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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

新規性・進歩性

平成27(行ケ)10018  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年12月17日  知的財産高等裁判所

 阻害要因有りとして、進歩性なしとした拒絶審決が取り消されました。
 周知例3及び4には,周知技術A,すなわち,端末装置の種類(通常画面 サイズも異なる)に対応する複数のスタイルシート(CSS)をあらかじめ用意 しておき,そのうちの1つを選択するようにすることが開示されているものと認 められる(甲4,甲5)。 したがって,周知技術Aは,周知性の有無はともかく,本願優先日当時におい て公知の技術であったことは明らかである。 そこで,以下では,引用発明に周知技術Aを適用することにつき,阻害要因の 存否を検討する。 イ(ア) 前記2(2)のとおり,従来,サーバ装置から提供されるコンテンツデー タは,端末装置の種類等の違いにかかわらず,同一の表示形式で提供されていた\nので,端末装置の画像解像度によっては,必ずしも提供されたコンテンツデータ を適切に表示することができないという問題があった。その対策として,様々な\n種類の端末装置ごとに別々のコンテンツデータを製作(制作)し,それらのコンテ ンツデータを端末装置の種類ごとに分けてサーバ装置に用意しておく方法等があっ たものの,そのような方法においては,サーバ装置側に,バッチファイル等の複数 の選択肢(例えば,バッチファイル等)をあらかじめ用意しておく必要があること から,端末装置の種類や機種の増加に伴って,サーバ装置側の製作負荷が膨大なも のとなり,コストも増大するという問題がある。 (イ) そこで,引用発明は,これらの問題をいずれも解決すること,すなわち, 端末装置の特性や能力等に応じて別々のコンテンツ及び選択肢を用意することなく,\nコンテンツのメンテナンスに要する負担やコスト等を軽減しつつ,端末装置に応じ た最適なコンテンツを提示することができる情報提示装置の提供を課題とした。 そして,引用発明は,前記課題解決手段として,ユーザに対して情報を提示す る端末装置の表示画面サイズを含む端末情報を取得し,コンテンツを構\成するペー ジに対応する構造化データに規定された素材データの提示形式を,前記端末情報に\n基づいて前記端末装置に合った提示形式に調整した上で,前記素材データをフォー マット変換してXHTML文書とCSSから成るページデータを生成するという構\n成を採用した。引用発明は,同構成を採用して,各コンテンツに係る素材データに\nつき,前記調整,変換を行い,最終的に各端末装置に合った提示形式を備えたペー ジデータにすることにより,各端末装置の特性等に応じて複数のコンテンツ及び選 択肢を用意しなくても,各端末装置に応じた最適なコンテンツを提供できるように して,前記課題を解決するものである。
ウ 他方,周知技術Aは,端末装置の種類(通常画面サイズも異なる)に対応 する複数のスタイルシート(CSS)をあらかじめ用意しておき,そのうちの1 つを選択するようにすることであり,これは,前記イ(ア)において従来技術の一 例として挙げた「様々な種類の端末装置ごとに別々のコンテンツデータを製作(制 作)し,それらのコンテンツデータを端末装置の種類ごとに分けてサーバ装置に用 意しておく方法」と同様に,サーバ装置側に複数の選択肢をあらかじめ用意してお く必要があることから,端末装置の種類や機種の増加に伴って,サーバ装置側の製 作負荷が膨大なものとなり,コストも増大するという問題を生じさせるものである。 そして,この問題は,引用発明がその解決を課題とし,前記イ(イ)の課題解決手段 の採用によって解決しようとした問題にほかならない。 したがって,引用発明に周知技術Aを適用すれば,引用発明の課題を解決するこ とができなくなることは明らかであるから,上記適用については,阻害要因がある ものというべきである。

◆判決本文

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平成26(ネ)10124  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年12月16日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審は80万円の損害賠償を認めました。1審と同時係属の無効審判(無効2014-800004)では無効理由なしと判断されていました。知財高裁は、1審判断を取り消しました。理由は、本件発明におけるガイド板について文言通り判断し、乙13発明から新規性なしというものです。なお、前記無効審判では乙13発明からの進歩性は争われていませんでした。
 本件特許発明の特許請求の範囲(請求項1)には,「ガイド板」に 関し,「前記本体と可動的に接続されたガイド板」及び「前記本体が 前記ガイド板に対して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃 または前記第2の刃が出る」との記載があるが,「ガイド板」の形状, 大きさ,厚さ,材質などを特定のものに限定する記載はない。また, 「カッター」は,一般に,「切る道具」,すなわち,切断道具を意味 するものであり(広辞苑第六版),本件特許発明の「ガイド板」は, 切断道具である「カッター」を構成する部材である。加えて,一般に,「ガイド」とは「案内すること。手引きすること。」\nなどを意味し,「板」とは「1)材木を薄く平たくひきわったもの。2) 金属や石などを薄く平たくしたもの。」などを意味すること(広辞苑 第六版)を踏まえると,請求項1の記載から,本件特許発明の「ガイ ド板」は,「切断方向を案内するための平たい形状の部材」であるこ とを理解することができる。 次に,本件明細書には,「ガイド板」の語を定義した記載はない。 また,本件明細書には,「ガイド板」に関し,「本体(1)の中に, カッターナイフの刃(2)を設け,シャフト(3)の通ったガイド板 (4)を設ける。」(段落【0005】),「このシートカッターは ノンスリップシートなどの表面の凹凸に,ガイド板(4)を合わせ,シャフト(3)を軸に本体を傾けるだけで,設けてあるカッターナイ\nフの刃(2)が出てくる。後はノンスリップシートなどの凹凸に沿わ せ滑らせるだけで,光の向きや照度に左右される事なく,簡単できれ い,かつ迅速にノンスリップシートなどを切断できる。」(段落【0 006】),「本体(1)の中にカッターナイフの刃(2)を設け, シャフト(3)を軸にスイングするガイド板(4)を設ける。・・これ を使用する時は,ガイド板(4)をノンスリップシートなどの表面の凹凸に合わせ,シャフト(3)を軸にして本体(1)を傾けカッター\nナイフの刃(2)を出す。」(段落【0008】)との記載があるが, 「ガイド板」の形状,大きさ,厚さ,材質などについて具体的に述べ た記載はないし,「ガイド板」がノンスリップシートなどの切断対象 物の切断時に切断対象物等に対してどのように作用するのかに関して, これを特定の態様に限定する記載もない。 さらに,図2及び3には台形の上辺に中央に孔の開いた半円を組み 合わせた形状のガイド板4が示されているが,本件明細書には,「ガ イド板」の形状を図2及び3に示すものに限定する記載はない。 以上の本件特許発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件 明細書の記載によれば,本件特許発明の「ガイド板」(構成要件D)は,「切断方向を案内するための平たい形状の部材」であると認めら\nれる。
b この点に関し,被控訴人は,「ガイド板」の文言及び本件明細書記 載の本件特許発明の効果(第1及び第2の効果)に照らすと,本件特 許発明の「ガイド板」は,「切断面に沿わせて切断方向をガイドする ための板」と解すべきである旨主張する。 しかしながら,前記aのとおり,本件特許発明の特許請求の範囲(請 求項1)及び本件明細書には,「ガイド板」の形状,大きさ,厚さ, 材質などを特定のものに限定する記載はないし,また,本件明細書に は,「ガイド板」が切断対象物の切断時に切断対象物等に対してどの ように作用するのかに関して,これを特定の態様に限定する記載はな く,被控訴人が本件特許発明の第1の効果において主張するような「ガ イド板」が「切断面に沿わせて滑らせることにより切断する方向をリ ードする部材である」ことを示した記載もない。 さらに,被控訴人が主張する本件特許発明の第2の効果は,本件明 細書の段落【0008】記載の「応用例として,壁紙の施工時,入り 隅や枠の凹凸に沿わせ,…壁紙の余計な部分を,地ベラや定規を使用 せず切り取る。」という効果であり,同段落に「応用例として」との 記載があるように,本件特許発明の一実施形態の効果として本件明細 書に示されたものであって,本件特許発明自体の特徴的な効果である ということはできないから,これをもって「ガイド板」の意義を特定 の構成のものに限定して解釈することはできない。以上によれば,本件特許発明の「ガイド板」は,「切断面に沿わせ\nて」切断方向をガイドする構成のものに限定されるものではないというべきであるから,被控訴人の上記主張は,この点において採用する\nことができない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成25(ワ)32665

◆無効審判の審取事件です。平成26(行ケ)10198

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平成26(行ケ)10245  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年12月17日  知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした拒絶審決が、動機付けなしとして取消されました。
 引用発明は,前記イのとおり,大きい,平坦な面を提供することができる インストルメントパネルを提案することを目的とし,引き出し板40を拡張位置ま で引き出すと,カバー20のテーブル面22と引き出し板40のテーブル面42と が同時に使用可能になって2倍の作業面が得られるという効果を奏するものである\nところ,かかる課題や効果の観点からは,引用発明において,周知技術1を適用し て,引き出し板40を,カバー20と空間30の間で,フレーム要素12に対して 摺動可能かつ枢動可能\に設ける動機付けがあるとはいえない。
・・・・
 被告は,相違点2に関し,引用発明における引き出し板40に代えて,周知技術 2のテーブルを適用することにより,引用発明の課題を十分に解決できるから,相\n違点1及び2を併せて検討すれば,引用発明において,周知技術1を適用すること によって空間30へのアクセスを良くし,周知技術2を適用することによって引用 発明の課題を解決できるのであって,引用発明において,周知技術1を適用するこ とに阻害要因は存在しない旨主張する。 しかし,引用例には,引用発明が,大きい,平坦な面を提供することができるイ ンストルメントパネルを提案することを目的とし,引き出し板40を拡張位置まで 引き出すと,カバー20のテーブル面22と引き出し板40のテーブル面42とが 同時に使用可能になって2倍の作業面が得られるという効果を奏するものであるこ\nとが記載されるとともに,さらに,空間30へのアクセスの改善という課題を解決 する手段として,引き出しレール70のセットを構成する内側引き出しレール72\nを,フレーム要素12ではなくカバー20に固着することにより,引き出し板40 がカバー20と連係して動くようにする形態が開示されており,かかる形態によれ ば,引き出し板40を拡張位置まで引き出すと,カバー20のテーブル面22と引 き出し板40のテーブル面42とが同時に使用可能になって2倍の作業面が得られ\nるという上記効果を維持しつつ,空間30へのアクセスを良くすることができると いう効果をも奏し得ることが開示されているといえる。 そうすると,カバー20のテーブル面22と引き出し板40のテーブル面42と が同時に使用可能になって2倍の作業面が得られるという効果とともに,空間30\nへのアクセスを良くするという効果を奏するにもかかわらず,引用例や周知例に何 らの記載も示唆もないのに,当業者において,周知技術1を適用した上で,更に周 知技術2を適用することにより,周知技術1を適用することでカバー20のテーブ ル面22と引き出し板40のテーブル面22とを同時に使用することができなくな るのを回避することを想起し,あえて引用発明において周知技術1を適用すること を,容易に想到することができたということはできない。

◆判決本文

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平成27(行ケ)10042  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年12月10日  知的財産高等裁判所

 引用例の認定誤りを理由として、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 この点に関し,本件審決は,引用例【0005】,【0030】,【0067】 及び【0086】の記載から,骨形成を促進する目的のためには,カルシウム化合 物粒子の露出の程度が大きい方が好ましいことは,明らかであると判断した。 しかし,前記2のとおり,これらの段落には,リン酸カルシウム化合物粒子が基 材シートに完全に埋入していたり,露出量が極端に少ない場合は,リン酸カルシウ ムと骨との結合が図られず,骨の補填が効率良く進行しないおそれがあること (【0005】),基材シートの片面側にリン酸カルシウム化合物粒子の一部を露出 させることにより,リン酸カルシウムと骨との結合が図られ,骨形成性が促進され ること(【0030】,【0067】,【0086】)が記載されているにとどまり,露出の程度については,言及されていないし,示唆もない。 ウ なお,引用例【0046】には,「リン酸カルシウム系化合物からなる粒子 と基材シートを構成する生体吸収性高分子物質とを予\め混合し,かかる混合物から 成形されたシート状物に比べ,基材シートの表面から露出する粒子の密度や割合が\n多く,リン酸カルシウム系化合物と骨との接触・結合を積極的に図ることができる。 このように露出したリン酸カルシウム系化合物の粒子は骨形成の核となって骨形成 を促進することができる。さらに,露出する粒子は骨との結合が可能であるため,\n体内への散在を抑制することができる。」との記載がある。しかし,【0046】の 記載は,リン酸カルシウム化合物粒子と生体吸収性高分子物質との混合物から成形 されたシート状の物と,リン酸カルシウム化合物粒子を基材シートの面上に付着さ せ,プレスによって同粒子の一部は基材シートに埋入させ,その余は露出した状態 である引用発明に係る骨補填用シートとを比較するものである。前記シート状の物 において,リン酸カルシウム化合物粒子は,それ自体がシート状の物の面上にある わけではなく,シート状の物を構成する混合物の成分として存在することに鑑みる\nと,「基材シートの表面から露出する粒子の密度や割合が多く」とは,各粒子が基\n材シートの表面から露出する程度ではなく,粒子全体に対して基材シートの表\面か ら露出する粒子の密集度やそのような粒子が占める割合が多いことを指すものと解 される。また,引用例【0047】には,「プレスすることにより粒子を固定させる方法によれば,基材シート4の表面において,部分的に粒子の露出量や粒子密度,さら\nに粒子の大きさ,構成材料等を変えることが容易であり,自由度が非常に大きい。」\nとの記載がある。しかし,【0047】の記載は,【0046】の記載に続くもので あることから,「部分的に粒子の露出量や粒子密度」「を変えることが容易であり, 自由度が非常に大きい。」という記載も,前記の粒子全体に対して基材シートの表\n面から露出する粒子の密集度やそのような粒子が占める割合を容易に変えられるこ とを意味し,各粒子が基材シートの表面から露出する程度を容易に変えられること\nを意味するものではない。 したがって,【0046】及び【0047】の記載はいずれも,前記のとおり本 願発明と引用発明との相違点に係る個々のカルシウム系化合物粒子が基材シートか ら露出する程度に関わるものではない。
エ また,本件審決は,引用例【0048】から【0051】には,基材シート と粒子を直接付着する方法等が記載されており,必ずしも「プレス」による付着方 法のみが記載されているわけではなく,しかも,「粒子の露出の程度」は,それら の方法に応じて様々なものになることは技術常識であるとして,粒子の露出の程度 を適宜変更するべくプレス以外の付着方法を採用することも当業者が容易になし得 た旨判断した。 しかし,前記2のとおり,引用例においては,従来技術の課題を解決する手段と して,1)基材シートの少なくとも片面側にリン酸カルシウム系化合物からなる粒子 を付着させること及び2)その粒子をプレスして基材シートに埋入させることが開示 されており,本件審決が指摘する【0048】から【0051】は,前記1)の「付 着」の方法に関するものである。また,前記2によれば,前記2)の「プレス」は, 前記課題を解決する手段として不可欠なものというべきである。 したがって,引用例に接した当業者において,前記2)の「プレス」を実施しない ことは,通常,考え難い。
オ 以上のとおり,引用例の記載において,露出の程度に触れているものはない ことに照らすと,引用例には,個々のカルシウム化合物粒子が基材シートから露出 する程度につき,大きい方が好ましいことが示されているということはできない。
(3) 相違点2の容易想到性
前記(2)のとおり,引用例には,個々のカルシウム化合物粒子が基材シートから露 出する程度につき,大きい方が好ましいことが示されているということはできない。 また,本願優先日当時においてそのような技術常識が存在していたことを示す証拠 もない。したがって,本願優先日当時において,引用例に接した当業者が,個々のカルシウム化合物粒子が基材シートから露出する程度をより大きくしようという動機付け があるということはできない。

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平成27(行ケ)10093  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年11月30日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について審決は進歩性有りと判断しましたが、知財高裁は引用文献の認定誤りを理由に、これを取り消しました。
 甲1発明3の「データ管理部」に格納されている「安全管理情報」 は,「工事にかかる安全情報で,事故歴等を入力しておくと,同じ工事 を次に行う場合に参考になる」情報であり(甲1の段落【0024】), 例えば,「代表作業用キーワード(細別)」が「コンクリート打設」で\n「規格」が「大」の場合は,「ポンプ車等車の出入りと通行人を誘導す る管理人 1」であり,「代表作業用キーワード(細別)」が「コンク\nリート打設」で「規格」が「小」の場合は,「1輪車運転中,障害物に よるバランスに注意」である(甲1の段落【0041】,【0044】, 図2及び3)。 しかるところ,上記「安全管理情報」の「ポンプ車等車の出入りと通 行人を誘導する管理人 1」とは,「大規模コンクリート打設」には, 「ポンプ車,コンクリートミキサー車,砂利運搬車の出入り等に関する 安全を確保するために交通整理を行う管理人が必要になる。」(甲1の 段落【0044】)というものであり,「ポンプ車等車の出入り」とい う「危険有害要因」に対応して発生し得る交通事故(「事故型分類」) に対する予防策として交通整理を行う管理人が必要であることを示した\nものといえるから,上記「安全管理情報」は,本件発明1の「危険有害 要因および事故型分類を含む危険情報」に該当することが認められる。 また,上記「安全管理情報」の「1輪車運転中,障害物によるバラン スに注意」とは,「障害物」という「危険有害要因」に対応して「1輪 車運転中に障害物によってバランスを崩すことによる事故」(「事故型 分類」)が発生し得ることを示したものといえるから,上記「安全管理 情報」も,本件発明1の「危険有害要因および事故型分類を含む危険情 報」に該当することが認められる。 そして,甲1発明3の「データ管理部」に格納されている「原価管理 情報」及び「安全管理情報」は,甲1の図1ないし図3に示すように, いずれも「代表作業用キーワード(細別)」(「コンクリート打設」)\n及びその各「規格」(「大」,「中」,「小」)ごとに関連付けられて 格納されていることが認められ,「安全管理情報」の格納の態様は,「工 事名称」(「代表作業用キーワード(細別)」)に関連付けられた「要\n素」(「規格」)に関連付けられたものといえるから,甲1発明3の「デ ータ管理部」には,本件発明1の「前記要素に関連付けられた危険有害 要因および事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マス ターテーブル」(相違点2に係る本件発明1の構成)が格納されている\nものと認められる。
(ウ) この点に関し,本件審決は1)甲1発明3においては,本件発明1 の「歩掛マスターテーブル」と「危険源評価マスターテーブル」に共通 に格納される「要素」に相当するものが存在しないから,本件発明1の 「要素」の構成を有するものではない,2)甲1の記載をみても,「デー タ管理部」に格納される情報をが「テーブル」として格納するとの記載 はなく,そのことが自明ともいえない,3)甲1発明3の「安全管理情報」 は,本件発明1のように工事にかかるリスクを抽出する目的で,各作業 工程において発生しうる危険としての「有害要因」とその「事故型分類」 とに整理分類して設定したものではないから,本件発明1の「危険有害 要因」及び「事故型分類」に相当する情報は含まれておらず,本件発明 1とは「危険情報」である点で共通するに留まるとして,本件発明1の 「危険源評価マスターテーブル」が存在しない旨認定した。 しかしながら,上記1)の点については,甲1発明3において,「歩掛 マスターテーブル」と「危険源評価マスターテーブル」に共通に格納さ れる「要素」に相当するものが存在することは,前記ア(カ)認定のとお りである。 また,上記2)の点については,前記(イ)認定のとおり,甲1発明3に おける「安全管理情報」の格納の態様は,「工事名称」(「代表作業用\nキーワード(細別)」)に関連付けられた「要素」(「規格」)に関連 付けられたものであるから,複数のデータ項目が関連付けられて「表」\n形式で記憶されているものと認められ,「テーブル」に該当するものと いえる。 さらに,上記3)の点については,本件発明1の特許請求の範囲(請求 項1)には,「事故型分類」に係る「分類」の方式や態様を規定した記 載はなく,本件明細書にも,「事故型分類」の語を定義した記載はない ことに照らすと,甲1発明3の「安全管理情報」は,工事にかかるリス クを抽出する目的で,各作業工程において発生しうる危険としての「有 害要因」とその「事故型分類」とに整理分類して設定したものではない からといって,本件発明1の「危険有害要因」及び「事故型分類」に相 当する情報に該当しないということはできない。 以上によれば,本件審決の上記認定は,誤りである。

◆判決本文

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平成26(ネ)10102  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年11月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について、進歩性がないので104条の3により権利できないとした1審判断が維持されました。
 相違点に係る本件発明1の構成は,「危険源評価データ生成手段」が「前\n記演算手段を使用して,前記危険源評価マスターテーブルを参照して,前 記内訳データ生成手段により生成された内訳データに含まれる各要素に基 づき,当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し,該 抽出した危険有害要因および事故型分類を含む危険源評価データを生成す る」(構成要件2−E)というものである。\n本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載には,「危険源評価デ ータ」が抽出した危険有害要因及び事故型分類を含むことのみが特定され ており,その形式や態様等が特定されているわけではないから,「危険源 評価データ」は,抽出した危険有害要因及び事故型分類を含むものであり さえすれば足りるものと解される。 他方,乙5発明において,「内訳データ」に含まれる「要素」である「規 格」に基づき,「危険源評価マスターテーブル」を参照し,「当該要素に 関連する危険有害要因及び事故型分類」(「安全管理情報」)を抽出して いることは,前記(4)オ認定のとおりである。 そして,乙5発明において,上記抽出した「安全管理情報」を利用する ためにこれをデータとして出力し,「危険有害要因及び事故型分類を含む 危険源評価データ」を「生成」するように構成することは,当業者であれ\nば格別の困難なく行うことができたことが認められる。 したがって,乙5に接した当業者であれば,相違点に係る本件発明の構\n成(構成要件2−Eの構\成)を容易に想到することができたものと認めら れる。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成25(ワ)19768

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平成27(ワ)1025  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年10月29日  東京地方裁判所

 サントリーVSアサヒのノンアルコールビールについての特許権侵害事件です。成分を特定した特許について、進歩性なしとして無効(特104条の3)と判断されました。 請求項は「エキス分の総量が0.5重量%以上2.0重量%以下であるノンアルコールのビールテイスト飲料であって,pHが3.0以上4.5以下であり,糖質の含量が0.5g/100ml以下である,前記飲料。」です。
 公然実施発明1は,本件特許の優先日当時,我が国におけるノンアルコールのビールテイスト飲料の中で販売金額が最も大きかったが,その一方で,消費者から,コク(飲み応え)がない,物足りない,味が薄いといった評価を受けていた。(乙10,34〜36) ノンアルコールのビールテイスト飲料については,本件特許の優先日以前から,濃厚感,旨味感,モルト感,ボリューム感やコク感を欠くという問題点が指摘されており,これらを解消して飲み応えを向上させるため,穀物の摩砕物にプロテアーゼ処理を施して得られる風味付与剤,麦芽溶液を抽出して得られる香味改善剤又は香料組成物,植物性タンパク分解物や麦芽抽出物,麦芽エキス,清酒由来のエキスを用いる風味向上剤,茶葉の水又はエタノール抽出物といった添加物を用いる技術が周知となっていた。(乙14〜16,25〜27) 本件明細書におけるエキス分の総量とは,アルコール度数が0.005%未満の飲料の場合,脱ガスしたサンプルをビール酒造組合国際技術委員会(BOCJ)が定めるビール分析法に従って測定したエキス値(重量%をいう(段落0022)。上記(イ)の風味付与材料等はいずれもこの方法の測定対象となるエキス分に当たる。(甲2,乙2)
上記事実関係によれば,公然実施発明1に接した当業者において飲み応えが乏しいとの問題があると認識することが明らかであり,これを改善するための手段として,エキス分の添加という方法を採用することは容易であったと認められる。そして,その添加によりエキス分の総量は当然に増加するところ,公然実施発明1の0.39重量%を0.5重量%以上とすることが困難であるとはうかがわれない。そうすると,相違点に係る本件発明の構成は当業者であれば容易に想到し得る事項であると解すべきである。\nなお,飲料中のエキス分の総量を増加させた場合にはpH及び糖質の含量が変化すると考えられるが,エキス分には糖質由来のものとそれ以外のものがあり(本件明細書の段落【0020】,【0033】参照),pHにも多様のものがあると解されることに照らすと,公然実施発明1にエキス分を適宜(例えば,非糖質由来で酸性又は中性のものを)加えてその総量を0.5重量以上としつつ,pH及び糖質の含量を公然実施発明1と同 程度のもの(本件発明の特許請求の範囲に記載の各数値範囲を超えないもの)とすることに困難性はないと解される。

◆判決本文

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平成26(行ケ)10148  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年9月28日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反なしとした審決が取り消されました。
 前記(2)のとおり,甲11発明では,GaN基板を研磨機により研磨する ことによって生じた表面歪み及び酸化膜を除去してn型電極のコンタクト抵\n抗の低減を図り,また,電極剥離を防止するために,ウエハーをフッ酸又は 熱燐酸を含む硫酸からなる混合溶液でエッチング処理するものとされている。 そうすると,甲11発明においては,GaN基板では,必要とするコンタク ト抵抗を確保するためには,研磨機による研磨及び鏡面出しのみでは不十分\nであり,表面歪み等を除去する必要があることが示唆されているものといえ\nる。しかしながら,他方で,甲11には,表面歪みの程度や除去すべき範囲\nについての具体的な記載はない。そうすると,甲11発明に接した当業者は, 甲11発明において,研磨機による研磨後,ウエハーのエッチング処理を行 う際に,コンタクト抵抗の低減を図るために,上記表面歪みをどの程度の範\n囲のものととらえてこれを除去する必要があるかについて検討する必要性が あることを認識するものといえる。 そして,かかる認識をした当業者であれば,前記(3)アないしウにおいて 認定した技術常識等に基づいて,甲11発明においても,研磨機による研磨 によって加工変質層と呼ばれる層に転位が生じているため,この転位がキャ リアである電子をトラップしてキャリア濃度が低下し,それによってコンタ クト抵抗が高くなるという作用機序は容易に想起できるものといえる。さら に,前記(3)エにおいて認定したとおり,少なくともシリコンについては, 転位を含む加工変質層は完全に除去すべきものとされていたところ,前記 (3)イのとおり,上記の転位を含む加工変質層がコンタクト抵抗に与える影 響についてはシリコンにおいてもGaN系化合物半導体においても同様であ る上に,コンタクト抵抗は低いほど望ましいことに鑑みると,当業者として は,甲11発明における表面歪み(なお,ひずみ層も加工変質層に含まれ\nる。)を,研磨機による研磨で生じ,透過型電子顕微鏡で観察可能な転位を\n含む加工変質層としてとらえ,あるいは,表面歪みのみならず加工変質層の\n除去についても考慮して,コンタクト抵抗上昇の原因となる加工変質層を全 て除去できるまで上記のエッチング処理を行って,基板に当初から存在して いた転位密度の値に戻すことで,キャリア濃度が低下する要因を最大限に排 除し,コンタクト抵抗の低減を図ることは,容易に想到できたことと認めら れる。
・・・
ア 被告は,1)GaN以外の化合物半導体では,電極形成における合金化に よって,コンタクト抵抗増大という課題が発生することはなかったのであ るから,基板裏面の機械研磨によって転位が生じ,これによりコンタクト 抵抗が増大するという問題は,GaN基板において初めて発見された現象 であり,本件特許発明によって初めて得られた知見であるから,当然,G aN基板において,電極形成面における転位が除去すべきものであること も知られていなかったし,このような知見がなければ,発生した転位を電 極形成前に除去して元の基板裏面の状態に戻すという問題意識も生じない, 2)原告は,GaN基板裏面の機械研磨によって転位が生じることが技術常 識であることを示す証拠を提出していないし,原告が提出したどの文献に も,GaN基板の電極を形成する裏面を機械研磨すると,原子レベルの線 状の欠陥である転位が生成して,コンタクト抵抗が上昇することや,転位 に着目し,これを電極形成前に除去することの記載はない,3)このように, 除去すべき必要性や課題が認識されていない加工変質層について完全に除 去するなどという周知技術は存在しない,などと主張する(前記第4の1 (1))。 しかし,前記(3)イ及びウにおいて説示したところに照らし,甲11発 明に接した当業者において,転位がキャリアである電子をトラップしてキ ャリア濃度が低下し,それによってコンタクト抵抗が高くなるという作用 機序を容易に想起できるといえることは,前記(4)において説示したとお りである。 そして,GaNを含む窒化物半導体においても,機械研磨により,転位 を含む加工変質層が生じることが本件優先日当時の当業者の技術常識であ ったことは前記(3)アにおいて説示したとおりであり,この点が窒化物半 導体の裏面を機械研磨した場合において異なると理解すべき根拠もない。 また,前記(3)エにおいて説示したとおり,少なくともシリコンについ ては,電気的特性に悪影響を及ぼすことや,ウエハーの反りやクラック発 生の原因となることから,加工変質層は完全に除去すべきものとされてい るところ,研磨機による研磨によって加工変質層と呼ばれる層に転位が生 じ,この転位がキャリアである電子をトラップしてキャリア濃度が低下し, それによってコンタクト抵抗が高くなるという作用機序を想起した当業者 であれば,GaNから成る窒化物半導体についても,転位を含む加工変質 層を全て除去する必要があることは容易に想到し得たものというべきであ ることは前記(4)において説示したとおりである。

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関連事件です。こちらは請求棄却です(無効理由なしとした審決維持)

◆平成26(行ケ)10147

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平成27(行ケ)10024  審決取消請求事件  実用新案権  行政訴訟 平成27年10月22日  知的財産高等裁判所

 めずらしく実用新案権についての無効判断です。審決は無効理由なしと判断しましたが、知財高裁は引用文献から理解できるとして、これを取り消しました。
 上記記載によれば,甲1考案で分解反応に用いる酸素は,有機性廃棄物と無機性 廃棄物との混合物中の水分に溶解した形で供給されるものであるから,有機性廃棄 物の効率的な分解のために,上記混合物中の水分に溶解した酸素の量が多い方が望 ましいことは,当業者にとって明らかである。 一方,前記1(3)のとおり,甲2考案は,密閉型の発酵槽を使用した発酵処理装置 において,発酵槽の上下部に複数の開口を有する吸気管及び送気管を配置し,循環 路に送風機及び外気取り入れ口を設け,発酵槽内を空気循環による好気雰囲気に保 持する空気循環機構である。甲2考案の空気循環機構\を用いた場合には,発酵槽の 下部に配置された送気管から送出された空気が有機性廃棄物を通過するから,有機 性廃棄物中の水分に空気中の酸素を溶解させる上で好都合であることは,当業者で あれば容易に理解できることである。 そうすると,甲1考案において,分解反応を促進するために,有機性廃棄物と無 機性廃棄物との混合物中の水分に溶解する酸素量を多くして,甲2考案の空気循環 機構を採用して相違点4に係る本件考案の構\成とすることは,きわめて容易である といえる。 甲1には,上記のとおり,「空気の供給量は,有機性廃棄物の混合物1Kg当たり, 一般に,10〜500L/分好ましくは50〜100L/分である。10L/分未満で は,水に溶解する酸素量が少なく,500L/分より大では,反応混合物の温度を下 げ,乾燥させすぎて分解反応を阻害することとなる。」(【0025】)との記載があ るが,この記載は,空気の供給量の許容範囲を定めたものにすぎず,当業者が,こ の記載に基づき,甲1考案において,空気の供給方法は通気口からのものに限定さ れているとか,通気口からの空気のみでその供給量が十分なものとされていると理\n解するとはいえない。
(3) 被告の主張について
被告は,甲1には水に溶解される酸素の量をできる限り大きくすることが好まし いとの記載はない旨を主張するが,上記(2)(3)のとおり,その主張は失当である。 また,被告は,本件考案における空気の循環は,槽内空気の流速(線速度)を速 めたり,過酸化水素の生成をもたらせることが目的であり,空気の溶解量を増やす ためのものではない旨を主張するが,本件明細書にはそのような目的から空気を循 環させる旨の記載はない。被告の上記主張は,明細書に基づかないものであるから, 失当である。 さらに,被告は,甲1考案は微生物を利用したものではなく,微生物の発酵処理 に適した好気雰囲気を保持する課題は存しないから,甲2考案を組み合わせる動機 付けはない旨を主張する。しかしながら,空気循環による好気雰囲気を保持するこ とによって有機性廃棄物中の水分に溶解する酸素量を多くするとの技術事項を適用 するに当たり,有機性廃棄物の分解機序が相違することは,その適用の妨げとなる ものではない。被告の上記主張は,採用することができない。 なお,甲2考案は,被処理物の保湿分布を均一にして処理反応を均一かつ効率的 に起こさせるという技術課題を直接の対象とするものであり(【0004】),この課 題の解決のため,甲2考案は,前記1(3)のとおり,発酵槽内の上下部に吸気管及び 送気管を配置して,発酵槽内を空気循環による好気雰囲気に保持させていた従来技 術に加えて,上記保湿分布の均一との技術課題の観点から,発酵槽内の上下部にあ るパイプに送吸気を兼ねさせて,発酵槽を上下に反転操作できるようにしたもので ある。そうすると,空気循環による好気雰囲気を保持するための空気循環機構を適\n用するに当たり,保湿分布の均一化のための機構を必ずしも要するものでないこと\nは,当業者であれば,甲2から容易に読み取ることができる。したがって,甲1考 案に保湿分布を均一にするという技術課題がないからといって,甲1考案に甲2考 案の上記にいう空気循環機構を適用することが妨げられるものではない。\n

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平成26(行ケ)10240  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年9月30日  知的財産高等裁判所

 進歩性判断において、引用文献記載の発明認定は、請求の範囲に限定されないと判断されました。
 進歩性の有無を判断する基礎となる引用発明が「刊行物に記載された発明」の場 合,当該発明は,当該刊行物に接した当業者が把握し得る先行公知技術としての技 術的思想である。そうすると,当該刊行物が甲1文献のような公開実用新案公報の 場合には,考案の詳細な説明なども含め,当該公報全体に記載された内容に基づい て引用発明が認定されるべきであって,実用新案登録請求の範囲に記載された技術 的思想に限定しなければならない理由はない。 そして,引用発明の認定は,これを本件発明と対比させて,本件発明と引用発明 との相違点に係る技術的構成を確定させることを目的としてされるものであるから,\n本件発明との対比に必要な技術的構成について過不足なくされなければならない。\nその際,刊行物に記載された技術的思想ないし技術的構成を不必要に抽象化,一般\n化すると,恣意的な認定,判断に陥るおそれがあることに鑑みれば,当該刊行物に 記載されている事項の意味を,当該技術分野における技術常識を参酌して明らかに するとか,当該刊行物には明記されていないが,当業者からみると当然に記載され ていると解される事項を補ったりすることは許容され得るとしても,引用発明の認 定は,当該刊行物の記載を基礎として,客観的,具体的にされるべきである。 上記アにおいて認定した甲1文献の記載内容によれば,審決における甲1発明の 認定は,本件発明との対比に必要な技術的構成について過不足なくされているし,\n甲1文献の記載を基礎として,客観的,具体的にされたものといえるから,この認 定に誤りがあるということはできない。

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平成26(行ケ)10182  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年8月20日  知的財産高等裁判所

 薬の特許について動機付けがないとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 前記(ア)ないし(エ)の記載によれば,うつ病患者は,抑うつ気分な どの基本症状のほかに,記憶や集中力や判断力の低下などの認知の障害 を訴えることがあり,認知機能に重要と考えられる脳器官(例えば海馬\nや前頭葉)がうつ病にも本質的に関与する可能性が指摘されていたが,\nうつ病と,記憶障害が中核症状である認知症(痴呆)とは,その病態が 異なり,認知症に有効な薬が当然にうつ病にも有効であるとの技術常識 があることを認めるに足りる証拠もないから,記憶・学習能力の低下を\n改善する薬が,うつ病をも改善するとの効果を有するとの技術常識が, 本願出願日当時に存在していたと認めることはできない。 また,抑うつ様症状の評価法としては,強制水泳試験(動物に強制的 に水泳を負荷することで生じる行動抑制を抑うつ様症状の指標として評 価する試験(甲22・97頁右欄10〜12行))等が汎用的であって, 記憶・学習能力に関する評価法であるモリス型水迷路試験から,抑うつ\n様症状が評価できるとの技術常識があったと認めることもできない。さ らに,うつ病と海馬組織中のアラキドン酸含有量との関連についての技 術常識があったことを認めるに足りる証拠もない。
ウ 引用例2に記載された発明の認定
前記イ(オ)のとおり,本願出願日当時,記憶・学習能力の低下の改善と\nうつ病の改善との関連,又は,うつ病と海馬組織中のアラキドン酸含有量 との関連についての技術常識があったと認めることができないことを前提 とすれば,引用例2に接した当業者は,引用例2の実施例3の老齢ラット のモリス型水迷路試験の結果に基づいて,「構成脂肪酸の一部又は全部が\n アラキドン酸であるトリグリセリド」を用いることにより,「記憶・学習 能力の低下」が改善されることは認識できるものの,さらに「うつ病」が\n改善されることまでは認識することができないというべきであって,まし て,「うつ病」を含む様々な症状や疾患が含まれる「脳機能の低下に起因\nする症状あるいは疾患」全体が改善されることまでは認識できないという べきである。 そうすると,引用例2に記載された発明の医薬組成物が予防又は改善作\n用を有する症状又は疾患を,本件審決のように,「脳機能の低下に起因す\nる症状あるいは疾患」と広く認定することは相当ではなく,その適用は脳 機能の低下に起因する記憶・学習能\力の低下に限られるというべきである。 したがって,引用例2に記載された発明は,「構成脂肪酸の一部又は全\n部がアラキドン酸であるトリグリセリドを含有するトリグリセリドを含ん で成る,脳機能の低下に起因する記憶・学習能\力の低下の予防又は改善作\n用を有する医薬組成物。」(以下「引用発明2’」という。)と認定すべきで ある。
(3) 本願補正発明と引用発明2’との対比
そうすると,本願補正発明と引用発明2’との一致点及び相違点は,次の とおりである。 ア 一致点
構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリドを含ん\nで成る医薬組成物。 イ 相違点
本願補正発明は,「うつ症状の改善のため」のものであるのに対し,引 用発明2’は,「記憶・学習能力の予\防又は改善作用を有する」ものであ る点(以下「相違点α’」という。)。 (4) 相違点α’に係る容易想到性について
確かに,引用例2の【請求項1】〜【請求項16】,【0012】,【001 7】には,「構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリ\nド」を用いて,「脳機能の低下に起因する症状あるいは疾患」の予\防又は改 善を行うことが記載され,当該症状あるいは疾患として,「記憶・学習能力\nの低下,認知能力の低下,感情障害(たとえば,うつ病),知的障害(たと\nえば,痴呆,具体的にアルツハイマー型痴呆,脳血管性痴呆)」等が記載さ れている。 しかし,前記(2)ウのとおり,引用例2に接した当業者は,引用例2の実 施例3の老齢ラットのモリス型水迷路試験の結果に基づいて,「構成脂肪酸\nの一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリド」を用いることにより, 「記憶・学習能力の低下」が改善されることは認識できるものの,さらに\n「うつ病」が改善されることまでは認識できないというべきである。 そして,前記(2)イ(オ)のとおり,うつ病と,記憶障害が中核症状である 認知症とは,その病態が異なり,本願出願日当時,記憶・学習能力の低下を\n改善する薬が,うつ病をも改善するとの効果を有するとの技術常識が存在し ていたとは認められないことからすれば,引用例2に接した当業者が,引用 例2に記載された「脳機能の低下に起因する症状あるいは疾患」に含まれる\n多数の症状・疾患の中から,特に「うつ病」を選択して,「構成脂肪酸の一\n部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリド」を用いて,うつ病の症状 である「うつ症状」が改善されるかを確認しようとする動機付けがあるとい うことはできない。 そうすると,引用例2に基づいて,相違点α’に係る本願補正発明の構成\nに至ることが容易であるということはできず,本件審決のこの点に関する判 断には誤りがあるというべきである。 283/085283

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平成27(行ケ)10009  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年8月4日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、どのような分野でも用い得る慣用技術ではないので、構造が共通していても適用容易とはいえないとして、進歩性なしとした審決を取り消しました。
 相違点2は,前記第2,3(4)イのとおり,本件訂正発明1では「出力部材が所定 の位置に達し,前記所定の位置にあることを検知可能」にしたのに対し,甲2発明\nでは「ピストン21の反転動作可能」にしたもので,「検知」については不明である\n点である。 そして,甲1事項2は,前記第2,3(2)ウのとおり,「ピストン行程の行程端で, クッションプラグ32によりプランジャ126を上昇させてプランジャ型スイッチ 100の開閉状態を切り換え,複数の空気ポート130の間が連通されることでピ ストン30が所望の位置に移動したことを確認可能に構\成した流体駆動シリンダ1 0。」である。 審決は,1)甲2発明の二方パイロット弁100,101も,甲1事項2のプラン ジャ型スイッチ100も,ピストンが端部の所定位置に達すると作動する開閉弁式 スイッチという点で,用途もスイッチの構造も共通しているとして,甲2発明の二\n方パイロット弁100,101について甲1事項2のプランジャ型スイッチ100 を適用することは,当業者であれば容易に想到し得る,2)適用されたプランジャ型 スイッチ100に,甲2発明のピストン21が移動して端部に達し,その位置にあ ることを検知させることは,当業者が容易に想到し得ると判断する。 これに対し,原告は,甲2発明の二方パイロット弁100,101と,甲1事項 2のプランジャ型スイッチ100とは,用途,構造及び機能\を異にし,動機付けが なく,阻害要因が存する旨を主張するので,以下,検討する。 甲2発明は,前記1(2)のとおりであり,ピストン21が左端の所定の位置に達し たときに,差圧ピストンがピストン21に押されて移動することにより,二方パイ ロット弁100,101の開閉状態が切り換えられ,制御管路93から供給される 圧力媒体が無圧領域41に連通することにより,三方弁37が切り替わって圧力配 管39からシリンダ23に圧力媒体が流入するなどして,ピストン21が右側に反 転動作をするものである。そうすると,甲2発明の二方パイロット弁100,10 1は,ピストンが端部の所定位置に達すると作動する開閉式スイッチであるともい える。 しかしながら,甲1事項2のプランジャ型スイッチ100は,どのような分野で も用い得る慣用技術等であるとまではいえないから,甲2発明の二方パイロット弁 100,101を,用途やスイッチの構造が共通しているとの点をもって,直ちに\n甲1事項2のプランジャ型スイッチ100に置換可能であるとはいえない。\nそして,相違点2は,本件訂正発明1においては,「出力部材の位置検知」である のに対し,甲2発明においては,「ピストンの反転動作」というものであるから,甲 2発明の二方パイロット弁100,101を検知機能を有する甲1事項2のプラン\nジャ型スイッチ100に置換するには,まず,甲2発明の二方パイロット弁100, 101に検知機能を持たせることが動機付けられなければならない(なお,甲2発\n明の二方パイロット弁100,101の開閉機構がピストン21の往復動作と連動\nしているからといって,二方パイロット弁100,101がピストン21の行程端 を検知しているとはいえない。)。 そこで,検討してみると,甲2発明の二方パイロット弁100,101は,圧力 媒体の流路回路を切り換え,ピストン21が自動的に反転動作をするための動作切 替手段の一部である。そうすると,当業者が,自動往復運動をしているピストン2 1の行程端を検知しようと試みて,動作切替手段の一部にすぎない二方パイロット 弁100,101にピストン21の行程端の検知機能を持たせようとする合理的理\n由がないから,甲2発明の二方パイロット弁100,101を,甲1事項2のプラ ンジャ型スイッチ100に敢えて置換しようと動機付けられるとはいい難い。 被告は,1)甲2発明の二方パイロット弁100,101にはスイッチの機能があ\nる旨を主張するが,そのように解したとしても上記結論が左右されないことは,上 記説示のとおりである。また,被告は,2)甲1事項2のプランジャ型スイッチ10 0にはピストンを反転動作させるためのスイッチの機能がある旨を主張するが,甲\n1事項2のプランジャ型スイッチ100は,ピストン30の位置を確認可能にした\nものであり,ピストン30の反転動作は,プランジャ型スイッチ100の機能によ\nるものではない。さらに,被告は,3)「リミットスイッチのようなセンサによって 操作される制御弁は,機械の順次動作におけるタイミングに合わせてピストンを所 望の方向へ移動させることによって上記シリンダを制御するために用いられる。」と の甲1の記載を指摘するが,リミットスイッチは,一般に,位置を検知する手段に すぎず,当然に,ピストンを反転動作させる手段でもあることにはならない。そし て,上記記載に続く,「機械の順次動作における次のステップが起こる前に上記ピス トンが最伸長または最後退の行程位置へ移動したのを知ることが頻繁に必要になる ので,ピストンの行程の行程端において上記ピストンロッドの外端または当該ピス トンロッドに連結した作業部分にリミットスイッチが接触するように,当該リミッ トスイッチが使用されてきた。」との記載を併せかんがみれば,甲1は,リミットス イッチを,ピストンの位置を検知するための手段としているにすぎないと認められ る。 したがって,上記被告の主張は,いずれも,採用することができない。 以上のとおりであり,甲2発明の二方パイロット弁100,101を甲1事項2 のプランジャ型スイッチ100に置換させることはできないから,相違点2に係る 本件訂正発明1の構成は,当業者が容易に想到することができない。\n

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平成26(行ケ)10231  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年8月6日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、本件発明の要旨認定が誤っているとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。  
 補正発明における「第1の写真アルバム」が格納されている「デバイス」 とは,請求項の記載上では「分散型ネットワークに参加しているいずれかのデバイ ス」であればよいから,特定のデバイスに限定されるものではない。また,「同期 させる手段」によって「同期」される「他の写真アルバムであって前記第1の写真 アルバムに関係付けられる他の写真アルバム」が格納されている「前記デバイス以 外のデバイス」も,請求項の記載上では「分散型ネットワークに参加している」デ バイスであればよいから,特定のデバイスに限定されるものではない。 そうすると,ある場合には修正された「第1の写真アルバム」が格納されている 「デバイス」が,別の場合には「同期させる手段」によって当該修正に「同期」さ れる写真アルバムが格納されている「デバイス」となることが想定されており,そ の逆の状況も想定されるから,分散型ネットワークに参加しているデバイスはいず れも,「第1の写真アルバム」が格納されているデバイスとなり得るし,また,「同 期させる手段」によって「同期」される写真アルバムが格納されているデバイスと なり得ることとなる。したがって,補正発明の装置においては,分散型ネットワー クに参加しているある特定の「デバイス」とそれ以外の「デバイス」と間において, 「写真アルバム」変更の検出による関連する他方の「写真アルバム」の自動的な同 期が,双方向に行われるものと認められる。
(2) 引用発明は,第2,3(2)ア記載のとおりに認定されるところ,サーバ2 及びミラーサーバ7は,更新オブジェクト情報やイベントをその都度受信端末へ提 供するが,仮に,受信端末側においてオブジェクトが変更されたとしても,更新オ ブジェクト情報やイベントが,データベース・サーバないし他の受信端末へ提供さ れることは想定されていない。すなわち,オブジェクトの変更等の検出による更新 オブジェクト情報の提供は,一方向にのみ行われるものと認められる。
(3) そうすると,引用発明は,補正発明における「分散された写真アルバムの 集合を自動的に同期させる」との構成,すなわち,ある特定の「デバイス」とそれ\n以外の「デバイス」と間において,「写真アルバム」変更の検出による関連する他 方の「写真アルバム」の自動的な同期を双方向に行う構成に相当する構\成を含むも のではない。この意味で,補正発明と引用発明との相違点は,補正発明の場合は, 「分散型ネットワークにおいて,写真アルバムの集合を自動的に同期させる装置」 であるのに対し,引用発明の場合は,「分散型ネットワークにおいて,多数のデー タベースへデータを同期させる装置」であると認定すべきである。
(4) 被告は,取消事由2は取消事由1を前提とした主張であるところ,取消 事由1は失当であるから,取消事由2も失当である旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,審決が,引用発明を「多数のデータベースへの データ配信システム」と認定した点に誤りはないものの,取消事由2における原告 の主張は,引用発明が「分散型ネットワークにおいて,不特定多数のデータベース へデータを同期させる」装置と認定すべきことを前提として,審決がこれを誤認 した結果,補正発明と引用発明との相違点の認定も誤ったというものである。 したがって,必ずしも取消事由1を前提とするものではなく,被告の主張は理 由がない。
(5) 審決は,上記認定の相違点の容易想到性を判断せずに補正発明の進歩性を 否定したものであるから,特許法29条2項の適用を誤ったものであり,取消しを 免れない。 264/085264

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平成26(行ケ)10270  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年7月30日  知的財産高等裁判所

 相違点の認定誤りを理由として、補正要件を満たしていないとした審決を取り消しました。
 ・・,本願補正発明と引用発明との一致点・相違点は,次のとおりである。 <一致点> 【A】プロバイオティク構成成分,及び【F】他の構\成成分,を含む,組成物で あって,【C】前記他の構成成分及びプロバイオティク構\成成分は共に混合されてな り,【D】前記組成物は,実質的にチューインガム基質を有しない,【E】組成物。
<相違点ア>
プロバイオティク構成成分として,本願補正発明は,「切除及び洗浄されたイヌ科\n動物又はネコ科動物の胃腸管から単離された株を含み(構成A1),かつビフィドバ\nクテリウム,ラクトバシラス,及びこれらの組み合わせからなる群から選択される 属を含む細菌を含む(構成A2)」ものであるのに対し,引用発明は,そのような特\n定がされていない点。
<相違点イ>
他の構成成分として,本願補正発明は,「ソ\ルビトール,マンニトール,グルコー ス,マンノース,フルクトース,及びこれらの混合物からなる群から選択される単 糖類を含む(構成B1),甘味剤構\成成分,を含む(構成B)」ものであるのに対し,\n引用発明は,「スクロース,初乳,プレバイオティック」を含むとはされているもの の,そのような特定がなされていない点。
そうすると,相違点アのうち,構成A2の点(相違点ア´),及び相違点イを相違\n点と認定せず,これを一致点と認定した審決の一致点・相違点の判断には,誤りが あり,原告の前記主張には理由がある。 すなわち,引用された発明が「プロバイオティック」との上位概念で構成されて\nいる場合,その下位概念に「ビフィドバクテリウム,ラクトバシラス」が含まれる ものであるとしても,「ビフィドバクテリウム,ラクトバシラス」により具体的に構\n成された発明が当然に開示されていることにはならない。また,本願補正発明の「甘 味剤構成成分」と,引用発明の「プレバイオティック」とが同一成分で重なるから\nといって,両者を直ちに同一のものととらえることはできない。
(2) 被告の主張について 被告は,刊行物1に,特に好ましい「プロバイオティック」として,ビフィドバ クテリウムやラクトバシルスが例示されていること,技術常識を踏まえれば,「プロ バイオティック」の生存率を高めるために,「プレバイオティック」として例示され た中からグルコース,フルクトース,マンノースに着目することは不自然ではない として,当業者は,引用発明を,「プロバイオティック」として,ラクトバシラスア シドフィラス及びビフィドバクテリウム属の各菌のいずれかを用い,「プレバイオテ ィック」として,グルコース,マンノース及びフルクトースのいずれかを用いた発 明であると認識できると主張する。 そこで,以下,検討する。
・・・
上記のとおり,引用発明の「プレバイオティック」は,「主として大腸の末端部に 対して有益である」とされているから,少なくとも,大腸の末端部まで到達できる ものである必要がある。一方,哺乳動物において,単糖類が小腸から吸収されるこ とは技術常識である。そうすると,当業者が,引用発明の「プレバイオティック」 として,グルコース,マンノース,フルクトースのような単糖類を用いていると認 識するとは直ちにいえない。そして,刊行物1に列挙された「プレバイオティック」 は,前記のとおり多岐にわたっているから,これらの「プレバイオティック」のい ずれと「プロバイオティック」との組合せが,引用発明に作用効果を導いたのかは 判然とせず,当業者が,引用発明「プロバイオティック」と「プレバイオティック」 は,刊行物1に記載されたもののいかなる組合せであってもよいと認識するとはい えない。

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平成26(行ケ)10158  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年7月16日  知的財産高等裁判所

 審判請求時にした補正書に該当するか否かが争われました。裁判所は実質的に判断して補正書に該当すると認定し、拒絶審決を取り消しました。
 特許法17条の2第1項4号は,特許出願人は,拒絶査定不服審判を請 求する場合には,その審判請求と同時に願書に添付した明細書,特許請求 の範囲又は図面について補正をすることができる旨規定し,同法17条4 項は,手続の補正(手数料の納付を除く。)をするには,手続補正書を提 出しなければならない旨規定し,また,特許法施行規則11条1項は,手 続補正書の様式に関し,手続の補正は,「様式13」によりしなければな らない旨規定している。 そこで,本件書面1が様式13に適合するかどうかについて検討するに, 様式13は,「【書類名】」欄に「手続補正書」,「【あて先】」欄に「特 許長官 殿」とそれぞれ記載し,「【事件の表示】」の「【出願番号】」\n欄,【補正をする者】の「【識別番号】」欄,「【住所又は居所】」欄及 び【氏名又は名称】」欄,【代理人】の「【識別番号】」欄,「【住所又 は居所】」欄及び「【氏名又は名称】」欄,「【発送番号】」欄」,「【手 続補正1】」の「【補正対象書類名】」欄,「【補正対象項目名】」欄, 「【補正方法】」欄及び「【補正の内容】」欄を設け,その各欄に具体的 に記載すべき旨定めているところ,前記ア(ウ)によれば,本件書面1は, 「【補正対象項目名】」欄と記載すべきところを「【補正対象項目】」欄 と記載し,「【代理人】」の「【識別番号】」欄の記載がないほかは,様 式13の定めに従った記載がされているものと認められる。 しかるところ,「【補正対象項目名】」欄の欄名を「【補正対象項目】」 と記載したことは,単なる誤記にすぎず,職権訂正の対象となる事柄であ るものと認められる。 次に,様式13の「[備考]」の「2」に「識別ラベルをはり付けるこ とにより印を省略するときは,識別ラベルは「「【氏名又は名称】」(法 人にあつては「【代表?】」)の横にはるものとする。」との記載がある ことからすると,【代理人】の「【識別番号】」欄は識別ラベルを貼付す\nる方法によって記載することができ,また,代理人がその押印をすること により「【識別番号】」欄の記載を要しないものと認められる。本件書面 1には,【代理人】の「【氏名又は名称】」欄に記載されたCの押印はな く,「【識別番号】」欄の記載も,識別ラベルの貼付もないが,前記ア(ア )のとおり,Cは特許庁の窓口(出願支援課窓口)に訪れて,本件審判請求 書とともに,本件書面1を含む書類を提出していること,本件審判請求書 の【代理人】の「【氏名又は名称】」欄には,Cの氏名が記載され,その 押印がされていること(乙6の1枚目)に鑑みると,上記の点は,窓口の 担当者がCに本件書面1への押印を求めることなどにより補正可能な軽微\nな瑕疵にすぎないものと認められる。 さらに,様式13には,「【提出日】」について,括弧書きで「(【提 出日】 平成 年 月 日)」と記載され,それが任意的記載事項であっ て,必要的記載事項に当たらないことが示されている。この点に関し,本 件書面1には,「【提出日】」欄に「平成22年12月 日」との記載が あるが,この記載は具体的な日を特定するものではなく,「【提出日】」 の記載に当たらないといえるから,本件書面1には,具体的な「【提出日 】」の記載がないものとして取り扱うべきものといえる。 以上によれば,本件書面1は,本願の特許請求の範囲の補正を内容とす る書面であって,様式13に適合する手続補正書と認めるのが相当である。
ウ そして,本件審判請求書の「3・立証の趣旨」に,「拒絶されるべきで ない理由」として記載されている主たる理由は,平成20年10月10日 付け手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし16につい て補正をすることで拒絶理由を解消するという内容のものであり(乙6の 5頁ないし9頁記載の「(拒絶理由1)」ないし「(拒絶理由4)」に対 する反論部分を参照),しかも,本件審判請求書の「4・むすび」には, 「したがって,本願発明は引用文献1〜10に記載された発明の内容に関 項を2つにまとめ, よって原査定を取り消す,この出願の発明はこれを特許すべきものとする, との審決をもとめる.」(乙6の10頁〜11頁)との記載がある。これ らの記載は,本願の特許請求の範囲が平成20年10月10日付け手続補 正による補正後の請求項1ないし16から本件書面1記載の請求項1及び 2に補正されたことを前提としたものであることは明らかである。 もっとも,本件審判請求書の「【提出物件の目録】」欄には,「【物件 名】」として,「1・手続補正書 1」及び「7・手続補正書 1」との 記載があり,「1・手続補正書 1」に対応するものとして本件書面1が, 「1・手続補正書 7」に対応するものとして本件書面2が提出されてい るが(前記第2の1(2)ウ),本件書面2(甲45,乙6)には,「【提出 日】」欄に平成22年10月5日,「【補正の内容】」欄に請求項1ない し3がそれぞれ記載され,「22.10.6」と刻印された特許庁国際出 願課名義の日付印が押印されていることに照らすと,本件書面2は,本件 審判請求書の提出日(平成23年12月26日)より前に提出された手続 補正書であり,本件審判請求書の前提とする「請求項を2つにまとめ」る 手続補正に係る手続補正書に当たらないことは明らかである。 さらに,本件においては,拒絶査定不服審判請求書の「【提出物件の目 録】」欄に,拒絶査定不服審判請求と同時にする「手続補正書」を記載し てはならないことを定めた法令が存在することや特許庁がそのような運用 基準を定めて公表していることについての主張立証はない。
エ 前記イ及びウによれば,本件書面1は,本件審判請求書と同時に特許庁 に提出された,本願の特許請求の範囲の補正を内容とする様式13に適合 する手続補正書であるから,特許法17条の2第1項4号に基づく補正に 係る手続補正書に該当するものと認められる。 そうすると,本件審判手続においては,本件書面による補正が特許法1 7条の2第3項ないし5項所定の補正の要件に適合するかどうかについて 審理判断を行い,適法であれば,本件書面による補正後の特許請求の範囲 (請求項1及び2)の記載に基づいて発明の要旨認定を行い,その特許要 件について審理判断を行うべきであったものであるが,本件審決には,本 件書面1による補正がされたことを看過し,上記審理判断を行うことなく, 本件書面による補正前の特許請求の範囲の記載に基づいて発明の要旨認定 を行った誤りがあり,この誤りは,審決の結論に影響を及ぼすべきものと 認められる。

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平成26(行ケ)10186  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月25日  知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした拒絶審決が維持されました。デシテックスと延伸率を,同時に,本願発明の数値範囲まで大きくすることは示唆されていないとしたものの、一般的な糸のサイズを利用しているにすぎないと判断されました。
 他方,両発明は,使用する裸スパンデックス糸のデシテックスの値及びエストラマー材料の供給時における延伸率の制御値が異なっている。そこで,これらを前提に,相違点として,何を認定すべきかを検討する。 確かに,本願発明の延伸率は2.5倍以下であり,引用発明の延伸率は2倍以下 であり,ともに上限を定めていないから,延伸率の値自体を比較すると,引用発明 の範囲である2倍以下は,必ず2.5倍以下という意味において,本願発明の数値 範囲に含まれている。 しかしながら,本願発明と引用発明は,ともに,ヒートセットを不要にするとい う目的を達成するために,一定の回復張力を目指して,糸のスパンデックスと延伸 率という2つのパラメータの組合せを提示するものであるが,甲1【0096】〜 【0099】の実施例8,12,13,35〜37,41〜43,48〜51,5 6,57を見ると,同じスパンデックス数であっても,収縮率が異なっている結果 が出ていることからも明らかなとおり,回復張力は,糸のスパンデックスだけでな く,延伸率や,共に使用される硬質糸の種類やサイズといった諸要素によって決せ られるから,スパンデックスと延伸率は相互に関係するパラメータといえ,単純に, 同一の延伸率値が常に同一の技術的意義を有するとはいえないし,数値として重な り合っている範囲が,常に同一の技術内容を示しているともいえない。他方,スパ ンデックスと延伸率の値は,同一回復張力を前提とする限りにおいて,相互に独立 したパラメータとして,設定できるわけではない。また,延伸率とデシテックスの 関係は,相互に関連するとはいえるが,それ以上の技術的関係が明らかでない以上, 重なり合いの範囲も定かではないから,本願発明と引用発明において,エラストマ ー材料を延伸させる製法である点において一致すると認定できるとしても,延伸率 の数値の点を相違点の認定からおよそ外し,容易想到性の判断から除外することは できないというべきである。 したがって,被告の主張するように,単純に延伸率の値の重なりをもって,本願 発明と引用発明の一致点というべきではないが,他方,原告の主張するように,延 伸率の違いをデシテックスの値と関連しない独立した相違点として挙げることも相 当ではなく,本願発明と引用発明の相違点は,「本願発明の裸スパンデックス糸が4 4〜156デシテックスで,その延伸率が元の長さの2.5倍以下であるのに対し, 引用発明の裸スパンデックス糸が17〜33デシテックスであり,その延伸率が元 の長さの2倍以下である点」と認定した上で,相互に関連したパラメータの変更の 容易想到性を判断すべきである。
・・・
(2) 確かに,デシテックスを大きくすることと,延伸率を大きくすることは, ともに回復張力を大きくする作用を有するものであるから,同程度の回復張力にす るためには,デシテックスを大きくした場合には,延伸率を小さくし,逆に,延伸 率を大きくした場合は,デシテックスを小さくする必要がある。したがって,引用 発明のデシテックスと延伸率を,同時に,本願発明の数値範囲まで大きくするとい う動機付けや示唆は,引用発明が前提としている回復張力を前提にする限りは,当 然には生じてこないというべきである。 しかしながら,本願発明における「44〜156デシテックス」という糸のサイ ズと,引用発明における「17〜33デシテックス」という糸のサイズとは,共に, 市場で普及している20〜400デシテックスという範囲内にあり(乙2〜5,弁 論の全趣旨),両発明は,一般的な糸のサイズを利用しているにすぎないから,この 範囲内にある糸のサイズの変更には,格別,技術的な意義はなく,当業者にとって, 予定した収縮率等に応じて適宜設定できるものといえる。したがって,デシテック\nスの範囲を本願発明の範囲の数値まですることは,当業者が容易に想到できる事項 である。

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平成26(行ケ)10232  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年7月16日  知的財産高等裁判所

 翻訳時に誤りがあった公報を基礎としてなした引用文献に記載の発明の認定に誤りがあったとして拒絶審決が取り消されました。
 ところで,審決は,甲1の[0096]の上記記載について,甲2の【0094】の記載を訳文としてそのまま参照し,「一実施形態において,このプロセスはタッチセンサ式パネルのおそらくは所定の箇所または複数箇所に触れているユーザにより作動させることができる。」と翻訳して,これに基づいて引用発明を前記3(1)のとおり認定し,「触覚による感覚を生成するプロセスは,センサ式パネルの所定の箇所または複数箇所に触れているユーザにより作動させることができる,」と認定した。この表現によれば,引用発明の「複数箇所に触れているユーザにより作動させる」とは,触覚による感覚を生成するプロセスの作動が,ユーザによるタッチセンサ式パネルへの接触が併発,すなわち,ユーザによる同パネルのある箇所への接触と他の箇所への接触とが少なくともある一時点において併存している(当該一時点で見れば,同時に接触していることになる。)ことにより生じる状態を示すと理解するのが通常である。\nそうすると,審決が,仮に,被告の主張するようにユーザが同パネルの複数箇所を同時に接触する状態を示すことを意図していないとしても,上記の表現では,審決が意図しない状態が認識されるから,当該認定は,不適切であったといわざるを得ない。前記の下線部分は,「一実施形態において,このプロセスは,センサ式パネルに触れているユーザにより,所定の箇所又は複数箇所で,作動させることができる。」と翻訳し,これに基づいて,引用発明の該当部分は,「触覚による感覚を生成するプロセスは,センサ式パネルに触れているユーザにより,所定の箇所又は複数箇所で作動させることができる,コンピュータシステム。」と認定すべきであったと解される。\nもっとも,引用文献が外国文献である場合に,引用発明の認定を適切な訳文で表現するのが難しいことは容易に推測できるところであり,十\分に適切な表現ができていない場合に,直ちにそれが引用発明の誤認や審決の取消理由となるものではないから,引用発明の正しい認定を前提として,審決が理解した引用発明に基づく本願発明との相違点及び相違点に関する判断についても検討する必要がある。\n
・・・
したがって,タッチの感知に応答して動的な触覚効果を生成する手段について,本願発明では,「少なくとも2つの実質的に同時に起こるタッチの感知に応答して動的な触覚効果を生成する」もので,動的な触覚効果を生成する原因となるものが,「タッチスクリーン上の少なくとも2つの実質的に同時に起こるタッチ」の感知であるが,引用発明では,そのようなタッチの感知ではない点で異なるものであるから,原告の主張する上記相違点2)は,相違点と認定すべきであり,審決には,この点において相違点の看過があったと認められる。

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平成26(行ケ)10253    特許権  行政訴訟 平成27年7月9日  知的財産高等裁判所

 動機付けなしとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 相違点2についての審決の判断は,要するに,甲2発明の移動体3に「水 平移動可能な移動ステージ」を適用することは,当業者が容易に想到することであ\nり,その場合,当業者は,水平方向に揺動自在な物品載置台11を「固定棚」とす ることを当然想到するというものであるから,「水平移動可能な移動ステージ」の適\n用が容易かどうかの判断は,水平方向に揺動自在な物品載置台11が存在すること を前提にして行われている。 しかし,甲2発明において,既に水平方向に揺動自在な物品載置台11が存在す るのであれば,移動体3の真下にあるステーションSTとの間で物品Bを移載する 場合はもちろん,物品保持部BSとの間で物品Bを移載する場合も,把持具3dを 水平方向に移動させる必要がない。すなわち,物品載置台11を水平方向に揺動さ せれば足りるから,別途「水平移動可能な移動ステージ」を設けて把持具3dを水\n平方向に移動させる理由がないことは明らかである。 イ したがって,当業者が,甲2発明の「水平方向に揺動自在な物品載置台 11」に代えて,相違点2に係る本件訂正発明1の構成を備えるようにすることを\n容易に想到できたか否かを検討すべきところ,甲2発明に「水平移動可能な移動ス\nテージ」を設け,その下方に把持具3dを保持したとすると,そのようにして得ら れるものは,ステーションSTとの間での移載及び物品保持部BSとの間での移載 のうち,一方については,単に把持具3dを昇降させることで行い,他方について は,把持具3dを「水平移動可能な移動ステージ」で水平方向に移動させてから昇\n降させることで行うことになる。 そうすると,甲2発明に「水平移動可能な移動ステージ」を設け,その下方に把\n持具3dを保持して得られるものは,ステーションSTとの間での移載と物品保持 部BSとの間での移載とを,互いに異なる動作で行うことになる。また,ステーシ ョンSTとの間での移載及び物品保持部BSとの間での移載のうち,一方は把持具 3dで,他方は「水平移動可能な移動ステージ」及び把持具3dで,それぞれ行う\nことになるから,ステーション用移載手段SCと保持部用移載手段BCとを移動体 3に設けた単一の物品移載手段BMで兼用しているとはいえなくなる。 すなわち,甲2発明の構成を上記のように変更すると,甲2発明の技術的意義(前\n記(1))が失われることになるから,「物品載置台11」と「水平方向に揺動自在」 とするための部材が省略できることを考慮してもなお,そのような変更をする動機 付けが当業者にあるとは認められない。
ウ 以上に述べたとおり,当業者が,甲2発明に「水平移動可能な移動ステ\nージ」を設け,その「水平移動可能な移動ステージ」の下方に把持具3dを保持す\nる変更を行う動機付けはなく,また,そのようにすると甲2発明の技術的意義を失 わせる結果になるから,阻害要因があるといえ,当業者が容易に想到し得ることで あるということはできない。
(3) 審決の判断について
ア 審決は,甲2の請求項4,【0007】の記載は,物品の移載手段を物品 保持部BSよりも移動体3に備えさせる方が構成の簡素化のために好ましいことを\n示唆し,当業者であれば,物品Bを移動体3の横幅方向に移動させるもの(【003 5】)にもこの示唆が適用可能であることを容易に理解するから,甲2発明に甲1事\n項2の構造又は甲4事項の構\造を適用し,物品Bを移動体3の横幅方向に移動させ る物品載置台11の機能を移動体3が備えるようにすることは,当業者が容易に想\n到し得る事項であると判断した。 しかし,甲2の請求項4,【0007】の記載は,そもそも,甲2に記載された実 施形態に表れていない何らかの新たな構\成を開示したり,それをこれらの実施形態 に付加したりすることを示唆するものではないから,これらの記載に接した当業者 は,甲2に「第1実施形態」として記載された甲2発明の構成の一部に代えて,甲\n1事項2の構造又は甲4事項の構\造を適用することを想到しない。
イ 審決は,移動体3から把持具3dを下降させて移動体3の走行経路の両 脇に位置する物品載置台11上の物品Bへ到達させるために,物品載置台11を移 動体3の把持具3dの真下に移動させるか,反対に,移動体3の把持具3dを物品 載置台11の真上に移動させるかは,単なる二者択一的な選択であるから,甲2発 明において,物品載置台11を移動体3の把持具3dの真下に移動させる代わりに, 移動体3の把持具3dを物品載置台11の真上に移動させるようにすることを阻害 する要因は見当たらないと判断した。 しかし,甲2発明において,移動体3の把持具3dを物品載置台11の真上に移 動させるために,「水平移動可能な移動ステージ」を設け,その下方に把持具3dを\n保持すると,前記のとおり,甲2発明の技術的意義を失わせる結果になるから,物 品載置台11を移動体3の把持具3dの真下に移動させるか,移動体3の把持具3 dを物品載置台11の真上に移動させるかは,単なる二者択一的な選択ではない。
ウ 審決は,甲2の図12に示された実施形態も,【0032】ないし【00 34】に記載されているように,屈曲アーム20bの伸縮動作によって移動体の移 動方向の左右両側に物品Bを出退自在に搬送するとともに,屈曲アーム20b自体 の昇降動作によって物品Bを昇降させて物品載置枠21bに載置するものであって, 甲2発明と同様に,物品Bの水平方向(横方向)移動及び上下動が必要なものであ ると判断した。 しかし,図12に示された実施形態の移動体3は,【0035】に明記されている とおり,物品Bを移動体横幅方向に移動させて物品Bの移載を行うようにしたもの である。そして,一般に物を横方向(水平方向)に移動させるときに,移動を円滑 にするために,また,その物自体やその物が置かれる場所(例えば床)が傷つかな いようにするために,その物を持ち上げて引きずらないようにすることは,日常生 活でも一般常識として普通に行うことである。しかも,甲2に記載された移動体3 のように工場内で物品Bの搬送に使用されるもの(【0002】)においては,物品 Bが精密機器であることも当然想定されるから,物品Bを移動体横幅方向に移動さ せるときにこれを持ち上げて引きずらないようにすることは,技術常識である。そ うすると,屈曲アーム20bが物品Bを僅かに昇降させるのは,「僅かに」とされて いることからも理解されるように,物品Bを移動体横幅方向に移動させるために必 要な限りで昇降するのであって,物品Bを垂直方向に移動させて物品Bの移載を行 うことを意図してのことではない。したがって,上記実施形態から,物品Bの水平 方向移動及び一定幅の上下動を同一の部材により行うことが認識されるものではな い。

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平成26(行ケ)10236  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月30日  知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は、周知技術の認定誤りです。
 甲13からは,上記イの技術が読み取れるものの,証拠(乙1,2)を斟酌したとしても,当該技術事項が,車両用指針装置の技術分野において,当業者に一般に知られている技術であると認めることはできない。上記アの甲9における従来技術の記載を併せて考慮したとしても,甲9の従来例の目的や意義は明らかでなく,審決の認定した「周知技術2」を基礎付けるものとはなり得ない。したがって,審決の認定した「周知技術2」が周知の技術であると認めることはできないから,これを周知の技術であるとした審決の認定には誤りがある。 したがって,目盛り板照射装置及び指針照明装置の各発光輝度がキースイッチのオフによって徐々に低下している状態でキースイッチがオンされた場合に,引用発明に周知技術1及び周知技術2を適用することによって,訂正発明2が容易に想到できることとした審決の判断には誤りがある。
・・・
さらに,審決は,周知技術2を適用することは容易に想到するとした上で,イグニッションスイッチのオフの直後にオンにされる場合には,運転操作に向かっているのであるから,直ちに周知技術2を適用することが自然であり,周知技術2の制御に際して,いったん,目盛りや記号等の表示部分が発光していない状態に制御すること,すなわち,「指針照明装置5に電力を供給して点灯すると同時に目盛板照明装置3を消灯し,・・・指針照明装置5への電力供給に遅延させて目盛板照明装置3に電力を供給して点灯」することは必然であると判断する。\nしかし,イグニッションスイッチをオフした後,運転を再開するためスイッチをオンにした場合,運転に向けてすべての照明手段を点灯させる必要がある中で,徐々に輝度を低下させている照明手段のうち一方をいったん完全に消灯させることが自然であるとは考え難い。また,周知技術2の適用の前提となる,「指針及び目盛り板がともに発光していない状態」を作出しようとするならば,いったん目盛り板照明手段及び指針照明手段のいずれも消灯させた上で,指針照明手段を先に点灯させる などの構成を採り得るのであるから,上記の構\成を必然であるとした審決の判断は採用できない。

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平成26(行ケ)10241  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月30日  知的財産高等裁判所

 公知文献の認定誤りを理由に無効理由無しとした審決が取り消されました。興味深いのは、「半円形状」のものに限定されそれ以外は排除されているとの認定を先行技術の課題解決との関係で取り消したことです。
 そこで検討するに,本件先願当初明細書等(甲24)中,「凹溝条」を なす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」の具体的形状については, 図1から図3及び図9において「半円形状」の「突条部10a」が描かれ ているのみであり,他に上記具体的形状を示す記載も図面もない。 本件先願発明の課題及びその解決の点からみると,前記2(2)よれば, モルタル塗り外壁通気工法につき,従来技術においては,建築物の外壁内 に通気層を形成するに当たり,別部材を要したことから,本件先願発明は, 別部材を用いずに通気層を形成することを課題とし,リブラスに防水シー トを貼着した部材,すなわち,「平板状の複合ラス素材」において「貼\着 された防水シート側に向けて突出させて」「凹溝条」を形成し,「凹溝条」 をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」を備え,その「通気胴 縁部」の「凹溝条」の凸部分,すなわち,「突条部10a」の頂部を建物 の外壁に当接させることによって通気層を形成することにより,別部材を 用いずに通気層を形成し,前記課題を解決するものである。 この点に関し,通気層を形成するためには,「通気胴縁部」の「凹溝条」 の凸部分,すなわち,「突条部10a」の頂部が建物の外壁に接すること により,「凹部分」に通気層となるべき空間が形成されれば足りるといえ る。このことから,従来技術の課題を解決するためには,「通気胴縁部」 が凹凸部分を備えた「凹溝条」をなしていれば足り,その「凹溝条」の 「凹部分」の底が平面であるか否かなどという具体的形状は,上記課題解 決の可否自体を左右する要因ではない。 そして,本件先願当初明細書等において,「半円形状」の「突条部10 a」,すなわち,「半円形状」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」について は,前記のとおり図示されているのみであり,「半円形状」とする意義に ついては記載も示唆もされていない。 加えて,前記2⑴のとおり,本件先願当初明細書の段落【0033】に おいては,「以上,実施例を図面に基づいて説明したが,本発明は,図示 例の限りではない。本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において,当業 者が通常に行う設計変更,応用のバリエーションの範囲を含むことを念の ために言及する。」と記載されており,同記載によっても,「突条部10 a」,すなわち,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」が,本件先願当初明細書 等に図示されている「半円形状」のものに限られないことは,明らかとい える。
以上によれば,本件先願当初明細書等においては,「凹溝条」をなす 「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」の具体的形状は限定されてお らず,図示された「半円形状」のもののみならず,その他の形状のものも 記載されているに等しいというべきである。前述したとおり,本件先願当 初明細書等とほぼ同様の内容を有する甲5明細書等についても,同様のこ とがいえる。 したがって,本件審決が,本件先願当初明細書等においては,「凹溝条」 をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」が半円形状のもののみ に限定されており,その他の形状のものは排除されていると解したことは, 誤りである。

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平成26(行ケ)10241  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月30日  知的財産高等裁判所

 公知文献の認定誤りを理由に無効理由無しとした審決が取り消されました。興味深いのは、「半円形状」のものに限定されそれ以外は排除されているとの認定を先行技術の課題解決との関係で取り消したことです。
 そこで検討するに,本件先願当初明細書等(甲24)中,「凹溝条」を なす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」の具体的形状については, 図1から図3及び図9において「半円形状」の「突条部10a」が描かれ ているのみであり,他に上記具体的形状を示す記載も図面もない。 本件先願発明の課題及びその解決の点からみると,前記2(2)よれば, モルタル塗り外壁通気工法につき,従来技術においては,建築物の外壁内 に通気層を形成するに当たり,別部材を要したことから,本件先願発明は, 別部材を用いずに通気層を形成することを課題とし,リブラスに防水シー トを貼着した部材,すなわち,「平板状の複合ラス素材」において「貼\着 された防水シート側に向けて突出させて」「凹溝条」を形成し,「凹溝条」 をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」を備え,その「通気胴 縁部」の「凹溝条」の凸部分,すなわち,「突条部10a」の頂部を建物 の外壁に当接させることによって通気層を形成することにより,別部材を 用いずに通気層を形成し,前記課題を解決するものである。 この点に関し,通気層を形成するためには,「通気胴縁部」の「凹溝条」 の凸部分,すなわち,「突条部10a」の頂部が建物の外壁に接すること により,「凹部分」に通気層となるべき空間が形成されれば足りるといえ る。このことから,従来技術の課題を解決するためには,「通気胴縁部」 が凹凸部分を備えた「凹溝条」をなしていれば足り,その「凹溝条」の 「凹部分」の底が平面であるか否かなどという具体的形状は,上記課題解 決の可否自体を左右する要因ではない。 そして,本件先願当初明細書等において,「半円形状」の「突条部10 a」,すなわち,「半円形状」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」について は,前記のとおり図示されているのみであり,「半円形状」とする意義に ついては記載も示唆もされていない。 加えて,前記2⑴のとおり,本件先願当初明細書の段落【0033】に おいては,「以上,実施例を図面に基づいて説明したが,本発明は,図示 例の限りではない。本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において,当業 者が通常に行う設計変更,応用のバリエーションの範囲を含むことを念の ために言及する。」と記載されており,同記載によっても,「突条部10 a」,すなわち,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」が,本件先願当初明細書 等に図示されている「半円形状」のものに限られないことは,明らかとい える。
以上によれば,本件先願当初明細書等においては,「凹溝条」をなす 「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」の具体的形状は限定されてお らず,図示された「半円形状」のもののみならず,その他の形状のものも 記載されているに等しいというべきである。前述したとおり,本件先願当 初明細書等とほぼ同様の内容を有する甲5明細書等についても,同様のこ とがいえる。 したがって,本件審決が,本件先願当初明細書等においては,「凹溝条」 をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」が半円形状のもののみ に限定されており,その他の形状のものは排除されていると解したことは, 誤りである。

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平成26(行ケ)10230  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月24日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、無効とした審決を取り消しました。理由は、公然実施品についての認定誤りです。
 審決は,本件発明が,出願当時公然実施されていた発明と同一である(ある いは,公然実施されていた発明から容易に想到することができる)として本件 特許を無効とした。そして,取消事由1において問題となっているのは,審決 の上記判断の前提となった,「本件ナットフィーダと出願当時の公然実施品で ある平成5年製ナットフィーダは同一であるから,本件ナットフィーダ(本件 ナットフィーダ送給装置も含む。)は,本件特許出願当時の公然実施品であっ たと認められる。」との判断が正しいかどうかであり,特に,両者のスピンド ルとノーズピンが同一であって,スピンドルの先端に取り付けられたノーズピ ンが,ナットを貫通する長さを有する構成になっているとの判断が正しいかど\nうかが問題となる。 ところで,本件特許に新規性ないし進歩性欠如の無効事由が存することは, 本件特許が無効であると主張する側が立証すべき事柄であるから,その前提と なる「本件ナットフィーダと平成5年製ナットフィーダが同一であること。」 についても,本件特許が無効であると主張する側が立証責任を負うべきであ る。したがって,この点の立証が尽くされたと判断される場合に初めて,特許 無効の判断をすることができる筋合いとなるが,この点を検討するのに当たっ ては,次の点を考慮する必要があると思われる。 まず,平成5年製ナットフィーダについては,その構造や構\成を直接認定す る根拠となるような図面等の証拠は存在しない(取扱説明書(甲1の1添付の 資料1)は,被告も自認するとおり,平成5年製ナットフィーダ用として個別 に作成されたものではなく,電元社製のあらゆる種類のナットフィーダ共通の ものとして作成されたものであるから,これを直接の根拠として,平成5年製 ナットフィーダの構造や構\成を認定することはできない。)。そのため,間接事 実に基づいて,現存する本件ナットフィーダと平成5年製ナットフィーダが同 一かどうかを判断しなければならないことになる。 しかし,この同一性の認定に当たっては,次のような問題点が存することを 考慮する必要がある。第1に,本件ナットフィーダは,ナットフィーダ送給装 置(本件ナットフィーダ送給装置)のスピンドル先端に付けられたノーズピン が,ナットを「串刺し」にして貫通する長さを有する構成(以下「串刺し方\n式」という。)になっている(甲1の1,47)。これに対し,平成5年製ナッ トフィーダを製作したのは電元社であるところ,電元社は,もともと,電元社 発明(昭和51年出願。甲40)の実施品としてナットフィーダの製造を始め た可能性がある。そして,電元社発明は,串刺し方式の場合の,ナットが串刺\nしロッドを回転しながらすべり落ちるために生じる降下速度のばらつきの問題 を解消すべく,ナットをロッドで串刺しにして保持する代わりに,磁石で吸着 して保持することを特徴としていた(これを「磁石吸着方式」という。)ので あるから,電元社がもともと製造していたナットフィーダも,串刺し方式では なく,磁石吸着方式を採用していた可能性があることは否定できない(当初\nは,磁石吸着方式を採用していたとまで認定することはできないが,電元社の 当初の製品がどのような構造や構\成を持つものであったかを認めるに足りる証 拠はない以上,その可能性を排除することはできないという趣旨である。)。こ\nのように,本件ナットフィーダと電元社がもともと製造していたナットフィー ダとは,異なる構成であった可能\性を否定することができないのであって,こ のことは本件ナットフィーダと平成5年製ナットフィーダも異なる構成であっ\nた一般的可能性を否定することができないことを意味する(平成5年以前に構\ 成を変更した可能性もあるが,変更時期や変更内容を認定するに足りる的確な\n証拠はない。)。第2に,平成5年製ナットフィーダは,平成5年12月に購入 され,平成10年末まで使用された後は,使用されないまま被告社内において 保管されていたものであるが,その間に,その部品の一部であり,使用時には 存在していたヒンジカバー,キックバネ及びチューブがなくなるなどしていた ことが認められる(甲1の1,甲48。なお,この点については,後記の2 (2)ウも参照。)。このように,平成5年製ナットフィーダは,その使用が停止 されてから,平成25年1月にその形状等の確認が行われる(甲1の1)ま で,約15年間も使用されないまま放置されていた上(その間,使用価値のな くなった機械が厳重に管理されていたとは到底考えられない。),その部品の一 部が実際に紛失するなどしてしまっているのであるから,平成5年製ナットフ ィーダが,その同一性を完全に保持したまま保管されていた(したがって,本 件ナットフィーダと完全に同一である)と認定することができないことは明ら かである。そうであるとすると,他の部品も,失われるなどした一般的可能性\nがあることは否定できない。 したがって,平成5年製ナットフィーダと本件ナットフィーダが同一かどう かを判断するのに当たっては,以上のような事情を考慮してもなお同一といえ るだけの証拠や根拠があるかという観点からの検討が必要であると考えられる ところ,次項において説示するとおり,本件審決には,少なくとも,スピンド ル交換の可能性はない(したがって,平成5年製ナットフィーダと本件ナット\nフィーダのスピンドルは同一である)と判断した点において,誤りがあったと 考えざるを得ない。

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平成26(行ケ)10220  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月24日  知的財産高等裁判所

 手袋の外表面に貼\り付けて用いるという新たな用途を見出したとの主張は認められましたが、最終的には、進歩性なしとした審決が維持されました。
前記第2の2のとおり,本願発明の画面操作用治具の装着部の構成は,\n「前記装着部は,指に貼り付けるための貼\付部を有し,該貼付部は,画面操\n作用突起部と反対側に設けられ,指の腹だけでなく,手袋をした状態で,指 の腹に相当する手袋の外表面にも貼\り付けるのに十分な広さを有する付着面\nを備えたフィルム状であり,」というものである。この記載によれば,「貼\n付部」は,「指の腹だけでなく,手袋をした状態で,指の腹に相当する手袋 の外表面にも貼\り付けるのに十分な広さを有する付着面」を備えたものであ\nるというのであるから,画面操作用治具の使用形態として,指の腹に貼り付\nける使用形態だけでなく,手袋をした状態で,指の腹に相当する手袋の外表\n面に貼り付ける使用形態をも規定したものと解するのが相当である。\nそうすると,本願発明の画面操作用治具は,その使用形態に照らして,指 の腹に貼り付けるとの用途だけでなく,手袋をした状態で,指の腹に相当す\nる手袋の外表面に貼\り付けるとの用途によっても使用することができるもの であると認められる。
・・・・
原告らは,引用文献1及び2のいずれも,指の腹に相当する手袋の外表\n面に貼り付けて用いるという本願発明の用途についての開示や示唆はなく,\n引用文献2記載発明のキー操作用補助具については,手袋をして嵩張った 状態での操作はミスタッチを引き起こすことから前提とされていないとし て,これらの引用文献を組み合わせても,本願発明に想到することはでき ないと主張する(前記第3の2(1))。 しかるに,携帯電話機が,例えば,冬場に,手袋をした状態でも操作さ れるという使用形態自体は何ら特別なものではなく,引用文献1記載発明 の入力補助具の装着部の構成について,引用文献2記載発明のキー操作用\n補助具の装着部の構成である貼\付部を有する構成を採用した上で,当該入\n力補助具の粘着剤の粘着力を適宜調整して,手袋をした状態で,指の腹に 相当する手袋の外表面に貼\り付けて使用するとの使用形態にすることが, 当業者であれば容易に想到し得るものであるということができることは, 前記(2)ウのとおりである。 よって,指の腹に相当する手袋の外表面に貼\り付けて用いるという使用 形態についての開示や示唆が引用文献1及び2のいずれにもないとして, 本願発明の構成の容易想到性を否定する原告らの主張は,採用することが\nできない。
なお,審決は,「「指の腹に貼り付けるのに十\分な広さを有する付着 面」は,「指の腹だけでなく,手袋をした状態で,指の腹に相当する手袋 の外表面にも貼\り付けるのに十分な広さを有する付着面」でもあるのが普\n通である」として,引用文献1記載発明の装着部の構成を,本願発明の装\n着部の構成に変更する改変は,当業者が容易に想到し得なかったものでは\nないとと判断した。このような審決の判断は,本願発明の画面操作用治具の 装着部が有する貼付部についての,「指の腹だけでなく,手袋をした状態\nで,指の腹に相当する手袋の外表面にも貼\り付けるのに十分な広さを有す\nる」との文言を,貼付部の付着面の広さを限定する文言と解することを前\n提とするものであり,本願発明の画面操作用治具の装着部の構成が,指の\n腹に相当する手袋の外表面に貼\り付けて用いるとの使用形態をも規定する ものであることを踏まえた上で,相違点に係る本願発明の装着部の構成の\n容易想到性について判断したものではない。 しかしながら,指の腹に相当する手袋の外表面に貼\り付けて用いるとの 使用形態にすることが当業者の容易に想到し得るものであることは上記の とおりであるから,審決の判断に,審決の結論に影響する違法があるとい うことはできない。

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平成26(行ケ)10186  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月25日  知的財産高等裁判所

 数値限定発明について、値を変更することは設計事項であるとして、拒絶審決が維持されました。
 本願発明における「44〜156デシテックス」という糸のサイ ズと,引用発明における「17〜33デシテックス」という糸のサイズとは,共に, 市場で普及している20〜400デシテックスという範囲内にあり(乙2〜5,弁 論の全趣旨),両発明は,一般的な糸のサイズを利用しているにすぎないから,この 範囲内にある糸のサイズの変更には,格別,技術的な意義はなく,当業者にとって, 予定した収縮率等に応じて適宜設定できるものといえる。したがって,デシテック\nスの範囲を本願発明の範囲の数値まですることは,当業者が容易に想到できる事項 である。 そこで,デシテックスの変更と同時に,延伸率を本願発明の範囲内に設定できる かについて,検討する。まず,回復張力の大きさは,商業的に許されている収縮率 に依存するものというべきであるところ,収縮率は,衣類の種類,すなわち,生地 が使用される用途に応じて,許容範囲は異なるものであり,特に,セーターなどに 使用されるゆったりとした生地においては,大きな収縮率が許容されると解されて いる(弁論の全趣旨)。したがって,原告が主張し,引用発明が前提とするように, すべての生地について,収縮率の上限値として7%が必ずしも要求されているとは いえない。そして,大きな収縮率を想定した場合には,許容される延伸率もまた大 きくなることになるところ,本願発明における延伸率である2.5倍という上限値 は,一般的な糸の使用を前提とすれば,その糸の太さにかかわらず,本願出願時に おいて特別に高い値ではない(乙5)。現に,引用文献(甲4及び5)の実施例1で, 本願発明に入るデシテックス数の44デシテックスで,商業上許容される範囲の収 縮率を実現する上で,延伸率として2.7倍を選択していることからすれば,2. 7倍よりも小さい2.5倍以下という延伸率を設定することに,技術的困難性はな い。そうすると,引用発明において想定されている収縮率は,本願出願時の技術水 準上,限界値であったわけではないから,引用発明のデシテックスを大きくするの と同時に,延伸率を大きくすること自体に阻害要因はないし,その場合における「2. 5倍以下」という数値設定も,当業者が容易になし得る程度の設計事項といえる。 したがって,上記相違点は,当業者であれば,容易に想到できるものである。

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平成26(行ケ)10225  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月9日  知的財産高等裁判所

 審決は、訂正請求により無効理由無しと判断しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
 被告は,本件訂正発明1のハイスロールは,従来のハイスロールでは対応できなかった特に高温高圧下でなされる棒鋼,線材又は形鋼の粗圧延に使用されるものであるから,その用途・課題は容易に想到できない旨を主張する。 まず,この点の検討に当たり,本件訂正発明1の特許請求の範囲の記載をみると,「棒鋼,線材,あるいは形鋼の粗圧延のための熱間圧延用複合ロール」との部分は粗圧延全体を示している。そして,特許請求の範囲には,更に「圧延速度が小さいために鋼材と長時間接触することによりロール内部まで温度上昇するとともに水冷による冷却が回転ごとに繰り返されることによる熱疲労き裂が起点となってロール表面が損傷することを防止するため」とあり,本件訂正明細書には「前記したハイス系ロールの使用は,圧延速度の大きな仕上げ及び中間圧延機群での使用に限定されていた。なぜなら,このハイス系ロールを,圧延速度が小さな粗圧延機群に使用する場合,ロールが高温となった鋼材と比較的長い時間接触することにより,熱伝導によってロールの内部まで温度が上昇し,また水冷による冷却がロールの回転ご\nとに繰り返されることにより,ロールの表面から深いき裂が生じるからである。このため,このき裂が起点となって,ロールの表\面が損傷し,ひいては表面の一部が剥離するため,全く使用に耐えるものではなかった。」(【0004】)とあり,圧延速度や温度についての定量的な記載があるものではなく,仕上げ圧延及び中間圧延との相対的な対比として記載されているにすぎず,一方で,本件訂正発明1の「粗圧延」が特定の箇所での使用に限定することを明示する記載は見当たらない(なお,特許法30条1項適用のために示された甲15には,本件訂正発明の熱間圧延複合ロールを,棒鋼,線材の粗スタンドの後段部で使用したことが明示されている〔45〜46頁〕。)。\nしたがって,本件訂正発明1のハイスロールは,棒鋼,線材又は形鋼の粗圧延全般に用いることを目的とするものと認められる。 そうすると,前記(1)にて認定判断のとおり,ハイスロールを棒鋼,線材の粗圧延に用いることは周知技術であり,その際の技術的課題は技術常識なのであるから,本件訂正発明1のハイスロールの使用用途及び解決課題が当業者において容易に想到できないとはいえない。

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平成26(行ケ)10150  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年5月27日  知的財産高等裁判所

 動機付けがないから両者を組み合わせるのは後知恵であるとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 以上によれば,刊行物2発明は,移動体と物品保持部との間及び移動体とステーション(加工装置)との間の物品の各移載手段を,単一の昇降移動手段で兼用し,構成の簡素化を図ることをその技術的意義とするものである。一方,相違点1に係る本件発明の構\\\成は,オーバーヘッド搬送車からその真下に位置する処理加工治具ロードポートへは,オーバーヘッド搬送車の移動ステージ下方に取り付けられて物品を把持するホイスト把持部が下降して,物品を移送するが,オーバーヘッド搬送車の側方に配置される固定棚へは,ホイスト把持部が移動ステージによって固定棚の上方へ水平方向に移動させられてから下降して,物品を移送するものであり,移動体側に物品の昇降移動と横幅移動の双方の手段を兼ね備え,ロードポートと固定棚への物品移載手段を互いに異なる動作で行うものであり,単一の昇降移動手段で兼用しているものではない。 そうすると,刊行物2発明において,把持具が昇降移動する構成に加えて,水平\n方向に移動する構成を適用し,物品載置台及び加工装置へ異なる移動手段で物品を移載するという相違点1に係る構\\\成とすることは,刊行物2発明の技術的意義を失わせることになる。そして,そもそも刊行物2発明においては,物品載置台11が揺動移動する構成となっており,移動体3の直下に位置することが可能\\\であるため,物品移載手段BMの把持具3dは昇降移動のみで物品載置台11との間の物品の移載が可能となるにもかかわらず,あえて把持具3dを水平方向に移動させる構\\\成を追加する必要性がなく,そのような構成に変更する動機付けがあるとは認められない。
ウ(ア) 以上に対し,被告は,刊行物2発明のような,把持具3dを下降させて物品載置台11へ物品を移載する物品移載手段BMがあり,該把持具3dに対して物品載置台11が移動体3の走行経路の両脇に位置するレイアウト構造を有するものにおいては,1)物品載置台11の物品載置部分側を把持具3dの真下に位置するよう横幅方向に移動させた上で把持具3dを下降させるか,又は,2)移動体3の把持具3d側を物品載置台11の物品載置部分の真上に位置するよう横幅方向に移動させた上で把持具3dを降下させるかは,単に二者択一的な動作を選択することで,当業者ならば当然着想する技術思想であり,上記1)の構造とした場合には,物品載置台11の横幅方向の移動機能\\\が不要になるため,これを固定式の物品載置台にできることも,当業者には自明の事項にすぎないと主張する。 しかし,前記イのとおり,刊行物2発明においては,把持具3dが,物品載置台だけではなく,加工装置との間でも単一の移載手段(昇降手段)を兼用することで構成を簡素化することを技術的意義とするものであり,上記1)の構成をあえて2)の構成に変更することの動機付けはないから,刊行物2発明において上記2)の構成が上記1)の構成と二者択一的とはいえないし,結局のところ同主張は後知恵的な発想であり,採用することができない。\n

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◆関連事件です。平成26(行ケ)10149

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平成26(行ケ)10237  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成27年5月12日  知的財産高等裁判所

「・・姿勢にあるとき,〜後縁の最後方位置が,〜〜と比較して前方に位置するものではない」という相違点があるとして、進歩性違反なしとした審決が維持されました。
 以上のことから,相手コネクタ33は,回転中心突起53が溝部49に形成された肩部56のケーブル44側に当接している状態(甲1の第3図の状態)では,コネクタ突合方向の軸線に対してある角度をもった状態,すなわち,相手コネクタ33の前端がもち上がって,上向き傾斜姿勢にある状態であり,この状態から相手コネクタ33を回転させ,嵌合終了状態にしていることがわかる。このときの回転の中心は回転中心突起53であるから,回転中心突起53の断面が円形であるとすると,相手コネクタ33の回転の前後で,回転中心突起53の最後方位置(ケーブル44側の位置)は変わらないことになる。そして,甲1の第3図の記載,回転中心突起56は,肩部56の中で回転するときの中心となるものであり,相手コネクタ33が円滑に回転するように形成されていると解されることや,回転させる前後及びその途中において,相手コネクタ33がコネクタ31に対して上下左右方向に移動できるような隙間が回転中心突起53と肩部56との間に生じるのはコネクタ同士の確実な嵌合という観点から見て望ましいものではないことを考慮すると,回転中心突起53の断面の形状は,基本的には円形が想定されていると考えられる。 もっとも,円滑な回転動作やコネクタの確実な嵌合に支障が出ない限度で,回転 中心突起53の断面が円形以外の形状となることも許容されているものと解される。そして,回転中心突起の断面が円形でない場合には,その形状に応じて回転中心突起53の最後方位置が相手コネクタ33の回転の前後で変わることになるが,甲1にはそのような事項は記載されていないのであって,回転によって,回転中心突起53の最後方位置が回転前に比較して後方に位置するという技術思想が記載されているとはいえない。 したがって,甲1発明は,コネクタ31から相手コネクタ33が外れることを防止するために,回転中心突起53が肩部56の上面に当接して,相手コネクタ33がコネクタ31に対して上方へ動くのを防いでいるものであるが,回転中心突起53の上方に肩部56の上面が位置するように,相手コネクタ33が傾斜している状態で肩部56の前側から後側(ケーブル側)へ回転中心突起53を移動させているものであって,相手コネクタ33の回転により回転中心突起56の最後方位置が後方(ケーブル側)へ移動するものではないから,甲1発明は回転中心突起56の断面形状に関する事項を特定した発明ではないと考えられる。
イ 対比
以上を前提に,本件発明3と対比すると,甲1発明は,「コネクタ嵌合過程にて上記ケーブルコネクタの前端がもち上がって該ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるとき,上記ロック突部の突部後縁の最後方位置が,上記ケープルコネクタがコネクタ嵌合終了姿勢にあるときと比較して前方に位置」するものではないという点において,本件発明3と相違する。したがって,回転中心突起53の形状を円柱状に限定した審決の甲1発明の認定の当否にかかわらず,相違点を肯定した審決の判断に誤りはない。

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平成26(行ケ)10237  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年5月12日  知的財産高等裁判所

「・・姿勢にあるとき,〜後縁の最後方位置が,〜〜と比較して前方に位置するものではない」という相違点があるとして、進歩性違反なしとした審決が維持されました。
 以上のことから,相手コネクタ33は,回転中心突起53が溝部49に形成された肩部56のケーブル44側に当接している状態(甲1の第3図の状態)では,コネクタ突合方向の軸線に対してある角度をもった状態,すなわち,相手コネクタ33の前端がもち上がって,上向き傾斜姿勢にある状態であり,この状態から相手コネクタ33を回転させ,嵌合終了状態にしていることがわかる。このときの回転の中心は回転中心突起53であるから,回転中心突起53の断面が円形であるとすると,相手コネクタ33の回転の前後で,回転中心突起53の最後方位置(ケーブル44側の位置)は変わらないことになる。そして,甲1の第3図の記載,回転中心突起56は,肩部56の中で回転するときの中心となるものであり,相手コネクタ33が円滑に回転するように形成されていると解されることや,回転させる前後及びその途中において,相手コネクタ33がコネクタ31に対して上下左右方向に移動できるような隙間が回転中心突起53と肩部56との間に生じるのはコネクタ同士の確実な嵌合という観点から見て望ましいものではないことを考慮すると,回転中心突起53の断面の形状は,基本的には円形が想定されていると考えられる。 もっとも,円滑な回転動作やコネクタの確実な嵌合に支障が出ない限度で,回転 中心突起53の断面が円形以外の形状となることも許容されているものと解される。そして,回転中心突起の断面が円形でない場合には,その形状に応じて回転中心突起53の最後方位置が相手コネクタ33の回転の前後で変わることになるが,甲1にはそのような事項は記載されていないのであって,回転によって,回転中心突起53の最後方位置が回転前に比較して後方に位置するという技術思想が記載されているとはいえない。 したがって,甲1発明は,コネクタ31から相手コネクタ33が外れることを防止するために,回転中心突起53が肩部56の上面に当接して,相手コネクタ33がコネクタ31に対して上方へ動くのを防いでいるものであるが,回転中心突起53の上方に肩部56の上面が位置するように,相手コネクタ33が傾斜している状態で肩部56の前側から後側(ケーブル側)へ回転中心突起53を移動させているものであって,相手コネクタ33の回転により回転中心突起56の最後方位置が後方(ケーブル側)へ移動するものではないから,甲1発明は回転中心突起56の断面形状に関する事項を特定した発明ではないと考えられる。
イ 対比
以上を前提に,本件発明3と対比すると,甲1発明は,「コネクタ嵌合過程にて上記ケーブルコネクタの前端がもち上がって該ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるとき,上記ロック突部の突部後縁の最後方位置が,上記ケープルコネクタがコネクタ嵌合終了姿勢にあるときと比較して前方に位置」するものではないという点において,本件発明3と相違する。したがって,回転中心突起53の形状を円柱状に限定した審決の甲1発明の認定の当否にかかわらず,相違点を肯定した審決の判断に誤りはない。

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平成26(行ケ)10237  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年5月12日  知的財産高等裁判所

「・・姿勢にあるとき,〜後縁の最後方位置が,〜〜と比較して前方に位置するものではない」という相違点があるとして、進歩性違反なしとした審決が維持されました。
 以上のことから,相手コネクタ33は,回転中心突起53が溝部49に形成された肩部56のケーブル44側に当接している状態(甲1の第3図の状態)では,コネクタ突合方向の軸線に対してある角度をもった状態,すなわち,相手コネクタ33の前端がもち上がって,上向き傾斜姿勢にある状態であり,この状態から相手コネクタ33を回転させ,嵌合終了状態にしていることがわかる。このときの回転の中心は回転中心突起53であるから,回転中心突起53の断面が円形であるとすると,相手コネクタ33の回転の前後で,回転中心突起53の最後方位置(ケーブル44側の位置)は変わらないことになる。そして,甲1の第3図の記載,回転中心突起56は,肩部56の中で回転するときの中心となるものであり,相手コネクタ33が円滑に回転するように形成されていると解されることや,回転させる前後及びその途中において,相手コネクタ33がコネクタ31に対して上下左右方向に移動できるような隙間が回転中心突起53と肩部56との間に生じるのはコネクタ同士の確実な嵌合という観点から見て望ましいものではないことを考慮すると,回転中心突起53の断面の形状は,基本的には円形が想定されていると考えられる。 もっとも,円滑な回転動作やコネクタの確実な嵌合に支障が出ない限度で,回転 中心突起53の断面が円形以外の形状となることも許容されているものと解される。そして,回転中心突起の断面が円形でない場合には,その形状に応じて回転中心突起53の最後方位置が相手コネクタ33の回転の前後で変わることになるが,甲1にはそのような事項は記載されていないのであって,回転によって,回転中心突起53の最後方位置が回転前に比較して後方に位置するという技術思想が記載されているとはいえない。 したがって,甲1発明は,コネクタ31から相手コネクタ33が外れることを防止するために,回転中心突起53が肩部56の上面に当接して,相手コネクタ33がコネクタ31に対して上方へ動くのを防いでいるものであるが,回転中心突起53の上方に肩部56の上面が位置するように,相手コネクタ33が傾斜している状態で肩部56の前側から後側(ケーブル側)へ回転中心突起53を移動させているものであって,相手コネクタ33の回転により回転中心突起56の最後方位置が後方(ケーブル側)へ移動するものではないから,甲1発明は回転中心突起56の断面形状に関する事項を特定した発明ではないと考えられる。
イ 対比
以上を前提に,本件発明3と対比すると,甲1発明は,「コネクタ嵌合過程にて上記ケーブルコネクタの前端がもち上がって該ケーブルコネクタが上向き傾斜姿勢にあるとき,上記ロック突部の突部後縁の最後方位置が,上記ケープルコネクタがコネクタ嵌合終了姿勢にあるときと比較して前方に位置」するものではないという点において,本件発明3と相違する。したがって,回転中心突起53の形状を円柱状に限定した審決の甲1発明の認定の当否にかかわらず,相違点を肯定した審決の判断に誤りはない。

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平成26(行ケ)10175  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年4月28日  知的財産高等裁判所

 本件発明の認定誤りを理由して、新規性無しとした審決を取り消しました。
 ⑵ア 本件審決は,本件発明の「同調」の意義につき,以下のとおり判断した。 すなわち,まず,本件訂正明細書の段落【0027】の記載等によれば,「特許請 求の範囲の『同調』とは,」「回転慣性質量と付加バネとにより定まる固有振動数を, 多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動数に『一致』させることを意\n味する。」とした。 次に,本件訂正明細書の段落【0002】記載の「同調」の意義につき,甲21 号証の記載によれば,「『同調』とは,吸振器系の固有振動数ωnと主振動系の固有 振動数Ωnとを(1)式(判決注:ωn/Ωn=1/(1+μ))の関係にして主振動 系の振幅倍率の最大値を最小にすることを意味する。」とした。 そして,「そうすると,特許請求の範囲の『同調』とは,回転慣性質量と付加バネ とにより定まる固有振動数と多層構造物の固有振動数や共振が問題となる特定振動\n数とを,発明の詳細な説明に記載される『従来一般のTMDによる場合に比べて格 段に優れた振動低減効果を得ること』(【0006】)や,『多層構造物全体に対して\n大きな振動低減効果が得られる』(同)等の作用効果を達成できるように特定の関係 とすることと解される。」と結論付けた。
イ 本件審決は,本件発明の「同調」の意義につき,結論として,「回転慣性 質量と付加バネとにより定まる固有振動数と,多層構造物の固有振動数や共振が問\n題となる特定振動数とを,本件訂正明細書記載の作用,効果を達成できるように特 定の関係とすること」と解される旨述べているところ,「一致」が,比較対象とされ るものの完全な合致のみを指す一義的な用語であるのに対し,「特定の関係」は,「一 致」よりも広義の用語であることは,明らかである。 この点に関し,「特定の関係」の具体的内容については,本件訂正明細書において 記載も示唆もされておらず,不明といわざるを得ない。 また,本件審決は,前記のとおり,本件訂正明細書の段落【0027】の記載等 によれば,「特許請求の範囲の『同調』」は「一致」を意味する旨認定しながら,本 件訂正明細書の段落【0002】記載の「同調」の意義につき,甲21号証の記載 を参照して異なる解釈をし,結論として,「特許請求の範囲の『同調』とは,」前記 「特定の関係」を意味するものと判断しているところ,「特定の関係」の具体的内容 を示しておらず,加えて,最終的に,本件請求項の「同調」の意義を,本件訂正明 細書の記載によって認定した「一致」よりも広義のものと認めた合理的な理由も, 明らかにしていない。
⑶ 小括
以上によれば,本件審決は,本件発明の「同調」の意義を,誤って認定したもの といえる。

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平成26(行ケ)10219  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年4月13日  知的財産高等裁判所

 一致点・相違点の認定に誤りがあるとして、進歩性違反なしとした審決が取り消されました。
 被告は,本件発明1のゴルフボールは,「表面を有する内側球体と内側球体表\面から延びる格子構造」を備えるものであるから,本件発明1のゴルフボールの具体的構\造は,内側球体の表面から延びる格子構\造と格子構造の間に現れる内側球体の表\面とにより形成されるのであり,この点は,従来のいかなるゴルフボールとも構造上異なるから,本件発明1は,甲第1号証発明とは着想において異なるばかりでなく,その異なる着想が具体的な構\造に具現化されており,審決が,「両者の構造や概念は,全く異なるものである」とした点に誤りはない旨主張する(前記第4の1(1)ア)。 しかし,本件発明1における「格子構造」及び「格子部材」についてみると,これらは,「内側球体の表\面から延びる格子構造であって,該格子構\造は複数の相互に連結した格子部材からなり,・・・」(本件請求項1)として特定されているが,「内側球体の表面から延びる格子構\造」とは,ゴルフボールの中心から外側へ向かう方向に内側球体の表面から格子構\造が高くなっていることをいうと解され,この格子構造が格子部材からなるものである。\nそして,本件訂正明細書【0049】の記載に照らすと,従来のゴルフボールにおいては,ディンプルが飛んでいるゴルフボールの表面の空気の境界層を捕捉し,より大きい浮揚と流体抵抗を抑制するように設計されているのに対し,本件発明1では,管状格子構\造が空気の境界層を補足するものであることが理解できる。そうすると,ゴルフボールの表面に設けた凹凸であり,空気の境界層を補足するという観点でみれば,従来のゴルフボールのディンプルも本件発明1の格子構\造も同じ作用効果を奏するものであるということができる。 なお,本件発明1では「格子部材」は二つの凹部分とこの凹部分の間に設けられた凸部分を有する曲線の断面を持ち,格子部材の底部から頂部までの距離,2つの凹部分と突部分が持つべき曲率半径,更には格子部材の頂部がゴルフボールの最外部であり,複数の格子部材が互いに辺を共有して連結された六角形状と五角形状の領域を形成する ことが特定されており,これにより,前記(イ)において説示した相違が存在することとなるが,これらの相違は,甲第1号証発明と本件発明1の相違点と認定した上で,その容易想到性の有無が判断されるべきものである。 よって,被告の上記主張は採用することができない。
b 被告は,甲第1号証発明のディンプルとディンプルとの間の部分が,本件発明1の格子部材に相当することにはならない,甲第1号証発明の「隆起」は,本件発明1の「第1凹部分と第2の凹部分の間に設けられた凸部分を有する曲線の断面を持ち」に相当しないなどとして,審決の一致点及び相違点の認定に誤りはない旨主張する(前記第4の1(1)イ)。 しかし,前記(ア),(イ)及び(エ)aにおいて説示したところに照らすと,被告の上記主張は採用することができない。
(オ) 以上によれば,審決の本件発明1と甲第1号証発明の一致点及び相違点の認定には誤りがある。

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平成26(ネ)10015  債務不存在確認請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年3月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審での訂正の再々抗弁も理由なしと判断されました。
 本件訂正発明1のメッセージ提供手段は,特許請求の範囲(甲7の2)の記載によれば,「前記連絡先番号に係る広告主に対し,前記広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供するメッセージ提供手段」というものである。 ここに,「前記広告情報」とあるのは,「いずれの広告情報に基づいて架電してきたかを識別するための識別番号と連絡先番号とを関連情報として有するデータベース」との発明特定事項中の「広告情報」を指すものであるから,この広告情報は,識別番号を有する「いずれの広告情報」を意味することとなる。すると,「前記広告情報に基づく架電である旨」は「いずれの広告情報に基づく架電である旨」と解することができる。このことは,1)本件訂正発明1が,識別番号に基づいて接続処理をするにもかかわらず,一転して,メッセージ提供手段が提供するメッセージのみがその識別番号を利用しないことが不自然なこと,2)メッセージ提供手段が提供するメッセージが,「広告情報に基づく架電である」それ自体を通知するものであるとした場合,「いずれの広告情報に基づいて架電してきたかを識別するための識別番号」と,広告情報と識別番号との関連付けを明示した意味がなくなってしまうことからみても,肯定することができる。 したがって,特許請求の範囲の記載からは,メッセージ提供手段が提供するメッセージは,「いずれの広告情報に基づく架電である旨」すなわち「複数の広告情報のうちのいずれの広告情報に基づく架電である旨」と解することができる。
(b) 本件明細書の記載
本件明細書(甲1)には,次の記載がある。
・・・
これらの記載によれば,CTI演算部は,あらかじめ記録された所定の応答音声データを応答検知部623Cから出力できるところ,その音声データを,識別番号に従った音声データとすることを妨げる記載はないから,本件訂正明細書の記載を参酌しても,上記特許請求の範囲の記載の検討結果を左右するものとまではいえない。 (c) 被控訴人らの主張について 被控訴人らは,本件訂正発明1のメッセージ提供手段が提供するメッセージは,本件訂正明細書の【0039】【0156】【図10】の記載からみて,「広告情報に基づく架電である」旨であると主張する。 しかしながら,当該メッセージの内容についての特許請求の範囲の記載は,前記のとおり解釈され,明細書における上記各記載のメッセージの内容は,例示にすぎないほか,その記載における「○○からの入電です。」の「○○」も,「広告情報を閲覧した利用者からの入電です。」の「広告情報」も,「いずれの広告情報」と解釈する余地があるから,被控訴人ら主張の記載は,メッセージ提供手段が提供するメッセージが,単に,「広告情報に基づく架電である」旨の通知であることを積極的に根拠付けるものとまではいい難い。 被控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(d) 小括
以上のとおり,本件訂正発明1のメッセージ提供手段が提供するメッセージは,広告主に対して,「複数の広告情報のうちのいずれの広告情報に基づき架電したきたか」を通知するものであり,その広告情報の具体的な内容を広告主に通知することと特定するものと認められる。
・・・・・
上記(a)〜(c)の記載によれば,発信者からの呼を受けた転送元が,その呼を転送先に転送する際に,呼に関するメッセージを提供しているといえ,このような架電接続方式は周知技術であったと認められる。 控訴人は,甲33は,広告に関するものではなく,受信者の利便を目的とするので,甲12A発明とは分野,目的を異にする旨を主張する。しかしながら,相違点である構成【訂正1−G】は,専ら通話の転送の際のメッセージ提供に係るものといえ,控訴人主張の甲33と甲12A発明との相違が,転送の際のメッセージの提供に係る甲33に記載の事項を,相違点に係る周知技術の認定資料とすることを妨げることはない。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
c 容易想到性
甲12A発明は,電話3からの呼を受けたサーバが,その呼をアクセス先の電話に接続(転送)する架電接続方式であるといえる。また,上記bのとおり,発信者からの呼を受けた転送元が,その呼を転送先に転送する際に,呼に関するメッセー ジを提供する架電接続方式は周知技術である。 そうすると,甲12A発明と周知技術は,ともに呼の転送を行う架電接続方式であるから,甲12A発明において,周知技術を採用し,呼をアクセス先の電話に転送する際に,呼に関するメッセージを提供するように設計変更することに格別の困難性は認められない。そして,甲12A発明のサーバは,受けた呼が,どのような種類の広告を見た発信者からの呼であるかを認識できるのであるから(甲12の【0025】),呼をアクセス先の電話に転送する際に,呼に関するメッセージとして,どのような種類の広告を見た発信者からの呼である旨,すなわち,いずれの広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供するように構成することは,当業者であれば容易に想到し得るものであり,その構\成をとったことによる効果も,甲12A発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
(ウ) 控訴人の主張について
1)控訴人は,相違点に係る本件訂正発明1の構成により,着信応答時に,直ちに広告効果があったか否かを広告主に伝えることを可能\とする顕著な効果を奏する旨を主張する。 しかしながら,相違点に係る本件訂正発明1の構成,すなわち,広告主に対しいずれの広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供する構\成が,当業者にとって容易に組み合わせられることは,前記のとおりであり,そのような構成を採用した場合,着信応答時に広告効果があったか否かが分かるのは当然の帰結であるから,控訴人主張の上記効果は,甲12A発明及び周知技術から,当業者が予\測し得る範囲内のものである。 控訴人の上記主張は,採用することができない。 2) 控訴人は,甲12A発明は,架電がすべて広告情報を視聴した者からされるため,アクセス先に対して広告情報に基づく架電である旨のメッセージの提供をする実益はなく,甲12A発明に本件訂正発明1の構成【訂正1−G】を組み合わせる動機付けがない旨を主張する。\n しかしながら,甲12A発明の構成は,広告を視聴せず「アクセス先電話番号」に架電したユーザの存在を排除するものではなく,このことは,本件訂正発明1と全く同様である。\n控訴人の上記主張は,その前提に誤りがあり,採用することができない。 イ 本件訂正発明6 上記アの認定判断によれば,本件訂正発明6が,甲12B発明及び周知技術から容易に想到できたことは明らかである。

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対応する無効審決に対する取消訴訟はこちらです。平成26(行ケ)10184

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平成25(行ケ)10115  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年2月26日  知的財産高等裁判所

 引用文献に記載の発明の認定に誤りがあるとして、拒絶審決が取り消されました。
 本件審決は,引用発明を前記のとおり認定しながら,本件訂正発明1と対比するに当たって,1)刊行物1に「2次元画像検出手段」として「TVカメラ」が例示されていることや,2次元コードを読み取る際の撮像手段としては一般的には「TVカメラ」が採用されていたこと,このようなカメラで用いられるCCDは通常は二次元アレイであること等を勘案すれば,引用発明における「CCD」は「前記読み取り対象の画像を受光するために前記読取位置に配置され,その受光した光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的に配列される」ものであることは明らかであり,引用発明における「CCD」と本件訂正発明1における「光学的センサ」とは「前記読み取り対象の画像を受光するために前記読取位置に配置され,その受光した光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的に配列される光学的センサ」である点で共通するといえる,2)引用発明の如き光学情報読取装置において,その撮像素子上に被写体の 像を結像せしめるための結像レンズを設ける事は須く採用される技術常識であるとともに,カメラでも結像レンズを設ける事は技術常識であるから,引用発明も当然結像レンズを備えているはずであり,引用発明と本件訂正発明1とは「読み取り対象からの反射光を所定の読取位置に結像させる結像レンズ」を備える点で共通するといえる,3)光学情報読取装置において絞りを設ける事も技術常識であるとともに,カメラでも絞りを設ける事は技術常識であるから,引用発明も本件訂正発明1と同様に「該光学的センサへの前記反射光の通過を制限する絞り」を備えることは明らかである,4)光学情報読取装置においてセンサ出力を増幅してから2値化等の処理を行うことは技術常識であり,引用発明における「2値化手段」は本件訂正発明1における「2値化」に,引用発明における「周波数成分比検出回路」は本件訂正発明1における「所定の周波数成分比を検出」することにそれぞれ相当する処理を行うものであるから,引用発明も本件訂正発明1における「カメラ部制御装置」に相当するものを備えているといえるなどとして,前記のとおり,刊行物1は2次元コード読取装置において用いられる光学的センサ(CCD)に存する課題やその解決手段としての光学的センサの構成や構\造を何ら開示するものではないにもかかわらず,光学系に係る技術常識であるとして,刊行物1に記載がないために引用発明として認定していない構成を,本件訂正発明1と引用発明の一致点として認定したものである。このような一致点の認定手法は,本件訂正発明1と引用発明とを適切に対比したものとはいえず,相当でないというべきである。\n

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平成26(行ケ)10153  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年3月5日  知的財産高等裁判所

 スロットマシンについて、進歩性違反なしとした審決が取り消されました。理由は動機付けありおよび本件発明の認定誤りです。
 被告は,甲1発明の扉開閉監視手段(サブCPU82及びセンサ)は,設定値の変更とは無関係であるから,甲1発明の扉開閉監視手段に甲5,甲15及び甲16に記載の設定値の変更に関連する技術事項を適用する動機付けはない旨を主張する。 しかしながら,甲1発明の技術分野(遊技機)と,甲5,甲15及び甲16からうかがわれる周知技術の分野(遊技機)は,同一であり,特段の阻害事由がないのであれば,当業者は,公知の発明に周知の技術を適用しようと動機付けられるところ,上記特段の阻害事由は認められない。 のみならず,甲1発明の扉開閉監視手段は,甲1に,「図55はドアオープン監視機能画面を示している。スロットマシン1の電源が断たれている間,主に遊技店の営業時間外の間に,前面扉37が開けられたことを,例えばセンサといったハードウエアで監視している。そして,スロットマシン1に電源が投入された時に,サブCPU82は,そのハードウエアをチェックし,前面扉37が開けられた形跡を検出した場合には,図示するようなメッセージを液晶表\\示装置22に表示する。遊技店関係者は,このメッセージにより,営業時間外に遊技機に不正行為が行われた可\n 能性が高いことを把握することが出来る。」(【0265】)と記載されているように,不正行為の監視を目的とするものであるところ,その不正行為とは,とりもなおさず,設定の変更のことなのであるから(【0253】),甲1に接した当業者は,更なる不正手段の防止のために,甲1発明の扉開閉監視手段に甲5,甲15及び甲16からうかがわれる不正変更防止の周知技術を適用しようと,強く動機付けられるといえる。\n
・・・
相違点6は,本件発明1の構成【C9】を甲1発明が備えていないというものである。そして,構\\成【C9】は,本件発明1の構成【C2】によって遊技用記憶手段に含まれた,1)所定の確率に基づいて算出される払出率について設定された段階を示す情報を記憶する特定領域,2)遊技の進行状況に関する情報を記憶する領域として記憶すべき情報の重要度に応じて分けられた特別領域,及び3)一般領域の3領域のうち,一般領域に記憶されている情報を,設定変更手段による段階の変更の際に初期化すると特定するものである。 これら,「特定領域」「特別領域」「一般領域」が何を示すものかについては,本件明細書を参酌する必要があるといえるが,これら3領域のうちのいずれが段階変更の際に初期化されるかは,本件明細書の記載を参酌するまでもなく特許請求の範囲の記載から一義的に明らかであり,本件明細書の記載を参酌する必要はない。すな わち,構成【C9】により初期化されるとされたのは一般領域のみであり,特定領域や特別領域の初期化の有無については,構\\成【C9】は何ら限定を付すものではない。
ウ 小括
以上によれば,前記の審決は,相違点6が,一般領域の初期化に係るものであるのにもかかわらず,上記各刊行物記載の発明が,「特定領域」「特別領域」「一般領域」の区分という相違点1に係る事項を有しないことと,特別領域の初期化という相違点6とは関連のない技術事項を有しないことを理由とし,上記各刊行物に相違点6に係る本件発明1の構成の記載がないと判断したものであって,合理的根拠を欠くことが明らかである。\nそうであれば,この点において,審決の判断過程には,誤りがあるといわざるを得ない。

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平成26(行ケ)10146  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年2月26日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明「電子カルテの指示文書作成装置」について、拒絶審決が維持されました。
 引用発明は,従前の紙カルテにおいては,患者別の医師指示簿から当日行うべきオーダーを抽出し,実施記録の記入に至るまでの間,かなりの量の人手による転記及び運搬作業を要し,その事務量の多さに加え,医療事故を招くミスを発生させるおそれがあり,また,医療チーム内の情報の共有化が困難であるなどの問題があったことから,それらを解決するために,医師が事前に一定の日付という条件が満たされれば実施するよう指示した処置,すなわち,「日付を条件とする処置」につき,条件が満たされ,看護師等が実施すべき状況に至ったものを自動的に選択し,同選択により確定した指示に係る処置を,画面に一覧表示してスタッフ等の関係者に伝えるネットカルテに係るものである(乙1号証)。
イ 甲2発明は,前述したとおり,処置の失念等の医療上のミス発生防止を目的の1つとしており,前述した引用発明の目的との間に共通性が認められる。また,甲2発明は,医師が事前に一定の「予見される症状」という条件が満たされれば実施するよう指示した処置,すなわち,「予\\見される症状を条件とする処置」につき,当該症状が現れて条件が満たされ,実施すべき状況に至った処置などを自動的に表示し,関係する医療従事者に伝えるという発明であり,医師による事前の条件付指示につき,当該条件が満たされ,実施すべき状況に至った指示に係る処置を自動的に選択し,同選択により確定した指示に係る処置を,表\\示して医療に携わる関係者に伝えるという点において,引用発明と共通する。 ウ 以上に鑑みれば,当業者において,医療上のミス発生防止を更に徹底するために,引用発明につき,対象とする医師による事前の条件付指示の選択肢を増やすことを考えて甲2発明を適用する動機は,十分にあるものといえる。\nそして,引用発明に甲2発明を適用すれば,対象とする医師による事前の条件付指示につき,引用発明に係る日付を条件とするもののみならず,予見される症状を条件とするものも選択できるようにすること,すなわち,相違点1のうち,前述した「1)条件に合致すると処置が確定する,ナースなどが実行する指示項目が,本願 発明においては,「日付」を条件とするもの又は「予見される症状」を条件とするもののいずれかであるのに対し,引用発明においては,前者のみであること」に係る構\\成に,容易に想到し得るものというべきである。 相違点1のうち,前述した「2)実施すべき指示につき,本願発明においては,操作者が選択して確定指示を発行するのに対し,引用発明においては,システムにおいて自動的に選択されて確定指示が発行されること」については,当業者が必要に応じて適宜決定し得る設計的な事項といえる。 以上によれば,相違点1につき,容易想到性を認めた本件審決の判断に,誤りはない。

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平成26(行ケ)10027  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年2月25日  知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤りを理由として、無効理由無しとした審決が取り消されました。
 審決は,甲1の請求の範囲の請求項1の「Bは,アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2〜60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5〜60のアリール基である。」との発明特定事項は,「Bは,アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2〜60の複素環基又はアルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した置換もしくは無置換の炭素数5〜60のアリール基である」と理解するのが自然であると判断した。 しかし,前記の発明特定事項の文言の構造上,「アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2〜60の複素環基」の部分と「置換もしくは無置換の炭素数5〜60のアリール基」との部分と\n は,「アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した」の部分の後に特に読点による区切りもなく,両部分が「又は」で並列的に記載されているものであって,「アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した」との部分が,「置換もしくは無置換の炭素数5〜60のアリール基」の部分に係るものではないと見るのが自然である。 このことは,甲1の請求の範囲の請求項1の記載を引用し,請求項1の下位概念であって,請求項1の範囲を限定したものと解される請求項2の記載において,「前記一般式(A)において,Bは,アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2〜60の複素環基又はアルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数5〜60のアリール基である請求項1に記載の新規芳香族化合物」とされ,請求項1の記載と同様に,「アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2〜60の複素環基」の部分と「アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数5〜60のアリール基」の部分とが「又は」で並列的に記載される構成とされているところ,「アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した」との部分が「又は」の前後において繰り返され,「アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した」の部分が「炭素数5〜60のアリール基」の部分に係ることが明確にされていることの対比からも裏付けられる。 さらに,審決が認定したように,「アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した置換もしくは無置換の炭素数5〜60のアリール基である」と理解すべきであるとすると,「アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した」との部分と「無置換の」と部分が存在し,矛盾が生じるものと解される。仮に,矛盾がないように「アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した(さらに)置換もしくは(その余は)無置換の」などと解するとすると,その文言上,「アルケニル基も しくはアリールアミノ基が1置換した」との発明特定事項のみでは,アリール基の他の部分が置換しているか無置換であるかが限定されないため,これを限定する発明特定事項を付加したものと解するほかないが,そうであれば,重ねて「置換もしくは無置換の」との同内容の発明特定事項を加えることとなり不自然である。実際に,甲1の請求の範囲の請求項1の「アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2〜60の複素環基」の部分に関し,複素環基には「置換もしくは無置換の」との文言は付されていないにもかかわらず,甲1の明細書(8頁16行以下)の複素環基の例が記載された部分では,「Bの置換又は無置換の複素環基としては,例えば,・・・」とされており,請求項1の複素環基は,何らの文言が付されていないのにかかわらず,「置換又は無置換」,すなわち,置換しているか無置換であるかが限定されないものであることが前提の記載となっている。 以上によれば,甲1の請求の範囲の請求項1の上記発明特定事項は,その記載上,「アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2〜60の複素環基」と「置換もしくは無置換の炭素数5〜60のアリール基」との双方を含むものと理解できるものと認められる。
・・・・
前記エ記載の本件発明1の一応の相違点に係る構成は,その文言上,甲1’発明1の「置換もしくは無置換の炭素数5〜60のアリール基」に包含されるものを含むものであると認められる。\nそして,本件特許の優先日当時,有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料としてアントラセン誘導体が広く用いられており,発光効率,輝度,寿命,耐熱性,薄膜形成性等を改良する目的で,用いるべき置換基の検討がなされていたことが認められるから(甲3〜5,10,11),当業者において,甲1’発明1の置換基の選択肢の中から,本件発明1に係る構成を選択することも十\分に可能であったものというべきであり,同構\成が甲1’発明1の置換基として選択され得ないようなものとは認められない。 そうすると,前記エ記載の本件発明1の一応の相違点に係る構成は,甲1’発明1の「置換もしくは無置換の炭素数5〜60のアリール基」に包含されるものを含むものであり,上記一応の相違点は,実質的な相違点ではないものというべきである。\n以上によれば,審決の甲1発明1の認定には誤りがあり,この誤った甲1発明1の認定に基づいてなされた相違点1の認定にも誤りがある。

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平成24(ワ)15693  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年1月23日  東京地方裁判所

 図書保管管理システム(CS関連発明)について、技術的範囲に属しないと判断されました。また、訂正の抗弁についても、「再訂正によって特許の無効理由が解消されるとは認められない」と判断されました。
 本件発明が物の発明であることに鑑みると,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに対して…更新する」との文言から,上記更新手段は,\n ステーションに搬送された状態で,図書が取り出された状態のコンテナ又は図書が返却された状態のコンテナに対して,記憶手段の記憶内容を更新するという構成を示していると解するのが自然である。そして,本件明細書等には,「図書館員がコンソ\ール54を操作して返却完了の指示を中央処理装置39に入力すると,図書コードと,…コンテナ番号とを組み合わせ,その組み合わせたデータを…前記ハードディスク47等に登録する。」(段落【0051】),「…図書館員がコンソール54を操作して取り出し完了の指示を中央処理装置39に入力すると,…更新する。」(段落【0058】)というように上記解釈を裏付ける記載はあるが,その一方で,本件明細書等には,ステーションに搬送されていない状態で,図書の取り出し又は返却の完了していない状態のコンテナに対して更新するものとする更新手段の構\成については,記載されていないし,かかる構成の示唆すらない。\nさらに,前記の本件明細書等の記載には,「…図書の取り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,…記憶内容が更新される」(段落【0010】),「このようなサイズ別フリーロケーション方式による図書の保管管理手段を採用することにより,…同一寸法の図書ならば,その寸法の図書を収容するためのコンテナ内に任意に返却することが可能となるので,…自動化による図書の取り出し及び返却作業の能\率を効果的に向上させることができる」(段落【0011】)と記載されており,これらの記載から,本件発明において前提とされるサイズ別フリーロケーション方式は,同一寸法の図書ならばコンテナ内に任意に返却することが可能な構\成,すなわち,同一寸法の図書であればその寸法の図書を収容するためのコンテナ内に空きのある限り任意に収容することが可能な構\成とされているものと理解することができる。そして,コンテナ内に空きのある限り図書を任意に収容するためには,図書の取 り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,更新手段が記憶内容を更新する,すなわち,図書の取り出しや返却が行われた状態にあるコンテナに対して記憶内容を更新することが必要であり,そのような構成が本件発明におけるサイズ別フリーロケーション方式の前提となっているものと解される。
ウ したがって,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに対して…更新する更新手段」とは,ステーションに搬送された状態で図書が返却された状態のコンテナに対して記憶内容を更新する構\成を具備する更新手段をいうものと解するのが相当である。
・・・
以上のイないしオによれば,乙22公報,乙26公報,乙23公報,乙27公報には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚領域を設けること,又は,自動倉庫の分野で幅及び高さがそれぞれ異なる棚領域を設けることが記載されており,これらのことが従来周知の技術的事項であると認められる。 また,乙26公報及び乙27公報に記載されているように,自動倉庫に格納される収容物がコンテナ又は容器に収納した状態で格納されることは,周知の事項であり,乙27公報に記載されているように,収容物の寸法に応じて大きさの異なる容器を使い分けることも,従来から一般的に行われていることであると認められる。そして,このコンテナ又は容器が収容される棚領域が,収容物の大きさ(寸法)に対応したものとなることは自明の事項である。 以上によれば,前記イないしオから,「収容物の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領域を有する倉庫とそれぞれが収容された棚領域に対応した寸法を有する複数の収容物を収容する複数のコンテナを備えた自動公庫」との事項が周知技術であると認められる。 キ そして,乙12発明と上記カで認定した周知技術は,コンテナ等に収容物を収容し,このコンテナを,棚等を有する収容場所に格納するものであるという点で共通するから,乙12発明に上記周知技術を適用することは, 当業者が容易になし得たことであると認められる。

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平成26(行ケ)10048  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年1月28日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について進歩性無しとした審決が維持されました。
 原告は,発明の容易想到性を肯定するためには,従来技術とは異なる何らかの構成を採用するに至る契機となる事実がなければならないにもかかわらず,審決は,明確な理由なく容易想到性を認めた旨主張する。\nしかし,引用例1発明及び引用例2発明は,複数の商品を置く場合の商品販売システムという点で共通し,引用例2発明は専門店についても含むことが明記され,書店における書籍の販売も含むものである。また,引用例1発明は,書籍の在庫不足の場合などに販売機会を喪失すること,立ち読みによる書籍の破損等を課題としているところ,引用例2発明は,売り場面積の有効活用,商品の汚損等を課題とするものであって,これを書店について考えれば,書籍の種類が少ない場合に多くの顧客を集めることができないこと,書籍の汚損が生じることを課題として含むものであるから,課題としても共通するものである。そうすると,引用例1及び引用例2に接した当業者であれば,書店において書籍ビュアーを置く際に,引用例2発明に開示されている商品見本の一部をディスプレイに置き換えるという技術及びディスプレイに書籍の外観を表示して書籍を陳列する方法と書籍を書棚に陳列する方法を混在させるという技術を適用して,書籍とともに書籍の外観が表\示されたディスプレイを書棚に置く動機付けがあるというべきである。 したがって,引用例1及び引用例2に接した当業者であれば,引用例1発明に引用例2発明を適用する動機付けがあるというべきであって,これにより,相違点(1)に係る構成を容易に想到することができるというべきである。\nしたがって,原告の主張は理由がない。
(3) 以上によれば,相違点(1)について,審決が,引用例2発明の商品見本陳列棚をディスプレイ群に置き換えることは可能であって,この置換えにおいて,商品見本陳列棚の一部をディスプレイに置き換えても,商品見本を陳列するという目的は達成でき,書店においては,引用例2発明の商品の陳列は書棚の書籍に他ならず,書棚の一部をディスプレイにしたところで,書籍の陳列という目的は達成できる旨判断したことは相当であって,原告の取消事由1は理由がない。\n

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平成25(行ケ)10285  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年1月22日  知的財産高等裁判所

 先願発明の認定の誤りを理由として、拒絶審決が取り消されました。
 ところで,証拠(乙1〜3)によれば,一般に,医薬化合物等の結晶に含まれる水は水和物を形成する結晶水と結晶表面に付着する付着水とに大別されるところ,医薬化合物等の結晶のTGAにおいて,付着水による重量減少はTGA測定の昇温開始と同時に生じ始め,緩慢と進行する場合が多く,重量減少量も湿度等に影響を受けるが,結晶水による重量減少は,一定の決まった温度範囲で生じ,その量は湿度等の影響を受けず,化合物の分子量に対し一定の比となること,当該医薬品化合物等の結晶についてDSC測定(示差走査熱量法。先願明細書の段落【0110】参照。)を行うと,付着水の場合には吸熱ピークが観測されないのに対し,結晶水の場合には,結晶から水が離脱する際の熱的変化のピークが観測される場合があることから,熱分析で付着水か結晶水かの推定を行うことが可能\とされていることが認められる。 そうすると,先願発明において,フォームTのTGAによる重量損失に関わった水が,付着水か結晶水のいずれであるかは,非等温的TG曲線の解析やDSC測定の解析をするなどして,重量減少と温度の関係を観察しなくては推定することができない。したがって,上記のようなフォームTの調製方法や熱重量分析の結果を検討しただけでは,フォームTが一水和物であると認めることはできない。 以上によれば,本件審決が,先願発明であるフォームTを一水和物と認定したことには誤りがあるというほかない。

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平成26(行ケ)10045  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年12月24日  知的財産高等裁判所

 薬(処置剤)について、動機付けなしとして、進歩性違反なしとした審決が取り消されました。
 それに続く引用例1記載の第II相臨床試験でも,乳癌又は多発性骨髄腫患者合計280名に対する0.4mg,2.0mg又は4.0mgの5分間点滴のいずれにおいても,パミドロン酸90mgの2時間点滴と同程度の安全性を示し,4.0mgゾレドロン酸の5分間点滴は,90mgパミドロン酸と同程度の溶骨性骨合併症の予防効果を奏した。\n以上の引用例1及び2に開示されたゾレドロン酸の第I相及び第II相臨床試験の結果によれば,ゾレドロン酸は,4mgという低用量で従来用いられていたパミドロン酸90mgに匹敵する薬効を奏し,5分間の短時間の静脈点滴で安全性が確保できるものであると理解できる。そうすると,・・・相試験で,当該用法用量による安全性について違った結果が生じて用法用量をより安全性の高いものに変更する可能性があることを考慮しても,第I相及び第II臨床試験の段階では,安全性に疑問を呈するような結果は全く出ていないのであるから,患者の利便性や負担軽減の観点からも,引用例1及び2の記載からは,4mgのゾレドロン酸を5分間かけて点滴するとの引用発明の投与時間を更に延長する動機付けを見出すことは困難であるというべきである。

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平成26(行ケ)10107  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年12月24日  知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤りを理由として、進歩性違反なしとした審決が取り消されました。
 上記周知技術に鑑みると,甲15に接した当業者においては,別紙6の図2の保護素子の外部ケース(外側ケース9)が基板に対して接着剤で接着していることにより,外部ケースの内部と外部とで気体が流通しないように密閉された気密状態となっており,これにより低融点金属体及びフラックスが外部ケースの外側の外気環境から保護されていると理解するものと認められる。 もっとも,甲15には,図2の外部ケースが基板と接着していることにより外部ケースの内部と外部とで気体が流通しないように密閉された状態となる構造となっていることについては,明示的な記載はないが,他方で,そのような構\造となっていてないことをうかがわせる記載もないことに照らすと,かかる明示的な記載がないことは,上記認定を妨げるものではない。 そうすると,甲15の図2の保護素子は,その外部ケースが基板に対して接着剤で接着していることにより気密に密着してフラックスを外気環境から保護しているものと理解することができるから,甲15には,相違点2に係る本件発明1の構成が開示されているものと認められる。
ウ この点に関し,本件審決は,甲15の外部ケースは,低融点金属体及び内側封止部とともに発熱体を覆うものであるから,本件明細書の段落【0007】,【0008】に従来技術として記載されているとおり,発熱体,低融点金属体及び内側封止部を完全に密封するものではなく,場合によってはカバーの一部に穴を開けて暴発を防ぐ構\造となっていると理解するのが相当であり,相違点2に係る本件発明1の構成のものとは異なる旨認定した。\n本件審決が引用する本件明細書の段落【0007】には,抵抗付温度ヒューズの従来の技術の説明として,基板(181)の片面に発熱抵抗体(183)と低融点合金体(182)とが絶縁層(189)を介して積層配置された構造のもの(別紙1の図11(a))に関し,基板上に配置された発熱抵抗体と低融点合金体とのショートが生じた場合,「また一般に低融点合金体は周囲にフラックスを伴っているため,このようなショートが起こった場合には,そのスパークによってフラックスが爆発的に化学反応を起こし,大量のガスを発生して抵抗付温度ヒューズがケースごと暴\発するというような問題も生じる。かかる観点から,図には示さないが,これにカバーをして内部の低融点合金体乃至はその周囲に配置されたフラックスを外部の環境から完全に密封するということが困難になっており,場合によってはケースでこの低融点合金体や低融点合金体やその周囲のフラックスを覆うもののカバーの一部に穴を開けてそのような暴発を防ぐ構\造を採用しているものもある。」との記載がある。
しかしながら,本件出願前に甲15に接した当業者は,本件出願後に公開された本件明細書の記載事項を参酌して甲15記載の保護素子の外部ケースの構造を理解することはない。\nまた,本件明細書に従来技術として記載されている事項は,本件出願の発明者が従来技術として認識していたことを意味するが,そのことから直ちに本件出願時の当業者も同様に従来技術として認識していたものと認めることはできない。 さらに,本件明細書には,「すなわち図12に示すように,基板上に配置された発熱抵抗体と低融点合金体とのショート190が生じるのである。これは特に発熱抵抗体193と低融点合金体192との電位差が大きくなればなるほど生じやすくなり,また両者を隔てている絶縁薄膜の厚みが薄くなればなるほど生じやすい。」(段落【0006】)との記載があることからすると,発熱抵抗体と低融点合金体とのショートが生じるかどうかは,発熱抵抗体と低融点合金体との電位差や,発熱抵抗体と低融点合金体との間の絶縁層の厚みにも影響されるものであり,これらを適宜調整することによりショートの発生を抑制することも可能であるものとうかがわれる。\nそうすると,基板の片面に発熱抵抗体と低融点合金体とが絶縁層を介して積層配置され,かつ,低融点合金体の周囲にフラックスが配置され,さらにそのフラックスがケースのカバーで覆われた構造の抵抗付温度ヒューズであるからといって直ちに外部ケースの内部と外部とで気体が流通しないように密閉された気密状態とすることが困難であるとはいえないし,また,カバーの一部に穴を開けて暴\発を防ぐ構造となっているものとはいえ\nない。 以上によれば,本件審決の上記認定は誤りである。

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平成26(行ケ)10103  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年12月24日  知的財産高等裁判所

 本件発明と引用文献との相違点に認定に誤りがあるとして、進歩性なしとした審決を取り消しました。
 以上のとおり,審決は,甲3発明においては,回転ドラム本体内の湿度調整が行われているか明らかではないにもかかわらず,湿度調整をしているかどうかという相違点を看過したものといえる。 原告は,相違点6として,「本件発明3は,「前記製麹原料の攪拌が,前記回転ドラム本体の回転により生じる原料層の傾斜面からの落下により行われ」,「温度及び湿度が任意に調整された前記回転ドラム本体内で前記製麹原料が前記傾斜面から順次落下する時に,前記回転ドラム本体内の空気に触れることにより熱交換が行われ」るのに対し,甲3発明は,ドラムの回転中に温度及び湿度の調整が行われているかは不明であり,また,原料層の傾斜面からの落下による攪拌,及び製麹原料が傾斜面から順次落下する時に熱交換が行われているかも不明である点。」があると主張する。原告の主張する相違点6の中の温度管理の点のうち,最初の室温及び回転ドラム本体内の温度を共に製麹開始温度とする点は相違点2,それ以降の回転時における上昇した温度の調整の点は相違点4の中に含まれていると評価することができるが,湿度調整の有無という相違点について,審決はどの相違点においても実質的に挙げているとはいえないから,この限度で原告の指摘は正当なものである。そして,上記相違点の看過が,本件発明3の進歩性判断に影響を与える可能性があるから,取消事由1は,その限度で理由がある。\n

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平成26(行ケ)10071  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年12月24日  知的財産高等裁判所

 動機付け有りとして、進歩性違反なしとした審決が取り消されました。
 審決は,搬送対象について甲2発明1の搬送対象は,キューイなどの「果菜」であるが,甲3発明1の搬送対象は,薄物や不定形品などの小物類であり,搬送対象の具体的性状を異にしており,この搬送対象の相違により,発明の対象となる技術分野も,甲2発明1において「果菜自動選別装置用果菜載せ体」であるのに対し,甲3発明1では「物品選別装置用物品載せ体」であって,相違すると判断した。 しかし,甲2発明1は,上記のとおり,キューイ等の果菜を選別する装置における果菜を載置する受け台に関するものであり,また,甲3発明1は,上記のとおり,薄物や不定形品などの小物類を自動的に仕分ける装置における小物類を載置する搬送ユニットに関するものであるから,甲2発明1と甲3発明1とは,物品を選別・搬送する装置における物品載せ体,すなわち「物品選別装置用物品載せ体」に関する技術として共通しているといえる。
また,両者が搬送する物品は,甲2発明1では,キューイ等の果菜であるのに対して,甲3発明1では,薄物や不定形品などの小物類であるから,物品の大きさや性状に大きな相違はない。このことは,甲1において,「各種の品物を,大きさ(サイズ)別,重量別などに自動的に選別してより分ける選別装置」と記載され(【0001】),「従来より小荷物,果菜その他の各種品物を大きさ,重量,形状等の条件に基づいて自動的に選別する装置には種々のものがあった」として,従来技術について,特に小荷物と果菜とを区別しておらず,「特にいたみやすい果菜の自動選別」(【0001】として,傷みやすい搬送物の典型として特に果菜を挙げながらも,請求項1において,搬送物につき「果菜や小荷物等」との記載をしており,対象とする物品が,果菜と小荷物等とで異なるとしても,これらの物品を選別,搬送する装置としては,同一の技術分野に属するものと捉えていることが明らかである。しかも,果菜が傷みやすく傷付きやすいとはいえ,甲1にも示されるように,従来から,果菜を選別して搬送方向から側方に送り出す際であっても,容器を傾倒する方式が採用されていたのであるから,破損しやすい小物類との間で,技術分野が異なるというほどに相違するものではない。 さらに,甲2発明1は,前記のとおり,キューイを転動させて受けボックス内に整列させると,受けボックスの下流側内壁面にキューイが当接したり,キューイの相互接触により,キューイの外周面に打ち傷や擦り傷が付いたりすることがあり, キューイの商品価値が損なわれるという問題点を解決するために,コンベアの搬送面上に形成した受け部に果菜物を個々に載置し,果菜物を所定間隔に離間した姿勢に保持して搬送することで,搬送中における果菜物の接触及び衝突を防止することとしたものであるところ,搬送物を選別振り分けする際に,搬送物が壁等の設備に衝突することを防止したり,搬送物同士の相互接触を防止したりするという課題は,ボックス内に整列させる際のみならず,選別・搬送の全過程を通じて内在していることは明らかである。そして,甲2発明1は,振り分けコンベアの受け台が,載置された搬送物を搬送方向側方に送り出す際に,搬送方向側方に向けて傾動可能な構\\成であるところ,傾動させて搬送物を搬送方向側方に送り出すには,ある程度の落下による衝撃,あるいは,接触時に衝撃が生じ,搬送物に損傷や破損の生じるおそれがあることは,従来技術の秤量バケットEを可倒させて,果菜Bを転がして落とす自動選別装置において,傷が付いたり潰れたりするという問題を解決するために,バケット式の果菜載せ体をベルト式の果菜載せ体に置換したと甲1に記載されるように,その構成自体から明らかな周知の課題である。\n一方,甲3発明1は,上記2(3)で認定したように,従来の傾動可能なトレイを備えた方式の場合は,搬送物同士の衝合による損傷や破損の生じるおそれがあり,破損しやすい搬送物の搬送には不向きであるという課題を解決するものである。\nそうすると,甲2発明1と甲3発明1は,課題としての共通性もある。 以上を総合すると,甲2発明1の振分けコンベアの搬送方向側方に向けて傾動可能な構\\成において生じる搬送物の損傷,破損という技術課題を解決するために,甲3発明1を適用して,相違点F’の構成に至る動機付けが存在するといえる。\n

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