確定遅延損害金を請求している期間の,被告第2製品の製造販売による 損害に対する遅延損害金の金額は,別紙「被告第2製品に係る損害額(裁判所の認 定)」の「H31.2.28までの確定遅延損害金」欄記載のとおりの方法で計算すると,合 計1231万6870円である。

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平成31(ネ)10031  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月10日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 一審原告製の使用済み中空芯管をそのまま利用して生産された薬剤分包用ロールペーパの特許権・商標権を侵害すると判断されました。1審では、商標権侵害は認められていましたが、差止請求が棄却されていましたが、その点は同じです。

 本件訂正発明は,構成要件A〜Dからなる「薬剤分包用ロールペーパ」に係る\n発明であるところ(構成要件E),構\成要件Aには薬剤分包装置に関する事項が, 構成要件B及びDにはロールペーパ及びその中空芯管並びにロールペーパに配\n設される複数の磁石(以下,併せて「本件ロールペーパ等」という。)に関する 事項が,構成要件Cには薬剤分包装置及びロールペーパに関する事項が,それぞ\nれ記載され,構成要件Aにおいて,ロールペーパと薬剤分包装置の関係につき,\n前者が後者に「用いられ」るものとして記載されている。 本件訂正発明は,「薬剤分包用ロールペーパ」という物の発明であると認めら れるところ,物の発明の特許請求の範囲の記載は,物の構造,特性等を特定する\nものとして解釈すべきであること,「用いられ」が,構成要件Aの中で「・・・\nようにした薬剤分包装置に用いられ,」とされていることからすると,「用いら れ」とは,本件ロールペーパ等が構成要件Aで特定される薬剤分包装置で使用可\n能なものであることを表\していると解される。
(3) 被告製品の構成要件充足性について\n
ア 前記(2)を前提に検討すると,構成要件Aのうち「ロールペーパの回\n転速度を検出するために支持軸の片端に角度センサを設け」との記載は,本件ロ ールペーパ等の「複数の磁石」につき,支持軸の片端に設けられた角度センサに よる検出が可能な位置に配設されるものであることを特定するものと理解でき,\nまた,構成要件Aのうち「ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその\n固定時に両者を一体に回転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設 け」との記載は,本件ロールペーパ等について,薬剤分包装置の中空軸と接する 中空芯管の端に,中空軸と着脱自在に固定する手段を設けることで,そのような 態様で回転させられるものであることを特定するものと理解できる。 そうすると,本件訂正発明に係る薬剤分包用ロールペーパの技術的範囲は,構\n成要件B〜Eと,構成要件Aによる上記特定に係る事項によって画されるもの\nであるから,被告製品が構成要件A〜Eで特定される本件ロールペーパ等とし\nての構成を備えていて,構\成要件Aで特定される薬剤分包装置に利用可能なも\nのについては,被告製品は本件訂正発明の技術的範囲に属するものと認められ, 被告製品が構成要件Aで特定される薬剤分包装置に実際に使用されるか否かと\nいうことは,上記構成要件充足の判断に影響するものではないと解される。\n
イ(ア) 被告製品は,前提事実(6)のとおりの構成を有するところ,弁論\nの全趣旨によると,被告製品の構成a,b,c,dは,本件訂正発明の構\成要件 B,C,D,Eをそれぞれ充足するものと認められる。
(イ) 弁論の全趣旨によると,被告製品の中空芯管内部に配設された 3個の磁石は,支持軸の片端に設置された角度センサによる信号の検出が可能\nな位置に配設されたものであり,また,被告製品は,薬剤分包装置の中空軸に着 脱自在に装着されて,固定時に中空軸と一体となって回転し得るものであって, その手段がロールペーパと中空軸が接する端に設けられているものと認められ る。
(ウ) したがって,被告製品は,本件訂正発明の構成要件B〜Eと構\成 要件Aによる上記アの特定に係る事項を充足し,構成要件Aで特定される薬剤\n分包装置で使用可能なものであると認められる。\n
ウ よって,被告製品は,本件訂正発明の技術的範囲に属するものと認め られる。
(4) 一審被告らの主張について
ア 一審被告らは,本件訂正発明が用途発明であり,また,本件訂正発明 において保護されるべき特徴的部分は,薬剤分包装置側の構成又は機能\である ことなどから,被告製品が構成要件Aを充足する薬剤分包装置に用いられては\nじめて本件特許権に対する侵害が成立すると主張する。 しかし,前記(2)で検討したとおり,本件訂正発明は用途発明ではない。また, 本件訂正発明の技術的意義は,前記(1)認定のとおりであって,本件訂正発明の 特徴的部分が薬剤分包装置のみにあるということはできない。 したがって,一審被告らの上記主張は採用することができない。 なお,特許庁の審査基準(甲22)も,サブコンビネーション発明について用 途発明と同様に解釈することを求めているものとは解されない。
イ 一審被告らは,一審原告は,本件補正に際して,本件訂正発明の技術 的特徴が構成要件Aにあることを主張していたと主張する。\n一審原告は,本件補正に際しての意見書(乙9)において,本件補正に先立つ 拒絶理由通知の引用文献記載の技術に対して,「本願発明では『回転角度と測長 センサの検出信号を検出してロールペーパの巻量が検出可能な位置に配置され\nた磁石』の構成を有し,かつ『角度センサの信号とずれ検出センサの信号との不\n一致により上記中空軸に着脱自在に装着されたロールペーパと上記中空軸との ずれを検出するようにした』薬剤分包装置に用いられることを前提とするロー ルペーパについての発明であり,部分的な構成部材の抽象的,総論的な構\成が公 知,周知であるという理由だけで,本願発明の全体の構成が全て否定されること\nにはならないと考えます。」と主張しているものの,そのことから直ちに一審原 告が構成要件Aを充足する薬剤分包装置で用いられることが必要であるとまで\n主張していたとは解されないから,一審被告らの上記主張を採用することはで きない。
ウ 一審被告らは,原審裁判所の暫定的見解について主張するが,原審裁 判所の暫定的見解によって当審の判断が左右されないことは明らかである。
・・・・
一審被告らは,非純正品であることを明示して販売していたことや 購入者が調剤薬局であることなどからすると,購入者は被告製品が非純正品で あること,すなわち,一審原告の製品ではないことを正確に認識しており,出所 表示機能\や品質保証機能が害されていないから,商標法26条1項6号が適用\nされるか,実質的違法性を欠き,商標権侵害が成立しないと主張する。 しかし,以下の(ア)〜(オ)の各事情を考え併せると,購入者の全てが,被告製 品が非純正品であること,すなわち,一審原告の製品ではないことを正確に認識 していたとは認められず,一審被告らの上記主張はその前提を欠くものであっ て,採用することができない。
(ア) まず,前記(1)イのとおり,被告製品については,ウェブサイト のみならず,ダイレクトメールやFAX等による宣伝活動もされており,顧客が 一審被告らのウェブサイトを経由することなく被告製品を購入する場合もあっ たと認められるところ,ダイレクトメールやFAXにおいて,どのような態様で 宣伝がされていたのかは証拠上必ずしも明らかではない。
(イ) 一審被告らは,顧客に対し,非純正品であることを説明していた と主張するが,一審被告らの下で稼働していた従業員は,その点に関し,刑事事 件の公判廷において,「電話で口頭で説明するときに,『純正の紙と違うので』 と説明した。」,「電子メールで顧客に説明する際にも電話での説明の場合と同 様に非純正であることを顧客に説明したように思うが,よく覚えてない。」と曖 昧な供述をしている(乙4)上,同供述の裏付けとなるような顧客への対応マニ ュアルや顧客に送付された電子メールといったようなものは何ら証拠として提 出されていないから,一審被告らの主張するような説明が常に顧客に対してさ れていたとは認められない。
(ウ) 被告製品の購入を申し込むために顧客が一審被告らに対して送\n付する「注文書兼使用許可書」についても,「非純正」の文字(乙25の1・2) は,後から記載されるもので,常に記載されていたのかは証拠上明らかではない し,また,「非純正」の文字が取り立てて大きく表示されたり,強調されたりし\nていないことからすると,仮に記載されていたとしても顧客がこれに気付かな いこともあり得る。そして,前記(1)イのとおり,顧客から使用済み芯管の送付 を受けることなく,被告製品が販売された事例があることからすると,上記の 「注文書兼使用許可書」が常に使用されるものであったとも認められない。 納品書(乙26)についても,「分包紙はお客様からお預かりした芯で作りま した。」とだけ記載されており,非純正品であることが明示されているわけでは ない。
(エ) 前記(1)ウのとおり,一審被告らのウェブサイトには「非純正分 包紙」という記載があったものの,被告ネクストウェブサイトの非純正品ウェブ ページ1では,「ユヤマ分包機対応」との記載に続いて各種の製品が表示されて\nいるのみで,非純正品であることが明示的に記載されていなかった上,被告ヨシ ヤウェブサイトの非純正品ウェブページ2でも,「ユヤマ分包機対応」という記 載と共に各種の製品が表示されており,「非純正分包紙」という記載が左欄に小\nさく記載されているにすぎないことからすると,一審被告らのウェブサイトに 接した購入者の全てが,被告製品が非純正品であると正確に認識するとは認め られない。
(オ) 購入者が調剤薬局であるからといって,その注意力が常に一般 消費者に比して高いとまではいえず,購入者の一人が,被告製品が非純正品であ ると認識していたことがある(乙19,113)からといって,それにより全購 入者が同じ認識であったとは認められない。 なお,一審被告らは,調剤薬局の薬剤師の間では,当該調剤薬局で使用してい る薬剤分包用ロールペーパの仕入先や問合せ先に関する情報が共有されている と主張するが,上記(ア)〜(オ)で検討してきたところによると,そもそも,調剤 薬局において,被告製品を非純正品(一審原告の製品でないもの)として購入す るとは限らないというべきであるから,仕入先や問合せ先に関する情報が共有 されるかどうかは,本件の結論を左右するものではない。

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◆平成28(ワ)7536

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平成31(ネ)10034  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月31日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審は、コンピュータプログラムにかかる特許について、構成要件FおよびGを有していないとして、技術的範囲に属しないと判断しました。知財高裁はこれを維持しました。

 構成要件Gの「前記上位ノード変数データ」の意義について\n
a 本件発明の構成要件Fの「前記スクリプトは,当該ノードデータに\n含まれる変数データである自ノード変数データと,当該ノードの直系 上位ノードのノードデータに含まれる変数データである上位ノード変 数データを利用した演算を行って,前記自ノード変数データの値を求 める代入用スクリプトを含んでおり」との記載及び構成要件Gの「前\n記表示された木構\造のノードのうちの選択されたノードの前記自ノー ド変数データ,前記上位ノード変数データ及び前記スクリプトを表示\nするノードデータテーブル表示ステップ」との記載から,本件発明の\n「上位ノード変数データ」は,「当該ノードの直系上位ノードのノー ドデータに含まれる変数データ」であり,構成要件Fの「前記自ノー\nド変数データの値」を求める「代入用スクリプト」による演算に利用 される「変数データ」であることを理解できる。 次に,本件明細書には,「上位ノード変数データ」に関し,「変数 情報は,各ノードが保持するデータであって,変数名に対応させて記 憶される。記憶される変数は,下位ノードから参照される公開変数と, 自ノード内でのみ使用する限定変数を含む。また,変数の値(「変数 データ」と記述する場合もある。)は,固定値が設定されても,スク リプトの実行によって演算された値が設定されてもよい。また,UR Lが設定されてもよい。どのような値が設定されるかは任意である。」 (【0031】),「代入用スクリプトは,自ノードの変数の値を演 算するためのものである。代入用スクリプトは,自ノードの変数の値 である自ノード変数データと,そのノードの直系上位ノードの公開変 数の値である上位ノード変数データを利用して記述することが可能で\nある。」(【0032】),「公開変数表示領域に表\示される公開変 数は,自ノードの公開変数51と,直系上位ノードの公開変数52を 含み,直系上位のノードの公開変数52は,自ノードの公開変数51 と異なる色で表示される(図10では,フォントを変えて示してある。)。\nまた,公開変数には,固定値が入力される公開変数と,代入用スクリ プトの実行によって計算される公開変数があり,修飾領域に「なし」 あるいは「要計算」を表示することによりに区別される。」(【00\n65】)との記載がある。 そして,図10には,「直系上位ノードの公開変数の値である上位 ノード変数データ」として,「52」に「変数名」及びそれに対応す る「値」が示されている(例えば,「変数名」の欄「パネル色」・「値」 欄「KW−400」)。 これらの記載によれば,本件明細書には,「上位ノード変数データ」 にいう「変数データ」は,「変数の値」を含むデータであることの開 示があることが認められる。 以上の本件発明の特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載によ れば,構成要件Gの「前記表\示された木構造のノードのうちの選択さ\nれたノードの前記自ノード変数データ,前記上位ノード変数データ及 び前記スクリプトを表示するノードデータテーブル表\示ステップ」に いう「前記上位ノード変数データ」は,「当該ノードの直系上位ノー ドのノードデータ」に含まれる「変数の値」を含むデータであると解 される。
b これに対し控訴人は,本件明細書の【0032】における「変数の 値(「変数データ」と記述する場合もある。)」との記載は,「変数 データ」という用語を,文脈によって,変数の値を指す意味で用いる こともあるという注意書きであると理解できること,「変数データ」 は,変数名と変数の型を意味するというのが,プログラミングに関す る通常の用語であること(甲24),実質的にも,本件発明が「ノー ドデータテーブル表示ステップ」において上位ノード変数データを表\ 示させる目的は,表示された木構\造の個々のノードに対応付けられた 詳細情報を簡単に表示することができる(【0009】)ことにより,\n文書ファイル(プログラム)の編集を容易にする点にあり,変数名が 分かれば,その目的を達成することができることからすると,本件発 明の「上位ノード変数データ」は,本件明細書において文脈上変数の 値を意味すべき場合を除き,変数名を指すと解すべきである旨主張す る。 しかしながら,本件明細書には,「上位ノード変数データ」が変数 名のみで構成される場合を含むことについての記載や示唆はない。\nまた,前記aの本件明細書の記載に照らすと,【0032】の「変 数の値(「変数データ」と記述する場合もある。)」との記載は,「変 数データ」は「変数の値」を意味することを示した記載であると解す るのが自然であり,これが変数の値を指す意味で用いることもあると いう注意書きであるということはできない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(イ) 被告プログラムにおける「ノードデータテーブル表示ステップ」の\n有無について
a 控訴人は,入力コネクタは,親ボックスから引き渡される値を記憶 する変数が図形化されたものであり,入力コネクタの名称が構成要件\nGにおける「上位ノード変数データ」に該当すること,インスペクタ 及びスクリプトエディタに表示される入力コネクタの名称に関する\n情報の表示は,上位ノード変数データを表\示するものであることから すると,被告プログラムは,「上位ノード変数データ」を表示する「ノ\nードデータテーブル表示ステップ」を備えている旨主張する。\nしかしながら,前記(ア)a認定のとおり,構成要件Gの「前記上位\nノード変数データ」は,「当該ノードの直系上位ノードのノードデー タ」に含まれる「変数の値」を含むデータであると認められるところ, 入力コネクタの名称は,「変数の値」であるとはいえないから,控訴 人の上記主張は,その前提を欠くものであり,理由がない。
b 控訴人は,被告プログラムの構成g’に関し,被告プログラムのS\nay Textボックスの「スクリプトエディタ」において「親から の変数を取得」機能を使う場合,上位ノードであるSayボックスの\n変数から利用可能なものを一覧表\示する機能があるから,被告プログ\nラムは,「上位ノード変数データ」を表示する「ノードデータテーブ\nル表示ステップ」を備えている旨主張する。\n しかしながら,控訴人の上記主張は,「スクリプトエディタ」にお いて,どのような「上位ノード変数データ」が表示されるのかについ\nて具体的に主張するものではないから,その主張自体理由がない。
c 以上によれば,被告プログラムは,「上位ノード変数データ」を表\n示する「ノードデータテーブル表示ステップ」を備えているものと認\nめることはできないから,構成要件Gの「前記表\示された木構造のノ\nードのうちの選択されたノードの前記自ノード変数データ,前記上位 ノード変数データ及び前記スクリプトを表示するノードデータテーブ\nル表示ステップ」を備えているものと認めることはできない。\n
ウ まとめ
以上のとおり,被告プログラムは,構成要件Gの「木構\造を表示する木\n構造表\示ステップ」及び「ノードデータテーブル表示ステップ」を備えて\nいるものと認められないから,構成要件Gを充足しない。\n

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◆平成29(ワ)31706

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平成30(ワ)7123  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月24日  大阪地方裁判所

 CS関連発明についての侵害事件で、大阪地裁21部は技術的範囲に属しないと判断しました。争点は「前記指定地域の外に出た後,再び前記指定地域内に戻っても,同じ前記広告情報を前記無線通信装置に送信しない」という用語の技術的意義です。

ア そもそも,特許発明の技術的範囲は,願書に添付した特許請求の範囲の 記載に基づいて定めなければならないとされている(特許法70条1項)。 そこで,本件特許の特許請求の範囲の請求項1をみると,構成要件Eとして,次\nのように記載されている。 「前記広告情報管理サーバは,前記無線通信装置が一旦前記指定地域の外に出た 後,再び前記指定地域内に戻っても,同じ前記広告情報を前記無線通信装置に送信 しないこと,を特徴とする無線通信サービス提供システム。」 ここでは, 「前記広告情報管理サーバは,同じ前記広告情報を前記無線通信装置に送信しな いこと,を特徴とする無線通信サービス提供システム。」 と記載されるのではなく,「前記無線通信装置が一旦前記指定地域の外に出た後, 再び前記指定地域内に戻っても,」という文言(以下「本件指定地域に関する文言」 という。)がみられる。 このように,構成要件Eには本件指定地域に関する文言がわざわざ付加されてい\nるから,その文言には何らかの意味があるものとして理解すべきであり,構成要件\nEについて本件指定地域に関する文言がない場合と同じ解釈をすることは許されず, その文言によって本件発明1の構成が特定(限定)されているものと理解するのが\n相当である。
イ そこで,本件指定地域に関する文言の意義について検討すると,ここで いう「指定地域」とは,構成要件C及びDの記載を踏まえると,広告提供者から入\n手した配信先情報に含まれる,広告提供者が広告情報を配信する地域として指定し た地域のことである。 そして,構成要件Eは,構\成要件Dにおいて,無線通信装置が少なくとも1回は 広告情報の配信を受けたことを踏まえたものであるから,無線通信装置がその時点 で上記指定地域内に存在していたことが前提となるが,無線通信装置は,その性質 上,(1)その指定地域内に存在し続ける場合((1)の場合)もあれば,(2)指定地域外に 出る場合もあり,後者の場合については,指定地域外に出たままの場合((2)−1の 場合)もあれば,一旦指定地域外に出た後,再び指定地域内に戻る場合((2)−2の 場合)も想定される。 このうち,指定地域外に出たままの場合((2)−1の場合)に,無線通信装置に同 じ広告情報が送信されないことは明らかであるが(これは構成要件Eによるもので\nはなく,指定地域内の無線通信装置に広告情報を送信するという構成要件Dの構\成 による作用効果である。),指定地域内に存在し続けている場合((1)の場合)及び 一旦指定地域外に出た後,再び指定地域内に戻った場合((2)−2の場合)には,無 線通信装置に同じ広告情報が送信される可能性がある。\nそうすると,本件指定地域に関する文言は,無線通信装置に同じ広告情報が送信 される可能性がある場合のうち,上記(2)−2の場合だけを記載し,上記(1)の場合を あえて記載していないことになる。
ウ 以上のことを踏まえると,構成要件Eは,広告情報管理サーバが,特に,\n無線通信装置が一旦指定地域外に出た後,再び指定地域内に戻った場合に,同じ広 告情報を無線通信装置に送信しないことを特徴とするということを記載したものと 解すべきこととなる。 もっとも,これは,広告情報管理サーバが広告情報を無線通信装置に送信するも のであること(構成要件C)を踏まえ,同じ広告情報を再送信するかどうかという\n機能ないし作用効果に着目して記載されたものであり,その具体的構\成について, 当該広告情報管理サーバは,単に,同じ広告情報を無線通信装置に再送信しないよ うにする構成を備えているだけでは足りず,一旦指定地域外に出た後,再び指定地\n域内に戻ったことを把握して,当該無線通信装置に,同じ広告情報を再送信しない ようにする構成を備えていなければ,構\成要件Eを充足するとはいえないと解すべ きである。
エ 原告の主張について
(ア) 原告は,本件明細書の【0070】の記載を指摘し,構成要件Eは,\n広告情報管理サーバが,無線通信装置への広告の配信回数が0であるか1であるか を表す送信済フラグに基づいて,無線通信装置が一旦配信エリアの外に出た後,再\nび配信エリア内に戻った場合には,広告情報を再送しないようにする態様を含むも のと解すべきであると主張する。 原告の主張のように,構成要件Eが,無線通信装置への広告の配信回数のみによ\nって広告情報を再送信しないようにする態様を含むと解する立場をとると,無線通 信装置が一旦配信エリアの外に出た後,再び配信エリア内に戻った場合だけでなく, 無線通信装置が配信エリア内に存在し続けている場合にも,同じ広告情報が再送信 されなければ構成要件Eを充足することになる。\nしかしながら,「一旦前記指定地域の外に出た後,再び前記指定地域内に戻って も」という構成要件Eの用語は,一義的に明確というべきであるし,特許請求の範\n囲には,発明を特定するために必要な事項が記載され(特許法36条5項),特許 発明の技術的範囲が,特許請求の範囲の記載に基づいて定められることは前述のと おりであるから(同法70条1項),前記(2)−1と(2)−2の態様を区別する構成な\nしに,広告情報の配信回数を制限し得ることをもって,構成要件Eを充足すると解\nすることはできない。
(イ) 本件明細書の【0070】では,広告情報管理サーバによる広告情報 (広告メッセージ)の配信方法等について記載されており,広告を配信する際,「個 人情報データベースに項目として本広告メッセージに対応する広告IDを追加し, 送信済フラグを立てる。これにより,同じユーザに対して同一の広告メッセージを 重複して送信することがなくなる。即ち,携帯端末1Aが一旦指定地域の外に出た 後,再び指定地域内に戻っても,この送信済フラグが立っていれば,同じ広告メッ セージを送信しない。」と記載されている。 この記載のうち,「即ち」よりも前の記載は,個人情報データベースに配信した 広告メッセージに対応する広告IDを追加し,送信済フラグを立てると,その広告 メッセージの配信を受けたユーザーに対しては,同一の広告メッセージを重複して 送信することがなくなるとの当然の機能ないし作用効果を記載したものと解される\nが,「即ち」の後ろの記載は,「携帯端末1Aが一旦指定地域の外に出た後,再び 指定地域内に戻っても,この送信済フラグが立っていれば,同じ広告メッセージを 送信しない。」というものであり,前記イで判示したとおり,携帯端末1Aが指定 地域内に存在し続けており,同一の広告メッセージを重複して受信する可能性があ\nる場合があえて除かれていることから,「即ち」の前の記載と同視し得るものと認 めることはできず,「即ち」の前の記載と後ろの記載とは,本来,「即ち」という 接続詞を用いて接続することのできる関係にはないといわざるを得ない。 したがって,構成要件Eは,【0070】の「即ち」の後ろの記載に対応するも\nのであるが,上記検討したところによれば,「即ち」の前の記載が,構成要件Eの\n意味内容である,あるいは,本件発明1の実施例であるということはできない。 また,【0070】は【0069】の後に記載されているところ,【0069】 では,広告情報管理サーバが,広告配信サービス契約を結んだ全てのユーザの携帯 端末の位置情報を時々刻々更新しており,常にそれら端末の現在位置を把握してい ることが記載されている。そして,【0070】の「即ち」の後ろでは,無線通信 装置が指定地域内に存在し続けている場合が除かれていることからすると,そこで は,特に,無線通信装置が一旦指定地域外に出た後,再び指定地域内に戻った場合 に,同じ広告メッセージを送信しないということを記載したものと読むのが自然で ある。 以上のことを踏まえると,【0070】の記載内容によって,前記ウの解釈は左 右されないというべきである。
(ウ) 本件特許の出願経過について
・・・・
(d) 原告は,同日,特許庁審査官に対し,意見書を提出し,上記補正 後の特許請求の範囲の請求項1について,その内容を記載した上で,「特に,『前 記広告情報管理サーバは,前記無線通信装置が一旦前記指定地域の外に出た後,再 び前記指定地域内に戻っても,同じ前記広告情報を前記無線通信装置に送信しない こと』に特徴付けられるものであります。」「本願発明は,かかる特徴的な構成を\n有機的に関連付けて具備することにより,明細書の段落0070に記載した通り, 『これにより,同じユーザに対して同一の広告メッセージを重複して送信すること がなくなる。即ち,携帯端末1Aが一旦指定地域の外に出た後,再び指定地域内に 戻っても,この送信済フラグが立っていれば,同じ広告メッセージを送信しない。』 という特有の作用・効果を奏するものであります。」などと説明した。また,原告 は,拒絶理由通知における引用文献との対比の項目でも,上記構成を含む構\成を「最 大の特徴」とした上で,引用文献にはこの構成についての記載や示唆は一切なく,\n補正後の請求項に係る各発明は,引用文献に記載された発明から当業者が容易に発 明することができたものではないと結論付けていた(乙1)。
(e) その後,上記請求項26を本件特許の設定登録時のもの(前記第 2の1(3)ウ参照)と同じ内容に変更する補正がされるなどした後,本件特許につい て特許査定がされた。
c 前記bで認定した本件特許の出願経過に照らし検討すると,確かに, 構成要件Eは本件明細書に【0070】の記載があることを踏まえて追加されたも\nのであることがうかがわれるが,原告は,上記補正に当たって,構成要件Eの構\成 を「特徴的な構成」などと位置付けた上で,この構\成を含む構成についての記載や\n示唆が引用文献には一切ないことを前提として,これを強調していた。 他方で,乙3の1の1ないし乙4の2によれば,本件特許が出願された平成12 年9月以前から,インターネットを利用した広告情報(バナー広告)の配信サービ スの分野においては,ユーザー(利用者)に対して同じ広告が配信(表示)される\n回数をコントロール(制限)することによって,「バナーバーンアウト」(広告に 反応がなくなる状態)ないし「バナー飽き(wearout)」を防止し,効果的な宣伝広 告を実現することが広く行われていたと認められる。この点,原告も,乙3の1の 1等で触れられているダブルクリック社の DART や乙4の1,2の公知技術が,広告 の配信回数を管理するものであることを認めている。 そうすると,原告が本件特許の出願経過において,単に,本件特許の出願前から 広く行われ,公知技術でもあった同じ広告の配信回数を管理するという構成による\n機能ないし作用効果を構\成要件Eに記載し,これを本件特許の「特徴的な構成」な\nどとして強調していたとは考え難い。 むしろ,前記認定の原告による本件特許の出願経過における説明内容に加え,本 件特許の出願当時,広く行われ公知とされていた技術を前提とすれば,原告は,特 に,無線通信装置が一旦指定地域外に出た後,再び指定地域内に戻った場合に,同 じ広告情報を無線通信装置に送信しないようにする構成を強調していたと理解する\nのが自然である。 したがって,先に判示した構成要件Eの解釈は,原告による本件特許の出願経過\nにおける説明等とも整合的ということができ,これに反する原告の主張は採用でき ない。

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平成31(ネ)10014  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審同様、技術的範囲に属する、無効理由無し(サポート要件、実施可能要件、進歩性)と判断されました。

 上記(1)の認定事実によれば,本件発明1は,PCSK9とLDLRタンパク 質の結合を中和し,参照抗体1と競合する,単離されたモノクローナル抗体及びこ れを使用した医薬組成物を,本件発明2は,PCSK9とLDLRタンパク質の結 合を中和し,参照抗体2と競合する,単離されたモノクローナル抗体及びこれを使 用した医薬組成物を,それぞれ提供するものである。そして,本件各発明の課題は, かかる新規の抗体を提供し,これを使用した医薬組成物を作製することをもって, PCSK9とLDLRとの結合を中和し,LDLRの量を増加させることにより, 対象中の血清コレステロールの低下をもたらす効果を奏し,高コレステロール血症 などの上昇したコレステロールレベルが関連する疾患を治療し,又は予防し,疾患のリスクを低減することにあると理解することができる。\n本件各明細書には,本件各明細書の記載に従って作製された免疫化マウスを使用 してハイブリドーマを作製し,スクリーニングによってPCSK9に結合する抗体 を産生する2441の安定なハイブリドーマが確立され,そのうちの合計39抗体 について,エピトープビニングを行い,21B12と競合するが,31H4と競合 しないもの(ビン1)が19個含まれ,そのうち15個は,中和抗体であること, また,31H4と競合するが,21B12と競合しないもの(ビン3)が10個含 まれ,そのうち7個は,中和抗体であることが,それぞれ確認されたことが開示さ れている。また,本件各明細書には,21B12と31H4は,PCSK9とLD LRのEGFaドメインとの結合を極めて良好に遮断することも開示されている。 21B12は参照抗体1に含まれ,31H4は参照抗体2に含まれるから,21 B12と競合する抗体は参照抗体1と競合する抗体であり,31H4と競合する抗 体は参照抗体2と競合する抗体であることが理解できる。そうすると,本件各明細 書に接した当業者は,上記エピトープビニングアッセイの結果確認された,15個 の本件発明1の具体的抗体,7個の本件発明2の具体的抗体が得られることに加え て,上記2441の安定なハイブリドーマから得られる残りの抗体についても,同 様のエピトープビニングアッセイを行えば,参照抗体1又は2と競合する中和抗体 を得られ,それが対象中の血清コレステロールの低下をもたらす効果を有すると認 識できると認められる。 さらに,本件各明細書には,免疫プログラムの手順及びスケジュールに従った免 疫化マウスの作製,免疫化マウスを使用したハイブリドーマの作製,21B12や 31H4と競合する,PCSK9−LDLRとの結合を強く遮断する抗体を同定す るためのスクリーニング及びエピトープビニングアッセイの方法が記載され,当業 者は,これらの記載に基づき,一連の手順を最初から繰り返し行うことによって, 本件各明細書に具体的に記載された参照抗体と競合する中和抗体以外にも,参照抗 体1又は2と競合する中和抗体を得ることができることを認識できるものと認めら れる。 以上によれば,当業者は,本件各明細書の記載から,PCSK9とLDLRタン パク質の結合を中和し,参照抗体1又は2と競合する,単離されたモノクローナル 抗体を得ることができるため,新規の抗体である本件発明1−1及び2−1のモノ クローナル抗体が提供され,これを使用した本件発明1−2及び2−2の医薬組成 物によって,高コレステロール血症などの上昇したコレステロールレベルが関連す る疾患を治療し,又は予防し,疾患のリスクを低減するとの課題を解決できることを認識できるものと認められる。よって,本件各発明は,いずれもサポート要件に\n適合するものと認められる。
(3) 控訴人の主張について
控訴人は,本件各発明は,「参照抗体と競合する」というパラメータ要件と,「結 合中和することができる」という解決すべき課題(所望の効果)のみによって特定 される抗体及びこれを使用した医薬組成物の発明であるところ,競合することのみ により課題を解決できるとはいえないから,サポート要件に適合しない旨主張する。 しかし,本件各明細書の記載から,「結合中和することができる」ことと,「参照 抗体と競合する」こととが,課題と解決手段の関係であるということはできないし, 参照抗体と競合するとの構成要件が,パラメータ要件であるということもできない。\nそして,特定の結合特性を有する抗体を同定する過程において,アミノ酸配列が特 定されていくことは技術常識であり,特定の結合特性を有する抗体を得るために, その抗体の構造(アミノ酸配列)をあらかじめ特定することが必須であるとは認められない(甲34,35)。\n前記のとおり,本件各発明は,PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和し, 本件各参照抗体と競合する,単離されたモノクローナル抗体を提供するもので,参 照抗体と「競合」する単離されたモノクローナル抗体であること及びPCSK9と LDLR間の相互作用(結合)を遮断(「中和」)することができるものであること を構成要件としているのであるから,控訴人の主張は採用できない。\n
(4) 本件各訂正発明のサポート要件適合性
なお,本件訂正発明1は,本件発明1の参照抗体1(構成要件1B)を可変領域のアミノ酸配列によってさらに限定した参照抗体1’(構\成要件1B’)とするものであり,本件訂正発明2は,本件発明2の参照抗体2(構成要件2B)を可変領域のアミノ酸配列によってさらに限定した参照抗体2’(構\成要件2B’)とするものであるから,本件各訂正発明も,いずれもサポート要件に適合するものと認められる。
(5) 小括
以上によれば,本件各発明及び本件各訂正発明は,いずれもサポート要件に適合 するというべきである。
4 争点(2)イ(実施可能要件違反)について
(1) 前記3(1)の認定事実によれば,本件各明細書の記載から,本件発明1−1及 び2−1の抗体及び本件発明1−2及び2−2の医薬組成物を作製し,使用するこ とができるものと認められるから,本件各明細書の発明の詳細な説明の記載は,当 業者が本件各発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができる。\nしたがって,本件各発明は,いずれも,実施可能要件に適合するものと認められる。\n
(2) 控訴人の主張について
控訴人は,本件各発明は,抗体の構造を特定することなく,機能\的にのみ定義さ れており,極めて広範な抗体を含むところ,当業者が,実施例抗体以外の,構造が特定されていない本件各発明の範囲の全体に含まれる抗体を取得するには,膨大な\n時間と労力を要し,過度の試行錯誤を要するのであるから,本件各発明は実施可能要件を満たさない旨主張する。\nしかし,明細書の発明の詳細な説明の記載について,当業者がその実施をするこ とができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとの要件に適合することが求められるのは,明細書の発明の詳細な説明に,当業者が容易にその実施をできる程\n度に発明の構成等が記載されていない場合には,発明が公開されていないことに帰し,発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことになる\nからである。 本件各発明は,PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和することができ, PCSK9との結合に関して,参照抗体と競合する,単離されたモノクローナル抗 体についての技術的思想であり,機能的にのみ定義されているとはいえない。そして,発明の詳細な説明の記載に,PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和す\nることができ,PCSK9との結合に関して,参照抗体1又は2と競合する,単離 されたモノクローナル抗体の技術的思想を具体化した抗体を作ることができる程度 の記載があれば,当業者は,その実施をすることが可能というべきであり,特許発明の技術的範囲に属し得るあらゆるアミノ酸配列の抗体を全て取得することができ\nることまで記載されている必要はない。 また,本件各発明は,抗原上のどのアミノ酸を認識するかについては特定しない 抗体の発明であるから,LDLRが認識するPCSK9上のアミノ酸の大部分を認 識する特定の抗体(EGFaミミック)が発明の詳細な説明の記載から実施可能に記載されているかどうかは,実施可能\要件とは関係しないというべきである。そして,前記(1)のとおり,当業者は,本件各明細書の記載に従って,本件各明細 書に記載された参照抗体と競合する中和抗体以外にも,本件各特許の特許請求の範 囲(請求項1)に含まれる参照抗体と競合する中和抗体を得ることができるのであ るから,本件各発明の技術的範囲に含まれる抗体を得るために,当業者に期待し得 る程度を超える過度の試行錯誤を要するものとはいえない。 よって,控訴人の主張は採用できない。
(3) 本件各訂正発明の実施可能要件の適合性
なお,前記3(4)のとおり,本件訂正発明1は,本件発明1の参照抗体1(構成要件1B)を可変領域のアミノ酸配列によってさらに限定した参照抗体1’(構\成要件1B’)とするものであり,本件訂正発明2は,本件発明2の参照抗体2(構成要件2B)を可変領域のアミノ酸配列によってさらに限定した参照抗体2’(構\成要件2B’)とするものであるから,当業者は,本件各明細書の記載から,本件訂正発明1 −1及び2−1の抗体及び本件訂正発明1−2及び2−2の医薬組成物を作製し, 使用することができるものと認められ,本件各訂正発明も,いずれも実施可能要件に適合するものと認められる。\n

◆判決本文

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平成30(ネ)10043  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月3日  知的財産高等裁判所

 知財高裁(2部)は、化分野の発明について、特許請求の範囲が抽象的な表現で記載されている場合、特許発明の技術的範囲を具体的な実施例に限定せず、明細書などの記載から当業者が実施できる範囲は、その技術的範囲に含まれると判断基準を示しました。ただ、結論は、1審と同じく、技術的範囲に属しないとしました。問題の用語は「凝血促進活性を増大させる」です。

 本件特許請求の範囲の請求項1(本件発明1に係る特許請求の範囲)の 記載は,「第IX因子または第IXa因子に対する抗体または抗体誘導体であって, 凝血促進活性を増大させる,抗体または抗体誘導体(ただし,抗体クローンAHI X−5041:Haematologic Technologies社製,抗体 クローンHIX−1:SIGMA−ALDRICH社製,抗体クローンESN−2: American Diagnostica社製,および抗体クローンESN−3: American Diagnostica社製,ならびにそれらの抗体誘導体を 除く)。」であり,請求項4(本件発明4に係る特許請求の範囲)は請求項1を引用 している。ここで,「凝血促進活性を増大させる」との記載の意義については,本件 明細書においてこれを定義した記載はない上,「血液凝固障害の処置のための調製 物を提供する」(段落【0010】)という本件各発明の目的そのものであり,か つ,本件各発明における抗体又は抗体誘導体の機能又は作用を表\現しているのみで あって,本件各発明の目的又は効果を達成するために必要な具体的構成を明らかにしているものではない。\n特許権に基づく独占権は,新規で進歩性のある特許発明を公衆に対して開示する ことの代償として与えられるものであるから,このように特許請求の範囲の記載が 機能的,抽象的な表\現にとどまっている場合に,当該機能や作用効果を果たし得る構\成全てを,その技術的範囲に含まれると解することは,明細書に開示されていない技術思想に属する構成までを特許発明の技術的範囲に含めて特許権に基づく独占権を与えることになりかねないが,そのような解釈は,発明の開示の代償として独\n占権を付与したという特許制度の趣旨に反することになり許されないというべきで ある。
したがって,特許請求の範囲が上記のように抽象的,機能的な表\現で記載されて いる場合においては,その記載のみによって発明の技術的範囲を明らかにすること はできず,上記記載に加えて明細書及び図面の記載を参酌し,そこに開示された具 体的な構成に示されている技術思想に基づいて当該発明の技術的範囲を確定すべきである。もっとも,このことは,特許発明の技術的範囲を具体的な実施例に限定す\nるものではなく,明細書及び図面の記載から当業者が理解することができ,実施す ることができるのであれば,同構成はその技術的範囲に含まれるものと解すべきである。\n
イ そこで,本件明細書において開示された具体的構成に示されている技術思想について検討する。\n
(ア) ある抗体が,FIX又はFIXaに結合し,FIXaの凝血促進活性 を増加するか又はFVIII様活性を有することを示すための試験方法としては, 凝血試験や色素形成試験等があり,これらによって評価が可能である(段落【0013】,【0014】,【0037】,【0065】)。そして,FIXaに対する抗体を\nスクリーニングし,色素形成アッセイによってFVIII様活性を有するモノクロ ーナル抗体(モノスペシフィック抗体)が複数作製されており(実施例4,9),そ の中でFVIIIインヒビターを有する血漿の凝血をもたらす抗体(193/AD 3)も確認されている(実施例7)。したがって,当業者は,FIXaに対する抗体 をスクリーニングすることにより,過度の試行錯誤を要することなく,一定の割合 で凝血促進活性を増大させるモノクローナル抗体(モノスペシフィック抗体)を作 製できたと認められる。 また,凝血促進活性を増大させるモノクローナル抗体(モノスペシフィック抗体) からの誘導体も複数作製されているから(例えば,CDR3領域由来ペプチド及び その誘導体〔実施例11,12〕,キメラ抗体〔実施例13〕,Fabフラグメント 〔実施例15〕,単鎖抗体〔scFv。実施例10,16,18〕,ミニ抗体〔実施 例17〕),当業者は,凝血促進活性を増大させるモノクローナル抗体(モノスペシ フィック抗体)からの誘導体も作製できたと認められる。
 (イ) バイスペシフィック抗体については,本件明細書において,実施例と して作製された例は記載されておらず,FIX又はFIXaに結合するアーム以外 のアームが結合する対象の抗原がいかなるものかも開示されていない。 しかし,バイスペシフィック抗体は,抗体誘導体の一態様として明記されている (段落【0019】及び【0026】)。そして,バイスペシフィック抗体ではない ものの,凝血促進活性を増大させるモノスペシフィック抗体からの誘導体も複数作 製されている(実施例10〜13,15〜18)。 また,FIX又はFIXaに対するバイスペシフィック抗体の作製法は,本件出 願日当時に複数知られており,その中でも,クワドローマ技術は簡便な方法であり, 本件出願日当時の当業者にとって,合理的な時間及び努力の範囲内でバイスペシフ ィック抗体を作製できる手法であったのであり,また,バイスペシフィック抗体を 産生するクワドローマを融合し及び選択する種々の方法及びプロトコルは,199 9年において,利用可能であり,良好に確立され,二重特異性のIgG分子を作製するのに幅広く用いられていた(本件明細書の段落【0026】,甲97,100〜\n104,甲140の1)のであるから,当業者は,本件出願日の技術常識から,F IX又はFIXaに対するバイスペシフィック抗体を作製可能であったと認められる。\nさらに,前記3(2)のとおり,バイスペシフィック抗体のFVIII補因子活性と 抗FIXのモノスペシフィック抗体とは乏しい相関関係しかなく,バイスペシフィ ック抗体のFVIII補因子活性は,抗FIX抗体由来の構造だけなく,抗FX抗体由来の構\造にも影響を受けるのであるが,バイスペシフィック抗体においては,FIX又はFIXaに対する結合部位は1価になるものの,1価でも凝血促進活性 を増大させる効果があり(本件明細書実施例10〜12,15,16,18),バイ スペシフィック抗体の二つの抗原間で立体干渉が生じない限り,モノスペシフィッ ク抗体の活性は維持される(甲140の1)。FIX又はFIXa以外の結合部位が FXである場合を想定すると,本件出願日当時,FIXaとFXaの構造が明らかとなっており,FIXaとFXaの立体構\造からすると,当業者は,FIXaとFXに結合するバイスペシフィック抗体(被控訴人が主張する非対称型バイスペシフ ィック抗体)で,FIXa結合部位の活性に対する干渉は起こりにくいと予測できる(甲140の1)。\nしたがって,当業者は,バイスペシフィック抗体(被控訴人が主張する非対称型 バイスペシフィック抗体)が,モノスペシフィック抗体が有する凝血促進活性を増 大させる作用を維持できると予測できたと認められる。そうすると,バイスペシフィック抗体(被控訴人が主張する非対称型バイスペシフィック抗体)についても,\nモノスペシフィック抗体の活性を維持しつつ当該抗体を改変した抗体誘導体の一態 様として「抗体誘導体」に含まれると解される。
(ウ) 以上によると,本件各発明の技術的範囲に含まれるというためには, 「第IXa因子の凝血促進活性を実質的に増大させる第IX因子又は第IXa因子 に対するモノクローナル抗体(モノスペシフィック抗体)又はその活性を維持しつ つ当該抗体を改変した抗体誘導体」であることが必要であるものの,バイスペシフ ィック抗体(被控訴人が主張する非対称型バイスペシフィック抗体)は「抗体誘導 体」の一態様としてこれに含まれ得ると解すべきである。 もっとも,FIX又はFIXaに対するモノクローナル抗体(モノスペシフィッ ク抗体)がFIXaの凝血促進活性を実質的に増大させるものでない場合には,別 異に解すべきである。すなわち,本件各発明の技術的範囲に属するというためには, 「第IXa因子の凝血促進活性を実質的に増大させる第IX因子又は第IXa因子 に対するモノクローナル抗体(モノスペシフィック抗体)又はその活性を維持しつ つ当該抗体を改変した抗体誘導体」であることが必要であると解されるところ,こ れには,FIXaの凝血促進活性を実質的に増大させるものではないFIX又はF IXaに対するモノクローナル抗体(モノスペシフィック抗体)は含まれないし, このようなモノクローナル抗体(モノスペシフィック抗体)から誘導される抗体誘 導体(バイスペシフィック抗体もこれに含まれる。)も含まれないというべきである。 このような抗体誘導体(バイスペシフィック抗体)は,たとえ,それ自体がFIX aの凝血促進活性を増大させる効果を有するものであったとしても,本件各発明の 課題解決手段とは異なる手段によって凝血促進活性を増大させる効果がもたらされ ているのであって,本件明細書の記載に基づいて当業者が理解し,実施できるもの とはいえないというべきである。
(エ) 被控訴人は,(1)非対称型バイスペシフィック抗体の著しく高い活性 は,一つの分子が2種類のアームを有するというバイスペシフィック抗体に固有の 機序によって初めて実現されたもので,非対称型バイスペシフィック抗体は,本件 明細書においてハイブリドーマ方法によって得られたモノスペシフィック抗体とは 活性及び機序の点で大きく異なっており,本件各発明の課題解決手段とは異なる手 段によって凝血促進活性を増大させる効果がもたされていることになる,(2)FVI II補因子活性は,抗FX腕によって影響を受けるため,抗FIX(a)腕及び抗 FX腕の何れの組合せが非対称型バイスペシフィック抗体のFVIII補因子活性 を発現するのか,予測することが困難である,(3)現時点においてすら,非対称型バ イスペシフィック抗体の適切な評価手法が確立できていないことなどからすると, 本件明細書は,非対称型バイスペシフィック抗体を想定していなかったといえると 主張する。 しかし,バイスペシフィック抗体(被控訴人が主張する非対称型バイスペシフィ ック抗体)が抗体誘導体の一態様として「抗体誘導体」に含まれ得ることは,既に 判示したとおりであって,このことは,被控訴人が主張する非対称型バイスペシフ ィック抗体の凝血促進活性を増大させる効果が大きいことや,抗FIX(a)腕と 抗FX腕の何れの組合せが効果があるかを予測することが困難であることや現時点において,非対称型バイスペシフィック抗体の適切な評価方法が確立していないこ\nとによって左右されるものではない。 (オ) 本件明細書においては,凝血促進活性を図る方法について,2時間の インキュベーション後のFVIIIアッセイ(例えば,COATEST(登録商標) アッセイまたはイムノクロム(Immunochrom)試験)において少なくと も3のバックグラウンドの対測定値の比を示すとされている(段落【0013】,【0 014】。なお,「バックグラウンドの対測定値の比」は,「ネガティブコントロール との比」と同義である。)が,色素形成アッセイ以外にも凝固アッセイなどFVII I活性を決定するために使用される全ての方法が使用でき(段落【0037】,【0 065】),同じ色素形成アッセイであってもインキュベーション時間が2時間では ない例も記載されている(実施例2,4,5,実施例11・図18〜22,実施例 15〜18)。
このように,本件明細書に記載された凝血促進活性の評価方法は,複数存在して おり,一般に,評価方法が異なればその基準が同一であるとは限らないとはいえる ものの,本件明細書では,段落【0013】及び【0014】に前記2(1)クのとお り記載され,色素形成アッセイにおけるネガティブコントロールとの比が,1.7 程度(例えば,段落【0081】・図11において,198/AP1はネガティブコ ントロールとの比が1.7程度であるが,凝血促進活性を示さないとされている。 段落【0067】・図7A(196/AF2 35μM Pefabloc Xa〔登 録商標〕),段落【0068】・図7B(198/AM1 35μM Pefablo c Xa〔登録商標〕)も同様。)や2程度(段落【0105】・図20において,A 1/5はネガティブコントロールとの比が2程度であるが,有意な凝血促進活性は ないと評価されている。)の場合においては,「凝血促進活性を増大させる」とは評 価されていない。 本件明細書のこれらの記載に加え,前記アのような本件各発明の請求項の記載を 考慮すると,当業者は,本件各発明の範囲に含まれる抗体又はその誘導体は,複数 の評価方法のうち,色素形成アッセイ(FVIIIアッセイ)を実施した場合には, 少なくとも3のバックグラウンドの対測定値の比(ネガティブコントロールとの比) を示すものが本件各発明の抗体及び抗体誘導体であると理解すると認められるから, 「凝血促進活性を増大させる」とは,色素形成アッセイを実施した場合には,ネガ ティブコントロールとの比が3を超えることを意味すると認めるのが相当である。 これに対し,控訴人らは,「凝血促進活性を増大させる」について,当業者は,ネ ガティブコントロールとの比が1を超えるものであるか否かで判断する旨主張し, 本件明細書の段落【0013】の記載は,「最終的に生成された物の評価をする際に 何らかの値を決めておく必要があるので,とりあえず3としたという程度の意味で ある」(甲131の3頁),「任意に設定された仮の基準であり,すべての候補物質に 適応すべき必須の条件ではない」(甲132の3頁),「ノイズや測定誤差の大きさに 関する記載がない以上,統計学的議論から根拠をもった基準として3を導くことは できない」(甲136の1頁)などの意見書を提出するが,これらの意見書によると, 本件各発明の技術的範囲が当業者にとって明らかでないことになるから,これらの 意見書の意見や控訴人らの主張を採用することはできないことは,既に判示したと おりである。
(2) 上記(1)のとおり,「凝血促進活性を実質的に増大させる」とは,色素形成 アッセイを実施した場合のネガティブコントロールとの比が3を超えることを意味 するが,色素形成アッセイの測定方法について,控訴人らは,本件明細書の記載及 び技術常識によると,コンティニュアス法によるアッセイを行うのであればインキ ュベーション時間を2時間とし,サブサンプリング法によるアッセイを行うのであ れば第1ステップのインキュベーション時間を5分とし,長時間のインキュベーシ ョン時間をとるのであれば,酵素の最大反応速度をみるために,継続的に測定すべ きである旨主張する。
ア コンティニュアス法及びサブサンプリング法について 証拠(甲210,甲229の1)及び弁論の全趣旨によると,サブサンプリング 法とは,FXaを生成させる第1ステップと,生成したFXaを定量する第2ステ ップを分離して実施する色素形成アッセイの方法であり,第1のステップではFX aを生成させるのに必要な試薬と被験抗体を混合させ,一定時間インキュベーショ ンさせてFXaを生成し,第1ステップで生成されたFXaの反応をみるために, 第2ステップに移行する前にFXaの生成を止め,第2ステップで,上記混合物に 発色性合成基質を添付することで,第1ステップで生成されたFXaが発色性合成 基質を切断し,発色する様子を測定するという標準的な FVIIIアッセイで用い られている方法であること,コンティニュアス法とは,第1ステップ(FXa生成 反応)及び第2ステップ(FXaによる発色反応)からなる一連の反応を1ステッ プで行う方法であり,被験抗体,FIXa,FX,リン脂質,カルシウムイオン, 発色性合成基質等の一連の反応に必要な試薬を全て最初から投入し,第1ステップ であるFXa生成反応と,第2ステップである生成したFXaによる発色反応とを 同時に進行させて,吸光度を経時的に測定することにより,FXa生成量の推移を 継続的に観察するものであることが認められる。
 イ 証拠(甲208,211,213,乙39)及び弁論の全趣旨によると, 本件明細書の段落【0013】に記載されているCOATEST(登録商標)やイ ムノクロムは,サブサンプリング法の色素アッセイキットであり,コアテストの仕 様書や,イムノクロムの後継品であるテクノクロムの仕様書にはインキュベーショ ン時間は5分間とされていることが認められるが,本件明細書の段落【0013】 においては,インキュベーション時間は2時間とされているから,本件明細書の段 落【0013】においては,サブサンプリング法を用いつつも,インキュベーショ ン時間を2時間として色素形成アッセイを実施したところ,少なくとも3のバック グラウンドの比を示すものが本件各発明である旨記載されていることになる。 この点について,控訴人らは,インキュベーション時間を2時間とすると,イン キュベーションの途中で,基質の消費に伴い,反応速度は最大反応よりも低下し, 第1ステップのインキュベーション時間の間,FIXaが失活してしまい,その結 果,FXaの生成速度も低下し,さらに,生成物であるFXaも自己消化を起こし, 血液凝血性やアミド活性を持たないFXaγに変換してしまうので,FXaの産出 量は本来の産出量より少なくなっていて,適切でなく,インキュベーション時間は 仕様書のとおり5分が適切であると主張する。 しかし,本件明細書には,上記のとおり,インキュベーション時間を2時間とし たものしか記載されていないのであって,本件明細書においては,インキュベーシ ョン時間を仕様書の記載に反してあえて2時間とし,そのときのFXaの産出量を もって,3のネガティブコントロールとの比を評価するときの産出量としているの であるから,当業者は,3のネガティブコントロールとの比を評価するに当たり, インキュベーション時間が5分の場合を想定することはできないというべきである。 なお,本件明細書において,インキュベーション時間を2時間とした理由につい ては,本件明細書に記載はなく,本件の証拠によるも必ずしも明らかでないが,そ のことは上記判断を左右するものではない。 そうすると,当業者は,本件各発明の「凝血促進活性を増大させる」というため には,インキュベーション時間を2時間とする測定を要すると理解すると解される。
ウ 以上によると,本件各発明の技術的範囲に含まれるというためには,「第 IXa因子の凝血促進活性を実質的に増大させる第IX因子又は第IXa因子に対 するモノクローナル抗体(モノスペシフィック抗体)又はその活性を維持しつつ当 該抗体を改変した抗体誘導体」であり,インキュベーション時間を2時間とする色 素形成アッセイにおけるネガティブコントロールとの比が3を超えるものを意味す ると認めるのが相当である。
・・・
エ 以上によると,被控訴人製品は,「第IXa因子の凝血促進活性を実質的 に増大させる第IX因子又は第IXa因子に対するモノクローナル抗体(モノスペ シフィック抗体)又はその活性を維持しつつ当該抗体を改変した抗体誘導体」に該 当するとは認められない。

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◆平成28(ワ)11475

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平成29(ワ)44181  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月18日  東京地方裁判所

 東京地裁(40部)は、構成要件11D等における「送信先」としては、「ドメイン」を含まないとして、技術的範囲に属しないと判断しました。均等侵害も第1要件を満たさないと判断されました。問題の構成要件における特定は、「受信した電子メールに設定された複数の送信先を個々の送信先に分割する分割手段」というものです。原告キヤノンITソ\リューションズ(株)代理人鮫島弁護士、被告デジタルアーツ(株)代理人大野聖二弁護士です。

 原告は,制御ルールのリストの例示である【図5】の「条件定義部」の 「受信者」欄に,「*@zzz.co.jp」が定められており,これはドメインを表\nすものであるから,「送信先」には電子メールアドレスのみならず,ドメ インを含むと主張する。 しかし,前記のとおり,本件明細書等1には,制御ルールに関し,「「条 件定義部」は,「発信者(送信元)」,「受信者(宛先)」,「その他条 件」から構成される。…「受信者(宛先)」には,メール送受信端末11\n0から取得する電子メールの宛先(To,Cc,Bcc)の電子メールア ドレス(受信者情報) が設定されている」(段落【0040】),「「発 信者(送信元)」,「受信者(宛先)」には,それぞれ電子メールアドレ スを複数設定することができ,アスタリスクなどのメタ文字(ワイルドカ ード)を使うことによって任意の文字列を表すこともできる」(段落【0\n041】)と記載されており,これらの記載によれば,上記「*@zzz.co.jp」 は,ドメインを意味するのではなく,「*」に任意の文字列を含み,ドメイ ン名を「zzz.co.jp」とする複数の電子メールアドレスを意味するという べきである。
原告は,「*@zzz.co.jp」がドメインを意味することは,複数の特許文献 (甲24,30〜32,乙15)などの記載からも裏付けられると主張す るが,特許請求の範囲や発明の詳細な説明において使用される言葉の意義 は各発明により異なることから,構成要件11D等の「送信先」の意義は\n本件特許に係る特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載に基づいて 解釈されるべきである。本件明細書等1の「*@zzz.co.jp」がドメインを意 味すると解し得ないことは上記判示のとおりであり,原告の挙げる他の文 献等の記載は上記結論を左右するものではない。
(イ) 原告は,本件明細書等の段落【0061】及び【図4】のステップS4 02には,「受信者」の「宛先」単位で電子メールの分割をすることを記 載しているが「受信者」の「宛先」にはドメインも含まれると主張する。 しかし,段落【0061】には「各宛先(受信者)のそれぞれを単一の 宛先としたエンベロープをそれぞれ生成する」と記載されているところ, 同エンベロープの生成を説明する【図12】には,送信先(受信者) の電 子メールアドレスとして設定されている「A」,「B」,「C」のそれぞ れを単一の宛先とするエンベロープ情報をそれぞれ生成することが図示 されているのであるから,同段落の「各宛先(受信者)」とは電子メール アドレスを意味するというべきである。
(ウ) 原告は,本件明細書等1の段落【0003】に記載の従来技術である乙 15公報における「宛先」には「電子メールアドレス」又は「ドメイン」 であることが記載されており,本件発明1において分割する単位をドメイ ンとしてもこの従来技術の課題を解決することができると主張する。 そこで,乙15公報をみるに,その段落【0032】には,【図2】の 「項目203,205にあっては,アカウントを*として,ドメインのみ を指定するとした設定も可能である」と記載されているが,ここにいう項\n目203は送信メールの一時保留機能を利用する場合であって,一時保留\nせずに,即配信したいメールアドレスの即配信リストを設定する項目であ り,同図の項目205は,全ての送信保留中メールを本人(送信者)に配 送する場合であって,配送を希望しない送信保留中メールを本人(送信者) に送信しないメールアドレスの送信不要リストを設定する項目である(段 落【0030】)。【図2】
このように,項目203及び同205は即配信又は送信不要リストを設 定するためのものであるから,段落【0032】の趣旨は,一時保留せず に即配信したいメールアドレスの即配信リスト(項目203)や,送信保 留中メールを本人(送信者)に送信しないメールアドレスの送信不要リス ト(項目205)に,任意のドメイン名を有する複数のメールアドレスを 一括して設定することも可能であることを述べたものにすぎず,電子メー\nルの「宛先」にドメインが含まれることを示すものということはできない。 そうすると,同段落の記載をもって従来技術である乙15公報における 「宛先」に「ドメイン」が含まれると解することはできないので,原告の 上記主張は前提において採用し得ないというべきである。
(エ) 原告は,電子メールをドメイン単位で分割する場合でも本件発明1の課 題を解決し得ると主張する。 しかし,電子メールをドメイン単位で分割するとなると,同一ドメイン の複数の電子メールのうち,一つのみの送出を保留すべきような場合に上 記課題を解決し得ないことは,前記判示のとおりである。 原告は,本件発明1はいかなる場合でも電子メールの送出制御を効率的 に行うことを課題と設定しているのではないと主張するが,本件発明1が その課題を解決し得ない構成を含むとは考え難く,特許請求の範囲及び本\n件明細書等1の記載に照らしても,「送信先」にドメインを含むとは解し 得ないことも,前記判示のとおりである。
エ 以上のとおり,構成要件11D等における「送信先」は「電子メールアド\nレス」のみを指し,「ドメイン」を含まないと解することが相当である。
・・・・
特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載,特に明細書 記載の従来技術との比較から認定されるべきであるところ(知財高裁平成2 7年(ネ)第10014号同28年3月25日判決),本件明細書等1には, 従来技術の「複数の送信先が記載された電子メールに対しては,誤送信の可 能性がある送信先が1つでも含まれていれば,その他の送信先に対するメー\nル送信までもが保留,取り消しがされることとなる」(段落【0004】) という課題を解決するため,電子メールに設定された複数の送信先を個々の 送信先に分割し,記憶手段に記憶されている制御ルール等に従って,電子メ ールの送出に係る制御内容を決定し,決定された制御内容に従って電子メー ルの送信制御を行うなどの構成を備えることにより,「ユーザによる電子メ\nールの誤送信を低減可能とすると共に,宛先に応じた電子メールの送出制御\nを行うことにより効率よく電子メールを送出させることができる」(段落【0 008】)などの効果を奏するものである。
イ 原告は,本件特許1の特許メモ(乙9)などを根拠に,本件発明1の本質 的部分は,「送出制御内容を,電子メールの送信元と送信先とに対応付けた 制御ルールと,分割された電子メールの送信先と送信元とに従って,分割さ れた送信先に対する電子メールの送出に係る制御内容を決定すること」(構\n成要件11E)にあると主張する。 しかし,本件発明1の従来技術として挙げられているのは乙15公報であ り,本件明細書等1に記載されている課題は「複数の送信先が記載された電 子メールに対しては,誤送信の可能性がある送信先が1つでも含まれていれ\nば,その他の送信先に対するメール送信までもが保留,取り消しがされるこ ととなる」というものであるところ,同課題を解決するためには,電子メー ルに設定された複数の送信先を電子メールアドレスごとに分割した上で,制 御ルールを適用することが不可欠である。そうすると,構成要件11D等に\n係る構成は本件発明1の本質的部分というべきである。\n 原告は,特許メモ(乙9)の記載を根拠とするが,同メモには,本件特許 の出願時の複数の公知文献に本件発明1に係る構成が記載されているかど\nうかが記載されているにすぎず,本件発明1の従来技術として挙げられた乙 15公報との対比がされているものではなく,また,本件発明1の本質的部 分の所在を検討するものでもないので,同メモに基づいて,本件発明1の本 質的部分が構成要件11Eに係る構\成にあるということはできない。

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平成30(ワ)24717  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月17日  東京地方裁判所(46部)

 ゼンリンに対する地図表示に関する特許侵害事件です。争点は、構\成要件D、Fの「各ページを適宜に分割して区画化し,…住宅建物の所在する番地を前記地図上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対応させて掲載」を具備していない、さらに均等侵害についても第1要件を満たさないと判断されました。

 特許請求の範囲の「各ページを適宜に分割して区画化し,…住宅建物の所 在する番地を前記地図上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画 の記号番号と一覧的に対応させて掲載」という記載(構成要件D,E及びF)\nに照らせば,構成要件Dの「適宜に分割して区画化」とは,ページの特定の\n部分に記号番号を付し番地とこれに対応するページの特定の部分を一覧的 に示したりすることができるよう,検索すべき領域の地図のページを分割し, 認識できるようにすることといえる。 そして,本件発明は, 前記1(2)のとおり、地図上に公共施設や著名ビル等 以外の住宅及び建物は番地のみを記載するなどし,全ての建物等が所在する 番地について,記載ページと当該ページ内で分割された区画のうち当該番地 が記載された区画を一覧的に対応させて掲載した索引欄を設けることによ って,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅地図の提供を可能\にする というものであり,本件発明の地図の利用者は,索引欄を用いて,検索対象 の建物等が所在する地番に対応する,ページ及び当該ページにおける複数の 区画の中の該当の区画を認識した上で,当該ページの該当区画内において, 検索対象の建物等を検索することが想定されている。そのためには,当該ペ ージについて,それが線その他の方法によって複数の区画に分割され,利用 者が該当の区画を認識することができる必要があるといえる。そうすると, 本件明細書に記載された本件発明の目的や作用効果に照らしても,本件発明 の「区画化」は,ページを見た利用者が,線その他の方法及び記号番号によ り,検索対象の建物等が所在する区画が,ページ内に複数ある区画の中でど の区画であるかを認識することができる形でページを分割することをいう といえる。
 また 前記(2)のとおり、本件明細書には発明の実施の形態において,本件 発明を実施した場合における住宅地図の各ページの一例として別紙「本件明 細書図2」及び「本件明細書図5」が示されているところ,これらの図にお いては,いずれも道路その他の情報が記載された長方形の地図のページが示 されたうえで,そのページが,ページ内にひかれた直線によって仕切られて 複数の区画に分割されており,その複数の区画にそれぞれ区画番号が付され ている。また,本件明細書図4の索引欄には,番地に対応する形でページ番 号及び区画番号が記載されており,利用者は,検索対象の建物の番地から, 索引欄において当該建物が掲載されているページ番号及び区画番号を把握 し,それらの情報を基に,該当ページ内の該当区画を認識して,その該当区 画内を検索することにより,目的とする建物を探し出すことが記載されてい る(【0028】)。ここでは,上記の特許請求の範囲の記載や発明の意義に 従った実施の形態が記載されているといえる。 加えて,本件明細書には,本件発明の「区画化」の用語を定義した記載は なく,【0017】ないし【0032】及び別紙「本件明細書図1」ないし 「本件明細書図5」で記載された実施形態以外には本件発明の実施形態の具 体的記載はない。なお,後記イのとおり,本件明細書の【0033】【00 37】に記載された地図は,本件発明の実施形態を記載したものとはいえな い。
したがって,本件明細書における発明の実施の形態に係る記載からしても, 構成要件Dの「適宜に分割して区画化」とは,ページを見た利用者が,線そ\nの他の方法及び記号番号により,検索対象の建物等が所在する区画が,ペー ジ内に複数ある区画の中でどの区画であるかを認識することができる形で ページを分割することをいうと解される。
イ これに対し,原告は,本件明細書(【0033】【0037】)は,本件発明 の実施形態として,コンピュータが自動的に区画を探し出し,当該区画を画 面中央に配置し,当該区画内にある所望の建物をユーザが直接認識できる電 子住宅地図(全戸氏名入り電子住宅地図)を開示しており,このような構成\nを備える電子住宅地図では,ユーザが視覚的に地図内の位置を分かりやすく 探せるように仕切り線を設ける必要はないから,「区画化」もまたユーザが 目に見える形で仕切る構成に限定されない旨主張する。\n確かに,本件明細書には,全戸氏名入り電子住宅地図として「戸番地(住 所地番及び号)をキーとして,電子電話帳11の氏名データと,住所入り電 子住宅地図12のポリゴンデータとを連結する。」(【0035】),「この全戸 氏名入り電子住宅地図14は,パソコン13のキーボードから氏名を入力す\nれば,その人物の居住する建物を中心にした地図がパソコン13の表\示装置 に表示され,その人物の居住する建物にマークが付されて,そのマークが点\n滅する。」(【0037】)との記載がある。
しかし,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)には,上記【0037】 記載の動作に対応する構成の記載はない。また,本件明細書には,「公官庁\nや住宅関係の企業では,今まで通り氏名入りの住宅地図を必要とする場合も 考えられる。そのような場合でも,…全戸氏名入りの住宅地図を作成するこ とができる。」(【0033】)との記載があるところ,上記記載中の「今まで 通り氏名入りの住宅地図」とは,「建物表示に住所番地ばかりではなく,居\n住者の氏名も全て併記」された「従来の住宅地図」(【0002】)を指すと 解されること,【0037】の全戸氏名入り電子住宅地図14においては, 利用者がパソコン13のキーボードから氏名を入力することによりその人\n物が居住する建物を検索する場合,マークの付された建物に表示された氏名\nを視認することによって検索の目的とする建物との同一性を確認するもの と理解できることからすると,全戸氏名入り電子住宅地図14は,「全戸」 の氏名が表示された地図であるものと認められる。そうすると,全戸氏名入\nり電子住宅地図14は,構成要件Bの「検索の目安となる公共施設や著名ビ\nル等を除く一般住宅及び建物については居住人氏名及び建物名称の記載を 省略し」の構成を備えていない。\n
 したがって,本件明細書記載の全戸氏名入り電子住宅地図14は,本件発 明の実施形態に含まれるとは認めることはできない。なお,本件発明の出願 経過によれば,本件特許出願の願書に最初に添付した明細書(乙8の2,8 の3)記載の特許請求の範囲は旧請求項1ないし11からなり,旧請求項7 ないし11には,「全戸氏名入り電子住宅地図作成方法」に係る発明の記載 があり,発明の詳細な説明中の【0014】ないし【0016】に旧請求項 7ないし11を引用した記載部分があったが,同年10月21日付けの手続 補正(乙9)により,旧請求項1の文言を補正し,旧請求項2ないし11及 び【0014】ないし【0016】を削除する補正がされたこと,上記補正 後の請求項1は,拒絶査定不服審判請求と同時にされた平成13年6月7日 付けの手続補正により本件発明の特許請求の範囲記載の請求項1と同一の 記載に補正されたこと(乙10)に照らすと,本件明細書の【0033】な いし【0038】記載の全戸氏名入り電子住宅地図14に関する記載は,平 成11年10月21日付けの手続補正により削除された旧請求項7ないし 11記載の「全戸氏名入り電子住宅地図作成方法」に係る発明の実施形態で あると認められる。 以上によれば,本件明細書記載の全戸氏名入り電子住宅地図14が本件発 明に含まれることを前提とする原告の上記主張は採用することができない。
・・・・
原告は,仮に縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図が,各ペー ジに線その他の方法及び記号番号を付されていない点において構成要件Dと相違\nするとしても,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,均等の 成立要件(第1要件ないし第3要件)を満たしているから,本件発明と均等なも のとして,本件発明の技術的範囲に属する旨主張する。 前記2(1)のとおり,本件発明の技術的意義は,検索の目安となる建物を除く建 物名称や居住者氏名の記載しないため,高い縮尺度で地図を作成することにより 小判で,薄い,取り扱いの容易な廉価な住宅地図を提供することや(構成要件B\n及びC),地図の更新のために氏名調査等の労力を要しないことによって廉価な住 宅地図を提供することを可能にするとともに,地図上に公共施設や著名ビル等以\n外の住宅及び建物は番地のみを記載し,地図のページを適宜に分割して区画化し たうえで,全ての建物等の所在する番地を,当該番地の記載ページ及び記載区画 を特定する記号番号と一覧的に対応させた索引欄を付すことによって,簡潔で見 やすく迅速な検索を可能にする住宅地図を提供すること(構\成要件DないしF) を可能にする点にあるものと認められる。\n
 しかしながら、被告地図においては前記2(1)で認定したとおり,地図を記載した各ページを線その他の方法及び記号番号によりユーザの目に見える形で複 数の区画に仕切られていないため,ユーザが所在番地の記載ページ及び区画の記 号番号の情報から検索対象の建物等の該当区画を探し,区画内から建物を探し出 すことができないから,迅速な検索が可能であるということはできない。\nしたがって,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,本件発 明の本質的部分を備えているものとは認めることができず,同被告地図の相違部 分は,本件発明の本質的部分でないということはできないから,均等の第1要件 を充足しない。よって,その余の点について判断するまでもなく,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められないから,本件発明の技術的範囲に属すると認めることはで\nきない。

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平成30(ワ)13400  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月11日  東京地方裁判所(40部)

 文言侵害、均等侵害とも否定されました。論点は係止爪の位置です。本件発明をアンテナ上方向(抜け方向)に荷重が加わったときに係止爪が外側に撓んで拡がることにより解決しているが、被告製品は本件発明1と異なる構成で実現していると、判断されました。\n


 均等論の本質的部分(第1要件)
 本件発明1と被告製品との相違点は,本件発明1では,係止爪がサブアー ム部の上端部に位置するものであるのに対し,被告製品では,爪部の上部に フック部が設けられ,爪部がサブアーム部の上端部に位置するとはいえない 点にあるところ,被告は,原告の均等侵害の主張に対し,第4要件を充足す ることは争わないものの,その余の要件の充足性を争うので,以下検討する。
(2) 第1要件(非本質的部分)について
ア 均等侵害が成立するための第1要件にいう本質的部分とは,当該特許発 明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思 想を構成する特徴的部分であり,このような特許発明の本質的部分を対象\n製品等が共通に備えていると認められる場合には,相違部分は本質的部分 ではないと解される。
イ 原告は,本件発明1のうち,挿入力の増加の防止のための構成がその本\n質的部分であるとした上で,被告製品は少なくともその課題の解決原理を 利用しているのであるから,被告製品のサブアーム部にフック部が付属し ているかどうかにかかわらず,同製品は本件発明1の本質的部分を備えて いると主張する。 しかし,本件発明1は,特に車載用等のアンテナの仮固定用ホルダにつ いて,従来例の仮固定用ホルダでは抜け力が弱いという問題があり,他方, 抜け力を強くするために係止爪の引っ掛かり量を多くすると,挿入力が強 くなり作業性が悪化することから,挿入力は弱いままで,抜け力を強くす るという課題を解決するためのものであると認められる(本件明細書等の 段落【0009】,【0013】〜【0015】)。そうすると,本件発 明1の本質的部分は,挿入力は弱いままで,抜け力を強くするための構成\nにあり,従来技術との対比でいうと,特に抜け力の強化のための構成が重\n要であるというべきである。 そして,本件発明1は,上記課題の解決のため,(1)メインアーム部と, メインアーム部の下端部で繋がったサブアーム部を有し,(2)当該下端部が サブアーム部の撓みの支点となり,(3)サブアーム部の上端部を,上端に向 かって肉厚が増加する係止爪からなるものとすることなどにより,取付孔 への挿入性の向上を図るとともに,アンテナ上方向(抜け方向)に荷重が 加わったときは,係止爪が外側に撓んで拡がることにより抜け力の増大を 可能にするものであると認められる(特許請求の範囲,本件明細書等の段\n落【0017】,【0029】,【0032】,【0033】,【003 6】,【0037】)。
ウ 他方,被告製品においては,サブアーム部の爪部の上部にフック部が設 けられ,当該フック部と車体のルーフ孔の距離が0.3mmであると認め られるから(乙13),抜け方向に荷重が加わった際に,フック部は0. 3mm程度以上は撓むことなくすぐに車体のルーフの内側面に当たり,爪 部がそれ以上に外側に撓ることは抑制されるものと認められる。 そして,被告製品における抜け力に関し,被告が実施した実験結果(乙 5)によれば,本件発明1の実施品の抜け力は186Nであるのに対し, 被告製品の抜け力は,215.8N,227N,271N,295Nであ り,最小でも約30N,最大で約110Nの差が生じたことが認められる。 また,被告が実施した,被告製品のコの字型部材(サンプル(1))と,被告 製品のコの字型部材を加工してフック部を除いたもの(サンプル(2))を用 いた実験結果(乙14)によれば,前者の抜け力の平均値は227.60 N,後者の抜け力の平均値は73.51N(いずれも10回実施)であり, フック部を備えたコの字型部材の方が,抜け力において約150N大きい ことが認められる。
前記のとおり,被告製品の爪部は外側への撓みが抑制されていると認め られるところ,これに上記の各実験結果を併せて考慮すると,被告製品は, 本件発明1の実施品に匹敵する抜け力を備えているということができ,そ の抜け力の大きさは,同製品がフック部を備えることに起因しているもの と考えるのが自然であり,少なくとも爪部の外部への撓みによるものでは ないということができる。 なお,原告は,乙14実験はサンプル(2)のフック部のカット加工の際に メインアーム部とサブアーム部の接続部の耐久性が損なわれた可能性が\nあるとして,乙14実験の信用性を争うが,サンプル(2)はフック部を爪部 からカットするものであり,上記接続部の耐久性が損なわれたことをうか がわせる事情は見当たらない。前記判示のとおり,乙14実験はサンプル (1)と(2)のそれぞれについて10回ずつ実験を行っているところ,数値にば らつきはあるものの,サンプル(1)は200N以上であり,サンプル(2)は概 ね60〜100程度であり,全体的に100N以上の差が生じていること に照らすと,その差が誤差や実験方法の不適切さに由来するものとはいう ことはできない。
エ 前記判示のとおり,抜け力の増大という課題を解決するための構成は本\n件発明1の本質的部分ということができるところ,本件発明1はこの課題 をアンテナ上方向(抜け方向)に荷重が加わったときに係止爪が外側に撓 んで拡がることにより解決しているのに対し,被告製品は爪部に加えてフ ック部を備えることにより抜け力を保持しているものと認められ,そうす ると,被告製品は本件発明1と異なる構成により上記課題を解決している\nということができる。

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平成28(ワ)12296  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月10日  大阪地方裁判所

 特許権侵害認定されましたが、損害額については102条2項について、「他の店舗用品とを組み合わせて販売されたバンドル取引商品である」ことを覆滅事由として、6割の推定が覆滅されました。

 まず,被告が経費として主張する製造委託費,検査費等は,いずれ も侵害者である被告において侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接 関連して追加的に必要となった経費に当たると認められるから,被告の利益額を算 定するに当たり,上記販売金額からこれらの経費の金額を控除すべきである。
b そして,乙53,56ないし61及び弁論の全趣旨によれば,製造 委託費(樹脂やプレートの材料代,プレートの組付費用を含み,金型の作成費用は 含まない。),検査費等として,別紙「被告の損害論における主張」の「被告の経 費額」欄記載の経費を支出したと認められる。
c 原告らは,被告主張の仕入価格には高すぎるなどの疑問があると主 張して,被告主張の経費のうち「製造委託費」の金額を争っている。 しかし,この主張は特許法102条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利 益の額の算定の問題に関連する主張であるが,そもそもその利益の額(限界利益の 額)の主張立証責任は特許権者側にあるものと解すべきであるから(知財高裁令和 元年6月7日判決・最高裁ウェブサイト),そのような観点から検討すると,原告 らは原告製品の製造販売に係る経費と対比をするのみで,被告製品の製造販売に係 る経費について具体的な立証をしているわけではない。 他方,被告製品の製造委託先は,被告と資本関係にあるわけではなく(乙62, 弁論の全趣旨),被告の主張する製品1個当たりの製造委託費は,別紙「被告主張 の被告製品1個当たりの経費額」の「製造委託費(材料費込)」欄記載のとおりで あるところ,その金額には一定の裏付け(乙56ないし61)がある。したがって, 原告らの上記指摘によって前記認定は左右されず,下記(ウ)で認定する金額を超え る利益が被告に生じていたことを認めることはできない。
(ウ) 被告の利益額
以上によれば,被告が本件特許権の侵害行為により受けた利益の額は,別 紙「被告の損害論における主張」の「被告の限界利益」欄記載のとおり,合計(中 略)円と認められる。
イ 推定覆滅事由の有無
(ア) 特許法102条2項における推定の覆滅については,侵害者が主張立 証責任を負うものであり,侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果 関係を阻害する事情がこれに当たると解され,例えば,(1)特許権者と侵害者の業務 態様等に相違が存在すること(市場の非同一性),(2)市場における競合品の存在,
(3)侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),(4)侵害品の性能(機能\,デザイン 等特許発明以外の特徴)などの事情について,考慮することができるものと解され る(前掲知財高裁令和元年6月7日判決)。
(イ) 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
a 原告扶桑産業について(甲1,33) 原告扶桑産業は,資本金の額を2500万円とする会社であり,その従 業員数は30名程度である。そして,原告扶桑産業は,店装用備品等の企画,製造 販売,陳列器具及び店舗什器関連備品等の製造販売等を事業品目とし,全国スーパ ー量販店備品卸売業者,全国インテリア装飾・店装業者等を取引先としている。そ して,原告製品については,被告や他の企業に対して卸売販売され,そこを通じて 小売量販店に販売された(量販店の各店舗に設置された)ほか,原告扶桑産業から 直接,株式会社サンリオの直営店等の量販店に販売されることもあった。
b 被告について(乙1,53ないし55,65ないし66の5)
(a) 被告は,資本金の額を1億円とする会社であり,その従業員数は 3000人程度で,平成28年度の売上高は1220億円(グループ全体で346 0億円)であり,平成20年から東北楽天ゴールデンイーグルスのメインスポンサ ーとなっている。そして,被告は,生活用品の企画,製造,販売を事業内容として おり,販売している商品は,LED照明,家電,調理用品,日用品,収納用品,ハ ードオフィス・資材等多岐に渡っており,被告のこれらの商品は全国のホームセン ターで販売されている。
(b) 被告は,量販店等の店舗向けに,什器・備品を単体で販売するの ではなく,内装工事を含め,店舗のあらゆるスペースをデザイン・プロデュースし, 店舗全体又は売り場全体の什器・備品を総合的に販売することも行っている。 そして,被告は,販売する什器について,500頁を超えるカタログ(乙1,5 4)を作成しており,そこに掲載されている什器は,カードケースを含むシステム 什器だけでなく,内装・棚下照明,陳列用什器,インフォメーション器具,販促用 品,オフィス家具,運営サポート用品及び照明・演出用品といったように,多岐に 渡っている。
(c) 被告が顧客との間で上記(b)の取引をする場合の流れは,次のと おりである。すなわち,まず顧客から要望についてヒアリングをした上で,それを もとに現地調査をする。その後,顧客から建築平面図等を取得し,什器の配置を検 討し,顧客と打合せをした上で,什器配置図等を作成するとともに,コストをシミ ュレーションする。そして,顧客の要望に応じた什器・オプションアイテムを提案 し,納品内容を確定した上で,現場への納品や施工の手配を行う。
(d) 被告が平成25年12月5日,ある株式会社に対して発行した見 積書(乙55)では,取引金額が合計(中略)万円(税抜)とされたが,そのうち カードケースの代金額は(中略)円(個数は合計(中略)個)であった。
(e) 平成26年の被告製品の販売金額は,合計(中略)円であったが, その大半((中略)円)はカードケースと他の店舗用品とを組み合わせて販売され るいわゆるバンドル取引によるものであった。
c 原告扶桑産業と被告との間の取引
(a) 被告は,遅くとも平成24年1月以降,原告扶桑産業から原告製 品を購入しており,同月から平成25年11月までの原告製品の販売数量は,次の とおりであった。
・・・・
(b) 上記(a)のうち平成25年の原告製品4(ただし,QPCII−65 を除く。)の販売数量・販売金額は次のとおりであったほか,平成26年ないし平 成28年の原告製品(ただし,QPCII−65を除く。)の販売数量・販売金額は, 次のとおりであった(乙78の2)。
・・・・
(ウ) 被告の主張について
a まず,被告は被告製品1,4,6及び10については,原告製品に 相当するものがないことを指摘している。 しかし,上記各被告製品は,原告製品と色やサイズが異なるだけであり,原告扶 桑産業が販売している他の色やサイズの製品が購入されなかったとまで認めること はできないし,原告扶桑産業が販売していた製品をみる限り,原告扶桑産業が被告 製品と同じ色やサイズの製品を製造し,販売することができなかったと認めること もできない。 したがって,被告の上記主張は推定覆滅事由とならない。
b 次に,被告は取引の実情として,被告製品の販売方法や,被告によ る販売力・営業努力・企業規模・ブランドイメージを理由とする推定覆滅を主張す る。
(a)(1) 前記認定のとおり,被告が販売している什器は多岐に渡ってお り,また量販店等の店舗向けに,什器・備品を単体で販売するのではなく,内装工 事を含め,店舗全体又は売り場全体の什器・備品を総合的に販売することも行って いた。そして,前記認定事実によれば,被告製品は,その大半が他の店舗用品と組 み合わせて販売されるいわゆるバンドル取引によって販売されていた。 しかも,前記認定事実によれば,そのようなバンドル取引の取引額に占めるカー ドケースである被告製品の販売額はわずかであったと認められる。 このような被告製品に係る取引の実情によれば,被告製品の需要者の大半は,カ ードケースである被告製品に殊更に注目して被告製品を購入したというよりも,他 の店舗用品と組み合わせて購入できる利便性や,内装工事を含めて店舗全体又は売 り場全体の什器・備品を総合的に購入することができるという被告の販売体制に魅 力を感じて,被告と取引をするに至り,その取引の一環として被告製品を購入した と認めるのが相当である。
(2) 原告らの主張について
原告らは,被告がドン・キホーテの店舗内装を受注するに当たり, ドン・キホーテから原告製品を使用するよう指示されたため,原告扶桑産業と原告 製品の取引をするようになったとか,バンドル取引においても原告製品を組み込む 需要があり,被告がその需要に応え,顧客との取引を維持するために原告製品を侵 害品である被告製品に置き換えたなどと主張する。 確かに,被告は現在でも,原告扶桑産業から原告製品を購入しているから,本件 発明の技術的範囲に属する製品を購入し,エンドユーザーにこれを販売する一定の 需要があったというべきである。 しかし,原告らが主張する原告扶桑産業との取引開始の経緯や,被告が本件特許 のライセンスを求めたことについては,これを認めるに足りる証拠はないし,被告 が,被告製品のモデルチェンジをして,本件特許権の侵害とならないカードケース を販売するようになった後,被告のバンドル取引による売上げが減ったとの事情も 認められない。 以上の事情に加え,前記認定の被告製品の取引の実情を踏まえると,被告が顧客 との取引を維持するために原告製品を侵害品である被告製品に置き換えたとまで認 めることはできず,原告らの上記主張は採用できない。
(3) そうすると,被告主張の事情は,侵害者である被告が得た利益 と特許権者である原告扶桑産業が受けた損害との相当因果関係を相当程度,阻害す る事情といえる。
(b) また,被告の企業規模や販売する製品の多様性は前記認定のとお りであり,被告が被告製品を販売するに当たり,被告自身の販売力や企業規模,ブ ランドイメージか需要者に与えた影響も小さくないものというべきである。 したがって,この事情も,上記(a)の事情と相まって,侵害者である被告が得た利 益と特許権者である原告扶桑産業が受けた損害との相当因果関係を一定程度,阻害 する事情といえる。
(c) なお,被告はその他に自身の営業努力も推定覆滅事由として主張 するが,被告製品に関する事実関係が明らかではなく,事業者は,製品の製造,販 売に当たり,製品の利便性について工夫し,営業努力を行うのが通常であることを 踏まえると,推定覆滅事由として考慮すべきとまでいうことはできない。
c 被告は代替品・競合品(乙67ないし72)の存在を指摘している。 しかし,推定覆滅事由として考慮する競合品といえるためには,市場において侵 害品と競合関係に立つ製品であることを要するものと解される(前掲知財高裁令和 元年6月7日判決)。このような観点から被告主張の製品を検討すると,被告が指 摘する製品には,その具体的構成や使用方法が判然としないものも含まれているほ\nか,カードケースが上保持部と下保持部を備えるなどという本件発明の構成の基本\n的部分を備えたものと認めることもできないから,被告指摘の製品を代替品ないし 競合品ということはできない。また,被告指摘の製品の販売時期等も不明である。 したがって,被告の上記指摘によって推定が覆滅されるとはいえない。
d 被告は,乙73ないし77の先行技術等の存在を指摘して,被告製 品の販売に対して本件発明の技術的意義が寄与する程度は低いということを主張す る。 しかし,被告が指摘する乙73ないし77はいずれも,カードケースが上保持部 と下保持部を備えるなどという本件発明の構成の基本的部分を備えたものと認める\nことはできない。また,被告が指摘する乙77は,表示板支持棒の先端に表\示板が 取り付けられているものの,その取り付け方法は,指示棒の先端に平板部分を設け, その下面に突設されたピンに表示板を保持するというものであり(乙77の【考案\nの詳細な説明】の【0021】),本件発明の構成とは大きく異なっている。それ\nだけでなく,被告製品が販売されていた時期に,本件発明の作用効果の一部を奏す るとされる技術があったとしても,それだけで直ちに,原告扶桑産業において,本 件特許の全構成を備えた被告製品の販売による利益に相当する損害を被ったことが\n否定されるとはいえない。 したがって,被告の主張の技術的観点からの主張は採用できない。
e 以上より,本件では前記b(a)及び(b)記載の事情を推定覆滅事由と して考慮すべきところ,前記認定・判示の事情を踏まえると,6割の限度で推定が 覆滅されると認めるのが相当である。 この点に関し,被告は顧客が原告らに注文して原告製品を購入するという行動に 出たという可能性は皆無であったなどとして,推定覆滅率を99.09%とすべき\n旨主張する。 確かに,被告が原告扶桑産業から原告製品を購入すべき義務を負っていたという 事情はうかがえないから,被告が原告製品以外のカードケースを販売すること自体 は自由にできたことと認められる。 しかし,他方で,被告は遅くとも平成24年1月以降,原告製品を購入し,量販 店等のエンドユーザーに対して販売しており,以前原告製品を購入したことのある エンドユーザーがバンドル取引において原告製品を組み込むことを希望する可能性\nも否定できない。また,前記認定のとおり,被告製品の販売を開始した平成25年 2月以降も,原告製品の購入を完全にやめたわけではなく,量販店等のエンドユー ザーへの販売もされていたことが推認されるから,被告において原告製品を購入し, これをエンドユーザーに販売する必要性が全くなかったとまで認めることはできな い。むしろ,従前の経緯を踏まえると,被告が本件特許の侵害品を販売しなければ, 原告扶桑産業から原告製品を購入し続け,原告扶桑産業が利益を得ていた可能性も\n一定程度認められるものというべきである。 したがって,被告が主張するように99.09%もの推定覆滅を認めることは相 当でない。
f 他に共有者がいることによる控除(推定覆滅)
(a) 被告は,特許法102条2項に基づく原告扶桑産業の損害は,同 項に基づき算定される逸失利益の2分の1にとどまると主張する。 しかし,特許権の共有者は,それぞれ,原則として他の共有者の同意を得ないで その特許発明の実施をすることができるものの(特許法73条2項),その価値の 全てを独占するものではないことに鑑みると,特許法102条2項に基づく損害額 の推定を受けるに当たり,共有者は,原則としてその実施の程度に応じてその逸失 利益額を推定されると解するのが相当であり,共有持分の割合を基準に共有者各自 の逸失利益額を推定すべきものではない。本件においては,前記(1)オで検討したと おり,原告製品を製造して被告に販売するという実施による利益は原告扶桑産業に 帰属し,原告ソーグは,これに伴って金員を得ていたにすぎないから,原告扶桑産\n業の損害額を算定するに当たり,特許法102条2項に基づく利益額の算定から, 共有持分の割合に応じて2分の1を控除(推定覆滅)すべき理由はない。 しかしながら,原告ソーグについては,被告製品の販売により,特許法102条\n3項の実施料相当額の損害を観念し得ることは既に述べたとおりであり,この場合 に,特許権の共有者の一部(原告扶桑産業)が同条2項により侵害者に対し損害賠 償請求権を行使するに当たっては,同項に基づく損害額の推定は,不実施に係る他 の共有者(原告ソーグ)の同条3項に基づく実施料相当額(共有持分の割合により\n取得する。)の限度で一部覆滅されるとするのが合理的である(知財高裁平成30 年11月20日判決・最高裁ウェブページ)。
(b) そこで,原告ソーグが被告に対して請求することができる特許法\n102条3項に基づく実施料相当損害金の額について検討する。 この点について,被告は原告らの間で支払われていた差益をもとに実施料率を算 定すべきと主張するが,原告らが指摘する差益は特許権の共有者間で支払われてい るものであり,その具体的内容や法的位置付けは判然としない(なお,原告らは訴 状において原告製品の原材料の売買による差益と主張していた。)から,この金額 を実施料相当損害金の額を算定するのに用いることは相当でない。 そこで,本件では業界における実施料の相場を考慮に入れつつ,相当な実施料率 を認定するのが相当である。 被告はそれを前提としつつも,本件発明の寄与度や被告による販売力等を考慮す ると,原告ソーグの共有持分(2分の1)に係る相当な実施料率は0.025%で\nあると主張するが,推定覆滅事由に関する前記判示によれば,本件発明の寄与度を 考慮するのは相当でない。そして,プラスチック製品(イニシャル・ペイメント条 件無し)の平成4年度から平成10年度までの実施料率の統計データによると,最 頻値は1%,中央値は3%,平均値は3.9%であること(乙83),本件発明の 構成によるとカードケースの使用者の操作性等が相当向上すると認められること,\n前記認定のとおり,被告による被告製品の売上には被告の販売力やブランドイメー ジ等が大きく影響したと認められること,その他本件に現れた事情に加え,さらに は特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき,実施に対し受けるべき料 率は,通常の実施料率に比べて自ずと高額になるであろうこと(前掲知財高裁令和 元年6月7日判決参照)をも考慮すると,本件で相当な実施料率は5%と認めるべ きであり,原告ソーグの特許法102条3項に基づく損害は(中略)円(計算式:\n被告製品の売上額(中略)円×5%×1/2(共有持分の割合))となる。
(c) そして,原告ソーグについて特許法102条3項により算定した\n(中略)円を,原告扶桑産業との関係では,前記eの推定覆滅に加え,さらに控 除(覆滅)すべきことになる。
ウ したがって,原告扶桑産業の特許法102条2項に基づく損害額は(中 略)円(計算式:(中略)円×4割(推定覆滅後)−(中略)円)と認められる。 なお,原告扶桑産業は特許法102条1項に基づく損害の主張もしているが,原 告ら主張の原告らの利益額は(中略)円であるところ,特許法102条1項ただし 書の「販売することができないとする事情」として考慮される事情は,同条2項の 推定覆滅事由として考慮される事情と変わるものではなく(前掲知財高裁平成27 年11月29日判決参照),本件では前記判示に照らすと,原告らの利益について 6割の限度で「販売することができないとする事情」があったと認めるのが相当で ある。そうすると,原告ら主張の利益額について立証されているかを検討するまで もなく,同条1項に基づく損害額が前記認定の同条2項に基づく損害額を下回るも のであることは明らかである。
エ 原告扶桑産業は,原告ら訴訟代理人及び補佐人弁理士に本件訴訟の提起 等を委任したところ,被告の特許権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は(中 略)万円と認めるのが相当であり,原告扶桑産業の損害額は合計(中略)円となる。
(3) 原告ソーグの損害額\n
原告ソーグの特許法102条3項に基づく損害額は,上記認定のとおり,(中\n略)円と認められる。 そして,原告ソーグは,原告ら訴訟代理人及び補佐人弁理士に本件訴訟の提起等\nを委任したところ,被告の特許権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は(中 略)万円と認めるのが相当であり,原告ソーグの損害額は合計(中略)円となる。\n
4 以上より,原告らの請求は,それぞれ主文第1項及び第2項に掲げる限度で 理由があるから,その限度で認容し,その余の請求はいずれも理由がないから,棄 却することとして,主文のとおり判決する。

◆判決本文

◆別紙1

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平成30(ワ)5189  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月19日  大阪地方裁判所

 許諾による実施権は有していないと判断されたものの、技術的範囲外として判断されました。

 確かに,本件業務委託契約の第4条第1項では,中国の会社がカキ殻加工固形物 (「ケアシェル」)の製造技術指導等を受け,そのノウハウを利用して製造,販売 する一切の成果物を製造,販売することができることが明記されており,中国の会 社は共有特許の構成を有する養殖魚介類への栄養補給体を製造,販売することも可\n能と考えられる。\nもっとも,同項では,「日本国以外で」製造,販売できる旨明記されている上に, 共有特許権が存続する間は,原則として,上記成果物を日本国において製造,販売 することはできないものとされ,さらに違約金の定めもされている(同条第2項)。 それだけでなく,第8条第1項では,中国の会社は,共有特許権が存続する間は, 「ケアシェル」を日本で製造,販売,日本へ輸出しないことを誓約することが明記 されている。 この点に関し,第4条第1項ただし書及び第8条第1項ただし書では,被告会社 が文書により要請したときは,中国の会社は上記成果物を被告会社に販売できるこ とや,「ケアシェル」を日本に輸出できることが明記されているが,あくまでも中 国の会社がこれらをすることができるのは,被告会社が文書により要請する場合に 限られているから,上記各条項によって,中国の会社に対し,共有特許の日本国内 での実施が許諾されたものと認めることはできない。 そして,本件業務委託契約の他の条項を検討しても,中国の会社に対し,日本国 内での共有特許の実施を許諾することを内容とする条項が設けられているとは認め られないから,本件業務委託契約が中国の会社に対し,共有特許権についての通常 実施権を許諾することを内容とするものと認めることはできない。 以上より,これを前提とする原告の主張には理由がない。
(4) 次に,原告は,中国の会社が「ケアシェル」を製造し,これが共有特許発 明の技術的範囲に属していることを前提として,その製造が共有特許権の侵害に当 たると主張する。 しかし,中国の会社が「ケアシェル」を製造し,これが共有特許発明の技術的範 囲に属するもの(共有特許の実施品)であることを認めるに足りる証拠はないし, 中国の会社がこれを日本国内で製造したことを認めるに足りる証拠もない。 したがって,中国の会社が共有特許権の侵害行為をしたと認めることはできない。
(5) 以上より,本件業務委託契約の内容とするところは,共有特許権の排他的 効力とは無関係であるから,被告会社が中国の会社と本件業務委託契約を締結した こと等が,共有特許権者である原告の権利を侵害したことを理由とする原告の請求 は理由がない。

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平成29(ワ)41474  特許権に基づく損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年7月30日  東京地方裁判所

 東京地裁47部は、被告方法は「タンパク質を抽出する」には該当しないとして、非侵害と判断しました。原告は個人、被告はDHCです。

 特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定められる ものであり(特許法70条1項),特許請求の範囲の記載の解釈は,明細書 の発明の詳細な説明の記載等を考慮して行うべきものである(同条2項)。 しかして,本件発明の構成要件Bにおける「タンパク質を抽出する」混\n合液との文言について解釈し,そのタンパク質抽出の態様を明らかにすべ く,本件明細書の発明の詳細な説明の記載をみると,1)従来,界面活性剤 の使用を前提とする方法により溶液中の対象物質(タンパク質等)を分離 (抽出)していたところ,界面活性剤を使用すると,分離(抽出)された 対象物質から界面活性剤を除去する工程が必要となり,煩雑さが生じてい たため,溶液中から対象物質を簡便に分離(抽出)するための混合液が求 められていたこと,2)そこで,上記課題を解決するため,界面活性剤を必 要的には含まず,所定の高級アルコール(第1の高級アルコール)と脂肪 酸を含む混合液によって,タンパク質と水性溶媒とを含む抽出対象液から タンパク質を簡便に分離(抽出)するという構成を採用したものが請求項\n1発明であり,本件発明は,かかる請求項1発明を前提としつつ,第1の 高級アルコールとは異なる高級アルコールと炭化水素を含む混合液によ って,タンパク質と水性溶媒と第1の高級アルコールと脂肪酸とを含む抽 出対象液からタンパク質を夾雑物の含有量が従来より少ない状態で抽出 するものであること,3)これによって,タンパク質と水性溶媒とを含む抽 出対象液からタンパク質を簡便に分離(抽出)できる混合液,及び,タン パク質の抽出方法が提供されることとなったこと,4)本件発明に係るタン パク質抽出剤には,従来使用されてきた対象物質の分離(抽出)のための エマルション等に含まれる界面活性剤よりも少ない量(例えば,タンパク 質抽出剤全体に対して0〜4質量%)の界面活性剤が含まれていてもよい こと,本件発明の目的を害さない限り,公知の添加剤(界面活性剤,炭素 数18未満の高級アルコール等)を添加してもよいことが記載されている 旨が認められる。
これらによれば,本件発明に係る,「タンパク質を抽出する」混合液とは, タンパク質と水性溶媒に加え所定の高級アルコールと脂肪酸を含む抽出対 象液から,上記とは別の高級アルコールと炭化水素を含むことによって, タンパク質を夾雑物の含有量がより少ない状態で分離(抽出)できる混合 液であり,界面活性剤の含有の有無を問わないが,従来のエマルション等 に含まれる界面活性剤よりも少ない量の界面活性剤の含有を,従来必要と されていた除去工程を不要にする限度において許容することによって,上 記の分離(抽出)を簡便に行うことができる混合液という技術思想に係る ものであるというべきである。そうすると,上記「タンパク質を抽出する」 混合液において,その含有される界面活性剤の程度は,分離等された対象 物質から界面活性剤を除去する工程が不要である程度を限度とするもので あり,そのような態様によってタンパク質を抽出するものと解するのが相 当であり,分離(抽出)されたタンパク質から界面活性剤を除去する工程 が必要となるものは,上記「タンパク質を抽出する」混合液には当たらな いというべきである。 なお,この解釈は,本件特許の特許出願の経過(「早期審査に関する事情 説明書」(乙2),「意見書」(乙3))において,原告自身が,先行技術にお いては,タンパク質の抽出につき界面活性剤を使用することが必要的であ ったところ,本件原出願の実施形態は,界面活性剤を必要的に用いること はせず,高級アルコールを必要的に用いるものであり,この構成の差によ\nり,界面活性剤を抽出結果物から除去する工程を不要とすることが可能と\nなり,また,タンパク質への界面活性剤の悪影響を回避することが可能と\nなるという効果を奏し(乙2),さらに,界面活性剤を含まなくとも,抽出 対象液からタンパク質を簡便に分離できるという,従来技術からは予測し\n得ない異質な効果を奏する(乙3)旨述べていることにも沿うものであり, 何ら矛盾するものではない。
イ 原告の主張について
これに対し,原告は,本件明細書(段落【0056】)には,「本発明の 目的を害さない限り,公知の添加剤(界面活性剤,炭素数18未満の高級 アルコール等)を添加してもよい」と記載されているが,本件発明の目的 を害する場合とは,タンパク質の分離・抽出作用が機能しない場合,例え\nば,界面活性剤の分量が多すぎるために抽出対象液の全部が乳化して二層 に分離せず,結果として界面が生じない場合などの極めて例外的な場面を 指すものであって,上記のようなタンパク質の分離抽出においておよそ想 定されない添加物の添加以外は,むしろ広く公知の添加物の添加をさらに 許容することを明示したものと解釈されるべきである旨主張する。 しかし,上記説示のとおり,本件発明に係る「タンパク質を抽出する」 混合液において,その含有される界面活性剤の程度は,分離(抽出)され た対象物質から界面活性剤を除去する工程が不要である程度を限度とする ものであり,そのような態様によってタンパク質を抽出するものと解する のが相当であるというべきであり,本件明細書の具体的記載を精査しても, 原告が主張するような,界面活性剤の分量が多すぎるために抽出対象液の 全部が乳化して二層に分離せず,結果として界面が生じない場合などの極 めて例外的な場面を除いて広く界面活性剤の添加を許容することが読み取 れるような記載は見当たらない。したがって,原告の上記主張は,本件明 細書の具体的記載から離れた独自の主張というほかなく,採用することが できない。
被告製品と構成要件Bとの対比\n
ア 証拠(乙18,28ないし31)によれば,被告製品は界面活性剤を「● (省略)●」質量%含むこと,従来,タンパク質の分離等のために使用さ れてきた界面活性剤の量は抽出剤と対象液とを合わせた全体量に対して 0ないし2質量%であったことが認められる。 そして,上記のとおり被告製品に含まれる界面活性剤の量からすれば, 「従来使用されてきた対象物質の分離等のためのエマルション等に含ま れる界面活性剤よりも少ない量(例えば,タンパク質抽出剤全体に対して 0〜4質量%)の界面活性剤が含まれていてもよい。」(段落【0041】) という本件明細書の記載との関係で見ても,また,上記のとおり従来使用 されてきた界面活性剤の量との関係で見ても,被告製品における界面活性 剤の含有量が,従来のエマルション等に含まれる界面活性剤よりも少ない 量であるものとは認められず,その含有される界面活性剤の程度が,分離 (抽出)された対象物質から界面活性剤を除去する工程が不要である程度 であるとは認めるに足りない。 そうすると,このような被告製品は,そのタンパク質抽出の態様の観点 からして,構成要件Bの「タンパク質を抽出する」混合液という文言を充\n足しないというほかない。
イ これに対し,原告は,従来の「抽出剤」を,「抽出対象液」に添加した総 量に対する界面活性剤の「終濃度」については,CMC(臨界ミセル形成 濃度)を意識して2ないし4%前後とされているところ,実験の操作性の 観点から,前段階である「抽出剤」における界面活性剤の濃度は,その1 0ないし20倍程度が概ね目安となることからすると,同濃度は,通常2 0ないし80%であることとなり,そうすると,界面活性剤を「●(省略) ●」質量%含む被告製品は,従来の「抽出剤」よりも界面活性剤の含有量 が少ないものといえる旨を主張する。 しかし,原告のいう界面活性剤の「終濃度」が「2ないし4%前後とさ れている」こと,「抽出剤」における界面活性剤の濃度がその10ないし2 0倍程度が目安となることを認めるに足りる的確な証拠はなく,従来使用 されてきた抽出剤における界面活性剤の含有量にかかる原告の上記主張 は採用しがたい。また,仮に,原告の上記主張(被告製品が,従来の「抽 出剤」よりも界面活性剤の含有量が少ないこと)を前提としても,そのこ とから直ちに,界面活性剤を「●(省略)●」質量%含む被告製品が,そ の界面活性剤の含有の程度につき,分離(抽出)された対象物質から界面 活性剤を除去する工程が不要である程度のものであると認められること とはならず,被告製品が,そのタンパク質抽出の態様の観点からして,構\n成要件Bの「タンパク質を抽出する」混合液という文言を充足しないとの 上記結論が左右されることにはならない。

◆判決本文

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平成30(ワ)2554  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年8月27日  大阪地方裁判所

 大阪地裁21部は、技術的範囲に属する、無効理由なしとして、差止請求を認めました。損害賠償請求については、準備手続き中に口頭弁論が分離されています。

 被告は,「挟み込んで保持する」という文言について経時的に解釈し,これを, 第二保持部がブレースボルトをその軸方向に沿って外周側から挟み込み,これを仮 に保持した状態でブレースボルトの軸方向に移動して位置調整を行った後に,ナッ トで締め付けて保持するという操作方法に限定される旨を主張し,ブレースボルト を第二保持部が挿通する場合はこれに含まれないから,ブレースボルトを第二保持 部に挿通する被告製品は,本件発明の構成要件を充足しないと主張する。\nしかしながら,構成要件1Cの「挟み込んで保持する」は,物の発明の一要素と\nして,ブレースボルトが,これを包囲する包囲部によりベース板部に固定されるこ と,すなわち「狭着保持」(本件各明細書の段落【0044】,【0049】ない し【0052】等)を意味すると解するのが相当である(なお,被告は,「挟着」 と「狭着」の違いについて,前者は「挟み込む」という予備的動作を指すのに対し,\n後者は「狭める」という最終的操作を意味する,と主張する。しかし,本件各明細 書においては,「挟み込んで保持する」及び「挟み込んで狭着保持する」という2 通りの言い回しがみられるものの,これらが被告の主張のように明確に区別して用 いられているということはできず,「挟み込んで」,「挟着」及び「狭着」という 文言は基本的に同義であると解すべきである。)。 本件各明細書の段落【0008】に,「この構成によれば,(中略)固定片の孔\n部に第二棒状体を挿通させる必要がなく」との記載がある点については,従来技術 において,ブレースボルトが長過ぎる場合,これを切断する等して調整せざるを得 ないが,本件発明の場合,固定片のナットをゆるめて,外周側からブレースボルト を挟むことができるということを,特別な場合における利点として述べたにすぎず, ベース板部と固定片の間に形成される孔部にブレースボルトを挿通することのでき る通常の場合にまで,外周側からブレースボルトを挟み込むことを要件とする趣旨 とは解し得ない。 そうすると,被告の主張するような上記操作方法は,本件発明における構成要件\n充足性の判断を左右するものではない。
(3) 被告製品の施工方法について(甲19,乙4,22)
被告が,被告製品1の施工に際し,安全性確保等の見地から,ブレースボルトを 第二保持部に外周側から挟み込むことはせずに,第二保持部にあらかじめブレース ボルトを挿通できる程度の間隙を開けておき,ブレースボルトを第二保持部の当該 間隙に挿通させて使用する(被告製品2については,第二保持部が開口部の狭いル —プ状板部で構成されるため,ブレースボルトを第二保持部に挿通して使用するこ\nとは明らかである。)ことは当事者間に争いはないが,上記⑴及び⑵で検討したと ころによれば,上記施工方法の結果は,本件発明の「挟み込んで保持する」に該当 するというべきであり,これに反する被告の主張は採用できない。
・・・
被告は,乙13を適宜設計変更したものとして副引用発明を設定するところ, 乙13発明は,同一平面上に配置された2本の棒状体の交差する箇所において,乙 13に記載された物品(以下「本物品」という。)を2つ,各棒状体をそれぞれ覆 うようにして対向配置させて装着し,それぞれの本物品の角度調整用の弧形状の孔 (角度調整用長穴)を利用してボルトにより緊結することにより,2本の棒状体を 連結・固定するものである。 これに対し,副引用発明は,本物品と,本物品から包囲部を取り除いた状態の平 面の板状部材(以下「平面部材」という。)から構成されているところ,平面部材\nは棒状体を覆うことができないので,本物品と平面部材を組み合わせても乙13に 記載されたような交差連結具として使用することはできない(本物品1個と平面部 材1個を組み合わせた場合,保持可能な棒状体は1本のみである。)。また,本物\n品及び平面部材は互いの角度を調整する必要がないから,両部材に存する上記弧形 状の孔の存在意義がなくなってしまう。 したがって,当業者が,乙13発明から副引用発明を導くことは困難である。 また,被告は,乙13以外にも乙12,14ないし20を引用し,天井から 吊設機器を吊り下げるボルトが交差する部位を連結する揺れ止め用交差連結具も慣 用技術であると主張し,当業者は,乙1発明の両端の外側狭着体の平面域に,斜め 支持体に代えて副引用発明を適用して連結することで,被告製品1(すなわち本件 発明)を容易に発明することができる,と主張する。 しかし,乙12,14ないし20に記載された発明も,乙13発明と同様に,同 一平面上に配置された2本の棒状体を,その交差する箇所を覆うように装着するこ とで,連結・固定して振れ止めするための交差固定金具に係るものであって,被告 の主張するような副引用発明の構成を示唆するものではない。\nなお,被告は,このほかにも,乙8,10,24ないし28を引用して,1本の 棒状体を狭着して固定するにあたって,狭着する一方が棒状体を包囲する包囲部を 備えた部材,他方が平面上の部材である慣用技術である旨主張し,乙8ないし11 を引用して,2本の棒状体を狭着して固定する連結具も慣用技術である旨主張する が,いずれにおいても,一対の部材のうち,一方の部材にのみ包囲部を設け,もう 一方の部材を平面状とする交差固定金具の技術は開示されておらず(乙8及び乙2 6に開示された発明は,2つの固定具の間に平板の基板を挟み込む形を採るが,そ れぞれの固定部が包囲部を備えている点については上記の他の発明と同様である。), 被告が主張するような副引用発明の構成を示唆するものではない。\n以上より,副引用発明は,乙13を含めて乙8ないし20のいずれにも開示 されているとはいえない。
オ 容易想到性について(相違点1)
被告は,本件発明や乙1発明のようなコーナー固定金具と,乙12ないし20に 開示されるような交差固定金具とは,同一の技術分野に属し,また,施工現場で同 じ吊設機器において併用されることが多いから,当業者には,コーナー固定金具の 第二支持部に交差固定金具を適宜設計変更して適用する動機付けがある旨主張する。 乙12ないし20に記載される発明から,被告が主張するような副引用発明が導 けないことは上記エで述べた通りであるが,仮にこの副引用発明の具体的構成を措\nくとしても,交差固定金具とコーナー固定金具は,固定する棒状体の本数も固定の 態様も全く異なるものであるところ,単に吊設機器上の近い位置で用いられる2種 類の金具であるからといって,適用の動機付けを認めることはできない。 したがって,設計変更される副引用発明の具体的構成がどうあれ,乙1発明に上\n記刊行物記載の発明を適用する動機付けがあるとはいえない。

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平成29(ワ)15518  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年6月26日  東京地方裁判所

 「画像情報を対応するパターンに変換する」という用語について、明細書の記載から「画像情報を0または1の信号の組合せに変換する」を意味するとして、技術的範囲に属しないと判断されました。

 (2) 争点2−1(構成要件1Aの充足性)について\n
以下のとおり,本件装置が「画像情報を対応するパターンに変換するパター ン変換器」を有すると認めることはできないので,同装置は構成要件1Aを充\n足しない。
ア 構成要件1Aは,「画像情報,音声情報および言語を対応するパターンに\n変換するパターン変換器と,パターンを記録するパターン記録器と,」であ るところ,本件特許1の特許請求の範囲の記載によれば,「パターン」は, 本件発明1の自律型思考パターン生成機を構成する「パターン変換器」によ\nり画像等の情報から変換され,「パターン記録器」に記録され,「パターン 制御器」において設定,変更がされ,あるいはパターン同士の結合関係が生 成されるものであるから,これらにより処理可能なものであると解すること\nができる。
次に,本件明細書等1の記載を参酌すると,「パターン」は,「対応する 事象の特徴を検出器が識別する信号の組合せにより表現したもの」であり\n(段落【0017】),例えば,画像情報として「犬」を入力すると,犬の 画像パターンが生成され,パターン記録器に犬の画像パターンとして記録さ れることとなる(段落【0018】)。そして,本件発明の実施形態1につ いて説明した段落【0039】においては,画像,音声及び言語の情報をそ れぞれ識別する信号の組合せに変換したものをパターンと呼び,パターンの 要素を「ON」,「OFF」又は「1」,「0」で表現することにするとさ\nれ,【図2】には,画像パターンの例として「IG=[0.0.1.1.・・・] T,とのパターン例が例示されている。 これらの記載によれば,本件発明1における「パターン」とは,画像,音 声及び言語に係る事象の特徴を,計算機たる検出器が識別することができる 「1」,「0」等の何らかの信号の組合せに変換したものを意味し,構成要\n件1Aは,少なくとも,「画像情報・・・を対応するパターンに変換するパ ターン変換器」,すなわち,画像情報を上記信号の組合せに変換する変換器 を有することを特定したものであるということができる。
イ 原告は,本件製品のパンフレットや動画において,アメリアが「感情的な 対応力」を有するとされ,アメリアの表情が「EQ(共感指数)」により変\n化させられ,ユーザがアメリアの感情を画像で確認できるようになっている ことなどを根拠として,本件装置は「画像情報・・・を対応するパターンに 変換するパターン変換器」を有していると主張する。 しかし,被告は,本件装置がアメリアの感情に対応した画像を予め保有し\nており,状況に応じてその場に適した表情の画像を表\示可能であるとしても,\n画像情報を対応するパターンに変換する機能は備えていないと主張すると\nころ,原告が指摘する本件パンフレットの記載や動画を総合すると,本件装 置が様々な感情に対応する表情のアメリアの画像を保有し表\示することが できるとは認められるものの,本件装置が,外部から入力された表情等に関\nする画像をパターンに変換する機能を有していると認めるに足りる証拠は\nない。
ウ 原告は,本件装置が,その感情に対応した画像を予め保有しており,状況\nに応じてその場に適した表情の画像を表\示可能な構\成を備えているにすぎ ないとしても,構成要件1Aの「画像パターン」とは,画像情報から生成さ\nれ,人工知能を構\成するソフトウェアが利用できる「一塊のデータ」の全て\nを含むのであるから,人工知能がアメリアの感情に対応する画像を表\示する 際に,画像作成時のデータ形式から別のデータ形式に変換する場合も同構成\n要件を充足すると主張する。
しかし,原告の主張する「パターン」の意義は,特許請求の範囲及び本件 明細書等の根拠を欠くものである上,本件装置がアメリアの感情に対応した 画像を予め保有しているのであれば,それは既にアメリアが利用できるデー\nタ形式で保有しているものと解するのが自然であり,更に異なるデータ形式 に変換する必要があるとは考え難い。そうすると,本件装置が様々な表情の\nアメリアの画像を表示し得ることをもって,本件装置が入力された画像情報\nからパターンに変換する機能を有するということはできず,他に本件装置に\nおいて,かかる変換をする変換器が存在することを認めるに足りる証拠はな い。
なお,原告は,アメリアとは別の画像処理用のコンピュータにより画像デ ータを作成したとしても,「アメリアの感情に対応した画像を計算機で処理 可能な形態(パターン)に変換する」という工程を実施していることになる\nから,アメリアが構成要件1Aを充足することに変わりはないとの主張もす\nるが,アメリアとは別のコンピュータが,アメリアが利用できるデータ形式 の画像データを作成する場合に,本件装置が上記工程を実施しているといえ ないことは明らかである。
エ 以上のとおり,本件装置は構成要件1Aを充足しない。\n

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平成29(ワ)4311  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年7月18日  大阪地方裁判所

 特許権侵害で102条2項に基づく損害として1000万を越える損害額が認定されました。利益を計算するに当たって、消費税を控除すべきかについても判断されています。

 後記検討する【図2】及び【図3】の問題を除けば,上記検討した本件明細 書の記載には,肘置き部が,施術部よりも上方部で施術部に連結していなければな らないことを積極的に示すような内容は存しないと思われるのに対し,本件発明の 効果の観点では,肘置き部は,施術の対象である被施術者の目の部分に近接する位 置で,施術部に連結されると解するのが合理的である。 そして,本件発明1の文言において,「上方位置」と「施術者の上方部」とは近 接する位置で使用されており,本件補正により追加された際にも,当然両者を認識 の上,別異の意味を有するものとして使用されたと解されるところ,前述のとおり, 「上方位置」が施術部よりも上方部の意味である以上,「施術部の上方部」はこれ とは異なる意味であると解され,このことに,上記検討した本件明細書の記載内容 を総合すると,構成要件Cの「施術部の上方部」は,施術部における上方部,すな\nわち,施術部の上下方向における略中心を想定し,それよりも上方の部分を指すと 解するのが相当である。 被告らは,構成要件Cが本件補正により追加された要件であるところ,特許\n請求の範囲の補正に当たって新たな技術的事項の導入は許されないとして,本件明 細書の【図2】及び【図3】においては,肘置き部の上方位置の背面に連結部であ る水平軸が設けられていることから,本件発明における「上方部」は,構成要件B\nの「上方位置」と同様,「施術部の,それより上の部分」(施術部を含まず,施術 部に対して上)と解釈せざるを得ないと主張する。 確かに,本件明細書の【図3】では,肘受け部の回転軸が,施術部の上縁より少 し上方に存するように見えるが,これが実施例にすぎないことは本件明細書にも明 示されているし(【0015】),回転軸が,施術部の上縁に接する状態であれば, これも,施術部における上方部に,肘置き部が連結されているといえなくもない。 その他の【図】で開示されている実施例では,肘置き部がどの位置で施術部に連 結され,回転軸がどの位置に存在するかは全く不明といわざるを得ないが,少なく とも,施術部における上方部に肘置き部を連結する構成と,明らかに矛盾するよう\nな内容は存しない。
イ 出願経過及び本件意見書の記載について
本件意見書には,「4.特許法第29条第2項の拒絶の理由がないことの説 明」という表題の下,「(a)本願第1発明の説明」として,本件発明1につき,\nアイメイクの施術部位は被施術者の目尻,目頭,瞼,まつ毛,眉毛等であるため, この施術部位の周辺に施術者の手を配置すれば,必然的に肘の位置は手の位置を基 点とした範囲内(被施術者の頭部周辺)になるところ,その範囲で肘を支える部材 として肘置き部を備えたのが本件発明1であること,肘置き部が施術部の上方部を 基点として,これを軸に施術部に対して回動することで施術部に対する角度が変化 するが,肘置き部がどのような角度に調整された場合であっても,回動する範囲は 施術部の周囲(頭部の左右位置,もしくは左右位置及び上方位置)において一定で あるため,肘置き部が回動する範囲は,施術部位周辺に施術者が手を配置した際に その施術者の肘が配置される範囲と常に一致すること,これにより,施術者は肘置 き部により肘を固定させて施術することができるため,施術が安定するとともに施 術効率を向上させることができる旨が記載されている。 また,原告は,上記に続く「(b)本件拒絶理由通知書における認定」にお いて,本件拒絶理由通知の概略を,1)「被施術者の頭部を載置する施術部が形成さ れている施術台において,前記施術部の周囲であって,載置される前記被施術者の 頭部の左右位置,もしくは左右位置及び上方位置に,施術者の肘を固定可能な肘置\nき部を設けることで施術者の施術における負担の軽減を図るものは,例えば,引用 文献2の第1図における肘掛け34a,34b(中略)にみられるように周知技術 (以下「周知技術1」という。)であり,引用発明1において上記周知技術1を適 用し,前記施術部の周囲であって,載置される前記被施術者の頭部の左右位置,も しくは左右位置及び上方位置に,施術者の肘を固定可能な肘置き部を設けたものと\nする(中略)ことは当業者が容易になし得たものである。」,及び2)「さらに,施 術者の肘を固定可能な肘置き部を水平を軸にして回動可能\なものとすることも,例 えば,引用文献3(中略),引用文献4(中略)にみられるように周知技術(以下 「周知技術2」という。)であり,引用発明1において上記周知技術2を適用し, 前記肘置き部は水平を軸にして回動可能であるものとすることも当業者が容易にな\nし得たものである。」とまとめた上で,それに続く「(c)本願第1発明と引用発 明との対比」において,引用発明2について,「ヘッドレスト33が傾倒するもの であり,肘掛け34a,34bは個別に回動するものではありません。また,肘掛 け34a,34bの取り付け位置は,ヘッドレスト33の左右方向です。」「した がって,引用発明1に,上記した各引用発明のいずれを適用したとしても,本件発 明1のように,『肘置き部が前記施術部の上方部に連結され,水平を軸にして前記 施術部に対して回動可能』な構\成とはならない」と記載した。 被告らは,上記原告の引用発明2に関する文章(「肘掛け34a,34bの 取り付け位置は,ヘッドレスト33の左右方向です。」)を理由に,本件意見書に おいて,原告は,肘置き部の取付け位置が施術部の左右である構成を排除した旨を\n主張する。 しかしながら,本件意見書の上記文章は,引用発明2について,肘掛けの取付け 位置がヘッドレストの左右であるものの,肘掛けが回動しない点で本件発明とは異 なる旨を指摘したものと解することができ,被告の主張は採用できない。
ウ まとめ
以上検討したところを総合すると,構成要件Cの「施術部の上方部」とは,施術\n部における上方部の意味に解すべきであるが,肘置き部の回転軸が施術部の上縁に 接するよう連結する構成も含み得るとすると,その範囲については,別紙原告図面\nのうち,赤で示された部分を指すと解すべきこととなる。
(2)構成要件Cの「連結」の意義について\n
ア 「連結」の字義的意味は,「つらねむすぶこと。むすびあわせること。」で あるところ,本件明細書には,特に「連結」についての定義や,具体的な連結方法 についての記載はない。 本件明細書の【図2】及び【図3】には,肘置き部と施術部が,それぞれ支持部 材と背面部材を介して,水平軸の位置でつながっている形態が示されており,段落 【0018】も上記形態について説明する。 また,本件意見書には,肘置き部が,施術部の上方部を基点として,これを軸に 施術部に対して回動すること,引用発明3及び引用発明4においては,枕F(また は head rest 2)と肘受24(または head rest 4)とが連動せず別々に動作するこ とが望ましいと考えられるため,引用発明1にこれらの発明を適用したとしても本 件発明1の構成要件Cのような構\成にはならないことが記載されている。 そうすると,構成要件Cにおける「連結」とは,施術部と肘置き部が別々に動作\nすることができない形態でつながっていることを意味し,それ以上具体的な連結方 法について定めるものではないと解するのが相当である。
イ 被告らは,本件明細書の【図1】及び【図6】に示される実施形態から,構\n成要件Cの「連結」とは,「肘置き部が,その上方位置の背面において,前記施術 部の上方部に連結され」と解釈すべきであると主張するが,同図は,1つの実施形 態にすぎないから,そこから具体的な連結部位についてまで定められていると解す べきではない。
(3) 被告製品の構成\n
ア 別紙被告製品写真1ないし4及び別紙「被告製品の説明書」によれば,構成\n要件Cに対応する被告製品の構成cは,施術部の左右側面のうち,上下方向におけ\nる中央線よりも上の部分において,回動部材を介して施術部とリクライニングアー ムとがつながる構成をとり,施術部を左右方向に横切るような仮想の回転軸を中心\nにリクライニングアームが回動するものであると認められる。
イ 被告らは,被告製品の肘置き部が施術部の「左右位置」において回転自在に 支持されていることから,本件発明の構成要件Cを充足しないと主張するが,構\成 要件Cの「施術部の上方部」が施術部の左右側面を排除しない概念であることは前 述のとおりであり,また,構成要件Cの「連結」が具体的な連結方法や連結部位を\n定めるものではないことも前述のとおりであるから,上記被告らの主張を採用する ことはできない。
ウ また,被告らは,被告製品について,仮想の回転軸が施術部を貫通している ことから,回転軸が施術部の背面にあり,また施術部よりも上方にある本件発明と 比較して,肘置き部を回転させた時に肘置き部の左右位置と施術部との間の距離が 比較的短く施術しやすい,という本件明細書から記載された発明からは導き出せな い技術的事項を有すると主張するが,本件発明の回転軸が施術部よりも上方にある との主張は採用できず,被告らの主張は理由がない。
(4) まとめ
以上より,被告製品のリクライニングアームは,施術部の上方部に連結され,水 平を軸として施術部に対して回動可能であると認められるから,本件発明の構\成要 件Cを充足する。
・・・
上記(1)及び(2)によると,被告製品の売上高(税込)から原価(税込)を控除した 額は,951万7032円(別紙被告計算表の「粗利(総計売上税込−総計原価税\n込)」欄参照。)であり,同額を被告らの利益の額と認め,原告の損害額を算定す る基礎とするのが相当である。 なお,消費税基本通達5−2−5に鑑みれば,知的財産権の侵害に基づく損害賠 償金は,消費税法上の資産の譲渡等の対価に該当し,消費税の課税対象となると解 するのが相当であり(消費税法2条1項8号,同法4条1項),本件における損害 賠償金も,特許権の侵害に基づく損害賠償金として消費税の課税対象となると解さ れるところ,上記被告らの利益の額は,税込売上高から税込原価を控除したもので あり,消費税相当額を含む額であるから,原告の損害額を算定する際に,さらに消 費税相当額8%を加算する必要はない。
イ 被告らの主張について
被告らは,消費税に関し,特許法102条2項の「利益」の算定方法について主 張するほか,そもそも,同項により推定される損害賠償金は逸失利益であるから, 一般的に消費税の課税の対象とならないか,本件の個別事情に照らし,損害賠償金 は対価性がないため消費税の課税の対象とならないこと,仮に本件における損害賠 償金が消費税の課税の対象になるとしても,原告と被告との間において内税方式, 外税方式のいずれを採用するかについての合意がない以上,内税方式によるべきで あることを主張する。 しかしながら,特許権侵害に対する損害賠償請求訴訟では,典型的には,特許権 者のみが発明の実施品を製造,販売している状態を想定し,侵害品の販売により特 許権者側の売上等が減少したことを損害と捉え,認定又は推定の方法により算定し た損害賠償額金を得させることで,権利侵害のなかった原状に可及的に復させよう とするものであるところ,その回復の対象となる原状において,特許権者が発明の 実施品を製造,販売すれば,売上,経費いずれの面でも消費税は考慮されるはずで ある。 そうすると,本件のように,回復の対象である原状において,消費税が考慮され る事案においては,その回復の手段として逸失利益の損害賠償を算定する際におい ても消費税の負担は考慮すべきことになり,これに反する被告らの主張は採用でき ない。 そして,その計算としては,前述のとおり,消費税相当額を考慮した売上額から, 消費税相当額を考慮した経費額を控除すれば足りると解され,これによって算定し た損害額に,さらに消費税相当額を加算する必要はないし,当事者間に特段の合意 がなければ内税方式により計算すべきであるとの被告らの主張も理由がない。 また,被告らは,消費税相当額分の遅延損害金の起算日は,その額が確定した日, すなわち判決確定日であって不法行為時ではないと主張するが,上記アのとおり, 原告に支払われるべき損害賠償金は,消費税相当額を含むものの,全体としては特 許法102条2項により原告の損害と推定される額であるから,全部につき不法行 為の日から遅滞に陥ると解するのが相当である。
(4) 推定覆滅又は寄与率について
ア 被告らは,本件発明の被告製品に対する技術的寄与及び顧客吸引力は小さく, 寄与率は50%程度であると主張する。 しかし,本件発明3の構成要件Fは,リクライニング機構\が付与されていること とされており,本件明細書の段落【0020】及び【0021】にも,電動式を含 むリクライニング機構が付与されていることにより,異なるアイメイク施術を1台\nで済ませることができたり,被施術者が仰向けになったときの下半身の負担を軽減 したりすることができる旨の記載がある。また,本件発明はアイメイク用施術台全 体に関するものであって,リクライニングアームのみに関する発明ではない。 よって,本件発明の,被告製品に対する技術的寄与が少ないという上記被告らの 主張を採用することはできない。
イ また,被告製品の価格(11万8000円(税抜))と本件発明の実施品の 価格(18万2000円(税抜))との差は6万4000円であるところ(乙29), これが直ちに顧客吸引力に大きな差が生じるまでの金額ということはできない。ま た,被告らは,高田ベッド製作所がアイメイク用施術台の分野において特別なブラ ンド力を有することや,被告製品の広告宣伝において,高田ベッド製作所のブラン ド力を使用していること等の主張立証をせず,リクライニング機構が本件発明3の\n構成要件となっていることは,上記アのとおりである。\nよって,本件発明が,顧客の購買に寄与する要素が極めて小さいという上記被告 らの主張を採用することはできない。
ウ したがって,本件において特許法102条2項の推定を覆滅すべき事情は認 められない。
(5) 特許法102条4項後段に関する主張
原告は,平成28年10月31日付け及び同年12月5日付けで,被告アイラッ シュに対し,本件特許権の侵害について2回にわたり警告し,被告アイラッシュも これに回答していることから(甲5ないし8),被告らにおいて被告製品が本件特 許の権利範囲外であると考えたことについて,故意または重過失がなかったとして 損害賠償の額を定めるにつきこれを参酌すべき場合であるとは認められない。

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平成30(ワ)28391  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年6月12日  東京地方裁判所

 後発医薬品について構成要件Eについて、技術的範囲に属しないと判断されました。興味深いのは、インカメラで該当性が判断されている点です。原告の書類提出命令申立てはインカメラで訂正の範囲外となっていると判断されました。\n

 原告は,平成31年2月21日,被告コーアイセイを相手方として,本件各 製剤が本件訂正発明等の技術的範囲に含まれることを立証するため,本件製剤 1に関する平成30年2月15日付け医薬品製造販売承認書に記載されてい る「成分及び分量又は本質」に係る部分について,特許法105条1項に基づ く書類提出命令の申立てをした。\n当裁判所は,同年4月11日,同条2項に基づくインカメラ手続を行い被告 コーアイセイから対象書類の提示を受けた上,同書類には本件製剤1にクロス ポビドンが含まれるかどうかや,クロスポビドンの医薬組成物中の含有率等に 関する情報が記載されているが,本件製剤1の組成物又は含有率は本件訂正発 明に規定するものと異なっている一方,同情報は被告コーアイセイにとって秘 密性の高い重要な技術的情報であると認められるから,被告コーアイセイには 書類の提出を拒むことについて正当な理由があるなどと判断して,同申立てを\n却下した。
・・・・
本件訂正発明の構成要件Cは,「前記崩壊剤が,クロスポビドンであり,前記\nクロスポビドンの医薬組成物中の含有率が5.6〜12質量%であり,但し,崩 壊剤がGRANFILLER−D(登録商標)から成る錠剤は除く,」というも のであるところ,原告は,本件各製剤が構成要件Cを充足すると主張する。\n しかし,本件各製剤が,1)崩壊剤としてクロスポビドンを含有すること,2)そ の医薬組成物中の含有率が5.6〜12質量%であること,3)同崩壊剤がGRA NFILLER−D(登録商標)から成る錠剤でないことについては,これを認 めるに足りる証拠がない。 原告は,本件各製剤は原告製剤の後発医薬品であることや,原告による本件製 剤1の分析によっても,本件製剤1がクロスポビドンの含有を否定するデータは 得られていないことなども指摘するが,本件各製剤が原告製剤の後発医薬品であ るとしても,そのことから直ちに本件各製剤が構成要件Cを充足するということ\nはできず,また,本件製剤1がクロスポビドンの含有を否定するデータは得られ ていないことは,むしろ,同製剤が構成要件Cに規定された含有率のクロスポビ\nドンを含有すると認めるに足りる客観的な証拠が存在しないことを示すもので ある。 したがって,本件各製剤が本件訂正発明等の技術的範囲に属すると認めること はできない。

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平成31(ネ)10005  特許権侵害行為差止請求控訴事件  特許権  行政訴訟 令和元年7月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 骨切術用開大器について、1審では、補正によって追加された事項を充足しない被疑侵害品について、第5要件問題なしとして均等を認めました。知財高裁は、文言侵害と判断しました。
なお、「原判決30頁17行目から31頁3行目までを次のとおり改める。」とありますが、原審のどの部分を改めるのか?は、上記範囲とはズレていますので、不明です。

 また,請求項1においては,係合部が設けられている揺動部材と他方の揺動部材が,それぞれ開閉機構を有することが規定されるのみで,いずれの開閉機構\をどのような手順で操作するかについては何ら特定がなく,前述の本件発明の技術的意義からもかかる点につき限定する理由はないから,係合部を設けた揺動部材の側に力を加えることによって,他の揺動部材が同時に開く仕組みになっていることは,本件発明において必須の構成ではない。\n以上を踏まえると,構成要件Eの「係合部」とは,これによって外力を伝達し,その結果,いずれか一方の揺動部材の開操作をもって,2対の揺動部材を同時に開くことを可能\にするものであるというべきである。
イ 「揺動部材の一方に…係合部が設けられている」の意義
次に,かかる係合部の意義を踏まえて,「揺動部材の一方に…係合部 が設けられている」の意義について検討する。 まず,「設けられている」との文言の一般的な意味は,「そなえてこ しらえる。設置する。しつらえる。」というものにすぎず(広辞苑・甲 13),当該文言自体からは,「係合部」が一方の揺動部材と一体であ るのか,別の部品であるのかを読み取ることはできない。前記の本件発 明の技術的意義に照らしても,「係合部」が一方の揺動部材と一体のも のでなければその機能を果たせないとはいえず,別の部品によって係合\n部を設けることを除くべき根拠は見当たらない。そうすると,係合部が 揺動部材に「設けられている」という構成が,係合部が揺動部材の一部\nを構成しているものに限定されるとはいえない。\nそして,「揺動部材の一方に…係合部が設けられている」という特許 請求の範囲の文言に照らすと,係合部が,「一方の」揺動部材に設けら れていることを要することは明らかである。このことは,特許請求の範 囲における請求項3及び4が,2対の揺動部材について,いずれに「係 合部」が設けられているかを区別できることを前提としていることから も裏付けられる。 以上によれば,「揺動部材の一方に…係合部が設けられている」とは, 「係合部」が,揺動部材に設けられており,かつ,それが2対のいずれ の揺動部材に設けられているのか区別できることを要し,またそれをも って足りると解される。
・・・
被告製品の構成eは,「揺動部材1,2の各下側揺動部には後部に開\n口部が設けられ,各上側揺動部にはその後部側に角度調整器のピンを挿 通させるためのピン用孔が設けられている。揺動部材1と揺動部材2が 組み合わせられたときに,開口部に留め金の突起部がはめ込まれ,ピン 用孔に角度調整器の2本のピンを挿通された状態で揺動部材2の上側揺 動部と下側揺動部を相互に開いていくと,留め金の突起部と角度調整器 のピンがそれぞれ揺動部材1の下側揺動部と上側揺動部を押圧して,揺 動部材2と一緒に開くようになっている」ものである(前記第2の3に おいて引用した原判決「事実及び理由」の第2の2⑸)。 このように,被告製品における角度調整器の2本のピンと留め金の突 起部は,外力の伝達により,いずれか一方の揺動部材の開操作をもって, 2対の揺動部材を同時に開くことを可能にするものであるから,角度調\n整器のピン及び留め金の突起部は,構成要件Eの「係合部」を充足する。\nまた,上記のとおり,角度調整器のピン及び留め金の突起部は,開操 作の前に,組み合わせられた揺動部材1及び2の開口部に留め金の突起 部がはめ込まれ,ピン用孔に角度調整器の2本のピンが挿通された状態 に固定されるものである。このような固定態様に照らすと,「係合部」 である角度調整器のピン及び留め金の突起部が,揺動部材1又は2に設 けられているといえる。そして,証拠(甲3,乙6,10)によれば, 角度調整器は,施術者から視認できるように揺動部材1側からピンが挿 通されて揺動部材1に固定されることが認められるから,少なくとも角 度調整器のピンは,揺動部材1に設けられていると認識できることは明 らかである。そして,留め金の突起部も,角度調整器のピンと一体とな って揺動部材の開操作に関わっているのであるから,この両者は,全体 として揺動部材1に設けられていると評価するのが素直である。したが って,「係合部」である角度調整器のピン及び留め金の突起部をもって, 構成要件Eの「揺動部材の一方に…係合部が設けられている」との要件\nは充足されることになる。 そして,「係合部」である角度調整器のピン及び留め金の突起部が, 2対の揺動部材の開操作の前にこれらの揺動部材に固定されることは上 記のとおりであって,これらを同時に開いていく間にかかる固定が解除 されることはない(乙6,10)。したがって,構成要件Eの「他方の\n揺動部材と組み合わせられたときに」揺動部材の一方に係合する係合部 が設けられているといえる。 控訴人は,被告製品の角度調整器のピン及び留め金の突起部が,揺動 部材1及び2と別の部品であることから,直ちにいずれの揺動部材に上 記ピン及び上記突起部が固定されているのかの区別ができなくなるとい う前提で主張するが,上記説示したところに照らし,採用できない。
カ 結論
以上のとおり,被告製品は構成要件Eを充足し,他の構\成要件を充足 することについては既に説示したとおりであるから,被告製品は,本件 発明1及び2の技術的範囲に属する。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成29(ワ)18184

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平成29(ワ)44053  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年5月29日  東京地方裁判所

 争点は、分割要件違反など色々ありますが、発明1,3についてはサポート要件違反なので権利行使不要、発明2については構成要件不充足と判断されました。\n

(3) 本件明細書1及び3の発明の詳細な説明の記載
ア 本件明細書1及び3の【0015】,【0017】
本件明細書1及び3の発明の詳細な説明の記載は,前記1(1)のとおりであり,発 明を実施するための形態として,「本発明の併用療法は,治療法が同時に行われ, すなわち抗CD20抗体は,同時にまたは同じ時間枠(すなわち,治療は同時に進 んでいるが,薬剤は全く同時に投与されるわけではない)で投与される。本発明の 抗CD20抗体はまた,他の治療法の前または後に投与されてよい。」(【001 5】),「また本発明には,化学療法の前,その最中,または後に,治療上有効量 のキメラ抗CD20抗体を患者に投与することを含んでなる,B細胞リンパ腫の治 療法が含まれる。そのような化学療法は,少なくとも,CHOP,ICE,ミトザ ントロン,シタラビン,DVP,ATRA,イダルビシン,ヘルツァー(hoelzer) 化学療法,ララ(LaLa)化学療法,ABVD,CEOP,2−CdA,FLAG& IDA(以後のG−CSF治療有りまたは無し),VAD,M&P,C−Week ly,ABCM,MOPP,およびDHAPよりなる群から選択される。」(【0 017】)と記載されている。 しかしながら,上記において,抗CD20抗体ないしキメラ抗CD20抗体とし て示されるリツキシマブの投与時期について,【0015】では,「他の治療法の 前または後」と「同時にまたは同じ時間枠(すなわち,治療は同時に進んでいるが, 薬剤は全く同時に投与されるわけではない)」が併記されるにとどまり,また, 【0017】では,「化学療法の前…または後」と「その最中」が併記されるにと どまっており,化学療法に用いられる薬剤の投薬期間や休薬期間に係る説明はされ ていないから,これらの記載をもって,リツキシマブをCHOP療法の各薬剤の投 薬期間中に投与するという本件発明1の用途を認識することは困難であり,もとよ り,リツキシマブを含む医薬組成物と化学療法に用いられる各薬剤を化学療法の各 サイクルの1日目に投与するという本件発明3の用途を認識することもできない。 このことに加えて,前記のとおり,本件発明1及び3は,いずれも,リツキシマ ブを含む医薬組成物について,対象疾患,併用される化学療法及び投与時期を特定 した用途発明であるところ,【0015】では,対象疾患及び併用される化学療法 が特定されておらず,【0017】でも,対象疾患が特定されておらず,併用され る化学療法であるCHOP療法も多数の選択肢の一つとして挙げられるにとどまっ ているから,その意味でも,これらが本件発明1及び3の用途を記載又は示唆する ものと認めるに足りない。
イ 本件明細書1の【0069】ないし【0071】,【0092】
(ア) また,本件明細書1の【0069】ないし【0071】及び【0092】の SWOGによる臨床試験に係る部分において,本件発明1の対象疾患である「低グ レード/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)」の患者に対するリツキシマブとC HOP療法の併用療法に係る実施例が記載されているものの,次のとおり,これら は,リツキシマブを含む医薬組成物をCHOP療法の各薬剤の投薬期間中に投与す るという本件発明1の用途を記載又は示唆するものであるとは認められない。 a すなわち,まず,本件明細書1の【0069】ないし【0071】には, 「新に診断された再発性低悪性度NHLまたは濾胞性NHLにおけるCHOPとリ ツクシマブ(登録商標)との併用を評価するために第II相試験」(【0069】) について,「CHOPは,標準用量で3週間毎にリツクシマブ(登録商標)(37 5mg/m3)を6回注入する6サイクルを行った。リツクシマブ(登録商標)注入 1と2は,最初のCHOPサイクル(これは8日目に開始した)の前の1日目と6 日目に投与した。リツクシマブ(登録商標)注入3と4は,それぞれ第3および第 4のCHOPサイクルの2日前に投与し,注入5と6は,6回目のCHOPサイク ル後のそれぞれ134日目と141日目に投与した。」(【0070】)と記載さ れており,参考文献21として甲38文献が参照されていること(【0071】) などに照らすと,これらは,甲38文献に記載されているCzuczmanらによる臨床試 験を記載したものと認められる(なお,【0070】の「第3および第4のCHO Pサイクルの2日前」は「第3及び第5のCHOPサイクルの2日前」の誤記であ ると認められる。)。 そうすると,【0070】の「リツクシマブ(登録商標)注入1と2」及び「注 入5と6」は,CHOP療法全体の開始前及び終了後の投与であり,また,「注入 3と4」も,Czuczmanらによる臨床試験の3回目及び4回目のリツキサンの投与と 同様に,CHOP療法の各薬剤の休薬期間中の投与であって,当業者は,いずれに ついても,CHOP療法の各薬剤の投薬期間中に投与するものではないと認識する と認められる。 したがって,【0069】ないし【0071】は,リツキシマブを含む医薬組成 物をCHOP療法の各薬剤の投薬期間中に投与するという本件発明1の用途を記載 又は示唆するものではない。
b また,本件明細書1の【0092】には,「SWOGにより行われた新に診 断された濾胞性リンパ腫でCHOPの後にリツクシマブ(登録商標)を使用する第 II相試験もまた,完了している。」として,SWOGによる臨床試験について記載 されているものの,同臨床試験においてリツキシマブが投与されたのは「CHOP の後」であるから,リツキシマブを含む医薬組成物をCHOP療法の各薬剤の投薬 期間中に投与するという本件発明1の用途を記載又は示唆するものではない。 (イ) さらに,本件明細書1の【0092】には,「マントル細胞リンパ腫が未治 療の40人の患者でリツクシマブ(登録商標)とCHOPの第III相試験も,ダナ ファーバー研究所(Dana Farber Institute)で行われている。21日毎の6サイ クルで,リツクシマブ(登録商標)は1日目に投与され,CHOPは1〜3日目に 投与される。この試験の発生項目は完了している。」として,ダナファーバー研究 所による臨床試験について記載されているものの,本件明細書1には,同臨床試験 の対象とされたマントル細胞リンパ腫が本件発明1の対象疾患である「低グレード /濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)」に含まれることは記載されておらず,そ のように認めるに足る証拠もないから,上記の臨床試験に係る記載部分が本件発明 1の用途を記載又は示唆するものと認めるに足りない。
ウ 本件明細書3の【0090】,【0092】
(ア) また,本件明細書3の【0090】において,本件発明3の対象疾患である 「中悪性度又は高悪性度の非ホジキンリンパ腫(NHL)」の患者に対するリツキ シマブとCHOP療法の併用療法に係る実施例が記載されているものの,その内容 は,「別の試験では,中または高悪性度NHLを有する31人の患者(女性19人, 男性12人,平均年齢49才)に,6回の21日サイクルのCHOPの1日目にリ ツクシマブ(登録商標)を投与した(35)。」というものであり,CHOP療法 の各薬剤の投与時期は記載されていない。 また,本件明細書3の発明の詳細な説明に,参考文献35として記載されている 乙9文献においても,前記1(2)イのとおり,Linkらによる臨床試験で,1サイクル 21日間(3週間)のCHOP療法を繰り返し実施するに当たり,リツキシマブは CHOP療法の各サイクルの1日目に投与されたのに対し,シクロホスファミド, ドキソルビシン及びビンクリスチンは各サイクルの3日目に投与され,プレドニソ\ ンは各サイクルの3日目から7日目まで投与されたことが認められる。 したがって,【0090】は,リツキシマブとCHOP療法の各薬剤をCHOP 療法の各サイクルの1日目に投与するという本件発明3の用途を記載又は示唆する ものとは認められない。
(イ) さらに,本件明細書3の【0092】には,前記のとおり,ダナファーバー 研究所による臨床試験について記載されているものの,本件明細書3には,同臨床 試験の対象とされたマントル細胞リンパ腫が本件発明3の対象疾患である「中悪性 度又は高悪性度の非ホジキンリンパ腫(NHL)」に含まれることは記載されてお らず,そのように認めるに足る証拠もない。 また,「21日毎の6サイクルで,リツクシマブ(登録商標)は1日目に投与さ れ,CHOPは1〜3日目に投与される。」というだけでは,CHOP療法の各薬 剤が全て各サイクルの1日目に投与されたかは必ずしも明らかでないから,いずれ にしても,上記の臨床試験に係る記載部分がリツキシマブとCHOP療法の各薬剤 をCHOP療法の各サイクルの1日目に投与するという本件発明3の用途を記載又 は示唆するものとは認められない。
(4)原告らの主張について
ア 本件発明1
原告らは,本件原出願日当時の化学療法とリツキシマブの併用療法は,化学療法 の各サイクルにおける化学療法薬の投薬期間の前又は後にリツキシマブを投与する 異日投与レジメンによっていたところ,本件明細書1の【0015】,【0017】 には,異日投与レジメンと区別して,化学療法の各サイクルにおける化学療法薬の 投薬期間中にリツキシマブを投与する同日投与レジメンが記載されていると主張す る。 しかしながら,本件原出願日当時,原告らが主張する異日投与レジメンによって リツキシマブと化学療法が併用されていたとしても,前記のとおり,【0015】, 【0017】には,化学療法に用いられる薬剤の投薬期間や休薬期間に係る記載は なく,化学療法の開始前,終了後,化学療法に用いられる薬剤の休薬期間中にリツ キシマブを投与するレジメンと区別して,化学療法に用いられる薬剤の投薬期間中 にリツキシマブを投与するレジメンが記載されているとはいえないから,これらの 記載が本件発明1の用途を記載又は示唆するものと認めるに足りない。
・・・
被告製剤についてみると,前記第2の2⑸ウのとおり,被告製剤の添付文書には, 用法・用量欄に「他の抗悪性腫瘍剤と併用する場合」が記載され,用法・用量に関 連する使用上の注意として,「他の抗悪性腫瘍剤と併用する場合は,先行バイオ 医薬品の臨床試験において検討された投与間隔,投与時期等について,【臨床成 績】の項の内容を熟知し,国内外の最新のガイドライン等を参考にすること。」 と記載されている。また,臨床成績欄には,被告製剤の臨床成績として,未治療 の進行期ろ胞性リンパ腫の患者に,被告製剤又は先行バイオ医薬品がR−CVP レジメンによって投与されたことが記載されているほか,先行バイオ医薬品の臨 床成績として,国外臨床第III相試験(PRIMA試験)において,ろ胞性非ホジ キンリンパ腫(NHL)の患者に,R−CVPレジメンによる寛解導入療法等が 実施されたことが記載されている。 そして,証拠(甲12,35)及び弁論の全趣旨によれば,被告製剤の添付文書 に記載されているR−CVPレジメンは,リツキシマブを1日目に投与するととも に,シクロホスファミド(CPA)及びビンクリスチン(VCR)を1日目,プレ ドニゾロン又はプレドニソン(PSL)を1日目から5日目まで投与するレジメン\nであると認められる。 そうすると,被告製剤は,添付文書に記載されたR−CVPレジメンがシクロホ スファミドを1日目にのみ投与するものであり,1日目から5日目まで投与するも のでない点で,構成要件2Bの「CVP」を充足するとはいえない。\n
・・・
以上のとおり,本件特許1及び3は特許法36条6項1号に違反しており,いず れも特許無効審判により無効とされるべきものと認められるから,同法104条の 3第1項により,本件特許1及び3に係る専用実施権者である原告による権利行使 は認められない。 また,被告製剤は本件発明2の技術的範囲に属するとはいえないから,被告製剤 の製造販売等が本件専用実施権2を侵害するとはいえない。

◆判決本文

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平成29(ワ)43269  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年6月18日  東京地方裁判所

 衛生マスクの特許権侵害が認定されました。「空間を形づくる非伸縮性の接合部」について、明細書の記載に基づいて、「会話や呼吸の妨げにならない程度に,マスクの本体が鼻下及び唇の表面に接触しない程度の空間が保たれている」と判断されました。\n

「空間を形づくる非伸縮性の接合部」の意義について,本件明細書には,マ スク布地の中央部に鼻下及び唇部を覆って空間を形づくる非伸縮性の接合部 を形成したので,会話等で唇を動かしても,呼吸をしても,ニット布地による 拡大,縮小といった変化を生じることがなく,安定して会話や呼吸を行うこと ができること,非伸縮性の接合部を形成する手段として,マスク本体の中央部 を左右に分離させた上,鼻下及び唇部との間に一定空間を保つような外膨らみ の扇形状に裁断し,可及的に伸縮性をもたない非伸縮性とすべく縫合するとの 記載がある(段落【0020】【0059】【0060】【0092】)。 そうすると,「空間を形づくる非伸縮性の接合部」とは,少なくとも,会話や 呼吸の妨げにならないように,マスクの本体が鼻下及び唇の表面に接触しない\n程度の空間が保たれるよう,マスク本体の中央部を左右に分離させ,外膨らみ の扇形状に裁断して可及的に伸縮性をもたない非伸縮性とすべく縫合する構\n成を含むと解するのが相当である。
 証拠(甲5,21の1・2,乙37)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品 は,マスク本体の中央部を左右に分離させ,外膨らみの扇形状に裁断して縫合 する構成を有しており,それによって,マスク本体の中央部に非伸縮性の接合\n部が形成され,会話や呼吸の妨げにならない程度に,マスクの本体が鼻下及び 唇の表面に接触しない程度の空間が保たれていると認められる。\nしたがって,被告製品は,「空間を形づくる非伸縮性の接合部」(構成要件D)\nを充足するといえる。
これに対し,被告は,「非伸縮性の接合部」について,「非」とは,後に続く 語句について「そうでない」という意味であり,「非伸縮性」とは,伸縮しない, 又は,伸縮するものを除くという意味であると主張するが,本件明細書には, 前記のとおりの記載があり,他方,「非伸縮性」について全く伸縮性を有しない とは記載されていない。また,本件発明はニット生地のマスクに関する発明で あり,一切伸縮しない製品のみを想定しているとは考え難い。 被告は,本件明細書の記載(段落【0060】【0061】)から,「非伸縮性」 の接合部とは,二重の縫合であることが必須の構成であると主張するが,本件\n明細書の段落【0061】には,「例えば・・・二重の縫合を施すことで可及的 な非伸縮性を得ることができる。」との記載があるとおり,二重の縫合はあく まで実施形態の一つとして例示されているにすぎず,「非伸縮性」の接合部の 構成が二重の縫合に限定されるとは認められない。\n

◆判決本文

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平成31(ネ)10019  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年7月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について均等主張も否定されました。1審では、構成要件Dについて均等主張をしていませんでした。控訴審では構\成要件Dの均等侵害を主張しましたが、第1要件を満たしていないと判断されました。被控訴人(1審被告)はYAHOO(株)です。

 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び前記(2)の本件明細 書の開示事項を総合すると,本件発明の技術的意義は,従来の住宅地図に おいては,建物表示に住所番地及び居住者氏名も全て併記されていたため,\n肉眼でも判別可能な実用性を確保するために縮尺度を低いものにする必要\nがあり,これに伴って全体として地図の大型化や大冊化を招き,この大型 化や大冊化が氏名の記載変更作業の実地調査に係る人件費と相俟って住宅 地図を高価格なものとし,更に氏名の公表を希望しない住人についても住\n宅地図に氏名を登載してしまうこととなるため,プライバシーの保護とい う点からも問題を有し,また,従来の住宅地図の付属の索引は,住所の丁 目及びそれぞれの丁目に該当するページだけが掲載されていたため,「目 的とする居住地(建物)を探し出す作業」(検索)が,煩雑で面倒であり, 迅速さに欠け,非能率な作業となっていたという課題があったことから,\n本件発明の住宅地図は,この課題を解決するため,検索の目安となる公共 施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については,居住人氏名や建物 名称の記載を省略し,住宅及び建物のポリゴンと番地のみを記載すること により,縮尺度の高い,広い鳥瞰性を備えた構成の地図とし(構\成要件B 及びC),地図の各ページを適宜に分割して区画化した上で,地図に記載 の全ての住宅建物の所在番地を,住宅建物の記載ページ及び記載区画を特 定する記号番号と一覧的に対応させた付属の索引欄を設ける構成(構\成要 件DないしF)を採用することにより,小判で,薄い,取り扱いの容易な 廉価な住宅地図を提供することができ,また,上記索引欄を付すことによ って,全ての建物についてその掲載ページと当該ページ内の該当区画が容 易に分かるため,簡潔で見やすく,迅速な検索の可能な住宅地図を提供す\nることができるという効果を奏することにあるものと認められる。
イ この点に関し控訴人は,本件発明の技術的思想(技術的意義)は,「検 索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については 居住人氏名や建物名称の記載を省略し住宅及び建物のポリゴンと番地のみ を記載すると共に,縮尺を圧縮して」(本件発明の構成要件B及び構\成要 件Cの前半)という構成により,「記載スベースを大きく必要とせず」(本\n件明細書の【0039】),これにより「広い鳥瞰性を備えた地図を構成」\n(構成要件Cの後半)する点にある旨(前記第2の4(1)エの「当審におけ る控訴人の主張」(ア))を主張する。
しかしながら,発明の技術的意義は,明細書に開示された従来技術の課 題について,特許請求の範囲の記載及び明細書の記載に基づいて,当該発 明がその課題の解決手段として採用した構成及びその構\成による効果を踏 まえて認定すべきものと解されるところ,控訴人の上記主張は,本件明細 書において,従来の住宅地図の付属の索引には,住所の丁目及びそれぞれ の丁目に該当するページだけが掲載されていたため,「目的とする居住地 (建物)を探し出す作業」(検索)が,煩雑で面倒であり,迅速さに欠け, 非能率であるという課題があったこと(【0003】),本件発明は,上\n記課題を解決するための手段として,地図の各ページを適宜に分割して区 画化した上で,地図に記載の全ての住宅建物の所在番地を,住宅建物の記 載ページ及び記載区画を特定する記号番号と一覧的に対応させた付属の索 引欄を設ける構成(構\成要件DないしF)を採用したことにより,全ての 建物についてその掲載ページと当該ページ内の該当区画が容易に分かるた め,簡潔で見やすく,迅速な検索を可能としたという効果を奏すること(【0\n039】)の開示があることを考慮しないものであるから,採用すること ができない。
・・・
控訴人は,仮に本件発明の構成要件Dの「区画化」の構\成が,地図が記載 されている各ページについて,記載されている地図を線その他の方法によっ て仕切って複数の区画に分割し,その各区画を特定する番号又は記号番号を 付し,利用者が,線その他の方法及び記号番号により,当該ページ内にある 複数の区画の中の当該区画を認識することができる形で複数の区画に分割す ることを意味するものと解し,また,仮に構成要件Fの「索引欄に…住宅建\n物の所在する番地を前記地図上における…記載ページ及び記載区画の記号番 号と一覧的に対応させて掲載した」との構成が,索引欄に所在番地の記載ペ\nージ及び区画の記号番号がユーザの目に見える形で掲載される構成に限られ\nると解した場合には,被告地図は,各ページに線その他の方法及び記号番号 が付されていない点及び「特定の緯度・経度を含む地点データと縮尺レベル 19ないし20を含むURL」が画面に「一覧的に」表示されていない点で\n本件発明と相違することとなるが,被告地図は,均等の成立要件(第1要件 ないし第3要件)を満たしているから,本件発明と均等なものとして,本件 発明の技術的範囲に属する旨主張する。 しかしながら,前記1(3)ア認定の本件発明の技術的意義に鑑みると,本件 発明の本質的部分は,検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住 宅及び建物については,居住人氏名や建物名称の記載を省略し,住宅及び建 物のポリゴンと番地のみを記載することにより,縮尺度の高い,広い鳥瞰性 を備えた構成の地図とし(構\成要件B及びC),地図の各ページを適宜に分 割して区画化した上で,地図に記載の全ての住宅建物の所在番地を,住宅建 物の記載ページ及び記載区画を特定する記号番号と一覧的に対応させた付属 の索引欄を設ける構成(構\成要件DないしF)を採用することにより,小判 で,薄い,取り扱いの容易な廉価な住宅地図を提供することができ,また, 上記索引欄を付すことによって,全ての建物についてその掲載ページと当該 ページ内の該当区画が容易に分かるため,簡潔で見やすく,迅速な検索の可 能な住宅地図を提供することができる点にあるものと認められる。\n
しかるところ,被告地図においては,前記2(1)ウ及び(2)認定のとおり, 地図を記載した各ページを線その他の方法及び記号番号によりユーザの目に 見える形で複数の区画に仕切られておらず,索引欄に住宅建物の所在番地の 記載ページ及び区画の記号番号がユーザの目に見える形で掲載されていない ため,構成要件D及びFを充足せず,ユーザが所在番地の記載ページ及び区\n画の記号番号の情報から検索対象の建物の該当区画を探し,区画内から建物 を探し当てることができないから,このような索引欄を利用した迅速な検索 が可能であるということはできない。\nしたがって,被告地図は,本件発明の本質的部分を備えているものと認め ることはできず,被告地図の相違部分は,本件発明の本質的部分でないとい うことはできないから,均等論の第1要件を充足しない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)34450

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 >> 均等
 >> 第1要件(本質的要件)
 >> 104条の3
 >> コンピュータ関連発明
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平成30(ワ)10157  独占的通常実施権に基づく損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年5月22日  東京地方裁判所

 独占的通常実施権者が損害賠償を請求しましたが、技術的範囲に属しないとして、請求棄却されました。

(1) 構成要件1Eは「前記溶出液による前記外面の衝撃の際の圧力は,0.5\nkg/cm2〜3.5kg/cm2の範囲であること」,同7Hは,「前記ノ ズルの噴射孔から前記溶出液が噴射されて前記ガラス基板の外面を0. 5kg/cm2〜3.5kg/cm2の範囲の圧力で衝撃する」という構\n成を含むものであり,いずれも,ノズルから噴射された溶出液がガラス 基板の外面を衝撃する際の圧力が「0.5kg/cm2〜3.5kg/c m2」の範囲内であることをその内容とするものである。
(2) 原告は,構成要件1E及び7Hの「圧力」の数値の意義について,1cm\n2当たりの平均の圧力ではなく,溶出液がガラスを衝撃するそのスポットの 衝撃圧力を意味すると理解すべきであると主張する。 しかし,構成要件1E及び7Hの「圧力」の単位は「kg/cm2」であ り,これは,通常の意味としては,ある程度の面積を有する面に所定の時間 にわたり作用する力の大きさを単位面積当たりの大きさに換算したものと解 するのが自然である。 また,本件明細書等には,構成要件1E及び7Hの「圧力」の意義や測定\n方法に関する明確な定義は存在しないものの,段落【0034】には,「こ の際,各ノズル4の各噴射孔41と外面との距離(図3にdで示す)は重要 な要素である。距離dがあまり大きくなると,送液ポンプ54による送液圧 力をかなり高くしなければ,上記範囲内の圧力で外面を衝撃することができ なくなってしまい,実用的に難しくなる。」との記載が存在する。液滴の大 きさや衝撃力は距離により変化するものではないので,上記明細書の記載は, 上記各構成要件の「圧力」が単位面積当たりの作用力の大きさであることを\n示唆するものということができる。
(3) これに対し,原告は,本件明細書等の段落【0015】及び【0017】 における,ノズルから噴射された溶出液の衝撃により外面の材料が溶け出し, 溶出液が衝撃により流出していく旨の記載を根拠として,構成要件1E及び\n7Hの「圧力」は,溶出液がガラスを衝撃するそのスポットの衝撃圧力を意 味すると主張する。しかし,上記記載は,構成要件1E及び7Hの「圧力」\nの測定について特定の方法によるべきことを含意するものではなく,同記載 をもって,同各構成要件の「圧力」が,ガラスを溶出液が衝撃するそのスポ\nットの衝撃圧力を意味すると解することはできない。
また,原告は,甲21の1〜3に依拠し,本件特許出願当時,本件特 許に近い技術分野においても,原告が主張するような意味で「圧力」と いう用語が用いられていたと主張する。しかし,甲21の1は,「気中ウ ォータージェットピーニング技術」であって,約1000MPaの非常 に高い衝撃圧力が生じるものであり,甲21の2及び3も,高速液体噴 流による洗浄・ピーニングに関する技術及び漁船等に付着した貝などを 除去するための高圧噴流ノズルに関する技術であって,本件特許のよう なガラスの基板の研磨に関する技術分野とは異なる技術分野であり,そ こで想定されている「圧力」の大きさも異なるというべきである。 むしろ,本件ノズルと同種のノズルを昭和30年代から製造している いけうち(乙4)においては,その測定に当たり,1cm×1cmの正 方形の圧力受領域を有する「受圧プレート」が使用されていると認めら れ(乙3),また,いけうちと同様に長年にわたりスプレーノズルを製造 している共立合金製作所においても,一定の面積の受圧部を使用してい ることが認められる(乙5参考資料1)。これによれば,本件特許出願当 時,ノズルから噴射された溶出液がガラス基板の外面を衝撃する際の圧 力の測定方法としては,一定面積を有する面に所定の時間にわたり作用 する力の大きさを単位面積当たりの大きさに換算することが標準的であ ったというべきである。
(4) 原告は,本件ノズルを製造したいけうちの作成したスプレーノズル流量線 図(甲8)などに基づき,被告NSCの用いる方法又は装置におけるフッ酸 の噴射圧力は約1.224kgf/cm2であるとした上で,ノズルからフ ッ酸が噴射される際の圧力と噴射によってガラス基板に加わる衝撃の圧力は ほとんど変わらないので,被告方法は構成要件1E及び7Hを充足すると主\n張する。 しかし,証拠(乙1資料4〜6,乙2)によれば,本件ノズルは,ノズル 吐出口の直径は約3mm,吐出口の面積が約7mm2であり,ノズルの先端 とガラス基板との間には190mmの距離があり,薬液は65〜70°の噴 霧角度(噴角)に均等な流量分布で広がって円錐形に噴霧されるので(乙2 の1頁左上写真参照),ノズルから190mm離れたガラス基板上に噴霧さ れる領域は,ノズルの噴霧圧力が0.1〜0.2MPaの場合,直径約24 2〜約266mmの円形領域となり,その面積は約4万5973〜約5万5 543mm2であると認められる。 このように,本件ノズルは,65〜70°の噴霧角度に広がり均等な流量 分布で円錐形に噴霧されるものであり,液滴の分布は一様に広がりながらガ ラス基板の外面に到達するのであるから,その分薬液の単位面積当たりの圧 力は大幅に低減するというべきである。 そうすると,ノズルからフッ酸が噴射される際の圧力と噴射によってガラ ス基板に加わる衝撃の圧力がほとんど変わらないことを前提とし,被告方法 が構成要件1E及び7Hを充足するとの原告の主張は理由がない。\n

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平成29(ワ)30826  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年3月26日  東京地方裁判所(46部)

 技術的範囲外と判断されました。均等侵害の主張も第1要件違反として否定されました。

 原告は,本件シールブックが「折り重ねることによって形成されるシール 領域」を有していないという相違点(本件相違点)があるとしても,本件シ ールブックは本件発明1の構成と均等なものとして,本件発明1の技術的範\n囲に属すると主張する。本件シールブックが本件発明1の構成と均等である\nというためには,特許請求の範囲に記載された構成中被告製品と異なる部分\nが特許発明の本質的部分でないことが必要である。 そして,特許発明における本質的部分とは,当該特許発明に係る特許請求 の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特\n徴的部分であると解すべきであり,特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細 な説明の記載に基づいて,特許発明の課題及び解決手段とその作用効果を把 握した上で,特許発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見ら れない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定するこ\nとによって認定されるべきである。
 イ 本件明細書の発明の詳細な説明の記載に照らすと,本件発明1は,シール 付き印刷物に関する発明であり,それまで知られていた特許文献1ないし3 (特開2007−334037号公報,特開2006−82542号公報, 特開2004−314621号公報〔乙2〕)に開示されたシール付き印刷 物では,「シール及びシール台紙は平面状であるため,立体的な広がりのあ る使い方を提供できるものではな」く,また「通常のシールを製造する方法 が適用される」ため製造が容易でないとの課題が存在した(段落【0006】, 【0007】)。ここにいう「通常のシールを製造する方法」は,本件明細書 には直接記載はされていないが,上記各特許文献において,紙本体の少なく とも一箇所を折り重ねることによってシール領域を形成する方法が開示さ れていたと認めるに足りる証拠はない。 本件発明1は,従来技術における上記課題を踏まえ,「容易に製造するこ とが可能」なシール付き印刷物を提供することを目的の1つとしており(段\n落【0007】),本件特許請求の範囲記載の構成,具体的には,シール及び\n台紙となる印刷が施された紙本体と,その少なくとも一箇所を折り重ねるこ とによって形成されるシール領域との構成を有するシール付き印刷物とし,\n紙本体を折り重ねることで形成されたシール領域を有するもの(段落【00 13】)と認められる。 また,実施例である【図1】及び【図2】については,「シール(5,6) 及び台紙(4)となる印刷がされた紙本体2を折り重ねることでシール領域 3と台紙領域4が形成される。」(段落【0046】),「紙本体2を印刷する 工程の延長線上で,紙本体2にコーティング層32と粘着層31A,31B を形成して貼り合わせることでシール領域3となるため,起立シール5を含\nむシールブック1を容易に製造することができる」(段落【0049】)と説 明されている。 これらの本件明細書における記載からすれば,本件発明1が解決しようと する課題である「容易に製造することが可能」となるための構\成には,少な くとも,1枚の「紙本体2」の両面に印刷を施した上で(段落【0020】 【0021】,図3),「紙本体2」を折り重ねて貼り合わせることによって\nシール領域を形成することにより(段落【0021】【0046】),製造さ れたシール付き印刷物であるという構成を有することが含まれていると解\nすることができる。 したがって,本件特許請求の範囲の記載のうち,「紙本体の少なくとも一 箇所を折り重ねることによって形成されるシール領域」との構成は,従来技\n術に見られない特有の技術的思想を構成する本件発明の特徴的部分である\nといえる。
 ウ これに対し,原告は,本件発明の本質的部分は,同種の紙素材を重ねて貼\nり合わせてシール領域と台紙領域を形成することであり,「折り重ねること によって形成されるシール領域」は本件発明1の本質的部分ではないと主張 する。 しかし,前記イのとおり,「紙本体の少なくとも一箇所を折り重ねること によって形成されるシール領域」との構成は,従来技術に見られない特有の\n技術的思想を構成する本件発明の特徴的部分であり,原告の主張は採用する\nことができない。 したがって,原告の上記主張は採用できない。
 エ 前記のとおり,被告製品である本件シールブックは,構成要件1Cの「折\nり重ねることによって形成」との文言を充足しないから,本件発明1とはそ の本質的部分において相違し,少なくとも均等の第1要件を充足しない。 したがって,被告製品である本件シールブックは,本件発明1と均等なも のとして,その技術的範囲に属するものとは認められない。

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平成30(ワ)10130  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年4月24日  東京地方裁判所(29部)

 CS関連発明の侵害事件です。会計ソフトについて非侵害と判断されました。均等も第1要件を満たさないと判断されました。 該当特許の公報は以下です。 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-4831955/B4E648E4A31FB8F27049717998C719922F602DAF55832B56FBCB639C750A8DAC/15/ja 該当特許は無効審判もありますが、審決は見れない状態です(無効2018-800140)

 ア 特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なか った技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想 に基づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にあることに照らすと,特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のう\nち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。\n
イ これを本件についてみると,前記のとおり,本件発明は,従来の現金主義に 基づく公会計では,政策レベルの意思決定に利用することは困難であったことに鑑 みて,国民が将来負担するべき負債や将来利用可能な資源を明確にして,政策レベルの意思決定を支援することができる会計処理方法及び会計処理を行うためのプロ\nグラムを記録した記憶媒体を提供することを課題とし,その課題を解決するための 手段として,純資産の変動計算書勘定を新たに設定し,当該年度の政策決定による 資産変動を明確にするとともに,将来の国民の負担をシミュレーションすることが できる会計処理方法を提案するものである。 そして,前記のとおり,本件発明の処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘 定)は,国家の政策レベルの意思決定を記録,会計処理するために設定された勘定 であるのに対し,資金収支計算書勘定は,従来の公会計において単式簿記システム で扱ってきた資金(現金及び現金同等物)の受入と払出を記録するものであり,閉 鎖残高勘定(貸借対照表勘定)及び損益勘定(行政コスト計算書勘定)も,企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきたものであるから,本件発\n明の課題解決手段である当該年度の政策決定による資産変動の明確化や将来の国民 の負担のシミュレーションは,国家の政策レベルの意思決定を対象とする処分・蓄 積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)によって行われるものと解するのが相当で ある。その上で,本件発明は,資金収支計算書勘定と閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定),損益勘定(行政コスト計算書勘定)と処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計\n算書勘定),処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)と閉鎖残高勘定(貸 借対照表勘定)の各勘定連絡を前提として,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に,当該年度における純資産増加(C3,C4)及び純資産減少(C1,\nC2)並びにこれらの差額(収支尻)である純資産変動額(C5)が表示される構\ 成を採用しており,将来の国民の負担をシミュレーションするためには資産変動の 内訳も認識される必要があると認められることにも照らせば,本件発明の課題解決 手段である当該年度の政策決定による資産変動の明確化や将来の国民の負担のシミ ュレーションは,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に表示される純資産増加(C3,C4)及び純資産減少(C1,C2)並びにこれらの差額(収支\n尻)である純資産変動額(C5)によって行われるものと解するのが相当である。 また,上記のような解釈は,本件発明によるシミュレーションに関する本件明細 書の説明とも整合する。すなわち,本件明細書には,「次に,本発明の特徴である シミュレーションについて説明する。損益外純資産変動計算書には,行政コストと, 当期に費消する財源措置で国民の純資産として将来に残る資産の科目からなる財源 措置とそれ以外の科目からなる財源措置と,当期に調達する財源で国民の純資産と して将来に残る資産の科目からなる財源とそれ以外の科目からなる財源と,国民の 純資産として将来に残る資産の原因別増減額と,再評価による差額と,国民の純資 産として将来に残る資産の原因別増減額充当のために手当てされた財源と,会計処 理により,それらから導き出された現役世代の負担額と,将来世代の負担額,赤字 公債相当額,建設公債相当額などの金額が表の中に表\示される。」(【0069】), 「本発明によるシミュレーションは,現役世代の負担額と,将来世代の負担額,赤 字公債相当額,建設公債相当額などの金額に,目標とするべき金額を設定して,行 政コストや財源措置をどのように調整すれば目標とするべき金額が達成できるかを 演算するための手順を予め複数のプログラムとして設定する。」(【0070】)などとして,本件発明によるシミュレーションについて,損益外純資産変動計算書に表\示される行政コスト,財源措置,財源及び資産の原因別増減額等から導き出される 現役世代の負担額,将来世代の負担額,赤字公債相当額及び建設公債相当額等によ って行われることが説明されており,本件発明の課題解決手段である当該年度の政 策決定による資産変動の明確化や将来の国民の負担のシミュレーションが処分・蓄 積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に表示される純資産増加(C3,C4)及び純資産減少(C1,C2)並びに純資産変動額(C5)によって行われるという\n上記の解釈と整合する。
そうすると,本件発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,国家の政策レベルの 意思決定に係る会計処理を対象とする処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘 定)を採用した上で,同勘定に表示される純資産減少(C1,C2)を構\成する勘 定科目の内容を具体的に規定する構成要件Hは,本件発明の課題解決手段を具体化する特有の技術的思想を構\成する特徴的部分であると認めるのが相当である。したがって,本件発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,社会保障給付等の損 益外で財源を費消する取引を「財源措置(C2)」に含める構成(構\成要件H)は, 本件発明の本質的部分であると認められる。
ウ この点,原告は,社会保障給付を処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書 勘定)の「財源措置(C2)」に含める構成は,本件発明の非本質的部分であるとし,その理由として,1)本件発明の技術的思想の中核をなす特徴的原理は,純資産 変動計算書勘定の存在,4つの勘定の勘定連絡の設定,自動仕訳と勘定連絡を通じ 政策レベルの意思決定と将来の国民の負担をシミュレーションできる会計処理方法 のプログラミングにあり(本件明細書【0008】,【0010】,【0021】, 【0031】参照),社会保障給付を行政コスト計算書に計上する被告製品の構成は,本件発明の特徴的原理と無関係であること,2)社会保障給付を処分・蓄積勘定 (損益外純資産変動計算書勘定)の借方の財源措置に計上する構成を,損益勘定(行政コスト計算書勘定)に計上する構\成に置換したとしても,損益勘定(行政コスト計算書勘定)は処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に振り替えら れるから,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の借方と貸方の差額 (収支尻)に示されている損益外の純資産変動額は同額となり,純資産変動額や将 来償還すべき負担の増減額を財務諸表の中に表\示することにより当該年度の政策決 定による資産変動を明確にするとともに,将来の国民の負担をシミュレーションで きるという同一の作用効果を奏することなどを主張する。 しかしながら,前記のとおり,本件発明は,国家の政策レベルの意思決定を対象 とするものとして,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)という新たな 勘定を設定するものであり,当該年度の政策決定による資産変動の明確化や将来の 国民の負担のシミュレーションを通じた政策レベルの意思決定の支援は,処分・蓄 積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)によって実現されるものと解するのが相当 であり,本件明細書においても,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定) 以外の勘定を用いて将来の国民の負担のシミュレーション等が行われることは説明 されていない(原告が指摘する本件明細書【0031】は,適切な勘定連絡を設定 することがシミュレーションをする前提として必要になることを説明するものであ り,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)以外の勘定を用いてシミュレ ーションを行うことを説明するものとは認められない。)。 そうすると,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の借方に計上され る金額の総額及び貸借差額が結果的に同一になるとしても,処分・蓄積勘定(損益 外純資産変動計算書勘定)以外の勘定を参照しなければ,国家の政策レベルの意思 決定に関する勘定科目(社会保障給付を含む)及びその金額が明らかにならないよ うな構成は,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)を通じて国家の政策レベルの意思決定を支援する本件発明とは作用効果が異なるというべきである。\n
エ また,原告は,従来技術に対する本件発明の貢献の程度は大きいから,本件 発明の本質的部分は,「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の導入に より,将来世代に対して負担が現実的に先送りされた金額や将来利用可能な資源の増加額を可視化する」という構\成要件Hを上位概念化したものであって,被告製品は,そのような構成を備えていると主張する。原告の主張は必ずしも明確でないが,従来技術に対する本件発明の貢献の程度に\n照らし,本件発明の構成のうち,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の設定以外のものは非本質的部分であると主張する趣旨であれば,本件出願日前に\n頒布された刊行物である乙12文献において,資金収支計算書勘定,貸借対照表勘定及び行政コスト計算書勘定に加えて,納税者,すなわち,国民の資産の変動を明\nらかにするための勘定として,財源措置・納税者持分増減計算書勘定を設ける構成が示されていることに照らし,少なくとも,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計\n算書勘定)の設定のみを従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると認めることはできないから,採用することができない。\n
オ そこで,被告製品をみると,被告製品では,前記のとおり,社会保障給付が 行政コスト計算書に計上されており,純資産変動計算書には,行政コスト計算書の 収支を基礎付ける勘定科目(社会保障給付を含む)及びその金額が示されていない ことが認められ,「純経常費用(C1)と並んで財源措置(C2)という項目もあ るが,これは具体的に言えば社会保障給付や…を指しており」(構成要件H)を充足するとはいえないから,本件発明と本質的部分において相違する。したがって,\n被告製品は,均等の第1要件を満たすとはいえない。

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平成29(ワ)9201  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年6月20日  大阪地方裁判所

 特許権侵害が認定され、102条3項の実施料率として7%が認定されました。大阪地裁はその理由を詳細に認定しています。H31.3の特許法改正規定の施行を先取りする形で、「通常の実施料率に比べておのずと高額になるであろうことを考慮すべき」と一般論を述べています。

 特許法102条3項は,「特許権者…は,故意又は過失により自己の特許権 …を侵害した者に対し,その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する 額の金銭を,自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。」旨 規定する。そうすると,同項による損害は,原則として,侵害品の売上高を基準と し,そこに,実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。 ここで,特許法102条3項については,「その特許発明の実施に対し通常受け るべき金銭の額に相当する額」では侵害のし得になってしまうとして,平成10年 法律第51号による改正により「通常」の部分が削除された経緯がある。また,特 許発明の実施許諾契約においては,技術的範囲への属否や当該特許の効力が明らか ではない段階で,被許諾者が最低保証額を支払い,当該特許が無効にされた場合で あっても支払済みの実施料の返還を求めることができないなど,様々な契約上の制 約を受けるのが通常である状況の下で,事前に実施料率が決定される。これに対し, 特許権侵害訴訟で特許権侵害に当たるとされた場合,侵害者は,上記のような契約 上の制約を負わない。これらの事情に照らせば,同項に基づく損害の算定に当たっ て用いる実施に対し受けるべき料率は,必ずしも当該特許権についての実施許諾契 約における実施料率に基づかなければならない必然性はなく,むしろ,通常の実施 料率に比べておのずと高額になるであろうことを考慮すべきである。 したがって,特許法102条3項による損害を算定する基礎となる実施に対し受 けるべき料率は,1)当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や,それ が明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ,2)当該特 許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能\n性,3)当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態 様,4)特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情 を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきである。
(イ) 実施料の相場(1))
「実施料率〔第5版〕」(社団法人発明協会研究センター編,平成15年発行。 甲38)によれば,「医薬品・その他の化学製品」(イニシャル無)の技術分野に おける平成4年度〜平成10年度の実施料率の平均値は7.1%であり,昭和63 年度〜平成3年度に比較して上昇しているところ,その要因として,「実施料率全 体の契約件数は減少しているものの,8%以上の契約に限れば件数が増加しており, この結果,…実施料率の平均値が高率にシフトしている。」,「この技術分野が他 の技術分野と比較して実施料率が高率であることと,実施料率の高率へのシフト傾 向は,医薬品が支 れている。また,「バイオ・製薬」の技術分野においては,平均6.0%,最大値 32.5%,最小値0.5%とされている。
(ウ) 本件における実施料率を考えるにあたり考慮すべき事情(2)〜3))
a 原告は,本件各発明の技術的価値は極めて優れたものであり,また,速乾性 手指消毒剤の市場における泡状の製品の占めるシェアの動向から,経済的にもその 価値は高いなどと主張する。 泡状の速乾性手指消毒剤である被告各製品に係る宣伝広告(甲5,7,8),製 品情報(甲6,9)及び医薬品インタビューフォーム(甲10)では,液状の速乾 性手指消毒剤では手に取ったときにこぼれやすく,ジェル状の速乾性手指消毒剤で は増粘剤が配合されているためにポンプのノズルの詰まりや繰り返し塗布したとき の使用感が問題になることがあったところ,被告各製品は,これらの問題点を解決 する製品である旨がうたわれていることが認められる。 また,本件各発明の実施品である泡状の速乾性手指消毒剤(平成23年6月発売。 甲39,41の1〜41の5,弁論の全趣旨)の販売業者が医療関係者向けに開設 したウェブサイト(甲40)には,泡が目に見えるので消毒範囲が確認できるとと もに,泡が消えるまで塗り広げることが消毒時間の目安にもなる点や,増粘剤が入 っていないので,ポンプが詰まらず,手に擦り込んでもヨレ(増粘剤入りの消毒剤 や化粧品を手に擦り込んだ際に出る糊状の剥離物)が出ないことがうたわれている。 さらに,平成30年9月26日付け薬事日報ウェブサイトの新薬・新製品情報に関 する記事(甲44)においては,第三者の販売に係る「医薬品として日本で初めて 承認された低アルコール濃度72vol%の手指殺菌・消毒剤」の出荷開始予定について\n報じる中で,「同品の登場によって,手指消毒剤の課題であったアルコールによる 手肌への刺激が低減され,…このほか,▽きめ細かく弾力のある泡で,手からこぼ れるリスクを軽減する▽泡が目でしっかり見えるため,手指消毒の状態を確認でき る−といった使用感も特徴。」,「現在,医療分野における手指消毒剤市場は約1 60億円とされ,構成比は液状が6割,ジェル状が3割,泡状が1割という状況。\nただ,液状の構成比は年々減少しており,今後はジェル状と共に泡状も伸びていく\nことが見込まれている。」とされている。 加えて,被告サラヤが実施したアンケートによれば,アンケート対象者である医 療従事者の施設で使用されている速乾性手指消毒剤の種類は,平成25年にはジェ ルタイプ67%,液タイプ27%,泡タイプ6%であったものが,平成27年には それぞれ66%,24%,10%となっている(甲42,43)。 以上の事情を総合的に見ると,被告各製品と本件各発明の実施品に加え,第三者 の製品も,本件各発明の奏する作用効果(前記3(2)ア)と同趣旨と見られる効果を 利点としてうたっていることなどに鑑みれば,泡状の手指消毒剤において本件各発 明が持つ技術的価値は高いものと見られる。また,手指消毒剤の市場において,泡 状の製品のシェアが徐々に高まっていることがうかがわれることに鑑みると,本件 各発明の経済的価値も積極的に評価されるべきものといえる。もっとも,後者に関 しては,ジェル状の製品のシェアはなお維持されているといってよいことに鑑みる と,その評価は必ずしも高いものとまではいえない。実施料率の決定要因としては, 当該特許発明の技術的価値よりも経済的価値の方がより影響力が強いと推察される ことに鑑みると,このことは軽視し得ない。 これに対し,被告らは,本件各発明は平均的な発明に比して技術的に優れた発明 ではなく,また,泡状の手指消毒剤のシェアの拡大は直接的には当該製品の販売事 業者の営業努力によるものであり,シェア拡大をもって特許の経済的価値が高いと はいえないなどと主張する。 しかし,進歩性が認められる本件各発明の奏する作用効果と同趣旨と見られる効 果が実際の製品の利点としてうたわれていることなどに鑑みれば,上記のとおり本 件各発明の技術的価値は高いものと評価するのが相当である。また,販売事業者が 営業活動に当たって相応の営業努力を行うことは当然である上,泡状の手指消毒剤 に係る営業方法等が,ジェル状ないし液状のものに係る営業方法等と比較して,格 別のものであると見るべき事情もない。 これらのことから,この点に関する被告らの主張は採用できない。
b 被告各製品は,被告製品1(500mLの泡ポンプ付が定価1760円,3 00mLの泡ポンプ付が1200円,80mLの泡ポンプ付が670円,600m Lのディスペンサー用が2000円。甲5,28,乙13),被告製品2(500 mLの泡ポンプ付が1760円,300mLの泡ポンプ付が1200円,200m Lの泡ポンプ付が930円,80mLのものが670円,600mLのディスペン サー用が2000円。甲8,29,乙14)いずれも比較的低価格である。反面, これを踏まえて被告各製品の売上高を見ると,その販売数量は多いといえるから, 被告各製品はいわゆる量産品であり,利益率は必ずしも高くないと合理的に推認さ れる。この点は,本件各発明を被告各製品に用いた場合の利益への貢献という観点 から見ると,実施料率を低下させる要因といえる。
(エ) 小括
上記(イ)及び(ウ)の各事情を斟酌すると,特許権侵害をした者に対して事後的に定め られるべき,本件での実施に対し受けるべき料率については,7%とするのが相当 である。これに反する原告及び被告らの各主張は,いずれも採用できない。 ウ 「特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」 以上によれば,原告が被告らによる本件各発明の実施に対し受けるべき金銭の額 に相当する額は,売上高に7%を乗じて算定すべきこととなる。

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平成30(ネ)10063  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年6月7日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 知財高裁特別部、いわゆる大合議判決です。争点は充足論、無効論など、多々ありますが、102条2項の推定覆滅事由、同3項の損害額の判断基準について一般論を述べています。

(3) 推定覆滅事由について
ア 推定覆滅の事情
特許法102条2項における推定の覆滅については,同条1項ただし書の事情 と同様に,侵害者が主張立証責任を負うものであり,侵害者が得た利益と特許権者 が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。例えば, 1)特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在すること(市場の非同一性),2)市 場における競合品の存在,3)侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),4)侵害 品の性能(機能\,デザイン等特許発明以外の特徴)などの事情について,特許法1 02条1項ただし書の事情と同様,同条2項についても,これらの事情を推定覆滅 の事情として考慮することができるものと解される。また,特許発明が侵害品の部 分のみに実施されている場合においても,推定覆滅の事情として考慮することがで きるが,特許発明が侵害品の部分のみに実施されていることから直ちに上記推定の 覆滅が認められるのではなく,特許発明が実施されている部分の侵害品中における 位置付け,当該特許発明の顧客誘引力等の事情を総合的に考慮してこれを決するの が相当である。
イ 控訴人らは,炭酸ガスを利用したパック化粧料全てが競合品であることを 前提に,他の炭酸パック化粧料の存在が推定覆滅事由となると主張する。 しかし,そもそも,競合品といえるためには,市場において侵害品と競合関係 に立つ製品であることを要するものと解される。 被告各製品は,炭酸パックの2剤型のキットの1剤を含水粘性組成物とし,炭 酸塩と酸を含水粘性組成物中で反応させて二酸化炭素を発生させ,得られた二酸化 炭素含有粘性組成物に二酸化炭素を気泡状で保持させる炭酸ガスを利用したパック 化粧料である。そして,化粧料における剤型は,簡便さ,扱いやすさのみならず, 手間をかけることにより得られる満足感等にも影響するものであり,各消費者の必 要や好みに応じて選択されるものであるから,剤型を捨象して広く炭酸ガスを利用 したパック化粧料全てをもって競合品であると解するのは相当ではない。控訴人ら が競合品であると主張する製品は,その販売時期や市場占有率等が不明であり,市 場において被告各製品と競合関係に立つものと認めるには足りない。
ウ 控訴人らは,被告各製品が利便性に優れているとか,被告各製品の販売は 控訴人らの企画力・営業努力によって成し遂げられたものであると主張する。 しかし,事業者は,製品の製造,販売に当たり,製品の利便性について工夫し, 営業努力を行うのが通常であるから,通常の範囲の工夫や営業努力をしたとしても, 推定覆滅事由に当たるとはいえないところ,本件において,控訴人らが通常の範囲 を超える格別の工夫や営業努力をしたことを認めるに足りる的確な証拠はない。
エ 控訴人らは,被告各製品は原告製品に比べて顕著に優れた効能を有すると\n主張する。 侵害品が特許権者の製品に比べて優れた効能を有するとしても,そのことから\n直ちに推定の覆滅が認められるのではなく,当該優れた効能が侵害者の売上げに貢\n献しているといった事情がなければならないというべきである。
・・・
(ウ) 被告各製品及び原告製品は,いずれも本件発明1−1及び本件発明2−1 の実施品であり,炭酸塩と酸を含水粘性組成物中で反応させて二酸化炭素を発生さ せ,得られた二酸化炭素含有粘性組成物に二酸化炭素を気泡状で保持させ,皮膚に 適用して二酸化炭素を皮下組織等に供給することにより,美肌,部分肥満改善等に 効果を有するものであると認められるのであり,上記(ア)及び(イ)に認定した事実に よっても,被告各製品が原告製品に比して顕著に優れた効能を有し,これが控訴人\nらの売上げに貢献しているといった事情を認めるには足りず,ほかにこれを認める に足りる的確な証拠はない。
オ 控訴人らは,被告各製品が控訴人ネオケミアの有する特許発明の実施品で あるなどとして,これらの特許発明の寄与を考慮して損害賠償額が減額されるべき であると主張する。 侵害品が他の特許発明の実施品であるとしても,そのことから直ちに推定の覆 滅が認められるのではなく,他の特許発明を実施したことが侵害品の売上げに貢献 しているといった事情がなければならないというべきである。控訴人ネオケミアが, 二酸化炭素外用剤に関連する特許である,1)特許第4130181号(乙A18), 2)特許第4248878号(乙A19),3)特許第4589432号(乙A20), 4)特許第4756265号(乙B全7)を保有していることは認められるが,被告 各製品が上記各特許に係る発明の技術的範囲に属することを裏付ける的確な証拠は ないから,そもそも,被告各製品が他の特許発明の実施品であるということができ ない。よって,これらの特許発明の寄与による推定の覆滅を認めることはできない。 なお,被告各製品の中には,上記特許権の存在や,特許取得済みであることを 外装箱に表示したり,宣伝広告に表\示したりしているものがあったことが認められ る(甲7,8,17,20)が,特許発明の実施の事実が認められない場合に,そ の特許に関する表示のみをもって推定覆滅事由として考慮することは相当でないか\nら,この点による推定の覆滅を認めることもできない。
カ 控訴人らは,従来技術との比較の観点から,本件発明1−1及び本件発明 2−1の技術的価値が低いことを主張するが,控訴人らが指摘するジェルと粉末を 組み合わせる化粧料の技術(資生堂614及び日清324)は,炭酸ガスを利用し た化粧料に係るものではないし(乙A103,乙E全9,35,36),2剤混合 型の気泡状の二酸化炭素を発生する化粧料(石垣発明1及び2)は,炭酸ガスの気 泡の破裂により皮膚等をマッサージするための発泡性化粧料の技術であって,二酸 化炭素を気泡状で保持する二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのものではない (乙E全4,5,37,38)から,いずれも本件発明1−1及び本件発明2−1 を代替するものではない。そうすると,これらの従来技術の存在は,被控訴人の受 ける損害とは無関係であるから,推定覆滅事由に当たるということはできない。 キ 控訴人らは,乙A3の実験結果によれば,ブチレングリコールが配合され た被告各製品においては,本件発明1−1及び本件発明2−1の寄与は限定的であ ると主張する。しかし,本件発明1−1及び本件発明2−1は二酸化炭素含有粘性 組成物を得るための2剤型の化粧料のキットの発明であるところ,被告各製品は, 炭酸塩を含むジェル剤と酸を含む顆粒剤を混合して使用するパック化粧料のキット であるから,本件発明1−1及び本件発明2−1は被告各製品の全体について実施 されているというべきである。また,被告各製品にブチレングリコールが配合され たことによる効果が控訴人らの売上げに貢献しているといった事情も認められない 本件において,ブチレングリコールが配合されていることは,被控訴人の受ける損 害とは無関係であるから,控訴人らが指摘する乙A3の実験の結果は,控訴人らの 上記主張を基礎付けるものではない。
・・・
6 損害(特許法102条3項)(争点6−2)
(1) 特許法102条3項について
ア 被控訴人は,選択的に,別紙「損害額一覧表」の「被控訴人主張額」「3\n項による損害額」欄記載のとおり,特許法102条3項により算定される損害額も 主張している。特許法102条3項は,特許権侵害の際に特許権者が請求し得る最 低限度の損害額を法定した規定である。
イ 特許法102条3項は,「特許権者…は,故意又は過失により自己の特許 権…を侵害した者に対し,その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当す る額の金銭を,自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。」 旨規定する。そうすると,同項による損害は,原則として,侵害品の売上高を基準 とし,そこに,実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。
(2) その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額
ア 特許法102条3項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の 額に相当する額」については,平成10年法律第51号による改正前は「その特許 発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額」と定められていたところ, 「通常受けるべき金銭の額」では侵害のし得になってしまうとして,同改正により 「通常」の部分が削除された経緯がある。
特許発明の実施許諾契約においては,技術的範囲への属否や当該特許が無効に されるべきものか否かが明らかではない段階で,被許諾者が最低保証額を支払い, 当該特許が無効にされた場合であっても支払済みの実施料の返還を求めることがで きないなどさまざまな契約上の制約を受けるのが通常である状況の下で事前に実施 料率が決定されるのに対し,技術的範囲に属し当該特許が無効にされるべきものと はいえないとして特許権侵害に当たるとされた場合には,侵害者が上記のような契 約上の制約を負わない。そして,上記のような特許法改正の経緯に照らせば,同項 に基づく損害の算定に当たっては,必ずしも当該特許権についての実施許諾契約に おける実施料率に基づかなければならない必然性はなく,特許権侵害をした者に対 して事後的に定められるべき,実施に対し受けるべき料率は,むしろ,通常の実施 料率に比べて自ずと高額になるであろうことを考慮すべきである。
したがって,実施に対し受けるべき料率は,1)当該特許発明の実際の実施許諾 契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界における実施料の相場 等も考慮に入れつつ,2)当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重 要性,他のものによる代替可能性,3)当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上 げ及び利益への貢献や侵害の態様,4)特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の 営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきである。
・・・・
ウ 実施に対し受けるべき金銭の額
上記のとおり,1)本件訴訟において本件各特許の実際の実施許諾契約の実施料 率は現れていないところ,本件各特許の技術分野が属する分野の近年の統計上の平 均的な実施料率が,国内企業のアンケート結果では5.3%で,司法決定では6. 1%であること及び被控訴人の保有する同じ分野の特許の特許権侵害に関する解決 金を売上高の10%とした事例があること,2)本件発明1−1及び本件発明2−1 は相応の重要性を有し,代替技術があるものではないこと,3)本件発明1−1及び 本件発明2−1の実施は被告各製品の売上げ及び利益に貢献するものといえること, 4)被控訴人と控訴人らは競業関係にあることなど,本件訴訟に現れた事情を考慮す ると,特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき,本件での実施に対し 受けるべき料率は10%を下らないものと認めるのが相当である。なお,本件特許 権1及び本件特許権2の内容に照らし,一方のみの場合と双方を合わせた場合でそ の料率は異ならないものと解すべきである。 したがって,本件各特許権侵害について,特許法102条3項により算定され る損害額は,別紙「損害額一覧表」の「裁判所認定額」「3項による損害額」欄記\n載のとおりとなる。
(3) 控訴人らの主張について
控訴人らは,被告各製品における本件各特許の寄与が限定されることを根拠に 実施に対し受けるべき料率を低くすべきであると主張するが,前記5(3)に説示し たところに照らし,本件発明1−1及び本件発明2−1を被告各製品に用いたこと による売上げ及び利益への貢献が限定されるとは認められないから,控訴人らの主 張は前提を欠く。 また,控訴人らは,被控訴人のビジネスモデルが不当に競争を制限するもので あると主張するが,前記5(1)イにおいて認定したとおり,被控訴人は本件各特許 の実施品を製造販売しているのであるから,被控訴人のビジネスモデルが不当に競 争を制限するものであると解する根拠がない。控訴人らの,MLMによる販売手法 に関する主張は具体的な主張を欠き,失当である。 控訴人らの主張するその余の点も,上記判断を左右するものではない。
7 総括
(1) 被控訴人キアラマキアート(被告製品5)については,上記6で認定した 特許法102条3項に係る損害額が,前記5で認定した同条2項に係る損害額より も高いから,同条3項に係る損害額をもって被控訴人の損害額と認めるべきことに なる。 他方,その余の控訴人らについては,いずれも前記5で認定した同条2項に係 る損害額の方が高いから,この金額をもって被控訴人の損害額と認めるべきことに なる。
なお,控訴人コスメプロらは,被告各製品を製造,販売するに至った経緯等に 照らし控訴人コスメプロらには故意又は重大な過失はなかったとして,同条4項に 基づき,このことを控訴人コスメプロらの損害賠償額を定めるについて参酌すべき であると主張する。しかし,控訴人コスメプロ,控訴人アイリカ,控訴人ウインセ ンス,控訴人コスメボーゼ及び控訴人クリアノワールは,化粧品の製造会社であり, 仮に同控訴人らの主張する諸事情があったとしても,同控訴人らにつき,特許権侵 害についての故意又は重大な過失がなかったということはできないから,控訴人ら の上記主張は採用できない。

◆判決本文

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◆平成27(ワ)4292

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平成31(ネ)10006  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年5月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 方法に用いる検査キットが間接侵害かが争われました。知財高裁(3部)は、1審の構成要件該当せずとの判断を維持しました。「患者の血清中のプロカルシトニン3−116の量を明らかにしていない」として、イ号キットを用いた検査方法は技術的範囲に属しないと判断されました。
 クレームが凄いですね。「患者の血清中でプロカルシトニン3−116を測定することを含む,敗血症及び敗血症様全身性感染を検出するための方法」です。

 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本件発明 の「プロカルシトニン3−116」は,「患者の血清中」から「測定」 されるものであり,測定結果が「敗血症及び敗血症様全身性感染」の「検 出」のために用いられることを理解できる。 そして,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)には,「プロカルシ トニン3−116を測定すること」の意義について規定する記載はない が,「測定」とは,一般的に,「長さ,重さ,速さなど種々の量を器具 や装置を用いてはかること」(大辞林(第3版))との意味を有する。 したがって,特許請求の範囲の記載によれば,本件発明の「患者の血 清中でプロカルシトニン3−116を測定すること」とは,患者の血清 中のプロカルシトニン3−116の量を明らかにすることを意味するも のと解される。
(イ) また,本件明細書の発明の詳細な説明には,従来技術として,患者 の血清中のプロカルシトニンの測定が,敗血症の検出にとって有益な診 断手段であることが知られていたこと,「本発明」の開始点は,敗血症 等の患者の血清中に比較的高濃度で検出可能なプロカルシトニンが,プ\nロカルシトニン1−116ではなく,プロカルシトニン3−116であ るという発見であり,そこから新規な診断及び治療方法,そこで使用可 能な物質等を導き出したことの開示がある(前記1(1)イ)。一方,本件 明細書の発明の詳細な説明には,「プロカルシトニン3−116を測定 すること」の意義について明示した記載はない。 そして,このような本件明細書の記載に照らしても,本件発明の「患 者の血清中でプロカルシトニン3−116を測定すること」とは,患者 の血清中のプロカルシトニン3−116の量を明らかにすることを意味 し,その測定結果が敗血症等の検出に用いられることを理解できる。
(ウ) 以上の特許請求の範囲及び本件明細書の記載事項を総合すると, 「患者の血清中でプロカルシトニン3−116を測定すること」とは, 患者の血清中のプロカルシトニン3−116の量を明らかにすることを 意味するものと解される。
イ これに対し控訴人は,構成要件Aの「患者の血清中でプロカルシトニン\n3−116を測定すること」とは,敗血症患者の血清中でプロカルシトニ ン3−116を敗血症の検出に必要な精度で測定することをいうと解すべ きであり,プロカルシトニン1−116と区別してプロカルシトニン3− 116を測定することを必須とするものではない旨主張し,その根拠とし て,1)本件明細書の記載事項(【0002】〜【0008】等)から,患 者の血清中でプロカルシトニン1−116等とプロカルシトニン3−11 6を区別することなくプロカルシトニン一般を測定したとしても,敗血症 等の検出に必要な精度でプロカルシトニン3−116を測定できることが 当業者に明らかであること,2)本件明細書には,本件特許に係る「敗血症 及び敗血症様全身性感染を検出するための方法」の具体例として,血中か ら検出されるプロカルシトニンの濃度を一般的なイムノアッセイにより測 定することが記載されているが(【0062】,表3),通常のイムノア\nッセイでは,プロカルシトニン1−116と区別してプロカルシトニン3 −116を測定することは不可能であることを挙げる。\nしかしながら,「患者の血清中でプロカルシトニン3−116を測定す ること」とは,患者の血清中のプロカルシトニン3−116の量を明らか にすることを意味するものと認められることについては,前記アのとおり である。
上記1)の点については,患者の血清中のプロカルシトニン3−116を プロカルシトニン1−116等と区別することなく測定することとは,患 者の血清中のプロカルシトニンを測定することと同義であるところ,本件 明細書には,患者の血清中のプロカルシトニン濃度を測定することにより 敗血症等を検出する技術は,本件出願の優先日前に従来技術として存在し たものであり,「本発明」は,かかる従来技術に対して新規のものである 旨が記載されていること(前記1⑵イ,ウ)からすると,かかる従来技術 が本件発明に係る方法に含まれると解することはできない。 なお,本件明細書には,敗血症等の患者の血清中に含まれるプロカルシ トニンの大部分がプロカルシトニン3−116であることを発見した旨 の記載があるが(【0009】,【0010】),たとえそのような関係 があるとしても,プロカルシトニン3−116を測定することと,プロカ ルシトニン一般を測定することとが同義とはいえないことは明らかであ る。更に付け加えれば,敗血症等の患者の血清中に含まれるプロカルシト ニンの大部分はプロカルシトニン3−116であるとの知見が存在する としても,敗血症等であるかどうかが明らかではない(だからこそ,その 診断を要する)患者については,その血清中のプロカルシトニンの大部分 がプロカルシトニン3−116であるかどうかは明らかではないはずで ある。したがって,敗血症等であるかどうかの診断に当たり,検出された プロカルシトニン一般の大部分がプロカルシトニン3−116であると の前提に立つことはできないというべきであるから,上記知見の存在は, 前記アの判断を左右するものではない。 また,上記2)の点については,本件明細書には,正常者及び敗血症患者 の血清中のプロカルシトニン濃度を測定した旨が記載されているところ (【0062】),【0062】に明示の記載はないが,上記測定は,【0 023】と同様に,市販のプロカルシトニンアッセイを用いて行われたも のと理解することができる。 しかしながら,本件明細書には,かかる測定は,これと同時に行われた これらの者の血清中のプロホルモン濃度の測定結果と対比することによ り,正常者と敗血症患者の間の濃度の差異がプロカルシトニンにおいて際 立っていることを示すものである旨の記載があることからすると(【00 59】,【0062】,【0063】,表3),上記測定が,本件特許に\n係る「敗血症及び敗血症様全身性感染を検出するための方法」の具体例と して記載されたものであるとは認められない。したがって,上記2)の主張 は,その前提を誤るものである。 以上によれば,控訴人の上記主張を採用することはできない。
(2) 被告方法について
前記前提事実のとおり,被告装置及び被告キットを使用すると,患者の 検体中において,プロカルシトニン3−116とプロカルシトニン1−1 16とを区別することなく,いずれをも含み得るプロカルシトニンの濃度 を測定することができ,その測定結果に基づき敗血症の鑑別診断等が行わ れていると認められるものの,本件全証拠によっても,被告装置及び被告 キットを使用して敗血症等を検出する過程で,プロカルシトニン3−11 6の量が明らかにされているとは認められない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告方法は,構\n成要件Aを充足するものとはいえない。

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◆平成29(ワ)28884

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平成29(ワ)31706  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年3月27日  東京地方裁判所

 東京地裁29部は、コンピュータプログラムにかかる特許について、構成要件FおよびGを有していないとして、技術的範囲に属しないと判断しました。

 そこで,被告プログラムが「木構造」を有するか,すなわち,被告プログラムを\n使用して表示されるフローダイアグラムの親子関係が示されている部分が「木構\ 造」であるかについて検討する。
原告は,前記イ(イ)の1)から4)までのSayボックスの接続関係について,木構\n造,すなわち階層リードで接続され,ノードの親子関係が示されている部分である と主張するのでこれをみると,前記イ(イ)のとおり,Sayボックスについて,S ayボックスのonStartコネクタから出発して,SayボックスのonSt oppedコネクタに接続されているのであり,SayボックスのonStart コネクタ及びonStoppedコネクタは,いずれも,Sayボックスの構成要\n素である以上,Sayボックスのフローダイアグラムにおけるボックスの接続関係 は,Sayボックスから出発してSayボックスに戻る閉路として表示されている\nことになり,木構造であるとはいえない。\nその他,階層リードで接続され,ノードの親子関係が示されている部分が全て木 構造であることを認めるに足りる証拠もない。\nそうであれば,被告プログラムは,「木構造」を有しているとはいえず,したが\nって,「木構造表\示ステップ」(構成要件G)を充足しないというべきである。\n
エ(ア) この点,原告は,「木構造」の意義について,ノード(点)とエッジ\n(線)から構成される図として表\示されるものであって,閉路を含まない概念であ るとした上で,前記イ(イ)でみたSayボックスの構成は,閉路ではないと主張す\nる。すなわち,被告プログラムのSayボックスのフローダイアグラムにおいて, 3)Say Textボックスの出力コネクタから1)Sayボックスの入力コネクタ に直接リードが接続されている場合には,SayボックスからSayボックスに戻 る閉路であるといえるが,3)Say Textボックスの出力コネクタは,4)Sa yボックスの出力コネクタに接続されており,1)Sayボックスの入力コネクタと 4)Sayボックスの出力コネクタは異なるものとして表示されているのであるから\n閉路ではない旨主張する。 しかしながら,「木構造」はコネクタの接続関係ではなく,ノード間の接続関係\nを表示するものであり,被告プログラムにおいて,それはボックス間の接続関係を\n表示するものであるところ,別紙6の図2は,別紙6の図1に表\示されたフローダ イアグラムのうち,Sayボックスの構成要素を表\示した図であって,前記認定の とおり,SayボックスのonStartコネクタとSayボックスのonSto ppedコネクタはいずれもSayボックスの構成要素であるから,Sayボック\nスのonStartコネクタとSayボックスのonStoppedコネクタの表\n示位置が離れているとしても,Sayボックスから出発してSayボックスへ戻る 接続関係がないとみることはできない。よって,原告の上記主張はその前提を欠き, 採用することができない。
(イ) また,原告は,出力コネクタであるonStoppedは,ボックスの動 作が終了したことを示すにすぎず,Say TextボックスのonStoppe dコネクタから出力されたデータは,Sayボックスを経由して流れることはない から,Sayボックスのフローダイアグラムは,データの流れの観点からみても閉 路ではない旨主張する。しかしながら,証拠(乙30,31)及び弁論の全趣旨に よれば,Say TextボックスのonStoppedコネクタから出力された データは,Sayボックスを経由していることが認められるから,原告の主張はそ の前提を欠き,採用できない。
オ 小括
以上のとおり,被告プログラムは,「木構造表\示ステップ」(構成要件G)を充\n足しない。
(2) 争点1−4(被告プログラムは,「自ノード変数データ,前記上位ノード変 数データ及び前記スクリプトを表示するノードデータテーブル表\示ステップ」(構\n成要件G)を充足するか)について
ア 「ノードデータテーブル表示ステップ」及び「ノード変数データ」の意義について\n
まず,「ノードデータテーブル表示ステップ」の意義について検討すると,「テ\nーブル」は,表,一覧表\を意味するところ,本件明細書等(【0046】,【00 55】,【0057】,【0065】,【0066】,【図6】,【図10】)に おいて,「ノードデータテーブル」に相当するデザインテーブルは,自ノード変数 データ及び全ての直系上位ノード変数データを表示する領域(【図6】における公\n開変数表示領域)と,代入用スクリプトを表\示する領域を含む一覧表になっており,\n「図6に示した状態で,表示された木構\造及びノードデータの編集が可能であり」\n(【0054】),「ノードデータとして1まとまりになっている」(【005 5】)と記載されていることにも照らせば,「ノードデータテーブル」とは,「ノ ードデータ」の一覧表であり,上位ノード変数データ,自ノード変数データ及び代\n入用スクリプトを同時に表示するものと解するのが一般的かつ自然である。\n次に,ノードデータテーブルが表示する「ノード変数データ」の意義について検\n討すると,本件明細書等には,「変数の値(「変数データ」と記述する場合もあ る。)」(【0031】),「ノードの直系上位ノードの公開変数の値である上位 ノード変数データ」(【0032】)と記載されており,これと異なる解釈を導く ような説明がされていることは認められないから,「ノード変数データ」は,変数 の値を意味すると解するのが自然かつ合理的である。
 イ この点,原告は,「テーブル」の意義について,本件明細書等に「デザイン テーブル20は,ツリービューア10に表示されたノードのうちの選択されたノー\nドが有する情報を表示する領域であり」(【0046】)と記載されているから,\n「テーブル」(構成要件G)は,情報を表\示する領域を意味すると主張する。しか しながら,この記載はデザインテーブルの性質を説明するものにすぎず,「テーブ ル」の意義を一般的意味より広く解釈すべきことを示唆する記載とみることはでき ないから,原告の同主張は採用することができない。 また,原告は,「ノード変数データ」の意義について,本件特許の請求項1及び 請求項9並びに本件明細書等の記載(【0008】【0017】)には,「前記自 ノード変数データの値」という文言があり,「変数データ」は,「変数データの 値」と区別して用いられているから,「ノードデータテーブル表示ステップ」にお\nいて,変数の値を表示することは必要ではなく,また,上位ノード変数データと自\nノード変数データとを同時に表示することも必要ではないと主張するが,同主張は,\n前記認定に照らして採用することができない。
ウ 被告プログラム
(ア) 被告プログラムの構成g\n
まず,原告は,被告プログラムのフローダイアグラム画面上のインスペクタに表\n示された入力コネクタの名称が「上位ノード変数データ」に当たると主張している ところ,入力コネクタの名称は変数の値ではないから,「上位ノード変数データ」 に当たると認めることはできない。よって,被告プログラムは,「上位ノード変数 データ」「を表示するノードデータテーブル表\示ステップ」を充足しない。
(イ) 被告プログラムの構成g’\n
また,原告は,被告プログラムのSay Textボックスのスクリプトエディ タにおいて親からの変数の取得機能を使う場合,上位ノードであるSayボックス\nの変数のうち利用可能なものを一覧表\示させることができる機能があるから,被告\nプログラムは,「上位ノード変数データ」「を表示するノードデータテーブル表\示 ステップ」を充足すると主張する。
この点,Say Textボックスにおいて親からの承継を選択した場合,別紙 3−1被告プログラム説明書図19のとおり,インスペクタ上に,Say Tex tボックスの変数Speed(%)の値が表示されるが,これはSay Text ボックスにおいて表示されるものであるから自ノード変数を表\示しているものと認 められ,「上位ノード変数データ」を表示しているとみることはできない。よって,\n被告プログラムは,一覧表として「自ノード変数データ」及び「上位ノード変数デ\nータ」を同時に表示しているということはできない。\nさらに,原告は,別紙6の図3のように,上位ノード変数と代入用スクリプトを 同時に表示することができる旨主張するが,同図の表\示形態を一覧表とみることは\nできない上,同図では,上位ノードの名称が表示されているにとどまり,上位ノー\nド変数の値が表示されていると認めることはできないから,「ノード変数データ」\nを一覧表として表\示しているということはできず,原告の同主張は採用することが できない。
加えて,本件全証拠によっても,behavior.xar内に,親からの承継 の機能に関して,自ノード変数データ及び上位ノード変数データを利用した演算を\n行って自ノード変数データの値を求める「代入用スクリプト」があると認めるに足 りる証拠はないから,被告プログラムは,「前記スクリプトを表示するノードデー\nタテーブル表示ステップ」を充足すると認めることはできない。\nエ 以上のとおり,被告プログラムは,「自ノード変数データ,前記上位ノード 変数データ及び前記スクリプトを表示するノードデータテーブル表\示ステップ」 (構成要件G)を充足しない。\n

◆判決本文

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平成29(ネ)10090  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年4月4日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 漏れていたのでアップします。知財高裁も、1審と同様に、数値範囲がその範囲であったとはいえないとして、先使用権を有しないと判断しました。なお、知財高裁は、傍論ですが、仮にその範囲であったとしても、同じ技術思想とはいえないとして、先使用ではないと判断しています。

 実際に用いられていたアルミピロー包材と同じ品番のアルミピロー包材の中に は,底部の折り曲げ部分のアルミが剥がれているものもある(甲18,26)。ま た,防湿性を確保したアルミピローの製造は,医薬品メーカーの管理方法を含めた 製造方法に大きく依存する旨指摘されている(乙48)。実際に用いられていたア ルミピロー包材に対して,専門家による立会いの下,リーク試験が行われ,気密性 が担保されていることが確認された旨報告されているものの(乙49),同リーク 試験は,検体を水没させ,一定の減圧条件(槽内圧力−40kPa,保持時間30 秒間)において,気泡が発生しないことを目視検査するというものである。水没試 験による気泡確認によって医薬包装の完全性を試験する方法は,個人の技量による 判別量の差や水槽内の細菌・水の表面張力による検出限界などの問題を有する旨指\n摘されているほか,−40kPaの圧力下において,直径5μmの孔からは5分経 過後も気泡が確認できず,直径10μmの孔においても,気泡の発生にばらつきが みられるとされている(甲27)。上記リーク試験の結果をもって,実際に用いら れたアルミピロー包材が気密性を有していたと確定することはできない。そうする と,サンプル薬が,長期間にわたって,アルミピロー包装下で保管されている間に, 湿気の影響を受けて水分含量が増加した可能性も,十\分にあり得るものである。 なお,サンプル薬の測定時の水分含量と,実生産品の水分含量(後記ウ(ア))や, 203サンプル薬を再製造したとされる錠剤の水分含量(2.18〜2.26質量%。 乙54〜56)は,ほぼ同じである。しかし,そもそも,サンプル薬と,実生産品 や203サンプル薬の再製造品が同一工程により製造されたものとは認められない から,この事実をもって,サンプル薬の測定時の水分含量が,製造時の水分含量と ほぼ同じであったということはできない。
(ウ) したがって,サンプル薬の測定時の水分含量が本件発明2の範囲内である からといって,4年以上も前の製造時の水分含量も本件発明2の範囲内であったと 推認できるものではない。
・・・
以上のとおり,サンプル薬を製造から4年以上後に測定した時点の水分含量 が本件発明2の範囲内であるからといって,サンプル薬の製造時の水分含量も同様 に本件発明2の範囲内であったということはできない。また,実生産品の水分含量 が本件発明2の範囲内であるからといって,サンプル薬の水分含量も同様に本件発 明2の範囲内であったということはできない。かえって,サンプル薬の顆粒の水分 含量を基に算出すれば,サンプル薬の水分含量は本件発明2の範囲内にはなかった 可能性を否定できない。その他,サンプル薬の水分含量が本件発明2の範囲内にあ\nったことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,控訴人が,本件出願日までに製造し,治験を実施していた本件2m g錠剤のサンプル薬及び本件4mg錠剤のサンプル薬の水分含量は,いずれも本件 発明2の範囲内(1.5〜2.9質量%の範囲内)にあったということはできない。
(3) サンプル薬に具現された技術的思想
ア 仮に,本件2mg錠剤のサンプル薬又は本件4mg錠剤のサンプル薬の水分 含量が1.5〜2.9質量%の範囲内にあったとしても,以下のとおり,サンプル 薬に具現された技術的思想が本件発明2と同じ内容の発明であるということはでき ない。
イ 本件発明2の技術的思想
前記1のとおり,本件発明2は,ピタバスタチン又はその塩の固形製剤の水分含 量に着目し,これを2.9質量%以下にすることによってラクトン体の生成を抑制 し,これを1.5質量%以上にすることによって5−ケト体の生成を抑制し,さら に,固形製剤を気密包装体に収容することにより,水分の侵入を防ぐという技術的 思想を有するものである。
ウ サンプル薬に具現された技術的思想
(ア) 控訴人が,本件出願日前に,サンプル薬の最終的な水分含量を測定したと の事実は認められない。
(イ) また,203サンプル薬及び303サンプル薬の製造工程では,A顆粒及 びB顆粒の水分含量を乾燥減量法による測定において●●●●●●●●にする旨定 められているものの(乙23の1・2,25の1・2),A顆粒及びB顆粒以外の 添加剤の水分含量は不明である。また,サンプル薬には吸湿性の高い崩壊剤や添加 剤が含まれているにもかかわらず,打錠時の周囲の湿度,気密包装がされるまでの 管理湿度などは不明である。 そうすると,サンプル薬に含有されるA顆粒及びB顆粒の水分含量について,● ●●●●にする旨定められているからといって,控訴人が,サンプル薬の水分含量 が一定の範囲内になるよう管理していたということはできない。
(ウ) さらに,012実生産品及び062実生産品の製造工程では,B顆粒の水 分含量を乾燥減量法による測定において●●●●●●●にすると定められており (乙24,26の1・2),サンプル薬と実生産品との間で,B顆粒の水分含量の 管理範囲が●●●●●●●●から●●●●●●●●へと変更されている。控訴人は, サンプル薬の水分含量には着目していなかったというほかない。
(エ) したがって,控訴人は,本件出願日前に本件2mg錠剤のサンプル薬及び 本件4mg錠剤のサンプル薬を製造するに当たり,サンプル薬の水分含量を1.5 〜2.9質量%の範囲内又はこれに包含される範囲内となるように管理していたと も,1.5〜2.9質量%の範囲内における一定の数値となるように管理していた とも認めることはできない。
エ 以上のとおり,本件発明2は,ピタバスタチン又はその塩の固形製剤の水分 含量を1.5〜2.9質量%の範囲内にするという技術的思想を有するものである のに対し,サンプル薬においては,錠剤の水分含量を1.5〜2.9質量%の範囲 内又はこれに包含される範囲内に収めるという技術的思想はなく,また,錠剤の水 分含量を1.5〜2.9質量%の範囲内における一定の数値とする技術的思想も存 在しない。 そうすると,サンプル薬に具現された技術的思想が,本件発明2と同じ内容の発 明であるということはできない。
オ 控訴人の主張について
(ア) 控訴人は,水分含量によってピタバスタチン製剤のラクトン体が生成する ことは技術常識であったから,控訴人は,本件2mg錠剤及び本件4mg錠剤の治 験薬製造前から,錠剤中の水分含量を管理する必要性を認識していたと主張する。 しかし,一般的に,医薬組成物において製剤中の水分が類縁物質生成の原因にな るという技術常識(乙8〜10)や,ピタバスタチンについては水分含量を調整し なければならないという技術常識(乙12〜14,20,57)が認められるとし ても,水分含量の調整方法は様々であるから,このような技術常識のみから,ピタ バスタチン又はその塩と特定の崩壊剤から成る錠剤であるサンプル薬について,錠 剤としての水分含量を一定の範囲内となるように管理することを控訴人が認識して いたといえるものではない。 したがって,本件出願日前の技術常識をもって,控訴人がサンプル薬の水分含量 を管理する必要性を認識していたということはできない。
(イ) 控訴人は,サンプル薬について,水分含量を調整することにより,水分に よる影響を受ける類縁物質が生成しない,長期安定な薬剤を製造する点は,確定し ていた旨主張する。 しかし,控訴人が,サンプル薬について,ラクトン体及び5−ケト体の生成の程 度について測定し,安定な製剤であることを確認していたとしても,前記のとおり, 控訴人が,サンプル薬を製造するに当たり,その水分含量を1.5〜2.9質量% の範囲内又はこれに包含される範囲内となるように管理していたとも,1.5〜2. 9質量%の範囲内における一定の数値となるように管理していたとも認めることは できない。サンプル薬において,5−ケト体の生成を抑制できていたとしても,こ れをもって,控訴人が,サンプル薬の水分含量を1.5質量%以上に管理していた と推認できるものではなく,また,これが,控訴人がサンプル薬の水分含量を1. 5質量%以上に管理するという技術的思想を有していた結果として生じたものと評 価できるものでもない。 したがって,サンプル薬について,何らかの方法を採用することにより,水分に よる影響を受ける類縁物質が生成しない,長期安定な薬剤を製造する点が確定され ていたとしても,これをもって,サンプル薬に具現された技術的思想が,本件発明 2と同じ内容の発明であるということはできない。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成27(ワ)30872 (東京地裁29部)

 本件出願日(平成24年8月8日)までに,被 告の社内において,本件発明2の内容を知らないでこれと同じ内容の発明がされて いた(被告が被告の従業員等から当該発明を知得していた)と認めることは困難で あるし,この点を措くとしても,後記(3)のとおり,本件出願日までに,本件2mg 製品及び被告製品(本件4mg製品)の内容が,本件発明2の構成要件Eを備える\nものとして,一義的に確定していたと認めることはできず,本件発明2を用いた事 業について,被告が即時実施の意図を有し,かつ,その即時実施の意図が客観的に 認識される態様,程度において表明されていたとはいえないから,被告に先使用権\nが成立したということはできない。
・・・
しかし,被告の提出に係る書証からは,実生産品とサンプル薬が同一の工程によ り製造されたものであると直ちに認めることは困難である。すなわち,本件で問題 となるのは,「PTP包装してなる医薬品」を構成する「錠剤」の「水分含量」が\n「1.5〜2.9質量%」の範囲となるよう管理されていたか否かであるところ, 水分は,有効成分でないばかりか,積極的な添加物でもなく,不純物として扱われ るものでもないため,錠剤が製造された後,PTP包装された状態で,錠剤の水分 含量がいかなる値となるかという観点から工程の同一性を論じるためには,被告の 提出に係る全ての書証をもってしても,情報が不足しているというほかはない(少 なくとも,打錠工程の湿度環境や打錠後の保管条件は,PTP包装された錠剤の水 分含量に影響するといわざるを得ないが,被告の提出にかかる書証では,これらの 条件は明らかにされていない。)。
イ 被告は,本件2mg錠剤のサンプル薬(ロット番号:PTVD−203)及 び本件4mg錠剤のサンプル薬(ロット番号:TVD−303)の水分含量につい て,いずれも本件発明2の構成要件Eの数値範囲内にあったと主張し,乙32号証\n(以下「乙32実験報告書」という。)を提出する。 しかし,乙32実験報告書に示される本件2mg錠剤のサンプル薬(ロット番号: PTVD−203)及び本件4mg錠剤のサンプル薬(ロット番号:TVD−30 3)の水分含量の測定値は,これらの錠剤が製造されたとされる日から4年以上が 経過した時点のものである。そして,被告ないし同報告書の説明するところによれ ば,これらの錠剤は,その製造後,PTP包装とアルミピロー包装がされ,その状 態により,被告の中央研究所の検体保管庫に温度20℃,成り行き湿度(実測値: 75%RH)で保存されていたものであり,検体1錠をPTP包装から取り出して, 乳鉢で粉砕してカールフィッシャー法により水分測定を行ったというのであるが, 上記の条件下で4年以上が経過しても,錠剤の水分含量がそのまま保持されること を直接裏付ける証拠はない。 かえって,1)本件2mg製品の使用期限が2年6か月とされ,本件4mg製品(被 告製品)の使用期限が3年とされていること(甲4〔52頁〕)からすれば,4年 以上という期間は,予定されている保存期間を大きく超えるものであって,水分含\n量を含む錠剤の状態に影響を及ぼす可能性を否定できないこと,2)ピタバスタチン からラクトンが生成する反応は,脱水縮合であって,水が脱離することから,水分 含量増加の原因となり得ること,3)アルミピロー包装に使用される材料の防湿性が 高いことがうかがわれる(乙33)としても,PTP包装された上記サンプル薬を 収納したアルミピロー包装には,チャックがついていて(乙32,39),当該材 料のみでは構成されてはおらず,また,湿気等の影響を受けやすい商品の包装には\n充分に注意する必要があるとされていること(甲18),4)PTP包装やアルミピ ロー包装が施された他の医薬品について,所定の保存期間経過後に水分含量が増加 しているとみられる例があること(甲15,19)などからすれば,PTP包装と アルミピロー包装により,直ちに上記サンプル薬の水分含量の増加が完全に抑えら れていたと断ずることは,困難である。
被告は,上記サンプル薬の水分含量がそれぞれ本件2mg錠剤の実生産品(ロッ ト番号:B062)及び本件4mg錠剤の実生産品(ロット番号:B012)とほ ぼ同じ値であることから,保存期間中の吸湿の可能性が否定される旨主張するよう\nであるが,かかる被告の立論は,本件2mg錠剤のサンプル薬が本件2mg錠剤の 実生産品と同一の工程により製造され,また,本件4mg錠剤のサンプル薬が被告 錠剤(本件4mg錠剤の実生産品)と同一の工程により製造されていたことを前提 とするものであるところ,既に説示したとおり,本件2mg錠剤のサンプル薬及び 本件4mg錠剤のサンプル薬が,それぞれ本件2mg錠剤の実生産品や本件4mg 錠剤の実生産品(被告錠剤)と同一の工程により製造されたと認めるに足りる証拠 はないものというべきである。

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平成30(ネ)10060  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成31年3月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 UI関連の発明について、1審では、新規性無しの無効理由ありとして請求棄却されました。1審では、訂正審判がなされ審決が確定しましたが、時期に後れた主張であるして、口頭弁論は再開しませんでした。知財高裁は、構成要件Fが不明瞭のため要件を具備しないと判断されました。被告はAppleです。

 まず,構成要件Fの「入力」との文言の意味について検討する。
 (ア) 本件明細書には,構成要件Fの「入力」の意味を直接定義していると認めるに足りる記載は見当たらない。\n他方で,本件明細書には,複数の箇所で「入力」との文言が使用され ているところ,例えば,段落【0008】の「摩擦力による入力を,直 接的または間接的に検出する」のように「物理的な力を加えること」と の意味や,段落【0012】の「図14は,…文字を入力する例を示し た図である。」のように「コンピュータに情報を与えること」との意味 など,同一の文言であるにもかかわらず文脈によって異なる意味で使用 されている。 なお,本件訂正審決は,本件明細書の段落【0035】及び【006 2】の記載に基づいて,本件発明の「『当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの(判決注:原文のまま)記憶部に\n記憶させる』とは,(背景の変更などの)変更結果を,(フォルダYに 保存することなどの)表示対象に対する情報として記憶することを意味しているといえる。」と判断しているが,これは構\成要件Fの「入力」 は「コンピュータに情報を与えること」を意味すると解したものといえ る。
(イ) この点について,控訴人は,構成要件Fの「入力」は,「力入力検出手段」により検出された当該表\示対象に対する「力入力」,すなわち「物理的な力を加えること」を意味すると主張する。 しかし,この解釈は,構成要件H,A及びDでは,「物理的な力を加えること」として「力入力」との文言が明示的に使用されているにもか\nかわらず,構成要件Fでは敢えて「入力」のように異なる文言が使用されていることと整合しない。\n
また,構成要件Fの「入力」は,「当該変更結果」,すなわち,「保持された表\示対象以外の表\示態様を変更することにより,当該表\示対象を相対的に変更させた結果」を目的語としていると解し得るところ,こ の場合に「入力」を「物理的な力を加えること」と解釈することは不自 然である。さらに,「として」は,前に置かれた語を受けて,その状態, 資格,立場等であることを表す語であるところ,「入力」を「物理的な力を加えること」と解すると,「入力として・・・記憶させる」との文言が\n意味するところを理解できないというべきである。
(ウ) 控訴人は,本件訂正審決が「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として・・・記憶部に記憶させる」とは,「(背景の変更などの)変更結\n果を,(フォルダYに保存することなどの)表示対象に対する情報として記憶することを意味している」と判断したことを指摘して,当該判断\nは控訴人の上記主張と整合するとも主張する。 しかし,「物理的な力を加えること」と「コンピュータに情報を与え ること」とは別個の概念であるから,構成要件Fの「入力」を「物理的な力を加えること」と解した上で,本件訂正審決の判断のように「コンピュータに情報を与えること」との意味をも有すると直ちに理解することは困難である(物理的な力が加わったことをコンピュータに検出させる場合には,両者の意味が重なっているともいい得るが,本件においては,上記説示のとおり,少なくとも「物理的な力を加えること」と解することは不自然であるから,両者の意味が重なっている場合と断ずることもできない。)。\n
(エ) 以上によれば,控訴人の主張によっては,構成要件Fの「入力」の意味を一義的に理解することは困難であるというほかない。\n
イ 仮に,構成要件Fの「入力」を,本件訂正審決が判断したように,「コンピュータに情報を与えること」と解したとしても,次のとおり,構\成要件Fの意義は依然として不明確であるというべきである。
(ア) 構成要件Fの「当該表\示対象」は,構成要件Cの「前記位置入力手段にて検出された位置の表\示対象」をいうと解される。本件明細書には,この「表示対象」の意味についても,直接定義していると認めるに足りる記載は見当たらないものの,発明の詳細な説明の記載に照らせば,アイコン等(【0021】),アイコンや文字列等(【0029】),アイコンや文字,記号,図形,立体表\示対象など(【0035】)がこれに当たるものと解される。 しかし,表示画面にアイコン等を表\示させ,利用者が当該表示画面に接触した位置を検出し,当該接触位置に応じて処理を行う入出力装置においては,表\示画面に表示するアイコン等のデータそのもの(例えば,スマートフォンの画面に表\示されているカメラ様の画像データ)と,当該アイコン等と紐づけされた実体(例えば,カメラアプリケーション) とは,別個のものとされていることが多いと解されるところ,本件明細 書の記載を精査しても,本件発明における「表示対象」が具体的にどのようなものであるのかは明らかといえない。\n
(イ) また,上記ア(イ)のとおり,構成要件Fの「当該変更結果」は,「保持された表\示対象以外の表示態様を変更することにより,当該表\示対象を相対的に変更させた結果」と解し得るところ,「相対的に変更させた結果」についても,背景として設定されている画像が移動したピクセル数や,保持された表示対象と重なることとなったアイコン等の有無及びその種類など,さまざまなものがあり得る。\n そして,構成要件Fによれば,この「相対的に変更させた結果」は,「当該表\示対象」に対する情報として与えるものであるが,ある対象に与え得る情報は,当該対象がアプリケーションかデータかや,その実装方法によっても大きく異なるものと解される。 そうすると,上記(ア)のとおり,「当該表示対象」が具体的に意味するところが明らかでない上に,「相対的に変更させた結果」の意味内容も特定されていないことを考え合わせると,「当該変更結果を当該表\示対象に対する入力として記憶部に記憶させる」の意義も明らかでないというべきである。
(ウ) この点に関し,本件訂正審決は,本件明細書の段落【0035】及び 【0062】の記載に基づいて,「当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの(判決注:原文のまま)記憶部に記憶させる」とは,「表\示要素『B』のデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存することを意味している」と判断した。しかし,本件訂正審決の説示においても,「表示要素『B』のデータ」がいかなるデータであるのかが具体的に特定されているとはいい難い。\n また,本件明細書の段落【0035】記載の「フォルダX」及び「フォルダY」と段落【0062】記載の「WINDOW1」及び「WINDOW2」の関係も明らかでなく,いかなる情報が「相対的に変更させた結果」に該当し,「フォルダXからフォルダYに移動させ」ると理解することになるのかについても具体的な指摘がされているとはいえない。
ウ 以上検討したところによれば,結局のところ,構成要件Fの意義は不明確というべきである。そして,構\成要件Fの意義が不明確である以上,被告各製品が構成要件Fを充足すると認めることはできない。\n

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)14142

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平成30(ネ)10033  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成31年1月31日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 大阪高裁は無効理由ありとして、1審の判断を取り消しました。1審では時期に後れた主張とされた無効主張も却下されませんでした。
1 争点3−4(乙64の1を主引用例とする進歩性欠如の無効理由の有無)に ついて
(1) 時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立てについて\n
被控訴人は,控訴人が当審において追加主張した乙64の1を主引用例と する進歩性欠如(争点3−4)を無効理由とする特許法104条の3第1項 の規定に基づく無効の抗弁(以下「本件無効の抗弁」という。)について, 民事訴訟法157条1項に基づき,時機に後れた攻撃防御方法に当たるもの として却下することを求める申立てをしたので,以下において判断する。\n
ア 前記第2の1(前提事実等)の(6)及び一件記録によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 控訴人は,平成27年4月17日の原審第4回弁論準備手続期日に おいて,被告準備書面(2)に基づき,実施可能要件違反の無効理由(争点\n3−1)による無効の抗弁の主張をし,同年9月14日の原審第7回弁 論準備手続期日において,被告準備書面(5)に基づき,明確性要件違反(争 点3−2)の無効理由による無効の抗弁の主張をした。 その後,原審の受命裁判官は,同年10月27日の第8回弁論準備手 続期日において,本件の侵害論の審理を終了し,損害論の審理を進める と述べた上で,控訴人に対し,被控訴人の損害主張に対し具体的に認否 反論し,必要な書面を提出するよう求めた。
(イ) 控訴人は,平成28年5月19日,本件発明1,2,6及び8につ いての本件特許を無効にすることを求める別件無効審判を請求した。 同年12月13日の原審第12回弁論準備手続期日において,控訴人 は,被告準備書面(10)に基づき,別件無効審判と同一の無効理由(サポー ト要件違反(争点3−3)の無効理由及び本件無効の抗弁に係る無効理 由を含む。)による無効の抗弁を追加して主張したのに対し,被控訴人 は,同期日において,上記主張は時機に後れた攻撃防御方法として却下 することを求める申立てをした。原審の受命裁判官は,被控訴人の上記\n申立てを容れて,控訴人の上記無効の抗弁に係る主張及び証拠を却下した。\n
(ウ) 特許庁は,平成29年12月15日,本件訂正後の請求項1,6及 び8に係る発明についての本件特許には,サポート要件違反(争点3− 3)の無効理由及び本件無効の抗弁に係る無効理由が存在するとして, 上記特許を無効とする別件審決をした。 同月20日の原審第18回弁論準備手続期日において,控訴人は,被 告準備書面(15)に基づき,別件審決が認めたサポート要件違反の無効理 由及び本件無効の抗弁に係る無効理由による無効の抗弁を再度追加して 主張したのに対し,被控訴人は,上記主張は時機に後れた攻撃防御方法 として却下することを求める申立てをした。原審の受命裁判官は,被控訴人の上記申\立てを容れて,控訴人の上記無効の抗弁に係る主張及び証拠を却下した。 原審は,同日,原審第2回口頭弁論期日において,本件訴訟の口頭弁 論を終結した後,平成30年3月22日,被控訴人の請求を一部認容す る原判決を言い渡した。 この間の同年1月20日,被控訴人は,別件審決の取消しを求める別 件審決取消訴訟を提起した。
(エ) 控訴人は,平成30年4月9日,本件控訴を提起した。控訴人は, 同年6月5日付けの控訴理由書において,被告準備書面(10)及び(15)を 引用して,サポート要件違反(争点3−3)の無効理由による無効の抗弁 及び本件無効の抗弁を記載した。 同年7月24日の当審第1回弁論準備手続期日において,控訴人は, 控訴理由書に基づき,本件無効の抗弁を主張し,被控訴人は,控訴答弁 書に基づき,上記主張は時機に後れた攻撃防御方法として却下すること を求める申立てをした。\n同年10月15日の当審第2回弁論準備手続期日において,控訴人は, 同年8月31日付けの控訴人準備書面(1)及び同年9月14日付けの控 訴人準備書面(2)に基づき,本件無効の抗弁の主張を補足し,被控訴人は, 同年10月1日付けの被控訴人第1準備書面に基づき,本件無効の抗弁に対する反論及び訂正の再抗弁を主張した。 その後,当裁判所は,同年12月10日の第1回口頭弁論期日におい て,本件口頭弁論を終結した。
イ 前記アの認定事実によれば,控訴人の当審における本件無効の抗弁の主 張は,原審において侵害論の審理を終了し,損害論の審理に入った段階で 提出されたため,時機に後れた攻撃防御方法として却下された主張と同旨 のものであるが,控訴人は,原審口頭弁論終結前に本件無効の抗弁に係る 無効理由の存在等を認めて本件特許を無効とする旨の別件審決がされた のを受けて,当審において再度提出したものであること,控訴人は,控訴 理由書に本件無効の抗弁を記載し,当審の審理の当初から本件無効の抗弁 を主張していたことが認められるから,当審における控訴人による本件無 効の抗弁の主張の提出が時機に後れたものということはできない。また,当審の審理の経過に照らすと,控訴人による本件無効の抗弁の主張の提出 により,訴訟の完結を遅延させることとなるとは認められない。 したがって,当審における控訴人による本件無効の抗弁の主張を時機に 後れた攻撃防御方法として却下することはしない。
(2) 本件明細書の記載事項等について
ア 本件発明1,2及び6の特許請求の範囲(請求項1,2及び6)の記載 は,前記第2の1(前提事実等)の(2)のとおりである。
・・・
前記aの記載事項によれば,乙64の2には,押しボタン式バルブ の下側で不燃性液体の上側の位置に,通気性を有する「連続気泡状パ ッキング」を挿入した,不燃性液化ガスを充填した噴射口を有する「噴 気式清掃機」の記載があり,その「連続気泡状パッキング」は,缶体 を逆さまにして使用しても不燃性液体がバルブ側の空間に漏れて液体 のまま噴出することを防止するためのものであることの記載があるこ とが認められる。 そして,乙64の2記載の「連続気泡状パッキング」は,連続気泡 を有する多孔質体であり,図2(別紙3)から円筒状の缶体内に挿入 された円板状の形状であることを理解できるから,「円板状多孔質 体」として,本件発明1の「通気性蓋状部材」に該当するものと認め るのが相当である。
(イ) 乙64の1には,スプレー缶を倒立状態で使用した場合や缶を倒立 状態で保管する場合に液漏れの原因となり,可燃性液化ガスの液漏れに より火炎が発生するおそれがあるため,吸収性能・保液性に優れた吸収\n体を提供することが課題であること(【0004】,【0054】)の 記載がある。 一方で,乙64の2には,乙64の2記載の「連続気泡状パッキング」 は,缶体を逆さまにして使用しても不燃性液体がバルブ側の空間に漏れ て液体のまま噴出することを防止するためのものであることの記載があ ることは,前記(ア)bのとおりである。 そうすると,乙64の1及び乙64の2に接した当業者は,乙64の 1の第1発明において,スプレー缶を倒立状態で使用した場合の吸収体 に充填された可燃性液化ガスの液漏れの防止を確実にするために,乙6 4の1の第1発明に乙64の2記載の「連続気泡状パッキング」の構成\nを適用する動機付けがあるものと認められる。 また,乙64の1の「具体的には,スプレー缶形状に合わせて,その 内径に適した大きさの円筒状の成形体とすると,充填が容易にできる上, 使用中も安定してスプレー缶内に保持することができる。」(【003 2】)との記載から,スプレー缶の使用中に吸収体を安定して保持する 必要性があることを理解できる。 以上によれば,当業者は,スプレー缶を倒立状態で使用した場合の吸 収体に充填された可燃性液化ガスの液漏れの防止を確実にし,吸収体を 安定して保持するために,乙64の1の第1発明において,乙64の2 の連続気泡状パッキングを適用する際に,乙64の2記載の連続気泡状 パッキングの構成のものを吸収体の表\面に密接に配置し,相違点2に係 る本件発明1の構成を容易に想到することができたものと認められる。\n
(ウ) これに対し被控訴人は,乙64の2記載の「連続気泡状パッキング4」は,バルブ2の下側に空間を形成するため缶体1に固定されている 必要があるため,肩部からバルブ側に押し込むように固定され(図2), バルブ2側に十分大きい空間が形成されないので,倒立状態では,比重\nの重い液体が下側(バルブ2側)へ移動し,バルブ側の空間に容易に液 が漏れることになって,倒立状態のまま噴射を継続することができない こと,乙64の2には,図2以外に,「連続気泡状パッキング4」の充 填状態について具体的に説明する記載はないことからすると,乙64の 1の第1発明に乙64の2記載の「連続気泡状パッキング」を組み合わ せる動機付けはないし,また,乙64の1の第1発明に乙64の2記載 の「連続気泡状パッキング」を組み合わせたとしても,本件発明1の通 気性蓋状部材の構成に至ることはない旨主張する。\nしかしながら,乙64の1の第1発明において,スプレー缶を倒立状 態で使用した場合の吸収体に充填された可燃性液化ガスの液漏れの防 止を確実にするために,乙64の1の第1発明に乙64の2記載の「連 続気泡状パッキング」の構成を適用する動機付けがあることは,前記\n(イ)のとおりである。 また,乙64の2には,連続気泡状パッキングが図2で示された位置 に配置することが不可欠である旨の記載はなく,連続気泡状パッキング の具体的な設置方法及び設置場所は,当業者が適宜決定すべき事項であると認められる。 さらに,乙64の2の【0012】の「連続気泡状パッキング4を挿 入し,たとえ缶体1を逆さまにして使用しても不燃性液体3が液体のま ま噴出することなく,ガスの整流性が良くなる。」との記載に照らすと, 乙64の2の「噴気式清掃機」が連続気泡状パッキングを挿入したため に倒立状態のまま噴射を継続することができないものと理解すること はできない。 したがって,被控訴人の上記主張は,採用することができない。
・・・
(7) まとめ
以上のとおり,本件発明1,2及び6は,乙64の1の第1発明及び乙6 4の2記載の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた ものと認められ,進歩性を欠くものであるから,本件特許には,特許法29 条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)があり,特許無効審判 により無効とされるべきものと認められる。
2 争点3−5(訂正の再抗弁の成否)(本件発明1及び6に関し)について
被控訴人は,本件訂正により,訂正前の請求項1及び6(本件発明1及び6) の無効理由は解消され,かつ,被告製品は,本件訂正発明1及び6の技術的範 囲に属するから,被控訴人は,控訴人に対し,本件特許権を行使することがで きる旨主張する。 そこで検討するに,本件訂正発明1(本件訂正後の請求項1)は,灰分含有 量を「1重量%以上12重量%未満」とするものであり,本件発明2と同一の 構成であるところ,前記1(5)のとおり,本件発明2は,乙64の1の第1発明 及び乙64の2の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることがで きたものと認められるから,本件発明1の無効理由は,本件訂正により解消されるものとはいえない。 また,前記1(6)で説示したのと同様の理由により,本件発明6の無効理由は, 本件訂正により,解消されるものとはいえない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,被控訴人の上記主張 は理由がない。
3 結論
以上によれば,本件発明1,2及び6は,進歩性を欠くものであり,本件特 許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)があ り,特許無効審判により無効とされるべきものと認められるから,被控訴人は, 同法104条の3第1項の規定により,控訴人に対し,本件特許権を行使する ことはできない。

◆判決本文

関連の審決取消し訴訟です。

◆平成30(行ケ)10012

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平成29(ワ)34450  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年1月31日  東京地方裁判所(46部)

 CS関連発明について、構成要件Dを有していないとして、非侵害の認定がされました。被告はヤフー株式会社です。
 前記(1)によれば,本件発明の意義は以下のとおりであると認められる。 従来の住宅地図は,建物表示に住所番地だけでなく居住者氏名も全て併記さ\nれていたため,氏名を記載するためのスペースを確保するために住宅地図の縮 尺を高くすることができず,そのため,地図の大きさも比較的大きくする必要 があるとともに,地図に氏名が記載されることによるプライバシー侵害や利用 者の検索への支障を生じたり,地図の更新作業のための調査に膨大な労力と人 件費がかかったりするという課題があった。また,住宅地図に付されている索 引についても,住所のうち丁目と,それぞれの丁目に該当するページが掲載さ れているだけであったため,同一の丁目の中で番地が異なっている多くの建物 の中から目的とする建物を探し出す必要があった。 本件発明は,居住者氏名を記載しないため,高い縮尺度で地図を作成するこ とにより小判で,薄い,取り扱いの容易な廉価な住宅地図を提供することや, 地図の更新のために氏名調査等の労力を要しないことによって廉価な住宅地 図を提供することを可能にするとともに,地図上に公共施設や著名ビル等以外\nは住宅番地のみを記載し,地図のページを適宜に分割して区画化したうえで建 物の所在する番地と記載ページと記載区画の記号番号を一覧的に対応させた 索引欄を付すことによって,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅地図\nを提供することを可能にするものである。\n
2 争点1−4(構成要件D(「該地図を記載した各ページを適宜に分割して区画\n化し」)についての文言侵害の有無) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告地図プログラムは,ユーザが,インターネット上の「https:/ /以下省略」のURLにアクセスし,所定の操作をするなどすると,ユーザ の端末にインストールされているWebブラウザを介して,ユーザ端末のデ ィスプレイに地図を表示できるようにしたプログラムである。\n被告地図プログラムにより表示される地図では,縮尺レベルが1〜20の\n20段階に分かれており,縮尺レベル20が最も詳細(縮尺率が小さい)な もので,縮尺レベル1が最も広域(縮尺率が大きい)なものである。各縮尺レベルに応じて,地図用のデータが存在する。 りディスプレイの画面に表示さ\nれる地図の画面表示等は,別紙「被告地図プログラムの構\成(分説)」記載の とおりである。(以上につき,甲13ないし19,乙1,22,弁論の全趣旨)
イ 被告地図において,市区町村名,町名,丁目及び番の表示の右側に〔地図〕\nと表示された部分等にはハイパーリンクが設定されており,そのハイパーリ\nンクに係るURLは,冒頭に「https://以下省略」と記載され,そ の後の記載がパラメータであることを示す「?」が記載された後に,「lat =…&lon=…&ac=…&az=…」及び「z=…」という記載を含む ものである。前記のlat,lon,ac,azが示す各値は,それぞれ当 該地点に係る緯度,経度,都道府県及び市区町村の住所コード,町,丁目, 番又は号の番号を示し,zが示す値は縮尺レベルを示す。ユーザがディスプ レイ画面上で当該ハイパーリンクをクリックすると,その緯度経度を含む地点データと縮尺データを含むURLが被告地図の地図提供サーバに送信さ れる。地図提供サーバが,この地点データに係る地点を含み,かつ,縮尺デ ータに係る縮尺のメッシュ地図を地図データベースサーバから読み出し,ユ ーザのパソコンに送信することにより,ユーザのディスプレイ画面上におい\nて当該緯度経度を中心とした所定の縮尺の地図が表示される。(甲4ないし\n19,弁論の全趣旨)
ウ インターネットに接続した状態で被告地図をユーザのディスプレイ画面 に表示し,その後,インターネットの接続を停止した上で地図表\示画面をス クロールさせると,地図が表示されない部分が画面上に表\示される。(甲3 4,弁論の全趣旨)
エ 被告地図プログラムにおける縮尺レベル19の縮尺は,概ね1/1250 から1/2857の範囲であり,被告地図における縮尺レベル20の縮尺は, 概ね1/615程度である。(甲33,乙1,弁論の全趣旨)
(2)本件明細書には、前記1(1)記載のほか、(発明の実施の形態)として以下 の記載がある。なお,以下の図1ないし5は,それぞれ,本判決別紙本件明細 書図1ないし5である。 ア 段落【0017】
・・・
(3)構成要件Dの「適宜に分割して区画化」について\n
構成要件Dの「適宜に分割して区画化」の意義について,特許請求の範囲の\n「各ページを適宜に分割して区画化し,…住宅建物の所在する番地を前記地図 上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対 応させて掲載」という記載(構成要件D,E及びF)に照らせば,構\成要件D の「適宜に分割して区画化」とは,記号番号を付すことや番地と対応する区画 を一覧的に示すことができる区画を作成することが可能となるように,検索す\nべき領域の地図のページを分割し,認識できるようにすることといえる。 そして,本件発明は, 前記1(2)のとおり、地図上に公共施設や著名ビル等以 外は住宅番地のみを記載するなどし,全ての建物が所在する番地について,掲 載ページと当該ページ内で分割された該当区画を一覧的に対応させて掲載し た索引欄を設けることによって,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅\n地図の提供を可能にするというものであり,本件発明の地図の利用者は,索引\n欄を用いて,検索対象の建物が所在する地番に対応する,ページ及び当該ペー ジにおける複数の区画の中の該当の区画を認識した上で,当該ページの該当区 画内において,検索対象の建物を検索することが想定されている。そのために は,当該ページについて,それが線その他の方法によって複数の区画に分割さ れ,利用者が該当の区画を認識することができる必要があるといえる。そうす ると,本件明細書に記載された本件発明の目的や作用効果に照らしても,本件 発明の「区画化」は,ページを見た利用者が,線その他の方法及び記号番号に より,検索対象の建物が所在する区画が,ページ内に複数ある区画の中でどの 区画であるかを認識することができる形でページを区分することをいうとい える。 前記(2)のとおり、本件明細書には、発明の実施の形態において,本件発明を 実施した場合における住宅地図の各ページの一例として別紙「本件明細書図2」 及び「本件明細書図5」が示されているところ,これらの図においては,いず れも道路その他の情報が記載された長方形の地図のページが示されたうえで, そのページが,ページ内にひかれた直線によって仕切られて複数の区画に分割 されており,その複数の区画にそれぞれ区画番号が付されている。また,本件明細書図4の索引欄には,番地に対応する形でページ番号及び区画番号が記載 されており,利用者は,検索対象の建物の番地から,索引欄において当該建物 が掲載されているページ番号及び区画番号を把握し,それらの情報を基に,該 当ページ内の該当区画を認識して,その該当区画内を検索することにより,目 的とする建物を探し出すことが記載されている(段落【0028】)。ここでは, 上記の特許請求の範囲の記載や発明の意義に従った実施の形態が記載されて いるといえる。そして,「区画化」の意義に関係して,他の実施の形態は記載さ れていない。
以上によれば,構成要件Dの「区画化」とは,地図が記載されている各ペー\nジについて,記載されている地図を線その他の方法によって仕切って複数の区画に分割し,その各区画に記号番号を付すことであり,索引欄を利用すること で,利用者が,線その他の方法及び記号番号により,当該ページ内にある複数 の区画の中の当該区画を認識することができる形で複数の区画に分割するこ とを意味すると解するのが相当である。 原告は,被告地図において,縮尺レベル19の住宅地図及び縮尺レベル20 の住宅地図がそれぞれ構成要件Dの「該地図を記載した各ページ」に該当する\nと主張した上で,被告地図のデータは,画面に表示されるときに区分された形\nでその一部が表示されるから構\成要件Dの「適宜に分割して区画化」されると 主張するとともに,「メッシュ化」され,また,複数のデータとして管理されて いるから構成要件Dの「適宜に分割して区画化」することになると主張する。\nしかし,仮に,縮尺レベル19の住宅地図及び縮尺レベル20の住宅地図が それぞれ構成要件Dの「該地図を記載した各ページ」に該当するとしても,利\n用者は,画面に表示されている地図を見ているのであって,線その他の方法及\nび記号番号により,ページにある複数の区画の中で,検索対象の建物が所在す る地番に対応する区画を認識することができるとはいえない。被告地図におい て「メッシュ化」がされていて,また,被告地図に係るデータが複数のデータ として管理されているとしても,被告地図プログラムの構成(分説)及び前記\nアないしウに照らし,利用者は,「メッシュ化」されている範囲や区分された データを通常認識しないだけでなく,それらに対応する記号番号を認識するこ とはない。したがって,被告地図において,線その他の方法及び記号番号によ り,ページにある複数の区画の中で,検索対象の建物が所在する地番に対応す る区画を認識することができるとはいえない。そうすると,前記 に照らし, 被告地図において,「各ページ」が,「適宜に分割して区画化」されているとは いえない。 これらによれば,被告地図について,構成要件Dの「適宜に分割して区画化」\nがされているとは認められない。

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平成30(ワ)3018  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年11月29日  東京地方裁判所(46部)

 サポート要件などの無効理由なし、技術的範囲に属すると判断されました。
 前記(2)のとおり、本件各名作書には、本件参照抗体と競合する,PCSK 9−LDLR結合中和抗体を同定,取得するための,免疫プログラムの手順 及びスケジュールに従った免疫化マウスの作製方法,ハイブリドーマの作製 方法,スクリーニング方法及びエピトープビニングアッセイの方法等が記載 されている。そして,当該方法によれば,本件各明細書で具体的に開示され た以外の本件参照抗体と競合する抗体も得ることができるといえる。 そうすると,本件各明細書の記載から当業者が実施可能な範囲が,本件各\n明細書記載の具体的な抗体又は当該抗体に対して特定の位置のアミノ酸の1 若しくは数個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有する抗体に限られる とはいえない。したがって,本件各明細書の記載から当業者が実施可能な範\n囲が本権各明細書記載の具体的な抗体又は当該抗体に対して特定のアミノ酸 の1もしくは数個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有する抗体に限ら れることを前提として,本件各発明の技術的範囲が本件各明細書記載の具体 的な抗体又は当該抗体に対して特定の位置のアミノ酸の1若しくは数個のア ミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有する抗体に限定されるとの被告の主張 は採用することができない。
(4)また,被告は,1)本件各明細書では,本件参照抗体と競合する抗体であれ ば,PCSK9とLDLRの結合を中和することができるという技術思想を 読み取ることはできない,2)本件各明細書の実施例に記載された3グループ ないし2グループの抗体のみによって,本件参照抗体と競合する膨大な数の 抗体全てがPCSK9−LDLR結合中和抗体であるとはいえず,本件各明 細書には,本件参照抗体と競合する膨大な数の抗体がPCSK9−LDLR 結合中和抗体であることの根拠は全く示されていないと主張する。 しかしながら,前記 のとおり,本件各明細書には,本件参照抗体がP CSK9−LDLR結合中和抗体であること,本件参照抗体がPCSK9に 結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体,又は,本件参照抗体 とPCSK9との結合を立体的に妨害するような上記エピトープに隣接する エピトープに結合する抗体である,本件参照抗体と競合する抗体は,本件参 照抗体と類似した機能的特性を有すると予\想されることが記載されている。 そして,前記 のとおりのスクリーニング等によって得られた本件各明細書の表2記載の30の抗体(21B12参照抗体と31H4参照抗体を除く。)\nのうち,24の抗体はPCSK9−LDLR結合中和抗体であり,かつ,本 件参照抗体と競合する抗体であること,表37.1.のビン1(21B12\n参照抗体と競合し,31H4参照抗体と競合しない抗体)に属する19の抗 体のうち16個,ビン2(21B12参照抗体とも,31H4参照抗体とも 競合する抗体)に属する抗体のうち2個及びビン3(31H4参照抗体と競 合し,21B12参照抗体と競合しない抗体)に属する10の抗体のうちの 7個は,表2に記載された抗体であり,これら16個と2個と7個の抗体の\nうち,27B2抗体並びに21B12参照抗体及び31H4参照抗体を除く 少なくとも20個はPCSK9−LDLR結合中和抗体であることが記載さ れている。そうすると,本件各明細書には,特定のスクリーニング等を経て 得られた抗体のうち,本件参照抗体と競合する複数の抗体がPCSK9−LDLR結合中和抗体であることが示されているといえる。 なお,この点に関係し,被告は,本件参照抗体と競合する膨大な数の抗体 がPCSK9−LDLR結合中和抗体であることの根拠は全く示されていな いと主張するが,本件各明細書に記載された抗体以外に,本件参照抗体と競 合するがPCSK9−LDLR結合中和抗体ではない具体的な抗体が示され ているものではなく,また,本件参照抗体と競合する抗体中,PCSK9− LDLR結合中和抗体でないものの割合が大きいことも明らかではない。 さらに,被告は,本件参照抗体と競合する抗体は,PCSK9−LDLR 結合中和抗体であるとは限らないとも主張する。しかし,本件各発明は,P CSK9−LDLR結合中和抗体であることを構成要件とするものであるか\nら(構成要件1A,2A),上記のような例外的な抗体は本件各発明の技術\n的範囲に含まれない。
(5)証拠(甲5,7の1,2,甲8〜10)及び弁論の全趣旨によれば,本件 各発明について,被告が主張する限定的な解釈を採らない限り,被告モノク ローナル抗体は,本件発明1−1及び本件発明2−1の各構成要件を全て充\n足し,被告製品は,本件発明1−2及び本件発明2−2の各構成要件を全て\n充足すると認められるから,被告モノクローナル抗体は,本件発明1−1及 び本件発明2−1の技術的範囲に属し,被告製品は,本件発明1−2及び本 件発明2−2の技術的範囲に属すると認められる。なお,被告モノクローナ ル抗体は,本件訂正発明1-1及び本件訂正発明2−1の技術的範囲にも属 し,被告製品は,本件訂正発明1−2及び本件訂正発明2−2の技術的範囲 にも属すると認められる。

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平成28(ワ)6494  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年12月18日  大阪地方裁判所

 被告製品は,特許権者製の使用済み芯管と一体化すると、本件特許の構成要件を充足するので、「のみ要件」を満たすと判断しました。\n
   イ 構成要件Aの「用いられ」の意味
前記アを前提に検討すると,構成要件Aのうち「ロールペーパの回転速度を\n検出するために支持軸に角度センサを設け」との記載は,本件ロールペーパ等の「複 数の磁石」につき,そのような位置に配置されることを特定するものと理解でき, また,構成要件Aのうち「ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその固\n定時に両者を一体に回転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設け」と の記載は,本件ロールペーパ等について,そのような態様で回転させられることを 特定するものと理解できるし,構成要件Cの「測長センサ」も,構\成要件Aの記載 によって特定されると理解できる。 そうすると,本件発明に係る薬剤分包用ロールペーパの技術的範囲は,構成要件\nBないしDと,構成要件Aによる本件ロールペーパ等の上記特定に係る事項とから\n画されるものと解されるから,一体化製品が上記技術的範囲に属すれば本件発明の構成要件を充足するものであって,一体化製品が構\成要件Aを充足する薬剤分包装 置に実際に使用されるか否かは,上記構成要件充足の判断に影響するものではない\nと解される。 被告らは,原告製使用済み芯管に,輪ゴムを介してロールペーパを巻いたプ ラスチック筒部をセットした一体化製品が構成要件Aの「用いられ」を充足するた\nめには,一体化製品に,構成要件Aを充足する薬剤分包装置に用いられる以外の用\n途が存在しないことが必要であると主張し,予備的に,仮にこれが認められないと\nしても,一体化製品は構成要件Aを充足する薬剤分包装置に用いられて初めて作用\n効果を奏するものであるから,現実に構成要件Aを充足する薬剤分包装置に用いら\nれることが必要であると主張する。 しかしながら,構成要件Aを充足する薬剤分包装置に使用可能\な構成を有し,そ\nの他の構成要件をも充足するものとして薬剤分包用ロールペーパが生産,譲渡され\nれば,その時点で本件特許権の侵害は成立するのであって,その後に構成要件Aを\n充足する薬剤分包装置に当該ロールペーパが使用されるか否かは,特許権侵害の成 否を左右するものではない。 被告らは,本件発明の出願経過に照らし,構成要件Aを充足する薬剤分包装置に\n一体化製品が使用されることが本件特許権侵害に係る必須の要証事実であると主張 するが,原告が,手続補正の際に提出した意見書(乙25)において,本件発明は 構成要件Aを充足する薬剤分包装置に現実に用いられることを必須とする旨を述べたものと解することはできない。\nさらに,被告らは,本件無効審判において,本件訂正後の発明に新規性が認めら れるための構成が特定されたところ,その中には薬剤分包装置に関するものがある\nので,一体化製品が本件発明の技術的範囲に属するかの判断のために,どのような 薬剤分包装置に用いられているかを確認する必要があると主張するが,前記検討し た構成要件Aと,構\成要件BないしDとの関係に照らし,採用できないといわざる を得ない。
ウ まとめ
以上検討したところによれば,本件発明においては,構成要件Aの「用いられ」\nは,構成要件Aの記載によって構\成要件B以下の内容が特定されることを意味する ものとして使われているというべきであるから,そのように特定された構成要件を\n一体化製品が充足する場合には,構成要件Aの「用いられ」を充足すると解され,\nこれ以上に,構成要件Aの「用いられ」が,一体化製品が構\成要件Aを充足する薬 剤分包装置以外には使用されないこと,あるいは現実に構成要件Aを充足する薬剤\n分包装置が存在することを,要件として定める趣旨と解することはできない。
(2)争点(1)イ(一体化製品は「2つ折りされたシート」(構成要件A)を充足す\nるか。)について
ア 被告らは,構成要件Aの「2つ折りされたシート」とは,ロールペーパを薬\n剤分包装置内で2つ折りにするシングルタイプのロールペーパの使用を前提として おり,あらかじめ2つ折りにされたダブルタイプのロールペーパは含まれない旨を 主張する。
イ そこで,検討するに,本件明細書【0018】には,「分包部は,三角板4 で2つ折りにされた際にホッパ5から所定量の薬剤が投入された後,ミシン目カッ タを有する加熱ローラ6により所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯状にヒートシー ルするように設けられている。」との記載があるが,本件明細書【0011】の記 載によれば,本件発明は,一定の張力を保ったままシートを分包部に供給すること により,シートに耳ずれや裂傷が生じることなく薬剤を分包することを可能とする\nものであり,この技術的思想に関しては,給紙部から分包部に送られてくるシート があらかじめ2つに折り畳まれたダブルタイプであっても,折り畳まれてい ション現象が生じるため,)張力変動により分包部でシートを2つ折りした際にシ ートの縁部が正確に重ならない,いわゆる耳ずれが生じ」るという問題は,シング ルタイプのロールペーパを分包部において2つ折りにしてできた空隙に薬剤を投入 した後シートの両側縁部と幅方向に加熱融着する場合であっても,ダブルタイプの ロールペーパを分包部において折り目を広げてその空隙に薬剤を投入した後同様に 加熱融着する場合であっても,同様に生じ得る。 さらに,原告は,本件特許につき拒絶理由通知(乙24)を受けて本件補正を行 っているが,本件明細書【0018】の記載に基づくものであり,元の記載がシン グルタイプのロールペーパを分包部において折り畳むことのみを指すと解するのは 相当ではない(乙25)。
ウ 以上によれば,ダブルタイプのロールペーパを使用する一体化製品も,「2 つ折りされたシート」(構成要件A)を充足するというべきである。
(3) 争点(1)全体についての判断
ア 被告らは,一体化製品につき,構成要件Aのうち,「測長センサ」,「シー\nトを送りローラで送り出す給紙部」,「上記支持軸と上記中空軸の固定支持板間で」, 「中空軸のずれを検出する」といった要件を充足しない旨を主張するが,原告製造 の特定の薬剤分包装置の構成についての主張であり,構\成要件Aと構成要件B以下\nとの関係を前述のとおり解する以上,意味のない主張といわざるを得ない。
イ 一体化製品は,前記第2の1(5)のとおりの構成を有するところ,被告らは,\n構成要件Aに関し,争点(1)ア及びイについて争うものの,構成要件B以下の充足性\nについては争うことを明らかにしておらず(当初,構成要件B及びDの充足を争っ\nたが,後に撤回した。),弁論の全趣旨によれば,一体化製品の構成aは本件発明\nの構成要件Bを,構\成bは構成要件Cを,構\成cは構成要件Dを充足すると認めら\nれ,一体化製品は構成要件Aを充足する薬剤分包装置において使用されることが可\n能な構\成を有すると認められる。
ウ 以上によれば,一体化製品は,構成要件AないしEをすべて充足するから,\n本件発明の技術的範囲に属すると認められる。
エ なお,原告は,被告日進が前訴において構成要件Aの充足性を争わなかった\nことから,本訴訟において構成要件Aの充足性を争うことは信義則に反する旨を主\n張するが(争点(1)ウ),被告日進は,前訴とは異なる製品の関係で,構成要件Aの\n充足性を本訴訟で主張したと認められるから,この点を争うことが信義則に反する とまではいえない。
3 争点(2)(特許権侵害が成立するか。)について
(1) 問題の所在
ア 前記2によれば,一体化製品を完成して譲渡すれば,その時点において特許 権侵害が成立することになるが,前記第2の1(4)及び(5)のとおり,被告らは,一体 化製品それ自体を生産,譲渡しておらず,プラスチック筒部の外周に薬剤分包用シ ートを巻き回したロールペーパ,すなわち一体化製品のうち原告使用済み芯管のな い物を被告製品として生産,譲渡し,これを入手した利用者が,輪ゴムを介してロ ールペーパに原告製使用済み芯管を挿入し,これを一体化製品とした上で,薬剤分 包装置に使用している。
イ この点について,原告は,1)被告製品は,一体化製品の生産にのみ用いる物 であるとして,特許法101条1号の間接侵害を主張するほか,2)被告らの行為は, 顧客との共同による特許権の直接侵害に当たること,3)被告らの行為は,顧客の特 許侵害に対する教唆又は幇助に当たることを主張するので,まず間接侵害の成否に ついて検討する。
(2) 争点(2)ア(被告製品は,一体化製品の「生産にのみ用いる物」と認められる か。)について
ア 被告製品の販売方法
証拠(甲4,5,21,36,文中掲記のもの)によれば,以下の事実が認めら れる。
被告日進の販売するロールペーパの製品には,商品名の冒頭に「A」の付く 製品(被告製品。以下「Aタイプ」という。)と「B」の付く製品(以下「Bタイ プ」という。)があり,両タイプは,それぞれ分包紙の材質として「グラシン」紙 又は「セロポリ」紙を選択できるようになっている。 被告日進が平成28年11月に公開していたウェブサイト(甲20)によれ ば,Aタイプの分包紙の芯管内径は67mmであって,「外径65mm前後の分包機用 芯管に装着可能」とされ,Bタイプの分包紙の芯管内径は52mmであって,「外径 50mm前後の分包機用芯管に装着可能」とされた。\n薬剤分包用ロールペーパとして,外径65mm前後の芯管を製造しているのは 原告のみであり,外径50mm前後の芯管を製造しているのは株式会社タカゾノのみ である(弁論の全趣旨)。
前記ウェブサイトの「よくある質問Q&A」の欄には,「Q.他社分包機に 装着するには特別な道具が必要ですか?」という質問に対し,「A.弊社分包紙は, 『使用済み分包機メーカー製芯管』を使用することによって,お客様ご使用の分包 機に装着することができます。つまり,『使用済み分包機メーカー製芯管』が1個 お手元にあれば繰り返し装着することができます。」との回答が記載されていた。 被告日進が平成28年1月頃にユーザである製剤薬局等に配布していた説明 資料(甲9)には,「使用済み分包機メーカー製芯管」に輪ゴム等を取り付け被告 日進が販売する分包紙製品に差し込むことにより,芯管の空回りを防止しながら被 告日進製以外の分包機において使用する方法がイメージ図や注意事項付きで詳細に 説明されている。
まとめ
以上によれば,被告日進が販売する分包紙のうちAタイプ(被告製品)は,原告 製使用済み芯管と一体化して原告製の薬剤分包装置に使用されることを前提として 生産され,原告製の薬剤分包装置を使用し,既に原告製使用済み芯管を保有してい る者に対し,購入の案内がされたものと認められる。
イ 他の用途について
被告日進製の薬剤分包装置
前記被告日進のウェブサイト(甲20)には,「複数メーカー機に装着可能」と\nいう文言と共に,「分包紙は当社分包機の専用分包紙であり,各社分包機メーカー 及び貴社ご使用の分包機メーカーとは無関係で,承認を受けた製品ではありません。」 という記載があり,前記説明資料(甲9)にも同様の記載があることが認められる。 しかし,被告らの主張によっても,被告日進は,経済産業省により「平成25年 度補正中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」に選定され た後,平成26年に被告日進製の薬剤分包装置について営業活動を開始し,平成2 7年にカタログを作成し,平成28年5月12日に1台,同年10月25日に1台 の被告日進製の薬剤分包装置を販売したことが認められるにとどまる(甲17,乙 1,11,36)。 他方,被告製品は平成26年12月から販売されており,原告代理人は,平成2 8年1月頃に,被告らに対し,本件特許権に基づき被告製品の製造販売の中止等を 求める警告書(甲10)を送付し,同年7月4日に本訴を提起したことが認められ る。 前記時系列によれば,被告製品の販売が開始された当初,これを被告日進製 の薬剤分包装置に装着することはおよそ予定されておらず,むしろ,原告との紛争\nが顕在化した後に,わずか2台を製造販売したにとどまる。 エルク製分包装置(甲19,乙2,14〜16) 被告製品を,エルク製分包装置において使用されている芯管(外径約60mm。以 下「エルク製芯管」という。)に挿入してエルク製分包装置に装着し使用するため には,被告製品の空回りを防止するために厚さ3.2mm程度のOリングを2個,エ ルク製芯管に装着することが必要であり,さらに,被告製品の外径(約193mm) が大きすぎるため,そのままではエルク製分包装置に正常に装着できず,使用開始 に当たって長さ330mの分包紙中約88ないし100m分を廃棄する必要がある ことが認められる。 よって,被告製品をエルク製分包装置に装着して使用することは相当の困難と無 駄を伴い,経済的に合理性のある使用とはいえない。
ウエダ製分包装置(甲23,乙17,18)
ウエダ製分包機については,特定の顧客が,その支持軸を独自に製作した支持軸 に取り換えるという改造を施すことにより,被告製品を装着して使用していること が認められる。 しかし,同顧客の保有するウエダ製分包機は20年以上前に販売が終了している 機種であり,ウエダ製分包機を保有する他のユーザが同様の改造を施して被告製品 を使用することは考えにくいし,改造を施さないウエダ製分包装置において,被告 製品を正常に装着して使用できると認めるべき証拠もない。 よって,被告製品をウエダ製分包装置に装着して使用することは,一般的な使用 方法ということはできない。
タカゾノ製分包装置(乙20,21)
株式会社タカゾノ製の薬剤分包装置において使用されている薬剤分包用ロールペ ーパが,被告製品と同様の構成であることを認めるに足りる証拠はない。\n
まとめ
被告日進製の薬剤分包装置については,被告製品の販売が一定期間行われた後に, わずか2台が製造,販売されたにとどまるものであるから,被告製品が使用された としてもごくわずかといわざるを得ないし,被告以外の薬剤分包装置に被告製品を 使用することには困難が伴い,現実的ではないといわざるを得ないから,被告製品 については,原告製薬剤分包装置に使用する以外の用途は,実質的には存在しない といわざるを得ない。
ウ 争点(2)アについての判断
前記ア及びイで検討したところによれば,被告製品は,原告製使用済み芯管と一 体化し,一体化製品として原告製薬剤分包装置に使用することを想定して生産,譲 渡され,これ以外の用途は実質的には存在しないというべきであるから,被告製品 は,一体化製品の生産にのみ用いるものと認めるのが相当である。
(3) 特許権侵害についての判断
被告らが被告製品を生産,譲渡した段階では,回転角度の検出に用いる磁石を配 置した原告製使用済み芯管はこれと共には存在せず,本件特許の構成要件の全部を\n充足するものではないが,前記(2)で検討した通り,被告製品は,原告製使用済み芯 管と一体化して,本件特許の構成要件を充足する状態で使用することが予\定されて おり,他の用途が実質的に存在せず,一体化製品の生産にのみ用いられるものと認 められるのであるから,被告製品の生産,譲渡は,特許権の直接侵害に至る蓋然性 が極めて高いものとして特許法101条 1 号の間接侵害に当たり,本件特許権を侵 害するものとみなすべきものである。

◆判決本文

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平成28(ワ)4759  不当利得返還請求事件  特許権 平成30年12月20日  大阪地方裁判所

 特許の均等侵害における第1要件の判断において、先行の29条の2の先行文献を考慮して、本質的部分の判断がなされました。被告製品は、Amazonの「Kindle paperwhite」です。
(エ) 以上によれば,乙8には,「ホログラムの単位幅における格子部幅/非 格子部幅の比が,導光板の前面出射面から出射する光を効率よく,また,面内で均 一に出射されるように,管状光源から離れる側の方が増大せしめられている」構成\nが開示されているといえる。
ウ したがって,乙8発明は,本件発明の構成要件Bと同一の構\成を備える ものであるから,相違検討点2は相違点とはいえない。
エ 原告の主張について
原告は,乙8には,導光板に設けるホログラムの面積密度を増減させる技術思 想が開示されているだけで,回折格子の単位幅における格子部幅/非格子部幅の比を変化させる技術思想は開示されていないと主張する。 しかし,前記アのとおり,本件発明も,格子部の面積の変化を通じて,導光板の 表面における輝度を増大させ,かつ均一化させるものであり,本件発明と乙8発明\nはその解決課題と解決原理を共通にしている。 そして,上記のとおり,乙8には,本件発明の構成要件Bの構\成を備えたホログ ラムの構成が開示されていると認められるから,本件発明の構\成要件Bはこれを別 の表現で記述したものにすぎず,同一の構\成が開示されていることに変わりはない。 したがって,原告の主張は採用できない。
(6) 小括
以上によれば,本件発明と乙8発明とは,前記の相違検討点1において相違す るから,同一の発明とはいえず,乙8による特許法29条の2違反の無効理由が存 するとは認められないが,本件発明と乙8発明とは,その解決課題及び解決原理を 共通にしており,解決手段たる回折格子の種類についてのみ相違するにすぎないと いうことができる。
・・・
(ア) 本件明細書に記載された従来技術及びその課題
前記認定のとおり,本件明細書では,本件発明に関する従来技術として, 導光板の下面に多数の多面プリズムをもつ透明アクリル樹脂からなり,プリズムに よる光の全反射を利用する導光板が記載されており,その具体例として,特開平5 −127157号公報記載の平面照光装置(本件明細書の図6参照)が挙げられて いる。 そして,その従来技術によっても液晶表示パネルを下方から輝度ムラが少なく明るく照らすことができると記載されているが(【0003】),1)導光板の下面にある 多面プリズムの一辺が例えば0.16mmと,光の波長に比べて相当大きいものである うえ,各プリズムが協同することなく個別に光を全反射するものであるため,導光 板の輝度を全体に高めようとすると,各プリズムの間の谷間にあたる箇所で乱反射 が起きて上面に向かう光量が減り,照光面である上面に極端な明暗のコントラスト が生じるという課題,及び2)このような導光板を設けた平行照光装置を電池で駆動 される液晶表示装置に用いると,照光面に向かう上記光量の減少を補って高輝度を\n得るべく,光源を大電流で照らす必要があるため,電池の寿命が短くなって,長期 使用ができなくなるという課題があったことが記載されている(【0004】)。
(イ) 本件発明の課題解決手段
本件発明は,従来技術の上記課題を解決するため,「光の幾何光学的性質を 利用した従来のプリズムによる全反射でなく,・・・光の波動の性質に基づく回折現象 を利用して,従来より遥かに高く,かつ均一な輝度を照光面全体に亘って得ることが でき,ひいては光源の電力消費の低減による電池の長寿命化も図ることができる導 光板を提供すること」を目的として(【0005】),本件発明の構成を採用したもの\nである。その構成は,(a)透明な板状体である導光板の裏面に回折格子を設け,導光 板の少なくとも一端面から入射する光源からの光をその表面側へ回折させるという点(構\成要件A),(b)上記回折格子の断面形状または単位幅における格子部幅/非 格子部幅の比の少なくとも1つを,上記導光板の表面における輝度が増大し,かつ\n均一化されるように変化させる点(構成要件B)である。
(ウ) 本件発明の作用効果
本件発明の導光板は,α 少なくとも一端面から光源からの光が入射する透 明な板状体の裏面に設けられた回折格子の断面形状または単位幅における格子部幅 /非格子部幅の比の少なくとも1つが,上記導光板の表面における輝度が増大し,\nかつ均一化されるように変化せしめられているので,光の波長に比べて寸法が大き く互いに協同することなく個別に光を幾何光学的に全反射する従来の導光板裏面のプリズムと異なり,ミクロン単位の互いに隣接する微細な格子が協同,相乗して波動 としての光を格段に強く回折できるうえ,β 上記一端面から離れて光源から届く光 量が減じるほど,光をより強く回折するように上記断面形状または単位幅における 格子部幅/非格子部幅の比が調整されているので,導光板の表面は高輝度で非常に\n均一に照らされる。 したがって,γ この導光板を電池で駆動される液晶表示装置,液晶テレビ,非常口 を表示する発光誘導板などに適用すれば,従来に比して格段に少ない消費電力で明\nるく均一な照明を得ることができ,光源および電池の寿命を延ばし,長期使用を可 能にすることができる(【0009】,【0023】)
(エ) もっとも,本件の場合,本件明細書に従来技術が解決できなかった課 題として記載されているところは,以下のとおり,出願時の従来技術に照らして客 観的に見て不十分なものと認められる。
a 導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは光量が減るとの課題(上記(ア)1))を,導光板の裏面に回折格子を設け,回折現象を利用して解決する構成(上記(イ)の(a),上記(ウ)α)について
本件明細書では,導光板の従来技術として,プリズムによる全反射を利用したもののみが記載され,回折現象は今まで導光板に用いられることがなかった と記載されている。 しかし,原告は平成6年3月11日に自ら,発明の名称を「回折格子を利用した バックライト導光板」とし,特許請求の範囲(請求項1)を「成形加工及び印刷 (転写を含む)された回折格子を裏面に有する事を特徴とするプラスチック製のバ ックライト導光板。なをここで裏面とは,液晶面と反対側の面と定義する。」とする 特許の出願をし,その明細書では,【課題を解決するための手段】の項において, 「導光板裏面に光と干渉する程度に微細なスリット形状を成形加工ないし印刷(転 写を含む)し,この反射格子により導光板の一端から入射する光を液晶面側に回折 させる。」(【0006】)と記載し,【発明の効果】の項において,この発明によれば蛍光管からの光を回折格子という極小単位の形状(格子スリットのピッチがサブミ クロンから数十ミクロン)の大きさのものの作用により,導光板面を均一に輝らす\n事ができるので,従来からのドット印刷や全反射を利用した導光板裏面加工による 方式に比較して,格段の面輝度とその均一性が可能になる。」(【0017】)と記載\nしていた(特願平6−79172)(乙10,20)。そして,これは本件発明の構\n成要件Aと同じ構成を備えた発明と認められる。\nまた,前記1で技術的意義等を認定した乙8発明も,回折格子の種類は同じとは 認められないものの,導光板の裏面に回折格子を設け,回折現象を利用して光量の 増大を図る発明である(乙8発明のようないわゆる拡大先願発明も参酌すべきこと は後記のとおりである。)。 以上より,導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは光量が減ると の課題は,本件特許の出願日において,本件発明と同じく導光板の裏面に回折格子 を設け,回折現象を利用することによって既に解決されている課題であったと認め られる。
b 導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは照光面に極 端な明暗のコントラストが生じるとの課題(上記(ア)1))を,回折格子の断面形状ま たは単位幅における格子部幅/非格子部幅の比の少なくとも1つを,上記導光板の 表面における輝度が増大し,かつ均一化されるように変化させることにより解決す\nる構成(上記(イ)の(b),上記(ウ)β)について 先に争点2−2(前記1)について述べたとおり,乙8発明も,導光板 の裏面にホログラムの回折格子を設け,回折現象を利用するものであり,かつ,本 件発明の構成要件Bと同一の構\成を備え,それにより,導光板の表面から出射する\n光を効率よく,また,面内で均一に出射されるようにするものである。もっとも, この乙8発明に係る特許の出願日は平成7年10月27日であり,本件特許の出願 よりも前に出願されたものであるが,乙8発明に係る特許について出願公開がされ たのは平成9年5月16日であり(乙8),本件特許の出願後であるから,乙8発明 はいわゆる拡大先願発明に該当するにすぎない。しかし,特許法29条の2は,特 許出願に係る発明が拡大先願発明と同一の発明である場合を特許要件を欠くものとしているところ,その趣旨の中には,先願の明細書等に記載されている発明は,出 願公開等により一般にその内容が公表されるから,たとえ先願が出願公開等をされ\nる前に出願された後願であっても,その内容が先願と同一内容の発明である以上, さらに新しい技術を公開するものではなく,そのような発明に特許権を与えること は,新しい発明の公開の代償として発明を保護しようとする特許制度の趣旨からみ て妥当でないとの点がある。このように特許法が,先願の明細書等に記載された発 明との関係で新しい技術を公開するものでない発明を特許権による保護の対象から 外している法意からすると,均等侵害の成否の判断のために発明の本質的部分とし て従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分を認定するに当た\nっては,拡大先願発明も参酌すべきものと解するのが相当である。 そうすると,導光板においてプリズムによる全反射を利用するのでは照光面に極 端な明暗のコントラストが生じるとの課題は,本件特許の出願日において,回折格 子として刻線溝又はエンボス型のホログラムを用いるか体積・位相型のホログラム を用いるかの違いがあるとはいえ,本件発明と同じく,回折格子の単位幅における 格子部幅/非格子部幅の比を,導光板の表面における輝度が増大し,かつ均一化されるように変化させることによって既に解決されている課題であったと認められる。\n
c そして,本件発明の,少ない消費電力で明るく均一な照明を得るこ とができないとの課題(上記(ア)2))は,上記a及びbで述べた課題が解決されるこ とに伴い解決されるものである(上記(ウ)γ)から,やはり既に解決されている課題 であったと認められる。
d 以上からすると,本件発明が課題とするところは,いずれも本件特 許の出願時の従来技術によって,同様の解決原理によって解決されていたといえる。 本件発明がそれらの従来技術と異なる点は,回折格子の単位幅における格子部幅/ 非格子部幅の比を,導光板の表面における輝度が増大し,かつ均一化されるように変化させることについて,体積・位相型のホログラムではなく,刻線溝又はエンボ\nス型のホログラムを用いた点にあるが,回折格子としては後者の方がむしろ通常で あること(前記1(4)ウ(ア),(エ),(オ))からすると,本件発明の従来技術に対する 貢献の程度は大きくないというべきである。
ウ 以上よりすれば,本件発明の本質的部分については,特許請求の範囲の 記載とほぼ同義のものとして認定するのが相当である。 この点について,原告は,本件発明の本質的部分は,光の波動の性質に基づく回 折現象を利用して,回折格子の断面形状又は単位幅における格子部幅/非格子部幅 の比に着目した点にあると主張するが,これまで述べたことに照らして採用できな い。
エ そうすると,被告製品の導光板では,前記のとおり,微細構造体が回折\nされた光が進行する側に設けられていることから,構成要件Aでいうところの「表\ 面」に微細構造体が設けられ,光源からの光が「表\面」側に回折させられている。 したがって,被告製品の導光板は構成要件Aの「板状体の裏面に設けられた回折格\n子」という部分を充足していない。よって,被告製品が本件発明の本質的部分を備えているということはできず,本件発明と被告製品とは本質的部分において相違すると認められるから,被告製品は,均等の第1要件を充足しない。

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平成29(ワ)18184  特許権侵害行為差止請求  特許権  民事訴訟 平成30年12月21日  東京地方裁判所

 東京地裁40部は、補正によって追加された事項を充足しない被疑侵害品について、均等を認めました。
 第5要件に関し,被告は,構成要件Eは本件補正によって追加されたも\nのであるところ,本件拒絶理由通知に対する本件意見書における「本発明 25 は,2組の揺動部材を備える点,および,揺動部材の一方に,他方に係合 する係合部を備える点において,引用文献1に記載された発明…と相違し ています。」との記載によれば,原告は,被告製品のように係合部を別部 材とする構成を特許発明の対象から意識的に除外したと理解することが\nできるから,均等侵害は成立しないと主張する。
しかし,本件意見書には,「引用文献1には,端部が回転可能に連結さ\nれることにより開閉可能に5 設けられた一対のジョーを備えた開創器アセ ンブリが開示されています。」,「このような構成(判決注:本件発明に\n係る構成)によれば,2組の揺動部材を同時に開かせることにより,骨に\n形成した切り込みの拡大作業を容易にし,また,切り込みの切断面に局所 的に過大な押圧力が作用することを防ぐことができる」,「2つの開創器 アセンブリを単に着脱可能に組み合わせただけでは本発明の構\成を導く ことはできません。」「引用発明1には,切り込みの切断面に作用する押 圧力を低減するという課題,および,2つの開創器アセンブリを一体で開 動作させるという係合部の作用に対する示唆がありません」などの記載が ある。
上記記載によれば,本件意見書の主旨は,特許庁審査官に対し,引用例 1が一対の揺動部材を開示していることを指摘し,それに対し,本件発明 は,開閉可能な2対の揺動部材を組み合わせ,一方の揺動部材を他方の揺\n動部材に係合するための係合部を設けることにより,両揺動部材が同時に 開くことを可能にするものであることを説明する点にあるというべきで\nある。そして,同意見書には,係合部の構成,すなわち,係合部を揺動部\n材の一部として構成するか,揺動部材とは別の部材により構\成をするかを 意識又は示唆する記載は存在しない。
そうすると,被告の指摘する「2組の揺動部材を備える点,および,揺 動部材の一方に,他方に係合する係合部を備える」との記載は,上記説明 の文脈において本件発明の構成を説明したものにすぎないというべきで\nあり,同記載をもって,同意見書の提出と同時にされた本件補正により構\n成要件Eが追加された際に,原告が,係合部を揺動部材とは別の部材とす る構成を特許請求の範囲から意識的に除外したと認めることはできない。\n

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平成29(ワ)28884  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年11月28日  東京地方裁判所

 特許権侵害事件です。敗血症を検出するための方法の技術的範囲には属しないと判断されました。争点は、「プロカルシトニン3−116を測定する」との用語の意義でした。
(1)「プロカルシトニン3−116を測定すること」の意義
ア 構成要件Aは「患者の血清中でプロカルシトニン3−116を測定すること\nを含む」というものであるところ,一般に,「測定」に,長さ,重さ,速さといっ た種々の量を器具や装置を用いてはかるという字義があることからすると,「プロ カルシトニン3−116を測定すること」は,プロカルシトニン3−116の濃度 等の量を明らかにすることを意味すると解するのが文言上自然である。 また,前記1(2)認定のとおり,本件発明は,敗血症等の患者の血清中に比較的高 濃度で検出可能なプロカルシトニンがプロカルシトニン1−116ではなく,プロ\nカルシトニン3−116であることが確認されたことを踏まえて新規な敗血症等の 検出方法を提供することを目的とするものであり,このような本件発明の目的に照 らせば,本件発明は,患者の血清中においてプロカルシトニン3−116が比較的 高濃度で検出されるか否かを見ることを可能とすることが求められているというこ\nとができる。 以上から,構成要件Aの「プロカルシトニン3−116を測定すること」は,プ\nロカルシトニン3−116の濃度等の量を明らかにすることを意味すると解するの が相当である。
イ この点につき,原告は,「プロカルシトニン3−116を測定すること」は, プロカルシトニン3−116を敗血症等の検出に必要な精度で測定ないし検出する ことができれば,プロカルシトニン3−116だけを特異的,選択的に測定するこ とに限られず,プロカルシトニン3−116とプロカルシトニン1−116及びそ の他のプロカルシトニン由来の部分ペプチドとを区別することなく測定することも 含むと主張しており,その意味するところは明確でないが,血清中のプロカルシト ニン3−116を検出しさえすれば足りるものである旨の主張であるとすれば,そ れはプロカルシトニン3−116の存在を明らかにすることで足り,その量を明ら かにすることは必要ではないことをいうものであって,前記アでみた「測定」の文 言の解釈に反するものであり,採用することができない。 また,血清中のプロカルシトニン3−116とプロカルシトニン1−116等と を区別することなく測定することがプロカルシトニン3−116を測定することに 該当すると主張するものであると解しても,そのような測定方法では,血清中にプ ロカルシトニン3−116が存在するかも明らかにならず,もとより,血清中のプ ロカルシトニン3−116の量も確認できないから,これを「プロカルシトニン3 −116を測定すること」に該当するというのは文言上困難である。
(2)被告方法
前記第2の2(5)ア認定のとおり,被告装置及び被告キットを使用すると,患者の 検体中において,プロカルシトニン3−116とプロカルシトニン1−116とを 区別することなく,いずれをも含み得るプロカルシトニンの濃度を測定することが でき,その測定結果に基づき敗血症の鑑別診断等が行われていると認められるもの の,本件全証拠によっても,被告装置及び被告キットを使用して敗血症等を検出す る過程で,プロカルシトニン3−116の量が明らかにされているとは認められず, 更にいえば,プロカルシトニン3−116の存在自体も明らかになっているとはい えない。 したがって,被告方法は,構成要件Aの「プロカルシトニン3−116を測定す\nる」を充足するとはいえない。

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平成30(ワ)3018  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年11月29日  東京地方裁判所(46部)

 美容器について、特許権に基づく差止が認められました。争点は、「前記各支持軸の基端側をホルダの両端部で押さえる」の技術的意義の解釈です。
 本件発明は,前記1のとおり,「ホルダ」に該当する部材によって回転体を支 持する支持軸を固定するものであるところ,原告は,被告製品のソーラーパネ\nル取付台が支持軸を固定していると主張するのに対し,被告はこれを否定する。 証拠(甲10,14)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品は,回転体の支 持軸の本体側先端部分にフランジが形成されていること,被告製品の本体内部 のソーラーパネル取付台の支持軸側先端部分には一対の段差及び半円形状の\n凹部が形成され,それらは回転体の支持軸及び支持軸に形成されたフランジの 形状に係合すること,ソーラーパネル取付台の先端部で回転体の支持軸を覆っ\nてソーラーパネル取付台を被告製品本体にネジで固定するとソ\ーラーパネル 取付台に支持軸のフランジが引っかかり,支持軸の先端部分がソーラーパネル\n取付台の段差及び半円形状の凹部に組み付けられること,その組付け後は回転 体を支持する支持軸に接着剤の塗布などはなかった被告製品においても支持 軸が本体から直ちには外れることがなかったことが認められる。これらによれ ば,被告製品のソーラーパネル取付台の先端部分の段差及び半円形状の凹部は,\n回転体の支持軸を固定するための構成であり,同部分が回転体の支持軸を覆い,\n支持軸を押し付けることによって支持軸を固定し,支持軸が抜けないようにし ていると認められる。
そうすると,被告製品のソーラーパネル取付台は構\成要件B及び構成要件C\nの「ホルダ」に該当し,被告製品は構成要件Bの「前記各支持軸の基端側をホ\nルダの両端部で押さえる」及び構成要件Cの「ホルダ」を充足するといえる。\nこれに対し,被告は,ソーラーパネル取付台の半円形状の凹部はリード線の\nハンダ付け部分をカバーするためのものであり,ソーラーパネル取付台をかぶ\nせただけでは支持軸は固定されず,支持軸を接着剤で被告製品本体内部に接着 固定しなければ,支持軸は簡単に抜けることからもソーラーパネル取付台は支\n持軸を固定する機能を有していないなどと主張する。\nしかしながら,ソーラーパネル取付台の段差及び半円形状の凹部の形状は,\n回転体の支持軸に係合する形状に形成されていて,リード線のハンダ付け部分 をカバーするために形成されていると認めるに足りる証拠はない。また,回転 体の支持軸を固定するために接着剤が塗布されている被告製品があるとして も,その塗布がされたことをもってソーラーパネル取付台が回転体の支持軸を\n固定する機能を有していることが直ちに否定されるものではなく,前記のとお\nりのソーラーパネル取付台の先端部の構\造,接着剤の塗布がなかった場合の回 転体の支持軸の被告製品本体からの着脱の状況等からすれば,ソーラーパネル\n取付台は回転体の支持軸を固定する機能を有しているということができ,被告\nの主張は採用することができない。

3 争点 −ア(乙11文献に基づく新規性欠如)
争点を検討するに当たり,まず,本件発明の「前記各支持軸の基端側をホル ダの両端部で押さえる」(構成要件B)の意義について検討する。\nア 「押さえる」とは,物に力を加えて,動かないように固定するという意味 を一般的に有する(乙3の1ないし3)。 そして,本件明細書には,前記1 アないしオの記載のほか,「発明を実施 するための形態」として,「図4及び図5に示すように,前記ベース体13の 両支持筒18には,金属製の一対の支持軸20がシールリング21を介して, 交差軸線L1,L2上に位置するとともに外側に突出した状態で嵌合支持さ れている。このシールリング21は,支持軸20の周りからハンドル12の 内部へ向かう水の侵入を防止している。各支持軸20の基端には,大径状の 抜け止め頭部20aが形成されている。図4及び図9に示すように,両支持 軸20の基端部間においてベース体13上には,ホルダ22が配置されてい る。このホルダ22の両端部には,各支持軸20の基端側を押さえるための ほぼ半円筒状の押さえ部22aが形成されている。ホルダ22の中間部には, 円筒状のネジ止め部22bが形成されている。そして,ホルダ22の両端の 押さえ部22aにより両支持軸20の基端が押さえられた状態で,ホルダ2 2の中間のネジ止め部22bがネジ23によりベース体13に固定される ことによって,各支持軸20がベース体13の支持筒18に対する嵌合支持 状態に抜け止め固定されている。すなわち,支持軸20の組み付け時には, ハンドル12のベース体13に形成された一対の支持筒18に外側(図4の 左側)から支持軸20をそれぞれ嵌挿して,交差軸線L1,L2上に位置す るように配置する。次に,図5及び図9に示すように,両支持軸20の基端 間におけるベース体13上にホルダ22を配置し,そのホルダ22の両端の 押さえ部22aにより両支持軸20の基端側を押さえる。これにより,図4 及び図9に示すように,各支持軸20の基端の抜け止め頭部20aが押さえ 部22aの端縁に係合される。この状態で,ホルダ22の中間のネジ止め部 22bをネジ23によりベース体13に固定すると,一対の支持軸20がベ ース体13に対して同時に抜け止め固定される。」(段落【0013】),「従っ て,この実施形態によれば,以下のような効果を得ることができる。(1)こ の美容器においては,ハンドル12の先端部に交差軸線L1,L2上に位置 する一対の支持軸20が設けられている。各支持軸20の先端側には回転体 27が回転可能に支持され,それらの回転体27により身体に対して美容的\n作用が付与されるようになっている。前記ハンドル12における両支持軸2 0の基端部間の位置には,ホルダ22がその中間部において固定されている。 そして,このホルダ22の両端の押さえ部22aにより,各支持軸20の基 端側がハンドル12に対して押し付け保持されるようになっている。このた め,1つのホルダ22からなる簡単な固定構成により,一対の支持軸20を\nハンドル12に対して容易に固定することができて,製造コストの低減を図 ることができる。」(段落【0019】)との記載がある。
上記のとおり,本件明細書の段落【0013】,【0019】には,ホルダ の両端部に各支持軸の基端側を押さえるためのほぼ半円筒状の押さえ部が 形成され,この押さえ部が支持軸の基端に接し,それをハンドルに押し付け ることによって支持軸を保持し,支持軸が抜けることがないように固定する という実施形態が記載されており,これは,前記のとおりの「押さえる」の 一般的な意味とも整合する。 そうすると,本件発明の「前記各支持軸の基端側をホルダの両端部で押さ える」とは,支持軸の基端部をホルダの両端部に接するようにし,ホルダの 両端部から支持軸の基端部に対して押し付けること,すなわち力を加えるこ とによって,支持軸を抜けることがないように固定することを意味するもの と解するのが相当である。
イ これに対し,被告は,本件明細書の【図4】や段落【0013】の記載か ら,「押さえる」とは,支持軸の基端に設けられた抜け止め頭部や押さえ部, その他支持筒等の部材との勘合・係合によって固定される構成を包含するも\nのであると主張する。 しかし,本件明細書の段落【0013】の記載は前記アのとおりであり, ホルダが支持軸に力を加えずに,部材の勘合・係合のみによって固定する態 様が記載されているとはいえず,本件明細書のその他の記載中にも被告の主 張するような固定態様に関する記載はない。また,本件明細書の【図4】か らもそのような固定態様を看取することはできない。被告の主張は,「押さ える」の一般的な意味と一致するものでは必ずしもなく,かつ,本件明細書 にその主張を裏付ける記載はないといえるのであり,採用することができな い。
(2)。乙11発明と本件発明の対比
ア 本件特許の出願日前に公開されていた乙11文献には,1)ハンドルの先端 部に交差軸上に位置する一対の支持軸が設けられていること(乙11文献の 【図6】〜【図8】),2)腕部の先端側にマッサージを行うためのローラが回 転可能に支持されていること(乙11文献の段落【0001】【0013】),\n3)ローラ取付部材の左右両端部にそれぞれ腕部を含むローラ連結部の一端 を回転軸により軸支固定すること及び当該回転軸をローラ取付部材の穴に 挿通してEリングによって抜け止めすること(乙11文献の段落【0008】 〜【0010】),4)ローラ取付部材の中間部をローラ連結部を介してハンド ルに固定すること(乙11文献の段落【0008】【図1】【図2】),5)以上 の構成を有する美容器である乙11発明が開示されていることは当事者間\nで争いはない。 そこで,本件発明と乙11発明を対比すると,本件発明は,支持軸の基端 部をホルダの両端部で力を加えて支持軸を抜けないように固定する構成で\nあるのに対し(構成要件B),乙11発明の支持軸の固定方法はそのような\n構成を有していない点で相違する。
イ 被告は,本件発明の構成要件Bの「押さえる」とは支持軸の基端に設けら\nれた抜け止め頭部や押さえ部,その他支持筒等の部材との勘合・係合によっ て固定される構成を包含するものであることを前提として,本件発明の構\成 要件Bと乙11発明の構成3)とが同一であると主張する。 しかし,構成要件Bの「押さえる」に関する被告の主張を採用することが\nできないことは とおりであり,乙11発明の構成3)が本件発明の構\n成要件Bと同じであるということはできない。 したがって,乙11文献には構成要件Bの構\成が開示されているとはいえず, 乙11発明と本件発明は同一ではないから,本件発明が新規性を欠くというこ とはできない。

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平成29(ワ)24174  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月24日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、特許権(6154978号)侵害が認められました。原告マネースクウェア、被告外為オンラインです。損害賠償は請求されておらず、サーバの差止だけです。事実認定のところで、実際に〜すると、〜〜となるという事実から、構成要件の充足を認定しています。
 イ 被告サーバにおける「注文情報」
(ア) 前記第2の2(4)イ認定のとおり,被告サービスにおいて注文が行われると, 別表のとおり被告サーバの処理が記録されるところ,前記2認定の被告サービスの内容,別表\の各欄の内容及び被告サーバの処理に照らすと,被告サーバにおいて,注文が行われた時点,すなわち,「注文日時」欄記載の日時に,同欄記載の注文を 識別するための注文番号,「注文日時」欄記載の注文日時,「取引」欄記載の新規 注文又は決済注文の別,「通貨P」欄記載の取引対象となる通貨の種類,「売」欄 記載の売り注文であるか否か,「買」欄記載の買い注文であるか否か,「新規注文」 欄記載のイフダンオーダーを構成する新規注文の注文番号,「執行条件」欄記載の成行注文,指値注文,逆指値注文の注文種別,「指定R」欄記載の指定価格,「期\n限」欄記載の注文の有効期限といった個々の注文の内容を規定する情報が生成され ていると推認することができる。 また,被告サーバにおいて,市場に発注された個々の注文が約定等したことが検 知されると,「注文状況」欄に,その注文が「無効」,「約定」,「取消」のいず れの状況にあるかが,「約定R」欄に,約定価格が,「約定等日時」欄に,注文が 約定等した日時が,すなわち,約定等の結果に係る情報が記録されていると推認す ることができる。 そうすると,少なくとも,被告サーバに記録されている注文番号,注文日時,新 規注文又は決済注文の別,取引対象となる通貨の種類,売り注文であるか,買い注 文であるか,イフダンオーダーを構成する新規注文の注文番号,成行注文,指値注文,逆指値注文の注文種別,指定価格,注文の有効期限といった個々の注文の内容\nを規定する情報は,個々の買い注文又は売り注文を行うために必要となる情報であ るということができ,本件発明の「注文情報」に該当する。 (イ) 以上より,被告サーバでは,本件発明の構成要件BないしHの「注文情報」に相当する情報が生成されていると認められる。
ウ 小括
前記のとおり,被告サーバでは,構成要件BないしHの「注文情報」に相当する情報が生成されているところ,これらの構\成要件の充足性について,後記(2),(3)に おいて検討する構成要件G及びHを除いた構\成要件BないしFの充足性については 次のとおりであり,被告サーバは構成要件BないしFをいずれも充足する。すなわち,本件発明の「注文情報」に関する前記判示を踏まえ,被告サーバの構\成を構成要件BないしFと対比すると,被告サーバは,例えば,番号114,111,108,105の買い注文に係る買い注文情報のような複数の買い注文情報を\n生成する買い注文情報生成手段を備えるものであるから,「金融商品の買い注文を 行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段」(構成要件B)を備えており,また,例えば,番号113,110,107,104の売り注文に\n係る売り注文情報のような複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段を 備えるものであるから,「前記買い注文の約定によって保有したポジションを,約 定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文 情報生成手段とを有する注文情報生成手段」(構成要件C及びD)を備えている。さらに,被告サーバは,別表\に「注文状況」欄及び「約定等日時」欄等があることから明らかなように,「前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検 知手段とを備え」(構成要件E)るものであり,また,例えば,番号113,110,107,104の売り注文のように,指定価格が114.90円,114.2\nなるものであるから,「前記複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報は, それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報」(構成要件F)を備えている。
(2) 争点1−2(被告サーバは構成要件Hを充足するか)
ア 構成要件Hは,「前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知する\nと,前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記 複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注 文価格の情報を含む売り注文情報を生成する…」というものであり,文言上,「複 数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文」1個が約定したときに 「複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り 注文価格の情報を含む売り注文情報」1個が生成される構成を含むと解するのが相当である。\nこれを被告サーバについてみると,前記2(2)認定のとおり,被告サーバは,約定 検知手段が,例えば,番号113,110,107,104の売りの指値注文のよ うな複数の売り注文のうち,指定価格を114.90円とする最も高い売り注文価 格の番号113の売り注文が約定されたことを検知すると,注文情報生成手段は, この検知の情報を受けて,指定価格を番号113の指定価格114.90円より0. 62円高い115.52円とし,これを含む売り注文情報である番号96の新たな 売りの指値注文を生成するものであるから,構成要件Hを充足する。
イ 被告は,構成要件Hは,「複数の売り注文」全てが約定したときに,「注文情報生成手段」が新たに「複数の売り注文情報」全て「を生成する」ことを意味す\nると解すべきであるとし,その理由として,1)構成要件Hの「最も高い売り注文価格の売り注文注文が約定されたことを検知」したときは,「最も高い売り注文価格」\nより低い価格の売り注文が既に約定していることが明らかであるから,構成要件Gの「前記複数の売り注文情報」が全て約定したときを意味すること,2)本件明細書 の【0145】ないし【0147】においては,全ての売りの指値注文が約定して 初めて,新たな買いの指値注文(B1ないしB5)及び売りの指値注文(S1ない しS5)の全てが同時に行われていること,3)構成要件Hの「前記注文情報生成手段」が引用している構\成要件C及びDにおいて,「注文情報生成手段」は「複数の売り注文情報」全て「を生成する」ものであるとされていることなどを主張する。 しかしながら,被告が理由として挙げる1)については,構成要件Hの文言にない限定を付すものである上,「注文情報生成手段」が「複数の売り注文情報」を「一\nの注文手続」で生成することを規定しているにすぎない構成要件Gについて,「注文情報生成手段」が常に「複数の売り注文情報」を生成することを規定するとの限\n定を加えた解釈を前提としていることから,採用することはできない。 また,被告が理由として挙げる2)についても,本件明細書の【0145】ないし 【0147】は,構成要件Hに対応する「シフト機能\」に「決済トレール機能」等を組み合わせた実施例にすぎないから採用し得ない。後記4(1)のとおり,全ての売 り注文が約定しなければ「シフト機能」を適用できないとするものでもない。したがって,被告の主張は採用することができない。
ウ また,被告は,被告サーバが「前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文 価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報」に係る「売り注文情報を 生成する」時点は,「前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い 売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知」したときではなく,買いの成行 注文の約定を検知したときであるから,構成要件Hを充足しないと主張し,買いの成行注文が売り注文に先行して行われていることを示す事情として,別表\において,番号96の売りの指値注文が「2014/11/7 22:29」に約定すると, 同一時刻に番号89の買いの成行注文だけが行われ,約定しているのに対し,番号 85の売りの指値注文は「2014/11/7 22:30」に行われていること などを指摘する。 被告の主張の趣旨は必ずしも明確でないが,仮に,個々の注文が有効なものとし て市場に発注された時点で,被告サーバで「注文情報」が生成されると主張するも のであれば,前記2(3),3(1)イ認定のとおり,被告サーバにおいて,市場に発注前 の売りの指値注文及び逆指値注文であっても,他の注文とともに,注文が行われた 時点で,注文番号等の注文情報が生成されていることと整合せず,採用することが できない。

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平成29(ネ)10073  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 マネースクウェアVS外為オンライン事件は、控訴審でも、技術的範囲に属しないと判断されました。成行注文であるNo.97の買い注文またはNo.88に係る注文情報が、構成要件Eの「新たな一の価格の新たな前記第一注文情報」と均等であるとの主張も、置換容易性がないとして、否定されました。
 前記前提事実からすると,被控訴人サービスは,買い注文から入った場 合は,取引開始後の最初の買い注文を成行注文とし,同注文と対をなす売り注文を 指値注文とし,同売りの指値注文が約定することをトリガとして新たな価格帯での 取引として,買いの成行注文に係る注文情報を生成させることとし,その後,同買 いの成行注文と対をなす売りの指値注文が約定することをトリガとして,更に新た な価格帯での取引を行い,以降,これを繰り返すという構成を採用していることが\n認められる。
被控訴人サービスの上記構成を前提として,被控訴人サービスの構\成と本件発 明の構成とを比較すると,まず,本件発明においては,第一注文情報及び第二注文\n情報とも指値注文とする構成であるのに対し,被控訴人サービスにおいては,1)第 一注文情報のうち取引開始後最初の取引の第一注文情報と,相場価格の変動後の新 たな価格帯での最初の取引の第一注文情報のみを成行注文とする構成である点で異\nなり,この点で,被控訴人サービスは構成要件E2)を充足しないが,特定の事項を トリガとして生成する成行注文においては,トリガとなる事項をどのように構成す\nるかの点もその内容となっているものと解されること,被控訴人サービスにおいて は,2)相場変動後の新たな価格帯での最初の成行注文に係る注文情報の生成を,旧 価格帯における成行注文と対をなす指値注文の約定をトリガとして行わせる構成と\nしたことが,上記1)の構成と一体となって技術的な意義を有するものと解されるこ\nとから,上記1)及び2)の構成(以下「本件相違構\成」)を本件発明の構成との相違\n点として把握して検討するのが相当である。 この点,控訴人は,被控訴人サービスと本件発明とは,本件発明が「検出され た前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定された値以上となった場合に」,新\nたな価格の「買いの指値注文」を設定するのに対し,被控訴人サービスは,「検出 された前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定された値以上となり,売りの指\n値注文が約定した場合に」,新たな価格の「買いの成行注文」を設定する点で相違 すると主張して均等侵害の主張をしているが,同主張は,被控訴人サービスにおい ては変動後の価格帯で生成されるすべての買い注文が成行注文であるとして,本件 設定できることからすると,相場価格が指定価格となることをトリガとする構成が\n想到し易いものと考えられる。
また,前記1のとおり,本件発明は,同じ価格帯でイフダンオーダーを自動的 に繰り返すことのできる従来の発明の課題を解決したものであり,同じ価格帯での イフダンオーダーを自動的に繰り返すことを前提としているところ,被控訴人サー ビスのように本件相違構成を採用すると,新たな価格帯における取引を行わせるた\nめに必要な相場価格の変動幅は,取引開始時に設定された第二注文情報の指値注文 と取引開始時の相場価格の差額と一致することになり,その結果,同じ価格帯での イフダンオーダーを継続させるためには,相場価格が変動した場合に,旧価格帯の 成行注文と対をなす売りの指値注文の約定をトリガとして,旧価格帯における指値 注文に係る注文情報群も生成させる構成を採用するなどの工夫をする必要が生じる\n(被控訴人サービスでは,同一の価格帯でのイフダンオーダーを継続させるために は,No.113の売りの指値注文の約定をトリガとして,新たな価格帯の取引で あるNo.97の買いの成行注文に係る注文情報を生成するだけでなく,旧価格帯 の取引であるNo.100及びNo.99の各注文に係る注文情報群をも生成させ る必要がある。なお,本件発明においても,顧客が「予め設定された値」を第二注\n文情報の指値価格と第一注文情報の指値価格の差額以下の値と設定することを可能\nとするのであれば,同じ価格帯でのイフダンオーダーを継続させるためには,相場 価格が変動しても,旧価格帯での取引を継続させる構成としておく必要があるが,\n上記の設定ができないようにすれば,上記の構成とする必要はない。)。このよう\nな理由から,被控訴人サービスは,本件相違構成を採用するためには,相場価格が\n変動した場合に,旧価格帯の成行注文と対をなす指値注文の約定をトリガとして, 旧価格帯における指値注文に係る注文情報群も生成させる必要があり,この点を考 慮すると,本件発明に本件相違構成を適用するに当たっては,相応の検討が必要で\nあったというべきである。 以上のことに,本件全証拠によっても,被控訴人サービスが開始された時点に おいて,本件相違構成を採用した金融商品取引に係るサービスが存在したことや,\n本件相違構成を開示した文献があったとは認められないことを併せ考慮すると,本\n件相違構成に係る置換をすることは当業者が容易に想到することができたとは認め\nられないというべきである。

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◆平成28(ワ)21346

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平成28(ワ)38103  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月17日  東京地方裁判所

 太陽光発電システムの工事について特許権侵害が認められました。東京地裁29部は、特102条3項による損害額として約1000万円を認めました。
 (1)原告は,まず,原告が太陽光発電装置の請負契約を締結する場合の請負代金 額を基に,太陽光発電パネルの出力1kw当たりの請負代金額は32万円であると して,これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じた1億1581万440 0円を民法709条所定の損害であると主張する。 しかしながら,太陽光発電装置の施工について,被告が本件各土地で施工してい なければ,原告がこれらを受注して施工することができたと認めるに足る証拠はな いから,原告の主張する上記の損害は被告の行為と相当因果関係のある損害である と認めることはできない。
(2) 原告は,次いで,本件特許に係る「単位数量当たりの利益の額」(特許法1 02条1項)は太陽光発電パネルの出力1kwを1単位として算定すべきであると して,太陽光発電パネルの出力1kw当たりの利益の額は9万8000円であり, これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じた3546万8160円を特許 法102条1項による損害額であると主張する。
しかしながら,原告の上記の主張は,アルバテック又は原告による太陽光発電装 置の施工に係る見積書(甲22の1,甲23の1)等の書面に基づくものであり, これらが実際の取引金額を反映したものであると認めるに足る証拠はないから,本 件各土地における太陽光発電装置の施工に対応する原告の単位数量当たりの利益の 額を算定する根拠として不十分である。\nその他本件特許に係る単位数量当たりの利益の額を認めるに足る証拠はなく,し たがって,特許法102条1項による損害額として,原告の主張する上記の損害を 認定することはできない。
(3)ア 原告は,さらに,原告が本件特許の実施許諾をする場合の実施料は出力1 kw当たり3万円であるとして,これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗 じた1085万7600円を特許法102条3項による損害額であると主張する。 イ そこで検討すると,証拠(甲24)によれば,原告は,平成25年12月1 5日,他社との間で,本件特許に係る通常実施権を許諾する旨の特許権実施許諾契 約を締結しており,同契約3条(1)において,実施料については,本件特許に係る施 工方法を用いて施工された太陽光発電パネルの出力1kwに対して3万円を乗じた 額とされたことが認められる。そして,本件全証拠によっても,この実施料額が高 額にすぎて不相当であると認めることはできない。 したがって,本件発明の実施に係る実施料率としては,太陽光発電パネルの出力 1kw当たり3万円と認めるのが相当であり,本件における特許法102条3項に よる損害額は,3万円に本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じて算定するの が相当である。 そうすると,本件各土地の太陽光発電パネルの出力は,前記第2の2前提事実(4)のとおりであって,合計361.92kwであるから,本件における特許法102 条3項による損害額は合計1085万7600円(本件土地1につき3万円に84. 24kwを乗じた252万7200円,本件土地2につき3万円に277.68k wを乗じた833万0400円の合計)である。
ウ これに対し,被告は,特許権の実施料率が請負代金の10%強となることは およそ考えられず,請負代金を基準とした場合にはその1%程度の金額にとどまる 旨主張するが,その理由を具体的に主張しておらず,裏付けとなる証拠を提出して いないから,実施料率を基礎付ける事情として採用することができない。

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平成28(ワ)3856 特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月19日  東京地方裁判所(29部)

 ドワンゴVSFC2の特許権侵害について、文言侵害および均等侵害が否定されました。第1,第5要件を満たさないというものです。
 以上のとおり,「第1の表示欄」は動画を表\示するために確保された領域(動画表\n示可能領域),「第2の表\示欄」はコメントを表示するために確保された領域(コメン\nト表示可能\領域)であり,「第2の表示欄」は「第1の表\示欄」よりも大きいサイズで いずれも固定された領域であると解されるところ,被告ら各装置においては,動画表\n示可能領域(被告ら装置1における「StageオブジェクトA」,被告ら装置2及\nび3における<iflame>要素又は<video>要素)とコメント表示可能\領 域(被告ら装置1における「CommentDisplayオブジェクトD」,被告 ら装置2及び3における<canvas>要素)は同一のサイズであるから,被告ら 各装置は,「第1の表示欄」及び「第2の表\示欄」に相当する構成を有するとは認め\nられない。したがって,被告ら各装置は,本件発明1−1の「第1の表示欄」(構\成要 件1−1C,1−1E,1−1F)及び「第2の表示欄」(構\成要件1−1D,1−1 E,1−1−1F)を充足するとは認められず,本件発明1−1の技術的範囲に属するとは認められない。 そして,被告ら各装置は,同様に,本件発明1−5の「第1の表示欄」及び「第2\nの表示欄」(構\成要件1−5J)を充足せず,そうである以上,「第2の表示欄」を構\ 成要素とする「コメント表示部」(構\成要件1−1D,1−2H,1−5J,1−6L)も充足しないから,本件発明1−2,1−5及び1−6の技術的範囲に属するとは認 められない。 また,本件発明1−9及び1−10は,発明の対象が「プログラム」であるが,発 明の対象を「表示装置」とする本件発明1−1及び1−2と対応するものである。したがって,被告ら各プログラムは,本件発明1−1及び1−2と同様に,「第1の表\ 示欄」(構成要件1−9B,1−9E)及び「第2の表\示欄」(構成要件1−9E)を\n充足せず,本件発明1−9を引用している本件発明1−10の構成要件1−10Hも\n充足しないから,本件発明1−9及び1−10の技術的範囲に属するとは認められない。以上のとおりであるから,被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件 発明1の技術的範囲に属するとは認められない。
・・・
ア 特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかっ た技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想に基 づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にあるから,特許発明にお\nける本質的部分とは,当該特許発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に 見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。そして,\n上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて, 特許発明の課題及び解決手段とその作用効果を把握した上で,特許発明に係る特許請 求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部\n分が何であるかを確定することによって認定されるべきである(知財高裁平成27年 (ネ)第10014号同28年3月25日特別部判決・判時2306号87頁参照。)。
イ これを本件についてみると,前記2(3)で説示したとおり,本件発明2は,複数 のコメントが書き込まれても,コメントの読みにくさを低減させることができる表示\n装置,コメント表示方法及びプログラムを提供することを目的とするものであって,\nコメント表示部によって表\示されるコメントが他のコメントと重なるか否かを判定 し,コメントが重なると判定した場合に,コメント同士が重ならない位置にコメント を表示させるようにし,複数のコメントが表\示される場合において,コメント同士が 動画上で重なってしまい,各コメントが判読できなくなってしまうことを防止するこ とができるようにするとともに,動画の再生中に他の端末装置から入力されたコメン トをリアルタイムに受信して当該動画上に表示し,そのコメントをダイナミックに変\n動させることにより,リアルタイムな双方向のコミュニケーションを可能にし,大人\n数でコメントを交換する面白みを増加させる発明である。上記の「動画の再生中に他 の端末装置から入力されたコメントをリアルタイムに受信して当該動画上に表示し,\nそのコメントをダイナミックに変動させることにより,リアルタイムな双方向のコミ ュニケーションを可能にする」という作用効果は,コメント配信サーバが端末装置か\nらコメント情報を受信してそれを送信するタイミングがリアルタイムに行われるこ と,すなわち,構成要件2−1Cに規定されているように「前記コメント配信サーバ\nが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信 されるコメント情報を受信」との構成によって実現されているのであり,本件特許2\nの出願経過においても,上記構成は,表\示すべき文字情報があらかじめ決定されてい る従来技術との比較において,「ユーザの端末装置から送信されるコメントを受信し て表示するものであり,コメントを受信する毎に,表\示するコメントがダイナミック に変動する点」が相違すると説明されている。そうすると,構成要件2−1Cは,動\n画の再生中に他の端末装置から入力されたコメントをリアルタイムに受信して当該 動画上に表示し,そのコメントをダイナミックに変動させることにより,リアルタイ\nムな双方向のコミュニケーションを可能にする」という作用効果を奏する構\成を具体 的な構成として特定したものであり,この構\成が従来技術にみられない特有の技術的 思想を構成する特徴的部分であり,本件発明2における本質的部分であるというべき\nである。
ウ 他方,前記のとおり,被告ら各装置は構成要件2−1Cを充足せず,被告ら各\nプログラムは構成要件2−9Bを充足しないから,被告ら各装置及び被告ら各プログ\nラムが本件発明2の本質的部分を備えているということはできず,本件発明2と被告 ら各装置及び被告ら各プログラムは本質的部分において相違すると認められる。
(3) 第5要件(特段の事情)について
前記2(2)において認定したとおり,本件特許2の出願経過として,1)特許庁審査官 は,平成22年11月24日を起案日とする拒絶理由通知書(乙24)において,出 願当初の特許請求の範囲請求項1ないし6及び8ないし12に係る各発明について, 特許法29条2項の規定により特許を受けることができない旨を通知し,2)原告は, 平成23年1月31日付け手続補正書(乙25)において明細書を補正し,請求項1 に「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し,前記コメント情報記憶部に 記憶する受信部と,」との構成を,請求項9に「前記コメント配信サーバが前記端末装\n置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメン ト情報を受信し,」との構成を付加して変更し,3)特許庁審査官はこれに対して特許 査定をしたものである。 上記の出願経過からすれば,原告は,拒絶理由を回避するために構成要件2−1C\n及び構成要件2−9Bを備えた発明に限定して特許を受けたものといえるから,上記\n構成要件の全部又は一部を備えない発明について,本件発明2の技術的範囲に属しな\nいことを承認したか,少なくとも外形的にそのように解される行動をとったものと理 解することができる。 したがって,均等の成立を妨げる特段の事情があるというべきであり,均等の第5 要件を充足しない。

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平成29(ワ)22041  差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月19日  東京地方裁判所(40部)

 構成要件B,C,Eを充足しないとして、技術的範囲に属しないと認定されました。\n
 原告は,被告製品の把持体外側の外郭部分全体の形状は「逆台形状」である から,構成要件Bを充足すると主張する。\n構成要件Bの「逆台形状」の意義に関し,本件明細書の段落【0008】,\n【0018】,【0023】,【0024】には,本件発明の把持部12が「逆 台形形状」である旨の記載があるが,その形状の定義や意義についての記載 は存在しない。そこで,一般的な用法を参酌すると,広辞苑第六版(乙1)に は,「台形」とは「一組の対辺が平行な四辺形」であると記載され,かつ,上 底が下底より短い四辺形の図が掲載されている。これによれば,「逆台形」と は,「上底が下底より長く一組の対辺が平行な四辺形」をいうと解するのが相 当である。 このような理解に立って本件明細書の図2に図示された把持部をみると, その上部(引き手から遠い部分を「上部」,引き手に近い部分を「下部」とい う。)の直線が下部の直線より長く,その側辺が直線状であるので,本件明細 書における「逆台形状」という語の意義は,上記の一般的用法に沿うものであ ると認められる。 他方,証拠(甲3)によれば,被告製品の把持体(前記第3の1(1)〔被告 の主張〕掲記の「被告製品の把持体」の赤線で囲まれた部分)は,下底は直線 状であるものの,下底から上部に向かう側辺は全体が曲線であり,把持体の 中央部分で最大幅となり,その後,上部に向かい先端部に行くほど幅が狭く なっている上,上底も直線状ではなく,曲線から構成されていることが看取\nされる。そうすると,被告製品の把持体は,平行な対辺もなく四辺形でもない ことから「逆台形状」ということはできず,むしろ「楕円形状」というべきで ある。 これに対し,原告は,「逆台形状」の「状」とは,「…のような形である」 の意味であるから,本件発明の「逆台形状」は必ずしも正確な「逆台形」に限 られないと主張する。しかし,被告の把持体が厳密な意味での「逆台形状」の 定義を満たすことは要しないとしても,少なくとも,逆台形としての基本的 な形状は備えていることを要すると解されるところ,被告製品の把持体は, 側辺及び上部が曲線で「四辺形」ということは到底できず,「楕円形状」とい うべきものであり,逆台形の基本的な形状を備えているということはできな いことは前記判示のとおりである。 したがって,被告製品の把持体は「逆台形状」とは言えず,構成要件Bを充\n足しない。
(2)争点1−2(構成要件Cの充足性)について
原告は,被告製品は,スライダーが10〜50%露出しているので,構成\n要件Cを充足すると主張する。 しかし,被告製品の写真である証拠(乙19の1の4枚目,19の2の5 枚目,19の3の3枚目,19の4の3枚目,19の5の4枚目,19の6 の4枚目,19の7の4枚目,19の8の3枚目,19の9の3枚目)によ れば,被告製品において,スライダーがファスナーカバーに収まった状態に おいて閉口端側に露出することはあるものの,その露出割合は10%を超え ないと認めることが相当である。 また,被告製品1の吊り下げヘッダー裏面にはスライダーをファスナーカ バーに収めた状態が図示されているが(甲3の1の図5),同図においても, スライダーはファスナーカバーから閉口端側に露出していない。これによれ ば,被告製品の通常の用法においては,スライダーがファスナーカバーに収 められた際に閉口端側に露出することは想定されていないものというべき である。
これに対し,原告は,被告製品1の実測値(別紙被告製品説明書の図1を 再度実測したとされるもの。原告第1準備書面11頁の図1)によれば,被 告製品1のファスナーカバーの長手方向の全長は約25mmであり,露出部 分が約3.5mmであるから,被告製品のスライダーは約14%(3.5/ 25×100=0.14)露出していると主張する。 しかし,原告が根拠とする上記の実測値は,被告製品の把持体を弾性のあ るファスナーカバーにどの程度強く押し込んだ上で実測されたかが明らか ではなく,訴状に添付された同製品に係る別紙被告製品説明書の図1(甲3 の1の図3)においては,被告製品1のスライダーの露出部分は約3mm程 度にとどまっている上,前記のとおり,吊り下げヘッダー裏面の図(甲3の 1の図5)においては,スライダーがファスナーカバーから閉口端側に露出 していないことなどに照らすと,上記の再実測図(原告第1準備書面11頁 の図1)は,被告製品1のスライダーを通常使用される態様より強くファス ナーカバーに押し込んで実測されたものであると推認される。 この点,原告は,本件発明の技術的範囲は,被告製品がスライダーをファ スナーカバーから所定の割合で露出させることが可能かどうかで判断され\nるべきであるから,スライダーを強くファスナーカバーに押し込んだ状態で 露出割合が10%を超えるのであれば構成要件Cを充足すると主張するが,\n被告製品におけるスライダーの露出割合は,当該製品が通常使用される状態 において測定されるべきであり,弾性を有するファスナーカバーにスライダ ーを強く押し込んだ状態においてスライダーの露出割合が10%を超える としても,それによって構成要件Cを充足するということはできない。\nしたがって,被告製品は構成要件Cを充足しない。
(3) 争点1−4(構成要件Eの充足性)について
原告は,被告製品は,ファスナーカバーに把持体が「収まった状態」となっ ているので,構成要件Eを充足すると主張する。\n構成要件Eの「収まった状態」との語に関し,本件明細書には,拡大把持体\nがカバー体にどの程度覆われていることを意味するかについての直接的な記 載はないが,本件発明に係る洗濯用ネットの開口部を開口及び閉口する際の 手順を記載した本件明細書の段落【0020】及び段落【0022】の記載に よれば,本件発明は,洗濯ネットの閉口時にはスライダ構成体を「確実にカバ\nー体に収」め,開口時には 閉口端側からスライダ3を押すことにより,拡大 把持体1の「先の部分」を一定量カバー体から露出させ,その部分を指でつか んで引き抜くことにより開口するものであると認められる。 このような,本件発明に係る洗濯ネットの開閉時の手順及び仕組みによれ ば,閉口時において拡大把持体は,その「先の部分」まで「確実に」カバー体 に覆われた状態にあるものと解するのが相当であり,本件明細書の【図4】 (C)にも,開口部を閉じた際に拡大把持体1が完全にカバー体に収められ た状況が図示されている。
そうすると,構成要件Eの「収まった状態」とは,拡大把持体がカバー体に\n完全に覆われた状態をいうものと解すべきであり,このような理解は,「収ま る」という語が,一般的には「ある範囲内に全部が残らず入る」ことなどを意 味すること(乙3)とも整合するというべきである。 また,仮に,原告の主張するように閉口時において拡大把持体がカバー体 に完全に覆われることを要しないと解し得るとしても,上記の開閉時の手順 及び仕組みによれば,少なくとも,拡大把持体は,開口時にその先の部分を指 でつまんでそのまま開口することができない程度までカバー体に覆われてい ることを要するというべきである。 以上に基づき被告製品についてみると,証拠(甲3,乙19)によれば,被 告製品はいずれも開口時に閉口端側からスライダーを押して把持体の先の部 分を露出することを必要とせず,そのまま把持体を指でつまんで開口するも のであり,これを可能にするように,開口部側において把持体のリング部分\nの一部が指でつまむことができる程度にファスナーカバーから露出している ことが認められる。 このように,被告製品は,閉口時に把持体がファスナーカバーに完全に覆 われておらず,少なくとも,把持体が指でつまむことができる程度に露出し ているのであるから,被告製品は構成要件Eの「拡大把持体が収まった状態」\nにあるということはできない。

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平成29(ワ)10742  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月19日  東京地方裁判所

 加熱調理器の特許侵害事件です。裁判所(29部)は、技術的範囲に属しないと判断しました。均等侵害は主張されていません。原告はアイリスオーヤマです。
 構成要件Eのうち,「調理容器の外殻」及び「最大径の調理容器」の意義につい\nて検討する。 上記各文言は,調理容器との関係をもって加熱調理器の構成を示すものであり,\n文言のみから一義的にその意義を明らかにすることができないことから,本件明細 書等の発明の詳細な説明の内容を考慮して検討する必要がある。そこで,1⑴にお いてみたとおりの本件明細書等の記載を考慮すると,本件明細書等(【0003】, 20 【0005】,【0021】,【0028】,【0029】,【0030】,【0 032】)には,リング状枠はトッププレート上に印刷表示され,調理容器を有効\nに加熱できる領域として使用者に示されるものであること(【0003】),リン グ状枠は加熱部の領域を示し,鍋の最大径と同径で,鍋の外殻を表すものであるこ\nと(【0005】,【0021】)及び加熱部は最大の鍋径と同径で,リング状枠 であること(【0028】,【0029】)が示され,これ以外に,上記各文言の 意義の解釈を導くような説明がされていることは認められない。そうすると,「最 大径の調理容器」は,トッププレート上に印刷表示され左右の加熱部の領域を示し,\nまた,リング状枠と同径のものであり,また,「調理容器の外殻」と一致するもの であると解するのが一般的かつ自然である。 この点,被告は,構成要件Eの内容は不特定であるなどと主張するが,同主張は,\n前記認定に照らし採用することができない。
(2) 被告製品関連製品の構成\nア 原告は,別紙3被告製品説明書(原告)において,被告各製品は,「左IH ヒーター及び右IHヒーター上で,調理容器の鍋底全体を加熱できる最大径である 直径26cmの領域を示す外殻線11,12」という構成を有し,これが「調理容\n器の外殻」であり「最大径の調理容器」である旨主張する。そして,被告各製品を 除く被告製品関連製品も被告各製品と同様の構成を有する旨主張する。\nイ しかしながら,前記⑴において認定したとおり,「調理容器の外殻」及び「最 大径の調理容器」は,トッププレート上に印刷表示された加熱部及び有効加熱領域\nの領域を示すリング状枠と同径のものであるところ,原告の主張する外殻線11, 12は,原告において付しているものにすぎず,トッププレート上に表示されてい\nるものではないから,これらを「調理容器の外殻」又は「最大径の調理容器」であ るとみることはできない。そして,本件全証拠によっても,被告各製品には,加熱 部及び有効加熱領域を示す直径26cmのリング状枠が表示されているとは認めら\nれず,加熱部及び有効加熱領域を示すリング状枠と同径である「調理容器の外殻」 及び「最大径の調理容器」が直径26cmであると認めることもできない。 原告は,「調理容器の外殻」は,鍋底の最大径であり,被告は被告各製品におい て鍋底が直径26cmまでの鍋を使用することができる旨説明しているから,被告 各製品の「最大径の調理容器」は26cmのものであると主張する。しかしながら, 被告において上記のように説明することが,被告各製品で使用可能な最大径の鍋底\nを示すものといえるか否かについてひとまず措くとしても,前記⑴において認定し たとおり,「調理容器の外径」及び「最大径の調理容器」と同一であるリング状枠 及び有効加熱領域は,トッププレートに表示される必要があるのであって,表\示さ れていない有効加熱領域に基づく原告の主張はその前提を欠き失当である。
(3) 小括
以上のとおり,被告各製品は,原告主張の「調理容器の鍋底全体を加熱できる最 大径である直径26cmの領域を示す外殻線」という構成を有するとは認められな\nいから,この外殻線を前提に被告各製品が構成要件Eを充足するという原告の主張\nは採用できず,ほかにこれを認めるに足りる証拠もない。また,被告各製品を除く 被告製品関連製品が構成要件Eを充足することを認めるに足りる証拠もない。\nしたがって,その余の点について判断するまでもなく,被告製品関連製品は,構\n成要件Eを充足しないから,本件発明の技術的範囲に属すると認めることはできな い。

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平成29(ワ)22417  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年8月29日  東京地方裁判所

 CS関連発明の侵害事件です。裁判所(29部)は、技術的範囲に属しないと判断しました。均等侵害も第1要件を満たさないとしました。
 (2)本件各発明の意義
上記(1)の本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の特許請求の範囲請 求項1及び3の記載によれば,本件各発明は,より広範で深い人間関係を結ぶための, 人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該 プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関するものであり,より広\n範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートするために,上記人脈関係登録シス テム等を提供することを目的とするものであって,登録者相互間の合意によって人間 関係が結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに,人間関係を結んだ登録者の個人情 報又は識別情報を関連付けて記憶することで,個人情報又は識別情報を含む検索キー ワードによって第二の登録者と人間関係を結んでいる第三の登録者の個人情報又は 識別情報を検索することができるようにするという発明である,と認められる。
2 被告サーバの構成について\n証拠(甲16,乙4,7)及び弁論の全趣旨によれば,被告サーバにおいて,人間 関係を記憶する手順は,次のとおりであり,これを図示すると,別紙「被告サーバの 動作フロー」のとおりである(同別紙では,アカウント1号を甲,アカウント2号を 乙と表記している。)と認められる。すなわち,他のユーザと人間関係を結ぶ申\請をす ることを意味する「友達申請」(以下,単に「友達申\請」という。)をするユーザを「アカウント1号」,友達申請をされるユーザを「アカウント2号」として説明すると,1) アカウント1号が「友達申請をする」と示されたボタンをクリックする(画面08),\n2)被告サーバがアカウント1号に確認画面を送信する,3)アカウント1号が「送信す る」と示されたボタンをクリックする(画面09),4)被告サーバが記憶手段に友達申\n請に係るデータを登録する,5)被告サーバが記憶手段にアカウント1号及びアカウン ト2号の人間関係が結ばれた旨の友達リストの仮登録をする,6)被告サーバがアカウ ント2号に友達申請がされたことを通知する(画面12),7)被告サーバがアカウン ト1号に友達申請の完了画面を送信する(画面11),8)アカウント2号が被告サー バにアカウント1号のプロフィールを要求する(画面13,14),9)被告サーバが記 憶手段からアカウント1号のプロフィールを取得する,10)被告サーバがアカウント2 号にアカウント1号のプロフィールを送信する,11)アカウント2号が「友達になる」 と示されたボタンをクリックする(画面15),12)被告サーバが記憶手段の友達リス トを更新して本登録をし,友達として関連付けることが完了する,13)被告サーバがア カウント1号に友達申請が承認されたことを示すメール(甲16)を送信する,とい\nうものである。 そうすると,被告サービスにおいては,被告サーバの記憶手段にアカウント1号と アカウント2号の人間関係が結ばれたとして関連付けられた後に,アカウント1号に 対して友達申請が承認されたことを示すメールが送信されるという処理がされるの\nであり,アカウント1号とアカウント2号が友達として記憶された後に,仮にアカウ ント1号に対し友達申請が承認された旨が通知されなかったとしても,被告サーバに\nおいては,アカウント1号とアカウント2号が友達であると記憶されているといえる。
3 争点1(被告サーバは,文言上,本件各発明の技術的範囲に属するか)について 事案に鑑み,まず,争点1−3(被告サーバは構成要件1D及び2Dを充足するか)\nについて判断する。
(1) 構成要件1Dは,「上記第二のメッセージを送信したとき,上記第一の登録者\nの個人情報と第二の登録者の個人情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段 と,」というものであり,本件発明1においては,サーバが,第二の登録者と人間関係 を結ぶことを希望する旨の第一の登録者からのメッセージである「第一のメッセージ」 を受信して同メッセージを第二の登録者の端末に送信し,第二の登録者からこれに合 意する旨のメッセージである「第二のメッセージ」を受信して,同メッセージを第一 の登録者に送信したことを条件として,又は送信した後で,第一の登録者の個人情報 と第二の登録者の個人情報とを関連付けて記憶手段に記憶するものとして規定して いるということができる。 そして,構成要件1Dの「個人情報」が「識別情報」に置き換えられているほかは,\n構成要件1Dと文言を共通にする構\成要件2Dについても,サーバが第二のメッセー ジを送信したことを条件として,又は送信した後で,第一の登録者の識別情報と第二 の登録者の識別情報とを関連付けて記憶手段に記憶するものとして規定していると 認められる。
(2) この点,原告は,構成要件1D及び2Dにおける「送信したとき」の「とき」\nは「ある幅をもって考えられた時間」という意味であるとして,構成要件1D又は2\nDは,第一の登録者の個人情報又は識別情報を第二の登録者の個人情報又は識別情報 とが関連付けられた後に第二のメッセージが送信される場合をも含む旨を主張する が,「送信したとき」とは,送信したことを条件とする旨表す表\現であると解釈するの が一般的かつ自然な解釈であるというべきであり,また,これが時を表す表\現である と解釈したとしても,送信という動作が完了していることを表す表\現が用いられてい ることからすると,送信することが関連付けることに先行すると解釈するのが一般的 かつ自然であって,本件明細書その他にも異なる解釈を導く説明は見当たらない。 したがって,構成要件1D及び2Dの記載は,送信の実行が先行し,その後に関連\n付ける旨の実行がされることを規定していると解され,原告の上記主張を採用するこ とはできない。
(3)そこで,被告サービスについてみると,前記2において認定したとおり,被告 サービスにおいては,被告サーバの記憶手段に第一の登録者に相当するアカウント1 号と第二の登録者に相当するアカウント2号が友達として登録されて関連付けるこ とが終了した後に,アカウント1号に対して友達申請が承認されたことを示すメール\nが送信されるという処理がされるのであるから,被告サーバは,「第二のメッセージ を送信したとき」に,「上記第一の登録者の個人情報と第二の登録者の個人情報とを 関連付けて上記記憶手段に記憶する手段」又は「上記第一の登録者の識別情報と第二 の登録者の識別情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段」を有しているとい うことはできない。したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告サー バは,構成要件1D及び2Dを充足しない。\nよって,被告サーバは,文言上,本件各発明の技術的範囲に属すると認めることは できない。
・・・・
これを本件についてみると,前記1(2)で説示したとおり,本件各発明は,より 広範で深い人間関係を結ぶための,人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサー バ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記\n録媒体に関するものであり,より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポート するために,上記人脈関係登録システム等を提供することを目的とするものであって, 登録者相互間の合意によって人間関係が結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに, 人間関係を結んだ登録者の個人情報又は識別情報を関連付けて記憶することで,個人 情報又は識別情報を含む検索キーワードによって第二の登録者と人間関係を結んで いる第三の登録者の個人情報又は識別情報を検索することができるようにするとい う発明である。そして,登録者相互間の合意は,メールの交換によって行われるもの されている(段落【0011】,【0015】)。そうすると,本件各発明の構成要件1D及び2Dの「第二のメッセージを送信したとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶\nする」という構成は,登録者相互間の合意(メッセージの交換)によって人間関係が\n結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに,人間関係を結んだ登録者の個人情報又は 識別情報を関連付けて記憶するという課題解決手段を具体的な構成として特定した\nものであって,この構成が従来技術に見られない特有の技術的思想を構\成する特徴的 部分であり,本件各発明における本質的部分というべきである。 これに対し,原告は,より広範で深い人間関係を結ぶために共通の人間関係を結ん でいる登録者の検索を容易にするということが本件各発明の本質であり,本件各発明 における友達申請メッセージ(第一のメッセージ)や承認メッセージ(第二のメッセ\nージ)のやり取りに係る構成は,人間関係を結ぶための「合意の手段」としての意味\nを有するにすぎず,本件各発明において非本質的な部分である旨主張する。 しかしながら,本件各発明の構成要件1D及び2Dの「第二のメッセージを送信し\nたとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶する」という構成が,本件各発明の課題解\n決手段を具体的な構成として特定したものであることは前記のとおりであるから,個\n人情報又は識別情報を関連付けて記憶する過程のみを切り離して,それらの処理のタ イミングを規定したものにすぎないということはできず,本件各発明の非本質的部分 であるということはできない。また,本件各発明は,個人情報又は識別情報を含む検 索キーワードによって第二の登録者と人間関係を結んでいる第三の登録者の個人情 報又は識別情報を検索することを内容とするものである(構成要件1Eないし1G,\n2E)が,それを超えて,共通の人間関係を結んでいる登録者の検索を容易にすると いうことが,本件各発明の課題又は目的とされて本件各発明の構成として具体的に反\n映されているとはいえず,原告の主張を裏付けるに足る本件明細書の記載その他の証 拠はない。 したがって,原告の主張は採用することができない。
ウ そうすると,本件各発明の構成要件1D及び2Dの「第二のメッセージを送信\nしたとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶する」という構成は,本件各発明におけ\nる本質的部分であると解されるところ,前記説示のとおり,被告サーバは,メッセー ジを交換する前に,登録者相互間の関連付けが終了するのであって,上記構成を有し\nていないから,その相違部分が本件各発明の本質的部分ではないとはいえず,均等の 第1要件(非本質的部分)を充足しない。

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平成29(ネ)10064  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 特許権侵害訴訟の控訴審です。知財高裁第1部は、被告装置1−2は本件訂正発明1の1の技術的範囲に属する、被告装置3は本件訂正発明4の技術的範囲に属し,かつ,無効理由無し、その他の被告装置は技術的範囲に属しない、とした1審判断を維持しました。均等侵害も第1、第2要件を満たさないとしました(1審と同じ)。損害額については変わりありませんが、「寄与率」という用語が「損害額の推定の覆滅」と変更されてます。
 前記のとおり(引用に係る原判決「事実及び理由」第4の1(1)イ(原判決 65頁6行目〜21行目)),本件訂正発明1の1及び1の2の従来技術には,基 礎杭等の造成にあたって地盤を掘削する掘削装置として一般に使用されるアースオ ーガ装置では,オーガマシンの駆動時の回転反力を受支するために必ずリーダが必 要となるが,リーダの長さが長くなると,傾斜地での地盤掘削にあっては,クロー ラクレーンの接地面とリーダの接地面との段差が大きい場合にリーダの長さを長く とれず,掘削深さが制限されるという課題等があった。そこで,本件訂正発明1の 1及び1の2は,これらの課題を解決するために,掘削装置について,掘削すべき 地盤上の所定箇所に水平に設置し,固定ケーシングを上下方向に自由に挿通させる が,当該固定ケーシングの回転を阻止するケーシング挿通孔を形成してなるケーシ ング回り止め部材を備えるものとして,リーダではなく,ケーシング回り止め部材 によって回転駆動装置の回転反力を受支するものとした発明と認められる。 ここで,回転駆動装置の回転反力を受支するには,1)回転駆動装置の回転反力が 固定ケーシングによって受支されるとともに,2)固定ケーシングの回転反力がケー シング回り止め部材によって受支されなくてはならない。そうすると,1)を具体的 に実現する「固定ケーシングが,掘削軸部材に套嵌されると共に,回転駆動装置の 機枠に一体的に垂下連結される」構成及び2)を具体的に実現する「ケーシング回り 止め部材が,掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の 横向きH形鋼からなる一対の支持部材上に載設固定され,固定ケーシングを上下方 向に自由に挿通させるが該固定ケーシングの回転を阻止することができるケーシン グ挿通孔を有する」構成により,ケーシング回り止め部材によってケーシング,ひ\nいては回転駆動装置の回転反力を受支するようにしたことが,従来技術には見られ ない特有の技術的思想を有する本件訂正発明1の1の特徴的部分であり,その本質 的部分というべきである。
(ウ) したがって,固定ケーシングが回転駆動装置の機枠に一体的に垂下連結さ れる構成を有しない被告装置1−3〜1−8は,本件訂正発明1の1と本質的部分\nを異にするものであり,第1要件を満たさない。
・・・
このことから,本件訂正発明1の1の「固定ケーシング5」は,「固定ケーシン グ5が円筒状ケーシングからなるため,地盤への固定ケーシング5の打ち込み及び 引き抜きが容易となり」【0028】とも記載されているように,回転駆動装置1 の下部から垂下され,ケーシング回り止め部材7のケーシング挿通口8に挿入され, 掘削軸部材2及びダウンザホールハンマー4と共に地盤の掘削により地盤に打ち込 まれ,地盤を所定深度まで掘削したら,ダウンザホールハンマー4の作動を停止さ せた後,昇降操作用ワイヤーWを巻取り操作して,掘削軸部材2及びダウンザホー ルハンマー4と共に引き上げられることを前提としたものである。 そうすると,本件訂正発明1の1の掘削装置においては,掘削後に引き抜くこと を前提にケーシングと回転駆動装置の機枠とを一体的に連結することによって,回 転駆動装置とケーシングを掘削後に引き抜く際に,地盤内でケーシングにかかる土 圧による抵抗に抗してこれを引き抜くことが可能になるものということができる。\nこれに対し,ケーシングと回転駆動装置との機枠とを一体的に連結するのでなく 着脱自在の構成にした場合,そもそも着脱自在の構\成はケーシングを掘削後に残置 させることができるという作用,効果を奏するものであるし,仮にこの構成でケー\nシングを引き上げるとすると,ケーシングと回転駆動装置の機枠との連結部の強度 が十分でないために,引き抜くことが不可能\ないし極めて困難となり,本件訂正発 明1の1の目的を達成することができない。 したがって,掘削後にケーシングを引き抜くことを前提とした本件訂正発明1の 1の掘削装置において,回転駆動装置にケーシングを着脱自在に連結する構成を採\n用すると,本件訂正発明1の1の目的を達成することが困難となり,同一の作用効 果を奏しなくなる。 そして,被告装置1−3〜1−8の構成につき,いずれも回転駆動装置の下部に\n連結された中空スリーブに設けられたスリット状の切り欠きとケーシング外周軸方 向に固設された角鉄とを係合させることにより,中空スリーブとケーシングとを着 脱自在に係合するものであるとする限りでは,当事者間に争いがない。 (イ) 以上によれば,被告装置1−3〜1−8は,第2要件を満たさない。

◆判決本文

1審判決はこちら。

◆平成25(ワ)10958

関連の無効審決の取消訴訟はこちら。

◆平成29(行ケ)10193

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平成29(ワ)40193  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月6日  東京地方裁判所

 CS関連発明に関する侵害訴訟です。東京地裁46部は、「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体」の意義を審査経過などから判断し、技術的範囲に属しないと判断しました。原告グリー、被告Supercellです。
 プレートがゲーム空間内の所定の範囲に適用されることがあることが記載さ れ,また,前記(2)イのとおり,本件明細書には,発明を実施するための形態と して,プレイヤがテンプレートの作成を指示したとき,「範囲選択画面」が表\n示され,そこにおいては,ゲーム空間の一部について,テンプレートが作成さ れる範囲が表示されていること,テンプレートが作成される範囲について,例\nとして,プレイヤが任意の2点をタップして,当該2点を対頂点とすることで 定められることがあること,ゲーム空間の一部に対して,そのテンプレートが 適用されることが記載されている。他方,本件明細書には,「ゲーム空間」の 選択に関して,上記内容とは異なる内容の記載はない。 さらに, 原告は,本件意見書において,補正により加えられた「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体」との記載について,プレイヤがゲーム空間のうちのテンプレートが作成される範囲を指定するという段落【0037】の記載を挙げた上で,プレイヤがゲーム空間の左上の点および右下の点をタップすることで,ゲーム空間の全部の範囲を選択することができることを意味する旨述べて,その記載が当初明細書から自明であると述べている。
以上によれば,本件明細書には,本件各発明のテンプレートはゲーム空間内 の所定の範囲について作成,適用されるもので,その範囲についてプレイヤが 定めることが記載されており,原告もそのことを前提として,プレイヤがゲー ム空間内の全部の範囲をテンプレートの範囲とすると定めることによりゲー ム空間の全体が選択されることになるという意見を述べたといえる。 上記の本件明細書及び本件意見書の記載を参酌すれば,構成要件1C及び2\nDの「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体」における「選択」とは, テンプレートの作成について,プレイヤがテンプレートとするゲーム空間内の 一定の範囲を選択することを前提として,テンプレートを作成する際に,プレ イヤがゲーム空間内の全部の範囲を選択することを意味するものと解釈する のが相当である。
これに対し,原告は,構成要件1C及び2Dにおける「ゲーム空間の全体」\nとは文字通りゲーム空間全体を意味するのであってゲーム空間のうちどの部 分を選択するかの決定権をプレイヤが有していることを必須の構成要素とは\nするものではないと主張し,また,本件明細書の第1及び第2実施形態は,テ ンプレートの作成,適用の具体例を示したにすぎないなどと主張する。 しかし,「ゲーム空間の全体」がプレイヤによって選択されるとしても,プレ イヤによってどのような態様による選択がされるかについては,特許請求の範 囲の記載からは明らかではない。本件明細書には,テンプレートの作成に当た って,プレイヤがゲーム空間内の一定の範囲を選択することは記載されている が,それ以外の選択に関する構成については何ら記載も示唆もないから,前記\nと異なる態様でのプレイヤによる選択について,本件明細書に記載や示唆が あるとはいえないし,原出願日の当業者の技術常識に照らして明らかであると もいえない。また,原告は,本件特許の出願経過(甲22)において,プレイ ヤがタップする任意の2点をゲーム空間の左上及び右下の点とすれば「ゲーム 空間の全体」になるなどと説明しており,この説明はプレイヤにおいてゲーム 空間内の一定の範囲を選択することを前提としているものといえ,前記 の解 釈に沿うものといえる。原告の主張は採用することができない。
上記(1)で認定のとおり,本件ゲームは,プレイヤが基本画面においてレイア ウトエディタのアイコンをタップしてレイアウトエディタ画面を表示させ,レ\nイアウトに対応する縮小画面を選択,保存することによって新たなレイアウト を作成するというものである。そうすると,そこにはプレイヤがゲーム空間内 の一定の範囲を選択するという機能や動作は全く存在していない。したがって,本件プログラム及び本件携帯端末は,いずれも構\成要件1C及び2Dを充足しない。

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平成30(ネ)10018  特許権に基づく差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年7月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 自動麻雀卓の発明について、技術的範囲に属しないとした1審判断が維持されました。均等主張もしましたが、そもそも、それ以外の要件Iを満たしていないと判断されました。
 本件発明に係る特許請求の範囲には,「吸着面」について,1) 攪拌装 置から牌を取り上げる汲上機構を構\成する円筒回転体には円筒回転体の 一側端から「牌の横幅ほどの幅」の「吸着面」が配設されること(構成\n要件C,H,I),2) 「吸着面」の中心には磁石を埋没し,「吸着面」 に磁気力により牌を吸着して下方から上方に吸い上げるように円筒回転 体を回転させること(構成要件J),3) 汲上機構によって取り上げら\nれた牌を一方向に整列して送り出すための整列機構には,円筒回転体に\n吸い上げられた牌の方向を揃えるため「吸着面」の外側の軌道に沿って 配設した案内部材が設けられること(構成要件D,K)の記載がある。\nそして,自動麻雀卓における「牌」は,字面に垂直な方向からみて 「横幅」が「縦幅」より短い長さとなる長方形状であるから(原判決別 紙図2),構成要件Iの「牌の横幅ほどの幅」との特定は,「吸着面」\nの幅が「牌の縦幅」より「牌の横幅」に近い幅をもつことを特定するも のと解するのが文言上自然である。
イ もっとも,特許請求の範囲の記載のみからは「横幅ほど」の外延は必ずしも明らかではないことから,本件明細書の記載について検討する。 本件明細書には,上記1(2)のとおりの本件発明の課題の解決手段とし て,円筒回転体の周面部位に円筒回転体の一側端から牌の横幅ほどの幅 をもつ吸着面を配設し,磁性体を埋設した牌を,中心に磁石を埋没した 吸着面に磁気力により吸着し,円筒回転体に吸い上げられた牌の方向を 揃えるため前記吸着面の外側の軌道に沿って配設した案内部材を設け, 前記円筒回転体によって下方位置にて取り上げられた牌は,前記案内部 材にそって牌の向きを揃えながら上方に移動する(段落【0008】) ことが記載されている。そして,円筒回転体は牌の縦幅と略等しい長さ の高さ寸法であり(段落【0009】,【0021】),円筒回転体の 一側端から「牌の横幅」と略等しい幅の吸着面が形成される(段落【00 21】)ことが記載されており,これらの記載からは,「牌の縦幅」と区 別される「牌の横幅」を「吸着面の幅」に相当するものとしていること が理解され,このような理解は特許請求の範囲の記載とも整合する。 さらに,本件明細書の段落【0033】〜【0035】には,吸着面 401Bに様々な角度で吸着した牌10につき,案内部材501の入り 口付近で吸着面401Bからはみ出た側面が,案内部材先端502に接 触して抵抗を受け,磁石により吸引されて回転しながら向きを変え,縦 長方向に整列することが記載され,図10及び図11における吸着面4 01Bの幅は牌の横幅に近似する幅であることが見て取れる。
ウ 以上のとおりの各構成要件相互の関係及び本件明細書の記載によれば,\n本件発明において「牌の横幅ほどの幅をもつ吸着面」とした技術的意義 は,吸着面の幅を「牌の横幅」分の幅とすれば,牌が少しでも斜めに吸 着した場合には牌が吸着面からはみ出るから,はみ出た牌の側面に吸着 面の外側の軌道に配設した案内部材を接触させ,接触による力学的な作 用と牌に埋設された磁石と吸着面の中心に埋設された磁石との吸引力に よって牌を回転させて長手方向の向きに揃えるようにしたことにあると 解することができる。 そして,このような技術的意義に照らせば,構成要件Iの「牌の横幅ほ\nどの幅」とは,吸着面の幅が,牌の横幅(短辺)と同一か,様々な角度 で吸着面に吸着した牌の側面が当該吸着面からはみ出る部分を有し,は み出た部分に案内部材を接触させることによって牌の方向を揃えること ができる程度の幅を意味し,牌の縦幅に近似する幅はこれに含まれない と解すべきである。

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1審はこちらです。

◆平成29(ワ)5074

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平成30(ネ)10001  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年6月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 会社役員Aに対して、悪意又は少なくとも重大な過失があった(会社法429条1項)として、約350万円の損害賠償が認められました。
 証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (a) 1審被告Aは,1審被告白石の代表取締役であり,1審被告白\n石の事業全般を統括していたが,平成22年6月4日,1審被告白 石宛ての1審原告の通知書(親和製作所の装置の販売が本件特許権 侵害である旨を指摘するもの)を受領し,本件特許権の存在を知る に至った。さらに,1審被告Aは,平成24年1月12日,1審被 告白石宛ての1審原告の通知書(親和製作所と1審原告の和解に関 するもの)を受領した。(甲15の資料5,資料9,乙73)
(b) 東京地方裁判所は,本件仮処分申立事件についての平成26年\n10月8日の審尋期日において,被告装置(WK型)が本件特許権 に係る発明の技術的範囲に属する旨の心証開示をした。(甲18)
(c) 1審被告白石は,平成26年10月24日から同月28日まで の間に,渡邊機開から,被告装置(WK型)を合計14台,本件板 状部材153個及び本件固定リング123個を購入した。1審被告 白石の平成23年から平成25年にかけての本件固定リングの購入 数は合計20個未満であり,平成26年10月24日から同月28 日までの本件固定リングの購入量はこれまでの取引状況に比して突 出して多い。(甲17の1,2)
(d) 東京地方裁判所は,平成26年10月31日,渡邊機開による 被告製品(WK型),本件固定リング及び本件板状部材の販売等を 差し止める旨の本件仮処分決定をし,1審原告は,同年11月4日 付け通知により1審被告白石に対しその旨を通知した。(甲15の 資料10)
(e) 1審被告白石は,本件仮処分決定後は,平成26年11月14 日頃から平成27年4月1日にかけて被告装置を販売した。
(f) 1審被告白石は,平成27年2月26日,鶴商に型式名を「L S−S」とする被告装置(実質は「WK−550」)を販売し,ま た,同年5月までには,渡邊機開からWK型として仕入れた被告装 置(「WK−600」)に,構成の変更がないのに「LS−G」型\nの表示を付したものを取り扱っていた。(上記2(1),甲22)
c 1審被告Aは,1審被告白石の事業全般を統括していたのであるか ら,1審被告白石の取引実施に当たっては,第三者の特許権を侵害し ないよう配慮すべき義務を負っていたというべきである。この観点か ら1審被告Aの責任について検討してみると,まず,平成22年6月 4日及び平成24年1月12日の時点で,1審被告Aにおいて,被告 装置が本件特許権に係る発明の技術的範囲に属することを知っていた ことを認めるに足りる証拠はない。なお,平成24年1月12日頃に 1審被告白石が1審原告から通知書を受領したことは上記b(a)のと おりであるが,その通知書の内容は親和製作所の装置に関するもので あり,渡邊機開製の被告装置とは直接関わるものではなかったのであ るから,1審被告Aが上記時点において被告装置につき専門家に問い 合わせるなどの調査等をせず,被告装置の販売を中止しなかったから といって,1審被告Aに重過失があったとすることはできない。 これに対し,上記b(d)によれば,1審被告Aは平成26年11月 初旬には本件仮処分決定について知ったものと認められるから,これ によって被告装置が本件特許権を侵害するおそれが高いことを十分に\n認識することができたと認められる。ところが,1審被告Aは,本件 仮処分決定を踏まえて,中立的な専門家の意見を聴取するなどの検討 をした形跡もないまま,取引を継続し,さらに被告装置の型式名につ いて工作をするなどしているのであり,これら上記bに認定した本件 仮処分決定前後の経過に照らせば,同月以降の1審被告白石による被 告装置の販売を中止するなどの措置をとらなかった1審被告Aには, 1審被告白石による本件特許権侵害について悪意又は少なくとも重大 な過失があったというべきである。 よって1審被告Aは,1審被告白石による被告装置の販売に係る 同月以降の本件特許権侵害について,会社法429条1項の責任を負 う。

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平成29(ネ)10096  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年6月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 均等侵害が成立するかが争われました。出願人は、拒絶理由通知に対して、拒絶理由のない従属請求項に限定する補正をおこないました。知財高裁4部は、1審と同様に、均等の第1、第5要件から、均等成立を否定しました。
本質的部分について、上位概念化できるかについての判断基準について言及しています。
 特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なか った技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想 に基づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にある。したがって,\n特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち, 従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきで\nある。
そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許 発明の課題及び解決手段とその作用効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範 囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が\n何であるかを確定することによって認定されるべきである。すなわち,特許発明の 実質的価値は,その技術分野における従来技術と比較した貢献の程度に応じて定め られることからすれば,特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記 載,特に明細書記載の従来技術との比較から認定されるべきである。そして,従来 技術と比較して特許発明の貢献の程度が大きいと評価される場合には,特許請求の 範囲の記載の一部について,これを上位概念化したものとして認定され,従来技術 と比較して特許発明の貢献の程度がそれ程大きくないと評価される場合には,特許 請求の範囲の記載とほぼ同義のものとして認定されると解される。
ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載されているところ が,出願時の従来技術に照らして客観的に見て不十分な場合には,明細書に記載さ\nれていない従来技術も参酌して,当該特許発明の従来技術に見られない特有の技術 的思想を構成する特徴的部分が認定されるべきである。そのような場合には,特許\n発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載のみから認定される場合に 比べ,より特許請求の範囲の記載に近接したものとなり,均等が認められる範囲が より狭いものとなると解される。
・・・・
 本件特許出願日以前に,キャラクター画像情報に対する課金方法として,携帯端 末自体を改めて販売する態様ではないもの,すなわち,毎月100円を支払うこと により携帯電話機へ毎日異なるキャラクタ画面データを配信するiモード上での上 記サービス「いつでもキャラっぱ!」が公知であったこと(乙6),及びiモード においてはコンテンツプロバイダー(情報提供者)がコンテンツの情報料をNTT ドコモから携帯電話の通信料と合わせて課金し得るシステムが採用されていたこと (乙9)が認められる。このことに鑑みれば,本件特許出願日において,「サービ ス提供者にとっても,…キャラクター画像情報を更新するには,携帯端末自体を改 めて販売するしかない」ため「キャラクター画像情報により効率良く利益を得るの は困難であった。」(本件明細書【0003】)との課題が未解決のままであった とは認められない。
d しかるに,本件明細書には,乙6,8及び9記載の上記技術についての記載 はない。したがって,本件明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載さ れているところは,本件特許出願日における従来技術に照らして客観的に見て不十分なものと認められる。\nそうすると,本件発明の本質的部分は,本件明細書の記載に加えて,乙6,8及 び9記載の前記技術も参酌して認定されるべきである。
(オ) そして,本件明細書の記載並びに乙6,8及び9記載の前記技術によれば, キャラクター選択・変更等の態様に関する構成(前記1)並びに2)及び3)の組合せ) について,本件明細書は,複数のパーツを組み合わせて気に入ったキャラクターを 創作決定すること(前記2)及び3))を携帯端末サービスシステムで提供する(前記 1))という発想自体を開示するにとどまり,このようなシステムの実装における未 解決の技術的困難性を具体的に指摘し,かつ,その困難性を克服するための具体的 手段を開示するものではないので,従来技術に対する本件発明の貢献の程度は小さ いというべきである。 キャラクターの選択等に対する課金に関する構成(前記2)及び3)並びに4)の組合 せ)についても,本件明細書は,複数のパーツを組み合わせて気に入ったキャラク ターを創作決定し(前記2)及び3)),当該決定したキャラクターに応じた情報提供 料を通信料に加算する(前記4))という発想自体を開示するにとどまり,このよう な課金方法の実装における未解決の技術的困難性を具体的に指摘し,かつ,その困 難性を克服するための具体的手段を開示するものではないので,従来技術に対する 本件発明の貢献の程度は小さいというべきである。 そうすると,本件発明の本質的部分については,特許請求の範囲の記載とほぼ同 義のものとして認定するのが相当である。
・・・・
 前記認定の出願経過によれば,控訴人は,構成要件A〜C及びHからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項1に係る発明)及び構\成要件A〜E及びHからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項2に係る発明)については,特許 を受けることを諦め,これらに代えて構成要件A〜Hからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項1に同2及び5を統合した発明,すなわち本件発明)に限定\nして,特許を受けたものということができる。 そうすると,控訴人は,構成要件F及びGの全部又は一部を備えない発明について,本件発明の技術的範囲に属しないことを承認したか,少なくとも外形的にその\nように解されるような行動をとったものと理解することができる。 したがって,均等の成立を妨げる特段の事情があるというべきであり,均等の第 5要件を充足しない。
ウ 控訴人の主張について
この点につき,控訴人は,被告システムは「仮想モール」に相当する構成を有しているから,本件特許の出願経過を参酌したとしても,均等の成立を妨げる特段の\n事情があるとはいえない旨主張する。 しかし,前記のとおり,本件発明の「仮想モール」は「ショップ」というカテゴ リーを選択することによってアイテムを購入する仕組みを包含するものではなく, また,本件明細書【0045】は本件発明の「仮想モール」を説明するものと見る ことができない以上,当該段落が当初から残存していたという本件特許の出願経過 も,本件発明の「仮想モール」の技術的意義を左右するものではない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成28年(ワ)第35182

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平成29(ネ)10033等  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年5月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審は一部侵害を認めましたが、知財高裁は、本件発明の技術的範囲に属さないとこれを取り消しました。
 特許請求の範囲の記載によれば,構成要件Eの「前記背後壁」は,「既\n設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる」(構成要件B)ものであり,\n改修の前後でその「高さ」が変わるものではない。他方,同「改修用下 枠」は,その「室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接 して支持されると共に,」その「室内寄りが,前記取付け補助部材で支 持され」(構成要件D)るものである。このため,構\成要件Eの「前記 背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さ」であることに寄与し ているのは,主ということができる。 この「取付け補助部材」について,本件明細書等の記載を見ると, 「既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用い る」(【0018】),「その取付用補助部材106の高さ寸法を変え ることで,異なる形状の既設下枠56にも同一形状の改修用下枠56 (裁判所注,改修用下枠69の誤記であると認める。)を,その支持壁 89と背後壁104を同一高さに取付けることが可能である。」(【0\n091】)との記載がある。しかも,段落【0018】には,上記記載 に先行して,「既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去したので, 改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,有効開 口面積が減少することがなく,広い開口面積が確保できる。」との記載 もある。 これらの事情を総合すると,構成要件Eの「同じ高さ」とは,「取付\nけ補助部材」で「改修用下枠」を支持することにより,「背後壁の上端」 と「改修用下枠の上端」とを,その間に高さの差が全くないという意味 での「同じ高さ」とした場合を意味するものと理解するのが最も自然で ある。 他方,「ほぼ同じ高さ」について,定義その他その意味内容を明確に 説明する記載は,本件明細書等には見当たらないが,以上に検討した点 を併せ考えると,ここでいう「ほぼ同じ高さ」とは,「取付け補助部材」 の高さ寸法を既設下枠の寸法,形状に合わせたものとすることにより, 「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とを,その間に高さの差が全 くないという意味での「同じ高さ」とする構成を念頭に,しかし,その\nような構成にしようとしても寸法誤差,設計誤差等により両者が完全に\nは「同じ高さ」とならない場合もあり得ることから,そのような場合を も含めることを含意した表現と理解することが適当である。\n
イ(ア) このように解することは,本件明細書等の図1に示された実施の形 態につき「前壁102の上端部から室内68に向かって上方へ傾斜する …底壁103の最も室内68側の端部に連な」る「背後壁104」が, 「室内側案内レール67と同一高さまで立ち上がる」ものとされ(【0 027】),また,同図6に示された実施の形態につき「既設下枠56 の背後壁104の上端部に室内68側に向かう横向片104aを有し, この横向片104aと改修用下枠69の支持壁89の上端が同一高さで ある」と記載されている(【0069】)一方で,図1及び6の実施の 形態と比較すると「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」の「高さ」 に図面上明らかに差が認められる図10及び11の実施の形態について は,「例えば,図10に示すように取付け補助部材106の高さ寸法を 大きくして室内側壁部108を底壁103に当接し,かつ室内側案内レ ール115にビス110で取付ける。…この場合には,支持壁89が背 後壁104より若干上方に突出する。」(【0092】)と記載され, 「同一高さ」等の表現が用いられていないこととも整合する。\n
(イ) 本件特許の出願経過に鑑みても,構成要件Eについては上記のよう\nに解釈することが適当というべきである。 すなわち,被控訴人らが構成要件E「前記背後壁の上端と改修用下枠\nの上端がほぼ同じ高さであり」を追加したのは,拒絶査定不服審判の請 求と同時にされた手続補正書による補正後の請求項1〜6に係る発明に 対する進歩性欠如の拒絶理由通知,これを受けての被控訴人らによる補 正案の作成と特許庁審判官によるその了承,サポート要件違反の拒絶理 由通知という経過を経た後の手続補正においてである。そうすると,構\n成要件Eの追加は,上記サポート要件違反の拒絶理由を解消するために のみなされたか,これと同時に上記進歩性欠如の拒絶理由も解消するた めになされたかのいずれかの意図によるものと理解される。 そして,サポート要件違反の拒絶理由通知には「本願の請求項1〜6 には,広い開口面積を確保する本願の課題に対応した構成が記載されて\nいない。」と記載されている。本件明細書等の記載によれば,この「広 い開口面積を確保する本願の課題」については,1)既設下枠に存在した 室外側案内レールを切断撤去してできたスペースを利用することで広い 開口面積を確保し,「有効開口面積が減少することが少ない」(本件明 細書等【0060】)ようにすることを意味するものと理解することが できる一方で,2)「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とを「ほぼ 同じ高さ」とすることで「有効開口面積が減少することがな」い(【0 018】)ようにすることを意味するものと理解することも可能である。\nしかし,「広い開口面積を確保する本願の課題」を1)の意味に理解す る場合,このような課題は本件明細書等の記載から見て本件発明により 当然に解決されるべきものであるから,本件特許に係る出願の審査段階 の当初から拒絶理由として通知されてしかるべきものである。ところが, 実際には,サポート要件違反の拒絶理由は,審査段階のみならず審判段 階でも1度目の拒絶理由通知では指摘されず,審判段階での2度目の拒 絶理由通知で指摘されたのであり,このような経緯に鑑みると,「広い 開口面積を確保する本願の課題」の意味を1)の趣旨でサポート要件違反 の拒絶理由通知がされたものと理解することは不自然というべきである。 他方,上記経過につき,審判合議体が,進歩性欠如の拒絶理由は「前 記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり」(構成要件\nE)との構成が追加されることで解消されると判断し,被控訴人らに更\nに補正の機会を与えるために,「広い開口面積を確保する本願の課題」 につき2)の意味を念頭にサポート要件違反の拒絶理由を通知したものと 理解するならば,2度目の拒絶理由通知の段階において敢えてサポート 要件違反の拒絶理由のみを通知したことも合理的かつ自然なこととして 把握し得る。現に,審判合議体は,「既設引戸を改修用引戸に改修する 際に有効開口面積が減少してしまうとういう課題を解決するものあっ て」,「当該構成は引用文献や他の文献から容易になし得たものである\nとはいえず」との審決書の記載から明らかなとおり,サポート要件違反 の拒絶理由通知を契機として「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端が ほぼ同じ高さであり」という構成要件Eが追加されたことによりサポー\nト要件違反及び進歩性欠如の拒絶理由がいずれも解消されたものとして 判断しており,このことは上記理解と整合的である。
ウ 被控訴人らの主張について
(ア) 被控訴人らは,本件発明において,改修用下枠の上端と背後壁の上 端との高さの差に一定の制限を設けないと,室外側案内レールを切断 撤去することにより従来技術に比べ開口面積の減少を少なくし,広い 開口面積を確保することが可能になったにもかかわらず,その取付け\nスペースを利用しないことにより改修用下枠が取付けスペース内に沈 み込まないために,本件発明の効果を達成し得ない構成も文言上包含\nされてしまうことから,本件発明の効果を達成できる範囲内において, 既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの関係を規定した のが構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」であると主張する。\nしかし,取付けスペースを利用することを規定したいのであれば,例 えば,改修用下枠の一部が,既設下枠の室外側案内レール(切断して撤 去されている。)が存在した高さよりも低い位置に挿入されることを規 定するなど,端的に取付けスペースを利用することを明確にする補正を すればよいのであって,取付けスペースを利用しない構成を除外する目\n的で既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの関係を請求項 に記載することの合理性は乏しいというべきである。
(イ) また,被控訴人らは,改修用引戸枠を既設引戸枠にかぶせて取り付 けるものである以上,有効開口面積は必ず減少するのであるから,本 件発明の課題(作用効果)を既設引戸を改修用引戸に改修する際に有 効開口面積を減少することがないようにすること(本件明細書等【0 018】)と理解するのは誤りであるとする。 しかし,本件明細書等には「有効開口面積が減少することが少ない」 (【0060】)と「有効開口面積が減少することがな」い(【001 8】)という異なる表現が用いられているのであるから,両者を区別し\nた上で,「有効開口面積が減少することがない」ことの意味を探求しよ うとするのはむしろ当然である。そして,本件明細書等の記載からは, 本件発明は改修引戸装置の下枠の態様に重点が置かれたものと考えられ るのであるから,その作用効果の説明を理解するに当たり下枠に着目し, 改修用引戸の取付けにより客観的には有効開口面積が減少していても, 「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」を文字通り「ほぼ同じ高さ」 とすることにより下枠に関しては「有効開口面積を減少することがない」 という作用効果が得られることが表現されていると解することには十\分 な合理性があるといえる。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成26(ワ)7643

この特許権の無効審判の審取はこちらです。

◆平成29年(行ケ)第10081号

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平成28(ワ)41720  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年5月31日  東京地方裁判所(47部)

 国が被告の特許権侵害事件です。気象庁の緊急地震速報が特許侵害かが争われました。裁判所は、「地震の到来方向」を演算したり,これを警報・通報することを想定していないとして、請求が棄却されました。
 緊急地震速報で発表する内容は以下のとおりである。
(ア) 緊急地震速報(警報)
・地震の発生時刻,震源の位置
・強い揺れ(震度5弱以上)及び震度4の地域の名称
(イ) 緊急地震速報(予報)
・地震の発生時刻,震源の位置,地震の規模(マグニチュード)
・強い揺れ(震度5弱以上)及び震度4の地域の名称
・予想される震度
・主要動の到達予想時刻
ウ 緊急地震速報の処理の流れは,以下のとおりである。
(ア) 観測点における震源推定処理
地震波を検知した観測点において地震波形を解析し,P波初動の時刻, 震央距離(B−Δ法による),震央方向(主成分分析法による),最大振幅, リアルタイム震度等を求める。この処理は地震検知を契機に実施され,そ の後毎秒,処理中枢(気象庁本庁・大阪管区気象台の処理中枢:EPOS) に送信される。
(イ) EPOS中枢処理における震源推定処理
EPOSにおいて震源を推定する処理では,最初にどこかの観測点で地 震波を検知してから,時間が経過して「地震波を検知する観測点が増える」 のに合わせ,様々な手法により震源計算を繰り返す。震源計算の手法には, IPF法,着未着法,EPOSによる自動震源決定処理があり,概ね時間 とともに精度が高くなる。
(ウ) マグニチュードの計算
前記の処理で推定した震源と観測した地震波の最大振幅を用いて,地震 の規模(マグニチュード)を毎秒推定する。
(エ) 震度等の予想
震源とマグニチュードを元に,地予想震度の精度も時間の経過とともに向上することが期待できる。
(オ) 情報の発表
震度等の計算結果が,発表条件・更新条件を満たすと,人手を介するこ\nとなく直ちに緊急地震速報を発表する。
(7) 上記(5),(6)のとおり,被告(気象庁)が行う緊急地震速報では,地震の観 測,データ処理,情報の発表を行うにすぎず,「受信」行為を行っていない(緊\n急地震速報を受信するのは,被告(気象庁)以外の第三者である。)。 また,仮に上記第三者の受信行為まで考慮に入れたとしても,被告の緊急地 震速報では,本件発明の「検出センタ」に相当する処理装置から「予想震度」\nや「到達予想時刻」が出力されており,受信機側で「予\想震度」や「到達時刻」 の演算が行われることは想定されておらず,したがって,個々の受信位置ごと に異なる個別の情報が提供されることもない。 さらに,被告の緊急地震速報で発表される情報は,上記(6)イのとおりであ り,その中に「地震の到来方向」は含まれていない。なお,インターネット検 索サイト Yahoo!JAPAN のニュースサイトに掲載された,高度利用者向け受信端 末の緊急地震速報に係る画像(甲5)上も,各地の予想震度を1つの地図内に\n図示しているにすぎず,地震データをそのまま告知に利用しており,個々の受 信機の受信位置ごとに異なる個別の情報である「地震の到来方向」を提供して いない。したがって,上記地図をみた者は,自らの所在地と震源地とを比較す ることで「地震の到来方向」を判断できるとしても,同地図上,「地震の到来方 向」自体が「警報・通報」されているものとはいえない。 このように,被告が行う緊急地震速報は,1)「受信」行為が含まれていない ほか,仮に第三者の受信行為まで考慮に入れたとしても,2)受信機側で「予想\n震度」や「到達時刻」の演算が行われることが想定されておらず,3)地震デー タをそのまま告知に利用しており,「地震の到来方向」を演算したり,これを警 報・通報することを想定していないから,いずれにしても,本件発明の構成要\n件(4)及び(5)を充足しない。これに反する原告の主張は,上記説示に照らして 採用できない。

◆判決本文

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平成29(ネ)10102  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年5月21日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 知財高裁でも、均等侵害が否定されました。
 本件各発明の意義は,充填された液体に臭いが移ることがな く,自立的に形状を維持でき,内部に空気を送り込むことなく,充填された液体の ほぼ全量を排出可能なウォーターサーバー用ボトルを提供するという課題を達成す\nるために,本件各発明の構成を採用することにある。すなわち,本件各発明は,全\n体をPET樹脂によって形成することで,液体を充填した際でも自立的に形状を維 持でき,液体に臭いが移ることがないようにし,胴部に上下方向に伸縮自在な蛇腹 部を設けることで,潰れやすさを向上させ,さらに,蛇腹部と底部との間に裾絞り 部を形成することで,ボトルが大気圧で押し潰れていく際に,裾絞り部が蛇腹部の 方に引き込まれていき,蛇腹部の内部の容積を削減する機能を有するようにしたも\nのである。 このような,本件明細書に記載された,蛇腹部と底部との間に裾絞り部を形成す ることの技術的意義に鑑みると,構成要件Hの「内部の液体の排出に伴って,前記\n裾絞り部がボトル内部に引き込まれること」とは,ウォーターサーバー用ボトル内 部の液体の排出に伴って,裾絞り部が蛇腹部の内部に引き込まれることを意味する ものと解される。 また,かかる解釈は,本件各発明の実施の形態として本件明細書に記載されてい る唯一の実施例において,内部の液体の排出に伴って【図4】(B),【図5】(A), 【図5】(B)と変化することが記載され,【図5】(B)において,裾絞り部が 蛇腹部の内部に引き込まれていることとも整合する。 ウ 以上のとおり,特許請求の範囲の記載,本件明細書の記載及び本件発明1に おける裾絞り部の技術的意義を総合すれば,構成要件Hの「内部の液体の排出に伴\nって,前記裾絞り部がボトル内部に引き込まれること」とは,ウォーターサーバー 用ボトル内部の液体の排出に伴って,裾絞り部が蛇腹部の内部に引き込まれること を意味するものと解される。
エ 控訴人の主張について
控訴人は,裾絞り部がボトル内部に引き込まれることの効果は,ボトル内の残水 を減らすことにあり,これを達するには,裾絞り部がボトル内部の方向に引き込ま れれば足り,蛇腹内部に裾絞り部が引き込まれることまで要求されるものではない から,構成要件Hの「裾絞り部がボトル内部に引き込まれる」とは,裾絞り部が蛇\n腹部の方向,つまり裾絞り部から見てボトル内部の方向に引き込まれることを意味 すると解される旨主張する。 しかし,前記イのとおり,蛇腹部と底部との間に裾絞り部を形成することの技術 的意義は,ボトルが大気圧で押し潰れていく際に,裾絞り部が蛇腹部の内部に引き 込まれていき,蛇腹部の内部の容積を削減する機能を有するようにしたことにある\nところ,単に裾絞り部がボトル内部の方向に引き込まれるというだけでは,本件明 細書に記載された本件各発明の上記効果を奏するものではなく,裾絞り部が蛇腹部 の内部まで引き込まれることによって,上記効果を奏するものである。 また,控訴人は,本件特許の出願時の請求項1を特許請求の範囲から削除し,出 願時の請求項2に構成要件Hを追加して請求項1とするなどの補正をした際に(乙\n6),審査官に対し,本件発明1は構成要件FないしHの構\成を備えることにより, 「ボトルが大気圧で押し潰れていく際,裾絞り部が蛇腹部の方に引き込まれていき, 蛇腹部の内部の容積を削減する機能があり(本件明細書【0020】),ボトル内\nの残水を減らす効果がある。」旨の意見を述べていたものであり(乙7),控訴人 の前記主張は,本件特許の出願経過における控訴人の主張とも異なるものである。 したがって,控訴人の上記主張は採用できない。

◆判決本文

原審はこちら。

◆平成28(ワ)7649

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北京市高等裁判所(2017)京民終454 号、判決日:2018 年3月28日

中国で興味深い判決がなされました。 北京市高等裁判所は、複数の実行主体を含む方法クレームにおいて、当該方法を使用する装置を販売しているメーカの幇助責任を認めました(判決番号:(2017)京民終454 号、判決日:2018 年3月28日)。 中国では、寄与侵害の規定が制限的に運用されていましたが、今後は、当該判決のような幇助責任ありと認定されることも想定されます。
事件の概要など、詳しくは、林達劉グループ 北京林達劉知識産権代理事務所の

◆西電捷通VS ソニーのWAPI 特許侵害事件に関する検討
を参照ください。

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平成28(ワ)29320  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月29日  東京地方裁判所(46部)

 技術的範囲に属すると判断されました。損害額として102条3項を主張しましたが、売上げに寄与する程度が小さいとして、減額されました。
 上記(1)の記載によれば,本件発明1及び2は,熱可塑性樹脂発泡シートに 非発泡の熱可塑性樹脂フィルムを積層した発泡積層シートを成形してなる容 器について,熱可塑性樹脂発泡シートと熱可塑性樹脂フィルムとの硬さの差 により,容器に触れた際に,硬いフィルムで指等を裂傷するおそれがあるが, 突出部の上下面に凹凸を形成すると,蓋体を外嵌させる際に突起部が係合さ れる突出部の下面側にも凹凸形状が形成されることとなって強固な係合状態 を形成させることが困難となり,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体などを強 固に止着させることが困難であるという課題を,本件発明1の構成,特に上記端縁部の上面に凹凸形状を形成する一方で下面は平坦とする形状とすることによって解決することとしたものということができる。\nまた,上記(2)の記載を参酌すると,本件発明1及び2は,上記端縁部を, 厚みが圧縮されて薄肉化されたもので,かつ,上面に凹凸形状が存在するも のとすることにより,その強度を強め,これによって蓋体を強固に止着させ るという課題を解決するものということができる。 以上によれば,本件発明1及び2は,容器の突出部の端縁部の形状につい て,上面に他の部分との厚みの差を付けて凹凸形状を形成するという形状と することで端縁部での怪我を防止するとの課題を解決し,端縁部につき上記 の端縁部の形状とすることに加えて下面を平坦にすることで,蓋の強固な止 着を実現するという課題を解決し,これによって上記各課題の双方を解決す ることを技術的意義とする発明である。

・・・・
 以上によれば,本件明細書においても,発明の構成につき特許請求の範囲の記載と同様の記載がされ,その実施例においても,側周壁部の上端縁であり,被収容物が収容される収容凹部のへりといえる開口縁から外側に\n張り出して形成されているものが突出部とされている。実施例を示す図面 には突出部が水平で平坦な容器が示されているが,発明の詳細な説明欄に は,突出部が平坦であることについての説明はなく,本件発明1及び2の 突出部を突出部が平坦なものに限る趣旨の記載は見当たらない。これらに よれば,「開口縁」及び「突出部」については,上記アのように解するの が相当であり,「突出部」は水平で平坦なものには限られない。
ウ これに対して,被告は,出願経過に照らし,本件発明1及び2は突出部 が水平で平坦である容器に関する発明であると主張する。 原告は,前記1(2)のとおり,「前記突出部の端縁部の…且つ該端縁部の」 と補正をしたものであるところ,証拠(乙12〔2〕)によれば,審判請 求書において,上記補正の根拠として,突出部の端縁部において熱可塑性 樹脂発泡シートが圧縮されて薄肉とされたものであることを明確にしたも のであり,この点が本件明細書の例えば段落【0019】や【図3】b) に記載されているもので,願書に添付した明細書及び図面に記載された事 項の範囲内のものである旨記載したことが認められる。 上記認定事実によれば,補正の前後に係る特許請求の範囲をみても,補 正された部分は「端縁部の上面」と「収容凹部の開口縁近傍の突出部の上 面」の位置関係と端縁部における形状についてであって,突出部の形状が 水平で平坦である旨の明示的な記載も示唆も見当たらないし,原告が主張 したのは本件明細書において発明の実施の形態として記載(段落【001 9】や【図3】b))があることから補正の要件を満たすということであ るから,突出部の形状が水平で平坦なものに限定する趣旨を読み取ること ができない。したがって,本件発明1及び2の容器の突出部が水平で平坦 であると解することはできず,被告の主張は採用できない。
・・・・
上記記載によれば,本件発明1及び2は前記1(3)のとおりの技術的意義 を持つもので,端縁部の下面が平坦であることとその厚みが薄いことの双 方が備わることで,それぞれの効果が生じ,蓋の強固な止着が実現するの であって,端縁部が圧縮されて薄くなっていることと上面の位置との関係 に何らかの技術的意義があるものでないし,実施例においても何らの効果 も示されていない。そうすると,物の態様として「ように」の語が特段の 意味を有すると解することはできず,前記ア1)及び2)の各構成が両立していれば足りると解するのが相当である。
ウ これに対し,被告は,「突出部の端縁部において…薄くなっており」と いう構成によってのみ「前記突出部の…下位となる」構\成が実現しなけれ ばならないと解釈すべき旨を主張し,その根拠として本件明細書の記載 (段落【0019】),審判請求書(乙12)において上記部分に係る補正 の根拠を本件明細書の「例えば段落0019や図3(b)」と主張したと いう出願経過を挙げる。 しかし,上記の本件明細書の記載(段落【0019】)は実施例の記載 であり,こうした実施例があることから上記のとおり解釈することは相当 でないし,当該記載が引用する【図3】b)によれば端縁部の下面も端縁 部以外の突出部の下面に比して下位となっており,端縁部を圧縮して薄く しなくても端縁部の上面が端縁部以外の突出部の上面に比して下位となっ ているとみる余地がある。補正の根拠に関する主張は,補正に係る部分が 本件明細書の記載の範囲内であることを指摘したものであって,説明した 部分に補正に係る部分の解釈を限定する趣旨を読み取ることはできない。 被告の主張は採用できない。
・・・
上記 1)によれば,プラスチック製品や容器についての一般的な実施 料率は2〜4%程度ということができる。また,・・・によれば, 本件発明1及び2の技術的意義が現れているのは容器の一部である端縁 部の形状に限定されるところ,一般的には端縁部における手指の切創を 防止することは顧客吸引力を持ち得るといえるものの,原告の製品にお いて行われている上記「セーフティエッジ」加工は,蓋の端縁部の加工 であって本件発明1及び2の包装用容器に係る加工であるとは認め難く, 原告においても平成27年以降はこの加工の存在をカタログ等において 顧客に告知していない。被告においても,端縁部において手指の怪我が 生じ得るという課題を認識して顧客に告知する一方で,その部分の怪我 防止の措置について顧客に告知をしていない。そうすると,本件発明1 及び2の技術的意義が容器の売上げに寄与する程度は相当程度小さいも のとならざるを得ないから,上記の一般的な実施料率よりも相当程度低 くすべきである。 以上によれば,本件発明1及び2の実施によって受けるべき相当な実 施料率は●(省略)●と認めるのが相当である。
ウ 損害の額
上記ア及びイによれば,本件発明1及び2の実施に対し受けるべき金銭 の額に相当するのは,1694万4217円であると認められる。

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平成29(ネ)10091  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月14日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 控訴審でも技術的範囲外と認定されました。
 イ号製品の構造上,「フック部」に相当し得るのは,先端部2及び曲折部1であり,\n「ボディ部」に相当し得るのは,2枚の樹脂板からなる,本体部3であり,「腹部」 に相当し得るのは,それぞれの樹脂板の,眼瞼縁又は医療用ドレープと対向する矩 形状の底面部分である。 証拠(甲18〜20,甲24の1,乙5,9)及び弁論の全趣旨によると,イ号 製品において,フック部に導かれた液体のうち,それぞれの樹脂板の矩形状の底面 部分を伝うものもあるが,その大部分は,2枚の樹脂板が対向する側面の間を伝っ て排出されるものと認められる。したがって,それぞれの樹脂板の矩形状の底面部 分は,フック部により導かれた液体の大部分を伝わせて排出するものではないから, イ号製品は,構成要件Gを充足しない。
ウ 控訴人の主張について
(ア) 控訴人は,本件特許明細書における「腹部」とは,ボディ部の「腹側」 にあり,排液器と眼瞼縁との間で排液のための動力を生み出す「隙間」を形成する 部分を指し,「腹部」以外の「腹側」とは,上記「隙間」から離れたボディ部の側面 にあって,その形状によって大きな表面積を確保し,流路を拡大する機能\を営む部 分である,と主張する。 しかし,本件特許明細書の【図5】に係る実施例においては,腹部103aは, 丸みをもたせ,断面が略円形状であって,液体が表面を伝うに適した形状であると\n特定され(【0028】),【図11】に係る実施例においては,断面略V字形状に形 成されている箇所が腹部1103aと特定されている(【0041】)のであるから, これらの箇所は,控訴人が主張するところの「濡れ性を利用して流路を拡大する部 分」も含んでいると認められる。また,【図5】に係る実施例において,液体の流量 が増え液面が上昇すると,液面と腹部の表面との「接点」が上昇する(【0028】)\nとされていることから,本件特許明細書においては,液体の流量が少ないときに液 面が接していなかった,「濡れ性を利用して流路を拡大する部分」も「腹部の表面」\nの一部とされていると認められる。 さらに,上記【0028】,【0041】の記載に鑑みると,控訴人が指摘する「ボ ディ部103の腹部103aの表面と医療用ドレープ240とで形成された隙間が\n毛細管として機能し」(【0029】)及び「腹部1103aと眼瞼縁233との間に\n形成された隙間が毛細管として機能し」(【0042】)との記載は,腹部のうち眼瞼\n縁又は医療用ドレープに近接する部分が,眼瞼縁又は医療用ドレープとの間で毛細 管として機能していることを述べていると解すべきであって,これらの記載から,\n毛細管として機能する部分のみが腹部であるということはできない。【図5】の「1\n03a」の文字から出た線及び【図11】の「1103a」文字から出た線が指し 示す位置は,腹部の範囲(上限位置)を示すものとは解されない。 本件特許明細書の【図13】及び【図15】に係る実施例においては,控訴人が 主張するところの「毛細管現象を引き起こす部分」と「濡れ性を利用して流路を拡 大する部分」からなる凹凸の位置を説明するために「腹側」との表現が用いられて\nいるにすぎず,そのうちの「毛細管現象を引き起こす部分」を「腹部」であると解 する根拠とすることはできない。 したがって,毛細管として機能するか否かによって「腹部」が特定されていると\nも,「毛細管現象を引き起こす部分」か「濡れ性を利用して流路を拡大する部分」か で,「腹部」と「腹側」との表現を使い分けているともいえない。控訴人の主張には,\n理由がない。

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原審はこちら。平成28(ワ)6357  

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平成29(ネ)10092  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 一審(東地46部)は、技術的範囲に属しないと判断しましたが、知財高裁(4部)は属する、無効理由無しと判断しました。
 前記1(2)のとおり,本件発明1の意義は,熱放散ブリッジに軸方向空気通 路を貫設せずに電力電子回路を冷却することにより,電子構成部品の配置に利用可\n能な空間を十\分に確保するという課題を達成するために,熱放散ブリッジの底面を 冷却流体通路の一方の壁とする構成を採用したことなどにある。すなわち,本件発\n明1は,冷却流体が,横方向に吸い込まれて,後部軸受けの中央スロット4b及び 4cの方に流れ,熱放散ブリッジの下方で冷却流体通路内を循環し,熱放散ブリッ ジの底面及び冷却フィンを,それらの全長にわたって掃引した後,後部軸受けの側 部スロット4a及び4dを通って排出される構成とすることにより,熱放散ブリッ\nジの上面に搭載された電力電子回路が,冷却フィン及び熱放散ブリッジを介して, 伝導によって冷却されるという効果を奏するようにしたものである。 そして,このように構成要件1Gの冷却流体通路が,熱放散ブリッジを冷却する\nための構成であり,同通路を流れる冷却流体が,熱放散ブリッジの底面をその全長\nにわたって掃引するものであることからすると,冷却流体通路の長手方向壁のうち, 少なくとも熱放散ブリッジの底面により形成される壁は,冷却効率の観点から,冷 却流体通路の全長にわたっている必要がある。
(イ) 一方,本件明細書1には,構成要件1Gの冷却流体通路が,同通路の他方\nの長手方向壁を形成している後部軸受けを冷却するための構成であることは何ら記\n載されていない。そして,前記1(2)のとおり,本件発明1は,軸方向を流れる冷却 流体によって,機械内の冷却流体全体の流量が増加し,オルタネータの内部部品を はるかに良好に冷却することができるという効果を奏するものであることからする と,後部軸受けの冷却は,冷却流体通路を通る空気によってではなく,主に,空間 22を通る軸方向空気流により機械内の空気流量全体が増加することによって達成 されるものであると認められる。 そうすると,後部軸受けをもって冷却流体通路の壁を形成する構成とすることは,\n空気の流れを冷却流体通路に沿わせる目的を持つのみということになるため,必ず しも,冷却通路全体にわたる必要はない。例えば,本件発明1の実施形態において, 後部軸受けの中央スロット4b及び4cの直上にある空気は,ファンによって後部 軸受け内部に流入し,絶えず側方からの空気と入れ替わるので,その直上の熱放散 ブリッジを冷却する空気流を形成することは,【図2】に示される構造から明らか\nであり,熱放散ブリッジを冷却するという機能に鑑みれば,中央スロット4b及び\n4cの部分には後部軸受けにより形成される壁はないものの,冷却流体通路に該当 するといえる。
(ウ) 以上のとおり,本件明細書1に記載された冷却流体通路の技術的意義に鑑 みると,構成要件1Gの冷却流体通路は,熱放散ブリッジの底面により形成される\n長手方向壁が全長にわたって設けられることを必要とする一方,後部軸受けにより 形成される長手方向壁が全長にわたって設けられることは,必ずしも必要ではない と解される。 また,かかる解釈は,冷却流体通路と冷却フィンとの関係とも整合する。すなわ ち,本件明細書1には,「この冷却手段は,通路17内に配置されて,選択された 通路に冷却流体を流す。」(【0054】)との記載があり,かつ,【図2】によ れば,冷却フィンが熱放散ブリッジの底面の半径方向全長にわたって配置され,後 部軸受けが対向しない箇所にも存在していることが読み取れるのであるから,熱放 散ブリッジと中央スロット4b及び4cとが対向する箇所は,冷却フィンが配置さ れる箇所という観点からも,熱放散ブリッジと後部軸受けとが対向する箇所と同様, 通路17の内部といえる。 加えて,仮に,熱放散ブリッジの底面及び後部軸受けの双方が壁をなしている部 分のみが冷却流体通路に該当すると解するならば,冷却流体通路の半径方向外側の 端部は,熱放散ブリッジの外周か後部軸受けの外周のうち軸側の部分となるところ, 【図2】を参照すると,後部軸受けの外周が保護カバー11に到達しておらず,後 部軸受けと保護カバーとの間に隙間が存在することは明らかであるから,冷却流体 通路は保護カバーと連通していないと理解される。しかし,本件明細書1には,「本 発明によれば,保護カバーは,流体通路17と向き合う位置に開口19を有する。 この開口は,通路17の外周と連通している。」(【0049】)として,通路1 7が保護カバーの開口と連通していることが記載されており,前記理解と整合しな い。
ウ 以上のとおり,特許請求の範囲の記載,本件明細書1の記載及び本件発明1 における冷却流体通路の技術的意義を総合すれば,冷却流体通路は,熱放散ブリッ ジの底面が冷却流体通路の全長にわたり長手方向壁を形成していることを要する一 方,後部軸受けにより形成される長手方向壁は冷却流体通路の全長にわたる必要は ないと解される。

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◆一審はこちらです。平成28(ワ)13239

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平成29(ワ)5074  特許権に基づく差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年1月30日  東京地方裁判所

 自動麻雀卓の特許について、文言を充足しないとして、技術的範囲に属しないと判断されました。問題の文言は「牌の横幅ほどの幅をもつ吸着面」です。
 本件発明に係る特許請求の範囲の記載に加え, 上記(1)の本件明細書の各記載, 特に【課題を解決するための手段】として「該円筒回転体の周面部位には前記 円筒回転体の一側端から牌の横幅ほどの幅をもつ吸着面を配設し,」,「前記円 筒回転体に吸い上げられた牌の方向を揃えるため前記吸着面の外側の軌道に 沿って配設した案内部材」「を設け,前記円筒回転体によって下方位置にて取 り上げられた牌は,前記案内部材にそって牌の向きを揃えながら上方に移動す る」(段落【0008】)との記載を勘案すると,本件発明の構成要件I及びK\nは,それぞれ円筒回転体の周面部位に配設された「円筒回転体の一側端から牌 の横幅ほどの幅をもつ吸着面」上で,吸着面からはみ出た牌の部分に「前記吸 着面の外側の軌道に沿って配設した案内部材」を当接させることによって,牌 の向きを揃えるという技術的意義を有するものと認められる(なお,本件明細 書の「図10及び図11を参照して、吸着面401Bに様々な角度にて吸着し た牌10が、整列機構500により縦長方向に整列する動作について説明する。\n案内部材501の入り口付近で吸着面401Bからはみ出た側面が、案内部材 先端502に接触して抵抗を受けるが、牌10に埋設されている磁石11の中 心が、円筒回転体401に埋設されている磁石401Cの中心に吸引されて回 転しながら向きを変え、当該側面が案内部材501の内壁面501Aと並行状 態になって整列機構500の内部に進入する。」との実施例の記載(段落【00\n33】)も上記認定を裏付けるものといえる。)。 そうすると,本件発明の構成要件Iの「円筒回転体の一側端から牌の横幅ほ\nどの幅をもつ吸着面」は,吸着面の幅が,牌の横幅(短辺)と同一か,牌の吸 着面からはみ出た部分に案内部材を接触させることによって牌の方向を揃え ることができる程度に狭くなっていることを意味し,少なくとも牌の縦幅に近 似した幅を有する吸着面はこれに含まれないと解するのが相当である。また, 構成要件Kの「前記吸着面の外側の軌道に沿って配設した案内部材」は,吸着\n面の幅が上記のようなものであることを前提として,吸着面からはみ出した牌 の部分に当接して牌の向きを揃えることができる位置に案内部材を配設する ことを意味し,少なくとも吸着面の外側の軌道に近似する線よりも内側に配設 された案内部材はこれに含まれないと解するのが相当である。 そこで,まず,構成要件Iの充足性について検討するに,各被告製品の吸着\n面の幅(円筒回転体の一側端からの幅)が32.6mmであるのに対し,牌の横 幅は24.0mm,牌の縦幅は32.9mmであって(乙4及び当事者間に争い がない事実),各被告製品の吸着面の幅はむしろ牌の縦幅に近似するものと認 められるから,構成要件Iの「円筒回転体の一側端から牌の横幅ほどの幅をも\nつ吸着面」を充足しない。 これに対し,原告は,1)吸着面の幅は牌の横幅より9mmほど長めであるに すぎない,2)本件明細書の段落【0009】の記載からすると,円筒回転体の 幅が牌の縦幅と略等しい場合にも構成要件Iを充足することが強く示唆され ているなどと主張する。 しかしながら,まず,上記1)について,各被告製品は,吸着面の幅が牌の横 幅より9mmも長い一方で牌の縦幅よりわずかに0.3mm短いにすぎないの であるから,円筒回転体の周面部位に配設された「円筒回転体の一側端から牌 の横幅ほどの幅をもつ吸着面」上で,吸着面からはみ出た牌の部分に「前記吸 着面の外側の軌道に沿って配設した案内部材」を当接させることによって,牌 の向きを揃えるという本件発明の技術的意義(上記(2))を発揮させることができ ない。また,上記2)について,被告が指摘する本件明細書の段落【0009】 の記載は,「円筒回転体の幅は牌の縦幅と略等しい寸法でよく」としているに すぎず,吸着面の幅が牌の縦幅とほぼ等しい場合に構成要件Iを充足すること\nの根拠となるものとは認め難い(なお,本件明細書の段落【0021】及び図 7には,円筒回転体の幅が牌の縦幅と略等しい長さ(lL )であるのに対し, 吸着面の幅が牌の横幅分の長さ(ls )である実施例が開示されている。)。し たがって,原告の主張はいずれも採用の限りでない。 次に,構成要件Kの充足性について検討するに,乙2の写真3及び4並びに\n弁論の全趣旨によれば,各被告製品の案内部材は吸着面の外側の軌道から約5. 6mmも内側に配設されていると認められるから,前記(2)に説示したところに よれば,各被告製品は,構成要件Kの「前記吸着面の外側の軌道に沿って配設\nした案内部材」も充足しない。

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平成29(ネ)10072  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年1月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について非侵害であるとした1審判断が維持されました。なお、控訴審の控訴理由書で、均等の主張を追加しましたが、時期に後れた主張として、却下されました。
 当裁判所は,当審の第1回口頭弁論期日において,民事訴訟法297条,1 57条1項に従い,上記均等侵害の主張を時機に後れた攻撃防御方法に当たる ものとして却下した。その理由は次のとおりである。 すなわち,控訴人は,控訴理由書第2の部分(13〜21頁)において,構\n成要件1D,1F及び2Dに関し,原判決の「送信したとき」の文言解釈は明 らかに誤りであるが,仮に原判決のとおりに解釈したとしても,被控訴人サー バが少なくとも本件各発明と均等なものとして,その技術的範囲に含まれるこ とを予備的に主張するとして,新たに均等侵害の主張を追加した。\nしかしながら,前記のとおり,原審における争点整理の経過に鑑みれば,「送 信したとき」に関するクレーム解釈や被控訴人サーバの内部処理の態様如何に よって構成要件充足,非充足の結論が変わり得ることは,控訴人としても当初\nから当然予想できたというべきであり,そうである以上,控訴人は,原審の争\n点整理段階で予備的にでも均等侵害の主張をするかどうか検討し,必要に応じ\nてその主張を行うことは十分可能\であったといえる(特許権侵害訴訟において 計画審理が実施されている実情を踏まえれば,そのように考えるのが相当であ るし,少なくとも控訴人についてその主張の妨げとなるような客観的事情があ ったとは認められない。)。 ところが,控訴人は,原審の争点整理段階でその主張をせず,また,第4回 弁論準備手続期日(平成29年2月14日)において乙25陳述書が提出され た後も,その内容について特に反論することなく,第5回弁論準備手続期日(同 年3月23日)において「侵害論については他に主張・立証なし」と陳述し, そのまま争点整理手続を終了させたものである。 しかるところ,控訴人が,上記のとおり当審に至り均等侵害の主張を追加す ることは,たとえ第1回口頭弁論期日前であっても,時機に後れていることは 明らかであるし,そのことに関し控訴人に故意又は重大な過失が認められるこ とも明らかといえる。 また,予備的にせよ,均等侵害の主張がされれば,均等の各要件についてそ\nれぞれ主張と反論を整理する必要が生じるのであるから,訴訟の完結を遅延さ せることとなることも明らかである。 したがって,当裁判所は,上記のとおり,当審の第1回口頭弁論期日におい て,かかる均等侵害の主張を時機に後れた攻撃防御方法に当たるものとして却 下した次第である。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成28(ワ)14868

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平成29(ネ)10027  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年12月21日  知的財産高等裁判所(2部)  東京地方裁判所

CS関連発明について、控訴審で差止請求が認められました。無効理由については「時機に後れた」として採用されませんでした。1審は、均等侵害も第1、第2、第3要件を満たさない、分割要件違反、および一部のクレームについてサポート要件違反があると判断していました。
 引用発明1は,前記ア(イ)のとおり,「毎度の自動売買では自動売買テーブルでの 約定価より真下の安値の買取り及び約定価より真上の高値の売込みが同時に発注さ れるよう設定されたものであって,それにより,先に約定した注文と同種の注文を 含む売込み注文と買取り注文を同時に発注することで,株価が最初の売買価の値段 の範囲から上下に変動する場合に,所定の収益を発生させることに加え,口座の残 高及び持ち株の範囲において,株の現在価を無視して株の値段への変動を一向に予\n測することなく,従前の株の買取り値より株価が下落すると所定量を買い取り,買 取り値より株価が上がると所定量を売り込むこと」を特徴とするものである。 このように,引用発明1において,従前の株の買取り値より株価が下落すると所 定量を買い取り,買取り値より株価が上がると所定量を売り込む,という,連続し た買取り又は売込みによる口座の残高又は持ち株の増大をも目的とするものである から,このような設定に係る構成を,約定価と同じ価格の注文を含む注文を発注対\n象に含めるようにし,それを「繰り返し行わせる」設定に変更することは,「約定価 より真下の安値の買取り」及び「約定価より真上の高値の売込み」を同時に発注す ることにより,「従前の株の買取り値より株価が下落すると所定量を買取り,買取り 値より株価が上がると所定量を売込む」という,引用発明1の特徴を損なわせるこ とになる。 そうすると,引用発明1を本件発明の構成1Hに係る構\成の如く変更する動機付 けあるといえないから,構成1Hに相当する構\成は,引用発明1から当業者が容易 に想到し得たものとはいえない。
エ 被控訴人の主張について
被控訴人は,本件発明1と引用発明1との相違点は,引用発明1が本件発明1の 構成1Fのうち「前記一の注文価格を一の最高価格として設定し」ていない点であ\nり,その余の点では一致していることを前提に,本件発明1は,引用発明1から容 易想到である,と主張する。 しかし,前記イのとおり,本件発明1と引用発明1とは,引用発明1が本件発明 1の構成1Hの構\成を有していない点について相違している。被控訴人の主張は, その前提を欠き,理由がない。
・・・・
4 なお,被控訴人は,口頭弁論終結後に,本件発明1が無効とされるべきであ ることが明白である事由があるとして,口頭弁論再開を申し立てるが,無効事由の\n根拠となるべき資料は10年以上前に作成されていたものであり,上記無効事由は, 被控訴人が重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法であって, これによって訴訟の完結を遅延させることとなるから,却下されるべきものである から,口頭弁論を再開しない。

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◆1審はこちらです。平成27(ワ)4461

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平成29(ワ)393  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年11月30日  東京地方裁判所(46部)

 構成要件Aを充足しないとして非侵害と判断しました。被告は桐灰で、被告商品はサイト上では、生産中止扱いとなっています。
 被告製品の不織布が構成要件Aの「不織布シート」に当たることは当事者\n間に争いがないところ,原告は,その表面にシリカ(SiO2)が付着して\nいるから,構成要件Aの「表\面に吸着・乾燥剤を付着させた」を充足すると 主張する。
(2)本件発明の特許請求の範囲にはいかなる物が「吸着・乾燥剤」に当たるか は記載されていないが,本件明細書(甲2)には,「吸着・乾燥剤としては, 二酸化珪素(SiO2)等の吸水性,吸着性を有する無機粉体を採用するの が好ましい。」と記載されている(段落【0020】)から,吸水性,吸着性 を有するシリカ(SiO2。証拠(乙11)及び弁論の全趣旨によれば, 「シリカ」は二酸化ケイ素の通称であると認められる。)の無機粉体は「吸 着・乾燥剤」に当たり得ると解される。
・・・
イ 上記ア の認定事実によれば,剥離紙を除く被告製品に一定量のシリカ が含まれているということができる。 しかし,前記前提事実(3)のとおり,剥離紙を除く被告製品には不織布以 外の層があるところ,上記ア の計量においては,剥離紙を除く被告製品 全体を試料としているから,不織布の表面以外の部分に含まれるシリカが\n検出された可能性を否定することができない。加えて,同 の試験におい ては,被告製品から剥離紙,粘着剤及び粘着剤のついたフィルムを除いた 試料からシリカが検出されることはなかったこと,同 のとおり被告製品 の不織布層の表面において乾燥剤に該当し得ない物体以外のものが検出さ\nれなかったことにも鑑みると,被告製品の不織布の表面にシリカが付着し\nていると認めることはできない。また,被告製品に一定量のシリカ(Si O2)が含まれているとしても,それが吸収性,吸着性を有するものとし て被告製品に存在することを認めるに足りる証拠もない。

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平成29(ネ)10038  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年11月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について、1審と同じ理由で、技術的範囲に属しない、均等侵害も否定されました。
 前記イを踏まえて,構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を\n移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示する」を検討\nすると,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」とは,タ ッチパネルを含む入力手段から,画面上におけるポインタの座標位置を移動させる 命令(電気信号)を処理手段が受信することである。そして,利用者がマウスにお ける左ボタンや右ボタンを押す操作に対応する電気信号ではなく,マウスにおける 左ボタンや右ボタンを押したままマウスを移動させる操作(ドラッグ操作)に対応 する電気信号を,入力手段から処理手段が受信することを含むものである。また, 本件発明1は,利用者が入力手段を使用してデータ入力を行う際に実行される入力 支援コンピュータプログラムであり,利用者が間違ってマウスの右クリックを押し てしまった場合等に利用者の意に反して画面上に操作コマンドのメニューが表示さ\nれてしまう等の従来技術の課題を踏まえて,システム利用者の入力を支援するため, 利用者が必要になった場合にすぐに操作コマンドのメニューを画面上に表示させる\n手段を提供することを目的とするものである。 そうすると,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」と は,タッチパネルを含む入力手段から,画面上におけるポインタの座標位置を,入 力支援が必要なデータ入力に係る座標位置(例えば,ドラッグ操作を開始する座標 位置)からこれとは異なる座標位置に移動させる操作に対応する電気信号を,処理 手段が受信することを意味すると解するのが相当である。 そして,前記第2の1(3)イのとおり,本件ホームアプリにおいて,控訴人が「操 作メニュー情報」に当たると主張する左右スクロールメニュー表示は,利用者がシ\nョートカットアイコンをロングタッチすることにより表示されるものであるが,ロ\nングタッチは,ドラッグ操作などとは異なり,画面上におけるポインタの座標位置 を移動させる操作ではないから,入力手段であるタッチパネルからロングタッチに 対応する電気信号を処理手段が受信することは,「入力手段を介してポインタの位置 を移動させる命令を受信する」とはいえない。 したがって,ロングタッチにより左右スクロールメニュー表示が表\示されるとい う本件ホームアプリの構成は,構\成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を 移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示する」という\n構成を充足するとは認められない。\n
エ 控訴人は,本件ホームアプリでは,タッチパネルに指等が触れると,「ポ インタの座標位置」の値が変化し,「カーソル画像」もこの位置を指し示すように移\n動するところ,ロングタッチは,タッチパネルに指等が触れるといった動作を含む から,被控訴人製品の処理手段はロングタッチにより「『ポインティングデバイスに よって最後に指示された画面上の座標』を移動させる命令」を受信するといえ,本 件ホームアプリは,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」 という構成を有していると主張する。\nしかし,本件ホームアプリにおいて,ロングタッチに含まれるタッチパネルに指 等が触れることに対応して,ポインタの座標位置を,「ポインティングデバイスによ って最後に指示された画面上の座標」位置から,指等がタッチパネルに触れた箇所 の座標位置に移動させることを内容とする電気信号が生じる(甲7の1・2)とし ても,前記ウのとおり,ロングタッチは,画面上におけるポインタの座標位置を移 動させる操作ではないから,上記電気信号は,画面上におけるポインタの座標位置 を移動させる操作に対応する電気信号とはいえない。また,「ポインティングデバイ スによって最後に指示された画面上の座標位置」は,ロングタッチの直前に行って いた別の操作に係るものであり,入力支援が必要なデータ入力に係る座標位置では ないから,上記電気信号は,画面上におけるポインタの座標位置を,入力支援が必 要なデータ入力に係る座標位置からこれとは異なる座標位置に移動させることを内 容とするものでもない。 そうすると,本件ホームアプリのロングタッチ又はこれに含まれるタッチパネル に指等が触れることに対応して,ポインタの座標位置を,「ポインティングデバイス によって最後に指示された画面上の座標」位置から,指等がタッチパネルに触れた 箇所の座標位置に移動させることを内容とする電気信号が生じることをもって,構\n成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」とい う構成を充足するとはいえない。\n オ 控訴人は,タッチパネルでは,指等が触れていれば継続的に「ポインタ の位置を移動させる命令」である「ポインタの位置を算出するためのデータ」を受 信し,「ポインタの位置」が一定時間,一定の範囲内に収まっている場合にはロング タッチであると判断されるから,ロングタッチを識別するために入力されるデータ 群には「ポインタの位置を移動させる命令」が含まれると主張する。 しかし,前記第2の1(3)イのとおり,本件ホームアプリは,ロングタッチにより 左右スクロールメニュー表示がされる構\成であるところ,ロングタッチは,継続的 に複数回受信するデータにより算出された「ポインタの位置」が一定の範囲内で移 動している場合だけでなく,当初の「ポインタの位置」から全く移動しない場合を 含むことは明らかであり(甲8),ロングタッチであることを識別するまでの間に「ポ インタの位置」を一定の範囲内で移動させることを内容とする電気信号は,前者に おいては発生しても,後者においては発生しないのであるから,そのような電気信 号をもって,構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を\n受信する」という構成を充足するとはいえない。\n カ 以上によると,本件ホームアプリが構成要件Eを充足すると認めること\nはできない。
(2) 均等侵害の成否
ア 控訴人は,本件ホームアプリにおける「利用者がタッチパネル上のショ ートカットアイコンを指等でロングタッチする操作を行うことによって操作メニュ ー情報が表示される」という構\成は,「利用者がタッチパネル上の指等の位置を動か して当該ショートカットアイコンを移動させる操作を行うことによって操作メニュ ー情報が表示される」という本件発明1の構\成と均等であると主張する。 そこで検討すると,前記(1)ア及びイによると,本件発明1は,コンピュータシス テムにおけるシステム利用者の入力行為を支援する従来技術である「コンテキスト メニュー」には,マウスの左クリックを行う等するまではずっとメニューが画面に 表示され続けたり,利用者が間違って右クリックを押してしまった場合等は,利用\n者の意に反して画面上に表示されてしまうので不便であるという課題があり,従来\n技術である「ドラッグ&ドロップ」には,例えば,移動させる位置を決めないで徐々 に画面をスクロールさせていくような継続的な動作には適用が困難であるという課 題があったことから,システム利用者の入力を支援するための,コンピュータシス テムにおける簡易かつ便利な入力の手段を提供すること,特に,1)利用者が必要に なった場合にすぐに操作コマンドのメニューを画面上に表示させ,2)必要である間 についてはコマンドのメニューを表示させ続けられる手段の提供を目的とするもの\nである。 そして,本件発明1は,上記課題を解決するために,本件特許の特許請求の範囲 請求項1の構成,すなわち,本件発明1の構\成としたものであるが,特に,上記1) を達成するために,「入力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことに よる開始動作命令を受信した後…において」(構成要件D),「入力手段を介してポイ\nンタの位置を移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示\nする」(同E)という構成を採用し,上記2)を達成するために,「利用者によって当 該押されていた命令ボタンが離されたことによる終了動作命令を受信するまで」(同 D),「操作メニュー情報を…出力手段に表示すること」(同E,F)を「行う」(同\nD)という構成を採用した点に特徴を有するものと認められる。\nそうすると,入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すること によってではなく,タッチパネル上のショートカットアイコンをロングタッチする ことによって操作メニュー情報を表示するという,本件ホームアプリの構\成は,本 件発明1と本質的部分において相違すると認められる。
イ 控訴人は,利用者がドラッグ&ドロップ操作を所望している場合に操作 メニュー情報を表示することが本質的部分であると主張する。\nしかし,前記(1)ア及びイのとおり,マウスが指し示している画面上のポインタ位 置に応じた操作コマンドのメニューを画面上に表示すること自体は,本件発明1以\n前から「コンテキストメニュー」という従来技術として知られていたところ,前記 (2)アのとおり,本件発明1は,この「コンテキストメニュー」がマウスを右クリッ クすることにより上記メニューを表示することに伴う課題を解決することをも目的\nとして,利用者が必要になった場合にすぐに操作コマンドのメニューを画面上に表\n示させるために,「入力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことによ る開始動作命令を受信した後…において」(構成要件D),「入力手段を介してポイン\nタの位置を移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示す\nる」(同E)という構成を採用した点に特徴を有するものと認められる。したがって,\n本件発明1において,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部\n分は,利用者がドラッグ&ドロップ操作といった特定のデータ入力を所望している 場合にその入力を支援するための操作メニュー情報を表示すること自体ではなく,\n従来技術として知られていた操作コマンドのメニューを画面に表示することを,「入\n力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことによる開始動作命令を受 信した後…において」(構成要件D),「入力手段を介してポインタの位置を移動させ\nる命令を受信する」(同E)ことに基づいて行うことにあるというべきである。 そうすると,入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すること によってではなく,タッチパネル上のショートカットアイコンをロングタッチする ことによって操作メニュー情報を表示するという,本件ホームアプリの構\成は,既 に判示したとおり,本件発明1と本質的部分において相違するというべきである。

◆判決本文

◆1審はこちら。平成28(ワ)10834


 

◆関連事件はこちら。平成29(ネ)10037

◆1審はこちら。平成28(ワ)13033

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平成29(ネ)10066  特許権侵害行為の差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年12月5日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁も、第1要件を満たさないとして均等侵害が否定されました。原審維持です。
 ア 第1要件について
(ア) 控訴人は,本件発明1の本質的部分は,本件各作用効果を奏する上で重要 な部分であるピンの前方部が後方部から斜め前方向に方向づけられ,第2壁面の前 方部に向かって延在している点にあるところ,ピンの前方部7aが第2壁面9の前 方部9aに接触することの有無は,本件各作用効果を奏するための必須の構成では\nないから,ピンの前方部7aが第2壁面9の前方部9aに接触している否かという, 本件発明1と被告製品の相違点は,本件発明1の本質的部分ではなく,被告製品は 均等の第1要件を充足する旨主張する。
(イ) 特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載 のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解\nすべきであり,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明の課題及び 解決手段とその効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従 来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定す\nることによって認定されるべきである。 ・・・のとおり,本件発明1は,従来の固定手段では, ピンが作動可能位置から移動してしまうことで側面開口部を通る出口を見つけられ\nずにスリーブ内部で変形する危険性や,周囲の骨物質に移動するピンの前端部の部 分が有利に曲がった状態へ変形しない危険性があったことを従来技術における課題 とし,これを解決することを目的として,特許請求の範囲請求項1記載の構成,具\n体的には,ピン7の前方部7aが,ピンの後方部7eから第2壁面9に向かって斜 め前方向に延びて湾曲前端部7fに至り,案内面12に近接する第2壁面9の前方 部9aに至るようにすることを定めており,この点は,従来技術には見られない特 有の技術的思想を有する本件発明1の特徴的部分であるといえる。
(エ) 被告製品は,前記2(2)のとおり,構成要件Fの「(前方部(7a)は,)\nピンの後方部(7e)から斜め前方向に方向づけられて前記湾曲前端部(7f)に 至り,前記案内面(12)に近接する前記第2壁面(9)の前方部(9a)まで延 在する」との文言を充足しないから,本件発明1とは,その本質的部分において相 違するものであり,均等の第1要件を充足しない。
(オ) 控訴人の主張について
控訴人は,本件発明1の本質的部分は,本件各作用効果を奏する上で重要な部分 であるピン7の前方部7aが後方部7eから斜め前方向に方向づけられ,第2壁面 9の前方部9aに向かって延在している点にあり,ピン7の前方部7aの第2壁面 9の前方部9aへの接触の有無は本件各作用効果を奏するための必須の構成ではな\nく,上記相違点は本件発明1の本質的部分ではないと主張する。 しかし,本件発明1において,本件各作用効果を奏するのは,ピン7の前方部7 aが,ピンの後方部7eから第2壁面9に向かって斜め前方向に延びて湾曲前端部 7fに至り,案内面12に近接する第2壁面9の前方部9aに至ることで,ピン7 の前方部7aと第2壁面9との間の遊びがなくなり,ピン7の第2壁面に向かう方 向の移動が抑制されることによるものであり,ピン7の前方部7aが前方部9aの 付近に位置しているだけでは,本件各作用効果を奏するものとは認められないこと については,前記2(1)イ(イ)のとおりである。よって,ピン7の前方部7aが第2 壁面9の前方部9aに接触していることは,本件発明1の本質的部分であると解さ れる。したがって,控訴人の上記主張は採用できない。

◆判決本文

◆原審はこちら。H27(ワ)11434号

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平成28(ワ)7649  特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成29年11月21日  大阪地方裁判所

 発明特定事項「裾絞り部」について、明細書の記載および出願経過から、限定解釈されました。
 「裾絞り部」の形状については,構成要件Gで特定されているとおり「底部に近\nづくに連れて先細りとなる」ものであり,本件明細書において,「裾絞り部」につ き,「垂直に延在するのではなく,裾絞り状に傾斜している」(【0015】)と 説明されている上,構成要件G及びHを含まない出願当初の特許請求の範囲の請求\n項 1 を削除した上記(2)認定の本件特許の出願経過に照らしても,裾絞り部は,それ が直線であっても,曲線であっても,少なくとも,垂直の部分を含むことなく,蛇 腹部から底部にかけて,徐々に先細りになっていくものに限定されていると解され る。
(5) まとめ
したがって,構成要件Gにいう「裾絞り部」とは,胴部において「蛇腹部」と「底\n部」の間にあって,それぞれに接続部で連続して存在するものであり,また「蛇腹 部」との接続部において「垂直に延在」する部分があっても許容されるが,それは 極く限られた幅のものにすぎないのであり,またその形状は,「蛇腹部」方向から 「底部」方向に向けて,徐々に先細りになっているものということになる。
(6) 以上の「裾絞り部」の解釈を踏まえ,被告容器が裾絞り部を備え,構成要件\nGを充足しているかを検討する。
ア 原告は,別紙「被告容器の構成(原告の主張)」記載の図面で「湾曲部」と\n指示した部分が「裾絞り部」に相当し,同部分の存在により構成要件Gを充足する\nと主張し,併せて,その上部にある垂直部分は,本件明細書の【0015】にいう 「接続部」にすぎないとしている。 しかしながら,上記検討したとおり,「裾絞り部」は,「蛇腹部」から接続部で 連続しているものであるが,この接続部は,極く限られた幅の範囲であるべきであ って,上記図面に明らかなように,被告容器における原告主張に係る「裾絞り部」 に相当する湾曲部と蛇腹部の間に存する,湾曲部と高さ方向の幅がほぼ一緒である 垂直に延在する部分をもって「接続部」にすぎないということはできない。 したがって,被告容器は,上記定義した「裾絞り部」で構成されるべき「蛇腹部」\nから「底部」にかけて胴部の大半が,「裾絞り部」に該当しない部分で構成されて\nいるということになるから,被告容器は,「裾絞り部」を備えているものというこ とはできない。

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平成28(ワ)35182 特許権 平成29年10月30日  東京地方裁判所(29部)

 サイバーエージェントに対するCS関連特許侵害事件です。裁判所は文言・均等侵害を否定しました。均等の第1、第5要件を満たさないと判断されています。
 これを本件について見ると,前記2で詳述したとおり,本件発明は,「その決定 したキャラクターに応じた情報提供料を通信料に加算する課金手段を備え」(構成\n要件C)ており,また,「表示部に仮想モールと,基本パーツを組み合わせてなる\n基本キャラクターとを表示させ」(構\成要件F),「基本キャラクターが,前記仮 想モール中に設けられた店にて前記パーツを購入する」(構成要件G)構\成を有し ているのに対し(なお,「仮想モール」は,内部に複数の仮想店舗と遊歩のための 空間とが表示されるものをいい,「基本キャラクター」と同時に表\示される必要が あると解すべきこと,「仮想モール中に設けられた店」で「パーツ」を購入する際 にも「基本キャラクター」が表示される必要があると解すべきことも,前記2のと\nおりである。),被告システムは,少なくとも,「キャラクターに応じた情報提供 料」を「通信料」に「加算」する構成を備えていない点,「仮想モール」に対応す\nる構成を有していない点において,それぞれ本件発明と相違するところ,以下のと\nおり,これらの相違部分は,本件発明の本質的部分に当たるというべきであるから, 被告システムは,均等の第1要件(非本質的部分)を満たさない。
イ 本件明細書の前記1(2)アないしエの各記載によれば,本件発明は,携帯端末 の表示部に気に入ったキャラクターを表\示させることができる携帯端末サービスシ ステムに関するものであって(【0001】),あらかじめ携帯端末自体のメモリ ーに保存してある複数のキャラクター画像情報から,気に入ったものを選択して, その携帯端末の表示部に表\示するなどの従来技術では,携帯端末自体のメモリーに 保存できる情報量には限りがあるため,キャラクター選択にあまり選択の幅がなく, ユーザーに十分な満足感を与え得るものではなく,サービス提供者にとっても,キ\nャラクター画像情報により効率良く利益を得るのは困難であったことから(【00 02】,【0003】),同問題点を解決し,「ユーザーが十分な満足感を得るこ\nとができ,且つ,サービス提供者は利益を得ることができる携帯端末サービスシス テムを提供する」ため(【0004】),本件特許請求の範囲の請求項1記載の構\n成(構成要件Aないし同Hの構\成)を備えることにより,ユーザーにとっては,キ ャラクター選択をより楽しむことができ,また,サービス提供者にとっては,キャ ラクター画像情報の提供により効率良く利益を得ることができ(【0005】), さらに,ユーザーは,種々のパーツを組み合わせてキャラクターを創作するという ゲーム感覚の遊びをすることができ,十分な満足感を得ることができ,また,「仮\n想モールと,基本キャラクターとが表示された表\示部を見ながら,基本キャラクタ ーを自分に見立て,さながら自分が仮想モール内を歩いているようなゲーム感覚で, その仮想モール内に出店された店に入り,パーツという商品を購入することで,基 本キャラクターを気に入ったキャラクターに着せ替えて,楽しむことができ,新た な楽しみ方ができて十分な満足感を得ることができる」(【0006】)というも\nのとされていることが理解できる。 そうすると,本件明細書では,本件発明は,サービス提供者がキャラクター画像 情報により効率良く利益を得るのは困難であったという従来技術の問題点を解決し て,サービス提供者が画像情報の提供により効率良く利益を得ることができる携帯 端末サービスシステムを提供することを目的の一つとするものであって,構成要件\nCの「その決定したキャラクターに応じた情報提供料を通信料に加算する課金手段 を備え」るとの構成は,まさに,従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決\n(サービス提供者がキャラクター画像情報により効率良く利益を得ることができる 携帯端末サービスシステムを提供すること)を実現するための,従来技術に見られ ない特有の技術的思想に基づく解決手段(課金手段)としての具体的な構成として\n開示されているものいうべきである。また,本件発明は,ユーザーに十分な満足感\nを与え得るものではなかったという従来技術の問題点を解決して,ユーザーが十分\nな満足感を得ることができる携帯端末サービスシステムを提供することを他の目的 とするものであって,「表示部に仮想モールと,基本パーツを組み合わせてなる基\n本キャラクターとを表示させ」るとの構\成を含む構成要件F及び「基本キャラクタ\nーが,前記仮想モール中に設けられた店にて前記パーツを購入する」との構成を含\nむ構成要件Gは,さながら自分が仮想モール内を歩いているようなゲーム感覚で商\n品を購入するなどして十分な満足感を得ることができるという本件発明に特有な作\n用効果に係るものであって,構成要件A,同B,同D及び同Eとともに,まさに,\n従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決(ユーザーが十分な満足感を得る\nことができる携帯端末サービスシステムを提供すること)を実現するための,従来 技術に見られない特有の技術的思想に基づく解決手段(ゲーム感覚の実現)として の具体的な構成として開示されているものというべきである。\n他方で,後述する引用例1(乙6)の開示(iモード上に用意された複数のキャ ラクタ画像を受信し,これを待受画面として利用することができる携帯電話機)及 び引用例2(乙7)の開示(画像情報の提供に係る対価の課金を通話料金に含ませ るもの)に照らすと,本件明細書において従来技術が解決できなかった課題として 記載されているところは,客観的に見て不十分であるといい得るが,本件明細書の\n従来技術の記載に加えて,引用例1及び同2の開示を参酌したとしても,本件発明 は,ユーザーが十分な満足感を得ることができ,かつ,サービス提供者が利益を得\nることができる携帯端末サービスシステムを提供するものであり,従来技術では達 成し得なかった技術的課題の解決を実現するための具体的な構成として,構\成要件 AないしHを全て備えた構成を開示するものであるから,これら全てが従来技術に\n見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分に当たるというほかない。\n以上によれば,本件発明と被告システムとの相違部分は,いずれも本件発明の本 質的部分に係るものと認めるのが相当である(なお,上記認定判断は,後述する本 件特許の出願経過とも整合するところである。)。
・・・・
上記アの出願経過に照らせば,原告は,構成要件A,同B,同C及び同Hからな\nる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項1に係る発明)及び構成要件A,同B,\n同C,同D,同E及び同Hからなる発明(出願当初の特許請求の範囲の請求項2に 係る発明)については,特許を受けることを諦め,これらに代えて,構成要件A,\n同B,同C,同D,同E,同F,同G及び同Hからなる発明(出願当初の特許請求 の範囲の請求項1に同2及び同5を統合した発明,すなわち本件発明)に限定して, 特許を受けたものといえる。 そうすると,原告は,構成要件F(「表\示部に仮想モールと,基本パーツを組み 合わせてなる基本キャラクターとを表示させ」)及び同G(「基本キャラクターが,\n前記仮想モール中に設けられた店にて前記パーツを購入する」)の全部又は一部を 備えない発明については,本件発明の技術的範囲に属しないことを承認したか,少 なくともそのように解されるような外形的行動をとったものといえる。 したがって,「仮想モール」に対応する構成を有していない被告システムについ\nては,均等の成立を妨げる特段の事情があるというべきであり,同システムは,均 等の第5要件(特段の事情)を充足しない。

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平成28(ネ)10074等  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年10月5日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 一審では本件特許2についても特許権侵害と認定されましたが、知財高裁はこれについては、被告製品は技術的範囲に属しないと判断しました。
 一審被告製品は,本件発明2の構成要件2Fを充足しないので,その技術的範囲\nに属するとは認められない。その理由は,以下のとおり原判決を補正するほかは, 原判決の第3の3記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決51頁6行目〜52頁6行目を,以下のとおり改める。
「ア 一審原告は,乙1のSIMS分析結果によると,一審被告製品において, 活性層のp型窒化物半導体層側の障壁層B11〜障壁層BLの領域に含まれる複数の 障壁層のSi濃度は,5×1016/cm3未満であると合理的に推認される旨主張する。 そこで,検討すると,乙1のSIMSチャート図では,Si濃度は,n型窒化物 半導体層側からp型窒化物半導体層側に向かって下降し,いったん5×1016/cm3 付近まで落ちた後,p型窒化物半導体層側に向かって上昇していることが観察され る。 この点について,一審原告は,Si濃度の上昇は試料の表面汚染の影響を受けた\nものであり,この表面汚染の影響を除外して考えれば,Siをアンドープにした後,\np側に向けて再びSiをそれよりも高い濃度でドープすることは考えられないから, Si濃度は,5×1016/cm3未満であると考えられると主張する。しかし,一審被告 製品における表面汚染の有無及び程度は明らかでなく,一審被告製品における表\面 汚染について定量的な主張立証がされているわけでもない。また,証拠(甲37, 39,乙44,45)と弁論の全趣旨によると,井戸層にはSiがドープされてい ないから,そのためにSIMSチャートでは障壁層のSi濃度が低く現れることが あること,Si濃度のプロファイルには,ノイズによる「ゆれ」があることが認め られるから,Si濃度がいったん5×1016/cm3付近まで落ちていることから,直ち に,一審被告製品において障壁層のSi濃度が5×1016/cm3を下回っていたと認 めることは困難である。 そうすると,乙1のSIMSチャート図から,p型窒化物半導体層側の障壁層B Lを含む複数の障壁層のSi濃度は,5×1016/cm3未満であると合理的に推認され ると認めることはできない。・・・」

◆判決本文

◆原審はこちら。平成26(ワ)8905

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平成28(ワ)24175  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年9月21日  東京地方裁判所(46部)

 技術的範囲に属しないと判断されました。均等侵害も否定されました。
 前記1(2)で述べたとおり,本件明細書の記載によれば,従来技術には, 気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,過飽和の状態を安定に維持して外 部に提供することが難しく,ウォーターサーバー等へ容易に取付けること ができないという課題があった。本件発明1は,このような課題を解決す るために,水に水素を溶解させる気体溶解装置において,水素水を循環さ せるとともに,水素水にかかる圧力を調整することにより,水素を飽和状 態で水素水に溶解させ,その状態を安定的に維持し,水素水から水素を離 脱させずに外部に提供することを目的とするものである。 本件発明1では,水素を飽和状態で水に溶解させ,その状態を安定的に 維持するために,加圧型気体溶解手段で生成された水素水を循環させて, 加圧型気体溶解手段に繰り返し導いて水素を溶解させることとし,「前記 溶存槽に貯留された水素を飽和状態で含む前記水素水を加圧型気体溶解 手段に送出し加圧送水して循環させ」る(構成要件F)という構\成を採用 している。また,気体溶解装置において,気体が飽和状態で溶解した状態 を安定的に維持し,水素水から水素を離脱させずに外部に提供するために は,水素を溶解させた状態の水素水が気体溶解装置の外部に排出されるま での間に,水素水にかかる圧力の調整ができなくなることを避ける必要が ある。このため,本件発明1では「前記溶存槽及び前記取出口を接続する 管状路」(構成要件E)という構\成を採用し,水素を溶解させた水素水が 導かれる溶存槽と水素水を気体溶解装置外に吐出する取出口との間を管 状路で直接接続し,水素水にかかる圧力の調整ができなくなることを避け ているものと解される。 以上のような本件発明1の課題,解決方法及びその効果に照らすと,生 成した水素水を循環させるという構成のほか,管状路が溶存槽と取出口を\n直接接続するという構成も,本件発明1の本質的部分,すなわち従来技術\nに見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分に該当するというべ\nきである。 被告製品は,管状路が溶存槽と取出口を接続するという構成を採用して\nいないことは前記4のとおりであるから,被告製品の構成は,本件発明1\nと本質的部分において相違するものと認められる。
イ これに対し,原告は,本件発明1の本質的部分は,生成された水素水が 大気圧に急峻に戻るのを防ぐため,管状路を加圧状態から大気圧状態まで の圧力変動があり得る構成と構\成の間に接続することであり,被告製品で は,冷水タンクにおいて水素水にかかる圧力が大気圧となるから,カーボ ンフィルタと冷水タンクを細管で接続する構成は本件発明1と本質的部分\nにおいて相違しない旨主張する。 しかし,被告製品のように,溶存槽から取出口までの間に水素水にかか る圧力が大気圧となる構成を設けた場合には,被告製品の取出口から水素\n水が取り出される前に,生成された水素水に対する圧力の調整ができなく なって水素が離脱し得ることになってしまい,「水素水から水素を離脱させ ずに外部に提供する」という効果を奏することができない。したがって, 本件発明1において,溶存槽と大気圧状態までの圧力変動があり得る構成\nの間に管状路を接続することが本質的部分であると解することはできず, 原告の主張は採用することができない。
エ したがって,被告製品は,均等侵害の第一要件を満たさない。
第二要件及び第三要件
ア 原告は,第二要件につき,被告製品と本件発明1とは,管状路を通して 徐々に生成した水素水を大気圧に降圧することにより,水素濃度を維持す る点が共通するから,「管状路に当たる細管が,カーボンフィルタの出口と 気体溶解装置内に設けられた冷水タンクの入口を接続する」という被告製 品の構成を,管状路が溶存槽と取出口を接続するという本件発明1の構\成 に置換することができると主張する。 しかし,前記 で判示したとおり,被告製品の上記構成では,装置の内\n部において水素水にかかる圧力の調整ができなくなり,「水素水から水素を 離脱させずに外部に提供する」という効果を奏することができず,被告製 品の構成と本件発明1の構\成は作用効果が同一であるとはいえない。した がって,被告製品は,均等侵害の第二要件も満たさない。
イ 原告は,第三要件につき,取出口の前に冷水タンクを設け,この冷水タ ンクに管状路を接続することは容易であると主張する。しかし,取出口の 前に大気圧となる冷水タンクを設けることは,「水素水から水素を離脱させ ずに外部に提供する」という本件発明1の課題解決原理に反するものであ るから,当業者としては,本件発明1に被告製品の上記構成を採用するこ\nとの動機付けを欠くものといえる。したがって,被告製品は,均等侵害の 第三要件も満たさない。 以上で述べたとおり,「管状路に当たる細管が,カーボンフィルタの出口と 気体溶解装置内に設けられた冷水タンクの入口を接続する」という被告製品 の構成は,均等侵害の第一要件,第二要件及び第三要件を満たさないから,\n被告製品の上記構成が本件発明1の構\成要件Eと均等であるとは認められ ない。

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平成28(ワ)13239  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年8月31日  東京地方裁判所(46部)

 文言侵害、均等侵害とも否定されました。
 以上によれば,従来のオルタネータにおいてはブリッジ整流器が備える正 ダイオードを冷却するためにこれを熱放散ブリッジに取り付け,同ブリッジ にスロット(開口部)を設けることでその内部を冷却空気が循環するように し,同ブリッジの上面にフィンを設けることで同ブリッジの冷却を助けるこ ととしていたのに対し,電力用トランジスタ及びかさ高の制御装置を備える ブリッジ整流器があるオルタネータ/スタータにおいては,同ブリッジにス ロットを設けるための空間を確保できない問題に対応するため,同ブリッジ が外側後面に冷却フィンを有する後部軸受けに押し当てられる構成が知られ\nていた。しかし,この構成においては,後部軸受けに熱放散ブリッジ又は基\n部をしっかりと押し当てる必要があり,また,後部軸受けが非常に高温にな ると対流で冷却できなくなるという課題があった。本件発明1は,冷却流体 が機械の後部に横方向に導入され,熱放散ブリッジ及びオルタネータの後部 軸受け間に形成された流体流通路内を循環する目的のために熱放散ブリッジ の後部軸受け側の面を通路の長手方向壁,後部軸受けを上記通路の別の長手 方向壁とし,冷却手段としてフィンを上記通路内に配置する構成を採用した\n点に技術的意義があるということができる。
・・・・
原告は,被告製品のフィンが「前記流体通路(17)内に配置」されて いないという相違点があるとしても,被告製品は本件発明1の構成と均等\nなものとして,本件発明1の技術的範囲に属するというべきであると主張 する。被告製品が本件発明1の構成と均等であるというためには,特許請\n求の範囲に記載された構成中被告製品と異なる部分が特許発明の本質的部\n分でないことが必要である。 イ そこで本件発明1の本質的部分につき検討する。 本件明細書1における背景技術,発明が解決しようとする課題及び課題 を解決するための手段の記載(前記1(2))を参酌すると,前記1(3)のとお り,本件発明1は,熱放散ブリッジにフィンを設け,これに冷却空気を触 れさせて電気部品の冷却を図る構成につき,熱放散ブリッジと後部軸受け\nの間に冷却流体通路を設けて冷却空気を循環させることとし,当該通路内 に冷却フィンを設けるオルタネータ/スタータの構成とすることによって,\n熱放散ブリッジにスロットが設けられない場合であっても十分に熱放散ブ\nリッジを冷却させることができる効果を生じさせることとしたというもの である。このことに照らすと,冷却流体の通路及び冷却フィンの配置につ いて上記構成を採用したことに本件発明1の意義があるということができ\nるから,冷却フィンがどこに配置されるかを含めたその配置は,本件発明 1の本質的要素に含まれると解するのが相当である。 そうすると,被告製品において冷却フィンが冷却流体通路でなく,熱放 散部材の底面であって上側ベアリングの開口部と対応する部分に配置され ている構成は,本件発明1と本質的部分において相違するというべきであ\nる。したがって,被告製品が本件発明1の構成と均等であるということは\nできない。
ウ これに対し,原告は,本件発明1の本質的部分は後部軸受けと熱放散ブ リッジの間に長手方向の,回転シャフトと熱放散ブリッジの間に軸方向の 各冷却流体通路を備えた点にあると主張する。 しかし,上記イのとおり,本件明細書1は熱放散ブリッジにフィンを設 け,これに冷却空気を触れさせて電気部品の冷却を図る構成を従来技術と\nして明示しており,フィンによって熱放散ブリッジと冷却空気が触れる表\n面積を増やし,これによって冷却効果を図る構成を採用することが前提と\nされていること,フィンの配置は冷却効果の程度に影響すると解されるこ とに照らすと,当該配置も本件発明1の意義に含まれるというべきである。

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平成29(ネ)10041  特許権侵害に基づく損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年8月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁4部は、均等の第1要件を満たさないとして、技術的範囲に属しないと判断しました。1審では均等主張はされていませんでした。
 本件発明では,近用アイポイントから近用中心までの距離を小さくしているため, 近用アイポイントから近用部にかけて発生する収差が比較的小さく,良好な視覚特 性が得られ,視線を大きく下げることなく中間視から近用視へ移行することができ るとともに,近用部において広い明視域を確保することができる。 また,特定中心を基準とした近用アイポイントでの屈折力増加量(KE−KA)を 加入度(KB−KA)の60%〜90%に設定すると,近用アイポイントから近用部 に至る領域の側方領域における非点収差の集中が軽減され,像の揺れや歪みなどが 抑えられ,近用部及び中間部において広い明視域を実現することができ,さらに, 近用アイポイントから特定視部にかけて加入度の60%〜90%だけ屈折力を低下 させるとの構成により,近用アイポイントから特定視部にかけて視覚特性が改良さ\nれ,主子午線曲線の側方領域における収差集中が緩和される結果,像の揺れや歪み を軽減することができ,広い明視域を確保することができ,また,屈折力の変化の 度合いが比較的小さいため,近用アイポイントと特定視部との接続が連続的で滑ら かになるように構成することができ,特定視部の明視域を大きく確保することがで\nきる(【0018】【0019】)。
(エ) 以上によれば,本件発明は,「近用視矯正領域」と,「特定視距離矯正領 域」と,「近用視矯正領域と特定視距離矯正領域との間において両領域の面屈折力 を連続的に接続する累進領域」とを備えた累進多焦点レンズを前提に,目の調節力 の衰退が大きい人が長い時間にわたって快適に近方視を継続することを目的として, 近用アイポイントから近用中心までの距離を2mmから8mmと設定するとともに, 条件式(1)(2)の条件を満足することを特徴とする累進多焦点レンズを提供し た結果,視線を大きく下げることなく中間視から近用視へ移行することができ,近 用部において広い明視域を確保するとともに,特定視部の明視域を大きく確保する ことを実現したものであるから,本件発明の本質的部分は,近用アイポイントから 近用中心までの距離を2mmから8mmと設定したことと,条件式(1)(2)を 設定したことにあると認められる。 そして,条件式(1)(2)では,「近用視矯正領域の中心での屈折力」である KBと「特定視距離矯正領域の中心での屈折力」であるKAとの差(KB−KA)が用 いられているところ,「特定視距離矯正領域」の範囲を特定できなくては,「特定 視距離矯正領域の中心」が特定できず,その屈折力KA を求めることができない上, 条件式(2)では,前記(2)イのとおり,「特定視距離矯正領域」の範囲を特定する ことができなければ,「特定視距離矯正領域」の明視域の最大幅WFを特定すること ができない。したがって,条件式(1)(2)を満足させるためには,「特定視距 離矯正領域」の範囲を特定できることが必要であるから,「特定視距離矯正領域」 が,屈折力が一定ないしほぼ一定の領域を有する,ある程度広がりを持った領域で あることも,本件発明の技術的思想を構成する特徴的部分であり,本質に係る部分\nである。したがって,控訴人の主張は,採用できない。
(オ) 被告製品は,前記(1)(2)のとおり,いずれも「特定視距離矯正領域」,「特 定視距離矯正領域の中心」を充足せず,条件式(1)(2)を満足させるものでは ないから,本件発明とは,その本質的部分において相違することが明らかであり, 均等の第1条件を充足しない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成26(ワ)8134

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平成28(ワ)35763  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月27日  東京地方裁判所(47部)

 CS関連発明の特許侵害事件です。当事者は、FREEとマネーフォワードです。均等の主張もしましたが、第1、第5要件を満たさないと判断されました。
 本件明細書の従来技術として上記ウの公知文献は記載されておらず,同記 載は不十分であるため,上記公知文献に記載された発明も踏まえて本件発明\nの本質的部分を検討すべきである。 そして,上記公知文献の内容を検討すると,上記ウ1),2)から,取引明細 情報は,取引ごとにマッチング処理が行われることからすれば,乙4に記載 されたSaaS型汎用会計処理システムにおいても,当該取引明細情報を取 引ごとに識別することは当然のことである。 また,上記ウ3)の「取得明細一覧画面上」の「各明細情報」は,マッチン グ処理済みのデータであるから,「取得明細一覧画面」は「仕訳処理画面」 といえる。 さらに,上記ウ3)の「仕訳情報入力画面」は,従来から知られているデー タ入力のための支援機能の一つに過ぎず(段落【0002】,【0057】),表示され\nた取引一覧画面上で各取引に係る情報を当該画面から直接入力を行うこと及 び該入力の際プルダウンメニューを使用することも普通に行われていること (特開2004-326300号公報(乙5)段落【0066】-【0081】)から すれば,「取引明細一覧画面」に仕訳情報である「相手勘定科目」等を表示\nし変更用のプルダウンメニューを配置することは当業者が適宜設計し得る程 度のことである。 以上によれば,本件発明1,13及び14のうち構成要件1E,13E及\nび14Eを除く部分の構成は,上記公知文献に記載された発明に基づき当業\n者が容易に発明をすることができたものと認められるから,本件発明1,1 3及び14のうち少なくとも構成要件1E,13E及び14Eの構\成は,い ずれも本件発明の進歩性を基礎づける本質的部分であるというべきである。 このことは,上記イの本件特許に係る出願経過からも裏付けられる。 原告は,構成要件1E,13E及び14Eの構\成について均等侵害を主張 していないようにも見えるが,仮に上記各構成要件について均等侵害を主張\nしていると善解しても,これらの構成は本件発明1,13及び14の本質的\n部分に該当するから,上記各構成要件を充足しない被告製品1,2並びに被\n告方法については,均等侵害の第1要件を欠くものというべきである。
・・・
(なお,本件においては,原告から「被告が本件機能につき行った特許出願にか\nかる提出書類一式」を対象文書とする平成29年4月14日付け文書提出命令の 申立てがあったため,当裁判所は,被告に対し上記対象文書の提示を命じた上で,\n特許法105条1項但書所定の「正当な理由」の有無についてインカメラ手続を 行ったところ,上記対象文書には,被告製品及び被告方法が構成要件1C,1E,\n13C,13E,14C又は14Eに相当又は関連する構成を備えていることを\n窺わせる記載はなかったため,秘密としての保護の程度が証拠としての有用性を 上回るから上記「正当な理由」が認められるとして,上記文書提出命令の申立て\nを却下したものである。原告は,上記対象文書には重大な疑義があるなどとして, 口頭弁論再開申立書を提出したが,そのような疑義を窺わせる事情は見当たらな\nいから,当裁判所は,口頭弁論を再開しないこととした。)

◆判決本文
 

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平成28(ワ)21346  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月20日  東京地方裁判所(46部)

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないと判断されました。
 原告は,上記2)の売りの指値注文が約定した時点が構成要件Eの「検出\nされた前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定された値以上となった」\nに該当すると主張し,それによって,高値側の「新たな一の価格」及び 「新たな他の価格」の注文情報群が生成されているとする(原告第3準備 書面17,18頁等)。 そこで,このことを前提として検討すると,被告サービスにおいては, 上記のとおり,上記2)の時点の直後に高値側に買いの成行注文及び売りの 指値注文(上記4)の各注文)の注文情報が生成,発注された。 もっとも,上記4)の各注文のうち,売り注文は指値注文であるが買い注 文は成行注文であるところ,前記(2)のとおり構成要件Eの「注文情報」は\n指値注文に係る注文情報をいい,成行注文に係る注文情報を含まないと解 される。そうすると,4)の買い注文に係る注文情報は,構成要件Eの新た\nな「第一注文情報」に該当しないというべきである。 他方,上記6)の注文はいずれも指値注文であり,これらの注文に係る注 文情報は構成要件Eの「第一注文情報」及び「第二注文情報」に該当し得\nるものといえる。しかし,6)の各注文は,2)の時点の直後に3)の各注文が された後,3)の成行の買い注文の約定価格よりも高値側に価格が変動し, 3)の売りの指値注文が約定した5)の時点の後にされるものである。そうす ると,6)の各注文に係る注文情報は,「検出された前記相場価格の高値側 への変動幅が予め設定された値以上となった」時点である2)の時点におい て,成就の有無が判断できる他の条件の付加なく,また,直ちに生成され たものということはできない。別表1の取引においても,6)の注文は,2) の時点から約35時間50分後にされ,また,その間に5)の売りの指値注 文の約定等がされた後にされている。 そうすると,「検出された前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定\nされた値以上となった場合」に,上記6)の注文に係る「第一注文情報」及 び「第二注文情報」が「設定」されたということはできない。 ウ 以上によれば,被告サービスは構成要件Eの「検出された前記相場価格\nの高値側への変動幅が予め設定された値以上となった場合,・・・高値側\nに・・・新たな前記第一注文情報と・・・新たな前記第二注文情報とを設 定」を充足しない。
(6) これに対し,原告は,1)「注文情報」につき,ア)本件発明の特許請求の範 囲上,指値注文か成行注文を区別していない,イ)本件発明の効果に照らすと 注文が指値注文か成行注文かを区別する必要がない,ウ)発明の実施に形態に おける注文に成行注文が含まれる旨の記載がある,以上のことから成行注文 が含まれると解すべきであると,2)「場合」につき上記条件以外の条件を付 加することを排除する趣旨でないと,3)「設定」につき実際に注文情報を生 成するものでなく,情報を生成し得るものとして記録しておけば足りると, 4)被告サービスは指値注文のイフダンオーダーの中に本件発明を構成しない\n買いの成行注文を付加したものにすぎないと各主張する。 しかし,上記1)につき,ア)は,本件明細書において,「注文情報」の語そ れ自体は指値注文と成行注文の区別を明示していない一方で,前記(2)アのと おり,特許請求の範囲の記載全体をみれば,構成要件Eを含む特許請求の範\n囲の記載における「注文情報」は指値注文をいうと解されるのであり,イ)は 背景技術,発明が解決しようとする課題の各記載(前記1(1)ア,イ)の趣旨 を併せて考慮するとむしろ指値注文のイフダンオーダーに関する発明である ことが示唆される。ウ)は,本件明細書の発明の実施の形態の記載(前記1(2)) によれば,当該形態においては成行注文も生成され得る(段落【0031】) 一方で通常の成行注文につきイフダンオーダーの手順(ステップS21〜2 8)を行わないとされている(段落【0101】,【図3】,【図4】)から, 生成された成行注文はイフダンオーダーに関する注文を構成しないことが明\nらかである。そうすると,原告が指摘する上記ア)〜ウ)はいずれも構成要件E\nの「注文情報」に成行注文が含まれると解すべき根拠とならない。 上記2)及び3)については,前記(3)及び(4)において説示したところ 上記4)につき,前記?に説示したとおり,被告サービスにおける買いの成 行注文(注文番号97)は売りの指値注文(同96)と同時に注文されてい るから,当該成行注文がイフダンオーダーの一部を構成していると認められ\nるところ,前記の「注文情報」,「場合」,「設定」の各解釈に加え,本件発明 の意義が指値注文のイフダンオーダーを相場価格の変動にかかわらず自動的 に繰り返し行うことにあることを前提とすれば,イフダンオーダーにおいて 成行注文を介在させる構成は,本件発明において解決すべき課題と異なるこ\nと,成行注文によって直ちに金融商品のポジションを得る効果が得られるこ とにおいて本件発明の構成と異なるものであるから,これを本件発明外の付\n加的構成とみることはできない。\n

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平成28(ワ)14868  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟  平成29年7月12日  東京地方裁判所(40部)

 CS関連発明についての特許権侵害事件です。文言「送信したとき」が論点となりました。「送信したことを条件として」という意義として、非侵害と判断しました。
イ ところで,広辞苑第六版(甲9)によれば,「とき」とは,「(連体修飾 語をうけ,接続助詞的に)次に述べることの条件を示すのに使う。…の場 合。」を意味するものであり,また,大辞林第三版(甲10)においても 「(連体修飾句を受けて)仮定的・一般的にある状況を表す。(...する) 場合。」とされており,用字用語新表記辞典(乙22)では「『とき』は条\n件・原因・理由・その他,『場合』よりも小さい条件のときに用いること がある。」,最新法令用語の基礎知識改訂版(乙23)では「『時』は時点 や時刻が特に強調される場合に使われるのに対して,『とき』は一般的な 仮定的条件を表す場合に使われる。」と記載されている。これらからすれ\nば,構成要件1D及び1Fにおける「送信したとき」の「とき」は,条件\nを示すものであると解するのが相当である。
ウ この点に関して原告は,「送信したとき」の「とき」は「同じころ」と いう意義を有するものであり,「ある程度の幅をもった時間」を意味する と主張する。 たしかに,広辞苑第六版及び大辞林第三版には,上記イで指摘した意義 の他に,原告が主張するような意義も掲載されている(甲9,10)。し かし,広辞苑第六版(甲9)には「おり。ころ。」を意味する「とき」の用 例として「ときが解決してくれる」「しあわせなときを過ごす」といった ものが掲載されており,「送信したとき」のような具体的な行為を示す連 体修飾語を受けた用例は記載されていない。また,大辞林第三版(甲10) をみると「ある幅をもって考えられた時間」を意味する「とき」の用例と して,「将軍綱吉のとき」「ときの首相」「ときは春」などというものが 掲載されており,やはり「送信したとき」のような具体的な行為を示す連 体修飾語を受けた用例は記載されていない。 そして,抽象的で,空間的及び時間的に広い概念を表現した上記各用例\nと比べると,「送信したとき」という表現は,その指し示す行為が相当程\n度に具体的かつ直接的であることから,およそ用いられる場面が異なると いうべきである。 また,原告が指摘する審決(甲11)には,「とき」という用語につい て「ある程度の幅を持った時間の概念を意味する」旨の判断がされている が,当該審決は,「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始されるときに, 前記転送手段によって前記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用\n数値情報を読み出して判定する」という記載における「前記9個の可変表\n示部の可変表示が開始されるときに」という文言について,「前記9個の\n可変表示部の可変表\示が開始されると『同時』又は『間をおかずに』」と いう意味ではなく,「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始され」た後, 「前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判定する」までの間に他\nの処理がされるとしても,「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始され るときに」に当たると判断したものであって,「前記転送手段によって前 記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判\n定」した後に「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始され」たとしても, 上記文言を充足するなどと判断したものではないから,本件における「送 信したとき」の解釈において参酌することは相当ではない。 そうすると,構成要件1D及び1Fの「送信したとき」における「とき」\nが「ある程度の幅をもった時間」を意味するものということはできない。 また,本件明細書等1をみても,「送信したとき」の「とき」について, 「条件」ではなく「時間」を意味することをうかがわせる記載はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
エ 以上から,構成要件1D及び1Fの「送信したとき」とは,「送信した\nことを条件として」という意義であると認めることが相当である。
・・・・
以上からすると,被告サーバは,第二のメッセージを受信したことを条件 として「マイミク」であることを記憶し,「マイミク」である旨の記憶をし たことを条件として「第二のメッセージ」を送信するという構成を有してい\nるものであって,第二のメッセージを送信したことを条件として「マイミク」 であることを記憶するという構成を有するものではないと認められる。\nしたがって,被告サーバは,「第二のメッセージを送信したとき」に「上 記第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて上記記 憶手段に記憶する手段」を有しているということはできないから,その余の 点について判断するまでもなく,構成要件1D及び1Fを充足しない。\n

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平成29(ネ)10014  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 本件発明の「緩衝剤」は,添加したものに限られると判断して、技術的範囲に属しないと判断されました。  
 確かに,本件明細書の段落【0050】には「実施例18」との記載はあ るが,他方で,本件明細書における実施例18(b)に関する記載をみると,「比較 のために,例えば豪州国特許出願第29896/95号(1996年3月7日公開) に記載されているような水性オキサリプラチン組成物を,以下のように調製した」 (段落【0050】前段)と記載され,また,実施例18の安定性試験の結果を 示すに当たっては,「比較例18の安定性」との表題が付された上で,実施例1\n8(b)については「非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物」と表現されている\n(段落【0073】)。そして,豪州国特許出願第29896/95号(1996 年3月7日公開)は,乙4発明に対応する豪州国特許であり,同特許は水性オキサ リプラチン組成物に係る発明であって,本件明細書で従来技術として挙げられる もの(段落【0010】)にほかならない。 上記各記載を総合すると,実施例18(b)は,「実施例」という用語が用いら れているものの,その実質は本件発明の実施例ではなく,本件発明と比較するため に,「非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物」,すなわち,緩衝剤が用いられていな い従来既知の水性オキサリプラチン組成物を調製したものであると認めるのが相当

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成27(ワ)28467

以下は類似案件です。

◆平成27(ワ)12412号

◆被告の異なる事件です。

◆これの原審はこちらです。平成27(ワ)28698

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)29001

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)29158

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)28467

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)28698

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)29159

◆被告の異なる事件です。平成27(ワ)12412

◆被告の異なる控訴審事件です。平成28(ネ)10046

こちらは、結論は非侵害で同じですが、1審では技術的範囲に属すると判断されましたので、それが取り消されています。また、控訴審における追加主張は時期に後れた抗弁として、却下されてます。

◆平成28(ネ)10031

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平成29(ネ)10009等  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月12日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(3部)は、1審の判断(「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まない)を維持し、控訴棄却しました。
 本件発明1の構成要件1C(オキサリプラティヌムの水溶液からなり)\nが,オキサリプラティヌムと水のみからなる水溶液であることを意味するの か,オキサリプラティヌムと水からなる水溶液であれば足り,他の添加剤等 の成分が含まれる場合をも包含するのかについては,特許請求の範囲の記載 自体からは,いずれの解釈も可能である。そこで,この点については,本件\n明細書1の記載及び本件特許1の出願経過を参酌して判断することとする。
・・・
前記アの本件明細書1の記載によれば,オキサリプラティヌムは,種々 の型の癌の治療に使用し得る公知の細胞増殖抑制性抗新生物薬であり,本 件発明1は,オキサリプラティヌムの凍結乾燥物と同等な化学的純度及び 治療活性を示すオキサリプラティヌム水溶液を得ることを目的とする発明 である。そして,本件明細書1には,オキサリプラティヌム水溶液におい て,有効成分の濃度とpHを限定された範囲内に特定することと併せて, 「酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくはその他の添加剤を含まない オキサリプラティヌム水溶液」を用いることにより,本件発明1の目的を 達成できることが記載され,「この製剤は他の成分を含まず,原則とし て,約2%を超える不純物を含んではならない」との記載も認められる。 他方で,本件明細書1には,「該水溶液が,酸性またはアルカリ性薬剤, 緩衝剤もしくはその他の添加剤」を含有する場合に生じる不都合について の記載はなく,実施例においても,添加剤の有無についての具体的条件は 示されておらず,これらの添加剤を入れた比較例についての記載もない。
しかしながら,前記イの出願経過において控訴人が提出した本件意見書 には,本件発明1の目的が,「オキサリプラティヌム水溶液を安定な製剤 で得ること」及び「該製剤のpHが4.5〜6であること」に加えて, 「該水溶液が,酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくはその他の添加 剤を含まないこと」にあること,さらに,水溶液のpHが該溶液に固有の ものであって,オキサリプラティヌムの水溶液の濃度にのみ依存するこ と,オキサリプラティヌムの性質上,本件発明1の構成においてのみ,\n「安定な水溶液」を得られることがわざわざ明記され,これらの記載を受 けて,審査官が拒絶理由通知の根拠とする引用文献1ないし3では,その ような「安定な水溶液」は得られないこと,すなわち,緩衝剤を含む凍結 乾燥物やクエン酸を含む水溶液では,「オキサリプラティヌムの安定な水 溶液」を得ることは困難である旨が具体的に説明されている。 その上で,本件意見書は,本件発明1が特許法29条2項に該当しない との結論を導いて審査官に再考を求めているのであり,その結果として控 訴人は,本件特許1の特許査定を受けているのである。 以上のような本件明細書1の記載及び本件特許1の出願経過を総合的に みれば,本件発明1は,公知の有効成分である「オキサリプラティヌム」 について,直ぐ使用でき,承認された基準に従って許容可能な期間医薬的\nに安定であり,凍結乾燥物を再構成して得られる物と同等の化学的純度及\nび治療活性を示す,オキサリプラティヌム注射液を得ることを課題とし, その解決手段として,オキサリプラティヌムを1〜5mg/mlの範囲の 濃度と4.5〜6の範囲のpHで水に溶解することを示すものであるが, 更に加えて,「該水溶液が,酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくは その他の添加剤を含まない」ことをも同等の解決手段として示すものであ ると認めることができる。 してみると,本件発明1の特許請求の範囲における「オキサリプラティ ヌムの水溶液からなり」(構成要件1C)とは,本件発明1がオキサリプ\nラティヌムと水のみからなる水溶液であって,他の添加剤等の成分を含ま ないものであることを意味すると解するのが相当である。

◆判決本文

◆1審はこちらです。

関連事件(同一特許、異被告)です。

◆平成27(ワ)28699等

◆平成27(ワ)29001

◆平成27(ワ)29158

同一特許の別訴事件で、1審(平成27(ワ)12416号)では技術的範囲内と判断されましたが、知財高裁はこれを取り消しました。

◆平成28(ネ)10031

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平成28(ネ)10047  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年10月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 少し前の事件ですが、漏れていたのでアップします。特許侵害事件において、無効理由無かつ技術的範囲に属するとした1審判断を維持しました。同一特許に係る審決取消請求事件の判決の理由中の判断は,侵害訴訟における技術的範囲の確定に対して拘束力を持たないとも言及しました。
 ところで,特許発明の技術的範囲の確定の場面におけるクレーム解釈と,当該特 許の新規性,進歩性等を判断する前提としての発明の要旨認定の場面におけるクレ ーム解釈とは整合するのが望ましいところ,確かに,本件特許2に係る審決取消請 求事件の判決(甲12)には,控訴人が指摘するとおり,「本件特許発明2は,ケ ーブルコネクタの回転のみによって,すなわち,ケーブルコネクタとレセプタクル コネクタ間のスライドなどによる相対位置の変化なしに,ロック突部の最後方位置 が突出部に対して位置変化を起こす構成に限定されていると解される。」旨の記載\nがある(39頁)。しかし,上記判決は,主引用例(本件における乙3)の嵌合過 程について,「…肩部56で形成される溝部49の底面に回転中心突起53が当た り,ここで停止する状態となる。…この状態で相手コネクタ33を回転させるので はなく,回転中心突起53を肩部56に沿って動かすことで,相手コネクタ33を コネクタ31に対してコネクタ突合方向のケーブル44側にずらした状態にして, 相手コネクタ33をコネクタ突合方向に直交する溝部方向に動かすことができない ようにし,その後,回転中心突起53を中心に相手コネクタ33を回転させている」 (36〜37頁)との認定を前提に,本件特許発明2と乙3発明とを対比するに当 たり,乙3発明には,「回転によって,回転中心突起53の最後方位置が回転前に 比較して後方に位置するという技術思想が記載されているとはいえない」,「回転 中心突起53の上方に肩部56の上面が位置するように,相手コネクタ33が傾斜 している状態で肩部56の前側から後側(ケーブル側)へ回転中心突起53を移動 させているものであって,相手コネクタ33の回転により回転中心突起56の最後 方位置が後方(ケーブル側)へ移動するものではない」(38頁)として,乙3発 明は,「コネクタ嵌合過程にて上記ケーブルコネクタの前端がもち上がって該ケー ブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるとき,上記ロック突部の突部後縁の最後方位 置が,上記ケーブルコネクタがコネクタ嵌合終了姿勢にあるときと比較して前方に 位置するものではないという点において,本件特許発明2と相違する。」旨認定し ている(38頁)。上記のように,乙3発明においては,ロック突部の突部後縁の 最後方位置の変化に,ケーブルコネクタの上向き傾斜姿勢からコネクタ嵌合終了姿 勢への回転を伴う姿勢の変化が関係していないこと(「回転によって,回転中心突 起53の最後方位置が回転前に比較して後方に位置するという技術思想が記載され ているとはいえない」こと)に照らせば,本件特許発明2と乙3発明とが相違する ことを認定するについては,本件特許発明2におけるロック突部の突部後縁の最後 方位置の変化が,ケーブルコネクタの上向き傾斜姿勢からコネクタ嵌合終了姿勢へ の回転を伴う姿勢の変化によって生じるものであれば足り,「回転のみによって」 生じること,言い換えれば,ケーブルコネクタを上向き傾斜姿勢からコネクタ嵌合 終了姿勢へと変化させる際に,姿勢方向を回転させることに伴って生じる「ケーブ ルコネクタとレセプタクルコネクタ間のスライドなどによる相対位置の変位」が一 切あってはならないことを要するものではないというべきである。なお,同一特許 に係る審決取消請求事件の判決の理由中の判断は,侵害訴訟における技術的範囲の 確定に対して拘束力を持つものではない。 したがって,控訴人の上記限定解釈に係る主張は,理由がない。
(イ) 控訴人は,被控訴人が,特許の無効を回避するために,自ら,「本件特許 発明2は,「ロック突部の突部後縁の最後方位置」が,「ケーブルコネクタが上向 き傾斜姿勢にあるとき」はロック溝部の溝部後縁から溝内方に突出する突出部の最 前方位置よりも前方に位置し,また,「ケーブルコネクタがコネクタ嵌合終了姿勢 にあるとき」は上記突出部の最前方位置よりも後方に位置することを規定している」 旨構成要件e及びfを限定解釈すべきことを主張しているのであるから,その技術\n的範囲の解釈に際しては,被控訴人の上記主張が前提にされるべきである旨主張す る。 しかし,特許発明の技術的範囲を解釈するについて,相手方の無効主張に対する 反論として述べた当事者の主張は,必ずしも裁判所の判断を拘束するものではない。 そして,本件特許発明2に係る特許請求の範囲には,控訴人が主張するような限 定は規定されていないし,前記(1)イ記載の本件特許発明2の課題及び作用効果は, ロック突部の突部後縁の最後方位置が,ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にある とき,すなわち,コネクタ嵌合終了姿勢に至る前は,常にロック溝部の溝部後縁か ら溝内方に突出する突出部の最前方位置よりも前方に位置しているのでなければ奏 し得ないというものではない。また,そもそも,本件明細書2には,本件特許発明 2に係る実施例の嵌合動作について,「ロック突部21’の下部傾斜部21’B− 2が,ロック溝部57’の後縁突出部59’Bの位置まで達すると,該後縁突出部 59’Bに対して下部傾斜部21’B−2が該後縁突出部59’Bの下方に向けて 滑動しながらケーブルコネクタ10はその前端が時計方向に回転して水平姿勢とな って嵌合終了の姿勢に至る。」(【0053】)と記載されているように,ケーブ ルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるときであっても,嵌合終了姿勢(水平姿勢)に 近づくと,ロック突部の突部後縁の最後方位置が,ロック溝部の溝部後縁から溝内 方に突出する突出部の最前方位置よりも後方に位置することが開示されているとい えるから,構成要件eを,「ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるときは,ロ\nック突部の突部後縁の最後方位置が,ロック溝部の溝部後縁から溝内方に突出する 突出部の最前方位置よりも前方に位置する」ことを規定したものと解釈することは, 誤りである。
・・・・・
 ア 控訴人の明確性要件違反並びに新規性及び進歩性欠如に係る主張は,控訴人 が請求した無効審判請求(無効2014−800015)と同一の事実及び同一の 証拠に基づくものであるところ,上記無効審判請求については,請求不成立審決が, 既に確定した(甲8,12)。したがって,控訴人において,本件特許2が,上記 明確性要件違反並びに新規性及び進歩性の欠如を理由として,特許無効審判により 無効にされるべきものと主張することは,紛争の蒸し返しに当たり,訴訟上の信義 則によって,許されない(同法167条,104条の3第1項)。
イ なお,控訴人は,本件特許発明2が「ケーブルコネクタの回転のみによって, すなわち,ケーブルコネクタとレセプタクルコネクタ間のスライドなどによる相対 位置の変化なしに,ロック突部の最後方位置が突出部に対して位置変化を起こす構\n成に限定されている」ものと解釈されないとすれば,本件特許発明2は進歩性を欠 く旨主張する。 しかし,本件特許発明2の要旨を上記のように限定的に認定しない場合であって も,乙3発明における嵌合動作は,相手コネクタ33の回転中心突起53をコネク タ31の溝部49に肩部56で停止する深さまで挿入し,次いで,回転中心突起5 3を肩部56に沿って動かし,回転中心突起53が溝部49に形成された肩部56 のケーブル44側に当接している状態にして,その後,回転中心突起53を中心に 相手コネクタ33を回転させ,嵌合終了姿勢に至るというものであり,本件特許発 明2と乙3発明とは,本件特許発明2では,「コネクタ嵌合過程にて上記ケーブル コネクタの前端がもち上がって該ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるとき, 上記ロック突部の突部後縁の最後方位置が,上記ケーブルコネクタがコネクタ嵌合 終了姿勢にあるときと比較して前方に位置し」ているのに対し,乙3発明では,コ ネクタ嵌合過程にて相手コネクタ33の前端がもち上がって該相手コネクタ33が 上向き傾斜姿勢にあるときのうち,少なくとも,コネクタ突合方向のケーブル44 側の端までずらした状態で回転中心突起53を中心に相手コネクタ33を回転させ るとき,回転中心突起の突部後縁の最後方位置が,相手コネクタ33がコネクタ嵌 合終了姿勢にあるときと同一の地点に位置している点,すなわち構成要件eの点で\n相違する。そして,乙3には,乙3発明の上記嵌合動作に関し,回転によって,回 転中心突起53の最後方位置が回転前に比較して後方に位置するという技術的思想 が記載されているとはいえず(甲12・38頁),また,乙3発明と乙7ないし1 0に記載された各コネクタとでは,その構造や形状が大きく異なるから,乙3発明\nにおいて,上記各コネクタの嵌合過程における突起部と突出部との位置関係を適用 しようとする動機付けがあるということはできないし,仮に適用を試みたとしても, 乙3発明において,上記相違点に係る本件特許発明2の構成を備えることが容易に\n想到できたとは認められない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成26(ワ)14006

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平成29(ネ)10005  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年6月13日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 被告製品が構成要件「加熱前のメラミン系樹脂発泡体よりも柔軟な」を充足するかが争われました。知財高裁(4部)は、1審同様、充足しないと判断しました。
本件各発明は,メラミン系樹脂発泡体からなる清掃具における「折り畳み可能な\n清掃具の変形能や,清掃対象面の形態に応じて変形可能\な清掃具の柔軟性等」が乏 しいという課題(【0006】)を解決することを目的とするものであり,その効 果は,「捩じり又は絞ったり,或いは,手指の動きに応じて多様な清掃対象物の汚 れを拭き取るといった布雑巾的な用法で使用可能な」ものを提供する(【0011】)\nというものであることからも,本件各発明における圧縮・加熱の工程を経たメラミ ン系樹脂発泡体が,加熱前のメラミン系樹脂発泡体「よりも柔軟な」ものになった ということは,圧縮・加熱前よりも,容易に折り畳みが可能で,清掃対象面の形態\nに応じて変形することができるようになったことを意味するということができる。 よって,本件各発明における「柔軟な」とは,容易に折り畳んだり,変形させた りできることを意味するものと認めることが相当である。
・・・
圧縮前後のメラミン系樹脂発泡体のサンプル平均を比較すると,甲45試験では, 圧縮前後の荷重の差は2.3Nであり,圧縮後のメラミン系樹脂発泡体の方が圧縮 前のものよりも,約5分の1の力で10mmたわんだとの結果になっている。しか しながら,乙11試験では,メラミン系樹脂発泡体の10mmたわみ時の荷重の圧 縮前後の差は0.06Nで,圧縮後の方がより弱い力でたわんだとの結果になって いるものの,約15%弱い力にすぎず,乙34試験では,その差は0.03Nとさ らに小さく,圧縮後の方が約5%弱い力でたわんだとの結果にとどまる。甲45試 験と,乙11試験,乙34試験の試験結果は,同一の試験機関によるものであると ころ,各試験で用いられた試料の圧縮の程度に差があることを考慮したとしても, 大きく異なるといわざるを得ないが,甲45,乙11,乙34の各報告書中には, これら試験結果に大きな差が生じ得たと考えられるような条件の記載はない。 圧縮後のメラミン系樹脂発泡体における10mmたわみ時荷重の平均値は,甲4 5試験において0.60N,乙11試験において0.41N,乙34試験において 0.62Nで,特に,甲45試験と乙34試験の数値は極めて近い。ところが,圧 縮前のものについての同数値は,乙11試験では0.47N,乙34試験では0. 65Nなのに対し,甲45試験では,2.90Nとされており,乙11,乙34の 各試験結果とは2.0N以上,約4倍の差となっているのであって,圧縮の条件等 による差が考えられない圧縮前の数値についてのみ,このような顕著な差があるこ とについて,合理的に理解することは困難といわざるを得ない。乙34報告書によ れば,厚さ40mmのメラミン系樹脂発泡体を10mmに圧縮したものについての 10mmたわみ時荷重は平均2.8N(サンプル数5)で,甲45試験と極めて近 接した数値となっていることも勘案すると,甲45試験の結果をもって,圧縮後の 方が「柔軟」になったと認定することはできない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成27年(ワ)第9891号

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平成25(ワ)10958  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年5月17日  東京地方裁判所(40部)

 特許権侵害について、一部の被告装置について、差止と損害賠償(約1400万円)が認められました。102条2項について寄与率による減額を主張しましたが否定されました。
 本件訂正発明1の1及び1の2の意義
上記各記載によれば,本件訂正発明1の1及び1の2は,基礎杭等の造 成にあたって地盤を掘削する掘削装置に関するものであって,この種の掘 削装置として一般に使用されるアースオーガ装置では,オーガマシンの駆 動時の回転反力を受支するために必ずリーダが必要となるが,リーダの長 さが長くなると,施工現場内でのリーダの移動作業や,現場へのリーダの 搬入及び現場からの搬出作業に非常な手間と時間を要するという課題及び 傾斜地での地盤掘削にあっては,クローラクレーンの接地面とリーダの接 地面との段差が大きい場合にリーダの長さを長くとれず,掘削深さが制限 されるという課題があることから,本件訂正発明1の1及び1の2は,こ れらの課題を解決するために,掘削装置について,掘削すべき地盤上の所 定箇所に水平に設置し,固定ケーシングを上下方向に自由に挿通させるが, 当該固定ケーシングの回転を阻止するケーシング挿通孔を形成してなるケ ーシング回り止め部材を備えるものとして,リーダではなく,ケーシング 回り止め部材によって回転駆動装置の回転反力を受支するものとした発明 である,と認められる。
・・・・
原告は,本件訂正発明1の1の実施による被告の利益を算定するに当 たっては,本件発訂正明1の1を実施した工程の代金のみならず,請負 代金額の全額を基礎とすべきと主張する。 しかし,本件訂正発明1の1は,掘削装置に関する発明であり,掘削 工事以外の工程には使用されない。そして,前記「内訳明細書」(乙1 05)によれば,被告は,現場(1)について,本件訂正発明1の1を実施 した掘削工事である「先行削孔砂置換工」のみを受注したものではなく, 「道路改良工事」を受注し,上記掘削工事の他,本件訂正発明1の1を 実施していない工事である「場所打杭工」,「鋼矢板工」及び「桟橋盛 替工」の各工事を行っており,これらの工事の代金(直接工事費)につ いては,本件訂正発明1の1を実施していないのであるから,本件訂正 発明1の1の実施があったためにその余の工事の受注ができたなどの特 段の事情がない限り,本件訂正発明1の1を実施したことにより被告が 受けた利益に当たるということはできない。そして,本件において,上 記事情を認めるに足りる証拠はない。
また,被告は,現場(1)の工事について,上記直接工事費のほかに,間 接工事費として「重機組解回送費」,「重機回送費」及び「経費」の支 払を受けているが,これらについても本件訂正発明1の1の実施により 受けた利益に当たると認めるべき証拠がない。 したがって,被告が,本件訂正発明1の1を実施したことにより受領 した額は,本件訂正発明1の1の実施による先行削孔砂置換工(DH削 孔費)の14本分の代金140万円である。
イ 利益率
被告の利益率が18%であることについて当事者間に争いがない。 したがって,本件訂正発明1の1を実施したことにより被告が得た利益 額は,25万2000円(=140万円×0.18)である。
ウ 寄与率
被告は,本件訂正発明1の1の売上に対する寄与率は低いなどと主張す るので検討するに,特許法102条2項は,損害が発生している場合でも, その損害額を立証することが極めて困難であることに鑑みて定められた推 定規定であるから,当該特許権の対象製品に占める技術的価値,市場にお ける競合品・代替品の存在,被疑侵害者の営業努力,被疑侵害品の付加的 性能の存在,特許権者の特許実施品と被疑侵害品との市場の非同一性など\nに関し,その推定を覆滅させる事由が立証された場合には,それらの事情 に応じた一定の割合(寄与率)を乗じて損害額を算定することができると いうべきである。
本件では,たしかに,前記アのとおり,現場(1)において,15本のうち 1本のケーシングについては,本件訂正発明1の1を実施しない形態(下 部/1本のH形鋼)が用いられていることが認められるものの,これは, 被告の主張によれば,山(崖)側に位置するケーシングでは,下部で井桁 状を組むことが困難であることから「下部/2本のH形鋼」ではなく「下 部/1本のH形鋼」の構成が用いられているというのであって,「下部2本のH形鋼」の構\成により,「下部/1本のH形鋼」の構\成と同等ない\nしより優れた効果が得られるためではない。また,上記イで算出した利益 の額は,本件訂正発明1の1の技術的範囲に属する被告装置1を用いて行 った工事である先行削孔砂置換工(DH削孔費)により被告が得た利益額 そのものであり,それ以外の工事による利益の額は含まれていない。 さらに,被告は,各杭の「掘削長×掘削基本時間」の単価計算から求め られたものに(「掘削時間」/〔「掘削時間」+「準備時間」+「排土埋 戻し時間」〕)を乗じたものが,掘削に対しての時間の割り出し単価とな るなどと主張しており,工事費用について時間当たりの単価を算出して, 現実に掘削に要した時間に相当する分についてのみ本件訂正発明1の1が 寄与しているかのような主張をしているが,被告が「先行削孔砂置換工」 のうちの掘削作業のみを受注しているものではなく,また,一般に掘削作 業のみを受注する形態が考えにくいこと,掘削作業が「先行削孔砂置換工」 の重要部分を占めると考えられること,発注者は準備時間や排土埋戻しの ために被告に工事を発注しているものでなく,準備や排土埋戻しの作業が 利益をあげているとはいえないことなどからすると,被告の上記主張は採 用することができない。 そうすると,代替技術の存在を考慮に入れたとしても,上記額が原告の 損害であるという推定を覆滅させるに足りる証拠がないというほかないか ら,被告の寄与率に係る主張は理由がない。

◆判決本文

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平成28(ネ)10096  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年5月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

知財高裁(4部)も、1審と同じく均等侵害を否定しました(第1、第4要件不備)。
 ア 均等の第1要件における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の 記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であり,\n上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明の課題 及び解決手段(特許法36条4項,特許法施行規則24条の2参照)とその効果(目 的及び構成とその効果。平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項\n参照)を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見ら れない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによっ\nて認定されるべきである。ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題とし て記載されているところが,出願時(又は優先権主張日)の従来技術に照らして客 観的に見て不十分な場合には,明細書に記載されていない従来技術も参酌して,当\n該特許発明の従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が認定\nされるべきである。
イ 本件明細書によれば,本件発明は,従来技術では経路探索の終了時にいくつ かの経由地を既に通過した場合であっても,最初に通過すべき経由予定地点を目標\n経由地点としてメッセージが出力されること(【0008】)を課題とし,このよ うな事態を解決するために,通過すべき経由予定地点の設定中に既に経由予\定地点 のいずれかを通過した場合でも,正しい経路誘導を行えるようなナビゲーション装 置及び方法を提供することを目的とし(【0011】),具体的には,車両が動く ことにより,探索開始地点と誘導開始地点のずれが生じ,車両が,設定された経路 上にあるものの,経由予定地点を超えた地点にある場合に,正しく次の経由予\定地 点を表示する方法を提供するものである(【0018】【0038】)。また,前\n記2(1)エ(ア)のとおり,本件特許出願当時において,ナビゲーション装置が,距離 センサー,方位センサー及びGPSなどを使って現在位置を検出し,それを電子地 図データに含まれるリンクに対してマップマッチングさせ,出発地点に最も近い ノード又はリンクを始点とし,目的地に最も近いノード又はリンクを終点とし,ダ イクストラ法等を用いて経路を探索し,得られた経路に基づいて,マップマッチン グによって特定されたリンク上の現在地から目的地まで経路誘導するものであった ことは,技術常識であったと認められる。 このように,本件発明は,上記技術常識に基づく経路誘導において,車両が動く ことにより探索開始地点と誘導開始地点の「ずれ」が生じ,車両等が経由予定地点\nを通過してしまうことを従来技術における課題とし,これを解決することを目的と して,上記「ずれ」の有無を判断するために,探索開始地点と誘導開始地点とを比 較して両地点の異同を判断し,探索開始地点と誘導開始地点とが異なる場合には, 誘導開始地点から誘導を開始することを定めており,この点は,従来技術には見ら れない特有の技術的思想を有する本件発明の特徴的部分であるといえる。 したがって,探索開始地点と誘導開始地点とを比較して両地点の異同を判断する 構成を有しない被控訴人装置が本件発明と本質的部分を異にすることは明らかであ\nる。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成26(ワ)25928

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平成26(ワ)34678  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年4月21日  東京地方裁判所(40部)

 特許権に基づく差し止め請求が認められました。出願経過参酌による意識的除外については認められませんでした。損害賠償は請求されてません。
 上記各記載によれば,本件発明の意義は,次のとおりであると認められる。 従前,シリンダボア内に冷媒を導入するためにロータリバルブが採用され たピストン式圧縮機においては,吐出行程にあるシリンダボア内の冷媒がこ のシリンダボアに連通する吸入通路からロータリバルブの外周面に沿ってシ リンダボア外に漏れやすいという課題があり,このような課題はバルブ収容 室の内周面とロータリバルブの外周面との間のクリアランスを極力小さくす ることにより解決されるものの,他方で,このクリアランス管理は非常に難 しいという課題があった。 そこで,本件発明は,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の 入口に向けてロータリバルブを「付勢」し,ロータリバルブの外周面を吸入 通路の入口に近づけるという構成を採用することによって,圧縮室内の冷媒\nを吸入通路から漏れ難くし,よって体積効率を向上させるという作用効果を 有するものである。
・・・・
まず,被告は,本件特許の出願過程における乙26意見書に「引用文 献1〔判決注:乙21公報〕に記載された発明とは,従来からのニード ルベアリングのような転がり軸受ではなく,ジャーナル軸受を採用する ことによって,回転軸側のジャーナル部とシリンダブロック側の滑り軸 受との間のクリアランスを極めて小さくし,その結果,ロータリバルブ からの冷媒漏れを抑制するというものです。あくまでも,ジャーナル部 と滑り軸受との間のクリアランス管理に基づいて冷媒漏れの抑制を実現 しているのであって,本願発明のように,ピストンに対する圧縮反力を ロータリバルブへの付勢力に変換し,ロータリバルブの外周面を直接, 吸入通路の入口に付勢することによって冷媒漏れを抑制する技術とは明 確に異なるのです。」と記載されていることを根拠に,原告が本件発明 の技術的範囲から「クリアランスが小さい場合」を意識的に除外してい ると主張する。 しかし,乙26意見書の上記部分は,その記載内容からも明らかなと おり,乙21発明の「ジャーナル軸受を採用することによって,回転軸 側のジャーナル部とシリンダブロック側の滑り軸受との間のクリアラン スを極めて小さし,その結果」冷媒漏れを抑制する技術と,本件発明の 「ピストンに対する圧縮反力をロータリバルブへの付勢力に変換し,ロ ータリバルブの外周面を直接,吸入通路の入口に付勢することによって」 冷媒漏れを抑制する技術とが相違することを述べたものにすぎず,「ク リアランスが小さい場合」を本件発明の技術的範囲から除外したものと 解することはできない。このことは,乙26意見書の上記部分の直前に 「引用文献1〔判決注:乙21公報〕に記載された発明は・・・ジャー ナル軸受をもってロータリバルブを支持する点に特徴があります。」と 記載され,さらに,乙21公報の「回転軸を支持する軸受がジャーナル 軸受であり,それが単にシリンダブロック内に設けられた滑り軸受と, 回転軸の一部であるジャーナル部によって構成される簡単な構\造である だけでなく,そのジャーナル軸受の構成部材自体に半径方向の吸入通路\nや吸入ポートを形成して,各シリンダに対して圧縮すべき流体を吸入さ せるための吸入弁を構成しているため,軸受構\造と吸入弁の構造が簡単\nになるだけでなく,滑り軸受の円筒内面の仕上げ加工が容易に行われて, ジャーナル部とのクリアランスをきわめて小さくすることが可能になり,\n圧縮された流体が吸入弁から漏洩することがない。」との記載が引用さ れていることからも明らかである。

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平成28(ワ)20818  特許権侵害差止請求事件  特許権 平成29年4月19日  東京地方裁判所(29部)

 差止請求が認められました。サポート要件違反もなしと判断されました。
 被告らは,仮に,構成要件1Gの「切り残し突起(16)」が,本件明細書等の【図8】(b)に示す形態に限られず,例えば下図(平成23年6月27日付\nけ意見書〔乙19〕の参考図1)の符号16のような形態のものまでも含むという のであれば,かかる形態は,発明の詳細な説明に記載されたものでも示唆されたも のでもないから,本件発明1(並びに本件発明1の構成要件を発明特定事項として引用する本件発明2及び同3)についての特許は,発明の詳細な説明に記載されて\nいない発明についてされたものとして,サポート要件違反の無効理由があると主張 する。
イ 特許請求の範囲の記載が,発明の詳細な説明に記載したもの(特許法36条 6項1号)といえるか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載と を対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発 明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識 できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時 の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか 否かを検討して判断すべきものである(知財高裁平成17年(行ケ)第10042 号同年11月11日特別部判決参照)。
ウ 本件特許の特許請求の範囲の請求項1には,前記前提事実(2)のとおり,連続 貝係止具において,「隣接する基材(1)同士はロープ止め突起(3)の外側が可 撓性連結材(13)で連結されず,ロープ止め突起(3)の内側が2本の可撓性連 結材(13)と一体に樹脂成型されて連結され,可撓性連結材(13)はロープ止 め突起(3)よりも細く且つロール状に巻き取り可能な可撓性を備えた細紐状であり,前記2本の可撓性連結材(13)による連結箇所は,2本のロープ止め突起(3)\nの夫々から内側に離れた箇所であり且つ前記2本のロープ止め突起(3)間の中心 よりも夫々のロープ止め突起(3)寄りの箇所として,2本の可撓性連結材(13) を切断すると,その切り残し突起(16)が2本のロープ止め突起(3)の内側に 残るようにした」旨が記載されている。
エ 本件明細書等の発明の詳細な説明には,次の記載がある(末尾の【】は,段 落番号を示す。)。 「本発明の連続貝係止具は,隣接する貝係止具11の2本のロープ止め突起3間 が2本の可撓性連結材13で連結され,2本の可撓性連結材13は貝係止具11が 差し込まれる縦ロープCの直径よりも広い間隔で2本のロープ止め突起3寄り箇所 を連結するので,貝係止具11を一本ずつ切断するときに可撓性連結材13の一部 が図8(b)のように切り残し突起16となって基材1に残って基材1から突出し ても,図8(a)のように貝係止具11を縦ロープCへ差し込むときに切り残し突 起16が邪魔にならず,縦ロープCが2本のロープ止め突起3間におさまり安定す る。又,貝係止具11を手で持って貝へ差し込むときに手(指)が切り残し突起1 6に当たらないため手が損傷したり,薄い手袋を手に嵌めて前記差込作業をしても 手袋が破れたりしにくい。」【0008】 「(連続貝係止具の実施形態1)本発明の連続貝係止具は図8(a)のように前 記実施形態の貝係止具11を間隔をあけて数千〜数万本平行に配置し,上下に隣接 する貝係止具11の基材1間を丸紐状の可撓性連結材13で連結して樹脂成型して 図12(a)(b)のようにロール状に巻くことができるようにしたものである。 図8(a)の場合はハ字状の2本のロープ止め突起3の間を2本の可撓性連結材1 3で連結してあり,しかも,2本の可撓性連結材13をロープ止め突起3寄り箇所 に配置して,2本の可撓性連結材13の間隔を縦ロープCの直径よりも広くしてあ る。このようにすると貝係止具11を一本ずつ切断する場合に可撓性連結材13の 一部が切り残されて図8(b)のように基材1に切り残し突起16が発生しても, それが縦ロープCへの差込時に邪魔になることがない。また,一本ずつ切断された 貝係止具11を貝の孔に差し込むために手で持っても切り残し突起16の部分が手 に当たらないため手が怪我したり,手に嵌めた作業用手袋が破れたりしにくい。」 【0026】
オ 上記に認定したところによれば,本件明細書等の発明の詳細な説明には,2 本の可撓性連結材による連結箇所を,2本のロープ止め突起の間で,かつ,2本の ロープ止め突起寄りの箇所とする構成により,可撓性連結材を切断したときに切り残し突起が残ったとしても,貝係止具を縦ロープへ差し込むときに切り残し突起が\n邪魔にならず,また,貝係止具を手で持って貝へ差し込むときに手(指)が切り残 し突起に当たらないため手が損傷したり,薄い手袋を手に嵌めて前記差込作業をし ても手袋が破れたりしにくいとの作用効果を奏することが明確に記載されている。 そうすると,本件明細書等の発明の詳細な説明に接した当業者において,本件発 明1に係る特許請求の範囲に記載された構成,すなわち,2本の可撓性連結材(13)による連結箇所を,2本のロープ止め突起(3)のそれぞれから内側に離れた\n箇所であり,かつ,2本のロープ止め突起(3)間の中心よりもそれぞれのロープ 止め突起(3)寄りの箇所とする構成を採用することにより,可撓性連結材(13)を切断した際の切り残し突起(16)の高さにかかわらず,本件発明1に係る課題\nを解決できると認識できることは明らかであるから,本件発明1が,発明の詳細な 説明に記載されていないものということはできない。同様の理由により,本件発明 2及び同3が,発明の詳細な説明に記載されていないものということはできない。 したがって,被告らの主張する無効理由2は認められない。

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平成28(受)1242  特許権侵害行為差止請求事件 平成29年3月24日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  知的財産高等裁判所

 製法特許について初めて均等が認められた事件について、上告が棄却されました。結論としては、二審(知財高裁大合議)と同じ(均等侵害認定)です。ただ、論旨は採用できないとしました。
 出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構\成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかったというだけでは,特許出 願に係る明細書の開示を受ける第三者に対し,対象製品等が特許請求の範囲から除 外されたものであることの信頼を生じさせるものとはいえず,当該出願人におい て,対象製品等が特許発明の技術的範囲に属しないことを承認したと解されるよう な行動をとったものとはいい難い。また,上記のように容易に想到することができ た構成を特許請求の範囲に記載しなかったというだけで,特許権侵害訴訟において,対象製品等と特許請求の範囲に記載された構\成との均等を理由に対象製品等が特許発明の技術的範囲に属する旨の主張をすることが一律に許されなくなるとする と,先願主義の下で早期の特許出願を迫られる出願人において,将来予想されるあらゆる侵害態様を包含するような特許請求の範囲の記載を特許出願時に強いられる\nことと等しくなる一方,明細書の開示を受ける第三者においては,特許請求の範囲 に記載された構成と均等なものを上記のような時間的制約を受けずに検討することができるため,特許権者による差止め等の権利行使を容易に免れることができるこ\nととなり,相当とはいえない。 そうすると,出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構\成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合であっても,それ だけでは,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識 的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するとはいえないというべきで ある。
(2) もっとも,上記(1)の場合であっても,出願人が,特許出願時に,その特許 に係る特許発明について,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,特許請求の範囲に記載された構\成を対象製品等に係る構成と置き換\nえることができるものであることを明細書等に記載するなど,客観的,外形的にみ て,対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構\成を代替すると認識し ながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときには,明細書の開示を受ける第三者も,その表\示に基づき,対象製品等が特許請求の範囲から除外されたものとして理解するといえるから,当該出願人において,対象 製品等が特許発明の技術的範囲に属しないことを承認したと解されるような行動を とったものということができる。また,以上のようなときに上記特段の事情が存す るものとすることは,発明の保護及び利用を図ることにより,発明を奨励し,もっ て産業の発達に寄与するという特許法の目的にかない,出願人と第三者の利害を適 切に調整するものであって,相当なものというべきである。 したがって,出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構\成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合において,客観 的,外形的にみて,対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構\成を代 替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときには,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲か\nら意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するというべきである。
そして,前記事実関係等に照らすと,被上告人が,本件特許の特許出願時に,本 件特許請求の範囲に記載された構成中の上告人らの製造方法と異なる部分につき,客観的,外形的にみて,上告人らの製造方法に係る構\成が本件特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて本件特許請求の範囲に記載しなかった旨を表\示していたという事情があるとはうかがわれない。
6 原審の判断は,これと同旨をいうものとして是認することができる。論旨は 採用することができない。

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◆二審はこちらです。平成27(ネ)10014

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平成26(ワ)8922  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年2月17日  東京地方裁判所

 輸入会社が輸入している商品について、特許権侵害であるとの警告について、最終的に侵害でなかった場合、製造会社の信用毀損行為(不競法2条1項14号(改正前))に該当すると判断されました。
 甲4書簡には,原告製品について「本製品は添付の弊社保有特許(特許第 4444410号,発明の名称:歯列矯正ブラケットおよび歯列矯正ブラケ ット用ツール)の請求項1に関連するものと思料しております。」と記載さ れているところ,本件発明に係る特許に「関連する」という文言は,本件発 明の技術的範囲に属する可能性があることを指摘するものと理解するのが素\n直である。そして,被告の常務取締役であるAが,バイオデントに送付した 甲23メールには,本件発明に係る特許について「使用許諾をすべきでない との意見が大勢を占めました。」と記載されており,被告がバイオデントに 対し,本件発明に係る特許の実施許諾をする意思がないことが明らかにされ ている。これらの事実を考慮すると,被告は,バイオデントに対し,原告製 品が本件発明の技術的範囲に属しているという事実及び被告が本件発明に係 る特許について実施許諾をする意思がないという事実を通知したということ ができる。そして,特許権は独占的排他的権利であり,特許権者において実 施許諾をする意思がない場合には,当該特許を業として実施している者は実 施行為を中止するほかないところ,実際にバイオデントは原告製品の販売を 中止しているから,バイオデントも,本件各告知は原告製品の輸入及び販売 の中止を求めるものと認識していたものと認められることからすれば,甲4 書簡による本件告知1の意義がやや不明瞭であるとしても,甲23メールに よる本件告知2を併せてみれば,本件各告知は,被告が,バイオデントに対 し,本件特許権侵害を理由として本件発明の実施行為である原告製品の輸入 及び販売の中止を求める侵害警告に当たると認めるのが相当である。 そして,被告の上記侵害警告は,バイオデントが原告から輸入して販売す る原告製品が特許侵害品である旨の告知であるから,原告の営業上の信用を 害する事実の告知であると認められる。 ところで,本件発明に係る特許については,冒認出願であることを理由と して,これを無効とすべき旨の審決が確定しており,同特許権は初めから存 在しなかったものとみなされるので(特許法125条),バイオデントによ る原告製品の輸入及び販売は,被告の特許権を侵害しないし,また,被告は 特許権に基づいて権利行使することはできない。 したがって,被告のバイオデントに対する本件各告知は,本件発明に係る 特許が存在しないにもかかわらず,原告製品の輸入及び販売がその特許権を 侵害するという事実を告知したものであって,虚偽の事実の告知に当たると 認めるのが相当である。
・・・・
被告は,権利侵害を疑われる行為を行う本人に対して権利侵害の事実を申\n述する行為は,不競法2条1項14号の不正競争行為に当たらないと主張す る。 しかし,バイオデントは権利侵害を疑われる行為を行う本人ではあるもの の,バイオデントに対し,本件各告知がされることにより,バイオデントで はなく,原告製品の製造元である原告の営業上の信用が害されるのであるか ら,上記告知は,「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知」に当た るというべきである。この点に関して被告は,バイオデントは原告と同一視 されるべき地位にあるなどとも主張するが,これを認めるに足りる証拠は ない。 また,被告は,本件各告知は正当な権利行使であり違法性が阻却されると も主張するが,上記(2)で説示したとおり,被告のバイオデントに対する本件 各告知行為には,登録された権利に基づく権利行使の範囲を逸脱する違法が あるというべきであるから,本件各告知は,正当な権利行使には当たらない というほかない。したがって,被告の上記主張はいずれも採用することができない。

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平成26(ワ)8134  特許権侵害に基づく損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年2月27日  東京地方裁判所

 技術的範囲に属しないと判断されました。下記の用語の解釈についても原告は特段の意味はないと述べましたが、裁判所は、無視はできないと述べてます。
 なお,原告は,本件明細書において,構成要件Aにいう「特定視距離矯正領\n域」は「近景よりも実質的に離れた特定距離に対応する面屈折力を有する」領域 (請求項1,【0016】)と定義されている旨主張するが,正確には,請求項1 や段落【0016】においても,「近景よりも実質的に離れた特定距離に対応する 面屈折力を有する特定視距離矯正領域」と表現されているのであって,「矯正」\n「領域」という語句が存する以上,これらの語句による意味の限定が加わり得るこ とは否定できない(すなわち,請求項1や発明の詳細な説明では,「領域A」とか 「第1領域」などといった記号的な用語を使っておらず,「矯正領域」という用語 を選択しているのであるから,その日本語の持つ意味合いをはなから無視すること はできない。)。そして,「矯正領域」という字義のほか,前記(ア)ないし(ウ)で説 示したところに照らすと,上記の「…対応する面屈折力を有する」という部分も, 眼鏡レンズ内の当該領域を視線が通過する場合に特定距離にある対象物が良く見え るような視力矯正を可能とする程度に当該領域内で一定ないしほぼ一定の面屈折力\nを有するという意味であると解するのが相当である。

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平成28(ネ)10061  損害賠償請求控訴事件  特許権 民事訴訟 平成29年2月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 画像補正データ生成システムについて、技術的範囲に属しないとした一審判断が維持されました。
 本件各発明の構成要件D1及びD2は,「出力画像データに対し中間的な周波数成\n分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像デ ータから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータ」と規定するもので あるから,「バンドパスデータ」には低周波成分は実質的に含まれてはいない。そし て,構成要件Eは,補正データ生成手段が,この「バンドパスデータ」に「対応し\nた画像補正テーブル」を出力するものであるが,この「対応」というものが,いか なる技術的意義を有するものかは,特許請求の範囲の記載のみからでは明らかでは ない。 そこで,検討するに,本件各発明の解決課題・作用効果は,前記1(2)(4)(5)エのと おりであって,補正データに低周波成分に対する補正を加えようとすることによっ て生じる画面中心部の輝度の低下を防止することである。また,本件各発明の実施 形態をみてみると,バンドパスフィルタリングにより低周波成分及び高周波成分を 除いたバンドパスデータを算出し,このバンドパスデータを「反転させた」画像補 正テーブルを生成し(本件明細書1の【0033】,本件明細書2の【0032】), 補正された画像を表示する際は,画像補正テーブルから得た補正データを,入力さ\nれた画像信号に加算している(本件明細書1の【0037】,本件明細書2の【00 36】)。この実施形態は,緩やかな表示むら(出力画像データの低周波成分)や細\nかい表示むら(出力画像データの高周波成分)はそのままとし(本件明細書1の【0\n012】,本件明細書2の【0012】参照),中間的な周波数成分のみを目標とし て,これを消去するとの技術思想に基づくものといえる。そして,本件各明細書に は,これ以外の実施態様の記載はない。そうすると,構成要件Eの「バンドパスデ\nータに対応した画像補正テーブル」は,バンドパスデータを打ち消す作用を持つよ うな画像補正テーブルをいうものと解される。なお,本件各明細書には,「表示むら\nは,各ピクセルの明るさが理想値と異なるために発生するので,あらかじめ各ピク セルの理想値とのズレを測定しておけば,そのズレに従って各ピクセルへの入力画 像値を補正することで,表示むらをキャンセルすることが可能\である。」(本件明細 書1の【0038】,本件明細書2の【0037】)との記載があるが,本件各明細 書には,このための具体的な構成が記載も示唆もされておらず,この記載が目標値\nを定めて補正を行うような画像補正方法を開示するとはいい難く,このような実施 形態が本件各発明に含まれるとは認められない。 以上からすると,本件各発明において,補正前のデータである出力画像データに は,その定義より低周波成分,中間的な周波数成分又は高周波成分が含まれている ところ,バンドパスデータには中間的な周波数成分のみが含まれ,その中間的な周 波数成分は補正後の画像では消去されるから,補正後の画像には,補正前のままの 低周波成分又は高周波成分のみが残ることになる。そうすると,補正前後の画像の 差分をとると,中間的な成分のみが残るはずであって,この差分に低周波成分は実 質的には存在しないことになる。 すなわち,補正前後の画像の差分の中に低周波成分が含まれるシステムは,まず, 低周波成分を分離していないことにより構成要件D1 及びD2を充足しないものと 考えられ,仮に,そのように言い切れないとしても,「バンドパスデータに対応した 画像補正テーブル」を有しないことによって構成要件Eを充足しないものであり,\nいずれにしても,本件各発明の技術的範囲に属しないこととなる。

◆判決本文

◆一審はこちらです。平成27(ワ)14871

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平成29(ワ)13033  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年2月23日  東京地方裁判所

 入力支援コンピュータプログラムクレーム(CS関連発明)についての特許権侵害事件です。東京地裁(46部)は、文言侵害・均等侵害とも否定しました。
 文言侵害の成否
ア 構成要件Eは,本件発明1の特許請求の範囲の記載によれば,処理手段\nが入力手段を介して「ポインタの位置を移動させる命令」を受信すると操 作メニュー情報を表示するものである。この「ポインタの位置を移動させ\nる命令」につき,本件明細書(甲2)には,1)「入力手段を介してポイン タの位置を移動させる命令を受信する」とは,入力手段としてのポインテ ィングデバイスから,画面上におけるポインタの座標位置を移動させる電 気信号を処理手段が受信することである(課題を解決するための手段,段 落【0020】),2)命令ボタンを押し続けたままで出力手段としてのデ ィスプレイの画面上に表示されているポインタの移動命令を行う,例えば,\n利用者がマウスにおける左ボタンや右ボタンを押したままマウスを移動さ せる行為がこれに該当する(発明を実施するための最良の形態,段落【0 079】)と記載されている。これに加え,本件発明1におけるポインタ が画面上に表示され,画面上の特定の位置を指し示すものをいうことに鑑\nみると,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令」とは,利 用者が画面上に表示されているポインタの位置を移動させる操作を行うこ\nとを意味すると解するのが相当である。 一方,本件ホームアプリにおいて,原告が「操作メニュー情報」に当た ると主張する左右スクロールメニュー表示は,利用者がショートカットア\nイコンをロングタッチすることにより表示されるものであり(前記前提事\n,画面上に表示されているポインタ(ショートカットアイコン並\nびに青い線の交点及び白い円形の画像。前記1(3))の位置を移動させる操 作により表示されるとは認められない。\n以上によれば,本件ホームアプリが構成要件Eを充足すると認めること\nはできない。
イ これに対し,原告は,「ポインタの位置の移動」とは,ポインタが画面 上に表示されるか否かにかかわらず,コンピュータプログラムがポインタ\nの座標位置の情報の書換えを行うことをいうと主張するが,前記1(1)のと おりポインタは画面上に表示されるものであるから,原告の主張は前提を\n欠き,これを採用することができない。なお,本件ホームアプリにおいて は,タップ操作やスライド操作の際にもポインタの座標位置の書換えが行 われることが認められるが(甲8の1及び2),これらの操作では左右ス クロールメニュー表示は表\示されないのであるから,本件ホームアプリが 「ポインタの座標位置の書換え」により左右スクロールメニュー表示を表\ 示するものでないことは明らかである。 また,原告は,タッチパネルでは指等が触れていれば継続的にポインタ の位置を移動させる命令を受信しており,ロングタッチを識別するために 入力されるデータ群には「ポインタの位置を移動させる命令」が含まれる から,本件ホームアプリは構成要件Eを充足するとも主張する。しかし,\nこの主張は「ポインタの位置を移動させる命令」を受信してもロングタッ チと識別されるまでは左右スクロールメニュー表示が表\示されないことを いうものにほかならず,失当というほかない。
均等侵害の成否
ア 原告は,本件ホームアプリにおける「利用者がタッチパネル上のショー トカットアイコンを指等でロングタッチする操作を行うことによって操作 メニュー情報が表示される」という構\成は「利用者がタッチパネル上の指 等の位置を動かして当該ショートカットアイコンを移動させる操作を行う ことによって操作メニュー情報が表示される」という本件発明の構\成と均 等であると主張するので,この点について検討する。
・・・・
ウ 本件明細書の上記各記載によれば,本件発明1は,従来の技術において はドラッグ&ドロップを行うに際して継続的な操作に適用させるのが困難 であるなどといった問題点があったことから,1)利用者が必要になった場 合にすぐに操作コマンドメニューを画面上に表示させ,かつ,2)必要であ る間はこれを表示させ続けられる手段の提供を目的とするものである。そ\nして,上記1)を達成するために「入力手段を介してポインタの位置を移動 させる命令を受信すると」操作メニュー情報を表示し(構\成要件E),上 記2)を達成するために出力手段に表示した操作メニュー情報がポインタに\nより指定されなくなるまで命令の実行を継続する(同F)という構成を採\n用した点に特徴を有するものと認められる。そうすると,入力手段を介し てポインタの位置を移動させる命令を受信することによってではなく,ポ インタがロングタッチされることによって操作メニュー情報を表示すると\nいう構成は,本件発明1と本質的部分において相違すると解すべきである。\n
エ これに対し,原告は,利用者がドラッグ&ドロップ操作を所望している 場合に操作メニュー情報を表示することが本質的部分であると主張する。\nそこで判断するに,原告が操作メニュー情報に当たると主張する左右スク ロールメニュー表示は,ショートカットアイコンをホーム画面の別のペー\n一方,本件ホームアプリにおいてロングタッチがされた場合に常にショー トカットアイコンをホーム画面の別のページへ移動させるドラッグ&ドロ ップ操作が行われると認めるに足りる証拠はない。そうすると,ロングタ ッチがされたことをもって上記のドラッグ&ドロップ操作が所望されてい るとみることはできないから,本質的部分に関する原告の上記主張を前提 としても,均等による本件特許権の侵害をいう原告の主張は採用すること ができない。

◆判決本文

◆関連事件です。同じく請求棄却です。平成29(ワ)13034

◆こちらも本件特許権は同じで請求棄却です。平成26(ワ)65

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平成27(ワ)4461  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年2月10日  東京地方裁判所

 CS関連発明の特許権侵害訴訟です。東京地裁は、均等侵害も第1、第2、第3要件を満たさない、分割要件違反、および一部のクレームについてサポート要件違反があるとして請求棄却しました。
 特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の 記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的\n部分であると解すべきである。 そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づ いて,特許発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で,特許発 明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的 思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定さ\nれるべきである。すなわち,特許発明の実質的価値は,その技術分野に おける従来技術と比較した貢献の程度に応じて定められることからすれ ば,特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載,特に 明細書記載の従来技術との比較から認定されるべきである。 ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載されて いるところが,出願時の従来技術に照らして客観的に見て不十分な場合\nには,明細書に記載されていない従来技術も参酌して,当該特許発明の 従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が認定さ\nれるべきである。 また,第1要件の判断,すなわち対象製品等との相違部分が非本質的 部分であるかどうかを判断する際には,上記のとおり確定される特許発 明の本質的部分を対象製品等が共通に備えているかどうかを判断し,こ れを備えていると認められる場合には,相違部分は本質的部分ではない と判断すべきであり,対象製品等に,従来技術に見られない特有の技術 的思想を構成する特徴的部分以外で相違する部分があるとしても,その\nことは第1要件の充足を否定する理由とはならないと解すべきである (知的財産高等裁判所平成28年3月25日(平成27年(ネ)第100 14号)特別部判決参照)。
イ 原告は,本件発明1の本質的部分は「一の注文手続で,同一種類の金 融商品について,複数の価格にわたって一度に注文を行うこと」及び 「その注文と約定を繰り返すようにしたこと」にとどまると主張する。 この点,確かに,本件明細書等1には,本件発明1の課題として, 「本発明は・・・システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うこと なく指値注文による取引を効率的かつ円滑に行うことができる金融商品 取引管理方法を提供することを課題としている。」(段落【0006】) との記載がある。この記載に,「請求項1・・・に記載の発明によれば, ・・・一の注文手続きを行うことで,同一種類の金融商品を複数の価格 にわたって一度に注文できる。」(段落【0017】),「請求項1・ ・・に記載の発明によれば,・・・約定した第一注文と同じ第一注文価 格における第一注文の約定と,約定した第二注文と同じ前記第二注文価 格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設定するこ とにより,第一注文と第二注文とが約定した後も,当該約定した注文情 報群による指値注文のイフダンオーダーを繰り返し行うことが可能にな\nる。」(段落【0018】)との各記載も併せれば,原告の主張する 「一の注文手続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたっ て一度に注文を行うこと」及び「その注文と約定を繰り返すようにした こと」との部分が本件発明1の本質的部分,すなわち従来技術に見られ ない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であるように見えなくもな\nい。 しかし,本件発明1に係る特許(本件特許1)の出願時の従来技術に 照らせば,本件明細書等1に本件発明1の課題として記載された「シス テムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく指値注文による取 引を効率的かつ円滑に行うことができる金融商品取引管理方法を提供す ること」(段落【0006】)は,本件発明1の課題の上位概念を記載 したものにすぎず,客観的に見てなお不十分であるといわざるを得ない。\n以下,詳述する。
以上の各記載に,上記エのとおり,引用文献1には既に「一の注文手 続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたって一度に注文 を行う」という技術が開示されていたことも併せれば,本件発明1は, 単に一の注文手続で複数の価格にわたって一度に注文を行うだけではな く,「請求項1・・・の発明」による「売買注文申込情報」,すなわち,\n「金融商品の種類」(構成要件1B−1),「注文価格ごとの注文金額」\n(構成要件1B−2),「注文価格」(構\成要件1B−3),「利幅」 (構成要件1B−4)及び「値幅」(構\成要件1B−5)を示す各情報 に基づいて,同一種類の金融商品を複数の価格について指値注文する注 文情報からなる注文情報群を生成することにより,金融商品を売買する 際,一の注文手続きを行うことで,同一種類の金融商品を複数の価格に わたって一度に注文できるという点にその本質的部分があるというべき である。
カ これを被告サービス1についてみると,被告サービス1では「利幅」 (構成要件1B−4)及び「値幅」(構\成要件1B−5)を示す情報が 入力されないのであるから,本件発明1と被告サービス1の相違点が特 許発明の本質的部分ではないということはできない。 したがって,被告サービス1については,均等の要件のうち第1要件 を満たさない。
(4) 第2要件(置換可能性)について
次に,均等の第2要件について検討する。 原告は,本件発明1の課題は「専門的な知識がなく,必ずしも正確に相場 変動を予測することができなくても,また,常に相場に付ききりとならなく\nても,FX取引により所望の利益を得ること」にある旨主張している。 しかし,仮に本件発明1の課題が原告の主張するところにあるとしても, 本件発明1と被告サービス1とは,課題解決原理が全く異なる。 すなわち,本件発明1では,顧客に利幅(構成要件1B−4)及び値幅\n(構成要件1B−5)をはじめとして全ての注文を直接的かつ一義的に導き\n出すに足りる情報を入力させた上,これにより,買いの指値注文及び売りの 指値注文からなる注文のペアを複数生成させ,この複数の注文のペアからな る注文を行うことで,上記課題を解決している。 一方,被告サービス1では,顧客が3)「参考期間」を選択しさえすれば, 4)「想定変動幅」を提案し,専門的な知識が必要である利幅(構成要件1B\n−4)及び値幅(構成要件1B−5)を顧客に入力させることなく,複数の\n注文のペアからなる注文を行うことで,上記課題を解決している。すなわち, 被告サービス1では,顧客に全ての注文を直接的かつ一義的に決定させるの ではなく,顧客には専門的な知識が必要とされる情報を入力させないまま, 注文を行わせるものである。 このように,本件発明1と被告サービス1は,金融商品の相場変動を正確 に予測することができなくてもFX取引による所望の利益を得るという課題\nを,顧客に利幅(構成要件1B−4)及び値幅(構\成要件1B−5)という 専門的な知識が必要である情報を入力させることで解決するか(本件発明 1),それともこれらの情報を入力させないまま解決するか(被告サービス 1)という課題解決原理の違いがあり,そのため作用効果も異なってくるも のといわざるを得ない。 したがって,均等の第2要件に関する原告の主張は理由がない。
(5) 第3要件(容易想到性)について
さらに,均等の第3要件について検討する。
ア 原告は,甲15公報及び甲17公報並びに他の証券会社の提供した 「クイック仕掛け(買いゲリラ100pips)」という機能に照らせば,値幅\nを直接入力せずに他の情報を入力してこれらの情報から値幅を算出して 決定するという構成や,あらかじめ設定された値を用いるという構\成は, 被告サービス1の提供開始時において既に公知の構成であったと主張す\nるので,以下検討する。
イ まず,甲15公報の「要約」欄には,以下の記載がある。
・「注文情報生成部は,取り引きの上限価格と,取り引きの下限価格と, 同時に生成される注文情報群の数とを取得し,取得された値に基づいて, 第一注文どうしの価格差が一定となり,第二注文どうしの価格差が一定 となり,かつ,同一の注文情報群に属する第一注文と第二注文との価格 差が一定となるように,第一注文及び第二注文の価格をそれぞれ演算す る。」 また,甲17公報には,以下の記載がある。
・「前記表示手段における上側の接触位置に対応して表\示された前記価 格情報に基づいて上限価格を設定すると共に前記表示手段における下側\nの接触位置に対応して表示された前記価格情報に基づいて下限価格とを\n設定させると共に,前記注文発注手段に対し,前記上限価格と前記下限 価格との間に形成された前記発注価格帯において前記注文情報を発注さ せることを特徴とする金融商品取引システム。」(【請求項1】)
・「前記注文発注手段は,前記任意の発注条件として,前記金融商品の 注文個数情報を備え,前記発注価格帯において,前記注文個数情報に基 づく複数の前記注文情報を,それぞれの価格差が均等な指値注文を発注 するように生成することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一つに記 載の金融商品取引システム。」(【請求項7】)
・「ポジション・ペアの数は,第一形態注文入力画面33(図8)で注文個 数入力欄(図示せず)に入力された注文個数情報の数値,又は,発注価 格帯の数値を値幅入力欄(図示せず)に入力された数値で割った値のう ちの整数値と同じ個数に等しく設定される。」(段落【0082】)
ウ 上記各記載を踏まえ,原告は,甲15公報にはトラップを仕掛ける範 囲(「取引の上限価格」と「取引の下限価格」)と,トラップの本数 (「同時に生成される注文情報群の数」)を入力し,これらの情報に基 づいて値幅及び利幅(「第一注文どうしの価格差」及び「同一の注文情 報群に属する第一注文価格と第二注文価格との差」)を一定となるよう に演算して決定する構成が開示されており,また,甲17公報にも,ト\nラップを仕掛ける範囲(タッチパネルの上下の接触位置に対応する「発 注価格帯」)と,トラップの本数(「注文個数情報」)を入力し,これ らの情報に基づいて,値幅が均等となるように演算して決定する構成が\n開示されていると主張する。 しかし,被告サービス1においては,そもそも注文情報群の数(原告 の主張する「トラップの本数」)を顧客が入力する構成とはなっていな\nい。すなわち,原告の主張によっても,被告サービス1では,顧客は6) 「対象資産(円)」欄に金額を入力するのみであり,被告サーバにおい てその額の証拠金で生成可能な数の注文情報群を生成するというのであ\nる。 加えて,前述のとおり,本件発明1(構成要件1B)と被告サービス\n1の相違点は,本件発明1では構成要件1B−4(利幅を示す情報)及\nび構成要件1B−5(値幅を示す情報)を入力するのに対し,被告サー\nビス1では2)「注文種類」ないし6)「対象資産(円)」の五つの情報を 入力する点にあるところ,甲15公報及び甲17公報にはこれらの五つ の情報の入力については何ら開示されていない。 エ さらに,他の証券会社の提供した「クイック仕掛け(買いゲリラ 100pips)」という機能についてみても,原告によれば,同機能\では利幅 及び値幅はあらかじめ設定されていて,顧客が入力するものではないと いうのである。そうすると,利幅(構成要件1B−4)及び値幅(構\成 要件1B−5)が顧客の入力に係る本件発明1に対し,利幅(構成要件\n1B−4)及び値幅(構成要件1B−5)があらかじめ設定されている\n「クイック仕掛け(買いゲリラ100pips)」の技術を適用する基礎がそも そも存在しないものといわざるを得ない。 オ 以上によれば,本件発明1の構成を被告サービス1のものに置換する\nことについて,当業者が被告サービス1の開始時点において容易に想到 することができたとはいえない。 したがって,均等の第3要件に関する原告の主張は理由がない。
・・・・
原出願である本件特許2に係る本件明細書等2の段落【0005】ないし 【0008】の記載によると,本件特許2は,従来技術の課題として,取引 開始直後の注文が成行注文のイフダンオーダーをすることができなかったこ と及びイフダンオーダーを繰り返し行えなかったことを技術課題として設定 している。 この課題を解決する手段として,本件明細書等2では,取引開始直後に約 定する成行注文の約定価格を基準として,注文情報群を生成し,これに基づ いて,決済注文である指値注文及び逆指値注文を行い,当該指値注文が約定 すると,新たな注文情報群を生成させ,これに基づいて,先行する成行注文 の約定価格と同一の価格の指値注文を行い,当該指値注文が約定すると,当 該新たな注文情報群に基づいて,当該指値注文の決済注文であって,先行す る決済注文である指値注文及び逆指値注文と同一の価格の指値注文及び逆指 値注文を行うことが開示されている。 すなわち,本件明細書等2の段落【0044】では,「・・・成行リピー トイフダンでは,一回目のイフダンでは,第一注文で買い注文または売り注 文の一方を成行で行ったのち,第二注文で買い注文または売り注文の他方を 指値で行う。・・・この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このときの 指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とから なるイフダンが,複数回繰り返される。」とされ,段落【0062】では 「ここで,本実施形態の第一注文は,一回目は成行注文で行われるが,二回 目以降は指値注文で行われる。このため,約定情報生成部14は,当該成行 注文の約定価格を,二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。」とされ た上,【図7】においても,2回目以降の指値の第一注文の価格を1回目の 成行注文の約定価格とする旨の記載がある。そして,証拠(乙11,13) 及び弁論の全趣旨によれば,これらの段落【0044】及び【0062】並 びに【図7】は,出願当初の明細書等から補正がされていないものと認めら れる。
(4) そこで,構成要件3F−2の「前記指値注文」の構\成と,本件明細書等2 の記載とを比較すると,本件明細書等2には2回目以降の指値の第一注文の 価格を1回目の成行注文の約定価格とすることしか開示されておらず,2回 目以降の指値の第一注文の価格を任意の価格にできるといった記載はない。 また,2回目以降の指値の第一注文の価格をどのような価格にするのか,言 い換えると,1回目の成行注文の約定価格以外のどのような価格に設定する のか,そのための方法等は一切開示されていない。 そうすると,本件明細書等2の出願当初及び分割直前の明細書等には,そ の技術課題及び課題を解決するための手段からみて,2回目以降の指値の第 一注文の価格を任意の価格に設定できることが形式的にも実質的にも記載さ れていないものといわざるを得ない。 したがって,本件発明3の構成要件3F−2は,分割出願の出願日が原出\n 願の出願日へ遡及するための要件である,上記1)及び2)の要件のいずれも満 たさないから,本件発明3に係る特許出願には特許法44条2項の適用がな く,分割要件違反となるものというべきである。
(5) 原告の主張に対する判断
この点に関して原告は,本件発明2及び3の技術思想は「顧客が煩雑な注 文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができて, システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際 に顧客が被るリスクを低減させることができる。」ことにあり,2回目以降 の第一注文の指値価格をどのようなものにするのかは,上記技術思想とは直 接の関係がないため,当業者において適宜選択・決定すれば足りる事項であ ると主張する。 しかし,上記(3)において引用したところからすれば,本件発明2の技術 思想は,先行する成行注文の約定価格と同一の価格の指値注文を行うところ にもあるということになる。そうすると,本件明細書等2に対し,システム が2回目以降の指値の第一注文の指値価格を決定するという構成を追加する\nことは,新たな技術的事項を導入するものというべきであるから,原告の上 記主張はその前提を欠き,採用することができない。 (6) 以上によれば,本件発明3に係る特許出願の出願日は,原出願の出願日ま で遡及せず,現実の出願日である平成26年11月13日となるところ,本 件発明2に係る特許出願の出願公開の公開日は平成25年7月11日である から(甲4の2),本件発明3の新規性は,本件発明3を下位概念化した本 件発明2によって,否定されることになる。 したがって,本件発明3に係る特許は,特許法29条1項3号に違反して されたものであるから,同法123条1項2号によって特許無効審判により 無効にされるべきものである。
・・・・
(1) 特許制度は,明細書に開示された発明を特許として保護するものであり, 明細書に開示されていない発明までも特許として保護することは特許制度の 趣旨に反することから,特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件が定 められたものである。 したがって,同号の要件については,特許請求の範囲に記載された発明が, 発明の詳細な説明の欄の記載によって十分に裏付けられ,開示されているこ\nとが求められるものであり,同要件に適合するものであるかどうかは,特許 請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に 記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか,すなわち, 発明の詳細な説明の記載と当業者の出願時の技術常識に照らし,当該発明に おける課題とその解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な 技術的事項が発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討して判断すべ きものと解される。
(2) これを本件についてみるに,原告の主張によれば,構成要件3F−2の\n「前記指値注文」とは,その価格については何の限定もなく,任意の指値価 格をその指値価格とする指値注文ということになる(前記10(3))。しかる に,前記10(3)で引用した本件明細書等2の段落【0044】及び【006 2】並びに【図7】は,本件明細書等3の段落【0042】及び【0060】 並びに【図7】に相当するところ,これらの段落等にも,その技術課題及び 課題を解決するための手段からみて,2回目以降の指値の第一注文の価格を 任意の価格に設定できることが形式的にも実質的にも記載されているとはい えない。 そうすると,当業者において,本件発明3の解決手段その他当業者が当該 発明を理解するために必要な技術的事項が,本件明細書等3の発明の詳細な 説明に記載されているものと認めることはできない。
(3) したがって,本件発明3は特許法36条6項1号に規定するサポート要件 を満たしていないことになるから,本件発明3に係る特許は同法123条1 項4号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。

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平成26(ワ)8133  特許権侵害損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年2月27日  東京地方裁判所

 無効判断には踏み込まず、技術的範囲に属しないと判断されました。
 ウ 本件明細書の上記イの記載からすると,1)装用時の光学性能を重視して処方面を非球面化した累進屈折力レンズは,測定基準点において面非点隔差が発生する\n結果,レンズメーターで測定される測定度数が処方度数と異なってしまうという課 題があったこと,2)乙4公報記載の累進屈折力レンズでは,処方度数と測定度数が 異なるという上記課題を解決するため,処方面の主注視線に沿った線上部分の一部 に面非点隔差の発生しない領域を設けることとし,当該領域をレンズをフレーム形 状に加工する際に不要部分として廃棄される位置としたこと,3)上記乙4公報記載 のものでは,不要部分として廃棄される領域において測定度数を得ることから,レ ンズの度数測定の本来の目的(装用者の処方どおりにレンズが正しく作成されてい るか否か)との関係で適切とはいえないという問題があったこと,4)本件各発明は, これらを踏まえ,装用状態における光学性能を良好に改善しているにもかかわらず,眼鏡店やユーザーによるレンズの度数測定を容易に行うことのできる累進屈折力レ\nンズを提供することを目的としたものであって,処方面の非球面形状により発生す る面非点隔差成分と処方度数の矯正に必要な球面又はトーリック面により発生する 面非点隔差成分との差の絶対値の平均値が,レンズの度数を測定するための測定基 準点を含む近傍の所定領域に亘って所定の値以下に抑えられているとの構成を有することにより,処方面の非球面化により装用状態における光学性能\を補正する構成\nを採用しているにもかかわらず,例えばレンズメーターを用いて測定基準点を基準 として測定することにより処方度数とほぼ同じ測定度数を得ることができる,とさ れていることが認められる。 また,本件明細書の上記イの記載によれば,本件各発明の実施に際しては,上記 所定領域を広くすると,度数測定には有利となるが,その代償として光学性能が低下するため,この点を考慮して所定領域を定めなければならず,所定領域は,「装\n用状態における光学性能を良好に改善しているにもかかわらず,眼鏡店やユーザーによるレンズの度数測定を容易に行うことのできる累進屈折力レンズを提供するこ\nとを目的とする」という発明の目的を達成するように定められる必要があり,また, 装用者の処方や使用条件,製品の仕様,度数測定方法,測定器の仕様のうち少なく とも一つの条件を考慮して,平均値ΔASavを所定の値以下に抑えるべき測定基 準点を含む近傍の所定領域の大きさや形状を決定することによって,より優れた光 学性能と度数測定の容易さとの両方を得ることが可能\となる,とされていることが 認められる。
・・・・
このように,レンズメーターを用いて測定した球面度数及び乱視度数の値を処方 球面度数及び処方乱視度数と略同じ値にするため,本件各発明は,「測定基準点を 含む近傍の所定領域」とその領域における「所定の値」を設けたものであり,処方 面において改善された光学性能を犠牲にしても,レンズメーターによって測定する「測定基準点を含む近傍の所定領域」において局部的な面補正をし,面非点隔差成\n分を所定の値以下にしようとするものであるから,構成要件Cにいう「測定基準点を含む近傍の所定領域」とは,それ以外の領域とは区別された領域であることを当\n然の前提としているものというべきである。
・・・・
このように,被告製品1,2及び4は,遠用度数測定点を中心とした遠用部領域 全体(被告製品2のうち,上記図中の2)−2については,ほぼ全体),被告製品3 は近用度数測定点を中心とした近用部領域の領域全体において,面非点隔差の平均 値が本件各発明の構成要件Dにおける所定の値(0.15ディオプター)を大きく下回っている。
イ そうすると,被告各製品においては,レンズの測定基準点を含む処方面の非 点隔差は,光学設計上,一定の領域における光学性能を犠牲にしても所定の値以下とするような局部的な面補正,つまり,「所定の値以下」にされた「所定領域」を\n設ける必要がない構造であることが認められる。したがって,被告各製品は,構\成要件Cにいう「所定領域」に相当する構成を有\nしないものというべきである。

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平成26(ワ)20319  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年1月27日  東京地方裁判所(40部)

 盗難防止タグに関する特許侵害事件において、請求項における「暗号コード」という用語について争われました。被告製品は暗号化していないとして請求棄却されました。
 「暗号」とは,一般に,「通信の内容が第三者にもれないように,おたが いに約束して使う記号(のしくみ)」(三省堂国語辞典第7版52頁〔甲 2〕),「秘密を保つために,当事者間にのみ了解されるようにとり決めた 特殊な記号・ことば。あいことば。」(広辞苑第4版99頁〔甲5〕), 「第三者に通信内容を知られないように行う特殊な通信(秘匿通信)方法の うち,通信文を見ても特別な知識なしでは読めないように変換する表記法\n(変換アルゴリズム)のこと」(ウィキペディア〔乙1〕),「秘密にした い情報をかき混ぜて(暗号)特定の者以外にはその内容が解らないようにす ること。」(情報通信用語辞典13頁〔乙3〕),「情報の意味が当事者以 外にはわからないように,情報を変換すること」(エンサイクロペディア電 子情報通信ハンドブック〔乙17〕)との意味を有するとされている。 また,「コード」とは,「文字や記号,数字などをコンピューターが識別 するためにまとめられた符号」(IT用語辞典BINARY〔乙2〕), 「データを表現するための一定の明確なルールあるいはそのルールに基づい\nて表現されたもの」(情報通信用語辞典100頁〔乙3〕)との意味を有す\nるとされている。 以上を前提にすると,本件発明4及び6の構成要件A4,B4及びB6に\nいう「暗号コード」とは,通信の内容が第三者に知られることのないように, 当事者間にのみ了解されるように取り決めた特殊な記号,文字ないし数字を まとめた符号を意味するものと解するのが相当である。
(2) これを被告製品3及び4についてみるに,被告によれば,被告製品3及び 4は「ID情報」を有しているが,この「ID情報」とは単なる数字にすぎ ないものと認められる(原告も明らかに争わず,これに反する証拠も存在し ない。)。そうすると,単なる数字にすぎない以上,その内容が「第三者に 知られることのないよう」にしたものではないのであるから,被告製品3及 び4の「ID情報」は,通信の内容が第三者に知られることのないよう,当 事者間にのみ了解されるように取り決めた特殊な記号,文字ないし数字をま とめた符号ではないのであって,「暗号コード」に該当するものとはいえな い。 そして,本件全証拠を精査しても,被告製品3及び4が「ID情報」以外 に「暗号コード」に該当するような符号を使用していることを認めるに足り る証拠はないから,本件においては,被告製品3及び4は,構成要件A4,\nB4及びB6にいう「暗号コード」を充足しないというべきである。
(3) 原告の主張に対する判断
この点に関して原告は,本件発明4及び6にいう「暗号コード」とは,コ ードの一部を任意の数字(信号)を組み合わせたものとしてリセットコード を設定し,送受信するものにすぎず,辞書等における「暗号」の意味とは異 なるものであって,このことは本件明細書等の記載からも明らかであると主 張する。 しかし,明細書の技術用語は,特に明細書の中で定義して特定の意味に使 用している場合を除き,原則として学術用語を用い,その有する普通の意味 を用い,かつ特許請求の範囲及び明細書全体を通じて統一して使用されなけ ればならないところ(特許法施行規則24条参照),本件明細書等において は,「暗号コード」の意義に関し,段落【0073】において「『暗号』は 4桁の暗号コードである。」と記載されているにすぎず,「暗号コード」な いし「暗号」の意味が原告主張のようなものであることにつき,何らの明確 な定義付けもされておらず,また辞書等における「暗号」の意味と異なるな どといった示唆もされていない。したがって,「暗号コード」とは電気通信 技術に関する技術的知識を有する当業者が理解する通常の意味で解釈すべき であるから,原告の上記主張は採用することができない。

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平成28(ワ)37954  承継参加申立事件  特許権  民事訴訟 平成29年1月31日  東京地方裁判所(第47民)

 録画機構を含まないとして、構\成要件を具備せず非侵害と判断されました。外付けのHDDを準備するのはユーザであるというものです。
 以上の特許請求の範囲や「発明の詳細な説明」の記載を総合すると,本 件発明は,デジタル格納部を含むユーザテレビ機器を備えた双方向テレビ 番組ガイドシステムに係る発明であるというべきである。 なお,明細書の【図1】(本件発明による例示的システムとされている。 段落【0011】ないし【0013】参照)においても,本件発明の「双 方向テレビ番組ガイドシステム」が,主設備(12),番組ガイドデータ ソース(14),テレビ配信設備(16),ユーザテレビ機器(22)を\n全て含むことが示されている。 イ 他方で,証拠(甲10の1及び2,14,16)及び弁論の全趣旨によ れば,被告物件である液晶テレビ製品は,単に放送を受信するだけで,い ずれもそれ自体に録画できるメモリー部分(デジタル格納部)を備えてお らず,録画先としては,外付けのUSBハードディスクやレグザリンク対 応の東芝レコーダーとされており,これらを被告物件に接続することによ って初めて,被告物件で受信した番組を上記ハードディスク等に録画する ことが可能であるものと認められる。
ウ 以上のとおり,本件発明は,デジタル格納部を含むユーザテレビ機器を 備えた双方向テレビ番組ガイドシステムに係る発明であるから,被告物件 (液晶テレビ製品)が本件発明の技術的範囲に属するというためには,被 告物件が「番組をデジタル的に格納可能な部分」を含むことが必要である\nところ,被告物件は,それ自体にテレビ番組をデジタル録画可能なメモリ\nー部分を有していないから,この点において,構成要件Cを充足しないと\nいうべきである。
エ これに対し,原告は,本件発明は「双方向テレビ番組ガイドシステム」 の発明であって,テレビ本体やデジタル格納デバイス自体の発明ではなく, 構成要件Aは「双方向テレビ番組ガイドシステム」が「ユーザテレビ機器\n(22)」自体を備えることを規定するものではないし,構成要件Cも,\nあくまで複数の番組をデジタル的に格納する「手段」を構成要件の内容と\nして規定するものであって,デジタル格納デバイスを規定しているわけで はないから,被告物件自体がUSBハードディスクを備えているか否かは, 本件発明の構成要件充足性には無関係である旨主張する。\nしかしながら,原告の上記主張は,上記で説示した特許請求の範囲や明 細書の各記載(例えば,本件発明の目的が「従来双方向番組ガイドシステ ムにより提供されたものよりも高度な機能を提供するように番組ガイドを\n用いることを可能にするデジタル格納部を備えた双方向番組ガイドシステ\nムを提供すること」であるとの明細書の記載(段落【0006】)等)に 明らかに反するものであるから,採用することができない。
(2) 構成要件Dの充足性について\n ア 証拠(甲7,乙14,15)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が 認められる。
・・・
イ このように,本件特許の出願人であったユナイテッド社は,本件特許の 出願段階で,特許庁に対し,本件発明が「引用文献3」(本件の乙20に 相当する。)記載の発明とは異なり,進歩性を有することを示すことを目 的として,本件発明では,同文献記載の発明とは異なり,「番組データが 格納される前に,番組が格納される」旨主張していたものである。そして, 特許庁では,ユナイテッド社の以上のような主張をも考慮した上で,本件 発明は「引用文献3」記載の発明とは異なり,かつ同発明からは容易想到 ではないとして,特許査定をしたものと解される。そうであれば,本件発 明の構成要件Dにおける番組の格納と番組データの格納の先後関係につい\nては,ユナイテッド社の上記主張のとおり,「番組データが格納される前 に番組が格納される」ものと解すべきであり,上記特許出願人の地位を承 継した原告が上記特許出願人による上記主張内容と異なる主張を本件訴訟 においてすることは,禁反言の原則に反するものとして許されないという べきである。
ウ そうであるところ,被告物件において「番組データが格納される前に番 組が格納(録画)される」という先後関係があるものとは認められないか ら,被告物件は,構成要件Dを充足しない。
エ なお,原告は,回答書(乙14)における引用文献3についての説明は, 単に本件発明と引用文献3記載の発明の内容の違いを説明したにすぎない とも主張するが,原告の同主張を前提としても,上記特許出願人が本件特 許の出願過程において上記のような説明をしたことに何ら変わりはないか ら,原告の上記主張は上記説示を何ら左右するものではない。

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平成28(ネ)10046  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年1月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(1部)は、一部の構成を有していないと判断しました。1審の判断は結論において誤っていないので原審維持です。1審は進歩性なしとして非侵害の判断をしていました。なお、特許庁は、屈折率の測定方法に関する訂正事項が訂正要件を見たしていると判断してました。
 前記アによると,本件各明細書には,樹脂組成物の屈折率について「硬化樹 脂層の屈折率測定方法は,JIS K 7142の「プラスチックの屈折率測定方 法」(Determination of the refractive in dex of plastics)に従う。具体的には,ガラス繊維織物が含まれ ていない硬化性樹脂のフィルムを,ガラス繊維織物を含む場合と同じ条件で作成し, アッベ屈折計を用いて測定する。」と記載されていることが認められる。したがって, 樹脂組成物の屈折率については,「JIS K 7142」(甲203)に規定され たA法(板状またはフィルム状試験片に適用)とB法(粉末状,ペレット状,顆粒 状サンプルに適用)のうち,アッベ屈折計を用いるとされるA法により測定される ことが記載されていると認められる。 これに対し,ガラス組成物の屈折率については,いくつかの測定方法があり,測 定方法が相違すると測定値も異なることがあることは前記認定のとおりであるけれ ども,本件各特許の特許請求の範囲の記載では,ガラス組成物の屈折率の測定方法 が特定されていないし,また,本件各明細書における発明の詳細な説明にも,ガラ ス組成物の屈折率の測定方法は明記されていないことが認められる。 もっとも,このような場合であっても,本件各明細書におけるガラス組成物等の 屈折率に関する記載を合理的に解釈し,当業者の技術常識も参酌して,ガラス組成 物の屈折率の測定方法を合理的に推認することができるときには,そのように解釈 すべきである。 まず,前記アの本件各明細書の記載においては,特に,ガラス繊維織物に織られ たガラス繊維の品番ECE225,ECG75,ECG37等が特定されているの に対し,そのガラス繊維であるECE225,ECG75,ECG37等の屈折率 が表示されていないこと,その原料であるEガラスの屈折率が1.558であると\n表示されており,表\1におけるガラス繊維織物の屈折率にもその1.558が用い られていることなどを考慮すると,本件各発明における「ガラス繊維織物中のガラ ス繊維を構成するガラス組成物」の「屈折率」は,ガラス繊維の屈折率を測定して\n得られたものではなく,繊維化する前のガラス組成物(原料)の屈折率であると認 めるのが相当である。なお,Eガラスにも各種品目があり,Eガラスの屈折率につ いては,1.548(乙あ93),1.560(乙あ11)のものもあるところ,本 件各明細書においては,Eガラスの中でも,屈折率が1.558のものが用いられ たものと推認することができる。また,本件各明細書には,硬化樹脂の屈折率の測 定方法についての記載があるのに対し,ガラス組成物の屈折率の測定法についての 記載がないのは,ガラス組成物について,商品データベース(甲26)などから, その屈折率が得られることから,独自に測定する必要性がないことによるというこ とができる。前記のとおり,実測によらないガラス組成物の屈折率は,実際のシー ト状態となったガラス繊維の屈折率とは一致しない可能性はあるけれども,上記で\n認定した「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物」の商品カタロ\nグ等における「屈折率」を採用することで,硬化樹脂に埋め込まれたガラス繊維を 分離して,屈折率を測定する煩雑さを回避することができることを考慮すると,こ のような定め方も不合理であるとはいえないし,本件明細書の表1によれば,ガラ\nス繊維の原料であるEガラス組成物の屈折率である1.558を用いた上で,硬化 樹脂との界面の透明性を確保することが可能となっていることが認められる。\n以上によれば,「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物」の「屈\n折率」は,繊維化する前のガラス組成物の屈折率を指すものと認めるのが相当であ る。また,前記認定のとおり,「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組\n成物の屈折率」は,素材メーカーが製品とともに公表したものであることを前提と\nすると,ガラス組成物の屈折率は「JIS K 7142」(プラスチックの屈折率 の測定方法)で測定されたものと解することはできず,むしろ,ガラス組成物(E ガラス)について素材メーカーが一般に採用する合理的な屈折率の測定方法により 測定されたものと解するのが自然な解釈であるといえる。そして,素材メーカーが Eガラスについて商品データベースにおいて表示している屈折率は,小数点以下第\n3位のものが多いことからすると(甲26,乙あ11,93),少なくとも有効数字 が小数点以下第4位まで測定できる測定方法である必要がある。また,証拠(甲4 5,乙あ27,89,108)及び弁論の全趣旨によれば,小数点以下第4位まで 測定できる測定方法としては,精度の高い最小偏角法(精度は約1×10−5)と,次 に精度が高いVブロック法(精度は約2×10−5)及び臨界角法(精度は1×10− 4)のいずれかであると認められるところ,このうち表示される屈折率が上記のとお\nり小数点以下第3位のものが多く,最も精度の高いものまで要求されないことや, Vブロック法による測定が最も簡便であって,試料の作成も容易であること(乙あ 89)を考慮すると,素材メーカーがEガラスについて一般に採用する合理的な屈 折率の測定方法は,Vブロック法であると推認するのが相当である。現に,本件に おいて,控訴人及び被控訴人ユニチカが,本件シートや本件各発明の実施品のガラ ス組成物の屈折率を,専門機関に依頼した上で,Vブロック法で測定していること (甲24,乙あ74,97の1)も,このことを裏付けるものである。 なお,本件各明細書には,樹脂組成物の屈折率については,「JIS K 714 2」に規定されたA法により測定されることが記載されていること,ガラス組成物 の屈折率の測定方法については明確な記載がないものの,「ガラス繊維織物中のガ ラス繊維を構成するガラス組成物」の「屈折率」としては,繊維化する前のガラス\n組成物の屈折率が記載されており,その測定方法は前記のとおりVブロック法であ ると推認されることからすると,樹脂組成物の屈折率の測定方法については,「JI S K 7142」の「B法」を追加する本件各訂正は新規事項の追加であり,ガ ラス組成物の屈折率の測定方法については,「JIS K 7142」を追加し,あ るいはその「B法」を追加する本件各訂正はいずれも新規事項の追加である。 したがって,本件各訂正請求は,特許法126条1項の訂正要件に反するもので あり,本件各訂正請求を認めた審決は未だ確定していないことからすれば(当裁判 所に顕著な事実である。),本件においては,本件防煙垂壁が本件各発明の技術的範 囲に属するか否かについて,本件各訂正請求の内容を考慮せずに判断すべきである (仮に,本件各訂正請求を認める審決が確定すると,本件各訂正発明は,特許法1 23条1項8号の無効理由を有するものとなる。)。

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◆平成26(ワ)10848
対応する審決取消訴訟です。

◆平成27(行ケ)10233

◆平成27(行ケ)10234

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平成28(ネ)10046  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年1月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁特別部は、延長登録された特許権の効力がイ号製品には及ばないとした1審判断を維持しました。論点は、たくさんあります。
 (2) 法68条の2の「政令で定める処分の対象となつた物」に係る特許発明の 実施行為の範囲について
政令(特許法施行令2条)では,延長登録の理由となる処分は医薬品医療 機器等法の承認と農薬取締法の承認の二つの処分に限定されている。本件の ように「政令で定める処分」が前者の承認(医薬品医療機器等法所定の医薬 品に係る承認)に係るものである場合においては,次のとおりであると認め られる。すなわち,
ア 医薬品医療機器等法14条1項は,「医薬品…の製造販売をしようとす る者は,品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けな ければならない。」と規定し,同項に係る医薬品の承認に必要な審査の対 象となる事項は,「名称,成分,分量,用法,用量,効能,効果,副作用\nその他の品質,有効性及び安全性に関する事項」(同法14条2項,9項) と規定されている。 このことからすると,「政令で定める処分」が医薬品医療機器等法所定 の医薬品に係る承認である場合には,常に「用法,用量,効能及び効果」\nが審査事項とされ,「用法,用量,効能及び効果」は「用途」に含まれる\nから,同承認は,法68条の2括弧書の「その処分においてその物の使用 される特定の用途が定められている場合」に該当するものと解される。 医薬品医療機器等法の承認処分の対象となった医薬品における,法68 条の2の「政令で定める処分の対象となつた物」及び「用途」は,存続期 間が延長された特許権の効力の範囲を特定するものであるから,特許権の 存続期間の延長登録の制度趣旨(特許権者が,政令で定める処分を受ける ために,その特許発明を実施する意思及び能力を有していてもなお,特許\n発明の実施をすることができなかった期間があったときは,5年を限度と して,その期間の延長を認めるとの制度趣旨)及び特許権者と第三者との 衡平を考慮した上で,これを合理的に解釈すべきである。 そうすると,まず,前記のとおり,医薬品の承認に必要な審査の対象と なる事項は,「名称,成分,分量,用法,用量,効能,効果,副作用その\n他の品質,有効性及び安全性に関する事項」であり,これらの各要素によ って特定された「品目」ごとに承認を受けるものであるから,形式的には これらの各要素が「物」及び「用途」を画する基準となる。 もっとも,特許権の存続期間の延長登録の制度趣旨からすると,医薬品 としての実質的同一性に直接関わらない審査事項につき相違がある場合に まで,特許権の効力が制限されるのは相当でなく,本件のように医薬品の 成分を対象とする物の特許発明について,医薬品としての実質的同一性に 直接関わる審査事項は,医薬品の「成分,分量,用法,用量,効能及び効\n果」である(ベバシズマブ事件最判)ことからすると,これらの範囲で「物」 及び「用途」を特定し,延長された特許権の効力範囲を画するのが相当で ある。 そして,「成分,分量」は,「物」それ自体の客観的同一性を左右する 一方で「用途」に該当し得る性質のものではないから,「物」を特定する 要素とみるのが相当であり,「用法,用量,効能及び効果」は,「物」そ\nれ自体の客観的同一性を左右するものではないが,前記のとおり「用途」 に該当するものであるから,「用途」を特定する要素とみるのが相当であ る。 なお,医薬品医療機器等法所定の承認に必要な審査の対象となる「成分」 は,薬効を発揮する成分(有効成分)に限定されるものではないから,こ こでいう「成分」も有効成分に限られないことはもちろんである。 以上によれば,医薬品の成分を対象とする物の特許発明の場合,存続期 間が延長された特許権は,具体的な政令処分で定められた「成分,分量, 用法,用量,効能及び効果」によって特定された「物」についての「当該\n特許発明の実施」の範囲で効力が及ぶと解するのが相当である(ただし, 延長登録における「用途」が,延長登録の理由となった政令処分の「用法, 用量,効能及び効果」より限定的である場合には,当然ながら,上記効力\n範囲を画する要素としての「用法,用量,効能及び効果」も,延長登録に\nおける「用途」により限定される。以下同じ。)。
イ 上記アによれば,相手方が製造等する製品(以下「対象製品」という。) が,具体的な政令処分で定められた「成分,分量,用法,用量,効能及び\n効果」において異なる部分が存在する場合には,対象製品は,存続期間が 延長された特許権の効力の及ぶ範囲に属するということはできない。しか しながら,政令処分で定められた上記審査事項を形式的に比較して全て一 致しなければ特許権者による差止め等の権利行使を容易に免れることがで きるとすれば,政令処分を受けることが必要であったために特許発明の実 施をすることができなかった期間を回復するという延長登録の制度趣旨に 反するのみならず,衡平の理念にもとる結果になる。このような観点から すれば,存続期間が延長された特許権に係る特許発明の効力は,政令処分 で定められた「成分,分量,用法,用量,効能及び効果」によって特定さ\nれた「物」(医薬品)のみならず,これと医薬品として実質同一なものに も及ぶというべきであり,第三者はこれを予期すべきである(なお,法6\n8条の2は,「物…についての当該特許発明の実施以外の行為には,及ば ない。」と規定しているけれども,同条における「物」についての「当該 特許発明の実施」としては,「物」についての当該特許発明の文言どおり の実施と,これと実質同一の範囲での当該特許発明の実施のいずれをも含 むものと解すべきである。)。 したがって,政令処分で定められた上記構成中に対象製品と異なる部分\nが存する場合であっても,当該部分が僅かな差異又は全体的にみて形式的 な差異にすぎないときは,対象製品は,医薬品として政令処分の対象とな った物と実質同一なものに含まれ,存続期間が延長された特許権の効力の 及ぶ範囲に属するものと解するのが相当である。
ウ そして,医薬品の成分を対象とする物の特許発明において,政令処分で 定められた「成分」に関する差異,「分量」の数量的差異又は「用法,用 量」の数量的差異のいずれか一つないし複数があり,他の差異が存在しな い場合に限定してみれば,僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異かど うかは,特許発明の内容(当該特許発明が,医薬品の有効成分のみを特徴 とする発明であるのか,医薬品の有効成分の存在を前提として,その安定 性ないし剤型等に関する発明であるのか,あるいは,その技術的特徴及び 作用効果はどのような内容であるのかなどを含む。以下同じ。)に基づき, その内容との関連で,政令処分において定められた「成分,分量,用法, 用量,効能及び効果」によって特定された「物」と対象製品との技術的特\n徴及び作用効果の同一性を比較検討して,当業者の技術常識を踏まえて判 断すべきである。 上記の限定した場合において,対象製品が政令処分で定められた「成分, 分量,用法,用量,効能及び効果」によって特定された「物」と医薬品と\nして実質同一なものに含まれる類型を挙げれば,次のとおりである。 すなわち,1)医薬品の有効成分のみを特徴とする特許発明に関する延長 登録された特許発明において,有効成分ではない「成分」に関して,対象 製品が,政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき,一部において\n異なる成分を付加,転換等しているような場合,2)公知の有効成分に係る 医薬品の安定性ないし剤型等に関する特許発明において,対象製品が政令 処分申請時における周知・慣用技術に基づき,一部において異なる成分を\n付加,転換等しているような場合で,特許発明の内容に照らして,両者の 間で,その技術的特徴及び作用効果の同一性があると認められるとき,3) 政令処分で特定された「分量」ないし「用法,用量」に関し,数量的に意 味のない程度の差異しかない場合,4)政令処分で特定された「分量」は異 なるけれども,「用法,用量」も併せてみれば,同一であると認められる 場合(本件処分1と2,本件処分5ないし7がこれに該当する。)は,こ れらの差異は上記にいう僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異に当た り,対象製品は,医薬品として政令処分の対象となった物と実質同一なも のに含まれるというべきである(なお,上記1),3)及び4)は,両者の間で, 特許発明の技術的特徴及び作用効果の同一性が事実上推認される類型であ る。)。 これに対し,前記の限定した場合を除く医薬品に関する「用法,用量, 効能及び効果」における差異がある場合は,この限りでない。なぜなら,\n例えば,スプレー剤と注射剤のように,剤型が異なるために「用法,用量」 に数量的差異以外の差異が生じる場合は,その具体的な差異の内容に応じ て多角的な観点からの考察が必要であり,また,対象とする疾病が異なる ために「効能,効果」が異なる場合は,疾病の類似性など医学的な観点か\nらの考察が重要であると解されるからである。 しかし,特許発明の技術的範囲における均等は,特許発明の技術的範囲 の外延を画するものであり,法68条の2における,具体的な政令処分を 前提として延長登録が認められた特許権の効力範囲における前記実質同一 とは,その適用される状況が異なるものであるため,その第1要件ないし 第3要件はこれをそのまま適用すると,法68条の2の延長登録された特 許権の効力の範囲が広がり過ぎ,相当ではない。 すなわち,本件各処分についてみれば明らかなように,各政令処分によ って特定される「物」についての「特許発明の実施」について,第1要件 ないし第3要件をそのまま適用して均等の範囲を考えると,それぞれの政 令処分の全てが互いの均等物となり,あるいは,それぞれの均等の範囲が 特許発明の技術的範囲ないしはその均等の範囲にまで及ぶ可能性があり,\n法68条の2の延長登録された特許権の効力範囲としては広がり過ぎるこ とが明らかである。 また,均等の5要件の類推適用についても,仮にこれを類推適用すると すれば,政令処分は,本件各処分のように,特定の医薬品について複数の 処分がなされることが多いため,政令処分で特定される具体的な「物」に ついて,それぞれ適切な範囲で一定の広がりを持ち,なおかつ,実質同一 の範囲が広がり過ぎないように(例えば,本件各処分にみられるような複 数の政令処分について,分量が異なる一部の処分に係る物が実質同一とな ることはあっても,その全てが互いに実質同一の範囲に含まれることがな いように)検討する必要がある。 しかし,まず,第1要件についてみると,このような類推適用のための 要件を想定することは困難である。すなわち,第1要件は,政令処分によ り特定される「物」と対象製品との差異が政令処分により特定される「物」 の本質的部分ではないことと類推されるところ,実質同一の範囲が広がり 過ぎないように類推適用するためには,政令処分により特定される「物」 の本質的部分(特許発明の本質的部分の下位概念に相当するもの)を適切 に想定することが必要であると解されるものの,その想定は一般的には困 難である。また,第2要件は,政令処分により特定される「物」と対象製 品との作用効果の同一性と類推されるところ,これは,実質同一のための 必要条件の一つであると考えられるものの,これだけでは実質同一の範囲 が広くなり過ぎるため,類推適用のためには,第1要件やその他の要件の 考察が必要となり,その想定は困難である。 以上によれば,法68条の2の実質同一の範囲を定める場合には,前記 の五つの要件を適用ないし類推適用することはできない。
オ ただし,一般的な禁反言(エストッペル)の考え方に基づけば,延長登 録出願の手続において,延長登録された特許権の効力範囲から意識的に除 外されたものに当たるなどの特段の事情がある場合には,法68条の2の 実質同一が認められることはないと解される。
(3) 対象製品が特許発明の技術的範囲(均等も含む。)に属することについて 法68条の2は,特許権の存続期間を延長して,特許権を実質的に行使す ることのできなかった特許権者を救済する制度であって,特許発明の技術的 範囲を拡張する制度ではない。したがって,存続期間が延長された特許権の 侵害を認定するためには,対象製品が特許発明の技術的範囲(均等も含む。) に属するとの事実の主張立証が必要であることは当然である。なお,このこ とは,法68条の2が政令処分の対象となった物についての「当該特許発明 の実施以外の行為には,及ばない」と規定していることからも明らかである。
・・・
しかしながら,一審原告の主張は,要するに,医薬品の承認制度の面から, 後発医薬品として承認されたものは全て実質同一物等に当たる(先発医薬品 に係る特許発明の効力が及ぶ)と断じるに等しく,法68条の2の制度趣旨 や解釈論を無視するものであって,採用することはできない。 すなわち,後発医薬品は,先発医薬品と同一の有効成分を同一量含み,同 一経路から投与する製剤で,効能・効果,用法・用量が原則的に同一であり,\n先発医薬品と同等の臨床効果・作用が得られる医薬品をいい,両者の間に有 効性や安全性について基本的な相違がないことが前提である。また,先発医 薬品と異なる添加剤を使用することがあっても,薬理作用を発揮したり,有 効成分の治療効果を妨げたりする物質を添加剤として使用することはできず, 医薬品としての承認に当たっては,生物学的同等性試験により主成分の血中 濃度の挙動が先発医薬品と同等であることの確認が求められるものとされて いる(甲30,弁論の全趣旨)。このように,後発医薬品は,先発医薬品と 治療学的に同等であるものとして製造販売が承認されるものであり,先発医 薬品と代替可能な医薬品として市場に提供されることが前提であるから,そ\nもそも医薬品としての品質において先発医薬品に依拠するものであることは 当然である。しかし,これは飽くまで有効成分や治療効果(有効性,安定性 を含む。)が原則として同一であるということを意味するにすぎず,特許発 明の観点からその成果に依拠するかどうかを問題にしているわけではない。 これに対し,延長登録された特許権の効力範囲における実質同一は,特許 権の効力範囲を画する概念である。前記のとおり,1)法68条の2の規定は, 特許権の存続期間の延長登録の制度が,政令処分を受けることが必要であっ たために特許発明の実施をすることができなかった期間を回復することを目 的とするものであることに鑑み,存続期間が延長された場合の当該特許権の 効力についても,その特許発明の全範囲に及ぶのではなく,「政令で定める 処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が 定められている場合にあつては,当該用途に使用されるその物)」について の「当該特許発明の実施」にのみ及ぶ旨を定めるものであり,2)医薬品の成 分を対象とする物の特許発明の場合,法68条の2によって存続期間が延長 された特許権は,具体的な政令処分で定められた「成分,分量,用法,用量, 効能及び効果」によって特定された「物」についての「当該特許発明の実施」\nの範囲で効力が及ぶと解するのが相当であるものの,3)これらの各要素によ って当該特許権の効力範囲が画されるとしても,これらの各要素における僅 かな差異や形式的な差異によって延長登録された特許権の効力が及ばないと することは延長登録の制度趣旨に反し,衡平の理念にもとる結果となるから, これらの差異によっても,なお政令処分の対象となった医薬品と実質同一の 範囲で,延長された当該特許権の効力が及ぶと解すべきである。 したがって,延長登録された特許権の効力範囲における「成分」に関する 差異,「分量」の数量的差異又は「用法,用量」のうち「効能,効果」に影\n響しない数量的差異に関する実質同一は,当該特許発明の内容に基づき,そ の内容との関連で,政令処分において定められた「成分,分量,用法,用量, 効能及び効果」によって特定された「物」と対象製品との技術的特徴及び作\n用効果の同一性を比較検討して,当業者の技術常識を踏まえてこれを判断す べきであり,これを離れて,医薬品としての有効成分や治療効果(有効性, 安定性)のみからこれを論じるべきものではない。少なくとも,法68条の 2が,およそ後発医薬品であるが故に,すなわち,先発医薬品と同等の品質 を備え,これに依拠するが故に直ちに特許権の効力を及ぼそうとする趣旨の ものでないことは明らかである。 しかるに,一審原告の主張は,当該特許発明の内容に関わらず,いわば医 薬品としての有効成分や治療効果のみに着目して延長された特許権の効力範 囲を論ずるものであり,これは前記のとおりの法68条の2の制度趣旨や解 釈論に反することが明らかであって,採用することはできないというべきで ある。

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◆平成27(ワ)12412

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平成27(ワ)12415  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年12月2日  東京地方裁判所(40部)

 医薬品特許における「解離シュウ酸」は「緩衝剤」には当たらないとして、イ号は、技術的範囲外と判断されました。
 (1) 本件発明2における「緩衝剤」は,添加されたシュウ酸またはそのアルカ リ金属塩をいい,オキサリプラチンが分解して生じた解離シュウ酸は「緩衝 剤」には当たらないと解することが相当である。理由は以下のとおりである。 (2)ア 化学大事典2(乙13)によれば,「緩衝剤」とは,「緩衝液をつくる ために用いられる試薬の総称」をいうものとされている。そして,広辞苑 第六版によれば,「試薬」とは「実験室などで使用する純度の高い化学物 質」であるところ,解離シュウ酸が「純度の高い化学物質」である「試薬」 に当たるとは考えがたいから,解離シュウ酸は一般的な意味で「緩衝剤」 とはいえないというべきである。
イ 次に,本件明細書2の段落【0022】には,「緩衝剤という用語は, 本明細書中で用いる場合,オキサリプラチン溶液を安定化し,それにより 望ましくない不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオD ACHプラチン二量体の生成を防止するかまたは遅延させ得るあらゆる酸 性または塩基性剤を意味する。」と記載されている。 上記記載において,「緩衝剤」は,「酸性または塩基性剤」であると定 義されているが,広辞苑第六版によれば,「剤」とは「各種の薬を調合す ること。また,その薬。」を意味するから,「酸性または塩基性剤」は, 酸性または塩基性の各種の薬を調合した薬を意味すると考えることが自然 であるところ,解離シュウ酸は,「各種の薬を調合した薬」に当たるとは いえない。 ウ そして,本件明細書2の段落【0013】後段ないし【0016】には, オキサリプラチンが水性溶液中で分解してジアクオDACHプラチンを不 純物として生成することが記載されているが,オキサリプラチンが分解す ると,次の式のとおり,シュウ酸イオンとジアクオDACHプラチンが生 じる。また,証拠(乙39)によれば,分解により生じたシュウ酸イオン は,一部がプロトン化されてシュウ酸又はシュウ酸水素イオンになること が認められる。 したがって,オキサリプラチンの分解によりシュウ酸イオン等が生じた ということは,すなわちオキサリプラチン水溶液において不純物が生じた ことを意味するから,仮にオキサリプラチンの分解により生じた解離シュ ウ酸が「緩衝剤」に当たるとすると,緩衝剤が防止すべき分解により生じ たものが緩衝剤に当たるということになってしまい,上記イの「望ましく ない不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオDACHプ ラチン二量体の生成を防止するかまたは遅延させ得る」という緩衝剤の定 義と整合しない。 エ 前記3(2)のとおり,本件発明2は,乙14発明よりも不純物が有意に少 ない,より安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することを目的とす るものである。 ところが,本件明細書2をみると,実施例18において生成される不純 物の量と比較して,シュウ酸を添加した実施例(ただし,実施例1及び8 を除く。なお,実施例1及び8は,後記(3)エのとおり,本件発明2の技術 的範囲に含まれる実施例ではない。)において生成される不純物の量は有 意に少ないことが示されている。ここで,実施例18は,豪州国特許出願 第29896/95号(1996年3月7日公開)に記載されている水性 オキサリプラチン組成物であるが,上記出願は,乙14発明に対応するも のであるから,実施例18は乙14発明と実質的に同一であると推認され る。 したがって,本件発明2は,乙14発明とは異なり,オキサリプラチン 溶液組成物に緩衝剤を添加したことによって,不純物が少なく,より安定 な溶液組成物を提供することができたことを特徴とする発明と考えるのが 自然である。
オ 本件明細書2には,実施例1ないし17については,シュウ酸が付加さ れていることが明記されている。また,本件明細書2(段落【0039】, 【0041】〜【0045】,【0047】,【0064】)では,実施 例1ないし17について,添加されたシュウ酸のモル濃度が記載されてい るが,解離シュウ酸を含むシュウ酸のモル濃度は記載されていない。 さらに,本件明細書2は,「緩衝剤」である「シュウ酸」に,オキサリ プラチンが分解して生じた解離シュウ酸が含まれることを示唆する記載は ない。 この点に関して原告は,構成要件2Gの数値範囲の下限(5×10−5M)\nが,本件明細書2記載の実施例1及び8で示された下限(1×10−5M) よりも大きいことをもって,請求項1は解離シュウ酸を考慮したものであ ると主張するが,本件明細書2には,1×10−5Mのシュウ酸を添加した オキサリプラチン溶液中のシュウ酸イオン等のモル濃度がどの程度になる かに係る記載は何ら存在しておらず,原告の上記主張は裏付けを欠く独自 の見解というほかない。 以上からすると,本件明細書2の記載においては,解離シュウ酸につい ては全く考慮されておらず,緩衝剤としての「シュウ酸」は添加されるも のであることを前提としているというべきである。 カ また,本件明細書2における実施例18(b)に関する記載をみると,「比 較のために,例えば豪州国特許出願第29896/95号(1996年3 月7日公開)に記載されているような水性オキサリプラチン組成物を,以 下のように調製した」(段落【0050】前段),「比較例18の安定性」 「実施例18(b)の非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物を,40℃で 1ヶ月間保存した。」(段落【0073】)といった記載がある。そして, 前記エのとおり,豪州国特許出願第29896/95号(1996年3月 7日公開)は乙14発明と実質的に同一であるから,上記各記載を総合す ると,実施例18(b)は,「実施例」という用語が用いられている部分 が多いものの,その実質は本件発明2の実施例ではなく,本件発明2と比 較するために,「非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物」,すなわち,緩 衝剤が用いられていない従来既知の水性オキサリプラチン組成物を調製し たものであると認めるのが相当である。 そうすると,本件明細書2において,緩衝剤を添加しない水性オキサリ プラチン組成物に関する実施例18は,本件発明2の実施例ではなく,比 較例として記載されているというべきである。 キ さらに,証拠(乙64,65)によれば,本件特許2の出願人が,本件 特許2に対応する米国特許出願(乙64)について,米国特許庁に提出し た意見書(乙65)において,「甲等の水溶液組成物(本願21頁に記載 されている甲等の組成物(比較例18)についての安定性データを参照) において見出されるよりも有意に少ない量でこのような不純物を生成する オキサリプラチンのより安定な溶液組成物が,オキサリプラチンの溶液組 成物に有効安定化量の緩衝剤を加えることにより得られることを,出願人 は予想外にも見出したのである。」などと記載し,緩衝剤が添加されるも\nのであること及び実施例18が比較例であることを前提とした主張をして いたことが認められる。 また,証拠(甲36)によれば,本件特許に対応するブラジル特許出願 に関し,出願人が,ブラジル特許庁に提出した拒絶処分に対する不服申立\nてにおいて,「本願発明にあるシュウ酸を緩衝剤として加えれば,不純物 が発生しないということである。」と,緩衝剤を添加する旨の主張をして いたことが認められる。 これらのことは,本件発明2においても,緩衝剤とは添加されたものに 限られると解されることの裏付けとなる事実であるというべきである。

◆判決本文

関連事件(同一特許、異被告)です。

◆平成27(ワ)28699等

◆平成27(ワ)29001

◆平成27(ワ)29158

同一特許の別訴事件で、1審(平成27(ワ)12416号)では技術的範囲内と判断されましたが、知財高裁はこれを取り消しました。

◆平成28(ネ)10031

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平成28(ワ)15355  特許権侵害に基づく損害賠償請求事件  民事訴訟 平成28年10月31日  東京地方裁判所

 「緩衝剤」の文言について、技術的見地、明細書の記載、先行技術などから判断し、技術的範囲に属しないと判断されました。
a 以上のとおり,本件明細書が,「オキサリプラチンの従来既知の水性組成物」 を従来技術として開示し,これよりも,本件発明1の組成物は「生成される不純物, 例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオDACHプラチン二量体が少ない ことを意味する。」と記載していること,解離シュウ酸は,オキサリプラチンが溶 液中で分解することにより,ジアクオDACHプラチンと対になって生成されるも のであること,本件発明1の発明特定事項として構成要件1Gが限定する緩衝剤の\nモル濃度の範囲に関する具体的な技術的裏付けを伴う数値の例として,本件明細書 は,添加されたシュウ酸又はシュウ酸ナトリウムの数値のみを記載し,解離シュウ 酸のモル濃度を何ら記載していないこと,本件明細書には,専ら,「緩衝剤」を外 部から添加する実施例のみが開示されていると解されること,請求項1は,「シュ ウ酸」と「そのアルカリ金属塩」とを区別して記載し,さらには「緩衝『剤』」と いう用語を用いていることなどをすべて整合的に説明しようとすれば,本件発明1 における「緩衝剤」は,外部から添加されるものに限られるものと解釈せざるを得 ない。
すなわち,本件発明1は,専ら,オキサリプラチン水溶液に,緩衝剤として,シ ュウ酸又はそのアルカリ金属塩を添加(外部から付加)することにより,オキサリ プラチン溶液中のシュウ酸濃度を人為的に増加させ,平衡に関係している物質の濃 度が増加すると,当該物質の濃度が減少する方向に平衡が移動するという原理(ル シャトリエの原理)に従い,結果として,オキサリプラチン溶液中におけるジアク オDACHプラチン及びジアクオDACHプラチン二量体などの望ましくない不純 物の量を,シュウ酸又はそのアルカリ金属塩を添加(外部から付加)しない場合よ りも,減少させることを目した発明と把握するべきであり,そのように把握するこ とにより,初めて,本件明細書の段落【0031】が「本発明の組成物は,オキサ リプラチンの従来既知の水性組成物よりも製造工程中に安定であることが判明して おり,このことは,オキサリプラチンの従来既知の水性組成物の場合よりも本発明 の組成物中に生成される不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオ DACHプラチン二量体が少ないことを意味する。」と記載していることや,本件 明細書には,シュウ酸又はシュウ酸ナトリウムを,構成要件1Gが規定する数値の\nモル濃度だけ,オキサリプラチン溶液に「添加」する実施例のみが開示されている こと,さらには,本件明細書に開示された実施例において,解離シュウ酸の量を明 記していないことや,他の不純物の量から解離シュウ酸の量を推計することを示唆 する記載すらないことなどを整合的に説明できるのである。 また,オキサリプラチン溶液に,緩衝剤として,シュウ酸又はそのアルカリ金属 塩を添加(外部から付加)して得られたオキサリプラチン溶液組成物は,これを添 加しないオキサリプラチンの従来既知の水性組成物よりも,ジアクオDACHプラ チン及びジアクオDACHプラチン二量体などの望ましくない不純物の量が減少す るから,客観的構成において異なる(すなわち,「物」として異なる。)ことにな\nるということもできる。
b 他方で,仮に,本件発明1を上記のように解することなく,原告らが主張す るように,解離シュウ酸であってもジアクオDACHプラチン及びジアクオDAC Hプラチン二量体の生成を防止し又は遅延させているとみなすというのであれば, 本件発明1は,本件優先日時点において公知のオキサリプラチン溶液が生来的に有 している性質(すなわち,オキサリプラチン溶液が可逆反応しており,シュウ酸イ オンが平衡に関係している物質であるという,当業者には自明ともいうべき事象) を単に記述するとともに,当該溶液中の解離シュウ酸濃度として,ごく通常の値を 含む範囲を特定したものにすぎず,新規性及び進歩性を見いだし難い発明というべ きである。すなわち,本件優先日時点において,例えば,濃度が5mg/mLのオ キサリプラチン水溶液が公知であった(乙1の1)。そして,当該水溶液中のオキ サリプラチンが分解して解離シュウ酸が生成されることは,その生来的な性質であ り(本件明細書の段落【0013】ないし同【0016】参照),シュウ酸が平衡 に関係している物質であることも同様であるところ,種々の条件下である程度の期 間保存された濃度5mg/mLのオキサリプラチン水溶液中には,解離シュウ酸が 存在し,その量が,5x10−5M以上となることが多いことが,乙13の3試験,甲2 0試験(「5x10−5M」として,有効数字を1桁とする以上,「4.86x10−5M」又は 「4.94x10−5M」も,「5x10−5M」とみて差し支えない〔乙12参照〕。),乙3 2試験及び乙37試験の各結果から,さらには,本件特許権に係る原告デビオファ ームの延長登録出願の願書(乙33)の記載から認められる(なお,上記認定は, 上記各試験が乙1の1実施例の追試として妥当であるか否かはともかく,少なくと も,公知の組成物である濃度5mg/mLのオキサリプラチン水溶液において,解 離シュウ酸のモル濃度が5x10−5M以上となることは,ごく通常のことであると認め るのが相当であることを指摘したものである。)。そうすると,公知の組成物であ るオキサリプラチン水溶液中に存在し,同水溶液の平衡に関係している物質である シュウ酸イオン(解離シュウ酸)に,「平衡に関係している」という理由で「緩衝 剤」という名を付け,上記のとおり通常存在しうる程度のモル濃度を数値範囲とし て規定したにとどまる発明は,公知の組成物と実質的に同一の物にすぎない新規性 を欠く発明か,少なくとも当業者にとって自明の事項を発明特定事項として加えた にすぎない進歩性を欠く発明というほかはない。
c したがって,本件発明にいう「緩衝剤」には,オキサリプラチンが溶媒中で 分解して生じたシュウ酸イオン(解離シュウ酸)は含まれないと解するのが相当で ある。

◆判決本文

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平成28(ネ)10042  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年10月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 島野工業vsAppleの控訴審で、1審判断(非侵害)が維持されました。均等侵害も否定されました。珍しく、無効主張については判断されていません。1審では、下記のように判断されています。
本件発明の「押付部材」は,少なくとも一部に球状面を有するものでは足りず,その全体が球であるものに限られるということができる(仮に,一部にのみ球状面を有するものが含まれるとすれば,本件特許は違法な分割出願によるものとして新規性欠如の無効理由を有することが明らかである。)。
判決文の最後に、イ号と本件発明の対比図面が掲載されています。
 証拠(甲4,甲32の1・2,乙38,54)及び弁論の全趣旨によれば,被告 製品の技術的意義につき,以下のとおり認められる。 プランジャーピンは,その大径部に略円錐面形状を有する傾斜凹部を備えている ものであるが,コイルバネにより付勢されて本体ケースの内周面に左右2箇所で接 触するように設計されている。コマ状部材は,導電性を有するものであり,その球 状部がプランジャーピンの大径部の傾斜凹部を押してこれと1点のみで接触するこ とによって傾き,本体ケースの内周面に左右2箇所で接触するように構成されてい\nる。プランジャーピン及びコマ状部材が確実に傾いて本体ケースに接触するよう, コマ状部材の中心軸とプランジャーピン底面の最深位置は,オフセットされている。 このように合計4つの電流経路を確保することにより,被告製品の電気抵抗が低 減し,被告製品を流れる電流についてコイルバネを通る経路以外の経路が存在しな いという事態が生じる可能性は低くなり,コイルバネに流れる電流量が抑えられる。\n加えて,コイルバネが●●●●●●●によって被覆されていることから,絶縁性ボ ールを使用する必要はない。 他方,本件発明においては,前記(2)のとおり,1)傾斜凹部を略円錐面形状とする ことによって,押付部材の球状面からなる球状部の中心を傾斜凹部の中心軸上に安 定して位置させることができ,それにより,押付部材を介してプランジャーピンに 伝達されるコイルバネの付勢に係る力の方向を安定させ,2)さらに,傾斜凹部の中 心軸をプランジャーピンの中心軸とオフセットさせることにより,コイルバネがプ ランジャーピンを本体ケースの中心軸に対して微小な角度を有する方向に付勢する ことを確実なものとすることによって,プランジャーピンの大径部を確実に本体ケ ースの管状内周面に接触させて本体ケースへ確実に電流を流すことを可能とするも\nのである。 以上によれば,被告製品と本件発明とは,押付部材とプランジャーピンとの接触 に関し,技術的意義を異にするものということができる。
(ウ) 控訴人の主張について
a 控訴人は,コマ状部材とプランジャーピンの材料である金属は,弾性変化す るものであるから,両部材は,必ず面で接触し,点で接触することはあり得ない旨 主張する。 しかし,甲第52号証によれば,球と平面が接触する場合,理論的には,接触部 分は点であり,接触面積を持たないものの,実際には,接触部分が変形することに よって接触面積を持ち,接触部の形状が円になり,このような接触は,「点接触」と 呼ばれる。前記(イ)において,被告製品のコマ状部材の球状部がプランジャーピン の大径部の傾斜凹部と1点のみで接触するというのも,上記点接触の趣旨であり, 控訴人主張に係る弾性変化した状態の接触を排除する趣旨ではない。
b 控訴人は,甲第4号証を根拠として,被告製品のコマ状部材は,コイルバネ から押圧されてその弾性力を受け止めており,同弾性力がコマ状部材と本体ケース との間の摩擦力よりも大きいときは,空滑りして傾かず,本体ケースに接触しない 旨主張する。 しかし,甲第4号証に掲載された被告製品の写真からは,コマ状部材が本体ケー スにわずかでも接触しているか,全く接触していないかは,必ずしも明らかではな い。また,コマ状部材の中心軸とプランジャーピン底面の最深位置がオフセットさ れていることに鑑みると,通常,コマ状部材が本体ケースに接触しないという事態 が頻繁に生じることは考えにくく,そのような事態は,被告製品の通常の用法にお いて想定されていないものと考えられる(乙54参照)。
c 控訴人は,プランジャーピンに流れる電流の総和は決まっているので,プラ ンジャーピンから本体ケースへ確実に電流を流すことができれば,コイルバネに流 れる電流量を相対的に減じることができ,コイルバネの焼切れの防止にもつながる 旨を主張する。 しかし,上記主張のとおりであったとしても,本件明細書には,被告製品のよう にプランジャーピンと本体ケースとの接触に加え,押付部材であるコマ状部材と本 体ケースとの接触により合計4つの電流経路を確保することによって被告製品の電 気抵抗を低減させるという技術的思想は,開示されていない。
d なお,控訴人は,乙第38号証に掲載された被告製品のプランジャーピンの 図においては,底部の形状が傾斜凹部をなしていないが,これは,正確なものでは なく,甲第32号証の1・2が,被告製品の正確な設計図である旨主張する。しか し,控訴人が指摘する乙第38号証の図面は,「マッシュルーム要素及びプランジャ ーの形状を大まかに描写した断面図」(乙38)であり,甲第4号証及び乙第38号 証に掲載された被告製品の写真並びに控訴人が被告製品の正確な設計図である旨主 張する甲第32号証の1・2により,前記(イ)のとおり認定することができる。
イ 構成要件Dの「押付部材」に該当する構\成の有無
前記アのとおり,被告製品のコマ状部材は,それ自体が本体ケースの内周面に左 右2箇所で接触して電流経路を確保している。 他方,前記(1)のとおり,本件明細書において,「押付部材」につき,小型化の要請 にこたえて接触端子の径(幅)を大きくすることなく,コイルバネを流れる電流量 を小さくしながら,比較的大きな電流を流し得る接触端子の提供という,本件発明 の課題を解決するための構成として,「大径部の略円錐面形状を有する傾斜凹部」内\nに収容されていることが開示されている。本件明細書において,「押付部材」自体が 本体ケースに接触して電流経路を確保することは,開示されていないものというべ きである。 したがって,被告製品のコマ状部材は,構成要件Dの「押付部材」に該当しない。\nほかに,被告製品の構成中,「押付部材」に相当するものはない。
ウ 「押圧」について
前記アのとおり,被告製品は,プランジャーピン及びコマ部材が確実に傾いて本 体ケースに接触するよう,コマ状部材の中心軸とプランジャーピン底面の最深位置 をオフセットしている。被告製品のコマ状部材の球状部がプランジャーピンの大径 部の傾斜凹部を押してこれと1点のみで接触することによって傾き,本体ケースの 内周面に左右2箇所で接触するという構成自体からも,通常,コマ状部材の球状部\nの中心が,プランジャーピン底面の最深位置,すなわち,傾斜凹部の中心軸上に位 置することは,考え難い。現に,別紙2は,コイルバネの付勢によって,コマ状部 材の球状部がプランジャーピンの大径部の傾斜凹部を押し,それによって,プラン ジャーピンの突出端部が本体ケースから突出するとともに,プランジャーピンの大 径部の外側面が本体ケースの内周面に押し付けられている状態であるが,コマ状部 材の球状部の中心は,明らかに傾斜凹部の中心軸からずれている。 よって,コマ状部材の球状部がプランジャーピンの傾斜凹部を押すことは,コマ 状部材の球状部の中心を傾斜凹部の中心軸上に安定して位置させるものではないか ら,構成要件Dの「押圧」に該当せず,ほかに,被告製品の構\成中,「押圧」に該当 するものはない。
・・・
しかし,特許請求の範囲に記載された構成中,相手方が製造等をする製品又は用\nいる方法と異なる部分が存する場合において,均等侵害の成立が認められるために は,上記異なる部分の全てについて均等の5要件が満たされることを要する。 前記2のとおり,本件特許請求の範囲に記載された構成と被告製品とは,1)構成\n要件Dの「押付部材」につき,本件明細書において,小型化の要請にこたえて接触 端子の径(幅)を大きくすることなく,コイルバネを流れる電流量を小さくしなが ら,比較的大きな電流を流し得る接触端子の提供という,本件発明の課題を解決す るための構成として,「大径部の略円錐面形状を有する傾斜凹部」内に収容されてい\nることが開示されており,「押付部材」自体が本体ケースに接触して電流経路を確保 することは,開示されていないのに対し,被告製品のコマ状部材は,それ自体が本 体ケースの内周面に左右2箇所で接触して電流経路を確保している点において異な るほか,2)構成要件Dの「押圧」は,押付部材の球状面からなる球状部の中心を傾\n斜凹部の中心軸上に安定して位置させるものであるのに対し,被告製品のコマ状部 材の球状部がプランジャーピンの傾斜凹部を押すことは,コマ状部材の球状部の中 心を傾斜凹部の中心軸上に安定して位置させるものではない点においても異なる。 控訴人は,これらの相違点のうち,構成要件Dの「押付部材」が球形であるのに\n対し,被告製品のコマ状部材が球形ではないという点についてのみ均等の5要件を 主張するにとどまるから,主張自体,失当である。 なお,前記2(4)のとおり,被告製品と本件発明とは,押付部材とプランジャーピ ンとの接触に関し,技術的意義を異にするものということができる。そして,前記 1のとおり,本件明細書には,従来技術として,金属製の本体ケースに設けられた 長穴にコイルバネを挿入した上でプランジャーピンを挿入し,本体ケースからプラ ンジャーピンの先端部分のみが突出する位置を保持されるという接触端子において, プランジャーピンとコイルバネとの間に絶縁球を介在させ,プランジャーピンの本 体ケース内の端部が斜面となっていて,絶縁球がプランジャーピンを本体ケースの 長穴の内面に押し付けることができるようになっており,これによって,プランジ ャーピンから本体ケースへ確実に電流を流すことができるとの構成が開示されてい\nる(【0002】,【0004】,【0006】)。したがって,本件発明においては,前記2のとおり,1)プランジャーピンの大径部に,単なる斜面ではなく,略円錐面形 状の傾斜凹部を設け,押付部材の球状面からなる球状部の中心を傾斜凹部の中心軸 上に安定して位置させるよう「押圧」すること及び2)傾斜凹部の中心軸をプランジ ャーピンの中心軸とオフセットさせることによって,コイルバネが,押付部材を介 して,プランジャーピンを本体ケースの中心軸に対して微小な角度を有する方向に 付勢することを確実なものとすることによって,プランジャーピンから本体ケース へ確実に電流が流れるようにすることが,従来技術に見られない,特有の技術的思 想を構成する特徴的部分に当たるというべきである。\n前記2によれば,本件発明と被告製品は,上記本質的部分において相違すること が明らかであるから,均等侵害の成立を認める余地はない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成26(ワ)20422

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平成27(ワ)7147  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年9月15日  大阪地方裁判所

 文言は被侵害、均等侵害も第1要件を充足していないとして否定されました。メーカではなく販売店が被告というのも興味深いです。
 すなわち均等侵害が認められるためには,本件発明と被告方法の構成に異な\nる部分が存在する場合であっても,その部分が本件発明の本質的部分ではないこと が要件となるところ,ここでいう特許発明における本質的部分とは,当該特許発明 の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成す\nる特徴的部分であると解すべきであり,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明 細書の記載に基づいて,特許発明の課題及び解決手段(特許法36条4項,特許法 施行規則24条の2参照)とその効果(目的及び構成とその効果。平成6年法律第\n116号による改正前の特許法36条4項参照)を把握した上で,特許発明の特許 請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴\n的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである(知財高裁平成 28年3月25日特別部判決)。
・・・
 本件発明の上記課題及び解決手段とその効果に照らすと,本件発明は,本件 特許の特許請求の範囲請求項1の発明に係るおかゆ調理器を用いたおかゆの調理方 法として,「粉砕段階」,「加熱段階」を含む複数の動作段階を設定し,それら動 作段階の一部についてはその順序,時間,回数等を具体的に指定し,穀物の粉砕手 段及び加熱手段を一体化した組合せとすることにより,通常のおかゆの調理方法に おいて時間を要していたふやかしの時間及び全体の調理時間の短縮を図り,また, 通常の調理方法においてはかきまぜの継続によって解消していたおかゆの焦げ付き も防止するなど,より簡便,迅速に本来の風味を有するおかゆの調理ができるよう にしたものであると認められる。 ところでおかゆの調理方法として,加熱や粉砕の動作を適宜組合せることは,周 知であるから(本件明細書の【0005】),本件特許の特許請求の範囲請求項1 の発明に係るおかゆ調理器を用いたおかゆの調理方法である本件発明における本質 的部分とは,調理方法を決定するところの「粉砕段階」,「加熱段階」,「待機段 階」という一連の動作段階の設定,及び各動作段階において具体的に規定された粉 砕及び加熱の動作並びに待機の順序,各動作及び待機の時間,各動作及び待機の回 数等を一体化した組合せそのものにあると認められる。 (6) これに対し,被告方法は,既述のとおり,少なくとも,その第1及び第2の 粉砕段階において,本件発明の構成要件として規定された粉砕と待機とは異なる時\n間,回数の粉砕と待機がなされるものであるから,動作等の組合せにおいて,本件 発明の一体化した組合せとは異なっており,この相違部分は本件発明の本質的部分 に存するものといわなければならない, したがって,被告方法は,均等の第1要件を充足するとは認められない。

◆判決本文

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平成27(ネ)10016  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年9月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審で均等主張をしましたが、知財高裁は、第2要件を満たさないとして、均等でないと判断しました。
 ア 前記2のとおり,1)本件発明1−1は,一次原反ロールから薬液が塗布され た二次原反ロールに至るまでの積層手段,薬液塗布手段,スリット手段及び巻取り 手段が順に連続した1つの製造ラインに組み込まれ,同製造ライン上をシートが上 記各手段を経ながら間断なく流れるように構成された二次原反ロールの製造設備で\nあるプライマシンを備えているのに対し,2)被告設備は,一次原反ロールから薬液 が塗布された二次原反ロールに至るまでの間,一次原反ロールRから積層連続シー トSを形成する積層手段であるシート合わせロール10,積層連続シートSをスリ ットするスリット手段であるスリッター101及びスリットされた積層連続シート Sを巻き取ってロール102とする巻取り手段である巻取り装置131から成る製 造ラインと,上記製造ラインとは別に設けられた薬液塗布手段であり,同製造ライ ンから移送されたロール102から繰り出される積層連続シートSに薬液を塗布す る薬液塗布装置11及び薬液が塗布された積層連続シートSを再度巻き取って二次 原反ロールRとする巻取り手段である巻取り装置132から成る製造ラインに分か れている。 そこで,本件発明1−1において一次原反ロールから薬液が塗布された二次原反 ロールを製造するプライマシンを,被告設備における上記2つの製造ラインと置き 換えても,本件発明1−1の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏する かについて検討する。
イ 前記1のとおり,本件発明1−1の課題は,薬液塗布工程をプライマシンや マルチスタンド式インターフォルダとは別に設ける構成を採用した場合に起きる,\n薬液塗布のために原反を移送する手間や多大な設備コストが掛かるという問題の発 生を回避し,同構成よりも低コストで薬液塗布を行うことができ,かつ,薬液塗布\nの有無を容易に切替え可能である製造設備を提供することであり,その解決手段は,\n一次原反ロールから薬液が塗布された二次原反ロールに至るまでの積層手段,薬液 塗布手段,スリット手段及び巻取り手段が順に連続した1つの製造ラインに組み込 まれ,同製造ライン上をシートが上記各手段を経ながら間断なく流れるように構成\nされたプライマシンを備える構成とすることである。同構\成の採用によって,薬液 塗布手段をプライマシンやマルチスタンド式インターフォルダとは別に設ける場合 と比較して,その場合に起きる,薬液塗布のために原反を移送する手間や多大な設 備コストが掛かるという問題の発生を回避し,設備コストをより低く抑えることが でき,また,薬液を塗布しない製品を製造する場合は,プライマシンから薬液塗布 手段を省略すれば足りるので,薬液塗布の有無を容易に切り替えることができると いう効果を奏する。
ウ そして,被告設備は,前記アのとおり,一次原反ロールから薬液が塗布され た二次原反ロールに至るまでの間,一次原反ロールRからロール102を形成する 製造ラインとは別に,薬液塗布装置11が設けられており,上記製造ラインから原 反(ロール102)を薬液塗布のために薬液塗布装置11に移送するというもので ある。したがって,本件発明1−1において一次原反ロールから薬液が塗布された 二次原反ロールを製造するプライマシンを,被告設備における2つの製造ラインと 置き換えれば,少なくとも,本件発明1−1の目的のうち,薬液塗布工程をプライ マシンやインターフォルダとは別に設ける構成を採用した場合に起きる薬液塗布の\nために原反を移送する手間が掛かるという問題の発生を回避し,同構成よりも低コ\nストで薬液塗布を行うことができる製造設備を提供するという目的を達成すること ができず,薬液塗布手段をプライマシンやマルチスタンド式インターフォルダとは 別に設ける場合と比較して,その場合に起きる薬液塗布のために原反を移送する手 間が掛かるという問題の発生を回避し,設備コストをより低く抑えることができる という効果を奏しなくなることは,明らかである。

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◆一審はこちら。平成24(ワ)6547

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平成26(ワ)25928  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年8月30日  東京地方裁判所

 構成要件Gを満たさないと判断されました。均等侵害についても、第1要件を満たしていないとして、否定されました。
 ウ さらに,本件特許の出願経過からも上記解釈は裏付けられる。すなわち, 原告は,本件特許の審査段階において,特許庁から平成15年1月21日 発送の拒絶理由通知(乙8)を受けたところ,そこには「…請求項1の記 載では本願発明の目的である通過すべき経由地点の設定中にすでにそれら の経由地点のいずれかを通過してしまった場合でも,正しい経路誘導を行 うための構成である『設定指令が入力された時点での車両現在位置を探索\n開始地点として記憶し,この記憶された探索開始地点と,経路データが設 定され移動体の経路誘導が開始される時点での移動体の現在位置を比較す る』点が明確に記載されていない。…よって,請求項1は,特許を受けよ うとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではな\nい。」とされていた。原告は,上記拒絶理由通知に対応して,同年2月5 日受付の意見書(乙9)を提出し,そこにおいて「審査官殿のご指摘の通 り,本願発明における探索開始地点と経路誘導地点に関する上述の点が不 明瞭であると考えますので,『設定指令が入力され,経路の探索を開始す る時点の前記移動体の現在位置を探索開始地点として記憶する記憶手段』 と構成要件を加えることにより,探索開始地点が記憶されることを明確に\nするとともに,経路データ設定手段が『記憶した探索開始地点を基に経路 の探索を行い,当該経路を経路データとして設定する』と補正して探索開 始地点と経路データの関係を明確にし,制御手段おける記憶された探索開 始地点と誘導開始地点を比較する点を明確に致しました。」(1頁下9行 〜2行)と記載し,併せて,同日受付の手続補正書(乙10)を提出して 上記記載に沿った補正を行い,探索開始地点と誘導開始地点とを比較する ことを明確にしたものである。以上の出願経過も,構成要件Gに係る上記\n解釈を裏付けるものである。
(2) しかるところ,被告装置において,「探索開始地点」と「誘導開始地点」 を比較して両地点が異なるかどうかを判断しているものと認めるに足りる証 拠はない。 かえって,証拠(乙16の1)によれば,被告装置においては,1)経路誘 導の計算が行われ,これが終了すると,出発地点P0から目的地Pnまでの 経路を示す経路リンクのリストがメモリに保存され,2)他方で,上記1)の経 路誘導とは独立して,継続的に,車両の現在位置Cと地図データの地図リン クとのマッチングが行われ,その際,車両の現在位置Cと,地図データのノ ード間を結ぶ地図リンクとを比較することで,車両の現在位置Cと一致する 地図リンクを特定し,3)上記2)のマップマッチングで特定されたリンクが上 記1)の経路リンクの一つと直接対応すると,道路境界領域の処理は行われず, その代わりに地図リンクと一致する経路リンクに基づいて誘導が行われ,他 方で,現在位置Cが,マップマッチングによって特定された経路リンクに載 っていない場合,所定の方法で絞り込んだ道路境界領域内のリンクと現在位 置とを比較してリンク上に載っているか否かの判定をするとの作業が行われ ていることが認められる。 なお,乙16の1は,補助参加人の関連会社所属のエンジニアが作成した 宣誓書であるが,同記載内容は,被告装置の制御に関する他の証拠とも矛盾 がなく,これを特段疑う理由もないから,信用できるものといえる。 以上からすれば,被告装置では,探索開始地点と誘導開始地点とを比較し て両地点が異なるか否かを判断するという作業は行われず,あくまで,車両 の現在位置が所定の経路リンク上に載っているか否かが判定されているにす ぎないから,被告装置は本件発明の構成要件Gを充足しないものというべき\nである。
・・・・
このように,本件発明が,車両が動くことにより探索開始地点と誘導開始 地点の「ずれ」が生じ,車両等が経由予定地点を通過してしまうことを従来\n技術における問題とし,これを解決することを目的として,上記「ずれ」の 有無を判断するために,探索開始地点と誘導開始地点とを比較して両地点の 異同を判断することを定めており,この点は,従来技術にはみられない特有 の技術的思想を有する本件特許の特徴的部分であるといえる。 そして,本件明細書(甲2)において,上記「ずれ」を判断する方法とし て,上記両地点を直接比較する方法以外の方法は何ら記載されておらず,そ れ以外の方法が想定されていたとは認められない。 また,前記2(1)ウ認定の本件特許に係る出願経過からも,探索開始地点 と誘導開始地点とを比較して両地点の異同を判断することが本件発明の本質 的部分であることは明らかである。 なお,原告自身も,本件発明においては「探索開始地点に関する情報」と 「誘導開始地点」とを比較する旨主張している(原告第9準備書面9頁参照) ところ,上記「探索開始地点に関する情報」の中核は「探索開始地点」自体 であるから,原告の上記主張を前提としても,本件特許において,探索開始 地点と誘導開始地点との比較が本質的部分であるといえる。 以上からすれば,探索開始地点と誘導開始地点とを比較して両地点の異同 を判断することが本件発明の本質的部分というべきであり,かつその比較方 法としては,両地点を直接比較することが当然に予定されているものであっ\nて,これに反する原告の主張は採用できない。 なお,原告は,従来技術において,経由予定地点を超えた地点となったこ\nとを判断する必要性すら認識されていなかった以上,この点に関する下位概 念的な具体的な手段まで本質的部分であるとはいえないとも主張する。しか し,前述のとおり,本件発明において探索開始地点と誘導開始地点の「ずれ」 を問題とし,その有無を判断するために,上記両地点を比較することが必須 であり,この点が本件発明を特徴付けているといえるものであって,その比 較の具体的手段が単なる下位概念であるとはいえないから,原告の上記主張 も採用できない。

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平成27(ワ)6812  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年6月23日  東京地方裁判所

 搾汁ジューサについて、均等侵害が認められました。興味深いのが損害額200万円がすべて代理人費用という点です。
 上記(ア)の本件明細書の記載によれば,圧力排出路の存在は本件発明が 解決すべき課題と直接関係するものではない。もっとも,本件発明の 効果等に関する上記 b,cの記載をみると,圧力排出路は,食材が 網ドラムの底部で最終的に圧縮され脱水される過程で生じる一部の汁 が防水円筒を超えてハウジングの外に流出するのを防ぐことを目的と するものであり,汁を排出するための通路をハウジング底面において 防水円筒の下部縁に形成することは発明の本質的部分であるとみる余 地がある。しかし,上記の効果を奏するためには,上記通路が防水円 筒の下部縁に存在すれば足り,これをどのような部材で構成するかに\nより異なるものではない。そうすると,上記の異なる部分は本件発明 の本質的部分に当たらないと解するのが相当である。
ウ 第2要件(置換可能性)について
前記イのとおり,本件発明における圧力排出路は,食材が網ドラム の底部で最終的に圧縮されて脱水される過程で生じる一部の汁が防水 円筒を超えてハウジングの外に流出するのを防ぐものである。また, これにスクリューギヤが挿入されて回転することにより,高粘度の汁 を効率的に排出することができる。 他方,前記前提事実 ウdの被告製品の構成及び別紙図17のとおり,\n被告製品のハウジングにスクリュー及び網ドラムを配置すると果汁案 内路が形成され,これが汁排出口と連通して,搾汁された汁の一部を 汁排出口へ案内する機能を果たすと認められる。また,被告製品のス\nクリュー下部に形成されたスクリューギアは,果汁案内路に挿入され て回転する(甲11)。そして,網ドラムはハウジングの上方から配置 されるものであり,果汁案内壁とハウジング底面との間に隙間が生じ ることもあり得るところ,その場合には当該隙間から汁が果汁案内路 の外側に流出するから,果汁案内路に流入した汁が内周側の防水円筒 を超えてハウジング外部に流出することはないものと考えられる。し たがって,被告製品の果汁案内路は本件発明の圧力排出路と同一の作 用効果を奏するということができる。 以上のとおり,被告製品の果汁案内路は圧力排出路と同一の作用効果 を奏するものとして,置換可能と評価するのが相当である。\nこれに対し,被告は,被告製品はハウジング底面を平坦化することに より清掃を容易にするという新たな効果が生じているから置換可能と\nはいえない旨主張する。しかし,仮にそのような効果が生じるとして も,ハウジング底面の清掃容易性は本件発明の前記課題とは無関係で あり,これをもって第2要件の充足性を否定することはできない。
エ 第3要件(置換容易性)について
本件明細書には,本件発明の実施例として,ハウジングに形成された 圧力排出路の外側のハウジング底面の上部に網ドラム底部に形成され た底部リングを載置し,その内周面と圧力排出路の外周面が上下に一 体となって,これと防水円筒の外周面により圧力排出路の上方に続く 空間を形成し,そこにスクリュー下方に突出形成された内部リング及 びその下端のスクリューギヤが挿入される例が記載されている(段落 【0045】,【0052】,【0056】,【図3A】,【図3B】)。この とき,水分(汁)の一部が内部リングと網ドラムの内部リング挿入孔 (底部リングの内側に当たる。)との間の隙間に押し込まれ,圧力排出 路に流入する(段落【0072】),すなわち,底部リング(網ドラ ム)内壁からそのまま圧力排出路の外周側の内壁を伝って圧力排出路 に流入しており,上記実施例において網ドラムの一部は圧力排出路の 外周側の壁の役割を果たしているといえる。また,本件発明と同じ技 術分野に属する搾汁機において,搾汁ケース(本件発明のハウジング に相当する。)のブッシング(同防水円筒に相当する。)の下部縁に流 路を形成せず,搾汁ケースの底部のこの部分を平坦にしたものは被告 製品の製造販売時に公知であったと認められる(甲26)。そうすると, 本件明細書の前記記載に接した当業者にとって,上記実施例の網ドラ ムないし底部リングを下方に伸長して圧力排出路の外周側の壁に代え るとともに,この部分のハウジングの底面を平坦にすることによって, 圧力排出路の外周側の壁全体を網ドラムで形成することに思い至るの は容易であるというべきである。 これに対し,被告は,ハウジングの底部を平坦にした被告製品は本件 発明と根本的に相違する旨主張するが,以上の説示に照らしこれを採 用することはできない。
オ 以上のとおり,被告製品の果汁案内路は本件発明の圧力排出路と均等で あるということができる。
・・・
3 争点 (原告の損害額)について
前記1及び2で判示したとおり被告製品は本件発明の技術的範囲に属す るところ,原告は,被告が被告製品の販売により1500万円の利益を得 たとして,特許法102条2項に基づき同額の損害賠償を請求する。これ に対し,被告は,被告製品の販売により316万9653円の損失が生じ ており,利益は得ていないと主張するところ,原告はこれに具体的に反論 せず原告主張を裏付けるに足りる証拠も提出しない。以上によれば,被告 が本件特許権の侵害行為により利益を得たと認めることはできないから, 独占的通常実施権の有無等の点について判断するまでもなく,原告の上記 請求は理由がないことになる。 本件事案の内容,経緯等に照らすと,本件において被告に負担させるべ き弁護士及び弁理士費用の額は200万円が相当であり,原告の被告に対 する本件特許権侵害による損害賠償請求はその限度で理由がある。

◆判決本文

◆こちらに図面があります

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平成28(ネ)10017  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年6月29日  知的財産高等裁判所  知的財産高等裁判所

 第2,第5要件を充足しないとして均等侵害が否定されました。
 ところで,商品の基礎情報である価格等は変わる場合があるところ,顧客 の注文前に商品の基礎情報が更新された場合,Web−POSサーバ・システムが 有する情報は,更新された後の商品情報のみであるから,Web−POSサーバ・ システムは,顧客が注文した商品の価格等を把握することができない(乙20)。 また,Cookieを用いたWeb技術は,サーバ側で識別情報としてテキスト・ データをWebブラウザごとに割り当て,更に,そのテキスト・データをWebブ ラウザの情報と対応付けて管理することにより,Webサーバ側において,HTT Pリクエストの送信元を識別等するというものにとどまる(甲25)。よって,W eb−POSサーバ・システムは,Cookie情報を受信しても,顧客が注文し た商品の価格等を把握することはできない。 そして,前記(ア)のとおり,本件ECサイトの管理運営システム内のサーバは, 顧客が注文した商品の価格等を把握するために,顧客のコンピュータからリクエス ト情報とともに受信したCookie情報をもとに,顧客のコンピュータに表示さ\nれた「レジ」画面情報の原本に当たる情報を同サーバから呼び出すという制御方法 を追加で採用することにより,顧客が注文した商品の価格等を把握するに至ってい るものである。
(ウ) したがって,ユーザが所望する商品の注文のための表示制御過程に関する\n構成において,Web−POSサーバ・システムがCookie情報等は取得する\nものの,注文された商品に係る商品基礎情報を取得しないという本件ECサイトに おける構成を採用した場合には,本件発明のように,Web−POSサーバ・シス\nテムは,注文時点における商品ごとの価格などが含まれた基礎情報をリアルタイム に管理することができないというべきである。
エ 小括
よって,本件ECサイトの制御方法,すなわち,オーダ操作が行われた際に,W eb−POSクライアント装置からWeb−POSサーバ・システムに送信される 情報に,注文された商品に係る商品基礎情報を含めずに,Cookie情報等を含 めるという方法では,本件発明と同一の作用効果を奏することができず,本件発明 の目的を達成することはできない。 したがって,均等の第2要件の充足は,これを認めることができない。
・・・・
前記1(2)ウのとおり,控訴人は,本件発明は,引用文献1に記載された発明に 基づいて容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項の規定 により特許を受けることができないとの拒絶理由通知に対して,本件意見書を提 出したものである。 そして,前記1(2)ウ及びエのとおり,控訴人は,本件意見書において,引用文 献1に記載された発明における注文情報には商品識別情報が含まれていないとい う点との相違を明らかにするために,本件発明の「注文情報」は,商品識別情報 等を含んだ商品ごとの情報である旨繰り返し説明したものである。 そうすると,控訴人は,ユーザが所望する商品の注文のための表示制御過程に関\nする具体的な構成において,Web−POSサーバ・システムが取得する情報に,\n商品基礎情報を含めない構成については,本件発明の技術的範囲に属しないことを\n承認したもの,又は外形的にそのように解されるような行動をとったものと評価す ることができる。 そして,本件ECサイトの制御方法において,管理運営システムにあるサーバが 取得する情報には商品基礎情報は含まれていないから,同制御方法は,本件発明の 特許出願手続において,特許請求の範囲から意識的に除外されたものということが できる。 したがって,均等の第5要件の充足は,これを認めることができない。
ウ 控訴人の主張について
これに対し,控訴人は,本件意見書において,POS管理を実現できる複数の構\n成の中から意識的にある構成を選択したり,ある構\成を排除したりしたものではな いと主張する。しかし,上記のとおり,控訴人は,本件意見書において,引用文献1に記載された発明における注文情報には商品識別情報が含まれていないという点との相違を 明らかにするために,本件発明の「注文情報」は,商品識別情報等を含んだ商品ご との情報である旨繰り返し説明していたものである。そうすると,控訴人は,本件 意見書において,本件発明のうち,ユーザが所望する商品の注文のための表示制御\n過程に関する具体的な構成については,Web−POSサーバ・システムが取得す\nる情報には必ず商品基礎情報を含めるという構成を,意識的に選択したことは明ら\nかであるといえ,控訴人の上記主張は,採用することができない。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成26年(ワ)第34145号

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平成28(ネ)10007  特許権侵害行為差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成28年6月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 第1,第5要件を充足しないとして均等侵害が否定されました。
 前記イのとおり,控訴人は,本件特許の出願時,座席を連続して揺動させること が可能な乳幼児用の椅子等であって,揺動制御手段としてソ\レノイドを有するもの について,旧請求項1においては,座席支持機構を特段限定せず,旧請求項2にお\nいては,座席支持機構をロッド2点支持方式に限定し,旧請求項3においては,座\n席支持機構を,座席とベースとの間に,ベースに対して座席が「水平往復動可能\な スライド手段を設けたことを特徴とする」ものに限定していたものである。そして, 控訴人は,本件補正により,旧請求項1を,本件特許の特許請求の範囲から削除し, その範囲を旧請求項2及び旧請求項3に限定したものである。 このように,控訴人は,本件補正において,座席を連続して揺動させることが可 能な乳幼児用の椅子等であって,揺動制御手段としてソ\レノイドを有するものにつ いて,拒絶理由通知に対応して,座席支持機構を特段限定していない旧請求項1を\n削除し,座席支持機構にロッド2点支持方式を採用する旧請求項2(本件発明)及\nび座席とベースとの間に,ベースに対して座席が「水平往復動可能なスライド手段\nを設けたことを特徴とする」方式を採用する旧請求項3に限定したものである。そ して,本件発明の出願時には既に,座席を連続して揺動させることが可能な乳幼児\n用の椅子等の座席支持機構として,コロと湾曲レールを利用した方式が存在するこ\nとは周知であり(乙3〜5),コロと湾曲レールを利用する方式に係る座席支持機 構は,上記のとおり削除された旧請求項1に係る座席支持機構\の範囲内に客観的に 含まれるものである。 したがって,控訴人は,コロと湾曲レールを利用する方式に係る座席支持機構に\nついても,本件発明の技術的範囲に属しないことを承認したもの,又は外形的にそ のように解されるような行動をとったものと評価することができる。 よって,均等の第5要件の充足は,これを認めることができない。
エ 控訴人の主張について
控訴人は,本件特許の出願当時,動力機構としてソ\レノイドを用い,座席支持機 構としてコロと湾曲レールを利用するという各構\成を組み合わせた乳幼児用の椅子 等は存在せず,また,動力機構としてソ\レノイドを用いることから生じる課題も公 知ではなかったから,本件特許の特許請求の範囲に,座席支持機構としてコロと湾\n曲レールを利用する方式も含めることは容易ではなく,さらに,拒絶理由を回避す るために,座席支持機構についてロッドを利用した方式に限定したものでもないと\n主張する。 しかし,控訴人が,本件補正において,ロッド2点支持方式等を除く方式に係る 座席支持機構を包括的に削除したとの事実の評価は,客観的に判断されるべきもの\nである。 そうすると,このような控訴人の本件補正時における具体的な認識や本件補正の 目的は,均等の第5要件の充足に関する結論を左右するものではない。
(4) まとめ
よって,均等のその余の要件の成否について検討するまでもなく,各被告製品は, 均等の第1要件及び第5要件を充足しないから,各被告製品が本件発明と均等なも のとしてその技術的範囲に属するということはできない。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成26年(ワ)第25196号

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平成27(ワ)8704    特許権  民事訴訟 平成28年5月12日  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないと判断されました。
「電子ショッピングシステム」の意義についても,本件明細書中に明確な定 義はないが,「ショッピング」が一般的な意味において売買を指すことは明らかで あるし,加えて構成要件Fからすると,この電子ショッピングには,少なくとも「注\n文」と「受注」が起きることが必要であるし,また本件明細書の【0001】には, 【発明の属する技術分野】として「本発明は,例えばレコードショップ等が加盟す るフランチャイズ制の電子ショッピングシステムに関し,インターネットを利用し た電子商取引の技術分野に関する。」とあり,さらに【発明の効果】を記載した【0 042】に「受注データにしたがって当該会員に商品を引き渡すと共に代金を受領 することにより,自らホームページを所持しなくても,インターネットを利用した 商取引が可能となる。」とあることから,ここにいう「電子ショッピングシステム」\nとは,インターネットを利用してされる有償の商品の取引を指すものと解するのが 相当であり,その取引においては,「注文」と「受注」,すなわち売買契約締結に 向けて顧客からの具体的法律行為がなされ得ることが必要であると解される。 これに対し,原告は,電子ショッピングシステムの定義について,商品の広告, 受発注,設計,開発,決済などのあらゆる経済活動と捉えるもので,商品の宣伝で あってもこれに含まれる旨主張するところ,確かに,本件明細書には,「電子ショ ッピングシステム」でなす経済活動について,「電子商取引」(【0001】,【0 005】,【0038】,【0043】),「商取引」(【0013】,【004 2】)などとする記載があり,さらに証拠(甲19ないし21)によれば,「電子 商取引」の定義については上記原告主張に一部沿うものが認められる。 しかし,「宣伝」に触れる記載(甲19)は,取引ではなく,インターネット上 の商行為について触れるものであるし,「広告」を含む通商産業省の定義(甲20) は,その当時の郵政省の定義とは異なることからすると,これは省庁の規制目的で 対象範囲の定義をしていると理解でき,直ちに一般的に通用する定義に結びつくも のとはいえない。 そして,そもそも,ここでは本件発明の構成要件にいう「電子ショッピングシス\nテム」の定義を問題にしているのであるから,上記説示のとおり本件明細書の記載 を考慮して解すべきであって,したがって,「電子ショッピンング」に,少なくと も原告の主張するような宣伝,広告までを含んで解することはできないというべき である。 (イ) これを前提に被告システムにつき検討するに,被告システムは,前記認定の とおり,顧客は各提携企業のホームページにおいて,講演会の講師を選択し,当該 講師の「講演を依頼する」タグを選択することにより現れる問合せ画面に名称,住 所,電話番号等の自らを特定する情報を記載し,さらに講演の希望内容を入力する などして送信すると本部のサーバーがこれを受信し,それに伴って各提携企業サー バーにeメールが送信されることで各提携企業が得る上記情報を基に,顧客を訪問 する,電話ないしメール等で連絡を取り合うなど営業活動をして,顧客の希望に沿 った講演会の内容・レベル・対象・講師・構成などを聴取し,顧客と契約できるよ\nう交渉を行うという方式である。 すなわち,被告システムの役割は,講演開催運営を取り扱う各提携企業に対し, 講演開催希望者がインターネットを使ってアクセスするホームページを設けて,そ の潜在的需要を顕在化させ,もって各提携企業が営業活動をすべき講演開催希望者 の情報を得ることができるというところまでであり,その後の講演開催実現に至る までの営業活動は,インターネット外,すなわち被告システム外の接触交渉が予定\nされているというものである。また,その機会における顧客が被告システムを利用 して「お問い合わせ(講演依頼)」をする行為は,漠然とした講演開催希望に基づ くものであってもよく,したがって,これにより提携企業との間で講演開催に向け ての交渉が開始されたとしても,それだけでは当事者間に法的な関係が直ちに生じ たとはいえないから,被告システムは,それは最終的に締結されるだろう講演開催 委託契約に向けての各提携企業の営業活動の契機を与えるものにすぎないものとい える。そして,このように見ると,被告システムでされている内容は,潜在的需要 者をインターネットでアクセスさせ,その潜在的な需要を顕在化させ,その情報を もとに実際の営業活動に結びつけるという,一般的な広告宣伝の手法と何ら変わら ないものといい得る。 なお,被告システム利用者の中には,希望講師のみならず講演会開催の日時,場 所とも確定して利用する者が含まれることはあり得るところ,その場合,そのよう な「お問い合わせ(講演依頼)」によるアクセス行為は,商品購入の注文に極めて 似ているといえるが,その場合であっても,被告システムを介して,そのアクセス を受けた各提携企業は,自らが講演する主体ではなく,また掲載講師のスケジュー ルを管理している主体とも認められないから,直ちに承諾,すなわち「受注」する ことができるわけではなく,その後,講師との関係を調整して,具体的講演開催に 向けて交渉を重ねる必要があるはずであって,したがって,利用者の 「お問い合わ せ(講演依頼)」をいかに具体化しても,これを売買契約における「注文」に準じ るものということができるわけではない。 したがって,被告システムは,構成要件Aにいう「電子ショッピングシステム」\nには相当しないというべきである。

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平成26(ワ)26079  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年4月27日  東京地方裁判所

 特許権侵害ではないと判断されました。原告は日本および中国の大手通信会社を被告として、数件訴訟しています。特許も複数あるようです。
  この点,原告は,情報処理技術分野における用語法などからすれば,「選択」 には全てを選択することが含まれると主張し,ユーザ端末が全部のサブバンドを選 択することもこれに該当する旨主張する。 しかし,仮に,本件各発明に関連する技術分野において「選択」との文言が上記 のように用いられることがあるとしても,加入者が全部のサブバンドの差分CQI を報告する以外の選択肢がなく,常に全部のサブバンドの差分CQIを報告しなけ ればならない状態についてまで,「選択」の語義に含まれると解するのは妥当でな い。前記前提事実に記載のとおり,被告通信システム方法及び被告製品においては, 基地局により本件モードを選択している以上,加入者は,基地局からのパイロット 信号に対し,全てのサブバンドの差分CQIを報告する以外に選択の余地はないの であるから,原告の上記解釈は採用することができない。 また,原告は,本件明細書の段落【0028】,【0040】,【0069】に は,全部のクラスタが選択されることを包含する内容の記載があること,実質的に も,全部のサブバンドを選択してフィードバックした方がかえってフィードバック 情報量を削減できるといえることなども主張するが,原告が掲げた本件明細書の上 記各段落の記載によっても,常に全部のクラスタについての情報を「選択」すると いう実施形態は明示されていない。なお,本件明細書の段落【0028】には, 「フィードバック内の情報の順序を基地局が知っている限り,フィードバック内の どのSINR値がどのクラスタに対応しているかを示すためにクラスタインデクス が必要になることはない。」としか記載されていないから,仮に,この実施形態が 全部のクラスタについての情報をフィードバックする実施形態を含むとしても,こ のようなフィードバックの形態と加入者による「選択」との関係が不明であり,少 なくとも,常に全部のクラスタについての情報を報告する態様を「加入者による選 択」の一形態として含むことについて,本件明細書に明確な記載はないものという べきである。かえって,原告の主張する解釈1を採用すると,本件発明4の課題解 決のための一つの構成として規定された構\成要件4F,あるいは本件発明9の課題 解決のための一つの構成として規定された構\成要件9Eにおける「前記加入者が選 択した・・・クラスタのグループの中の・・・クラスタを・・・割り当てる」との 意義が失われるというべきで,上記の解釈1は妥当でないと言わざるを得ない。

◆判決本文

◆同じ特許での被告が異なる事件でも同様に判断されています。平成26(ワ)24183

◆同じ特許での被告が異なる事件でも同様に判断されています。平成26(ワ)34227

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平成27(ネ)10127  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年4月27日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 均等の第5要件で侵害なしとした一審判断が維持されました。
 前記(2)の認定事実によれば,第1手続補正前の時点では,特許請求の範囲の請求項1において,「計算」については,「Web−POSサーバ・システム」で行われるのか,あるいは,「Web−POSクライアント装置」で行われるのかを含め,発明特定事項としては何ら規定されていなかったが,控訴人は,第1手続補正によって,特許請求の範囲の請求項1において,「計算」について,「Web−POSサーバ・システム」で行われる構成に限定し,その後にした第2手続補正において,特許請求の範囲を本件請求項1の構\成要件F4のとおり補正し,この第2手続補正に基づく特許請求の範囲の請求項1(本件請求項1)について,特許査定を受けたものであるということができる。そして,第2手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(本件請求項1)の「該数量に基づく計算」,すなわち,本件特許発明の構成要件F4の「該数量に基づく計算」は,「Web−POSサーバ・システム」では行われず,「Webブラウザ」を備える「Web−POSクライアント装置」で行われるものと解さざるを得ないことは,前記1のとおりである。そうすると,本件出願手続において,第1手続補正前の時点では,「計算」について,発明特定事項として何らの規定もされていなかった特許請求の範囲の請求項1について,控訴人は,第1手続補正により,「計算」が「Web−POSサーバ・システム」で行われる構\成に限定し,その後の第2手続補正によって,この構成に代えて,あえて「該数量に基づく計算」が「Web−POSクライアント装置」で行われる構\成に限定して特許査定を受けたものということができる。上記事実に鑑みれば,控訴人において,「該数量に基づく計算」が,被告方法のように「Web−POSサーバ・システム」で行われる構成については,本件特許発明の技術的範囲に属しないことを承認したもの,又は外形的にそのように解されるような行動をとったものと評価することができる。したがって,均等の第5要件の成立は,これを認めることができない。\n

◆判決本文

◆一審はこちら。平成26(ワ)27277

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平成25(ワ)29520  不当利得返還請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年3月30日  東京地方裁判所

 クレームの用語「ICSネットワークアドレス」を技術的に分析して、該当しないと判断されました。
 ウ 以上の本件明細書1の記載によれば,「ICSネットワークアドレス」とは, コンピュータ情報/通信アドレスとして独自に定めたアドレスの付与規則を持つI CS(統合情報通信システム)において,これを構成するアクセス制御装置,アク\nセス制御装置とユーザ物理通信回線との接続点であるICS論理端子,中継装置, VAN間ゲートウェイ及びICS網サーバ等に付与される,それぞれICS内部で 唯一の識別符号を指すものであり,かつ,このうち,ICS論理端子に付されるア ドレスは,ICSネットワークフレームを構成するネットワーク制御部に格納され,\n同アドレスが直接参照されることにより,ICSネットワークフレームがICS網 内を転送されるものを意味すると認められる。
エ しかるところ,被告システムにおける「ラベル」,すなわち網内転送ラベル (outerラベル)及びVPN識別ラベル(innerラベル)の各値は,各事業所に設置 されているCEルータが,自身が接続しているVPNサイト内部のルート情報を接 続しているPEルータに配信し,これを受信したPEルータにおいて,当該VPN に属する他の事業所を接続するPEルータやPルータに配信することを繰り返すこ とにより,特定のホストアドレスを有するVPN内部のユーザへ情報を配信する場 合に通過する経路を各々のPEルータ及びPルータが蓄積した結果決定された情報 であって,被告システムにおいて「ICS論理端子」に該当しうる「PE−CEイ ンターフェイス」に網内で唯一付された識別子であるとは認められない。 加えて,網内転送ラベル(outerラベル)の値は,あくまでPEルータ又はPル ータがMPLSフレームを転送すべき次のPルータ又はPEルータを特定するため に設定された値である上,Pルータを経由するごとに貼り替えられていくのである\nから,仮に,被告システムの「PE−CEインターフェイス」に網内で唯一付され た識別子が存在しているとしても,同識別子が網内転送ラベル(outerラベル)の 値と一致するものとは認め難い。また,VPN識別ラベル(innerラベル)は,M PLSフレームが各Pルータを転送されて受信側PEルータに到着した際に同受信 側PEルータによって参照され,これによりパケットを出力すべきPE−CEイン ターフェイスが特定されるものではあるが,あくまで受信側PEルータ内部によっ てPE−CEインターフェイスを特定するものであるから,VPN識別ラベル (innerラベル)の値が,特定のPE−CEインターフェイスに網内で唯一付され た識別子と同一の値であるとは直ちには認められず,両値の同一性を認めるに足り る的確な証拠もない。
オ なお,原告は,網内転送ラベル(outerラベル)及びVPN識別ラベル (innerラベル)の「2つのラベルに含まれる情報」や「ラベルの組合せ」をもっ て,「ICSネットワークアドレス」に該当すると主張しているようにも思われる ところ,確かに,被告システムにおいて,網内転送ラベル(outerラベル)及びV PN識別ラベル(innerラベル)が付されたパケットは,最終的に所望のPE−C Eインターフェイスを経由して特定のユーザに送信されることとなるが,上記のと おり,「ICSネットワークアドレス」とは,コンピュータ情報/通信アドレスと して独自に定めたアドレスの付与規則を持つICS(統合情報通信システム)にお いて,これを構成するアクセス制御装置,アクセス制御装置とユーザ物理通信回線\nとの接続点であるICS論理端子,中継装置,VAN間ゲートウェイ及びICS網 サーバ等に付与される,それぞれICS内部で唯一の識別符号を指すものであり, かつ,このうち,ICS論理端子に付されたアドレスは,ICSネットワークフレ ームを構成するネットワーク制御部に格納され,同アドレスが直接参照されること\nにより,ICSネットワークフレームがICS網内を転送されるものを意味するの であって,単に「所望のICS論理端子にICSユーザフレームを到達させるため に同ICSユーザフレームに付される情報」一般を包括的に含む広範な概念を指す ものとは認められないから,原告の主張は採用できない。 カ したがって,被告システムは,「ICSネットワークアドレス」を有しない から,構成要件1−1A,同1−1B及び同1−2Aをいずれも充足しない。\n

◆判決本文

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平成27(ネ)10126  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年4月14日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁も、物の発明ではないと判断し、控訴棄却しました。
 これに対し,控訴人は,「手順・プロセス」が含まれていても,「構造\n・構成」に発明性を備えるものは「物の発明」であるところ,本件特許発明\nは,「テーブル」と「緩衝材」によって構成される「構\造」によって,本件 明細書に記載された発明の作用効果を得ることを目的とする「物の発明」で あって,テーブルを「設置し」と建築物等を「配置する」の前後関係は,技 術的には何ら価値がなく,本件特許発明の構成要件ではないなどと主張する。\n しかしながら,これらの控訴人の主張は,あくまでも,本件特許発明にお ける「地盤強化工法」が構造ないし構\成を意味することを前提とするもので あり,前記アのとおり,かかる「地盤強化工法」が工事の方法を指すと解さ れる以上,控訴人の上記主張は,その前提において採用することができな い。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成27(ワ)14339

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平成27(ネ)10107  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年3月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 第1要件により均等侵害否定されました。1審では、文言解釈により技術的範囲に属しない、また進歩性なしとして特許104条の3により権利行使不能と判断されていました。\n
 これらの記載によれば,本件特許発明1の特徴となる技術的意義の一 つは,弾性腕の接触部についての有効嵌合長が短くなるという課題を解決するため に(【0005】【0008】),複数の弾性腕が,いずれも,端子の基部から接触線 に沿って平行に延びるという解決手段を採用することによって(【0013】,【00 25】,【0042】),端子の基部から延びる弾性腕が接触線を跨ぐことで相手端子 と当接することを防ぎ,その結果,各弾性腕を長く形成することができ(【0013】), そのため,有効嵌合長を大きく確保することができるという効果を奏する(【001 9】)ものであるから,弾性腕が,端子の基部から接触線に沿って平行に延びること は,本件特許発明1の効果を奏するために必要となる,特徴的な構成であると認め\nられる。 これに対し,本件特許発明1において,弾性腕の間に設けられた中央壁15は, 実施例で言及されているだけであるから,本件特許発明1において発明特定事項と なる必須の構成ではなく,また,本件特許1の明細書に従来技術に関する文献とし\nて掲げられた特開平8−236187号公報(甲19)に加え,特開2003−1 68505号公報(乙12),特開平6−76896号公報(乙15),バーグエレ クトロニクスジャパン株式会社カタログ(乙19。平成10年1月ころ発行)から も明らかなとおり,本件特許1の出願日及び本件特許2の原出願日である平成20 年8月5日当時において,コネクタでは,2つの端子の接触部側の間に,相手端子 を当接して停止させる効果をもたらす中央壁が必ず設けられるという技術常識は存 在しないから,当業者にとって,上記中央壁の設置が当然の構成ということもでき\nない。そして,中央壁が存在しない場合には,弾性腕の根元部分が接触線を跨ぐと, 有効嵌合長が短くなるし,仮に,中央壁を設ける場合であっても,弾性腕の根元部 分が中央壁よりも常に高い位置に設けられるとは限らないから,例えば,弾性腕の 最も根元の部分が,中央壁よりも低い位置から開始し,かつ,接触線に対して端子 溝側にある場合であっても,弾性腕が屈曲形状を有していて,中央壁よりも高い位 置で接触線を跨ぐときには,有効嵌合長が短くなることも想定され,したがって, 有効嵌合長の長さは,常に中央壁よりも高い弾性腕部分の長さになるわけではなく, 弾性腕の根元部分の位置や弾性腕の形状等にも左右される。本件特許1の明細書に 記載された従来技術としては,特開平8−236187号公報(甲19)では,相 手端子が当接する中央壁が存在しないコネクタが実施例として,特開2002−1 75847号公報(甲20)では,相手端子が当接する中央壁が設けられたコネク タが実施例として開示されているから,これらの従来技術を踏まえた本件特許発明 1は,相手端子が当接する中央壁の有無にかかわらず,有効嵌合長を長くすること を確実にする効果を目指していた発明ということができる。 そうすると,本件特許発明1は,中央壁の有無にかかわらず,有効嵌合長を大き く確保することを課題とする発明である以上,当該効果を確実に実現するためには, 弾性腕の一部だけが接触線に対して一方の側に位置すれば足りるわけではなく,そ の全体が接触線に対して一方の側に位置することが不可欠であり,複数の弾性腕全 体が接触線の一方の側にあるという発明特定事項は,本件特許発明1の本質的部分 といえる。
(エ) これに対し,被控訴人製品1,2のいずれにおいても,内側接触子2 3(「上位に位置する弾性腕」)の内側湾曲部23Aの根元部分は,直線(接触線) Xを跨っているから,弾性腕が,接触線に対して一方の側に位置しているとはいえ ない。 したがって,被控訴人製品は,本件特許発明1の本質的部分である構成要件1B\nと相違するから,均等の第1要件を充足しない。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成26(ワ)18842

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平成26(ワ)20422  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年3月17日  東京地方裁判所

 Appleと島野製作所の特許侵害訴訟です。島野の請求は棄却されました。理由は、イ号の「コマ」は本件発明にいう「押付部材」には該当しないというものです。裁判所は、明細書の記載および本件が分割出願であることも考慮しました。
 本件発明の「押付部材」に対応する被告製品中の「コマ」は,別紙被告ポゴ ピン断面図のとおり,球形ではなく,一部に球状の面を有するにとどまる。被 告が押付部材は球に限られるので被告製品は構成要件D2を充足しない旨主張\nするのに対し,原告は押付部材の一部(プランジャーピンの傾斜凹部に押圧さ れる部分)が球状の面であれば足りる旨主張するので,以下,検討する。 (1) まず,特許請求の範囲の記載をみるに,本件発明は,コイルバネで付勢し てプランジャーピンを突出させる接触端子に関するものであり(構成要件A\n〜C),コイルバネがプランジャーピンを直接押圧するのではなく,コイル バネとプランジャーピンの間に「押付部材」が介在し,これがコイルバネか ら付勢を受けて,その「球状面からなる球状部」がプランジャーピンの傾斜 凹部を押圧することに特徴がある(構成要件D1〜3)。\nこの「押付部材」という語は当該部材が果たす機能をそのまま記述したも\nのであるところ,その形状に関しては,プランジャーピンの傾斜凹部に押圧 される部分が「球状面からなる球状部」であるとされるのみであり,それ以 外の部分(コイルバネから付勢される部分,コイルバネ側とプランジャーピ ン側の中間部分)の形状については特許請求の範囲に何ら記載がない。そう すると,上記押圧される部分が球状に丸くなっていればそれ以外の部分はい かなる形状でもよいと解する余地がある。他方,押付部材の形状は,上記機 能を果たし得るものに限定されると考えられる上,同機能\\を果たすものであ ればいかなる形状の部材でも本件発明の技術的範囲に含まれるとすることは, 現に発明をして明細書に開示した範囲で保護を与えるという特許制度の趣旨 に反しかねない。そこで,特許請求の範囲に記載された「押付部材」の語の 意義を解釈するため,本件明細書(甲2)の発明の詳細な説明の記載及び図 面を考慮することとする。
(2) 本件明細書の発明の詳細な説明の記載をみると,「押付部材」との語は一 切用いられていない。本件発明の接触端子においてプランジャーピンとコイ ルバネの間に介在する部材として開示されているのは「絶縁球」のみであり, 図面に示されたのも球のみである。 すなわち,本件発明は,背景技術として,コイルバネが直接プランジャー ピンに触れるとコイルバネに電流が流れて焼き切れてしまうので,プランジ ャーピンとコイルバネの間に絶縁球を介在させた接触端子が存在したことを 前提に(段落【0002】〜【0004】),比較的大きな電流を流し得る接 触端子を提供することを目的として(同【0008】),プランジャーピンの 大径部(コイルバネ側)の端部を切削して袋孔を形成し,その底部を円錐面 とするとともに,円錐の中心軸とプランジャーピンの中心軸をオフセットさ せることによって,プランジャーピンの大径部の外側面を本体ケースの内周 面に強く押し付け,確実に電流を流すことができるようにしたものである (同【0009】,【0013】〜【0015】)。そして,実施例及び参考例 をみても,押付部材に相当する部材としては「絶縁球」のみが記載されてい る(同【0024】〜【0030】,【0032】,【0036】,【0039】 〜【0042】,【図2】,【図4】,【図6】)。 以上のとおり,押付部材として本件明細書に開示されているのは球のみで あり,これと異なる形状の押付部材があり得ることを示唆する記載は見当た らない。そうすると,本件明細書の記載を考慮すると,本件発明における押 付部材の形状は球に限られると解するのが相当である。
(3)さらに,本件特許の出願経過についてみるに,後掲の証拠及び弁論の全趣 旨によれば,1)本件特許は,特願2011−192407号を優先権の基礎 とする特願2011−271985号(原出願)から分割出願されたもので あること(甲2),2)上記優先権の基礎とされた出願及び原出願は,いずれ も名称を「接触端子」とする発明に関するものであり,特許請求の範囲,発 明の詳細な説明及び図面を通じ,プランジャーピンとコイルバネの間に介在 する部材として記載されているのは「絶縁球」のみであること(乙13,1 4),3)本件特許は平成25年4月19日に分割出願されたものであり,そ の特許請求の範囲に,プランジャーピンとコイルバネの間に「押付部材」を 介在させる旨記載されたこと(乙15),4)原告は,同年10月11日,押 付部材に係る特許請求の範囲の記載を「少なくとも一部に球状面を有する押 付部材の球状部」と補正したこと(乙17),5)これに対し,同月25日, 特許法36条6項1号違反を理由1(発明の詳細な説明には押圧部材に絶縁 球を用いることが記載される一方,請求項1には絶縁性を有しない押圧部材 が記載されていること),同法29条1項3号及び2項の違反を理由2及び 3(原出願に「押付部材」として記載されていたのは「絶縁球」のみであり, これを「少なくとも一部に球状面を有する押付部材」とすることは適法な分 割出願でないので,請求項1記載の発明は原出願の公開特許公報により新規 性又は進歩性を欠くこと)とする拒絶理由通知が発せられたこと(乙4), 6)原告は,同年11月8日,上記4)の補正後の特許請求の範囲の記載を「押 付部材の球状面からなる球状部」と補正する旨の手続補正書と,絶縁性を有 しない押付部材でも本件発明の効果を奏するので,発明の詳細な説明に記載 されたものといえる旨の意見書を提出したこと(乙5,6),7)同月27日 に特許査定がされたこと(乙19),以上の事実が認められる。 上記事実関係によれば,本件発明の「押付部材」は,少なくとも一部に球 状面を有するものでは足りず,その全体が球であるものに限られるというこ とができる(仮に,一部にのみ球状面を有するものが含まれるとすれば,本 件特許は違法な分割出願によるものとして新規性欠如の無効理由を有するこ とが明らかである。)。

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平成27(ネ)10014  特許権侵害行為差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年3月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁の大合議判決です。争点は製法特許についての均等主張です。知財高裁は、均等を認めた1審判決を維持しました。第5要件の特段の事情について、出願時に容易にきさいできたにもかかわらず記載しなかった場合に、原則として、第5要件には当たらないと判断しました。
 この点,特許請求の範囲に記載された構成と実質的に同一なものとして,\n出願時に当業者が容易に想到することのできる特許請求の範囲外の他の構成があり,\nしたがって,出願人も出願時に当該他の構成を容易に想到することができたとして\nも,そのことのみを理由として,出願人が特許請求の範囲に当該他の構成を記載し\nなかったことが第5要件における「特段の事情」に当たるものということはできな い。
なぜなら,1)上記のとおり,特許発明の実質的価値は,特許請求の範囲に記載さ れた構成以外の構\成であっても,特許請求の範囲に記載された構成からこれと実質\n的に同一なものとして当業者が容易に想到することのできる技術に及び,その理は, 出願時に容易に想到することのできる技術であっても何ら変わりがないところ,出 願時に容易に想到することができたことのみを理由として,一律に均等の主張を許 さないこととすれば,特許発明の実質的価値の及ぶ範囲を,上記と異なるものとす ることとなる。また,2)出願人は,その発明を明細書に記載してこれを一般に開示 した上で,特許請求の範囲において,その排他的独占権の範囲を明示すべきもので あることからすると,特許請求の範囲については,本来,特許法36条5項,同条 6項1号のサポート要件及び同項2号の明確性要件等の要請を充たしながら,明細 書に開示された発明の範囲内で,過不足なくこれを記載すべきである。しかし,先 願主義の下においては,出願人は,限られた時間内に特許請求の範囲と明細書とを 作成し,これを出願しなければならないことを考慮すれば,出願人に対して,限ら れた時間内に,将来予想されるあらゆる侵害態様を包含するような特許請求の範囲\nとこれをサポートする明細書を作成することを要求することは酷であると解される 場合がある。これに対し,特許出願に係る明細書による発明の開示を受けた第三者 は,当該特許の有効期間中に,特許発明の本質的部分を備えながら,その一部が特 許請求の範囲の文言解釈に含まれないものを,特許請求の範囲と明細書等の記載か ら容易に想到することができることが少なくはないという状況がある。均等の法理 は,特許発明の非本質的部分の置き換えによって特許権者による差止め等の権利行 使を容易に免れるものとすると,社会一般の発明への意欲が減殺され,発明の保護, 奨励を通じて産業の発達に寄与するという特許法の目的に反するのみならず,社会 正義に反し,衡平の理念にもとる結果となるために認められるものであって,上記 に述べた状況等に照らすと,出願時に特許請求の範囲外の他の構成を容易に想到す\nることができたとしても,そのことだけを理由として一律に均等の法理の対象外と することは相当ではない。
(イ) もっとも,このような場合であっても,出願人が,出願時に,特許請求の 範囲外の他の構成を,特許請求の範囲に記載された構\成中の異なる部分に代替する ものとして認識していたものと客観的,外形的にみて認められるとき,例えば,出 願人が明細書において当該他の構成による発明を記載しているとみることができる\nときや,出願人が出願当時に公表した論文等で特許請求の範囲外の他の構\成による 発明を記載しているときには,出願人が特許請求の範囲に当該他の構成を記載しな\nかったことは,第5要件における「特段の事情」に当たるものといえる。 なぜなら,上記のような場合には,特許権者の側において,特許請求の範囲を記 載する際に,当該他の構成を特許請求の範囲から意識的に除外したもの,すなわち,\n当該他の構成が特許発明の技術的範囲に属しないことを承認したもの,又は外形的\nにそのように解されるような行動をとったものと理解することができ,そのような 理解をする第三者の信頼は保護されるべきであるから,特許権者が後にこれに反し て当該他の構成による対象製品等について均等の主張をすることは,禁反言の法理\nに照らして許されないからである。
イ 控訴人らの主張について
(ア) 控訴人らは,化学分野の発明では,特許請求の範囲が客観的かつ明瞭な表\n現で規定されており,第三者にはその範囲以外に権利が拡張されることはないとの 信頼が生じるから,当該信頼は保護されるべきであると主張する。しかし,前記の とおり,均等による権利は,特許請求の範囲の文言上規定された範囲以外であって も,特許請求の範囲に記載された構成からこれと実質的に同一なものとして当業者\nが容易に想到することができる技術に及び,第三者はこれを予期すべきであり,禁\n反言の法理に照らし均等の主張が許されないのは,上記特段の事情がある場合に限 られるのであって,化学分野の発明であることや,特許請求の範囲が文言上明確で あることは,それ自体では「特段の事情」として均等の成立を否定する理由とはな り得ないから,控訴人らの主張は理由がない。

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平成27(ネ)10104  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年3月9日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審で均等侵害を主張しましたが、第1要件、第5要件を満たしていないとして、否定されました。
ア 均等侵害の第1要件は,特許請求の範囲に記載された構成と相手方が製造等をする製品又は用いる方法との異なる部分が特許発明の本質的部分でないことであ\nる。そして,特許発明における本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された構成のうち,当該特許発明特有の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部\n分であると解すべきである。
イ 本件各発明は,前記1(4)イのとおり,HMG−CoA還元酵素阻害剤として 高脂血症の治療に有用な,結晶形態のピタバスタチンカルシウム塩及びそれを含む 医薬組成物に関し,特別な貯蔵条件でなくとも安定なピタバスタチンカルシウムの 結晶性原薬を提供すること,同原薬を安定的に保存する方法を提供することを課題 とし,ピタバスタチンカルシウムの結晶性原薬に含まれる水分量を特定の範囲にコ ントロールすることでその安定性が格段に向上すること及び結晶形態AないしCの 中で結晶形態Aが医薬品の原薬として最も好ましいことを見いだしたというもので ある。 そうすると,特別な貯蔵条件でなくとも安定なピタバスタチンカルシウムの結晶 性原薬を提供すること,同原薬を安定的に保存する方法を提供することを課題とす る本件各発明において,特定の結晶形態をとることが,上記課題の特徴的な解決手 段であるといえる。 そして,本件各明細書には,結晶形態AないしCの3種類の結晶形態は,水分が 同等で結晶形態が異なる形態であり,結晶形態B及びCは,「いずれも結晶形態A に特徴的な回折角10.40°,13.20°及び30.16°のピークが存在し ないことから,結晶多形であることが明らかにされる。」(本件明細書1【001 4】,本件明細書2【0015】)とあるように,CuKα放射線を使用して測定 した粉末X線回折図において,結晶形態Aに存在する3本のピークの回折角が存在 しないことによって,結晶形態Aと区別されるものであることが記載されているの みで,結晶形態B及びCに係る回折角(2θ)の数値,相対強度や粉末X線回折図 を含めその粉末X線回折パターンについての開示は一切なく,他方で,結晶形態A については,CuKα放射線を使用して測定した粉末X線回折パターンとして,別 紙本件明細書1図表目録2記載のとおりの数値が記載され,同目録3記載の【図1】の記載があるのみで,それ以上の特定はされておらず,結晶形態Aに係る回折角に\nついて,その数値に一定範囲の誤差が許容されることや15本のピークのうちの一 部のみによって結晶形態Aを特定することができることをうかがわせる記載も一切 存しない。 以上によれば,本件各発明において,構成要件C・C’に規定された15本のピークの回折角の数値は,本件各明細書において,本件各発明の課題の特徴的な解決\n手段である特定の結晶形態を,他の結晶形態,すなわち本件各発明の課題の解決手 段とはなり得ない結晶形態と画する唯一の構成として開示されたものであるということができる。\nしたがって,本件各発明において,構成要件C・C’に規定された15本のピークの回折角の数値は,本件各発明の課題の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核\nをなす特徴的部分であるというべきである。
ウ そうすると,控訴人が被控訴人製品に含まれるピタバスタチンカルシウム塩 における15本のピークの回折角であるとする数値は,前記1(5)のとおり,原判決 別紙物件目録(1)記載のとおりであり,控訴人の特定する数値によったとしても,1 5本の全てが構成要件C・C’の回折角の数値と相違するのであるから,被控訴人製品は,本件各発明と課題の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的\n部分において相違していることになる。 以上によれば,被控訴人製品は,均等侵害の第1要件を充足しない。
(3) 均等侵害の第5要件について
ア 均等侵害の第5要件は,相手方が製造等をする製品又は用いる方法が特許発 明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるな どの特段の事情がないことである。
イ 前記1(3)のとおり,控訴人は,本件特許1の出願経過において,拒絶理由通 知を受け,構成要件Cの15本のピークの回折角の数値を挿入する平成23年11月29日付けの補正を行い,この際,上記補正が特許請求の範囲の限定的減縮に相\n当するものであることを表明した。また,控訴人は,本件特許2の出願経過においても,拒絶理由通知を受け,構\成要件C’の15本のピークの回折角の数値を挿入する平成25年3月8日付けの補正を行い,この際,上記補正が特許請求の範囲の 限定的減縮に相当するものであることを表明した。控訴人は,本件特許1の出願経過における拒絶理由通知において,1本のみのピ\nーク強度でしか特定されず,他のピークの特定がないので,公知文献に記載された 結晶と出願に係る結晶が区別されているとは認められないなどと指摘されたのに対 して,上記補正を行ったのであるから,15本のピークの回折角の数値をもって本 件発明1の結晶を特定したというほかない。 そして,本件特許2は,結晶形態のピタバスタチンカルシウム塩及びそれを含む 医薬組成物に関し,特別な貯蔵条件でなくとも安定なピタバスタチンカルシウムの 結晶性原薬を提供することを課題とし,ピタバスタチンカルシウムの結晶性原薬に 含まれる水分量を特定の範囲にコントロールすることでその安定性が格段に向上す ること及び結晶形態AないしCの中で結晶形態Aが医薬品の原薬として最も好まし いことを見いだした本件特許1を原出願とする分割出願であって,本件特許1に係 る原薬を安定的に保存する方法を提供することを課題とする発明であり,その出願 当初の特許請求の範囲の請求項1には,上記補正後の本件発明1の結晶と同じ15 本のピークの回折角の数値をもって結晶が特定されていたものである。 以上によれば,本件各特許の出願経過においてされた上記各補正は,本件各発明 の技術的範囲を,回折角の数値が15本全て一致する結晶に限定するものであると 解されるから,構成要件C・C’の15本のピークの回折角の数値と,全部又は一部がその数値どおり一致しないピタバスタチンカルシウム塩の結晶は,本件各発明\nの特許請求の範囲から意識的に除外されたものであるといわざるを得ない。 したがって,被控訴人製品は,均等侵害の第5要件を充足しない。

◆判決本文

◆一審はこちらです。平成26(ワ)3344等


◆関連事件です。平成27(ネ)10108

◆この事件の一審はこちらです。平成26(ワ)688

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平成27(ワ)12748  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年2月23日  東京地方裁判所

 特許権侵害ではないと判断されました。争点は「滑らかに当接して徐々に停止する」という文言でした。
 構成要件1Iにつき,本件発明の特許請求の範囲には,「レッグレストフレーム……の当接部材」が「座席フレームの湾曲部」に「滑らかに当接」して「徐々に停止する」ものであると記載されている。この「滑らか」は,本件明細書(甲1)において定義づけられていないので,「すらすらと通るさま。つかえないさま。よどみないさま」(広辞苑〔第六版〕2103頁),「物事がよどみなく運ぶさま。すらすらと進むさま」(大辞林〔新装第二版〕1924頁)といった意味を有すると解される。また,「徐々に停止する」とは,「徐々に」が「停止」を修飾していることに照らすと,引き出されてきたレッグレストフレームの当接部材が座席フレームの湾曲部に当接すると直ちに停止するのではなく,当接した後も移動を続けつつも次第に減速して停止に至ることを意味すると解される。さらに,「座席フレームの湾曲部」が座席フレームの「開放する側の両端部」にあって「下方に鈍角状に折り曲げられた」構\造を有していること(構成要件1E。なお,構\成要件1B,1E及び1Fにいう「座部フレーム」は構成要件1Iにいう「座席フレーム」と同一の部材を指すと認める。)からすれば,レッグレストフレームの当接部材に対しては,引き出す方向に対する抵抗力が次第に大きくなる一方,下方に向かう力がかかっていくと考えられる。\n以上を総合考慮すると,「滑らかに当接して徐々に停止する」とは,引き出されてきたレッグレストフレームの当接部材が座席フレームの湾曲部に当接しても直ちに停止することなく更に引き出され続けるが,湾曲部との当接後は湾曲部から受ける力により次第に減速して,当接から多少なりとも間を置いて停止することを意味すると解される。
(2)この点につき,念のため本件明細書の記載及び本件特許の出願経過を見るに,本件明細書(甲1)においては,「発明を実施するための形態」欄において,円形当接部材が座部フレームの湾曲部の基端部に滑らかに当接すること,及び,鈍角状の上記湾曲部により徐々に停止していくので強く引き出しても衝撃がないことが記載されている(段落【0032】)。また,本件の特許出願について,引用文献(登録実用新案第3046819号公報。乙3)に基づき容易想到であるとする拒絶理由通知(乙2)に対し,原告は,特許請求の範囲(構成要件1I)に「滑らかに」を加える補正をした上,平成25年3月28日付け意見書(乙4)において,本件発明が本件明細書の上記記載のとおりの作用効果を奏するものであり,上記引用文献記載の考案は当接部が屈曲部の下側の曲線部にいきなり当接するもので,滑らかに当接し徐々に停止していくものでは全くないと述べている。\nそうすると,構成要件1Iは,レッグレストフレームを引き出した際に衝撃を感じることがないという効果を奏するために,当接部材が座席フレームの湾曲部に当接しても突然停止するのでなく,その後に次第に速度を落として停止することをいうものと解するのが相当であるから,前記(1)の解釈と合致するということができる。
(3) 以上を前提に被告製品が構成要件1Iを充足するかどうかについて検討するに,証拠(甲9,乙7の1)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品は,レッグレストフレームを前方に引き出していくと,同フレームに取り付けられた側面視略L字型のストッパー部材の上端ないし引き出し方向先端の角の部分が座席フレームの湾曲部に当接し,その直後にレッグレストフレームが,次第に減速するのではなく,ほぼ一瞬にして停止するものと認められる。\nしたがって,被告製品は,「滑らかに当接して徐々に停止する」ものでないから,構成要件1Iを充足しない。\n

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平成26(ワ)17390  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年2月16日  東京地方裁判所  棄却  東京地方裁判所

 並行して無効審判で訂正請求がなされていますが、訂正とは異なる構成について、技術的範囲に属しいないと判断されました。\n
 そこで,上記ウの解釈を前提に,被告製品1及び2が構成要件1Bの「ヘリコバクター・ピロリのネイティブなカタラーゼに対するモノクローナル抗体」を充足するかについてみる。・・ ローナル抗体はヘリコバクター・ピロリのネイティブなカタラーゼと結合する。また,証拠(乙26,34)及び弁論の全趣旨によれば,このモノクローナル抗体(被告製品1につきIgG主抗体及びIgG副抗体,被告製品2につきIgM抗体)はSDS及び2ME(メルカプトエタノール)による変性処理並びに煮沸処理を経たカタラーゼを検出することが認められる。そして,これらの変性及び煮沸処理によってカタラーゼは完全に変性し,単量体となったものと考えられるから(本件明細書の段落【0116】参照),被告製品1及び2のモノクローナル抗体は変性剤で変性されたカタラーゼと結合するものであるということができる。 そうすると,被告製品1及び2のモノクローナル抗体は,ヘリコバクター・ピロリのネイティブなカタラーゼだけでなく,変性剤で変性されたカタラーゼとも結合するモノクローナル抗体であるから,構成要件1Bの「ヘリコバクター・ピロリのネイティブなカタラーゼに対するモノクローナル抗体」に当たらない。したがって,被告製品1及び2が構\成要件1Bを充足すると認めることはできない。

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平成27(ネ)10080  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年2月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 均等侵害も第5要件満たしていないとして、否定されました。
 イ 前記1(3)のとおり,控訴人は,本件特許1の出願経過において,拒絶理由通 知を受け,構成要件Cの15本のピークの回折角の数値を挿入する平成23年11\n月29日付けの補正を行い,この際,上記補正が特許請求の範囲の限定的減縮に相 当するものであることを表明した。また,控訴人は,本件特許2の出願経過におい\nても,拒絶理由通知を受け,構成要件C’の15本のピークの回折角の数値を挿入\nする平成25年3月8日付けの補正を行い,この際,上記補正が特許請求の範囲の 限定的減縮に相当するものであることを表明した。\n控訴人は,本件特許1の出願経過における拒絶理由通知において,1本のみのピ ーク強度でしか特定されず,他のピークの特定がないので,公知文献に記載された 結晶と出願に係る結晶が区別されているとは認められないなどと指摘されたのに対 して,上記補正を行ったのであるから,15本のピークの回折角の数値をもって本 件発明1の結晶を特定したというほかない。 そして,本件特許2は,結晶形態のピタバスタチンカルシウム塩及びそれを含む 医薬組成物に関し, 特別な貯蔵条件でなくとも安定なピタバスタチンカルシウムの 結晶性原薬を提供することを課題とし,ピタバスタチンカルシウムの結晶性原薬に 含まれる水分量を特定の範囲にコントロールすることでその安定性が格段に向上す ること及び結晶形態AないしCの中で結晶形態Aが医薬品の原薬として最も好まし いことを見いだした本件特許1を原出願とする分割出願であって,本件特許1に係 る原薬を安定的に保存する方法を提供することを課題とする発明であり,その出願 当初の特許請求の範囲の請求項1には,上記補正後の本件発明1の結晶と同じ15 本のピークの回折角の数値をもって結晶が特定されていたものである。 以上によれば,本件各特許の出願経過においてされた上記各補正は,本件各発明 の技術的範囲を,回折角の数値が15本全て一致する結晶に限定するものであると 解されるから,構成要件C・C’の15本のピークの回折角の数値と,全部又は一\n部がその数値どおり一致しないピタバスタチンカルシウム塩の結晶は,本件各発明 の特許請求の範囲から意識的に除外されたものであるといわざるを得ない。

◆判決本文


◆平成27(行ケ)10081 こちらは、本件特許発明についての無効審判の取消訴訟です。この事件では、特許無効とした判断が取り消されていますが、上記事件ではイ号は非侵害と判断されています。

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平成26(ワ)5210  損害賠償請求事件  民事訴訟 平成28年1月21日  大阪地方裁判所

 均等侵害が認定されました。また、損害額について譲渡対象とならなかった分について、有償譲渡とは異なる料率が認定されました。
 本件特許発明が,シートによって鼻全体を覆うことを想定していることは先に述 べたとおりである。しかし,本件明細書の記載によれば,従来のシートでも鼻の上 部に切り込みは設けられておらず(【0005】,図2),鼻の上部に当たる目頭付近 部分は,従来技術によってもシートで覆うことが実現されていたのに対し,本件特 許発明の技術的課題は,従来のパック用シートでは,小鼻部分にシートで覆えない 大きな隙間が空き,また,シートの小鼻に対応した部分が浮き上がってしまう欠点 があったことから,顔面で最も高く膨出する鼻の小鼻部分をもぴったりと覆うこと にあり,本件特許発明は,「ほぼ台形の領域」にミシン目状の切り込み線を配すると したことにより,不織布の横方向に伸びやすいという物性と相俟って,パック用シ ートが鼻筋や鼻の角度に沿って自然と横方向に伸び広がるようにし,隙間を生じる ことなく小鼻部分をもぴったり覆うようにしたものであると認められる。 これらからすると,本件特許発明は,鼻部にミシン目状の切り込み線を複数列配 することによって,従来技術では困難であった小鼻部分を覆うことを実現した点に 固有の作用効果があると認められる。そうすると,被告製品において,目頭の高さ からやや下の部分までの領域に切り込み線が設けられていない点は,このような本 件特許発明の固有の作用効果を基礎付ける本質的部分に属する相違点ではないとい うべきである。
イ 置換可能性について
証拠(甲3)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品は,目頭の高さからやや下の 部分までの領域にミシン目状の切り込み線が設けられていなくとも,小鼻部分を含 めた鼻全体に密着するものであると認められる。 そうすると,被告製品も,本件特許発明の目的を達することができ,同一の作用 効果を奏するものであると認められる。 ウ 置換容易性について 前記のとおり,鼻の上部に当たる目頭付近部分は,従来技術によってもシートで 覆うことが実現されていたことからすると,切り込み線が配される台形状の領域の 上底の高さを,眼の付け根である目頭の高さよりも,目頭の1段分か2段分,下に 設けても本件特許発明と同一の作用効果を奏することは,当業者が,対象製品等の 製造等の時点において容易に想到することができたというべきである。
・・・・
(2) 被告製品の製造に関する実施料相当額
被告に納入されたパック用シート●●●●●●●●のうち,被告製品として譲渡 されたのは●●●●●●●●であり,その差である●●●●●●●●については, 納入されたが譲渡されなかったものである。しかし,被告製品のパック用シートが 特殊な形状をしていることからすると,被告は,シートの製造業者に発注して被告 製品用のパック用シートを製造させたと推認され,そうすると,被告は,パック用 シートの製造行為を行ったと評価すべきである。そして,パック用シートの製造も 本件特許発明の実施であり,侵害行為に当たるから,納入されたが譲渡されなかっ た分も損害賠償の対象とするのが相当である。 もっとも,被告は,これらについては,その価値を市場に提供して利用したわけ ではないことからすると,これを有償譲渡と同視し,前記の想定市場販売価格を基 礎として実施料相当額を算定するのは相当でない。そこで,これらシートについて は,その製造自体の価値を示すものとして,その納入価格を基礎として実施料相当 額を算定するのが相当であり,証拠(乙12)によれば,シート1枚当たりの納入 価格は●●円であると認められる。この点について,原告は,これらについても想 定市場販売価格を基礎にして実施料相当額を算定すべきであると主張するが,前記 に照らして採用できない。 また,前記(1)エにおいて考慮した事情に照らせば,これらシートの納入価格には, 美容液の価値が考慮されていないから,被告製品用のシートを製造したが譲渡しな かった場合の実施料率は,●●と認めるのが相当である。

◆判決本文

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平成26(ワ)25013  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年1月28日  東京地方裁判所

 使用量を限定した治療薬について、用法用量がそのような投与量のものに限られると判断して、本件特許を侵害しないと認定しました。請求項1は以下の通りです。
成人1日あたり0.15〜0.75g/kg体重のイソソ\ルビトールを経口投与されるように用いられる(ただし,イソソ\ルビトールに対し1〜30質量%の多糖類を,併せて経口投与する場合を除く)ことを特徴とする,イソソ\ルビトールを含有するメニエール病治療薬。
 まず,特許請求の範囲の記載を見ると,本件発明は,所定量のイソソ\ルビトールを経口投与されるように用いられること(構成要件A)を「特徴とする,イソ\ソルビトールを含有するメニエール病治療薬」の発明であり,メニエール病治療薬を用法用量により特定したものであるが,イソ\ソルビトールの投与量が構\成要件A所定の範囲に含まれるような用法があれば足りるのか(その範囲未満又は超過の投与量での用法があってもよいのか),用法用量がそのような投与量のものに限られるのか(それ以外の用法用量をも有する治療薬は本件発明の技術的範囲から除外されるのか)については,特許請求 の範囲に明示的に記載されていない。 上記アの本件明細書の記載によれば,本件発明は,従来のイソソ\ルビトール製剤(これが被告製品1を指すことは明らかであり,その標準用量は1日当たりイソソ\ルビトール1.05〜1.4g/kg体重に相当する。甲3)の投与量が過大であり,そのために種々の問題が生じるところ,その投与量を構成要件Aに記載の0.15〜0.75g/kg体重という範囲にまで削減することによって上記の問題を解消したというものである。そうすると,本件発明の治療薬は,構\成要件A記載の範囲を超える量のイソソ\ルビトールを投与する用法を排除し,従来より少ない量を投与するように用いられる治療薬に限定されるということができる。換言すると,上記範囲を超える量のイソソ\ルビトールを投与するように用いられる治療薬は,「医師のさじ加減」個々の患者の特徴や病態の変化に応じて医師の判断により投与量が削減された場合には構成要件Aに記載された量で用いられ得るものであっても,本件発明の技術的範囲に属しないと解すべきである。このことは,上記?イのとおり,実施例又は参考例において,イソソ\ルビトールの投与量を時間的推移に着目して変動させたものが見当たらないことからも裏付けられると解される。 したがって,構成要件Aの「成人1日あたり0.15〜0.75g/kg体重のイソ\ソルビトールを経口投与されるように用いられる」とは,上記の用量を,患者の病態変化その他の個別の事情に着目した医師の判断による変動をしない段階,すなわち治療開始当初から,患者の個人差や病状の重篤度に関わりなく用いられることをいうものと解するのが相当である。\n

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平成26(ワ)12198  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年12月24日  東京地方裁判所

 こちらも、iPhone、iPadが侵害対象物の侵害訴訟です。Apple Japanが被告です。裁判所は、構成要件Cを充足しないと判断しました。興味深いのは、いずれも本社はアメリカ法人ですが、日本の子会社同士の訴訟です。米国にも対応特許があるようなですが、なぜ日本特許での侵害訴訟なのでしょうか?
 このように,本件特許発明1において,加入者装置は,構成要件1Cで「候補サブキャリアのセット」の「選択」を行い,構\\成要件1Dで,上記「選択」した「候補サブキャリアのセット」に関して情報提供を基地局に行うものである。 一方,LTE規格の非周期的CQIレポートの高次階層設定サブバンドフィードバックモードにおいては,加入者装置(ユーザ端末)は,N個のサブバンドで構成されている全帯域の「N個のサブバンド全部」について,サブバンド差分CQI値を報告することとされている(当事者間に争いがない。また,前記(2)のとおり,LTE規格の仕様書には,高次階層設定サブバンドフィードバックの欄に,ユーザ端末が,各サブバンドセットについて1つのサブバンドCQI値を報告しなければならない旨の記載がある。)。 イ 原告は,本件通信システム方法において全部のサブバンドが選択されている旨主張するが(見解1),このように,LTE規格の上記モードにおいて,全てのサブバンドについて情報提供が義務付けられているとすれば,これは本件特許発明1の特徴である「選択したものについて情報提供を行う」との処理とは異なるものであって,構成要件1Cでいう「選択」や,それに引き続く構\\成要件1Dの「情報提供」があるとはいえない。 広辞苑第6版(乙3)によれば,「選択」とは,「えらぶこと。適当なものをえらびだすこと。良いものをとり,悪いものをすてること。」を意味するとされており,「選択」とは,何らかの基準を充たすものを選び出すことを意味すると解すべきである。 なお,前記(1)オ(ア)のとおり,本件明細書には,「各加入者は(中略)性能の良い(中略)複数のサブキャリアを選択して,それら候補サブキャリアに関する情報を基地局にフィードバックする。」と記載されており(甲4),これは実施例に関する記載ではあるが,各加入者が性能\\の良いものを選び出し,その選択したサブキャリアに関する情報を提供するという過程が記載されており,上記解釈を裏付けるものである。 また,選択を行う者が,何らかの基準に従って対象物につき選択を行った結果,全てが選ばれる場合も想定し得るが,上記のとおり,非周期的CQIレポートの高次階層設定サブバンドフィードバックモードにおいては,加入者装置(ユーザ端末)は,常に全てのサブバンドについてのサブバンド差分CQI値を報告することとされており,このような場合には「選択」の余地はないというべきである。 なお,前記(1)オ(ア)のとおり,本件明細書には「このフィードバックには,全てのサブキャリアについて又は一部のサブキャリアだけについてのチャネルと干渉の情報(中略)が含まれる」(段落【0010】)との記載があるが(甲4),これはあくまで,結果的に「全てのサブキャリア」が選択されることもあり得ることを前提とした記載というべきであって,常に「全てのサブキャリア」が選択されることを前提とした記載ではない。 原告は,情報処理技術分野においては,「全部の選択」等の用語の用い方はごく一般的であり,本件特許発明の「選択」の技術的意義については,単なる日本語の語義に基づくことは誤りであるとも主張する。しかし,本件特許の関連技術分野全てにおいて「選択」との文言が上記のように用いられることが通常であることを認めるに足りる証拠はないし,本件明細書においても,「選択」との文言の意義につき特段の説明はないから(甲4),原告の上記主張は採用できない。このほか,原告は,全サブバンドについてサブバンド差分CQIのフィードバックを行うことによって,情報量の低減効果があるとも主張するが,情報量の低減効果の有無と,サブバンドの「選択」の有無とは,直接関係がないことである。
ウ 以上のとおり,本件通信システム方法において全部のサブバンドが選択されているとの原告の主張(見解1)を前提にすると,本件通信システム方法では,加入者装置(ユーザ端末)において本件特許発明1の規定する「選択」をしていないから,構成要件1Cを充足せず,更に,選択したものについて「情報提供」をしているともいえないから,構\\成要件1Dも充足しない。

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平成26(ワ)371  債務不存在確認請求事件  特許権 平成27年12月25日  東京地方裁判所

 iPhone、iPadのタッチパネル方式が侵害か争われました。損害賠償請求の不存在確認訴訟なので、Apple Japanが原告です。裁判所は、構成要件Cを充足しないと判断しました。
 (1) 本件特許の特許請求の範囲の請求項1並びにこれを引用する同請求項2,同請求項4及び同請求項6においては,本件各発明が,「位置検出手段により検出される複数の指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段」(構成要件C)を具備することを特徴とするタッチパネルシステムであることが規定されている。上記「複数の指示部位」には,当然,指示部位が2個である場合と指示部位が3個以上である場合の双方が含まれるところ,上記特許請求の範囲の記載の文理や,本件明細書において,入力検出面に3つの位置指示具が存在する場合に,当該3個所の位置(光量が0の領域)の中から最外端にある2個所の位置(光量が0の領域)を特定する実施例について説明がされていること(甲3の【0035】,【図7】)からすれば,当該タッチパネルシステムが具備するところの「距離算出手段」は,「位置検出手段により検出される指示部位が2個であれ3個以上であれ,それら指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段」であると解される(換言すれば,「位置検出手段により検出される指示部位が2個である場合には,それら指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出するが,位置検出手段により検出される指示部位が3個以上である場合には,それら指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出するわけではない距離算出手段」はこれに当たらないと解される。)。なお,上記「最外端」という文言それ自体の意義については一義的でないようにも思われるが,本件明細書の【0035】,【0040】,【図7】,【図10】の記載及び弁論の全趣旨に照らせば,「最外端にある2個所」とは,「互いに最も離れた位置にある2個所」を指すものと解するのが相当である。\nそうすると,位置検出手段により検出される指示部位が3個以上である場合に,それら指示部位のうち最外端にある2個所(互いに最も離れた位置にある2個所)の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段を具備していなければ,当該タッチパネルシステムは,構成要件Cを充足しないというほかはない。
(2) これに対し,被告は,通常の用法である「2本指のピンチジェスチャ」(指示部位が2個である場合)においては,2つのタッチ位置が「複数の指示部位のうち最外端の2個所」にそのまま該当し,侵害となる以上,実用上特殊な場合である「3本指以上のピンチジェスチャ」(指示部位が3個以上である場合)を殊更取り上げることに意味はないなどと主張する。 しかしながら,前記(1)で説示したとおり,本件各発明の構成要件の充足性を判断するに当たっては,当該タッチパネルシステムが具備する距離算出手段がどのような距離算出手段であるのかが問われるのであって,被告の上記主張のように特定の使用態様(2本指のピンチジェスチャ)のみに着目することによって,「複数の指示部位」という文言が指すもののうちから「2個の指示部位」の場合のみを切り出し,その場合のみを基に侵害判断をすることは相当でない。そして,2本指のピンチジェスチャが通常の用法であるとしても,1)「複数の指示部位」という文言が「3個以上の指示部位」の場合をも含むことは当然である上,2)実際,頻度は少ないにせよ「3個以上の指示部位」が検出される場合があり得ること,3)被告自身,本件明細書(【0035】【図7】)において,3つの位置指示具が存在する場合について説明をしていることに照らすと,指示部位が3個以上である場合を取り上げることに意味がないなどということはできない。さらに,「最外端」の特定は,発明における動作原理にも関係することを考慮すると,被告の上記主張は到底採用することができない。
(3) 以上を前提として原告製品について検討すると,位置検出手段により検出される指示部位が3個以上である場合に,それら指示部位のうち最外端にある2個所の指示部位の指示位置の間の距離を算出する距離算出手段を原告製品が具備していることを示す証拠はない。 かえって,証拠(甲9,18,19)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品のタッチパネルに3本ないし5本の指で1本ずつタッチしてピンチ操作を行った場合,表示イメージの拡大縮小は,最外端にある2個所(互いに最も離れた位置にある2個所)の指の間の距離に基づいて実行されるものではなく,最初及び2番目にタッチされた2本の指に基づいて実行されることが認められる。
(4) そうすると,原告製品は,構成要件Cを充足しないというほかはない。\n

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平成26(ワ)34145  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年1月14日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、「注文情報」に該当しないので非侵害と判断されました。被告がアスクルです。
 本件明細書(甲2)の発明の詳細な説明の欄には,本件発明の実施形態が記載されているところ(段落【0027】〜【0134】,【図1】〜【図21】),この実施形態においては,「Web−POSクライアント装置」の表示画面に「明細フォーム」(カテゴリ,メーカコード,商品番号,商品名,単価,数量,金額といった注文商品明細が表\示されているもの。【図10】〜【図12】,【図17】〜【図21】。)が表示され,「オーダ・ボタン」のクリックに応答して,「Web−POSサーバ・システム」へ明細フォーム中のカテゴリ,メーカコード等の全フィールドを送信し,「Web−POSサーバ・システム」においてこの明細フォームを受信することとなっているところ(段落【0056】,【0111】〜【0125】,【0127】,【図12】),「オーダ・ボタン」のクリックにより「Web−POSサーバ・システム」が受信するのが「注文情報」であることから(構\成要件F4),上記明細フォームは「注文情報」に相当するので,「注文情報」には商品名,価格等の商品基礎情報が含まれている。また,本件明細書には本件発明の他の実施形態の説明も記載されているが(段落【0134】〜【0139】),いずれも「明細フォーム」を利用するものであり,「注文情報」に商品基礎情報を含まない構成についての記載は見当たらない。\nこれら本件明細書の記載を考慮して「注文情報」の意義を解釈すると,本件発明は,「Web−POSクライアント装置」の表示画面に明細フォームその他商品基礎情報を含む情報を表\示した上で,「オーダ・ボタン」のクリックに応答して,これらの情報を「Web−POSサーバ・システム」に送信するという構成を採用したものと認められる。したがって,「Web−POSクライアント装置」が送信して「Web−POSサーバ・システム」が受信する商品の注文に関する情報にカテゴリ,メーカコード,商品名,価格等の商品基礎情報が含まれていない場合には,構\成要件F4,G及びHの「注文情報」に当たらないと解するのが相当である。 ウ 「注文情報」を上記のように解釈することは,本件特許の出願経過における原告の説明とも一致する。すなわち,原告は,平成23年10月9日付け意見書(乙20)において,引用文献1(乙11)との相違点につき,1)引用文献1における注文情報は購入者ごとに生成される情報であって,この購入者ごとの注文情報は,商品識別情報等を含んだ商品ごとの情報である本件発明の「注文情報」とは異なる(乙20の11〜12頁),2)用文献1には,商品注文明細情報の生成及び表示過程に関する詳細な記載がなく,ユーザが注文した情報に売上管理等に必須となる商品識別情報及びこれに対応する商品基礎情報が含まれていないのに対し,本件発明では「注文情報」に商品識別情報とこれに対応する商品基礎情報が含まれている(同12〜13頁)と説明しており,これら1)及び2)の説明は上記の解釈と整合するということができる。

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平成26(ワ)23926  損害賠償  特許権  民事訴訟 平成27年12月11日  東京地方裁判所

 ソニーのブルーレイレコーダのお出かけ転送機能\について、侵害か否かが争われました。裁判所は侵害なしと判断しました。
 本件明細書等をみると,本件各発明が適用される第1実施形態を説明する図1には,記憶再生装置に当たる「DVDレコーダ1」に「USB I/F」が具備されているものと図示されており,これについて「USBインターフェイス40は,USBポート41を介して接続される外部の機器と各種信号をやり取りするためのインターフェイスである。」(段落【0045】)と説明されている。そして,図1の「DVDレコーダ1」には,上記「USBI/F」とは別に,「無線LANモデム」が図示されており,これについて,「無線LANモデム60は,外部のネットワーク網と接続するためのモデムであ」り,「DVDレコーダ1は,この無線LANモデム60を介してネットワーク網に接続されるとともに,FTPサーバー3(a),及び通信局3(b)を介して,DVDレコーダ4,携帯電話5,及びパーソナルコンピュータ6と通信可能\なように構成されて」おり(段落【0047】),「無線LANモデム60が通信インターフェイスに相当」する(段落【0076】)と説明されている。そして,本件明細書等の図1には,第3の記憶媒体が,\n「DVDレコーダ1」(記憶再生装置)に内蔵された「HDD21〜HDD23」である場合と,無線LANモデム及び外部ネットワークを介して接続される「FTPサーバー3(a)」である場合の両方が図示されているにもかかわらず,通信インターフェイスについては,ネットワーク網に接続する無線LANモデムのみが記載されていること,本件各発明においては,記憶再生装置から動画情報を送信する先の端末が「通信端末」と呼称されており,ネットワーク網を経由した通信機能を有した端末であることが示唆されていると考えられ,ネットワーク網を経由した通信を想定していることがうかがえること,本件明細書等を精査しても,USBインターフェイスが通信インターフェイスに当たる場合があることを示唆する記載がないことなどからすると,本件明細書等は,通信インターフェイスからUSBインターフェイスを除外していると解するのが相当である。したがって,本件各発明における「通信インターフェイス」には,「USBインターフェイス」は含まれないというべきである。
(3) 以上によれば,USBインターフェイスを有しているにすぎない被告製品(イ〜ホ)は,構成要件B1,C1,H1,G2及びH2を充足しない。\n6 争点(1)カ(均等侵害の成否)について
原告の主張する均等侵害は争点(1)エ及びオに関し文言侵害が認められない場合の予備的主張であるところ,前記3及び4のとおり,本件では,その他の構\成要件において文言非充足であるから,原告の主張する均等侵害は理由がない。

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平成27(行ケ)10119  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年12月8日  知的財産高等裁判所

 訂正後のクレームの「Aであって且つB」という文言の意義が争われました。裁判所は「記載順序の違いは,2つの条件を共に満たす範囲に影響を与えるものではない」と判断しました。
 1) 原告は,第1訂正後の本件発明では,スクラロースを,該飲料の0.00 12〜0.003重量%の範囲内に用いることを前提に,その範囲の中から,甘 味を呈さない量という限定を加えているため,0.0012〜0.003重量%の 範囲内に甘味の閾値が存在する場合が含まれることを前提とするものであり,甘味 閾値の具体的な数値を正確に測定する必要があるのに対し,本件訂正後の本件発明 では,甘味を呈さない範囲の量の範囲内で,客観的数値である該飲料の0.00 12〜0.003重量%のスクラロースを用いるという数値限定を加えているた め,0.0012〜0.003重量%は甘味を呈さないこと前提とするものであ り,スクラロースを用いる最大量である0.003重量%において,飲料が甘味 を呈する場合は,明確に排除されているから,具体的な甘味閾値を求める必要は ないとして,第1訂正後の本件発明と本件訂正後の本件発明は,実質的に同一でな いと主張する。
(2) しかしながら,第1訂正後の本件発明と本件訂正後の本件発明では,いず れも「であって」という用語によって,前後の発明特定事項が接続されているが, 「であって」における「て」は,対句的に語句を並べ,対等,並列の関係で前後を 結びつける作用を有する接続助詞であるから,両発明は,いずれも「該飲料の0. 0012〜0.003重量%の範囲」であること(条件A),及び「甘味を呈さな い量」であること(条件B)という2つの条件を共に満たしていることを要求して いると解される。したがって,両発明では,ただ条件の記載順序が異なるにすぎな い。そして,記載順序の違いは,2つの条件を共に満たす範囲に影響を与えるもの ではない。 原告の主張は,発明特定事項が「AかつB」と記載された場合には,条件Aを満 たす集合の中に条件Bを満たす集合が包含されていることが前提となるが,逆に「B かつA」と記載された場合には,条件Bを満たす集合の中に条件Aを満たす集合が 包含されていることが前提となるというものである。しかしながら,各集合に属す るための条件が相互に独立した項目であれば,ある特定の条件を満たす集合は,他 の条件を満たす集合から何ら影響を受けずに,当該特定条件を満たす集合の大きさ や帰属する要素を規律するはずである。そして,複数の条件を満たす集合体の大き さや帰属する要素は,いずれの条件を先に検討しても,それぞれの重なり合う範囲 となるのであり,同じ結果になるはずである。したがって,「AかつB」と「Bかつ A」は同じものを指すのであって,仮に条件Aを満たす集合の中に条件Bを満たす 集合全体が包含される関係にあるのであれば,「AかつB」も「BかつA」も条件B を満たす集合を指すことになり,条件Bを満たす集合の中に条件Aを満たす集合が 包含される関係にはならない。前記1のとおり,本件発明において,「該飲料の0. 0012〜0.003重量%の範囲」であることは,当該飲料の重量によって計算 上算定される値であり,かつ,「甘味を呈さない量」であることは,ヒトの味覚に よって検査される値であり,それぞれ独立した条件であり,一方の条件が論理的に 当然に他方の条件に影響するものではない。
・・・
(3) また,本件訂正後の請求項1は,「・・・スクラロースを,該飲料の0.0 012〜0.003重量%の範囲であって,且つ0,003重量%の場合において スクラロースの甘味を呈さない量を用いることを特徴とする渋みのマスキング方 法」ではなく,「・・・スクラロースを,甘味を呈さない範囲の量であって,且つ該 飲料の0.0012〜0.003重量%用いることを特徴とする渋味のマスキング 方法。」である。すなわち,本件訂正後の請求項1は,スクラロース0.003重量% の場合に甘味があるときがあることを前提としつつ,より少ない重量%として甘味 を呈さない場合をも,その発明特定事項の対象とするものである。したがって,0, 003重量%の場合に常にスクラロースの甘味を呈さないことを前提とした原告の 主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものといわざるを得ない。本件訂正後 の明細書(甲48)の記載を参酌しても,同明細書中には,ウーロン茶飲料におい てスクラロースを0.0012%用いた場合(【0018】)及び緑茶飲料において スクラロースを0.0014%用いた場合(【0019】)に渋みがマスキングされ ることは確認されているが,それぞれの飲料においてスクラロースを0.003重 量%使用した場合に,甘味を呈するか否かは確認されていない。 しかも,かかる主張は,甘味を呈する閾値と0.003重量%との大小関係が一 義的に定まることを前提とするものであるところ(原告は,0.003重量%にお ける甘味の有無だけを判断すれば足り,甘味の閾値を定める必要がないとも主張す るが,本件訂正前の請求項との違いを説明するに当たって,甘味を呈する閾値の上 下で甘味の有無を区別した上で,0.003重量%との大小関係を問題にしている から,このような前提に立つと解するのが相当である。),かかる前提自体は,前件 判決で採用できないことが明らかにされている。すなわち,前件判決は,明確性要 件違反である理由として,極限法が甘味の閾値の測定方法として一般的であるとは いえないこと,官能検査の方法等により甘味の閾値が異なる蓋然性が高いことを前\n提としつつ,「0.0012〜0.003重量%の範囲」は非常に狭く,「甘味を呈 さない量」が「0.0012〜0.003重量%」との関係でどの範囲の量を意味 するのか不明であると判示したのであって,最後の判示部分は,異なる官能検査方\n法を用いた場合の甘味の閾値が,「0.0012〜0.003重量%の範囲」におけ る上下限値と,一義的な大小関係が決まらないことを,明確性の観点から問題とし たものと解される。したがって,原告が主張するように,甘味の閾値が0.001 2〜0.003重量%の範囲内にあるような飲料を当然に除外することはできない し,甘味閾値を求める必要がないともいえない。

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平成27(ネ)10076  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年11月12日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 第2要件、さらには第1要件を満たさないとして均等侵害も否定されました。
 ア 前記1(2)によれば,円テーブル装置のクランプ機構においては,作業時にお\nける工具からの加圧又は振動に対して,確実に所定の回転角度の位置を保つことの できるクランプ力を得るために,油圧ピストンを使用して高い作動圧(油圧)でク ランプ部材を加圧していたが,油圧ピストンの使用には,部品コストが掛かり,メ ンテナンスにも手間が掛かるという課題があったことから,本件特許発明は,円テ ーブル装置において,空気圧のような低圧で使用する流体圧ピストンでも十分に回\n転軸をクランプすることができるクランプ機構の提供を目的としたものである。\nそして,本件特許発明は,クランプ機構を構\成する増力機構につき,第1段増力\n部及び第2段増力部を備えたものとし,流体圧ピストン(25)から可動側クラン プ部材(21)に働くクランプ方向の力を2段階にわたり増力することによって, 空圧ピストンのように低い作動圧のピストンでも十分に回転軸をクランプすること\nができるようにして,前記課題を解決するものである。
イ この点に関し,前記1(3)のとおり,本件明細書には,前記増力機構における\n2段階にわたる増力について,以下のとおり開示されている(別紙1【図2】参照)。 すなわち,1)流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)とボー ル(26)との当接部P1において,F1(流体圧ピストン(25)のクランプ方 向の押圧力)が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面 (40)に対向している流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28) のカム作用により,F2(径方向の外方に向く力)に増力されてボール(26)に 伝達される(第1段の増力)。 次に,2)ボール(26)と可動側クランプ部材(21)との当接部P2において, F2が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40) に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)の カム作用により,F3(クランプ方向の押圧力)に増力されて可動側クランプ部材 (21)に伝達される(第2段の増力)。
ウ 第2段の増力に関し,前記2(3)ウ(ウ)のとおり,仮に,α3=0°,すなわ ち,第2段用テーパーカム面(29)が回転軸芯と直角を成すものとすると,径方 向の外方に向く力であるF2が,第2段用テーパーカム面(29)と完全に平行の 状態になることから,F2がクランプ方向の押圧力であるF3に増力されることは なく,「第2段増力部」が増力機構として機能\しなくなる。 したがって,第2段用テーパーカム面(29)が回転軸芯と直角,すなわち,傾 斜角度が「α3=0°」の場合を含まないという構成を,「α3=0°」の構\成に置 き換えれば,2段階にわたる増力により空圧ピストンのように低い作動圧のピスト ンでも十分に回転軸をクランプすることができるようにするという本件特許発明と\n同一の目的を達することも同一の作用効果を奏することもできなくなることは,明 らかというべきである。
エ 控訴人は,本件特許発明における2段式増力機構における増力の仕組みは,\n前記第3の2〔当審における控訴人の主張〕(5)のとおりであり,「α3=0°」の場 合に,F1からF3への増力は最大となるから,「第2段用テーパーカム面(29)」 の「30°以下の緩やかな傾斜角度」,すなわち,「0°<α3≦30°」を「α3 =0°」に置き換えても,増力を実現でき,かつ,低い作動圧下における高いクラ ンプ力の実現等の本件特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏す る旨主張する。 しかし,控訴人の主張は,第2段の増力につき,F2がシリンダ形成部材(31) のテーパー面(40)においてF3に増力され,この反作用として,テーパー面(4 0)からボール(26)を介して可動側クランプ部材(21)に対してF3と同等 の力が生じることを前提とするものであるところ,前記2(4)カ(イ)のとおり,特許 請求の範囲にも本件明細書の発明の詳細な説明にも,控訴人主張に係る増力の仕組 みは記載されておらず,したがって,同仕組みは,本件明細書の記載に基づかないものといわざるを得ない。
なお,控訴人の役員が作成した甲第15号証には,被告製品のクランプ機構の動\n作につき,「『クランプピストン』が正面部に動き,『鋼球』を『クランプシリン ダ』のテーパー面にそって動かし,『クランプシリンダ』のテーパー面に対向して いる『クランプピストン』のカム作用と,『鋼球』を介して,『クランプシリンダ』 のテーパー面に対向している『クランプリング』のカム作用による増力された力が 『クランプリング』に加わることになります。」と記載されているが,同記載によ っても,本件特許発明のように2段階の増力が行われているかは不明であり,増力 の測定値等の客観的な裏付けもない以上,被告製品において2段階にわたる増力が されていると認めるに足りないというべきである。
オ 以上によれば,被告製品は,前記(2)2)の要件を充たすものではない。
(4) 前記(2)1)の要件について
ア 前記(3)によれば,本件特許発明に係る円テーブル装置のクランプ機構が,2\n段階にわたり増力する増力機構を備えることは,前記課題解決に不可欠な構\成とい え,本件特許発明を特徴付けるものということができるところ,第2段用テーパー カム面(29)が回転軸芯と直角を成すものではないこと,すなわち,傾斜角度が 「α3=0°」の場合を含まないことは,上記増力機構を構\成する「第2段増力部」 における第2段の増力のために不可欠なものである。 この点に鑑みると,本件特許発明の構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(2\n9)」は,傾斜角度が「α3=0°」の場合を含まないのに対し,被告製品の構成中,\n「クランプリング8の鋼球10と当接する面」は,回転軸芯と直角,すなわち,「α 3=0°」であるという相違部分が,本件特許発明の本質的部分でないということ はできない。
イ 控訴人は,F2からF3への増力において問題となる角度はα2であり,α 3ではないとして,「α3=0°」に係る相違部分は,本件特許発明の本質的部分で はない旨主張するが,控訴人の主張は,前記(3)のとおり,本件明細書の記載に基づ かない増力の仕組みを前提とするものであるから,採用できない。
ウ したがって,被告製品は,前記(2)1)の要件を充たすものともいえない。

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平成26(ワ)27277  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年10月14日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、均等の第5要件を満たしていないとして侵害不成立と判断されました。
 事案に鑑み,まず,前記1において認定説示した本件特許発明と被告方法とが相違する部分(構成要件F4と被告方法との相違部分)に関し,均等の第5要件(上記(1)5))の成否を検討する。
前記1(3)において認定説示したとおり,本件特許の出願人である原告は,本件特許の出願手続において,当初(分割出願時)は,「数量に基づく計算」を「Web−POSクライアント装置」により行うか,「Web−POSサーバ・システム」により行うかについて,本件特許請求の範囲により規定していなかったところ,第1手続補正により,本件特許請求の範囲に「3)商品オーダ内容の操作に関する表示制御,すなわち,上記Web−POSクライアント装置の入力手段を有する表\示装置に表示された上記商品の注文明細情報について,ユーザが,該入力手段により,オーダ内容(数量)を入力(選択)すると,該オーダ内容に基づく計算が上記Web−POSサーバ・システムにおいて行われると共に,その結果が上記Web−POSクライアント装置に通知され,また,ユーザが,該入力装置により,オーダ操作(オーダ・ボタンをクリック)を行うと,該商品の注文明細情報に対する該オーダ内容に基づく計算結果の販売情報または注文情報が該Web−POSサーバ・システムにおいて取得(受信)されること」との構\成を付加しようとしたこと,特許庁審査官は,同構成を付加する補正は,願書に最初に添付された明細書,特許請求\nの範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく,特許法17条の2第3項に違反するなどの理由により,第1手続補正を同法53条1項により却下する旨の決定をしたこと,原告は,同却下決定を受けて,第2手続補正により,本件特許請求の範囲に「ユーザが,該入力手段により数量を入力(選択)すると,該数量に基づく計算が行われると共に,」との構成を付加したことが認められ,また,同補正により,本件請求項1記載の発明は,「該数量に基づく計算」が「Web−POSクライアント装置」により行われるものに限定されたと解すべきである。
そうすると,原告は,本件特許の出願手続において,被告方法のような「該数量に基づく計算」が「Web−POSサーバ・システム」により行われ,その結果が「Web−POSクライアント装置」に通知される構成について,これを明確に認識しながら,あえて本件特許請求の範囲から除外したものと外形的に評価し得る行動をとったものというべきである(なお,原告は,前記1において認定説示した本件特許発明と被告方法とが相違する部分〔構\成要件F4と被告方法との相違部分〕以外については,被告方法が本件特許発明と同一であるか,少なくとも均等であると主張しているのであるから,同主張を前提とする限り,被告方法は,客観的にみて,本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものにあたることになるといえる。)。
この点,原告は,第1手続補正が却下されているとか,第2手続補正のうち,構成要件F4に関する部分は,サポート要件(特許法36条6項1号)違反の拒絶理由の解消を目的としたものであるなどと主張するが,第1手続補正が却下されたとの事実は,出願人である原告が,被告方法のような「該数量に基づく計算」が「Web−POSサーバ・システム」により行われ,その結果が「Web−POSクライアント装置」に通知される構\成を明確に認識していたとの上記認定を左右するものではなく,また,原告が当該構成を明確に認識しており,第2手続補正により本件請求項1記載の発明が「該数量に基づく計算」が「Web−POSクライアント装置」により行われるものに限定されたと解される以上,第2手続補正のうち,構\成要件F4に関する部分についての補正の目的が原告主張のとおりであったとしても,被告方法のような構成をあえて本件特許請求の範囲から除外したものと外形的に評価し得る行動をとったとの上記認定判断が左右されるものではない。\nしたがって,均等の第5要件の成立は,これを認めることができない。

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平成27(ネ)10047  差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年9月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について、特許権侵害でないとした一審判断が維持されました。
 これを本件ホームアプリについてみるに,本件ホームアプリがイン ストールされた被告製品においては,利用者がタッチパネル上のショー トカットアイコンを指で長押し(ロングタッチ)すると,その際のホー ム画面のページ番号に応じて,画面上に左右スクロールメニュー表示が\n表示され,当該ページが,左端ページであれば「右スクロールメニュー\n表示」のみが,右端ページであれば「左スクロールメニュー表\示」のみ が,それ以外のページであれば「左右スクロールメニュー表示」がいず\nれも表示されるものであり(前記1(3)イ(ア)),左右スクロールメニュ ー表示は,利用者がタッチパネル上のショートカットアイコンを指で長\n押し(ロングタッチ)する操作を行うことによって表示されるものであ\nって,利用者がタッチパネル上の指の位置を動かすことにより,当該シ ョートカットアイコンを移動させる操作によって表示されるものとはい\nえない。 このことは,1)甲32の1及び2(控訴人作成の「被告製品の映像及 び映像説明書」)によれば,本件ホームアプリにおいて,タッチパネル 上のポインタ(ショートカットアイコン)を指で長押し(ロングタッチ) すると,ショートカットアイコンは,ぶるぶる振動する振動状態に遷移 し,振動状態になれば,ショートカットアイコンを移動させる操作(ド ラッグ操作)を行わなくても,画面右端に右スクロールメニューが表示\nされることが認められること,2)甲17の2(被控訴人作成の「IS04 取扱説明書」)によれば,「ロングタッチする」という項目に,「画面 の項目やアイコンを指で押さえたままにします。」と記載されているか ら,本件ホームアプリにおける「ロングタッチ」とは,ショートカット アイコンを指で押さえたままにすること,すなわち,指を移動しないま ま,ショートカットアイコンを押し続ける操作であり,指の移動を伴う ドラッグ操作は含まれないことからも明らかである。 したがって,本件ホームアプリにおいて,控訴人が主張する「操作メ ニュー情報」である左右スクロールメニュー表示を表\示させるための電 気信号は,ショートカットアイコンを押し続ける操作(ロングタッチ) が行われたことを検知した電気信号であって,ショートカットアイコン を移動させる操作(ドラッグ操作)が行われたことを検知した電気信号 ではない。 そうすると,本件ホームアプリにおいては,利用者が入力手段を介し て画面上のポインタ(ロングタッチをしたショートカットアイコン)の 位置を移動させる操作を行ったことを検知して,その操作をポインタの 座標位置を移動させる命令(電気信号)に変換し,処理手段がその電気 信号を受信することによって,控訴人が主張する「操作メニュー情報」 である左右スクロールメニュー表示を画面上に表\示させているものとは いえないから,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を 受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示する」(構\成要件E) 処理が実行される構成を備えているものと認めることはできない。\n

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◆ 一審はこちらです。平成26年(ワ)第65号

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平成26(ワ)25858  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年8月25日  東京地方裁判所

 被告製品2については第1要件を満たさないとして、均等侵害が否定されました。なお、被告製品1は文言侵害が認められています。
 以上の本件明細書の記載によれば,本件発明は,講演者の立ち位置によってはスクリーンに投影される画像に干渉するという従来技術の問題点を解決するために,自動車のフロントガラスの前に置かれた物(これがフロントガラスの下にあることは明らかである。)がフロントガラス(観測者である運転者から見て上端が手前に,下端が奥にあることは明らかである。)に映り,フロントガラスの背景に存在するように見えるという物理原理をステージ等の背景に映像を表示することに利用したものであって,ステージの床に反射面(上記フロントガラスの例において背景に存在するように見える物が置かれる場所に相当する。)を配置し,フィルム(フロントガラスに相当する。)の上端を観客席側から見て手前に,その下端を奥に保持するとともに,表\示される物を反射面に直接置くのではなく,これに対面する天井に画像源を配置するとの構成を採用した点に,本件発明の本質的部分があるものと解される。
ウ これに対し,原告は,フィルムを反射面に向かい合うように傾斜させて配置したこと及び反射面の反対側に画像源を配置したことが本件発明の本質的部分であり,画像源と反射面の上下その他具体的な保持・配置関係は本質的部分でないと主張する。 そこで判断するに,本件明細書においては,自動車のフロントガラスの手前にある「保管場所」と本件発明の「反射面」をそのままの位置関係で対応させて面が床(下)にあるものとして記載されているのであって(第1図についても,支持部材22の形の下部保持部と巻取パイプ24の形の上部保持部とを伴うフィルム20(5欄35〜37行),第1図の左にいる観客(同41行)との記載によれば,観客から見た上下及び前後を踏まえた上で作図されたものであると解される。),画像源と反射面の位置関係が任意に変更可能であることを示唆する記載はない。かえって,反射面を床に設け書の記載上,特許請求の範囲に規定された画像源と反射面の上下関係等が本件発明の本質的部分に当たらないとみることはできないと考えられる。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。\n 

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平成26(ワ)18842  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年7月28日  東京地方裁判所

 特許侵害訴訟です。東京地裁は、文言解釈により技術的範囲に属しないと判断しました。また進歩性なしとして特許104条の3により権利行使不能とも判断してます。\n
 まず,「接触圧」との文言について,原被告双方が異なる解釈を採って いるため,この点について検討する。 「圧」とは「おしつける力」を意味し,「接触」とは「近づきふれるこ と,さわること」を意味する(広辞苑第6版,乙1参照)。 そして,これらの文言の通常の解釈からすれば,本件特許発明1におけ る「接触圧」との文言は,複数の物体が互いに接触する際に生じる力ない し圧力を意味するものと解されるところ,次に指摘する本件特許1の明細 書の記載を参酌すれば,上記文言は,複数の物体が互いに接触する際に生 じる力を意味すると解すべきである。 すなわち,本件特許1の明細書(甲2)において,前記ア 「・・・上記複数の弾性腕の接触部はコネクタ嵌合時に相手端子と最初に 接触する接触部から順に相手端子に対する接触圧が小さくなっており,相 手コネクタを嵌合するときに,最初の接触部を圧したその勢いで,次の弾 性腕の接触部を圧することができるので,小さい挿入力で弾性変形させる ことができ・・・」「指圧(操作者がコネクタ嵌合時に相手コネクタを押 し込む力であり,接触部での接圧に比例する。)」などと記載されている ことからすれば,同明細書の記載は「接触圧」を力と同視しているものと いえ,「接触圧」が相手端子と各弾性腕の接触部との間で生じる力を意味 すること,すなわち「力」であることが明らかといえる。 これに対し,原告は,「接触圧」とは単位変位量当たりの反力(N/m m)を意味する旨主張する。しかし,これは通常の文言解釈に反する上, 原告の上記解釈を根拠付けるような明細書上の記載は存在しないため,原 告の上記主張を採用することはできない。 このほか,原告は,上記「接触圧」が,嵌合終了時点ではなく嵌合途中 の数値を指すとも主張するところ,既に検討したところによれば,この点 について判断するまでもなく,原告の同主張は採用できない。 ウ 原告は,「接触圧」に関する自らの解釈を前提として,被告製品が構成\n要件1Fを充足する旨主張するが,「接触圧」に関する原告の解釈を採用 できないことは前記イのとおりであって,被告製品が「接触圧」に関する 構成要件1Fを充足することを認めるに足りる証拠はない。\n

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平成27(ネ)10019  特許権に基づく損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年7月15日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 クラウドシステムについての特許侵害訴訟(CS関連発明)にて、控訴審でも、技術的範囲に属しないと判断されました。1審は、詳細な説明(目的・効果など)を参酌して、技術的範囲に属しないと判断していました。
 控訴人は,甲30文献を根拠に,テンプレートが,仮想マシンの情報等を含 むデータファイルであり,複写の対象となる実体を有するものであって,ハードウ エア資源を割り付けられることによって仮想マシンとして機能するものであるから,\n被控訴人商品のテンプレートは,本件発明の構成要件Aの「レンタルエンジン」に\n該当するものであり,さらに,インターネット接続も含めて総合試験が実施され動 作保証がされた被控訴人商品の「テンプレート」は,「インターネットに接続する」 「レンタルエンジン」に該当する旨主張する。 そこで,検討するに,甲30号証によれば,仮想マシンによる仮想システムは, ユーザーが,ユーザーインターフェース画面から,所望の処理能力を有する仮想マ\nシンとそのOSを選択し,この選択された仮想マシンとOSに対してハードウエア 資源内の必要なハードウエア資源を割り付けることで行われる(段落【0003】), 構築した仮想システムを別のユーザーに複写したい場合には,テンプレートファイ\nルを複写して複写テンプレートを作成し,その複写テンプレートに新たなハードウ エア資源を割り付けて,元の仮想システムと同じ仮想システムを生成することが行 われている(段落【0006】),データセンタは,管理サーバや複数のサーバと複 数のストレージ及び複数のネットワーク機器を有するハードウエア資源群を備えて おり,ユーザーが作成する仮想マシンを有する仮想システムの情報を有するテンプ レートファイルに,ハードウエア資源群内のハードウエアを割り付けて仮想システ ムを構築し運用する管理サーバを有する(段落【0014】),ユーザーが,仮想マ\nシンとそれにインストールするOS等を選択してオーダーすると,オーダーした仮 想マシンを有する仮想システムのテンプレートがハードウエア資源群内のサーバの ハードディスク領域内に生成され(段落【0022】),管理サーバが,ユーザーが 作成した仮想システムのテンプレート内の仮想マシンや仮想ストレージに,サーバ やストレージなどのハードウエア資源を割り付けることによって,仮想システムが 構築され,運用可能\になる(段落【0027】)ことが認められる。そして,「サー バ群#1内には,複数のサーバが設けられていて,それらのサーバはスイッチSW を介してネットワークで均質に接続され,コアスイッチC−SWを介してネットワ ークNWに接続され,インターネットからアクセス可能である(段落【0016】)」\nとされる。 そうすると,甲30文献におけるテンプレートについても,それのみでは,実体 のある仮想マシン・仮想システムであるとはいえないし,テンプレートにサーバや ストレージなどのハードウエア資源を割り付けることによって,初めて実体のある 仮想マシン・仮想システムとして,インターネットからアクセス可能となることが\n認められるのであるから,このテンプレートと,テンプレートにハードウエア資源 を割り付けることによって生成される仮想マシンは,コンピュータ技術上同一のも のということはできない。そして,前記認定のとおり,被控訴人商品のテンプレー トは,デザインスタジオの頁において,メニューとして表示されるものであるから,\n被控訴人商品におけるテンプレートは,被控訴人商品のサービスポータルの表示画\n面において,顧客が利用する仮想マシン及び仮想システムの構成のメニューとして\nの選択候補を意味するにすぎない。 以上によれば,甲30文献によっても,被控訴人商品の「テンプレート」が本件 発明の「レンタルエンジン」に該当するものと認めることはできない。

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◆原審はこちら。平成25年(ワ)第16060号

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平成26(ネ)10104  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年6月16日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審でも、明細書の記載を参酌して、技術的範囲に属しないと判断されました。
イ 以上によれば,本件発明の技術的意義について,以下のことを認めるこ とができる。
本件発明は,基板となり得るような結晶欠陥の少ない窒化物半導体(InXAlY Ga1−X−YN,0≦X,0≦Y,X+Y≦1)を用いたレーザダイオード(LD) 等の電子デバイスに使用される窒化物半導体素子に関する(【0001】)。 従来,窒化物半導体は,サファイア基板上に格子不整合の状態で成長されている が,格子不整合で半導体材料を成長させると,半導体中に結晶欠陥が発生し,その 結晶欠陥が半導体デバイスの寿命に大きく影響するため,サファイア基板上に,結 晶欠陥が非常に多いGaN層を薄く成長させ,その上にSiO2よりなる保護膜を 部分的に形成し,その保護膜の上からハライド気相成長法(HVPE),有機金属気 相成長法(MOVPE)等の気相成長法を用いて,再度GaN層を横方向に成長さ せるというラテラルオーバーグロウス(LOG)と呼ばれる成長方法により,結晶 欠陥の少ない窒化物半導体を成長させる試みが行われた(【0002】〜【0004】)。 この従来の方法によると,保護膜の上部に結晶欠陥を集中させて,窓部に結晶欠陥 の少ない領域を作製すること,すなわち,意図的に結晶欠陥を偏在させることがで きるので,異種基板上に直接成長させた窒化物半導体よりも,結晶欠陥の数は減少 するが(【0006】),窒化物半導体表面に現れている結晶欠陥の数は多く未だ十\分 満足できるものではなく,また,窒化物半導体素子についても,結晶欠陥が偏在す るため,信頼性も十分とはいえず,そのため一枚のウェーハからレーザ素子を多数\n作製しても,満足できる寿命を有しているものはわずかしか得られないので,寿命 に優れた素子を作製するためには,窒化物半導体表面に現れた結晶欠陥の数を更に\n減少させる必要があった(【0007】)。 そこで,本件発明は,基板となり得る窒化物半導体の結晶欠陥を少なくして,信 頼性に優れた窒化物半導体素子を提供することを目的とし(【0007】),厚みが5 0μm以上であり,少なくとも下面から厚さ方向に5μmよりも上の領域では結晶 欠陥の数が1×107個/cm2以下である,ハライド気相成長法(HVPE)を用 いて形成されたn型不純物を含有するGaN基板と,前記GaN基板の上に積層さ れた,活性層を含む窒化物半導体層と,前記窒化物半導体層に形成されたリッジス トライプと,該リッジストライプ上に形成されたp電極と,前記GaN基板の下面 に形成されたn電極と,を備えるたものであり(【0008】,【0009】),その結 果,結晶欠陥が少ないGaN基板の上に活性層を含む窒化物半導体層を積層してい るので,非常に信頼性の高い素子が実現できるという効果を奏するものである(【0 061】)。 ウ 上記のように解されるから,本件発明において,結晶欠陥の数が多い高 キャリア領域にn電極を設けることによって,効率のよい素子を作製することまで がその技術的意義に含まれるとはいえず,したがって,この観点から,「GaN基板」 の解釈を導くことはできない。 また,本件発明は,物の発明に関するものであり,ハライド気相成長法(HVP E)を用いることを除き,結晶成長方法を特許請求の範囲に含めておらず,本件明 細書において,n型不純物を含有するGaN基板をハライド気相成長法(HVPE) で形成するに際し,新たに3族源のガスに対する窒素源のガスのモル比(窒素源/ 3族源)を2000以下に調整することで,結晶欠陥を横方向に伸ばすことが記載 されている(【0010】,【0019】,【0022】)としても,結晶成長方 法をこれに限定するものでない(【0016】)旨も記載されている。 エ(ア) しかし,その一方,上記【0016】は,「第2の窒化物半導体層の 結晶欠陥の多い領域と,少ない領域とが窒化物半導体積層方向に対してほぼ同じ方 向にあれば,」成長方法は特に限定されない旨が記載されているのであり,第2の 窒化物半導体層は,結晶欠陥の多い領域と少ない領域が積層する厚み方向に対して 上下方向に位置するものであることを前提としている。
・・・
そうすると,本件明細書では,下地層が除去されて素子構造を形成する場合には,\nn型不純物のドープと併せて,結晶欠陥の多い領域を残存させることによって,高 キャリア濃度を確保する手段が記載されており,結晶欠陥の少ない領域にドープを することによって適切なキャリア濃度に調整することや,そのようなドープのみで 適切なキャリア濃度を確保して動作をさせることが可能か否かについても明らかで\nはないといわざるを得ない。

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平成26(ワ)23732  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年6月26日  東京地方裁判所

 構成要件1Bを有していないとして技術的範囲外と判断されました。なお、原告は、侵害訴訟の終結時期に訂正審判請求を行い、これに基づいて技術的範囲に属するとの主張をしましたが、裁判所は、これについて認めないと判断しました。
 原告が本件訴訟の係属後にした訂正審判請求について付言しておく。
(1) 原告は,平成27年3月11日付けで訂正審判(訂正2015−39022。以下「本件訂正審判」という。)を請求し,本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲の訂正を求めているが(甲8,9),明細書,特許請求の範囲又は図面の訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであってはならない(特許法126条6項)から,本件訂正審判の結果によって,被告製品が本件各特許発明の技術的範囲に属するものとは認められない旨の前記判断が覆ることは,理論上,あり得ない(仮に,誤ってそのような訂正が認められたときは,特許法123条1項8号所定の無効事由が生じたことになる。)。
(2) 原告が本件訂正審判において求めている特許請求の範囲の訂正には,本件特許発明1の構成要件1A―\(3)及び1−Bについて,「尾根構造体の短手方向に支柱を連結する複数のシザー組立体の中央部に前記幕体支持ポールを垂直に連結し」,「複数のシザー組立体」(下線部は,いずれも訂正箇所を示す。)などとすることが含まれる(甲8)。\nしかし,構成要件1A−(2)は,「シザー組立体は2本のバーをX字状に回動自在に連結してパンタグラフ状に折り畳み自在とした構造とし」としているから,シザー組立体は2本のバーをX字状に連結したものを1単位と解すべきであるところ,仮に,構\成要件1A−(2)を「複数のシザー組立体の中央部」と訂正したとしても,シザー組立体が三つ,又は,五つなど奇数単位存在する場合には,その中央部は,シザー組立体とシザー組立体の間ではなく,2本のX字状のバーの交差する箇所を中央部として幕体支持ポールを垂直に連結することを示すと解さざるを得ない。このような例は,本件明細書に記載されておらず,シザー組立体の単位数が奇数か偶数かで幕体支持ポールの位置が異なることになる。 したがって,本件訂正審判に係る訂正は,少なくとも,特許法126条5項に違反するものであって,認められるべきものではないと思われる。
(3) 原告は,本件訂正審判の請求後,特許庁長官に対し,審判請求書を補正する旨の同年4月7日付け手続補正書(甲9)を提出したが,同補正書によれば,原告が求めている特許請求の範囲の訂正には,構成要件1Cについて,「該補強フレームの一端は最も外側に位置する幕体支持ポールの上端位置に係止し,補強フレームの他端は隣接する幕体支持ポールに挿着されたスライトブラケットに上方から当接させることにより,幕体支持ポールを垂直に保持しながら,シザー組立体の伸張を維持しテント側面の強度を向上しつつ,直立する妻面を構\成するようにしたことを特徴とする」(下線部は,いずれも訂正箇所を示す。)などとすることが含まれるようである(同補正書の1頁には,「補正対象項目名」として「請求の理由」とあ り,「請求の趣旨」とは記載されていないが,訂正特許請求の範囲を含む同補正書2頁以下の記載によれば,請求の趣旨を補正することが当然の前提となっているものと考えざるを得ないし,原告の同月8日付け準備書面2〔4頁〕にも,これに沿う記載がある。)。 しかし,訂正審判における審判請求書について,請求の趣旨を補正することは認められていない(特許法131条の2第1項1号)。 なお,仮に,原告が本件訂正審判に係る請求の趣旨の補正を求めていないとすれば,同補正書の記載はおよそ無意味であるというほかはなく,原告がいかなる目的で同補正書を特許庁長官に提出し,また,本件訴訟において書証として申し出たのか,理解に苦しむところといわなければならない。
(4) 以上より,本件訴訟において,原告が本件訂正審判において求めている訂正を前提として,本件各特許発明の技術的範囲に被告製品が属するか否かを検討する必要がないことは,明らかである。

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平成26(ネ)10112  特許専用実施権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年5月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 均等侵害について、知財高裁は、1審と同じく第1および第3要件を具備していないと判断しました。
 控訴人は,本件相違点3に関し,1)本件発明の本質的部分は,「グリップベース」の上下方向の可動性であり,「スライドボルト」の上下方向の可動性ではない(第3の1【控訴人の主張】⑴ウ(ア)a),2)本件相違点3及び4に関し,「スライドベース」の固定用垂直面の縦長小判穴,「スライドボルト支持用垂直面」に形成され た縦長穴,「スライドボルト」及び「スライドタップ」の構成(構\成要件D3及びD4)は,「スライドベース」にリベット固定されたベースレールが島上部枠構造の下面にネジ留め固定される機構\(構成要件D1及びD2)と,「グリップベース」と「グリップアーム」とにより台枠上板が挟持される機構\(構成要件D5及びD6)の係わり合わせ方の1つにすぎず,その構\成自体は,本件発明の本質的部分ではない旨主張する(第3の1【控訴人の主張】⑴ウ(ア)c)。
イ しかしながら,前記⑶エのとおり,本件発明は,上部取付装置30の自動高さ整機能によって,島枠構\造の高さと台枠の高さとの間に差があっても,自動的に調整できる構造を備えたパチンコ台取付装置の提供という,従来の技術の問題点に係る課題の1つを解決するものであるところ,上記機能\に必須の要件といえるグリップベース35の上下方向の可動性は,グリップベース35が固定されたスライドボルト33が,「上下方向に移動可能に保持されること」という構\成によって確保されている。 この点に鑑みると,本件発明においては,「グリップベース」の上下方向の可動性よりも,その必要不可欠な前提である「スライドボルト」の上下方向の可動性が,本質的部分を構成するものとみるべきである。
ウ また,前記⑶ウのとおり,本件発明において,「スライドボルト」の上下方向の可動性は,スライドボルト33が,スライドベース31の固定用垂直面31bの縦長小判穴31eの長径とスライドボルト33の縦方向の径の長さとの差の範囲内において,上下方向に移動の自由が与えられた状態で,取り付けられているという構成によって,確保されている。\nさらに,グリップベース35が,スライドボルト33に螺合されたスライドタップ34に溶接固定され,スライドベース31の底面中央開口31dに吊り下げられた状態で取り付けられているという構成によって,グリップベース35を,上下方向の可動性が確保されたスライドボルト33の動きに追随させ,パチンコ台アセンブリの取付前は,重力により下がり,同取付時において台枠よりも低いときは,その高さまで押し上げられるようにしている。
以上によれば,本件相違点3及び4に係る本件発明の「スライドベース」の固定用垂直面の縦長小判穴,「スライドボルト支持用垂直面」に形成された縦長穴,「スライドボルト」及び「スライドタップ」のこれらの構成は,本件発明の課題の1つである上部取付装置30の自動高さ調整機能\を実現するためのものといえるから,本件発明の本質的部分に関わるものというべきである。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成25年(ワ)第31341号

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平成27(ネ)10006  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年5月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 インターネットオークション・ショッピングの価格比較サイトの運営が特許権侵害かが争われました。知財高裁は、侵害でないとした1審判断を維持しました。争点は複数主体による侵害、間接侵害、均等侵害など種々ありましたが、そもそも構成要件が欠落しているとして請求棄却です。
 前記(3)イ(イ)認定のとおり,被告サーバーは,被告サイトにアクセ スしたユーザーのクライアント端末の要求に基づいて,そのディスプレ イ上に,予め被告サーバーに保管されていた過去に開催されたオークシ\nョン商品の縮小画像のアイコン2を含む画面3を表示させ(原判決別紙\n物件目録の別紙図9,12参照),ユーザーによってアイコン2がクリ ックされると,当該クリックされたアイコン2に対応する上記商品の画 像4,落札価格等の商品情報を主表示した画面5を表\\示(同原判決別紙 物件目録の別紙図9,12参照)させる構成を有するが,被告サーバー\nに予め保管されていた過去に開催されたオークション商品の縮小画像,\n画像,落札価格等の商品情報は,ヤフー社が一般に公開しているAPI に接続してヤフー社が運営管理するヤフーサーバーから送信された「ヤ フオク!」のオークション情報であるものと認められる。 しかるところ,ヤフーサーバーから送信された「ヤフオク!」の上記 オークション情報は,「ヤフオク!」のWebサイトのWebページの 情報であり,そのWebサイトの運営又は管理の主体はヤフー社である から,「商品の広告をネット上で紹介提供」する参加企業が運営又は管 理する「Webサイト」又はそのトップページとしてのホームページで ある「参加企業のホームページ」に該当するものと認めることはできな い。 控訴人は,この点について,ヤフーサーバーには,「ヤフオク!」の 個別のオークション商品ごとのWebページのデータがオークションコ ードごとの場所(ドメインないしURL)に保管されており,このオー クション商品ごとのWebページは,「ヤフオク!」における「出店者」 である参加企業が自由に編集可能なオークション商品ごとのWebペー\nジであり,その運用又は管理の主体は参加企業であるといえるから,「 参加企業のホームページ」に該当し,ヤフーサーバーには「参加企業の ホームページ」を保管する「バナーサーバー」が存在する旨主張する( なお,控訴人の上記主張は,前記第3の1(2)アのとおり,「争点1−イ」 に関するものであるが,その主張内容に照らし,「争点1−ア」におい ても主張するものと解される。)。
しかしながら,前記(3)ウ(イ)の認定事実によれば,「ヤフオク!」の サイトの個別のオークション商品のWebページには,「商品の情報」 (「即決価格」,「残り時間」,「入札件数」,「個数」,「開始時の 価格」,「最高額入札者」,「開始日時」,「終了日時」,「商品説明 を読む」等),「商品画像」(小さな画像をクリックすると,拡大表示\nされる。),「出品者の情報」(「出品者(自己紹介),「評価」,「 出品者への質問」,「出品者のその他のオークションを見る」),「商 品画像」等が掲載されるが,当該Webページは,ヤフー社が自ら運営 又は管理する自社のWebページであることが明らかである。 また,「ヤフオク!」のサイトのオークション商品のWebページに 掲載される「商品の情報」及び「出品者の情報」は出品者によって入力 され,「商品画像」は出品者によってアップロードされるが,その入力 項目はヤフー社によって設定され(甲74),Webページにおける各 情報の表示スタイルもヤフー社によって定められたものであり,表\\示さ れる情報の入力等が出品者によって行われるからといって,当該Web ページが出品者が運営又は管理する「Webサイト」又はそのトップペ ージとしてのホームページであるということはできない。

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◆1審はこちらです。平成25年(ワ)247069

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平成26(ワ)4  特許権侵害差止等請求事件 平成27年4月28日  大阪地方裁判所

 傾斜角度が0°は本件クレームの「テーパーカム面」に該当しないとして、技術的範囲に属しないと判断されました。
「テーパーカム面」の意義について,本件特許請求の範囲や本件明細書に具体的な記載はないところ,原告は,「テーパーカム面」は,不可分一体の用語であり,シリンダ形成部材テーパー面40と対向してセットになるカム作用を生じさせる面であり,傾斜角度がつけられていることは必須ではない旨主張するのに対し,被告は,「テーパー」で限定された「面」あるいは「カム面」である旨主張する。
(イ) 原告は,本件明細書において,「テーパー面(40)」と,「カム面(28,29)」及び「テーパーカム面」は明確に書き分けられていると指摘し,「カム面」を,カム作用を生じさせる面であるとして,前記のとおり主張する。 しかし,構成要件C5は,「カム面(28,29,40)よりなる増力機構\」と記載し(「40」は,訂正により加えられている。),ボールを介した増力機構における面40,面28及び面29を「カム面」として同列に記載していることからすれば,原告が主張するような明確な書き分けがされているとまではいえない。\nまた,本件明細書において,面28,29及び40については「カム面」との用語を使用しながら,構成要件E2において「テーパーカム面(29)」との用語を使用しているということは,当該面それ自体が,「カム」としての性格または機能\と「テーパー」としての性格または機能を有する趣旨と解するのが自然である。\n
(ウ) 原告は,「テーパー」の意味として,ピストン側のボールと接する面(28)及び可動側クランプ部材の面(29)と,シリンダ形成部材との各2両面で勾配を形成していることのように主張する。 しかし,本件明細書には,回転軸芯と面28とのなす角度α1を「テーパー角」,「シリンダ形成部材31のテーパー面40及び可動クランプ部材21のテーパーカム面29は,回転軸芯と直角な面に対して30°以下の緩やかな傾斜角度α2,α3」となっている旨の記載があり(【0018】),ボール26を囲む面の有する勾配については,回転軸芯ないしは回転軸芯と直角な面に対する勾配であることを前提としていることが認められるものの,複数の面の相関関係によって円錐状の勾配が形成されるとの意味で「テーパー」が用いられていると解し得る記載は存しない。 そして,本件特許は回転軸芯を中心とした円テーブル装置であり,その構造に関する本件特許請求の範囲の記載を解釈するものであることをあわせ考慮すれば,「テーパー」とは,回転軸芯あるいは回転軸芯と直角な面を基準として,傾斜角度を有することと解するのが相当である。\nこの点,原告は,面29の回転軸芯と直角な面に対する角度(α3)が0°の場合も含む旨主張し,当業者の認識理解や,α3が0°の場合のみ除くのは不自然であることなどを指摘するが,上記「テーパー」の意義からすれば,原告の上記主張は採用できないというべきである。
(エ) 前述のとおり,構成要件E2の「テーパーカム面」は,面29それ自体が,「テーパー」としての性格または機能\と「カム」としての性格または機能を有すべきところ,前記イ(イ)によれば,「カム」の典型的機能は,回転運動を直線運動に変換することであるから,広義では,方向等を変換しつつ力を伝達する部材と解する余地がある。\nまた,上記検討したところによれば,「テーパー」は,回転軸芯あるいは回転軸芯と直角な面を基準として傾斜角度(0°を含まない。)を有するとの意味になる。
ウ 被告製品の構成要件E2充足性
以上を前提に,被告製品が,構成要件E2を充足するかにつき検討するに,前記認定によれば,クランプリング8の鋼球10と当接する面は,増力機構\の一部として,鋼球10を介し,クランプピストン9の前進による力をクランプリング8に伝達するのであるから,カム面としての性質を有しているということはできる。 しかしながら, 被告製品において,クランプリング8の鋼球10と当接する面が回転軸芯と直角であること(α3=0°)は争いがなく(原告は,この面が傾斜している旨を主張するものではなく,この面の傾斜角度が0°であっても,テーパーカム面に該当する旨を主張する。),「テーパー」について前記イのとおり解する以上,この面は「テーパーカム面」に該当せず,結局,被告製品は構成要件E2を充足しない。\n

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平成26(ネ)10107  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年5月14日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないとした1審判断が維持されました。争点が「一覧出力形式」という用語の意味です。
 控訴人は,「一覧」とは「全体に一通り目を通すこと」という意味も包含するのであって,「全体を一目で分かるように」する場合に限る必要はないし,本件発明1に対する課題解決のための手段という観点からも,出願経緯からも,出力を1回に限定する必要もなく,被控訴人方法は構成要件1Dを充足すると主張する。\n確かに,「全体を一目で分かるように」するためには,全体が画面に表示される必要があるものの,その場合,画面への表\示までに送信されるデータが一度で出力されなければならない必然性はない。また,【0055】にあるとおり,本件発明1は,画面をスクロールする場合を含むのであって,この場合,画面上表示されない画像データについては事前に送信しなくても,表\示するためのスクロールの時点までに送信されていれば,全体を確認することができる以上,画面上表示されない画像データについては事前に送信しない方法も考えられ,このような観点からしても,画\n 像出力の回数を1回に限定する必要はない。また,本件発明1の目的,作用効果を果たすためには,事業者は,顧客に対し,預かった複数の品物の全てについて一目で分かるように,すなわち,複数の品物の全ての画像を含むように生成したウェブページとして1回の呼出操作で,ウェブページに含まれる品物に対応した画像を閲覧できるように提示する必要があるが,このことを表現するものとして,控訴人の主張するとおり,「一覧」は「全体に一通り目を通す」ものと解釈することも一応は可能\である。 しかしながら,そう解釈した場合であっても,顧客が自らの預かり品の「全体」の範囲を簡単に把握,理解できない方法では,すなわち,自分が行った1回の呼出操作で全ての商品の画像が同一ウェブページに表示されず,出力されていない画像が他に存在する構\成に基づく方法では,顧客が,表示されていない品物の存在を失念している場合には,他のカテゴリーにアクセスしたり,同一カテゴリー内にある他の画像を呼び出したりすることは考えられないのであって,自分が預けた品物を全て正確に把握するという上記課題を解決できないから,「全体に一通り目を通す」ことにならない。そうすると,1回の呼出操作で全ての商品の画像が同一ウェブページに表\示されない新旧いずれの方法についても,被控訴人方法がこの要件を欠くものとなる。 したがって,被控訴人方法は,本件発明1の技術的範囲に属しない。同様の理由で,被控訴人方法は,本件発明2及び3の技術的範囲に属さず,被控訴人装置も,本件発明4から6の技術的範囲に属しない。

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平成26(ワ)23512  差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年3月24日  東京地方裁判所

 ECサイトの楽天に対する特許権侵害が認められませんでした。代理人無しの本人訴訟です。YAHOOに対しても訴訟提起しており、同じ判断がなされました。事件番号はいずれも平成26(ワ)23512号ですが、判決文のURLは異なるので、おそらく間違いなのでしょう。
 本件明細書の上記イの記載によれば,本件発明は,ホタテ等の貝殻を粉砕した炭酸カルシウム粉末の粒体が多孔質粒体であり,多孔質粒体は吸着効果が大きいことを利用して,洗浄する物品に付着した化学物質等を吸着することを技術思想とする発明であると認められる。そうすると,本件発明の「炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構\造体を備えた貝殻を粉砕した粉末からなる炭酸カルシウム粉末」とは,上記アのとおり,貝殻を粉砕した粉末そのものであることを要するものであり,ホタテ貝殻を粉砕した粉末を焼成して得られた酸化カルシウム粉末が化学反応を経て炭酸カルシウム粉末になったものは含まないものと解される。
(2) 原告は,これと異なる前提に立って,被告各製品がホタテ貝殻を使用した製品であり,酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムを含むことから本件発明の技術的範囲に属すると主張し,被告各製品が,ホタテ貝殻を粉砕した炭酸カルシウム粉末そのものを混合した構成であることを主張立証しない。\nしたがって,原告の主張は,均等をいう部分を含めて採用できず,被告各製品が本件発明の技術的範囲に属すると認めることはできない。

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平成26(ワ)11110  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年3月25日  東京地方裁判所

 第4要件を満たしていないとして均等侵害ではないと判断されました。
 原告は,乙1発明は,役者やモデルのような舞台に上がる者を対象としたメイクアップの技術であるのに対し,乙4発明は,模型等を対象とした塗装技術であって,技術分野が全く異なること,また,乙1発明と乙4発明の解決課題が異なることから,乙1発明に乙4発明を適用する動機付けがないと主張する。しかし,証拠(乙1)によれば,乙1文献の「問題点を解決するための手段」には,「本発明者は,上記の問題点を解決するために,化粧料を,手作業によって塗布する代りに,工業的に吹き付けることに気が付き,塗料を噴霧して吹き付けるのと同様な方法によって化粧料を噴霧して吹き付けることを考え付いたのである。」との記載があり,この記載はまさに,塗料を噴霧して吹き付ける塗装技術を,化粧料を吹き付ける技術に応用することが可能であることを示唆するものであると認めることができる。したがって,上記記載に照らせば,化粧料の吹付けに関する乙1発明に塗装技術である乙4発明を適用する動機付けがあるというべきであり,これに反する上記原告の主張は採用することができない。\n

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平成24(ワ)15621  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年1月22日  東京地方裁判所

 かなりレアの判断です。侵害ではあるが、過剰な差止を認めることとなるとして、差止請求が棄却されました。
 原告は,本件における差止めの対象を,被告合金1及び2のうち,X線ランダム強度比の極大値が6.5以上のものであると限定するが,同一の製造条件で同一組成のCu−Ni−Si系合金を製造した場合,当然に,X線ランダム強度比の極大値が同一になることまでをも認めるに足りる証拠はなく,かえって,前記のとおり,製造ロットや測定部位の違いによりこれが変動する可能性があることからすると,正確なX線ランダム強度比の極大値については,製造後の合金を測定して判断せざるを得ないことになるが,この場合,どの部位を測定すればよいか,また,ある部位において構\成要件Dを充足するX線ランダム強度比の極大値が測定されたとしても,どこまでの部分が構成要件Dを充足することになるのかといった点について,原告は,その基準を何ら明らかにしていない。\nそうすると,被告の製品において,たまたま構成要件Dを充足するX線ランダム強度比の極大値が測定されたとして,当該製品全体の製造,販売等を差し止めると,構\成要件を充足しない部分まで差し止めてしまうことになるおそれがあるし,逆に,一定箇所において構成要件Dを充足しないX線ランダム強度比の極大値が測定されたとしても,他の部分が構\成要件Dを充足しないとは言い切れないのであるから,結局のところ,被告としては,当該製品全体の製造,販売等を中止せざるを得ないことになる。そして,構成要件Dを充足する被告合金1及び2が製造される蓋然性が高いとはいえないにせよ,甲5のサンプル2のように,下限値付近の測定値が出た例もあること(なお,原告は,これが構\成要件Dを充足しないことを自認している。)に照らすと,本件で,原告が特定した被告各製品について差止めを認めると,過剰な差止めとなるおそれを内包するものといわざるを得ない。 さらに,原告が特定した被告各製品を差し止めると,被告が製造した製品毎にX線ランダム強度比の極大値の測定をしなければならないことになるが, これは,被告に多大な負担を強いるものであり,こうした被告の負担は,本件発明の内容や本件における原告による被告各製品の特定方法等に起因するものというべきであるから,被告にこのような負担を負わせることは,衡平を欠くというべきである。 これらの事情を総合考慮すると,本件において,原告が特定した被告各製品の差止めを認めることはできないというべきである。

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平成24(ワ)15621  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年1月22日  東京地方裁判所

 かなりレアの判断です。侵害ではあるが、過剰な差止を認めることとなるとして、差止請求が棄却されました。
 原告は,本件における差止めの対象を,被告合金1及び2のうち,X線ランダム強度比の極大値が6.5以上のものであると限定するが,同一の製造条件で同一組成のCu−Ni−Si系合金を製造した場合,当然に,X線ランダム強度比の極大値が同一になることまでをも認めるに足りる証拠はなく,かえって,前記のとおり,製造ロットや測定部位の違いによりこれが変動する可能性があることからすると,正確なX線ランダム強度比の極大値については,製造後の合金を測定して判断せざるを得ないことになるが,この場合,どの部位を測定すればよいか,また,ある部位において構\成要件Dを充足するX線ランダム強度比の極大値が測定されたとしても,どこまでの部分が構成要件Dを充足することになるのかといった点について,原告は,その基準を何ら明らかにしていない。\nそうすると,被告の製品において,たまたま構成要件Dを充足するX線ランダム強度比の極大値が測定されたとして,当該製品全体の製造,販売等を差し止めると,構\成要件を充足しない部分まで差し止めてしまうことになるおそれがあるし,逆に,一定箇所において構成要件Dを充足しないX線ランダム強度比の極大値が測定されたとしても,他の部分が構\成要件Dを充足しないとは言い切れないのであるから,結局のところ,被告としては,当該製品全体の製造,販売等を中止せざるを得ないことになる。そして,構成要件Dを充足する被告合金1及び2が製造される蓋然性が高いとはいえないにせよ,甲5のサンプル2のように,下限値付近の測定値が出た例もあること(なお,原告は,これが構\成要件Dを充足しないことを自認している。)に照らすと,本件で,原告が特定した被告各製品について差止めを認めると,過剰な差止めとなるおそれを内包するものといわざるを得ない。 さらに,原告が特定した被告各製品を差し止めると,被告が製造した製品毎にX線ランダム強度比の極大値の測定をしなければならないことになるが, これは,被告に多大な負担を強いるものであり,こうした被告の負担は,本件発明の内容や本件における原告による被告各製品の特定方法等に起因するものというべきであるから,被告にこのような負担を負わせることは,衡平を欠くというべきである。 これらの事情を総合考慮すると,本件において,原告が特定した被告各製品の差止めを認めることはできないというべきである。

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平成26(ワ)65  差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年2月27日  東京地方裁判所

 携帯電話の入力支援方法についての特許権の技術的範囲に属しないと判断されました。
 ア 振動状態のショートカットアイコンが移動可能な状態になることについて甲3,甲17の1,甲32の1・2及び弁論の全趣旨によれば,本件ホームアプリにおいて,振動状態でないショートカットアイコンにドラッグ操作を行っても指の動きに追従して移動することはないが,振動状態のショートカットアイコンにドラッグ操作を行うと,指の動きに追従して移動することが認められる。\nそうすると,ロングタッチは,「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置を移動可能な状態に切り替える命令」とみることができる。原告は,「させる」とは「ある行為をするように仕向ける」という意味であるから,「ポインタの位置を移動させる命令」とは,「ポインタの座標位置を移動させる状態に切り替える命令」という意味であると主張する。\nしかし,「させる」とは「ある行為をするように仕向ける」という意味であるから(甲27),「ポインタの位置を移動させる命令」とは,「ポインタの位置を移動するよう仕向ける命令」すなわち「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」を意味することは一義的に明確であって,これを「ポインタの位置を移動可能な状態に切り替える命令」であると解釈する余地はない。「ある行為をするように仕向ける」ことと,「ある行為が可能\な状態に切り替える」こととが異なることは明らかであるから,「させる」に前者の意味があるとしても,後者の意味があることにはならない。原告の主張は失当である。 本件明細書の段落【0052】〜【0101】の実施例の説明を見ても,構成要件Eにいう「ポインタの位置を移動させる命令」に対応するものとしては,「例えば,マウスにおける左ボタンや右ボタンを押したままマウスを移動させること(ドラッグ操作)や,キーボードにおける特定のキーを押しつつマウスを移動させる行為,等が該当する。」(段落【0079】)とされ,「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」をもって「ポインタの位置を移動させる命令」としているのであって,「ポインタの位置を移動可能\な状態に切り替える命令」をもって「ポインタの位置を移動させる命令」とすることについては何らの記載も示唆もない。このような本件明細書の記載を参酌すれば,「ポインタの位置を移動させる命令」が「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」を意味し,「ポインタの位置を移動可能\な状態に切り替える命令」を意味しないことは一層明らかである。\nしたがって,ロングタッチが「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置を移動可能な状態に切り替える命令」であったとしても,構\成要件Eにいう「ポインタの位置を移動させる命令」に当たるということはできない。
イ 振動状態のショートカットアイコンがやや下に移動することについて ロングタッチにより振動状態となったショートカットアイコンは,元々の位置よりやや下に移動して振動するものと認められる。 しかし,甲32の1・2によれば,Facebookアイコンをロングタッチすると,ロングタッチ中のFacebookアイコンのみならず,ロングタッチしていないEvernoteアイコンやTwitterアイコンも元々の位置よりやや下に移動して振動状態となっていることが認められる。 そうすると,ロングタッチが,「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置」を「元々の位置よりもやや下に移動させる」ことを指示する命令ということはできない。ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコンがやや下に移動するのは,他のショートカットアイコン(非「ポインタ」)の移動と同様,振動状態になったことを示す付随的な動作にすぎず,このような付随的な動作が生じることをもって,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令(=移動を指示する命令)」であるということはできない。
ウ 振動状態のショートカットアイコンが小刻みに振動することについて 甲32の1によれば,ロングタッチにより振動状態となったロングタッチ中のショートカットアイコン(=「ポインタ」)は小刻みに振動することが認められるが,これも,他のショートカットアイコン(非「ポインタ」)の振動と同様,振動状態になったことを示す付随的な動作にすぎず,このような付随的な動作が生じることをもって,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令(=移動を指示する命令)」であるということはできない。
(6) 「ポインタの位置」を「『Multi Touch』ソフトウェアがカーソ\\ルや数値で表示する座標位置」とした場合原告は,甲32の1・2において「Multi Touch」と題するソフトウェアが赤いカーソ\ルの位置や画面左上の数値で表示する座標位置の変化をもって,「ポインタの位置の移動」であるかのような主張をする(原告準備書面(2)42頁)。しかし,原告は,「Multi Touch」と題するソフトウェア(及びこれにデータを提供していると主張する「MotionEvent」と題するソフトウェア)がどのようなデータを検出しており,それが本件発明にいう「ポインタ」の定義を満たすのかについて主張立証をしないから(指を離した状態でも,また「ショートカットアイコンが指に追従する」状態でなくてもカーソ\ルが表示されているのであるから,「タッチパネル上の指の座標位置」でも,「指の動きに追従するショートカットアイコンの座標位置」でもないことは明らかである。),当該ソ\フトウェアが何を検出しているにせよ,それが本件発明にいう「ポインタ」に当たると認めることはできず,仮にロングタッチにおいて上記ソフトウェア上のカーソ\\ルや数値で表示される座標位置が変動するとしても,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」に当たるとはいえない。(7) 本件ホームアプリが「ポインタ」を用いるものでない場合被告の主張するとおり,本件ホームアプリが「ポインタ」を用いるものでないと解釈した場合には,当然ながら,「ポインタの位置を移動させる命令」も存在しない。 (8) 以上のとおり,本件ホームアプリにおける「ポインタ」をどのように解釈するにせよ,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」であるとはいえないから,その余の点につき判断するまでもなく,本件ホームアプリは,本件発明の構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すると……操作メニュー情報を……表\示する」出力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムであるとは認められない。

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平成26(ネ)10114  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年2月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁は、インターネットショッピングサイト「ZOZOTOWN」に対して、特許権に基づく、損害賠償請求を棄却した1審判断を維持しました。 1審判決はなぜかアップされてません。
 被告ウェブサイトは,被控訴人が多数のファッションブランドの商品を販売するインターネットショッピングサイトであり,被控訴人は,ブランド各社から納入を受けた商品を被告ウェブサイトにアクセスしたユーザーに対し,被控訴人の名義で販売しており,被告ウェブサイトで商品情報画像のアイコン2(別紙1の図2)がユーザーによってクリックされると,関連商品が表示されるリンク先のページ(別紙1の図3及び図4)は,被控訴人の自社のページであること,被告ウェブサイトで表\示される他のページも,いずれも被控訴人の自社のページであり,被告ウェブサイトには,被控訴人以外の他の企業が管理するホームページに誘導するバナー広告が存在しないことが認められる。 したがって,被告ウェブサイトを使用する被告システムには,「商品の広告をネット上で紹介提供」する参加企業が運営又は管理する「Webサイト」又はそのトップページとしてのホームページである「参加企業のホームページ」が存在するものと認めることはできず,ひいては,被告システムにおいて,「参加企業のホームページ」を保管する「バナーサーバー」が存在するものと認めることはできない。

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平成26(ワ)7856  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年2月24日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、構成要件を備えていないとして、特許権侵害が否定されました。
 前記前提事実及び上記認定事実に基づき構成要件1D並びに2C及び2Dにいう「第1記録領域」及び「第2記録領域」の意義についてみるに,まず,特許請求の範囲の「記録媒体の第1記録領域」及び「記録媒体の第2記録領域」との記載によれば,第1記録領域及び第2記録領域は,記録媒体が有する記録領域全体のうちそれぞれ一部分を占める領域であり,相互に区別されて存在するものであることが明らかである。また,「第1データを・・・第1記録領域に書き込み」,「第2データを・・・第2記録領域に書き込\nむ」との記載によれば,データを書き込む際には,それが第1データであるか第2データであるかに応じて,記録領域全体のうちどの領域に書き込まれるのかが定まっているとみることができる。 このような特許請求の範囲の記載によれば,記録媒体の記録領域は,第1記録領域及び第2記録領域(並びに管理領域その他の領域)に物理的に区分されており,第1データが記録される第1記録領域に第2データが書き込まれたり,第2データが記録される第2記録領域に第1データが書き込まれたりすることはないと解すべきものとなる。 そして,上記の解釈は,前記(1)イの本件明細書の記載,すなわち,半導体メモリには第1記録領域と第2記録領域が形成されており,第1データの書き込みは第1記録領域の書込可能容量に達した場合に終了し,第2データの書き込みは第2記録領域の書込可能\容量に達した場合に終了する旨の記載に沿うものであって,本件明細書(甲4)の発明の詳細な説明及び図面に,これと異なる構成(第1データが記録されるべき領域への第2データの書き込み又は第2データが記録されるべき領域への第1データの書き込みを許容するような構\成)を示唆する記載は見当たらない。 そうすると,第1記録領域及び第2記録領域は,記録媒体の記録領域を物理的に区分して形成された別個の領域であると解するのが相当である。
・・・
 被告機器及び被告運行管理方法においては,センサから出力され,一次記録領域に記録された加速度データを,トリガ判定閾値を超えるなどの条件を満たすデータ(原告が第1データに当たると主張するもの。以下「甲データ」という。)であるか,事故判定閾値を超えるなどの条件を満たすデータ(原告が第2データに当たると主張するもの。以下「乙データ」という。)であるかに応じて,記録媒体(CFカード)に形成された別個のファイルに記録するとされている(別紙被告機器・・・)。そして,原告の認めるとおり,CFカードの記録領域は物理的に区分されておらず,甲データ又は乙データに対応するファイルが記録領域全体のうちどの部分に形成されるかは書き込みをする際に定まるというのであるから,CFカード中の空き領域には甲データ及び乙データのいずれもが書き込まれ得るということができる。 以上によれば,被告機器及び被告運行管理方法は本件各特許発明の「第1記録領域」及び「第2記録領域」に相当する構成を有していないと判断するのが相当である。\n

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平成24(ワ)15693  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年1月23日  東京地方裁判所

 図書保管管理システム(CS関連発明)について、技術的範囲に属しないと判断されました。また、訂正の抗弁についても、「再訂正によって特許の無効理由が解消されるとは認められない」と判断されました。
 本件発明が物の発明であることに鑑みると,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに対して…更新する」との文言から,上記更新手段は,\n ステーションに搬送された状態で,図書が取り出された状態のコンテナ又は図書が返却された状態のコンテナに対して,記憶手段の記憶内容を更新するという構成を示していると解するのが自然である。そして,本件明細書等には,「図書館員がコンソ\ール54を操作して返却完了の指示を中央処理装置39に入力すると,図書コードと,…コンテナ番号とを組み合わせ,その組み合わせたデータを…前記ハードディスク47等に登録する。」(段落【0051】),「…図書館員がコンソール54を操作して取り出し完了の指示を中央処理装置39に入力すると,…更新する。」(段落【0058】)というように上記解釈を裏付ける記載はあるが,その一方で,本件明細書等には,ステーションに搬送されていない状態で,図書の取り出し又は返却の完了していない状態のコンテナに対して更新するものとする更新手段の構\成については,記載されていないし,かかる構成の示唆すらない。\nさらに,前記の本件明細書等の記載には,「…図書の取り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,…記憶内容が更新される」(段落【0010】),「このようなサイズ別フリーロケーション方式による図書の保管管理手段を採用することにより,…同一寸法の図書ならば,その寸法の図書を収容するためのコンテナ内に任意に返却することが可能となるので,…自動化による図書の取り出し及び返却作業の能\率を効果的に向上させることができる」(段落【0011】)と記載されており,これらの記載から,本件発明において前提とされるサイズ別フリーロケーション方式は,同一寸法の図書ならばコンテナ内に任意に返却することが可能な構\成,すなわち,同一寸法の図書であればその寸法の図書を収容するためのコンテナ内に空きのある限り任意に収容することが可能な構\成とされているものと理解することができる。そして,コンテナ内に空きのある限り図書を任意に収容するためには,図書の取 り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,更新手段が記憶内容を更新する,すなわち,図書の取り出しや返却が行われた状態にあるコンテナに対して記憶内容を更新することが必要であり,そのような構成が本件発明におけるサイズ別フリーロケーション方式の前提となっているものと解される。
ウ したがって,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに対して…更新する更新手段」とは,ステーションに搬送された状態で図書が返却された状態のコンテナに対して記憶内容を更新する構\成を具備する更新手段をいうものと解するのが相当である。
・・・
以上のイないしオによれば,乙22公報,乙26公報,乙23公報,乙27公報には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚領域を設けること,又は,自動倉庫の分野で幅及び高さがそれぞれ異なる棚領域を設けることが記載されており,これらのことが従来周知の技術的事項であると認められる。 また,乙26公報及び乙27公報に記載されているように,自動倉庫に格納される収容物がコンテナ又は容器に収納した状態で格納されることは,周知の事項であり,乙27公報に記載されているように,収容物の寸法に応じて大きさの異なる容器を使い分けることも,従来から一般的に行われていることであると認められる。そして,このコンテナ又は容器が収容される棚領域が,収容物の大きさ(寸法)に対応したものとなることは自明の事項である。 以上によれば,前記イないしオから,「収容物の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領域を有する倉庫とそれぞれが収容された棚領域に対応した寸法を有する複数の収容物を収容する複数のコンテナを備えた自動公庫」との事項が周知技術であると認められる。 キ そして,乙12発明と上記カで認定した周知技術は,コンテナ等に収容物を収容し,このコンテナを,棚等を有する収容場所に格納するものであるという点で共通するから,乙12発明に上記周知技術を適用することは, 当業者が容易になし得たことであると認められる。

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平成25(ワ)16060  特許権に基づく損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年1月16日  東京地方裁判所

 クラウドシステムについての特許侵害訴訟(CS関連発明)です。裁判所は詳細な説明(目的・効果など)を参酌して、技術的範囲に属しないと判断しました。
 上記アからすると,被告商品における「テンプレート」は,被告のサービスポータルの表示画面において,顧客が利用する仮想マシン及び仮想システムの構\成のメニューとしての選択候補を意味するにすぎないものと認められる。 この点,原告は,被告商品における「テンプレート」は,総合試験を経て動作保証された,即時稼働可能な状態で提供される仮想マシンそのものであり,予\め用意されたテンプレートのコピーにより仮想マシンが作成されるのであるから,構成要件Aの「レンタルエンジン」に該当する旨主張する。\nしかし,前記認定に係る本件発明の特徴からすれば,ユーザーからのリクエスト時にレンタルエンジンは実在するものでなければならないところ,上記のとおり,被告商品においては,ユーザーの選択により仮想マシンが配備される,つまり,ユーザーが選択しない限り仮想マシンは配備されず,ユーザー自らが必要な構成や機能\を選択してシステム構築を行うものであるから,ユーザーのリクエスト時に実在しない仮想マシンをレンタルエンジンととらえることはできない。まして,テンプレートをコピーすることにより仮想マシンが作成されることを前提としても,テンプレートを実在するレンタルエンジンととらえることもできない。ユーザーからのリクエスト時にテンプレート上に表\示されたリソースの動作保証がされていることと表\示されたリソースから構\成されるコンピューターが現実に存在することが異なることは明らかである。 ウ 以上のとおり,被告商品における「テンプレート」を,構成要件Aの「レンタルエンジン」ととらえることはできず,ほかに被告商品において構\成要件Aにいう「レンタルエンジン」に該当すると認めるべき構成は見当たらない。\n

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平成25(ワ)3480  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年12月11日  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属さないと判断されました。
 前記3のとおり,本件特許発明4(請求項4)が,いずれも請求項1の従属項である請求項2または請求項3の発明に,「前記ユーザエージェントは,前記第三者エージェントと協働して仕事を行うマルチエージェントで構成されている」との構\成を付加していることから,本件特許発明1(請求項1)は,マルチエージェントシステムの構成を前提とするものではないと解する余地がある。\nしかしながら,本件特許発明1(請求項1)には,「自律的なソフトウェアモジュールとしてのエージェント」,「コンテンツ提供手段」,「プロフィール情報受付手段」,「マッチング判断を行うエージェント」,「中立性を有する第三者エージェント」,「コンテンツ提供システム」といった構\成が使用されており,単に「マルチエージェント」の言葉が使用されていないことのみを理由として,複数のエージェントが協働するマルチエージェントシステムの構成が開示されていないと即断することはできない。\nむしろ,上記のとおり,原出願はマルチエージェントシステムの構成を前提とするものであるから,その曾\孫出願をさらに分割してされた本件特許が,複数のエージェントの協働という限定のない,単にエージェントの存在のみを内容とするシステムを権利内容とするとは考え難い(仮にそうであるとすると,分割要件の問題となるほか,前記3(2)において認定した従来技術との関係において,新規性,進歩性も問題となる。また,上記のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,マルチエージェントシステムを前提に課題を解決する発明が開示されていると認められるが,請求項1に単なるエージェントの存在のみで構成される発明が記載されているものとした場合,サポート要件の点も問題となる。)。\nまた,前記3のとおり,原出願の明細書では,発明の実施の形態として,ゼネラルマジック社が開発した通信用言語であるテレスクリプトによる自律ソフトウェアとしてのエージェントを採用することなどが記載されているが,その前後の記載から,これがマルチエージェントシステムの採用を前提とする内容であることは明らかであるところ,本件明細書にも,前述のとおり,発明の実施の形態として,ゼネラルマジック社が開発した通信用言語であるテレスクリプトによる自律ソ\フトウェアとしてのエージェントを採用することが記載されており,これによれば,本件明細書は,原出願にかかる明細書同様,エージェント同士が協調して動作するマルチエージェントシステムを利用することで課題を解決するとの構成を開示するものと認められ,本件特許の特許請求の範囲の文言についても,これを前提に理解すべきものである。
(3) あてはめ
以上によれば,本件特許の構成要件A−1の「自律的なソ\フトウェアモジュールとしてのエージェント」については,他のソフトウェアモジュールとしてのエージェントと,課題解決のために協調して動作するマルチエージェントシステムの一部を意味するものと解するのが相当である。\n被告システムについては,前記2で認定したところであるが,携帯電話等のユーザー端末,被告が利用するサーバー群及びコンテンツ提供業者のそれぞれにソフトウェアがインストールされ,相互に情報のやり取りをする事実は認められるものの,被告システムのエージェントが,ユーザーのエージェントあるいはコンテンツ提供業者のエージェントと,課題解決のために協調して動作するマルチエージェントシステムが構\成されている事実は,本件で提出された証拠によっては認定することができない。 そうすると,被告物件イ−2(iコンシェル)は構成要件A−1を充足せず,本件特許発明1の技術的範囲に属しないというべきである。\n

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平成25(ワ)32665  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年10月30日  東京地方裁判所

 機能クレームについて特許権侵害が認められました。
 本件特許の特許請求の範囲には,構成要件Dとして「前記本体と可動的に接続されたガイド板」と,構\成要件Eとして「前記本体が前記ガイド板に対して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃または第2の刃が出る」と記載されており,その文言上は,本体がガイド板に対して動くとガイド板から刃が出てくるものであれば足り,本体とガイド板の接続態様や本体の動き方についての限定はないということができる。しかし,構成要件Eの上記文言は,発明の構\成をそれが果たすべき機能によって特定したものであり,いわゆる機能\的クレームに当たるから,上記の機能を有するものであればすべてこれを充足するとみるのは必ずしも相当でなく,本件明細書に開示された具体的構\成を参酌しながらその意義を解釈するのが相当である。そして,構成要件Dの「可動的に接続された」との構\成についても,構成要件Eと整合するように解釈すべきものと解される。\n
・・・
(3) 本件明細書の上記記載によれば,「前記ガイド板から前記第1の刃または第2の刃が出る」との機能を果たすための本体のガイド板に対する動き方として本件明細書に開示されているのは,本体をガイド板に対して傾けること(上記(2)オ,カ)及びスイングするガイド板を設けること(同カ)であり,要するに本体をガイド板に対して傾け,又は回転運動させるということである。そして,本体をガイド板に対して左右に傾け,又は回転運動させた場合には,本体の左下又は右下の端部がガイド板から外に出るから,本体の左下及び右下の端部に第1及び第2の刃の各先端を位置させて おけば,本体を傾けるだけで刃が出てきて,あとはノンスリップシート等の凹凸に沿わせて滑らせるだけで簡単,きれいかつ迅速に切断できるという本件特許発明の効果(同オ)を奏すると認められる。そうすると,構成要件Eの「動く」には少なくとも回転運動が含まれるとみることができる。\n次に,本体がガイド板に対して回転運動するように「可動的に接続」すること(構成要件D)についてみるに,2枚の板状の部材を回転可能\に接続する態様としては,1)それぞれの中心部分をシャフト等により軸着する構成のほか,2) 一方の周辺部に円弧状の溝等を設け,この溝等に他方を摺動可能に取り付けるといった構\成を採用し得る。このうち本件明細書に明示されているのは1)の構成のみであるが(上記(2)エ〜カ),いずれの構成であっても特許請求の範囲にいう「可動的に接続」に該当し,かつ,本件特許発明に係る課題を解決して上記の効果を奏すると考えられる。したがって,2)の構成も構\成要件Dの「可動的に接続」に含まれると解すべきものである。 (4) 被告製品は,前記前提事実(5)イのとおり,本体3(回転板)とガイド板6(固定板)が円弧状の溝を有する接続部7を介して接続され,本体を左右に傾けてこの溝に沿って円周方向に動かすと,刃1又は刃2がガイド板から外に出るように構成されている。したがって,被告製品は,構\成要件D及びEを充足し,本件特許発明の技術的範囲に属すると認められる。 (5) これに対し,被告は,1) 本件特許発明の技術的範囲は本件明細書に開示された構成(本体とガイド板がシャフトにより接続され,本体がシャフトを軸にしてガイド板に対して回転する構\成)に限定して解釈されるべきである,2) 被告製品は本件特許発明とは異なる課題を解決するものであるから,本件特許発明の技術的範囲に属しない旨主張する。そこで判断するに,1)について,上記(3)に説示したところによれば,本体とガイド板を回転可能に接続するに当たり,シャフトにより軸着するか,円弧状の溝に摺動可能\に嵌合するかは,当業者が適宜選択し得る実施の形態にすぎないということができる。また,2)について,被告製品が本件特許発明の構成要件を充足し,その効果を奏することは上記(3)及び(4)のとおりであるから,被告製品が本件特許発明と異なる課題をも解決するとしても,この点は上記の判断に影響するものではない。

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平成25(ワ)5744  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月18日  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないと判断されました。均等侵害も否定されました。
(ア)「一覧出力形式」のうち,「一覧」には,「全体の概略が簡単にわかるようにまとめたもの」(甲14),「全体が一目で分かるようにしたもの」(乙4)という意味があり,「出力」には,「機器・装置が入力を受けて仕事をし,外部に結果を出すこと」(甲14),「原動機・通信機・コンピュータなどの装置が入力を受けて仕事または情報を外部へ出すこと」(乙4)という意味があり,「形式」には,「物事を行うときの,則るべき一定の手続きや方法・様式」(甲14),「事務などを進めるための,文書の体裁や執るべき手続」(乙4)という意味がある。 構成要件1Dには,第1通信装置の記憶手段に記憶された複数の品物の画像データの中から,ユーザ情報に対応するものを「一覧出力形式」で,すなわち,全体を一覧できるように,情報を外部へ出す方法で,第2通信装置へ送信する旨が記載されている。ここで,「全体」とは,「ユーザ情報に対応するもの」,すなわち,ユーザ情報に対応する複数の品物の画像データの全てであると読み取ることができる。
(イ)発明が解決しようとする課題,課題を解決するための手段及び発明の効果において,顧客がどの衣類を預けたか忘れてしまうことがあるが,事業者が預かっている対象物の内容を画像で視覚的に示すことによって,顧客が,預けている衣類を正確に把握でき,その中から,返却を要求したい衣類を事業者に対して容易かつ的確に知らせることができる旨が指摘されており,P1は,本件特許出願の過程で,同様の指摘や補正をしている。このような目的,作用効果のためには,事業者は,顧客に対し,預かった複数の品物の全てについて,1回の出力で,その画像を閲覧できるように提示する必要がある。 発明の実施の形態においても,預かり物の全ての画像データが読み込まれ,その結果,注文情報データベースから抽出した所定の注文情報と,預かり物画像データベースから読み込んだ衣類の画像データによって生成される「お預かり表」のウェブページに,抽出された全てのレコードに記述されている画像データパスの画像データが表\示され,全ての画像データを閲覧することが可能となる。
(ウ)前記(ア)及び(イ)を併せ考えると,「一覧出力形式」とは,ユーザ情報に対応する複数の品物の画像データが出力された場合,その画像データの全てが一覧できる状態,例えば,ディスプレーに表示される場合には,ひとつの画面上で閲覧できる状態(ディスプレーの大きさや画面の大きさにより,スクロールする必要が生じる場合を含む。)で,情報を外部へ出す方法を意味すると解される。
(2)構成要件1Dに対応する被告方法の構\成 証拠(甲6〜8,乙3)及び弁論の全趣旨によると,被告方法は,別紙被告方法目録記載第2の構成を備えていると認めることができる。 これによると,被告方法では,各画像データが「保管中アイテム」等のカテゴリーに分けられてサーバに記録されており,顧客があるカテゴリーのボタンをクリックすると,旧被告方法の場合,当該カテゴリーについてのみ,カテゴリー内の全ての画像が顧客側へ送信され,新被告方法の場合,当該カテゴリー内の1枚の画像のみが顧客側へ送信される。
(3)被告方法の構成要件1Dへの充足性
そうすると,被告方法は,ユーザ情報に対応する複数の品物の画像データの全てが一覧できる状態で,情報を外部へ出す方法をとっておらず,「一覧出力形式」との構成要件(構\成要件1D)を充足しない。 したがって,被告方法は,本件発明1から3までの構成要件を文言上充足すると認めることができない。\n

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平成25(ワ)5600  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月25日  大阪地方裁判所

 技術的範囲に属しないとして判断されました。
 もっとも,請求項1及び2の記載のみからは,「横向き管の最下面」,「延長線」の意味が明らかではない。横向き管は,上向き,下向き等の方向のものをも含むところ,本件明細書では,横向き管が水平である場合の「延長線」が図示されているのみで,上向きや下向きの場合の「延長線」は図示されていない。そうすると,横向き管が上向きや下向きの場合に,「最下面」がどの面を指すかという点や,「延長線」の始点,方向が明らかとはいえない。 イ そこで,前記(1)で指摘した本件明細書の記載内容を検討すると,従来の混合装置では,輸送短管の出口とレベル計との間に空間ができていたために,材料の一部が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下していたところ,この問題を解消するため,本件各特許発明では,輸送開始時に必要とされる充填レベルに達するまで混合済み材料を充填させ,既に充填された混合済み材料によって,吸引輸送される材料が未混合のまま一時貯留ホッパー へ落下するのを阻止するようにしている。 また,充填レベルは,混合済み材料が縦向き管のどの高さまで貯留したかを示すものであるから,輸送開始時を定める充填レベルの基準は,混合済み材料の上表面によって示される必要がある(混合済み材料の上表\面は,必ずしも正確な水平面とは限らないが,レベル計によって,その上表面の位置が判断される。)。 充填レベルが,横向き管が縦向き管に接する出口の下端よりも下方にあって,充填レベルと横向き管の出口の下端との間に空間が生じていると,輸送された材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下することになる。そのため,一時貯留ホッパーへの落下を防ぐには,材料の輸送が開始する時点で,横向き管が縦向き管に接する出口の下端に達するまで,混合済み材料が充填されている必要がある。 したがって,輸送開始時を定める充填レベルの基準となり,充填レベルを検出するためのレベル計の位置の基準ともなる「横向き管における最下面の延長線」とは,横向き管が縦向き管と接する出口の下端から,水平方向に向かって延長した線を意味すると解される。

◆判決本文

◆関連事件はこちらです。これは侵害(間接侵害)が成立しています。平成25(ネ)10026等

◆これの1審判断です。平成20(ワ)10819

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平成23(ワ)26676  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月25日  東京地方裁判所

 技術的範囲に属しないと判断されました。
 一般的な学術用語としての転位に該当する典型的な線状の結晶欠陥(前記(2)ア参照)であれば,STEMないしTEM観察により線状の画像が明瞭に認められる(甲23,24,30,乙6,21参照)のに対し,乙21写真において原告が「転位」であると指摘する箇所は,画像処理を行ってコントラストを強調すれば線状に見える余地があるとはいえ(甲34参照),上記の典型的な場合に比較すると不鮮明なものにとどまる。 また,本件明細書1には結晶欠陥(転位)密度をTEM分析により測定した旨の記載があり(段落【0046】),その発明者らはTEMを用いて「転位」の存在を確認したと推測されるものの,当時のTEM画像等は証拠として提出されてお