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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商標の使用

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成26(ワ)12570  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年1月31日  大阪地方裁判所

以前の判決ですが、漏れていたのでアップします。
使用済みのトナーカートリッジに、インクを詰めたリサイクル品の製造・販売等が,不正競争防止法の品質等誤認惹起行為に該当するとともに、商標権侵害となると判断されました。被告は、販売時に、RFIDをリセットすることで、トナー交換メッセージが表示されるのを解除していましたが、これにともない「シテイノトナーガソウチャクサレテイマス」との表示がなされるようになり、これが品質誤認等に該当するとの判断です。

ア 被告は,経済常識によれば,原告京セラDSがリサイクル品を指定,すなわ ちお墨付きを与えることはあり得ないことから,需要者は,被告商品を原告プリン ターに装着したときにディスプレイに現れる「シテイノトナー」を原告京セラDS の主張するような意味に理解することはないと主張するが,原告京セラDSがいか なる場合にも他社の安価なリサイクル品を指定トナーとすることはあり得ないと断 定する根拠はないのであるから,当該表示が「誤認させるような表示」であること は免れないというべきである。
イ 被告は,被告商品がリサイクル品であることが明らかとなるよう純正品であ ることを否定する打ち消し表示がされていること,プリンターメーカーの純正リサ イクル品であればその旨の表示があるはずであるのにそのような表示がないこと, また,そもそも需要者はリサイクル品と純正品とを区別して購入しているものであ ること等を指摘し,本件指定表示が,「誤認させるような表示」ではない旨主張する。 上記第2の2(3)ウのとおり,被告商品の包装や外箱には,被告商品がリサイクル 品であることが理解できる記載がされているが,プリンターメーカーが新品の純正 品だけでなく,リサイクル品を販売している例もあるし(甲10の1ないし3),プ リンターメーカーが定める品質が,プリンターメーカー以外が製造するリサイクル 品においてあり得ないとまで断定できない以上,需要者が,被告商品を原告プリン ターに装着することによりディスプレイに現れる本件指定表示によって,被告商品 の品質,内容について誤認するおそれを完全に否定することはできない。そして, この点は,被告商品を原告らとは関係のない業者が製造したリサイクル品と明確に 認識して購入した需要者であっても同様であって,被告の上記主張は採用できない。
ウ 被告は,ステータスページのトナー残量を表示させるためRFIDをリセッ トすると,これに連動して本件指定表示が現れるようにする原告純正品にされた設 定は,不正競争防止法の問題を生じさせるようあえて設定されたものであって,競 争者に対する取引妨害を禁止する独占禁止法の趣旨に反するとし,被告商品による 不正競争該当性を否定すべきである旨主張する。 確かに,原告純正品についてなされた設定が,使用済み原告純正品のカートリッ ジを再利用してリサイクル品とする場合に,商品として競争力を減殺するものであ れば独占禁止法上問題とされる余地はあると考えられる。しかし,そもそも,RF IDをリセットしない原告純正品のリサイクル品であっても,トナー残量が不足し てきた場合には,プリンターのディスプレイには,「トナーガスクナクナリマシタ」, 「トナーヲコウカンシテクダサイ」との表示がされ,業務上支障がないよう配慮さ れているのであるから,プリントする必要があるステータスページのトナー残量が 表示できるようRFIDのリセットをしなければ,原告純正品のリサイクル品の製 造販売が阻害されるような前提でいう被告の主張は,その点で採用し難い。 また,原告純正品のステータスページにおけるトナー残量表示は,規定量の充填 された新品の「シテイノトナー」を前提に,各印刷物のドット量等から使用量を計 算するなどして表示しているというのであるから(弁論の全趣旨),そもそも原告京 セラDSにおいて規定量が充填されているか否かを確認できないトナーカートリッ ジを前提にRFIDをリセットして使用することは想定されておらず,そのリセッ トを自由にさせるよう求めることになる被告の主張はこの点でも採用できない。 したがって,原告純正品にされた,本件指定表示とステータスページを関連づけ た設定が独占禁止法の趣旨に反する旨の被告の主張は採用できない。
・・・
(1) 被告商品2には,トナーカートリッジの底面に本件商標が付されており,そ の表示態様は,被告商品2において,商品の出所を識別表示させるものといえる。 そして被告商品2は,本件商標の指定商品であるトナーカートリッジであるから, 被告商品2を製造販売する行為は,本件商標権の侵害行為を構成するといえる。
(2) これに対し,被告は,被告商品2には,原告らが流通に置いた商品であり, かつ,リサイクル品であることが一見して明らかな表示を幾重にも施しているから, 需要者が被告商品2の出所を原告京セラ又はそのグループ会社であると誤認するこ とはあり得ないとして,被告の行為は本件商標権侵害の違法性を欠く旨主張する。 確かに,上記第2の2(3)ウ(ア)のとおり,被告商品2の本体及び梱包した箱には, 被告商品2がリサイクル品であることが明示されていることが認められる。また, 箱の中に入れられている,「ご使用前の注意」と題する書面,「リサイクルカートリ ッジトラブル調査票」によっても,被告商品2がリサイクル品であることは明らか にされていることも認められる。 しかしながら,被告商品2の本体には,製造元等の記載は全く存在しないから, 本体に付された上記のような表示ラベルだけでは,本件商品2の本体に付された本 件商標の出所表示機能を打ち消す表示として十分なものとはいえない。

◆判決本文

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令和5(ネ)10085 損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件  商標権  民事訴訟 令和6年3月7日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審、知財高裁とも、は、DVDのケースの「九鬼神流」などの記載は、商標的使用ではないと判断しました。知財高裁は、消滅時効の追加主張を時期に後れたものとはいえないとして、一部の債権については時効により消滅したと判断し、損害賠償額を減額しました。

被控訴人は、控訴人に対し支払義務を負うとしても、本件訴状が原審裁判所に提 出された令和3年10月14日時点で、平成23年10月14日以前に支払われた 出演料に相当する部分6万9420円(=41万6521円÷(1−0.1)÷7% ×1.05×7%−41万6521円)は消滅時効が成立していると主張し、その 時効を援用していることは記録上明らかであるため、この点について検討する。10 控訴人は、上記主張につき、時機に後れた攻撃防御方法であることや時効援用が 信義則に反することを主張するが、被控訴人の時効主張は、原審での審理経過及び 判断内容を踏まえてされたものであるところ、その主張内容からすると、その審理 のために訴訟の完結を遅延させることとなるものとは認められず、時機に後れたも のとはいえないし、時効援用が信義則に反するものともいえない。 そして、本件訴訟提起時(令和3年10月14日)から遡って10年内に履行期 が到来した債権については、時効期間が経過していないものの、それ以前に履行期 が到来した債権については、本件訴提起時までに時効期間が経過し、かつ、権利行 使が可能であったといえ、時効中断等の事情もうかがわれないことからすると、平\n成23年10月14日以前に支払われた出演料に相当する未払部分6万9420円 (=41万6521円÷(1−0.1)÷7%×1.05×7%−41万6521 円)は消滅時効が完成し、被控訴人の時効の援用によって同額について時効により 消滅したものといえる。
(3) したがって、被控訴人は控訴人に対し、1万5177円(=8万4597円 (訂正の上引用する原判決第5の4(3))−6万9420円(上記(2)))及びこれに 対する履行期の到来後で控訴人の請求する令和3年11月16日から支払済みまで 民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
5 著作権侵害(当審における新たな請求原因の主張)について
控訴人は、当審における令和5年9月20日付け控訴理由書において、新たな請 求原因の追加的変更に当たる主張として、被控訴人の本件大会ビデオ・DVDの制 作・販売が控訴人の演武の著作権を侵害するとの主張を行ったが、被控訴人は、か かる主張は原審において提出できたことは明らかであり、控訴審において更に審理 することは訴訟の完結を遅延することなるため、却下すべきと主張する。 上記請求原因の追加的変更については、原審においてその主張ができなったとい うやむを得ない事情はうかがわれず、上記請求原因の追加的変更を許せば、控訴人 の演武の著作物性、著作権侵害の有無、仮に侵害が認められる場合においては損害 の有無等を新たに審理しなければならず、著しく訴訟手続を遅滞させることとなる から,当該請求原因の追加的変更は不当であると認められる。 したがって、控訴人の著作権侵害に係る請求原因の追加的変更の申立ては、民訴\n法297条、143条1項及び4項に基づき、許さないのが相当である。

◆判決本文
原審はこちら

◆令和3(ワ)26704

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令和2(ワ)7918  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和5年12月14日  大阪地方裁判所

被告は、ロゴ化された商標「Robot Shop」を用いてオンライン販売をしていました。商標「Robot Shop」(標準文字)の商標権者が、侵害訴訟を提起しました。裁判所は、差止と約1500万円の損害賠償を認めました。争点は、被告の行為は役務「ロボットの提示」か、26条該当性、禁反言などです。判決文の最後に被告標章、原告商標などが掲載されています。

証拠(乙1〜3)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件商標の出願に当 たり、「第7類 工業用ロボット、娯楽用ロボット、研究用ロボット、その他ロボッ ト」、「第28類 ロボットおもちゃ並びにその部品」等、「第35類 工業用ロ ボットの小売」等を指定商品及び指定役務としていたが、特許庁から、本件商標は、 「ロボットの小売店」程の意味合いを容易に認識させるものであるところ、ロボッ トの販売及び修理等を取り扱う業界において、「Robot Shop」及び「ロ ボットショップ」の文字が、ロボットを取扱商品とする小売店であることを示す語 として一般的に使用されている実情があることから、本件商標を第35類の工業用 ロボットの小売等の指定役務に使用することは、商標法3条1項3号に該当するこ と等を理由とする拒絶理由通知書の送付を受け、前記商品及び役務を指定商品等か ら除外して、本件商標の登録を受けたことが認められる。
被告は、被告各サイトにおいて、被告販売商品を販売しているところ、このよう な本件商標の出願経過に照らすと、原告が、被告販売商品のうちロボットと同一又 は類似するものに対して本件商標権の侵害を主張することは、禁反言の原則(民法 1条2項)により許されないと解するのが相当である。
(2) ロボットの字義は、「複雑精巧な装置によって人間のように動く自動人形。 一般に、目的とする操作・作業を自動的に行うことのできる機械又は装置」(広辞 苑第七版)であるほか、証拠(甲24、25、乙31)及び弁論の全趣旨によれば、 日本産業規格(JIS規格)は、ロボットについて、二つ以上の軸についてプログ ラムによって動作し、ある程度の自律性をもち、環境内で動作をして所期の作業を 実行する運動機構と定義し、産業用ロボットについて、産業オートメーション用途\nに用いるため、位置が固定又は移動し、3軸以上がプログラム可能で、自動制御さ\nれ、再プログラム可能な多用途マニピュレータ(互いに連結され相対的に回転又は\n直進運動する一連の部材で構成され、対象物をつかみ、動かすことを目的とした機\n械)と定義していることが認められる。これらの字義等に照らすと、所定の目的の ために自律性をもって動作等をする機械又は装置は、少なくともロボットに類似す るものであるといえる。
別紙「被告商品の指定商品該当性」の「被告サイトにおける説明」欄によれば、 非類似商品を除く被告商品のうち、「被告商品」欄の「2.無人機・ドローン」の 「(1)無人機・ドローンキット/ARF/RTF」、「(2)完成品(RTF)/半完 成品(ARF)」、「(3)無人機・ドローン 完成品(RTF)」、「(4)小型/超小 型無人機」、「(6)Vテール」、「(7)クワッドコプター」、「(8)ヘキサコプター/ オクタコプター」及び「(9)飛行機」(以下、これらを「ロボット類似品」と総称す る。)は、所定の目的のために自律飛行が可能なものが含まれるものと認められ、\n少なくともロボットに類似するものといえる。一方、ロボット類似品を除くその余の被告商品は、いずれもロボット製作に使用する部品や汎用的な部品、製作機器等であって、ロボットに類似するとはいえない。
(3) 以上から、原告が、ロボット類似品に対して本件商標権の侵害を主張することは、禁反言の原則により許されない。

◆判決本文

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令和3(ワ)26704  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和5年7月26日  東京地方裁判所

 DVDのケースの「九鬼神流」などの記載は、商標的使用ではないと判断されました。

請求原因イ、ウ及び抗弁 (商標的使用)について
ア 甲18、34〜37によれば、本件大会ビデオ・DVDのケースの表紙・\n裏表紙、本件大会ビデオ・DVDの映像におけるテロップ、本件雑誌に掲載\nされた本件大会ビデオの広告、各種ウェブサイト上の店舗における商品であ る本件大会DVDのケースの表紙の画像やその説明において、「九鬼神流」、\n「九鬼神」、「高木揚心流」との記載があることが認められる。 もっとも、本件大会ビデオ・DVDのケースの表紙・裏表\紙における上記 「九鬼神流」等の記載の態様は前記1 ア 、 のとおりであり、本件大会 ビデオ・DVDの映像におけるテロップにおける「九鬼神流」等の記載の態 様は同 のとおりであり、本件雑誌に掲載された本件大会ビデオの広告にお ける上記「九鬼神流」等の記載の態様は同 のとおりである。「月刊 秘伝 WEB SHOP」における上記「九鬼神流」等の記載の態様は同 のとお りであり、甲34〜37によれば、各種ウェブサイト上の店舗における商品 である本件大会DVDの画像は前記1 ア の本件大会DVDのケースの 表紙のものであり、また、その説明文は、上記「月刊 秘伝 WEB SH OP」におけるものと同様のものであったと認められる。 そうすると、前記1と同様の理由により、それらの「九鬼神流」、「九鬼神」、 「高木揚心流」との表示は、関係する各記載やその使用態様から、日本武道\n国際連盟が主催した本件大会における演武を収録した本件大会ビデオ・DV Dに収録されている対象に関する説明をするものであり、本件大会ビデオ・ DVDの出所を示すものとはいえないから、これらの表示は需要者が何人か\nの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用され ていないものといえる。

◆判決本文

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令和5(ネ)10044  商標権に基づく差止請求権不存在確認請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和5年11月1日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

破産管財人が提起した差止請求不存在確認訴訟の控訴審です。破産会社は被控訴人(1審被告)から通常使用権を有していましたが、契約は解除されてました。1審は、差止請求権有りと判断していました。知財高裁も同じ判断です。争点は、商標法上の真正品であるので権利濫用となるか否かです。

本件使用許諾契約は既に効力を失っており、在庫商品について例外的に本件商標の使用が許諾された期間も経過しているから、本件使用許諾契約が有効である間に製造され本件商標が付された商品であっても、これを販売することは、前記1のとおり、商標法2条3項2号の「商品に標章を付したものを譲渡し」たとして「使用」に当たり、本件使用許諾契約及び本件解約合意に違反するものである。
上記事実によると、破産会社は本件在庫商品を販売できる期間を自ら合意していながら、その期間内に本件在庫商品を販売せずに、販売可能な期間を徒過したものであり、控訴人はその地位を承継したものであるから、控訴人が主張する各事実をもって、信義則違反又は権利濫用に当たるものとはいえない。\n

◆判決本文

原審はこちら。

◆令和4(ワ)18610

しかし、商標法31条2項は、「通常使用権者は、設定行為で定めた範囲内 において、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を有す る。」と規定しており、通常使用権の範囲、期間、条件等は使用許諾契約によ り定められることになるが、前記1のとおり、本件使用許諾契約は既に効力を 失っており、在庫商品について例外的に本件商標の使用が許諾された期間も既 に経過しているから、本件使用許諾契約が有効である間に本件商標が付された 商品であっても、今後、これを販売することは、本件使用許諾契約及び本件解 約合意に違反するものである。そうすると、現時点において、通常使用権者で あった破産会社の地位を承継した原告が、商標権者である被告に対し、本件商 標を付した本件在庫商品を販売することは実質的違法性を欠くなどと主張し得 ないことは明らかである。
また、商標法は、商標を使用する者の業務上の信用及び需要者の利益を確保 することを目的とするところ(商標法1条参照)、需要者である一般消費者は、 登録商標が付された商品を商標権者から直接購入する場合ではなくとも、商標 権者の許諾に基づいて登録商標が付された商品を購入しようとする際には、商 標権者による技術指導や品質検査等を前提とする商品であると理解し、商標権 者が登録商標を付して流通に置いた正規の流通経路によった商品と出所及び品 質が同一の商品を購入することができる旨信頼するのが通常であり、その信頼 を裏切らないことにより、商標権者の業務上の信用が確保されるというべきで ある。ところが、前記1のとおり、本件商標を付した本件在庫商品が市場に出 回ることは、商標権者である被告の許諾がないことから、正規の流通経路によ らないものであるといえるし、本件商標を使用するに当たっての遵守事項を定 めた本件使用許諾契約が解約されたことにより、破産会社又は原告がこれに従 う法的根拠が失われ、被告は本件在庫商品の品質管理を行い得る立場にないこ とになる。そうすると、原告が本件商標を付した本件在庫商品を販売すること は、本件商標の出所表示機能\及び品質保証機能を害するものといえる。
さらに、平成15年最判は、商標権者から商標の使用を許諾された者が使用 許諾契約で定める条件に違反して当該商標を付した商品を製造したところ、別 の業者が当該商品を海外で仕入れて日本に輸入する行為、いわゆる並行輸入の 違法性が争われた事件に関する判断であるのに対して、本件は、かつて商標の 使用を許諾されていた者自身の行為の違法性が問われているから、事案を異に する。原告が指摘する他の裁判例についても、同様である。
したがって、原告が本件商標を付した本件在庫商品を販売することについて、 商標権侵害の実質的違法性を欠くとはいえない。

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令和3(ワ)33526  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年12月22日  東京地方裁判所

被告は、標章「バレナイ二重」を被告商品「二重瞼形成用化粧品」包装の前面中央部に大きな文字で表示していました。登録商標「バレないふたえ」を保有していた原告は、商標権侵害と主張しました。東京地裁47部は、「何人かの業務に係る商品…であることを認識することができる態様により使用」ではないとして、商標権の効力が及ばない(商26条1項6号該当)と判断しました。 本件商標はこれです。

◆登録5607340
本件の対象にはなっていませんが、少し表記が異なる「バレない\ふたえ」という別商標もあります。\n

◆登録5648844


1 争点 2-3(商標法 26 条 1 項 6 号該当性)について
事案に鑑み、まず、争点 2-3(商標法 26 条 1 項 6 号該当性)について検討する。
(1) 証拠(掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 「ばれない」、「バレない」、「バレナイ」の用例等
・・・
(イ) インターネット検索の結果によれば、二重瞼を形成する美容施術や二重瞼形 成用化粧品等の宣伝広告として、「作った二重だなんてバレない」、「バレにくい二 重」、「バレない自然な二重まぶたに!?」、「絶対バレない!自然な二重まぶたの作 り方」、「バレないコツ」、「本気でバレない二重の作り方」、「バレないふたえまぶた」「バレない・腫れない二重整形」といった表現が使用されていることが認められる\n(甲 16、乙 2〜5)。また、「【専門家監修】アイプチのおすすめ人気ランキング 選 【学生向けやバレないものも!】」と題して二重瞼形成用化粧品等をランキング形 式で紹介するウェブページ(丙 3)においても、「アイプチでは周りの人にバレてし まうのが心配な方も多いはずです。」、「使っていることがバレないようにしたいで すよね!バレにくさを重視するなら、ファイバーや皮膜式のアイプチがおすすめで す。」といった記載がされている。さらに、原告商品及び被告商品以外の二重瞼整形 用化粧品等において、商品の説明として、「バレない整形級ふたえ」(丙 1-1)、「バレない!テカらない!」(丙 1-2・3)、「目をつぶってもバレない!」(丙 1-4)、「閉じてもバレにくい!」(丙 1-5)、「極細繊維ファイバーでバレないふたえ成形」(丙 1-6)、「バレない!!整形メイク」(丙 1-7)といった表現が見受けられる。加えて、二重瞼形成用化粧品等以外にも、鼻筋整形用の化粧品の説明として「バレない!カンタ\nン!自然な仕上がり!」との表現が(丙 2-1)、つけ爪(ネイルチップ)の説明とし て「バレないつけ爪」との表現が(丙 2-2・3)、頬の美容整形施術の説明として「バ レないリフト」との表現(丙 2-4)が、それぞれ使用されていることが認められる。
イ 被告商品における被告標章の使用態様等
証拠(甲 5)によれば、被告商品 1 の包装には、その表面の上部半分程度を占め\nる大きさの黒色ハート形の図形が配置され、その図形内の最上段には下線付きの「長 時間キープ」の文字が、中段には被告標章 1 が、いずれも包装のベース色であるピ ンク色で表示されている。また、その最下段には緑色の帯状の図形上に黒色で「リ\nキッドタイプ」の文字が記載されると共に、当該帯状の図形の左端に接着した黒色 丸形の図形内に緑色で「細筆」の文字及び筆先の形状のイラストが記載されている。 さらに、同包装の下部左上側には、上下二段からなる「Eye Catching」、「Beauty」(なお、「Beauty」の「t」は、2 画の交点の左側及び下側が右側及び上側に比して長い十\n文字状にデザインされている。)との記載が、下部左中央には同じく上下二段からな る「FUTAE」、「LIQUID」との記載が、下部右側には「♯目元サギメイク」との記載 が、それぞれ置かれている。加えて、下部のこれらの記載の間に存在する透明な窓 部からは被告商品 1 の本体を視認し得るところ、これには、下部左上側と同様の構\n成からなる「Eye Catching」、「Beauty」との表示が存在する(ただし、全ての被告商\n品 1 において上記窓部から上記表示が看取し得ることを認めるに足りる証拠はな\nい。)。他方、裏面には、表面と同様の構\成からなる「Eye Catching」、「Beauty」の記載と、一連一体に並べられた「FUTAE LIQUID」の記載のほか、「アイキャッチング ビューティ ふたえリキッド(二重まぶた化粧品)」の記載等があるが、被告標章 1 の記載はない。
イ 上記(1)イ認定に係る被告商品の包装の表面及び裏面の各記載等を総合的に\n考慮すると、一般消費者からみて、被告商品の名称は、「Eye Catching Beauty FUTAE LIQUID」及び「アイキャッチングビューティ ふたえリキッド」(被告商品 1)、「Eye Catching Beauty FUTAE MESH TAPE」及び「アイキャッチングビューティ ふたえ メッシュテープ」(被告商品 2)と認識されることがうかがわれる。
他方、被告標章については、上記(1)認定を踏まえると、以下のとおり理解される。 すなわち、「ばれない」、「バレない」、「バレナイ」は、その表記いかんにかかわらず、秘密等が露顕しないという意味である。また、被告商品が属する二重瞼形成用化粧\n品等や二重瞼形成のための美容施術の宣伝広告においては、化粧品や美容施術によ り一重瞼を二重瞼に整えたことが他人に容易には露顕しないという当該化粧品ない し美容施術の効能や役務の内容の説明又はそのような効能\等をうたうキャッチフレ ーズと理解される表現として、「ばれない」等に「二重」を組み合わせたものが多数\nみられる。また、二重瞼形成用化粧品等以外の化粧品や美容整形施術等美容関係の 商品及び役務においても、「ばれない」等の語が、他人から当該化粧品や当該施術を 使用していることが露顕しないという説明ないしそのような効能等のキャッチフレ\nーズとして少なからず用いられていることがうかがわれる。これは、美容関係の商 品等の需要者の多くが、当該商品等を使用して人工的・意図的にその状態を形成し ていることが他人には容易に明らかにならず、当該商品等を使用した結果が自然の 状態として見られることを欲することを踏まえ、当該商品等の提供者において、そ の欲求にこたえる効果を訴求することを狙ったものと理解される。
「ばれない」等の語が美容関係の商品等においてこのように多く使用されている 実情を踏まえると、二重瞼形成用化粧品等の需要者である一般消費者は、「バレナイ」 に「二重」が組み合わされた被告標章につき、二重瞼を形成していることが他人に 容易に露顕しない化粧品等であるという被告商品の効能等の説明ないしそのような\n効能等のキャッチフレーズと認識・理解するのがむしろ通常といえる。被告商品の\n包装において、被告標章は、「長時間キープ」、「リキッドタイプ」(被告商品 1)又は「テープタイプ」(被告商品 2)という文字等の記載に挟まれるように配置されてい ること、被告標章のほかに被告商品の名称と認識し得る記載が存在することなどを 考慮すると、なおさらである。このことは、被告標章をなす「二重」の「二」の文 字の下部が、その左端に二条の跳ねがあるかのように図案化されていることを考慮 しても異ならない。
以上より、被告標章は、被告商品の需要者である一般消費者にとって、被告商品 の効能等の説明ないしキャッチフレーズとして理解されるものであり、自他商品識\n別又は出所識別標識としての機能を有するものとは認められない。\n

◆判決本文

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令和3(ワ)10991  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和5年9月29日  東京地方裁判所

 Tシャツに、本件商標の図形を胸元に大きく表示することが商標的使用となるかが1つの争点でした。東京地裁(29部)は、該当すると認め、差止および約90万円の損害賠償を認めました。判決文の最後に、本件商標と被告製品の写真があります。

(1) 証拠(甲10、12の2、12の4、12の5、12の6、13の3、1 4の2、14の3)によれば、原告は、原告ブランドの店舗開店当初から、 原告商標を、同店舗のポスター、看板、Tシャツ、パーカー、アクセサリー 等に印刷して使用していたこと、令和元年頃には、横浜、東京、千葉、名古 屋等に常設又は臨時店舗を開設し、同店舗及びオンラインショップで、原告 商標が印刷された商品を販売していたことが認められる。 また、前提事実(4)イのとおり、原告は、他のアパレル会社等とコラボレ ーションをし、原告商標を改変したり、同イラストの下部又は右下部にコラ ボレーションをしたアパレル会社のブランド名を記載したりしたものをTシ ャツ等の胸元に印刷して、販売することがあった。
これらの事実に照らせば、原告商標は、これを付した製品の出所を示す ものとして、一定の知名度を有していたと認められる。 そして、被告は、前記4のとおり、原告商標と誤認混同のおそれがある 被告標章を、前提事実(5)のとおり、被告製品に付して使用していたのである から、被告標章の使用は、自他識別機能を果たす態様での使用であるといえ、\n商標的使用に該当するというべきである。
(2) これに対し、被告は、被告製品は被告標章が胸部の中央に大きく印刷され たものであるところ、需要者は、通常、Tシャツの首後ろ部に印刷された被 告シリーズの名称や、被告製品販売時に付された紙製のタグにより被告製品 の出所を認識するから、被告標章により出所を認識するものではなく、被告 標章は自他商品識別機能を果たさない態様で使用されていたと主張する。\nしかし、商標がTシャツの首後ろ部の表示やタグだけではなく、胸元に\n大きく付された商品も多く存在すると認められること(当裁判所に顕著な事 実)に照らすと、需要者がTシャツの首後ろ部に印刷された名称や紙製のタ グにより被告製品の出所を認識するとの事実を直ちに認めることはできない というべきであり、本件全証拠によっても、被告主張の事実を認めることは できない。

◆判決本文

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令和3(ワ)6974  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年9月12日  大阪地方裁判所

 情報サイトによける標章の使用は、商標的使用ではない(商26条1項6号)として、商標権の効力が及ばないと判断されました。

(1) 本件サービスサイトの性質及び本件ウェブページの位置づけについて 後掲各証拠及び弁論の全趣旨に前提事実を総合すると、次の各事実を認めること ができる。
ア 被告は、平成30年、葬儀に関する困りごとの解決へ向け、葬儀サービスを 探している人々と葬儀社をマッチングする事業として葬儀社紹介サービスを提供す る本件サービスサイトの運営を開始した(甲3、4)。 本件サービスサイトは、被告との提携の有無にかかわらず、全国の葬儀社の情報 を掲載することとしており、被告と提携していない葬儀社のページには、葬儀社の 電話番号やウェブサイトのリンクを記載し、被告の提供するサービスを介さず直接 連絡できる設計としており、本サービスサイトのユーザー(葬儀希望者)が、提携 していない葬儀社を指定して被告に問合せをした場合は、当該葬儀社の電話番号を 案内する方針としている。なお、提携先の葬儀社については、見積り取得の手配や 代行を行っている(甲10、20)。
イ 本件サービスサイトにおいて、ユーザーが一定の地域を選択すると、被告が 把握するその地域に所在の葬儀社や斎場が一覧表示され(その他、費用・形式別の\nプランの紹介、葬儀の依頼や相談、一括見積を行うサイトへの遷移ボタン、当該地 域の葬儀に関するQ&Aや事例なども表示される)、その一覧の中から、個別の葬\n儀社等を選択すると、当該個別の葬儀社等に関する被告が把握した情報を提供する ページが表示され、本件葬儀場(セレモニートーリン)を選択した場合、本件ウェ\nブページが表示される(甲22の1・2、乙1)。\n
ウ 本件ウェブページは、その固定ヘッダーに「安心葬儀 葬儀のご依頼/ご相 談 一括見積なら|安心葬儀」「安心葬儀/葬儀相談コールセンター(無料)通話 無料<省略>」といった記載があるほか、ページの上部に「安心葬儀TOP」「葬 儀の種類」「宗教・宗派別葬儀」「葬儀の知識」という記載(リンク)や「安心葬儀 TOP>大阪府の葬儀社/斎場一覧>大阪市<以下略>>セレモニートーリン」と いう各ウェブページの階層を示す記載があり、また、「セレモニートーリン」と太 字で書かれた下部には、本件葬儀場の外観を撮影した写真が掲載され、「セレモニー トーリンとは」「セレモニートーリンの特徴」「セレモニートーリンの住所・地図・ アクセス」「セレモニートーリンの情報」「セレモニートーリンの口コミ・レビュー」 「セレモニートーリンの葬儀式場・休憩室情報」の各欄にはそれぞれ見出しに対応 した情報が記載されているほか、「当サイトは「セレモニートーリン」と提携して おりません。掲載している情報は、葬儀社様の公式サイトの情報など、一般に公開 されている情報をもとに、当サイトの方で収集、編集を加えまとめたものになりま す(中略)。斎場に関する詳細・最新の情報につきましては公式の Web サイトや電 話で直接ご確認ください。」との記載がある。 これより下部には、「セレモニートーリンの近くにある他の斎場」「大阪府で経 験・実績の多い葬儀社」「大阪府の家族葬の葬儀事例」の欄には、それぞれ複数の 葬儀社や葬儀事例が記載されており、さらに、「葬儀社/斎場を地域を指定して検 索する」「葬儀社/斎場を大阪府の市町村から選ぶ」の欄においては、それぞれ選 択した対象エリアや地域に所在する葬儀社等を検索することが可能である(甲22\nの1・2。なお、以上の記載内容は、口頭弁論終結時のものである。)。
エ 検索サイトYahoo!において、「セレモニートーリン」とキーワード検 索すると、検索結果を表示するウェブページにおいて、広告であることが明記され\nた他の葬儀社等のリンクが表示された後、広告表\示のないものとしては一番目に原 告のウェブサイトへのリンクが「公式/セレモニートーリン・大阪市<以下略>、 東大阪のお葬式」等の見出しのもとに何件か表示される。それに引き続き、被告の\n本件ウェブページについての案内(その詳細は、「https<以下略>>大阪府の葬儀 社/斎場一覧>大阪市<以下略>」とドメイン部分等が小さく表示され、その下に\n見出し(リンク)部分として、「セレモニートーリン(大阪府)の斎場詳細|安心 葬儀」が表示され、「評価:4.3 1件のレビュー」との情報及び本件ウェブペー ジの説明文として、「セレモニートーリン(大阪府大阪市<以下略>)の口コミ、 写真、施設情報、アクセス・地図など詳しい情報をご紹介します。【安心葬儀】は お客様のご予算やご要望に合わせて、...」が表示され、「セレモニートーリンの特\n徴・セレモニートーリンの住所・地図...」との表示もされる。)が表\示される。な お、その下には、詳細は不明であるが、被告以外の他のサービスサイトと思われる サイトへのリンクも表示される(甲21の1・2)。\n
(2) 前記認定によると、本件サービスサイトは、その構成において、需要者であ\nる葬儀希望者に対し、その条件に見合った葬儀社等の情報提供を行い、また希望者 には葬儀の依頼や相談、一括見積を行うことなどを通して、葬儀希望者と葬儀社等 とのマッチング支援を行うサービス(被告役務)を提供するものであることが容易 に看取できる。
そして、本件ウェブページは、これを単独でみても、そのドメインや本件ウェブ ページのタイトル部分や末尾の「安心葬儀」等の表示、競合し得る近隣の斎場等の\n情報も表示されることに加え、本件葬儀場の情報については、ホールの外観、特徴\nや所在地、アクセス方法、設備情報等の客観的な情報が記載されているにとどまり、 これを超えて本件葬儀場の利用を誘引するような記載はみられないこと等の事情か らすると、本件ウェブページに接した需要者は、「セレモニートーリン」を、葬儀 場を紹介するという本件サービスサイトにおいて紹介される一葬儀社(場)として 認識するものであり、原告が本件葬儀場において提供する商品ないし役務に関し、 被告がその主体であると認識することはないものというべきである(本件ウェブペー ジを含め、本件サービスサイトの運営者が原告であると認識することがないことも 同様である。)。
さらに、原告が問題とする本件ウェブページの html ファイル中のタイトルタグ及 び記述メタタグに記載された内容は、検索サイトYahoo!において「セレモニー トーリン」をキーワードとして検索した際の検索結果において基本的に各タグに記 載されたとおり表示されると認めることができるが、その内容は、いずれも本件サー\nビスサイトの名称が明記された見出し及び説明文と相まって、原告の運営するウェ ブサイトとは異なることが容易に分かるものと評価できる上、一般に、検索サイト の利用者、とりわけ現に葬儀の依頼を検討するような需要者は、検索結果だけを参 照するのではなく、検索結果の見出しに貼られたリンクを辿って目的の情報に到達\nするのが通常であると考えられるところ、需要者がそのように本件ウェブページに 遷移した場合には、前記のとおり、被告が運営する本件サービスサイトの一部とし て本件ウェブページを理解するのであって、やはり、被告標章を本件ウェブページ の各タグ内で使用することによって、原告と被告の提供する商品または役務に関し 出所の混同が生じることはないというべきである。 したがって、被告による被告標章の使用は、商標法26条1項6号の規定により、 本件商標権の効力が及ばないというべきである。
(3) 原告は、被告は、本件ウェブページの見出しやその説明文において被告標章 を表示させ、需要者をして本件ウェブページにアクセスするよう誘引し、本件ウェ\nブページにおいて本件葬儀場の建物の写真や情報を表示させることで、需要者をし\nて、本件ウェブページが原告(セレモニートーリン)のウェブページであると誤認 させ、出所の混同を生じさせている旨を主張する。 しかし、本件ウェブページの見出し、説明文及び本件ウェブページ自体の表示内\n容を踏まえると、見出し及び説明文に被告標章の表示があるからといって、出所の\n混同を生じさせることにはならないことは前述したとおりである。原告の主張は、 要するに、原告を紹介する本件ウェブページに被告の電話番号等が表示されること\nにより、原告が、その潜在的需要を失う不利益を被っていることをいうものと解さ れるが、そのような結果が仮に生じているとしても、前記認定に係る本件サービス サイトの性質及び本件ウェブページの記載(なお、反対にこれを参照して原告に依 頼する需要者も在り得ると考えられる。)からすると、自由競争の範囲内のものと いうべきである。原告の前記主張は採用の限りでない。

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令和4(ネ)10010 商標権侵害行為差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和4年8月22日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

商標権者は、商標「小野派一刀流」指定役務41類「剣道を主とする古武道の教授」を保有しています。被控訴人(1審被告)は「小野派一刀流剣術」を使用していました。1審(は、商標的使用には当たらないと判断しました。また不競法についても、「商品等表示」の「使用」に当たらず、控訴人の周知な商品等表\示を認めることはできないと判断しました。知財高裁は原審維持しました。

ア 控訴人は、日本の伝統芸能や古武道における流派の意義、そして「小野派一\n刀流」の流派名の意義等を主張して、「小野派一刀流」は、流派の教え・系統を指す とともに、宗家を長とし門人によって構成される本流流派を継承する集団(団体)を\n指し、両者は密接不可分の関係にあるから、流派名としての「小野派一刀流」の使用 は、同時に集団(団体)としての「小野派一刀流」を想起させるもので、需要者が提 供される役務の出所を認識し得るような態様での使用に当たる旨を主張する。 しかし、本件全証拠によっても、日本の伝統芸能一般又はそのうち古武道一般に\nおいて、一つの流派について一つの集団(団体)しか存在しないという事情は認めら れない。この点、例えば、古武道振興会の「加盟流派」のページ(本件ウェブページ。 甲3の1)には、「荒木流拳法(K)」(代表はK)及び「荒木流拳法(L)」(代\n表はL)として、「荒木流拳法」という流派名を冠する加盟流派が代表\を異にして二 つ掲載されており、同様に「神道夢想流杖術」、「夢想神伝流居合術」及び「柳生心 眼流兵法」についても、同一の流派名を冠する加盟流派が代表を異にして複数掲載\nされている。また、古武道協会のウェブサイトにおける「各流派の紹介」のページ (甲33の1)にも、「天神真揚流柔術(新座市)」と「天神真揚流柔術(川越市)」 とが掲載されている。
そうすると、控訴人の主張するように、流派名と当該流派を継承する集団(団体) との間に密接な関係があることを前提としても、当該密接な関係により流派名が想 起させる集団(団体)が、直ちに特定の役務の提供等の一主体となるような特定の団 体であるということはできず、それは、当該流派を継承する複数の団体を含み得る より抽象的な集団にすぎないとみるのが相当である。 そして、本件全証拠をもってしても、「小野派一刀流」が古武道の流派の名称であ るということを前提にしてもなお、それが特定の役務の提供等の一主体となるよう な当該流派を継承する特定の団体を指すものであると認めるに足りず、「小野派一 刀流」について上記と異なって解すべき事情は認められない。 したがって、流派名としての「小野派一刀流」の使用が同時に集団(団体)として の「小野派一刀流」を想起させるものであるとの控訴人の前記主張は、訂正して引用 した原判決の第4の1における、本件標章使用が被控訴人らによる商標的使用であ るとは認められないという判断を左右するものではないというべきである。
イ 控訴人は、本件標章使用1)について、本件常識(小野派一刀流の教え・系統と これを継承してきた集団(団体)とが密接不可分であり、本流が宗家を長とし門人に よって構成される集団(団体)において継承されてきたこと、中でも正統は広範かつ\n強大な権限を有する宗家一人に継承されること)のほか、「小野派一刀流剣術」の名 称と共に「代表」等として被控訴人Y1が掲載されているという態様を特に指摘し\nて、本件標章使用1)が商標的使用に当たる旨を主張する。 しかし、訂正して引用した原判決の第4の1(2)(本件標章使用1)について)で認 定説示したとおり、「加盟流派」について掲載した本件ウェブページの記載の形式や 内容からすると、そこにおける「小野派一刀流剣術」の名称やその「代表」等の記載\nに接した者においては、その名称は古武道振興会において加盟を認められている古 武道の流派の一つの名称であって、併記された代表者の氏名及び連絡先もあくまで\nそのような流派の代表者及び連絡先として古武道振興会が把握しているものの記載\nであると理解するとみるのが合理的である(なお、前記アで指摘したとおり、本件 ウェブページには、同一の流派名を冠する加盟流派が代表を異にして複数掲載され\nている例があるところ、「小野派一刀流剣術」については代表を異にする同名とみら\nれる加盟流派が他に記載されていないことから、その記載に接した者においては、 加盟流派としては単一のものと理解することにはなるが、他方で、上記の例がある ことが同時に容易に看取できることからすると、「小野派一刀流剣術」に係る「代表」\n等の記載が、古武道振興会の加盟流派、換言すると古武道振興会の認識を離れて、客 観的に、流派としての「小野派一刀流剣術」の唯一の宗家や当該宗家から代表と称す\nることを許諾された者を示すものであると直ちに認識するとまではいえない。)。 また、訂正して引用した原判決の第4の1(1)(認定事実)からすると、本件ウェ ブページの記載に当たり、古武道振興会は、自律的に定めた「日本古武道振興会規 約」における会員に関する定めに基づき、会員資格や代表会員の資格の受継につい\nて判断しているもので、Bの死去後の受継の問題についても、平成30年度第1回 常任理事会において、自律的に判断がされたものとみられる(なお、その判断の前提 とされた事実関係について、本件証拠に照らし、明白な誤認があったというべき事 情や被控訴人らから古武道振興会を欺罔するような説明がされたといった事情も認\nめられない。)。そのような判断に基づいてされたとみられる本件ウェブページにお ける「小野派一刀流剣術」に係る記載(なお、古武道振興会規約は、古武道振興会 のウェブサイトにも掲載されていることが窺われる(甲3の1〜3)。)をもって、 当該流派に係る特定の団体が提供する何らかの役務の出所を認識し得るような態様 で被控訴人らが表示をしたものと認めることもできない。\n
したがって、「小野派一刀流剣術」の名称と共に「代表」等として被控訴人Y1が\n掲載されているという態様を特に指摘しての控訴人の前記主張は、訂正して引用し た原判決の第4の1(2)(本件標章使用1)について)の判断に影響を与えるものでは ない。控訴人が主張する本件常識も、前記アで説示した点に照らし、同判断を左右し ない。
ウ 控訴人は、本件標章使用2)について、「小野派一刀流剣術(G) Y1(東京 都)」との記載が太字でされていることや演武者名とは別に記載されていること、並 んで記載された流派について記載されている者が当該流派の宗家であることが需要 者に周知であること、本件常識や本件標章使用2)に係る武道大会等は古武道振興会 が主催等するものであること等を特に指摘して、本件標章使用2)が商標的使用に当 たる旨を主張するが、本件標章使用2)が被控訴人らによる被告商標の商標的使用と 認められないことは、訂正して引用した原判決の第4の1(3)(本件標章使用2)につ いて)で認定説示したとおりである。
前記アで説示した点に照らし、本件常識は、本件標章使用2)が被控訴人らによる 被告商標の商標的使用と認められないとの判断を左右するものではない。 また、訂正して引用した原判決の第4の1(1)(認定事実)のとおり、本件標章使 用2)がされた武道大会等は古武道振興会が主催等したものであること、古武道振興 会が主催する大会において使用されるパンフレットやめくりは、本件ウェブページ に掲載されている加盟流派の情報と同様に、古武道振興会に既に登録されている情 報に基づき、古武道振興会が主体となって作成、掲示、配布等するものであること (これは、古武道振興会が主催以外の態様で関与した武道大会等についても同様と 推認され、この推認を覆す事情はない。)や、本件標章使用2)に係るパンフレット の記載内容等を踏まえると、前記イで説示したのと同様、控訴人が指摘するその余 の点も、本件標章使用2)が被控訴人らによる被告商標の商標的使用と認められない との判断に影響を与えるものではないというべきである(なお、控訴人が指摘する 点のうち、本件標章使用2)に係る武道大会等は古武道振興会が主催等するものであ るという点は、むしろ、同判断の根拠となり得るものといえる。この点、本件全証拠 をもってしても、古武道振興会が、古武道の各流派の正当性について有権的に判断 する団体であるといった事情や、古武道の流派が加盟し得る唯一の団体であるとい った事情は見受けられない。控訴人の主張は、ひっきょう、被控訴人Y1について受 継を認めたという古武道振興会の判断を論難するものにすぎないというべきであ る。)。

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令和4(ネ)10027等  損害賠償等請求控訴事件,同附帯控訴事件  その他  民事訴訟 令和4年8月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 情報提供サイトにおけるメタタグの使用は、商標的使用ではない(商26条1項6号)と判断されました。平成30(ネ)10064等は、メタタグの使用も不競法における商品等表示に該当するとしましたが、今回のように情報提供サイトにおける使用ではありませんでした。被告は、「葬儀」サービスは行っていませんが、「葬儀に関する情報の提供」には該当しそうです。なお、本事件の原告は本人訴訟です。\n

 前記認定によると、本件サービスサイトは、その構成において、需要者であ\nる葬儀希望者に対し、その条件に見合った葬儀社等の情報提供を行い、また希望者 には葬儀の依頼や相談、一括見積を行うことなどを通して、葬儀希望者と葬儀社等 とのマッチング支援を行うサービス(被告役務)を提供するものであることが容易 に看取できる。 そして、本件ウェブページは、これを単独でみても、そのドメインや本件ウェブ ページのタイトル部分や末尾の「安心葬儀」等の表示、競合し得る近隣の斎場等の\n情報も表示されることに加え、本件葬儀場の情報については、ホールの外観、特徴\nや所在地、アクセス方法、設備情報等の客観的な情報が記載されているにとどまり、 これを超えて本件葬儀場の利用を誘引するような記載はみられないこと等の事情か らすると、本件ウェブページに接した需要者は、「セレモニートーリン」を、葬儀 場を紹介するという本件サービスサイトにおいて紹介される一葬儀社(場)として 認識するものであり、原告が本件葬儀場において提供する商品ないし役務に関し、 被告がその主体であると認識することはないものというべきである(本件ウェブペー ジを含め、本件サービスサイトの運営者が原告であると認識することがないことも 同様である。)。
さらに、原告が問題とする本件ウェブページの html ファイル中のタイトルタグ及 び記述メタタグに記載された内容は、検索サイトYahoo!において「セレモニー トーリン」をキーワードとして検索した際の検索結果において基本的に各タグに記 載されたとおり表示されると認めることができるが、その内容は、いずれも本件サー\nビスサイトの名称が明記された見出し及び説明文と相まって、原告の運営するウェ ブサイトとは異なることが容易に分かるものと評価できる上、一般に、検索サイト の利用者、とりわけ現に葬儀の依頼を検討するような需要者は、検索結果だけを参 照するのではなく、検索結果の見出しに貼られたリンクを辿って目的の情報に到達\nするのが通常であると考えられるところ、需要者がそのように本件ウェブページに 遷移した場合には、前記のとおり、被告が運営する本件サービスサイトの一部とし て本件ウェブページを理解するのであって、やはり、被告標章を本件ウェブページ の各タグ内で使用することによって、原告と被告の提供する商品または役務に関し 出所の混同が生じることはないというべきである。 したがって、被告による被告標章の使用は、商標法26条1項6号の規定により、 本件商標権の効力が及ばないというべきである。
(3) 原告は、被告は、本件ウェブページの見出しやその説明文において被告標章 を表示させ、需要者をして本件ウェブページにアクセスするよう誘引し、本件ウェ\nブページにおいて本件葬儀場の建物の写真や情報を表示させることで、需要者をし\nて、本件ウェブページが原告(セレモニートーリン)のウェブページであると誤認 させ、出所の混同を生じさせている旨を主張する。 しかし、本件ウェブページの見出し、説明文及び本件ウェブページ自体の表示内\n容を踏まえると、見出し及び説明文に被告標章の表示があるからといって、出所の\n混同を生じさせることにはならないことは前述したとおりである。原告の主張は、 要するに、原告を紹介する本件ウェブページに被告の電話番号等が表示されること\nにより、原告が、その潜在的需要を失う不利益を被っていることをいうものと解さ れるが、そのような結果が仮に生じているとしても、前記認定に係る本件サービス サイトの性質及び本件ウェブページの記載(なお、反対にこれを参照して原告に依 頼する需要者も在り得ると考えられる。)からすると、自由競争の範囲内のものと いうべきである。原告の前記主張は採用の限りでない。  

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平成27(ワ)547  不正競争行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成29年1月19日  大阪地方裁判所

 漏れていたのでアップします。メタタグが商標的使用になるかについて、ディスクリプションメタタグないしタイトルタグは該当、キーワードメタタグについては、該当せずと判断されました。

 被告のウェブサイトの html ファイル上の前記前提事実(4)ウ記載のコードのう ち,「<meta name=″keywords″content=″バイクリフター″>」との記載は,い わゆるキーワードメタタグであり,ユーザーが,ヤフー等の検索サイトにおいて, 検索ワードとして「バイクリフター」を入力して検索を実行した際に,被告のウェ ブサイトを検索結果としてヒットさせて,上記(1)のディスクリプションメタタグ 及びキーワードタグの内容を検索結果画面に表示させる機能\を有するものであると 認められる。このようにキーワードメタタグは,被告のウェブサイトを検索結果と してヒットさせる機能を有するにすぎず,ブラウザの表\示からソース機能\をクリッ クするなど,需要者が意識的に所定の操作をして初めて視認されるものであり,こ れら操作がない場合には,検索結果の表示画面の被告のウェブサイトの欄にそのキ\nーワードが表示されることはない。(弁論の全趣旨)\n
ところで,商標法は,商標の出所識別機能に基づき,その保護により商標の使用\nをする者の業務上の信用の維持を図ることを目的の一つとしている(商標法1条) ところ,商標による出所識別は,需要者が当該商標を知覚によって認識することを 通じて行われるものである。したがって,その保護・禁止の対象とする商標法2条 3項所定の「使用」も,このような知覚による認識が行われる態様での使用行為を 規定したものと解するのが相当であり,同項8号所定の「商品…に関する広告…を 内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」というのも,同号 の「広告…に標章を付して展示し,若しくは頒布し」と同様に,広告の内容自体に おいてその標章が知覚により認識し得ることを要すると解するのが相当である。 そうすると,本件でのキーワードメタタグにおける原告商標の使用は,表示され\nる検索結果たる被告のウェブサイトの広告の内容自体において,原告商標が知覚に より認識される態様で使用されているものではないから,商標法2条3項8号所定 の使用行為に当たらないというべきである。
これに対し,原告は,インターネットの検索サイトの利用者がサーチエンジンに キーワードとして原告商標を入力した際にサーチエンジンを通じて被告ホームペー ジでのメタタグ表記を視認しているといえることから,被告による原告商標のメタ\nタグ使用は,商標的使用に当たると主張する。しかし,検索サイトにおける検索キ ーワードと検索結果との関係にさまざまな濃淡があることは周知のことであること からすると,検索結果画面に接した需要者において,検索キーワードをもって,検 索結果として表示された各ウェブサイトの広告の内容となっていると認識するとは\n認め難いから,検索キーワードの入力や表示をもって,キーワードメタタグが,被\n告のウェブサイトの広告の内容として知覚により認識される態様で使用されている と認めることはできない。
(3) よって,被告標章1のディスクリプションメタタグないしタイトルタグへの 記載は商標的使用に当たり,侵害行為であると認められるが,原告商標のキーワー ドメタタグへの使用については,これを商標的使用に当たると認めることはできな いから,侵害行為であるとは認められない。

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令和2(ワ)3646  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年11月9日  大阪地方裁判所

 納入された際の原告標章を使用せずに商品販売したことが商標権侵害となるかについて、裁判所は契約の問題であり侵害は成立しないと判断しました。

原告は,原告標章(標準文字)が商標登録され,これに係る公報が発行された後 は,原告標章を使用せず,被告ら標章により本件商品を販売した行為は,登録商標 の出所表示機能\を毀損するものとして,商標権侵害が成立する旨を主張する。
しかしながら,商標権侵害は,指定商品又は指定役務の同一類似の範囲内で,商 標権者以外の者が,登録商標を同一又は類似の商標を使用する場合に成立すること がその基本であり(商標法25条,37条),原告が原告標章を付した本件商標を 被告らに譲渡した際に,原告標章と同一又は類似の商標を使用する競業者が存在し なかったことをもって,本件商標権はその役割を終えたと見ることができるのであ り,原告から本件商品を譲り受けた被告らが,これを原告標章以外の商品名で販売 することができるかは,商標権の問題ではなく,前記検討したとおり,原告と被告 らとの合意の存否の問題と考えざるを得ない。 したがって,後半期間において,被告フジホームが本件商品を被告ら標章により, また取扱説明書を差し替えて自社のオンラインストアで販売したこと(被告ら行為 2)),あるいは被告サンリビングが,原告より直接入手した本件商品を,被告ら標 章によりダイワに譲渡したことは(被告ら行為3)),いずれも商標権侵害にはあた らないといわざるを得ない。

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令和2(ワ)8061  商標権侵害差止請求  商標権  民事訴訟 令和3年9月27日  大阪地方裁判所

 被告はメルカリの販売サイトにて「♯シャルマントサック」のハッシュタグを使用して、ハンドメイド品の巾着袋を販売していました。 大阪地裁は、「♯シャルマントサック」は商標的使用として、差し止めを認めました。

 被告は,被告標章1につき,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であるこ とを認識することができる態様により使用されていない,すなわち商標的使用がさ れていない旨を主張する。 しかし,前記のとおり,オンラインフリーマーケットサービスであるメルカリに おける具体的な取引状況をも考慮すると,記号部分「#」は,商品等に係る情報の検 索の便に供する目的で,当該記号に引き続く文字列等に関する情報の所在場所であ ることを示す記号として理解される。このため,被告サイトにおける被告標章1の 表示行為は,メルカリ利用者がメルカリに出品される商品等の中から「シャルマン\nトサック」なる商品名ないしブランド名の商品等に係る情報を検索する便に供する ことにより,被告サイトへ当該利用者を誘導し,当該サイトに掲載された商品等の 販売を促進する目的で行われるものといえる。このことは,メルカリにおけるハッ シュタグの利用につき,「より広範囲なメルカリユーザーへ検索ヒットさせること ができる」,「ハッシュタグ機能をメルカリ上で使うと使わないでは,商品閲覧数\nや売り上げに大きく差が出ます」などとされていること(いずれも甲7)からもう かがわれる。
また,被告サイトにおける被告標章1の表示は,メルカリ利用者が検索等を通じ\nて被告サイトの閲覧に至った段階で,当該利用者に認識されるものである。そうす ると,当該利用者にとって,被告標章1の表示は,それが表\示される被告サイト中 に「シャルマントサック」なる商品名ないしブランド名の商品等に関する情報が所 在することを認識することとなる。これには,「被告サイトに掲載されている商品 が「シャルマントサック」なる商品名又はブランド名のものである」との認識も当 然に含まれ得る。
他方,被告サイトにおいては,掲載商品がハンドメイド品であることが示されて いる。また,被告標章1が同じくハッシュタグによりタグ付けされた「ドットバッ グ」等の文字列と並列的に上下に並べられ,かつ,一連のハッシュタグ付き表示の\n末尾に「好きの方にも・・・」などと付されて表示されている。これらの表\示は,掲載 商品が被告自ら製造するものであること,「シャルマントサック」,「ドットバッ グ」等のタグ付けされた文字列により示される商品そのものではなくとも,これに 関心を持つ利用者に推奨される商品であることを示すものとも理解し得る。しかし, これらの表示は,それ自体として被告標章1の表\示により生じ得る「被告サイトに 掲載されている商品が「シャルマントサック」なる商品名又はブランド名である」 との認識を失わせるに足りるものではなく,これと両立し得る。 これらの事情を踏まえると,被告サイトにおける被告標章1の表示は,需要者に\nとって,出所識別標識及び自他商品識別標識としての機能を果たしているものと見\nられる。すなわち,被告標章1は,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であ ることを認識することができる態様による使用すなわち商標的使用がされているも のと認められる。これに反する被告の主張は採用できない。

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平成29(ワ)11462  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和2年7月29日  東京地方裁判所

 スニーカーの側面に付与されている「X」について商標権侵害が認められました。販売時における38条2項損害について、約460万円が認められました。商標的使用も論点となっています。

◆イ号および本件商標


 原告各商標と被告各標章の外観を比較すると,上記のとおり,それぞれ1)英 文字の「X」型十字が左側(反時計回り方向)に傾いた形で組み合わされた2本の帯からなり,2)帯状線の輪郭が鋸歯状であるという点において共通しており,被告 各標章の外観は,原告各商標の外観と,その識別力の強い部分において共通する特 徴を有しているといえる。 他方で,被告各標章は,3)右上から左下に伸びる帯が左上から右下に伸びる帯の 上に重なっており,4)各帯の輪郭線に沿って,その内側にステッチがそれぞれ2本 施されているとの点で原告各商標とは異なる特徴を有しているが,同色の帯の重な りであって,ステッチも輪郭線の近くに施されているものであるから,いずれも一 見して目立つ特徴であるとまではいえない。また,被告各標章の色彩についても, 商品識別力の強い点とはいえない。 被告は,その他に別紙4被告が主張する原告各商標と被告各標章の外観相違点の とおり,原告各商標と被告各標章との間に,中心点から右下及び左下に伸びる部分 の長さの比,2つの帯のなす角度,帯の端部の形状,帯の太さ等において,相違点 があると主張するが,いずれも,上記1),2)の共通点を前提にすれば,需要者に対 して原告各商標と異なる印象を与えるようなものであるとまではいえない。 これらの争点について,被告は,靴という商品の性質や,被告商品の価格帯・販 売場所からすれば,需要者はそのデザインを細部まで入念に検討する等として,「X」 型十字の標章の細部に相違点がある場合には外観上類似性がないと判断されるべきと主張するが,上記に説示した内容に照らせば,この主張は採用することができな\nい。 したがって,被告各標章は,いずれも,原告各商標とその外観において類似する というべきである。
イ 前記(2)及び(3)のとおり,原告各商標と被告各標章は,いずれも特定の称 呼・観念が生じるものではなく,これらが著しく相違するとは認められない。 また,本件証拠上,原告各商標と被告各標章につき,上記の外観の類似性にかか わらず,商品の出所を誤認混同するおそれがないとするような取引の実情等がある とも認められない。被告商品の価格帯・販売場所などの被告の指摘する前記事情に ついて,商品の出所の誤認混同の有無を判断する上で考慮すべき取引の実情として 検討しても,本件について,上記判断を左右するとはいえない。
ウ したがって,被告各標章は,いずれも,原告各商標とそれぞれ類似するとい うべきである。
2 争点2(非商標的使用(商標法26条1項6号)該当性)について
(1) 被告各標章は,別紙2被告標章目録のとおりであり,前記第2の2(3)イで 示したとおり,いずれも靴の甲の側面において,側方から見て概ね中央の位置に付 されている。 上記の位置は,靴の外観において特に目立つ部分ということができ,証拠(乙1, 2,4,5,6,7,12)によれば,靴において,当該部分に商標を付すことは 一般的に行われていることが認められる。また,証拠(甲26,27)及び弁論の 全趣旨によれば,被告商品を製造したミュニック社においては,スニーカー様の靴 の側面の中央の位置に傾いた「X」型十字を表\\示した平面図状の標章について国際 商標登録をしていたことも認められる。 そうすると,上記の位置に目立つ大きさで付されている被告各標章については, 商品識別機能を果たすものとして使用されていると認めるのが相当である。
(2) 被告は,被告商品においては,被告各標章の他にも,ミュニック社が商標登 録した別の標章の一部が,商品そのもの,包装箱及びタグに記されており,被告各 標章は単なるデザインとして使用されているにすぎない等と主張するが,他の登録 商標が付されていることによって,当然に被告各標章が商品識別機能を有しないということはできない上,証拠(乙13)によっても,被告商品に付されている他の\n登録商標(乙14)は,その位置や大きさからして被告各標章よりも際だって目立 つものであるとは認められず,そうであれば,被告商品に付されている他の登録商 標の使用は,被告各標章が商品識別機能を果たすものとして使用されている旨の前記判断を左右するものではなく,被告の上記主張は採用することができない。また,\nミュニック社商品において,被告各標章を使用していないスニーカーがあること (乙15,16)によっても,被告商品に付された被告各標章に出所識別機能がないということはできない。\n被告は,ミュニック社以外の靴について,「X」型十字が単なるデザインとして付されているものがあると主張するが,証拠(乙1)によれば,被告が他の靴に付さ\nれていると指摘する「X」型十字は,その形状や位置において,被告各標章とは大きく異なるものであり,この点の指摘も上記(1)の結論を左右するものとはいえない。
(3) 以上によれば,被告商品に付された被告各標章が,需要者が何人かの業務に 係る商品である認識することができる態様により使用されていない商標(商 標法26条1項6号)に該当するとはいえない。
3 商標権侵害の有無についてのまとめ
以上によれば,被告商品は原告各商標権の指定商品に含まれるところ,被告各標 章はいずれも原告各商標とそれぞれ類似し,被告各標章の使用について商標法26 条1項6号によって原告各商標権の効力が及ばないとはいえないから,被告が,被 告各標章を付した被告商品を輸入し,販売することは,原告各商標権を侵害するも のとみなされる(商標法37条1項1号)。
4 争点3(原告の損害)について
(1) 商標法38条2項の適用の有無について
被告は,原告は対象期間のうち,少なくとも平成27年10月25日までの期間 については,原告各商標を使用したスニーカーを販売していなかったとして,同期 間の損害については,商標法38条2項は適用されないと主張する。 しかしながら,証拠(甲183)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,対象期間 を通じて,英文字の「X」型十字が左側(反時計回り方向)に傾いた形で組み合わされた2本の帯状線からなり,帯状線の輪郭が鋸歯状であるという特徴を持つ,原\n告各商標と同一又は類似する標章を甲の側面部分に付したスニーカーを販売してい たものと認められる。 このように対象期間において原告が被告商品と競合する商品を販売していたこと からすれば,原告には,被告による被告商品の輸入販売行為がなかったならば利益 が得られたであろうという事情が存在すると認められ,対象期間中の原告の損害額 の算定については商標法38条2項の適用があるというべきである。
(2) 被告が侵害の行為により受けた利益について
ア 利益の意義
被告商品の輸入販売について,商標法38条2項所定の侵害行為により被告が受 けた利益の額は,被告商品の売上高から,被告において被告商品を輸入販売するこ とによりその輸入販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利 益の額である。
イ 事実認定
前記の前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告商品の輸入販売状 況及び売上高,経費等について,以下の事実が認められる。
(ア) 被告商品を含むミュニック社商品の輸入及び販売
被告は,遅くとも平成26年2月3日以降,被告商品を含むミュニック社商品を, ベルネダ社から輸入し,靴流通問屋や百貨店等に卸売していた(乙19,25,2 6)。 被告における対象期間中のミュニック社商品全体の販売額は,総額●(省略)● 円であった(乙20,21)。
(イ) 被告によるミュニック社商品の費用に関する管理
被告は,平成26年11月1日にミュニック社商品のみを扱うミュニック事業部 を設立し,同日以降はミュニック事業部において輸入販売の管理を行っていた。被 告は,ミュニック社商品について,同事業部の設立の前後を通じて商品別又は品番 別の経費の管理はしていなかった(乙19)。
(ウ) 被告商品の販売数量
被告商品については,別紙3被告商品販売一覧表記載のとおり,被告各標章のうち「標章番号」欄記載の番号の標章が付された「商品名」,「品番」欄記載の商品名,品番を有するスニーカーを,それぞれ同別紙記載の数量輸入していた(弁論の全趣\n旨)。 また,平成29年4月7日時点の被告商品の在庫は別紙3被告商品販売一覧表の「在庫数量(4/7)」欄の記載のとおりであり(合計●(省略)●足),この在庫\nとは別に,被告は,同年9月ころに,輸入した被告商品のうち同別紙の「2017 /9/15返品」との記載の下に記載された数量(合計●(省略)●足)を仕入先 に返品した。 そうすると,対象期間中の被告商品の販売数は,輸入数量から上記の在庫数量及 び返品数量を控除した同別紙の「販売数量」欄記載の数量(その合計は●(省略) ●足)である(弁論の全趣旨)。
(エ) 被告商品の販売価格
被告商品それぞれの消費者への販売価格については,別紙3被告商品販売一覧表の「上代」価格のとおりである(被告商品の消費者への販売価格が1万5000円\nないし2万1000円程度であったとの当事者間に争いのない事実,弁論の全趣旨)。 そして,被告は,被告商品を靴流通卸問屋や百貨店に,上記の「上代」価格に別 紙3被告商品販売一覧表の「掛率」欄記載の割合を乗じた「販売価格」欄記載の価格で販売していた(乙19,25,26,弁論の全趣旨)。\n
(オ) 被告商品の仕入額
被告商品の1個当たりの仕入価格は別紙3被告商品販売一覧表の「輸入平均単価」欄に記載の金額であり,前記(ウ)の被告商品の販売数に対応する仕入額は同別紙の 「仕入額」欄記載のとおりとなり,合計額は●(省略)●円である(弁論の全趣旨)。 (カ) 諸掛(外注費)について 被告は,対象期間中に,ミュニック社商品の輸入販売に関して,被告での会計処 理において「諸掛(外注費)」の勘定科目において,「加工料」,「運賃」,「付属代」, 「関税」と「雑費」に分類した費用を次のとおり支出し,その合計は●(省略)● 円である(乙19,53,93,弁論の全趣旨)。
a 加工料について
加工料に分類された費用は●(省略)●円であり,これは主に輸入したミュニッ ク社商品を販売するための納品,入出庫,梱包等の作業のために被告が支払った費 用である(乙53,79,93,弁論の全趣旨)。このうち,商品値引き費用につい ては,ミュニック社商品を百貨店が値引販売した際に,被告が値引額を負担したも のである(乙19,弁論の全趣旨)。
b 運賃について
運賃に分類された費用の合計額は●(省略)●円であり,これは主に輸入の際の 運送費,海上運賃,航空運賃等として被告が支払った費用である(乙53,81〜 85,93,弁論の全趣旨)。 また,このうちTQ使用料については,革製品の輸入の際にその数量に応じて必 要となるものである(乙85,弁論の全趣旨)。
c 付属代について
付属代に分類された費用の合計額は●(省略)●円であり,これはミュニック社 商品の販売に当たって被告が付していたタグや袋等の購入費用である(乙53,8 0,93,弁論の全趣旨)。
d 関税について
関税に分類された費用の合計額は●(省略)●円であり,これはミュニック社商 品の輸入の際に支払った関税である(乙53,81〜83,86,87,93,弁 論の全趣旨)。
e 雑費について
雑費に分類された費用の合計額は●(省略)●円であり,これは,主にミュニッ ク社商品の輸入手続を依頼した業者に支払った通関料や手数料(取扱料)等の費用, 前記c及びdに計上されなかったTQ使用料や袋代,ミュニック社商品に付した輸 入保険料である(乙53,81,86〜88,93,弁論の全趣旨)。
(キ) 広告費について
被告は,対象期間中に,「広告費」の勘定科目において,ミュニック社商品の宣伝 のためのダイレクトメール作成費用,展示会や百貨店での催事に要した費用として 合計●(省略)●円を支出した(乙19,22〜24,54,63〜72,94, 弁論の全趣旨)。このうち,被告商品の写真のみを大きく扱ったダイレクトメールが 作成されていたことがある(乙22)。
(ク) 運賃について
被告は,対象期間中に,ミュニック社商品に関し,「運賃」の勘定科目において, 運送費,倉庫における入庫・梱包等に係る倉庫費用・出荷作業料,検品検査代その 他の国内での運送及び保管の費用として●(省略)●円の出費をした(乙19,5 5,89〜92,95,弁論の全趣旨)。
(ケ) 販売手数料について
被告は,対象期間中に,「販売手数料」の勘定科目において,ミュニック社商品の 販売に関して販売業務及び営業業務を委託した業務委託費用として,合計●(省略) ●円を支出した(乙56,96,弁論の全趣旨)。また,被告はミュニック社商品の 販売活動等に関してAとの間で業務委託契約を締結していた(乙27,弁論の全趣 旨)。
(コ) 荷造包装費について
被告は,対象期間中に,「荷造包装費」の勘定科目において,段ボール代,梱包テ ープ等のミュニック社商品の梱包資材費用として●(省略)●円の上記支出をした (乙57,97,弁論の全趣旨)。
(サ) 保険料について
被告は,対象期間中に,「保険料」の勘定科目において,ミュニック社商品の販売 に関して,火災保険料,損害保険料及び輸入保険料(ただし前記(カ)eで計上されな かったもの)として合計●(省略)●円を支出し,また,海外出張の際の傷害保険 料として●(省略)●円を支出した(乙19,58,98,弁論の全趣旨)。 このうち,火災保険料,損害保険料,輸入保険料として支出された合計●(省略) ●円については,毎回の保険料が定額でなく,補助元帳上,摘要欄に対象となる商 品数が記載されているものがある(乙58)。
(シ) 旅費交通費について
被告は,対象期間中に,「旅費交通費」の勘定科目において,ミュニック社商品の 営業等に要した交通費,国内出張費及び海外出張費として合計●(省略)●円を支 出した(乙59,99,弁論の全趣旨)。
(ス) 見本費について
被告は,対象期間中に,「見本費」の勘定科目において,ミュニック社商品販売の ためのサンプル購入費用や,スニーカーに関する書籍の購入費用として合計●(省 略)●円を支出した(乙60,100,弁論の全趣旨)。
(セ) 雑損失について
被告は,対象期間中に,「雑損失」の勘定科目において,為替予約を解約した際に発生した費用として,「為替予\約解約損」●(省略)●円を計上している(乙61,弁論の全趣旨)。
(ソ) 特別損失について
被告は,対象期間中に,「特別損失」の勘定科目において,ミュニック社商品を販 売していた恵比寿三越伊勢丹に支払った費用(広告費用,撤退費用,撤退違約金, B氏特別退職金)合計●(省略)●円を「恵比寿店舗撤退違約金」,「恵比寿店舗費 用等」,「恵比寿店舗撤退費用」及び「特別退職金」として計上している(乙32, 弁論の全趣旨)。
ウ 事実認定の補足
(ア) 輸入数量について,原告は,被告から,被告各標章が付された商品のインボ イスとして,被告商品の品番についてマスキングをした上で開示を受けたものの, 開示資料に裏付けられる前記イ(ウ)認定の数量以外にも,被告商品の輸入数量がある 旨を主張するが,原告が被告商品に関するインボイス等を対象として行った文書提 出命令の申立ては,後記5のとおり必要性がなく,その他,原告の主張を認めるに足りる証拠はない。\nまた,被告標章19を付した商品については,原告がその商品の商品名及び品番 として特定する「MASSANA」及び「862015」と,被告標章3の2を付 した商品の商品名及び品番とが同一であり,外観も,被告標章3の2を付した商品 とソールの色を除いて類似していると認められる(甲11,198,弁論の全趣旨)踏まえると,被告標章3の2を付した商品の輸入に関して被告から原告に開\n示され,それに沿うものとして認められる前記イ(ウ)の数量とは別に,輸入された事 実やその数量はないと考えることが自然であって,これを認めるに足りる証拠はな い。
(イ) 前記イ(カ)ないし(ソ)認定の費用を超えて,ミュニック社商品に関する費用を 認めるに足りる証拠はない。
エ 検討
前記イの認定事実を基に,限界利益の額を検討する。
(ア) 被告商品の売上高
前記イ(ウ)及び(エ)によれば,対象期間における被告商品の売上高は,別紙3被告 商品販売一覧表の「売上高」欄のとおりであり,合計●(省略)●円である。
(イ) 売上高から控除すべき経費
a 売上高から控除すべき経費として,まず,被告商品の仕入額があり,前記イ (オ)のとおり,●(省略)●円である。
b その他,売上高から控除すべき経費としては,前記イ(カ)の外注費,前記イ (キ)の広告費,前記イ(ク)の運賃,前記イ(コ)の荷造包装費及び前記イ(サ)の保険料 (傷害保険料を除く。)のうち,それぞれ被告商品に係る部分が,前記認定した各費 用の性質上,被告商品の輸入販売に直接関連して追加的に必要となったものとして, 該当すると認められる。そして,前記イ(イ)のとおり,被告は,ミュニック社商品の 経費について商品別又は品番別に管理しておらず,上記各費用の被告商品に係る部 分を直接的に示す資料はないことから,ミュニック社商品の販売総額に占める被告 商品の割合,被告商品の輸入数量に占める販売数量の割合などを考慮して,被告商 品に係る費用の額を算出するのが相当であり,これは,次のとおり,合計●(省略) ●円であると認められる。
(a) 外注費については,対象期間中の被告におけるミュニック社商品全体の販売 総額●(省略)●円に占める被告商品の販売総額●(省略)●円の割合(以下,こ の割合を「被告商品の販売総額の割合」ともいう。)が約●(省略)●%であること, 被告商品の輸入数量●(省略)●足のうち対象期間中に販売された数量●(省略) ●足の占める割合が約●(省略)●%である踏まえ,被告商品に係る費用の 額は,全体の●(省略)●円の15%に当たる●(省略)●円と認められる。
(b) 広告費については,上記の被告商品の販売総額の割合が約●(省略)●%で あることに加え,ミュニック社商品の広告宣伝活動の中で,被告商品が取り上げら れた程度や被告商品の広告宣伝のみに要した額を確定し得る証拠はない考慮 し,被告商品に係る費用の額は,全体の●(省略)●円の15%に当たる●(省略) ●円と認められる。
(c) 運賃については,前記(a)において考慮したものと同様の事情のほか,輸入 に要した費用の場合と比較して,国内の運送保管費の場合には,販売されなかった 商品に係る費用の占める割合が少ないと考えられることも考慮し,被告商品に係る 費用の額は,全体の●(省略)●円の20%に当たる●(省略)●円と認められる。
(d) 荷造包装費については,前記(c)において考慮したものと同様の事情を考慮 し,全体の●(省略)●円の20%に当たる●(省略)●円と認められる。
(e) 保険料のうち,火災保険料,損害保険料,輸入保険料として支出された● (省略)●円については,前記イ(サ)において認定した,毎回の保険料が定額でない ことや対象となる商品数の記載が帳簿に示されていることなどの事情を踏まえれば, 輸入販売数量によって変動するものとして控除すべき経費と考えられ,被告商品に 係る費用の額は,前記(a)において考慮したものと同様の事情を考慮し,上記金額の 15%に当たる●(省略)●円と認められる。
c その他の費用については,次のとおり,被告商品の輸入販売に直接関連して 追加的に必要となった経費とはいえず,売上高から控除すべき経費には当たらない。
(a) 前記イ(ケ)の販売手数料は,百貨店のミュニック社商品の売り場へのミュニ ック社商品販売員派遣に関する人件費や交通費といった費用(乙78,弁論の全趣 旨),ミュニック社商品の販売活動等に関する業務委託先への報酬額(乙27,弁論 の全趣旨)であるが,これらの費用と被告商品の販売との関連性などは明らかでは なく,いずれも,被告商品の輸入販売に直接関連する経費とはいえない。
(b) 前記イ(サ)の保険料のうち,前記b(e)でその一部を控除すべき経費と認めた 火災保険料等を除くもの,すなわち傷害保険料は,海外出張費に付随する費用であ り,後記(c)のとおり,海外出張費は控除すべき経費に該当しないことからすれば, 同様に控除すべき経費には該当しないものというべきである。 (c) 前記イ(シ)の旅費交通費のうち,交通費及び国内出張費は,その支出と被告 商品の販売との関連性について具体的な主張立証はなく,控除すべき経費には該当 しない。海外出張費については,被告が提出する出張報告書等(乙28)によって も,これらの海外出張が特に被告商品の輸入販売のために必要となった認め るに足りず,被告商品の輸入販売に直接関連して追加的に必要となった経費とはい えない。
(d) 前記イ(ス)の見本費については,サンプル商品や書籍の購入が被告商品に関 するものであることの具体的な主張立証はなく,被告商品の輸入販売に直接関連す る経費とはいえない。
(e) 前記イ(セ)の雑損失は,為替予約を解約した際に発生した費用であり,その性質からしても,被告商品の輸入販売に直接関連する経費とはいえない。\n
(f) 前記イ(ソ)の特別損失のうち,恵比寿三越伊勢丹に支払った撤退違約金,撤 退費用,営業担当者の特別退職金については,販売不振からミュニック社商品の恵 比寿三越伊勢丹での販売を終了したことによって発生したものにすぎないし,恵比 寿店舗費用等についてはこの発生原因や被告商品との関連性について具体的な裏付 けはないのであって,いずれも,被告商品の輸入販売に直接関連する経費とはいえ ない。
(ウ) 限界利益の額
以上によれば,対象期間における被告商品の輸入販売により,被告が受けた限界 利益の額は,前記(ア)の被告商品の売上高●(省略)●円から,前記(イ)aの被告商 品の仕入額●(省略)●円及び同bのその他の控除すべき経費●(省略)●円を控 除した583万0211円である。
(3) 推定覆滅事由について
ア 証拠(甲68〜77,183〜186)及び弁論の全趣旨によれば,原告は, 自社の商品を,主に靴の量販店やインターネット上の通信販売サイトを通じて販売 し,その小売価格は2000円から6000円程度の商品が中心であり,原告が, 対象期間中に原告各商標と同一ないし類似する商標を付したスニーカー(甲183) を販売した際の売上げは一足当たり3000円程度であったと認められる。 他方で,証拠(乙19)及び弁論の全趣旨によれば,被告商品は主に百貨店等の 店頭で販売されたものであり,別紙3被告商品販売一覧表記載のとおり,その小売価格は1万5000円から2万1000円,被告が百貨店等に販売する際の卸売価\n格は●(省略)●円から●(省略)●円であったと認められる。 被告商品の販売による一足平均の限界利益は前記(2)エ(ウ)で認定した583万0 211円を,前記(2)イ(ウ)で認定した販売数量である●(省略)●足で除した● (省略)●円であり,原告が販売した競合品の一足当たりの限界利益を裏付ける証 拠はないが,上記の原告が販売した競合品の価格自体や,被告商品における一足当 たりの売上額が原告による競合品よりも大幅に高かったことからすれば,販売され た商品一足当たりの限界利益についても,被告商品の方が原告の商品よりも大きか ったものと推認される。 このような販売態様や販売価格の違い及び一足当たりの限界利益の違いは,被告 の限界利益額の一部について,商標法38条2項の推定を覆滅すべき事情として考 慮すべきである。
イ 他方で,被告が主張するその他の事情については,以下のとおり,いずれも 商標法38条2項の推定覆滅事情として考慮すべき事情とはいえない。
(ア) 原告が原告各商標を使用しない商品を販売していたことについて 被告は,原告が販売していた商品の多くには,原告各商標と同一又は類似の標章 が付されておらず,被告商品の販売によって,原告の売上げが減少したという関係 にないと主張する。 原告は,原告各商標と同一又は類似する標章を使用したスニーカーを販売してお り,被告による被告商品の輸入販売行為がなかったならば利益が得られたであろう という事情が原告に認められることは前記(1)のとおりであり,原告が上記のスニー カー以外に原告各商標と類似する標章が付されていない靴を販売していたとの事情 は,損害額の推定を覆滅すべき事情に当たるとも認められない。
(イ) 競合品の存在について
被告は,側面に「X」型十字が付された大人用スニーカーは,被告商品の他にも市場に多数存在していると主張するが,証拠(乙1)によれば,被告が他のスニー\nカーに付されていると指摘する「X」型十字は,その形状が被告各標章や原告各商標とは大きく異なるものであり,その他,原告各商標と同一又は類似の標章が付さ\nれた原告又は被告以外によるスニーカーの存在とそのシェアについての具体的な主 張立証はないから,この点も損害額の推定を覆滅すべき事情には当たらない。
(ウ) 被告の営業努力,ブランド力の差等について
被告は,被告商品を販売するための営業努力,原告と被告とのブランド力の差, 原告各商標の訴求力の程度等からすれば,原告各商標の被告商品の売上げへの寄与 率は著しく低いとも主張するが,被告が作成した展示会の資料においてもミュニッ ク社商品については「2014年日本デビュー」との記載がされており,被告が前 記(2)イ(キ)のように被告が広告宣伝活動を行った考慮しても,対象期間中に おける日本においてのブランドの知名度の程度を裏付ける証拠はなく,他方で,証 拠(甲170〜176,180〜182)及び弁論の全趣旨によれば,原告各商標 に関する販売,広告宣伝状況については,平成14年頃から原告各商標と同一又は 類似の標章が付されたスニーカーが原告が許諾した業者によって販売されており, 有名歌手がこれを着用した雑誌広告が掲載されたこともあったとの事情も認められ, これらの点からすれば,上記の被告の主張する各点をもって,推定覆滅事情に当た るとは認められない。
ウ 前記ア及びイで検討した事情によれば,被告商品の輸入販売による原告の損 害については,商標法38条2項の推定を覆滅すべき事情が認められ,その覆滅割 合は2割と認めるのが相当である。
(4) 損害額についてのまとめ 以上によれば,被告商品の輸入販売による原告各商標権侵害について,商標法3 8条2項に基づく原告の損害額は,被告の限界利益である583万0211円の8 割に相当する466万4168円であると認められる。

◆判決本文

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令和1(ネ)10069    商標権  民事訴訟 令和2年6月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 質問用紙の表紙上部の「MMPI−1 性格検査」、ソフトのパッケージの表\紙の「MMPI−1性格検査」、診断結果書左上の「MMPI−1自動診断システム」との表記が商標「MMPI」の侵害となるかが争われました。指定役務は「第44類 心理検査」です。 知財高裁は、「商26条により効力が及ばない」と判断した原審判断を維持しました。

 (ア) 被告各標章は,「MMPI−1」の部分と「性格検査」,「回答用 紙」又は「自動診断システム」の部分とを結合した標章である。 平成29年4月1日当時において,需要者の間で,「MMPI」の表\n示は,ハサウェイとマッキンレーが開発した心理検査である「Minnesota Multiphasic Personality Inventory」(ミネソタ多面的人格目録)(本\n件心理検査)又はその略称を表すものであることが広く認識されていた\nこと(前記(2)ア),ハイフン記号と数字を組み合わせてバージョンを示 すことが一般的に行われていること(甲4,87,乙5)を踏まえると, 被告標章1(「MMPI−1 性格検査」)に接した需要者は,被告標 章1は,「MMPI−1」という名称の「性格検査」を示したものと理 解し,被告標章1における「−1」のハイフン記号及び数字部分は,「M MPI」のバージョンを,「MMPI」の文字部分は,ハサウェイとマ ッキンレーが開発した本件心理検査を示したものと認識するものと認め られる。また,被告標章3又は被告標章5に接した需要者は,上記と同 様に,被告標章3又は被告標章5は,「MMPI−1」という名称の「性 格検査」を示したものと理解し,「MMPI」の文字部分は,ハサウェ イとマッキンレーが開発した本件心理検査を示したものと認識するもの と認められる。 次に,被告標章2(「MMPI−1 回答用紙」)に接した需要者は, 被告標章2における「MMPI」の文字部分は,ハサウェイとマッキン レーが開発した本件心理検査を示したものと認識し,被告標章2は,本 件心理検査に用いられる「回答用紙」であることを示したものと理解す るものと認められる。 さらに,被告標章4(「MMPI−1自動診断システム」)に接した 需要者は,被告標章4における「MMPI」の文字部分は,ハサウェイ とマッキンレーが開発した本件心理検査を示したものと認識し,被告標 章4は,本件心理検査の診断結果を作成する自動診断システムであるこ とを示したものと理解するものと認められる。
(イ) 前記(ア)のとおり,被告各標章に接した需要者は,被告各標章にお ける「MMPI」の文字部分をハサウェイとマッキンレーが開発した本 件心理検査を示したものと認識するものと認められるから,「MMPI」 の文字部分は,心理検査の内容を示したものと認められる。 そして,法26条1項3号の役務の「質」には役務の「内容」が含ま れるから,被告各標章における「MMPI」の文字部分は,本件商標の 指定役務である「心理検査」の質を示したものと認められる。 次に,前記ア認定の被告各商品及び被告広告における被告各標章の表\n示態様によれば,被告各標章における「MMPI」の文字部分は,いず れも,その文字の大きさ,フォント及び表示位置等に顕著な特徴がある\nとはいえず,取引上一般に用いられている方法で表示したものと認めら\nれるから,本件商標の指定役務「心理検査」の質を「普通に用いられる 方法」で表示したものと認められる。\n
ウ まとめ
以上によれば,「MMPI」の文字部分を含む被告各標章は,本件商標 の指定役務「心理検査」の「質」又は当該指定役務に類似する商品の「品 質」を「普通に用いられる方法」で表示する商標に該当するものと認めら\nれるから,法26条1項3号に該当する。

◆判決本文

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◆平成29(ワ)38481

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◆平成29(ワ)22922

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平成29(ワ)6906  商標権侵害差止等請求事件  商標権 平成30年11月5日  大阪地方裁判所

 漏れていたのでアップします。ミニオン語をミニオンの図柄と一緒に使用した場合に、商標的使用ではないと判断されました。

  被告各商品において,被告各標章は,ミニオンの図柄とともに表示されて\nいるところ,被告各商品のようなTシャツ,下着,帽子,靴下等の服飾品には,一 般に様々な図柄や単語ないしフレーズが装飾的なデザインとして用いられることが 多く見られ,被告各商品に付されたミニオンの図柄と被告各標章も,そのようなデ ザインとしての性質を有すると認められる。他方,服飾品では,被告各商品で被告 各標章が付されている位置には,装飾的なデザインと兼ねてブランド名が表示され\nる場合もある(前記1(6))。このことからすると,被告各商品に接した需要者が, 被告各標章を「需要者が何人かの業務に係る商品…であることを認識できる態様に より使用されていない商標」(商標法26条1項6号)と認識するか否かは,ミニ オンの図柄や被告各標章が服飾品のデザインとしての性質を有することを前提にし つつ,更に被告各標章の使用態様や取引の実情等を総合考慮して検討する必要があ る。
(2) 前記1(1)ア(ア)で認定したとおり,ミニオンは,それが登場する米国の映 画が大ヒットとなり,●(略)●という対象者を限定した被告のアンケートにおい てであるとはいえ高い周知度があったことから,一般的に高い周知性を有している とキャラクターであると推認される。そして,被告各商品はそのようなミニオンの キャラクターグッズであるから,需要者は,ミニオンのキャラクターに関心を有し, 被告各商品がミニオンのキャラクターグッズであるという点に着目してこれを購入 するものと考えられる。
そして,前記1(1)イのとおり,被告各商品は主としてUSJのパーク内及び近隣 の直営店舗で公式グッズとして販売されているところ,USJを訪れる需要者が上 記のような関心を有することに加え,パーク内のキャラクターとしてミニオンが導 入されていることからすると,需要者にとっては,ミニオンが,USJ(被告)が 擁するキャラクターであり,被告各商品は,そのUSJ(被告)がパーク内と近隣 で運営する店舗で販売している公式のキャラクターグッズであるということをもっ て,他の商品との出所の識別としては十分であり,それ以上に被告各商品の出所の\n識別を意識する動機に乏しいと考えられる。 また,前記1(2)のとおり,パーク内及び近隣の直営店舗では,ミニオンのキャラ クターグッズは,服飾品である被告各商品に限らず,服飾品でない文房具,歯ブラ シ,コップ,菓子に至るまで多岐にわたって展開されており,それらに広く被告各 標章ないし「BELLO!」が付されている。また,USJのパーク内でも,具体 的商品を離れて,周知のミニオンのキャラクターに関連して,看板等に「BELL O!」との表示がされている。このように,被告各標章や「BELLO!」が,広\nくミニオンのキャラクターとセットで使用されていることからすると,パーク内及 び近隣の直営店舗を訪れた需要者は,被告各標章や「BELLO!」をもって,少 なくとも周知のミニオンのキャラクターと何かしら関連性を有する語ないしフレー ズとして認識すると考えられる(なお,被告は,「BELLO」という語は,ミニ オンが用いるミニオン語として認識されると主張する。しかし,映画の設定上はそ のようにされているとしても,ミニオン語は18種類以上あり,映画の宣伝等でも ミニオン語〔特にBELLO〕に着目した宣伝がされているとも認められないこと 〔前記1(1)ア(イ)〕からすると,ミニオンというキャラクターが周知であることを 超えて,「BELLO」という語がミニオン語であることまでが被告各商品の需要 者の間で周知となっているとは認められないから,需要者が「BELLO」という 語がミニオン語であるとまで認識するとは認められない。)。 これらの状況からすると,パーク内及び近隣の直営店舗を訪れた需要者が,被告 各標章をミニオンの図柄とは関連のないものと認識し,それによって被告各商品の 出所を識別するとは考え難く,需要者は,被告各標章をもって少なくともミニオン のキャラクターと関連する何らかの語ないしフレーズとして認識し,被告各商品の 出所については,それがUSJ(被告)の直営店舗で販売されるミニオンのキャラ クターの公式グッズであることや,被告各商品にも一般に商品の出所が表示される\n部位である商品のタグやパッケージに本件被告ロゴが表示されていることによって\n識別すると認めるのが相当である。
(3) もっとも,本件各商標が周知なものであれば,需要者は,それを既知の出 所表示として認識しているから,被告各標章が周知のミニオンの図柄と共に表\示さ れ,上記のような状況で販売される場合でも,被告各標章を出所表示として認識す\nることになると考えられる。そして,上記1(5)のとおり,原告が,その創業以来, オリジナルブランドを周知させるべく,「BELLO」の文字ないしその筆記体風 の文字で構成される本件各商標を取り扱う商品に付すなどしてきたことは認められ\nる。
しかし,原告が取り扱う商品が掲載された雑誌は印刷部数が格別多いわけでもな い男性誌に限られ(乙29ないし31,弁論の全趣旨),掲載された頻度も,上記 1(5)ウのとおり短期間に限られている。また,上記1(5)アのとおり百貨店等で原 告が取り扱う商品の販売コーナーが設けられたこと自体は,原告が取り扱う商品の 需要者層に対する訴求力があるとはいえ,販売コーナーはさほど大きなものではな く,コーナーが設けられた期間も短期間にとどまっている。また,原告は,その取 り扱う商品を複数の展示会に出展しているが,いずれも短期のものである上に,回 数も5回にとどまっている。さらに,検索エンジンである「Google」で「BELL O 帽子」等の検索ワードで検索した場合に原告の取り扱う商品に関するウェブペ ージが上位にヒットすること(甲9の1ないし4)は,原告以外にも「BELL O」という文字を含むブランド名を採用する同業者がある程度存在しないのであれ ば,当然のことであって,それをもって本件各商標の周知性を推認することはでき ない。これらからすると,本件各商標が被告各商品の需要者の間で周知性を有する とは認められないから,その既知性に基づいて被告各商品の需要者が被告各標章を 出所表示として認識するとはいえない。\n
(4) 以上に対し,原告は,1)被告各標章が幅広く使用され始めたのは,被告各 商品の販売開始時期の頃ではなく比較的最近のことであり,需要者が,被告各標章 を何らかの出所表示として認識する具体的可能\性が否定される前提を欠く,2)US Jではコラボ商品としてコラボ先の出所が表示された商品が販売されていたり,ウ\nェブサイトではミニオンのキャラクターに係る権利のライセンス先がライセンス商 品を販売したりしていることに照らせば,需要者が,被告各標章を何らかの出所表\n示として認識する可能性は否定されないと主張する。\nまず,1)についてみると,確かに,被告各標章の使用状況が,被告各商品の販売 時期から次第に拡大している可能性は否定できない。しかし,乙54の各写真自体\nには,撮影年月日の表示はないものの,被告において商品販売等を担当する部署の\n者が,新たな店舗展開や装飾展開をするに当たり,これらの履歴を保存しておくた めに店舗状況を写真撮影しておいたという被告の説明に格別不自然な点はない。し たがって,乙54の各写真は,被告が各写真ファイルの作成日から特定したと主張 する各写真の撮影年月日に撮影したものと認められ,この写真から認められる状況 に加え,新規の訪問客を開拓し,リピーターを増やすためにキャラクターを導入し ていると考えられる被告のキャラクターグッズに係るマーケティング戦略としては, 当初からある程度の商品ラインアップを揃えることが合理的に想定されることを考 慮すれば,被告は,ミニオンのキャラクターグッズの販売開始当初から,既に多様 な商品について被告各標章を使用していたと推認するのが合理的である。したがっ て,原告の上記1)の主張は採用できない。 次に,2)についてみると,確かに,上記1(3)のとおり,ミニオンについては,こ れまで複数のコラボレーション商品やライセンス商品が販売されてきたと認められ る。しかし,上記1(3)で認定した事実によれば,コラボレーション商品の場合には, 各商品主体において,それがコラボレーション商品である旨を明示していると認め られるところ,コラボレーション商品は,異なる商品主体同士がコラボレーション することで商品価値の相乗効果を狙う商品であるから,コラボレーション商品であ りながらその旨を明記しないことは通常考え難いことである。そうすると,USJ (被告)の直営店舗で販売されるミニオンのキャラクターの公式グッズであるとい う以上に被告各商品の出所の識別を意識する動機に乏しい需要者において,コラボ レーション商品であることを特に表記していない被告各商品について,他社とのコ\nラボレーション商品であるとの認識が生じる可能性は乏しいと考えられる。また,\nライセンス商品の場合には,一般的にはライセンス先の商標等が表示されることも\n多いと考えられるが,本件では前記のように多岐にわたる商品群や看板等について 被告各商標ないし「BELLO!」が使われていることからすると,上記のような 需要者において,被告各標章が特定のライセンス先の出所を表示するものであると\nの認識が生じる可能性も乏しいというべきである。したがって,原告の上記2)の主 張は採用できない。
(5) また,被告各商品は,USJのオンラインストアでも販売されているが, USJのオンラインストアのトップページには,本件被告ロゴが表示され,USJ\nのオンラインストアであることが明確に認識されるようになっている(乙50)上, 弁論の全趣旨によれば,USJのオンラインストアでは,USJのパーク内及び近 隣の直営店舗で販売されているのと同じ商品が販売されていると認められるから, 同ストアを訪れた需要者は,そこで販売されているキャラクターグッズがUSJの 公式グッズであると認識すると考えられる。 このことからすると,USJのオンラインストアで被告各商品が販売される局面 でも,被告各商品に接した需要者は,それがUSJの公式のキャラクターグッズで あるという以上に商品の出所の識別を意識する動機に乏しいと考えられ,また,同 ストアには多数の公式キャラクターグッズが掲載されているのであるから,やはり, 需要者が,商品の写真に写っている被告各標章をミニオンの図柄とは関連のないも のとして,それによって被告各商品の出所を識別するとは考え難いというべきであ る。
(6) また,被告各商品は,USJのオンラインストア以外のオンラインストア 等で第三者により販売されることもあるが,上記1(4)のとおり,アマゾンでの販売 では,出品者が「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」,商品が「USJ 公式 限定 商品 《ミニオン キッズ キャップ》ミニオン グッズ」と記載され,フ リルでの販売でも,商品が「ハロウィン 子供 ミニオン ミニオンズ ハット キャップ 子供 帽子 USJ」と記載され,いずれも出所がUSJであるミニオ ンのキャラクターグッズであると明記されている一方,それらの商品の写真に写っ ている「BELLO!」ないし「bello!」について言及する記載はない。そ して,被告各商品のような公式グッズは,被告ないしUSJを出所とする公式グッ ズとしての独自の価値があることからすると,第三者が被告各商品を販売するに当 たり,これらと異なり,被告各商品の出所が被告ないしUSJであることを明記し ないとは考え難い。 これらからすると,USJのオンラインストア以外のオンラインストア等で被告 各商品に接した需要者は,USJが自前のミニオンというキャラクターを用いた商 品として,その出所をその表記によって識別すると考えられ,被告各標章をミニオ\nンの図柄とは関連のないものとして,それによって被告各商品の出所を識別すると は考え難いというべきである。
(7) 以上からすると,証拠により示されたこれまでの取引の実情に基づく限り, 被告各商品が販売されているいずれの局面においても,被告各標章が出所表示とし\nて機能していないから,被告各標章は,「需要者が何人かの業務に係る商品…であ\nることを認識することができる態様により使用されていない」(商標法26条1項 6号)と認められる。また,将来の被告各標章の使用についても,取引の実情の変 化の有無やその態様が明らかではないから,将来における取引の実情の変化を前提 とする判断をすることはできない。

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平成30(ネ)20 商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成31年2月21日  大阪高等裁判所

 3文字のアルファベットで構成された登録商標「LDR」について、一覧で「LDR−○○」という使用形態については、商標として機能していないと判断されました。1審判決の最後に原告商標、被告標章が掲載されています。  1審でも、「被告標章2は,極めて多数の型式が存する被告商品の中にあって,基本となる型式,発光色,寸法等を間違いなく発注,納品等し得るようにする型式名の一部として用いられていると解するのが相当であって,商品の出所を表示したり,顧客を吸引したりする機能\は,基本的に有しないと考えられる。」と判断されていました。
 控訴人は,被控訴人が,被告標章2を商標として使用していると主張し,当 審においては,その理由として前記第2の5(1)のとおり述べる。しかし,次の とおり,いずれの主張も採用することはできない。
(1) 標章が商品の型式名の一部として使用されることについて
控訴人は,従来の裁判例において商標としての使用が否定され得る使用態 様として,1) 標章が単に商品等の属性・内容・由来等について説明するため の表示として付されていたり,別の商品の名称,種類等を示す表\示として付 されていたりすると認識される場合,2) 標章が商品等の装飾・意匠として付 されていると認識される場合,3) 標章が専ら商品の宣伝のためのキャッチフ レーズや宣伝文句として付されていると認識される場合を挙げ,本件はその どれにも当たらないと主張する。 そこで,本件における被告標章2の使用態様を検討すると,上記2),3)に 当たらないことは明らかである。しかし,引用に係る原判決「事実及び理由」 第3の5(5)イのとおり,被告標章2は,専ら,極めて多数の型式が存する被 告商品の中で,基本となる型式,発光色,寸法等を間違いなく発注,納品等 し得るようにするための型式名の一部として用いられており,それ以外の役 割を果たしていると認めることができないので,上記1)に準じて考えること ができる。また,この点を措くとしても,後記(2)のような使用態様に照らすと,被告標章2は,商品の出所を表示したり,顧客を吸引したりする機能\を 有していないというべきである。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(2) 被告標章2の使用態様について
控訴人は,現在の被控訴人のカタログやウェブサイトに被告標章2が直接 表示されていないからといって,被告標章2が商標として使用されているこ\nとを否定する根拠とはならないと主張する。 しかし,商標としての使用というためには,出所表示機能\を発揮する態様での使用でなければならないので,どのような態様で表示されているかが重\n要であるところ,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の5(5)のとおり, 被控訴人が現在使用する本件カタログに被告標章2が表示されていないだけ\nでなく,被告標章2に相当する記載は,製品の仕様の詳細を示す一覧表にお\nける型式名の一部として,あるいは製品の仕様及び価格を列挙した価格表に\nおける型式名の一部として表示されるにとどまっている。\n以上によると,被告標章2が商標として使用されていると認めることはで きない。
(3) 画像処理用LED照明装置の取引の実情について
控訴人は,画像処理用LED照明装置の分野において,商品名(型式名) のみで商品を特定する取引が少なからず行われていると主張し,証拠(甲2 6,27,29)を提出する。 たしかに,甲26(現品票)及び甲27(請求書)には,同装置の売買に 際し,型式名をもって商品を特定していることが認められる。しかし,これらの文書は,商品の購入が決まり,注文があった後に作成されたものである。 そして,当該商品を注文するに至るまでの間,どのようなやり取りがされた か不明であり,上記各文書に記載された型式名だけで注文が行われたとまで 認めることはできない(これらの文書に記載された型式名は,前記(1)のとお り,基本となる型式,発光色,寸法等を間違いなく発注,納品等し得るよう にするために使用されているものということができる。)。 また,甲29によれば,インターネット通販サイトにおいて,「日進電子 工業 直接照射照明 リング型 DRシリーズ」と「CCS(シーシーエス) リ ング照明 LDR2シリーズ」の表示のもとに,各商品が販売されていること\nが認められる。このようにメーカー名も左上部に表示されていることからも,\n需要者において型式名のみで商品を買い受けているとは認め難い。
(4) 以上のとおりで,被告標章2は,商標としては使用されていないと認められる。
4 本件商標1に係る商標権の損害額について
被控訴人が被告標章1を使用したことによる控訴人の損害額,被控訴人の不 当利得額について検討する。なお,本件商標1登録後の平成23年9月1日か ら平成29年7月31日までの被控訴人の売上を算定の基礎とすることは争 いがない。
(1) 損害の基礎となる金額
ア 被告商品の売上総額
被控訴人における平成24年12月1日から平成25年10月31日 までの被告商品の売上高は3億0191万5347円,同年11月1日か ら平成29年7月31日までの売上高は12億5406万9731円,合 計15億5598万5078円であった(争いがない)。 なお,控訴人は,平成23年9月1日から平成25年10月31日の間 について不当利得の返還を請求するが,被控訴人は,平成24年12月1 日から平成25年10月31日までの間の売上高を開示し,その額は上記 のとおり3億0191万5347円である。控訴人は,同額を平成23年 9月1日から平成25年10月31日までの算定の基礎とすることとし た。
イ 被告標章2を付した商品の売上額 一方,被告商品のうち,被告標章2を付した被告商品1−1−1ないし 6の,平成18年11月1日から平成25年10月31日までの売上高は 4848万1830円,同年11月1日から平成29年7月31日までの 売上高は2012万6460円,合計6860万8290円であった(争 いがない)。
ウ 算定の基礎となる金額
被告標章1は,被告商品に付されているのではなく,カタログに使用されているので,これによる個別の損害額を算定することは困難であるが, 商標の自他識別機能を害する形態で使用されているので,不法行為に基づ\nく損害賠償として使用料相当額の請求が認められる(商標法38条3項)。 また,不当利得返還請求としても使用料相当額を認めることができる。 ところで,前記3に説示したとおり,被告標章2については商標権侵害 が成立しないところ,被告標章1の使用にかかる販売額を算定するに当た り,前記イの額を控除する必要はない。 したがって,控訴人が算定の基礎として主張する,平成23年9月1日 から平成29年7月31日までの「被告標章1固有の販売額」は,前記ア の15億5598万5078円ということになる。
(2) 使用料相当額
被告標章1は,本件カタログの比較的目立つ位置に掲載されているところ, 顧客がこれに目にする可能性は高いが,「照明の解決」という意味内容は,\n被告商品及び役務の特長を直接的に表すものであり,一定の顧客吸引力を有\nすると認められるものの,照明装置のカタログに付すものとしては,常識的 な発想の範囲内の言葉である。 引用に係る原判決「事実及び理由」第3の5(4)のとおり,画像処理用LE D照明装置の需要者・取引者が商品に求めるものは特定の機能や性能\であり, 一定期間の検討を経て購入の決定に至るのが一般的と考えられ,一般家庭用 の商品でもないから,カタログに記載された文言が顧客を強く吸引し,購入 の有無に強く影響するということも考え難い。また,被告標章1は,平成2 7年の本件カタログには使用されているものの,従前のカタログ(平成8年, 11年,15年,16年)には使用されておらず,価格表やウェブサイト,\nあるいは被告商品自体に付された事実もなく,被告標章1が,被告商品に関 する惹句として,あるいは企業としての被控訴人自体を需要者に印象付ける 語句として,継続的に,あるいは広範囲に使用されたとの事実を認めることはできない。よって,上記認定した被告標章1の顧客吸引力の程度,被告標章1使用の 態様を総合すると,被告標章1が被控訴人の取引に影響した程度は極めて低 いというべきであり,支払うべき許諾料相当額は,不法行為及び不当利得に 基づく請求のいずれの期間においても,算定の基礎となる被控訴人の売上高 の0.2%と認めることが相当であるから,その額は311万1970円(不 当利得につき上記3億0191万5347円の0.2%である60万383 1円,不法行為につき上記12億5406万9731円の0.2%である2 50万8139円)となる。

◆判決本文

1審判決はこちらです。

◆平成28(ワ)9753

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平成28(ワ)6268  商標権侵害差止請求事件  商標権  民事訴訟 平成29年5月11日  大阪地方裁判所

会社名をロゴ化したについては商標については侵害、その他については、自己の名称を「普通に用いられる方法」により表示したものと判断されました。
 (ア) 被告標章4は,まず,被告の事務所の正面玄関口の看板として表示さ\nれているところ,通常,企業の事務所においては当該企業の商品又は役務に関する 需要者向けの業務が,あるいは,そのための広告宣伝がなされるのであり,現に「AD EBiS」と「EC-CUBE」の広告物が陳列されている。そうすると,被告の事務所の正面 玄関口における被告標章4の使用は,少なくとも「AD EBiS」と「EC-CUBE」につい ての使用であると認められる。 また,被告標章4は,セッションの壁面においても表示されているところ,そこ\nには同時に,「AD EBiS」及び「THREe」の広告の表示があるから,被告は,セッショ\nンにおいて,「AD EBiS」及び「THREe」について被告標章4を表示して使用している\nと認められる。(争点2) また,これらからすると,被告4サービス中の他のものについても被告標章4を 使用するおそれがあるというべきである。
(イ) そして,被告の商号の英訳は「LOCKON CO.,LTD.」であり(甲32の1 頁,乙2の1頁,乙8),「LOCKON」との被告標章4はその略称であるから,被告標 章4が「自己の名称」を表示するものとはいえない。なお,この略称が著名である\nことを認めるに足りる証拠はないから,被告標章4が「著名な略称」を普通に用い られる方法で表示する場合に当たるものともいえない。(争点3)\n

◆判決本文

◆原告と被告が逆の事件です。平成28(ワ)5249 こちらは、原告の請求は全て棄却されています。

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平成28(ワ)5249  商標権侵害差止請求事件  商標権  民事訴訟 平成29年5月11日  大阪地方裁判所

 ウェブサイトにおける使用が35類の広告サービスとしての側面があるかが争われました。裁判所は、42類のプログラムの提供としての使用であり、35類の広告サービスではないと判断しました。
(1) 前記のとおり,被告のホームページにおいて,被告サービスは,「スマート フォン対応のケイータイサイト作成ASP」,「華やかなケータイサイトが専門知識 なしで簡単に作成できる」として総括的に紹介されており,被告サービスの17の 機能の多くはホームページの作成支援に関わる機能\であることからすると,被告サ ービスは,ホームページ作成支援を主たる機能とするものであると認められる。そ\nして,前記のとおり,被告サービスは,「ASP」とされ,ASPとは,ソフトウェ\nアをインターネットを介して利用させるサービスをいうこと(弁論の全趣旨)から すると,被告標章が使用されている被告サービスは,全体として,インターネット を介してスマートフォン等の携帯電話用のホームページの作成・運用を支援するた めのアプリケーションソフトの提供を行うものであり,第42類の「電子計算機用\nプログラムの提供」に該当すると認められ,本件商標の指定役務第35類の「広告」 には該当せず,また,これに類似する役務とも認められない。
(2) これに対し,原告は,被告サービスのうちのプッシュ通知機能及びメール\nマーケティング機能に着目し,これらの機能\のうち,メールサーバによる電子メー ルの配信を提供するインターネット役務部分は広告業に当たるから,広告及び操作 画面に被告標章を表示する行為が「広告業」について被告標章を使用するものであ\nる旨主張する。
しかし,まず,被告サービスの内容は上記のとおりであり,これらの機能は,被\n告サービスの機能として広告されてはいるものの,それぞれ,被告サービスに付随\nする17種類の機能のうちの1つにすぎず,価格面でもこれらの機能\の有無によっ て区分されておらず,これら機能が独立して提供されているわけではないから,被\n告標章がそれらの機能について独立して使用されていると認めることはできない。\nそして,前記のとおり,被告サービスは全体としてインターネットを介してスマー トフォン等の携帯電話用のホームページの作成・運用を支援するためのアプリケー ションソフトの提供を行うものであると認められ,被告標章はそのような被告サー\nビスの全体について使用されているのであるから,被告サービスのうちのプッシュ 通知機能及びメールマーケティング機能\のみに着目して,被告標章が「広告業」に 使用されているとする原告の上記主張は採用できない。 また,被告サービスのプッシュ通知機能及びメールマーケティング機能\が,メー ルサーバによる電子メールの配信を提供する要素を含んでおり,それが広告機能を\n営むものであるとしても,それは,被告サービスによって提供されるアプリケーシ ョンソフトを被告の顧客が使用することにより自動的に行われるものであるから,\n被告の提供する役務は,そのような配信機能を有するプログラムを提供するものと\nいうべきであり,被告自身が広告配信サービスを提供していると捉えることはでき ない。

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◆原告と被告が逆の事件です。平成28(ワ)6268 こちらは、原告の請求が一部認められています。

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平成28(ワ)28591  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成29年4月27日  東京地方裁判所(47部)

 商標「医の心」「医心」について、ウェブサイトでの使用形態は、商標的使用でないと判断されました。
 前記(1)ア(ア)のとおり,「医の心」という語は,従前から医療関係の書 籍や番組等で頻繁に用いられている語であり,その文言からしてその意味は 医師ないし医療の心得といったものであると自然に理解できるところ,現に, 昭和62年に発行された心臓外科の権威とされる医師による「医の心」と題 する書物(乙8)では,「医の心」につき,医師の心得ないし医師の心情と の意味である旨が詳細に記載されている。 また,「医心」という語も,「医の心」を短縮した語であると解され,現 に,前記(1)ア(イ)のとおり,「医術の心得」(広辞苑第6版)といった意 味で一般に用いられている。 そして,前記(1)イ(ア)ないし(カ)のとおり,被告は,本件ウェブサイト 等を含む被告のウェブサイト及びパンフレット等において,被告標章1「医 の心」や被告標章2「医心」という語を,上記のような一般的な意義と同様 に,医師としての心構えや医師が有すべき素養等といった意味で用いている\nものであり,被告標章3「医心養成ゼミ」も,そのような「医の心」や「医 心」を養成するためのゼミであることを説明しているものである。実際に, 被告は,前記(1)イ(キ)のとおり,「医心養成ゼミ」において,医学部受験 のための知識ではなく,医師としての心構えや素養を養うことを目的とした\nカリキュラムを提供している。 以上のとおり,本件ウェブサイト等を含む被告のウェブサイト及びパンフ レットにおいて,被告標章1及び2は,医学部志望者が医師になるために学 力とともに備えるべき心構えや素養を記述的に説明した語であり,被告標章\n3も,医師として必要な心構えや素養の養成を目的とするゼミであることを\n記述的に説明した語であると認められるから,これらの標章は自他識別機能\nを有する標識として商標的に使用されているものではなく,したがって,被 告のウェブサイト及びパンフレットにおける被告標章1ないし3の使用には, 本件商標権1及び2の効力は及ばない(商標法26条1項6号)。 なお,仮に,原告から使用許諾を受けた者が本件商標を商標的に用いてい るとしても,同事実によって,被告が被告標章を商標的に使用していること にはならない。
(3) また,本件検索結果における被告標章1ないし3の表示についても,被\n告が開講している「医心養成ゼミ」に関する被告のウェブサイトの記載の 一部が表示されるものであるところ,そもそもそれが被告による使用に当\nたるか否かの点(争点(2))は措いて,その表示内容を検討しても,上記\n(2)の被告のウェブサイト及びパンフレットにおける被告標章の使用の場合 と同様に,被告標章を商標的に使用しているものではなく,本件商標権1 及び2の効力は及ばない。

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平成28(ネ)10014  商標権侵害損害賠償請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成28年7月20日  知的財産高等裁判所  横浜地方裁判所  横須賀支部

 類似する商標であると判断されたものの、商標的使用でないと判断され、非侵害とした1審判決が維持されました。
 しかしながら,登録商標に類似する標章の商標権者以外の者による使用が 当該商標権の侵害に当たるとするためには,その標章が,商品・役務出所表示機能\, 自他商品・役務識別機能を発揮する態様で,すなわち,需要者が何人かの業務に係\nる商品又は役務であることを認識できる態様で,使用されていることが必要である と解すべきである。なぜなら,法律上,商標の果たすべき最大の機能は,商品・役\n務出所表示機能\,自他商品・役務識別機能であり,商標権によってまず守られるの\nは,登録商標のそのような機能であり,商標権侵害とされるのは,登録商標のこの\n機能を阻害する態様の行為に限られると考えるのが合理的であるからである。
(4) そこで,検討するに,前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人 は,「FRANGIPANI」を屋号として,宝石様のガラス等に貼付された医療用\nシートを耳のつぼに貼付する「耳つぼジュエリー」の施術方法を教授する「耳つぼ\nジュエリープロ通信講座」を開催しており,インターネット上にホームページを開 設して,前記講座の広告に伴う自己紹介として,1)「現在はサロンワークの傍ら, 自身のセミナー,通信講座の運営など「耳つぼジュエリスト」として後進の指導と 女性(特に育児中のママ)の起業サポートに力を注ぎ,日々「大人を教える技術」 に磨きをかける。」という被控訴人標章を含む文言を記載したこと,被控訴人標章が 記載された前記ホームページには,その上部に「FRANGIPANI」という被 控訴人の屋号の記載があり,その下に「耳つぼジュエリープロ通信講座」との記載 があったこと,被控訴人の開設したホームページには,いずれもその上部に「FR ANGIPANI」という被控訴人の屋号の記載があり,被控訴人は,当該ホーム ページ又はこれらにリンクされているページ中に,2)「耳つぼジュエリースクール では,お仕事として耳つぼジュエリーをしていきたい耳つぼジュエリストの育成も してまいりました。」,3)「そんな耳つぼジュエリストとしてのやりがいや幸せを感 じていただきたいと思っています。」,4)「また,受講いただいた方への十分なコミ\nュニケーションとサポート,サービス提供もとことんさせていただき,自信を持っ て耳つぼジュエリストデビューをしていただくまでのお手伝いをするために,今回 プレミアム特典も別に用意させていただきました。」,5)「学ぶことで,ご心配なく 取り組んでいただけます,学んだらいいかわからない,耳つぼジュエリストのYが 開発いたしました。」,6)「痛くない施術,説明するときにも役立ちます,通信教育 って途中で勉強,そんな耳つぼジュエリストとしてのやりがいや幸せ,ピンクリボ ンフェスタ2013出展。」という被控訴人標章を含む記載をし,また,投稿動画に 添える表題的な文言として,7)「ネイリストより簡単!自宅で学べる耳つぼジュエ リストのプロを目指す」という被控訴人標章を含む記載をしたことが認められる。 前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,前記ホームページ又はこれらにリンク されているページにおいて,「耳つぼジュエリスト」は,ラインストーンに貼付され\nた医療用シートを耳のつぼに貼付する「耳つぼジュエリー」の施術を業として行う\n者という意味で使用されており,「耳つぼジュエリープロ通信講座」の開催及び「D ipLoma」と題する文書の発行の主体は,「FRANGIPANI」であること が明示されているといえる。 そして,前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人のほかにも,相当数 の者が,インターネット上において,「耳つぼジュエリー」の施術方法を教授する講 座を開催していたことが認められる。 以上の事実及び弁論の全趣旨によれば,本件商標権の指定役務である知識の教授 に係る事業の需要者において,インターネット上の被控訴人の前記1)ないし7)の被 控訴人標章を含む記載のあるホームページ等を見た場合,「FRANGIPANI」 が,その行う事業の一環として,その受講者に「DipLoma」と題する修了証 を発行する通信講座を開催し,その広告を掲載しており,前記講座は,前記施術を 行う技術を教授する講座であり,前記1)及び5)の記載は被控訴人が自らが前記施術 を業として行っていることを示したもの,前記2)ないし4),6)及び7)の各記載は, 一般的な資格として前記施術を業として行う者を示したものであると理解するので あって,「FRANGIPANI」という表示によって役務の出所を識別するのが通\n常であると考えられ,被控訴人標章から役務の出所を想起することはないものと認 められる。 したがって,前記の被控訴人標章の各記載は,需要者が何人かの業務に係る役務 であることを認識することができる態様により使用されているものと認めることは できず,「登録商標に類似する商標の使用」(商標法37条1号)には該当しないと いうべきである。

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平成27(行ケ)10032  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年9月30日  知的財産高等裁判所

 指定商品「コーヒー」について「ヨーロピアン」が商標として機能する使用であるかが争われました。知財高裁は、「他の自他商品識別機能\の強い商標と併用されることなく,単独で使用され,かつ,他の文字に比べると大きく,商品の目立つ位置に表示され,さらに(R)が付されて表示されている場合には、書体の違いおよび(R)の記載があり・・」なので、需用者は一応自他商品識別機能を有する商標と認識すると判断しました。原告はコカコーラです。
 このような例について考察すると,「ヨーロピアン」の語は,他の自他商品識別機 能が強い商標と併用されてコーヒーやコーヒー豆に使用されている場合には,単に\nコーヒーの品質を表示するだけであり,自他商品識別機能\を有する商標として使用 されているものとは認めることはできない場合が多い,ということができる。 (2) これに対し,本件包装袋には「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章が 付されていることは前記認定のとおりである。本件包装袋には,このほかに,「無糖」,「お湯を注ぐだけ」との表示と「ホットコーヒーが入ったコーヒーカップの図柄」\nとが表示されているだけであり,これらが本件商品の品質や内容の単なる説明であ\nって,商標として表示されているものではないことは明らかであり,本件商品には,\nほかに自他商品識別機能を有する商標は使用されていない。そして,本件包装袋に\nおける「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章は,いずれも同じ書体で同じ大 きさの文字で,他の文字に比べると大きく,包装袋の表面上部の目立つ位置に表\示 され,さらにが付されて表示されているものである。これらの本件包装袋に\nおけるが登録商標であることを示す記号として広く使用されていることを考慮すると,取引者及び需要者は,本件包装袋における「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章が,本件商品の商標として本件包装袋に表示されていると認識し,理解するほかなく,その観念も「ヨーロッパ風のコーヒー」とかあるいは「深煎りの豆を使用したコーヒー」,「苦味が強いコーヒー」又は「コクが強いコーヒー」として認識されるものと認められる。\n(3) 以上によれば,「ヨーロピアン」との標章は,コーヒーあるいはコーヒー豆 に使用されている場合は,ほかに強い自他商品識別機能を有する商標と併用されて\nいるときには,単なる品質を表示するものとして使用されていると解される場合が\n多いものの,本件包装袋における「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章のよ うに,他の自他商品識別機能の強い商標と併用されることなく,単独で使用され,\nかつ,他の文字に比べると大きく,商品の目立つ位置に表示され,さらにが\n付されて表示されているときには,それ程強いものではないけれども,一応自他商\n品識別機能を有する商標として使用されているものと認められる。\n

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平成26(ネ)10129  商標権侵害差止請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成27年8月27日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審でも商標法26条に該当するので、商標権の効力は及ばないと判断されました。
 被控訴人は,被控訴人が被控訴人各商品の錠剤に被控訴人各標章を表示しているのは,調剤ミスや誤飲等を避けるためであって,自他商品識別機能\を奏するために表示しているものではなく,被控訴人各商品における被控訴人各標章の使用は,いわゆる商標的使用に当たらないから,被控訴人各標章は,「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様\nにより使用されていない商標」(商標法26条1項6号)に該当する旨主張 する。 ア そこで検討するに,前記1の認定事実によれば,1)被控訴人各商品は, 一般的名称(JAN)を「ピタバスタチンカルシウム」とする化学物質を 有効成分とする「HMG−CoA還元酵素阻害剤」であり,医療用後発医 薬品(ジェネリック医薬品)であること,2)医薬品の販売名等の類似性に 起因した医療事故等を防止するための対策の一環として平成17年9月2 2日付で発出された本件厚労省課長通知は,医療用後発医薬品の承認申請に当たっての販売名の命名に関し,「販売名の記載にあたっては,含有す\nる有効成分に係る一般的名称に剤型,含量及び会社名(屋号等)を付すこ と」を定めており,被控訴人各商品の販売名である「ピタバスタチンCa 錠1mg「サワイ」」,「ピタバスタチンCa錠2mg「サワイ」」及び 「ピタバスタチンCa錠4mg「サワイ」」は,本件厚労省課長通知に従 って命名されたこと,3)被控訴人を含む後発医薬品メーカー二十数社は,平成25年12月から,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする後発\n医薬品(「HMG−CoA還元酵素阻害剤」)の製造,販売を開始し,被 控訴人以外の各社も,本件厚労省課長通知に従って,上記後発医薬品の販 売名を命名し(例えば,「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」),剤型 及び含量が同じであれば,被控訴人各商品との販売名の違いは「会社名(屋 号等)」だけであること,4)「スタチン系薬」又は「スタチン系化合物」 は,医師,薬剤師等の医療従事者の間において,HMG−CoA還元酵素 阻害薬の総称として一般に知られていたこと,5)「スタチン系薬」又は「ス タチン系化合物」に属する具体的な物質を表記する場合,「スタチン」の用語を除外した部分を略称として使用することが一般的であるとまではいえないが,「スタチン系薬」又は「スタチン系化合物」を説明する際に,\n「ピタバスタチン」,「アトルバスタチン」,「ロスバスタチン」等につい て「ピタバ」,「アトルバ」,「ロスバ」等の略称で表記する場合もあり医師,薬剤師等の医療従事者であれば,「スタチン系薬」又は「スタチン系化合物」を説明する文献又は文脈の中で,上記表\記がされた場合,それらが「ピタバスタチン」,「アトルバスタチン」,「ロスバスタチン」等を意味することを理解すること,6)本件厚労省課長通知には,「有効成分の 一般的名称については,その一般的名称の全てを記載することを原則とす るが,当該有効成分が塩,エステル及び水和物等の場合にあっては,これ らに関する記載を元素記号等を用いた略号等で記載して差し支えないこ と。また,他の製剤との混同を招かないと判断される場合にあっては,塩, エステル及び水和物等に関する記載を省略することが可能であること。」との記載があることが認められる。上記認定事実によれば,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の\n表示(被控訴人各標章)は,有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」について,その塩に関する部分(「カルシウム」)の記載及び「スタチン」の記載を省略した「略称」であることが認められる。
イ 次に,被控訴人各商品の包装態様は,錠剤が10錠ずつPTPシートに パッケージされ,その複数のPTPシートを内袋に入れる「ピロー包装」 がされ,さらに,内袋が外箱に入れられたものであり(前記1(1)イ(イ)), 被控訴人各商品の錠剤は,通常は,PTPシートから取り出して服用する ことが想定されているといえる。 また,被控訴人商品1の外箱には,「ピタバスタチンCa錠1mg「サ ワイ」」と横書きで大きく表示され,その上部には「HMG−CoA還元酵素阻害剤」,その下部には「PTP100錠 ピタバスタチンカルシウ ム錠」との表示があり,内袋には,「ピタバスタチンCa錠1mg「サワイ」」との表\示があり,さらに,PTPシートの表面には,上部に「ピタバスタチンCa錠1mg「サワイ」」,一錠ごとに「ピタバスタチン」,\n「Ca 1」との表示があり,その裏面には,「ピタバスタチン」,「Ca 1mg「サワイ」」との表示があり,被控訴人商品2及び3の外箱及びPTPシートについても,含量及び「Ca」に続く数字の表\記が「2」又は「4」である点で異なるほかは,被控訴人商品1と同様の表示があることは,前記1(1)イ(イ)のとおりである。 さらに,被控訴人各商品の外箱,内袋又はPTPシートに記載された「ピ タバスタチンCa」,「ピタバスタチン」等の表示と被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表\示(被控訴人各標章)を同じ機会に目にした場合,「ピタバスタチンCa」又は「ピタバスタチン」と「ピタバ」の言 語構成から,「ピタバ」が「ピタバスタチンCa」又は「ピタバスタチン」の頭部分の3字を略記したものであることを自然に理解するものと認められる。\nそして,医師,薬剤師等の医療従事者の間においては,後発医薬品の販売 名は含有する有効成分に係る一般的名称に剤型,含量及び会社名(屋号等) から構成されていることは一般的に知られているものと認められるから,医療従事者が,被控訴人各商品に接した場合,被控訴人各商品が「ピタバスタチンCa錠1mg「サワイ」」等を販売名とする後発医薬品であるこ\nとを認識し,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は,有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」の略称であることを認識するものと認められる。\n一方で,患者においては,PTPシートに入れられた状態で被控訴人各 商品の交付を受けた場合,PTPシートから被控訴人各商品を取り出して 服用する際に,PTPシートに記載された「ピタバスタチンカルシウム」 等の表示が自然に目に触れ,被控訴人各商品は「ピタバスタチンカルシウム」が含有された錠剤であること認識するものと認められるから,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表\示(被控訴人各標章)は,被控訴人各商品の含有成分を略記したものであることを理解するものと認められる。 また,被控訴人各商品は,医師等の処方箋により使用する「処方箋医薬 品」であり(前記1(1)イ(ア)),被控訴人各商品と他の薬剤とが一つの袋 にまとめて包装される「1包化調剤」により処方される場合があるが,こ の場合,患者は,1包化した袋を開封し,その袋内に薬剤が入ったままの 状態で服用するので,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示を認識することはないのが通常である。もっとも,患者は,1包化した袋からいったん薬剤を取り出して服用する場合もあるが,その際には,取り出\nした薬剤を一緒に服用すべきひとまとまりの薬剤として認識し,個々の薬剤 の表示が目に触れたとしても,その表\示が薬剤の出所を示すものと理解する ことはないものと認められる。 以上によれば,被控訴人各商品の需要者である医師,薬剤師等の医療従 事者及び患者のいずれにおいても,被控訴人各商品に付された「ピタバ」 の表示(被控訴人各標章)から商品の出所を識別したり,想起することはないものと認められるから,被控訴人各商品における被控訴人各標章の使用は,商標的使用に当たらないというべきである。\nウ したがって,被控訴人各標章は,「需要者が何人かの業務に係る商品で あることを認識することができる態様により使用されていない商標」(商 標法26条1項6号)に該当するものと認められる。
(2) 控訴人は,これに対し,1)患者は,通常,被控訴人各商品の有効成分の名 称が何であるかについて興味も知識もなく,医師,薬剤師等から説明も受け ていないから,被控訴人各商品の錠剤に表示された「ピタバ」に触れたときに,それが「有効成分」を示すものであると認識するものとはいえないし,たとえ,患者が被控訴人各商品のPTPシートに付された「ピタバスタチン\nCa錠1mg「サワイ」」等の表示に触れた上で,被控訴人各商品の錠剤に表\示された「ピタバ」に触れたときに,「ピタバ」の表示が販売名たる「ピタバスタチンCa錠1mg「サワイ」」等のうちの「ピタバスタチンCa」\nの一部の表示あるいはそれに由来する表\示であると認識することがあったと しても,「ピタバ」を「有効成分」としての「ピタバスタチンCa」を意味 するものと認識することはないから,被控訴人各商品の取引者,需要者であ る患者において,被控訴人各標章が出所識別機能を発揮する表\示であると認 識されないということはできない,2)薬剤の錠剤に付された「ピタバ」の表示に関するアンケート調査結果(甲23)によれば,「ピタバ」の表\示が「この薬の有効成分(薬の効果をもたらす成分)の名前(またはその一部)」と 回答したのは全体の15%にすぎず,残りの85%は有効成分の名称(また はその一部)であるとは認識しなかったこと,全体の43%が薬剤の錠剤に 付された「ピタバ」の表示を「この薬の商品名」と認識していたことからすると,患者が被控訴人各標章を有効成分の説明的表\示であると認識するとはいえないとして,被控訴人各標章は,商標法26条1項6号に該当しない旨 主張する。 ア しかしながら,前記(1)イ認定のとおり,患者は,PTPシートに入れら れた状態で被控訴人各商品の交付を受けた場合には,PTPシートから被 控訴人各商品を取り出して服用する際に,PTPシートに記載された「ピ タバスタチンカルシウム」等の表示が自然に目に触れ,被控訴人各商品は「ピタバスタチンカルシウム」が含有された錠剤であること認識するものと認められるから,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表\示(被控訴人各標章)は,被控訴人各商品の含有成分を略記したものであることを理解するものと認められる。 次に,被控訴人各商品が「1包化調剤」により処方された場合には,前 記(1)イ認定のとおり,患者は,1包化した袋を開封し,その袋内に薬剤が 入ったままの状態で服用するので,個々の薬剤の表示には被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表\示を認識することがないのが通常であり,また,患者が1包化した袋からいったん薬剤を取り出して服用する場合も あるが,その際には,患者は,取り出した薬剤を一緒に服用すべきひとまと まりの薬剤として認識し,個々の薬剤の表示が目に触れたとしても,その表\ 示が薬剤の出所を示すものと理解することはないものといえるから,患者に おいて,被控訴人各商品に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)から商品の出所を識別したり,想起することはないものと認められる。イ また,控訴人の挙げる「ピタバ」の表示に関するアンケート調査(甲23)は,「ピタバ」の表\示が付された「錠剤」の写真と「PTPシート」の写真とを対比して質問に対する回答を求めたものであり,患者が被控訴 人各商品を処方され,これを服用する際の実情を踏まえたものといえない から,上記アンケート調査の結果は,患者において被控訴人各商品に付さ れた「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)から商品の出所を識別したり,想起することはないとの上記アの認定を左右するものではない。したがって,被控訴人各商品における被控訴人各標章の使用は,商標的\n使用に当たらないから,控訴人の上記主張は,採用することができない。 (3) 以上によれば,被控訴人各商品の錠剤に付された被控訴人各標章は,商標 法26条1項6号に該当するから,控訴人が有する本件分割商標権の効力は, 被控訴人各標章に及ばないというべきである。

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◆1審はこちらです。平成26(ワ)768

◆被告が異なる関連事件です。平成26(ネ)10098

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平成27(行ケ)10057  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年7月30日  知的財産高等裁判所

 商標「加護亜依」について、指定役務に不使用であるとした審決が維持されました。
 すなわち,原告が,本件取消審判請求において提出した「navi☆Road U SA」と題するウェブページ(乙1の1添付資料)の作成者と思われる「アメリカ 留学 ナビロード」という団体又は会社が本件商標の商標権者,専用使用権者又は 通常使用権者であるとは認められない上に,「加護ちゃん的・・・」という記載や加 護亜依の写真の掲載しかなく,これらの記載等が,本件商標と同一又は社会通念上 同一の商標の使用とは認められず,本件指定役務のいずれかに関する使用ともいえ ない。また,原告の了解を取得せずにテレビ番組に出演したことに関して交わされ た,原告と株式会社C.A.Lとの間の合意書(乙1の1添付資料)における「加 護亜依」という記載は,原告に所属するタレントの氏名を明らかにするために使用 されただけであって,本件指定役務である「放送番組の制作」に関し,出所識別標 識として表示されたものではなく,商標法2条3項各号に定める「使用」のいずれ\nにも該当しない。 さらに,原告は,本件取消審判請求において,商標不使用の正当事由として,加 護亜依が商標権使用に協力的でなかったことや,加護亜依のスキャンダルのために 使用ができなかったことを主張したが(乙1の2),これらは,いずれも原告の所属 タレント自身ないし同人と原告との関係に関する事情であって,いわば,原告の内 部的な紛争にかかわる事情にすぎないから,本件商標の不使用がやむを得なかった といえる事情には該当せず,本件商標の不使用についての正当な理由とは認められ ない。

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平成26(ネ)10098  商標権侵害差止請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成27年7月16日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 販売名「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」が商標的使用でないと判断されました。問題の商標は「PITAVA」です。
 上記認定事実によれば,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の 表示(被控訴人各標章)は,有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」について,その塩であることを示す部分(「カルシウム」)の記載及び「ス\nタチン」の記載を省略した「略称」であることが認められる。
・・・
そして,医師,薬剤師等の医療従事者の間においては,後発医薬品の販売 名は含有する有効成分に係る一般的名称に剤型,含量及び会社名(屋号等) から構成されていることは一般的に知られているものと認められるから,医療従事者が,被控訴人各商品に接した場合,被控訴人各商品が「ピタバ\nスタチンCa錠1mg「明治」」等を販売名とする後発医薬品であること を認識し,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は,有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」の略称であるこ\nとを認識するものと認められる。 一方で,患者においては,PTPシートに入れられた状態で被控訴人各 商品の交付を受けた場合,PTPシートから被控訴人各商品を取り出して 服用する際に,PTPシートに記載された「ピタバスタチンカルシウム」 等の表示が自然に目に触れ,被控訴人各商品は「ピタバスタチンカルシウム」が含有された錠剤であること認識するものと認められるから,被控訴\n人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は,被控訴人各商品の含有成分を略記したものであることを理解するものと認められ\nる。
・・・
以上によれば,被控訴人各商品の需要者である医師,薬剤師等の医療従 事者及び患者のいずれにおいても,被控訴人各商品に付された「ピタバ」 の表示(被控訴人各標章)から商品の出所を識別したり,想起することはないものと認められるから,被控訴人各商品における被控訴人各標章の使\n用は,商標的使用に当たらないというべきである。 ウ したがって,被控訴人各標章は,「需要者が何人かの業務に係る商品で あることを認識することができる態様により使用されていない商標」(商 標法26条1項6号)に該当するものと認められる。

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平成26(ネ)10128  商標権侵害差止請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成27年6月8日  知的財産高等裁判所

 薬の有効成分について商標法26条で商標権の効力は及ばないと判断されました。原審は4条1項16号違反で無効と判断していましたが、原告は、指定商品を2件の商標権に分割し、品質誤認が起きない商標権にだけの請求に変更しました。
 前記争いのない事実等(3)ウによれば,被控訴人各全体標章を構成する語である「ピタバスタチン」とは,被控訴人各商品の有効成分である本件物質の慣用名で,本件物質の一般的名称である「ピタバスタチンカルシウム」から,塩についての記載である「カルシウム」を省略したものであり,本件商標権2の指定商品である「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」の「原材料」に当たるものである。\nそこで,本件における被控訴人による被控訴人各全体標章の使用が,法26条1項2号の「原材料」を「普通に用いられる方法で表示する」ものに当たるか否かを検討する。\nイ まず,「普通に用いられる方法で表示する」とは,一般的には,取引者や需要者の観点から見て,当該標章を自他商品識別力を発揮する態様で使用する場合を含まないと解されるところ,被控訴人各全体標章については,PTPシートに和文販売名を記載すべきとする本件取扱いに準拠して被控\n 訴人各商品のPTPシートに付されたものと認められる以上,被控訴人各商品の販売名の一部として使用されているとも解し得るから,自他商品識別力を発揮する態様での使用に当たることを否定することができないのではないかが問題となる。 しかし,被控訴人各商品のような「後発医薬品」に関しては,本件留意事項により,販売名を,有効成分の一般的名称を基本としたものにすることが要求されているところ,その趣旨は,有効成分が同一の後発医薬品に関しては,すべて同一の有効成分名が販売名に記載され,薬(有効成分)の取り違えが起きないようにすることにあると解される。したがって,後発医薬品について,PTPシートに販売名を記載するという取扱いの趣旨は,自他識別力のある販売名を表示させるというよりは,有効成分名をきちんと記載させるというところにあるとも解することができるから,少なくとも,後発医薬品のPTPシート等に,「ピタバスタチン」(あるいはピタバスタチンカルシウム)などといった有効成分名のみが記載されている限りにおいては,それがPTPシートに販売名を記載するという本件取扱いに準拠して行われたものであったとしても,その実質は,有効成分名(原材料名)を記載したものにとどまると評価することができるものというべきである。\nそして,PTPシートに「ピタバスタチン」という語を記載する行為が,原材料名を「普通に用いられる方法で表示する」場合に当たるかどうかを,需要者の観点も踏まえて検討してみると,前記(2)ア及びイのとおりの,本件物質を有効成分とする先発医薬品や後発医薬品の販売状況,医療現場で繁用されている医療専門書の記載内容,さらに,前記(2)イのとおりの後発医薬品の販売名についての本件留意事項の内容に照らせば,「ピタバスタチン」の語は,指定商品の需要者や取引者のうち少なくとも医師,薬剤師,看護師等の医療従事者においては,脂質異常症の治療に用いられる HMG−CoA還元酵素阻害薬である本件物質を指すものであることは広く認識されていたと認めることができる。 これに対し,需要者のうち患者については,医薬品について医療従事者と同程度の知識を有するとはいい難いし,本件留意事項の内容を一般的に認識しているともいい難いから,患者において,「ピタバスタチン」の語は脂質異常症治療薬である本件物質を指すことが広く認識されていたとはいい難い。 しかしながら,被控訴人各商品は,いずれも処方箋医薬品に指定されているから,患者は,医師等の処方箋なしにこれを購入することはできず,医師から処方を受ける際には,医師から,少なくともどのような性質で,どのような効能を持った薬剤を処方されるのかの説明を受け,さらに,被控訴人各商品を購入する際には,薬剤師から,被控訴人各商品の性質や効能\に加え,購入する商品が,その有効成分である本件物質の一般的名称や慣用名,あるいは販売名を成す「ピタバスタチン」あるいは「ピタバスタチンカルシウム」であるとの説明を受けることが一般的であると考えられる。これに加えて,本件物質を有効成分とする後発医薬品が,多数の製薬業者によって,「ピタバスタチンカルシウム」や「ピタバスタチンCa」を販売名の一部として現に販売されていることも併せてみると,「ピタバスタチン」の語は,実際には販売名というよりもむしろ,脂質異常症の治療に用いられるHMG−CoA還元酵素阻害薬である本件物質を指すものであることを容易に理解することができるものと考えられる。 以上の点を総合考慮すると,「ピタバスタチン」の語をPTPシート等に表示する行為は,脂質異常症の治療に用いられるHMG−CoA還元酵素阻害薬である本件物質の原材料名を表\示するものであり,これを自他商品識別力を発揮する態様で使用するものではないということができる。
ウ 次に,被控訴人各全体標章が,本件物質の一般的名称である「ピタバス タチン」の語のうち,「ピタバ」の部分を「スタチン」に比べて強調して表示する構\成であることが,「普通に用いられる方法で表示する」場合に当たるかどうかが問題となる。\n被控訴人各全体標章は,原判決別紙被告標章目録記載4ないし6のとおり,いずれもゴシック体の「ピタバ」と「スタチン」の各語を上下二段に横書きして成る構成であるところ,「ピタバ」の部分は,一見して目に付きやすい一段目に配置され,「スタチン」の部分と比較して相当大きな書体で記載され,その幅も「スタチン」の部分よりも広く外側に張り出している。よって,「ピタバ」の部分が視覚上強調されて感得されるものとみることができる。\nとはいえ,医療従事者にとっては,「ピタバスタチン」はHMG−CoA還元酵素阻害薬である本件物質を指すものであることが広く認識されていたと認めることができるのは前記イのとおりである。また,被控訴人各全体標章においては,「ピタバ」の部分が「スタチン」の部分に比べて視覚上強調された構成であるものの,前記(2)オに認定した事実を踏まえると,医療従事者にとっては,「ピタバ」の語は,少なくとも「ピタバスタチン」の語の一部として,あるいはこの語とともに用いられる場合には,明らかにその略称であると解されるから,かかる構成であることをもって,被控訴人各全体標章から本件物質を想起することが妨げられるということはできない。さらに,前記(2)ウのとおり,被控訴人各商品のPTPシートには,被控訴人各全体標章のほか,横書き一段の「ピタバスタチン」の記載があり,これと外箱における販売名の記載などを併せて見ると,被控訴人各全体標章が「ピタバ」ではなく「ピタバスタチン」を表したものであると認識することは,医療従事者にとっては容易であるということができる。\nそうすると,結局,医療従事者にとって,被控訴人各全体標章を見たと きには,一体として「ピタバスタチン」を表していること(あるいは,「ピタバ」の部分のみを取り出した場合には,「ピタバスタチン」の略称として用いられているのにすぎないこと)を,容易に理解することができるというべきである。\n次に,患者にとっては,被控訴人各商品は,いずれも処方箋医薬品に指定されているから,医師等の処方箋なしにこれを購入することはできず,医師から薬剤の処方を受ける際には,少なくともどのような性質でどのような効能を持った薬剤を処方されるか等について説明を受け,被控訴人各商品を購入する際には,薬剤師から,被控訴人各商品の性質や効能\,購入する商品が,その有効成分である本件物質の一般的名称や慣用名,あるいは販売名を成す「ピタバスタチン」あるいは「ピタバスタチンカルシウム」であるとの説明を受けることが一般的であると考えられることは,前記イにおいて説示したとおりである。 これに加え,前記(2)ウのとおり,被控訴人各商品のPTPシートにおいては,耳部に横書き一段の「ピタバスタチン」あるいは「PITAVASTATIN」の記載があること,被控訴人各全体標章が付された裏面にはそれと交互に横書き一段の「ピタバスタチン」の記載があること,表面には横書き一段の「ピタバスタチン」の記載のみがあり,仮にPTPシートを一錠ずつに切り離したとしても,表\面には必ず横書き一段の「ピタバスタチン」の語が付されていることとなることなども併せてみると,患者において,被控訴人各商品に付された被控訴人各全体標章が,一体として「ピタバスタチン」を指すものであること(あるいは,「ピタバ」の部分のみを取り出した場合には,それが「ピタバスタチン」の一部を取り出した略称にすぎないこと)を,さしたる困難もなく理解することができるというべきである。 したがって,被控訴人各全体標章は,取引者や需要者において,全体と して「ピタバスタチン」を表示するものとして認識されるか,又は「ピタバスタチン」の略称と容易に理解することができる語としての「ピタバ」を表\示するものとして認識されるものということができるから,その表示は,「普通に用いられる方法で表\示する」ものの域を出るものではないと認められる。
エ 以上によれば,被控訴人が被控訴人各商品のPTPシートに付して使用している被控訴人各全体標章は,本件商標権2の指定商品の原材料である「ピタバスタチン」を,普通に用いられる方法で表示するものと認められるから,法26条1項2号に当たり,これに対し,控訴人の有する本件商標権2の効力は及ばないというべきである。\n

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平成26(ワ)766  商標権侵害差止請求事件  商標権  民事訴訟 平成27年4月27日  東京地方裁判所

 商標的使用に該当せず,また,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標(商標法4条1項7号)に該当すると判断されました。
上記2(1)及び(2)で認定した厚労省通知及び日本ジェネリック製薬協会の要請は,類似した名称の使用による取違えを回避する観点から,販売名を見れば,需要者等に,当該後発医薬品の有効成分,剤型,有効成分の含有量及び販売している会社を認識できるようにすることを目的とするものといえる。そうすると,販売名のうち,有効成分,剤型,有効成分の含有量に係る部分は,あくまで後発医薬品の性質に係る情報を示すために付される名称であり,需要者等も同部分をかかる情報が表示されたものであると認識するのであるから,同部分は出所識別機能\を有するものと認めることはできない。
・・・
商標法4条1項7号は,商標登録を受けることができない商標として,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」を規定しているところ,ある商標を指定商品又は指定役務について使用することを特定人に独占させることが著しく社会的妥当性を欠くと認められるような場合には,当該商標は,同号に該当するものと解するのが相当である。 イ これを本件についてみるに,前記前提事実,前記2の認定事実及び弁論の全趣旨(当裁判所に顕著な事実を含む。)を総合すれば,1)本件商標を構成する「PITAVA」の文字は,医学分野の学会発表\や研究報告において,「Pitavastatin」(原告商品及び被告各商品の有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」について,塩に関する記載を省略した「ピタバスタチン」の英語表記である。)の略称として用いられている「Pitava」を大文字で表\記したものであること,2)被告各標章を構成する「ピタバ」の文字は,被告商品の有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」について,塩に関する記載を省略した「ピタバスタチン」の略称として用いられるものであること,3)原告は,平成15年9月以降,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする原告商品を製造販売してきたが,同商品の販売に当たり,本件商標を使用したことはないこと,4)原告は,本件特許権の存続期間が平成25年8月3日をもって満了し,同年12月以降,原告商品に対する後発医薬品の製造販売が開始されたことを受けて,当該後発医薬品の錠剤自体に「ピタバ」との記載を付している会社(キョーリンリメディオを除く。)に対して,商標権侵害訴訟を提起したこと,5)上記後発医薬品(被告各商品を含む。)の錠剤に「ピタバ」との記載がされた趣旨は,取違えを回避することを目的とした厚労省通知及び日本ジェネッリク製薬協会の要請に従おうとしたものであることが,いずれも認められる。 そうとすれば,原告による本件商標に係る商標登録出願は,本件特許権の存続期間満了後,原告のライセンシー以外の者による後発医薬品の市場参入を妨げるという不当な目的でされたものであることが推認されるばかりか,本件商標を指定商品「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」に使用することを原告に独占させることは,薬剤の取違え(引いては,誤投与・誤服用による事故)を回避する手段が不当に制約されるおそれを生 じさせるものであって,公共の利益に反し,著しく社会的妥当性を欠くと認めるのが相当である。
なお,付言するに,原告のような先発医薬品を製造販売する者が後発医薬品の市場参入を阻止したいと考えること自体は,無理からぬところであるが,その手段は,特許権など医薬品それ自体に関する権利の行使によるべきであって,化合物の一般的名称である「ピタバスタチンカルシウム」の略称として用いられる「PITAVA」の文字を標準文字で書してなる本件商標と,薬剤の取違えを回避するため被告商品の錠剤表面に印字された「ピタバ」(有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」の略称として用いられることは,前示のとおりである。)との文字からなる標章(被告標章)とが類似する旨主張することは,公益上,容認することができないというべきである。\n

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平成25(ワ)27442  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成26年11月14日  東京地方裁判所

 被告の使用形態は、商標的使用であると認定されました。
 前記(2)のとおり,被告商品においては,30cm四方のデザインの一単位に一つの被告標章が配されているところ,証拠〈略〉によれば,被告標章は,そのデザインの中において,他の文字列から分離して表記されており,その「SHIPS」の文字列は,全て大文字で,かつ,「ANCHOR」の文字列とともに,他の文字列よりもやや大きい文字サイズであり,さらに,他の\n 文字列がいずれも文又は句を構成しているのに対して,この「SHIPS」及び「ANCHOR」はそれぞれ一単語のみで独立して用いられていることが認められる。そして,「ANCHOR」の文字列は,それが意味するところの「錨」のマークの上に配置され,同マークの下の「Anchors can either be temporary or permanent.」の英文を含めて,一つの固まりとして一体的に表示されているのに対して,被告標章は,それが意味するところの「船」ではなく,「錨」のマークの下に配置され,同マークの上の「SINCE1981」の文字列を含めて,一つの固まりとして一体的に表\示されている。 このような被告商品における被告標章の配置,文字の大きさ及び表示態様からすれば,被告標章は,被告商品のデザインの中で,十\分に独立して認識可能な標章として表\示されているということができる。 このことに加えて,被告標章が,一般に企業や団体の創業年又はブランドの設立年などを表す際に用いられる「SINCE」の表\記を伴い,上記のとおり「SINCE1981」の文字列と一体的に表示されていること,及び,前記(1)のとおり,「SHIPS」の文字列からなる本件商標が服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識され強い識別力を持つ商標であることを総合すると,被告商品において被告標章は,その需要者に対して,商品の自他を識別し,出所を表示する態様で用いられていると認めることができる。\nしたがって,被告標章は,被告商品において,商標として使用されていると認めるのが相当である。
(4) 被告らの主張について
ア この点に関して被告らは,被告商品において被告標章は装飾的・意匠的な図柄の一部をなしているにすぎず,商標的使用に当たらないと主張する。 しかし,仮に被告標章が被告商品のデザインの一部であるといえるとしても,そのことによって,直ちに商標としての使用が否定されるものではなく,装飾的・意匠的な図柄の一部をなしている標章であっても,その標 章に装飾的・意匠的な図柄を超える強い識別力が認められるときは,装飾的・意匠的図柄であると同時に自他識別機能・出所表\示機能を有する商標としての役割を果たす場合があるというべきである。そして,被告商品のデザインにおいては,約30cm四方の一単位に,被告標章以外にも複数のマークや文字が表\示されており,赤色で表示された「ANCHOR」の文字が目立つ態様であることは否めないが,それらの中においても被告標章が十\分に独立した標章として認識されて,被告商品において自他識別・出所表示の機能\を果たしていると認められることは前記(3)のとおりであるから,被告らの上記主張は採用することができない。 また,被告らは,被告標章が錨マークと一体となって分離不能な「単位表\示部」を形成しているから,単独で取り出すことができないと主張する。 この点,確かに被告標章は,錨マークのすぐ下に記載されているから,同マーク及びそのすぐ上に記載された「SHINCE1981」の表示も合わせて,一つの固まりとして一体的に配置されているといえる。しかし,錨マークは,「錨」の形をした図形であり,一方,被告標章である「SHIPS」の文字列は「船」を意味する英単語であるから,一つの固まりの中でも,それぞれが異なる観念を持つものとして,独立して認識し得ることは明らかである。\nしたがって,被告標章が錨マークと分離不能であるとの被告らの主張は採用できない。\n

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平成25(行ケ)10023 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年06月20日 知的財産高等裁判所

 「業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲーム機,ゲーム機(テレビジョン受像機専用のもの),コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」(以下「本件指定商品」という。)について不使用であるとした審決が維持されました。
 原告は,本件ソフトウェアを記憶させたCD−Rに本件商標を付する行為は商標法2条3項3号の使用に該当するとか,本件ソ\フトウェアを記憶させたCDRを,すずめ,AIRCAST及びLSコミュニケーションズに提供することによって役務を提供した行為は,同項4号の使用に該当するなどと主張する。しかしながら,商標法2条3項3号及び同項4号は,役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為(同項3号)又は利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為(同項4号)を標章の使用と定めているのであって,いずれも役務の提供における標章の使用についての規定であるから,これらの規定に基づき,本件指定商品についての本件商標の使用を認定することはできない。したがって,原告の主張は,採用することができない。
 (2) 原告は,ホームページにおいて,本件商標を付して「麻雀ゲームジャンナビ(PC版)」「麻雀ゲームジャンナビ(携帯版)」を掲載した行為は,商標法2条3項8号に規定する商標の広告的使用に当たると主張する。しかし,原告のホームページ(甲4,5)には,「ジャンナビ」との標章が付されたパソコン版又は携帯版の麻雀ゲームが掲載されているものの,これらの麻雀ゲームは,パソ\コン上又は携帯電話の画面上でいわゆるオンラインゲームとして遊戯するものであるから(甲4,5),いずれも本件指定商品である業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲーム機,ゲーム機(テレビジョン受像機専用のもの)又はコンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体に該当するものではない。

◆判決本文

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◆平成25(行ケ)10024

◆平成25(行ケ)10025

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平成23(ネ)2238等  商標権 民事訴訟 平成25年03月07日 大阪高等裁判所

 堂島ロールで有名なモンシュシュの商標権侵害控訴事件です。高裁は地裁の判断を維持しました。損害賠償額における寄与率ですが、原審0.3%でしたが、平成21年10月までが0.3%,同年11月以降が0.2%と認めるのが相当であると判断しました。
 平成21年11月以降は,前提事実記載のとおり,被告標章1ないし6を包装箱,紙袋,保冷バッグに使用することが中止されたことからすると,被告各標章がその購買動機の形成に寄与する割合は,それ以前よりもさらに低下したものと認められる。

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◆原審はこちらです。平成22(ワ)4461平成23年06月30日大阪地裁

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平成23(ワ)23260 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成24年09月06日 東京地方裁判所

 Tシャツに「SURF'SUP」を含む標章の表示が、原告商標「SURF\SUP」の使用に該当するかどうかが争われました。裁判所は、被告標章に含まれている「SURF\SUP」の部分には識別力がないとして、請求を棄却しました。
 被告標章は,胸元に目立つように表示され,その中でも「SURF\SUP」の部分が大きく表\示されているが,「SURF'S UP」は, 原告の造語などではなく,サーフィン関連のものとして,一般にも,また,Tシャツ等にもしばしば使用されるありふれた表現であり,需要者がその標章により原告の商品であると認識するなど,それが原告の商標として周知又は著名であると認めるに足りる証拠もないから,それ自体が有する出所識別力はもともと弱いものということができる。そして,被告標章は,「SURF\S UP」のみからなるものではなく,その「P」の縦棒部分には,白抜きで「GOTCHA」の文字が「C」を左右反転させた人目を引く形態で配され,また,「UP」の上部には波の図やGマーク商標が配され,これらが一体として表示されているものである。Tシャツの出所が一般に表\示される襟ネームや前身頃の裾付近に付された2か所のタグには,胸元に付された「GOTCHA」の文字やGマーク商標に対応するGOTCHA商標やGマーク商標等が付され,襟ネームの下方にも「GOTCHA」の文字が記載され,背面側にもGOTCHA商標2等が表示されていて,商品タグにも「GOTCHA」の文字やGマーク商標が記載されている。これに対し,「SURF\S UP」は上記の胸元部分以外には表示されていない。こうした表\示態様に照らすと,被告商品に接した需要者は,被告商品を,「SURF'S UP」なるブランドのものとしてではなく,むしろ「GOTCHA」というブランドのものと認識するものと考えられる。とりわけ,被告が,「GOTCHA」の名を冠したサーフィンの大会を協賛し,雑誌にも「GOTCHA」や被告の各商標を頻繁に掲載していることからすると,被告の「GOTCHA」や被告の各商標は,サーフィン愛好家はもちろんのこと,被告商品の需要者と考えられる10代から20代の若者の間においても相当程度周知性を有すると推認される上,被告商品は,被告やその関連会社の直営店で,「GOTCHA」と明示される態様で販売され,かつ,それらの店舗では被告やその関連会社以外の商品は取り扱われていないから,被告商品の胸元に「SURF'S UP」が目立つように表示されているとしても,被告商品に接した需要者は,「SURF\S UP」ではなく,むしろ「GOTCHA」によってその出所を識別するのが普通であると考えられる。そうすると,被告標章における「SURF'S UP」の表示は,商品の出所識別機能\を果たす態様で使用されていると認めることはできないから,被告標章の使用は本来の商標としての使用には当たらないというべきである。
 (3) 原告は,「SURF'S UP」が被告商品の胸元に目立つように,しかも周辺の文字等とは区別して明確に認識し得る態様で表現されているから,出所識別機能\をも有するものとして使用されていると主張をする。確かに,胸元にブランド名等を目立つように表示した衣料品も日常的に目にするところではあるが,衣料品のデザインは,通例,その装飾性やファッション性と切り離し難いものであり,胸元に目立つように表\示されたものであるからといって,当然にそれが出所識別機能を有するものであるということはできない。そして,被告標章においては,「GOTCHA」の文字が「SURF\S UP」の「P」を白抜きし,しかも「C」を左右反転させた目立つ形態で使用されるなどしているから,被告商品に接する需要者は,胸元のみならず襟ネームやタグ等にも記載されている「GOTCHA」がその商品の出所を表示するものと認識するというべきである。また,原告は,「GOTCHA」が周知であるとは認められないし,仮に被告の商標として周知であるとしても,被告による「SURF\S UP」の使用行為が本件商標権の侵害を免れることにはならないと主張する。しかしながら,前記(2)の認定事実によれば,「GOTCHA」は,被告商品をはじめとする被告の取扱商品の需要者に対して相当程度の周知性を獲得していると考えられるのであって,そうであれば,需要者が,当該商品の出所を「GOTCHA」であると認識することは当然というべきである。さらに,原告は,「SURF'S UP」は英和辞典に載っていないし,「いい波が来た」との意味を理解する者は極めて少数であるから,ありふれた一般的な英語表現であるということはできないと主張する。しかしながら,被告商品の需要者が「SURF\S UP」の意味を理解しているかどうかにかかわらず,サーフィンに関連して「SURF'S UP」がしばしば用いられていることに鑑みると,その表現はありふれたものであって,出所識別力が弱いことは否定することができない。\n

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平成24(行ケ)10011等 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年06月06日 知的財産高等裁判所

 不使用であるとした審決が取り消されました。
 ここで,ネオンブラケットが用いられるパイロットランプは,これが取り付けられた機器の状態(例えばスイッチのオン,オフ)を示す表示灯としての機能\を果たすものであるが,甲第25,第44号証によれば,ネオンランプ(ネオンブラケット)をその定電圧特性を活かして回路保護のために用いることがあることが認められるから,上記カタログにおける使用商標1,2の使用をもって,「電子応用機械器具及び部品」についての使用と評価することが可能である。この点,被告は,ネオンランプの主たる用途は照明にあるとか,原告の「ネオンランプ」が電球の類として用いられることは明らかであると主張するが,種々の発光色のネオンランプを用いて照明装置を構\成することがあるとしても,原告の「ネオンブラケット」を照明装置ないしその部品にすぎないとしてよいと断定することはできないし,カタログ(甲8の3)に電球交換型ネオンブラケットのための「ネオン交換電球」が掲載されているとしても(21頁),ネオンランプを交換できるようにするために電球型のネオンランプが採用されているにすぎず,その名称ゆえに一般の照明用の「電球」と単純に同一視してよいかは疑問である(上記カタログには,ネオンランプを交換できないタイプのネオンブラケットも掲載されている。)。そうすると,被告の上記主張を採用することはできない。2 甲第10ないし第19号証によれば,原告は,平成20年7月ないし平成23年1月ころ,顧客に対し商品「センサー用LED基板Assy」,「拡散照明装置」,「透過照明装置」,「2面バックライト照明」を納入するに当たり,取引書類である納品書や納入仕様書に使用商標1を使用したことが認められる。上記「センサー用LED基板Assy」は基板上に複数のLED(発光ダイオード)を並べて実装したもの(甲10),「拡散照明装置」,「透過照明装置」は基板上にLEDのほかに,ツェナーダイオード,トランジスタ,コンデンサー等を実装して装置を構成したもの(甲11,12,29,30,51),「2面バックライト照明」も基板上にLEDのほかに,定電圧ダイオード等を実装し,偏光板と組み合わせるなどして装置を構\成するもの(甲13,14)であるが,これらは顧客が画像解析装置を製造するために,注文を受けた原告においてその構成部品(装置)を設計,製造したものである(弁論の全趣旨)。ここで,上記「センサー用LED基板Assy」等が画像解析を行うために,対象となる物に光を照射する機能\を果たすものであるとしても,日常生活において光を照らして空間を明るくする目的とは程遠いことは明らかである。そして,上記「センサー用LED基板Assy」等は,電子部品であるLEDやダイオード等を使用して構成されており,その機能\に照らせば,電子の作用を応用し,その電子の作用が当該機械器具にとっての構成要素となっているということができる。そうすると,原告は,「電子応用機械器具及びその部品」につき,取引書類である納品書や納入仕様書に使用商標1を使用したということができる。\n

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平成22(ワ)18759 損害賠償請求事件 平成23年06月29日 東京地方裁判所

 パソコンの一部の機能\についての使用は、商標的使用でないと判断されました。平成22(ワ)18759号と同じ判断ですね。
 被告は,「HP QuickLook」又は「HPQuickLook2」,「HP QuickLook3」との表示を,上記ソ\フトウェア又は機能の名称として使用しているものであって,甲9又は10に接したコンピュータ商品の需要者は,前記(3)ア(ア)でみた甲9及び10における「クイックルック」,「HP QuickLook」,「HP QuickLook2」,「HP QuickLook3」,「HP QuickLook(クイックルック)」及び被告標章3−2に関する説明表示の内容並びに前記(ウ)でみた甲9及び10の広告目的に加えて,前記(1)ウでみたとおり,「quick look」が「速く(すばやく)見る」との意味を有するものと理解されることとも相まって,被告各標章(ただし被告標章3については被告標章3−2)につき,被告製のノート型コンピュータの電源が切られているなど,直ちにメールやスケジュールを開くことができない状態であっても,専用ボタンを押すことにより,すばやくメール等の内容をコンピュータの画面に表示させることができるという,被告製のノート型コンピュータが一般的に有する一つの機能\又は上記機能を実現させるために当該コンピュータに搭載されたソ\フトウェアの名称を表示又は意味すると認識するにとどまるものと認められ,被告各標章から,特定のコンピュータ商品としての被告商品の出所を識別するものとしてその出所を想起するものではないと認められる。(オ) したがって,被告各標章が甲9及び10のウェブページにおいて被告商品の自他商品識別機能・出所表\示機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,甲9及び10のウェブページにおける被告各標章の使用は,被告商品に関して,商標としての使用(商標的使用)に当たらない。\n

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平成22(ワ)4461 商標権侵害差止等請求事件 平成23年06月30日 大阪地方裁判所

 堂島ロールの販売元である「モンシュシュ」の使用が、商標「モンシュシュ」にかかる商標権侵害であるとして、差止、損害賠償が認定されました。ただ、賠償額は寄与度を考慮して0.3%と判断されました。
 したがって,被告の売上げについては,平成18年度から平成20年度までは,堂島ロールの知名度が大きく寄与しており,平成21年度以降も,堂島ロールの製造販売元である菓子店としての,固有の顧客吸引力が寄与していたといえる。また,被告商品は,原告商品とは異なり,洋菓子全般であって,通年販売されていたものであるから,需要者が被告商品を購入する場合,被告各標章がその購買動機の形成に寄与することは,それほど多くないと考えられる。エ 前記イ,ウの事情及び本件に現れた一切の事情を総合考慮すれば,使用料相当額を算定するにあたって採用すべき本件商標の使用料率は,0.3%と認めるのが相当である。

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平成22(ワ)18759 損害賠償請求事件  平成23年05月16日 東京地方裁判所

 「Mac OS X」の一部の機能である「Quick Look」について商標的使用でないとして非侵害と判断しました。
 このような甲47のウェブページに接したコンピュータ商品およびOS商品の需要者は,「Quick Look」が,ファイルを開かずにファイルの内容をすばやくプレビュー表示するという機能\を有する,被告のOSソフトウェア商品である「Mac OS X」の主なアプリケーションの一つであると認識し,被告標章1も,当該機能を有する被告のOSソ\フトウェア商品の主なアプリケーションの一つを表示するものと認識すると認められる。そして,被告は,後記エのとおり,ファイルを開かずにファイルの内容をすばやくプレビュー表\示するという機能を使えるようにするために埋め込むプログラム(プラグイン)を作成するために必要な技術仕様を公開,提供していることが認められる。しかしながら,前記アのとおり,被告は,ファイルを開かずにファイルの内容をすばやくプレビュー表\示するという,被告OSソフトウェア商品が有する機能\を「Quick Look」(クイックルック)と表示していることが認められるところ,後記エのとおり,被告は,当該機能\を使えるようにするためのプログラム(プラグイン)を作成するために必要な技術仕様の公開,提供をしていることは認められるものの,当該プラグインを自ら作成したり,これを配布したりするなどの行為を行っていると認めることはできないから,結局,被告が被告のOSソフトウェア商品の主なアプリケーションの一つとして表\示する「Quick Look」(クイックルック)は,被告のOSソフトウェア商品の有する当該機能\を,被告のOSソフトウェア商品の「アプリケーション」と称して表\示したものにすぎないというべきである。そうすると,甲47のウェブページの「Quick Look」との表示は,被告のOSソ\フトウェア商品が有する機能の一つを表\示したものであり,甲47のウェブページに接した被告コンピュータ商品あるいは被告OSソフトウェア商品の需要者は,「Quick Look」が,被告のOSソフトウェア商品がアプリケーションとして有するファイルを開かずにファイルの内容をすばやくプレビュー表\示するという機能を表\示するものであると認識するものと認められるが,他方で,被告のOSソフトウェア商品の出所については,甲47のウェブページの「Quick Look」の表示がその左上部に記載された,「Mac OS X」の一機能として記載されていることからすると,被告のOSソ\フトウェア商品の出所については,その左上部に記載された「Mac OS X」の標章から想起し,「Quick Look」の語から想起するものではないものと認められる。したがって,被告標章1が甲47のウェブページにおいて被告OSソフトウェア商品の自他商品識別機能\・出所表示機能\を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,甲47のウェブページにおける被告標章1の使用は,商標としての使用(商標的使用)に当たらない。

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平成20(ワ)34852 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成22年11月25日 東京地方裁判所

 商標的使用でないとして非侵害と判断されました。
 原告は,被告各標章を構成する「塾なのに家庭教師」の語は,「塾であるにもかかわらず,家庭教師のように個別対応の懇切丁寧な教授を行うこと」を暗示する造語であって,役務の性質を,日常的には使用されることのないインパクトのある言葉で表\現したものであり,被告の提供する役務の自他識別標識として機能するものであるから,被告による被告チラシ及び被告ウェブサイトにおける被告各標章の使用は,商標的使用に当たる旨主張する。しかしながら,「塾なのに家庭教師」の語は造語であるが,前記(1)イ認定のとおり,「塾であるにもかかわらず家庭教師」のようであることを示す語であるというにとどまり,「塾なのに家庭教師」の語それ自体から直ちに一義的な特定の観念が生じるものとはいえない。そして,ある標章の使用が商標的使用に当たるかどうかは,その具体的使用態様にかんがみて判断すべきであるところ,前記アないしオで認定したとおり,被告チラシ及び被告ウェブサイトにおける被告各標章の具体的な使用態様に照らすならば,被告各標章は,被告の提供する「学習塾の教授」の役務の出所表示機能\・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできない。・・・・原告は,「塾なのに家庭教師」の語が,被告チラシにおいて,他の記述と区別された態様で「東京個別指導学院」,「関西個別指導学院」の語と被告チラシの上下位置で対になるように使用され,あるいは,被告ウェブサイトにおいて,他の記述と区別された態様で「TKG」の語と並べて使用されることによって,需要者は,「塾なのに家庭教師」の語を「東京個別指導学院」,「関西個別指導学院」あるいは「TKG」の語と結びつけて記憶するようになるのであり,「塾なのに家庭教師」の語は,これに接した需要者が即座に一定の出所を想起するように使用されていることは明らかである旨主張する。しかしながら,被告標章1ないし被告標章4は,前記アないしエのとおり,被告チラシにおいて,「東京個別指導学院名古屋校」の標章等及び「TKG」の標章とは別の位置にそれぞれ離れて記載され,また,被告標章5は,前記オのとおり,被告ウェブサイトにおいて,「TKG」の標章と並記されて表\示されているものの,同標章と文字色と大きさも異なるのであるから,需要者において,必ずしも「東京個別指導学院名古屋校」等の標章又は「TKG」の標章と「塾なのに家庭教師」の語を結びつけて記憶するのが自然であるとまではいえない。また,前記(2)イのとおり,学習塾の業界関係者,生徒及びその保護者の間においては,「東京個別指導学院」の標章は,被告が経営する個別指導方式の学習塾を表示するものとして著名なものとなっており,「TKG」の標章は,「東京個別指導学院」の略称として広く認識され,周知なものとなっていたことに照らすならば,むしろ,需要者は,「東京個別指導学院」や「TKG」の文字に着目して,役務の出所が被告であると認識すると解するのが自然である。さらに,仮にこれらの語を結びつけて認識したとしても,前記アないしオのとおり,需要者は,被告チラシや被告ウェブサイトにおける他の記載部分と相俟って,「塾なのに家庭教師」の語は,学習塾であるにもかかわらず,自分で選んだ講師から家庭教師のような個別指導が受けられるなどの学習指導の役務を提供していることを端的に記述した宣伝文句であると認識し,その役務の出所については「塾なのに家庭教師」の語から想起するものではないものと認められる。\n

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平成21(ワ)30827 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成22年09月30日 東京地方裁判所

    商標的使用でないとして侵害でないと判断されました。
 前記(ア)及び(イ)の認定事実に加えて,2匹の猿のキャラクターのうち,「BABY MILO」(ベイビーマイロ)のキャラクター及びその下部に表示された「*A BATHING APE®」のブランドは,被服等のファッションに関心のある若者層の間では広く認識されていたこと(前記(1)エ(ウ))からすると,これらの若者層が被告商品1に接した場合には,被告商品1の前身頃の中心部分にある「BABY MILO」(ベイビーマイロ)のキャラクター及び雌の猿のキャラクターについて着目し,これらのキャラクターから商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を受けるものと認められ,一方で,これらのキャラクターの背景の一部として模様的に描かれた被告標章1については,「ピースマーク」として「平和」を表現するために用いられたものと認識し,商品の出所を想起させるものではないものと認められる。また,これらの若者層以外の一般消費者においても,「ピースマーク」は「平和」の象徴として広く認識されていること,被告商品1の前身頃において上記キャラクターが中心部分に配置され,被告標章1がキャラクターの背景の一部として模様的に描かれていることに照らすならば,被告標章1については,「ピースマーク」として「平和」を表\現するために用いられたものと認識し,商品の出所を想起させるものではないものと認められる。そうすると,被告標章1が被告商品1において商品の出所表示機能\・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,被告商品1における被告標章1の使用は,本来の商標としての使用(商標的使用)に当たらないというべきである。\n

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平成21(ワ)33872 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成22年08月31日 東京地方裁判所

 商標権侵害等について、電子モール運営者が行為主体に該当するかについて、裁判所は該当しないと判断しました。
 前記前提事実によれば,i)被告が運営する楽天市場においては,出店者が被告サイト上の出店ページに登録した商品について,顧客が被告のシステムを利用して注文(購入の申込み)をし,出店者がこれを承諾することによって売買契約が成立し,出店者が売主として顧客に対し当該商品の所有権を移転していること,ii)被告は,上記売買契約の当事者ではなく,顧客との関係で,上記商品の所有権移転義務及び引渡義務を負うものではないことが認められる。これらの事実によれば,被告サイト上の出店ページに登録された商品の販売(売買)については,当該出店ページの出店者が当該商品の「譲渡」の主体であって,被告は,その「主体」に当たるものではないと認めるのが相当である。したがって,本件各出店者の出店ページに掲載された本件各商品についても,その販売に係る「譲渡」の主体は,本件各出店者であって,被告は,その主体に当たらないというべきである。・・・以上のとおり,本件各出店者の出店ページに掲載された本件各商品の販売に係る「譲渡」(商標法2条3項2号)の主体は,出店者であって,被告は,その主体に当たらないというべきであり,これと同様に,「譲渡のために展示」する主体は,出店者であって,被告はこれに当たらないというべきである。また,不正競争防止法2条1項1号及び2号の「譲渡のための展示」又は「譲渡」についても,商標法2条3項2号と同様に解するのが相当である。

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平成21(ワ)33872 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成22年08月31日 東京地方裁判所

 商標権侵害等について、電子モール運営者が行為主体に該当するかについて、裁判所は該当しないと判断しました。
 前記前提事実によれば,i)被告が運営する楽天市場においては,出店者が被告サイト上の出店ページに登録した商品について,顧客が被告のシステムを利用して注文(購入の申込み)をし,出店者がこれを承諾することによって売買契約が成立し,出店者が売主として顧客に対し当該商品の所有権を移転していること,ii)被告は,上記売買契約の当事者ではなく,顧客との関係で,上記商品の所有権移転義務及び引渡義務を負うものではないことが認められる。これらの事実によれば,被告サイト上の出店ページに登録された商品の販売(売買)については,当該出店ページの出店者が当該商品の「譲渡」の主体であって,被告は,その「主体」に当たるものではないと認めるのが相当である。したがって,本件各出店者の出店ページに掲載された本件各商品についても,その販売に係る「譲渡」の主体は,本件各出店者であって,被告は,その主体に当たらないというべきである。・・・以上のとおり,本件各出店者の出店ページに掲載された本件各商品の販売に係る「譲渡」(商標法2条3項2号)の主体は,出店者であって,被告は,その主体に当たらないというべきであり,これと同様に,「譲渡のために展示」する主体は,出店者であって,被告はこれに当たらないというべきである。また,不正競争防止法2条1項1号及び2号の「譲渡のための展示」又は「譲渡」についても,商標法2条3項2号と同様に解するのが相当である。

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平成21(ワ)657 商標使用差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成21年11月12日 東京地方裁判所

 「朝バナナダイエット」を含む題号の本について、商標権侵害、不競法違反は成立しないと判断されました。
 ところで,商標の使用が商標権の侵害行為であると認められるためには,登録商標と同一又は類似の第三者の標章が,単に形式的に指定商品又はこれに類似する商品等に表示されているだけでは足りず,その商品の出所を表\示し自他商品を識別する標識としての機能を果たす態様で使用されていることを要するものと解すべきである。前記1で認定したところによれば,被告書籍の内容は,「朝バナナダイエット」というダイエット方法を実行し,ダイエットに成功するために,著者が成功の秘訣と考える事項を40項目挙げるというものであり,題号の表\示も,被告書籍に接した読者において,書籍の題号が表示されていると認識するものと考えられる箇所に,題号の表\示として不自然な印象を与えるとはいえない表示を用いて記載されているといえる。そうすると,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」を含む被告書籍の題号の表\示を,被告書籍が「朝バナナダイエット」というダイエット方法を行ってダイエットに成功するための秘訣が記述された書籍であることを示す表示であると理解するものと解される。なお,被告書籍の題号のうち,「朝バナナ」の文字部分は,「ダイエット成功のコツ40」の部分に比べて大きく記載されており,被告書籍の題号中当該部分が強調されているといえる。しかしながら,「朝バナナ」という用語は,朝食時にバナナと水を摂取することを基本とするダイエット方法として知られる「朝バナナダイエット」を略称した用語として一般に知られていること(甲7ないし18,30,32,34ないし40,42),両部分は統一感のあるデザイン,色調で記載されていることに照らせば,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」という部分を,原告の出版活動と関連させて理解するというよりは,むしろ,被告書籍が「朝バナナダイエット」に関する内容の書籍であることを強調する部分であると理解するものと考えられる。(4)以上によれば,被告書籍のカバーや表\紙等における被告標章の表示は,被告標章を,単に書籍の内容を示す題号の一部として表\示したものであるにすぎず,自他商品識別機能ないし出所表\示機能を有する態様で使用されていると認めることはできないから,本件商標権を侵害するものであるとはいえない。・・・自己の商品表\示中に,他人の商品等表示が含まれていたとしても,その表\示の態様からみて,専ら,商品の内容・特徴等を叙述,表現するために用いられたにすぎない場合には,他人の商品等表\示と同一又は類似のものを使用したと評価することはできない。前記1で認定したところによれば,被告書籍の内容は,「朝バナナダイエット」というダイエット方法を実行し,ダイエットに成功するために,著者が成功の秘訣と考える事項を40項目挙げるというものであり,題号の表示も,被告書籍に接した読者において,書籍の題号が表\示されていると認識するものと考えられる箇所に,題号の表示として不自然な印象を与えるとはいえない表\示を用いて記載されているといえる。そうすると,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」を含む被告書籍の題号の表示を,被告書籍が「朝バナナダイエット」というダイエット方法を行ってダイエットに成功するための秘訣が記述された書籍であることを示す表\示であると理解するものと解され,被告標章を含む被告書籍の題号は,専ら,被告書籍の内容を表現するために用いられたものであると認めるのが相当である。」\n

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◆平成18(ワ)4029 商標権侵害差止等請求事件 商標権民事訴訟 平成19年05月16日 東京地方裁判所

   著名商標「ELLE 」を含む名称のロックバンド名「ELLEGARDEN」を付したTシャツ等について一部の使用態様は商標権侵害であると認定されました。
   「被告標章は,それぞれ具体的なデザインに相違はあるものの,いずれも「ELLEGARDEN」の10文字の欧文字から成る。このうち,「ELLE 」の部分は,上記のとおり我が国において著名な商標である本件ELLE 商標と同じ綴りから成る。また,「GARDEN 」の部分は,我が国における英語教育の水準からすると,それに接した需要者により,「庭,庭園」等の意味を有する普通名詞であると理解されるため,被告標章は,同需要者により,「ELLE 」と「GARDEN 」の2つの単語より成るものとして理解されるものと認められる。なお,我が国におけるドイツ語教育の水準からすると,同需要者により,「ELLE 」がドイツ語において長さの単位を意味する単語であると理解されることはないと認められる。著名商標は,その著名性故に看者の強い注意を惹き,結合商標の中に著名商標と同じ綴りが含まれる場合,当該著名商標と同じ綴りの部分に看者の注意が向くと考えられるところ,「ELLEGARDEN 」のうち「ELLE 」の部分は,著名な本件ELLE 商標と同じ綴りから成るから,当該部分は極めて強い出所表示機能\を有すると認められる。他方,「GARDEN 」の部分は,著名商標と同じ綴りの「ELLE 」部分に比し,出所表示機能\が弱いというべきである。したがって,被告標章の要部は,「ELLE 」の部分であると認められる。・・・前記1(3)アに述べたことに加え,被告標章(10)が本件ELLE 商標に極めて類似したデザインを採用していることからすると,被告標章(10)の要部は「ELLE 」の部分であると認められる。このため,前記1(3)イ〜エで述べたと同様に,本件ELLE 商標と被告標章(10)とは,外観,称呼及び観念において類似する。b 前記1(3)オで述べたとおり,原告はファッション関係の事業を行うものであり,音楽関連事業その他のエンタテインメント関連事業を行っていないが,弁論の全趣旨によれば,音楽はファッションに関心のある人々が現代における生活の一部として関心を持つ分野であると認められるから,ファッションと音楽とは,商品又は役務の類似性の観点から見ても,類似性のある分野であると認められる。c しかも,前記(1)セ(ア)のとおり,その使用態様及び本件ELLE 商標に極めて類似した本件標章(10)の字体等から,使用態様(10)に接した需要者が被告標章(10)から本件CD のミュージシャンを想起するものではない。d よって,被告標章(10)を使用態様(10)で使用した被告商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認混同されるおそれがあると認められる。」

◆平成18(ワ)4029 商標権侵害差止等請求事件 商標権民事訴訟 平成19年05月16日 東京地方裁判所

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◆H17.12. 8 大阪地裁 平成16(ワ)12032 商標権 民事訴訟事件

   サイトのトップページを表示するためのhtmlファイルに、メタタグとして、「meta name="description"content="クルマの110番。輸入、排ガス、登録、車検、部品・アクセサリー販売等、クルマに関する何でも弊社にご相談下さい。"」と記載することが、登録商標「クルマの110番」の使用といえるかが争われました。裁判所は、役務に対する広告であるとして、損害賠償を認めました。
   「一般に、事業者が、その役務に関してインターネット上にウェブサイトを開設した際のページの表示は、その役務に関する広告であるということができるから、インターネットの検索サイトにおいて表\示される当該ページの説明についても、同様に、その役務に関する広告であるというべきであり、これが表示されるようにhtmlファイルにメタタグを記載することは、役務に関する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供する行為にあたるというべきである。・・・さらに、被告会社は、「クルマの110番」という表\示を見て、被告サイトを閲覧した者がいたとしても、被告サイトにはどこにも「クルマの110番」という表示はないのであるから、被告サイトが原告のものとは異なることはすぐに分かるのであって、出所識別機能\は害されず、注文時には誤認混同が生じないとも主張する。しかしながら、ある事業者が、複数の標章を並行して用いることはしばしばあることであるから、インターネットの検索サイトにおけるページの説明文の内容と、そこからリンクされたページの内容が全く異なるものであるような場合はともかく、ページの説明文に存在する標章が、リンクされたページに表示されなかったとしても、それだけで、出所識別機能\が害されないということはできない。」

◆H17.12. 8 大阪地裁 平成16(ワ)12032 商標権 民事訴訟事件

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◆H17. 7.20 知財高裁 平成17(行ケ)10246 商標権 行政訴訟事件

 商標の使用が争われた事例です。争点は何点かありますが、あるソフトに同梱されている付属品ないし付加されている場合に、そのソ\フトが商標法上の商品に該当するのかが1つの争点となりました。
 裁判所は、「ソフトウエアが必ずしも常に単独で販売されるとは限らず,独立した複数のソ\フトウエアを収録して1つの商品として販売されることがあることは,よく知られているところであるが,OCRソフトウエアは,画像データとして読み取った文字情報を文字データに変換するという機能\を有するソフトウエアであり,そのようなソ\フトウエアが各種機器や文字データを扱う別のソフトウエアに添付,同梱される例が多いこと,その種類も決して少なくなく,多くのメーカーからさまざまな名称が付されて提供されていることは,当裁判所に顕著である。そして,そのような添付,同梱されたOCRソ\フトウエアがいかなる者(会社)によって開発,作成,販売されているものであるかは,機器等を購入する者にとっても大きな関心事であり,需要者としては,これを商品パッケージ等に付された当該ソフトウエアに係る商標によって識別することになるのであるから,本件ソ\フトウエアが商標法上の商品に当たらないということはできない」と特許庁の審決を維持しました。

   ◆H17. 7.20 知財高裁 平成17(行ケ)10246 商標権 行政訴訟事件

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◆H17. 3.30 東京地裁 平成16(ワ)25661 商標権 民事訴訟事件

  「スタビライゼーションフィジカル・コントロール・テクニック(PC)」(指定役務:運動法の教授)という商標権を有する原告が、書籍、DVD、ビデオの題号として「スタビライゼーション」を含む表記をした被告に対して行った事件です。裁判所は、”「スタビライゼーション」が特定のトレーニング方法を表\す普通名称であり・・・”と判断しました。

◆H17. 3.30 東京地裁 平成16(ワ)25661 商標権 民事訴訟事件

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◆H17. 1.13 東京高裁 平成16(ネ)3751 商標権 民事訴訟事件

 適合機種表示が商標として機能\しているかが争われました。原審と同じく、非侵害と判断されました。
 「これらの事情に照らして本件をみるに,本件「brother」又は「ブラザー」との表示に接した被告製品の一般需要者は,控訴人が被告製品の製造者又は販売者であるとは速断せず,むしろ,「For brother」又は「(新)ブラザー用」との態様で表\示されていることから,これらの表示が適合機種表\示であって,被告製品はファクシミリのメーカー以外の業者により製造,販売されるものであると認識する可能性の方が高いものと判断される。これに,前判示のように,「OHM ELECTRIC INC.」及び「お客様相談室」の表示などから,被告製品の一般需要者は,「OHM ELECTRIC INC.」が被告製品の製造者又は販売者であって,控訴人とは別の主体であると認識するものと認められることをも考慮すると,被告標章が自他商品識別機能や出所表\示機能を発揮しているとは認められない。」
 なお、その前段にて、「ファクシミリに使用されるインクリボンにつき,ファクシミリのメーカー以外の業者が製造,販売する実例が見られ,その場合には,「対応機種」との表示に続いて当該メーカーの名称が記載されたり,「○○」部分にメーカーの名称を入れて「○○用」と記載されたり,「適用機種」・「メーカー名」との表\示に続いて当該メーカーの名称が記載されたり,「○○」部分にメーカーの名称を入れて「FOR USE ON ○○」と記載されたりして,このような表示によって適合機種が示される実情にあることが認められる(このような態様の表\示が直ちにメーカーの商標権侵害となるものとは考えにくいが,その具体的な表示のいかんによっては商標権侵害となり得ないわけではないであろう。」とも述べています。
 
原審はこちらです。
◆H16. 6.23 東京地裁 平成15(ワ)29488 商標権 民事訴訟事
 

◆H17. 1.13 東京高裁 平成16(ネ)3751 商標権 民事訴訟事件

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◆H16.11.30 大阪地裁 平成15(ワ)11200 商標権 民事訴訟事件

 被告製品の輸入行為は真正商品の並行輸入に実質的に準じるものとして違法性が阻却されるものかが争われました。
 裁判所は、「我が国において商標権を有しない者が、我が国における商標権者の許諾を受けないで、当該登録商標の指定商品と同一の商品につき、その登録商標と同一又は類似の商標を付したものを輸入する行為は、当然に商標権を侵害するものであり、前記(2)に記載した要件を充足する場合に初めて、真正商品の並行輸入として商標権侵害の実質的違法性を欠くことになるものというべきである。本件が厳密な意味での真正商品の並行輸入とは異なるものとして、上記の要件のすべてを充足しなくても実質的違法性を欠くという主張は、独自の主張であって採用することができない。」と判断しました。

◆H16.11.30 大阪地裁 平成15(ワ)11200 商標権 民事訴訟事件

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◆H16.12. 1 東京地裁 平成16(ワ)12137 商標権 民事訴訟事件

  被告ホームページのURLとして「http:/www.esite.nttdocomo.co.jp/」との使用が、登録商標「e−sight」の使用に該当するかが争われました。
  裁判所は、「本件商標と被告esite標章とは,称呼において共通しているが,前記観念の相違,外観の相違及び取引の実情を併せ考慮すると,同一又は類似の役務に使用されたとしても,被告esite標章と本件商標との間で出所の誤認混同を生じるおそれは認められず,被告esite標章は本件商標に類似するとは認められない。」と判断しました。

◆H16.12. 1 東京地裁 平成16(ワ)12137 商標権 民事訴訟事件

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◆H16. 8.31 東京高裁 平成15(ネ)899 商標権 民事訴訟事件

 使用済みの空の容器に再度インキを詰め替えたインクボトルを販売する行為について、「控訴人らが被控訴人インクの販売の際に使用するパンフレット,注文書等には,控訴人印刷機やこれに対応したインクカートリッジの名称がそのまま使用されている反面,上記パンフレットには,「被控訴人インクが控訴人と無関係に製造されたものである」旨のいわゆる打ち消し表示もされておらず,むしろ被控訴人インクが控訴人の純正インクであるかの如き誤解を招く記載もあり,・・・これらの事情によれば,被控訴人らの被控訴人インクの販売行為が,市場における取引者,需要者の間に,「本件登録商標が付されたインクボトルに充填されたインクが控訴人を出所とするものである」との誤認混同のおそれを生じさせていることは明らかであるから,本件登録商標は,商品(インク)の取引において出所識別機能\を果たしているものであって,被控訴人らの行為は,実質的にも本件登録商標の「使用」に該当し,本件商標権を侵害するものというべきである。」と判断し、原審の判断を一部取り消しました。
 

 原審では「商標法上の商標の「使用」に該当するというためには,当該商標が商品の取引において出所識別機能を果たしている必要がある。この点に照らせば,個別の取引において,買主から商品の容器又は包装紙等が提供され,売主が商品を当該容器に収納し,あるいは当該包装紙等により包装して,買主に引き渡す場合には,当該容器ないし包装紙等に商標が表\示されていたとしても,商標法上の商標の「使用」には該当しない。けだし,この場合には,容器ないし包装に付された商標とその内容物である商品との間には何らの関連もなく,当該商標が商品の出所を識別するものとして機能していないことが外形的に明らかだからである(例えて言えば,顧客が酒店に空瓶を持参して,酒を量り売りで購入する場合や,顧客が鍋等の容器を豆腐店に持参して豆腐等を購入する場合と,同様である。)」と述べて非侵害と認定されていました。
  ◆H15. 1.21 東京地裁 平成14(ワ)4835 商標権 民事訴訟事件
 

◆H16. 8.31 東京高裁 平成15(ネ)899 商標権 民事訴訟事件

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◆H16. 1.15 大阪地裁 平成14(ワ)1919等 著作権 民事訴訟事件

 少し前の事件です。
   訴外Aの社員と被告が共同で開発したパチスロ機の関する著作権の帰属および商標権侵害が争われました。原告Bは、訴外Aの破産管財人から知的財産権の譲渡を受け、自己が権利者であると主張しました。
 具体的には、著作物に該当するのか、著作者は誰か、商標の使用に該当するのか等が争われました。裁判所はパチスロ機の液晶画面について美術の著作物に当たり、また、共同著作物ではないと判断しました。
 また、商標権については、「ソフトウエアは、一般に、その記憶媒体のいかんにかかわらず、プログラム自体が商品の本質をなすという特質を有するものである。そして、ソ\フトウエアを実行した場合にその導入部で表示される標章は、需要者に認識され、出所識別機能\を果たすものであるから、商標として使用されているというべきであり、これをプログラムに組み込むことも、商品に標章を付することに当たるというべきものである。・・・したがって、同ソフトウエアの「隠しムービー」で別紙標章目録2記載の標章が表\示されるように同ソフトウエアに組み込むことは、本件商標に類似する標章を商品に付して使用することに当たるというべきである。」と判断しました。

 

◆H16. 1.15 大阪地裁 平成14(ワ)1919等 著作権 民事訴訟事件

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◆H16. 3.24 東京地裁 平成15(ワ)25348 商標権 民事訴訟事件

 特別号として「がん治療の最前線」という標章を、雑誌の表紙,裏表\紙及び1枚目表側に表\記した雑誌を販売していた行為が、「がん治療最前線」という登録商標(指定商品、新聞・雑誌)の使用に該当するかが争われました。
東京地裁は、「被告が本件書籍において被告標章を用いた行為は,被告標章を,本件書籍の自他商品識別機能ないし出所表\示機能を有する態様で使用する行為,すなわち商標としての使用行為であると解することはできないから,本件商標権の侵害には当たらない。」と、類似性にはふれず、商標的使用でないとして、侵害を否定しました。

◆H16. 3.24 東京地裁 平成15(ワ)25348 商標権 民事訴訟事件

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◆H15.10.16 東京高裁 平成15(行ケ)349 商標権 行政訴訟事件

指定商品「印刷物」に対する商標の使用に該当するかが争われました。審決では不使用と判断されましたが、裁判所は、認定の判断は誤っているとその判断を取り消しました。ただ、一言付け加えています。
 ”原告自身又はその意を受けた者が本件会報を発行したと認められる以上,審決の,「本件商標権者である「A」が本件商標を使用していたとは認め難いところである。」とし,かつ,「また,本件商標が使用権者によって使用されているとする証拠はない。」とする認定判断は,明白な誤りという以外にない。商標法50条により本件登録を取り消す,との審決の結論は,仮に最終的には正しいと認められるべきものであるとしても,審決が説示した理由からは,導き出すことができないのである”

   

◆H15.10.16 東京高裁 平成15(行ケ)349 商標権 行政訴訟事件

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◆H15. 6.27 東京地裁 平成14(ワ)10522 商標権 民事訴訟事件

商標「花粉のど飴」を商品「キャンディー」に使用することは、「のど飴及びその他のキャンデー」を範囲とする商標権「花粉」の専用使用権を侵害するか否かが争われました。争点は、1)「花粉」と「花粉のど飴」は類似するか、2)被告の使用方法は、商標法26条1項2号に該当する効力の及ばない範囲か否か等です。
裁判所は、1)については両者類似、2)については効能ではなくまた、普通に用いられる方法でもないとして、侵害を認めました。
  個人的には、春先には花粉症が話題にならない日はないくらいですので、「花粉のど飴」ときけば、一般の人は花粉症用ののど飴と認識すると思います。証拠は結構出したようですが、裁判所としては立証不十\分に写ったんでしょうか?、また、4条1項16号は後発的無効理由でもあるので、これを根拠に権利濫用の主張をしていれば結果は変わったのでしょうか?

◆H15. 6.27 東京地裁 平成14(ワ)10522 商標権 民事訴訟事件

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◆ H15. 1.21 東京地裁 平成14(ワ)4835 商標権 民事訴訟事件

   インクボトルにインクを充填して顧客に納品する行為が、商標の使用に該当するかが争われました。
  裁判所は、「個別の取引において,買主から商品の容器又は包装紙等が提供され,売主が商品を当該容器に収納し,あるいは当該包装紙等により包装して,買主に引き渡す場合には,当該容器ないし包装紙等に商標が表示されていたとしても,商標法上の商標の「使用」には該当しない。けだし,この場合には,容器ないし包装に付された商標とその内容物である商品との間には何らの関連もなく,当該商標が商品の出所を識別するものとして機能\していないことが外形的に明らかだからである(例えて言えば,顧客が酒店に空瓶を持参して,酒を量り売りで購入する場合や,顧客が鍋等の容器を豆腐店に持参して豆腐等を購入する場合と,同様である。)。・・・ なお,原告は,論拠として改造ファミコン事件第一審判決を挙げるが,同判決の事案は,商品にXの商標が付されて市場において流通した事案であり,買主から提供された容器に商標が付されていた本件とは,事案を異にするものであるから,同判決を引いて被告らの商標権侵害をいう原告の主張は,失当である。・・・顧客としては同一の種類形状のインクボトルが返還されれば,それをもって自己の提出したインクボトルと同一のインクボトルが返還されたものと認識しているものであり,社会的にも同一物が返還されたものと評価されるものであるから,いずれにしても商標の「使用」に該当するものと解することはできない。」と判断しました。

 

◆ H15. 1.21 東京地裁 平成14(ワ)4835 商標権 民事訴訟事件

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