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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商4条1項各号

◆平成18(行ケ)10344 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年11月29日 知的財産高等裁判所

 1本の毛髪を表した図形商標が、識別性なしとして拒絶された審決が維持されました。
  「本願商標の構成は,前記2(1)において認定したとおり,中心に縦に描かれた黒色の棒状体が,上端から下端に行くにしたがってだんだんと太くなっていき,・・・本願商標の指定商品・指定役務に含まれる商品・役務の広告において,実際に,商品・役務の品質,用途の文章による説明とともに,その理解を助ける補足的な説明として,上記のような図形が多数掲載されていることが認められる。そうすると,本願商標を構成する図形は,その指定商品・指定役務との関係上,その商品・役務の特性そのものを記述するに止まるものであって,それ以上に,特定の者によって製造販売されたことを明らかにするという出所表\示機能を果たしにくいものであり,また,このような図形については,その使用の機会を当該商品を製造販売する多くの事業者に開放しておくことが適当であって,その中の一部の事業者に当該商標の商標登録を許し当該商標の使用を独占させるのは公益上望ましくないというべきである。以上によれば,本願商標を法3条1項3号に該当するものとした審決の判断に誤りはない。」

◆平成18(行ケ)10344 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年11月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10233 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年11月20日 知的財産高等裁判所

  図形と結合した商標について称呼が類似するので類似であるとした審決が取り消されました。
 「本願商標のような,文字部分と図形部分の結合から成る商標(いわゆる「結合商標」)の類否を判断するに当たっては,商標の構成全体が有するデザインとしての有機的関連性をも踏まえて,文字部分と図形部分とを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められるか否か,という観点からの検討が不可欠である。
イ そこで,上記の観点から本願商標の構成をあらためて検討すると,本願商標は,前記のとおり,「X−Pact」の文字部分を囲むように,文字部分の上側左半分から左側,下側を通って右側中程に至るまで,半月刀ないし三日月様の図形が描かれている。そして,「X−Pact」の文字には,標準文字ではなく,ゴシック様の斜字体が用いられているが,当該字体の選択は,半月刀ないし三日月様の図形がもたらす生き生きとした動的な印象との調和を考慮して行われたものであることがうかがわれる。また,文字部分と図形部分との配置関係についても,文字部分を図形部分が包み込むようなものとなっており,かかる配置は,デザインとしての一体性を有するものと認められる。このように,本願商標は,文字部分と図形部分とを「分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合している」とまではいえないにしても,標準文字と図形とを上下又は左右に単純に併記したような商標とは異なり,文字部分と図形部分との間に,デザインとしての有機的な関連性が認められるというべきである。したがって,審決が,文字部分から生ずる称呼の類否についての検討に「その外観に終始し,外観についてはおいて相違するところがあるとしても」(2頁最終段落)と述べるだけで実質的な検討を欠いたまま,本願商標と引用商標とが類似すると判断したことは,本願商標と引用商標とが外観において著しく相違することを看過したものであって,不適切であるといわざるを得ない。・・・前記(1)のとおり,商標の類否は,両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその取引の実情を明らかにしうるかぎり,その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。
イ 上記の点につき,本願の指定商品の冒頭に掲げられている「圧延機,連続鋳造機」についてまず検討すると,これらの商品は,その名称からして,製鉄工場等に設置される大規模な機械装置であって,取引者・需要者は製鉄業等の専門的知識を有する少数の者であり,実際の購入に当たっては,機械の性能やメーカーの信用等についての慎重な検討が行われることが,容易に推認される。そうすると,上記(2),(3)イで認定したとおり,本願商標と引用商標とは外観において相違することや,称呼の類似の程度もさして高くはないことに照らし,取引者・需要者において,出所の混同が生じる可能性は著しく低いというべきである。もっとも,「その他の金属加工機械器具」として動力付き手持工具等を,「電子応用機械器具」としてパーソ\ナルコンピュータ等をそれぞれ想定した場合には,これらは一般の消費者も手にする商品であるから,取引に際して払われる注意力等は,「圧延機,連続鋳造機」等の取引におけるものよりは相対的に低いと推認されるが,これらの商品も日用品とは異なるから,上記(2),(3)イで認定した本願商標と引用商標との相違に照らして,取引者・需要者において出所の混同が生じる可能性は低いというべきである。
ウ したがって,本願商標と引用商標とは,同一または類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとは認められない。」

◆平成18(行ケ)10233 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年11月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10349 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年09月20日 知的財産高等裁判所

 「赤毛のアン」の原題である「ANNE OF GREEN GABLES」の登録が公序良俗に反するとして無効とされた審決が、維持されました。
 結論は同じですが、審決は,「被告を含むカナダ国政府との国際信義に反する」として無効としましたが、知財高裁は詳細な検討をした上で無効としています。
   「ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,?@その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,?A当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,?B他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,?C特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,?D当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである。」
 「題号は,当該著作物の標識というべきものであるから,その著作物を他の著作物から識別する機能を有するとともに,当該著作物の評価や名声がその題号に化体し,著名な著作物についてはその題号自体が大きな経済的価値を有する場合があり,本件著作物のような世界的に著名な題号が有する経済的な価値は,計り知れないものがある。本来万人の共有財産であるべき著作物の題号について,当該著作物と何ら関係のない者が出願した場合,単に先願者であるということだけによって,当該指定商品等について唯一の権利者として独占的に商標を使用することを認めることは相当とはいい難く,商標登録の更新が容易に認められており,その権利行使は半永久的に継続されることになることなども考慮すると,なおさら,かかる商標登録を是認すべき必要性は低いというべきである。そうすると,本件著作物のように世界的に著名で,大きな経済的な価値を有し,かつ,著作物としての評価や名声等を保護,維持することが国際信義上特に要請される場合には,当該著作物と何ら関係のない者が行った当該著作物の題号からなる商標の登録は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当すると解することが相当である。」

◆平成17(行ケ)10349 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年09月20日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10840 審決取消請求事件 平成18年05月10日 知的財産高等裁判所

  商標「マジカルウェスト」が「マジカルクエスト」と類似するとした審決が維持されました。
 「「クエスト」に接したときにそれが「探索」という意味であると直ちに 理解されるほどの状況になっているということは困難であるのみならず,一 般消費者の英語の理解度からしても,「クエスト」に接したとき,それが 「探索」という意味であると直ちに理解することも困難というべきである。 また,原告が,本願商標及び引用商標から生ずる観念であると主張する 「魔法の腰のくびれ」,「魔法の西域」又は「魔法の探索」という観念自体 が,いずれも一般的な言語表現とはいえず,その具体的意味すら明らかでないものであるから,これを本願商標に係る各指定商品の取引者・需要者であ\nる一般消費者が直ちに想起できるということ自体にも無理がある。 したがって,原告の上記の主張は採用することができない。」

◆平成17(行ケ)10840 審決取消請求事件 平成18年05月10日 知的財産高等裁判所

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◆H18. 2.15 知財高裁 平成17(行ケ)10741 商標権 行政訴訟事件

  14March=π(Pi・Pie)Day」の文字と「14March」の文字の下部に「3.14」の文字を表してなる商標について指定商品「菓子及びパン,即席菓子のもと」が登録されていました。これについて、「指定商品「パイ」については、4条1項11号違反、他の商品については同項16号違反」との無効審判が請求されました。審決では、指定商品「パイ」については、4条1項11号であると判断されましたが、16号違反についは理由無しと判断されました。16号違反について理由無しとした判断について、審判請求人は、審決取消訴訟を提起しました。裁判所は、16号違反であるとして、無効不成立の部分を取消しました。
  「確かに,本件商標は菓子パイそのものを意味するものではなく,「Pie」の文字も本件商標の一部を構成するにすぎない。また,一般的な需要者にとって,本件商標が「3月14日が菓子のパイの日である」との意味を持つと即座に理解することが必ずしも容易ではないことは,甲1のアンケート結果(問12)が示すとおりである。しかしながら,前記判示のとおり,本件商標はホワイトデーという多くの人が限られた期間内に菓子類等を買い求める機会に使用されるものであり,そのことが商標の構\成から明らかであるところ,同商標には,パイ菓子であることを直接的に示す平易な英語である「Pie」という言葉が使われ,さらに「π」「Pi」も「パイ」と呼称されるのであるから,ホワイトデーの贈り物として菓子類やパン類を求めにきた需要者は,本件商標に接した場合,その内容,品質がパイ菓子であって,他の種類の菓子やパンではないと認識するのが自然である。そうすると,本件商標が,パイ菓子以外の「菓子及びパン,即席菓子のもと」に使用された場合には,需要者はその商品の品質,内容がパイ菓子であると誤認するおそれがあるというべきである。」

◆H18. 2.15 知財高裁 平成17(行ケ)10741 商標権 行政訴訟事件

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◆H18. 1.31 知財高裁 平成17(行ケ)10565 商標権 行政訴訟事件

  本件商標「サイクロンドライヤー」が引用商標「Cyclo」に類似するかが争われました。指定商品は、第9類「産業機械器具・・」です。裁判所は、商標「サイクロンドライヤー」からは「サイクロン」という称呼が生じ、「サイクロン」は「Cyclo」と類似するとした審決を維持しました。
 「「サイクロンドライヤー」の称呼は,10音にわたるものであるから,簡易・迅速を尊ぶ取引の実際において,冗長なものとして認識される場合がないということはできないし,上記のとおり,本願商標の構成からみて,「サイクロン」と「ドライヤー」の各文字部分が分離して認識され得るものであり,本願の指定商品中の「乾燥機,乾燥装置」との関係においては,本願商標中の「ドライヤー」の文字部分は,自他商品を識別する標識としての出所表\示機能を有さないものであるから,当該部分を省略して「サイクロン」の称呼が生じることは十\分あり得ることというべきである。なお,原告は,過去の裁判例を引用するが,これらは,商標全体が一連のものとして周知性を獲得しているなど,それぞれ本件と事情を異にする事例に関するものというべきである。したがって,原告の上記主張も採用できない。・・・上記「サイクロン」及び「サイクロ」の各称呼は,「サイクロ」の音を共通にしており,語尾の「ン」の有無の点が異なるのみである。そして,「ン」の音(撥音)は,「子音だけで母音を含まないため,上につく音節といっしょにして一音節と数える」(日本文法用語辞典・初版,乙12)ものであり,鼻音である(広辞苑・第5版,乙13)から,その発音に際しては強調されることがなく,極めて聴取しにくい音といわざるを得ない。・・また,原告は,「サイクロ」が,日本人に何の観念も想起させない造語であるのに対し,「サイクロン」は「熱帯低気圧」の意味を有するので,両者は観念において明確に相違するから,互いに紛れることはない旨主張する。確かに,引用商標は,特定の観念を生じないため,本願商標と引用商標の観念を比較することができず,両商標が観念において類似するとはいえない。しかしながら,前記のとおり,両商標は,その称呼において極めて類似するものであるから,観念において類似するものでなくても,両商標は,互いに紛らわしいものといわざるを得ない。したがって,原告の上記主張も採用できない。」

◆H18. 1.31 知財高裁 平成17(行ケ)10565 商標権 行政訴訟事件

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◆H17.12.27 知財高裁 平成17(行ケ)10613 商標権 行政訴訟事件

 「自由学園」が「学校法人自由学園」の著名な略称であり、「国際自由学園」はかかる略称を含むので商標法4条1項8号により登録を受けられないかが争われました。東京高裁(当時)は同号には該当せずと判断しました(H16(行ケ)168号)が、この判断が最高裁で破棄、差し戻しされました(H16年(行ヒ)343号)。知財高裁は、さらに審理を行い、同号に該当すると判断しました。
 「原告は,大正10年の設立以来,原告略称を教育及びこれに関連する役務に長期間にわたり使用し続け,本件出願時を経て本件審決時に至るまでの間,各種の書籍,新聞,雑誌,テレビ等で度々取り上げられてきており,これらにおいては,原告を示す名称として原告略称が用いられてきたのであるから,原告略称は原告を指し示すものとして一般に受けいられていたものと認めることができ,したがって,上記基準時(本件出願時及び登録査定時)において,原告略称は原告の名称の「著名な略称」であったと認めることができる。・・・人の名称等の略称が8号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するについては,常に,問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく,その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものであるというのでから,「教育関係者を始めとする知識人」ないしこれに「指定役務の需要者である学生等」を加えた限定された層を基準とする被告の上記主張は,採用することができない。

 最高裁の判決はこちらです。 H16年(行ヒ)343号

◆H17.12.27 知財高裁 平成17(行ケ)10613 商標権 行政訴訟事件

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