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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

動機付け

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成29(行ケ)10096  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年5月15日  知的財産高等裁判所

 数値限定の範囲を変えることについて動機付けありとして、進歩性違反無しとした審決が、取り消されました。
 本件訂正発明1と甲1発明との相違点である,甲1発明におけるSiO2粒 子(非磁性材)の含有量を「3重量%」(3.2mol%)から「6mol%以上」とする ことについて,当業者が容易に想到できるといえるか否かを検討する。
イ 動機付けの有無について
(ア) 上記3(1)において認定したとおり,本件特許の優先日当時,垂直磁 気記録媒体において,非磁性材であるSiO2を11mol%あるいは15〜40vol% 含有する磁性膜は,粒子の孤立化が促進され,磁気特性やノイズ特性に 優れていることが知られており,非磁性材を6mol%以上含有するスパッタ リングターゲットは技術常識であった。 そして,本件特許の優先日前に公開されていた甲4(特開2004− 339586号公報)において,従来技術として甲2が引用され,甲2 に開示されている従来のターゲットは「十分にシリカ相がCo基焼結合金 相中に十分に分散されないために,低透磁率にならず,そのために異常\n放電したり,スパッタ初期に安定した放電が得られない,という問題点 があった」(段落【0004】)と記載されていることからも,優れた スパッタリングターゲットを得るために,材料やその含有割合,混合条 件,焼結条件等に関し,日々検討が加えられている状況にあったと認め られる。 そうすると,甲1発明に係るスパッタリングターゲットにおいても, 酸化物の含有量を増加させる動機付けがあったというべきである(磁気 記録方式の違いが判断に影響を及ぼさないことについては,後記オ(ア) に説示するとおりである。)。
(イ) 次に,具体的な含有量の点についてみると,被告も,非磁性材の含有 量を「6mol%以上」と特定することで何らかの作用効果を狙ったものでは ないと主張している上,証拠に照らしても,6mol%という境界値に技術的 意義があることは何らうかがわれない。 さらに,本件明細書の段落【0016】及び【0017】に記載され ているスパッタリングターゲットの作製方法は,本件特許の優先日当時, 一般的に使用・利用可能であった通常の強磁性材及び非磁性材を用い,\n様々な原料粉の形状,粉砕・混合方法,混合時間,焼結方法,焼結温度 を選択することにより,本件訂正発明に係る形状及び寸法を備えるよう にできるというものであるから,甲1発明に基づいて非磁性材である酸 化物の含有量が6mol%以上であるターゲットを製造することに技術的困難 性が伴うものであったともいえない。 そうすると,磁気特性やノイズ特性に優れたスパッタリングターゲッ トの作製を目的として,甲1発明に基づいて,その酸化物の含有量を6mol% 以上に増加させる動機付けがあったと認めるのが相当である。
ウ 阻害要因の有無について
(ア) 審決は,ターゲットの組成を変化させるとターゲット中のセラミック 相の分散状態も変化することが推測され,例えば,当該セラミック相を 増加させようとすれば,均一に分散させることが相対的に困難になり, ターゲット中のセラミック相粒子の大きさは大きくなる等,分散の均一 性は低下する方向に変化すると考えるのが自然であって,実施例1の「3 重量%」(3.2mol%)から本件訂正発明1の「6mol%以上」という2倍近い値 まで増加させた場合に,ターゲットの断面組織写真が甲1の図1と同様 のものになるとはいえず,本件訂正発明1における非磁性材の粒子の分 散の形態を変わらず満たすものとなるか不明であると判断した。 被告も,甲1発明において酸化物含有量を「3重量%」(3.2mol%)から 「6mol%以上」に増加させた場合に,組織が維持されると当業者は認識し ない,すなわち,組織が維持されるかどうか不明であることは,甲1発 明において酸化物含有量を増やすことの阻害要因になると主張する。
(イ) この点について,上記2(2)オにおいて認定したとおり,甲1には, 実施例4(酸化物の含有量は1.46mol%)について,「このターゲットの 組織は,図1に示した酸化物(SiO2)が分散した微細混合相とほぼ同様 であった。」(段落【0022】),実施例5(同1.85mol%)及び同6 (同3.19mol%)についても「このターゲットの組織は,図1に示した組 織とほぼ同様であった。」(段落【0024】及び【0026】)との 各記載があるように,非磁性材である酸化物の含有量が1.46mol%(実施 例4)から3.19mol%(実施例6)まで2倍以上変化しても,ターゲット の断面組織写真が甲1の図1と同様のものになることが示されている。 さらに,上記3(2)において認定したとおり,メカニカルアロイングに おける混合条件の調整,例えば,十分な混合時間の確保等によってナノ\nスケールの微細な分散状態が得られることも,本件特許の優先日当時の 技術常識であった。 そうすると,甲1に接した当業者は,甲1発明において酸化物の含有 量を増加させた場合,凝集等によって図1に示されている以上に粒子の 肥大化等が生じる傾向が強まるとしても,金属材料(強磁性材)及び酸 化物(非磁性材)の粒径,性状,含有量などに応じてメカニカルアロイ ングにおける混合条件等を調整することによって,甲1発明と同程度の 微細な分散状態を得られることが理解できるというべきである。 また,上記イのとおり,甲1発明に基づいて非磁性材である酸化物の 含有量が6mol%以上であるターゲットを製造することが,何かしらの技術 的困難性を伴うものであると認めることはできない。 したがって,甲1発明において酸化物の含有量を「3重量%」(3.2 mol%) から「6mol%以上」に増加した場合に,分散状態が変化する可能性がある\nとか,上記本件組織が維持されるかどうかが不明であることが,直ちに 非磁性材の含有量を増やすことの阻害要因になるとはいえない。

◆判決本文

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平成29(行ケ)10180  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月28日  知的財産高等裁判所

 審決では動機付け無しとして進歩性違反なしと判断されていました。知財高裁(2部)は動機付けありとして、審決を取り消しました。
 登記識別情報保護シールを登記識別情報通知書に何度も貼り付け,剥離すること\nを繰り返すと,粘着剤層が多数積層して,登記識別情報を読み取りにくくなるとい う登記識別情報保護シールにおける本件課題は,登記識別情報保護シールを登記識 別情報通知書に何度も貼り付け,剥離することを繰り返すと必然的に生じるもので\nあって,登記識別情報保護シールの需要者には当然に認識されていたと考えられる (甲15)。現に,本件原出願日の5年以上前である平成21年9月30日には, 登記識別情報保護シールの需要者である司法書士に認識されていたものと認められ る(甲26の3)。そして,登記識別情報保護シールの製造・販売業者は,需要者 の要求に応じた製品を開発しようとするから,本件課題は,本件原出願日前に,当 業者において周知の課題であったといえる。 そうすると,本件課題に直面した登記識別情報保護シールの技術分野における当 業者は,粘着剤層の下の文字(登記識別情報)が見えにくくならないようにするた めに,粘着剤層が登記識別情報の上に付着することがないように工夫するものと認 められる。甲3発明は,秘密情報に対応する部分には実質的に粘着剤が設けられて いないものであり,甲3発明と甲1発明は,秘密情報保護シールであるという技術 分野が共通し,一度剥がすと再度貼ることはできないようにして,秘密情報の漏洩\nがあったことを感知するという点でも共通する。したがって,甲1発明に甲3発明 を適用する動機付けがあるといえる。 甲1発明に甲3発明を適用すると,粘着剤層が登記識別情報の上に付着すること がなくなり,本件課題が解決される。したがって,甲1発明において,甲3発明を 適用し,相違点に係る構成とすることは,当業者が容易に想到するものと認められ\nる。
ウ 被告の主張について
(ア) 被告は,甲3発明には,シールを何度も貼り付け,剥離することを繰\nり返すという課題は存在せず,その使用目的から容器又はシールを使い回すことは 倫理上許されないから本件課題とは矛盾し,阻害要因がある,と主張する。 しかし,甲3発明のシールは何度も貼り付け,剥離することを予\定されていない としても,一度剥がした後に新たなシールを貼付することは可能\である。また,甲 3発明が,医療,保健衛生分野において使用される検体用容器等に使用される場合 には,何度も貼り付け,剥離することはないのは,検体用容器等の用途がそのよう\nなものであるからであって,甲3発明自体の作用,機能に基づくものではなく,甲\n3発明は保健,衛生分野に限って使用されるものではないから,甲1発明と組み合 わせるのに阻害要因があるとはいえない。したがって,被告の主張には,理由がな い。

◆判決本文

同じ特許発明に関する別の無効審判の取消事件です。 こちらも進歩性無しと判断されました。

◆平成29(行ケ)10176

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平成29(行ケ)10139  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年4月16日  知的財産高等裁判所

 条件判断を入れ替えると、技術的意義に変動が生じるので単なる設計事項ではないとして、進歩性なしとした拒絶審決を知財高裁は取り消しました。
 引用発明の衝突対応車両制御は,衝突対応制御プログラムが実行されることによ って行われる。同プログラムは,S1の自車線上存在物特定ルーチン及びS2のA CC・PCS対象特定ルーチンにおいて,自車線上の存在物であるか否かという条 件の充足性が判断され,その後に処理されるS5のACC・PCS作動ルーチンに おいて,自車両の速度,ブレーキ操作部材の操作の有無,自車両と直前存在物との 衝突時間や車間時間等の条件に応じて,特定のACC制御やPCS制御が開始され, 又は開始されないというものである。
(イ) 条件判断の順序の入替えについて
本願補正発明では,ターゲット物体との相対移動の検知に応答してアクションを 始動するように構成された後に,自車線上にある存在物を特定し,アクションの始\n動を無効にするという構成が採用されている。したがって,引用発明を,相違点に\n係る本願補正発明の構成に至らしめるためには,少なくとも,まず,自車線上の存\n在物であるか否かという条件の充足性判断を行い,続いて,特定のACC制御やP CS制御を開始するために自車両の速度等の条件判断を行うという引用発明の条件 判断の順序を入れ替える必要がある。 しかし,引用発明では,S1及びS2において,自車線上の存在物であるか否か という条件の充足性が判断される。この条件は,ACC制御,PCS制御の対象と なる前方存在物を特定するためのものである(引用例【0091】)。そして,引 用発明は,これにより,多数の特定存在物の中から,自車線上にある存在物を特定 し,ACC制御,PCS制御の対象となる存在物を絞り込み,ACC制御,PCS 制御のための処理負担を軽減することができる。一方,ACC制御,PCS制御の 対象となる存在物を絞り込まずに,ACC制御,PCS制御のための処理を行うと, その処理負担が大きくなる。このように,引用発明において,自車線上の存在物で あるか否かという条件の充足性判断を,ACC制御,PCS制御のための処理の前 に行うか,後に行うかによって,その技術的意義に変動が生じる。 したがって,複数の条件が成立したときに特定のアクションを始動する装置にお いて,複数の条件の成立判断の順序を入れ替えることが通常行い得る設計変更であ ったとしても,引用発明において,まず,特定のACC制御やPCS制御を開始す るために自車両の速度等の条件判断を行い,続いて,自車線上の存在物であるか否 かという条件の充足性判断を行うという構成を採用することはできない。\nよって,引用発明における条件判断の順序を入れ替えることが,単なる設計変更 であるということはできないから,相違点に係る本願補正発明の構成は,容易に想\n到することができるものではない。
(ウ) 本件周知技術の適用
a 引用発明における条件判断の順序を入れ替えることが単なる設計変更であっ たとしても,条件判断の順序を入れ替えた引用発明は,まず,自車両の速度等の条 件判断がされ,続いて,自車線上の存在物であるか否かという条件の充足性が判断 され,その後,特定のACC制御やPCS制御が開始され,又は開始されないもの になる。そして,これに本件周知技術を適用できたとしても,本件周知技術を適用 した引用発明は,まず,自車両の速度等の条件判断がされ,続いて,自車線上の存 在物であるか否かという条件の充足性が判断され,その後,特定のACC制御やP CS制御が開始され,又は開始されないものになり,加えて,特定の条件を満たし た場合には,当該ACC制御やPCS制御の始動が無効になるにとどまる。 ここで,本件周知技術を適用した引用発明は,特定の条件を満たした場合に,P CS制御等の始動を無効にするものである。そして,本件周知技術を適用した引用 発明においては,PCS制御等の開始に当たり,既に,自車線上の存在物であるか 否かという条件の充足性が判断されているから,自車線上の存在物であるか否かと いう条件を,再度,PCS制御等の始動を無効にするに当たり判断される条件とす ることはない。 これに対し,相違点に係る本願補正発明の構成は,「横方向オフセット値に基づ\nいて」,すなわち,自車線上の存在物であるか否かという条件の充足性判断に基づ いて,少なくとも1のアクションの始動を無効にするものである。 したがって,引用発明に本件周知技術を適用しても,相違点に係る本願補正発明 の構成には至らないというべきである。
b なお,本件周知技術を適用した引用発明は,自車両の速度等の条件判断と, それに続く,自車線上の存在物であるか否かという条件の充足性判断をもって,P CS制御等を開始するものである。PCS制御等の開始を,自車線上の存在物であ るか否かという条件の充足性判断よりも前に行うことについて,引用例には記載も 示唆もされておらず,このことが周知慣用技術であることを示す証拠もない。 したがって,引用発明に本件周知技術を適用しても,その発明は相違点に係る本 願補正発明の構成には至らないところ,さらに,PCS制御等の開始を,自車線上\nの存在物であるか否かという条件の充足性判断よりも前に行うことにより,当該発 明を,相違点に係る本願補正発明の構成に至らしめることができるものではない。
c そもそも,本願補正発明では,ターゲット物体との相対移動の検知に応答し てアクションを始動するように構成された後に,自車線上にある存在物を特定し,\nアクションの始動を無効にするという構成が採用されている。本願補正発明は,タ\nーゲット物体との相対移動の検知に応答してアクションを始動するという既存の構\n成に,当該構成を変更することなく,単に,自車線上の存在物であるか否かという\n条件の充足性判断を付加することによって,アクションの始動を無効にするという ものであり,引用発明とは技術的思想を異にするものである。
(エ) 以上のとおり,引用発明における条件判断の順序を入れ替えることが単な る設計変更ということはできず,また,引用発明に本件周知技術を適用しても,相 違点に係る本願補正発明の構成には至らないというべきであるから,相違点に係る\n本願補正発明の構成は,引用発明に基づき,容易に想到できたものとはいえない。\n

◆判決本文

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平成29(行ケ)10097  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所

 ゲームプログラムについて、進歩性ありとした審決が維持されました。
 前記1(1)の認定事実によれば,本件発明は,ユーザがシリーズ化された一連のゲ ームソフトを買い揃えるだけで,標準のゲーム内容に加え,拡張されたゲーム内容\nを楽しむことを可能とすることによって,シリーズ化された後作のゲームの購入を\n促すという技術思想を有するものと認められる。 これに対し,前記1(2)の認定事実によれば,公知発明は,前作と後作との間でス トーリーに連続性を持たせた上,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラ クタでプレイをしたり,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイ を有利にすることによって,前作のゲームをプレイしたユーザに対し,続編である 後作のゲームもプレイしたいという欲求を喚起することにより,後作のゲームの購 入を促すという技術思想を有するものと認められる。 そうすると,公知発明は,少なくとも,前作において実際にプレイしたキャラク タをセーブするとともに,前作のゲームにおいてキャラクタのレベルが16以上と なるまでプレイしたという実績(以下「プレイ実績」という。)をセーブすることが, その技術思想を実現するための必須条件となる。そのため,前作において実際にプ レイしたキャラクタ及びプレイ実績に係る情報をセーブできない記憶媒体を採用し た場合には,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラクタでプレイをした り,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイを有利にすることが できなくなる。このことは,前作のゲームをプレイしたユーザに対し,続編のゲー ムをプレイしたいという欲求を喚起することにより,後作のゲームの購入を促すと いう公知発明の技術思想に反することになる。 したがって,当業者は,公知発明1のディスクについて,前作において実際にプ レイしたゲームのキャラクタ及びプレイ実績をセーブできない記憶媒体,すなわち, 「記憶媒体(ただし,セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)」に変更しよう\nとする動機付けはなく,かえって,このような記憶媒体を採用することには,公知 発明の技術思想に照らし,阻害要因があるというべきである。 仮に,先行技術発明A等(甲20の1及び2,甲21の1及びの2,甲91,甲 92のゲーム等を含む。以下同じ。)のように,2本のゲームのROMカセットを所 有し,ゲーム機のスロットに挿入するのみで拡張されたゲーム内容を楽しめるゲー ムが周知技術であったとしても,これを公知発明1に対して適用するに当たり,公 知発明1のディスクを,ゲームのプレイ実績をセーブできない記憶媒体,すなわち, 「記憶媒体(ただし,セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)」に変更すると,\n上記のとおり,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラクタでプレイをし たり,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイを有利にすること ができなくなるから,前作のゲームをプレイしたユーザに対し,後作のゲームの購 入を促すという公知発明の技術思想に反することになる。 また,仮に,ゲームに登場するキャラクタをゲームプログラムにプリセットして おき,プレイヤーがキャラクタを適宜選択できるようにすることが,本件特許の出 願当時において,技術常識であったとしても,公知発明1の「キャラクタのレベル が16以上である」というゲームのプレイ実績を,プリセットされたキャラクタに 係る情報に変えると,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラクタでプレ イをしたり,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイを有利にす ることができなくなるから,上記と同様に,公知発明の技術思想に反することにな る。 以上によれば,公知発明1において,所定のゲーム装置の作動中に入れ換え可能\nな記憶媒体,一の記憶媒体及び二の記憶媒体を,ディスクから「記憶媒体(ただし, セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)」に変更して相違点1ないし3に係る\n構成とすることは,当業者が容易になし得たことであるとはいえないとした審決の\n判断に誤りはなく,取消事由1は,理由がない。
(3) 原告の主張について
原告は,公知発明1の技術思想について,魔洞戦紀DDI(前作ゲーム)に記憶 された切換キーがゲーム装置で読み込まれている場合に,勇士の紋章DDII(後作 ゲーム)で,標準ゲームプログラムに加えて,拡張ゲームプログラムでもゲーム装 置を作動させるものであり,これによりゲーム内容を豊富化してユーザに前作の購 入を促すというものであるから,本件発明の技術思想と同じであると主張する。そ して,原告は,上記主張を前提とした上で,上記切換キーには,「魔洞戦紀DDIが 装填された」という条件1に係る情報と「キャラクタのレベルが16以上である」 という条件2に係る情報とが含まれているところ,公知発明1の技術思想である「ユ ーザに前作の購入を促す」ことは,切換キーのうち「魔洞戦紀DDI」が装填され たという条件1に係る情報のみで達成できるのであるから,当業者であれば,その 目的を達成するために,「キャラクタのレベルが16以上である」という条件2に係 る情報を切換キーから除くなどして,記憶媒体についてもセーブデータが記憶可能\nな記憶媒体としないことは容易であり,かえって,このような場合には,よりユー ザの負担なく拡張ゲームプログラムが楽しめるようになるのであるから,前作の購 入を促すことが可能であるともいえ,公知発明1の切換キーに「キャラクタのレベ\nルが16以上である」という条件2に係る情報であるセーブデータを含ませるか否 かは,当業者が適宜選択できる設計事項であると主張する。 しかしながら,上記(2)のとおり,公知発明は,前作と後作との間でストーリーに 連続性を持たせた上,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラクタでプレ イをしたり,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイを有利にす ることによって,前作のゲームをプレイしたユーザに対し,続編である後作のゲー ムもプレイしたいという欲求を喚起することにより,後作のゲームの購入を促すと いう技術思想を有するものと認められる。 そうすると,公知発明は,少なくとも,前作のキャラクタをセーブするとともに, キャラクタのプレイ実績をセーブすることが,その技術思想を実現するための必須 条件となるから,キャラクタ及びプレイ実績に係る情報をセーブできない記憶媒体 を採用した場合には,公知発明の技術思想に反することになる。 したがって,「キャラクタのレベルが16以上である」という条件2に係る情報を 切換キーから除くなどして,記憶媒体についてセーブデータが記憶可能な記憶媒体\nとしないことは,公知発明を都合よく分割してその必須条件を省略しようとするも のであるから,上記のとおり,公知発明の技術思想に反することは明らかである。 以上によれば,原告の主張は,その余の点を含め,公知発明の技術思想を正解し ないものに帰し,採用することができない。

◆判決本文

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平成29(行ケ)10062  取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月26日  知的財産高等裁判所(4部)

 異議理由ありとした審決が取り消されました。進歩性なしとの審決について、動機付けがないとの理由です。異議申立が認められる割合が低いのですが、それが取り消される事件は、さらに低いですね。
 引用発明Aでは,第1のワイヤが接続されるpn接合ダイオードの一の電 極及びショットキーバリアダイオードの一方の電極は,いずれもカソード電極とな\nる。 そして,引用例には,IGBT4とダイオード5との組合せを,SiCMOSF ETとショットキーバリアダイオードとの組合せに置き換える場合,置換えの前後 で動作を異ならせる旨の記載や示唆はない。 また,引用発明Aは,「トランスファーモールド樹脂で封止した電力用半導体装 置には,主端子に大電流を流すことができるブスバーの外部配線が,ねじ止めやは んだ付けで固定されるため,電力用半導体装置の組み立て時において,主端子部に おおきな応力が働き,この応力により,主端子の外側面とトランスファーモールド 樹脂との接着面に隙間が発生したり,トランスファーモールド樹脂本体に微細なク ラックが発生する等の不具合を主端子部に生じ,電力用半導体装置の歩留まりが低 くなり生産性が低下するとともに,信頼性も低下する」ことを課題とし,「トラン スファーモールド樹脂により封止された電力用半導体装置であって,主回路に接続 される主端子に大電流を流すことのできる外部配線を接続しても,外部配線の接続 により主端子部に発生する不良を低減でき,歩留まりが高く生産性に優れるととも に,信頼性の高い電力用半導体装置を提供すること」を目的とする発明であって(【0 007】,【0008】),この目的を達成することと,SiCMOSFETの型 や並列接続するショットキーバリアダイオードの接続方向を変更することは,無関 係である。 したがって,当業者が,引用発明Aにおいて,上記目的を達成するために,「前 記PN接合ダイオードの一の電極」及び「前記ショットキーバリアダイオードの一 方の電極」をカソード電極からアノード電極に変更する動機付けがあるとはいえな\nいから,相違点1’に係る本件発明1の構成を当事者が容易に想到できたものであ\nるとは認められない。
(イ) さらに,本件発明は,MOSFETに寄生しているpn接合ダイオードに 電流が流れると,MOSFETの結晶欠陥が拡大してデバイス特性が劣化し,特に, SiCMOSFETでは,寄生pn接合ダイオードに電流が流れると,オン抵抗が 増大するという課題があったが,ショットキーバリアダイオードを並列接続しても pn接合ダイオードに電流が流れてしまう現象が生じていることから(【0002】 〜【0004】,【0006】),本件発明1の構成を採用し,第2のワイヤに寄\n生するインダクタンスによって,pn接合ダイオードの順方向立ち上がり電圧以上 の逆起電力が発生しても,pn接合ダイオードに電流が流れないようにする(【0 014】)との作用効果を奏するものである。 しかし,引用発明Aの課題及び目的は,前記(ア)のとおりであり,引用例には, ダイオード5やワイヤーボンド7にインダクタンスが寄生することについての記載 や示唆はないことから,引用例に接した当業者が,引用発明Aに本件発明の作用効 果が期待されることを予想できたとはいえない。\n

◆判決本文

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平成28(行ケ)10220  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年7月4日  知的財産高等裁判所(4部)

 CS関連発明について、認定については誤っていないとしたものの、 引用例には、本願発明の具体的な課題の示唆がなく、相違点5について、容易に想到するものではないとして、進歩性無しとした審決が取り消されました。  確かに,引用例には,発明の目的は,複数の事業者と,税理士や社会保険労務士 のような専門知識を持った複数の専門家が,給与計算やその他の処理を円滑に行う ことができるようにするものであり(【0005】),同発明の給与計算システム及び 給与計算サーバ装置によれば,複数の事業者と,税理士や社会保険労務士のような 専門知識を持った複数の専門家を,情報ネットワークを通じて相互に接続すること によって,給与計算やその他の処理を円滑に行うことができること(【0011】), 発明の実施の形態として,複数の事業者端末と,複数の専門家端末と,給与データ ベースを有するサーバ装置とが情報ネットワークを通じて接続された給与システム であり,専門家端末で給与計算サーバ装置にアクセスし,給与計算を行うための固 定項目や変動項目のデータを登録するマスター登録を行い(【0018】〜【002 1】),マスター登録された情報とタイムレコーダ5から取得した勤怠データとに基 づき,給与計算サーバ装置で給与計算を行い,給与担当者が,事業者端末で給与明 細書を確認した上で,給与振り込みデータを金融機関サーバに送信する(【0022】 〜【0025】,【0041】〜【0043】,図7のS11〜S20)ほか,専門家 が専門家端末を介して給与データベースを閲覧し(【0031】〜【0033】),社 会保険手続や年末調整の処理を行うことができる(【0026】〜【0030】,【0 044】,【0045】,図7のS21〜S28)とする構成が記載されていることが\n認められる。 しかし,引用文献が公開公報等の特許文献である場合,当該文献から認定される 発明は,特許請求の範囲に記載された発明に限られるものではなく,発明の詳細な 説明に記載された技術的内容全体が引用の対象となり得るものである。よって,引 用文献の「発明が解決しようとする課題」や「課題を解決するための手段」の欄に 記載された事項と一致しない発明を引用発明として認定したとしても,直ちに違法 とはいえない。 そして,引用例において,社労士端末や税理士端末に係る事項を含まない,給与 計算に係る発明が記載されていることについては,上記(2)のとおりであるから,こ の発明を引用発明として認定することが誤りとはいえない。 ・・・・ ウ 以上のとおり,周知例2,甲7,乙9及び乙10には,「従業員の給与支払 機能を提供するアプリケーションサーバを有するシステムにおいて,企業の給与締\nめ日や給与支給日等を含む企業情報及び従業員情報を入力可能な利用企業端末のほ\nかに,1)従業員の取引金融機関,口座,メールアドレス及び支給日前希望日払いの 要求情報(周知例2),2)従業員の勤怠データ(甲7),3)従業員の出勤時間及び退 勤時間の情報(乙9)及び4)従業員の勤怠情報(例えば,出社の時間,退社の時間, 有給休暇等)(乙10)の入力及び変更が可能な従業者の携帯端末機を備えること」\nが開示されていることは認められるが,これらを上位概念化した「上記利用企業端 末のほかに,およそ従業員に関連する情報(従業員情報)全般の入力及び変更が可 能な従業者の携帯端末機を備えること」や,「上記利用企業端末のほかに,従業員\n入力情報(扶養者情報)の入力及び変更が可能な従業者の携帯端末機を備えること」\nが開示されているものではなく,それを示唆するものもない。 したがって,周知例2,甲7,乙9及び乙10から,本件審決が認定した周知技 術を認めることはできない。また,かかる周知技術の存在を前提として,本件審決 が認定判断するように,「従業員にどの従業員情報を従業員端末を用いて入力させ るかは,当業者が適宜選択すべき設計的事項である」とも認められない。 (3)動機付けについて 本願発明は,従業員を雇用する企業では,総務部,経理部等において給与計算ソ\nフトを用いて給与計算事務を行っていることが多いところ,市販の給与計算ソフト\nには,各種設定が複雑である,作業工程が多いなど,汎用ソフトに起因する欠点も\nあることから,中小企業等では給与計算事務を経営者が行わざるを得ないケースも 多々あり,大きな負担となっていることに鑑み,中小企業等に対し,給与計算事務 を大幅に簡便にするための給与計算方法及び給与計算プログラムを提供することを 目的とするものである(本願明細書【0002】〜【0006】)。 そして,本願発明において,各従業員が入力を行うためのウェブページを各従業 員の従業員端末のウェブブラウザ上に表示させて,同端末から扶養者情報等の給与\n計算を変動させる従業員情報を入力させることにしたのは,扶養者数等の従業員固 有の情報(扶養者数のほか,生年月日,入社日,勤怠情報)に基づき変動する給与 計算を自動化し,給与計算担当者を煩雑な作業から解放するためである(同【00 35】)。 一方,引用例には,発明の目的,効果及び実施の形態について,前記2(1)のとお り記載されており,引用例に記載された発明は,複数の事業者端末と,複数の専門 家端末と,給与データベースを有するサーバ装置とが情報ネットワークを通じて接 続された給与システムとし,専門家端末で給与計算サーバ装置にアクセスし,給与 計算を行うための固定項目や変動項目のデータを登録するマスター登録を行うこと などにより,複数の事業者と,税理士や社会保険労務士のような専門知識を持った 複数の専門家が,給与計算やその他の処理を円滑に行うことができるようにしたも のである。 したがって,引用例に接した当業者は,本願発明の具体的な課題を示唆されるこ とはなく,専門家端末から従業員の扶養者情報を入力する構成に代えて,各従業員\nの従業員端末から当該従業員の扶養者情報を入力する構成とすることにより,相違\n点5に係る本願発明の構成を想到するものとは認め難い。\nなお,引用発明においては,事業者端末にタイムレコーダが接続されて従業員の 勤怠データの収集が行われ,このデータが給与計算サーバ装置に送信されて給与計 算が行われるという構成を有するから,給与担当者における給与計算の負担を削減\nし,これを円滑に行うということが,被告の主張するように自明の課題であったと しても,その課題を解決するために,上記構成に代えて,勤怠データを従業員端末\nのウェブブラウザ上に表示させて入力させる構\成とすることにより,相違点5に係 る本願発明の構成を採用する動機付けもない。\n

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平成28(行ケ)10168  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年6月12日  知的財産高等裁判所(3部)

 進歩性なしとした審決が取り消されました。なお、相違点3については認定は誤りであるが、他の争点で審決の判断は取り消されるべきものとして、取消理由にはならないと判断されています。
 以上のとおり,本件審決には,本件特許発明1と甲1発明の相違点3の一 内容として相違点3−1を認定した点に誤りがあるものといえる。 しかしながら,後記4で述べるとおり,本件審決認定の相違点3のうち, 相違点3-1以外の部分に係る本件特許発明1の構成についての容易想到性\nは否定されるべきであり,そうすると,本件審決の相違点3−1に係る認定 の誤りは,本件特許発明1の進歩性欠如を否定した本件審決の結論に影響を 及ぼすものではない。
・・・・
原告は,相違点3に係る本件特許発明1の構成のうち,「第1(あるいは\n第2)の係止片が枠体の後端より後ろ向きに突設し枠体の上辺(あるいは 下辺)よりも内側に設けられ」るとの構成についての容易想到性を否定し\nた本件審決の判断は誤りである旨主張する。しかるところ,上記構成のう\nち,「係止片が枠体の後端より後ろ向きに突設」する構成が本件特許発明1\nと甲1発明の相違点といえないことは,上記3(2)で述べたとおりであるか ら,以下では,上記構成のうち,「第1(あるいは第2)の係止片が枠体の\n上辺(あるいは下辺)よりも内側に設けられ」るとの構成(以下「相違点\n3−2に係る構成」という。)についての容易想到性を否定した本件審決の\n判断の適否について検討することとする。 ア 原告は,部材を取り付けるための係止片を当該部材の最外周面よりも 少し内側に設ける構成は,甲1(図39(a)及び図49),16,17及 び63に記載され,審判検甲1及び2が現に有するとおり,スロットマ シンの技術分野において周知な構成であるとした上で,甲1発明に上記\n周知な構成を適用し,相違点3−2に係る構\成とすることは,当業者が 容易に想到し得たことである旨主張するので,以下検討する。 (ア) 甲1の図39(a)及び図49について
甲1の図39(a)(別紙2参照)は,スロットマシンの飾り枠本体に 取り付けられる第4ランプカバーの斜視図であるところ,同図に示さ れた第4ランプカバー423は,側方形状L字状に形成され,その一 辺の両サイドから後方に係止爪424が突設されている(甲1の段落 【0158】)。また,甲1の図49(別紙2参照)は,スロットマシ ンのメダル受皿の分解斜視図であるところ,同図に示されたメダル受 皿12の両サイドには,係止爪620が後方に向かって突設されてい る(甲1の段落【0205】)。 しかしながら,上記係止爪424と第4ランプカバー423の最外周 面との位置関係及び上記係止爪620とメダル受皿12の最外周面との 位置関係については,甲1には記載されておらず,何らの示唆もされて いない。 この点,原告は,これらの図面において,係止片に相当する部分とそ の取付け端の境界に実線が記載されていることから,当業者は,係止片 が部材の最外周面よりも少し内側に設けられていると理解する旨主張す る。しかし,甲1の上記図面は,特許出願の願書に添付された図面であ り,明細書を補完し,特許を受けようとする発明に係る技術内容を当業 者に理解させるための説明図であるから,当該発明の技術内容を理解す るために必要な程度の正確さを備えていれば足り,設計図面に要求され るような正確性をもって描かれているとは限らない。そして,甲1は, 遊技部品を収容する収容箱と収容箱に固定される連結部材を介して収容 箱の前面に開閉自在に設けられる前面扉とから構成されるスロットマシ\nンについての発明を開示するものであり(段落【0001】),特に,連 結部材を前面扉に取り付ける取付部に載置部及び被載置部を形成するこ とによって前面扉を連結部材に組付ける際の作業性を向上させたスロッ トマシンに係る発明を開示するものであるから(段落【0002】〜 【0008】),甲1の図面において,上記取付部に関係しない部材であ る第4ランプカバー423の係止爪424やメダル受皿12の係止爪6 20の詳細な構造についてまで正確に図示されているものと断ずること\nはできない。してみると,甲1の明細書中に何らの記載がないにもかか わらず,上記図面中の実線の記載のみから,係止片が部材の最外周面よ りも少し内側に設けられている構成の存在を読み取ることはできないと\nいうべきであり,原告の上記主張は採用できない。 したがって,甲1の図39(a)及び図49には,そもそも,部材を取 り付けるための係止片を当該部材の最外周面よりも少し内側に設ける構\n成が記載されているとはいえない。
・・・
以上によれば,原告が,「部材を取り付けるための係止片を当該部材 の最外周面よりも少し内側に設ける構成」が記載されているものとして\n挙げる文献のうち,甲1及び63については,そもそもそのような構成\nが記載されているとはいえない(なお,仮に,原告主張のとおり,甲1 及び63に上記構成が記載されていることを認めたとしても,これらの\n文献には,甲16及び17と同様に当該構成が採用される理由について\nの記載や示唆はないから,後記の結論に変わりはない。)。 他方,甲16及び17には,上記構成が記載され,また,審判検甲1\n及び2のパチスロ機も上記構成を有することが認められる。しかしなが\nら,これらの文献の記載や本件審判における審判検甲1及び2の検証の 結果によっても,これらの装置等において上記構成が採用されている理\n由は明らかではなく,結局のところ,当該構成の目的,これを採用する\nことで解決される技術的課題及びこれが奏する作用効果など,当該構成\nに係る技術的意義は不明であるというほかはない。 してみると,甲16及び17の記載や審判検甲1及び2の存在から, 上記構成がスロットマシンの分野において周知な構\成であるとはいえる としても,その技術的意義が不明である以上,当業者がこのような構成\nをあえて甲1発明に設けようと試みる理由はないのであって,甲1発明 に当該周知な構成を適用すべき動機付けの存在を認めることはできない。\nしたがって,甲1発明に上記周知な構成を適用し,相違点3−2に係\nる構成とすることは,当業者が容易に想到し得たこととはいえない。\n

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平成28(行ケ)10151 特許権 行政訴訟 平成29年5月31日  知的財産高等裁判所(3部)

 審決は、進歩性無しを理由として訂正を認めませんでした。知財高裁はこれを取り消しれました。理由は、刊行物1に刊行物2を適用した場合に、あえて、当該構成の技術的意義との関係で凹部を残す理由がないというものです。\n
 本件審決は,刊行物1発明と刊行物2発明が多接点端子を有する電気コネ クタとしての構造を共通にすることから,刊行物1発明に刊行物2発明を適\n用する動機付けがあることを認めた上で,刊行物1発明の側方突出部26, 28に刊行物2発明を適用して,「第一接触部及び第二接触部それぞれの斜 縁の直線部分との接触を通じて相手端子に嵌合側から順次弾性接触するよう になっており,第一弾性腕の第一接触部は,該第一弾性腕の嵌合側端部から 嵌合側と反対側へ延びて相手端子との接触側に向かう斜縁を有し且つ該斜縁 よりも嵌合側と反対側に位置する下縁に凹部が形成され」るようにすること は当業者が容易になし得たことである旨判断し,この判断を前提として,刊 行物1発明と刊行物2発明,周知の技術事項(電気コネクタの技術分野にお いて有効嵌合長を長くすること)及び周知技術(相手コネクタと接触する接 点から接触部の突出基部に向けた直線と,斜縁を通る直線とでなす角度を鋭 角とすること)に基づいて相違点2に係る本件訂正発明の構成とすることは,\n当業者が容易に想到し得たことである旨判断する。 しかしながら,以下に述べるとおり,刊行物1発明に刊行物2記載のコネ クタの弾性舌部に係る構成を適用したとしても,第一弾性腕の第一接触部の\n斜縁よりも嵌合側と反対側に位置する下縁に凹部が形成される構成とするこ\nとを当業者が容易に想到し得たものということはできない。 すなわち,まず,刊行物2記載のコネクタの第一弾性舌部と第二弾性舌部 にそれぞれ形成された突状の第一接触部と第二接触部は,「それぞれの斜縁 の直線部分との接触を通じてプリント回路基板23の電気コンタクトに嵌合 側から順次弾性接触するようになっており,第一弾性舌部と第二弾性舌部 は,プリント回路基板23の電気コンタクトとの接触位置を通り嵌合方向に 延びる接触線に対して一方の側に位置しており,第一弾性舌部の第一接触部 は,該第一弾性舌部の嵌合側端部から嵌合側と反対側へ延びてプリント回路 基板23の電気コンタクトとの接触側に向かう斜縁を有し且つ該斜縁よりも 嵌合側と反対側に位置する下縁を有して」いるものの,当該下縁には「凹 部」が形成されていないから(図9及び18参照),刊行物1発明の側方突 出部26の構成を,刊行物2記載のコネクタの第一接触部に係る構\成に単に 置き換えたとしても,その下縁に「凹部」が形成される構成とならないこと\nは明らかである。
 そこで,刊行物1発明の側方突出部26に刊行物2記載のコネクタの第一 接触部に係る構成を適用することによりその下縁に「凹部」を形成する構\成 とするためには,刊行物1発明の側方突出部26の構成のうち,「下縁に凹\n部が形成され」た構成のみを残した上で,それ以外の構\成を刊行物2記載の コネクタの第一接触部に係る構成と置き換えることが必要となる(本件審決\nも,このような置換えを前提として,その容易性を認めたものと理解され る。)。しかしながら,刊行物1発明の側方突出部26に刊行物2記載のコ ネクタの第一接触部に係る構成を適用するに際し,上記側方突出部26が備\nえる一体的構成の一部である下縁の「凹部」の構\成のみを分離し,これを残 すこととすべき合理的な理由は認められない。そもそも,刊行物1発明の側 方突出部26の下縁に凹部が形成されている理由については,刊行物1に何 ら記載されておらず,技術常識等に照らして明らかなことともいえないか ら,当該構成の技術的意義との関係でこれを残すべき理由があると認められ\nるものではない。したがって,当業者が,刊行物1発明の側方突出部26に 刊行物2記載のコネクタの第一接触部に係る構成を適用するに当たり,刊行\n物1発明の側方突出部26における下縁の「凹部」の構成のみをあえて残そ\nうとすることは,考え難いことというほかない。 してみると,刊行物1発明に刊行物2記載のコネクタの第一接触部に係る 構成を適用したとしても,相違点2に係る本件訂正発明の構\成のうち,第一 接触部の斜縁よりも嵌合側と反対側に位置する下縁に凹部が形成される構成\nとすることを当業者が容易に想到し得たとはいえないから,相違点2に係る 本件審決の上記判断は誤りである。 なお,被告は,刊行物1発明に刊行物2発明を適用すべき動機付けが存在 することについて前記第4の2のとおり主張するが,上記で述べたとおり, 当該動機付けの存在を前提に,刊行物1発明に刊行物2記載のコネクタの第 一接触部に係る構成を適用したとしても,相違点2に係る本件訂正発明の構\ 成とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえないのであるから,被告 の主張は,上記判断を左右するものではない。

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◆関連事件です。平成28(行ケ)10150

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平成28(行ケ)10106  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年4月25日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が維持されました。動機付けあり、阻害要因もなしとの判断です。
   以上のとおり,引用発明1も,引用発明2も,蒸発(揮発)したニコチンを,肺 へ送給するに当たり,好ましい送給量を実現できるよう調整するという同一の目的 を有するものであり,また,タバコ代替品として用いられる装置に関するものであ って同一の用途を有するものである。そして,引用発明1と引用発明2とは,ニコ チン源の相違という点をもって作用が異なると評価することもできない。 よって,引用発明1に引用発明2を適用する動機付けはあるというべきである。
キ 阻害事由
原告は,引用発明1の目的は,タバコ(天然物ニコチン源)の使用をやめさせる ことであるとして,引用発明1のニコチン源を,天然物ニコチン源とすることには 阻害事由がある旨主張する。しかし,前記エのとおり,引用発明1に係る装置は, タバコをベースとした製品の代わりになるものであって,タバコ代替品としても用 いられるものであるから,引用発明1の目的を,タバコの使用をやめさせることの みにあるということはできない。原告の阻害事由の主張は,その前提において誤り である。

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平成28(行ケ)10207  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年3月28日  知的財産高等裁判所(4部)

 明確性違反および進歩性無しについて、拒絶審決が維持されました。出願人は株式会社ドクター中松創研です。
【0009】には,前記(3)のとおり,本願発明が,耳より後ろのバッテ リー11の重さや電子回路12の重さW1と,前方のディスプレイ16やカメラ1 8の重量W2とを,「つる」の13を支点として,バランス(釣合い)をとるよう にし,天秤の原理でディスプレイ16やカメラ18が,装着者の顔が動いても水平 になるものであることが記載されているところ,このような,天秤の原理による支 点より前方側と後方側のモーメントのバランス(釣合い)は,一般に「スタティッ クバランス(静的な釣合い)」といわれるものであり,「スタティックバランス」 をとることが,必ずしも「ダイナミックバランス」(運動状態にある物体について, その運動状態によって発生している力をも考慮した釣合い)をもとることにはなら ないことは,技術常識に照らして明らかである。それにもかかわらず,本願明細書 には,【0009】を含め,耳より後ろのバッテリー11の重さや電子回路12の 重さW1と,前方のディスプレイ16やカメラ18の重量W2とを,「つる」の1 3を支点として,バランス(釣合い)をとるようにすることや天秤の原理と,「ダ イナミックバランス」(動的釣合い)がとれることとの関係については,何らの記 載もない。 したがって,本願明細書の記載によっても,耳より後ろの錘W1を「ダイナミッ クバランサー」とすることや本願発明が「ダイナミックバランスドスマホ,PC」 であることの技術的意義を明確に理解することはできず,第三者の利益が不当に害 されるといわざるを得ない。
・・・
原告は,引用発明は,メガネのモーメントWLを,耳の後方に固定するしゃ もじ状部4で吸収するものであるが,引用発明において,引用例2に記載された技 術事項を適用し,PC機能や通話機能\を付加すると,アイウェア側の重さWが重く なるので,モーメントWLは大きくなり,しゃもじ状部4はこのモーメントWLに 耐えることが必要となって,しゃもじ状部4を支える耳の負担を増やしてしまうと いう不具合が生じるから,引用発明において,引用例2に記載された技術事項を適 用し,相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは容易に想到できたこ\nとではない旨主張する。 しかし,引用例1には,レンズ1に液晶層を設けたときにその電源となる電池を しゃもじ状部4に埋め込んでもよいことが記載されているから,引用発明において, 引用例1の上記記載に従い,液晶層に情報を表示するために,アイウェア(メガ\nネ)という同一の分野に係る技術である引用例2に記載された技術事項を適用する ことには動機付けがある。 なお,本願発明は,耳の位置を支点として,その後方のバッテリー11や電子回 路12の重さW1と,その前方のディスプレイ16やカメラ18の重さW2とのバ ランスをとるものであるとの原告の主張によれば,本願発明も,引用発明のメガネ も,支点である耳より後の錘をW1として天秤機能をさせ,前方の重さをW2とし\nて顔が止まっても動いてもW1とW2のバランスをとり,鼻などの顔部に荷重がか からないものである点で共通するから,支点である耳に「耳かけダイナミックバラ ンスドスマホ,PC」,又は引用例2に記載された技術事項を適用したアイウェア 11の全荷重がかかるという点で異ならない。よって,この点においても,しゃも じ状部4を支える耳の負担が増えることを問題にする原告の上記主張は,失当であ る。
イ 原告は,引用例2に記載されているのは,単なるディスプレイメガネであっ て,本願発明のようにカウンタウェイトとしてのバッテリーを備えておらず,耳を 支点としてその前後のバランスをとるというような発明ではなく,本願発明とは関 係がないから,引用発明において,引用例2に記載された技術事項を適用し,相違 点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは容易に想到できたことではない\n旨主張する。 しかし,前記アと同様に,引用例1には,レンズ1に液晶層を設けたときにその 電源となる電池をしゃもじ状部4に埋め込んでもよいことが記載されているから, 引用発明において,引用例1の上記記載に従い,液晶層に情報を表示するために,\nアイウェア(メガネ)という同一の分野に係る技術である引用例2に記載された技 術事項を適用することには動機付けがある。

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平成28(行ケ)10186  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年3月21日  知的財産高等裁判所(4部)

 特許庁は進歩性無しと認定しましたが、知財高裁は、容易ではないと判断しました。
 引用発明1は,前記2のとおり,低温側変色点以下の低温域における発色状態又 は高温側変色点以上の高温域における消色状態を特定温度域で記憶保持できる色彩 記憶保持型の可逆熱変色性微小カプセル顔料を水性媒体中に分散させた可逆熱変色 性インキ組成物を充填したペン等の筆記具であり,同筆記具自体によって熱変色像 の筆跡を紙など適宜の対象に形成することができる(引用例1【0004】〜【0 006】【0012】【図4】)。 これに対し,引用発明2は,筆記具と上面に熱変色層が形成された支持体等から 成る筆記材セットであり,前記ウのとおり,同様の色彩記憶保持型の可逆熱変色性 微小カプセル顔料を,バインダーを含む媒体中に分散してインキ等の色材として適 用し,紙やプラスチック等から成る支持体上面に熱変色層を形成させた上で,氷片 や冷水等を充填して低温側変色点以下の温度にした冷熱ペンで上記熱変色層上に筆 記することによって熱変色像の筆跡を形成するものである(引用例2【0005】 【0010】〜【0012】【0014】【0016】〜【0020】【図1】)。 引用発明2は,筆記具である冷熱ペンが,氷片や冷水等を充填して低温側変色点以 下の温度にした特殊なものであり,インキや芯で筆跡を形成する通常の筆記具とは 異なり,冷熱ペンのみでは熱変色像の筆跡を形成することができず,セットとされ る支持体上面の熱変色層上を筆記することによって熱変色像の筆跡を形成するもの である。 このように,引用発明1と引用発明2は,いずれも色彩記憶保持型の可逆熱変色 性微小カプセル顔料を使用してはいるが,1)引用発明1は,可逆熱変色性インキ組 成物を充填したペン等の筆記具であり,それ自体によって熱変色像の筆跡を紙など 適宜の対象に形成できるのに対し,2)引用発明2は,筆記具と熱変色層が形成され た支持体等から成る筆記材セットであり,筆記具である冷熱ペンが,氷片や冷水等 を充填して低温側変色点以下の温度にした特殊なもので,インキや顔料を含んでお らず,通常の筆記具とは異なり,冷熱ペンのみでは熱変色像の筆跡を形成すること ができず,セットとされる支持体上面の熱変色層上を筆記することによって熱変色 像の筆跡を形成するものであるから,筆跡を形成する対象も支持体上面の熱変色層 に限られ,両発明は,その構成及び筆跡の形成に関する機能\において大きく異なる ものといえる。したがって,当業者において引用発明1に引用発明2を組み合わせ ることを発想するとはおよそ考え難い。
オ 相違点5に係る本件発明1の構成の容易想到性について
(ア) 前記エのとおり,当業者が引用発明1にこれと構成及び筆跡の形成に関す\nる機能において大きく異なる引用発明2を組み合わせることを容易に想到し得たと\nは考え難く,よって,相違点5に係る本件発明1の構成を容易に想到し得たとはい\nえない。
(イ) 仮に,当業者が引用発明1に引用発明2を組み合わせたとしても,前記ウ のとおり,引用例2には,熱変色像を形成する熱変色体2及び冷熱ペン8とは別体 のものとしての摩擦具9のみが開示されていることから,引用発明2の摩擦具9は, 筆記具とは別体のものである。よって,当業者において両者を組み合わせても,引 用発明1の筆記具と,これとは別体の,エラストマー又はプラスチック発泡体を用 いた摩擦部を備えた摩擦具9(摩擦体)を共に提供する構成を想到するにとどまり,\n摩擦体を筆記具の後部又はキャップの頂部に装着して筆記具と一体のものとして提 供する相違点5に係る本件発明1の構成には至らない。
(ウ) そして,前記イのとおり,引用例1には,そもそも摩擦熱を生じさせる具 体的手段について記載も示唆もされていない。 また,前記ウのとおり,引用例2には,熱変色像を形成する熱変色体2及び冷熱 ペン8とは別体のものとしての摩擦具9のみが開示されており,そのように別体の ものとすることについての課題ないし摩擦具9を熱変色体2又は冷熱ペン8と一体 のものとすることは,記載も示唆もされていない。 引用例3(甲9),甲第10,11号証,引用例4(甲12),甲第13,14, 及び52号証には,筆記具の多機能性や携帯性等の観点から筆記具の後部又はキャ\nップに消しゴムないし消し具を取り付けることが,引用例7(甲80)には,筆記 具の後部又はキャップに装着された消しゴムに,幼児等が誤飲した場合の安全策を 施すことが,引用例8(甲81)には,消しゴムや修正液等の消し具を筆記具のキ ャップに圧入固定するに当たって確実に固定する方法が,それぞれ記載されている。 しかし,これらのいずれも,消しゴムなど単に筆跡を消去するものを筆記具の後部 ないしキャップに装着することを記載したものにすぎない。 他方,引用発明2の摩擦具9は,低温側変色点以下の低温域での発色状態又は高 温側変色点以上の高温域における消色状態を特定温度域において記憶保持すること ができる色彩記憶保持型の可逆熱変色性微小カプセル顔料からなる可逆熱変色性イ ンキ組成物によって形成された有色の筆跡を,摩擦熱により加熱して消色させるも のであり,単に筆跡を消去するものとは性質が異なる。そして,引用例3,4,7, 8,甲第10,11,13,14及び52号証のいずれにもそのような摩擦具に関 する記載も示唆もない。よって,このような摩擦具につき,筆記具の後部ないしキ ャップに装着することが当業者に周知の構成であったということはできない。また,\n当業者において,摩擦具9の提供の手段として,引用例3,4,7,8,甲第10, 11,13,14及び52号証に記載された,摩擦具9とは性質を異にする,単に 筆跡を消去するものを筆記具の後部ないしキャップに装着する構成の適用を動機付\nけられることも考え難い。
(エ) 仮に,当業者において,摩擦具9を筆記具の後部ないしキャップに装着す ることを想到し得たとしても,前記エのとおり引用発明1に引用発明2を組み合わ せて「エラストマー又はプラスチック発泡体から選ばれ,摩擦熱により筆記時の有 色のインキの筆跡を消色させる摩擦体」を筆記具と共に提供することを想到した上 で,これを基準に摩擦体(摩擦具9)の提供の手段として摩擦体を筆記具自体又は キャップに装着することを想到し,相違点5に係る本件発明1の構成に至ることと\nなる。このように,引用発明1に基づき,2つの段階を経て相違点5に係る本件発 明1の構成に至ることは,格別な努力を要するものといえ,当業者にとって容易で\nあったということはできない。

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平成27(行ケ)10247  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年3月16日  知的財産高等裁判所(2部)

 進歩性ありとした審決が取り消されました。
 前記(2)のとおり,本件訂正発明と甲1発明とは,相違点1(架橋剤で架 橋処理される前の対象物であるポリアクリル酸ナトリウム塩部分中和物について, 本件訂正発明は,「架橋体」からなり「2個以上の重合性不飽和基または2個以上の 反応性基を有する内部架橋剤を共重合または反応させた」ものであると特定するの に対し,甲1発明は,「アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩等の水溶性ビニル モノマーに対して,重合開始剤として0.03〜0.4重量%の量の過硫酸カリウ ム,過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩を使用して重合し」て得られた「生成ポリ マー」と特定する点)において相違するが,甲1発明の「アクリル酸又はアクリル 酸アルカリ金属塩等の水溶性ビニルモノマーに対して,重合開始剤として0.03 〜0.4重量%の量の過硫酸カリウム,過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩を使用 して重合し」て得られた「生成ポリマー」は,甲1に「過硫酸塩を用いる場合には, 架橋反応も伴」うことが記載されている(【0020】)ことからすると,自己架橋 型の内部架橋を有するものである。 他方,本件訂正発明は,「2個以上の重合性不飽和基または2個以上の反応性基を 有する内部架橋剤」を用いた内部架橋剤型の内部架橋を有するものである。 そうすると,相違点1は,「架橋剤で架橋処理される前の対象物であるポリアクリ ル酸ナトリウム塩部分中和物について,本件訂正発明は,『2個以上の重合性不飽和 基または2個以上の反応性基を有する内部架橋剤』を用いた内部架橋剤型の内部架 橋を有するものであるのに対し,甲1発明は,自己架橋型の内部架橋を有するもの である点」(相違点1’)において相違するということができる。
イ そして,本件優先日当時,前記(3)イ(イ)のとおり,紙オムツ等に使用され る吸収体を,自己架橋型として製造することと,内部架橋剤型として製造すること とは,当業者が任意に選択可能な技術であり,同ウ(イ)のとおり,自己架橋型の内部 架橋と比較して,内部架橋剤型の内部架橋には,例えば,吸収体の架橋密度を制御 し,吸水諸性能をバランスよく保つことができる等の利点があることが,当業者の\n技術常識であったものと認められる。 そうすると,本件優先日当時の当業者には,甲1発明において,使い捨ておむつ や生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられる高吸水性樹脂に一般に求められる, 架橋密度を制御して吸水諸性能をバランスよく保つ等の課題を解決するために,自\n己架橋型の内部架橋に代えて,内部架橋剤型の内部架橋を採用する動機があったも のということができる。 また,相違点1’に係る容易想到性の判断は,「架橋剤で架橋処理される前の対象 物であるポリアクリル酸ナトリウム塩部分中和物」について,自己架橋型の内部架 橋に代えて,内部架橋剤型の内部架橋を採用することが容易想到であるかを検討す べきものであるから,後に「架橋剤で架橋処理される」こと(表面架橋)が予\定さ れていることが内部架橋剤型の内部架橋を採用することの妨げとなるかを検討して も,前記(3)エ(イ)のとおり,本件優先日当時,紙オムツ等に使用される吸収体を,内 部架橋剤と表面架橋剤とを併用して製造することは,当業者の周知技術であったと\n認められるから,後に表面架橋が予\定されていることが内部架橋剤型の内部架橋を 採用することを阻害するとはいえない。同様に,甲1に内部架橋剤と表面架橋剤と\nを併用する旨の記載がなかったとしても,当業者が,甲1発明において,「重合後」 に架橋剤を添加することに加えて,更に架橋剤を「重合前」又は「重合時」にも添 加することを想到することが困難であったとも認められない。 したがって,甲1発明において,自己架橋型の内部架橋とすることに代えて,内 部架橋剤型の内部架橋とすることは,当業者が容易に想到し得るものと認められる。 そして,前記(3)イ(ア)及びウ(ア)のとおり,本件優先日前に頒布された刊行物には, 「2個以上の重合性不飽和基」を有する内部架橋剤を用いること(甲16の5,6, 甲18の2,4,6),「2個以上の反応性基」を有する内部架橋剤を用いること(甲 16の5,6)が記載され,また,「2個以上の重合性不飽和基」を有する内部架橋 剤である「N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド」及び「ポリエチレン グリコールジ(メタ)アクリレート」の一方又は双方が具体的に記載されているこ と(甲16の1〜4,甲18の6)からすれば,内部架橋剤として,「2個以上の重 合性不飽和基または2個以上の反応性基を有する内部架橋剤」を選択することは, 本件優先日当時の当業者が,適宜なし得ることであったということができる。 ・・・ ア 被告は,自己架橋型の架橋構造と内部架橋剤型の架橋構\造とでは,分子 構造や網目の大きさが異なるのが一般的であるから,審決における「分子構\造が異 なる」との認定は正しいものといえ,また,内部架橋剤型であったとしても,使用 する内部架橋剤の構造,属性により大きく吸水諸特性が異なるのであり,「内部架橋\n剤型の架橋構造」同士においても,内部架橋剤の種類の違いによる分子レベルでの\n微細構造の違いによって吸水諸特性が異なるのであるから,いわんや「自己架橋型\nの架橋構造」を「内部架橋剤型の架橋構\造」と同視することは不合理である旨主張 する。 しかしながら,前記(4)イのとおり,本件優先日当時,紙オムツ等に使用される吸 収体を,自己架橋型として製造することと,内部架橋剤型として製造することとは, 当業者が任意に選択可能なものであると共に,当業者が,自己架橋型よりも内部架\n橋剤型を選択する動機があったということができる。当該吸収体において,自己架 橋型の架橋構造と内部架橋剤型の架橋構\造との分子構造が異なり,その結果,双方\nの吸水諸特性に相違が生じることがあるとしても,両者が共に選択可能な製造技術\nである以上,その置換は容易なものといわなければならない。被告が,自己架橋型 の架橋構造と内部架橋剤型の架橋構\造とが同視できる技術でなければ容易に置換で きないと主張するのであれば,それ自体失当といえる。

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平成28(行ケ)10076  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年3月14日  知的財産高等裁判所

 阻害要因ありとして、進歩性ありとした審決が維持されました。
 引用発明及び甲2発明は,共に,建築の際に用いられる羽子板ボルトに関するも のであるから,その技術分野を共通にし,横架材等を相互に緊結するという機能も\n共通している。 しかし,引用発明に回動不能構\成を採用することには,引用発明の技術的意義を 損なうという阻害事由がある。 引用発明は,前記2(2)のとおり,従来の羽子板ボルトが有する,ボルト穴の位置 がずれた場合に羽子板ボルトを適切に使用することができないという課題を解決す るために,ボルト81が摺動自在に係合する係合条孔92を有する補強係合部10b を,軸ボルト4を中心として回動可能にするという手段を採用して,補強係合具10bが軸ボルト4を中心に回動し得る横架材16面上の扇形面積部分19内のいず\nれの部分にボルト穴171が明けられても,補強係合具10bの係合条孔92にボル ト81を挿入することができるようにしたものである。引用発明に相違点2に係る 構成を採用し,引用発明の補強係合具10bを,軸ボルト4を中心として回動可能\ なものから回動不能なものに変更すると,補強係合具10bの係合条孔92にボルト81を挿入することができるのは,ボルト穴171が係合条孔92に沿った位置に\n明けられた場合に限定される。すなわち,引用発明は,横架材16面上の扇形面積 部分19内のいずれの部分にボルト穴171が明けられても,補強係合具10bの 係合条孔92にボルト81を挿入することができるところに技術的意義があるにも かかわらず,回動不能構\\成を備えるようにすると,係合条孔92に沿った位置以外 の横架材16面上の扇形面積部分19内に明けられたボルト穴171にはボルト8 1を挿入することができなくなり,上記技術的意義が大きく損なわれることとなる。 そして,引用発明の技術的意義を損なってまで,引用発明の補強係合具10bを 回動不能なものに変更し,係合条孔92に沿った位置にボルト穴171を明けない限りボルト81を挿入することができないようにするべき理由は,本件の証拠上,認\nめることができない。 そうすると,引用発明の補強係合具10bを回動不能なものに変更することには,阻害要因があるというべきである。したがって,引用発明が相違点2に係る本件発\n明1の構成を備えるようにすることは,当業者が容易に想到し得ることであるということはできない。\nそして,甲3文献に記載された事項は,「垂直材」(柱)と「横架材」(土台梁)と を接合する「羽子板ボルト」であって,上記阻害事由があるという判断に影響する ものではないから,引用発明に相違点2に係る本件発明1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。\n

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平成28(行ケ)10103  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年2月28日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が維持されました。
 (ア) 引用発明は,前記(1)イによれば,ワイヤーの把持面又はその辺りでの結び や捻れを防止し,かつ絶縁型のワイヤーへの損傷や切断を生じないワイヤー把持具 を提供することを目的とし,かかる課題の解決手段として,ハンドル32が,ピン 33とブラケット35との間に段差状の屈曲する部分を有し,ガイド36の形状と 配置にあわせて,ハンドル32の上記屈曲と枢着接続部33の移動の円弧がよく調 整されるようにした構成を採用し,これにより,引っ張る負荷が目37に適用され\nるとき,ハンドル32がワイヤーに接触せず移動して目37の位置がワイヤーに接 近し,引っ張る動作は常にワイヤーのほぼ軸方向にあるから,ワイヤーが曲がった り,捻れたりしないという作用効果を奏するものである。 そうすると,引用発明は,前記1(2)アの本件発明の課題と共通する課題を,ハン ドル32が,ピン33とブラケット35との間に段差状の屈曲する部分を有し,ガ イド36の形状と配置にあわせて,ハンドル32の上記屈曲と枢着接続部33の移 動の円弧がよく調整されるようにした構成を採用することにより,既に解決してい\nるということができるから,上記構成に加えて,あるいは,上記構\成に換えて,ハ ンドル32を「捻った」部分を有するように構成する必要がない。
(イ) また,前記アの周知例等の記載によっても,掴線器において,長レバーの 移動により,その後端に設けられたリング部がケーブルなど他の部材と干渉するの を避けるために,長レバーを「捻った」部分を有するように構成することが,もと\nの出願日前に,当業者に周知慣用の技術であったとは認められない。すなわち,周 知例1,10ないし14,甲16及び20には,部材を「捻った」構成が記載され\nているものの,周知例1は「耐張碍子を腕金に連結する捻りストラップ」,周知例 10は「六角レンチ」,周知例11は「自動車ボデーの補修工具」,周知例12は 「回転電機巻線」,周知例13は「多穴管」,周知例14は「チューブ」,甲16 は「通い綱ロープの掛け止め補助具」,甲20は「架線走行システムの補助レー ル」に関するものであって,掴線器に関するものではなく,掴線器の長レバーと同 様の作用や機能を有する部材に関するものでもない。なお,周知例2及び甲21は,\nもとの出願日後に公開された文献であって,もとの出願日前の周知慣用の技術を示 す証拠としては失当であるが,この点を措いても,周知例2は「耐張碍子を腕金に 連結する捻りストラップ」,甲21は「引込線等をなす撚り線」に関するものであ って,掴線器に関するものではなく,掴線器の長レバーと同様の作用や機能を有す\nる部材に関するものでもない。同様に,周知例3,甲15,17ないし19及び2 2ないし27は,いずれも掴線器に関するものではないし,そこに記載されている のは,部材を「曲げた」又は「巻き付けた」構成であって,そもそも「捻った」構\ 成でもない。さらに,周知例4ないし9は,掴線器に関するものであるが,長レバ ー又はそれに相当する部材を「捻った」構成とすることについて,記載又は示唆す\nるものではない。
(ウ) したがって,そもそも,掴線器において,長レバーの移動により,その後 端に設けられたリング部がケーブルなど他の部材と干渉するのを避けるために,長 レバーを「捻った」部分を有するように構成することが,もとの出願日前に,当業\n者に周知慣用の技術であったとは認められないし,引用発明において,上記構成を\n備えるようにする動機付けもない。
(エ) むしろ,引用発明の構成に加えて,ハンドル32を「捻った」部分を有す\nるように構成する場合には,引用発明では,目37がワイヤーに近接した位置とな\nるように調整されているため,目37がワイヤーに接触するおそれがあり,目37 がワイヤーに接触しないようにするには,目37とワイヤーとの距離を遠ざけるよ うにガイド36の形状と配置を変更することや,ハンドル32の段差状の屈曲と枢 着接続部の移動の円弧の再調整をすることが必要になるから,引用発明において, その構成に加えて,ハンドル32を「捻った」部分を有するように構\成することに は,阻害要因があるというべきである。
(オ) 以上によれば,引用発明において,周知例等に記載された事項に基づいて 相違点に係る本件発明の構成を備えるようにすることが,容易に想到できたという\nことはできない。

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平成27(行ケ)10190  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年2月22日  知的財産高等裁判所(3部)

 進歩性無しとした審決が取り消されました。理由は阻害要因ありです。
 そこで,以上の理解を踏まえて,本件審決の相違点2についての判断の当 否につき検討するに,本件審決は,甲1発明1において,エステル交換によ って脂肪酸エステルを含む油組成物を生成することと,本件訂正発明1に おいて,揮発性作業流体を混合物に添加することとは,環境汚染物質を除去 するために分子蒸留に付すべき脂肪酸エステルを含む油組成物を生成する という操作目的の点で技術的に軌を一にすることを理由として,甲1発明 1における「リパーゼを用いた選択的エステル交換を行って脂肪酸エステ ルを含む油組成物を生成する」構成を,周知技術である「揮発性作業流体を\n油組成物に外部から添加する」構成に置換することの容易想到性を認める\n判断をする。
しかしながら,上記エで述べたとおり,甲1公報に記載された発明は,上 記エ1)ないし3)の各課題を解決することを目的とする発明であると理解さ れるところ,このうち,上記エ1)及び3)の課題の解決のためには,「リパー ゼを用いた選択的エステル交換を行って脂肪酸エステルを含む油組成物を 生成」し,その上で分子蒸留を行うことにより,所望でない飽和および単不 飽和脂肪酸を実質的に有しないグリセリドの残余画分を得ることが不可欠 であり,この工程を,「揮発性作業流体を油組成物に外部から添加」した上 で分子蒸留を行う工程に置換したのでは,上記発明における上記エ2)の課 題は解決できたとしても,これとともに解決すべきものとされる上記エ1) 及び3)の課題の解決はできないことになる。 してみると,甲1公報に記載された発明において,「リパーゼを用いた選 択的エステル交換を行って脂肪酸エステルを含む油組成物を生成する」構\n成に代えて,周知技術である「揮発性作業流体を油組成物に外部から添加す る」構成を採用することは,当該発明の課題解決に不可欠な構\成を,あえて 当該課題を解決できない他の構成に置換することを意味するものであって,当業者がそのような置換を行うべき動機付けはなく,かえって阻害要因\nがあるものというべきである。
なお,このことは,甲1公報の記載のうち,「トリグリセリドの形態で飽 和および不飽和脂肪酸を含有する油組成物からの環境汚染物質の除去のた めの方法」に係る特許請求の範囲請求項22で特定される発明に専ら着目 してみても,異なるものではない。すなわち,当該発明においても,「(a) 該油組成物を,実質的に無水の条件下,かつ飽和および単不飽和脂肪酸のエ ステル交換を優先的に触媒するに活性なリパーゼの存在下に,…エステル 交換反応に供する工程」を要し,かつ,「(b)工程(a)において得られ た生成物を…分子蒸留に供して多不飽和脂肪酸のグリセリドに富み,かつ 環境汚染物質が優先的に除去された残余画分を回収する工程」を要するも のとされているのであるから,上記エ2)の課題とともに,上記エ1)及び3)の 課題をも解決するために,「リパーゼを用いた選択的エステル交換を行って 脂肪酸エステルを含む油組成物を生成する」構成を不可欠の構\成としてい ることは明らかといえる。

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平成28(行ケ)10040  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年12月26日  知的財産高等裁判所(第2部)

 進歩性なしとした拒絶審決が取り消されました。理由は、そもそも引例と本件周知技術とは技術分野が異なるので組み合わせができない、さらに組み合わせても、本件発明まで想到しないというものです。
 前記a及びbによれば,コンピュータシステムの不正使用防止の技 術分野において,装置Aの記憶媒体に記憶されている情報を,特定の者に利用させ る場合につき,当該特定の者が装置Bを携行することを前提に,装置Aと装置Bと の間の距離測定を行い,その距離が所定の範囲内であるときに限り,装置Bの所持 者に当該情報を利用させることは,本願優先日には周知技術であったと認められる。
ウ(ア) 甲1発明は,前記(1)のとおり,車両側無線装置と携帯型無線装置との 間の距離を測定し,所定の間隔の範囲内である場合に,車両側無線装置が車両の施 解錠実行部に解錠指令を送出するキーレス・エントリーシステムである。 一方,甲3は,前記イ(ウ)aのとおり,携帯通信端末とカードとの距離に応じてカ ードの使用を許可するシステムであって,ここでのカードの使用とは,クレジット カードの情報を用いる電子商取引,すなわち,情報処理である。また,甲4は,同 bのとおり,多端末環境でのユーザのワークステーションへのアクセスを許可する システムであり,ここでのワークステーションへのアクセスは,当然に情報処理を 目的としている。つまり,甲3及び4に記載された技術は,情報処理システムに対 する不正使用防止の技術であるのに対し,甲1発明は,ドアの解錠システムという, 情報処理システムではないシステムに対する不正使用防止の技術であって,両者は, その前提とするシステムが相違しており,技術分野が異なる。
(イ) しかも,装置Aの記憶媒体に記憶されている情報を,特定の者に利用 させる場合につき,当該特定の者に装置Bを携行させ,装置Aと装置Bとの間の距 離測定を行い,その距離が所定の範囲内であるときに限り,装置Bの所持者に当該 情報を利用させるという周知技術を,甲1発明に適用したとしても,距離測定後に, 距離測定の対象である装置の一方から他方へ,当該一方の装置が記憶しているマル チメディアデータを,他方の装置に送信するという構成に至るものではない。
(ウ) したがって,当業者が,甲1発明と甲3又は4に記載された周知技術 を組み合わせることは,容易とはいえず,仮に組み合わせたとしても,本願発明を 発明することができたとはいえない。

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平成28(行ケ)10049  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年10月26日  知的財産高等裁判所

 宅配ボックスと中食配送システムについて、組み合わせの動機付けありと認定し、拒絶審決が維持されました。裁判所は、利用者宛ての荷物について,システムから利用者に対しメール通知を行う点で共通の技術分野に属すると言及しました。
 (2) 引用例2(甲3)には,以下のとおり,引用発明2が開示されている。 好きな食事を任意に摂取できる食環境について,より低コストかつ迅速な配送が 可能で,管理や作業が容易であり,かつ,発送者,受取者の利用者双方の要求に臨\n機応変に適応できるような,便利で効率のよい配送システムを提供するために (【0007】【0008】),権限を有する所定の配送作業者及び利用者のみが 荷物を出し入れすることができるボックスなどの収容手段を複数有する集合住宅の 玄関などに設置された配送中継装置と,利用者端末装置と,管理装置と,中食提供 者端末装置とを備え,利用者が利用者端末装置を操作して,中食の内容,当該中食 を利用者が受け取る時間及び配送中継装置を指定した注文を管理装置に送信し,管 理装置が,上記受信した注文について,中食提供者端末装置に対して,指定された 内容の中食を製造することを指示するとともに,中食配送者端末装置に対して,上 記指定された時間までに指定された配送中継装置に中食を配送することを指示し, 中食配送者が,中食配送者端末装置が受けた指示を基に,中食提供者から受け取っ た中食を,上記指定された時間までに,指定された配送中継装置の所定のロッカー に保管されるよう配送し,配送中継装置は,所定の管理期間が経過しても利用者が 中食を取りにこないと判断した場合には,利用者のメールアドレスにその旨を通知 する,中食配送システム(【0029】【0032】【0054】〜【006 6】)。
(3) 引用発明1は,前記2(2)のとおり,集合住宅内に設置された宅配ボックス から成り,受取人宛ての荷物が配達され宅配ボックスに保管されると,通信サーバ が,荷物の受取人宅宛てに電子メールを送信する宅配ボックスシステムである。そ して,引用発明2は,前記(2)のとおり,ボックス等の収納手段を有する集合住宅の 玄関などに設置された配送中継装置から成り,利用者の注文した中食が配送され配 送中継装置に保管され,その後所定の管理時間が経過しても中食が取られない場合 には,配送中継装置が,中食の受取人である利用者のメールアドレスに通知を送る 中食配送システムというものである。 したがって,引用発明1と引用発明2は,ともに,集合住宅に設置された保管ボ ックスから成り,配達され保管された利用者宛ての荷物について,システムから利 用者に対しメール通知を行う荷物の配送システムという,共通の技術分野に属する ものである。そして,引用発明1と引用発明2は,いずれも,荷物の配送システム において,インターネット等を利用して発送者,受取者等の利用者の利便性を向上 させるという課題を解決するものということができ,引用発明1のシステムの利便 性を向上させるために,利用者端末装置や管理装置を含む引用発明2の構成を組み\n合わせる動機付けがあるというべきである。
(4) 他方,引用発明1は,自分宛ての荷物の注文が,誰によりどのようになされ たものであるのか何ら特定していないから,自分宛ての荷物の配達として,利用者 自らの注文によらない場合の配達サービス(具体的には,他者による注文に基づく 荷物の配達)に限定されないと解するのが自然であり,また,引用例1の【001 9】における「…たとえば最近のインターネット通販などによる高価な宅配物の増 加に対して極めて有効なセキュリティシステムとなる。」との記載には「インター ネット通販」が例示として挙げられているのであって,引用発明1が,インターネ ット通販のような,利用者自らが自分宛ての荷物を注文し,当該注文した荷物を配 送業者等により自身宛てに配達してもらう形態を排除していないと解するのが相当 である。 そうすると,引用発明1に対し,共通の技術分野に属し,共通の課題を有する引 用発明2を適用する上での阻害要因は何ら認められないというべきである。
(5) 原告らの主張について
原告らは,引用例1では,高価な宅配物を対象とするインターネット通販におい て,高いセキュリティシステムを適用することが開示されているにすぎないのに対 し,引用例2では,インターネットを介して中食を発注するシステムが開示されて いるものの,高価な宅配物を対象とするものではなく,また,二つの暗証番号を入 力するといった高度なセキュリティを必要とするものではないから,引用例1と引 用例2が対象とする宅配物は全く異なるものであり,単にインターネット通販に係 るものであるからといって,引用発明1に引用発明2を組み合わせる動機付けは一 切存しないと主張する。 しかし,引用例1自体,高度のセキュリティを備えることを必然の構成としてい\nるわけではないし(甲2の【0016】〜【0019】),配送対象の荷物が高価 であるか否かや,高度なセキュリティを要するか否かが,技術分野及び課題の共通 性を阻害し動機付けを失わせるとはいえないから,原告らの上記主張は理由がない。
(6) したがって,引用発明1に対し,共通の技術分野に属し,課題においても共 通する引用発明2を適用することの動機付けがあり,かつ,適用する上での阻害要 因が何ら認められないのであるから,引用発明1におけるユーザのモバイル端末に おいて,引用発明2の技術を適用することで,発注機能を備えるよう構\成して相違 点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。\n

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平成28(行ケ)10009  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年10月26日  知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、動機付けなし・阻害要因ありとして、取り消されました。
 引用例2には,そこに記載された加湿器が,給水部の水位を検知する検知装置を 備えた加湿器において,表示部が,給水部の水位が一定の水位よりも低くなると,\nあらかじめ定めた第1表示内容を表\示し,モーターが所定時間以上回転した後,モ ーターを停止し,あらかじめ定めた第2表示内容を表\示するものであることが記載 され(【0005】),かかる構成にしたことにより,給水部の水位が一定の水位\nよりも低くなった後,給水を促す表示をするが,モーターが所定時間の5分間以上\n回転しているため,モーターが回転している間に使用者が給水を促す表示に気が付\nき,給水を行えば,加湿運転を停止させて部屋を乾燥させてしまうことがない,ま た,モーターの回転を低速回転とするため,加湿量が減って給水部の水位が一定の 水位よりも低くなった後はゆっくりと水位が下がり,長時間加湿できることから, その間に給水を促す表示に気が付きやすいなどと記載されている(【0009】,\n【0010】)。また,【0036】ないし【0038】には,給水部2の水位が 基準の水位よりも低くなると,ファン3を低速回転とし,ヒーター8をOFFとし, タイマーに所定時間の5分間以上の時間を設定し,表示部6には第1の表\示内容で ある「給水」及びタイマー残時間の表示をして,タイマーの減算を開始すること,\nタイマーの残時間が0となったらファン3を停止し,表示部6には第2の表\示内容 である「給水」点滅の表示をすることが記載されている。\nこれらの記載によれば,引用例2に記載の加湿器は,部屋の乾燥を防止するため に,水位が「一定の水位」より低くなった後も,モーターが所定時間以上回転し, さらに,低速回転とすることで長時間加湿をすることが可能なものである。そして,\n「第1表示内容」が「給水」という文字及びタイマー残時間を表\示するものである から,「一定の水位」は,給水が一応求められる水位であるといえるものの,タイ マー残時間分のファンの継続運転によって,上記「一定の水位」よりさらに低くな った水位における「第2の表示内容」が「給水」という文字を含む点滅表\示である ことに照らせば,上記「一定の水位」は,タイマー残時間分の加湿運転の余地があ る水位を意味するものと理解される。 したがって,引用例2における「一定の水位」は,それを下回る水位でも加湿機 能が適正に動作して加湿空気を生成することができ,それを下回る水位が検出され\nた後も加湿機能の動作を行わせることを前提とするものであるということができる。\n(ウ) 以上によれば,引用例2に記載された技術事項における,給水部の水位を 検知する検知装置が検知する「一定の水位」は,引用発明におけるフロートスイッ チ14の「第1の基準位置における接点」とは,水位の性質,すなわち,それを下 回る水位でも加湿機能が適正に動作できるか否か及び加湿機能\の動作を行わせるこ とを前提としているか否かという点において,明らかに相違する。 加えて,引用発明において,液面検出手段を構成するフロートスイッチ14は,\n「第1の基準位置H1における接点」のみならず,「第2の基準位置H2における 接点」を有するところ,「第2の基準位置H2における接点」が検出する液面高さ の「第2の基準位置」は,加湿機の運転時の場合には,水面高さ(液面高さ)が第 1の基準位置H1以上の場合には運転が継続される,すなわち,液面高さが「第2 の基準位置」を下回っても,第1の基準位置を上回る限りにおいて,加湿機の運転 が継続されるものである(【0028】)。そうすると,所定の水位を下回る液面 高さでも加湿機能が動作して加湿空気を生成することができ,それを下回る水位が\n検出された後も加湿機能の動作を行わせるものである点において,引用例2におけ\nる「一定の水位」と引用発明の「第2の基準位置H2における接点」は共通するも のであるということができる。 このように,引用例2の「一定の水位」は,フロートスイッチ14の「第1の基 準位置における接点」とは水位の性質(それを下回る水位でも加湿機能が適正に動\n作できるか否か及び加湿機能の動作を行わせることを前提としているか否かという\n点)において明らかに相違し,かつ,引用発明には,上記性質において共通する 「第2の基準位置H2における接点」が既に構成として備わっているにもかかわら\nず,引用発明において,フロートスイッチ14の「第1の基準位置における接点」 を引用例2の「一定の水位」を検知する構成に置き換える動機付けがあるというこ\nとはできない。 (エ) さらに,引用発明におけるフロートスイッチ14の「第1の基準位置H1 における接点」を,引用例2に記載された技術事項(それを下回る水位が検出され た後も加湿機能の動作を行われせることを前提した「一定の水位」を検出対象とす\nるもの)に置き換えると,引用発明におけるフロートスイッチ14の「第1の基準 位置H1における接点」は,液面高さが「第1の基準位置」を下回ったことを検出 しても加湿機能を引き続き動作させることになるから,引用発明におけるフロート\nスイッチ14の「第1の基準位置H1における接点」に係る構成により奏するとさ\nれる,加湿部の動作を自動的に停止して液体収容槽の液体の残量がないときにファ ンを無駄に動作させることを防止できるという効果(【0009】)は,損なわれ ることになる。 そうすると,引用発明におけるフロートスイッチ14の「第1の基準位置H1に おける接点」を,引用例2に記載された技術事項である,「一定の水位」を検知す る構成に置き換えることには,阻害要因があるというべきである。\n

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◆関連事件です。平成28(行ケ)10008

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平成27(行ケ)10149  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年8月10日  知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は「容易の容易」に当たるので動機付けなしというものです。
イ 相違点2の容易想到性について
(ア) 本件審決は,浚渫用グラブバケットに関する発明である引用発明1におい て,同じく浚渫用グラブバケットに関する周知技術2及び3並びに引用発明3を適 用して相違点2に係る本件発明の構成とすることは,当業者であれば容易に想到し\n得たことであると判断した。 (イ) 相違点2は,シェルの構成に関するものである。しかし,引用例1(甲1)\nには,専ら,バケットの吊上げ初期の揺れがほとんど発生せず,開閉ロープのロー プ寿命も長くなる浚渫用グラブバケットの提供を課題として(【0005】),上部 シーブ,下部シーブ,バケット開閉用の開閉ロープ及びガイドシーブの構成や位置\nによって上記課題を解決する発明が開示されており(【請求項1】〜【請求項3】, 【0006】,【0016】),シェルに関しては,特許請求の範囲及び発明の詳細な 説明のいずれにも,「各シェル部1A,1Bは軸3で開閉自在に軸支され,下部フ レーム2に取付けられている。」(【0008】)など,他の部材と共にグラブバケッ トを構成していることが記載されているにとどまり,シェル自体の具体的構\成につ いての記載はない。引用例1においては,前記⑴ア(ア)のとおり,上記発明の一実 施形態に係る浚渫用グラブバケットの側面図【図1】及び正面図【図2】に加え, 従来のグラブバケットの側面図【図6】及び正面図【図7】において,シェルが図 示されているにすぎない。 したがって,引用例1には,シェルの構成に関する課題は明記されていない。\n(ウ) もっとも,引用例3(甲4)の考案の詳細な説明中の考案が解決しようと する問題点(前記(2)ア(イ)b),周知例1(甲16)の【0002】,【0003】 (前記(3)ア(イ)),周知例2(甲26)の考案の詳細な説明中,従来技術の欠点に ついて述べたもの(前記(3)イ(イ)a)及び引用例5(甲5)の【0006】から 【0008】(前記(4)ア(イ)c)によれば,本件特許出願の当時,浚渫用グラブバ ケットにおいて,シェルで掴んだ土砂や濁水等の流出を防止することは,自明の課 題であったということができる。したがって,当業者は,引用発明1について,上 記課題を認識したものと考えられる。 前記(3)ウのとおり,本件審決が周知技術2を認定したことは誤りであるが,当業 者は,引用発明1において,上記課題を解決する手段として,周知例2に開示され た「シェルが掴んだヘドロ等の流動物質の流出を防ぐために,相対向するシェル1 1,11の上部開口部12,12に上部開口カバー13,13をシェル11,11 の内幅いっぱいに固着するか,又は,取り外し可能に装着することによって,上部\n開口部12,12を上部開口カバー13,13でふさぎ,シェル11,11を密閉 する」構成を適用し,相違点2に係る本件発明の構\成のうち,「シェルの上部にシ ェルカバーを密接配置する」構成については容易に想到し得たものと認められる。\nしかしながら,前記(4)のとおり,シェルの上部に空気抜き孔を形成するという周 知技術3は,シェルの上部が密閉されていることを前提として,そのような状態に おいてはシェル内部にたまった水や空気を排出する必要があり,この課題を解決す るための手段である。引用例1には,シェルの上部が密閉されていることは開示さ れておらず,よって,当業者が引用発明1自体について上記課題を認識することは 考え難い。当業者は,前記のとおり引用発明1に周知例2に開示された構成を適用\nして「シェルの上部にシェルカバーを密接配置する」という構成を想到し,同構\成 について上記課題を認識し,周知技術3の適用を考えるものということができるが, これはいわゆる「容易の容易」に当たるから,周知技術3の適用をもって相違点2 に係る本件発明の構成のうち,「前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成」す\nる構成の容易想到性を認めることはできない。\n(エ) また,前記(2)のとおり,引用例3には,海底から掻き取った海底土砂等を バケットシェル内に保持することを可能にし,かつ,水の抵抗を最小限にして,荷\nこぼれによる海水汚濁を防止し得るグラブバケットの提供を課題とし,同課題解決 手段として,シェルの上部開口部の開閉手段を設けた旨が記載されていることから, 当業者は,引用発明1において,シェルで掴んだ土砂や濁水等の流出を防止すると いう自明の課題を解決する手段として,シェルを密閉するために,「浚渫用グラブ バケットにおいて,シェルの上部開口部に,シェルを左右に広げたまま水中を降下 する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに,シェルが掴み物を所定容量以 上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き,グラブバケットの水中での移 動時には,外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付けるとい う技術」である引用発明3の適用を容易に想到し得たものということができる。 しかし,引用発明1に引用発明3を適用しても,シェルの上部に上記のように開 閉するゴム蓋を有する蓋体をシェルカバーとして取り付ける構成に至るにとどまり,\n相違点2に係る本件発明の構成には至らない。
ウ 被告の主張について
被告は,空気抜き孔をシェルカバーの一部に設けることは,引用例5及び周知例 1に開示された公知技術ないし周知技術である旨主張するが,前記イのとおり,同 技術は,シェルの上部が密閉されていることを前提として,そのような状態におい てはシェル内部にたまった水や空気を排出する必要があり,この課題を解決するた めの手段であり,引用例1には,シェルの上部が密閉されていることは開示されて いないのであるから,よって,当業者が引用発明1自体について上記課題を認識す ることは考え難く,上記技術を適用する動機付けを欠く。

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平成27(行ケ)10165  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年3月23日  知的財産高等裁判所

 断面形状が5角形の枕について、進歩性なしとした審決が、動機付けなしとして取り消されました。
 審決は,枕の断面形状を5角形とすることが周知の技術事項であり,引用発明の 転がり枕が多角形状の外周面をもつ転がし容易な形状のものであるから,その多角 形状の一形態として5角形の断面形状を選択して5角柱体状の転がり枕を構成する\nことは,当業者にとって容易であると判断する。 しかしながら,審決が周知の技術事項である根拠として摘示した参照文献である 特開2008−125974号公報(乙4)には,複数の多角形断面を有する柱状 体を連結した枕部品が,特開2006−102018号公報(乙5)には,複数種 の枕袋体で構成された枕(請求項2記載の発明は,各枕袋体が着脱自在であるだけ\nで,各枕袋体を単独で用いるものではない。)が,特開平7−275098号公報(乙 6)には,2個の枕を連結して凹部を構成する枕が開示されているだけである。上\n記各公報には,枕の一部を構成する部分に5角形の断面形状を有するものが認めら\nれるものの,そうであるからといって,一部材からなる枕の断面形状を5角形にす るという技術事項を開示したことにはならないのであり,また,単体で使用する枕 の断面形状を5角形にすることが直ちに動機付けられるものでもない。審決の上記 認定の根拠となる刊行物等は,見当たらない。 また,引用発明は,「適度な弾性を有するウレタンフォームや発泡スチロール若し くはゴムなどの弾性体で作られた,多角形状の外周面をもつ転がし容易な形状の, 容易に転がして首筋の任意な好みの部位にその円頂部を宛がう転がり枕」というも のであるところ,「多角形」の語義それ自体には5角形が含まれ(ただし,5角形の 断面形状が「多角形状の外周面をもつ転がし容易な形状」と異なることは,相違点 とされており,当事者間に争いがない。),また,引用例には,「多角形」が8角形で あってもよいことが開示されている(【図5】)。 しかしながら,前記1(2)に認定のとおり,引用発明の転がり枕は,容易に転がし て体の任意の部分にあてがうことができ,また,その部位をわずかに上げて転がす ことであてがい直しができるとするものであり,引用例にも,「円形状若しくは多角 形状の外周をもつ転がり容易な円柱形状の弾性体枕」(【請求項1】),「多角形状の外 周面をもつ転がし容易な円柱形状の丸型枕」(【0004】【課題を解決するための手 段】),「本発明の円柱形状に形成された転がり枕」(【0009】【発明の効果】)との 記載があることにかんがみると,引用発明の転がり枕の外周面は,円に近い形状の 多角形が想定されているものと認められる(審決は,引用例【0005】【0007】 の記載から,引用発明について「多角形の転がり易い形状」と認定したものと解さ れるが,十分に正確なものとはいえない。)。そして,多角形は,角の数が増えるほ\nど円に近い形状となるから,そのような断面形状を有する物が転がりやすくなり, 逆に,角の数が減るほど円から離れた形状となり転がりにくくなることは自明であ る。そうであれば,引用例に接した当業者は,具体的に開示された8角形よりも角 の数の多い多角形状の外周面を持つ形状とすることを通常試みるとはいえるものの, これよりも角の数の少ない多角形状の外周面を持つ形状とすることは,引用発明の 目的から離れていくことであって,これを試みること自体に相応の創意を要する。 他方,本願発明や円柱体に比べて,人間が仰臥,横臥の姿勢で行う,こすり付けや引っ掛け等のストレッチ運動において,そのし易さ,安定度等の点で非常に優れている・・・例えば,・・・・,3角柱体は,急斜面過ぎて使い難い。7角以上の柱体では,一辺の長さが5角柱体に比べ小さく,転がり易く不安定」であり,「又,頭との接触幅が小さいので感触も劣る。」(【0011】)と記載されているとおり,5角柱体に格別の技術的意義を見出したものである。 このように,枕を5角柱体とすることに格別の技術的意義を見出した本願発明に対し,枕の断面形状を5角形とすることが周知技術とはいえず,また,多角形状の枕である引用発明は,「転がり容易」なことを目的とするものである。そうすると,引用発明において,「多角形状の外周面をもつ転がし容易な形状」を「5角柱体状」とすることは,当業者が容易に想到し得る事項ではないと認められる。 被告は,転がりやすさは,枕の弾性や枕と設置面との間の摩擦力にもよることで あって,断面形状と転がりにくさとの間には必ずしも相関関係はないと主張する。 しかしながら,枕の弾性や枕と設置面との間の摩擦力など,枕の断面形状以外の 条件を同じくすれば,断面形状の角の数がより少ないものがより転がりにくくなる ことは明らかである。被告の上記主張は,枕の断面形状と転がりにくさとの関係を 主張しているものではなく,失当である。

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平成27(行ケ)10156  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年3月28日  知的財産高等裁判所

 動機付けなしとした審決が維持されました。
 (2) 操作部をアタッチメント11の上面に設ける構成の容易想到性について\n原告は,アタッチメント11の取付台12には,電源供給及び信号処理の回路が 設けられており,板状にすぎないビデオカメラ支持部33とは異なり,上面に操作 部35を設けることが可能なボックス形状を有していること,アーム40を折り畳\nんだ非使用状態ではアーム40が操作部35に重なるため,操作部35を操作でき ない不都合や,正面から操作できない不都合を解消するために,ビデオカメラ支持 部33と一体のアタッチメント11の取付台12の上面に操作部35を設け,アー ム40を折り畳んだ状態でも操作部35を操作できるように構成することは当業者\nなら容易に想到し得る旨主張する。しかし,甲1’発明は,前記(1)に認定したとおりのものであり,アタッチメント11を取り付ける場合とアタッチメント11を取り付けない場合の両方の場合を想定した発明であり,ビデオカメラ支持部33を有する書画カメラ部31をアタッチメント11やプロジェクタ本体から着脱可能なようにしたことで,書画カメラ部31を有効活用でき,ユーザに好ましい印象を与えることができるものである。そうすると,甲1’発明の操作部35は,アタッチメント11を取り付ける場合及びアタッチメント11を取り付けない場合に共通に使用されるものであるから,書画カメラ装置を操作する上で必須である。このため,甲1’発明において,操作部35を設ける場所を,書画カメラ部31の回路収納部34の上面からアタッチメント11の上面に変更すると,アタッチメント11を取り付けない場合,書画カメラ装置は操作部35を具備しない構\成となって,書画カメラ装置の操作ができなくなり,書画カメラ部31を着脱可能なようにしたことで有効活用し,ユーザに好ましい印象を与えるとの効果を奏しないこととなる。そうすると,当業者は,甲1’発明において,他に何らの示唆もなく,操作部をアタッチメント11の上面に設けようと動機付けられることはない。\n

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平成27(行ケ)10094  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年3月30日  知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。「引用発明1に基づいて,2つの段階を経て相違点に係る本件発明1の構成に想到することは,格別な努力が必要であり,当業者にとって容易であるということはできない。」という理由です。
 ア したがって,仮に,引用発明1に引用発明2を適用したとしても,後部カバ ー13に弾性部材を設け,その弾性部材をその進行方向後方側の位置で固定すると ともに,固定部を除いて前方側を自由な状態とし,主カバー12に対する土付着防 止部材20の固定位置において,その土付着防止部材20と互いに重なるようにす る結果,引用発明1の主カバー12に固定された各土付着防止部材20は,その固 定位置全てが隣接する他の土付着防止部材20と互いに重なるようにはなるものの, 引用発明1の後部カバー13に引用発明2の弾性部材23として設けられた土付着 防止部材20は,その進行方向前方側の端部寄りの部分が自重で垂れ下がるもので はないから,本件発明1には至らない。 イ 本件審決は,仮に引用発明2の弾性部材23の前端部23aが前方に延設さ れた(前方)端部寄りの部分が自重で垂れ下がるものでないとしても,エプロンに 固定された土除け材を,その端部寄りの部分が自重で垂れ下がるような材質のもの とすることは,当業者が適宜になし得る程度のことにすぎないと判断した。
(ア) しかし,引用発明2の弾性部材23の前端部23aが前方に延設された (前方)端部寄りの部分を自重で垂れ下がるものとすることを想到した上で,これ を引用発明1に適用することによって,引用発明1の後部カバー13に引用発明2 の弾性部材23として設けられた土付着防止部材20の進行方向前方側の端部寄り の部分を自重で垂れ下がるものとするというのは,引用発明1を基準にして,更に 引用発明2から容易に想到し得た技術を適用することが容易か否かを問題にするこ とになる。このように,引用発明1に基づいて,2つの段階を経て相違点に係る本 件発明1の構成に想到することは,格別な努力が必要であり,当業者にとって容易\nであるということはできない。
(イ) また,引用例2には,弾性部材23の前端部23aはブラケット19に密 着しており,リヤカバー13が上方へ回動したときであっても飛散した土が入り込 むことがなく,前端部23aを更に前方へ延設して低摩擦係数の部材14と重ね合 わせた状態にしたときは,飛散した土の侵入がより一層防止できる旨の記載がある (【0015】)。このように,前端部23aが飛散した土の侵入を防止するという 作用効果を奏するのは,前端部23aがブラケット19に密着しているからであり, 前端部23aを更に前方に延設して低摩擦係数の部材14と重ね合わせた状態にす るのは,その作用効果を強めるためである。 ここで,仮に,弾性部材23の前方側の端部寄りの部分が自重で垂れ下がったと すると,弾性部材23の固定部(座24)から自由端(前端部23a)までのどの 部分がどの程度垂れ下がるにしても,前端部23aは,下方,すなわち,ブラケッ ト19との密着を保つことが困難になる方向に移動することになる。さらに,リヤ カバー13が上方へ回動すると,前端部23aとブラケット19との密着はさらに 困難になる。その結果,前端部23aがブラケット19と密着することによって奏 する飛散した土の侵入防止という上記の作用効果が減殺されることは,明らかであ る。 すなわち,引用例2の【0004】,【0006】の記載に照らすと,リヤカバー に固着された土付着防止部材(弾性部材)を自重で垂れ下がるように構成すると,\nリヤカバーの枢着部分では,メインカバーに取り付けた低摩擦係数の部材と,リヤ カバーに取り付けた弾性部材との接合部に間隙が生じるため,ここに土がたまりや すくなるという引用発明2の課題を解決できない。したがって,引用発明2の弾性 部材23について端部寄りの部分が自重で垂れ下がるような材質のものに変更する ことは,引用発明2の目的に反する。特に,引用発明2で,リヤカバー13を下降 させた状態において,既に前方側の端部寄りの部分が自重で垂れ下がるような弾性 部材23を用いた場合,リヤカバー13を上方へ回動させると,弾性部材23の垂 れ下がり位置はリヤカバー下降時よりさらに下方になるため,リヤカバーの枢着部 分では,メインカバーに取り付けた低摩擦係数の部材と,リヤカバーに取り付けた 弾性部材との接合部にさらに間隙が生じ,ここに土がたまりやすくなってしまい, 飛散した土の侵入防止という引用発明2の上記作用効果を奏することができない。 そのため,上記作用効果を奏するためには,リヤカバー13を下降させた状態にお いて,既に前方側の端部寄りの部分が自重で垂れ下がるような弾性部材23を用い ることはできない。 そうすると,引用発明2において,弾性部材23の前方側の端部寄りの部分を自 重で垂れ下がるようにすることには,そもそも阻害要因があると認められる。弾性 部材23の前端部23aを更に前方に延設して低摩擦係数の部材14と重ね合わせ た状態にした場合も,同様の理が妥当することから,前端部23aを前方に延設し た弾性部材23の前方側の端部寄りの部分が自重で垂れ下がるようにすることは, 当業者が適宜になし得る程度のものということはできない。 したがって,本件審決の上記判断は,誤りというべきである。
(ウ) 被告は,引用発明2のリヤカバー側の弾性部材23について前方側の端部 寄りの部分が自重で垂れ下がるような材質のものに変更することは,メインカバー に固着された土付着防止部材が自重で垂れ下がることによる不都合を課題とする引 用発明2の目的に反するものではないから,弾性部材23を,進行方向前方側の端 部寄りの部分が自重で垂れ下がるような材質のものとすることは,当業者が適宜に なし得る程度のことにすぎない旨主張するが,同主張に理由がないことは,前記 (イ)において説示したとおりである。
・・・
しかし,前記(イ)のとおり,弾性部材23の前端部23aは,ブラケット19に 密着することによって,リヤカバー13が上方へ回動したときでも飛散した土が入 り込むことがないという作用効果を奏するものであるから,前端部23aがブラケ ット19に密着するのを妨げるような変更を加えることには阻害要因がある。そし て,弾性部材23の前方側の端部寄りの部分が自重で垂れ下がるようにすることは, 前端部23aをブラケット19との密着を困難にする方向に移動させることを意味 するから,当業者が適宜になし得るものということはできない。

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平成27(行ケ)10014  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年3月25日  知的財産高等裁判所

 化合物の製造方法について、一部の置換基を置換することについて動機付けなしとした審決が維持されました。
(ア) 原告らは,主張1)のとおり,マキサカルシトールの効率的な製造方法を検 討する当業者は,甲第4号証の図9から,エポキシド化合物(18)及び(19) のヒドロキシメチル基をメチル基に置き換えることを着想し,動機付けられると主 張する。 しかし,前記のとおり,甲第4号証の図9記載の工程は,25位の立体配置が異 なる二種類のマキサカルシトールの予想代謝物(12)又は(13)を選択的に合\n成するための製造方法であり,まず,出発物質に試薬を適用して二重結合を有する 側鎖を導入し,次いで,これに香月−シャープレス反応を用いるという二段階の反 応を行うことにより,二重結合をエポキシ基に変換した中間体である二種類のエポ キシド化合物(18)又は(19)を選択的に生成し,さらに,各エポキシド化合 物のエポキシ基を開環することにより図9の右下に図示される2種類のステロイド 化合物を製造し,最後に,各ステロイド化合物を光照射及び熱異性化して,それぞ れから最終目的物である上記予想代謝物(12)又は(13)を生成するという一\n連の工程である。原告らの主張1)は,この一連の工程のうち終盤の,中間体(前駆 体)としてエポキシド化合物を経由するという点のみを取り出して,そのエポキシ ド化合物を得るまでの工程は,甲4発明1とは全く違うものに変更するというもの であるから,甲4発明1の一連の工程のうち,特にエポキシド化合物を経由すると いう点に着目するという技術的着想が必要である(仮に,この甲4発明1をマキサ カルシトールの合成にも応用しようとするのであれば,甲4発明1の試薬を,4− ブロモ−2−メチル−テトラヒドロピラニルオキシ−2−ブテンに代えて,マキサ カルシトールの側鎖にとって余分なテトラヒドロピラニルオキシ基〔OTHP基〕 のない下図の4−ブロモ−2−メチル−2−ブテン(臭化プレニル)を用い,それ 以外は,甲4発明1と同様の一連の側鎖導入工程,エポキシ化工程,エポキシ基の 開環工程を経る製造方法に想到することが自然である。)。 甲第4号証記載の試薬 4−ブロモ−2−メチル−2−ブテン この点,甲第4号証には,図9の一連の工程が,特にエポキシド化合物を経由す る点に着目したものであることを示唆する記載はなく,むしろエポキシド化合物は, 26位が水酸化された側鎖末端の立体配置構造が異なる2種類のマキサカルシトー\nルの予想代謝物(12)又は(13)を選択的に製造するという目的のために,香\n月−シャープレス反応を採用した結果,工程中において生成されることとなったも のにすぎないものと理解される。また,甲第4号証には,図9の合成方法によって マキサカルシトールの予想代謝物が高収率で得られたことが記載されているのみで,\n問題点の記載もなく,甲4発明1の一連の工程の改良(変更)をする際に,どの点 は変更する必要がなく,どの点を改良すべきかを示唆する記載もない(なお,仮に 改良すべき点として工程数を取り上げたとしても,側鎖導入工程,エポキシ化工程, エポキシ基の開環工程のいずれを短縮すべきなのかについての示唆もなく,二重結 合からエポキシ化を経由せず直接水酸化するという選択肢なども想定は可能であ\nる。)。 そうすると,当業者が,仮に甲第4号証の図9のマキサカルシトールの予想代謝\n物(又はその前駆体となるステロイド化合物)とマキサカルシトールの側鎖の類似 性から,甲4発明1をマキサカルシトールの合成に応用することを想到し得たとし ても,その際に,一連の工程のうち,特にエポキシド化合物を経由するという点に 着目して,最終工程であるエポキシド化合物のエポキシ基を開環する工程の方を変 更せずに,その前段階である側鎖導入工程とエポキシ化工程は変更することを前提 として,マキサカルシトールの前駆体となるエポキシド化合物を製造しようとする ことを,当業者が容易に着想することができたとは認められない。

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平成27(行ケ)10113  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年3月24日  知的財産高等裁判所

 医薬品の用量・用法を変えることについて、動機付けありと認定しました。 審決は無効理由なしと判断していましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
(ア) 甲10には,タダラフィルは,PDE5阻害剤であって,ヒトの勃 起機能不全の処置に有用であること(前記(2)ア(ア)ないし(カ),(ケ), (コ)),その用量について,平均的な成人患者(70kg)に対して1 日当たり,概ね0.5〜800mgの範囲であり,個々の錠剤又はカプ セル剤は,1日当たり単回又は数回,単回投与又は反復投与のため,好 適な医薬上容認できる賦形剤又は担体中に0.2〜400mgの有効成 分を含有するものであることが記載され(前記(2)ア(オ)),さらに,具 体的に,タダラフィルを50mg含む錠剤及びカプセルの組成例(前記 (2)ア(キ),(ク))が記載されている。 また,「実際には,医師は,個々の患者に最も適している実際の投与 計画を決定するが,それは特定の患者の年齢,体重および応答によって 変化する。上記の投与量は,平均的な場合の例であり,より高い又は低 い用量範囲が有益であるような個々の事例が存在するかもしれないが, いずれも本発明の範囲内である。」(前記(2)ア(オ))と,実際の患者に 投与する場合には,医者が最も好適と考えられる投与計画を決定するこ とも記載されている。 さらに,タダラフィルを用いたインビトロ試験において,PDE5阻 害作用につき,IC50が2nMであったことが記載されている(前記(2) ア(コ))。
(イ) 前記(ア)の記載に接した当業者であれば,甲10発明に係るタダラ フィルにつき,平均的な成人患者(70kg)に対して1日当たり,概 ね0.5〜800mgの範囲において,ヒトの勃起機能不全の処置に有\n用であり,具体的には50mgのタダラフィルを含む錠剤ないしはカプ セルが一例として考えられること,もっとも,実際の患者に投与する場 合には,好適と考えられる投与計画を決定する必要があることを理解す ると認められるところ,タダラフィルと同様にPDE5阻害作用を有す るシルデナフィルにおいて,ヒトに投与した際,PDE5を阻害するこ とによる副作用が生じることが本件優先日当時の技術常識であったこと から(前記イ(ウ)),甲10のタダラフィルを実際に患者に投与するに 当たっても,同様の副作用が生じるおそれがあることは容易に認識でき たものといえる。そして,薬効を維持しつつ副作用を低減させることは 医薬品における当然の課題であるから,これらの課題を踏まえて上記の 用量の範囲内において投与計画を決定する必要があることを認識するも のと認められる。そうすると,そのような当業者において,前記アの技 術常識を踏まえ,甲10に記載された用量の下限値である0.5mgか ら段階的に量を増やしながら臨床試験を行って,最小の副作用の下で最 大の薬効・薬理効果が得られるような投与計画の検討を行うことは,当 業者が格別の創意工夫を要することなく,通常行う事項であると認めら れる。 加えて,前記(ア)のとおり,甲10のタダラフィルに関するインビト ロ試験の結果によれば,タダラフィルのPDE5阻害作用はシルデナフ ィル(前記イ(ア))に比べ強いことが示されているのであるから,タダ ラフィルが,インビトロ試験と同様にインビボ試験である臨床試験にお いても,強いPDE5阻害作用を発揮する可能性を考慮に入れて,タダ\nラフィルの用量としてシルデナフィルの用量である10mg〜50mg (前記イ(イ))及びそれよりも若干低い用量を検討することも,当業者 において容易に行い得ることである。 以上によれば,甲10発明について,適切な臨床における有用性を評 価するために臨床試験を行い,最小の副作用の下で最大の薬効・薬理効 果が得られるような範囲として,相違点1に係る範囲を設定することは, 当業者が容易に想到することができたものと認められる。
エ 被告の主張について
(ア) 被告は,経口投与された医薬化合物が,作用部位でどの程度の濃度 になるかを左右する薬物動態は,様々なファクターに影響され,これら のファクターは個々の医薬化合物によって様々に異なるとともに,各フ ァクターによる影響は総合的に生体に作用するものであるから,作用部 位において当該化合物が適切な濃度になるために必要な投与量は,ヒト における臨床試験を経て初めて設定され得るものであることは,医薬分 野における技術常識であり,経口投与する際の適切な用量は,インビト ロ試験での活性でのみ決定できるものではないし,ある医薬化合物の適 切な用量を,薬物動態が異なる全く別の化合物の用量を参考にして決定 することなどできないことも,医薬分野における技術常識である旨主張 する。 確かに,実際にヒトに対して薬物を経口投与する際における適切な用 量を決定するに当たっては,インビトロ試験での活性でのみ決定できる ものではなく,最終的にはヒトにおける臨床試験を経て決定されるもの であることは被告の主張するとおりである。 しかしながら,ヒトに対する適切な用法・用量を決定することに関し, 臨床試験においては,前記ア(ウ)のとおり,非臨床試験での全成績を詳 細に検討し,同薬効,類似構造薬に関する従来の知識,経験をも加味し\nて決定されるものとされている以上,タダラフィルと同様にPDE5阻 害作用を有するシルデナフィルの用量や,タダラフィルのインビトロ試 験データを参考にすることも,当業者が当然行うことと認められる。こ の点につき,タダラフィルの用量の検討に当たり,シルデナフィルは参 考にできないほど薬物動態が異なるという知見が存在することをうかが わせる証拠もない。そして,医薬品の開発は,インビトロ試験で有用な 薬理効果が確認された化合物について,動物試験,さらにはヒトに対す る臨床試験を行い(甲24参照),最適な用量が決定されるものである が,この過程を経ること自体は,ヒトに医薬品を投与する際の適切な用 量を決定するに当たって通常想定されることであって,当業者が容易に なし得ることであるから,これらを行う必要があったことを根拠として, 医薬品の用量・用法に関する発明につき容易想到性を否定することはで きない。

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平成27(行ケ)10075  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年3月24日  知的財産高等裁判所

 動機付けありとして無効とした審決が維持されました。
 原告は,本件審決は,甲4発明において相違点4に係る構成を採用することの動機付けにつき,工業製品の製造分野において,共通の製造装置から可\n及的に多様な製品を製造することは当然の要請であると判断しているが,誤 りであり,また,甲4発明に本件周知技術を適用する動機付けはないから, 相違点4につき容易想到であるとした本件審決の判断は誤りである旨主張す るので,以下検討する。
ア 甲4には,・・・・がそれぞれ開示されている(前記(2)ア(オ))。 そうすると,甲4は,必要とされる引張り強度又はクッション性,通水 性及び通気性等の機能に応じて,線条の押し出し方向と平行な外周につき,密度の高い表\面部分を片側又は両側に適宜形成することを開示するものと\nいえる。
イ 甲3(前述のとおり,甲3が公開されたのは,本件特許の原出願日の約 24年前である)においても,線条の押し出し方向と平行な外周の表面側であるマットの片側の表\面部分を高密度化した立体網状構\造体を製造する\n方法のほかに,両面を高密度化した立体網状構造体を製造する方法及び連続した高密度の平滑な表\面を形成するために,環状の接触プレートで完全に取りまかれた,全体的に環状,だえん状又は別様に閉じられた断面を有 する束にフィラメントを押し出す方法,すなわち,外周の全ての表面が平滑で内部よりも密度が高い表\面となる立体網状構造体を製造する方法も選\n択的に示されていることから(前記(3)ア(ア)e〜h),線条の押し出し方 向と平行な外周の表面側につき,必要に応じて高密度化した部分を適宜形成することが開示されているものといえる。
ウ 前記ア及びイによると,立体網状構造体の製造方法の技術分野において,線条の押し出し方向と平行な外周の表\面側につき,立体網状構造体の用途\n等に応じて適宜選択した上で,必要な部分の密度を高くすることが行われ ているものと認められる。 そうすると,4面成形をした立体網状構造体を必要とする当業者が,甲4発明に本件周知技術を適用しようとする動機は十\分にあり得たものであり,その場合,甲4発明の,線条の押し出し方向と平行な外周の2面の表面側の密度がこの2面の表\面側を除く部分の密度より相対的に高くなり,この2面の表面側の空隙率が80%以下になるという構\成を残りの表面側にも適用して,外周の全ての表\面側の密度が表面側を除く部分の密度より\n相対的に高くなり,この全ての表面側の空隙率が80%以下になるようにすること,すなわち,相違点4に係る本件発明1の構\成とすることは,容易に想到し得たものと認められる。

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平成27(行ケ)10097  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年3月8日  知的財産高等裁判所

 訂正後のクレームについて進歩性なしとした審決が取り消されました。
 本件出願の優先日当時,照明ユニットにおいて発光効率を高める ために,不純物の除去等の製造条件の最適化等により,蛍光体の内部量子 効率をできるだけ高めることは,当業者の技術常識であったことが認めら れる。しかしながら,他方で,不純物の除去等の製造条件の最適化等により, 蛍光体の内部量子効率を高めることについても,自ずと限界があることは 自明であり,出発点となる内部量子効率の数値が低ければ,上記の最適化 等により内部量子効率を80%以上とすることは困難であり,内部量子効 率を80%以上とすることができるかどうかは,出発点となる内部量子効 率の数値にも大きく依存するものと考えられる。 しかるところ,甲3には,量子効率に関し,別紙2の表3に3種の化合\n物の「量子効率(QE)」が「29」%,「51」%,「30」%である こと,段落【0067】に,「サイアロンSrSiAl2O3N2:Eu2+ (4%)(試験番号TF31A/01)」について「量子効率QEは43%」 であることの記載があるだけであり,これ以外には,量子効率,外部量子 効率又は内部量子効率について述べた記載はないし,別紙2の表4記載の\n赤色蛍光体である「Sr2Si4AlON7:Eu2+」の内部量子効率につ いての記載もない。また,甲3には,「Sr2Si4AlON7:Eu2+」 の「Sr2」を「Ca」又は「Ba」に置換した蛍光体の内部量子効率に ついての記載もない。 このほか,別紙2の表4記載の赤色蛍光体である「Sr2Si4AlON\n7:Eu2+」,さらには「Sr2Si4AlON7:Eu2+」の「Sr2」を 「Ca」又は「Ba」に置換した蛍光体の内部量子効率がどの程度である のかをうかがわせる証拠はない。 以上によれば,甲3に接した当業者は,甲3発明において,Sr2Si4 AlON7:Eu2+蛍光体のSrの少なくとも一部をBaやCaに置換し たニトリドアルミノシリケート系の窒化物蛍光体を採用した上で,さらに, 青色発光素子が放つ光励起下におけるその内部量子効率を80%以上とす る構成(相違点5に係る本件訂正発明の構\成)を容易に想到することがで きたものと認めることはできない。 したがって,本件審決における本件訂正発明と甲3発明の相違点5の容 易想到性の判断には誤りがある。
 イ これに対し被告は,内部量子効率が高いことが望ましいことは,本件出 願の優先日前の技術常識であったから,内部量子効率ができるだけ高めら れた蛍光体を用いることは,当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内のこ\nとである,本件出願の優先日前において,「ニトリドシリケート系の窒化 物蛍光体」(α−サイアロン蛍光体を含む。)の内部量子効率が80%以 上のものを製造できる可能性を,技術常識に基づいて想定できたものとい\nえるなどとして,内部量子効率がどの程度以上の蛍光体を用いるかは,目 標とする効率や蛍光体の入手・製造の容易性などを勘案して,当業者が適 宜設定すべき設計事項にすぎないから,当業者は,甲3発明において,相 違点5に係る本件訂正発明の構成を採用することを容易に想到することが\nできた旨主張する。 しかしながら,一般論として,本件出願の優先日前において,青色発光 素子が放つ光励起下における「ニトリドシリケート系の窒化物蛍光体」(α −サイアロン蛍光体を含む。)の内部量子効率が80%以上のものを製造 できる可能性を技術常識に基づいて想定できたとしても,甲3に接した当\n業者が,甲3の記載事項を出発点として,甲3発明において,Sr2Si4 AlON7:Eu2+蛍光体のSrの少なくとも一部をBaやCaに置換し たニトリドアルミノシリケート系の窒化物蛍光体を採用した上で,さらに, 青色発光素子が放つ光励起下におけるその内部量子効率を80%以上とす る構成に容易に想到することができたかどうかは別問題であり,被告の上\n記主張は,甲3の具体的な記載事項を踏まえたものではないから,採用す ることができない。

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平成27(行ケ)10078  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年3月2日  知的財産高等裁判所

 引用文献(ダブルスピンドル方式の製造装置)にシングルスピンドル方式の構成を採用することについて動機付けを欠くとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。\n
 (ア) 前記(2)アのとおり,引用発明は,複数の加工具回転軸を備え,複数の砥石 によって眼鏡レンズを加工する装置を用いる従来の玉型加工の方法に,眼鏡レンズ を回転させないという構成を採用したものである。\nそして,前記(2)イのとおり,引用例には,加工具回転軸を1つとするシングルス ピンドル方式についての記載はなく,示唆もされていない。加工具回転軸が複数あ ること自体に起因して何らかの問題が発生する,又は,加工具回転軸を1つとする ことにより何らかの効果が期待できるなどといった,シングルスピンドル方式を採 用する動機付けにつながり得ることも何ら示されていない。
(イ) 加えて,前記(2)イのとおり,ダブルスピンドル方式の眼鏡レンズ加工装置 は,加工具回転軸を1つとするシングルスピンドル方式の眼鏡レンズ加工装置に比 して,機械剛性が高く,加工時間も短いという利点を有するものと推認することが できるのに対し,シングルスピンドル方式の眼鏡レンズ加工装置がダブルスピンド ル方式の眼鏡レンズ加工装置に比して優位な点があることは,本件証拠上,認める に足りない。
(ウ) したがって,当業者において,本願出願当時,引用発明に係る一対の加工 具回転軸を備えたダブルスピンドル方式の眼鏡レンズの製造装置につき,あえて加 工具回転軸を1つとするシングルスピンドル方式の構成を採用することについては,\n動機付けを欠き,容易に想到し得ないというべきである。
(4) 相違点2の容易想到性について
ア 相違点2について
相違点2は,前記第2の3(2)ウ(イ)のとおり,レンズチャック軸と加工具回転軸 との軸間距離を変動させる軸間距離変動手段が,本願補正発明においては,レンズ チャック軸を加工具回転軸に向けて移動させるというものであるのに対し,引用発 明においては,一対の砥石軸を眼鏡レンズ駆動装置に固定された眼鏡レンズに向け て移動させるというものである点をいい,本願補正発明と引用発明との間に,この ような相違点が存在することは,当事者間に争いがない。 引用発明の砥石軸は,本願補正発明の加工具回転軸に相当し,また,引用発明の 眼鏡レンズは,本願補正発明のレンズチャック軸に相当する軸部材に保持されてい るものであるから,引用発明における上記軸間距離変動手段は,実質において,一 対の加工具回転軸をレンズチャック軸に向けて移動させるというものである。 よって,相違点2は,実質的には,軸間距離変動手段が,本願補正発明において は,レンズチャック軸を加工具回転軸に向けて移動させるというものであるのに対 し,引用発明においては,一対の加工具回転軸をレンズチャック軸に向けて移動さ せるというものである点をいうものと認められる。
イ 本願補正発明における軸間距離変動手段は,加工具回転軸が単数であること を前提とするものであり,加工具回転軸が複数の場合に同手段を採用することは, 事実上不可能である。\nしたがって,相違点2は,相違点1に係る加工具回転軸の個数差を前提とするも のということができ,相違点1に係る本願補正発明の構成が容易に想到し得ない以\n上,相違点2に係る本願補正発明の構成も容易に想到し得るものではない。
(5) 被告の主張について
ア 被告は,当業者において,引用例に記載されている「眼鏡レンズが砥石に当 接した直後から,眼鏡レンズには眼鏡レンズの回転を停止する方向に力が継続して 加わっている」(【0006】)という軸ずれの原因となる物理現象は,ダブルスピン ドル方式及びシングルスピンドル方式のいずれにおいても生じるものであることを 理解することができることを前提として,眼鏡レンズが回転していない状態で砥石 と当接させるという上記物理現象に対する引用発明の解決手段は,ダブルスピンド ル方式及びシングルスピンドル方式のいずれにおいても使用できるものであり,当 業者であれば,上記解決手段の適用対象が,いずれの方式の装置であるかにかかわ らず,軸ずれの課題を解決し得るものとして認識することができる旨主張する。 本件証拠上,加工具回転軸の個数と軸ずれとの間に何らかの関係があるものとは 認めるに足りず,したがって,たとえ,当業者において,上記解決手段がダブルス ピンドル方式及びシングルスピンドル方式のいずれにおいても引用発明の課題であ る軸ずれを防止し得る旨を認識したとしても,それは,引用発明の一対の加工具回 転軸を1個の加工具回転軸とすることには,つながらない。

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平成26(行ケ)10245  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年12月17日  知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした拒絶審決が、動機付けなしとして取消されました。
 引用発明は,前記イのとおり,大きい,平坦な面を提供することができる インストルメントパネルを提案することを目的とし,引き出し板40を拡張位置ま で引き出すと,カバー20のテーブル面22と引き出し板40のテーブル面42と が同時に使用可能になって2倍の作業面が得られるという効果を奏するものである\nところ,かかる課題や効果の観点からは,引用発明において,周知技術1を適用し て,引き出し板40を,カバー20と空間30の間で,フレーム要素12に対して 摺動可能かつ枢動可能\に設ける動機付けがあるとはいえない。
・・・・
 被告は,相違点2に関し,引用発明における引き出し板40に代えて,周知技術 2のテーブルを適用することにより,引用発明の課題を十分に解決できるから,相\n違点1及び2を併せて検討すれば,引用発明において,周知技術1を適用すること によって空間30へのアクセスを良くし,周知技術2を適用することによって引用 発明の課題を解決できるのであって,引用発明において,周知技術1を適用するこ とに阻害要因は存在しない旨主張する。 しかし,引用例には,引用発明が,大きい,平坦な面を提供することができるイ ンストルメントパネルを提案することを目的とし,引き出し板40を拡張位置まで 引き出すと,カバー20のテーブル面22と引き出し板40のテーブル面42とが 同時に使用可能になって2倍の作業面が得られるという効果を奏するものであるこ\nとが記載されるとともに,さらに,空間30へのアクセスの改善という課題を解決 する手段として,引き出しレール70のセットを構成する内側引き出しレール72\nを,フレーム要素12ではなくカバー20に固着することにより,引き出し板40 がカバー20と連係して動くようにする形態が開示されており,かかる形態によれ ば,引き出し板40を拡張位置まで引き出すと,カバー20のテーブル面22と引 き出し板40のテーブル面42とが同時に使用可能になって2倍の作業面が得られ\nるという上記効果を維持しつつ,空間30へのアクセスを良くすることができると いう効果をも奏し得ることが開示されているといえる。 そうすると,カバー20のテーブル面22と引き出し板40のテーブル面42と が同時に使用可能になって2倍の作業面が得られるという効果とともに,空間30\nへのアクセスを良くするという効果を奏するにもかかわらず,引用例や周知例に何 らの記載も示唆もないのに,当業者において,周知技術1を適用した上で,更に周 知技術2を適用することにより,周知技術1を適用することでカバー20のテーブ ル面22と引き出し板40のテーブル面22とを同時に使用することができなくな るのを回避することを想起し,あえて引用発明において周知技術1を適用すること を,容易に想到することができたということはできない。

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平成26(行ケ)10182  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年8月20日  知的財産高等裁判所

 薬の特許について動機付けがないとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 前記(ア)ないし(エ)の記載によれば,うつ病患者は,抑うつ気分な どの基本症状のほかに,記憶や集中力や判断力の低下などの認知の障害 を訴えることがあり,認知機能に重要と考えられる脳器官(例えば海馬\nや前頭葉)がうつ病にも本質的に関与する可能性が指摘されていたが,\nうつ病と,記憶障害が中核症状である認知症(痴呆)とは,その病態が 異なり,認知症に有効な薬が当然にうつ病にも有効であるとの技術常識 があることを認めるに足りる証拠もないから,記憶・学習能力の低下を\n改善する薬が,うつ病をも改善するとの効果を有するとの技術常識が, 本願出願日当時に存在していたと認めることはできない。 また,抑うつ様症状の評価法としては,強制水泳試験(動物に強制的 に水泳を負荷することで生じる行動抑制を抑うつ様症状の指標として評 価する試験(甲22・97頁右欄10〜12行))等が汎用的であって, 記憶・学習能力に関する評価法であるモリス型水迷路試験から,抑うつ\n様症状が評価できるとの技術常識があったと認めることもできない。さ らに,うつ病と海馬組織中のアラキドン酸含有量との関連についての技 術常識があったことを認めるに足りる証拠もない。
ウ 引用例2に記載された発明の認定
前記イ(オ)のとおり,本願出願日当時,記憶・学習能力の低下の改善と\nうつ病の改善との関連,又は,うつ病と海馬組織中のアラキドン酸含有量 との関連についての技術常識があったと認めることができないことを前提 とすれば,引用例2に接した当業者は,引用例2の実施例3の老齢ラット のモリス型水迷路試験の結果に基づいて,「構成脂肪酸の一部又は全部が\n アラキドン酸であるトリグリセリド」を用いることにより,「記憶・学習 能力の低下」が改善されることは認識できるものの,さらに「うつ病」が\n改善されることまでは認識することができないというべきであって,まし て,「うつ病」を含む様々な症状や疾患が含まれる「脳機能の低下に起因\nする症状あるいは疾患」全体が改善されることまでは認識できないという べきである。 そうすると,引用例2に記載された発明の医薬組成物が予防又は改善作\n用を有する症状又は疾患を,本件審決のように,「脳機能の低下に起因す\nる症状あるいは疾患」と広く認定することは相当ではなく,その適用は脳 機能の低下に起因する記憶・学習能\力の低下に限られるというべきである。 したがって,引用例2に記載された発明は,「構成脂肪酸の一部又は全\n部がアラキドン酸であるトリグリセリドを含有するトリグリセリドを含ん で成る,脳機能の低下に起因する記憶・学習能\力の低下の予防又は改善作\n用を有する医薬組成物。」(以下「引用発明2’」という。)と認定すべきで ある。
(3) 本願補正発明と引用発明2’との対比
そうすると,本願補正発明と引用発明2’との一致点及び相違点は,次の とおりである。 ア 一致点
構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリドを含ん\nで成る医薬組成物。 イ 相違点
本願補正発明は,「うつ症状の改善のため」のものであるのに対し,引 用発明2’は,「記憶・学習能力の予\防又は改善作用を有する」ものであ る点(以下「相違点α’」という。)。 (4) 相違点α’に係る容易想到性について
確かに,引用例2の【請求項1】〜【請求項16】,【0012】,【001 7】には,「構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリ\nド」を用いて,「脳機能の低下に起因する症状あるいは疾患」の予\防又は改 善を行うことが記載され,当該症状あるいは疾患として,「記憶・学習能力\nの低下,認知能力の低下,感情障害(たとえば,うつ病),知的障害(たと\nえば,痴呆,具体的にアルツハイマー型痴呆,脳血管性痴呆)」等が記載さ れている。 しかし,前記(2)ウのとおり,引用例2に接した当業者は,引用例2の実 施例3の老齢ラットのモリス型水迷路試験の結果に基づいて,「構成脂肪酸\nの一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリド」を用いることにより, 「記憶・学習能力の低下」が改善されることは認識できるものの,さらに\n「うつ病」が改善されることまでは認識できないというべきである。 そして,前記(2)イ(オ)のとおり,うつ病と,記憶障害が中核症状である 認知症とは,その病態が異なり,本願出願日当時,記憶・学習能力の低下を\n改善する薬が,うつ病をも改善するとの効果を有するとの技術常識が存在し ていたとは認められないことからすれば,引用例2に接した当業者が,引用 例2に記載された「脳機能の低下に起因する症状あるいは疾患」に含まれる\n多数の症状・疾患の中から,特に「うつ病」を選択して,「構成脂肪酸の一\n部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリド」を用いて,うつ病の症状 である「うつ症状」が改善されるかを確認しようとする動機付けがあるとい うことはできない。 そうすると,引用例2に基づいて,相違点α’に係る本願補正発明の構成\nに至ることが容易であるということはできず,本件審決のこの点に関する判 断には誤りがあるというべきである。 283/085283

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平成27(行ケ)10009  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年8月4日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、どのような分野でも用い得る慣用技術ではないので、構造が共通していても適用容易とはいえないとして、進歩性なしとした審決を取り消しました。
 相違点2は,前記第2,3(4)イのとおり,本件訂正発明1では「出力部材が所定 の位置に達し,前記所定の位置にあることを検知可能」にしたのに対し,甲2発明\nでは「ピストン21の反転動作可能」にしたもので,「検知」については不明である\n点である。 そして,甲1事項2は,前記第2,3(2)ウのとおり,「ピストン行程の行程端で, クッションプラグ32によりプランジャ126を上昇させてプランジャ型スイッチ 100の開閉状態を切り換え,複数の空気ポート130の間が連通されることでピ ストン30が所望の位置に移動したことを確認可能に構\成した流体駆動シリンダ1 0。」である。 審決は,1)甲2発明の二方パイロット弁100,101も,甲1事項2のプラン ジャ型スイッチ100も,ピストンが端部の所定位置に達すると作動する開閉弁式 スイッチという点で,用途もスイッチの構造も共通しているとして,甲2発明の二\n方パイロット弁100,101について甲1事項2のプランジャ型スイッチ100 を適用することは,当業者であれば容易に想到し得る,2)適用されたプランジャ型 スイッチ100に,甲2発明のピストン21が移動して端部に達し,その位置にあ ることを検知させることは,当業者が容易に想到し得ると判断する。 これに対し,原告は,甲2発明の二方パイロット弁100,101と,甲1事項 2のプランジャ型スイッチ100とは,用途,構造及び機能\を異にし,動機付けが なく,阻害要因が存する旨を主張するので,以下,検討する。 甲2発明は,前記1(2)のとおりであり,ピストン21が左端の所定の位置に達し たときに,差圧ピストンがピストン21に押されて移動することにより,二方パイ ロット弁100,101の開閉状態が切り換えられ,制御管路93から供給される 圧力媒体が無圧領域41に連通することにより,三方弁37が切り替わって圧力配 管39からシリンダ23に圧力媒体が流入するなどして,ピストン21が右側に反 転動作をするものである。そうすると,甲2発明の二方パイロット弁100,10 1は,ピストンが端部の所定位置に達すると作動する開閉式スイッチであるともい える。 しかしながら,甲1事項2のプランジャ型スイッチ100は,どのような分野で も用い得る慣用技術等であるとまではいえないから,甲2発明の二方パイロット弁 100,101を,用途やスイッチの構造が共通しているとの点をもって,直ちに\n甲1事項2のプランジャ型スイッチ100に置換可能であるとはいえない。\nそして,相違点2は,本件訂正発明1においては,「出力部材の位置検知」である のに対し,甲2発明においては,「ピストンの反転動作」というものであるから,甲 2発明の二方パイロット弁100,101を検知機能を有する甲1事項2のプラン\nジャ型スイッチ100に置換するには,まず,甲2発明の二方パイロット弁100, 101に検知機能を持たせることが動機付けられなければならない(なお,甲2発\n明の二方パイロット弁100,101の開閉機構がピストン21の往復動作と連動\nしているからといって,二方パイロット弁100,101がピストン21の行程端 を検知しているとはいえない。)。 そこで,検討してみると,甲2発明の二方パイロット弁100,101は,圧力 媒体の流路回路を切り換え,ピストン21が自動的に反転動作をするための動作切 替手段の一部である。そうすると,当業者が,自動往復運動をしているピストン2 1の行程端を検知しようと試みて,動作切替手段の一部にすぎない二方パイロット 弁100,101にピストン21の行程端の検知機能を持たせようとする合理的理\n由がないから,甲2発明の二方パイロット弁100,101を,甲1事項2のプラ ンジャ型スイッチ100に敢えて置換しようと動機付けられるとはいい難い。 被告は,1)甲2発明の二方パイロット弁100,101にはスイッチの機能があ\nる旨を主張するが,そのように解したとしても上記結論が左右されないことは,上 記説示のとおりである。また,被告は,2)甲1事項2のプランジャ型スイッチ10 0にはピストンを反転動作させるためのスイッチの機能がある旨を主張するが,甲\n1事項2のプランジャ型スイッチ100は,ピストン30の位置を確認可能にした\nものであり,ピストン30の反転動作は,プランジャ型スイッチ100の機能によ\nるものではない。さらに,被告は,3)「リミットスイッチのようなセンサによって 操作される制御弁は,機械の順次動作におけるタイミングに合わせてピストンを所 望の方向へ移動させることによって上記シリンダを制御するために用いられる。」と の甲1の記載を指摘するが,リミットスイッチは,一般に,位置を検知する手段に すぎず,当然に,ピストンを反転動作させる手段でもあることにはならない。そし て,上記記載に続く,「機械の順次動作における次のステップが起こる前に上記ピス トンが最伸長または最後退の行程位置へ移動したのを知ることが頻繁に必要になる ので,ピストンの行程の行程端において上記ピストンロッドの外端または当該ピス トンロッドに連結した作業部分にリミットスイッチが接触するように,当該リミッ トスイッチが使用されてきた。」との記載を併せかんがみれば,甲1は,リミットス イッチを,ピストンの位置を検知するための手段としているにすぎないと認められ る。 したがって,上記被告の主張は,いずれも,採用することができない。 以上のとおりであり,甲2発明の二方パイロット弁100,101を甲1事項2 のプランジャ型スイッチ100に置換させることはできないから,相違点2に係る 本件訂正発明1の構成は,当業者が容易に想到することができない。\n

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平成26(行ケ)10186  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月25日  知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした拒絶審決が維持されました。デシテックスと延伸率を,同時に,本願発明の数値範囲まで大きくすることは示唆されていないとしたものの、一般的な糸のサイズを利用しているにすぎないと判断されました。
 他方,両発明は,使用する裸スパンデックス糸のデシテックスの値及びエストラマー材料の供給時における延伸率の制御値が異なっている。そこで,これらを前提に,相違点として,何を認定すべきかを検討する。 確かに,本願発明の延伸率は2.5倍以下であり,引用発明の延伸率は2倍以下 であり,ともに上限を定めていないから,延伸率の値自体を比較すると,引用発明 の範囲である2倍以下は,必ず2.5倍以下という意味において,本願発明の数値 範囲に含まれている。 しかしながら,本願発明と引用発明は,ともに,ヒートセットを不要にするとい う目的を達成するために,一定の回復張力を目指して,糸のスパンデックスと延伸 率という2つのパラメータの組合せを提示するものであるが,甲1【0096】〜 【0099】の実施例8,12,13,35〜37,41〜43,48〜51,5 6,57を見ると,同じスパンデックス数であっても,収縮率が異なっている結果 が出ていることからも明らかなとおり,回復張力は,糸のスパンデックスだけでな く,延伸率や,共に使用される硬質糸の種類やサイズといった諸要素によって決せ られるから,スパンデックスと延伸率は相互に関係するパラメータといえ,単純に, 同一の延伸率値が常に同一の技術的意義を有するとはいえないし,数値として重な り合っている範囲が,常に同一の技術内容を示しているともいえない。他方,スパ ンデックスと延伸率の値は,同一回復張力を前提とする限りにおいて,相互に独立 したパラメータとして,設定できるわけではない。また,延伸率とデシテックスの 関係は,相互に関連するとはいえるが,それ以上の技術的関係が明らかでない以上, 重なり合いの範囲も定かではないから,本願発明と引用発明において,エラストマ ー材料を延伸させる製法である点において一致すると認定できるとしても,延伸率 の数値の点を相違点の認定からおよそ外し,容易想到性の判断から除外することは できないというべきである。 したがって,被告の主張するように,単純に延伸率の値の重なりをもって,本願 発明と引用発明の一致点というべきではないが,他方,原告の主張するように,延 伸率の違いをデシテックスの値と関連しない独立した相違点として挙げることも相 当ではなく,本願発明と引用発明の相違点は,「本願発明の裸スパンデックス糸が4 4〜156デシテックスで,その延伸率が元の長さの2.5倍以下であるのに対し, 引用発明の裸スパンデックス糸が17〜33デシテックスであり,その延伸率が元 の長さの2倍以下である点」と認定した上で,相互に関連したパラメータの変更の 容易想到性を判断すべきである。
・・・
(2) 確かに,デシテックスを大きくすることと,延伸率を大きくすることは, ともに回復張力を大きくする作用を有するものであるから,同程度の回復張力にす るためには,デシテックスを大きくした場合には,延伸率を小さくし,逆に,延伸 率を大きくした場合は,デシテックスを小さくする必要がある。したがって,引用 発明のデシテックスと延伸率を,同時に,本願発明の数値範囲まで大きくするとい う動機付けや示唆は,引用発明が前提としている回復張力を前提にする限りは,当 然には生じてこないというべきである。 しかしながら,本願発明における「44〜156デシテックス」という糸のサイ ズと,引用発明における「17〜33デシテックス」という糸のサイズとは,共に, 市場で普及している20〜400デシテックスという範囲内にあり(乙2〜5,弁 論の全趣旨),両発明は,一般的な糸のサイズを利用しているにすぎないから,この 範囲内にある糸のサイズの変更には,格別,技術的な意義はなく,当業者にとって, 予定した収縮率等に応じて適宜設定できるものといえる。したがって,デシテック\nスの範囲を本願発明の範囲の数値まですることは,当業者が容易に想到できる事項 である。

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平成26(行ケ)10253    特許権  行政訴訟 平成27年7月9日  知的財産高等裁判所

 動機付けなしとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 相違点2についての審決の判断は,要するに,甲2発明の移動体3に「水 平移動可能な移動ステージ」を適用することは,当業者が容易に想到することであ\nり,その場合,当業者は,水平方向に揺動自在な物品載置台11を「固定棚」とす ることを当然想到するというものであるから,「水平移動可能な移動ステージ」の適\n用が容易かどうかの判断は,水平方向に揺動自在な物品載置台11が存在すること を前提にして行われている。 しかし,甲2発明において,既に水平方向に揺動自在な物品載置台11が存在す るのであれば,移動体3の真下にあるステーションSTとの間で物品Bを移載する 場合はもちろん,物品保持部BSとの間で物品Bを移載する場合も,把持具3dを 水平方向に移動させる必要がない。すなわち,物品載置台11を水平方向に揺動さ せれば足りるから,別途「水平移動可能な移動ステージ」を設けて把持具3dを水\n平方向に移動させる理由がないことは明らかである。 イ したがって,当業者が,甲2発明の「水平方向に揺動自在な物品載置台 11」に代えて,相違点2に係る本件訂正発明1の構成を備えるようにすることを\n容易に想到できたか否かを検討すべきところ,甲2発明に「水平移動可能な移動ス\nテージ」を設け,その下方に把持具3dを保持したとすると,そのようにして得ら れるものは,ステーションSTとの間での移載及び物品保持部BSとの間での移載 のうち,一方については,単に把持具3dを昇降させることで行い,他方について は,把持具3dを「水平移動可能な移動ステージ」で水平方向に移動させてから昇\n降させることで行うことになる。 そうすると,甲2発明に「水平移動可能な移動ステージ」を設け,その下方に把\n持具3dを保持して得られるものは,ステーションSTとの間での移載と物品保持 部BSとの間での移載とを,互いに異なる動作で行うことになる。また,ステーシ ョンSTとの間での移載及び物品保持部BSとの間での移載のうち,一方は把持具 3dで,他方は「水平移動可能な移動ステージ」及び把持具3dで,それぞれ行う\nことになるから,ステーション用移載手段SCと保持部用移載手段BCとを移動体 3に設けた単一の物品移載手段BMで兼用しているとはいえなくなる。 すなわち,甲2発明の構成を上記のように変更すると,甲2発明の技術的意義(前\n記(1))が失われることになるから,「物品載置台11」と「水平方向に揺動自在」 とするための部材が省略できることを考慮してもなお,そのような変更をする動機 付けが当業者にあるとは認められない。
ウ 以上に述べたとおり,当業者が,甲2発明に「水平移動可能な移動ステ\nージ」を設け,その「水平移動可能な移動ステージ」の下方に把持具3dを保持す\nる変更を行う動機付けはなく,また,そのようにすると甲2発明の技術的意義を失 わせる結果になるから,阻害要因があるといえ,当業者が容易に想到し得ることで あるということはできない。
(3) 審決の判断について
ア 審決は,甲2の請求項4,【0007】の記載は,物品の移載手段を物品 保持部BSよりも移動体3に備えさせる方が構成の簡素化のために好ましいことを\n示唆し,当業者であれば,物品Bを移動体3の横幅方向に移動させるもの(【003 5】)にもこの示唆が適用可能であることを容易に理解するから,甲2発明に甲1事\n項2の構造又は甲4事項の構\造を適用し,物品Bを移動体3の横幅方向に移動させ る物品載置台11の機能を移動体3が備えるようにすることは,当業者が容易に想\n到し得る事項であると判断した。 しかし,甲2の請求項4,【0007】の記載は,そもそも,甲2に記載された実 施形態に表れていない何らかの新たな構\成を開示したり,それをこれらの実施形態 に付加したりすることを示唆するものではないから,これらの記載に接した当業者 は,甲2に「第1実施形態」として記載された甲2発明の構成の一部に代えて,甲\n1事項2の構造又は甲4事項の構\造を適用することを想到しない。
イ 審決は,移動体3から把持具3dを下降させて移動体3の走行経路の両 脇に位置する物品載置台11上の物品Bへ到達させるために,物品載置台11を移 動体3の把持具3dの真下に移動させるか,反対に,移動体3の把持具3dを物品 載置台11の真上に移動させるかは,単なる二者択一的な選択であるから,甲2発 明において,物品載置台11を移動体3の把持具3dの真下に移動させる代わりに, 移動体3の把持具3dを物品載置台11の真上に移動させるようにすることを阻害 する要因は見当たらないと判断した。 しかし,甲2発明において,移動体3の把持具3dを物品載置台11の真上に移 動させるために,「水平移動可能な移動ステージ」を設け,その下方に把持具3dを\n保持すると,前記のとおり,甲2発明の技術的意義を失わせる結果になるから,物 品載置台11を移動体3の把持具3dの真下に移動させるか,移動体3の把持具3 dを物品載置台11の真上に移動させるかは,単なる二者択一的な選択ではない。
ウ 審決は,甲2の図12に示された実施形態も,【0032】ないし【00 34】に記載されているように,屈曲アーム20bの伸縮動作によって移動体の移 動方向の左右両側に物品Bを出退自在に搬送するとともに,屈曲アーム20b自体 の昇降動作によって物品Bを昇降させて物品載置枠21bに載置するものであって, 甲2発明と同様に,物品Bの水平方向(横方向)移動及び上下動が必要なものであ ると判断した。 しかし,図12に示された実施形態の移動体3は,【0035】に明記されている とおり,物品Bを移動体横幅方向に移動させて物品Bの移載を行うようにしたもの である。そして,一般に物を横方向(水平方向)に移動させるときに,移動を円滑 にするために,また,その物自体やその物が置かれる場所(例えば床)が傷つかな いようにするために,その物を持ち上げて引きずらないようにすることは,日常生 活でも一般常識として普通に行うことである。しかも,甲2に記載された移動体3 のように工場内で物品Bの搬送に使用されるもの(【0002】)においては,物品 Bが精密機器であることも当然想定されるから,物品Bを移動体横幅方向に移動さ せるときにこれを持ち上げて引きずらないようにすることは,技術常識である。そ うすると,屈曲アーム20bが物品Bを僅かに昇降させるのは,「僅かに」とされて いることからも理解されるように,物品Bを移動体横幅方向に移動させるために必 要な限りで昇降するのであって,物品Bを垂直方向に移動させて物品Bの移載を行 うことを意図してのことではない。したがって,上記実施形態から,物品Bの水平 方向移動及び一定幅の上下動を同一の部材により行うことが認識されるものではな い。

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平成26(行ケ)10225  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月9日  知的財産高等裁判所

 審決は、訂正請求により無効理由無しと判断しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
 被告は,本件訂正発明1のハイスロールは,従来のハイスロールでは対応できなかった特に高温高圧下でなされる棒鋼,線材又は形鋼の粗圧延に使用されるものであるから,その用途・課題は容易に想到できない旨を主張する。 まず,この点の検討に当たり,本件訂正発明1の特許請求の範囲の記載をみると,「棒鋼,線材,あるいは形鋼の粗圧延のための熱間圧延用複合ロール」との部分は粗圧延全体を示している。そして,特許請求の範囲には,更に「圧延速度が小さいために鋼材と長時間接触することによりロール内部まで温度上昇するとともに水冷による冷却が回転ごとに繰り返されることによる熱疲労き裂が起点となってロール表面が損傷することを防止するため」とあり,本件訂正明細書には「前記したハイス系ロールの使用は,圧延速度の大きな仕上げ及び中間圧延機群での使用に限定されていた。なぜなら,このハイス系ロールを,圧延速度が小さな粗圧延機群に使用する場合,ロールが高温となった鋼材と比較的長い時間接触することにより,熱伝導によってロールの内部まで温度が上昇し,また水冷による冷却がロールの回転ご\nとに繰り返されることにより,ロールの表面から深いき裂が生じるからである。このため,このき裂が起点となって,ロールの表\面が損傷し,ひいては表面の一部が剥離するため,全く使用に耐えるものではなかった。」(【0004】)とあり,圧延速度や温度についての定量的な記載があるものではなく,仕上げ圧延及び中間圧延との相対的な対比として記載されているにすぎず,一方で,本件訂正発明1の「粗圧延」が特定の箇所での使用に限定することを明示する記載は見当たらない(なお,特許法30条1項適用のために示された甲15には,本件訂正発明の熱間圧延複合ロールを,棒鋼,線材の粗スタンドの後段部で使用したことが明示されている〔45〜46頁〕。)。\nしたがって,本件訂正発明1のハイスロールは,棒鋼,線材又は形鋼の粗圧延全般に用いることを目的とするものと認められる。 そうすると,前記(1)にて認定判断のとおり,ハイスロールを棒鋼,線材の粗圧延に用いることは周知技術であり,その際の技術的課題は技術常識なのであるから,本件訂正発明1のハイスロールの使用用途及び解決課題が当業者において容易に想到できないとはいえない。

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平成26(行ケ)10150  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年5月27日  知的財産高等裁判所

 動機付けがないから両者を組み合わせるのは後知恵であるとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 以上によれば,刊行物2発明は,移動体と物品保持部との間及び移動体とステーション(加工装置)との間の物品の各移載手段を,単一の昇降移動手段で兼用し,構成の簡素化を図ることをその技術的意義とするものである。一方,相違点1に係る本件発明の構\\\成は,オーバーヘッド搬送車からその真下に位置する処理加工治具ロードポートへは,オーバーヘッド搬送車の移動ステージ下方に取り付けられて物品を把持するホイスト把持部が下降して,物品を移送するが,オーバーヘッド搬送車の側方に配置される固定棚へは,ホイスト把持部が移動ステージによって固定棚の上方へ水平方向に移動させられてから下降して,物品を移送するものであり,移動体側に物品の昇降移動と横幅移動の双方の手段を兼ね備え,ロードポートと固定棚への物品移載手段を互いに異なる動作で行うものであり,単一の昇降移動手段で兼用しているものではない。 そうすると,刊行物2発明において,把持具が昇降移動する構成に加えて,水平\n方向に移動する構成を適用し,物品載置台及び加工装置へ異なる移動手段で物品を移載するという相違点1に係る構\\\成とすることは,刊行物2発明の技術的意義を失わせることになる。そして,そもそも刊行物2発明においては,物品載置台11が揺動移動する構成となっており,移動体3の直下に位置することが可能\\\であるため,物品移載手段BMの把持具3dは昇降移動のみで物品載置台11との間の物品の移載が可能となるにもかかわらず,あえて把持具3dを水平方向に移動させる構\\\成を追加する必要性がなく,そのような構成に変更する動機付けがあるとは認められない。
ウ(ア) 以上に対し,被告は,刊行物2発明のような,把持具3dを下降させて物品載置台11へ物品を移載する物品移載手段BMがあり,該把持具3dに対して物品載置台11が移動体3の走行経路の両脇に位置するレイアウト構造を有するものにおいては,1)物品載置台11の物品載置部分側を把持具3dの真下に位置するよう横幅方向に移動させた上で把持具3dを下降させるか,又は,2)移動体3の把持具3d側を物品載置台11の物品載置部分の真上に位置するよう横幅方向に移動させた上で把持具3dを降下させるかは,単に二者択一的な動作を選択することで,当業者ならば当然着想する技術思想であり,上記1)の構造とした場合には,物品載置台11の横幅方向の移動機能\\\が不要になるため,これを固定式の物品載置台にできることも,当業者には自明の事項にすぎないと主張する。 しかし,前記イのとおり,刊行物2発明においては,把持具3dが,物品載置台だけではなく,加工装置との間でも単一の移載手段(昇降手段)を兼用することで構成を簡素化することを技術的意義とするものであり,上記1)の構成をあえて2)の構成に変更することの動機付けはないから,刊行物2発明において上記2)の構成が上記1)の構成と二者択一的とはいえないし,結局のところ同主張は後知恵的な発想であり,採用することができない。\n

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◆関連事件です。平成26(行ケ)10149

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平成26(行ケ)10153  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年3月5日  知的財産高等裁判所

 スロットマシンについて、進歩性違反なしとした審決が取り消されました。理由は動機付けありおよび本件発明の認定誤りです。
 被告は,甲1発明の扉開閉監視手段(サブCPU82及びセンサ)は,設定値の変更とは無関係であるから,甲1発明の扉開閉監視手段に甲5,甲15及び甲16に記載の設定値の変更に関連する技術事項を適用する動機付けはない旨を主張する。 しかしながら,甲1発明の技術分野(遊技機)と,甲5,甲15及び甲16からうかがわれる周知技術の分野(遊技機)は,同一であり,特段の阻害事由がないのであれば,当業者は,公知の発明に周知の技術を適用しようと動機付けられるところ,上記特段の阻害事由は認められない。 のみならず,甲1発明の扉開閉監視手段は,甲1に,「図55はドアオープン監視機能画面を示している。スロットマシン1の電源が断たれている間,主に遊技店の営業時間外の間に,前面扉37が開けられたことを,例えばセンサといったハードウエアで監視している。そして,スロットマシン1に電源が投入された時に,サブCPU82は,そのハードウエアをチェックし,前面扉37が開けられた形跡を検出した場合には,図示するようなメッセージを液晶表\\示装置22に表示する。遊技店関係者は,このメッセージにより,営業時間外に遊技機に不正行為が行われた可\n 能性が高いことを把握することが出来る。」(【0265】)と記載されているように,不正行為の監視を目的とするものであるところ,その不正行為とは,とりもなおさず,設定の変更のことなのであるから(【0253】),甲1に接した当業者は,更なる不正手段の防止のために,甲1発明の扉開閉監視手段に甲5,甲15及び甲16からうかがわれる不正変更防止の周知技術を適用しようと,強く動機付けられるといえる。\n
・・・
相違点6は,本件発明1の構成【C9】を甲1発明が備えていないというものである。そして,構\\成【C9】は,本件発明1の構成【C2】によって遊技用記憶手段に含まれた,1)所定の確率に基づいて算出される払出率について設定された段階を示す情報を記憶する特定領域,2)遊技の進行状況に関する情報を記憶する領域として記憶すべき情報の重要度に応じて分けられた特別領域,及び3)一般領域の3領域のうち,一般領域に記憶されている情報を,設定変更手段による段階の変更の際に初期化すると特定するものである。 これら,「特定領域」「特別領域」「一般領域」が何を示すものかについては,本件明細書を参酌する必要があるといえるが,これら3領域のうちのいずれが段階変更の際に初期化されるかは,本件明細書の記載を参酌するまでもなく特許請求の範囲の記載から一義的に明らかであり,本件明細書の記載を参酌する必要はない。すな わち,構成【C9】により初期化されるとされたのは一般領域のみであり,特定領域や特別領域の初期化の有無については,構\\成【C9】は何ら限定を付すものではない。
ウ 小括
以上によれば,前記の審決は,相違点6が,一般領域の初期化に係るものであるのにもかかわらず,上記各刊行物記載の発明が,「特定領域」「特別領域」「一般領域」の区分という相違点1に係る事項を有しないことと,特別領域の初期化という相違点6とは関連のない技術事項を有しないことを理由とし,上記各刊行物に相違点6に係る本件発明1の構成の記載がないと判断したものであって,合理的根拠を欠くことが明らかである。\nそうであれば,この点において,審決の判断過程には,誤りがあるといわざるを得ない。

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平成26(行ケ)10045  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年12月24日  知的財産高等裁判所

 薬(処置剤)について、動機付けなしとして、進歩性違反なしとした審決が取り消されました。
 それに続く引用例1記載の第II相臨床試験でも,乳癌又は多発性骨髄腫患者合計280名に対する0.4mg,2.0mg又は4.0mgの5分間点滴のいずれにおいても,パミドロン酸90mgの2時間点滴と同程度の安全性を示し,4.0mgゾレドロン酸の5分間点滴は,90mgパミドロン酸と同程度の溶骨性骨合併症の予防効果を奏した。\n以上の引用例1及び2に開示されたゾレドロン酸の第I相及び第II相臨床試験の結果によれば,ゾレドロン酸は,4mgという低用量で従来用いられていたパミドロン酸90mgに匹敵する薬効を奏し,5分間の短時間の静脈点滴で安全性が確保できるものであると理解できる。そうすると,・・・相試験で,当該用法用量による安全性について違った結果が生じて用法用量をより安全性の高いものに変更する可能性があることを考慮しても,第I相及び第II臨床試験の段階では,安全性に疑問を呈するような結果は全く出ていないのであるから,患者の利便性や負担軽減の観点からも,引用例1及び2の記載からは,4mgのゾレドロン酸を5分間かけて点滴するとの引用発明の投与時間を更に延長する動機付けを見出すことは困難であるというべきである。

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平成26(行ケ)10071  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年12月24日  知的財産高等裁判所

 動機付け有りとして、進歩性違反なしとした審決が取り消されました。
 審決は,搬送対象について甲2発明1の搬送対象は,キューイなどの「果菜」であるが,甲3発明1の搬送対象は,薄物や不定形品などの小物類であり,搬送対象の具体的性状を異にしており,この搬送対象の相違により,発明の対象となる技術分野も,甲2発明1において「果菜自動選別装置用果菜載せ体」であるのに対し,甲3発明1では「物品選別装置用物品載せ体」であって,相違すると判断した。 しかし,甲2発明1は,上記のとおり,キューイ等の果菜を選別する装置における果菜を載置する受け台に関するものであり,また,甲3発明1は,上記のとおり,薄物や不定形品などの小物類を自動的に仕分ける装置における小物類を載置する搬送ユニットに関するものであるから,甲2発明1と甲3発明1とは,物品を選別・搬送する装置における物品載せ体,すなわち「物品選別装置用物品載せ体」に関する技術として共通しているといえる。
また,両者が搬送する物品は,甲2発明1では,キューイ等の果菜であるのに対して,甲3発明1では,薄物や不定形品などの小物類であるから,物品の大きさや性状に大きな相違はない。このことは,甲1において,「各種の品物を,大きさ(サイズ)別,重量別などに自動的に選別してより分ける選別装置」と記載され(【0001】),「従来より小荷物,果菜その他の各種品物を大きさ,重量,形状等の条件に基づいて自動的に選別する装置には種々のものがあった」として,従来技術について,特に小荷物と果菜とを区別しておらず,「特にいたみやすい果菜の自動選別」(【0001】として,傷みやすい搬送物の典型として特に果菜を挙げながらも,請求項1において,搬送物につき「果菜や小荷物等」との記載をしており,対象とする物品が,果菜と小荷物等とで異なるとしても,これらの物品を選別,搬送する装置としては,同一の技術分野に属するものと捉えていることが明らかである。しかも,果菜が傷みやすく傷付きやすいとはいえ,甲1にも示されるように,従来から,果菜を選別して搬送方向から側方に送り出す際であっても,容器を傾倒する方式が採用されていたのであるから,破損しやすい小物類との間で,技術分野が異なるというほどに相違するものではない。 さらに,甲2発明1は,前記のとおり,キューイを転動させて受けボックス内に整列させると,受けボックスの下流側内壁面にキューイが当接したり,キューイの相互接触により,キューイの外周面に打ち傷や擦り傷が付いたりすることがあり, キューイの商品価値が損なわれるという問題点を解決するために,コンベアの搬送面上に形成した受け部に果菜物を個々に載置し,果菜物を所定間隔に離間した姿勢に保持して搬送することで,搬送中における果菜物の接触及び衝突を防止することとしたものであるところ,搬送物を選別振り分けする際に,搬送物が壁等の設備に衝突することを防止したり,搬送物同士の相互接触を防止したりするという課題は,ボックス内に整列させる際のみならず,選別・搬送の全過程を通じて内在していることは明らかである。そして,甲2発明1は,振り分けコンベアの受け台が,載置された搬送物を搬送方向側方に送り出す際に,搬送方向側方に向けて傾動可能な構\\成であるところ,傾動させて搬送物を搬送方向側方に送り出すには,ある程度の落下による衝撃,あるいは,接触時に衝撃が生じ,搬送物に損傷や破損の生じるおそれがあることは,従来技術の秤量バケットEを可倒させて,果菜Bを転がして落とす自動選別装置において,傷が付いたり潰れたりするという問題を解決するために,バケット式の果菜載せ体をベルト式の果菜載せ体に置換したと甲1に記載されるように,その構成自体から明らかな周知の課題である。\n一方,甲3発明1は,上記2(3)で認定したように,従来の傾動可能なトレイを備えた方式の場合は,搬送物同士の衝合による損傷や破損の生じるおそれがあり,破損しやすい搬送物の搬送には不向きであるという課題を解決するものである。\nそうすると,甲2発明1と甲3発明1は,課題としての共通性もある。 以上を総合すると,甲2発明1の振分けコンベアの搬送方向側方に向けて傾動可能な構\\成において生じる搬送物の損傷,破損という技術課題を解決するために,甲3発明1を適用して,相違点F’の構成に至る動機付けが存在するといえる。\n

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平成26(行ケ)10124  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年11月19日  知的財産高等裁判所

 訂正事項は新規事項である、および、動機付けがあるとした審決が、取り消されました。
 審決は,図15と図12とは,シート(110)の形状が同様であり,図15の断面図では,永久接着手段(80)が製品の主要面の両面にあることが示されていることからすれば,図12の斜視図には,主要面の下面の接着手段が図示されていないとしても,製品とシートの上下両面とが永久接着手段で接着していると解するのが自然であるとし,これと同様に,図17及び18においても,実際の実施例では製品の主要面の両面が永久接着手段で接着しているのに,下面の接着手段が図示されなかったにすぎないと判断する。 しかし,図12と図15は,シート(110)を有する点で共通するものの,図12と図15の対応関係は明らかではなく,図12の断面図が図15であるとする根拠はないから,図15で示された主要面の両面に配置された永久接着手段が,図12では下面のものが省略されていると断定することはできない。そうすると,透視図である図18の図面において上記のように上面にのみ接着手段が施されている構成が記載されているにもかかわらず,これを無視して,図12の下面に接着手段が記載されていないことを理由として,図17及び18の構\成について,推し量るのは合理的でなく,採用できない。 イ また,審決は,「主要面の一方においてのみ」永久接着手段(80)を設ける構成それ自体は,本件明細書の記載から,当業者にとって自明であるといえるとしても,「切離し部分の中で主要面の一方のみが永久接着手段によりパケットに固定されていることにより,比較的小さな力Fでもって,容易にかつ確実に,切離し部分の切り離しが可能\になり,また,消費者が引っ張っている途中で急に切れたりせずに,安定した形で切り離しを行うことができるという作用効果を奏する構成」という技術的思想が,当業者にとって自明であるとまではいえないとする。そして,\nこの点につき,被告は,「参考図」及び「展開して示した力の作用を示す参考図」において,「上面側において,永久接着手段80から切取線171までの距離ℓ1は短く,下面側において,永久接着手段80から切取線171までの距離ℓ2は長いが,距離ℓ1,ℓ2の長短は,切取線171に加わる引張力fの大小には無関係である。」と主張する。 しかし,前記「参考図」において,個包装製品10をFの力で水平方向に引っ張った場合,永久接着手段80に接着された上面側の包装紙の切取線171部分と接着されていない下面側の包装紙の切取線171部分には,同じ引張力fが働くが,包装紙は,紙,パラフィン紙,金属フォイル,プラスチックフォイル又はこれらの材料の種々の組合せから形成される(【0017】参照)ことから,引張力fにより包装紙に伸びが生じることは自明である。そして,永久接着手段80で接着された部分から切取線171までの上面側の包装紙の距離ℓ1は,永久接着手段80で接着された部分から下面側の切取線171までの包装紙の距離ℓ2より短く,上面側の包装紙と下面側の包装紙は,同じ材質であり,伸びの割合は同じであることから,破断に至るまでに包装紙が伸び得る長さは,前記ℓ1の長さに係る包装紙の方が,前記ℓ2の長さに係る包装紙より短くなる。 したがって,切取線部分171に同じ引張力fが加わった場合,切取線部分において破断まで許容される伸びを超えた場合に,他の部分より弱い切取線部分において破断が生じることから,前記ℓ2の長さに係る包装紙の切取線部分(下面側)より早く前記ℓ1の長さに係る包装紙の切取線部分(上面側)が破断することとなる,すなわち,永久接着手段80により接着されている上面側の包装紙の切取線部分の方が下面側のそれより切り離れやすくなるものと認められる。 以上によれば,永久接着手段(80)が,主要面の一方のみにあれば,原告主張の作用効果を奏することはその構成自体から,当業者にとって自明であると認められ,当該作用効果によって新たな技術的事項が導入されたとすることはできない。
(4) 以上のとおりであるから,請求項1を訂正する事項である訂正事項2は, いわゆる新規事項とは認められず,訂正事項2が,特許法134条の2第9項で準用する同法126条第5項又は6項の規定に違反するということはできない。
・・・・
審決は,甲2発明Aに,甲1の技術を適用すると,適用後の発明は,甲1に記載された上記の消費者にとって有用な作用効果を奏することが,当業者に明らかであるから,甲2発明Aに甲1の技術を適用する動機付けは存在するとした。 しかし,これは,両発明を組み合わせることについての動機付けの判断に当たり,具体的な動機や示唆の有無について検討することなく,単に,組合せ後の発明が消費者にとって有用な作用効果を奏するとの理由で動機付けを肯定しているものであり,事後分析的な不適切な判断といわざるを得ない。
イ そこで,甲2発明Aに甲1発明の技術を適用する動機付けについて検討すると,以下のとおりである。
すなわち,両発明とも,ガムなどの製品(包装体)を箱(収納容器)に収納するパッケージ(容器入り包装体)であり,同じ技術分野に属するものであって,製品(包装体)が取り外された後においても箱(収納容器)内で製品(包装体)を保持することができるようにするという点で課題(効果)を同じくする部分があるものと認められる。 しかし,甲2発明Aは,前記2(2)のとおり,消費者が製品をシート及びハウジングから掴んで容易に取り出すことができ,かつ,多数の製品が取り外された後でも 製品を保持することができることを目的とし,そのために,製品とシートの間の結合(接着)は,製品をシートから容易に取り外すことのできる「剥離可能な」結合(接着)との構\成をとったものである。 これに対し,甲1発明は,容器に収納されている形態の被包装物を,片手で簡便に取り出すことを可能とする容器入り包装体を提供することを目的として,包装体下方部を収納容器に永久的に固着すること,及び包装体の適宜位置に収納容器底面と略平行な切目線を設けること,の2つの要件により,包装体を収納容器から取り出す際,包装体を引っ張るだけで,包装体が切目線の部分で切り離され,包装体を被包装物の一部が露出した状態で取り出すことができるとの構\成をとったものである。 そうすると,当業者は,製品をシートから容易に取り外すことのできる「剥離可能な」結合(接着)との構\成をとった甲2発明Aにおいて,製品とシート間及びシートと箱間の「接着」を「永久的」なものとすることによって,包装体が切目線の部分で切り離されるように構成した甲1発明を組み合わせることはないというべきである。\nよって,甲1の技術を,甲2発明Aに適用して,相違点1に係る本件発明12の構成とすることは,当業者が容易に推考し得たことである,との審決の認定は誤りである。\n

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平成25(行ケ)10244  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年10月30日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が取り消されました。保持炉から次の所定の処理を行う装置まで搬送される点で共通するので、動機付け有りというものです。
 審決は,甲1文献には,甲1発明の取鍋内の溶鉄が,コアードワイヤ処理の後に,別の取鍋に移し替えられて鋳造工程へ進むことが記載されており,この鋳造工程では,移し替えられた取鍋を注湯機上に載置するものと認められるから,甲1発明の取鍋は,注湯用の取鍋ではなく,甲2発明の取鍋に相当するものではないと判断した。 しかし,甲2発明によって搬送される取鍋が注湯用取鍋であるのに対して,甲1 発明において搬送される取鍋が注湯用取鍋でないとしても,前記(1)で判示したとおり,これらは保持炉に保持されていた鋳鉄溶湯を装入する取鍋であり,保持炉から次の所定の処理を行う装置まで搬送される点で共通するものである上,本件特許の出願前に刊行された「GieβereiーPraxis,1983,No21,313−320頁」(甲31)によれば,ワイヤーフィーダー法においてもマグネシウム処理及び鉄の注湯が同じ取鍋で実施されることがあると認められ,甲1発明における取鍋が注湯用であるか否かは搬送手段の選択に大きな影響を及ぼすものではない。また,甲2発明は,単に取鍋を自動搬送するだけであるから,注湯用取鍋しか搬送できない特殊なものではなく,当業者であれば,注湯用ではない取鍋であっても搬送が可能であると認識できると認められる。\nしたがって,甲1発明の取鍋が,甲2記載の取鍋に相当するものではないからといって,甲1発明において,取鍋の搬送手段として甲2発明を適用することは当業者にとって容易になし得たことではないということはできない。 イ また,審決は,甲1発明の処理ステーションでは,取鍋が,注湯機のように載置されるのではなく,吊り上げられることが記載されているから,甲1発明の処理ステーションには,むしろホイストが必要であって,取鍋移送機構を設ける必要がないことなどから,甲1発明に甲2発明を適用することは当業者が容易になし得たことではないと判断した。\n確かに,甲1発明では,処理ステーションにおける黒鉛球状化処理の際,フックで取鍋を吊り上げており(別紙甲1発明図面目録の図2参照),そのためにホイストが必要であることは認められる。 しかし,処理ステーション内において取鍋を吊り上げるからといって,溶湯が装入された取鍋をホイストで吊って前炉から処理ステーション内の所定の位置まで搬送することによって生じる危険性がなくなるわけではなく,その危険性を避けるため,取鍋を前炉から処理ステーション内の所定の位置に設置するまでの搬送手段として甲2発明を利用する意義は存在するから,甲1発明に甲2発明を適用する動機 付けは依然として存在するというべきである。 したがって,甲1発明に甲2発明を適用することは当業者が容易になし得たことではないとした審決の判断には誤りがある。

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平成25(行ケ)10338  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年11月13日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が取り消されました。「内在する課題が共通なので、適用する動機付けあり」というものです。
 審決は,甲8文献の記載からは係合部材が2本のパイプ(スライドシャフト)の軸心を結ぶ仮想平面を通っているか不明であること,甲6発明については,係合部 材による押圧方向が2本のパイプ(スライドレール)の軸心を結ぶ仮想平面上としなければ許容できる精度で加工できないといった動機付けがないことなどから,甲8発明の係合部材を甲6発明に適用するに当たり,押圧方向を甲6発明の2本のパイプの軸心を結ぶ平面上とすることは,当業者にとって容易に想到し得たものではない旨判断した。 しかし,甲8文献の第1図及び第3図はいずれも側面図ではあるものの,第1図の「ノブ15」は「スライドシャフト11,12」(パイプ)に対して垂直方向の上方から押圧する形で図示されており,正面図を作成したときに「スライドシャフト11」と「スライドシャフト12」が左右にずれることを窺わせるような記載は一切ない。また,卓上切断機においては,2本のパイプの軸心を結ぶ平面が鉛直であるものが数多く存在し(甲18ないし20),甲6発明も同様である。これらの事情によれば,甲8発明に接した当業者であれば,「ノブ15」は,「スライドシャフト11」と「スライドシャフト12」の軸心を結ぶ仮想平面上を通っており,上方から「スライドシャフト11」を押圧すると理解するものであって,係合部材が2本のスライドシャフト(パイプ)の軸心を結ぶ仮想平面を通っているか不明であるということはできない。 そして,甲6発明も甲8発明も,揺動軸を支点として揺動可能な切断部を有し,かつ,上下に平行に配置された2本のパイプを用いることで切断部を摺動可能\とする卓上切断機に関するものであって,いずれも切断幅を増大して幅広の木材に対応するものである。また,甲8発明で開示されている技術は,摺動する切断部を固定することを可能にするものであるところ,切断部が摺動する構\造において切断部を摺動しないように固定することは,切断作業の態様を増やすという利点があること(摺動せずに切断部の上下の揺動のみで切断することができる。),搬送時などに切断部が意図せず動くことを防止する必要があることなどからすると,甲6発明を含めた切断部が摺動する構造を有する卓上切断機において,切断部を固定することは,共通の内在する課題であると認められる。\nそうすると,甲6発明に甲8発明を適用する動機付けがあるというべきであって,甲6発明及び甲8発明に接した当業者であれば,甲8発明を甲6発明に適用して,相違点1に係る構成(一対のパイプの軸心を含む仮想平面の方向に第1のパイプを押圧するように設けられた係合部材を有し,支持部材の傾動角度にかかわらず前記係合部材による押圧方向が前記仮想平面上であって且つ切断刃の側面と平行となるようにする構\成)とすることを容易に想到することができると認められるから,審決の判断は誤りである。
(5) 被告の主張について
ア 被告は,甲8文献には,2本のパイプの軸心を含む仮想平面と切断刃が平行であるか否か,同平面を係合部材が通っているかについて記載も示唆もない旨主張する。 しかし,甲8文献の記載からすれば,当業者は2本のパイプの軸心を含む仮想平面と切断刃が平行であると理解するものであるし,側面図(甲8文献の第1図及び第3図)において,ノブの上面が見えない水平な形で「ノブ15」が記載されている点からしても,「ノブ15」の押圧方向は,「スライドシャフト11,12」の軸心を含む仮想平面の方向であると理解されるものである。 なお,被告は,2本のパイプが傾いて設置されている例として乙1ないし5を提出するが,乙1はパイプの太さが異なる構成であること,乙2はパイプの配置,太さ等の構\成が明らかではないこと,乙3はパイプがテーブル面よりも下方に配置されている構成であること,乙4は卓上切断機ではないこと,乙5はパイプが3本ある構\成であることなどからすると,いずれも甲8発明の構成とは異なるものであって,これらの証拠は,甲8文献記載の図面に関する前記解釈を左右しない。\n

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平成25(行ケ)10244  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年10月30日  知的財産高等裁判所

 動機付けありと判断して、無効事由無しとした審決を取り消しました。
 審決は,甲1文献には,甲1発明の取鍋内の溶鉄が,コアードワイヤ処理の後に,別の取鍋に移し替えられて鋳造工程へ進むことが記載されており,この鋳造工程では,移し替えられた取鍋を注湯機上に載置するものと認められるから,甲1発明の取鍋は,注湯用の取鍋ではなく,甲2発明の取鍋に相当するものではないと判断した。 しかし,甲2発明によって搬送される取鍋が注湯用取鍋であるのに対して,甲1発明において搬送される取鍋が注湯用取鍋でないとしても,前記(1)で判示したとおり,これらは保持炉に保持されていた鋳鉄溶湯を装入する取鍋であり,保持炉から次の所定の処理を行う装置まで搬送される点で共通するものである上,本件特許の出願前に刊行された「GieβereiーPraxis,1983,No21,313−320頁」(甲31)によれば,ワイヤーフィーダー法においてもマグネシウム処理及び鉄の注湯が同じ取鍋で実施されることがあると認められ,甲1発明における取鍋が注湯用であるか否かは搬送手段の選択に大きな影響を及ぼすものではない。また,甲2発明は,単に取鍋を自動搬送するだけであるから,注湯用取鍋しか搬送できない特殊なものではなく,当業者であれば,注湯用ではない取鍋であっても搬送が可能であると認識できると認められる。\nしたがって,甲1発明の取鍋が,甲2記載の取鍋に相当するものではないからといって,甲1発明において,取鍋の搬送手段として甲2発明を適用することは当業者にとって容易になし得たことではないということはできない。 イ また,審決は,甲1発明の処理ステーションでは,取鍋が,注湯機のように載置されるのではなく,吊り上げられることが記載されているから,甲1発明の処理ステーションには,むしろホイストが必要であって,取鍋移送機構を設ける必要がないことなどから,甲1発明に甲2発明を適用することは当業者が容易になし得たことではないと判断した。\n確かに,甲1発明では,処理ステーションにおける黒鉛球状化処理の際,フックで取鍋を吊り上げており(別紙甲1発明図面目録の図2参照),そのためにホイストが必要であることは認められる。 しかし,処理ステーション内において取鍋を吊り上げるからといって,溶湯が装入された取鍋をホイストで吊って前炉から処理ステーション内の所定の位置まで搬送することによって生じる危険性がなくなるわけではなく,その危険性を避けるため,取鍋を前炉から処理ステーション内の所定の位置に設置するまでの搬送手段として甲2発明を利用する意義は存在するから,甲1発明に甲2発明を適用する動機付けは依然として存在するというべきである。

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平成25(行ケ)10347  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成26年10月9日  知的財産高等裁判所

 動機付け無しとして進歩性有りと認定した審決が取り消されました。
 上記のような甲10公報の記載に接すれば,当業者であれば,第2図に図示されている直線的かつ平行な電界の生成が,電気機械変換効率を高め,その結果,CI値を小さくするという作用効果に寄与していること は,容易に理解できるものと認められる。そして,甲10公報には,振動細棒420の上下に2つずつ溝を設け,それぞれに電極440aを配置してもよい(第10図)との記載があるのであるから,当業者であれば,振動細棒420に設ける溝を2本とした場合にも,1本の場合と同様に,CI値を小さくするという作用効果を奏するものであることは,容易に理解できるものと認められる。そうすると,公用製造方法において,1本の溝を2本の溝とすることは,当業者が容易に設計し得る事項にすぎないというべきである。イ この点について,審決は,公用製造方法において,音叉腕に設ける溝を2本の溝とした場合に,M1とM2の大小関係がどのようになるかは不明であるとして,公用製造方法において,相違点2における本件訂正発明の構成を採用することの積極的な動機付けがなく,むしろ,阻害要因が存在するとしている(審決書22頁)。しかし,証拠(甲9,10,31,32)及び弁論の全趣旨によれば,原告が前記第3の2において主張するとおり,公用製造方法において,音叉腕に設ける溝を2本とした場合においても,M1>M2の関係が担保されることが認められ,このことは,当業者であれば予\測し得るものというべきである。したがって,公用製造方法において,音叉腕に設ける溝を2本の溝とした場合に,M1とM2の大小関係がどのようになるかは不明であるとする審決の判断は誤りといわざるを得ない。部分幅の数値限定の容易想到性部分幅を0.05mmより小さくすることについて,本件明細書の【0048】には,「更に,本実施例では,溝が中立線を挟む(含む)ように音叉腕に設けられているが,本発明はこれに限定されるものでなく,中立線を残して,その両側に溝を形成しても良い。この場合,音叉腕の中立線を含めた部分幅W7は0.05mmより小さくなるように構成される。又,各々の溝の幅は0.04mmより小さくなるように構\成され,溝の厚みt1と音叉腕の厚みtの比は0.79以下に成るように構成される。このような構\成により,M1をMnより大きくする事ができる。」との記載がある。しかし,上記記載は,その記載から明らかなとおり,「音叉腕の中立線を含めた部分幅W7は0.05mmより小さくなるように構成」し,「溝の幅は0.04mmより小さくなるように構\成」し,「溝の厚みt1と音叉腕の厚みtの比は0.79以下に成るように構成」した場合において,「M1をMnより大きくする事ができる」というものであり,「音叉腕の中立線を含めた部分幅W7を0.05mmより小さくなるように構\成」しただけで直ちに「M1をM2より大きくする事ができる」というものではない。そして,本件明細書には,他に,上記部分幅の数値限定の技術的意義について記載されていない以上,本件訂正発明における上記部分幅の数値限定に格別の技術的意義があるとは認められない。そうすると,公用製造方法において,部分幅の寸法を0.05mmより小さくすることも,当業者が容易に設計し得る事項にすぎないというべきである。

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◆関連事件です。平成25(行ケ)10346

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平成25(行ケ)10209  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年9月10日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が取り消されました。
 前述した本願優先日当時の当業者の一般的な認識に鑑みれば,当業者が,ACE阻害活性の有無に焦点を絞り,引用発明においてIPP及びVPPがACE阻害活性を示したことのみをもって,引用例2から引用例5に記載されたACE阻害剤との間には,前述したとおりACE阻害活性の強度及び構造上の差異など種々の相違があることを捨象し,IPP及びVPPも上記ACE阻害剤と同様に,血管内皮の機能\改善作用,血管内膜の肥厚抑制作用を示すことを期待して,IPP及び/又はVPPを用いることを容易に想到したとは考え難い。
また,仮に,当業者において,引用例2から引用例5に接し,前記一般的な認識によれば必ずしも奏功するとは限らないとはいえ,ACE阻害活性を備えた物質が上記作用を示すか否か試行することを想起したとしても,前述したとおり,IPP及びVPPは,性質,構造において上記ACE阻害剤と大きく異なり,特にIPP及びVPPのACE阻害活性は上記ACE阻害剤よりもかなり低いものといえるから,試行の対象としてIPP及び/又はVPPを選択することは,容易に想到するものではないというべきである。
以上によれば,引用発明と引用例2から引用例5とを組み合わせて補正発明を想到することは容易とはいえず,本件審決が,「相当程度の確立した知見」を前提として,引用発明と引用例2から引用例5とを組み合わせ,これらを併せ見た当業者であれば,引用発明においてACE阻害活性を有することが確認されたIPP及び/又はVPPを,血管内皮の収縮・拡張機能改善及び血管内膜の肥厚抑制の少なくとも一方の作用を有する剤として用いることに,格別の創意を要したものとはいえないと判断した点は誤りである。\n

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平成25(ワ)4303  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月25日  東京地方裁判所

 進歩性無しとして、権利行使不能(特104条の3)と判断されました。
 以上の事実,すなわち,乙13発明と乙16文献に記載された発明は,技術分野,解決すべき課題及び課題解決原理が共通し,経皮吸収製剤の形状及び強度並びにその構造的な強さを形成・保持するための基剤及び成形方法という課題解決手段にも共通性があること,粘弾性・保水力の大きいゼリー様のヒアルロン酸溶液を乾燥させると非常に強固な固体となるという物性が技術常識として知られていたことに照らせば,乙16文献に接した当業者がこれを乙13発明と組み合せる動機付けがあり,当業者において,乙13発明の基剤を乙16文献の基剤に置き換え,角質層を貫通するように十\分強い生体適合性材料の一つとしてヒアルロン酸を基剤(マトリックス)に選択することも,容易に想到し得たことであって,これを乙13発明に組み合せて成形した経皮吸収製剤が皮膚を貫通するのに十分な強度を有することも,容易に理解し得たということができる。\nまた,本件発明に係る経皮吸収製剤の作用効果が格別顕著なものであることを認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件発明は,乙13発明に乙16文献を組み合せることにより,当業者において容易に想到することができたものというべきである。  

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平成22(行ケ)10056  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成23年2月8日  知的財産高等裁判所

 少し前の事件ですが挙げておきます。動機付けについて「公知技術に記載された事項を過度に抽象化した事項を引用発明に適用して具体的な本件発明の構成に想到しようとするものであって相当でない」旨、判断されました。
 しかし,この審決の判断の流れは,2),4),6)の周知技術を前提とし,1),5)の自明課題,設計事項を踏まえ,bの甲第1号証から読み取れる事項も認定したうえ,3),7),8)の判断を経て,9),10),11)のとおり相違点1ないし3の容易想到性を導いているものであって,甲第3,10,21,22号証は周知技術の裏付けとして援用したものである。このうち,4)の周知技術の認定で審決が説示する「液体インク収納容器からの色情報」が単に液体インク収納容器のインク色に関する情報でありさえすればよいとすると,前記周知技術は,液体インク収納容器と記録装置側とが発光部と受光部との間の光による情報のやり取りを通じて当該液体インク収納容器のインク色に関する情報を記録装置側が取得することを意味するものにすぎない。このような一般的抽象的な周知技術を根拠の一つとして,相違点に関する容易想到性判断に至ったのは,本件発明3の技術的課題と動機付け,そして引用発明との間の相違点1ないし3で表される本件発明3の構\成の特徴について触れることなく,甲第3号証等に記載された事項を過度に抽象化した事項を引用発明に適用して具体的な本件発明3の構成に想到しようとするものであって相当でない。その余の自明課題,設計事項及び周知技術にしても,甲第3号証等における抽象的技術事項に基づくものであり,同様の理由で引用発明との相違点における本件発明3の構\成に至ることを理由付ける根拠とするには不足というほかない。
(4) 上記のとおり,周知技術等に基づいてする審決の判断は是認できないが,甲第3号証等が開示する技術的事項も踏まえて念のため判断するに,甲第3,21,22号証の液体インク収納容器において,記録装置と液体インク収納容器の間の接続方式につき共通バス接続方式が採用されているかは不明であって,少なくとも甲第3,21,22号証においては,共通バス接続方式を採用した場合における液体インク収納容器の誤装着の検出という本件発明3の技術的課題は開示も示唆もされていないというべきである。そして,上記技術的課題に着目してその解決手段を模索する必要がないのに,記録装置側がする色情報に係る要求に対して,わざわざ本件発明3のような光による応答を行う新たな装置(部位)を設けて対応する必要はなく,このような装置を設ける動機付けに欠けるものというべきである。そうすると,甲第3,21,22号証に記載された事項は,解決すべき技術的課題の点においても既に本件発明3と異なるものであって,共通バス接続方式を採用する引用発明に適用するという見地を考慮しても,本件発明3と引用発明との相違点,とりわけ相違点2,3に係る構成を想到する動機付けに欠けるものというべきである。なお,本件発明3における液体インク収納容器が保持する色情報の技術的意義が前記のとおりであることに照らすと,液体インク収納容器から記録装置側に伝達される情報自体に「色情報」が含まれるか否かは,本件発明3と引用発明の実質的な相違点であるというべきである(相違点2)。
(5) よって,その余の点について検討するまでもなく,本件発明3と引用発明との相違点に係る構成に容易に想到できるとした審決の前記判断は誤りであるというべきである。\n
(6)ア被告ら及び補助参加人(以下「被告ら」というときは,補助参加人も含む。) は,甲第21,22号証の記録装置と液体インク収納容器の構成から,記録装置に受光素子を1つ設け,キャリッジの移動により受光素子と対向する位置に来た液体インク収納容器に対し,誤装着検出を行う等の基本的な技術の構\成が分離して把握できないものではなく,上記基本的な技術構成が本件発明3の優先日前に周知の技術であると主張する。しかしながら,前記のとおり,甲第21,22号証の記録装置と液体インク収納容器の構\成及び誤装着の検出原理は,本件発明3のそれらと大きく異なるのであって,仮に甲第21,22号証の構成から,キャリッジを移動させることにより特定の位置に来る液体インク収納容器を交替させ,発光部と受光部の間の光のやり取りによって順次液体インク収納容器の検出を行うという,具体的な動作機構\や検出原理を捨象し,相当程度抽象化した事項を持ち出してみても,本件発明3との相違点にかかる構成の容易想到性が肯定できるものではないから,被告らの上記主張は採用できない。また,甲第3号証の記録装置において,受光手段が一つだけ設けられているかは不明であるから,上記記録装置において,受光手段を一つだけ設け,キャリッジの移動により順次液体インク収納容器からの光の受光を行う構\成が採用されているとはいうことができない。

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◆これには侵害事件もあります。◆平成24(ネ)10093

◆原審はこちらです。平成23年(ワ)第24355号

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平成25(行ケ)10209  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年9月10日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が取り消されました。
 前述したとおり,補正発明と引用発明の相違点は,薬剤の用途が,補正発明においては,「血管内皮の収縮・拡張機能改善及び血管内膜の肥厚抑制の少なくとも一方の作用を有する剤」であるのに対して,引用発明においては,「ACE阻害活性を示す,抗高血圧剤」である点である。\nイ(ア) 引用例2から引用例4には,前記のとおり,ACE阻害剤であるシラザプリル,キナプリル,カプトプリルを,本態性高血圧症や内皮機能障害の疾患を有するヒト,バルーンカテーテル処理によって頸動脈の内皮剥離,損傷を受けたラットに投与した実験の結果,血管内皮の拡張能\の向上,血管内膜の肥厚抑制等が見られた旨が記載されており,引用例5には,血管壁肥厚の抑制と改善,内皮細胞機能の改善等がACE阻害薬の効果としてヒトで証明されている旨が記載されている。これらの記載によれば,シラザプリル等のACE阻害剤を人体や動物に投与した実験において,血管内皮の機能\改善作用,血管内膜の肥厚抑制作用が確認されたことを読み取ることができる。 (イ) しかしながら,前述のとおり,本願優先日当時においては,上記と異なる実験結果を示す複数の技術文献が存することから,ACE阻害剤であれば原則として血管内皮の収縮・拡張機能改善作用又は血管内膜の肥厚抑制作用のうち少なくともいずれか一方を有するとまではいえず,個々のACE阻害剤が実際にこれらの作用を有するか否かは,各別の実験によって確認しなければ分からないというのが,当業者の一般的な認識であった。\n(ウ) しかも,IPP及びVPPと,引用例2から引用例5に記載されたシラザプリル等のACE阻害剤との間には,以下のとおり,性質,構造において大きな差異が存在する。他方,IPP及びVPPと上記ACE阻害剤との間に,ACE阻害活性を有すること以外に特徴的な共通点は見当たらない。\na すなわち,シラザプリル等はいずれも典型的なACE阻害剤であるのに対し,IPP及びVPPは確かにACE阻害活性を有しているものの,下記の比較によれば,その強度は上記ACE阻害剤よりもかなり弱いものにとどまるといえる。現に,本件に証拠として提出されている公刊物中には,IPP及びVPPをACE阻害剤として紹介する記載は見当たらない。
・・・
ウ 前述した本願優先日当時の当業者の一般的な認識に鑑みれば,当業者 が,ACE阻害活性の有無に焦点を絞り,引用発明においてIPP及びVPPがA CE阻害活性を示したことのみをもって,引用例2から引用例5に記載されたAC E阻害剤との間には,前述したとおりACE阻害活性の強度及び構造上の差異など\n種々の相違があることを捨象し,IPP及びVPPも上記ACE阻害剤と同様に, 血管内皮の機能改善作用,血管内膜の肥厚抑制作用を示すことを期待して,IPP\n及び/又はVPPを用いることを容易に想到したとは考え難い。 また,仮に,当業者において,引用例2から引用例5に接し,前記一般的な認識 によれば必ずしも奏功するとは限らないとはいえ,ACE阻害活性を備えた物質が 上記作用を示すか否か試行することを想起したとしても,前述したとおり,IPP 及びVPPは,性質,構造において上記ACE阻害剤と大きく異なり,特にIPP\n及びVPPのACE阻害活性は上記ACE阻害剤よりもかなり低いものといえるから,試行の対象としてIPP及び/又はVPPを選択することは,容易に想到するものではないというべきである。 以上によれば,引用発明と引用例2から引用例5とを組み合わせて補正発明を想到することは容易とはいえず,本件審決が,「相当程度の確立した知見」を前提として,引用発明と引用例2から引用例5とを組み合わせ,これらを併せ見た当業者であれば,引用発明においてACE阻害活性を有することが確認されたIPP及び/又はVPPを,血管内皮の収縮・拡張機能改善及び血管内膜の肥厚抑制の少なくとも一方の作用を有する剤として用いることに,格別の創意を要したものとはいえないと判断した点は誤りである。\n

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平成25(行ケ)10277 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年8月27日  知的財産高等裁判所

 「試行錯誤なしに当然に導き出せる結論ではない」として、進歩性無しとした審決が取り消されました。
 審決は,フラックスレスろう付けの手法として,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法がともに技術常識であることから,相違点2に係る構成は,当業者が容易に想到できるものと判断した。確かに,本願発明と引用発明とは,いずれも,ろう付けされた部材の製造に使用される,芯材用のアルミニウム合金製の帯材又は板材において,所定量のイットリウムを含有させる点で共通するものである。また,エロージョンは,ろう材が芯材を侵食する現象であり,芯材の中にシリコンが浸透して腐食が起きやすくなるために,ろう付けの際に回避すべきものであるが,エロージョンが起きれば,侵食された芯材部分にろう材が流れ込む結果,ろう付けのための充分なろう材が行き渡らずに所定の付着効果が得られず,ろう付け性が低下するから,エロージョンの抑制には,結果的にはろう付け性を改善するといえる側面もあり,本願発明と引用発明の技術課題に重なり合う部分が存在すること自体は否定し難い。しかしながら,本願発明は,管理された窒素雰囲気でのろう付けによるものであるのに対して,引用発明は,真空雰囲気下でのろう付けによるものであるという相違点があるのであり,相違点2に係る構\成が当業者にとって容易に想到し得るものか否かは,結局,刊行物2に記載されたイットリウムの使用が,管理された窒素雰囲気下でのろう付けにも使用できるという示唆があるかどうか,また,本願出願時の技術常識から,それぞれのろう付け法におけるろう材や芯材の相互の互換性があるといえるか否かにより判断されるべきである。 しかるに,刊行物2そのものには,管理された窒素雰囲気下でのろう付けについて,何らの記載も示唆もない。また,芯材用アルミニウム合金にイットリウムを含有させることにより,管理された窒素雰囲気下でのろう付けにおいて,改善されたろう付け性が得られることについて,何らの記載も示唆もない。そして,上記のとおり,本願出願時には,ろう付け法ごとに,それぞれ特定の組成を持ったろう材や芯材が使用されることが既に技術常識となっており,ろう付け法の違いを超えて相互にろう材や芯材を容易に利用できるという技術的知見は認められない。したがって,真空雰囲気下でのろう付け法である引用発明において,芯材用アルミニウム合金にイットリウムを含有させることにより,ろう付けの際に生じるエロージョンを抑制することができるものであるとしても,管理された窒素雰囲気下でのろう付け法において,改善されたろう付け性が得られるかどうかは,試行錯誤なしに当然に導き出せる結論ではない。 したがって,相違点2に係る構成を当業者が容易に想到し得たとはいえず,この点に関する審決の判断は誤りである。
(4) 被告の主張に対する判断
ア 被告は,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法は,いずれもフラックスレスのろう付け法として,当業者において良く知られた技術であり(乙1〜7),また,特開昭62−13259号公報(乙1),特開昭58−163573号公報(乙4),特開昭53−131253号公報(乙5),特開昭63−157000号公報(乙6),特開昭61−7088号公報(乙7)には,これらのろう付け法が並列して記載されていることからすると,これらのろう付け法は,当業者にとって適宜置換可能な方法といえるから,刊行物2に接した当業者であれば,刊行物2に記載された材料からなる芯材用アルミニウム合金製の帯材又は板材を,真空ろう付け法だけでなく,窒素ガス雰囲気ろう付け法にも使用できることを容易に理解すると主張する。\n確かに,上記乙1,5〜7の記載によると,昭和50年代から昭和60年代初めにかけて,ろう付け法の種類に着目することなく,芯材,ろう材や母材にBe,Biを添加する方法がろう付け性向上のための技術思想として把握されていたことがうかがわれる(もっとも,乙6の第1表,第2表\には,真空雰囲気下ではろう材にMgを必ず含めているのに対し,窒素雰囲気下ではろう材にMgを含ませておらず,特定の芯材やろう材が特定のろう付け法において意識的に使い分けられていたとみる余地もある。)。しかしながら,ろう付け法が並列に記載されていることと,各方法において利用されていた技術が相互に容易に置換可能であることは別次元の問題であって,上記(2)のとおり,その後の本願出願時においては,技術常識として,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法とでは,使用されるアルミニウム合金ブレージングシートは,通常,区別されるものであるとされていたと認められるから,当業者にとって,真空ろう付け法において使用できた芯材を,窒素ガス雰囲気下のろう付け法において,当然に利用できると認識することは困難といえる。

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平成25(行ケ)10058  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年7月30日  知的財産高等裁判所

旧特181条により特許庁に差し戻された心理について、無効理由無しとした審決が取り消されました。動機付けありという理由です。
 甲1には,アレルギー性結膜炎を抑制するためのKW−4679(化合物Aのシス異性体の塩酸塩)を含有する点眼剤が記載され,また,甲1には,モルモットに抗原誘発及びヒスタミン誘発したアレルギー性結膜炎に対する各種抗アレルギー薬の影響を検討した結果,KW−4679の点眼は,10及び100ng/μlの濃度で,抗原誘発したアレルギー性結膜炎症に有意な抑制作用を示したこと,及び抗原誘発結膜炎よりもヒスタミン誘発結膜炎に対してより強力な抑制効果を示したことが記載されていることは, そしレルギー性結膜炎を抑制する薬剤の研究及び開発において,ヒトのアレルギー性結膜炎に類似するモデルとしてラット,モルモットの動物結膜炎モデルが作製され,点眼効果等の薬剤の効果判定に用いられていたこと,本件特許の優先日当時販売されていたヒトにおける抗アレルギー点眼剤の添付文書(「薬効・薬理」欄)には,各有効成分がラット,モルモットの動物結膜炎モデルにおいて結膜炎抑制作用を示したことや,ラットの腹腔肥満細胞等からのヒスタミン等の化学伝達物質の遊離抑制作用を示したことが記載されていたことからすると,甲1に接した当業者は,甲1には,KW−4679が「ヒト」の結膜肥満細胞に対してどのように作用するかについての記載はないものの,甲1記載のアレルギー性結膜炎を抑制するためのKW−4679を含有する点眼剤をヒトにおけるアレルギー性眼疾患の点眼剤として適用することを試みる動機付けがあるものと認められる。 そして,本件特許の優先日当時,ヒトのアレルギー性結膜炎を抑制する薬剤の研究及び開発において,当該薬剤における肥満細胞から産生・遊離されるヒスタミンなどの各種の化学伝達物質(ケミカルメディエーター)に対する拮抗作用とそれらの化学伝達物質の肥満細胞からの遊離抑制作用の二つの作用を確認することが一般的に行われていたことは,甲1記載のKW−4679を含有する点眼剤をヒトにおけるアレルギー性眼疾患の点眼剤として適用することを試みるに際し,KW−4679が上記二つの作用を有するかどうかの確認を当然に検討するものといえる。 加えて、前記(2)イ認定のとおり, 甲4には,化合物20(「化合物A」に相当)を含む一般式で表される化合物(I)及びその薬理上許容される塩のPCA抑制作用について,「PCA抑制作用は皮膚肥満細胞からのヒスタミンなどのケミカルメディエーターの遊離の抑制作用に基づくものと考えられ」るとの記載がある。この記載は,ヒスタミン遊離抑制作用を確認した実験に基づく記載ではないものの,化合物20(「化合物A」に相当)を含む一般式で表\される化合物(I)の薬理作用の一つとして肥満細胞からのヒスタミンなどのケミカルメディエーター(化学伝達物質)の遊離抑制作用があることの仮説を述べるものであり,その仮説を検証するために,化合物Aについて肥満細胞からのヒスタミンなどの遊離抑制作用があるかどうかを確認する動機付けとなるものといえる。 そうすると,甲1及び甲4に接した当業者においては,甲1記載のアレルギー性結膜炎を抑制するためのKW−4679を含有する点眼剤をヒトにおけるアレルギー性眼疾患の点眼剤として適用することを試みるに当たり,KW−4679が,ヒト結膜の肥満細胞から産生・遊離されるヒスタミンなどに対する拮抗作用を有するかどうかを確認するとともに,ヒト結膜の肥満細胞からのヒスタミンの遊離抑制作用を有するかどうかを確認する動機付けがあるものと認められる。

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平成25(行ケ)10089  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年7月16日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、動機付けありとした審決を取り消して、進歩性ありと判断しました。
 審決は,引用例3の記載を踏まえれば,引用発明のピーエヌツイン−2号の2室開通後のビタミンB1の安定性を改善する動機があると判断した。 確かに引用例3には,前記ウのとおり,2室開通後48時間経過した場合には,ビタミンB1の残存率が低下することが示されているが,それとともに,6時間経過後であれば安定性に問題はなく,24時間経過後であっても8割程度以上が残存していることも示されている。他方,ピーエヌツイン−2号は2室合計1100ミリリットル入りであって,通常これを用いた点滴注入は,直前に第1室と第2室が開通され,その後,8〜12時間程度で終了するものと認められる(甲2,12,35)。そうすると,引用例3の記載を踏まえても,引用発明の2室開通後,点滴終了後までのビタミンB1の安定性が不十分であると当業者が認識することはない。\nしたがって,引用例3の記載を踏まえれば,引用発明の2室開通混合後のビタミンB1の安定性を改善する動機があるとの審決の判断には,誤りがある。そして,2室開通混合後のビタミンB1の安定性確保以外に引用発明に引用例2に記載された発明を適用する動機を見出すことはできないから,引用例2の開示内容について検討するまでもなく,審決の相違点2に関する判断には誤りがある。

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平成25(行ケ)10229 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年05月12日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、動機付けなしとして取り消されました。
 ところで,甲2発明において,「ウェール数を多めに編成する」のは,あくまでも甲1の「まち部20」と同じ効果をもたらすためであるから,当業者が,靴下の内側又は外側に対し,甲2発明の構成を適用しようとするのは,甲1発明の「まち部20」が形成されるのと同じ側,すなわち踵部の内側である。したがって,甲2の「ウェール数を多めに編成する」構\成を甲1発明に適用したとしても,それは,減らし目及び増やし目工程を二工程ずつ行う側とウェール数を多めに編成する側とが踵部において同じ側になることが明らかであり,両方の側が互いに反対となる本件発明の構成,「踵部の内側すなわち着用者の第一趾側は減らし目,増やし目,減らし目ついで増やし目の順に編成・・・すると共に外側方向にウェール数を多めに編成する」には至らないから,相違点2を解消できない。
イ 仮に,「まち部20」が形成される側と反対側,例えば,踵部の内側に「まち部20」を形成しつつ,踵部の外側の「ウェール数を多めに編成」した場合には,相違点2そのものは解消されることになる。しかしながら,かかる構成を採用した場合,踵部の内側に「まち部20」による余裕ができる一方で,踵部の外側に「ウェール数を多めに編成」することによる余裕ができてしまい,踵部の両側に余裕ができることになるため,踵部の内側と外側とが対称形に近づいてしまい,踵部が左右非対称形に形成された靴下を提供するという甲1発明の目的や課題に反することとなってしまう。したがって,「ウェール数を多めに編成すること」を甲1発明の「まち部20」が形成される側とは反対側に適用することには,阻害事由があるということになる。\n

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平成25(行ケ)10207 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年04月17日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、動機付け無しとして、拒絶審決が取り消されました。出願人は、三菱東京UFJ銀行です。
 相違点2は,本願発明は,「インターネットを介して利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するのに対し,引用発明は,そのような手段を有するとはされていない点である。本件審決は,上記相違点2について,引用発明の具体的動作として,「アクセス可能なサーバー/アプリケーションのID/パスワードの束」を受け取る具体例が示されているが,ユーザーがどの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定して,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取るようにすることは,当業者が適宜になし得ることであり,その際に,「Webのアプリケーション」に対して「SSO環境を構\\築できる」ような製品である場合に,「インターネットを介して」,どの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定する情報を「SSOサーバー」に送るようにすることも,当業者が適宜になし得ることにすぎないから,引用発明を,「インターネットを介して利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するようなものとすることは,当業者が適宜になし得ることである旨判断した。 ア 前記1のとおり,本願発明における認証代行処理手段は,利用者の選択により,利用者の認証情報が登録されているリンク先が指定された場合に,利用者に代わって当該リンク先の認証処理を代行する機能を有するものである。すなわち,本願発明における認証代行処理手段は,利用者によるリンク先の指定情報及びその利用者情報を受け取って,リンク先情報登録手段から該当するリンク先情報(URL情報など)を,また認証情報格納手段から利用者のそのリンク先における認証情報(リンク先における利用者のユーザーID及びパスワードなど)を,それぞれ読み出すと共に,ひな形スクリプト/モジュール格納手段から,該当するリンク先のひな形スクリプトを読み出して,リンク先用の認証処理スクリプト(対象とするリンク先に自動的に接続処理を開始する処理をHTMLとJavaScriptにて記載したもの)を作成し,上記リンク先情報及び認証処理スクリプトを,利用者のブラウザに転送するので,利用者側のブラウザは,送られてきたリンク先情報で,目的とするリンク先にリンクすると共に,上記認証処理スクリプトに基づいて,ブラウザが,リンク先で実行される認証処理で表\\示される画面構成に対し,自動的に上記認証情報を埋め込んでいくため,利用者は,何ら選択したリンク先への操作を行わなくても,認証処理が自動的に実行されることになる。その結果,本願発明は,利用者が,ポータルサイトなどにおいてリンク先の選択を行うだけで,該リンク先に対して,何ら特別な操作を行わなくても,認証処理が自動的に実行されるため,それが終了した段階で,当該リンク先へのログインが可能\\となるという効果を奏し得るものである。そうすると,本願発明は,利用者の選択により,利用者の認証情報が登録されているリンク先が指定され,「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」(相違点2に係る構成)によって,上記利用者によるリンク先の指定情報を受け取った認証代行処理手段が,利用者に代わって当該リンク先の認証処理を代行するものと認められる。
イ これに対し,引用発明は,前記3のとおり,SSOサーバーにログインすると,アクセス可能なサーバー/アプリケーションのID/パスワードの束と,各サーバー/アプリケーションの種類ごとに用意され,ログイン操作を自動化するスクリプトが,SSOサーバーからクライアント・モジュールに配布され,クライアント・モジュールは,ログイン操作を自動化するスクリプトを実行するものである。ここで,アクセス可能\\なサーバー/アプリケーションのID/パスワードの束とは,SSOサーバーにログインしたユーザーが,アクセスすることができる全てのサーバー/アプリケーションのID/パスワードの組合せであると理解することができる。また,前記3アのとおり,引用例の記載及び本技術分野における技術常識に照らせば,引用発明のSSOサーバーは,各サーバー/アプリケーションのリンク先情報を登録しておくリンク先情報登録手段を有し,クライアントモジュールは,SSOサーバーから,各サーバー/アプリケーションのリンク先情報を受け取るものである。そして,引用発明では,上記の構成を採用することによって,ユーザーは,一度のログイン操作で,アクセス可能\\な全てのアプリケーションを利用できるとの機能(シングル・サインオン(SSO)機能\\)を有すると認められる。そうすると,引用発明においては,一度SSOサーバーにログインすれば,クライアント・モジュールは,SSOサーバーにログインしたユーザーがアクセス可能な全てのサーバー/アプリケーションのID/パスワードの組合せ,各サーバー/アプリケーションの種類ごとのログイン操作を自動化するスクリプト,及び各サーバー/アプリケーションのリンク先情報を受け取るから,それ以降,SSOサーバーとの通信を行う必要がなく,ログイン操作を自動化するスクリプトを実行することで,シングル・サインオン機能\\を果たすとの作用効果を奏すると認められる。しかるに,このような構成を採用する引用発明について,SSOサーバーが「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するものとした上で,ユーザーがどの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定して,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取るように構\\成を変更するとすれば,利用者が情報閲覧手段よりリンク先の指定を行う都度,クライアント・モジュールは,SSOサーバーとの通信を行い,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取り,上記指定された「サーバー/アプリケーション」へのログイン操作を自動化するスクリプトを実行することにより,シングル・サインオン機能を果たすことになる。しかし,それでは,一度SSOサーバーにログインすれば,クライアント・モジュールは,それ以降,SSOサーバーとの通信を行う必要がなく,ログイン操作を自動化するスクリプトを実行できるとの引用発明が有する上記の作用効果が失われることとなる。したがって,引用発明において,相違点2に係る本願発明の構\\成に変更する必要性があるものとは認められない。このように,引用発明について,SSOサーバーが「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するもの(相違点2に係る構成とすること)とした上で,ユーザーがどの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定して,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取るように構\\成を変更することについては,引用発明が本来奏する上記作用効果が失われるものであって,その必要性が認められないから,引用発明における上記構成上の変更は,解決課題の存在等の動機付けなしには容易に想到することができない。しかして,引用例には,引用発明について上記構\\成上の変更をすることの動機付けとなるような事項が記載又は示唆されていると認めることはできない。
ウ 前記アのとおり,本願発明は,利用者の選択により,利用者の認証情報が登録されているリンク先が指定され,「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」(相違点2に係る構成)によって,上記利用者によるリンク先の指定情報を受け取った認証代行処理手段が,利用者に代わって当該リンク先の認証処理を代行するものであるから,本願発明と引用発明とは,相違点2に係る構\\成により,作用効果上,格別に相違するものであり,引用発明において,相違点2に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が適宜なし得る程度のものとは認められない。\n

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平成25(行ケ)10176 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月26日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が維持されました。裁判所は「複数の課題が示されている場合に,その優劣関係や関連性などを考慮した上で,ある課題の解決を優先して別の構成を採用することが当業者が適宜試みるものである」として、動機付けあり、および阻害要因無しと判断しました。

ア 動機付けについて
原告は,引用例1には,「構造も極めて簡単かつ強固」にするという課題があり,「接着剤や締結部材等を要することなく弾性的に密嵌合した状態で確実かつ強固に係止される」という作用効果を奏するためには,環状後端面3Dが内側環状面7Cに係合されることが必要であるから,引用発明は,環状後端面3Dが形成されること,すなわち,本願発明でいえば,第1の直径が第2の直径よりも小さい構\成でなければならないし,引用例1には,直径の大きさを上記構成と逆にする設計思想は開示も示唆もない,また,引用例2や引用例3の構\成も図面から特定されているだけで,具体的な設計思想はないから,引用発明と,引用例2又は引用例3の記載事項を組み合わせる動機付けはないと主張する。しかしながら,引用例1に「組立作業の大部分を占める電極部材の取り付けが極めて容易であるばかりでなく,構造も極めて簡単かつ強固で・・・」(段落【0004】)と記載されているように,環状後端面3Dを備えた電極素材は,強固な固着の作用をもたらすと同時に電極部材の取付けの容易性を導き出すための構\成でもある。したがって,引用発明は,部品を減らすこと,固着を強固にすることという課題のみならず,電極部材の取付けを容易なものとするという課題をも解決したものといえ,引用発明において電極部材の取付けやすさという課題が示唆されている以上,同じ課題を解決するための手段や技術と組み合わせることについて示唆があるといえる。そして,当業者は,引用発明に複数の課題が示されているような場合には,その優劣関係や関連性の程度,一方を優先した場合の他方への影響の度合いや得失などを考慮した上で,特定の課題の解決をいったん留保して異なる課題の解法の観点から,発明が採用している構成の一部を変更することも適宜試みるものというべきである。これを本件に当てはめると,筒状体の両端部に嵌める電極部材の形状として,第1の直径と第2の直径の大小関係をどのようにするかという点についても,固着を強固にするという課題を留保して電極部材の取付けを容易にするという課題の解決のために,当業者が適宜決定できる設計事項を採用して,構\成の変更を行うことについての示唆があるというべきである。そして,引用例2又は引用例3における電極部材の構成は,いずれも,第1の直径が第2の直径よりも大きい構\成であるところ,かかる構成は,筒状の物体の端の孔を部材でふさぐ場合において,センサという技術分野に限られずに用いられる,一般的なありふれた形状であって,いわば周知技術といえ(乙3,4参照),しかも,その構\造は筒状体に取り付けやすい形状であることは明らかであるから,これを取付けやすさを課題の1つとした引用発明に組み合わせることには動機付けがある。したがって,「筒状体B」に嵌まる部分の第2の直径を変更することなく,「筒状体B」に嵌まらない部分の第1の直径を「筒状体B」に嵌まる部分の第2の直径よりも大きく構成することで,本願発明と引用発明の相違点に係る構\成(第2の直径を第1の直径よりも小さくする構成)とすることは,当業者であれば容易に想到し得るものである。\n
イ 阻害要因について
原告は,引用例1において,仮に,第1の直径を第2の直径よりも大きく設定しようとすると,環状突起7及び9を除去して筒状体Bの内径を増大させなければならないから係止できず(仮定A),仮に,電極部材A1とA2の向きを逆にして対向させても頸部1同士が突き当たるし,距離をとっても取り外すことは困難であり(仮定B),仮に,第1の直径を第2の直径よりも大きく設定する場合,センサ自体が大型化し,小型化という引用発明の目的に反する(仮定C)から,引用発明に,引用例2又は引用例3の構成を採用すると,引用発明の本来の目的を放棄することになるから,組合せに阻害要因があると主張する。しかしながら,そもそも審決は仮定A,Bについての判断を示していない。また,引用発明は,従来技術(乙1,2)が有していた必要な部品の点数が多く,各種の組立工程が多いという課題に鑑みて,少ない部品で取り付けやすく固着の強固なセンサを目指して発明されたものであって,複数の課題が示されている場合に,その優劣関係や関連性などを考慮した上で,ある課題の解決を優先して別の構\成を採用することが当業者が適宜試みるものであることは,上記アで説示したとおりであり,このような試みに阻害要因があるとはいえない。したがって,電極部材を筒状体に係止する必要性がない場合には,係止のための工夫を取り除いて,第1の直径と第2の直径の大小関係を逆転させることや内部の環状突起を除外すること,電極部材同士がぶつかりあわないような筒状体の長さを設けたり,電極部材の頸部の長さを短縮したりすること,電極部材の取外しが容易な部材を用いた形状にすることは,当業者が適宜決定できる設計事項であって,上記仮定A,Bは阻害要因にはならないというべきである。さらに,第1の直径を第2の直径よりも大きく設定する場合には,第1,2のいずれの直径も従前より小さくしさえすれば,従来技術と比較してセンサ自体が大型化することもない。

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平成25(行ケ)10214 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月25日 知的財産高等裁判所

 相違点の認定について誤っているとして、進歩性無しとした審決が取り消されました。
 審決は,「ソレノイド駆動ポンプを含む電気機器や電気システムにおいて,設計上その使用に適した電圧が設定されていることは電気機器・システムにおける技術常識である。」,「交流電源を用いる電気機器において,電源電圧が異なっても同じ機器を使用できるように対処しようとする課題は周知の課題…であるから,パソ\\コン・家電用品に限らず,ポンプ等交流電源を用いるものならば当然要求される課題である。また,刊行物1発明の課題も入力電圧の異なる複数の電源に対応することである。」,「交流電源を用いる機器であるソレノイド駆動ポンプは,…従来から周知の技術である。」,「刊行物2には,ソ\\レノイドを用いるポンプ…の入力電圧が異なっても…,オン・オフのデューティを制御…する信号…を用いて所望の直流電圧を得ることが記載されている」,「自動車用の燃料ポンプとしてポンプ動作体…を往復動作するためにソレノイドが用いられるものは,…常套手段である」とし,「入力電圧の異なる複数の電源に対応することを課題とする刊行物1発明を,刊行物2記載の事項,上記技術常識,上記周知の課題,上記周知の技術及び上記常套手段の下,適用対象を本件訂正発明のソ\\レノイド駆動ポンプとし,本件訂正発明の上記相違点1に係る構成とすることは当業者であれば容易に想到し得ることと認められる。」(審決書17〜19頁)と判断した。しかしながら,審決の上記判断は,次に述べるとおり誤りである。ア 本件訂正発明は,前記(1)のとおり,ソレノイド駆動ポンプの制御回路に関する発明であり,ポンプの技術分野に属するものであって,その課題は,ユーザーが電源電圧の選択を必要とせず,かつ,種類が低減され,したがって,管理が容易なソ\\レノイド駆動ポンプの制御回路を提供することである。これに対し,刊行物1発明は,前記(2)のとおり,パソコン等の電子機器に内蔵されたDC/DCコンバータの制御回路に関する発明であり,電子機器の技術分野に属する発明であって,その課題は,利用者の経済的負担を軽減でき,設置面積が少なくて済み,かつ様々な電源に対応可能\\な電源供給手段を備えた電子機器を提供することにある。このように,刊行物1発明は,電子機器の技術分野に属するものであるのに対し,本件訂正発明はポンプの技術分野に属するものであるから,両者の技術分野は明らかに相違する。しかるに,審決は,上記のとおり,交流電源を用いる電気機器において,電源電圧が異なっていても同じ機器を使用できるようにするとの課題は周知の課題であることを理由として,ソレノイド駆動ポンプにも上記課題があるとする。しかし,これは技術分野を特定しない交流電源を用いる電気機器における課題であって,ポンプの技術分野における課題ではないし,ポンプの技術分野において当然に要求される課題であることを示す証拠もない。そもそも,本件訂正発明が属するポンプの技術分野における当業者が,ポンプとは明らかに技術分野が異なる電子機器に関する刊行物1に接するかどうかも疑問であり,また,仮に,ポンプの技術分野における当業者が刊行物1に接したとしても,刊行物1発明は,携帯型パーソ\\ナルコンピュータ等の電子機器に関するものであり,刊行物1には,ポンプについての記載はなく,刊行物1発明が技術分野の異なるポンプに対しても適用可能であることについてはその記載もなければ示唆もない。したがって,携帯型パーソ\\ナルコンピュータ等の電子機器に関する刊行物1発明をポンプに適用しようとする動機付けもないといわざるを得ない。以上によれば,刊行物1発明を本件訂正発明の相違点1に係る構成とすることが容易想到であるとした審決の前記判断は誤りである。イ 被告は,刊行物1発明も本件訂正発明も共に電源電圧の変換回路を開示しており,技術分野は同一であると主張し,また,刊行物1発明において用いられている「DC/DCコンバータ」は周知の技術であり,電気機器,電子機器全般に適用可能な汎用技術であるから,その適用範囲内において適用対象が異なっても,技術分野が異なることになるとはいえないとも主張する。しかし,前記のとおり,本件訂正発明はポンプの技術分野に属する発明であるのに対し,刊行物1発明は,電子機器の技術分野に属する発明であって,両者の属する技術分野は,明らかに異なる。そして,刊行物1発明が本件訂正発明と同様に電源電圧の変換回路を開示しているとしても,また,刊行物1発明において用いられている「DC/DCコンバータ」が周知の技術であり,電気機器,電子機器全般に適用可能\\な汎用技術であるとしても,刊行物1発明をポンプに適用しようとする動機付けがないことは前記のとおりである。

◆判決本文

◆関連事件です。平成25(行ケ)10193

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平成25(行ケ)10213 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月26日 知的財産高等裁判所 

 進歩性無しとした審決が、動機付けなしとして取り消されました。
 そこで,相違点2の容易想到性について検討するに,引用例1(甲1)の実施例8には,濃度が1重量%となる塩化カルシウム及び濃度が1%となる次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液50リットルを回転ドラムの外胴内に供給し,室温において撹拌することが記載されているが(段落【0074】),引用例1には,この薬剤水溶液50リットルの量並びに同薬剤水溶液に含まれる塩化カルシウム及び次亜塩素酸ナトリウムの濃度が,撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分の量を考慮して定められたものであることについての記載や示唆はない。次に,引用例1の記載事項を全体としてみても,「紙おむつを膨潤抑制剤水溶液に浸漬すると,…尿などの水分を吸収して膨潤していた高吸水性ポリマーは収縮して水分を染み出して小さな粒状あるいは粉末状になり」(段落【0050】)との記載はあるものの,使用済み紙オムツに含有する尿などの水分の具体的な量や,膨潤抑制剤水溶液に浸漬することにより吸水性ポリマーから染み出す水分の具体的な量について言及した記載はないし,また,撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分の量を利用することにより,撹拌に用いる薬剤水溶液の量あるいは薬剤水溶液に含有する水の量を必要最低限の量とすることができることについての記載や示唆もない。そうすると,引用例1に接した当業者において,引用例1発明における回転ドラム内に所定量の薬剤水溶液をあらかじめ供給し,その所定量の薬剤水溶液の中で紙オムツの撹拌を行う構成に代えて,薬剤(膨潤抑制剤及び消毒剤)の供給と水の給水(供給)とを別々に行うこととした上で,回転ドラム内で「撹拌可能\な最低限の水を給水しながら」,「使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて」撹拌を行う構成(相違点2に係る本願発明の構\成)を採用することについての動機付けがあるものとは認められない。したがって,引用例1に接した当業者が,引用例1発明において,相違点2に係る本願発明の構成を採用することは適宜なし得るものではなく,上記構\成を容易に想到することができたものとは認められない。
ウ 被告は,これに対し,1)環境やコストなどに配慮して,下水処理すべき処理液の量を減らすことは,当業者にとっては自明の課題であり,特別の動機付けは必要ないから,引用例1発明において,使用される水の量を減らし,薬剤水溶液の所定量を「処理槽内で撹拌可能な最低限」の量と特定することは,当業者が容易になし得ることである,2)引用例1発明は,使用済み紙オムツを処理するものであって,使用済み紙オムツに尿,すなわち水分が含まれていることは明らかであり,このような使用済み紙オムツについての薬剤と水が存在する状態での撹拌は,「使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用い」た撹拌であるといえるから,「使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用い」る点は,本願発明と引用例1発明との実質的な相違点ではない,3)引用例1発明において供給される「薬剤水溶液」を構成している薬剤と水の添加順序や添加方法を変更してみることは,当業者が必要に応じて適宜検討する事項であり,引用例1発明において,添加する薬剤を「薬剤水溶液」とした状態で添加することに代えて,薬剤と水を別々に添加することとし,その際に,予\め薬剤を添加した後に,水を徐々に供給する方法を採用し,「給水しながら」の構成とすることは当業者が適宜なし得ることであるとして,引用例1発明において,相違点2に係る本願発明の構\成を採用することは,当業者が容易に想到することができた旨主張する。しかしながら,上記1)の点についてみると,相違点2に係る本願発明の構成である「処理槽内で撹拌可能\な最低限の水を給水しながら」,「該使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて」撹拌を行う構成の技術的意義は,前記ア認定のとおり,処理槽内に使用済み紙オムツと石灰及び次亜塩素を投入した処理槽内に水を給水しながら,撹拌している間に,石灰によって使用済み紙オムツの特に高分子ポリマーが分解されて吸収している水分が処理槽内に混ざり,この水分と処理槽内に給水した水を共に用いて使用済み紙オムツを撹拌し,分解された使用済み紙オムツから放出される細菌等は次亜塩素によって消毒されるので,処理槽内に供給する水の量を必要最低限の量にすることができることにあるといえる。このような撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分の量を利用することにより,処理槽内に供給する水の量を必要最低限の量とする技術思想は,下水処理すべき処理液の量を減らすという課題から直ちに導出できるものではない。また,引用例1発明において,薬剤水溶液の所定量を「処理槽内で撹拌可能\な最低限」の量と特定することを想到し得るとしても,そのことは,上記技術思想に想到し得ることを意味するものではない。次に,上記2)の点についてみると,引用例1発明における所定量の薬剤水溶液中での使用済み紙オムツの撹拌においても,結果的に,撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分も撹拌に用いられているものとはいえるが,前記イ認定のとおり,引用例1発明における薬剤水溶液の量及び同薬剤水溶液に含まれる薬剤の濃度は,撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分の量を考慮して定められたものとは認められないから,引用例1発明は,撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分の量をも利用するいう上記技術思想を具現化しているものとはいえない。さらに,上記3)の点についてみると,前記イ認定のとおり,引用例1には,使用済み紙オムツに含有する尿などの水分の具体的な量や,膨潤抑制剤水溶液に浸漬することにより吸水性ポリマーから染み出す水分の具体的な量について言及した記載はないし,また,撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分の量を利用することにより,撹拌に用いる薬剤水溶液の量あるいは薬剤水溶液に含有する水の量を必要最低限の量とすることができることについての記載や示唆もない。そうすると,引用例1に接した当業者において,引用例1発明における薬剤水溶液を薬剤(膨潤抑制剤及び消毒剤)と水に分離し,それぞれの供給を別々に行うこととした上で,回転ドラム内で「撹拌可能な最低限の水を給水しながら」,「使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて」撹拌を行う構\成を採用する動機付けがあるものとは認められない。したがって,引用例1発明において,相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者が容易に想到することができたとの被告の主張は,理由がない。\n

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平成25(行ケ)10016 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年12月10日 知的財産高等裁判所 

 パチンコ機について進歩性なしとした審決が、動機付け無しとして取り消されました。
 (ア) 前記アの引用例2の記載(段落【0004】【0018】【0023】【0037】【0041】【0052】【0055】)によれば,引用発明2は,第一種の遊技と第二種の遊技とが行われる遊技機であり,これらの遊技が行われる順番について遊技者が把握できるようにする発明であるということができる。
(イ) 引用発明2において,遊技が行われる順番について遊技者が把握できるようにするためだけであれば,第一種の遊技と第二種の遊技の行われる順番を表示すれば足りるが,引用例2には,保留に関する残りの上限数である「予\」を併せて表示することも記載されている(段落【0041】【0049】〜【0051】)。当該記載によれば,引用発明2は,第一種の遊技の保留の上限数が4である場合,第一種の遊技,第二種の遊技,第一種の遊技,第一種の遊技の順に保留が行われているときには,「1→2→1→1→予\」と保留の状態が表示され,第二種の遊技,第一種の遊技,第一種の遊技,第一種の遊技,第一種の遊技の順に保留が行われているときには,「2→1→1→1→1」(「予\」の表示は第一種の遊技が上限に達しているのでない。)と表\示され,第一種の遊技,第一種の遊技,第一種の遊技,第一種の遊技の順に保留が行われているときには,「1→1→1→1」と表示されるものである。しかし,引用発明2は,第一種の遊技と第二種の遊技の2種類の変動表\示ゲームの確定タイミングに時間差を設け,遊技者が同時に行われる複数の変動表示ゲームの結果を気にすることなく,わかりやすいゲーム進行が可能\な遊技機を提供することを目的としており,発明の効果としては,第一の特別遊技に関連した識別情報の変動と,第二の特別遊技に関連した可変大入賞口の開閉が同時に達成することがないので,双方の遊技を存分に楽しむことが可能になること,第一の入賞口への入賞に基づく保留と第二の入賞口の入賞に基づく保留が,保留記憶手段に記憶されたことが一目瞭然なので,遊技者は保留状態を即座に把握できるとともに,これを受け,保留状況に応じた最適な遊技を行うことが可能\になることが挙げられている。また,第二種の遊技の留保について保留可能な上限に達していない場合に,第一種の遊技と異なって,「予\」といった表示を行わない理由については,何らこれを示唆する記載はないが,引用例2に記載された実施例については,第一種の遊技の留保数は4個であるのに対し,第二種の遊技の留保数は1個であることからすると,引用発明2は,これを前提として,第一種の遊技については,保留可能\な上限を「予」という形で示す必要があるが,第二種の遊技については,留保数は1 個しかないので,留保状態だけを表示することにすれば,遊技者は第二種の遊技の留保状態について確実に把握できることを前提としたものであり,第一種の遊技と異なって,あえて第二種の遊技について留保の上限を表\示しないことにしたものではないと理解することができる。そうすると,本件審決が認定した技術的事項Aについては,「第一留保手段による留保上限情報」について,「前記第1所定数に対応する数の第1空表示態様を一列に並べて表\示する第1空表示制御手段」が記載されているということはできるが,引用例2の記載から,「第1留保手段による留保上限情報と第2留保手段による留保上限情報とのうち前記第1留保手段による留保上限情報のみを表\示すべく」という技術的事項が開示されていると認めることはできない。また,技術的事項Bについては,「第2留保表示態様を,前記一列に並べて表\示された前記第1空表示態様のもっとも端の位置に表\示する」ことが記載されているということができるが,「前記第2留保手段による留保上限情報を表示することなく,」という技術的事項が開示されていると認めることはできない。
(ウ) さらに,引用発明1は,2種類の第一種の遊技について,確定タイミングに時間差を設け,遊技者が同時に行われる複数の変動表示ゲームの結果を気にすることなく,わかりやすいゲーム進行が可能\な遊技機を提供することを目的としており,変動表示装置は,2種類の変動表\示ゲームについて,いずれも,留保上限情報と現在の留保状態の有無と数を明示するものであり,本願発明のように,第2留保手段による留保上限情報をあえて表示しないことにより,遊技者から見れば留保上限が増えたように感じることができ,興趣が高められるといった目的,手段,効果を示唆する記載は見当たらない。そして,引用発明2についても,その目的,効果は,引用発明1と同様であり,変動表\示装置は,実施例についていえば,第一種の遊技と第二種の遊技の留保上限数を前提として,遊技者から見て留保状態の有無及び数と留保上限数との関係が明確に分かるように表示しており,本願発明のように,第2留保手段による留保上限情報をあえて表\示しないことにより,遊技者から見れば留保上限が増えたように感じることができ,興趣が高められるといった目的,手段,効果を示唆する記載は見当たらない。そうすると,引用発明1及び引用発明2は,実質的に「わかりやすいゲーム進行が可能な遊技機を提供する」という共通の目的を有しているものの,引用発明1に,本願発明のような第2留保手段による留保上限情報をあえて表\示しないことにより,遊技者から見れば留保上限が増えたように感じることができ,興趣が高められるといった目的を達成し,またこのような効果を得るために,相違点1ないし3について,引用発明2を適用する動機付けはないといわざるを得ない。
(エ) 以上によれば,引用例2には,相違点1ないし3に関する全ての技術的事項の開示があるとはいえず,引用発明1に引用例2に開示された技術的事項を適用する動機付けも認められないから,本願発明は,引用発明1及び引用発明2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたと認めることはできない。

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平成25(行ケ)10066 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年11月28日 知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が維持されました。
 以上の刊行物1及び2の開示事項を前提とすると,刊行物1及び2に接した当業者は,1)刊行物1記載の多層構造重合体及び刊行物2記載の多層構\造のグラフト共重合体は,いずれも添加対象樹脂の耐衝撃性改良剤として耐衝撃性及び耐熱性の両者に優れた効果を奏し,刊行物1記載の多層構造重合体を含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物を添加して得られる熱可塑性樹脂組成物と刊行物2記載の多層構\造のグラフト共重合体を添加して得られる熱可塑性樹脂組成物は,いずれも自動車用部品,OA機器等の用途に有用であること,2)刊行物1の記載からは,多層構造重合体のコア層を構\成するゴム層が肥大化しているかどうかは不明であるのに対し,刊行物2には,肥大化したブタジエン系ゴム重合体ラテックスを含有する多層構造のグラフト共重合体は,肥大化していないブタジエン系ゴム重合体ラテックスを含有する多層構\造のグラフト共重合体よりも耐衝撃性に優れており,さらに,肥大化剤として酸基含有共重合体を用いて肥大化した場合には,耐衝撃性に優れるとともに,熱安定性を低下させることなく,耐熱性にも優れていることが示されていることを理解するものといえるから,刊行物1記載の多層構造重合体を含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物において,組成物の耐熱性を維持したまま,より耐衝撃性の向上した組成物を得ることを目的として,刊行物1記載の多層構\造重合体に代えて刊行物2記載の肥大化したブタジエン系ゴム重合体ラテックスを含有する多層構造のグラフト共重合体を置換することを試みる動機付けがあるものと認められる。したがって,刊行物1及び2に接した当業者であれば,刊行物1及び2に基づいて,相違点に係る本願発明の構\成を容易に想到することができたものと認められる。

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平成24(行ケ)10402 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年10月07日 知的財産高等裁判所

 単なる設計事項であるとして、進歩性違反無しとした審決が取り消されました。
 上記(ア)〜(ウ)認定の各公報等の記載事項に照らすと,水などの液中で切断加工を行う装置において,水槽などの加工槽内の液面(水位)を調節する装置を切断加工領域を除く領域(外側)に備えることは,本件出願日以前において周知であったものと認められる。
ウ 相違点3に係る容易想到性について
後記3(1)認定のとおり,甲7公報記載の水中切断装置において用いられているプラズマ・アーク・トーチ・システムに代えて,ノズルから噴射されるアブレシブによりワークの切断加工を行う水中切断用アブレシブ切断装置とすることは当業者が容易に想到し得ることである。そして,上記イ認定のとおり,水などの液中で切断加工を行う装置において,水槽などの加工槽内の液面(水位)を調節する装置(本件発明における「液位調整タンク」に該当する。)を,切断加工領域を除く領域(外側)に備えることは,本件出願日以前において周知であったこと,及び,アブレシブ切断装置においては,ノズルから噴射された研磨材を含む高圧水は水中でも減衰が少なく,ワークに衝突し加工を行った後の下流領域においても,かなりの衝撃加工エネルギーを保有しているものであることは本件出願日において周知であったこと(甲28,29,33)に照らすと,甲第7号証記載の発明において,切断方法としてアブレシブ切断を採用した際に,液位調整タンクなど損傷してはいけないものを,アブレシブジェットが直撃してしまう場所を避けて切断加工領域を除く領域(外側)に配置することは,当業者が容易に考えることであり,そのように考える動機付けがあるといえる。そして,甲第7号証記載の発明に関し,上記の構造とすることが技術的に困難であるとは認められない(甲7,19,30,32)ことからすれば,液位調整タンクを切断加工領域の下側から切断領域を除く領域(外側)に配置することは設計的な変更事項であるといえる。以上によれば,甲第7号証記載の発明において,切断方法としてアブレシブ切断を採用した際に,上記周知技術を適用して,相違点3に係る発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たものであると認められる。\n

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平成24(行ケ)10305 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年07月31日 知的財産高等裁判所 

 進歩性違反無しとした審決が維持されました。
(1)ア 本件発明1と甲1発明とは,いずれも,被覆材を表面に設けた被加工物を,アシストガスを用いたレーザ光により加工するレーザ加工方法に関するものであり,両発明の技術分野は共通する(本件明細書の【0001】,甲1公報の【0001】)。また,本件発明1と甲1発明とは,レーザ加工中に,被加工物と被覆材との間にアシストガスが侵入して被覆材が剥離するのを防止するために,第1加工工程として,最終加工とは異なる加工条件により被覆材を処理する点でも共通する(本件明細書の【0002】〜【0008】,【0014】,【0050】,甲1公報の【0002】〜【0006】,【0008】,【0018】)。しかし,本件発明1は,被覆材をあらかじめ除去するものであるのに対し,甲1発明は,保護シート(被覆材)が剥離するのを防止するために,ワーク(被加工物)にあらかじめ保護シートを焼付けるものであり,この点において,両発明は相違する。甲1公報には,保護シートをあらかじめ除去することについては記載も示唆もなく,甲1発明の保護シートが剥離するのを防止するために,保護シートをあらかじめ除去することを動機付けるものはない。かえって,甲1公報には,保護シートがワーク上に貼\付されたままであることが望ましい(【0003】)が,保護シート付きワークにレーザビーム及びアシストガスを照射して切断加工を行うと,保護シートが剥離してしまうため,保護シートをワーク上に残すことを目的とするレーザによる切断加工は実際には行われていなかった(【0005】)ことが記載されている。このような記載に照らすと,甲1発明は,保護シートをあらかじめ除去してワークを露出させることは,望ましくないとの認識を前提とするものと解される。そうすると,甲1発明においては,保護シートをあらかじめ除去してワークを一定範囲にわたり露出させることは,保護シートが剥離するのを防止するためであるとはいえ,そもそも意図するところではないともいえる。
イ 一方,甲2公報には,表面を合成樹脂等の保護材で覆った状態の金属材に対して,レーザによる溶断加工を実施すると,保護材が金属材に溶着して表\面を汚すこと(甲2・1頁右下欄16行〜2頁左上欄8行),また,このような溶着を防止するために,低い出力のレーザ光エネルギで保護材を溶断した後,高い出力のレーザ光エネルギで金属部材を加工すること(同・特許請求の範囲)が記載されている。また,甲3公報には,ステンレスなどの金属からなる母材の表面に合成樹脂の被膜を付着させた材料を,レーザ光で切断する際に,これらを同時に切断すると,被膜が炭化した状態で母材の表\面に焼付いてしまうこと(甲3・1頁左下欄18行〜2頁左上欄2行),また,このような被膜の炭化を防止するために,弱いエネルギのレーザ光で被膜だけ切断してから,強いエネルギのレーザ光で母材を切断すること(同・特許請求の範囲)が記載されている。甲2公報及び甲3公報の上記記載によれば,被覆材を表面に設けた被加工物をレーザ光により加工する際に,被覆材が被加工物に溶着したり,被覆材が炭化して被加工物に焼付いたりするのを防止するために,低いエネルギのレーザ光で被覆材をあらかじめ除去した後,高いエネルギのレーザ光で被加工物を加工することは,周知技術であると認められる。しかし, 甲1発明は,ワークと保護シートとの間にアシストガスが流入して保護シートが剥離するのを防止するために,ワークにあらかじめ保護シートを焼付けるものであるのに対し,上記周知技術において,被覆材の除去は,被覆材が被加工物に溶着すること等を防止するために行われるものであり,被加工物と被覆材との間にアシストガスが侵入して被覆材が剥離するのを防止するために行われるものではない。そもそも,甲2公報及び甲3公報には,アシストガスについての記載はなく,アシストガスが被加工物と被覆材との間に侵入して,被覆材が剥離することについても何ら記載はない。そうすると,上記周知技術における「被覆材を除去する」ことと,甲1発明における「ワークに保護シートを焼付ける」ことは,相互に置換可能な手段であるとはいえないから,甲1発明において,ワークにあらかじめ保護シートを焼付けることに代えて,保護シートをあらかじめ除去する動機付けがあるということはできない。\n

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平成24(行ケ)10349 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年07月18日 知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が維持されました。
 刊行物1発明において,連通気孔の体積率を「少なくとも50体積%」に高める動機付けがないとはいえない。刊行物1には,砥石に形成される気孔の体積率に関し,「気孔形成用物質の粒径・・・があまり小さ過ぎると砥石の自生効果が少なくなり,一方,あまり大き過ぎると砥石が脆くなってしまうので好ましくない。又,砥石中に形成される気孔の体積率(気孔率)は約5〜50%であるのが好ましく,約10〜40%であるのがより好ましい。この体積率が上記範囲外であると,上述したと同様の理由により好ましくない。」との記載があり,気孔の体積率が50%を超えると,砥石が脆くなってしまうので好ましくないことが記載されていると認められる。しかし,補正発明の数値は50体積%を含むし,刊行物1の特許請求の範囲は,気孔の体積率が50%を下回る数値に限定していないから,刊行物1に記載された発明を全体としてみれば,気孔の体積率は50%を上回らないのが好ましいというにとどまるものであり,そこに上限値を規定する趣旨はなく,50%を超える体積率が除外されているとまではいえない。そして,上記のとおり,そもそも,気孔の体積率をどの程度とするかは,砥石の用途や使用態様のほか,砥粒及び結合材の材質や割合,砥石の各種特性と耐久性のバランス等も考慮して,当業者が適宜決定し得る事項であるといってよい。そうすると,砥石の特定の用途や使用態様の下で,砥粒及び結合材として特定の材質のものを特定の割合で用いる場合等においては,気孔の体積率が50%を超えると,砥石が脆くなることがあるとしても,砥石の用途や使用態様のほか,砥粒及び結合材の材質や割合等によっては,また,砥石の各種特性と耐久性をどのようにバランスさせるかによっては,50%以上の体積率を設定し得ることは,当業者にとって明らかである。以上によれば,刊行物1発明において,連通気孔の体積率を「少なくとも50体積%」に高める動機付けを肯定することができる。

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平成24(行ケ)10271 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年06月11日 知的財産高等裁判所 

 進歩性違反無しとした審決が維持されました。
 審決は,相違点1,3に係る本件発明1,6の構成は容易想到と判断したが,相違点2,4に係る本件発明1,6の構\成は容易不想到とした。原告は,この後者の審決判断を争っているので,相違点2,4に係る容易想到性についてみると,超音波モータと振動ジャイロとをカメラに同時に搭載する際に,振動検出素子の共振周波数と超音波モータが与える不要な振動の周波数とがともに超音波周波数域であるとしても,それらが重なる蓋然性が高く,重なる場合には振動ジャイロは誤出力してしまうという,それらの振動の周波数に関わる特有の課題が存在することについては,これを開示する証拠はない。そして,上記特有の課題を開示する証拠がない以上,それを解決するための手段を採用する動機付けがあるとは認められない。また,所定の帯域あるいは範囲を含め,超音波モータの共振周波数あるいは駆動周波数を,励振センサの共振周波数に関係した帯域に関連して設定することが,公知であったことを示す証拠もない。一般的に,関連する技術分野の発明や技術事項を組み合わせることは,当業者が容易に着想し得ることであるから,ともにカメラに用いられる甲10記載のような振動ジャイロや甲11記載のような超音波モータを,引用発明(甲4)のカメラに適用することを,当業者は着想し得るといえる。しかし,モータや振動を検出するセンサには様々な態様のものが存在しているのであって,超音波モータも多種多様に存在しており,甲11はその一例に過ぎず,また,圧電振動ジャイロも多種多様のものが存在しており,甲10はその一例に過ぎない。上記(3)に判示したとおり,甲10には,振動ジャイロを,超音波モータを備えたカメラに用いることの記載はなく,振動ジャイロ(振動検出素子)の共振の半値幅帯域と超音波モータの周波数制御範囲とを別の帯域に設定したことは何ら記載されておらず,また,上記(3)に判示したとおり,甲11には,励振された振動検出素子からなるセンサについては記載がなく,振動検出素子の共振の半値幅帯域と超音波モータの周波数制御範囲とを別の帯域に設定したことは記載されておらず,さらに,超音波モータがすでに備えられている引用発明に,甲11記載発明の超音波モータを適用しようとする動機があるとはいえず,超音波モータと振動ジャイロとをカメラに同時に搭載する際の特有の課題,解決手段,及びそれを採用する動機のいずれも公知とは認められないことを踏まえると,個別特定の公知技術である甲10記載発明と甲11記載発明とをともに適用することが,当業者にとって容易に想到し得ることであるとはいえない。原告が主張するように,甲10記載発明の振動ジャイロと甲11記載発明の超音波モータとをともに適用すれば,超音波モータの周波数制御範囲が振動ジャイロの1次と2次の共振の半値幅帯域に重ならないものとなり,上記相違点2に係る本件発明2の構成を満足することとなるが,甲10記載発明と甲11記載発明とを単に事後分析的に選択したに過ぎないといえる。したがって,引用発明において,上記相違点2に係る本件発明2の構\成とすることは,引用発明(甲4)並びに甲10記載発明及び甲11記載発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。相違点4に係る本件発明6の構成は,本件発明2において単に「振動検出素子の共振の半値幅帯域と別の帯域」と特定していたものを,本件発明6においては「振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間」と更に限定して特定したものに相当すると解される。よって,本件発明6のこの構\成も,当業者が容易になし得たものとすることはできない。

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平成24(行ケ)10335 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年06月06日 知的財産高等裁判所

 動機づけが無いとして、裁判所は、進歩性なしとした審決を取り消しました。
 甲2,3(周知例1,2)によれば,1)填料としての炭酸カルシウム及び/又は古紙由来の炭酸カルシウムが存在する製紙工程は周知のものと認められ,また,2)炭酸カルシウムが存在する製紙工程では,微生物が繁殖しやすいこと,3)微生物の繁殖により,微生物を主体とし填料等を含むスライムデポジットが生成され,紙に斑点が発生する等の問題を生じること,4)このような問題を防止するために,製紙工程水にスライムコントロール剤を添加し,微生物の繁殖を抑制し又は殺菌することは,いずれも周知の事項と認められる。しかし,上記の斑点は,微生物を主体とするスライムデポジットによるものであり,ニンヒドリン反応では陽性を示すもの(本願明細書【0008】,甲19)と考えられる。また,補正発明における炭酸カルシウムを主体とする斑点が,従来のスライムコントロール剤では,その濃度を高くしたとしても十分に防止できず,上記反応物によれば防止できるものであることも考慮すれば,上記の斑点は,填料を含むものではあるものの,補正発明における炭酸カルシウムを主体とする斑点とは異なるものと認めるのが相当である。周知例1,2にも,炭酸カルシウムが存在する製紙工程において,微量スライムが炭酸カルシウムを凝集させることにより,紙に炭酸カルシウムを主体とする斑点が発生すること,また,製紙工程水に上記反応物を添加することにより,このような斑点を防止できることについては記載も示唆もない。周知例1,2も,引用発明に係る方法を,炭酸カルシウムが存在する製紙工程において実施することにより,紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止することを動機づけるものではない。以上のとおり,周知例1,2には,炭酸カルシウムが存在する製紙工程において,製紙工程水に上記反応物を添加することにより,紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止できることについて記載も示唆もない以上,引用発明に係る方法を,炭酸カルシウムが存在する製紙工程において実施することにより,紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止する動機づけは認められない。\n

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平成24(行ケ)10328 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年04月10日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、組み合わせる動機づけ無しとして取り消されました。
 本願発明は,上記特許請求の範囲及び本願明細書の記載によれば,飲食物廃棄物の処分のための容器であって,液体不透過性壁と,液体不透過性壁の内表面に隣接して配置された吸収材と,吸収材に隣接して配置された液体透過性ライナーとを備え,吸収材上に被着された効果的な量の臭気中和組成物を持つものである。本願発明は,上記構\成により,一般家庭において,ゴミ収集機関により収集されるまで,飲食物廃棄物からの液体の流出を防止し,腐敗に伴う不快な臭気を中和する,経済的なプラスチック袋を提供することができるものである。これに対し,引用発明は,上記引用例1(甲8)の記載によれば,厨芥など水分の多いごみを真空輸送する場合などに適用されるごみ袋に関するものであるところ,これらのごみをごみ袋に詰めて真空輸送すると,輸送途中で破袋により,ごみが管壁に付着したり,水分が飛散して他の乾燥したごみを濡らして重くするなどのトラブルの原因となっていたという課題を解決するために,水分を透過する内面材と,水分を透過させない表面材と,上記内面材と上記表\面材とに挟まれ水分を吸収して凝固させる水分吸収体との多重構造のシート材でごみ袋を構\成することにより,厨芥などのごみの水分を吸収して凝固させ袋内に閉じ込めるようにしたものである。
 ところで,上記引用例1(甲8)の記載等に照らすと,真空輸送とは,住宅等に設置されたごみ投入口とごみ収集所等とを輸送管で結び,ごみ投入口に投入されたごみを収集所側から吸引することにより,ごみを空気の流れに乗せて輸送,収集するシステムであって,通常,ごみ投入口は随時利用でき,ごみを家庭等に貯めておく必要がないものと解される。そうすると,引用発明に係るごみ袋は,真空輸送での使用における課題と解決手段が考慮されているものであって,住宅等で厨芥等を収容した後,ごみ収集時まで長期間にわたって放置されることにより,腐敗し,悪臭が生じるような状態で使用することは,想定されていないというべきである。これに対し,被告は,引用発明は,厨芥,すなわち,腐敗しやすく悪臭を発生することが想定されるごみを収容するごみ袋であり,腐敗臭,悪臭の発生を抑制すべき技術課題を内在すると主張する。しかし,上記のとおり,引用発明は,厨芥等を真空輸送に適した状態で収容するためのごみ袋であり,厨芥等を長期間放置しておくと腐敗して悪臭を生じるという問題点は,上記真空輸送により解決されるものと理解することができ,引用例1の「厨房内などに水切り設備を設置して事前に水切りを行えるなどの場合は,本ごみ袋の下部に水切り用孔6を穿設してもよく,この場合はより一層効果的にごみの水分を取り除くことができる」(甲8・段落【0008】)との記載からしても,引用発明が厨芥等から発生する腐敗臭,悪臭の発生を抑制すべき技術課題を内在していると解することはできない。
 以上のとおり,引用発明には,腐敗に伴う不快な臭気を中和するという課題がなく,引用発明に臭気中和組成物を組み合わせる動機付けもないので,本願発明と引用発明との相違点について,引用発明において,効果的な量の臭気中和組成物を吸収材上に被着して相違点に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは,引用例2記載の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるとした本件審決の判断には誤りがある。

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平成24(行ケ)10284 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月27日 知的財産高等裁判所

 動機づけなしとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 上記1(1)イ 認定の事実によれば,引用例1記載の発明は,美肌作用やアトピー性皮膚炎,湿疹,皮膚真菌症,色素沈着症,尋常性乾癬,老人性乾皮症,老人性角化腫,火傷などの皮膚疾患の改善作用,発毛促進作用,発汗促進作用,消化液分泌促進作用,利尿作用,便通促進作用等の生体活動の改善や,人体機能の発現に関与する物質群の補給システムを中心とした生体活動の更なる改善手段(生体に有害な環境ホルモンなどの体外への排出を高める作用も含む。)を提供することを課題とし(【0005】,【0006】,【0010】),体内から体外に向かって形成された水の流れを媒体とした人体機能\の発現に関与する物質の能動的な移送を真の目的とする津液作用と,酸素,栄養などのエネルギーを中心とする補給の活性化作用である補血及び活血作用が,同時に促進されることが,人体にとって極めて有用であることから,津液作用を有する生薬のエッセンス及びその活性成分から選ばれる1種ないし2種以上と補血・活血作用を有する生薬のエッセンスから選ばれる1種ないし2種以上とを組み合わせて使用することにより,上記課題を解決するものであること(【0002】ないし【0004】,【0007】)が認められる。また,引用例1には,実施例においてシムノールサルフェート,ダイズイン等を含む健康食品で,環境ホルモンの排出が促進されたことが記載される(【0029】,【0033】)が,アルツハイマー病,加齢による認識記憶喪失,痴呆,喘息,心臓疾患,運動障害,運動麻痺及び筋肉の引きつり等に対する効果を示唆する記載はない。
一方,上記(1)ウ,エ 認定の事実によれば,引用例2ないし4には,大豆イソフラボン等が,アルツハイマー病,加齢による認識記憶喪失,痴呆,喘息及び心臓疾患等に効果があり,甲6には,コクダイズが運動障害,運動麻痺及び筋肉の引きつり等に効果があり得ることが開示されているといえる。しかし,引用例2は,COX-2,NFκB,ならびにCOX-2およびNFκBの両者の生合成阻害剤であるフラボン化合物を開示するもの,引用例3は,ダイズ,および,その他,クローバーなどの植物の成分であるイソフラボノイドを単離したものを,アルツハイマー型痴呆,および加齢に伴うその他の認識機能\低下を治療および予防するために使用することを特徴とする発明を開示するもの,引用例4は,イソ\フラボン,リグナン,サポニン,カテキン,および/またはフェノール酸を,栄養補給剤としてまたはより伝統的なタイプの食物中の成分として各自が摂取する便利な方法を提供する発明を開示するもの,甲6は,コクダイズの成分,薬効等を開示するものであって,いずれも引用例1記載の上記課題と共通する課題,とりわけ,生体に有害な環境ホルモンなどの体外への排出を高める作用について記載しているとは認められない。そうすると,引用例1に接した当業者は,引用発明に含まれるダイズインが,環境ホルモン排出促進ないしこれと関連性のある生理的作用を有することを予期し,そのような生理的作用を向上させるべく,津液作用を有する生薬のエッセンス及びその活性成分と補血・活血作用を有する生薬のエッセンスを組み合わせて使用することに想到するとは考えられるが,ダイズインが,環境ホルモン排出促進と関連性のない生理的作用を有することにまで,容易に想到するとは認められない。そして,当業者にとって,引用例2ないし4及び甲6に記載されるアルツハイマー病,加齢による認識記憶喪失,痴呆,喘息,心臓疾患,運動障害,運動麻痺及び筋肉の引きつり等に対する効果が,環境ホルモン排出促進ないしこれと関連性のある生理的作用であると認めるに足りる証拠はないから,当業者が,引用例1の記載から,ダイズインが,上記の各効果をも有することに容易に想到すると認めることはできない。
 イ これに対し,被告は,ダイズインのアグリコンであるダイゼイン等の大豆イソフラボンがアルツハイマー病,加齢による認識記憶喪失,痴呆,喘息及び心臓疾患の処置に有効であることが公知であり,ダイズインを有効成分とする大豆には,脳梗塞後の運動障害,運動麻痺,及び筋肉の引きつりに効果があり,また視力を良くする効果もあることが周知であることから,ダイズインを含む引用発明の組成物の具体的用途として,「強筋肉剤,抗脳梗塞後遺症剤,抗運動麻痺剤,抗喘息剤,抗視力減退剤,抗機能\性心臓障害剤,または,抗痴呆症剤」といったものをさらに特定することは,当業者が格別の創意なくなし得る旨主張する。しかし,上記のとおり,引用発明は,津液作用を有する生薬のエッセンス及びその活性成分と補血・活血作用を有する生薬のエッセンスとを組み合わせて使用することにより,課題を解決しようとするものであるから,引用例1に接した当業者が,引用発明の1成分にすぎないダイズインにことさら着目することの動機づけを得るとはいえない。そうすると,たとえ,引用例2ないし4及び甲6により,大豆イソフラボンないし大豆が被告主張の効果を有することが周知ないし公知といえるとしても,当業者において,引用発明から出発して,当該周知ないし公知の知見を考慮する動機づけがあるとはいえず,相違点2に係る本願発明の構\成(「強筋肉剤,抗脳梗塞後遺症剤,抗運動麻痺剤,抗喘息剤,抗視力減退剤,抗機能性心臓障害剤,または,抗痴呆症剤」)に想到することが容易であるとはいえない(まして,本願発明は,引用発明の組成物に加えてクルクミンを含むものであるところ,そのような3成分を含む組成物について,強筋肉剤等の用途が容易想到であることの理由も明らかでない。)。\n

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平成24(行ケ)10312 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月29日 知的財産高等裁判所

 無効理由(進歩性違反)無しとした審決が維持されました。
 上記ア(ア) 認定の事実によれば,本件発明1は,液体インク収納容器の状態に関する報知をLEDなどの発光手段によって行う構成で用いられる液体インク収納容器,液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジに関し,配線数を削減するためにはバス接続といった共通の信号線の構\成が有効であるが,そのような共通の信号線を用いる構成では,インクタンクもしくはその搭載位置を特定することができないという問題があることから(【0001】,【0009】),複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表\示器の発光制御を行い,インクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の発光制御をすることを可能\とすることを目的(解決課題)とした発明であること(【0010】),記録装置の本体側の接点(コネクタ)と接続する液体インク収納容器であるインクタンクの接点(パッド)を介して入力される信号と,そのインクタンクの色情報とに基づいて発光部の発光を制御するので,複数のインクタンクが共通の信号線によってその同じ制御信号を受け取ったとしても,色情報に合致するインクタンクのみがその発光制御を行うことができ,インクタンクを特定した発光部の点灯など発光制御が可能となり,例えば,キャリッジに搭載された複数のインクタンクについて,その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに,上記所定の位置での発光を検出するようにすることにより,発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識でき,ユーザに対してインクタンクを正しい位置に再装着することを促す処理をすることができ,インクタンクごとにその搭載位置を特定することができるという効果を奏するものであること(【0019】)が認められる。すなわち,本件発明1は,共通バス接続方式のような共通の信号線を用いた場合でも,インクタンクがインク色に従ってキャリッジの所定の位置に搭載されているかを識別することを目的(解決課題)とした発明であるといえる。
(イ) 一方,甲1発明の内容は,上記第2の3(2)ア のとおりであり(当事者間に争いがない。),共通バス接続方式の下で,液体インク収納容器が誤りなく装着されているかを検出するための機構を備えているものである。しかし,上記ア(イ) 認定の事実によれば,複数色のインクカートリッジを備えるカラープリンタにおいて,インクカートリッジの交換時における誤装着を防止するため,インク色毎にインクカートリッジの外形形状を変更し,誤ったインクカートリッジが物理的に装着できないようにする技術や,同一の外形形状を有するインクカートリッジを用い,1個のインクカートリッジのみが脱着可能な開口部を有するカバーをプリンタ上に設け,交換されるべきインクカートリッジを開口部まで移動させて,交換されるべきインクカートリッジのみの脱着を許容する技術が知られるところ,前者の技術には,リサイクル効率が悪い等の問題があり,後者の技術では,交換されるべきでないインクカートリッジの誤った取り外しは防止できても,装着されたインクカートリッジが正しいインクカートリッジであるか否かまでは検出できないという問題があったことから,甲1発明は,外形的な識別形状を用いることなく,交換時における誤装着や交換されるべきでないカートリッジの誤った取り外しを防止することを目的とするものであることが認められる。すなわち,甲1発明は,(1回につき)1個のインクカートリッジのみが脱着可能\であることを前提として,交換時における誤装着や交換されるべきでないカートリッジの誤った取り外しを防止することを目的したものと認められる。そして,同発明の記憶装置は,クロック信号端子CT,データ信号端子DT,リセット信号端子RTと接続されており,データ信号端子DTを介して入力されたデータ列に含まれる識別データとメモリアレイ201に格納されている識別データとが一致するか否かを判定するのであって,電気配線を通じて液体インク収納容器からインク色等に係る情報(信号)を取得するものにすぎない。そうすると,甲1発明は,「共通バス接続方式のような共通の信号線を用いた場合でも,インクタンクがインク色に従ってキャリッジの所定の位置に搭載されているかを識別する」という本件発明1と同様の解決課題を有するものではなく,また,光を利用して液体インク収納容器の識別を行う本件発明1の構成は開示も示唆もされていないというべきである。なお,甲1には,搭載されているインクカートリッジCAに対応する数だけキャリッジ101上にLED18が備えられた実施例が開示されているが,このLEDは,交換の対象となるインクカートリッジの搭載位置をユーザに視覚的に指し示すにすぎず,その機能\は受動的なものであり,本件発明1のように,液体インク収納容器の識別を行うために動作するものではない。したがって,甲1に接した当業者が,共通バス接続方式のような共通の信号線を用いた場合でもインクタンクがインク色に従ってキャリッジの所定の位置に搭載されているかを識別できるようにするために,甲1発明に,他の公知技術を組み合わせようとする動機付けを得るとは認められない。
(ウ) また,上記ア(ウ)ないし(オ)認定の事実に照らすと,以下のとおり,甲2,甲3,甲5のいずれにも本件発明1の上記解決課題と同様の解決課題は開示ないし示唆されていない。すなわち,甲2記載の発明は,インクカートリッジの誤装着を電気的に検出でき,こわれにくく,作製費用が少ない検出手段を有するインクジェット記録装置を提供することを目的とし,インクジェット記録装置にインクカートリッジが装着されると,インクジェット記録装置は,インクカートリッジに設けられている導体または抵抗体があらかじめ定められたものであるか否かを電気的に検出し,導体または抵抗体があらかじめ定められたものである場合は,印字制御を実行するが,導体の位置や抵抗体の抵抗値が異なっている場合は,警告を発するというものであり,共通バス接続方式のような共通の信号線を用いた場合を前提としたものではなく,インクタンクがインク色に従ってキャリッジの所定の位置に搭載されているかを識別することを意図したものでもない。甲3記載の発明は,インクタンクに配線などを引き回したりする必要のない,簡易な構成で,インクタンク内の情報の検出などの外部との双方向の情報のやり取りを非常に効率良く行える立体形半導体素子を配したインクタンク,および該インクタンクを備えたインクジェット記録装置を提供することを目的とし,立体形半導体素子は,外部とのやり取りを行うものである。伝達先はインクジェット記録装置のみでなく,特に光,形,色や音などの場合は人の視覚や聴覚に伝達してもよいとの記載があり(【0049】),立体形半導体素子からの情報伝達手段として,光を用いることは示されているといえるが,これは,外部に情報を伝達する手段として光を用いることが開示されているにすぎず,光の受光結果に基づいて液体収納インク容器の搭載位置を検出するという相違点1に係る本件発明1の構\成が示されているとはいえない。甲5記載の発明は,光を用いてインク残量やインク色を検出する構成を有するが,同発明は,発光体と受光体とで構\成される光学的検出手段を,インク容器の一部位を略鉛直方向から挟んで配置し,インク容器の一部位およびインク容器中のインクに光を透過させて,その強弱や透過率によって,インク容器内のインク量やインク色を検出するというのであるから,相違点1に係る本件発明1の構成を有するものではない。
(エ) 以上のとおり,相違点1に係る本件発明1の構成は,甲5記載の技術事項に,甲3記載の技術事項を組み合わせることにより,当業者であれば容易に想到できる,甲1発明に甲5,甲3記載の技術事項を組み合わせる動機付けもあるとの原告らの主張は理由がない。\n

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平成24(行ケ)10245 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月25日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は、結論に至る論理付けが不十分というものです。
 審決は,相違点4について,周知例4〜6の記載からみて,フェノールと3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンやアセトン等のカルボニル化合物を反応させてビスフェノール類を製造する技術において,分離された濾液を製造目的化合物であるビスフェノール類を含んだ状態で上記「反応」を行う工程に「循環」させることが周知であることを前提として,引用発明における「再結晶ろ液を繰り返し使用する」工程において,再結晶濾液の少なくとも一部を,製造目的物である「1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン」を含む状態で,フェノールと3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンとを反応させる工程に循環させることは,当業者が容易になし得たものであると判断する。この点,確かに,上記周知例4ないし6,乙2によれば,一般に,化学物質の製造工程において,目的物質を主に含む画分以外の画分にも目的物質や製造反応に有用な物質が含まれる場合には,それをそのまま,あるいは適切な処理をした後に製造工程で再利用して無駄を減らすことは周知の技術思想であって,実際,フェノールとカルボニル化合物からビスフェノール類を製造する場合においても,さまざまな具体的製造方法において,途中工程で得られた有用物質を含む画分が再利用されているものと認められる。
しかし,ある製造方法のある工程で得られた,有用物質を含む画分を,製造方法のどの工程で再利用するかは,製造方法や画分の種類に応じて異なるものと認められる。この点,引用発明においては,再結晶濾液を再利用できる工程として,フェノールと3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンとを反応させる前反応及び後反応のみならず,中和後の結晶化工程や再結晶工程が想定されるところ,審決には,フェノールと3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンとを反応させる工程に循環させるという構成に至る理由が示されていない(なお,乙2を参照してもこの点が\n明らかになるとはいえない。)。
これに対し,被告は,周知例4〜6が引用発明と目的物質や反応に有用な物質が同様であることから,引用発明における「再結晶ろ液を繰り返し使用する」工程において,再結晶濾液の少なくとも一部を,製造目的物である「1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン」を含む状態で,フェノールと3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンとを反応させる工程に循環させることは,当業者が容易になし得たものであると主張する。しかし,目的物質や反応に有用な物質が同様であったとしても,具体的な製造方法が異なれば,再利用すべき画分も,その再利用方法も異なり,それぞれの場合に応じた検討が必要となるから,被告の上記主張は採用することができない。
(3) 以上のとおり,引用発明に周知例4〜6に示されるような周知技術を適用することにより,相違点4に係る構成に容易に想到できたとはいえず,審決の相違点4に係る容易想到性判断には誤りがある。\n

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平成24(行ケ)10262 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月21日 知的財産高等裁判所

 ある処理については周知で有っても、温度条件までは知られていなかったとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 本願発明の解決しようとする課題は,ガラスを溶融し,純化しかつ均質化する方法を,白金からなる構成部分を使用する場合でも酸素リボイルが防止されるように構\成することである(本願明細書である本件出願の公開特許公報(甲7)【0004】)のに対して,引用発明の解決しようとする課題は,溶解に高温度(特に1700℃以上)を要するガラスを,不純物や泡・異物等の無い高品質なガラスとして製造する技術を提供することであり(甲1【0006】),本願発明と引用発明とでは,解決しようとする課題が相違する。また,引用発明は,上記のとおり,粗溶解したガラスを高周波誘導直接加熱により直接加熱して,溶解・均質化・清澄するものであるが,清澄は,ガラス中に発生する誘導電流に伴う強制対流混合によりなされるものであり(甲1【0013】),一種の物理的清澄と解される(乙4)。引用文献1には,溶融ガラスに清澄剤を添加して清澄ガスを発生させて清澄すること,すなわち化学的清澄(甲4,乙4)については記載も示唆もない。引用文献1は,物理的清澄を行う引用発明において化学的清澄を併用する動機付けがあることを示すものとはいえない。また,引用発明は,1850℃で清澄が行われるものであるが,以下のとおり,このような高温において化学的清澄を行うことが通常のこととはいえず,また,このような高温で使用できる清澄剤が知られているともいえない。引用文献4には,清澄剤としてFe2O3,SnO2等を用いることが記載されているが(【0012】,【0013】),清澄は1200〜1500℃で行われている(【0018】)。特開平11−21147号公報(甲5)には,清澄剤としてFe2O3等を用いることが記載され,1600℃を超える温度でも清澄剤としての効果が発揮されることが示唆されているといえるが(【0013】〜【0015】),それでも高々1600℃を超える温度であり,実施例では1600℃で溶融しているにすぎない。特開平10−45422号公報(甲6)には,清澄剤としてFe2O3,SnO2等を用いることが記載され(【0025】),処理の対象となる無アルカリガラスは,粘度が102ポイズ以下となる温度が1770℃以下であることが記載されている(【0029】)ものの,実施例では1500〜1600℃で溶解しているにすぎない。また,甲4〜6に記載の各清澄剤が,1850℃での清澄においても清澄剤として使用できることが当業者にとって自明のことともいえない。以上のとおり,1850℃という高温において化学的清澄を行うことが通常のこととはいえず,また,このような高温で使用できる清澄剤が知られているともいえない以上,1850℃という高温において物理的清澄が行われる引用発明において,化学的清澄を併用する動機付けがあるとはいえない。以上のとおりであるから,引用発明において,引用文献4に記載されるFe2O3,SnO2等を清澄剤として用いる化学的清澄を併用して,「溶融物内に少なくとも0.5重量%の割合を有する高い電子価段階を持つ多価のイオンが存在する」ものとすることは,当業者が容易に想到し得ることとはいえない。被告は,溶融ガラスを清澄する際に,清澄剤を添加することは化学的清澄として当業者にとって周知であり,物理的清澄と化学的清澄とは相乗的効果が期待できることから,1850℃で物理的清澄を行う引用発明において,清澄剤として引用文献4の「Fe2O3」を0.01〜2.0重量%添加して化学的清澄を行うことは,当業者が容易になし得ることであると主張する。しかし,化学的清澄が当業者にとって周知であるとしても,上記のとおり,1850℃という高温において化学的清澄を行うことが通常のこととはいえず,また,このような高温で使用できる清澄剤が知られているともいえない以上,1850℃という高温において物理的清澄が行われる引用発明において,化学的清澄方法を併用する動機付けがあるとはいえない。

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平成24(行ケ)10278 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月06日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、動機づけ無しを理由に取り消されました。
 すなわち,発明Aは,「『不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23』の交換時期になったとき,『不織布21およびフィルタ本体22からなる交換用フィルタ23』のみを交換してこれを廃棄するタイプ」であるから,フィルター材交換タイプであって,このフィルター材交換タイプにおいて,交換用フィルタを換気扇又はレンジフードに取付けた状態では,汚れの付着状態を正確に判定するのが困難であるということを解決課題とし,フィルタ本体の所定位置に,使用状態に応じて目視による識別性が変わる不織布21(インジケータ)を設けることを解決手段とした発明であるということができる。ウ上記ア,イからすると,発明Aは,フィルター材のみを廃棄するフィルター材交換タイプの換気扇フィルターであって,フィルター材とフィルター枠を共に廃- 26-棄する全部廃棄タイプの本件発明1とはタイプが異なる上,両発明は,解決課題及びその解決手段も全く異なるものである。そして,発明Aは,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターについて,交換用フィルタの交換時期になったとき,フィルタ本体の汚れの程度を,フィルタを通気口から取り外すことなく簡単に判定することができることを特徴とするものであって,引用例1の記載からしても,これに接した当業者が,発明Aのフィルター材交換タイプを本件発明1の全部廃棄タイプに変更しようとする動機付けや示唆を得るとはいえない。また,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターである発明Aにおいて,全部廃棄タイプの換気扇フィルターである本件発明1が解決課題としている「通常の状態では強固に接着されているが,使用後は容易に両者を分別し得るようにして,素材毎に分離して廃棄することを可能すること」と同様の解決課題が当然に存在するともいえない。そうすると,全部廃棄タイプの換気扇フィルターを使用することが周知の事項であって(この点は原告らも争わない。),物品を分別(分離)して廃棄すること自体,日常生活において普通に行われていることであったとしても,本件発明1は,発明A及び上記周知の事項から容易に想到し得るものとはいえないし,使用した後,廃棄する際に,水に浸漬すれば,金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とを手指で容易に剥離することができ,金属と不織布とを分別廃棄することができるという本件発明1の作用効果は,発明Aの及び上記周知の事項から容易に予\測できるものともいえない。したがって,発明Aについて,全部廃棄タイプの換気扇フィルターにすることは,当業者であれば容易になし得ることであり,その際,不織布製フィルター材と金属製フィルター枠を分離することができる全部廃棄タイプの換気扇フィルターとし,不織布製フィルター材と金属製フィルター枠を分離(分別)して廃棄することは,当業者であれば適宜行う設計事項であるということができるとした審決の判断は誤りであり,これを前提とした本件発明1に関する容易想到性の判断も誤りである。
 エ これに対し,被告は,引用例1に記載されるフィルター材交換タイプの換気扇フィルターとは,フィルター材をフィルター枠ごと取り外した後,フィルター枠からフィルター材を取り外して廃棄するものであり,全部廃棄タイプの換気扇フィルターと引用例1記載のフィルター材交換タイプの換気扇フィルターは,両者ともにフィルター材をフィルター枠ごと取り外すという点で一致するところ,原告らは,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターの定義を「フィルター枠を備え付けたままとしフィルター材のみを廃棄するものである」としており,この定義は,引用例1の記載とは異なっており,誤りであると主張する。しかし,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターも全部廃棄タイプの換気扇フィルターも,フィルター材をフィルター枠ごと取り外すことができる点では一致するが,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターに関する原告らの上記定義の趣旨は,「備え付けられたフィルター枠はそのまま使用し,フィルター材のみを廃棄する」というものであり,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターと全部廃棄タイプの換気扇フィルターとでは,フィルター材のみを廃棄するかフィルター枠をフィルター材と共に廃棄するかという点で相違する。そうすると,発明Aが,フィルター材交換タイプの換気扇フィルターであって,本件発明1とはタイプが異なる上,解決課題及びその解決手段も本件発明1とは異なることに変わりはなく,上記ウの判断は左右されない。よって,被告の主張は採用できない。

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平成24(行ケ)10221 審決取消請求事件  特許権 行政訴訟 平成25年02月27日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反なしとした審決が、動機づけ有りとして取り消されました。
 引用発明1の洗浄剤混合物は,グルタミン酸二酢酸塩類,グリコール酸塩,陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤を含んでおり,本件発明1の洗浄剤組成物と組成において一致し,かつ,各成分量は,本件発明1において規定された範囲内である。このように,引用発明1の洗浄剤混合物は,本件発明1の規定する3つの成分をいずれも含み,かつ,その成分量も本件発明1の規定する範囲内であることに照らすと,単に,グリコール酸ナトリウムが主成分の一つであると規定したことをもって,容易想到でなかったということはできない。この点,被告は,甲1文献では,グリコール酸ナトリウムは,洗浄剤の有効成分と認識されず,精製して除去されるべき不純物として記載されているのであるから,本件発明1の相違点1に係る構成は,容易想到ではないと主張する。確かに,仮に,本件発明1の洗浄剤組成物が引用発明1と対比して異なる成分から構\成されるような場合であれば,両発明に共通する成分である「グリコール酸ナトリウム」が,単なる不純物にすぎないか否かは,発明の課題解決の上で,重要な技術的な意義を有し,容易想到性の判断に影響を与える余地があるといえる。しかし,本件においては,前記のとおり,本件発明1と引用発明1とは,その要素たる3成分が全く共通するものであるから,「グリコール酸ナトリウム」が単なる不純物ではないとの知見が,直ちに進歩性を基礎づける根拠となるものではないといえる。
(イ)被告の付加的な主張について
 被告は,相違点2については容易想到ではないとも主張する。しかし,被告の上記主張は,以下のとおり,採用することはできない。甲1文献には,同文献における金属イオン封鎖剤組成物の封鎖作用は,通常の洗浄剤媒体のアルカリ性のレベルに相当するpH8〜11において最大であることが確認された旨の記載があり,実施例3では,pH10のアンモニア性緩衝液において,甲1文献における金属イオン封鎖剤組成物の効果が確認されている。そうすると,たとえ上記pH8〜11に関する記述が界面活性剤を含む洗浄剤混合物について記載したものではないとしても,甲1文献の記載から,上記金属イオン封鎖剤組成物を含有する引用発明1の洗浄剤混合物においても,pH8〜11において洗浄作用が最大になると理解することは,容易に想到できる事項である。そして,このpHの数値範囲は,本件発明1におけるpH10〜13と,pH10〜11において重なっている。したがって,甲1文献に接した当業者が,その洗浄能力が高まるように調整して,引用発明1のpHを10〜13にするのは,容易であるといえる。よって,この点に関する審決の判断に誤りはない。\nエ 以上のとおり,審決は,相違点1を本件発明1と引用発明1の相違点であると認定した上で,相違点1が容易想到でないとした判断に,誤りがある。

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平成23(ネ)10087 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年03月05日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反なしとした審決が、動機づけ有りとして取り消されました。
 上記乙第1,第8,第11号証の1ないし5によれば,交通事故の発生前後の所定時間にわたって車両の挙動に係る情報を収集,記録すること,車両に設けられた加速度センサが検出する加速度が所定の閾値を超えるか否かやエアバッグ作動信号の有無に代えて,車両の加速度等が所定の閾値を超えたか否かによって交通事故が発生したか否かを判定する程度の事柄は,本件優先日当時における車両の挙動に係る情報を収集,記録する装置の技術分野の当業者の周知技術にすぎないものと認められる。本件訂正発明1にいう「特定挙動」は前記のとおり「事故につながるおそれのある危険な操作に伴う車両の挙動」であって交通事故の発生を前提とするものではない(交通事故が発生しない場合も含む)が,本件訂正発明1においても,例えばセンサ部から得られる角速度等のデータが所定の閾値を超えたか否かによって「特定挙動」の有無が判定されるから(本件訂正明細書の段落【0030】,【0034】,【0050】,図2,3等),装置の機能の面に着目すれば,本件訂正発明1において「特定挙動」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構\成は,上記周知技術において「交通事故」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構成と実質的に異なるものではない。加えて,上記周知技術と引用発明1とは,属する技術分野が共通し,前者を後者に適用するに当たって特段障害はないから,本件優先日当時,かかる適用を行うことにより,当業者が本件訂正発明1,2にいう「特定挙動」の発生前後の所定時間分の車両の挙動に係る情報を収集,記録する構\成に想到することは容易であるということができる。以上のとおり,乙第6号証記載の引用発明1に,「特定挙動」の発生前後の車両の挙動に係る情報を収集する条件を記録媒体に記録,設定する乙第2号証記載の発明と,「特定挙動」に相当する一定の契機(交通事故等)の発生前後所定時間分の車両の挙動に係る情報収集をする乙第1,第8,第11号証の1ないし5記載の周知技術を適用することにより,本件優先日当時,当業者において,相違点Aに係る構成に容易に想到することができたというべきであり,本件訂正発明1は進歩性を欠く。
3 本件訂正後の請求項15の本件訂正発明2と乙第6号証記載の引用発明2とは,移動体の挙動を特定挙動と判定して当該挙動に関わる情報が記録された記録媒体からその記録情報を読み出す処理,読み出した情報から当該移動体の操作傾向を解析する処理をコンピュータ装置に実行させるためのディジタル情報が記録された,コンピュータ読取可能な記録媒体である点で一致し,本件訂正発明2が,特定挙動の発生前後の挙動に関わる情報を所定時間分収集するための収集条件を記録媒体に設定する処理をコンピュータ装置に実行させるものであるのに対して,引用発明2は,そのようなものでない点(相違点B)で相違することが認められる。乙第3号証は,自動車の操作に関するイベント(事象)を記録する自動車レーダシステムに関する発明に係る文献であるところ,段落【0008】,【0018】,【0043】,【0047】によれば,上記レーダシステムに用いる自動車用イベント(事象)記録装置(ERA)において,コンピュータ装置及び着脱可能\なRAMカードを用い,前方間隔,警告閾値や,自動車の電子制御システムを介してセットされるその他のパラメータを設定する発明,すなわちRAMカードに記録されているパラメータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更されたパラメータをERAに適用する発明が記載されているということができる。そして,上記発明は,車両の挙動に関する情報を収集,記録する装置に関するもので,引用発明2と技術分野が共通するし,コンピュータ装置に処理を実行させて,着脱可能なRAMカード等の記録媒体に記録されているパラメータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更されたパラメータを上記収集・記録装置に適用する程度の事柄であれば,事故分析に有用な情報を記録するブラックボックス的機能\を有する,車両の挙動に係る情報の記録装置(乙3の段落【0001】〜【0007】)とは不可分のものではない。したがって,乙第6号証や乙第2号証に接した当業者であれば,「スピードの出し過ぎや急発進・急制動の有無乃至その回数を予め設定された基準値を基に自動判定し,また走行距離を用途別(私用,公用,通勤等)に区分して把握してドライバーの運転管理データを得るシステムを提供する」こと等を技術的課題とする引用発明2に,乙第3号証記載の発明を適用する動機付けがある。\n

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平成24(行ケ)10205 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年02月28日 知的財産高等裁判所

 動機づけなし、阻害要因有りとして進歩性なしとした審決が取り消されました。
 本願発明は,喫煙以外の手段で喫煙の満足感を与えることを目的として,ニコチンをスプレーにより専ら口腔粘膜経由で取り込ませるための液体医薬製剤であって,唾液中のニコチンが優先的に吸収される形態である遊離塩基に保つことを可能とするために薬剤自体をアルカリ性化することにより,ニコチンの急速な経口腔粘膜取り込みを実現するものである。(イ) 他方,前記2(1)によれば,引用発明1は,本願発明と同様の目的を有する液体薬剤に係る発明ではあるが,単にニコチンを摂取するだけではなく,喫煙という行為を再現する方法でニコチンを摂取させることを意図しており,喫煙時と同様に,使用者の好みに応じてニコチンの含有量を選択した上で,口腔粘膜,鼻腔粘膜,肺などから吸入されるものである。引用発明1において,薬剤は様々なニコチン含有量のアンプルとして提供され,使用者が好みの銘柄のたばこに対応するニコチン含有量のアンプルを選択し,好みの方法により吸入するものであるから,各アンプル中の薬剤は,口腔粘膜,鼻腔粘膜及び肺などの吸入経路のいずれにも対応できる液体であって,ニコチン含有量についてのみ,多様性を有するものということができる。
イ 引用発明1に引用発明2及び3を組み合わせる動機付けについて (ア) 引用例2(甲2)は,経皮ニコチンシステム及びニコチンの経粘膜投与のためのシステムに係る文献であるところ,同文献には,口腔内でのアルカリ環境がニコチンの頬側吸収を促進することが記載されている。(イ) 引用例3(甲3)は,ニコチン含有流動物質を含む口経投与用カプセルに係る文献であるところ,同文献には,カプセルの内容物以外で重要なのは,ニコチンの吸収速度を左右する溶液のpHであり,ニコチン溶液のpHが6ないし10,好ましくは7ないし9,特に6ないし8の範囲が好ましいことが記載されている。(ウ) 上記(ア)及び(イ)によれば,引用例2及び3には,口腔粘膜からのニコチン吸収がアルカリ環境で促進されることが開示されているということができる。しかしながら,引用発明1は,使用者の好みに応じて,口腔粘膜のみならず鼻腔粘膜や気道などからもニコチンが吸入されることを念頭においた薬剤であるから,口腔粘膜からの吸収を特に促進する必要性を認めることはできないし,引用例1には,口腔粘膜からの吸収を特に促進させる点に関する記載や示唆も存在しない。したがって,引用発明1に,引用発明2及び3を組み合わせることについて,動機付けを認めることはできない。
ウ 阻害事由について
・・・
(カ) 以上によると,本願優先日当時,鼻腔や肺に投与されるニコチン溶液は通常pH5ないし6程度の酸性であって,ニコチンが遊離塩基になりやすいアルカリ性では,生理的に悪影響があることが周知であったということができる。したがって,引用発明1の薬剤をアルカリ性化することには,阻害事由が認められる。

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平成24(行ケ)10199 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年02月14日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 引用文献2には,ユーザ自身が作成した音声,画像(静止画),動画,テキスト等を含むコンポーズドメディアを,インターネットを介して相手に送信するグリーティングカード(カードページ)に盛り込むことができる旨が記載され,引用文献3でも,ユーザが作成した画像や音楽のデータ(ファイル)をインターネットを介して相手に送信するデジタルポストカードに盛り込むことができる旨が記載されているから,審決が認定するとおり,本件優先日当時,サーバを用いてイメージデータを第三者と共用するサービスにおいて,ユーザのコンピュータに記憶されているデータをサーバに記憶させるようにすること,またかかるデータをサーバで運用されるデジタルのポストカード(電子情報で構成され,ネットワークを介して送受信されるポストカード)で利用できるようにする程度の事柄は,当業者の周知技術にすぎなかったと認められる。そうすると,本件優先日当時,引用文献1記載発明に上記周知技術を適用することにより,当業者において相違点2を解消することは容易であったということができ,この旨をいう審決の判断に誤りはない。
 この点,原告は,引用文献1のサービスは美しい料理の写真を送ることを目的としており,サービス提供者側の装置が送信コンピュータから料理の写真を受信する構成に改める動機付けがないなどと主張する。しかしながら,引用文献2において既存の画像(ファイル)に加えてユーザが保有する画像ファイルをサービス提供者のサーバに送信し,後者の画像(ファイル)もデジタルのポストカードで利用できるようにして,ポストカード作成の自由度,サービスの利便性を高めることが記載されているように,ユーザの画像(ファイル)も利用可能\とすることでポストカード作成の自由度,サービスの利便性を高めることは当業者の常識に属する事柄である。したがって,引用文献1に接した当業者において,サービス提供者側の装置が送信コンピュータから料理の写真を受信する構成に改める動機付けに欠けるところはない。仮に引用文献1のサービスが美しい料理の写真を盛り込んだデジタルのポストカードの提供を長所の一つにしているとしても,当業者が引用文献1の料理の写真をユーザのコンピュータから送信(アップロード)される写真一般に改める上で阻害事由とまではならず,当業者にとってかように構\成を改めることは容易である。また,引用文献1ではユーザがメールアドレスやメッセージの入力欄に文字情報(テキスト)を入力したり,画像を選択したりして情報(データ)をサービス提供者側の装置に送信するが,前記のとおりの周知技術を引用文献1記載発明に適用したときにユーザのコンピュータからサービス提供者側の装置(サーバ)に送信されることになるのは,文字情報等に止まらず,画像等のデータ(ファイル)が含まれることが明らかである。結局,相違点2に係る構成に当業者が想到することが容易でないとする原告の主張は採用できない。\n

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平成24(行ケ)10198 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年02月07日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が維持されました。理由は動機づけ無しです。
 本件明細書の前記2(1)エの記載によれば,本件発明1においては,袋本体の前側と後ろ側の対向する頂部シール部同士又は底部シール部同士を,頂点の接着部分と連続的又は不連続的に接着することによって,袋体の頂部側又は底部側に左右一対の吊り下げ部を形成していることから,内容物を充填した袋体の重量を支えるために,接着される頂部シール又は底部シールを構成する三角形状のフィン部に強度が求められることは当然であって,その際,三角形状のフィン部において対向する袋本体の内面同士が,閉鎖シール部の接着部分と連続的に接着され,また,全面的にではなく,部分的ないし断続的に接着されている構\成は,吊り下げ部の機能を向上させるために有用であることは,当業者にとって自明である。したがって,本件発明1においては,吊り下げ部を形成するためにフィン部の内面同士を接着する構\成が特定されているものである。
イ 引用発明の吊り下げ部について
他方,引用発明は,袋体の上縁を構成する各シール部の外側のフィルム及びガセット折込体については,開口以外の部分についてシールすることが記載されていないだけでなく,そもそも,不要の構\成と理解される。また,仮にその不要の構成が残されているとしても,フィルム及びガセット折込体のコーナの部分は内袋の直方体の上面上に沿うとされているから,吊り下げのために,不要な構\成をあえて残し,さらに直方体の上面に沿わない構成として,吊り下げ用の空間を形成することは,引用発明における阻害要因となる。また,引用発明では,内容物を注入した後に内袋のみを運搬するようなことが想定されておらず(【0014】【0026】),内袋を吊り下げて運ぶための構\成を採用する動機付けがない。
ウ 引用例2,引用例4等の吊り下げ部について
(ア) 引用例2記載の発明は,非熱接着性外面層と熱接着性内面層を有する本体フィルムと該各折込みフィルムの上,下縁部の近傍に設けた透孔は,一体不可分の構成である。また,そのような構\成である以上,袋体の上縁の全体を接着するという構成を採用する選択肢は採り得ない。他方,引用例4(図7,8),周知例1(図23),周知例2(図1〜3)の頂部シールはいずれも頂部の全体をシールするものであることが,少なくとも各図面の記載に照らして明らかである。そうすると,引用例2と,引用例4等とは,頂部シールの構\成を異にするから,接着位置をいずれとするかを設計事項であるということはできず,また,引用例2において,引用例4等の頂部シールの構成を参酌する余地はない。したがって,引用例2について,引用例4等をどのように参酌しても,吊り下げ用に用いることは導き出せない。\n

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平成24(行ケ)10168 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年01月30日 知的財産高等裁判所

 動機づけまたは示唆がないとして、進歩性なしとした審決を取り消しました。
   ア 上記(1)ア 認定の事実によれば,本願補正発明は,「皮内注射を行うのに使用する皮下ニードルアセンブリであって,薬剤容器に取り付け可能なハブ部分と,前記ハブ部分によって支持され,前記ハブ部分から突出する前端を有する中空本体を備えた皮下注射用の針,・・・前記針の前端の方に予\め選択された距離だけ突出するリミッタ部分と,を具え,・・・前記針の前端は,動物の皮膚を突き刺すことができる量を前記リミッタ部分が制限するように,予め選択された距離だけ皮膚接触面を越えて突出している」との構\成を有すること,皮下注射針は各皮膚層と皮下組織を貫通して筋肉組織内に突き刺さるが,或る状況下では,針が真皮層を越えて突き刺さることのないように皮内注射を行なうことが望ましいこと,皮内注射を行なう技術の一つとして,Mantoux 法が知られているが,比較的複雑で,注射を行なう医療専門家や患者に熟練が必要であり,特に経験のない人が注射を行なう場合には,注射を受ける患者が苦痛を感じることが判っていること,従来の針のサイズに比べて短い針を用いて皮内注射を行なうための装置が提案されているが,これらの装置は,非常に特殊化された注射器であって適用性と用途が限られていたり,特別に設計された注射器を必要とし,種々のタイプの注射器と共に使うわけにはいかず,経済的な大量生産向きではないという欠点や不都合があること,そこで,本願補正発明においては,熟練や経験のない人が皮内注射を行う場合でも患者が苦痛を感じることなく,かつ,種々の注射器本体と共に使用するのに適した皮内注射装置に対する要望,大量生産規模で経済的に製造可能な皮内注射装置に対する要望に対処することを解決課題として,上記の構\成が採用されたこと,そのため,単に皮膚に垂直に装置を押し付けることにより物質を注入できるので,薬剤やワクチン等の物質を皮内に注射する場合などに適し,かつ,リミッタ部分とハブ部分により患者の皮膚に突き刺す針の有効長さより全長の大きい針の使用が可能となるので,小径の皮下注射針を使用するなどして,薬剤注入装置を安価な構\成にて提供することができるとの効果を奏することが認められる。
イ 一方,上記(1)イ 認定の事実によれば,引用発明は,注射器用の針の透過深度をコントロールするための装置に関するものであり,発明の目的は,注射器針の透過深度をコントロールするか調節するための装置を提供することであって,注射が最適のやり方で行なわれることを可能にする皮内注射の注射器のために特に設計されていること,装置1の表\面20の端部が患者の皮膚8と接触させられるように用いられ,装置1は針3が所定長さ皮膚に入ることを可能にするために皮膚8をわずかに変形するためにわずかに押され,表\面20の端部または縁が,患者の皮膚8にわずかに押し付けられるから,それは,針3刺し傷を囲む領域を敏感にすることができ,それにより,皮内注射の間に患者に作用する軽い痛覚はより減少され,一方で,主として,繰り返される注射の場合に,患者に対する,より大きな痛み除去を確実にするように構成されていることが認められる。すなわち,引用発明においては,注射が最適のやり方で行なわれることを可能\にする皮内注射の注射器のために特に設計されているというのであるから,使用される針は,皮下注射用の針ではなく,皮内注射に適した針であると理解される。また,引用発明は,注射器針の透過深度をコントロールするか調節するための装置を提供することを目的とし,それによって,皮内注射の間に患者に作用する軽い痛覚はより減少され,主として,繰り返される注射の場合に,患者に対する,より大きな痛み除去を確実にする効果を奏するものであることが認められる。ウ 上記の認定によれば,本願補正発明は,熟練や経験のない人が皮内注射を行う場合でも患者が苦痛を感じることなく,かつ,経済的合理性に対する要望にも対処することを目的(解決課題)として.皮下注射用の針を用いて皮内注射を行うニードルアセンブリであるのに対し,引用発明は,皮内注射に適した針を用いて注射器針の透過深度をコントロールするか調整することにより,皮内注射の際の患者の苦痛を緩和ないし除去することを目的とした装置であるということができる。そして,上記の引用発明の目的からすると,引用例に接した当業者が,引用発明の「皮内注射を行うのに使用する針」,すなわち皮内注射に適した針を,敢えて,本願補正発明の「皮下注射用の針」に変更しようと試みる動機付けや示唆を得るとは認め難いから,当業者にとって,相違点に係る本願補正発明の構成を容易に想到し得るとはいえない。\n

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平成24(行ケ)10166 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年01月17日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、動機づけ無しとして、取り消されました。
 ア 引用発明1及び2は,いずれも運動靴の靴底(表底)に関するものであって,技術分野を同一にする。しかしながら,引用発明1は,前記1イに説示のとおり,スパイク付き運動靴が,接地の際に急速に停止する機能\を有していることを前提として,その機能に起因する課題を解決し,靴底の上部辺が幾分揺れるようにして徐々に停止するという作用効果を有するものであるのに対し,引用発明2は,前記イに説示のとおり,ランニングシューズの靴底が接地の際に弾性を備えていることを前提として,その機能\に起因する課題を解決し,上層に設けられた突起が直ちに下層に接することで足を内側に巻き込むローリング現象を防止するという作用効果を有するものである。このように,引用発明1は,運動靴の接地に伴う急速な安定性を解消して弾性をもたらそうとするものであるのに対し,引用発明2は,運動靴の接地に伴う弾性を解消して安定性をもたそうとするものであって,その解決課題及び作用効果が相反している。したがって,引用例1には,引用発明1に引用発明2を組み合わせることについての示唆も動機付けもない。
イ また,前記1ア及びイに説示のとおり,本願発明の「変形臨界点」とは,弾性変形体を備える表底に荷重が掛かった場合に,無視可能\な程度を除けば,荷重により圧着した(上層と下層とが相互接触した)弾性可変部材が当該荷重によりそれ以上変形できない状態となる限界を意味しており,「剛性」とは,弾性可変部材が「変形臨界点」に達したことにより,本願発明(表底)が,やはり無視可能\な程度を除き,それ以上接線方向に平行変形できない状態となることを意味しているものと解され,本願発明は,このようにして得られる「剛性」によって,靴底の弾性を解消するものである。他方,引用発明2は,前記イに説示のとおり,上層に設けられた突起が直ちに下層に接することで靴底の弾性を解消するものであって,本願発明とは弾性を解消する作用機序が異なるから,引用例2の記載(前記アウ)によれば,突起を含む各部材は,いずれも弾性可変材料で構成されているものと認められるものの,それが荷重により下層に接した場合に,当該突起及びこれを含む靴底が,当該荷重によりそれ以上変形できない状態となっているか否かは,不明であるというほかない。したがって,仮に引用発明1に引用発明2を組み合わせたとしても,それによって本願発明の本件相違点に係る構\成が実現されるものではない。

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平成24(行ケ)10196 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年01月21日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、取り消されました。理由は動機づけ無しです。
 以上によれば,伸縮部材を含む使い捨て吸収性物品に関し,単層エラストマーフィルムを備える剥離ライナーを使用して伸縮積層体の製造を試みる場合,フィルム材をさらに加工する際に,大抵,剥離ライナーはエラストマーフィルムから分離され,除去され,巻き上げられるため,剥離ライナーと組み合わされたエラストマー単分子層又は単層フィルムの操作は,不織布とのその後の積層における層の操作を促進する他の機構を次に必要とするとの課題があり,本願発明は,上記の課題を解決するため,不織布層を含むかかるフィルムの積層プロセスを促進するのに必要とされるブロッキング防止を助ける機構\を備えるものであることが認められる。また,本願発明における伸縮部材は,「前記エラストマー層を得る工程と,当該エラストマー層の1以上の表面への粉末の塗布を含むブロッキング防止処置を当該エラストマー層に施す工程と,当該エラストマー層を1以上の不織支持ウェブ層に積層する工程」の3つの工程を,このとおりの順序で含む方法により得られるものであると解される。一方,上記(1)イ 認定の事実によれば,引用刊行物1には,引用発明が,伸張性繊維基材の特定領域に伸張性を持たせるために,伸張性繊維基材の少なくとも1つの領域に配置されたエラストマー部材を有する伸縮性複合体ないしその製造方法に関するものであること(上記(1)イ 【0001】),使い捨て吸収製品は,一般に腰部区域やカフ区域に伸縮可能な材料を含み,これらの区域に望ましい弾性特性を提供するには種々の方法があるが(同【0002】,【0003】),伸縮性積層体は別々に製造されるところ,伸縮性積層体は適当な大きさ及び形状に切断され,「カット・アンド・スリップ」プロセスと呼ばれることのあるプロセスで,製品の望ましい位置に粘着剤で貼\り付けられる必要があり,異なる伸縮性の伸縮性積層体を用いたり,これらの積層体を製品の異なる位置に貼り付けたりするには,複数のカット・アンド・スリップユニットが必要なことがあるため,プロセスが厄介で複雑なものになるとの課題があること(同【0006】),課題解決手段として,製品の使用中に望ましい利点を提供するように,特定の部分にのみ特定の伸縮性を持たせて配置したエラストマー材を有する,費用効率の高い伸縮性複合体,間隔を置いて別個に配置した構\成成分の間の特定の部分で伸縮性を発揮する伸縮性複合体,物品の構成成分内で特定の伸縮性を発揮する伸縮性複合体の実現が望ましく,また,複数の工程,装置を必要とせず,吸収製品の様々な部分で伸縮特性を実現させるための有効かつ費用効率の高いプロセスの実現が望ましいこと(同【0007】,【0008】),発明を実施する形態として,エラストマー構\成成分を形成する工程とエラストマー構成成分を基材に結合する工程とが1つの工程の連続したプロセスに組み合わされた,新しいプロセスを提供するものであり,1つの連続したプロセスで,おむつの別個の弾性構\成成分に対応する複数の部分にエラストマー部材を直接付加することができること,異なる弾性を有する複数のエラストマー部材を,吸収性の物品の1つの構成要素の隣接した部分に付加することができることも意図されること(同【0028】),エラストマー部材は繊維性ウェブに直接付加されることも,又は最初に中間体の表\面に配置されることにより,間接的に繊維性ウェブに付加されることもできるが,エラストマー組成物の粘度は慎重に選択する必要があり,組成物,温度,及び/又は濃度は,特定の処理方法及び操作条件に好適な粘度を与えるために変更できること(同【0042】,【0043】)が記載されているといえる。
 以上によれば,引用発明は,エラストマー部材を有する伸縮性複合体ないしその製造方法に関するものであって,伸縮性積層体が「カット・アンド・スリップ」プロセスで,製品の望ましい位置に粘着剤で貼り付けられる必要があり,異なる伸縮性の伸縮性積層体を用いたり,これらを製品の異なる位置に貼\り付けたりするには,複数のカット・アンド・スリップユニットが必要なことがあるため,プロセスが厄介で複雑なものになるとの課題があり,これを解決する手段として,エラストマー構成成分を形成する工程とエラストマー構\成成分を基材に結合する工程とが1つの工程の連続したプロセスに組み合わされた,新しいプロセスを提供するものであることが認められる。すなわち,引用発明の課題及びその解決手段は,異なる伸縮性の伸縮性積層体を「カット・アンド・スリップ」プロセスで製品の望ましい位置に貼り付ける工程を効率化する目的で,エラストマー構\成成分を形成する工程と基材に結合する工程を1つの工程の連続したプロセスに組み合わせるというものであって,本願発明の課題及びその解決手段である,エラストマーフィルムから剥離ライナーを分離,除去し,巻き上げるためのプロセスを促進する目的で,不織布層を含むかかるフィルムの積層プロセスを促進するのに必要とされるブロッキング防止を助ける機構を備えることとは全く異なるというべきである。また,引用刊行物1には,エラストマー材をグラビア印刷等により基材に直接付加する方法と,エラストマー材を中間体の表\面に配置した後,オフセット印刷のように間接的に基材に移す方法が挙げられるところ,前者の方法は,流体状のエラストマー材が基材に直接付加されるため,エラストマー層がブロッキングすることはなく,後者の方法は,エラストマー材はいったん中間体の表面に配置されるものの,引き続き中間層ごと基材に圧着,転写されるため,やはりエラストマー層がブロッキングすることはないから,引用発明における伸縮性複合体の製造方法で,エラストマー構\成成分を形成した後,基材に結合する前にブロッキングが生じるおそれはないといえる。そうすると,引用発明における伸縮性複合体の製造方法において,エラストマー構成成分を形成後,基材に結合する前に,ブロッキング防止処理を適用する動機付けはないというべきであり,これにブロッキング防止処理工程を含むとすることは,当業者が容易に想到することではないから,引用発明から,相違点2に係る本願発明の構\成である「当該エラストマー層の1以上の表面への粉末の塗布を含むブロッキング防止処置を当該エラストマー層に施す工程を含む方法によって得られ」との構\成に至ることは,当業者にとっても容易ではないというべきである。したがって,相違点2について,「引用発明において,伸縮部材を得る方法についての特定に,エラストマー層表面へのブロッキング防止処置工程を含むとすることは,当業者が容易に想到しうる」とした審決の判断は誤りである。イ これに対し,被告は,引用刊行物1には,伸縮性複合体を製造するのに,エラストマー構成成分の形成工程と基材への結合工程とが連続している製造に関して,より適した方法であるとの記載があるとしても,一般的な製造方法としてエラストマー形成工程後に保存して基材に結合する方法も当然認識され,記載される旨主張するとともに,吸収性物品の技術分野や多層積層樹脂フィルム製造においては,各種ブロッキング防止処理が周知慣用技術である旨主張する。しかし,上記ア認定のとおり,引用発明は,異なる伸縮性の伸縮性積層体を「カット・アンド・スリップ」プロセスで製品の望ましい位置に貼\り付ける工程を効率化することを目的(課題)とするものであって,引用刊行物1において,当該発明が,伸縮性複合体の製造方法に関する一般的課題を解決しようとするものであることが記載ないし示唆されているとは認められないから,引用刊行物1記載の発明における製造方法に,エラストマー構成成分を形成後,基材に結合する前にブロッキング防止処理を適用する動機付けがあるとはいえない。そして,引用刊行物1記載の発明における製造方法に,ブロッキング防止処理を適用する動機付けが認められない以上,ブロッキング防止処理が周知慣用技術として存在するとしても,引用発明に,当該周知慣用技術を適用して本願発明に想到することが容易であると判断することはできないというべきである。\n

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平成23(行ケ)10414 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年01月10日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が取り消されました。理由は適用できないとした判断の誤りです。
 本件審決は,浚渫用のグラブバケットである引用発明1に,荷役用のグラブバケットに係る技術を適用することは,操縦者が対象物を目視できるために想定外の荷重がシェルにかかるおそれが少ない荷役用グラブバケットと,掴み物を目視できず,掴み物の種類や形状も安定しないため,荷役用と比較して,グラブバケットの強度を高く設定する必要がある浚渫用グラブバケットとでは,使用態様に基づいて要求される特性の相違から,当業者が容易に想到することができたものとはいえないとする。しかしながら,グラブバケットは,荷役用又は浚渫用のいずれの用途であっても,重量物を掬い取り,移動させる用途に用いられるものであるから,技術常識に照らし,ある程度の強度が必要となることは明らかであって,必要とされる強度は想定される対象物やその量,設計上の余裕(いわゆる安全係数)等によって定められる点において変わりはないものというべきである。確かに,浚渫用グラブバケットは,上記各観点に加えて,掴み物を目視できない点をも考慮した上で強度を高く設定する必要があることは否定できないが,ここでいう強度とは,想定される対象物(掴み物)に対してどの程度の強度上の余裕を確保すべきかという観点から決せられるべきものである。本件リーフレット(甲25)には,本件製品に関する照会の際には掴み物の種類や大きさを連絡することを求める旨の記載があり,荷役用グラブバケットにおいても,対象物に応じて強度を設定する必要があることは明らかである。したがって,荷役用のグラブバケットに係る技術を浚渫用のグラブバケットに適用する際には,浚渫用のグラブバケットにおいて特に考慮すべき強度上の余裕を確保することに支障を生ずるか否かについて,十分配慮する必要があるとしても,浚渫用グラブバケットの上記特性とは直接関連しない,対象物を掬い取って移動させるという両目的に共通する用途に係る技術について,一律に適用を否定することは相当ではない。
イ 本件構成1及び2の技術的意義等について
本件審決は,荷役用グラブバケットに係る本件構成1及び2を,浚渫用グラブバケットに係る引用発明1に適用することを否定する。しかしながら,前記1(4)アによると,本件発明は,シェルを爪無しの平底幅広構成とするとともに,本件構\成1及び2を採用することにより,従来の丸底爪付きグラブバケットと比較してバケット本体の実容量が大きく,かつ,掴み物の切取面積を大きくして掴みピッチ回数を下げることにより作業能率を高めるとともに水の含有量を減らし,しかも掘り後が溝状とならずにヘドロを完全に浚渫することが可能\となるという作用効果を実現したものであって,本件構成1及び2は,むしろバケットの本体の実容量及び掴み物の切取面積を大きくすることを実現するために採用された構\成であるということができる。また,証拠(甲25,甲32の3)によれば,本件リーフレットに記載された本件製品の図面及び主要寸法から,本件製品は本件構成1及び2を有するものと認められるところ,被告光栄は,荷役用グラブバケットである本件製品を,浚渫用グラブバケットとして実際に使用している状況を撮影した写真を本件広告に掲載した上で,本件製品の製品名(「グラブバケット(WS型)」)を明記していることが認められる。したがって,引用発明1に,引用例3が開示する本件構\成1及び2を適用することについて,動機付けが存在する一方,阻害事由を認めることはできない。

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平成24(行ケ)10414 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年12月17日 知的財産高等裁判所 

 進歩性違反なしとした審決が、甲1発明には動機付けが含有されているとして、取り消されました。
 上記下線部分,すなわち,有価証券情報の印字部外周に施された抜き型による加工はプリペイドカードを抜き取り可能とするためのものであるところ,これは,プリペイドカードが単に有価証券情報をカード購入者に通知するのみならず,利用者による携帯を予\\定しているため,有価証券情報が記載されているとともに有価証券情報を隠蔽してもいる折畳み対向紙片から分離させる必要があるために設けられたものと解される。すなわち,購入者に交付されるシートからプリペイドカードを分離して使用できるようにすることも,請求項1〜8にその構成が包含されているのみならず,考案の詳細な説明の段落【0010】,【0024】,【0026】,【0030】,【0031】,【0035】にその構\\成が独立して説明されている事項であり,甲1発明において技術的課題の一つとされていたというべきである。そうすると,甲1発明は,折畳み対向紙片の内側面に印字された部分が有価証券情報のように隠蔽される必要のないものであっても,折畳み対向紙片の内側面の一部分を独立して抜き取る(折畳み対向紙片から分離させる)必要性があれば,プリペイドカードに代えてかかる分離させる必要があるものを採用するについての動機付けを含有するものというべきである。かかる見地から見るに,広告の一部に返信用葉書を切取り可能に設けることは,本件出願前に既に周知の技術であったと認められる(特開2004−133065号公報〔甲3〕,特開平3−55272号公報〔甲16〕)。そして,広告の一部に返信用葉書を設ける場合,返信のために葉書部分を分離させる必要があることは明らかである。したがって,消費者等が受領したシートや紙面から分離して使用するものとして,甲1発明の「プリぺイドカード」に代えて「葉書」を採用することは当業者にとって容易想到であるというべきである。(4) 別の角度からみるに,返信用葉書を備え付けた郵便物であって,当該返信用葉書に受取人の個人情報(氏名・会員番号・生年月日・電話番号・性別・住所など),預金残高,借入金額などの隠蔽すべき情報が予め記載されたものも本件出願前において周知の技術であったと認められる(特開2000−177277号公報〔甲17〕,特開平2−108073号公報のマイクロフィルム〔甲19〕)。したがって,隠蔽されるべき情報が記載され,かつ,顧客等に送付ないし交付される郵便物や書面から分離して使用されるべきものとしてプリペイドカードと葉書は共通する一面を有しているといえるから,甲1発明の「プリぺイドカード」に代えて「葉書」を採用することは当業者にとって容易想到であるということもできる。いずれにせよ,この判断と異なり,甲1発明の「プリペイドカード」に代えて「葉書」を採用することは想到容易でないとし,甲1発明との間の相違点2,3に係る訂正発明1の構\\成は容易想到ではないとした審決の判断は誤りであり,これを前提とした訂正発明1,2についての容易想到性判断は誤りである。
(5) なお,審決は,「プリペイドカード」を筆記性が要求され,さらに大きさや厚さの基準が定められている「葉書」に代える動機が甲1発明には見出せないとした。しかし,筆記性や大きさや厚さといった基準の差異については,「分離して使用されるもの」の単なる物品特性上の相違にすぎない。また,甲1発明が,プリペイドカード付きシートが購入者によって受領された後はプリペイドカードを分離させることに意義があり,そこに技術的課題を見出したことからしても,「葉書」に筆記性が要求され,大きさや,厚さといった基準があるからといって,「プリペイドカード」を「葉書」に代える動機がないということはできないというべきである。

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◆関連事件です。平成24(行ケ)10413

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平成24(行ケ)10101 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年12月05日 知的財産高等裁判所 

 進歩性違反なしとした審決が維持されました。
 引用発明及び本件発明は,いずれも石灰等を使用した建築物等の被覆材料に関するものである点で技術分野を同一にしている。イ しかしながら,引用発明は,前記2(2)に説示のとおり,セメント又は石灰結合性建築物被覆材料の疎水性を向上させるために従前行われていた添加剤は大量の添加ができず,また,添加によって建築物被覆材料の加工性が極めて悪くなるという課題を解決するものであり,前記2(1)ウに記載のとおり,施工現場で加工することが想定されているものであるのに対し,本件発明は,前記1(2)に説示のとおり,漆喰の施工時に現場で漆喰を調整することにより一定した品質のものが得られず,また,着色漆喰塗膜に色むらが生じるという課題を解決するものであって,引用発明と本件発明とでは,解決すべき課題を大きく異にしているといえる。ウ また,引用発明は,前記2(1)ウ及び(2)に説示のとおり,石灰及び水等に加えて,「場合により多くの他の添加物質からなる」建築物被覆材料を混合する方法であって,引用例1に当該他の添加物質として列記されている顔料(酸化チタン等),プラスチック及び着色料等は,いずれもあくまでも石灰及び水等に対して「場合により」添加されるというものであるにすぎない。したがって,引用例1には,石灰及び水等に加えて,白色顔料,プラスチック及び着色顔料の全てを組み合わせて混合する方法については記載がなく,この点を示唆する記載も見当たらないというほかない。また,引用例1の実施例〔例1〕は,前記2(1)カに記載のとおり,石灰及び水等のほかに,白色顔料(二酸化チタン金紅石)及び結合剤(再分散可能なポリビニルアセテート−コポリマー粉末をベースとするエチレンビニルアセテート)等を含有するが,着色料(着色顔料)を含有していないものであって,本件発明1の方法から着色顔料を除いた全ての物質を配合する方法であるといえる。しかしながら,上記のとおり,引用例1には,石灰及び水等に加えて,白色顔料,プラスチック及び着色顔料の全てを組み合わせて混合する方法については記載も示唆もないから,上記実施例〔例1〕は,石灰及び水等に対して,上記の各物質が添加物質として選択された結果が記載されているにとどまり,当該実施例〔例1〕の記載があるからといって,それに加えて,更に着色顔料を添加することについての示唆があるものとはいえない。
エ 引用例2は,「酸化チタン〜物性と応用技術」と題する文献の抜粋であって,そこには,酸化チタン工業の歴史,酸化チタンが白色顔料として建物内外壁や建造物等の塗装等に用いられてきたこと,白色塗料としての酸化チタン顔料等と灰色塗料としてのカーボンブラックとを混合した場合の着色力及び隠蔽力を測定した結果等が記載されている。加えて,甲17は,「処理顔料」という名称の発明に係る公開特許公報(特開平9−183919号)であり,甲18は,「着色顔料組成物及びその製造方法」という名称の発明に係る公開特許公報(特開平5−59297号)であって,そこには,酸化チタンを他の無機の着色顔料等と混合して製造される顔料についての記載がある。甲19は,「塗料のおはなし」と題する文献(昭和61年2月24日刊行)であって,そこには,白色チタンとカーボンブラックとを混合して灰色の塗料を製造することなどが記載されている。甲20は,「これだけは知っておきたい 塗装工事の知識」と題する文献(昭和57年4月5日刊行)であって,そこには,二酸化チタンと無機の着色顔料を配合した顔料についての記載がある。以上によれば,白色顔料である酸化チタンに着色顔料を含有させることで着色塗料を製造することは,本件優先権主張日当時,当業者に周知の技術であったものと 認められる。他方,甲5は,「土壁・左官の仕事と技術」と題する文献(平成13年2月20日刊行)の抜粋であって,そこには,セメント又は漆喰に着色のために着色顔料を使用することが記載されている。また,甲10は,「無機質仕上げ材組成物及びそれを用いた工法」という名称の発明に係る公開特許公報(特開平7−196355号)であり,甲11は,「壁材及びその施工方法」という名称の発明に係る公開特許公報(特開2000−96799号)であるが,そこには,着色顔料等により着色された漆喰についての記載がある。以上に加えて,漆喰及び着色顔料がいずれも古くから使用されていること(甲6,13参照)を併せ考えると,漆喰に着色顔料を配合することで着色をすることも,本件優先権主張日当時,当業者に周知の技術であったものと認められる。しかしながら,引用例1には,前記ウに説示のとおり,石灰及び水等に加えて白色顔料及び着色顔料等の全てを組み合わせて混合する方法についての記載も示唆もないから,引用発明にこれらの各周知技術を適用する動機付けが見当たらないばかりか,上記の各周知技術は,それぞれ,塗料又は漆喰の調色のために白色顔料を配合し又は漆喰に着色顔料を配合するというものであって,このようにして着色された塗料又は漆喰に対して,当該各周知技術を相互に組み合わせることで,更に石灰(漆喰)又は白色顔料を配合し,引用発明と相俟って本件発明1の本件相違点に係る構成とすることについての示唆又は動機付けを有するものではない。
オ さらに,引用発明は,前記イに説示のとおり,施工現場で実施することが想 定されているものであって,建築物被覆材料が良好な加工性性質及び撥水性性質を 備えるという作用効果を有するものであるのに対し,本件発明は,前記1(2)に説示 のとおり,漆喰組成物を均一かつ安定に着色し,塗膜を形成した際に,色飛び又は 色飛びによる白色化や色むらが有意に抑制され(着色漆喰塗膜の色飛び抑制),重 ね塗りをした場合にも色差のほとんどない着色漆喰塗膜が形成できるという作用効 果を有するものであるから,本件発明の作用効果は,引用発明の作用効果とは異質 のものであって,引用発明から当業者が直ちに予測可能\なものとはいえない。

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◆関連事件です。平成24(行ケ)10100

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平成23(行ケ)10443 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年12月11日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が「論理付けに欠ける」として取り消されました。
 ウ 上記記載によれば,甲2には,1)解決課題として,電線挿通孔dへの電線の挿通によって防水栓本体が外径変化,すなわち,径方向の外側に膨らみ,径方向の外側に位置するシール部位(b−e間)の密着性が低下すること,2)解決手段として,電線挿通孔dおよびシール部位の間に環状溝を介在させること,3)作用効果として,環状溝の内部空間によって防水栓本体の変形を吸収し,防水シール効果の低下を抑制すること,が開示されていると認められる。ところで,甲2の解決課題は,電線が挿通される電線挿通孔dと,テーパー面e及び嵌合壁bの間のシール部位とが,径方向の内外において対向していることから生じるものであって,両者が径方向に対向していない場合には,そもそも,電線の挿通によって防水栓本体の外径が変化しても,その影響はシール部位には及ばないから,同様の問題が生じないものである。そうすると,甲2から,「コネクタ用防水栓においてパッキン及び電線の密着とパッキン及びハウジングの密着が互いの影響を及ぼすことが望ましくないこと」が周知の事項と認められるとしても,それは,パッキン及び電線の密着部位と,パッキン及びハウジングの密着部位とが,径方向において対向している構造においては当てはまるものであるが,両者が径方向に対向していない構\造においては当てはまらないものである。
エ そこで,引用発明におけるパッキン及び電線の密着部位とパッキン及びハウジングの密着部位についてみると,審決が引用発明認定の根拠とした甲1の実施例の構造(甲1の図面参照)では,両者が径方向において対向しておらず,軸方向にずれていることが分かる。したがって,引用発明においては,電線の挿通による防水栓本体の外径変化の影響がシール部位に及ばない構\造となっており,審決が認定した「コネクタ用防水栓においてパッキン及び電線の密着とパッキン及びハウジングの密着が互いの影響を及ぼすことが望ましくないこと」との周知の事項が当てはまらないものである。また,引用発明において,第2のシール部の配設位置を後側に変更すると,参考図(別紙参照)の構成となるが,この構\成においては,リブ部は,第2のシール部の外周近傍から前方に向かって環状に突出しており,第1のシール部は,第2のシール部の中心近傍から前方に向かって延在している。そうすると,内側の第1のシール部と,外側のリブ部とは,径方向において対向するが,第1のシール部及びリブ部の間には環状のコネクタハウジングが介在することになる。したがって,この構成では,電線の挿通による影響が第2のシール部位に直接的には及ばないから,径方向の歪み(変形)の伝達を抑制するという点で,実質的に甲2と同様の構\成を備えることとなる。この場合,第1のシール部の外径に変化が生じても,環状のコネクタハウジングによってその変形が第2のシール部には伝達されず,リブ部の防水シール効果の低下が生じないことは明らかである。すなわち,仮想構成1を採用した段階で,甲2の解決手段のみならず,甲2の作用効果も同時に達成されることになる。そうすると,更にそこから仮想構\成2のように変更すること,すなわち,リブ部の突出方向を前方から後方に敢えて変更することについては,もはや動機づけが存在しないというべきである。ところが,審決は,「コネクタ用防水栓においてパッキン及び電線の密着とパッキン及びハウジングの密着が互いの影響を及ぼすことが望ましくないことは,例えば,実公昭58−29576号(判決注:甲2)(特に1ページ左欄34行〜右欄4行参照。)に記載されているように周知の事項である……」(9頁15行〜18行)と述べるにとどまり,当該周知の事項が甲2とは異なりパッキン及びハウジングの密着部位とが径方向に対向していない構造の引用発明においても該当することの根拠を全く示しておらず,リブ部の突出方向を前方から後方に敢えて変更すること,すなわち,仮想構\成2を適用することの論理づけを欠くものというほかない。

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平成24(行ケ)10073 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年11月14日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が取り消されました。
 上記(2)エの記載からすると,液晶表示装置において,「基板表\面の凹凸」により液晶ディレクターの傾斜方角がばらつき,これにより,ディスクリネーションが発生することは周知の課題であると認められるところ,上記「基板表面の凹凸」として,薄膜トランジスタに起因する凹凸が含まれることは,当業者にとって自明である。これを引用発明についてみると,前記(1)イ(イ)のとおり,引用発明の層間絶縁膜は,「薄膜トランジスタに起因する凹凸を緩和するように,その表面が平坦化される平坦化絶縁膜」に相当するものではないから,薄膜トランジスタに起因する凹凸が生じていることは明らかであり(なお,被告も,引用発明の層間絶縁膜が本件発明1にいう「平坦化」したものでないことを争っていない。),引用発明においても,薄膜トランジスタに起因する凹凸により負の誘電率異方性を有する液晶の配向がばらつき,それによってディスクリネーションが発生するという課題を有しているものと認められる。そして,上記(2)オ及びカの記載からすると,一般の液晶表示装置技術において,薄膜トランジスタの段差に起因する凹凸を平坦化するために薄膜トランジスタを平坦化絶縁膜で覆うことは,液晶の配向性をより高めるものとなることが認められるから,画素電極が層間絶縁膜上に形成された平坦化絶縁膜上に形成されている上記周知の構\成においても,液晶の配光性が高まっているものと認められる。そうすると,引用発明において,薄膜トランジスタに起因する凹凸により負の誘電率異方性を有する液晶の配向がばらつき,それによってディスクリネーションが発生することを防止するために,液晶の配向性をより高めるための上記周知の構成を採用することには動機付けがあるといえる。
 (イ) また,薄膜トランジスタの半導体層とソース電極及びドレイン電極の接続構\造として,引用発明のように直接接続するか,上記周知の構成のように層間絶縁膜に開けられた開口を介して接続するかは,当業者が適宜選択し得る設計事項である。しかも,引用発明は,層間絶縁膜の厚さを少なくとも1μm以上にすることにより,表\示電極が薄膜トランジスタとその電極ラインから十分に離され,液晶の配向がこれらの電界の影響を受けて乱れることがなくなり,表\示電極エッジ及び配向制御窓により,配向制御が効果的に行われるという効果が得られるものであるから,引用発明における薄膜トランジスタの半導体層とソース電極及びドレイン電極の接続構\造として,上記周知の構成を採用すれば,電極ラインのうちゲートラインと表\示電極とが,層間絶縁膜の膜厚分だけさらに離されることとなる。したがって,引用発明については,上記のような引用発明の効果をより得るために,引用発明における薄膜トランジスタの半導体層とソース電極及びドレイン電極の接続構\造としても,上記周知の構成を採用することの動機付けもあるということができる。\n

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平成24(行ケ)10023 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月10日 知的財産高等裁判所

 相違点1の容易想到性について、進歩性なしとした審決が維持されました。原告代理人は、元知財高裁所長の塚原弁護士です。
ア カッター及び切断片の形状について
(ア) 前記2のとおり,引用発明は,マンホールの蓋体周囲の舗装面を整備したり,蓋体を新たなものと交換するような場合に用いられるマンホール補修部の構造に関するものであり,低廉な施工コストで短時間のうちに確実な補修が行える汎用性に富むマンホール補修部の構\造を提供するという目的に沿ったものであって,そのために,i)円形カッターを用いて,マンホール蓋体の中心を中心として,受枠の周囲を円形に切断して舗装を切断する工程と,ii)切断された舗装を蓋体の受枠ごとクレーンなどを用いて吊り上げ撤去する工程と,iii)マンホール上壁に接触させるように新たな受枠を再設置する工程と,iv)新たな受枠と舗装を受枠ごと撤去して形成される円形開口部との間に,路盤材として早強無収縮性モルタルを装填し,さらに,水溶性の常温硬化型アスファルト混合材料よりなる表層材を受枠の上面側と面一状となるように装填する材料充填工程とを備えるマンホール蓋枠取替え工法である。このように,引用発明は,マンホール蓋枠取替え工法であり,上記i)ii)の工程で,マンホール周囲の舗装を切断し,切断された舗装を受枠とともに一体に取り出せるものであって,切断片の取り出し除去作業を行うものである。ところで,一般に,この種の工事作業において,作業性の向上を図り,作業を容易にしようとすることは,安全性の確保や工費節減,工期短縮などと同様に,またそれらを達成するために,設計者や工事作業者,工事監督者を含む当業者において,当然に考えることであるから,引用発明のマンホール蓋枠取替え工法において,それぞれの工程の作業を容易にしようとする課題が存在しているということができる。また,引用発明の目的は,低廉な施工コストで短時間のうちに確実な補修を行うことであるところ(前記2(1)エ),作業を容易にしようとすることは,そのような目的に沿うものということができる。また,引用例1においても,直線切りカッターに代えて円切りカッターを採用することが記載されているように(前記2(1)ウ),関連する技術分野に置換可能な公知又は周知の技術手段があるときは,当業者であれば,その技術手段の転用を試みるものである。よって,路面の切断作業をする際に,カッターを公知又は周知の異なる種類のものに変更しようとすることも,当業者であれば容易に着想することができるものということができる。(イ) 前記(2)のとおり,引用例2に記載された路面用カッターは,マンホールの蓋の周囲に切り込みを入れることにも使用されるものであるところ,切り取った切断片が疑似扁平お椀形となり,取り出し除去作業が容易となる。また,引用例2には,切断部が垂直の場合は,切断面の接合性が悪く,補修部分が沈下又は陥没しやすいという問題点があること(前記(2)ア(イ)),断面円弧状のカッターを使用することにより,切断部が断面円弧状,切断面が球面状を呈するために,垂直切断面とは異なり,切断面の接合性が極めて良く新規に施工した部分が沈下したり陥没したり等の不都合な現象を防止することができること(前記(2)ア(オ))が記載されている。
(ウ) 上記(ア)(イ)によれば,引用発明において,切断片の取り出し除去作業を行うに際し,作業を容易にするという課題が示唆されているということができる。そして,上記課題を解決するため,引用例2に記載された回転円弧状又は球面状のカッターを採用し,当該カッターの切断刃を360°旋回させて切り込みを入れることにより,切り取った切断片が疑似扁平お椀形となり,取り出し除去作業が容易になるほか,切断部が垂直であることなどによって生じる新規施工部分の沈下や陥没の問題を解消することができる。すなわち,引用例2に記載されている新規施工部分が沈下や陥没を生じないという効果は,引用発明において,切断部が垂直であることなどによって生じる新規施工部分の沈下や陥没の問題を解消する等の課題を解決するものである。以上のことを踏まえると,引用発明において,切断片の取り出し除去作業を容易にし,切断部が垂直であることによる問題を解決する等の目的で,カッターとして引用例2に記載された回転円弧状又は球面状のカッターを採用する動機付けがあるということができる。

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平成24(行ケ)10129 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月17日 知的財産高等裁判所

   知財高裁は、無効理由無しとした審決を取り消しました。関連する侵害訴訟で104条の3で権利公使不能と判断されています。\n
 前記(イ)ないし(オ)を総合すれば,交通事故の発生前後の所定時間にわたって車両の挙動に係る情報を収集,記録すること,車両に設けられた加速度センサーが検出する加速度が所定の閾値を超えるか否かやエアバッグ作動信号の有無に代えて,車両の加速度等が所定の閾値を超えたか否かによって交通事故が発生したか否かを判定する程度の事柄は,本件優先日当時における車両の挙動に係る情報を収集,記録する装置の技術分野の当業者の周知技術にすぎないということができる。そして,訂正発明1,2にいう「特定挙動」は前記のとおり「事故につながるおそれのある危険な操作に伴う車両の挙動」であって交通事故の発生を前提とするものではない(交通事故が発生しない場合も含む)が,訂正明細書の段落【0030】,【0034】,【0050】,図2,3等の記載によれば,訂正発明1,2にあっても,例えばセンサ部から得られる角速度等のデータが所定の閾値を超えたか否かによって「特定挙動」の有無が判定されるから,装置の機能の面に着目すれば,訂正発明1,2において「特定挙動」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構\成は,上記周知技術において「交通事故」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構成と実質的に異なるものではないということができる。加えて,上記周知技術と甲3発明とは,属する技術分野が共通し,前者を後者に適用するに当たって特段障害はないから,本件優先日当時,かかる適用を行うことにより,当業者が訂正発明1,2にいう「特定挙動」の発生前後の所定時間分の車両の挙動に係る情報を収集,記録する構\成に想到することは容易であるということができる。さらに,甲第4号証にも,車両内部のセンサから得られた横加速度等の情報から,運転に係る要因による異常又は異常に近い状況の発生の有無を認定し,かかる状況の発生前後の所定時間分の車両の挙動に関する情報を収集,記録する技術的事項が開示されているところ(前記(ア)),上記と同様に装置の機能面の共通性に着目すれば,上記の結論に至ることが可能\である。
エ 以上によれば,甲3発明に,「特定挙動」の発生前後の車両の挙動に係る情報を収集する条件を記録媒体に記録,設定する甲1発明と,「特定挙動」に相当する一定の契機(交通事故等)の発生前後所定時間分の車両の挙動に係る情報収集をする甲第4,第5,第6号証の1ないし6記載の周知技術を適用することにより,本件優先日当時,当業者において,審決が認定した甲3発明と訂正発明1の相違点に係る構成(「特定挙動」発生前後の車両の挙動に係る情報を所定時間分収集するための収集条件に適合する挙動の情報を記録媒体に記録,設定する構\成)に容易に想到することができたというべきであり,これに反する審決の判断は誤りである。オ そして,審決がした甲3発明と訂正発明1の一致点の認定については当事者双方は特段の主張をしていないから,結局,訂正発明1は進歩性を欠くものというべきである。原告が主張する無効理由4は訂正発明1に関して理由があり,これに反する審決の判断は誤りである。
・・・
イ そうすると,甲第2号証には,自動車用イベント(事象)記録装置(ERA)において,コンピュータ装置及び着脱可能なRAMカード(20)を用いて,前方間隔,警告閾値や,自動車の電子制御システムを介してセットされるその他のパラメータを設定する発明すなわちRAMカードに記録されているパラメータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更されたパラメータをERAに適用する発明(甲2発明)が記載されているということができる。ここで,甲2発明は,車両の挙動に関する情報を収集,記録する装置に関するもので,甲3発明と技術分野が共通する。そして,コンピュータ装置に処理を実行させて,着脱可能\なRAMカード等の記録媒体に記録されているパラメータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更されたパラメータを上記収集・記録装置に適用する程度の事柄であれば,甲2発明の技術的課題である事故分析に有用な情報を記録するブラックボックス的機能を有する,車両の挙動に係る情報の記録装置(甲第2号証の段落【0001】〜【0007】)とは不可分のものではなく,甲第1ないし3号証に接した当業者であれば,「スピードの出し過ぎや急発進・急制動の有無乃至その回数を予\め設定された基準値を基に自動判定し,また走行距離を用途別(私用,公用,通勤等)に区分して把握してドライバーの運転管理データを得るシステムを提供する」こと等を技術的課題とする甲3発明に,甲2発明を適用する動機付けがあると解して差し支えない。 ウ したがって,甲3発明に甲1発明,甲2発明と甲第4,第5,第6号証の1ないし6記載の周知技術(前記(1)ウ(カ))を適用することにより,本件優先日当時,当業者において,審決が認定した甲3発明と訂正発明2の相違点に係る構成に容易に想到することができたというべきであり,これに反する審決の判断は誤りである。そして,審決がした甲3発明と訂正発明2の一致点の認定については当事者双方は特段の主張をしていないから,結局,訂正発明2は進歩性を欠くものというべきである。原告が主張する無効理由4は訂正発明2に関しても理由があり,これに反する審決の判断は誤りである。なお,無効理由4には甲第2号証が引用例として明示的に挙げられていないが,審決は,原告が審判請求で証拠として挙げたのに応じて,甲第2号証も引用例として取り上げており(20,21頁),本件訴訟で,当事者双方ともにこの審決判断を前提にして,審決の判断の誤りの有無を主張しているので,上記のように甲第2号証も引用例(副引用例)に加えて訂正発明2の上記相違点に係る判断に至ることができるというべきである。\n

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平成24(行ケ)10129 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月17日 知的財産高等裁判所

   知財高裁は、無効理由無しとした審決を取り消しました。関連する侵害訴訟で104条の3で権利公使不能と判断されています。
 前記(イ)ないし(オ)を総合すれば,交通事故の発生前後の所定時間にわたって車両の挙動に係る情報を収集,記録すること,車両に設けられた加速度センサーが検出する加速度が所定の閾値を超えるか否かやエアバッグ作動信号の有無に代えて,車両の加速度等が所定の閾値を超えたか否かによって交通事故が発生したか否かを判定する程度の事柄は,本件優先日当時における車両の挙動に係る情報を収集,記録する装置の技術分野の当業者の周知技術にすぎないということができる。そして,訂正発明1,2にいう「特定挙動」は前記のとおり「事故につながるおそれのある危険な操作に伴う車両の挙動」であって交通事故の発生を前提とするものではない(交通事故が発生しない場合も含む)が,訂正明細書の段落【0030】,【0034】,【0050】,図2,3等の記載によれば,訂正発明1,2にあっても,例えばセンサ部から得られる角速度等のデータが所定の閾値を超えたか否かによって「特定挙動」の有無が判定されるから,装置の機能の面に着目すれば,訂正発明1,2において「特定挙動」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構\成は,上記周知技術において「交通事故」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構成と実質的に異なるものではないということができる。加えて,上記周知技術と甲3発明とは,属する技術分野が共通し,前者を後者に適用するに当たって特段障害はないから,本件優先日当時,かかる適用を行うことにより,当業者が訂正発明1,2にいう「特定挙動」の発生前後の所定時間分の車両の挙動に係る情報を収集,記録する構\成に想到することは容易であるということができる。さらに,甲第4号証にも,車両内部のセンサから得られた横加速度等の情報から,運転に係る要因による異常又は異常に近い状況の発生の有無を認定し,かかる状況の発生前後の所定時間分の車両の挙動に関する情報を収集,記録する技術的事項が開示されているところ(前記(ア)),上記と同様に装置の機能面の共通性に着目すれば,上記の結論に至ることが可能\である。
エ 以上によれば,甲3発明に,「特定挙動」の発生前後の車両の挙動に係る情報を収集する条件を記録媒体に記録,設定する甲1発明と,「特定挙動」に相当する一定の契機(交通事故等)の発生前後所定時間分の車両の挙動に係る情報収集をする甲第4,第5,第6号証の1ないし6記載の周知技術を適用することにより,本件優先日当時,当業者において,審決が認定した甲3発明と訂正発明1の相違点に係る構成(「特定挙動」発生前後の車両の挙動に係る情報を所定時間分収集するための収集条件に適合する挙動の情報を記録媒体に記録,設定する構\成)に容易に想到することができたというべきであり,これに反する審決の判断は誤りである。オ そして,審決がした甲3発明と訂正発明1の一致点の認定については当事者双方は特段の主張をしていないから,結局,訂正発明1は進歩性を欠くものというべきである。原告が主張する無効理由4は訂正発明1に関して理由があり,これに反する審決の判断は誤りである。
・・・
イ そうすると,甲第2号証には,自動車用イベント(事象)記録装置(ERA)において,コンピュータ装置及び着脱可能なRAMカード(20)を用いて,前方間隔,警告閾値や,自動車の電子制御システムを介してセットされるその他のパラメータを設定する発明すなわちRAMカードに記録されているパラメータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更されたパラメータをERAに適用する発明(甲2発明)が記載されているということができる。ここで,甲2発明は,車両の挙動に関する情報を収集,記録する装置に関するもので,甲3発明と技術分野が共通する。そして,コンピュータ装置に処理を実行させて,着脱可能\なRAMカード等の記録媒体に記録されているパラメータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更されたパラメータを上記収集・記録装置に適用する程度の事柄であれば,甲2発明の技術的課題である事故分析に有用な情報を記録するブラックボックス的機能を有する,車両の挙動に係る情報の記録装置(甲第2号証の段落【0001】〜【0007】)とは不可分のものではなく,甲第1ないし3号証に接した当業者であれば,「スピードの出し過ぎや急発進・急制動の有無乃至その回数を予\\め設定された基準値を基に自動判定し,また走行距離を用途別(私用,公用,通勤等)に区分して把握してドライバーの運転管理データを得るシステムを提供する」こと等を技術的課題とする甲3発明に,甲2発明を適用する動機付けがあると解して差し支えない。 ウ したがって,甲3発明に甲1発明,甲2発明と甲第4,第5,第6号証の1ないし6記載の周知技術(前記(1)ウ(カ))を適用することにより,本件優先日当時,当業者において,審決が認定した甲3発明と訂正発明2の相違点に係る構成に容易に想到することができたというべきであり,これに反する審決の判断は誤りである。そして,審決がした甲3発明と訂正発明2の一致点の認定については当事者双方は特段の主張をしていないから,結局,訂正発明2は進歩性を欠くものというべきである。原告が主張する無効理由4は訂正発明2に関しても理由があり,これに反する審決の判断は誤りである。なお,無効理由4には甲第2号証が引用例として明示的に挙げられていないが,審決は,原告が審判請求で証拠として挙げたのに応じて,甲第2号証も引用例として取り上げており(20,21頁),本件訴訟で,当事者双方ともにこの審決判断を前提にして,審決の判断の誤りの有無を主張しているので,上記のように甲第2号証も引用例(副引用例)に加えて訂正発明2の上記相違点に係る判断に至ることができるというべきである。\n

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平成23(行ケ)10398 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年09月19日 知的財産高等裁判所

 進歩無しとした審決が、動機づけ無しとして取り消されました。
 本願発明は,「この管路にはオゾン発生装置が連結してあるエジェクターが設けてあり,前記圧力容器内部には供給口に連結した噴霧装置が設けてある」ものであるから,「エジェクター」と「噴霧装置」とを併用するものである。他方,引用発明は,接触反応器の構造が複雑で,しかも高価なエジェクターに替えて,エジェクターより接触反応器の構\造が簡単で安価なスプレーノズルを用いるものであるから,スプレーノズルは,エジェクターの代替手段である。そうすると,引用発明において,接触反応器の構造が複雑で,しかも高価なエジェクターを敢えて用いようとする動機付けがあるとはいえない。イ また,仮に,引用発明にエジェクターを適用する動機があるとしても,スプレーノズルがエジェクターの代替手段であるから,その場合は,引用発明におけるスプレーノズルに替えてエジェクターを適用することになるところ,引用発明には,本願発明のようにエジェクターとスプレーノズル(噴霧装置)とを併用することの示唆や動機付けがあるとはいえない。他に,水処理装置において,エジェクターと噴霧装置とを併用することについて,記載や示唆があるとは認められない。
ウ したがって,一般に,被処理水にガスを供給することについて,被処理水を供給する管路に「ガスが供給されるエジェクター」を設けることが,本件出願前周知の事項であったとしても,引用発明において,エジェクターとスプレーノズル(噴霧装置)とを併用することは,当業者にとって容易であるとはいえない。そして,本願発明は,エジェクターとスプレーノズル(噴霧装置)とを併用することによって,エジェクターでオゾンと被処理水を混合し,圧力容器内に気体オゾンを混合した被処理水を噴霧供給することで,圧力容器内の圧力を高圧にし,更に噴霧によってオゾンと被処理水の接触面積を大きくしてオゾンを被処理水に溶解させて有機汚染物を分解するものであり,それによって,オゾンが被処理水に効率よく溶解され,汚染水処理装置の処理能力が向上するという顕著な効果を奏するものである。
エ よって,相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは,引用発明及び本件出願前周知の事項に基づいて当業者であれば容易になし得るとした本件審決 の判断は,誤りである。

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平成23(行ケ)10301 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年09月26日 知的財産高等裁判所

 動機づけがないとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 引用発明1は,前記のとおり,創傷部周囲の皮膚に応力を加えることなく創傷部を塞ぐ創傷部癒合装置に係る発明であり,本件補正発明と同一の技術分野に属するものであって,創傷部に向かって上皮及び皮下組織の移動を促進するに十分な領域にわたって連続して負荷を加えることにより,創傷部の膿を排出させるという従来技術を前提として,創傷部の空気を吸引することにより創傷部が負圧となり,創傷部から流れ出る液のキャニスターへの排出が促進されることなどを目的とするものである。これに対し,引用発明2は,外傷を負った哺乳類の皮膚の治療に用いる多層創傷ドレッシングについて,創傷部に殺菌性の環境を与え,創傷表\面を湿潤状態に保つ一方で,創傷滲出物を速やかに吸収するほか,創傷の治癒を極力邪魔しないようにし,かつ,引き剥がすのが容易で,その際,皮膚に傷を残すことがないようにすることを目的とするものであり,そのために,体内の創傷治癒因子あるいは創傷接触層に含まれる高分子成分の通過を防止しながら,創傷からの液体滲出物を中間吸収層に迅速に除去し,また,組織細胞が中に入り込むのを防止するものである。引用発明2は,上記目的,すなわち,体内の創傷治癒因子あるいは創傷接触層に含まれる高分子成分の通過を防止しながら,創傷からの液体滲出物を中間吸収層に迅速に除去し,また,組織細胞が中に入り込むのを防止するために,孔径の大きさを設定したものであって,本件補正発明や引用発明1のように,創傷部から体液を積極的に真空吸引して真空キャニスターに収集するとともに,創傷部に負圧による修復作用をもたらすため,創傷部に連続的な負圧を加えることを前提として孔径の大きさを設定したものではない。そうすると,引用発明1には,多孔性パッドの外側表面部の孔群について,同発明とは目的及び機序が異なる引用発明2の孔径を適用することに関し,そもそも動機付けが存在しないものというほかない。\n

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平成23(行ケ)10320 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年09月27日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、動機づけ無し、阻害要因有りとして、取り消されました。
 審決は,相違点1に関して,引用発明において,本願発明のように,メモリにアクセスするアドレスを含む命令ポインタを,全て命令トレースコントローラに送っておき,不連続なアドレスを示す制御信号により命令トレースコントローラによって選択するようにすることは当業者が容易になし得たことであると認定,判断する。しかし,審決の上記認定,判断には,誤りがある。・・・そもそも,引用発明は,上記のとおり,分岐先アドレスを出力することで,出力される実行情報の量を抑制することを目的とするものであるから,引用発明において,この目的を達成することが可能なアドレス計算部の出力する分岐先アドレスを用いるのに代えて,実行する命令のアドレス全てを出力するとの構\成に至る動機付けがない。むしろ,引用文献1の上記記載によれば,引用発明は,内蔵キャッシュがヒットしている場合,命令の実行状況がマイクロプロセッサのアドレスバスやデータバスに出力されない構成である上,常にマイクロプロセッサの実行情報をプロセッサの外部に出力することは,バスの競合が発生し,マイクロプロセッサの性能\の低下を招くとの認識を前提としており,引用発明において,実行する命令のアドレス全てを出力するように構成することには,阻害事由があるといえる(なお,本願発明は,命令ポインタレジスタから出力され,CPUによって実行されるアドレス(命令ポインタ)のうち,命令トレースに必要な不連続アドレス(分岐先アドレス)のみを,アドレスの不連続を示す制御信号を用いて抽出するものである。これに対し,引用発明においては,命令実行部がアドレス計算部を備え,分岐先アドレスを計算して出力するが,分岐が発生しない場合には,命令プリフェッチ部10において,次サイクルにおいて実行する命令のアドレスが計算され,命令キャッシュ内にある命令が読み出されるものであって,アドレス計算部から出力されるのは,不連続な分岐先アドレスのみであり,CPUによって実行される命令のアドレス全てを出力するものではないから,引用発明におけるアドレス計算部は,本願発明における命令ポインタレジスタに対応するものともいえない。)。これに対し,審決は,本願発明において,制御信号によって不連続であることが通知されたアドレス以外は,命令トレースコントローラで何ら使用されることなく,捨てられるだけであり,全ての命令ポインタを命令トレースコントローラに送ることによって格別の効果を生ずるものではないとして,相違点1は格別のものではないと認定,判断するが,不連続でないアドレスが利用されないからといって,引用発明から本願発明を容易に想到できたとはいえない。以上によれば,引用発明において,本願発明のように,メモリにアクセスするアドレスを含む命令ポインタを,全て命令トレースコントローラに送っておき,不連続なアドレスを示す制御信号により命令トレースコントローラによって選択するようにすることは当業者が容易になし得たことであるとの審決の認定,判断には,誤りがある。\n

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平成23(行ケ)10335 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年09月12日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が維持されました。得異な効果も発明の構成に基づくものではないとして採用されませんでした。
 原告は,相違点3及び4は,相互に密接に関連しており,それらを組み合わせた効果も相乗的なものであるから,これを分断して判断したことは,進歩性判断の誤った手法によるものであると主張する。相違点3は,本願発明の走査方法が点順次走査であることに関し,相違点4は,点順次走査を前提とした上で,標本化定理を尊重した検出周波数の選定に関するものであることから,両者は,点順次走査という点で一定の関連性を有するものである。しかしながら,標本化定理は,本来,画像の復元性の保証という観点から走査方法の如何を問わず考慮されるべき基本的事項であって,走査方法とは技術的観点が異なるから,相違点3及び4を別々に判断したとしても,誤りがあるとはいえない。また,本件審決は,相違点4の判断において,相違点3及び4をあわせ,全体として総合的に効果の点も含めて,容易想到性を判断したのであるから,原告の上記主張には理由がない。
 イ 原告は,本願発明の特徴は,リアルタイムで「高品質」の画像形成を可能にするために,「解像度」と「フレーム・レート(リアルタイム)」と「感度」という互いに相反する3つのパラメータの間に適切なバランスを新たに提供するものであると主張する。本願発明は,本願明細書に記載されたとおり,「リアルタイム表\示」すると同時に「画像の品質を最適化」,特に「高解像度化」することを目的とし,その目的を達成するために,本願発明の構成を採用し,特定したものである。しかしながら,本願発明の特許請求の範囲には,リアルタイムで「高品質」の画像形成を可能\にするための「解像度」と「フレームレート(リアルタイム)」と「感度」の間の適切なバランスを特定することについても,リアルタイム性を表す「フレームレート」,画像の品質を表\す「解像度」及び「サンプリング周波数」が具体的な高い値として得られることについても,何ら特定されてはいない。本願発明は,「数千本の光ファイバ」及び「リアルタイムで使用するに充分な毎秒画像数の取得に対応する速度」という発明特定事項を有するものの,上記発明特定事項だけからでは,従来実現していなかった,あるいは,従来知られていなかった,「解像度」と「フレーム・レート(リアルタイム)」と「感度」の組合せが実現できる発明が特定されているとはいえない。そうすると,原告の上記主張は,特許請求の範囲に基づくものではなく,失当である。

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平成23(行ケ)10374 審決取消請求事件  特許権 行政訴訟 平成24年08月09日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
 引用発明と甲2文献記載の発明の技術分野,技術内容を対比,検討すると,両発明は,いずれも,風力発電で発生した電力が配電網(電力系統1)に供給される場合に,マイクロコンピュータ(制御装置7)が,周波数変換器(インバータ)を制御することにより,配電網(電力系統1)の電圧の変動を制御しようとするものである。また,電圧調整用のパラメータとして,引用発明ではマイクロコンピュータに力率が入力され,甲2文献記載の発明では制御装置7に無効電力値が入力されており,無効電力が制御の対象とされている。したがって,引用発明と甲2文献記載の発明とは,解決課題において共通する。
(ウ) 他方,審決が認定した常套手段2は,「電力系統の電圧制御や無効電力の制御を行う技術分野において不感帯を設ける」というものであり,その具体的な制御方法等は,何ら開示がない。また,甲4文献に記載されている不感帯域は,系統母線電圧と無効電力について,目標値V0 ・Q0 の周囲に予め決められた不感帯域を設定し,負荷時タップ切換変圧器LR,電力用コンデンサCs,あるいは分路リアクトルSRの制御を行うことにより,系統母線電圧と無効電力を上記不感帯域に収めるものである(段落【0007】【0009】)。したがって,甲4文献記載の事項がいかに技術常識であったとしても,当業者が,甲4文献記載の事項を適用することにより,本願発明における引用発明との相違点2に係る構\成,すなわち「(マイクロコントローラが電圧測値および所定のパラメータの値に基づいて,インバータを制御するステップと,を有し,前記電圧測値の変動を制御するよう,インバータを制御する,方法において,本願発明では,マイクロコントローラが電圧測値および所定のパラメータの値に基づいて,「目標位相角を導出し,インバータを制御して位相角φを該目標位相角に設定するステップ」と,前記マイクロコントローラが前記インバータを制御するステップと,を有し,前記インバータを制御するステップは,)前記電圧測値が下方参照電圧Uminと上方参照電圧Umaxとの間に含まれる場合は,前記位相角φの大きさが一定に保たれるよう前記インバータを制御するサブステップと,前記電圧測値が前記上方参照電圧Umaxを上回る場合には,前記電圧測値のさらなる増大に応じて前記位相角φが大きくなるように,又は,前記電圧測値が前記下方参照電圧Uminを下回る場合には,前記電圧測値の減少に応じて前記位相角φが小さくなるように,前記電圧測値が所定の参照電圧を示すようになるまで前記電気ネットワークへ誘導性または容量性の無効電力が供給されるよう,前記インバータ(18)を制御するサブステップと,を含む」との構成に,容易に想到すると解することはできない。
 この点につき,被告は,本訴において新たに,特開平3−122705号公報(乙2)及び特開平10−191570号公報(乙3)を提出する。そして,乙2には,電圧調整器を線路上に設けた系統に設置する静止形無効電力補償装置において,制御目標電圧と交流系統電圧の偏差信号に不感帯を設けることが,乙3には,発電設備と系統電源とを連系し,電圧変動基準により無効電力の制御を行う系統連系システムにおいて,検出した電圧変動量から電圧変動基準を演算して出力する関数回路において,電圧変動が一定値以内では感知しない不感帯を設けることが,それぞれ記載されており,乙2及び乙3には,「ある値(X)が下方参照値と上方参照値との間に含まれる場合は対応する信号(Y)の大きさが一定に保たれるように制御するサブステップと,前記ある値(X)が前記上方参照値を上回る場合には,前記ある値(X)のさらなる増大に応じて前記対応する信号(Y)が大きくなるように,又は前記ある値(X)が前記下方参照値を下回る場合には,前記ある値(X)の減少に応じて前記対応する信号(Y)が小さくなるように制御するサブステップを有する」不感帯を設ける制御が記載されている。しかし,上記の不感帯における制御に関する審理,判断が一切されていない,審判手続の審理経緯に照らすならば,本訴訟に至って,上記証拠(乙2,乙3)を考慮に入れた上で,相違点2に係る構成の容易想到性の有無の判断をすることは,相当とはいえない。\n

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平成23(行ケ)10297 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年07月11日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとした審決が維持されました。
 以上の記載に照らせば,本件出願時の技術常識として,シアノアクリレートやポリウレタン等の水反応型接着剤が知られており,電気カーペット等の面状採暖具の接着用途のみならず,卓球ボール,ソフトテニスボール,ゴルフボールなどの球技用ボールの接着用途も含めて,一般的に用いられる,すなわち,汎用性を有するものと認められる。そうすると,引用発明2において,水反応型接着剤の一つである「反応型ホットメルト樹脂」が,IDカードやICカードの接着用途に特化されたものであるとはいえず,一般的な接着剤と同様,他の用途にも適用可能\な汎用性を有するものというべきである。甲3,4についても同様であり,甲3,4の水反応型接着剤が,電気カーペット等の面状採暖具の接着用途に特化されたものであるとはいえず,それ自体は,一般的な接着剤と同様,他の用途にも適用可能な汎用性を有するものというべきである。このような水反応型接着剤の汎用性に照らせば,引用発明1のメルトン貼\りボールの接着用途として,水反応型接着剤を適用することは,単なる設計的事項にすぎず,動機づけを否定することができない。そうである以上,引用発明2,周知技術及び自明な事項1〜3を引用発明1に適用することに格別の困難性は認められない。原告は,審決が加圧接着剤による接着方法が水反応型接着剤による接着方法に劣ると認定したことは誤りであると主張する。しかし,特開昭63−189486号公報(乙6)には,感圧型接着剤は硬化に時間がかかり,強固に接着できないことが記載されている(1頁左下欄下から2行〜右下欄8行)。また,特開昭62−91576号公報(乙7)には,感圧型接着剤は,被接着面が湿気を帯びているときには粘着性が十分発揮されず,接着を試みても必要な接着強度を得ることが不可能\なものであることが,記載されている(1頁左下欄下から3行〜右下欄4行)。これらの記載に照らせば,感圧接着剤の接着強度が弱いことは,本件出願時の技術常識であるものと認められる。また他方で,上記水反応型接着剤の汎用性に照らせば,引用発明1のメルトン貼りボールの接着用途として水反応型接着剤を適用することは設計的事項であるから,仮に加圧接着剤による接着方法が水反応型接着剤による接着方法に劣るか否かは別として,水反応型接着剤を選択することを困難にするものではない。いずれにしても,原告の主張をもって審決の判断を誤りとすることはできない。\n

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平成23(行ケ)10284 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年06月06日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
,甲第2号証には,「水産加工廃棄物等の被処理物(A)を走行散布ホッパー(10)により第2図示の如く発酵槽(1)の略全長に亘り堆積する。・・・これらフォーク(6)・・・(6)の先端爪部(6c)・・・(6c)により被処理物(A)をその全体に亘り攪拌する。」(5頁15行〜6頁7行)と記載されているのみで,台車を所望の位置に動かして,所望の範囲(領域)で撹拌動作を指定した頻度(回数)で行うことで,領域ごとに被処理物の滞留日数及び撹拌頻度を管理することは記載されていない。また,甲第3号証にも,従来の撹拌機につき「第1図に示す攪拌機は,・・・堆積された畜糞を撹拌しつつ一方に向かつて搬送するものである。」(2頁4行〜9行)と記載され,被処理物を撹拌しながら他方に向かって送り出すことが開示されているのみで,台車を所望の位置に動かして,所望の範囲(領域)で撹拌動作を指定した頻度(回数)で行うことで,領域ごとに被処理物の滞留日数及び撹拌頻度を管理することは記載されていない。他方,前記のとおり,引用発明が解決しようとする課題は,発酵槽内を複数の領域に概念的,論理的に区切り,領域ごとに被処理物の滞留日数及び撹拌頻度を管理する点にあり(甲1の2頁左下欄10〜16行),引用発明の撹拌機も,下記第1図のとおり,発酵槽(1)内からいったん移動通路(15)上に移動させた後,移動通路上を発酵槽の長尺方向に沿って他の領域の前(開口部側)まで移動させ,再度発酵槽内に移動させることによって,上記の領域ごとの被処理物の撹拌頻度の管理を可能にするものである。【引用刊行物(甲1)の第1図】したがって,引用発明においては,撹拌機の構\成と移動通路とは機能的に結び付いているものである。そうすると,引用発明の発酵処理装置の構\成から移動通路(15)を省略し,かつ奥行き方向に往復して撹拌する撹拌機の構成を長尺方向にのみ往復移動しながら撹拌動作する甲第2,第3号証から認められる周知技術に係る撹拌機の構\成に改め,同時に概念的,論理的に複数に区切られた発酵槽内の領域を,発酵槽開口部の所望の個所から被処理物の投入・堆積・取出しを行うことができるようにするべく,領域ごとに被処理物の滞留日数及び撹拌頻度を管理することができるようにすることは,甲第2,第3号証に表れる構\成が当業者に周知のものであるとしても,本件出願当時,当業者において容易ではあったと認めることはできない。したがって,これと異なる「引用発明において採用する撹拌方式に替え,上記周知の撹拌方式を採用することで本件発明1における発明特定事項に想到することは,当業者であれば容易になしうるところである。」との審決の判断(8頁)は誤りである。

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平成23(行ケ)10208 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年05月31日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、引用文献には開示または示唆がないとして、取り消されました。
これに対し,被告は,引用発明において,複数のインク層を前のインクが乾燥してから印刷する必然性はない,引用発明がウェットトラップを利用しないものとはいえないなどと主張する。しかし,被告の主張は採用できない。すなわち,引用例において,インクが未乾燥の状態でガイドローラと接触するとの記載はない。仮に,被印刷体を移送するローラが乾燥していないインクを有する印刷面に接触する技術が周知であったとしても,そのことから直ちに,引用例においてウェットトラップ印刷法を採用すること,同印刷法を採用した場合に生じ得る解決課題及び解決方法が記載,示唆されていると解することはできない。また,仮に,ウェットトラップ印刷法が,本願優先日前における技術常識であったとしても,上記アのとおり,引用発明においては,インクを重ね刷りすることを前提としておらず,重ね刷りによる解決課題(色の汚濁の防止,印刷時間の長期化の防止等)を目的としたものではないから,引用発明からウェットトラップ印刷法を採用する動機付けは生じない。

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平成23(行ケ)10181 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年04月11日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が維持されました。
 この点について,原告らは,本願発明は,ヒートポンプのエネルギー発生の観点では効率が悪いとされる部分沸き上げ方式をあえて採用したものであり,全部沸き上げ方式を採用する引用発明1及び2に基づいて,当業者が容易に想到し得るものではない,引用発明2に引用発明1を組み合わせたとしても,太陽熱集熱器で得られる集熱熱量に応じて低温の(高温ではない)湯の量を制御することはできない,蓄熱運転終了時に貯湯タンクの上方に貯湯される湯と下方に存在する湯との間に温度差が生じるようにして沸き上げ,かつ,上方に貯湯される高温の湯の量が,太陽熱集熱器で得られる集熱熱量に応じて変化するように蓄熱運転の制御を行うことは,引用例1及び2には全く示唆されていない,仮に,深夜時間帯に部分沸き上げ方式を採用することが公知であるとしても,部分沸き上げ方式が構造的に不可能\な引用発明2に,全部沸き上げ方式を採用している引用発明1を組み合わせる動機付けを認めることはできないなどと主張する。しかしながら,部分沸き上げ方式が本件出願前の技術常識であり,仮に引用発明1が同方式とは異なる沸き上げ方式を採用するものであったとしても,当該技術常識を採用すること自体は,設計的事項にすぎないことは,先に述べたとおりである。
 また,引用発明1の「ヒートポンプ」と,引用発明2の「電気ヒータ」とは,「貯湯式給湯装置」において「太陽熱集熱器」とともに給湯用水を加熱し,沸き上げるとともに,「制御手段」により制御される「加熱手段」という同一の技術分野に属するものである。そして,相違点2は,給湯用必要熱量から太陽熱集熱器で得られる集熱熱量を減じた「必要沸き上げ熱量」に応じてヒートポンプユニットを蓄熱運転する「制御手段」の有無に係る相違点であるから,必要とされる熱量を蓄えるための制御方法については,全部沸き上げ方式であるか,あるいは部分沸き上げ方式であるかを問わず,いずれにおいても適用可能であることは明らかである。しかも,引用例2には,太陽熱と電気ヒータとを併用して貯湯する装置において,可能\な限り太陽熱を利用することにより,電気料金を必要とする電気ヒータの利用を抑制するという技術思想が開示されている以上,当業者が引用発明1に引用発明2を適用する動機付けも認められるものというべきである。

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平成22(ワ)30777 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年03月29日 東京地方裁判所

 実験する条件について動機づけがあるので進歩性なしとして、非侵害と認定されました。
 乙7には,「WB法より簡便かつ高感度な方法の確立を目的として,ELISA法について検討」した結果の報告である旨の記載があるが(前記(1)ア(ア)),遠心分離処理条件の検討がされた旨の記載はない。乙7記載の方法を更に簡便とするため,目的とする物質の遠心分離が達成できる範囲で遠心分離処理条件を変更し,その検出結果を検討することは,当業者が当然試みることといえる。そして,乙7及び乙9は,ELISA法に用いてPrPScを検出する試料の調製法に係る文献である点で,その技術分野を共通にするところ,乙7には,「脳又は脾臓」から試料を調製する場合に,両者を区別せずに「69,000×g」で遠心すると記載されているのに対し,乙9には,脾臓,リンパ節等については,遠心を40,000回転とする一方で,脳の場合には15,000回転とされていること(前記イ(ア)d)に照らすならば,乙7及び乙9に接した当業者であれば,乙7記載の方法において,「脳」(脳組織)から試料を調製する場合に,「69,000×g」の遠心分離処理条件に代えて,乙9記載の「毎分1万5000回転」の遠心分離処理条件(相違点に係る本件発明の構成)を適用することを容易に想到し得たものと認められる。
 (イ) これに対し原告は,界面活性剤の種類,分析対象組織の種類,適用される遠心分離の方法,洗浄,再沈殿などの精製工程の有無は,結果に大きく影響するところ,乙7及び乙9を検討すると,超遠心分離の適用が原則であること,乙7では,Zwittergentとサーコシルの組合せよりも,トリトンX−100とサーコシルの組合せの方が良好であったことなどからすると,Zwittergentを使用する乙9に記載された遠心分離の条件を,乙7における既に良好である方法を変更するために適用する動機付けが存在しないから,乙7に記載された発明に,乙9記載の遠心分離条件(相違点に係る本件発明の構成)を組み合わせることは容易想到とはいえない旨主張する。しかしながら,前記(ア)で述べたように,乙7記載の方法において,目的とする物質の遠心分離が達成できる範囲で遠心分離処理条件を変更し,その検出結果を検討することは,当業者が当然試みることであり,しかも,乙9には「脳」(脳組織)から試料を調製する場合の遠心分離の回転数について15,000回転と記載されていることからすると,乙7記載の方法に,乙9記載の遠心分離条件を適用する動機付けが存在するものといえること,乙7には,「脳」から試料を調製する場合に,「69,000×g」の遠心分離処理条件を変更することに問題があることを積極的に示唆する記載はなく,上記の適用について阻害事由もないこと照らすならば,原告の上記主張は,採用することができない。

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 >> 104条の3

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平成23(行ケ)10214 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年03月07日 知的財産高等裁判所

 周知技術から容易想到でないとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 前記3のとおり,周知例1ないし3には,従来のサーマルプリンタにおいては,印刷媒体の温度によって印字濃度が影響を受けるという問題点があったことから,印刷媒体の温度に応じてサーマルヘッドへの印加エネルギーを制御するという技術が開示されているところ,引用発明のサーマルプリンタにあっても,印刷濃度が印刷媒体の温度の影響を受けるという問題を有することは,当業者に自明であるということができるから,引用発明において,この問題を解決するため,印刷媒体の温度を検知し,検知した媒体温度に基づいて,プリントヘッド要素に入力するエネルギーを補正すること自体は,当業者が容易に想到し得ることといわなければならない。しかしながら,本願発明は,周囲温度と,プリントヘッド素子に以前に提供されたエネルギと,プリントヘッド素子が印刷する予定の印刷媒体の温度とに基づいて,プリントヘッド素子の温度を予\測するステップを有するものであるが,周知例1ないし3には,印刷媒体の温度に基づいて,サーマルヘッド(本願発明の「プリントヘッド要素」に相当する。)への印加エネルギー(同様に「入力エネルギ」に相当する。)を補正することは記載されているといっても,この補正は印刷媒体の温度に基づいて補正されるべきエネルギーを計算するものであって,プリントヘッド要素の現在の温度を予測するのに際して印刷媒体の温度を考慮することは何ら記載も示唆もされていない。周知例1ないし3においては,印刷媒体の温度の影響を考慮して入力エネルギーを補正することによって,より適正な印刷ができるようにするとの目的を達成しているのであるから,周知例1ないし3は,プリントヘッド要素の温度を予\\測するために用いる要件として,印刷媒体の温度を選択することの契機となり得るものではない。また,引用例には,周囲温度及びプリントヘッド要素に以前に提供されたエネルギーに基づいてプリントヘッド要素の現在の温度を予測するという引用発明を上位概念化して捉えることを着想させるような記載はないから,引用例にはプリントヘッド要素の温度を予\測することが開示又は示唆されていると解釈した上で,印刷媒体の温度もプリントヘッド要素の温度に影響を及ぼす要素として周知であるとの事情を考慮することにより,プリントヘッド要素の現在の温度を予測する要件として,印刷媒体の温度を採用することが容易であるということもできない。したがって,引用発明に周知例1ないし3記載の周知の技術事項を適用しても,当業者が相違点に係る本願発明の構\\成を容易に想到することができたとはいえない。
(2) また,被告は,印刷媒体の温度に基づく補正において,単純に補正前のエネルギーに加算するのではなく,計算効率の観点から等式の形が大きく変更されないように,周囲温度とプリントヘッド要素に以前から提供されたエネルギーとに基づいて予測されるプリントヘッド要素の現在の温度Taに加算するように拡張した等式E=G(d)+S(d)Ta’を用いて,プリントヘッド要素に供給する入力エネルギーを計算することも,当業者が適宜設計し得ることであると主張する。しかしながら,印刷媒体の温度に基づいてプリントヘッド要素への入力エネルギーを補正するに当たり,印刷媒体の温度を考慮してプリントヘッド要素の温度を修正することは,周知例1ないし3に開示されていないし,入力エネルギーの計算効率を向上するために印刷媒体の温度を考慮してプリントヘッド要素の温度を修正することが技術常識であるとすべき根拠も見当たらないから,プリントヘッド要素の温度を修正して入力エネルギーを計算することが,当業者が適宜設計し得るものであるということはできない。\n

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平成23(行ケ)10237 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年03月05日 知的財産高等裁判所

 技術的思想に反するもので本件発明の構成に改める発想が生じるはずがないとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 前記のとおり,引用発明のガスケット(6)に設けられた突条部17の役割は,その弾性力(反発力)で,可動側板(可動形側板4)を歯車端面側に押し付けることにあり,突条部17と可動側板の間に作動液(高圧流体)が侵入して,液圧でガスケットをケーシング(1)に押し付ける(押し上げる)こと等は想定されていないが,本願発明のガスケット又は可動側板に設けられる「凹欠」は,可動側板の溝の底部の隅(隅部)の「Rをとっている部位」すなわち曲面状の部位(部分)にまで達するように,例えば溝状の部分を設け,この部分に作動液が侵入できるようにして,ガスケットが作動液によって低圧側の溝壁に押し付けられたときでも,作動液の液圧で,ガスケットをケーシングに向かって押し付け,また可動側板を歯車端面に向かって押し付けて,可動側板の圧力バランス及び歯車端面に対する封止機能(シール)を確保できるようにするものである。そうすると,本願発明のガスケットの「Rをとっている部位」や「凹欠」が果たす機能\と引用発明のガスケットの突状部17等が果たす機能は異なり,引用発明のガスケットでは,可動側板(可動形側板4)の溝底隅部でガスケットと可動側板との間に作動液が侵入して可動側板の圧力バランスをとることが想定されていない。したがって,引用発明ではガスケットと可動側板(可動形側板4)との間の隙間10が可動側板の溝底隅の曲面状の部位(Rをとっている部位)にまで及ぶことが予\定されていない。また,刊行物1の8頁6ないし13行には,「前記隙間10内に導入された高圧流体の圧力によって,前記ガスケット6の帯状部16がボディ7の端壁7bの内面7cに押し付けられ固定されるので,高圧領域Hと低圧領域Lとの圧力差によってガスケット6が低圧領域側へはみだすという不都合も有効に防止されるものであり,該ガスケット6の耐久性を向上させることができる。」との記載があるから,引用発明のガスケット(6)と可動側板(可動形側板4)の構成には,作動液の液圧でガスケットの低圧側の側面を可動側板の溝の側面(内側面)に押し付け密着させて固定することで,ガスケットのそれ以上の低圧側へのはみ出しを有効に防止するという機能\があるということができる。ここで,ガスケットがかかる機能を発揮するためには,可動側板の溝の側面と底面が成す隅部に向かってガスケットが密着するように押し付けられるのが好ましく,上記溝の底面から離れるように,すなわち上記隅部付近でガスケットが可動側板から離れるように押し上げられると,ガスケットが上記溝の低圧側側面を超えてはみ出すおそれが生じるし,また,上記隅部付近でガスケットが可動側板を歯車端面に向かって押し付ける力を得る必要があるとはいえない。 そうすると,引用発明のガスケットと可動側板の構\成を,可動側板の溝の低圧側側面と底面が成す曲面状の隅部にまで作動液が侵入して可動側板の圧力バランスをとることができるよう,ガスケットと可動側板との間の隙間10が上記の曲面状の部位(Rをとっている部位)にまで及ぶように改めることは,突条部17の機能を害し,またガスケットの低圧側へのはみ出しを防止するという技術的思想に反するものであるから,上記構\成に改める発想が生じるはずはなく,当然のことながら当業者には容易に想到できる事柄ということはできない。
・・・
 また,本願発明のガスケットに相当する乙第3号証のリップシール(24)は,本願発明の可動側板に相当するサイドプレート(12)ではなく,反対側のカバー(14)に装着され,リップシールとサイドプレートの間に設けられたバックアップ(17)を介してサイドプレートを押し付けるもので,本願発明のガスケット及び可動側板と構成が相当異なるから,乙第3号証に記載された技術的事項を根拠に,本願発明のガスケット等の構\成が当業者が容易に行い得る設計変更(設計的事項)の範疇に属するということはできない。乙第4号証の図2,4からも,ガスケットに設けられた凹部の範囲及び形状は必ずしも明確でなく,その余の明細書中の記載でもガスケットに設けられた凹部の技術的意義が明らかでないから,上記図等に記載された技術的事項を根拠に,本願発明のガスケット等の構成が当業者が容易に行い得る設計変更(設計的事項)の範疇に属するということはできない。\n

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平成23(行ケ)10193 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年02月27日 知的財産高等裁判所

 無効理由無しとした審決が取り消されました。
 甲2公報〜甲4公報に開示された上記の技術事項に照らすと,椅子の背もたれ等に施療子が設けられ,制御回路がスイッチ操作等の入力に基づいて施療子を移動させる機能を備えたマッサージ機の技術分野において,施療子を移動させる際に突出量が大きいと,使用者の身体に対する危険がある,あるいは,駆動装置に大きな負荷がかかるなどといった問題の存在は,当業者にとって広く知られた周知の課題であったと認められ,そのような課題を解決するために,施療子の突出量を最小にして,あるいは突出量が小さくなるよう調整して移動させることも,周知の技術事項であったと認められる。このような課題は,施療子を人体に沿って移動させることにより一般的に生じるものであって,甲2公報〜甲4公報に開示されたマッサージ機のように施療子を背もたれ等に設けた場合に特有の課題ではない。そして,甲1発明のマッサージ機は,施療子が脚支持台ごと脚部に沿って移動する構\成を備えているが,全体としてみると椅子式マッサージ機であって,甲2公報〜甲4公報に記載された椅子式マッサージ機とは同一の技術分野に属するものであり,施療子を設けた場所は異なるとしても,施療子が身体に沿って移動するという点においては技術的に共通するものであるから,当業者が,脚部用の移動する施療子を設けた甲1発明に接した場合に,施療子の移動に関する上記の一般的な課題を認識し,これを解決するために周知の技術事項を甲1発明に適用して,スイッチ操作等の入力に応じて制御回路が(脚支持台ごと)施療子を移動させる際に,突出量を最小とする,すなわち非突出状態とすることや,突出量を適宜小さく調整することは,甲1公報自体に示唆等がなくとも,適宜なし得ることというべきである。

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平成23(行ケ)10142 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年01月31日 知的財産高等裁判所

 進歩なしとした審決が、動機づけなしとして取り消されました。
 引用発明は,セラミック製の調理容器で調理を行うときは,芋等が内部加熱され水分が蒸発するとともに風味が著しく損なわれるという従来の問題点に鑑み,フェライト材(マイクロ波を吸収して発熱し,赤外線を放射する。)とセラミック材(マイクロ波を透過する。)とが併存するように被調理物加熱層14を構成し,フェライト材におけるマイクロ波の吸収に起因した外部加熱と,セラミック材におけるマイクロ波の透過に起因した誘電加熱とを併用するものである。引用刊行物2には,調理品等の味覚が損なわない新たな解凍技術として開発された発明であること,解凍又は加熱するときにその組成の違う物資が混在しているなかでマイクロ波を直接,照射すると解凍又は加熱すべき素材は全体が均一な温度による解凍又は加熱が困難であり,解凍又は加熱後の温度むらの原因は油脂部分等にマイクロ波が集中的に吸収されるなどして,全体に均一な温度の解凍又は加熱ができないこと,そこで,磁性体シートにおけるキュリー温度相当の外部加熱のみによって素材を加熱するため,磁性体シートを透過したマイクロ波をアルミ箔等の遮断層で反射することによって,素材にマイクロ波が直接当たらないように遮断することが記載され,さらに,段落【0013】には,磁性体シートは,マイクロ波の吸収による発熱の機能\を担うのであってマイクロ波の遮断までも担うものではないこと,マイクロ波の遮断機能を担うのはアルミ箔等であることが示されている。
以上によれば,引用発明は,調理品等の味覚が損なわれるのを防止するためフェライト材とセラミック材とが併存するように被調理物加熱層14を構成し,マイクロ波の外部加熱と赤外線の誘電加熱とを併用加熱することによって,課題を解決するものであるのに対して,引用刊行物2記載の技術は,素材に対し,均一な温度による解凍又は加熱を実現するため,マイクロ波を対象物に直接照射させないようにアルミ箔などで遮断して,外部加熱のみによって素材を加熱するものである。
すなわち,引用発明は,素材を内外から加熱することに発明の特徴があるのに対して,引用刊行物2記載の技術は,マイクロ波の素材への直接照射を遮断することに発明の特徴があり,両発明は,解決課題及び解決手段において,大きく異なる。引用発明においては,外部加熱のみによって加熱を行わなければならない必然性も動機付けもないから,引用発明を出発点として,引用刊行物2記載の技術事項を適用することによって,本願発明に至ることが容易であるとする理由は存在しない。したがって,審決が,引用刊行物2記載の示唆に基づいて,引用発明の内部加熱のための被調理物加熱層14を透過するマイクロ波の一部が透過しないように被調理物加熱層14のセラミック材をなくし,フェライト粉によってマイクロ波を遮蔽するようなすことは当業者が格別の困難性を要することなくなし得たことを前提に,本願発明の相違点Aに係る構成に至ることが容易であるとした判断は,前提を欠くものであり,誤りというべきである。

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平成23(行ケ)10121 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年01月31日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、取り消されました。周知技術について、「当業者の技術常識ないし周知技術の認定,確定に当たって,特定の引用文献の具体的な記載から離れて,抽象化,一般化ないし上位概念化をすることが,当然に許容されるわけではなく」と言及されました。

 被告は,「製造工程において素材あるいは製品を分割して,個々の製品を製造する場合に,分割前の素材に,素材の機能に影響を与えない箇所に記号等を表\示しておき,製品となった後に,その記号等を利用して分割前の場所に起因する不良解析を行う」ことは,周知の技術であり,当業者が決定する設計的事項である旨を主張する。しかし,被告の主張は,失当である。当該発明が,発明の進歩性を有しないこと(すなわち,容易に発明をすることができたこと)を立証するに当たっては,公平かつ客観的な立証を担保する観点から,次のような論証が求められる。すなわち,当該発明と,これに最も近似する公知発明(主引用発明)とを対比した上,当該発明の引用発明との相違点に係る技術的構成を確定させ,次いで,主たる引用発明から出発して,これに他の公知技術(副引用発明)を組み合わせることによって,当該発明の相違点に係る技術的構\成に至ることが容易であるとの立証を尽くしたといえるか否かによって,判断をすることが実務上行われている。この場合に,主引用発明及び副引用発明の技術内容は,引用文献の記載を基礎として,客観的かつ具体的に認定・確定されるべきであって,引用文献に記載された技術内容を抽象化したり,一般化したり,上位概念化したりすることは,恣意的な判断を容れるおそれが生じるため,許されないものといえる。そのような評価は,当該発明の容易想到性の有無を判断する最終過程において,総合的な価値判断をする際に,はじめて許容される余地があるというべきである。
ところで,当業者の技術常識ないし周知技術についても,主張,立証をすることなく当然の前提とされるものではなく,裁判手続(審査,審判手続も含む。)において,証明されることにより,初めて判断の基礎とされる。他方,当業者の技術常識ないし周知技術は,必ずしも,常に特定の引用文献に記載されているわけではないため,立証に困難を伴う場合は,少なくない。しかし,当業者の技術常識ないし周知技術の主張,立証に当たっては,そのような困難な実情が存在するからといって,i)当業者の技術常識ないし周知技術の認定,確定に当たって,特定の引用文献の具体的な記載から離れて,抽象化,一般化ないし上位概念化をすることが,当然に許容されるわけではなく,また,ii)特定の公知文献に記載されている公知技術について,主張,立証を尽くすことなく,当業者の技術常識ないし周知技術であるかのように扱うことが,当然に許容されるわけではなく,さらに,iii)主引用発明に副引用発明を組み合わせることによって,当該発明の相違点に係る技術的構成に到達することが容易であるか否という上記の判断構\造を省略して,容易であるとの結論を導くことが,当然に許容されるわけではないことはいうまでもない。上記観点に照らすならば,被告の主張は,次の理由から採用することはできない。 すなわち,前記のとおり,引用発明は,その解決課題を「基板と,集積回路を形成し,該基板の1つの領域に取り付けられるチップと,該チップを該基板の1つの面に位置する外部電気接続領域に接続する電気接続手段と,封止容器と,をそれぞれに含む複数の半導体パッケージの製作の効率化」とする発明にすぎず,引用発明には,配線基板上にマトリクス状に搭載した複数の半導体チップを一括して樹脂封止した後,この配線基板を分割することによって複数の樹脂封止型半導体装置を製造する,樹脂封止型半導体装置の製造方法において,配線基板の上面に複数の半導体チップを搭載する工程を前提として,これを樹脂封止する工程に先立って,上記配線基板の下面のパッド及び配線を除く領域にアドレス情報パターンを形成するとの構成を採用することにより,上記アドレス情報パターンをカメラ,顕微鏡,目視等で認識することができ,個々の樹脂封止型半導体装置が元の配線基板のどの位置にあったかを配線基板の分割後においても容易に識別できること,依頼メーカの標準仕様(既存)の金型を使用する場合にも適用することができるため,樹脂封止型半導体装置の製造コストを低減することができることという本願発明の解決課題及びその解決手段についての開示ないし示唆は,存在しない。
したがって,被告の主張に係る「製造工程において素材あるいは製品を分割して,個々の製品を製造する場合に,分割前の素材に,素材の機能に影響を与えない箇所に記号等を表\示しておき,製品となった後に,その記号等を利用して分割前の場所に起因する不良解析を行う」との技術が,周知技術又は当業者の技術常識であるか否かにかかわらず,引用発明を起点として,周知技術を適用することによって本願発明に至ることが容易であるとはいえない。のみならず,被告の主張に係る「製造工程において素材あるいは製品を分割して,個々の製品を製造する場合に,分割前の素材に,素材の機能に影響を与えない箇所に記号等を表\示しておき,製品となった後に,その記号等を利用して分割前の場所に起因する不良解析を行う」との技術が,周知例1ないし3の具体的な記載内容を超えて,技術内容を抽象化ないし上位概念化することなく,当然に周知技術又は当業者の技術常識であると認定することもできない。さらに,周知例1ないし3には,本願発明の相違点2に係る構成を採用することによる解決課題及び解決手段に係る事項についての記載も示唆もない。そうである以上,引用発明を起点として,周知技術を適用することによって本願発明に至ることが容易であると解することはできない。\n

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平成23(行ケ)10130 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年01月16日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、論理付けが不充分として取り消されました。
 ・・・かかる原告の主張は,運搬・施工時の衝撃に対する強度の記載が一切なく,被着体保護用途が想定されない引用発明2を材料自体の性質,製造可能性の観点から検討しただけでは,引用発明1Aとの組合せの論理付けがなされていないというものと解される。そこで検討するに,審決は,「プラスチックフィルム等を用いる包装材において,新たな機能\を付与しようとすれば新たな機能を有する層を付加するのは当業者の技術常識といえ,逆に,従来複数の層により達成されていた機能\を例えば一層で達成できるならば,従来の複数の層に代えて新たな一層を採用し,製造の工程や手間やコストの削減を図ることも,当業者の技術常識といえる。すなわち,二層の機能を一層で担保できる材料があれば,二層のものを一層のものに代えることは当業者が当然に試みることである。」(28頁1行〜8行)と当業者の技術常識を認定している。しかし,積層体の発明は,各層の材質,積層順序,膜厚,層間状態等に発明の技術思想があり,個々の層の材質や膜厚自体が公知であることは,積層体の発明に進歩性がないことを意味するものとはいえず,個々の具体的積層体構造に基づく検討が不可欠であり,一般論としても,新たな機能\を付与しようとすれば新たな機能を有する層を付加すること自体は容易想到といえるとしても,従来複数の層により達成されていた機能\をより少ない数の層で達成しようとする場合,複数層がどのように積層体全体において機能を維持していたかを具体的に検討しなければ,いずれかの層を省略できるとはいえないから,二層の機能\を一層で担保できる材料があれば,二層のものを一層のものに代えることが直ちに容易想到であるとはいえない。目的の面からも,例えば材質の変更等の具体的比較を行わなければ,層の数の減少が製造の工程や手間やコストの削減を達成するかどうかも明らかではない。引用発明2は,粘着剥離を繰り返せる標識や表示として使用される自己粘着性エラストマーシート(いわばシール)に関する発明であって,被着体の運搬・施工時の衝撃から被着体を保護するための気泡シートに関する発明である引用発明1Aとは技術分野ないし用途が異なるものである。当業者は,発明が解決しようとする課題に関連する技術分野の技術を自らの知識とすることができる者であるから,気泡シートの分野における当業者は,引用発明1Aが「粘着剤層32」を有していることから「粘着剤」に関する技術も自らの知識とすることができ,「粘着剤」の材料の選択や設計変更などの通常の創作能力を発揮できるとしても,引用発明1Aを構\成しているのは「粘着剤層32」であるから,当業者は,気泡シート内でポリオレフィンフィルム31上に形成されている粘着剤層32に関する知識を獲得できると考えるのが相当であり,両者を合わせて気泡シートの構造自体を変更すること(すなわち,「ポリオレフィンフィルム31上に形成されている粘着剤層32」という二層構\造を,気泡シートの構造と粘着剤の双方を合わせ考慮して一層構\造とすること)まで,当業者の通常の創作能力の発揮ということはできないというべきである。(3) したがって,引用発明1Aにおいて,「基材としてのポリオレフィンフィルム31の片面に,粘着力が0.7〜25(N/50mm)である粘着剤層32を有」するものに代えて「一層」からなるライナーフィルムとすることは容易想到でなく,そうすると,引用発明1Aに引用発明2を適用することは容易想到であるとはいえない。

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平成23(行ケ)10080 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年11月30日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が維持されました。
 原告は,引用例1は,縦方向に構えて使用するカメラの使い勝手が良くなるように,シャッターを本願発明の蓋体部に相当する部分に設けているのに対して,引用例2に開示された複合機器では,ファインダーを備えたカメラを前提にしてカメラの使い勝手が良くなるようにシャッターの位置を決めているもので,両者は設計思想を異にするから,引用例1に対して引用例2を適用することは困難であると主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり,採用できない。すなわち,引用例1の携帯電話機は,閉じた状態で撮影する場合に,縦方向に構\える必然性はなく,どのような方向に構えても撮影可能\である。他方,引用例2の段落【0026】には,「当該複合機器をファインダー方式の電子スチルカメラとして使用する場合には,図3に示すように,LCD13aが設けられている蓋部33を閉じて右手で本体右側を把持する。言い換えると,通常のカメラを把持する状態と同じである。」と記載されており,右手で本体右側を把持して撮影することが念頭に置かれているが,横方向のみならず,縦方向に把持して,撮影することもできるといえる。以上のとおりであり,引用例1に引用例2を適用することにより,シャッターボタンを「本体部の右側面であって連結部の反対端に近い位置に配置」することが,困難であるとはいえない。

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平成23(行ケ)10022 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月24日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとした審決につき、組み合わせる動機づけが存在しないとして取り消しました。第1部です。
 引用発明1には,ウェブのアルミ箔に渦電流を流すことで,誘導加熱による熱を発生させ,この熱でポリエチレンフィルム層を溶融させてウェブを横シールすることは記載されているものの,ウェブのアルミ箔層に代えて,他の材料を使用することに関する記載や示唆を見出すことはできない。一方,審決が指摘する引用例2には,前記(3) のとおり,ポリプロピレン(A)からなるフィルム表面に,金属(B1)または金属酸化物(B2)の蒸着薄膜が形成されている金属蒸着ポリプロピレンフィルムが記載されており,この「金属蒸着ポリプロピレンフィルム」は,基材フィルムに金属の蒸着薄膜が形成された金属蒸着層であって,低温シール性及び耐ブロッキング性に優れている技術的事項が記載されてはいるものの,金属蒸着ポリプロピレンフィルムを高周波誘電加熱に用いることについては何ら記載されていない。この点に関し,審決は,「この『金属蒸着フィルム』は,基材フィルムに金属の蒸着薄膜が形成された金属蒸着層といえ,これは,従来知られていた『導電性等を付与するため』『金属・・を蒸着したプラスチックフィルム』(摘示2b)を,『低温シール性・・に優れ』(摘示2d)るようにしたもの,すなわち低温でのヒートシール性に優れるようにしたものであり,導電材料であるこの『金属蒸着フィルム』(にうず電流を流すこと)によって発生する熱である誘導加熱による熱でシールするもので,低温でのヒートシール性に優れたものといえる。」(審決10頁12行〜19行)と判断している。しかし,引用例2には,「金属蒸着フィルム」に渦電流を流すことや,誘導加熱による熱でシールすることは記載されていない。そして,引用例2に記載されている「低温シール性」とは,段落【0031】及び【0032】の記載からみて,基材フィルムのポリプロピレンをメタロセン系オレフィン重合用触媒を用いて調製したことによって,低分子領域の成分含有率が少なくなり,低分子領域成分のブリードアウトが低減されたことに基づく性質である。また,引用例2の【実施例】の記載によれば,メタロセン系オレフィン重合触媒を用いて調製した基材フィルムからの金属蒸着ポリプロピレンフィルム(実施例1,2)が,従来技術であるチーグラー系オレフィン重合用触媒を用いて調製したもの(比較例2)よりも,ヒートシール温度が低い場合の引張り試験結果が優れていることが示されていることから,引用例2に記載される「低温シール性」に優れるとは,ヒートシールする温度が従来よりも「低温」であっても「シール性」に優れることであるというべきであるから,審決の上記判断は誤りである。以上のとおり,高周波誘電加熱に用いるために,引用発明1の「アルミ箔層」に代えて,引用例2に記載された「金属蒸着層」を適用することについては,何ら動機付けが存在しないというべきである。\n

◆判決本文

◆関連出願についても同様の判断がされています。平成23(行ケ)10021

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平成23(行ケ)10056 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月28日 知的財産高等裁判所

 阻害要因ありとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 反転構造を持つ基板を製造するに際し,MgOを添加して光透過率を向上させることや,Mgを添加して,非線形光学定数及び電気光学特性を低下させずに小さな分極反転電圧を得ることは,甲3及び甲4にみられるように周知技術といえる。そして,審決は,引用発明において,本願補正発明の相違点1に係る構\成を備えることは,上記の周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと判断した。しかし,前記(ア)のとおり,引用発明は,Ta過剰で定比組成に近いLT単結晶へのMg又はMgOの添加により生じる前記問題点i)及びii)を解決すべき課題とし,Li過剰で定比組成に近いLT単結晶を用いることで,Mg又はMgOを添加せずに済むようにし,上記問題点を解決したものである。このように,引用発明が,Mg又はMgOの添加によって発生する問題点の解決を課題としていることからすれば,LT単結晶がTa過剰の組成かLi過剰の組成かにかかわらず,定比組成に近いLT単結晶にMg又はMgOを添加することは,上記課題解決の阻害要因になると解するのが自然であって,被告が主張するように,Ta過剰の組成かLi過剰の組成かによって区別して阻害要因を検討するのは不自然である。また,甲3及び甲4には,定比組成に近いLT単結晶からなる周期的分極反転構造を持つ基板を製造するに際し,Mg又はMgOを添加することが記載されているにとどまり,それにより前記問題点i),ii)が生じ得ること及びその解決方法については,記載も示唆もされていない。そうすると,引用発明において,上記の周知技術を適用し,Ta過剰で定比組成に近いLT単結晶又はLi過剰で定比組成に近いLT単結晶にMg又はMgOを添加することには,阻害要因があるといわざるを得ず,引用発明において,相違点1に係る構成とすることが,上記の周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであると認めることはできない。(ウ) なお,被告は,審決の「引用例全体の記載をみても,引用例にはMgを添加してはならない旨の記載はない。」との記載について,「引用例にはMgを添加してはならない旨の記載の事実がないことを指摘するとともに,引用発明として認定したタンタル酸リチウム単結晶全体についてMg添加が除外されているわけではないことを示した」旨主張する。しかし,前記(2)アの記載からすれば,引用例の記載に接した当業者は,Ta過剰で定比組成に近いLT単結晶へのMg又はMgOの添加により生じる問題点i)及びii)を解決するために,Li過剰で定比組成に近いLT単結晶を用いることで,Mg又はMgOを添加せずに済むことに想到するものと解するのが自然かつ合理的であるから,引用例の記載から「引用発明として認定したタンタル酸リチウム単結晶全体についてMg添加が除外されているわけではない」とする被告の主張は合理的でなく,採用することができない。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10235 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月04日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
 そうすると,本件優先日当時(平成15年8月8日),VA型(垂直配向型)液晶表示装置等に用いる重畳フィルムを作製するために,偏光フィルムの吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とが直交(偏光フィルムの透過軸と位相差フィルムの遅相軸が平行)するように両フィルムを貼\り合わせるという条件の下で,ロールtoロールの方法で両フィルムを貼り合わせるためには,引用発明のように,横方向に延伸して遅相軸が横方向に現れる位相差フィルムを作製し,他方でフィルムを縦方向に延伸し,吸収軸が縦方向に現れる偏光フィルムを作製して,両フィルムを貼\り合わせる方法を採用するか,又は縦方向に遅相軸を有する位相差フィルムをロールから切り離して,縦方向に吸収軸を有する偏光フィルムのロールと貼り合わせる方法を採用するのが当業者の一般的な技術常識であったと認められる。だとすると,本件優先日当時,縦方向に延伸して位相差フィルムを作製する方法や横方向に延伸して偏光フィルムを作製する方法が存在したとしても,これらの方法をすべて採用し,引用発明に適用して相違点を解消するには,当業者の上記の技術常識を超越して新たな発想に至る必要があるのであって,当業者にとってかかる創意工夫が容易であったかは極めて疑問である。そうすると,前記のとおり,引用文献2ないし6にはロールtoロールの方法で偏光フィルムと位相差フィルムを貼\り合わせる発明に対して各文献に記載された事項を当業者が適用する可能性及びその効果が教示されていない点を併せ考えてみると,本件優先日当時,当業者が引用発明に引用文献2ないし6に記載された事項を適用して,補正発明と引用発明の相違点1,2に係る構\成に想到することが容易であったと認めることはできない。

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平成22(行ケ)10348 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月15日 知的財産高等裁判所 

 記載不備および進歩性違反ともに、理由無しとした審決が維持されました。
 前記2(2)エに認定のとおり,引用例4に記載の上記各化合物は,いずれも鎖状のアミンにジチオカルバミン酸が結合した化合物であり,環状アミンにジチオカルバミン酸基が結合した本件化合物1及び2とは化学構造が異なる。したがって,引用例4に上記各化合物の記載があるからといって,これと化学構\造を異にする本件化合物1及び2が飛灰中の重金属を固定化できることを示唆することにはならない。また,前記2(2)アに認定のとおり,引用例1には,ジチオカルバミン酸基を有する低分子量の化合物の中から,飛灰中の重金属固定化剤として本件各化合物を想起させるに足りる記載又は示唆があるとはいえず,前記2(2)イに認定のとおり,引用例2には,そこに記載の化合物又は本件各化合物が廃棄物等の焼却により生じる飛灰を水やpH調整剤と混練するという環境下で,そこに含まれる多様な物質の中で鉛等の重金属と錯体を形成し,これを固定化するものであることについては何らの記載も示唆もない。さらに,前記2(2)ウに認定のとおり,引用例3に記載のピペラジンジチオカルバメート(I)及びピペラジンビスジチオカルバメート(II)は,それぞれ本件発明における本件化合物1及び2に相当し,引用例3は,本件化合物1及び2のようなジチオカルバミン酸基を有するキレート剤が白金属元素と錯体を形成することを明らかにしているものの,それが廃棄物等の焼却により生じる飛灰を水やpH調整剤と混練するという環境下で,そこに含まれる多様な物質の中で鉛等の重金属と錯体を形成し,これを固定化するものであることについては何らの記載も示唆もない。したがって,引用例3には,本件化合物1及び2のキレート剤が飛灰中の重金属固定化剤として利用できることについてまで記載や示唆がなく,引用発明4と引用例3の記載を組み合わせて本件発明1の相違点3に係る構成を想起させるに足りる動機付けがないというほかない。\n

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平成22(行ケ)10344 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年07月07日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとした審決が維持されました。
 原告は,本願発明と引用発明の対象がホイールローダであって,引用例2の油圧ショベルとは作業の実態が異なるので,引用発明に引用例2記載の油圧シャベルの技術を適用することは,動機付けに欠けると主張する。しかし,引用例1には,掘削作業中か否かに応じて,作業機に伝達する力を調整するため,可変容量型油圧ポンプを制御することが記載されている。そして,引用例2には,掘削作業中か否かに応じて「エンジンの出力トルクを制御する」ことが開示されており,引用例1及び引用例2が,掘削作業中か否かに応じて作業機に伝達する出力を調整するための制御である点で共通することを勘案すれば,引用発明に,引用例2記載の技術的事項を適用する動機付けが存在する。よって,当業者にとって,引用発明に,引用例2記載の技術的事項を適用することに困難性はなく,引用発明に,引用例2記載の技術的事項を適用し,「エンジンの上限出力トルクを制御する」ようにし,かつ「掘削が行われていないと判定された場合のエンジンの上限出力トルクカーブが,掘削が行われていると判定された場合におけるエンジンの上限出力トルクカーブよりも低くなるように,エンジンの上限出力トルク制御する」ようにして,相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。

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平成22(行ケ)10312 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟  平成23年04月26日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が取り消されました。
 審決は,甲第1号証の図1,7,8のマッサージ具41,42の構成に図11の突起体91,マッサージ具41,42の構\成を追加して,両構成を兼ね備えた構\成にする動機付けがない旨説示するが,上記の両構成は同一の文献に記載された実施例にすぎないのであり,両構\成をともに採用したときに支障が生じることを窺わせる記載は甲第1号証中にもないし,当業者の技術常識に照らしても,そのような支障があるものとは認められないから,両構成を兼ね備えた構\成にする動機付けに欠けるところはなく,審決の上記判断には誤りがある。そして,上記の両構成を兼ね備えた構\成を採用することによって生じる作用効果は,背中の側部と上腕の側方を同時にマッサージできるといった程度のものにすぎず,当業者が予測し得ない格別のものではないということができる。したがって,「本件発明1は,『前記胴体クッション部に設けられて給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の胴体を後方から押圧して胴体側部に圧迫刺激を与える第1空気式マッサージ器』を有しているが,甲1発明は有していない点。」との甲1発明との相違点2に係る本件発明1の構\成の容易想到性についての審決の判断には誤りがあるというべきである。

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平成22(行ケ)10277 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月26日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反なしとした審決が維持されました。
 そうすると,本件各発明と甲第1号証発明とは解決すべき技術的課題が異なり,甲第1号証にはフットレストに足裏支持ステップを設けることにつき記載も示唆もされていないとした審決の認定判断に誤りがあるとはいえない。ここで,甲第1号証の図1のマッサージ機のU 字型の部分にくるぶしより下の部位を載せ,足裏をマッサージするようにすることが構造的に可能\であるとしても,また上記マッサージ機を足裏のマッサージに用いることが甲第1号証にいうマッサージ機の取扱いの容易化という目的を積極的に阻害するものではないとしても,これらの事由により甲第1号証においてフットレストに足裏支持ステップを設けることにつき示唆があることにはならない。ウ そうすると,甲第1号証発明の椅子型マッサージ機に足裏支持ステップが設けられたフットレストを追加する構成が記載も示唆もされていない以上,本件出願日当時,当業者において相違点1に係る本件発明1の構\成に容易に想到することができなかったというべきであって,この旨をいう審決の判断に誤りがあるとはいえない。

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平成22(行ケ)10239 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月14日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 以上によれば,情報処理システムにおいて辞書を用いたデータ変換処理を行う際に,検索時間の短縮化という効果を求める引用発明には,データの変換時ではなく,変換に先立って予めデータをメモリ上に展開しておくことで処理を更に高速化することができる周知技術を組み合わせることについて十\分な動機付けがある。なお,データをメモリ上に全て展開しておけば,高速処理が可能である反面,大きなメモリ容量が必要となり,メモリ展開にも時間がかかるようになることは,技術的に自明であって,当業者は,これらの得失を当然に勘案した上で周知技術の組合せを検討するものであるといえるから,この点において,上記の動機付けが妨げられるものではない。したがって,当業者は,前記周知技術に基づき,引用発明に対して相違点2に係る構\成を適宜に組み合わせることができるものというべきであり,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

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平成22(行ケ)10273 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年03月08日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、動機づけがないとして取り消されました。
 これに対し,審決は,上記のとおり,「赤外光に対し格別に優れた透過性を有するインクを用いなくても,閾値δ2を適当な値に設定すれば,カバーフィルム4上の異物を印刷部9と区別して判定することができることは明らかである。」と述べるところ,赤外光に対し透過性を有するインクを用いない場合には,印刷部の明度が一定程度低下し,印刷部上に印刷部と同程度の明度を有する異物が存するときには,当該異物が判定できないこととなる(異物の明度が既に判明している場合には,その明度より高く,かつ,印刷部の明度より低く閾値δ2を設定すれば異物が判定できるが,そのような場合が一般的であると解することはできない。)。したがって,審決の上記説示は,引用発明1の技術課題が解決できない従来技術を示したものにすぎず,引用発明1に対して引用発明2の構成を適用することについての動機付け等を明らかにするものではない。・・・そもそも,「塗料」又は「インク」に関する公知技術は,世上数限りなく存在するのであり,その中から特定の技術思想を発明として選択し,他の発明と組み合わせて進歩性を否定するには,その組合せについての示唆ないし動機付けが明らかとされなければならないところ,審決では,当業者が,引用発明1に対してどのような技術的観点から被覆顔料を使用する引用発明2の構\成が適用できるのか,その動機付けが示されていない(当該技術が,当業者にとっての慣用技術等にすぎないような場合は,必ずしも動機付け等が示されることは要しないが,引用発明2の構成を慣用技術と認めることはできないし,被告もその主張をしていない。)。(4) この点について,被告は,引用例2の段落【0006】の記載を根拠に,色相,着色力及び分散性に優れているのが好ましいことは,インキや塗料の顔料について一般的にいえることであり,引用発明1のインクについてもあてはまることであるから,引用発明1のインクとして引用発明2の油性塗料を適用してみようという程度のことは,当業者が容易に考えつくことであると主張する。確かに,インクや塗料において,色相,着色力及び分散性に優れているのが一般的に好ましいと解されるところ,それに応じて,色相,着色力,分散性などのいずれかに優れていることをその特性として開示するインクや塗料も,多数存在すると認められるのであり,その中から,上記の一般論のみを根拠として引用発明2を選択することは,当業者が容易に想到できるものではない。

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平成22(行ケ)10202 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年02月17日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 原告は,本件補正発明と引用発明1とでは,目的,課題及び作用効果が相違しており,本件補正発明のように,Webページからメール作成画面に切り換えて表示するとともに,表示されていたWebページのURLを当該メールに貼り付け,メール送信完了後に先に表示していたWebページに表示を戻すことまでを含めた一連の制御を行うことは,引用発明1では想定し得ないと主張する。しかしながら,前記ア(イ)のとおりの引用発明2のWWWブラウザと電子メール送受信機能とを備える携帯電話は,WWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\とを実現する情報処理端末であるということができ,他方,引用発明1は,前記(1)ア(エ)のとおり,閲覧中のWebページのURL情報をメールに貼り付けて送信しようとするものであって,WWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\とを実現する情報処理端末であるコンピュータにおいて,これらの両機能を連係しようとするものである。そうすると,引用発明1におけるWWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\を実現し,これらを連係しようとするコンピュータに換えて,同じく,WWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\を実現する情報処理端末である引用発明2の携帯電話のような携帯端末を採用することの動機付けが認められるものである。そして,このような引用発明において,携帯電話のような携帯端末を採用することによって,アンテナを介して信号を送受信する無線部が備わることになる。(ウ) また,前記1(2)の記載によると,本件補正発明は,簡単な操作で閲覧中のWebページのURLをメールに貼り付けて送信することができるようにして利便性を向上しようとするものである。これに対し,前記(1)ア(ア)及び(イ)のとおり,引用発明1は,閲覧中のWebページのURLを伝えるに際し間違いやすいことから,ほとんどのメールソフトに付いているアクティブURLの機能を利用して,閲覧中のWebページのURL情報をメールで送信するに当たって,Outlook ExpressやNetscape Messengerを使えば,ブラウザから直接URL情報をメールで送信でき,これによって,閲覧中のWebページのURL情報を簡単に送信することができるというものである。(エ) そうすると,本件補正発明と引用発明1とのいずれも,閲覧中のWebページのURL情報を簡単な操作でメールに貼り付けて送信しようとするものであって,その更なる動機が,本件補正発明では,ユーザは小さなキーを何度も押し下げる必要があり,煩雑な操作をしなければならず,不便であるとの問題点があったことであり,引用発明1では,WebページのURLを伝える場合の間違いを防ぐためであったこととの点において,仮にこれらが相違するということができるとしても,上記の閲覧中のWebページのURL情報を簡単な操作でメールに貼り付けて送信したいとし,それを実現しようとするものであるという点で,目的,課題及び作用効果が一致しているものということができる。

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平成22(行ケ)10056 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年02月08日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、取り消されました。
 しかし,この審決の判断の流れは,・・・このような一般的抽象的な周知技術を根拠の一つとして,相違点に関する容易想到性判断に至ったのは,本件発明3の技術的課題と動機付け,そして引用発明との間の相違点1ないし3で表される本件発明3の構\成の特徴について触れることなく,甲第3号証等に記載された事項を過度に抽象化した事項を引用発明に適用して具体的な本件発明3の構成に想到しようとするものであって相当でない。その余の自明課題,設計事項及び周知技術にしても,甲第3号証等における抽象的技術事項に基づくものであり,同様の理由で引用発明との相違点における本件発明3の構\成に至ることを理由付ける根拠とするには不足というほかない。(4) 上記のとおり,周知技術等に基づいてする審決の判断は是認できないが,甲第3号証等が開示する技術的事項も踏まえて念のため判断するに,甲第3,21,22号証の液体インク収納容器において,記録装置と液体インク収納容器の間の接続方式につき共通バス接続方式が採用されているかは不明であって,少なくとも甲第3,21,22号証においては,共通バス接続方式を採用した場合における液体インク収納容器の誤装着の検出という本件発明3の技術的課題は開示も示唆もされていないというべきである。そして,上記技術的課題に着目してその解決手段を模索する必要がないのに,記録装置側がする色情報に係る要求に対して,わざわざ本件発明3のような光による応答を行う新たな装置(部位)を設けて対応する必要はなく,このような装置を設ける動機付けに欠けるものというべきである。そうすると,甲第3,21,22号証に記載された事項は,解決すべき技術的課題の点においても既に本件発明3と異なるものであって,共通バス接続方式を採用する引用発明に適用するという見地を考慮しても,本件発明3と引用発明との相違点,とりわけ相違点2,3に係る構成を想到する動機付けに欠けるものというべきである。\n

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◆関連する侵害訴訟控訴審はこちらです。平成22(ネ)10064

◆関連する侵害訴訟控訴審はこちらです。平成22(ネ)10063

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平成22(行ケ)10184 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年02月03日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした拒絶審決が取り消されました。
 以上のとおり,引用例1及び2には,膨張弁のパワーエレメント部と樹脂製の弁本体の固定に当たり,弁本体の外周部にインサート成形した固着部材に雄ねじを,上端部が屈曲した筒状の連結部材の内側には雌ねじを,それぞれ形成して,両者をねじ結合により螺着させるという本件補正発明の相違点2に係る構成を採用するに足りる動機付け又は示唆がない。むしろ,引用発明は,それに先行する本件先行発明の弁本体が金属製であることによる問題点を解決するためにこれを樹脂製に改め,併せてパワーエレメント部と弁本体とを螺着によって固定していた本件先行発明の有する課題を解決するため,ねじ結合による螺着という方法を積極的に排斥してかしめ固定という方法を採用したものであるから,引用発明には,弁本体を樹脂製としつつも,パワーエレメント部と弁本体の固定に当たりねじ結合による螺着という方法を採用することについて阻害事由がある。しかも,本件補正発明は,上記相違点2に係る構\成を採用することによって,パワーエレメント部の固定に強度不足という問題が発生せず,膨張弁の動作に不具合が生じるおそれもなく,またその強度不足によって生ずる水分の侵入により不都合が生じるというおそれも発生しないという作用効果(作用効果1)を発揮することで,引用発明が有する技術的課題を解決するものである。したがって,当業者は,引用発明,本件オリフィス構成,甲8技術及び周知技術に基づいたとしても,引用発明について相違点2に係る構\成を採用することを容易に想到することができなかったものというべきである。
エ 被告の主張について
以上に対して,被告は,パワーエレメント部の弁本体への固定手段としてどのような手段を用いるかは当業者が適宜選択すべきことにすぎず,螺着という方法が周知技術であり,かしめ固定に様々な問題があることも技術常識であるし,引用例1の本件先行発明に関する記載が,本件先行発明における螺着の不具合を示しているにすぎないから,螺着という方法の採用自体を妨げるものではなく,当業者が,引用発明における固定手段としてかしめ固定に代えて螺着を採用することが容易にできた旨を主張する。しかしながら,ねじ結合による螺着及びかしめ固定にそれぞれ固有の問題があることが周知ないし技術常識であるとしても,引用発明は,そのような技術常識の中で,あえて本件先行発明が採用する螺着の問題点に着目し,これを解決するためにかしめ固定を採用したものである。すなわち,前記認定のとおり,引用例1は,本件先行発明が採用している螺着という方法を積極的に排斥している以上,相違点2に係る構成について引用発明のかしめ固定に代えて同発明が排斥している螺着という方法を採用することについては阻害事由があるのであって,これに反する被告の上記主張をもって,いずれも相違点2についての容易想到性に係る前記判断が妨げられるものではない。\n

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平成22(行ケ)10075 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年01月31日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
イ この点について,審決は,前記甲18,19及び32の例から,「換気扇フィルターの使用後に金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とを分別して廃棄すること(を容易にすること)」は,周知の技術的課題であることから,当業者は,甲2に接すれば,上記の課題を解決するため,接着剤成分が溶解または膨潤するものを選択することが容易であると判断している。しかし,審決は,上記課題が周知であるとすると,なにゆえ本件発明1の引用発明(発明A)との相違点に係る構成が容易に想到できることになるのかに関する論理について,合理的な理由を示していない点において,妥当を欠く。のみならず,甲18,19及び32の記載を子細に検討してみても,本件発明1が解決課題としている「金属製フィルター枠と不織布製フィルター材とが接着剤で接着されている換気扇フィルターにおいて,通常の状態では強固に接着されているが,使用後は容易に両者を分別し得るようにして,素材毎に分別して廃棄することを可能\とすること」と同様の解決課題を示唆するものはない。すなわち,i)甲18,19及び32は,換気扇フィルターの使用後に金属製フィルター枠及びフィルター材の廃棄を容易にするものではあるものの,いずれも,金属製フィルター枠とフィルター材とが「接着剤で接着されている」ことを前提とした発明とは異なる技術を示すものである。また,ii)甲18記載のレンジフード用フィルターは,金属製フィルター枠と不織布製フィルター材が「強固に接着されている換気扇フィルター」ではなく,「金属箔を成形可能な繊維不織布に代えることにより金網フイルターへの取り付けを簡略化すると共に使用後の廃棄に際し,分別することなく全体を容易に家庭ゴミとして処分せしめることを目的とする」ものであり,本件発明1とは,解決課題及び解決手段において異なる。さらに,iii)甲19も,金属箔製の換気扇カバー枠体と金属繊維を用いたフィルターから構成され,フィルター部分と換気扇カバー枠体とを分離する必要性を解消させて,そのまま一体物として出しても問題が起き難く,ゴミとして出す場合の作業性に優れ,かつ,再資源化が容易な換気扇カバーを提供することを目的としており,本件発明1とは解決手段において異なる。すなわち,本件発明1は,フィルター枠とフィルターとの剥離を容易にしようとすることを目的とするのに対し,甲18,19は,一体物としてゴミ出しをしても問題が生じることがないようにして,作業を高めるものであって,本件発明1における,解決課題の設定及び解決手段は,全く逆であって,本件発明1の異なる構\成に想到することを容易とする技術が示唆されているものとはいえない。

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平成22(行ケ)10110 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月28日 知的財産高等裁判所 

 拒絶審決が取り消されました。
 以上のとおり,本願発明は,異常事態が発生した場合に,巻上ロープをトラクションシーブに食い込ませ,シーブとロープとの間に十分な把持力が得られるようにして,エレベータの機能\及び信頼性を保証させるものであり,異常事態が発生したときにおける,一時的な把持力の確保を図ることを解決課題とするものである。また,引用文献1記載の発明2も,本願発明と同様に,何らかの原因よって高摩擦材が欠落するような異常事態が生じた場合を想定し,その際,ワイヤロープがU字形またはV字形のトラクションシーブ溝の接触部で接触し,この部分で摩擦力を得ることによって,エレベータ積載荷重を確保させることを解決課題とする発明である。これに対して,引用文献2記載の技術は,上記のような異常事態が発生した場合における把持力の確保という解決課題を全く想定していない。そうすると,本願発明における引用文献1記載の発明2との相違点に関する構成に至るために,引用文献2記載の技術を適用することは,困難であると解すべきである。\n

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平成22(行ケ)10229 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月28日 知的財産高等裁判所

 理由不備を理由として、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 当裁判所は,審決には,理由不備の違法があるから,審決は取り消されるべきであると判断する。その理由は,以下のとおりである。審決は,刊行物1(甲1)を主引用例として刊行物1記載の発明を認定し,本願発明と当該刊行物1記載の発明とを対比して両者の一致点並びに相違点1及び2を認定しているのであるから,甲2及び甲3記載の周知技術を用いて(併せて甲4及び甲5記載の周知の課題を参酌して),本願発明の上記相違点1及び2に係る構成に想到することが容易であるとの判断をしようとするのであれば,刊行物1記載の発明に,上記周知技術を適用して(併せて周知の課題を参酌して),本願発明の前記相違点1及び2に係る構\成に想到することが容易であったか否かを検討することによって,結論を導くことが必要である。しかし,審決は,相違点1及び2についての検討において,逆に,刊行物1記載の発明を,甲2及び甲3記載の周知技術に適用し,本願発明の相違点に係る構成に想到することが容易であるとの論理づけを示している(審決書3頁28行〜5頁12行)。すなわち,審決は,「刊行物1記載の発明を上記周知のピンポイントゲート又はトンネルゲートを有する金型に適用し,本願発明の上記相違点1に係る構\成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たものである。」(審決書4頁19行〜21行)としたほか,「上記相違点1において検討したとおり,刊行物1記載の発明をピンポイントゲート又はトンネルゲートを有する金型に適用することが容易に想到し得るものである以上,本願発明の上記相違点2に係る構成は,実質的な相違点ではない。」(審決書4頁26行〜29行),「本願発明は刊行物1記載の発明を従来周知の事項に適用しただけの構\\成であることは,上記で検討したとおりである。」(審決書5頁5行〜7行),「刊行物1記載の発明を従来周知の事項に適用することの動機づけとなる従来周知の技術的課題(ウエルドラインやジェッティング等の外観不良の解消)があり,その適用にあたり阻害要因となる格別の技術的困難性があるとも認められない。」(審決書5頁8行〜11行)などと判断しており,刊行物1記載の発明を,従来周知の事項に適用することによって,本願発明の相違点に係る構成に想到することが容易であるとの説明をしていると理解される。そうすると,審決は,刊行物1記載の発明の内容を確定し,本願発明と刊行物1記載の発明の相違点を認定したところまでは説明をしているものの,同相違点に係る本願発明の構\成が,当業者において容易に想到し得るか否かについては,何らの説明もしていないことになり,審決書において理由を記載すべきことを定めた特許法157条2項4号に反することになり,したがって,この点において,理由不備の違法がある。

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平成19(行ケ)10059 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月22日 知的財産高等裁判所

 周知技術との組み合わせについて動機づけ無しとした審決が維持されました。
 引用発明3の前記内容によれば,同発明は,常時は親機からの制御信号を各端末に順次ポーリング動作により送出するが,必要な場合に割込許可信号としての伝送信号を送出することで,特定の端末から割込監視信号を返信させるようにしたものである。そして,引用例3にも,親機と端末との間の通信制御をCPU又はステートマシーンのいずれで行っているかについての明確な記載はないものの,単なるポーリング動作に終始せず,上記のように親機からの割込許可信号の伝送を可能にするという特徴を有している以上,サイクリック交信と個別交信を適宜組み合わせている引用発明1と同様に,CPUによる通信制御を念頭に置いているものと見る余地が十\分にある。したがって,引用例3には,制御手段の制御について,「プログラムによる通信制御に基づかないで,回路の駆動で制御する」(本件構成1)というステートマシーンにより通信制御を行うことについて示唆ないし動機付けがあるとまでは認め難い。・・以上のとおり,ステートマシーンによる通信制御それ自体が,本件特許出願当時,当業者に周知の技術であったとしても,引用例1ないし3には,引用発明1の通信制御手段として本件構\成1を採用することについて,いずれも示唆ないし動機付けがあるとはいえない。

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平成22(行ケ)10104 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年11月10日 知的財産高等裁判所

 阻害要因ありとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 引用発明1と引用発明2とその技術分野をみてみると,引用例1には,金属イオン封鎖剤組成物をその金属イオン封鎖組成物が硬表面に付着した汚れ自体に作用して洗浄する旨の記載はないのに対し,引用発明2は,アルカリと錯体形成剤とを硬表\面の洗浄のための有効成分として用いるものであるとの違いがあるが,上記(3)のとおり,金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤組成物を硬表面の洗浄のための有効成分として用いることは周知技術であるということができるものであるから,引用発明1も,洗浄作用という技術分野に係る発明であって,引用発明2と技術分野を同じくするものということができる。
ウ しかしながら,引用発明2は,グリコール酸ナトリウムを組成物とする金属イオン封鎖剤組成物の発明ではなく,また,引用発明1も,その発明に係る金属イオン封鎖剤組成物には,グリコール酸ナトリウムが含まれているとはいえ,前記(1)ウのとおり,当該金属イオン封鎖剤組成物にとって,グリコール酸ナトリウムは必須の組成物ではなく,かえって,その必要がない組成物にすぎないのである。そうすると,一般的に,金属イオン封鎖剤を含む洗浄剤組成物を硬表面の洗浄のための有効成分として用いることとし,その際に引用発明1に引用発明2を組み合わせて引用発明1の金属イオン封鎖剤に水酸化ナトリウムを加えることまでは当業者にとって容易に想到し得るとしても,引用発明1の金属イオン封鎖剤組成物にとって必須の組成物でないとされるグリコール酸ナトリウムを含んだまま,これに水酸化ナトリウムを加えるのは,引用例1にグリコール酸ナトリウムを生成する反応式(2)の反応が起こらないようにする必要があると記載されているのであるから,阻害要因があるといわざるを得ず,その阻害要因が解消されない限り,そもそも引用発明1に引用発明2を組み合わせる動機付けもないというべきであって,その組合せが当業者にとって容易想到であったということはできない。

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平成22(行ケ)10024 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月28日 知的財産高等裁判所 

 新規事項でないとした審決の判断は維持されましたが、進歩性ありとした判断は取り消されました。
 前記(4),(5)によれば,本件基準明細書又は図面に記載された発明は,回路基板改造による不正行為の防止を課題とし,上記不正行為を効果的に防止して不正行為を受けにくくする遊技機を提供することを目的としており(前記段落【0006】【0007】),遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とする信号伝達方向規制手段を表\示制御基板に設けるとともに,表示制御基板への信号の出力のみを可能\とする信号伝達方向規制手段を遊技制御基板に搭載する構成とし(図16),更に信号伝達方向規制手段をバッファIC回路で構\成していることが認められる(前記段落【0060】)。これにより,本件基準明細書又は図面に記載された発明は,表示制御基板側から遊技制御基板側に信号が伝わることなく,確実に信号の不可逆性を達成することができるようにしており,表\示制御基板改造による不正行為を効果的に防止するものである(前記段落【0094】【0095】【0096】)。そうすると,本件基準明細書又は図面のすべての記載を総合すると,本件基準明細書又は図面に記載された遊技機は,当業者において,不正行為を防止するため,遊技制御基板から表示制御基板への信号の伝達のみを可能\とし,表示制御基板側から遊技制御基板側に信号が伝わる余地がないよう,確実に信号の不可逆性を達成することができるように構\成していること,すなわち,信号の不可逆性に例外を設けないとの技術的事項が記載されていると認定するのが合理的である。そうすると同技術的事項との関係において,「遊技制御基板と表示制御基板との間のすべての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記表\示制御基板への一方向に規制する」ことは,新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。これに対し,原告は,甲3記載の発明について,メイン制御部からサブ制御部へのすべての信号を規制の対象としていないと解釈するならば,本件基準明細書についても同様に解釈するべきであり,本件訂正は,新たな技術的事項を導入するものに当たると主張する。しかし,前記のとおり,訂正の適否の判断において,「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内」であるか否かは,当業者において,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべてを総合することによって,認識できる技術的事項との関係で,新たな技術的事項を導入するものであるか否かを基準に判断すべきものであり,他の公知文献等の解釈により判断が左右されるものではないから,上記原告の主張は採用することができない。したがって,遊技制御基板と表示制御基板との間の「信号」を「全ての信号」と限定する本件訂正は,「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内」においてするものということができるので,審決が本件訂正を認めた点に違法はない。
・・・ 以上によれば,審決が認定する技術事項Cが前記段落【0071】の記載に基づくものであるとしても,同段落の記載は,甲9の他の部分の記載や甲9記載の発明が解決しようとする課題及びその解決手段と整合しないか,又は,技術的に解決不可能な内容を含むものであって,誤った記載と解される。したがって,前記段落【0071】の記載のみから,甲9には技術事項Cが実質的に開示されていると認めることはできない。審決が,技術事項Cを根拠に,甲9において,「遊技制御基板199」から「払出制御回路基板152」へ伝達される信号は賞球個数信号D0〜D3がすべてであるとは認定できないと判断したことは誤りである。
・・・ 前記(2)のとおり,甲3には,サブ制御部6からメイン制御部1へのデータ信号入力を禁止し,サブ制御部6からメイン制御部1への不正信号の入力を防止するため,メイン制御部1とサブ制御部6との間のすべての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記表示制御基板への一方向に規制するための信号伝達方向規制手段を設けることが実質的に記載されているものと認められる。そうすると,本件訂正発明1と甲3記載の発明との相違点は,本件訂正発明1は表\示制御基板内及び遊技制御基板内の各々に信号伝達方向規制手段が実装されているのに対し,甲3記載の発明は,メイン制御部1(「遊技制御基板」に相当)及びサブ制御部6(「表示制御基板」に相当)の各々に信号伝達方向規制手段が実装されていないこととなる。また,前記(3)のとおり,甲9には,遊技機に関し,メイン制御部からサブ制御部への一方向通信とした構\成を採用することにより,サブ制御部からメイン制御部へ入力される情報の入力部を利用した不正なデータの入力による不正改造等を防止することが記載されており,その具体的手段として,信号の伝達方向を遊技制御基板(メイン基板)からサブ基板への一方向に規制するために,前記遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とし,前記遊技制御基板への信号の出力を不能\とする信号伝達方向規制手段である信号回路209を遊技制御基板199(メイン基板)に設けるとともに,信号の伝達方向を前記遊技制御基板(メイン基板)からサブ基板への一方向に規制するために,前記サブ基板への信号の出力のみを可能とし,前記サブ基板からの信号の入力を不能\とする信号伝達方向規制手段である信号回路217を払出制御回路基板152(サブ基板)に設けることが開示されていると認められる。さらに,甲9に記載された技術事項は,甲3記載の発明と同様に遊技機に関する技術分野において,不正信号の入力を防止するという目的を達成するためのものであり,甲3記載の発明においては1つであった一方向データ転送手段を,甲9のように入力側基板と出力側基板のそれぞれに設けることにより,より高い効果が期待できることは当然のことであるから,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用することは,当業者において容易であるといえる。なお,前記(3)のとおり,審決が技術事項Cとして認定した事項は,甲9記載の技術的思想に基づく適切な開示事項とは認められず,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用する際の阻害要因とはならない。したがって,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用することにより,本件訂正発明1の構成(ε)及び構\成(ζ)を得ることは当業者が容易に想到し得ることといえる。以上によれば,本件訂正発明1は,甲3に記載された発明に甲9記載の技術事項及び周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到することができるものであるから,本件訂正発明1の進歩性を肯定した審決の判断は誤りであり,取消事由2は理由がある

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平成21(行ケ)10330 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月12日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、周知技術を組み合わせる動機づけがないとして取り消されました。
 以上のとおり,周知技術として提示された乙3,4においては,いずれも医療用具が何らかの化学物質でコーティングされており,コーティングの際,所望の厚みないし付着量の均一なコーティングを行うために粘度や溶解性(濃度)が考慮されるとしても,同化学物質が医療用具に付着し続けることが念頭に置かれているものである。以上を前提とした場合,上記周知技術の認識を有する当業者が,コーティングした物質を剥離させるという,周知技術とは異なる技術的思想を開示する引用例2(甲2)において,そこに記載も示唆もない,部材上の複数の角質層−穿刺微細突出物に,物質の水溶液が乾燥後治療に有効な量となり,有効な塗布厚みとなって付着するようにするとの観点に着目することが容易であったとはいえない。・・・
 このほか,被告は,本願補正発明は(水溶液の)粘度の上限のみ限定され,下限は限定されておらず,粘度が例えば水そのものの粘度とほぼ同じように低い水溶液も含まれるものであり,粘性は大きくなければならない旨の原告の主張と矛盾する旨主張する。しかし,特許請求の範囲において発明を特定する際,必ずしも,所望の効果を発揮するために必要な条件をすべて特定しなければならないわけではなく,発明を構成する特徴的な条件のみ特定すれば足りることが通常であって,発明の内容と技術常識に基づき当業者が適宜設定できる条件まで,逐一,発明特定事項とすることが求められるわけではない。そして,本願補正発明においては,薬理学的活性物質の水溶液の粘度が約500センチポアズ(cp)未満であれば所望の効果を発揮できるとされている。他方で,岩波理化学辞典第5版(株式会社岩波書店発行,甲13)によれば,1p(ポアズ)は10 Pa・s(パスカル・秒)であるとこ−1ろ,20℃での水の粘性率は約1.00×10 Pa・sとされており, これはすなわち約0.01p=1cpである。そうすると,本願補正発明においては,約1〜500cpの範囲内で,所望する効果に応じて粘度を適宜設定すれば足りるものであって,「薬理学的活性物質の水溶液の粘度が低い値の場合には,薬理学的活性物質の水溶液はおよそ所望のようには微細突出物上に付着できないものであり,そのような値を含む本願補正発明の数値範囲の限定には格別の意義を見出せない」旨の被告の主張は理由がない。

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平成21(行ケ)10376 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年08月04日 知的財産高等裁判所

   進歩性なしとの審決が、動機づけがないとして取り消されました。
 先に指摘したとおり,本願発明の出願前において,照射野ランプが点滅することなどにより,X線撮影装置の作動状態を視覚上明らかにする技術は周知であった。しかしながら,本願発明及び引用発明は,X線撮影装置の作動状態ではなく,「撮影準備完了状態」を視覚的に認識することをその課題とするものであるところ,周知例1及び乙1文献により開示された周知技術は,いずれも照射野ランプの点灯状態の変化により,X線撮影装置の作動状態を視覚上明らかにするにとどまるものであって,照射野ランプによって「撮影準備完了状態」を視覚的に認識させることに関する技術は何ら開示されていない。周知例2についても,同様である。
イ 組合せの動機付けの有無について
引用発明は,操作者は,X線撮影時において,X線被曝を防ぐため,できるだけX線装置から離れた位置で撮影しようとすることを前提として,被検者に不安を与えることなく,操作者に撮影準備完了状態を視覚的に容易に認識させるために,操作者が頭を少し上向きにするだけで容易に視野に入る,操作者からよく見える場所である,天井などの装置の「上方」にレーザー光を当てるものである。そのような引用発明において,X線装置の上方で,かつ,装置から離れている操作者からもよく見える場所として例示されている天井(平面)のほかに,撮影準備完了状態を視認させるレーザー光を当てる場所として,天井とは異なって,装置の上方ではなく,また,平面でもない「被検者の撮影部位」を選択することは,人体にレーザー光線を当てることによって,少なくとも「被検者に不安を与えること」が当然予想されることも併せ考慮すると,当業者にとって想到すること自体が困難であるということができる。しかも,当業者にとって「被検者の撮影部位」を選択することが容易想到であり,さらに,レーザー光照射部をX線装置の適宜の位置に設けることについても当業者にとって容易想到であるとしても,照射野ランプとレーザー光照射部とがX線撮影装置に併設されるというにとどまり,それ以上に,X線照射野を照準し確認するための照射野ランプに撮影準備完了状態を知らせる機能\を併せ持たせることによって,撮影準備完了状態を知らせるレーザー光を照射するためのレーザー光照射部を不要とすることについては,引用例は,そもそも照射野ランプの構成自体を有さない以上,何らの示唆を有するものではない。さらに,既に指摘したとおり,照射野ランプについても,これに撮影準備完了状態を知らせる機能\を併せ持たせる構成は,本願発明の出願前においては,周知ではなかったのであるから,引用発明において,撮影準備完了状態を知らせるレーザー光に代えて,照射野ランプに撮影準備完了状態を知らせる光の光源としての機能\を付加する動機付けを見いだすこともできない。

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平成21(行ケ)10329 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年07月28日 知的財産高等裁判所 

 進歩性違反なしとした審決が取り消されました。
 審決が,引用発明1では,「運転の条件は,被混煉材の種類や温度上昇の制限に合わせて予め設定」されているため,「溶剤等の温度上昇」は運転の条件の設定により制限されて問題とされるものではなく,引用発明1において,他の手法により,「溶剤等の温度上昇」をさらに制御しようとする動機付けは見い出せないと認定した(23頁19行〜36行)ことについて,このような動機付けが存在しないという審決の認定は,当業者による通常の創作能\力を誤解したものであって誤りであると主張する。そこで,検討するに,引用発明1は,前記3(2)認定のとおり,真空状態にある混煉容器を自転・公転させて被混煉材を混煉脱泡する際に,当該容器の温度上昇を制限する必要があるという技術課題を明示しており,これを解決するために,容器の自転数,公転数を含む運転条件を予め設定したものと認められる。また,引用発明2も,前記4(2)認定のとおり,同様に,攪拌混合する対象物の温度上昇を押さえるという技術課題を有しており,これを解決するために,ホッパーの上面に設けた温度センサーにより対象物の温度を検知し,温度が一定の温度まで上昇すると,攪拌する部材の回転数を減少させて温度を低下させ,以後,検知した温度に応じて回転数を制御し,攪拌する部材の回転数の減少,増加を順次繰返すものであると認められる。さらに,本件周知例にも,攪拌により一定以上に温度が上昇するのを防ぐという技術課題と,これを解決するために,検出された温度に応じて攪拌翼の回転数を制御するという技術事項が開示されている。そうすると,引用発明1及び2と本件周知例は,いずれも攪拌により生じる温度上昇を一定温度に止めるという共通の技術課題を有し,それぞれその課題を解決する手段を提供するものであると認められる。したがって,引用発明1において,上記技術課題を解決するために採用した,混煉のための自転数,公転数を含む運転条件を温度上昇の制限などの条件に合わせて予め設定しておくという構\成に代えて,共通する技術課題を有する引用発明2に開示された,温度センサーにより対象物の温度を検知して温度が一定の温度まで上昇すると,攪拌する部材の回転数を制御するという技術思想を採用し,対象物の温度を検知して検知した温度に応じて容器の自転数,公転数を含む運転条件を制御するという構成(審決認定の[特定事項B]の構成)に至ることは,攪拌により一定以上に温度が上昇するのを防ぐという技術課題自体が本件周知例にも示される周知の技術課題であることも考慮すると,当業者にとって,容易に想到することができたものといわなければならない。審決認定のとおり引用例1に「温度の検知」の記載がないとしても,攪拌により生じる温度上昇を一定温度に止めるという技術課題が引用例1自体に開示されており,これが周知の技術課題でもある以上,当該課題解決の観点から,温度を検知してそれに応じて運転条件を制御するという構成を採用することに,格別の困難性はないものということができる。
・・・確かに,引用発明1において,混煉容器を自転・公転させて被混煉材を混煉脱泡する際に,当該容器の温度上昇を制限する必要があるという技術課題が開示されていることは,前記3(2)認定のとおりである。また,引用例1に「温度の検知」の記載がないとしても,攪拌により生じる温度上昇を一定温度に止めるという技術課題が引用例1自体に開示されており,周知の技術課題でもある以上,当該課題解決の観点から,他の解決手段を採用することに格別の困難性がないことも,前記(2)認定のとおりである。そうすると,引用発明1において,同発明と同様の技術課題を有する引用発明2に開示された,ホッパーの上面に設けた温度センサーにより対象物の温度を検知し,温度が一定の温度まで上昇すると攪拌する部材の回転数を制御するという技術思想を採用することは,当業者にとって,容易に想到することができたものといわなければならない。したがって,引用発明1において,引用例2に記載される技術思想を適用する動機付けは,周知技術を加味しても見い出せないとした審決の判断(32頁24行〜25行)は誤りであり,この点に関する原告主張の取消事由3には理由がある。

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平成21(行ケ)10324 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年06月29日 知的財産高等裁判所

 進歩性について争われましたが、示唆もないし阻害要因ありとして、無効理由無しとした審決が維持されました。
 甲2,甲11ないし甲14は,ポッティング後に放熱板を取り外すことや故障した部品を交換することについては,何ら記載されておらず,後記のとおり,甲18,19を考慮したとしても,ポッティング材に埋設されたプリント基板の部品を交換する技術が周知であるとはいえない。したがって,甲1,甲2,甲11ないし甲14には,部品交換を目的とした放熱器の着脱を行う甲1発明に甲2発明を適用することについての示唆はない。
イ 阻害要因
(ア) また,前記(2)イのとおり,甲1発明における作用効果の一つである,部品交換を目的として半導体素子の放熱器の着脱容易な取付けを満足できるようにすることは,プリント基板1の下側より穴6にネジ回しを差し込んで,半導体素子2と放熱器3を固定するネジ4を回して半導体素子2から放熱器3を外すことが可能な状態にあることを前提とするものであるところ,ポッティングが周知の技術であるとしても,プリント基板をポッティング材により覆う場合は,ネジ回しをプリント基板1の下側より穴6に差し込んでネジ4を外すことも,プリント基板に取付けられた部品を交換することも,ポッティングを施さない場合に比べて困難である。したがって,ポッティングを施すことは,甲1発明の作用効果の前提とは相容れない。仮に,甲1発明に甲2発明を適用するならば,甲1発明のプリント基板をケース内に収納し,プリント基板及び電子部品のリードを覆いかつ放熱器の一部を埋設状態とするようにケース内にポッティング材を充填することとなる。そうすると,放熱器の直下にある部品が故障して交換しなければならないような場合,放熱器を固定しているネジを回そうとしても,ケース及びその中に充填されたポッティング材があるため,そのままでは,プリント基板の下側より穴にネジ回しを差し込んでネジを回すことにより放熱器の着脱をすることはできない。プリント基板の下側より穴にネジ回しを差し込んでネジを回すことにより放熱器の着脱をするのであれば,ケースを破壊するなどし,ポッティング材を除去することが必要不可欠となる。しかし,そのような方法では,プリント基板の下側より穴にネジ回しを差し込んでネジを回すことにより放熱器の着脱をすることができるように放熱器を取り付けたことにならず,放熱器の着脱容易な取付けという甲1発明の課題,作用効果は達成されないこととなる。放熱器の着脱容易な取付けという甲1発明の課題,作用効果を達成するのであれば,単にプリント基板の下側より穴にネジ回しを差し込んでネジを回すことにより放熱器の着脱をすることができるように放熱器を取り付けなければならないから,そのような甲1発明の課題,作用効果は,甲1発明に甲2発明を適用し,甲1発明のプリント基板をケース内に収納してケース内にポッティング材を充填することの阻害要因になるものと認められる。\n

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平成21(行ケ)10287 審決取消請求事件 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反について無効理由無しとした審決が維持されました。
 したがって,甲1記載の第1実施例において,本件発明の最終到達水位,及び水の撹拌を行う際の水位に該当するのは,いずれも高水位であり,給水を停止し撹拌を始める時の水位は,最終到達水位に等しく,そうすると,甲1の第1実施例には,給水を中断し撹拌を始める時の水位が最終到達水位である発明が記載されており,最終到達水位より低い水位において給水を停止して撹拌を始める発明は記載されていない。(ウ) もっとも,甲1の第1実施例の槽洗浄コースにおいては,高水位まで給水(ステップa1)して1巡目の洗浄を行った後,再び高水位までの給水(ステップa1)をするから,1巡目の洗浄において水が撹拌される間に外槽2から水が溢れ出て,1巡目の洗浄の後には,外槽2及び内槽3内の水位が高水位よりも低下していることが推認される。しかし,前記アのとおり,本件発明において,水を撹拌する際の水位は,給水を停止し撹拌を始める時の水位を指すものと認められるから,水の撹拌中及び撹拌後に水位が低下したとしても,そのことから直ちに,本件発明にいう,水を撹拌する際の水位(すなわち,水の撹拌を始める時の水位)も低下するとの帰結が導かれるわけではない。そして,甲1の第1実施例の1巡目及び2巡目の洗浄は,いずれも給水(ステップa1)によって高水位まで給水されて撹拌が開始されるから,本件発明にいう,水を撹拌する際の水位(すなわち,水の撹拌を始める時の水位)はいずれも高水位であり,1巡目の洗浄による撹拌中又は撹拌後の水位が低下していたとしても,そのことによって,本件発明にいう,水を撹拌する際の水位(すなわち,水の撹拌を始める時の水位)が低下するとはいえない。(エ) さらに,本件発明に示された,最終到達水位よりも低い水位で給水を停止して水を撹拌するという技術思想は,撹拌された水の波の機械力による洗浄作用を利用するとの技術的知見に基づくものであるが,甲1には,このような技術的知見について,何らの記載も示唆もない。

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平成21(行ケ)10361 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとの審決について、技術思想が異なるとして取り消されました。
 以上を総合すると,引用刊行物Cからは,耐油汚れの評価に当たって,時間,労力,価格を抑え,手順を簡略化しようとする本願発明の解決課題についての示唆はない。引用刊行物C記載の発明における,「乾燥工程を経由しない滴下」という操作は,本願発明における同様の操作と,その目的や意義を異にするものであっって,引用刊行物C記載の発明は,本願発明と解決課題及び技術思想を異にする発明である。前記のとおり,引用刊行物A記載の発明は,擬似油汚れについて特定量を滴下し,乾燥工程を設けないとする相違点(い)に係る構成を欠くものである。同発明は,本願発明における時間,労力,価格を抑えることを目的として,手順を簡略化しようとする解決課題を有していない点で,異なる技術思想の下で実施された評価試験に係る技術であるということができる。このように,本願発明における解決課題とは異なる技術思想に基づく引用刊行物A記載の発明を起点として,同様に,本願発明における解決課題とは異なる技術思想に基づき実施された評価試験に係る技術である引用刊行物C記載の発明の構\成を適用することによって,本願発明に到達することはないというべきである。本願発明は,決して複雑なものではなく,むしろ平易な構成からなる。したがって,耐油汚れに対する安価な評価方法を得ようという目的(解決課題)を設定した場合,その解決手段として本願発明の構\成を採用することは,一見すると容易であると考える余地が生じる。本願発明のような平易な構成からなる発明では,判断をする者によって,評価が分かれる可能\性が高いといえる。このような論点について結論を導く場合には,主観や直感に基づいた判断を回避し,予測可能\性を高めることが,特に,要請される。その手法としては,従来実施されているような手法,すなわち,当該発明と出願前公知の文献に記載された発明等とを対比し,公知発明と相違する本願発明の構成が,当該発明の課題解決及び解決方法の技術的観点から,どのような意義を有するかを分析検討し,他の出願前公知文献に記載された技術を補うことによって,相違する本願発明の構\成を得て,本願発明に到達することができるための論理プロセスを的確に行うことが要請されるのであって,そのような判断過程に基づいた説明が尽くせない限り,特許法29条2項の要件を充足したとの結論を導くことは許されない。

◆判決本文

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平成21(ネ)10028 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年04月28日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとして104条の3により請求棄却とした原審が取り消されました。
 以上によると,甲11技術は,・・・という点で共通するものということができるが,柱の垂直度の調整方法については,・・・,本件発明と異なり,柱の垂直度の調整は,柱を垂直状態に吊り下げた状態において行われるものと判断される。また,甲11技術においては,建柱作業の終了後も,ボルト体はベースの下面四方部に残されるものであるのに対して,本件発明の建て直し装置は,建入れ直し装置のナットの上方にベースプレートの縁部を配置するものであって,作業終了後には装置を撤去するものである。また,甲12技術には,鉄骨柱の建入れ直しにおいて,鉄骨柱を鉛直に姿勢制御すること,鉄骨柱を鉛直に姿勢制御するに当たって,歪直し用のワイヤを不要とすることという技術課題が開示されており,この課題の解決手段として,鉄骨柱の建入れ直しにおいて,鉄骨柱の歪みを直すためにジャッキ装置が鉄骨柱の重量を積極的に引き受けようとするものであって,本件発明のように,鉄骨柱の重量の大半をテツダンゴが引き受け,ボルトの軸線方向に移動可能であるナットについては,てこの原理によって,鉄骨柱の重量に対して比較的小さな力を加えることによって,ベースプレートの縁部を持ち上げてベースプレートが水平になるように微調整をすることができるものであって,鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるものではないものとは,その機能\\において異なるところがあり,甲12技術と本件発明とでは,それぞれのジャッキ又は建て直し装置に求められる対象物を支えるために適した大きさや強度についての構造等に違いが生ずるものである。そうであるから,上(ア)記 のとおり,本件発明とは技術分野や課題が異なり,本件発明とは異なって対象物の重量を積極的に引き受けるホイスト(ジャッキ装置)についての乙1発明に,鉄骨柱の建入れ直し方法として鉄骨柱の垂直度の調整方法や作業終了後の建入れ直し装置の取扱が本件発明とは異なっている甲11技術や,鉄骨柱の鉛直への姿勢制御において,ボルトの軸線方向に移動可能なナットの機能\\について鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるものではない本件発明とは異なって,鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるジャッキによる甲12技術を適用して,相違点1を克服することが容易想到であるということはできないというべきである。

◆判決本文

◆原審・平成21年03月05日東京地裁判H20年(ワ)第19469号事件

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平成21(行ケ)10273 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月27日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が維持されました。
 原告は,引用発明は,鑞材塗布と鑞付けによる接合が必須の要件であるから,このことは,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略することに対し,阻害事由となると主張する。しかし,前記1 イ のとおり,甲1の特許請求の範囲の請求項2と実施例には,嵌合されて接合されたヒートシンクが記載されているものの,甲1の記載により,嵌合された後で接合される前の状態は明確に認めることができる。そして,甲2の【0009】の記載によれば,鑞付け等による接合の有無は,コストと熱抵抗との関係で決められる設計的事項にすぎないものと認められるから,引用発明は,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略することに対し,阻害事由とはならないものと認められ,原告の上記主張は,採用することができない。・・・以上によれば,審決が,甲2に,「ヒートパイプを使ったヒートシンクについて,フィンにバーリング加工等によって孔を設け,その孔にヒートパイプを差し込む形態が実用的であることに加え,コスト面で許されれば,熱抵抗を小さくするため,鑞接合する」旨が記載されていることから,「引用発明において,コスト面を考慮して,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略すること,すなわち相違点1を解消することは,甲1,2の記載から当業者が容易に想到することができた」と判断した点に誤りはないものと認められる。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10301 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月26日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が維持しされました。
 「上記のとおり,引用発明1は,切断部20に断続部22を設けることにより,切断部20を形成した後,粘着テープ2の巻心1への巻き付け完了までの間,テープ2が取り扱い易くなることを企図したことが認められるから,同様に巻き取り時の破断防止を効果とする引用発明2を適用することの動機付けが認められる。そうすると,引用発明1に引用発明2を適用し,当該断続部22を高速巻き取り時に破断しない程度の大きさに設定することは,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)にとって格別困難ではなく,容易に想到し得たことというべきである。ところで,次層表面の接着剤による最表\層裏面に作用する付着力や,切り目を入れない部分で上流側の粘着テープと連続していることによる巻き込む力といった,粘着テープの最表層を粘着テープ側が保持しようとする力に対し,最表\層表面の接着剤による清掃面に付着しようとする力が大きい場合には,粘着テープの最表\層が清掃面に付着することは引用発明1の切断部20の構造に照らすと技術的に明らかであり,こうした清掃面への付着に係る機序は当業者であれば容易に理解できるものである。こうした機序を理解した当業者にとって,引用発明1に引用発明2を適用し,当該断続部22を高速巻き取り時に破断しない程度の大きさに設定する場合に,その限度において断続部22が破断しにくくなるため,使用時の巻き込む力がより期待できることも容易に理解できる。そして,引用発明1は,「シート面等の粉塵等を粘着除去する」(甲20,段落【0001】)とあるようにフローリング等への使用を想定しているといえるところ,粘着式ローラーを床面等の清掃に利用する場合に床等に粘着テープが付着してしまうこと,その原因は床等が平滑・平坦であることにより粘着力が大きくなることであることは当該技術分野において周知の技術的事項であることを踏まえれば,さらに進めて,粘着テープの粘着力とフローリング等の平滑度に基づく付着力を勘案して,断続部22を粘着テープの一部がフローリング等へ剥離付着しないように設定した大きさとすることも,上記の機序を理解した当業者にとっては容易に想到できた事項と考えられる。さらに,前記のとおり,引用発明1は,ローラーの軸方向に対し傾斜した切り目を設けた上,切り目を入れない部分をその上流側の端部に有するものであるので,こうした引用発明1に粘着テープの粘着力とフローリング等の平滑度に基づく付着力を勘案して,断続部22を粘着テープの一部がフローリング等へ剥離付着しないように設定した大きさとすることにより,本願発明と同様,フローリング等への付着を防止する効果が期待できることは,当業者が十\分に予測できるものと認められる。よって,本願発明の相違点bに係る構\成は,引用発明1,引用発明2及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものと解するのが相当である。」

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平成21(行ケ)10111 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月20日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとした無効審決が維持されました。争点は、動機づけがあるか否かです。
 原告は,甲2発明は内槽と外槽の二重槽のタンクを効率よく解体する場合の課題,及び解体工事中のタンクの横振れや移動に伴う事故の解消を課題としているのに対し,甲1発明はそのような課題を考慮しておらず,両発明の課題は異なっており,甲2発明に甲1発明を適用する動機付けはないと主張する。しかし,前記1(2)の〔従来の技術〕欄記載のとおり,甲2には「原油タンクなどの鋼板製のタンクの解体工法としては,従来タンクの上部から順に解体する工法と,下部より解体する工法とがある。上部から解体する工法では,高所作業となるため足場の架設や安全確保に対する配慮が必要で,それに伴って解体費用が増加するという難点がある。……これを避けるため下部解体工法が開発され,その代表的工法としてジヤツキダウン工法がある」との記載がある。また,前記1(3)の<従来の技術>及び<発明が解決しようとする課題>欄記載のとおり,甲1には「従来,建造物の解体作業は,低層建造物から高層建造物に至るまで悉く,屋上等の最上部から聞始され,地下基礎部等の最下部にて終了されていた。……本発明は,以上の諸点に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,作業が容易で,工数,工期も短く,しかも周辺への飛散物や,高層階からの落下物のない建造物の新規な解体工法を提案するにある。」との記載がある。そして,前記1(1)イ,ウのとおり,本件特許発明は,ビルを上部からではなく下部から解体する工法に関する発明で,「周囲に与える危害を最小にして,能率よく安全に,さらに経済的に解体できるビルの解体工法を提供する」ことを目的とするものである。上記各記載によれば,甲1発明と甲2発明とは,いずれも,構\造物を,上部ではなく下部から解体するもので,工期や工数(費用)の増加,作業の危険性等といった問題点の解決を課題とするものであり,本件特許発明と共通の解決課題を有しているものである。

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平成21(行ケ)10142 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月29日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
 エ 原告は,上記<相違点2−1>についての容易想到性を否定した審決の判断に誤りがあると主張するので,この点について判断する。上記アの甲2公報の記載に基づき甲2装置発明が上記相違点2−1の構成(材料混合タンクの底面に、材料供給兼排出管53と材料排出専用管57とを分離させて設ける構\成)を採用した技術的意義についてみると,このような材料排出専用管を有しない従来技術の気流混合装置(具体的には,本件訂正発明2のように,流動ホッパーの出入口が縦方向に連通した縦向き管とのみ連通するような気流混合装置)においては,エアー吸引手段が作動している間は材料供給兼排出管から混合済み粉粒体混合材料を排出することができないという課題があったことから,作動中に混合済み材料の排出を可能とする管,すなわち材料排出専用管を,材料供給管とは分離して設けたものと認められる。このような技術的意義に照らせば,上記認定に係る甲2装置発明における材料排出専用管は同発明の本質的要素を構\成するものというべきであって,甲2装置発明に基づきつつ,これから同管を除外した構成を想到することは容易でないといわなければならない。オ(ア) これに対し原告は,甲2装置発明における材料排出専用管は,装置の停止時には単なる蛇足であり,作動時にも特に必要なものではないから,これを取り去ることに障害はないと主張する。しかし,上記アの段落【0023】〜【0027】の記載によれば,甲2装置発明においては,材料排出専用管を設けることにより,エアー吸引手段の作動中にもかかわらず混合済み材料を次工程に排出することが可能となり,またエアー吸引手段の停止時には,混合済み材料が材料供給兼排出管と材料排出専用管の2本から排出されることで残材として残りにくくなり,色替えや品種替えの際に起こり得る品質の低下を解決できるという作用効果を有するものと認められるから,このような材料排出専用管が単なる蛇足ということはできない。・・・・甲2公報におけるレベル計の技術的意義は,これにより材料混合タンク内の混合済みの粉粒体混合材料の貯留量を検出し,材料供給源から材料混合タンクへの粉粒体材料の供給量を制御してその貯留量を一定とすることを可能\とし,もって材料収容手段側に安定して混合済みの粉粒体混合材料を排出するというものであって(段落【0029】),そこには未混合材料が材料収容手段へ落下することを回避する目的で混合済み材料のレベルを制御するという本件訂正発明2の上記課題ないし技術思想について開示・示唆するところがない。そうすると,甲3公報及び甲2公報のいずれにおいても,本件訂正発明2における上記課題について開示・示唆するところがないから,そのレベル計の部分のみを取り出して両者を組み合わせる必然性はないといわざるを得ず,甲3発明のレベル計を,受部から更に上部に位置する混合ホッパーへと変更することについて動機付けがあるということはできない。オ(ア) これに対し原告は,甲3発明と甲2装置発明の技術分野の同一性,技術内容の密接性,甲3発明と甲2装置発明が後者は前者を従来技術とするものであり,両者の目的も機能も同じであるから,甲3発明のレベル計の位置を甲2装置発明のレベル計の位置に置換することに困難性がないと主張する。しかし,たとえ技術分野や技術内容に同一性や密接な関連性や目的・機能\の類似性があったとしても,そこで組み合せることが可能な技術は無数にあり得るのであって,それらの組合せのすべてが容易想到といえるものでないことはいうまでもない。その意味で,上記のような一定の関連性等がある技術の組合せが当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)において容易想到というためには,これらを結び付ける事情,例えば共通の課題の存在やこれに基づく動機付けが必要なのであって,本件においてこれが存しないことは前記エのとおりである。\n

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平成21(行ケ)10223 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年02月26日 知的財産高等裁判所

   進歩性なしとした拒絶審決が維持されました。1つの争点が周知の認定です。
 以上に述べた甲3公報及び甲5公報は複写機やレーザービームプリンタ等の画像形成装置に関するものであり,甲4公報は火災警報装置に関するものであるから,その技術分野は必ずしも一致するものではない。しかし,いずれの検出装置においても,検出部の汚染等により検出値が経時変化するという課題がある場合に,汚染等がない検出装置の初期状態における検出値を記憶し,検出装置を所定期間又は所定回数使用した後で測定する際の測定値0の状態における検出値と記憶された前記検出値を用いて測定された検出値を補正するという,同種の方法が開示されており,しかも,その具体的方法は,複写機等や火災報知器といった技術分野に特有の技術的知見に基づくというよりも,画像や煙の濃度を感知するセンサーが電気的に制御されていることに着目し,その検出値の経時変化を電気的なレベルで把握して汚染等による検出値の誤差を補正しようとするものである。このような上記各公報の内容及び当該補正に係る技術内容に鑑みれば,前記認定に係る汚れの検出及びその補正方法は,検出装置一般における周知の技術であったということができる。そして,本願発明における電子捕獲型検出器はガスクロマトグラフ装置の検出器であり,引用発明の定電流形電子捕獲器は,前記イオン電流の変化を,試料を検出セルに導入する前のパルス電圧の周波数と,検出セルに分析試料を注入した後のパルス電圧の周波数を用いて検出し,分析試料の濃度を測定するものであって,いずれもイオン電流の変化をパルス電圧の周波数の変化として検出する検出装置にほかならない。そうすると,上記補正方法に対応する課題が存在するのであれば,それに上記のような課題解決手段を適用することは,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)であれば容易に想到し得るということができる。前記3のとおり,引用発明に係る定電流形電子捕獲器は,長期の使用によって,セル内が汚染されると,汚染物質により電子が吸収され,パルス電圧の周波数が増加するという課題があったことが知られていたことから,引用発明と上記周知技術とは,検出部の汚染等により検出値が経時変化するという課題において共通するものであり,さらに引用例(甲2)には,定電流形電子捕獲器において,イオン化室の汚れが試料濃度の測定結果に影響を与えることが示されているから,引用発明に周知技術を適用する動機も存在するということができる。

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平成21(行ケ)10081 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月05日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は、引用発明に記載された発明は前提が異なるというものです。
 「引用発明は,利用者側の複合器がスケーラビリティ機能を持たないことを前提としており,基本ビットストリームと付加ビットストリームを含む記録媒体が更新処理器側に配置されていることは必須の構\成であるから,基本ビットストリーム(基本部分)と付加ビットストリーム(補足部分)とがそれぞれ別の記録媒体に蓄積されていたとしても,利用者側に更新処理器(本願発明の併合手段に相当)を配置することやその一方を利用者側に配置し他方を通信ネットワーク(本願発明の伝送ラインに相当)を通じて利用者側にリンクする構成とすることは排除されているというべきであり,前記構\成要件ii)の構成を採用することが引用文献に記載された課題から容易に想到し得たということはできない。
エ なお,引用文献(甲1,乙1)には,「2.ビットスケーラビリティの問題点」(72頁13行〜73頁3行)の欄に,ビットストリームスケーラビリティには,階層符号化・復号器の低解像度用復号器で何らかの復号処理をしなければ高解像度加増を再生することができず処理が複雑であること,復号器での処理量の負担が多くなること等の問題があったことが記載されており,上記引用発明の課題認識に至る過程で,利用者側の復号器が更新処理器の機能を備えた構\成が示唆されているということもできる。しかし,この場合においても,前記イのとおり,基本ビットストリーム及び付加ビットストリームをそれぞれ別の記録媒体に分けて蓄積する構成とする解決課題ないし動機は存在せず,仮に,基本ビットストリーム及び付加ビットストリームがそれぞれ別の記録媒体に分けて蓄積されていたとしても,その一方を利用者側に配置し他方を通信ネットワークを通じて利用者側にリンクする構\成とする解決課題ないし動機も存在しないのであるから,前記構成要件i),ii)の構成を採用することが容易に想到し得たということはできない。オ以上のとおりであるから,引用発明から本願発明の構\成に至ることが当業者にとって容易に想到し得たことであるということはできない。」

◆平成21(行ケ)10081 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月05日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10297 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月05日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が、取り消されました。理由は、動機づけ無しというものです。
 「上記イ及びウによると,本件発明1の「REDIRECTコマンド」がクライアントにおいて情報ページを自動的に表示させるためのコマンドであって,ディレクトリサーバーによって行われるものであるのに対して,引用発明の「リダイレクト」は,ローカルエリア・ネットワーク内のサーバーに対する「インターネットの至る所」からのクライアントによるアクセスを確立する方法であって,このようなクライアントに対してローカルエリア・ネットワーク内で唯一のホストとなるフラグシップ・ホストによって行われるものであるということができる。そして,一貫してインターネットにおけるアクセスを念頭に置く本件発明1は,ローカルエリア・ネットワーク内のサーバーとのアクセスを実現するためのフラグシップ・ホストに相当するサーバーの存在及びその機能\としての「リダイレクト」によって,その技術的課題を解決しようとするものではないのであり,本件発明1の存在を知らない当業者がこのような引用例の記載に接したとしても,フラグシップ・ホストを必要としないインターネットのアクセス方法において,このような「リダイレクト」の構成を採用して,本件発明1のディレクトリサーバーによる「REDIRECTコマンド」に係る構\成とするように動機付けられるということはできないし,引用例において,フラグシップ・ホストの機能から離れて「リダイレクト」の機能\を採用しようと動機付ける記載も存在しない。そして,仮に,引用例に開示された事項についての技術的意義を離れて,「リダイレクト」という用語の抽象的な意義のみに基づいて本件発明1の「REDIRECTコマンド」と対比することを前提とするならば,排除されるべき「後知恵」の混入を避けることはできないといわなければならない。」

◆平成20(行ケ)10297 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月05日 知的財産高等裁判所

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平成21(行ケ)10090 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月29日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 「審決は,相違点(相違点1,2)に関し,「保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることは,本願の出願日において周知となっていた」(14頁4行〜6行)とした上で,「保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることが本願の出願日において周知となっていた現状に照らせば,被保険者に重大な保全変更事情が発生した場合,就学している子供がいれば奨学金を給付するようにすることは,当業者が容易に考えつくサービスの仕組みといえる。そして,奨学金の給付に結びつく重大な保全変更事情として,死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報などが考えられることも,当業者が普通に想起することである。」(14頁7行〜15行)とした。上記4で検討したとおり,保険会社が奨学金支給を支援すること,及び保険会社が財団を設立して奨学金を支給することが周知であることに照らせば,被保険者に重大な事情の変更が生じた場合に,就学している子供がいれば,保険会社が奨学金を直接給付することについても,当業者において普通に想起できるものと解される。そして上記重大な事情の変更として本願補正発明の挙げる死亡保険金給付等があるとすることも,当業者が普通に想起するものである。イ また,引用発明の記載された刊行物1(甲1)には,上記2(1)ア(イ)で摘記したとおり,「…子供の進学年齢毎に国公私立の中学校や高校や大学の各種案内を表示することもできる。あるいは,家族や子供の誕生日毎にお祝いのメッセージなどを表\示することもできる。…」(段落【0050】)と記載され,同(ウ)摘記の図3に記載のとおり顧客登録情報として家族の構成・性別・年齢・趣味等が記載されていることからすると,引用発明でも被保険者及び家族の個人情報を検索し,必要と思われる情報を取得して印刷する機能\を備えるものと解される。そうすると,引用発明において,入力する情報を本願補正発明における保険金給付等の情報とし,印刷し提供する情報を奨学金支給の案内状とすることに格別の技術的課題を見出すことはできないから,結局これら構成の相違点についても,当業者が容易になし得る設計的事項の範囲内のものであると認められる。そうすると,審決が相違点に係る構\成について容易想到と判断したことに誤りはない。」

◆平成21(行ケ)10090 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月29日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10398 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月22日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとして審決に対して、「動機付ける旨の開示又は示唆がない」として、取り消しました。
 「上記(1)及び(2)のとおり,化粧用パック材にWJ加工を施すとの本件各発明の構成は,化粧用パッティング材から個々の化粧用パック材を剥離する際に生じる毛羽立ちの防止を主たる解決課題として採用されたものであるところ,同課題が本件出願当時の当業者にとっての自明又は周知の課題であったということはできず,また,引用例を含め,化粧用パッティング材(化粧綿)から剥離される各層(各シート部材)にWJ加工を施すことを動機付ける旨の開示又は示唆のある刊行物(本件出願前に頒布されたもの)は存在しないのであるから,仮に,本件審決が判断したとおり,引用発明に周知事項1及び2を適用して各層(化粧用シート部材)の側縁部近傍を圧着手段により剥離可能\に接合するとともに,各層を化粧用パック材として使用することが,本件出願当時の当業者において容易になし得ることであったとしても,また,引用発明の単位コットン(化粧用パッティング材)がWJ加工を施したものであることを考慮しても,これらから当然に,各層を1枚ごとに剥離可能としてパック材として使用する際にその使用形態に合わせて各層にWJ加工を施すことについてまで,本件出願当時の当業者において必要に応じ適宜なし得ることであったということはできず,その他,引用発明の各層にWJ加工を施すことが本件出願当時の当業者において必要に応じ適宜なし得たものと認めるに足りる証拠はないから,相違点1に係る各構\成のうち化粧用パック材にWJ加工を施すとの構成についての本件審決の判断は誤りであるといわざるを得ない。この点に関し,被告は,審査基準が想定する当業者であれば,引用発明の各層を1枚ごとに剥離可能\としてパック材として使用するときは各層にWJ加工を施すものであるなどと主張するが,上記説示したところに照らすと,そのようにいうことはできないし,その他,被告主張に係る事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,化粧用パッティング材(化粧綿)から剥離された各層(各部材)にWJ加工を施すことは引用発明から容易に想到し得るものではないのに,この点を看過した相違点1についての本件審決の判断は誤りであるというほかなく,原告主張の取消事由2は理由があるといわなければならない。」  

◆平成20(行ケ)10398 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月22日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10433 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月16日 知的財産高等裁判所

 拒絶査定の理由と異なる理由に基づいて判断したので、手続き違背を理由として審決を取り消すとともに、周知技術についても一言述べました。  「このように,拒絶査定と審決とでは,「表面に吸着」する点に関し,同一性のある解釈をしていたとは認められず,むしろ,拒絶査定及び審決における各説示の文言等に照らし,前者はこれを「表\面への吸着」と解釈し,後者は表面のみならず「吸収」を含む現象と解釈していることが認められる。したがって,審決は,拒絶査定の理由と異なる理由に基づいて判断したといわざるを得ない。そして,前記第3で主張するとおりの原告らの解釈及び前提に立てば,この「表\面に吸着」する点はまさしく本願発明の重要な部分であるところ,原告らの意見書や審判請求書における主張からすれば,「表面に吸着」する点に関し,原告らは,審判合議体とは異なる解釈をし,本願発明や引用発明を異なる前提で捉えていることが認められるのであるから,これに対して,審決が,拒絶査定の理由と異なる理由に基づいて,「表\面に吸着し」との点について判断をしている以上,原告らに対し,意見を述べる機会を与えることが必要であったというべきである。なお,審決が原告らに対し上記のような意見を述べる機会を付与しなかったとしても,その双方の場合について実質上審理が行われ,原告らが必要な意見を述べているなどの特段の事情があれば,審決のとった措置は実質上違法性がないということもできないではないが(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10538号,同20年2月21日判決の第5の1(4) 参照),本件においては,そのような特段の事情を認めることはできない。ウ さらに,審決は,拒絶理由通知においてなんら摘示されなかった公知技術(周知例1及び2)を用い,単にそれが周知技術であるという理由だけで,拒絶理由を構成していなくとも,特許法29条1,2項にいういわゆる引用発明の一つになり得るものと解しているかのようである。すなわち,審決は,相違点1について,「排ガスがリーンのときに,NOx浄化触媒としてNOxを触媒表\面へ吸着するものは周知(例えば,周知例1及び周知例2参照。以下「周知技術1」という。)であることから,相違点1に係る本願発明の発明特定事項は周知である。」と説示し,また,相違点2についても,「内燃機関がリーン運転しているとき,前記NOx浄化触媒で排ガス中のNOxを吸着し,吸着後に,排ガスを数秒間ストイキもしくはリッチの状態とし,前記NOx浄化触媒で吸着したNOxを還元剤と接触反応させてN2に還元して排ガスを浄化することは周知(‥‥‥)であり,相違点2に係る本願発明のように時間及び深さを決定することは,周知例1及び周知例3の周知技術2を勘案すれば,適宜なし得る設計的事項に過ぎないものである。」,そして,「本願発明は,引用発明,周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである」という説示をしているが,誤りである。被告主張のように周知技術1及び2が著名な発明として周知であるとしても,周知技術であるというだけで,拒絶理由に摘示されていなくとも,同法29条1,2項の引用発明として用いることができるといえないことは,同法29条1,2項及び50条の解釈上明らかである。確かに,拒絶理由に摘示されていない周知技術であっても,例外的に同法29条2項の容易想到性の認定判断の中で許容されることがあるが,それは,拒絶理由を構成する引用発明の認定上の微修整や,容易性の判断の過程で補助的に用いる場合,ないし関係する技術分野で周知性が高く技術の理解の上で当然又は暗黙の前提となる知識として用いる場合に限られるのであって,周知技術でありさえすれば,拒絶理由に摘示されていなくても当然に引用できるわけではない。被告の主張する周知技術は,著名であり,多くの関係者に知れ渡っていることが想像されるが,本件の容易想到性の認定判断の手続で重要な役割を果たすものであることにかんがみれば,単なる引用発明の認定上の微修整,容易想到性の判断の過程で補助的に用いる場合ないし当然又は暗黙の前提となる知識として用いる場合にあたるということはできないから,本件において,容易想到性を肯定する判断要素になり得るということはできない。」\n

◆平成20(行ケ)10433 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月16日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10490 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月17日 知的財産高等裁判所

 数値限定発明について、進歩性なしとはいえないとして無効審決(特許維持)がなされましたが、これが取り消されました。  「本件明細書には,本件発明1における数値範囲の臨界的意義についての具体的な記載はされておらず,また,塩素原子含有量は,上限値である10ppm以下だけが記載され,下限値が特定されていないものであって,これらによれば,本件発明1における塩素原子含有量の数値限定の意義は,塩素原子がポリカーボネート樹脂中に少なければ少ないほど,塩素原子の影響による半導体ウエーハの汚染を低減でき,本件発明1の目的達成に適しているというものにすぎないといわざるを得ない。」

◆平成20(行ケ)10490 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月17日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10431 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

 周知技術を適用するための共通の解決課題ないし動機付けが存在していたか否か,仮に存在していたとして,周知技術を適用するための阻害要因がなかったとして、進歩性なしとした審決を取り消しました。
 「このように,引用刊行物に記載された技術的事項は,2次コイルとして,環状コイルを用いることを前提としたものであって,引用刊行物には,相互インダクタンス電流トランスジューサーの2次コイルを環状コイル以外のものとする可能性を示唆する記載はない。引用発明は,電流感知トランスジューサーの従来技術を前提としながら,環状コイルにおけるシンメトリー構\造の実現という課題を,環状コイルを多重層構造とすることによって解決しようとしたものである。引用発明と本願発明は,課題解決の前提が異なるから,引用発明の解決課題からは,コイルを多層基板上に形成するための動機付けは生じないものといえる。なお,引用刊行物には,相互インダクタンス電流トランスジューサーを小型化するという課題も記載されているが,環状コイルを前提としたものであって,本願発明における小型化とは,その解決課題において共通するものではない。以上のとおり,引用発明には,環状コイルに代えて,多層基板上に形成されたプリントコイルによりトランスを構\成する前記周知技術を適用する解決課題や動機は存在しないというべきであり,したがって,当業者が本願発明の相違点2に係る構成を想到することが容易であったとはいえない。イ また,引用発明に周知例の技術を適用するに当たっては,以下のとおり,その適用を阻害する要因が存在するともいえる。すなわち,引用発明においては,細長いほぼ直線状の導電体の周囲に同軸的に円筒形のスリーブを配置し,その円筒形スリーブと嵌合するように環状コイルが配置され,環状コイルがほぼ直線状の導電体の周囲を取り囲むという構\成を採用しているのに対し,周知例の技術では1次コイルと2次コイルが平面的に対向するように配置されており,引用発明と周知例の技術は,構造を異にしている。そして,導電体と環状コイルとからなる,引用発明のトランスの構\成に,上記周知例に記載されたトランスの構成を適用する場合,2次コイルである環状コイルは,直線状の導電体に直交する仮想的な平面上に,前記導電体を囲むように配置されることが必要となる。しかし,周知例に記載されたトランスは,平面状コイルを形成した絶縁基板を積層するものであり,平面上の1次コイルと2次コイルは,互いに平行な基板面上に形成され,引用発明の導電体と環状コイルの配置関係と,周知例に記載されたトランスにおける1次コイルと2次コイルの配置は,構\造上の相違が存することから,引用発明に周知例の構成を適用することには,困難性があるというべきである。また,引用発明に周知例に記載された技術を適用することを想定した場合,まず,引用発明においてはほぼ直線状の導電体とすることにより導電体によるインピーダンスの発生が抑制されているのに対し,引用発明の導電体に対応する周知例の1次コイルは渦巻状であって導体長が長く,それ自体がインピーダンスとして働く余地があり,この点でも引用発明に周知例の技術を適用しようとするに当たっての阻害要因となる。さらに,引用発明においては,電力メーター用電流感知トランスジューサーとして,需要家に供給される電力の正確な測定ということが技術的課題とされ,そのために,環状コイルに作用する外因性磁場による悪影響の排除という課題が存在するのに対して,周知例の技術においては,専ら1次コイルと2次コイルの磁気結合の強化ということが技術的課題とされていて,外部磁界による磁気干渉は,格別考慮する必要がない点において,引用発明に周知例の技術を適用しようとするに当たっての阻害要因となり得る。以上のとおり,引用発明に周知例の技術を適用することには,課題の共通性や動機付けがなく,また,その適用には阻害要因があるというべきであるから,当業者が引用発明に周知例の技術を適用して本願発明に至ることが容易であったということはできない。」\n

◆平成20(行ケ)10431 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10121 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年04月27日 知的財産高等裁判所

 審決の論理付けが十分かつ合理的な説明を欠くとして、取り消されました。
 「引用発明と引用発明2とを対比すると,引用発明では,「該レバーの回動により回動する軸体の回動操作により各分岐流路への水路の切り換えを行う構成を有する切換弁」とされているとおり,その操作力の方向は,レバーを回すこと,すなわち回転(回動)であるのに対し,引用発明2では,「押し部11を押す」とされているとおり,操作力の方向が押し部を押すこと,すなわち直動であるとの点で,操作力の方向において相違する。そして,本願発明は,操作力の方向については,「該切換レバーと連動して回動する回転軸の回動操作により各原水吐出口または原水送水口への水路の切り換えを行う」とされているとおり,切換レバーを回動させるものであって,引用発明と共通する。さらに,本願発明では「取っ手部分を備えた切換レバー」と「該切換レバーによる回動伝達部にラチェット機構\とを有する」構成の両者を採用することにより,「取っ手部分」を小さい力で押圧しても,ラチェット機構\に大きなトルクを作用させることが可能になる等の効果を奏することが説明されている(もっとも,当裁判所は,そのような効果が格別のものであると解するものではない。)。そうすると,引用発明は,レバーと回転軸との関係においては,「回動−回動変換」方式を採用している点において,本願発明と共通するのに対して,引用発明2は,押し部と回転軸中心との関係において「直動−回動変換」方式を採用しており,押し部11を押す直動の操作力を回転板9の回動に変換するとの技術的特徴を備えている点において,引用発明及び本願発明と相違する。引用発明2の技術的特徴及び相違点を考慮するならば,引用発明と引用発明2とを組み合わせて本願発明の構\成に到達すること,すなわち,引用発明2のラチェット歯94を,引用発明の回動伝達部に適用することにより,本願発明の構成である「該切換レバーによる回動伝達部にラチェット機構\を有する」構成に至ることが容易であるとはいえない。・・・・特許法157条2項4号が,審決に理由を付することを規定した趣旨は,審決が慎重かつ公正妥当にされることを担保し,不服申\立てをするか否かの判断に資するとの目的に由来するものである。特に,審決が,当該発明の構成に至ることが容易に想到し得たとの判断をする場合においては,そのような判断をするに至った論理過程の中に,無意識的に,事後分析的な判断,証拠や論理に基づかない判断等が入り込む危険性が有り得るため,そのような判断を回避することが必要となる(知財高等裁判所平成20年(行ケ)第10261号審決取消請求事件・平成21年3月25日判決参照)。そのような点を総合考慮すると,被告が,本件訴訟において,引用発明と引用発明2を組み合わせて,本願発明の相違点イに係る構成に達したとの理由を示して本願発明が容易想到であるとの結論を導いた審決の判断が正当である理由について,主張した前記の内容は,審決のした結論に至る論理を差し替えるものであるか,又は,新たに論理構\成を追加するものと評価できるから,採用することはできない。以上のとおりであるから,レバーを回動させる操作力を,被回動部材に伝達する回動伝達部に,ラチェット歯を有するラチェット機構として備える構\成が,本願出願前に公知又は周知であるか否か,引用発明に,ラチェットに係る公知又は周知の技術を適用することにより本願発明の構成に至ることが容易であるか否かの争点については,審判手続において,出願人である原告に対して,本願発明の容易想到性の有無に関する意見を述べる機会等を付与した上で,審決において,改めて判断するのが相当である。」

◆平成20(行ケ)10121 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年04月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10205 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月12日 知的財産高等裁判所 

  進歩性なしとした拒絶審決を取り消しました。
 「引用文献1(甲1)には,炭素フィブリルの凝集体の大きさを0.10mm(100μm)よりも小さくすることについてまで示唆するような記載はなく,むしろ,凝集体をそのまま用いると分散性等に問題が生じるとしていることや,成形物の外観を損なわないことを目的の一つとしていることからすると,凝集体をそのまま用いずにある程度分解してから用いることを示唆するにとどまるものと認められる。したがって,引用文献1(甲1)には本願発明に至るために必要な教示ないし示唆は存在しないというべきである。
・・・(ウ) そうすると,引用文献3(甲3)には,一般的に充填剤をマトリックス材料に分散させて複合体を製造する方法に関して,高い分散性を得るために凝集物粒径を小さくすることが記載されているとしても,炭素フィブリルを充填剤として導電性を有する複合体を製造する場合について,十分な導電性と機械的強度が得られる炭素フィブリルの凝集体の大きさについて具体的な数値が示されているとはいえないものである。したがって,引用文献3(甲3)にも,引用発明における炭素フィブリルの凝集体の径を100μmよりも小さくすることの教示ないし示唆が存在するとはいえない。
 (4) 以上によれば,本願発明は,引用文献1〜3に記載された発明に基づいては当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず,審決は,容易想到性についての判断を誤ったものである。」

◆平成20(行ケ)10205 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月12日 知的財産高等裁判所 

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◆平成20(行ケ)10130 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年12月25日 知的財産高等裁判所

 組み合わせの動機付けがないとして、拒絶審決を取り消しました。
  「そこで,引用発明において,周知技術であるオフセンタ機能を採用する解決課題ないし動機等が存在するか否かについて検討する。・・・・引用発明においては,他航空機等は,既に,全体の表\示画面において,自航空機の速度を速くする前から表示されているのであるから,「警戒空域」画面の表\示態様として,オフセンタ機能を適用する解決課題ないし動機付けはない。審決は,本願発明と引用発明とは,解決課題及び技術思想を互いに異にするものであって,引用発明を前提とする限りは,本願発明と共通する解決課題は生じ得ないにもかかわらず,解決課題を想定した上で,その解決手段として周知技術を適用することが容易であると判断して,引用発明から本願発明の容易想到性を導いた点において,誤りがあるといえる。」

◆平成20(行ケ)10130 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年12月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10238 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年09月29日 知的財産高等裁判所

  動機付けがないとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 「既に認定したとおり,引用発明は,平面と角部との接触や,傾斜面を対称にするなどの本願補正発明と類似の構成のほかに,傾斜面部3a,3bの傾斜角度を40°〜80°とすることにより蓋傾斜面部10a,10bと傾斜面部3a,3bとが相互に一方が他方に食い込むような楔効果を生じさせるものであり,この楔効果は本願補正発明にはみられない引用発明独自の効果である。換言すれば,引用発明は本願補正発明とは異なる上記構\成を採用することにより,側溝躯体1側の接合面と側溝蓋8側の接合面との間の誤差を吸収するという発明の目的を達成しているものである。そうすると,引用発明においては更に側溝蓋8の斜め移動を可能として自動調心作用を働かせる必要はなく,引用発明における「微小間隙G1」を拡げて蓋板の平行移動及び斜め移動を許容するものとする動機付けは存在しない。イ さらに,コンクリート側溝の蓋板は,その上を人や車両が通行するのであるから,蓋板が無用に移動するのは必ずしも好ましいことではないと考えるのは,自然なことである。この点について,本願明細書には「…本体ブロック2に対する蓋板3の幅方向の平行移動は,蓋板3の上面を幅方向に若干傾斜させる作用を有するのみで,がたつきの防止には直接寄与しない。蓋板3の中央部における幅方向移動を抑止する突起21を設けることにより…,蓋板3が本体ブロック2上で無用に移動するのを防止することができる」(段落【0026】)と記載されており,蓋板の幅方向の平行移動は必ずしも好ましいものではないことが指摘されている。そうすると,引用発明において間隙G1を微小なものとしたのは,側溝蓋8が側溝躯体1上で幅方向に平行移動することを抑止しつつ,側溝蓋8の開閉操作を容易にする限度で間隙を備えることとしたものと解することができる。したがって,既に独自の構\成によって側溝躯体1側の接合面と側溝蓋8側の接合面との間の誤差を吸収するという発明の目的を達成している引用発明において,あえて蓋板の幅方向の平行移動を可能とするような構\成を採用することは考え難い。ウ 以上のことから,引用発明において相違点2に係る構成を採用することは,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が容易になしうるものとはいえず,相違点2について容易想到性を肯定した審決の判断は誤りである。」

◆平成19(行ケ)10238 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年09月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10148 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年12月25日 知的財産高等裁判所

  進歩性無しとした無効審決が、動機付けがないとの理由で取り消されました。
   「ア 引用例は,前記(1)のとおり,熱プレス成形によるフィルム同士の熱接着の 問題を課題として開示するものといえるが,これを解決するための手段としてのマ ット加工技術を開示し,又は示唆するものではない。 イ 周知例2及び3には,マット加工が施された樹脂膜又はプラスチックシート が,熱と圧力をかけて容器等に成形されるとの記載も示唆もないところ,上記(2) イのとおり,本件特許出願当時の当業者において,マット加工面に熱と圧力を同時 に加えると上記のようにマット加工の技術的意味が没却されると考えられていたこ とに照らすと,熱プレス成形によるフィルム同士の熱接着の問題を解決するため, 引用発明に,周知例2又は3に記載されたマット加工技術を適用することについて は,その動機付けがないばかりか,その適用を阻害する要因が存在したものという べきである。・・・エ 他方,周知例1は,本件発明や引用発明と同種の技術分野におけるマット加 工技術を開示するものであるほか,同周知例には,「本発明の加熱調理用食品容器 は,上記した食品容器材料を公知の成形法,例えば加熱圧縮法により所望形状に成 形してなるものである」,「この食品容器材料を用いて加熱圧縮法により成形し, ・・・カップ状の加熱調理用食品容器・・・を得た」との各記載があるところであ る。 しかしながら,周知例1に記載された食品容器材料は,紙である基材の上に,ポ リプロピレンよりも融点が高い・・・ポリメチルペンテン等の耐熱性樹脂層を有するものであって,ポリプロ ピレン樹脂製フィルムのみから成る本件発明及び引用発明のラミネートフィルムと はその材質を異にするものであるほか,同周知例には,加熱圧縮法において用いら れる加熱温度についての具体的な記載はみられないところ,紙である基材は,復元 性の高い樹脂製フィルムとは異なり,折り込みのような機械的な作用のみでも成形 が可能であることからすると,その加熱温度が,上記ポリブチレンテレフタレート等の耐熱性樹脂の成形温度(軟化温度)よりも相当低いことも想定され,また,食\n品容器材料から容器を形成する際の方法についても,複数枚の材料を積層して加熱 圧縮するとの方法が示されているものではないから,結局,周知例1が,複数枚の 樹脂製ラミネートフィルムを重ねて金型に配置し,熱プレス成形によりフィルム製 容器を製造する場合に生ずる熱プレス成形によるフィルム同士の熱接着の問題の解 決方法を開示し,又は示唆するものということはできず,したがって,当該問題を 解決するため,引用発明に,周知例1に記載されたマット加工技術を適用すること についても,その動機付けがないといわざるを得ない。」

◆平成19(行ケ)10148 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年12月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10421 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年09月12日 知的財産高等裁判所

   進歩性無しとした審決が取り消されました。
   「確かに,「また,他の実施例として,上記ウエハ保持部(28),(33)はどちらか一方だけを動かすことも可能である。」(上記(ア)f)との記載によれば,「左右のアーム部材とそれらの回転軸とを共通の第1のアーム部材を設け」た第4図及び第5図に記載の搬送装置において,左右のウエハ保持部は「どちらか一方だけを動かすことも可能である」ことを一応示唆するものといえる。しかし,甲3には,単に上記の記載がされているだけであって,「左右のアーム部材とそれらの回転軸とを共通の第1のアーム部材を設け」た搬送装置において,「どちらか一方だけを動かす」ための構\成及び手段について何ら具体的な記載や示唆はない。また,甲3の他の記載事項部分を参酌しても,上記搬送装置において「どちらか一方だけを動かす」ことを実現することが自明であるともいえない。」

 また、本件について、一部の請求項については、無効理由無しとした審決は確定しているとして、特許庁の取り扱いについて補足意見が述べられました。
 「第1次審決中「特許第2580489号の請求項5に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との審決部分については,被告(審判請求人)において取消訴訟を提起することなく出訴期間が経過したのであるから,同審決部分は形式的に確定した。しかるに,特許庁は,本件特許の請求項5に係る無効審判請求が形式的に確定していないとの前提に立った上で,当該請求項についても審判手続で審理し,「特許第2580489号の請求項5に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」旨の判断をした。上記審判手続のあり方は,著しく妥当を欠くというべきである。けだし,本件特許の請求項5については,無効審判請求に係る無効理由が存在しないものとする審決部分が確定したことにより,原告は,形式的確定の利益を享受できる地位を得ているのであるから,それにもかかわらず,他の請求項に係る特許を無効とした審決部分について取消訴訟を提起して,当該請求項について有利な結果を得ようとしたことにより,かえって無効審判請求を不成立とする請求項5についてまで,不安定な地位にさらされることになることは著しく不合理だからである。」

◆平成18(行ケ)10421 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年09月12日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10368 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成19年08月28日 知的財産高等裁判所

  無効理由無しとした審決が、動機付けの障害がないとして、取り消されました。
   「被告の多岐にわたる主張の要点は,審決と同様,本件特許出願前,当業者がテトラアルキルアンモニウムイオンのNF膜の透過可能性を予\測することは困難であったという点にあり,このような予測可能\性がなければNF膜を採用しようと動機付けられることもないとするものである。そこで検討するに,確かに,本件特許出願前にNF膜がテトラアルキルアンモニウムイオンを透過することを指摘した技術文献がないことは被告の主張するとおりである。しかし,このことから直ちにNF膜を採用しようと動機付けられないといえないことは,前項に説示したところに照らして明らかである。NF膜が有する電荷の影響が分離対象物質の挙動に複雑な影響を及ぼすものであり,テトラアルキルアンモニウムイオンのNF膜の透過可能性について予\測することが困難であったとしても,このような事情は,NF膜のテトラアルキルアンモニウムイオンの透過可能性を否定したものではないのであるから,NF膜の持つ低分子量の化合物の分離に極めて有効であるという従来の膜にない一般的特徴を根拠に,優れた透過性能\を期待してこれを分離膜として採用してみようとする動機付けの障害となるものではないというべきである。」

◆平成18(行ケ)10368 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成19年08月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10339 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年07月19日 知的財産高等裁判所

 引用発明において,「スクリーン巻取り最終段階からさらに巻取速度を減速させるようにする」ことが必要となるものとは認められず,そうであれば,当業者が,あえて,そのような構成を採用して引用発明に適用することが,設計事項であるとも,容易であるともいえないとして、拒絶審決を取消ました。
 「もっとも,スプリングの蓄勢力に対し,制動力が小さすぎる粘性ダンパを選択したような場合を仮定すれば,引用発明の粘性ダンパであっても,「スクリーン巻取り初期段階から同様の減速を行っても最終段階で充分な巻取筒の減速特性が得られないような特性のブレーキ」に当たるといえないこともない。しかしながら,粘性ダンパの制動力の大きさをスプリングの蓄勢力に見合ったものとすることこそ,まさに設計事項であり,引用例1には,そのための手段も記載されている(上記(1)のア(カ))のであるから,本願補正発明に対する公知技術として引用発明を選択しながら,上記のような仮定を設定すること自体,失当といわざるを得ない(もっとも,スクリーンの巻終わりの衝突を防止しつつ,巻上げ時間の短縮を図ることを課題として,あえて,引用発明の粘性ダンパの制動力をスプリングの蓄勢力に対して小さいものとし,巻取り最終段階で巻取速度を減速することも考えられないではないが,そのような技術課題は引用例1に記載も示唆もなく,また,周知であると認めるに足りる証拠もないから,引用発明を前提として採用し得るものではない。)。

◆平成18(行ケ)10339 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年07月19日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10484 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年04月26日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
 「以上検討したところによれば,本件発明1は,ガイドピンが床面に磁力にて突出引退自在に設けられた構成を有するものであって,ガイドピンの大径部が係止ガイド片に当接することにより機械的に保持され,走行溝から下降しないようにした点に主たる技術的意義があるものであるのに対し,刊行物2(甲2)においては,規制ピンは敷居に植設固定されており,突出引退自在に設けられたものではないから,「走行中や停止中において,吊戸本体3の揺れや振動などにてガイドピン4が磁着体Xから外れ,ガイドピン4がその自重で容易に床面下に下降する」(訂正明細書〔甲8の2〕段落【0003】)という本件発明1の従来技術にいう課題を解決する手段として突出引退自在に設けられたガイドピンを係止ガイド片によって機械的に保持する技術を開示するものではない。しかも,刊行物2(甲2)の遊転ローラは,フランジと当接する構\造(フランジがローラーを機械的に保持する構造)であってはならず,引用発明2は,フランジと遊転ローラーとの間の高さ方向において,一定の間隔を設けることを前提とする技術であるから,本件発明1のガイドピンの大径部が係止ガイド片に当接することにより機械的に保持する構\造とは,その技術的意義が異なるものである。したがって,引用発明1における,ガイドピンが突出引退自在である構成を前提としたまま,刊行物2の「フランジ18を有したコの字型案内溝19にビス22の遊転ローラー21を案内させる構\成」を適用することはできないというべきである。」  

◆平成18(行ケ)10484 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年04月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10422 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年03月29日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
  「引用例(甲1)には,・・・と記載されているから,革製本底1の上面全体に防水布2を積層配置すれば防水性が高まるが,その場合には,通気性が損なわれ,靴内部の蒸れによる不快感の問題が生じることが記載されているということができる。しかし,この問題を解決するために防水布の通気性を保つために貫通孔を備えた不透過性の材料でできた上部部材により被覆するという技術的思想については,記載も示唆もない。被告は,引用発明において防水部材2が積層配置された部分は,防水部材2によって防水性が確保されているのであるから,防水性をより向上させるためには,防水部材2が積層配置されていない革製本底1の上面が露出する部分に対して合成樹脂を積層すればよく,革製本底1の上面が露出する部分は,革製本底1の周縁となるから,周縁に沿って革製本底1の上面が露出する部分を合成樹脂で被うことは,当業者が容易に想到し得たことであり,周縁に沿って革製本底1の上面が露出する部分を合成樹脂で被えば,必然的に合成樹脂は貫通孔を備えたものになると主張する。確かに,引用発明において,防水性を向上させるため革製本底1の上面が露出する部分に対して合成樹脂を積層すれば,革製本底1の上面が露出する部分は周縁であるから,「貫通孔を備えた不透過性の材料でできた上部部材」を採用すること,すなわち,本願発明の相違点の構成を採用することにより,引用発明の防水性をより向上させることができるが,引用発明は,防水性を「通気性を有する防水部材」を積層することにより達成しているものであり,かつ,「本実施例のように踏付け部のみに防水布2(判決注:本願発明の「通気性でかつ耐水性の材料からなる膜」に相当)を積層配置しただけで充分に効果的である」(甲1の明細書5頁第2段落)とあるように,それで足りるとしているものである。引用例には,更に防水性を高めるために「不透過性の材料でできた上部部材」で覆うというようなことについては記載も示唆もなく,また,審決が周知技術として引用する甲2刊行物ないし甲4刊行物にも記載がないのであるから,防水布の通気性を保つために貫通孔を備えた不透過性の材料でできた上部部材により被覆するという本願発明の相違点に係る構\成を採用することが,当業者に容易想到とすることはできない。被告の上記主張は,裏付けのない主張であり,本願発明の相違点に係る構成を後から論理付けしたものというほかなく,採用することができない。」

◆平成18(行ケ)10422 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年03月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10531 特許取消決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年11月22日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとして特許を取り消した審決について、裁判所は、動機付けがないとして、これを取り消しました。
 「・・・との各記載があり,これらの記載によれば,刊行物4発明において,一次バインダーには,低酸素雰囲気中できれいに燃焼することが要求されているものと認められるが,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体が,低酸素雰囲気中できれいに燃焼するものであることを認めるに足りる証拠はない。(7) そうすると,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体は,上記のとおり,水性処理が可能な感光性樹脂として周知であり,水性処理が可能\である点は,刊行物4発明の一次バインダーとしての目的に沿うものであるが,同様に刊行物4発明の一次バインダーに求められる,高解像度の付与,低酸素雰囲気中できれいに燃焼するものである点については,少なくとも,刊行物4発明のアクリル系共重合体との比較において,適用の動機付けとなるかどうかは明らかではなく,さらに,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を刊行物4発明に適用するためには,既存の感光性成分である光硬化性モノマーとの併用に伴って生ずる影響を検討することが不可欠であるから,エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系共重合体を刊行物4発明に適用することが,当業者において容易になし得たものと直ちに認めることはできず,決定の相違点(イ)についての判断は,誤りといわざるを得ない。」

◆平成17(行ケ)10531 特許取消決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年11月22日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10490 審決取消請求事件 平成18年06月29日 知的財産高等裁判所

  進歩性無しとされた審決が取り消されました。
  「そもそも,本願発明の相違点1ないし3は,正確にいうと,相違点1及び2であることを特徴とする相違点3に係る光学検出部と言い換えることもでき,相違点1及び2は,相違点3に係る光学検出部であることを前提としている。しかも,審決が相違点3として摘示するとおり,本願発明は「紙葉類識別装置」に係る発明であるのに対し,引用発明は,紙葉類の積層状態検知用装置に係る技術であって,発明の課題及び目的が相違しており,このことは被告も認めるところである。したがって,本願発明の構成を把握する上で,相違点1及び2と相違点3とを分説するのはよいとしても,相違点1ないし3の相互の関係を考慮しながら,本願発明の進歩性について検討しなければならない。」 「確かに,本件周知装置においては,上記(2)ウのとおり,紙葉類の識別を行う際に,紙葉類の特徴箇所を選んで識別することは,当業者が容易に想到し得たことということができる。しかし,このことから,上記(3)のような,複数本の検出ラインの技術的思想のない引用発明について,複数本の検出ラインの技術的思想を前提とし,一対の発光・受光素子によって一括して検出を行うという相違点1及び3に係る本願発明の構成を付加することが容易であるとか,あるいは,単なる設計変更であるということは困難である。」

◆平成17(行ケ)10490 審決取消請求事件 平成18年06月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10718 審決取消請求事件 平成18年06月22日 知的財産高等裁判所

   進歩性が争われました。裁判所は、進歩性無しとした拒絶審決を取り消しました。最近では、動機付けが見いだせないとして審決を取り消した例は少ないと思います。
「仮に本件審決にいう周知技術を前提としても,そのことが,引用発明において「独立した入力端を有する共振周波数の異なる複数個の超音波振動子」を「電気的共振点を複数有し且つ入力端を1個だけ有する1の負荷」に変更する動機付けとなるものと解することはできず(このことは,被告が提出する乙1ないし3によっても何ら変わるものではない。),かかる動機付けが見出せない以上,引用発明に上記周知技術を用いて,「共通の入力端に,各共振周波数に周波数を切り替えた電源を供給するようにする程度のことは,当業者にとって適宜採用しうる構成にすぎない」とすることはできない。」

◆平成17(行ケ)10718 審決取消請求事件 平成18年06月22日 知的財産高等裁判所

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