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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商4条1項各号

平成27(行ケ)10111  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年11月19日  知的財産高等裁判所

 審決は、LLが重なり表示されている部分について、Lと認識されるとして先願と類似すると判断しましたが、知財高裁は、当該部分は、LLと認識するとして、審決を取り消しました。判決の最後に本件商標が添付されています。
 ・・・本願上段中央文字についても,その2本のL字状の線から成る形態と相まって,下段の文字部分の「Life」,「Learning」の各頭文字「L」,「L」を連想させることに鑑みると,下段の文字部分は,見る者に,あたかも上段の文字部分のルビとして付さ れたものという印象を与えるということができる。以上に加え,複数の単語から構成される英語の熟語や名称については,その略称として,各単語の頭文字の大文字を並べたものを用いることが多いことに鑑みると,上段の文字部分は,下段の文字部分を構\成する各英単語の頭文字である「G」「L」「L」「C」を意味するものとして認識されるというべきである。

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平成27(行ケ)10074  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年10月29日  知的財産高等裁判所

 商標「養命青汁」が,「養命酒」と出所混同生ずるか(4条1項15号)が争われました。知財高裁は、混同するとした審決を維持しました。
 引用商標の外観は,前記第2,1のとおり,「養命酒」を漢字で横書きにしたやや デザイン化された毛筆体から成るものであるが,一語一語は同じ大きさの同一書体 である。この構成中の「酒」は,普通名称としての酒(薬用のものを含む。)を示す\nものとして認識され,この「酒」部分の自他商品の出所識別力は乏しく,出所識別 標識として支配的な印象を与えるものではない。一方,引用商標中の「養命」の部 分は,その漢字の意義から,「命を養う」との意味合いを生じさせるものであり,「養 命酒」が薬用酒の中でも極めて著名なブランドとして通用していたことに照らすと, 引用商標中の「養命」部分は,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印 象を与えるものと認められる。そうすると,引用商標が,「養命酒」として著名であ って,「養命」として著名性を獲得しているものでないとしても,引用商標が一連一 体の「養命酒」(ヨウメイシュ)としてのみ観念されるとはいえず,「養命」部分を 基幹部分として認識するものと認められる。したがって,「ヨウメイシュ」のほかに 「ヨウメイ」との称呼も生じる。 他方,本件商標について見ると,本件商標は,漢字横書きの標準文字から成るも のである。「青汁」との語は,「緑色の生野菜をしぼった汁」(広辞苑第6版,株式会 社岩波新書)を意味する普通名称として親しまれたものであり,本件商標中の「青 汁」の部分は,指定商品である,野菜又は野菜及び茶を主原料とする液状の加工食 品,調理用野菜ジュース,飲料用野菜ジュースにおいて使用される際には,単に, 指定商品そのものを示す普通名称であると捉えられ,第5類の野菜を主原料とする 粉状,ゼリー状等の加工食品,サプリメントや,第29類の「乳製品,冷凍野菜…」 や,第32類の「ビール,清涼飲料,果実飲料…」等に用いられた場合には,品質 (原材料)を示すものと捉えられるのであるから,単なる普通名称,あるいは,商 品の品質,性状を示すにすぎないものであって,自他商品の出所識別力は乏しく, 出所識別標識として支配的な印象を与えるものではない。また,簡易迅速性を重ん ずる商品取引の実際においては,その商品に付された商標の一部分だけによって簡 略に呼称,観念することがあるから,本件商標においても,「養命」部分を呼称,観 念することもあり得るものである。 そうすると,本件商標は,「養命」の文字と商品の普通名称の文字によって構成さ\nれるものとして把握され,このような商標に接する取引者,需要者は,本件商標の 全体をもって取引に資するほか,前半の「養命」の文字部分に着目することが少な くない。したがって,「ヨウメイアオジル」のほか,「ヨウメイ」との称呼も生じる。 そうすると,本件商標と引用商標とは,その基幹部分である「養命」において, 外観上実質的に同一であり,称呼「ヨウメイ」においても同一の商標であるといえ る。そして,「養命」の観念においては,「養生」や「健康」を連想させる「命を養 う」との観念が生ずるほか,後記のとおり,被告商品と関連性のある指定商品に用 いられた場合には,極めて著名な薬用酒である「養命酒」と同一又は緊密な関係に ある営業主の業務に係る商品との観念も生ずるものと解される。 以上によれば,引用商標と本件商標は,冒頭の2文字を上記のとおり基幹部分と いえる「養命」が占める点で共通し,この冒頭の「養命」部分は,引用商標では3 文字の漢字のうち2文字,本件商標では4文字の漢字のうち,半分の2文字を占め る点で,看者に強い印象を与え,外観において近似した印象を与える。称呼につい ては,「ヨウメイ」部分の称呼が共通しているが,末尾に付された語は「シュ」と「ア オジル」と差異があるものであり,全体の称呼として,必ずしも類似するとはいえ ない。しかし,引用商標は「命を養う酒」,本件商標は「命を養う青汁」という観念 が生じ,両商標とも「命を養う」飲料のイメージで共通し,上記のとおり,極めて 著名な引用商標の基幹部分を含んでいることから,本件商標について,「養命酒」と 同一又は緊密な関係にある事業主の製造販売に係る青汁,又は,緑の野菜を原料と した飲料といった観念が生じ,観念においても近似するといえる。 したがって,引用商標と本件商標は,ある程度類似しているといえる。
(2) 本件商標の指定商品等には,野菜又は野菜及び茶を主原料とする液状の加 工食品,飲料用野菜ジュース,ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース などの飲料となるものが含まれる一方,被告商品は,薬草等を原料とする薬用酒で あり,健康志向の飲料という点において共通しており,また,本件商標の指定商品 のうちには青汁を原料とする加工品が含まれ,健康維持に関心のある者を需要者層 とするものであって,これらの商品は,薬局や,薬品を中心に雑貨などを取り扱う ドラッグストアにおいて取り扱われる商品であるから,取引者層を共通にするもの であって,本件商標の指定商品と被告商品とは密接な関係を有するといえる。 そして,これらの商品の購入者が,特別な専門的知識経験を有しない一般消費者 であることからすると,当該商品を購入するに際して払われる注意力は,さほど高 いものではない。 以上のとおり,本件商標は,引用商標の基幹部分である「養命」をその構成の一部\nに含むものであり,当該部分の自他商品識別機能が高いと認められる一方,「養命」\n部分の末尾に普通名称が付加されたにすぎないことに照らすと,前記のとおり,原 告が取引者及び需用者を被告商品と共通する本件商標を指定商品に使用した場合, これに接した取引者,需要者は,極めて高い著名性を有する「養命酒」の表示を連\n想し,「青汁」という飲料,原料に用いられる「養命青汁」が,著名な養命酒に配合 された生薬と同一の成分が含有されているなどの養命酒の姉妹商品として,被告の 出所に係るものと誤認するか,あるいは,当該商品が被告との間にいわゆる親子会 社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグル\nープに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され,商品の出所に つき誤認を生じさせるものと認められる。

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◆関連案件です。平成27(行ケ)10073

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平成27(行ケ)10064  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年9月29日  知的財産高等裁判所

 商標は「Kami No Suna」(第21類「愛玩動物用排泄物処理材」)について、先登録商標「紙の砂」と類似するとした審決が維持されました。
 ・・・商品の原材料の一つとして用いられている「紙」の語,格助詞の「の」及び商品の性状を比喩的に表した「砂」の語を容易に連想,想起し,その構\成全体をもって,「紙の砂」の日本語の音を欧文字を用いてローマ字表記してなるものと理解,認識するといえる。\n

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平成27(行ケ)10025  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年9月15日  知的財産高等裁判所

 商4条1項15号違反なしとした審決が取り消されました。理由は「赤帽」が著名であることによりただ乗りやその希釈化を招くという結果を生じ兼ねないというものです。
 他方,上記認定のとおり,原告の前身団体が,昭和50年5月12日か ら,「赤帽」の標章を貨物軽自動車に付し,運送事業を開始し,昭和51年7月には, 赤帽軽自動車運送共同組合を設立し,その後,全国の京都府を含む各都道府県ごと に,会員組合を設立した上で,昭和53年には各会員組合を連合会組織にして原告 が成立し,その組合員に運送業のノウハウを提供する一方,「赤帽」の文字よりなる 商標を会員組合員の貨物自動車運送事業のサービスマークとして使用することを許 諾する方式の営業を行ってきており,本件商標出願前である平成19年12月には, 原告の組合員数は約1万5000名,車両台数は1万8000台となり,平成22 年8月ころ以降,組合員数1万3000名程度,車両台数1万5000台程度とな った。また,近年においては,原告は,「赤帽」商標の外に,平仮名の「あかぼう」, キャラクターの「あかぼうくん」及び欧文字の「Akabou」をデザイン化した 商標も用いているが,原告ないし原告の営業を簡略に表示する場合には「赤帽」の\n語が用いられ(甲30ないし34),原告の組合員の屋号には「赤帽」の語が冠され るのが通常である。そうすると,「赤帽」商標は,原告の営業を示すものとして,我 が国の貨物自動車及び軽自動車等による輸送の役務において,その取引者及び需要 者の間に広く認識されているものであって,周知著名性の程度が高い表示である。\nもっとも,「赤帽」の語は,造語ではなく,赤い帽子又は駅において乗降客の荷物 を運ぶ人の意味があり,駅において乗降客の荷物を運ぶ人の意味は,本件商標の指 定役務である貨物運送業と関連するといえるから,「赤帽」商標の独創性の程度は, 造語による商標に比して,低いとも考えられる。しかしながら,駅において乗降客 の荷物を運ぶ人を「赤帽」と称することがほとんど見られなくなった現在では,前 記認定の事実に照らせば,「赤帽」といえば駅において乗降客の荷物を運ぶ人より原 告を想起すると考えられるから,「赤帽」の語が,本件商標の指定役務との関係で識 別力が低いとはいえない。そうすると,本件商標の本号該当性の判断をする上で, 「赤帽」商標の独創性の程度が低いことを重視するのは相当でないというべきであ る。
ウ 本件商標を構成する「赤帽」の語以外の部分のうち,「京都」は,地名と\nしての京都府や京都市との観念を生じ,「舞妓図形」及び「舞妓マークの」は,京都 の「舞妓さん」を想起させるものである。そして,原告を構成する組合は,京都府\n にも存在する。 さらに,「赤帽」商標の周知著名性の程度の高さや,本件商標と「赤帽」商標とに おける役務の同一性並びに取引者及び需要者の共通性に照らすと,本件商標が指定 役務に使用されたときは,その構成中の「赤帽」部分がこれに接する取引者及び需\n要者の注意を特に強く引くであろうことは容易に予想できるのであって,本件商標\nからは,原告又は原告と緊密な関係にある営業主の業務に係る役務であるとの観念 も生ずるということができる。 この点につき,被告は,被告の顧客が,原告の営業と被告の営業とを混同したこ とはない旨を証明した「証明願」と題する文書を複数提出する(乙17ないし44)。 しかしながら,これら文書は,被告と取引関係のある顧客のみが被告の依頼に基づ いて提出したものであって,被告と特定の取引のない一般の顧客の認識を証明する ものではないから,上記認定を左右するに足りない。
(3) 以上のとおり,本件商標は,「赤帽」商標と同一の部分をその構成の一部\nに含む結合商標であって,その外観,称呼及び観念上,この同一の部分がその余の 部分から分離して認識され得るものであることに加え,「赤帽」商標の周知著名性の 程度が高く,しかも,本件商標の指定役務と「赤帽」商標の使用されている役務と が重複し,両者の取引者及び需要者も共通している。これらの事情を総合的に判断 すれば,本件商標は,これに接した取引者及び需要者に対し「赤帽」商標を連想さ せて役務の出所につき誤認を生じさせるものであり,その商標登録を維持する場合 には,「赤帽」商標の持つ顧客吸引力へのただ乗りやその希釈化を招くという結果を 生じ兼ねないと考えられる。そうすると,本件商標は,商標法4条1項15号にい う「混同を生ずるおそれがある商標」に当たると判断するのが相当であって,「赤帽」 商標の独創性の程度が造語による商標に比して低いことや,原告が「赤帽」商標以 外の標章も使用していることは,この判断を左右するものでないというべきである (最(二)判平成13年7月6日,裁判集民事202号599頁参照)。

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平成26(行ケ)10268  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年8月6日  知的財産高等裁判所

 審決は、「オルガノ」は薬品業界では、著名ではないと判断しました。これに対して、知財高裁は、水処理関連事業には薬品事業が伴うものと認識されていたとして、審決を取り消しました。
 (1) 原告は,昭和21年に株式会社日本オルガノ商会として設立され,同41 年に現商号である「オルガノ株式会社」に商号変更した。原告は,純水製造装置, 超純水製造装置,排水処理装置,発電所向けの復水脱塩装置,官公需向けの上下水 設備等の製造,納入,メンテナンスといった水処理装置事業と,水処理薬品,イオ ン交換樹脂,食品添加物等の製造,販売といった薬品事業を主に行っており(甲7, 8),本件商標の登録出願時(平成20年)には資本金が約82億円に達し,該期の 売上高は735億9200万円(そのうち,水処理装置事業が581億7200万 円,薬品事業が154億2000万円)に及ぶ(甲10)。特に,超純水製造装置は, 水処理事業の主力商品であり,市場シェアの3割以上を占める(甲15)。また,原 告は,多数の子会社,孫会社を有しており,これら子会社,孫会社のほとんどがそ の商号中に「オルガノ」の文字を含んでいる(甲7)。 原告発行にかかる総合カタログ及び個別商品カタログには,いずれの表紙にも,\n図形と「ORGANO」又は「オルガノ」の文字との組合せからなる標章が表示さ\nれている(甲30ないし79)。そして,かかる図形と「ORGANO」又は「オル ガノ」の文字とは,常に不可分一体のものとして認識し把握されるべき格段の理由 は見いだし難いから,それぞれが独立して出所識別標識としての機能を果たし得る\nものといえる。 昭和39年から現在に至るまで50年以上にわたり,新聞の題字広告(1面の新 聞紙名の真下に表示される広告)として「オルガノ」の文字からなる使用商標が,\n「総合水処理・イオン交換装置」,「純水装置・排水処理装置」,「水の高度処理全シ ステム」,「すべての水は資源」,「水のプラントメーカー」,「水のトータルエンジニ アリング」,「工場の節水支援 排水処理・水リサイクル技術」,「心と技で水の価値 を創造する」等の語句とともに定期的に掲載されており,近年では朝日新聞,読売 新聞及び日本経済新聞の3紙に掲載されている(甲80ないし83)。 図形と「ORGANO」又は「オルガノ」の文字との組合せからなる標章を表示\nした原告の企業広告が,昭和51年頃から平成24年頃まで,日本経済新聞,朝日 新聞等に不定期に掲載されているが,これらは,原告の薬品事業やその製造販売に 係る薬品に限定された広告ではなく,原告の水処理関連技術,装置ないしシステム や,原告の事業全体を抽象的に広告したものと認められる(甲89ないし91)。そ して,原告の広告は,日本工業新聞広告大賞(日本工業新聞),日本産業広告賞(日 刊工業新聞)を度々受賞している(甲86,87)。 原告については,各種雑誌,新聞等の記事に取り上げられ,多くは「オルガノ」 として紹介され,中には,図形と「ORGANO」又は「オルガノ」の文字との組 合せからなる標章を表示した広告が共に掲載されているものもある(甲99ないし\n127)。これらは主に,原告の水処理関連事業ないし装置に言及したものであるが, 超純水の製造には薬剤が使用される場合があるとされ(甲106),また,大手水処 理メーカーとして原告と並び称される栗田工業が,超純水システムを販売した顧客 とメンテナンスや薬品販売で長期関係を築くと紹介される(甲114)など,水処 理事業には薬品販売が伴うものであると認識されていたものと認められる。その他, 2007年に社団法人日本産業機械工業会主催の「第33回優秀環境装置表彰」に\nおいて,原告の電子部品洗浄用機能水製造装置が経済産業大臣賞を受賞し,そのこ\nとが新聞報道された(甲130ないし132)。 以上より,引用商標及び使用商標は,本件商標登録出願時には,原告及び原告の 事業ないし商品・役務を示すものとして相当程度周知となっており,原告の事業は 水処理関連事業であるが,これには薬品事業が伴うものと認識されていたものと認 められる。
(2) これに対して被告は,1)原告ないし原告の関連会社以外を権利者とする, 「オルガノ」を含む登録商標が複数存在し,「ORGANO GOLD」が原告の登 録商標を理由に拒絶通知されておらず,「オルガノ」を含む商標・商号は,ネット上 で原告ら以外も使用しており,これを「有機」の意味で使用しているものもあるこ と,2)特許庁電子図書館の日本国内周知著名商標に,「オルガノ」は含まれておらず, 「オルガノ」が防護標章登録されていないこと,3)原告の国内関連会社7社のうち, 3社の社名は「オルガノ」が付されておらず,原告は,「オルガノ」を含まない商標 も多く登録していること,4)最終需要者が日常触れないような製品を提供している 原告や被告は,衣料品などの会社に比べて周知度は低く,原告の薬品事業の年商を 凌駕する企業は多々あること,5)原告の水処理薬品は,水処理装置と相互に密接に 関連するから,水処理技術に秀でた原告の事業としては,薬品事業は周知著名とは いえないこと,6)新聞等の印刷物の記載は,興味のあるものしか目に入らないもの であるから原告の題字広告によって原告が周知著名であるとはいえないことから, 引用商標及び使用商標は周知著名商標ではないと主張する。 しかし,被告の上記各主張は,以下のとおり,いずれも理由がなく,前記(1)の証 拠に基づく認定事実を左右するに足りるものではない。すなわち,1)第三者の「オ ルガノ」を含む登録商標の存在,それらが原告の登録商標を理由に拒絶査定されて いないことや,第三者の「オルガノ」を含む商標・商号の使用は,それ自体では引 用商標及び使用商標の周知性を否定するものではなく,その周知性の有無は,前記 (1)に認定とおり,引用商標及び使用商標の具体的な使用の程度,内容に基づいて判 定されなければならない。また,「オルガノ」を「有機」の意味で使用することがあ るとしても,後に認定のとおり(第5の2(2)),本件商標登録出願時に「有機」の 意味での使用が一般に浸透していたとは認められない。2)特許庁電子図書館の日本 国内周知著名商標に「オルガノ」が含まれていないこと,及び,「オルガノ」が防護 標章登録されていないことは,それのみでは,引用商標の周知性を認定する妨げと はならない。3)原告は,引用商標ないし使用商標以外の商標も登録しており,また, 使用しているが,これらの登録商標の使用により,引用商標及び使用商標の周知性 が減殺されていると認めるに足る証拠はない。4)薬品事業や水処理事業を営む企業 が,幅広い需要者を有する衣料品などを取り扱う企業より,一般市民に対して相対 的に周知著名性が低くなることはあり得るが,このことが,当該企業の商品又は役 務の需要者に対する周知著名性を否定する根拠となるものではない。原告の年商を 上回る企業が多々あるとしても,原告の年商は相当程度大きく,また,このことが, 引用商標及び使用商標の周知性を否定する理由とはならない。5)原告の水処理事業 が著名であるとしても,上記認定のとおり,そのことにより,薬品事業の周知性が 否定されるものではない。6)印刷物について興味があるものしか目に入らないとす る主張は,印刷物を利用した宣伝効果を否定するものであって,採用できない。原 告による引用商標及び使用商標についての永年にわたる題字広告は,本件商標の指 定商品及び指定役務の取引者・需要者のみならず,一般の消費者に対しても一定の 宣伝効果を有したものと推認される。 (3) したがって,引用商標ないし使用商標は,原告の薬品事業を含む原告の事 業ないし商品・役務を示すものとして相当程度周知であったものと認められる。
2 取消事由1(商標法4条1項11号該当性についての判断の誤り)について (1) 上記のとおり,引用商標「オルガノ」は,本件商標登録出願当時,相当程 度周知であったものと認められる。 (2) 本件商標「オルガノサイエンス」は,「オルガノ」と「サイエンス」の結 合商標と認められるところ,その全体は,9字9音とやや冗長であること,後半の 「サイエンス」が科学を意味する言葉として一般に広く知られていること,前半の 「オルガノ」は,「有機の」を意味する「organo」の読みを表記したものと解\nされるものの,本件商標登録出願時の広辞苑に掲載されていない(甲133)など, 「サイエンス」に比べれば一般にその意味合いが十分浸透しているものとは考えら\nれないことが認められ,さらに,上述のような引用商標の周知性からすれば,本件 商標のうち「オルガノ」部分は,その指定商品及び指定役務の取引者,需要者に対 し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ, 他方,「サイエンス」は,一般に知られている「科学」を意味し,指定商品である化 合物,薬剤類との関係で,出所識別標識としての称呼,観念が生じにくいと認めら れる(最(二)判平成20年9月8日,裁判集民事228号561頁参照。)。した がって,本件商標については,前半の「オルガノ」部分がその要部と解すべきであ る。 (3) 本件商標の要部「オルガノ」と,引用商標とは,外観において類似し,称 呼を共通にし,一般には十分浸透しているとはいえないものの,いずれも「有機の」\nという観念を有しているものと認められる。したがって,両者は,類似していると 認められる。 (4) 本件商標の指定商品と,引用商標の指定商品とは,いずれも「化学剤」を 含んでいる点で共通している。
3 したがって,原告の主張する取消事由1は理由があるから,その余の点を判 断するまでもなく,原告の請求には理由がある。

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平成27(行ケ)10023  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年8月3日  知的財産高等裁判所

 周知商標の更新をライセンサーが失念した場合に、ライセンシーが同じ商標を登録しました。審決は4条1項7号(公序良俗)違反ではないとしましたが、知財高裁は、出願の目的が不当な利益を得ることにあるとして、公序良俗に反すると判断しました。
 以上のとおり,原告チェーン店のフランチャイジーである夢の郷社の 実質的経営者として,原告使用商標の法的な裏付けとなる旧A商標に係る 商標権を尊重し,原告及びAによる当該商標権の保有・管理を妨げてはな らない信義則上の義務を負う立場にある被告が,旧A商標の存続期間が満 了するタイミングに合わせて,原告に重大な営業上の不利益をもたらし得 る本件出願を行い,しかもそのことを原告側に秘匿し続けたという本件出 願に係る経緯からすれば,被告が本件出願を行った目的については,他に 合理的な説明がつかない限りは,何らかの不正な目的によるものであるこ とが強く疑われるというべきである。特に,本件出願が行われた平成23 年9月の直前である同年6月から8月ころの時期においては,原告と夢の 郷社との間で,三国ヶ丘店における本件食材代金等債務の支払遅延が問題 となっており,Aと被告との間でその回収に向けた話し合いが行われてい たことからすれば,被告がこのような原告との金銭的な交渉を想定し,自 己に有利な交渉材料とする目的で本件出願を行うことも,十分考え得るこ\nとといえる。
・・・・
エ まとめ
以上の諸事情を総合考慮すれば,被告による本件出願の目的が,被告 が主張するような第三者による原告使用商標に係る商標登録の取得を防止 するためなどではなく,原告との金銭的な交渉において本件出願又はこれ に基づく商標登録の事実を自己に有利な交渉材料として利用し不当な利益 を得ることにあったことは,優にこれを認定することができる。 (2) 公序良俗違反の有無について
以上のとおり,被告による本件出願は,原告チェーン店のフランチャイジ ーである夢の郷社の実質的経営者として,旧A商標に係る商標権を尊重し, 原告による当該商標権の保有・管理を妨げてはならない信義則上の義務を負 う立場にある被告が,旧A商標に係る商標権が存続期間満了により消滅する ことを奇貨として本件出願を行い,原告使用商標に係る商標権を自ら取得し, その事実を利用して原告との金銭的な交渉を自己に有利に進めることによっ て不当な利益を得ることを目的として行われたものということができる。 そして,このような本件出願の目的及び経緯に鑑みれば,被告による本件 出願は,原告との間の契約上の義務違反となるのみならず,適正な商道徳に 反し,著しく社会的妥当性を欠く行為というべきであり,これに基づいて被 告を権利者とする商標登録を認めることは,公正な取引秩序の維持の観点か らみても不相当であって,「商標を保護することにより,商標の使用をする 者の業務上の信用の維持を図り,もって産業の発達に寄与し,あわせて需要 者の利益を保護する」という商標法の目的(同法1条)にも反するというべ きである。 してみると,本件出願に係る本件商標は,本件出願の目的及び経緯に照ら し,商標法4条1項7号所定の「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれが ある商標」に該当するものといえる。

◆判決本文

◆関連事件です。平成27(行ケ)10022

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平成26(行ケ)10247  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年7月9日  知的財産高等裁判所

 審決は、地方の元気再生事業における名称について、一飲食店が取得するのは、公序良俗違反と判断し、知財高裁もこれを維持しました。
「激馬かなぎ」とする本願商標と激馬かなぎカレーの名称(「激馬かなぎカレー」) とを対比すれば,後者の要部が「激馬かなぎ」との部分と認められる以上,両者が 類似することは明らかであるところ,上記(1)に認定のとおり,1)本件事業は,地域 活性化という公益目的を有する事業の1つとして選定されたものであり,少なから ぬ公費が投入されたものであること,2)激馬かなぎカレーの開発及びその命名は, 本件事業の成果として得られたものであること,3)激馬かなぎカレーとその名称は, 新聞報道がされたほか,公的機関又は公益団体が,イベント,ガイドブック,ウェ ブサイトなどにおいて,五所川原市又は同市金木町区域の特産品として宣伝広告が され,広く知られるに至ったこと,4)原告は,激馬かなぎカレーを提供する店舗を 経営するものであり,上記広報活動でも,激馬かなぎカレーを提供する店として紹 介され,その便益を十分に受けていること,のみならず,原告は,激馬かなぎカレ\nーが,五所川原市金城町区域の特産品として開発されたことを十分に知っており,\nその上で,本願商標の登録出願をした者であること,5)原告は,別件商標について, かなぎ元気倶楽部に対し,有償の通常使用権を設定することを主張したことが認め られる。 そうであれば,上記認定事実からみて,原告は,五所川原市金木町区域の活性化 を図るという公益的な施策に便乗して,公費の投入や公的機関等の広報活動によっ て広く知られるに至った地方特産品との位置付けである「激馬かなぎカレー」の標 章につき,そこから得られる利益の独占を図ろうとする者と同視され,本願商標は, 公正な競業秩序を害するものであって,公序良俗に反するものというべきである。

◆判決本文

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平成26(行ケ)10266  商標登録取消審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年6月18日  知的財産高等裁判所

 審決は、商標「こんぴら製麺」が、「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」であるので、4条1項8号違反と認定しました。知財高裁はこの判断を維持しました。
 原告は,「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」は,「金刀比羅宮」又は「こん ぴらさん」であって,「こんぴら」は,「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」の略称, すなわち,俗称,通称,愛称にすぎないから,商標法4条1項8号の「他人の名称」 の「略称」に該当しない旨主張する。 しかし,前記1において述べたとおり,同号の趣旨からすれば,人の名称等の略 称が同号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するには,その略称が本人 を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準とすべきものである。 そして,商標法上「略称」を定義する規定はなく,一般的な意義に従うべきである ところ,略称とは,広辞苑第6版によれば「名前を省略して呼ぶこと。また省略し て呼ぶ名前。」(乙41)を指す。そうすると,「宗教法人金刀比羅宮」の「略称」は, 「金刀比羅宮」のみに定まるものではなく,仮に,俗称,通称,愛称に該当するも のであっても,「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものとして一般に受け入れられて いる呼称については,略称に当てはまるものである。そして,前記1に述べたとお り,「こんぴら」は,「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものとして一般に受け入れ られているものである以上,「著名な略称」に該当する。したがって,原告の上記主 張は採用できない。
(2) 原告は,名称に地名を含む神社を省略する場合,必ず敬称を付して「こん ぴらさん」や「こんぴら様」のように使用するのが通常であり,敬称を付さない場 合には,単に地名を示すものと認識される旨主張する。 しかし,前記1のとおり,「こんぴら」の語は,多数の辞書,辞典において「金刀 比羅宮」を意味するものと説明されている上,「ことひらぐう【金刀比羅宮】」の見 出しの下に,「こんぴら。」(甲246)と記載されたものがあり,また,金刀比羅宮 の門前には,「こんぴら 参拝入口」との看板が掲げられる(乙22)など,「こん ぴらさん(様)」のように接尾語を使用せず,「こんぴら」との語のみで,「金刀比羅 宮」を指し示すことは明らかである。 しかも,地名としてではなく,宗教法人あるいは宗教団体・財産としての「金刀 比羅宮」を指し示す意味で「こんぴら」と用いられたと認められる例として,「こん ぴらの美」(乙15),「こんぴら展」(乙16,21),「こんぴらに里帰り」,「こん ぴら信仰」(乙17),「こんぴらの宝」(乙18),「こんぴら,行く年見る年『金刀 比羅宮 書院の美』あすから後期公開【大阪】」(乙19),「こんぴらのパリ展」(乙 20)がある。また,金刀比羅宮に参詣することを示して,「こんぴら参(まい)り」 (乙12,19,25〜29),「こんぴら詣で」(乙30〜33),「こんぴら参拝」 (乙34〜36),「こんぴら参詣」(乙37),「こんぴら門前町」(乙38)と用い る例が多数認められ,その他,辞書においても,「こんぴらまいり【金毘羅参】」,「こ んぴらまつり【金毘羅祭】」(乙5)など,地名としてではなく,「金刀比羅宮」を示 すものとして「こんぴら」が用いられることが明らかである。 そうすると,接尾語「さん」,「様(さま)」などを付さずに「こんぴら」と用いる 場合であっても,必ずしも地名を意味するものではなく,原告主張のように「こん ぴら」が地名を指す場合があるとしても,そのことは,「こんぴら」が「宗教法人金 刀比羅宮」の略称に該当することを排斥するものではない。
(3) 原告は,仮に,「こんぴら」の語が,「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すも のであるとしても,被告は,「こんぴら」の語が「宗教法人金刀比羅宮」のみを指し 示すことを何ら立証していないと主張する。 しかし,商標法4条1項8号は,「他人の名称」等について,その「他人」が「名 称」等について排他的な独占を有することを要件としておらず,同じ名称を複数人 が有する場合や,他の意味合いをも併有する場合においても,その該当性を否定す るものではない。本件で,例えば,「こんぴら」が「地名」のみしか認識し得ないた めに,宗教法人金刀比羅宮の「略称」であり得ないという場合であれば格別,本件 においてはそのような事情はなく,「こんぴら」は,「宗教法人金刀比羅宮」を指し 示すものとして一般に受け入れられていると認められるのであるから,原告の上記 主張は失当である。
なお,原告は,「こんぴら」が仮に「地名」だけでなく宗教法人「金刀比羅宮」を 表すとしても,2つの観念が混在する語であるから,どちらか一方の観念のみに限\n定して解釈するのは誤りであると主張するが,審決及び被告は,「こんぴら」が「宗 教法人金刀比羅宮」の略称に該当することを述べるのみであって,地名の観念が生 ずることを否定しているわけではなく,どちらか一方の観念のみに限定して解釈し たものではないから,原告の主張は,審決等を正解しないものであって,採用でき ない。

◆判決本文

◆関連事件です。平成26(行ケ)10267

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平成26(行ケ)10264  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年6月11日  知的財産高等裁判所

 商標「RUNE」と「René」が類似するかが争われました。知財高裁は非類似であるとした審決を維持しました。
 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきであり,しかも,その商品又は役務の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引の実情に基づいて判断すべきものである(前記最高裁昭和43年判決参照)。 原告は,三点観察システムについて,三点のうち一点で類似すると解される以上,類似商標と判断されるべきであるとして,最高裁昭和43年判決の判断基準を批難するが,原告が主張する判断基準は,商標法4条1項11号に係る商標の類否の判断基準としては,狭きに失するものであり,採用できない。 そこで,前記の観点から,本件商標と引用商標の類否について検討する。
・・・
本件商標と引用商標とは,いずれも「ルネ」の称呼を生じる場合がある点では共通である。 また,引用商標から「ルネ」の称呼を生じる場合,前記3(3)記載のとおり,引用商標から「ルネなる男の名」との観念が生じるといえるが,本件商標からは,前記2(3)記載のとおり,必ずしも特段の観念が生じるとはいえないから,本件商標と引用商標とは,観念において類似するとは認められない。 これに対し,外観については,本件商標と引用商標とが,ともに欧文字4文字を横一行に書してなり,語頭が「R」(大文字)から始まる点で共通するが,これに続く3文字は,本件商標では「UNE」であるのに対し,引用商標では「ené」であって,本件商標が全て大文字で表記されているのに対し,引用商標では全て小文字で表\記され,かつ,末尾の「e」の上にはアクセント記号が付されている点で相違しており,本件商標と引用商標とは,外観上明確に相違するといえる。 (2) そして,本件商標と引用商標とで共通する指定商品である「布製身の回り品」,「被服」及び「履物」の取引においては,取引者,需要者は,店頭販売,通信販売及びインターネットを介した販売において,商品の外観を見て購入するのが通常であり,その際に,商品,値札,カタログ,商品情報等に 付された商標の外観や製造販売元を見て商品の出所について相応の注意を払って購入することが多いと考えられ,取引者,需要者が商標の称呼のみをもって商品の出所を識別して商品を購入するとは考えにくい。 (3) 以上検討したところによれば,本件商標と引用商標とは,「ルネ」との称呼が同一である場合が生ずるものの,外観上明確に相違するものであること,観念において類似するとはいえないこと,前記(2)のような取引の実情を踏まえると,取引者,需要者が商品の出所を誤認混同するおそれがあるとはいえない。 したがって,本件商標が引用商標と類似する商標であるとは認められず,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないというべきである。
・・・
加えて,本件商標と引用商標とで共通する指定商品である「布製身の回り品」,「被服」及び「履物」の取引においては,取引者,需要者が商標の称呼のみをもって商品の出所を識別して商品を購入するとは考えにくいことは,前記(2)記載のとおりである。原告は,本件商標と引用商標とで比較すべき指定商品が同一である場合には,取引の実情を考慮するまでもないかのように主張するが,商標法4条1項11号に係る商標の類否を判断するに当たっては,取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきであり,しかも,取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引の実情に基づいて判断すべきものであることは,前記1記載のとおりである。 そうすると,本件商標と引用商標とは,「ルネ」との称呼が同一である場合が生ずるものの,外観上明確に相違するものであること,観念において類 似するとはいえないこと,共通の指定商品に係る取引の実情を踏まえると,取引者,需要者が商品の出所を誤認混同するおそれがあるとはいえないから,原告の上記主張は理由がない。

◆判決本文

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平成25(行ケ)10011  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年5月14日  知的財産高等裁判所

 「DHC ディープクレンジングオイル」は周知であっても「ディープクレンジングオイル」は他社からの販売されていたので、周知性なしとした審決が維持されました。なお、被告は,答弁書その他の準備書面も提出しなかったので、(1)特許庁における手続の経緯等,(2)本件審決の内容の各事実は自白と認められたものの、法的評価は審決のままでした。
 前記(2)のとおり,原告は,平成7年12月に,「DHC ディープクレンジングオイル」という商品名の本件商品を,包装容器の上部に引用商標1を付して販売を開始して以降,通信販売,ホテル等への出荷,全国各地の小売店等で販売を継続し,販売数量については,平成7年12月から平成24年2月までの累計が7935万8050本であったこと,全国紙である日刊新聞への広告の掲載,女性向け雑誌への広告の掲載,原告の販売製品の愛用者向けの月刊会報誌への広告の掲載,新聞への折り込みチラシによる広告や街頭配布のチラシ広告,テレビコマーシャル,電車内の中吊り広告・広告用ステッカー,渋谷駅,名古屋駅及び梅田駅構内の広告等により,大量かつ継続的に本件商品の宣伝広告を行ない,平成11年以降平成21年までの間,継続的に新聞広告に多額の費用をかけ,殊に平成16年以降平成21年までの間のテレビコマーシャルについては,年度によっては数億円単位の広告費用をかけていること,化粧品業界における各化粧品メーカーのディープクレンジングオイルを含むクレンジングの販売について,原告は平成12年以降平成20年に至るまで販売実績及びシェアにおいて第1位であったこと,本件\n 商品は平成15年以降平成20年まで女性向け雑誌の読者が選ぶランキング等において,クレンジング部門で第1位に度々選ばれていることなど,原告による本件商品の販売実績及び宣伝広告実績並びにこれらを通じて得られた知名度によれば,本件商品の商品名を表す引用商標と社会通念上同一と認められる「DEEP CLEANSING OIL」及び「ディープクレンジングオイル」の各商標は,本件商品の販売開始以来,平成13年以降に他の多数の化粧品メーカーが相次いで「ディープクレンジングオイル」を製品名とし,又は製品名に含むクレンジングオイル商品を多数市場に投入するまでは,原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた(周知となっていた)といえる余地がある。
しかしながら,前記(3)のとおり,遅くとも平成13年2月頃から平成22年1月5日までの間に,本件商標及び引用商標に係る指定商品である「クレンジングオイル」を取り扱う化粧品業界において,「ディープクレンジングオイル」の語は,少なくとも他の11社の化粧品メーカーから13以上のブランドで,「主に毛穴の汚れを落としたり余分な角質を取り除いたりするクレンジングオイル」の製品名又は製品名に含まれる語として使用され,これら「ディープクレンジングオイル」の商標を使用したクレンジングオイル商品が市場に出回り続けている。しかも,このように「ディープクレンジングオイル」の商標を使用したクレンジングオイル商品が他の化粧品メーカーから販売され,多数,市場に出回ることについて,本件商標登録の出願時(平成21年11月6日)及び査定時(平成22年7月6日)に至るまで,原告から他の化粧品メーカーに対して,自己の権利を侵害するものとしてその使用の中止を求めたり,権利侵害である旨の警告をしたとの主張立証はなく,また,原告自ら商標登録出願をしたこともなかったのである。その結果,前記(2)ウのとおり,化粧品業界における原告を含めた各メーカーのクレンジングの販売実績及びシェアにおいて,平成17年頃までは原告の販売高は9 0億円前後であるものの,化粧品業界におけるシェアとしては20%に届かず,その後,平成18年以降は販売高及びシェアも漸減し,本件商標登録の査定がされた平成22年は,販売高が64億5000万円,化粧品業界におけるシェアも12.8%にすぎない。また,前記(1)のとおり,もともと「DEEP CLEANSING OIL」及び「ディープクレンジングオイル」は,その用語からして,「皮膚の深部又は深いところからきれいにするクレンジングオイル」という程度の意味合いを有する語として,取引者・需要者によって一般に認識され得るものであるから,上記のように多数の化粧品メーカーから「ディープクレンジングオイル」の商標を使用したクレンジングオイル商品が市場に出回ることにより,クレンジングオイルの取引者・需要者において,当該商標が原告の業務に係る商品を表示するものというよりも,「皮膚の深部又は深いところからきれいにするクレンジングオイル」という上記程度の意味合いを有する商品一般を指すものと認識するに至ることも自然なことというべきである。\nこのように,原告が平成7年12月に本件商品の販売を開始して以降,他の多数の化粧品メーカーが相次いで「ディープクレンジングオイル」を製品名とし,又は製品名に含むクレンジングオイル商品を多数市場に投入するまでは,「DEEP CLEANSING OIL」及び「ディープクレンジングオイル」の各商標は,原告の業務に係る商品を表示するものとして周知となっていたといえる余地があるものの,平成13年以降,多数の化粧品メーカーがクレンジングオイル市場に参入し,「ディープクレンジングオイル」を製品名又は製品名に含むクレンジングオイル商品が多数市場に出回り,これに対して原告から化粧品メーカーに対して,差止請求及び権利侵害の警告等をすることなく,また,同商標について商標登録出願をすることもなく推移することによって,本件商標登録の出願時(平成21年11月6日)及び査定時(平成22年7月6日)においては,「ディープクレンジングオイ\nル」及び「DEEP CLEANSING OIL」の各商標は,クレンジングオイルの取引者・需要者の間において,「皮膚の深部又は深いところからきれいにするクレンジングオイル」というクレンジングオイル商品の品質ないし用途を表示するものとして認識され使用されていたものというべく,そうすると,本件商標登録の出願時及び査定時においては,もはや,「ディープクレンジングオイル」又は「DEEP CLEANSING OIL」の商標の使用された商品に接した取引者・需要者にとって,それが原告の業務に係る商品を表示するものとして周知されていたとまでいうことはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。\n

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平成26(行ケ)10217 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成27年2月26日 知的財産高等裁判所

 商標「Le Verger」が「Verger」と類似するとした審決が維持されました。
 本件商標は,別紙1商標目録記載のとおりの外観であって,1)オレンジ色の横長長方形の中央部分に,該長方形の長辺の約半分の直径の白色の真円を配し,2)該白色の真円内の中央部分に,「Le Verger」の欧文字を,オレンジ色の筆記体で,ほぼ該真円の直径と同じ幅の横書きにし, 3)該白色の真円内で,かつ該欧文字中の「ger」の文字の上部に,「ル・ヴェルジェ」の片仮名を,該欧文字に比して相当小さいオレンジ色の文字で横書きにして成るものである。 本件商標の構成態様に鑑みると,本件商標の各構\成部分(上記1)ないし2)の構成部分)は,それぞれこれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとまではいえない。
本件商標の構成部分のうち文字部分は,「Le Verger」の欧文字部分と「ル・ヴェルジェ」の片仮名部分とから成るが,「Le Verger」の欧文字が白色の真円内の中央部分に,真円の直径とほぼ同じ幅で表されているのに対し,「ル・ヴェルジェ」の片仮名は,該欧文字のうち「ger」の文字,すなわち,末尾3字の小文字の上部に,該小文字に比して相当小さな文字で表\されていることなど,「Le Verger」の欧文字部分と「ル・ヴェルジェ」の片仮名部分の文字の大きさやその配置に照らし,「Le Verger」の欧文字部分は,その外観上,見る者の注意を最も強く引く部分であると認められる。他方で,「ル・ヴェルジェ」の片仮名部分は,「Le Verger」の欧文字部分の読みがなを示したものと認められるものであり,その外観上,見る者の注意を引く部分であるとは認められない。 そして,「Le Verger」の欧文字部分は,「L」と「V」の文字は筆記体の大文字で表されているのに対し,それ以外の文字は小文字の筆記体で表\されていること,小文字の「e」と大文字の「V」との間にはやや間隔が空いていることに照らし,視覚上,「Le」と「Verger」との二語から成るものと看取され,しかも,「Le」は,フランス語では定冠詞であって,それ自体に格別の意味がないものであるから,取引者,需要者は,欧文字部分のうち「Verger」の文字部分を出所を示す識別標識として顕著な部分と認識し,これから生ずる称呼をもって取引に当 たる場合も少なくないものと推認し得る。 これに対し,本件商標の構成部分のうち上記1)の図形部分は,オレンジ色の横長長方形の中央部分に,該長方形の長辺の約半分の直径の白色の真円を配したというものであり,格別特徴のある図形ではないから,取引者,需要者に対して商品又は役務の出所を示す識別標識として機能する部分であるとは認められない。\nイ 以上によれば,取引者,需要者は,本件商標を常に一体的に認識するだけでなく,外観上,見る者の注意を最も強く引く部分であり,かつ,より強い出所識別力を有する「Verger」の文字部分をもって,商品又は役務の出所を示す識別標識としてとらえる場合も少なくないものと認められるから,「Verger」の文字部分が,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。 したがって,「Verger」の文字部分を本件商標の要部として抽出し,本件商標と引用商標との類否を判断することができるというべきである。

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