H14.10.29 東京高裁 平成13(行ケ)501 特許権 行政訴訟事件

平成13年(行ケ)第501号 審決取消請求事件
     判    決
 原 告 東海ゴム工業株式会社
 訴訟代理人弁理士 樋口武尚
 被 告 大成プラス株式会社
 訴訟代理人弁護士 野上邦五郎、杉本進介、冨永博之、弁理士 富崎元成、円城寺貞夫


     主    文
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。


     事実及び理由
 「および」は「及び」と「または」は「又は」に表記を統一する。その他、審決、明細書等を引用する際に、公用文の方式に沿って表記したものがある。


第1 原告の求めた裁判
 「特許庁が無効2000−35269号事件について平成13年10月2日にした審決を取り消す。」との判決。


第2 事案の概要
 1 特許庁における手続の経緯
 被告は、発明の名称を「記録再生装置の防振装置」とする特許第2138602号発明(平成2年10月22日出願、平成2年特許願第281847号、平成10年10月9日設定登録)の特許権者であるが、原告は、平成12年5月16日、本件特許の請求項1記載の発明(本件発明1)につき無効審判を請求し、無効2000−35269号事件として審理され、平成13年2月26日訂正請求があった結果、平成13年10月2日、「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は平成13年10月12日原告に送達された。


 2 本件発明1の要旨
(請求項1の「A」、「B」は便宜上付与したもの)
 (1) 訂正前の発明の要旨
【請求項1】
 A.内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、
 B.前記減衰手段は、
 a.前記筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部と、
 b.この筒状部内に収容された減衰材と、
 c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部に型成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、

 d.前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材とを有する記録再生装置の防振装置。
【請求項2】請求項1において、前記減衰手段は、前記筐体に着脱自在に取付けられ、かつ熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなるブラケットを有し、このブラケットに前記筒状部が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。
【請求項3】請求項1において、前記筐体と前記筒状部とが、一体に型成形された熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなることを特徴とする記録再生装置の防振装置。
【請求項4】請求項1ないし3のいずれか1において、前記第2密封部材は熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、略中央部に熱融着可能な前記減衰材の注入口が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。


 (2) 訂正後の発明の要旨
【請求項1】のc.を、
「c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、」に訂正した以外は、(1)と同じ。


 3 審決の理由
 別紙審決の理由のとおりであり、審決は要するに、審判における特許無効理由通知に記載の理由、並びに、原告(請求人)の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明(本件発明11)の特許を無効とすることはできない、と判断した。


第3 原告主張の審決取消事由
 1 取消事由1(訂正の違法)
 (1) 審決は、「この訂正事項は、請求項1に係る「第1密封部材」の位置と成形手段を限定したものと認められる。」とし(別紙審決の理由35、36行)、その理由として、「訂正前は、第1密封部材」の位置は「前記筐体内方側の端部」とされていたので、少なくとも「端部」と解釈できるが、この訂正により「端部」だけに限定される。また、「成形」も「型」により行っていたものをより具体的に「射出」により行うものに限定したものであるから、これらの訂正はいずれも特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。」と判断している(別紙審決の理由37〜41行)。審決はまた、当該訂正を支持する明細書の記載として、本件特許公報第5欄4行〜7行の「筒状部11の端部内周面には、環状段部13が形成されている。この環状段部13に、軟質の熱可塑性弾性体からなる第1密封部材14が射出成形により一体に熱融着されている。」との記載を挙げている(別紙審決の理由42〜44行)。

 (2) しかしながら、「筒状部11の端部内周面には、環状段部13が形成されている。」とは、「筒状部11の端部内周面には、環状段部13が」存在することを意味するが、「筒状部11の端部内周面」の「環状段部13」がどの範囲で形成されているかは特定されていない。また、「環状段部13に、・・・第1の密封部材が射出成形により一体に熱融着され」とは、環状段部13に「第1の密封部材の全外周」が射出成形により一体に熱融着されることである。訂正請求で「端部」を「端部だけ」に文言上限定しても、実施例の「筐体内方側の端部」は、射出成形により一体に熱融着される個所である筒状部11の端部内周面に存在する「環状段部13の全内周面」を指すものであり、「のみ」によって限定される特定個所が存在しない以上、両者間に技術的な違いはないのである。当然、訂正前明細書(本件特許公報)には、「第1の密封部材の全外周」以外の、「端部のみ」の「のみ」と限定解釈される実施例の記載はないし、また、「端部のみ」と限定されることによる作用効果の記載もない。
 したがって、「筐体内方側の端部」は筒状部の図示された「環状段部13」を特定する要件であるから、「端部のみ」と特定することにより、「端部」を「言葉上」限定しても、技術的に特定の広い範囲から「端部のみ」と「端部」を限定できる論拠に欠き、「環状段部13の全内周面」を意図する本件発明1の要旨を変更するものである。

 2 取消事由2(審理不尽)
 審決は提出された証拠内容を十分に検討せず、重大な周知慣用技術を見逃しており、審理不尽の違法がある。例えば、甲第19号証(審判乙第5号証)の6の「2色成型品試作用図面」において、「@フランジ部はPP」と成形材料が「PP(ポリプロピレン)」であることが特定されているが、軟質樹脂及び接着剤の指示がないことから、当業者間で「2色成型」が「熱可塑性樹脂」による接着剤なしによる「熱融着」されるものであることが周知慣用技術であることは明らかである。


 3 取消事由3(明細書の記載不備)
 (1) 請求項1の構成Baには「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の筒状部」とあり、減衰手段が複数の筒状部を備えることを規定している。しかしながら、明細書の実施例の記載では減衰手段は「複数の中空の筒状部」を有しておらず、「1個の中空の筒状部」しか備えておらず、請求の範囲に記載の発明の要部と実施例の記載に矛盾があり、発明の構成を不明にしている。
 審決は、「請求項1においては「減衰手段」は振動を減衰するための手段全体を総称しているのに対し、発明の詳細な説明における「減衰手段6」は、筒状部からなる個々の部材を呼称しているものと認められる。しかしながら、請求の範囲の記載では「減衰手段」の構成は、「筐体にその内方を向くよう」に「複数の中空の筒状部」が設けられ、各筒状部が更にb、c、dの構成を備えているのであるから、表現手法が異なるものの「各筒状部」の構成と実施例の「減衰手段6」の構成が一致することは明らかであり、請求項1に係る記載と実施例の記載に矛盾はないから、請求の範囲の記載が不備とはいえない。」としている(別紙審決の理由172〜178行)。しかし審決は、本件発明1の「各筒状部」と実施例の「減衰手段6」の構成が一致すると判断するために、特許請求の範囲の「筒状部」の表現で対応させず、「各筒状部」と置き換えて認定していることからみて、両者間に整合性がないことは明らかである。審決の上記認定は誤りである。

 (2) 請求項1の構成Bbでは「筒状部内に収容された減衰材」としているが、減衰材は流体であり、筒状部材だけでは収容できない。特許請求の範囲には、「筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された・・・第1密封部材」と「筒状部の他端部に固着された第2密封部材」との定義はあっても、第1密封部材と第2の密封部材で閉じた空間を形成するという概念はない。
 審決では、「本件発明1は請求の範囲で表現された結果として、筒状部とその両端に設けられる第1・第2の密封部材で閉じた空間を形成し、該空間に減衰材が収納される構成が明らかであり、発明の構成が不明であるとはいえない。」と認定しているが(別紙審決の理由186〜189行)、特許請求の範囲の記載を正確に解釈しないものであって、誤りである。


 4 取消事由4(先願発明との同一性判断の誤り)
 (1) 相違点2について
 審決は、「先願発明の第一部材は「硬質樹脂」製であり、本件発明11の材料である熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックとも異なる。そして、熱融着を意図していない前記先願発明の「硬質樹脂製の第一部材」が実質的に「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチック」を意味するとは認められない。」(別紙審決の理由320〜323行)とするが、誤りである。
 審決は先願発明の「硬質樹脂製の第一部材」が熱融着を意図していない旨認定しているが、実際は「2色成型」の際に接着剤を使用する方が例外的である。例えば、甲第19号証(審判乙第5号証)の1及び甲第19号証(審判乙第5号証)の4〜6等において、原告製品に関し、「2色成型」と記載されているが、接着剤を特定していないことからも、当業者にとって2色成形が「熱融着」を意図することは常識的事項である。

 さらに、例えば、甲第20号証(昭和63年(1988)年2月15日、株式会社ラバーダイジェスト社発行「ポリマーダイジェスト」第40巻第2号38〜52頁)にも「エラストマーは、PP、PEに相溶性があり、加熱状態で二層成形(原告注・2色成形の意味)することにより、プライマの必要性もなく、接着性のよい部品が得られる。」等の記載があり、2色成形の長所の1つは接着剤を使用しなくてもよいことであることを示している。
 また、本件発明11の熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックは、明細書中に格別定義されておらず、一般的定義が適用されるものであるから、甲第18号証(昭和59年12月28日トヨタ自動車株式会社、トヨタ技術会発行「材料の知識」64〜71頁)に示すように、「構造用及び機械部材用として適しているプラスチック」を意味するものである。してみれば、用途が同一であれば、当然、構造用及び機械部材用として適する先願発明の第一部材も同一材料であることは明らかである。

 したがって、当業者にとって、防振装置への使途が明らかで、「2色成型」として樹脂材料を特定すれば、それを本件発明11のように、「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチック」と特定しても、それは表現上の違いにすぎず、その違いは当業者の慣用手段による表現上の違いであるから、技術的意味内容に実質的な違いはない。
 (2) 相違点3について
 審決では、「先願発明は、第一部材に軟質樹脂を用いているが、この軟質樹脂を硬質樹脂との組合せで2色成形するとの事項のみから、該軟質樹脂が実質的に「軟質の熱可塑性弾性体」であると認定することはできない。」と判断している(別紙審決の理由325〜327行)。しかし、通常、軟質樹脂と硬質樹脂との組合せで2色成型するといえば、熱硬化性樹脂で行うものではなく、熱可塑性樹脂で熱融着を行うものであることは自明である。上記、「相違点2について」で述べたように、当業者であれば、「2色成型」の用語で熱可塑性樹脂による熱融着を行う成形であることは自明である。

 審決は、先願発明が「外周壁部64の内周面全面で内周壁部と固着されており」、本件発明11のように「外周壁部の端部のみで固着するとの思想は認められない。」旨認定している(別紙審決の理由337、338行)。先願発明の図示された実施例は「内周面で内周壁部と固着(熱融着)」するものであるが、本件発明11で「外周壁部の端部」を「外周壁部の端部のみ」と訂正が許されたものであることを前提とすれば、「外周壁部の端部」と「外周壁部の端部のみ」に実質的な違いがないことを意味する。そして、「外周壁部の端部」又は「外周壁部の端部のみ」と特定しても、「端部」又は「端部のみ」で固着することとの作用効果はない。先願発明の図示された実施例の「内周面で固着(熱融着)」するものとの違いも、本件明細書には記載されていない。
 したがって、先願発明の「内周面で固着(熱融着)」と、本件発明11の「外周壁部の端部」又は「外周壁部の端部のみ」との間に実質的な相違点はない。

 5 取消事由5(進歩性判断の誤り)
 (1) 引用刊行物1(実願昭63−151566号(実開平2−72834号)のマイクロフィルム)の第4図及び第5図の実施例から見て、審決の「支持軸挿入部(従来例の支持軸支持部)を底部から蓋部に移動させたものを、再び底部に移動させる点、及び底部と筒状部を別材料で形成されるにもかかわらず一体に形成する点は、引用刊行物1の発明においては相容れない技術事項と認められる。」との判断(別紙審決の理由611〜614行)、及び「引用刊行物1に記載の発明に、引用刊行物2(特開昭61−189336号公報)に記載のプラスチックをダンパー材料として適用するとの思想及び引用刊行物3(特開平1−139240号公報)、引用刊行物4(特開平2−107415号公報)及び引用刊行物5(特開平1−139241号公報)に記載の硬軟のプラスチックの組合せ及びこれらの固着構成を適用することを困難にしている」との判断(別紙審決の理由615〜618行)は、本件発明11の進歩性には左右されない事項である。

 よって、引用刊行物1の従来技術に、引用刊行物2ないし引用刊行物5を組み合わせることに困難性を有する理由がない。
 (2) 審決は、「上記したように引用刊行物1に記載の発明において、接着材で蓋をしていた部分を設計事項であるとして、熱融着に換えて本件発明11を得ることができないことは明らかであるから、その主張は採用できない。」と判断している(別紙審決の理由625〜628行)。しかし、本件発明11は引用刊行物1に記載の公知の構造の「ダンパー60」の材料を単純に特定したにすぎないものであり、審決のこの判断は誤りである。


第4 審決取消事由に対する被告の反論
 1 取消事由1(訂正の違法)に対し
 請求項1の構成Bcは、訂正前は「……端部に型成形により……」というものであり、審決も認定しているように、この「端部」とは、少なくとも「端部」と解釈できるのである。例えば、審判甲1号証の第5図のような、内周壁全面に成形されているものも含まれる可能性があるので、それとの違いを明らかにするため「端部のみ」としたものである。また、「筒状部の、前記体内方側の端部」とは、「筒状部」の「端部」であり、「環状段部13」の「端部」ではないのであるから、「環状段部13」の「いずれの位置」に「第1密封部材14」が位置するかが特定されなければならないわけではない。実施例が「端部のみ」の事例であったとしても、それだけで特許請求の範囲が「端部のみ」に限定されるわけではなく、その意味で、訂正前明細書においては、特許請求の範囲を「端部のみ」に限定して解釈しなければならないことの根拠となる記載はなかった。


 2 取消事由2(審理不尽)に対し
 審決が検討しないとした証拠は、いずれも、被請求人である被告提出に係る本件出願後のもので、しかも単なる私信である。審決は、2色成形技術そのものが本件発明1の出願時点で公知技術であること自体は認定しているし、原告もこれを認める。2色成形技術が周知の従来技術であるからといって本件発明1が容易に発明できたことを意味するものではない。


 3 取消事由3(明細書の記載不備)に対し
 (1) 審決が認定したように、請求項1における「減衰手段」は振動を減衰するための手段全体を総称しているのに対し、請求項3、及び発明の詳細な説明での「減衰手段」は、これを構成する個別の部材を呼称しており、この部材中の「筒状部」が複数個あると解釈しても、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との間の矛盾はない。本件特許請求の範囲の請求項1の構成Bのb、c、dが各筒状部の構成を示していることはその記載から明らかであるし、筐体と筒状部とが一体に型成形されているということから、請求項1の「筒状部」が「4個の筒状部」を当然意味することになるわけではない。
 (2) 「筒状部材」に関する原告の主張は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の文言とが形式的に完全に一致していないというものにすぎない。


 4 取消事由4(先願発明との同一性判断の誤り)に対し
 (1) 相違点2について
 原告は「2色成型」の際に接着剤を使用する方が例外であるとしているが、「2色成型」と接着剤による成型か熱融着かは、別の問題である。熱融着と同様の現象が生じているということや、熱融着を用いることが考え得るということから直ちに、「硬質樹脂」と「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチック」とが実質的に同一であるなどということはできない。甲第20号証でも、「「2色成型」の長所の一つには接着剤を使用しなくてもよいとの記載があり、「2色成型」の際に接着剤を使用する方が例外的である」とする記載はない。審決は、「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチック」という用語の一般的な意味を認定したものではなく、本件発明11と先願発明との対比において、本件発明11でいう「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチック」と先願発明の「硬質樹脂」とは異なると判断したものである。原告の主張は、あくまでも一般技術用語として、「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチック」と「硬質樹脂」とが重なる樹脂があると主張しているにすぎず、両発明の対比の上ではこの主張は意味がない。

 (2) 相違点3について
 「2色成型」ということと、接着剤による成型か熱融着かは、別の問題である。甲第20号証には、特定のエラストマー、すなわち第3表「エラストマーAR−730X基本物性」に示されたスチレン系エラストマーと、ポリプロピレン(PP)、ポリピロビレン(PE)とが相溶性があり、二層成形(必ずしも「2色成型」と同一ではない。)することにより、プライマーの必要がなく、接着性のよい部品が得られる、との記載がある(41頁の中段の欄)。
 したがって、この記載から、原告がいうように直ちに一般的に「2色成型」が熱可塑性樹脂による熱融着を行う成形であると当然にいうことはできない。


 5 取消事由5(進歩性判断の誤り)に対し
 引用刊行物1及び2は、審判での無効理由通知で引用されたものであり、その刊行物1及び2は職権で引用されたものであり、その両刊行物の組合せと、それに記載されている事項の認定、及び無効理由の提示は職権で行われたものであり、原告が提出したものでもない。したがって、原告が審判で主張もせず、しかも審決が判断していないものは審決取消訴訟の対象でもない。原告の主張は、審決が認定していない引用刊行物1の第4図の従来例の内容に基づくものであり、本件審決取消訴訟の対象とはなり得ない。
 本件発明11は引用刊行物1に記載の公知の構造の「ダンパー60」の材料を単純に特定したにすぎないものかどうかについて、審決は何ら問題としていないのであるから、ダンパー60についての主張は、審決取消訴訟の対象とならない。


第5 当裁判所の判断
 1 取消事由1(訂正の違法)について
 (1) 甲第15号証(本件特許公報)によって認められる訂正前明細書及び第2図の実施例(第1実施例)を参照して、請求項1のB.における減衰手段について検討してみる。
 @要素a:「前記筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部と、」については、筐体2の内側に向けて減衰手段6の筒状部11が突出してる状況が第1図及び第2図から看取することができる。また、「ブラケット6(「8」の誤記)は筒状部11を含めて、周知の射出成形法により一体成形される。ブラケットの材質は、ABS、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、PBT、ナイロン6、11、12など、機械的強度、成形性が良いもの、いわゆるエンジニアリングプラスチックと呼ばれるものであればどんな合成樹脂でも良い」(5欄33〜38行)との記載からみて、筒状部11の材料として熱可塑性のエンジニアリングプラスチックが規定されていることになる。

 A要素b:「この筒状部内に収容された減衰材と、」については、減衰材12が筒状部11と第1密封部材14と第2密封部材16で画成される空間内に封入されている。
 B要素c:「前記筒状部の前記筐体内方側の端部に型成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、」については、筒状部11の図面中左側の端部(内周面)に第1密封部材14の(外周面)が取付けられていることが第2図に示され、その取付態様は、訂正前明細書の記載によれば「筒状部11の端部内周面には、環状段部13が形成されている。この環状段部13に、軟質の熱可塑性弾性体からなる第1密封部材14が射出成形により一体に熱融着されている。」(5欄4〜7行)とされていることから、熱融着によって密封されていること、また、その素材は軟質の熱可塑性弾性体であることが理解される。また、第1密封部材14の略中央には凹部15が形成されており、第1図を参照すれば当該凹部15には再生装置の突起7が挿入されている。「型成形」については、訂正前明細書の[作用]の欄には第1密封部材は型成形により一体に筒状部に熱融着されるとされ、さらに、6欄9〜13行において「この製造方法は、射出成形法であるが、筒状部11に第1密封部材14を熱融着する方法は、他の公知の手段でも良い。例えば、射出成形、ブロー成形、カレンダ成形、圧縮成形、トランスファ成形など成形と同時に融着する条件であれば、他の方法でも良い。」との記載があることから、射出成形以外の成形方法を包含する意図であることが理解される。
 C要素d:「前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材」については、第2図から、第2密封部材16が筒状部11の第1密封部材14の取付側とは反対の側において筒状部11に挿入・固定されていることが看取され、実施例の記載によれば、「第2密封部材16は筒状の取付部17を有し、この取付部17の外周面に環状突起18が形成されている。環状突起18に対応して、筒状部11の他端部内周面に環状溝19が設けられている。第2密封部材16の取付部17が筒状部11に圧入され、かつ環状突起18が環状溝19に係合することにより、第2密封部材16は筒状部11に固着される。」(5欄14〜20行)として固着の態様が記載されている。

 以上のとおり、要素a〜dに関する記述は十分に明瞭に図面及び訂正前明細書の実施例の記載から読み取ることができる。
 (2) 次に、訂正による限定事項の内容を検討する。
 @「端部」を「端部のみ」と限定することについて
 第1密封部材が筒状部の「端部のみ」に熱融着されていることについて、本件明細書にこれを支持する具体的な文言はない。しかし、第2図において、減衰手段6の筒状部11の左側端部には第1密封部材が取り付けられ、右側端部には第2密封部材16が取り付けられており、第1密封部材14の配置されている位置も、筒状部11と熱溶着されている位置も、明らかに「左側の端部のみ」であって、筒状部11の中央部や右側端部側ではない。また、「のみ」と限定することに関し、被告は、「例えば、審判甲1号証の第5図のような、内周壁全面に成形されているものも含まれる可能性があるので、それとの違いを明らかにするため「端部のみ」としたものである。」と主張しているところ、確かに審判甲第1号証(甲1号証)の第5図において、本件発明11の第1密封部材に相当する第1部材は第2部材の全長にわたって延在していることが明らかであるから、このような態様との峻別を図るべく、第1密封部材の存在位置を「端部のみ」に限定することの意義を認めることができる。

 A「型成形により」を「射出成形により」と限定することについて
 上述のように、訂正前明細書は、第1密封部材と筒状部の熱融着に関し、「ブロー成形、カレンダ成形、圧縮成形、トランスファ成形など成形と同時に融着する条件であれば、他の方法でも良い。」として、実施例に記載の射出成形以外の方法を挙げている。本件訂正はこれを実施例に記載の射出成形に限定するものであることは明らかである。
 (3) よって、訂正は明細書の要旨を変更するものでも、新たな事項を明細書中に導入するものでもなく、訂正をもって適法なものであるとした審決の判断に、原告主張の誤りはない。取消事由1は理由がない。


 2 取消事由2(審理不尽)について
 甲第19号証は、本件出願後に作成された試作品の見積もりに関する私信であり、甲第19号証の6の試作図面の内容も本件発明11の態様とは異なるものであって、無効審判請求の証拠としての価値が低いことは明らかである。審決が甲第19号証に関して言及しなかったとしても、そこに違法があるとすることはできない。原告は当該書面に2色成形との記載があることを強調するが、審決は「なお、2色成形が、型内に材料を圧力をかけて射出する成形方法であることは、周知のことと認められる。」として、2色成形技術の周知性を認めているのであり、この点に関する原告の主張も理由がない。
 よって、取消事由2も理由がない。


 3 取消事由3(明細書の記載不備)について
 (1) 原告は、請求項1の「減衰手段」が要素Baにおいて、「複数の中空の筒状部」を有するとしているのに対して明細書中の「減衰手段」は1個の筒状部しか備えておらず、矛盾すると主張する。確かに、請求項における「減衰手段」の表現は前段部では複数の減衰手段を総括的に呼んでいるのに対し後段部では個々の減衰手段の内部構造を対象としており、不統一あるいは不正確な点があることは否めない。しかしながら、本件発明11の構成は極めてシンプルであり、かかる記載上の不備にかかわらず、減衰手段と名付けられた部材6が複数存在すること、そして、個々の減衰手段の内部構造が特定の構造をしているという基本的な内容を請求項が定義していることについて疑問の余地は生じない。原告主張の部分につき請求の範囲の記載が不備とはいえないとした審決の認定判断に誤りはない。

 (2) 原告はさらに、粘性流体であるはずの減衰材が筒状部材11内に収容されるとの請求項の記載が不正確であると主張するが、そこにおける発明の構成が不明であるとはいえないとした審決の認定判断に誤りがあるとすべき根拠は認められない。
 (3) よって、取消事由3も理由がない。


 4 取消事由4(先願発明との同一性判断の誤り)について
 (1) 原告は、本件発明11と先願発明の相違点2に関する審決の判断の誤りの根拠として、「2色成型」と「熱融着」が同じ技術であるかのように主張するが、「2色成型」と「熱融着」が同一の技術であることを認めるべき証拠はない。熱融着とは、文字どおり成形に際して樹脂同士を熱により融着させて強固な接着・密封状態を得る技術である。審決も認定するように、「2色成型」に際しても樹脂間で何らかの接着力を発揮することは想定されるが、「融着」といえるほどの強い結合状態であると認めることはできない。かえって、先願明細書(甲第1号証)にあっても、「容器本体54と蓋体70との固着は樹脂同士の溶着により行うことができる」(3頁左下欄16〜17行)とされており、強い密封状態が必要な容器と蓋の固着には「溶着」(固着の態様において融着とは近似した技術と認められる)との表現を用いて明らかに「2色成型」と区別しているのである。

 「熱可塑性エンジニアリングプラスチック」と「硬質樹脂」が技術用語として同じ材料を包含することがあるとしても、樹脂同士の「熱融着」を行うことを特に目的として選定される材料と「2色成型」において選定される材料が同じであると断定することはできない。
 本件発明11と先願発明との間の相違点2に関してした審決の判断に原告主張の誤りがあると認めることはできない。
 (2) 原告は、審決が、「先願発明は、第一部材に軟質樹脂を用いているが、この軟質樹脂を硬質樹脂との組合せで2色成形するとの事項のみから、該軟質樹脂が実質的に「軟質の熱可塑性弾性体」であると認定することはできない。」と認定判断したのに対し、「通常、軟質樹脂と硬質樹脂との組合せで2色成形するといえば、熱可塑性樹脂で熱融着を行うものであることは自明である。」と主張する。しかしながら、2色成形と熱融着を同一の技術と解することができないのは上記(1)で判断したとおりである。異なる技術に対して採用されるべき材料が同一とはいえないことは明らかであり、審決の上記認定判断に誤りは認められない。

 審決は、先願発明において、「外周壁部64の内周面全面で内周壁部と固着されており、外周壁部の端部のみで固着するとの思想は認められない。」と認定判断したが、甲第1号証によれば、先願発明においては、内周壁部64の内周面全面で内周壁部と固着されており、しかも先願発明は環状突片72を中心的特徴事項とするものであることが認められる。したがって、これを省略して本件発明11のように、密封部材を「端部のみ」に溶着することは容易に想到することができるものということはできず、審決の上記認定判断に誤りはない。
 (3) よって、取消事由4も理由がない。


 5 取消事由5(進歩性判断の誤り)について
 原告は、取消事由5において、引用刊行物1の従来のダンパーの構成に基づく主張をしているにすぎず、引用刊行物1に記載の発明に基づく容易想到性を主張しているものではないので、そこで主張されている事項は、原告がそこで指摘する審決の判断部分である引用刊行物1記載の発明からする本件発明11の容易想到性に関する判断の誤りに結び付くものではない。
 取消事由5も理由がない。


第6 結論
 以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がないので、原告の請求は棄却されるべきである。
(平成14年10月1日口頭弁論終結)
 東京高等裁判所第18民事部


         裁判長裁判官       永   井   紀   昭


            裁判官       塩   月   秀   平


                       裁判官       古   城   春   実




             平成13年(行ケ)第501号 無効2000−35269
    審決の理由


1.手続の経緯
(1)本件特許第2138602号に係る発明についての出願は、平成2年10月22日に出願され、平成7年12月25日に特公平7−122983号として出願公告がなされ、平成8年3月22日及び平成8年3月25日に特許異議の申し立てがなされ、平成10年10月9日にその発明について特許の設定登録がなされた。
(2)その特許に対し、平成12年5月16日に請求人東海ゴム工業株式会社(以下、「請求人」という。)から無効審判の請求がなされ、被請求人から答弁書が提出され、さらに、請求人から上申書が提出された。なお、この特許に対し、平成11年10月20日に請求人北辰工業株式会社から無効審判の請求がなされている。(平成11年−審判第35576号)
(3)その後、両審判事件は平成12年12月12日に併合され、平成12年12月13日付けで当審から無効理由の通知がなされ、被請求人から所定期間内である平成13年2月26日に意見書と共に訂正請求書が提出され、訂正を求めた。

(4)請求により、平成13年5月11日に口頭審理が行われ、それぞれ提出された陳述要領書を含めて陳述すると共に、該口頭審理に関して平成13年6月11日に被請求人から、平成13年7月11日に請求人から上申書が提出された。
(5)平成13年9月5日付けで両審判事件を分離した。


2.訂正の可否に対する判断
2.−(1)被請求人の求めた訂正は、以下のとおりである。
a.特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり訂正する。
 請求項1記載中の要件c.「・・・端部に型成形により・・・」を「c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と」と訂正する。
b.発明の詳細な説明の[課題を解決するための手段]を以下のように訂正する。「c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と」と訂正する。

2.−(2)訂正の目的の適否・新規事項の有無及び拡張・変更の存否
 訂正事項a.について
 この訂正事項は、請求項1に係る「第1密封部材」の位置と成形手段を限定したものと認められる。
 すなわち、訂正前は、「第1密封部材」の位置は「前記筐体内方側の端部」とされていたので、少なくとも「端部」と解釈できるが、この訂正により「端部」だけに限定される。また、「成形」も「型」により行っていたものをより具体的に「射出」により行うものに限定したものであるから、これらの訂正はいずれも特許請求の範囲の減縮を目的としたものと言える。
 また、これらの訂正については、特許公報の第5欄4行〜7行に「筒状部11の端部内周面には、環状段部13が形成される。この環状段部13には、軟質の熱可塑性弾性体からなる第1の密封部材が射出成形により一体に熱融着されている。」と記載されており、更に、第6欄9行〜11行には、「この製造方法は、射出成形法であるが、筒状部11に第1密封部材を熱融着する方法は、他の公知の手段でも良い。例えば、射出成形、ブロー成形・・・」と記載されている。よって上記訂正は、願書に最初に添付した特許明細書の範囲内においてしたものと認められる。

 そして、上記訂正は、特許明細書の範囲内において、明確に限定されたものであるから実質上特許請求の範囲の請求項1を拡張し、又は変更するものでもない。また、請求項1を引用する請求項2乃至4項においても同様である。
 訂正事項b.について
 この訂正は、訂正事項a.の訂正すなわち、特許請求の範囲の訂正に対応して発明の詳細な説明の記載の整合を取るためにおこなったものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものと言え、かつ、この訂正により実質上特許請求の範囲1乃至4を拡張し、又は変更するものでもない。
 なお、請求人は、「筒体内方側端部のみ」と限定できる理由がないと主張している(口頭審理陳述要領書第2頁7−A参照)が、先に記したように、限定する理由は明確と認められる。
2.−(3)独立特許要件の判断

 請求項2乃至4に係る特許発明(下記3.参照)は、無効審判の請求がなされていないが、請求項1を引用して記載されているために、請求項1の訂正に伴い実質的に訂正されているので、独立特許要件の検討を行う。
 請求項2乃至4に記載された事項には不備な点は認められず、かつ、各発明で引用する請求項1に係る発明が、下記6.に記載したように特許法第36条の規定を満たしている以上、請求項2乃至4に記載された発明は、同法第36条の規定を満たしていることは明かである。
 また、請求項2乃至4に係る発明が引用している請求項1に係る発明は、下記6.,7.に記載のように特許法第29条の2,同法第29条第2項の規定に該当しないから、請求項1に係る発明よりも減縮されている請求項2乃至4に係る発明も当然に同法第29条の2及び同法第29条2項の規定に該当しないことは明かである。

 したがって、請求項1に係る発明をそのまま包含する請求項2乃至4に係る発明は、当然、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
2.−(4)むすび
 したがって、平成13年2月26日付けの訂正請求は、特許法第134条第2項及び同条第5項で準用する同法第126条第2項乃至4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


3.本件発明
 本件特許第2138602号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)及び請求項2乃至4乃至に係る発明は、平成13年2月26日付け訂正請求書により訂正された特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
A.内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、
B.前記減衰手段は、
a.前記筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部と、
b.この筒状部内に収容された減衰材と、

c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、
d.前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材とを有する記録再生装置の防振装置。
【請求項2】請求項1において、前記減衰手段は、前記筐体に着脱自在に取付けられ、かつ熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなるブラケットを有し、このブラケットに前記筒状部が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。
【請求項3】請求項1において、前記筐体と前記筒状部とが、一体に型成形された熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなることを特徴とする記録再生装置の防振装置。
【請求項4】請求項1ないし3のいずれか1において、前記第2密封部材は熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、略中央部に熱融着可能な前記減衰材の注入口が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。」

(なお、請求項1の「A」,「B」は便宜上付与した符号である。)

4.請求の趣旨
 請求人は、本件特許第2138602号の請求項1に係る発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする旨の無効審判を請求し、証拠方法として後記の書証を提示し、以下の理由により無効にされるべきであると主張している。
(1)無効理由1
 本件発明(請求項1に係る発明)は、特許請求の範囲に記載の発明の要部である事項と実施例に記載の事項との対応に矛盾があり、発明の構成が不明である。
 したがって、本件発明の明細書の記載は、特許法第36条に違反するものである。
(2)無効理由2
 本件発明(請求項1に係る発明)は、平成2年5月31日付け出願の特願平2−142337号(特開平3−223539号公報)の先願が存在し、該先願発明と本件発明との相違点は先願の出願当時の本件発明の要部である減衰手段の普通の使用形態を特定したにすぎないものであるから、特許法第29条の2によって拒絶されるべきものである。


5.証拠方法及び参考資料
5.−(1)請求人の提示した証拠方法
 審判甲第1号証:特開平3−223539号公報(特願平2−142337号、平成2年5月31日出願、平成3年10月2日公開)
 審判甲第2号証:特開昭61−189336号公報(昭和61年8月23日公開)
 審判甲第3号証:実開昭60−163592号公報
 審判甲第4号証:実開昭61− 68393号公報
 審判甲第5号証:実開昭63−114492号公報
 審判甲第6号証:実開昭63−164891号公報
 審判甲第7号証:特開昭61−215822号公報
 審判甲第8号証:実開平 2− 96056号公報及び実願平1−4970号のマイクロフィルム
 審判甲第9号証:実開平2−114238号公報及び実願平1−23407号のマイクロフィルム

 審判甲第10号証:東海ゴム工業株式会社の昭和60年6月27日付定款
 審判甲第11号証:ソニー向けCDオートチェンジャー用ダンパーの開発NO’89−65 1989年10月23日作成(1989年12月29日付優先権出願(実願平1−152196)日前に試作・量産へ向けての検討を行っていた資料)
 審判甲第12号証:ソニー向けCDオートチェンジャー用ダンパーの開発NO’89−66 1989年10月23日作成(1989年12月29日付優先権出願(実願平1−152196)日前に試作・量産へ向けての検討を行っていた資料)
5.−(2)被請求人の提示した証拠方法
 審判乙1号証:桜内雄二郎著、新版「プラスチック材料読本」、株式会社工業調査会発行、1987年5月15日発行の第10頁乃至第12頁等

 審判乙2号証:白石雅夫著「機能材料」1999.10月号Vol.19,No.10 株式会社シーエムシー発行第18頁乃至第23頁
 審判乙3号証:大阪市立工業研究所、プラスチック読本編集委員会、プラスチック技術協会共編、改訂第8版「プラスチック読本」1971年5月10日発行の第227頁乃至同第197頁等
 審判乙4号証:永井進監修「プラスチック用語辞典」、株式会社工業調査会、1982年8月25日発行、第469頁
なお、被請求人は当事者尋問を申請したが、尋問事項が「本件発明1」の実用化の困難性に関するものであるため前記尋問は行わないこととなった。そのため、提出された検証物審判乙1,審判乙2号証および審判乙5号証の1ないし60、審判乙6号証については検討しない。


6.請求人の無効理由についての当審の判断
6.−(1)特許法第36条違反について
 請求人は、請求項1に係る発明は、以下の点で不備であり、特許法第36条に違反していると主張している。
イ. 「前記減衰手段」は、「a.前記筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部」と記載されているが、本件特許明細書における「減衰手段」は、「側板4の下端に減衰手段6が複数(実施例では各側板4に対して2つ)設けられている。減衰手段6は再生装置1の側部に設けた突起7を介して、再生装置1を支持するとともに、再生装置1からの振動が伝達される。第2図は減衰手段6の詳細を示す図である。減衰手段6は、ブラケット8を有している。・・・・ブラケット10には、中空の筒状部11が形成され、その内部に減衰材12が封入されている。」(特許公報第4欄41行〜第5欄2行)と記載されており、実施例の「減衰手段」には「複数の中空の筒状部」を有しておらず、「1個の中空の筒状部」のみであるから、特許請求の範囲に記載の発明の要部である事項と実施例に記載の事項の対応に矛盾があり、本件発明の要部の構成が不明である。

 検討するに、請求項1においては「減衰手段」は振動を減衰するための手段全体を総称しているのに対し、発明の詳細な説明における「減衰手段6」は、筒状部からなる個々の部材を呼称しているものと認められる。しかしながら、請求の範囲の記載では「減衰手段」の構成は、「筐体にその内方を向くよう」に「複数の中空の筒状部」が設けられ、各筒状部が更にb,c,dの構成を備えているのであるから、表現手法が異なるものの「各筒状部」の構成と実施例の「減衰手段6」の構成が一致することは明かであり、請求項1に係る記載と実施例の記載に矛盾はないから、請求の範囲の記載が不備とは言えない。
ロ. 請求項1に係る構成Bb.では「筒状部内に収容された減衰材」と表現されているが、「減衰材」は流体であり、筒状部内のみに収容されるものではない。実施例においても第1密封部材14と第2密封部材16と筒状部11で形成した空間内に減衰材12を収容しており、特に第1密封部材14は端部から突出しており、筒状部11の内側の位置に存在しないから、特許請求の範囲に記載の事項と実施例との対応に矛盾があり、本件発明の要部となるべく発明の構成が不明である。

 しかしながら、本件発明は、装置の発明であって組立方法の発明ではないから、記載の順序が逆になっていても配置関係が明らかになれば不備とは言えない。本件発明は請求の範囲で表現された結果として、筒状部とその両端に設けられる第1・第2の密封部材で閉じた空間を形成し、該空間に減衰材が収納される構成が明かであり、発明の構成が不明であるとは言えない。
 また、第1密封部材が端部より突出している点は、実施例における具体的構成の特徴にすぎず、請求の範囲の記載が上記のように不明と言えない以上、実施例の具体的構成と請求の範囲に記載された構成が不一致であるから不備であるとすることはできない。
ハ. 前記請求項1に係る構成Bc.では、「端部に型形成により一体に熱融着」と記載されており、更に、前記「端部」について、特許異議答弁書(加藤妙子)第4頁下9及び7行で「本願発明の構成要件(D)の部分の「前記筒状部の前記筐体内方側の端部に型成形により一体」の「端部」は「端部のみ」を意味し、・・・」と記載しているが、本件発明の構成要件(Bd)の前記「端部」が「端部のみ」と限定される旨本件発明の明細書の何れをみても記載がない。

 しかしながら、この点については、平成13年2月26日付けで訂正された訂正明細書により「端部のみ」と明確になったので、請求人の主張は根拠がない。
6.−(2)特許法第29条の2違反について
a.証拠に記載の発明
 請求人の提示した証拠には、以下の発明が記載されているものと認める。
(i)審判甲第1号証(特開平3−223539号公報参照)
 審判甲第1号証には、粘性流体封入ダンパーについての発明が記載されており、車両等にCDプレーヤーを搭載する場合、車両の振動がそのままCDプレーヤーに伝達されるのを防止するために用いられるものである点が記載されている(1頁右欄3行〜8行)。
 このような粘性流体封入ダンパーを用いた車両に用いるCDプレーヤーの支持構造の一例が、第2図に記載されており、「第2図は、・・・この支持フレーム10によりメカデッキ12がスプリング14と粘性流体封入ダンパー16とにより支持されている。」と記載されている(2頁左下欄下から2行〜右下欄3行)。 また、粘性流体封入ダンパーの一例が第5図に記載されている。そして、「この例のダンパー53は、容器本体54が軟質樹脂(又はゴム)製の第一部材と硬質樹脂製の第二部材とで構成され、それらが一体に固着されている(樹脂製の第一部材と第二部材とは2色成形により同時成形することが可能である)。第一部材には、支持部材から延び出す軸体を嵌入させるための穴部56を備えた攪拌軸部58と、可撓部60と、容器本体の周壁部の一部(外周壁部62)が形成され、また第二部材には、周壁部の一部(外周壁部64)と厚肉のフランジ66とが形成されている。この硬質樹脂製の第二部材には、図中上面側に嵌合凹所68が形成され、そこに同じく硬質樹脂製の蓋体70が嵌め込まれた上、固着されるようになっている。尚、容器本体54と蓋体70との固着は、樹脂同士の溶着によって行うことができる。」と記載されている(3頁左下欄2行〜17行)。
 なお、2色成形が、型内に材料を圧力をかけて射出する成形方法であることは、周知のことと認められる。
 これらの記載事項によれば、審判甲第1号証には「支持フレーム10上にCDプレーヤーの板状のメカデッキ12が、上下方向に可動なスプリング14と粘性流体封入ダンパー16とにより支持される防振装置において、前記粘性流体封入ダンパーの筒状をなす容器本体は軟質樹脂製の第一部材と硬質樹脂製の第二部材とで構成され、
 第一部材には略中央部に支持部材又は被支持部材から延び出す軸体を嵌入させるための穴部56を備えた攪拌軸部58と、容器本体の内周壁部62と、前記中央部の攪拌軸部58と、前記内周壁部62を連結する可撓部60が形成され、また前記第二部材には、容器本体の外周壁部64と厚肉のフランジ66とが形成され、前記第一部材と第二部材は、前記内周壁部62の外周面と前記外周壁部64の内周部全面において接する関係で射出成形され、一体に固着され、第二部材の前記穴部とは反対側端部であるフランジ部には上面側に硬質樹脂製の蓋体70が固着された防振装置。」の発明(以下、「先願発明」という。)が認められる。

(ii)審判甲第2号証
 内部に空間を有する筐体5、20と、該筐体5、20の内方の一部に設けられるばね部材7、23と前記筐体に設けられる複数のダンパー10,29とで、筐体内に被支持体1を支持する点。(1,2,8図参照)
(iii)審判甲第3号証
 内部に空間を有する固定フレーム7、この固定フレーム7の一部に設けられるコイルばね10と、固定フレーム7の内方に向けて設けてある複数のダンパー11によりメカデッキ1を支持する点。(2,3図参照)
(iv)審判甲第4号証
 審判甲第4号証の発明(2図参照)は、審判甲第3号証の3図と同じ構成であると認められる。
(v)審判甲第5号証
 再生装置内の筐体10内でディスク駆動ユニット11が複数のスプリング11とダンパ14により支持されている点。(4,5図参照)
(vi)審判甲第6号証

 内部に空間を有する固定フレーム11と、この固定フレーム11の一部に設けられるスプリング18、23と、固定フレームの内方に向けて設けてある複数のダンパー17によりメカデッキ12を支持する点。(1,2図参照)
(vii)審判甲第7号証
 内部に空間を有する筐体5にその内方に向けて複数のダンパー9を設け、該ダンパ9と複数のばね部材6により被支持体1を支持する点。(6図参照)
(Viii)審判甲第8号証
 審判甲第8号証の発明(4図参照)は、審判甲第3号証の3図と同じ構成であると認められる。
(ix)審判甲第9号証
 審判甲第9号証の発明(2図参照)は、審判甲第3号証の3図と同じ構成であると認められる。
(x)審判甲第10号証
  請求人が合成樹脂も扱っている点。
(xi)審判甲第11,12号証
 1989年12月29日前に、ダンパー材料としてナイロン、PPの使用、PPとTPEを2色成形により接着する点等を検討していた点。


6.−(2)−b.審判甲第1号証に記載の発明(先願発明)と本件発明1との対比
 先願発明と本件発明1を対比すると、先願発明の「支持フレーム」、「CDプレーヤー」、「スプリング」、「粘性流体」、「ダンパー」、「軸体を嵌入させるための穴部」は、本件発明1の「筐体」、「記録再生装置」、「弾性支持具」、「減衰材」、「減衰手段」、「突起を受け入れるための凹部」に相当するものと認められ、前記突起を受け入れるための凹部は、共に筒状部の端部を覆う弾性部材に設けられている点で共通し、また、先願発明の「硬質樹脂製の第二部材」と本件発明1の「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる筒状部」は硬質樹脂である点で共通し、さらに、先願発明の「蓋体」と本件発明1の「第二密封部材」は、減衰手段をなす容器の「密封部材」として共通するから、

 両者は「筐体の一部に設けられる弾性支持具と振動を減衰するための減衰手段で記録再生装置を支持する防振装置であって、
 減衰手段は、前記筐体に設けられた複数の硬質樹脂からなる中空の筒状部と、この筒状部内に収容された減衰材と、
 前記筒状部の端部を覆う弾性部材には記録再生装置を支持するための突起を受け入れるための凹部を設けると共に、
 前記筒状部の他端部に設けられた密封部材とを有する記録再生装置の防振装置。」で一致するが、以下の点で相違する。
相違点1
 本件発明1が「内部に空間を区画する筐体」を備えているのに対し、先願発明が「上部にメカデッキを支持するための支持フレーム」を備えている点。
相違点2
 本件発明1が「筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部」を備えているのに対し、先願発明は中空の筒状部は支持フレームに上下方向に向いており、かつ、筒状部は硬質樹脂で形成されている点。

相違点3
 記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられる弾性部材について、本件発明1が「筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなる第1密封部材」を備えているのに対し、先願発明は第一部材が容器本体をなす硬質樹脂製の第二部材の内周壁全面において、軟質樹脂で射出成形される内周壁部と、これに連結し、前記突起を受け入れるための凹部を弾性的に支持するための可撓部とからなっている点。


6.−(2)−c.相違点の検討
 上記相違点について検討する。
イ.相違点1について
 先願発明の、上部にCDプレーヤーのメカデッキを支持するための支持フレームを備える構成は、支持フレームの内部にCDプレーヤーを収納するための空間を備えていないので、本件発明1の「内部に空間を区画する筐体」とは、明らかに構成が相違する。
 しかしながら、請求人の提示した審判甲第2乃至9号証によれば「内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置」の構成は、この分野におけるダンパーの周知の使用形態にすぎず、先願発明においても、このように構成することは適宜実施しうる程度のことにすぎない。

ロ.相違点2について
 先願発明における粘性流体封入ダンパーは、支持フレームに上下方向に向いており、かつ、上記相違点1のように、先願発明における支持フレームは内部に空間を区画していないので、「筐体内方に向くように設けられた、・・・中空の筒状部」の構成とも異なる。しかしながら、本件発明1に係る上記構成は、上記したように周知の使用形態を採用する際、当然得られる構成にすぎない。
 一方、先願発明の第一部材は「硬質樹脂」製であり、本件発明1の材料である熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックとも異なる。そして、熱融着を意図していない前記先願発明の「硬質樹脂製の第一部材」が実質的に「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチック」を意味するとは認められない。
ハ.相違点3について
 先願発明は、第一部材に軟質樹脂を用いているが、この軟質樹脂を硬質樹脂との組合せで2色成形するとの事項のみから、該軟質樹脂が実質的に「軟質の熱可塑性弾性体」であると認定することはできない。

 なお、「樹脂製の第一部材と第二部材を2色形成により、同時成形」する際、同時成形といっても、このような2つの筒状のものを全く同時に形成できず、一方を形成しておいてから他方を形成するであろうことは当然行うべきことと認められる。 そして、その際、両部材間は一体成形されるのであるから、何らかの力が働いて両者を固着していることは明かであり、予め形成した硬質樹脂の筒に接するように軟質樹脂を射出成形すれば両者の間には、被請求人の主張する「熱融着」程の強度が得られるかは不明であるが、程度の差があっても同様の現象が生じているものと認められる。
 しかしながら、先願発明は、攪拌軸部58と、可撓部60と、容器本体の内周壁部62が一体に形成され、そのうちの内周壁部62の外周には外周壁部64が同時成形により配置された形状となっている。即ち、外周壁部64の内周面全面で内周壁部と固着されており、外周壁部の端部のみで固着するとの思想は認められない。

 また、先願発明の攪拌軸部58と可撓部60及び容器本体の内周壁部62とからなる第一部材は一体に形成されることにより一つの容器を形成しているので、外周壁部64の端部のみに本件発明1のように密封部材を固着することにより密封して容器を形成する構成とも相違する。
 しかも、先願発明における第一部材は、その上端の開口周縁部から内側に突出するようにして立ち上がる薄肉の環状突片72を設けることを必須の構成要件としている(特許請求の範囲及び第3頁左下欄18〜19行参照)。すなわち、柔らかい前記環状突片72をも必ず一体に成形するので、先願明細書には、この突片を省略して前記周壁部62を短くし、前記外周壁部64の下側端部のみで固着するとの思想は認められない。
 さらに、先願発明の攪拌軸部58と可撓部60及び容器本体の内周壁部62とからなる第1部材は一体に形成されることにより一つの容器を形成しているので、外周壁部64の端部を本件発明1のように密封部材を固着することにより密封して容器を形成する構成とも相違する。

 以上検討したように、相違点1乃至3は全て実質的な相違でないと言えないので、本件発明1と先願発明を同一であると認めることはできない。

6.−(2)−d.請求人の主張
 なお、請求人は、本件発明1と先願発明との対比に関し、概ね以下のように主張している。
イ.先願の審判甲第1号証が開示する発明
 審判甲第1号証(先願発明)には、以下の点が記載されている。
(a)第2図には、支持フレーム10と、この支持フレーム10の一部に設けられ,CDプレーヤーを支持するためのスプリング14と、支持フレーム10の一部に設けられ、CDプレーヤーを支持し、かつ、その振動を減衰するための複数個の第5図に示す粘性流体封入ダンパー16(53)とを備えたCDプレーヤーの支持構造であること。
(b)第5図に示す粘性流体封入ダンパー16(53)は、熱可塑性樹脂からなる中空の筒状部64を有すること。
(c)第5図に示す粘性流体封入ダンパー53は、筒状部64内に収容された粘性流体を有すること。

(d)第5図に示す粘性流体封入ダンパー53は、筒状部64のCDプレーヤーを設ける側に型成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記CDプレーヤー側に設けた突起を受け入れるための凹部56が設けられた第1密封部材54を有すること。
(e)第5図に示す粘性流体封入ダンパー53は、筒状部64の他端部に固着された第2密封部材70を有すること。
ロ.先願出願前の周知慣用技術
 先願発明の粘性流体封入ダンパー16(53)は、当該防振装置としてCDプレーヤー等の記録再生装置での使用を前提として発明されたものである。
 そこで、前記(a)の構成に代る他の「CDプレーヤーの支持構造」をみてみると、上記審判甲2〜9号証等で、「内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置」が、先願の出願前の周知の「CDプレーヤーの支持構造」の使用形態(以下、先願出願前の周知の使用形態(a’)」という。)であることが判る。

 したがって、先願発明の粘性流体封入ダンパー16(53)における(a)の構成に関する構成(a’)は周知の製品の普通の使用形態として使用されることを前提とするものであり、又、構成(b)に関しても「粘性流体封入ダンパーは、前記減衰手段は筐体にその内方を向くように設けられる」構成(b’)、さらに、構成(d)に関しても「粘性流体封入ダンパーは、筒状部の筐体内方側に設けられること」の構成(d’)も、粘性流体封入ダンパーの周知の製品の普通の使用形態である。
ハ.本件発明1と先願発明との比較
[1]本件発明1の構成要件Aと先願発明の(a)との比較
 審判甲第1号証で粘性流体封入ダンパー53の構造及びその実施の形態の開示があることから、審判甲第1号証で本件発明1の構成要件A(内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置)について開示され、本件発明1の構成要件Aは先願の審判甲第1号証で開示された発明の構成要件との間に違いがない。

[2]本件発明1の構成要件Baと先願発明の構成(b)との比較
 構成要件aの「熱可塑性のエンジニアリングプラスチック」は通常使用する材料を特定しただけのものであるから、格別限定が付されていない先願発明の熱可塑性樹脂の外周壁部(筒状部)64」に相当する。
 したがって、本件発明1の構成要件Ba.は、先願発明の(b)の構成を周知の普通の使用形態(b’)に特定したものであるから、先願発明の(b)に相当し、両者間に違いがない。
[3]本件発明1の構成要件Bb.と先願発明の構成(c)との比較
 本件発明1の構成要件Bb.の「前記減衰手段は、前記筒状部内に収容された減衰材を有すること。」は、先願発明の(c)の第5図に示す粘性流体封入ダンパー53は、筒状部64内に収容された粘性流体を有すること。」に想到し、両者間に相違がない。

[4]本件発明1の構成要件Bc.と先願発明の構成(d)との比較
 先願発明は、前記指摘部分に記載のように、2色成形すれば第一部材と第二部材とが融着によって接合されることは明かである。
[5]本件発明1の構成要件Bd.と先願発明の構成(e)との比較
 構成要件Bd.と先願発明の構成「筒状部64の他端に固着された硬質樹脂製の蓋体70」との間に違いがない。
 以上のように、本件発明1の必須構成要件と先願発明の構成は夫々対応する。特に先願発明の「粘性流体封入ダンパー」の発明は、審判甲第2号証乃至審判甲第7号証に示す周知の普通の使用形態が全体となって発明されているものであり、且つ、本件発明の目的として、「減衰手段の組立て工数が少なく、製作が簡単な防振装置を提供することにある。」と記載していることからも、本件発明1の本旨との間に相違点がない。

 したがって、先願発明の粘性流体封入ダンパー53は、その用途を審判甲第2号証乃至審判甲第7号証等に示す周知慣用技術の形態を前提に発明されたものであり、本件発明1は、先願の審判甲第1号証に記載された発明と実質的に同一であるから、本件発明1は特許法第29条の2によって拒絶されるべきものである。

 しかしながら、上記[2]の点は、6−(2)−c.に記したように相違がないとは言えない。
 すなわち、熱可塑性の硬質樹脂が、実質的に熱可塑性のエンジニアプラスチックと同じであると認定することはできない。
 また、同じく上記[4]の点も6−(2)−c.に記したように相違がないとは言えない。
 すなわち、先願発明は、本件発明1のように筒状部の端部のみに密封するべく熱融着されていない点で相違する。
 したがって、請求人の上記主張は、採用できない。


7.当審における無効理由
7.−(1)当審が通知した無効理由における引用刊行物
引用刊行物1:実願昭63−151566号(実開平2−72834号)のマイクロフィルム (平成2年6月4日公開)
 引用刊行物1には、以下の記載事項がある。
(1)「本考案は、車載用のコンパクトディスクプレーヤのドライブユニット等の精密機器を支持する際に使用される防振支持装置に関する。」(2頁6行〜同8行)
(2)「第3図はコンパクトディスクプレーヤの主要部を示す図である。図中1はシャーシ等の支持部材である。この支持部材1はコンパクトディスクプレーヤを取り付けるためのフレームである。この支持部材1に、メカシャーシ等の被支持部材2が弾性支持用附勢手段であるコイルスプリング6とダンパー60によって支持されている。被支持部材2上にはコンパクトディスクDを支持して回転させるターンテーブル4aと、このターンテーブル4aを回転駆動させるモータ機構4と、光学ピックアップ5及び図示していない電子回路ユニットや表示機構ならびに外部接続コネクタ機構などが搭載されている。」(2頁10行〜3頁3行)

(3)「容器部12はブチルゴム等のゴム材料にて厚肉に形成された円筒状の胴部12aの一端に底12bが設けられて容器状に一体に成形されている。・・・(中略)・・・この蓋部13はブチルゴムとのゴム材にて容器部12より柔らかく弾性体に成形される。」(10頁8行〜11頁5行)
(4)「ダンパー20の容器部22は筒状の胴部22aの一端に開口端22cを有し、その開口端22cの近辺の外周には支持部材の取付孔laに嵌入させる溝22dが設けられている。胴部22aの一端には底部22bを有し、容器部22は一体成形されている。さらに、蓋部23は胴部22aの開ロ端を覆うとともに、容易に弾性変形するように容器部22より軟質に成形されている。蓋部23の中央部に支持軸挿入部23aを有し、この支持軸挿入部23aの周囲に連結して断面がV字状に内側に折曲げられた環状の薄肉部23cを有し、さらにこの薄肉部23cの外周に上記容器部22の開口端22cに対して接着できるように端部23bを有し、蓋部23は一体成形されている。」(12頁16行〜13頁10行)

 これらの記載事項及び第2,3図によれば、引用刊行物1には「内部に空間を有する支持部材1と、該支持部材1内にコンパクトディスクプレーヤを配置し、
 支持部材とコンパクトディスクプレーヤ間にコイルスプリング6とダンパー20を設けるとともに、ダンパーはその容器部を支持部材に取付け、内方に向いた支持軸66をコンパクトディスク側に取付けてなる防振装置において、
 上記ダンパー20は、ゴム材料で形成されたダンパーの容器部22が筒状の胴部22aの一端に開口端22cを有し、その開口端22cの近辺の外周には支持部材の取付孔1aを嵌入させる溝22dが設けられ、前記胴部22aの他端には底部22bを有し、容器部22は一体に成形され、蓋部23は前記胴部22aの前記開口端22cを覆うとともに、容易に変形するように容器部22の材料より軟質のゴム材料で成形され、蓋部23の中央部に支持軸挿入部23aを有し、この支持軸挿入部23aの周囲に連結して環状の薄肉部23cを有し、さらにこの薄肉部23cの外周に上記容器部22の前記開口端22cに対して接着する端部23bを有し、前記蓋部23は一体成形され、容器部内に粘性流体を封入して構成されている防振装置。」の発明(以下、「引用刊行物1に記載の発明」という。)が記載されていると認められる。


引用刊行物2:特開昭61−189336号公報(昭和61年8月23日公開)
 引用刊行物2には、「ビデオテープレコーダ及びコンパクトディスクプレーヤ等の磁気記録再生装置を含む電子機器に好適する防振装置」に関し(1頁左欄13行〜15行)、第2図等には粘性流体28を封入したダンパー29が開示されており、「ダンパー29として、ゴムを用いた場合で説明したが、これに限ることなく、例えば弾性プラスチック等の弾性材料でなる弾性体を用いて構成してもよい」点が記載されている(3頁右上欄4行〜8行)。


引用刊行物3:特開平1−139240号公報(平成1年5月31日公開)
 引用刊行物3には、「(産業上の利用分野)
 本発明は、硬質部位と軟質部位を有する複合成形体の新規な製造方法に関する。更に詳しくは、ポリカーボネートなどの硬質で諸特性に優れたエンジニアリングプラスチックで構成された部位と、軟質の熱可塑性弾性体で構成された部位とを有する複合成形体を熱融着手段により効率よく製造する方法に関するものである。」(2頁左上欄1行〜同8行)、「(従来の技術)優れた機械的強度を持つエンジニアリングプラスチックスは、・・・・(中略)、一方熱可塑性弾性体・・・(中略)近年、合成樹脂(プラスチック)性部品や部材の性能の高度化、機能の高度化の要求が厳しく、その中で前記したエンジニアプラスチックと熱可塑性弾性体との複合化を試みる動きがある。そして、その複合化に際し両者に共通した成形手段である射出技術により、両者を相互に熱融着させて複合化することが最も効果的である。」(2頁左上欄9行〜右上欄16行)、「しかしながら、一般に熱可塑性のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性樹脂とは熱融着性が必ずしも良くない。とりわけ、ゴム弾性に優れた熱可塑性弾性体(TPE)との熱融着性が悪く両者を強固に接合させることができない。」(2頁右上欄17行〜左下欄1行参照)、「合成樹脂成形体の存在下に該合成樹脂成形体より硬度の低い成形体を与える熱可塑性弾性体組成物を熱融着により接合させる」点(特許請求の範囲の請求項1参照)及び、「熱融着により接合させる技術手段は、いずれでも採用可能である。例えば、(中略)生産の観点から射出成形法が望ましい。」(4頁右上欄11〜16行参照)と記載されている。
 これらの記載によれば、引用刊行物3には「熱可塑性のエンジニアリングプラスチックスからなる部材に、軟質の熱可塑性弾性体を射出成形により一体に熱融着させる」発明が記載されているものと認められる。


引用刊行物4:特開平2−107415号公報(平成2年4月19日公開)
 引用刊行物4には、「一方・・・(中略)エンジニアリングプラスチックと熱可塑性弾性体との複合化を試みる動きがある。そして、その複合化に際し、両者に共通した成形手段である射出成形技術により両者を相互に熱融着させて複合化することが量産性という点から最も効果的である。」(2頁左下欄4行〜右下欄10行)、「一般に熱可塑性のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性樹脂とは熱融着性が必ずしも良くない。とりわけ、ゴム弾性に優れた熱可塑性弾性体との熱融着生が悪く、両者を強固に接合することができない。」(2頁左下欄11行〜同15行)及び、「自動車用ランプのランプボディをエンジニアリングプラスチックで成形する成形工程と、前記ランプボディを射出成形金型に入れる挿入工程と、前記ランプボディと前記射出成形金型との間に形成される空間部に熱可塑性エラストマーを注入する注入工程と、前記ランプボディと前記熱可塑性エラストマーを熱融着させる熱融着工程」(特許請求の範囲の請求項1)と記載されている。

 これらの記載を総合すると、引用刊行物4には引用刊行物3と同様の発明が記載されているものと認められる。

引用刊行物5: 特開平1−139241号公報(平成1年5月31日公開)
 引用刊行物5には、「(産業状の利用分野) 本発明は、機械的強度に優れたエンジニアリングプラスチックなどの合成樹脂で構成される成形体部位と、弾性に富んだ熱可塑性弾性体で構成される成形体部位とを有する複合成形体の製造に有用な、熱融着特性に優れた熱可塑性弾性体組成物に関する。」(1頁右欄13行〜18行)、
「エンジニアリングプラスチックと熱可塑性弾性体との複合化を試みる動きがある。そして、その複合化に際し、両者を共通した形成手段である射出成形技術により両者を相互に熱融着させて複合化することが最も効果的である。」(2頁右上欄2行〜6行)、「しかしながら、一般に熱可塑性のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性樹脂とは、熱融着性が必ずしも良くない。とりわけ、ゴム弾性に優れた熱可塑性弾性体(TPE)との熱融着性が悪く、両者を強固に接合させることができない。」(2頁右上欄7行〜11行)と記載されている。

 これらの記載を総合すると、引用刊行物5には、引用刊行物3と同様の発明が記載されているものと認められる。

7.−(2)対比
 本件発明1と上記引用刊行物1に記載の発明を対比すると、引用刊行物1に記載の発明の「支持部材1」、「コイルスプリング」、「ダンパー」、「容器部22の筒状の胴部22a」、「粘性流体」及び「支持軸挿入部23a」は、本件発明1の「筐体」、「弾性支持具」、「減衰手段」、「中空の筒状部」、「減衰材」及び「記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部」にそれぞれ相当し、さらに引用刊行物1に記載の発明の「蓋部23は胴部22aの開口端22cを覆うとともに、容易に変形するように容器部22の材料より軟質のゴム材料で成形され、蓋部23の中央部に支持軸挿入部23aを有し、この支持軸挿入部23aの周囲に連結して断面がV字状に内側に折り曲げられた環状の薄肉部23cを有し、さらにこの薄肉部23cの外周に上記容器部22の開口端22cに対して接着する端部23bを有し」における蓋部は容器22を密封する部材であることは明らかであり、またその部材である「軟質のゴム材料」が軟質の弾性体であることも自明のことであるので、

 両者は「内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、前記減衰手段は、前記筐体にその内方を向くように設けられた、複数の中空の筒状部と、
 この筒状部内に収容された減衰材と、
前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに固着され軟質の弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた密封部材と、
を有する記録再生装置の防振装置。」で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
 本件発明1が、筐体の内方に向くように設けられた複数の中空の筒状部を「熱可塑性のエンジニアリングプラスチック」で構成するとともに、該筐体内方側端部に「軟質の熱可塑性弾性体からなる第1密封部材」を設けているのに対し、引用刊行物1に記載の発明では容器部22は「ゴム材料」で形成するとともに、該容器部の内方側端部である開口部22cに設けるものは,「容易に変形するように容器部22の材料より軟質のゴム材料で成形された蓋部23」である点。

相違点2
 本件発明1の筐体内方側端部に設けられる第1密封部材が、「射出成形により一体に熱融着」されるのに対し、引用刊行物1に記載の発明では、筒状の容器部の内方側端部である開口端22cに蓋部23を接着して設けている点。
相違点3
 本件発明1が、第1密封部材が設けられている筒状部の他端部に第2密封部材を備えているのに対し、引用刊行物1に記載の発明では容器部の蓋が設けられている側の反対側には、底部22bが胴部22aと一体に設けられている点。


7.−(3)相違点の検討
イ.相違点1,2について
 引用刊行物1に記載の発明は、ダンパーを構成する筒状の容器部に対して、その端部に接着される蓋部は、前記容器部のゴム材料に比して軟質のゴム材料を用い、且つ両者を接着することにより接合している。
 一方、ダンパーの構成材料としてゴム材料に換えてプラスチックを用いることが可能なことは引用刊行物2に記載されている。
 そして、「熱可塑性のエンジニアリングプラスチックスからなる部材に、軟質の熱可塑性弾性体を型成形により一体に熱融着させる」ことは上記引用刊行物3乃至5に記載のように周知のことである。


 以上の点を考慮すれば、引用刊行物1に記載の発明の硬い筒状の容器部とその端部を塞ぐ柔らかい蓋部の組合せについて、ダンパー構成部材に少なくともプラスチックを用いる引用刊行物2に記載の発明思想の基に、硬いプラスチック構成材料として熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックを、軟質のプラスチック構成材料として熱可塑性弾性プラスチックの周知(引用刊行物3乃至5記載参照)の組合せを用いると共に、両者の接合手段として同じく周知の前記熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックに射出成形により軟質の熱可塑性弾性体を一体に熱融着する接合構成を用いることが、考え得る。しかしながら、下記[ロ.相違点3について]で検討することにより、困難性があることが明かとなった。

ロ.相違点3について
 引用刊行物1に記載の発明は、従来のダンパーが「袋体61内に流体65を注入する必要があり、この袋体61内に支持軸66部が突出しているので、流体65を注入する際、支持軸66部が邪魔になり、」(5頁17行〜20行)との欠点および「このダンパー70は、容器部71の底部71aを薄肉に形成し、周囲部71bを厚肉に形成したものであり。且つ、これ等は同一材で一体に形成されている。・・・したがって、周囲部71bを厚肉に形成しても、十分な振動減衰効果が得られないという問題を有していた。」(6頁10行〜18行)との欠点を克服するためになされたものであり、支持軸76を支持するダンパーの容器として適するように硬質材料からなる容器部22と、ダンパーの支持軸挿入部として適するように軟質の材料を用いると共に、粘性流体の注入作業が容易となるように、従来のダンパー(第5図参照)では容器の底部にあった一体成形の支持軸挿入部を蓋部に移動させたものであると認められる。そのために、唯一の密封部である容器部22の開口端22cと蓋部23の端部23b(蓋部の外周部)を後から密封するために、該部分を接着する構成にしたものと認められる。

したがって、あえて支持軸挿入部(従来例の支持軸支持部)を底部から蓋部に移動させたものを、再び底部に移動させる点、および底部と筒状部を別材料で形成されるにもかかわらず一体に形成する点は、引用刊行物1の発明においては相容れない技術事項と認められる。
 そして、この2つの技術事項は、前記相違点1,2の検討において記した引用刊行物1に記載の発明に、引用刊行物2に記載のプラスチックをダンパー材料として適用するとの思想および引用刊行物3乃至5に記載の硬軟のプラスチックの組合せ及びこれらの固着構成を適用することを困難にしていることは明かである。


7.−(4)請求人の主張
 なお、この無効理由に関して行われた口頭審理における請求人の陳述内容を検討しても、上記相違点の検討における判断を覆す理由を見出せない。
 特に、請求人は、「熱融着は、熱可塑性合成樹脂相互間の接合を行う基本的接合技術であるから、接着剤で接合するか、熱融着で接合するかは今更証拠を提示する必要のない設計事項である」と主張している(平成13年7月11日付上申書第4〜5頁)が、上記したように引用刊行物1に記載の発明において、接着材で蓋をしていた部分を設計事項であるとして、熱融着に換えて本件発明1を得ることができないことは明かであるから、その主張は採用できない。


7.−(5)むすび
 したがって、本件発明1は、当審において通知した引用刊行物1乃至5に記載された発明から容易に発明をすることができたものとすることができない。


8.むすび
 以上のとおりであるから、当審における特許無効理由通知に記載の理由並びに、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明(本件発明1)の特許を無効とすることはできない。
 又、他に本件発明1に係る特許を無効とする理由を発見しない。