H14. 8.27 東京高裁 平成13(行ケ)539 商標権 行政訴訟事件

平成13年(行ケ)第539号 審決取消請求事件
平成14年6月6日口頭弁論終結
            判       決
      原      告    沖電気工業株式会社
      訴訟代理人弁理士   木 村 三 朗
      同          佐々木 宗 治
      同          大 村   昇
      同          小 林 久 夫
      被      告    Y
             主       文
    特許庁が無効2000−35478号事件において平成13年10月18日にした審決を取り消す。
    訴訟費用は被告の負担とする。
               事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判

 1 原告
    主文同旨
 2 被告
    原告の請求を棄却する。
    訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
   被告は,「OKI DOKI」の文字を横書きして成り,第38類「移動体電話による通信,テレビジョン放送,有線テレビジョン放送」を指定役務とする,商標登録第4377687号商標(平成10年12月19日登録出願,平成12年4月21日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
     原告は,平成12年9月6日,本件商標の商標登録を無効にすることについて審判を請求した。
   特許庁は,これを無効2000−35478号事件として審理し,その結果,平成13年10月18日に,「本件審判の請求は,成り立たない。審判費用は,請求人の負担とする。」との審決をし,その謄本を,平成13年10月30日,原告に送達した。

 2 審決の理由
     審決は,別紙審決書の写しのとおり,@本件商標は,審決書の別掲(1)に示すとおり,「OKI」の文字を横書きして成り,第11類「電気機械器具(但し,電線,ケーブルを除く)電気通信機械器具,電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料(但し,絶縁テープ,絶縁用ゴム製品を除く)」を指定商品として,昭和53年12月8日に登録出願,昭和56年7月31日に設定登録された登録第1471372号商標(以下「引用A商標」という。),及び,審決書の別掲(2)に示すとおり,「OKI」の文字を横書きして成り,第38類「移動体電話による通信,テレックスによる通信,電報による通信,ファクシミリによる通信,無線呼出し,テレビジョン放送,有線テレビジョン放送,ラジオ放送,報道をする者に対するニュースの提供」を指定役務として,平成4年9月30日に登録出願,平成7年12月26日設定登録された登録第3107407号商標(以下「引用B商標」という。引用A商標と引用B商標をまとめて表現するときは,「引用商標」という。)とは類似せず,商標法(以下「法」という。)4条1項11号に該当しない,A本件商標は,原告の業務と混同を生ずるおそれがある商標ではなく,法4条1項15号に該当しない,B本件商標は,原告の著名な略称を含む商標ではなく,法4条1項8号に該当しない,C本件商標は,不正の目的をもって出願されたものではなく,法4条1項19号に該当しない,と認定判断し,請求人(原告)の主張する無効理由をすべて排斥した。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
     審決は,本件商標は,引用商標とは類似せず,法4条1項11号に該当しない,と誤って認定判断し(取消事由1),本件商標は,原告の業務と混同を生ずるおそれがある商標ではなく,法4条1項15号に該当しない,と誤って認定判断し(取消事由2),本件商標は,原告の著名な略称を含む商標ではなく,法4条1項8号に該当しない,と誤って認定判断し(取消事由3),本件商標は,不正の目的をもって出願されたものではなく,法4条1項19号に該当しない,と誤って認定判断したものであり(取消事由4),これらの誤りがそれぞれ結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として取り消されるべきである。

 1 取消事由1(法4条1項11号違反・本件商標と引用商標との類似性)
   (1) 称呼の類似性
      審決は,本件商標の「「オキドキ」の称呼は,冗長というべきものではなく,簡潔に一気に称呼し得るものであり」(審決書8頁31行〜32行)と認定した。
      しかし,本件商標は,「OKI」の語と「DOKI」の語との間に約1文字分の間隔が設けられているため,「OKI」の語と「DOKI」の語を単純に結合した商標として認識され,その構成に対応して,「オキ」と「ドキ」の2音節の間に若干の間(ま)を置いて,「オキ ドキ」と称呼される。
      このように称呼されると,引用商標の「OKI」が著名であるため,本件商標の称呼中,「オキ」の部分が主として聴取され,記憶されることになる。
      したがって,本件商標と引用商標は称呼において類似する。

   (2) 観念の類似性
      審決が,「本件商標は,いわゆる「OK」(オーケー)の口語表現である旨,被請求人は述べ証拠を挙げているが,証拠によってはそのような事実は認められないものであって」(審決書9頁1行〜3行)と認定したのは正当である。しかし,審決が,本件商標が,「造語と認められるから,特定の観念を生ずるものとはいえず,引用商標とは比較することができない。」(審決書9頁3行〜4行)と認定したのは,誤りである。
      本件商標は,「OKI」の語と「DOKI」の語を,1文字分の間隔を空けて単純に結合した商標であり,また,「OKI」の語は,原告の著名な引用商標であると同時に,原告の著名な略称であるから,看者は,本件商標中の「OKI」の語に注意を引かれ,「OKI」の語から,原告を観念するのである。したがって,本件商標と引用商標は,観念において類似する。

   (3) 商標法4条1項11号
     審決は,「本件商標は,引用商標とその外観,称呼及び観念のいずれにおいても類似しない商標といえる」(審決書9頁5行〜6行)と認定した。しかし,称呼及び観念についての審決の認定は,上記のとおり誤りである。本件商標は,法4条1項11号に違反して登録されたものというべきである。
 2 取消事由2(法4条1項15号違反・本件商標と原告の業務との混同)
   (1) 原告は,世界的規模で通信・情報分野の業務に携わるいわゆるリーディングカンパニーの一つである。原告は,1881年に設立されて以来,電話機・交換機,後にはファクシミリ等の電気通信の分野における業務を中心として,電子計算機・プリンター・現金自動預払機等の情報処理機器及びIC・LSI等半導体の電子デバイスの分野並びにCATV・インターネットを利用した画像通信等の分野にも事業を拡大し,総合エレクトロニクスメーカーとして情報社会の発展に貢献する商品やサービスを提供している。

     原告は,現在,日本国内に41の支社及び支店を有し,海外には,アメリカ地域に7,ヨーロッパ地域に19,アジア地域に12の子会社を,ヨーロッパ,アジア,オセアニアに四つの駐在員事務所をそれぞれ有する,全世界的な規模で活躍する電気通信・情報の分野におけるいわゆるリーディングカンパニーの一つとなっている。また,原告は,関連子会社である株式会社沖データの管理下に47の関連子会社(2001年7月31日現在)を配置して,巨大な組織を効率よく関連させて,更に新しい事業への発展を目指している。
   (2) 原告は,その創業以来「OKI」を社章(ハウスマーク)として使用しており,これをその製造販売する個々の製品にも表示してきた。
     原告の引用商標「OKI」は,原告のすべての本支店の社屋,パンフレット,カタログ類を含むすべての印刷物,看板,雑誌・新聞広告を含むすべての宣伝物,展示会等の催物において,原告を表示するハウスマークとして表示されており,また,原告の関係会社によっても,それらが原告のグループに属することを表示するものとして,原告の指示に基づいて使用されている。

     原告が,このように永年にわたり引用商標を広範に使用してきたことにより,原告の引用商標は,需要者間に原告及び原告のグループ会社自体を表示するハウスマークとして,また,原告及び原告のグループ会社の業務に係る製品及び役務を示す表示として,遅くとも本件商標が出願された平成10年12月19日当時には,周知であった。
   (3) 審決の「引用A商標は電話機械器具,ファクシミリ等の商品について別掲に示す構成態様で有名商標として知られている」(審決書9頁9行〜10行)との認定は,引用商標が周知である範囲を「電話機械器具,ファクシミリ等の商品」に限定している点で誤っていることは,上に記載したところから明らかである。原告の主たる事業である通信機器,放送機器及びインターネットの機器とそれらに関連するソフトウェア技術と,本件商標の指定役務「移動体電話による通信,テレビジョン放送,有線テレビジョン放送」とは,機器とその機器を用いた通信・放送サービスの関係にあり,互いに類似する商品と役務である。

   (4) 原告は,原告及び原告グループ企業が製造販売する通信・情報の分野における個々の商品又はその提供する役務を表示するために,引用商標を基本とする様々な種類の多数のファミリーマークを使用している(ここにいうファミリーマークとは,ある企業が,一つの商標を基幹としてこれに種々の文字を結合させて,自己及びその支配権を有するグループ,企業の商品・役務に広く使用することにより,それら商標が同一の出所(グループ)のものであることを識別することを意図する,商標のグループの総称のことである。原告においては,「OKI」と他の語を,一文字分の間隔を空けて,又は間隔を空けないで,結合した商標である。)。ファミリーマークとして需要者の間に認識されるようになったものの構成要素と同一の構成要素を含む商標を他人が使用した場合,その他人の商標が,当該ファミリーを構成している個々の商標とは,一般的基準によれば非類似であると考えられる場合においても,その他人の商標の使用は,当該ファミリーマークとの間に混同を生ずるおそれがあることになる,と判断されるべきである。
   (5) 本件商標は,原告の引用商標「OKI」の書体と似た態様の書体で表示され,これを他の語から分離した状態で語頭部に配置する構成であるから,本件商標を見る者は,この「OKI」の語に注意を引き付けられる。したがって,上に記載したところからすれば,本件商標がその指定役務に使用された場合,本件商標を見る者は,原告又は原告グループ企業を直感的に認識することになるのであり,本件商標を原告又は原告グループ企業の業務に係る役務を表示する商標であると誤認混同するおそれが大きいのである。したがって,審決の「本件商標は,請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれは認められない。」(審決書9頁14行〜16行)との認定判断は誤りである。本件商標は,法4条1項15号に該当するというべきである。
 3 取消事由3(法4条1項8号違反・原告の著名な略称)
    本件商標は,原告の著名な略称である「OKI」を含む商標である。原告は,自らを「沖電気」あるいは「沖」と称することもあり,英文で表示するときは「OKI」と称している。また,「OKI」が原告の略称として著名であることは,上記2(2)で述べたとおりである。したがって,本件商標は,原告の著名な略称を含む商標に該当することが明らかであり,法4条1項8号に該当する。審決の「本件商標は,他人の著名な略称を含む商標に該当するものとは認められない。」(審決書9頁18行〜19行)との認定判断は誤りである。
 4 取消事由4(法4条1項19号違反・不正の目的)
    原告の引用商標は,上記のとおり,通信・情報の技術分野において,取引者・需要者間に周知の商標である。したがって,被告が本件商標を原告の業務と混同を生ずるおそれのある指定役務に出願をした行為は,原告の引用商標の著名性にフリーライドし,原告に関係するかのように装って不正に利得しようとする意図によるものであることが明らかである。したがって,審決の「本件商標は,前示認定判断したとおりであるから,・・・不正の目的をもって出願されたものとは認められない。」(審決書9頁21行〜23行)との認定判断は,誤りである。本件商標は,法4条1項19号に該当するというべきである。

第4 被告の反論の要点
 1 取消事由1(法4条1項11号違反・本件商標と引用商標との類似性)について
   (1) 本件商標について
      本件商標を構成する「OKI DOKI」の語は,英語のOkeydokeyと同じ意味を表すものとしてインターネットのホームページ等で使用され,あるいは,意味を持つかどうかは別として,楽曲のタイトル等にも使用されており,社会的に認知されてきている。本件商標は,もともと,「OKI」の語と「DOKI」の語とが結合した独自の造語であり,これが引用商標と類似することはあり得ない。
   (2) 称呼及び観念の類似性について
      本件商標から生ずる称呼は,[okidoki]であり,これは,英語のOkeydokeyの発音である[oukidouki]と極めてよく似ている。したがって,本件商標は,その称呼からも,Okeydokeyという英語を直接的に連想させる優れた造語であり,「OKI」のみからなる引用商標とは,称呼において類似しない。また,仮に,「OKI」の語が原告の略称として知られているとしても,本件商標に接する者が,「OKI」の語のみに注意を向けることもないから,本件商標から原告の観念が生ずるということもない。

 2 取消事由2(法4条1項15号違反・本件商標と原告の業務との混同)について
    原告が,世界的な規模で通信・情報分野の業務に携わるいわゆるリーディングカンパニーの一つであるとしても,本件商標と引用商標とは,上記1のとおり,明らかに別の商標であるから,見る者に出所の混同を生じさせるものではない。
 3 取消事由3(法4条1項8号違反・原告の著名な略称)について
    「OKI」が原告の著名な略称であるとしても,本件商標は,それ単独で意味を持つ商標であるから,本件商標中に「OKI」という文字があることのみをもって,原告の著名な略称を含んでいるものということはできない。
 4 取消事由4(法4条1項19号違反・不正の目的)について
    被告は,不正の目的をもって,本件商標を出願し,使用しようとするものではない。

第5 当裁判所の判断
 1 取消事由2(法4条1項15号違反・本件商標と原告の業務との混同)について
   (1) 本件商標の出願時における商品又は役務の出所の混同のおそれについて
     (ア) 証拠(甲4ないし32,甲34ないし277,甲285(各枝番を含む。))によれば,次の事実が認められる。
       (a) 原告は,1881年に設立されて以来,電話機・交換機・後にはファクシミリ等の電気通信の分野における業務を中心として発展し,現在では,電子計算機・プリンター・現金自動預払機等の情報処理機器及びIC・LSI等半導体の電子デバイスの分野並びにCATV・インターネットを利用した画像通信等の分野に事業を拡大し,各分野におけるいわゆるリーディングカンパニーの一つとなっている。
         原告は,平成11年9月30日現在,日本国内に,約38の支社及び支店等及び六つの研究所並びに39の関係会社を有し,海外には,アメリカ地域に5,ヨーロッパ地域に19,アジア地域に10の子会社を,ヨーロッパ,アジア,オセアニアに五つの駐在員事務所を,それぞれ有している(特段の急激な変動があったことを認めるに足りる証拠はないので,本件商標の出願時である平成10年12月19日においても,これとほぼ同規模であったものと推認することができる。)。

       (b) 引用商標「OKI」は,原告のすべての本支店の社屋,パンフレット,カタログ類を含むすべての印刷物,及び,看板,雑誌・新聞広告を含むすべての宣伝物,並びに,展示会等の催物において,原告の業務に係る製品及び役務を示す表示として使用されており,また,「OKI」との標章は,これによって,原告を表示する社章(ハウスマーク)と認識されるに至っている。さらに,原告の関係会社も,それらが原告のグループに属することを表示するものとして,「OKI」との標章を原告の指示に基づいて使用している。
         原告は,引用商標を基幹とする多数の登録商標を有しているだけでなく,これらの登録商標の一部を実際に商標として使用している。原告が実際に使用している登録商標は,具体的には,OKI Frameware,OKITAC,OKIMATE,OKITYPER,OKISONIC,OKIFAX,OKIDES,OKIBUILTICS,OKITECS,OKINET,OKIGAL,OKITRON,OKICOM,OKIPOS,OKIMAIL等であり,これらの商標は,原告のハウスマークである「OKI」とともに使用されている。

         引用商標を構成する「OKI」の語は,本件商標の登録出願前,既に,引用B商標として,本件商標の指定役務である「移動体電話による通信,テレビジョン放送,有線テレビジョン放送」を含む第38類の多くの役務について登録され,引用A商標として,第11類「電気機械器具(但し,電線,ケーブルを除く)電気通信機械器具,電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料(但し,絶縁テープ,絶縁用ゴム製品を除く)」について登録されたのを始めとして,本件商標の登録出願後ではあるものの,平成13年末現在では,商品及び役務42区分中,33の区分に防護標章として登録されている。また,引用商標を構成する「OKI」の語は,特許庁のインターネットのホームページで日本国の周知・著名商標として掲載されており,平成10年にAIPPI・JAPANによって編纂、刊行された日本有名商標集(FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN)にも掲載されている。
         原告が,このように永年にわたり,上記「OKI」の語をハウスマーク及び商標として広範に使用してきたことにより,この「OKI」の語は,遅くとも本件商標が出願された平成10年12月19日当時には,本件商標の指定役務の需要者の間はもとより,一般の消費者の間においても,原告及び原告のグループ会社自体を表示するハウスマークとして,あるいは,原告及び原告のグループ会社の業務に係る製品及び役務を示す商標として,周知・著名であったものというべきである。
     (イ) 本件商標の「OKI DOKI」は,引用商標「OKI」の書体と似た態様の書体で表示された「OKI」の語を,「DOKI」の語から分離した状態で語頭部に配置する構成である。そして,「OKI DOKI」の語は,後述のとおり,一般の日本人を基準にして考察した場合に,特定の意味を持った英語として認識されることはほとんどなく,「OKI」と「DOKI」の二語からなる,いわゆる造語として認識されるものであること,及び,引用商標を構成する「OKI」の語が,上記認定のとおり,本件商標の指定役務の分野において,原告のハウスマークとして,また,原告及び原告のグループ会社の業務に係る製品及び役務を示す商標として,遅くとも本件商標が出願された平成10年12月19日当時には,周知・著名であったことからすれば,本件商標を見る者は,この中の「OKI」の語に注意を引き付けられ,この「OKI」の文字部分に着目して,上記原告の「OKI」のハウスマークあるいは引用商標を連想するものと認められ,したがって,本件商標をその指定役務に使用すれば,そのことによって,その役務が,原告又は原告と組織的・経済的に密接な関係がある者の業務に係る役務であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
   (2) 審決時における商品の出所の混同のおそれについて
      本件商標の商標登録出願時から審決時までの間に,前記(1)で認定した事情に変化があったものと認めるに足りる証拠はないから,審決時においても,前記(1)で認定した混同のおそれは,なお継続していたものと認められる。
   (3) 混同のおそれに関する被告の主張について
      被告は,本件商標と引用商標は,明らかに別の商標であるから,見る者に出所の混同を生じさせるものではない,本件商標から生ずる称呼は,[okidoki]であり,これは,英語のOkeydokeyの発音である[oukidouki]と極めて似ている,したがって,本件商標は,その称呼からも,Okeydokeyという英語を直接的に連想させる優れた造語であり,「OKI」のみからなる引用商標とは称呼において類似しない,また,仮に,「OKI」の語が原告の略称として知られているとしても,本件商標に接する者が,「OKI」の語のみに注意を向けることもないから,本件商標から原告の観念が生ずるということもない,と主張する。

      しかし,証拠(乙2,3の3)によれば,「okeydokey」との英語(口語)は,その発音がであり,その意味が「OK」との意味であること,及び,類似語としてokeydokeとokiedokieがあることが認められるものの,一般の日本人にとって,okeydokeyとの英語がよく知られている英語であることを認めるに足りる証拠はなく,むしろ,一般の日本人にとっては,あまりなじみのない英語であると推認されるものであることからすると,okeydokeyの発音が本件商標の「OKI DOKI」と似ているからといって,一般の日本人が,本件商標の「OKI DOKI」からokeydokeyとの英語を連想するものと認めることは,到底できない。
      被告は,証拠(乙3の1・2,乙6,7(各枝番を含む。))を提出して,「OKI DOKI」との語がインターネットのホームページ等で使用されており,社会的に認知されてきている,と主張する。しかし,被告が提出する証拠中にも,「OKI DOKI」の意味が不明確なまま使用されている例があるのみならず,そもそも,無数にあるインターネットのホームページのごく一部に「OKI DOKI」との語が使用されている例があるとしても,このことから,「OKI DOKI」との語が社会的に認知されているものということができないことは明らかである。まして,上記の使用例を根拠に,一般の日本人が「OKI DOKI」との語から,okeydokeyとの英語を連想するものというようなことは,およそできることではない。

   (4) 以上のとおりであるから,審決の「本件商標は,請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれは認められない。」(審決書9頁14行〜16行)との認定判断は誤りであり,本件商標は,法4条1項15号に該当するというべきである。
 2 結論
    以上に検討したところによれば,少なくとも,原告の主張する取消事由2には理由がある。そこで,原告の本訴請求を認容することとし,訴訟費用の負担ついて,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
   
   東京高等裁判所第6民事部


           裁判長裁判官         山  下  和  明


              裁判官        設  樂  隆  一
                            


              裁判官         阿  部  正  幸