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補正・訂正 > 新規事項 > 新たな技術的事項の導入

知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

新たな技術的事項の導入

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成29(行ケ)10216  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年8月22日  知的財産高等裁判所

 審決は、羽の寸法を追加する補正が新規事項であるとしましたが、知財高裁(第2部)は、これを取り消しました。理由は、その商品に用いることが記載されていることなどから、特定事項aは新たな技術的事項を導入するものとはいえないというものです。
 前記で認定したような本願発明において,撹拌羽根 の形状,寸法等の撹拌条件は発明特定事項として重要な要素といえるところ,当初 明細書等に本件撹拌羽根を用いることは明示されていない。しかし,当初明細書の 【0012】には,1)撹拌にET−3Aを用いること,2)「撹拌羽」は,回転中心 となる支軸の下端から漢字の「山」の字を構成する形態で対の羽部を延設した「撹\n拌羽」であること,3)「撹拌羽」の回転半径は,内容量が200mlで内径約6c mのビーカー等の円筒形容器の半径(約3cm)より僅かに小さいことが記載され ているところ,前記(1)イの事実によると,当初明細書に記載されている上記「撹拌 羽」の形状,寸法は,ET−3Aの付属品である200mlビーカー用の本件撹拌 羽根のそれと一致するものである。また,前記(1)イの事実によると,ET−3Aは, 昭和60年頃から長年にわたって販売されており,多数の当業者によって使用され てきたと推認される実験用の機械であるところ,販売開始以来,付属品である本件 撹拌羽根の形状,寸法に変更が加えられたことは一度もなく,しかも,遅くとも平 成17年7月頃には,本件撹拌羽根は,ET−3Aとともに日光ケミカルズのカタ ログに掲載されていた。さらに,当初明細書の記載に適合するような形状,寸法の ET−3A用の撹拌羽根が,ET−3A本体とは別に市販されていたことは証拠上 認められない。
以上の事実を考え併せると,当業者が,当初明細書等に接した場合,そこに記載 されている撹拌羽が,ET−3Aに付属品として添付されている200mlビーカ ー用の本件撹拌羽根を指していると理解することができるものと認められる。そし て,特定事項aは,200mlビーカー用の本件撹拌羽根の実寸法を追加するもの であるから,特定事項aを本願の請求項1に記載することが,明細書又は図面の全 ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を 導入するものとはいえず,新規事項追加の判断の誤りをいう原告の主張は理由があ る。

◆判決本文

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平成29(行ケ)10114  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年7月18日  知的財産高等裁判所(4部)

 明確性違反、進歩性違反などいくつかの無効主張について、無効でないとした審決が維持されました。数値範囲を限定した記載が原文新規事項には該当しないとも判断されました。
 原告らは,本件審決は,本件特許の請求項3の「1〜2ng/mlプラズ マ濃度」の記載について,本件国際出願明細書には,「1〜2ng/mlプ ラズマ濃度」との文言の記載はないが,「0.1〜2ng/mlプラズマ濃 度」との記載があり,「1〜2ng/mlプラズマ濃度」の数値範囲は,「0. 1〜2ng/mlプラズマ濃度」の数値範囲の約半分ほどの範囲を占める部 分であり,当該範囲は,他の数値範囲からは予測できない特段の意味を有す\nる数値範囲でもなく,新たな技術的事項を導入するものでもないから,本件 発明3及び請求項3を発明特定事項として引用する本件発明4ないし12は, 本件国際出願明細書に記載した事項の範囲内にあり,原文新規事項に該当し ない旨判断したが,1)「1〜2ng/ml」のプラズマ濃度におけるデクス メデトミジンの作用は,「0.1〜1ng/ml」のプラズマ濃度における デクスメデトミジンの作用とは,明らかに異質なものであり(甲9x,9y, 10),「1ng/mlプラズマ濃度」を数値範囲の境界値として本件特許 の請求項3に記載することは,新たな技術的事項を導入するものであるから, 原文新規事項に該当する,2)本件国際出願明細書と本件国内書面によれば, 国際出願時の請求項3で「0.1〜2ng/mlプラズマ濃度」とされてい たものが,本件国内書面の請求項3で「1〜2ng/mlプラズマ濃度」と なったようであるが,既に特許登録されている請求項3を「0.1〜2ng /mlプラズマ濃度」に訂正する手段はないから,原文新規事項に該当する というほかないとして,本件審決の上記判断は誤りである旨主張する。 そこで検討するに,本件国内書面(甲77の2)には,プラズマ濃度に関 し,「デクスメデトミジンの投与量の範囲は,標的プラズマ濃度として記載 することができる。ICUにおける患者の人々に鎮静を提供することを期待 されるプラズマ濃度範囲は,鎮静の目的レベルおよび患者の全体的な状態に 依存して0.1〜2ng/mlの間で変わる。これらのプラズマ濃度は,瞬 時投与(bolus dose)および規則的な維持注入(steady maintenance infusion) による継続投与を用いて静脈内投与によってなされることができる。たとえ ば,ヒトにおいて前記プラズマ濃度範囲に到達するための瞬時の投与量範囲 は,約10分間またはそれよりゆっくり投与されるため,約0.1〜2.0 μg/kg,好ましくは約0.5〜2μg/kg,より好ましくは1.0μ g/kgであり,ついで,約0.1〜2.0μg/kg/h,好ましくは約 0.2〜0.7μg/kg/h,より好ましくは0.4〜0.7μg/kg /hが維持投与される。デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る 塩の投与期間は,目的の使用持続期間に依存している。」(【0028】) との記載がある。上記記載によれば,【0028】には,ICUにおける患 者の人々に鎮静を提供することを期待されるプラズマ濃度範囲は,「鎮静の 目的レベルおよび患者の全体的な状態に依存して0.1〜2ng/mlの間 で変わる」ことが開示されていることが認められるが,一方で,本件国内書 面の発明の詳細な説明及び図面には,【0028】以外に,「0.1〜2n g/mlプラズマ濃度」に関して言及した記載はない。また,この点につい ては,本件国際出願明細書も,本件国内書面と同様であることが認められる。 そして,本件特許の請求項3の「1〜2ng/mlプラズマ濃度」は,【0 028】記載の「0.1〜2ng/ml」の数値範囲内にあるから,ICU における患者の人々に鎮静を提供することを期待されるプラズマ濃度範囲に あることは明らかである。 そうすると,本件特許の請求項3の「1〜2ng/mlプラズマ濃度」の 記載が,本件国際出願明細書のすべての記載を総合することにより導かれる 技術事項との関係において新たな技術的事項の導入に当たるということはで きない。
(2) この点に関し,原告らは,甲9x,9y,10を根拠として挙げて,デク スメデトミジンのプラズマ濃度が「1〜2ng/ml」に達すると,患者は 深く眠ってしまって覚醒できなくなるが,プラズマ濃度が「0.1〜1ng /ml」であれば,音声指示によって容易に目を覚ますことが可能であるか\nら,「1〜2ng/ml」のプラズマ濃度におけるデクスメデトミジンの作 用は,「0.1〜1ng/ml」のプラズマ濃度におけるデクスメデトミジ ンの作用とは,明らかに異質なものである旨主張(上記1)の主張)する。 しかし,原文新規事項に該当するかどうかは,本件国際出願明細書の全て の記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術 的事項の導入に当たるかどうかを判断すべきであるところ,甲9x,9y, 10は,本件国際出願明細書とは別の文献であり,しかも,原告らが根拠と して挙げる上記各文献の具体的な記載内容が,本件優先日当時技術常識であ ったとまで認められないから,原告らの上記1)の主張は,採用することがで きない。 また,原告らは,本件特許の請求項3の「1〜2ng/mlプラズマ濃度」 の記載が原文新規事項に該当することの根拠として,請求項3の「1〜2n g/mlプラズマ濃度」の記載を「0.1〜2ng/mlプラズマ濃度」に 訂正する手段がないことを挙げるが(上記2)の主張),そのように訂正する 手段があるかどうかの問題と請求項3の「1〜2ng/mlプラズマ濃度」 の記載が原文新規事項に該当するかどうかの問題とは別個の問題であるとい うべきであるから,原告らの上記2)の主張は失当である。
(3) 以上によれば,本件発明3及び請求項3を発明特定事項として引用する本 件発明4ないし12は,本件国際出願明細書に記載した事項の範囲内にあり, 原文新規事項に該当しないとした本件審決の判断に誤りがあるとの原告らの 上記主張(取消事由5)は,理由がない。

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平成28(行ケ)10278  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年1月15日  知的財産高等裁判所(4部)

 異議理由ありとした審決が取り消されました。理由は、新規事項か、サポート要件違反か、実施可能要件違反かです。知財高裁は、当初明細書の範囲内と判断しました。\n
ア 本件出願当初明細書等の記載
結晶多形Aについて,本件出願当初明細書等には,おおむね,次のとおり記載が ある。
・・・・
イ 本件出願当初明細書等に開示された結晶多形Aに関する技術的事項
(ア) 本件出願当初明細書等にいう結晶多形Aは,本件出願当初明細書等におい て名付けられたものである(【0007】)。
(イ) そして,本件出願当初明細書等【0008】には,結晶多形Aに該当する具体的な結晶多形として,【0008】(1)は,本件出願時の特許請求の範囲【請求 項1】で特定される結晶多形を挙げるほか,【0008】(5)は,2θで表して,構\ 成要件Eで特定されるのと同様の26個の角度において,ピークを有する特徴的な X線回析図形を示し,FT−IR分光法と結合した熱重量法により測定した含水量 が3〜15%であるピタバスタチンカルシウムの結晶多形を挙げており,後者の結 晶多形は,構成要件Eで特定される結晶多形を含むものである。このように,本件\n出願当初明細書等【0008】の記載は,結晶多形Aには,構成要件Eで特定され\nる結晶多形だけではなく,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特定される 結晶多形も,該当する旨説明するものである。
(ウ) また,本件出願当初明細書等【0009】は,「結晶多形Aの一つの具体 的形態」として,2θで表して,構\成要件Eで特定されるのと同様の26個無偏差 相対強度図形を示す結晶多形を例示しており,この結晶多形は,構成要件Eで特定\nされる結晶多形を含むものである。そうすると,本件出願当初明細書等【0009】 の記載は,構成要件Eで特定される結晶多形は,結晶多形Aの具体的な態様の一つ\nである旨説明するものである。
(エ) さらに,本願出願当初明細書等【0047】には,【0047】に記載さ れた製造方法によって,結晶多形Aが得られること,当該結晶多形AのX線粉末回 析図形は,構成要件Eと同様の26個無偏差相対強度図形を示したことが記載され\nている。本件出願当初明細書等【0047】の記載は,特定の製造方法によって生 成された結晶多形AのX線粉末回析図形を説明するにとどまり,構成要件Eで特定\nされる結晶多形のみが結晶多形Aである旨説明するものではない。
(オ) したがって,本件出願当初明細書等の記載を総合すれば,構成要件Eで特\n定される結晶多形Aだけではなく,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特 定される結晶多形Aも,導くことができる。
(4) 新規事項の追加の有無
本件出願当初明細書等の記載を総合すれば,構成要件Eで特定される結晶多形A\nだけではなく,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特定される結晶多形A も,導くことができるから,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】で特定され る結晶多形Aから,構成要件Eで特定される結晶多形Aを除くものを,本件出願当\n初明細書等の全ての記載を総合することにより導くことができるというべきである。 したがって,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】に,構成要件Eを追加す\nる本件補正は,新たな技術的事項を導入するものではなく,本件出願当初明細書等 に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。
(5) 被告の主張について
被告は,本件出願当初明細書等に記載された結晶多形Aを,26個のピークの回 折角2θ及びその相対強度で特定しなくても,6個のピークの回析角2θ等によっ て特定し得るということは技術常識ではないと主張する。 しかし,本件出願当初明細書等の記載を総合すれば,26個のピークの回折角2 θ及びその相対強度で特定される結晶多形Aだけではなく,6個のピークの回析角 2θ等によって特定される結晶多形Aも導くことができる。本件補正は,26個の ピークの回折角2θ及びその相対強度で特定される結晶多形を,6個のピークの回 析角2θ等によって特定することを前提としてなされたものではないから,被告の 上記主張は,前提を欠く。
(6) 小括
以上のとおり,本件出願時の特許請求の範囲【請求項1】に,構成要件Eを追加\nする本件補正は,新たな技術的事項を導入するものではない。そして,本件補正の その余の部分について,被告は,新たな技術的事項を導入するものではなく,本件 出願当初明細書等に記載した範囲内においてしたものであることを争わない。した がって,本件補正は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たす。

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平成28(行ケ)10088  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年2月8日  知的財産高等裁判所

 知財高裁(3部)は、第1次判決の拘束力が及ばない、新規事項であるとした審決は妥当と判断しました。
 事情が複雑です。本件特許出願について、第1次審決で補正要件違反(新規事項)と判断され、知財高裁にて、それが取り消されました(第1次判決 平成26年(行ケ)第10242号)。審理が再開されましたが、審判官は、再度補正要件違反(新規事項)として判断しました。理由は、現出願である実案出願に開示がなかった技術的事項を導入しているというものです。
 以上を前提に,本件実用新案登録の当初明細書等と本願明細書等の記載事 項を比較すると,次のとおり,本願明細書等には,本件実用新案登録の当初 明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係に おいて,明らかに新たな技術的事項を導入するものというべき記載が認めら れる。
ア 本願明細書等の請求項1の(3)ないし(15)に関する事項 本願明細書等に記載がある,シュレッダー補助器について,材質がプラ スチック製であること(請求項1の(3)及び(9)),色が透明である こと(同(11)),横幅が約35cmであること(同(8))の各事項 について,本件実用新案登録の当初明細書等には明示の記載がなく,また, 本件実用新案登録の出願時において,これらの記載事項が技術常識であっ たとも認められない。 また,シュレッダー補助器に埋め込まれた金属製爪部分及びこれに関す る記載事項(同(4)ないし(7),(10),(12)ないし(15)) については,本件実用新案登録の当初明細書等において,そのような爪部 分の存在自体が明らかでない。 したがって,これらの事項は,本件実用新案登録の当初明細書等の全て の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,明ら かに新たな技術的事項を導入するものというべきである。
イ 本願明細書等の図1及び図2並びに段落【0010】の図1及び図2に 関する事項
本願明細書等の図1(シュレッダー補助器の横断面図)及び図2(シュ レッダー補助器の正面図)並びに段落【0010】の図1及び図2に関す る寸法については,本件実用新案登録の当初明細書等には記載も示唆も一 切認められない。これらの事項は,本件実用新案登録の当初明細書等の全 ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,明 らかに新たな技術的事項を導入するものというべきである。 ウ 本願明細書等の段落【0010】の図3及び図4に関する事項 本願明細書等の段落【0010】には,図3の寸法に関し,「(ム)シ ュレッダー補助器の下部外幅は6mm,」と記載され,「(ヤ)シュレッダ ー補助器が挿入し易いよう,傾斜角を,シュレッダー機本体の水平面から 測って85度とし,」と記載されている。しかしながら,本件実用新案登録 の当初明細書等の対応する図1においては,シュレッダー補助器の下部外 幅は5mmと異なる数値が記載されており,また,傾斜角については記載 も示唆も認められない。 また,本願明細書等の段落【0010】には,図4の寸法に関し,「( ヨ)シュレッダー補助器の横幅約35cm,」と記載されている。しかし ながら,本件実用新案登録の当初明細書等には,この点についての記載も 示唆も認められない。 したがって,これらの事項は,本件実用新案登録の当初明細書等の全て の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,明ら かに新たな技術的事項を導入するものというべきである。
(5) 以上のとおりであるから,本願明細書等に記載した事項は,本件実用新案 登録の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。 したがって,本願について出願時遡及を認めることはできないから,本願 は,平成18年8月24日(本件実用新案登録に係る実用新案登録出願の時) に出願したものとみなすことはできないとした本件審決の判断に誤りはなく, 本願出願の時は,本願出願の現実の出願日である平成20年10月10日と なる。
(6) これに対し,原告は,本件実用新案登録は,出願時と同一のものであると 認められたからこそ,登録になったのであり,原告は,本願において,その 登録になったものと同一のものを,そのまま(変更せずに)特許出願したに すぎないから,出願時遡及を認めないのは誤りであると主張する。 しかしながら,実用新案登録制度は,考案の早期権利保護を図るため実体 審査を行わずに実用新案権の設定の登録を行うものであるため,補正により 新規事項が追加され,無効理由を胚胎した出願であっても,実用新案権の設 定の登録はされ得る。そして,このような新規事項が追加されて実用新案登 録になった明細書等と同一のものに基づいて特許出願をした場合,特許出願 の当初明細書等も実用新案登録出願の当初明細書等に対して新規事項が追加 されたものになるから,その後の補正により新規事項が解消されない限り, 出願時遡及は認められないことになる。すなわち,実用新案権の設定の登録 は,登録時の明細書等が実用新案登録出願の当初明細書等と同一でなくとも され得るから,実用新案登録になった明細書等と同一のものをそのまま用い て特許出願をしたとしても出願時遡及が直ちに認められるものではない。し たがって,上記原告の主張はその前提を欠くものであって失当である。
また,原告は,本件実用新案登録の出願後,登録になるまでに何度も手続 補正をしているが,それは,いずれも被告側の指示(手続補正指令書)に従 って手続補正書を提出したものであり,被告側の指示に従って手続補正を繰 り返した結果,ようやく登録が認められたにもかかわらず,本件実用新案登 録の出願時のものとは異なるという理由で,出願時遡及を認めないのは理不 尽であるとも主張する。 しかしながら,証拠(甲2の1,4,6,8の1,8の2,11)によれ ば,手続補正指令書による被告の補正命令は,いずれも実用新案法6条の2 第1号又は第4号に関するものであって,補正後の明細書等の具体的内容を 指示したものではない。また,各手続補正指令書において,その都度,補正 した事項が出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であるように十分\n留意する必要がある旨の注意喚起もなされている(更に付け加えれば,出願 手続には専門知識が要求されるので,専門家である弁理士に相談することの 促しもなされている。)。 それにもかかわらず,本件実用新案登録の登録時における明細書等の内容 が,新規事項の追加によって出願時のそれと異なるものとなり,その結果, 特許法46条の2第2項による出願時遡及が認められないこととなったのは, 原告自身の責任によるものというほかない。したがって,上記原告の主張も また失当である。

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平成27(行ケ)10262  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年9月29日  知的財産高等裁判所

 無効理由なしとの審決が維持されました。争点として訂正要件を満たしているのかが争われています。「下端部」を「先端部」とする訂正も新規事項ではないと判断されました。
 原告は,訂正事項1について,審決は,「下端部」が「先端部」と同じ意味 であることは明らかであると断定しているが,本件明細書には「先端部」という記 載はなく,「下端部(自由端部)6a」,「下端部6a」という記載しか存在しないの であるから,本件明細書に全く記載のない全く別概念である「先端部」という表現\nを用いた訂正を行うことは,本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるとは いえず,新規事項を追加するものであり,違法である旨主張する。 しかし,本件明細書の「棚板2は,水平状に広がる平面視四角形の基板4と,基 板4の各辺から上向きに立ち上がっている外壁5と,外壁5の上端に連接した内壁 6とから成っており,」(段落【0016】),「図3(B)に示すように,・・・内壁6のうち外壁5に繋がる連接部11は本実施形態では略平坦状の姿勢になっている。 他方,内壁6の下端部(自由端部)6aは,外壁5に向けて傾斜した傾斜部になっ ている。」(段落【0021】)との記載によれば,図3(B)の実施形態において, 内壁6の上端部は,外壁5との連接部11であり,外壁5に繋がる固定端部である のに対し,内壁6の下端部6aは,自由端部であり,下端部6aよりも先には内壁 6の部分が存在しないことから,内壁6の先端部であると認められる。そして,こ のような内壁6の構造は,本件明細書の図5(A),(B)などにも記載されている\nものである。 したがって,訂正事項1の「先端部」との表現を用いた訂正は,本件明細書に記\n載した事項の範囲内のものであるから,原告の上記主張は採用することができない。 また,原告は,「先端部」という用語は,上下方向に限られない先に位置する部分 を指す語であるから,「先端部」は「下端部」よりも広い部分を指すことになるので, 本件発明において,「下端部」の代わりに「先端部」という語を用いると発明の範囲 を広げることになる旨主張する。 しかし,本件明細書には,「なお,本願発明の棚板は基板の周囲に外壁を備えてい るが,棚板は基板から上向きに立ち上がっていても良いし,下向きに垂下していて も良い。」(段落【0010】)と記載されているところ,後者の外壁が下向きに垂下 する構成を採用する場合,内壁の先端部は下端部ではなく,上端部となることは自\n明である。そうすると,本件明細書に明示的に記載があるのは「下端部」との語の みであるとしても,内壁の先端部について,「下端部」のみならず「上端部」も本件 明細書に記載されているに等しいものと認められるから,本件明細書に記載されて いると認められる事項が「下端部」に限定されるものでないことは明らかである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(イ) 原告は,訂正事項1のうち,「内壁の先端部は前記基板に至ることなく前記 外壁に向かっており」との部分について,本件明細書には,「内壁の先端部が外壁に 到達していない」構成は記載も示唆もされていないのであるから,特許請求の範囲\nにおいてもそのように解釈されるべきであり,内壁の先端部が外壁に到達していな い場合を含む表現である「前記内壁の先端部は・・・前記外壁に向かっており」と\n訂正することは,実質上特許請求の範囲を拡張することに該当し,拡張変更に当ら ないとする審決の判断は誤っていると主張する。 審決が認定するとおり,「向かう」とは「ある場所や方向を目指して進む。また, ある状態に近づく。」(広辞苑:甲11)との意味であり,「内壁の先端部は・・・外 壁に向かっており」とは,内壁の先端部が外壁の方向を目指して延びているとの意 味であると解されるから,「内壁の先端部は・・・外壁に向かっており」との構成は,\n内壁の先端部が外壁の方向を目指して延びていれば足り,内壁の先端部が外壁に到 達しているか否かは問わないものであって,内壁の先端部が外壁に到達している場 合と内壁の先端部が外壁に到達していない場合とを含むものであるといえる。 もっとも,本件明細書(図3,図5(A),(B))には,「内壁の先端部が外壁に 到達していない」構成も記載されていることが認められるから,実質上特許請求の\n範囲を拡張することに該当するとは認められない。なお,本件明細書には,「内壁の 先端部が外壁に到達していない」構成も記載されていることが認められる(図5(J)\n(K))。 そして,訂正事項1は,内壁の先端部についての限定がされていなかった本件訂 正前の請求項1について,本件明細書の図5(D)のような,外壁と重なる「重合 部6b」を有する内壁6の構造などの「内壁の先端部は・・・外壁に向かって」い\nるものではない構成を除外することにより,本件訂正前の請求項1に記載された「内\n壁」を限定するものであると認められる。 したがって,訂正事項1は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する ものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから,原告 の上記主張は採用することができない。

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平成27(行ケ)10229  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年9月28日  知的財産高等裁判所

 補正が新規事項であると判断されました。
 ア 本件技術的事項が,当業者によって,本願当初明細書等の全ての記載を総合 することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入し ないものと認められるかについて検討する。
イ まず,本願当初明細書等には,「空気噴射装置11の正面には圧縮空気噴射 口20が設けられており」,「圧縮空気噴射口20の背面には…電磁弁22が設けら れている」,「空気噴射装置11は支持部材23によって固定されており,支持部材 23には振動センサ24が設置されている」と説明され(【0059】),さらに, 本願当初明細書等の【図面1】ないし【図面3】(別紙1本件補正明細書図面目録 の【図面1】ないし【図面3】に同じ。)には,筐体の正面上部に空気噴射口があ り,筐体の背面上部よりも下方に電磁弁があり,空気噴射口の背面側の位置に,振 動センサの設置された支持部材がある空気噴射装置が描かれている。そうすると, 本願当初明細書等には,本件技術的事項のうち,空気噴射口が正面上部となるよう にみたときの縦方向に着目した上で,2)筐体の正面上部に空気噴射口を設け,筐体 の背面上部よりも下方に電磁弁を設けることを可能にし,空気噴射口の背面側の位\n置に,振動センサの設置された支持部材を設けるという技術的事項については説明 されているということができる。 しかし,本件技術的事項には,空気噴射口が正面上部となるようにみたときの縦 方向に着目した上で,1)筐体の形状を横方向よりも縦方向に長いものとするという 技術的事項も含まれるところ,本願当初明細書等の【図面2】には,横方向よりも 縦方向に短い筐体の形状を備える空気噴射装置が描かれており,本願当初明細書等 には,その他に,空気噴射装置の形状について言及されていない。そうすると,本 願当初明細書等には,本件技術的事項のうち,空気噴射口が正面上部になるように みたときに縦方向に着目した上で,1)筐体の形状を横方向よりも縦方向に長いもの とするという技術的事項については説明されていないというべきである。 ウ よって,本件技術的事項は,当業者によって,本願当初明細書等の全ての記 載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内にあるということはできず, 「空気噴射装置」についてなされた本件補正は,新たな技術的事項を導入しないも のということはできない。
(4) 原告の主張
ア 原告は,本件補正は,空気噴射装置のうち,支持部材によって支持されてい る上方部分と支持されていない下方部分とに着目した場合,支持部材によって支持 されていない下方部分が,支持部材によって支持されている上方部分よりも縦方向 に長いことから,「空気噴射装置」について,「正面上部に前記空気噴射口を設けた 縦長の筐体」としたものである旨主張する。 しかし,前記(2)のとおり,「空気噴射装置」について「縦長の筐体」を備えると いう構成を付加することは,空気噴射口が正面上部となるようにみたときの縦方向\nに着目した上で,筐体の形状,並びに,空気噴射口,電磁弁及び振動センサの設置 された支持部材の位置関係を特定するという技術的事項を追加するものであって, 単に,空気噴射装置のうち,支持部材によって支持されている上方部分と支持され ていない下方部分の縦方向の長さを比較するというものにとどまるものではない。 したがって,原告の前記主張は採用できない。
イ 原告は,本件補正において,「横長」の筐体とすべきところを,「縦長」の筐 体と誤記載をしてしまっただけであると主張するが,本件補正により追加された技 術的事項の認定は,客観的になされるべきものであるから,原告の上記主張は失当 である。

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平成27(行ケ)10245  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年8月24日  知的財産高等裁判所

 新規事項違反なし、サポート要件違反なしとした審決が取り消されました。
 当初明細書等の記載には,前記1(1)のとおり,便器と便座との間隙を形成する手 段としては便座昇降装置が記載されているが,他の手段は,何の記載も示唆もない。 すなわち,補正前発明は,便器と便座との間隙を形成する手段として,便座昇降 装置のみをその技術的要素として特定するものである。 そうすると,便座と便器との間に間隙を設けるための手段として便座昇降装置以 外の手段を導入することは,新たな技術的事項を追加することにほかならず,しか も,上記のとおり,その手段は当初明細書等には記載されていないのであるから, 本件補正は,新規事項を追加するものと認められる。
(3) 被告の主張について
1) 被告は,当初明細書等に接した当業者にとって,便器と便座との間に拭き取 りアームを移動させるための間隙さえ形成されていればよく,その手段が当初明細 書等に例示されたもの限られないということは,自明の事項であると主張する。 しかしながら,便器と便座との間の間隙を形成する手段が自明な事項というには, その手段が明細書に記載されているに等しいと認められるものでなければならず, 単に,他にも手段があり得るという程度では足りない。上記のとおり,当初明細書 等には,便座昇降装置以外の手段については何らの記載も示唆もないのであり,他 の手段が,当業者であれば一義的に導けるほど明らかであるとする根拠も見当たら ない。
2) また,被告は,公開特許公報には,便座昇降装置以外の手段で便器と便座と の間に間隙を設ける技術が開示されているから,当初明細書等に便座昇降装置以外 の手段で便器と便座との間に間隙を設けることは,当初明細書等に実質的に記載さ れていると主張する。 しかしながら,上記の自明な事項の解釈からいって,他に公知技術があるからと いって当該公知技術が明細書に実質的に記載されていることになるものでないこと は,明らかである。のみならず,上記公報に記載された技術は,容器6と座部3と の間に介護者が手を入れられる隙間を設けることを開示しているだけであり,便器 と便座との間に機械的な拭き取りアームが通過する間隙を設けることとは,全く技 術的意義を異にしている。
3) 被告の上記各主張は,いずれも採用することはできない。
・・・
3 取消事由2(サポート要件充足の有無に対する判断の誤り)について
上記2に説示のとおり,当初明細書等には,便座昇降装置により便座が上昇され た際に生じる便器と便座との間の間隙以外の間隙を設ける手段の記載はないところ, 本件発明に係る本件補正後の明細書及び図面(以下「本件明細書」という。甲4。) は,当初明細書等の発明の詳細な説明及び図面と同旨であり,本件明細書にも,便 座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間の間隙以外の間隙 を設ける手段の記載はない。そして,本件発明15のような機械式拭き取り装置の 設置を前提として,便器と便座との間の間隙をどのように形成するかに関して何ら かの技術常識があるとは認められない。 そうすると,便器と便座との間の間隙を形成するに際して,便座昇降装置を用い るものに限定されない本件発明15は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載した ものではなく,サポート要件を充足しないものである。したがって,本件発明15 の発明特定事項を全て含む本件発明23,本件発明25ないし本件発明29,及び 本件発明30(15)もまた,サポート要件を充足しないものである。 以上から,審決のサポート要件充足の有無に対する判断には,誤りがある。

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平成26(行ケ)10227  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年7月29日  知的財産高等裁判所

 補正が新規事項であるとした審決が維持されました
 これに対し原告は,1)当初明細書等の段落【0041】には,ミキサの 「混合信号」が,「m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)) (3)」の式( 式(3)」)で示されており,式(3)中の「cos(2πfct)」は送信信号,「cos (2πfct+φ(t))」は受信信号(甲15の1,2),「φ(t)」は,「送信お よび受信信号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合)」で あること(段落【0041】),2)当初明細書等の段落【0039】には, 「パルス波形」の「無線周波数信号」である送信信号が「s(t)=u(t)cos(2 πfct+θ) (1)」の式(式(1))で示されており,式(1)(送信信号s(t)) と式(3)(混合信号m(t))とを対比すると,式(1)中の位相角θと式(3)中の 経路差φ(t)が形式的に同等であることは明確であるから,位相角θと経路 差φ(t)は,いずれも,余弦関数の引数の中の瞬時位相として現れており, 信号の位相に関する情報を伝えるものであること,3)「φ(t)」は,一般に 「位相シフト」,「位相オフセット」,「位相差」(甲17の1,2)と呼 ばれていることからすると,「φ(t)」は,「位相シフト」,すなわち,「 位相差信号」を意味すること,4)送信された信号が反射して帰ってくると, その経路距離,すなわち経路差に応じて位相がずれており,「経路差」と「 位相差」は同じものを別の表現で表\したものであることは,当業者にとって 自明であり(甲20の1,2),「経路差(path difference)」と「位相差 (phase difference)」が密接に関連していることは,本願の優先権主張日 当時,一般的な技術常識であったこと,5)当初明細書等の段落【0072】 には,「反射信号に送信信号を乗じ,それより呼吸,心活動,および身体 機能または動作を示すベースバンド信号を出力するように乗算回路を設け\nてもよい。」との記載があること,及び6)当初明細書等の段落【0041 】及び図1(別紙明細書図面参照)の記載によれば,当初明細書等には, 式(3)中の「φ(t)」は,「送信および受信信号の経路差(単一の反射体に より反射が決定される場合)」を表すものであるが,「ベースバンド信号」\nから得ることのできる「位相差信号」でもあり,また,ローパスフィルタ のフィルタリングにより混合信号から2fcを中心とする成分が除去された 後の出力信号は,位相差信号である「φ(t)」となり,この位相差信号に「 動作,呼吸,および心活動に関する情報」を含んでいることが開示されて いるといえるから,位相差信号である「φ(t)」から,「動作,呼吸,およ び心活動に関する情報」を導出できることが記載されているなどとして, 当初明細書等に,補正発明の本件構成に係る技術が記載されている旨主張\nする。 しかしながら,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
(ア) 当初明細書等の段落【0041】中には, 「受信信号と送信信号は,ミキサと呼ばれる一般的な電子機器(アナロ グあるいはデジタル方式)により混合することができる。たとえばCW の場合,混合信号は以下に等しい。 【数3】 m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)) (3) ここでφ(t)は送信および受信信号の経路差(単一の反射体により反射が 決定される場合),γは反射信号の減衰量である。反射体が一定の場合 φ(t)およびm(t)は一定となる。我々に該当する例では,反射体(胸部な ど)が動作しており,m(t)が時間とともに変化する。簡単な例として, 呼吸により胸部が正弦動作している場合, 【数4】 resp(t)=cos(2πfmt) (4) 混合信号は,fm成分(およびフィルタリングにより簡単に除去可能な2f cを中心とする成分)を含んでいる。混合後のローパスフィルタの出力側 の信号を未処理センサ信号と称し,動作,呼吸,および心活動に関する 情報を含んでいる。」との記載があり,「φ(t)」は「送信および受信信 号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合)」であること が示されている。 しかるところ,「位相差」とは,同じ周波数を有し,同じ時点に属す るとされる二つの波の位相の差を意味し,0°〜360°の角度に相当 する値で示されるのに対し(甲17の1(訳文甲17の2),乙2), 「経路差」とは,二つの波の間における波の源と干渉が起きる点との間 の経路の長さの違いを意味するものであり,「経路差」は「位相差」が 生じる一般的な要因となるが(甲22の1(訳文甲22の2)),「位 相差」と「経路差」は,概念的に異なるものである。 また,当初明細書等には,補正発明の特許請求の範囲(本件補正後の 請求項1)の「位相差信号」が「経路差」と同義であることについての 記載はなく,「φ(t)」が本件補正後の請求項1の「位相差信号」あるい は「前記生体対象から反射された前記反射信号と前記生体対象に向けて 送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相 差信号」に相当することについての記載も示唆もない。もっとも,原告 が主張するように,式(1)(送信信号s(t))(当初明細書等の段落【00 39】)と式(3)(混合信号m(t))(同段落【0041】)とを対比する と,式(1)中の位相角θと式(3)中の経路差φ(t)が形式的に同等のもので あり,いずれも,余弦関数の引数の中の瞬時位相として信号の位相に関 する情報を伝えるという点で共通するといえるとしても,このことから 直ちに「φ(t)」が本件補正後の請求項1の「位相差信号」に相当するこ とを認めることはできない。
(イ) 仮に「φ(t)」が送信信号及び受信信号の「経路差」を表すとともに,\nその位相差を示す「位相差信号」を表したものと解する余地があるとし\nても,式(3)(m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)))は,ミキサから 出力された混合信号m(t)に位相差信号としての「φ(t)」の成分が含まれ ていることを示したものにすぎず,プロセッサが「ベースバンド信号」 を分析し,「φ(t)」を決定したことを示したものとはいえないし,当初 明細書等の記載事項全体をみても,プロセッサが「ベースバンド信号」 を分析し,「φ(t)」を決定し,又は決定することができることを示す記 載はない。 また,当初明細書等には,プロセッサが,「φ(t)」又は「位相差信号」 から「呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上の測定\n結果を導出」し,又は導出することができることについての記載はない。 (ウ) 以上によれば,当初明細書等には,式(3)中の「φ(t)」が,本件補 正後の請求項1の「位相差信号」あるいは「前記生体対象から反射され た前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(R F)のパルス信号との位相差を示す位相差信号」に相当することについ ての開示があるものとはいえないし,また,プロセッサが「ベースバン ド信号」を分析し,「φ(t)」を決定し,「φ(t)」から「呼吸,心活動, および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出」すること\nについての開示があるものともいえないから,当初明細書等に補正発明 の本件構成に係る技術が記載されているとの原告の主張は,理由がない。\n

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平成26(行ケ)10087  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年1月28日  知的財産高等裁判所

 訂正要件(新規事項)を満たしていないとした審決が取り消されました。
 以上のような本件明細書の記載,特に本件発明7に関する記載とその技術的意義からすれば,本件明細書の記載を見た当業者であれば,可動アームに測定ユニットをどのように取り付けるかは本件発明における本質的な事項ではなく,測定ユニットは,その機能を発揮できるような態様で可動アームに保持されていれば十\分であると理解するものであり,そして,本件特許の出願時における上記技術常識を考慮すれば,可動アームに測定ユニットを取り付ける態様を,「懸下」以外の「埋設」等の態様とすることについても,本件明細書から自明のものであったと認められる。 したがって,本件明細書の記載を総合すれば,測定ユニットを「保持」する可動アームを含む本件訂正は新たな技術的事項を導入するものではなく,本件明細書に記載された事項から自明のものであると認められる。
(2) 審決の判断及び被告の主張について 審決は,測定ユニットを可動アームに取り付ける態様として,「保持」が上位概念,「懸下」,「埋設」及び「立設」がその下位概念であり,本件訂正は,「懸下」に加えて「埋設」や「立設」等の取付態様を含むものであり,本件明細書には「保持」について直接の記載はなく,「保持」が本件明細書における「懸下」の記載から自明な事項でもない理由として,次のアないしウのとおり述べている。しかし,審決のアないしウにおいて述べることは,次のとおり,理由がない。
ア 審決は,測定ユニットを可動アームに埋設した場合,「懸下」に比して「埋設」の態様によって,より速度の速い移動に対応できるとともに,懸下部材が不要となり,部品点数が少なくなるなどの一応の作用効果が生じることについて当事者間に争いがないから,「懸下」に比して「埋設」の態様が自明な事項,すなわち新たな技術的事項を導入しないものとまでいうことができない旨判断した(被告も同旨の主張をする。)。 しかし,審尋(甲32)に対する原告の平成26年1月23日付け回答書(甲34)の記載をみても,原告が上記作用効果が生じることを争っていないと認めることはできない。また,測定ユニットの可動アームへの「懸下」や「埋設」は,その具体的態様によって作用効果が異なるのであるから,測定ユニットの「懸下」を「埋設」にしたからといって,直ちに,より速度の速い移動に対応できるとともに,懸下部材が不要となり,部品点数が少なくなるなどの一応の作用効果が生じると認めることもできない。さらに,測定ユニットの「懸下」と「埋設」に関して,その作用効果において具体的な差異が生じるとしても,そのことは,本件明細書に記載された本件発明7の前記技術的意義とは直接関係のないことであり,また,本件特許の出願時における前記技術常識を考慮すれば,本件訂正発明2が本件明細書に記載された事項から自明であるとの前記認定判断を左右するものではない。 したがって,審決の上記理由から,本件訂正は新たな技術的事項を導入するものであるということはできない。
イ(ア) 審決は,測定ユニットが光照射によるものであれば,通常の構成では「埋設」した場合は原理的には測定ができないことになるが,特別の「配置,構\成」を用いるか,「撮像素子」等の手法を用いて測定することにより,測定が必ずしも不可能ではないということができるから,「測定可能\」な「埋設」の態様は,限定的なものであり,自明な事項であるとはいいきれず,新たな技術的事項を導入しないものとまでいうことはできない旨判断した(被告も同旨の主張をする。)。 しかし,前記(1)で判示したとおり,甲42文献ないし甲45文献によれば,バー コードラベルを斜め方向から読み取ったり,撮像素子で読み取ったりすることは,本件特許の出願当時,技術常識であったと認められる。 そうすると,当業者であれば,可動アームに測定ユニットを「埋設」した場合であっても,測定ユニットの機能が発揮することができるよう,光照射部がバーコードラベルの方向に向くように設置するものと認められ,このような「埋設」の態様は,本件明細書の記載と前記技術常識から自明であるから,「懸下」を「埋設」の態様にしたとしても,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。\n

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平成26(行ケ)10114  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年1月28日  知的財産高等裁判所

 構成要件の一部のみ取り出して特定事項とし,当該特定事項を含む補正発明が発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内にあるかを検討することは、間違いであるとして、拒絶審決が取り消されました。
 審決は,「当該最終レンズの射出側の一部に,前記射出面が他の部分に対して突出して形成される突出部を有し」との特定事項を含む補正発明は,発明の詳細な説明に記載された事項を超えた事項を含むと判断した。 これに対し,原告は,審決が突出部に関する要件の一部を看過したと主張する(前記第3の1)。そこで,当該突出部の構成要件の内容について,以下,検討する。 補正発明は,「前記最終レンズは,前記液体と接する面であって前記照明光が通過する射出領域を一部に含む射出面と,当該最終レンズの射出側の一部に,前記射出面が他の部分に対して突出して形成される突出部を有し,前記第1方向の幅に基づいて規定される,前記突出部の中心は,前記第1方向に関して前記光軸から離れており,前記光軸に対して前記投影領域の中心と同じ側にある」との構成要件(以下「突出部の構\成要件」という。)を備えている。 ここで,「最終レンズ」に形成される「前記突出部の中心は,前記第1方向に関して前記光軸から離れており,前記光軸に対して前記投影領域の中心と同じ側にある」から,その突出部(射出面)は,その形状がどのようなものであれ,光軸から第1方向に関して投影領域の中心と同じ側に離れた位置に中心を有する。さらに,「第1方向」とは,「投影領域の中心は,前記光軸と直交する第1方向に関して前記光軸から離れて」いるという補正発明の構成要件における「第1方向」であり,投影領域の中心が光軸から離れる方向のことである。したがって,光軸から第1方向に関して投影領域の中心と同じ側に離れた位置とは,要するに,光軸から投影領域の中心に向かって離れた位置のことである。\n そうすると,突出部の構成要件は,全体として,最終レンズの突出部(射出面)が,それ自体の形状を問わず,光軸から投影領域の中心に向かって離れた位置に中心を有するという一つの事項を特定するものであるということができる。\n補正発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか否かを判断するに当たっては,突出部の構成要件が全体として特定する上記の一つの事項が発明の詳細な説明に記載されているかどうかを検討すべきである。\nこれに対して,審決は,前記のとおり,突出部の構成要件の一部のみ取り出して特定事項とし,当該特定事項を含む補正発明が発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内にあるかを検討している。したがって,その判断手法には誤りがあるといわざるを得ない。\n

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平成25(行ケ)10206 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年02月26日 知的財産高等裁判所

 特許庁は、訂正された事項が新規事項でないと判断しましたが、裁判所はこれを否定しました。
 本件訂正は,訂正前の「前記本体ハウジングの開口部を覆う樹脂製のカバー」なる事項を訂正し,訂正後の「前記本体ハウジングの開口部を覆い前記本体ハウジングとは熱膨張率が異なる樹脂製で縦長形状のカバー」とするもので,減縮を目的として,カバーの構成をより具体的に特定したものと認められる。そして,上記訂正後の記載を見れば,「熱膨張率が異なる」とは,本体ハウジングに対してカバーの「熱膨張率が大きい」場合と「熱膨張率が小さい」場合が含まれることになることは,文言上明らかである。イ そこで,本体ハウジングに対して,「熱膨張率が大きい」カバーと「熱膨張率が小さい」カバーの双方が,本件明細書等に記載した範囲のものといえるか否かについて検討する。本件明細書等には,前記(1)アのとおり,「上記従来の回転角検出装置では,ホールIC52を固定するステータコア10をモールド成形した樹脂製のカバー9は,これを取り付ける金属製のスロットルボディー1に比べて熱膨張率が大きい。しかも,このカバー9は,スロットルボディー1の下側部に配置されたモータ4や減速機構5を一括して覆うように縦長の形状に形成されているため,その長手方向の熱変形量が大きくなる。」(段落【0004】),「以上説明した本実施形態(1)では,ホールIC25を固定するステータコア26をモールド成形した樹脂製のカバー24は,これを取り付ける金属製のスロットルボディー15に比べて熱膨張率が大きい。しかも,このカバー24は,スロットルボディー15の下側部に配置されたモータ16や減速機構\\20を一括して覆うように縦長の形状に形成されているため,その長手方向の熱変形量が大きくなる。」(段落【0026】)との記載があり,樹脂製のカバーが金属製のスロットルボディーに比べて「熱膨張率が大きい」ことは明確に記載されていると認められる。一方,樹脂製のカバーが(金属製の)スロットルボディーに比べて「熱膨張率が小さい」ことは明示的に記載されておらず,これを示唆する記載もない。また,本件発明は,前記(1)で認定説示したように,従来の回転角検出装置においては,ホールICを固定するステータコアをモールド成形した樹脂製のカバーは,これを取り付ける金属製のスロットルボディーに比べて熱膨張率が大きく,また,縦長の形状に形成されているため,その長手方向の熱変形量が大きく,しかも,ホールICの磁気検出方向とカバーの長手方向が平行になっていたため,カバーの熱変形によって,磁気検出ギャップ部のギャップやステータコアと磁石とのギャップが変化して,回転角の検出精度が低下するという欠点があったことから,カバーの熱変形による磁気検出素子の出力変動を小さく抑えて,回転角の検出精度を向上することを目的としている。すなわち,本件発明は,樹脂製のカバーが金属製のスロットルボディー(本体ハウジング)に比べて熱膨張率が大きいことを前提とする課題を解決しようとするものであって,樹脂製のカバーがスロットルボディー(本体ハウジング)に比べて熱膨張率が小さいことは想定していない。そして,本件明細書等に記載されたスロットルバルブの回転角検出装置は,自動車のスロットルバルブの回転角検出装置において,エンジンルームからスロットルバルブに到達する熱により,本体ハウジングに相当の熱量が加わることを前提としていることはその構造上自明であるから,そのような熱量の加わる本体ハウジングにカバーよりも熱膨張率の大きい材質を用いることは技術的に想定し難い。なお,段落【0039】に「スロットルバルブの回転角検出装置以外の回転角検出装置に適用しても良い。」との記載があるところ,その実施例や具体的な構\\成が示されているものでなく,これは,回転角の被検出物がスロットルバルブに限定されないものである旨を記載したものにすぎない。スロットルバルブ以外の被検出物を想定したとしても,前記に述べた本件発明の課題及びその解決原理に照らせば,樹脂製のカバーの側が縦長形状で長手方向に膨張することを前提としているのであって,本体ハウジングの側の熱膨張率が,樹脂製のカバーよりも大きいという例は,スロットルバルブの回転角検出装置以外の装置においても,想定されていないというべきである。そうすると,樹脂製のカバーの熱膨張率が本体ハウジングの熱膨張率よりも小さいことは,出願の当初から想定されていたものということはできず,本件訂正により導かれる技術的事項が本件明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項であると認めることはできない。
ウ 被告の主張について
被告は,本件発明1において,「熱膨張率」の限定がなかったのを,訂正によって熱膨張率の限定を加えた減縮訂正であるから,「カバーの熱膨張率が本体ハウジングの熱膨張率よりも小さい」は,本件訂正によって新たに含まれることになったのではなく,本件訂正前から含まれていた事項であると主張する。しかし,前記のとおり,本件訂正が減縮を目的とするものであることはそのとおりであるとしても,新規事項の追加に当たるか否かは,本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものといえるか否かによって決せられる,次元の異なる問題であって,上記主張は採用できない。また,被告は,樹脂製カバーの熱膨張率が本体ハウジングの熱膨張率より大きい例は,熱変形が生じる典型的な事例であって,熱膨張率が小さい例も含まれる旨主張する。本件明細書の段落【0001】,【発明の属する技術分野】においては,自動車の電子スロットルシステムにおけるスロットルバルブの回転軸の回転角検出装置である旨の記載はないが,これ以外の具体的な装置に関する記載や示唆もない。そして,本件発明は,上記イにおいて述べたとおり,スロットルバルブの回転角検出装置以外に用いられるとしても,本体ハウジングが樹脂製カバーよりも熱膨張率が大きい場合は想定されていないと解され,本体ハウジングに比べて樹脂製カバーの熱膨張率が大きい例が,単なる典型例であって,熱膨張率が本体ハウジングより小さい例も含むものであると解することはできない(なお,被告の主張を前提とすると,本件訂正は,スロットルバルブ以外の具体的な被検出物を明らかにすることもないままに,本体ハウジングと樹脂製のカバーの熱膨張率が同一という特定の場合のみを除外するために,特許請求の範囲の「減縮」が行われたことになり,不自然な訂正というほかない。)。よって,被告の上記主張は採用できない。
(3) 審決の判断について
審決は,本件明細書等には,熱膨張率に関して,カバーの熱膨張率が,本体ハウジングの熱膨張率より大きい場合のみが記載されており,小さい場合は記載されているとはいえないことを前提とした上で,本件訂正による「前記本体ハウジングとは熱膨張率が異なる樹脂製のカバー」との事項は,実質的には,「前記本体ハウジングより熱膨張率が大きい樹脂製のカバー」との事項にほかならないとして,本件訂正は新規事項の追加に当たらないと判断した。しかし,「前記本体ハウジングとは熱膨張率が異なる樹脂製のカバー」との文言からすれば,通常,カバーが本体ハウジングより,熱膨張率が大きい場合と小さい場合の両方を含むと明確に理解することができ(現に,本訴において,特許権者である被告は,その両方を含む旨を主張している。),明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しなければ特定できないような事情はないのに,「前記本体ハウジングとは熱膨張率が異なる樹脂製のカバー」の意義を「前記本体ハウジングより熱膨張率が大きい樹脂製のカバー」に限定的に解釈することは相当ではない。したがって,上記のように訂正発明1の技術的内容を限定的に理解した上で,新規事項の追加に当たらないとした審決の認定は誤りであるといわざるを得ない。

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◆関連事件です。平成25(行ケ)10174

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平成25(行ケ)10201 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年02月24日 知的財産高等裁判所

 新規事項であるとした無効審決の取り消しを求めましたが、裁判所は特許庁の判断を維持しました。
 以上を前提に,本件補正により新たな技術的事項が導入されるか否かについて検討するに,前記(1)のとおり,本件補正によると,育苗ポットの側面の全周に段差部が形成されたものや,一つの側壁の全幅に渡って段差部が形成されたものまでが「段差部」に含まれることとなる(技術事項A)が,この場合,段差部において差込み口が形成されている領域と差込み口が形成されていない領域とが区別できなくなり,差込み口の位置を側壁の外面から把握できない結果となる。上記のとおり,差込み口のある側壁部分と他の側壁部分とを区別させる第1凹部の構成は,側壁の外面から差込み口を容易に把握できるという本件発明の技術課題の解決手段として設けられたものであることからすれば,本件補正により第1凹部を設けない場合には,当初発明の技術課題を解決することにはならないから,技術事項Aは,新たに導入した技術的事項に該当するというべきである。
(3) 原告らの主張について
原告らは,第1凹部を,差込み口を設ける部位(段差部(横壁A))と,根巻き防止機能を果たす部位(縦壁B,C)とに,分解して解釈することができるところ,段落【0082】の「第1凹部7には,苗Nの根を底壁3側に導く機能\を持たせず,差込み口9を設けるための部位としての機能だけを持たせるようにしても良い。」との記載から,「横壁Aを,縦壁B,Cを伴わずに形成すること」は,当業者であれば自明であると主張する。確かに,当初明細書の段落【0049】,【0028】,【0029】,【0050】〜【0051】の記載からすれば,「第1凹部7」は,底壁3側に向かって帯状に延びることで,苗の根を底壁側に導き,苗の根が根巻き状態となるのを防止する機能\を有するものと認められ,段落【0082】にあるとおり,この根巻き防止機能を持たせず,差込み口9を設けるための部位としての機能\だけを持たせるようにすることができ,第1凹部は帯状でなくとも,例えば,えくぼ的に窪む構成とし,左右の縦壁が底壁3まで到達しないものであってもよいことが示唆されているといえる。しかし,上記根巻き防止機能\が本件発明7の必須の効果でないとしても,上記(2)で述べたように,側壁の一部が他の側壁の外面よりも収納空間5側に窪むことで,育苗ポットに収納された培土に埋もれて開口面から把握できない差込み口の位置を,側壁の外面から把握することができるという本件発明7の本来的効果からすれば,育苗ポットの側面の全周に段差部が形成されたものや一つの側壁の全幅に渡って段差部が形成されたものまでを含むような構成(技術事項A)は除外されているというべきである。この点,原告らは,側壁を平面視多角形状に形成し,差込み口を,その多角形状に形成された側壁の1の面における周方向の略中央部に形成するとの構\成を備えているから,「育苗ポットの全周に段差部が形成されたもの」であっても,差込み口の水平方向の位置を外部から把握できると主張する。しかし,第1凹部の目印機能については,前記のとおり,側壁の外面から容易に差込み口を認識させるというものであり,略中央に配置することで差込み口を認識できるというのは,当該位置についての別途の情報伝達や経験的認識を前提とするものであり,視覚的に側壁の「外部から容易に」差込み口を把握することとは異なる解決原理に基づく構\成である。また,本件補正によれば,差込み口を有しない部分に「段差」を設けることもでき,その場合には,「段差」が目印機能を有しないことは明らかである。加えて,段落【0085】には,「育苗ポット1の形状や大きさは,かかるものに限定されるものではなく,形状は円筒状や多角形状のものであっても良く」と記載されていることからすれば,当初明細書等の中に,多角形の1の面の略中央に差込み口を配置させる図面等の記載があるとしても,そのような差込み口の配置は,上記の目印機能\を果たすことを意図して設けられたものでないことが明らかである。したがって,原告らの上記主張は採用できない。
3 請求項7に係る本件訂正について
以上のとおり,本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものではないから,平成20年法律第16号改正前の特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。そして,訂正発明7は,前記のとおり,本件発明7に「前記段差部は,少なくともその差込み口が開口されている部分に形成されている」との構成を付加するものであるが,この構\成は,本件発明7の「その段差部の前記開口面を臨む部分に開口され,…表示板を差込む差込み口を有し,」にも実質的に記載されている事項であり,上記の技術事項Aをそのまま残すものであるから,本件訂正によって上記補正の瑕疵がなくなるものではない。したがって,訂正発明7は,平成20年法律第16号改正前の特許法17条の2第3項の規定に違反してなされたものであり,特許法123条1項1号に該当し無効にすべきものである。\n

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平成24(行ケ)10425 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年09月10日 知的財産高等裁判所

 新規事項であるとした審決が取り消されました。
(3) 【0030】の記載事項
本件発明6の構成である「非防爆エリア」について,前記のとおり,当初明細書の【0030】に,「また,舵取機室9は非防爆エリアであるから,各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点もある。」と記載されている。ここに記載された利点は,文理上,舵取機室の副次的な効果として述べられている。しかし,当該記載に接した当業者は,この効果は舵取機室に限定されるものではなく,舵取機室とは別次元の「非防爆エリア」の一般的な効果として理解するというべきである。その理由は,以下のとおりである。まず,「非防爆エリア」の意味およびその具体的な場所が当業者の技術常識であることは,上述したとおりである。「非防爆エリア」は,「電気機器の構\造,設置及び使用について特に考慮しなければならないほどの爆発性混合気が存在しない区画又は区域」を意味するから,「非防爆エリア」であれば,そこに配置される電気機器の構造,設置及び使用について特に考慮する必要がないことは当然で,その結果として,「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点」があることも明白である。すなわち,「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点」は,「非防爆エリア」の裏返しであって,「非防爆エリア」が備える当然の効果を述べているものである。そうすると,当初明細書の趣旨が全体として舵取機室に主眼を置かれており,【0030】の記載が操舵機室の効果を文理上述べているとしても,【0030】の記載に接した当業者は,「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点」が舵取機室特有の効果であると理解することはなく,舵取機室には限定されない,より広義の「非防爆エリア」に着目した効果であると即座に理解するものと認めることができる。そして,かかる理解の下,「非防爆エリア」についても,舵取機室とはほとんど無関係な単独の構\成として理解するというというべきである。よって,【0030】の記載から,バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設する構成によって,「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむ」という効果を奏する,ひとまとまりの技術的思想を読み取ることができ,本件発明6の「非防爆エリア」は,【0030】において実質的に記載されているというべきである。「非防爆エリア」の構\成について特許法17条の2第3項の要件を満たさないとすることはできない。
(4) 【0025】との関係 当初明細書の趣旨は,全体として,バラスト水処理装置を舵取機室に配設することに主眼を置いており,特に,【0025】には,舵取機室の優位性が機関室(「非防爆エリア」の一つ)との対比において述べられている。当初明細書で全体として述べられている,バラスト水処理装置を舵取機室に配設するという技術的思想は,【0023】に記載されているように,舵取機室固有の特性,すなわち,操舵機室は,プロペラ及び舵の直上に位置しており,振動の問題があるため,通常機器類の設置に適さない場所(空間)として残されていることに着目したものである。これに対して,バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設するという技術的思想は,【0030】に記載されているように,「非防爆エリア」が「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点」を有することに着目したものである。したがって,バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設するという技術的思想は,バラスト水処理装置を舵取機室に配設する技術的思想と着目点の次元が異なっている。バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設するという技術的思想は当初明細書の【0030】によってサポートされている以上,当初明細書において,舵取機室に関する特有の技術的思想が開示されているとしても,そして,バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設することに関連する記載が【0030】においてだけであるとしても,「非防爆エリア」に関する本件発明6が特許法17条の2第3項の規定を満たすことについての判断を左右するものではない。また,バラスト水処理装置を舵取機室に配設することと,これを「非防爆エリア」に配設することとは,次元を異にする技術的思想であるから,前者の優位性を後者との関係で述べた【0025】の記載が存在するとしても,後者を無視することはできない。そして,両者が別次元の技術的思想である以上,「非防爆エリア」が舵取機室以外の場所(機関室を含む)を包含するとしても,そのことをもって,新たな技術事項を導入したものとすることはできない。

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◆関連事件です。平成24(行ケ)10424

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平成24(行ケ)10307 審決取消請求事件  特許権 行政訴訟 平成25年08月08日 知的財産高等裁判所

 審決は、第1のアンテナからの無線信号を第1の無線周波数復調器で復調するステップが「最初に」実行される際に,必ず「ダイバーシチ」が「オフ」状態になっていて「第2のプロセッサ422」(第2の無線周波数復調器)が無効化された状態になっているということは,新規事項であると判断しました。これに対して、裁判所は、新規事項ではないと判断しました。最終的には進歩性なしとして拒絶審決が維持されました。
 2 取消事由1(新規事項の追加禁止の要件に係る判断の誤り)について
前記1のとおり,補正発明は,ダイバーシチ処理がなくても十分な性能\が与えられるような場合においても常にダイバーシチ処理を行うことは,電力消費の観点から移動局の動作時間が短縮するという課題があったので,必要な場合にのみダイバーシチ処理を行うようにしたものである。そうすると,移動局の動作を開始させた当初,ダイバーシチ処理の必要性が不明な状態において,ダイバーシチ処理を行わせるように,第2の無線周波数復調器を有効化するとは考え難い。また,段落【0032】には,「最初のステップ510において,無線周波数信号が第1のアンテナ410で受信される。2番目のステップ512において,この無線周波数信号は処理のため第1のRFプロセッサ420へ入力される。…ステップ520でベースバンドプロセッサ430がダイバーシチをオンすべきか否かを判定する。」との記載があり,また,【図5】のフローチャートにおいても,動作開始当初の地点を示す上方の矢印の始点が,ステップ510の「第1のアンテナでRF信号を受信」するところから始まっているところ,これらのことに,段落【0040】において「ダイバーシチが不要な場合,第2のRFプロセッサ422は使用されない。」,段落【0019】に「ダイバーシチを用いることによる性能向上がダイバーシチを用いることによる電力消費を上回る場合を判断でき,後者の状況においてのみダイバーシチ処理へ切り替える」と明記されていることを考慮すると,動作開始時において,ダイバーシチがオンであることを前提として第1のアンテナでの受信及び第1のRFプロセッサへの入力と第2のアンテナでの受信及び第2のRFプロセッサへの入力とが,同時並行的あるいは順次行われるとは解しがたく,動作開始当初はダイバーシチがオフ(第2の無線周波数復調器が無効)とされていると理解するのが自然である。このように考えた場合,【図5】のフローチャートは,動作開始当初,ステップ512で受信したRF信号を第1のRFプロセッサ(第1の無線周波数復調器)で処理し,ステップ514においてダイバーシチはオンではないこととなるから,そのままステップ517に進んで,第1のRFプロセッサ(第1の無線周波数復調器)からの処理信号を復調することとなり,ステップ520において初めて,ダイバーシチが必要か否かを判定し,必要でなければ,当初の流れを継続(すなわち,【図5】の左側欄のサイクル〈ステップ510,512,514,517,520,521〉を継続)し,ステップ520においてダイバーシチが必要であると判定された場合にのみ,第2のアンテナにおけるRF信号受信から復調・合成処理に至るステップ515,516,518に進むものと理解でき,上記に示した明細書の他の記載とも整合的である。そうすると,本件補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,新規事項が追加されたものとはいえない。本件補正を新規事項の追加に当たるとした審決の判断は誤りである。
もっとも,審決は,本件補正却下の理由として補正発明が独立特許要件(特許法29条2項)を満たしていないことも挙げているから,進んで,本件補正が平成18年法律第55号による改正前の特許法17条の2第5項,126条4項に違反するか否かについて検討する。

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平成23(行ケ)10415 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年11月29日 知的財産高等裁判所

 新規事項およびサポート要件違反でないとした審決が維持されました。
 本件補正によって当初明細書の請求項1(請求項1を引用するその他の請求項も同様である)に「Ag3Sn金属間化合物を有する無鉛ハンダ合金であって」,「前記Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成して相互に連結されている」との事項が追加された(前記第2,2(1)で下線を付した部分のとおり。)。
イ 当裁判所の判断
 当初明細書の【0017】には,「Sn−Ag系合金においては,凝固組織の中にAg3Sn金属間化合物のネットワークが生成し」ていること,Sn−Ag系ハンダ合金にCuを0.3質量%以上添加したハンダ合金においても同様に,「Ag3Sn金属間化合物のリング状ネットワーク」が存し,これが「密にな(る)」ことが記載されている(前記1(1)イ)。また,Sn−Ag系ハンダ合金において,Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成すること,そのネットワークがリング状であること,その他合金元素が数%添加された場合でも基本的にAg3Snの組織は維持されることは,いずれも技術常識と認められるものでもある(前記1(3)アないしウ)。このような当初明細書の【0017】の記載及び技術常識によれば,当初明細書の請求項1に係る合金が「Ag3Sn金属間化合物を有する無鉛ハンダ合金であ(る)」こと,「前記Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成して相互に連結されている」ことは,いずれも自明な事項として把握できる。また,Sn−Ag合金に,他の元素を添加した場合にも,Ag3Snの微細分散組織が維持されることは技術常識(前記1(3)アないしウ)と認められるから,請求項1の合金に,Ni,Sb及びZnをさらに添加する請求項2,3に係る合金についても,「Ag3Sn金属間化合物を有する無鉛ハンダ合金であ(る)」こと,「前記Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成して相互に連結されている」ことは自明である。以上よりすると,本件補正は,当初明細書の【0017】に記載した事項の範囲内においてしたものといえるのであって,この点に関する審決の判断に誤りはない。
ウ 原告の主張について
原告は,当初明細書には,「Ag3Sn金属間化合物を有する無鉛ハンダ合金であって」という明示的な記載はなく,当該補正は,「Ag3Sn金属間化合物」を「有する」として,上位概念化をしたものであるから,当初明細書の記載から自明ではない新たな技術的事項を導入するものであると主張する。しかし,上記イのとおり,Sn−Ag合金においては,Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成するのであって,「Ag3Sn金属間化合物」を「有する」との補正は,その前提として,当該合金にAg3Sn金属間化合物が存することを確認的に示したにすぎないと解される。また,原告は,「前記Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成して相互に連結されている」との補正は,当初明細書の【0017】の「Ag3Sn金属間化合物のリング状ネットワークが密になり」との記載から,「リング状」という形状の規定を削除して上位概念化するものであると主張する。しかし,上記イのとおり,Sn−Ag系ハンダ合金において,Ag3Sn金属間化合物がネットワークを形成すること,そのネットワークがリング状であることは,技術常識と認められるから,請求項1に「リング状」という形状の規定が存在しないからといって,上位概念化されているということはできない。さらに,原告は,当初明細書には本件発明2,3について合金の組織がどのようなものであるかについては一切開示がないとも主張するが,上記イのとおり,Sn−Ag合金に,他の元素を添加した場合にも,基本的にはAg3Snの微細分散組織が維持されることは技術常識であるから,原告の主張は採用の限りではない。

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平成23(行ケ)10383 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月10日 知的財産高等裁判所

 補正が新規事項であるとした審決が取り消されました。
 上記記載によれば,引用例の図2及び図3には,図1に示すダイヤフラム式ポペット弁体とは異なるロールダイヤフラム式ポペット弁体122が示されていること,ロールダイヤフラム式ポペット弁体122は,ポペット弁体の頭部126と一体で頭部からポペット弁体フランジ128へ軸線方向に延在するスリーブ124を具備すること,スリーブ124は「ロール及び非ロール動作」をすること,ピストンの頭部82の壁表面はスリーブ124の内側表\面を支持することが理解できる。ダイヤフラム式ポペット弁体とは異なるロールダイヤフラム式ポペット弁体の存在は引用発明の前提とされており,ロールダイヤフラム式ポペット弁体自体は詳細に説明されていないことからすると,ダイヤフラム弁の技術領域において,通常のダイヤフラム弁と,それとは異なり「ロール及び非ロール動作」を伴うローリングダイヤフラム弁とが存在することは,引用例が公開された平成13年6月29日時点において,特段の説明を要しない技術常識であったことが理解できる。
3 上記の「反転」の一般的意味及び技術常識に照らし,また,審判請求書における原告の主張を合わせると,本件補正によって追加された「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」の構成は,「膜部の一部が天地を逆転することがなく,具体的には,ロールダイアフラム式ポペット弁のような開閉時に薄膜のロール・非ロール動作を伴うことなく」との意味であることが明らかである。
4 以上によれば,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」とは,ロールダイアフラム式ポペット弁のような開閉時に薄膜のロール・非ロール動作を伴うものではないものである,という程度の意味で膜部の一部で天地が逆転しないものであることと理解すべきであり,係る事項を加えることは,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものといえる。
・・・
被告は,ダイアフラム弁の技術分野において「反転」の用語は,非ローリングダイアフラム弁においても通常用いられており(乙1〜3),それは当業者にとって技術常識といえるものであるから,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」という補正事項は,原告が限定したとする通常型をも除く意味を有することとなるから,「ローリングダイアフラム弁を除く」ことと同義とはいえない,と主張する。しかしながら,乙1〜3に記載された「反転」の意味は,乙1においては,図3に示されるように,膜体6の周囲の支持部と凸球面状の弁体3の下端との位置関係が逆になることをいい,乙2においては,ダイアフラムの外周部の湾曲方向が上向きの凸形状と下向きの凸形状に変化することをいい,乙3においても乙2と同様のことをいうと理解でき,本件補正における「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」とは次元が異なるから,乙1〜3の記載をもって,本件補正を不適法とすることはできない。

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平成24(行ケ)10018 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月10日 知的財産高等裁判所

 新規事項であるとした審決が取り消されました。
   当初明細書等の段落【0027】,【0028】,図3及び図4の記載によれば,本件特許にかかる発明の第2の実施形態として,赤,緑,青の三原色によるカラー表示を行うアクティブマトリクス型カラー液晶表\示装置であって,各画素領域12が,列単位で赤,緑,青のいずれかの色を表示するストライプ状配列となっており,赤,緑,青の各色が3列おきに繰り返し配置されているものが記載されていることが認められる。次に,段落【0029】及び図3には,第2の実施形態は,各列に補助容量連結ライン16を配置した第1の実施形態の変形例であって,ドレインライン10の3本につき1本の補助容量連結ライン16を配置するものであることが記載され,また,段落【0030】には,第2の実施形態は,第1の実施形態より補助容量連結ラインの本数が少なくても,近くに配置された補助容量連結ラインを介して他の補助容量ラインから電荷を補い,信号電圧を矯正することができ,さらに,第1の実施形態よりも補助容量連結ラインが少ないため,補助容量連結ラインによる開口率の低下を抑えることができるという効果を奏するものであることが記載されているといえる。そうすると,第2の実施形態は,赤,緑,青の各色が3列おきに繰り返し配置されている画素領域の3列につき1列に補助容量連結ラインを設けることによって,上記効果が得られるものであって,その効果は,補助容量連結ラインを赤,緑,青のいずれの画素領域の列に設けても得られるものであるということができる。そして,補助容量連結ラインによる開口率の低下が問題となっていることから,透過型の表\示装置について記載したものであると認めることができる。以上より,当初明細書等には,補助容量連結ラインが,赤,緑,青の三原色のうちの緑に限定されない特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成される,カラー表\示を行う透過型のアクティブマトリクス型表示装置,すなわち,技術的事項Aが記載されているものと認められる。したがって,本件補正によって導入された技術的事項Aは,当初明細書等の記載から把握できる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。よって,本件発明1,3〜6に係る特許は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであるとの審決の判断は誤りであり,取消事由1は理由がある。
なお,審決は,「本件発明1の『ストライプ状に配列』することは,RGBが一定の周期で出現する配列のみを意味するものではなく,例えば,特開平10−54959号公報(甲16)の【0116】及び図67に記載されているような『RGB/BGR/RGB・・・』の配置のように,画素の色が異なる周期で現れるものもストライプ状配列としてよく知られているから,当初明細書等にストライプ状配列が記載され,かつ,補助容量連結ラインが3本につき1本配置されることが記載されていることのみをもって,画素領域の色の配列パターンと補助容量連結ラインの配列パターンとを関連付けて,補助容量連結ラインを緑以外の赤や青を含む特定の色の画素領域にのみ選択的に配置する,という技術的事項を把握することはできない。」(25頁13行〜27行)とした。しかし,前記のとおり,当初明細書等(甲2)の【0027】,【0028】,図3及び図4には,第2の実施形態は,赤,緑,青の三原色によるカラー表示を行うアクティブマトリクス型カラー液晶表\示装置であって,各画素領域12が,列単位で赤,緑,青のいずれかの色を表示するストライプ状配列となっており,このストライプ状配列は赤,緑,青の各色が3列おきに繰り返し配置されていることが記載されており,このような配列の記載を受けて,段落【0029】では,「ドレインライン10の3本につき1本の隣に補助容量連結ライン16が配置され,」と記載されているのであるから,これらによって技術的事項Aを把握することができる。「ストライプ状配列」という用語に,図3の具体的配列と異なる意味に用いる例があるからといって,補助容量連結ラインを緑以外の赤や青を含む特定の色の画素領域にのみ選択的に配置する技術的事項を段落【0028】,【0029】の記載から把握することはできないとの審決の判断は誤りである。
・・・上記のとおり,・・・第2の実施形態では,赤,緑,青の各色が3列おきに繰り返し配置されている画素領域の3列につき1列に補助容量連結ラインを設けることによって,第1の実施形態より補助容量連結ラインの本数が少なくても,信号電圧を矯正することができ,また,第1の実施形態よりも補助容量連結ラインによる開口率の低下を抑えることができるという効果(以下「任意の色の効果」という。)を奏するものであり,その効果は,補助容量連結ラインを赤,緑,青のいずれの画素領域の列に設けても得られることは明らかである・・

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平成23(行ケ)10351 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年09月26日 知的財産高等裁判所

 補正が新規事項と認定されました。
 本件補正は,請求項1の特許請求の範囲に,一対の冷蔵室扉のうちのいずれか一方の後面(背面)に製氷室を取り付けるとの限定を加えるものであるが,願書に添付された当初明細書(甲1)の発明の詳細な説明には,冷蔵室扉よりも後方(内側)に位置する冷蔵室の内部に製氷室を設けることが記載されているのみで,扉自体に製氷室を内蔵させることは記載も示唆もない。また,当初明細書に添付の図面を見ても,扉自体に製氷室を内蔵させる構成を見て取ることができない。この点,原告は,当初明細書の段落【0019】,【0020】中で,かかる技術的事項(限定事項)が開示されていると主張するが,段落【0019】には,「前記製氷室は,前記冷蔵室の内部に着脱可能\に設けられる。」と記載されているのみで,冷蔵室扉自体に製氷室を内蔵させる構成が含意されていると見るのは困難である。段落【0020】にも,「前記扉の一側には,前記製氷室が備えられる。」との記載があるが,この1文に引き続いて,「前記冷蔵室を開閉する扉は,それぞれ異なる幅を有する。前記冷蔵室を開閉する複数の扉の先端には,それぞれガスケットが備えられ,扉が閉まった時,相互密着される。」との記載があることにかんがみると,上記「前記扉の一側」との文言も,冷蔵室の一対(複数)の扉相互間で構\造に違いがあることに着目した表現であるとみるのが合理的であって,単に一対の扉のうちの片方の側(より正確にはこの片方の扉の後方(内側))に製氷室が位置することを意味するものにすぎないというべきである。したがって,上記「前記扉の一側」が冷蔵室の扉の後面(内側の面)を指すとか,上記段落が冷蔵室扉自体に製氷室を内蔵させる構\成を意味するということはできない。さらに,当初明細書の発明の詳細な説明に係る段落【0026】,【0031】,【0056】,【0060】,【0074】には,給水タンクが冷蔵室内部における冷蔵庫本体の一側又は扉の一側に設けられることが記載されているものの,これらの段落では製氷室の設置箇所は特定されていないし,段落【0082】でも,給水タンクを冷蔵室内部又は冷蔵室扉裏面に設ける場合のメリットが記載されているだけで,製氷室を冷蔵室扉に内蔵させる場合の作用効果が記載も示唆もされていない。これら発明の詳細な説明の記載に照らしても,扉自体に製氷室を内蔵させる構成が新たな技術的事項の導入でないと認めることはできない。\n

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平成23(行ケ)10317 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年08月30日 知的財産高等裁判所

 裁判所は、訂正要件を満たしているとした審決を維持しました。明細書には、「前後左右に回動」と記載されているが、「前後左右に揺動」との記載は有りませんでしたが、図面から明らかであると認定されました。
 原告は,願書に添付した明細書及び図面には「揺動」という文言に関する説明が一切なく,本件発明において「揺動」という動きの意味が確定しない以上,訂正事項1−クが新たな技術的事項を導入するものであるのか否か自体の判断ができないし,被告自身が「回動」と「揺動」を異なる概念として用いていると説明している以上,訂正事項1−クは,回動を根拠としての訂正では別の技術的事項を導入することになるのは明らかであって,特許法134条の2第5項において準用する同法126条3項の規定に違反すると主張する。しかしながら,「揺動」とは,文字どおり「揺れ動くこと。揺り動かすこと。」(「広辞苑」第五版)を意味する。そして,本件訂正に際して基準とすべき本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の段落【0019】の「……図8(a)(b)に示す腹骨格部C1は,両端に設けた夫々の第一玉部(図面上で下側)52と第二玉部(図面上で上側)53を,夫々回動可能に嵌め込んだ断面視略U字状の腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56からなり……本実施形態では,胴部骨格Cを,腹骨格部C1と胸骨格部C2の二部構\成とし,かつ腰部骨格Bと腹骨格部C1との連結部およびこの腹骨格部C1と胸骨格部C2との連結部を夫々玉52,53を介して回動可能な構\造とした……本実施形態において,第一玉部52と第二玉部53を嵌め込む夫々の嵌め込み部51a・51aと56a・56aは,各第一玉部52と第二玉部53を嵌め込んだ時に,腰部骨格連結部51および胸部骨格連結部56が所望位置でその状態(例えば,左右いずれかの方向に所望角度をもって傾斜している状態)を維持できるように,各第一玉部52と第二玉部53が夫々緊密に摺接するよう構成するのが好ましい。このとき,嵌め込み部51a・51aと56a・56aは,夫々の曲面の曲率が各第一玉部52と第二玉部53の曲率と同一若しくは近似するものとする。……腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56は,夫々が前後左右に回動可能\(図8中,矢印Y1乃至Y4 で示す前後方向,矢印Y5 乃至Y8 で示す左右方向)……」との記載,及び【図2】,【図8】(本件特許の願書に添付した図面については,別紙参照)に記載されている「腰部骨格連結部51」,「胸部骨格連結部56」の構造からすると,それぞれの連結部が,前後にも左右にも揺れ動くことが可能\であること,すなわち,前後・左右に揺動可能であることは明らかである。したがって,本件発明の「揺動」の意味は明確であり,また,訂正事項1−クは,上記特許明細書等に記載した事項から自明な事項の範囲内において訂正したものと認められるから,新たな技術事項を導入するものとはいえない。\n

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平成22(行ケ)10402 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月26日 知的財産高等裁判所

 新規事項、且つ、サポート要件違反ありとした審決が維持されました。
 原告は,「1,2−ジヒドロキノン」や「1,4−ジヒドロキノン」などの「ヒドロキノン」は容易に酸化されて「1,2−ベンゾキノン(オルソベンゾキノン)」や「1,4−ベンゾキノン(パラベンゾキノン)」などの「ベンゾキノン」に変化し,「ベンゾキノン」が還元されると「ヒドロキノン」に変化するという関係に鑑みれば,「ヒドロキノン」,すなわち「1,2−ジヒドロキノン」や「1,4−ジヒドロキノン」はキノン類に属することは明らかであるとも主張する。しかし,特許法17条の2第3項の「明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項」とは,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができるというべきところ,当初明細書等の全ての記載を総合しても,本願補正発明の抗菌,抗ウイルス及び抗真菌組成物において,酸化能\力を有する試剤である過酸化水素やアズレンキノン等のキノンが,さらに酸化を受けた後に組成物中でその作用を発揮するということはできないので,当初明細書等に,酸化を受けて酸化能力を有する試剤に変換される物質を酸化能\力を有する試剤に含めることが記載されているということはできない。
・・・
 本願の当初明細書には,「抗菌,抗ウィルス,及び抗真菌組成物に用いられる(A)は,触媒機能を有する金属イオン化合物で,一般式は,M+aX−bで,Mは,ニッケル(Ni),コバルト(Co),・・・クロム(Cr),・・・鉄(Fe),銅(Cu),チタン(Ti),・・・白金(Pt),バラジウム(Pd),…からなる群から選択された金属元素・・・である・・・」(段落【0005】)と記載されているものの,M+aX−bで表\される成分(A)のMとして「銅」以外の金属を使用する組成物については,発明の詳細な説明に具体的データの記載がなく,また,本願の組成物が脂肪酸やDNAを分解するメカニズムを説明する記載もなく,脂肪酸やDNAの分解において組成物中の各成分が果たす役割を実証する記載もない。他方,本件補正後の請求項1の記載によって特定される3つの成分を組み合わせることにより,脂肪酸やDNAが分解でき,その結果,バクテリア,ウイルス及び真菌類を破壊,殺菌できることについて,具体例をもって示さなくとも当業者が理解できると認めるに足りる技術常識はない。そうすると,本願の組成物の成分(A)のMとして「銅」以外の金属を使用するものが,脂肪酸やDNAを分解でき,バクテリア等を破壊,殺菌するという課題を解決できるということはできないので,本願における発明の詳細な説明は,本件補正の請求項1の記載によって特定される成分(A)のMの全ての範囲において所期の効果が得られると当業者において認識できる程度に記載されているということができない。したがって,本件補正後の請求項1(本願補正発明)の記載は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである」(サポート要件充足)ということはできない。

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平成23(行ケ)10030 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月26日 知的財産高等裁判所

 新規事項でないとして訂正を認めた審決が取り消されました。
 以上によれば,当業者は,本件明細書の全ての記載を総合することにより,「共通フラグ」について,設定値についての1ビット(賭け数についての1ビットのフラグを設定する場合は併せて2ビット)のデータであるとの技術的事項を導くことが認められる。イ 他方,本件訂正に基づく「区別データ」は,「複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別する」ためのデータであって,「フラグ」であるとの限定や1ビットであるとの限定もないから,1ビットを超えるデータを含むと理解される。また,1ビットを超えてビット数を増大させることができるならば,判定値データの分類を限りなく細かく設定することができるので,上記解決課題に沿わないような記憶態様を作出することが可能となる。すなわち,本件訂正に基づき請求項1に「区別データ」を加入することは,単に,1ビットを超えるデータを含むことになるのみならず,願書に添付された本件明細書に開示された発明の技術思想,解決課題とは異質の技術的事項を導入するものというべきである。ウ そうすると,本件訂正に基づき請求項1に「区別データ」を加入することは,本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入することになる。したがって,「前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための区別データ」が,「共通フラグ」について記載した段落【0091】から自明な事項であるとして,本件訂正が,本件訂正前の本件明細書に記載された事項の範囲内においてしたものとした審決の判断は誤りというべきである。

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平成23(行ケ)10139 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月08日 知的財産高等裁判所

 補正が新規事項であると判断した審決が取り消されました。
 以上によれば,当初明細書の前記(2)オ及びキに認定の部分に記載された,本願発明1の最内熱可塑性材料層に狭い分子量分布を有する線形低密度ポリエチレンをメタロセン触媒を用いて重合するとの技術的事項(前記(1)ii)及び当初明細書の前記(2)オないしキに認定の部分に記載された,本願発明1及び5の最内熱可塑性材料層を前記線形低密度ポリエチレン及びマルチサイト触媒で重合して得られた低密度ポリエチレンとの特定の配合割合によるブレンドポリマーであるとする技術的事項(前記(1)iii)は,いずれも,同じく狭い分子量分布を有する線形低密度ポリエチレンからなる樹脂層を有する本願発明2ないし4についても妥当するものと解するのが相当である。このように,当初明細書の上記記載部分は,本願発明1の最内熱可塑性材料層を例示しているものの,当初明細書の全ての記載を総合するとき,本願発明2ないし4において狭い分子量分布を有する線形低密度ポリエチレンからなる各樹脂層についても,「メタロセン触媒で重合して得られた」ものであるとの技術的事項(前記(1)ii)及び上記線形低密度ポリエチレン及びマルチサイト触媒で重合して得られた低密度ポリエチレンとの特定の配合割合によるブレンドポリマーであるとする技術的事項(前記(1)iii)を,いずれも容易に導くことができるものというべきである。エ したがって,本願発明1ないし4の最内熱可塑性材料層等の樹脂層を構成する狭い分子量分布を有する線形低密度ポリエチレンをその製造方法により特定し(前記(1)ii),かつ,本願発明1ないし4の最内熱可塑性材料層等の樹脂層の構成を上記線形低密度ポリエチレン及びマルチサイト触媒で重合して得られた低密度ポリエチレンとの特定の配合割合によるブレンドポリマーであると特定した(前記(1)iii)本件補正は,いずれの点においても,当初明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
・・・
 また,被告は,当初明細書には本件補正発明1が「15〜17のメルトフローインデックス」を有する旨が記載されていない旨を主張する。しかしながら,当初明細書には,前記(2)エに認定のとおり,本願発明1ないし4及び本件補正発明1ないし4の最内熱可塑性材料層等の樹脂層が「5〜20のメルトフローインデックス」を有する旨の記載がある。そして,メルトフローインデックスとは,前記のとおり,樹脂材料の熱溶融時の流動性に関する指標であるところ,本願発明1及び本件補正発明1の特許請求の範囲の記載にある「15〜17のメルトフローインデックス」は,当初明細書の上記記載をより限定するものであり,当初明細書の記載を総合しても,この限定によって何らかの新たな技術的事項を導入するものとは認められないから,メルトフローインデックスを上記のように限定する補正は,明細書の範囲内においてされたものであって,当初明細書には,本件補正発明1ないし4の有するメルトフローインデックスについての記載があるとみて差し支えない。

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平成23(行ケ)10072 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月29日 知的財産高等裁判所

 新規事項による補正による無効理由ありとした審決が、新たな技術的事項を導入するものではないとして、取り消されました。
 以上のとおり,当初明細書等の全ての記載を総合的に判断すると,当初明細書等には,そこに記載の発明の形状に関する説明に当たり,本件補正事項中のi)「当てがう」こと,ii)「挿入」すること,iii)「吊り持ちさせる」こと及びiv)「展示させる」ことの4つの動作の同時並行関係又は時間的な順序関係については,これを同時動作を意味すると解する特段の記載がない一方で,これらの動作の間に同時並行関係又は時間的な順序関係があること,すなわち同時動作を意味すると解することを否定しているものでもないから,本件補正事項は,その中に2回用いられている「ながら」との文言が,動作の同時並行関係を含意しない「…のままで。」との同時状態の意味のほかに,「同時にあれとこれとをする意。」との動作の同時並行関係,すなわち同時動作の意味を有するからといって,当初明細書等の記載から導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいい難い。したがって,本件補正事項を追加する本件補正は,当初明細書等の記載から導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとまではいえず,そこに記載した事項の範囲内においてされたものであるということができるから,特許法17条の2第3項に違反するとはいえない。そして,本件特許に係る【請求項2】ないし【請求項7】は,いずれも本件発明に関する【請求項1】を引用しているから,本件発明についての本件補正に関する上記判断は,本件特許に係る【請求項2】ないし【請求項7】にも同じく妥当することになる。そして,本件補正事項中の「ながら」が「同時にあれとこれとをする意。」という動作の同時並行関係(同時動作)のみを意味するものと限定的に解釈する本件審決の判断は,その根拠を欠くばかりか,当初明細書等にはこのような上記i)ないしiv)の4つの動作の同時並行関係又は時間的な順序関係についての記載がないから新たな技術的事項を導入しないものとはいえないとすることは,当初明細書等の記載の字句等を形式的に判断するものであって,当初明細書等の全ての記載を総合的に判断しているものとはいえないから,本件審決による本件特許に係る各発明に関する本件補正の適否の判断には誤りがある。

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平成22(行ケ)10373 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年07月21日 知的財産高等裁判所

 補正は新規事項であるとした審決の判断が維持されました。
 このことから,特許請求の範囲の文言上は,商品カタログの基準色画像部分以外の他の部分が基準色画像部分と同一条件でかつ同時に色補正されるように,商品カタログの受信者が基準色画像の色補正を「自己のシステムにおける選択機能」を機能\させずに行うことは特定されているものの,この「自己のシステムにおける選択機能」の意義は明らかでない。
イ 発明の詳細な説明の記載
 この点について,発明の詳細な説明(【0024】)には,「最近コンピューター画像処理技術が急速に発展し,自己の所有するパソコンのモニタに表\示されたデジタル画像色の単純な補正が一般家庭でも容易に出来るようになった。従って,本願発明の場合でも,自己の所有するパソコンのモニタに表\示された基準色のデジタル画像の色を自己が所有するこの基準色画像の色(印刷された基準色画像の色)と比較して目視で両者間の相違が明瞭に認識された場合に,例えば公知のコンピューター画像処理手法(例えばAdobe 社 Photoshop LE-J(登録商標))を用いた色補正処理によって,モニタ表示のデジタル基準色画像の色を自己が保有する印刷基準色画像の色と実質的に合致するように補正すれば,前記デジタル基準色画像と共に表\示されている商品のデジタル画像の色も補正されるので,色品質を重視した商品の選択が効率的に高い精度で可能となる。」と記載されている。
ウ 「自己のシステムにおける選択機能」の意義
 発明の詳細な説明に「公知のコンピューター画像処理手法」として記載された「Adobe Photoshop LE-J」のユーザガイド(以下「本件ユーザガイド」という。)の「第3章:選択範囲の操作」には,選択ツールにより,i)「画像の一部を補正する具体的方法」とii)「画像全体を補正する具体的方法」とが記載されている(甲8の2)。なお,「公知のコンピューター画像処理手法を用いた色補正処理」として,本件ユーザガイドに記載された上記以外の技術的事項があると認めるに足りない。そうすると,「自己のシステムにおける選択機能」とは,受信者所有のパソ\コンのような「自己のシステム」に含まれる,本件ユーザガイドにおけるi)「画像の一部を補正する具体的方法」とii)「画像全体を処理する具体的方法」のことであり,いわゆる「選択ツール」により編集操作の対象として画像の一部又は全部を選択する機能のことをいうものと解される。\n

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平成22(行ケ)10024 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月28日 知的財産高等裁判所 

 新規事項でないとした審決の判断は維持されましたが、進歩性ありとした判断は取り消されました。
 前記(4),(5)によれば,本件基準明細書又は図面に記載された発明は,回路基板改造による不正行為の防止を課題とし,上記不正行為を効果的に防止して不正行為を受けにくくする遊技機を提供することを目的としており(前記段落【0006】【0007】),遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とする信号伝達方向規制手段を表\示制御基板に設けるとともに,表示制御基板への信号の出力のみを可能\とする信号伝達方向規制手段を遊技制御基板に搭載する構成とし(図16),更に信号伝達方向規制手段をバッファIC回路で構\成していることが認められる(前記段落【0060】)。これにより,本件基準明細書又は図面に記載された発明は,表示制御基板側から遊技制御基板側に信号が伝わることなく,確実に信号の不可逆性を達成することができるようにしており,表\示制御基板改造による不正行為を効果的に防止するものである(前記段落【0094】【0095】【0096】)。そうすると,本件基準明細書又は図面のすべての記載を総合すると,本件基準明細書又は図面に記載された遊技機は,当業者において,不正行為を防止するため,遊技制御基板から表示制御基板への信号の伝達のみを可能\とし,表示制御基板側から遊技制御基板側に信号が伝わる余地がないよう,確実に信号の不可逆性を達成することができるように構\成していること,すなわち,信号の不可逆性に例外を設けないとの技術的事項が記載されていると認定するのが合理的である。そうすると同技術的事項との関係において,「遊技制御基板と表示制御基板との間のすべての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記表\示制御基板への一方向に規制する」ことは,新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。これに対し,原告は,甲3記載の発明について,メイン制御部からサブ制御部へのすべての信号を規制の対象としていないと解釈するならば,本件基準明細書についても同様に解釈するべきであり,本件訂正は,新たな技術的事項を導入するものに当たると主張する。しかし,前記のとおり,訂正の適否の判断において,「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内」であるか否かは,当業者において,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべてを総合することによって,認識できる技術的事項との関係で,新たな技術的事項を導入するものであるか否かを基準に判断すべきものであり,他の公知文献等の解釈により判断が左右されるものではないから,上記原告の主張は採用することができない。したがって,遊技制御基板と表示制御基板との間の「信号」を「全ての信号」と限定する本件訂正は,「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内」においてするものということができるので,審決が本件訂正を認めた点に違法はない。
・・・ 以上によれば,審決が認定する技術事項Cが前記段落【0071】の記載に基づくものであるとしても,同段落の記載は,甲9の他の部分の記載や甲9記載の発明が解決しようとする課題及びその解決手段と整合しないか,又は,技術的に解決不可能な内容を含むものであって,誤った記載と解される。したがって,前記段落【0071】の記載のみから,甲9には技術事項Cが実質的に開示されていると認めることはできない。審決が,技術事項Cを根拠に,甲9において,「遊技制御基板199」から「払出制御回路基板152」へ伝達される信号は賞球個数信号D0〜D3がすべてであるとは認定できないと判断したことは誤りである。
・・・ 前記(2)のとおり,甲3には,サブ制御部6からメイン制御部1へのデータ信号入力を禁止し,サブ制御部6からメイン制御部1への不正信号の入力を防止するため,メイン制御部1とサブ制御部6との間のすべての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記表示制御基板への一方向に規制するための信号伝達方向規制手段を設けることが実質的に記載されているものと認められる。そうすると,本件訂正発明1と甲3記載の発明との相違点は,本件訂正発明1は表\示制御基板内及び遊技制御基板内の各々に信号伝達方向規制手段が実装されているのに対し,甲3記載の発明は,メイン制御部1(「遊技制御基板」に相当)及びサブ制御部6(「表示制御基板」に相当)の各々に信号伝達方向規制手段が実装されていないこととなる。また,前記(3)のとおり,甲9には,遊技機に関し,メイン制御部からサブ制御部への一方向通信とした構\成を採用することにより,サブ制御部からメイン制御部へ入力される情報の入力部を利用した不正なデータの入力による不正改造等を防止することが記載されており,その具体的手段として,信号の伝達方向を遊技制御基板(メイン基板)からサブ基板への一方向に規制するために,前記遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とし,前記遊技制御基板への信号の出力を不能\とする信号伝達方向規制手段である信号回路209を遊技制御基板199(メイン基板)に設けるとともに,信号の伝達方向を前記遊技制御基板(メイン基板)からサブ基板への一方向に規制するために,前記サブ基板への信号の出力のみを可能とし,前記サブ基板からの信号の入力を不能\とする信号伝達方向規制手段である信号回路217を払出制御回路基板152(サブ基板)に設けることが開示されていると認められる。さらに,甲9に記載された技術事項は,甲3記載の発明と同様に遊技機に関する技術分野において,不正信号の入力を防止するという目的を達成するためのものであり,甲3記載の発明においては1つであった一方向データ転送手段を,甲9のように入力側基板と出力側基板のそれぞれに設けることにより,より高い効果が期待できることは当然のことであるから,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用することは,当業者において容易であるといえる。なお,前記(3)のとおり,審決が技術事項Cとして認定した事項は,甲9記載の技術的思想に基づく適切な開示事項とは認められず,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用する際の阻害要因とはならない。したがって,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用することにより,本件訂正発明1の構成(ε)及び構\成(ζ)を得ることは当業者が容易に想到し得ることといえる。以上によれば,本件訂正発明1は,甲3に記載された発明に甲9記載の技術事項及び周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到することができるものであるから,本件訂正発明1の進歩性を肯定した審決の判断は誤りであり,取消事由2は理由がある

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平成22(行ケ)10064 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月28日 知的財産高等裁判所

 補正について新規事項であるした点は誤りであるが、進歩性なしとの判断については誤りでないと判断しました。ただ、進歩性の判断手法については一言述べられています。
 当裁判所は本件補正2について,新たな技術的事項を導入したとした審決の判断に誤りがあるとする取消事由1に係る主張は,理由があるが,本件補正2について,本願補正発明につき独立特許要件を欠くとした審決の判断に誤りがあるとする取消事由2に係る主張は,原告の主張を前提とする限りにおいては理由がないと解する。したがって,本件補正2を却下した上,本願を拒絶すべきものとした審決には,結果として,誤りはないものと判断する。
・・・ 審決は,本件補正2に関し,「『第一高分子樹脂材料及び第二高分子樹脂材料は,互いに異なるポリウレタン樹脂である』との明示的な記載を当初明細書等に見つけることはできない。」として,「第一高分子樹脂材料及び第二高分子樹脂材料の選択として,両者が『同一』であるか『互いに異なる』かに大別されるものであったとしても,そのうちの一方である『互いに異なるポリウレタン樹脂』を選択することは,新たな技術的事項を導入したものと認めざるを得ない。」と判断する。しかし,審決の判断は誤りである。当初明細書(甲1)の段落【0033】には,「基布50を被覆する第二高分子樹脂材料58は(中略)ステープルファイバーバット56を被覆する第一高分子樹脂材料に対して親和性を示す。実際,そのような親和性により,第一高分子樹脂材料および第二高分子樹脂材料をして使用される材料の選択が決定される。(中略)前記二つの材料はポリウレタン樹脂材料であってもよい。いずれにしても,その親和性により,第二高分子樹脂材料と(中略)第一高分子樹脂材料とが化学的に結合するようになり,硬化した第二高分子樹脂材料と基布の糸の間における機械的な結合が補強される。」旨の記載があり,第一高分子樹脂材料と第二高分子樹脂材料は,ともにポリウレタン樹脂材料である場合があって,両者は親和性を示し,化学的に結合するものであるから(この点は,当事者間に争いがない。),当初明細書には,両ポリウレタン樹脂が化学的に結合するものであること(両者が化学的に結合する反応性基をそれぞれの分子内に有すること)を前提として,両者が同一である場合と,互いに異なる場合の双方の技術が開示されている。そうすると,本件補正2は,「互いに異なる」ポリウレタン樹脂材料に限定したものであり,そのことにより,新たな技術を導入したものと解することは到底できない。以上のとおり,本件補正2について,新たな技術的事項を導入したとした審決の判断は誤りである。
・・・ なお,本願補正発明の進歩性の有無を判断するに当たり,審決は,本願補正発明と引用発明との相違点を認定したが,その認定の方法は,著しく適切を欠く。すなわち,審決は,発明の解決課題に係る技術的観点を考慮することなく,相違点を,ことさらに細かく分けて(本件では6個),認定した上で,それぞれの相違点が,他の先行技術を組み合わせることによって,容易であると判断した。このような判断手法を用いると,本来であれば,進歩性が肯定されるべき発明に対しても,正当に判断されることなく,進歩性が否定される結果を生じることがあり得る。相違点の認定は,発明の技術的課題の解決の観点から,まとまりのある構成を単位として認定されるべきであり,この点を逸脱した審決における相違点の認定手法は,適切を欠く。しかし,本件では,原告において,このような問題点を指摘することなく,また,平成22年4月15付けの第1準備書面において,審決のした本願補正発明の相違点1ないし5に係る認定及び容易想到性の判断に誤りがないことを自認している以上,審決の上記の不適切な点を,当裁判所の審理の対象とすることはしない。\n

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平成21(行ケ)10400 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月13日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、新規事項か否かが争われました。知財高裁は新規事項とした審決を維持しました。
 ところで,前記1で判示したとおり,当初明細書及び図面には,ダウンロードページの細部項目メニュ画面中の使用案内ボタンをクリックした場合,使用案内ページのどの画面に移動するかについて,明確な記載が認められず,当初明細書及び図面の記載を総合すると,使用案内ページのモデルメニュ画面に移動すると解するのが,最も自然な画面移動であって,選択したパソコンモデルに対応した,細部項目のメニュ画面やグラフィック情報及びテキスト情報を提供する画面などに直接移動することを示唆する記載は,当初明細書及び図面には見当たらない。また,ダウンロードボタンをクリックした場合も,ダウンロードページのモデルメニュ画面に移動すると解するのが,最も自然な画面移動であって,当初明細書及び図面には,選択したパソ\コンモデルに対応した他の画面に直接移動することを示唆する記載も見当たらない。したがって,上記の補正事項を実現するために,前記のような直接的な画面移動を実現することは,各種のサービスページに共通して,選択されたパソコンモデルの種類を認識・保存するとの技術的事項を導入するものであり,また,移動メニュの同じサービスページのボタンであっても,そのボタンが設けられている画面(又はその表示内容)によって,ボタンをクリックした場合の移動する先の画面又はその表示内容が異なるという技術的事項を導入するものであるから,当初明細書及び図面に記載された事項ではなく,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるということはできない。\n

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平成21(行ケ)10283 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年09月30日 知的財産高等裁判所

 パチスロ機発明(CS関連発明?)について、訂正要件違反無し、無効理由無しとした審決が維持されました。
 原告は,訂正事項6(A)について,審決のようにエリア4からエリア1までを順次チェックして最初にハズレとなる回をリーチ目に変更するものと解釈すると訂正事項6(B)の記載と重複し,訂正事項6(A)が無意味な記載となるから訂正目的違反に当たる旨主張する。しかし,訂正事項6(A)と訂正事項6(B)の記載に一部重複する部分があるとしても,これらはいずれも事前報知を行う場合を限定するものであり,重複記載により特許請求の範囲を不明確にするものでもないから,訂正事項6(A)が訂正目的違反に当たるということもできない。なお,原告は,審決引用部分Aの記載はエリア4が当たり(特定の識別情報に対応する表示結果)の場合について説明したものであるのに対し,訂正事項6(A)はエリア4が当たりでない(特定の識別情報に対応するものでない表\示結果)場合の記載であること,審決引用部分Aの記載は,明細書の記載からはほとんど想定できない実施例であること,審決引用部分Aの記載に従うと,エリア3ないしエリア1のデータは,打玉の始動入賞領域への入賞により生成された表示結果決定用データではない場合にも,再度リーチ目表\示用データに変更されることになり,打玉の始動入賞領域への入賞により生成された表示結果決定用データがハズレか否かを判定するという訂正事項6(A)の構\成となっていないことから,審決引用部分Aの記載に基づき訂正事項6(A)が新たな技術事項の導入に当たるか否かを判断することは誤りである旨主張する。しかし,審決引用部分Aには,常にエリア4の停止図柄データをリーチ目表示用の停止図柄データに変更するように構\成することに代えて,エリア4に記憶されている停止図柄データが当たりであった場合にはエリア4をリーチ目表示用の図柄データに変更することなくエリア3からエリア1を順次チェックすることが記載されているのであって,エリア4が当たりでない場合はエリア4により事前報知を行うことも記載されているから,審決引用部分Aの記載を根拠として,訂正事項6(A)が新たな技術事項の導入に当たらないとした判断に誤りはない。また,エリア4に記憶されている停止図柄データが大当たり又は中当たりの値であった場合には,エリア3にはハズレのデータではなく,既にリーチ目表\示用の図柄データに変更されたデータが入っている可能性が少なくない(エリア2及びエリア1についても同様)としても,そのことと新たな技術事項の導入に当たるか否かとは無関係であり,これをもって審決引用部分Aの記載から訂正事項6(A)が新たな技術事項の導入に当たらないとした判断が誤りであるということもできない。\n

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◆関連事件です。平成21(行ケ)10282

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平成22(行ケ)10019 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年07月15日 知的財産高等裁判所

 審決は新規事項であるとして訂正を認めませんでしたが、裁判所は、当初明細書の範囲内であるとしてこれを取り消されました。
 旧特許法126条1項は,訂正が許されるためには,いわゆる訂正の目的要件(本件では特許請求の範囲の減縮)を充足するだけでは足りず,「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」であることを要するものと定めている。法が,いわゆる目的要件以外に,そのような要件を定めた理由は,訂正により特許権者の利益を確保することは,発明を保護する上で重要ではあるが,他方,新たな技術的事項が付加されることによって,第三者に対する不測の不利益が生じることを避けるべきであるという要請を考慮したものであって,特許権者と第三者との衡平を確保するためのものといえる。このように,訂正が許されるためには,いわゆる目的要件を充足することの外に,「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」であることを要するとした趣旨が,第三者に対する不測の損害の発生を防止し,特許権者と第三者との衡平を確保する点にあることに照らすならば,「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」であるか否かは,訂正に係る事項が,願書に添付された明細書又は図面の特定の箇所に直接的又は明示的な記載があるか否かを基準に判断するのではなく,当業者において,明細書又は図面のすべてを総合することによって導かれる技術的事項(すなわち,当業者において,明細書又は図面のすべてを総合することによって,認識できる技術的事項)との関係で,新たな技術的事項を導入するものであるか否かを基準に判断するのが相当である(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10563号平成20年5月30日判決参照)。・・・・本件訂正前の本件特許明細書の上記記載中の本件発明の作用・効果等の記載に照らすならば,i)本件発明を特徴づけている技術的構成は,特許請求の範囲の記載(請求項1)中の「継鉄部と,外周側が開放され内周側が連結された歯部とに分割されるとともに,前記歯部にコイルが巻装され,かつ,前記継鉄部と歯部とが,プレス抜きの後積層されて,一体的に構\成されるステータコアと,前記ステータコアをインサート成形した絶縁性樹脂からなるフレームと,前記フレームに嵌合固定するブラケットとを有するモールドモータにおいて」までの部分にあるのではなく,むしろ,これに続いて記載されている「前記コイルの巻装形状を,コイルエンドの軸方向端面の外周側を平坦面にするとともに,コイルエンドの軸方向端面の内周側にテーパを形成した台形状とし,かつ,前記フレームのコイルエンドの軸方向端部の平坦面と接する部分の厚みを薄くし,前記コイルエンドと前記ブラケットとを,肉厚のきわめて薄い樹脂製のフレームからなる細隙を介して対向させたことを特徴とするモールドモータ。」との部分にあると解されるところ,本件特許明細書の「内周側が連結された歯部」との構成は,前段部分に記載されていること,ii)そして,「歯部」は,「内周側が絶縁性樹脂を介して連結された歯部」のみに限定された範囲のものであったとしても,「内周側が絶縁性樹脂を介さないで連結された歯部」を含む範囲のものであったとしても,本件発明の上記作用効果,すなわち,歯部間におけるコイルのスペースファクタを高くし,コイルの冷却を良好にすることにより,モータ特性を向上させ,モータの全長を短くするとの作用効果との関係においては,何らかの影響を及ぼすものとはいえないことが,それぞれ認められる。
イ 被告は,本件特許明細書の【図2】及び【図4】には,「歯部の内周側が絶縁性樹脂を介して連結されること」が明確に示されているとはいえない点を,本件訂正が「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」の訂正であることを否定する根拠としている。しかし,訂正が,上記要件を充足するか否かは,明細書の実施例に図示されているか否かという形式的な観点から判断すべきではなく,当該明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で,第三者に不測の損害を生じる可能性があると推測できるような,新たな技術的事項を導入したか否かを実質的に判断すべきであるから,被告の主張は採用の限りでない。この点,被告は,本件において,「絶縁性樹脂を介して連結された歯部」とする訂正を認めると,本件特許明細書の記載から予\測できない範囲に特許権の効力が及ぶことになり,第三者に不測の損害を与えかねないと主張する。しかし,被告は,第三者に不測の損害を与えかねないような新たな技術的事項の内容を,何ら明らかにしていないので,被告の主張は採用できない。また,審決では,本件訂正が「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当すると判断しており,「内周側が絶縁性樹脂を介して連結された歯部」も本件訂正前の請求項1記載の発明に含まれることを認めているのであって,本件においては,本件訂正がされたからといって,第三者に不測の損害を与える可能性のある新たな技術的事項が付加されたことを,想定することは困難である。
ウ したがって,「内周側が連結された歯部」(本件において,同構成が「内周側が絶縁性樹脂を介さないで連結された歯部」及び「内周側が絶縁性樹脂を介して連結された歯部」を含むことについては,争いがない。)を「内周側が絶縁性樹脂を介して連結された歯部」とした本件訂正は,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないというべきである。\n

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平成21(行ケ)10303 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年06月22日 知的財産高等裁判所

   補正事項は新規事項であるとした審決が取り消されました。
 審決は,本件補正が特許法17条の2第3項の規定に違反するというものであるところ,同条の「明細書又は図面に記載した事項」とは,技術的思想の高度の創作である発明について,特許権による独占を得る前提として,第三者に対して開示されるものであるから,ここでいう「事項」とは明細書又は図面によって開示された発明に関する技術的事項であることが前提となるところ,「明細書又は図面に記載した事項」とは,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができると解すべきである。そこで,以下,本件補正が,上記の新たな技術的事項を導入しないものであるか否かを各補正事項ごとに検討する。・・・・前記1の段落【0002】及び図7を参照すると,従来の携帯電話端末は,「音響信号(音声)を音声電気信号に変換するマイク8」と,「音声電気信号を音響信号に変換するスピーカ9」を備えており,また,本願発明の携帯電話端末に関して,「本装置の基本的な構成は,図7に示した従来の携帯電話端末とほぼ同様であり,従来と同様の部分としてアンテナ1と,無線部2と,ベースバンド処理部3と,表\示部7と,マイク8と,スピーカ9と,バッテリ11と,電源制御部12とを備え,」(段落【0016】参照)と記載されているとともに,発明の実施の形態を示す図1には,マイク8及びスピーカ9が制御部10と矢印線により結ばれている様子が示されている。すると,当初明細書等に記載された本願発明の実施例としての携帯電話端末は,「マイク8」と「スピーカ9」とを備え,従来の携帯電話端末と同様に,「マイク8」は「音響信号(音声)を音声電気信号に変換する」ものであり,「スピーカ9」は「音声電気信号を音響信号に変換する」ものであると認められる。・・・以上のように,当初明細書等に記載された本願発明の課題とその解決手段及び周知技術を総合して考慮すると,本願発明の携帯電話端末において通信機能を停止した場合にそのまま使える機能\としては,少なくとも時計機能,電話帳機能\,マイクによる音声を電気信号に変換する機能,及びスピーカによる電気信号を音声に変換する機能\が含まれるものと解される。(5) 以上のとおり,補正事項イ)ないしハ)は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであると認められるから,本件補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができると解される。

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平成21(行ケ)10133 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月03日 知的財産高等裁判所

 訂正要件違反かが争われました。新規事項でないとした判断は維持しましたが、当該構成要件を採用することは容易と判断して、無効理由なしとした審決を取り消しました。\n 本件明細書における「台板」の構成は,埋込用アタッチメントの一部を構\成する四角形の板状部材であって,その上部にフレーム及び振動装置を固定し,その下面中央部には杭の上部に嵌め込むための円筒状の嵌合部が設けてあるものとして記載されているということができるが,本件図面における振動装置の油圧モーターの油圧式ショベル系掘削機側の端は,台板とは別の部材である三角柱の3つの側面のうちの1つの面を開放状態としたような形状の部材によってカバーされており,同図面上は同油圧モーターの端がどこに位置するのかを確認することはできないから,台板の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機側の辺が,油圧式ショベル系掘削機側にある振動装置の油圧モーターの端よりも油圧式ショベル系掘削機側にあることについて,本件明細書又は本件図面に直接的に記載されているとまで認めることはできない。もっとも,訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものということができるので,本件訂正のうち特許請求の範囲に「上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり,」との記載を付加する部分が,本件明細書及び図面の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものかどうかを判断するに当たっては,この種の杭埋込装置における前記説示した意味での台板の存在及び形状についての当業者の認識を踏まえる必要がある。・・・・ 以上によると,本件特許出願時における当業者にとって,油圧式ショベル系掘削機のアーム先端部に取り付ける埋込用アタッチメントとして,四角形の台板の上部に振動装置を備えるとともに,その下部略中央部に杭との嵌合部を備えるものはよく知られており,振動装置,四角形の台板及び嵌合部相互の関係については,四角形の台板を油圧モーターを含む振動装置が納まる程度の大きさとし,振動装置が隠れるように配置する構成のものが知られ,作業現場において長年にわたって使用されてきたものとして周知であったということができる。そうすると,本件訂正のうち,特許請求の範囲の【請求項1】及び【請求項2】について「上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり,」との限定を加える部分は,本件特許出願時において既に存在した「台板の上部に振動装置を設けるとともに,下面中央部に嵌合部を設ける」という基本的な構成を前提として,「振動装置の油圧モーターが油圧式ショベル系掘削機側にある」という当業者に周知の構\成のうちの1つを特定するとともに,「台板」と「振動装置」の関係について,同様に当業者に周知の構成のうちの1つである「四角形の台板の上に油圧モーターが隠れるように振動装置を配置するという構\成」に限定するものである。そして,上記イ(ア)ないし(ク)で認定した技術状況に照らすと,上記周知の各構成はいずれも設計的事項に類するものであるということができる。したがって,本件明細書及び図面に接した当業者は,当該図面の記載が必ずしも明確でないとしても,そのような周知の構\成を備えた台板が記載されていると認識することができたものというべきであるから,本件訂正は,特許請求の範囲に記載された発明の特定の部材の構成について,設計的事項に類する当業者に周知のいくつかの構\成のうちの1つに限定するにすぎないものであり,この程度の限定を加えることについて,新たな技術的事項を導入するものとまで評価することはできないから,本件訂正は本件明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてするものとした本件審決の判断に誤りはない。・・・・そして,上記1(3)ウにおいて認定した本件特許出願時における当業者の認識を踏まえると,この種の杭打込装置において,「台板の上部に振動装置を設けるとともに,下面中央部に嵌合部を設ける」という構成は基本的な構\成のうちの1つであると認められるから,引用例1に接した当業者は,同記載の図面から台板の存在を認識することができるというべきである。したがって,台板の有無及びその構成について,本件発明1と引用発明1との相違点2を認定した本件審決には,原告主張の誤りがあるといわなければならない。(2) しかしながら,本件審決は,引用発明1には台板の上部にあるものを保護するという技術思想を認めることができないとの理由により,引用発明1と本件発明1との相違点2に係る構成を導き出すことは当業者にとって容易であるということはできないと判断しているのであって,引用例1における台板の存在を認定したとしても,その判断が異なる結果となったとは解されず,本件審決による相違点2の認定の前記誤りは,結局,本件審決の結論に影響を及ぼすものということはできないから,原告主張の取消事由2も採用することができない。\n

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平成21(行ケ)10175 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月28日 知的財産高等裁判所

 新規事項追加とした審決が、新たな技術的事項を導入したものでないとして取り消されました。
 発明とは,自然法則を利用した技術的思想であり,課題を解決するための技術的事項の組合せによって成り立つものであることからすれば,同条3項所定の出願当初明細書等に「記載した事項」とは,出願当初明細書等によって開示された発明に関する技術的事項であることが前提になる。したがって,当該補正が,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入したものと解されない場合であれば,当該補正は,明細書,特許請求の範囲の記載又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものというべきであって,同条3項に違反しないと解すべきである。ところで,特許法36条5項は,特許請求の範囲には,「・・・特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない」と規定する。同規定は,特許請求の範囲には,「・・・特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載」すべきとされていた同項2号の規定を改正したものである(平成6年法律第116号)。従来,特許請求の範囲には,発明の構\成に不可欠な事項以外の記載はおよそ許されなかったのに対して,同改正によって,発明を特定するのに必要な事項を補足したり,説明したりする事項を記載することも許容されることとされた。そこで,これに応じて,特許請求の範囲に係る補正においても,発明の構成に不可欠な技術的事項を付加する補正のみならず,それを補足したり,説明したりする文言を付加するだけの補正も想定されることになる。したがって,補正が,特許法17条の2第3項所定の出願当初明細書等に記載した「事項の範囲内」であるか否かを判断するに際しても,補正により特許請求の範囲に付加された文言と出願当初明細書等の記載とを形式的に対比するのではなく,補正により付加された事項が,発明の課題解決に寄与する技術的な意義を有する事項に該当するか否かを吟味して,新たな技術的事項を導入したものと解されない場合であるかを判断すべきことになる。上記の観点から,本件補正の適否を判断する。・・・・(ア) 本件当初出願に係る特許請求の範囲(請求項1)においては,「高断熱・高気密住宅において」(構成A)と記載されていた。前記アの認定によれば,同構\成は,本件発明の解決課題及び解決機序と関係する技術的事項とはいい難く,むしろ,本件発明における課題解決の対象を漠然と提示したものと理解するのが合理的である。そして,本件補正によって,「高断熱・高気密住宅」については「熱損失係数が1.0〜2.5kcal/m ・h・℃」との事項が付加され,「熱損失係数が1.0〜2.5kcal/m ・h・℃の高断熱・高気密住宅」との構成とされた。ところで,「熱損失係数が1.0〜2.5kcal/m ・h・℃の高断熱・高気密住宅」との構成について,本件発明全体における意義を検討すると,形式的には,数値を含む事項によって限定されてはいるものの,熱損失係数の計算精度は高いものとはいえないと指摘されていること等に照らすならば,同構\成は,補正前と同様に,本件発明の解決課題及び解決機序に関係する技術的事項を含むとはいいがたく,むしろ,本件発明における課題解決の対象を漠然と提示したものと理解するのが合理的である。本件補正の適否についてみてみると,仮に本件補正を許したとしても,先に述べた特許法17条の2第3項の趣旨,すなわち,i)出願当初から発明の開示を十分ならしめ,発明の開示が不十\分にしかされていない出願と出願当初から発明の開示が十分にされている出願との間の取扱いの公平性の確保,ii)出願時に開示された発明の範囲を前提として行動した第三者が被る不測の不利益の防止,という趣旨に反するということはできない。そうすると,本件補正は,本件発明の解決課題及び解決手段に寄与する技術的事項には当たらない事項について,その範囲を明らかにするために補足した程度にすぎない場合というべきであるから,結局のところ,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入していない場合とみるべきであり,本件補正は不適法とはいえない。・・・・そうすると,仮に,本件補正によって付加された事項が技術的内容を含んでいると解したとしても,本件出願当初明細書には「熱損失係数が1.0〜2.5kcal/m ・h・℃」における数値が明示されているわけではないが,本件発明の課題解決の対象である「高断熱・高気密住宅」をある程度明りょうにしたにすぎないという意味を超えて,当該数値に本件発明の解決課題及び解決手段との関係で格別な意味を見いだせない本件においては,その付加された事項の内容は,本件出願当初明細書において既に開示されていると同視して差し支えないといえる。したがって,本件補正は,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入した場合であるとはいえない。

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平成21(行ケ)10049 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月28日 知的財産高等裁判所

 分割要件を満たしていないとした審決が維持されました。
「以上のとおり,本件原出願明細書には,発明の目的を「メンテナンスが行ないやすく,且つ,部品点数を少なくしつつも剛性の大きな(強度の高い)細断機を提供すること」とし,具体的には「前後の揺動側壁が開くので,メンテナンスが行ないやすい。」,また,「2本の支持軸と1本の連結材で左右の固定側壁を連結するので,細断機の剛性を大きくすることが出来る。」,更に,「2本の支持軸が,揺動側壁の枢軸と左右の固定側壁を連結する連結材とを兼ねているので,部品点数を少なくしてコスト低減を図ることが出来る。」発明が記載,開示されている。そうすると,「左右の固定側壁の上部前部に渡し止められた連結材」(本件連結材)は,細断機の剛性を大きくするという発明の解決課題を達成するための必須の構成であり,本件原出願明細書には,同構\成を有する発明のみが開示されており,同構成を具備しない発明についての記載,開示は全くなく,また,自明であるともいえない。したがって,本件原出願明細書の特許請求の範囲に記載された,「左右の固定側壁の上部前部に渡し止められた連結材」との記載部分を本件原出願明細書の「特許請求の範囲」の記載から削除したことは,細断機の剛性確保に関して,新たな技術的意義を実質的に追加することを意味するから,本件分割出願は,もとの出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものではなく,分割出願の要件を満たしていないから,不適法である。\n

◆平成21(行ケ)10049 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月28日 知的財産高等裁判所
 

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平成19(ワ)3494 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月27日 東京地方裁判所

 侵害訴訟で、除くクレームが新規事項かが争われました。

 特許法17条の2第3項は,第1項の規定により明細書等について補正をするときは,願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしなければならないと規定している。そして,「明細書等に記載した事項」とは,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するもの(当業者)を基準として,明細書・特許請求の範囲・図面のすべての記載を総合して理解することができる技術的事項のことであり,補正が,上記のようにして導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は「明細書等に記載した事項の範囲内」であると解すべきである。したがって,特許請求の範囲の減縮を目的として特許請求の範囲に限定を付加する補正を行う場合,付加される補正事項が当該明細書等に明示されているときのみならず,明示されていないときでも新たな技術的事項を導入するものではないときは,「明細書等に記載した事項の範囲内」の減縮であるというべきであり,このことは除くクレームを付加する補正においても妥当する。・・・別件特許は,球状活性炭に関し,本件特許とは異なり,フェノール樹脂又はイオン交換樹脂を出発原料として特定せず,また,本件特許では従来技術に属するものとされるピッチ類を用いても調整が可能であるとして,このR値の観点から球状活性炭を特定したものである。そうすると,球状活性炭のうちフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として用いた場合において,そのR値が1.4以上であるときには,本件特許に係る発明と別件特許に係る発明は同一であるということができる。そして,本件補正は,このR値が1.4以上である球状活性炭を特許請求の範囲から除くことを目的とするものであり,特許請求の範囲の記載に技術的観点から限定を加えるものではなく,新たな技術的事項を導入するものではないと認めるのが相当である。・したがって,本件補正は,「明細書等に記載した事項の範囲内」の減縮であるので,特許法17条の2第3項に違反するものではなく,本件特許は,無効とされるべきものとは認められない。なお,本件特許の審決取消請求訴訟において,同様の判断がされている(知的財産高等裁判所平成21年3月31日判決・甲77)。」\n

◆平成19(ワ)3494 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月27日 東京地方裁判所
 

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平成20(行ケ)10420 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

 補正された事項が新規事項であるとした審決を取り消しました。
 上記の認定事実によれば,本件補正事項である「マンガン化合物のみに機械的な力と熱エネルギーを同時に加え」るとの事項が,本願当初明細書等の実施例1に開示されていることは明らかである。すなわち,実施例1では,原料マンガン化合物のMH処理の段階において,マンガン化合物である二酸化マンガンには機械的な力(剪断応力と圧縮応力)と熱エネルギー(100℃の熱の加熱)が加えられている。その後のスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物の製造において,マンガン化合物以外のリチウム化合物である水酸化リチウム一水和物が添加・混合され,混合後に400〜500℃の炉で大気中7時間熱処理が行われ,その後冷却された再度混合されて均一化された粉末が750℃の空気雰囲気下で2次熱処理を受けてリチウムマンガンスピネル粉末とされるが,その間は熱エネルギーが加えられるものの,リチウム化合物には機械的な力が同時に加えられるものではない。したがって,本件補正事項は,本願当初明細書等の実施例1に基づくものであるから,本願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との対比において,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。また,本件補正により,本件補正前発明に関する技術的事項に何らかの変更を生じさせているものということはできない。イ 被告は,本願当初明細書等の実施例1では,MH処理の対象にマンガン化合物以外にも水素イオン及びその他の揮発可能\なイオンや結晶水を含み,これらがMH処理を受けるから,マンガン化合物のみに機械的な力と熱エネルギーを同時に加えることは新規事項の追加に当たると主張する。しかし,被告の上記主張は失当である。すなわち,前記認定の本願当初明細書等の記載によれば,本願発明において,MH処理を実施する目的は,原料の2次粒子内部に存在する吸着水,結晶水,水素イオン及びその他の揮発可能なイオンを揮発させることにあり,当業者であれば,このような不純物の除去を当然の前提としていると解するのが相当である。そうすると,当業者は,本件補正における「マンガン化合物のみ」を,このような不純物をも含んだMH処理前の「マンガン化合物のみ」との意味であると理解するといえる。」\n

◆平成20(行ケ)10420 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(ワ)4056 損害賠償請求事件 特許権民事訴訟 平成21年03月05日 大阪地方裁判所

   審査においてした補正が要旨変更と判断され、特許法104条の3により権利行使が制限されました。
 「明細書の要旨」とは,旧特許法上その意義を定めた明文の規定がないものの,特許請求の範囲に記載された技術的事項を指すものと解すべきである。したがって,特許請求の範囲を増加し,減少し,変更することは,その本来的意味においては,いずれも明細書の要旨を変更するものということができる。しかし,「出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前に,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更する補正は,明細書の要旨を変更しないものとみなす」と定めているから(旧。特許法41条),当該補正が明細書の要旨を変更することになるか否かは,結局のところ,当該補正後の特許請求の範囲に記載された技術的事項が「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」か否かによって決せられることになる。そして,「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項」とは,当業者によって,出願時の明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,このように導かれる技術的事項との関係において,当該補正が特許請求の範囲の記載に新たな技術的事項を導入するものであるときは,当該補正は,「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということはできず,明細書の要旨を変更するものということになる。以下,このような見地から本件補正が当初明細書の特許請求の範囲に記載された技術的事項に新たな技術的事項を導入するものであるか否かを検討する。
 ・・・イ このように,当初明細書等に開示された発明は,もっぱら,複数の画像表示部で1つの画面を構\成し,かつ,折りたたみ可能とすることにより,不要時には小さく,必要時には大きくすることができ,装置の小型化と画面の大型化を同時に実現できる画像表\示装置であったといえる。そして,このときの各画像表示部の位置関係について,被告は,相互に当接していることを要する旨主張し,当初明細書等の実施例の説明においては「当接して」との文言が記載されている(上記(4)オ(ア))ところ,必ずしも各画像表示部が「当接」すなわち当たり接していなくても,1つの画像表\示がなされたと認識し得るような近接した位置関係にあれば,当初明細書等の上記発明の効果を奏しないとはいえない。したがって,当初明細書等に記載された発明は,「当接する」ことまでは要しないが,少なくとも複数の画像表示部が1つの画像を表\示していると認識し得る程度に近接していることを要するというべきであって,各画像表示部が離れた位置にあることによって1つの画面を構\成しないような画像表示装置は記載も示唆もされていないというべきである。そして,かかる構\成が当業者にとって自明であったともいえない。補正事項?@に係る補正後の特許請求の範囲の記載では「画像表示用の表\示部を複数有し」とされているのみで,「複数の画像表示部が一つの画像表\示がなされたと認識し得る程度に近接している」もの以外の構成を包含し得るものとなっているから,補正事項?@に係る補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で,当初明細書等に開示された発明の構成に関する技術的事項に新たな技術的事項を導入するものというべきである。したがって,同補正は,当初明細書等の範囲内においてするものではなく,当初明細書等の要旨を変更するものというべきである。」

◆平成20(ワ)4056 損害賠償請求事件 特許権民事訴訟 平成21年03月05日 大阪地方裁判所

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◆平成20(行ケ)10254 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年12月25日 知的財産高等裁判所

 訂正要件について新規事項か否かが一つの争点でしたが、知財高裁は、審決を維持しました。
   「特定図柄の半透明に形成された部分以外の部分は,種類ごとに異なる色に着色されると共に,遮光性が付された」との訂正事項(訂正事項2)が新規事項の追加に当たるかについて判断する。(1) まず,特許法126条3項にいう「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内において」との文言について,「明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項」とは,当業者によって,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,訂正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内において」するものということができる。もっとも,明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項は,通常,当該明細書,特許請求の範囲又は図面によって開示された技術的思想に関するものであるから,例えば,特許請求の範囲の減縮を目的として,特許請求の範囲に限定を付加する訂正を行う場合において,付加される訂正事項が当該明細書,特許請求の範囲又は図面に明示的に記載されている場合や,その記載から自明である事項である場合には,そのような訂正は,特段の事情のない限り,新たな技術的事項を導入しないものであると認められ,「明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内において」するものであるということができる。・・・・訂正前明細書(甲13)の段落【0025】には,「各シンボルは上記実施形態と同様にリール帯31を形成する透明フィルム材の裏面に光透過性有色インキが印刷されて描かれているが,各半透明部分32aおよび33aにはこの有色インキが印刷されていない。その後の光透過性白色インキによる背景印刷は全面に対して行われ,最後の遮光性銀色インキによるマスク処理は各半透明部分32aおよび33aを除く領域に対して行われている。」との記載があるが,これも,各シンボルがリール帯31を形成する透明フィルム材の裏面に光透過性有色インキが印刷されて描かれていることを示すものにすぎない。したがって,訂正前明細書,特許請求の範囲又は図面(甲13)の記載を総合しても,当業者が,本件訂正発明のように,異なる種類の複数の特定図柄の一部分に半透明部分を形成するという構成において,「種類ごとに異なる色に着色」するという構\成を採用することの技術的意義について導くことができるとはいえず,本件訂正発明のように,異なる種類の複数の特定図柄の一部分に半透明部分を形成するという構成において,「種類ごとに異なる色に着色」するという構\成を採用することの技術的意義は不明というほかない。そうすると,たとえ属性ごとに各図柄を色で塗り分けること自体は周知の事項であるとしても,そのような技術的意義が不明である構成を新たに導入することについてまで,同様に周知の事項であるということはできない。」

◆平成20(行ケ)10254 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年12月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10431 補正却下決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月30日 知的財産高等裁判所

出願当初の明細書に記載されていた事項が、ある装置が当然の前提であるとして、その前提を削除する補正は要旨変更であるとした補正却下不服審決を維持しました。
 「以上によれば,本願の出願当初明細書における本願発明は,遊技球の通過を検出し,これに基づく特典の付与を可能とする始動ゲート装置を備えた遊技機に関するものであり,遊技機の遊技盤に形成された遊技領域に設けられる始動ゲート装置(これは,従来,遊技球の通過に基づき可変表\示ゲームの始動条件を付与可能な通過チャッカとして多用されていたものである。)について,従来技術においては単に球検出部を遊技盤面に突出させ,その球検出部の周りをシンプルなゲート部材で囲った程度の構\成であり,球が一瞬の間に球検出部を通り抜け,後は遊技盤面にごく普通に落下していくという単調さであったものを,球の通過を検知し,これに基づいて可変表示ゲームの始動等の特典を付与することを可能\としつつ,通過した球の挙動を変化させて遊技者の興趣を増大させるという意義を有するものである。そして,本願の出願当初明細書には,ここでの「特別可変表示装置」につき,可変表\示ゲーム,すなわち,始動口にパチンコ玉が入賞すると3箇所の特別図柄表示部における図柄が所定時間変動表\示された後に停止表示され,その際3箇所の図柄が揃うと特賞遊技状態(大当たり)となるゲームの表\示を可能とするため遊技領域に設けられた表\示装置である旨,また,「特別変動入賞装置」につき,このようにして特賞遊技状態となった場合に開閉扉が所定時間ずつ開放されるという特別遊技を可能とするための装置である旨の記載があると認められるものの,「特別可変表\示装置」が上記のように特別変動入賞装置の作動を決定する特別可変表示ゲームを実施する以外,他の目的があるとの記載はない。そうすると,本件出願当初の明細書に記載された特別可変表\示装置は,特別変動入賞装置の作動を決定する目的を有する装置であって,特別入賞装置とともに存在することに技術的意義を有する装置であると認められる。(4) これに対し,本件補正後の請求項1の記載は前記第3,1,(2)ウのとおりであるところ,これによると,「特別可変表示装置」については,「普通変動入賞装置への遊技球の入賞に基づき特別可変表\示ゲームを表示可能\な特別可変表示装置」と特定されているものの,「特別変動入賞装置」については規定するところがないから,本願補正発明は,特別可変表\示装置を有しつつ特別変動入賞装置を有しない遊技機,換言すれば,特別変動入賞装置の作動を決定する目的を持たず特別入賞装置とともに存在することを要しない特別可変表示装置をも,その請求の範囲に含むものである。そして,本願の出願当時におけるパチンコに代表\される遊技機の技術分野において,特別変動入賞装置と無関係な特別可変表示装置が遊技機に単体で存在することが自明であったとは認め難いから,このような遊技機(特別変動装置の作動との関係から切り離された「特別可変表\示装置」が単体で存在する遊技機)を出願当初の明細書から把握することは自明のことではないというべきである。そうすると,本件補正は,明細書の中に新たに遊技機に単体で存在する特別可変表示装置という技術的事項を導入するものであるから,明細書の要旨を変更するものといわなければならない。」
◆平成19(行ケ)10431 補正却下決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10053 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月12日 知的財産高等裁判所

 訂正要件を満たしていないとした審決を取り消しました。
  「特許法134条の2第5項で準用する同法126条3項該当性についてア訂正が,当業者によって,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができ,特許請求の範囲の減縮を目的として,特許請求の範囲に限定を付加する訂正を行う場合において,付加される訂正事項が当該明細書又は図面に明示的に記載されている場合や,その記載から自明である事項である場合には,そのような訂正は,特段の事情のない限り,新たな技術的事項を導入しないものであると認められ,「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された範囲内において」するものであるということができる(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10563号事件・平成20年5月30日判決参照)。以上を前提として,訂正事項1及び5について,「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」するものであるか否かを検討する。・・・・・ウ 本件明細書の前記イの各記載によれば,【請求項1】には,衣服の身頃,襟,襟口,ポケット又はポケットフラップの周縁に沿って袋を形成することが記載されており(前記イ(ア)),段落【0017】には,ワイヤの取付位置として,襟,襟口(襟の開き部分),袖の下部,身頃の下部,ポケットの縁,ポケットフラップの縁が記載されており(前記イ(イ)),段落【0019】には,ワイヤの取付構造(方法)として,衣服の表\側を構成する主布の裏側に,別布を縫合して袋を形成し,この袋の内部にワイヤを挿通させることが記載されており(前記イ(ウ)),段落【0021】には,ワイヤの取付位置として,襟の周縁,襟口の周縁が記載されており(前記イ(エ)),段落【0022】には,ワイヤの取付位置として,ポケットの開口の周縁,ポケットフラップの周縁が,それぞれ記載されている(前記イ(オ))と認められる。すなわち,本件明細書には,?@「衣服の襟,ポケット又はポケットフラップの周縁に沿って袋を形成」することが記載され(【請求項1】),?Aワイヤの取付位置として,「衣服の襟,ポケット又はポケットフラップの周縁」が記載され(段落【0017】,【0021】及び【0022】),?Bワイヤの取付構造(方法)として,「衣服の表\側を構成する主布の裏側に別布を縫合して,袋を形成」すること,この袋の内部にワイヤを挿通させることが記載されている(段落【0019】)といえる。そうすると,「衣服の襟,ポケット又はポケットフラップの周縁に沿って袋を形成」して,「衣服の襟,ポケット又はポケットフラップの周縁」にワイヤを取り付けるに当たり,「衣服の表\側を構成する主布の裏側に別布を縫合して,袋を形成」し,この袋の内部にワイヤを挿通させるようにすることは,本件明細書の記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,当業者であれば,本件明細書の記載から自明である事項として,認識することができるというべきである。」

◆平成20(行ケ)10053 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年06月12日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10563 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年05月30日 知的財産高等裁判所

  大合議判決です。除くクレームによる消極的限定について、訂正要件を満たしているかが争われました。裁判所は、「願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」の意義について一般論を述べた上、本件は上記範囲内の訂正であると認めました。
  「このような特許法の趣旨を踏まえると,平成6年改正前の特許法17条2項にいう「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」との文言については,次のように解するべきである。すなわち,「明細書又は図面に記載した事項」とは,技術的思想の高度の創作である発明について,特許権による独占を得る前提として,第三者に対して開示されるものであるから,ここでいう「事項」とは明細書又は図面によって開示された発明に関する技術的事項であることが前提となるところ,「明細書又は図面に記載した事項」とは,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。そして,同法134条2項ただし書における同様の文言についても,同様に解するべきであり,訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。もっとも,明細書又は図面に記載された事項は,通常,当該明細書又は図面によって開示された技術的思想に関するものであるから,例えば,特許請求の範囲の減縮を目的として,特許請求の範囲に限定を付加する訂正を行う場合において,付加される訂正事項が当該明細書又は図面に明示的に記載されている場合や,その記載から自明である事項である場合には,そのような訂正は,特段の事情のない限り,新たな技術的事項を導入しないものであると認められ,「明細書又は図面に記載された範囲内において」するものであるということができるのであり,実務上このような判断手法が妥当する事例が多いものと考えられる。
・・・・上記アのとおり,訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができるというべきところ,上記イによると,本件各訂正による訂正後の発明についても,成分(A)〜(D)及び同(A)〜(E)の組合せのうち,引用発明の内容となっている特定の組合せを除いたすべての組合せに係る構成において,使用する希釈剤に難溶性で微粒状のエポキシ樹脂を熱硬化性成分として用いたことを最大の特徴とし,このようなエポキシ樹脂の粒子を感光性プレポリマーが包み込む状態となるため,感光性プレポリマーの溶解性を低下させず,エポキシ樹脂と硬化剤との反応性も低いので現像性を低下させず,露光部も現像液に侵されにくくなるとともに組成物の保存寿命も長くなるという効果を奏するものと認められ,引用発明の内容となっている特定の組合せを除外することによって,本件明細書に記載された本件訂正前の各発明に関する技術的事項に何らかの変更を生じさせているものとはいえないから,本件各訂正が本件明細書に開示された技術的事項に新たな技術的事項を付加したものでないことは明らかであり,本件各訂正は,当業者によって,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかであるということができる。したがって,本件各訂正は,平成6年改正前の特許法134条2項ただし書にいう「願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものであると認められる」

◆平成18(行ケ)10563 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年05月30日 知的財産高等裁判所

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