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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商4条1項各号

平成28(行ケ)10143  商標登録取消決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年12月8日  知的財産高等裁判所(3部)

 4条1項19号違反の異議理由ありとの審決が維持されました。
 上記1の認定に係る各事実によれば,原告は,平成8年7月頃から共同 事業者として本件事業に関与し,平成18年11月以降は本件委託契約に基 づき受託者として引き続き関与していたところ,平成25年2月時点で,遅 くとも平成26年12月31日までに本件委託契約が終了し,本件事業に係 る業務を東長寺に引き継ぐべき義務を負ったにもかかわらず,本件委託契約 期間中である平成26年2月12日に本件商標の商標登録出願をし,同年1 2月19日に設定登録を受けたものである。 また,本件事業は,「縁の会」会員に対する個人墓の販売終了により事業 が終了するものではなく,会員に対しその生前から死後に至るまで,様々な 宗教的行為等を継続的に提供するものであることに鑑みると,たとえ個人墓 の販売が完了したとしても,東長寺が本件事業の標識として引用商標を引き 続き使用し続ける必要があることは明らかであるし,仮に原告が本件商標の 設定登録をすることにより東長寺が引用商標を使用し得なくなると本件事業 の継続に重大な支障を来すおそれがあることも,容易に予想されるところで\nある。そして,上記のとおり本件事業に関わり,その内容等を熟知している 原告にとっても,これら点は当然予見し得る事情といってよい。\nしかも,原告が本件商標の設定登録を受けることにつき原告と東長寺と の間に合意があったことを裏付けるに足りる証拠はなく,むしろ遅くとも平 成26年5月頃には原告による本件商標の登録出願や他の宗教法人(常在寺) と組んでの「縁の会」の語を用いた類似事業の展開等を巡って東長寺との間 に紛争が生じていたことがうかがわれる(甲106,107)。また,原告 が本件商標権を設定登録し,その使用権を専有することになった場合,同一 商標である引用商標の使用には当然問題が生じ得ることになるのであるから, 本件事業の受託者であり,かつ,本件事業を東長寺に円滑に移行させる旨を 約束していた原告としては,設定登録に当たり,東長寺に対し,引用商標の 使用を許諾するなど,東長寺の地位に不安が生じないような配慮をするのが 当然であったといえるはずであるにもかかわらず,そのような配慮がされた 形跡は認められないのであって(甲107は,日付も入れられていない不完 全な文書であり,これによって引用商標の使用の許諾がされたとは認め難 い。),この点も,原告の背信性を裏付けるものであるといわざるを得ない。 これらの事情に加え,前記のとおり,本件商標と引用商標が同一の商標 といえること,本件商標の登録出願時に既に引用商標が東長寺の展開する本 件事業に係る標章として日本国内における周知性を獲得していたことを併せ 考慮すると,原告は,引用商標がいまだ商標登録されていないことに乗じ, これに化体された信用及び顧客吸引力にただ乗りし,他の宗教法人と展開す る本件事業類似の事業に本件商標を使用することで利益を得,又は本件事業 の継続に支障を生じさせて東長寺に損害を生じさせることを目的として本件 商標を使用するものと合理的に推認される。このことは,原告が真光寺とと もに本件事業類似の「真光寺縁の会」の事業を展開し,これについて東長寺 が了承していたことがうかがわれること(甲12の1〜4,12の8及び9, 12の12〜14,12の16,12の19,12の21〜24,12の2 6,12の28,12の30及び31,乙22,23,25,34,74, 75)を考慮しても異ならない。上記のとおり,原告が常在寺とともに展開 する「常在寺縁の会」の事業を巡っては東長寺と原告との間で紛争を生じて いると見られることに鑑みると,原告が引用商標を用いて本件事業に類似す る事業を展開することを東長寺が広く許容していたとは考え難いからである。 したがって,原告は,不正の目的をもって本件商標を使用するものと認 められる。
(2) これに対し,原告は,不正の目的はないとしてるる主張する。 しかし,原告が,東長寺との合意すなわち本件共同事業契約ないし本件 委託契約に基づき広報・広告活動を行い,その費用を支出し,また,本件事 業における会員組織の事務局の管理運営等を担っていたとしても,それ自体 は本件共同事業契約及び本件委託契約に基づく原告の債務の履行にすぎず, 本件商標の登録出願時及び設定登録時における原告の不正の目的の存在に関 する上記認定を覆すべき事情とは必ずしもいえない。

◆判決本文

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平成28(行ケ)10090  商標登録取消決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年10月27日  知的財産高等裁判所

 審決は「Dr.Coo」の下段の「AQUA COLLAGEN GEL」について識別力があるとして、4条1項11号違反として、取り消し決定をしました。知財高裁も、この判断を維持しました。
  認定事実によれば,本件商標の登録査定時(平成26年9月8日) において,申立人は,我が国のスキンケア市場における有力メーカーの一つ\nであり,とりわけドクターズコスメの分野では,パイオニア的な存在である とともに,圧倒的なシェアを誇るトップメーカーであって,スキンケア化粧 品やドクターズコスメの取引者,需要者らに広く知られる存在であったこと, 申立人が製造,販売する商品の中でも,アクアコラーゲンゲル化粧品は,申\ 立人の設立当初から15年以上にわたって継続的に販売される主力商品であ り,全国でのテレビCMをはじめとする大規模かつ長年に及ぶ宣伝・広告等 により,近年においては,年間100億円を超える売上高を維持し,各種の 人気投票等でも常に上位にランクされるなど,人気商品としての地位を確立 し,スキンケア化粧品やドクターズコスメの取引者,需要者らに広く知られ ていたこと,アクアコラーゲンゲル化粧品に係る上記宣伝・広告等の多くに おいては,「アクアコラーゲンゲル」という商品名の片仮名表記とともに,\n当該化粧品容器の画像が表記され,その中には,ドクターシーラボ標章の下\nに「Aqua-Collagen-Gel」の欧文字が組み合わされた標章(引用商標1と実 質的に同一の標章)が表示され,更に,その下に,各種の商品ごとに付加さ\nれた名称(「Super Moisture」など)が表示されていることが認められる。\n そして,これらの事実を総合すると,アクアコラーゲンゲル化粧品の商品 名を片仮名で表記した「アクアコラーゲンゲル」の標章及び引用商標1は,\n本件商標の登録査定時(平成26年9月8日)において,申立人が製造,販\n売するアクアコラーゲンゲル化粧品を表示する商標として,全国のスキンケ\nア化粧品やドクターズコスメの取引者,需要者らの間において広く認識され ていたものと認めることができる。 また,商品の製造,販売を行う企業においては,その企業自体の営業標識 となるロゴやマーク(いわゆるハウスマーク)を用いるほかに,商品のブラ ンド名を表す商標を用いる場合があり,その中でも,シリーズ商品や一定の\nカテゴリーに属する複数の商品群に統一的な商標(いわゆるファミリーマー ク)を使用した上で,その中の個々の商品について,ファミリーマークに付 加して個別の商品を識別するための標章(いわゆるペットマーク)を使用す ることが一般的に行われており,また,これらのマークを組み合わせて使用 することも一般的に行われている(当裁判所に顕著な事実)。そこで,この ような取引の実情を踏まえて考察すれば,前記宣伝・広告等におけるアクア コラーゲンゲル化粧品の容器の画像中の標章に接した取引者,需要者らにお いては,その構成中のドクターシーラボ標章については,企業名である「ド\nクターシーラボ」の欧文字表記に相当する「Dr.Ci:Labo」の文字を含む図形 であり,申立人の広告等の中で単独でも用いられていることから,申\立人の ハウスマークに相当するものとして認識し,また,その下の「AquaCollagen-Gel」の欧文字については,アクアコラーゲンゲル化粧品に共通し て用いられる「アクアコラーゲンゲル」の商品名を欧文字表記したファミリ\nーマークに相当するものとして認識し,更に,その下の「Super Moisture」 などの表示については,アクアコラーゲンゲル化粧品のシリーズにおける個\n別の商品を識別するためのペットマークに相当するものとして認識し,全体 として,これらのマークが組み合わされた商標であると自然に理解するもの と考えられる。してみると,引用商標1は,その全体が,申立人の製造,販\n売するアクアコラーゲンゲル化粧品を表示するというのみならず,その構\成 中の「Aqua-Collagen-Gel」の文字部分のみをとらえても,アクアコラーゲ ンゲル化粧品を示すファミリーマークに相当するものとして独立の商品識別 機能を果たしているというべきであり,引用商標1及びその構\成中の 「Aqua-Collagen-Gel」の文字部分は,全国のスキンケア化粧品やドクター ズコスメの取引者,需要者らの間において,そのようなものとして認識され, 広く知られていたということができる。
2 本件商標と引用商標1及び2の類否について
そこで,以上を踏まえた上で,本件商標と引用商標1及び2との類否につい て判断する。
本件商標について
原告は,本件商標の構成中,「AQUA COLLAGEN GEL」の文字部分が独立し て自他商品の識別標識としての機能を果たし,これから「アクアコラーゲン\nゲル」の称呼が生じるとした本件決定の判断は誤りである旨主張するので, 以下検討する。
ア 本件商標は,別紙1記載のとおり,上段に欧文字の「Dr.Coo」を,下段 に欧文字の「AQUA COLLAGEN GEL」を,それぞれ横書きしてなる結合商標 である。 しかるところ,上記「Dr.Coo」の文字と上記「AQUA COLLAGEN GEL」の 文字とは,上下二段に分けて表記されている上,前者の文字が後者よりや\nや大きいこと,前者が大文字と小文字の組合せであるのに対し,後者は大 文字のみからなること,両者の文字数の違いにより,両者の文字列全体の 幅が大きく異なることといった相違があることからすると,両者は,外観 上明瞭に区別して認識されるものといえる。 また,本件商標から生じる観念についてみても,「Dr.Coo」の文字から は,直ちに特定の観念が生じるとは認められず,他方,「AQUA COLLAGEN GEL」の文字については,「AQUA」は「水」を,「COLLAGEN」は「コラー ゲン(硬たんぱく質の一種)」を,「GEL」は「コロイド溶液がゼリー状 に固化したもの」をそれぞれ意味する外国語として一般的に知られている ことから,これらを組み合わせた観念が生じることが考えられるが, 「Dr.Coo」の文字と結びついた観念が生じるものではないから,両者は, 観念の点においても特段の結びつきがあるものではなく,明瞭に区別して 認識されるものといえる。 加えて,前記1 で述べたとおり,「アクアコラーゲンゲル」の標章及 び引用商標1の構成中の「Aqua-Collagen-Gel」の文字部分が,申立人の\n製造,販売するアクアコラーゲンゲル化粧品を示すものとして,スキンケ ア化粧品やドクターズコスメに係る全国の取引者,需要者らに広く認識さ れている事実からすれば,本件商標がその指定商品である「コラーゲンを 配合したゲル状の化粧品,コラーゲンを配合したゲル状のせっけん類」に 使用された場合,これに接した取引者,需要者が,スキンケア化粧品等の 分野において周知な「アクアコラーゲンゲル」の標章や「Aqua-CollagenGel」の文字と称呼や欧文字の綴りを共通にする下段の「AQUA COLLAGEN GEL」の部分に特に注目することは,自然にあり得ることであるといえる。 以上を総合すれば,本件商標においては,その構成のうち下段の「AQUA COLLAGEN GEL」の文字部分が,取引者,需要者に対し商品の識別標識とし て強く支配的な印象を与える部分として認識されることがあるというべき であるから,当該部分を本件商標の要部として把握することが可能であり,\nそこから,「アクアコラーゲンゲル」の称呼が生じるとともに,申立人の\n製造,販売する人気のシリーズ商品であるアクアコラーゲンゲル化粧品の 観念が生じるものと認めることができる。

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平成28(行ケ)10083  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年10月11日  知的財産高等裁判所

 審判における職権証拠調べに対して、当事者に意見陳述の機会が与えられていないという理由で、無効理由なしとした審決が取り消されました。原告は米国のマスターズナショナルインコーポレーテッド、被告はゲームソフトメーカのコナミです。
 前記認定(第2,3,(2))のとおり,特許庁は,本件審判手続において 本件職権証拠調べを行ったものであるところ,証拠(甲78,79)によれ ば,特許庁は,原告に対し,平成27年11月16日に書面審理通知書(起 案日は同月12日)を発送した上で,同月17日,審理終結通知書(起案日 は同月12日)を発送したことが認められるものの,本件職権証拠調べの結 果を原告に対して通知し,相当の期間を指定して意見を申し立てる機会を与\nえたことをうかがわせる証拠は全くなく,これらの手続は行われなかったこ とが推認される。
(2)ア 法56条が準用する特許法150条は,「審判に関しては,…職権で, 証拠調べをすることができる。」(1項)とする一方で,「審判長は,… 職権で証拠調べ…をしたときは,その結果を当事者…に通知し,相当の期 間を指定して,意見を申し立てる機会を与えなければならない。」(5項)\nと定める。ところが,本件審判手続において,特許庁は,上記(1)のとお り,原告に対し,本件職権証拠調べの結果につき通知し,相当の期間を指 定して意見を申し立てる機会を与えなかったのであり,この点で本件審判\n手続には上記規定に違反するという瑕疵があったものというべきである。 イ また,本件職権証拠調べは,具体的にはインターネットにより「スポー ツクラブ」及び「マスターズ」の語を複合キーワード検索することで 「スポーツクラブ」における「マスターズ」の語の使用例を調査したも のであるが,本件審決は,本件商標の法4条1項15号該当性を論ずる 中で,本件商標の称呼及び観念につき判断するに当たり,本件商標のよ うに「スポーツクラブ」の文字と「マスターズ」の文字が結合した場合 の「マスターズ」の文字部分が持つ出所識別機能の程度を評価する根拠\nの一つとして,このような本件職権証拠調べの結果である5件のスポー ツクラブのホームページに存在する記載を利用している。 さらに,法4条1項19号及び同7号該当性の判断に当たっても,本 件審決は,本件職権証拠調べの結果を利用して,本件商標中の「マスタ ーズ」の文字部分が持つ出所識別機能の程度につき検討している。
ウ そうすると,本件審判手続には瑕疵があり,その瑕疵は,審判の結果で ある審決の結論に一般的に見て影響を及ぼすものであったものというべ きである。このような場合,その瑕疵は,審決の結論に影響を及ぼさな いことが明らかであると認められる特別の事情,すなわち,たとえ職権 証拠調べの結果の通知がなくとも,これに対する反論,反証の機会が実 質的に与えられていたものと評価し得るか,又は当事者に対する不意打 ちとならないと認められる事情がない限り,審決取消事由となるものと 解される(最高裁判所第一小法廷昭和51年5月6日判決・判例時報8 19号35頁,最高裁判所第三小法廷平成14年9月17日判決・判例 時報1801号108頁参照)。 そこで,本件における上記特段の事情の有無を検討すると,本件職権 証拠調べは,上記のとおり具体的にはインターネットによる「スポーツ クラブ」及び「マスターズ」の語の複合キーワード検索であり,その手 法それ自体は必ずしも目新しいものではなく,一般的かつ容易に行われ 得るものではある。しかし,原告において,そのような証拠調べが行わ れることを当然に予期していたとか,予\期すべきであったと認めるに足 りる証拠はない上,そもそも,本件審判事件においては,被告は原告の 主張に対し何ら答弁せず(前記第2の2),また,その審理は職権によ り書面審理とされていた(前記(1))のであるから,本件職権証拠調べの 事実を知らない原告にとっては,何らかの追加主張ないし立証が必要で あること自体,全く予期し得なかったと考えられるのである。また,本\n件職権証拠調べの結果それ自体も,本件審決の引用するホームページ上 の記載の存在そのものはともかく,これを受けた反証活動や本件証拠調 べの結果の評価に関する反論の余地がないとはいい難い。 そうである以上,本件においては本件職権証拠調べの結果に対する反 論,反証の機会が原告に対し実質的に与えられていたものとは評価し得 ず,また,原告に対する不意打ちとならないと認めるべき事情も見当た らない。すなわち,上記特段の事情の存在は認められない。 したがって,本件職権証拠調べの結果の原告に対する通知等を欠くと いう手続上の瑕疵は,本件審決の取消事由となるものというべきである。

◆判決本文

◆平成24(行ケ)10363号 以前に、「Augusta Club」で15号違反が争われた事件です。こちらは15号違反と認定されています。

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平成28(行ケ)10065  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年8月10日  知的財産高等裁判所

 商標「山岸一雄大勝軒」について、創始者以外の同姓同名の他人が存在することを根拠として8号違反とした審決が維持されました。
 上記事実及び弁論の全趣旨によれば,本願商標の登録出願時(平成25年11月 19日)及び本件審決時(平成28年1月29日)において,亡山岸(生前の住所 地は東京都豊島区。甲19)とは別に,「山岸一雄」を氏名とする者が,複数生存 していたものと推認される。
ウ 以上によれば,本願商標は,他人の氏名を含む商標であると認められる。
(2) 「山岸一雄」を氏名とする者の承諾の有無
証拠(甲19,38)及び弁論の全趣旨によれば,原告の取締役であった亡山岸 は,本願商標の登録出願時において,原告が本願商標の登録出願をし,その商標登 録を受けることを承諾していたこと,その後,亡山岸は,平成27年4月1日死亡 したことが認められる。 しかし,前記(1)イのとおり,本願商標の登録出願時及び本件審決時において,亡 山岸とは別に,「山岸一雄」を氏名とする者が,複数生存していたものと推認され るところ,亡山岸以外の「山岸一雄」を氏名とする者が本願商標の登録について承 諾していたとの事実を認めるに足りる証拠はない。
(3) 小括
以上によれば,本願商標は,商標法4条1項8号に該当し,商標登録を受けるこ とができないものというべきである。
3 原告の主張について
(1) 原告は,商標法4条1項8号において,氏名を含む商標の登録が許されない のは,1)他人のパブリシティの権利を侵害する場合(当該他人の氏名等に少なくと も周知性が認められる場合),2)パブリシティの権利以外の氏名専用権の侵害にな る場合(商標出願の願書の記載から客観的類型的に判断し,氏名保持者が不快感を 感じると判断すべき場合)に限られると解すべきところ,本願商標は,上記1)及び 2)のいずれにも該当しない旨主張する。 しかし,商標法4条1項8号の趣旨は,前記1のとおり,人の氏名に対する人格 的利益の保護,すなわち,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われるこ とがないという利益を保護することにある。そして,同号は,その規定上,「著名 な雅号,芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称」とし,これらについては 著名なものを含む商標のみを不登録事由とする一方で,「他人の肖像又は他人の氏 名若しくは名称」については,著名又は周知なものであることを要するとはしてい ない。また,同号は,人格的利益の侵害のおそれがあることそれ自体を要件として 規定するものでもない。したがって,商標法4条1項8号の趣旨やその規定ぶりか らすると,同号にいう「他人の氏名」が,著名又は周知なものに限られるとは解し 難く,また,同号の適用が,他人の氏名を含む商標の登録により,当該他人の人格 的利益が侵害され,又はそのおそれがあるとすべき具体的事情の証明があったこと を要件とするものであるとも解し難い。すなわち,同号は,他人の氏名を含む商標 については,そのこと自体によって,上記人格的利益の侵害のおそれを認め,その 他人の承諾を得た場合でなければ,商標登録を受けることができないとしているも のと解される。 原告の上記主張は,商標法4条1項8号が,その規定上,他人の氏名については 「著名な」ものであることを要するとはしていないこと,他人の人格的利益を侵害 し,又はそのおそれがあるとすべき具体的事情の証明があったことを要件としてい るとも解し難いことに照らし,文理解釈の範囲を超えるものといわざるを得ない。 また,同号の趣旨は,上記のとおり,人の氏名に対する人格的利益の保護にあると ころ,この人格的利益の保護の要否を,顧客吸引力の有無(周知性や著名性の有 無)により分けるというのも,同号が商品又は役務の出所の混同のおそれを要件と していないことに照らし,相当でない。さらに,自己の氏名を含む商標が登録され ることにより氏名保持者が精神的苦痛や不快感を感じるか否かを商標出願の願書の 記載のみから判断すれば足りるというのも,氏名保持者ごとに人格的利益に係る事 情は異なるにもかかわらず,その個別的事情を一切捨象するものであって,相当で ない。なお,他人の氏名を含む商標について,当該氏名を有する他人から登録異議 の申立てや無効審判請求がされたときに初めて,当該商標の商標法4条1項8号該\n当性を判断すれば足りるとするのは,同号が商標の不登録事由として規定されてい ることにそぐわないのみならず,登録異議の申立期間が商標掲載公報の発行の日か\nら2月以内に限られ(同法43条の2),同項8号に違反してされたことを理由と する無効審判は商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は請求することがで きないとされていることから(同法47条1項),人は,自らの承諾なしにその氏 名を商標に使われることがないという利益を確保するために,自己の氏名が含まれ る商標の登録の有無を常に確認しなければならないことになる。かかる解釈は,商 標に含まれる氏名を有する他人に負担を強いるものであって,相当でないといわざ るを得ない。 以上の諸点に照らし,原告の上記主張は,採用することができない。なお,本件 において,亡山岸以外の「山岸一雄」が不快感を感じることがないとまでは認める に足りない。
(2) 原告は,学説の状況及び氏名を含む商標が登録されている例が存在すること を挙げ,商標法4条1項8号について,他人の氏名を含む商標については,そのこ と自体によって,上記人格的利益の侵害のおそれを認め,その他人の承諾を得た場 合でなければ,商標登録を受けることができないものと解釈することは不当である 旨主張する。 しかし,原告の挙げる学説の内容は,当裁判所の判断を拘束するものではないし, 過去に氏名を含む商標が登録されている例があるからといって,本件審決における 本願商標の商標法4条1項8号該当性の判断が,これに左右されるものではない。
(3) 原告は,被告が,NTT「ハローページ」電話帳を検索して同姓同名者を発 見し,これを出願人に通知して,拒絶や審決の根拠とするのは,現実に同姓同名者 が存在する蓋然性が高いにもかかわらず,氏名を含む商標が登録されている例が多 く存在していること,NTT電話帳は,プライバシー保護等の観点から,近時掲載 者数が激減しており,また,戸籍名で登録されている可能性もますます少なくなっ\nていること等に照らし,不当である旨主張する。 しかし,前記2(1)イのとおり,本件においては,NTT「ハローページ」電話帳 の掲載内容によれば,本願商標の登録出願時及び本件審決時において,亡山岸とは 別に,「山岸一雄」を氏名とする者が,複数生存していたものと推認されるのであ るから,本件審決が,本願商標の商標法4条1項8号該当性について,NTT「ハ ローページ」電話帳を検索し,その結果に基づき判断したことが,不当であるとい うことはできない。そして,これら同姓同名者の承諾を得ていないにもかかわらず, 「山岸一雄」の氏名を含む商標が登録されることにより,それらの者の人格的利益 を侵害するおそれがおよそ存在しないとまでいうことはできない。
・・・
(6) 原告は,他人の氏名を含む商標であっても,長年にわたる当該商標の使用や 指定商品又は指定役務と関連付けられた報道等での当該氏名の露出等の結果,需要 者が何人かの業務に係る商品又は役務であると認識することができ,他人の業務に 係るものと認識しない状態となった場合には,商標法4条1項8号の規定にかかわ らず,商標登録を受けることができると解すべきである旨主張する。 しかし,商標法4条1項8号について,同法3条2項に相当する規定は存しない。 原告の上記主張は,独自の見解であって,採用の限りでない。

◆判決本文

◆関連事件です。平成28(行ケ)10066

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平成28(行ケ)10062  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年7月20日  知的財産高等裁判所

FITの3文字が大きく表示され、その周辺に Foxconn Interconnect Technologyと小さく表示した商標について、FITだけを分離抽出できるかが争われました。知財高裁は、分離抽出できるとした審決を維持しました。
 本願商標と引用商標とを対比すると,前記2のとおり,本願商標からは, 「フォックスコン インターコネクト テクノロジー エフ アイ ティー」の称 呼及び鴻海グループに属する企業との観念が生じるとともに,「FIT」の文字部 分から,「エフアイティー」との称呼が生じるほか,その構成文字と同一の英文字\nから成る英単語の「fit」に相応した「フィット」との称呼及び「適した」,「ぴ ったりの」との観念が生じ(乙1,2),これは,原告も自認するところである。 本願商標から生じるこれらの称呼及び観念のうち,「フィット」との称呼及び「適 した」,「ぴったりの」との観念は,前記3の引用商標の称呼及び観念と同一である。 このように,対比に係る商標から2つ以上の称呼,観念が生じる場合,そのうちの 1つの称呼,観念が類似するときは,両商標は類似するというべきである(最高裁 昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12 号1621頁参照)。 本願商標の「FIT」の文字部分と引用商標とは,外観上,文字の彩色や書体等 の相違はあるものの,その相違は,上記の称呼及び観念の同一性をりょうがして上 記類似を覆すほどのものではない。 以上によれば,本願商標と引用商標とは,出所について誤認混同のおそれがあり, 両商標は,類似するものということができる。
(2) 原告は,本願商標の構成文字に,原告のグループ企業のブランドとして広く\n知られた「Foxconn」の文字が含まれ,かつ,原告の商号原語表記である\n「Foxconn Interconnect Technology」が併記さ れているという事実を軽視せず,本願商標の指定商品に係る取引においては商品の 製造主体が重視されるという取引実情にも鑑みれば,本願商標と引用商標は,事実 上,出所の混同が生じることはない旨主張する。 しかし,前記2のとおり,本願商標中,「Foxconn Interconnect Technology」の文字部分は,外観上,「FIT」の文字部分に 比べて明らかに目立たない態様であり,それほど見る者の注意をひくものではなく, 取引者・需要者に対し,本願商標の指定商品の出所識別標識として強く支配的な印 象を与えるのは,「FIT」の文字部分である。したがって,原告主張に係る取引 の実情を考慮しても,本願商標と,本願商標の「FIT」の文字部分と同一の構成\n文字から成り,同一の称呼及び観念を生じる引用商標とは,出所について誤認混同 のおそれがあるものというべきである。

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平成28(行ケ)10045  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟  平成28年6月29日  知的財産高等裁判所

 上方舞の流派である「吉村流」の六世家元が出願した商標「吉村流」が公序良俗に反しないと判断されました。
 被告は,Aが,その設立時社員となって,平成26年7月8日に設立された 一般社団法人であるが,前記1認定のとおり,1)その目的を「法人設立以前の上方 舞吉村流六世家元B(本名A)が,吉村流四世家元F及び吉村流五世家元Gから承 継してきた本邦固有の古典舞踊である,上方舞・地唄舞の技芸と振付を,京都御所 の舞指南・御狂言師たる吉村流の格式と伝統を保持しつつ,これを普及・発展させ, さらに後世に承継させ,以てわが国の文化芸術の振興に寄与すること」とし,上方 舞の実技・理論の教授及び後継者の育成,上方舞の舞踊公演会及び講習会の企画・ 開催等の事業を行うものであり,2)その会員は,師範名取,名取,弟子で構成され\nるが,従前の団体「吉村流」の会員であった者については,被告に会費を納入した 場合,当然に被告の会員とみなされ,従前の名取,師範名取の資格を有するものと され,3)その理事長を吉村流六世家元B(A)が務め,理事長(家元)は,被告を 代表し,吉村流家元としてその業務を執行し,名取試験,師範名取試験を実施し,\n理事会の承認を得て各免状を交付し,名取式,事始め等の吉村流の伝統儀礼を催行 し,各家元の年忌法要及び追善舞踊会等を主催するものとされている。また,実際 にも,前記1認定のとおり,被告の設立以前から「吉村流」の師範名取又は名取で あった者のうち多数の者は,被告に会費を納め,被告の会員として活動しており, 従前の団体「吉村流」において,家元が主体となって行っていた,個々の師範名取 や名取の活動を超えた団体としての主要な活動,すなわち,師範名取や名取の免状 の作成,交付,「上方舞吉村会」や歴代家元の追善公演等の主催などの活動は,被 告が行っている。
イ 前記1認定のとおり,本件商標の商標登録出願時において,「吉村流」は,上 方舞の流派である「吉村流」の舞踏の習得,教授等を行う者を構成員とする団体\n(団体「吉村流」)の名称(略称)又はその役務を表示するものとして,日本舞踊に\n係る需要者の間に広く認識されていたものであるが,前記アの事情に照らせば,被 告は,実質的には,従前の団体「吉村流」を法人化したものであるということがで きるから,被告が本来本件商標の商標登録を受けるべき者でないということはでき ない。 さらに,前記1認定の事実によれば,被告が設立された経緯も,団体「吉村流」 と家元個人との会計とを分別して会計の明朗化を図る必要性を契機とするものであ り,法人化に際し定められた定款(甲16)において,組織運営の明確化が図られ ているのであるから,本件商標の商標登録出願が不正の目的の下に行われたもので あるということもできない。
(4) 小括
以上によれば,本件商標の商標登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くもの があるとはいえず,また,本件商標について商標登録を認めることが商標法の予定\nする秩序に反するものであるともいえない。 したがって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当しない。

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平成28(行ケ)10003  商標登録取消決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年6月23日  知的財産高等裁判所

 「ももいちご」が周知商標であるとして異議申し立てがなされました。知財高裁は、周知商標であるとした審決を維持しました。
 申立人ら商品1は,本件商標の登録出願日である平成21年11月24日の時点において,販売開始から約15年が経過し,毎年の出荷量も数十\トン程度とほぼ安定した状況にあり,また,この間,関西地域において,テレビCMが7年間にわたって放送されたほか,ラジオCM等の各種宣伝広告も多数行われ,更には,申立人ら商品1の粒の大きさや甘さ,特定の地域でしか生産されない希少性,一粒1000円にもなる高価さなど\nが話題となり,テレビ番組,雑誌,新聞,インターネット上の情報記事等で 繰り返し紹介され,これらの宣伝や紹介の際には,常に引用商標1が使用さ れてきたことが認められる。 これらの事実を総合すると,引用商標1は,本件商標の登録出願日当時に おいて,これがいちごに使用された場合,申立人らが生産,販売する申\立人 ら商品1を表示するものとして,少なくとも関西地域及び徳島県における取\n引者,需要者の間において広く認識されていたものと認めることができる。 ・・・ JA徳島市らによるテレビCMやラジオCM等の宣伝・広告は行われていな いものの,平成25年初めころまでは,新聞記事等で引用商標1とともに紹 介されている事実が認められるほか,申立人ら商品2を紹介するテレビ番組,\n新聞記事等において,申立人ら商品2の前身となるブランドのいちごとして,\n引用商標1とともにたびたび紹介されている事実が認められるのであり,こ れらを総合すれば,引用商標1の周知性は,本件商標の登録査定時である平 成25年10月9日当時においても,なお維持されていたものと認めること ができる。 ・・・ 原告らは,申立人ら商品1が「あまおう」などの他の高級いちご\nと比べて,出荷量が圧倒的に少ない事実を指摘する。 しかし,申立人ら商品1は,そもそも徳島県佐那河内村の特定の農家の\nみが生産するいちごであるから,「あまおう」などの一般的な品種のいち ごに比べて,その生産・出荷量が圧倒的に少ないことは当然である。そし て,申立人ら商品1は,上記のような希少性が一つの理由となって話題を\nインターネット上の 情報記事等で繰り返し紹介されてきたものであり,その結果,引用商標1 が周知性を獲得するに至ったのであるから,申立人ら商品1の出荷量が他\nの高級いちごに比べて少ない点は,引用商標1の周知性を否定する事情と なるものではない。 また,申立人ら商品1の平成15年から平成25年3月までの年度ごと\nの出荷量の推移は,・・年まで約69トンから約95トンの間で推移した後,平成21年には約55トン,平成22年には約47トンと徐々に減少傾向が見られるようにな っている。しかし,申立人ら商品1は,本件商標の登録査定時(平成25\n年10月9日)の直近である平成24年12月から平成25年3月までの 出荷シーズンにおいても,約38トンの出荷量を確保しているのであるか ら,本件商標の登録査定時までに申立人ら商品1の流通量が著しく減少し\nたとまではいえず,この程度の減少傾向の存在が,引用商標1の周知性の 喪失に直ちに結びつくものとはいえない。

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平成27(行ケ)10246  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟  平成28年5月18日  知的財産高等裁判所

 「Photomaker Pro」と「Photomaker」が類似すると判断された審決が維持されました。
 本願商標の外観は,横一行で,「Photomaker」と「Pro」の各部分 の間に半角分の間隔を空け,「Photomaker」の各文字は灰色の輪郭のみ で,「Pro」の各文字は黒色で書された文字を灰色で縁取りすることで表されて\nいる。また,「P」の文字は,いずれも右部の弧状の部分が直線で示され,「t」の 文字は,通常の書体では左側に突き出る部分が削除され,「m」の文字は,通常の 書体では左上に突き出る部分が削除され,「a」の文字は,通常の書体では右下に 突き出る部分が削除され,上部の弧状の部分も直線で示され,「e」の文字は,そ の書き出し部分を左斜め上方向へ傾斜させ,「r」の文字は,いずれも通常の書体 では左上に突き出る部分が削除されるなどのデフォルメがされている。 そして,本願商標の全体からは「フォトメーカープロ」との呼称が生じる。また, 「Photo」は「写真」を,「maker」は「作る人」を意味し(乙3,4), 上記のとおり「Pro」の部分は,「より熟練者を対象とした」,又は「より高い機 能を備えた」という意味で理解されるのであるから,本願商標の全体からは,「写\n真を作る専門家」という観念を生じる。 また,上記(1)のとおり,本願商標の構成から「Photomaker」の部分\nを抽出して対比することも許されるところ,同部分からは「フォトメーカー」との 称呼を生じる。そして,同部分からは「写真を作る人」という観念を生じる。 したがって,本願商標は,その全体から「フォトメーカープロ」,「写真を作る専 門家」との称呼,観念を生じるほか,「Photomaker」の部分から「フォ トメーカー」,「写真を作る人」との称呼,観念を生じる。

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平成27(行ケ)10224  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年4月27日  知的財産高等裁判所

 「MAGGIE MILANO」が「MAGGIE」と類似するとした審決が維持されました。指定商品は被服です。「MILANO」がファッション業界では著名といえる地名というのが理由のようです。
 本願商標においては,「MAGGIE」と「MILANO」との間に1文字分に満 たないスペースが設けられていることから,「MAGGIE」と「MILANO」と の2つの単語からなるものであると認識し得る。 前半の「MAGGIE」の欧文字部分は,「『マギー』という女性の名又は愛称」 ほどの意味を有するといえる。そして,後半の「MILANO」の欧文字部分は, 「イタリア北部の都市」を指称する語(甲24,乙8)として広く一般に知られて いるものであり,かつ,ミラノにおいては,毎年,世界中から注目されるデザイナ ーズ・コレクションが開かれており(乙9),ファッション性の高いイメージを有す る都市として周知されているから,本願商標を本願指定商品である衣服や靴,洋品 小物などに使用する場合は,それに接する取引者,需要者は,当該「MILANO」 の欧文字を,イタリア国ミラノでデザイン等された商品であることを表す部分,す\nなわち,当該各商品の品質を表示した部分と認識するものとみるのが相当である。\nしたがって,本願商標は,その構成中,後半の「MILANO」の欧文字が,商\n品の品質を表示した部分として,格別の自他商品識別力を有しないのに対し,前半\nの「MAGGIE」の欧文字は,固有の名称であって,出所識別標識として強く支 配的な印象を与えるものであるから,当該欧文字のみを抽出し,他人の商標と比較 して商標としての類否を判断することが許されるというべきである。
イ 称呼について
(ア) 以上のことからすれば,本願商標は,その全体から「マギーミラノ」 の称呼が生じるほか,「マギー」との称呼をも生じるものと認められる。
(イ) これに対して,原告は,本願商標は,「マギー」と「ミラノ」に区切 って発音すると不自然であるから,「マギーミラノ」のみの称呼が生じると主張する。 しかし,本願商標の外観は,「MAGGIE」と「MILANO」との間にスペー スがあることから,2語から構成されるものと看取され,「マギー」と「ミラノ」と\nに区切って発音することに特段の困難も見い出せない。 原告の主張には,理由がない。 ウ 観念について
(ア) 本願商標は,その全体から「イタリアのミラノという都市の『マギー』 という女性の名又は愛称」の観念が生じるほか,上記アのとおり,その構成中「M\nAGGIE」の欧文字が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるから,「『マ ギー』という女性の名又は愛称」の観念を生じる。
(イ) これに対して,原告は,「ミラノ」は人の姓としても採択されている から,とある外国人の姓名又は愛称としての「マギーミラノ」という観念が生じる こともあり,また,本願商標では,ファッションブランドの一般的な表記とは異な\nり,「MILANO」を発祥地として小さく付記したものではないから,「MILA NO」は商標中の不可分な構成要素であると主張する。しかし,「ミラノ」が人の姓として使用されることがある(甲27,48)としても,これが我が国において,イタリアの都市名としての「ミラノ」を観念する(このことは,原告も認める。)よりも,優先して観念されるとは認められない。また,ファッションブランドがその発祥地を示す場合に,発祥地を小さく付記することがあるとは認められるが(甲41,乙10〜16),当該発祥地を商標中の他の部分と同程度の大きさで表\示することがないとまではいえない(なお,原告主張によれば,本願商標に係るブランドは,もともと,イタリアの「Maggie Jeans」というジーンズブランドであったとされるから,本願商標については,「MILANO」が発祥地を示すことを意図したものであるとも考えられる。)。

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平成27(行ケ)10153  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年4月13日  知的財産高等裁判所

 歴史と伝統を備えた超高級ブランドであるとして特異性を主張しましたが、日本における著名性が認められず、類似と判断されました。
 原告は,歴史と伝統を備えた超高級ブランドについて,十分な知識と経験を備え\nた超富裕層である需要者の間では,「CIFONELLI」ブランドは,「チフォネ リ」の称呼のもと,最高級の紳士スーツについて広く認識された存在となっている から,本願商標と引用商標との類否判断に当たっては,かかる取引実情を考慮すべ きと主張する。 しかし,原告が日本に進出したのは,2000年秋であり(甲7),原告商品が取 り扱われている百貨店は,東京の新宿伊勢丹(甲11),大阪の阪急メンズ大阪(甲 12),東京の銀座三越(甲13)及び東京の日本橋三越(甲14)等の数か所にす ぎない。また,原告の紹介記事等は,2000年8月ころ(甲7)及び2009年 春ころ(甲8)にファッション雑誌に掲載され,2010年2月16日公開のファ ッション情報ウェブサイトに掲載された(甲10)ほかは,原告商品を取り扱う百 貨店のパンフレット(甲9,11〜15)に記載されているだけであり,ウェブサ イト上の質問コーナーの回答中に原告商品への言及(甲16)が認められるにすぎ ない。一般に広く需要者が閲覧する雑誌及びウェブサイトへの記事掲載が,証拠上, 2000年以降現在までわずか4回にすぎないこと,百貨店のパンフレットのうち, 甲9は2011年春物の紹介であるから配布期間が短く手に取る者は限定されてい たであろうし,甲14は紳士服オーダーサロンにおける春のオーダー会の紹介とし て,原告ブランドが他のブランドと並んで紹介されているにすぎず,掲載期間及び 需要者がアクセスした期間は限定されており,甲15は伊勢丹新宿店のウェブペー ジであって,他の取り扱いブランドと同様に原告商品の仕立て料金等を表示してい\nるにすぎず,甲11〜甲13は,百貨店のフロアガイドであって,他のブランドと 同等に原告ブランドが記載されているにすぎず,ウェブサイト上の質問コーナー(甲 16)を閲覧した者が相当多数であったと認めるに足りる証拠もない。原告の日本 における売上げは,2013年及び2014年の3月〜9月(7か月分)で700 0万円近くと認められる(甲32)ものの,かかる金額が,紳士服の1ブランドの 売上げとしてその周知著名性を基礎付けるほど多額であると認めるに足りる証拠も ない。 上記の事実を総合考慮すれば,本願商標が,原告の扱う最高級の紳士服を示すも のとして,本願指定商品の需要者である男性の間で周知又は著名となっていたとは 認められない。したがって,本願商標に係る需要者層が富裕層の男性に限られ,本 願商標に係る商品が高級な男性用スーツ等に限られるとする原告の主張には,理由 がない。

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◆関連事件です。平成27(行ケ)10154

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平成27(ネ)10063  商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成28年3月31日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 バイクのインディアンに関する商標について、権利濫用とした1審判決が維持されました。
 上記(ア)ないし(ウ)のとおりの控訴人の本件各商標の登録出願の経緯,出願 当時の認識及び本件各商標の使用状況ないし控訴人の宣伝広告等の内容を総合考慮 すると,控訴人による本件各商標の商標登録出願は,控訴人が,平成3年頃から旧 インディアン社によるインディアンブランドの潜在的周知性に着目し,旧インディ アン社と控訴人とは関わりがないにもかかわらず,同社との関連性を強調して我が 国でインディアン関連商品の販売をすることを意図し,被控訴人がその頃我が国で 先行してインディアンブランド事業を開始しているのをみて,自らもそのような被 控訴人の事業展開や宣伝広告に便乗するとともに,被控訴人による事業展開を妨げ る目的で行われたものであると認めるのが相当である。
イ 本件各商標に化体された信用性について
前記のとおり,控訴人は,本件各商標についてこれと同一の商標を商品や宣伝広 告に使用したことは全くないのであるから,そもそも本件各商標自体には,控訴人 の独自の信用が化体されているとはいえない。また,前記のとおり,控訴人は, 「Indian」ロゴや本件商標2と類似するカナダインディアン社の商標を使用した商 品を販売していたが,これらについても,自らとは関わりがない旧インディアン社 との関係を強調した宣伝広告を行っていたものである。控訴人のこのような商標の 使用は,自己の商品に係る業務について,旧インディアン社の承継人ないしはライ センシーの業務であるかのような混同を生じさせるものであり,商標法が商標の出 所表示機能\を保護するものであることからすれば,同法上,このような商標の出所 表示機能\は本来保護されるべき性質のものとはいい難く,このような商標の使用に よって形成された控訴人の信用は,控訴人独自のものとはいえず,本件各商標と類 似した商標が使用されることによって,本件各商標の出所表示機能\が実質的に害さ れるものとはいえない。
ウ 控訴人片仮名商標に基づく侵害訴訟との関係について
さらに,本件各商標は,前記1のとおり,被控訴人標章1と類似するものである ところ,そもそも被控訴人の代表者であるCは,被控訴人標章1(Indian/Motocyc le商標)と同一の商標について,本件各商標の登録出願(平成6年9月21日)よ りも先立つ平成4年2月6日の時点で,商標登録出願をしていたものであり,被控 訴人は,平成7年9月29日に被控訴人標章1に係る商標登録がされた後,その商 標権を譲り受けていたものである。 そして,同商標登録は,控訴人が請求した無効審判において,控訴人片仮名商標 と類似し,商標法4条1項11号に違反することを理由として無効審決がされ,平 成14年12月27日,同審決を維持する内容の東京高等裁判所の判決がされ,平 成15年6月12日に同審決は確定したため,遡及的に無効となったものであるけ れども,一方で,同時期に係属していた,控訴人の被控訴人に対する控訴人片仮名 商標に係る商標権に基づく商標権侵害差止等請求訴訟においては,同年12月26 日,控訴人が被控訴人らに対して同商標権に基づいて禁止権を行使することは,商 標権の濫用に当たるものとして許されないとの一審判決が言い渡され,さらに,平 成16年12月21日,前記イと同様の理由により,控訴人片仮名商標に係る商標 権の行使が権利の濫用であるとして,その控訴を棄却する控訴審判決がされ,同判 決が確定したものである。 そうすると,本件片仮名商標は,これに係る商標登録自体は有効であるものの (なお,控訴人片仮名商標に係る商標登録が商標法4条1項7号に違反するとして 被控訴人が請求した無効審判については,上記侵害訴訟の控訴審判決とほぼ同時期 である平成16月12月8日に,同号違反を否定する審決を維持する内容の判決が, 同控訴審判決とは別の裁判体によってされた。),その商標権は,被控訴人に対し ては行使できないものであるところ,仮に控訴人片仮名商標に係る商標登録がされ なければ,商標法4条1項11号違反を理由として被控訴人標章1に係る商標登録 が無効とされることはなく(なお,被控訴人標章1についての商標法4条1項7号 違反を理由とする無効理由は,別の審決取消訴訟において理由がないものと判断さ れている。),むしろ,被控訴人標章1よりも後願である本件各商標(被控訴人標 章1と類似する。)についての商標登録の方が認められなかったはずであり,また, 被控訴人標章2(「Indian」ロゴ商標)も,本件各商標と類似しているとして,商 標法8条1項違反を理由として無効審決が維持されたものであるから,同様に,控 訴人片仮名商標に係る商標登録がなければ,無効とされることはなかったはずのも のである。 そうすると,被控訴人と控訴人との間では,控訴人片仮名商標に係る商標権に基 づく権利行使が許されないとの判決が確定しているにもかかわらず,控訴人片仮名 商標が登録されていることを唯一の理由として商標登録が無効とされた商標と同一 の標章である被控訴人標章1及び2について,被控訴人標章1よりも後に出願され た本件各商標との類似性を理由として本件各商標権に基づく権利行使を認めること は不合理である。

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◆1審はこちらです。平成25(ワ)13862

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平成27(行ケ)10219  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年4月12日  知的財産高等裁判所

パロディーの「フランク三浦」が「フランクミュラー」から無効理由あるかが争われました。知財高裁は、類似するとした審決を取り消しました。侵害事件ではありません。
(ア) 本件商標と引用商標1を対比すると,本件商標より生じる「フラン クミウラ」の称呼と引用商標1から生じる「フランクミュラー」の称呼 は,第4音までの「フ」「ラ」「ン」「ク」においては共通するが,第 5音目以降につき,本件商標が「ミウラ」であり,引用商標1が「ミュ ラー」であって,本件商標の称呼が第5音目と第6音目において 「ミ」「ウ」であり,語尾の長音がないのに対して,引用商標1におい ては,第5音目において「ミュ」であり,語尾に長音がある点で異なっ ている。しかし,第5音目以降において,「ミ」及び「ラ」の音は共通 すること,両者で異なる「ウ」の音と拗音「ュ」の音は母音を共通にす る近似音である上に,いずれも構成全体の中間の位置にあるから,本件\n商標と引用商標1をそれぞれ一連に称呼する場合,聴者は差異音 「ウ」,「ュ」からは特に強い印象を受けないままに聞き流してしまう 可能性が高いこと,引用商標1の称呼中の語尾の長音は,語尾に位置す\nるものである上に,その前音である「ラ」の音に吸収されやすいもので あるから,長音を有するか否かの相違は,明瞭に聴取することが困難で あることに照らすと,両商標を一連に称呼するときは,全体の語感,語 調が近似した紛らわしいものというべきであり,本件商標と引用商標1 は,称呼において類似する。
他方,本件商標は手書き風の片仮名及び漢字を組み合わせた構成から\n成るのに対し,引用商標1は片仮名のみの構成から成るものであるか\nら,本件商標と引用商標1は,その外観において明確に区別し得る。 さらに,本件商標からは,「フランク三浦」との名ないしは名称を用 いる日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じるのに対 し,引用商標1からは,外国の高級ブランドである被告商品の観念が生 じるから,両者は観念において大きく相違する。 そして,本件商標及び引用商標1の指定商品において,専ら商標の称 呼のみによって商標を識別し,商品の出所が判別される実情があること を認めるに足りる証拠はない。 以上によれば,本件商標と引用商標1は,称呼においては類似するも のの,外観において明確に区別し得るものであり,観念においても大き く異なるものである上に,本件商標及び引用商標1の指定商品におい て,商標の称呼のみで出所が識別されるような実情も認められず,称呼 による識別性が,外観及び観念による識別性を上回るともいえないか ら,本件商標及び引用商標1が同一又は類似の商品に使用されたとして も,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとはいえない。 そうすると,本件商標は引用商標1に類似するものということはでき ない。
(イ)a これに対し,被告は,本件商標は,著名ブランドとしての「フラ ンク ミュラー」の観念を想起させる場合があることから,著名ブラ ンドとしての「フランク ミュラー」の観念を生じる引用商標1と は,観念において類似し,称呼においても類似するから,両者は類似 の商標である旨主張する。 確かに,前記(2)アのとおり,被告使用商標ないしは引用商標1が,被 告商品を表示するものとして,本件商標の登録査定時に,我が国にお\nいて,需要者の間に広く認識され,周知となっていたのであるから,前 記(ア)のとおり,本件商標と引用商標1の称呼が類似することと相ま って,本件商標に接した需要者が,本件商標の称呼から,称呼の類似 する周知な被告使用商標ないしは引用商標1を連想することはあり得 るものと考えられる。 しかしながら,本件商標は,その中に「三浦」という明らかに日本 との関連を示す語が用いられており,かつ,その外観は,漢字を含ん だ手書き風の文字から成るなど,外国の高級ブランドである被告商品 を示す引用商標1とは出所として観念される主体が大きく異なるもの である上に,被告がその業務において日本人の姓又は日本の地名に関 連する語を含む商標を用いていることや,そのような語を含む商標な いしは標章を広告宣伝等に使用していたことを裏付ける証拠もないこ とに照らすと,本件商標に接した需要者は,飽くまで本件商標と称呼 が類似するものの,本件商標とは別個の周知な商標として被告使用商 標ないしは引用商標1を連想するにすぎないのであって,本件商標が 被告商品を表示すると認識するものとは認められないし,本件商標か\nら引用商標1と類似の観念が生じるものともいえない。

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平成27(行ケ)10174  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年3月23日  知的財産高等裁判所

「チャッカマン」は周知ではあるが、「チャッカボー」と非類似、また、混同もなしとした審決が維持されました。
本件商標と原告使用商標とが非類似の商標であって,両商標において共通する「チ ャッカ」の文字部分も,本件指定商品及び原告商品との関係において,その需要者 に「着火」の語を直ちに想起させるものであって,格別に独創性が高いものではな いから,本件商標は,これに接する需要者をして,原告使用商標を連想させて商品 の出所について誤認,混同を生じさせるおそれある商標とはいえず,かつ,フリー ライド又はダイリューションを招くとまでもいえない。

◆判決本文

◆関連判決はこちち。平成27(行ケ)10173

◆関連判決はこちち。平成27(行ケ)10172

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平成27(行ケ)10134  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年2月17日  知的財産高等裁判所

 新聞をにぎわしたタニタとオムロンヘルスケアの争いです。商標「dualscan」について、知財高裁は、類似群コードは異なるけれども、類似する商品と判断し、無効理由なしとした審決を取り消しました。
   商標法施行令は,商標法6条2項に係る区分を定める政令別表において,\n第10類として「医療用機械器具及び医療用品」を挙げているところ,省令別表で\nは,第10類の項目において,「医療用機械器具」が,「手術用キャットガット」や 「人工鼓膜用材料」,「医療用手袋」等とともに列挙されているから,第10類の「医 療用機械器具」とは,本来,医療行為に供することが予定されている商品を指すも\nのと解される。 そうすると,引用商標の指定商品である「体脂肪測定器,体組成計」とは,医療 行為に供する程度の品質,性能を保有することが予\定されている体脂肪率,筋肉量, 基礎代謝量等の体組成の測定機器を指すものというべきである。 確かに,省令別表の第10類には,「おしゃぶり」,「哺乳用具」,「綿棒」,「指サッ\nク」,「業務用美容マッサージ器」,「家庭用電気マッサージ器」や「耳かき」なども 列挙されており,医師による診断,治療の場面以外での使用が想定されているもの や,小型で安価で個人でも入手可能であり,病院以外に家庭での使用が想定されて\nいるもの,機能的に高度とはいえないものが含まれている。しかしながら,これら\nの物品は,いずれも美容,健康に関連する商品という意味において,医療行為の範 ちゅうに属する行為ないし医療行為に関連する行為に供されるものと認められるし, 高度な機能が不要であるとしても,医療行為に供されること,そのために必要な品\n質,性能が求められていることは同様であるから,当該物品に関する省令別表\の分 類は,上記判断を左右しない。
ウ これに対し,政令別表では,第9類として「科学用,航海用,測量用,\n写真用,音響用,映像用,計量用,信号用,検査用,救命用,教育用,計算用又は 情報処理用の機械器具,光学式の機械器具及び電気の伝導用,電気回路の開閉用, 変圧用,蓄電用,電圧調整用又は電気制御用の機械器具」が列挙されているところ, 省令別表では,第9類の項目において,「測定機械器具」として,温度計,圧力計,\n金属材料圧縮試験機,気象観測用機械等の種々のものが列挙されているものの,い ずれも,医療行為に供することを予定したものではないから,省令別表\の「測定機 械器具」が属する第9類の「測量用・・・の機械器具」は,元々,医療行為に供す ることが予定されていない商品を指すものと解される。\nそうすると,本件商標の指定商品である「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重 計,体重計」とは,体脂肪率,筋肉量,基礎代謝量等の体組成や体重の測定機器を 指すというべきである。そして,測定の対象自体は引用商標の指定商品と重なる部 分があるが,医療行為に供することが予定されていないという意味において,医療\n行為に供する場合よりも,品質や性能が劣るものを予\定しているというべきである。 エ なお,原告は,第9類への帰属と第10類への帰属が択一関係にあるこ とを否定すべき旨主張する。しかしながら,商標法6条1項及び2項が,商標登録 出願の際に商品の指定をすること,同商品の指定は,政令で定めた区分に従って行 うことを要求し,これに基づいて政令別表が作成されていること,政令別表\はニー ス協定の規定した国際分類に即して作成されているが,国際分類でも類別表又はア\nルファベット順の一覧表において,多数の多種多様な商品及びサービスが概括的,\n網羅的に記載されていること,政令別表を再区分化した省令別表\では,別表に商品\n名の記載がない場合を例外的な場合と取り扱っていることからすると,政令別表は,\n指定商品を指定するに当たって,可能な限りその中から選択できるように,世上存\nする多数の商品を全て列挙することを目指すものであり,そのうち,同種企業が取 り扱う可能性のある商品の類型ごとに1つの区分を設けたと考えられる。\nしたがって,省令別表は,特定の商品が多数の類型に同時に属することを,本来,\n予定していないと解するのが相当というべきである。「商品及び役務の区分解説」(乙\n3,4)においても,医院又は病院で専ら使用される電子応用の機械器具は,例外 的に,第9類の電子応用機械器具及びその部品に含まれないこと,第9類の「測定 機械器具」に該当する器具でも,専ら医療用に使用する測定機械器具については, 第10類の「医療用機械器具」に含まれることが記載されており,第9類と第10 類の商品を区別し,いずれかに分類できることを前提としている。 確かに,特定の商品がどの分類に属するかが不明な場合があることや,特定の分 類に属していた商品が,品質向上に伴って他の分類の属すると評価するのが相当な ことはあり得るといえるが,上記の指定商品の区分を設けた趣旨からして,同時に 複数の類型に帰属することは予定されていないとの前記解釈が左右されるものでは\nない。よって,本件商標の指定商品は,第9類に属するとされている以上,第10 類にも属するとの前提に立つことはできない。
・・・
確かに,「医療用機械器具」に属する具体的な商品では,大型で高額であり,医師 等の専門家でなければ入手し,使用することができないようなものが多く,このよ うな商品については,一般的な消費者が自ら購入することは考えにくく,上記推定 が及ぶものと解される。もっとも,「医療用機械器具」に属する具体的な商品の中に は,上記のような多種多様なものが含まれ,必ずしも一般消費者には入手困難とは いえない類型のものも存在するし,今後,技術革新や取引形態の変化によって,高 性能の低価格帯の製品が普及し,一般消費者も,医療用として使用されている機械\n器具を購入し,使用するようになれば,事後的に,出所について誤認混同するおそ れが生じ得ることになるから,実際に商標が使用されている具体的な商品の使用状 況,取引の実情等によっては,上記推定を及ぼすことが相当でない場合もあるとい うべきである。「類似商品・役務審査基準」において,商取引,経済界等の実情の推 移から,類似と推定した場合でも非類似と認められること,基準上は類似とならな い場合であっても類似と認められることがあると注記しているのも(甲64),例外 を許容する趣旨と解され,上記見解と整合するものである。 (2) 体脂肪計,体組成計,体重計の取引状況
そこで,以下,本件商標の指定商品とこれに関連した引用商標の指定商品の取引 の実情を,具体的に検討することにする。
・・・
以上によれば,本件査定時において,本件商標と引用商標の指定商品に関連する 体脂肪計,体組成計,体重計等の取引の実情に関し,次のことがいえる。
ア まず,業務用として販売されている体組成計及び体重計は,医療用とし て使用することを想定した機能や性能\を有し,医療用製品に該当するといえるとこ ろ,家庭用の体組成計及び体重計のシェアが極めて高い原告と被告は,医療用製品 の製造者でもある。また,医療用の体組成計しか製造していないメーカーが存在す る一方,医療用の体組成計を製造していない家電メーカーも存在し,家庭用の製品 と医療用の製品に関し,シェアが一致しているとは認められない。
イ 次に,メーカーによって,販売用のカタログの種類,掲載対象は異なる が,家庭用の体組成計や体重計のシェアが高い被告は,家庭用と業務用の両方を掲 載したカタログを用意している。また,多数の医療機器販売メーカーのカタログに おいて,小型の体脂肪計,体組成計,体重計が掲載され,販売されているが,その 中には,原告や被告の製品で,業務用のものと家庭用のものの両方が含まれている ため,医療関係者は,医療用機器の購入時に家庭用機器も併せて購入対象として検 討することになる。 小売店における体脂肪計,体組成計,体重計の販売では,業務用の大型のものは 展示されていないが,健康意識の向上に伴い,血圧計や体温計といったヘルスケア に関する製品と一緒に展示されており,一般消費者は,家庭用体組成計,体脂肪計 及び体重計を,健康維持や病気予防の目的で使用できる製品と近い性質のものと認\n識し得る。 また,近時は,ネット販売の増加もうかがわれるところ,体脂肪計,体組成計, 体重計のネット販売は,家電メーカー,医療機器メーカーに限られず,オフィス用 品取扱会社などにおいても取り扱われており,医療関係者の購入を前提とし,医療 用製品を主に取り扱うウェブサイトもあれば,一般消費者の購入を前提とし,家庭 用製品を主に取り扱うウェブサイトもある。前者では,医療用機器として大型の体 重計,体組成計以外に小型の製品も掲載され,医療用に限定されず,家庭用の体組 成計,体重計が販売されていることが多いため,主たる需要者である医療関係者に とって,医療用機器と同様に,家庭用機器が購入検討対象となる。しかも,医療用 製品を主として取り扱うウェブサイトであっても,一般消費者がアクセスすること 自体に制限はなく,購入も禁止されていないため,一般消費者も需要者となること があり,その場合の購入対象は,家庭用機器に必ずしも限られず,医療用機器も候 補となる。他方,一般消費者向けのウェブサイトであっても,業務用体重計が販売 される場合もあり,医療用製品が購入候補になることもあるし,リンクが貼られた\n業務用製品販売通販サイトへアクセスすることで,他の医療用製品等が購入候補と なることもある。
ウ さらに,医療用と家庭用の体脂肪計,体組成計,体重計において,そ の品質及び価格は様々であるが,医療用と同程度の品質及び価格が用意されている 業務用のものは,医療現場以外の学校やフィットネスクラブ等でも使用され,学生 やフィットネスクラブの会員である一般消費者が,直接接する場合がある。 具体的には,医療現場に設置されることが多いと考えられる業務用の製品は,価 格が100万円を超えるものや,一般住宅内での設定が想定できないほど大型のも のがあるが,一方,業務用の体重計であっても,価格が3万円程度で,一般家庭で の購入が十分可能\な製品もある(被告のWB−260A)。 他方,家庭用の体脂肪計,体組成計,体重計であっても,多数の機能が付加され\nていることが通常であり,1万円を超えることも珍しくない。これらの家庭用の体 重計等は,家庭用計量器の基準しか満たさないものとはいえ,その測定対象や測定 単位が医療用のものと同様のことがあり,医療関係の研究論文で使用される程度の 精度を備えていて,医療現場で購入される場合もある。
エ このように,家庭用の体重計の需要者である一般消費者は,医療用の 体組成計,体重計も入手可能な状況となっていたといえる上に,医療用の体組成計,\n体重計は,医療現場での利用に限定されず,学校やフィットネスクラブ,企業等で も利用されるから,その需要者は,医療関係者に限定されず,学校関係者やフィッ トネス関係会社,企業の物品購入部門,健康管理部門の従業員も含まれる。そして, 医療用の体組成計及び体重計のシェアの正確な数値は不明であるが,被告の医療用 の体組成計の販売台数は相当数に及び,販売シェアも小さくないから,これらの需 要者は,家庭等で被告の家庭用の体組成計を目にするだけでなく,学校やフィット ネスクラブ等で被告の医療用の体組成計を目にする機会もあることが推認される。 また,一般消費者の一部を構成する医療従事者は,一般消費者よりも高い注意力\nをもって商品を観察するとはいえ,医療用と家庭用の両方の製品を製造し,家庭用 のシェアの大半を占める原告と被告の製品に日常的に接することになるから,医療 用製品の出所について,家庭用製品の出所と区別して認識することが困難な状況と いえる。 さらに,その他の学校関係者,フィットネス関係会社や企業の物品購入部門,健 康管理部門の従業員には,一般的な消費者も含まれており,しかも,医療用と家庭 用の体重計,体組成計の測定対象は同じであり,性能等が近づきつつあるといえる\n上に,精度の違いは一般消費者には識別し難い場合があることから,性能による明\n確な区別も困難である。
オ よって,本件査定時においては,医療用の「体脂肪測定器,体組成計」 と家庭用の「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」は,誤認混同のお それがある類似した商品に属するというべきである。したがって,審決の指定商品 の類否判断の誤りをいう原告の取消事由3は,理由がある。

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平成27(行ケ)10180  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年2月9日  知的財産高等裁判所

 指定商品「サプリメント」商標「宮古養命草」について、「養命酒」及び「養命」から4条1項15号違反に認定されました。ただ、欠席裁判です。
(1) 被告は,適式の呼出を受けながら,本件口頭弁論期日に出頭しないし,答弁 書その他の準備書面も提出しないから,原告の主張(請求原因事実)を自白したも のとみなされる。 したがって,15号引用商標の「養命酒」及び「養命」の語は,本件商標の登録 出願時及び査定時において,原告商品の名称として周知著名であり,日本全国にお いて,ユニークな造語として広く一般需要者に認識されていたこと,「養命酒」及び 「養命」の語は,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な 印象を与えるものであり,本件商標の要部は「養命」の部分であること,原告は, 原告商品のほか「養命水」の商標を使用したミネラルウォーターや,サプリメント 等を販売していること,本件商標の指定商品「サプリメント」と原告商品である薬 用酒とは,いずれも広い意味でセルフメディケーションの用途で飲用,食用される 商品であり,需要者を共通にするものであることが認められる。
(2) 以上の事実によれば,被告が取引者及び需要者を原告商品と共通する本件商 標を指定商品に使用した場合,これに接した取引者,需要者は,高い周知著名性の ある「養命酒」,「養命」の表示を連想し,原告の出所に係るものであると誤信する\nか,少なくとも,当該商品が原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な 営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある\n営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがあり,商品の出所につき誤認 を生じさせるものと認められる。 そうすると,本件商標は,商標法4条1項15号所定の「混同を生ずるおそれが ある商標」に当たると解される。本件商標が商標法4条1項15号に該当しないと した審決の判断には誤りがある。

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平成27(行ケ)10132  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年2月9日  知的財産高等裁判所

 商標法4条1項7号(公序良俗)違反なしとした審決が維持されました。
 前記認定のとおり,被告は,本件商標が登録されるまで,日本国内において 製造・販売するゴルフクラブに「KAMUI」単体商標を使用することはなかった ことが認められるものの,他方で,原告と被告は,共同企業体であるカムイクラフ トを設立し,製造したゴルフクラブに「KAMUIPRO」の名称を付して販売し ていたこと(「KAMUIPRO」の商標権は原告と被告の共有である。),カムイク ラフト解消後,被告は,ゴルフクラブの名称をカムイプロからカムイツアー(KA MUITOUR)に改めることとしてゴルフクラブの製造販売を継続したこと(「K AMUITOUR(標準文字)」についても商標登録されている。),一時期は,被告 のゴルフクラブが「カムイ」のゴルフクラブとして紹介されることもあったこと, 本件商標の登録出願時においても,「KAMUITOUR」,「カムイツアー」等の標 章を使用してゴルフクラブを販売しており,上記のゴルフクラブの売上本数や売上 高についても原告と同程度のものであったことなどが認められ,被告としても,当 初から,「KAMUI」と文字を共通にする上記各標章をゴルフクラブに付して販売 等しており,継続的に相応の売上げがあったものということができる。 また,前記認定のとおり,原告と被告は,共同企業体であるカムイクラフトを解 消するに当たり,カムイの新製品については,それぞれが権利を有することを合意 したことが認められるものの,この合意のみをもって,被告が原告に対し,原告が 「KAMUI」単体商標の権利を有することを約束したものとはいい難く,本件商 標の登録出願が,原告と被告との間の上記合意に反するとは認められない。その他, カムイクラフト解消後においても,被告が原告に対し「KAMUI」単体商標に関 して法的義務を負う関係にあったということもできず,本件商標の登録出願につき, 被告に何らかの義務違反があるとも認められない。 以上のような経緯等によれば,前記認定の韓国における原告と被告の「KAMU I」に係る商標に関する紛争も契機として,被告が本件商標権に基づく先行訴訟に 至ったことを考慮しても,本件商標について,直ちに本件商標の登録出願の経緯に 著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが到底容認し得ないよう な事情があるとは認められない。

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平成27(行ケ)10171  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年1月28日  知的財産高等裁判所

 商標「i:na」と「e−na」について、審決では類似すると判断されましたが、知財高裁は「称呼は同じだが、外観において明らかに相違しその相違の程度が顕著である」として、類似しないと判断しました。
 そこで,本願商標の「i:na」と引用商標の「e−na」を対比す ると,いずれも欧文字3字と1つの記号(「:」又は「−」)からなり,後 半の2文字が「na」である点において共通するが(引用商標中の「a」は 「a」にアクサン記号が付されたもの),冒頭の1文字及び記号はいず れも異なる。特に,引用商標においては,冒頭の「e」の文字が他の文 字よりも大きく表記され,最も看者の注意を惹きやすい文字といえると\nころ,これと本願商標の冒頭の「i」の文字とは,その外観が明らかに 異なる。 また,本願商標の「i:na」の欧文字は,同じ大きさのデザイン化 された太い筆記体の文字が横一列に並べられたもので,全体として整然 とした印象を受けるのに対し,引用商標の「e−na」の欧文字は,手書 き風のややくだけた活字体の書体であることに加え,文字の大きさが統 一されておらず,「n」の文字が他の文字よりやや低い位置に表記され,各\n文字が横一列に整然と並べられていないことから,全体としてやや雑然 とした印象を受けるものといえる。 なお,本願商標の下段部分と引用商標は,欧文字に近接してその読み を表記する片仮名又は平仮名が表\記されている点において共通する が,いずれも欧文字部分に比して極めて小さな表記にすぎないから,こ\nの点は,外観の類否に特段の影響を与えないものというべきである。 (エ) 以上のとおり,本願商標の下段部分と引用商標は,それぞれを構成\nする欧文字3字中の2字を共通にするものの,看者の注意を惹きやすい 冒頭の文字が異なる上,文字の書体,配列等の構成も異なっており,全\n体として受ける印象においても相違することによれば,本願商標の下段 部分と引用商標は,外観において明らかに相違し,その相違の程度は顕 著であるものと認められる。
・・・
エ 取引の実情について
本願商標の指定商品である「ティッシュペーパー,トイレットペーパ ー,その他の紙類」に係る取引又は引用商標の指定役務中の「紙類の小売 等役務」及び「壁紙の小売等役務」に係る取引において,本件審決当時,商 標の称呼のみによって取引が行われる実情があることをうかがわせる証拠 はない。 かえって,ティッシュペーパー,トイレットペーパー等の商品について は,スーパーマーケット,ホームセンター,ドラッグストア等の小売店舗 において,展示販売され,商品に付された商標の外観を確認し得る態様で 販売されることが通常であると考えられるところであり,このことは,本 件審決当時,原告が本願商標を使用して製造・販売するティッシュペーパ ー及びトイレットペーパーについても,これらの小売店舗において広く販 売されている事実(甲2,5,19)からも裏付けられる。また,インタ ーネット販売においても,商品名,商品の画像等から,商品に付された商 標の外観を確認し得るのが通常であるといえる。
オ 小括
以上のとおり,本願商標の要部である下段部分と引用商標は,「イーナ」の 称呼が生じる点では共通するものの,観念において比較することができな い上,外観において明らかに相違し,その相違の程度は顕著であること,さ らに,前記エ認定の取引の実情を総合考慮すると,本願商標及び引用商標 が本願商標の指定商品と同一又は類似する商品に使用されたとしても,取 引者,需要者において,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれ があるものといえないから,本願商標と引用商標とは全体として類似して いるものと認めることはできない。 したがって,本願商標が引用商標に類似する商標であるとは認められな いから,本願商標の指定商品と引用商標の指定役務の類否について判断す るまでもなく,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした本件審 決の判断には誤りがある。

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平成27(行ケ)10058  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年1月28日  知的財産高等裁判所

 「Enoteca Italiana」が「ENOTECA」と類似するかが争われました。特許庁審決では類似しないと判断されましたが、知財高裁は類似するとしてこれを取り消しました。
 以上のとおり,本件商標は,「Enoteca」の文字部分と「I taliana」の文字部分とから構成される結合商標であるが,その\n外観上,それぞれの文字部分を明瞭に区別して認識することができるこ と,それぞれの文字部分から別異の観念が生じることに鑑みると,本件 商標の「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部 分は,それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほ ど不可分的に結合しているものと認められないというべきである。 イ 本件商標の登録査定当時には,「ENOTECA」又は「エノテカ」は,原 告及び原告が行うワインの輸入販売,小売,卸売等の事業ないし営業を表\n示するものとして,日本国内において,取引者,需要者である一般消費者 の間に,広く認識され,周知となっていたこと,本件商標の「Enote ca」の文字部分から,取引者,需要者において,原告の周知の営業表示\nとしての「ENOTECA」又は「エノテカ」の観念が生じることは,前 記ア(イ)認定のとおりである。 他方で,前記ア(ウ)認定のとおり,本件商標の「italiana」の 文字部分から「イタリアの」という観念を生じるが,本件商標の指定役務 との関係においては,本件商標の「italiana」の文字部分は,そ の役務の提供の場所,提供の用に供される物等がイタリアに関連すること を示すものと認識されるにとどまるものといえる。 以上を総合すると,本件商標が「ワインの小売又は卸売の業務について 行われる顧客に対する便益の提供」の役務及びワインに関連する役務に使 用された場合には,本件商標の構成中の「Enoteca」の文字部分は,取\n引者,需要者に対し,上記各役務の出所識別標識として強く支配的な印象 を与えるものと認められ,独立して役務の出所識別標識として機能し得る\nものといえる。 そうすると,本件商標から「Enoteca」の文字部分を要部として 抽出し,これと引用商標とを比較して商標そのものの類否を判断すること も,許されるというべきである。 ウ これに対し,被告らは,本件商標は,外観が不可分一体で,称呼も一連 一体であり,観念についても,その構成全体から,ワインを販売・提供す\nる店舗の名称あるいは被告会社の周知な店舗名を表すものであること,本\n件商標の構成中の「Enoteca」の文字部分は強く支配的な印象を与\nえるものはいえないことなどからすると,本件商標から「Enotec a」の文字部分のみを要部として抽出することはできない旨主張する。 しかしながら,被告らの主張は,以下のとおり理由がない。 (ア) 被告らは,本件商標は,縁取りして統一的に図案化されたワインレ ッド色の「Enoteca Italiana」の文字をまとまりよく一 体的に表してなるロゴタイプの商標であり,本件商標から「エノテカイ\nタリアーナ」の一連の称呼がよどみなく生じるから,本件商標は,色彩 や形態によって外観が不可分一体であり,称呼も一連一体である旨主張 する。 しかしながら,前記ア(ア)認定のとおり,本件商標は,その構成全体\nから「エノテカイタリア−ナ」の称呼が生じるが,一方で,本件商標は,そ の構成中の「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文\n字部分との間に空白があること,それぞれの文字部分の冒頭の文字が大 文字で,冒頭以外の文字が小文字であることからすると,本件商標の外 観上,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部 分とを明瞭に区別して認識することができるから,本件商標の外観が不 可分一体であるということはできない。 また,本件商標の構成全体から「エノテカイタリア−ナ」の称呼が自\n然に生じることからといって直ちに本件商標から「Enoteca」の 文字部分を要部として抽出することができないとはいえない。 したがって,被告らの上記主張は,本件商標から「Enoteca」の 文字部分のみを要部として抽出することはできないことの根拠となるも のではない。

◆判決本文

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平成27(行ケ)10159  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年1月20日  知的財産高等裁判所

 「Reebok」の文字の下段に極小さく表示した「ROYAL FLAG」から構成された結合商標について、先行商標「ROYAL FLAG」と類似するのかが争われました。知財高裁は、分離できるとした審決を取り消し、非類似と判断しました。判決文の最後に、本件商標があげられています。
 しかしながら,本願商標は,その外観上,「Reebok」の文字部分,図 形部分及び「ROYAL FLAG」の文字部分を組み合わせて成る結合商標であ ると認められるが,前記(1)のとおり,右側に鋭角の頂点を有する黒地の三角形の左 端に縦に白線を表し,当該三角形全体を左から右に波打つように旗状に表\\した図形 を中央に大きく配し,その上段に,「Reebok」の文字を図案化された特徴の ある書体で表し,図形の下段に「ROYAL」及び「FLAG」の各文字を1文字\n程度の間隔を空けて,上段の文字部分よりも小さく,かつ細いゴシック体で表して\n成るものであり,全体としてまとまりよく表されている。これに加え,中央に配さ\nれた図形の大きさ及びその形状並びにその上段に配された「Reebok」の文字 の大きさ及びその図案化された特徴のある書体に比べ,図形部分の下段に配された 「ROYAL FLAG」の文字部分は,小さく,すなわち「ROYAL FLA G」の冒頭の「R」と「Reebok」の冒頭の「R」の文字の大きさを比べると, 前者は後者の10分の1程度の大きさしかなく,かつ細い文字で表され,しかも,\nゴシック体という一般的な書体であるから,その外観上,「ROYAL FLA G」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているというこ\nとはできない。
ウ また,「ROYAL FLAG」という一連の語は,既成語として辞書に掲 載されているものではないが,「ROYAL」及び「FLAG」は,我が国にお ける英語の普及率に照らせば,いずれも一般的な英単語であって,格別のものでは ないこと,「ロイヤル(royal)」が国語辞典に掲載されているだけでなく (甲50),これを付した複合語(例えば,「ロイヤル・ウェディング(roya l wedding)」,「ロイヤル・スマイル(royal smile)」, 「ロイヤル・ファミリー(Royal Family)」,「ロイヤルブルー(r oyal blue)」,「ロイヤル・ボックス(royal box)」,「ロ イヤル・ミルク・ティー(royal milk tea)」など)も,カタカナ ・外来語辞典等に数多く掲載されていること(甲51,52),「フラッグ(f lag)」が国語辞典に掲載されているだけでなく(甲35,41),これと他の 語との複合語(例えば,「チェッカー フラッグ(checker flag)」, 「チャンピオン フラッグ(champion flag)」,「ナショナル フ ラッグ(national flag)」,「ナショナル フラッグ キャリアー (national flag carrier)」,「フラッグ・ショップ(f lag shop)」など)も,外来語辞典等に複数掲載されていること(甲37 〜40,44),「ROYAL」又は「FLAG」の英単語を含む商標登録も数 多く存在すること(甲56〜59)等に照らせば,一般的な英単語をつないだもの にすぎないというべきである。そして,「ROYAL FLAG」の文字部分は, それ自体が自他商品を識別する機能が全くないというわけではないものの,商品の\n出所識別標識として強く支配的な印象を与える「Reebok」の文字部分との対 比においては,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印 象を与えるものであるということはできず,本件全証拠によるも,このようにいえ るだけの事情を認めるに足りない。 エ したがって,本願商標の構成のうち「ROYAL FLAG」の文字部分だ けを抽出して,引用商標と比較して類否を判断することは相当ではない。

◆判決本文

◆関連事件です。平成27(行ケ)10158
こちらは「REEBOK ROYAL FLAG」と標準文字にて横一行で表した結合商標です。\n

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平成27(行ケ)10096  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年1月13日  知的財産高等裁判所

 特許庁の審査基準では、備考類似の商品役務については、第三者から申立があった場合に、判断されます。「プログラムの提供等」と「プログラム」が類似関係にあると判決も認めました。
 本件において,引用商標の指定商品「電子応用機械器具及びその部品」には,「電 子計算機用プログラム」が含まれるところ,遅くとも本件商標の出願時には,電子 計算機用プログラムは,記録媒体に記録された電子計算機用プログラムとして店頭 にて販売されていたのみならず,インターネットを通じたダウンロードにより流通 されており,さらには,インターネット等の通信回線を通じ,サーバ上に保管され た電子計算機用プログラムを使用させる役務として提供されていたものと認められ る(甲132)。 一方,本件商標の指定役務中「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プロ グラムの提供等」の役務で提供される内容は,いずれも「電子計算機用プログラム」 であるから,商品「電子計算機用プログラム」の製造・販売者がかかる役務の提供 を行うことも少なくないものと考えられる。また,商品「電子計算機用プログラム」 の需要者と,役務「電子計算機用プログラムの提供」の需要者は,いずれも,コン ピュータ等を用いて電子計算機用プログラムを使用する者であるから,共通すると いえる。さらに,上記認定のとおり,電子計算機用プログラム自体の流通と,電子 計算機用プログラムの提供とは,共にインターネット等の通信回線を通じて行われ ることもあると解されるから,取引形態も共通する。そして,これらの事情は,電 子計算機用プログラムの用途の内容,例えば,ウェブログの運用管理,オンライン によるブログ作成,インターネット上の情報閲覧などに限られるか否かによって異 なるものとは認められない。 したがって,商品「電子計算機用プログラム」と役務「ウェブログの運用管理の ための電子計算機用プログラムの提供等」とに同一又は類似の商標を使用する場合 は,同一営業主の製造若しくは販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそ れがあると認められる関係があるといえる。
(2) これに対して,原告は,引用商標の指定商品「電子応用機械器具及びその 部品」に含まれる「電子計算機用プログラム」はあくまでも電子応用機械器具の部 品としてのプログラムに限られるから,ウェブサイト上でのコンピュータプログラ ムの提供などとは類似しない,と主張する。 しかし,仮に,特定分野の電子計算機用プログラムが商品としてのみ流通してお り,ウェブサイト上などでは提供されてはいないという状況があったとしても,一 般的には,前記認定のとおり,電子計算機用プログラムが,インターネット等を通 じてダウンロードにより流通されると同時に,サーバ上に保管された電子計算機用 プログラムをインターネット等の通信回線を通じて使用させる役務として提供され ていたものと認められる。商品としてのみ流通している電子計算機用プログラムと, ウェブサイト上などでも電子計算機用プログラムが提供されている場合とで,その 製造・販売・提供者や商品・役務の内容,それぞれの需要者が異なると認めるに足 りる証拠はない。したがって,商品「電子計算機用プログラム」と役務「ウェブロ グの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供等」とに同一又は類似の商標 を使用する場合は,同一営業主の製造若しくは販売又は提供に係る商品又は役務と 誤認されるおそれがあると認められる関係があるといえる。

◆判決本文

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平成27(行ケ)10084  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年12月24日  知的財産高等裁判所

 我が国おいて周知か否かが争われました。知財高裁は、「周知である」とした審決を取り消しました。
 商標法4条1項10号にいう「広く認識されている」とは,業務に係る商品等と これと競合する商品等とを合わせた市場において,その需要者又は取引者として想 定される者に対して,当該業務に係る商品等の出所が周知されていることであり, その周知の程度は,全国的に知られているまでの必要性はないものの,通常,一地 方,すなわち,一県の全域及び隣接の数県を含む程度の地理的範囲で知られている 必要があると解される。 ところで,前記第3の1及び第4の1によれば,本訴当事者間においては,本件 電子瞬間湯沸器の需要者又は取引者として想定すべき者は,電気を熱源とする瞬間 湯沸器の需要者又は取引者に限られるものではなく,ガスを熱源とするものも含む 家庭用の壁掛型の瞬間湯沸器全体の需要者又は取引者であることで争いがないとこ ろ,電気を熱源とする瞬間湯沸器とガスを熱源とする瞬間湯沸器とは,同じ用途に 使用され,熱源の相違によって利用者が異なるとする事情は認められないから,上 記当事者の主張のとおり解すべきものである。また,本件電子瞬間湯沸器が特定の 地方で集中的に又は専属的に販売されるものであるとする事情はないから,引用商 標が,全国のいずれかの地域において,上記に説示した地理的範囲において周知で あるか否かを考慮することになる。 イ 検討 そこで,上記を前提に検討するところ,上記(1)の認定のとおり,被告が本件電子 瞬間湯沸器の販売を開始したと認められる平成7年5月から,本件商標の登録査定 がされた平成17年8月までの間においては,1)被告が,自ら引用商標と共に本件 電子瞬間湯沸器の宣伝広告をしたのは,わずかに2回であること,2)引用商標と共 に本件電子瞬間湯沸器が新聞・雑誌及びテレビ放送に取り上げられたことは8回で あって,必ずしも多数といえないばかりか,それらは,平成6年〜平成9年と平成 14年〜平成16年の2つに分かれるなど,離散して取り上げられたにすぎないこ と,3)被告が引用商標と共に本件電子瞬間湯沸器の実演展示をしたことは31回あ るものの,これは,年平均では約3回にすぎず,その場所もおおむね西日本各地に 散在していること,4)被告による当該期間における本件瞬間湯沸器の販売台数は, 全く明らかにされておらず,新聞記事等から推測される販売台数は年間数百台程度 であり((1)エ1)は,被告の取引先の社内報であり,客観的裏付けを欠くものと解さ れる。),需要者又は取引者の範囲を家庭用の壁掛型の瞬間湯沸器の需要者又は取引 者とした場合,一見して僅少であること(なお,本件電子瞬間湯沸器には,「Eem aX」との引用商標と類似する標章が付されていたことは推認できる。),また,そ の納入先も全国に散在しているとみられ,特定の傾向はないこと,5)被告により開 示された広告宣伝費及び展示会費は,引用商標を付した本件電子瞬間湯沸器に係る 費用に限定されない会社全体としての宣伝広告費及び展示会費である上,金額も, 前者は百万円台,後者は百万円以下が多く,壁掛型瞬間湯沸器という全国的な市場 において需要者又は取引者に印象を残すための費用としては,明らかに少ないもの であること,以上の事実を導くことができる。 そうすると,本件証拠上,被告自身による引用商標に関する宣伝広告等は活発と はいえない上,新聞・雑誌等によりこれが報道された機会も少ないと認められる一 方,引用商標を付した本件電子瞬間湯沸器の販売台数等は明らかではなく,全国的 規模の市場に対する販売実績は極めて少ないものと推測される。このような宣伝広 告及び販売実績等を考慮すると,家庭用の壁掛型の瞬間湯沸器又は電気を熱源とす る同瞬間湯沸器の市場規模を子細に確定するまでもなく,いずれの引用商標も,本 件商標の登録査定時において周知性を有していたとは認め難い。なお,被告が自社 ホームページで宣伝活動をしたことは,ホームページを開設することが誰でも直ち に行える以上,それのみで周知性を裏付けるものとはならない。そのほか被告のる る主張するところも,採用することはできず,上記適示した証拠以外の証拠も,上 記認定を左右するものではない。

◆判決本文

◆関連事件です。平成27(行ケ)10083

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