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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

プログラムの著作物

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

令和1(ワ)10940  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和6年1月29日  大阪地方裁判所

プログラムの著作物性は認められましたが、複製・翻案については同意があったと認定されました。一方、氏名表示権侵害として10万円が認められました。\n

ア 本件プログラム1は、マンロック(高圧室作業場所への作業員の出入り用 気密扉)内の気圧、二酸化炭素濃度等を記録するペーパーレスレコーダー(最 大10機)を集中管理(レコーダーで記録された情報を遠隔地のパソコンで\nリアルタイムに表示し、データを蓄積するとともに閾値を超えた場合は警告\nを発することが可能)するシステムプログラムであり、統合管理画面(メイ\nンフォーム画面)、個々のレコーダーの監視画面(レコーダーフォーム画面。 表示形式はレコーダーと同様。)、レコーダーの通信ルーチン、データベース\n(レコーダーの情報を集積する部分)などを構成要素とするものである。(甲\n28、弁論の全趣旨)
この点、画面構成や、レコーダーのデータをどのように扱うかについては、\nプログラムの目的、環境規制の態様、ハードウェアやオペレーティングシス テムなどに由来する制約等により、表現の選択の余地の乏しいものもあると\n考えられるが、データ処理の具体的態様(クラス、サブルーチンの利用等の 構造化処理を含む)、レコーダーとの通信プロトコルの選択及びそれに応じ\nた実装、データベース化の具体的処理手順などについて、各処理の効率化な ども意識してソースコードを記述する過程においては、相応の選択の幅があ\nるものと認められる。
イ 原告は、このような選択の幅の中から、データ処理の態様を設計した上、 A4用紙で約120頁分(1頁あたり60行程度。以下同様)のソースコー\nドを作成したことからすると、ソースコード(甲28)の具体的記述を全体\nとしてみると、本件プログラム1は、原告の個性が反映されたものであって、 創作性があり、著作物であるということができる。
ウ 被告は、本件プログラム1のソースコードの多くの記述が公開されたサン\nプルプログラムであり、単純な作業を行う機能の複数の記述であり、計測上\nの管理基準に対応させた記述の順序や組合せであるから、ソースコードの記\n述に創作性はない旨を主張する。しかし、ソースコードに既存のサンプルが\n含まれることについて的確な立証はない上、仮にそのような記述が含まれる としても、プログラム全体としての創作性を直ちに否定するものともいえな いから、被告の主張は採用できない。
・・・
前提事実及び認定事実によると、本件各プログラムの中には、明示的に 異なる現場で用いることを前提とする仕様が採用されたものがあること、 本件各プログラムはいずれも発注の原因となった現場と異なる現場で用 いることについてプログラムの仕様上の制限はないとうかがわれること、 原告自身、一つの現場が終了したと見込まれる後も、プログラムの修正に 応じるなどしていること、原告自らソースコードを納品したものもあるこ\nとに加え、原告が、平成2年に独立した後、多数回にわたって被告から依 頼されたプログラムを制作、納品し、平成20年12月から平成21年4 月までの間は、被告に採用されてプログラム制作業務に従事していたこと からすれば、計測業務における被告のプログラムの利用実態(プログラム を一つの現場で利用するだけでなく他の現場においても複製、変更又は改 変(カスタマイズ)して利用していたことを含む。)から、自己が制作して 納品したプログラムが被告により複数の現場で利用され得ることを認識 していたものとみられることが認められる。これらの本件においてうかが われる事情からすると、本件各プログラムの開発に係る各請負契約におい て、成果物が、少なくとも被告の内部で使用される限りにおいては、他の 現場における使用や改変を許容する旨の黙示の合意があったものという べきである。
・・・
(1) 氏名表示権が侵害されたか(争点3−3、5−2)及び被告に故意又は過失\nがあったか(争点3−4、5−3)
ア 本件プログラム3(争点3−3、3−4)
前記前提事実のとおり、本件プログラム3を複製、変更した被告プログラ ム3の起動画面やバージョン表示画面においては、被告の社名が表\示され、 原告の氏名は表示されていない(甲9)。そして、本件プログラム3と被告プ\nログラム3を比較すると、ソースコードの大部分において同一であり、被告\nプログラム3には本件プログラム3に時間率評価機能を果たす計算処理や\ndB値の時系列変数の計算処理の機能が追加された点において相違するが\n(甲8の3)、この相違点から被告プログラム3が本件プログラム3と別個 のプログラムであるということはできない。 したがって、被告による上記表記により、本件プログラム3について、原\n告の氏名表示権が侵害され、その態様から、被告に故意があったと認められ\nる。
・・・
(3)損害の有無及び額(争点3−5、5−4)
(1)の被告の行為により原告の被った損害は、本件に顕れた一切の事情を考 慮し、10万円と認め(なお、原告は、本件プログラム5についての氏名表示\n権侵害固有の損害を主張しないが、弁論の全趣旨から、相当の損害賠償を求め る趣旨と解される。)、被告は、相当因果関係のある弁護士費用1万円を加えた 11万円及びこれに対する遅延損害金を支払う義務を負う。

◆判決本文

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平成30(ワ)17968 著作権 民事訴訟 令和4年8月30日 東京地方裁判所

 在宅医療用プログラムの著作物性について争われました。東京地裁は被告プログラムのうち表現が似ている部分については、いずれも創作性無しと判断しました。\n

 以上のように、PMポータルを基盤としPMポータルのWebフレーム ワークを用いて作成されたことに起因して、(ア)部分の多くはPMポータル のWebフレームワークを構成するプログラムファイルから構\成されてお り、(ウ)部分は、PMポータルのWebアプリケーション部を参照して作成 され、データの処理や画面の表示などの中核的な機能\は(ア)部分を参照して 実行するため、その内容は、自由度が制約され、基本的な命令文を列挙し て、変数にデータを代入する処理や画面を表示するためのHTML文書が\n記述された部分が多くを占めていること(前記第2の1(5)イ、前記イ)、 作成、表示される医事文書の基本的な様式も通知により定められるなどし\nていることから、各プログラムにおいて変数に値を設定する処理や画面を 表示するためのHTML文書を記述するに当たっても個性を発揮する余地\nが乏しい。これらの(ア)及び(ウ)部分の特性から、電子カルテシステムに適用 するために、PMポータルを修正し新たに作成した部分があるからといっ て、そのことが直ちに本件31個の各プログラムの表現上の創作性につな\nがるとはいえない(前記ウ )。そして、原告は、本件各31個の各プロ グラムがそれぞれ著作物であり、それらに創作性があると主張するところ、 原告が本件31個の各プログラムの創作的表現であると主張する具体的な\n各点について、本件31個の各プログラムを含む(ア)及び(ウ)部分が上記のと おりの特性を有する部分でありそこにおけるプログラムもその特性の下に あるものであることにも関係し、原告が創作性があるとして主張する具体 的な記述等はいずれもありふれたといえるものなどであって、それらに独 自に著作物といえる程度の表現上の創作性を認めるに足りない(前記ウ\n〜 )。 以上のとおり、本件31個の各プログラムにPMポータルを離れた独自 の創作性があるとは認めるに足りない。
・・・・
原告プログラム4と被告プログラムにおいて共通する本件共通箇所は、原告 プログラム4においては、(オ)部分に用いられているORCAから受信したXM Lデータを解析する部分の一部である。 本件共通箇所のうち、オープンソースである「XML_Unserializer.php」を 用いた部分は、その仕様に基づくインスタンスを記述したものであり(前記1 (2)ウ )、その記述例もインターネットウェブサイトにおいて公開されている ものであって(乙56)、ありふれた表現であって、創作性が認められない。\nまた、本件共通箇所のその余の部分は、異なる施設間で診療情報を電子的に 交換するために制作された規約であるMML及びCLAIMにおいて定義され たタグ(用語)(前記1(2)ウ )を、「XML_Unserializer.php」の仕様に従 って記述した(乙62)ありふれた表現であって、創作性が認められない。\n以上によれば、本件共通箇所に創作性があると認めるに足りない。

◆判決本文

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平成21年(ネ)第10024号 著作権確認等請求控訴事件 原審・大阪地方裁判所平成17年(ワ)第2641号

 1審大阪地裁は、ソースコード1000行以上から構成されていることから、本件プログラムの著作物性を認めましたが、知財高裁(4部)は、創作性がある部分を立証しなかった原告に対して、多くの命令数により記述されているだけでは、実現される機能が多岐にわたることを意味するにすぎないとして、1審判決を破棄しました。

、 ア DHL車側プログラム(甲291)について
DHL車側プログラムのうち,「NL」「NL1」の処理(TC車の車番付けを 命ずる命令に関する処理)を行うための部分(甲291の8頁〜12頁(0286 番地〜0427番地))に関する部分は,200行前後のうちプログラムの実行順 序に係る制御を行う命令(JP命令とCALL命令)の行数が50行前後,つまり ステップ数で全体の4分の1前後が実行順序制御に係る命令に用いられている(甲 291,294)。 DHL車側プログラムには,ソースコード上では,「JP,・・・##」と示さ\nれる,飛び先の番地が指定されず,結果として0000番地が指定された場合と同 様の動作を行うJP命令(CA0000)が含まれている(なお,甲291及び後 述する甲292においては,上述したもの以外のJP命令については飛び先となる メモリのアドレス(番地)の値が具体的に示されており,甲289及び290と同 様に,ロードされるメモリ上のアドレス(番地)及びJP命令の飛び先となるアド レスが絶対的に定まったものとされている。)。 これらの命令は,変更後DHCフローチャート(甲189の1)や変更前のソー\nスコード(甲289)には含まれているものではないから,本件装置を動作させる ための最低限の機能を実現するために必要不可欠なものであったか否かは不明であ\nる。もっとも,昭和61年12月に「不連結時TC流動発生ブレーキ閉が作用しな い」という異常への対処としてプログラムが変更されたことからすると,変更を行 ったプログラム作成者は,何らかの意図,たとえば,当該プログラムの変更による 変更後の制御のタイミングを維持すべきであること等に基づいて,ほかに選択肢が あるにもかかわらず,あえて上記部分を挿入したままとしたものと推測されなくも ない。
そうすると,DHL車側プログラムには,上記命令が存在することにより,創作 性が認められる余地がないわけではない。 もっとも,1審原告は,本来,ソースコードの詳細な検討を行うまでもなく,本\n件プログラムは著作物性を有するなどと主張して,当初,本件プログラムのソース\nコードを文書として提出せず,当審の平成22年5月10日の第4回弁論準備手続 期日における受命裁判官の求釈明により,本件プログラム全体のソースコードを文\n書として提出するか否かについて検討し,DHL車側プログラムについては,ソー\nスコードを提出したものの,本件プログラムのいかなる箇所にプログラム制作者の 個性が発揮されているのかについて具体的に主張立証しない。 したがって,DHL車側プログラムに挿入された上記命令がどのような機能を有\nするものか,他に選択可能な挿入箇所や他に選択可能\な命令が存在したか否かにつ いてすら,不明であるというほかなく,当該命令部分の存在が,選択の幅がある中 から,プログラム制作者が選択したものであり,かつ,それがありふれた表現では\nなく,プログラム制作者の個性,すなわち表現上の創作性が発揮されているもので\nあることについて,これを認めるに足りる証拠はないというほかない。 以上からすると,DHL車側のプログラムには,表現上の創作性を認めることは\nできない。
イ TC車側プログラム(甲292)について
TC車側プログラムのうち,「LINK」の処理(TC車側における車番がつく までの処理)を行うための部分(甲292の4頁〜9頁(00F7番地〜0317 番地))は,294行中88行がプログラムの実行順序に係る制御を行う命令であ るとされている(甲294)ところ,当該部分の相当程度について,ソースコード\nが開示されていない。 DHL車側プログラムとTC車側プログラムとは,各プログラムが機能すること\nによって,本件装置を制御するものであるから,「不連結時TC流動発生ブレーキ 閉が作用しないという異常」を防止するために本件装置を制御するためには,両者 について同様の配慮が必要となると推測されることから,TC車側プログラムにも, DHL車側プログラムと同様に,本件装置を動作させるための最低限の機能を実現\nするために必要不可欠なものであったか否かは明らかではない命令が挿入されてい る可能性は否定できない。\nもっとも,仮に,このような命令が挿入されていたとしても,DHL車側プログ ラムと同様に,当該命令部分の存在が,プログラム制作者の個性,すなわち表現上\nの創作性が発揮されているものであることについて,これを認めるに足りる証拠は ないというほかない。 したがって,TC車側プログラムにも,表現上の創作性を認めることはできない。\n
ウ 1審原告の主張について
1審原告は,本件装置は,特許権を取得できるほどに新規で進歩性を有する画期 的な技術であり,新規な機能を有するものであるから,当該装置を稼働させるため\nの本件プログラムも,他の既存のプログラムの表現を模倣することにより作成する\nことはできないところ,特に,中核部分であるTC車の車番付けを行わせる部分は, 本件プログラムが有する多数の機能のうち最重要部分を実現するもので,新規のア\nイデアに基づき全くのゼロから開発されたものである,当該中核部分を構成する各\nパートは,それぞれ数十から百数十\もの命令数により記述されている上,多数のサ ブルーチンを用いた構成となっているところ,このような複雑なプログラムにつき,\nその表現が1つ又は極めて限定された数しかなかったり,だれが記述しても大同小\n異のものとなったりすることは到底あり得ないし,他にも多数の機能を実現するた\nめの部分が有機的に組み合わされてひとまとまりのプログラムとなっているのであ るから,本件プログラムは,本来,ソースコードの詳細な検討を行うまでもなく,\n著作権の保護を受けるプログラムの著作物に該当することは明らかであるなどと主 張する。しかしながら,本件装置が新規性を有するからといって,当該装置を稼働させるためのプログラムが直ちに著作物性を有するということができないことは明らかで ある。
また,先に述べたとおり,プログラムに著作物性があるというためには,プログ ラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個\n性,すなわち,表現上の創作性が表\れていることを要するのであるから,新規のア イデアに基づきゼロから開発されたものであること,多くの命令数により記述され ていることから,直ちに表現上の創作性を認めることはできない。本件プログラム\nが多数の機能を実現するための部分が有機的に組み合わされているとしても,当該\nプログラムに表現上の創作性があることについて具体的に主張立証されない以上,\n当該プログラムにより実現される機能が多岐にわたることを意味するにすぎない。\nさらに,1審原告は,TC車側プログラムのうち,SOSUBサブルーチン(0 72F〜0792番地)のソースコードを例として,甲290及び292が機械語\nレベルでほぼ同一の命令構成となっているにもかかわらず,ソ\ースコードレベルで の具体的表現が異なること,SOSUBルーチンの行う仕事は,1)連結器のピンを 外すパワーシリンダを作動させる部分,2)パワーシリンダが正常に作動したか否か をチェックする部分,3)パワーシリンダの作動状況及びそのチェックの結果を操作 者に知らせるため表示灯の点・消灯を行う部分の3つに大別できるところ,本件プ\nログラムの極めて小さな一部分であるSOSUBルーチンのソースコードにおける\n具体的表現だけをみても,多数の選択肢の中から開発者の個性により選択された表\ 現が用いられているなどとも主張する。
しかしながら,甲290及び292におけるソースコードレベルでの具体的表\現 の相違は,CPUの機種変更に応じて必然的に定まる変更に基づくものにすぎず, 創作性の基礎になり得るものではない。また,上記1)ないし3)の機能を実現するそのほかの表\現に係る選択肢が存在する可能性があるからといって,直ちに本件プログラムにおけるSOSUBルーチンの具体的表\現について,創作性が認められるものでもない。1審原告が具体的に指摘する各事項は,いずれも本件装置が要求する仕様や機能を単にプログラムとして実現したものにすぎず,表\現上の創作性を基礎付けるものではない。

◆判決本文

原審はこちら。

◆平成17(ワ)2641

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令和3(ネ)10083  著作権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和4年3月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 コンピュータソフトの画面について、著作物性、不競法2条1項1号の商品等表示に該当するかが争われました。知財高裁2部は、1審の判断を維持しました。

ア 控訴人は,控訴人表示画面と被控訴人表\示画面との一致箇所をひとまとまり として捉えて創作性を判断すべきこと,ビジネスソフトウェアのディスプレイ(表\ 示画面をいう趣旨と解される。)における表現の創作性については丁寧な検討が必\n要であること,控訴人表示画面について表\現上主要な箇所は2)データ分析等画面(単 品詳細情報画面,日別画面,他店舗在庫表示画面,定期改正入力画面,リクエスト\n管理画面)であり,そこには表現上の工夫が多数散りばめられていることなどを主\n張する。
しかし,被控訴人製品の各表示画面から控訴人製品の各表\示画面の本質的な特徴 を感得することはできず,被控訴人表示画面に接する者が全体として控訴人表\示画 面の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるとは認められないことは,\n訂正して引用した原判決の第4の1で認定判断したとおりである。 控訴人表示画面と被控訴人表\示画面の対比に係る判断は,同1(3)のとおりであ って,控訴人表示画面と被控訴人表\示画面の共通する部分をひとまとまりにして検 討することによって,上記判断が左右されるものではない。ビジネスソフトウェア\nのディスプレイ(表示画面)における表\現の創作性について丁寧な検討が必要であ るという一般論の主張も,上記判断に影響しない。控訴人が2)データ分析等画面に 多数散りばめられていると主張する表現上の工夫のうち,発注操作を行う欄の配色\nについては,創作者の思想又は感情が創作的に表現されているといえる程度の特徴\nを有するものとは認められず,同欄の位置や詳細情報を画面の下方に配置すること は,書店業務を効率的に行うという観点から通常想定される範囲内のものである。 控訴人の主張する2)データ分析等画面における素材の選択及び配列における選択の 幅についても,訂正して引用した原判決の第4の1(4)で判断したとおりである。
イ 控訴人は,控訴人製品の表示画面と被控訴人製品の表\示画面に共通性が多数 認められること,操作ガイダンスの文字列に一致が何か所もあることなどを主張す るが,それらの主張は,訂正して引用した原判決の第4の1の認定判断を左右する ものではない。
(2) 争点4(不正競争防止法違反の有無)に関する控訴人の補充主張について
ア 控訴人は,控訴人表示画面の特別顕著性に関し,需要者を書店ユーザーに限\n定すべきこと,控訴人製品がその表示画面に顕著な特徴を有することを主張するが,\n控訴人表示画面の特徴に関しては訂正して引用した原判決の第4の1(3)及び(4)で 認定判断したとおりであり,控訴人表示画面に特別顕著性が認められないことは,\n同3で判断したとおりである。控訴人の主張するように控訴人製品の需要者を書店 に限定したとしても,上記の認定判断は左右されない。
イ 控訴人は,周知性についても主張するところ,控訴人製品のシェアについて 控訴人が当審で追加提出した証拠(甲83の1・2,甲84)を含む本件全証拠を もってしても,控訴人の主張するシェアを認めるに足りない。なお,仮に,控訴人 製品が相応のシェアを占めているとしても,そのことから直ちに,控訴人表示画面\nの周知性が認められるものともいえない。 また,控訴人は,控訴人製品の宣伝・広報活動について主張するが,当該活動に ついて控訴人が追加提出した証拠(甲85〜91)を含む本件全証拠をもってして も,当該活動は一定の期間及び範囲に限定して認められるにすぎず,また,その内 容をみても,当該活動において控訴人表示画面が媒体に表\示されていたものではな いから,控訴人表示画面の周知性を裏付けるものとはいえない。\n控訴人のその他の主張も,訂正して引用した原判決の第4の3(2)における控訴 人表示画面の周知性が認められない旨の判断を左右するものではない。\n

◆判決本文

1審はこちら。

◆平成30(ワ)28215

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平成30(ワ)28215 著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和3年9月17日  東京地方裁判所

 コンピュータソフトの画面について、著作物性、不競法2条1項1号の商品等表示に該当するかが争われました。本件ではいずれも否定されましたが、一般論としては「ビジネスソ\フトウェアの表示画面は,商品の形態と同様,・・特別顕著性,かつ,・・周知になっている場合に不競法2条1項1号の「商品等表\示」に該当すると解するのが相当である。」と 認定されています。

 以上のとおり,原告表示画面と被告表\示画面の共通する部分は,いずれも アイデアに属する事項であるか,又は,書店業務を効率的に行うに当たり必 要な一般的な指標や情報にすぎず,各表示項目の名称の選択,配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表\現においても,創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない上,両製品の配色の差違等により,利用者が画面全体から受ける印象も相当異なるというべきである。そ\nして,被告表示画面について,他に原告表\示画面の本質的特徴を直接感得し 得ると認めるに足りる証拠はない。
(4) 表示画面の選択や相互の牽連関係における創作性の有無・程度
ア 原告は,表示画面の牽連性に関し,原告製品は,画面の最上部にメニュータグを常時表\示し,どの画面からも次の業務に移行できるようにしている点や,画面の中央にサブメニュー画面を用意し,画面遷移なしに表示することを可能\にしている点などに独自性があると主張する。 しかし,画面の最上部にメニュータグを常時表示し,そのいずれの画面からも次の業務に移行できるようにすることや,画面の中央にサブメニュー画\n面を用意し,画面遷移なしに表示することを可能\にすることは,利用者の操 作性や一覧性あるいは業務の効率性を重視するビジネスソフトウェアにおいては,ありふれた構\成又は工夫にすぎないというべきであり,原告製品における表示画面相互の牽連性に特段の創作性があるということはできない。
イ また,原告は,原告製品が補充発注画面や自動計算機能を備えていることをもって他社にはない独自性があると主張するが,在庫の変動に伴い商品を\n補充して発注することや,定期改正数を自動計算することなどは,一般的な 書店業務の一部であり,原告製品の補充発注(条件設定)画面及び補充発注 (入力)画面に表示された項目の名称の選択,配列順序及びそのレイアウトなどの具体的な表\現において,創作者の思想又は感情が創作的に表現されて\nいるということはできないことは,前記(3)ケ及びコで判示のとおりである。
ウ したがって,原告製品は,表示画面の選択や画面相互の牽連性において独自性又は創作性があるとの原告主張は採用し得ない。\n
・・・
(1) 原告は,被告製品の表示画面が不競法2条1項1号の規定する不正競争行為に該当すると主張するところ,ビジネスソ\フトウェアの表示画面は,商品の形\n態と同様,1)当該表示画面が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,2)その表示画面が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な広告宣伝や爆発的な販売実績等により,\n需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっている場合に不競法2条1項1号の「商品等表\示」に該当すると解するのが相当である。
(2) 周知性について
原告は,原告表示画面が,遅くとも平成25年末までには,出版業界及び書店業界において広く認識されていたと主張するが,以下のとおり,理由がない。\nア 原告製品の販売数や市場占有率に関し,原告は,原告のシステム製品は出 版社市場でトップシェアを占めており,原告製品は既に全国の小売書店10 00店舗に向けて販売・採用されていると主張するが,原告商品の導入件数, 市場規模,原告製品の市場占有率を客観的に示す証拠は提出されていない。
イ また,原告は,業界新聞である「文化通信BB」において原告製品が紹介 されたことを指摘するが,「文化通信BB」の発行部数等は明らかではなく, その記事の内容は原告製品を紹介する内容を含むものの,原告製品の表示画面は一切掲載されていない(甲18)。\n同様に,原告は,日販が平成25年8月1日付け業界新聞において書店向 けPOSレジと原告製品を連携させることを発表し,系列の書店1000店に合計1300台を販売することを表\明したと主張するが,同記事で導入が表明されているのはPOSレジであり,原告製品が書店に導入されたことを裏付けるものではない上,同記事には原告製品の表\示画面は一切表示されて\nいない(乙23)。
ウ さらに,原告は,「文化通信」及び「新文化」のウェブサイトの上段に,バ ナー広告を掲載したことや,「BOOK EXPO」や「書店大商談会」に出 展し,広報を行っていることを根拠に,原告表示画面には周知性がある旨主張する。\n しかし,証拠(乙22)によれば,文化通信社のウェブサイト上に掲載さ れたバナー広告は,「BOOK ANSWERシリーズ」という製品名を表示するものにすぎず,原告製品の表\示画面は一切示されていない。また,「BOOK EX PO」や「書店大商談会」への出展についても,その規模や具体的な出展・ 宣伝態様などは一切明らかではない。
エ 以上によれば,原告画面表示が,遅くとも平成25年末までに,出版業界及び書店業界において広く認識されていたと認めることはできない。\n
(3) 特別顕著性について
原告は,原告表示画面には特別顕著性が認められる旨主張し,その根拠として,1)業務統合型のシステムを構築するという設計思想に基づき,仕入部門で使用するメニューと店売部門で使用するメニューが統合されている点や,2)発 注に当たって,商品分析の画面から一旦発注画面に移行することなく,商品分 析の画面から即発注することができる点,3)帳票を作成するという発想がなく, 画面上に表示して見るということを基本にしている点,4)独自の用語を用いて いる点に,他社製品にはない原告製品の独創的な特徴がある旨主張する。
しかし,上記1)〜3)の点は,いずれも,原告製品の設計思想や機能としての独自性を指摘するものにすぎず,表\示画面自体の顕著な特徴を基礎付けるものということはできない。また,上記4)の点についても,原告製品の表示画面に用いられた用語は,一般的な書店業務に用いられているものがほとんどであり,\n画面全体の特別顕著性を基礎付けるに足りる独創的を有すると認めることは できない。
したがって,原告表示画面が同種製品と異なる顕著な特徴を有しているということはできない。\n
(4) 以上のとおり,原告表示画面には,周知性及び特別顕著性のいずれも認められないから,原告表\示画面が「商品等表示」に該当するということはできない。\nしたがって,その余の点を判断するまでもなく,不正競争防止法に関する原 告の主張についても理由がない。

◆判決本文

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令和3(ワ)3208  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和3年11月9日  大阪地方裁判所

 プログラムの著作権侵害として、10億円を超える損害額が認定され、一部として6000万円の損害賠償が認められました。原告プログラムはAUTOCADです。

(1) 著作権法114条3項に基づく使用許諾料相当の損害について
ア 証拠(甲1,2,4〜9,18,乙2,3[各枝番を含む。])及び弁論の全 趣旨によれば,原告製品は,オンラインストア等で顧客に対し販売されていること, 原告製品には,永久ライセンス版と,使用期間を1か月,1年,3年に制限したサ ブスクリプション版が存在するところ,これらの動作種別は,ライセンス認証時に 原告から送付される認証コードの種別により決せられることが認められるが,被告 は,前記認定のとおり,本件海賊版製品の落札者に対し,本件海賊版製品と共に, ライセンス認証を回避する不正なプログラム,及びインターネットに接続せずにイ ンストールをすること等を指示するマニュアル等を添付して,落札者をして前記ラ イセンス認証システムを無効化させ,これによって,落札者は,使用期間の制限な く本件海賊版製品を使用することが可能になったことが認められる。\nこれらの事実関係に照らすと,原告製品の永久ライセンス版の定価をもって,原 告が原告製品の著作権の行使につき受けるべき価額であると認めるのが相当である。
イ これに対し,被告は,原告製品の定価をもって著作権法114条3項の使用 料相当額とすることは,最低限の賠償額を保障した同3項の趣旨及び文理に反する 旨を主張する。しかし,被告販売行為により,落札者は,もともとの原告製品の使 用期間制限の有無や期間にかかわらず,使用期間の制限なく本件海賊版製品を使用 することが可能となるのであり,これによって,原告は,被告販売行為がなければ\n得られたであろう永久ライセンス版の定価の額に相当する額を得られなかったこと になるし,被告販売行為の態様は,本件海賊版製品をライセンス認証を回避しつつ インストールすることができるよう販売するという悪質なものであり,その違法性 は高く,市場への影響も大きい。 被告は,原告製品の定価と原告製品の使用料相当額として受けるべき金銭の額と は別である旨を主張するが,原告製品のようなアプリケーションプログラムの販売 価格は,その本質において著作物の使用許諾に対する対価というべきであるから, 前述のとおり,原告製品の定価をもって,著作権法114条3項が定める著作権の 行使につき受けるべき金銭の額と見ることができるのであり,被告の主張は理由が ない。
また,被告は,原告製品と動作環境との適合性や進化するセキュリティソフトと\nの相性の問題等があるため,本件海賊版製品を期間の制限なく使用できることはあ り得ないことから,原告製品の永久ライセンス版の価格を使用許諾料の基準とする のは相当でないこと,あるいは,原告製品の期間契約には,1か月,1年及び3年 の各期間設定があるところ,契約期間が長くなれば割安になることから,原告製品 のうち永久ライセンス版が設定されていないものについて1年ライセンス版の価格 を使用許諾料の基準とするのは相当でないことを主張する。しかし,前述したとお り,被告販売行為により,落札者は,もともとの原告製品の使用期間制限の有無や 期間にかかわらず,使用期間の制限なく本件海賊版製品を使用することが可能とな\nるのであり,その時点で原告には原告製品の永久ライセンス版の定価相当額の損害 が発生したというべきであって,その後,動作環境等により本件海賊版製品を使用 できなくなる可能性があることやもともとの原告製品には期間制限があることなど\nの事情は,損害額の算定には影響しないと解するのが相当である。
ウ 証拠(甲2の1〜2の18)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品の永久ラ イセンス版の定価は,別紙2−1「原告損害一覧表1」及び同2−2「原告損害一\n覧表2」の各「原告製品価格」欄記載の価格をくだらないことが認められ,被告販\n売行為による原告の損害は,同各「原告損害」欄記載の合計10億5509万67 50円をくだらない。
(2) 弁護士費用相当の損害について
被告販売行為と相当因果関係のある弁護士費用は,原告が主張する弁護士費用1 億0550万円をもって相当と認める。

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令和3(ネ)10028  損害賠償等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年9月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ゲームの著作物について複製・翻案であるかについて1審は複製・翻案ではないと判断しました。知財高裁(1部)も同様です。

 また,控訴人は,当審において,原判決は,全体として一つのゲーム を一画面一画面に分断し,分断した画面ごとに共通する部分(アイコン 等の配置等)について,個別に創作性を判断し,その結果として,共通 する部分全体の創作性を否定したものであり,一連の流れのあるゲーム の著作権侵害を判断しているのではなく,画面の著作権侵害を判断して いるにすぎないから,このような原判決の判断手法によると,他社のゲ ームをデッドコピーしても,キャラクターやアイコンのデザイン等を多 少変更さえしてしまえば,著作権侵害を免れることになり,不合理であ るとして,被告ゲームは原告ゲームを複製又は翻案したものに当たらな いとした原判決の判断手法は誤りである旨主張する。 しかしながら,原告ゲーム全体と被告ゲーム全体の共通部分が創作的 表現といえるか否かを判断する際に,その構\成要素を分析し,それぞれ について表現といえるか否か,表\現上の創作性を有するか否かを検討す ることは,有益かつ必要なことであり,その上で,ゲーム全体又は侵害 が主張されている部分全体について表現といえるか否か,表\現上の創作 性を有するか否かを判断することは,合理的な判断手法であると解され る。 そして,前記(イ)のとおり,原判決は,被告ゲームと原告ゲームの共 通点はアイデアや創作性のないものにとどまり,また,具体的表現にお\nいて相違し,デッドコピーであるとは評価できないから,被告ゲーム全 体が,原告ゲーム全体を複製又は翻案したものに当たるということはで きないと判断したものであり,その判断手法に誤りはない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。」
(2) 原判決42頁6行目の「原告は,」を「ア 控訴人は,」と改め,同43頁 20行目から44頁20行目までを次のとおり改める。
「 イ ところで,著作権法上の「プログラム」は,「電子計算機を機能させ\nて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせ たものとして表現したもの」をいい(同法2条1項10号の2),プロ\nグラムをプログラム著作物(同法10条1項9号)として保護するた めには,プログラムの具体的記述に作成者の思想又は感情が創作的に 表現され,その作成者の個性が表\れていることが必要であると解され る。すなわち,プログラムの具体的記述において,指令の表現自体,そ\nの指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選 択の幅があり,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表\れ ていることが必要であると解される。 これを原告ソースコードについてみるに,前記ア認定のとおり,原\n告ソースコードは,原告ゲームの473個のLuaファイルのうちの\n1個である「MissionMainPage.lua」であり,原告 ソースコードに係るプログラムは,「任務(ミッション)」に係る画面\n(メインミッション画面,デイリーミッション画面,功績画面)の切 り替えに関する処理及び表示内容の更新処理を行うプログラムである。\nそして,原告ソースコードの記述は,原判決別紙「ソ\ースコード対比 表」の「原告ソ\ースコード」欄記載のとおりであり,個々の記述の意味 は,同表の「裁判所の認定」欄記載のとおりである。\n原告ソースコードの記述は,いずれも単純な作業を行うfunct\nion(ローカル変数やテーブルの宣言及びモジュールの呼び出し等) が複数記述されたものであり,ソースコードによって記述される機能\ が上記のとおりローカル変数やテーブルの宣言及びモジュールの呼び 出し等の単純な作業を行うことである以上,表現の選択の幅は狭く,\nその具体的記述の表現も,定型的なものであり,ありふれたものであ\nると言わざるを得ない。 また,個々の記述の順序や組合せについても,ゲームの機能に対応\nさせたにすぎないものであり,ありふれたものである。 そうすると,原告ソースコードの具体的記述に控訴人の思想又は感\n情が創作的に表現され,控訴人の個性が表\れていると認めることはで きないから,原告ソースコードに係るプログラムは,プログラムの著\n作物に該当するものと認めることはできない。 したがって,被告ソースコードの大部分が原告ソ\ースコードと共通 しているとしても,原告ソースコードに係るプログラムの著作物性は\n認められないから,被告ソースコードの制作は,原告ソ\ースコードに 係るプログラム著作権(複製権又は翻案権)の侵害に当たらない。
(4) 編集著作権の侵害について 控訴人は,当審において,1)原告ゲームは,素材である個々の画面(8 4画面)の選択,その画面遷移等の配列,素材である各画面内における アイコン,ボタン,キャラクター等の選択又は配列に作成者の個性が発 揮されているから,素材の選択又は配列によって創作性を有する編集著 作物である,2)原告ソースコードも,個々のソ\ースコードの書き方,各 ソースコードの順序,変数の名称等の素材を選択して組み合わせたこと\nに作成者の個性が発揮されているから,素材の選択又は配列によって創 作性を有する編集著作物である,3)被告ゲームは,編集著作物である原 告ゲーム(原告ソースコードを含む。)を複製又は翻案して制作されたも\nのであるから,被告ゲームの制作及び配信行為は,原告ゲームについて 控訴人が有する編集著作権(複製権,翻案権及び公衆送信権)の侵害に 当たる旨主張する。 しかしながら,控訴人の上記主張は,原告ゲーム又は原告ソースコー\nドにおける個々の素材の選択又は配列にいかなる創作的表現がされてい\nるのか,その創作的表現が被告ゲーム又は被告ソ\ースコードにおいてど のように利用されているのかについて具体的に主張するものではないか ら,その主張自体理由がない。

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平成30(ワ)5948  損害賠償請求事件  著作権 令和3年1月21日  大阪地方裁判所

 舟券購入のプログラムについて著作物性、翻案かが争われました。裁判所はこれを認め、約1.4億円の損害額を認めました。ただ請求が一部請求したため1400万の損害賠償額です。

 プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,そ\nの指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があ り,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表\現上の創 作性が表れていることを要するといわなければならない(知財高裁平成21年\n(ネ)第10024号同24年1月25日判決・判例時報2163号88頁)。
イ そこで検討するに,前記1(5)で認定したところによれば,原告プログラム は,市販のプログラム開発支援ソフトウェアである Microsoft Visual Studio を使用 して Microsoft Visual Basic 言語で記述されているから,ソースコードを個別の行\nについてみれば,標準的な構文やありふれた指令の表\現が多用されており,独創的 な関数等は用いられていない。 しかしながら,前記(5)イについては,一定の画面表示を得るために複数の記述\n方法が考えられるところ,一定の意図のもとに特定の指令を組み合わせ,独自のメ ソッドを作成して独自の構\成で記述しており,同ウ及びエについては,一定の処理 方式を選択すること自体はアイデアにすぎないが,やはり,一定の結果を得るため にどのように指令を組み合せ,どの範囲で構造体を設定し,配列・構\造化するかに は様々な選択肢が考えられるところ,その具体的な記述は,一定の意図のもとに特 定の指令を組み合わせ,多数の構造体を設定し,配列・構\造化した独自のものにな っている。
また,同オについては,HTML データから一定の情報を抽出する指令の記述は 選択の幅があるところ,メンテナンス性を考慮して独自の記述をしていることが認 められ,同カについても,人間が情報を入力してログインや舟券購入の操作をする ことを想定して作成されている投票サイトのサーバーに,人間の操作を介さずに必 要なデータを送信してログインや舟券の購入を完了するための指令の表現方法は複\n数考えられるところ,複数の方式を適宜使い分けて記述し,一連の舟券購入動作を 構成していることが認められる。\nそうすると,前記イないしカのソースコードには表\現上の創作性があるといえ, これらを組み合わせて構成されている原告プログラムにも,表\現上の創作性が認め られるというべきである。
ウ 被告ら(被告エーワンを除く。以下同じ。)は,原告プログラムの機能は,\n原告プログラムを利用せずに競艇公式ウェブサイト等により実行できると主張する が,競艇公式ウェブサイト等で人間の動作として情報を得たり舟券の購入をしたり することと,原告プログラムにより情報を得たり自動的に舟券を購入したりするこ とは異なるから,原告プログラムに創作性がないとする理由にはならない。 また,被告らは,原告プログラムが利用しているデータが競艇公式ウェブサイト で公知であると主張するが,プログラムに入力される変数であるレース情報等のデ ータが公知であるか否かはプログラムの著作物性とは関係がなく,失当である。 さらに,被告らは,原告プログラムのうち自動運転機能の部分は,既存のソ\ース コードを単純作業により組み合わせたものであり,「Boat Advisor」等の類似のソ\nフトウェアが多数存在すると主張する。しかしながら,前記のとおり,原告プログ ラムは,独自の指令の組合せ,構造体等の設定,構\成によって記述されており,あ りふれたものとはいえず,証拠(乙2)をみても,「Boat Advisor」はレース予\n想,データ分析を主たる機能とするソ\フトウェアであり,原告プログラムのように 舟券を自動購入するものであるとは認められず,原告プログラムがありふれたソー\nスコードによって構成されているものとはいえない。\n原告プログラムに著作物性がないとの被告らの主張は,採用できない。
(2) 争点2(被告プログラムは,原告プログラムを複製又は翻案したものか) について
ア 前記1(3)で認定したところによれば,被告プログラムは,被告P4がP7 より入手した原告プログラムについて,被告P3において逆コンパイルを行うと共 に難読化を解除し,期待値と称する機能を追加した以外は,逆コンパイルによって\n得られた原告プログラムの機能をそのまま利用したものであるから,少なくともそ\nのまま利用した部分において,被告プログラムは,原告プログラムを複製したもの ということができる。
イ また,前記1(6)で認定したところによれば,被告プログラムは,少なくと も,原告プログラムの BoatRaceCom.DLL 及び Kcommon.DLL を複製して作成され たことが明らかである。 さらに,被告プログラムは,原告プログラムと画面表示やモジュール名がほぼ同\nじであること,マニュアルに記載された機能が原告プログラムとほぼ同一であるこ\nとも,上記アの結論と合致する。
ウ 被告らは,被告プログラムは,被告プログラム独自のアルゴリズムで算出さ れた期待値(人気指数)に基づく予想をユーザーに提供するものであって,その部\n分に創作性があり,原告プログラムとは全く異なるものであると主張する。 被告らが主張する期待値の機能については,本件の証拠によっても判然とはしな\nいが,仮に,より勝率が高くなることが期待される買目を計算して推奨し,舟券を 自動購入する機能を追加した点で,被告プログラムは原告プログラムと異なる旨を\nいう趣旨であるとしても,原告プログラムが元々有する買目設定の機能を強化,発\n展させたものと理解し得るものであると共に,既に認定したとおり,被告プログラ ムは,期待値の機能を追加した以外の部分については,原告プログラムを複製した\nものをそのまま利用しているとされるのであり,全体として,被告プログラムは, 原告プログラムの本質的特徴を直接感得し得るものであるから,少なくとも翻案に あたることは明らかというべきであり,被告プログラムの作成は,原告プログラム についての原告らの著作権を侵害するものである。 なお,被告らは,被告プログラムに「買目切捨」や「保険買目」など,原告プロ グラムにはない機能があると主張するが,被告P3において,期待値の機能\以外は 原告プログラムと異なる機能はないと供述していること,前記のとおり,マニュア\nルや画面が同じであること,原告プログラムにも同一の機能があることから,当該\n主張は上記結論を左右するものではない。
・・・
前記1の(2)ないし(4)によれば,P7は1本20万円を原告らに支払って取 得した原告ソフトウェアを1本50万円から80万円で約30本販売したこと,被\n告P5は,被告エーワンの名義で,被告ソフトウェア約70本を1本60万円から\n100万円で販売し,その中に,平成28年5月2日のP8に対する100万円の 売買が含まれること,以上の事実が認められる。なお,被告ガルヒが被告ソフトウ\nェアを販売するためのセキュリティ認証キーを140個用意したことは前記1の (4)で認定したとおりであるが,これに対応する140本の被告ソフトウェアが販\n売されたと認めるに足りる証拠はない。
イ 以上によれば,被告らは,被告ソフトウェアを少なくとも70本販売し,う\nち少なくとも1本は平成28年5月2日に100万円で販売し,その余は少なくと も1本60万円で販売したと認めるのが相当であり,ここから控除すべき経費等の 主張はないから,被告ソフトウェアの販売により被告らが受けた利益は,少なくと\nも4240万円であると認められる。 そうすると,著作権法114条2項により,原告らの受けた損害額は4240万 円,著作権を共有する原告各人について2120万円ずつと推定される。 また,損害のうち100万円(各50万円)は,平成28年5月2日に被告ソフ\nトウェアが販売されたことによるものであり,被告エーワンを含む被告らは,同日 から遅滞の責を負う。その余については販売時期が不明であり,前記のとおり,被 告ソフトウェアが3から4か月間販売されていたことからすれば,遅くとも同年9\n月2日までには,その余の損害すべてに係る侵害行為が行われたと認められるか ら,原告らのその余の損害について,被告らは,同日から遅滞の責を負うものと認 められる。

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平成29(ワ)19073  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年3月4日  東京地方裁判所

 本件コンピュータプログラムは著作物性なしと判断されました。

イ そこで検討すると,前記1(1),(3)イ認定のとおり,本件プログラムは,ED INETにおける取扱いに変更があったことを踏まえ,ユーザーが作成した会計に 関するエクセルファイル等をX−Smartに取り込み,会計科目を開示科目に組 み替え,編集作業等を経て,宝XBRLの形式に変換することを簡易に行うことな どを目的として開発されたものであり,相応の分量のソースコードから成るもので\nある。 しかしながら,前記1(2)に照らすと,DI社が原告に本件プログラムの開発を委託した際に提供された本件各資料のうち,少なくとも本件資料4ないし6には,本 件プログラムに要求される機能及びそれを実現する処理,画面の構\成要素等を別紙 3本件プログラム説明書と同様のものとすることが概ね示されていたと認められる。 また,前記1(3)認定のとおり,本件プログラムは,ユーザーからのフィードバッ クの結果を踏まえ,順次,DI社からの発注を受けて修正及び追加等をしながら開 発されたものであり,その過程で,そのソースコードの一部については,DI社か\nら元となるデータやそのサンプルが提供され,その作成方法を指示されるなどして 作成されたものであること,その他,ソースコード中にNetAdvantageに含まれるフ ァイル,VisualStudioで自動生成されるファイル,オープンソースからダウンロー\nドしたファイルから作成された部分や,一般的な設定ファイル等である部分も相応 に含まれていることにも照らせば,ソースコードの分量等をもって,本件プログラ\nムに係る表現の選択の幅が広いと直ちにはいえない。\n
(2)原告が創作的表現であると主張している部分についての検討\n
以上を前提として,本件プログラムのうち,原告が創作的表現であると主張して\nいる部分について検討する。 ア ドロップダウンリストの生成に係る部分 前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード1には,画面1の「ファイル形式」を\n選択するドロップダウンリストを生成する処理が記述されているところ,原告は, 本件ソースコード1では,ドロップダウンリストを「asp:DropDownList」を利用し て別の箇所で生成しているが,他の表現1のように,ドロップダウンリストを直接\n生成することもできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れている旨主\n張する。 しかしながら,前記1(3)ウ認定のとおり,本件プログラムの開発はASP.NE T環境下で行われているところ,証拠(乙227)及び弁論の全趣旨によれば, 「asp:DropDownList」は,ドロップダウンリストを生成するためのツールとしてA SP.NET環境で用意されているものであり,これを利用する方法は一般的なこ とであると認められるから,他の表現1があるとしても,「asp:DropDownList」を 利用することに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,本件ソースコード1の具体的な記述も,ASP.NET環境で利用可能\な 宣言構文のとおりのものであると認められる(乙227)のであって,作成者の個\n性が表れていると認めるに足りず,創作的表\現であるとはいえない。
イ サブルーチンに係る部分
原告は,本件ソースコード2ないし4について,サブルーチン化するか否か,サ\nブルーチン化するとしてどのようにサブルーチン化するかについて選択の幅がある と主張する。 しかしながら,前記第2の2(5)ア認定のとおり,サブルーチンは,高等学校工業 科用の文部科学省検定済教科書である乙232文献にも記載されているような基本 的なプログラミング技術の一つであり,証拠(乙238,240)及び弁論の全趣 旨によれば,プログラム中で繰り返し表れる作業につきサブルーチンに設定するこ\nとで可読性及び保守性を向上させることができ,そのような観点からサブルーチン を設定することは一般的な手法であると認められるから,本件ソースコード2ない\nし4にサブルーチンが設定されているというだけでは,作成者の個性が表れている\nとはいえない。
また,本件ソースコード3において,更にサブルーチンを設定しないことに何ら\nかの目的,意図があるともいい難いから,サブルーチンを更に分割することができ るというだけでは,作成者の個性が表れていると認めるに足りないというべきであ\nる。 以上に加えて,原告は,上記の各点以外に,本件ソースコード2ないし4の記述\nに選択の幅があることを具体的に主張立証しておらず,これらを創作的表現である\nと認めるに足りない。
ウ 条件分岐及びループに係る部分
(ア) 本件ソースコード5\n
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード5には,画面1から画面2に遷移する\n際に呼び出されるサブルーチンのうち,アップロードしたファイルの種類を判別し, 対応する画面を生成する処理が記述されているところ,原告は,本件ソースコード\n5では,switch文で条件分岐を行っているが,他の表現5のように,els\ne−ifで条件分岐を行うこともできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性 が表れている旨主張する。\nしかしながら,証拠(乙223ないし226,232,233)及び弁論の全趣 旨によれば,switch文は,複数の選択肢の中から式の値に合うものを選び, その処理を行うものであり,else‐ifは,複数の条件のどれに当てはまるか によって異なる処理を行うものであって,いずれも高等学校工業科用の文部科学省 検定済教科書である乙232文献その他複数の文献(乙223ないし226,23 3)に記載されている条件分岐の基本的な制御文であり,3種類以上の場合に分け て条件を指定するときに使用されるものであると認められるから,本件ソースコー\nド5のように,アップロードしたファイルの種類によって場合を分けて条件を指定 する必要がある場合に,switch文を使用すること自体は一般的なことである と認められ,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\n
(イ) 本件ソースコード6\n
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード6には,ファイルの何列目からデータ\nを取り込むかを取得し,取り込み開始が20列目を超えているか否かを判別し,超 えている場合にはエラーを発生させる処理が記述されているところ,原告は,本件 ソースコード6では,for文でループを行っているが,他の表\現6のように,w hile文でループを行うこともできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性 が表れている旨主張する。\nしかしながら,証拠(乙223ないし226,232,233)及び弁論の全趣 旨によれば,for文は,繰り返す回数を指定して反復処理を行うものであり,w hile文は,指定した条件を満たす限り反復処理を行うものであって,いずれも, 高等学校工業科用の文部科学省検定済教科書である乙232文献その他複数の文献 (乙223ないし226,233)に記載されているループの基本的な制御文であ り,for文で記述できるものはwhile文でも記述可能であると認められるか\nら,本件ソースコード6のように,取り込み開始が20列目を超えているか否かを\nループ処理によって判別するに当たり,for文を使用すること自体は一般的なこ とであると認められ,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\n
(ウ) 本件ソースコード7\n前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード7には,ファイルの最大列数や項目名\nの開始列を取得する処理が記述されているところ,原告は,本件ソースコード7で\nは,全てのデータに対してforeach文でループを行っているが,他の表現7\n(1)のように,あらかじめ決められた条件で抽出されたデータに対してのみループを 行うことも可能であり,他の表\現7(2)のように,for文でループを行うこともで きるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れている旨主張する。\n
しかしながら,証拠(乙223ないし226,233)及び弁論の全趣旨によれ ば,C#において,foreach文は,複数のデータの集まりの各要素を最初か ら最後まで1回ずつ呼び出して処理するものであり,for文等と共に複数の文献 (乙223ないし226,233)に記載されているループの基本的な制御文であ って,for文等で記述された処理を代替し得るものであると認められるから,本 件ソースコード7のように,ファイルの最大列数や項目名の開始列を判別するに当\nたり,foreach文を使用すること自体は一般的なことであると認められ,そ のことに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,他の表現7(1)及び(2)は,ループを行う範囲を限定するものであると認めら れるが,同等の処理を行うものと認められる本件ソースコード7と比べて記述が長\nく,可読性が低下していると認められるところ,あえてそのような記述をする必要 があると認めるに足る証拠はないから,これを選択可能な他の表\現であるとは認め 難い。
(エ) 本件ソースコード8\n
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード8には,金額の単位を選択するために\n画面3に表示されるドロップダウンリストを生成するための判別処理等が記述され\nているところ,原告は,本件ソースコード8では,foreach文によるループ\nの中で,求める条件が正しい場合に次の条件に進むように記述しているが,他の表\n現8のように,求める条件が正しくない場合にループをやり直すように記述するこ ともできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れている旨主張する。\nしかしながら,前記(ウ)のとおり,foreach文は,ループの基本的な制御 文であるから,本件ソースコード8のように,ドロップダウンリストを生成するた\nめの判別処理として,foreach文を使用すること自体は一般的なことである と認められ,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,証拠(乙232ないし234)及び弁論の全趣旨によれば,他の表現8に\n用いられているcontinue文は,ループの中で使用され,その前のif文が 真になった場合にcontinue以降の処理をスキップして,次のループ処理の 最初に戻るものであると認められるものの,if文を用いた本件ソースコード8と\n比べてソースコードが長く,可読性が低下していると認められ,あえてそのような\n記述をする必要があると認めるに足る証拠はないから,これを選択可能な他の表\現 であるとは認め難い。
(オ) 本件ソースコード9\n
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード9には,画面2で選択された列の種別\nを判別して対応する処理が記述されているところ,原告は,本件ソースコード9で\nは,else−ifで条件分岐を行っているが,他の表現9(1)のように,swit ch文で条件分岐を行うこともでき,他の表現9(2)のように,switch文に加 えて,foreach文によるループの対象として,条件分岐の判別に必要な変数 を直接取得することもできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れてい\nる旨主張する。 しかしながら,前記(ア)のとおり,else−if及びswitch文は,いず れも条件分岐の基本的な制御文であるから,本件ソースコード9のように,画面2\nで選択された列の種別を判別して対応する処理を行うに当たり,else−ifで 条件分岐を行うこと自体は一般的なことであると認められ,そのことに作成者の個 性が表れているということはできない。\nまた,証拠(乙222)及び弁論の全趣旨によれば,他の表現9(2)は,他の表現\n9(1)と同様のswitch文の中に統合言語クエリ(LINQ)を実行する処理に 係る記述を挿入したものであると認められるものの,ソースコードが長く,可読性\nが低下していると認められ,あえてそのような記述をする必要があると認めるに足 る証拠はないから,これを選択可能な他の表\現であるとは認め難い。
(カ) 小括(本件ソースコード5ないし9)\n
原告は,上記(ア)ないし(オ)の各点以外に,本件ソースコード5ないし9の記述に\n選択の幅があることを具体的に主張立証しておらず,これらを創作的表現であると\n認めるに足りない。
エ 変数への設定に係る部分
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード10には,画面4に表\示される会計科 目のデータの判別及び設定を行う処理が記述されているところ,原告は,本件ソー\nスコード10では,変数に対して判別結果を直接設定し,条件演算子「?」,「:」 を使用しているが,他の表現10のように,if文によって変数に設定する値を変\nえることもできる,実際の表現の方が簡潔に表\現されているが,他の表現10にも,\nデバッグやログの出力をしやすいといった利点があるのであって,選択の幅があり, ここに原告の個性が表れている旨主張する。\nしかしながら,証拠(甲48,乙236,237)及び弁論の全趣旨によれば, 条件演算子は,条件に基づいて複数の処理を選択する演算子であると認められ,i f文等の条件分岐の制御文と同様の処理を行い得るものであって,両者は代替され 得るものとして認識されていると認められるから,本件ソースコード10のように,\n会計科目のデータの判別及び設定を行うに当たり,条件演算子を使用すること自体 は一般的なことであると認められ,変数に対して判別結果が直接設定されることが 特殊なことであると認めるに足る証拠もないから,それらに作成者の個性が表れて\nいるということはできない。 また,原告は,上記の点以外に,本件ソースコード10の記述に選択の幅がある\nことを具体的に主張立証していないから,これを創作的表現であると認めるに足り\nない。
オ チェック処理に係る部分
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード11には,組替操作時に画面4でドロ\nップされた行番号の取得及び変換を行う処理が記述されているところ,原告は,本 件ソースコード11では,TryParseメソ\ッドの戻り値でドロップされた行 番号のチェック結果を判別しているが,他の表現11のように,Parseメソ\ッ ドを用いて,まず行番号の取得を試みて,エラーが発生するかどうかでチェック結 果を判別することもできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れている\n旨主張する。 しかしながら,証拠(乙226,227)によれば,TryParseメソッド\n及びParseメソッドは,いずれもC#ライブラリに標準機能\として搭載された, 文字列を数値に変換する手法であるところ,TryParseメソッドは,変換に\n失敗したときに,例外として情報を取得し,それを精査することにより失敗の原因 を究明することができるとされるParseメソッドとは異なり,戻り値として,\n失敗したという情報だけを取得し,ソースコードはParseメソ\ッドより短くな ると認められ,本件ソースコード11のように,ドロップされた行番号の取得及び\n変換を行うに当たり,TryParseメソッドを用いること自体は一般的なこと\nであると認められ,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,原告は,上記の点以外に,本件ソースコード11の記述に選択の幅がある\nことを具体的に主張立証していないから,これを創作的表現であると認めるに足り\nない。
カ デバッグログを出力するコードに係る部分
(ア) 本件ソースコード12\n
原告は,本件ソースコード12にデバッグログを出力するコードが挿入されてい\nることにプログラム作成者の個性が表れると主張する。\nしかしながら,弁論の全趣旨によれば,プログラムの開発過程において,プログ ラムの保守及び変更等の必要から,不具合があり得ると考えられるソースコード上\nにデバッグログを出力するコードを挿入することは一般的に行われていることであ ると認められるから,デバッグログを出力するコードが挿入されているというだけ で,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,本件ソースコード12のデバッグログを出力するコードの記述に作成者の\n個性が表れていることについて原告は具体的に主張立証していないから,これを創\n作的表現であると認めるに足りない。\n
(イ) 本件ソースコード13\n
原告は,デバッグログを出力するコードが挿入されていない本件ソースコード1\n3に対し,他の表現12(1)及び(2)のように,デバッグログを出力するコードを挿入 することも選択し得るとも主張するが,納品されるプログラムにデバッグログを出 力するコードが挿入されていないこと自体は一般的なことであると考えられるから, そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\n
キ コメントに係る部分
原告は,本件ソースコード14等におけるコメントの有無及びその内容にプログ\nラム作成者の個性が表れる旨主張する。\nしかしながら,前記(1)アのとおり,プログラムは,電子計算機を機能させて一の\n結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現し\nたもの(著作権法2条1項10号の2)であるところ,コメントは,コンピュータ ーの処理の結果に影響するものではなく,コンピューターに対する指令を構成する\nものであるとはいえないから,上記のプログラムに当たらない。 また,原告は,本件ソースコード14のコメントの内容に作成者の個性が表\れて いることを具体的に主張立証しておらず,これを創作的表現であると認めるに足り\nない。
ク 小括(本件ソースコード)\n
以上のとおり,原告が創作的表現であると主張している本件ソ\ースコードについ て,作成者の個性が表れているということはできず,著作権法で保護されるべき著\n作物であると認めることはできない。
(3) 原告の主張について
原告は,本件プログラムはプログラムの著作物に当たるとし,その理由として, 1)本件プログラムは,原告が創作した部分に限っても,合計4万0381ステップ という膨大な量のソースコードから成り,指令の組み合せ方,その順序,関数化の\n方法等には無限に近い選択肢があること,2)本件プログラムにおけるエクセル取込 機能及び簡易組替機能\は,一般的な用途に使用されるものではないから,これらの 機能を実現するためのプログラムがありふれたものであるとはいえないこと,3)原 告は,NetAdvantageやVisualStudio等の開発ツールを用いながらも,ライブラリ群 の中からどのライブラリを用いるべきか,どの順番でライブラリを呼び出させるべ きか,どのように加工すべきか,どのようにパラメータを設定すべきかなどに工夫 を凝らしており,それらに個性が表れていること,4)本件各資料は,いずれも要求 定義又は外部設計に関するものにすぎず,DI社が要求している機能を実現するた\nめの指令の組合せは記載されていないから,本件プログラムに係る選択の幅を狭め るものではないことを主張する。 しかしながら,上記1)について,前記(1)アのとおり,プログラムに著作物性があ るというためには,プログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた 表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表\現上の創作性が表れていることを要す\nると解されるところ,本件プログラムに表現上の創作性があることについて具体的\nに主張立証されない以上,前記(1)イで認定,説示したとおり,多くのステップ数に より記述されていることをもって,直ちに表現上の創作性を認めることはできない。\nまた,上記2)について,原告の主張は,本件プログラムの機能の特殊性を指摘す\nるにとどまっているところ,プログラムの機能そのものは著作権法によって保護さ\nれるものではなく,特定の機能を実現するためのプログラムであるというだけで,\n直ちに表現上の創作性を認めることはできない。\nさらに,上記3)について,原告は,ライブラリの使用等にどのような工夫をした かについて具体的に主張立証しておらず,その点に選択の幅があり,作成者の個性 が表れていると認めるに足りない。\nまた,上記4)について,本件各資料にソースコードが具体的に記述されていない\nとしても,要求されている機能及び処理を実現するための表\現に選択の幅があると 当然にはいえないから,この点を考慮しても,本件プログラムに表現上の創作性を\n認めるに足りないというべきである。

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平成28(ワ)11067  著作権侵害差止請求事件 令和元年5月21日  大阪地方裁判所

 飲食店におけるオーダ管理、および売り上げ管理をおこなうプログラムについて、「原告プログラムの作成日以前から一般的に使用されている指令であり,変数や条件等の文字列の場所が決まっているため独創的な表現形式を採る余地のないものであって,インターネット上に使用例が公開されている」として、著作物性が否定されました。

 プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこ\nれに対する指令を組み合せたものとして表現したもの」(著作権法2条1項10号\nの2)であり,所定のプログラム言語,規約及び解法に制約されつつ,コンピュー ターに対する指令をどのように表現するか,その指令の表\現をどのように組合せ, どのような表現順序とするかなどについて,著作権法により保護されるべき作成者\nの個性が表れることになる。\nしたがって,プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,そ\nの指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり, かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表\現上の創作性 が表れていることを要するといわなければならない(前掲知財高裁平成24年1月\n25日判決)。
(2) 原告プログラムのソースコードの創作性について\n
ア 原告プログラムのソースコードのうち創作性が認められ得る部分\n前記1のとおり,原告プログラムは,原告が作成していたレジアプリケーション ソフトを基に,原告と被告が協議しつつ,原告がソ\ースコードを書くことにより完 成したものであって,顧客の携帯電話端末を注文端末として使用することができる 点や,店舗において入力した情報を店舗(クライアント)側ではなくサーバー側プ ログラムを介してデータベースに保持し,主要な演算処理を行う点等について,従 来の飲食店において使用されていた注文システムとは異なる新規なものであったと 一応推測することができる。また,原告の書いた原告プログラムのソースコード(甲\n3)は,印刷すると1万頁を超える分量であって,相応に複雑なものであると推測 できる(原告本人)。 そして,6)データベースにおける正規化されたデータの格納方法や,注文テーブ ル及び注文明細テーブルに全てのアプリケーションからの注文情報を集約するため の記述(甲18)等に,原告の創作性が認められる可能性もある。\n
イ コンピュータに対する指令の創作性について 前記(1)のとおり,プログラムの著作物性が認められるためには,プログラムによ り特定の機能を実現するための指令の表\現,表現の組合せ,表\現順序等に選択の幅 があり,ありふれた表現ではないことを主張立証することが必要であって,これら\nの主張立証がなされなければ,プログラムにより実現される機能自体は新規なもの\nであったり,複雑なものであったとしても,直ちに,当該プログラムをもって作成 者の個性の発現と認めることはできないといわざるを得ない。
コンピュータに対する指令(命令文)の記述の仕方の中には,コンピュータに特 定の単純な処理をさせるための定型の指令,その定型の指令の組合せ及びその中で の細かい変形,コンピュータに複雑な処理をさせるための上記定型の指令の比較的 複雑な組合せ等があるところ,単純な定型の指令や,特定の処理をさせるために定 型の指令を組合せた記述方法等は,一般書籍やインターネット上の記載に見出すこ とができ,また,ある程度のプログラミングの知識と経験を有する者であれば,特 定の処理をさせるための表現形式として相当程度似通った記述をすることが多くな\nるものと考えられる(乙12,被告代表者)。\nそうすると,ソースコードに創作性が認められるというためには,上記のような,\n定型の指令やありふれた指令の組合せを超えた,独創性のあるプログラム全体の構\n造や処理手順,構成を備える部分があることが必要であり,原告は,原告プログラ\nムの具体的記述の中のどの部分に,これが認められるかを主張立証する必要がある。
ウ 本件における主張立証
被告は,原告プログラムについて,1)レジ,2)キッチンモニター及び3)マスタメ ンテナンスの各プログラムのソースコードは,汎用性のあるソ\ースコードであり創 作性が認められないと主張し,被告代表者の陳述書(乙12)において,上記1)〜 3)の各プログラムのソースコード(甲4〜6)の大部分について,指令の表\現に選 択の幅がなく,一般書籍(乙6)やインターネット上にも記載のあるありふれたも のであることを指摘する。また,被告は,原告プログラムのうち他の構成について\nも,指令の組合せがありふれたものであると主張する。 これに対し,原告は,4)スタッフオーダー等によって入力された情報を,5)サー バー側プログラムを経由して飲食店用に最適化された6)データベースにおいて一括 管理し,レジやキッチンに出力する機能が一体となる点に創作性が認められる旨主\n張するが,これは,プログラムにより実現される機能が新規なもの,複雑なもので\nあることをいうにとどまり,それだけでプログラムに創作性が認められることには ならないことは前述のとおりであるところ,原告は,具体的にどの指令の組合せに 選択の幅があり,いかなる記述がプログラム制作者である原告の個性の発現である のかを,具体的に主張立証しない。 むしろ,乙6,12によれば,原告が開示した原告プログラムの1)レジ,2)キッ チンモニター及び3)マスタメンテナンスのソースコード(甲4〜6)に表\れる指令 の組合せのうちの多くは,原告プログラムの作成日以前から一般的に使用されてい る指令であり,変数や条件等の文字列の場所が決まっているため独創的な表現形式\nを採る余地のないものであって,インターネット上に使用例が公開されているもの も多いことが認められる。
エ まとめ
前記認定したところによれば,原告は,平成23年3月の時点で,一定のレ ジアプリケーションを完成していたが,これは「でんちゅ〜」そのものではなく, 「でんちゅ〜」を事業化しようとする被告代表者と協議しながら,「でんちゅ〜」\nのプログラムを開発したこと,平成24年12月までの原告と被告との法的関係は 不明であるが,「でんちゅ〜」の事業化の主体は被告であり,原告は,被告の依頼 又は内容に関するおおまかな指示を受けてプログラムの開発を行ったこと,「でん ちゅ〜」は平成23年に飲食店に試験導入され,平成24年以降本格導入されたこ と,原告は,少なくとも同年12月から平成27年7月の退社までの2年半余り, 被告の被用者として被告の指示を受け,前記導入の結果を踏まえ,「でんちゅ〜」 の改良,修正等に従事したこと,以上の事実が認められる。 上記事実の中で,平成24年5月22日の時点における原告プログラムの構\n成が,ありふれた指令を組み合わせたものであるには止まらず,原告の個性の発現 としての著作物性を有していたと認めるに足りるものであることの立証がなされて いないことは,既に述べたところから明らかである。 また,平成23年の導入以降,「でんちゅ〜」については,段階的に改良や 修正が施され,原告自身も,少なくとも2年半余り被告の従業員としてその開発, 修正に従事しており,前記認定のとおり,原告プログラムと被告プログラムには相 当程度の差異が認められるのであるから,仮に原告プログラムの一部に,原告の個 性の発現としての創作性が認められる部分が存したとしても,その部分と同一又は 類似の内容が被告プログラムに存すると認めるに足りる証拠はなく,結局のところ, 平成24年5月22日時点の原告プログラムの著作権に基づいて,現在頒布されて いる被告プログラムに対し,権利を行使し得る理由はないといわざるを得ない。

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平成27(ワ)16423    不正競争  民事訴訟 平成30年11月29日  東京地方裁判所(46部)

 漏れてましたのでアップしました。ソフトウェアのソ\ースコードを流用したことが、不正競争行為に該当すると判断されました。問題となったのは、原告ソフトウェアについて、原告外部の技術者としてその開発,制作に携わり,その後,被告から委託を受け,被告ソ\フトウェアの実際の開発,制作を担当したBの行為です。前訴で著作権侵害を争いましたが、1審、2審とも著作権を侵害しないと判断されています。損害認定については、原告の利益*被告の譲渡数量をベースとして95%の滅失事由があると認定されました。

 本件鑑定で用いられたソースコードの分析の手法及びその鑑定結果の概要\nは以下のとおりである。(鑑定の結果〔4頁ないし12頁,17頁,24頁ない し27頁〕)
ア 本件鑑定においては,原告の意見等も踏まえ,本件ソースコードのうち1\n14種類のソースファイルが鑑定対象とされ,本件ソ\ースコードのうち一つ または複数のソースコードに対して被告ソ\フトウェアの複数のソースコー\nドを比較すべき場合があることから,300組のソースコードのペアについ\nて,一致点の有無等が判断された。
イ 前記の300組のソースコードのペアについて,類似性や共通性を判断す\nるため,8種類のコードクローン検出(コードクローンとはソースコード中に相互に一致又は類似したコード断片をいう。)を実施した。\n8種類のコードクローン検出の方法の概要は,1)識別子とリテラルのオー バーラップ係数を用いて名前の包含度合いを確認する,2)識別子とリテラル のコサイン係数を用いて名前の一致度合いを確認する,3)識別子とリテラル の部分文字列のオーバーラップ係数を用いて名前の文字並びの包含度合い を確認する,4)識別子とリテラルの部分文字列のコサイン係数を用いて名前 の文字並びの一致度合いを確認する,5)コメントの部分文字列のオーバーラ ップ係数を用いてコメントの文字並びの包含度合いを確認する,6)コメント の文字列のコサイン係数を用いてコメントの文字並びの一致度合いを確認 する,7)キーワードや記号の系列にSmith−Watermanアルゴリ ズムを適用してソースコードの文字並びの一致度合いを確認する,8)前記ア ルゴリズムをソースコードの長さで正規化してソ\ースコードの構造の一致\n度合いを確認するというものであった。
ウ 前記イの8種類のコードクローン検出を実施し,1種類以上の方法で類似 性についての一定の閾値を超えたものを要注意コード・ペアとして取り扱っ た。この要注意コード・ペアは,300組中57組存在した。
エ 前記ウの結果を参考にしつつ,鑑定人が300組全てのソースコードのペ\nアについて目視確認を行い,共通性や類似性が疑われるソースコードのペア\nを選んだ。その結果,原告ソフトウェアのソ\ースファイルと被告ソフトウェアのソ\ースファイルには,1)「GlobalSettings.h」と「S ourceDefault.h」(順に,原告ソフトウェアのソ\ースファイル と被告ソフトウェアのソ\ースファイル。以下,同じ。),2)「GlobalS ettings.cpp」と「SourceDefault.cpp」,3)「S STDB.cpp」と「Mdb.cpp」,4)「AutoLocker.h」 と「SafeLocker.h」,5)「AutoLocker.cpp」と「S afeLocker.cpp」につき,共通性や類似性が疑われる箇所が発見された(類似箇所1ないし5)。
・・・・
鑑定人は,類似箇所1ないし4について原告と被告のソースコードが不自\n然に類似・共通する箇所が存在すると判断し,類似箇所5については原告と 被告のソースコードに類似性や共通性が見られるがその理由が不自然であ\nるとまではいえないと判断した。
・・・
キ 鑑定人は,類似箇所1ないし5について,原告ソフトウェアを参照せずに\n被告らが独自に作成することが可能であるか否かにつき,以下のとおり判断\nした。
類似箇所1について
原告ソフトウェアのソ\ースコードの一部がサンプルで公開されていた などといった外部要因がないことを前提とすれば,原告ソフトウェアと被\n告ソフトウェアの開発者は必ず同一人物である。被告ソ\フトウェアを開発 する際に原告ソフトウェアを参照した可能\性が高いが,参照せずに開発す ることが全く不可能であるとまでは言い切れない。\nもっとも,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの開発者が同一人物で あり,その人物の記憶を手掛かりとしても,原告ソフトウェアのソ\ースコ ードを参照せずに類似箇所1で見られるような細かい特徴まで一致させ ることは難しいと考えることが自然である。
・・・
類似箇所1ないし3について,本件ソースコードの被告\nらによる使用等があったと認められる。そして,Bが,原告ソフトウェアの開\n発に携わった者の一人であり,被告ソフトウェアについて実際の開発,制作を\n担当したこと(前提事実 )及び弁論の全趣旨から,Bは,被告ソフトウェア\nの開発の際,本件ソースコードの類似箇所1ないし3に対応する部分を使用し\nて被告ソフトウェアを制作等し,もって,類似箇所1ないし3を被告フェイス\nに対して開示し,また,被告フェイスにおいてそれを取得して使用したと認め られる。
類似箇所4について
前記1(1)によれば,類似箇所4については,被告ソフトウェアのデータベー\nスで用いられている52件のフィールドの名前が原告ソフトウェアのデータ\nベースで用いられているものと同じであると指摘されており,被告らもTem plate.mdbの複製について認めていることに照らせば,類似箇所4に ついては,類似箇所1ないし3についてと同様の理由から,Bから被告フェイ スに対する開示及び被告フェイスによるその使用があったと認められる。
・・・
イ 原告ソフトウェアが開発されるに至った経緯や原告ソ\フトウェアの開発 の際のBの勤務の形態等に照らしても,原告ソフトウェアの開発,制作は原\n告の指示に基づきされたといえるものであり,本件ソースコードは原告が保\n有すると認められる。そして,原告ソフトウェアの開発,制作に携わった者\nの一人であるBは,類似箇所1ないし3が本件ソースコードの一部であるこ\nとや,販売用ソフトウェアのソ\ースコードという本件ソースコードの性質や\nその開発等の経緯等から,それが原告が保有する営業秘密であることを認識 できたといえる。 これらを考慮すると,Bが原告ソフトウェアと販売上も競合する被告ソ\フ トウェアを開発,制作するに当たって類似箇所1ないし3を使用したことは原告から示された営業秘密を,図利加害目的をもって被告フェイスに開示し たものと認めることが相当である(不競法2条1項7号)。 被告フェイスは,被告ソフトウェアが原告ソ\フトウェアと同種の製品であ り,字幕データファイル等について互換性を有するという特徴を有するもの であることや,上記のような機能を有する被告ソ\フトウェアの開発を具体的 に行うBが原告ソフトウェアの開発に携わった者の一人であったことは認\n識していたと認められる。これらのことから,被告フェイスは,被告ソフト\nウェアの具体的な開発を委託したBによる被告ソフトウェアの開発過程等\nにおいて違法行為が行われないよう特に注意を払うべき立場にあった。不競 法2条1項8号にいう重過失とは,取引上要求される注意義務を尽くせば容易に不正開示行為等が判明するにもかかわらずその義務に違反した場合を いうところ,被告フェイスにおいて,前記の事情に照らせば,前記の注意義 務を尽くせば被告ソフトウェアの開発過程等においてBの不正開示行為が\n介在したことが容易に判明したといえ,被告フェイスは,少なくとも重過失 により,原告の営業秘密である類似箇所1ないし3をBから取得し,それら を被告ソフトウェアに用いて販売したと認めるのが相当である(不競法2条\n1項8号)。 Aについて,被告ソフトウェアの開発,制作に当たって,具体的な本件ソ\ ースコードを被告フェイスに開示した事実を認めるには足りないし,その他, Aにおいて,不正競争行為となる事実を認めるに足りる証拠はない。したが って,Aについて,不正競争行為は認められない。
イ 被告らは,類似箇所1ないし3が被告ソフトウェアのソ\ースコードと一致 ないし類似するに至った原因は,Bが,原告ソフトウェアを開発するに際し\nてライブラリの選択等のために独自に自らのパソコンで作成し,そのパソ\コ ンに残っていた簡易な評価プログラムやそのプログラムに含まれる変数定 義部分を被告ソフトウェアの開発の際にも参照したことにあり,そのような\n行為は非難されるべきものではないなどと主張する。しかしながら,同事実関係を裏付ける証拠はない。また,前記の評価プロ グラムは,それが作成,使用されたとしても,その評価の対象となる本件ソ\nースコードの存在を前提として作成,使用されたものと考えられ,変数定義 部分が前記評価プログラムの作成又は使用によってBのパソコンに残って\nいたとしても,それが本件ソースコードの一部である以上,前記に述べたと\nころと同様の理由により,原告から示された営業秘密であるとするのが相当 であり,また,Bにおいて,そのことを認識することができたといえる。こ れらに照らせば,被告らの主張は,Bにおいて類似箇所1ないし3を被告ソ\nフトウェアの開発の際に使用する行為が不競法2条1項7号にいう不正競 争に該当するなどの前記結論を左右するものではない。
・・・
前記(1)アのとおり,被告ソフトウェアの販売数は,主として業務用として\n利用されるドングル版が●(省略)● ここで,オンライン版とスクール版の前記個数については同一顧客によっ て更新された回数が含まれているところ,オンライン版とスクール版につい ては,価格(更新の価格も含む。)がドングル版に比較して相当安価に設定さ れていて,同一顧客による同内容のソフトウェアの継続利用とその更新を前\n提としている部分があると認められる。このことに原告ソフトウェアの価格\nから推測されるその利用方法を考慮すると,本件においては,オンライン版 とスクール版については,不競法5条1項にいう「譲渡数量」としては,同 一顧客に対する販売を1個とすることが相当であるというべきである。 したがって,不競法5条1項における被告ソフトウェアの譲渡数量は,ド\nングル版が●(省略)●であると認めるのが相当である。
イ 原告ソフトウェアの単位数量当たりの利益の額\n
前記 ウのとおり,主として業務用に利用される原告ソフトウェアの価格は,基本編集機能\を搭載したもので28万円である。また,前記 オのとお り,主として教育用に利用される原告ソフトウェアの価格は,割引を考慮し\nない場合は2万4800円である。 そして,平成21年から平成23年までの間及び平成27年について,減 価償却費や人件費を控除して算出された原告商品の利益率は,最も利益率が 低い期間の利益率においても53.2パーセントを超えること(甲38の2, 甲133)及び弁論の全趣旨から,原告ソフトウェアの限界利益の利益率は,\n少なくとも40パーセントであると認められる。 以上によれば,主として業務用に利用される原告ソフトウェアの前記利益\nの額は11万2000円(28万円×0.4),主として教育用に利用される 原告ソフトウェアの前記利益の額は9920円(2万4800円×0.4)\nであると認められる。 これに対し,原告は,原告ソフトウェアの価格は90万7200円である\nと主張する。しかしながら,前記 廉価版である「SSTG1 Lite」を14万2000円で販売している。 また,90万7200円という金額は高等機能オプションやデータのインポ\nート/エクスポートオプション等の大部分を搭載した場合における金額で あるところ,前記 のとおり,原告ソフトウェアを利用する顧客の中には\n個人の顧客もかなりの割合で存在しており,そのような個人の顧客が基本編 集機能に加えてそれらのオプションを搭載したものを購入しているか否か\nは証拠上明らかではなく,むしろ,証拠(乙5,42)によれば個人の顧客 の97パーセントは基本編集機能のみを購入していることがうかがわれる。\nしたがって,原告の前記主張は採用できない。
ウ 小括
前記ア及びイによれば,以下の計算式のとおり,主として業務用に利用さ れるソフトウェアの関係では2654万4000円が原告の損害額と推定\nされ,主として教育用に利用されるソフトウェアの関係では1123万93\n60円が原告の損害額と推定される(合計3778万3360円)。
(計算式)
●(省略)●
エ 推定覆滅事由についての検討
前記3のとおり,被告ソフトウェアに関連し,原告の営業秘密である類似\n箇所1ないし3についてB及び被告フェイスの不正競争行為が認められる。 ここで,類似箇所1ないし3はいずれも変数定義部分等であり,ソフトウェ\nアの動作に不可欠な有用な部分ではあるが,ソフトウェアの画面表\示,イン ターフェイスや動作といったソフトウェアの利用者に関係する機能\等の制 御に直接的に関係する部分ではなく,また,類似箇所1ないし3の内容に照 らし,それらが被告ソフトウェアに対して他のソ\フトウェアでは一般的とは いえない特別の動作をもたらすものであるとは認められない。他方,前記1 とおり,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアのソースコードは,類似\n箇所1ないし5以外に類似している箇所があるとは認められず,ソフトウェアの利用者に関係する機能\等の制御に直接的に関係する部分については原 告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの間に共通する部分は存在していない ともいえる。 これらを考慮すると,被告らの不正競争行為が被告ソフトウェアの利用者\nに関係する機能を同種のソ\フトウェアに関する機能と大きく異なるものに\nしたとは直ちにはいえず,被告ソフトウェアの売上げは,基本的には,被告\nソフトウェアの不正競争行為ではない行為により作成された機能\に基づく 商品としての価値や被告フェイスの営業努力等によって実現されていたと するのが相当である。
以上によれば,被告ソフトウェアの譲渡数量のうちの相当程度の数量の原\n告ソフトウェアについて,原告が販売することができなかった事情があると\n認めるのが相当であり,以上のほか,本件にあらわれた一切の事情を総合的 に勘案すれば前記ウの推定は95パーセントの限度で覆滅し,被告フェイス 及びBによる不正競争によって原告に生じた損害は,前記ウ記載の損害の5 パーセントであると認めるのが相当である。また,弁護士費用としては,10万円をもって相当と認める。 なお,被告らは,「おこ助」と称する字幕ソフトウェアがシェアを拡大して\nおり,原告ソフトウェアとの競合品が存在していることが推定覆滅事由に該\n当するなど主張するが,前記「おこ助」の販売台数や機能等の詳細は明らか\nでなく,むしろ,証拠(乙38,39)によれば前記「おこ助」は主として 聴覚障がい者向けの字幕制作のためのソフトウェアであることがうかがわ\nれることに照らせば,前記「おこ助」が原告ソフトウェアの競合品であるこ\nとを理由とした被告らの前記主張は認められない。

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前訴はこちらです。

◆平成25(ワ)181

◆平成27(ネ)10102

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平成29(ワ)32433  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月21日  東京地方裁判所(46部)

 プログラムの著作物について、複製又は翻案が争われました。全体のプログラムを新サーバへ移行しましたが、問題となっている本件共通環境設定プログラムは複製・翻案していないと判断しました。
 争点 (2)−2(本件基本契約終了後の本件共通環境設定プログラムの保守管理 業務に伴う複製権又は翻案権侵害)について
ア 原告は,被告マルイチ産商と被告テクニカルパートナーは,被告マルイチ 産商のコンピュータ保守管理のための人材派遣契約を締結し,被告テクニカ ルパートナーらは,上記派遣契約に基づき,被告マルイチ産商のコンピュー タの保守管理業務を行っており,本件基本契約が終了した平成26年9月1 7日以降も,保守管理業務の一環として,本件共通環境設定プログラムの複 製又は翻案を行ったと主張する。 しかし,保守管理業務の一環として本件共通環境設定プログラムの複製又 は翻案が行われた事実を認めるに足りる証拠はなく,原告の主張を採用する ことはできない。
イ また,仮に,被告らが本件基本契約終了後の本件共通環境設定プログラム の保守管理業務に伴い,本件共通環境設定プログラムの複製又は翻案を行っ たとしても,本件基本契約26条は,「著作権・知的財産権および諸権利の帰 属」に関する定めが本件基本契約の終了後も有効であると定めており,被告 マルイチ産商は,本件基本契約終了後も「著作権・知的財産権および諸権利 の帰属」に関する定めである本件基本契約21条3項 に基づき,本件共通 環境設定プログラムを複製等することができると解するのが相当であるか ら,複製権又は翻案権侵害は成立しないと解するのが相当である。 これに対し,原告は,本件基本契約は更新しない旨の意思表示による解約\n(28条1項但書)により終了したのであり,本件基本契約26条の「本契 約が合意の解約により終了した場合および解除により終了した場合」に直接 該当しないし,本件基本契約26条が規定するのは「著作権・知的財産権お よび諸権利の帰属」であり,本件基本契約21条3項が定める権利の帰属主 体が契約終了によっても変わらないことを定めているとしても,同項(2)の利 用に関する定めは射程外であると主張する。 しかし,本件基本契約26条は,「契約終了後の権利義務」との見出しの下 で「本契約が合意の解約により終了した場合および解除により終了した場合 でも」と定めており,他の原因による終了の場合にも適用されることを前提 にしていると解され,本件基本契約中に他の原因による契約終了時の権利義 務等を定める条項がないことからしても,本件基本契約26条は,更新しな い旨の意思表示による解約による契約終了の場合の権利義務の帰趨も定め\nていると解釈すべきである。
また,本件基本契約26条における「著作権・知的財産権および諸権利の 帰属」との文言は,本件基本契約21条の見出しと同一であること,また, 同条3項は,成果物の著作権・知的財産権および諸権利の帰属を定めるとと もに,著作権が共有となる場合(同項 )には双方が利用することができる ことを定め,原告のみに帰属する場合(同項 )には被告マルイチ産商に対 して利用することができる範囲を定めており,著作権の帰属の違いに対応し て利用することができる範囲をそれぞれ定めているものであり,そのような 定めにおいて,契約終了後,著作権の帰属の定めのみ有効に存続すると解す るのは不自然であること,契約中に契約終了後の利用やその禁止についての 定めはないことからすると,本件基本契約26条において契約終了後も有効 とされる「著作権・知的財産権および諸権利の帰属」の定めとは,同21条 の定め全体を指し,同条が定める利用に関する定めも含んでいると解釈する のが相当である。原告が主張する本件基本契約の解釈によれば,本件新冷蔵 庫等システムの使用のために必要となる本件共通環境設定プログラムは本 件基本契約終了により一切複製等できなくなり,本件共通環境設定プログラ ムのサーバ移行等を行うことができず,本件新冷蔵庫等システム自体の使用 を継続することも不可能ないし困難となるが,そのような解釈は不合理であ\nる。

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平成29(ネ)10103等  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ラダー図による表記したプログラムについて創作性無しと判断されました。
 ア 著作権法2条1項1号所定の「創作的に表現したもの」というためには,\n作成者の何らかの個性が表れている必要があり,表\現方法がありふれている場合な ど,作成者の個性が何ら表れていない場合は,「創作的に表\現したもの」というこ とはできないと解するのが相当である。
ラダー図は,電機の配線図を模式化したシーケンス図をさらに模式化したもので あるから,ラダー図は配線図に対応し,配線図が決まれば,ラダー図の内容も決ま ることとなり(乙ロ1),したがって,その表現方法の制約は大きい。ラダー図に\nおいては,接点等の順番やリレー回路の使用の仕方を変更することにより,理論的 には,同一の内容のものを無数の方法により表現できるが,作成者自身にとってそ\nの内容を把握しやすいものとし,また,作成者以外の者もその内容を容易に把握で きるようにするには,ラダー図全体を簡潔なものとし,また,接点等の順番やリレ ー回路の使用方法について一定の規則性を持たせる必要があり,実際のラダー図の 作成においては,ラダー図がいたずらに冗長なものとならないようにし,また,接 点等の順番やリレー回路の使用方法も規則性を持たせているのが通常である(乙ロ 1,3)。
イ 控訴人プログラム1)は,控訴人19年車両の車両制御を行うためのラダ ー図であるが,共通ブロックの各ブロックは,いずれも,各接点や回路等の記号を 規則に従って使用して,当該命令に係る条件と出力とを簡潔に記載しているもので あり,また,接点の順番やリレー回路の使用方法も一般的なものであると考えられ る。
すなわち,例えば,ブロックY09は,リモコンモード,タッチパネルモード及 びメンテナンスモードという三つのモードのモジュールを開始する条件を規定した ブロックであるところ,同ブロックでは,一つのスイッチに上記三つのモードが対 応し,モードごとの動作を実行するため,上記各モードに応じて二つの接点からな るAND回路を設け,スイッチに係るa接点と各AND回路をAND回路で接続し ているが,このような回路の描き方は一般的であると考えられる。また,同ブロッ クでは,上段にリモコンモード,中段にタッチパネルモード,下段にメンテナンス モードを記載しているが,控訴人プログラム1)の他のブロック(Y11,Y23, Y24,Y25,Y26)の記載から明らかなように,控訴人プログラム1)では, リモコンモード(RM),タッチパネルモード(TP),メンテナンスモード(M M)の順番で記載されている(なお,これらにリモコンオンリーモード(RO)が 加わる場合は,同モードが一番先に記載される。)から,ブロックY09において も,それらの順番と同じ順番にしたものであり,また,メンテナンスモードを最後 に配置した点も,同モードがメンテナンス時に使用される特殊なモードであること を考慮すると,一般的なものであると評価できる。さらに,「これだけ!シーケン ス制御」との題名の書籍に,「動作条件は一番左側」と記載されている(乙ロ3) ように,ラダー図においては,通常,動作条件となる接点は左側に記載されるもの と認められるところ,ブロックY09の上記各段の左側の接点は,各モードを開始 するための接点であり,同接点がONとなることを動作条件とするものであるから, 通常,上記左側の各接点は左側に記載され,これと右側の接点とを入れ替えるとい うことはしないというべきであり,したがって,上記各段における接点の順番も一 般的なものである。したがって,同ブロックの表現方法に作成者の個性が表\れてい るということはできない。
また,ブロックY17は,拡幅待機中であることを規定するブロックであるとこ ろ,拡幅待機中をONにする条件として,10個のb接点をすべてAND回路で接 続しているが,上記条件を表現する回路として,関係する接点を全てAND回路で\n接続することは一般的なものであると考えられる。また,上記各接点の順番も,リ モコンオンリーモード,リモコンモード,タッチパネルモード及びメンテナンスモ ードの順番にし,各モードごとに開の動作条件と閉の動作条件の順番としたもので あるところ,前記のとおり,上記各モードの順番は,他のブロックの順番と同じに したものであり,開の動作条件と閉の動作条件の順番も一般的なものである。した がって,同ブロックの表現方法に作成者の個性が表\れているということはできない。 さらに,ブロックY25は,ポップアップフロアを上昇させる動作を実行するた めのブロックであるが,拡幅フロアの上昇又は下降に関しては,拡幅フロア上昇に 関する接点及び拡幅フロア下降に関する接点がそれぞれ四つずつ存在するという状 況下において,同ブロックでは,拡幅フロア上昇に関する接点をa接点,拡幅フロ ア下降に関する接点をb接点とした上で,四つのa接点及び四つのb接点をそれぞ れOR回路とし,これら二つのOR回路をAND回路で接続している。拡幅フロア の上昇と下降という相反する動作に関する接点が存在する場合において,目的とす る動作のスイッチが入り,目的に反する動作のスイッチが入っていないときに,目 的とする動作が実行されるために,目的とする動作の接点をa接点,これと反する 動作の接点をb接点としてAND回路で接続し,命令をONとする回路で表現する\nことは,a接点及びb接点の役割に照らすと,ありふれたものといえる。また,同 一の動作に関する接点が複数あり,目的とする動作の接点であるa接点のいずれか がONとなったときに目的とする動作が実行されるようにするため,それらの接点 をOR回路で表現することもありふれたものといえる。さらに,OR回路で接続さ\nれた四つの段においては,リモコンオンリーモード,リモコンモード,タッチパネ ルモード及びメンテナンスモードの順番としているが,前記のとおり,この順番は, 他のブロックの順番と同じにしたものである。ブロックY26は,ポップアップフ ロアを下降させる動作を実行するためのブロックであり,上記のブロックY25で 述べたのと同様のことをいうことができる。加えて,ブロックY25及びブロック Y26のAND回路で接続された各二つの列においては,上昇又は下降のa接点, 下降又は上昇のb接点の順番としているが,前記のとおり,ラダー図においては動 作条件となる接点は左側に記載されるところ,ブロックY25及びブロックY26 の各1列目は,「拡幅フロア上昇」又は「拡幅フロア下降」の動作条件となる接点 であると認められるから,通常,同ブロックのとおりの順番で接続され,1列目と 2列目を入れ替えるということはしないものということができる。したがって,こ れらのブロックの表現方法に作成者の個性が表\れているということはできない。

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1審はこちらです。

◆平成28(ワ)19080

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平成28(ネ)10102  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成29年3月14日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 一審と同様に、HTML文には創作性無しと判断されました。
 プログラムの著作物性が認められるためには,指令の表現自体,同表\現の組合せ, 同表現の順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十\分にあり,かつ,それがあ りふれた表現ではなく,作成者の個性が表\れているものであることを要するという ことができる。プログラムの表現に選択の余地がないか,あるいは,選択の幅が著\nしく狭い場合には,作成者の個性の表れる余地がなくなり,著作物性は認められな\nくなる。 前記1のとおり,本件HTMLは,被控訴人が決定した内容を,被控訴人が指示 した文字の大きさや配列等の形式に従って表現するものであり,そもそも,表\現の 選択の幅は著しく狭いものということができる。
・・・
(ア) 〈form name="frm_member" action="compliance.php?ts=%ts%" method="post"〉 (甲27の1右欄)は,online.html において,新規会員登録の画面下部の「上記を全 て満たすので会員登録手続きへ進む。」のボタンをクリックすると,compliance.php に アクセスすることに関するものと解される。 HTMLに関する事典ないし辞典において,1)「
」は,後出の「
」 との間の範囲が入力フォームであることを示すこと(乙35),2)フォームの送信先 や送信方法等は,上記「form」タグの属性で指定し,属性="属性値"で表すこと(乙\n20,35,36),3)「name」は,フォームに名前を付与する属性であること(乙 36),4)「action」は,フォームに入力されたデータを処理するプログラムのURL を指定する属性であること(乙35),5)「method」は,入力されたデータの送信形 式を指定する属性であり,フォームのデータのみを本文として送信する「post」と 「action」属性で指定したURLフォームのデータを追加して送信する「get」のいず れかを選択するものとされていること(乙35)が記載されている。 したがって,上記記述は,その大半が,HTMLに関する事典ないし辞典に記載 された記述のルールに従ったものであり,作成者の個性の余地があるとは考え難い。 よって,控訴人主張に係る上記の記述において作成者の個性が表れているという\nことはできない。
(イ) 〈form name="frm_member" action="./compl_check.php?ts=%ts%" method="post"〉 (甲27の2右欄)は,compliance.html において,登録申請時確認テストの画面の問\n題に全問回答した後に,下部の「確認」ボタンをクリックすると,compl_check.php に アクセスすることに関するものと解されるが,前記(ア)と同様に,作成者の個性が表\nれているということはできない。
(ウ)
と表されること\n(乙19)が記載されており,また,3)HTMLにおいて長さを指定する方法とし てピクセル数を単位に整数で指定する方法があること(乙35),4)「submit」は「送 信ボタン」を意味する語として用いられていること(乙37)が記載されている。こ れらの記載によれば,「"margin:0px;"」は,余白0ピクセルを意味するもの,「onsubmit」は送信ボタンに関するものと解される。また,「"return false;"」は,実行中止を意味するものである。以上に加え,前記(ア)にも鑑みると,控訴人主張に係る上記記述は,HTMLに関する教本及び辞典に記載された記述のルールに従った,作成者の個性の表れる余地があるとは考え難いものや,語義からその内容が明らかなありふれたものから成り,したがって,作成者の個性が表\れているということはできない。

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◆一審はこちらです。所平成27年(ワ)第5619号

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平成27(ネ)10102  損害賠償等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成28年3月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 プログラムが利用するテンプレートデータについて、著作物に該当しないとした1審判断が維持されました。
 プログラムの著作物の複製権又は翻案権を侵害したといえるためには,既存のプ ログラムの具体的表現中の創作性を有する部分について,これに依拠し,この内容\n及び形式を覚知させるに足りるものを再製するか,又は,その表現上の本質的な特\n徴の同一性を維持しつつ,これに修正,増減,変更等を加えて,新たな思想を創作 的に表現し,新たな表\現に接する者が従来の表現の本質的な特徴を直接感得するこ\nとのできるものを創作したといえることが必要であり,単にプログラムが実現する 機能や処理内容が共通するだけでは,複製又は翻案とはならない。\n本件においては,控訴人プログラム及び被控訴人プログラムのいずれについても, 極めてわずかな部分を除いては,適式にソースコードが開示されておらず,それぞ\nれのプログラムの具体的表現は不明というほかなく,控訴人プログラムの創作性の\nある具体的表現内容やこれに対応する被控訴人プログラムの具体的表\現内容も不明 である。もっとも,控訴人プログラムのソースコードは,約19万行と認められるから(弁論の全趣旨),その全部に創作性がないことは考えにくく,仮に,被控訴人\nプログラムが,控訴人プログラムにおいて創作性を有する蓋然性の高い部分のコー ドの全部又は大多数をコピーして作成されたものといえる事情があるならば,被控 訴人プログラムは,控訴人プログラムを複製又は翻案したものと推認することがで きる。
以下,この観点から,控訴人の指摘する点に沿って検討を加える。
(2) 控訴人の主張について
1) 被控訴人が控訴人プログラムのTemplate.mdbを複製したことは,当事者間に争いがない。 しかしながら,被控訴人がTemplate.mdbを複製したのは,専ら旧SSTとの互換性を確保するためであると認められるところ,上記のとおり,Template.mdbに格納するデータはTemplate.mdb以外のプログラムが処理をするものであり,当該データを定義するコードを除いて,Template.mdbを複製したからその余のプログラムも複製されたと推認される関係にはない。また,Template.mdbに格納するデータは,前記1(1)のとおり,作成された文字情報や各種設定情報であるから,これを定義するコードの表現に選択の幅はないか,ほぼないと認められるから,このコード自体に創作性を認めることも困難である。たがって,Template.mdbが複製されているとしても,そのことは,被控訴人プログラムが控訴人プログラムにおいて創作性を有する蓋然性の高い部分のコードの全部又は大多数をコピーしたことを推認させる事情とはいえない。
2) 控訴人プログラムには,xlsx形式(Excel2007)で出力された字幕ファイルであっても,その拡張子に「xls」(Excel2003)が付されてしまう事象が生じていたところ,平成25年にリリースされた本件プログラムでも同様の事象が生じていたたことが認められる(甲36,37,157,159)。上記事象の原因が,控訴人が主張するように,この事象に関係するコードがExcel2007が頒布開始された平成19年(2007年)より前に作成されたことによるのか,被控訴人が主張するように開発環境にExcel2007がなかったことによるのか, あるいは,単なるバグであるのか(平成25年にリリースされた製品でもそれ以前 に販売されたソフトウェアに対応する必要性はある。),いずれとも確定し難い。し\nたがって,上記事象が,控訴人プログラムのソースコードと被控訴人プログラムの\nソースコードとの特異な一致ということもできない。\nしたがって,上記事象があるとしても,そのことは,被控訴人プログラムが控訴 人プログラムにおいて創作性を有する蓋然性の高い部分のコードの全部又は大多数 をコピーしたことを推認させる事情とはいえない。
3) 控訴人は,本件プログラムには,字幕ウィンドウのハコ全体に対する表示属\n性の設定がハコ内に入力される字幕すべてに適用されないという,控訴人プログラ ムと同様のバグがあると主張する。しかしながら,テキストを全選択して属性設定をしても,その選択範囲よりも前の部分に新たに挿入した文字にその属性が反映されないのは,プログラムとして普通のことである。しかるに,そもそも本件プログラムにはハコ全体に対する表示属性設定機能\がないとの被控訴人の主張や,被控訴人プログラムのマニュアルにおける「全て個別設定になります。」との記載(甲23添付の別紙マニュアルの37頁)にかんがみると,控訴人提出の証拠(甲43〜46)によって示されているのは単なるテキストの全選択にすぎないものと認めるほかなく,本件プログラムに控訴人プログラムと同様のバグがあることを認めるには足りない。

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◆1審判決はこちち。平成25(ワ)18110

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平成24(ワ)24628  著作権に基づく差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成26年9月30日  東京地方裁判所

 プログラムの著作物について、本件テンプレートはデータベースの著作物とは認められないと判断されました。
 証拠(甲1,2,6,7,9)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件テンプレートは,販売,購買,在庫,会計及び現金出納の5つの主要プロセスについて,サブプロセスを含めると82の標準的な業務フローが登録されており,各プロセスには関連する勘定科目が定義され,364個の標準的,典型的なリスクがアサーションの定義とともに登録されていて,被告製品を購入したユーザーがこれをサンプルテンプレートとして利用することで必要な情報をデータベースに随時登録し,プロセス記述書,RCM等として引き出すことにより,内部統制に関する情報を容易に利用することが可能となるものであると認められる。しかしながら,本件テンプレートの実体や存在形式は判然としないし,具体的にどのような情報がいかなる体系で構\成されているのかについては,本件全証拠によってもその詳細が判然としないから,仮に本件テンプレートがデータベースに該当するものであるとしても,その情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものであるとは認め難い。\nしたがって,本件テンプレートがデータベースの著作物であると認めることはできないから,これを前提とした原告の請求は理由がない。

◆判決本文

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平成25(ワ)5210 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成26年03月25日 東京地方裁判所

 指令の表現の組合せ,表\現順序等について,具体的にどのような表現上の創作性を有しているのか、を主張立証しなかったため、プログラムの著作物について、法上の著作物ではないと判断されました。原告は代理人無しの本人訴訟です。
 著作権法上保護される「著作物」というためには,思想又は感情を創作的に表現したものであることを要する(著作権法2条1項1号)ところ,プログラムは,「電子計算機を機能\させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(同項10号の2)であり,所定のプログラム言語,規約及び解法(同法10条3項)に制約を受けながら,コンピュータに対する指令をどのように表\現するか,その指令の表現をどのように組み合わせ,どのような表\現順序とするかなどについて,保護されるべき作成者の個性(創作性)が表れることになる。以上によれば,プログラムに創作性があるというためには,指令の表\現自体,その指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,プログラム作成者の個性,すなわち,表\現上の創作性が表れていることを要するものと解される。(2) 原告は,原告各プログラムについて,BSS−PACKシステムを構成する各部分の働きをコントロールしてシステム全体を稼動させる特別なプログラムであって,定型性のない原告の創作プログラムであり,極めて画期的なものであると主張するが,原告の主張からは,指令の表\現自体,指令の表現の組合せ,表\現順序等について,具体的にどのような表現上の創作性が表\れているのかが明らかではないし,本件全証拠によっても,原告各プログラムに表現上の創作性があると認めることはできない。(3) したがって,原告各プログラムが「著作物」に当たるということはできない。

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平成24(ワ)5771 著作権侵害差止請求権不存在確認等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年12月18日 東京地方裁判所

 差止不存在確認訴訟で、プログラムについて該当部分は著作物ではないと判断されました。
 上記共通する箇所は,原告が主張するように,第三者(Baidu社)が提供しているオープンソースソ\フトウェアを利用した記述や,マイクロソフト社の「Visual Studio」が自動生成するソースコードを利用した記述, マイクロソフト社が公開している関数の名称( 「OnSize 」,「AddString 」, 「LoadBitMap 」, 「SetTimer 」, 「AddPage 」,「GetDlgItem 」, 「IMPLEMENT_DYNCREATE 」, 「AfxMessageBox 」,「IMPLEMENT_DYNAMIC」等)の記述,コンピュータプログラムの文法上一般的に使用される表現を用いたもの(「While」文等)など,いずれもありふれた表現であって(甲8ないし20,22,弁論の全趣旨),作成者の個性が表\れているものとはいえない。以上によれば,被告が本件ソフトウェアのプログラムのソ\ースコードの記述における表現上の創作性を有すると主張する部分は,そもそも表\現上創作性を認めることはできないし,また,被告が主張する原告ソフトウェアのプログラムの具体的記述から本件ソ\フトウェアのプログラムの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできない。したがって,本件ソ\フトウェアのプログラムのソースコードの記述における表\現上の創作性を有する部分と原告ソフトウェアのプログラムのソ\ースコードの記述とが表現上の本質的な特徴が同一であるとの被告の主張は採用することはできない。\n

◆判決本文

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平成24(ワ)15034 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年11月30日 東京地方裁判所

 プログラムの著作物について、本件プログラムに基づいて生成された画像は、プログラムの著作物の複製ではないと判断しました。
   被告は,同一事案について既に判決が確定しているから,一事不再理の原則からみても本件訴えは却下されるべきであると主張する。しかし,別件訴訟は,原告が,被告に対し,主位的には,ウェブサイト制作作業等の請負代金等296万円及び遅延損害金の支払を,予備的には,被告が原告作成のウェブサイト等に不正にアクセスしたことによってウェブサイト制作費,コンサルティング料金等相当額である286万円を不当に利得したとして同額及び法定利息金の支払を求めたものである(甲3の1・2。なお,原告は,別件訴訟控訴審において,主位的請求及び予\備的請求とも100万円及びこれに対する附帯請求の限度に請求を減縮した。)。これに対し,本件訴訟は,原告が,被告に対し,本件プログラムの著作権(複製権)侵害(予備的に一般不法行為)に基づき,損害賠償金合計1120万円の一部請求として280万円の支払を求める事案である。別件訴訟と本件訴訟とは当事者を同一にし,事実関係に重なるところがあるとはいえ,訴訟物も争点も異なるものであるから,本件訴えが一事不再理の原則により不適法であるとはいえない。
2 別件乙3の印刷による複製権侵害による不法行為について
(1) 原告は,別件乙3の印刷物は,原告が著作権を有するプログラムの著作物である本件プログラムを紙に印刷して複製したものであり,複製権侵害であると主張するので,この点について検討する。
(2) 原告は,本件プログラムは原告が創作した「プログラムの著作物」(法10条1項9号)であると主張する。プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表\現したもの」(法2条1項10号の2)であり,所定のプログラム言語,規約及び解法(法10条3項)に制約されつつ,コンピュータに対する指令をどのように表現するか,その指令の表\現をどのように組み合わせ,どのような表現順序とするかなどについて,法により保護されるべき作成者の個性(創作性)が表\れることになる。したがって,プログラムに著作物性(法2条1項1号)があるというためには,指令の表現自体,その指令の表\現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表\現ではなく,プログラム制作者の個性,すなわち,表現上の創作性が表\れていることを要する(知財高裁平成21年(ネ)第10024号平成24年1月25日判決・裁判所ウェブサイト)。原告は,本件プログラムのソースコード(甲6の1。A4用紙7枚(1枚当たり36行。全部で232行)のもの。)を提出するものの,本件プログラムのうちどの部分が既存のソ\ースコードを利用したもので,どの部分が原告の制作したものか,原告制作部分につき他に選択可能な表\現が存在したか等は明らかでなく,原告制作部分が,選択の幅がある中から原告が選択したものであり,かつ,それがありふれた表現ではなく,原告の個性,すなわち表\現上の創作性が発揮されているものといえるかも明らかでない。・・・
 原告は,被告がブラウザを用いて本件プログラムにアクセスし,その情報を被告のパソコンのモニタに表\示させ,表示された情報のスクリーンショットを撮り,当該スクリーンショットの画像ファイルを紙である別件乙3(甲1の1,乙2)に印刷したことが,プログラムの著作物である本件プログラムの複製に当たると主張する。法にいう「複製」とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製することをいうが(法2条1項15号),著作物を有形的に再製したというためには,既存の著作物の創作性のある部分が再製物に再現されていることが必要である。これを本件についてみると,紙である別件乙3(甲1の1,乙2)に記載されているのは画像であって,その画像からは本件プログラムの創作性のある部分(指令の表\現自体,その指令の表現の組合せ,その表\現順序からなる部分)を読み取ることはできず,本件プログラムの創作性のある部分が画像に再現されているということはできないから,別件乙3の印刷が本件プログラムの複製に当たるということはできない。

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平成23(ネ)10063 プログラム著作権使用料等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年02月29日 知的財産高等裁判所

 裁判所は、プログラムの著作物性について「疑義はあるが、争点ではないので」と、損害額のみについて判断しました。1審と同じく、双方本人訴訟です。
 プログラムに著作物性があるというためには,プログラムの全体に選択の幅が十分にあり,かつ,それがありふれた表\現でなく,作成者の個性,すなわち,表現上の創作性が表\れていることを要するところ,本件証拠上,本件プログラムが著作物性を備えるものであるといえるかについては疑義がある。しかし,前記のとおり,当審における争点は,専ら損害の額であるので,本件プログラムに著作物性があることを前提として,損害の額について検討すると,本件プログラムは,平成18年以前に作製されたものであること(甲1),本件契約に基づく本件プログラムの利用料等は,1か月2万8380円であったこと,本件プログラムと同様の機能を有する他のプログラムについて,インターネットで無料配布されたり,相当低廉な価格で提供されるものもあること(弁論の全趣旨),被控訴人が同社のインターネットホームページ上で本件プログラムを利用したのは,平成22年5月28日頃から同年6月頃までと平成23年3月28日頃から同年4月7日までの比較的短期間であることなどからすれば,本件で控訴人が被った損害の額は,原判決が認容した合計10万円を超えるものとは認められない。この点に関し,控訴人は,本件プログラムは無料若しくは安価である同様のプログラムにはない,初心者でも容易に設置でき,改造もしやすく,頻繁に変更される上位ドメイン管理データベースに追随しやすく設計されているという特徴があると主張するが,無料若しくは安価である同様のプログラムに比して,本件プログラムが控訴人が主張する優位性を備えていると認めるに足りる客観的な証拠はない。また,被控訴人の申\出により本件契約が締結され,本件プログラムの使用が特別に許諾されたという控訴人主張の事実は,損害の額に係る上記認定を左右するに足りるものではないし,本件での控訴人の損害の額が,被控訴人の平成22年度の売上額の1%に相当するとみるべき根拠もない。

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平成23(ネ)10041等 損害賠償等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年01月31日 知的財産高等裁判所

  元社員が別の会社で作成したプログラムについて複製・翻案権侵害と認定された著作権侵害事件の控訴審です。知財高裁は1審の判断を維持しました。
 上記事実関係によれば,被告プログラムのうち36個のファイルが原告プログラムの35個のファイルとほぼ1対1で対応し,かつ,被告プログラムの上記36個のファイルにおけるソースコードが原告プログラムの35個のファイルにおけるソ\ースコードと,記述内容の大部分において同一又は実質的に同一である。このように,測量業務に必要な機能を抽出・分類し,これをファイル形式に区分して,関連付け,使用する関数を選択し,各ファイルにおいてサブルーチン化する処理機能\を選択し,共通処理のためのソースコードを作成し,また,各ファイルにおいてデータベースに構\造化して格納するデータを選択するなど,原告プログラムのうち作成者の個性が現れている多くの部分において,被告プログラムのソースコードは原告プログラムのソ\ースコードと同一又は実質的に同一であり,被告プログラムは原告プログラムとその表現が同一ないし実質的に同一であるか,又は表\現の本質的な特徴を直接感得できるものといえる。

◆判決本文

◆原審はこちら 平成19(ワ)24698平成23年05月26日東京地裁

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平成19(ワ)24698 損害賠償等請求事件 平成23年05月26日 東京地方裁判所

 元社員が別の会社で作成したプログラムについて複製・翻案権侵害と認定されました。114条2項による侵害額の推定も認められました。
 証拠(乙11の1,3〜5)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年8月31日終了事業年度(1期)から平成21年8月31日終了事業年度(4期)までの間における,被告YKSC社の売上高の合計額は4億2 1 4 3 万1 3 8 4 円( 20,138,050 + 121,484,073 + 137,885,662 +141,923,599=421,431,384 円)であり,変動経費として売上高から控除すべき費用(材料費,外注加工費,旅費交通費)の合計額は1億3611万8708円(2,664,896+43,659,701+49,072,556+40,721,555=13,618,708 円)であると認められるから,上記期間における被告YKSC社の限界利益の合計額は2億8531万2676円であり,売上高に占める変動経費の比率は約32%であると認められる。本件では,上記のとおり,別紙売上集計表記載の一般測量,丁張測量,位置郎リース,成果(データ作成,図面・他成果)業務の売上高の一部について,被告ソ\フトを使用したことによる売上高であると認められるところ,上記認定に係るこれらの業務の性質や,被告YKSC社の業務のうち被告ソフトを使用したものと認められなかった業務の性質等を考慮すると,上記限界利益を算定するに当たって売上高から控除すべき変動経費は,売上高の30%と認めるのが相当である。したがって,上記(ア)a,b,同(イ)a,同(ウ)認定の売上高の合計額から3 0 % を控除した2 2 6 4 万5 6 6 5 円( { 6,560,430 +17,942,240+3,535,450+2,319,200+1,993,630}円×0.7=22,645,665円)が,被告YKSC社が被告ソフトを使用したことによる利益であると認められる。\n

◆判決本文

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平成20(ワ)11762 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成23年01月28日 東京地方裁判所

 プログラム著作物について、差止、損害賠償が認められました。問題となったプログラムは、被告が原告在職中に作成したものでした。なお、翻案の差止は認められず、実施料相当額は10%と判断されました。
ウ これに対し,被告らは,原告プログラムにおいては,画面上の構成要素を貼\り付け,ボタン等を配置するために必要なプログラムなど,開発ツールであるMicrosoft社の「Visual Studio.net」によって自動生成された部分が相当の分量に及んでおり,これらの部分には創作性がないとした上で,原告プログラムのうちのMainForm.csの原告ソースコードに含まれる各関数を分析すると,別紙5において☆,○又は□の印を記載したものについては,自動生成コードが相当割合を占めることから,創作性が認められない旨を主張する。しかしながら,MainForm.csの原告ソースコードについては,そこに含まれる各関数における自動生成コードの占める割合が被告ら主張のとおりであることを前提にしたとしても,少なくとも別紙5において△の印が記載された合計10の関数については,被告ら自身が汎用的でないコードからなるものであることを認めており,創作性が認められることに実質的な争いはないものといえる。また,別紙5において□の印が記載された合計164の関数についても,被告らは,自動生成コードの割合が1割程度にすぎないこと,すなわち,9割程度が自動生成コードではないことを認めているのであり,これらの関数については,少なくとも自動生成コードが相当割合を占めることを理由として創作性を否定することはできないというべきである。この点,被告らは,これらの関数について,汎用的プログラムの組合せであることを理由として創作性が否定されるかのごとく主張するが,汎用的プログラムの組合せであったとしても,それらの選択と組合せが一義的に定まるものでない以上,このような選択と組合せにはプログラム作成者の個性が発揮されるのが通常というべきであるから,被告らの上記主張は採用できない。してみると,被告らの上記主張を前提としても,MainForm.csの原告ソースコードについては,そこに含まれる298の関数のうちの約6割(174/298)において,自動生成コードが1割以下にとどまっており,それ以外のコードは,その選択と組合せにおいてプログラム作成者の個性が発揮されていることが推認できるというべきであるから,プログラム著作物としての創作性を優に肯定することができる。エさらに,後記(2)イで認定するとおり,原告プログラムは,主として被告A1がその開発及びプログラミング作業を行ったものであるから,原告プログラムの内容等を最も知悉する者は被告A1にほかならないところ,それにもかかわらず,被告らは,原告プログラムの一部であるMainForm.csの原告ソースコードについて,別紙5に記載した印に基づいて前記第3の1(2)ア記載の程度の概括的な主張をしてその創作性を争うにとどまっており,それ以外の原告プログラムの創作性については,具体的理由に基づいてこれを争う旨の主張は行っていない。しかも,被告A1は,その本人尋問において,自らが行った原告プログラムにおけるソースコードの記述方法について,様々な創意工夫がされていることを自認する供述もしている。前記イ及びウで述べたことに加え,上記のような被告らの訴訟対応や被告A1の本人尋問における供述をも総合すれば,原告プログラムが,全体として創作性の認められるプログラム著作物であることは,優にこれを認めることができる。
・・・
原告は,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づき,被告プログラムの翻案の差止めを求めている。そこで,被告らが,被告プログラムの翻案行為を現に行い,又は,これを行うおそれがあると認められるか否かにつき検討するに,まず,被告らが,被告プログラムを改変する行為を現に行っているとの事実を認めるに足りる証拠はない。また,被告プログラムを翻案する行為には,広範かつ多様な態様があり得るものと考えられる。ところが,原告の上記請求は,差止めの対象となる行為を具体的に特定することなく,上記のとおり広範かつ多様な態様を含み得る「翻案」に当たる行為のすべてを差止めの対象とするものであるところ,このように無限定な内容の行為について,被告らがこれを行うおそれがあるものとして差止めの必要性を認めることはできないというべきである。したがって,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づいて被告プログラムの翻案の差止めを求める原告の請求は理由がない。
・・・
そこで,上記会費収入を前提として,原告が原告プログラムについての著作権の行使につき受けるべき金銭の額(使用料相当額)を算定するに,i)社団法人発明協会発行の「実施料率【第5版】」(甲24)に記載されたソフトウェアを含む「電子計算機・その他の電子応用装置」の技術分野における外国技術導入契約において定められた実施料率に関する統計データによれば,平成4年度から平成10年度までのイニシャル・ペイメント条件がない契約における実施料率の平均は33.2パーセントとされ,特にソ\フトウェアにおいて高率契約の割合が高いとされていること,ii)原告プログラムは,原告において,多大な時間と労力をかけて開発されたものであり,かつ,原告の業務の中核となる重要な知的財産であって,競業他社にその使用を許諾することは,通常考え難いものであること,iii)他方,証拠(乙13,被告A1)によれば,被告会社においては,その会員に対し,被告ソフトを公衆送信して使用させることのみならず,被告会社が野村総研から購入した株価や銘柄に関するデータに種々の処理を施したものを提供するサービスや会員に対して電子メールで種々のアドバイスを送信するメールサービスも行っていることから,会員から得られる会費の中には,これらのサービスに対する対価に相当する部分も含まれており,本来,上記会費収入の全額が実施料率算定の基礎となるものではないことといった事情のほか,原告ソ\フト及び被告ソフトの内容,被告らによる侵害行為の態様及びそれに至る経緯,原告と被告らとの関係など本件に現れた一切の事情を総合考慮すれば,被告らによる平成19年1月から平成22年8月までの著作権侵害について,原告が受けるべき使用料相当額は,上記(ア)の会費収入合計額2045万1200円の約10パーセントに当たる200万円と認めるのが相当である(なお,被告らによる著作権侵害について,原告が受けるべき使用料相当額は,原告の原告ソフトの表\示画面に係る著作権侵害の主張が認められる場合でも,上記金額を超えるものとはいえない。)。

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平成21(ワ)35164 著作権移転登録請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年09月03日 東京地方裁判所

 プログラム著作権の帰属が争われました。権利の特定はSOFTICの登録番号でなされていました。権利の特定が容易となるというプログラム登録制度の意義が活用されています。

◆判決本文

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平成22(行コ)10001 情報非開示処分取消等請求控訴事件 その他 行政訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

 委託者には著作権は譲渡されていないと判断されました。
 一般的に,著作権は,不動産の所有者や預金の権利者が権利発生等についての出捐等によって客観的に判断されるのと異なり,著作物を創作した者に原始的に帰属するものであるから(著作権法2条1項2号,同法17条),ソフトウェアの著作権の帰属は,原則として,それを創作した著作者に帰属するものであって,開発費の負担によって決せられるものではなく,システム開発委託契約に基づき受託会社によって開発されたプログラムの著作権は,原始的には受託会社に帰属するものと解される。また,旧岡三証券とOISとの間の本件委託業務基本契約(甲22)に基づくデータ処理業務は,上記認定の内容からすれば,情報処理委託契約であると解されるところ,情報処理委託契約は,委託者が情報の処理を委託し,受託者がこれを受託し,計算センターが行う様々な情報処理に対し,顧客が対価を支払う約定によって成立する契約であって,著作権の利用許諾契約的要素は含まれないと解される。本件においては,前記認定のとおり,旧岡三証券とOIS間において,昭和55年7月1日に締結された本件委託業務基本契約にも,著作権の利用許諾要素は全く含まれていないが,それは上記の理由によりいわば当然であり,また,証拠(甲61,62,70ないし73)によれば,そのような場合でも,委託者が,受託者に対し,システム開発料として多額の支出をすることは,一般的にあり得ることと認められるから,単に開発したソ\\フトウェアが主に委託者の業務に使用されるものであるとの理由で,委託者がその開発料を支払っていれば,直ちにその開発料に対応して改変された著作物の著作権が委託者に移転されるということにはならないことは明らかである。著作権はあくまで著作物を創作した者に原始的に帰属するものであるから,例えば,日本ユニシスとOISとの間の平成15年10月1日付「アウトソーシング・サービス委託契約書」(乙61)において,その第9条2項に,日本ユニシスが保有するプログラムをOISが改良した場合の改良後のプログラムの著作権法27条及び28条の権利を含む著作権が日本ユニシスに帰属する旨が合意されているように,その譲渡にはその旨の意思表\\示を要することは,他の財産権と異なるものではない。したがって,本件においても,上記のような明示の特約があるか,又はそれと等価値といえるような黙示の合意があるなどの特段の事情がない限り,旧岡三証券が本件ソフトウェアの開発費を負担したという事実があったとしても,そのことをもって,直ちに,その開発費を負担した部分のソ\\フトウェアの著作権が,その都度,委託者である旧岡三証券に移転することはないというべきである。そして,本件全証拠を精査しても,一度原始的にOISに帰属した本件ソフトウェアの著作権が,旧岡三証券がその開発費用を支出した都度,本件譲渡契約前にOISから旧岡三証券に対して黙示的に譲渡されていたことなどの特段の事情を認めるに足りる証拠はない。\n

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◆平成17(ワ)2641 著作権確認等請求事件 著作権民事訴訟 平成21年02月26日 大阪地方裁判所

 争点の1つがプログラムが著作物性を有するかでした。裁判所は本件プログラムは著作物性であると認定しました。

 「プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表\ 現したもの」であり(著作権法2条1項10号の2),所定のプログラム言語,規約及び解法に制約されつつ,コンピュータに対する指令をどのように表現するか,その指令の表\ 現をどのように組み合わせ,どのような表現順序とするかなどといったところに,法により保護されるべき作成者の個性が表\ れることになる。したがって,プログラムに著作物性があるというには,指令の表現自体,その指令の表\ 現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十\ 分にあり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表\ れていることを要する。
 (3) 本件プログラムの著作物性の有無 

 本件プログラム全体について本件プログラムは,DHL車にTC車が複数両一挙に連結された場合に,何両のTC車が連結されたのかはDHL車に予め示されておらず,かつ各TC車の連結操作番号も決められていない状態から,DHL車の最寄り側から順次整然と連結操作番号が決定される等の特徴(前記(1)エ(キ))を,DHL車とTC車の部分が相まって初めて発揮するものであるから,全体としてひとまとまりの著作物というべきである。前記(1)において認定したとおり,本件プログラムの内容は,DHL車から連結されている複数のTC車に対し,任意の連結操作番号を付与し,常時電気信号を送信し,その受信状態により,連結状況・異常の有無を確認したり,ブレーキの解放・緊締のための信号を送信するもので,作業自体は,複数の種類がある上に,その作業の一つ一つについて相当程度の数の段階・順序を踏むものであり,その方法も,各車両の対向する部分に設置された搬送コイルの電磁信号送受信装置を用いるもので,非接触方式であり,搬送コイルによる非接触方式によるこのような車両の連結・解放・ブレーキ操作の方法・装置は,特許を取得する程度に新規なものであったことから,これに対応するプログラムも,当時およそ世の中に存在しなかった新規な内容のものであるということができる。したがって,本件プログラムは,DHL車の部分及びTC車の部分を併せた全体として新規な表現であり,しかも,その分量(ソ\ースリストでみると,DHL車の部分は1300行以上,TC車の部分は約1000行)も多く,選択配列の幅が十分にある中から選択配列されたものということができるから,その表\ 現には全体として作成者の個性が表れているものと推認することができる。」

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◆平成19(ワ)18724 損害賠償請求事件 著作権民事訴訟 平成20年12月25日 東京地方裁判所

   静止画の連続するゲームプログラムが映画の著作物に該当するかが争われました。裁判所は、該当しないと判断しました。
 「本件ゲームソフトの影像は,多数の静止画像の組合せによって構\成されており,静止画像の画面ごとに音楽や台詞が加えられ,台詞の終了ごとに所定の位置をクリックすること等をきっかけとして画面が変わること,主人公が登場人物と会話する場面の影像は,画面全体に「総帥室」,「エレツィオーネ厨房」など百貨店内の特定の場所を示す静止画像が表示されるとともに,画面上部中央に「零式真琴」などその登場人物の静止画像が表\示され,画面下部に主人公とその登場人物の会話等が順次表示されることで構\成されていること,プレイヤーが画面に表示された複数のコマンドの一つを選択するに従ってストーリーが展開し,コマンドの選び方によってストーリーが変化することが認められる。他方で,甲3からは,本件ゲームソ\フトの影像中に,動きのある連続影像が存することを認めることはできない。もっとも,甲3には,設定場面が変わる際に主人公等のキャラクターが静止画像で表示されているマップ上を移動する場面があるが,同場面は,本件ゲームソ\フトの影像のものではなく,被告ゲームソフトの影像の一部であると認められる。他に本件ゲームソ\フトの影像中に動きのある連続影像が存することを認めるに足りる証拠はない。・・・本件ゲームソフトの影像は,多数の静止画像の組合せによって表\現されているにとどまり,動きのある連続影像として表現されている部分は認められないから,映画の著作物の要件のうち,「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表\現されていること」の要件を充足しない。したがって,本件ゲームソフトは,映画の著作物に該当するものとは認められない。」

◆平成19(ワ)18724 損害賠償請求事件 著作権民事訴訟 平成20年12月25日 東京地方裁判所

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◆平成17(ワ)23419 損害賠償等請求事件 著作権民事訴訟 平成19年03月16日 東京地方裁判所

  DLLファイルの有する制限設定機能を排除し,単に,製品設計や開発という1つの目的に利用可能\な多くのモジュールを収載した1つのソフトウェアに変形し,すべてのモジュールが利用可能\となる環境を作り出す行為がプログラムの著作物の翻案であると判断されました。
 「本件ソフトウェアは,三次元な作図等に関する数多くのモジュールと,使用許諾されたモジュールを管理する本件DLLファイルとから成り,本件ソフトウェア中の本件DLLファイルが毎回LUMプログラムで設定されている使用許諾に関する情報を確認し,それを基に,許諾された範囲内でモジュールを使用可能にし,その使用環境を設定する機能\を有していたところ,本件ソフトウェア中の本件DLLファイルにつき別紙改変方法に記載した方法により改変をした本件改変行為により,本件改変行為がされた11台の各コンピュータですべてのモジュールを使用でき,かつ,本件ソフトウェアを同時に使用できるようになったものであるから,本件改変行為は,本件ソ\フトウェア全体に対する翻案権侵害に当たると認められる。」

◆平成17(ワ)23419 損害賠償等請求事件 著作権民事訴訟 平成19年03月16日 東京地方裁判所

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◆H14. 8.30 東京地裁 平成13(ワ)23818 著作権 民事訴訟事件

   最高裁の判断がでましたので、地裁レベルから紹介します。争点は、ゲーム中のキャラクター「かすみ」について,裸体の「かすみ」を選択できるようにメモリーカード上のパラメータ・データを編集できるプログラム(以下「本件編集ツール」という。)を収録したCD−ROMを販売する行為が、同一性保持権を害するか否かです。

 東京地裁は、「被告は,そのような本件編集ツールを使用して作成した本件メモリーカードを使用して,本件裸体画像を表示させる者がいることを予\期して,本件編集ツールを含む本件CD−ROMを多数販売し,その結果,ユーザーが被告の指示した方法に従って機器を操作することによって本件メモリーカードを作成し,それを通常のメモリーカードの使用方法に従って使用することにより,本件裸体画像が表示され,本件ゲームソ\フトが改変されたものと認められるから,本件CD−ROMに本件編集ツールを収録して販売し,その使用を意図して流通に置いた被告は,本件メモリーカードの使用による本件ゲームソフトの同一性保持権の侵害を惹起したものとして,民法709条の不法行為に基づく損害賠償責任を負うと解するのが相当である」と判断しました。

 控訴及び上告されましたが、いずれの棄却です。

 控訴審では、「本件ゲームソフトにおいて,「かすみ」のコスチューム数を記録しているアドレス13E0Fに7というデータを収録し,これをPS2に読み込んでプレイすること,すなわち,「ストーリーモード」の対戦画面において「かすみ」が本件裸体影像で対戦相手と戦闘することは,本件ゲームソフトの対戦画面の影像ないしゲーム展開が,本来予\定された範囲を超えたものと認められる・・・本件メモリーカードの使用は,本件ゲームソフトを改変し,本件同一性保持権を侵害するものというべきであるところ,本件編集ツールは,本件編集による本件メモリーの作成のみを目的とするものであるから,専ら本件ゲームソ\フトの改変のみを目的とするものと認めることができ,これを収録した本件CD-ROMを販売し,他人の使用を意図して流通においた控訴人は,他人の使用による本件同一性保持権の侵害を惹起したものとして,被控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負うものというべきである」と認定されました。

   高裁判断です。◆H16. 3.31 東京高裁 平成14(ネ)4763 著作権 民事訴訟事件

◆H14. 8.30 東京地裁 平成13(ワ)23818 著作権 民事訴訟事件

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◆H16.11.24 東京高裁 平成14(ネ)6311 不正競争 民事訴訟事件

   コンピュータゲームについての翻案か否か等が争われました。裁判所は本質的創作部分を認定して、翻案にあたらないと判断しました。
 「翻案権とは,原著作物を利用して創作性を加え,別個の著作物を創作する権利であるから,二次的な著作物に新たな表現が付加されたからといって,直ちに翻案該当性が否定されるわけではない。しかしながら,新たな表\現が付加されることにより,二次的な著作物が原著作物との同一性を失い,これに接する者が著作物全体から受ける印象を異にすると認められるときは,二次的な著作物から原著作物の創作的特徴を直接感得することはできないから,その二次的著作物はもはや原著作物の複製ないし翻案ということはできないと解すべきである。」

   原審です。H14.11.14 東京地裁 平成13(ワ)15594 不正競争 民事訴訟事件

◆H16.11.24 東京高裁 平成14(ネ)6311 不正競争 民事訴訟事件

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◆H15.10.23 大阪地裁 平成14(ワ)8848 著作権 民事訴訟事件

プログラムを違法複製して授業をしていたコンピュータスクールとその代表取締役が、複製権侵害などを問われました。争点は複製数と損害額です。
前者(複製数)については、「本件プログラムのインストールを直接確認できたコンピュータはもとより、そのインストールの痕跡があるコンピュータについても、本件プログラムの複製の事実を推認させるものということができる」と認定しました。
また、後者については、原告は、”標準小売価格の2倍”を主張しましたが、裁判所は、”不法行為による損害賠償の制度は、直接にそのようなことを目的とするものではない・・・プログラムの違法複製について、原告らの主張(プログラムの正規品購入価格より高額の金銭を支払うべきものとすること)を根拠付けるような実定法上の特別規定があるわけではないし、そのような内容の社会規範が確立していると認めるべき証拠もない。・・・一方、被告らは・・・卸売価格相当額である旨を主張するが、違法行為を行った被告らとの関係で、適法な取引関係を前提とした場合の価格を基準としなければならない根拠を見い出すことはできない。”として、”原告らが受けるべき金銭の額に相当する額(著作権法114条2項)としては、本件プログラムの標準小売価格を基準として算定すべき”としました。

  ほぼ同様の判断をおこなったLEC事件です。
◆H13. 5.16 東京地裁 平成12(ワ)7932 著作権 民事訴訟事件

     こちらはLEC事件とは違う判断をおこなった事件です。
◆H14.10.31 東京地裁 平成13(ワ)22157 著作権 民事訴訟事件

          

◆H15.10.23 大阪地裁 平成14(ワ)8848 著作権 民事訴訟事件

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◆H15. 1.31 東京地裁 平成13(ワ)17306 著作権 民事訴訟事件

   プログラムの著作物について、複製ないし翻案したか否かが争われました。裁判所は、判決理由にて、「原告プログラムの創作性を有する本質的な特徴部分を直接感得することもできない」と翻案に対する判断基準に言及しました。

 

◆H15. 1.31 東京地裁 平成13(ワ)17306 著作権 民事訴訟事件

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