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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商4条1項各号

平成24(行ケ)10267 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年12月19日 知的財産高等裁判所

 公序良俗違反(商標法4条1項7号)とした審決が維持されました。
本件商標は,「シャンパンタワー」なる商標であるところ,そのうち「シャンパン」の語が,上記のとおり,「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして,周知著名であり,当該表示には多大な顧客吸引力が備わっていることに照らすと,本件商標からは,「シャンパンタワー」のみならず「シャンパン」という称呼及び観念も生ずるということができる。(3) そして,フランスの法律に基づいて設立された被告は,INAOとともに,「シャンパン」表示が有する上記のような周知著名性や信頼性を損なわないよう,シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者を厳格に管理・統制し,厳格な品質管理・品質統制を行ってきた。このような,被告を始めとするシャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者らの努力により,「シャンパン」表\示の周知著名性が蓄積・維持され,それに伴って高い名声,信用,評判が形成されているものであり,「シャンパン」という表示は,シャンパーニュ地方のみならず,フランス及びフランス国民の文化的所産というべきものになっている。そして,前記1(4)に掲記の証拠によれば,「シャンパン」という表示は,我が国においても,ぶどう酒という商品分野に限られることなく一般消費者に対しても高い顧客吸引力が化体するに至っていることが認められる。
(4) 以上のような,本件商標の文字の構成,指定役務の内容並びに本件商標のうちの「シャンパン」の表\示がフランスにおいて有する意義や重要性及び我が国における周知著名性等を総合考慮すると,本件商標を飲食物の提供等,発泡性ぶどう酒という飲食物に関連する本件指定役務に使用することは,フランスのシャンパーニュ地方における酒類製造業者の利益を代表する被告のみならず,法律により「CHAMPAGNE」の名声,信用,評判を保護してきたフランス国民の国民感情を害し,我が国とフランスの友好関係にも影響を及ぼしかねないものであり,国際信義に反するものといわざるを得ない。よって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当するというべきである。\n

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平成24(行ケ)10253 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年12月26日 知的財産高等裁判所

 周知(商標法4条1項10号)違反とは認められないとした審決が取り消されました。
 前記認定事実によれば,カレンダーの製造・販売業界においては,販売代理店がカレンダーの流通に当たって重要な役割を果たしているから,カレンダーについては,販売代理店が第一次的な取引者又は需要者であるといえるところ,原告は,平成11年4月頃から,「カラーラインメモ」の片仮名を標準文字で表してなる使用商標について,自社の製造・販売に係るカレンダー(原告カレンダー)の名称として自社商品のカタログに記載して販売代理店に対する頒布という形で使用を開始し,本件商標出願時(平成22年8月2日)及び登録査定時(同年11月1日)に至る約11年間にわたって,原告カレンダーの販売に当たり,毎年使用商標を自社商品のカタログに記載し,販売代理店に対する請求書にも原告カレンダーを意味するものとして使用商標を記載してきたものである。また,原告が上記カタログを頒布し,原告カレンダーを販売した販売代理店は,全国に所在しており,その数も毎年数百箇所に及んでいるばかりか,販売代理店に頒布された当該カタログの数は,毎年おおむね4万冊前後であり,販売代理店に販売された原告カレンダーの数も,平成13年に25万6448部であったものがその後順調に増加を続け,本件商標出願時及び登録査定時の属する平成22年には,合計115万7090部という大部数に及んでいるのであって,これは,全国連合会に所属する会社の中で最大規模である原告が販売する全カレンダー(合計283種類)の中でも,売上げ部数が5番目に多いものであるから,かなりの数量であるといえる。しかも,「カラーラインメモ」との語は,英語の「カラー(色,色彩)」,「ライン(線)」及び「メモ(書き付け,備忘)」を複合した造語であって,カレンダーの名称として使用された場合,強いていえば「色彩」,「線又は線による区切り」及び「メモ余白の存在」を想像させるが,それ以上に特定の観念又はカレンダーとしての構\成を想像させるものではなく,一定の特異性が認められるものであるところ,原告が,平成12年(平成13年版)以降,一貫しておおむね類似した構成の意匠を備えたカレンダー(原告カレンダー)の名称として「カラーラインメモ」との語を使用しており,かつ,「カラーラインメモ」との名称をカレンダー又はこれに類似する商品に付して販売した者が,平成22年まで,原告以外には存在しなかったことは,前記認定のとおりである。
 以上の事情を総合すると,使用商標(「カラーラインメモ」)は,本件商標出願時及び登録査定時において,原告が製造・販売する特定の商品(原告カレンダー)を表示するものとして,全国に所在する多数の販売代理店の間に広く認識されており,原告カレンダーの販売期間,販売数量及び原告以外に「カラーラインメモ」との名称をカレンダー等に使用した者が存在しなかったことなどに照らすと,当該販売代理店を通じてカレンダーを入手する全国の最終消費者の間においても,特定の業者が製造・販売する特定の商品(原告カレンダー)を表\示するものとして広く認識されていたものと認めるのが相当である。

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平成24(行ケ)10143 商標登録取消決定取消請求事件  商標権 行政訴訟 平成24年11月29日 知的財産高等裁判所

 「ECO MINI」が「MINI」から混同を生ずるとして拒絶した審決が維持されました。
 前記1で認定したとおり,引用商標(「MINI」)は,少なくとも自動車に使用された場合,需要者において,BMWの業務に係る本件自動車を表示するものとして,広く認識されている。
エ 類否の判断
引用商標は,需要者の間で,本件自動車及びその出所を表すものとして広く認識されているということができるから,「MINI」の文字からなる標章が自動車に使用された場合には,需要者は,本件自動車及びその出所を認識すると認められる。本件商標は,「ECO」部分と「MINI」部分とに分断して看取することもできるところ,本件商標を指定商品である自動車に使用した場合には,「ECO」部分からは「環境に優しい,環境に配慮した自動車」との観念が生じるにすぎず,「ECO」部分の自他識別力は弱い。そうすると,上記のような「MINI」の文字からなる標章に,自他識別力の弱い「ECO」部分を結合させた本件商標を自動車に使用した場合,これに接した需要者は,本件商標中の「MINI」部分から,本件自動車及びその出所を想起し得ると認められる。以上に加え,原告は,これまで約40年間,本件自動車やその部品・付属品の販売等を行ってきたことも考慮すると(乙4),原告が本件商標を指定商品である自動車に使用した場合には,これに接した需要者が,BMWの業務に係る本件自動車であると誤認し,その出所につき混同を生じるおそれがあると認められる。よって,本件商標は引用商標に類似する商標であるといえる。
(2) 原告の主張に対して
原告は,これまでに,日本国内において,「自動車」を指定商品とする「MINI」又は「ミニ」の文字を含む商標は,90件以上登録されており,それは,それらの商標が引用商標と「MINI」又は「ミニ」の語を共通にするとしても,他の語句との結合により,引用商標とは区別することができるからであると主張する。しかし,他に「MINI」又は「ミニ」の語を含む商標が登録されている例があることをもって,本件商標が引用商標と類似しないということはできない。
(3) 小括
以上のとおり,本件商標は,引用商標と類似する。そして,引用商標は,BMWの業務に係る自動車を表示するものとして,需要者に広く認識されているところ,本件商標の指定商品は「自動車並びにその部品および付属品」であり,引用商標が使用されている商品である「自動車」と同一又は類似する。したがって,本件商標は商標法4条1項10号に該当する。\n

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平成24(行ケ)10069 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年11月15日 知的財産高等裁判所

  商標「漢検」について、後発的に公序良俗違反とした審決が維持されました。原告(商標権者)が元々、「漢検」を開催していました。
 商標法4条1項7号は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」について,不登録事由としているところ,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」とは,当該商標の構成に,非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字,図形等を含む場合のほか,そうでない場合であっても,当該商標を指定商品又は指定役務について使用することが,法律によって禁止されていたり,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳的観念に反していたり,特定の国若しくはその国民を侮辱したり,国際信義に反することになるなど特段の事情が存在するときには,当該商標は同法4条1項7号に該当すると解すべき余地がある。そして,商標法46条1項5号は,商標登録がされた後,当該登録商標が同法4条1項7号に掲げる商標に該当するものとなったことを登録無効事由として規定しているところ,商標登録後であっても,当該商標を指定商品又は指定役務について使用することが,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳的観念に反するなどの特段の事情が生じた場合には,当該商標は同法4条1項7号に該当すると解すべき余地があるといえる。
・・・
上記認定事実によれば,「日本漢字能力検定」は,もともと原告によって創設され,その内部機関である旧協会によって実施されていたものであるが,原告の代表\取締役であったD自身が設立代表者となって,公益法人である被告が設立され,その後,被告が「日本漢字能\力検定」の実施の主体となったこと,「日本漢字能力検定」は,被告設立と共に,文部省(現・文部科学省)の認定(民間技能\審査事業認定制度廃止後は後援)を受け,公的資格と見なされるようになったことなどから,志願者数が急増し,平成5年度には約24万人,平成9年度には約106万人,平成14年度には約204万人,平成20年度には約289万人に達し,我が国有数の検定試験になったことが認められる。また,「日本漢字能力検定」の志願者が増加するのに伴い,被告の名称の一部である「日本漢字能\力検定協会」や,「日本漢字能力検定」の略称である「漢検」は,被告ないし被告の提供する役務を表\すものとして,社会一般に広く知れ渡っているものと認められる。他方,原告は,被告設立後,「日本漢字能力検定」の主体ではなくなっていたにもかかわらず,平成12年ころまで,被告の名称や「日本漢字能\力検定」に係わる商標を出願し,その後も,被告名義で出願した商標(本件商標を含む。)について出願人名義を原告に変更するなどして,商標権者となっていたことが認められる(なお,平成18年ころまで,原告の内部組織である振興会が,小学校1年ないし3年生を対象とした漢字能力検定の主催者とされていたことは認められるものの,乙1,3【6,7頁】,11によれば,実際に上記検定に係る業務を行っていたのは被告の職員であり,振興会は名目上の主催者にすぎなかったものといえる。)。上記のとおり,被告は,文部大臣(当時)による許可を受けて設立された公益法人であり,文部省(現・文部科学省)の認定ないし後援を受けて「日本漢字能\力検定」を実施していたのであるから,これに係わる商標の登録出願も自ら行うべきものであったといえる。にもかかわらず,当時原告の代表取締役であり,被告の理事長でもあったDは,被告理事会の承認等を得ることなく,本件商標を含む,被告の名称ないし「日本漢字能\力検定」に係わる商標を,原告名義で出願したり,出願人名義を被告から原告に変更するなどしていたものであって,そのこと自体,著しく妥当性を欠き,社会公共の利益を害すると評価する余地もある(この点,原告は,被告の資産が乏しかったため,原告名義で上記商標登録出願をしたと主張するが,上記のとおり,被告設立当時,既に「日本漢字能力検定」は相当数の受検者がおり,受検料等による収入が見込まれていたこと,Dは,被告設立直後のみならず,平成12年ころまで,被告の名称ないし「日本漢字能\力検定」に係わる商標を原告名義で出願し続けていたことなどからすれば,上記主張は採用することができない。また,被告の名称や「日本漢字能力検定」に係わる商標権自体が,相当な財産的価値を有するものといえるから,原告が被告に対して無償の商標使用を許諾していたことや,商標権の取得・維持費用を負担していたことがあるとしても,そのことをもって,上記行為を正当化することはできない。)。このような経緯に加えて,Dは,被告に対して文部科学省による行政指導がなされ,新聞報道等で被告と原告関連4社との利益相反取引等が糾弾され,Eと共に背任罪で起訴された上,被告から多額の損害賠償請求訴訟が提起された後,本件商標の登録名義を原告からAらに移転したり,被告に対して被告の名称や「日本漢字能\力検定」に係わる商標等の使用差止請求訴訟を提起したりするに至ったものである。さらに,DないしEは,本件商標等について,権利の取得・維持の実費相当額での被告への譲渡を拒み,これらを原告自ら使用する可能性に言及するなどしている。上記事情に照らすと,原告の前代表\取締役D及び現代表取締役Eは,商標権者等の業務上の信用の維持や需要者の利益保護という商標法の目的に反して,自らの保身を図るため,原告が有する被告の名称ないし「日本漢字能\力検定」に係わる商標を利用しているにすぎず,原告が,本件商標を指定役務について使用することは,被告による「日本漢字能力検定」の実施及びその受検者に対し,混乱を生じさせるものであり,社会通念に照らして著しく妥当性を欠き,社会公共の利益を害するというべきである。\n

◆判決本文

◆関連事件です。平成24(行ケ)10064

 

◆平成24(行ケ)10070

◆平成24(行ケ)10068

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◆平成24(行ケ)10066

◆平成24(行ケ)10065

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平成24(行ケ)10258 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年11月21日 知的財産高等裁判所

 商標「モンテローザ」について公序良俗違反なしとした審決が維持されました。
 原告は,本件商標は外国の著名な地名であるモンテローザ高峰や外国の著名な商標である「Monte Rosa」の信用,名声,顧客吸引力等にフリーライドしたものであり,このような商標の登録を認めることは,国際信義に反するものであると主張するので,以下検討する。ア モンテローザ高峰の周知,著名性について前記1(2)のとおり,モンテローザ高峰は,アルプス山脈第2の高峰であり,マッターホルン,リンプィッシュホルン,アルプフーベル,ドームなどを含めてモンテ・ローザ山群と呼ばれることがあるものであるから,アルプス山脈のあるスイスやイタリアにおいては,周知,著名な地名であるということができる。しかしながら,本件商標について登録査定がされた平成7年頃までの日本国内においては,モンテローザ高峰については,本件証拠上,百科事典における記載や,大正15年あるいは昭和13年に発行された新聞記事での記載,スイスやイタリアを紹介した旅行用の書籍中での記載,昭和41年に公開された映画の舞台の一部として使用されたことなどが確認されるにとどまるから,スイスやイタリアを訪れる日本人旅行者には知られている地名であったとしても,広く一般の需要者にも知られていたと認めることはできない。
 イ 「Monte Rosa」ホテルの周知,著名性について 前記1(3)で認定したとおり,ツェルマットの「Monte Rosa」ホテルやキアヴァリの「Monte Rosa」ホテルは,いずれも創業から数十年以上の長い歴史を有するものであるから,「Monte Rosa」の語は,本件商標の登録出願当時,少なくともスイスやイタリアでは,ホテルの名称として,周知,著名であったといえる。また,日本国内においても,昭和55年当時,ツェルマットの「Monte Rosa」ホテルは,日本から電話で宿泊等の予約をすることができるホテルとして旅行雑誌に紹介されていたのであるから,海外への旅行者には同ホテルを知る者があったということはできる。しかしながら,上記旅行雑誌の記載のほかに,本件証拠上,本件商標の登録出願時やその登録査定時において,「Monte Rosa」ホテルの名称が日本国内で紹介,宣伝等されていたことをうかがわせる事情は見当たらないから,その当時,これらのホテルの名称が日本国内において周知,著名であったと認めることはできない。
 ウ 以上のとおり,本件商標の登録出願や登録査定の当時,日本国内において,モンテローザ高峰や「Monte Rosa」ホテルの名称は,いずれも周知,著名なものであったということはできない。そうすると,仮に,被告がモンテローザ高峰や「Monte Rosa」ホテルの名称に依拠して本件商標を構成し,これを登録出願したものであったとしても,これらの名称が日本国内において周知,著名であったとはいえない以上,被告が,これらの名称の有している信用,名声,顧客吸引力等にフリーライドしたものとはいえないし,また,本件全証拠によっても,本件商標の出願経緯等に不正の利益を得る目的その他不正の目的があるなど社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあったとも認められない。\n

◆判決本文

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平成24(行ケ)10222 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年11月07日 知的財産高等裁判所

 公序良俗違反とした審決が取り消されました。
 前記2(1)アに認定したところによれば,本願商標は,その構成自体がきょう激な文字や卑わいな図形等である場合に該当するものとはいえないところ,本件審決は,本願商標は社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものであると判断しているので,以下においては,本願商標を本件指定商品について使用することが社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反するものといえるかどうかについて検討する。(1) まず,前記2(1)アのとおり,本願商標は,「北斎」との筆書風の漢字と,葛飾北斎が用いた落款と同様の形状をした本件図形からなるところ,前記2(4)に認定した審判段階における原告の主張からすると,本願商標が商標登録された場合において,原告が本件指定商品について本願商標に基づき主張することができる禁止権の範囲は,「北斎」との筆書風の漢字と本件図形からなる構成に限定されると考えられることから,例えば,「北斎」との漢字文字のみからなる商標について,これが本願商標の禁止権の範囲に含まれるなどと主張することは,信義誠実の原則に反し許されないといわなければならない。(2) また,前記2(2)のとおり,葛飾北斎の出身地である東京都墨田区や国内各地のゆかりの地においては,当該地域のまちづくりや観光振興のシンボルとして,同人の名を用いた施設の整備や催し物の開催等が行われているところであって,「北斎」の名称は,それぞれの地域における公益的事業の遂行と密接な関係を有している。したがって,原告が本願商標の商標登録を取得し,本件指定商品について,本願商標を独占的に使用する結果となることは,上記のような各地域における公益的事業において,土産物等の販売について支障を生ずる懸念がないとはいえない。しかしながら,前記(1)のとおり,原告が本件指定商品について本願商標に基づき主張することができる禁止権の範囲は,「北斎」との筆書風の漢字と本件図形からなる構成に限定されると考えられることからすれば,当該公益的事業の遂行に生じ得る支障も限定的なものにとどまるというべきである。(3) さらに,前記2(2)のとおり,葛飾北斎は,日本国内外で周知,著名な歴史上の人物であるところ,周知,著名な歴史上の人物名からなる商標について,特定の者が登録出願したような場合に,その出願経緯等の事情いかんによっては,何らかの不正の目的があるなど社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあるため,当該商標の使用が社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反する場合が存在しないわけではない。しかしながら,原告による本願商標の出願について,上記のような公益的事業の遂行を阻害する目的など,何らかの不正の目的があるものと認めるに足りる証拠はないし,その他,本件全証拠によっても,出願経緯等に社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあるとも認められない。
(4) 以上のとおり,本願商標の商標登録によって公益的事業の遂行に生じ得る影響は限定的であり,また,本願商標の出願について,原告に不正の目的があるとはいえず,その他,出願経緯等に社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあるとも認められない本件においては,原告が葛飾北斎と何ら関係を有しない者であったとしても,原告が本件指定商品について本願商標を使用することが,社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反するものとまでいうことはできない。

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平成23(行ケ)10326 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年11月15日 知的財産高等裁判所 

 アディダスの3本線の商標について、細長い4本の台形様ストライプは出所混同を生ずるとして、無効理由無しとした審決が取り消されました。
 上記(2)イに認定した事実によれば,運動靴の甲の両側面(靴底とアイレットステイを結ぶ位置)にサイドラインとして付されたスリーストライプス商標(細部のデザインの相違を捨象した3本線を基調とする商標)は,スリーストライプという語が需要者の間に用語として定着していたかはともかく,本件商標の登録出願時である平成17年5月25日及び登録査定時である同年10月28日において,我が国において運動靴の取引者,需要者に,3本線商標ないしスリーストライプス商標といえばアディダス商品を想起するに至る程度に,アディダスの運動靴を表示するものとして著名であったものと認められる。スリーストライプス商標の具体的な構\成には,使用時期や製品によって,ストライプの長短,幅,間隔,傾斜角度,輪郭線の形状等,細部のデザインが異なる様々なものが存在するが,これら細部の相違は,スリーストライプス商標の基本的な構成である3本のストライプが与える印象と比較して,看者に異なった印象を与えるほどのものではないというべきである。イ 本件商標は,上記(2)アのとおり,細長い4本の台形様ストライプからなるものであるが,その指定商品「履物,運動用特殊靴」に属する運動靴においては,同ウに認定したとおり,靴の甲の側面に商標を付す表示態様が多く採用され,そのような態様で付された場合,商標の上下両端部における構\成が視認しにくく,また,4本線の部分とそれらの間に存在する3つの空白部分につき,4本線か3本線かが紛れる場合が見受けられるのであり,その場合,参考図(別紙記載11a,b)のような構成のものと区別することが困難であるともいえる。そして,4本線商標とスリーストライプス商標との相異の程度について,別の角度から検討すると,本件商標の構\成と同様に4本の長短のある台形様図形をやや傾けて互いに平行に等間隔で配置してなる4本線商標(引用商標1,2の図形部分に似た白色の4本線のもの1件,黒色の4本線のもの3件)の事例について,特許庁において,アディダスの業務に係る商品と出所混同を生ずるおそれがあり,商標法4条1項15号に該当するとの認定がなされ,登録無効審決又は登録取消決定が確定していることが認められる(甲93の1,2,甲94,122〜127)。そうすると,運動靴の甲の側面に付された本件商標に接した取引者,需要者は,本件商標の上下両端部における構成が視認しにくい場合や,本件商標から,4本の細長いストライプではなく,それらの間に存在する空白部分を3本のストライプと認識する場合などがあり,これらのことから,3本のストライプから著名なアディダスのスリーストライプス商標を想起するものと認められる。また,4本線商標かスリーストライプス商標かという相異についても,靴の甲の側面に商標として付された場合,さほど大きな区別のメルクマールになるものとはいえない。さらに,本件商標は,4本線商標というのみならず,台形様図形の向かい合う2辺の各々に沿って表\示された2本のステッチ状の模様とその間に均等間隔に表示された多数の小さな丸点が描かれている点において,引用商標と異なることは確かであるが,アディダスのスリーストライプス商標の付された運動靴において,甲の両側面に付されたスリーストライプス商標の各ストライプの向かいあう2つの長辺に沿ってその内側に2本のステッチ状の模様(これは商標を靴の甲の側面に付す場合の縫い目のようにも見える。)のあるものが多数存在し,3本のストライプ間の中央部又はストライプ中央部にストライプに沿って直線上に多数のパンチング(小さな丸い孔)模様のあるものも存在することを考慮すると,本件商標の「2本のステッチ状の模様」及び「多数の小さな丸点」は,本件商標の構\成において,格別の出所識別機能を発揮するものと認めることはできない。ウ 以上検討したところによれば,単に本件商標と引用各商標との外観上の類否を論ずるだけでは足りないのであって,本件商標と引用各商標(アディダスの著名商標)との構成態様より受ける印象及び両商標が使用される指定商品の取引の実情等を総合勘案すると,本件商標を指定商品「履物,運動用特殊靴」に使用したときは,その取引者,需要者において,当該商品がアディダスの業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものと認められる。\n

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平成24(行ケ)10125 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年10月30日 知的財産高等裁判所

 市章が,公共施設やホームページ等に表示されたからといって,本願商標の指定商品の取引者,需要者にとって、著名であるとはいえない、また、両者は類似しないと、判断されました。4条1項6号での拒絶です。
以上によれば,日南市章は昭和25年12月20日に旧日南市の市章として制定され,日南市もこれを継承していること,日南市章は,日南市を表示するものとして同市の公共施設,ホームページ,広報用パネル,マンホールの蓋などに使用され,大きなイベントの際には,メインとなる舞台や調印式などの背景に日南市章が赤色で表\示された日南市旗が掲げられていること,これらのイベント等を報じる新聞記事やテレビ放送には,背景等に日南市章が写ることも多く,また,日南市の観光や物産を紹介する書籍,ホームページにも,日南市の名称とともに日南市章が掲載されることがあること,が認められる。しかしながら,日南市章が,日南市の公共施設やホームページ等に表示されたからといって,本願商標の指定商品の取引者,需要者が一般に目にするとは認められない。また,イベント等を報じる新聞記事の写真,テレビ放送等に写る日南市章は,背景として小さく写り込んでいるにすぎず,目立つものとは認められない。そして,日南市の観光や物産を紹介する書籍,ホームページも,本願商標の指定商品の取引者,需要者が一般に目にするとは認められない。被告は,本願商標の指定商品に含まれる商品「マンホール」の蓋は自治体の章が刻印されることが少なくなく,公共工事に用いられる建材を提供する事業者は県章や市章等に相当程度注意を払っているという取引の実情が存在すると主張する。しかしながら,マンホールの蓋を扱う取引者,需要者の数は明らかではなく,本願商標の指定商品の取引者,需要者のうちのどの程度を占めるのかは不明というほかない。したがって,被告の主張する上記取引の実情を考慮しても,上記認定の事実から,審決時に,日南市章が本願商標の指定商品「建築用又は構\築用の金属製専用材料,金属製建具,金属製建造物組立てセット」,「セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス」及び「清掃用具及び洗濯用具」に係る一商圏以上の範囲の取引者,需要者に広く認識されていたと認めることは,困難である。
・・・・
光が上下左右に4本伸びた構成(「上下左右に三角形の突起を有する黒塗りの肉太円輪郭」の構\成)は,日立製作所の社章でもよく知られたものである(弁論の全趣旨)。そうすると,本願商標の図形部分は,本願商標の大きな部分を占めるものではあるが,「日」という漢字の古代書体に由来するありふれた図形であって,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとまでは認められない。他方,本願商標の「DAIWA」の文字部分は,図形部分と比して1/5程の大きさにすぎないが,同部分から「ダイワ」の称呼が生じることは明らかである。また,我が国には,「ダイワ」,「大和」を冠した企業名が多数存在する(裁判所に顕著な事実)から,取引者,需要者は,「DAIWA」の文字部分を企業名に関する表示として認識し,同部分からそのような企業名としての観念を生じるものと認められる。したがって,本願商標の「DAIWA」の文字部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認めることはできない。以上によれば,前掲最高裁判決の判断基準に照らして,本願商標の構成から図形部分を抽出し,この部分だけを日南市章と比較して商標そのものの類否を判断することは,許されないというべきである。そして,本願商標と日南市章を全体として対比すると,外観において本願商標の図形部分と日南市章は類似するものの,本願商標が「ダイワ」の称呼を生じ,「ダイワ」ないし「大和」の企業名としての観念を生じるのに対し,日南市章は,特定の称呼,観念を生じるものとは認められないから,全体として類似するとはいえない。\n

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平成24(行ケ)10120 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年10月30日 知的財産高等裁判所 

 1私人に、「富士山世界文化遺産センター」という商標登録は認められない(公序良俗違反)とした拒絶審決が維持されました。
 以上によれば,我が国として,世界遺産条約に基づく世界遺産一覧表への記載に向け,「富士山」を推薦することを決定したこと,「富士山」が世界文化遺産登録に推薦されたことを受け,静岡県及び山梨県は,行政,企業,団体等を中心としてその登録実現に向けた活動を行っていること,静岡県において,現在は仮称であるが,「富士山世界遺産センター」との名称の施設を設置する構\想・基本計画が存し,同施策が具体的に進行していることについては,その都度,新聞報道がなされ,少なくとも静岡県及びその周辺の建設事業等に関連する取引者,需要者に,広く知られているものと認めることができる。5 本願商標の商標法4条1項7号該当性について(1) 本願商標は,「富士山世界文化遺産センター」の標準文字からなるが,「富士山」の文字部分は,静岡県と山梨県との境にそびえる日本一高い山である「富士山」を意味するものとして,「世界文化遺産」の文字部分は,ユネスコの世界遺産登録については一般に広く知られていることから,ユネスコに登録される「世界文化遺産」を意味するものとして,「センター」の文字部分は,「その分野の中心となる機関・施設」を意味するものとして,いずれも容易に理解,認識されるものと認められ,全体として,「富士山の世界文化遺産に関する中心となる施設」程の意味合いを有する商標として認識されるものと認められる。
(2) 他方,上記2,3のとおり,i)世界遺産条約にいう「世界遺産」には,「文化遺産」と「自然遺産」があり,我が国は,世界遺産条約の締約国として,「世界遺産」の保護,保存等をすることが義務付けられていること,ii)我が国の複数の「世界遺産」において,所在地等と「世界遺産センター」とを組合せた「○○世界遺産センター」なる名称の施設が公的機関によって設置され,その世界遺産の保全・管理業務,調査研究,情報提供などの活動の拠点として運営されていること,iii)我が国は,「富士山」を世界文化遺産登録に推薦することとし,国のほか,静岡県及び山梨県も,行政,企業,団体等を中心としてその登録実現に向けた様々の活動を行っていること,iv)上記iii)の事実は,その都度新聞報道がなされ,少なくとも静岡県及びその周辺の建設事業等に関連する取引者,需要者に,広く知られていることが認められるから,これらの事情に照らすと,本願商標は,これに接する取引者,需要者に,「公的機関によって設置・運営される富士山の世界文化遺産に関する施設の名称」であると認識されるものと認められる。(3) そうすると,「公的機関によって設置・運営される富士山の世界文化遺産に関する施設の名称」と認識される本願商標について,一私人である原告の登録を認め,「建物の管理」,「土地の管理」,「建物又は土地の情報の提供」等を含む指定役務について,その使用する権利を専有させることは,国又は地方公共団体等の公的機関による,富士山の「世界遺産」に関連する施策の遂行を阻害するおそれがあると認められる。そして,これら施策の高度の社会公共性に鑑みれば,本願商標の登録を認めることは社会公共の利益に反するというべきであり,本願商標は,商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものと認められる。

◆判決本文
 

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平成23(行ケ)10404 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年07月26日 知的財産高等裁判所

 商標「3ms」が、「3M」と出所混同しないとした審決が取り消されました。
 被告は,原告は本件指定役務に関する業務は行っておらず,本件商標を本件指定役務に使用しても,混同が生じるおそれはない,布地・被服等の加工品に引用商標が表示されたタグ等が付されていても,これらのタグ等は加工業者を示すものとは認識されないと主張する。しかし,以下のとおり,被告の主張は失当である。原告や引用商標1が著名であることに加え,原告の関連会社が販売する商品は,多分野,多種類に及んでいること,引用商標1は原告や関連会社のハウスマークとして使用されていることからすると,たとえ,原告や関連会社が本件指定役務に含まれる業務を実施していないとしても,取引者・需要者において,原告又は原告と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると混同するおそれがあるというべきである。また,衣服等においては,素材の開発から加工技術の開発まで同一の企業や関連会社が行う場合もあることからすると,布地・被服等の加工品に引用商標1が表\示されたタグ等が付されていれば,取引者・需要者が原告又は原告と何らかの関係を有する者がこれらの加工を行ったと認識する可能性はある。

◆判決本文

◆こちらは類似案件です。平成23(行ケ)10403
「sanm's」「サンエムズ」の2段併記の商標については、混同無しと判断しました。

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平成23(行ケ)10436 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年07月18日 知的財産高等裁判所

「COOLBOSS」が「BOSS/HUGO BOSS」から無効理由があるかが争われました。裁判所は、商4条1項15号(出所混同要件)に違反するとして、無効理由無しとした審決を取り消しました。
 上記認定の事実によれば,「BOSS/HUGO BOSS」商標は,フーゴ・ボスAGにかかる紳士服及び紳士用品について使用されるものとして,本件商標登録出願日及び現在において,海外及び我が国で著名となっているものと認められる。ここで,「BOSS」の欧文字は,2段に構成された「BOSS/HUGO BOSS」商標中で上段に顕著に表された部分であり,フーゴ・ボスAGが用いる多数のブランドの大部分で共通する部分であり,「BOSS/HUGO BOSS」商標の要部と認められる。「BOSS」の欧文字からは,「ボス」の称呼を生じ,「親分」「上司」の観念を生じる。
(3) 本件商標の取引の実情をみるに,甲98,甲100〜103によれば,被告は本件商標を付した小型ファン付き作業服を販売し,その開始は,本件商標の出願とほぼ同時期である。そのパンフレット(甲98)には,上方に大書された「クールボス」の文字の下方に,大きな文字で「涼しい」「作業服」との記載があり,「涼しい」の文字と「作業服」の文字は,「涼しい」の文字の下から「作業服」の文字の上にかけて記載された「〜」を反転させた形状の曲線によって区分され2行に表記されている。「涼しい」を英語で「クール」と称することは一般的な認識であるから,この記載を見る者は,「クールボス」の文字中の「クール」の部分が「涼しい」に対応し,「ボス」の部分が「作業服」に対応するとの理解に誘導されることになる。「クール」の文字が説明的で出所表\示機能を有しないのに対し,「ボス」の文字は,これから生じる「親分」「上司」の観念が作業服とは結び付かず,作業服を「ボス」と呼ぶこともないことからすると,本件商標からは,前記のように紳士服及び紳士用品の商品分野において著名な「BOSS/HUGO BOSS」商標を想起する可能性が高いといえる。このように,「BOSS/HUGO BOSS」商標がフーゴ・ボスAGにかかる紳士服及び紳士用品について使用されるものとして我が国において著名となっていること,作業服の購入者に男性が多いであろうことからからすると,「クールボス」の商標が付された作業服が販売されれば,その作業服がフーゴ・ボスAG又はこれと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,出所について混同を生じるおそれがあることになる。

◆判決本文

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平成23(行ケ)10375 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年07月19日 知的財産高等裁判所

 商標「POWERWEB」が、引用商標「POWERWAVE」と類似するとした審決が取り消されました。
 本願商標からは「パワーウェブ」,「パワーウエブ」,「パワーウエッブ」といった称呼を生じ,引用商標からは「パワーウェーブ」という称呼を生じるから,両商標の称呼上の差異は,「ウェ」に続く長音「ー」の有無のみであるか,あるいは,「ウ」に続く称呼が「エ」又は「エッ」であるか,「ェー」であるかのみである。しかし,前記のとおり,「POWERWEB」は,「POWER」と「WEB」の2つの単語を組み合わせたものであり,「POWERWAVE」は,「POWER」と「WAVE」の2つの単語を組み合わせたものであることは,一般人にとって容易に理解可能であり,「POWER」,「WEB」,「WAVE」は,いずれも一般人にとって観念を容易に想起し得る単語であること,スポーツ関係の商品に使用される「POWER」の文字の自他商品識別力は,同じくスポーツ関係の商品に使用される「WEB」及び「WAVE」の文字の自他商品識別力よりも強いものとはいえないことからすると,両商標の語調語感は自ずと相異なる。したがって,両商標は,称呼上類似はするものの,両商標を聞き分けることは必ずしも困難なことではない。
エ 両商標の類否
 以上のとおり,本願商標と引用商標とは,外観及び観念において相違し,称呼上類似はするものの,両商標を聞き分けることは必ずしも困難なことではないこと,また,取引の実情として,外観や観念よりも称呼によって商品の出所を識別しているなど,称呼上の識別性が外観及び観念上の識別性を上回っているような事情は認められないことに照らせば,両商標は,外観及び観念上の相違が称呼上の類似性を凌駕するものというべきである。

◆判決本文

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平成23(行ケ)10373 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年07月12日 知的財産高等裁判所

 商4条1項11号における類似商標ではないとして、拒絶審決が取り消されました。
 そこで,これを本件についてみると,引用商標は,「fantasy LIFE」の部分と「mabinogi/マビノギ」の部分とからなる結合商標と解されるところ,「mabinogi/マビノギ」の部分は,「fantasy LIFE」の部分よりも大きく(高さは約5倍,幅は約2倍)かつ特徴的な書体で表され,同部分からは特定の観念を生じないか,物語の題号の1つである「マビノギ」の観念を生じさせるから,造語ないし固有名詞として認識され,取引者,需要者に対して商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。また,同部分から「マビノギ」の称呼が生じることは明らかである。他方,「fantasy」の語は,「空想,夢想,ファンタジー」を意味する平易な英語であって,「ファンタジー」の語は,コンピュータゲームの分野においてゲームのジャンル(「空想上の人生・生活を体験することを内容としたゲーム」)を指すものとして使用されているから,引用商標の構成中「fantasy LIFE」の部分は,取引者,需要者にコンピュータゲームのジャンルを示すものと認識されることが多いものと認められ,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとは認められない。上記のとおり,引用商標の構成中,「fantasy LIFE」の部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めることはできず,他方,「mabinogi/マビノギ」の部分から出所識別標識として固有の称呼を生じ,観念を生じ得るのであるから,引用商標の構成中「fantasy LIFE」の部分だけを抽出して本願商標と対比することは許されないというべきである。そして,本願商標と引用商標の構成部分全体を対比すると,両者は外観において著しく異なり,観念,称呼において一部共通するものの,取引の実情を考慮するならば,類似するとはいえない。したがって,本願商標と引用商標の類否について,外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,具体的な取引状況に基づいて全体的に考察すると,本願商標と引用商標が,役務における出所の誤認混同を生じるおそれはなく,両商標は類似しないから,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断には誤りがある。
 (3) 被告は,「ファンタジー」の語が「ファイナルファンタジー」のように他の語と結合して自他商品・役務の識別力を有する造語を形成する場合があると主張する。しかし,コンピュータゲームの商品名に「ファイナルファンタジー」のように「ファンタジー」の語を含むものがあるとしても,「ファイナルファンタジー」は「ファンタジー」のジャンルに属するコンピュータゲームであると認められる(甲23)から,「ファンタジー」の語自体が商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるということはできず,被告の主張は理由がない。また,被告は,商品又は役務に係るゲームソフトウェア及びその他のソ\フトウェアにおいては,その商品又は役務を識別する標章として,ソフトウェアの内容を示すタイトルのほかに,該ソ\フトウェアの制作会社等に係る標章を表示してあることが少なからず存在するものであり,また,該標章は,タイトルよりも小さく表\示されていることが一般的であると主張し,乙6〜14には,ソフトウェアの内容を示すタイトルのほかに該ソ\フトウェアの制作会社等に係る標章をタイトルよりも小さく表示してあることが認められる。しかしながら,そうであるからといって,引用商標において「fantasy LIFE」の部分が,同部分より大きくかつ特徴的な書体で表された「mabinogi/マビノギ」の部分より商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとは認められない。被告は,他にも縷々反論するが,上記判断を左右しない。

◆判決本文

◆こちらは、類似案件です。平成23(行ケ)10372

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平成23(行ケ)10400 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年06月27日 知的財産高等裁判所

 商標「Tarzan」が公序良俗違反かが争われした。特許庁は公序良俗違反でないと判断しましたが、裁判所は、公序良俗違反で無効と判断しました。
 ・・・日本では広く知られていないものの,独特の造語になる「ターザン」は,具体的な人物像を持つ架空の人物の名称として,小説ないし映画,ドラマで米国を中心に世界的に一貫して描写されていて,「ターザン」の語からは,日本語においても他の言語においても他の観念を想起するものとは認められないことからすると,我が国で「ターザン」の語のみから成る本件商標登録を維持することは,たとえその指定商品の関係で「ターザン」の語に顧客吸引力がないとしても,国際信義に反するものというべきである。「ターザン(Tarzan)」の語は,米国の作家バローズの手になる小説シリーズ「ターザン・シリーズ」に登場する主人公の名前であり,本件商標登録査定時(平成22年7月6日)の時点において,日本におけるその著作権は存続していたし,派生的著作物にはなお著作権が存続し続けていたものである。バローズから「ターザン・シリーズ」のすべての書籍に関する権利を譲り受けた原告は,オフィシャル・ウェブサイトを通じ,ターザンに関する諸々の作品及びバローズの業績を伝承・解説するとともに,「ターザン・シリーズ」を含めたバローズに関する小説,パルプ雑誌,映画,ラジオ放送作品,テレビ放送作品,コミックスなどのあらゆる作品を収蔵したオンラインアーカイブを作成・提供するなど,「ターザン」の原作小説及びその派生作品の価値の保存・維持に努めるとともに,米国のみならず世界各国において「ターザン」に関する商標を登録して所有したり,ライセンス契約の締結・管理に関わることによって,その商業的な価値の維持管理にも努めてきた。このように一定の価値を有する標章やキャラクターを生み出した原作小説の著作権が存続し,かつその文化的・経済的価値の維持・管理に努力を払ってきた団体が存在する状況の中で,上記著作権管理団体等と関わりのない第三者が最先の商標出願を行った結果,特定の指定商品又は指定役務との関係で当該商標を独占的に利用できるようになり,上記著作権管理団体による利用を排除できる結果となることは,商標登録の更新が容易に認められており,その権利を半永久的に継続することも可能であることなども考慮すると,公正な取引秩序の維持の観点からみても相当とはいい難い。被告は,「Tarzan」の語の文化的・商業的価値の維持に何ら関わってきたものではないから,指定商品という限定された商品との関係においてではあっても「Tarzan」の語の利用の独占を許すことは相当ではなく,本件商標登録は,公正な取引秩序を乱し,公序良俗を害する行為ということができる。\n

◆判決本文

◆こちらは関連事件です。平成23(行ケ)10399

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平成24(行ケ)10013 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年06月06日 知的財産高等裁判所

 商標「スバリスト」が『スバル』から無効か否かについて、裁判所は、広義の混同が生ずるおそれがあるとして、無効理由無しとした審決を取り消しました。
 前記(2)のとおり,本件商標は,外観や称呼において引用商標1ないし3と相違し,これらが全体として類似する商標であるといえないとしても,本件商標からは,原告が製造する自動車のブランドであるスバルの自動車の愛好家との観念が生じることがあり,他方,引用商標1ないし3からも,原告が製造する自動車のブランドであるスバルとの観念が生じ得るから,観念において関連性があることは否定できない。また,前記(2)アのとおり,本件商標出願当時,自動車やその関連商品の分野では,本件商標を構成する「SUBARIST」「スバリスト」との語は,原告が製造する自動車のブランドであるスバルの自動車の愛好家を意味することが広く知られていたものであるが,この「SUBARIST」「スバリスト」との語が,原告の製造する自動車のブランドである「SUBARU」あるいは「スバル」に由来する造語であることは明らかである。そして,自動車の分野において,引用商標1ないし3が周知著名性を有していることは当事者間に争いがないことや,本件商標の指定商品は,引用商標1ないし3が使用される商品と同一又は関連性を有することなどを併せ考慮すると,本件商標をその指定商品に使用した場合,その需要者及び取引者において,本件商標が使用された商品が,例えば,原告から本件商標についての使用許諾を受けた者など,原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し,商品の出所につきいわゆる広義の混同を生ずるおそれがあることは否定できない。\n

◆判決本文

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平成23(行ケ)10426 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年05月31日 知的財産高等裁判所

 商標「Lambormini」が引用商標「LAMBORGHINI」に対して、商標法4条1項10,15,19号違反がないとした審決が取り消されました。
 本件商標は,字体における特徴があり,また図形部分が付加されている点で,引用商標と外観において若干の相違があるものの,全体として類似するといえる。以上によれば,本件商標と引用商標は,本件商標の文字部分10文字中9文字が引用商標と共通すること,称呼において,相違する1音が母音構成を同じくする近8似音であり類似すること,外観においても,若干の相違があるものの,全体として類似することに加え,前記原,被告の各商標の使用状況等取引の実情等を総合して判断すると,本件商標と引用商標は,互いに類似する商標であると解される。(2) 商標法4条1項10号該当性について上記のとおり,引用商標である「LAMBORGHINI」は,本件商標の出願以前から現在に至るまで,イタリアの高級自動車メーカーである原告又は原告の業務に係る商品「自動車(スーパーカー)」を表示するものとして,日本国内の自動車の取引業者や愛好家の間で広く知られているから,他人の業務に係る商品(自動車)を表\示するものとして,需要者の間に広く認識されている商標に該当するものと認められる。また,本件商標は,上記のとおり,引用商標に類似し,本件商標の指定商品には,「自動車」を含んでいる。そうすると,本件商標は,他人の業務に係る商品(自動車)を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって,その商品(自動車)に使用をするものに該当すると認められる。したがって,本件商標は,商標法4条1項10号に該当する。(3) 商標法4条1項15号該当性についてまた,上記のとおり,原告は,本件商標の出願以前から現在に至るまで,引用商標である「LAMBORGHINI」等の商標を使用して,「自動車(スーパーカー)」を製造,販売する業務を行っていること,本件商標は,引用商標と類似する商標であり,その指定商品に引用商標が使用されているのと同一商品(自動車)を含むこと,被告は,「Lambormini」や「ランボルミーニ」との商標を使用して,原告の製造,販売に係る自動車を模したカスタムバギーを製造,販売していること等を総合すると,本件商標は,他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標に該当すると認められる。したがって,仮に本件商標が商標法4条1項10号に該当しないとしても,同条同項15号に該当するものと認められる。
(4) 商標法4条1項19号該当性について
 さらに,被告は,上記のとおり,原告が世界的に著名な自動車メーカーであり,引用商標も原告の業務に係る商品(自動車)を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることや,かかる引用商標と本件商標が類似の商標であることを認識しながら,自動車等を指定商品等とする本件商標登録を行い,実際に「Lambormini」や「ランボルミーニ」との商標を使用して,原告の製造,販売に係る自動車を模したカスタムバギーを製造,販売していることが認められる。そうすると,本件商標は,被告が,不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認められる。したがって,仮に本件商標が商標法4条1項10号,15号に該当しないとしても,同条同項19号に該当するものと認められる。\n

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平成23(行ケ)10323 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年03月28日 知的財産高等裁判所

「KDDI Module Inside」を上下三段併記した商標に対して、インテルが無効審判を請求しました。理由は、「intel inside」と混同するというものです。審判では無効理由無し、裁判所も審決を維持しました。
 原告は,引用各商標における自他商品の識別性を有する商標の要部の一つは,「・・・inside」及び「・・・INSIDE」との表示形式であり,本件商標の「KDDI」「Module」「Inside」の文字を順に上から下へ積み重ねた態様は,「・・・INSIDE」との表示形式と共通しているから,「・・・インサイド」という共通の称呼が生じ,商品の出所に混同を生じるものであると主張する。確かに,引用各商標を構成する「intel inside」との文字が原告又は原告製造に係る製品の表示として広く認識されていることや,テレビ媒体等で使用された「インテル,入っている」というサウンドロゴに接した者は,「intel」の語と「inside」の語との結び付きを強く印象に残すものであることなどからすると,「intel」以外の文字と「inside」の文字を結合した「・・・inside」との表示形式を有する商標に接した者は,当該商標と引用各商標との構\成それ自体の共通性を想起し得ることは否定することができない。しかし,原告は,本件商標の登録出願前では,平成12年3月15日にコンピュータとコンピュータソフトウエアの使用等を指定役務とする「THE JORNEYINSIDE」との商標を出願しているものの(甲50),他に「intel」の文字に代えて,他の文字と「inside」の文字を結合した表示を使用した事実は認められないこと,また,「inside」の文字は,「内側の,内部の」等の意味合いを持つ,一般的な語であり,「intel」以外の文字と結合させることも含め,多様な用法が想定できることからすると,「intel」以外の文字と「inside」の文字を結合した「・・・inside」という商標の構成が,当該商標が使用された商品又は役務が直ちに原告の製造に係る商品又は役務であると誤信するおそれを生じさせるほどの強い出所識別機能\を有しているとまでは認められない。

◆判決本文

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平成23(行ケ)10203 商標登録取消決定取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年02月21日 知的財産高等裁判所

 商標「VOSS」(フォスとのふりがなを2段併記)が、「BOSS」と類似するとした審決が取り消されました。
 被告は,「フォス」は「VOSS」の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識し得るものとはいえない旨主張する。しかし,証拠(甲9,10,乙7ないし9)及び弁論の全趣旨によれば,我が国において「フォルクスワーゲン」というドイツ製の自動車が広く知られていること,「フォルクスワーゲン」に対応するドイツ語が「VOLKSWAGEN」であることが認められるところ,「フォ」は「ヴォ」の濁音が清音になっただけであることをも併せ考慮すれば,「フォス」は「VOSS」の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識し得るというべきであり,被告の上記主張は採用することができない。また,被告は,「フォルクスワーゲン」や「フォルクス」は日本においても著名であるから,このような特殊な事例を本件商標の称呼の特定の参考にすべきではない旨主張するが,上記名称が著名であれば,我が国においても「Vo」との綴りを無理なく「フォ」と読み得ることにつながり,被告の上記主張は理由がない。このほか,被告は,我が国においてドイツ語はなじみがなく,「Vo」との綴りが「フォ」と読まれることはないとも主張する。確かに,我が国において,英語と比べてドイツ語になじみがないことは事実であるが,本件商標においては,下段に「フォス」との片仮名が記載されていることからすれば,我が国におけるドイツ語のなじみの程度とはかかわりなく,本件商標からは「フォス」との称呼が生じるものと解される。
(2) 引用各商標における「BOSS」の独立性につき被告は,引用各商標につき,「BOSS」の欧文字部分が独立して取引に資されるとして,分離観察をした上で,引用各商標と本件商標との類否判断をすべき旨主張する。しかし,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構\成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁等参照)。そして,引用各商標において,「パイプをくわえた男性の斜め横顔」のイラスト部分は印象的であって,ここから出所識別標識としての観念が生じないとはいえないため,「BOSS」の欧文字部分が,取引者,需要者に対し,出所識別標識として一定程度の強い印象を与えるとしても,「BOSS」部分のみを抽出して,本件商標との類否を判断することは許されないというべきである。また,被告は,引用各商標において,「パイプをくわえた男性」の図形部分と「BOSS」の欧文字部分とは,称呼や観念において,直接的には関連性のないものであり,ひいては「BOSS」の欧文字部分が独立して自他識別機能を有する旨主張する。しかし,両者に直接的に関連がないとしても,引用各商標においては,いずれも「パイプをくわえた男性」のイラストと「BOSS」の欧文字部分が組み合わせて用いられており,証拠(甲25,乙12)からすれば,サントリー関連会社の缶コーヒーにおいて,両者は常に一体として用いられていること,「BOSSコーヒー」に関するウィキペディア(フリー百科事典)上も,BOSSコーヒーにおいては「パッケージにパイプをくわえた男性のイラストが特徴である」と記載されていることが認められ,以上からしても,両部分は一体というべきであり,被告の上記主張は採用することができない。\n

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平成23(行ケ)10223 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年02月09日 知的財産高等裁判所

 審判では、「戸建マンション」が、識別力なしとして、拒絶されました。知財高裁もこれを維持しました。
 前記(1)アの新聞記事及びインターネット情報によれば,本願の指定役務である建物に関連する役務を提供する業界においては,プライバシーを確保する目的で住戸の独立性を高めたり,戸建のような住居配置で優れた独立性と採光・通風を確保し,また専用の庭,駐車場及び門扉を設置するなどの工夫を施すことによって,戸建てに近い居住性,建築形態を採るマンションが多数取引されている実情にあることが認められる。また,前記(1)イの新聞記事及びインターネット情報によれば,「戸建てマンション」,「戸建型マンション」,「戸建て感覚マンション」及び「戸建て風マンション」の語が,建物に関連する役務を提供する業界において実際に使用されていることが認められる。上記事実によれば,本願商標「戸建マンション」は,上記「戸建てマンション」,「戸建型マンション」,「戸建て感覚マンション」及び「戸建て風マンション」と実質的に同一の語であると認められ,また,戸建てに近い居住性,建築形態を採る戸建てのようなマンションが多数取引されている実情をも併せ考慮すると,それらの語は,「戸建て住宅の機能・特長を併せ持ったマンション」という意味合いを有すると認められる。そうすると,本願商標は,これに接する取引者・需要者をして,「戸建て住宅の機能\・特長を併せ持ったマンション」という意味合いを有する合成語として容易に認識,理解させるとみるのが相当である。したがって,本願商標は,これをその指定役務である建物に関連する役務に使用しても,単に役務の質(内容)等を表示するにすぎず,自他役務の識別標識としての機能\を果たさないものであり,また,前記「戸建マンション」に係る建物に関連する役務以外の役務に使用するときは,役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるといわざるを得ない。
 以上のとおり,結局,本願商標は自他役務識別標識としての機能を果たし得ないものというべきであって,商標法3条1項3号の「その役務の質を普通に用いられる方法で表\示する標章のみからなる商標」に該当し,また,本願商標を前記役務以外の役務に使用するときは,役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるから,同法4条1項16号の「役務の質の誤認を生じるおそれがある商標」に該当するといわざるを得ない。

◆判決本文

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平成23(行ケ)10190 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年01月30日 知的財産高等裁判所

 本件商標「メルクス」が「メルク」と類似すると無効主張しましたが、類似しないとした審決が維持されました。
 本件商標より生ずる「メルクス」の称呼と引用商標より生ずる「メルク」の称呼とを比較すると,両称呼は,「メルク」の音を同じくし,末尾において「ス」の音の有無の差異を有する。そして,差異音「ス」(su)の子音(s)は,舌端を前硬口蓋に寄せて発する無声摩擦子音であって,構音上,例えば,破裂音(p.b.t.d.k.g)等の音に比した場合,響きの弱い音として聴取されるものとしても,「ス」の音の有無の差異は,本件商標と引用商標のように4音対3音といった比較的短い構成音からなる称呼に与える影響は大きいこと,そして何よりも,日本語の「ス」は「U」の母音を伴うもので,通常「S+U」と発音され,これが「メ」「ル」「ク」「ス」の4音のみから成り観念を持たない単語において,各音を一つ一つ明確に発音する可能\性が高い音の一つとなっていることからすれば,両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは,全体の語調・語感が異なるものとなる。また,両商標のアルファベット文字部分についてみても,末尾が「クス」と発音される本件商標と末尾が「ク」と発音される引用商標とでは,「X」と「CK」の文字の相違があり,アルファベット発音に慣れてきている日本人にとってこの文字の違いによる発音の相違は一般化しているというべきである。よって,本件商標の片仮名及びアルファベット文字の双方をみても,本件商標は,引用商標と互いに紛れるおそれは少ないと認めるべきである。

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平成22(ワ)32483 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成24年01月26日 東京地方裁判所 

 商標法32条の先使用権が認められました。「KAMUI」のゴルフクラブといえば、ゴルファーの間では、「飛ぶ」と有名でしたね。
 上記(1)イのとおり,被告は,平成12年以降,ゴルフクラブに被告標章3をはじめ,被告標章1やその他「KAMUI」単体の標章を付して製造・販売し,また,キャディバッグにも被告標章3を付して販売しており,これらの各標章は,「KAMUI」の標章として社会通念上同一のものと認められる。そして,上記(1)イ(ク),(ケ)のとおり,上記「KAMUI」の標章が付されたゴルフクラブが,平成12年から本件商標が登録される前年の平成18年までに合計して約4万5000本販売されており,平成16年以降は毎年1億円を超える売上げがあったこと,上記(1)イ(コ)のとおり,複数の雑誌等に上記「KAMUI」の標章が付された被告のゴルフクラブが,場合によっては被告の表示と共に,掲載されていたこと,上記(1)イ(サ)のとおり,上記「KAMUI」の標章が付されたゴルフクラブが100名を超える多数のプロゴルファーに納品されていることを併せ考慮すると,上記「KAMUI」の標章は,本件商標が登録出願された平成19年4月23日の時点において,被告の製造・販売するゴルフクラブ及びその関連用品であるキャディバッグを表示するものとして需要者の間に広く認識されていた(法32条1項)というべきである。そして,上記(1)ア認定の事実経過によれば,被告が「KAMUI」標章を使用することに不正競争の目的は認められないから,被告には,法32条1項により,ゴルフクラブ及びその関連用品であるキャディバッグについて,「KAMUI」の標章として社会通念上同一の標章と認められる被告標章1ないし3の先使用権が認められる。

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平成23(行ケ)10252 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年01月30日 知的財産高等裁判所

 「海葉」は「海陽」とは非類似であると判断されました。
 以上のとおり,本願商標と引用商標とは,その外観,観念において大きく相違し,称呼において基本的に同一であるところ,海の母音である「あい」も,葉や陽の母音である「おう」も,漢字の音読みとしてありふれた読みであり,これに「K」と「Y」の子音を組み合わせた「KあいYおう」との称呼は2文字の漢字のありふれた読みからくるもので,外観,観念の相違に比較すると,識別力が弱いものである。そして,本件において,この判断に反して特に考慮すべき取引の実情は認められないから,本件においては,外観と観念の相違が称呼の共通を凌駕するものというべきであって,指定商品について共通するものがあるとしても,本願商標と引用商標とは類似するものではないというべきである。

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平成22(ワ)10785 商標権侵害差止請求事件 商標権 民事訴訟 平成24年01月12日 東京地方裁判所

 日本郵便の「ゆうメール」の使用が、商標権侵害に該当すると判断されました。ゆうパックが著名であることは認定されましたが、出所混同を起こすとの無効主張は認められませんでした。
 本件商標「ゆうメール」と被告商標「ゆうパック」とを比較すると,外観は「ゆう」のみが共通するだけで全体として異なったものであり,称呼は「ユウメール」と「ユウパック」で異なり,その観念においても,「ゆう」だけではいかなる観念が生じるか直ちに明らかではなく,「メール」からは,郵便,郵便物,電子メール(広辞苑第6版)の観念が生じ,他方「パック」からは,包装すること,包装したもの(広辞苑第6版)の観念が生じるから,両者は観念においても異なる。したがって,そもそも本件商標と被告商標「ゆうパック」とは,その類似性が乏しいといわざるを得ない。その上,被告商標「ゆうパック」は,一般小包郵便物に利用されているが,そのサービスと本件指定役務である「各戸に対する広告物の配布,広告」との関連性も大きいものとはいえない。そうすると,たとえ被告商標「ゆうパック」自体が著名であったとしても,以上説示の点を考慮して総合的に判断すると,本件商標が,その出願時及び登録時において,被告商標「ゆうパック」を使用した被告の役務と出所混同のおそれのある商標であったということはできない。よって,本件商標の登録が法4条1項15号に違反するとは認められない。 エ なお,被告は,「ゆう○○」の構成の商標は,郵便事業に関係する商品・役務については,被告又は日本郵政の使用する商標として需要者に認識されており,「ゆう」は郵便の「郵」を意味する旨主張する。確かに,被告が主張するとおり,上記「ゆうパック」のほか,郵便貯金を意味する「ゆうちょ」(乙58の5,62)や郵便局で郵便物の引受け等を行う「ゆうゆう窓口」(乙58の6及び7,63)など,「ゆう」が「郵」を意味する「ゆう」として使用されていると考えられる商標が複数存在する(乙58の1ないし33)。しかし,「ゆう」自体,ひらがな二文字から構\成される短い言葉であること,「郵」以外にも「ゆう」に対応する漢字が多数考えられること,実際に,郵便の「郵」以外を意味すると考えられる「ゆう」を使用した登録商標も多数存在すること(甲92の1ないし5,93の1,93の3ないし6)からすれば,必ずしも「ゆう」が「郵」を意味するとはいえず,本件指定役務と郵便事業との結び付きの程度をも考慮すれば,被告の主張は失当であるといわざるを得ない。

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