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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

実質上拡張変更

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成29(行ケ)10032  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年11月7日  知的財産高等裁判所(4部)

 無効審判における訂正を認めなかった審決が取り消されました。審決は、実質上の変更に該当すると判断しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
 本件審決は,本件発明10は,値段が高い銀ナノ粒子を使用することなく導 電性材料を得ることを目的とした発明であるのに対し,本件訂正発明10は,大量 の酸素ガスや大量の還元性有機化合物の分解ガスを発生させることなく,導電性材 料を得ることを目的とするものであり,本件訂正発明10が達成しようとする目的 及び効果は,訂正事項10−1による訂正で変更されたと認められるから,訂正の 前後における発明の同一性は失われており,訂正事項10−1は,実質上特許請求 の範囲を変更するものであると判断した。 イ しかし,本件明細書には,従来技術において,酸化銀等の銀化合物の微粒子 を還元性有機溶剤へ分散したペースト状導電性組成物を基板上に塗布して加熱し配 線を製造する方法が知られていたが,ミクロンオーダーの銀粒子を使用した場合, 高い反応熱によりガスが大量発生し,不規則なボイドが形成されて導電性組成物が 破壊されやすくなったり,取扱上の危険性があるという問題点があり(【0004】 〜【0007】,【0010】),銀ナノ粒子を含む導電性組成物を用いると,銀ナノ 粒子の値段が高いという問題点があったこと(【0009】,【0010】)が記載さ れており,本件発明は,安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて得られる導電 性材料を製造する方法を提供することを目的とするとの記載があるのであるから (【0012】),本件発明の目的は,従来技術においてミクロンオーダーの銀粒子を 使用する際にガスが大量発生することによる問題を解消するとともに,値段が高い 銀ナノ粒子を使用することなく,導電性材料を製造することにあると認められる。 そして,本件発明10においては,その目的を,「銀の粒子が,0.1μm〜15 μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる」という構成,及び「第\n2導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃〜320℃の 範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し」とい う構成を備えることによって達成している。\n他方,本件訂正発明10は,大量のガスを発生させることなく導電性材料を得る という目的を達成するため,「前記銀の粒子の一部を局部的に酸化させることにより, 前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し」という構成を備えている上,\n銀の粒子が,0.1μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有するものから, 2.0μm〜15μmの平均粒径(メジアン径)を有するものに訂正されたことに より,訂正前に比べて銀の粒子径がより大となっており,値段が高い銀ナノ粒子を 使用することなく導電性材料を得るという目的及び効果について,より限定された ものとなっている。
ウ したがって,訂正事項10−1による訂正は,本件発明10が達成しようと する目的及び効果を変更するものではない。

◆判決本文

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平成28(行ケ)10170  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年8月30日  知的財産高等裁判所(1部)

 訂正要件満たしていないとした審決が取り消されました。
 審決は,「x2+y2=r2」の式は,原点を中心とする半径rの円周上 の各点の座標(x,y)の方程式とみることもできるが,斜辺の長さがrとなる直 角三角形における直角をはさむ2辺の長さx,yの方程式とみることもでき,この 場合,本件条件式(|(x2+y2)1/2|≦2.50)のx,yは,それぞれ,測 定基準点から水平線を延ばしたときに所定領域の外縁と交差する位置(水平方向外 縁位置)までの距離,及び,測定基準点から鉛直線を延ばしたときに所定領域の外 縁と交差する位置(鉛直方向外縁位置)までの距離を示すと解するのが自然である とする(第1解釈)。 しかしながら,審決の上記認定に従って,本件条件式のx,yを理解すると,本 件条件式は,「水平方向外縁位置と鉛直方向外縁位置の距離」が2.5mm以下であ ればよく,水平方向と鉛直方向以外については何ら規定していないのであるから, 本件条件式によっては,「所定領域」の形状が定まらないことになる。また,水平方 向外縁位置と鉛直方向外縁位置の距離が2.5mm「以下」であればよいことにな るので,水平方向外縁位置及び鉛直方向外縁位置が0のもの,すなわち,所定領域 として大きさをもたないものも含むことになる。  前記(ア)のとおり,所定領域は面非点隔差成分の平均値(ΔASav)を決めるた めの基準となる範囲を示すものであって,本件条件式は,この所定領域が満足すべ き範囲を定めるものであることからすれば,本件条件式について,上記のように, 形状が定まらず,また,大きさを持たないものも含むように解することは,不自然 であるといわざるを得ない。
また,本件明細書には,「実質的に球面形状またはトーリック面形状である測定基 準点を含む近傍の領域は,…|(x2+y2)1/2|≦1.75(mm)の条件を満 足する領域であることが望ましい。また,処方度数と測定度数とをさらに良好に一 致させるには,実質的に球面形状またはトーリック面形状である測定基準点を含む 近傍の領域は,|(x2+y2)1/2|≦2.50(mm)の条件を満足する領域で あることが望ましく」(前記1(1) と記載されていることからすると,本件条件 式は,少なくとも,|(x2+y2)1/2|≦1.75(mm)の場合と比較して, 度数測定がより容易になる条件を規定しているものと認められる。 しかしながら,審決の上記解釈によれば,本件条件式は,所定領域の形状が特定 されるものではなく,しかも,所定領域として大きさを持たないものも含むことに なるものであるから,度数測定がより容易になる条件を規定したものとはいい難く, 上記のとおり,|(x2+y2)1/2|≦1.75(mm)の条件式と対比して,本 件条件式を規定している本件明細書の記載と整合するものとはいえない。 したがって,審決の上記解釈は,不自然であるといわざるを得ない。 なお,審決は,「所定領域」は,測定基準点を中心としてどの方向にも大きさが略 一定の領域(すなわち,測定基準点を中心とする略円形の領域)として設ければよ いのであり,水平方向及び鉛直方向の大きさとそれ以外の方向の大きさとが大きく 異なるような不定形の形状の領域にすることは,必要がないばかりか,光学性能の\n低下という観点から有害であることが当業者に自明であるとして,本件条件式は, 測定基準点を中心としてどの方向にも「所定領域」の大きさが略一定であることを 前提として,その大きさを規定したものである,とも認定している。むしろ,この ように,所定領域の大きさが略一定であることが当業者にとって当然の前提となる のであれば,本件明細書の記載に接した当業者は,本件条件式が円を規定するもの, すなわち,x,yを座標であると理解するというのが自然かつ合理的である。 以上によれば,本件明細書において,本件条件式とともに面非点隔差成分の平均 値を求める基礎となる面非点隔差成分ΔASについて,x,yが座標として用いら れていること,本件条件式のx,yを測定基準点から水平方向外縁位置及び鉛直方 向外縁位置までの距離であると解することが本件明細書の全体の記載に照らして不 自然であることなどから,本件条件式のx,yは,座標として用いられていると解 するのが相当である。そして,このように解しても,本件訂正後の本件訂正発明は, 処方面の非球面化により装用状態における光学性能を補正する構\\成を採用している にもかかわらず,レンズの度数測定を容易に行うことができるとの効果を奏するも のであると認められる。 したがって,訂正事項1−4は,もとより座標を示すものであると解される本件 条件式のx,yが座標であることを明記したにすぎないものであり,訂正事項1− 4に係る本件訂正発明3の第2発明特定事項は,本件明細書の全ての記載を総合す ることにより導かれる技術的事項であり,新たな技術的事項を導入しないものであ るから,本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものということができる。

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平成28(行ケ)10160  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年7月12日  知的財産高等裁判所

 使用態様を特定した製剤に限定する訂正が、訂正要件違反と判断されました。
 訂正事項5は,本件訂正前の特許請求の範囲の請求項 1に「針状又は糸状の形状を有すると共に」とあるのを「針状又は糸状の形 状を有し,シート状支持体の片面に保持されると共に」に訂正する,という ものであり,これを請求項の記載全体でみると,「…尖った先端部を備えた 針状又は糸状の形状を有すると共に前記先端部が皮膚に接触した状態で押圧 されることにより皮膚に挿入される,経皮吸収製剤」とあるのを「…尖った 先端部を備えた針状又は糸状の形状を有し,シート状支持体の片面に保持さ れると共に前記先端部が皮膚に接触した状態で押圧されることにより皮膚に 挿入される,経皮吸収製剤」に訂正するものである。 ここで,「経皮吸収製剤」にかかる「前記先端部が皮膚に接触した状態で 押圧されることにより皮膚に挿入される」との文言は,経皮吸収製剤の使用 態様を特定するものと解されるから,その直前に挿入された「シート状支持 体の片面に保持されると共に」の文言も,前記文言と併せて経皮吸収製剤の 使用態様を特定するものと解することが可能である。すなわち,訂正事項5\nは,経皮吸収製剤のうち,「シート状支持体の片面に保持される」という使 用態様を採らない経皮吸収製剤を除外し,かかる使用態様を採る経皮吸収製 剤に限定したものといえる。 ところで,本件発明は「経皮吸収製剤」という物の発明であるから,本件 訂正発明も「経皮吸収製剤」という物の発明として技術的に明確であること が必要であり,そのためには,訂正事項5によって限定される「シート状支 持体の片面に保持される…経皮吸収製剤」も,「経皮吸収製剤」という物と して技術的に明確であること,言い換えれば,「シート状支持体の片面に保 持される」との使用態様が,経皮吸収製剤の形状,構造,組成,物性等によ\nり経皮吸収製剤自体を特定するものであることが必要である。 しかしながら,「シート状支持体の片面に保持される」との使用態様によ っても,シート状支持体の構造が変われば,それに応じて経皮吸収製剤の形\n状や構造(特にシート状支持体に保持される部分の形状や構\造)も変わり得 ることは自明であるし,かかる使用態様によるか否かによって,経皮吸収製 剤自体の組成や物性が決まるという関係にあるとも認められない。 したがって,上記の「シート状支持体の片面に保持される」との使用態様 は,必ずしも,経皮吸収製剤の形状,構造,組成,物性等により経皮吸収製\n剤自体を特定するものとはいえず,訂正事項5によって限定される「シート 状支持体の片面に保持される…経皮吸収製剤」も,「経皮吸収製剤」という 物として技術的に明確であるとはいえない(なお,「シート状支持体の片面 に保持される」との用途にどのような技術的意義があるのかは不明確といわ ざるを得ないから,本件訂正発明をいわゆる「用途発明」に当たるものとし て理解することも困難である。)。 そうすると,訂正事項5による訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 は,技術的に明確であるとはいえないから,訂正事項5は,特許請求の範囲 の減縮を目的とするものとは認められない。 なお,仮に,「シート状支持体の片面に保持されると共に」の文言が経皮 吸収製剤の使用態様を特定するものではなく,「尖った先端部を備えた針状 又は糸状の形状を有し」との文言と同様に経皮吸収製剤の構成を特定するも\nのであるとすれば,本件訂正発明は,「シート状支持体の片面に保持された 状態にある経皮吸収製剤」になり,構成としては「片面に経皮吸収製剤を保\n持した状態にあるシート状支持体」と同一になるから,訂正事項5は,本件 訂正前の請求項1の「経皮吸収製剤」という物の発明を,「経皮吸収製剤保 持シート」という物の発明に変更するものであり,実質上特許請求の範囲を 変更するものとして許されないというべきである(特許法134条の2第9 項,126条6項)。
・・・
被告は,訂正事項5は,請求項1の経皮吸収製剤に対して,本件明細書中 に記載され,請求項19においても記載されているシート状支持体の構成を\n追加したものであり,両者の構成及び関係は本件明細書の記載上明確である\nから,物としての態様(構成)が明確でないとの批判も当たらないし,特許\n法上,物の発明において使途の構成を規定してはいけないというような制限\nはなく,本件訂正発明が飽くまで経皮吸収製剤の発明であって,経皮吸収製 剤保持シートの発明でないことは,訂正後の請求項1の文言から明らかであ る,などと主張する。
しかしながら,訂正事項5は,経皮吸収製剤のうち,「シート状支持体の 片面に保持される」という使用態様を採らない経皮吸収製剤を除外し,かか る使用態様を採る経皮吸収製剤に限定したものとみるべきであり,「経皮吸 収製剤」自体の構成を更に限定するものとみるのは相当でないこと,そして,\n訂正事項5が,使用態様の限定であるとしても,かかる限定によって,経皮 吸収製剤自体の形状,構造,組成,物性等が決まるという関係にあるとは認\nめられず,本件訂正後の経皮吸収製剤も技術的に明確であるといえないこと は,いずれも前記のとおりである。

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平成27(行ケ)10239  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年12月26日  知的財産高等裁判所(第2部)

 無効審判について請求棄却審決が維持されました。取り消し理由の一つが訂正要件違反(実質上拡張変更)でしたが、否定されました。
 そこで,134条の2第9項で準用する126条6項の規定の趣旨や,平成6年 法律第116号による特許法の改正は,あらゆる発明について目的,構成及び効果\nの記載を求めるのではなく,技術の多様化に対応した記載を可能とし,併せて制度\nの国際的調和を図ることを目的として,同法律による改正前の特許法36条4項が 発明の詳細な説明の記載要件として規定していた「発明の目的,構成及び効果」を\n削除したにとどまり,同法126条2項の実質上特許請求の範囲を拡張・変更する 訂正の禁止の規定は,実質的改正はされていないこと(甲60)を踏まえて,以下, 検討する。
・・・
(3) 前記(2)の記載によれば,本件発明1について,次のとおり,認められる。 すなわち,本件発明1は,バラスト水処理装置については,今後設置が義務付け られるにもかかわらず,船舶にその適当な設置場所を確保することが困難な状況に あり,船体設計の大幅な変更を必要とせず,しかも,新造船に設置する場合にも, 既存の船舶を改造して設置する場合にも容易に適用可能な船舶が望まれていたこと\nに鑑み,多種多様な船舶に対して,多種多様な方式のバラスト水処理装置を船内適 所に容易に設置可能とする船舶を提供することを目的とするものである(【000\n5】〜【0007】)。 そして,本件発明1は,この課題を解決するために,船舶後方で,吃水線よりも 上方に位置する舵取機室内に,バラスト水処理装置を配設するという手段を採用し た(【0008】)。 その結果,バラスト水処理装置を船舶後方の舵取機室内に配設したことから,船 体構造や船型を大きく変更することなく,船舶内の空間を有効利用して種々のバラ\nスト水処理装置を容易に設置することができ,また,バラスト水処理装置を配設し た舵取機室が吃水線よりも上方に位置することから,緊急時にバラスト水を容易に 船外へ排水することができるという効果を奏する(【0009】)。
(4) これに対し,訂正事項1は,1)「バラスト水処理装置」によって「バラス ト水中の微生物類を処理して除去または死滅させる」時期を,「バラスト水の取水時 または排水時」という択一的な記載から「バラスト水の取水時」という限定的な記 載に変更し(構成要件A),2)「バラストタンク」及び「バラスト水配管系統に設け られ,機関室に設置されたバラストポンプ」についての記載を追加し(構成要件A),\n3)構成要件Bないし構\成要件Eについての記載を追加し,さらに,4)「緊急時に前 記バラスト水処理装置からバラスト水を船外に排水できるように構成する」との記\n載を追加する(構成要件G)ものであり,それによって「船舶」の発明である本件\n発明1を限定し,同じく「船舶」の発明である本件訂正発明1とするものである。 これらのうち,1)バラスト水処理装置へのバラスト水の供給時期が択一的であっ たものを1つの時期に限定した点は,本件発明1に新たな構成を付加するものでは\nなく,本件発明1の課題に含まれない新たな課題を解決するものではないことは明 らかである。
2)バラストタンク,バラスト水配管系統及びバラストポンプの記載を追加した点 は,本件発明1に新たな構成を付加するものであるが,本件発明1は,バラスト水\n処理装置を備えた船舶の発明であり,バラスト水処理装置を備えた船舶において, バラスト水を積載するバラストタンク,バラスト水の配管系統,バラスト水の取水 と排水のためのバラストポンプが備えられていることは周知の事項であるから(甲 30〜甲33),これらの記載の追加は,本件発明1の課題に含まれない新たな課題 を解決するものではない。
3)構成要件Bないし構\成要件Eについての記載を追加した点は,本件発明1に新 たな構成を付加するものであるが,本件発明1は,バラスト水処理装置を備えた船\n舶の発明であるところ,構成要件Bないし構\成要件Eは,バラスト水処理装置を備 えた船舶において備えられているバラスト水配管系統の構成について,バラスト水\n処理装置が装置入口側配管及び装置出口側配管を介してバラスト水配管系統と連結 され(構成要件B),装置入口側配管,装置出口側配管,連結点間配管に設けられた\n本件各開閉弁と,取水管路の一部を構成するが排水管路の一部を構\成しない処理装 置配管系統,取水管路も排水管路も構成しない連結点間配管を備え(構\成要件C− 1,C−2,D−1,D−2),バラストポンプと装置入口側連結点との間のバラス ト水配管系統に設けられた,バラストポンプから装置入口側連結点へ向かう方向の 流れのみを許容する逆止弁を備えること(構成要件E)を特定して,本件発明1に\nおいて多種多様に構成することが可能\であったバラスト水配管系統の構成を限定し\nているものであって,本件訂正明細書を踏まえて,構成要件Bないし構\成要件Eの 構成を検討しても,その構\成の追加により本件発明1の課題に含まれない新たな課 題を解決するものとは認められない。
4)「緊急時に前記バラスト水処理装置からバラスト水を船外に排水できるように 構成する」との記載を追加した点は,本件発明1に緊急排水用管路という新たな構\ 成を付加するものであるが,前記(2)のとおり,本件発明1の緊急時にバラスト水を 容易に船外へ排水することができるという効果を,当業者にとって自明な構成によ\nり具体化したものにすぎないから,その構成の追加により本件発明1の課題に含ま\nれない新たな課題を解決するものとまでは認め難い。
(5) また,本件発明1及び本件訂正発明1は,物の発明であるが,訂正事項1 の内容からすれば,特許法101条1号及び3号の間接侵害の成立範囲が訂正事項 1により左右されることはおよそ考え難い。 原告らは,訂正事項1により同条2号の間接侵害の成立範囲が広がる可能性があ\nり,具体的には,訂正事項1により追加された配管構造等に関し,これを生産する\n等の行為について同条2号の間接侵害が成立するおそれがあると主張するが,訂正 事項1により同条2号の間接侵害の成立範囲が広がるものとは認められない。すな わち,同条2号の間接侵害は,発明の対象である「物の生産に用いる物」のうち「そ の発明による課題の解決に不可欠なもの」に限って成立するものであり,その成立 範囲は,その発明の構成要件中の本質的部分を実現するために不可欠な部品に限ら\nれるというべきであるが,前記(4)のとおり,訂正事項1により,本件発明1の課題 に含まれない新たな課題が,本件訂正発明1の課題となったものとは認められない。 したがって,たとえ原告ら主張の本件バラスト水配管系統等を現実的に想定できた としても,訂正事項1が,本件訂正発明1の課題に本件発明1の課題と異なる新た な課題を追加するものではない以上,その課題の解決に不可欠なものの範囲,すな わち,その発明の構成要件中の本質的部分を実現するために不可欠な部品の範囲も,\n本件訂正発明1と本件発明1とで異なるものではないというべきであるから,訂正 事項1により同条2号の間接侵害の成立範囲が広がるものとは認められない。

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平成27(行ケ)10216  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年8月29日  知的財産高等裁判所

 クレームの用語について、原文に基づく誤訳訂正を求めました。裁判所は、実質上変更となるとした審決を維持しました。
 (3) 本件公報に接した当業者の認識について
ア 前記(2)イのとおり,本件訂正前の明細書には,燐酸を示す化学式として, ホスホン酸の化学式が6か所にわたり記載されているというのであるから,「スルホ ン酸,燐酸及びカルボン酸からなる群」に含まれない「オクタデシルホスホン酸」 が作用成分として記載されていることとも相まって,本件公報に接した当業者は, 「燐酸」又は「リン酸」という記載か,ホスホン酸の化学式及び「オクタデシルホ スホン酸」という記載のいずれかが誤っており,請求項1の「燐酸」という記載に は「ホスホン酸」の誤訳である可能性があることを認識するものということができ\nる。
イ しかし,更に進んで,本件公報に接した当業者であれば,請求項1の「燐 酸」という記載が「ホスホン酸」の誤訳であることに気付いて,請求項1の「燐酸」 という記載を「ホスホン酸」の趣旨に理解することが当然であるといえるかを検討 すると,前記(1)イのとおり,請求項1の「燐酸」という記載は,それ自体明瞭であ り,技術的見地を踏まえても,「ホスホン酸」の誤訳であることを窺わせるような不 自然な点は見当たらないし,前記(2)アのとおり,本件訂正前の明細書において,「燐 酸」又は「リン酸」という記載は11か所にものぼる上,請求項1の第2の処理溶 液の作用成分を形成するアニオン界面活性剤としてスルホン酸,カルボン酸と並ん で「燐酸」を選択し,その最適な実施形態を確認するための4つの比較実験におい て,燐酸や燐酸基が使用されたことが一貫して記載されている。 そうすると,化学式の記載が万国共通であり,その転記の誤りはあり得ても誤訳 が生じる可能性はないことを考慮しても,本件公報に接した当業者であれば,請求\n項1の「燐酸」という記載が「ホスホン酸」の誤訳であることに気付いて,請求項 1の「燐酸」という記載を「ホスホン酸」の趣旨に理解することが当然であるとい うことはできない。 以上によれば,本件訂正事項(燐酸→ホスホン酸)を訂正することは,本件公報 に記載された特許請求の範囲の表示を信頼する当業者その他不特定多数の一般第三\n者の利益を害することになるものであって,実質上特許請求の範囲を変更するもの であり,126条6項により許されない。

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平成26(ネ)10109  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年10月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 訂正主張は時機に後れたとはないと判断されたものの、実質上変更に該当すると判断されました。
 被控訴人らは,控訴人による本件訂正に係る訂正の対抗主張は時機 に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)に当たり,却下されるべきで ある旨主張するが,控訴人が,無効2012−800073号の無効審判請 求事件において,本件訂正に係る訂正請求を行うに至った経過(前記第2の 2の「前提事実」(3))及び原判決の判断内容等に鑑みれば,控訴人が,当審 で提出した平成27年3月20日付け控訴人第2準備書面において初めて本 件訂正に係る訂正の対抗主張を行ったことが,時機に後れたものということ はできないから,被控訴人らの上記主張は理由がない。
・・・
そこで,以上を踏まえて検討するに,本件訂正における訂正事項1)は,本件訂正前の請求項1について,同請求項の「水溶性かつ生体 内溶解性の高分子物質」の前に「シート状の支持体の少なくとも一方 の面に経皮吸収製剤が1又は2個以上保持され,皮膚に押し当てられ ることにより前記皮膚吸収製剤が皮膚に挿入される経皮吸収製剤保持 シートであって,」(構成要件O)を新たに加え,同請求項の「経皮\n吸収剤。」(構成要件G)を「である,経皮吸収製剤保持シート。」\n(構成要件H’)に訂正するというものであり,発明の対象を「経皮\n吸収製剤」という物の発明から「経皮吸収製剤保持シート」という物 の発明に変更するものといえる。 そして,1)本件訂正前の特許請求の範囲中には,請求項19として, 「シート状の支持体の少なくとも一方の面に請求項1〜17のいずれ かに記載の経皮吸収製剤が1又は2個以上保持され,皮膚に押し当て られることにより前記皮膚吸収製剤が皮膚に挿入される経皮吸収製剤 保持シート」との記載があり,「経皮吸収製剤」の発明とは別に, 「経皮吸収製剤保持シート」の発明の記載があること,2)本件明細書 には,「経皮吸収製剤」の発明は,「難経皮吸収性の薬物等であって も高い効率で皮膚から目的物質を吸収させることができる」という効 果(段落【0059】)を奏することが,「経皮吸収製剤保持シート」 の発明は,「本発明の経皮吸収製剤を簡便かつ効率的に投与すること ができる」という効果(段落【0060】)を奏することが記載され るなど,「経皮吸収製剤」の発明と「経皮吸収製剤保持シート」の発 明とは,構成及び効果を異にする別個の発明として開示されているこ\nとを併せ考慮すると,本件訂正前の請求項1の「経皮吸収製剤」とい う物の発明を「経皮吸収製剤保持シート」という物の発明に変更する 訂正事項1)に係る訂正は,実質上特許請求の範囲を変更するものとし て,特許法134条の2第9項において準用する同法126条6項に 違反するものと認められる。仮にこのような物の発明の対象を変更す る訂正が許されるとすれば,「その物の生産にのみ用いる物」又は 「その物の生産に用いる物」の生産等の行為による間接侵害(同法1 01条1号ないし3号)が成立する範囲も異なるものとなり,特許請 求の範囲の記載を信頼する一般第三者の利益を害するおそれがあると いえるから,前記(イ)で述べた同法126条6項の規定の趣旨に反す るといわざるを得ない。他方で,本件においては,請求項19の「経 皮吸収製剤保持シート」の発明について,発明の対象を変更すること なく必要な訂正を行い,当該請求項に基づいて特許権を行使すること も可能であるから,請求項1について,発明の対象の変更となるよう\nな訂正をあえて認めなければ,特許権者である控訴人の権利保護に欠 けるという特段の事情もない。

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平成26(ワ)23732  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年6月26日  東京地方裁判所

 構成要件1Bを有していないとして技術的範囲外と判断されました。なお、原告は、侵害訴訟の終結時期に訂正審判請求を行い、これに基づいて技術的範囲に属するとの主張をしましたが、裁判所は、これについて認めないと判断しました。
 原告が本件訴訟の係属後にした訂正審判請求について付言しておく。
(1) 原告は,平成27年3月11日付けで訂正審判(訂正2015−39022。以下「本件訂正審判」という。)を請求し,本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲の訂正を求めているが(甲8,9),明細書,特許請求の範囲又は図面の訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであってはならない(特許法126条6項)から,本件訂正審判の結果によって,被告製品が本件各特許発明の技術的範囲に属するものとは認められない旨の前記判断が覆ることは,理論上,あり得ない(仮に,誤ってそのような訂正が認められたときは,特許法123条1項8号所定の無効事由が生じたことになる。)。
(2) 原告が本件訂正審判において求めている特許請求の範囲の訂正には,本件特許発明1の構成要件1A―\(3)及び1−Bについて,「尾根構造体の短手方向に支柱を連結する複数のシザー組立体の中央部に前記幕体支持ポールを垂直に連結し」,「複数のシザー組立体」(下線部は,いずれも訂正箇所を示す。)などとすることが含まれる(甲8)。\nしかし,構成要件1A−(2)は,「シザー組立体は2本のバーをX字状に回動自在に連結してパンタグラフ状に折り畳み自在とした構造とし」としているから,シザー組立体は2本のバーをX字状に連結したものを1単位と解すべきであるところ,仮に,構\成要件1A−(2)を「複数のシザー組立体の中央部」と訂正したとしても,シザー組立体が三つ,又は,五つなど奇数単位存在する場合には,その中央部は,シザー組立体とシザー組立体の間ではなく,2本のX字状のバーの交差する箇所を中央部として幕体支持ポールを垂直に連結することを示すと解さざるを得ない。このような例は,本件明細書に記載されておらず,シザー組立体の単位数が奇数か偶数かで幕体支持ポールの位置が異なることになる。 したがって,本件訂正審判に係る訂正は,少なくとも,特許法126条5項に違反するものであって,認められるべきものではないと思われる。
(3) 原告は,本件訂正審判の請求後,特許庁長官に対し,審判請求書を補正する旨の同年4月7日付け手続補正書(甲9)を提出したが,同補正書によれば,原告が求めている特許請求の範囲の訂正には,構成要件1Cについて,「該補強フレームの一端は最も外側に位置する幕体支持ポールの上端位置に係止し,補強フレームの他端は隣接する幕体支持ポールに挿着されたスライトブラケットに上方から当接させることにより,幕体支持ポールを垂直に保持しながら,シザー組立体の伸張を維持しテント側面の強度を向上しつつ,直立する妻面を構\成するようにしたことを特徴とする」(下線部は,いずれも訂正箇所を示す。)などとすることが含まれるようである(同補正書の1頁には,「補正対象項目名」として「請求の理由」とあ り,「請求の趣旨」とは記載されていないが,訂正特許請求の範囲を含む同補正書2頁以下の記載によれば,請求の趣旨を補正することが当然の前提となっているものと考えざるを得ないし,原告の同月8日付け準備書面2〔4頁〕にも,これに沿う記載がある。)。 しかし,訂正審判における審判請求書について,請求の趣旨を補正することは認められていない(特許法131条の2第1項1号)。 なお,仮に,原告が本件訂正審判に係る請求の趣旨の補正を求めていないとすれば,同補正書の記載はおよそ無意味であるというほかはなく,原告がいかなる目的で同補正書を特許庁長官に提出し,また,本件訴訟において書証として申し出たのか,理解に苦しむところといわなければならない。
(4) 以上より,本件訴訟において,原告が本件訂正審判において求めている訂正を前提として,本件各特許発明の技術的範囲に被告製品が属するか否かを検討する必要がないことは,明らかである。

◆判決本文

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平成26(行ケ)10105等  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年4月23日  知的財産高等裁判所

 判決文が全部で230頁あります。争点の一つが訂正要件違反(「映像番組を代表する情報を出力するカメラ」が「番組情報を出力するカメラ」への訂正)が、実質上の拡張に当たるかです。知財高裁は、実質上の拡張であると判断しました。
 上記記載によれば,本件発明22の「デジタル映像記録装置」は,「映像番組を代表する情報を出力するカメラ」を備えることを理解することができる。\nしかるところ,本件訂正前の請求項22には,「映像番組を代表する情\n報」について,その具体的構成を特に規定する記載はなく,また,本件明細書(甲33)の発明の詳細な説明においても,「映像番組を代表\する情報」の具体的構成について述べた記載はない。\n一方で,本件訂正により削除された本件訂正前の請求項34は,・・・というものであり(甲24,33),その記載中には,「映像番組を代表する情報」と「前記映像番組の情報」の用語が区別して用いられている。\n以上によれば,本件訂正前の請求項22の「映像番組を代表する情報」は,その文理上,「映像番組」の情報あるいは「映像番組」に係る情報のうちの「代表\する」情報を意味するものと解される。 次に,本件訂正前の請求項22には,「番組情報をデジタル圧縮する手段」,「前記パーソナルコンピューターを使用したオフライン編集に合った番組情報」,「オンライン編集に合った番組情報」,「前記番組情報」\nとの記載があり,「番組情報」の用語が用いられている。 しかるところ,本件訂正前の請求項22には,「番組情報」について,その具体的構成を特に規定する記載はなく,また,本件明細書の発明の詳細な説明においても,「番組情報」の具体的構\成について述べた記載はない。 本件訂正前の請求項22の記載を全体としてみると,「番組情報」にいう「番組」とは,「映像番組」を意味するものであり,「番組情報」は,「映像番組」の情報あるいは「映像番組」に係る情報をいうものと解される。 そうすると,本件訂正前の請求項22の「映像番組を代表する情報」は,「番組情報」に含まれる情報であって,「番組情報」と上位概念・下位概念の関係にあるものと解される。
イ ・・・上記請求項22の記載によれば,訂正事項2に係る本件訂正により,「映 像番組を代表する情報を出力するカメラ」が「番組情報を出力するカメラ」と訂正されたものであり,この訂正により,「カメラ」が出力する対象が「映像番組を代表\する情報」から「番組情報」に変更されたことを理解することができる。 しかるところ,前記アのとおり,「映像番組を代表する情報」は,「番組情報」に含まれる情報であって,「番組情報」と上位概念・下位概念の関係にあるものと解されるから,本件訂正前の請求項22の「カメラ」が出力する対象は,「映像番組を代表\する情報」であったのが,本件訂正後の請求項22の「カメラ」が出力する対象は,「映像番組を代表する情報」以外の「番組情報」に含まれる情報をも含むものとなり,この点において,本件訂正は,本件訂正前の請求項22について,実質上特許請求の範囲を拡張するものであると認められる。\n

◆判決本文

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平成24(行ケ)10135 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年12月03日 知的財産高等裁判所

 訂正要件を満たさないとした審決が維持されました。
 原告らは,実施形態【図7】と実施形態【図3】とは,パーツの形態が大きく相違するにもかかわらず,実施形態【図3】の前身頃及び後身頃の各パーツの実線を強引に実施形態【図7】のパーツの実線に引きずり込んで,実施形態【図7】の前身頃及び後身頃の各位置を解釈しているにほかならず,実施形態【図7】のパーツの本来の前身頃及び後身頃の各位置を正しく解釈していることにはならないから,審決の訂正要点aの認定手法は誤りであると主張する。しかし,実施形態【図3】については,各パーツの図面符号「12」,「14」,「16」,「18」は,図面上のそれぞれ実線で区劃された範囲のものを指していることが見て取れるから,「前身頃」や「後身頃」は,「股部パーツ」や「大腿部パーツ」と同じく下肢用衣料を構成するパーツであって,「前身頃」は図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲のもので,「後身頃」も同様に,図面符号「14」で指示された実線で区劃された範囲のものと解することができる。そして,実施形態【図3】と実施形態【図7】とは,下肢用衣料が「前身頃12」,「後身頃14」,「股部パーツ16」及び「大腿部パーツ18」で構\成されていることには変わりがないので,実施形態【図7】においても実施形態【図3】と同様に,前身頃と後身頃は,図面符号「12」と「14」で指示された実線で区劃された範囲のもの(パーツ)と解するのが自然であり,このように解することに,格別,不都合な点は見当たらない。よって,審決における「前身頃」及び「後身頃」の認定及びその手法に誤りはない。
イ 原告らは,実施形態【図7】のパーツの前身頃及び後身頃の各位置を正しく判断するには,実施形態【図7】の各パーツを縫製して下肢用衣料とした場合に,実施形態【図7】のパーツはどこが前身頃及び後身頃に位置するか正しく判断することが必要であり,また,前身頃と後身頃の意味はそれぞれ「衣類の身頃のうち,胴体の前の部分をおおうもの」と「衣類の身頃で胴体の後ろの部分をおおうもの」であって(甲1),その意味を下肢用衣料(ショーツ)に当てはめると,前身頃とは,下肢用衣料(ショーツ)の身頃のうち,下半身の前の部分を覆うものとなり,後身頃とは,下肢用衣料(ショーツ)の身頃で下半身の後ろの部分を覆うものとなり,さらに,1つのパーツにおいて,前の部分を覆うものを前身頃とし,この前の部分を覆う境界の箇所から後側に直ちに回り込む箇所(本件帯状部分)を後身頃とすることは,例えば甲13〜甲18に示されるように,当業者において周知であるから,審決における「前身頃」及び「後身頃」の認定には誤りがあると主張する。しかし,本件明細書において,【図7】の左右において下方に垂下する2つの本件帯状部分が「後身頃」の構成部分である旨の記載や示唆は存在せず,本件帯状部分が「後身頃」の構\成部分であるとは,窺えない。また,「前身頃」の意味が「衣類の身頃のうち,胴体の前の部分をおおうもの」であり,「後身頃」の意味が「衣類の身頃で胴体の後ろの部分をおおうもの」であって(甲1),1つのパーツにおいて,前の部分を覆うものを「前身頃」といい,この前の部分を覆う境界の箇所から後側に直ちに回り込む箇所を「後身頃」ということがあるとしても(甲13〜甲18),乙1及び乙2によれば,下肢用衣料において,下半身の前の部分の延長となる後ろの部分の一部をも覆うパーツも加えて「前身頃」ということもあるのであり,この場合には訂正前の実施形態【図7】と同様のものとなる。したがって,前身頃及び後身頃という用語の解釈として,原告らが主張するような解釈において当該技術分野の常識となっているということはできない。よって,「前身頃」及び「後身頃」という用語の意味は,明細書及び図面の記載全体から把握する必要があり,そのようにして理解される意味は上記のとおりであって,審決の「前身頃」及び「後身頃」の認定及びその手法に誤りはない。
・・・
2 取消事由3(審決の訂正目的に対する判断の誤り)について
上記1で判示したとおり,本件明細書の段落【0030】及び【図7】には,実施形態【図7】が記載され,この実施形態における「前身頃」が図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲のものを指していること,そして,「後身頃」が,図面符号「14」で指示されたものを指していることは,自然に理解できるもので,不明瞭な記載や誤記の存在は見当たらず,逆に,【図7】において図面符号「12」で指示される前身頃の本件帯状部分が後身頃の構成部分であることは,窺えない。そうである以上,訂正要点aが,誤記の訂正,或いは,明瞭でない記載の釈明を目的にしているということはできない。
・・・
3 取消事由4(審決の実質変更・拡張に対する判断の誤り)について
 本件明細書の請求項1は,本件訂正によって訂正されていないから,本件発明は,本件訂正の前後において,「後身頃」を,「足刳り形成部を有した」と限定されたものとして発明特定事項としている。次に,上記1で認定したところを踏まえ,本件訂正前の本件発明についてみると,本件明細書の記載全体からして,先に(上記1で)説示したように,本件発明の「前身頃」は,実施形態【図3】,実施形態【図7】及び実施形態【図8】の,いずれも図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲のもの,「後身頃」も同様に「14」で指示された範囲のものと解することができる。これに対し,本件訂正の,特に訂正要点aにより,【図7】の図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲内にある本件帯状部分が,「後身頃」の構成部分となり,本件訂正後の本件発明の「前身頃」は,【図7】を参照した実施形態でいえば,図面符号「12」で指示された実線で区劃された範囲から上記本件帯状部分を除いた範囲のものということになり,本件発明の発明特定事項である「前身頃」の技術的内容が変更されており,併せて,「後身頃」の技術的内容も実質的に変更されている。また,実施形態【図7】が,図面符号「14」で指示された実線で区劃された範囲のものである「後身頃」に足刳り形成部を有していないため,本件発明の発明特定事項を満たしておらず,本件発明の構\成に含まれないものであったが,本件訂正後では,実施形態【図7】は,本件発明の構成に取り込まれており,特許請求の範囲は,拡張又は変更されている。以上のとおりの判断を示した審決に誤りはない。\n

◆判決本文

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平成22(ワ)24818 特許権差止等請求事件 平成23年11月25日 東京地方裁判所

 訂正要件を満たさないため無効理由を解消できず、104条の3の規定により、権利行使不能と判断されました。
 本件特許発明は「鍵」発明であり,ロータリーディスクタンブラー錠の構成に関する上記限定を加えたからといって,「鍵」自体の構\成が限定されるとは認められないのであるから,上記限定によって,本件特許発明に係る特許請求の範囲を減縮するものということはできず,また,本件特許発明の「鍵」の構成が明瞭になるとも,誤記又は誤訳が訂正されることになるということもできない。したがって,本件訂正請求は,特許法134条の2第1項ただし書各号所定の事項を目的とするものとは認められないから,不適法なものであり,これによって,本件特許が有する前示1の無効理由を解消することはできない。\n

◆判決本文

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◆平成20(行ケ)10339 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月24日 知的財産高等裁判所

  訂正が実質上特許請求の範囲を変更するものでないとした審決が維持されました。
   「ところで,「刻々の動作変化」という文言は,平成8年12月24日付けの補正(甲19)において初めて特許請求の範囲で用いられたものであるが,上記イ(カ)bの第1表及びそれに関する説明は,出願当初の本件特許明細書(甲3)から記載されていたのであり,本件特許明細書に,上記イ(カ)bの第1表記載の「i」毎の変化が本件発明における「刻々の動作変化」に当たると解することを妨げる記載があったとも認められない。したがって,「i」毎の変化は本件発明における「刻々の動作変化」に当たると解することが,本件特許の出願経過(特許請求の範囲及び特許明細書の記載の変遷)に照らして許されないというべき理由はない。」

◆平成20(行ケ)10339 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月24日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10268 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年11月28日 知的財産高等裁判所

   誤記訂正が、実質上の拡張または変更に当たるとして、訂正を認めなかった審決が取り消されました。
  「0.5重量%以下」との記載は,確かに,被告が主張するように,その記載自体を独立したものとして見る限り,数値及びその範囲として明確であり,疑問が生じることはない。しかしながら,特許請求の範囲の意味内容を確定する場合には,当該記載の前後の単語・文章,文脈,当該請求項の全体の意味内容との関係で検討すべきであり,被告が主張するように,問題となった記載を前後から切り離して取り上げて意味内容を把握し,その単純な総和として,確定すべきものではない。確かに,発明の詳細な説明に記載した発明のすべてを特許請求の範囲に記載して権利化しなければならないわけではないものの,発明の詳細な説明に登場するいくつかの実施例のうち,請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」に対応するのは,実施例8のみであり,出願人は,本件補正によって大部分の権利範囲を失うことになる。しかも,特許出願に係る発明が境界域である「0.5重量%の水酸化カリウム」の場合に限定されることになるというだけではなく,特許請求の範囲に提示された「0.5重量%未満」の範囲は特許法36条4項の定める要件を欠如することになりかねない。仮に,出願人が真意に基づきそのような補正をしたというのであれば,権利化の際に通常選択する合理的な経済行為からは,大きく乖離するものであったといわざるを得ない。・・・これらの記載によれば,本件発明は,水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの双方又はいずれか一方を含むものとして記載されており,その双方とも含まないことを前提とした記載は一切なく,請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」との記載は,「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であると容易に理解するに至ることは明らかである。」

 また、実質上拡張変更については、下記のように述べました。
 「請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」の記載は,「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であるとする場合,この2つの文言のみに即して形式的に考察すると,「0.5重量%以下の水酸化カリウム」の範囲は,「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の範囲と明らかに異なるから,その限りでは特許請求の範囲が変更となるのではないかという問題があるかのようであるが,請求項1の「0.5重量%以下の水酸化カリウム」とある記載は,上述のとおり,特許請求の範囲の記載からだけでは不明確であり,そこで,発明の詳細な説明を参酌すると,「0.5重量%以下の水酸化カリウム」は,「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であることが明らかであるというのであるから,その実質を捉えて考察すると,特許請求の範囲の拡張や変更はされていないということができ,同法126条4項違反の問題は生じないものというべきである。」

◆平成18(行ケ)10268 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年11月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10070 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年01月25日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について実質上変更の判断です。裁判所は、実質上の変更に当たるとした審決を取り消しました。
  「被告は,当初明細書には,特許査定時の請求項3に係る発明の目的について,「所望の番組の放送チャンネルおよび放映開始時刻を確実に知ることができ,且つサーチした番組を自動的に受信すること」,「当該番組サーチ装置の操作者などが所望の番組を見逃す危険性を低くする」と示されているだけであり,このような極めて一般的な目的から,請求項1における,番組を表形式でその一部を出力するという具体的な目的,該番組表\を更新させるという具体的な目的及び「毎週キーという一種の専用キーで,一旦,ある番組をサーチすると,翌週以降に放映される同じ番組を簡単にサーチすることができる」という具体的な目的が直ちに導出されるということはできないから,訂正事項bは,特許査定時の請求項3に記載された発明の具体的な目的の範囲を逸脱すると主張する。しかしながら,発明の目的は特許請求の範囲の請求項において規定された構成によって達せられるものであり,新たに構\成が付加されたり構成が限定されれば,目的も,それに応じて,より具体的なものになることは当然であって,訂正後の発明の構\成により達せられる目的が訂正前の発明の構成により達せされる上位の目的から直ちに導かれるものでなければ,発明の目的の範囲を逸脱するというのであれば,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正は事実上不可能\になってしまうから,相当でない。そうであれば,訂正事項により付加,限定された構成により達成される内容が,訂正前の発明の目的に含まれるものであれば足りると解するのが相当であり,本件においては,上記(2)のとおり,訂正事項bの具体的内容は,いずれも,特許査定時の請求項3に係る発明の目的に含まれる。・・・ さらに,被告は,請求項1において新たに付加された「番組表出力手段」,「更新手段」という構\成要件については,その用語自体,当初明細書には何ら記載されていなかったものであって,訂正明細書の段落【0014】,【0015】において,上記ステップ110から120に至る処理を「番組表出力手段」,上記ステップ120から150に至る処理を「更新手段」として,それぞれ新たに定義し直し,明細書に初めて出現させたものであるところ,明細書に記載されているからといって,必ずしもその全てが訂正可能\であるとは限らないと主張する。しかしながら,特許請求の範囲を減縮する場合には,新たな構成要件を付加したり,構\成を新たに具体的に限定するのが通常であるから,新たな構成要素を付加したり,構\成要素を新たに具体的に限定することが,直ちに,実質上特許請求の範囲を変更することに当たるものでないことは明らかである。訂正事項bに係る「番組表出力手段」,「更新手段」の内容は,いずれも,当初明細書に記載されているものであって,訂正事項bの「番組表\出力手段」と「指定手段」は,特許査定時の請求項3における「記憶手段」と「指定手段」により実現される内容をより具体的に規定したものであり,「更新手段」と「サーチ手段」は,特許査定時の請求項3の「記憶手段に記憶されているテレビ放送の中から,上記指定手段により指定された内容と同一の番組を,異なる時間帯の番組よりサーチするサーチ手段」により実現される内容をより具体的に規定したものであるから,明細書に接した第三者であれば,訂正が可能であることを予\測することができるのであって,訂正事項bによる訂正が一般第三者の利益を損なうものとはいえない。」

  こちらは本件の分割出願、その分割出願に関する判断です。
◆平成18(行ケ)10071 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年01月25日 知的財産高等裁判所
◆平成18(行ケ)10072 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年01月25日 知的財産高等裁判所  

◆平成18(行ケ)10070 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年01月25日 知的財産高等裁判所

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◆H16. 5.14 東京地裁 平成13(ワ)12933 特許権 民事訴訟事件

 出願公告後にした構成要件を追加する補正が、特許請求の範囲を実質上変更するものであり本件特許には無効理由ありとして、損害賠償請求を棄却しました。
「平成6年改正前特許法64条,126条2項が公告決定後の補正につき上記のように補正の要件を規定している趣旨は,特許出願人と第三者との間の利害の調整にあるところ,特許請求の範囲に新たな構成を付加することで表\面的には特許請求の範囲の減縮に当たっても,実質的にはこれによって全く別個の発明になるような場合にまで補正を許容すると,補正後の別個の発明の技術的範囲について補正前の特許発明の出願日に遡って出願公告に伴う仮保護の権利を与えることとなり,特許公報の記載を信頼して行動する第三者に対して不測の不利益を与えることとなるからである。そして,この場合において,補正前の特許請求の範囲に係る発明に新たに付加された構成が,同発明の特許出願当時,当業者にとって周知の技術手段(周知技術)に該当しない場合には,補正前の特許発明と補正後の特許請求の範囲の記載に係る発明は,特段の事情のない限り,別個の発明というべきである。けだし,周知の技術手段を付加するものである限りは,発明はその同一性を失うことがなく,特許請求の範囲も実質上変更されることはないが,周知でない新規な技術手段を付加するときは,特段の事情のない限り,構\成を異にすることになり,別個の発明となってしまうからである。」 と述べました。
実質上の変更に該当するかについては、類型化できるほどの判断例が多くないので、具体的事案について検討してみたいですね。

 

◆H16. 5.14 東京地裁 平成13(ワ)12933 特許権 民事訴訟事件

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◆H15. 2.17 東京高裁 平成15(行ケ)39 特許権 行政訴訟事件

  誤記訂正か実質上の変更かが争われました。
裁判所は、「このような本件明細書の記載に接した当業者が,発明の詳細な説明中の参考例,実施例及び試験例の記載が一貫して誤りであり,特許請求の範囲の請求項1,7の記載が正しいと考えることは,特段の事情がない限りあり得ないというべきところ,・・・・本件明細書の特許請求の範囲の請求項1,7の記載が誤記であること,この−CH2−基の数は,正しくは「1」又は「0」であるべきことは,本件明細書の記載全体から明白であり,当業者はたやすくこのことを認識し得たものと認められ・・・  なお,特許請求の範囲の記載の訂正が,明細書中に記載された特許請求の範囲を信頼する一般第三者の利益を害することになるとして,特許法126条2項(注,平成6年法律第116号による改正前のもの)により許されないとした被告引用の最高裁判決は,いずれも事案を異にし,本件に適切ではない。」と訂正を認めなった審決を取り消しました。

 

◆H15. 2.17 東京高裁 平成15(行ケ)39 特許権 行政訴訟事件

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◆H14.11.20 東京高裁 平成14(行ケ)62 特許権 行政訴訟事件

   訂正審判における「上記目的乃至効果の外に・・・という新たな目的乃至効果を有するものと解され,訂正事項aの訂正は,実質上特許請求の範囲を変更するものである」との判断が争われました。
  裁判所は、「訂正明細書の特許請求の範囲【請求項1】の記載の技術的意義は,【請求項1】の記載自体によって一義的に明確であり,そこに記載された用語の意義を解釈するために,訂正明細書及び登録明細書の発明の詳細な説明や図面等の他の記載を参酌すべきものとは認められない・・・,被告主張の・・・の記載は,発明の詳細な説明中の単なる【発明の実施の形態】に係るものにすぎず,・・・また,・・・の技術的意義をこれらの記載により特定すべきものでもない。そうすると,これらの記載をもって,訂正明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された・・・を,・・・ための構成であると解釈すべき余地はない。・・訂正事項aが・・するために必要な最初の工程に対応する事項であって,・・・ための構\成であるとする審決の判断は,誤りである」と判断しました。

 

 

◆H14.11.20 東京高裁 平成14(行ケ)62 特許権 行政訴訟事件

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