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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商標の使用

令和3(ワ)26704  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和5年7月26日  東京地方裁判所

 DVDのケースの「九鬼神流」などの記載は、商標的使用ではないと判断されました。

請求原因イ、ウ及び抗弁 (商標的使用)について
ア 甲18、34〜37によれば、本件大会ビデオ・DVDのケースの表紙・\n裏表紙、本件大会ビデオ・DVDの映像におけるテロップ、本件雑誌に掲載\nされた本件大会ビデオの広告、各種ウェブサイト上の店舗における商品であ る本件大会DVDのケースの表紙の画像やその説明において、「九鬼神流」、\n「九鬼神」、「高木揚心流」との記載があることが認められる。 もっとも、本件大会ビデオ・DVDのケースの表紙・裏表\紙における上記 「九鬼神流」等の記載の態様は前記1 ア 、 のとおりであり、本件大会 ビデオ・DVDの映像におけるテロップにおける「九鬼神流」等の記載の態 様は同 のとおりであり、本件雑誌に掲載された本件大会ビデオの広告にお ける上記「九鬼神流」等の記載の態様は同 のとおりである。「月刊 秘伝 WEB SHOP」における上記「九鬼神流」等の記載の態様は同 のとお りであり、甲34〜37によれば、各種ウェブサイト上の店舗における商品 である本件大会DVDの画像は前記1 ア の本件大会DVDのケースの 表紙のものであり、また、その説明文は、上記「月刊 秘伝 WEB SH OP」におけるものと同様のものであったと認められる。 そうすると、前記1と同様の理由により、それらの「九鬼神流」、「九鬼神」、 「高木揚心流」との表示は、関係する各記載やその使用態様から、日本武道\n国際連盟が主催した本件大会における演武を収録した本件大会ビデオ・DV Dに収録されている対象に関する説明をするものであり、本件大会ビデオ・ DVDの出所を示すものとはいえないから、これらの表示は需要者が何人か\nの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用され ていないものといえる。

◆判決本文

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令和5(ネ)10044  商標権に基づく差止請求権不存在確認請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和5年11月1日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

破産管財人が提起した差止請求不存在確認訴訟の控訴審です。破産会社は被控訴人(1審被告)から通常使用権を有していましたが、契約は解除されてました。1審は、差止請求権有りと判断していました。知財高裁も同じ判断です。争点は、商標法上の真正品であるので権利濫用となるか否かです。

本件使用許諾契約は既に効力を失っており、在庫商品について例外的に本件商標の使用が許諾された期間も経過しているから、本件使用許諾契約が有効である間に製造され本件商標が付された商品であっても、これを販売することは、前記1のとおり、商標法2条3項2号の「商品に標章を付したものを譲渡し」たとして「使用」に当たり、本件使用許諾契約及び本件解約合意に違反するものである。
上記事実によると、破産会社は本件在庫商品を販売できる期間を自ら合意していながら、その期間内に本件在庫商品を販売せずに、販売可能な期間を徒過したものであり、控訴人はその地位を承継したものであるから、控訴人が主張する各事実をもって、信義則違反又は権利濫用に当たるものとはいえない。\n

◆判決本文

原審はこちら。

◆令和4(ワ)18610

しかし、商標法31条2項は、「通常使用権者は、設定行為で定めた範囲内 において、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を有す る。」と規定しており、通常使用権の範囲、期間、条件等は使用許諾契約によ り定められることになるが、前記1のとおり、本件使用許諾契約は既に効力を 失っており、在庫商品について例外的に本件商標の使用が許諾された期間も既 に経過しているから、本件使用許諾契約が有効である間に本件商標が付された 商品であっても、今後、これを販売することは、本件使用許諾契約及び本件解 約合意に違反するものである。そうすると、現時点において、通常使用権者で あった破産会社の地位を承継した原告が、商標権者である被告に対し、本件商 標を付した本件在庫商品を販売することは実質的違法性を欠くなどと主張し得 ないことは明らかである。
また、商標法は、商標を使用する者の業務上の信用及び需要者の利益を確保 することを目的とするところ(商標法1条参照)、需要者である一般消費者は、 登録商標が付された商品を商標権者から直接購入する場合ではなくとも、商標 権者の許諾に基づいて登録商標が付された商品を購入しようとする際には、商 標権者による技術指導や品質検査等を前提とする商品であると理解し、商標権 者が登録商標を付して流通に置いた正規の流通経路によった商品と出所及び品 質が同一の商品を購入することができる旨信頼するのが通常であり、その信頼 を裏切らないことにより、商標権者の業務上の信用が確保されるというべきで ある。ところが、前記1のとおり、本件商標を付した本件在庫商品が市場に出 回ることは、商標権者である被告の許諾がないことから、正規の流通経路によ らないものであるといえるし、本件商標を使用するに当たっての遵守事項を定 めた本件使用許諾契約が解約されたことにより、破産会社又は原告がこれに従 う法的根拠が失われ、被告は本件在庫商品の品質管理を行い得る立場にないこ とになる。そうすると、原告が本件商標を付した本件在庫商品を販売すること は、本件商標の出所表示機能\及び品質保証機能を害するものといえる。
さらに、平成15年最判は、商標権者から商標の使用を許諾された者が使用 許諾契約で定める条件に違反して当該商標を付した商品を製造したところ、別 の業者が当該商品を海外で仕入れて日本に輸入する行為、いわゆる並行輸入の 違法性が争われた事件に関する判断であるのに対して、本件は、かつて商標の 使用を許諾されていた者自身の行為の違法性が問われているから、事案を異に する。原告が指摘する他の裁判例についても、同様である。
したがって、原告が本件商標を付した本件在庫商品を販売することについて、 商標権侵害の実質的違法性を欠くとはいえない。

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令和3(ワ)33526  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年12月22日  東京地方裁判所

被告は、標章「バレナイ二重」を被告商品「二重瞼形成用化粧品」包装の前面中央部に大きな文字で表示していました。登録商標「バレないふたえ」を保有していた原告は、商標権侵害と主張しました。東京地裁47部は、「何人かの業務に係る商品…であることを認識することができる態様により使用」ではないとして、商標権の効力が及ばない(商26条1項6号該当)と判断しました。 本件商標はこれです。

◆登録5607340
本件の対象にはなっていませんが、少し表記が異なる「バレない\ふたえ」という別商標もあります。\n

◆登録5648844


1 争点 2-3(商標法 26 条 1 項 6 号該当性)について
事案に鑑み、まず、争点 2-3(商標法 26 条 1 項 6 号該当性)について検討する。
(1) 証拠(掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 「ばれない」、「バレない」、「バレナイ」の用例等
・・・
(イ) インターネット検索の結果によれば、二重瞼を形成する美容施術や二重瞼形 成用化粧品等の宣伝広告として、「作った二重だなんてバレない」、「バレにくい二 重」、「バレない自然な二重まぶたに!?」、「絶対バレない!自然な二重まぶたの作 り方」、「バレないコツ」、「本気でバレない二重の作り方」、「バレないふたえまぶた」「バレない・腫れない二重整形」といった表現が使用されていることが認められる\n(甲 16、乙 2〜5)。また、「【専門家監修】アイプチのおすすめ人気ランキング 選 【学生向けやバレないものも!】」と題して二重瞼形成用化粧品等をランキング形 式で紹介するウェブページ(丙 3)においても、「アイプチでは周りの人にバレてし まうのが心配な方も多いはずです。」、「使っていることがバレないようにしたいで すよね!バレにくさを重視するなら、ファイバーや皮膜式のアイプチがおすすめで す。」といった記載がされている。さらに、原告商品及び被告商品以外の二重瞼整形 用化粧品等において、商品の説明として、「バレない整形級ふたえ」(丙 1-1)、「バレない!テカらない!」(丙 1-2・3)、「目をつぶってもバレない!」(丙 1-4)、「閉じてもバレにくい!」(丙 1-5)、「極細繊維ファイバーでバレないふたえ成形」(丙 1-6)、「バレない!!整形メイク」(丙 1-7)といった表現が見受けられる。加えて、二重瞼形成用化粧品等以外にも、鼻筋整形用の化粧品の説明として「バレない!カンタ\nン!自然な仕上がり!」との表現が(丙 2-1)、つけ爪(ネイルチップ)の説明とし て「バレないつけ爪」との表現が(丙 2-2・3)、頬の美容整形施術の説明として「バ レないリフト」との表現(丙 2-4)が、それぞれ使用されていることが認められる。
イ 被告商品における被告標章の使用態様等
証拠(甲 5)によれば、被告商品 1 の包装には、その表面の上部半分程度を占め\nる大きさの黒色ハート形の図形が配置され、その図形内の最上段には下線付きの「長 時間キープ」の文字が、中段には被告標章 1 が、いずれも包装のベース色であるピ ンク色で表示されている。また、その最下段には緑色の帯状の図形上に黒色で「リ\nキッドタイプ」の文字が記載されると共に、当該帯状の図形の左端に接着した黒色 丸形の図形内に緑色で「細筆」の文字及び筆先の形状のイラストが記載されている。 さらに、同包装の下部左上側には、上下二段からなる「Eye Catching」、「Beauty」(なお、「Beauty」の「t」は、2 画の交点の左側及び下側が右側及び上側に比して長い十\n文字状にデザインされている。)との記載が、下部左中央には同じく上下二段からな る「FUTAE」、「LIQUID」との記載が、下部右側には「♯目元サギメイク」との記載 が、それぞれ置かれている。加えて、下部のこれらの記載の間に存在する透明な窓 部からは被告商品 1 の本体を視認し得るところ、これには、下部左上側と同様の構\n成からなる「Eye Catching」、「Beauty」との表示が存在する(ただし、全ての被告商\n品 1 において上記窓部から上記表示が看取し得ることを認めるに足りる証拠はな\nい。)。他方、裏面には、表面と同様の構\成からなる「Eye Catching」、「Beauty」の記載と、一連一体に並べられた「FUTAE LIQUID」の記載のほか、「アイキャッチング ビューティ ふたえリキッド(二重まぶた化粧品)」の記載等があるが、被告標章 1 の記載はない。
イ 上記(1)イ認定に係る被告商品の包装の表面及び裏面の各記載等を総合的に\n考慮すると、一般消費者からみて、被告商品の名称は、「Eye Catching Beauty FUTAE LIQUID」及び「アイキャッチングビューティ ふたえリキッド」(被告商品 1)、「Eye Catching Beauty FUTAE MESH TAPE」及び「アイキャッチングビューティ ふたえ メッシュテープ」(被告商品 2)と認識されることがうかがわれる。
他方、被告標章については、上記(1)認定を踏まえると、以下のとおり理解される。 すなわち、「ばれない」、「バレない」、「バレナイ」は、その表記いかんにかかわらず、秘密等が露顕しないという意味である。また、被告商品が属する二重瞼形成用化粧\n品等や二重瞼形成のための美容施術の宣伝広告においては、化粧品や美容施術によ り一重瞼を二重瞼に整えたことが他人に容易には露顕しないという当該化粧品ない し美容施術の効能や役務の内容の説明又はそのような効能\等をうたうキャッチフレ ーズと理解される表現として、「ばれない」等に「二重」を組み合わせたものが多数\nみられる。また、二重瞼形成用化粧品等以外の化粧品や美容整形施術等美容関係の 商品及び役務においても、「ばれない」等の語が、他人から当該化粧品や当該施術を 使用していることが露顕しないという説明ないしそのような効能等のキャッチフレ\nーズとして少なからず用いられていることがうかがわれる。これは、美容関係の商 品等の需要者の多くが、当該商品等を使用して人工的・意図的にその状態を形成し ていることが他人には容易に明らかにならず、当該商品等を使用した結果が自然の 状態として見られることを欲することを踏まえ、当該商品等の提供者において、そ の欲求にこたえる効果を訴求することを狙ったものと理解される。
「ばれない」等の語が美容関係の商品等においてこのように多く使用されている 実情を踏まえると、二重瞼形成用化粧品等の需要者である一般消費者は、「バレナイ」 に「二重」が組み合わされた被告標章につき、二重瞼を形成していることが他人に 容易に露顕しない化粧品等であるという被告商品の効能等の説明ないしそのような\n効能等のキャッチフレーズと認識・理解するのがむしろ通常といえる。被告商品の\n包装において、被告標章は、「長時間キープ」、「リキッドタイプ」(被告商品 1)又は「テープタイプ」(被告商品 2)という文字等の記載に挟まれるように配置されてい ること、被告標章のほかに被告商品の名称と認識し得る記載が存在することなどを 考慮すると、なおさらである。このことは、被告標章をなす「二重」の「二」の文 字の下部が、その左端に二条の跳ねがあるかのように図案化されていることを考慮 しても異ならない。
以上より、被告標章は、被告商品の需要者である一般消費者にとって、被告商品 の効能等の説明ないしキャッチフレーズとして理解されるものであり、自他商品識\n別又は出所識別標識としての機能を有するものとは認められない。\n

◆判決本文

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令和3(ワ)10991  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和5年9月29日  東京地方裁判所

 Tシャツに、本件商標の図形を胸元に大きく表示することが商標的使用となるかが1つの争点でした。東京地裁(29部)は、該当すると認め、差止および約90万円の損害賠償を認めました。判決文の最後に、本件商標と被告製品の写真があります。

(1) 証拠(甲10、12の2、12の4、12の5、12の6、13の3、1 4の2、14の3)によれば、原告は、原告ブランドの店舗開店当初から、 原告商標を、同店舗のポスター、看板、Tシャツ、パーカー、アクセサリー 等に印刷して使用していたこと、令和元年頃には、横浜、東京、千葉、名古 屋等に常設又は臨時店舗を開設し、同店舗及びオンラインショップで、原告 商標が印刷された商品を販売していたことが認められる。 また、前提事実(4)イのとおり、原告は、他のアパレル会社等とコラボレ ーションをし、原告商標を改変したり、同イラストの下部又は右下部にコラ ボレーションをしたアパレル会社のブランド名を記載したりしたものをTシ ャツ等の胸元に印刷して、販売することがあった。
これらの事実に照らせば、原告商標は、これを付した製品の出所を示す ものとして、一定の知名度を有していたと認められる。 そして、被告は、前記4のとおり、原告商標と誤認混同のおそれがある 被告標章を、前提事実(5)のとおり、被告製品に付して使用していたのである から、被告標章の使用は、自他識別機能を果たす態様での使用であるといえ、\n商標的使用に該当するというべきである。
(2) これに対し、被告は、被告製品は被告標章が胸部の中央に大きく印刷され たものであるところ、需要者は、通常、Tシャツの首後ろ部に印刷された被 告シリーズの名称や、被告製品販売時に付された紙製のタグにより被告製品 の出所を認識するから、被告標章により出所を認識するものではなく、被告 標章は自他商品識別機能を果たさない態様で使用されていたと主張する。\nしかし、商標がTシャツの首後ろ部の表示やタグだけではなく、胸元に\n大きく付された商品も多く存在すると認められること(当裁判所に顕著な事 実)に照らすと、需要者がTシャツの首後ろ部に印刷された名称や紙製のタ グにより被告製品の出所を認識するとの事実を直ちに認めることはできない というべきであり、本件全証拠によっても、被告主張の事実を認めることは できない。

◆判決本文

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令和3(ワ)6974  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年9月12日  大阪地方裁判所

 情報サイトによける標章の使用は、商標的使用ではない(商26条1項6号)として、商標権の効力が及ばないと判断されました。

(1) 本件サービスサイトの性質及び本件ウェブページの位置づけについて 後掲各証拠及び弁論の全趣旨に前提事実を総合すると、次の各事実を認めること ができる。
ア 被告は、平成30年、葬儀に関する困りごとの解決へ向け、葬儀サービスを 探している人々と葬儀社をマッチングする事業として葬儀社紹介サービスを提供す る本件サービスサイトの運営を開始した(甲3、4)。 本件サービスサイトは、被告との提携の有無にかかわらず、全国の葬儀社の情報 を掲載することとしており、被告と提携していない葬儀社のページには、葬儀社の 電話番号やウェブサイトのリンクを記載し、被告の提供するサービスを介さず直接 連絡できる設計としており、本サービスサイトのユーザー(葬儀希望者)が、提携 していない葬儀社を指定して被告に問合せをした場合は、当該葬儀社の電話番号を 案内する方針としている。なお、提携先の葬儀社については、見積り取得の手配や 代行を行っている(甲10、20)。
イ 本件サービスサイトにおいて、ユーザーが一定の地域を選択すると、被告が 把握するその地域に所在の葬儀社や斎場が一覧表示され(その他、費用・形式別の\nプランの紹介、葬儀の依頼や相談、一括見積を行うサイトへの遷移ボタン、当該地 域の葬儀に関するQ&Aや事例なども表示される)、その一覧の中から、個別の葬\n儀社等を選択すると、当該個別の葬儀社等に関する被告が把握した情報を提供する ページが表示され、本件葬儀場(セレモニートーリン)を選択した場合、本件ウェ\nブページが表示される(甲22の1・2、乙1)。\n
ウ 本件ウェブページは、その固定ヘッダーに「安心葬儀 葬儀のご依頼/ご相 談 一括見積なら|安心葬儀」「安心葬儀/葬儀相談コールセンター(無料)通話 無料<省略>」といった記載があるほか、ページの上部に「安心葬儀TOP」「葬 儀の種類」「宗教・宗派別葬儀」「葬儀の知識」という記載(リンク)や「安心葬儀 TOP>大阪府の葬儀社/斎場一覧>大阪市<以下略>>セレモニートーリン」と いう各ウェブページの階層を示す記載があり、また、「セレモニートーリン」と太 字で書かれた下部には、本件葬儀場の外観を撮影した写真が掲載され、「セレモニー トーリンとは」「セレモニートーリンの特徴」「セレモニートーリンの住所・地図・ アクセス」「セレモニートーリンの情報」「セレモニートーリンの口コミ・レビュー」 「セレモニートーリンの葬儀式場・休憩室情報」の各欄にはそれぞれ見出しに対応 した情報が記載されているほか、「当サイトは「セレモニートーリン」と提携して おりません。掲載している情報は、葬儀社様の公式サイトの情報など、一般に公開 されている情報をもとに、当サイトの方で収集、編集を加えまとめたものになりま す(中略)。斎場に関する詳細・最新の情報につきましては公式の Web サイトや電 話で直接ご確認ください。」との記載がある。 これより下部には、「セレモニートーリンの近くにある他の斎場」「大阪府で経 験・実績の多い葬儀社」「大阪府の家族葬の葬儀事例」の欄には、それぞれ複数の 葬儀社や葬儀事例が記載されており、さらに、「葬儀社/斎場を地域を指定して検 索する」「葬儀社/斎場を大阪府の市町村から選ぶ」の欄においては、それぞれ選 択した対象エリアや地域に所在する葬儀社等を検索することが可能である(甲22\nの1・2。なお、以上の記載内容は、口頭弁論終結時のものである。)。
エ 検索サイトYahoo!において、「セレモニートーリン」とキーワード検 索すると、検索結果を表示するウェブページにおいて、広告であることが明記され\nた他の葬儀社等のリンクが表示された後、広告表\示のないものとしては一番目に原 告のウェブサイトへのリンクが「公式/セレモニートーリン・大阪市<以下略>、 東大阪のお葬式」等の見出しのもとに何件か表示される。それに引き続き、被告の\n本件ウェブページについての案内(その詳細は、「https<以下略>>大阪府の葬儀 社/斎場一覧>大阪市<以下略>」とドメイン部分等が小さく表示され、その下に\n見出し(リンク)部分として、「セレモニートーリン(大阪府)の斎場詳細|安心 葬儀」が表示され、「評価:4.3 1件のレビュー」との情報及び本件ウェブペー ジの説明文として、「セレモニートーリン(大阪府大阪市<以下略>)の口コミ、 写真、施設情報、アクセス・地図など詳しい情報をご紹介します。【安心葬儀】は お客様のご予算やご要望に合わせて、...」が表示され、「セレモニートーリンの特\n徴・セレモニートーリンの住所・地図...」との表示もされる。)が表\示される。な お、その下には、詳細は不明であるが、被告以外の他のサービスサイトと思われる サイトへのリンクも表示される(甲21の1・2)。\n
(2) 前記認定によると、本件サービスサイトは、その構成において、需要者であ\nる葬儀希望者に対し、その条件に見合った葬儀社等の情報提供を行い、また希望者 には葬儀の依頼や相談、一括見積を行うことなどを通して、葬儀希望者と葬儀社等 とのマッチング支援を行うサービス(被告役務)を提供するものであることが容易 に看取できる。
そして、本件ウェブページは、これを単独でみても、そのドメインや本件ウェブ ページのタイトル部分や末尾の「安心葬儀」等の表示、競合し得る近隣の斎場等の\n情報も表示されることに加え、本件葬儀場の情報については、ホールの外観、特徴\nや所在地、アクセス方法、設備情報等の客観的な情報が記載されているにとどまり、 これを超えて本件葬儀場の利用を誘引するような記載はみられないこと等の事情か らすると、本件ウェブページに接した需要者は、「セレモニートーリン」を、葬儀 場を紹介するという本件サービスサイトにおいて紹介される一葬儀社(場)として 認識するものであり、原告が本件葬儀場において提供する商品ないし役務に関し、 被告がその主体であると認識することはないものというべきである(本件ウェブペー ジを含め、本件サービスサイトの運営者が原告であると認識することがないことも 同様である。)。
さらに、原告が問題とする本件ウェブページの html ファイル中のタイトルタグ及 び記述メタタグに記載された内容は、検索サイトYahoo!において「セレモニー トーリン」をキーワードとして検索した際の検索結果において基本的に各タグに記 載されたとおり表示されると認めることができるが、その内容は、いずれも本件サー\nビスサイトの名称が明記された見出し及び説明文と相まって、原告の運営するウェ ブサイトとは異なることが容易に分かるものと評価できる上、一般に、検索サイト の利用者、とりわけ現に葬儀の依頼を検討するような需要者は、検索結果だけを参 照するのではなく、検索結果の見出しに貼られたリンクを辿って目的の情報に到達\nするのが通常であると考えられるところ、需要者がそのように本件ウェブページに 遷移した場合には、前記のとおり、被告が運営する本件サービスサイトの一部とし て本件ウェブページを理解するのであって、やはり、被告標章を本件ウェブページ の各タグ内で使用することによって、原告と被告の提供する商品または役務に関し 出所の混同が生じることはないというべきである。 したがって、被告による被告標章の使用は、商標法26条1項6号の規定により、 本件商標権の効力が及ばないというべきである。
(3) 原告は、被告は、本件ウェブページの見出しやその説明文において被告標章 を表示させ、需要者をして本件ウェブページにアクセスするよう誘引し、本件ウェ\nブページにおいて本件葬儀場の建物の写真や情報を表示させることで、需要者をし\nて、本件ウェブページが原告(セレモニートーリン)のウェブページであると誤認 させ、出所の混同を生じさせている旨を主張する。 しかし、本件ウェブページの見出し、説明文及び本件ウェブページ自体の表示内\n容を踏まえると、見出し及び説明文に被告標章の表示があるからといって、出所の\n混同を生じさせることにはならないことは前述したとおりである。原告の主張は、 要するに、原告を紹介する本件ウェブページに被告の電話番号等が表示されること\nにより、原告が、その潜在的需要を失う不利益を被っていることをいうものと解さ れるが、そのような結果が仮に生じているとしても、前記認定に係る本件サービス サイトの性質及び本件ウェブページの記載(なお、反対にこれを参照して原告に依 頼する需要者も在り得ると考えられる。)からすると、自由競争の範囲内のものと いうべきである。原告の前記主張は採用の限りでない。

◆判決本文

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令和4(ネ)10010 商標権侵害行為差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和4年8月22日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

商標権者は、商標「小野派一刀流」指定役務41類「剣道を主とする古武道の教授」を保有しています。被控訴人(1審被告)は「小野派一刀流剣術」を使用していました。1審(は、商標的使用には当たらないと判断しました。また不競法についても、「商品等表示」の「使用」に当たらず、控訴人の周知な商品等表\示を認めることはできないと判断しました。知財高裁は原審維持しました。

ア 控訴人は、日本の伝統芸能や古武道における流派の意義、そして「小野派一\n刀流」の流派名の意義等を主張して、「小野派一刀流」は、流派の教え・系統を指す とともに、宗家を長とし門人によって構成される本流流派を継承する集団(団体)を\n指し、両者は密接不可分の関係にあるから、流派名としての「小野派一刀流」の使用 は、同時に集団(団体)としての「小野派一刀流」を想起させるもので、需要者が提 供される役務の出所を認識し得るような態様での使用に当たる旨を主張する。 しかし、本件全証拠によっても、日本の伝統芸能一般又はそのうち古武道一般に\nおいて、一つの流派について一つの集団(団体)しか存在しないという事情は認めら れない。この点、例えば、古武道振興会の「加盟流派」のページ(本件ウェブページ。 甲3の1)には、「荒木流拳法(K)」(代表はK)及び「荒木流拳法(L)」(代\n表はL)として、「荒木流拳法」という流派名を冠する加盟流派が代表\を異にして二 つ掲載されており、同様に「神道夢想流杖術」、「夢想神伝流居合術」及び「柳生心 眼流兵法」についても、同一の流派名を冠する加盟流派が代表を異にして複数掲載\nされている。また、古武道協会のウェブサイトにおける「各流派の紹介」のページ (甲33の1)にも、「天神真揚流柔術(新座市)」と「天神真揚流柔術(川越市)」 とが掲載されている。
そうすると、控訴人の主張するように、流派名と当該流派を継承する集団(団体) との間に密接な関係があることを前提としても、当該密接な関係により流派名が想 起させる集団(団体)が、直ちに特定の役務の提供等の一主体となるような特定の団 体であるということはできず、それは、当該流派を継承する複数の団体を含み得る より抽象的な集団にすぎないとみるのが相当である。 そして、本件全証拠をもってしても、「小野派一刀流」が古武道の流派の名称であ るということを前提にしてもなお、それが特定の役務の提供等の一主体となるよう な当該流派を継承する特定の団体を指すものであると認めるに足りず、「小野派一 刀流」について上記と異なって解すべき事情は認められない。 したがって、流派名としての「小野派一刀流」の使用が同時に集団(団体)として の「小野派一刀流」を想起させるものであるとの控訴人の前記主張は、訂正して引用 した原判決の第4の1における、本件標章使用が被控訴人らによる商標的使用であ るとは認められないという判断を左右するものではないというべきである。
イ 控訴人は、本件標章使用1)について、本件常識(小野派一刀流の教え・系統と これを継承してきた集団(団体)とが密接不可分であり、本流が宗家を長とし門人に よって構成される集団(団体)において継承されてきたこと、中でも正統は広範かつ\n強大な権限を有する宗家一人に継承されること)のほか、「小野派一刀流剣術」の名 称と共に「代表」等として被控訴人Y1が掲載されているという態様を特に指摘し\nて、本件標章使用1)が商標的使用に当たる旨を主張する。 しかし、訂正して引用した原判決の第4の1(2)(本件標章使用1)について)で認 定説示したとおり、「加盟流派」について掲載した本件ウェブページの記載の形式や 内容からすると、そこにおける「小野派一刀流剣術」の名称やその「代表」等の記載\nに接した者においては、その名称は古武道振興会において加盟を認められている古 武道の流派の一つの名称であって、併記された代表者の氏名及び連絡先もあくまで\nそのような流派の代表者及び連絡先として古武道振興会が把握しているものの記載\nであると理解するとみるのが合理的である(なお、前記アで指摘したとおり、本件 ウェブページには、同一の流派名を冠する加盟流派が代表を異にして複数掲載され\nている例があるところ、「小野派一刀流剣術」については代表を異にする同名とみら\nれる加盟流派が他に記載されていないことから、その記載に接した者においては、 加盟流派としては単一のものと理解することにはなるが、他方で、上記の例がある ことが同時に容易に看取できることからすると、「小野派一刀流剣術」に係る「代表」\n等の記載が、古武道振興会の加盟流派、換言すると古武道振興会の認識を離れて、客 観的に、流派としての「小野派一刀流剣術」の唯一の宗家や当該宗家から代表と称す\nることを許諾された者を示すものであると直ちに認識するとまではいえない。)。 また、訂正して引用した原判決の第4の1(1)(認定事実)からすると、本件ウェ ブページの記載に当たり、古武道振興会は、自律的に定めた「日本古武道振興会規 約」における会員に関する定めに基づき、会員資格や代表会員の資格の受継につい\nて判断しているもので、Bの死去後の受継の問題についても、平成30年度第1回 常任理事会において、自律的に判断がされたものとみられる(なお、その判断の前提 とされた事実関係について、本件証拠に照らし、明白な誤認があったというべき事 情や被控訴人らから古武道振興会を欺罔するような説明がされたといった事情も認\nめられない。)。そのような判断に基づいてされたとみられる本件ウェブページにお ける「小野派一刀流剣術」に係る記載(なお、古武道振興会規約は、古武道振興会 のウェブサイトにも掲載されていることが窺われる(甲3の1〜3)。)をもって、 当該流派に係る特定の団体が提供する何らかの役務の出所を認識し得るような態様 で被控訴人らが表示をしたものと認めることもできない。\n
したがって、「小野派一刀流剣術」の名称と共に「代表」等として被控訴人Y1が\n掲載されているという態様を特に指摘しての控訴人の前記主張は、訂正して引用し た原判決の第4の1(2)(本件標章使用1)について)の判断に影響を与えるものでは ない。控訴人が主張する本件常識も、前記アで説示した点に照らし、同判断を左右し ない。
ウ 控訴人は、本件標章使用2)について、「小野派一刀流剣術(G) Y1(東京 都)」との記載が太字でされていることや演武者名とは別に記載されていること、並 んで記載された流派について記載されている者が当該流派の宗家であることが需要 者に周知であること、本件常識や本件標章使用2)に係る武道大会等は古武道振興会 が主催等するものであること等を特に指摘して、本件標章使用2)が商標的使用に当 たる旨を主張するが、本件標章使用2)が被控訴人らによる被告商標の商標的使用と 認められないことは、訂正して引用した原判決の第4の1(3)(本件標章使用2)につ いて)で認定説示したとおりである。
前記アで説示した点に照らし、本件常識は、本件標章使用2)が被控訴人らによる 被告商標の商標的使用と認められないとの判断を左右するものではない。 また、訂正して引用した原判決の第4の1(1)(認定事実)のとおり、本件標章使 用2)がされた武道大会等は古武道振興会が主催等したものであること、古武道振興 会が主催する大会において使用されるパンフレットやめくりは、本件ウェブページ に掲載されている加盟流派の情報と同様に、古武道振興会に既に登録されている情 報に基づき、古武道振興会が主体となって作成、掲示、配布等するものであること (これは、古武道振興会が主催以外の態様で関与した武道大会等についても同様と 推認され、この推認を覆す事情はない。)や、本件標章使用2)に係るパンフレット の記載内容等を踏まえると、前記イで説示したのと同様、控訴人が指摘するその余 の点も、本件標章使用2)が被控訴人らによる被告商標の商標的使用と認められない との判断に影響を与えるものではないというべきである(なお、控訴人が指摘する 点のうち、本件標章使用2)に係る武道大会等は古武道振興会が主催等するものであ るという点は、むしろ、同判断の根拠となり得るものといえる。この点、本件全証拠 をもってしても、古武道振興会が、古武道の各流派の正当性について有権的に判断 する団体であるといった事情や、古武道の流派が加盟し得る唯一の団体であるとい った事情は見受けられない。控訴人の主張は、ひっきょう、被控訴人Y1について受 継を認めたという古武道振興会の判断を論難するものにすぎないというべきであ る。)。

◆判決本文

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