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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

104条の3

平成26(ネ)10124  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年12月16日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審は80万円の損害賠償を認めました。1審と同時係属の無効審判(無効2014-800004)では無効理由なしと判断されていました。知財高裁は、1審判断を取り消しました。理由は、本件発明におけるガイド板について文言通り判断し、乙13発明から新規性なしというものです。なお、前記無効審判では乙13発明からの進歩性は争われていませんでした。
 本件特許発明の特許請求の範囲(請求項1)には,「ガイド板」に 関し,「前記本体と可動的に接続されたガイド板」及び「前記本体が 前記ガイド板に対して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃 または前記第2の刃が出る」との記載があるが,「ガイド板」の形状, 大きさ,厚さ,材質などを特定のものに限定する記載はない。また, 「カッター」は,一般に,「切る道具」,すなわち,切断道具を意味 するものであり(広辞苑第六版),本件特許発明の「ガイド板」は, 切断道具である「カッター」を構成する部材である。加えて,一般に,「ガイド」とは「案内すること。手引きすること。」\nなどを意味し,「板」とは「1)材木を薄く平たくひきわったもの。2) 金属や石などを薄く平たくしたもの。」などを意味すること(広辞苑 第六版)を踏まえると,請求項1の記載から,本件特許発明の「ガイ ド板」は,「切断方向を案内するための平たい形状の部材」であるこ とを理解することができる。 次に,本件明細書には,「ガイド板」の語を定義した記載はない。 また,本件明細書には,「ガイド板」に関し,「本体(1)の中に, カッターナイフの刃(2)を設け,シャフト(3)の通ったガイド板 (4)を設ける。」(段落【0005】),「このシートカッターは ノンスリップシートなどの表面の凹凸に,ガイド板(4)を合わせ,シャフト(3)を軸に本体を傾けるだけで,設けてあるカッターナイ\nフの刃(2)が出てくる。後はノンスリップシートなどの凹凸に沿わ せ滑らせるだけで,光の向きや照度に左右される事なく,簡単できれ い,かつ迅速にノンスリップシートなどを切断できる。」(段落【0 006】),「本体(1)の中にカッターナイフの刃(2)を設け, シャフト(3)を軸にスイングするガイド板(4)を設ける。・・これ を使用する時は,ガイド板(4)をノンスリップシートなどの表面の凹凸に合わせ,シャフト(3)を軸にして本体(1)を傾けカッター\nナイフの刃(2)を出す。」(段落【0008】)との記載があるが, 「ガイド板」の形状,大きさ,厚さ,材質などについて具体的に述べ た記載はないし,「ガイド板」がノンスリップシートなどの切断対象 物の切断時に切断対象物等に対してどのように作用するのかに関して, これを特定の態様に限定する記載もない。 さらに,図2及び3には台形の上辺に中央に孔の開いた半円を組み 合わせた形状のガイド板4が示されているが,本件明細書には,「ガ イド板」の形状を図2及び3に示すものに限定する記載はない。 以上の本件特許発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件 明細書の記載によれば,本件特許発明の「ガイド板」(構成要件D)は,「切断方向を案内するための平たい形状の部材」であると認めら\nれる。
b この点に関し,被控訴人は,「ガイド板」の文言及び本件明細書記 載の本件特許発明の効果(第1及び第2の効果)に照らすと,本件特 許発明の「ガイド板」は,「切断面に沿わせて切断方向をガイドする ための板」と解すべきである旨主張する。 しかしながら,前記aのとおり,本件特許発明の特許請求の範囲(請 求項1)及び本件明細書には,「ガイド板」の形状,大きさ,厚さ, 材質などを特定のものに限定する記載はないし,また,本件明細書に は,「ガイド板」が切断対象物の切断時に切断対象物等に対してどの ように作用するのかに関して,これを特定の態様に限定する記載はな く,被控訴人が本件特許発明の第1の効果において主張するような「ガ イド板」が「切断面に沿わせて滑らせることにより切断する方向をリ ードする部材である」ことを示した記載もない。 さらに,被控訴人が主張する本件特許発明の第2の効果は,本件明 細書の段落【0008】記載の「応用例として,壁紙の施工時,入り 隅や枠の凹凸に沿わせ,…壁紙の余計な部分を,地ベラや定規を使用 せず切り取る。」という効果であり,同段落に「応用例として」との 記載があるように,本件特許発明の一実施形態の効果として本件明細 書に示されたものであって,本件特許発明自体の特徴的な効果である ということはできないから,これをもって「ガイド板」の意義を特定 の構成のものに限定して解釈することはできない。以上によれば,本件特許発明の「ガイド板」は,「切断面に沿わせ\nて」切断方向をガイドする構成のものに限定されるものではないというべきであるから,被控訴人の上記主張は,この点において採用する\nことができない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成25(ワ)32665

◆無効審判の審取事件です。平成26(行ケ)10198

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平成26(ネ)10102  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年11月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について、進歩性がないので104条の3により権利できないとした1審判断が維持されました。
 相違点に係る本件発明1の構成は,「危険源評価データ生成手段」が「前\n記演算手段を使用して,前記危険源評価マスターテーブルを参照して,前 記内訳データ生成手段により生成された内訳データに含まれる各要素に基 づき,当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し,該 抽出した危険有害要因および事故型分類を含む危険源評価データを生成す る」(構成要件2−E)というものである。\n本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載には,「危険源評価デ ータ」が抽出した危険有害要因及び事故型分類を含むことのみが特定され ており,その形式や態様等が特定されているわけではないから,「危険源 評価データ」は,抽出した危険有害要因及び事故型分類を含むものであり さえすれば足りるものと解される。 他方,乙5発明において,「内訳データ」に含まれる「要素」である「規 格」に基づき,「危険源評価マスターテーブル」を参照し,「当該要素に 関連する危険有害要因及び事故型分類」(「安全管理情報」)を抽出して いることは,前記(4)オ認定のとおりである。 そして,乙5発明において,上記抽出した「安全管理情報」を利用する ためにこれをデータとして出力し,「危険有害要因及び事故型分類を含む 危険源評価データ」を「生成」するように構成することは,当業者であれ\nば格別の困難なく行うことができたことが認められる。 したがって,乙5に接した当業者であれば,相違点に係る本件発明の構\n成(構成要件2−Eの構\成)を容易に想到することができたものと認めら れる。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成25(ワ)19768

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平成27(ネ)10075  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年11月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 冒認であるとして無効とした原審の認定について、知財高裁はこれを維持しました。被控訴人はアップルです。
 発明者とは,当該発明の特徴的部分,すなわち,特許請求の範囲に記載 された発明の構成のうち,従来技術には見られない部分の完成に創作的に\n寄与した者であると解すべきところ,本件発明において,従来技術には見 られない部分は構成要件Eのみであり,構\成要件FないしHの構成は本件\n出願前の公知技術にすぎないから(後記イないしエ参照),本件発明の特 徴的部分は,構成要件Eの構\成のみである。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成25(ワ)14849

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平成27(ワ)1025  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年10月29日  東京地方裁判所

 サントリーVSアサヒのノンアルコールビールについての特許権侵害事件です。成分を特定した特許について、進歩性なしとして無効(特104条の3)と判断されました。 請求項は「エキス分の総量が0.5重量%以上2.0重量%以下であるノンアルコールのビールテイスト飲料であって,pHが3.0以上4.5以下であり,糖質の含量が0.5g/100ml以下である,前記飲料。」です。
 公然実施発明1は,本件特許の優先日当時,我が国におけるノンアルコールのビールテイスト飲料の中で販売金額が最も大きかったが,その一方で,消費者から,コク(飲み応え)がない,物足りない,味が薄いといった評価を受けていた。(乙10,34〜36) ノンアルコールのビールテイスト飲料については,本件特許の優先日以前から,濃厚感,旨味感,モルト感,ボリューム感やコク感を欠くという問題点が指摘されており,これらを解消して飲み応えを向上させるため,穀物の摩砕物にプロテアーゼ処理を施して得られる風味付与剤,麦芽溶液を抽出して得られる香味改善剤又は香料組成物,植物性タンパク分解物や麦芽抽出物,麦芽エキス,清酒由来のエキスを用いる風味向上剤,茶葉の水又はエタノール抽出物といった添加物を用いる技術が周知となっていた。(乙14〜16,25〜27) 本件明細書におけるエキス分の総量とは,アルコール度数が0.005%未満の飲料の場合,脱ガスしたサンプルをビール酒造組合国際技術委員会(BOCJ)が定めるビール分析法に従って測定したエキス値(重量%をいう(段落0022)。上記(イ)の風味付与材料等はいずれもこの方法の測定対象となるエキス分に当たる。(甲2,乙2)
上記事実関係によれば,公然実施発明1に接した当業者において飲み応えが乏しいとの問題があると認識することが明らかであり,これを改善するための手段として,エキス分の添加という方法を採用することは容易であったと認められる。そして,その添加によりエキス分の総量は当然に増加するところ,公然実施発明1の0.39重量%を0.5重量%以上とすることが困難であるとはうかがわれない。そうすると,相違点に係る本件発明の構成は当業者であれば容易に想到し得る事項であると解すべきである。\nなお,飲料中のエキス分の総量を増加させた場合にはpH及び糖質の含量が変化すると考えられるが,エキス分には糖質由来のものとそれ以外のものがあり(本件明細書の段落【0020】,【0033】参照),pHにも多様のものがあると解されることに照らすと,公然実施発明1にエキス分を適宜(例えば,非糖質由来で酸性又は中性のものを)加えてその総量を0.5重量以上としつつ,pH及び糖質の含量を公然実施発明1と同 程度のもの(本件発明の特許請求の範囲に記載の各数値範囲を超えないもの)とすることに困難性はないと解される。

◆判決本文

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平成26(ワ)688  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年7月31日  東京地方裁判所

 争点の一つが、分割要件違反かです。東京地裁は、薬剤の特許について分割要件を満たさないとして、104条の3で無効と判断されました。
 上記ア及びイからすると,本件方法特許の出願当初は,保存方法の対象となる結晶について,20.68°の回折角(2θ)のピーク強度を100%とした場合の30.16°の回折角ピークの相対強度が25%よりも大きなもののみとしていたにもかかわらず,上記イの補正により,上記相対強度が25%以下のものを含むものへと拡大されたものと認められる。そして,出願当初の特許請求の範囲,明細書及び図面には,構成要件Cの相対強度の発明特定事項を満たさない結晶形態であっても安定に保存できることについての記載はない。\nそうすると,上記イの補正は,新たな技術的事項を導入するものであって,特許法17条の2第3項の補正要件に違反するから,本件方法特許は,同法123条1項1号により無効とされるべきものである。

◆判決本文

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平成26(ワ)18842  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年7月28日  東京地方裁判所

 特許侵害訴訟です。東京地裁は、文言解釈により技術的範囲に属しないと判断しました。また進歩性なしとして特許104条の3により権利行使不能とも判断してます。\n
 まず,「接触圧」との文言について,原被告双方が異なる解釈を採って いるため,この点について検討する。 「圧」とは「おしつける力」を意味し,「接触」とは「近づきふれるこ と,さわること」を意味する(広辞苑第6版,乙1参照)。 そして,これらの文言の通常の解釈からすれば,本件特許発明1におけ る「接触圧」との文言は,複数の物体が互いに接触する際に生じる力ない し圧力を意味するものと解されるところ,次に指摘する本件特許1の明細 書の記載を参酌すれば,上記文言は,複数の物体が互いに接触する際に生 じる力を意味すると解すべきである。 すなわち,本件特許1の明細書(甲2)において,前記ア 「・・・上記複数の弾性腕の接触部はコネクタ嵌合時に相手端子と最初に 接触する接触部から順に相手端子に対する接触圧が小さくなっており,相 手コネクタを嵌合するときに,最初の接触部を圧したその勢いで,次の弾 性腕の接触部を圧することができるので,小さい挿入力で弾性変形させる ことができ・・・」「指圧(操作者がコネクタ嵌合時に相手コネクタを押 し込む力であり,接触部での接圧に比例する。)」などと記載されている ことからすれば,同明細書の記載は「接触圧」を力と同視しているものと いえ,「接触圧」が相手端子と各弾性腕の接触部との間で生じる力を意味 すること,すなわち「力」であることが明らかといえる。 これに対し,原告は,「接触圧」とは単位変位量当たりの反力(N/m m)を意味する旨主張する。しかし,これは通常の文言解釈に反する上, 原告の上記解釈を根拠付けるような明細書上の記載は存在しないため,原 告の上記主張を採用することはできない。 このほか,原告は,上記「接触圧」が,嵌合終了時点ではなく嵌合途中 の数値を指すとも主張するところ,既に検討したところによれば,この点 について判断するまでもなく,原告の同主張は採用できない。 ウ 原告は,「接触圧」に関する自らの解釈を前提として,被告製品が構成\n要件1Fを充足する旨主張するが,「接触圧」に関する原告の解釈を採用 できないことは前記イのとおりであって,被告製品が「接触圧」に関する 構成要件1Fを充足することを認めるに足りる証拠はない。\n

◆判決本文

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平成24(ワ)6435  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年5月28日  大阪地方裁判所

 特102条1項による損害として、特許権者の利益額350万/台(限界利益)*被告の販売台数5台=1750万円が認められました。
 被告は,本件特許が登録された後,5台の被告製品(被告製品1を4台,被 告製品2を1台。)を販売したことを自認している(前記第2の6【被告の主 張】(1))。
イ 原告は,契約後,未納となっている被告製品の譲渡が少なくとも3台あるこ とを主張する。 一般論として,侵害品の譲渡契約がされた場合には,それが未納であったと しても,特許法102条1項にいう「譲渡数量」に加算できる場合はあるもの というべきであるが,本件においては,上記譲渡契約に基づいて,被告製品と して特定された本件特許発明の技術的範囲に属する製品が納入されることに ついて,的確に認定し得る証拠は提出されていないから,上記3台が特許法1 02条1項にいう「譲渡数量」に含まれるものと認めることはできない。 したがって,被告製品の譲渡数量は,5台と認めるのが相当である。
(2) 被告の侵害行為がなければ原告が販売することができた物について 証拠(甲12,13)によると,原告が販売する型番HTP−3,6,10, 15,20ないしHT−3,6,10,15,20の製品は,本件特許発明の実 施品と認められるし,仮にそうでなかったとしても,自治体の廃棄物処理場等に 納入される破袋機であって,被告製品と競合する関係にあることは明らかである。 したがって,原告は,販売可能な製品を有していたものといえる。\n
(3) 単位数量当たりの利益の額
証拠(甲19)及び弁論の全趣旨によると,原告は,次のとおり,上記(2)の原 告実施品を製造,販売したこと,原告製品の実際の製造は外注によって行われ, 下記の粗利において直接労務費は既に控除されているものと認められる。 そうすると,原告製品の販売台数は14台,売上合計は9039万円,粗利合 計は4917万8369円,1台当たりの粗利は,351万2740円(1円未 満切り捨て)となる。
・・・
なお,前記のとおり,原告が現実の製造を外注して行っているのであれば,い わゆる限界利益を考慮するとしても,製造人件費,変動経費は外注費として控除 されていると考えられるから,本件において,上記からさらに控除すべき経費は 想定されない。 被告は,そのような利益率は常識はずれであって合理性がないと主張するが, 何ら具体的根拠,証拠を提示しないし,控除すべき費目を具体的に特定するもの でもないから,上記判断を左右しない。 したがって,単位数量当たりの利益の額は,351万2740円と認められる。 (4) 原告の実施能力
上記認定にかかる原告の販売実績及び被告の譲渡数量を比較すると,原告の実 施の能力から,被告の販売台数5台全てを原告が販売できたものと認められる。\n(5) 販売することができないとする事情(特許法102条1項ただし書)
ア 競合品の存在,破袋機の流通形態について
被告は,破袋機を製造する第三者が多数存在することを指摘し,その旨の証 拠(乙55から71まで)を提出するが,単に破袋機を製造販売するメーカー が存在することを挙げるにすぎず,本件特許発明を回避しつつ,同様の作用効 果を発揮する競合品の存在や具体的なシェアが明らかとなっているものでは ないから,上記証拠によって本項ただし書の事情を認めることはできない。 また,破袋機が,常時市場に存在するものでないことは,そもそも本項ただ し書に該当する事情に当たらない。
イ 原告製品と被告製品の価格差について
上記のとおり,原告製品の販売価格は,418万円から950万円であるの に対し,被告製品の販売価格(定価)は,証拠(乙41ないし45)及び弁論 の全趣旨によると,350万円であることが認められる。もっとも,原告製品 のうち高価格のものは,容量ないし処理量の大きいものと認められるから,こ の点も考慮に入れると,原告製品の価格帯と,被告製品の価格帯の差はさほど 大きなものとは評価できず,本項ただし書にいう事情に当たるとはいえない。 ウ 寄与度について
本件特許発明は,破袋機の構造の中心的部分に関するものである上,原告は,\n一定のブランド力も有するものであるから,上記のとおり,多様な破袋機を製 造販売するメーカーが,原告,被告のほか多数あること等の被告の主張を考慮 に入れたとしても,本件特許発明が被告製品や原告製品に寄与する割合を減ず ることはできない。 また,被告が日本唯一の雪上車メーカーであることは,本件と何ら関係のな い事情である。
(6) まとめ(特許法102条1項による金額)
以上によると,特許法102条1項により,原告の損害は,単位数量当たりの 利益額351万2740円に,被告の譲渡数量5台を乗じた,1756万370 0円と推定され,この推定を覆す事情は認められない。 なお,特許法102条2項により推定される金額は,被告の売上額の合計が上 記金額に満たないものと認められる(乙41ないし44)から,本件においては これを採用しない。
(7) 保守費用について
ア 特許権者は,物の発明にあっては,特許発明を使用した製品(以下「特許製 品」という。)の「使用」についてもその権利を専有するものであるから(特 許法68条,2条3項1号),侵害品の譲受人が侵害品を使用することもまた, 特許権侵害となり,不法行為を構成することになる。\nそうすると,侵害品を保守,修理することで,譲受人の侵害品の使用を継続 させたり,容易させたりなどした場合は,上記使用による不法行為を幇助する ものとして,共同不法行為(民法709条,719条2項)を構成する余地が\nあるが,侵害品の保守,修理それ自体は,間接侵害(特許法101条)の規定 に抵触しない限り,独立の不法行為となるものではない。 イ 原告は,被告の使用者に対する保守行為を不法行為の幇助と構成し,前記検\n討した被告製品の譲渡による損害とは別に,保守行為によって被告が得た利益 相当額を原告の単価等により計算した上,これを原告の逸失利益として,被告 に対する損害賠償として請求するものであるが,本件においては,被告の保守 行為それ自体が独立の不法行為に当たることを認めるに足りる証拠はないし, 原告もそのような主張はしていない。 ウ また,本件においては,既に検討したとおり,侵害品の製造,譲渡を理由と する損害賠償請求が認容され,これによって,原告の販売機会喪失等による損 害は全て填補されるところ,これとは別に,譲受人が侵害品を使用することに よって,原告にどのような損害が生じるかは明らかにされておらず,これに対 する幇助として,被告がさらに損害賠償義務を負担すると認めるべき理由はな い。
エ そうすると,原告の,保守費用相当額の損害賠償請求は,理由がないものと いうべきである。

◆判決本文

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平成24(受)1204  特許権侵害差止請求事件 平成27年6月5日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  知的財産高等裁判

 一部の構成を製法で特定した物の発明について、知財高裁は「発明の要旨は,当該物をその構\造又は特性により直接特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するときでない限り,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物に限定して認定されるべき」としましたが、最高裁はこれを破棄差戻しました。
 特許法36条6項2号によれば,特許請求の範囲の記載は,「発明が明確であること」という要件に適合するものでなければならない。特許制度は,発明を公開した者に独占的な権利である特許権を付与することによって,特許権者についてはその発明を保護し,一方で第三者については特許に係る発明の内容を把握させることにより,その発明の利用を図ることを通じて,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とするものであるところ(特許法1条参照),同法36条6項2号が特許請求の範囲の記載において発明の明確性を要求しているのは,この目的を踏まえたものであると解することができる。この観点からみると,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているあらゆる場合に,その特許権の効力が当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物に及ぶものとして発明の要旨を認定するとするならば,これにより,第三者の利益が不当に害されることが生じかねず,問題がある。すなわち,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲において,その製造方法が記載されていると,一般的には,当該製造方法が当該物のどのような構\\造若しくは特性を表しているのか,又は物の発明であってもその発明の要旨を当該製造方法により製造された物に限定しているのかが不明であり,特許請求の範囲等の記載を読む者において,当該発明の内容を明確に理解することができず,権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予\測可能性を奪うことになり,適当ではない。他方,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲においては,通常,当該物についてその構\造又は特性を明記して直接特定することになるが,その具体的内容,性質等によっては,出願時において当該物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能\であったり,特許出願の性質上,迅速性等を必要とすることに鑑みて,特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要するなど,出願人にこのような特定を要求することがおよそ実際的でない場合もあり得るところである。そうすると,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法を記載することを一切認めないとすべきではなく,上記のような事情がある場合には,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として発明の要旨を認定しても,第三者の利益を不当に害することがないというべきである。
以上によれば,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能\\であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁平成24年(受)第1204号平成27年6月5日第二小法廷判決・裁判所時報1629号登載予定参照)。 以上と異なり,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,そのような特許請求の範囲の記載を一般的に許容しつつ,その発明の要旨は,原則として,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造された物に限定して認定されるべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本判決の示すところに従い,本件発明の要旨を認定し,更に本件特許請求の範囲の記載が上記4(2)の事情が存在するものとして「発明が明確であること」という要件に適合し認められるものであるか否か等について審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

◆判決本文

◆原審はこちらです。 平成22(ネ)10043

◆関連訴訟です。平成24(受)2658

◆関連事件の原審はこちらです。平成23(ネ)10057

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平成26(ネ)10015  債務不存在確認請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年3月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審での訂正の再々抗弁も理由なしと判断されました。
 本件訂正発明1のメッセージ提供手段は,特許請求の範囲(甲7の2)の記載によれば,「前記連絡先番号に係る広告主に対し,前記広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供するメッセージ提供手段」というものである。 ここに,「前記広告情報」とあるのは,「いずれの広告情報に基づいて架電してきたかを識別するための識別番号と連絡先番号とを関連情報として有するデータベース」との発明特定事項中の「広告情報」を指すものであるから,この広告情報は,識別番号を有する「いずれの広告情報」を意味することとなる。すると,「前記広告情報に基づく架電である旨」は「いずれの広告情報に基づく架電である旨」と解することができる。このことは,1)本件訂正発明1が,識別番号に基づいて接続処理をするにもかかわらず,一転して,メッセージ提供手段が提供するメッセージのみがその識別番号を利用しないことが不自然なこと,2)メッセージ提供手段が提供するメッセージが,「広告情報に基づく架電である」それ自体を通知するものであるとした場合,「いずれの広告情報に基づいて架電してきたかを識別するための識別番号」と,広告情報と識別番号との関連付けを明示した意味がなくなってしまうことからみても,肯定することができる。 したがって,特許請求の範囲の記載からは,メッセージ提供手段が提供するメッセージは,「いずれの広告情報に基づく架電である旨」すなわち「複数の広告情報のうちのいずれの広告情報に基づく架電である旨」と解することができる。
(b) 本件明細書の記載
本件明細書(甲1)には,次の記載がある。
・・・
これらの記載によれば,CTI演算部は,あらかじめ記録された所定の応答音声データを応答検知部623Cから出力できるところ,その音声データを,識別番号に従った音声データとすることを妨げる記載はないから,本件訂正明細書の記載を参酌しても,上記特許請求の範囲の記載の検討結果を左右するものとまではいえない。 (c) 被控訴人らの主張について 被控訴人らは,本件訂正発明1のメッセージ提供手段が提供するメッセージは,本件訂正明細書の【0039】【0156】【図10】の記載からみて,「広告情報に基づく架電である」旨であると主張する。 しかしながら,当該メッセージの内容についての特許請求の範囲の記載は,前記のとおり解釈され,明細書における上記各記載のメッセージの内容は,例示にすぎないほか,その記載における「○○からの入電です。」の「○○」も,「広告情報を閲覧した利用者からの入電です。」の「広告情報」も,「いずれの広告情報」と解釈する余地があるから,被控訴人ら主張の記載は,メッセージ提供手段が提供するメッセージが,単に,「広告情報に基づく架電である」旨の通知であることを積極的に根拠付けるものとまではいい難い。 被控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(d) 小括
以上のとおり,本件訂正発明1のメッセージ提供手段が提供するメッセージは,広告主に対して,「複数の広告情報のうちのいずれの広告情報に基づき架電したきたか」を通知するものであり,その広告情報の具体的な内容を広告主に通知することと特定するものと認められる。
・・・・・
上記(a)〜(c)の記載によれば,発信者からの呼を受けた転送元が,その呼を転送先に転送する際に,呼に関するメッセージを提供しているといえ,このような架電接続方式は周知技術であったと認められる。 控訴人は,甲33は,広告に関するものではなく,受信者の利便を目的とするので,甲12A発明とは分野,目的を異にする旨を主張する。しかしながら,相違点である構成【訂正1−G】は,専ら通話の転送の際のメッセージ提供に係るものといえ,控訴人主張の甲33と甲12A発明との相違が,転送の際のメッセージの提供に係る甲33に記載の事項を,相違点に係る周知技術の認定資料とすることを妨げることはない。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
c 容易想到性
甲12A発明は,電話3からの呼を受けたサーバが,その呼をアクセス先の電話に接続(転送)する架電接続方式であるといえる。また,上記bのとおり,発信者からの呼を受けた転送元が,その呼を転送先に転送する際に,呼に関するメッセー ジを提供する架電接続方式は周知技術である。 そうすると,甲12A発明と周知技術は,ともに呼の転送を行う架電接続方式であるから,甲12A発明において,周知技術を採用し,呼をアクセス先の電話に転送する際に,呼に関するメッセージを提供するように設計変更することに格別の困難性は認められない。そして,甲12A発明のサーバは,受けた呼が,どのような種類の広告を見た発信者からの呼であるかを認識できるのであるから(甲12の【0025】),呼をアクセス先の電話に転送する際に,呼に関するメッセージとして,どのような種類の広告を見た発信者からの呼である旨,すなわち,いずれの広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供するように構成することは,当業者であれば容易に想到し得るものであり,その構\成をとったことによる効果も,甲12A発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
(ウ) 控訴人の主張について
1)控訴人は,相違点に係る本件訂正発明1の構成により,着信応答時に,直ちに広告効果があったか否かを広告主に伝えることを可能\とする顕著な効果を奏する旨を主張する。 しかしながら,相違点に係る本件訂正発明1の構成,すなわち,広告主に対しいずれの広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供する構\成が,当業者にとって容易に組み合わせられることは,前記のとおりであり,そのような構成を採用した場合,着信応答時に広告効果があったか否かが分かるのは当然の帰結であるから,控訴人主張の上記効果は,甲12A発明及び周知技術から,当業者が予\測し得る範囲内のものである。 控訴人の上記主張は,採用することができない。 2) 控訴人は,甲12A発明は,架電がすべて広告情報を視聴した者からされるため,アクセス先に対して広告情報に基づく架電である旨のメッセージの提供をする実益はなく,甲12A発明に本件訂正発明1の構成【訂正1−G】を組み合わせる動機付けがない旨を主張する。\n しかしながら,甲12A発明の構成は,広告を視聴せず「アクセス先電話番号」に架電したユーザの存在を排除するものではなく,このことは,本件訂正発明1と全く同様である。\n控訴人の上記主張は,その前提に誤りがあり,採用することができない。 イ 本件訂正発明6 上記アの認定判断によれば,本件訂正発明6が,甲12B発明及び周知技術から容易に想到できたことは明らかである。

◆判決本文

対応する無効審決に対する取消訴訟はこちらです。平成26(行ケ)10184

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平成26(ネ)10069  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年3月5日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審でも進歩性違反有りとして、損害賠償請求は棄却されました(特104条の3)
 上記記載によれば,乙7発明について,次のとおり認められる。 乙7発明は,鋳造品の製造において,鋳型に溶湯を注入する際,溶湯が装入された取鍋を,保持炉等から注湯機まで自動的に搬送するための装置に関するものである。従来,鋳造品の製造において,鋳鉄等の溶湯が装入された取鍋を保持炉から注湯機まで搬送する作業は,ホイストで取鍋を吊り上げ,モノレールにより走行させていたが(【0001】,【0002】,図5),ホイストによる取鍋の上下動及びモノレールによる電動走行を除き,そのほとんどは作業者の手作業であり,また,作業者は取鍋に追従して移動する必要があり,さらに,溶湯が装入された取鍋をホイストで吊って搬送することには,各種の危険があった(【0004】,【0005】)。そこで,取鍋の搬送作業を自動化することによって危険を回避するとともに,取鍋搬送を安定化し,更に時間短縮等,作業の効率化を図ることを目的とし(【0006】),保持炉と注湯機の間にレールを敷設し,取鍋を載置した台車を走行機構により電動走行させ,台車上に設けたローラコンベア(本件発明の「取鍋移動手段」に相当。)と,注湯機上に設けたローラコンベア(本件発明の「取鍋移送手段」に相当。)により,取鍋を,台車から注湯機上における取鍋を載置すべき所定位置へ移送するもの(【0007】,【0008】,【0012】,図1,図3)である。\nしたがって,乙7文献には,取鍋を保持炉から注湯機上に搬送するため,ホイストとモノレールに換え,取鍋を載せて自走し,かつ,載せた取鍋をその上で移動させるためのローラコンベアと,注湯機上に設けたローラコンベアからなる取鍋移送手段を用いることが記載されているといえる。
(イ) そこで,乙5発明に乙7発明を適用することにより,本件出願時に当業者が本件発明を容易に想到することができたか否かについて検討する。 前記に認定したとおり,乙5発明と乙7発明は,いずれも,鋳鉄の鋳造設備に関するものであり,保持炉に保持されていた鋳鉄溶湯を取鍋に装入し,その鋳鉄溶湯が装入された取鍋を,保持炉から次の所定の処理を行う装置まで搬送する工程を有する点で共通するものである。 また,「鋳造工場の自動化・省力化マニュアル」(平成7年3月31日発行。財団法人素形材センター。乙24)によれば,鋳造設備において取鍋を搬送する際,クレーンあるいはモノレールを使用した空間搬送の場合であっても,人が所定の場所までペンダントを持って運ぶことが多く,溶湯が高温であるから,その安全性が第一に問われていたこと,そのため,その安全性を確保しながら,工場の環境整備,省力化のために搬送手段の自動化が進められてきたことが認められ,その方法として,自動走行クレーンの利用による空中搬送のほかに,地上方式の場合も少なくなく,搬送には様々な方法,用途があり,実用化がされていたことが認められる(97〜99頁)。これによれば,本件出願当時,当業者にとって,取鍋を搬送するに当たっては,その作業を自動化することによって危険を回避するとともに,取鍋搬送を安定化し,更に時間短縮等,作業の効率化を図るという課題が周知であり,空中搬送に換えて地上搬送を行うことも周知であったと認められる。 そして,乙7発明は,前記のとおり,取鍋の搬送作業を自動化することによって危険を回避するとともに,取鍋搬送を安定化し,更に時間短縮等,作業の効率化を図ることを目的としたものである。 そうすると,乙5発明及び乙7発明に接した当業者であれば,乙5発明において, 前炉に保持されていた溶鉄が充填された取鍋を,前炉から処理ステーションに搬送するに当たり,取鍋の搬送作業を自動化することにより,危険を回避するとともに,取鍋搬送を安定化し,更に時間短縮等,作業の効率化を図るために,取鍋の搬送手段として乙7発明を適用して,前炉と処理ステーションの間にレールを敷設し,取鍋を載置した台車を走行機構により電動走行させ,台車上に設けたローラコンベアと,処理ステーションに設けたローラコンベアにより,取鍋を,台車から処理ステーションにおける適宜定められた位置へ移送するという相違点に係る構\成を容易に想到することができるというべきである。

◆判決本文

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平成24(ワ)15693  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年1月23日  東京地方裁判所

 図書保管管理システム(CS関連発明)について、技術的範囲に属しないと判断されました。また、訂正の抗弁についても、「再訂正によって特許の無効理由が解消されるとは認められない」と判断されました。
 本件発明が物の発明であることに鑑みると,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに対して…更新する」との文言から,上記更新手段は,\n ステーションに搬送された状態で,図書が取り出された状態のコンテナ又は図書が返却された状態のコンテナに対して,記憶手段の記憶内容を更新するという構成を示していると解するのが自然である。そして,本件明細書等には,「図書館員がコンソ\ール54を操作して返却完了の指示を中央処理装置39に入力すると,図書コードと,…コンテナ番号とを組み合わせ,その組み合わせたデータを…前記ハードディスク47等に登録する。」(段落【0051】),「…図書館員がコンソール54を操作して取り出し完了の指示を中央処理装置39に入力すると,…更新する。」(段落【0058】)というように上記解釈を裏付ける記載はあるが,その一方で,本件明細書等には,ステーションに搬送されていない状態で,図書の取り出し又は返却の完了していない状態のコンテナに対して更新するものとする更新手段の構\成については,記載されていないし,かかる構成の示唆すらない。\nさらに,前記の本件明細書等の記載には,「…図書の取り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,…記憶内容が更新される」(段落【0010】),「このようなサイズ別フリーロケーション方式による図書の保管管理手段を採用することにより,…同一寸法の図書ならば,その寸法の図書を収容するためのコンテナ内に任意に返却することが可能となるので,…自動化による図書の取り出し及び返却作業の能\率を効果的に向上させることができる」(段落【0011】)と記載されており,これらの記載から,本件発明において前提とされるサイズ別フリーロケーション方式は,同一寸法の図書ならばコンテナ内に任意に返却することが可能な構\成,すなわち,同一寸法の図書であればその寸法の図書を収容するためのコンテナ内に空きのある限り任意に収容することが可能な構\成とされているものと理解することができる。そして,コンテナ内に空きのある限り図書を任意に収容するためには,図書の取 り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,更新手段が記憶内容を更新する,すなわち,図書の取り出しや返却が行われた状態にあるコンテナに対して記憶内容を更新することが必要であり,そのような構成が本件発明におけるサイズ別フリーロケーション方式の前提となっているものと解される。
ウ したがって,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに対して…更新する更新手段」とは,ステーションに搬送された状態で図書が返却された状態のコンテナに対して記憶内容を更新する構\成を具備する更新手段をいうものと解するのが相当である。
・・・
以上のイないしオによれば,乙22公報,乙26公報,乙23公報,乙27公報には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚領域を設けること,又は,自動倉庫の分野で幅及び高さがそれぞれ異なる棚領域を設けることが記載されており,これらのことが従来周知の技術的事項であると認められる。 また,乙26公報及び乙27公報に記載されているように,自動倉庫に格納される収容物がコンテナ又は容器に収納した状態で格納されることは,周知の事項であり,乙27公報に記載されているように,収容物の寸法に応じて大きさの異なる容器を使い分けることも,従来から一般的に行われていることであると認められる。そして,このコンテナ又は容器が収容される棚領域が,収容物の大きさ(寸法)に対応したものとなることは自明の事項である。 以上によれば,前記イないしオから,「収容物の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領域を有する倉庫とそれぞれが収容された棚領域に対応した寸法を有する複数の収容物を収容する複数のコンテナを備えた自動公庫」との事項が周知技術であると認められる。 キ そして,乙12発明と上記カで認定した周知技術は,コンテナ等に収容物を収容し,このコンテナを,棚等を有する収容場所に格納するものであるという点で共通するから,乙12発明に上記周知技術を適用することは, 当業者が容易になし得たことであると認められる。

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