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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

不正競争(その他)

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

令和5(ワ)893  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年3月18日  大阪地方裁判所

 商標権侵害であるとAmazonに申告することは、不正競争行為に該当すると判断されました。

不競法2条1項21号の「虚偽」とは、客観的事実に反する事実であるところ、 本件各申告の内容は、原告各標章を付した原告各商品の販売が被告商標権を侵害 するというものであるから、以下、当該内容が客観的事実に反するか、すなわち、 原告各標章の使用が被告商標権を侵害しないといえるかにつき検討する。
なお、商標権侵害の判断の前提となる商標の類否は、対比される両商標が同一 又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混 同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、使用され た商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、 連想等を総合して全体的に考察すべきであり、かつ、その商品又は役務に係る取 引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断される (最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民 集22巻2号399頁参照)。また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と 解されるものについて、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は 役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、 それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場 合等、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると 思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合には、その構成部 分の一部を抽出し、当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断する ことも許される(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小 法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同 5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年 (行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号56 1頁参照)。
(1) 原告標章1ないし同10と被告商標との対比
ア 原告標章1ないし同10について
原告標章1ないし同10は、「Qbit」、「いつでも」、「簡単」、「トイレ」 の文字(同1、4、5、7、8)及びこれらの文字と丸い絵柄(円の外から 中央右下に向けて濃紺から淡い青を経て白色にグラデーションが施され、円 の内部に「Q」の字を模した白抜きがされたもの)から構成される結合商標 である。これらの標章のうち、「いつでも」、「簡単」の文字部分は、順に、商 品の使用の時期、使用の方法又は効能を表示するものにすぎず、「トイレ」部 分は普通名称であるから、これらが「いつでも簡単トイレ」と一体として表 示されていることを踏まえても、これらの文字部分が商品の出所識別機能を 有しているとはいえず、「Qbit」又は「Qbit」と上記丸い絵柄部分が 強い出所識別機能を有しているといえる。よって、被告商標との類否の判断 にあたっては、文字部分を抽出するのは相当でなく、上記「Qbit」と丸 い絵柄の部分を抽出して対比することが相当である(なお、これらの標章の 中には、Qbitや上記絵柄部分と他の文字部分が、横並びになる構成のも のや上下の構成のものもあるが、これらの構成の相違は、上記結論に影響し ないというべきである。)。 そして、「Qbit」及び丸い絵柄からは「きゅーびっと」との称呼が生 じ、特定の観念は生じない。
イ 被告商標について
被告商標は、片手で長い布様のものを所持する赤ちゃん様の絵柄と「いつ でも」、「どこでも」、「簡単」、「トイレ」との各文字部分から構成される。こ のうち、文字部分は、前記長い布様のものの上に「いつでもどこでも」と「簡 単トイレ」が2段に配置され、「いつ」「どこ」がロゴ化され、「トイレ」のレ の字には、用が足される様子を模式的に示す絵柄が付加されているものの、 商品の使用時期、提供の場所、使用の方法又は効能を表示するものにすぎず、 「トイレ」部分は普通名称であるから、これらが一体として表示されている ことをも踏まえても、これらの文字部分が商品の出所識別機能を有している とはいえず、赤ちゃん様の絵柄部分が強い出所識別機能を有しているという べきである(仮に文字部分の識別力を考慮するとしても、前記の配置やロゴ 化、絵柄の付加といった要素を捨象して考えることはできない。)。よって、 原告標章1ないし同10との類否の判断にあたっては、(標準文字としての) 文字部分を抽出するのは相当でなく、上記赤ちゃん様の絵柄を抽出して対比 することが相当である。そして、当該部分からは特定の称呼、観念は生じない。
ウ 対比
原告標章1ないし同10の「Qbit」又は「Qbit」と丸い絵柄部分 と被告標章の赤ちゃん様の絵柄部分とを比較すると、外観、称呼、観念のい ずれにおいても類似しない(双方の標章の文字部分と上記図柄の組合せを全 体として観察しても同様である。)。この点、被告商標の商標登録後に出願さ れた原告商標1及び原告商標2がいずれも商標登録されるに至ったことは、 上記判断と整合する。
(2) 原告標章11ないし同15について
これらの標章は、「いつでも」、「簡単」、「トイレ」の文字から構成されている が、上記のとおり、これらの文字部分は、商品の使用の方法や効能を表示する ものや普通名称であり、出所識別機能を有しているとはいえないから、商標法 26条1項2号の商標に該当すると認められる。よって、これらの標章に被告 商標権の効力は及ばない。
(3) 小括
したがって、原告各標章を付した商品の販売は、被告商標権を侵害する行為 に当たらないから、これに反する本件各申告の内容は「虚偽」であると認めら れる。
(4) 争点1のまとめ
以上に加え、前記1、2を総合すると、本件各申告は、不競法2条1項21 号の不正競争に当たる。

◆判決本文

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令和5(ネ)1384等  損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和6年1月26日  大阪高等裁判所

大阪高裁は、アマゾンに対してサイト上に掲載した画像等が被告の著作権を侵害する等の申告をした行為が不正競争防止法(不競法)2条1項21号の不正競争行為に該当すると判断されました。1審の判決維持です。なお、著作物性無しと判断されたのは、芸能人を被写体とする写真が印刷された平面的な表\紙及び裏表紙を、できるだけ忠実に再現するため真正面から撮影した画像です。\n

写真集及び卓上カレンダーに係る被告画像1、2及び4ないし10は、 インターネットショッピングサイトにおいて販売する商品がどのような ものかを紹介するために、芸能人を被写体とする写真が印刷された平面\n的な表紙及び裏表\紙を、できるだけ忠実に再現するため真正面から撮影 した画像であり、上記表紙及び裏表\紙以外に背景や余白はないのであっ て、被写体の選択・組合せ・配置、構図・カメラアングルの設定、背景\n等に選択の余地がなく、上記表紙及び裏表\紙ひいてはそこに印刷された 芸能人を被写体とする写真を忠実に再現する以外に、その画像の表\現自 体に何らかの形で撮影者の個性が表れているとは認められないから、上\n記各被告画像には創作性が認められない。したがって、上記各被告画像 は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)\nとはいえず、著作物とは認められないから、一審被告が上記各被告画像 について著作権を有するとは認められない。
(イ) 被告画像3について
単語帳に係る被告画像3も、インターネットショッピングサイトにお いて販売する商品がどのようなものかを紹介するための写真ではあるが、 芸能人を被写体とする写真が印刷された表\紙及び裏表紙を金具のリング\nから取り外し、各写真を表にして平面上に上下に並べ、その右側に一部\n裏表紙と重なる形で、63枚の単語カードを写真側を表\にして金具のリ ングを要として扇状に広げたものを撮影したものであり、正面から撮影 されたものではあるものの、上記単語カードを扇状に広げることによっ てその重なり合いによる陰影が表現され、また、2枚目以降の単語カー\nドの白い縁取りからわずかに各写真が垣間見えるように広げることによ って各単語カードにそれぞれ異なる写真が印刷されていることを表現し\nており、白い背景によって表紙及び裏表\紙の写真等を浮き立たせる効果 も生んでいるといえる。このような手法が商品としての単語帳を紹介す る際にまま見られるもの(乙62、63)であったとしても、その被写 体の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、背景の選択には 複数の余地があり、被告画像3の表現自体に撮影者の個性が表\れている と認められる。したがって、被告画像3は、「思想又は感情を創作的に 表現したもの」といえ、著作物性が認められるから、その撮影者である\n一審被告は被告画像3について著作権を有すると認められる。
(ウ) 以上に対し、一審被告は、被告画像1、2及び4ないし10についても、 手ブレ補正、露出補正、ホワイトバランス等の細かい調整を行い、光の 入り方に気を配って撮影場所にこだわり、複数の写真を撮影してその中 の一番良い写真について彩度、色合いを編集するなどの独自の工夫を凝 らしている旨主張するが、一審被告が主張するそのような工夫は、商品 である写真集ないし卓上カレンダーの表紙及び裏表\紙、ひいてはそこに 印刷された芸能人を被写体とする写真を忠実に再現するためのものであ\nって、上記工夫の結果、それらが忠実に再現された各被告画像が得られ たとしても、その表現自体に何らかの形で撮影者である一審被告の個性\nが表れているとは認められない。したがって、上記一審被告の主張は上\n記(ア)の判断を左右しない。
・・・
ア 上記のとおり、被告サイト上の被告各画像及び商品名のうち、そもそも著 作物性が認められるのは被告画像3のみであり、その余については著作物性 自体が認められず、一審被告が著作権を有しないから、一審原告がその著作 権を侵害した事実はおよそ存在しない。そこで、原告画像3の掲載が被告画 像3についての一審被告の著作権侵害に当たるかにつき、以下検討する。
イ 被告画像3の表現上の本質的特徴は、前記(3)ア(イ)のとおり、本件商品3 を撮影する際の被写体の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、 背景の選択等を総合した表現に認められるところ、画像テンプレートを利用\nして作成された原告画像3は、単語帳から取り外した一部の表紙等を並べて\nその横に単語帳を扇状に広げて置くなどの点で商品の見せ方に関する基本的 なアイデアに被告画像3との共通点はあるが、取り外して並べられたのが表\n紙や裏表紙の写真面か、単語カードの韓国語単語が記載された面か、その枚\n数、色彩及び配置、金具のリングを要として扇状に広げられた単語帳がその 右側に配置されているか左側に配置されているか等の配置、同単語帳の1枚 目のカードに印刷された写真内容、同単語帳の単語カードの枚数、色彩、扇 状の広がり方及び陰影等で異なっていることが一見して明らかであって、そ の素材の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、色彩の配合、素 材と背景のコントラスト等において被告画像3と異なるから、被告画像3の 表現上の本質的特徴を直接感得させるものとはいえない。なお、原告画像3\nで選択された素材のうち、本件商品3の表紙を正面から撮影した画像部分の\nみは被告画像3と共通するが、その画像自体は、被告画像1、2及び4ない し10について検討したと同様、平面的な上記表紙を忠実に再現したのみで\n創作性が認められない部分であるから、同画像部分が共通しているからとい って、原告画像3が被告画像3と類似しているとは到底認められない。した がって、一審原告が原告画像3を原告サイトに掲載したことが、被告画像3 に係る一審被告の著作権を侵害するものとは認められない。
以上によれば、一審被告が、本件各申告によってアマゾンに告知した、一\n審原告が被告サイト上の被告各画像及び商品名についての一審被告の著作権 を侵害しているとの本件各申告の内容は、全て虚偽の事実であったというこ\nとになる。そして、前記第2の2で原判決を補正した上で引用した前提事実 (1)によれば、一審原告と一審被告は競争関係にあるといえ、また、上記著 作権侵害の事実を申告する行為は一審原告の営業上の信用を害する虚偽の事\n実を告知する行為といえるから、本件各申告は、客観的に不競法2条1項2\n1号に該当するということになる。

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令和4(ワ)16072  不正競争防止法に基づく差止請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年2月21日  東京地方裁判所

非たばこ加熱式スティックに関する本件表示は、不競法2条1項20号の品質等誤認惹起行為に該当しないと判断されました。\n

(ア) 判断基準について
不競法2条1項20号は、商品や役務に、その品質や内容を誤認させ るような表示をし、又はその表\示をした商品を譲渡等することにより、 需要者の需要を不当に喚起するとともに競争上不当に優位に立とうとす ることを防止する趣旨の規定であるといえるから、本件表示が本件商品\nの品質及び内容について誤認させるような表示に当たるか否かは、本件\n表示によって、本件商品についての需要者の需要を不当に喚起し、被告\nらが不当に競争上優位に立つことになるか否かによって判断すべきと解 される。
(イ) 本件表示の目的について\n
本件商品は、一般消費者向けの茶葉を原料とする非たばこ加熱式ステ ィックであり(前提事実(2))、本件商品に係る広告においては、本件商 品はたばこであるか否か、有害な成分が入っているか否かについての質 問及び回答が掲載されている(前提事実(3))。このような事実に照らす と、本件表示の目的は、ニコチンの含有量を科学的な正確さをもって示\nすためのものではなく、本件商品が含有する成分は茶葉と同様であって、 たばこのように身体及び精神に悪影響を与えるような程度の量の成分を 含有していないことを示すためのものと認められる。
・・・・
(カ) まとめ
前記(イ)ないし(オ)のとおり、1)本件表示は、ニコチンの含有量を科学\n的な正確さをもって示す目的のものではなく、本件商品が含有する成分 は茶葉と同様であって、本件商品に身体及び精神に悪影響を与えるよう な程度の量の成分を含有していないことを示す目的のものと考えられる こと、2)本件商品が含有するニコチンは、茶葉そのものに含まれていた 内因性由来のものであって、その含有量は、人が摂取しても安全と評価 されており、生理活性がない可能性も指摘されている水準にとどまるこ\nと、3)茶葉を原料とする他の複数の非たばこ加熱式スティックに係る広 告においても、定量下限を1ppmとした分析によりニコチンが検出さ れなかったことを根拠として「ニコチン0」との記載がされているとこ ろ、これらの商品にも当該定量下限を下回る量の内因性由来のニコチン が含まれている可能性を当然に否定することはできないことを指摘する\nことができる。
以上の点に照らせば、本件表示に接した需要者は、本件商品が、ニコ\nチン含有の有無及びその量に関し、身体及び精神に与える影響との観点 から、他の非たばこ加熱式スティックと比較してより優れたものである と認識するものではないというべきである。 したがって、本件表示が、本件商品についての需要者の需要を不当に\n喚起し、被告らが不当に競争上優位に立つことになるものであるという ことはできず、よって、本件表示が本件商品の品質及び内容について誤\n認させるような表示に当たると認めることはできない。\n

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令和5(ネ)10097  営業侵害行為差止請求等控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和6年2月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

1審では、営業秘密、限定提供データのいずれではないと判断されました。知財高裁も同様です。利益分配に関する請求についても同様です。

ア 原告は、EL社が営業秘密又は限定提供データの保有者であり、被告AI及 び被告SAIはEL社から営業秘密又は限定提供データの開示を受けたと主張する が、そうであるとすれば、開示された営業秘密又は限定提供データが原告の営業秘 密又は限定提供データであるということはできないはずである。もともと、前記補 正の上引用した原判決のとおり、スマホ留学の顧客情報は各組合員に帰属するもの であり(本件組合契約5条1項)、被告AI及び被告SAIが自らに帰属する顧客 情報を使用することは、不正競争行為に当たるものではない。
イ さらに、本件組合契約は、スマホ留学以外の特定の商品又はサービスを「対 象案件」として、その紹介をするため、スマホ留学の顧客情報を用いることを予定\nしている(本件組合契約6条4項等)。したがって、被告らが、顧客情報をケンペ ネEnglishやオンライン留学の紹介に用いたことをもって、直ちに本件組合 契約に違反すると認めることはできない。
ウ 原告は、本件組合契約7条2項を文字通り解釈すると本件組合契約締結以前 に提供された情報は、同項の「機密情報」には該当しなくなるから不合理である旨 主張する。しかし、原告及び被告らとの間で平成29年3月1日に締結された業務 委託契約書(乙A102)によれば、本件組合契約締結前のスマホ留学事業に関す る機密情報については、上記業務委託契約書9条に本件組合契約7条2項と同じ内 容の機密保持に関する条項が設けられていることが認められ、本件組合契約の締結 により当該条項の効力が失われたと解すべき理由は見当たらない。したがって、当 事者の合理的意思解釈として、本件組合契約締結前の機密情報については前記業務 委託契約書9条に基づく保護の対象となると解するのが相当であるから、原告の主 張する点は、本件組合契約7条2項をその文言どおり解釈することの妨げとなるも のではない。

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原審はこちら

◆令和2(ワ)23432

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令和5(ワ)70052  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年2月26日  東京地方裁判所

 囲碁将棋チャンネルは、YouTubeに、著作権侵害としてYouTuberの動画の削除申請しました。これが違法か否か争われました。争点は棋譜に著作権があるのか否かです。裁判所は約2万円の損害賠償を認めました。

原告は、本件において虚偽の事実を告知等されたことによって、経済的損害に つき不正競争防止法2条1項21号に基づく損害賠償請求権が発生するほかに、 併せて人格的利益を侵害するものとして、別途不法行為に基づく損害賠償請求権 が発生する旨主張する。そこで検討するに、人格権ないし人格的利益とは、明文上の根拠を有するものではなく、生命又は身体的価値を保護する人格権、名誉権、プライバシー権、肖像権、名誉感情、自己決定権、平穏生活権、リプロダクティブ権、パブリシティ 権その他憲法13条の法意に照らし判例法理上認められるに至った各種の権利 利益を総称するものであるから、人格的利益の侵害を主張するのみでは、特定の 被侵害利益に基づく請求を特定するものとはいえない。しかしながら、原告は、 裁判所の重ねての釈明にもかかわらず、単なる総称としての人格的利益をいうに とどまることからすると、原告の主張は、請求の特定を欠くものとして失当とい うほかない。
もっとも、原告は、原告主張に係る人格的利益とは、最高裁平成16年(受) 第930号同17年7月14日第一小法廷判決・民集59巻6号1569頁(平 成17年判決)にいう著作者の人格的利益と同趣旨のものであり、大阪高裁令和 4年(ネ)第265号、第599号同4年10月14日判決(令和4年判決)も、 その趣旨をいうものである旨主張する。
仮に、原告主張に係る人格的利益が、上記判例を引用する限度で特定されてい るものと善解したとしても、平成17年判決は、著作者の思想の自由,表現の自\n由が憲法により保障された基本的人権であることに鑑み、公立図書館において閲 覧に供された図書の著作者の思想、意見等伝達の利益を法的な利益として肯定す るものであり、その射程は、公立図書館の職員がその基本的義務に違反して独断 的評価や個人的好みに基づく不公平な取扱によって蔵書を廃棄した場合に限定 されるものである。そうすると、私立図書館その他の私企業における場合は、明 らかにその射程外というべきものであるから、平成17年判決は、私企業である YouTubeにおける投稿動画に係る伝達の利益が問題とされている本件に は、適切なものといえない。
また、原告が引用する大阪高裁令和4年(ネ)第265号、第599号同4年 10月14日判決(令和4年判決)は、人格的利益に関わるものと説示しつつも、 投稿者の営業活動を妨害するという側面をも踏まえたものであるから、精神的価 値という法益に限定して法的利益性が主張されている本件には、必ずしも適切で はない。のみならず、平成17年判決が、上記のとおり、伝達の利益を法的な利 益として肯定する場面を、公立図書館の職員による極めて不公平な取扱等の場合 に制限している趣旨に照らしても、憲法で保障されている表現の自由から、直ち\nにYouTubeにおける投稿動画に係る伝達の利益を肯定するのは相当では ない。その他に、原告は、著作権法、電気通信事業法その他の法令を縷々指摘して、 原告主張に係る人格的利益が重要性の高い法益である旨主張するものの、原告が 掲げる法令は、原告主張に係る人格的利益を保護するものとはいえず、上記にお いて説示したところに鑑みると、原告の主張は、その特定及び根拠を欠くもので あり、採用の限りではない。

◆判決本文

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令和5(ネ)1657  実験装置使用差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和6年2月9日  大阪高等裁判所

科研費契約に付随する秘密保持義務違反かどうかについて争われました。1審は義務違反無しとし、大阪高裁は、これを維持しました。

1 争点(1)(被控訴人は本件科研費契約に付随する秘密保持義務に違反したか)に ついて
(1) 前記前提事実(4)アのとおり、本件物件は関係規定に基づき控訴人らから被 控訴人に寄付されたものであるところ、控訴人らは、上記寄付を受け入れた 研究機関である被控訴人としては、本件科研費契約上、補助事業者である研 究者に代わり本件物件を科研費の交付目的に従って適切に管理することが求 められるのであり、本件物件に化体している本件情報に関する権利について は、同契約に付随して、信義則上、上記目的外で自ら使用したり、第三者に 漏洩・開示等したりしてはならない義務(秘密保持義務)を負っている旨を 主張する。
(2) そこで検討するに、公金である補助金により購入された設備等の取り扱い については、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律を始めとする\n関係各規定により詳細が定められ、本件物件もこれに従い控訴人らから被控 訴人に寄付されたものであるところ、まず寄付とは、一般的に、公共性、公 益性を有する事業や団体などに対し、財産を贈与することであり、その目的 が物であれば、その所有権の無償による譲渡を意味するものである。そして、 大学共同利用機関取扱要領22条によると、寄付を受けた設備等は、固定資 産管理規則に基づき管理するものとされているところ、同規則11条には、 「資産管理責任者は、固定資産等を寄附により取得する場合」との記載があ ること、平成18年12月26日付けで作成された文部科学省の「研究費の 不正対策検討会報告書」には、「現在の競争的資金等の制度においては、例え ば機器を購入した場合(中略)個人補助の科学研究費補助金の場合、所有権 はいったん研究者に帰属し、所属する研究機関に寄付することになっており」 との記載があること(甲63の1・2)、振興会作成の科研費ハンドブックに 掲載された「科研費FAQ」には、「直接経費により購入した設備等は、研究 代表者又は研究分担者が所属する研究機関に寄付しなければなりません。【Q\n4405】」、「科研費により購入した設備等は、購入後直ちに研究機関に寄付 することとしていますので、研究期間終了後も、研究機関の定めに従い、別 の研究等で使用することは差し支えありません。【Q44071】」との記載 があること(甲21)がそれぞれ認められ、これらの記載はいずれも、科研 費により設備等を購入した研究者がその所属する研究機関に行う寄付が、留 保を伴わない所有権の無償譲渡を意味するものであることを前提としている と解するのが相当である。これらに加え、平成23年に締結された被控訴人、 RCNP、TRIUMF及びウィニペグ大学の4研究機関によるUCNの共 同研究に係る合意(2011年覚書)には、被控訴人が本件物件の所有権を 有している旨の定めが置かれており(原文は英文)、本件情報に関して控訴人 らが主張する権利について特段の留保は付されていないことも認められる(甲 8)。
そうすると、そもそも控訴人らによる寄付を義務付けた関係各規定にいう 寄付は一般的な寄付と同様の意味に解されるし、本件物件の寄付を受けるこ とでその所有権を取得した被控訴人が寄付を受けた本件物件の使用、収益及 び処分について制約を受けるべき根拠は関係各規定中に見当たらないから、 控訴人ら主張に係る本件科研費契約なるものが科研費の交付決定に伴い関係 者間に成立するとしても、これに付随して、信義則上、被控訴人が、その一 方的負担となる秘密保持義務を控訴人らに対して負うことになると解する余 地はないというほかない。
(3) この点に関し、控訴人らは、科研費により取得される設備等に関し、設備 等の寄付を行った研究代表者等が他の研究機関に所属することとなる場合に\nおいて、当該研究代表者等に当該設備等の継続使用の希望があるときは、当\n該設備等を研究代表者等に返還しなければならない旨の「返還ルール」が定\nめられている旨を指摘し、同ルールは設備等(本件物件)の寄付を受けた被 控訴人において負担する上記制約の顕れである旨を主張する。
確かに、機関ルール2−3及び3−28には、上記趣旨の記載が存在する が、他方、上記科研費FAQには、補助事業期間中に他の研究機関に異動す る場合は、研究機関は研究機関の定めに基づき、当該設備等を当該研究者に 返還する旨【Q4405】、令和2年度以降に購入した設備等に関しては、研 究期間終了後(補助事業を廃止した場合を含む)5年以内の場合も同様に取 り扱う旨【Q4405、44071】、令和2年度以前に購入した設備等に関 しては、研究期間終了後も、研究機関の定めに従い、別の研究等で使用する ことも差し支えない旨【Q44071】がそれぞれ記載されている。 しかし、これらの記載からすると、少なくとも令和2年度以前において、 「返還ルール」は、補助事業期間中のルールであり、研究機関が異動する研 究者の返還請求に応じるべきであるのは、補助事業期間中に限られているこ とを前提としているものと解するのが相当であるところ、本件物件のうち、 本件物件1に係る基盤研究Aの補助事業期間は平成12年から同14年まで、 本件物件2に係る基盤研究Sの補助事業期間は平成21年から同25年まで、 本件物件3に係る基盤研究Bの補助事業期間は平成18年から同20年まで というのであって(甲4、16〜18、当審第1回口頭弁論調書)、本件物件 については、いずれも補助事業期間を経過している。
したがって、上記のような「返還ルール」の存在を斟酌しても、寄付によ り本件物件の所有権を取得した被控訴人が、その使用、収益及び処分に制約 を受けることになる秘密保持義務を、控訴人らに対して信義則上負うべきも のとは解されない。
(4) なお、本件科研費契約に付随する秘密保持義務違反にいう秘密とは、控訴 人らが本件において営業秘密と主張する本件情報と同じものと主張されてい るが(当審第1回口頭弁論調書)、後記3(2)でみるとおり、本件情報は、本 件物件の外観を見ただけでは解析が不可能であり、控訴人らの関与なしには\nこれを取得できないというのである。そうであるとすると、本件物件をトラ イアンフその他の第三者との共同研究の用に供しているとしても、控訴人ら 主張に係る秘密(本件情報)は明らかにされることはないことになる。まして や、第三者が本件物件を分解して主張に係る秘密(本件情報)を探索するこ とも想定できないから、仮に秘密保持義務を負うとしても、そもそも第三者 との共同研究の用に供されることをもって、秘密保持義務違反の状態が起き ることはあり得ないということが指摘できる。 また、控訴人らは、秘密保持義務を根拠づけるものとして、本件物件の所 有権の所在とそれに化体しているノウハウなどの技術情報の所在とは別次元 の問題であり、寄付により本件物件の所有権を被控訴人に無償譲渡したこと になるとしても、控訴人らにおいて本件情報に係る権利まで譲渡する意思は なかったから、被控訴人が本件物件に化体したノウハウを自由に使用してよ いことにはならないとも主張する。しかし、上記説示のとおり、本件物件を 研究の用に供することのみでは秘密保持義務違反の状態が起きないから、本 件物件が価値のあるノウハウを使用したものであるとしても、そのことを理 由に本件物件そのものの使用、収益及び処分に制限を及ぼすことは、結局、 設備等の寄付を無意味ならしめるものであるといわざるを得ず、控訴人らの 上記主張は採用することができない。

◆判決本文

1審はこちら。

◆令和2(ワ)12387

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令和4(ワ)13396    不正競争  民事訴訟 令和6年1月17日  東京地方裁判所

発注した業務に関してインターネット上で行った投稿が、営業上の信用を害する虚偽の事実を流布するもので、不競法2条1項21号所定の不正競争に該当するかが争われました。
裁判所は、これを認めて50万円の損害賠償および投稿削除を命じました。

(イ) 前記(ア)の各事実を前提として、本件投稿部分1が摘示する「何度やり とりしても、原告は、被告担当者からの質問に明確に回答しない」との 事実が客観的真実に反するものであるか否かについて検討する。 a 前記(ア)aのとおり、本件アナライザー案件において、被告が仕様の 確定を行うべきとされていたことについては、当事者間に争いがない。 また、本件全証拠によっても、原告が、被告の作成した仕様を評価す る立場にあったと認めることはできない。
そして、前記(ア)cの原告と被告担当者とのやりとりの内容に照らせ ば、原告は、被告担当者からの質問に対し、一貫して、原告が「課題 管理表」の項番13において指摘した事項の趣旨を説明しつつ、本件アナライザー案件において原告が受注していない業務である仕様の評\n価にわたる事項については回答することができないとの趣旨を明確に 回答していると認めるのが相当である。
b また、原告が、被告担当者に対し、「なんで答える必要あるの?」と の文言どおりの回答をしていないことも当事者間に争いがない。 この点に関し、被告は、当該回答は、「今回当方へのご依頼は管理画 面の開発で、くじら IT サービス様でご用意される資料の評価は含まれ ていないという認識です。」との原告の回答を簡潔にまとめた表現であると主張する。\n
そこで検討すると、不競法2条1項21号所定の告知又は流布の内 容は、その相手方の普通の注意と読み方・聞き方を基準として判断す べきと解されるところ、本件サイトは、ソフトウェアやITシステムの開発業務を営んでいる者や、このような開発業務を依頼しようとす\nる者が専ら閲覧していると考えられる。そして、これらの者の普通の 注意と読み方を基準とすると、「なんで答える必要あるの?」との表現は、理由を一切説明することなく、回答を拒否したとの意味に理解で\nきるものである。これに対し、被告が指摘する原告の上記回答は、原 告が受注した業務の内容について説明した上、被告が用意する資料の 評価にわたる事項については回答することができないとの趣旨を回答 するものといえる。 したがって、「なんで答える必要あるの?」との表現は、原告の上記回答を要約したものとはいえず、被告の上記主張を採用することはで\nきない。
(ウ) 以上によれば、本件投稿部分1が摘示する「何度やりとりしても、原 告は、被告担当者からの質問に明確に回答しない」との事実は、客観的 真実に反するもの、すなわち虚偽のものと認められる。
・・・
(1) 無形損害について
前記1(2)のとおり、ソフトウェアやITシステムの開発において、受注者が、発注者との質疑応答に適切に対応できる資質や能\力を備えているか否かは、受注の可否にも直結する重要な事柄であると考えられるところ、本件投 稿部分1が摘示する事実は、これを閲覧した者に対し、原告がそのような資 質や能力を欠くとの印象を与えるといえるから、本件投稿は、原告の営業上の信用を大きく毀損するものと認められる。\nそして、前記1(1)イのとおり、原告の納品した成果物が、被告と合意した 仕様に合致するものであることについての立証がされているとはいえず、本 件投稿部分2及び3について不正競争及び不法行為が成立するとは認められ ないものの、被告は、成果物が仕様に合致していないことを意味する他の表現を採用することは極めて容易であると考えられるのに、「ゴミを納品され、\n捨てました。」と、原告による作業や成果物が有する価値のすべてを否定する かのような表現を敢えて用い、同業者が多数閲覧する可能\性のあるインター ネット上のマッチングサイトの評価画面に本件投稿をしたものであるところ、 不正競争に該当する本件投稿部分1と上記の表現とが一連一体のものとして本件投稿を構\成している以上、無形損害の額を算定するに当たり、この事情も考慮することができるというべきである。 以上の事情によれば、本件投稿によって原告に生じた無形損害の額につい ては、50万円と認めるのが相当である。

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令和4(ワ)11394  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年1月16日  大阪地方裁判所

棋譜情報をフリーライド利用された被告が、Googleに対して著作権侵害であると申告したことが、不競法2条1項21号の不正競争に当たるとして、争われました。大阪地裁は、「虚偽の事実の告知」に該当すると認定し、約120万円の損害賠償を認めました。\n

本件動画は被告の著作権を侵害するものではない(この点について被告は争って いない。)にもかかわらず、本件削除申請は、グーグル等に対し、本件動画が被告\nの著作権を侵害する旨を摘示するものであるから、客観的な真実に反する内容を告 知するものとして、「虚偽の事実の告知」に当たると認められる。 これに対し、被告は、本件動画は被告の営業上の利益その他何らかの権利を侵害 する旨を主張するが、本件削除申請が虚偽の事実の告知に当たるかどうかの判断と\nは無関係である上、本件動画により被告の何らかの権利が侵害された事実も明らか でないから、採用できない。
2 争点2(本件削除申請は原告の「営業上の利益」を侵害するか)について\n
前提事実に加え、証拠(枝番号があるものは各枝番号を含む。以下同じ。甲4〜 13、15、16)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、ユーチューブ及びツイキ ャスにおいて、本件動画を配信して収益を得ていたところ、本件削除申請は、グー\nグル等のプラットフォーマーに対し、本件動画が被告の著作権を侵害する違法なも のであることを摘示する内容であり、これによって、原告は、ユーチューブにおい ては、別紙「原告動画目録」の「配信停止期間」欄記載の期間、動画の配信が停止 されたことが、ツイキャスにおいては、動画配信によって収益を得ることが少なく とも一定期間停止されたことがそれぞれ認められる。そうすると、本件削除申請は、\n原告が本件動画の配信という営利事業を遂行していく上での信用を害するものとし て、原告の「営業上の利益」を侵害したと認められる。
これに対し、被告は、原告による本件動画の配信は、被告が配信する棋譜情報を フリーライドで利用するという著しく不公正な手段を用いて被告ら棋戦主催者の営 業活動上の利益を侵害するものとして不法行為を構成することを指摘して、本件動\n画の配信に係る営業上の利益は法律上保護される利益に当たらない旨を主張し、こ れを裏付ける証拠として「王将戦における棋譜利用ガイドライン」(乙2)を提出 する。しかし、棋譜は、公式戦対局の指し手進行を再現した「盤面図」及び符号・ 記号による「指し手順の文字情報」を含むものと認められるところ(乙2)、本件 動画で利用された棋譜等の情報は、被告が実況中継した対局における対局者の指し 手及び挙動(考慮中かどうか)であって、有償で配信されたものとはいえ、公表さ\nれた客観的事実であり、原則として自由利用の範疇に属する情報であると解される。 同ガイドラインは、棋譜の利用権等を王将戦主催者が独占的に有する旨規定するが、 王将戦主催者が、原告を含めた被告の実況中継の閲覧者の関与なく一方的に定めた ものであり(乙2)、原告に対して法的拘束力を生じさせるものであるとはいえな い。また、前記1のとおり、本件動画は被告の著作権を侵害するものではなく、そ の他、原告が、被告の配信する棋譜情報を利用することが不法行為を構成すること\nを認めるに足りる事情はない。したがって、被告の前記主張は、その前提を欠き、 採用できない。

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令和4(ワ)2551  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年11月10日  東京地方裁判所

被告の行為は、不競法の品質誤認表示に該当するとして、約9200万円(損害額自体は約1億4000万円と認定)の損害賠償が認められました。

(1) 不正競争防止法2条1項20号の誤認惹起行為が不正競争に該当し違法と されるのは、事業者が商品等の品質、内容などを偽り、又は誤認を与えるよ うな表示を行って、需要者の需要を不当に喚起した場合、このような事業者\nは適正な表示を行う事業者より競争上優位に立つことになる一方、適正な表\ 示を行う事業者は顧客を奪われ、公正な競争秩序を阻害することになるから である。 このような趣旨に照らすと、「品質」について「誤認させるような表示」に\n該当するか否かを判断するに当たっては、需要者を基準として、商品の品質 についての誤認を生ぜしめることにより、商品を購入するか否かの合理的な 判断を誤らせる可能性の有無を検討するのが相当である。\n
(2) 被告表示が「品質」について「誤認させるような表\示」に該当するかにつ いて
ア 令和元年5月8日から令和3年8月30日までの表示について\n
前提事実(5)ア4)の「全国導入実績2,500台以上」との表示は、被告\nが販売している業務用生ごみ処理機、すなわち被告商品は、全国で250 0台以上が販売されているとの事実を、「ゴミサー/ゴミサポーターはその 処理方法・性能が多くの企業・施設で認められ、おかげ様で現在、全国で\n2,300台以上が稼働しています。」との表示は、被告商品は、その処理\n方法及び性能が多くの企業や施設で認められたため、全国で2300台以\n上が販売されたとの事実を、「全国・海外での導入実績は3,500台以 上。」との表示は、被告商品は、全国及び海外で3500台以上が販売され\nたとの事実を需要者に対し認識させるものであると認められる。 他方で、前提事実(5)エによれば、被告が令和元年5月8日以降販売して いる被告商品の過去の累計販売数は2300台に達するものではないこと が認められ、少なくとも、上記「全国導入実績2,500台以上」、「ゴミ サー/ゴミサポーターはその処理方法・性能が多くの企業・施設で認めら\nれ、おかげ様で現在、全国で2,300台以上が稼働しています。」及び 「全国・海外での導入実績は3,500台以上。」の表示(以下、これらを\n併せて「本件誤認惹起表示1)」という。)は、いずれも、実際の販売実績と は異なるにもかかわらず、多数の被告商品が販売されており、このような 販売実績は、被告商品のごみ処理方法及びその性能が他の同種商品に比べ\nて優れたものであることに起因することを強調するものであって、その結 果、需要者に対し、被告商品がその品質において優れた商品であるとの権 威付けがされ、また、他の需要者も購入しているという安心感を与えるこ とになるため、需要者が商品を購入するか否かの合理的な判断を誤らせる 可能性があるというべきである。そうすると、本件誤認惹起表\示1)は、「品 質」について「誤認させるような表示」に該当すると認められる。\n
この点について、被告は、本件誤認惹起表示1)は、原告と被告との間の 取引が終了した後、一時的かつ短期的に残存していたものにすぎず、かつ、 被告が販売した原告商品の販売実績を記載したものであるから、虚偽では なく真実そのものであると主張する。しかし、前記のとおり、需要者は、 本件誤認惹起表示1)が被告が過去に販売していた製品についての記載であ ると認識することはなく、現在(被告ウェブページ掲載時)販売している 被告商品についての記載であると認識するといえるから、その表示の残存\nが一時的かつ短期的であったとしても、需要者が購入するか否かを決断す る時点において、その合理的な判断を誤らせる可能性は否定できない。し\nたがって、被告の上記主張は採用することができない。
・・・
(3) 被告の主張について
被告は、販売実績の違いは、商品の品質の違いを推認するものにすぎず、 原告商品及び被告商品の間に、性能及び機能\における違いがない本件におい ては、原告商品と被告商品の品質の違いが推認されるものではないと主張す る。 しかし、前記(1)で説示した不正競争防止法2条1項20号の誤認惹起行為 が不正競争に該当し違法とされる趣旨に照らすと、客観的な性能及び機能\に おける違いがないとしても、前記(2)のとおり、本件誤認惹起表示1)ないし3) は、いずれも、販売実績について事実と異なる表示をするとともに、同販売\n実績が品質の優位性に起因するものであるとの表示をすることによって、そ\nのような販売実績をもたらす「品質」であるとの誤解を需要者に与え、その 結果、公正な競争秩序を阻害するものである以上、同号の「品質」について 「誤認させるような表示」に該当すると認めるのが相当である。\n

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令和5(ネ)10041  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和5年11月16日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 本件商品の輸入が本件特許権を侵害すると主張して税関に輸入差止の申立てをしたことが不法行為に該当するとして、約4000万円の損害賠償請求がなされました。知財高裁は1審と同じく、無効理由がないとして請求を棄却しました。

原告は、甲7公報に記載されたバー10が独立した運動器具の発明である といえるかに関し、1)甲7公報記載の発明は、従来技術であるバーベル装置(バー 部分と重り部分からなるもの)における問題(バーが長いことによってバランスを とることが困難であるとの問題)を解消するため、バー部分を短く改良した三頭筋 運動器具であるところ、バーベル装置においては、重りを着けずにバー部分のみで 運動を行うことが想定されているのであるから、バーベル装置を改良した甲7公報 記載の発明においても、バー10単独での使用が可能である、2)甲7公報には、発 明の目的及び別の目的に係る記載があるところ、前者の記載にある「中央に位置す る重り支持セクションを有する」との文言が後者の記載からあえて削除されている から、甲7公報記載の発明は、重り支持プラットフォーム及び重りを備えない状態 で使用することを当然の前提にしている、3)甲7公報記載の発明は、バー10を単 独で使用することによっても一定の作用効果を奏する、4)バー10は、三頭筋運動 において非常に重要な役割を果たしているとして、甲7公報記載の発明においては、 バー10を独立して捉えることが可能であり、それ自体が独立した運動器具の発明\nであると主張する。
そこで検討するに、1)甲7公報には、「比較的長いバーを有しバランスをとるこ とが困難であるなどの従来のバーベル装置が有していた問題を解消するため、本件 各発明は、両側にあるハンドルを備える中央の重り支持セクションを有し、各ハン ドルが複数の握持位置を有する」旨の記載があるが、補正して引用した原判決第4 の1(4)アにおいて説示したところに照らすと、仮に、従来のバーベル装置が重り を着けない状態で使用されることがあるとしても、そのことは、甲7公報記載の発 明においても、バー10のみの状態(重りのみならず支持クランプ組立体をも取り 外した状態)での使用が想定されていることの根拠となるものではない。
また、2)甲7公報には、「本発明の目的は、中央に位置する重り支持セクション を有する、三頭筋をエクササイズするための改善されたウエイトリフティング装置 を提供することである。本発明の別の目的は、複数の握持位置を備える両側にある ハンドルを有する、三頭筋をエクササイズするための改善されたウエイトリフティ ング装置を提供することである。本発明の別の目的は、end to endの手 の配置を可能にする、三頭筋をエクササイズするための改善されたウエイトリフテ\nィング装置を提供することである。最後に、本発明の全体的な目的は、安価であり、 高い信頼性を有し、その意図される目的を達成するのに高い有効性を有する、説明 した目的のための装置内にある改善された要素及び機材を提供することである。」 との記載があるが、これらの記載は、甲7公報記載の発明の目的について述べるも のであり、その具体的な構成について詳述するものではなく、補正して引用した原\n判決第4の1(2)イ(オ)のとおりの甲7公報記載の発明の具体的な構成に係る記載に\nも照らすと、「本発明の別の目的」及び「本発明の全体的な目的」に係る各記載中 に「本発明の目的」に係る記載中の「中央に位置する重り支持セクションを有する …ウエイトリフティング装置」などの記載がないことをもって、甲7公報記載の発 明において、バー10のみの状態での使用が想定されているということはできない。 さらに、3)前記1)において説示したのと同様、補正して引用した原判決第4の1
(4)アにおいて説示したところに照らすと、仮に、重りを取り外した状態で使用す ることによっても甲7公報記載の発明の効果を奏する場合があるとしても、そのこ とは、甲7公報記載の発明において、バー10のみの状態(重りのみならず支持ク ランプ組立体をも取り外した状態)での使用が想定されていることの根拠となるも のではない。なお、4)甲7公報記載の発明においてバー10が重要な役割を果たしているとしても、そのことは、原告の主張を直ちに根拠付けるものではない。以上のとおりであるから、原告の主張を採用することはできない。
(2) 原告は、相違点1)に係る本件各発明の構成の容易想到性に関し、リング状\nの器具をトレーニング器具として用いることは慣用技術であるから、リング状のバ ー10をトレーニング器具とすることは、単にスポーツ器具用部品であるバー10 に慣用技術を適用するだけのことであり、当業者にとって極めて容易な事柄である と主張する。しかしながら、これまで説示したとおり、本件においては、バー10のみ(甲7発明)が独立した引用発明であると認定することはできず、バー10のみならず重 り支持部分をも備えた甲7発明(被告)が引用発明であると認定するのが相当であ るから、甲7公報記載の発明を引用発明とする本件各発明の進歩性の判断(相違点 1)に係るもの)に当たっては、そのような甲7発明(被告)から重り支持部分を取 り除くことについての容易想到性が問題となるところ、甲7発明(被告)における バー10は、甲7発明(被告)を構成する部材の一部であり、重り支持部分と不可\n分の部材であるから、バー10のみをもって、原告が主張するリング状の器具であ るとみることはできない(なお、原告の主張も、リング状の器具として、甲8公報 記載のトレーニング用器具、甲9公報記載の体育器具のほか、ラタンリング、ピラ ティスリング、ヨガリング、フープ等を念頭に置いている。)。 以上によると、原告が慣用技術であると主張する技術の適用により当業者が相違 点1)に係る本件各発明の構成に容易に想到することができたとは認められない。\n

◆判決本文

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◆令和4(ワ)3847

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令和4(ワ)14148  不正競争行為差止請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年4月27日  東京地方裁判所

比較広告が品質誤認表示(不競法2条1項20号)かが争われました。原告はダイソン、被告はパナソ\ニックです。裁判所は該当しないと判断しました。

1 被告表示 2 の品質誤認表示該当性について\n
(1) 被告表示 2 について
被告表示 2 は、別紙被告表示目録記載のとおり、「水分発生量従来の 18 倍」とす る表示(被告表\示 2-1)及び被告表示 2-2 のとおりのものである。被告表示 2-2 中に は、「高浸透ナノイーとは、髪への浸透性を高めたナノイーのことです。発生方式を 変えることで、ナノイーの水分発生量が従来の 18 倍になりました。」との記載があ る。「18 倍」とは、「ナノイーと高浸透ナノイーとの比較(当社調べ)」とされている (甲 2)。 これらの記載から、被告表示 2 においては、「高浸透ナノイー」と従来の「ナノイ ー」の各「水分発生量」が比較対象とされていることが理解される。
(2) 原告実験 2 について
原告実験 2 に係る報告書「水分量測定試験に関する報告」(甲 4。以下「原告実験 2 報告書」という。)によれば、その測定試験は、「送風口とイオン口を備えるドラ イヤーA 及び B について、イオン口から発せられる水分量を比較すること」を目的 として、ドライヤーA と B について、イオン口から放出される水分子による絶乾シ リカゲルの吸水変化を閉鎖系において測定し、その測定結果を比較したものである。 ドライヤーA 及び B は原告代理人から提供されたものであるが、その製品名等は原 告実験 2 報告書では特定されていない。 実験の具体的な方法は、「105゜C)で一晩静置した乾燥シリカゲルをデシケータに入 れ、閉鎖系でドライヤーA および B のイオン口から送風し(HOT モード、TURBO。 ナノイーのランプが付いている状態)、シリカゲルの吸水量の変化を観察した。」、 「チャンバー内の風速は 2.6±0.3m/s に統一した。各時間(0〜4 時間)にイオン口か らの風を吹かせた後、シリカゲルの重量変化を測定し、シリカゲル中に給水された 水分量変化として換算した。」とされている。また、「Fig.1」では、原告実験 2 で使 用した実験装置の構成及び配置等が示されている。\n原告実験 2 報告書では、原告実験 2 の結論として、「ドライヤーA 及び B のイオ ン口からの水粒子によるシリカゲルの吸水率は、コントロールと比較して明確な違 いが見られた。また、ドライヤーA とドライヤーB を比較すると、その吸水率の差 は 1.21〜1.36 倍であることが判明した。つまり、ドライヤーA のイオン口から発せ られる水分量は、ドライヤーB のイオン口から発せられる水分量の約 1.21 倍〜1.36 倍であると推察される。」(裁判所注:「コントロール」とは、「デシケータ内に風を 送り込んでいないシリカゲル」である。)とされている。
(3) 原告実験 2 報告書について
原告実験 2 報告書において、閉鎖系を実現する構成については、Fig.1 に画像とし て示されるにとどまり、具体的かつ詳細な説明はない。もっとも、同図を子細に見 ると、ドライヤーA 及び B のいずれについても、その送風口を除き、その上部にあ るイオン口が包まれるようにラップフィルム状のものでドライヤーの中央部外周を 覆い、かつ、そのラップフィルム状のものにより当該部分からデシケーター入り口 までを覆い、覆った上記ラップフィルム状のものの端部を固定・固着して塞いでい ることが看取される。
しかし、この方法による場合、各ドライヤーのイオン口から放出される水分の全 てが、ラップフィルム状のもの等に吸着されることなくデシケーター内に送られ、 デシケーター内のシリカゲルに吸着するといえるのかは不明である。また、各ドラ イヤーのイオン口から放出される水分の系外への流出及び空気中の水分の系内への 流入が防止されているのか、又は、上記吸着ないし流出・流入がいずれの系におい ても一定に保たれているのかも、不明である。このため、原告実験 2 において測定 されたシリカゲルの吸水量が、各ドライヤーのイオン口から発せられる水分量すな わち水分発生量を正しく反映していると見ることについては疑義がある。 さらに、シリカゲルを用いる方法によることについて、原告実験 2 報告書によれ ば、懸念材料として「秤量時の大気中水分の影響です。シリカゲルをデシケーター から取り出して精密天秤で測定する場合…、大気中水分の吸着の影響を最小限に抑 える工夫が必要となります。」との指摘がされたのに対し、同報告書作成者は、「確 かに厳密に数値を計測する場合には当該指摘のとおりであるが、本測定はドライヤ ーA におけるシリカゲルの重量変化とドライヤーB におけるシリカゲルの重量変化 を比較する目的で実施されたもので、いずれも秤量中に大気中の水蒸気の影響を受 けること、また秤量時間は 30 秒程度と送風時間と比べて短時間であることから、本 測定においては、秤量中の水蒸気が結果に影響を与えることはないといってよいだ ろう。」との見解を示している。しかし、いずれのシリカゲルも秤量中に大気中の水 蒸気の影響を受けるといっても、その影響が同じであるとは必ずしもいえないので あって(そもそも、使用されたシリカゲルの状態及び性能等が同一ないし同等であ\nったかも、同報告書上明らかでない。)、秤量時間が 30 秒程度と短時間であるとして も、原告実験 2 の精度が問題ないといえる程度に高いといえるのかについては疑問 を抱かざるを得ない。 「高浸透ナノイー」と従来の「ナノイー」との「水分発生量」の比較に当たって は、各ドライヤーのイオン口から発せられる水分量の正確な測定値が必要とされる ところ、原告実験 2 は、上記の各点で、その正確性が担保されていることにつき疑 義がある。
(4) 原告の主張について
原告は、その主張に係る本件規範を前提としつつ、原告実験 2 に基づき、被告表\n示 2 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものである旨を主張する。 しかし、品質等誤認表示の不正競争に関しては、法 2 条 1 項 号の趣旨に鑑み、 広告等の表示内容の解釈に当たっては一般消費者の視点に基づき判断するのが相当\nであるとしても、その表示中に示されたデータ等については、客観的かつ科学的に\n実証されたものであることを要し、かつ、それで足りると考えられる。そのデータ 等の取得に当たって設定されるべき試験条件等についても、法 2 条 1 項 号の解 釈として何らかの規律が設けられているとは考えられない。 また、原告実験 2 の結果について、「コントロール」の存在を考慮しても、なお上 記(3)の疑義はいずれも解消されない。 その他原告が縷々指摘する点を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用で きない。
(5) 小括
以上のとおり、原告実験 2 報告書は、被告表示 2 が被告商品の品質につき誤認を 生じさせるものであることを裏付けるに足りるものとはいえない。その他被告表示\n2 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りる証 拠もない。 したがって、被告表示 2 は、被告商品の品質につき誤認を生じさせるものとは認 められない。
・・・
ウ 原告実験 1-1 においては、実験に使用した二組の 束の髪の毛につき、同一 の毛束の、水道水浸漬・乾燥処理前後の水分量が測定されている。その点では、原 告実験 1-1 においては、被告表示 1 の検証・確認実験として適切な対象の測定が行 われたものといえる。また、その結果、被告商品の場合には、水道水に浸漬・乾燥 後の毛束の水分量は未処理の毛束の水分量よりも増加しているのに対し、EH-NA9E の場合、処理の前後で髪の水分含有量に著しい変化がない可能性があるとされてい\nる。 他方、原告実験 1-2 においては、「濡らし/乾し処理前後の髪の水分含有量を定量 する」とされているものの、具体的には、同じ毛束から採取された別の毛髪を水道 水浸漬・乾燥処理前に水分量を測定する毛髪と処理後に測定する毛髪として使用し ている。しかし、同じ毛束に属していたといっても、毛髪が異なればその水分量は 当然異なるといえることから、原告実験 1-2 においては、同一の毛束(毛髪)にお ける髪を乾かした際の水分増加量に関する被告表示 1 の検証・確認実験として適切 な対象が測定されているとはいえない。 また、原告実験 1 報告書においては、FT-NIR 法は定性的、又はせいぜい半定量的 な測定方法であるなどとされている。しかし、証拠(乙 7、8)によれば、FT-NIR 法 は、定性分析や定量分析に利用されるものであること、従来の分析法に匹敵する正 確さと精度で多成分分析を行うことができる素早くシンプルな非破壊の分析手法で あり、初期より、農業から食品業界まで幅広い測定に応用できる非破壊の迅速な分 析手法として広く用いられるようになったものとの評価を受けているものであるこ とが認められる。 これらの事情を踏まえると、被告表示 1 の検証・確認実験における測定法として は、非破壊的に毛髪中の水分を定量でき、同一の毛髪につき、水道水浸漬・乾燥処 理前後の水分量を測定し得る FT-NIR 法の方が、KF 法よりも適切な方法と考えられ る。にもかかわらず、原告実験 1 においては、FT-NIR 法については定量的な測定方 法とは位置付けられておらず、また、KF 法の結果は同一の毛髪で水道水浸漬・乾燥 処理前後の水分量を測定していないこと、そのような不適切な方法を被告表示 1 の 検証・確認実験として採用したことから、原告実験 1 の結果が十分に信頼し得るも\nのであるかについては疑義があるというべきである。これに反する原告の主張は採 用できない。
(3) 小括
以上のとおり、原告実験 1 報告書は、被告表示 1 が被告商品の品質につき誤認を 生じさせるものであることを裏付けるに足りるものとはいえない。その他被告表示\n1 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りる証 拠もない。
・・・
以上より、被告各表示は、いずれも被告商品の品質につき誤認を生じさせるもの\nとは認められない。したがって、原告は、被告に対し、法 3 条に基づき、被告各表\n示の差止請求権(同条 1 項)及び抹消請求権(同条 2 項)をいずれも有しない。
なお、事案に鑑み付言すると、原告は、被告各表示に関する裏付けとなるデータ\n等を被告が開示しないことにつき、具体的態様の明示義務(法 6 条)及び積極否認 の際の理由明示義務(民訴規則 79 条)に違反するものと指摘する。 しかし、「具体的態様」とは、侵害判断のための対比検討が可能な程度に具体的に\n記載された物の構成又は方法の内容等を意味すると解されるところ、本件において\nは、被告商品の品質につき誤認を生じさせるものとされる被告各表示に記載された\n表示内容は、その記載から明確であるといってよく、その基礎となる被告が保有す\nるはずのデータそれ自体及びこれを導く試験条件等につき、被告各表示において開\n示されたもののほかは開示されていないというに過ぎない。 このため、現に原告が各実験により試みているように、本件において主張立証すべき対象は、侵害判断のための対比検討が可能な程度に、被告各表\示において既に具体的に示されているといえる。そうすると、本件においては、「侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様」(法 6 条)が明らかでないとは必ずしもいえない。また、その点を措くとしても、具体的態様の明示義務に基づき相手方に対して具体的態様 の明示を求め得るためには、濫用的・探索的な提訴等を抑止する観点から、当該事 案の性質・内容等を踏まえつつ、提訴等を一応合理的といい得る程度の裏付けを要 すると解される。しかるに、本件においては、上記のとおり対比検討すべき表示内\n容は明確である上、原告実験 1〜は、その実験方法が被告各表示の検証・確認実験\nとして不適切であり、また、その結果にはそれぞれ疑義があることを踏まえると、 上記の程度の裏付けがされているとはいいがたい。そうである以上、被告の対応を もって具体的態様の明示義務等に違反するものとまではいえない。

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令和3(ワ)11152  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年3月16日  大阪地方裁判所

 被告は、「口コミ掲示板」に、「匿名さん」として、「アイメシアとか名乗る会社の超迷惑営業電話下調べもなしにかけてくるとはぬるい営業ですね」との内容の投稿しました。かかる行為が、不競法2条1項21号の不正競争行為に該当するとして、約50万円の損害賠償が認められました。

ア 競争関係の有無(争点1−ア)
(ア) 前記前提事実(1)及び認定事実(1)によれば、原告と被告会社は、いずれも ウェブサイトの作成(企画・開発)、運営及び保守業務、並びにインターネット上 の検索エンジンの最適化サービス(SEO対策)等の同種の事業を行っている。し たがって、両社は営業活動上需要者や取引先を共通にする可能性があるといえるこ\nとから、競争関係にあると認められる。また、被告P1は、被告会社の代表取締役\nであるから、その職務に関して原告と競争関係にあるといえる。
(イ) 被告らは、原告の事業と被告会社の事業が全く異なり競争関係に立たない 旨主張する。しかし、不競法2条1項21号における競争関係は、需要者又は供給 者を共通にする可能性があるなど、将来現実化し得る潜在的な競争関係であれば足\nりると解されるところ、前記(ア)のとおり、被告会社の登記事項証明書及びウェブ サイトに記載された被告会社の事業内容(甲5)と原告の事業内容とが重複してい ることから、当該主張は採用できない。
イ 摘示事実の虚偽性(争点1−イ)
(ア) 本件投稿1の内容は、「アイメシア 特定商取引法に関する知識はなく、 コンプライアンス担当者はおらず…何度も何度も電話してくる…さらに電話の人間 は嘘丸出し営業トーク」と記載し、原告について、特商法に関する知識がなく、コ ンプライアンス担当者がおらず、営業対象先に対し何度も電話をかけ、電話をした 従業員が事実に反した話をするという事実を指摘するものである。当該記載を閲覧 した本件ページの閲覧者は、原告が、法令を遵守せず営業対象先に何度も電話をか け、かつ営業担当者が事実に反する話をする営業活動を行う会社であると読み取る ものといえる。
被告P1による令和3年1月14日の投稿、本件各投稿及び本件書面等の各内容 等(前記前提事実(2)(3)及び認定事実(3)(4))を踏まえると、原告が、営業対象先 に係るインターネット上の口コミサイトの記事を印刷し、SEO対策の重要性や原 告の業務を紹介する文書と共に営業対象先に送付し、同じ頃に営業対象先に電話を した上で当該文書等に言及して原告への依頼を促す等の営業活動を行っていること、 被告会社に対し、同月及び7月に営業目的で2回電話をし、本件書面等を送付した ことが認められるものの、原告が法令を遵守せずに営業の電話をし、また原告の従 業員が事実に反する話をして営業活動を行ったとはいえず、本件投稿1の前記記載 は事実に反するといえることから、その虚偽性が認められる。
(イ) 本件投稿2の内容は、「自分でネットに企業の誹謗中傷を書いて、それをネ タにネットの誹謗中傷対策しますというマッチポンプ詐欺の会社」と記載し、原告\nについて、営業対象先を誹謗中傷する内容の記事を予めインターネット上に書き込\nむ等した上で、当該企業に対し、当該書き込みを契機としてその対策業務を行う原 告への依頼を促す旨の営業活動を行っているという事実を指摘するものである。当 該記載を閲覧した本件ページの閲覧者は、原告がこのような詐欺的な営業活動を行\nう会社であると読み取るものといえる。 しかし、本件証拠に照らし、原告が、自ら営業対象先を誹謗中傷する書き込み等 をし、その対策等を理由に営業活動を行ったとはいえず、本件投稿2の前記記載は 事実に反するといえるから、その虚偽性が認められる。
(ウ) 本件投稿3の内容は、「自前で悪評判を立てた上で対策しますという…営 業を行う詐欺会社」と記載し、原告について、自ら相手方の悪評判を立てた上で、\n当該評判を契機としてその対策業務を行う原告への依頼を促す旨の営業活動を行う という事実を指摘するものであり、本件投稿2と同様に当該記載は事実に反する。
(エ) したがって、本件各投稿に記載された事実は、いずれも事実に反し虚偽で あると認められる。
(オ) 被告らの主張について
被告らは、被告P1が本件各投稿をした目的は、原告の営業が悪質であることか ら、原告に警告を発したり、他の業者が原告の営業に引っかからないようにするた めであるなどと主張する。 しかし、本件資料に係る口コミサイトの記載について、書き込みの時期(平成2 8年及び平成29年)と、原告の被告会社に対する架電の時期(令和3年1月及び 7月)が相当程度離れていること(前記認定事実(3)(4)及び(6)ウ)等を踏まえる と、原告が営業手段として自ら当該口コミサイトの記載を行ったとは認められない。 前記(ア)の原告の営業手法及び被告会社に対する営業行為を前提としても、本件各 投稿の前記内容が全体として事実に反することに変わりはなく、被告らが主張する 目的により本件各投稿行為が正当化されるものではない。このことは、被告会社が そのウェブサイトにおいて営業目的の電話を固く断り、迷惑であると判断した場合 には本件サイト等にその旨を登録すること等を記載していた(前記認定事実(6) ア)としても、同様である。
・・・
(3) 損害の発生及びその額(争点3)
ア 無形損害
前記2(1)イのとおり、本件各投稿は、原告が法令を遵守せず営業対象先に架電 し、かつ営業担当者が事実に反する話をする営業活動を行う会社であるとの印象や、 営業対象先を誹謗中傷する内容の記事を予めインターネット上に書き込む等した上\nで、当該企業に対し、当該書き込みを契機としてその対策業務を行う原告への依頼 を促す旨の営業活動を行う会社であるとの印象を与えるものであり、原告の社会的 評価が一定程度低下したと認められること、本件各投稿が、一定数の不特定多数の 者に閲覧されたと推認されること、一方で、本件各投稿が掲載された期間は令和3 年7月2日又は3日から同年8月7日までの一か月余りであり比較的短期間である といえること、本件サイトの口コミの投稿は、氏名やメールアドレスの記載が任意 とされ、投稿者が特定されない形で書き込むことが可能であることから、本件サイ\nトの口コミ掲示板に記載された情報に接した閲覧者が当該情報について信頼性が高 い情報として受け取るとまではいえないこと等を考慮すると、被告P1の本件各投 稿行為による原告の無形損害は50万円と認めるのが相当である。 なお、本件ページにおいて、被告P1による投稿以外の投稿がされたことが認め られないことは前記認定事実(4)ウのとおりである。

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令和3(ワ)4439  損害賠償等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年2月21日  大阪地方裁判所

不競法2条1項7号の不正開示行為として、損害賠償を求めましたが、秘密管理性なしとして、請求棄却されました。

原告は、本件早見表及び本件情報につき、被告P1が小堀鐸二研究所との契\n約上、本件早見表の利用許諾の対象を原告のみとしようとしたこと、原告が小堀鐸\n二研究所との契約上、秘密保持義務を負っていること、本件早見表のデータを保有\nしていたのは限られた人間だけであったこと、外部への持出しが禁止されていたこ と、被告P1が原告代表者として、原告内部で本件情報を共有するにあたり、取扱\nいを十分注意するよう呼び掛けていたこと、個別の現場において本件早見表\を用い るにあたって必要箇所以外はマスキングしていたこと、富士ネット工業において秘 密として管理されていたことから、原告において秘密として管理されていたと主張 する。
しかしながら、証拠(甲9、10)によれば、原告と小堀鐸二研究所との契約は 非独占的利用許諾の形式がとられている上、本件早見表の利用許諾の対象が、当初\n「原告及び原告の登録会員」であったものが、「原告及び原告の協力会社」と修正 されたにすぎないから、この変更が何ら原告や被告P1が本件情報を秘密として管 理していたことを示すものとはいえない。また、小堀鐸二研究所との契約上、原告 が秘密保持義務を負っているとしても、原告が現実に本件情報を秘密として管理し ていたかどうかには直接の関連性がない。前記(1)ア及びエ認定のとおり、本件早 見表を保有していたのは13名ないし14名の原告の従業員のうち、主に営業を行\nう5名ほどの者であったことが認められるものの、業務上必要のある者が保有して いたというにすぎず、他の従業員のアクセスが制限されていたとは認められない。 また、本件早見表の外部への持出しが禁じられていたこと、被告P1が原告におい\nて本件情報の取扱いを十分注意するよう呼び掛けていたことについては、いずれも\n被告P1が否定しているところ、原告の主張を裏付ける客観的な証拠は全くない。
さらに、個別の現場において本件早見表を取引先等に示す場合に必要箇所以外がマ\nスキングされていたからといって、本件情報の一部を担当者の判断で第三者に自由 に開示していることに変わりはなく、これをもって原告が本件情報を秘密として管 理していたとはいえない。加えて、富士ネット工業における本件早見表や本件情報\nの管理体制は、原告において秘密として管理されていたかどうかとは関連性がな く、被告P1が富士ネット工業在籍時に、本件情報の取扱いを注意するよう求める メールを他の従業員に送信していたとしても、富士ネット工業退職後、原告を設立 してからも同様の行動をしたことが推認されるわけではないし、前記(1)エ認定の とおり、被告P1が富士工業ネット工業在籍中に、本件早見表のデータにつき、そ\nの取扱いや電磁的記録媒体の紛失に注意を促す以外に、アクセス制限や拡散防止の 措置を講じていたものとも認められない。 本件情報の内容についても、天井部材落下防止ネットを張る際のいくつかの仕様 の組合せにより各支持部にかかる想定荷重について構造計算をした結果が一覧でき\nるため、便利ではあるが、仕様が異なればそのまま利用することはできないもので あるし、第三者が一級建築士等に依頼して独自に同種の早見表を作成することが困\n難とまではいえないから、本件情報を営業秘密として管理すべき必要性が客観的に 高いとは解されない。 そして、前記認定のとおり、本件早見表のデータは、営業秘密であることの表\示 等の措置のないままに、原告の従業員らの使用するコンピュータや持ち運び可能な\n電磁的記録媒体に保存されていたものであり、その使用後も、情報漏洩を防止する 何らの措置も採られなかったことなどに鑑みると、これらの情報は、いずれも秘密 として適切に管理されているとはいえず、秘密として管理されていると客観的に認 識可能な状態であったともいえない。\nその他原告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用 できない。
ウ そうすると、その余の点について検討するまでもなく、本件情報は、秘密管 理性が認められず、不正競争防止法上の「営業秘密」に該当しない。

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令和2(ワ)32931  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和4年10月25日  東京地方裁判所

 空気圧制御機器において、被告製品の流量特性を表す有効断面積及び Cv 値についての不正確な表示が、被告製品の品質を誤認させるような表\示に当たるかが争われました。裁判所は、該当するとしたものの、損害額としては因果関係のある弁護士費用15万円を認めました。 。

ア 被告は、被告サイトに掲載された被告製品に係るカタログの記載を訂正前数 値から訂正後数値に訂正するなどしたところ、訂正前数値が誤りであり、訂正後数 値が正確な数値であった。(争いのない事実)
イ 被告製品は空気圧制御機器の一種であり、その主な用途は、生産工場等の空 気圧システムを用いたオートメーション設備で使用されるエアシリンダに組み合わ せてエアシリンダの空気の流れを制御することにある。このため、被告製品の一般 的な需要者としては、上記オートメーション設備の製造者や同設備を導入する工場 経営者等(以下「工場経営者等」という。)が想定される。(争いのない事実)
ウ 空気圧制御機器は、それ自体が空気圧システムの回路を通過する空気の流れに対する抵抗となり、空気の流れに影響を与える。もっとも、空気の圧力条件が同じであっても、空気圧制御機器によって、機器を通過できる空気の流量は異なる。このような圧力条件と流量の関係は、空気圧制御機器の性質という観点から、空気圧制御機器の流量特性として把握される。空気圧システムに用いる空気圧制御機器を選定するにあたり、当該空気圧制御機器の流量特性を適切に把握することは必要かつ重要である。流量特性が適合しない空気圧制御機器を誤って選定すると、所定の出力が得られず、さらに、空気圧制御系が不安定になることも起こり得る。(以上につき、甲 12、13、18)
(2) 前提事実及び前記各認定事実によれば、被告製品は、空気圧システムを用い たオートメーション設備で使用されるエアシリンダの空気の流れを制御することを 主な用途とする空気圧制御機器であるところ、空気圧制御機器にとって、流量特性 とは、それを適切に把握しなければ空気圧システムにおいて所定の出力が得られな くなるなどの不具合を生じかねない重要な意味を持つ要素である。そうすると、空 気圧制御機器において、その流量特性は、機器の品質に関係する要素の 1 つといえ る。 したがって、被告製品の流量特性を表す有効断面積及び Cv 値についての不正確 な表示は、被告製品の品質を誤認させるような表\示に当たる。 本件では、被告は、被告製品の流量特性を表す有効断面積及び Cv 値について不 正確な数値を記載した本件カタログを配布すると共に、これを被告サイト上に掲載 したのであるから、被告製品の品質について誤認させるような表示をしたと認めら\nれる。
(3) これに対し、被告は、工場経営者等が電磁弁を購入する際に重視するのはシ リンダとの適合性や価格等であって、有効断面積や Cv 値ではないなどとして、本 件表示は品質誤認表\示に当たらない旨を主張する。 しかし、前記のとおり、空気圧制御機器の流量特性は、それを適切に把握しなけ れば空気圧システムにおいて所定の出力が得られなくなるなどの不具合を生じさせ かねない重要な要素であり、シリンダとの適合性もこれに基づいて定まるものとい える。そうである以上、空気圧制御機器の一般的な需要者である工場経営者等は、 当該機器の選定にあたり、流量特性を空気圧制御機器の品質に関係する要素と認識 し、評価要素の 1 つとしていることが強く推認される。このことは、本件カタログ で、少なくとも一部の被告製品について「優れたバルブの内部構造により、有効断\n面積を増大させ、流量をアップさせることができます」と記載し、被告自身が有効 断面積の増大をアピールしていること(甲 1)からもうかがわれる(なお、被告の カタログでは、有効断面積等の数値訂正後も同じ記載が維持されている。乙 3)。ま た、流量特性を評価要素の 1 つとすることは、工場経営者等が機器の価格等を重視 することと矛盾するものではなく、これと両立し得る。被告製品の通販サイト上の レビューで有効断面積について言及したものがないとしても、被告指摘に係るレビ ューはわずか 4 件に過ぎず、これらが言及した要素をもって被告製品の品質を網羅 したものとはいえないし、これらのレビューが有効断面積を空気圧制御機器の品質 に関係する数値と考えていないことをうかがわせるものともいえない。 エアシリンダの機種選定手順に関する原告の資料(乙 15)が有効断面積に言及し ていない点も、電磁弁はエアシリンダに組み合わせて用いる機器であってエアシリ ンダそのものではないこと、原告の自社製品カタログ(甲 3)には電磁弁の Cv 値及 び有効断面積に換算可能な C 値が掲載されていることなどに鑑みると、上記判断を 左右する事情とはいえない。
・・・
ア 本件カタログは、AirTAC グループの中国における拠点の一つである寧波エ アタックが作成したものであり、本件カタログに掲載された各製品の性能等に関す\nる数値は全て、寧波エアタックが運営する研究開発センターにおいて測定・算出さ れたものである。(乙 13、弁論の全趣旨)
イ 被告は、AirTAC グループの唯一の日本における拠点であり、同グループにお いて製造した被告製品を日本国内で自社製品又は自社グループ製品として販売して いる。(甲 1)
ウ 被告は、寧波エアタックから本件カタログの提供を受け、これを顧客に配布 すると共に被告サイトに掲載したが、その際、本件カタログに記載された数値の正 確性につき、改めて自ら測定し、又は研究開発センターに照会するなどして確認す ることはしなかった。(弁論の全趣旨)
(2) 前記各認定事実によれば、被告は、その取扱製品である被告製品を掲載した カタログ等の宣伝広告物を配布等するに当たり、被告製品の品質に係る数値として 正確な数値をカタログ等に記載すべき義務を負っていたにもかかわらず、これを怠 り、本件表示に係る数値の正確性を確認することなく本件カタログを配布等したと\nいうのである。したがって、被告には、被告製品の品質を誤認させるような表示を\nしたことについて少なくとも過失が認められる。
(3) これに対し、被告は、本件カタログに掲載された数値の正確性を検証できる設備を有していないため研究開発センターの測定結果を信頼するしかないなどと指摘して、自己に過失はない旨を主張する。しかし、販売業者が自己の取扱製品の宣伝広告物としてカタログ等を配布等する場合、取引先に対して示すカタログ等の記載内容の正確性を確保すべき義務を販売業者が負うのはむしろ当然とも思われる。まして、被告製品は被告も属する AirTACグループ内で製造され、本件カタログ等に記載されたデータも同グループ内の企業による計測結果に基づくものである。これらの事情を踏まえると、少なくとも本件において、被告は、取引先等に対し本件カタログ等の記載内容の正確性を確保すべき義務を負うというべきである。被告自身は当該数値の正確性を検証できる自社設備を有しておらず、また、訂正前数値に特段不審な点がなかったとしても、それらの事情は、上記義務を免れることを基礎付けるものではなく、また、これを履行したことを示すものでもない。その他被告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する被告の主張は採用できない。
4 損害の有無及び損害額について
(1) 本件は、被告の不正競争に係る訴訟であり、専門的・技術的側面を有するこ と、被告が本件の訴状副本の送達を受けて間もなく訂正前数値の不正確さを認め、 その訂正及び本件カタログの廃棄等を実施したこと(前記第 2 の 1(5)、第 3 の 2(1))、本件カタログは被告製品全てを掲載したものであること(前記第 2 の 1(2))、原告が弁護士費用相当額以外の損害について一切主張立証していないこと、その他諸般の 事情を総合的に考慮すると、被告の不正競争と相当因果関係のある弁護士費用に相 当する損害額は、15万円とするのが相当である。

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令和3(ワ)3824  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年3月4日  東京地方裁判所

 アフィリエイト報酬を目的とした紹介サイトの運営者が、競合関係にあると判断されました。原告商品はWiMAXではないにも関わらず、WiMAX競合社と比較して紹介されまていました。

 不正競争防止法2条1項21号は、競争関係にある者が他の事業者の営業上 の信用を害する虚偽の事実を告知するなどし、競争行為において有利な地位を 得ようとする行為を規定し、もって事業者間の公正な競争等を確保するもので ある。このような同号の趣旨、目的に鑑みると、不正競争防止法2条1項21 号に規定する「競争関係」とは、商品販売上の具体的な競争関係がある場合に 限定されるものではなく、虚偽の事実を告知又は流布した者が、他人の競争上 の地位を低下させることによって、不当な利益を得る場合をも含むと解するの が相当である。 これを本件についてみるに、前記前提事実によれば、原告はモバイルWiF iルーターという商品を自ら販売する事業者であるのに対し、被告はアフィリ エイターであり、原告商品と競合する商品を直接販売するものではない。 しかしながら、前記前提事実によれば、原告の需要者はモバイルWiFiル ーター等の契約を希望する者であるのに対し、本件サイトの需要者は、WiM AXの契約を希望する者であって、両商品は、いずれも携帯可能な無線通信の\nための規格であるという点において共通しているところ、本件サイトにおいて は、本件各商品のうち、原告商品及びBroad WiMAXを除いた本件W iMAX商品についてのみ、アフィリエイトリンクが設定されている。 そのため、本件サイトを閲覧した者が本件サイトを通じて商品を契約する場 合において、被告は、上記の者が原告商品を契約した場合には何らの経済的利 益を得られないのに対し、Broad WiMAXを除いた本件WiMAX商 品を契約した場合にはアフィリエイト報酬を得ることができることになる。 これらの事情の下においては、被告は、原告商品について虚偽の事実を告知 又は流布し、原告の競争上の地位を低下させることによって不当な利益を得る ことができる関係にあるものと認められる。 したがって、被告と原告は、「競争関係」にあるものと認めるのが相当であ る。 (2) これに対し、被告は、本件サイトにおいては、本件各商品の長所も指摘され ていること、本件各商品に関する原告の公式サイトへのリンクも紹介されてい ること、アフィリエイトリンクの設定されている本件WiMAX商品につき、 公式サイトを通じて契約することを強く推奨するような文章も記載されてい ないこと、以上の事情等を指摘して、原告と被告は競争関係にない旨主張する。 しかしながら、本件サイトを閲覧した者が本件サイトを通じて商品を契約す る場合において、被告は、原告商品が契約された場合よりも、Broad W iMAXを除いた他の本件WiMAX商品を契約された場合の方が、利益を得 られる関係にあるものと認められ、このことは、上記において説示したとおり である。そうすると、被告主張に係る事情を考慮しても、上記判断は左右され ないものというべきである。

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平成31(ネ)10008 不正競争防止法に基づく差止・損害賠償請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和3年3月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 漏れていたのでアップします。 卵子及び胚の100%の生存率が達成できるとの記載が不競法2条1項20号の不正競争に当たるが争われました。1審は該当せずと判断しましたが、知財高裁は品質誤認を認めました。損害賠償額は、5条2項による被控訴人(1審被告)の利益額として推定がなされ、被控訴人が書類の提出を拒んだため、控訴人(1審原告)の主張がそのまま認められたものの、覆滅が95%として、5%が損害額です。

前記第2の2で判示したとおり被告サイト1には本件表示1〜6が記載されているほか,前記1(2)アで認定した記載がされている。 不妊治療において,治療用の器具を使用する際は,当該器具の使用方法に従うこ とは当然であることを考慮すると,被告サイト1の上記記載を閲覧した医療関係者 は,被告サイト1に記載された本件表示1〜6は,医療関係者が,クライオテック法のプロトコールを遵守して,被告製品を使用して正常な卵子,胚及び胚盤胞,す\nなわち,臨床において使用可能な卵子,胚及び胚盤胞(以下「正常な卵子」などという。)の凍結保存をした場合,融解後の生存率は100%となるという意味であ\nると認識するものと認められる。
・・・
ア 控訴人は,令和2年9月7日,法7条に基づき,平成30年7月26日 から令和2年7月31日までの間の1)貸借対照表・損益計算書・法人事業概況説明書を含む決算報告書,2)営業報告書,3)確定申告書控え(添付書類を含む),4)総 勘定元帳,5)売上元帳,6)仕入元帳を提出対象の書類とし,上記期間の被告製品に よって乳児が出生される年間の件数は2万8333件であること,乳児一人の出生 に必要な被告製品一式の販売価格は7733円であること及び被告製品の利益率は 70%であることを証すべき事実として,書類提出命令の申立てをしたところ,当裁判所は,同年10月9日,送達日から14日以内に上記申\立てに係る書類の提出を命じる旨の決定をしたが,被控訴人は,提出期限までに上記の各書類を提出しな かった。 そして,上記の各書類の記載に関して具体的な主張をすること及び上記の各書類 によって証明すべき事実を他の証拠によって証明することは,著しく困難であると 認められる。
したがって,民訴法224条3項により,控訴人が,被告広告によって受けた損 害の賠償請求期間として主張している平成27年7月26日から令和2年7月31 日までの間における被告製品によって乳児が出生される年間の件数は2万8333 件であること,乳児一人の出生に必要な被告製品一式の販売価格は7733円であ ること及び被告製品の利益率は70%であることは真実と認められる。 なお,前記2〜4のとおり,被告広告に本件記載部分を含む本件各表示を表\示す る行為は,法2条1項20号の不正競争に当たり,被控訴人は,同不正競争につい て,控訴人に対し損害賠償責任を負うものと認められるところ,上記の書類提出命 令に係る書類は,いずれも,被控訴人の上記不正競争によって控訴人の受けた損害 を算定するために必要であること,被控訴人は,上記書類の提出によって受ける損 害について特段の主張をしていないことからすると,上記の書類提出命令について, 被控訴人において,書類の提出を拒む正当な理由があるとは認められない。 イ 被控訴人は,被告製品を購入した者は,被告製品を実際に使用してみて 購入したのであり,被告広告に接したことによって被告製品を購入したのではない こと,被告製品の性能,品質は原告製品よりも優れていること,控訴人の売上げ,利益は減少していないことを理由に,被控訴人は,被告広告によって利益を受けた\n事実は認められないと主張する。 しかし,前記アのとおり,法5条2項の「侵害の行為により・・・受けてい る・・・利益の額」は,侵害行為と相当因果関係のある利益を意味するのではなく, 侵害者が得た利益の全額を意味するのであり,本件においては,上記「利益の額」 は,本件記載部分を含む本件各表示を掲載した被告広告を表\示している期間中に, 本件各表示によってその品質等が示されている被告製品を販売したことによって被控訴人が受けた利益の全額であるというべきであるから,被控訴人の上記主張は理\n由がない。
(3) 推定の覆滅について
ア 前記1(3)のとおり,被控訴人の営業活動は,主に,営業担当者が被告 製品の購入が見込まれる不妊治療施設を訪問して行うというものであるから,その ような営業活動において,被告広告が利用されることがあるとしても,被控訴人の 営業活動にとって,広告の占める程度は小さいといえる。 しかし,そうであるとしても,被告広告に記載された本件各表示に接することにより,被告製品の購入を検討するようになり,前記1(3)のとおり,所属の培養士 を技術講習会(ワークショップ)に参加させ,その結果,被告製品を購入する不妊 医療施設が存在するものと推認され,このような意味において,本件各表示は,被告製品の購入動機に影響を与えている場合があるというべきである。もっとも,そ\nの場合であっても,技術講習会(ワークショップ)における被告製品の使用感等が 被告製品を購入しようとの意思決定をするに当たって重視されるものと考えられる から,本件各表示の影響は相当程度限定的であるというべきである。また,本件製品は継続的に使用されるものであるから,原告製品や被告製品の販\n売の多くは,既に,同製品を購入して,同製品を使用している不妊医療施設に対す るものであると認められるところ,「生存率100%」が実現できるかは,客観的 に判明し,被告製品を使用している者にとっては,その真偽を比較的容易に認識し 得るといえることからすると,被告製品を継続的に購入し,使用している不妊医療 施設が購入の更なる継続をしようとの意思決定をするに当たっては,「生存率10 0%」などの本件記載部分に影響を受けることはないというべきである。 以上の事情を総合考慮すると,被告製品の売上げに対する被告広告の貢献の程度 は,かなり小さいといわざるを得ない。
また,前記1(9)のとおり,日本において販売されている本件製品のほとんどは, 原告製品又は被告製品であるが,海外においては,原告製品と被告製品が競合して いるインドのシェアは,被告製品が18%,原告製品が54%であり,原告製品と 被告製品が競合しているロシアのシェアは,被告製品が15%,原告製品が60% である。そうすると,法5条2項の推定が一部覆滅され,その割合は95%であると解するのが相当である。

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◆平成30(ワ)22646
以上によれば,研究報告1ないし5によっては,手順を厳密に遵守して被 告製品を用いて卵子を凍結保存し融解したとしても100%の生存率を達成 することができないとは認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠も ないから,被告から提出された証拠(乙4ないし10)の内容も考慮すれば, 本件記載部分を含む本件各表示が被告製品の需要者である医療関係者や研究者をしてその品質等を誤認させるおそれがあるとは認めるに足りない(なお,\n本件記載部分の表現については,紛争予\防の観点から,研究報告1ないし5 の内容も踏まえ,より慎重に検討することが望まれる。)。

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令和1(ワ)11673  差止請求等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和3年9月3日  東京地方裁判所

 女性用下着の形状について、周知著名商品等表示ではないと判断されましたが、不競法2条1項3号の形態模倣であるとして、約2億円の損害賠償が認められました。

 原告は,原告商品は形態1)ないし7)を組み合わせたものであり,原告 商品全体の形態と同一又は類似の商品は見当たらないから,他の同種商 品と識別し得る特徴を有すると主張する。 しかし,原告商品の販売が開始された当時,原告商品が備える形態1) ないし7)の全てを備えるブラジャー又はナイトブラが販売されていたこ とを認めるに足りる証拠はないものの,前記(1)ウ(ア)のとおり,形態1) ないし7)のうちの3つ又は4つを備える商品AないしGが存在していた。 そうすると,原告商品の販売開始時点では,既に,原告商品の形態に似 通った商品が複数販売されていたということができる。しかも,前記(ア) のとおり,原告商品の形態1)ないし7)は,いずれも他の商品とは異なる 顕著な特徴とは認められないから,当該商品には認められないが原告商 品には認められる形態上の特徴により,需要者であるブラジャー又はナ イトブラの購入に関心がある一般消費者が出所の違いを識別することが できるとはいえない。そして,形態1)ないし7)を組み合わせることによ り上記需要者の注意を特に惹くことになる事情も見当たらないことから すると,形態1)ないし7)を組み合わせた原告商品の形態が他の同種の商 品とは異なる顕著な特徴を有していると認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
ウ 周知性について
前記(1)イ(ア)のとおり,原告商品は平成28年9月12日に販売が開始 されたところ,原告商品の形態につき周知性が確立したと原告が主張する 平成29年12月までに約1年4か月,被告商品1の販売が開始された平 成30年10月まででも約2年1か月しか経過していない。そして,前記 (1)ウ(ア)のとおり,原告商品の販売が開始される前から,原告商品が備え る形態1)ないし7)のうち複数を有するブラジャー又はナイトブラが販売さ れており,原告商品の形態が原告によって長期間独占的に利用されたとは 認められない。
・・・
商品の形態を比較した場合,問題とされている商品の形態に他 人の商品の形態と相違する部分があるとしても,当該相違部分についての 改変の内容・程度,改変の着想の難易,改変が商品全体の形態に与える効 果等を総合的に判断した上で,その相違がわずかな改変に基づくものであ って,商品の全体的形態に与える変化が乏しく,商品全体から見て些細な 相違にとどまると評価されるときには,当該商品は他人の商品と実質的に 同一の形態というべきである。
イ 被告商品1について
(ア) 前記(1)アのとおり,被告商品1は,原告商品が備える形態1)ないし7) を全て備え,別紙3比較写真目録記載の写真のとおり,全体的なデザイ ンはほぼ同一であるといえる。 被告商品1と原告商品の間には相違点1)が認められるが,別紙2原告 商品目録記載の写真のとおり,原告商品のカップ部の中央に付けられた リボンはごく小さな装飾にすぎず,そのようなリボンを取り外すという 改変については,その程度はわずかであり,着想することが困難である とはいえず,商品全体の形態に与える効果もほとんどないといえる。 また,被告商品1と原告商品の間には相違点2)が認められるが,別紙 1被告商品目録記載1の写真のとおり,左右の前身頃を構成する3枚の\n生地のうち最下部にある生地が被告商品全体に占める面積はそれほど大 きいものではなく,他の部分の布地と同系色であってレース生地の存在 が際立つものではない上,別紙3比較写真目録記載の写真のとおり,原 告商品と被告商品1とで,ナイトブラとしての機能を成り立たせるパー\nツの形状及び構成は同一といってよいことからすると,相違点2)は,需 要者であるブラジャー又はナイトブラの購入に関心がある一般消費者に 対し,原告商品よりもレース生地が比較的多いという印象を与えるにと どまるから,被告商品1の上記部分をレース生地とすることが商品全体 の形態に与える効果は小さいといえる。さらに,前記1(2)イのとおり, ブラジャーにレース生地を用いること自体ありふれた形態であり,上記 部分を無地の生地からレース生地に置き換える着想が困難であるともい えない。
そうすると,相違点1)及び2)は,いずれもわずかな改変に基づくもの であり,商品の全体的形態に与える変化は乏しく,商品全体から見て些 細な相違にとどまるといえるから,被告商品1は原告商品と実質的に同 一の形態であると認めるのが相当である。 (イ) 前記(ア)のとおり,被告商品1と原告商品は実質的に同一の形態であり, 前記前提事実(2)及び(3)アのとおり,被告商品1の販売が開始された平 成30年10月頃に先立つ平成28年9月12日に原告商品の販売が開 始されているところ,本件全証拠によっても,被告が被告商品1を独自 に開発したことをうかがわせる事情は認められないことからすると,被 告は原告商品の形態に依拠して被告商品1を作り出したと推認するのが 相当である。
(ウ) 以上によれば,被告商品1は,原告商品の「商品の形態」を「模倣し た商品」であると認められる。
・・・
また,被告商品2と原告商品の間には相違点5)が認められるが,別紙 1被告商品目録記載2の写真のとおり,被告商品2も,被告商品1と同 様,レース生地の色合いが他の部分の布地と同系色であって,レース生 地の存在が際立つものではなく,被告商品2では,被告商品1よりレー ス生地が多く用いられているものの,そのレース生地が肩紐部や背部と いった比較的注目することが多くないと考えられる部分に用いられてお り,一方で,同写真と別紙2原告商品目録記載の写真を見比べると,原 告商品と被告商品2とで,ナイトブラとしての機能を成り立たせるパー\nツの形状及び構成はほぼ同一であるといえることからすると,この改変\nが商品全体の形態に与える効果は大きくないというべきである。さらに, 前記1(2)イのとおり,ブラジャーにレース生地を用いること自体ありふ れた形態であり,被告商品2の相違点5)に係る部分を無地の生地からレ ース生地に置き換える着想が困難であるとはいえない。 被告商品2と原告商品の間には相違点6)が認められるが,ホックが4 段階であるか3段階であるかの違いにすぎず,ホックを連結する段階数 を増やすという改変を着想することは容易であり,そのような改変が商 品全体の形態に与える効果は小さいといえる。 そうすると,相違点3)ないし6)は,いずれもわずかな改変に基づくも のであり,商品の全体的形態に与える変化は大きくなく,商品全体から 見て些細な相違にとどまるといえるから,被告商品2は原告商品と実質 的に同一の形態であると認めるのが相当である。
(イ) 前記(ア)のとおり,被告商品2と原告商品は実質的に同一の形態であり, 前記前提事実(2)及び(3)イのとおり,被告商品2の販売が開始された平 成31年2月頃に先立つ平成28年9月12日に原告商品の販売が開始 されているところ,本件全証拠によっても,被告が被告商品2を独自に 開発したことをうかがわせる事情は認められないことからすると,被告 は原告商品の形態に依拠して被告商品2を作り出したと推認するのが相 当である。
・・・
不競法5条2項の侵害者が侵害行為により受けた利益の額は,侵害者の侵 害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりその製 造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額で あると解するのが相当である。 辞任前の被告訴訟代理人が作成した一覧表(甲54)によれば,被告が被\n告商品1を販売したことにより,1億5794万円の売上げがあり,商品原 価として2650万円,カード決済料金として552万7900円及び送料 原価として2650万円を要したこと,被告が被告商品2を販売したことに より,1億4254万5320円の売上げがあり,商品原価として2873 万7640円,カード決済料金として498万9086円及び送料原価とし て2391万7000円を要したことが認められる。
そして,弁論の全趣旨 によれば,上記の商品原価,カード決済料金及び送料原価は,いずれも被告 各商品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費と認められる。 他方で,上記一覧表(甲54)には,被告商品1につき広告費として73\n20万5070円,人件費420万円及び販売システム費用789万700 0円,被告商品2につき広告費として7063万0834円,人件費630 万円及び販売システム費用712万7266円を要したかのような記載があ る。しかし,被告が上記広告費を支出してどのような内容の広告をしたのか, それが被告各商品に係るものであったかは,証拠上明らかではないし,上記 人件費及び販売システム費用がいかなる目的で支出されたかも証拠上明らか でないから,これらの費用は,被告各商品の製造販売に直接関連して追加的 に必要となった経費とは認められない。
したがって,被告が被告商品1を販売したことによる利益の額は9941 万2100円(=1億5794万円−2650万円−552万7900円− 2650万円)であると,被告商品2を販売したことによる利益の額は84 90万1594円(=1億4254万5320円−2873万7640円− 498万9086円−2391万7000円)であると,それぞれ認められ る。
(2) 本件訴訟に現れた全ての事情を勘案すると,本件訴訟の弁護士費用相当の 損害額は,被告商品1につき994万1210円,被告商品2につき849 万0159円と認めるのが相当である。
(3) したがって,被告が被告各商品を販売したことにより原告が被った損害額 は,合計2億0274万5063円である。

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平成31(ワ)2034  損害賠償請求事件  その他  民事訴訟 令和3年1月8日  東京地方裁判所

 被告会社は原告に事業譲渡をしました。原告は競業避止義務違反を理由に事業の中止を求めました。裁判所はこれを認めました。争点は問題の事業が譲渡対象であったか否かでした。

(1) 本件事業譲渡の対象について
本件事業譲渡の対象について,原告は,関東地方に所在する食品加工業者 及び食品工場向けの食品用機械の開発,製造,加工,販売又はメンテナンス の事業等が包括的に含まれると主張するのに対し,被告は,本件事業譲渡の 対象は,旧関東事業部の行っていた食品用機械のメンテナンス及び付属部品, 資材の販売等の事業に限られると主張するので,以下,検討する。 ア 本件事業譲渡契約書第1条には,被告は原告に「関東事業部」を譲渡す る旨の記載があるところ,前記前提事実(第2の1(1)),証拠(甲11, 12)及び弁論の全趣旨によれば,1)被告は,平成23年11月,海外メ ーカー製の食品用機械の輸入及び販売事業等を行うことを目的として,関 東産機事業部を被告所沢事務所内に立ち上げたこと,2)その後,関東産機 事業部の責任者であるAが平成27年に被告を退社したことから,被告所 沢事務所内に同事業部の担当者が不在になり,関東産機事業部が行ってい た事業は,原告代表者を含む旧関東事業部の従業員等が引き継いで行うよ\nうになったこと,3)平成28年から平成29年頃にかけての被告の受注予\n定表は「札幌」と「関東」とで別々に作成されており,関東地方の受注予\ 定表には関東産機事業部と旧関東事業部の区別なく,受注案件の進捗状況\n等が記載されていること,の各事実が認められる。 上記各事実によれば,本件事業譲渡当時,関東産機事業部の活動は事実 上休止状態にあり,被告の関東地方における事業やその営業は,そのほと んどを旧関東事業部が行っていたものと認められ,本件事業譲渡契約書第 1条の「関東事業部」とは,同契約締結当時に旧関東事業部が行っていた 事業,すなわち,被告の関東地方における食品加工業者及び食品工場向け の食品用機械の開発,製造,加工,販売又はメンテナンスの事業を包括的 に含むものと解するのが相当である。
イ また,前記前提事実(第2の1(2))のとおり,本件事業譲渡契約書には, 関東産機事業部に残される資産や契約等についての記載は存在せず,かえ って,同契約書第2条は,被告は,原告に対し,建物付属設備,機械装置, 器具備品等の全てを含む資産,旧関東事業部の敷地及び建物(工場・事務 所)の物品の全てに関する契約,並びに旧関東事業部の行う事業に関する 営業上の秘密,ノウハウ,顧客情報等を含む必要又は有益な全ての情報を 譲渡すると規定されている。 被告は,原告に譲渡した事業には関東産機事業部の事業は含まれないと 主張するが,本件事業譲渡契約書の草案を作成したのが被告であることに ついては当事者間に争いないところ,仮に被告の主張するように関東産機 事業部を事業譲渡の対象としないのであれば,本件事業譲渡契約書におい て旧関東事業部に譲渡する食品用機械や資材等の資産,契約,顧客等と被 告の関東産機事業部に残す資産,契約,顧客等とが区別して規定されてし かるべきであるが,本件事業譲渡契約書においては,関東産機事業部に一 部の資産,契約,顧客情報等を残すことを前提とする記載は存在しない。 そうすると,本件事業譲渡契約書第2条の規定は,被告が,原告に対し, 被告の関東における食品加工業者及び食品工場向けの食品用機械の開発, 製造,加工,販売又はメンテナンスの事業等に関する資産,顧客情報を包 括的に譲渡する趣旨であると解するのが相当である。
ウ さらに,平成28年10月21日に開催された役員会議の議事録(乙1 2)には,本件事業譲渡に関し,被告代表者が「(関東事業部の)事業譲\n渡を考えています。・・・関東事業部の資産価値1,000万円,営業権1,000万円 くらい。Xさんが関東事業部の頭でもあるため,Xさんが関東事業部を買 う形が望ましい。」と発言した旨の記載があると認められるが,同議事録 には,関東産機事業部の事業を譲渡対象としないことやその資産価値につ いての記載は存在しない。 このことに照らしても,本件事業譲渡契約の対象には,被告の関東にお ける食品加工業者及び食品工場向けの食品用機械の開発,製造,加工,販 売又はメンテナンスの事業等が包括的に含まれると解するのが相当であ る。

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平成30(ワ)3789  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和3年2月9日  東京地方裁判所

 不競法違反の損害額として覆滅97%の約1800万円の損害が認定されました。

ア 被告商品の売上高について
前記期間の被告商品の売上金額は,11億0573万1572円(消費 税相当額抜き)であった(乙34,弁論の全趣旨)。 もっとも,このうち2251万6179円は未収であり(乙35),結 局,被告商品が販売されて被告が利益を受けたものとはいえないから, 上記売上金額から控除すべきである。また,被告は被告商品の売上げに 係る消費税を納税しなければならないから,税抜金額を売上金額とする。 以上から,前記期間の被告商品の売上高は,別紙損害額の売上高欄記載 のとおり,10億8321万5393円であったと認められる。
・・・
エ 被告が受けた利益の額について
以上から,被告が前記期間に被告商品の販売により受けた利益の額は, 別紙損害額の限界利益欄記載のとおり,合計6億1192万6912円 となる。
(3) 推定覆滅事由について
ア 不正競争防止法5条2項による推定は,侵害者による侵害行為がなかっ たとしても侵害者が受けた利益を被侵害者が受けたとはいえない事情が 認められる場合には,覆滅されると解される。
イ 掲記の証拠によれば,次の各事実が認められる。 被告は,被告商品について,電子商取引サイト等において,本件品質 誤認表示によるオリゴ糖の純度に係る特徴のほか,オリゴ糖が1種類で\nはなく,複数の種類のオリゴ糖を配合していることを強調し,また,被 告商品の原材料が全て動植物に由来するものであり添加物がないことな どの特徴をも大きく取り上げ,妊婦や乳幼児等が摂取しても安全,安心 であるなどと広告宣伝していた。さらに,「実感力」などの言葉を使っ て,584人のアンケート結果によれば,「『毎日すっきり!』実感で きました!」というモニターが76.1%であるなど,多くの者が何ら かの形で便通の効果を実感しているとして,「満足率97.2%」であ るという記載をするなどしていた。(甲10〜16)
被告は,被告商品の購入者に対して,商品を使用した感想,被告の客 対応,他社との違い等を自由に記載する欄を設けたアンケートの葉書を 交付していたところ,それらを記載して被告に返送した回答者928人 のうち,被告商品が「オリゴ糖100%」であることについて言及した ものは6人であった。回答者には,多くの者が便通が改善したことを述 べていた。(乙41,42) オリゴ糖類食品は,オリゴ糖などを組み合わせ,配合することによっ て製造されており,主力製造業者及びその販売する商品としては,原告 商品及び被告商品のほか,塩水港精糖の「オリゴのおかげ」,加藤美蜂 園本舗の「北海道てんさいオリゴ」,日本オリゴの「日本オリゴのフラ クトオリゴ糖」,株式会社明治フードマテリアの「メイオリゴ」,Hプ ラスBライフサイエンスの「オリゴワン」,伊藤忠製糖の「クルルのお いしいオリゴ糖オリゴDEクッキング」,井藤漢方製薬の「乳酸菌オリ ゴ糖」,梅屋ハネーの「梅屋イソマルトオリゴ糖」,正栄の「スッキリ\nオリゴ糖」,ユウキ製薬の「活き活きオリゴ糖」,オリヒロの「オリゴ 糖シロップ」,ビオネの「ビオネ・ビートオリゴ」,日本甜菜製糖の 「ラフィノース100」などがある。これらのオリゴ糖類食品市場にお ける平成25年度から平成28年度及び平成30年度の原告商品の占有 率は,22.8%から26.9%であり,平均約24.4%であった。 上記のオリゴ糖類食品には,その内容や形態,販売態様において様々 なものがあり,例えば,塩水港精糖の販売する「オリゴのおかげ」は, 個包装された顆粒状のもの,シロップ形態のものなどがあり,加藤美蜂 園本舗の販売する「北海道てんさいオリゴ」は天然の甘味料であること をうたった商品であるが,同社は他にシロップ形態の商品も販売してお り,株式会社明治フードマテリアの販売する「メイオリゴ」には,液体, 粉末,顆粒等の各形態が存在する。もっとも,いずれについても,需要 者である一般消費者が,日常の食生活の中で健康に有用な効果作用を発 揮するオリゴ糖を簡便に摂取できる点に商品の意義が認められており, 需要者は,これらの多数の各商品の中から,各商品の上記の点以外の様 々な特徴を勘案して選択,購入しているといえる。 (本項につき,甲34,41,乙54,59,61(なお,乙59の5 によれば,平成29年度の原告商品の市場占有率42.3%であるとさ れているが,その前後の年度の市場占有率と大きな差があること,平成 29年度の市場規模が47億4000万円である一方,同年前後の原告 商品の売上高は概ね年9億7000万円から10億9000万円程度で あること等に照らすと,上記の同年度の市場占有率を直ちに信用するこ とはできない。))
ウ 被告は,被告商品について,本件品質誤認表示によるオリゴ糖の純度に\n係る特徴のほか,複数の種類のオリゴ糖を配合していること,被告商品の 原材料が全て動植物に由来するものであり添加物がないことなどの特徴を も大きく取り上げ,妊婦や乳幼児等が摂取しても安全,安心であるなど, 被告商品の魅力を掲げて広告宣伝していた。そして,被告商品の購入者が 自由に記載したアンケート結果によっても,オリゴ糖の純度に特に着目し て被告商品を購入した需要者が多かったことが直ちに認められるものとま ではいえない(前記イ )。また,オリゴ糖類食品には様々な形態のもの が存在し,原告商品と被告商品が似た形態であるのに対し,これらと異な る形態のものが多数あるのであるが,形態にかかわらず,これらの商品は, 基本的に需要者である一般消費者が,オリゴ糖を簡便に摂取できる点に商 品の意義が認められている。そうすると,需要者は,多数の各商品の中か ら,各商品の様々な特徴を勘案して選択,購入することもあるといえ原告 商品以外のオリゴ糖類商品も原告商品及び被告商品と市場において競合す るといえるものである。このようなオリゴ糖類食品市場における原告商品 )。
そして,本件では品質を誤認させるような表示が問題となっていて,被\n告商品の出所を原告と誤認するおそれが問題となっているわけではない ところ,被告商品を販売するウェブサイトには,被告が強く関与するも の(前記第2の1(2)ケ)に加えて,アマゾン,楽天,ヤフーなどが運営 するサイトもあり,これらにおいて原告商品について触れられていると は認められない(甲10,15,32)。 さらに,被告は,平成28年11月までは自社の電子商取引サイト等も 含めて本件品質誤認表示をしていたが,同月以降,自社の電子商取引サイ\nトからはその表示を削除し,平成30年2月には,アフィリエーターらに\n対し,「オリゴ糖100%使用」等の表示をしないように求めた(前記1\n(2)エ)。
これらを考慮すると,被告の本件品質誤認表示による被告商品の販売数\n量の増加と,他のオリゴ糖類食品の販売数量の低下,さらには,原告商 品の販売数量の低下との間には,それほど強い相関関係が成り立つとは いえず,上記の各事情を総合考慮すれば,被告の本件品質誤認表示がな\nかったとしても被告が受けた利益を原告が受けたとはいえない事情が相 当程度認められ,被告が受けた利益の額の97%について,原告が受け た損害の額であるとの推定が覆滅されるとするのが相当である。 以上から,上記推定覆滅後の額は,別紙損害額の推定覆滅後の金額欄記 載のとおり,1835万7803円となる。

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令和1(ワ)19889  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和2年3月18日  東京地方裁判所

 fashionブランドのセレクトショップ「SHIPS」と同じマッチングサイトの名称を使用していた被告に対して、差止と20万円の損害賠償が認められました。

原告ブランドに係る商品の需要者は,衣料品を中心とするファッション全 般に関心を有する一般消費者であると解されるところ,前記認定のとおり, 1)原告の店舗数及びその展開地域,2)オンラインショップも運営しているこ となど,その販売態様,3)原告の商品の売上高及び来店者数,4)セレクトシ ョップ分野における原告の地位(三大ブランドの一つ),5)雑誌,カタログ, フリーペーパー等における宣伝・広告の状況,6)フェイスブック,ツイッタ ー,インスタグラムにおけるフォロワー数などの事情を総合すると,原告表\n示は,被告表示の使用が開始された平成31年4月時点において,需要者等\nの間において,原告の商品等表示に当たるものとして,周知であったと認め\nられる。
(2) これに対し,被告は,原告商品の売上高や店舗数,UNITED ARR OWS,BEAMS,ユニクロ,しまむらなどの同業他社に比して少ないこ とを指摘する。 しかし,原告商品の売上高や店舗数が,原告より更に規模が大きい同業他 社と比較して小さいとしても,そのことは原告ブランドが需要者等の間で周 知であるとの認定を妨げるものではない。前記認定のとおり,原告は,アパ レルの一つの分野として確立しているセレクトショップ分野において,BE AMS及びUNITED ARROWSとともに,三大セレクトショップの 一つと評価されており,その店舗は,著名百貨店,主要ターミナル駅の駅ビ ル,大型路面店などを中心に,全国に展開され,売上高(平成31年2月期) も245億7502万円に上ることなどを考慮すると,原告表示が周知であ\nると認められることは前記判示のとおりである。
(3) 被告は,「知恵蔵」の出版が10年以上前であることなどを指摘し,原告 が挙げる書籍は周知性を基礎付けるものではないと主張するが,前記1(2) のとおり,アパレル業界に関する書籍及び「知恵蔵」などの一般書籍は,出 版時期を問わず,いずれも,原告がセレクトショップの大手であるとの認識 を示している上,上記1で認定した原告ブランドの宣伝・広告状況などにも 照らすと,原告がセレクトショップとして需要者等によく知られているとい う「知恵蔵」に記載された状況は,平成31年4月時点においても変わりが ないというべきである。
(4) 被告は,原告による広告宣伝について,他社の広告費との比較や実際の広 告効果の定量的な主張・立証がないと主張するが,前記1(3)(4)記載のとお り,原告ブランドの雑誌等における紹介の状況,SNSにおけるフォロワー の数,創業40周年の際の宣伝・広告状況(全国主要駅におけるポスター広 告,新聞における全面広告等),プロサッカーにおけるスポンサー企業とし ての宣伝・広告状況など,原告による広告・宣伝の内容,量等に照らすと, 他企業の広告費との比較を要することなく,原告表示は需要者等の間で周知\nであると認めることができる。
(5) 被告は,被告サイトの利用者向けに実施したアンケート調査の結果によれ ば,回答者341名のうち,原告表示を知らなかった者は297名に及ぶこ\nとを理由として,原告表示が周知ということはできないと主張する。\n しかし,被告の行ったアンケート調査調査は,その対象者が被告サイトの 利用者であり,被告サイトにより提供されるサービスの性質,内容等に照ら すと,その利用者層は一定の限定された範囲にとどまるものと考えられ,そ の調査結果が必ずしも原告ブランドに係る商品の需要者の認識を反映してい るとはいい難い。そうすると,上記調査結果は,原告表示が需要者等の間で\n周知であるとの結論を左右しないというべきである。
(6) 以上のとおり,原告表示は,少なくとも周知性を有するものであって,不\n正競争防止法2条1項1号の「需要者の間に広く認識されているもの」に当 たるというべきである。
3 争点2(混同のおそれの有無)について
(1) 不正競争防止法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」には,他人の周 知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と当該他人とを同一\n営業主体として誤信させる行為のみならず,両者間にいわゆる親会社,子会 社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業\nを営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為をも包含すると解さ れる(最高裁平成7年(オ)第637号同10年9月10日第一小法廷判 決・集民189号857頁,最高裁昭和56年(オ)第1166号同59年 5月29日第三小法廷判決・民集38巻7号920頁参照)。
(2) これを本件についてみるに,前記認定(5)及び(6)のとおり,1)原告は,原 告表示を含むブランド名を用いて,アパレル分野に限らず,自動車のメンテ\nナンスやカスタム,生活雑貨の販売などの事業も手掛けていること,2)原告 は,原告表示を用いて,異業種の他企業との間で,多数のコラボレーション\n企画を実施しており,そのことは需要者等に相応に認識されていたものと推 認されること,3)原告は,原告表示を用いて,福祉分野を始めとする社会的\nな活動にも参加しており,公式サイトにおいて,「コンプライアンス,LG BT,ダイバーシティなどについての啓蒙」に取り組んでいる旨を表明して\nいることが認められる。 これによれば,被告サイトに原告表示と類似する被告表\示を使用すること は,原告と被告との間にいわゆる親会社,子会社の関係や系列関係などの緊 密な営業上の関係があり,又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属\nする関係が存すると需要者等に誤信させる行為であって,原告の商品又は営 業と「混同を生じさせる行為」というべきである。
(3) これに対し,被告は,原告の属するアパレル分野と被告の属するマッチン グサイトの分野とは,全くの異業種であり,業種の隔たりが大きいと主張す るが,原告自身が,障害者を始めとするマイノリティや福祉に対する支援活 動を積極的に行っていることは前記判示のとおりであり,また,アパレルメ ーカーがマッチングアプリとの協業プロジェクトを実施した事例や,セクシ ャルマイノリティの間で人気の出会い系アプリがアパレルラインを発表した\n事例があると認められること(甲65)に照らすと,アパレル分野とマッチ ングサイトの分野とが全くの異業種であるということはできない。
(4) また,被告は,原告は他の企業の知名度を借りたコラボレーションをして いるにすぎないと主張するが,原告が他の分野で事業自体を展開していない としても,他業種の企業とコラボレーションをし,原告表示の付された商品\n等を提供することとなれば,需要者等は,原告と被告との間に子会社等の関 係があるなどの誤信をするおそれがあることに変わりはないというべきであ る。
(5) 被告は,被告の実施したアンケート調査結果も根拠として,被告サイトが 原告によって運営されていると誤信することはないと主張するが,前記判示 のとおり,被告の行ったアンケート調査結果が原告ブランドの需要者等の認 識を反映しているとは必ずしもいうことはできないので,同アンケート調査 結果を根拠にして混同のおそれがないということはできないが,同調査結果 によっても,セレクトショップ「SHIPS」を知っている者の2割以上に 混同が生じていることによれば,被告表示に接した需要者等が上記の混同を\nする可能性は高いというべきである。\n
(6) したがって,被告の行為は,原告の商品又は営業と「混同を生じさせる行 為」に当たる。
4 争点3(営業上の利益の侵害の有無)について
原告は,昭和52年に「SHIPS 銀座店」を開設して以来,その店舗を 拡大し,平成31年3月頃までに,全国19都道府県に約70店舗を展開する に至っており,原告ブランドには長年にわたる使用により信用力が形成されて いると解されるところ,被告による被告表示の使用は,原告ブランドの信用力\nに依拠し,その意に反してこれと類似の被告表示を使用するものであり,原告\nブランドの信用力を希釈化若しくは毀損するものであるということができる。 したがって,被告の行為は,原告の営業上の利益を侵害し,これを侵害する おそれのある行為であると認められる。
5 争点4(故意・過失の有無及び損害額)について
(1) 被告は,被告以外にも「シップス」又は「SHIPS」の名称を用いる事 業者が存在することなどを理由として,被告には過失がなかったと主張する が,「SHIP」等の名称を用いる業者が他に存在するとしても,そのこと をもって過失の存在が否定されるものではない。被告は,原告表示の存在を\n知りつつ,被告サイトに被告表示を使用したものであり,原告表\示の周知性 や原告表示との類似性を容易に認識し得たものと認められるので,被告には\n少なくとも過失が存在したものというべきである。
(2) そして,本件訴訟の難易度,審理の経過,認容する請求の内容その他本件 において認められる諸般の事情を考慮すると,被告による不正競争行為と相 当因果関係にある弁護士費用相当額は20万円とするのが相当である。

◆判決本文

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令和元年(ネ)10044 損害賠償等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 令和2年1月31日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第29604号)

日本製鉄のノウハウが「POSCO」に漏洩した事件についての控訴審です。原審維持です。伏せ字だらけです。

 これに対し,控訴人は,本件技術情報1ないし6,8ないし17及び 26には,乙11記載の公知文献等に記載された情報が含まれており, 非公知性は認められない旨主張する(乙11)。 しかしながら,本件技術情報は,電磁鋼板の生産現場で採用されてい る具体的条件を含むものであり,乙11記載の公知文献等に記載されて いる研究開発段階の製造条件とは,技術的位置付けが異なる。また,乙 11記載の公知文献等に記載されている製造条件は,文献毎にばらつき があったり,一定の数値範囲を記載するにとどまるものである。そして, 電磁鋼板は多段階工程で製造され,高品質の電磁鋼板を製造するために は,各工程の最適条件の組合せが必要とされるのであって,一工程の一 条件のみでは高品質の電磁鋼板を製造することはできない。 したがって,乙11記載の公知文献等に本件技術情報の具体的な条件 を含む記載があるというだけでは,生産現場で実際に採用されている具 体的な条件を推知することはできず,非公知性は失われていないという べきである。
そして,以下に述べるとおり,本件技術情報1ないし6,8ないし1 7及び26には,乙11記載の公知文献等に記載された情報が含まれて おり,非公知性は認められない旨の控訴人の主張は理由がない。
(ア) 本件技術情報1について
控訴人は,本件技術情報1は,●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●乙11記載の公知文献等に記載された情報 とは性質を異にするものであるから,大量の情報の中に本件技術情報 1に近い情報が存在しているからといって,非公知性は否定されない。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。
(イ) 本件技術情報2について
控訴人は,本件技術情報2は,●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●本件技術情報2が開示されている旨主張する。 しかしながら,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●本件技術情報2の非公知性は失われないから,控訴 人の上記主張は理由がない。
(ウ) 本件技術情報3について
控訴人は,本件技術情報3は,●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●このことは多くの乙11記載 の公知文献等(甲99ないし108)に記載されている旨主張する。 しかしながら,前記(ア)のとおり,●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●乙11記載の公知文献等に記載され た情報とは性質を異にするものであるから,大量の情報の中に本件技 術情報3に近い情報が存在しているからといって,非公知性は否定さ れない。また,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●が開示されているとはいえない。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。
(エ) 本件技術情報4について
控訴人は,本件技術情報4は,●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● しかしながら,前記(ア)のとおり,本件技術情報4の操業条件は, ●●●●●●●●●●●●●●●乙11記載の公知文献等に記載され た情報とは性質を異にするものであり,各特許文献において「実施例」 として記載されているからといって,直ちに被控訴人における●●● ●●●●を示すものではない。 したがって,本件技術情報4は,依然として非公知であるというべ きであるから,控訴人の上記主張は理由がない。
(オ) 本件技術情報5について
控訴人は,本件技術情報5は,●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● したがって,本件技術情報5は非公知であるというべきであるから, 控訴人の上記主張は理由がない。
(カ) 本件技術情報6について
控訴人は,本件技術情報6は●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●本件技術情報6が開示されているとはいえない。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。
(キ) 本件技術情報8について 控訴人は,本件技術情報8は,●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●乙11記載の公知文献等には ●●●●●●●●●●●技術が多く開示されている旨主張する。 しかしながら,本件技術情報8においては,●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●は乙11記載の公知文献等に 開示されていない。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●かかる技術情報も乙11記載の公知 文献等に開示されていない。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。
(ク) 本件技術情報9について
控訴人は,本件技術情報9は,●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●は乙11記載の 公知文献等に記載されていないから,控訴人の上記主張は理由がない。
(ケ) 本件技術情報10ないし14について
控訴人は,本件技術情報10ないし14は,●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●は,乙11記載の公知文 献等に開示されている旨主張する。 しかしながら,本件技術情報10ないし14を構成する●●●●●\n●●●●●●●●●●●は,控訴人の指摘する乙11記載の公知文献 等に記載されていないから,控訴人の上記主張は理由がない。
(コ) 本件技術情報15ないし17について
控訴人は,本件技術情報15ないし17は,●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●は乙11記載の公知文献等に開 示されている旨主張する。 しかしながら,控訴人の指摘する乙11記載の公知文献等に本件技 術情報15ないし17は記載されていないから,控訴人の上記主張は 理由がない。
(サ) 本件技術情報26について
控訴人は,本件技術情報26は,●●●●●●●●●に関するもの であるところ,乙11記載の公知文献等に開示されている旨主張する。 しかしながら,本件技術情報26の●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●は,控訴人の指摘する乙11 記載の公知文献等に開示されていないから,控訴人の上記主張は理由 がない。」
3 争点2(控訴人による不競法2条1項4号又は7号の不正競争の成否)につ いて
次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第4の3記載のとお りであるから,これを引用する。 原判決28頁5行目から8行目の「開示した。」までを次のとおり改める。 「前記1(5)で認定のとおり,控訴人は,●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●被控訴人の電磁鋼板に関する本件 技術情報を開示したことが認められる。」
4 争点3(被控訴人の損害額)について
次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第4の4記載のとお りであるから,これを引用する。
(1) 原判決30頁23行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「(4) 控訴人は,控訴人が●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●が,HGOの品質改善に大きく寄与した旨主張するが, これを認めるに足りる証拠はない。控訴人は,そのほかにもるる主張す るが,いずれも,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●との上記認定判断を左右するものではな い。」
(2) 原判決30頁24行目の「(4)」を「(5)」と改める。
5 争点4(弁済の抗弁の成否)について
次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第4の5記載のとお りであるから,これを引用する。
原判決31頁6行目から7行目までを次のとおり改める。
「しかしながら,POSCOと控訴人の負う債務は不真正連帯債務であるか ら,POSCOと被控訴人との間でPOSCOの負う債務の額について何らか の合意がされたとしても,合意の効果は控訴人に及ぶものではない。また,P OSCOと被控訴人との間の訴訟は,POSCOらによる営業秘密侵害行為等 を理由として986億円の損害賠償等を求める訴えであるところ,POSCO の支払った和解金300億円がいかなる債務のいかなる額の弁済に充てられた かを認めるに足りる証拠はない。 この点に関し控訴人は,弁済の事実の証明軽減が図られるべきである旨主張 するが,採用することはできない。 したがって,控訴人の弁済の抗弁は認められない。」

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◆平成29(ワ)29604

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令和1(ネ)10039  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和元年11月11日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 純正品であると誤認させる行為が不競法2条1項14号に該当するのかが争われました。1審、2審とも、本件行為は、同号には該当しないと判断しました。

 控訴人は,被告表示1は,被告各商品がタカギ社純正品であると誤認させ\nると主張する。しかし,「タカギ社純正品」であるとの表示が商品の品質等\nを表示していると理解するのは疑問であり,むしろ,商品の出所を表\示する ものと理解すべきであるから,控訴人主張の点は,不競法2条1項1号の問 題としてとらえるべきもので,同項14号の問題としてとらえるべきもので はない。そして,控訴人は,本訴においては同項1号該当の主張はしないと 明言しているのであるから,控訴人の上記主張は,それ自体失当である。 仮に,「タカギ社純正品」との表示が品質等の表\示に当たると見る余地が あり,かつ,一行目の「タカギ社製」が二行目の「交換用カートリッジ」を 修飾すると認識する需要者も一定程度は存在するとしても,例えば,被告表\n示1の直下には「待望の交換用カートリッジついに発売!!」という表示が\nあるところ,被告各ウェブページに接する需要者は控訴人製の浄水蛇口のユ ーザであって,もともと純正品の交換用カートリッジが控訴人によって提供 されていることを知っているのであるから,上記表示を読めば直ちに被告各\n商品が控訴人製の純正品ではないことを認識するはずであることや,被告表\n示1と近接した位置にある「お買い求めの前に」の欄に,「標準タイプ・高 除去タイプともに,純正カートリッジより浄水の流量が少ないですが」と被 告各商品がタカギ社純正品ではないことを前提とした記述があることなどに 照らしてみれば,需要者は,被告各商品が控訴人の製品ではないと認識する と考えられる。  したがって,控訴人の上記各主張は,被告表示1が同項14号の表\示に当 たらない旨の判断を左右するものでなく,採用することができない。

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◆平成29(ワ)19266

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平成30(ネ)10092  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和元年8月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所(46部)

 被告のプログラムの作成行為について、原審は1審原告の主張を一部認め、不競法2条1項7号違反と判断しましたが、控訴審は、全て取り消しました。

 2 不競法2条1項4号,5号,7号及び8号所定の不正競争行為の成否について
前記1(3)のとおり,本件鑑定の結果によれば,鑑定対象とされた300組のソー\nスコードのペアは,類似箇所1ないし4について,共通ないし類似すると判断され たことが認められる。 そこで,かかる鑑定結果を踏まえて,一審被告らが本件ソースコードを使用した\nと評価することができるかについて,以下検討する。
(1) 類似箇所1について
ア 類似箇所1は,字幕データの標準値を格納するクラスメンバ変数を宣言する ものである。 本件鑑定の結果によれば,被告ソフトウェアのソ\ースファイルSourceDe fault.hで宣言されている変数30個のうち,20個の宣言が型,注釈,イ ンデントを含めて原告ソフトウェアのソ\ースファイルGlobalSetting s.hのものと完全に一致し(表記方法が複数あると考えられる●●●●●●●●\n●●●●●●●●●●●●の注釈を含む。),5個では少なくとも変数の名前がGl obalSettings.hのものと一致しており,残りの5個では一致してい ない。 また,本件ソースコードと被告ソ\フトウェアのソースコードに共通してみられる\n特徴として,1)クラスメンバ変数の名前がアンダースコア(_)で始まること,2) 複数の英単語から構成される変数名において,各単語の先頭が大文字になっている\nこと,3)型名にLONGが多用されていること,4)HorizontalをHor iz,VerticalをVertと略していること,5)変数宣言の順番が似てい ること,6)メンバ変数の型を記述する部分に3個のタブ(12個のスペース)を用 いていること,7)●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●のコメントがタブ文 字を含めて完全に一致していることが指摘されている(以下,順に,それぞれ「共 通点1)」などという。)。 そして,鑑定人は,上記共通点3)ないし7)から,原告ソフトウェアと被告ソ\フト ウェアの開発者は同一人物であると判断した上で,変数の一致箇所が多いことと, 共通点6)7)を理由に,被告ソフトウェアが原告ソ\フトウェアを参照して開発された と考えるのが自然である旨述べていることが認められる。
イ 本件ソースコードの類似箇所1に係る部分について\n
(ア) 本件ソースコードの類似箇所1に係る部分は,原告ソ\フトウェアの字幕デ ータの標準値を,GlobalSettings.hのCGlobalSetti ngsクラスのパブリック・メンバ変数に格納し,字幕データの標準値を格納する 変数を宣言するものであって,処理を行う部分ではない。 また,本件ソースコードのうち,被告ソ\フトウェアのソースコードと一致又は類\n似するとされた25個の変数名は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●というものである。そして,上記括弧内の注釈に記載された とおり,上記の変数は,それぞれ,字幕を表示する際の基本的な設定に関する変数\nと解される。
これらの変数名は,字幕制作ソフトウェアで使用する一般的な内容をごく短い英\n単語で表記したものであり,その形式は,変数の命名をアンダースコアで始め(共\n通点1)),各英単語の先頭を大文字にして一体化したもの(共通点2))となっている が,鑑定人は,共通点1)2)について,変数の命名規則として,クラスメンバ変数の 名前の先頭にアンダースコア(_)があり,各単語の先頭を大文字とする命名規則 もWindowsでよくみられ,開発者の慣習であるから,異なる開発者間でも一 致することがあり得るとの意見を述べており,変数名の付け方は,特徴的とはいえ ないと認められる。 さらに,上記25個の変数についてのデータの型名のうち,両者で一致するとさ れた23の変数のデータ型は,LONG型,CString型,BOOL型が使用 されているところ,これらは,マイクロソフト社が提供する標準のデータ型であっ\nて(乙57〜60),特別なものではない。 なお,前記1(3)イ(ア)のとおり,本件鑑定の結果によれば,類似箇所1に係る本件 ソースコードと被告ソ\フトウェアのソースコードは,字幕データの標準値(変数名)\nをパブリック・メンバ変数(公開変数)に格納している点で一致しているとされる。 しかし,これらの変数は字幕データの標準値を設定するものであって,他のクラス の関数から参照されることが前提であるから,パブリック・メンバ変数とすること は通常のことであると解され,本件鑑定においても,この点は有用な一致点とはさ れていない。
(イ) 共通点1)ないし7)について
共通点1)2)は,異なる開発者であっても一致することがあり得るものであること は,前記(ア)で検討したとおりである。 共通点3)は,LONG型が多用されているというもの,共通点4)は単語の略し方 の特徴,共通点5)は,変数宣言の順番であるが,いずれもプログラムの制作者が同 一であれば,同じになることは自然であると解される。また,共通点6)は,変数名 の開始位置を揃えるため,メンバ変数の型を記述する部分にタブ文字を使う際に, 被告ソフトウェアでは2個のタブに相当するスペースを配置すれば十\分で,3個の タブに相当するスペースを与える必然性はないにもかかわらず,3個のタブを使っ ている点で原告ソフトウェアと共通するというものであるが,被告ソ\フトウェアに おいては,タブが2個以上であれば変数名の開始位置を揃えることができるから, 3個のタブを使用したことが不自然とまではいえない。 そうすると,共通点3)ないし6)は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの制作 者が同一であれば不自然な一致とはいえないことから,いずれも,一審被告らが本 件ソースコードを使用したことを推認させるものではない。\n他方,共通点7)は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●のコメントがタ ブ文字を含めて完全に一致しているというものであり,鑑定人は,「特に,『(0:無 し 1:フェードイン)』や『(0:無し 1:フェードアウト)』という表記そのもの,\n『種別』と『(0:無し)』の間にタブ文字が置かれていることは,双方のソースコー\nドの共通点・類似点を強く示唆している。仮に,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウ ェアの開発者が同一人物で,その人物の記憶を手がかりとしても,原告ソフトウェ\nアのソースコードを参照せずに,これほど細かい特徴を一致させるのは難しいので\nはないかと考える。」との意見を述べている。そうすると,共通点7)によれば,一審 被告らが,本件ソースコードの変数定義部分を参照した可能\性を否定できないとい うべきである。
ウ 検討
上記イ(イ)のとおり,類似箇所1に係る本件ソースコードと被告ソ\フトウェアの ソースコードとの共通点7)によれば,一審被告らが,本件ソースコードの変数定義\n部分を参照した可能性は否定できない。\nしかし,上記イ(ア)によれば,類似箇所1に係る本件ソースコードは,変数定義部\n分であり,字幕データの標準値を格納する変数を宣言するもので,処理を行う部分 ではないこと,変数は,いずれも字幕を表示する際の基本的な設定に関する変数で\nあること,変数名は,字幕制作ソフトで使用する一般的な内容を表\す,ごく短い英 単語に基づくものであって,その形式も開発者の慣習に基づくこと,変数のデータ の型は,マイクロソフト社が提供する標準のデータ型であること,注釈の内容も,\n変数名が表す字幕の意味をそのまま説明したものであることが認められる。\nそして,字幕表示に必要な設定項目は,原告ソ\フトウェアの設定メニューから把 握できること(乙64),変数の定義の仕方として,変数名,型,注釈で定義するこ とは極めて一般的であること,変数名は字幕ソフトが使用する一般的な名称である\nこと,データの型はマイクロソフト社が提供する標準の型であること,注釈も一般\n的な説明であることによれば,類似箇所1に係る本件ソースコードの情報の内容(変\n数定義)自体は,少なくとも有用性又は非公知性を欠き,営業秘密とはいえない。 一審被告らが,類似箇所1に係る本件ソースコードの変数定義部分を参照して,\n被告ソフトウェアのソ\ースコードを作成したとしても,このことから他の部分を参 照したことまで推認されるものではない上,それ自体が営業秘密とはいえない変数 定義部分を参照したことのみをもって,本件ソースコードを使用したとも評価でき\nないというべきである。
エ 小括
以上によれば,一審被告らが,類似箇所1について,本件ソースコードの変数定\n義部分を参照した可能性が否定できないとしても,そのことをもって,一審被告ら\nが本件ソースコードを使用したとは評価できない。\n
(2) 類似箇所2及び3について
ア 類似箇所2,3は,それぞれ,字幕データの標準値を格納するオブジェクト の代入演算子,比較演算子のオーバーロードを定義するものであるから,類似箇所 1と同じ変数が使用される。これらの変数は,誤入力を避けるために類似箇所1を コピーして作成したと考えるのが自然であり,類似箇所2,3は,類似箇所1に基 づいて発生したものと解される。 鑑定人も,「類似箇所2,3については,原告ソフトウェア,被告ソ\フトウェアの いずれも,類似箇所1の変数やコメントをコピーし,類似箇所2と類似箇所3のコ ードを記述した可能性を否定できず,類似箇所1に基づいて発生していると考えら\nれるため,類似箇所2,3に基づいて,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの開 発者の同一性を判定したり,被告ソフトウェアの独自性を判定することはできない。」\nとの意見を述べている。
イ 一審原告は,類似箇所3における比較演算子のオーバーロードは,編集中の 字幕フォーマット情報を保存しようとする際,既存のフォーマットのリストの中に, 保存しようとする前記フォーマット情報と同一のものがあるか否かを判断するため に呼び出される比較処理部分であるところ,そもそも被告ソフトウェアにはフォー\nマット情報をファイルに保存してリスト化する機能はないから,この部分は被告ソ\ フトウェアにとって不要であると主張し,B大阪大学大学院情報科学研究科准教授 作成の意見書(甲143。以下「B意見書」という。)は,類似箇所3について,被 告ソフトウェアのソ\ースコードには必要のないコードが存在していることを,流用 の根拠として指摘する。 しかし,演算子のオーバーロードは,C++言語のプログラムでは普通に実装さ れるものであり,被告ソフトウェアのCSourceDefaultクラスの比較\n演算子のオーバーロードは,フォーマット情報をファイルに保存してリスト化する 機能に特化されたものとは認められないから,被告ソ\フトウェアにとって不要なも のとはいえない。 そして,他に,類似箇所2,3が,類似箇所1とは別個に生じた類似箇所である ことを認めるに足りる証拠はなく,類似箇所2,3によって,一審被告らが本件ソ\nースコードを使用したことを推認することはできない。
(3) 類似箇所4について
ア 類似箇所4は,字幕データの標準値をADOインターフェースでmdb形式 のデータベースに格納するためのプログラムに関し,原告ソフトウェアのSSTD\nB.cppのソースコードと被告ソ\フトウェアのMdb.cppのソースコードに\nおいて,52個のフィールド名が一致したというものである。 上記フィールド名自体はmdbファイルから参照可能であるところ,一審被告ら\nは,旧SSTとの互換を得るため,mdbファイルを参照してMdb.cppファ イルを実装したことを認めており,類似箇所4に係るフィールド名の一致は,その ことによって生じたものと推認される。
イ 一審原告は,被告ソフトウェアにおいて,Template.mdbを利用\nし,旧SSTのプロジェクトファイルと互換性のあるプロジェクトファイルをエク スポートできていることは,Template.mdbのセマンティクス,すなわ ち,Template.mdbの解析アルゴリズム(解析ロジック)を利用してい ることを意味するところ,本件鑑定において,類似箇所4から生じるセマンティク スの正確な把握は困難であると指摘されており,Template.mdbのセマ ンティクスの利用は,本件ソースコードを使用していることにほかならない旨主張\nする。
(ア) セマンティクスの意味
セマンティクスとは,データの形式や構造ないし枠であるシンタックスに対応す\nる概念であり,データの意味,内容のことであるとされる(甲95)。 Template.mdbは,旧SSTにおいて生成された字幕データを書き出 すためのmdb形式のファイルを作成するためのひな型であり,ひな型を構成する\nフィールド名,データ型がシンタックスであるのに対し,各フィールドが表す意味,\n各フィールドのデータ型に従った個々のデータ値の表す意味がセマンティクスであ\nると解される。例えば,Globalsテーブル1行目の「strGlobFon tName」(甲48,50)では,フィールド名「strGlobFontNam e」,データ型「テキスト型」がシンタックスであり,フィールドの意味が,字幕本 文フォント名を表し,「MSゴシック」というように文字列(テキスト)で記述する\nということが,セマンティクスに当たる。 この点,一審原告は,セマンティクスとは,解析アルゴリズムであると主張する。 しかし,Template.mdbは,mdb形式のファイルを作成するためのひ な型であり,プログラムではないから,そのセマンティクスに解析アルゴリズムが 含まれるとは解されず,一審原告の主張は採用できない。
(イ) セマンティクスの把握方法
a 類似箇所4に係るフィールド名は,Template.mdbに具体的な字 幕データ等を上書きしたファイルであるmdbファイルをマイクロソフトAcce\nssで開けば見ることができるところ,フィールド名には,「Font」,「Edge」など,字幕制作に携わる者であれば容易に分かる名称が用いられていることから, それ自体から,フィールドの意味を理解することができるものと認められる。例え ば,フィールド名「strGlobFontName」であれば,「FontNam e」の意味は本文フォント名を表すことを理解することができ,「str」の記載か\nら,データ型がハンガリアン記法(変数の型を名前の先頭に付与しておき,変数名 から変数へのアクセス方法に関する情報を伝えようとする記法)により,「CStr ing」,すなわち,文字列型であることを推測することができる。さらに,mdb ファイルのプロパティを見れば,データ型も見ることができるから(甲50),デー タ型がテキスト型(文字列型)であることを確認することができ,本文フォント名 を表し,テキスト型(文字列型)で記載されるフィールドであるというセマンティ\nクスを把握できる。 フィールド名からすぐにはその内容がわからないものについても,mdbファイ ルを参照し,記録されている具体的な字幕データの数値を変えて字幕の変化を見た り,目標とする字幕を見つけて該当項目の数値を確認し,字幕の設定を変えて数値 の変化を確認したりすることにより,データの属性を把握することができると解さ れる。例えば,mdbファイルで保存した字幕ファイルには,strGlobFo ntNameのデータとして,「MSゴシック」のように字体の名称が記載されてい るところ(甲89),これを手掛かりとして,本文フォントの字体の設定を変えたと きに,mdbファイルのstrGlobFontNameのデータがどのように変 化するかを試すことにより,どのような名称の字体が記述されるセマンティクスな のかを把握することは可能であると認められる。\n
また,「strFormat」は,標準設定と異なる個別設定をする際のフォーマ ット情報が格納されたフィールドであり,文字修飾の個別設定を指定すると,md bファイルのstrFormat欄にその個別設定に対応する数字や文字列が格納 される(乙24,28)。そうすると,字幕データの入力内容を変化させ,その変化 に対して格納される数字や文字列がどのように変化するかを確認することで,st rFormatの値がいかなる文字修飾を意味するものであるかを把握できるもの と認められ,セマンティクスを把握することができるというべきである。 以上によれば,一審被告らが,Template.mdbのセマンティクスを利 用しているとしても,かかるセマンティクスは,本件ソースコードを使用しなくて\nも把握可能であるものと認められる。\n
b 鑑定人は,「各フィールドがどのようなセマンティクスを持つのかを正確に 把握するのは,容易なことではない。例えば,iGlobOrientation フィールドが格納している整数値のセマンティクスはかなり複雑である。」との意 見を述べている。 しかし,SSTG1操作マニュアルによれば,原告ソフトウェアにおいては,「表\ 示位置・行配置」欄において,6箇所の表示位置と5箇所の行配置を指定すること\nができるとされるところ(乙25),mdbファイルを参照すれば,iGlobOr ientationのデータ値と「表示位置・行配置」とは,「4」と「横下中央」,\n「1」と「横下中頭」,「8」と「横下中末」,「16」と「横下行頭」というように 1対1の対応で把握することができることが認められる(乙29)。そうすると,本 件ソースコードを参照しなくても,iGlobOrientationフィールド\nのセマンティクスを把握することができるものと認められる。 もっとも,iGlobOrientationは,16進表記で表\されており(甲 101),その各桁の数値と,字幕の表示位置・行配置とがそれぞれ対応していると\n思われるところ,かかる各桁の数値からその意味を把握することは困難であり,鑑 定人の上記意見は,この点を指して正確なセマンティクスを把握するのは容易では ないとするものと推察される。しかし,データ値と「表示位置・行配置」の1対1\nの対応関係を把握できれば互換を得ることができるのであれば,それ以上に,iG lobOrientationのセマンティクスを正確に把握する必要はないと解 されるから,互換を得るために必要なiGlobOrientationのセマン ティクスは,mdbファイルから把握可能であり,本件ソ\ースコードを参照しない 限り把握できないものとはいえない。
(ウ) 以上によれば,一審被告らが,旧SSTとの互換を得るため,mdbファイ ルを参照してMdb.cppファイルを実装していることは,本件ソースコードを\n使用していることを意味するものではない。
ウ 一審原告は,本件鑑定書は,SSTDB.cppファイルとMdb.cpp ファイルは,ファイル自体が類似・共通すると指摘しており,フィールド名の一致 は,両ファイルが一致していると判断する理由の一つにすぎない上,SSTDB. cppファイルの行数は優に3000行を超えるのであるから,類似箇所は52の フィールド名の一致にとどまるものではないと主張し,B意見書は,52のフィー ルド名が一致しており,ファイルが巨大であることから,処理も一致している可能\n性が高いとの意見を述べる。 しかし,本件鑑定において,鑑定人は,原告ソフトウェアのSSTDB.cpp\nと被告ソフトウェアのMdb.cppとの目視確認を行った上で,類似箇所は52\n個のフィールド名にあると鑑定したのであり,処理も含めて両ファイルが類似・共 通すると鑑定していないことは明らかである。 また,B意見書は,被告ソフトウェアのソ\ースコードを視認せずに,類似した処 理を含んでいる可能性が高いと述べているにすぎない上,ファイルの行数が多いこ\nとが処理の一致を意味すると解すべき根拠はないから,採用することはできない。 そして,被告ソフトウェアにおいて,本件ソ\ースコードを参照して原告ソフトウ\nェアの解析アルゴリズムを把握し,同じ処理を行っていることを認めるに足りる証 拠はない。かえって,エクスポートされるmdbファイルの字幕の配置に関するi GlobOrientationフィールドとiOrientationフィール ドのデータ値は,エクスポート前においては,原告ソフトウェア及び被告ソ\フトウ ェアのいずれも変数名を●●●●●●●●●●●●とする変数に格納されているが, 原告ソフトウェアにおいては,データ型をLONG型とし(甲99,原判決別紙a),\n表示位置・行配置の設定について,水平位置,垂直位置,行揃え,縦書き横書きの\n4種の情報を16進表記の特定の桁に割り当て,特定の桁をマスクビットを用いて\nビット演算により抽出している(甲100〜102)のに対し,被告ソフトウェア\nにおいては,データ型を列挙型としており(原判決別紙a),表示位置・行配置の設\n定について,水平位置,垂直位置,行揃え,縦書き横書きの4種の情報を16進表\n記の特定の桁に割り当て,特定の桁をマスクビットを用いてビット演算により抽出 するものではないと解され,表示位置・行配置の設定処理のアルゴリズムは同一で\nはないことが認められるのであって,本件ソースコードを参照したものではないこ\nとが推認されるというべきである。
エ 小括
以上によれば,類似箇所4は,一審被告らによる本件ソースコードの使用を意味\nするものではないのであって,一審原告の主張は採用できない。
(4) 一審被告らによる本件ソースコードの使用の有無\n
ア 以上の検討によれば,類似箇所1については,一審被告らが本件ソースコー\nドの変数定義部分を参照したことにより生じた可能性を否定できないものの,当該\n変数定義部分は営業秘密とはいえない以上,これのみをもって,本件ソースコード\nを使用したとは評価できない。 また,類似箇所2,3は,類似箇所1とは別個に生じた類似箇所ではない。 類似箇所4は,本件ソースコードを参照したことにより生じた一致とはいえない\n上,旧SSTとの互換を得るために本件ソースコードを参照したとも認められない。\nそして,本件鑑定の結果によれば,300組のソースコードのペア中,類似箇所\n1ないし5に該当する118行の他には本件ソースコードと被告ソ\フトウェアのソ\nースコードとが一致ないし類似する部分があったとは認められず,鑑定の対象とな ったソースコード2万9679行(コメント,空行を除いた有効行)のうち2万9\n561行は非類似であって,非類似部分が99%以上となる。 以上によれば,一審被告らが,類似箇所1に係る部分以外に本件ソースコードを\n参照したとは認められず,また,類似箇所1に係る変数定義部分を参照した可能性\nが否定できないことをもって,本件ソースコードを使用したとは評価できない。そ\nうすると,本件ソースコードについて,不競法2条1項7号にいう「使用」があっ\nたとはいえないというべきである。
イ 一審原告の主張について
(ア) 一審原告は,本件鑑定は最低限度の共通性の言及にとどまり,類似箇所や共 通箇所を網羅的に指摘したものではないから,本件鑑定の結果によって,類似箇所 1ないし4以外は類似しないとは認定できない旨主張し,B意見書も,本件鑑定手 法は不十分であり,他に類似箇所がないとはいえない旨の意見を述べる。\nしかし,鑑定人は,「表1.2に示した(判決注:類似箇所1ないし5)以外の場\n所では,類似・共通すると認定できる箇所は見つからなかった」と明記しており, 本件鑑定の結果によっては,他に類似・共通する箇所があるとはいえないことは明 らかである。そして,前記(3)ウのとおり,B意見書は,被告ソフトウェアのソ\ース コードを参照しておらず,具体的な一致箇所を指摘するものではないから,採用の 限りではなく,他に本件鑑定の結果を左右するに足りる証拠はない。よって,一審 原告の主張は理由がない。
(イ) 一審原告は,類似箇所1ないし4の他にも,一審被告らによる本件ソースコ\n
ードの使用を推認させる事実が多数存在するとも主張する。 しかし,以下のとおり,一審原告の主張は,いずれも理由がない。 a 一審原告は,被告ソフトウェアに原告ソ\フトウェアで使用されているsdb 形式の字幕データベースが実装されていたことは,一審被告らが本件ソースコード\nを不当に入手,利用していることを推認させる旨主張する。 しかし,被告ソフトウェアのプログラムファイルに,sdbとの記載があること\nは認められるものの(甲51の1〜5),sdb形式の字幕データベースが実装され ていたことを認めるに足りる証拠はないから,一審原告の主張は,その前提を欠く ものである。
b 一審原告は,被告ソフトウェアと原告ソ\フトウェアには,1)字幕の全体設定 (デフォルト)を縦書きに設定して作成されたmdbファイルをインポートした場 合に,原告ソフトウェアも被告ソ\フトウェアも横書きでインポートされてしまう, 2)一審被告フェイスは平成22年に設立されていて,それ以降に開発された被告ソ\nフトウェアからエクスポートしたExcelファイルの拡張子は「.xlsx」と なるはずであるところ,被告ソフトウェアのエクスポート先の拡張子は「.xls」\nである,3)Excelの言語設定を英語にした状態で,Excelファイルをエク スポートすると,原告ソフトウェアも被告ソ\フトウェアもハングアップする,4)エ クスポート先をC:¥に設定してExcelファイルをエクスポートすると,原告 ソフトウェアと被告ソ\フトウェアもハングアップする,5)横書きで,例えば「ワシ ントンD.C.」と入力した字幕を縦書きに変換すると,原告ソフトウェアも被告ソ\ フトウェアも「D.C.」のピリオドの位置がおかしくなってしまうとの共通したバ グが存在することも,一審被告らによる本件ソースコードの使用を推認させると主\n張する。 しかし,本件鑑定の結果によれば,1)の事象は,被告ソフトウェアでは発生する\nものの,原告ソフトウェアでは発生していないとされ,そもそも事象の共通性が認\nめられない,2)については,原告ソフトウェアは拡張子の情報がリソ\ースの文字列 定数として格納されているのに対し,被告ソフトウェアではC#のソ\ースコード中 で直接記述されているという差異がある,3)については,原告ソフトウェアと被告\nソフトウェアはExcelのAPIを読み出すために異なるアプローチを採用し,\n不具合が発生する直接の原因は原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアでは異なる, 4)については,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアとでは不具合が発生する原因 が異なる,5)については,表示位置を左上から右上に修正させる処理が,原告ソ\フ トウェアと被告ソフトウェアとでは,大きく異なっているとの意見が述べられてい\nる。かかる本件鑑定の結果によれば,これらのバグが共通することは,一審被告ら が,本件ソースコードを使用したことを裏付ける事実とは認められない。\n
c 一審原告は,本件ソースコードと被告ソ\フトウェアのソースコードでは,ス\nペルミスが一致するところ,かかる一致は,一審被告らが本件ソースコードを複製\nしたものでなければ到底発生し得ないものである旨主張する。 しかし,本件鑑定の結果によれば,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアとで共 通するスペルミスは圧倒的に少ないから,共通するスペルミスの存在は一審被告ら が原告ソフトウェアを複製したことの根拠とならないとされる。また,原告ソ\フト ウェアと被告ソフトウェアとで共通して,rubyの複数形をrubiesとすべ\nきところがrubysとなっていたり,ルビの綴りは正しくはrubyであるにも かかわらず,rubiという綴りが混在しているほか,alignmentをal ign,horizontalをhorz又horizと略す傾向があるところ, これらは,原告ソフトウェアを参照しなくても,同一開発者の一貫した記憶間違い\nや発想によっても生じ得るとされる。そうすると,共通するスペルミスも,一審被 告らによる本件ソースコードの使用を推認させる事実とは認められない。\n
d 一審原告は,被告ソフトウェアでは,C++/CLI言語による無用なコー\nディングが行われており,C++言語の本件ソースコードを流用したことを推認さ\nせる旨主張する。 しかし,本件鑑定の結果によれば,鑑定人は,C++言語とC#言語を使い分け るというのは,「Visual Studio」を用いた開発においては合理的な選 択と考えられ,C++/CLI言語は,C++言語とC#言語の間を橋渡しするた めに用いられていると考えられるとの意見を述べている。そうすると,被告ソフト\nウェアにおけるC++/CLI言語でのコーディングの存在も,一審被告らが,一 審原告から持ち出したC++言語のソースコードを流用したことを裏付ける事実と\nは認められない。
e 一審原告は,被告ソフトウェアの開発が開始した平成24年頃には,「Vis\nual Studio2008」,「Visual Studio2010」という 2つの新しい開発環境がリリースされ,広く一般的に利用されていたにもかかわら ず,被告ソフトウェアの当初の開発環境が,原告ソ\フトウェアの開発環境と同じ「V isual Studio2005」であることは,被告ソフトウェアにおいて,\n「Visual Studio2005」で開発された本件ソースコードを流用し\nたことを推認させると主張する。 しかし,本件鑑定の結果によれば,「Visual Studio2005」は, Windows7までしか対応しておらず,被告ソフトウェアの開発環境もWin\ndows7であるから,被告ソフトウェアを開始した時期に,「Visual St udio2005」を開発環境として採用することに,特段の矛盾は見つからない とされる。そうすると,被告ソフトウェアの開発環境が「Visual Stud io2005」であることも,一審被告らが本件ソースコードを流用して被告ソ\フ トウェアのソースコードを作成したことを推認させる事実とは認められない。\nf その他,一審原告は,るる主張するが,いずれも採用できない。
(5) まとめ
以上によれば,一審被告Yの行為は,不競法2条1項7号の営業秘密の使用に該 当せず,一審被告フェイスについても,同項8号の不正競争行為は認められない。 また,同項4号,5号の不正競争行為についても認定することはできない。 その余の争点については判断するまでもないが,原判決が,将来バージョンアッ プされた後の被告ソフトウェアについて,本件ソ\ースコードを使用するものか否か 審理することなく,その使用等の差止めを認めたことは,その範囲が過大であって, 相当でないことを付言する。

◆判決本文

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◆平成27(ワ)16423

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平成31(ネ)10016  競業差止請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和元年8月7日  知的財産高等裁判所(3部)  東京地方裁判所  立川支部

 元従業員が退職後に同一地域内のまつげエクステサロンで就労したことは競業禁止合意に反せず、不正競争行為(不競法2条1項4号,5号又は8号)にも該当しないと判断されました。争点は、在職中に知り得た秘密情報か否かです。原審はアップされていません。

 本件競業行為が本件各合意に違反するか(争点1)
(1) 退職者に対する競業の制限(以下「競業制限」という。)は,退職者の 職業選択の自由や営業の自由を制限するものであるから,個別の合意あるい は就業規則による定めがあり,かつその内容が,これによって守られるべき 使用者の利益の内容・程度,退職者の在職時の地位,競業制限の範囲,代償 措置の有無・内容等に照らし,合理的と認められる限り,許されるというべ きである。
(2) 就業規則及び退職時合意の効力
ところで,控訴人の就業規則には,1)社員は,退職後も競業避止義務を 守り,競争関係にある会社に就労してはならない,2)社員は,退職または解 雇後,同業他社への就職および役員への就任,その他形態を問わず同業他社 の業務に携わり,または競合する事業を自ら営んではならないとの規定があ るが,この定めは,退職する社員の地位に関わりなく,かつ無限定に競業制 限を課するものであって,到底合理的な内容のものということはできないか ら,無効というほかはない。 また,被控訴人が退職時に提出した「誓約・確認書」には,前述のとおり, 退職後2年間,国分寺市内の競合関係に立つ事業者に就職しないとの約束を することはできない旨の被控訴人の留保文言が付されていたのであるから, これによって競業制限に関する合意が成立したということはできない。 これに対し,控訴人は,控訴人が「誓約・確認書」に「この文言は,当社 が指定した書式ではないので,無効。会社記載文言のみ有効。また,既に入 社時誓約書に記載もあるので,そちらの誓約書を根拠とすることも可能。」\nと記載してその旨説明し,被控訴人も「わかりました」と述べたものである から,「誓約・確認書」の不動文字のとおりの合意が成立したと主張するが, 控訴人の主張する事実を裏付ける的確な証拠はないし,仮に,このような事 実があったとしても,これにより「誓約・確認書」の不動文字どおりの合意 が成立したと解することはできない。
(3) 入社時合意の効力
ア 控訴人は,入社時合意について,被控訴人が,退職後2年間,国分寺市 内でアイリスト業務に従事することを禁止したものであると主張するか ら,入社時合意の効力が問題となる。
イ 入社時誓約書には,1)被控訴人は,退職後2年間は,在職中に知り得た 秘密情報を利用して,国分寺市内において競業行為は行わないこと(13 項),2)秘密情報とは,在籍中に従事した業務において知り得た控訴人 が秘密として管理している経営上重要な情報(経営に関する情報,営業 に関する情報,技術に関する情報…顧客に関する情報等で会社が指定し た情報)であること(10 項),3)被控訴人は,秘密情報が控訴人に帰属 することを確認し,控訴人に対して秘密情報が被控訴人に帰属する旨の 主張をしないこと(12 項)が記載されている(甲3)。 そこで,「秘密情報」の意義が問題となるが,上記入社時誓約書の記 載によれば,入社時合意における「秘密情報」とは「秘密として管理」 された情報であることを要することが理解できる。また,入社時誓約書 の秘密情報に関連する規定は,その内容に照らし,不正競争防止法と同 様に営業秘密の保護を目的とするものと解される。そして,入社時誓約 書には「秘密として管理」の定義規定は存在せず,「秘密として管理」 について同法の「秘密として管理」(2条6項)と異なる解釈をとるべ き根拠も見当たらない。そうすると,入社時誓約書の「秘密として管理」 は,同法の「秘密として管理」と同義であると解するのが相当である。 また,「競業行為」とは,控訴人に在籍中の被控訴人が提供していた 役務の性質に照らせば,他のまつげエクステサロンの経営及び他のまつ げエクステサロンにおけるアイリスト業務への従事を意味すると解され る。 以上によれば,入社時合意は,被控訴人が,退職後2年間は,在職中 に知り得た「秘密情報」を利用して,国分寺市内において他のまつげエ クステサロンの経営をせず,他のまつげエクステサロンにおけるアイリ スト業務に従事しない旨の合意であり,ここにいう「秘密情報」とは秘 密管理性を有する情報であることを要するものと解される。
ウ 被控訴人は,入社時合意は被控訴人の職業選択の自由及び営業の自由を 不当に制限するものであって無効であると主張する。 しかし,上記イのとおり,入社時合意は,2年という期間と国分寺市 内という場所に限定した上で,秘密管理性を有する情報を利用した競業 行為のみを制限するものと解されるから,職業選択の自由及び営業の自 由を不当に制限するものではなく,その制限が合理性を欠くものである ということはできない。

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平成29(ワ)7764  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成31年4月11日  大阪地方裁判所

「被告がランキング1位であるとの表示(本件ランキング表\示)」が品質誤認表示(不競法2条1項14号)と認められました。なお、認められた損害額は直接かかった弁護士費用のうち、発信者情報開示にかかった費用のみです。

(4) 本件サイトにおける被告がランキング1位であるとの表示(本件ランキン\nグ表示)の品質誤認表\示該当性

ア 上記のような本件サイトを閲覧する者の認識からすると,本件ランキン グ表示は,掲載業者の中での,投稿された口コミの件数及び内容に基づく評価との\n間にかい離がないのであれば,品質誤認表示に該当するとはいえない。\nそこでまず,被告への口コミの件数についてみると,本件サイトの表示上,他の\n業者への口コミ件数よりも絶えず多くなっている(甲5の3,甲6の1ないし3, 甲21の1ないし4)。また,被告への口コミの内容についてみると,本件サイト の表示からうかがうことができるものについて,別紙「被告への口コミ内容一覧\n表」記載のとおりの口コミが投稿されている。\nこのように本件サイトの表示からうかがうことができる範囲に限ってみると,被\n告への合計32件の口コミは,一部を除いて基本的に,工事の質や接客態度といっ た被告の提供するサービスの質,内容を高く評価するものであるところ,このこと に,原告も被告への口コミが高評価のものばかりであると主張しているという弁論 の全趣旨を併せ考えると,被告への口コミは,証拠上本件サイトの表示からうかが\nうことができない範囲のものについても,被告の提供するサービスの質,内容を高 く評価するものであると推認される。 このように被告への口コミは,その件数が最も多いだけでなく,その内容も軒並 み高評価のものであることからすると,本件ランキング表示(本件サイトにおける\n被告がランキング1位であるとの表示)と,被告への口コミの件数及び内容に基づ\nく評価との間にかい離はないと認められる。
イ もっとも,そもそも被告への口コミが虚偽のものである場合,例えば, 被告が自ら投稿したものであったり,形式的には施主又は元施主(以下「施主等」 という。)からの投稿であったとしても,その意思を反映したものではなかったり などする場合は,本件サイトの表示上の被告への口コミの件数及び内容をそのまま\nのものとして受け取ることが許されなくなり,その結果,本件ランキング表示との\nかい離があるということとなる。そこで,次にこの点を検討する。
・・・・
以上からすると,本件サイト公開前の日付となっている5件の投稿は,被告の関 与の下にヒューゴにおいて投稿作業をした架空の投稿であると認められる。そして, 確かに,同様の日付の投稿は他の業者についても存在するが,それらの投稿はいず れも各4件である(甲21の2ないし4。甲21の5でも同様である。)から,被 告については,これらにより,本件サイトの公開時点から,既にランキング1位と 表示されていたと推認され,その表\示は虚偽であったといえる。
・・・
また,乙10によれば,被告は,平成24年6月当時,コメントを書いた施主等 にプレゼントを進呈していたと認められ,また,甲15によれば,被告は,平成2 9年9月頃,本件サイトに関する新聞社の取材に対し,「顧客の感想を社員が聞き 取って(自社の口コミとして)投稿したことはあったが虚偽は書いていない」と回 答したと認められ,このように被告が施主等から聞き取った内容を自ら口コミとし て投稿したことがあることは,当事者間に争いがないところ,この対応からすると, 何とかして被告への口コミ件数を増やそうとする姿勢が見て取れる。そしてまた, 乙10によれば,被告の担当者は,平成24年6月28日にヒューゴとの間で本件 サイトの改修を打ち合わせるメールの中で,「過去コメント分の編集(入力日時) の変更はできないでしょうか?」と述べていたと認められるところ,このメールか らは,施主等から投稿される口コミをそのまま反映させようとしない作為的な態度 が見て取れる。
以上のような重大な疑問と被告の態度に加え,前記(ア)のとおり,被告は,その関 与の下に本件サイトの公開時点で架空の投稿が表示されるようにしていたことを考\n慮すると,上記の「地域」が表示された投稿も架空のものと認めるのが相当である。\n
・・・・
ウ 以上からすると,本件サイトにおける被告がランキング1位であるとい う本件ランキング表示は,実際の口コミ件数及び内容に基づくものとの間にかい離\nがあると認められる。 そして,本件サイトが表示するようないわゆる口コミランキングは,投稿者の主\n観に基づくものではあるが,実際にサービスの提供を受けた不特定多数の施主等の 意見が集積されるものである点で,需要者の業者選択に一定の影響を及ぼすもので ある。したがって,本件サイトにおけるランキングで1位と表示することは,需要\n者に対し,そのような不特定多数の施主等の意見を集約した結果として,その提供 するサービスの質,内容が掲載業者の中で最も優良であると評価されたことを表示\nする点で,役務の質,内容の表示に当たる。そして,その表\示が投稿の実態とかい 離があるのであるから,本件ランキング表示は,被告の提供する「役務の質,内容\n・・・について誤認させるような表示」に当たると認めるのが相当である。\n

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平成29(ワ)27298  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成31年3月19日  東京地方裁判所

 機器を持ち出した人は特定できないが、持ち出されたことは認定できるとして、 当該機器の販売額が損害として認められました。グンマジとは、解錠するための特殊工具です。

 前記オの事実に,本件元従業員らが,平成26年10月以降,原告を順 次退職し,被告会社に転職したこと(前記1)を総合すると,株式会社ジョ ーエイ製機製の製造番号555番及び597番のキーマシン(計2台)は, 本件元従業員らのうちの誰かが,原告内に置かれていたものを持ち出したか, 又は,仕事等のために持ち出し,そのまま返却せずに被告会社に移して,業 務に使用したものと認められる。
イ もっとも,本件元従業員らのうちの誰かが上記キーマシン(2台)を持ち 出したことは認められるものの,その中の誰が上記キーマシン(2台)を持 ち出したかは不明であり,被告B又は被告Cが上記キーマシン(2台)を持 ち出したと認めるに足りる証拠はない。
・・・・
  以上のとおり,原告が主張する各不法行為のうち,本件元従業員らのうちの誰 かがキーマシン及びグンマジを持ち出した行為(前記2(2),(3))は,原告に対す る不法行為を構成するというべきである。また,これらの行為は,遅くとも,本\n件元従業員らのうち,最も遅く原告を退職した被告Cの退職日である平成27年 3月31日までに行われたと認められる。 もっとも,被告B又は被告Cが上記不法行為をしたと認めるに足りず,また, 被告B,被告C及び被告Aが上記不法行為に共謀等によりその不法行為に加担し たとも認めるに足りないから,被告B,被告C及び被告Aが不法行為責任を負う とは認められない。
他方,上記キーマシンやグンマジが原告から持ち出された時期は不明であるも のの,これらの工具等は,原告から持ち出された後,いずれかの時期に,被告所 有の車両や本件倉庫に移され,また,被告会社従業員が使用しているのであるか ら,持ち出した者がその時点で既に被告会社の従業員であったか,又は,少なく とも,持ち出した者と意を通じて,被告会社の管理下に移すことに協力した被告 会社の従業員がいたと推認することができる。 そして,上記工具等は,被告会社が行う開錠業務で使用するために持ち出され たものであると認められるから,工具等を持ち出した者,又は,その協力者は, 被告会社での業務のために,工具等を持ち出し,原告に損害を加えているのであ り,使用者である被告会社は,原告に対し,使用者責任に基づく損害賠償責任を 負うというべきである。 これに対し,被告会社は,本件元従業員らの行動を把握していなかったことな どから使用者責任を負うことはないと主張するが,被告会社が被用者の選定やそ の事業の監督について相当な注意をしたとも,相当な注意をしても損害が生ずべ きであったとも認められず,被告会社は使用者責任に基づく損害賠償責任を免れ ないというべきである。
・・・・
キーマシンを持ち出したことによる損害について 証拠(甲16〜19)及び弁論の全趣旨によれば,被告会社の車両及び本件 倉庫に置かれていた原告所有の株式会社ジョーエイ製機製の製造番号555 番及び597番のキーマシンの販売価格は32万円であると認められ,2台の 販売価格合計64万円が損害額となる。
グンマジを持ち出したことによる損害について
原告は,本件元従業員らがグンマジを持ち出したことによって,原告がグン マジの開錠方法を独占的に使用することで得られていた市場による優位性を 喪失し,得べかりし利益を喪失したと主張する。 しかし,原告は,本件講座において,原告従業員ではなく,また,原告従業 員になるとは限らない本件講座の受講生にもグンマジの解錠技術を教え,原告 に入社せずに,鍵師として自らで開錠業務を行うことを考えている元受講生に 対してもグンマジを販売していたといえるから,原告がグンマジの開錠方法を 市場において独占的に使用していたとは認められない。また,グンマジによっ て開錠することができるというスイッチサムターンの一般家庭における普及 率は明らかではなく,スイッチサムターンでない鍵はグンマジを使用しなくて も開錠することができるのであり,原告においても,開錠依頼があった案件の 全てでグンマジが使用されていたわけではない。また,被告会社が開錠業務を 行っていた規模が原告の業務に影響を及ぼす程度であったことを認めるに足 りる証拠はない。(甲36,K〔18-20頁〕,被告B〔18-19頁〕,前記 4)。
以上によれば,本件元従業員らがグンマジを持ち出したことによって,原告 が市場による優位性を喪失したことによる損害が生じたとは認められない。も っとも,本件倉庫にあった構成部品と併せて,F及び本件元従業員らのうちの\n誰かが,合計少なくとも2台のグンマジを持ち出したと認められ,被告会社は この行為について使用者責任に基づく損害賠償責任を負うところ,グンマジの 販売価格は1台29万8000円であったから,2台の販売価格相当額の合計 59万6000円が損害となるといえる。

◆判決本文

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平成29(ワ)7764  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成31年4月11日  大阪地方裁判所

 競合会社から、被告の宣伝行為は、全国の外壁塗装業者の中で最も優良であると誤解されるような表示であるとして、不正競争行為に該当するかが争われました。大阪地裁(26部)は、役務の質,内容について誤認させるような表示であると、認定しました。ただ、損害額は8万円です。

 本件サイトを閲覧する者がまず目にすることになる本件サイトのトッ プページ(本件トップページ)の上部には,本件共通表示のタイトルとして「みん\nなのおすすめ,塗装屋さん」の文字が他の文字よりも大きく表示されている(甲5\nの1等)上,その右部には,本件ランキング表が表\示されている。前記のとおり, 本件サイトを訪問する需要者が,サービスの質,内容に言及した口コミを基にした 評価が掲載されているという先入観を持っており,そのような需要者が,「みんな のおすすめ」のタイトルの下でのランキングに接することからすると,本件トップ ページを閲覧した者は,投稿された口コミを基にして外壁塗装業者やリフォーム業 者の提供するサービスの質,内容に関するランキングが作成されており,そのラン キングにおいて1位にランク付けられている業者の提供するサービスの質,内容は, 掲載業者の中で最も「おすすめ」,つまり最も「優良」であると評価されていると 基本的には認識すると考えられる。そして,本件トップページに表示されている\n「みんなのおすすめ,塗装屋さん」という表示及び本件ランキング表\は,本件サイ トのいずれのページにおいても表示されていることに照らせば,本件サイトの閲覧\nを続けていく限り,上記認識は補強されていくものと考えられる。 これに対し,被告は,本件サイトでのランキングは口コミ件数のみに基づくもの であり,閲覧者もそのように認識すると主張し,1)本件サイト説明ページには, 「ランキングは今の所口コミ件数で で決定されているとは通常想定されないことである。 この観点から見ると,前記のうちの2)の本件口コミランキングページの記載につ いては,その直後に「口コミの内容については,投稿後に一定時間を経過してから ランキングへと自動反映される仕組みになっています。」と,口コミ内容を基にし てランキングを作成しているように理解される内容の表示がされており,口コミ件\n数を基にしてランキングを作成しているという内容の表示を文字通りのものとして\n受け取って良いのかに疑問を抱かせてしまう表示になっている。\nまた,前記のうちの1)の本件サイト説明ページの記載については,文字自体は赤 字という比較的目立つものではあるが,その記載場所は同ページの下部にある「管 理人のつぶやき」欄の末尾という目立ちにくい場所にあり,かえって同ページの上 部にある説明本文欄では,その冒頭で本件サイトを「利用者からの投稿によりおす すめ業者をランク付けしたサイト(口コミサイト)」と説明しており,より目立つ 上部の本文欄の記載によって,口コミを基にして業者をサービスの内容,質により ランク付けをしているとの認識を補強することとなっている。 さらに,前記のうちの3)については,確かに本件サイトにはランキング評価上考 えられる諸要素をどのように考慮してランキングを作成したのかについては,全く 記載されていないが,本件サイトのランキングが「おすすめ」の口コミランキング とされている以上,それに接した需要者は,何らかのやり方で口コミに基づいて業 者が提供するサービスの良・不良を評価していると認識するのが通常であると考え られるから,点数等の表示がないからといって,本件サイトのランキングが,投稿\nされた口コミの件数だけを基にして作成されたものであるとの認識が生じるとは認 められない。 したがって,上記の点によっては,口コミを基にして業者をサービスの内容,質 によりランク付けがされているとの上記認識が払拭されるとは認め難く,被告の上 記主張は採用できない。そうすると,結局のところ,本件サイトを閲覧した者は, 本件ランキング表を始めとする本件サイトにおけるランキングは,外壁塗装業者や\nリフォーム業者の提供するサービスの質,内容に関して,投稿された口コミの件数 だけでなく,その内容をも基にして作成されたものであり,本件ランキング表示に\nついては,そのランキングにおいて1位にランク付けられている被告の提供するサ ービスの質,内容が,掲載業者の中で最も優良であると評価されていると認識する と認められる。
(イ) 他方,本件サイトを閲覧した者は,本件サイトが口コミサイトである と認識している以上,本件サイトのランキングも,所詮は口コミという主観的な評 価を集積したものにすぎないということは当然認識しているはずであるから,本件 サイトのランキングにおいて問題とされているサービスの質,内容に関する評価が, それらの客観的な優劣を問題にするものではないことも認識していると認められる。 そして,前記のとおり,本件サイトにはランキング評価上考えられる諸要素をどの ように考慮してランキングを作成したのかについて全く記載されていないことから すると,本件サイトを閲覧した需要者は,結局のところ,そこに記載されている口 コミの中で,高評価の件数が多く,低評価の件数が少なければ上位にランキングさ れ,逆であれば下位にランキングされるといった程度の認識を生じるにすぎないと 認めるのが相当である。 この点について,原告は,本件サイトを閲覧した者が,本件サイトのランキング を見て,外壁塗装業者やリフォーム業者の提供するサービスの質,内容に関する客 観的な優劣がランク付けされたものであり,そのランキングにおいて1位にランク 付けられている被告の提供するサービスの質,内容が客観的に最も優良であると認 識するかのような主張をする。しかし,上記のとおり,本件サイトを閲覧した者は, 口コミランキングである本件サイトのランキングが,口コミという主観的な評価を 集積したものにすぎないということは当然認識しているはずである。また,外壁塗 装業者やリフォーム業者の提供するサービスの質,内容において重要視される諸要 素は,個々人の価値観によって異なるものであるため,これらに関する客観的な優 劣をランク付けすることなどそもそも不可能であることは,誰にでも容易に認識で\nきることである。以上の諸点に照らせば,本件サイトを閲覧した者は,本件サイト のランキングを見ても,外壁塗装業者やリフォーム業者の提供するサービスの質, 内容に関する客観的な優劣がランク付けされたものであるとは認識せず,口コミを 投稿した者の主観的な評価を基にランク付けしたものであると認識すると認められ るから,原告の主張は採用できない。
(ウ) 次に,原告は,本件サイト説明ページでは,本件サイトが「日本全国 で営業している外壁塗装業者を対象に…おすすめの業者をランク付けしたサイト」 であると説明されていること(甲5の2)から,本件サイトを閲覧した者は,本件 ランキングが全国のあらゆる外壁塗装業者の中でのランキングであって,こうした ランキングにおいて被告が1位とされていることから,被告が全国のあらゆる外壁 塗装業者の中で最も優良な業者であるとの認識が生じると主張する。 しかし,本件掲載業者一覧ページを見れば,本件ランキングの対象とされる掲載 業者の範囲が,一覧表示することが可能\な程度のものにすぎないこと(甲5の4 等)は容易に認識できるから,本件サイトの閲覧者において,本件サイトのランキ ングが全国に存在するありとあらゆる外壁塗装業者やリフォーム業者を対象にする ものであるとの認識が生じるとは認められない。そして,本件掲載業者一覧ページ に掲載されている業者の本店所在地が,関西地方の「大阪府」及び「兵庫県」,関 東地方の「東京都」及び「神奈川県」,中部地方の「愛知県」及び「石川県」並び に九州地方の「福岡県」というように各地方にまたがっており,店舗数も7店舗の ものから155店舗のものが掲載されていること(甲5の4,甲17の1及び2, 甲26の1及び2)に照らせば,「日本全国で営業している外壁塗装業者を対象」 というのは,全国的に営業活動を行う事業者を全国各地からピックアップして対象 としたという程度の意味にすぎず,本件ランキングも,そうしてピックアップした 掲載業者の中でのランキングであると理解すると考えられる。したがって,原告の 主張は採用できない。
(エ) 以上のとおりの本件サイトを閲覧する者の認識を前提とすれば,本件 サイトのランキングは,投稿された口コミの件数及び内容を基に作成された,本件 掲載業者一覧ページに掲載されている業者の提供するサービスの質,内容に関する 評価のランク付けを表示したものであって,被告がランキング1位であることは,\n投稿された口コミの件数及び内容に基づき,被告の提供するサービスの質,内容が, 本件掲載業者一覧ページに掲載されている業者の中で投稿者の主観的評価として最 も優良であると評価されていると表示したものである。\n
(4) 本件サイトにおける被告がランキング1位であるとの表示(本件ランキン\nグ表示)の品質誤認表\示該当性
ア 上記のような本件サイトを閲覧する者の認識からすると,本件ランキン グ表示は,掲載業者の中での,投稿された口コミの件数及び内容に基づく評価との\n間にかい離がないのであれば,品質誤認表示に該当するとはいえない。\nそこでまず,被告への口コミの件数についてみると,本件サイトの表示上,他の\n業者への口コミ件数よりも絶えず多くなっている(甲5の3,甲6の1ないし3, 甲21の1ないし4)。また,被告への口コミの内容についてみると,本件サイト の表示からうかがうことができるものについて,別紙「被告への口コミ内容一覧\n表」記載のとおりの口コミが投稿されている。\nこのように本件サイトの表示からうかがうことができる範囲に限ってみると,被\n告への合計32件の口コミは,一部を除いて基本的に,工事の質や接客態度といっ た被告の提供するサービスの質,内容を高く評価するものであるところ,このこと に,原告も被告への口コミが高評価のものばかりであると主張しているという弁論 の全趣旨を併せ考えると,被告への口コミは,証拠上本件サイトの表示からうかが\nうことができない範囲のものについても,被告の提供するサービスの質,内容を高 く評価するものであると推認される。 このように被告への口コミは,その件数が最も多いだけでなく,その内容も軒並 み高評価のものであることからすると,本件ランキング表示(本件サイトにおける\n被告がランキング1位であるとの表示)と,被告へのく評価との間にかい離はないと認められる。\n
イ もっとも,そもそも被告への口コミが虚偽のものである場合,例えば, 被告が自ら投稿したものであったり,形式的には施主又は元施主(以下「施主等」 という。)からの投稿であったとしても,その意思を反映したものではなかったり などする場合は,本件サイトの表示上の被告への口コミの件数及び内容をそのまま\nのものとして受け取ることが許されなくなり,その結果,本件ランキング表示との\nかい離があるということとなる。そこで,次にこの点を検討する。 (ア) まず,本件サイトの公開日は平成24年3月5日であるところ,被告 への口コミとして表示されている口コミのうち5件の口コミについては,口コミ内\n容とともに表示されている日付が,同日より前のもの(同年2月2日,同月11日,\n同月13日,同月21日及び同月25日付け)になっている(同年6月11日時点 の表示として甲21の1)。このような事態は,それらの投稿が真に施主等による\nものであれば,考え難いものである。 この点について,被告は,サイト公開前にヒューゴが入力したテスト投稿の消し 忘れの可能性を指摘する。しかし,被告が,これら5件の口コミが既に投稿されて\nいたと認められる平成24年6月11日(甲21の1)よりも後の同月28日に, ヒューゴに対してバックデイト機能を要求したり,その要求の際に投稿された口コ\nミが直ぐに反映されずにタイムラグが生じるという問題点も併せて指摘したりして いること(乙10)からすると,被告は,それ以前に本件サイトに投稿された口コ ミを確認していたと考えられ,その場合に公開日前の日付が投稿日として表示され\nている口コミがテスト投稿の消し忘れであれば,これを放置するとは考え難いから, そのまま残されている上記5件の口コミが,ヒューゴによるテスト投稿の消し忘れ であるとは考え難い。
また,被告は,1)平成24年2月14日よりも後になって初めて口コミが投稿で きるようになったと思われるにもかかわらず,上記5件の口コミのうち3件はそれ 以前の日付が投稿日となっていること,2)被告の施主等から本件サイトの公開前に 返送されてきたアンケートの存在(乙14)に照らせば,上記5件の口コミについ てはヒューゴが本件サイトの公開後に施主等の投稿をバックデイトしたものである 可能性が高いと主張する。しかし,ヒューゴは被告からの依頼を受けて本件サイト\nを制作したにすぎず,本件サイトの公開後にヒューゴが被告の依頼を受けて注力し ていたのも各種キーワードによる検索順位の向上にすぎない(乙6ないし12)か ら,そのようなヒューゴが,本件サイトの歴史を少しでも長く見せようなどとして, 本件サイトの公開後に投稿された口コミを独断でバックデイトしようとする動機が そもそも見いだし難い(なお,被告が平成24年6月28日にヒューゴにバックデ イト機能を要求していることからすると,それ以前に表\示されていた上記5件の投 稿が,被告がバックデイトを指示したものであるとも考え難い。)。そして,上記 1)の主張は,本件口コミ投稿フォームが完成するまでの間については,ヒューゴで あっても口コミを投稿できないことを前提とするものであるが,本件サイトの仕組 みに照らせば,制作者であるヒューゴであれば,本件口コミ投稿フォームが完成す る前でも口コミの投稿作業をすることは不可能ではなかったと認められる(甲5,\n28,29,弁論の全趣旨)。また,上記2)の主張については,本件サイトの公開 前に返送されたアンケートは,飽くまで本件サイト外でのアンケートにすぎないか ら,仮に上記5件の投稿内容がアンケート結果に即したものであったとしても,上 記5件の投稿が本件サイトの公開後にされたものをバックデイトしたものであると 推認されるわけではない。また,この点はおくとしても,被告以外の業者に関する 口コミについても,口コミ内容とともに表示されている日付が本件サイトの公開日\nである平成24年3月5日より前になっているものがあること(甲21の2ないし 4。なお,甲21の5については時期が明らかでない。)に照らせば,被告に対す るアンケートの存在から,口コミ内容とともに表示されている日付が本件サイトの\n公開日である平成24年3月5日より前になっている理由を説明できるものではな い。したがって,被告の上記主張は採用できない。 以上からすると,本件サイト公開前の日付となっている5件の投稿は,被告の関 与の下にヒューゴにおいて投稿作業をした架空の投稿であると認められる。そして, 確かに,同様の日付の投稿は他の業者についても存在するが,それらの投稿はいず れも各4件である(甲21の2ないし4。甲21の5でも同様である。)から,被 告については,これらにより,本件サイトの公開時点から,既にランキング1位と 表示されていたと推認され,その表\示は虚偽であったといえる。
(イ) 次に,本件サイト公開後の投稿を見ると,1)掲載業者に対する投稿フ ォームは,(a)平成24年6月11日時点では,「地域」と「口コミ内容」を入力す るものであった(甲33の1)のが,(b)同年12月16日までには,「名前」, 「メールアドレス」,「ウェブサイト」及び「コメント」を入力するものに変更さ れ(甲33の2),その後,(c)セキュリティのための計算式の回答の入力が加わり (甲6),その状態が平成27年5月25日時点でも維持されていた(甲28の 1)こと,2)掲載業者以外の業者に対する投稿フォームは,平成27年5月25日 時点でも(a)と同じであったこと(甲27の1)が認められる。 これによれば,掲載業者に対する投稿については,少なくとも平成24年12月 16日以降は「地域」を入力することがないはずであるが,その後の被告及び他の 1社の情報の掲載ページでは,氏名が表示されるべき欄に地域が表\示されているも のが見られる(被告についての甲6の1では3件,他社についての甲6の3では2 件)。しかも,乙10によれば,本件サイトでの掲載業者への投稿は,平成24年 6月28日以降は投稿内容が即時に反映させる仕様になっていたと認められるから, 上記の投稿もそれによるもののはずである。そうすると,上記の投稿は不可解とい うほかなく,この点について被告から合理的な説明はないから,それらの投稿が真 に施主等がした真正なものであるかについては重大な疑問を抱かざるを得ない。 また,乙10によれば,被告は,平成24年6月当時,コメントを書いた施主等 にプレゼントを進呈していたと認められ,また,甲15によれば,被告は,平成2 9年9月頃,本件サイトに関する新聞社の取材に対し,「顧客の感想を社員が聞き 取って(自社の口コミとして)投稿したことはあったが虚偽は書いていない」と回 答したと認められ,このように被告が施主等から聞き取った内容を自ら口コミとし て投稿したことがあることは,当事者間に争いがないところ,この対応からすると, 何とかして被告への口コミ件数を増やそうとする姿勢が見て取れる。そしてまた, 乙10によれば,被告の担当者は,平成24年6月28日にヒューゴとの間で本件 サイトの改修を打ち合わせるメールの中で,「過去コメント分の編集(入力日時) の変更はできないでしょうか?」と述べていたと認められるところ,このメールか らは,施主等から投稿される口コミをそのまま反映させようとしない作為的な態度 が見て取れる。
以上のような重大な疑問と被告の態度に加え,前記(ア)のとおり,被告は,その関 与の下に本件サイトの公開時点で架空の投稿が表示されるようにしていたことを考\n慮すると,上記の「地域」が表示された投稿も架空のものと認めるのが相当である。\n (ウ) もっとも,上記(ア),(イ)で述べた投稿を除いても,被告への投稿件数 が1位であることに変わりはない。そして,乙10によれば,被告の担当者は,平 成24年6月28日,ヒューゴとの間で本件サイトの改修を打ち合わせるメールの 中で,「あと技術的な部分の確認なのですが,コメント入力後の即反映に変更する ことはできないでしょうか?プレゼントを差し上げるため,お客様に入力確認の連 絡を頂いているのですが,タイムラグが発生してしまい上手く進んでいません。」 と述べていたと認められるところ,このメールからすると,施主等自身が実際に投 稿をすることがあったと認められるから,被告への口コミとして表示されている口\nコミのうち,投稿日が本件サイトの公開日以降となっているもの全てが虚偽のもの であるといえないことは明らかである。しかし,上記のとおり平成24年3月5日 の時点で被告は架空の投稿を表示し,同年12月16日以降も架空の投稿をしてい\nるのであって,施主等への通常の投稿の勧誘により被告への高評価の投稿数が1位 になるのであれば,そのような架空の投稿までする必要はないはずである。このこ とに加え,前記のとおり上記の間の同年6月28日の時点でも被告は施主等からの 投稿日を変更しようとする作為的な態度を示していたことからすると,被告は,架 空の投稿を相当数行うことによって,ランキング1位の表示を作出していたと推認\nするのが相当である。
ウ 以上からすると,本件サイトにおける被告がランキング1位であるとい う本件ランキング表示は,実際の口コミ件数及び内容に基づくものとの間にかい離\nがあると認められる。 そして,本件サイトが表示するようないわゆる口コミランキングは,投稿者の主\n観に基づくものではあるが,実際にサービスの提供を受けた不特定多数の施主等の 意見が集積されるものである点で,需要者の業者選択に一定の影響を及ぼすもので ある。したがって,本件サイトにおけるランキングで1位と表示することは,需要\n者に対し,そのような不特定多数の施主等の意見を集約した結果として,その提供 するサービスの質,内容が掲載業者の中で最も優良であると評価されたことを表示\nする点で,役務の質,内容の表示に当たる。そして,その表\示が投稿の実態とかい 離があるのであるから,本件ランキング表示は,被告の提供する「役務の質,内容\n・・・について誤認させるような表示」に当たると認めるのが相当である。\n

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平成29(ネ)10020等  競業行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成29年9月13日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 会社とプログラマーとの関係が雇用契約なのか、請負契約なのかが争われました。 概括的な記載しかない発注書では請負としての実質を備えたものとはいえないと判断されました。今回は問題になってませんが、職務発明かどうかも同様にもめそうですね。
 上記認定事実を踏まえて,控訴人と被控訴人の間の契約の性質が,請負 契約であるのか,雇用契約等であるのかについて検討するに,控訴人と被 控訴人との間で締結された本件基本契約の各条項(甲1)をみる限りは, その内容が請負を内容とするものであることは否定できないところであ る。 しかしながら,使用者と労働者との間における労働契約の存否について は,明示された契約の形式のみによることなく,その労務供給形態の具体 的実態に照らし事実上の使用従属関係があり,当該使用従属関係を基盤と する契約を締結する旨の当事者間に客観的に推認される黙示の意思の合致 があるか否かにより判断されるべきものといえる。特に,本件では,被控 訴人が控訴人に現に雇用されていた状況の下で,控訴人代表者からの提案\nにより,当該雇用関係が解消され,本件基本契約の締結に至ったという経 過があるところ,一般に,労働者の立場にある者が使用者から上記のよう な提案を受けた場合,これを容易に拒絶し難いであろうことは,推察し得 るところである。また,この時点において,被控訴人が,労働関係法令に よって保護される労働者としての地位をあえて放棄し,リスクの高い個人 事業者の地位を選択し,控訴人との契約を請負契約に切り替えようとする 積極的な理由は認め難いのであり,これらの事情を勘案すれば,被控訴人 が真にその自由意思によって控訴人との雇用契約関係を解消し,請負を内 容とする本件基本契約を締結したと断ずることには疑問がある。してみる と,本件においては,控訴人と被控訴人の間で本件基本契約が締結された 事実があるからといって,当該契約に規定された各条項どおりの契約が成 立したものと直ちに断ずることはできないのであり,本件基本契約の各条 項に従った請負契約の成立が認められるためには,本件基本契約締結以後 の被控訴人による労務提供の実態や報酬の労務対価性等が,それ以前の雇 用関係の下におけるものと異なっており,真に請負契約としての実質を備 えたものであることが認められる必要があるのであって,そうでない限り は,従前と同様の雇用契約関係が継続しているものと解するのが,客観的 事実から推認される当事者間の黙示の意思に適合するものというべきであ る。
イ そこで,上記認定事実に基づき考察するに,まず,被控訴人による労務 提供の実態をみると,業務の内容,勤務場所,勤務時間,業務遂行上の指 揮監督の状況において,本件基本契約締結の前後で格別の相違は見られな い。また,本件基本契約締結以後の業務においては,その勤務時間からし て,被控訴人が控訴人以外の業務を受注し得る状況にはなく,現に,その 実績もないのであり,業務の専属性は高いものといえるし,そのような状 況もあって,被控訴人が控訴人から求められた業務を断る自由(諾否の自 由)があったとは考えにくい。そのほか,本件基本契約締結以後の業務に おいても,被控訴人が使用する主要な機材(パソコン)は控訴人所有のも\nのであり,業務上使用する名刺も控訴人の社員用のものであって,いずれ も本件基本契約締結以前と異ならない。 他方,報酬の労務対価性に関しては,報酬の決め方や支払方法が,前記 (1) 本件基本契約締結の前後で相違していることが認められる。しかしながら,控訴人発行の発注書の記載には,「業務の内容」として,「開発業務」との概括的な記載しかなく,その対価である「委託料」についても総額が記載されるのみである。一般に,請負契約において発注書等で請け負うべき業務の内容やその対価の額を定める場合に は,業務内容の詳細やそれに対応した対価の額の内訳を記載し,当事者間 の認識を明確化し,後の紛争防止を図るのが通常といえるのであり,これ からすれば,上記のような概括的な記載しかない発注書によって報酬の額 を定める方法は,業務の成果と報酬との具体的な対応関係が明らかではな く,真に請負としての実質を備えたものと評価することは困難である。む しろ,上記発注書の記載は,「本契約の発効日」から「業務の完了期日」 まで,控訴人における「開発業務」に従事すること全般に対する対価を定 めたもの(すなわち,雇用契約上の報酬額を,それが,労働基準法の定め に合致するかどうかはともかくとして,月々の給与としてではなく,不定 期の期間ごとに区切って,その都度定めたもの)と理解することが可能で\nあるといえる。 以上によれば,本件基本契約締結以後の被控訴人による労務提供の実態 や報酬の労務対価性等をみても,それ以前の雇用関係の下におけるものと 異なるものではなく,真に請負契約としての実質を備えたものであること が認められるとはいえないから,控訴人と被控訴人の間の契約の性質は, 本件基本契約締結以後においても,それ以前と同様の雇用契約のままで あったと解するのが相当である。そして,そうである以上,本件基本契約 のうち,雇用契約の性質に反する条項は,その効力を有しないものという べきである。
ウ 他方,控訴人は,控訴人と被控訴人の間では,本件案件に係る成果物が 特定されており,被控訴人は控訴人に対し特定の成果物提出義務を負って いた旨(すなわち,控訴人と被控訴人の間の契約は請負契約である旨)を 主張し,これを示す事情として,A社ス案件及びC社ア案件について,被 控訴人が,甲10及び11工数見積表,その前提となる詳細見積書(甲6\n6の2,67の2),それらをスケジュール化した甲12開発計画及び顧 客向けの見積試算表(甲70の2)や見積資料(甲72の2)を作成して\nいた事実を挙げる。 しかし,被控訴人が,控訴人の受注したA社ス案件及びC社ア案件につ いて,開発責任者又はプログラマーとして開発業務に当たっていた以上, これらの案件において想定される最終的な成果物を把握し,この点につい て控訴人との共通認識があったことは当然のことであり,このことは,控 訴人と被控訴人の間の契約が,請負であるか,雇用であるかに関わらない ことである。また,控訴人の要求に応じて,これらの案件に係る工数見積 表等の資料を作成することは,開発責任者等としての業務の範囲内のこと\nと考えられるのであり,このことも,控訴人と被控訴人の間の契約が,請 負であるか,雇用であるかに関わらないことといえる。 したがって,控訴人の上記主張は,控訴人と被控訴人の間の契約の性質 いかんに関わる事情を指摘するものではないから,これによって上記イの 判断が左右されるものではない。

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平成28(ネ)2932  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成29年4月6日  大阪高等裁判所

ドメインzenshin.gr.jpについて不正競争行為として、約2200万円の損害賠償が認められました。不競法5条2項により推定が一部覆滅された部分について,同条3項を適用した使用料相当額の損害賠償請求は1審と同様、認められませんでした。
一審原告は,不正競争防止法5条2項により推定が一部覆滅された部 分について,同条3項を適用して使用料相当額の損害賠償請求をするこ とができると主張する。しかし,補正して引用した原判決「事実及び理 由」中の第4の7 及び において算定した同条2項により推定される 損害額は,平成23年12月17日から平成26年8月8日までの一審 被告の前記不正競争行為の全体によって生じた一審原告の損害(逸失利 益)額を算定したものであり,推定が覆滅された一部について改めて同 項3項による損害額を算定し,その合算額を損害額とすることは,同一 の侵害行為を二重に評価して損害額を算定することを意味するものであ り,許されないといわなければならない。一審原告の上記主張は,採用 することができない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成27(ワ)2504

その他、当該ドメインを巡っては下記事件があります。

◆平成28(ネ)2241

◆この事件の原審はこちら。平成27(ワ)2505等

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平成27(ワ)16719  競業行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年1月26日  東京地方裁判所

 プログラマーに対する競業避止条項について、本件については、被告の自由を過度に制限するものとして,公序良俗に反し無効と判断されました。
 前記前提事実(2)アのとおり,本件競業避止条項は,本件基本契約期間 中及びその終了後12か月間,原告の業務内容と同種の行為を被告が行う ことを禁じるものである。そして,上記事実関係によれば,原告と被告は 継続的に被告が原告の業務を行う関係にあり,本件基本契約上,被告は原 告の営業秘密を扱ってソフトウェアの開発を行う立場にあるから,原告に\nおいては,被告がこうした営業秘密その他原告の業務を通じて得た知識を 用いることにより原告に不利益が生じることを防止する必要性があると解 される。そうすると,原告が被告に対し,原告の業務を行う期間中及び終 了後一定期間につき,本件機密保持契約上の義務に加え,被告が原告以外 のために同種の業務を行うことを禁止する旨の約定をすることは不合理で ないということができる。一方,本件競業避止条項により,被告は営業の 自由,職業選択の自由を制限されることになり,しかも,本件基本契約は 期間が定められず,双方の同意があった場合にのみ解除されるとされるの で(前記前提事実(2)ア),本件競業避止条項を文言どおり解した場合に は事実上無期限に競業避止義務を負うことになりかねない。したがって, 被告が競業を禁止される期間は,原告における上記必要性の程度に応じ合 理的な範囲に限られると解するのが相当である。 このような観点からみると,本件基本契約においては発注書によって具 体的な成果物及び期間を指定して業務を発注することが予定されており,\n競業避止の範囲も発注書の規定により画されていること(前記前提事実(2) ア 及び ),業務の完了から期間が経過するに従い被告が前記知識を用 いることによる原告の不利益が減少すると解されることに照らすと,被告 が原告の発注による業務に従事している期間及び更なる発注が見込まれる 期間は上記の必要性が存続するということができる一方,これが見込まれ なくなったときは上記の必要性は失われると考えられる。そして,被告が 本件案件等の業務を平成25年12月29日以降行っていない上,平成2 6年1月に原告事務所のカードキーを原告側に返却したこと(前記(3)ア ),原告が同年11月に被告に対して仮処分命令の申立てをしたこと\n(前記前提事実(4))を勘案すると,遅くとも原告が本件訴訟を提起した平 成27年6月(当裁判所に顕著)には上記の必要性が失われたとみるべき である。そうすると,本件競業避止条項は,現時点において,被告の自由 を過度に制限するものとして,公序良俗に反し無効であると解するのが相 当である。 ウ これに対し,原告は,取引関係が当事者の合意によって終了すれば本件 基本契約も解約されるから,本件競業避止条項は期限が付されており,公 序良俗違反に当たらないと主張するが,以上に説示したところに照らし, 失当というべきである。

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平成27(ワ)2504  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成28年10月13日  大阪地方裁判所

 図形商標については非類似と認定しましたが、不競法に基づく損害賠償として売り上げの1%が認定されました。
 原告は,原告標章1の上下に2本の直線を追加すると,「Z」との文字が浮かび 上がり,被告標章1も,原告標章1を構成する2つの三角形状の図形にそれぞれ3本の白線を追加したものにすぎず,同様に「Z」の文字が浮かび上がるもので,両 者は類似する旨主張する。 しかし,標章の上下に2本の直線を追加すると「Z」の文字が浮かび上がるとい ったことは,需要者が容易に認識し得るものではないことからすれば,この点が類 否に影響を及ぼすものではない。 原告標章1は,一辺を曲面の凹面で切り取られた赤色の鈍角三角形2つが上下に 凹面が来るように点対称に配置された旗のようなマークであり,被告標章1は,原 告標章1に,対置する底面に平行な3本の白い線を各鈍角三角形部分に入れたもの であるので,確かに,外周の形態及び色は類似しているといえるが,本体である鈍 角三角形に縞模様が入っているか否かは需要者が容易に区別し得るものであり,相 当異なる印象を与えるものであるから,原告標章1と被告標章1を全体として見比 べると,相当異なるものであることは一見して明らかである。 したがって,被告標章1は,原告標章1とは類似しないというべきである。
3 争点3(被告は被告各標章及び本件ドメインを使用しているか)について
 被告が運営する被告2店舗は,原告標章2,7を外壁に掲げた原告店舗の近隣に あって競業関係にあり,しかも周知商品等表示である原告各標章5ないし7に類似する被告標章11,12を店舗の出入口に掲げていたというのであり,またその店\n舗名に「ゼンシン」という原告及び「全秦グループ」を他から識別する部分を含ん でいたというのであるから,その開業当初は,需要者である遊戯客に原告店舗ない し原告との関係につき一定の誤認混同を生じさせたことは優に認められるといえる (上記ア(オ)dのとおり,取引業者であるが,現に誤認混同していた実例も認められ ている。)。 しかし,上記ア(エ)によれば,そもそもパチンコ店等の需要者である遊戯客による 店舗選択は,当該パチンコ店等の経営主体がどこであるとか,どのパチンコ店グル ープの店舗であるかということを重視するのではなく,パチンコやパチスロの台の 機能や機種,出玉感,交換率等の個別店舗の具体的営業内容そのものを主要な選択要素として決せられることが認められ,これからすると当該店舗の営業主体の誤認\n混同が当該店舗の選択,ひいてはその売上げあるいは損害に結び付く関係は薄弱で あるということができる。 なお上記ア(エ)からは,需要者である遊戯客には,店員の接客態度や店舗が清潔に 清掃されているか等のサービスについても選択時に考慮する要素としている者がい ることも認められるから,それらの需要者であれば,店舗の営業主体を指し示す営 業表示を手掛かりに当該店舗で受けられるサービスを期待して店舗選択をする可能\ 性があることは否定できない。しかし,需要者であるパチンコ店等の遊戯客は,パ チンコ店を極めて頻回に利用するのが一般的であるというのであるから(週1日の 利用でも年間72日の利用になる。),仮に被告2店舗の需要者の利用が,被告標 章の使用によりもたらされた被告店舗が原告と関係する店舗であるとの誤認混同か ら始まったとしても,当該店舗のサービスを実際に経験している以上,その後の継 続的利用が原告と被告2店舗との関係についての誤認混同の影響によりもたらされ ているとは考え難いところである。 そして,そもそも原告店舗及び被告2店舗とも隠岐の島という需要者が限られた 市場の中で他の4店舗とも競合している店舗であるが,被告2店舗のうち,ゼンシ ン隠岐がもともとあったパーラー隠岐という別店舗の営業実態を実質上承継してい る関係にあることからすると,被告2店舗の営業が原告店舗の顧客の誤認混同によ り生じた需要によって継続的に成り立っているとはおよそ考えられず,むしろその 影響は極めて小さいと見る方が合理的である。 なお,本件において被告が被告標章を使用して営業を営んでいるのは隠岐の島の 被告2店舗だけであり,不正競争防止法5条2項で推定されるべき原告の損害は, 被告2店舗の営業の影響を受ける範囲,すなわち,その競合店となる原告店舗にお いて生じた損害だけが問題となるというべきであるから,被告による被告各標章の 使用態様のうち,隠岐の島の住民において認識されないような岡山県津山市所在の 本件建物の外壁に掲げられた被告標章2,6による標章の使用は原告店舗の営業に 損害を全くもたらさないことは明らかである。 したがって,このような事情を総合考慮すると,本件における被告の得た利益と 原告の受けた損害の関係に不正競争防止法5条2項の推定規定の適用があるとして も,その推定は99%の限度で覆滅されるというべきである。 なお,原告は,原告店舗と被告2店舗の営業方法の類似性,さらには原告代表者としてのP1の競業避止義務違反さえ問題としているが,そこで問題とされる損害\nは,結局のところ,営業表示の誤認混同に由来する損害ではなく,単に原告店舗の近隣に競合店である被告2店舗が出店されたことから生じる原告店舗の売上減少の\n問題にすぎないから,不正競争防止法2条1項1号の不正競争により生じる損害の 議論としては失当であり,上記認定を左右するものではない。
(4) 上記(1)アのとおり,被告が,被告2店舗で得た利益は合計6億6654万1 348円であるから,原告において損害と推定される額は,666万5413円で あると認められる。
(5) 不正競争防止法5条3項の適用による損害について
本件で問題とする原告各標章は周知商品等表示であり,これに類似する被告標章7ないし9及び11ないし13の使用の結果,現実的な誤認混同が生じた事実も認\nめられるから,顧客吸引力が全くない商標権の場合と同様の意味での損害不発生を いう被告の主張は直ちには採用できない。 しかし,上記(2)で検討したとおり,パチンコ店等では,需要者は,主に営業表示以外の営業内容そのものの要素を選択肢として店舗を選択するというのであるか\nら,営業表示により誤認混同が生じたとしても,そのことが店舗選択に与える影響は極めて小さく,しかも,その需要者は店舗を頻回に利用するというのであり,そ\nのような需要者を顧客としてつなぎとめるためには,出玉であるとか交換率である などのパチンコそのものの営業内容によって他店と競争しなければならないといえ るから,原告各標章の営業表示に顧客吸引力があるとしても,営業の場面で,これを発揮する余地は限りなく少ないというべきである。\nしたがって,本件において認定できる被告の不正競争に対して原告が受けるべき 金銭の額は極めて少額にとどまるのが相当であり,これを認めるとしても,被告が 不正競争により受けた利益に基づき認定される不正競争防止法5条2項にいう原告 の損害の額を上回ることはないというべきである。

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平成26(ワ)10534  契約金返還等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成28年5月27日  東京地方裁判所

 差止および損害賠償請求を有しないことの確認訴訟について、訴えの利益なしと判断されました。その他の不当利得返還請求の棄却されました。
1 争点1(原告サーナアルファが,被告に対し,被告が同原告に対して不正競 争防止法2条1項7号及び同法3条1項に基づく差止請求権並びに同法2条1項7 号及び同法4条に基づく損害賠償請求権を有しないことの確認を請求することにつ いて,確認の利益が認められるか)について 原告サーナアルファは,同原告によるVRC法の実施は,被告が同原告に提供し た不正競争防止法2条1項7号所定の営業秘密の不正使用又は不正開示に当たらな いとして,同原告のVRC法の実施行為について,被告が同原告に対して同法3条 1項に基づく差止請求権及び同法4条に基づく損害賠償請求権を有しないことの確 認を求めている。 一般に,確認の訴えは,即時確定の利益がある場合,換言すれば,現に,原告の 有する権利又は法律的地位に危険又は不安が存在し,これを除去するため被告に対 し確認判決を得ることが紛争の解決のために必要かつ適切な場合に限り,許される と解すべきである。 証拠(甲12,33)によれば,被告は,原告サーナアルファに対し,弁護士を 通じ,内容証明郵便により,平成25年7月19日付け本件警告状及び同年8月2 9日付け通告書(以下「本件通告書」という。)を送付し,被告の「知的財産権 等に対する一切の侵害行為及び妨害行為を停止」するよう求めたことが認められる。 しかし,上記証拠によれば,本件警告状及び本件通告書には,被告が原告サーナ アルファに提供したとされる営業秘密に関する記載は何ら存在せず,同原告による VRC法の実施が不正競争防止法2条1項7号所定の営業秘密の不正使用又は不正 開示に当たる旨の記載も存在しないのであって,被告が,本件警告状又は本件通告 書により,同原告に同法2条1項7号及び3条1項に基づく差止請求権や同法2条 1項7号及び4条に基づく損害賠償請求権を主張したとみることは,困難であり, ほかに,被告が,同原告に対して,同法2条1項7号及び同法3条1項に基づく差 止請求権並びに同法2条1項7号及び同法4条に基づく損害賠償請求権を主張する おそれが,現に存在していると認めるべき事情は見当たらない。 そうすると,現に,同原告の有する権利又は法律的地位に危険又は不安が存在し, これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが紛争の解決のために必要かつ 適切であるということはできないから,確認の利益は,これを肯定することができ ない。 したがって,被告が同原告に対して不正競争防止法2条1項7号及び同法3条1 項に基づく差止請求権並びに同法2条1項7号及び同法4条に基づく損害賠償請求 権を有しないことの確認請求に係る同原告の訴えは,不適法である。

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平成27(ネ)10119  損害賠償請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成28年2月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ネット上の誹謗中傷削除サービスにおける広告活動が品質誤認(不競法2条1項13号)に該当しないとした1審の判断が維持されました。
 原告らは,被告ウェブサイト(広告)では,まさしく削除請求を代行するとうた っており,非弁活動の広告がなされているものであるから,適法に任意削除請求が できないにもかかわらず,これが適法に可能であるように表\示しており,「役務の質, 内容」について消費者を誤認させる表示に当たる旨主張する。\n確かに,被告ウェブサイトには,原告らの主張する「削除代行サービス」「誹謗中 傷サイトを削除してきました」「専門スタッフが最速で誹謗中傷を完全消去いたしま す」「一括して削除代行を承ります」(甲1の1),「削除代行」「ネット削除の費用」 「掲示板の削除の料金」「スレッド(板)またはレス(書き込み)単位で削除いたし ます」「格安で掲示板を削除」との記載があり,その部分のみを取り出せば,被告が 顧客に代わって削除請求を代理するかのような表現がある。しかし,被告ウェブサ\nイトの表示を正確に理解するためには,原告らも認めるとおり,当該ウェブサイト\nの特定の文言のみならず,その他前後の文脈等も見る必要があるところ,トップペ ージにおける「ブログの削除」欄には,「当社では,ブログの削除代行も行っていま す。」との記載に引き続いて,「削除依頼をITの面からサポートし,解決いたしま す。」との記載(甲1の1),削除ページには,「ネット削除(削除依頼)のITサポ ート」との見出しや,「ネット削除申請サービス(技術サポート)」,との見出しがあ\nり,「ITやWEBの専門技術を生かし,削除依頼の手続きを最後までお手伝いしま す。」,「当社では,これまでの数千件以上の削除実績と経験をふまえ,最も効果的な 削除要請ができるよう,技術面からサポートいたします。」との記載(甲1の2), 相談ページには,「ITの知識も必要」「ネットの削除養成については法律知識だけ でなく,ITの知識や技術も必要になります。当社では,ITの面から削除要請を サポートしています。削除の方法が技術的に分からないようなときは,当社にご相 談下さい。」との記載(甲1の3)もある。これらによれば,原判決が述べるように, 被告が,顧客と顧客が削除を求める相手との関係でどのように関わるのかについて 明確でなく,技術的サポートの内容も具体的ではないものの,被告が顧客に代わっ て削除依頼を直接行ったり,法的助言を行ったりするものと理解することはできな い。そうすると,被告ウェブサイトが,本来,被告が適法に行うことができない法 律的な業務について,これを行うことが適法に可能であるように表\示したとまでは いうことができず,したがって,「役務の質,内容」について消費者を誤認させたと いうことはできない。

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◆原審はこちら。平成26(ワ)31864

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平成26(ワ)31864  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成27年9月25日  東京地方裁判所

ネット上の誹謗中傷削除サービスにおける広告活動が品質誤認(不競法2条1項13号)に該当するかが争われました。裁判所は該当しないと判断しました。
(3) 原告らは,被告は自らの「削除代行」が「業界最安値」であり,弁護士の削除料金は高いと広告しているが,事業者による「削除代行」は非弁行為であり違法であって,自らの「削除代行」が弁護士の料金より安く「業界最安値」と広告することは,不競法に定める品質(有利)誤認行為(不競法2条1項13号)に当たり,こうした被告ウェブサイトの記載(広告)は,原告らの営業権を侵害する不正競争に当たるものであると主張する。 しかし,被告ウェブサイトには,前記1(1)イのとおり「株式会社WEB広報は,インターネット上の誹謗中傷対策を専門とする会社です。2ちゃんねる(2ch)などの掲示板やブログなど各種WEBサイトで中傷の被害あっている(判決注;ママ)企業様や個人の方々に,解決のためのサービスを提供しています。独自の技術と豊富なノウハウにより,誹謗中傷の被害を『最速』『最安』で解決します。」と記載されているほか,「WEB広報のネット削除の料金は,1サイトあたり8000円〜と,業界最安値です。」(トップページ。甲1の1,1頁),「削除料金は,ミラーサイトの場合,1サイトあたり8000円〜となっており,業界最安値です。」(トップページ。甲1の1,2頁)との記載はあるが,被告ウェブサイトには,原告らないし弁護士と被告が同じ「業界」であるとの記載はなく,また原告ら弁護士を同業の「業界」であることを前提とした上で「最安」で解決すると記載するものではない。そうすると,被告ウェブサイトの記載と実質的な非弁行為との関係はともかくとしても,そもそも被告ウェブサイトの上記記載は,被告の行う役務の品質に伴う価格について誤認させる表示とはいえないから,原告らの上記主張は採用することができない。
(4) さらに原告らは,民間業者が人格権に基づく妨害排除請求権としての削除請求権を代行行使することは非弁行為としての業務であるから,その範囲で原告らとは競争関係にある者としての同じ業界に属する旨主張する。 なるほど被告ウェブサイトには,「当社は,インターネット上の誹謗中傷の削除を代行する『ネット削除ITサポート会社』です。ITやWEBの専門技術を生かし,削除依頼の手続きを最後までお手伝いします。」との記載など,被告が,顧客と顧客が削除を求める相手との間でどのように関わるのかについて明確でない記載が存する。しかし,被告ウェブサイトの記載が役務の品質に伴う価格について誤認させる表示といえないことは前記(2)で検討したところであるから,原告らの主張は前提を欠き,採用することができない。

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平成26(ワ)24118  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 平成27年9月30日  東京地方裁判所

 利用料を支払うことなく利用できるようにカラオケ機器を改造して販売していた被告に対して、技術的制限手段の回避行為(不競法2条)として、約500万円の損害賠償が認められました。損害額の算定基準は、被告の得ていた利益です。ラベルそのままなので商標権侵害も認定されています。
 被告会社は,被告機器を14万8000円,15万8000円又は18万8000円で販売していたところ,証拠(甲3)によれば,被告Aは,刑事事件手続において,被告機器の1台あたりの仕入代金につき,正規品(原告機器)が約四,五万円,充電器が約6000円,デンモクが約1万円,改造部品が数千円,宅配便の送料と代金引換手数料が数千円であったとして,7万円から8万円であったと供述し,被告機器1台につき,6万円から7万円の利益があったと供述していることが認められる。したがって,被告会社が被告機器1台を販売することにより得た利益は,1台あたり6万5000円(被告Aの上記供述に係る6万円から7万円の中値)と認めるのが相当である。

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平成25(ネ)10067 不正競争行為差止等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成26年06月12日 知的財産高等裁判所

 DS用マジコンについて、不競法の技術的制限手段に該当するとした1審判断が維持されました。
 控訴人らは,法2条7項の技術的制限手段には,ある信号が存在して初めてあるプログラムの実行や映像や音の視聴が可能になる「検知→可能\方式」は含まれない旨を主張し,このことを前提にその主張を展開するので,まずこの点について検討する。当裁判所は,次のとおり,法2条7項の技術的制限手段に「検知→可能方式」は含まれると判断する。
イ まず,法文の文言から検討する。
法2条7項は,「この法律において「技術的制限手段」とは,電磁的方法・・・により・・・プログラムの実行・・・を制限する手段であって,視聴等機器・・・が特定の反応をする信号を・・・プログラムとともに記録媒体に記録・・・する方式によるものをいう。」と定義されている。同項の文言によれば,前者のプログラムと後者のプログラムは同一のプログラムであることは要求されていないものと解される。すなわち,法2条では,同一の条項中に複数の同一文言が現れ,これらが同一の対象を指す場合には,「当該」あるいは「その」との文言を付して限定しており(例えば,同条1項1号の「その商品等表示」,3号の「当該商品」,5号の「その営業秘密」,15号の「当該商標」等),このような規定方法は7項と同時に立法された1項10号,11号でも踏襲されている(10号の「当該装置」,「当該プログラム」,「当該機能\」,「当該技術的制限手段」,11号の「当該特定の者」)。また,法の他の条文(例えば,法5条,7条ないし13条,18条,19条,21条ないし23条,25条,26条,30条等)でも同様とされている。このように,法(不正競争防止法)においては,同一の条項中に複数の同一文言が現れ,これらが同一の対象を指す場合には,「当該」あるいは「その」との文言を付してこれを明示する形式を比較的厳格に遵守していることからすれば,前記の法2条7項の文言中の2つのプログラムは,同一のプログラムであることは要求されていないと解するのが合理的である。このような解釈を前提とするならば,実行が制限される前者のプログラムが,技術的制限手段とともに記録媒体に記録される後者のプログラムよりも広義である場合も,法2条7項所定の「技術的制限手段」に該当することとなることから,承認を受けたプログラムを除きプログラム一般(前者のプログラム)の実行を制限するために,技術的制限手段を特定のプログラム(後者のプログラム)とともに記録媒体に記録するような形態(「検知→可能方式」)も,法2条7項所定の「技術的制限手段」に含まれるとの結論が導かれることになる。\n

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◆原審はこちら 東京地裁平成21年(ワ)第40515号等事件

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平成25(ワ)7391 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成26年03月18日 大阪地方裁判所 

 不競法の営業秘密に該当せず、競業禁止規定についても合理性がない、と判断されました。
 前提事実記載のとおり,平成20年5月21日,被告P2が,本件合意が記載された本件契約書に署名押印したことは争いがないが,職業選択の自由の制限となる退職後の競業避止義務が有効であるためには,その合理性を支える事情が必要となる。(2) この点,本件合意は,3年間,地域,業務に何ら制限なく,同業者(その関連企業も含む)への就職や起業,コンサルティング業務等までをも禁止する広汎なものであり,およそ情報機器等の販売等に従事すること一切を禁止するものであるところ,前記前提事実のとおり,被告P2は単に営業職であったにすぎず,同被告がこのような競業避止義務を甘受すべき地位,職務にあったとは認められないし,また,原告が,同義務を負わせるに十分な代償措置を講じたことなどについての立証は何らされていない。結局,前記職業選択の自由の制限を正当化するに足る事情は何ら認められないというべきである。(3) したがって,本件合意は,その内容に照らし,真意に基づいて合意されたとは認め難い上に,その合理性を支える事情は何ら認められないから,被告P2に対して効力がないというべきである。

◆判決本文

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平成25(ワ)7931 損害賠償請求事件 不正競争 民事訴訟 平成26年03月06日 大阪地方裁判所

 不競法の営業秘密かが争われました。裁判所は、秘密管理性無しと判断しました。 また、退職後の競業禁止規定についても合理性が認められないとして、就業規則に拘束されないと判断しました。
 原告は,営業秘密として問題とする本件情報を,原告が被告に貸与したパソコン等で被告が日常業務において作成した見積書等に記載の取引先,業務内容,単価,数量の情報と特定した上で,被告の行為が不正競争防止法2条1項4号に該当すると主張する。しかしながら,原告が主張するところによっても,被告は日本ペイントを含む原告の取引先との取引に従事する過程で,取引先に交付する見積書や請求書を作成する都度,原告の業務に使用するものとして,原告が被告に貸与していたパソ\コン等に保存していたというのであり,原告の主張する上記情報とは,前記見積書に記載されていた事項であるというのであるから,そもそも被告が上記情報を不正の手段により取得したということはできないし,仮に被告が上記情報を何らかの形で所持していたとしても(そのような事実が立証されている訳ではない),不正取得行為により取得した情報の使用とはいえないから,不正競争防止法2条1項4号が適用される余地のないことは,明らかと言わざるを得ない。また,被告が上記情報を取得し使用することが不正競争行為に当たるとするためには,上記情報が不正競争防止法2条6項の営業秘密に当たることが前提となるが,上記情報のうち,産業廃棄物運搬の単価にかかる情報は,従業員や契約の相手方において,通常秘匿することが当然に期待される性質の情報とはいえないし,原告は,上記情報,あるいはそれを記録したパソコンの管理等に関する従業員に対する指示内容や,情報管理に関する規程等の秘密管理の状況,さらに上記情報が非公知であることについて何ら具体的に主張立証せず,被告が大東衛生に対し,本件情報を開示したことについての立証もない。\n
(2) 以上によれば,不正競争防止法違反に基づく原告の請求(請求1)は理由がない。
・・・・
証拠(甲5,9の1・2)によると,平成17年4月1日,原告の就業規則に,「退職後,1年間は同業種の仕事及び得意先に営業行為をしてはならない」との規定が追加されたことが認められる一方,被告が原告に採用されたのが平成15年6月2日であることは当事者間に争いがない。そうすると,就業規則の不利益変更という意味においても,また,そもそも職業選択の自由の制限となる退職後の競業避止義務の有効性という意味においても,同規定が被告に適用されるには,その合理性を支える事情が必要となるというべきところ,同規定は,1年間,地域,業務に何ら制限なく同業者への就職や取引先への営業行為を禁止する広汎なものであるのに対し,このような職業選択の自由の制約を正当化するに足るような事情,すなわち,原告において,被告が競業避止義務を甘受すべき地位,職務にあったこと,また,原告が,同義務を負わせるに十分な代償措置を講じたことなどについての主張立証はされていないから,結局,前記合理性を支える事情は何ら認められないというべきである。したがって,原告の主張する就業規則は,被告を拘束しないというべきであるから,退職後の競業避止義務違反をいう原告の主張(請求3)は理由がない。\n

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平成25(ネ)10062等 不正競争行為差止等請求控訴事件,同附帯控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成25年12月26日 知的財産高等裁判所

 不競法の商品形態について、原審の損害認定が維持されました。不競法19条の適用除外については除外されないと判断されました。ただ、50%の商品について、いわゆる「販売不可事情」が認められました。
 そこで検討するに,一審被告は,インテリア用品の輸入販売業者として,他人の商品の形態を模倣した商品を輸入し,これを販売することにより他人の営業上の利益を侵害してはならない義務を負うというべきであるから,一審被告がティファニー社から被告各商品を輸入するに当たり,ティファニー社に対し,被告各商品のデザイン完成に至る開発経緯等を問い合わせるなどして被告各商品が他人の商品の形態を模倣した商品ではないことを調査確認すべき注意義務を負っていたものと解するのが相当である。しかるところ,前記(1)の認定事実によれば,一審被告は,被告各商品を輸入するに当たり,ティファニー社に対し,被告各商品が被告各商品が他人の商品の形態を模倣した商品ではないことを調査確認したことがなかったことが認められ,また,平成23年9月27日に一審原告の代理人弁護士から被告商品1ないし5が楽天市場の原告ショップで販売されている原告商品1ないし5の形態を模倣した商品である旨の本件警告を受けた後も,原告ショップを調査することなく,被告商品1ないし5の販売を継続するとともに,原告商品6の形態を模倣した被告商品6の販売を行っていたのであるから,一審被告には,被告各商品が他人の商品の形態を模倣した商品ではないことを調査確認しようとする意思もなかったものと認められる。加えて,楽天市場は,大手のインターネットショッピングモールであり,一審原告が楽天市場の原告ショップで販売するステンドグラスの各商品は,平成20年5月ころ以降,楽天市場の洋風ペンダントライト,シャンデリア,壁掛け照明の各部門の「ランキング市場」でしばしば1位等のランキング上位を獲得していたこと(前記(1)ア)からすると,一審被告において,被告各商品のデザイン完成に至る開発経緯等をティファニー社に問い合わせていれば,楽天市場の原告ショップを調査することに格別の困難はなかったものと認められる。そして,原告ショップには,ステンドグラスのペンダントランプが原告各商品を含めて100種類程度展示されていたが(前記(1)ア),原告各商品の形態と被告各商品との形態は酷似していること(前記(2)アの(ア)ないし(カ))に照らすと,一審被告が原告ショップを調査すれば,被告各商品が原告各商品の形態を模倣した商品であることを容易に認識し得たものと認められる。以上を総合すると,一審被告において被告各商品の輸入時に被告各商品が原告各商品の形態を模倣した商品であることを知らなかったとしても,それは,被告各商品が他人の商品の形態を模倣した商品ではないことを調査確認すべき注意義務を怠ったことによるものであり,しかも,上記調査確認をすることにより被告各商品が原告各商品の形態を模倣した商品であることを容易に認識し得たにもかかわらず,一審被告には調査確認をしようとする意思すらなかったのであるから,一審被告において被告各商品の輸入時に被告各商品が原告各商品の形態を模倣した商品であることを知らなかったことにつき重大な過失がなかったものと認めることはできない。したがって,一審被告は,本件警告の前後を通じて,被告各商品について不競法19条1項5号ロの「他人の商品の形態を模倣した商品を譲り受けた者(その譲り受けた時にその商品が他人の商品を模倣した商品であることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)」に該当しないから,一審被告の上記主張は,採用することができない。
・・・・
一審被告は,一審原告が製造販売するステンドグラスのランプシェードの種類は非常に多く,実際の原告各商品の販売数は年間数個から十数個程度と考えられること,原告各商品の価格は1個4万円台が主流であるのに対し,被告各商品の小売価格(参考上代)は1万円以下であって,その価格差は4倍程度あり,被告各商品を購入した顧客層が高価な原告各商品を購入するとは考えられないことからすると,一審被告が販売した被告各商品の販売数量の全部に相当する数量について一審原告が「販売することができないとする事情」(不競法5条1項ただし書き)がある旨主張する。そこで検討するに,1)原告各商品及び被告各商品は,ステンドグラスのペンダントランプという照明器具の一種であり,同様の照明器具には多種多様なものが存在すること,2)原告各商品及び被告各商品は,それぞれ原告ショップ又は被告ショップで販売されており,ネットショップで販売されていたという点では共通するが,原告各商品については,その販売価格が4万円台(4万0950円ないし4万7250円の範囲)であるのに対し,被告各商品については,一審被告によって業者に対して卸売りがされたものであり,その販売価格(卸売価格)は2000円台(2300円ないし2900円の範囲)であり,その価格差は20倍程度あり,また,被告ショップ掲載の被告各商品の参考上代は1万円前後(9200円ないし1万1600円の範囲)であり,この参考上代と対比しても,その価格差は4倍程度あったことからすると,一審被告から被告各商品を購入する顧客層と一審原告から原告各商品を購入する顧客層には重なり合わない部分がかなりあるものといえること,3)一審原告が楽天市場の「ランキング市場」で1位等のランキング上位を獲得したステンドグラスのペンダントランプは,原告各商品とは別商品であり,原告各商品がとりわけ人気が高い商品であったことをうかがわせる事情を認めるに足りる証拠はないこと,4)一審被告の取引先の業者のネットショップにおいて,被告商品2が2万4000円,被告商品3が2万4000円,被告商品4が2万3000円,被告商品5が2万5000円などの小売価格で掲載されている例(甲21ないし24)があるが,当該業者と一審被告とを同一視し得るような事情を認めるに足りる証拠はなく,また,この小売価格と対比しても,原告各商品との価格差は1.6倍程度あったこと,以上の1)ないし4)の事情を総合考慮すると,前記ア認定の被告各製品の販売数量のうち,50%に相当する数量については,原告各商品と被告各商品の価格差及び顧客層の相違等に起因して,一審被告による不正競争行為がなくとも,一審原告が原告各商品を「販売することができないとする事情」があったものと認めるのが相当である。したがって,前記アの被告商品の譲渡数量のうち,50%に相当する数量(被告商品1につき23個,被告商品2につき30個,被告商品3につき20個,被告商品4につき25個,被告商品5につき16個,被告商品6につき16個)に応じた額を,原告の損害額から控除すべきである。この限度において一審被告の上記主張は,理由がある。(イ) これに対し一審原告は,不競法2条1項3号の形態模倣の不正競争行為は,被侵害者の商品の形態に依拠し,これと実質的に同一の形態を持つ商品を販売する行為であり,被侵害者の商品と侵害品とが市場において完全に補完関係に立つから,被侵害者の商品と侵害品との価格差等は,そもそも被侵害者が「販売することができないとする事情」に該当しないし,また,被告商品2が2万4000円,被告商品3が2万4000円,被告商品4が2万3000円,被告商品5が2万5000円であるなどの小売価格の例があることや,現実に被告商品4は2万3000円でも売れており,原告各商品及び被告各商品は,一般家庭や店舗等におけるインテリアとして使用されるランプであり,いわゆる消耗品等は異なり,若干の価格差によって購買層が分断されるような性質の商品ではなく,原告各商品と被告各商品との価格差が需要者の購買意欲に与える影響は極めて小さいから,上記事情は存在しない旨主張する。しかしながら,前記(ア)で述べたように,原告各商品は,ステンドグラスのペンダントランプという照明器具の一種であって,同様の照明器具には多種多様なものが存在する一方で,原告各商品が価格の多寡にかかわらず,需要者が購入を求めるような特に人気の高い商品であったものとまでは認められないことからすると,原告各商品と被告各商品との価格差が需要者の購買意欲に与える影響を軽視することはできない。そして,前記(ア)の1)ないし4)の事情に鑑みると,被告各商品の形態が原告各商品の形態と酷似していることなどを考慮してもなお,原告各商品と被告各商品とが市場において完全に補完関係に立つものとはいえず,一審原告の上記主張は,理由がない。

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◆原審はこちら。平成24(ワ)4229

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平成21(ワ)40515等 各不正競争行為差止等請求,承継参加申立事件 不正競争 民事訴訟 平成25年07月09日 東京地方裁判所

 DS用マジコンの複数販売業者に対して、合計1億円弱の損害賠償が認められました。
 原告任天堂は,DS用マジコンの販売業者がDS用マジコンを譲渡したことにより,原告任天堂がDSカードを販売する機会を確定的に失ったところ,多数のDSカードを購入する者も少なくないから,ウェブサイトからダウンロードされたDSプログラムのうち,原告任天堂が販売するDSカードに対応するものの数は,DS用マジコンが譲渡されなければ原告任天堂が販売することができたDSカードの数に相当すると主張する。しかしながら,DS用マジコンが譲渡されなければ販売する機会があったDSカードの数は,その後に販売することができるDSカードの数とその後も販売することができないDSカードの数を含んでいるから,DS用マジコンが譲渡されなければ販売することができたDSカードの数を超えるものになることは明らかである。しかも,前記(4)認定の事実によれば,「ROMサイト」等と呼ばれるウェブサイトから「コピーゲーム」等と呼ばれるDSプログラムを無料でダウンロードしてこれを入手することができるところ,証拠(甲169の1,173)によれば,原告任天堂が販売するDSカードの販売価格は,おおむね約4600円であることが認められるから,無料でダウンロードすることができるコピーゲームと約4600円を支払って購入するDSカードとでは,その容易さに大きな違いがある。そうであるから,ウェブサイトからダウンロードされたDSプログラムのうち,原告任天堂が販売するDSカードに対応するものの数が,DS用マジコンが譲渡されなければ原告任天堂が販売することができたDSカードの数に相当するということはできない。
・・・
イ 年間タイレシオから推計する方法について
(ア) DSカード1本当たりの利益の額について
証拠(甲169の1,173,鑑定の結果)によれば,原告任天堂におけるDSカード1本当たりの利益の額は,別紙逸失利益額一覧表記載のとおり,12表\題が●(省略)●円を下らず,92表題が●(省略)●円を下らないことが認められるから,その平均額は,次の計算式のとおり,●(省略)●円を下らない。(計算式)( ●(省略)●円×12表題+●(省略)●円×92表題)÷(12表題+92表題)=●(省略)●円 (1円未満切捨て)
(イ) DS用マジコンの譲渡がなかった場合の年間タイレシオについて a 証拠(甲177,190の1ないし5,195の4及び5,230ないし232,233の1ないし4)によれば,1)国内におけるDS本体1台当たりのDSカードの年間販売数を示す年間タイレシオ(DSカードの年間販売数÷DS本体の累積販売数)と国内におけるDS本体1台当たりのDSカードの累積販売数を示す累積タイレシオ(DSカードの累積販売数÷DS本体の累積販売数)は,次の表のとおりであり,年間タイレシオは,平成16年12月から平成17年12月までが3.246本,平成18年が3.236本とほぼ一定であったのに対し,平成19年が1.997本,平成20年が1.312本,平成21年が0.975本と毎年大きく減少していること,2)ゲーム業界は,平成18年以降,拡大し続けていて,平成20年後半に始まった不況下においても,単価が他のレジャーに比べて安いこと等から,むしろ売上げが増加していたこと,3)DS用マジコンは,平成17年4月ころから販売されていたが,R4がその使いやすさゆえに平成18年12月ころから爆発的に販売されるようになったこと,4)原告任天堂は,平成19年以降,ゲーム機「Wii」向けのゲームソフトの製作,販売に注力するようになり,DS本体向けのゲームソ\フトでヒットする作品が出なかった一方で,平成20年にはソニーの販売する携帯型ゲーム機「プレイステーション・ポータブル」向けのゲームソ\フトで,平成21年には原告株式会社スクウェア・エニックスの販売するDS本体向けのゲームソフトで,それぞれヒットする作品が出たことが認められる。前記認定の事実に,年間タイレシオは漸減していくのが通常であることを併せ考慮すると,平成16年12月から平成18年12月までの平均年間タイレシオ3.241本は,DS用マジコンの譲渡がなければ,平成19年から平成21年までの間,少なくとも平均2.5本を限度として維持されたものと認めるのが相当である。
・・・
b 前記認定の事実によれば,インターネットやゲーム雑誌,テレビ,新聞等は,遅くとも平成19年1月から,DS用マジコンを用いれば,DSカードを購入しなくても,無償で,DS本体においてゲーム等をすることができるようになることを多数紹介し,広く知られていた上,証拠(甲33の1及び2,34の3,150)によれば,DS用マジコンを取得した者は,実際にDSカードを購入しなくなったことが認められるから,これらの事実を総合すれば,DS用マジコンの譲渡により,DSカードの販売業者は,販売することができたはずのDSカードを販売することが事実上できなくなったものと認められる(なお,社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会が平成22年9月に実施したアンケート調査の結果によれば,DS本体とDS用マジコンを保有している者のうち,DS用マジコンの利用によってDSカードを購入する頻度が減ったのは約42.6%にとどまっているが(甲192),これは,自己に不利益な回答を差し控えたことによるものというべきである。)。証拠(甲184)によれば,DSカードの国内販売数における原告任天堂の市場占有率は●(省略)●%であると認められるから,原告任天堂は,被告マジカル,同AI,同メディア及び同Mediaが平成19年1月から平成21年9月までに本件DS用マジコンを譲渡したことによって,DS本体1台について販売することができたはずのDSカード約●(省略)●本(2.5本×33月/12月×●(省略)●)を販売することが事実上できなくなったものと認められる。
・・・
(c) そうすると,CIは,平成19年1月1日から平成20年2月12日までにR4を3万5266台販売し,被告マジカル及び同AIは,次の計算式のとおり,同月13日から平成21年9月30日までにR4を6万9898台,DSTTを8万5600台,R4iを1万7287台,合計17万2785台販売したものである。
・・・
(c) そうすると,被告メディア及び同Mediaは,次の計算式のとおり,平成19年2月7日から平成20年5月24日までにR4を1万2961台,平成19年12月28日から平成20年6月3日までにDSTTを1万1371台,平成20年5月30日から平成21年9月30日までにM3さくらを3万8196台,合計6万2528台販売したものである。
(エ) 損害額について
したがって,原告任天堂は,逸失利益と8%相当額の弁護士費用として,次の計算式のとおり,CIによるR4の譲渡により●(省略)●円の損害を,被告マジカル及び同AIによる別紙物件目録記載1の各DS用マジコンの譲渡により●(省略)●円の損害を,被告メディア及び同Mediaによる別紙物件目録記載2の各DS用マジコンの譲渡により●(省略)●円の損害をそれぞれ受けた。(計算式) ●(省略)●円×●(省略)●本=●(省略)●円●(省略)●円×3万5266台×1.08=●(省略)●円●(省略)●円×17万2785台×1.08=●(省略)●円●(省略)●円×6万2528台×1.08=●(省略)●円

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平成19(ワ)11489等 損害賠償請求事件 不正競争 民事訴訟 平成23年12月15日 大阪地方裁判所 

 経緯からして「他人の商品等表示」ではないとしたものの、不法行為による損害賠償が認められました。また、一部の表\示(被告表示1−5及び1−7)を付して販売する行為は不競法2条1項13号の不正競争に該当すると認定されました。
 以上のような原告,被告ら及び協和興材の関係並びに需要者の認識を踏まえると,本件商品に付された原告表示1ないし4は,本件商品の製造販売に関与する原告,被告ら及び協和興材の三者の出所表\示として,需要者の間に広く認識されていたものと認められる。
エ これに対し,原告は,被告らは,原告が協和興材を通じて本件商品を販売するための中間業者として中間マージンを得ていただけの存在にすぎないから,原告表示1ないし4の各表\示に被告ら独自の業務上の信用が化体する余地はなく,これらの表示が被告らの出所表\示となることはあり得ないかのように主張する。しかし,本件外箱の表示,広告宣伝時の表\示など,需要者が直截,目にする部分において,被告らが本件商品の製造販売において独立した商品等主体として関わっている旨が表示されているのであるから,需要者としては,当然,被告らも本件商品の出所の主体であると理解するであろうし,現実の取引においても,本件商品の総発売元である協和興材と直接の取引関係にあるのは原告ではなく被告らであって,被告らが,本件商品の販売において独立した主体的立場を有していることは明らかである。また,被告P1は,その屋号を「グリッタージャパン」とし,「GOLD Glitter」の文字商標の登録までしていたことからしても,本件商品の販売において,積極的な役割を果たしていたといえる(なお,原告は,これらについて被告P1が原告に無断で行ったと主張するが,これらの事実から,少なくとも,被告P1が,本件商品の販売において,自らの屋号を「グリッタージャパン」とし,対外的にそのような屋号の事業体として認識されるだけの利害関係を有していたことは否定できないから,無断であったか否かは,この場面では問題とならないというべきである。)。よって,原告表示1ないし4が被告らの出所表\示となることはあり得ないとする原告の主張は失当である。
オ 以上によれば,原告表示1ないし4は,不正競争防止法2条1項1号の周知商品表\示であると認められるものの,その出所識別機能は原告,被告P1(被告会社設立以降は被告会社)及び協和興材の三者について生じており,被告会社にとって「他人の」周知商品表\示であるとは認められないから,被告会社が,その製造販売する商品に原告表示1ないし4と同一ないし類似する被告表\示1−1ないし1−4,1−6を付したとしても,これをもって,不正競争防止法2条1項1号の不正競争を構成するものと認めることはできないというべきである。\n

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平成20(ワ)7756等 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成22年06月08日 大阪地方裁判所

 コンピュータで管理している情報について、秘密管理性は満たしていると認定されましたが、共謀しての持ち出しまでは否定されました。
 上記認定のとおり,原告は,ウラデンと称する顧客情報管理ソフトを導入し,「電話番号」,「氏名」,「フリガナ」,「住所」,「何を見て」,「転送区分」,「DM区分」,「コレクト区分」,「備考区分」,「入力担当」,「更新担当」,「入力日時」,「更新日時」等の欄を設けて顧客に関する情報を入力してデータとして保管していたところ,営業時間中はウラデンを起動させた状態にしており,スタッフが顧客情報を閲覧すること自体は制限されていなかった。しかし,ウラデンを起動させるために必要なパスワードについては,勤務年数の長いスタッフにしか知らされていなかった上,F及びH以外のスタッフが使用する原告事務所2階に設置されているパソ\コンは顧客情報のデータのコピー及びプリントアウトができないような設定がされており,スタッフが顧客情報を持ち出すことを困難にする措置が講じられていた。また,原告では,ウラデンで管理されている顧客情報を用いてタックシールを作成し,これを貼付してダイレクトメールを送付していたが,顧客の住所,氏名が記載されるタックシールは,スタッフが使用するパソ\コンでは作成することができず,FあるいはHだけが使用していたマスターパソコンで同人らだけが作成していた上,貼\付前のタックシールについては,事務所2階に設置していた鍵付き引出しのある棚で施錠した上で保管し,鍵については一部のスタッフが管理するとともに,タックシールの枚数についてもノートに記載して管理していたというのである。そして,原告においては,スタッフ及び占い師と契約を締結する際,原告の顧客情報を外部に流出させるなどした場合に,損害賠償金として50万円や100万円といった高額の違約金を支払わせる内容の業務請負契約を締結していたものであり,以上の事情に照らせば,原告のスタッフあるいは占い師としては,原告が顧客情報を他の情報とは区別して,秘密として管理していたことを十分に認識することができたといえる。以上のような原告における管理態様からすれば,原告が営業秘密と主張する本件顧客情報は,これに接した者において,原告が秘密として管理していることを十\分に認識することができる措置が取られていたというべきであり,本件顧客情報にアクセスすることができるスタッフが6名程度であったという原告の規模等も考慮すれば,秘密として管理されているものと認めるのが相当である。・・・上記で認定した事実,とりわけ,Eが,土曜日や日曜日には原告事務所に1人で出勤してダイレクトメールの作成作業に従事しており,顧客の氏名,住所が印刷されたタックシールを持ち出すことが容易な状況にあったこと,Eが原告を退職してオブジェに勤務を開始した直後,オブジェにおいて原告と同様の電話占い業の開業準備が始められたこと,オブジェがハーバースを開業した当時にオブジェと業務請負契約を締結した占い師は,いずれも原告と契約を締結していた被告ら4名だけであること(ただし,被告Aについては,この時点では原告との契約が継続していた。),オブジェがハーバースを開業してからわずか3か月後には,EがHER−BER−SUを設立してその代表者となり,オブジェからハーバースの事業を譲り受けたこと,ハーバースが開業した平成19年5月ころから,原告の顧客のもとにハーバースからダイレクトメールが届くようになったこと,平成19年8月10日(HER−BER−SU設立直後)から同年11月14日までの期間でみると,89名中61名,すなわちHER−BER−SUの利用者の実に約68.5%もの利用者が,原告がウラデンで管理していた顧客名簿に記載されている顧客の氏名と一致することなどの事実を総合すれば,Eにおいて,原告と競業する電話占い業を自ら立ち上げることを企て,原告がダイレクトメール送付用に作成したタックシールを印刷するなどして原告の本件顧客情報を持ち出し,連絡先を把握していた被告らに自らあるいは第三者を通じて接触してオブジェと契約を締結させ,本件顧客情報をオブジェに開示し,オブジェ及びHER−BER−SUが,占い事業を営むに当たり,本件顧客情報を利用して原告の顧客のもとへダイレクトメールを送付するなどしたことが推認されるというべきである。以上のEの行為は,不正の競業をする目的で,営業秘密である本件顧客情報をオブジェ(後のHER−BER−SU)に開示したものであるから,不正競争防止法2条1項7号所定の不正競争に該当し,Eから開示された本件顧客情報を用いて原告の顧客にダイレクトメールを送付して勧誘等をするHER−BER−SUの行為は,同項8号所定の不正競争行為に該当するというべきである。\n

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平成18(ワ)29160 損害賠償等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成22年04月28日 東京地方裁判所

 コエンザイムQ10の培養液及び生産菌を持ち出し,これらを被告会社に提供し、被告会社が,悪意でこれらを取得したことが、不競法2条1項4号,同項5号に該当する行為であると認定されました。
 以上によれば,原告が,被告らによる不正競争行為であるとして主張する行為のうち,その事実を認めることができるのは,次の行為に限られ,その余の行為については,これを認めることができない。(ア) 被告Cが,平成16年10月ころ,自己の利益を図るために利用する目的を持って,原告社内から,原告が保有する営業秘密であるコード番号「M15−204」の本件生産菌Aの種菌,コエンザイムQ10の生産菌(コード番号が明らかではないもの)の培養液及び本件生産菌Bを原告に無断で持ち出し,その後,これらを被告会社に提供したこと。(イ) 被告会社が,被告Cが持ち出し上記(ア)の各生産菌が被告Cによって原告に無断で原告社内から持ち出されたものであることを知りながら,被告Cから上記各生産菌を取得したこと。イ被告Cの上記ア(ア)の行為は,前記(2)ウ及び(3)のとおり不正競争防止法2条1項4号の不正競争行為に該当し,また,被告会社の上記ア(イ)の行為は,前記(3)のとおり同項5号の不正競争行為に該当する。

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平成21(受)609 発信者情報開示等請求事件 平成22年04月13日 最高裁第三小法廷

 最高裁は、プロバイダ制限責任法の適用について、「侵害情報の流通による開示請求者の権利侵害が明白であることなど当該開示請求が同条1項各号所定の要件のいずれにも該当することを認識し,又は上記要件のいずれにも該当することが一見明白であり,その旨認識することができなかったことにつき重大な過失がある場合にのみ,損害賠償責任を負うものと解するのが相当である」と判断しました。
 「これを本件について検討するに,本件書き込みは,その文言からすると,本件スレッドにおける議論はまともなものであって,異常な行動をしているのはどのように判断しても被上告人であるとの意見ないし感想を,異常な行動をする者を「気違い」という表現を用いて表\\\\し,記述したものと解される。このような記述は,「気違い」といった侮辱的な表現を含むとはいえ,被上告人の人格的価値に関し,具体的事実を摘示してその社会的評価を低下させるものではなく,被上告人の名誉感情を侵害するにとどまるものであって,これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められる場合に初めて被上告人の人格的利益の侵害が認められ得るにすぎない。そして,本件書き込み中,被上告人を侮辱する文言は上記の「気違い」という表\\\\現の一語のみであり,特段の根拠を示すこともなく,本件書き込みをした者の意見ないし感想としてこれが述べられていることも考慮すれば,本件書き込みの文言それ自体から,これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見明白であるということはできず,本件スレッドの他の書き込みの内容,本件書き込みがされた経緯等を考慮しなければ,被上告人の権利侵害の明白性の有無を判断することはできないものというべきである。そのような判断は,裁判外において本件発信者情報の開示請求を受けた上告人にとって,必ずしも容易なものではないといわなければならない。そうすると,上告人が,本件書き込みによって被上告人の権利が侵害されたことが明らかであるとは認められないとして,裁判外における被上告人からの本件発信者情報の開示請求に応じなかったことについては,上告人に重大な過失があったということはできないというべきである。5 以上と異なる見解の下に,上告人に重大な過失があるとして被上告人の損害賠償請求を一部認容した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。この点をいう論旨は理由があり,原判決中,被上告人の損害賠償請求を認容した部分は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,第1審判決中,上記請求を棄却した部分は正当であるから,同部分に対する被上告人の控訴を棄却すべきである。なお,発信者情報の開示請求に関する上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする。」\n

◆判決本文

原審の判決文が見つかりませんでした。 平成20(ネ)3598 平成20年12月10日 東京高裁

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平成19(ワ)4916等 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成22年03月30日 東京地方裁判所

 不競法の秘密管理性が認定され、営業秘密として保護されると判断しました。
 以上を総合すれば,本件情報は,平成15年ないし平成16年当時の出光石油化学千葉工場において,従業員以外の者はそもそもアクセスすることができず,また,従業員であっても,特定の関係者以外はアクセスが制限され,さらに,アクセスした従業員においても,それが秘密情報であることが認識し得るような状況の下で管理されていたものと認められるから,本件情報は,その当時,「秘密として管理されている」情報であったことが認められる。(イ) これに対し被告P商事及び被告Bは,本件情報の管理について,PS・PC計器室の建物出入口に「関係者以外立入禁止」の表示があったとしても,特別の監視装置があるわけではないので,PS,PCの部署以外の従業員が立ち入らないということはできず,鍵のかけられていないロッカーから容易にケースごと本件情報が記録されたフロッピーディスクを持ち去られる危険がある,上記フロッピーディスクから所要の情報を画面上に出し,これを印刷する操作を許容されている従業員の範囲及び暗証番号等の規定が不明である,PS,PCの部署の従業員が必要箇所を含む書類1冊を持ち出して工場現場まで持ち込む際のチェック及び工場内に持ち込んで必要箇所をコピーし,その書類を返還する場合の手続が不明である,退職者,転勤者らの訪問の際の取扱い如何によっては本件営業秘密の社外への流出は十\分防止できないなどの問題点があり,本件情報は,秘密管理性の要件を満たしているとはいえない旨主張する。しかし,前記(ア)認定のとおり,本件情報は,平成15年ないし平成16年当時の出光石油化学千葉工場において,従業員以外の者はそもそもアクセスすることができず,従業員であっても,特定の関係者以外はアクセスが制限され,アクセスした従業員においても,それが秘密情報であることが認識し得るような状況で管理されていたものであり,被告P商事及び被告Bが指摘する上記問題点を勘案しても,上記認定を左右するものではない。したがって,本件情報は秘密管理性の要件を満たしているとはいえないとの被告P商事及び被告Bの主張は,採用することができない。

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平成21(受)1049 発信者情報開示請求事件 平成22年04月08日 最高裁判所第一小法廷 判決

いわゆる経由プロバイダがプロバイダ責任制限法の発信者に該当するとの高裁の判断が維持されました。
 法4条の趣旨は,特定電気通信(法2条1号)による情報の流通には,これにより他人の権利の侵害が容易に行われ,その高度の伝ぱ性ゆえに被害が際限なく拡大し,匿名で情報の発信がされた場合には加害者の特定すらできず被害回復も困難になるという,他の情報流通手段とは異なる特徴があることを踏まえ,特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害を受けた者が,情報の発信者のプライバシー,表現の自由,通信の秘密に配慮した厳格な要件の下で,当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対して発信者情報の開示を請求することができるものとすることにより,加害者の特定を可能\\\\にして被害者の権利の救済を図ることにあると解される。本件のようなインターネットを通じた情報の発信は,経由プロバイダを利用して行われるのが通常であること,経由プロバイダは,課金の都合上,発信者の住所,氏名等を把握していることが多いこと,反面,経由プロバイダ以外はこれを把握していないことが少なくないことは,いずれも公知であるところ,このような事情にかんがみると,電子掲示板への書き込みのように,最終的に不特定の者に受信されることを目的として特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録するためにする発信者とコンテンツプロバイダとの間の通信を媒介する経由プロバイダが法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当せず,したがって法4条1項にいう「開示関係役務提供者」に該当しないとすると,法4条の趣旨が没却されることになるというべきである。そして,上記のような経由プロバイダが法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当するとの解釈が,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限について定めた法3条や通信の検閲の禁止を定めた電気通信事業法3条等の規定の趣旨に反するものでないことは明らかである。以上によれば,最終的に不特定の者に受信されることを目的として特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録するためにする発信者とコンテンツプロバイダとの間の通信を媒介する経由プロバイダは,法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当すると解するのが相当である。これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。

◆判決本文

原審の判決文が見つかりませんでした。 平成20(ネ)5138 平成21年03月12日 東京高裁

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平成20(ワ)15238  不正競争 民事訴訟 平成22年03月04日 東京地方裁判所

コンピュータによる管理した情報について、秘密管理性・有用性が認められました。
上記データベースのシステムは,原告の情報戦略推進部で一元的に管理されていた。データベース内の本件情報にアクセスするためには,アカウントの付与を前提としたアクセス権限の付与を受けている必要があった。申請が必要となるアカウントは,Windowsアカウント,メール,Notesアカウント,DigiSheet,使用するPC機器等であった。アカウント申請書(甲8添付資料1)による申\請があると,その申請者の所属する部門の部門長及び情報戦略推進部が妥当性を判断して当該アカウント申\請を承認するかどうかを判断し,承認されると申請者に上記アカウントが付与される。なお,原告の従業員が社外に送信するメールは,必ず上司に対してもbccとして送信されることとなっていた。アクセス権限も申\請により付与されるものであり,申請書(甲8添付資料2及び3)には,アクセス権限を申\請する対象のデータベースの名称,アクセスの理由等を記載するものとされていた。その申請について,申\請者の所属する部門の個人情報保護部門管理者がその部門における個人情報保護の観点から,同部門の部門長が申請者の業務遂行においてそのデータベースへのアクセスが必要かどうかという観点から,個人情報保護管理者が全社的な個人情報保護の観点から,順次,それぞれ妥当性を判断して承認を行うこととされていた。その上で,情報戦略推進部において,上記各承認を経ているかを確認し,更に申\請内容の妥当性を確認して承認の決裁をする。すべての手続完了後,情報戦略推進部においてアクセス権限の付与がされるものとされていた。・・・ 原告は,その就業規則の第45条1項14号及び15号において,業務上知り得た個人情報や原告及び関係取引先の重大な秘密及びその他の情報の漏洩等をしたときは懲戒解雇とすると定めていた(甲10)。また,秘密情報の保持に関する誓約書を従業員に提出させ(甲11),研修などで個人情報保護テキスト等(個人情報,営業秘密の保護の重要性,どのような情報が秘密情報に当たるのか,秘密管理のルール等について具体的な記載がされていた。)を使用して講義を行っていた(甲12,13)。 以上の認定事実によれば,原告は,本件情報を電子データとしてデータベース内に保有するとともに,書類として保有していたものであり,データベースについてはアクセス権限を制限し,権限を与える際には多くの決裁者による慎重な決裁を必要としていたこと,書類については施錠することができる倉庫又はキャビネットに保管し,その鍵を責任者により管理台帳を用いるなどして管理していたことが認められ,これらのことからすれば,本件情報は,原告により秘密として管理されていたと認めることができる。そして,本件情報は,派遣エンジニアの氏名や連絡先,分野,派遣先,給与データ等の情報や,派遣先企業の名称,派遣個別契約の満了日等の情報を含んでいるところ,これらの情報は,原告にどのような派遣エンジニアが所属し,どのような条件で企業に派遣されているのかを知ることができるものであるから,労働者派遣事業において有益な営業上の情報であるということができる。さらに,本件情報は,原告が事業を継続する中で集積した原告の従業員の個人情報及び派遣先企業の情報であると認められるから,公然と知られていないものであるといえる。以上から,本件情報は,原告の営業秘密(不正競争防止法2条1項7号,6項)に該当するものと認められる。

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平成21(ネ)1456 損害賠償,情報使用禁止等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成22年02月24日 大阪高等裁判所 

 1審判決は眉山の位置決めの仕方については保護されると判断しましたが、大阪高裁はこれを取り消しました。
 以上より,被控訴人技術を構成する, i)3点決め作業,ii)描く作業(眉型にアナスタシアのものを使用することを除く),iii)ワックス脱毛作業及びiv)仕上げ作業のいずれも,既存の技術ないし平成18年時点において眉の手入れに関するサービスを提供する美容施術者であれば容易に取得ないし習得できる事柄であり,かつ,各作業の全体の流れも,平成18年時点において眉の手入れに関するサービスを提供する美容施術者であれば容易に取得ないし習得できる事柄であったと認められる。エ「アナスタシアアイブロウトリートメント技術」の範囲についてのまとめ被控訴人の主張及び被控訴人がアナスタシア社との関係で日本ないしアジアにおいて「アナスタシア技術サービス」ないし「アナスタシアブランド名の下でアナスタシア製品を正しく競争的に販売するのに必要な技術サービス」を使用等する権利を独占的に有していること(甲2,4)も踏まえると,被控訴人技術は,アナスタシアステンシル(眉型)を日本人顧客の骨格に合わせて美しく施術することも要素としていることになる。被控訴人技術においては「アナスタシアステンシル」を用いて施術するとされているのに対し,当然のことながら既存技術においてはそのように表現される技術は存在しない。他方で,上記に認定したところからすると,3点決め作業と,描く技術のうち4種類のアナスタシアステンシル(眉型)の中から顧客の骨格に適したものを選択し,3点決め作業で設定した眉頭,眉山及び眉尻の各位置を基準としてステンシルを設置することによって構\\\成される作業の流れは,平成18年時点において眉の手入れに関するサービスを提供する美容施術者であれば容易に取得ないし習得できる事柄であったと認められる。そうだとすると,前記(4)ウ−1で示した理解での甲5誓約書の趣旨における「アナスタシアアイブロウトリートメント技術」(被控訴人技術),すなわち甲5誓約書により控訴人らが制約される技術は,アナスタシアステンシル(眉型)を日本人顧客の骨格に合わせて美しく施術することに焦点を当てて理解すべき一連の技術であると解するのが相当である。・・・控訴人Aら3名は甲7誓約書に基づき,控訴人Dら5名は甲5誓約書に基づき,被控訴人に対し,被控訴人技術であって,アナスタシア眉型を日本人の骨格に合わせて美しく施術することに焦点が当てられるべき一連の技術である,アナスタシアアイブロウトリートメント技術を使用しない義務を負う。しかしながら,控訴人らが控訴人サロンで用いている技術は,前記4(3)で認定した被控訴人技術の構成要素と多くを共通するが,眉尻の位置決めの仕方,使用する眉型がアナスタシアのものではなく控訴人サロン独自のものであること,眉のワックス脱毛に先立ちワックスを塗布するところにファンデーションを塗布すること,眉のワックス脱毛に用いるワックス器内のワックスの温度は67℃前後であることの点で異なるものと認めることができる(乙40,弁論の全趣旨)。なお,上記の「アナスタシアアイブロウトリートメント技術」を個々の構\\\成技術に分解して甲5誓約書で約定された禁止範囲を画するのは相当でない。被控訴人は,その技術についてワックス脱毛の目的からみて一般のワックス脱毛の構成とは違うことを強調して主張するが,被控訴人技術のうちのワックス脱毛作業が既存のアイディアと技術の組合せに過ぎないことは前記4(4)ウ−4における説示のとおりであり,その特定の構成部分が控訴人サロンのものと共通しているとしても,その部分のみをとらえて甲5誓約書によって使用が禁止されるものとすることはできない。また,被控訴人技術,すなわち「アナスタシアアイブロウトリートメント技術」は,アナスタシア眉型を日本人の骨格に合わせて美しく施術することに焦点が当てられるべきところ,上にみたように,控訴人サロンの技術ではアナスタシア眉型を用いないのであるから,その主要な部分において控訴人サロンの技術はアナスタシアアイブロウトリートメント技術と異なるものといわざるを得ない。したがって,控訴人らはアナスタシアアイブロウトリートメント技術を用いていないものであり,被控訴人主張に係る債務不履行又は不法行為の責めを負うものではない。\n

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◆平成18(ワ)7097等 損害賠償等請求事件 不正競争民事訴訟 平成21年04月14日 大阪地方裁判所

 退職後の競合禁止条項について、裁判所は、一部公序良俗違反で無効と判断しました。
  「原告技術に関して,3点決め作業(ただし,眉山の位置決めの仕方を除く。),描く作業及び仕上げ作業に関する技術については,その個々の作業で見る限り,被告らの退職時点(平成18年3月31日から同年5月15日までの間。ただし,被告H については同年12月15日。)において眉に関する美容施術者であれば容易に取得ないし習得できる技術であったといえる。これに対し,3点決め作業のうち眉山の位置決めの仕方及びワックス脱毛作業に関する技術については,同時点において容易に取得ないし習得できる技術であったとはいえない。したがって,甲5誓約書のうち,被告らに対し原告ピアス退職後3点決め作業(眉山の位置決めの仕方を除く。),描く作業及び仕上げ作業に関する原告技術の不使用を誓約させる部分は,その個々の作業に関する技術の使用を禁止する趣旨であれば,原告ピアスの正当な利益の保護を目的とするものとはいえず,被告らの職業選択の自由を不当に制約するものというべきであるから,公序良俗に違反するものというべきである。これに対し,甲5誓約書のうち,被告らに対し原告ピアス退職後に眉山の位置決めの仕方及びワックス脱毛作業に関する原告技術を使用しない旨誓約させる部分は,上記作業を含む全体としての原告技術の使用を禁止するものであるから,使用者である原告ピアスの正当な利益の保護を目的とするものであるといえる。そして,被告らに対し眉山の位置決めの仕方及びワックス脱毛作業を含む全体としての原告技術の不使用を誓約させたとしても,下記の事情を考慮すれば,被告らの職業選択の自由を不当に制約するものではないというべきであるから,甲5誓約書のうち,被告らに対し原告ピアス退職後に眉山の位置決めの仕方及びワックス脱毛作業を含む全体としての原告技術を使用しない旨誓約させる部分は,公序良俗に違反するものということはできない。」

◆平成18(ワ)7097等 損害賠償等請求事件 不正競争民事訴訟 平成21年04月14日 大阪地方裁判所

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◆平成20(ワ)20886等 不正競争行為差止請求事件 不正競争民事訴訟 平成21年02月27日 東京地方裁判所

  「マジコン」が、不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」に該当するか否か、不正競争防止法2条1項10号の技術的制限手段を無効化する機能「のみ」を有するのか等が争われ、裁判所は、”該当する”と判断しました。
  「以上の不正競争防止法2条1項10号の立法趣旨と,無効化機器の1つであるMODチップを規制の対象としたという立法経緯に照らすと,不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」とは,コンテンツ提供事業者が,コンテンツの保護のために,コンテンツの無断複製や無断視聴等を防止するために視聴等機器が特定の反応を示す信号等をコンテンツとともに記録媒体に記録等することにより,コンテンツの無断複製や無断視聴等を制限する電磁的方法を意味するものと考えられ,検知→制限方式のものだけでなく,検知→可能方式のものも含むと解される。・・・・前記(3)イ(ア)及び(イ)のとおり,合同会議報告書や国会における審議においては,MODチップが存在し,そのプログラムの実行を制限する動作が原告仕組みによる制限の動作と同じ検知→可能方式のものであることが記載されており,前記(3)ア(イ)及びイ(ウ)のとおり,改正解説にも,国会における審議等ほどには明確ではないが,事業者が用いている技術的制限手段又は方式の例として,「○無許諾記録物が視聴のための機器にセットされても,機器が動かない(ゲーム)」や「MODチップ」が記載されている。しかも,平成11年改正法の立法過程で,自主制作ソフト等の実行を可能\とすることに意義を認めるなどして,検知→可能方式のものを規制の対象からはずし,検知→制限方式のもののみを規制の対象としたことをうかがわせる証拠は見いだせない。したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。・・・・前記1(1)〜(3)及び上記(1)アの立法趣旨及び立法経緯に照らすと,不正競争防止法2条1項10号の「のみ」は,必要最小限の規制という観点から,規制の対象となる機器等を,管理技術の無効化を専らその機能とするものとして提供されたものに限定し,別の目的で製造され提供されている装置等が偶然「妨げる機能\」を有している場合を除外していると解釈することができ,これを具体的機器等で説明すると,MODチップは「のみ」要件を満たし,パソコンのような汎用機器等及び無反応機器は「のみ」要件を満たさないと解釈することができる。」

◆平成20(ワ)20886等 不正競争行為差止請求事件 不正競争民事訴訟 平成21年02月27日 東京地方裁判所

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◆平成20(許)36 秘密保持命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 平成21年01月27日 最高裁判所第三小法廷 決定 破棄自判 知的財産高等裁判所

 仮処分における秘密保持の申立却下について、最高裁は、これを取り消しました。
「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において,提出を予定している準備書面や証拠の内容に営業秘密が含まれる場合には,当該営業秘密を保有する当事者が,相手方当事者によりこれを訴訟の追行の目的以外の目的で使用され,又は第三者に開示されることによって,これに基づく事業活動に支障を生ずるおそれがあることを危ぐして,当該営業秘密を訴訟に顕出することを差し控え,十\分な主張立証を尽くすことができないという事態が生じ得る。特許法が,秘密保持命令の制度(同法105条の4ないし105条の6,200条の2,201条)を設け,刑罰による制裁を伴う秘密保持命令により,当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用すること及び同命令を受けた者以外の者に開示することを禁ずることができるとしている趣旨は,上記のような事態を回避するためであると解される。特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は,仮処分命令の必要性の有無という本案訴訟とは異なる争点が存するが,その他の点では本案訴訟と争点を共通にするものであるから,当該営業秘密を保有する当事者について,上記のような事態が生じ得ることは本案訴訟の場合と異なるところはなく,秘密保持命令の制度がこれを容認していると解することはできない。そして,上記仮処分事件において秘密保持命令の申立てをすることができると解しても,迅速な処理が求められるなどの仮処分事件の性質に反するということもできない。特許法においては,「訴訟」という文言が,本案訴訟のみならず,民事保全事件を含むものとして用いられる場合もあり(同法54条2項,168条2項),上記のような秘密保持命令の制度の趣旨に照らせば,特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は,特許法105条の4第1項柱書き本文に規定する「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟」に該当し,上記仮処分事件においても,秘密保持命令の申\立てをすることが許されると解するのが相当である。」

◆平成20(許)36 秘密保持命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 平成21年01月27日 最高裁判所第三小法廷 決定 破棄自判 知的財産高等裁判所

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◆平成17(ワ)12138 著作権に基づく差止請求権不存在確認請求事件 著作権民事訴訟 平成19年01月30日 大阪地方裁判所

   著作権の存続期間が満了した著作物について(c)マークをライセンシーに使用させることは、不正競争行為に該当しないと判断されました。
  「商品の実質や属性であればどのようなものであっても,13号の不正競争行為である誤認表示の対象となる「商品の内容」ということはできないのであって,前示のとおり,同号の趣旨が,商品等若しくはその広告等に表\示する原産地,品質,内容等を偽り,需要者の誤認を招くような表示をすることは,適正な表\示を行う他の事業者より競争上不当に優位に立ち,需要者の需要を不当に喚起する一方,適正な表示を行う誠実な事業者は競争上不当に劣位に立たされて顧客を奪われるなど営業上の利益を害されることになる点にあることからすれば,「商品の内容」に関する誤認表\示とは,商品に誤認を招くような表示をすることにより,その表\示を信じた需要者の需要を不当に喚起するような表示であることを要すると解すべきである。これを本件についてみると,・・・・被告表\示3ないし5は,それが本件絵柄の著作物について日本においては著作権保護期間が満了しているのにいまだに著作権が存続していると誤認させるものであるとしても,13号の不正競争行為である「商品の内容」に関する誤認表示には該当しないというべきである。ちなみに,商品に実際には存在しない特許権,実用新案権,意匠権を表\示する行為は13号の不正競争行為に該当する場合が多いと解されるが,そのように解されるのは,そのような表示が需要者をして当該商品が特許や,実用新案登録,意匠登録を認められたような優れた技術,デザインを有するという商品の品質,内容を誤認させるものである場合が多いからであると解される。これに対し,消費者等の需要者は,その絵柄が著作権の保護を受ける著作物であるか否かによってこれを購入するか否かを決定しているものではなく,そのような事項は商品の品質,内容に関するものとはいえないから,著作権の保護期間経過後の著作物に著作権表\示を付することと上記のような特許権等の虚偽表示とを同列に論じることはできない。」

◆平成17(ワ)12138 著作権に基づく差止請求権不存在確認請求事件 著作権民事訴訟 平成19年01月30日 大阪地方裁判所

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◆平成16(ワ)25672 営業行為差止等請求事件 平成18年07月25日 東京地方裁判所

  本件における顧客名簿は、不競法の営業秘密には該当しないと判断されました。
 「不正競争防止法上の「営業秘密」は,「秘密として管理されている」ことを要するところ(不正競争防止法2条6項),事業者の事業経営上の秘密一般が営業秘密に該当するとすれば,従業員の職業選択・転職の自由を過度に制限することになりかねず,また,不正競争防止法の規定する刑事罰の処罰対象の外延が不明確となることに照らし,当該情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることを認識できるようにしていること,及び,当該情報にアクセスできる者が制限されていることを要するものと解するのが相当である。本件においては,本件利用者名簿の電磁的記録情報及び紙媒体のいずれにおいても,当該情報及び媒体自体並びにその収納場所に,「部外秘」等の秘密であることを示す表示が何ら付されていない。また,事務室の扉の施錠は防犯上当然行われる事柄にすぎず,これを理由として原告社員に秘密であることが表\示されているとは到底いえない。そして,電磁的記録情報へのアクセスは,専用のパソコンを使用しているとはいうものの,パソ\コンを起動する際の簡易なパスワードが設定されているにとどまり,そのパスワードも広く社員に知られている。また,紙媒体は,施錠することなくキャビネットに保管されていて,登録ヘルパーも,担当する利用者のファイルは,サービス提供責任者の管理のもと,閲覧することができ,一部の書類は,事業所内から持ち出すことも認められていた。ところで,原告は,介護に関する事項を秘密として扱うべきことは特段の措置を講じていなくても当然に認識できることであり,また,被告両名ら原告の従業員及び登録ヘルパーは,業務上知り得た利用者又は家族の秘密を口外しない旨の雇用契約上の義務を負担し,原告は秘密保持に留意するよう指導教育を行ってきたのであるから,秘密管理性は認められる旨主張する。しかし,かかる雇用契約上の秘密保持義務や指導教育は,利用者のプライバシー保護を念頭におくものと解するのが相当であって,これによって不正競争防止法上の営業秘密性が直ちに導かれるものではなく,原告の主張は採用することができない。したがって,本件利用者名簿に記載された情報の内容や従業員らが秘密保持義務を負担していることを考慮しても,本件利用者名簿の実際の管理状況やアクセスできる者に照らせば,秘密管理性に欠け,これを不正競争防止法上の営業秘密に該当するものということはできない。」

◆平成16(ワ)25672 営業行為差止等請求事件 平成18年07月25日 東京地方裁判所

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◆H17. 8.10 知財高裁 平成17(ネ)10029等 不正競争 民事訴訟事件

    本件各表示を広告等に記載する被告の行為が,不競法2条1項13号の不正競争行為に該当するとの一審判断が取り消されました。
 裁判所は、「以上検討したところからすると,耐候性試験は,試験方法,試験条件,試験片の調整などによる影響を受けやすいものであり,まして,本件においては,一方において,被告商品を施工したものの光沢度保持率が91.9%であることを示す乙148試験の結果があり,また,実際に被告商品を施工した5年経過後の複数の車両の平均光沢度が,93.7%,96.1%という高い数値を維持していることを示す測定結果(乙127等報告)もあることなどに照らすと,被控訴人が援用する前記の各耐候性試験の結果に依拠して,被告商品には新車時の塗装面の光沢度を5年間持続する効果がないとまで的確に認定することはできないといわざるを得ない。そして,本件各表示における「新車の輝き」が持続しているかどうかということ自体が,多分に見る者の主観によるところが大きく,ある程度の幅を持つものであることをも考え併せると,本件全証拠をもってしても,未だ本件各表\示における「新車時の塗装の輝きが5年間維持される」との表示が虚偽であり,その表\示が需要者等に被告商品の品質及び内容を誤認させるものであると認めることはできない。」と述べました。

   原審です。H16. 9.15 東京地裁 平成14(ワ)15939 不正競争 民事訴訟事件

◆H17. 8.10 知財高裁 平成17(ネ)10029等 不正競争 民事訴訟事件

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◆H16. 9.15 東京地裁 平成14(ワ)15939 不正競争 民事訴訟事件

 本件各表示を広告等に記載する被告の行為は,不競法2条1項13号の不正競争行為に該当するのか等が争われました。原告はワックスを製造販売する会社ですが、不競法5条2項の適用(損害額の推定規定)も認められました。
 裁判所は、「 おおむね7か月後には,当初の光沢度の数値の半分程度に低下していると解される。そうすると,被告商品には,新車時の塗装の光沢度が5年間維持する効果はない・・・」として被告商品の品質及び内容を誤認させるものと認定しました。また、損害額については「本件不正競争行為によって原告が受けた損害額の算定に当たっては,被告の利益の額を基礎として,これに原告商品の自動車用ワックス全体の販売額に対する占有率を乗じ,さらに,前記諸事情を総合考慮して,2パーセントの割合を乗じた金額とするのが相当である。」と述べました。

◆H16. 9.15 東京地裁 平成14(ワ)15939 不正競争 民事訴訟事件

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◆H16. 6. 1 大阪地裁 平成14(ワ)8337 不正競争 民事訴訟事件

ろうそく、及びその広告であるポップ、商品パンフレット、商品しおりに、燃焼時に発生するすすの量が90%減少していること、火を消したときに生じる消しにおいが50%減少していることを趣旨とする表示が、不競法2条1項13号、14号に該当するとして、競合他社による表\示差し止めおよび損害賠償が認められました。

 

◆H16. 6. 1 大阪地裁 平成14(ワ)8337 不正競争 民事訴訟事件

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