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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

新規性・進歩性

平成21(行ケ)10076 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年12月22日 知的財産高等裁判所

 阻害要因ありとして進歩性が争そわれましたが、進歩性なしとした審決が維持されました。
 「原告は,金属が展性を有し,レーザ照射を行っても割断き裂が発生しないとして,引用発明の分断対象物を「金属基板を有する製品」とすることには阻害要因があると主張するが,前記2(2)のとおり,引用発明の技術的思想が,非金属材料基板を加工対象物とすること及びレーザ割断を加工方法とすることに固有のものではなく,金属基板を有する製品を加工対象物とする場合であっても,レーザ切断を加工方法とする場合であっても,十分に妥当するものであることからすると,原告が主張する金属の特性を考慮しても,引用発明の分断対象物を「金属基板を有する製品」とすることに阻害要因があるということはできない。」\n

◆判決本文

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平成21(行ケ)10080 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年12月22日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、相違点の認定誤りを理由として取り消されました。
 「しかしながら,前記(2)認定のとおり,参考例2に示された関節部位に適用されるサポータにおいて,X状になっているのは,関節部分に使用するサポータの形状であり,電熱片(電熱線)そのものがX状に布設されているわけではない。そして,参考例2のサポータの使用方法としては,X状に裁断されたサポータの交点で関節を覆い,関節を挟んだ各片同士を接続することにより,サポータを身体に装着するもの,具体的には,例えば肘に装着する場合,肘の外側にサポータにおけるX状の交点をあてがい,上腕側,下腕側にそれぞれ位置する2つの片同士を,互いに腕に巻き付けて上腕側片同士,下腕側片同士を相互に接続することにより,肘に装着するものと認められるのである。参考例2に示されたサポータは,上記のように装着することにより,肘の折り曲げ部内側にはサポータ片が存在しないため,肘を屈伸しても,サポータが障害とならないことから,参考例2のサポータは,活発に活動する関節部位の使用に適合するとされ,またそのためにサポータの全体形状がX状とされているものと解される。ウ 他方,前記(1)認定の事実によれば,本件補正発明のヒートセルがX字型に隔離して配設されているのは,身体のねじりのような斜め方向の曲げに対して,ヒートセルが障害とならず,全体形状としては長方形に近い温熱身体ラップが,ねじりに追随して曲がりやすいことを意味し,これにより身体の様々な領域に順応することができるとされているものと解される。エ 上記イ,ウのとおり,参考例2のサポータが全体形状としてX状であることと,本件補正発明の全体形状としては長方形に近い身体温熱ラップにおいて,ヒートセルがX字型に隔離して配設されることは,X状ないしX字型といっても,その意義ないし機能は本質的に異なるものであり,またそれにより身体の適用可能\\な部位も異なることになる。このように,X状ないしX字型に関する両者の意義ないし機能が異なるのであるから,参考例2における,内部に電熱線が均一に布設されたサポータが全体形状としてX状にされている構\\成のうち,「X状」という技術事項のみを取り出し,本件補正発明の身体温熱ラップ内に存在するヒートセルの配設の形態に適用する動機付けは存在せず,引用発明1に参考例2を適用して,相違点2に係る構成とすることはできないといわざるを得ない。オ本件審決は,「使用者が装着している時,使用者の身体または各部位のさまざまな領域の運動に順応することは,当然に要求される事項」とした上,「そのような目的の配置として,X字型の配設は,従来周知」として,参考例2を挙げるが,参考例2をもって,上記周知技術ということはできない。そして,他に,上記事項が周知であることを認めるに足りる証拠はない。カ したがって,引用発明1に周知技術を適用して相違点2に係る構\\成を想到することが,当業者にとって容易であるとした本件審決の判断は,誤りといわなければならない。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10070 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年12月02日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、引用文献に記載された発明の認定誤りを理由として 取り消されました。
そこで,本願出願時の技術常識を踏まえて,引用例1に,マイクロカプセル中に封入された硬化剤が,さらにパトローネ中に入れられた態様のものが記載されているといえるかにつき,以下検討する。イ引用例1における本件記載Cの直前の記載である本件記載B,すなわち「しかし,大部分の場合に,反応性樹脂および硬化剤を,単一体,例えば,一個のパトローネ中に2個の室に分けて入れる。…パトローネは穿孔中に導入した後にだぼまたはアンカーボルトを挿入,回転させることによって破壊され,この際パトローネの壁材料は充塡剤として作用することができ,充塡剤の部分に加えられる。」との記載は,パトローネを破壊することで,パトローネの各室に収納されていた硬化剤と反応性樹脂が混合されることを説明するものである。そして,これに続く本件記載Cが,「しかし」に始まり,「マイクロカプセルの壁材料が破壊される。」で終わっていることからすれば,パトローネの破壊によって硬化剤と反応性樹脂との混合を行うことに代えてマイクロカプセルの破壊によっても上記両成分の混合を行うことができる旨を説明しているにすぎず,マイクロカプセル中に封入された硬化剤がさらにパトローネ中に入れられた構成までが開示されているとみることはできない。そして,本件記載Cにおいては,単にマイクロカプセルの壁材料の破壊が記載されるにとどまり,パトローネの(壁材料の)破壊についての記載がないことも上記結論を裏付けるものである。・・・・エ 以上のとおり,引用例1には,マイクロカプセル中に封入された硬化剤をさらにパトローネ中に収納する形態について記載されているとはいえず,パトローネを用いる場合には,2個の室を有するパトローネのいずれかの室に,マイクロカプセル中に封入されていない硬化剤を入れる方法が記載されている(本件記載B)にすぎない。他方,マイクロカプセル中に封入された硬化剤を使用する形態については,パトローネ中に入れられず,直接穿孔中に導入する方法が記載されている(本件記載C)にとどまる。そうであるとすれば,審決は,引用発明につき,「エポキシ基を有するビスフェノール化合物および/またはノボラック化合物を使用してアクリル酸またはアクリル酸誘導体を転化させることによって得られる反応生成物である硬化性アクリル化合物と,促進剤と,過酸化ジベンゾイルからなる重合開始剤を含有する硬化剤とを,2個の室を有するパトローネ中に入れたものであり,パトローネおよび室は穿孔中に導入した後にアンカーボルトを挿入,回転させることによって破壊されるものである,アンカーボルトを固定するために使用するパトローネ」と認定すべきであって,「硬化剤をマイクロカプセル中に封入した上で,これをさらにパトローネ中に入れた」旨認定した審決には誤りがあるといわざるを得ない。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10242 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月26日 知的財産高等裁判所

 無効理由無しとした審決がなされ、審判請求人は審決取り消しを求めました。裁判所には、被告は出頭しませんでしたが、審決は維持されました。
 「被告は,上記のとおり本件口頭弁論期日に出頭しないし,答弁書その他の準備書面も提出しないから,請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(発明の内容),(3)(審決の内容)の各事実は明らかに争わないものとして,これを自白したものとみなす。なお,被告が審判手続において提出した平成21年6月3日付け審判事件答弁書(甲15)には,「本特許第3692084号については,年金未払いのため,平成20年6月24日をもって,権利が消滅しております。そのため,本件無効審判の請求に対して,本件特許を防御する必要はありません。ついては,速やかに審決がなされることを希望します。」旨の記載がある。」

◆判決本文

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平成21(行ケ)10082 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月30日 知的財産高等裁判所 

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 「原告は,引用発明では,ユーザーコード情報の照合により判明するのは,券が真正なものであるか否かであって,人の同一性の認証ができないのに対し,本件発明1においては,一身専属性が極めて高い携帯電話を利用することにより,バーコードを人に付したのと同様の効果が得られるため,人の同一性の認証(個人認証)ができる点において相違すると主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり,失当である。すなわち,本件発明1における個人認証の仕組みは,被認証者が記録した携帯電話のバーコードと認証装置側のバーコードとの同一性の有無を確認することによるものであって,当該携帯電話を所持し,提示した者が,被認証者自身であるか否かを照合の対象とするものではない。したがって,本件発明1と引用発明は,個人認証の有無において相違するということはできない。」

◆判決本文

関連事件はこちら◆平成18年(行ケ)第10478

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平成21(行ケ)10085 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月30日 知的財産高等裁判所

 数値限定発明について、設計事項であるとして進歩性なしとした審決が維持されました。
 原告は,本願補正発明は,第1伸縮域の最大伸長時における伸長応力を0.2〜2.0N/25mmの範囲に,第2伸縮域の最大伸長時における伸長応力を0.1〜0.6N/25mmの範囲に,それぞれ設定したことにより格別の効果を奏するものであるから,伸長応力をこれらの範囲に設定することは,当業者が適宜決め得る設計的事項ではない,と主張する。しかし,原告の上記主張は,理由がない。すなわち,本願補正発明が,第1伸縮域の最大伸長時における伸長応力を0.2〜2.0N/25mmの範囲に,第2伸縮域の最大伸長時における伸長応力を0.1〜0.6N/25mmの範囲に,それぞれ設定するのは,おむつのずれ落ちや,必要以上の強い締め付けを効果的に防止し,締め付け力を局所的に集中させず,漏れを防ぎ,吸収性コアがしわになりにくくするためであり(甲4,段落【0024】),引用例1記載の発明も,使い捨てパンツ型おむつのずれ落ちを効果的に防止し,締め付け力を局所的に集中させず,漏れを防ぎ,吸収性コアがしわになりにくくするためのものである(甲1,段落【0006】,【0007】)。そして,パンツ型の使い捨ておむつのずれ落ちや,締め付け力,漏れ,吸収性コアのしわのより方は,その用途(幼児用か大人用か,失禁用か)や素材によっても相違すると考えられるから,当業者であれば,ずれ落ちを効果的に防止し,締め付け力を局所的に集中させず,漏れを防ぎ,吸収性コアがしわになりにくくするため,使い捨てパンツ型おむつの用途や吸収性コアの素材などの相違に対応して,締め付け機能を有する弾性体の伸長応力を適宜調整することは当然に行うと予\想される事項であり,その調整による効果も当業者の予想の範囲内であるといえるから,第1伸縮域,第2伸縮域の伸長応力を本願補正発明で特定した範囲内の伸長応力とすることは,当業者が適宜決め得る設計的事項であるということができる。よって,これと同旨の審決の判断に誤りがあるとはいえない。\n

◆判決本文

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平成21(行ケ)10153 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月26日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとの審決が、引用文献の認定誤りを理由として取り消されました。
 「以上によれば,旋盤用切削工具を形成する方法に関し,引用文献には,切削体に溝,蟻継ぎ等を成す幾何学的特徴が形成される点,及び硬質金属をダイキャスト,プレス成形,成型,又は鋳造によって保持部材に密に固定する,との点は記載されている。しかし,硬質金属を鋳造等で保持部に固定するに先立って,保持部に溝,蟻継ぎ等をなす幾何学的特徴が形成されるとまで記載されているということはできないというべきである。そうすると,引用文献には,幾何学的特徴を有する保持部材を提供し,この提供された保持部材をその幾何学的特徴を介して切削体に接合するとの一連の工程が記載されているということはできない。・・・そして,上記「それぞれの前記互いに結合可能な幾何学的特徴を介して,前記硬い金属体を前記基台に接合する工程」とあるところ,この「前記互いに結合可能\な幾何学的特徴を介して」とある部分の「前記」の語は,その前段の「それぞれが互いに結合可能な幾何学的特徴を有する…硬い金属体と基台とを提供する工程」により提供された硬い金属体と基台とが既に有する「それぞれが互いに結合可能\な幾何学的特徴」を指すことが明らかである。これは,審決が,本願発明と引用発明との一致点を上記第3,1(3)イのとおり,「切削工具インサートを形成する方法であって,それぞれが互いに結合可能な幾何学的特徴を有するチップとインサート本体とを提供する工程と,それぞれの前記互いに結合可能\な幾何学的特徴を介して,前記チップを前記インサート本体に接合する工程とを有する方法において,前記チップを前記インサート本体に前記接合する工程は,前記インサート本体を前記チップの周囲に鋳造することにより生じるものである」こととして,チップとインサート本体とが,それぞれ互いに結合可能な幾何学的特徴を有する旨認定していることからも明らかである。そうすると,審決は,引用発明を,それぞれが互いに結合可能\な幾何学的特徴を有する硬い金属体と基台とを提供し,これら提供された硬い金属体と基台とを,それらが有する互いに結合可能な幾何学的特徴を介して接合する方法と認定したということができる。しかし,上記アによれば,引用文献(甲4)には,保持部材(基台)について,切削体(硬い金属体ないし硬質金属)と接合する工程に先立ち,切削体の幾何学的特徴と結合可能\な幾何学的特徴を有する保持部材(基台)を提供する工程が記載されているということはできない。そうすると,審決の引用発明の内容の認定には誤りがあり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。」

◆判決本文

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平成20(行ケ)10483 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月11日 知的財産高等裁判所

 特29−2の適用について先願公報にどの程度の記載が必要であるかについて争われました。裁判所は、具体的な実施例までは必要としないものの、化学物質発明の有用性をその化学構造だけから予\測することは困難であるとして、記載されていたとした審決を取り消しました。
 いわゆる化学物質の発明は,新規で,有用,すなわち産業上利用できる化学物質を提供することにその本質が存するから,その成立性が肯定されるためには,化学物質そのものが確認され,製造できるだけでは足りず,その有用性が明細書に開示されていることを必要とする。そして,化学物質の発明の成立のために必要な有用性があるというためには,用途発明で必要とされるような用途についての厳密な有用性が証明されることまでは必要としないが,一般に化学物質の発明の有用性をその化学構造だけから予\測することは困難であり,試験してみなければ判明しないことは当業者の広く認識しているところである。したがって,化学物質の発明の有用性を知るには,実際に試験を行い,その試験結果から,当業者にその有用性が認識できることを必要とする。・・・(3) そこで,本件について検討すると,前記1(2)のとおり,化合物No.II-10 については,先願明細書等の【請求項9】【化5】に一般式が記載されるとともに,【0104】【化37】に一般式が,【0105】【化38】に具体的な構造が,それぞれ示されている。そして,先願明細書等の【0263】ないし【0345】において,化合物No.I-1,No.II-1,No.VII-1,No.X-10,No.X-3 を用いた実施例(ここには,上記各化合物の製造方法についても記載されている。なお,化合物No.X-10,No.X-3 につき,具体的なデータの記載に乏しいとしても,実施例として記載されていることは否定できない。)が記載され,【0346】【0347】において,これらの化合物が,「融点やガラス転移温度が高く,その蒸着等により成膜される薄膜は,透明で室温以上でも安定なアモルファス状態を形成し,平滑で良好な膜質を示す。従って,バインダー樹脂を用いることなく,それ自体で薄膜化することができる。」「ムラのない均一な面発光が可能であり,高輝度が長時間に渡って安定して得られ,耐久性・信頼性に優れる。」との効果が記載されている。確かに,先願明細書等には,化合物No.II-10 それ自体の製造方法や,これを用いた実施例の記載はないが,先願の化合物一般につきウルマン反応によって得られることが記載されている(【0170】参照)上,前記1(3) カの各公報記載の事実からすれば,正孔輸送材料ないし電荷輸送材料として用いられる化合物の製造方法としてウルマン反応を用いることは,本願出願当時,周知技術であったというべきであって,化合物No.II-10 を製造する道筋は示されているといえる。また,同化合物の有機EL素子としての有用性についても,同化合物が,その構造上,実施例とされた化合物No.II-1 と,相当程度類似していること(先願明細書等に化合物No.II-10 の構造が具体的に記載されていることからすれば,ここで求められる類似性は,後述の,特許法29条の2の適用が問題となる場合とは自ずから異なるものである。)等からすれば,実施例の記載から,当業者に同化合物の有用性が認識できるものといえ,同化合物を用いた具体的な実施例の記載がないことは,上記結論に影響を及ぼすものではないというべきである。・・・また,前記1(3) エ,オからすれば,乙4,5で開示された,それぞれ同族列の関係にある各化合物の化学的性質(有機EL素子としての性質を含む。)が類似していることが認められるが,これが直ちに,化合物No.II-10 と「先願発明」化合物の関係にも適用できるか明らかではない上,特許法29条2項の進歩性を判断する場合であれば格別,同法29条の2第1項により先願発明との同一性を判断するに当たっては,化合物双方が同族列の関係にあることをもって,一方の化合物の記載により他方の化合物が「記載されているに等しい」と解するのは相当ではない(前述のとおり,一般に化学物質発明の有用性をその化学構造だけから予\測することは困難であり,試験してみなければ判明しないことは当業者の広く認識するところであるからである。)。・・・・確かに,前記1(3) ア,イのとおり,「正孔注入輸送を司る本質的部位が分子中のN−フェニル基である」旨の被告の主張に整合する文献(乙1,2)が存在するほか,先願明細書等には「分子中にN−フェニル基等の正孔注入輸送単位を多く含み,R 1 〜R4にフェニル基を導入してビフェニル基にすることでπ共役系が広がり,キャリア移動に有利になり,正孔注入輸送能にも非常に優れる」旨の記載がある(【0058】)。しかし,前述のとおり,特許法29条の2第1項による先願発明との同一性の判断は,同法29条2項の進歩性の判断とは異なるから,上記のような「公知技術」を安易に参酌して先願明細書等の記載を補充するのは相当ではなく,メチル基の有無を捨象して化合物No.II-10 と「先願発明」化合物を同視し,「先願発明」化合物が先願明細書等に実質的に記載されていたとみることは相当ではない。」

◆判決本文

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平成21(行ケ)10081 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月05日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は、引用発明に記載された発明は前提が異なるというものです。
 「引用発明は,利用者側の複合器がスケーラビリティ機能を持たないことを前提としており,基本ビットストリームと付加ビットストリームを含む記録媒体が更新処理器側に配置されていることは必須の構\成であるから,基本ビットストリーム(基本部分)と付加ビットストリーム(補足部分)とがそれぞれ別の記録媒体に蓄積されていたとしても,利用者側に更新処理器(本願発明の併合手段に相当)を配置することやその一方を利用者側に配置し他方を通信ネットワーク(本願発明の伝送ラインに相当)を通じて利用者側にリンクする構成とすることは排除されているというべきであり,前記構\成要件ii)の構成を採用することが引用文献に記載された課題から容易に想到し得たということはできない。
エ なお,引用文献(甲1,乙1)には,「2.ビットスケーラビリティの問題点」(72頁13行〜73頁3行)の欄に,ビットストリームスケーラビリティには,階層符号化・復号器の低解像度用復号器で何らかの復号処理をしなければ高解像度加増を再生することができず処理が複雑であること,復号器での処理量の負担が多くなること等の問題があったことが記載されており,上記引用発明の課題認識に至る過程で,利用者側の復号器が更新処理器の機能を備えた構\成が示唆されているということもできる。しかし,この場合においても,前記イのとおり,基本ビットストリーム及び付加ビットストリームをそれぞれ別の記録媒体に分けて蓄積する構成とする解決課題ないし動機は存在せず,仮に,基本ビットストリーム及び付加ビットストリームがそれぞれ別の記録媒体に分けて蓄積されていたとしても,その一方を利用者側に配置し他方を通信ネットワークを通じて利用者側にリンクする構\成とする解決課題ないし動機も存在しないのであるから,前記構成要件i),ii)の構成を採用することが容易に想到し得たということはできない。オ以上のとおりであるから,引用発明から本願発明の構\成に至ることが当業者にとって容易に想到し得たことであるということはできない。」

◆平成21(行ケ)10081 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月05日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10297 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月05日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が、取り消されました。理由は、動機づけ無しというものです。
 「上記イ及びウによると,本件発明1の「REDIRECTコマンド」がクライアントにおいて情報ページを自動的に表示させるためのコマンドであって,ディレクトリサーバーによって行われるものであるのに対して,引用発明の「リダイレクト」は,ローカルエリア・ネットワーク内のサーバーに対する「インターネットの至る所」からのクライアントによるアクセスを確立する方法であって,このようなクライアントに対してローカルエリア・ネットワーク内で唯一のホストとなるフラグシップ・ホストによって行われるものであるということができる。そして,一貫してインターネットにおけるアクセスを念頭に置く本件発明1は,ローカルエリア・ネットワーク内のサーバーとのアクセスを実現するためのフラグシップ・ホストに相当するサーバーの存在及びその機能\としての「リダイレクト」によって,その技術的課題を解決しようとするものではないのであり,本件発明1の存在を知らない当業者がこのような引用例の記載に接したとしても,フラグシップ・ホストを必要としないインターネットのアクセス方法において,このような「リダイレクト」の構成を採用して,本件発明1のディレクトリサーバーによる「REDIRECTコマンド」に係る構\成とするように動機付けられるということはできないし,引用例において,フラグシップ・ホストの機能から離れて「リダイレクト」の機能\を採用しようと動機付ける記載も存在しない。そして,仮に,引用例に開示された事項についての技術的意義を離れて,「リダイレクト」という用語の抽象的な意義のみに基づいて本件発明1の「REDIRECTコマンド」と対比することを前提とするならば,排除されるべき「後知恵」の混入を避けることはできないといわなければならない。」

◆平成20(行ケ)10297 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月05日 知的財産高等裁判所

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平成21(行ケ)10090 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月29日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 「審決は,相違点(相違点1,2)に関し,「保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることは,本願の出願日において周知となっていた」(14頁4行〜6行)とした上で,「保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることが本願の出願日において周知となっていた現状に照らせば,被保険者に重大な保全変更事情が発生した場合,就学している子供がいれば奨学金を給付するようにすることは,当業者が容易に考えつくサービスの仕組みといえる。そして,奨学金の給付に結びつく重大な保全変更事情として,死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報などが考えられることも,当業者が普通に想起することである。」(14頁7行〜15行)とした。上記4で検討したとおり,保険会社が奨学金支給を支援すること,及び保険会社が財団を設立して奨学金を支給することが周知であることに照らせば,被保険者に重大な事情の変更が生じた場合に,就学している子供がいれば,保険会社が奨学金を直接給付することについても,当業者において普通に想起できるものと解される。そして上記重大な事情の変更として本願補正発明の挙げる死亡保険金給付等があるとすることも,当業者が普通に想起するものである。イ また,引用発明の記載された刊行物1(甲1)には,上記2(1)ア(イ)で摘記したとおり,「…子供の進学年齢毎に国公私立の中学校や高校や大学の各種案内を表示することもできる。あるいは,家族や子供の誕生日毎にお祝いのメッセージなどを表\示することもできる。…」(段落【0050】)と記載され,同(ウ)摘記の図3に記載のとおり顧客登録情報として家族の構成・性別・年齢・趣味等が記載されていることからすると,引用発明でも被保険者及び家族の個人情報を検索し,必要と思われる情報を取得して印刷する機能\を備えるものと解される。そうすると,引用発明において,入力する情報を本願補正発明における保険金給付等の情報とし,印刷し提供する情報を奨学金支給の案内状とすることに格別の技術的課題を見出すことはできないから,結局これら構成の相違点についても,当業者が容易になし得る設計的事項の範囲内のものであると認められる。そうすると,審決が相違点に係る構\成について容易想到と判断したことに誤りはない。」

◆平成21(行ケ)10090 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月29日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10398 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月22日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとして審決に対して、「動機付ける旨の開示又は示唆がない」として、取り消しました。
 「上記(1)及び(2)のとおり,化粧用パック材にWJ加工を施すとの本件各発明の構成は,化粧用パッティング材から個々の化粧用パック材を剥離する際に生じる毛羽立ちの防止を主たる解決課題として採用されたものであるところ,同課題が本件出願当時の当業者にとっての自明又は周知の課題であったということはできず,また,引用例を含め,化粧用パッティング材(化粧綿)から剥離される各層(各シート部材)にWJ加工を施すことを動機付ける旨の開示又は示唆のある刊行物(本件出願前に頒布されたもの)は存在しないのであるから,仮に,本件審決が判断したとおり,引用発明に周知事項1及び2を適用して各層(化粧用シート部材)の側縁部近傍を圧着手段により剥離可能\に接合するとともに,各層を化粧用パック材として使用することが,本件出願当時の当業者において容易になし得ることであったとしても,また,引用発明の単位コットン(化粧用パッティング材)がWJ加工を施したものであることを考慮しても,これらから当然に,各層を1枚ごとに剥離可能としてパック材として使用する際にその使用形態に合わせて各層にWJ加工を施すことについてまで,本件出願当時の当業者において必要に応じ適宜なし得ることであったということはできず,その他,引用発明の各層にWJ加工を施すことが本件出願当時の当業者において必要に応じ適宜なし得たものと認めるに足りる証拠はないから,相違点1に係る各構\成のうち化粧用パック材にWJ加工を施すとの構成についての本件審決の判断は誤りであるといわざるを得ない。この点に関し,被告は,審査基準が想定する当業者であれば,引用発明の各層を1枚ごとに剥離可能\としてパック材として使用するときは各層にWJ加工を施すものであるなどと主張するが,上記説示したところに照らすと,そのようにいうことはできないし,その他,被告主張に係る事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,化粧用パッティング材(化粧綿)から剥離された各層(各部材)にWJ加工を施すことは引用発明から容易に想到し得るものではないのに,この点を看過した相違点1についての本件審決の判断は誤りであるというほかなく,原告主張の取消事由2は理由があるといわなければならない。」  

◆平成20(行ケ)10398 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月22日 知的財産高等裁判所

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 >> 新規性・進歩性
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平成21(行ケ)10003 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月15日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が維持されました。  「原告は,審決の作用効果についての判断は,本件発明1が有する課題及びその課題を解決したことによる作用効果を正当に評価せず,何らの根拠もなく「格別に顕著なものではない」と断じているもので,本件発明1の顕著な作用効果を看過した誤りがあると主張する。しかし,本件発明1が新たな技術課題や作用効果の認識に基づくものであるとしても,本件発明1は,出願前に既に開示された引用発明1に,当業者に自明な周知・慣用技術を組み合わせただけの構成であることは,上記(1)(2)記載のとおりである。また,本件発明1の作用効果としては,本件訂正後の明細書(特許公報〔甲30〕,全文訂正明細書〔甲31〕)には,前記のとおり,抜きダレを下面にするため樹脂の流動性が向上し,リードフレームに与える樹脂注入時の抵抗を低下させることができ,したがって,樹脂厚の薄いものでも良好にリードフレームを固定でき,不良を防止できることが記載されているが,これらの「樹脂の流動性が向上」,「樹脂注入時の抵抗を低下」及びその結果としての「樹脂厚の薄いものでも良好にリードフレームを固定でき,不良を防止できる」との効果は,抜きバリがリードフレームの表面に対して突起状に形成されることと,樹脂モールド工程において樹脂は流動体であることを考慮すれば,当業者が予\期し得ない格別顕著なものということはできない。よって,本件発明1の作用効果に関する原告の上記主張は採用することはできない。」

◆平成21(行ケ)10003 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月15日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10433 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月16日 知的財産高等裁判所

 拒絶査定の理由と異なる理由に基づいて判断したので、手続き違背を理由として審決を取り消すとともに、周知技術についても一言述べました。  「このように,拒絶査定と審決とでは,「表面に吸着」する点に関し,同一性のある解釈をしていたとは認められず,むしろ,拒絶査定及び審決における各説示の文言等に照らし,前者はこれを「表\面への吸着」と解釈し,後者は表面のみならず「吸収」を含む現象と解釈していることが認められる。したがって,審決は,拒絶査定の理由と異なる理由に基づいて判断したといわざるを得ない。そして,前記第3で主張するとおりの原告らの解釈及び前提に立てば,この「表\面に吸着」する点はまさしく本願発明の重要な部分であるところ,原告らの意見書や審判請求書における主張からすれば,「表面に吸着」する点に関し,原告らは,審判合議体とは異なる解釈をし,本願発明や引用発明を異なる前提で捉えていることが認められるのであるから,これに対して,審決が,拒絶査定の理由と異なる理由に基づいて,「表\面に吸着し」との点について判断をしている以上,原告らに対し,意見を述べる機会を与えることが必要であったというべきである。なお,審決が原告らに対し上記のような意見を述べる機会を付与しなかったとしても,その双方の場合について実質上審理が行われ,原告らが必要な意見を述べているなどの特段の事情があれば,審決のとった措置は実質上違法性がないということもできないではないが(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10538号,同20年2月21日判決の第5の1(4) 参照),本件においては,そのような特段の事情を認めることはできない。ウ さらに,審決は,拒絶理由通知においてなんら摘示されなかった公知技術(周知例1及び2)を用い,単にそれが周知技術であるという理由だけで,拒絶理由を構成していなくとも,特許法29条1,2項にいういわゆる引用発明の一つになり得るものと解しているかのようである。すなわち,審決は,相違点1について,「排ガスがリーンのときに,NOx浄化触媒としてNOxを触媒表\面へ吸着するものは周知(例えば,周知例1及び周知例2参照。以下「周知技術1」という。)であることから,相違点1に係る本願発明の発明特定事項は周知である。」と説示し,また,相違点2についても,「内燃機関がリーン運転しているとき,前記NOx浄化触媒で排ガス中のNOxを吸着し,吸着後に,排ガスを数秒間ストイキもしくはリッチの状態とし,前記NOx浄化触媒で吸着したNOxを還元剤と接触反応させてN2に還元して排ガスを浄化することは周知(‥‥‥)であり,相違点2に係る本願発明のように時間及び深さを決定することは,周知例1及び周知例3の周知技術2を勘案すれば,適宜なし得る設計的事項に過ぎないものである。」,そして,「本願発明は,引用発明,周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである」という説示をしているが,誤りである。被告主張のように周知技術1及び2が著名な発明として周知であるとしても,周知技術であるというだけで,拒絶理由に摘示されていなくとも,同法29条1,2項の引用発明として用いることができるといえないことは,同法29条1,2項及び50条の解釈上明らかである。確かに,拒絶理由に摘示されていない周知技術であっても,例外的に同法29条2項の容易想到性の認定判断の中で許容されることがあるが,それは,拒絶理由を構成する引用発明の認定上の微修整や,容易性の判断の過程で補助的に用いる場合,ないし関係する技術分野で周知性が高く技術の理解の上で当然又は暗黙の前提となる知識として用いる場合に限られるのであって,周知技術でありさえすれば,拒絶理由に摘示されていなくても当然に引用できるわけではない。被告の主張する周知技術は,著名であり,多くの関係者に知れ渡っていることが想像されるが,本件の容易想到性の認定判断の手続で重要な役割を果たすものであることにかんがみれば,単なる引用発明の認定上の微修整,容易想到性の判断の過程で補助的に用いる場合ないし当然又は暗黙の前提となる知識として用いる場合にあたるということはできないから,本件において,容易想到性を肯定する判断要素になり得るということはできない。」\n

◆平成20(行ケ)10433 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月16日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10490 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月17日 知的財産高等裁判所

 数値限定発明について、進歩性なしとはいえないとして無効審決(特許維持)がなされましたが、これが取り消されました。  「本件明細書には,本件発明1における数値範囲の臨界的意義についての具体的な記載はされておらず,また,塩素原子含有量は,上限値である10ppm以下だけが記載され,下限値が特定されていないものであって,これらによれば,本件発明1における塩素原子含有量の数値限定の意義は,塩素原子がポリカーボネート樹脂中に少なければ少ないほど,塩素原子の影響による半導体ウエーハの汚染を低減でき,本件発明1の目的達成に適しているというものにすぎないといわざるを得ない。」

◆平成20(行ケ)10490 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月17日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10431 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

 周知技術を適用するための共通の解決課題ないし動機付けが存在していたか否か,仮に存在していたとして,周知技術を適用するための阻害要因がなかったとして、進歩性なしとした審決を取り消しました。
 「このように,引用刊行物に記載された技術的事項は,2次コイルとして,環状コイルを用いることを前提としたものであって,引用刊行物には,相互インダクタンス電流トランスジューサーの2次コイルを環状コイル以外のものとする可能性を示唆する記載はない。引用発明は,電流感知トランスジューサーの従来技術を前提としながら,環状コイルにおけるシンメトリー構\造の実現という課題を,環状コイルを多重層構造とすることによって解決しようとしたものである。引用発明と本願発明は,課題解決の前提が異なるから,引用発明の解決課題からは,コイルを多層基板上に形成するための動機付けは生じないものといえる。なお,引用刊行物には,相互インダクタンス電流トランスジューサーを小型化するという課題も記載されているが,環状コイルを前提としたものであって,本願発明における小型化とは,その解決課題において共通するものではない。以上のとおり,引用発明には,環状コイルに代えて,多層基板上に形成されたプリントコイルによりトランスを構\成する前記周知技術を適用する解決課題や動機は存在しないというべきであり,したがって,当業者が本願発明の相違点2に係る構成を想到することが容易であったとはいえない。イ また,引用発明に周知例の技術を適用するに当たっては,以下のとおり,その適用を阻害する要因が存在するともいえる。すなわち,引用発明においては,細長いほぼ直線状の導電体の周囲に同軸的に円筒形のスリーブを配置し,その円筒形スリーブと嵌合するように環状コイルが配置され,環状コイルがほぼ直線状の導電体の周囲を取り囲むという構\成を採用しているのに対し,周知例の技術では1次コイルと2次コイルが平面的に対向するように配置されており,引用発明と周知例の技術は,構造を異にしている。そして,導電体と環状コイルとからなる,引用発明のトランスの構\成に,上記周知例に記載されたトランスの構成を適用する場合,2次コイルである環状コイルは,直線状の導電体に直交する仮想的な平面上に,前記導電体を囲むように配置されることが必要となる。しかし,周知例に記載されたトランスは,平面状コイルを形成した絶縁基板を積層するものであり,平面上の1次コイルと2次コイルは,互いに平行な基板面上に形成され,引用発明の導電体と環状コイルの配置関係と,周知例に記載されたトランスにおける1次コイルと2次コイルの配置は,構\造上の相違が存することから,引用発明に周知例の構成を適用することには,困難性があるというべきである。また,引用発明に周知例に記載された技術を適用することを想定した場合,まず,引用発明においてはほぼ直線状の導電体とすることにより導電体によるインピーダンスの発生が抑制されているのに対し,引用発明の導電体に対応する周知例の1次コイルは渦巻状であって導体長が長く,それ自体がインピーダンスとして働く余地があり,この点でも引用発明に周知例の技術を適用しようとするに当たっての阻害要因となる。さらに,引用発明においては,電力メーター用電流感知トランスジューサーとして,需要家に供給される電力の正確な測定ということが技術的課題とされ,そのために,環状コイルに作用する外因性磁場による悪影響の排除という課題が存在するのに対して,周知例の技術においては,専ら1次コイルと2次コイルの磁気結合の強化ということが技術的課題とされていて,外部磁界による磁気干渉は,格別考慮する必要がない点において,引用発明に周知例の技術を適用しようとするに当たっての阻害要因となり得る。以上のとおり,引用発明に周知例の技術を適用することには,課題の共通性や動機付けがなく,また,その適用には阻害要因があるというべきであるから,当業者が引用発明に周知例の技術を適用して本願発明に至ることが容易であったということはできない。」\n

◆平成20(行ケ)10431 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10468 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

 引用例の認定誤りを理由として、進歩性なしとした審決を取り消しました。
   「前記のとおり,引用文献2記載の発明における課題解決のための技術思想の特徴は,最初のN個目までの修正から得られた修正係数及び修正角度の平均を用いて,適切な補正係数及び補正角度を獲得し,N+1個目からはその補正係数及び補正角度による修正のみによって不釣合い量を所定値内に抑えるものであって,2回目までの修正を行う場合にも,1回目と同様の手順で2回目までの補正係数及び補正角度を算出するものである。段落【0022】における「2次修正まで行なうものにも本発明を適用できる。」との記載部分は,これに続く「その場合,修正係数は1次測定結果と2次測定結果のベクトル差に加えて2次測定結果と3次測定結果のベクトル差を用いることができる。」と記載部分を併せて読むならば,N個目までの回転供試体の2次測定結果と3次測定結果のベクトル差の平均から獲得した2次修正用の補正係数及び補正角度をもって,N+1個目以降の回転供試体の2次修正を行い,2回の修正をもって不釣合い量を所定値内に抑えて試験効率(修正効率)を改善させることを意味するものであると理解するのが自然な解釈である。被告は,引用文献2には,「同一回転供試体の不釣合いを2回の修正で仕上げる際に1回目は補正数値を用いずに修正を行い,この1回目の修正から算出された補正数値をもって2回目の修正を行い,残留不釣合いを極めて小さい数値にする」という発明の技術思想も開示されていると解すべきであると主張する。しかし,「2次修正まで行なうものにも本発明を適用できる。」との記載部分のみを根拠として,引用文献2記載の発明の技術思想を,上記のようにn=1の場合も含めて広く理解することは,引用文献2の発明の前記技術思想の特徴と整合を欠く理解であって賛同できるものではない。」

◆平成20(行ケ)10468 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月30日 知的財産高等裁判所

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平成20(ワ)19402 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月31日 東京地方裁判所

 特許侵害訴訟について、進歩性なしとして権利行使不能と判断されました。

◆平成20(ワ)19402 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月31日 東京地方裁判所

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平成20(行ケ)10405 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月01日 知的財産高等裁判所

 設計事項なので当業者にとって容易である、とした審決が取り消されました
 「引用例の記載によると,引用発明におけるインクカートリッジは,インクカートリッジホルダに接合する面が長方形であるものを想定していると認められるところ,その長方形の内部において,インク導入口のような他の必要な部材と共に回路基板及び開口穴を配置しようとする場合,これらの部材をスペースに余裕のある長手方向に配列しようとするのが自然な発想であり,あえて短手方向に複数の部材を配置しようとするには,何らかの示唆に基づくそれなりの動機付けを必要とするというべきである。したがって,引用発明において,回路基板と開口穴とを近傍に配置しようとしたからといって,必ずしも本件補正発明の相違点に係る構成を採用することとなるわけではない。これに対し,本願明細書の記載によると,本件補正発明において,本件相違点に係る構\成が採用されたのは,接続電極部における位置ずれを極めて小さくし,製造のばらつきによる位置決め部を中心とする上下の回動による影響も最小限に抑えようとの動機に基づくものであると認められるところ,上記(1)のとおり,そもそも引用発明が課題として製造のばらつきを意識したものであるとは認められないし,引用例における位置決め機構に関する上記3の記載や他の記載において,本件相違点に係る構\成を示唆する記載が存在するとは認められない。そうすると,引用発明に基づいて,本件補正発明との本件相違点に係る構成を採用することは,当業者にとって単なる設計事項であるということはできないというべきである。」

◆平成20(行ケ)10405 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月01日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10345 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年08月31日 知的財産高等裁判所

 周知技術であるとした認定を誤りを理由として進歩性なしとした無効審決が取り消されました。
 「上記各記載によれば,周知例1ないし3においては,いずれも膨縮袋により手又は足の両側から挟持して空圧施療するために膨縮させる事項が開示されている。しかし,各周知例は,いずれも,肘掛部上面に形成された膨縮袋群は,内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させるとの構成は示されていない。すなわち,(ア) 周知例1(甲12)は,従前のマッサージ機では施療部を押し上げるようにしてマッサージし,拡縮袋の膨張時に施療部が前方へ押し出されるという課題があったため,拡縮体を施療部の左右両側に分割配置してこの課題を解決しようとするものであり,被施療部を安定的に保持させるという課題は存在しない。(イ) 周知例2(甲17)は,底面と底面の左右両側から立設された側壁を備えた1つの凹状脚収納部内に使用者の両脚を左右並べて収納し(脚の後方部が底面と接し,脚の両外側が左右両面と接する),空気の給排により膨張収縮して凹状脚収納部に収納された両脚の側部を押圧する側面エアセルが両側壁の内面に設けられた脚用空気マッサージ機に関するものであって,底面に設けられた底面エアセルの膨張収縮により両脚の後方側を押圧してマッサージするものである。周知例2は,側面エアセルからの押圧は脚の形状に沿って側方から押圧し,底面エアセルの押圧は,脚の形状に沿って後方から押圧する構成が採用されている。両脚は,一つの凹状収納体に,縦方向に収納されるため,底面エアセルによって,安定的に保持して脱落を防止するという技術的課題はない。(ウ) 周知例3(甲22)は,使用者の手部及び下腕部を両側から挟持してマッサージするものであって,被施療部を安定的に保持させるという技術的課題に対応しようとするものではない。(3) 小括以上の検討によれば,引用発明1と引用発明2の組合せに周知技術を考慮したとしても,本件肘掛部上面に膨縮袋からなるマッサージ部を配置し,膨縮袋により肘掛け部全面を持ち上げてマッサージし,かつ,手部を立上り壁に配置された膨縮袋との間で挟持して保持する構成とすることには想到し得たとしても,膨縮袋を手部の安定的保持の機能\のための構成とし,「肘掛部の上面に配設した膨縮袋群は,圧縮空気給排装置からの給気によって膨縮袋群の肘幅方向の外側一端よりも内側他端が立ち上がるように配設され,前記膨縮袋の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させ」る構\成とすることには当業者が容易に想到し得ないものというべきである。」

◆平成20(行ケ)10345 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年08月31日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10259 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月07日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした無効審決が取り消されました。理由は、引用文献に記載された発明の認定誤りです。
 「以上によると,引用発明において,2つ以上のコイルを用いる意義は,液体の流れ方向の上流側と下流側に配置した複数のコイルに異なる方向の磁場を形成させ,コイルとコイルの間の仮想平面(分割線Sで示される)付近に,より大きなローレンツ力を発生させることにあるものと認められ,摘記事項(お)の記載は,そのような構成を前提として,コイルの電気的な接続の仕方を記載するものであると認められる。そして,大きなローレンツ力を発生させるためには,複数のコイルを液体の流れ方向の上流側と下流側に並べて配置する必要があるはずであって,被告の主張するように,複数のコイルを同じ箇所に重ねて配置するとすれば,引用発明の特徴とする仮想平面が形成できない結果とならざるを得ないのであるから,このようなコイルの配置が引用刊行物に示唆されているなどということはできない。そうすると,本件審決が,摘記事項(お)の記載から,「巻き方向が同じ複数のコイル」を「2重に巻き付ける態様」を適宜に設計できることが示唆されているとし,これを前提として,相違点1について,「2つの通電により磁束を形成するコイルを装置に取り付ける使用の態様として,『巻き方向が同じ複数のコイル』を,2つの通電により磁束を形成するコイルを被処理物が流れる管路の外周に2重に巻き付ける態様を採用することは,当業者が容易に想到しえることであると認められる。」と判断したのは誤りであるといわざるを得ないし,引用発明において,複数のコイルを重ねて配置し,分割線Sで示される仮想平面を形成することができない構\成を採用することは,そもそも,その技術思想に反するものであるから,引用発明から本件発明の構成を想到することが容易であるということは到底できない。」

◆平成20(行ケ)10259 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月07日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10396 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月30日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした無効審決が、引用文献との相違点の認定誤りを理由として取り消されました。
  「前記2のとおり,本件発明1における「破砕片」は,表面に表\飾のための凹凸が施された塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙の廃材を細かく破砕したものであって,表\面に上記凹凸を残存する塩化ビニール片と紙片の貼り合わせ構\造を有し,塩化ビニール片の上記凹凸面が対面して通水路を形成し,該通水路内に繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を保持した構造を有するものであるから,シート形態を残存するものである。そして,前記2(2)カのとおり,本件特許明細書(段落【0037】〜【0039】)には,破砕機を用いて壁紙を破砕することが記載されており,このような方法が本件発明1の技術分野で通常用いられる破砕方法と考えられる。一方,前記3(2)のとおり,甲第1号証発明は「3mm以下の粒度の表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材の粉砕物」を含むものであるが,証拠(牛乳パックの外観写真と拡大断面写真[甲29],技術説明資料[甲35])及び弁論の全趣旨によれば,表\面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙である紙製牛乳パックを,破砕機で3mm以下に粉砕した粉砕物は,紙の部分がプラスチックフィルムの部分よりもはるかに厚いため,短繊維状に離解されて,シート原形を留めない粉末状又は綿状のものになり,シート形態を残存しないものと認められる。そうすると,本件発明1における「破砕片」と甲第1号証発明における「粉砕物」とは,上記のとおりシート形態を残存するかどうかという点に違いがあるということができる。・・・・(3) 審決は,<相違点2>として,「本件発明1は,粗粒状体が『壁紙を細かく破砕し形成した表面に上記凹凸を残存する塩化ビニール片と紙片の貼\り合わせ構造を有する破砕片を組成材とする』のに対し,甲第1号証発明は,粒体が『粉砕物を含有』するものであり,かかる『粉砕物』について,表\面に凹凸を残存する塩化ビニール片と紙片の貼り合わせ構\造を有する破砕片であることの特定がない点。」と認定し,<相違点3>として,「本件発明1は,『粗粒状体中の塩化ビニール片の上記凹凸面が対面して通水路を形成し,該通水路内に上記繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を保持した構造を有する』のに対し,甲第1号証発明は,かかる構\造の特定がない点。」と認定しているが,上記(1)(2)で述べたところからすると,単に特定がないというにとどまらず,上記(1)(2)認定のような形状の違いがあることを認定すべきであったということができる。」

◆平成20(行ケ)10396 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10426 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月02日 知的財産高等裁判所

 UI(ユーザインターフェイス)の発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
  「上記(ア)によれば,「形態」の語は,原告主張のとおり,通常,物のかたち等の意味で用いられることが認められるものの,上記(1)アによれば,本願補正発明における「表示形態」の意味については,色,形,サイズ等による表\示上の視覚的属性をいうものであることは,既に検討したとおりである。また,上記(1)ア(イ)摘記によれば,図2Dに示された画面は,図2Cの画面からのユーザーインタフェースにおける形態の変更を示すものであるところ,(1)ア(ウ)の図2C,図2Dの記載から明らかなとおり,両者でウインドウの境界線の太さは異なっているものの,タイトルバー及び境界線により画定されたウインドウの形状及びタイトルバー内のクローズボックスの形状には差異がなく,ウインドウの外形形状に変化がないことが理解できる。従来のユーザーインタフェース画面とは外形形状において差異がない図2Dについても表示形態が異なるテーマに設定されたユーザーインタフェース画面として示されていることからしても,本願補正発明における「表\示形態」の意味は,主として表示する上での形状であるとする原告の主張が採り得ないことは明らかである。・・・・以上によれば,審決が相違点(3)に関し,「…ユーザの一般的な要望に従ってイメージを一変させ見栄えのするデスクトップとするため,引用例1記載発明において,第1のセット及び第2のセットにインタフェースオブジェクト及びオブジェクトパーツの配色パターンのみならず,インタフェースオブジェクトの形状をも含ませるようにし,インタフェースオブジェクトが第1セットを使用して表\示される場合には第1形状の第1アウトラインを有し,前記インタフェースオブジェクトが第2セットを使用して表示される場合には第2形状の第2アウトラインを有するものとすることは当業者が格別困難なくなしうることと認められる。」(10頁28行〜35行)とした判断に誤りはない。

◆平成20(行ケ)10426 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月02日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10444 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月30日 知的財産高等裁判所

 相違点の認定誤りを理由として、進歩性なしとした審決が取り消されました。
     「本願補正発明に係る請求項の記載によれば,「内面シート」,「外面シート」及びこれらに挟まれた「液吸収体」とを有する「積層体」によって「袋体」が形成されるとともに,当該「袋体」は「身体装着側」と「身体装着側に対向する裏側」とを有し,「身体装着側」には「開口部」が形成され,「開口部を囲む領域」と「これ以外の領域」との境に,液吸収体を薄くし又はこれを除去した「変形境界部」が形成されるものである。以上からすれば,「開口部を囲む領域」は,当然に,上記「袋体」の一部と解されるため,「内面シート」,「外面シート」及び「液吸収体」を有する「積層体」で形成されていることになる。(イ) 他方で,被告が主張するとおり,液吸収体を有する積層体において,端部にシール部がないと液が端部から漏れるおそれがあることは技術常識といえるため,このような積層体はシール部を有することが通常であるものと解される。そして,本願補正発明においても,「開口部」を囲む部位は積層体の端部となるので,「袋体」の「開口部」を囲む部位にはシール部が必要であると解され,現に,開口部20の周囲には「縁部17」(シール部)が存在する(前記(2)ク,ケ参照)。しかし,前記(ア)で検討したとおり,本願補正発明の請求項の記載によれば,「開口部を囲む領域」は,「内面シート」,「外面シート」及び「液吸収体」を有する「積層体」で形成されるものである。仮に,シール部が「開口部を囲む領域」の一部に該当すると解する余地があるとしても,被告が主張するように,「開口部を囲む領域」が,液吸収体が全く存在しない単なるシール部でもよいと解するのでは,特許請求の範囲の請求項に「『開口部を囲む領域』が『液吸収体』を有する『積層体』によって形成される」旨が記載されていることが無意味になるから,被告の上記主張は採用できない。(ウ) 以上のとおり,本願補正発明に係る尿取りパッドにはシール部が存在するが,本願補正発明における「開口部を囲む領域」とは,液吸収体を有する積層体で形成されている領域であって,基本的にシール部以外の領域を指す(仮に「開口部を囲む領域」がシール部を含むとしても,少なくともシール部以外の「液吸収体を有する積層体」で形成される部分を主たる構成部分とする。)ものと解するのが相当である。

◆平成20(行ケ)10444 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10375 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月29日 知的財産高等裁判所

 マピオン特許(CS関連発明?)について、無効理由無しとした審決が維持されました。

◆平成20(行ケ)10375 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月29日 知的財産高等裁判所
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◆平成21(行ケ)10036 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成21年07月21日 知的財産高等裁判所

 実案公報に記載の意匠と類似するとした審決が取り消されました。
   「本願意匠も引用意匠も,周側面において,開口部が四つ設けられている点やゴム素材が占める割合が開口部が占める割合よりも大きい点は共通しているものの,その開口部の「位置,範囲,大きさ」は,上記認定のとおりかなり異なっており,本願意匠では,開口部が周側面において大きな部分を占めているとの印象を与えるが,引用意匠では,開口部は周側面の一部であるとの印象しか与えない。そして,この開口部の「位置,範囲,大きさ」は,本願意匠及び引用意匠に係る物品では,非常に目立つ部分であり,需要者の注目を惹くということができる。乙3(三洋電機株式会社がインターネットに掲載した「MoMAstore」のページ)によれば,寸法及び色彩の違う輪ゴムがワンセットで販売されていることが認められるが,そうであるからといって,需要者が輪ゴムの開口部の「位置,範囲,大きさ」の違いに着目しないということはできない。・・・以上によると,本願意匠では,開口部が周側面において大きな部分を占めているとの印象を与えるが,引用意匠では,開口部は周側面の一部であるとの印象しか与えないという,需要者に注目される大きな違いがあるということができるのであって,「本願意匠と引用意匠の開口部における差異は,意匠全体から観れば一部位における僅かな程度の差異である」とか「本願意匠と引用意匠の開口部における差異は,輪ゴムの分野において従前からみられる態様であるため,格別看者の注意を惹くものではない」ということはできない。したがって,その旨の審決の判断には誤りがあり,取消事由1,2は理由がある。」

◆平成21(行ケ)10036 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成21年07月21日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(ワ)27187 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年07月15日 東京地方裁判所

 ユーザインターフェイス関係の特許(CS関連発明)について最終的には、進歩性違反を理由に権利行使不能と判断されましたが、用語の解釈について興味深い判断がなされました。
  「被告は,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続では,原告が,「テレビジョン番組リスト」の用語を「個々の番組単位における番組情報」の意味では使用しておらず,各手続における特許庁の主張及び裁判所の判決においても,「テレビジョン番組リスト」とは,テレビジョン番組のタイトルのリスト,すなわち,テレビジョン番組のタイトルが並んだものと解されているから,本件発明における「テレビジョン番組リスト」の文言についても,「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を意味すると解すべきであり,分割出願に係る本件特許権による権利行使の際に,同用語の意義を違えて主張することは,信義則に基づく禁反言法理から許されないと主張する。しかしながら,分割出願制度は,一つの出願において二つ以上の異なる発明の特許出願をした出願人に対し,出願を分割する方法により,各発明につき,それぞれ元の出願の時に遡って出願がされたものとみなして特許を受けさせるものであるから,原出願で特許出願された発明と,分割出願で特許出願された発明は,本来,内容を異にするものであり,分割出願された発明の「特許請求の範囲」に記載された文言の解釈が,原出願の手続における文言の解釈と必ずしも一致する必要はないというべきである。したがって,本件特許の「テレビジョン番組リスト」の文言の解釈において,仮に,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続において使用された「テレビジョン番組リスト」の文言の意味とは異なる解釈をしたとしても,禁反言法理から許されないとはいえず,被告の上記主張は採用できない。」

◆平成19(ワ)27187 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年07月15日 東京地方裁判所

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◆平成21(行ケ)10002 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月24日 知的財産高等裁判所

 29条1項3号の「刊行物に記載された」には該当しないと判断されました。
   審決は,仮に,引用例の図3,4の図示内容ではスリーブの末端部分とステントの大小関係が明らかとはいえないとしても,スリーブの末端部分の外径をどの程度の寸法にするかは,当業者が必要に応じて決定し得る単なる設計事項にすぎず,引用例には,本願発明と実質的に同一の発明が記載されているとした上で,本願発明は特許法29条1項3号に該当する旨判断している。しかし,同号所定の「刊行物に記載された」というためには,当業者がその刊行物を見れば,特別の思考を要することなく実施し得る程度にその内容が開示されている必要がある。本件において,引用例のスリーブの末端部分の内径寸法は,前述のとおり,通常1.524mmであるところ,被告は,肉厚が0.1mm以下の管状部材の作成が可能であることは当業者にとって周知である旨主張し,その根拠として乙1,2を挙げるので,以下,検討する。・・・・このように,乙1,2に記載された,血管内に挿入するカテーテル管に関する技術と,白内障の手術等に用いるスリーブに関する引用発明や本願発明とは,医療器具に関する点で共通性を有するものの,器具の属性,使用状況,求められる強度等において異なる(これらの点は,肉厚にも影響を与えるものと解される。)ことを否定できず,引用例におけるスリーブの末端部分(その内径寸法は,前述のとおり,通常1.524mmである。)につき,約0.1mm以下の肉厚の素材を用いることにより,その外径寸法を1.72mm以下にするためには,なお相当程度の思考を要するというべきであって,当業者が引用例を見れば,特別の思考を要することなく実施し得る程度に本願発明の内容が開示されていたとまでは認められない。以上のとおり,乙1,2上の記載を前提としても,引用例に本願発明が記載されているとはいえない。(3) 本件での結論は以上のとおりであるが,被告は,「2.5mmの切開創口(引用例において使用可能とされているサイズ)から挿入できる最大限の外径は,計算上1.592mmとなる」旨の原告の主張を前提とすれば,切開創口から挿入される部分である引用発明のスリーブの末端部分の外径は1.592mm以下となり,引用例上に本願発明が記載されていることになる旨主張しているところ,念のため,この点についても検討する。確かに,引用例では,2.5mmの切開創口でスリーブを用いることが可能\とされているから,原告の主張どおり,2.5mmの切開創口に挿入可能なスリーブの外径の上限値が1.592mmであるならば,引用例上に,本願発明の範囲に含まれるもの(内径寸法1.524mm,外径寸法1.592mmのスリーブの末端部分)が記載されているものと解し得る。しかし,被告が指摘する原告の主張は,前記第3.2(2)のとおり,「引用例における装置を2.5mmの切開創口に用いるのは不可能である」旨の主張を構\成する一部分にすぎず,当該部分だけを抽出するのは妥当でない。また,1.592mmという数値も,単に2.5mmに2を乗じて円周率で除して得られたにすぎないものと解され,これが実施可能性等を考慮した上での主張であるとは認められない。このように,いずれにしても,原告の主張の一部分に基づいて「引用発明のスリーブの末端部分の外径寸法が1.592mm以下である」などと認定できないことは明らかであり,この点に関する被告の主張は採用できない。(4) 以上のとおり,引用例上,外径寸法が1.40mm以上,1.72mm以下の範囲のスリーブの末端部分(本願発明における灌流スリーブと同じ範囲の寸法のもの)が記載されていると認めることはできず,本願発明が引用例上に記載されているとはいえない。2 このように,本願発明につき特許法29条1項3号を適用することはできず,審決に,この点に関する誤りがあることは明らかである(なお,本判決は,本願発明が進歩性など他の特許要件を満たすか否かについては,何ら判断を示すものではない。)から,その余の点について判断するまでもなく,審決を取り消すこととする。

◆平成20(ワ)12952 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年07月10日 東京地方裁判所

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◆平成20(行ケ)10259 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月07日 知的財産高等裁判所

  引用文献における認定誤りを理由として、進歩性なしとした無効審決を取り消しました。
   「以上によると,引用発明において,2つ以上のコイルを用いる意義は,液体の流れ方向の上流側と下流側に配置した複数のコイルに異なる方向の磁場を形成させ,コイルとコイルの間の仮想平面(分割線Sで示される)付近に,より大きなローレンツ力を発生させることにあるものと認められ,摘記事項(お)の記載は,そのような構成を前提として,コイルの電気的な接続の仕方を記載するものであると認められる。そして,大きなローレンツ力を発生させるためには,複数のコイルを液体の流れ方向の上流側と下流側に並べて配置する必要があるはずであって,被告の主張するように,複数のコイルを同じ箇所に重ねて配置するとすれば,引用発明の特徴とする仮想平面が形成できない結果とならざるを得ないのであるから,このようなコイルの配置が引用刊行物に示唆されているなどということはできない。そうすると,本件審決が,摘記事項(お)の記載から,「巻き方向が同じ複数のコイル」を「2重に巻き付ける態様」を適宜に設計できることが示唆されているとし,これを前提として,相違点1について,「2つの通電により磁束を形成するコイルを装置に取り付ける使用の態様として,『巻き方向が同じ複数のコイル』を,2つの通電により磁束を形成するコイルを被処理物が流れる管路の外周に2重に巻き付ける態様を採用することは,当業者が容易に想到しえることであると認められる。」と判断したのは誤りであるといわざるを得ないし,引用発明において,複数のコイルを重ねて配置し,分割線Sで示される仮想平面を形成することができない構\成を採用することは,そもそも,その技術思想に反するものであるから,引用発明から本件発明の構成を想到することが容易であるということは到底できない。」

◆平成20(行ケ)10259 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月07日 知的財産高等裁判所

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◆平成21(行ケ)10002 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月24日 知的財産高等裁判所

 引用文献に記載の発明の認定誤りを理由として、29条1項3号違反とした拒絶審決が取り消されました。
  「もっとも,引用例には,スリーブの末端部分の外径寸法や,スリーブの肉厚に関する具体的な数値の記載はないため,引用例上のスリーブの末端部分の外径寸法は明らかではない。エ審決は,引用例の明細書上の記載に加え,図3,4を参酌し,「図3及び4には,スリーブの末端部分26の外径寸法がステント32の外形寸法よりも小さい点が図示されている」として,スリーブとステントの大小関係から,(前記ウのとおり,通常,ステントの外径寸法が1.651mmであることを前提として)スリーブの末端部分の外径寸法が1.651mm以下であると認定している。しかし,特許出願に際して,願書に添付された図面は,設計図ではなく,特許を受けようとする発明の内容を明らかにするための説明図にとどまり,同図上に,当業者に理解され得る程度に技術内容が明示されていれば足り,これによって当該部分の寸法や角度等が特定されるものではない。本件では,前記ウのとおり,ステントの内径寸法は,通常,スリーブの末端部分の内径寸法より小さい1.397mmとなるべきところ,引用例の図3では,ステントの内径がスリーブの末端部分の内径よりも大きく図示されている。以上を前提とすると,引用例上の図面が,部材の大小関係を正確に踏まえて作成されたか否かは不明といわざるを得ず,このような図面のみに基づいて,引用例における部材の大小関係を認定することは適切ではない。・・・・(2)ア 審決は,仮に,引用例の図3,4の図示内容ではスリーブの末端部分とステントの大小関係が明らかとはいえないとしても,スリーブの末端部分の外径をどの程度の寸法にするかは,当業者が必要に応じて決定し得る単なる設計事項にすぎず,引用例には,本願発明と実質的に同一の発明が記載されているとした上で,本願発明は特許法29条1項3号に該当する旨判断している。しかし,同号所定の「刊行物に記載された」というためには,当業者がその刊行物を見れば,特別の思考を要することなく実施し得る程度にその内容が開示されている必要がある。本件において,引用例のスリーブの末端部分の内径寸法は,前述のとおり,通常1.524mmであるところ,被告は,肉厚が0.1mm以下の管状部材の作成が可能であることは当業者にとって周知である旨主張し,その根拠として乙1,2を挙げるので,以下,検討する。・・・・・このように,乙1,2に記載された,血管内に挿入するカテーテル管に関する技術と,白内障の手術等に用いるスリーブに関する引用発明や本願発明とは,医療器具に関する点で共通性を有するものの,器具の属性,使用状況,求められる強度等において異なる(これらの点は,肉厚にも影響を与えるものと解される。)ことを否定できず,引用例におけるスリーブの末端部分(その内径寸法は,前述のとおり,通常1.524mmである。)につき,約0.1mm以下の肉厚の素材を用いることにより,その外径寸法を1.72mm以下にするためには,なお相当程度の思考を要するというべきであって,当業者が引用例を見れば,特別の思考を要することなく実施し得る程度に本願発明の内容が開示されていたとまでは認められない。以上のとおり,乙1,2上の記載を前提としても,引用例に本願発明が記載されているとはいえない。」

◆平成21(行ケ)10002 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月24日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10413 審決取消請求事件,審決取消請求承継参加事件 特許権 行政訴訟平成21年05月27日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明(?)について、進歩性なしとの拒絶審決が維持されました。
 問題となったクレームは 「バッジの携帯者による保護域へのアクセスをチェックする装置において, 前記バッジは, 特定の身体的特徴を記憶する第1のメモリと, 前記第1のメモリに接続された第1の無線手段を含み, 前記装置は, 前記第1のメモリに記憶された前記特定の身体的特徴を無線により読み取る 第2の無線手段と, 前記バッジの携帯者の特定の身体的特徴を取得する取得手段と, 前記第2の無線手段により読み取った特定の身体的特徴と,前記取得手段で 取得した前記バッジの携帯者の特定の身体的特徴とを比較する比較手段と, 前記比較手段の結果により施錠を制御するアクセス施錠手段とを含む ことを特徴とする前記アクセスチェック装置。」 というものです。

◆平成20(行ケ)10413 審決取消請求事件,審決取消請求承継参加事件 特許権 行政訴訟平成21年05月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(ワ)8426 不当利得返還請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年05月20日 東京地方裁判所

 侵害訴訟における無効判断時に、発明の要旨認定にリパーゼ判決を用いると言及がなされました。
   「そもそも,本件発明も,外部取り出し端子に印加された静電気が,2端子素子の保護回路及び共通浮遊電極を通じて,他の外部取り出し端子へと分割されるという分散放電の技術思想をその必須の内容とするものではないから,乙2文献が分散放電の技術思想を開示していないことによって,相違点1についての前記(ア)の判断が左右されるものではない。すなわち,特許出願手続,無効審判手続及び審決取消訴訟における発明の要旨認定は,特許請求の範囲の記載に基づいて行われ,明細書の発明の詳細な説明の記載や図面が参酌されるのは,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限られると解すべきところ(最高裁昭和62年(行ツ)第3号平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁参照),侵害訴訟において特許法104条の3第1項に基づく権利行使の制限の主張が行われた場合の当該特許発明の要旨認定においても,同条項が「特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは」と規定されていることに照らし,特許無効審判手続及びその審決取消訴訟における発明の要旨認定の場合と同じ認定手法によるのが相当と認められる。したがって,上記権利行使の制限の主張が行われた場合の発明の要旨認定は,原則として,特許請求の範囲の記載に基づいて行われ,明細書の発明の詳細な説明の記載や図面が参酌されるのは,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限られると解すべきである。 ところで,本件明細書(甲10添付)には,発明の詳細な説明の欄において,「共通浮遊電極を設けた場合には,静電気は2端子素子から共通浮遊電極さらに2端子素子を通して他の複数の端子に放電されるので,さらに印加電圧を低くすることができる。」,「第6図は,さらに第5図の例において遮光膜を第1主電極延在部27として第1主電極106に接続した例で,両方向に電流を流しやすい構造を有している。」との記載があるが,特許請求の範囲の記載は,前記争いのない事実等の(1)で認定したとおりであり,同記載によれば,本件発明においては,2端子薄膜半導体素子の付加ゲート電極及び第2主電極は外部取り出し端子に接続し,第1主電極は共通浮遊電極に接続するという順方向接続態様で接続する構\\成(構成要件E)であることが明らかであり,この接続態様によれば,電流は,外部取り出し端子から2端子薄膜半導体素子を介して共通浮遊電極へ流れる方向には流れやすいが,共通浮遊電極から2端子薄膜半導体素子を介して他の外部取り出し端子に流れる方向には流れにくくなっているものと認められる。そうすると,本件特許の特許請求の範囲の記載からみて,分散放電の技術思想ないしそれを実現する構\\成は,本件発明の必須の内容とはされていないというべきである。したがって,原告の上記主張は理由がない。b 仮に,原告の主張に係る分散放電を,本件発明の構成でも実現できる程度のものと解した場合でも,以下のとおり,原告の上記主張には理由がない。」

◆平成19(ワ)8426 不当利得返還請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年05月20日 東京地方裁判所

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◆平成20(ワ)6226 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月04日 大阪地方裁判所

 CS関連発明ではありませんが、新規性無しとして権利行使不能とされました。
 「これらの記載によると,本件明細書に記載された本件発明の実施例において,書込と読出は同時に行われることはなく,「タイムスリット」と呼ばれる短い時間を単位として,書込と読出が時分割で行われていることが示されている。具体的には,1個の書込タイムスロット「0」で書込を行い,次に,63個の読出タイムスロット「1」〜「63」で読出を行うという,合計64個のタイムスロットを繰り返すことが示されており,書込中の箇所を含む複数個の任意の位置から読出するのではなく,書込中の箇所を除く複数個の任意の位置から読出することがわかる(なお,仮に,本件発明1の「任意の複数の位置」が,引用発明3のタイムスロットのn個全体における任意の位置を意味するのであれば,引用発明3を理由として,本件発明1の無効をいうことはできなくなるが,そのときは,特許庁による判定〔乙1〕で示されたとおり,被告製品は,本件発明1を文言上侵害していないということになる。)。」

◆平成20(ワ)6226 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月04日 大阪地方裁判所

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◆平成20(行ケ)10394 特許権 行政訴訟 平成21年05月26日 知的財産高等裁判所

 不明瞭な記載の釈明、および限定的減縮違反については取り消したものの、独立特許要件違反は存在するとして、拒絶審決が維持されました。
 「・・・本件補正前の特許請求の範囲の請求項2の記載は,前記したとおりであって,同記載において,押しピンについては,「…構造である押しピンを内部に収容しうる…」,「…により押しピンを押圧する…」と記載されているにとどまることから,本件審決が判断し,また,被告も主張するように,押しピンは,本願発明2における発明の対象ではなく,発明の対象であるカートリッシが備える構\成の1つとして記載されているにすぎないと理解する余地もないわけではない。他方,請求項2の記載において,押しピンは「筒状部と,筒状部に収容された弾性部材及びピン部とを有し,非使用時にピン部は弾性部材によって筒状部内に収容され,使用時に筒状部の上部に設けられた押入部材が挿入される孔部を通じて押入部材により押圧され,下部に設けられた孔部からピン部先端が外部に突出する構造である」ことが特定されており,本願発明2は,このような押しピンと,「筒状部の上部に設けられた押入部材が挿入される孔部を通じて押入部材により押しピンを押圧する押圧部」を有するものであることによって特定されるカートリッジとによって構\成されるものであると理解する余地もないわけではない。そして,そのような理解を前提にすると,本件補正前の請求項2は,これとは反対に,押しピンを発明の対象とせず,その対象であることが記載上明らかなカートリッジの備える構成の1つとして記載されているにすぎないと理解されなくもない記載となっていたということができるのであって,その意味で,当該記載は法17条の2第4項にいう「明りようでない記載」に当たるといわなければならない。・・・これに対し,補正事項2は,本件補正前の請求項2における「押しピンを内部に収納しうる空洞部と」及び「押しピンのカートリッジ。」の記載を,補正後の請求項1においては,「押しピンと,該押しピンを内部に…収納しうる空洞部と」及び「押しピンおよびそのカートリッジ。」の記載に改めるものであり,その記載内容から,本願発明2が「カートリッジ」だけでなく,「押しピン」も発明の対象とするものであることを明示しようとするものであることが明らかである。そして,上記(ア)のとおり,本件補正前の請求項2の記載からは,「押しピン」と「カートリッジ」と,その両者を本願発明2の対象とするものであったと解することが可能であったところ,その反面,「押しピン」を当該発明の対象とするものではなく,「カートリッジ」のみを対象とするものであったと解する余地もないわけではなく,明りょうでない記載といわざるを得ないものであったのであるから,補正事項2は正にその明りょうでない記載を釈明するものであるということができる。実際,補正事項2による補正前後の記載を比較してみれば,本件補正前の請求項2のように,本願発明2の対象である「押しピン」がもう1つの発明の対象である「カートリッジ」が備える構\成の1つにとどまるかのように記載されていることを前提として,両者の構造を認識し,これらを対比して両者が発明の対象であると理解する場合に比較して,本件補正後の請求項2の記載のように「押しピン」と「カートリッジ」とを並列的に記載したほうが,その趣旨がより明りょうとなっているということができる。この点について,被告は,本件審決の判断と同様に,本件補正前の請求項2に係る発明が「カートリッジ」の発明であって,「押しピン」の発明ではないなどとるる主張するが,本件補正前の請求項2が「カートリッジ」のみを対象とする発明として明りょうに記載されていた場合であれば格別,既に説示したとおり,当該記載が「明りようでない記載」であった以上,被告の主張を採用することはできない。・・・法17条の2第4項4号は,「明りようでない記載の釈明」として補正が許されるのは,「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る」と規定するところ,被告は,本件においては,「押しピンのカートリッジ」が「明りようでない」との拒絶の理由は示されていないから,補正事項2は「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするもの」ではないと主張するので,この点についても検討する。甲11によると,平成18年3月22日付け拒絶査定には,本件特許出願は平成17年8月22日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶されるべきことが記載されていることが認められ,甲7によると,平成17年8月22日付け拒絶理由通知書には,拒絶の理由として,請求項1及び同2に係る発明(本願発明1及び同2)が特許法29条1項3号又は同条2項の規定により特許を受けることができない旨記載されるとともに,請求項2に係る発明(本願発明2)については,引用発明1の画鋲刺入装置において,引用発明2の画鋲を収容することによって,本願発明2のように構\成することは容易である旨記載されていることが認められる。これに対し,補正事項2は,前記認定の経緯からして,本願発明2が「押しピン」と「カートリッジ」と,その両者を当該発明の対象とするものであることを明示することにより,上記拒絶理由通知書において指摘された本願発明2に係る拒絶の理由を回避しようとするものであると認められるから,補正事項2が「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするもの」であるということが妨げられるものではなく,被告の主張を採用することはできない。・・・原告は,補正事項3に係る補正が本願発明2の「押しピン」を限定する補正であるとして,この補正が法17条の2第4項2号にいう「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではないとした本件審決の判断に誤りがあると主張するので,以下,検討する。・・・これに対し,補正事項3は,補正前の請求項2においては,「押しピン」の構造が「使用時に…下部に設けられた孔部からピン部先端が外部に突出する」と記載されていたところ,補正後の請求項1においては,その構\造に「使用しないときには手でどの部分に触れてもピン部が動くことはなく,」という限定を付加して記載されているのであって,その記載内容を比較すると,本願発明2における「押しピン」の構造に上記限定を付加するものであると認められる。そして,本願発明2の「押しピン」が特定の構\造を有するものであることは前記で説示したところであるから,このような「押しピン」に上記限定が加えられることにより,使用しないときに手でいずれかの部分を触れればピン部が動く可能性があった本件補正前の「押しピン」が,本件補正後においては「使用しないときには手でどの部分に触れてもピン部が動くことはな(い)」ものに限定されたということができ,本願発明2においては,「押しピン」も当該発明の対象となるものであることも前記ア(ア)で説示したとおりであるから,その構成が限定されることによって,特許請求の範囲は減縮されるものと認めることができる。この点について,被告は,本願明細書の発明の詳細な説明に「使用しない時には…手にとってどの部分に触れてもピン部3が動くことはない」(段落【0006】)との記載があることから,本件補正前の請求項2に記載されていた「押しピン」はそのようなもの(補正事項3による補正後のもの)と理解されるから,補正事項3は本願発明2の「押しピン」を具体的に限定するものではないと主張するが,本件補正前の請求項2には,「押しピン」が「使用しないときには手でどの部分に触れてもピン部が動くことはな(い)」ものであることを示す記載は存在しないから,被告の主張は失当である。なお,被告は,本願発明2の対象は「カートリッジ」のみであって,「押しピン」それ自体は本願発明2の対象ではないから,「押しピン」の構\造に上記制限が加えられたとしても,特許請求の範囲の減縮にはならないとも主張するが,「押しピン」も「カートリッジ」と並んで本願発明2の対象となることは前記アで説示したとおりであるから,この点に関する被告の主張は,その前提において,失当といわなければならない。」

◆平成20(行ケ)10394 特許権 行政訴訟 平成21年05月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10121 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年04月27日 知的財産高等裁判所

 審決の論理付けが十分かつ合理的な説明を欠くとして、取り消されました。
 「引用発明と引用発明2とを対比すると,引用発明では,「該レバーの回動により回動する軸体の回動操作により各分岐流路への水路の切り換えを行う構成を有する切換弁」とされているとおり,その操作力の方向は,レバーを回すこと,すなわち回転(回動)であるのに対し,引用発明2では,「押し部11を押す」とされているとおり,操作力の方向が押し部を押すこと,すなわち直動であるとの点で,操作力の方向において相違する。そして,本願発明は,操作力の方向については,「該切換レバーと連動して回動する回転軸の回動操作により各原水吐出口または原水送水口への水路の切り換えを行う」とされているとおり,切換レバーを回動させるものであって,引用発明と共通する。さらに,本願発明では「取っ手部分を備えた切換レバー」と「該切換レバーによる回動伝達部にラチェット機構\とを有する」構成の両者を採用することにより,「取っ手部分」を小さい力で押圧しても,ラチェット機構\に大きなトルクを作用させることが可能になる等の効果を奏することが説明されている(もっとも,当裁判所は,そのような効果が格別のものであると解するものではない。)。そうすると,引用発明は,レバーと回転軸との関係においては,「回動−回動変換」方式を採用している点において,本願発明と共通するのに対して,引用発明2は,押し部と回転軸中心との関係において「直動−回動変換」方式を採用しており,押し部11を押す直動の操作力を回転板9の回動に変換するとの技術的特徴を備えている点において,引用発明及び本願発明と相違する。引用発明2の技術的特徴及び相違点を考慮するならば,引用発明と引用発明2とを組み合わせて本願発明の構\成に到達すること,すなわち,引用発明2のラチェット歯94を,引用発明の回動伝達部に適用することにより,本願発明の構成である「該切換レバーによる回動伝達部にラチェット機構\を有する」構成に至ることが容易であるとはいえない。・・・・特許法157条2項4号が,審決に理由を付することを規定した趣旨は,審決が慎重かつ公正妥当にされることを担保し,不服申\立てをするか否かの判断に資するとの目的に由来するものである。特に,審決が,当該発明の構成に至ることが容易に想到し得たとの判断をする場合においては,そのような判断をするに至った論理過程の中に,無意識的に,事後分析的な判断,証拠や論理に基づかない判断等が入り込む危険性が有り得るため,そのような判断を回避することが必要となる(知財高等裁判所平成20年(行ケ)第10261号審決取消請求事件・平成21年3月25日判決参照)。そのような点を総合考慮すると,被告が,本件訴訟において,引用発明と引用発明2を組み合わせて,本願発明の相違点イに係る構成に達したとの理由を示して本願発明が容易想到であるとの結論を導いた審決の判断が正当である理由について,主張した前記の内容は,審決のした結論に至る論理を差し替えるものであるか,又は,新たに論理構\成を追加するものと評価できるから,採用することはできない。以上のとおりであるから,レバーを回動させる操作力を,被回動部材に伝達する回動伝達部に,ラチェット歯を有するラチェット機構として備える構\成が,本願出願前に公知又は周知であるか否か,引用発明に,ラチェットに係る公知又は周知の技術を適用することにより本願発明の構成に至ることが容易であるか否かの争点については,審判手続において,出願人である原告に対して,本願発明の容易想到性の有無に関する意見を述べる機会等を付与した上で,審決において,改めて判断するのが相当である。」

◆平成20(行ケ)10121 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年04月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10119 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年04月28日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとされた審決が取り消されました。 
  「そこで,上記観点に立って刊行物1発明について検討すると,前記(3)に認定した明細書の【図10】及び【図12】の記載から明らかなとおり,刊行物1発明においてはシステムバス42に一時的記憶装置であるRAM23が接続されているから,通信制御装置39において受信されたファクシミリデータ(符号化された画像情報)はRAM23に一旦格納され,その後RAM23から読み出されてシステムバス42を介して符号化復号化装置65へ伝送され,そこで直ちに復号化された後,内部バス69を介してVRAM63へ伝送され,復号化された画像データがVRAM63に蓄積されると解するのが自然であり,符号化復号化装置65を経由しているにもかかわらず,これを復号化することなく符号化したままでVRAM63に記憶させる必然性を認めることはできないというべきである。また,このようなデータの流れは,符号化されたデータを復号化する処理であり,かつ,当該処理作業に当たって符号化されたデータをメモリ(RAM23)に記憶した上で復号化するものである点で,前記乙1〜乙3公報の開示と矛盾するものでもない。・・・以上によれば,刊行物1発明のVRAM63は符号化した画像情報を記憶するものではないから,審決が「符号化されている画像情報は,復号化する前に,ワークメモリとしてのVRAM63に一時記憶されるものと理解される」(審決6頁)と認定したことは誤りであり,したがって,VRAM63は,「上記画像を表わすディジタル・データと上記グラフィック画像を表\わすディジタル・データの両方を記憶する単一のメモリ」といえる限りにおいて本願発明と相違しないとした審決の一致点の認定も誤りであり,その誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。」

◆平成20(行ケ)10119 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年04月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10252 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年03月26日 知的財産高等裁判所

  用語「生産,稼働情報」がスケジュール管理情報を意味するが争われました。裁判所は、リパーゼ判決に言及することなく、下記のように判断しました。
 「上記アのとおり,特許請求の範囲の記載によれば,本願発明の「生産,稼働 情報」はスケジュール管理情報を意味するものとは特定されていない。また,「生産,稼働情報」との用語が一義的にスケジュール管理情報を意味するものといえないことも明らかである。次に,上記イの本願明細書の記載を検討するに,発明の実施形態に関する上記イ(イ)及び(ウ)の記載からは,生産,稼働情報がスケジュール管理情報を意味するものと解釈することは困難であり,また,実施例に関する上記イ(エ)の記載によっても,生産,稼働情報に,受注月日又は登録月日,納入日,折丁の完成日(折丁入日),作業開始(予定)時間及び作業終了(予\定)時間等の作業スケジュールに関連した情報が含まれるとはいえるものの,客先名,製造する本のサイズ(A4判,B5判など,製造部数(納入部数,丁合) ) 機3の使用台数,見返りの有無等の作業スケジュールに関連するとはいえない情報も含まれているのであるから,本願発明の「生産,稼働情報」がスケジュール管理情報を意味するものと限定して解釈することは困難である。さらに,本願発明の解決課題や効果に関する上記イ(ア)及び(オ)の記載によっても,本願発明が,遠隔のセンタ通信端末器側からローカル製本機の運転制御を可能とし,センタ通信端末器側においてローカル製本機の集中管理ができるようにする発明であることは理解できるものの,このような抽象的な作用効果の記載から,本願発明の「生産,稼働情報」がスケジュール管理情報に限定されるものと理解し得る訳ではない。エ以上のとおり,本願発明における「生産,稼働情報」は作業スケジュール管理情報を意味するものであるとする原告ら主張は採用することができないから,「生産,稼働情報」は,用語の一般的な意味に解するほかない。」

◆平成20(行ケ)10252 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年03月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10300 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年04月15日 知的財産高等裁判所

   進歩性なしとした審決が取り消されました。
  「前記(3)ウのとおり,従来から使用されているホースの内管を構成するエラストマー組成物の135℃における50%モジュラスは,約0.98〜2.35MPa程度であり,甲4,甲5記載の技術は,加硫時に発生する補強糸の棚落ちという特定の課題を解消するために,135℃における50%モジュラスが約1.96〜3.92MPaという値のエラストマー組成物を採用したものである。そうすると,繊維補強層を有するホースの内管を構\成するエラストマー組成物を,100℃における50%モジュラスが3.0MPa程度以上のものとすることは,100℃と135℃の温度の差を考慮に入れても,繊維補強層を有するホースに関する技術分野において,普通に採用される範囲のものであるということはできない。しかも,引用発明で繊維補強層に用いられているヘテロ環含有芳香族ポリマーからなる繊維は,前記(2)イのとおり,耐熱性,難燃性であり,その分解温度は600℃以上であり,伸度も3.0%以下である。そうであるとすると,ヘテロ環含有芳香族ポリマーからなる繊維は,600℃を越えて分解温度に達するまでほとんどその形状を維持し強度を保つことになり,100℃程度の温度条件では,ホースの補強に関する性能に特段の影響は生じないと解されるから,引用発明において,ホースの内管を構\成するエラストマー組成物の100℃における50%モジュラスを,敢えて普通に採用される値より大きい3.0MPa程度以上とする必要性はなく,そのようにする契機があるとはいえない。そうすると,繊維補強層を有するホースの内管を構成するエラストマー組成物について,100℃における50%モジュラスを3.0MPa程度以上とすることは,普通に採用される範囲であるとはいえず,更にこれを引用発明に適用して相違点4に係る構\成とすることが,当業者にとって容易想到であるとはいえない。」

◆平成20(行ケ)10300 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年04月15日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10205 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月12日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした拒絶審決が取り消されました。
 「ところで,引用発明における上記構成は,引用文献2(甲2)の発明の詳細な説明において「極細炭素フィブリル中の凝集体の最長径を0.25mm以下とし,且つ,径が0.10mm〜0.25mmである凝集体の占める割合(含有率)が50重量%以上である…」(4頁左上欄6行〜9行)と記載されているように,「最長径が0.25mm以下」という要件と「径が0.10〜0.25mmの凝集体を50重量%以上含有する」という要件の双方を満たさなければならないものとされている。そして,このような要件が設けられた理由については,・・・と記載されている。
  エ そうすると,引用発明が採用した上記二つの要件は,凝集体の径が0.25mmを超える大きなものを排除するのみならず,径が0.1mmに満たない小さな凝集体が一定以上の割合(50重量%以上)を占めることをも,十分な導電性及び機械的強度を確保するという観点から排除しているものということができる。したがって,引用文献2(甲2)には,炭素フィブリルの凝集体の実質的全部について径の大きさを0.10mm(100μm)よりも小さいものとすることの動機付けは存在しない。そして,引用発明において上記のような要件が定められていることが本願発明を想到する阻害要因になるとまでは直ちにいうことができないとしても,引用文献2(甲2)に接した当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が本願発明の構\成に至るためには,引用発明に定めた要件に反して,炭素フィブリルの凝集体の実質的全部についての径の大きさを0.10mm(100μm)よりも小さくすることの動機付けが必要であり,少なくとも他の公知文献等において,炭素フィブリルの凝集体の実質的全部について径の大きさを0.10mm(100μm)よりも小さくした場合に十分な導電性と機械的強度が得られることの教示ないし示唆が存在することが必要である。」

◆平成20(行ケ)10205 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月12日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10225 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月26日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした無効審決を維持されました。
  「本件発明1と甲1号証第1発明との相違点1は,本件発明1の小型電子画像装置4は,テレビ画像用でスピーカーが一体若しくは別体で近設され,前面に面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネル3を有しているのに対し,甲1号証第1発明はそのような構\成を有していないというものである。b これに対し甲1文献の上記記載によれば,甲1号証第1発明の電子画像装置におけるディスプレイ16は,望ましくは液晶ディスプレイとされ,そこには当該商品の単価や単位量当たりの値段に関する値段付け情報18が表示されるほか,「SALE(セール)」等の代替情報20を表\示することができるとされているが,その表示方式や代替情報として表\示される内容は特定の方式・事項に限定されていない。もっとも,甲1号証第1発明の目的が主として商品陳列棚における値段付け情報の電子的表示にあることに照らせば,使用される電子画像装置は値段付け情報を表\示するに適したものでなければならない。そして,小売店等の商品陳列棚における値段付け情報の表示は,顧客が当該商品の単価や単位量当たりの値段を即時かつ明確に知ることのできるものでなければならず,時間の流れに応じて映像が刻々変化するテレビ画像をあえて値段付け情報を表\示する方法として選択することは想定し難いものである。したがって,甲1号証第1発明の電子画像装置としてテレビ画像用の小型電子画像装置を採用する動機付けは甲1文献中には存在しないというべきである。c そこで,甲3〜5の各文献から,本件発明1の構成に至ることが当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)に容易であるかについて検討する。・・・(b) 以上によれば,本件特許の出願日(平成5年11月10日)の時点においては,液晶ディスプレイの性能は向上し,様々な分野・用途において広く使用されていたことが認められ,このような液晶ディスプレイを備えたテレビ画像用の小型電子画像装置を商品陳列棚に取り付けることに特段の技術的困難は存在しなかったということができる。そうすると,店頭等での広告表\示に関し,より高い広告効果を求めて,展示商品に最も近い場所である商品陳列棚に液晶カラー画像表示パネルを有するテレビ画像用の小型電子画像装置を取り付ける構\成とすることは,当業者が容易になしうるものというべきである。f したがって,本件発明1と甲1号証第1発明との相違点1について容易想到であるとした審決の判断に誤りはない。」

◆平成20(行ケ)10225 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10261 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月25日 知的財産高等裁判所

  引用文献に記載された事項の認定誤りを理由として、拒絶審決が取り消されました。
  「上記(A)ないし(D)には,引用例2は,専ら「感染部位」を「気道下部」とする疾患を対象とした治療方法が開示され,また,上記(E)ないし(G)には,抗炎症剤及び抗感染剤が感染部位である「気道下部」に直接的に投与されることが,好ましい治療態様であることが開示されている。そうすると,上記(G)「好ましい態様においては,上記の抗炎症剤及び上記の抗感染剤は,上記宿主の気道下部に直接的に投与される。上記の抗炎症剤及び/又は上記の抗感染剤は,鼻の中に投与されることができる。上記の抗炎症剤及び/又は上記の抗感染剤は,エアロゾル粒子の形態で鼻の中に投与されることができる。」における「鼻の中に投与されることができる。」との記載部分は,エアロゾル粒子を,抗炎症剤及び/又は抗感染剤を感染部位である「気道下部」に直接的に投与するために,通過経路の入り口に当たる鼻孔から「鼻の中」に向けて投与されることができるという意味に理解すべきであり,鼻自体が感染部位であることを前提として,鼻を治療する目的等で,鼻に抗炎症剤及び/又は抗感染剤を投与するという意味に理解することはできない。したがって,「引用例2には,・・・感染剤を・・・感染部位である鼻に投与できることが記載されている(摘記事項(G))。」とした審決の前記認定は誤りである。」

◆平成20(行ケ)10261 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10153 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月25日 知的財産高等裁判所

  認定するための証拠が不十分であるとして、審決を取り消しました。
「かえって,刊行物1(甲1)の「必要であれば,図2に示すように,シートの長手方向にも1本または2本以上の切断用のミシン目(2B)を設けることができる。」(段落【0008】)との記載に照らすならば,「エァセルラー緩衝シートのような積層構造体においても延伸された方向へ引き裂かれる特性があること」は何ら意識されていないことがうかがわれ,刊行物1に係る特許出願がされた当時(平成9年5月7日),「従来のエァセルラー緩衝シートは,長手方向(巻付け方向)へは比較的に真っ直ぐに引き裂くことができた」ことや「エァセルラー緩衝シートのような積層構\造体においても延伸された方向へ引き裂かれる特性があること」は,当業者にとって,周知の知見ではなかったことが推認される。そして,本件記録を検討しても,刊行物1に係る特許出願がされた後,本件特許が出願されるまでの間に,上記の各知見が周知となったことをうかがわせる証拠は見当たらず,その他,本件特許の出願当時(平成14年4月18日),「エァセルラー緩衝シートのような積層構造体においても延伸された方向へ引き裂かれる特性があることがよく知られていた」との事実を認めるに足りる証拠は,これを見いだすことができない。・・・上記検討したところによれば,本件審決の事実認定(エ)のうち,「エァセルラー緩衝シートのような積層構造体においても延伸された方向へ引き裂かれる特性があることがよく知られていた」との点は,証拠に基づかないものであって,誤りというべきである。」

◆平成20(行ケ)10153 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10305 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月25日 知的財産高等裁判所

  進歩性なしとした無効審決を取り消しました。
   「引用発明は,シール帯域内に合成樹脂溜まり部を設けて,熱融着に寄与するポリエチレン樹脂の量を確保することにより,「接合強度を維持」するようにしたものであるから,単に,「溝を設けた部分に形成される合成樹脂溜まり部を非溶着の熱シールされない部分とする」ことを開示する周知例(甲2,3)を指摘することによって,その周知の技術を適用して,引用発明とは異なる解決課題と解決手段を示した本願発明の構成に至ることが容易であるということはできない。引用発明は,接合強度維持を目的とした技術であるのに対し,周知技術は,接合強度維持に寄与することとは関連しない技術であるから,本願発明と互いに課題の異なる引用発明に周知技術を適用することによって「本願発明の構\成に達することが容易であった」という立証命題を論理的に証明できたと判断することはできない。」

◆平成20(行ケ)10305 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10205 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月12日 知的財産高等裁判所 

  進歩性なしとした拒絶審決を取り消しました。
 「引用文献1(甲1)には,炭素フィブリルの凝集体の大きさを0.10mm(100μm)よりも小さくすることについてまで示唆するような記載はなく,むしろ,凝集体をそのまま用いると分散性等に問題が生じるとしていることや,成形物の外観を損なわないことを目的の一つとしていることからすると,凝集体をそのまま用いずにある程度分解してから用いることを示唆するにとどまるものと認められる。したがって,引用文献1(甲1)には本願発明に至るために必要な教示ないし示唆は存在しないというべきである。
・・・(ウ) そうすると,引用文献3(甲3)には,一般的に充填剤をマトリックス材料に分散させて複合体を製造する方法に関して,高い分散性を得るために凝集物粒径を小さくすることが記載されているとしても,炭素フィブリルを充填剤として導電性を有する複合体を製造する場合について,十分な導電性と機械的強度が得られる炭素フィブリルの凝集体の大きさについて具体的な数値が示されているとはいえないものである。したがって,引用文献3(甲3)にも,引用発明における炭素フィブリルの凝集体の径を100μmよりも小さくすることの教示ないし示唆が存在するとはいえない。
 (4) 以上によれば,本願発明は,引用文献1〜3に記載された発明に基づいては当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず,審決は,容易想到性についての判断を誤ったものである。」

◆平成20(行ケ)10205 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月12日 知的財産高等裁判所 

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◆平成20(行ケ)10064 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月11日 知的財産高等裁判所

  進歩性なしとした無効審決を取り消しました。
  「以上のとおり,本件発明は,内側の液体用供給路を形成する供給管及びその先端部に設けられた液体供給孔が主軸と同体に回転するように構成し,これによって液体供給孔から供給された液体が遠心力で外方に噴出して微細化することとなり,さらに,気体がこの液体供給孔の外周囲に設けられた狭窄部を経て噴出されることにより,液体と気体が激しく攪拌混合してミストを発生するようにしたもので,このようにして発生したミストは,工具ホルダ及び工具内の通路を分離することなく通過して,被加工物の比較的深い箇所にも供給されるものである。そして,その結果,ミスト発生装置の設置箇所は,主軸の先端部内又は工具ホルダ内とすることが可能\となっている。これに対し,甲2発明は,本件発明と異なり,パイプ(19)をスピンドルと同体にして回転させるものではなく,また,液体供給孔の外周に狭窄部を設けて空気を噴出させて積極的に液体と気体が激しく攪拌混合してミストを発生するようにするものではなく,噴霧を切削領域に放出させるためには,パイプ(19)は,ドリル工具又はフライス工具(10)の出口(31)のすぐ上流側まで延びて配置する必要があるものである。
 エ そうすると,本件発明と甲2発明とは,同じ工作機械の主軸装置に関する発明において,主軸装置側にミスト発生装置を設け,そのミスト発生装置は,気体と液体を同時かつ別々に供給するための2系統の供給路を備え,2系統の供給路のうち内側に液体用供給路を形成する供給管を設けて切削液を液体供給孔から供給し,気体をこの液体供給孔の外周囲に設けられた供給管から供給して,液体と気体を混合してミストを発生する構成とし,発生したミストは,工具内通路を通じて切刃近傍から噴出され,被加工物に供給されるようにした点で共通するものであるが,本件発明は,混合したミストが分散しないことを解決課題としているという点で,甲2発明とは異なる課題を有するものである。そして,?@本件発明における上記課題を解決するため,本件発明1のミスト発生装置の構成は,甲2発明のミスト発生装置の構\成とは上記のとおりの相違点を有することになり,その結果,?Aミスト発生装置の設置位置につき,甲2発明は工具の出口のすぐ上流側であるのに対し,本件発明は主軸の先端部又は工具ホルダ内とすることができるとの相違点を生じさせ,さらに,?Bミスト発生位置からミストを供給する加工部までの噴霧状態を保つ必要がある距離も,両者を比較すると,本件発明は長い距離であるのに対し,甲2発明は短い距離であるとの相違点を生じさせたものである。このように,本件発明は,本件発明が有し,甲2発明が有しない上記課題を解決するために,ミストを発生する機構,ミスト発生装置の設置箇所及び噴霧状態を保つ距離において異なることとなったものであって,これらについては,甲2発明から容易に想到し得るものではないと認められる。
 したがって,審決が,甲2発明の構成につき,「ミスト発生のための機構\が,工具の中央ボア孔(22)と,パイプ(19)からなっているのであるから,工具そのものが,その中央ボア孔がパイプを通し,更に必要な量の圧縮空気を流すことのできるというような,ミスト発生のための専用の形状を採らざるを得ないことは明らかである。」(20頁11〜15行)としながら,「しかしながら,切削液通路を備えただけの通常の形状の工具を用いるというような要求は一般的なものであるから,この要求に応えるならば,ミスト発生のための機構を,工具内に設けることはできなくなり,工具の手前,つまり『主軸の先端部或いは工具ホルダ内』に設けざるを得ないのは,当然である。」(20頁16〜20行)として,「相違点1に係る本件発明の発明特定事項は,当業者が適宜採用できた設計的事項である。」(20頁21,22行)としたことは是認することができない。」

◆平成20(行ケ)10064 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月11日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10128 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月26日 知的財産高等裁判所

 無効であるとした審決が、本件発明の認定誤りを理由として取り消されました。
 「すなわち,甲第7号証の前記(1)アの記載,特に段落【0016】及び【0025】の記載によれば,甲第7号証の給水ユニット配管10においては,各分岐主管14の長さは湯沸器22,浴室24,台所26等との接合部分Jでの取合誤差を許容するため,最短の配管距離よりも余裕を持った長さであるとされているところ,審決の上記認定を前提とすると,図1(A)において,分岐主管14は湯沸器22,浴室24,台所26等の各給排水設備機器の接合部分Jと離れてしまい,接合部分Jでの取合誤差の調整は,分岐主管14ではなく,分岐主管14から継手管18を介して各給排水設備機器に接続される枝管16(別紙訂正図の赤色配管部分)によって行われることになるものと解されるが,それでは,分岐主管14の長さに余裕を持たせることにより接合部分Jでの取合誤差を調整するとした明細書の記載と整合しないこととなるし,図1(A)の符号の不一致も多くなり,図面との整合性も欠くこととなる。したがって,審決の上記認定を採用することはできない。・・・・・特許法29条の2を適用するに当たり,「他の出願」の発明を認定する場合には,当該「他の出願」に係る当初明細書及び図面の記載を基に,そこに記載された発明を認定するのであり,その際に参酌できるのは「他の出願」の出願時の技術常識である。しかるところ,本件訂正後発明及び甲第7号証発明が属する建築物等の給排水設備機器のための配管に関する技術分野においては,本件出願当時も甲第7号証発明の出願当時も,当業者は「主管」及び「枝管」の用語で表される配管を区別して理解していたものと認められる(甲1,3,7,12)から,本件訂正後発明と甲第7号証発明との同一性を判断するに当たっても,それぞれの「主管」同士及び「枝管」同士を対応させた上で,発明の同一性を判断するのが相当である。したがって,被告の上記主張は,甲第7号証発明の分岐主管14が本件訂正後発明の枝管と対応するとした点において既に失当であるというべきである。」

◆平成20(行ケ)10128 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月26日 知的財産高等裁判所

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 進歩性なしとした審決が取り消されました。
 「前記(1)イ及び(2)イによれば,本願補正発明の「試験の監督データ」と引用発明の「異常事態報告記録」に係るデータとは,試験中の機器のトラブル等の問題に関連する情報を対象とし,当該情報が試験の結果に影響し得るとの点では,共通する部分を有するといえなくもない・・・しかしながら,本願補正発明の「試験の監督データ」は,当該試験の有効・無効の完全な判定を実現するために必要とされる一切のデータを意味するところ,第一次的には,狭義の試験監督のためのデータであり,その中心となるものは,ビデオカメラにより試験中継続して記録されるオーディオ・ビジュアルデータである。これに対し,引用発明においては試験の有効・無効の完全な判定という目的を欠くがゆえに,引用発明の異常事態報告記録データ等の対象に,狭義の試験監督に関連する情報を含んでいないのであるから,両者は,質的に相違するものといわざるを得ず,したがって,引用発明の「テスト状況記録データ」(異常事態報告記録データ等)が本願補正発明の「試験の監督データ」の一部にたまたま含まれる関係にあるからといって,両者が一致するものと認めることはできないというべきである。
 イ 被告の主張は,要するに,本願補正発明の「試験の監督データ」の内容に限定はなく,試験の有効性の判断に供されるデータがすべて含まれるとした上,引用発明の異常事態報告記録データ等にも試験の有効性の判断に供されるデータが含まれるのであるから,後者は前者に相当するというものである。しかしながら,そもそも,引用発明と対比した場合の本願補正発明の主たる新規性は,試験会場に管理者の配置を不要にしながら,試験の有効・無効の判定までを可能にするシステムを構\築するという点にあり,本願補正発明において,上記オーディオ・ビジュアルデータを中心とした「試験の監督データ」を記録するなどの構成が,上記システムを実現するに当たり必須のものであることは明らかである。このように,本願補正発明の「試験の監督データ」に係る構\成は,本願補正発明の新規性の本質部分を成すものであるところ,本願補正発明の「試験の監督データ」と引用発明の「テスト状況記録データ」(異常事態報告記録データ等)との対比判断に当たり,本願補正発明の「試験の監督データ」の技術的意義が特許請求の範囲の記載から一義的に明確に理解することができないものであるにもかかわらず,当該技術的意義を本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して具体的に明らかにすることなく,特許請求の範囲の記載から形式的に導き出される「試験の有効性の判断に供されるすべてのデータ」との包括的な概念を用いることによって,両者の具体的な内容の相違,すなわち,狭義の試験監督に係るデータを含むか否かという重要な相違を捨象するのは,本願補正発明の新規性の本質を看過するものといわざるを得ない。したがって,被告の上記主張を採用することは到底できないというべきである。」

◆ 平成20(行ケ)10115 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月24日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10238 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月18日 知的財産高等裁判所

  進歩性違反の無効理由無しとした審決を、容易に想到できるとして取り消しました。
  「上記(2)の甲1の記載内容,殊に上記(2)オ「考察」欄及び図3等を参照すると,正常者群については,距離と面積が比例的な関係にあることが記載されていると認められる。そして,これは,数学的には,「L(距離)≒k(定数)×D(面積)」と表されることになるところ,「k≒L/D」であるから,すなわち,「距離と面積の比(L/D値)がほぼ一定」ということが,実質的に記載されていると認められる。また,上記(2)の甲1の記載内容,殊に上記(2)オ「考察」欄及び図6等を参照すると,めまい患者群については,距離と面積が必ずしも比例的な関係にないことが記載されていると認められ,すなわち,「距離と面積の比(L/D値)が一定でない」ということが,実質的に記載されていると認められる。そして,甲1には,距離と面積との関係を診断の指標として用いることまでは記載されていないが,上記のとおり,正常者群とめまい患者群とでは,距離と面積についての比例的な違いがあるという情報が記載されている場合,この記載に基づいて,この「L/D値」を診断に使うことに想到することは,当業者においては容易であると認めることができる。なお,上記(2)カのとおり,甲1の「まとめ」欄には,「4.距離と面積の指標は互いに独立したものであると考えられるので,重心動揺検査の評価には両者を併記する必要があると思われた。」との記載があるが,これは,距離と面積の2つの指標を用いることにし,2つの指標が互いに独立していることから,片方だけではなく,両方の指標を併記する必要があることを記載したものであって,2つの指標から求めた「L/D値」については,直接言及するものではない。しかしながら,このような直接の言及がないとしても,上記のとおり,甲1に接した当業者であれば,甲1の記載に基づき,算出した軌跡長L,動揺面積Dから,「L/D値」を算出する構成を付加することは,容易に想到できることと認められる。」

◆平成20(行ケ)10238 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月18日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10209 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月18日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
 「そうすると,前記(2)の甲17,甲18に記載された技術は,マスク全体の外周が固定されているもののマスクの内方(中心方向)は固定されておらず,外周からマスクを引っ張ることによって,マスクを緊張させ撓み等を除去し得ることを前提とするものであるところ,これを引用発明に適用しようとしても,引用発明においては,金属薄膜がマスク基板の粗いマスクパターンに密着し固定されているため,外周から金属薄膜を引っ張ることによっては,直ちに金属薄膜を緊張させその撓み等を除去し得るとは認められず,金属薄膜に外周縁へ向かう均一な張力をかけることができるとは認められない。また,本願発明のマスク本体に相当する引用発明の金属薄膜は,マスク基板上に蒸着により成膜されるものであって,マスク基板上に蒸着(すなわち,一体化)する前においては,金属薄膜としての形態を有していないから,マスクを引っ張ることによる張力付与技術を,金属薄膜のみに適用することはできない。したがって,甲17,甲18に記載の張力付与技術を,引用発明に適用して,「マスク本体に外周縁に向う均一な張力をかけた状態で」一体化することは,容易になし得るということはできない。」

◆平成20(行ケ)10209 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月18日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10026 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月17日 知的財産高等裁判所

     進歩性なしとした審決が取り消されました。
    「ア 上記(1)によれば,相違点1に係る本願発明3の構成は,乗物の実際の前進加速により乗客が経験する加速度の感覚を強調するために,乗物を更に加速することに代えて,前進中の乗物に加速度感を生起させる動きを加え,それによるシミュレーション効果により擬似的に実際の加速以上の加速度感を乗客に体験させるとともに,安全性を十\分に確保するという点に技術的意義があるものと認められる。これに対し,上記(2)のとおり,刊行物記載発明は,カプセル内部のスクリーン上の映像に対応して座席等に動きを与え,乗客に映像上の出来事を擬似的に体感させるというものであり,同発明におけるシミュレーション効果は,乗物の実際の動きがもたらす乗客の感覚とは無関係である。また,引用刊行物には,設計技術上及び安全性の問題から乗物の急激な加・減速や急速度での急カーブの曲がりなどの実際の動きが制限されるという事情の下で,動的な乗物に臨場感や大きなスリルなどを求める乗客に対して急激な加速や減速,高速での急カーブの曲がりの感覚を提供するという本願発明3の課題についての記載も示唆もなく,シミュレーション効果の利用という点においては,引用刊行物が従来技術として記載している「従来のシミュレーション式遊戯装置」と同一の技術的思想であるといえる。したがって,刊行物記載発明は,動的な乗物においてシミュレーション効果を利用するという点では本願発明3と共通するものの,シミュレーション効果の利用状況についての着想及びそれにより実現される効果の点で本願発明3とは技術的思想を異にするものというべきであって,刊行物記載発明と本願発明3とでは,シミュレーションを利用することの技術的意義が相違するものと認められる。そして,本願発明3におけるシミュレーションの利用の技術的意義については,引用刊行物に記載も示唆も認め難いところ,本願発明3におけるシミュレーションの利用の点が,相違点1に係る構成に当たるから,結局,引用刊行物には,相違点1に係る構\成の技術的意義について,記載及び示唆があるものと認めることはできない。以上によれば,引用刊行物には,相違点1に係る本願発明3の構成を想到する契機ないしは動機付けとなる記載や示唆があるものと認めることはできない。・・・
  (エ) 上記(ア)ないし(ウ)によれば,乗物を実際には移動させることなく(上記(ア),(ウ)),あるいは乗物の実際の動きとは異なる態様で(上記(イ)),乗物を運転する際に感じる運転感覚や体感を擬似的に体験させるシミュレーション装置はよく知られた技術であると認められる。しかしながら,周知例甲2ないし5には,乗物が実際に前進加速している時に,乗客が経験する加速度感を更に強調するために,当該乗物に加速度感を生起させる実際の動きを加え,乗客の前進加速感を擬似的に強調し高めるシミュレーションを行うとの技術的事項が記載されているとは認められないし,これを示唆する記載も見い出すことがことができない。そうすると,周知例甲2ないし5によって,擬似的な前進加速感を乗客に与えるシミュレーションを行うことが周知技術であることは認められるものの,前記アに認定した本願発明3におけるシミュレーション利用の技術的意義についてまで周知であったと認めることはできず,また,これが当業者にとって技術常識であったことを認めるに足りる証拠もない。さらに,前記アに説示したところに照らせば,上記周知のシミュレーション技術は,本願発明3におけるシミュレーション利用の技術的意義を示唆するものとは認め難いから,相違点1に係る本願発明3の構成を示唆するものとも認められない。(オ) 以上のとおり,引用刊行物には,相違点1に係る本願発明3の構成を想到する契機ないしは動機付けとなる記載も示唆もないこと,また,周知例甲2ないし5によっては,単に擬似的な前進加速感を乗客に与えるシミュレーションを行うことが周知技術であったと認められるにすぎず,同シミュレーション技術は相違点1に係る構\成を示唆するものでもないこと等に照らすならば,刊行物記載発明において上記周知技術を考慮したとしても,当業者において,本願発明3におけるシミュレーション利用の技術的意義を容易に着想し,また,それによる効果を容易に想到し得たとは認められないから,当業者が相違点1に係る本願発明3の構成を容易に想到し得たとは認められない。」

◆平成20(行ケ)10026 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月17日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10154 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月04日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした無効審決が取り消されました。
 「以上の(1),(2)を踏まえて取消事由1(相違点Eの判断の誤り)の採否について検討するに,甲1発明の容器は,前記(2)イに説示したとおり,溶湯は受湯口から取鍋内に収納され,使用先の工場では,注湯口を開きフォークリフトにより取鍋を傾動して保持炉や鋳型等に注湯する方式の,いわゆる傾動式の取鍋であると認められるところ,この傾動式の取鍋から,これを,密閉された容器に溶融金属用の配管が設けられ加減圧用の配管が接続されるという構成(いわゆる加圧式)とすること自体は,甲10・・・において,加圧式の場合,注湯精度,溶湯品質等の点で傾動式よりも優れていることが記載されているから,当業者がこれを適用することは容易に想起できるものと認められる。しかし,このことは,当業者が甲1発明から出発してこれにいわゆる加圧式の容器を採用しようと考えた後は,加圧式の容器であれば性質上当然具備するはずの構\成のほかそのすべての個々の具体的構成は当然に適用できることを意味するものではない。そして,甲1発明の傾動式の容器であれば,その傾動式の容器であるという性質自体から,溶湯を出し入れするために注湯口及び受湯口が必要であることが導かれるが,加圧式の容器の場合は,一つの流路を通して溶湯の導入と導出とを行う注湯方式であり加減圧用の配管が容器に接続されていればよいのであるから,傾動式の容器で必要な受湯口及び受湯口小蓋は必須なものではない。したがって,甲1発明の傾動式の容器に接した当業者がこれを加圧式の取鍋にすることを考える際,あえて,必須なものではない受湯口及び受湯口小蓋を具備したままの構\造とするのであれば,そうした構造を採用する十\分な具体的理由が存する必要があるというべきである。」

関連判決はこちらです
    ◆平成20(行ケ)10155号
    ◆平成19(行ケ)10258号
     ◆平成20(行ケ)10154 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月04日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10176 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月29日 知的財産高等裁判所

 ゲーム装置(CS関連発明?)について、進歩性なしとした審決が取り消されました。 
  「審決は,引用発明の電子チップが本願発明のゲーム的メリットと共通する(実質的具備事項5)とした上で,引用発明と本願発明とが「電子データであるメリットをネットワークを介して端末装置に送信する送信手段」を有する点で一致すると認定している。しかしながら,上記ア及びイに認定説示したところによれば,本願発明は,ゲーム的メリットをネットワークを介して端末装置に送信するものであるのに対し,引用発明は,電子チップを端末装置に送信するものではないから,引用発明の電子チップが本願発明のゲーム的メリットと共通するかについても争いのあるところであるが,仮にこれが認められるとしても,引用発明が「電子データであるメリットをネットワークを介して端末装置に送信する送信手段」を有するとした審決の認定は誤りというべきである。(イ) この点について,被告は,引用発明においては,電子チップ情報をクライアント装置に送信して供給することにより,消費あるいはゲームの進行に従った電子チップ数の演算及び表示をクライアント装置に実施させ,ひいてはユーザが電子チップを消費し,あるいはゲームの進行に従って電子チップ数を変化させることを可能\としているから,電子チップ情報の供給は,実質的には,クライアント装置に対して利用可能な形態で電子チップを送信して供給するものであるということができると主張する。しかしながら,引用発明において,ユーザがクライアント装置を使用してその保有する電子チップに関する情報を確認できたり,電子チップを使用できたりしたとしても,そのような機能\を実現するための具体的構成は複数存在するのであって,引用発明と本願発明とでは同じ機能\を実現するための具体的な構成が異なるのであるから,単に実現される機能\が同一であるという理由から,両者の具体的な構成を同一視することはできないというべきである。したがって,被告の上記主張は採用することができない。」

◆平成20(行ケ)10176 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10386 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月29日 知的財産高等裁判所

 請求理由なしとした(進歩性)審決が取り消されました。 
 「このようにしてエアシリンダ13は,第2のアーム8が目標の設定位置P2に到達する以前から起動し始めるため,エアシリンダ13の順次プログラム上での実質的な作動時間は,第2のアーム8の移動完了後に起動する場合と比較して短縮している。」との記載に照らしてみれば,甲第7号証記載の動作制御装置は,第2のアームが移動中にエアシリンダの移動を開始することで作動時間を短縮するものであるが,最も作動時間が短縮されるのは,第3図に記載の円弧に沿って動作が完了する場合,すなわち,第2のアームの旋回運動が停止した時点でエアシリンダの下降動作が完了する場合であることはきわめて容易に理解し得るところである。(ウ) そうすると,甲第7号証に接した当業者であれば,ロボットにおいて同時に複数の動作を行うように動作制御する場合に,一方の動作の終了時点と他方の動作の終了時点が一致するように制御すれば,最も動作時間を短縮できることを容易に理解し得るものと認められるから,甲第7号証には,「ロボットにおいて同時に複数の動作を同時に行うように動作制御する場合に,一方の動作の終了時点において他方の動作を終了するように重ねて制御すれば,最も動作時間を短縮することができる」との技術事項が開示されているといえる。(エ) そして,前記ア(ア),(イ)の甲第3号証の記載事項及び当業者が技術常識から当然に認識し得た事項を考慮すれば,甲第3号証記載の考案に甲第7号証記載の上記(ウ)の技術事項を適用して,相違点10に係る本件考案の構成とすることは,当業者がきわめて容易に想到し得たことというべきである。」

◆平成19(行ケ)10386 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10258 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月28日 知的財産高等裁判所

   進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は「どのように組み合わせるのかについて、容易ではない」というものです。
  「加圧式の場合,注湯精度,溶湯品質等の点で傾動式よりも優れていることが記載されているから,当業者がこれを適用することは容易に想起できるものと認められる。しかし,このことは,当業者が甲2発明から出発してこれにいわゆる加圧式の容器を採用しようと考えた後は,加圧式の容器であれば性質上当然具備するはずの構成のほかそのすべての個々の具体的構\成は当然に適用できることを意味するものではない。そして,甲2発明の傾動式の容器であれば,その傾動式の容器であるという性質自体から,溶湯を出し入れするために注湯口及び受湯口が必要であることが導かれるが,本件発明1の加圧式の容器の場合は,一つの流路を通して溶湯の導入と導出とを行う注湯方式であり加減圧用の配管が容器に接続されていればよいのであるから,傾動式の容器で必要な受湯口及び受湯口小蓋は必須なものではない。したがって,甲2発明の傾動式の容器に接した当業者がこれを加圧式の取鍋にすることを考える際,あえて,必須なものではない受湯口及び受湯口小蓋を具備したままの構造とするのであれば,そうした構\造を採用する十分な具体的理由が存する必要がある。しかるに,上記(1)に記載したように,本件発明1における技術的課題は,密閉された容器に溶融金属用の配管が設けられ加減圧用の配管が接続されるという構成をとったとき,液滴が容器内で飛び散って内圧調整用の配管に付着し,これが度重なることで配管詰まりが発生する点にあるところ,このような課題を解決するために,容器の上面部に開閉可能\に設けられ,容器の内外を連通する内圧調整用の貫通孔が設けられたハッチを具備するという構成を採用し,この構\成により,ハッチを開けて加熱器を容器内に挿入して予熱をする際に,内圧調整用の貫通孔に対する金属の付着を確認することができ,内圧調整に用いるための配管や孔の詰まりを未然に防止できるという作用効果を有するようにしたものである。そうすると,本件発明1と上記(2)に記載したような甲2発明とを対比すると,甲2発明は取鍋を運搬車輌に搭載し公道を介して工場間で運搬するという技術的課題を有し,その課題解決手段としては,上記(2)ア(ウ)〜(キ)記載のような運搬用車輌に搭載し公道上を搬送されるに適した構成を採用しており,技術分野は同じくするものの,その技術的課題は,傾動式取鍋の安全な工場間運搬(甲2発明)と加圧式取鍋特有の内圧調整用配管の詰まりの防止(本件発明1)というように基本的に異なっており,その課題解決手段も,注湯口,受湯口の密閉手段や運搬用車両への係止手段が設けられた構\成(甲2発明)と「ハッチに容器の内外を連通し,容器内の加圧を行うための内圧調整用の貫通孔が設けられ」た構成(本件発明1の相違点B )と’ いうように異なっており,その機能や作用についても異なるものであるから,そのような甲2発明に接した当業者が,本件発明1の相違点B’の構\成を容易に想起することができたと認めることはできない。」

関連判決はこちらです
    ◆平成20(行ケ)10155号
    ◆平成20(行ケ)10154号
◆平成19(行ケ)10258 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10096 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月28日 知的財産高等裁判所

  進歩性なしとした審決を取り消しました。裁判所は、規範として「出願に係る発明の特徴点(先行技術と相違する構成)は,当該発明が目的とした課題を解決するためのものであるから,容易想到性の有無を客観的に判断するためには,当該発明の特徴点を的確に把握すること,すなわち,当該発明が目的とする課題を的確に把握することが必要不可欠である。そして,容易想到性の判断の過程においては,事後分析的かつ非論理的思考は排除されなければならないが,そのためには,当該発明が目的とする「課題」の把握に当たって,その中に無意識的に「解決手段」ないし「解決結果」の要素が入り込むことがないよう留意することが必要となる。さらに,当該発明が容易想到であると判断するためには,先行技術の内容の検討に当たっても,当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十\分ではなく,当該発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等が存在することが必要であるというべきであるのは当然である。」と述べてます。

 「(2) 上記の観点に立って,審決の判断の当否について検討する。・・・一方,前記1,(2)の引用例には,「フェノキシ樹脂は・・・エポキシ樹脂と構造が似ていることから相溶性が良く,また接着性も良好な特徴を有する」(甲4の段落【0007】)と記載されており,格別,相溶性や接着性に問題があるとの記載はない上,回路用接続部材用の樹脂組成物を調製する際に検討すべき考慮要素としては耐熱性,絶縁性,剛性,粘度等々の他の要素も存在するのであるから,相溶性及び接着性の更なる向上のみに着目してビスフェノールF型フェノキシ樹脂を用いることの示唆等がされていると認めることはできない。また,一般的に,ビスフェノールF型フェノキシ樹脂が本願出願時において既に知られた樹脂であるとしても(乙2,3),それが回路用接続部材の接続信頼性や補修性を向上させることまで知られていたものと認めるに足りる証拠もない。さらに,ビスフェノールF型フェノキシ樹脂は,ビスフェノールA型フェノキシ樹脂に比べてその耐熱性が低いという問題があること,・・・上記のビスフェノールF型フェノキシ樹脂の性質に照らすと,良好な耐熱性が求められる回路用接続部材に用いるフェノキシ樹脂として,格別の問題点が指摘されていないビスフェノールA型フェノキシ樹脂(PKHA)(甲4の段落【0022】)に代えて,耐熱性が劣るビスフェノールF型フェノキシ樹脂を用いることが,当業者には容易であったとはいえない。」

◆平成20(行ケ)10096 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10166 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月27日 知的財産高等裁判所

  本願発明の要旨認定誤りとして、拒絶審決が取り消されました。
  「以上の記載によれば,引用発明は,・・・これを攪拌・混合して粒状物を得るという方法を採用している。 そうすると,引用発明は,従来の湿式造粒法における欠点を克服し,多量の水分を含有させずに粒状物を製造するという点では本願発明と共通の目的を有するものの,その目的を達成するための手段として低融点物質を加熱して溶融させるという方法を採用している点で,本願発明とは異なる方法によるものである。したがって,引用発明における「粒状物の製造方法」が本願発明の「熱粘着式造粒方法」に相当するものとした審決の判断は誤りである。」

 なお、発明の要旨認定について、下記のような判断を述べています。
 「被告は,本願発明に関して特許請求の範囲の記載に何ら不明確な点はなく,発明の詳細な説明の記載を参酌すべき特段の事情も存在しないから,審決が本願発明の「熱粘着式造粒方法」は加熱して粒状物を製造する方法であるとした点に誤りはないと主張する。しかし,特段の事情が存在しない限り発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されないのは,あくまでも特許出願に係る発明の要旨の認定との関係においてであって,上記のように特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するに当たっては,特許出願に関する一件書類に含まれる発明の詳細な説明の記載や図面を参酌すべきことは当然であるから,被告の上記主張は採用することができない。」

◆平成20(行ケ)10166 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月27日 知的財産高等裁判所

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