H15. 1.21 東京高裁 平成14(行ケ)266 商標権 行政訴訟事件

平成14年(行ケ)第266号 審決取消請求事件 (平成14年11月14日口頭弁論終結) 
                   判    決
     原  告        株式会社ライオン事務器
     訴訟代理人弁理士    牛木理一
     被  告        株式会社パイロット
         訴訟代理人弁理士    村橋史雄、石田正彦、遠藤祐吾
            
                      主    文
    原告の請求を棄却する。
    訴訟費用は原告の負担とする。


                       事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
  特許庁が無効2000−35527号事件について平成14年4月17日にした審決を取り消す、との判決。


第2 事案の概要
 1  特許庁における手続の経緯
 被告は、「SUPER GRIP」の欧文字を横書きしてなり、指定商品を第16類「グリップ部に軟質ゴムの部材を装着した筆記具」とする登録第4356559号商標(平成11年5月20日出願、平成12年1月28日設定登録。以下「本件商標」という。別紙の(1))の商標権者である。
 原告は、平成12年9月29日、被告を被請求人として、本件商標について登録無効審判の請求をしたが(無効2000−35527号事件)、特許庁は、平成14年4月17日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本を同月30日に原告に送達した。


 2 審決の理由の要点
 審決は、本件商標は、引用商標(登録第840669号、片仮名文字で「グリップ」と横書きしてなるもの。別紙の(2))とは指定商品において類似しないものであるから、商標法4条1項11号に違反して登録されたものではなく、その登録を無効とすることはできない、と判断した。審決の判断の要旨は、次のとおりである。
   【審決の判断の要旨】
    本件商標と引用商標の商品の類否についてみるに、引用商標は、その登録出願時(昭和41年11月22日)の商標法施行規則(旧)別表第25類「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」を指定商品として、登録されたものである。
    そうすると、引用商標の出願から登録までの経過において、原告(審判請求人)の主張する商品類別第18類「コンパス」を指定商品とする登録第331998号商標(昭和14年10月25日登録出願)を引用されたことをもとに、その指定商品「紙類、文房具類」から「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品」を除外する補正がなされて登録されたものであるとしても、この場合における「類似商品」の範囲というのは、その指定商品の補正がされた時点における商品の類似の範囲と解するのが相当であり、これに反する原告の主張は採用できない。

    そこで、引用商標の指定商品中の「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」の範囲を検討するに、商標法施行規則(旧)別表第25類所定の商品例示をみると、この商品中の「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」は、「文房具類」の概念に属する商品ということができる。そして、「特許庁商標課編『商品区分』に基づく類似商品審査基準」をみるに、前記商品は、商品区分第25類の「文房具類(柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱を除く。)」に属するものと認められ、この範疇に属する商品は、その用途、販売場所等を総合するに、互いに類似する消費というのが相当である。また、「文房具類(柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱を除く。)」と、「柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱」の商品は、その用途、販売場所を異にするから、非類似の商品というのが相当である。
    そうすると、引用商標の指定商品「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」とは、実質的には、「紙類、柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱」を指定商品として登録されたものというべきであって、該指定商品中には、「文房具類(柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱を除く。)」が除外されているものと認められるものである。
    してみると、本件商標の指定商品「グリップ部に軟質ゴムの部材を装着した筆記具」は「文房具類(柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱を除く。)」の範疇に属する商品というのが相当であるから、引用商標の指定商品「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」とは、その生産部門、販売部門、用途、需要者の範囲等から総合的に観察するに、一致する点を見出し難いものであるから、両商品は、互いに非類似の商品といわなければならない。

    なお、原告は、引用商標の商標権については1回目及び2回目の更新登録出願において、第1回目は商品「事務用クリップ」、また、第2回目は商品「クリップファイル」に登録商標を使用していることが認められ、更新登録がされており、さらに、他人の商標登録第1487803号についても、引用商標と同様の但し書による商品除外の登録例に類似群コード「25B01」が記載されているので、引用商標の指定商品は、「文房具」」に属する「ペン及び鉛筆類」である「万年筆、鉛筆」等の筆記具については削除されていない旨主張しているが、たとえ、そのような事実があったとしても、「類似商品」の範囲は、前記の如く解するのが相当であり、また、特許庁の電子図書館より検索した詳細表示という審判甲第6号証中に「文房具類(柄付き捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱を除く。)」の類似群を表すものとして用いられている「25B01」のコードが付されているとしても、このコードはあくまでも「参考情報」を示しているにすぎず、検索等の便宜をも考慮して付与されているにすぎないから、本件商標の商標公報の類似群コードに同一の「25B01」が付されている理由のみをもって、類似群コードを共通にする商品同士が直ちに類似の商品となるものではない。
   してみれば、本件商標は、引用商標と、商標の類似について判断するまでもなく、指定商品において類似しないものであるから、商標法4条1項11号に違反して登録されたものではない。
    したがって、本件商標は、商標法46条1項の規定により、その登録を無効とするはできない。
  
第3 原告主張の審決取消事由の要点
 本件商標が商標法4条1項11号に違反して登録されたものではないとした審決の判断は誤りである(取消事由)から、審決は取り消されるべきである。


 1 商品の類似(本件商標と引用商標とは指定商品が類似すること)
  (1) 引用商標は、指定商品を(旧)25類(平成3年改正前の商標法施行令1条別表による商品区分。以下この別表による商品区分には「(旧)」と表示する。)「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」とするものであり、「文房具類」は、除かれた「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品」以外の商品については、指定されたまま残されているものである。
 引用商標の指定商品が前記のような但し書のある指定商品に補正させられた理由は、引用商標の審査過程で、(旧旧)18類(大正10年商標法の下での商品類別。以下「(旧旧)」と表示する。)の「コンパス」を指定商品とした登録商標「Clipクリップ」(登録第331998号)との類似を理由とする拒絶理由が示されたことに対し、(旧旧)18類「教育用機械器具」に属する三角定規、地球儀、「算数器」に属する計算尺、そろばん及びその類似商品を削除せざるを得なかったことによる。このような理由でなされた補正であるから、(旧旧)51類の「文房具」に属する「ペン及び鉛筆類」である「万年筆、鉛筆等」の筆記具が除外されたものでないことは明らかである。上記拒絶理由で引用された商標の指定商品は、「コンパス」であるから、これの類似商品と考えられた「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品」という、(旧旧)18類の「教育用機械器具、算数器」に属する商品を除外しているのであって、除外した商品に(旧旧)50類の「紙類、紙製品」及び(旧旧)51類の「文房具」は含まれていないのである。

 したがって、引用商標の指定商品中には、ペン及び鉛筆類が残っているものである。
 (2) 審決は、「引用商標の指定商品「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」とは、実質的には、「紙類、柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱」を指定商品として登録されたものというべきであって、該指定商品中には「文房具類(柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱を除く。)が除外されていると認められるものである。」と判断したが、全くの誤りである。
 すなわち、(旧旧)18類に属する「コンパス」(引用商標の拒絶理由引用商標の指定商品)は(旧旧)51類の「文房具類」に属する商品とは非類似の商品であったのであるから、「但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」の記載によって、柄付捕虫網等以外の文房具類をすべて除いたことになどなるはずがない。

 一般に、ある概念中のものから、あるものを除外するとの表現形式がとられた場合においては、その除外したものは、特にこれを除外する旨を明示したものに限られ、その他のものには及ばないと解するべきである。指定商品が「紙類、文房具類」と記載されているのに、その但し書の記載だけによって、文房具と呼ばれる商品が実質的に全部除外され、指定商品に残っているのは「紙類」と「柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱」だけで、「文房具類」は形骸だけのものになっているという審決の論理は、奇妙というほかない。
 (3) 引用商標は、「文房具類」に属する事務用クリップ及びクリップファイルについて使用している事実が認められ、第1回目及び第2回目の更新登録がされている(甲8、9)。このことは、特許庁自身、過去において、引用商標の指定商品に「文房具類」に属する商品が残っていることを認めていたことを意味する。

 (4) 被告は、本件商標の指定商品(筆記具)の中概念に当たる「鉛筆類」(商標法施行規則(旧)別表)と、引用商標の除外商品の中概念の「その他の文房具類」(同(旧)別表)に属する「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」とは類似する商品であるから、引用商標の指定商品に「鉛筆類」は含まれないと主張するが、失当である。「鉛筆類」と「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」とは、生産部門、用途及び需要者が一致しておらず、両者を類似する商品ということはできない。

 2 商標の類似(本件商標と引用商標とは類似の商標であること)
 (1) 本件商標「SUPER GRIP」は、外観構成の全体から、「スーパー・グリップ」の称呼及び観念を生じるが、「SUPER」は、「上の」「超」という意味を有する接頭語であり、商品の品質又は性能を誇示するため、他の語に冠して通常使用されている語である。すなわち、「SUPER」の語は、商品の品質表示であり、これ自体は自他商品識別力を有しない部分であるから、本件商標の自他商品識別力を有する部分(要部)は「GRIP」である。したがって、本件商標は、「スーパー・グリップ」の他に、「グリップ」の称呼及び観念を容易かつ自然に生ずるものである。
 これに対し、引用商標は、片仮名文字の「グリップ」の語からなるものであるから、「グリップ」の称呼及び観念を生ずる。

 したがって、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念において類似する、類似の商標である。
 (2) 被告は、本件商標は指定商品を「グリップ部に軟質ゴムの部材を装着した筆記具」としているから、「GRIP」の部分が独立して需要者に把握・認識されることはないと主張するが、指定商品の記載にあるのは「グリップ部」であって「グリップGRIP」でないから、被告の主張は失当である。
 被告は、また、「GRIP」を含む文字を組み合わせた標章が各社によって数多く登録されていることを理由に、それぞれが出所の混同を生じないような態様の標章であると主張するが、いずれのものにおいても「GRIP」が要部であることに変わりはない。
 被告は、本件商標は、「SUPER」と「GRIP」の2語が一体となって自他商品識別力を発揮していると主張するが、取引の簡便さを考慮すれば、「スーパー・グリップ」と称呼せず単に「グリップ」と称呼して筆記具の商標として使用することは日常茶飯事である。

 してみれば、両商標は上記称呼及び観念において相紛れる商標であって、類似する商標というべきである。

第4 被告の反論の要点
 1 商品の類似の主張に対して
 (1)引用商標は、昭和34年法の下で出願され、(旧)25類の「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」を指定商品として登録されたものであるから、その指定商品の記載において但し書で除外された「その類似商品」の内容も、大正10年法時の基準ではなく、昭和34年法時の基準に従って判断されるべきである。
 「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」は、昭和34年法下の(旧)25類の「文房具類」に属する。そして、当時の類似商品の判断基準を示す特許庁商標課編「『商品の区分』に基づく類似商品審査基準」によれば、「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」と類似する商品とは、「事務用紙」「鉛筆類」「絵画材料」「その他の文房具類」であるから、これらは引用商標の指定商品から除外されているものである。 

 原告は引用商標の指定商品記載の但し書に記載された「その類似商品」に「事務用紙」「鉛筆類」「絵画材料」「(三角定規、地球儀、計算尺、そろばんを除く)その他の文房具類」が含まれるとする解釈は不当であるというが、上記審査基準によれば、(旧)25類の「文房具類(柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱を除く。)」の見出し語に含まれるすべての商品は相互に類似する商品とされており、「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」が「文房具類」中の中概念である「その他の文房具類」に属する商品であることは明らかであるから、「その類似商品」を上記のように解することは、昭和34年法時の類似商品の判断基準に適合する妥当な解釈である。
 そして、「その類似商品」を以上のように解釈すれば、引用商標の指定商品は、審決が認定したとおり、実質的に(旧)25類の「紙類、柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱」となる。

 (2) 引用商標の指定商品の補正が(旧旧)18類の「コンパス」との抵触関係を解消するために行われたものであるとしても、そのことは引用商標の指定商品表示における「その類似商品」の解釈に影響を与えるものではない。引用商標の指定商品の範囲は、大正10年法時の基準ではなく、引用商標の審査時の審査基準に従って判断されるべきことは既に述べたとおりである。
 原告主張のように除外された「その類似商品」の範囲を解すると、登録出願の審査において引用された商標がいつの法律に基づくものであるかによって、同一の表示方法により表された指定商品の範囲が異なることになって、不合理である。また、指定商品の補正がどのような意図の下に行われたかは、外部からは知り得ないことであるから、そのような審査時における出願人の主観的な事情は、指定商品の範囲の解釈において考慮されるべきではない。商標法27条2項の「指定商品の範囲は、願書の記載に基づいて定めなければならない」との規定における「指定商品の範囲」は、その表示から判断される客観的な範囲を意味するものである。原告の主張するような解釈を採ると、商標公報及び登録原簿等の指定商品の記載のみからでは登録商標の指定商品範囲を特定し得ないことになって、公示の意味が失われ、取引の安全を著しく害する。

 (3) 引用商標の更新登録が認められたのは、特許庁の過誤によるというべきであるから、文房具であるクリップ等の使用の事実に基づき更新登録が認められたからといって、引用商標の指定商品の範囲の解釈に影響するものではない。
 (4) 本件商標の指定商品の中概念に当たる「鉛筆類」と、引用商標の除外商品の中概念の「その他の文房具類」に属する「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」とは、最判昭和36年6月27日(民集15巻6号1730頁)の基準に照らしても互いに類似する商品である。
 すなわち、「鉛筆類(筆記用具)」と「三角定規」等とは、生産部門において一致するところが多く、販売部門、需要者の範囲においても一致し、商品の用途も密接に関連するものであるから、両者は類似する商品である。
 したがって、「鉛筆類(筆記用具)」は、「三角定規・・・およびその類似商品を除く」としたことにより、本件商標の指定商品から除外されているものである。

 
 2 商標の類似の主張に対して
 本件商標と引用商標とは、非類似の商標である。
 (1) 称呼・観念の非類似
 本件商標の構成中に含まれる「GRIP」の文字は、「握り部分、握り柄」等を意味する外来語の「グリップ」として我が国において通用しているものである(乙26、27)。本件商標は、「グリップ部に軟質ゴム部材を装着した筆記具」を指定商品とするものであるところ、筆記用具の分野において「グリップ」の語は、単に商品の品質、形状を表示するものとして、自他商品識別力を有しない。文房具を扱う日本の代表的な企業のカタログにおいて、筆記具等の握り部分は「グリップ」と指称されており、握り部分への指先のフィット感や握り易さを追求して、グリップの形状、材質に特徴を持たせた商品が開発され、販売されている。

 また、文房具業界各社は、上記のような特徴を持たせた商品の品質等を暗示させることを意図して、「グリップ」又は「GRIP」の文字を商標の構成中に含む商標を選択しており、「グリップ」又は「GRIP」の文字を含む多数の登録商標が併存している実情にある(乙56〜68)。
 さらに、本件商標は、被告の企業努力によって、被告の業務にかかる商品を表示するものとして需要者に広く知られたものになっているから、本件商標を構成する文字から「グリップ」の文字部分が独立して抜き出されて需要者等に把握・認識されることはあり得ない。
 本件商標は、やや斜めに書された丸みのある字体で「SUPER GRIP」の欧文字を同一の大きさで外観上まとまりよく一体的に構成してなるものであるから、その構成全体が不可分一体のものとして、需要者等に把握・認識される。また、本件商標から生ずる称呼「スーパーグリップ」は、格別冗長なものではない。したがって、本件商標から生ずる称呼・観念は、「スーパーグリップ」のみである。

 以上のとおりであるから、本件商標と引用商標とは、その称呼及び観念において相紛れることのない非類似の商標である。
 (2)外観の非類似
 本件商標と引用商標とは、外観において明らかに非類似である。
 (3)取引の実情
 本件商標は、平成7年12月ころより使用が開始され、以来約7年にわたり被告によって継続的に使用されている(乙69〜73)。筆記具の分野における被告の商品の市場占有率は、油性ボールペンで13.5%、シャープペンシルで14.1%と高く、本件商標を使用する商品は被告の筆記具の主力商品となっているから、本件商標を使用する商品の販売数量・売上高は多大である。また、その宣伝広告費は、過去3年分だけでもテレビ広告費が約3億600万円、新聞広告費が約3400万円であり、本件商標は被告の企業努力によって、被告の業務に係る商品を表示するものとして、需要者に広く知られたものとなっている(乙74〜86)。

 他方、引用商標は、原告発行の「LION総合カタログ2002」にも引用商標を使用した商品は全く掲載されておらず(乙87)、原告によって全く使用されていないか、使用されているとしてもごく僅かであると推測される。
 このような取引の実情からすると、本件商標と引用商標との間に商品の出所についての誤認混同が生じるおそれはない。
 (4)したがって、本件商標は、引用商標と同一又は類似するものではない。


第5 当裁判所の判断
 1 本件商標及び引用商標について
 (1) 本件商標は、「SUPER GRIP」の欧文字を横書きしてなり、別紙の(1)に示されるとおりの構成態様のものであって、平成11年5月20日に登録出願され、第16類「グリップ部に軟質ゴムの部材を装着した筆記具」を指定商品として、平成12年1月28日に設定登録されたものである。
 (2) 引用商標については、証拠(甲3の1、2、甲4、5、8、9)及び弁論の全趣旨により、次の事実を認めることができる。
 引用商標は、「グリップ」の片仮名文字を横書きしてなり、別紙の(2)に示されるとおりの構成態様のものであって、昭和41年11月22日に(旧)25類「紙類、文房具類」を指定商品として、福井商事株式会社(原告の旧名称)により商標登録出願された。

 これに対し、(旧旧)18類「コンパス」を指定商品とする登録第331998号の商標「Clipクリップ」(特公昭15−2244、昭和14年10月25日出願、商標の構成態様は、頭文字の「C」を一際大きく記し、その後に文字間隔を詰めたやや小さい文字の「lip」を続けて「Clip」とした欧文字の下に「クリップ」の片仮名文字を小さく表してなるもの。以下「「Clip」商標」という。)を引用商標として、商標法4条1項11号該当を理由とする拒絶理由が通知された。
 この拒絶理由通知に対応して、引用商標の出願人は、昭和43年12月26日付けで意見書に代わる手続補正書を提出し、願書の指定商品の記載を(旧)25類「紙類および文房具、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」と補正した。

 引用商標は、昭和44年10月15日登録査定され、同年12月9日に、商品の区分及び指定商品を(旧)第25類「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」として、商標権の設定登録(商標登録第840669号)がされ、その後、昭和55年3月28日(第1回目)、平成2年8月29日(第2回目)及び平成12年1月18日(第3回目)の3回にわたり存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続している。なお、第1回目及び第2回目の更新登録は、「事務用クリップ」及び「クリップファイル」について引用商標を使用している事実を証明することによって、認められたものである。

 2 商品の類否について
 まず、本件商標の指定商品が引用商標の指定商品と類似するか否かを判断する。
 (1) ここでの争点は、引用商標における指定商品の表示「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」の解釈であり、より具体的には、「但し・・・を除く」の記載(以下「但し書」ということがある。)によって除外された「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん及びその類似商品」の範囲である。これは、引用商標の指定商品「紙類、文房具類」に残されたもの(審決のいう引用商標の「実質的な指定商品」)は何か、と言い換えてもよい。
 (2) 上記争点について、審決は、引用商標の指定商品からは、「文房具類(柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱を除く。)」が除外されており、引用商用の指定商品は、実質的には、「紙類、柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱」であるとした。この判断に至る審決の論理は、@引用商標につき但し書で指定商品から除外された商品のうち「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」は、商標法施行規則(旧)別表の商品例示によると、「文房具類」の概念に属する商品である、A特許庁の「『商品区分』に基づく類似商品審査基準」によれば、「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」は、同審査基準の「第25類 紙類 文房具類」中の「文房具類(柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱を除く。)」に属するところ、この範疇に属する商品は、互いに類似する商品というのが相当である、Bそうすると、「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」の「類似商品」とは、「文房具類(柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱を除く。)」であり、これを除外した後に「文房具類」に残るのは、「柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱」であるから、引用商標の実質的な指定商品は、「紙類、柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱」である、というものであると解される。
 (3) しかしながら、審決の上記判断は、以下の理由により、是認することができない。
 商標法にいう指定商品とは、商標登録出願人が商標法6条1項の規定により、商標登録出願の願書に、その出願に係る商標を使用するものとして指定した商品であるところ、商標登録出願に当たり、いかなる商品を指定商品とするかは、出願人の意思に委ねられているのであるから、願書に指定商品として記載されたものがどの範囲の商品(商品群)であるかは、第一義的には、願書に指定商品を記載することによって表示された意思の客観的な解釈の問題であるということができる。このことは、願書の指定商品の記載が「商品X、但しA及びその類似商品を除く。」という表現形式を採っている場合も同様であって、商標を使用する商品として指定されているものの内容は、記載の解釈によって定まり、これが定まった後に初めて、対比されるべき商標の指定商品との間で商品が類似するか否かを判断することになるのである。もとより、願書に記載された指定商品の解釈は、商標権の効力が指定商品と同一の商品及び類似の商品に及ぶことを考えれば、出願人の主観的意図のみに基づくものであってはならず、商標権の及ぶ商品の範囲を公示するものとして商標公報及び登録原簿に記載された指定商品の記載(表示)を第三者がどのように理解するかという観点からする客観的解釈でなければならない。そして、事の性質が表示の解釈である以上、指定された商品の範囲についての判断の基準は、商標法4条1項11号(商標登録阻却事由)にいう商品の類否判定について用いられる判定基準、すなわち、同一又は類似の商標を使用した場合に出所の誤認混同を生ずる商品かどうかを取引の実情(生産部門、販売部門、用途、需要者の範囲等)を考慮して判断するという、出所混同が生ずる客観的範囲に基づく判定基準とは自ずと異なったものになると考えられる。
 ところで、審決は、引用商標の指定商品の記載「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」における「その類似商品」を、特許庁の「『商品区分』に基づく類似商品審査基準」に基づいて判断したが、これは、指定商品記載中の「その類似商品」という用語にとらわれて、これを商標法4条1項11号にいう「類似する商品」と同視し、同号の商品類否についての判定基準をそのまま「その類似商品」の解釈に持ち込んでいる点において、誤りであるといわざるを得ない。

 すなわち、「『商品区分』に基づく類似商品審査基準」は、特許庁が商標の登録審査において商品の類否を判定する際の一般的標準を定めたものであって、その    (四角カッコ)で囲った見出しの商品に含まれる商品は原則として互いに類似商品と推定されるというものであるところ、この場合における商品の類否判定は、先願登録商標と同一又は類似の商標が同一又は類似の商品について登録されることを防止するためになされるものであるから、同審査基準において商品Aの類似商品とされる範囲は、A商品を指定商品とする商標(先願登録商標)とX商品を指定商品とする商標(出願商標)について、それらの商標を使用した商品相互の間で出所の誤認混同を生ずるおそれがあるかという観点に立って定められているものと解される。このような、出所混同を生ずる範囲という観点から定められる「商品Aの類似商品」と、出願人が商標を使用する商品を指定するに当たって、指定商品から除外するものとして表示された「商品Aの類似商品」の範囲とが、必ずしも一致するものでないことは、先に述べたところから明らかである。
 本件に即して述べると、先願登録商標の指定商品が「A」と記載されている場合には、商標法4条1項11号にいう商品Aに「類似する商品」の範囲を上記審査基準に従って判定することができるが、指定商品の記載が「X 但しA及びその類似商品を除く」となっているときには、「但し・・・を除く」の文言によって、指定商品の範囲は、「XからA及びAの類似商品を除いたもの(X−AとAの類似商品)」となっているのであるから、上記審査基準を適用し得るのは「X−AとAの類似商品」についてであって、除かれる「Aの類似商品」については、上記審査基準に示された判定基準がそのまま妥当するものではないのである。
 (4) そこで、引用商標についての指定商品の記載「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く。」に立ち帰って、上記記載中の但し書にいう「その類似商品」をいかに解釈すべきかを検討する。

   ア まず、引用商標は、昭和41年11月22日の出願であるから、その指定商品の表示は、その出願時において適用されていた商標法施行規則(旧)別表に基づいているものと解される。
 そこで、商標法施行規則(旧)別表の第25類「紙類 文房具類」を参照すると、同(旧)別表25類の商品は、「紙類」と「文房具類」に大分類され、後者の「文房具類」は、さらに「一 事務用紙」、「二 鉛筆類」、「三 絵画用材料」、「四 その他の文房具類」に中分類され、「四 その他の文房具類」中に、「定規」、「そろばん」、「計算尺」が掲げられていることが認められる。なお、「地球儀」は商標法施行規則(旧)別表25類には例示されていないが、現行の商標法施行規則別表第16類の「九 文房具類」中の中分類「(四) その他の文房具類」には、「定規」「そろばん」とともに「地球儀」が記載されているから、(旧)別表の下でも「その他の文房具類」に属する商品と解される。

     イ 以上のことを念頭において、引用商標の指定商品の記載をみると、「・・およびその類似商品を除く。」との記載の直前には、「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」と記載されているから、ここでいう「その類似商品」とは、直前に例示された商品「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」と共通点を持つものとして、これらの商品から容易に類推される商品を意味しているとみるのが文脈に即した最も自然な理解である。
 そして、例示された「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」が、いずれも「事務用紙」、「鉛筆類」、「絵画用材料」とは異なる中項目で括られた「その他の文房具類」に属する商品であることからすれば、「その類似商品」として通常想起される商品の範囲は、広くみてもせいぜい「その他の文房具類」に属するものの範囲にとどまり、これを超えて、「事務用紙」、「鉛筆類」、「絵画用材料」にまで及ぶものではないと解するのが相当である。

   ウ 被告は、引用商標の指定商品の記載の解釈は、「但し・・・その類似商品を除く」との補正がされた時点における類似商品の範囲を基準としてなされるべきであり、審決が補正時における「『商品区分』に基づく類似商品審査基準」に依拠して、「その類似商品」とは「三角定規、地球儀、計算尺、そろばん」が属する「文房具類」(大分類)のうち「柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱」を除くすべての商品であると判断したことは正しいと主張する。
 しかしながら、「但し・・・およびその類似商品を除く」と記載された場合の「類似商品」の範囲について上記審査基準に示された判断基準が直ちに当てはまるものでないことは前示のとおりである。
 しかも、「その類似商品」を審決のように解するときは、指定商品に「文房具類」との記載があるにもかかわらず、実際には、商標法施行規則(旧)別表に第25類「文房具類」として例示されたすべての商品(「一 事務用紙」、「二 鉛筆類」、「三 絵画用材料」及び「四 その他の文房具類」の項目分類の下に例示されているすべての商品)が除外され、ただ、「『商品区分』に基づく類似商品審査基準」に(旧)25類「文房具類」に類似しない商品として挙げられた「柄付捕虫網、毒つぼ、殺虫管、昆虫胴乱、昆虫採集箱」のみが「紙類」とともに指定商品に残されているということになるが、そのようなことは「文房具類」を記載している指定商品の表示の理解として極めて不自然であって、補正をした出願人はいうに及ばず、およそ商標公報及び商標登録原簿の指定商品の記載に接した世人の予期するところではないというべきである。

     エ ちなみに、引用商標の指定商品についてされた補正は、先に認定したとおり、(旧旧)18類「理化学、医術、測定、写真、教育用ノ器械器具、眼鏡及算数器ノ類並其ノ各部 試験管、外科用器械、歯科用具、度量衡器、感光膜、活動写真映画、製図器、体操用器具、望遠鏡、顕微鏡等」に属する「コンパス」を指定商品として登録された「Clip」商標との抵触を回避するためにされたものであり、この補正の経緯からみても、出願人が「文房具類」に属する商品のほとんどすべてを指定商品から除外する意思で補正をしたのでないことは明らかである。
 そして、本件においては、既に説示したとおり、引用商標における指定商品の記載自体からみて、引用商標の指定商品には(旧)25類の「文房具類」に属する商品のうち「事務用紙」、「鉛筆類」「絵画用材料」に属するものが残されていると解されるのであり、補正における出願人の意図が上記のとおりのものと認められる以上、「その類似商品」の範囲を前記イのとおり解しても、出願人が補正によりいったん放棄した範囲を指定商品として回復させるような不当な結果となるものではない。

   オ 被告は、また、引用商標の指定商品から除外された「三角定規」等は、販売部門、用途、需要者層の共通性により、本件商標の指定商品「筆記具」が属すると認められる(旧)別表25類の「文房具類中」の「鉛筆類」と類似する旨主張するが、仮に「三角定規」等と「鉛筆類」の間に被告の主張するような共通性を認め得たとしても、前記(2)に述べたとおり、そのことから直ちに鉛筆類が指定商品から除外されるものとして表示された「その類似商品」に含まれるということはできない。引用商標の指定商品表示における「その類似商品」の解釈については、イに示したとおりであり、被告の主張は採用することができない。
 (5) 以上によれば、引用商標の指定商品には、「文房具類」中の「事務用紙」、「鉛筆類」、「絵画用材料」に属する商品(鉛筆類(筆記具)を含む。)が残されているというべきである。

 そうすると、本件商標の指定商品(「文房具類」中の「筆記用具」に属する「グリップ部に軟質ゴムの部材を装着した筆記具」)は、引用商標の指定商品と類似する商品であり、本件商標が引用商標と指定商品において類似しないとした審決の判断は、誤りであるといわざるを得ない。

 3 商標の類否
 そこで、さらに進んで、本件商標が商標法4条1項11号に該当するかどうかを判断するために、本件商標と引用商標との類否について検討する。
 この点については、当裁判所は、以下のとおり、両商標を互いに非類似と判断するものである。
 (1) まず、外観についてみるに、引用商標(別紙の(2))は、片仮名文字のありふれた活字体で「グリップ」と横書きしてなるものである。これに対し、本件商標(別紙の(1))は、やや斜めの丸みを帯びた書体の欧文字で「SUPER GRIP」と書してなる構成態様のものであるから、両商標は外観において明らかに非類似である。
 (2) 次に、称呼及び観念についてみるに、片仮名文字で「グリップ」と書してなる引用商標は、その文字どおりの「グリップ」の称呼と外来語の「グリップ」が意味する「握り部」、「握り柄」等の観念を生じさせるものと認められる。

 一方、本件商標は、「SUPER」(スーパー)と「GRIP」(グリップ)の二つの語を含むものであり、「SUPER」の文字部分と「GRIP」の文字部分とは、互いにわずかに離れてはいるが、同一書体の同大の文字で外観上まとまりよく構成されており、視覚的にほぼ一連一体のものとして把握、認識されるものと認められる。そして、本件商標「SUPER GRIP」の日本語読みである「スーパーグリップ」は、格別冗長でもなく、よどみなく一連に発音し得るものであるから、視覚上まとまりのある外観と相俟って、本件商標からは、「スーパーグリップ」の称呼及び観念を生ずるものと認められる。
 (3) 原告は、本件商標の構成中の「SUPER」は商品の等級等を表す品質表示語にすぎず、これ自体は自体商品の識別力を有しない部分であるから、識別力を有する語は「GRIP」であり、本件商標からは、「スーパーグリップ」の称呼及び観念の他に、「グリップ」の称呼及び観念も生ずると主張し、本件商標と引用商標とは、取引において相紛れる類似の商標であると主張する。

 確かに、「SUPER(スーパー)」が「上の」「超」という意味を持つものとして日常極く普通に使用される語であることは当裁判所にも顕著な事実であり、その点からすれば、「SUPER」は商品の等級等を表す品質表示語にすぎないという原告の主張にも一理があるということができる。しかし、その一方で、「GRIP(グリップ)」も特別な語ではなく、広辞苑等の日本語の辞書にも「握り」、「握り部」等を意味する語として掲載され、広く知られ、かつ一般的に使用されているものであるから、本件商標が使用される商品である「グリップ部に軟質のゴム部材を装着した筆記具」との関係でいえば、グリップ部に特徴を持たせた筆記具について使用される「GRIP(グリップ)」の語も、商標の使用される商品の特徴部分を記述的に示したものにすぎないという面がある。
 そうすると、本件商標は、その構成中の「SUPER」及び「GRIP」のどちらか一方だけが独立して着目され、商品の出所識別機能を発揮するというよりは、むしろ両者が結合して一体となった「SUPER GRIP」として把握され、識別機能を発揮するとみることが実情に合致すると考えられる。
 (4) さらに、本件商標の使用される商品分野における取引の実情をみるに、本件商標の出願の前後を通じて、文房具等のカタログにおいては、筆記具の握り部分を「グリップ」と呼び、握り部をその部材や形状によって「ラバーグリップ」、「三角グリップ」等々と称していることが認められる(乙28〜52)。また、これらのカタログや商品広告の内容からは、筆記具、特にボールペンやシャープペンシルについて、握り易さや指先のフィット感、長時間使用しても疲れにくいことなど追求して、グリップの形状、材質に特徴を持たせた商品が多数開発され、各社によって販売されていることがうかがわれるうえ、商標としても、筆記具、文房具を指定商品として、「グリップ」又は「GRIP」の文字を商標の構成中に含む商標「ITOYASoftgrip」、「Dr.GRIP」、「FLEXGRIP」、「PROGRIP」、「suregrip」、「パワーグリップ/POWER GRIP」、「NEOGRIP」、「SumoGrip」、「Naturalgrip/ナチュラルグリップ」等、多数の商標が出願・登録されていることが認められる(乙56〜68)。

 以上のような状況に照らすと、文房具の分野、とりわけ筆記具について、「GRIP」(グリップ)は、それ単独では自他識別力を有しないか、又は自他識別力はあっても微弱なものと認められる。したがって、本件商標がその構成中に引用商標「グリップ」と共通する「グリップ」の欧文字表記「GRIP」を含んでいても、そのことによって、本件商標を付した商品と引用商標を付した商品との間で出所の混同が生じるおそれがあるとは認められない。
 (5) 以上のとおり、両商標の外観、称呼及び観念について検討したところに取引の実情を加味して総合判断すると、本件商標と引用商標とは、相紛れることのない非類似の商標と認めるのが相当である。


 4 結論
 2に示したとおり、審決は、本件商標と引用商標とが商品において類似しないとした判断において誤ったものというべきであるが、3に示したとおり、本件商標は引用商標と非類似の商標と認められるものであるから、本件商標は、商標法4条1項11号に該当するものではない。したがって、本件商標は商標法4条1項11号に違反して登録されたものではない、とした審決の判断には、結局、誤りがないことに帰し、この判断に基づき、「本件審判の請求は成り立たない」とした審決の結論は相当である。
 原告主張の審決取消事由は理由がなく、原告の請求は棄却されるべきである。
東京高等裁判所第18民事部



                   裁判官     古   城   春   実


          裁判官     田   中   昌   利


 裁判長裁判官永井紀昭は、転補につき、署名押印することができない。


                   裁判官     古   城   春   実