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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

104条の3

平成22(ワ)18769等 特許権差止請求権本訴事件,損害賠償等請求反訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年09月17日 東京地方裁判所

 1つの争点が、特許権侵害であるとの取引先への警告が不競法の営業誹謗行為(2条1項14号)に該当するか否かでしたが、裁判所はこれを認めました。
 本件特許発明は,当業者が引用発明,甲18の2刊行物及び甲19の2刊行物の記載に基づき容易に発明することができたものであって進歩性を欠くものであるが,i)引用発明が記載された甲22刊行物は,本件特許出願の3年以上前の平成11年1月に旭化成建材がパワーボードの施工をする業者向けに発行した技術情報パンフレットであり,相当の部数が当業者に配布されたことが推認できること,ii)副引用例である甲18の2刊行物及び甲19の2刊行物は本件特許権の出願審査の過程でされた平成19年4月24日付け拒絶理由通知において引用文献として指摘されていたこと(乙5),iii)それにもかかわらず,被告が甲3及び甲4の書面を送付するに当たり,本件特許の無効事由の有無につき検討したのか否か,したとすればどのような検討を行ったのかについて,被告は何ら主張立証をしていないこと等に照らすと,被告が本件告知行為を行うに当たって上記注意義務を尽くしたと認めることはできず,被告には過失があるというべきである。

◆判決本文

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 >> 104条の3
 >> 営業誹謗

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平成21(ワ)31831 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年10月01日 東京地方裁判所 

 104条の3により、権利行使できないと判断されました。
 以上によれば,本件発明の相違点a,bに係る構成は,引用発明に,乙3及び乙5に記載された周知の技術的事項(座椅子の座部が座面中央に座面側に向かって次第に拡大する形状の円穴を設けること)及び乙6,乙7,乙9及び乙10に記載された周知の技術的事項(椅子用のクッション材として上層に低反発クッション部材を配設すること)を組み合わせることにより,当業者が容易に想到できたものと認められる。(5) 以上のとおり,本件発明は,当業者が引用発明及び上記の周知の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであり,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,特許法104条の3第1項により,原告は被告に対し本件特許権を行使することができない。

◆判決本文

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平成20(ワ)14669 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年08月27日 東京地方裁判所

 104条の3により、権利行使不能と判断されました。権利者は無効とする審決に対して訂正をし、訂正後の発明については進歩性なしとの審決がなされており、これに対する審取事件が係属中でした。
 機械設計上,構成部材を少なくし構\成をより単純化することは,当業者にとって,製造コストの削減や製品の耐久性向上等につながる一般的な技術課題であるといえる。そのため,引用発明においても,カップ部材であるケースホルダー20とホルダ部材であるローラケース21を着脱自在に係合ロックするための構成について,構\成部材が少ないより単純な構成とすることは,当業者が当然に認識する自明の技術課題であったといえる。そうすると,引用発明の係合ロックの構\成(ロックレバー39やコイルスプリング46等の部品を組み立てて成るローラケース21をケースホルダー20に係合ロックする構成)を,構\成部材が少ないより単純な構成である上記クで認定した周知の係合ロックの構\成(一方の部材に係合溝を設け,他方の部材に弾性が付与されて成る可動片に設けられた係合突起を一体成形することにより,2つの部材を着脱自在に係合ロックする構成)に置き換えることは,当業者にとって,十\分に動機付けられていたということができ,通常の創作能力により容易になし得たといえる。\n

◆判決本文

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平成21(ワ)9328 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年08月06日 東京地方裁判所

 104条の3により権利行使が制限されました。
 前記アによれば,帳票,伝票などにおいては,その表面領域が限られ,表\面領域に記録して伝達することができる情報にも限りがあるため,その限られた表面領域を有効利用して,より多様な情報を記録して伝達するため,配送伝票に関する様々な技術を開示した多くの特許,実用新案公報文献に,分離票等の下層に情報記載欄を設けることが示されており,本件特許の出願当時,かかる技術は,汎用的な技術として当業者に採用されていたことが認められる。したがって,乙4の2発明に,前記の周知の構\成を適用して,「台紙2」の「切り込み7」よりも内側の表面領域に情報記載欄を備えるという構\成とすることは,当業者において容易になし得たことであると認められる。そして,そのような構成を採用した場合には,その結果として,本件発明の「輪郭切り取り線を切断して本票から分離票を切り離すと分離票に相当する部位に台紙の情報記載欄が現れるようになっている」(相違点4)との構\成を備えることになる。したがって,乙4の2発明に,前記の周知技術を適用して,相違点2及び相違点3に係る構成を採用して本件発明の構\成とすることは,当業者において容易に想到し得たものである。

◆判決本文

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平成21(ワ)2208等 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年04月15日 大阪地方裁判所

 特許権侵害訴訟において、技術的範囲外さらに特104条の3の規定により権利行使不能と判断されました。
 以上の事実を総合すれば,本件2ピークは,白金ホルダーピークであるとしても説明が困難でなく,かつ,検出の原因として,白金ホルダーの使用以外には考えにくいから,白金ホルダーピークであると考えるのが合理的である。そうすると,本件2ピークは,本件発明の特定のためには余分な事項であるが,それにもかかわらず,特許請求の範囲に,その回折角及び強度が記載されていることになり,特許請求の範囲中,本件2ピークに係る記載は,事後的・客観的にみれば,誤った記載というべきである。誤記のなかには,特許法上の訂正審判や訂正の請求による訂正を待つまでもなく,誤記であることを前提として,特許請求の範囲を解釈することができる場合も存在するが,本件2ピークの記載は,単なる誤記(表記上の誤り)とは性格を異にする。すなわち,本件特許出願に際し,原告は,本件2ピークが本件エステル塩酸塩一水和物結晶のピークであると信じ,特許請求の範囲として表\示しようとしたとおりのクレームをしているのであって,後に,その信じていたところが誤りであったことが判明したに過ぎないと認めるのが相当である(原告が本件2ピークが本件エステル塩酸塩一水和物結晶のピークではなく,白金ホルダーのピークであると認識していたのであれば,その旨を本件明細書に記載したはずである。)。出願時において要件とした事項であっても,後に,実際には不要であったことが判明することは,一般に生じ得る事態であるが,特許請求の範囲の記載を前提とする第三者の行為は,このような出願人の調査不足や不注意によって規制されるべきではない。
・・・・ 本件明細書には「S-, 1108塩酸塩無水物は容易に水一分子を吸収して本発明のS-1108塩酸塩一水和物となる。」(段落【0021】),「S-1108塩酸塩無水物‥‥は吸水性で粉末化,製剤化などの操作中に部分的吸湿が起きて含水量が変動する」(段落【0003】)との記載がある。また,P2 准教授作成の鑑定意見書(乙8)では,本件標準品について,105℃から110℃付近まで昇温すると,水1分子が離脱して,本件明細書記載の本件エステル塩酸塩無水物結晶となり,この無水物結晶を大気中で室温まで降温すると,水1分子を吸収して,本件明細書記載の本件エステル塩酸塩一水和物結晶となることが明らかにされている。そうすると,本件エステル塩酸塩の結晶は,高温状態に置いて無水物結晶としない限りは,一水和物結晶の状態にあるといえる。そして,本件エステル塩酸塩水和物結晶が1種類しかないことは原告自身が主張し,立証するところであるから(甲19),前記イの工程により得られた本件エステル塩酸塩の結晶は,すなわち本件エステル塩酸塩一水和物の結晶であるといえる。

◆判決本文

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 >> 技術的範囲
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平成21(ネ)10028 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年04月28日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとして104条の3により請求棄却とした原審が取り消されました。
 以上によると,甲11技術は,・・・という点で共通するものということができるが,柱の垂直度の調整方法については,・・・,本件発明と異なり,柱の垂直度の調整は,柱を垂直状態に吊り下げた状態において行われるものと判断される。また,甲11技術においては,建柱作業の終了後も,ボルト体はベースの下面四方部に残されるものであるのに対して,本件発明の建て直し装置は,建入れ直し装置のナットの上方にベースプレートの縁部を配置するものであって,作業終了後には装置を撤去するものである。また,甲12技術には,鉄骨柱の建入れ直しにおいて,鉄骨柱を鉛直に姿勢制御すること,鉄骨柱を鉛直に姿勢制御するに当たって,歪直し用のワイヤを不要とすることという技術課題が開示されており,この課題の解決手段として,鉄骨柱の建入れ直しにおいて,鉄骨柱の歪みを直すためにジャッキ装置が鉄骨柱の重量を積極的に引き受けようとするものであって,本件発明のように,鉄骨柱の重量の大半をテツダンゴが引き受け,ボルトの軸線方向に移動可能であるナットについては,てこの原理によって,鉄骨柱の重量に対して比較的小さな力を加えることによって,ベースプレートの縁部を持ち上げてベースプレートが水平になるように微調整をすることができるものであって,鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるものではないものとは,その機能\\において異なるところがあり,甲12技術と本件発明とでは,それぞれのジャッキ又は建て直し装置に求められる対象物を支えるために適した大きさや強度についての構造等に違いが生ずるものである。そうであるから,上(ア)記 のとおり,本件発明とは技術分野や課題が異なり,本件発明とは異なって対象物の重量を積極的に引き受けるホイスト(ジャッキ装置)についての乙1発明に,鉄骨柱の建入れ直し方法として鉄骨柱の垂直度の調整方法や作業終了後の建入れ直し装置の取扱が本件発明とは異なっている甲11技術や,鉄骨柱の鉛直への姿勢制御において,ボルトの軸線方向に移動可能なナットの機能\\について鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるものではない本件発明とは異なって,鉄骨柱の重量を積極的に引き受けるジャッキによる甲12技術を適用して,相違点1を克服することが容易想到であるということはできないというべきである。

◆判決本文

◆原審・平成21年03月05日東京地裁判H20年(ワ)第19469号事件

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 >> 新規性・進歩性
 >> 動機付け
 >> 104条の3

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平成20(ワ)8086 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年02月24日 東京地方裁判所

 特許権侵害に対して、要旨変更による出願繰り下げにより新規性無しとして、特104条の3の規定により、権利行使不能と判断されました。
 以上のとおり,本件当初明細書の特許請求の範囲の(1)や,〔課題を解決するための手段〕欄には,格子定数関係式2が記載され,これらには,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくするとの限定はない。(イ) しかしながら,格子定数関係式2に係る発明につき,本件当初明細書の〔作用〕欄には,「なお,a(CB)<a(InP)<a(CW)の場合には,量子井戸層とバリア層の厚さを調整して,活性層全体としての平均的な格子定数をInPの格子定数に等しくする。」と記載されている。また,格子定数関係式2に係る発明の実施例は,第2の実施例のみであると認められるところ,これには,「平均の格子定数がInPに格子整合する活性層(17)を有」すること,「活性層(17)の平均格子定数は,量子井戸層(20)とバリア層(21)の厚みと組成を調整することによってInPの格子定数と等しくすることができる」ことが記載されている。他方で,格子定数関係式2に係る発明について,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくすることを前提としない場合の構成及び作用に関する記載はなく,実施例の記載もない。また,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくすることを前提としない格子定数関係式2に係る発明を採用した場合に,歪を緩和するという作用効果が生ずることをうかがわせる記載はないのみならず,そもそも,転位の発生の防止という本件発明の課題との関係において,具体的にどのような効果が生ずるかについての記載もない。(ウ) また,証拠(乙6)によれば,本件特許出願前である1986年(昭和61年)に公刊されたと認められる乙6刊行物には,・・・・ことが記載されている。他方で,本件各証拠に照らしても,本件特許出願当時,歪超格子において,InP基板に格子整合させずに,単に格子定数関係式2に係る発明を採用することにより,歪を緩和して,転位の発生を防止することを記載した刊行物が存在したとは認められない。(エ) このような本件特許出願当時の技術水準に照らして,本件当初明細書の〔作用〕欄の記載及び第2の実施例の記載(特に,「平均の格子定数がInPに格子整合する活性層(17)を有」すること,「活性層(17)の平均格子定数は,量子井戸層(20)とバリア層(21)の厚みと組成を調整することによってInPの格子定数に等しくすることができる」との記載)に接した当業者は,これらの記載につき,乙6刊行物に記載された知見(歪超格子の平均的な格子定数,すなわち,全体的な平衡値を,適切な組成と厚さを選択することにより,InP基板に格子整合させ,歪エネルギーを最小化すること)を,量子井戸半導体レーザ素子に適用したものと理解するものと認められる。(オ) 以上のことからすれば,本件当初明細書の記載に接した当業者は,格子定数関係式2に係る発明が,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくすることを前提とした発明であると理解するものと認められる。したがって,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくすることを前提としない,格子定数関係式2に係る発明は,本件当初明細書には記載されていなかったものと認められる。・・・以上のことからすれば,第2回補正は,本件当初明細書には記載されていなかった,活性層の平均格子定数をInPの格子定数と等しくせずに,量子井戸層の格子定数をInPの格子定数より大きくし,バリア層の格子定数をInPの格子定数よりも小さいものとすることにより,歪による転位の発生を緩和するという技術的事項を新たに追加するものであるから,本件当初明細書の要旨を変更するものと認められる。

◆判決本文

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 >> 補正・訂正
 >> 要旨変更
 >> 104条の3

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平成21(ワ)6505 損害賠償請求事件 特許権 平成22年01月22日 東京地方裁判所

 原告は最終口頭弁論期日の直前に訂正審判をして104条3の無効理由はないと主張しましたが、時期に後れた抗弁として却下されました。
 そこで検討するに,原告は,既に第1回口頭弁論期日において被告らから乙6刊行物記載の発明が本件特許発明と同一の発明であるとして乙6刊行物を提示されたのに対して,両発明が同一ではないとの主張を終始維持し続けていたにもかかわらず(主張を変更することを妨げる事情は何ら認められない。),弁論準備手続終結後になって訂正審判請求をした上で,最終口頭弁論期日に,この訂正により乙6刊行物記載の発明には本件特許発明と相違点が生じ無効理由がない旨の上記主張に及んだものである。そして,このことについてやむを得ないとみられる合理的な説明を何らしていない。したがって,原告の上記主張は,少なくとも重大な過失により時機に後れて提出したものというほかなく,また,これにより訴訟の完結を遅延させるものであることも明らかである。よって,原告の上記主張は,民事訴訟法157条により,これを却下する。

◆判決本文

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 >> 104条の3
 >> 裁判手続

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平成20(ワ)7901等 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月25日 東京地方裁判所

 特許権侵害訴訟について、裁判所は、104条の3の規定により、権利行使不能と判断しました。
 「以上の記載から,シート形状の被処理物を支持具で支持してメッキ液中でメッキ処理するに当たり,被処理物を垂直状態で支持すること,メッキ電流を陰極バー,支持具を介して被処理物に給電することは,第3特許出願前におけるメッキ処理という技術分野における周知技術であったことが認められる。そうすると,乙11の1発明において,被処理物をワークキャリアに保持してメッキ液中でメッキ処理するに当たり,上記の周知技術を適用して,被処理物を「ワークキャリア2」で垂直状態に保持すること,メッキ電流を「ワークキャリア2」及び「ワークレール13」を介して被処理物に給電することは,当業者であれば容易に行い得るものというべきであって,当業者は相違点1に係る構成を容易に想到できたものと認められる。
イ 相違点2について
上記2,(4)イで詳述したように,乙9の5刊行物(乙11の7刊行物)には,浴内で陰極レール(1)又は陰極フレームにおいて間隔を空けて交互に1列に配列されたワークピース(3)上になされる電解コーティングを向上させる工程に関し,各ワークピースの間隔を小さく保つことで「ドッグ・ボーン効果」と呼ばれる両端部近傍のメッキ厚さが肉厚となる現象の発生を抑える技術が開示されていることが認められ,一定の間隔に保持された各被処理物の間隔を設定するに当たり,被処理物の両端近傍のメッキ厚が肉厚とならないようにするために,その間隔を小さくすべきことは第3特許出願前におけるメッキ処理という技術分野における公知の解決手段であったといえる。そうすると,乙11の1発明において,めっき槽搬送手段に取り付けられた各被処理物の間隔を一定の間隔に保持するに当たり,上記の公知の解決手段を適用して,各被処理物の間隔をめっき厚さに不均一を生じない程度に小さく保持することは,技術分野が共通であり,均一なメッキ膜を形成するという技術課題も共通であることから,当業者が容易に行い得るものというべきであって,当業者は相違点2に係る構成を容易に想到できたものと認められる。」\n

◆判決本文

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 >> 104条の3

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平成20(ワ)38425等 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月21日 東京地方裁判所

 104条の3により、請求が認められませんでした。
 前記(1)で認定したように,乙20公報の記載内容を知る当業者は,乙22公報の記載自体からも,フレームサイズが294 mm ×427 mm のような大型ペリクルでも,ピンと張った状態でペリクル膜をたるみなくフレームに貼り付けることが要求されるものであり,その結果,ペリクル膜の張力によりフレームに歪みが生じ,その歪みは,フレームサイズが大きくなるにつれて増大するという技術課題が開示されているものと理解できる。他方,前記(2)で認定したように,長辺及び短辺を有する方形状の枠体において,長辺の撓みを減少させるために長辺の幅のみを広くすることは,技術常識であって,当業者が当然のこととして知るところである。そうすると,公知となっている,大型ペリクルにおいてフレームサイズが大きくなるにつれてフレームの歪みが増大するという上記の技術課題を解決する観点から,長辺の撓みを減少させるために長辺の幅のみを増大させるという上記の技術常識を当てはめて,ペリクル膜の張力による歪みに応じ,長辺の幅を短辺の幅よりも広くすることは,当業者が容易に想到することができたものであるといえる。したがって,前記相違点のうち,「長辺の幅」が「短辺の幅」よりも大きいという本件発明の構成は,乙22発明に,当業者の技術常識を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものというべきである。\n

◆判決本文

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 >> 104条の3
 >> 数値限定

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平成20(ワ)10854 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月24日 大阪地方裁判所

 サポート要件違反を理由にして104条の3により権利行使不能と認定されました。
 旧特許法36条5項1号は1 ,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」と規定し,特許請求の範囲の記載がこれに適合することを求めている(明細書のサポート要件)。その趣旨は,発明を公開させることを前提に,その発明に特許を付与して一定期間その発明を業として独占的,排他的に実施することを保障し,もって,発明を奨励し,産業の発達に寄与することを目的とする特許制度の趣旨に基づき,願書に添付すべき明細書に,発明の技術内容を一般に開示させるとともに,その効力の及ぶ範囲(特許発明の技術的範囲)を明らかにするという役割を果たさせるため,明細書の発明の詳細な説明に,その発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載することを要求し,公開されていない発明について独占的,排他的な権利が発生することにより,一般公衆からその自由利用の利益を奪い,ひいては産業の発達を阻害することを防ぐことにある。そして,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10042号同年11月11日特別部判決・判例タイムズ1192号164頁参照)。以下,かかる観点から,本件特許に係る特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものであるかについて検討する。・・・そうすると,本件特許発明が解決する課題(目的)は,環境に危険な材料を含まず,かつ,動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けてもスイッチが確実に作動するよう設計されたレベル・センサを得ることにあると認められる。そして,上記のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明の【実施例】の項に「水位レベルが上昇し始めると,レベルセンサは遂には傾き始め,…主水平位置に到達する。容積と重量の適切な選択により,水位レベルがセンサより上に如何に上昇するかに関係なく,センサはこの水平位置を取る(段落【0014 「。」】) センサがその水平位置近くからスタートすると,そのとき重心10がベアリング6,8の下で且つ右にある平衡重り9はベアリング6,8のまわりを時計方向に回転する。この回転は平衡重り9の表面の一つが中空本体1の内面と接触することによって制限される。このように移動している間,平衡重りの表\面13は接続円板5および弾性ヨーク16との接触を失っている。それからマイクロスイッチはスイッチが接続されるか又は切離されることを意味する他の位置をとるように作動される。」(段落【0015】)と記載されていることからすれば,本件特許発明の上記課題である,動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けてもスイッチが確実に作動するよう設計されたレベル・センサを得るため,本件特許発明のレベル・センサは,液中にある状態で,概ね主水平位置を安定的に維持するような構成を採用したものと解され,その具体的構\成の一つが,構成要件E,すなわち,平衡重りの重量を,センサが空気によって囲まれている時そのセンサの全重量の少なくとも30%とするとの数値限定したものと解される。ところで,そのような数値限定をする構\成を採用したことについて,本件明細書の発明の詳細な説明には,【実施例】の項に「マイクロスイッチを確実に停止させるため,平衡重り9は相対的に重く,レベル・センサの全重量の可成りの部分を構成する。しかしながら同時に,センサは製造上の理由のために重過ぎてはならない。受入れ可能\な安全性を得る最小値は全重量の30%であるが,適切な値は50から80%の間である。」(段落【0016】)と記載されており,この記載によれば,平衡重りの重量をセンサが空気によって囲まれている時そのセンサ全重量の少なくとも30%とすることが,本件特許発明の上記課題(その動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けても,概ね主水平位置を安定的に維持し,もってスイッチが確実に作動するよう設計されたレベル・センサを得る)を解決するために不可欠な構成とされていることが明らかである(上記数値限定を内容とする構\成が,本件特許発明が解決する課題のうち「環境に危険な材料を含ま」ないレベル・センサを得ることを解決するものでないことは明らかである。)。・・・以上によれば,「レベル・センサを液中において概ね主水平位置に安定的に維持する」という効果との関係において,平衡重りとセンサ全体の重量比が影響を及ぼすとの技術常識を認めることはできない。エ以上によれば,本件特許に係る出願時の技術常識に照らして,本件明細書の上記記載から,「動作環境下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける外力を受けてもスイッチが確実に作動する」との効果を得るために,平衡重りの重量をセンサ全重量の30%以上にすることの技術的意義ばかりでなく,平衡重りの重量をセンサ全重量の一定割合を超えるように設定することの技術的な意味を当業者が理解することができないというべきである。他に,平衡重りの重量をセンサ全重量の一定割合を超えるように設定することの技術的な意味を示唆するような記載も見当たらない。したがって,本件特許の特許請求の範囲の記載は,明細書のサポート要件に違反するというべきである。

◆判決本文

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平成21(ネ)10046 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月28日 知的財産高等裁判所

 第1審は、進歩性なしを理由として104条の3により権利行使不能と認定しました。控訴人は、引用文献に記載の技術は、基本原理が異なると控訴しましたが、知財高裁は原審の判断を維持しました。
 すなわち,確かに,同じ断面の管路に同じ速さで液体を流すことを前提とするならば,粘性の高い液体にはその分だけ高い圧力を必要とすることとなる。しかし,実際の装置における液体の流速は,ノズルの長さ,大きさや液体の粘性などの諸条件に応じて異なり,液体に加えられる圧力も異なるものと認められ,乙22に記載された「0.1から5bar」という圧力は,一概に低いとは言い切れないとしても,高いとも断言できないものである。また,前記a(b)のとおり,乙22記載の発明において分析液体7が圧力チャンバー1内で加圧下に保持されていたとしても,そのことから直ちに,乙22記載の発明が液体供給源の圧力によって液体が放出されることを基本原理とするものとは認められない。・・・前記(ア)bのとおり,乙22の記載(【0021】等)によれば,液圧加速とは,閉鎖領域19がノズル放出口3より広いことにより,閉鎖素子13の移動の速さよりもノズル放出口3から放出される液体の速さが速くなることを意味するものと認められ,原告主張のように,閉鎖素子の移動によってバルブの開きが小さくなったときに流量が減少するという問題に対して流量を補うものとは認められない。以上によれば,乙22記載の発明は,閉鎖素子の移動によって液体が放出されるものと認められ,液体供給源の圧力によって液体が放出されることを基本原理とするものとは認められない。

◆判決本文

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