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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商4条1項各号

平成26(行ケ)10112  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成26年12月8日  知的財産高等裁判所

 「軽井沢浅間高原ビール」が「軽井沢浅間ビール」と混同生ずる(商4条1項15号)とした審決が維持されました。当事者の一方が星野リゾートです。
 以上の認定事実からすると,平成9年に発売を開始した被告商品は,1)少なくとも,新聞の地方紙又は全国紙地方版にたびたび取り上げられたこと,2)地域雑誌や全国を販域とする雑誌にもたびたび紹介されていたこと,3)平成18年時点で,軽井沢を訪れた観光客の77%に認知されており,その観光客の29%が雑誌から被告商品を知ったこと,4)地ビールとしては相当量の販売実績があり,長野県内のみならず主として関東地方を中心に相応の販売実績があったことが認められる(なお,前記2(2)に認定のとおり,引用商標2は専ら文字として識別される商標であるから,刊行物に被告商品の名称のみが引用されている場合であっても,称呼のみならず,外観も直ちに引用商標2が想起される関係にあるといえる。)。 そうすると,被告商品に付された引用商標2は,被告ヤッホーの業務に係るビー ルを表示するものとして,遅くとも,本件商標登録出願前には,長野県内及び関東地方の取引者,需要者の間に広く認識されていたものといえ,その周知性は,本件商標の登録査定時においても継続していたものといえる。\n
・・・
原告商品は,全国で店頭販売されているものであるから,当然の結果,被告商品の主たる販売地域である軽井沢町及びその周辺地域において(甲7),取引者・需要者を共通にする。 のみならず,軽井沢は,関東地方からを中心に(約7〜8割)毎年800万人近くもの観光客が全国から訪れている日本有数の観光地であり(乙239,240),1)被告商品が長野県内で広く取り扱われていること(甲7,乙237),2)前記(2)アd(c)に認定のとおり,被告商品が1kℓ以上出荷された長野県外の業者の所在地が,福島県,群馬県,茨城県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,山梨県にわたっていること,3)被告ヤッホーが,被告商品をインターネットを利用して宣伝し,インターネットを通じて被告商品を販売していること(甲6,84,乙93,248)などにかんがみると,少なくとも,長野県内及び関東地方において,原告商品と被告商品とは,取引者・需要者を共通にしているといえる。
・・・
(4) 混同のおそれ
以上(1)〜(3)のとおり,1)本件商標と引用商標2とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても近似し,また,2)用商標2は,被告ヤッホーの業務に係るビールを表示するものとして,長野県内及び関東地方の取引者・需要者の間に広く認識されていたものといえ,さらに,3)本件商標の指定商品と被告商品とは同一であって,4)長野県内及び関東地方において,本件商標の指定商品と被告商品とは取引者・需要者を共通としているといえる。 以上の事情に照らせば,本件商標をその指定商品に使用するときは,その取引者・需要者において,同商品が被告ヤッホーの業務に係る商品と混同を生じるおそれがあるというべきである。

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平成26(行ケ)10094  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成26年10月29日  知的財産高等裁判所

 一部を構成する「peace」が抽出されて認識されるかが争われました。裁判所は、抽出可能\との審決を維持しました。
   ア(ア) 原告は,本願商標は,ピースマークを含む本願文字部分,図形部分及び黒,白,灰色の色彩を融合させた一体的なロゴマークとして看取されるものであり,構成全体が一体不可分の商品出所識別標識として認識,理解されるものであり,本願上下段文字部分が,強く支配的な印象を与えるものということはできない旨主張する。\n
・・・
b しかしながら,ロゴマークに該当する商標がすべて,外観上,常に一体不可分のものとして認識されるとは限らない。前述したとおり,本願商標においては,本願上段文字及び本願下段文字が,それぞれ,白抜き文字よりも相当に大きく,線も太く,本願商標の面積の半分近くを占めており,白抜き文字に比して強い存在感を醸し出すものといえる。また,本願上段文字及び本願下段文字は,図形部分の上に力強く浮き上がっている印象を与える。 以上に鑑みると,本願上下段文字部分は,本願商標のその余の構成部分である白抜き文字部分及び図形部分に比して,外観上,顕著なものであり,強く看者の注意を引くものといえることから,本願商標の構\成中,突出して強く支配的な印象を与えることは否定し難いというべきである。この結論は,図形部分の一部に黒色の影が付いており,いわゆるシャドウ体(影を付けて立体的な表現を取ったもの〔甲40〕)が用いられていることなど原告指摘の点を考慮しても,左右されるものではない。\nしたがって,原告の前記主張は採用できない。 イ 原告は,「PEACE」の文字は,「平和」を意味する外来語「ピース」として一般に親しまれているものであり,商品の出所識別標識として格別に強い印象を与えるものではない旨主張する。 しかしながら,出所識別力の有無は,当該指定商品又は役務との関係において考えるべきであり,前記のとおり,本願商標中,本願上段文字部分の「PEACE」の文字から生じる称呼及び意味合いは,ありふれたものであるが,本願指定商品の品質等に関わるものではないことなどから,同商品については,一定の出所識別力を有するものと認められ,原告の上記主張は採用できない。
ウ(ア)a 原告は,白抜き文字部分につき,1)その地色及び配置から,看者の 視覚を瞬時にとらえられる顕著な存在といえること,2)我が国においては,「アイスコーヒー(ice coffee)」という呼び方が一般に親しまれており,これを「アイスト・コーヒー(iced coffee)」と呼ぶことはないことから,上記文字部分は,必ずしも本願指定商品の品質表示として直感されるものとはいえない旨主張する。\nb しかしながら,確かに,白抜き文字は,地色が白く,図形部分の中央辺りに存在するものの,前記のとおり,上記文字よりも相当に大きく,より太い黒線で書かれた本願上段文字と本願下段文字との間に挟み込まれるように配置されていることから,あまり目立つとはいえず,看過される可能性も否定しきれない。\n また,辞典類には,外来語である「アイスコーヒー」につき,「ice coffee」と表記するもの(甲41から甲43)があるものの,他方,後述するとおり,「ICED COFFEE」等の文字を「アイスコーヒー」という文字と併記するコーヒー飲料の宣伝広告も存在する。加えて,「iced」は,それ自体,「凍らせた」を意味する比較的平易な英単語であり,また,本願指定商品はコーヒーに関する飲料類であるから,白抜き文字,すなわち,「ICED」の文字に接した取引者,需要者は,直ちに上記英単語を想起し,冷たい飲料類を連想するものと推認できる。 以上によれば,白抜き文字部分は,本願指定商品の品質を表示するものとして理解されるといえ,原告の前記主張は採用できない。
(イ) また,原告は,仮に,白抜き文字部分が本願指定商品の品質表示として認識される場合があるとしても,本願指定商品が含まれる飲料及び食品の分野においては,商品の普通名称や品質表\示等に該当し,一般には出所識別力が弱いと考えられる文字部分についても,同文字部分を含めた構成文字全体が商標(製品名)として機能\し,認識されている例が多く見受けられ,殊更に一部の文字部分を捨象したものが商品出所識別標識として認識される場面は,想定し難く,この理は,本願商標についても当てはまる旨主張する。 しかしながら,原告が掲げる実例(甲134から甲144)を参照しても,本願商標のように,視覚上分離して看取され得るものであり,称呼及び観念においても,常に全体が一体不可分のものとして認識されるものとはいえない結合商標につき,外観上,文字の大きさ,配置等により他の構成部分に比して明らかに印象の弱い構\成部分まで含め,常にすべての構成部分が一体のものとして認識されるとは限らない。特に,後述するとおり,本願指定商品の分野における取引者,需要者には,広く一般の消費者も含まれており,また,簡易,迅速な取引が求められることに鑑みると,本願商標に接する取引者,需要者は,その構\成中,強く看者の注意を引く本願上下段文字部分又は本願上段文字部分をもって,取引に当たる場合も少なくないものというべきである。 以上によれば,原告の前記主張は,採用できない。
⑸ 小括
以上に鑑みると,本願商標に接する取引者,需要者は,本願上下段文字部分及び白抜き文字部分を常に一体的に認識するだけでなく,外観上,強く看者の注意を引く本願上下段文字部分,又は,そのうち出所識別力を有する本願上段文字部分をもって,商品の出所識別標識としてとらえる場合もあるものと認められ,したがって,本願上下段文字部分又は本願上段文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから,本願上下段文字部分又は本願上段文字部分を本願商標の要部として抽出し,他人の商標と比較して類否を判断することができるというべきである。

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平成26(行ケ)10122  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成26年10月27日  知的財産高等裁判所

「VIA」と「SOLUTIONS」の結合商標について、「VIA」が要部であると判断され、後願の「VIA」が拒絶した審決が維持されました。
 「VIA」の文字部分は,上段中央に太いゴシック体で大きく表わされているのに対し,「SOLUTIONS」の文字部分は,「VIA」の文字部分よりも低い位置にあり,同文字部分に比して,線が細く,小さい。また,「VIA」の文字部分は,引用図形と比べると,全体的に色が濃く,線も太い。以上の点から,引用商標を構\\成する構成部分のうち,外観上,「VIA」の文字部分が,単独で最も強く看者の注意を引くものと認められる。\n
・・・
「SOLUTIONS」の文字部分からは,その構成文字に相応した「ソ\\リューションズ」の称呼を生じ,その英単語の「SOLUTION」は,「問題解決又はその方法」を意味する(乙4)。そして,1)「現代用語の基礎知識」(平成25年1月自由国民社発行,乙5)には,「ソリューション〔solution〕1)解決(法)。問題解決。(中略)新しい情報システムやビジネスモデルによる企業の問題解決。」と記載されていること,2)「標準パソコン用語事典 最新2009〜2010年版」(平成21年株式会社秀和システム発行,乙6)には,「ソリューション solution 様々な問題解決の蓄積などから,考えられる問題点と,それに対する解決法をユーザーに提出し,実現すること。」と記載されていること,3)複数の企業が,自社の開発に係る医療関連のシステム等を紹介,宣伝する際,顧客の要望等に係る課題の解決手段を提供するという趣旨で,「ソリューション」又は英単語の「solution」を使用していること(乙7から乙9,乙16)が認められ,これらの事実によれば,上記英単語は,外来語として我が国の日常生活にかなり浸透しており,「SOLUTIONS」は,同英単語の語尾に「S」の文字を付した複数形を表すものとして,広く一般に認識されているものと認めることができる。c 引用図形については,称呼は生じず,また,それ自体としても,両引用文字部分の両方又はいずれか一方と組み合わせても,特に何かを連想させるものとはいえない。d なお,引用商標において,両引用文字部分及び引用図形を常に一体不可分なものと認識しなければならないような称呼上の理由及び意味合い上の関連性は見出せない。(イ) 出所識別力について本願商標の指定商品は,主として歯科用の医療器具であり(甲2),外科用の医療器具を主とする引用商標の指定商品(甲1)と同一又は類似の商品を含むものであるところ,前述したとおり,複数の企業が,自社の開発に係る医療関連のシステム等を紹介,宣伝する際,顧客の要望等に係る課題の解決手段を提供するという趣旨で「医療ソリューション」(乙7),「メディカルソ\\リューション」(乙8),「Solutions」(乙9),「血液管理ソリューション」(乙16)という用語を使っていることに鑑みれば,「SOLUTIONS」の文字部分は,本願商標の指定商品との関係においては,当該商品又はこれに関連する医療システム,医療機器を表\\したものにすぎないと理解され,出所識別力が弱いものといえる。他方,「VIA」の文字部分に係る称呼及び意味合いは,前記のとおりであるところ,いずれも上記指定商品の形状,性質に関わるものではなく,また,日常生活上使われることのない造語として印象的といえるから,上記文字部分は,「SOLUTIONS」の文字部分よりも,上記指定商品との関係における出所識別力を有するものということができる。ウ 小括以上に鑑みると,引用商標に接する取引者,需要者は,両引用文字部分を常に一体的に認識するだけでなく,外観上,単独で最も強く看者の注意を引き,かつ,両引用文字部分のうちより強い出所識別力を有する「VIA」の文字部分をもって,商品の出所識別標識としてとらえる場合もあるものと認められ,したがって,同文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから,同文字部分を引用商標の要部として抽出し,他人の商標と比較して商標の類否を判断することができるというべきである。

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平成26(行ケ)10092  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟  平成26年9月11日  知的財産高等裁判所

 審査段階では、「東京維新の会を本願の指定役務(第41類技芸・スポーツ又は知識の教授等)に使用した場合には,一私人である出願人が政治団体と何らかの関係があるが如く需要者が誤認をするおそれがあり,かつ,商取引の秩序を害するおそれがあるから,本願商標は,商標法4条1項7号に該当する」として拒絶されました。
出願人は審判を請求をしましたが、「東京維新の会」という地域政党が設立され、審判では4条1項6号違反を通知して、拒絶審決がなされました。出願人は、6号に該当するかは査定時であるべきとのして取り消しを求めました。知財高裁は、審決を維持しました。
 これを,本件についてみると,特許庁における手続の経緯は,次のとおりである。 本願に対して,審査官は起案日を平成24年5月10日,発送日を同月18日とする拒絶理由通知(甲2)を発した。その拒絶の理由は,東京維新の会を本願の指定役務(第41類技芸・スポーツ又は知識の教授等)に使用した場合には,一私人である出願人が政治団体と何らかの関係があるが如く需要者が誤認をするおそれがあり,かつ,商取引の秩序を害するおそれがあるから,本願商標は,商標法4条1項7号に該当するというものであった。同年8月16日起案,同月24日発送の拒絶査定における理由も同様であった(甲4)。 そこで,原告が不服審判を申し立てたところ,審判体は,平成25年4月9日を起案日,同月12日を発送日とする拒絶理由通知を発し(商標法55条の2,15条の2。甲6),拒絶の理由は,本願商標は商標法4条1項6号に該当するというものであった。これに対し,原告は,同年5月21日,意見書を提出したが(甲7),本件審決に至った。\nこの手続の経緯からみれば,審査官は商標法4条1項7号の拒絶理由通知を発していたのに対し,審判体は同条1項6号という拒絶査定の理由とは異なる新たな拒絶の理由を発見し,新たな拒絶理由通知を発した上で,異なる拒絶の理由に基づいて審決をしたものである。 そうすると,審査官においては商標法4条1項6号の拒絶理由の存否については全く判断をしておらず,審決において初めて同号の拒絶理由の存否について判断したものであるから,このような場合,審査官の拒絶査定において全く判断の対象とならなかった商標法4条1項6号の判断について,査定時を判断の基準時とする合理性はない。むしろ,同号について初めて特許庁としての判断が示された審判時をもって,判断の基準時とするのが合理的である。 そうすると,審査と拒絶査定不服審判とは続審の関係にあり,本件のように審判において新たな拒絶理由通知が発せられ,審査とは異なる拒絶理由について判断されることもあることを考慮すると,拒絶査定不服審判の審決における商標法4条1項6号の判断の基準時は審決時となるというべきである。本件において審決時を基 準時とすべきであるとした審決の判断に誤りはない。

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平成25(行ケ)10298  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟  平成26年8月7日  知的財産高等裁判所

 アラビア語とカタカナの2段併記の商標について、カタカナ部分で類似するとした審決が維持されました。
 以上によれば,本願商標と引用商標1及び3ないし8は,いずれも同一ないし類似の称呼及び観念が生じるものである。そして,本願商標と引用商標1及び3ないし8の外観は類似するとまではいえないが,本願商標と引用商標8の外観は近似するし,引用商標1及び3ないし7は,いずれも本願商標の上段部分の欧文字表記と同じ称呼の片仮名又は欧文字表\示に変更した表記から成る商標又は同表\記部分が需要者の目を惹きやすい構成から成る商標であり,全体として,その書体に,本願商標との差異を取引者,需要者に特段印象づけるほどの著しい特徴があるものではないから,外観の差異は,称呼及び観念の同一性ないし類似性をしのぐものではない。\nしたがって,本願商標とこれらの引用商標とは,互いに商品の出所につき誤認混同が生じるおそれのある類似する商標に当たるものと認められる。 (2) 以上に対し,原告は,1)アラビア文字部分を含めた本願商標全体と引用商標とを比較すれば,両者が外観上相紛れるおそれは全くないし,両者の観念も著しく相違し,称呼における類似性を凌駕しているから,日本の銀座マギーに関連する引用商標と,外国発祥のブランドと認識される本願商標との間で出所混同のおそれが生じることは現実的にはあり得ない,2)アパレル業界における取引の実情として,称呼の一部又は全部が共通することは少なくないが,実際の需要者がこれらのブランドについてその出所を混同することはなく,需要者は,商品の外観上の差異や取扱商品の傾向の違い,需要者層の違いによって,個々のブランドを異なるものとして把握するということを考慮すれば,称呼が共通していることのみをもって需要者等が出所混同することはあり得ないと主張する。 しかし,1)については,本願商標においては,下段部分のアラビア文字が需要者の注意を惹く部分ということはできず,上段部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであることは前記のとおりであるから,アラビア文字部分を含めた本願商標全体と引用商標1及び3ないし8とが外観上相紛れるおそれが全くなく,称呼における類似性を凌駕している旨をいう原告の主張は理由がない。 また,原告は,引用商標のみから日本の銀座マギーとの観念が生じることを前提として,本願商標と引用商標との観念が相違する旨主張する。この点,前記3認定に係る取引の実情等によれば,引用商標の商標権者である株式会社銀座マギーのブランド名である「銀座マギー」やその略称である「maggy(マギー)」は,本願商標の査定時には,少なくともいわゆる熟年層世代の需要者には広く知られていたものと認められる。このような取引の実情等を考慮すると,「ギンザマギー」や「マギー」との称呼や,前記認定の観念が生じ得る引用商標3,4,7のみならず,「マギー」との称呼や前記認定の観念が生じる引用商標1,5,6,8も,いずれも「銀座マギー」あるいはその略称である「maggy(マギー)」ブランドを想起させる商標であるといえる。一方で,本願商標も,同じく「マギー」との称呼や前記認定の観念を生じさせるから,「銀座マギー」あるいはその略称である「maggy(マギー)」ブランドを想起させる商標であるといえる。そうすると,上記取引の実情等を考慮しても,本願商標とこれらの引用商標とは類似するものであり,出所識別標識として区別することは困難である。原告の主張は採用することができない。 また,2)については,称呼が同一又は類似である場合にも,商品の取引の実情によって,需要者等が出所の誤認混同を生じるおそれがない場合には類似性が否定されることは原告の主張するとおりであるけれども,前記3(1)認定の取引の実情のとおり,本願商標は,未だ日本において店舗における被服販売に一切利用されておらず,我が国においては,本願商標が特定の需要者層に向けて使用された事実や,需要者によって特定の被服の趣向や価格帯と関連付けて認識されているという事実は認められないし,仮に本願商標に係る若い女性向けのカジュアルファッションブランドを展開する予定であるとしても,株式会社銀座マギーにおいてもインターネット上において1,2万円前後の価格帯の女性向け商品を販売しており,双方の対象とする需要者層がまったく異なるとも認められない。そうすると,アパレル業界における需要者が商品を選択,購入する際に払う注意力を前提としても,称呼及び観念が同一ないし類似であり,外観が顕著に異なっているわけでもない本願商標について,引用商標1及び3ないし8との関係において,商品の出所の誤認混同を生じるおそれがないということはできない。したがって,この点についての原告の主張も採用することができない。\n(3) 以上によれば,本願商標は引用商標1及び3ないし8と類似する。そして,本願商標の指定商品と引用商標1及び3ないし8の指定商品又は指定役務とが類似することは当事者間に争いがないから,本願商標は,商標法4条1項11号に該当する。

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平成25(行ケ)10336 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年06月25日 知的財産高等裁判所

 判断自体は注目するようなものではないかもしれませんが、被告である特許庁長官に補助参加人がついてるというのが興味深いです。拒絶査定不服審判の審取に補助参加人がついたという判決は珍しいと思います。被告補助参加人はどうやってこの事件を知ったんでしょうか?、もしかしたら別途無効審判とかが提起されているのかもしれませんね。
第5 被告補助参加人の主張
1 引用商標の周知性に係る識別の対象について
(1) ラーメン店「三代目月見軒」の営業状況
ア 被告補助参加人がラーメン店「三代目月見軒」の経営に携わった経緯は,以下のとおりである。昭和33年に創業されたラーメン店「月見軒」が,二代目であるBの体調不良により20年余り休業した後,Dがレシピを受け継ぎ,平成5年頃,「三代目月見軒」という名称でラーメン店を再開した。同人は,長男である原告月見軒代表者と共に同店を経営してきたが,借金が増えて営業の継続が困難になった。他方,被告補助参加人代表\者は,平成15年5月16日に被告補助参加人を設立し,上記のとおりラーメン店「三代目月見軒」が経営難に陥っていたので,被告補助参加人において同年7月1日付けで同店の営業をDから譲り受けた。なお,甲3号証,すなわち,Dがアルコール離脱せん妄状態のために平成15年8月8日から入院治療を受けた旨が記載された証明書は,上記営業譲渡の当時においてDが常時せん妄状態で意思能力を欠いていたことを示すものではない。以後,現在に至るまで,被告補助参加人は,ラーメン店「三代目月見軒」の経営,広告・宣伝活動,物産展等デパートの催事への出展,お土産ラーメンの販売等の営業活動に継続的に従事し,自らが主体となって「三代目月見軒」の商標を使用しており,商域は日本全国に及ぶ。なお,被告補助参加人は,デパートにおける催事に関し,原告月見軒代表\者に対して催事手数料という名目で金員を支払っていたが,これは当該催事に備えた仕込み等の作業の対価である。イ ラーメン店「三代目月見軒」には,本店(札幌),札幌駅北口店,東京店及び平成17年出店の京都駅ビル店があり,本店,東京店及び京都駅ビル店は被告補助参加人の直営であるが,札幌駅北口店については原告アイズが営業に従事している。原告アイズが同店の営業に携わるようになった経緯は,以下のとおりであり,創業者一族からののれん分けによるものではない。すなわち,平成15年7月頃,被告補助参加人は,原告アイズの元代表者に対し,被告補助参加人による「三代目月見軒」営業の傘下に入ることを条件に,前述の営業譲渡により取得した「三代目月見軒」の商標及びレシピを使用してラーメン店を開業することを許諾した。その後,原告アイズの元代表\者は原告アイズを設立し,前記条件に従って札幌駅北口店を開業した。被告補助参加人は,開業に際して開店広告掲載の手続を行うとともに費用も負担し,また,原告アイズに生めんなどを卸していた。・・・

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平成25(行ケ)10322 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年06月18日 知的財産高等裁判所

 商標「Tivoli」が先行商標「チボリ」と類似するかが争われました。知財高裁は、類似するとした審決を維持しました。
 原告は,「Tivoli」の文字は一義的に「ティボリ」と称呼される旨を主張する。しかしながら,そもそも国語辞典にすら「Tivoli」が「チボリ」と称呼されることが記載されているほか(甲33),「Tibet(チベット)」「ticket(チケット)」「Timor(チモール)」「tin(チン〔すず〕)」「tip(チップ)」など一々枚挙するまでもなく,外来語において「Ti」又は「ti」を「チ」と読む例は多数あるのであり,我が国において,「Ti」又は「ti」を「ティ」と発音するか,「チ」と発音するか,いずれかを断定すべき合理的な根拠はない。したがって,少なくとも,「Tivoli」の文字が,一義的に「ティボリ」とのみ称呼されるといい得ないことは明らかである。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。以上から,「Tivoli」の文字から「チボリ」の称呼も生じるとした審決の認定には,誤りはない。
3 取消事由2−1(称呼の類似性判断の誤り)について
原告は,「Tivoli」の称呼である「ティボリ」と引用商標の「チボリ」との称呼が類似しない旨を主張する。上記2に認定のとおり,「Tivoli」が原告は,「Tivoli」の称呼である「ティボリ」と引用商標の「チボリ」との称呼が類似しない旨を主張する。上記2に認定のとおり,「Tivoli」が「チボリ」と称呼され得る以上,本件商標の要部である「Tivoli」と引用商標の「チボリ」は称呼を同一にするものであるから,上記主張は,両商標が称呼上類似するとの審決の結論を左右するものではないが,いずれにせよ,「ティ」の音は一音で発音され,かつ,「チ」と母音(イ)を同じくする近似音であるために,「ティボリ」と「チボリ」をそれぞれ一連に称呼するときは,その語調語感が互いに近似し,発音上は3文字分しかないごく短いものであるから,これらを互いに聴き誤るおそれがあることは明らかである。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。以上から,「Tivoli」の称呼である「ティボリ」と引用商標の「チボリ」との称呼が類似するとした審決の判断には,誤りはない。

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平成26(行ケ)10029 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年06月18日 知的財産高等裁判所 

 商標「粋」が、2段併記の「宝焼酎 粋」とは非類似と判断した審決が維持されました。
 上記イ認定事実によれば,一般に,焼酎を含めた酒類の商品には,漢字一文字の商品名や銘柄を有するものが多数存在し,また,焼酎を含めた酒類を取り扱う業界においては,商品取引において,商品名や銘柄を出所の識別標識として重視するものといい得る。しかしながら,原告が,引用商標を使用した焼酎の商品や「粋」との商品名で識別される焼酎の商品を実際に販売していたことを認めるに足りる証拠はない。加えて,上記イ認定事実によれば,原告の関連会社である宝酒造株式会社は,「宝焼酎」と冠した焼酎の商品については,取引者,需用者に対し,「宝焼酎「純」」,「極上〈宝焼酎〉」,「宝焼酎」,「特撰宝焼酎「マイルド」」と表示紹介していたのであり,これらの商品を,その商品名の一部である「純」,「」,あるいは,「マイルド」などと表\示紹介していたことを認めるに足りる証拠はない。したがって,原告又はその関連会社である宝酒造株式会社の取り扱う商品取引において,「宝焼酎」と冠した焼酎の商品に関し,「宝焼酎」以外の部分のみをその出所の識別標識として使用していたとの事情は認められない。
ウ 以上の検討を総合すると,まず,引用商標の構成中の「宝焼酎」の部分が,上記のとおり,焼酎を取り扱う業界において周知性を有し,取引者,需用者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるから,それとの対比において,「粋」の部分は,自他商品の識別標識としての機能\は弱いものといえる。そして,酒類については,漢字一字の商品が多数存在することが認められるが,「宝焼酎」を冠した焼酎の商品については,「宝焼酎」を冠して表示しており,「宝焼酎」以外の部分のみをその出所の識別標識として使用していたとの事情は認められないことからすると,引用商標の構\成中の「粋」の部分のみでは,出所の識別標識としての称呼,観念を生じることはないというべきである。
4 本件商標と引用商標との類否について
外観について
引用商標は,上段の「宝焼酎」と下段の「粋」とが全体としてまとまりのある外観を呈しており,これを全体として本件商標の「粋」と対比すると,両商標が外観上相違することは明白であるといえる。また,引用商標の「宝焼酎」の文字部分は,焼酎を取り扱う業界において,周知性を有し,取引者,需用者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であることに照らすと,引用商標に接した取引者,需用者は,上段の「宝焼酎」のみを記憶に留めることが考えられ,その場合には,引用商標の上段の「宝焼酎」と本件商標の「粋」とを対比することになるが,この場合にも両商標が外観上相違することは明白であるといえる。
称呼及び観念について
引用商標からは,その全体から「タカラショウチュウスイ」又は「タカラショウチュウイキ」という一連の称呼及び「宝焼酎粋」との観念が生じるほか,「宝焼酎」の部分から「タカラショウチュウ」という称呼及び「宝焼酎」との観念も生じ得る。これに対し,本件商標からは,「イキ」又は「スイ」の称呼を生じ,「粋」の観念を生じる。両商標は,「宝焼酎」の有無により,称呼及び観念上も相違するといえる。

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平成25(行ケ)10342 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年06月11日 知的財産高等裁判所 

「B:MING」と「LIFE STORE」が上下に記載された商標が分離解釈できるのかが争われました。知財高裁は、分離できるとした審決を維持しました。
 以上によれば,本願商標の上段部分である「B:MING」の文字と下段部分である「LIFE STORE」の文字は,少し離れた位置に配置され,青色と赤色という明確な色の違いがある上,その態様も直立と円弧状とで異なっているほか,書体も異なり,上段部分と下段部分には明らかな違いがあること,上段部分である「B:MING」は大きく表示されており見る者の注意を相当程度引く一方で,下段部分である「LIFE STORE」も十分認識できる大きさで,目立つ色,態様で表\示されていること,「B:MING」も「LIFE STORE」も造語であって観念的なつながりはなく,「B:MING」は特定の観念を生じないが,「LIFE STORE」は「生活の店」程度の観念を生じ,いずれも相当程度の識別力を有すると考えられること等に照らすと,上段部分である「B:MING」と下段部分である「LIFE STORE」を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているということはできない。そうすると,本願商標においては,上段部分である「B:MING」と下段部分である「LIFE STORE」は,分離して観察することが可能というべきである。\n

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平成25(行ケ)10345 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年05月21日 知的財産高等裁判所   

 「maximum」の文字部分は右に90度回転させて表され「COTTON」をその下部に横書きした商標から、「maximum」を分離解釈できるかが争われました。\n知財高裁は、分離するとした審決を維持しました。
 「COTTON」の文字部分は,「maximum」とほぼ同じ大きさで配されており,リボン状の図形内に配置されていることもあって,外観上は,目をひくものである。しかし,上記のとおり,「maximum」の文字部分が横書きの文字を右に90度回転させた横向きの状態で配されているのに対し,それ以外の部分は,通常の横書きで配されているため,その構成上,「maximum」の文字部分とそれ以外とは分離して看取されるものである。そして,「COTTON」の文字部分からは,「コットン」,「綿」,「木綿」との観念が生じ(乙4),その下の花実様の絵図部分も,「COTTON」の文字と合わせて見た場合,綿花を連想させる絵図であることから,これを本願指定商品である「木綿を含むティーシャツ,木綿を含むポロシャツ」に使用した場合,これらに接する取引者,需要者は,単に指定商品の材質である「木綿」(製品)を表\したものと認識することが一般的であると推測される。そうすると,「maximum」の文字部分は,「COTTON」の文字部分及び花実様の絵図部分とは,構成上も,その意味の上からも,分離して看取,把握され,本願商標に接した取引者,需要者は,上段に大きく記載された印象的な部分であり,自他識別機能\を有する部分である「maximum」の文字部分を強く意識することが多いものと認められ,この部分が,本願商標の要部をなすというべきである。したがって,本願商標は,「maximum」の文字部分が強く支配的な印象を与えるものとして,本願商標と引用商標との類否判断の際に,本願商標のうち該部分だけを引用商標と比較した審決の判断に誤りがあるとはいえない。

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平成25(行ケ)10233 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年03月26日 知的財産高等裁判所 

 商標「遠山の金さん」の登録が公序良俗に反するかが争われました。裁判所は、該当しないとした審決を維持しました。
 上記認定事実によれば,被告は,「遠山の金さん」という名称をタイトル名ないし主人公名として初めて使用した者とはいえないが,昭和25年以降,「遠山の金さん」と呼ばれる主人公が登場する映画を多数作成し,昭和45年以降は,同名のテレビ番組を長期間にわたって多数制作してきたものと認められ,「遠山の金さん」の呼称やイメージを一般大衆に広めることに一定の寄与をした立場にあるといえる。したがって,被告は,遠山景元と血縁関係を有する者の関連する会社や同人の生育地と地縁を有する団体に当たるものではないが,本件商標の登録出願を剽窃的に行ったものということはできない。
イ 「遠山の金さん」の利用状況と本件商標による影響
「遠山の金さん」という呼称自体は,被告以外の同業他社によりテレビドラマのタイトルや台詞の中で利用されるほか,歌舞伎や講談等においても台詞等で利用され,地方公共団体が遠山景元に関する史跡や文化財において同人を紹介する際に「遠山の金さん」を引き合いに出すことがあるのは,上記認定事実のとおりである。しかしながら,そもそも,「遠山の金さん」がテレビ番組のタイトル名ないし主人公名にすぎないことからすると,本件指定商品における本件商標の使用によって,「遠山景元」という歴史上の人物の名前を独占できるかという公益性のある社会的問題が生じる余地はなく,本件商標によって失われる公益は想定し難い。また,同業他社との関係でいえば,新たな時代劇の制作や放送は,本件指定商品の範囲外であり(商標法施行規則別表第38類,第41類参照),類似商品又は役務に当たるとも考えにくく,直ちに影響があるとはいえない上に,作品制作に関連して行われる,本件指定商品に属する物品の販売等に関する制約は,同業他社に対する経済的活動の制約にすぎず,あくまでも私的な影響にとどまるものといわざるを得ない。歌舞伎等における影響についても,遠山政談物の上演が本件指定商品との関係で当然に禁止されると解することは困難である(同第41類参照)。なお,原告らとの関係では,パチンコ遊技機における本件商標の使用の有無に関して紛争が生じているが,これは私的な領域に関するものであり,公益性と関連のないことは多言を要しない。以上のとおり,現状の「遠山の金さん」の使用状況にかんがみても,本件商標の出願及び使用によって,公益が損なわれることは想定し難いといえる。\n
ウ 本件出願の経緯,目的,理由
上記イのとおり,本件指定商品を前提とする本件商標の登録出願及び使用により公益性が損なわれるものでないということは,被告の登録出願の目的が,公益事業を不当に制約することにあったわけではないことをうかがわせるものといえる。また,被告が「遠山の金さん」シリーズの映画やテレビ番組の制作や配給をしてきたのは上記認定事実のとおりであって,「遠山の金さん」という語を商標登録出願することにより,形成してきたその信用や顧客吸引力を保護しようとすること自体は,商標制度の本質からして非難できるものでもない。なお,被告以外の同業他社も,「遠山の金さん」というタイトル名をつけた時代劇を制作しており原告と同様の立場であると認められ,「遠山の金さん」という文字を商標として登録出願する機会があったといえるから,かかる点においても,被告による本件商標の登録出願につき,先願主義の原則や公正な競争原理から見て,著しく不当と評価されるような側面は見出し難い。
エ 遺族の名誉感情,国民感情
本件商標「遠山の金さん」があくまでも遠山景元をモデルとして作り出された主人公名にすぎないことは,繰り返し述べてきたとおりであるから,そもそも遠山景元の遺族感情や同人に関する国民感情を問題にする余地はない(なお,仮にモデルとなった人物である遠山景元の遺族感情を問題とするとしても,本件においては,遠山景元の遺族の有無は明らかにされていない上に,遺族感情に関する証拠は何ら提出されていない。加えて,国民が「遠山の金さん」について庶民の味方であるヒーローというイメージを抱いているとしても,そのことが直ちに本件商標を被告が登録出願したことに関して反対する意向であることには結び付かないし,本件では被告の本件商標保持に関する国民感情に関する証拠は何ら提出されていない。)。
オ 本件商標の禁止権の範囲
被告が本件商標を登録したことによる法的,社会的影響については,公益的事業において歴史上実在した遠山景元を紹介するに当たって,通称として「遠山の金さん」の表現が併記されることがあるとしても,それは本件指定商品の範囲外で,類似する商品・役務に当たるともいえないから,公益的事業自体に支障が生じるとは考えにくい。確かに,本件商標が標準文字からなることや本件指定商品の種類からすると,遠山景元と関連のある公的機関・団体などが「遠山の金さん」という標章を付しておもちゃ・人形等の土産物や観光物品を作成することについては,一定の支障が生じるおそれは否定できないが,公益性ある文化事業に付随した営業行為に当然に公益性があるとはいえないし,上記のとおり,史跡での紹介等への利用自体は本件指定商品からすれば除外されており,加えて,本件指定商品に含まれる土産物や観光物品に「遠山景元」という歴史上の人物の名称を使用することまで制約されるわけではない。したがって,公益的事業等への影響は,限定的なものにとどまるというほかない。\n

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平成25(行ケ)10226 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年03月13日 知的財産高等裁判所

ゴルフクラブ「KAMUI」について、周知性が否定されました。特許庁は同一証拠ではないとして10号の無効理由ありと判断しましたが、裁判所は同一事実同一証拠に基づくとして、審決を取り消しました。理由は一事不再理の適用誤りです。侵害事件では、本件被告に先使用権が認められています。
 そうすると,無効審判請求においては,「同一の事実」とは,同一の無効理由に係る主張事実を指し,「同一の証拠」とは,当該主張事実を根拠づけるための実質的に同一の証拠を指すものと解するのが相当である。そして,同一の事実(同一の立証命題)を根拠づけるための証拠である以上,証拠方法が相違することは,直ちには,証拠の実質的同一性を否定する理由にはならないと解すべきである。このような理解は,平成23年法律第63号による特許法167条の改正により,確定審決の第三者効を廃止することとし,他方で当事者間(参加人を含む。)においては,紛争の一回的解決を実現させた趣旨に,最も良く合致するものというべきである。
・・・・
(3) 判断
ア 同一事実について
本件商標が商標法4条1項10号に該当するとの事項についての被告の主張事実は,被告が使用する商標は,本件商標登録の出願時には,被告がゴルフクラブに使用する商標として,日本国内の取引者・需要者に広く認識されており,その状態は本件商標の登録査定時においても継続していること,本件商標は被告が使用する商標と類似すること,本件商標の指定商品は被告の商標が使用されているゴルフクラブと類似することであり,その主張事実は,前審判及び本件審判において同一であると評価できる。なお,本件審判では,周知であるとの被告の主張に係る商標が,以下の1)ないし3)のいずれであるか必ずしも明確ではない。1)「KAMUI」単体商標のみ2)「KAMUI」単体商標及び「K∧MUI+くさび図形」商標3)1)又は2)に「KAMUIPRO」,「TYPHOONPRO」及び「KAMUITYPHOONPRO」の各文字からなる商標を含むしかし,本件審判において被告が周知であると主張する商標が上記のいずれであっても,それらは,前審判において判断の対象とした商標に含まれるというべきである。すなわち,1)「KAMUI」単体商標は,前審判における別紙前審判引用商標目録1,2及び4記載の商標に含まれる。2)「K∧MUI+くさび図形」商標は,前審判における別紙前審判引用商標目録4記載の商標に図形を付加した商標である。3)「KAMUIPRO」及び「KAMUI TYPHOONPRO」の各文字からなる商標について原告が周知であると主張する部分は,いずれも「KAMUI」部分であると合理的に解される(「TYPHOONPRO」の文字からなる商標は,本件審決の判断の当否に直接関連するものではない。)。以上によれば,前審判と本件審判とでは,被告が周知性を有すると主張する被告使用の商標は,互いに同一と評価できる。(なお,本件審決は,前審判における無効理由が商標法4条1項10号及び19号該当性であるのに対して,本件審判における無効理由が同項7号又は10号該当性であるから,前審判と本件審判とは「同一の事実」に基づく審判請求ではないと判断する。しかし,同項10号所定の無効理由の存否について判断した審決が確定した後に,それと異なる無効理由を追加さえすれば,同項10号所定の無効理由の存否について判断した審決の確定効がなくなると解する審決の判断が,誤った理解に基づくことは明らかである。)
イ 同一証拠について
前記のとおり,前審判と本件審判とでは,被告が使用する商標の周知性を裏付ける主張事実は,ほとんど同一であり,周知性を立証するための証拠は,そのほとんどが同一である。なお,本件審判では,前審判とは異なり,「被告の2000年版商品カタログ」(甲10),「カムイ社の出荷明細」(甲11−1−1ないし11−1−9),「カムイ社の平成15年度ないし平成18年度の決算報告書」(甲11−2ないし11−5),「使用プロ一覧表」(甲11−31)が,証拠として提出されている。そこで,上記各証拠の性質につき,念のため検討する(なお,本件審判で新たに提出された上記以外の証拠は,商標法4条1項10号該当性に関連するものではない。)。(ア) 「被告の2000年版商品カタログ」(甲10)前審判において,被告は,他のカタログ(甲53,54)を提出したが,前審決において,提出に係る当該カタログは作成年月日が確認できないとされたことから(甲112),本件審判において,作成年月日の確認ができるカタログを提出したと解される。(イ) 「カムイ社の出荷明細及び決算報告書」(甲11−1−1ないし11−1−9,11−2ないし11−5)前審判において,被告は,カムイ社が販売した被告ゴルフクラブの本数の表(甲11−1)を提出したが,前審決において,販売数の裏付けがないことなどから同表\に記載された本数が採用されなかったため,本件審判において,同表の信憑性を裏付けるために提出された証拠と解される。(ウ) 「使用プロ一覧表」(甲11−31)前審判において,被告は,使用プロ一覧表\(甲40)を提出したが,本件審判において,その形式を変更し,被告ゴルフクラブを使用するプロゴルファーの氏名等を追加記載したものを証拠として提出したと解される。上記によれば,本件審判で提出された上記各証拠は,前審決における被告の主張を排斥した判断に対し,同判断を蒸し返す趣旨で提出された証拠の範囲を超えるものではない。
ウ 小括
 以上によると,前審判と本件審判とでは,商標法4条1項10号違反の根拠として主張されている事実において同一であり,また,これを立証するために提出された証拠も実質的に同一であると評価できる。したがって,本件審判における本件商標が同項10号に該当することを理由とする無効審判請求は,前審決の確定効に反するものとして許されないというべきである。本件商標が同項10号に該当するとして本件商標登録が無効であるとした本件審決には,上記の点における誤りがある。なお,被告は,本件商標が同項7号に該当しないとした審決の判断に対して誤りがある旨を指摘する。しかし,この点については取消事由とされておらず,判断しない。

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◆侵害事件はこちらです。平成22(ワ)32483

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平成25(行ケ)10127 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟  平成26年02月05日 知的財産高等裁判所

 商標無効審判における一事不再理が争われました。裁判所は、一事不再理の原則に必ずしも反するものではないと判断しました。また、先頭文字Mを図案化してMとは認識できないとして非類似と判断しました。
 改正前特許法167条を準用した改正前商標法56条1項の趣旨は,商標権者における応訴の繰返しによる煩わしさを避けるとともに,訴訟経済の観点から蒸し返し請求を防止し,無効審判をする者の利益と商標権の安定を図る点にあるところ,本件では,本件審判請求の請求人である原告が第一次審判請求の請求人である明治製菓株式会社の承継人であり実質的に前件と当事者が同一であるという事実関係が認められるから,第三者による再度の審判請求の場合と比較してみると,相対的には,蒸し返し請求防止の要請がより重視され,事実や証拠の同一性についてある程度緩和して解釈されてもやむを得ないというべきである。そうすると,本件審判請求が改正前商標法56条1項に反しないものとして,新たな「証拠」に基づく適法な審判請求といえるためには,形式的に第一次無効審判請求で提出されたものと異なる証拠が提出されてさえいれば許されることとなるわけではなく,新たに提出された証拠が,実質的に見て,これまでの無効原因を基礎付ける事情以外の新たな事実関係を証明する価値を有する証拠といえる必要があるというべきである。以上を前提に本件につき検討するに,本件審判請求では,第一次審判請求で提出なされなかった甲7,8,23ないし27が新たに提出されているところ(弁論の全趣旨),それ以外の大半の証拠は共通しているといわざるを得ない。しかしながら,追加された証拠は,本件商標中の「『二つのだ円形をハート型に重ねた形状に図案化され』た部分」である本件図形がローマ字「M」と認定できるかに関わる証拠(甲7),被告が明治パン株式会社の新工場が設立されることを契機として,そこで使用する伝票や名刺,封筒などに記載される商標として本件商標をデザインし,登録出願したという本件商標の称呼に関わる証拠(甲8)や本件商標の実際の使用態様を明らかにする証拠(甲23ないし27)であるから,実質的には,第一次無効審判請求において商標法4条1項11号,同15号該当性を基礎付けていた事情とは異なる,新たな事実関係を証明する価値を有する証拠が提出されたと評価できるものといえる。したがって,本件証拠関係に鑑みれば,本件審判請求は一事不再理の原則に必ずしも反するものではないというべきであり,本件審決の判断は結論において正当である。被告の主位的な主張は理由がない。
・・・
本件商標は,オレンジ色に彩色した三つの半円をドームのように模した図形の下に,青色に彩色した二つのだ円形をハート型に重ねた本件図形と,その左側に同色に彩色した「eiji」の欧文字とを配した構成態様からなるが,伝票や名刺,封筒にマークとして使用することがあるものの,商品に直接付することはなく,これ自体に発音はない。本件商標を構\成する本件図形は,青色に彩色した二つのだ円形をハート型に重ねて表現した独創的なものと認識し,いずれかの字形を表\現したものかなどと推測して取引に当たるものともいい難く,本件商標からは直ちに「メイジ」の称呼を生じるものということはできない。本来的には発音はないが,強いていえば,普通の書体で表された「eiji」の文字部分から自然に「エイジ」の称呼が生じる。原告は,ローマ字「M」をハート型に図案化することは,図案化の態様として普通に用いられる手法の一つであると主張するが,原告提出の証拠によれば,東京メトロ(甲38)とエムハートツーリスト(甲39)の二例にすぎず,このことのみをもって,図案化の態様として普通に用いられる手法とはいえない。さらに,東京メトロの図形は,ウサギや猫などの動物の耳をモチーフにした図形にも見えるとことから,原告の主張のように,「M」や「ハート」を直ちに看取することはできず,甲37の3頁目の中段の「シンボルマーク」に関する説明書きによって,「メトロ(METRO)」の頭文字「M」をハート型に図案化したものと理解できる程度にすぎない。また,甲39の公報の【ウィーン分類(参考情報)】には,「27.5.1.13」以外にも複数の図形コードが複数付与されている。そうすると,原告が主張するように,当該図形商標から直ちに,ローマ字「M」をハート型に図案化することが,図案化の態様として普通に用いられる手法の一つであるということはできない。したがって,本件商標に接する取引者・需要者は,下段部分を一連の文字列であると理解するのが最も自然であるとはいえず,本件図形は「M」を図案化したものであると比較的容易に理解されることは決してない。

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平成25(行ケ)10113 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年01月27日 知的財産高等裁判所

 商標「CST方式」と「CST」の類似が争われました。裁判所は、「方式」については識別力がないかあってもきわめて弱いので、「CST」という要部が抽出できるとした審決を維持しました。
 引用商標は,「CST方式」の文字を横書きして成るところ,構成中「CST」と「方式」の文字とは,書体が相違し,視覚上分離して看取し得るものであること,構\成前半の「CST」の欧文字が上記のとおり特定の観念を生じないのに対し,構成後半の「方式」の文字は,「一定の形式または手続」(広辞苑第6版),「〔何かをする上での〕決まった形式・やり方」(乙3)を意味する日常語で,何人も容易に意味を理解でき,コンピュータ関連分野では他の語と組み合わせた複合語が多く用いられ,複合語を形成した場合に「方式」の文字を省略してもよい場合もあること(乙4〜13)からすると,構\成前半の「CST」の欧文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるのに対し,構成後半の「方式」の文字部分は,自他商品の識別標識としての機能\を果たさないか,又はその機能が極めて弱く,引用商標の取引者・需要者は,構\成前半の「CST」の欧文字部分に着目し,当該文字部分をもって取引する場合も少なくないものということができる。したがって,引用商標は,「CST」の欧文字部分をもって要部と認めるのが相当である。そうすると,引用商標は,その全体から「シーエスティーホウシキ」の称呼を生じるほか,「CST」の欧文字部分から「シーエスティー」の称呼をも生じるということができる。

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