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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

新規性・進歩性

平成25(行ケ)10234  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年11月27日  知的財産高等裁判所

 阻害要因有りとして、進歩性違反無しとした審決が取り消されました。
 審決は,刊行物1発明におけるカーボンナノチューブ層のパターニング方法を刊行物3発明における「カーボンナノチューブ層の形成後にカーボンナノチューブ層をリソグラフィ技術でパターニングするという方法」に変更して,相違点1に係る本願発明の構\成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである旨判断した。 しかし,刊行物1発明は,「ナノチューブ薄膜は固着性が悪く,接触や空気の流れ(たとえば空気掃除機)により容易に除かれるほどである。」(【0003】)ため,「適切な固着性を有し,より有用で堅固なデバイス構造の形成を可能\にするより便利で,融通のきく方法」(【0005】)を開発することを課題とし,これを実現するため,パターン形成材料にカーボン分解材料,カーバイド形成材料,低融点金属などを用いてパターン形成し,これにナノチューブを堆積させた上でアニールすることによって,カーボン分解,カーバイド形成又は溶融を誘発させて,固着性(「ASTMテープ試験D3359−97で,2A又は2Bスケールを十分越える固着強度を指す。」(【0006】【0013】))を確保するものである。\nしたがって,固着性の確保は刊行物1発明の必須の課題であって,刊行物1発明におけるパターニングの方法については,刊行物1発明と同程度の固着性を確保できなければ,他のパターニングの方法に置き換えることはできないというべきである。そして,刊行物3発明のパターニング方法におけるカーボンナノチューブの固着性についてみると,刊行物3発明は,「カーボンナノチューブを塗布,圧着,埋込み等の方法で合成樹脂製の支持基板12上に供給する」と記載しているのみであって,固着性について特段の配慮はされておらず,カーボンナノチューブ層が支持基板12に対して,いかなる程度の固着強度を有するかも不明である。 よって,刊行物1発明に刊行物3発明を適用することには阻害要因があるから, 刊行物1発明に刊行物3発明を適用して相違点1に係る本願発明の構成とすることを当業者が容易に想到し得るとした審決の判断には誤りがある。\n

◆判決本文

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平成26(行ケ)10097  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年11月26日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が取り消されました。理由は、予想できる程度の効果にすぎないというものです。
 審決の認定する相違点Aは,要するに,本件発明と甲1発明とは,1)対向面の面数と2)対向面の対向面積とガスケットの開口面積の大小関係という量的な点において相違する,というものである。
(ア) 課題及び課題解決方法
そこで,検討するに,上記ア,イによれば,本件発明と甲1発明とは,いずれも,扁平形非水電解質二次電池において,電極群として,正極構成材の表\面に作用物質含有層を有する正極板と,負極構成材の表\面に作用物質含有層を有する負極板とが,セパレータを介し多層積層されたものを用いて,正極板の作用物質含有層と負極板の作用物質含有層との対向面積の総和を大きくし,重負荷放電時の放電容量を大きくすることができるとするものであり,その課題と課題解決方法において共通するものである。
(イ) 対向面の面数
甲1において,正極板と負極板との対向面の面数について具体的に明記されているのは,上記のとおり,3面の場合のみであるが,もとより,甲1発明は対向面の 面数を3面に限定する発明ではないところ,甲1発明は,正極板と負極板とを積層することにより,正極板と負極板との対向面積を大きくしようとするものであり,また,正極板と負極板との積層数(すなわち,正極板と負極板との対向面の面数)が多くなればなるほど,正極板と負極板との対向面積がこれに比例して単純に大きくなることも明らかである。そうであれば,甲1には,正極板と負極板との対向面を3面とすることだけではなく,複数のもの,すなわち,2面や4面以上とすることも記載されているに等しいということができる。したがって,甲1には,セパレータを介して対向している前記正極板の作用物質含有層と前記負極板の作用物質含有層との対向面が少なくとも5面であることも記載されていると認められ,正極板と負極板との積層数(すなわち,対向面の面数)をどの程度とするかは,要求される重負荷放電時の放電容量のレベルに応じて決定される,単なる設計的事項にすぎないといえる。 そして,本件明細書の【表1】には,対向面の面数を1,3,5,7及び9面とした扁平形非水電解質二次電池(比較例2,実施例1〜4)の重負荷放電容量が,それぞれ,2.4mAh,22.8mAh,52.7mAh,53.7mAh,52.5mAhであることが示されている。この【表1】によれば,上記対向面の面数が1面から5面まで増加するにつれて,重負荷放電容量が上昇しているが,このことは,対向面の面数が多くなればなるほど,正極板の作用物質含有層と負極板の作用物質含有層との対向面積の総和が大きくなることからすれば,当業者にとって,予\想どおりの結果といえる。そして,対向面積の総和に対する重負荷放電容量の増加割合は,1面から3面にした場合が6.0((22.8−2.4)/(5.1−1.7)),3面から5面にした場合が約8.8(52.7−22.8)/(8.5−5.1)),5面から7面にした場合が0.3((53.7−52.7)/(11.8−8.5))であり,7面から9面にした場合はマイナスであり,3面から5面にした場合の増加割合が1面から3面にした場合のものに比してやや高いとはいえるものの,単純な比例関係を超えるものではなく,その増加割合が顕著なものとはいえない。一方で,対向面が5面 を超えても重負荷放電容量に大きな変化が見られず,場合によって逓減化することは,予想外のことともいえるが,本件発明は,重負荷放電時の放電容量を大きくすることを技術課題とする発明であって,対向面の面数の下限値を特定したものであり,上限値を特定したものではないから,対向面数の増加に比例して放電容量が増加しないことをもって,本件発明における新たな効果ということはできない。\n
・・・・
被告は,対向面を5面としたことによって更に顕著な作用効果を奏するので,対向面を5面とすることには臨界的意義がある旨を主張する。 しかしながら,上記(1)ウ(イ)のとおり,対向面が1面から5面にかけて増加するに連れて,重負荷放電容量が増加していることは,予想どおりの結果であって,発明の実質的同一性を否定するような臨界的意義を認めることは困難というべきである。対向面の面数を増加させれば重負荷放電容量が増加することにより,直ちに臨界的意義があることにはならず,その増加が他の範囲に比して別発明と評価できるような顕著なものであることを要するのである。\nしたがって,被告の上記主張は,採用できない。

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平成26(行ケ)10044  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年11月20日  知的財産高等裁判所

 Appleの特許について進歩性なしと審決が取り消されました。「セキュリティ特権」という用語の意義が争点です。
 被告は,本願の請求項1には「セキュリティ特権」の明確な定義はないことを前提に,本願明細書の記載を参酌すると,本願発明に特定された「セキュリティ特権」の技術的意義は,所定の機能と関連付けられたアクセス権に対応するものであり,審決の認定するように「Eメールなどの機能\と登録した指紋とを結び付けるもの」(審決書14頁8〜9行目等)であると合理的に理解することができ,審決における本願発明のセキュリティ特権の技術的意義の認定に誤りはない旨主張する(前記第4の1)。 しかし,被告の上記主張は,審決における「Eメール機能はセキュリティ特権の中の一であって,「セキュリティ特権」は,Eメールなどの「機能\」と登録した「指紋」とを結び付けるものであり,「機能」や「指紋」から独立して設定可能\な「セキュリティ特権」があるものではないと解される。」(審決書14頁7行目〜10行目)との認定判断を前提とするものであるところ,本願発明における「セキュリティ特権」は,指紋と機能とを結び付けるものであるとしても,「機能\」とは異なるものとして理解できることは前記ウの説示のとおりである。そうすると,上記審決の認定は誤っているというほかなく,したがって,被告の上記主張は採用することができない。
オ まとめ
以上によれば,本願発明の「セキュリティ特権」の意義に関する審決の認定には誤りがある。

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平成26(行ケ)10124  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年11月19日  知的財産高等裁判所

 訂正事項は新規事項である、および、動機付けがあるとした審決が、取り消されました。
 審決は,図15と図12とは,シート(110)の形状が同様であり,図15の断面図では,永久接着手段(80)が製品の主要面の両面にあることが示されていることからすれば,図12の斜視図には,主要面の下面の接着手段が図示されていないとしても,製品とシートの上下両面とが永久接着手段で接着していると解するのが自然であるとし,これと同様に,図17及び18においても,実際の実施例では製品の主要面の両面が永久接着手段で接着しているのに,下面の接着手段が図示されなかったにすぎないと判断する。 しかし,図12と図15は,シート(110)を有する点で共通するものの,図12と図15の対応関係は明らかではなく,図12の断面図が図15であるとする根拠はないから,図15で示された主要面の両面に配置された永久接着手段が,図12では下面のものが省略されていると断定することはできない。そうすると,透視図である図18の図面において上記のように上面にのみ接着手段が施されている構成が記載されているにもかかわらず,これを無視して,図12の下面に接着手段が記載されていないことを理由として,図17及び18の構\成について,推し量るのは合理的でなく,採用できない。 イ また,審決は,「主要面の一方においてのみ」永久接着手段(80)を設ける構成それ自体は,本件明細書の記載から,当業者にとって自明であるといえるとしても,「切離し部分の中で主要面の一方のみが永久接着手段によりパケットに固定されていることにより,比較的小さな力Fでもって,容易にかつ確実に,切離し部分の切り離しが可能\になり,また,消費者が引っ張っている途中で急に切れたりせずに,安定した形で切り離しを行うことができるという作用効果を奏する構成」という技術的思想が,当業者にとって自明であるとまではいえないとする。そして,\nこの点につき,被告は,「参考図」及び「展開して示した力の作用を示す参考図」において,「上面側において,永久接着手段80から切取線171までの距離ℓ1は短く,下面側において,永久接着手段80から切取線171までの距離ℓ2は長いが,距離ℓ1,ℓ2の長短は,切取線171に加わる引張力fの大小には無関係である。」と主張する。 しかし,前記「参考図」において,個包装製品10をFの力で水平方向に引っ張った場合,永久接着手段80に接着された上面側の包装紙の切取線171部分と接着されていない下面側の包装紙の切取線171部分には,同じ引張力fが働くが,包装紙は,紙,パラフィン紙,金属フォイル,プラスチックフォイル又はこれらの材料の種々の組合せから形成される(【0017】参照)ことから,引張力fにより包装紙に伸びが生じることは自明である。そして,永久接着手段80で接着された部分から切取線171までの上面側の包装紙の距離ℓ1は,永久接着手段80で接着された部分から下面側の切取線171までの包装紙の距離ℓ2より短く,上面側の包装紙と下面側の包装紙は,同じ材質であり,伸びの割合は同じであることから,破断に至るまでに包装紙が伸び得る長さは,前記ℓ1の長さに係る包装紙の方が,前記ℓ2の長さに係る包装紙より短くなる。 したがって,切取線部分171に同じ引張力fが加わった場合,切取線部分において破断まで許容される伸びを超えた場合に,他の部分より弱い切取線部分において破断が生じることから,前記ℓ2の長さに係る包装紙の切取線部分(下面側)より早く前記ℓ1の長さに係る包装紙の切取線部分(上面側)が破断することとなる,すなわち,永久接着手段80により接着されている上面側の包装紙の切取線部分の方が下面側のそれより切り離れやすくなるものと認められる。 以上によれば,永久接着手段(80)が,主要面の一方のみにあれば,原告主張の作用効果を奏することはその構成自体から,当業者にとって自明であると認められ,当該作用効果によって新たな技術的事項が導入されたとすることはできない。
(4) 以上のとおりであるから,請求項1を訂正する事項である訂正事項2は, いわゆる新規事項とは認められず,訂正事項2が,特許法134条の2第9項で準用する同法126条第5項又は6項の規定に違反するということはできない。
・・・・
審決は,甲2発明Aに,甲1の技術を適用すると,適用後の発明は,甲1に記載された上記の消費者にとって有用な作用効果を奏することが,当業者に明らかであるから,甲2発明Aに甲1の技術を適用する動機付けは存在するとした。 しかし,これは,両発明を組み合わせることについての動機付けの判断に当たり,具体的な動機や示唆の有無について検討することなく,単に,組合せ後の発明が消費者にとって有用な作用効果を奏するとの理由で動機付けを肯定しているものであり,事後分析的な不適切な判断といわざるを得ない。
イ そこで,甲2発明Aに甲1発明の技術を適用する動機付けについて検討すると,以下のとおりである。
すなわち,両発明とも,ガムなどの製品(包装体)を箱(収納容器)に収納するパッケージ(容器入り包装体)であり,同じ技術分野に属するものであって,製品(包装体)が取り外された後においても箱(収納容器)内で製品(包装体)を保持することができるようにするという点で課題(効果)を同じくする部分があるものと認められる。 しかし,甲2発明Aは,前記2(2)のとおり,消費者が製品をシート及びハウジングから掴んで容易に取り出すことができ,かつ,多数の製品が取り外された後でも 製品を保持することができることを目的とし,そのために,製品とシートの間の結合(接着)は,製品をシートから容易に取り外すことのできる「剥離可能な」結合(接着)との構\成をとったものである。 これに対し,甲1発明は,容器に収納されている形態の被包装物を,片手で簡便に取り出すことを可能とする容器入り包装体を提供することを目的として,包装体下方部を収納容器に永久的に固着すること,及び包装体の適宜位置に収納容器底面と略平行な切目線を設けること,の2つの要件により,包装体を収納容器から取り出す際,包装体を引っ張るだけで,包装体が切目線の部分で切り離され,包装体を被包装物の一部が露出した状態で取り出すことができるとの構\成をとったものである。 そうすると,当業者は,製品をシートから容易に取り外すことのできる「剥離可能な」結合(接着)との構\成をとった甲2発明Aにおいて,製品とシート間及びシートと箱間の「接着」を「永久的」なものとすることによって,包装体が切目線の部分で切り離されるように構成した甲1発明を組み合わせることはないというべきである。\nよって,甲1の技術を,甲2発明Aに適用して,相違点1に係る本件発明12の構成とすることは,当業者が容易に推考し得たことである,との審決の認定は誤りである。\n

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平成25(行ケ)10244  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年10月30日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が取り消されました。保持炉から次の所定の処理を行う装置まで搬送される点で共通するので、動機付け有りというものです。
 審決は,甲1文献には,甲1発明の取鍋内の溶鉄が,コアードワイヤ処理の後に,別の取鍋に移し替えられて鋳造工程へ進むことが記載されており,この鋳造工程では,移し替えられた取鍋を注湯機上に載置するものと認められるから,甲1発明の取鍋は,注湯用の取鍋ではなく,甲2発明の取鍋に相当するものではないと判断した。 しかし,甲2発明によって搬送される取鍋が注湯用取鍋であるのに対して,甲1 発明において搬送される取鍋が注湯用取鍋でないとしても,前記(1)で判示したとおり,これらは保持炉に保持されていた鋳鉄溶湯を装入する取鍋であり,保持炉から次の所定の処理を行う装置まで搬送される点で共通するものである上,本件特許の出願前に刊行された「GieβereiーPraxis,1983,No21,313−320頁」(甲31)によれば,ワイヤーフィーダー法においてもマグネシウム処理及び鉄の注湯が同じ取鍋で実施されることがあると認められ,甲1発明における取鍋が注湯用であるか否かは搬送手段の選択に大きな影響を及ぼすものではない。また,甲2発明は,単に取鍋を自動搬送するだけであるから,注湯用取鍋しか搬送できない特殊なものではなく,当業者であれば,注湯用ではない取鍋であっても搬送が可能であると認識できると認められる。\nしたがって,甲1発明の取鍋が,甲2記載の取鍋に相当するものではないからといって,甲1発明において,取鍋の搬送手段として甲2発明を適用することは当業者にとって容易になし得たことではないということはできない。 イ また,審決は,甲1発明の処理ステーションでは,取鍋が,注湯機のように載置されるのではなく,吊り上げられることが記載されているから,甲1発明の処理ステーションには,むしろホイストが必要であって,取鍋移送機構を設ける必要がないことなどから,甲1発明に甲2発明を適用することは当業者が容易になし得たことではないと判断した。\n確かに,甲1発明では,処理ステーションにおける黒鉛球状化処理の際,フックで取鍋を吊り上げており(別紙甲1発明図面目録の図2参照),そのためにホイストが必要であることは認められる。 しかし,処理ステーション内において取鍋を吊り上げるからといって,溶湯が装入された取鍋をホイストで吊って前炉から処理ステーション内の所定の位置まで搬送することによって生じる危険性がなくなるわけではなく,その危険性を避けるため,取鍋を前炉から処理ステーション内の所定の位置に設置するまでの搬送手段として甲2発明を利用する意義は存在するから,甲1発明に甲2発明を適用する動機 付けは依然として存在するというべきである。 したがって,甲1発明に甲2発明を適用することは当業者が容易になし得たことではないとした審決の判断には誤りがある。

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平成25(行ケ)10338  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年11月13日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が取り消されました。「内在する課題が共通なので、適用する動機付けあり」というものです。
 審決は,甲8文献の記載からは係合部材が2本のパイプ(スライドシャフト)の軸心を結ぶ仮想平面を通っているか不明であること,甲6発明については,係合部 材による押圧方向が2本のパイプ(スライドレール)の軸心を結ぶ仮想平面上としなければ許容できる精度で加工できないといった動機付けがないことなどから,甲8発明の係合部材を甲6発明に適用するに当たり,押圧方向を甲6発明の2本のパイプの軸心を結ぶ平面上とすることは,当業者にとって容易に想到し得たものではない旨判断した。 しかし,甲8文献の第1図及び第3図はいずれも側面図ではあるものの,第1図の「ノブ15」は「スライドシャフト11,12」(パイプ)に対して垂直方向の上方から押圧する形で図示されており,正面図を作成したときに「スライドシャフト11」と「スライドシャフト12」が左右にずれることを窺わせるような記載は一切ない。また,卓上切断機においては,2本のパイプの軸心を結ぶ平面が鉛直であるものが数多く存在し(甲18ないし20),甲6発明も同様である。これらの事情によれば,甲8発明に接した当業者であれば,「ノブ15」は,「スライドシャフト11」と「スライドシャフト12」の軸心を結ぶ仮想平面上を通っており,上方から「スライドシャフト11」を押圧すると理解するものであって,係合部材が2本のスライドシャフト(パイプ)の軸心を結ぶ仮想平面を通っているか不明であるということはできない。 そして,甲6発明も甲8発明も,揺動軸を支点として揺動可能な切断部を有し,かつ,上下に平行に配置された2本のパイプを用いることで切断部を摺動可能\とする卓上切断機に関するものであって,いずれも切断幅を増大して幅広の木材に対応するものである。また,甲8発明で開示されている技術は,摺動する切断部を固定することを可能にするものであるところ,切断部が摺動する構\造において切断部を摺動しないように固定することは,切断作業の態様を増やすという利点があること(摺動せずに切断部の上下の揺動のみで切断することができる。),搬送時などに切断部が意図せず動くことを防止する必要があることなどからすると,甲6発明を含めた切断部が摺動する構造を有する卓上切断機において,切断部を固定することは,共通の内在する課題であると認められる。\nそうすると,甲6発明に甲8発明を適用する動機付けがあるというべきであって,甲6発明及び甲8発明に接した当業者であれば,甲8発明を甲6発明に適用して,相違点1に係る構成(一対のパイプの軸心を含む仮想平面の方向に第1のパイプを押圧するように設けられた係合部材を有し,支持部材の傾動角度にかかわらず前記係合部材による押圧方向が前記仮想平面上であって且つ切断刃の側面と平行となるようにする構\成)とすることを容易に想到することができると認められるから,審決の判断は誤りである。
(5) 被告の主張について
ア 被告は,甲8文献には,2本のパイプの軸心を含む仮想平面と切断刃が平行であるか否か,同平面を係合部材が通っているかについて記載も示唆もない旨主張する。 しかし,甲8文献の記載からすれば,当業者は2本のパイプの軸心を含む仮想平面と切断刃が平行であると理解するものであるし,側面図(甲8文献の第1図及び第3図)において,ノブの上面が見えない水平な形で「ノブ15」が記載されている点からしても,「ノブ15」の押圧方向は,「スライドシャフト11,12」の軸心を含む仮想平面の方向であると理解されるものである。 なお,被告は,2本のパイプが傾いて設置されている例として乙1ないし5を提出するが,乙1はパイプの太さが異なる構成であること,乙2はパイプの配置,太さ等の構\成が明らかではないこと,乙3はパイプがテーブル面よりも下方に配置されている構成であること,乙4は卓上切断機ではないこと,乙5はパイプが3本ある構\成であることなどからすると,いずれも甲8発明の構成とは異なるものであって,これらの証拠は,甲8文献記載の図面に関する前記解釈を左右しない。\n

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平成26(行ケ)10051  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年10月22日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性無しとした審決が維持されました。出願人は住友不動産(株)です。
 本願発明において,「単位改修価格情報」を,「ビル全体を新築するための標準全体新築費用と,既存ビル全体を新築同様の状態へと改修するための標準全体改修費用との割合に応じて,新築ビルの単位規模あたりの新築価格より小さく設定」したのは,改修工事として標準的な工事内容を想定した場合には,改修費用は,新築費用よりも小さくなることに着目して,新築工事と改修工事の全体費用の差に応じて単位規模当たりの改修価格を設定し,同様に,単位規模当たりの改修工期を,単位規模当たりの新築工期より小さい値に設定したものである。ここで,建物の改修工事は,既設建物のうち再利用可能な部分については,再利用することを前提とするものであるから,一定程度の再利用可能\\な部分を有する建物に対する標準的な改修工事においては,躯体,土工事,杭工事の費用が新築工事よりも大幅に安く,給排水,空調,電気,エレベータ,仮設(足場),外構の費用も削減されることは,明らかといえる。一方,著しく老朽化した建物など,再利用可能\\な部分が極めて少ない建物に対する改修工事においては,改修費用が,新築費用よりもむしろ大きくなり,工期も長くなる場合があり得る。建物の状況によっては,上記両用の場合があり得るにもかかわらず,本願発明において,「単位改修価格情報」を,改修工事の対象となる建物の個別の状況を反映することなく,「ビル全体を新築するための標準全体新築費用と,既存ビル全体を新築同様の状態へと改修するための標準全体改修費用との割合に応じて,新築ビルの単位規模あたりの新築価格より小さく設定」し,「単位改修工期情報」を,「ビル全体を新築するための標準全体新築工期と,既存ビル全体を新築同様の状態へと改修するための標準全体改修工期との割合に応じて,新築ビルの単位規模あたりの新築工期より小さく設定」したのは,審決が認定するように,「専ら,ビル全体の改修工事の方が新築の場合よりメリットがあることを顧客に説明し,契約を円滑に進めるための商業上の都合によるもの」と認められる。そして,顧客との契約を円滑に進めるために,顧客に対する契約の提示者が,価格などについて,商業上の都合により設定すること,及びその価格設定に際して,標準的な費用を算出して価格設定の根拠として用いることは,適宜なし得ることといえる。また,概算工事費等を算出する場合において,単位規模当たりの工事費,工期を算出しようとする際,所定の標準値を算出した上で,標準値に対する「割合」を用いて算出することは,常とう手段である。以上によれば,引用例1発明を「ビル全体を新築同様の状態へと改修する全体新築化改修依頼」に適用するに当たり,「工事価格」(改修価格)及び「工事工期」(改修工期)を,所定の標準値との「割合」に応じて,「新築ビルの単位規模あたりの新築価格より小さく設定」し,あるいは,「新築ビルの単位規模あたりの新築工期より小さく設定」することには,格別の技術的意義は認められず,当業者が適宜なし得る設計事項であるといえ,この旨判断した審決の判断に誤りはない。

◆判決本文

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平成25(行ケ)10244  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年10月30日  知的財産高等裁判所

 動機付けありと判断して、無効事由無しとした審決を取り消しました。
 審決は,甲1文献には,甲1発明の取鍋内の溶鉄が,コアードワイヤ処理の後に,別の取鍋に移し替えられて鋳造工程へ進むことが記載されており,この鋳造工程では,移し替えられた取鍋を注湯機上に載置するものと認められるから,甲1発明の取鍋は,注湯用の取鍋ではなく,甲2発明の取鍋に相当するものではないと判断した。 しかし,甲2発明によって搬送される取鍋が注湯用取鍋であるのに対して,甲1発明において搬送される取鍋が注湯用取鍋でないとしても,前記(1)で判示したとおり,これらは保持炉に保持されていた鋳鉄溶湯を装入する取鍋であり,保持炉から次の所定の処理を行う装置まで搬送される点で共通するものである上,本件特許の出願前に刊行された「GieβereiーPraxis,1983,No21,313−320頁」(甲31)によれば,ワイヤーフィーダー法においてもマグネシウム処理及び鉄の注湯が同じ取鍋で実施されることがあると認められ,甲1発明における取鍋が注湯用であるか否かは搬送手段の選択に大きな影響を及ぼすものではない。また,甲2発明は,単に取鍋を自動搬送するだけであるから,注湯用取鍋しか搬送できない特殊なものではなく,当業者であれば,注湯用ではない取鍋であっても搬送が可能であると認識できると認められる。\nしたがって,甲1発明の取鍋が,甲2記載の取鍋に相当するものではないからといって,甲1発明において,取鍋の搬送手段として甲2発明を適用することは当業者にとって容易になし得たことではないということはできない。 イ また,審決は,甲1発明の処理ステーションでは,取鍋が,注湯機のように載置されるのではなく,吊り上げられることが記載されているから,甲1発明の処理ステーションには,むしろホイストが必要であって,取鍋移送機構を設ける必要がないことなどから,甲1発明に甲2発明を適用することは当業者が容易になし得たことではないと判断した。\n確かに,甲1発明では,処理ステーションにおける黒鉛球状化処理の際,フックで取鍋を吊り上げており(別紙甲1発明図面目録の図2参照),そのためにホイストが必要であることは認められる。 しかし,処理ステーション内において取鍋を吊り上げるからといって,溶湯が装入された取鍋をホイストで吊って前炉から処理ステーション内の所定の位置まで搬送することによって生じる危険性がなくなるわけではなく,その危険性を避けるため,取鍋を前炉から処理ステーション内の所定の位置に設置するまでの搬送手段として甲2発明を利用する意義は存在するから,甲1発明に甲2発明を適用する動機付けは依然として存在するというべきである。

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平成25(行ケ)10303  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年10月23日  知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤りを理由として、新規性無しとした審決が取り消されました。
 特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明は,その発明について特許を受けることができない(特許法29条1項3号)。\nここにいう「刊行物に記載された発明」の認定においては,刊行物において発明の構成について具体的な記載が省略されていたとしても,それが当業者にとって自明な技術事項であり,かつ,刊行物に記載された発明がその構\\成を備えていることを当然の前提としていると当該刊行物自体から 理解することができる場合には,その記載がされているに等しいということができる。しかし,そうでない場合には,その記載がされているに等しいと認めることはできないというべきである。 そうすると,本件において,「ポリエステル組成物Aからなる白色ポリエステルフィルム」が甲1公報に記載されているに等しいというためには,ポリエステル組成物Aについてフィルムを成形したものが当業者にとって自明な技術事項であり,かつ,同公報に記載された発明が,ポリエステル組成物Aについてフィルムを成形したものであることを当然の前提としていると同公報自体から理解することができることが必要というべきである。 しかるに,本件においては,ポリエステル組成物Aについてフィルムを成形したものが当業者にとって自明な技術事項であることを認めるに足りる証拠はない。したがって,これを自明な技術事項であるということはできない。また,甲1公報の記載を検討しても,実施例12のポリエステル組成物Aは白色二軸延伸フィルムを製造するポリエステル組成物Bを得るための中間段階の組成物にすぎず,同実施例がポリエステル組成物Aについてフィルムを成形するものでないことはいうまでもないし,さらに,同公報のその他の記載をみても,ポリエステル組成物Aについてフィルムを成形することを示す記載や,そのことを当然の前提とするような記載はない。 以上のとおり,ポリエステル組成物Aについてフィルムを成形したものが当業者にとって自明な技術事項であるとはいえず,また,甲1公報に記載された発明が,ポリエステル組成物Aについてフィルムを成形したものであることを当然の前提としていると同公報自体から理解することができるともいえない。そうすると,「ポリエステル組成物Aからなる白色ポリエステルフィルム」は,甲1公報に記載されているに等しい事項であると 認めることはできないものというべきである。

◆判決本文

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平成26(行ケ)10030  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年10月20日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が維持されました。
 (2) 以上のとおり,甲1においては,第1実施の形態として,段落【0013】〜【0020】,図1〜6において,・・・可能としたものが記載されている。\nところが,第2実施の形態において,「カードサイズ紙片」を加えた構成について,本文中の記載及び図面にも直接的に記載したものはなく,これを窺わせる記載も存在しない。そして,甲1発明の目的は,上記(1)アに記載したとおり,重ね合わせた部分が不必要時には不用意に開封しないようにして,かつ,必要なときには重ね合わせた部分を容易に開封できるようにした重ね合わせ郵便はがきを提供することであり,発明の効果として,隅部にカットラインを入れて,隅部を切り取ることなく一方の片葉に残したために,従来技術のように段差を形成することはないため,重ね合わせ郵便はがきに他の郵便はがきが引っかかって不用意に開封されることがなく,剥がすときには,片葉あるいは二葉の両端に形成した隅部をカットラインから切離して取り除くことにより段差を形成することができ,その段差から一方の片葉を容易に引き剥がすことができる(【0026】〜【0029】)と記載されているのみである。これらの記載から見て,甲1の請求項に記載された発明の本質的部分は,隅部にカットラインを入れた構成に存するものであることは明らかである。したがって,第1実施の形態に記載された「カードサイズ紙片」は,甲1全体を通じて理解される技術思想であるとは理解できず,単に,用紙を中央で二葉に折り曲げて,二葉同士を重ね合わせ,剥離可能\に接着剤で密着して形成した重ね合わせ郵便はがきを第1実施の形態とし,その一例の構成として示されたものにすぎない。よって,第1の実施の形態における「カードサイズ紙片」は,第2の実施の形態と関連性を有するものではなく,第2の実施例において「カードサイズ紙片」を設けることが自明であるとも,記載されているに等しいものと認めることもできない。\n

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平成25(行ケ)10347  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成26年10月9日  知的財産高等裁判所

 動機付け無しとして進歩性有りと認定した審決が取り消されました。
 上記のような甲10公報の記載に接すれば,当業者であれば,第2図に図示されている直線的かつ平行な電界の生成が,電気機械変換効率を高め,その結果,CI値を小さくするという作用効果に寄与していること は,容易に理解できるものと認められる。そして,甲10公報には,振動細棒420の上下に2つずつ溝を設け,それぞれに電極440aを配置してもよい(第10図)との記載があるのであるから,当業者であれば,振動細棒420に設ける溝を2本とした場合にも,1本の場合と同様に,CI値を小さくするという作用効果を奏するものであることは,容易に理解できるものと認められる。そうすると,公用製造方法において,1本の溝を2本の溝とすることは,当業者が容易に設計し得る事項にすぎないというべきである。イ この点について,審決は,公用製造方法において,音叉腕に設ける溝を2本の溝とした場合に,M1とM2の大小関係がどのようになるかは不明であるとして,公用製造方法において,相違点2における本件訂正発明の構成を採用することの積極的な動機付けがなく,むしろ,阻害要因が存在するとしている(審決書22頁)。しかし,証拠(甲9,10,31,32)及び弁論の全趣旨によれば,原告が前記第3の2において主張するとおり,公用製造方法において,音叉腕に設ける溝を2本とした場合においても,M1>M2の関係が担保されることが認められ,このことは,当業者であれば予\測し得るものというべきである。したがって,公用製造方法において,音叉腕に設ける溝を2本の溝とした場合に,M1とM2の大小関係がどのようになるかは不明であるとする審決の判断は誤りといわざるを得ない。部分幅の数値限定の容易想到性部分幅を0.05mmより小さくすることについて,本件明細書の【0048】には,「更に,本実施例では,溝が中立線を挟む(含む)ように音叉腕に設けられているが,本発明はこれに限定されるものでなく,中立線を残して,その両側に溝を形成しても良い。この場合,音叉腕の中立線を含めた部分幅W7は0.05mmより小さくなるように構成される。又,各々の溝の幅は0.04mmより小さくなるように構\成され,溝の厚みt1と音叉腕の厚みtの比は0.79以下に成るように構成される。このような構\成により,M1をMnより大きくする事ができる。」との記載がある。しかし,上記記載は,その記載から明らかなとおり,「音叉腕の中立線を含めた部分幅W7は0.05mmより小さくなるように構成」し,「溝の幅は0.04mmより小さくなるように構\成」し,「溝の厚みt1と音叉腕の厚みtの比は0.79以下に成るように構成」した場合において,「M1をMnより大きくする事ができる」というものであり,「音叉腕の中立線を含めた部分幅W7を0.05mmより小さくなるように構\成」しただけで直ちに「M1をM2より大きくする事ができる」というものではない。そして,本件明細書には,他に,上記部分幅の数値限定の技術的意義について記載されていない以上,本件訂正発明における上記部分幅の数値限定に格別の技術的意義があるとは認められない。そうすると,公用製造方法において,部分幅の寸法を0.05mmより小さくすることも,当業者が容易に設計し得る事項にすぎないというべきである。

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◆関連事件です。平成25(行ケ)10346

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平成26(行ケ)10109 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年10月6日  知的財産高等裁判所

 この事件は、出願から審決取消訴訟の判決まで1年6月かかっていません。私の知ってる限り、出願から判決まで最速です。公開公報が出る前に、判決文にて発明の内容が公表された珍しい案件です。
 引用発明の「ロール情報」(保守プログラム識別子)は,前記ア2)のとおり,監視動作の機能であるプログラム(トナーの残量監視プログラム,紙詰まり監視プログラム)や通知動作の機能\であるプログラム(通報プログラム)等の動作内容が類似する機能ごとに付与されているものであり,「トナーの残量」「紙詰まり」及び「通報」等は,各保守プログラムの役割を表\しているといえる。 また,前記(1)アのとおり,「ロール情報」(保守プログラム識別子)が「紙詰まり」である場合の保守プログラムリストの例として,4つ(複数)の紙詰まり検出プログラムがダウンタイムの短い順に順位付けされており,保守プログラム選択部30によって選択の対象とされるものである。 そして,情報処理の技術分野において,複数のプログラムを連続して実行する際に,前に実行した処理結果(情報)に基づいて,後続の処理を行うことは技術常識であると認められる。 そうすると,「紙詰まり」というロール情報(保守プログラム識別子)に,複数の呼び出し用プログラム(保守プログラム)が関連付けられており,その複数の呼び出し用プログラム(保守プログラム)から1つの呼び出し用プログラム(保守プログラム)を選択して実行する引用発明において,「紙詰まり」に対する呼び出し用プログラム(保守プログラム)の呼び出し順序よりも前に実行する呼び出し用プログラム(保守プログラム)がある場合 に,その呼び出し用プログラム(保守プログラム)から出力された情報に基づいて,実行対象とする1つの呼び出し用プログラム(保守プログラム)を選択するように構成することは,当業者であれば容易に想到し得るものである。\n

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平成25(行ケ)10209  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年9月10日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が取り消されました。
 前述した本願優先日当時の当業者の一般的な認識に鑑みれば,当業者が,ACE阻害活性の有無に焦点を絞り,引用発明においてIPP及びVPPがACE阻害活性を示したことのみをもって,引用例2から引用例5に記載されたACE阻害剤との間には,前述したとおりACE阻害活性の強度及び構造上の差異など種々の相違があることを捨象し,IPP及びVPPも上記ACE阻害剤と同様に,血管内皮の機能\改善作用,血管内膜の肥厚抑制作用を示すことを期待して,IPP及び/又はVPPを用いることを容易に想到したとは考え難い。
また,仮に,当業者において,引用例2から引用例5に接し,前記一般的な認識によれば必ずしも奏功するとは限らないとはいえ,ACE阻害活性を備えた物質が上記作用を示すか否か試行することを想起したとしても,前述したとおり,IPP及びVPPは,性質,構造において上記ACE阻害剤と大きく異なり,特にIPP及びVPPのACE阻害活性は上記ACE阻害剤よりもかなり低いものといえるから,試行の対象としてIPP及び/又はVPPを選択することは,容易に想到するものではないというべきである。
以上によれば,引用発明と引用例2から引用例5とを組み合わせて補正発明を想到することは容易とはいえず,本件審決が,「相当程度の確立した知見」を前提として,引用発明と引用例2から引用例5とを組み合わせ,これらを併せ見た当業者であれば,引用発明においてACE阻害活性を有することが確認されたIPP及び/又はVPPを,血管内皮の収縮・拡張機能改善及び血管内膜の肥厚抑制の少なくとも一方の作用を有する剤として用いることに,格別の創意を要したものとはいえないと判断した点は誤りである。\n

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平成25(行ケ)10276  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成26年9月11日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について進歩性を否定した審決が維持されました。
 前記(1)アによれば,甲1発明のサイバーマネーが原告の主張する通用ポイントとして利用されることは認められる。 しかし,甲1発明を本件発明1と対比するに当たっては,甲1発明のサイバーマネーが本件発明1の共通ポイントに相当するかを検討するのであるから,本件発明1の共通ポイントの技術的意義を明らかにした上で,甲1発明のサイバーマネーが 共通ポイントに相当するかを検討すべきであり,本件発明1の共通ポイントの意義と関係づけることなく,甲1発明のサイバーマネーの意義を単独で検討しても意味はない。 そこで,本件発明1の共通ポイントの技術的意義について検討するに,本件特許の請求項1の記載によれば,第1のクライアント企業のポイントが交換レートに基づいて共通ポイントに交換され,その共通ポイントが第2のクライアント企業のポイントとして精算レートに基づいて精算されるものである。 そうすると,共通ポイントとは,第1のクライアント企業のポイントと第2のクライアント企業のポイントを交換するに当たり,その仲立ちをするものであり,企業ポイントとの間で設定された交換レート又は精算レートに基づいて,企業ポイントとの間で交換されるものである。 次に,甲1発明の内容をみるに,前記(1)アによれば,売渡注文の場合は,売渡注文のボーナスポイントの数量を注文者のポイント情報DBに保有されている数量から控除するとともに,所定の交換レートに基づいて算出されたサイバーマネーとしてこれを注文者のポイント情報DBに格納して交換し,買受注文の場合は,買い受けるポイントに対して所定の交換レートに基づいて注文者がポイント情報DBに保有するサイバーマネーを控除するとともに,買い受けたボーナスポイントの数量を注文者のポイント情報DBに格納して交換するものである。 そうすると,甲1発明のサイバーマネーは,売渡注文と買受注文を連続的に観察した場合には,A企業のポイントとB企業のポイントを交換する当たり,その仲立ちをするものであり,企業ポイントとの間で設定された所定の交換レートに基づいて,企業ポイントとの間で交換されるものである。そして,甲1公報の発明の効果欄の記載によれば,消費者は少額多種のボーナスポイントを他の一種類のボーナスポイントに交換することができるというのであるから,甲1発明は売渡注文と買受注文が連続的に行われる場合を予定しているものというべきである。\n以上によれば,甲1発明のサイバーマネーは,本件発明1の共通ポイントに相当 するものということができる。

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平成25(ワ)4303  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月25日  東京地方裁判所

 進歩性無しとして、権利行使不能(特104条の3)と判断されました。
 以上の事実,すなわち,乙13発明と乙16文献に記載された発明は,技術分野,解決すべき課題及び課題解決原理が共通し,経皮吸収製剤の形状及び強度並びにその構造的な強さを形成・保持するための基剤及び成形方法という課題解決手段にも共通性があること,粘弾性・保水力の大きいゼリー様のヒアルロン酸溶液を乾燥させると非常に強固な固体となるという物性が技術常識として知られていたことに照らせば,乙16文献に接した当業者がこれを乙13発明と組み合せる動機付けがあり,当業者において,乙13発明の基剤を乙16文献の基剤に置き換え,角質層を貫通するように十\分強い生体適合性材料の一つとしてヒアルロン酸を基剤(マトリックス)に選択することも,容易に想到し得たことであって,これを乙13発明に組み合せて成形した経皮吸収製剤が皮膚を貫通するのに十分な強度を有することも,容易に理解し得たということができる。\nまた,本件発明に係る経皮吸収製剤の作用効果が格別顕著なものであることを認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件発明は,乙13発明に乙16文献を組み合せることにより,当業者において容易に想到することができたものというべきである。  

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平成25(ワ)25813  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月25日  東京地方裁判所

 数値限定の発明について進歩性有りとして、差止が認められました。
 以上を踏まえて判断するに,まず,本件発明は,ハンドルに設けられたマッサージ用のボールで顔,腕等の肌をマッサージすることにより,血流を促したりして美しい肌を実現することができる美容器に関するものであるから(前記1(2)ア),その効果を評価する基準としては主として個々人の使用感によらざるを得ず,官能評価によること自体があいまいであるとすることはできない。\nそして,上記認定の本件明細書の記載によれば,1) 本件発明の構成要件Cの一対のボール支持軸の開き角度及び構\成要件Dの一対のボール外周面間の間隔は,いずれも小さくなると肌の摘み上げ効果が強く,大きくなると同効果が弱くなるものであり,一定の範囲で好ましい摘み上げ効果を発揮すること,2) 原告が,側方投影角度,ボールの直径等の条件を固定してボール支持軸の開き角度又はボール外周面間の間隔のみを変化させる官能評価を行ったところ,ボール支持軸の開き角度については,70度の場合が最も良好で,これより広く又は狭くすると徐々に効果が下がるが,40〜120度の範囲ではおおむね3分の1以上の者が「良い」と感じ,また,ボール外周面間の間隔については,実施する体の部位によって異なるものの,11mm又は12〜15mmの場合が最も良好で,これより広く又は狭くすると徐々に効果が下がるが,8〜25mmの範囲ではおおむね3分の1以上の者が「良い」と感じていることが認められる一方,支持軸の開き角度及び外周面間の間隔が構\成要件C及びDの数値範囲を満たすにもかかわらず本件発明の効果が奏されない場合があることをうかがわせる証拠はない。 そうすると,本件発明は,支持軸の開き角度及び外周面間の間隔の双方を一定の範囲に限定し,これを他の構成要件と組み合わせることによって所定の効果を発揮するようにしたものと理解することができるのであって,本件の関係各証拠上,数値限定による異質な又は優れた効果がないことを理由に進歩性を欠くとの被告の主張を採用することはできないと解すべきである。\n

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平成25(行ケ)10227  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成26年9月17日  知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤りを理由として、無効理由無しとした審決が取り消されました。
 相違点13−2は,要するに,本件発明7では,光検出器において,第二の次元の共焦点作用をもたらすのに対し,甲13発明では,PS−PMT検出器において,そのような共焦点作用をもたらしているか否か不明である,というものである。 しかるところ,空間フィルタを使用しないで,光検出器において共焦点作用をもたらすことが本件優先日前に周知の事項であったことは,審決において認定するところであり(27頁10〜14行目),被告も,そのこと自体を争っているものとは認められない。 したがって,甲13に接した当業者は,甲13発明のPS−PMT検出器において共焦点作用を生じるに足るものであれば,少なくとも共焦点作用がもたらされていること自体は,認識するといえる。 これについて,審決は,上記周知の空間フィルタを使用しない共焦点作用は,2次元の共焦点作用をもたらすものの代替であり,1次元の共焦点作用をもららすものではないと認定している。 そこで,まず,甲13発明のPS−PMT検出器が共焦点作用をもたらしているか,そして,その共焦点作用がいかなるものかを,次に検討する。
・・・・
すると,甲13発明では,スリットの長さ方向(Y軸方向)に広がる光を非点収差補正光学系で光検出器の位置で結像させ,PS−PMTのY方向の5ピクセルの領域のみを加算しているから,「光検出器の所与の領域で受ける光が,前記所与の領域外で受ける光を含まずに」「所与の領域は第一の次元(X軸方向)を横切る第二の次元(Y軸方向)で共焦点作用をもたらすように形成されて」いるといえる。 したがって,相違点13−2は,実質的な相違点ではない。
・・・・
以上2及び3によれば,相違点13−1及び相違点13−2は,実質的な相違点ではなく,相違点13−3及び相違点13−4は,容易に想到し得たものといえる。 したがって,本件発明7は,甲13発明及び周知技術に基づいて容易に想到することができたから,本件発明7を甲13発明から容易に想到できないとした審決の認定判断には誤りがあり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。

◆判決本文

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平成26(行ケ)10005  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年9月17日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が維持されました。争点は阻害要因です。
 以上のとおり,1)引用発明において,「リード線の端部」と「太陽電池素子の電極」との「接着」について,はんだによる処理が許容されていること,2)原出願優先日当時,異方導電熱硬化型フィルム接着剤がはんだに代わる接続手段として用いられることは,当業者にとって周知の技術事項であったこと,3)原出願優先日当時,異方導電熱硬化型フィルム接着剤は,種々の対象物の接続に幅広く使用し得ることも,当業者にとって周知の技術事項であり,上記対象物には太陽電池も含まれることが認められる。上記事実によれば,原出願優先日当時,1)引用発明においてはんだによる処理が許容されていた「リード線の端部」と「太陽電池素子の電極」との「接着」に,2)はんだに代わる接続手段として,太陽電池も含む種々の対象物に幅広く使用し得ることが当業者に周知されていた,異方導電熱硬化型フィルム接着剤を使用することは,当業者にとって容易に想到し得たものといえる。そして,前述のとおり,補正発明と引用発明との実質的相違点は,結晶系太陽電池セルと接続部材との接続に,補正発明は異方導電熱硬化型フィルム接着剤を用い,引用発明は熱硬化型の導電性接着剤を用いることであるから,引用発明において,接続部材である「リード線」の端部と,結晶系太陽電池セル,すなわち,「太陽電池素子」の電極との接着に異方導電熱硬化型フィルム接着剤を使用することにより,補正発明の構成に至ることは明らかである。したがって,原出願優先日当時,当業者において,引用発明から補正発明に想到することは容易であったものと認められる。\n

◆判決本文

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平成22(行ケ)10056  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成23年2月8日  知的財産高等裁判所

 少し前の事件ですが挙げておきます。動機付けについて「公知技術に記載された事項を過度に抽象化した事項を引用発明に適用して具体的な本件発明の構成に想到しようとするものであって相当でない」旨、判断されました。
 しかし,この審決の判断の流れは,2),4),6)の周知技術を前提とし,1),5)の自明課題,設計事項を踏まえ,bの甲第1号証から読み取れる事項も認定したうえ,3),7),8)の判断を経て,9),10),11)のとおり相違点1ないし3の容易想到性を導いているものであって,甲第3,10,21,22号証は周知技術の裏付けとして援用したものである。このうち,4)の周知技術の認定で審決が説示する「液体インク収納容器からの色情報」が単に液体インク収納容器のインク色に関する情報でありさえすればよいとすると,前記周知技術は,液体インク収納容器と記録装置側とが発光部と受光部との間の光による情報のやり取りを通じて当該液体インク収納容器のインク色に関する情報を記録装置側が取得することを意味するものにすぎない。このような一般的抽象的な周知技術を根拠の一つとして,相違点に関する容易想到性判断に至ったのは,本件発明3の技術的課題と動機付け,そして引用発明との間の相違点1ないし3で表される本件発明3の構\成の特徴について触れることなく,甲第3号証等に記載された事項を過度に抽象化した事項を引用発明に適用して具体的な本件発明3の構成に想到しようとするものであって相当でない。その余の自明課題,設計事項及び周知技術にしても,甲第3号証等における抽象的技術事項に基づくものであり,同様の理由で引用発明との相違点における本件発明3の構\成に至ることを理由付ける根拠とするには不足というほかない。
(4) 上記のとおり,周知技術等に基づいてする審決の判断は是認できないが,甲第3号証等が開示する技術的事項も踏まえて念のため判断するに,甲第3,21,22号証の液体インク収納容器において,記録装置と液体インク収納容器の間の接続方式につき共通バス接続方式が採用されているかは不明であって,少なくとも甲第3,21,22号証においては,共通バス接続方式を採用した場合における液体インク収納容器の誤装着の検出という本件発明3の技術的課題は開示も示唆もされていないというべきである。そして,上記技術的課題に着目してその解決手段を模索する必要がないのに,記録装置側がする色情報に係る要求に対して,わざわざ本件発明3のような光による応答を行う新たな装置(部位)を設けて対応する必要はなく,このような装置を設ける動機付けに欠けるものというべきである。そうすると,甲第3,21,22号証に記載された事項は,解決すべき技術的課題の点においても既に本件発明3と異なるものであって,共通バス接続方式を採用する引用発明に適用するという見地を考慮しても,本件発明3と引用発明との相違点,とりわけ相違点2,3に係る構成を想到する動機付けに欠けるものというべきである。なお,本件発明3における液体インク収納容器が保持する色情報の技術的意義が前記のとおりであることに照らすと,液体インク収納容器から記録装置側に伝達される情報自体に「色情報」が含まれるか否かは,本件発明3と引用発明の実質的な相違点であるというべきである(相違点2)。
(5) よって,その余の点について検討するまでもなく,本件発明3と引用発明との相違点に係る構成に容易に想到できるとした審決の前記判断は誤りであるというべきである。\n
(6)ア被告ら及び補助参加人(以下「被告ら」というときは,補助参加人も含む。) は,甲第21,22号証の記録装置と液体インク収納容器の構成から,記録装置に受光素子を1つ設け,キャリッジの移動により受光素子と対向する位置に来た液体インク収納容器に対し,誤装着検出を行う等の基本的な技術の構\成が分離して把握できないものではなく,上記基本的な技術構成が本件発明3の優先日前に周知の技術であると主張する。しかしながら,前記のとおり,甲第21,22号証の記録装置と液体インク収納容器の構\成及び誤装着の検出原理は,本件発明3のそれらと大きく異なるのであって,仮に甲第21,22号証の構成から,キャリッジを移動させることにより特定の位置に来る液体インク収納容器を交替させ,発光部と受光部の間の光のやり取りによって順次液体インク収納容器の検出を行うという,具体的な動作機構\や検出原理を捨象し,相当程度抽象化した事項を持ち出してみても,本件発明3との相違点にかかる構成の容易想到性が肯定できるものではないから,被告らの上記主張は採用できない。また,甲第3号証の記録装置において,受光手段が一つだけ設けられているかは不明であるから,上記記録装置において,受光手段を一つだけ設け,キャリッジの移動により順次液体インク収納容器からの光の受光を行う構\成が採用されているとはいうことができない。

◆判決本文

◆これには侵害事件もあります。◆平成24(ネ)10093

◆原審はこちらです。平成23年(ワ)第24355号

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平成26(行ケ)10002  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年9月11日  知的財産高等裁判所

 進歩性有りとした審決が取り消されました。
 そこで,甲7発明及び甲8発明の甲1発明への適用可能性の点について検討するに,前記のとおり,甲1発明の非弾性カバー部材121は,その内側に設けられた弾性カバー部材122との間に膨縮機構\11を介設し,膨縮機構11が膨張している際には変化をしない(形状を維持する)という硬度を有するものであり,これにより,膨縮機構\の空気圧をより効率的に人体手部及び下腕部側へ与えることができ,適度な空気圧マッサージを行うことができるという機能を有するものと解される。したがって,膨縮機構\11が膨張していないときの非弾性カバー部材121が変形するかどうかは,手部及び下腕部を非弾性カバー部材121の内側の膨縮機構によりマッサージするという甲1発明のマッサージ機能\又は効果に関わるものではない。そのため,甲1公報には,非弾性カバー部材121は膨張しているときに変化しない(形状を維持する),との記載はあるものの,膨張していないときの非弾性カバー部材の状態を明示する記載もない。そして,甲1公報には,非弾性カバー部材121について合成繊維等という材質の記載があるものの(段落【0024】),その具体的な材料は記載されておらず,また材質をこれに限定する記載はないから,甲1公報を見た当業者は,甲1発明の機能,用途に沿う範囲で,具体的に様々な材料を検討することになると考えられるところ,むしろ,外殻部の内面に設けられた空気袋の膨張によってその内側に収容した下腕部に空気圧を加えてマッサージをする椅子式マッサージ機であるという点において甲1発明と共通する甲7発明及び甲8発明においては,その空気袋(膨縮機構\)を内面に設ける外殻部は,いずれも形状維持が可能な程度に硬度が高い材料から形成されている。さらに,甲7発明及び甲8発明のこれらの構\成に加え,甲8公報の記載(【段落0002】)によれば,凹部の内壁に空気袋を取付け,空気袋の膨張収縮により人体の肢体をマッサージするという構成は,甲8発明の出願時(平成11年7月30日)における従来技術であり,同従来技術における凹部の内壁も甲8発明と同様に形状維持が可能\な程度に硬度が高い材料から成っていたと理解されること,甲9公報にも,形状維持が可能な程度に硬度が高い材料から成り,空気袋を収納する脚保持部が開示されていることからすれば,空気袋の膨張による空気圧によりその内側に収容した人体の肢体をマッサージする椅子式マッサージ機において,空気袋を内面に設け,肢体を保持する外殻部を形状維持が可能\な程度に硬度が高い材料とすることは,周知技術であったといえる。 そうすると,合成繊維等で構成された外面部の非弾性カバー部材121について,形状維持が可能\な程度に硬度が高い材料とすることは甲1発明の機能や効果に関わることではなく,甲1公報にも同材料を否定する記載はなく,むしろ非弾性カバー部材121と同様の機能\を有する甲7発明や甲8発明の構成部分についてはそのような材料が採用されており,そのような材料で肢体をマッサージするための空気袋を内面に設ける外殻部を構\成することは周知技術といえることからすれば,当業者が,甲1発明に甲7発明及び甲8発明を適用して,非弾性カバー部材121を「形状維持が可能な程度に硬度が高い材料からなる」ものとすることは容易に想到できるものというべきである。\n以上によれば,甲1発明と本件訂正発明1との相違点1に係る構成のうち,「形状維持が可能\な程度に硬度が高い材料からなる外殻部」とすることは,容易に想到できるものではないとした審決の判断には誤りがある。

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平成25(行ケ)10134  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成25年11月27日  知的財産高等裁判所

 1年くらい前の判決ですが、「請求項1の要旨認定については,発明の詳細な説明を参酌する必要はない」とのくだりがおもしろいので、あげておきます。知財高裁は新規性有りとした審決を取り消しました。
 上記アによると,本件訂正発明と甲7発明との一応の相違点は,審決が認定するとおり,本件訂正発明では,目的物質が「基剤に保持され」ているのに対して,甲7発明では,目的物質が基剤からなる医療用針内に設けられたチャンバに封止されているか,縦孔に収容されることにより保持されている点となる。審決は,この一応の相違点について,「目的物質が,基剤にではなく,基剤に設けられた空間に保持されている点で,両者は,相違する。したがって,本件訂正発明は,甲第7号証に記載された発明であるとはいえない。」と判断した。この審決の判断は,請求項1の記載を当業者が読めば,「基剤に保持された目的物質とを有し」とは,目的物質が基剤に混合されて基剤とともに存在していると理解されること,及び,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確ではないとして,本件訂正明細書の記載(【0005】【0006】【0008】〜【0010】【0070】等)をみても,同様に解されることを前提とするものである。しかし,請求項1の「基剤に保持された目的物質」との記載は,目的物質が基剤に保持されていることを規定しているのであり,その保持の態様について何らこれを限定するものでないことは,その記載自体から明らかである。そして,「保持」とは,広辞苑(甲12)にあるとおり,たもちつづけること,手放さずに持っていることを意味する用語であり,その意味は明確である。したがって,請求項1の「保持」の技術的意義は,目的物質を基剤で保持する(たもちつづける)という意味のものとして一義的に明確に理解することができるのであるから,審決が,請求項1の「基剤に保持された目的物質」との記載について,目的物質が基剤に混合されて基剤とともに存在していると理解されることと解したのは,請求項1を「基剤に混合されて保持された目的物質」と解したのと同義であって,誤りであるといわざるを得ない。また,本件訂正発明の請求項1の記載は,上記のとおり,請求項の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないなど,発明の詳細な説明を参酌することができる特段の事情がある場合にも当たらないから,少なくとも請求項1の要旨認定については,発明の詳細な説明を参酌する必要はないところである(最高裁判所平成3年3月8日第二小法廷判決民集45巻3号123頁参照)。そうすると,甲7発明の,目的物質が基剤からなる医療用針内に設けられたチャンバに封止されていることや縦孔に収容されていることは,本件訂正発明の目的物質が「基剤に保持された」構成に含まれているといえる。そうすると,本件訂正発明は,甲7公報に記載された発明といえるから,特許法29条1 項3号の規定により特許を受けることができないものであり,この点に関する審決の判断は誤りである。

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平成25(行ケ)10209  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年9月10日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が取り消されました。
 前述したとおり,補正発明と引用発明の相違点は,薬剤の用途が,補正発明においては,「血管内皮の収縮・拡張機能改善及び血管内膜の肥厚抑制の少なくとも一方の作用を有する剤」であるのに対して,引用発明においては,「ACE阻害活性を示す,抗高血圧剤」である点である。\nイ(ア) 引用例2から引用例4には,前記のとおり,ACE阻害剤であるシラザプリル,キナプリル,カプトプリルを,本態性高血圧症や内皮機能障害の疾患を有するヒト,バルーンカテーテル処理によって頸動脈の内皮剥離,損傷を受けたラットに投与した実験の結果,血管内皮の拡張能\の向上,血管内膜の肥厚抑制等が見られた旨が記載されており,引用例5には,血管壁肥厚の抑制と改善,内皮細胞機能の改善等がACE阻害薬の効果としてヒトで証明されている旨が記載されている。これらの記載によれば,シラザプリル等のACE阻害剤を人体や動物に投与した実験において,血管内皮の機能\改善作用,血管内膜の肥厚抑制作用が確認されたことを読み取ることができる。 (イ) しかしながら,前述のとおり,本願優先日当時においては,上記と異なる実験結果を示す複数の技術文献が存することから,ACE阻害剤であれば原則として血管内皮の収縮・拡張機能改善作用又は血管内膜の肥厚抑制作用のうち少なくともいずれか一方を有するとまではいえず,個々のACE阻害剤が実際にこれらの作用を有するか否かは,各別の実験によって確認しなければ分からないというのが,当業者の一般的な認識であった。\n(ウ) しかも,IPP及びVPPと,引用例2から引用例5に記載されたシラザプリル等のACE阻害剤との間には,以下のとおり,性質,構造において大きな差異が存在する。他方,IPP及びVPPと上記ACE阻害剤との間に,ACE阻害活性を有すること以外に特徴的な共通点は見当たらない。\na すなわち,シラザプリル等はいずれも典型的なACE阻害剤であるのに対し,IPP及びVPPは確かにACE阻害活性を有しているものの,下記の比較によれば,その強度は上記ACE阻害剤よりもかなり弱いものにとどまるといえる。現に,本件に証拠として提出されている公刊物中には,IPP及びVPPをACE阻害剤として紹介する記載は見当たらない。
・・・
ウ 前述した本願優先日当時の当業者の一般的な認識に鑑みれば,当業者 が,ACE阻害活性の有無に焦点を絞り,引用発明においてIPP及びVPPがA CE阻害活性を示したことのみをもって,引用例2から引用例5に記載されたAC E阻害剤との間には,前述したとおりACE阻害活性の強度及び構造上の差異など\n種々の相違があることを捨象し,IPP及びVPPも上記ACE阻害剤と同様に, 血管内皮の機能改善作用,血管内膜の肥厚抑制作用を示すことを期待して,IPP\n及び/又はVPPを用いることを容易に想到したとは考え難い。 また,仮に,当業者において,引用例2から引用例5に接し,前記一般的な認識 によれば必ずしも奏功するとは限らないとはいえ,ACE阻害活性を備えた物質が 上記作用を示すか否か試行することを想起したとしても,前述したとおり,IPP 及びVPPは,性質,構造において上記ACE阻害剤と大きく異なり,特にIPP\n及びVPPのACE阻害活性は上記ACE阻害剤よりもかなり低いものといえるから,試行の対象としてIPP及び/又はVPPを選択することは,容易に想到するものではないというべきである。 以上によれば,引用発明と引用例2から引用例5とを組み合わせて補正発明を想到することは容易とはいえず,本件審決が,「相当程度の確立した知見」を前提として,引用発明と引用例2から引用例5とを組み合わせ,これらを併せ見た当業者であれば,引用発明においてACE阻害活性を有することが確認されたIPP及び/又はVPPを,血管内皮の収縮・拡張機能改善及び血管内膜の肥厚抑制の少なくとも一方の作用を有する剤として用いることに,格別の創意を要したものとはいえないと判断した点は誤りである。\n

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平成25(行ケ)10209  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年9月10日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が取り消されました。
 前述したとおり,補正発明と引用発明の相違点は,薬剤の用途が,補正発明においては,「血管内皮の収縮・拡張機能改善及び血管内膜の肥厚抑制の少なくとも一方の作用を有する剤」であるのに対して,引用発明においては,「ACE阻害活性を示す,抗高血圧剤」である点である。\nイ(ア) 引用例2から引用例4には,前記のとおり,ACE阻害剤であるシラザプリル,キナプリル,カプトプリルを,本態性高血圧症や内皮機能障害の疾患を有するヒト,バルーンカテーテル処理によって頸動脈の内皮剥離,損傷を受けたラットに投与した実験の結果,血管内皮の拡張能\の向上,血管内膜の肥厚抑制等が見られた旨が記載されており,引用例5には,血管壁肥厚の抑制と改善,内皮細胞機能の改善等がACE阻害薬の効果としてヒトで証明されている旨が記載されている。これらの記載によれば,シラザプリル等のACE阻害剤を人体や動物に投与した実験において,血管内皮の機能\改善作用,血管内膜の肥厚抑制作用が確認されたことを読み取ることができる。 (イ) しかしながら,前述のとおり,本願優先日当時においては,上記と異なる実験結果を示す複数の技術文献が存することから,ACE阻害剤であれば原則として血管内皮の収縮・拡張機能改善作用又は血管内膜の肥厚抑制作用のうち少なくともいずれか一方を有するとまではいえず,個々のACE阻害剤が実際にこれらの作用を有するか否かは,各別の実験によって確認しなければ分からないというのが,当業者の一般的な認識であった。\n(ウ) しかも,IPP及びVPPと,引用例2から引用例5に記載されたシラザプリル等のACE阻害剤との間には,以下のとおり,性質,構造において大きな差異が存在する。他方,IPP及びVPPと上記ACE阻害剤との間に,ACE阻害活性を有すること以外に特徴的な共通点は見当たらない。\na すなわち,シラザプリル等はいずれも典型的なACE阻害剤であるのに対し,IPP及びVPPは確かにACE阻害活性を有しているものの,下記の比較によれば,その強度は上記ACE阻害剤よりもかなり弱いものにとどまるといえる。現に,本件に証拠として提出されている公刊物中には,IPP及びVPPをACE阻害剤として紹介する記載は見当たらない。
・・・
ウ 前述した本願優先日当時の当業者の一般的な認識に鑑みれば,当業者 が,ACE阻害活性の有無に焦点を絞り,引用発明においてIPP及びVPPがA CE阻害活性を示したことのみをもって,引用例2から引用例5に記載されたAC E阻害剤との間には,前述したとおりACE阻害活性の強度及び構造上の差異など\n種々の相違があることを捨象し,IPP及びVPPも上記ACE阻害剤と同様に, 血管内皮の機能改善作用,血管内膜の肥厚抑制作用を示すことを期待して,IPP\n及び/又はVPPを用いることを容易に想到したとは考え難い。 また,仮に,当業者において,引用例2から引用例5に接し,前記一般的な認識 によれば必ずしも奏功するとは限らないとはいえ,ACE阻害活性を備えた物質が 上記作用を示すか否か試行することを想起したとしても,前述したとおり,IPP 及びVPPは,性質,構造において上記ACE阻害剤と大きく異なり,特にIPP\n及びVPPのACE阻害活性は上記ACE阻害剤よりもかなり低いものといえるから,試行の対象としてIPP及び/又はVPPを選択することは,容易に想到するものではないというべきである。 以上によれば,引用発明と引用例2から引用例5とを組み合わせて補正発明を想到することは容易とはいえず,本件審決が,「相当程度の確立した知見」を前提として,引用発明と引用例2から引用例5とを組み合わせ,これらを併せ見た当業者であれば,引用発明においてACE阻害活性を有することが確認されたIPP及び/又はVPPを,血管内皮の収縮・拡張機能改善及び血管内膜の肥厚抑制の少なくとも一方の作用を有する剤として用いることに,格別の創意を要したものとはいえないと判断した点は誤りである。\n

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平成25(行ケ)10277 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年8月27日  知的財産高等裁判所

 「試行錯誤なしに当然に導き出せる結論ではない」として、進歩性無しとした審決が取り消されました。
 審決は,フラックスレスろう付けの手法として,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法がともに技術常識であることから,相違点2に係る構成は,当業者が容易に想到できるものと判断した。確かに,本願発明と引用発明とは,いずれも,ろう付けされた部材の製造に使用される,芯材用のアルミニウム合金製の帯材又は板材において,所定量のイットリウムを含有させる点で共通するものである。また,エロージョンは,ろう材が芯材を侵食する現象であり,芯材の中にシリコンが浸透して腐食が起きやすくなるために,ろう付けの際に回避すべきものであるが,エロージョンが起きれば,侵食された芯材部分にろう材が流れ込む結果,ろう付けのための充分なろう材が行き渡らずに所定の付着効果が得られず,ろう付け性が低下するから,エロージョンの抑制には,結果的にはろう付け性を改善するといえる側面もあり,本願発明と引用発明の技術課題に重なり合う部分が存在すること自体は否定し難い。しかしながら,本願発明は,管理された窒素雰囲気でのろう付けによるものであるのに対して,引用発明は,真空雰囲気下でのろう付けによるものであるという相違点があるのであり,相違点2に係る構\成が当業者にとって容易に想到し得るものか否かは,結局,刊行物2に記載されたイットリウムの使用が,管理された窒素雰囲気下でのろう付けにも使用できるという示唆があるかどうか,また,本願出願時の技術常識から,それぞれのろう付け法におけるろう材や芯材の相互の互換性があるといえるか否かにより判断されるべきである。 しかるに,刊行物2そのものには,管理された窒素雰囲気下でのろう付けについて,何らの記載も示唆もない。また,芯材用アルミニウム合金にイットリウムを含有させることにより,管理された窒素雰囲気下でのろう付けにおいて,改善されたろう付け性が得られることについて,何らの記載も示唆もない。そして,上記のとおり,本願出願時には,ろう付け法ごとに,それぞれ特定の組成を持ったろう材や芯材が使用されることが既に技術常識となっており,ろう付け法の違いを超えて相互にろう材や芯材を容易に利用できるという技術的知見は認められない。したがって,真空雰囲気下でのろう付け法である引用発明において,芯材用アルミニウム合金にイットリウムを含有させることにより,ろう付けの際に生じるエロージョンを抑制することができるものであるとしても,管理された窒素雰囲気下でのろう付け法において,改善されたろう付け性が得られるかどうかは,試行錯誤なしに当然に導き出せる結論ではない。 したがって,相違点2に係る構成を当業者が容易に想到し得たとはいえず,この点に関する審決の判断は誤りである。
(4) 被告の主張に対する判断
ア 被告は,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法は,いずれもフラックスレスのろう付け法として,当業者において良く知られた技術であり(乙1〜7),また,特開昭62−13259号公報(乙1),特開昭58−163573号公報(乙4),特開昭53−131253号公報(乙5),特開昭63−157000号公報(乙6),特開昭61−7088号公報(乙7)には,これらのろう付け法が並列して記載されていることからすると,これらのろう付け法は,当業者にとって適宜置換可能な方法といえるから,刊行物2に接した当業者であれば,刊行物2に記載された材料からなる芯材用アルミニウム合金製の帯材又は板材を,真空ろう付け法だけでなく,窒素ガス雰囲気ろう付け法にも使用できることを容易に理解すると主張する。\n確かに,上記乙1,5〜7の記載によると,昭和50年代から昭和60年代初めにかけて,ろう付け法の種類に着目することなく,芯材,ろう材や母材にBe,Biを添加する方法がろう付け性向上のための技術思想として把握されていたことがうかがわれる(もっとも,乙6の第1表,第2表\には,真空雰囲気下ではろう材にMgを必ず含めているのに対し,窒素雰囲気下ではろう材にMgを含ませておらず,特定の芯材やろう材が特定のろう付け法において意識的に使い分けられていたとみる余地もある。)。しかしながら,ろう付け法が並列に記載されていることと,各方法において利用されていた技術が相互に容易に置換可能であることは別次元の問題であって,上記(2)のとおり,その後の本願出願時においては,技術常識として,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法とでは,使用されるアルミニウム合金ブレージングシートは,通常,区別されるものであるとされていたと認められるから,当業者にとって,真空ろう付け法において使用できた芯材を,窒素ガス雰囲気下のろう付け法において,当然に利用できると認識することは困難といえる。

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平成25(行ケ)10058  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年7月30日  知的財産高等裁判所

旧特181条により特許庁に差し戻された心理について、無効理由無しとした審決が取り消されました。動機付けありという理由です。
 甲1には,アレルギー性結膜炎を抑制するためのKW−4679(化合物Aのシス異性体の塩酸塩)を含有する点眼剤が記載され,また,甲1には,モルモットに抗原誘発及びヒスタミン誘発したアレルギー性結膜炎に対する各種抗アレルギー薬の影響を検討した結果,KW−4679の点眼は,10及び100ng/μlの濃度で,抗原誘発したアレルギー性結膜炎症に有意な抑制作用を示したこと,及び抗原誘発結膜炎よりもヒスタミン誘発結膜炎に対してより強力な抑制効果を示したことが記載されていることは, そしレルギー性結膜炎を抑制する薬剤の研究及び開発において,ヒトのアレルギー性結膜炎に類似するモデルとしてラット,モルモットの動物結膜炎モデルが作製され,点眼効果等の薬剤の効果判定に用いられていたこと,本件特許の優先日当時販売されていたヒトにおける抗アレルギー点眼剤の添付文書(「薬効・薬理」欄)には,各有効成分がラット,モルモットの動物結膜炎モデルにおいて結膜炎抑制作用を示したことや,ラットの腹腔肥満細胞等からのヒスタミン等の化学伝達物質の遊離抑制作用を示したことが記載されていたことからすると,甲1に接した当業者は,甲1には,KW−4679が「ヒト」の結膜肥満細胞に対してどのように作用するかについての記載はないものの,甲1記載のアレルギー性結膜炎を抑制するためのKW−4679を含有する点眼剤をヒトにおけるアレルギー性眼疾患の点眼剤として適用することを試みる動機付けがあるものと認められる。 そして,本件特許の優先日当時,ヒトのアレルギー性結膜炎を抑制する薬剤の研究及び開発において,当該薬剤における肥満細胞から産生・遊離されるヒスタミンなどの各種の化学伝達物質(ケミカルメディエーター)に対する拮抗作用とそれらの化学伝達物質の肥満細胞からの遊離抑制作用の二つの作用を確認することが一般的に行われていたことは,甲1記載のKW−4679を含有する点眼剤をヒトにおけるアレルギー性眼疾患の点眼剤として適用することを試みるに際し,KW−4679が上記二つの作用を有するかどうかの確認を当然に検討するものといえる。 加えて、前記(2)イ認定のとおり, 甲4には,化合物20(「化合物A」に相当)を含む一般式で表される化合物(I)及びその薬理上許容される塩のPCA抑制作用について,「PCA抑制作用は皮膚肥満細胞からのヒスタミンなどのケミカルメディエーターの遊離の抑制作用に基づくものと考えられ」るとの記載がある。この記載は,ヒスタミン遊離抑制作用を確認した実験に基づく記載ではないものの,化合物20(「化合物A」に相当)を含む一般式で表\される化合物(I)の薬理作用の一つとして肥満細胞からのヒスタミンなどのケミカルメディエーター(化学伝達物質)の遊離抑制作用があることの仮説を述べるものであり,その仮説を検証するために,化合物Aについて肥満細胞からのヒスタミンなどの遊離抑制作用があるかどうかを確認する動機付けとなるものといえる。 そうすると,甲1及び甲4に接した当業者においては,甲1記載のアレルギー性結膜炎を抑制するためのKW−4679を含有する点眼剤をヒトにおけるアレルギー性眼疾患の点眼剤として適用することを試みるに当たり,KW−4679が,ヒト結膜の肥満細胞から産生・遊離されるヒスタミンなどに対する拮抗作用を有するかどうかを確認するとともに,ヒト結膜の肥満細胞からのヒスタミンの遊離抑制作用を有するかどうかを確認する動機付けがあるものと認められる。

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平成25(行ケ)10291  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成26年7月16日  知的財産高等裁判所

 特29条の2の同一発明かが争われました。裁判所は同一発明でないと判断しました。
 審決は,拡大先願発明の農薬活性成分であるアニロホスとベンフレセートが遊星運動型混合機による混合で融点降下して液状化すると認定した。 融点降下とは,異なる二種類の物質が混ざり合うことにより純粋な物質のときよりも融点が低くなる現象をいう(乙2)。融点降下は,あらゆる物質を混合した場合に起きるわけではなく,むしろ,特定の選択された化合物間においてのみ認められ,(乙3,4参照),融点が低い化合物を混合したからといって常温で液状化するとはいえない。しかるに,拡大先願発明において,・・・という大量の固体成分と一様に混合されるから,アニロホスとベンフレセートの二成分のみが接触混合されるわけではない。また,拡大先願発明で用いられるアニロホス,ベンフレセートは,実際に融点降下が生じた・・・ との間で,化学物質としての構造や性質の類似性,同質性を認めるに足りる証拠はない。さらに,アニロホス,ベンフレセートを融点降下の生じ得る化合物として掲げている特開平10−158111号公報(甲2)においても,\nこれらの二つの成分について融点降下が実際に生じた例やそのための条件に関する言及はない。 したがって,拡大先願発明において,アニロホス,ベンフレセートにつき融点降下が生じる条件が整っていると認めるに足りる具体的・技術的根拠はなく,融点降下が起きていると断定することは困難である。よって,アニロホスとベンフレセートが混合により融点降下して液状化するという審決の認定には,誤りがある。
ウ 液状化について
また,審決は,拡大先願発明では,ナタネ油や界面活性剤が実質上の液体溶媒として作用して,農薬活性成分がナタネ油に溶解又は分散した液状物の形態で含まれる旨推認した。 まず,界面活性剤については,当事者双方の主張自体において,必ずしも液体であることを前提としていないから,これが実質上の液体溶媒として作用するとはいえない。したがって,界面活性剤が実質上の液体溶媒として作用するという審決の判断には誤りがある。 また,ナタネ油に関して検討すると,拡大先願発明において,そもそも混合するナタネ油の量それ自体が非常に少なく,液体溶媒として機能する上で十\分かという点が疑問である。しかも,拡大先願発明は,混合造粒機に焼成軽石を加え,運転しながらナタネ油を浸み込ませた後,それとは別に農薬活性成分等の成分を混合した後にハンマーミルで粉砕して調製した原末を投入し,さらに造粒機を運転させる過程を経て作成するものであるから,焼成軽石に既に浸み込んだ後のナタネ油が,農薬活性成分を溶解させる機能を果たすのに充分なだけの湿潤性をなお保持しているかという点にも疑問が残る。したがって,拡大先願発明において,ナタネ油が液体溶媒として機能\するとは必ずしもいえず,この点においても,審決の判断には誤りがあるというべきである。
エ 農薬活性成分の状態
上記のとおり,融点の低いアニロホス,ベンフレセートに融点降下が起きて液状 化するとは認められないから,固体の状態を維持したまま混合され,ケナフ粉などその他の原末成分とともに粉末化される。ここで,溶媒の役割を果たすべき液体のナタネ油の量は6%と非常に少ない上に,予め焼成軽石に浸み込まされているために農薬活性成分と混合した際に触れる量はより一層少ないから,ナタネ油は,混合された固体の農薬活性成分を液状化するまでには至らず,結合剤として機能\するだけで,固体の農薬活性成分を焼成軽石の表面や内部空隙に結着させるにすぎないと考えられる。したがって,拡大先願発明において,農薬活性成分が製造過程において液状になることはなく,「液体」又は「液状物」が「含有」されたものとはいえないから,「液体の農薬活性成分」又は「農薬活性成分を液体溶媒に溶解もしくは分散させた液状物」を「含有」することを必須とする本願発明とはこの点において相違がある。\n確かに,本願発明と拡大先願発明はいずれも物の発明であるところ,本願発明において,液体溶媒に分散された固体農薬活性成分が繊維作物の破断物の内部空隙まで浸透せずに表面に結着して存在する場合,生成物同士を比較すると,本願発明と拡大先願発明との間で固体農薬活性成分の存在形態に違いがない以上,両者を区別することはできない。また,拡大先願発明において,ケナフ粉の空隙と焼成軽石成分粒子の大小関係次第では,ケナフ粉の内部にアニロホス,ベンフレセートを含めた固体の農薬活性成分粒子が侵入することも考えられるが,この場合,農薬活性成分が繊維作物破断物の内部へ浸透する場合の本願発明と,固体農薬活性成分の存在形態に違いがなくなり,両者を区別することはできないことになる。このように,本願発明と拡大先願発明の固体農薬組成物に重なり合う部分があることは否定できないが,本願発明の請求項に「液体の農薬活性成分」又は「農薬活性成分を液体溶媒に溶解もしくは分散させた液状物」を「含有」するという記載がある以上,拡大先願発明との対比においてこの点を無視することはできないのであって,拡大先願発明がこの点を具備しない以上,相違点と認めざるを得ない。\nしたがって,審決の一応の相違点αに関する判断には誤りがある。

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平成25(行ケ)10089  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年7月16日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、動機付けありとした審決を取り消して、進歩性ありと判断しました。
 審決は,引用例3の記載を踏まえれば,引用発明のピーエヌツイン−2号の2室開通後のビタミンB1の安定性を改善する動機があると判断した。 確かに引用例3には,前記ウのとおり,2室開通後48時間経過した場合には,ビタミンB1の残存率が低下することが示されているが,それとともに,6時間経過後であれば安定性に問題はなく,24時間経過後であっても8割程度以上が残存していることも示されている。他方,ピーエヌツイン−2号は2室合計1100ミリリットル入りであって,通常これを用いた点滴注入は,直前に第1室と第2室が開通され,その後,8〜12時間程度で終了するものと認められる(甲2,12,35)。そうすると,引用例3の記載を踏まえても,引用発明の2室開通後,点滴終了後までのビタミンB1の安定性が不十分であると当業者が認識することはない。\nしたがって,引用例3の記載を踏まえれば,引用発明の2室開通混合後のビタミンB1の安定性を改善する動機があるとの審決の判断には,誤りがある。そして,2室開通混合後のビタミンB1の安定性確保以外に引用発明に引用例2に記載された発明を適用する動機を見出すことはできないから,引用例2の開示内容について検討するまでもなく,審決の相違点2に関する判断には誤りがある。

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平成25(行ケ)10239  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年7月9日  知的財産高等裁判所

 進歩性理由無しとした審決が取り消されました。
 上記ア,イのとおり,マンガンの溶出を抑制することによって高温保存性やサイクル特性を向上させるという周知の課題について,スピネル型マンガン酸リチウム又はこのマンガンを第3元素で置換した複合酸化物の結晶構造中に,ナトリウムが取り込まれることによってマンガンの溶出を抑制することができる,という手段が知られており(甲8),さらに,水酸化ナトリウムで中和した電解二酸化マンガンにはナトリウムが含有されており,このような電解二酸化マンガンをリチウムマンガ\n ン複合酸化物の原料として用いた場合(甲5)に,この電解二酸化マンガンに含有されていたナトリウムがリチウムマンガン複合酸化物の結晶構造中に取り込まれることも,広く知られていたといえる。\nそうすると,スピネル型マンガン酸リチウムであって,その原料として電解二酸化マンガンを用いる甲1発明において,高温保存性やサイクル特性を向上させるために,ナトリウムを取り込むという広く知られた手段を用いることとし,その際,水酸化ナトリウムで中和することによってナトリウムを含有することが広く知られている電解二酸化マンガンを原料として利用すること(甲5)に着目し,これを原料として使用することで・・・の結晶構造中にナトリウムを取り込み,それによりマンガンの溶出を抑制することは,当業者が容易に想到することであると認められる。\nまた,電解二酸化マンガンについて,中和によりどの程度のpHとするか,また,ナトリウムの含有量をどの程度とするかは,ナトリウムの単なる量的条件の決定にすぎず,上記解決手段を具現化する中で適宜選択される最適条件にすぎないから,pHを2以上とするとともに,ナトリウムの含有量を0.12〜2.20重量%とすることも,当業者が容易に想到することであるといえる。
・・・
本件発明1と甲1発明との相違点は,電解二酸化マンガンに関するものに限られたものであるところ,上記(1)ア,イのとおり,非水電解質二次電池の正極材料として用いられるスピネル型マンガン酸リチウムの結晶構造中にナトリウムが取り込まれることによりマンガンの溶出が抑制されることは,従来から知られていたことである。\nそして,前述のとおり,電解二酸化マンガンについて,中和によりどの程度のpHとするか,また,ナトリウムの含有量をどの程度とするかは,ナトリウムの単なる量的条件の決定にすぎず,解決手段を具現化する中で適宜選択される最適条件にすぎないところ,本件発明1の数値限定の量的範囲に従来技術と対比した臨界性はなく,当業者ならば単純な試行錯誤を重ねることによっていずれは達する数値であるから,容易に想到することであるといえる。 また,本件発明1の高温保存性や高温サイクル特性等の向上との効果は,マンガンの溶出を抑制することにより生じる効果そのものであり,また,その量的効果も格別顕著なものとは認められず,当業者が予測し得る範囲内のものである。\n

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平成25(行ケ)10310  審決取消請求事件  実用新案権  行政訴訟 平成26年7月9日  知的財産高等裁判所

 登録実用新案について、無効理由無しとした審決が取り消されました。
 甲1及び甲2対象品は,その形状等からみて,いずれも審決が甲1考案として認定したとおりの構成を有するものと認められ,本件考案1との相違点も,審決の認定のとおり,甲1及び甲2対象品が「付箋紙の積重ね層の中間部分に位置している色の付箋紙だけを剥離しても,他の付箋紙が分離してばらばらになることのないように,個々の上記付箋紙束が,多数枚の上記付箋紙の端縁の集まりによって形成されている上記付箋紙束の面状の端面に剥離可能\に接合された帯状の連結材によって連結されている」との構成(本件連結構\成)を有するか否が明らかでない点である。 そこで,甲1及び甲2対象品が,本件連結構成を有するか否かについて検討する。\n技術的効果証明写真(甲16)及び係争付箋紙の機能説明用DVD(甲27)によれば,甲1及び甲2対象品を各々構\成する一塊となった4色組付箋紙束が実験に用いられているところ,4色組付箋紙束ブロックをそれぞれ広げると,一端は繋がったまま各色の付箋紙束が角度をなして離間した状態となること,これらの4色組付箋紙束ブロックの両側最外層に一対のクリップを取り付け,両クリップを持って付箋紙束ブロックを持ち上げると,一端は繋がったまま各色の付箋紙束が角度をなして離間した状態となることが認められ,甲1及び甲2対象品の4色組付箋紙束ブロックにおいて,各色の付箋紙束が一端にて連結されているといえる。そして,前記のとおり,甲1及び甲2対象品は同一製品であるところ,甲1又は甲2対象品内の4色組付箋紙束ブロックのうち,中間部分の色束を数十枚剥離しても,付箋紙束は繋がったままであり,実験後の付箋紙束の両側最外層に一対のクリップを取り付け,両クリップを持って付箋紙束ブロックを持ち上げても,一端が繋がったままである様子が認められ,中間部分に位置している色の付箋紙を剥離しても,残った付箋紙が分離してばらばらにならないといえる。さらに,複数枚の付箋紙を剥離した後の付箋紙束の面状の端面,すなわち,付箋紙束が連結されている部分を見ると,膜状の層を認識でき,この膜状の層は,付箋紙束の面状の端面全体に亘っていることが認められ,各色の付箋紙束の一端を連結するのが,各色の付箋紙束の一端の端面に跨って接合された膜状の層であるといえる。\n以上を総合すれば,甲1及び甲2対象品の4色付箋紙束ブロックは,各色の付箋紙束の一端の端面に跨って剥離可能に接合された膜状の層によって,各色の付箋紙束が一端にて連結されることで,中間部分に位置している色の付箋紙を剥離しても,残った付箋紙が分離してばらばらにならない構\成を有することが認められる。上記の「膜状の層」は本件考案1の「帯状の連結材」に相当するものであるから,両構成は一致しており,甲1及び甲2対象品の4色付箋紙束ブロックは,本件考案1の本件連結構\成を備えているといえる。

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平成25(行ケ)10242  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年7月17日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が阻害要因ありとして取り消されました。
,甲16発明は,上記(1)ウのとおり,従来の技術では,照射面のうち,LEDアレイの並設方向(横方向)の照度にも,これと直交する方向(縦方向)の照度にも偏りが生じ,縦方向の有効照射巾が狭く,かつ均一な照度を得られないという課題を解決するため,光を無指向に散乱させる散乱シート2(ポリエステルフィルム上に微粉末からなる光拡散層)を設けることにより,光をLEDアレイの並設方向にも,これと直交する方向(縦方向)にも散乱させ,照射面については均一な照度となるようにし,その縦方向については有効照射巾を拡大できるようにしたものである。そうすると,甲16発明は,主としてLEDアレイの並設方向に光を集中的に拡散させることを課題とするものではなく,かえって,これと直交する方向にも光を拡散させることを課題とするものであるから,光を特定の1つの方向にのみ集中的に拡散させるという機能を有する光拡散体である甲17発明を,甲16発明に組み合わせることは,その動機付けを欠くものであり,当業者が容易に想到することができるものとは認められないというべきである(なお,甲17公報には,微小凹凸形状が転写されたモールドを,2つの方向に引き伸ばしてから,同モールドに硬化性樹脂を流し込んで製造する光拡散体も開示されていると認められるから,微小凹凸形状を2つの直交する方向に引き伸ばしたモールドから製造した光拡散体であれば,当業者が,甲16発明の課題を解決するために,甲16発明の散乱シート2に代えて組み合わせることは容易であると考える余地があるが,かかる光拡散体は,そもそも,「各凸レンズ部を,各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成し」た構\成を備えているとは認められないから,甲16発明と組み合わせても本件発明1の構成にはなり得ない。)。また,甲16発明と本件発明1との関係をみても,甲16発明と本件発明1とは,照射面における光のむらを解消することを課題の一部とする点では共通するが,甲16発明は,照度のユラギを改善して照射面全体における照度を均一とすることを目的とし,これに加えて,有効照射巾の拡大のため,縦方向にも光を散乱させることを課題とするものであり,かつ,その結果として,照射面における一定程度の照度の低下はやむを得ないことを前提とし(【実施例】),これを防止することは解決課題とはしていないのに対し,本件発明1は,各LEDの並設方向と直交する方向への光の拡散は課題としておらず,かえって,同方向へはほとんど拡散させずに,光を無用に減衰させることなく主に各LEDの並設方向に集光させ,かつ,照度の低下を防止することを必須の課題とするものであるから,両発明の解決課題は全体として異なるものである。それだけではなく,本件発明1は,各LEDの並設方向と直交する方向への光の拡散はほとんどさせないことにより,光を無用に減衰させることなく集光することを解決手段の1つとするものであるから,これとは逆に,同方向への光の拡散を課題の一部とする甲16発明には,本件発明1を想到することについての阻害要因が存するというべきである。\n

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平成25(行ケ)10245  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年7月17日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が、相違点の認定に誤りありとして取り消されました。
 引用文献においては,「Refining(精細)して再利用可能な程度の可塑性と粘着性を与える工程」については,「再生は脱硫のみならずRefiningに依つても行われる」,「(Refiningを)をおろそかにしている工場の殆ど總ては・・・出来上つた再生ゴムは粒子が粗く著しい見劣りが感ぜられた」,「何れにしてもRefiningは斯くの如く重要なもの」等とされており,「Refining(精細)して再利用可能な程度の可塑性と粘着性を与える工程」を重視すべきことが強調されている(甲2)。そうすると甲2発明に接した当業者は,再生(本願発明の「脱硫」)に際して「Refining(精細)して再利用可能な程度の可塑性と粘着性を与える工程」を強化するべきことを想到するとしても,「Refining(精細)して再利用可能な程度の可塑性と粘着性を与える工程」を必須としない構\成については,これを容易に想到し得ない。(3) 本願発明の「54〜100%の架橋を破壊して,加硫ゴム中の硫黄含量を減少するに十分な量のテルピン溶液」とは,本願発明の意味での「脱硫」,すなわち,使用済みの加硫ゴムを再利用できる形態まで「再生」すること,を基本的に完了するに足りる量のテルピン溶液を意味すると解される。一方,甲2発明の「再生方法」では,松根油と共に加熱する工程のみならず,可塑性及び粘着性を強めるRefining工程も必須であって,松根油と共に加熱する工程のみで「再生」が行われるわけではないから,松根油の量は,加硫ゴムを再利用できる可塑性及び粘着性を有する形態まで「再生」するのに十分な量であるとは認められない。むしろ,引用文献には,前記のとおり油の量を多くし加熱時間を長くすると再生ゴムの腰が弱くなるので,そうせずにRefiningを十分に行うことで十\分な可塑性と粘着性を有し,腰の強い再生ゴムが得られる旨が記載されているので,油の量を多くすることには阻害要因があるというべきである。(4) したがって,本願発明と甲2発明との間の上記各相違点に係る構成は,当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないから,審決の容易想到性判断には誤りがある。そして,この誤りは結論に影響を及ぼすものであるから,原告主張の取消事由4は理由がある。\n

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平成25(行ケ)10242 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年07月17日 知的財産高等裁判所

 阻害要因ありとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 甲16発明は,上記(1)ウのとおり,従来の技術では,照射面のうち,LEDアレイの並設方向(横方向)の照度にも,これと直交する方向(縦方向)の照度にも偏りが生じ,縦方向の有効照射巾が狭く,かつ均一な照度を得られないという課題を解決するため,光を無指向に散乱させる散乱シート2(ポリエステルフィルム上に微粉末からなる光拡散層)を設けることにより,光をLEDアレイの並設方向にも,これと直交する方向(縦方向)にも散乱させ,照射面については均一な照度となるようにし,その縦方向については有効照射巾を拡大できるようにしたものである。そうすると,甲16発明は,主としてLEDアレイの並設方向に光を集中的に拡散させることを課題とするものではなく,かえって,これと直交する方向にも光を拡散させることを課題とするものであるから,光を特定の1つの方向にのみ集中的に拡散させるという機能を有する光拡散体である甲17発明を,甲16発明に組み合わせることは,その動機付けを欠くものであり,当業者が容易に想到することができるものとは認められないというべきである(なお,甲17公報には,微小凹凸形状が転写されたモールドを,2つの方向に引き伸ばしてから,同モールドに硬化性樹脂を流し込んで製造する光拡散体も開示されていると認められるから,微小凹凸形状を2つの直交する方向に引き伸ばしたモールドから製造した光拡散体であれば,当業者が,甲16発明の課題を解決するために,甲16発明の散乱シート2に代えて組み合わせることは容易であると考える余地があるが,かかる光拡散体は,そもそも,「各凸レンズ部を,各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成し」た構\成を備えているとは認められないから,甲16発明と組み合わせても本件発明1の構成にはなり得ない。)。また,甲16発明と本件発明1との関係をみても,甲16発明と本件発明1とは,照射面における光のむらを解消することを課題の一部とする点では共通するが,甲16発明は,照度のユラギを改善して照射面全体における照度を均一とすることを目的とし,これに加えて,有効照射巾の拡大のため,縦方向にも光を散乱させることを課題とするものであり,かつ,その結果として,照射面における一定程度の照度の低下はやむを得ないことを前提とし(【実施例】),これを防止することは解決課題とはしていないのに対し,本件発明1は,各LEDの並設方向と直交する方向への光の拡散は課題としておらず,かえって,同方向へはほとんど拡散させずに,光を無用に減衰させることなく主に各LEDの並設方向に集光させ,かつ,照度の低下を防止することを必須の課題とするものであるから,両発明の解決課題は全体として異なるものである。それだけではなく,本件発明1は,各LEDの並設方向と直交する方向への光の拡散はほとんどさせないことにより,光を無用に減衰させることなく集光することを解決手段の1つとするものであるから,これとは逆に,同方向への光の拡散を課題の一部とする甲16発明には,本件発明1を想到することについての阻害要因が存するというべきである。
・・・・
エ 被告の主張について
(ア) 被告は,甲16発明の課題の1つである「有効照射巾を広げる」とは,光を照射面で線状に収束させるにあたり,光軸の近傍で有効照射巾をほとんど確保することができない箇所が生じてセンサー出力のバラツキが生じないよう,光軸の近傍でセンサ機能等に必要な有効照射巾を十\分に確保し,以て必要な光量を確保する意義,と解するのが相当であり,他方,本件発明1の課題は,光軸近傍で必要な有効照射巾を確保することを否定するものではなく,乱反射により無用に光量が減衰することを防止する趣旨のものであるから,甲16発明と本件発明1の課題とは相反するものではないし,甲16発明から本件発明1を想到する阻害要因はなく,両発明は,照射面の照度の均一化・光量のむらの低減,光量の確保について,具体的な課題を共通にするものであり,甲16発明から本件発明1に到達する動機付けは十分にあると主張する。 しかし,甲16発明の対象とするセンサの性質上,甲16発明が,各LEDと直交する方向(縦方向)へ無限定に光を拡散することを課題とするものではないことは当然であるとしても,甲16発明は,照射面における縦方向の有効照射巾が狭いということを解決課題とするものである以上,縦方向に光を拡散させることを必須とするものであるし,甲16発明の採用する光拡散体は,縦方向へ無限定に光を拡散させることを可能とする構\成でもない。そして,甲16公報の記載全体によっても,光の拡散を主に各LEDの並設方向へ行うということを課題とすることを示唆する記載はない。他方,本件発明1は,光軸近傍で必要な有効照射巾を確保することを否定するものではないとしても,集光位置の縦方向における照度の確保(有効照射巾の確保)を従前の技術についての解決が必要な課題としてとらえているとは認められない(甲39,45)。したがって,本件発明1は,各LEDの並設方向と直交する方向へはほとんど光を拡散させないことを前提としているのに対し,甲16発明は,集光位置の縦方向における照度の確保(有効照射巾の確保)を解決課題として,各LEDの並設方向と直交する方向にも,同並設方向と同程度に光を拡散させるものであるから,甲16発明と本件発明1の課題とは異なるものであり,甲16発明から本件発明1を想到する阻害要因があるというべきである。したがって,被告の上記主張は採用できない。

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平成25(行ケ)10057等 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年06月25日 知的財産高等裁判所 

 請求項1は無効、請求項2は無効理由なしとした審決について、双方が争いました。知財高裁は、審決を維持しました。請求項2は、請求項1にさらに「前記移動局は,アクセス閾値評価を実施するために,前記アクセス閾値(S)とランダム数または擬似ランダム数(R)とを比較する手段を有する」という限定がなされていました。
 しかるところ,引用発明1の「受信レベル」は,「基準レベルL」と比較されて,移動局が「規制ゾーン」(規制空間)に位置するか否かが判断されるものであり,受信レベルの値を常に厳密に予測することは困難であるとしても,局発信号を送信する規制基地局と移動局との距離が近くなれば受信レベルは大きくなり,その距離が遠くなれば受信レベルは小さくなるという傾向が存在し,移動局の受信レベルの概略値をある程度予\測することが可能であり,また,移動局が同じ場所に留まり,周辺の状況の変化が生じなければ,受信レベルは一定となり,「規制ゾーン」(規制空間)内か否かの判断結果も,時間の経過とともに変化するものではないと解される。そうすると,引用発明1の受信レベルは,「ある一定の確率法則に従い,かつ相互にまったく独立になるようにつくられた一群の数」とはいえず,「いかなるアルゴリズムも満たさないこととなる数の列」ともいえないから,本件特許発明2の「ランダム数」に該当しないというべきである。\n

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平成26(行ケ)10028 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年05月28日 知的財産高等裁判所

IPHONEの裏のリンゴマークをケースの図形として活用可能なスマホケースについての\n進歩性が争われました。知財高裁は、進歩性無しとした審決を維持しました。
 審決は,さらに,上記電子的技術情報1には,該アフリカゾウのイラストが,ロ ゴマークと一体となって一つのモチーフを醸し出すためにデザインされたものであ る点も記載されていると認定したところ,原告は,上記「アースウェア絶滅危惧種」 シリーズの他の動物のケースでは,動物のイラストがリンゴのロゴマークと重なっ たり,無関係の構図で描かれたりしていることからすると,アフリカゾウとリンゴ\nの位置関係は偶然にすぎず,アフリカゾウがリンゴを鼻でつかんでいるように見え るのは,意図されたものでないと主張して,審決の引用発明の認定を争っている。 上記「アースウェア絶滅危惧種」シリーズは,透明のクリアケースを用い,白色 で絶滅危惧種の動物等のイラストを施した一連のシリーズであるから,一貫したコ ンセプトをもってデザインされたと考えるのが自然である。かかる観点から各イラ ストを検討するに,上記「グレービーシマウマ」の首のあたりには模様がない部分 が認められるが,これは,本体にケースを取り付けた際に,iPhone4の裏面 のリンゴのロゴマークが,シマウマの首の縞模様の一部を形成するように,当該マ ークと一致させて模様を脱落させたものであるとみるのが自然である。そして,シ マウマの顔の位置も,iPhone4の裏面の文字と重ならないように形成されて いるのも,同じようなロゴ文字との調和の意図を持ってなされたものと推認するの が相当である。他方,上記のとおり,「アレキサンドラトリバネアゲハ」のイラスト は,「グレービーシマウマ」のそれと同じようにリンゴのロゴマークと重なり合って いるが,その部分がチョウの身体の模様,すなわち,羽の模様の一部にはなってい ない。もっとも,リンゴのロゴマークはチョウの羽とほぼ重なるように配置されて おり,リンゴのロゴマークが大きくはみ出すようなデザインになっていないという 限度において,少なくとも,リンゴのロゴマークの大半を隠すことによって,チョ ウのイラストとリンゴのロゴマークとの調和をある程度図ったとみるのが自然であ る。また,「ブッシュマンウサギ」,「アムールヒョウ」,「ホッキョクグマ」の各イラストは,ロゴマークのリンゴとは離れた構図が採用され,一見リンゴと無関係の位\n置に配置されているようにも見えるが,少なくとも,動物の身体と重ならないよう に配慮されているのは明らかであって,この限度で,動物のイラストとリンゴのロ ゴマークとの調和をある程度図ったものであることは,他のデザインと同様である。 しかも,被告も指摘するように,「ホッキョクグマ」のイラストは,その下に記載さ れた地球のイラストと対比すると,リンゴのロゴマークをして月を想起させるよう な位置に配置されているという評価もできるものである。そうすると,アフリカゾ ウのイラストとリンゴのロゴマークの位置関係も偶然ではなく,両者をもって一つ のモチーフを醸し出すためにデザインされたものであると認めることができる。

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平成25(行ケ)10248 審決取消訴訟 特許権 行政訴訟 平成26年05月26日 知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤りを理由として、進歩性無しとした審決が取り消されました。
 甲1発明は,前記(1)イに認定したとおりであるから,甲1発明における,排気ガスの酸素濃度が低下したとき(リッチ燃焼運転時)に,「HCが部分酸化されて活性化され,NOxの還元反応が進みやすくなり,結果的に,HC及びNOx浄化率が高まる」という作用効果は,NOx吸収材と貴金属とを含む排気ガス浄化用触媒に追加した「Ce−Zr−Pr複酸化物」によって奏したものであって,排気ガスの酸素濃度を前記段落【0058】のように「2.0%以下,あるいは0.5%以下」となるように制御することによって奏したものではない。すなわち,「Ce−Zr−Pr複酸化物」は,前記作用効果を奏するための必須の構成要件であるというべきであり,排気ガスの酸素濃度を「2.0%以下,あるいは0.5%以下」となるように制御した点は,単に,実施例の一つとして,リーン燃焼運転時に「例えば4〜5%から20%」,リッチ燃焼運転時に「2.0%以下,あるいは0.5%以下」との数値範囲に制御したにとどまり,前記作用効果を奏するために施した手段とは認められない。したがって,引用発明において,「HCが部分酸化されて活性化」されるのは,NOx吸収材と貴金属とを含む排気ガス浄化用触媒において,「Ce−Zr−Pr複酸化物」を含むように構\成したことによるものであるから,引用例1に,「排気ガス浄化用触媒1の入口側の排気ガスの酸素濃度は2.0%以下に制御」(段落【0058】)することにより,HCの部分酸化をもたらすことを内容とする発明が,開示されていると認めることはできない。そうすると,審決は,引用発明の認定において,「酸素濃度は2.0%以下に制御され,HCが部分酸化されて活性化されNOxの還元反応が進みやすくなり,結果的にHC及びNOx浄化率が高まる,排気ガス浄化装置」と認定しながら,そのような作用効果を奏する必須の構成である「Ce−Zr−Pr複酸化物」を排気ガス浄化用触媒に含ませることなく,欠落させた点において,その認定は誤りであるといわざるを得ない。\n

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平成25(行ケ)10229 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年05月12日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、動機付けなしとして取り消されました。
 ところで,甲2発明において,「ウェール数を多めに編成する」のは,あくまでも甲1の「まち部20」と同じ効果をもたらすためであるから,当業者が,靴下の内側又は外側に対し,甲2発明の構成を適用しようとするのは,甲1発明の「まち部20」が形成されるのと同じ側,すなわち踵部の内側である。したがって,甲2の「ウェール数を多めに編成する」構\成を甲1発明に適用したとしても,それは,減らし目及び増やし目工程を二工程ずつ行う側とウェール数を多めに編成する側とが踵部において同じ側になることが明らかであり,両方の側が互いに反対となる本件発明の構成,「踵部の内側すなわち着用者の第一趾側は減らし目,増やし目,減らし目ついで増やし目の順に編成・・・すると共に外側方向にウェール数を多めに編成する」には至らないから,相違点2を解消できない。
イ 仮に,「まち部20」が形成される側と反対側,例えば,踵部の内側に「まち部20」を形成しつつ,踵部の外側の「ウェール数を多めに編成」した場合には,相違点2そのものは解消されることになる。しかしながら,かかる構成を採用した場合,踵部の内側に「まち部20」による余裕ができる一方で,踵部の外側に「ウェール数を多めに編成」することによる余裕ができてしまい,踵部の両側に余裕ができることになるため,踵部の内側と外側とが対称形に近づいてしまい,踵部が左右非対称形に形成された靴下を提供するという甲1発明の目的や課題に反することとなってしまう。したがって,「ウェール数を多めに編成すること」を甲1発明の「まち部20」が形成される側とは反対側に適用することには,阻害事由があるということになる。\n

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平成25(行ケ)10259 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年04月24日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が、共通の技術分野に属するものであるとして、取り消されました。
 本件特許発明1は,帯電微粒子水を食品収納庫内の空気中に浮遊させて当該帯電微粒子水に含まれる活性種とエチレンガスを反応させ,二酸化炭素と水に分解するエチレンガスの除去方法であるのに対し,甲1発明1は,帯電微粒子水を室内の空気中に浮遊させて当該帯電微粒子水に含まれる活性種とアセトアルデヒドを反応させて消臭するものではあるが,いずれも,活性種を用いて対象物を除去し空気を清浄する点では共通するものである。さらに,前記・・・において認定した甲2公報ないし甲5公報に記載された技術は,その生成方法や生成された活性種の状態について本件特許発明1や甲1発明1のものと同一とはいえないものも含まれるものの,いずれも活性種を利用し空気等を清浄した点では共通する。そうすると,原出願時の当業者は,本件特許発明1,甲1発明1及び・・・において認定した各技術につき「活性種を利用した空気清浄技術」という共通の技術分野に属するものと認識するものと認められる。さらに,前記イにおいて認定した技術も,その内容に照らし,いずれも「活性種を利用した空気清浄技術」に属するものと認められる。そして,前記・・・において認定したところに照らすと,「活性種を利用した空気清浄技術」という技術分野において,同一の活性種の発生方法(発生装置)を,空気清浄機や食品収納庫やエアコンや加湿器等の異なる機器の間で転用したり,脱臭や除菌やエチレンガスの分解等の異なる目的の用途に利用することは,原出願時において,当業者において通常に行われていた技術常識であると認められる。さらに,前記・・・において認定したところに照らすと,一般に,植物の成長促進成分として野菜や果実からエチレンガス及びアセトアルデヒドが出ることが知られており,このエチレンガス及びアセトアルデヒドを活性種により分解することは,原出願時において周知の技術であるものと認められる。加えて,・・・とおり,甲2公報ないし甲5公報には,食品収納庫において活性種が食品から出るエチレンガスを分解することが記載されているほか,甲4公報には,OHラジカルがエチレンを炭酸ガス(CO2)と水に分解することが記載されていることに照らすと,食品収納庫内のエチレンガスを除去することが求められており,そのために活性種を用いる技術が存在したことが認められる。また,前記・・・において認定したところに照らすと,甲1発明1並びに甲2公報及び甲3公報に記載された技術は,いずれも,活性種が水と結合している状態のものを利用して空気等を清浄する点で共通するものと認められる。以上によれば,甲1発明1において,帯電微粒子水に含まれる活性種につき,アセトアルデヒドと反応させて消臭することに代えて,エチレンガスの除去に用いること,その際,帯電微粒子水を室内の空気中に浮遊させ,アセトアルデヒドを消臭することに代えて,帯電微粒子水を食品収納庫内の空気中に浮遊させて当該帯電微粒子水に含まれる活性種とエチレンガスを反応させ,二酸化炭素と水に分解することは,原出願時の当業者において容易に想到することができたものと認められる。よって,甲1発明1に甲2公報ないし甲5公報記載の技術並びに技術常識及び周知技術を適用して,本件特許発明1との相違点に係る構成とすることは,原出願時の当業者において,容易に想到することができたものと認められる。\n

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平成25(行ケ)10207 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年04月17日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、動機付け無しとして、拒絶審決が取り消されました。出願人は、三菱東京UFJ銀行です。
 相違点2は,本願発明は,「インターネットを介して利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するのに対し,引用発明は,そのような手段を有するとはされていない点である。本件審決は,上記相違点2について,引用発明の具体的動作として,「アクセス可能なサーバー/アプリケーションのID/パスワードの束」を受け取る具体例が示されているが,ユーザーがどの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定して,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取るようにすることは,当業者が適宜になし得ることであり,その際に,「Webのアプリケーション」に対して「SSO環境を構\\築できる」ような製品である場合に,「インターネットを介して」,どの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定する情報を「SSOサーバー」に送るようにすることも,当業者が適宜になし得ることにすぎないから,引用発明を,「インターネットを介して利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するようなものとすることは,当業者が適宜になし得ることである旨判断した。 ア 前記1のとおり,本願発明における認証代行処理手段は,利用者の選択により,利用者の認証情報が登録されているリンク先が指定された場合に,利用者に代わって当該リンク先の認証処理を代行する機能を有するものである。すなわち,本願発明における認証代行処理手段は,利用者によるリンク先の指定情報及びその利用者情報を受け取って,リンク先情報登録手段から該当するリンク先情報(URL情報など)を,また認証情報格納手段から利用者のそのリンク先における認証情報(リンク先における利用者のユーザーID及びパスワードなど)を,それぞれ読み出すと共に,ひな形スクリプト/モジュール格納手段から,該当するリンク先のひな形スクリプトを読み出して,リンク先用の認証処理スクリプト(対象とするリンク先に自動的に接続処理を開始する処理をHTMLとJavaScriptにて記載したもの)を作成し,上記リンク先情報及び認証処理スクリプトを,利用者のブラウザに転送するので,利用者側のブラウザは,送られてきたリンク先情報で,目的とするリンク先にリンクすると共に,上記認証処理スクリプトに基づいて,ブラウザが,リンク先で実行される認証処理で表\\示される画面構成に対し,自動的に上記認証情報を埋め込んでいくため,利用者は,何ら選択したリンク先への操作を行わなくても,認証処理が自動的に実行されることになる。その結果,本願発明は,利用者が,ポータルサイトなどにおいてリンク先の選択を行うだけで,該リンク先に対して,何ら特別な操作を行わなくても,認証処理が自動的に実行されるため,それが終了した段階で,当該リンク先へのログインが可能\\となるという効果を奏し得るものである。そうすると,本願発明は,利用者の選択により,利用者の認証情報が登録されているリンク先が指定され,「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」(相違点2に係る構成)によって,上記利用者によるリンク先の指定情報を受け取った認証代行処理手段が,利用者に代わって当該リンク先の認証処理を代行するものと認められる。
イ これに対し,引用発明は,前記3のとおり,SSOサーバーにログインすると,アクセス可能なサーバー/アプリケーションのID/パスワードの束と,各サーバー/アプリケーションの種類ごとに用意され,ログイン操作を自動化するスクリプトが,SSOサーバーからクライアント・モジュールに配布され,クライアント・モジュールは,ログイン操作を自動化するスクリプトを実行するものである。ここで,アクセス可能\\なサーバー/アプリケーションのID/パスワードの束とは,SSOサーバーにログインしたユーザーが,アクセスすることができる全てのサーバー/アプリケーションのID/パスワードの組合せであると理解することができる。また,前記3アのとおり,引用例の記載及び本技術分野における技術常識に照らせば,引用発明のSSOサーバーは,各サーバー/アプリケーションのリンク先情報を登録しておくリンク先情報登録手段を有し,クライアントモジュールは,SSOサーバーから,各サーバー/アプリケーションのリンク先情報を受け取るものである。そして,引用発明では,上記の構成を採用することによって,ユーザーは,一度のログイン操作で,アクセス可能\\な全てのアプリケーションを利用できるとの機能(シングル・サインオン(SSO)機能\\)を有すると認められる。そうすると,引用発明においては,一度SSOサーバーにログインすれば,クライアント・モジュールは,SSOサーバーにログインしたユーザーがアクセス可能な全てのサーバー/アプリケーションのID/パスワードの組合せ,各サーバー/アプリケーションの種類ごとのログイン操作を自動化するスクリプト,及び各サーバー/アプリケーションのリンク先情報を受け取るから,それ以降,SSOサーバーとの通信を行う必要がなく,ログイン操作を自動化するスクリプトを実行することで,シングル・サインオン機能\\を果たすとの作用効果を奏すると認められる。しかるに,このような構成を採用する引用発明について,SSOサーバーが「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するものとした上で,ユーザーがどの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定して,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取るように構\\成を変更するとすれば,利用者が情報閲覧手段よりリンク先の指定を行う都度,クライアント・モジュールは,SSOサーバーとの通信を行い,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取り,上記指定された「サーバー/アプリケーション」へのログイン操作を自動化するスクリプトを実行することにより,シングル・サインオン機能を果たすことになる。しかし,それでは,一度SSOサーバーにログインすれば,クライアント・モジュールは,それ以降,SSOサーバーとの通信を行う必要がなく,ログイン操作を自動化するスクリプトを実行できるとの引用発明が有する上記の作用効果が失われることとなる。したがって,引用発明において,相違点2に係る本願発明の構\\成に変更する必要性があるものとは認められない。このように,引用発明について,SSOサーバーが「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するもの(相違点2に係る構成とすること)とした上で,ユーザーがどの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定して,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取るように構\\成を変更することについては,引用発明が本来奏する上記作用効果が失われるものであって,その必要性が認められないから,引用発明における上記構成上の変更は,解決課題の存在等の動機付けなしには容易に想到することができない。しかして,引用例には,引用発明について上記構\\成上の変更をすることの動機付けとなるような事項が記載又は示唆されていると認めることはできない。
ウ 前記アのとおり,本願発明は,利用者の選択により,利用者の認証情報が登録されているリンク先が指定され,「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」(相違点2に係る構成)によって,上記利用者によるリンク先の指定情報を受け取った認証代行処理手段が,利用者に代わって当該リンク先の認証処理を代行するものであるから,本願発明と引用発明とは,相違点2に係る構\\成により,作用効果上,格別に相違するものであり,引用発明において,相違点2に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が適宜なし得る程度のものとは認められない。\n

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平成24(ワ)11800 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月27日 東京地方裁判所

 被告が完成し公然実施した発明なので、本件特許発明は新規性がないとして権利行使不能と判断されました。
 原告は,先行製品は1ロットの中ですら,αMDが10ppm/度(摂氏)未満であったり,αTDが7ppm/度(摂氏)超であったりして,本件発明1の構成要件1C1及び2と一致しないものであり,被告が先行発明を完成させていないことは,1)被告やその譲渡先が公表していたウェブサイト,論文等に先行発明に関する記載がないこと,2)厚さ約35μmのポリイミドフィルムについては,αTDをαMDと等しくしたものとαMDより低くしたものに別の名称を付しているのに対し,厚さ25μmの先行製品については,別の名称を付していないこと,3)被告がαTDをαMDより低くしたポリイミドフィルムに関する発明を特許出願したのは,平成20年6月であることから明らかであると主張する。しかしながら,特許法2条1項の「発明」は,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいうから,当業者が創作された技術内容を反復実施することにより同一の結果を得られること,すなわち,反復可能性のあることが必要である(最高裁平成10年(行ツ)第19号同12年2月29日第三小法廷判決・民集54巻2号709頁参照)。被告は,平成14年3月10日ころから平成15年4月2日までの間に,先行発明の技術的範囲に属する28本の先行製品を製造したのであって,先行発明には反復可能\性があるから,被告が平成16年3月30日以前に先行発明を完成させていたことは明らかである。確かに,先行製品は,別表記載のとおり,1ロットの中でも,αMDが10ppm/度(摂氏)未満であったり,αTDが3ppm/度(摂氏)未満や7ppm/度(摂氏)超であったりしたのであるが,弁論の全趣旨によれば,それは,被告が,本件発明1の内容を知らず,αMDを10ppm/度(摂氏)以上,αTDを3〜7ppm/度(摂氏)以上とすることを目標にしていなかったからにすぎないことが認められる。そして,1)や2)については,証拠(乙9,32,34,35,47)によれば,被告は,平成14年ころから,銅張積層体メーカーと共にCOF用基板を開発するために,αTDをαMDより低くした先行製品を製造していたことが認められるから,被告やその譲渡先が公表していたウェブサイト,論文等に先行発明に関する記載がなく,また,先行発明の技術的範囲に属する先行製品に別の名称を付していないとしても,このこと自体,格別不自然であるということはできない。3)については,証拠(甲15)によれば,被告が平成20年6月に特許出願した発明は,αTDをαMDより低くしたポリイミドフィルムの連続製造方法に係る発明であって,上記ポリイミドフィルムに係る発明でないことが認められる。原告の前記主張は,採用することができない。(ウ) そうであるから,被告は,本件特許権の優先日に係る特許出願前に,一部の本件発明1に相当する先行発明を完成させたものと認められる。
イ 先行発明の公然実施について
(ア) 被告は,別表記載のとおり,平成14年4月5日から平成16年3月12日までの間に,複数の銅張積層体メーカーに対し,先行発明の技術的範囲に属する28本の先行製品のうち,αMDが10.1〜14.4ppm/度(摂氏)であり,αTDが3.5〜7.0ppm/度(摂氏)である19本の全部又は一部を譲渡した。そして,被告や上記銅張積層体メーカーが当該譲渡について相互に守秘義務を負っていたことを認めるに足りる証拠はない。(イ) 原告は,前記譲渡がCOF用のポリイミドフィルムを共同開発するためであって,相互に守秘義務を負っていたと主張する。しかしながら,証拠(乙47)によれば,前記銅張積層体メーカーの1社である東レ株式会社が平成15年1月に発行された業界誌に投稿した論文には,αTDをαMDより低くしたポリイミドフィルムがCOF用に適している旨の記載があることが認められ,この事実に照らすと,被告や前記銅張積層体メーカーが相互に守秘義務を負っていたとは考え難い。原告の前記主張は,採用することができない。(ウ) そうであるから,被告は,本件特許権の優先日に係る特許出願前に,先行発明のうちαTDが3.5ppm/度(摂氏)以上のものを公然と実施したものである。ウ したがって,本件発明1は,本件特許権の優先日に係る特許出願前に公然実施をされた発明であり,本件発明1に係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。

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平成25(行ケ)10176 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月26日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が維持されました。裁判所は「複数の課題が示されている場合に,その優劣関係や関連性などを考慮した上で,ある課題の解決を優先して別の構成を採用することが当業者が適宜試みるものである」として、動機付けあり、および阻害要因無しと判断しました。

ア 動機付けについて
原告は,引用例1には,「構造も極めて簡単かつ強固」にするという課題があり,「接着剤や締結部材等を要することなく弾性的に密嵌合した状態で確実かつ強固に係止される」という作用効果を奏するためには,環状後端面3Dが内側環状面7Cに係合されることが必要であるから,引用発明は,環状後端面3Dが形成されること,すなわち,本願発明でいえば,第1の直径が第2の直径よりも小さい構\成でなければならないし,引用例1には,直径の大きさを上記構成と逆にする設計思想は開示も示唆もない,また,引用例2や引用例3の構\成も図面から特定されているだけで,具体的な設計思想はないから,引用発明と,引用例2又は引用例3の記載事項を組み合わせる動機付けはないと主張する。しかしながら,引用例1に「組立作業の大部分を占める電極部材の取り付けが極めて容易であるばかりでなく,構造も極めて簡単かつ強固で・・・」(段落【0004】)と記載されているように,環状後端面3Dを備えた電極素材は,強固な固着の作用をもたらすと同時に電極部材の取付けの容易性を導き出すための構\成でもある。したがって,引用発明は,部品を減らすこと,固着を強固にすることという課題のみならず,電極部材の取付けを容易なものとするという課題をも解決したものといえ,引用発明において電極部材の取付けやすさという課題が示唆されている以上,同じ課題を解決するための手段や技術と組み合わせることについて示唆があるといえる。そして,当業者は,引用発明に複数の課題が示されているような場合には,その優劣関係や関連性の程度,一方を優先した場合の他方への影響の度合いや得失などを考慮した上で,特定の課題の解決をいったん留保して異なる課題の解法の観点から,発明が採用している構成の一部を変更することも適宜試みるものというべきである。これを本件に当てはめると,筒状体の両端部に嵌める電極部材の形状として,第1の直径と第2の直径の大小関係をどのようにするかという点についても,固着を強固にするという課題を留保して電極部材の取付けを容易にするという課題の解決のために,当業者が適宜決定できる設計事項を採用して,構\成の変更を行うことについての示唆があるというべきである。そして,引用例2又は引用例3における電極部材の構成は,いずれも,第1の直径が第2の直径よりも大きい構\成であるところ,かかる構成は,筒状の物体の端の孔を部材でふさぐ場合において,センサという技術分野に限られずに用いられる,一般的なありふれた形状であって,いわば周知技術といえ(乙3,4参照),しかも,その構\造は筒状体に取り付けやすい形状であることは明らかであるから,これを取付けやすさを課題の1つとした引用発明に組み合わせることには動機付けがある。したがって,「筒状体B」に嵌まる部分の第2の直径を変更することなく,「筒状体B」に嵌まらない部分の第1の直径を「筒状体B」に嵌まる部分の第2の直径よりも大きく構成することで,本願発明と引用発明の相違点に係る構\成(第2の直径を第1の直径よりも小さくする構成)とすることは,当業者であれば容易に想到し得るものである。\n
イ 阻害要因について
原告は,引用例1において,仮に,第1の直径を第2の直径よりも大きく設定しようとすると,環状突起7及び9を除去して筒状体Bの内径を増大させなければならないから係止できず(仮定A),仮に,電極部材A1とA2の向きを逆にして対向させても頸部1同士が突き当たるし,距離をとっても取り外すことは困難であり(仮定B),仮に,第1の直径を第2の直径よりも大きく設定する場合,センサ自体が大型化し,小型化という引用発明の目的に反する(仮定C)から,引用発明に,引用例2又は引用例3の構成を採用すると,引用発明の本来の目的を放棄することになるから,組合せに阻害要因があると主張する。しかしながら,そもそも審決は仮定A,Bについての判断を示していない。また,引用発明は,従来技術(乙1,2)が有していた必要な部品の点数が多く,各種の組立工程が多いという課題に鑑みて,少ない部品で取り付けやすく固着の強固なセンサを目指して発明されたものであって,複数の課題が示されている場合に,その優劣関係や関連性などを考慮した上で,ある課題の解決を優先して別の構\成を採用することが当業者が適宜試みるものであることは,上記アで説示したとおりであり,このような試みに阻害要因があるとはいえない。したがって,電極部材を筒状体に係止する必要性がない場合には,係止のための工夫を取り除いて,第1の直径と第2の直径の大小関係を逆転させることや内部の環状突起を除外すること,電極部材同士がぶつかりあわないような筒状体の長さを設けたり,電極部材の頸部の長さを短縮したりすること,電極部材の取外しが容易な部材を用いた形状にすることは,当業者が適宜決定できる設計事項であって,上記仮定A,Bは阻害要因にはならないというべきである。さらに,第1の直径を第2の直径よりも大きく設定する場合には,第1,2のいずれの直径も従前より小さくしさえすれば,従来技術と比較してセンサ自体が大型化することもない。

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平成25(行ケ)10214 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月25日 知的財産高等裁判所

 相違点の認定について誤っているとして、進歩性無しとした審決が取り消されました。
 審決は,「ソレノイド駆動ポンプを含む電気機器や電気システムにおいて,設計上その使用に適した電圧が設定されていることは電気機器・システムにおける技術常識である。」,「交流電源を用いる電気機器において,電源電圧が異なっても同じ機器を使用できるように対処しようとする課題は周知の課題…であるから,パソ\\コン・家電用品に限らず,ポンプ等交流電源を用いるものならば当然要求される課題である。また,刊行物1発明の課題も入力電圧の異なる複数の電源に対応することである。」,「交流電源を用いる機器であるソレノイド駆動ポンプは,…従来から周知の技術である。」,「刊行物2には,ソ\\レノイドを用いるポンプ…の入力電圧が異なっても…,オン・オフのデューティを制御…する信号…を用いて所望の直流電圧を得ることが記載されている」,「自動車用の燃料ポンプとしてポンプ動作体…を往復動作するためにソレノイドが用いられるものは,…常套手段である」とし,「入力電圧の異なる複数の電源に対応することを課題とする刊行物1発明を,刊行物2記載の事項,上記技術常識,上記周知の課題,上記周知の技術及び上記常套手段の下,適用対象を本件訂正発明のソ\\レノイド駆動ポンプとし,本件訂正発明の上記相違点1に係る構成とすることは当業者であれば容易に想到し得ることと認められる。」(審決書17〜19頁)と判断した。しかしながら,審決の上記判断は,次に述べるとおり誤りである。ア 本件訂正発明は,前記(1)のとおり,ソレノイド駆動ポンプの制御回路に関する発明であり,ポンプの技術分野に属するものであって,その課題は,ユーザーが電源電圧の選択を必要とせず,かつ,種類が低減され,したがって,管理が容易なソ\\レノイド駆動ポンプの制御回路を提供することである。これに対し,刊行物1発明は,前記(2)のとおり,パソコン等の電子機器に内蔵されたDC/DCコンバータの制御回路に関する発明であり,電子機器の技術分野に属する発明であって,その課題は,利用者の経済的負担を軽減でき,設置面積が少なくて済み,かつ様々な電源に対応可能\\な電源供給手段を備えた電子機器を提供することにある。このように,刊行物1発明は,電子機器の技術分野に属するものであるのに対し,本件訂正発明はポンプの技術分野に属するものであるから,両者の技術分野は明らかに相違する。しかるに,審決は,上記のとおり,交流電源を用いる電気機器において,電源電圧が異なっていても同じ機器を使用できるようにするとの課題は周知の課題であることを理由として,ソレノイド駆動ポンプにも上記課題があるとする。しかし,これは技術分野を特定しない交流電源を用いる電気機器における課題であって,ポンプの技術分野における課題ではないし,ポンプの技術分野において当然に要求される課題であることを示す証拠もない。そもそも,本件訂正発明が属するポンプの技術分野における当業者が,ポンプとは明らかに技術分野が異なる電子機器に関する刊行物1に接するかどうかも疑問であり,また,仮に,ポンプの技術分野における当業者が刊行物1に接したとしても,刊行物1発明は,携帯型パーソ\\ナルコンピュータ等の電子機器に関するものであり,刊行物1には,ポンプについての記載はなく,刊行物1発明が技術分野の異なるポンプに対しても適用可能であることについてはその記載もなければ示唆もない。したがって,携帯型パーソ\\ナルコンピュータ等の電子機器に関する刊行物1発明をポンプに適用しようとする動機付けもないといわざるを得ない。以上によれば,刊行物1発明を本件訂正発明の相違点1に係る構成とすることが容易想到であるとした審決の前記判断は誤りである。イ 被告は,刊行物1発明も本件訂正発明も共に電源電圧の変換回路を開示しており,技術分野は同一であると主張し,また,刊行物1発明において用いられている「DC/DCコンバータ」は周知の技術であり,電気機器,電子機器全般に適用可能な汎用技術であるから,その適用範囲内において適用対象が異なっても,技術分野が異なることになるとはいえないとも主張する。しかし,前記のとおり,本件訂正発明はポンプの技術分野に属する発明であるのに対し,刊行物1発明は,電子機器の技術分野に属する発明であって,両者の属する技術分野は,明らかに異なる。そして,刊行物1発明が本件訂正発明と同様に電源電圧の変換回路を開示しているとしても,また,刊行物1発明において用いられている「DC/DCコンバータ」が周知の技術であり,電気機器,電子機器全般に適用可能\\な汎用技術であるとしても,刊行物1発明をポンプに適用しようとする動機付けがないことは前記のとおりである。

◆判決本文

◆関連事件です。平成25(行ケ)10193

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平成25(行ケ)10213 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月26日 知的財産高等裁判所 

 進歩性無しとした審決が、動機付けなしとして取り消されました。
 そこで,相違点2の容易想到性について検討するに,引用例1(甲1)の実施例8には,濃度が1重量%となる塩化カルシウム及び濃度が1%となる次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液50リットルを回転ドラムの外胴内に供給し,室温において撹拌することが記載されているが(段落【0074】),引用例1には,この薬剤水溶液50リットルの量並びに同薬剤水溶液に含まれる塩化カルシウム及び次亜塩素酸ナトリウムの濃度が,撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分の量を考慮して定められたものであることについての記載や示唆はない。次に,引用例1の記載事項を全体としてみても,「紙おむつを膨潤抑制剤水溶液に浸漬すると,…尿などの水分を吸収して膨潤していた高吸水性ポリマーは収縮して水分を染み出して小さな粒状あるいは粉末状になり」(段落【0050】)との記載はあるものの,使用済み紙オムツに含有する尿などの水分の具体的な量や,膨潤抑制剤水溶液に浸漬することにより吸水性ポリマーから染み出す水分の具体的な量について言及した記載はないし,また,撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分の量を利用することにより,撹拌に用いる薬剤水溶液の量あるいは薬剤水溶液に含有する水の量を必要最低限の量とすることができることについての記載や示唆もない。そうすると,引用例1に接した当業者において,引用例1発明における回転ドラム内に所定量の薬剤水溶液をあらかじめ供給し,その所定量の薬剤水溶液の中で紙オムツの撹拌を行う構成に代えて,薬剤(膨潤抑制剤及び消毒剤)の供給と水の給水(供給)とを別々に行うこととした上で,回転ドラム内で「撹拌可能\な最低限の水を給水しながら」,「使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて」撹拌を行う構成(相違点2に係る本願発明の構\成)を採用することについての動機付けがあるものとは認められない。したがって,引用例1に接した当業者が,引用例1発明において,相違点2に係る本願発明の構成を採用することは適宜なし得るものではなく,上記構\成を容易に想到することができたものとは認められない。
ウ 被告は,これに対し,1)環境やコストなどに配慮して,下水処理すべき処理液の量を減らすことは,当業者にとっては自明の課題であり,特別の動機付けは必要ないから,引用例1発明において,使用される水の量を減らし,薬剤水溶液の所定量を「処理槽内で撹拌可能な最低限」の量と特定することは,当業者が容易になし得ることである,2)引用例1発明は,使用済み紙オムツを処理するものであって,使用済み紙オムツに尿,すなわち水分が含まれていることは明らかであり,このような使用済み紙オムツについての薬剤と水が存在する状態での撹拌は,「使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用い」た撹拌であるといえるから,「使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用い」る点は,本願発明と引用例1発明との実質的な相違点ではない,3)引用例1発明において供給される「薬剤水溶液」を構成している薬剤と水の添加順序や添加方法を変更してみることは,当業者が必要に応じて適宜検討する事項であり,引用例1発明において,添加する薬剤を「薬剤水溶液」とした状態で添加することに代えて,薬剤と水を別々に添加することとし,その際に,予\め薬剤を添加した後に,水を徐々に供給する方法を採用し,「給水しながら」の構成とすることは当業者が適宜なし得ることであるとして,引用例1発明において,相違点2に係る本願発明の構\成を採用することは,当業者が容易に想到することができた旨主張する。しかしながら,上記1)の点についてみると,相違点2に係る本願発明の構成である「処理槽内で撹拌可能\な最低限の水を給水しながら」,「該使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて」撹拌を行う構成の技術的意義は,前記ア認定のとおり,処理槽内に使用済み紙オムツと石灰及び次亜塩素を投入した処理槽内に水を給水しながら,撹拌している間に,石灰によって使用済み紙オムツの特に高分子ポリマーが分解されて吸収している水分が処理槽内に混ざり,この水分と処理槽内に給水した水を共に用いて使用済み紙オムツを撹拌し,分解された使用済み紙オムツから放出される細菌等は次亜塩素によって消毒されるので,処理槽内に供給する水の量を必要最低限の量にすることができることにあるといえる。このような撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分の量を利用することにより,処理槽内に供給する水の量を必要最低限の量とする技術思想は,下水処理すべき処理液の量を減らすという課題から直ちに導出できるものではない。また,引用例1発明において,薬剤水溶液の所定量を「処理槽内で撹拌可能\な最低限」の量と特定することを想到し得るとしても,そのことは,上記技術思想に想到し得ることを意味するものではない。次に,上記2)の点についてみると,引用例1発明における所定量の薬剤水溶液中での使用済み紙オムツの撹拌においても,結果的に,撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分も撹拌に用いられているものとはいえるが,前記イ認定のとおり,引用例1発明における薬剤水溶液の量及び同薬剤水溶液に含まれる薬剤の濃度は,撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分の量を考慮して定められたものとは認められないから,引用例1発明は,撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分の量をも利用するいう上記技術思想を具現化しているものとはいえない。さらに,上記3)の点についてみると,前記イ認定のとおり,引用例1には,使用済み紙オムツに含有する尿などの水分の具体的な量や,膨潤抑制剤水溶液に浸漬することにより吸水性ポリマーから染み出す水分の具体的な量について言及した記載はないし,また,撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分の量を利用することにより,撹拌に用いる薬剤水溶液の量あるいは薬剤水溶液に含有する水の量を必要最低限の量とすることができることについての記載や示唆もない。そうすると,引用例1に接した当業者において,引用例1発明における薬剤水溶液を薬剤(膨潤抑制剤及び消毒剤)と水に分離し,それぞれの供給を別々に行うこととした上で,回転ドラム内で「撹拌可能な最低限の水を給水しながら」,「使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて」撹拌を行う構\成を採用する動機付けがあるものとは認められない。したがって,引用例1発明において,相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者が容易に想到することができたとの被告の主張は,理由がない。\n

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平成25(行ケ)10178 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月26日 知的財産高等裁判所

 無効審判の取り消し訴訟です。裁判所は新規性違反無しとした審決を維持しました。理由は、公知の立証が不十分というものです。\n
 (ア) 別紙の本件刻印の態様によれば,「00」は西暦の下2桁を,「7」は月を意味する表示であって,甲2報告書のMTXが,平成12年(2000年)7月頃に製造された可能\性は否定できない。もっとも,当時,ノースウェーブの担当者であった者が作成した甲34陳述書(甲34)及び甲35陳述書(甲35)には,いずれも平成12年夏頃に製造されたMTXは販売用のサンプルであった旨の記載があり,原告も,甲2報告書のMTXは試作製造段階のものであること,スノーボード用製品製造の一般的サイクルとして,平成13年(2001年)ないし平成14年(2002年)シーズン用の新製品は,平成12年(2000年)夏頃から開発に着手するのが一般的である旨主張しているが,これらによって上記甲2報告書のMTXの製造日を裏付けることは困難である。(イ) 甲3カタログには,MTXの写真が掲載されているものの,当該写真からはMTXの形状の詳細は明らかではなく,また,MTXの形状に関する具体的な記載もない。したがって,甲2報告書のMTXと,甲3カタログに掲載されているMTXとが同一の構造を有していると認めることはできない。また,新製品の展示会において,来場者に製品カタログが配布されることは一般的な取扱であり,本件展示会において,DRAKEの製品カタログも配布された可能\性は高いものの,甲3カタログが本件展示会において配布されたことを認めるに足りる的確な証拠はない(甲34陳述書には,甲3カタログが本件展示会で配布された旨の記載があるが,甲34陳述書は,本件展示会から約12年経過後の平成25年(2013年)6月10日付けで作成されていること,作成者である A の勤務先であるスノーボード関連製品会社が本件特許の有効性に関し,利害関係を有している可能性も否定できないことなどからすると,甲34陳述書の当該記載は採用することができない。)。(ウ) バルサーフの発注書(甲10)は,MTXの型番が記載されているにすぎないから,バルサーフが発注したMTXが,どのような形状を有していたかは不明であるというほかなく,甲2報告書のMTXとバルサーフが発注したMTXとが同一の構造を有していると認めることはできない。(エ) 甲36一覧表には,MTXの商品名及び型番が記載されているにすぎないから,当該MTXがどのような形状を有していたかは不明であるというほかなく,甲2報告書のMTXと甲36一覧表\に記載されたMTXとが同一の構造を有していると認めることはできない。(オ) 甲63雑誌に掲載されたMTXの写真は,後側方から撮影された比較的小さな写真1枚にすぎず,その具体的構成は当該写真及び紹介記事の内容からは不明であるから,甲63雑誌に掲載された写真のMTXと甲2報告書のMTXとが同一の構\造を有していると認めることはできない。
イ 甲2発明の公知性について
前記アによれば,本件の原出願(平成13年6月14日)前において,MTXが掲載されたカタログが配布されていた事実,MTXの試作品が業者向けの展示会において展示され,あるいは完成品が一般に市販されていた事実を推認することは可能である。しかしながら,甲2報告書のMTXが平成12年7月頃に試作されたことを認めるに足りる的確な証拠はない。また,本件展示会において展示されたり,甲3カタログに掲載されたMTXや一般に市販されたMTXが,具体的にどのような形状を有していたかについては,本件全証拠をもってしても不明である。さらに,上記各MTXと,甲2報告書のMTXとが同一の構\成を有していることを認めるに足りる証拠もないから,甲2報告書のMTXが公然知られた状態に至った時期も,不明である。したがって,本件展示会(平成13年2月4日ないし7日,同年3月9日ないし13日)時点において,公知となっていたMTXの具体的形状が不明である以上,その当時,甲2発明が公然知られていたということはできない。

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平成25(行ケ)10163 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年01月30日 知的財産高等裁判所

審判では訂正を認めた上で無効であると判断されましたが、裁判所はこれを取り消しました。理由は、引用文献の認定誤りです。
 以上の甲11公報の記載に照らすと,放電によって発生するマイナスの極小イオンは,その後,「水の分子に極小イオンが結合して,水分子のクラスターを核とする0.001μm(判決注・1nm)程度の大きさの動きやすい小イオン」となるものとされているにとどまる。また,上記図3には「O2―(H2O)n」が示されているが,これも上記の小イオンに該当するものである。そうすると,甲11公報に,高電圧により大気中で水を静電霧化して生成された帯電微粒子水にラジカルが含まれることが開示されているとは認められない。・・・・以上によれば,本件優先日において,高電圧により大気中で水を静電霧化して生成された帯電微粒子水にラジカルが含まれることが技術常識であったとも,当業者が上記の事項を認識できたともいえない。なお,ラジカルにより臭気を除去できることが本件優先日時の技術常識であったとしても,臭気を除去するものとして水粒子に溶解させること (甲8,20参照)など他の方法も存在するものである以上,上記の点のみをもって甲1発明1の帯電微粒子水による消臭効果がラジカルによるものであると認識することができるものということはできない。そうすると,甲4公報の記載及び技術常識に基づき,甲1発明1の帯電微粒子水にラジカルが含まれ,これにより消臭がなされたと認識することが容易であるということはできない。

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平成25(行ケ)10087 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年01月22日 知的財産高等裁判所

 本件発明の認定に誤りがあるものの、結果的に相違点は容易に発明できるとして拒絶審決が維持されました。
 本願発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載中には,「ローカル無線ゾーン内のモバイル端末に位置ベース情報を提供するための方法」,「アクセスポイントを介したモバイル端末とのローカル無線通信が可能である,一意のゾーン識別子に関連付けられたローカル無線ゾーン内のモバイル端末を認識すること」との記載があるが,「モバイル端末が複数のローカル無線ゾーン内に位置していること」,すなわち,モバイル端末が,別紙1の図2に示すような,複数のローカル無線ゾーンが重複するエリアに位置することを発明の特定事項とする旨の記載はない。そうすると,本件審決が認定した相違点である「本願発明は,モバイル端末が複数のローカル無線ゾーン内に位置していることを前提として,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために一意のゾーン識別子を使用するのに対して,引用発明は,アクセスポイントに関連付けられたサーバから位置ベース情報を得るものの,そのようなサーバを一意のゾーン識別子を使用して選択するものか否か明確ではない点。」のうち,「本願発明は,モバイル端末が複数のローカル無線ゾーン内に位置していることを前提として」との部分は適切とはいえない。したがって,本願発明と引用発明の相違点は,本件審決が認定した相違点から上記部分を除き,「本願発明が,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために一意のゾーン識別子を使用するのに対して,引用発明は,その点が不明である点。」(以下「本件相違点」という。)と認定すべきであったものというべきである。そこで,本件相違点について検討するに,引用発明は,無線端末装置5a〜5cは,それぞれ最寄りの無線基地局装置2a〜2cとの無線接続を確立し(S1),無線基地局装置固有の無線基地局識別番号を取得して(S2),その識別番号をアドレス提供サーバ3に送信し(S3),アドレス提供サーバ3は,受信した無線基地局識別番号に対応する情報のURLを,自己が保有する対応表\から取得し,無線端末装置5a〜5cに送信し(S4),URLを受信した無線端末装置5a〜5cは,そのURLを元に情報サーバ1a〜1cに接続し(S5),その地域に応じた情報を取得する(S6)方法である(引用文献の段落【0031】,【0032】及び別紙2の図3参照)。引用文献には,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために,無線基地局識別番号を使用するとの明示の記載はない。しかしながら,引用発明においては,無線端末装置5a〜5cは,アドレス提供サーバ3から送信された情報のURLを元に情報サーバ1a〜1cに接続し,接続した情報サーバ1a〜1c内の地域に応じた情報を取得し,しかも,情報のURLは無線基地局識別番号に対応するものであるから,無線基地局識別番号は,無線基地局装置2a〜2cに関連付けられた情報サーバ1a〜1cを選択するために使用されているものと認められる。そして,引用発明の「無線基地局識別番号」は本願発明の「一意のゾーン識別子」に,「無線基地局装置2a〜2c」は本願発明の「アクセスポイント」に,「情報サーバ1a〜1c」は本願発明の「サーバ」に,情報サーバ1a〜1c内の「地域に応じた情報」は本願発明の「位置ベース情報」にそれぞれ相当することは,前記1で認定したとおりである。そうすると,引用文献には,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために「無線基地局識別番号」(一意のゾーン識別子)を使用するとの明示の記載はないものの,引用発明においては,情報サーバ1a〜1c内の地域に応じた情報を選択する前提として,無線基地局識別番号がサーバを選択するために使用されており,本件相違点は,本願発明と引用発明の実質的な相違点とはいえないから,当業者であれば,相違点に係る本願発明の構成(「アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために一意のゾーン識別子を使用する構\成」)を容易に想到し得たものと認められる。

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平成25(行ケ)10076 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年12月25日 知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が取り消されました。
 本組成物が,審決の指摘するとおり「水などを含有する水性分散媒に対してシリコーンなどの非水性分散質が分散してなるO/W型の液体分散系である」ことに技術的誤りはないと考えられるところ,前記ア(ア)及び(イ)の記載に照らせば,そのような分散系の流体は,剪断速度を増加させると,剪断速度の増加に対して粘度が変化しないニュートン流動の状態から,剪断速度の増加に対して粘度が低下するshear-thinning(本願発明における「ずり減粘」。乙1参照。以下同じ。)という非ニュートン流動の一種の状態に変化するが,分散系流体がニュートン流動の状態からshear-thinning という状態に変化する剪断速度は,その分散系流体の組成や分散状態によって異なるというのが,当業者の技術常識であると認められる。そうすると,本組成物が非ニュートン流動を示すとしても,どの程度の剪断速度でニュートン流動から非ニュートン流動に変化するかは,引用例の記載及び技術常識に照らしてもこれを的確に認定することはできないから,本組成物が20s−1以下の剪断速度において非ニュートン流動を示すことを前提に,同組成物の0.5s−1の剪断速度における粘度を推定することはできないというべきである。

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平成24(行ケ)10426 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年12月26日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が阻害要因ありとして維持されました。
 原告は,引用発明1はその従来技術である引用発明2の有する課題を解決するため,「半導体発光素子」と「光半導体結晶基板」とを金属を介して貼り合わせるという技術を用いて,従来技術とは層形成の順番を逆にして半導体発光素子を形成する発明であると主張する。しかしながら,引用発明2は,前記のとおり,従来,高輝度青色LEDを実現するために必要である,バンドギャップが例えば2.7eV以上と大きく,pn制御が可能\で,結晶の質も良い,という条件を満たす半導体材料は存在しなかったので,新しい化合物半導体材料を用いた青色発光LEDを提供することを目的とするものであり,GaP基板91上に超格子構造の反射層92を形成し,その上にp型GaAlN/BP混晶層
・・・
及びGaNコンタクト層95が順次形成されたLED(別紙3の図10参照)において,超格子構造反射層92が良好なバッファ層として働く結果,良好なpn接合が得られ,また,高い光取出し効率が得られて,高輝度青色発光が認められるというものである。上記のような半導体発光素子の構\成を有する引用発明2について,引用発明1の「半導体発光素子」と「光半導体結晶基板」とを金属を介して貼り合わせるという技術を用いて,従来技術とは層形成の順番を逆にして半導体発光素子を形成することを考慮した場合には,ダミー基板上に,GaNコンタクト層95,・・・の順に形成することになるが,この積層過程では,本来であれば,良好なpn接合を形成するためのバッファ層となる「超格子構\造の反射層92」が形成されないため,n型,アンドープ及びp型GaAlN/BP混晶層は,良好なpn接合を得ることができず,発光素子として十分な特性が得られないものとなる。そうすると,引用発明2について,層形成の順番を逆にして半導体発光素子を形成することには,阻害要因があるものというべきである。\n

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平成25(行ケ)10154 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年12月24日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が取り消されました。
 本件発明は,前記1に認定したとおり,車両用指針装置において,そのキースイッチのオフに伴う指針や目盛り板の明るさの変化に工夫を凝らし,キースイッチのオフ後の視認性の斬新さを乗員に与えるようにすることを目的として,制御手段が,キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段(ないし指針照射手段)の照射光の輝度を徐々に低下させるように制御することにより,目盛り板(ないし指針)の明るさがキースイッチのオフ後徐々に低下するとの構成をとり,斬新な視認性を提供するというものである。そして,段落【0033】には,乗員が座席に着席している場合にのみ自発光指針及び目盛り板の発光輝度の低下処理を行い,乗員が離席している際には「瞬時に暗く」するという第3の実施例が示されていることや斬新な「視認性」を目指すものであることに照らすと,本件発明は,乗員に対して視覚に訴えることにより効果を与えるものと認められる。その一方,本件発明は,キースイッチのオフを契機として制御を開始するものであり,もはや車両用計器の情報を読み取る必要がなく,目盛り板や指針を注視する必要性がなくなった段階で作用するものであって,乗員が必ずしも指針や目盛り板自体に注目している場合を前提とするものではない。そして,指針や目盛り板は,車両用計器としての性質上,運転席に対面する視認しやすい位置に配置されており,通常,乗員が着席して正面を向いた体勢であれば,その存在及び少なくともその光が視界に入るものである。また,発明特定事項ではないものの,段落【0005】,【0007】,【0019】には,「目盛り板照射手段及び指針照射手段として発光ダイオードを用いれば,各照射光がその輝度の低下過程において色変化を生ずることがなく,その結果,乗員に対し違和感を与えることがない。」旨が記載されていることや,段落【0018】に「瞬時に暗くなることなく時間データtの増大に比例して暗くなっていくので,イグニッションスイッチIGオフ後の自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を乗員に提供できる。」と記載されていることに照らすと,本件発明は,指針や目盛り板を注視する必要がないが,その存在あるいは光が視界に入る状況下で,キースイッチのオフに伴って,指針や目盛り板が瞬時に暗くなるという唐突感を生じさせず,違和感なくスムーズに減光することで,乗員に良好な心理的効果を与えるものと解される。そうすると,安全性の観点から視認性を確保するため,あるいは,光の変化に目を慣らすための減光などの実際的な必要性とは異なり,フェードアウトによる「何らかの良好な心理的効果」を得ようとする点で,本件発明と周知技術1とは共通するものであり,例えば,周知技術1がキーシリンダ照明灯である場合には,イグニッションキーをオフにする際に,キー差込口がどこにあるかという情報を読み取る必要がなくなったキーシリンダを演出用に使って,視認性の斬新さを図るものであると解されるから,本件発明1によって奏される「視認性の斬新さ」は,周知技術1により奏される「何らかの良好な心理的効果」と異なるものではないといえる。よって,本件発明と周知技術1とは,照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する点で共通するだけでなく,その技術的な意義も同一であると認めるのが相当である。\n

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平成25(行ケ)10109 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年12月25日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性無しとした審決が取り消されました。
 本願発明は,車等の移動体に搭載されたナビゲーション装置を介して,移動体が走行する経路等の周辺の施設等に関する広告情報を提供する移動体広告システムにおける経路広告枠設定装置に関する発明である。従来の移動体広告システムは,移動体の位置や,予めユーザが目的地を登録することにより決定された経路に応じて広告情報を配信するものであったが,配信する広告情報が地図上の各エリアに対応付けられていたため,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であれば,エリアに対応付けられた広告情報が配信されてしまうという解決課題があった。本願発明は,エリアに代えて地図上の経路に応じて広告情報を配信可能\な経路広告枠設定装置を提供することを目的とするものである。本願発明における経路広告枠設定装置は,通信ネットワークを介して広告主の端末と接続しており,この広告主の端末から,地図上の経路に関する,線描写によって設定された経路情報を受信し,受信した前記経路情報に広告枠を設定し,記憶部に有する経路データベースに記憶するとの構成を有するものであり,広告主は,地図上の様々な経路に広告枠を設定することができるとするものである。そして,ユーザの端末からユーザの位置情報を取得し,当該位置情報を含む経路を特定して,当該経路に関連する広告枠の広告情報をユーザの端末に送信する。\n
(2) 容易想到性の有無
引用例1発明は,広告枠を地図上のエリアに設定し,広告主が供給する広告情報と地図上のエリア情報の対応関係をデータベースに記憶し,現在位置が含まれる地図上のエリアに対応した広告情報をデータベースから読み出して,ナビゲーション装置に送信するという,移動体広告システムの発明であり,本願明細書が言及するとおり,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であれば,エリアに対応付けられた広告情報が配信されてしまうとの未解決の課題を残した発明である。他方,引用例2は,車載ナビゲーション・システム等を使用した,位置に基づく広告の提供方法に関する発明を記載したものである。引用例2には,広告メッセージを伝えることができる位置として,通行可能な道路沿いの特定位置を「仮想広告掲示板」の位置として指定し,ナビゲーション・サービス・プロバイダは広告主との契約に基づき,設けられた「仮想広告掲示板」の位置を通過するエンドユーザに広告メッセージを伝えるとの技術事項が記載開示されている。引用例2に記載された上記技術は,通行可能\な道路沿いの特定位置を通過するユーザに対して,広告メッセージを伝えるものであり,広告メッセージが送信されるのは,ユーザが特定の位置を通過した時点である。広告枠を地図上のエリアに設定し,広告主が供給する広告情報と地図上のエリア情報の対応関係をデータベースに記憶し,現在位置が含まれる地図上のエリアに対応した広告情報をデータベースから読み出して,ナビゲーション装置に送信するという発明である引用例1発明と,通行可能な道路沿いの特定位置を「仮想広告掲示板」の位置として指定し,位置を通過するエンドユーザに広告メッセージを伝えるとの引用例2に記載された技術事項を組み合わせたとしても,本願発明における地図上の経路に広告枠を設定するとの構\成に至ることはない。また,引用例1発明に引用例2の記載事項を組み合わせても本願発明における上記構成に至らない以上,経路を線描写によって設定することが周知事項であったとしても,引用例1発明に引用例2の記載事項及び上記周知事項を組み合わせることにより本願発明の上記構\成に至ることはない。したがって,広告枠を地図上の経路に対して設定することが引用例2の段落【0060】及び【0061】の記載並びに図11から出願前公知であるとして,経路を線描写によって設定することが周知事項であることを考慮し,引用例1発明の地図上のエリアとして引用例2の記載事項にあるような道路区間(経路)を採用し,相違点の構成とすることが当業者において容易になし得ることであるとした審決の判断には誤りがある。
(3) 被告の主張に対して
被告は,引用例2における「道路区間」は本願発明における「経路」に相当し,引用例2には「道路(経路)に対して広告を設定すること」が記載されているのであるから,引用例1発明に引用例2に記載の技術事項を採用して,相違点に係る構成に至るのは容易であると主張する。しかし,引用例2に記載された「道路区間」の語は,仮想広告掲示板を設定する「道路区間」沿いの位置を特定する文脈の中で用いられたものであって,広告枠を設定する対象を意味するものとして用いられた語ではない。したがって,引用例2における「道路区間」と本願発明における「経路」とは,技術的意義において相違する。引用例2においては,移動体が当該道路区間上を移動中であったとしても,当該特定位置に至らない限り,広告メッセージは配信されないのであるから,「広告枠を経路情報に設定」することが記載されているとはいえず,被告の主張は失当である。\n

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平成25(行ケ)10109 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年12月25日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性無しとした審決が取り消されました。
 本願発明は,車等の移動体に搭載されたナビゲーション装置を介して,移動体が走行する経路等の周辺の施設等に関する広告情報を提供する移動体広告システムにおける経路広告枠設定装置に関する発明である。従来の移動体広告システムは,移動体の位置や,予めユーザが目的地を登録することにより決定された経路に応じて広告情報を配信するものであったが,配信する広告情報が地図上の各エリアに対応付けられていたため,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であれば,エリアに対応付けられた広告情報が配信されてしまうという解決課題があった。本願発明は,エリアに代えて地図上の経路に応じて広告情報を配信可能\な経路広告枠設定装置を提供することを目的とするものである。本願発明における経路広告枠設定装置は,通信ネットワークを介して広告主の端末と接続しており,この広告主の端末から,地図上の経路に関する,線描写によって設定された経路情報を受信し,受信した前記経路情報に広告枠を設定し,記憶部に有する経路データベースに記憶するとの構成を有するものであり,広告主は,地図上の様々な経路に広告枠を設定することができるとするものである。そして,ユーザの端末からユーザの位置情報を取得し,当該位置情報を含む経路を特定して,当該経路に関連する広告枠の広告情報をユーザの端末に送信する。\n
(2) 容易想到性の有無
引用例1発明は,広告枠を地図上のエリアに設定し,広告主が供給する広告情報と地図上のエリア情報の対応関係をデータベースに記憶し,現在位置が含まれる地図上のエリアに対応した広告情報をデータベースから読み出して,ナビゲーション装置に送信するという,移動体広告システムの発明であり,本願明細書が言及するとおり,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であれば,エリアに対応付けられた広告情報が配信されてしまうとの未解決の課題を残した発明である。他方,引用例2は,車載ナビゲーション・システム等を使用した,位置に基づく広告の提供方法に関する発明を記載したものである。引用例2には,広告メッセージを伝えることができる位置として,通行可能な道路沿いの特定位置を「仮想広告掲示板」の位置として指定し,ナビゲーション・サービス・プロバイダは広告主との契約に基づき,設けられた「仮想広告掲示板」の位置を通過するエンドユーザに広告メッセージを伝えるとの技術事項が記載開示されている。引用例2に記載された上記技術は,通行可能\な道路沿いの特定位置を通過するユーザに対して,広告メッセージを伝えるものであり,広告メッセージが送信されるのは,ユーザが特定の位置を通過した時点である。広告枠を地図上のエリアに設定し,広告主が供給する広告情報と地図上のエリア情報の対応関係をデータベースに記憶し,現在位置が含まれる地図上のエリアに対応した広告情報をデータベースから読み出して,ナビゲーション装置に送信するという発明である引用例1発明と,通行可能な道路沿いの特定位置を「仮想広告掲示板」の位置として指定し,位置を通過するエンドユーザに広告メッセージを伝えるとの引用例2に記載された技術事項を組み合わせたとしても,本願発明における地図上の経路に広告枠を設定するとの構\成に至ることはない。また,引用例1発明に引用例2の記載事項を組み合わせても本願発明における上記構成に至らない以上,経路を線描写によって設定することが周知事項であったとしても,引用例1発明に引用例2の記載事項及び上記周知事項を組み合わせることにより本願発明の上記構\成に至ることはない。したがって,広告枠を地図上の経路に対して設定することが引用例2の段落【0060】及び【0061】の記載並びに図11から出願前公知であるとして,経路を線描写によって設定することが周知事項であることを考慮し,引用例1発明の地図上のエリアとして引用例2の記載事項にあるような道路区間(経路)を採用し,相違点の構成とすることが当業者において容易になし得ることであるとした審決の判断には誤りがある。
(3) 被告の主張に対して
被告は,引用例2における「道路区間」は本願発明における「経路」に相当し,引用例2には「道路(経路)に対して広告を設定すること」が記載されているのであるから,引用例1発明に引用例2に記載の技術事項を採用して,相違点に係る構成に至るのは容易であると主張する。しかし,引用例2に記載された「道路区間」の語は,仮想広告掲示板を設定する「道路区間」沿いの位置を特定する文脈の中で用いられたものであって,広告枠を設定する対象を意味するものとして用いられた語ではない。したがって,引用例2における「道路区間」と本願発明における「経路」とは,技術的意義において相違する。引用例2においては,移動体が当該道路区間上を移動中であったとしても,当該特定位置に至らない限り,広告メッセージは配信されないのであるから,「広告枠を経路情報に設定」することが記載されているとはいえず,被告の主張は失当である。\n

◆判決本文

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