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争点別に注目判決を整理したもの

不正競争(その他)

平成30(ネ)10092  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和元年8月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所(46部)

 被告のプログラムの作成行為について、原審は1審原告の主張を一部認め、不競法2条1項7号違反と判断しましたが、控訴審は、全て取り消しました。

 2 不競法2条1項4号,5号,7号及び8号所定の不正競争行為の成否について
前記1(3)のとおり,本件鑑定の結果によれば,鑑定対象とされた300組のソー\nスコードのペアは,類似箇所1ないし4について,共通ないし類似すると判断され たことが認められる。 そこで,かかる鑑定結果を踏まえて,一審被告らが本件ソースコードを使用した\nと評価することができるかについて,以下検討する。
(1) 類似箇所1について
ア 類似箇所1は,字幕データの標準値を格納するクラスメンバ変数を宣言する ものである。 本件鑑定の結果によれば,被告ソフトウェアのソ\ースファイルSourceDe fault.hで宣言されている変数30個のうち,20個の宣言が型,注釈,イ ンデントを含めて原告ソフトウェアのソ\ースファイルGlobalSetting s.hのものと完全に一致し(表記方法が複数あると考えられる●●●●●●●●\n●●●●●●●●●●●●の注釈を含む。),5個では少なくとも変数の名前がGl obalSettings.hのものと一致しており,残りの5個では一致してい ない。 また,本件ソースコードと被告ソ\フトウェアのソースコードに共通してみられる\n特徴として,1)クラスメンバ変数の名前がアンダースコア(_)で始まること,2) 複数の英単語から構成される変数名において,各単語の先頭が大文字になっている\nこと,3)型名にLONGが多用されていること,4)HorizontalをHor iz,VerticalをVertと略していること,5)変数宣言の順番が似てい ること,6)メンバ変数の型を記述する部分に3個のタブ(12個のスペース)を用 いていること,7)●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●のコメントがタブ文 字を含めて完全に一致していることが指摘されている(以下,順に,それぞれ「共 通点1)」などという。)。 そして,鑑定人は,上記共通点3)ないし7)から,原告ソフトウェアと被告ソ\フト ウェアの開発者は同一人物であると判断した上で,変数の一致箇所が多いことと, 共通点6)7)を理由に,被告ソフトウェアが原告ソ\フトウェアを参照して開発された と考えるのが自然である旨述べていることが認められる。
イ 本件ソースコードの類似箇所1に係る部分について\n
(ア) 本件ソースコードの類似箇所1に係る部分は,原告ソ\フトウェアの字幕デ ータの標準値を,GlobalSettings.hのCGlobalSetti ngsクラスのパブリック・メンバ変数に格納し,字幕データの標準値を格納する 変数を宣言するものであって,処理を行う部分ではない。 また,本件ソースコードのうち,被告ソ\フトウェアのソースコードと一致又は類\n似するとされた25個の変数名は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●というものである。そして,上記括弧内の注釈に記載された とおり,上記の変数は,それぞれ,字幕を表示する際の基本的な設定に関する変数\nと解される。
これらの変数名は,字幕制作ソフトウェアで使用する一般的な内容をごく短い英\n単語で表記したものであり,その形式は,変数の命名をアンダースコアで始め(共\n通点1)),各英単語の先頭を大文字にして一体化したもの(共通点2))となっている が,鑑定人は,共通点1)2)について,変数の命名規則として,クラスメンバ変数の 名前の先頭にアンダースコア(_)があり,各単語の先頭を大文字とする命名規則 もWindowsでよくみられ,開発者の慣習であるから,異なる開発者間でも一 致することがあり得るとの意見を述べており,変数名の付け方は,特徴的とはいえ ないと認められる。 さらに,上記25個の変数についてのデータの型名のうち,両者で一致するとさ れた23の変数のデータ型は,LONG型,CString型,BOOL型が使用 されているところ,これらは,マイクロソフト社が提供する標準のデータ型であっ\nて(乙57〜60),特別なものではない。 なお,前記1(3)イ(ア)のとおり,本件鑑定の結果によれば,類似箇所1に係る本件 ソースコードと被告ソ\フトウェアのソースコードは,字幕データの標準値(変数名)\nをパブリック・メンバ変数(公開変数)に格納している点で一致しているとされる。 しかし,これらの変数は字幕データの標準値を設定するものであって,他のクラス の関数から参照されることが前提であるから,パブリック・メンバ変数とすること は通常のことであると解され,本件鑑定においても,この点は有用な一致点とはさ れていない。
(イ) 共通点1)ないし7)について
共通点1)2)は,異なる開発者であっても一致することがあり得るものであること は,前記(ア)で検討したとおりである。 共通点3)は,LONG型が多用されているというもの,共通点4)は単語の略し方 の特徴,共通点5)は,変数宣言の順番であるが,いずれもプログラムの制作者が同 一であれば,同じになることは自然であると解される。また,共通点6)は,変数名 の開始位置を揃えるため,メンバ変数の型を記述する部分にタブ文字を使う際に, 被告ソフトウェアでは2個のタブに相当するスペースを配置すれば十\分で,3個の タブに相当するスペースを与える必然性はないにもかかわらず,3個のタブを使っ ている点で原告ソフトウェアと共通するというものであるが,被告ソ\フトウェアに おいては,タブが2個以上であれば変数名の開始位置を揃えることができるから, 3個のタブを使用したことが不自然とまではいえない。 そうすると,共通点3)ないし6)は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの制作 者が同一であれば不自然な一致とはいえないことから,いずれも,一審被告らが本 件ソースコードを使用したことを推認させるものではない。\n他方,共通点7)は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●のコメントがタ ブ文字を含めて完全に一致しているというものであり,鑑定人は,「特に,『(0:無 し 1:フェードイン)』や『(0:無し 1:フェードアウト)』という表記そのもの,\n『種別』と『(0:無し)』の間にタブ文字が置かれていることは,双方のソースコー\nドの共通点・類似点を強く示唆している。仮に,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウ ェアの開発者が同一人物で,その人物の記憶を手がかりとしても,原告ソフトウェ\nアのソースコードを参照せずに,これほど細かい特徴を一致させるのは難しいので\nはないかと考える。」との意見を述べている。そうすると,共通点7)によれば,一審 被告らが,本件ソースコードの変数定義部分を参照した可能\性を否定できないとい うべきである。
ウ 検討
上記イ(イ)のとおり,類似箇所1に係る本件ソースコードと被告ソ\フトウェアの ソースコードとの共通点7)によれば,一審被告らが,本件ソースコードの変数定義\n部分を参照した可能性は否定できない。\nしかし,上記イ(ア)によれば,類似箇所1に係る本件ソースコードは,変数定義部\n分であり,字幕データの標準値を格納する変数を宣言するもので,処理を行う部分 ではないこと,変数は,いずれも字幕を表示する際の基本的な設定に関する変数で\nあること,変数名は,字幕制作ソフトで使用する一般的な内容を表\す,ごく短い英 単語に基づくものであって,その形式も開発者の慣習に基づくこと,変数のデータ の型は,マイクロソフト社が提供する標準のデータ型であること,注釈の内容も,\n変数名が表す字幕の意味をそのまま説明したものであることが認められる。\nそして,字幕表示に必要な設定項目は,原告ソ\フトウェアの設定メニューから把 握できること(乙64),変数の定義の仕方として,変数名,型,注釈で定義するこ とは極めて一般的であること,変数名は字幕ソフトが使用する一般的な名称である\nこと,データの型はマイクロソフト社が提供する標準の型であること,注釈も一般\n的な説明であることによれば,類似箇所1に係る本件ソースコードの情報の内容(変\n数定義)自体は,少なくとも有用性又は非公知性を欠き,営業秘密とはいえない。 一審被告らが,類似箇所1に係る本件ソースコードの変数定義部分を参照して,\n被告ソフトウェアのソ\ースコードを作成したとしても,このことから他の部分を参 照したことまで推認されるものではない上,それ自体が営業秘密とはいえない変数 定義部分を参照したことのみをもって,本件ソースコードを使用したとも評価でき\nないというべきである。
エ 小括
以上によれば,一審被告らが,類似箇所1について,本件ソースコードの変数定\n義部分を参照した可能性が否定できないとしても,そのことをもって,一審被告ら\nが本件ソースコードを使用したとは評価できない。\n
(2) 類似箇所2及び3について
ア 類似箇所2,3は,それぞれ,字幕データの標準値を格納するオブジェクト の代入演算子,比較演算子のオーバーロードを定義するものであるから,類似箇所 1と同じ変数が使用される。これらの変数は,誤入力を避けるために類似箇所1を コピーして作成したと考えるのが自然であり,類似箇所2,3は,類似箇所1に基 づいて発生したものと解される。 鑑定人も,「類似箇所2,3については,原告ソフトウェア,被告ソ\フトウェアの いずれも,類似箇所1の変数やコメントをコピーし,類似箇所2と類似箇所3のコ ードを記述した可能性を否定できず,類似箇所1に基づいて発生していると考えら\nれるため,類似箇所2,3に基づいて,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの開 発者の同一性を判定したり,被告ソフトウェアの独自性を判定することはできない。」\nとの意見を述べている。
イ 一審原告は,類似箇所3における比較演算子のオーバーロードは,編集中の 字幕フォーマット情報を保存しようとする際,既存のフォーマットのリストの中に, 保存しようとする前記フォーマット情報と同一のものがあるか否かを判断するため に呼び出される比較処理部分であるところ,そもそも被告ソフトウェアにはフォー\nマット情報をファイルに保存してリスト化する機能はないから,この部分は被告ソ\ フトウェアにとって不要であると主張し,B大阪大学大学院情報科学研究科准教授 作成の意見書(甲143。以下「B意見書」という。)は,類似箇所3について,被 告ソフトウェアのソ\ースコードには必要のないコードが存在していることを,流用 の根拠として指摘する。 しかし,演算子のオーバーロードは,C++言語のプログラムでは普通に実装さ れるものであり,被告ソフトウェアのCSourceDefaultクラスの比較\n演算子のオーバーロードは,フォーマット情報をファイルに保存してリスト化する 機能に特化されたものとは認められないから,被告ソ\フトウェアにとって不要なも のとはいえない。 そして,他に,類似箇所2,3が,類似箇所1とは別個に生じた類似箇所である ことを認めるに足りる証拠はなく,類似箇所2,3によって,一審被告らが本件ソ\nースコードを使用したことを推認することはできない。
(3) 類似箇所4について
ア 類似箇所4は,字幕データの標準値をADOインターフェースでmdb形式 のデータベースに格納するためのプログラムに関し,原告ソフトウェアのSSTD\nB.cppのソースコードと被告ソ\フトウェアのMdb.cppのソースコードに\nおいて,52個のフィールド名が一致したというものである。 上記フィールド名自体はmdbファイルから参照可能であるところ,一審被告ら\nは,旧SSTとの互換を得るため,mdbファイルを参照してMdb.cppファ イルを実装したことを認めており,類似箇所4に係るフィールド名の一致は,その ことによって生じたものと推認される。
イ 一審原告は,被告ソフトウェアにおいて,Template.mdbを利用\nし,旧SSTのプロジェクトファイルと互換性のあるプロジェクトファイルをエク スポートできていることは,Template.mdbのセマンティクス,すなわ ち,Template.mdbの解析アルゴリズム(解析ロジック)を利用してい ることを意味するところ,本件鑑定において,類似箇所4から生じるセマンティク スの正確な把握は困難であると指摘されており,Template.mdbのセマ ンティクスの利用は,本件ソースコードを使用していることにほかならない旨主張\nする。
(ア) セマンティクスの意味
セマンティクスとは,データの形式や構造ないし枠であるシンタックスに対応す\nる概念であり,データの意味,内容のことであるとされる(甲95)。 Template.mdbは,旧SSTにおいて生成された字幕データを書き出 すためのmdb形式のファイルを作成するためのひな型であり,ひな型を構成する\nフィールド名,データ型がシンタックスであるのに対し,各フィールドが表す意味,\n各フィールドのデータ型に従った個々のデータ値の表す意味がセマンティクスであ\nると解される。例えば,Globalsテーブル1行目の「strGlobFon tName」(甲48,50)では,フィールド名「strGlobFontNam e」,データ型「テキスト型」がシンタックスであり,フィールドの意味が,字幕本 文フォント名を表し,「MSゴシック」というように文字列(テキスト)で記述する\nということが,セマンティクスに当たる。 この点,一審原告は,セマンティクスとは,解析アルゴリズムであると主張する。 しかし,Template.mdbは,mdb形式のファイルを作成するためのひ な型であり,プログラムではないから,そのセマンティクスに解析アルゴリズムが 含まれるとは解されず,一審原告の主張は採用できない。
(イ) セマンティクスの把握方法
a 類似箇所4に係るフィールド名は,Template.mdbに具体的な字 幕データ等を上書きしたファイルであるmdbファイルをマイクロソフトAcce\nssで開けば見ることができるところ,フィールド名には,「Font」,「Edge」など,字幕制作に携わる者であれば容易に分かる名称が用いられていることから, それ自体から,フィールドの意味を理解することができるものと認められる。例え ば,フィールド名「strGlobFontName」であれば,「FontNam e」の意味は本文フォント名を表すことを理解することができ,「str」の記載か\nら,データ型がハンガリアン記法(変数の型を名前の先頭に付与しておき,変数名 から変数へのアクセス方法に関する情報を伝えようとする記法)により,「CStr ing」,すなわち,文字列型であることを推測することができる。さらに,mdb ファイルのプロパティを見れば,データ型も見ることができるから(甲50),デー タ型がテキスト型(文字列型)であることを確認することができ,本文フォント名 を表し,テキスト型(文字列型)で記載されるフィールドであるというセマンティ\nクスを把握できる。 フィールド名からすぐにはその内容がわからないものについても,mdbファイ ルを参照し,記録されている具体的な字幕データの数値を変えて字幕の変化を見た り,目標とする字幕を見つけて該当項目の数値を確認し,字幕の設定を変えて数値 の変化を確認したりすることにより,データの属性を把握することができると解さ れる。例えば,mdbファイルで保存した字幕ファイルには,strGlobFo ntNameのデータとして,「MSゴシック」のように字体の名称が記載されてい るところ(甲89),これを手掛かりとして,本文フォントの字体の設定を変えたと きに,mdbファイルのstrGlobFontNameのデータがどのように変 化するかを試すことにより,どのような名称の字体が記述されるセマンティクスな のかを把握することは可能であると認められる。\n
また,「strFormat」は,標準設定と異なる個別設定をする際のフォーマ ット情報が格納されたフィールドであり,文字修飾の個別設定を指定すると,md bファイルのstrFormat欄にその個別設定に対応する数字や文字列が格納 される(乙24,28)。そうすると,字幕データの入力内容を変化させ,その変化 に対して格納される数字や文字列がどのように変化するかを確認することで,st rFormatの値がいかなる文字修飾を意味するものであるかを把握できるもの と認められ,セマンティクスを把握することができるというべきである。 以上によれば,一審被告らが,Template.mdbのセマンティクスを利 用しているとしても,かかるセマンティクスは,本件ソースコードを使用しなくて\nも把握可能であるものと認められる。\n
b 鑑定人は,「各フィールドがどのようなセマンティクスを持つのかを正確に 把握するのは,容易なことではない。例えば,iGlobOrientation フィールドが格納している整数値のセマンティクスはかなり複雑である。」との意 見を述べている。 しかし,SSTG1操作マニュアルによれば,原告ソフトウェアにおいては,「表\ 示位置・行配置」欄において,6箇所の表示位置と5箇所の行配置を指定すること\nができるとされるところ(乙25),mdbファイルを参照すれば,iGlobOr ientationのデータ値と「表示位置・行配置」とは,「4」と「横下中央」,\n「1」と「横下中頭」,「8」と「横下中末」,「16」と「横下行頭」というように 1対1の対応で把握することができることが認められる(乙29)。そうすると,本 件ソースコードを参照しなくても,iGlobOrientationフィールド\nのセマンティクスを把握することができるものと認められる。 もっとも,iGlobOrientationは,16進表記で表\されており(甲 101),その各桁の数値と,字幕の表示位置・行配置とがそれぞれ対応していると\n思われるところ,かかる各桁の数値からその意味を把握することは困難であり,鑑 定人の上記意見は,この点を指して正確なセマンティクスを把握するのは容易では ないとするものと推察される。しかし,データ値と「表示位置・行配置」の1対1\nの対応関係を把握できれば互換を得ることができるのであれば,それ以上に,iG lobOrientationのセマンティクスを正確に把握する必要はないと解 されるから,互換を得るために必要なiGlobOrientationのセマン ティクスは,mdbファイルから把握可能であり,本件ソ\ースコードを参照しない 限り把握できないものとはいえない。
(ウ) 以上によれば,一審被告らが,旧SSTとの互換を得るため,mdbファイ ルを参照してMdb.cppファイルを実装していることは,本件ソースコードを\n使用していることを意味するものではない。
ウ 一審原告は,本件鑑定書は,SSTDB.cppファイルとMdb.cpp ファイルは,ファイル自体が類似・共通すると指摘しており,フィールド名の一致 は,両ファイルが一致していると判断する理由の一つにすぎない上,SSTDB. cppファイルの行数は優に3000行を超えるのであるから,類似箇所は52の フィールド名の一致にとどまるものではないと主張し,B意見書は,52のフィー ルド名が一致しており,ファイルが巨大であることから,処理も一致している可能\n性が高いとの意見を述べる。 しかし,本件鑑定において,鑑定人は,原告ソフトウェアのSSTDB.cpp\nと被告ソフトウェアのMdb.cppとの目視確認を行った上で,類似箇所は52\n個のフィールド名にあると鑑定したのであり,処理も含めて両ファイルが類似・共 通すると鑑定していないことは明らかである。 また,B意見書は,被告ソフトウェアのソ\ースコードを視認せずに,類似した処 理を含んでいる可能性が高いと述べているにすぎない上,ファイルの行数が多いこ\nとが処理の一致を意味すると解すべき根拠はないから,採用することはできない。 そして,被告ソフトウェアにおいて,本件ソ\ースコードを参照して原告ソフトウ\nェアの解析アルゴリズムを把握し,同じ処理を行っていることを認めるに足りる証 拠はない。かえって,エクスポートされるmdbファイルの字幕の配置に関するi GlobOrientationフィールドとiOrientationフィール ドのデータ値は,エクスポート前においては,原告ソフトウェア及び被告ソ\フトウ ェアのいずれも変数名を●●●●●●●●●●●●とする変数に格納されているが, 原告ソフトウェアにおいては,データ型をLONG型とし(甲99,原判決別紙a),\n表示位置・行配置の設定について,水平位置,垂直位置,行揃え,縦書き横書きの\n4種の情報を16進表記の特定の桁に割り当て,特定の桁をマスクビットを用いて\nビット演算により抽出している(甲100〜102)のに対し,被告ソフトウェア\nにおいては,データ型を列挙型としており(原判決別紙a),表示位置・行配置の設\n定について,水平位置,垂直位置,行揃え,縦書き横書きの4種の情報を16進表\n記の特定の桁に割り当て,特定の桁をマスクビットを用いてビット演算により抽出 するものではないと解され,表示位置・行配置の設定処理のアルゴリズムは同一で\nはないことが認められるのであって,本件ソースコードを参照したものではないこ\nとが推認されるというべきである。
エ 小括
以上によれば,類似箇所4は,一審被告らによる本件ソースコードの使用を意味\nするものではないのであって,一審原告の主張は採用できない。
(4) 一審被告らによる本件ソースコードの使用の有無\n
ア 以上の検討によれば,類似箇所1については,一審被告らが本件ソースコー\nドの変数定義部分を参照したことにより生じた可能性を否定できないものの,当該\n変数定義部分は営業秘密とはいえない以上,これのみをもって,本件ソースコード\nを使用したとは評価できない。 また,類似箇所2,3は,類似箇所1とは別個に生じた類似箇所ではない。 類似箇所4は,本件ソースコードを参照したことにより生じた一致とはいえない\n上,旧SSTとの互換を得るために本件ソースコードを参照したとも認められない。\nそして,本件鑑定の結果によれば,300組のソースコードのペア中,類似箇所\n1ないし5に該当する118行の他には本件ソースコードと被告ソ\フトウェアのソ\nースコードとが一致ないし類似する部分があったとは認められず,鑑定の対象とな ったソースコード2万9679行(コメント,空行を除いた有効行)のうち2万9\n561行は非類似であって,非類似部分が99%以上となる。 以上によれば,一審被告らが,類似箇所1に係る部分以外に本件ソースコードを\n参照したとは認められず,また,類似箇所1に係る変数定義部分を参照した可能性\nが否定できないことをもって,本件ソースコードを使用したとは評価できない。そ\nうすると,本件ソースコードについて,不競法2条1項7号にいう「使用」があっ\nたとはいえないというべきである。
イ 一審原告の主張について
(ア) 一審原告は,本件鑑定は最低限度の共通性の言及にとどまり,類似箇所や共 通箇所を網羅的に指摘したものではないから,本件鑑定の結果によって,類似箇所 1ないし4以外は類似しないとは認定できない旨主張し,B意見書も,本件鑑定手 法は不十分であり,他に類似箇所がないとはいえない旨の意見を述べる。\nしかし,鑑定人は,「表1.2に示した(判決注:類似箇所1ないし5)以外の場\n所では,類似・共通すると認定できる箇所は見つからなかった」と明記しており, 本件鑑定の結果によっては,他に類似・共通する箇所があるとはいえないことは明 らかである。そして,前記(3)ウのとおり,B意見書は,被告ソフトウェアのソ\ース コードを参照しておらず,具体的な一致箇所を指摘するものではないから,採用の 限りではなく,他に本件鑑定の結果を左右するに足りる証拠はない。よって,一審 原告の主張は理由がない。
(イ) 一審原告は,類似箇所1ないし4の他にも,一審被告らによる本件ソースコ\n
ードの使用を推認させる事実が多数存在するとも主張する。 しかし,以下のとおり,一審原告の主張は,いずれも理由がない。 a 一審原告は,被告ソフトウェアに原告ソ\フトウェアで使用されているsdb 形式の字幕データベースが実装されていたことは,一審被告らが本件ソースコード\nを不当に入手,利用していることを推認させる旨主張する。 しかし,被告ソフトウェアのプログラムファイルに,sdbとの記載があること\nは認められるものの(甲51の1〜5),sdb形式の字幕データベースが実装され ていたことを認めるに足りる証拠はないから,一審原告の主張は,その前提を欠く ものである。
b 一審原告は,被告ソフトウェアと原告ソ\フトウェアには,1)字幕の全体設定 (デフォルト)を縦書きに設定して作成されたmdbファイルをインポートした場 合に,原告ソフトウェアも被告ソ\フトウェアも横書きでインポートされてしまう, 2)一審被告フェイスは平成22年に設立されていて,それ以降に開発された被告ソ\nフトウェアからエクスポートしたExcelファイルの拡張子は「.xlsx」と なるはずであるところ,被告ソフトウェアのエクスポート先の拡張子は「.xls」\nである,3)Excelの言語設定を英語にした状態で,Excelファイルをエク スポートすると,原告ソフトウェアも被告ソ\フトウェアもハングアップする,4)エ クスポート先をC:¥に設定してExcelファイルをエクスポートすると,原告 ソフトウェアと被告ソ\フトウェアもハングアップする,5)横書きで,例えば「ワシ ントンD.C.」と入力した字幕を縦書きに変換すると,原告ソフトウェアも被告ソ\ フトウェアも「D.C.」のピリオドの位置がおかしくなってしまうとの共通したバ グが存在することも,一審被告らによる本件ソースコードの使用を推認させると主\n張する。 しかし,本件鑑定の結果によれば,1)の事象は,被告ソフトウェアでは発生する\nものの,原告ソフトウェアでは発生していないとされ,そもそも事象の共通性が認\nめられない,2)については,原告ソフトウェアは拡張子の情報がリソ\ースの文字列 定数として格納されているのに対し,被告ソフトウェアではC#のソ\ースコード中 で直接記述されているという差異がある,3)については,原告ソフトウェアと被告\nソフトウェアはExcelのAPIを読み出すために異なるアプローチを採用し,\n不具合が発生する直接の原因は原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアでは異なる, 4)については,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアとでは不具合が発生する原因 が異なる,5)については,表示位置を左上から右上に修正させる処理が,原告ソ\フ トウェアと被告ソフトウェアとでは,大きく異なっているとの意見が述べられてい\nる。かかる本件鑑定の結果によれば,これらのバグが共通することは,一審被告ら が,本件ソースコードを使用したことを裏付ける事実とは認められない。\n
c 一審原告は,本件ソースコードと被告ソ\フトウェアのソースコードでは,ス\nペルミスが一致するところ,かかる一致は,一審被告らが本件ソースコードを複製\nしたものでなければ到底発生し得ないものである旨主張する。 しかし,本件鑑定の結果によれば,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアとで共 通するスペルミスは圧倒的に少ないから,共通するスペルミスの存在は一審被告ら が原告ソフトウェアを複製したことの根拠とならないとされる。また,原告ソ\フト ウェアと被告ソフトウェアとで共通して,rubyの複数形をrubiesとすべ\nきところがrubysとなっていたり,ルビの綴りは正しくはrubyであるにも かかわらず,rubiという綴りが混在しているほか,alignmentをal ign,horizontalをhorz又horizと略す傾向があるところ, これらは,原告ソフトウェアを参照しなくても,同一開発者の一貫した記憶間違い\nや発想によっても生じ得るとされる。そうすると,共通するスペルミスも,一審被 告らによる本件ソースコードの使用を推認させる事実とは認められない。\n
d 一審原告は,被告ソフトウェアでは,C++/CLI言語による無用なコー\nディングが行われており,C++言語の本件ソースコードを流用したことを推認さ\nせる旨主張する。 しかし,本件鑑定の結果によれば,鑑定人は,C++言語とC#言語を使い分け るというのは,「Visual Studio」を用いた開発においては合理的な選 択と考えられ,C++/CLI言語は,C++言語とC#言語の間を橋渡しするた めに用いられていると考えられるとの意見を述べている。そうすると,被告ソフト\nウェアにおけるC++/CLI言語でのコーディングの存在も,一審被告らが,一 審原告から持ち出したC++言語のソースコードを流用したことを裏付ける事実と\nは認められない。
e 一審原告は,被告ソフトウェアの開発が開始した平成24年頃には,「Vis\nual Studio2008」,「Visual Studio2010」という 2つの新しい開発環境がリリースされ,広く一般的に利用されていたにもかかわら ず,被告ソフトウェアの当初の開発環境が,原告ソ\フトウェアの開発環境と同じ「V isual Studio2005」であることは,被告ソフトウェアにおいて,\n「Visual Studio2005」で開発された本件ソースコードを流用し\nたことを推認させると主張する。 しかし,本件鑑定の結果によれば,「Visual Studio2005」は, Windows7までしか対応しておらず,被告ソフトウェアの開発環境もWin\ndows7であるから,被告ソフトウェアを開始した時期に,「Visual St udio2005」を開発環境として採用することに,特段の矛盾は見つからない とされる。そうすると,被告ソフトウェアの開発環境が「Visual Stud io2005」であることも,一審被告らが本件ソースコードを流用して被告ソ\フ トウェアのソースコードを作成したことを推認させる事実とは認められない。\nf その他,一審原告は,るる主張するが,いずれも採用できない。
(5) まとめ
以上によれば,一審被告Yの行為は,不競法2条1項7号の営業秘密の使用に該 当せず,一審被告フェイスについても,同項8号の不正競争行為は認められない。 また,同項4号,5号の不正競争行為についても認定することはできない。 その余の争点については判断するまでもないが,原判決が,将来バージョンアッ プされた後の被告ソフトウェアについて,本件ソ\ースコードを使用するものか否か 審理することなく,その使用等の差止めを認めたことは,その範囲が過大であって, 相当でないことを付言する。

◆判決本文

原審はこちら。

◆平成27(ワ)16423

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平成31(ネ)10016  競業差止請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和元年8月7日  知的財産高等裁判所(3部)  東京地方裁判所  立川支部

 元従業員が退職後に同一地域内のまつげエクステサロンで就労したことは競業禁止合意に反せず、不正競争行為(不競法2条1項4号,5号又は8号)にも該当しないと判断されました。争点は、在職中に知り得た秘密情報か否かです。原審はアップされていません。

 本件競業行為が本件各合意に違反するか(争点1)
(1) 退職者に対する競業の制限(以下「競業制限」という。)は,退職者の 職業選択の自由や営業の自由を制限するものであるから,個別の合意あるい は就業規則による定めがあり,かつその内容が,これによって守られるべき 使用者の利益の内容・程度,退職者の在職時の地位,競業制限の範囲,代償 措置の有無・内容等に照らし,合理的と認められる限り,許されるというべ きである。
(2) 就業規則及び退職時合意の効力
ところで,控訴人の就業規則には,1)社員は,退職後も競業避止義務を 守り,競争関係にある会社に就労してはならない,2)社員は,退職または解 雇後,同業他社への就職および役員への就任,その他形態を問わず同業他社 の業務に携わり,または競合する事業を自ら営んではならないとの規定があ るが,この定めは,退職する社員の地位に関わりなく,かつ無限定に競業制 限を課するものであって,到底合理的な内容のものということはできないか ら,無効というほかはない。 また,被控訴人が退職時に提出した「誓約・確認書」には,前述のとおり, 退職後2年間,国分寺市内の競合関係に立つ事業者に就職しないとの約束を することはできない旨の被控訴人の留保文言が付されていたのであるから, これによって競業制限に関する合意が成立したということはできない。 これに対し,控訴人は,控訴人が「誓約・確認書」に「この文言は,当社 が指定した書式ではないので,無効。会社記載文言のみ有効。また,既に入 社時誓約書に記載もあるので,そちらの誓約書を根拠とすることも可能。」\nと記載してその旨説明し,被控訴人も「わかりました」と述べたものである から,「誓約・確認書」の不動文字のとおりの合意が成立したと主張するが, 控訴人の主張する事実を裏付ける的確な証拠はないし,仮に,このような事 実があったとしても,これにより「誓約・確認書」の不動文字どおりの合意 が成立したと解することはできない。
(3) 入社時合意の効力
ア 控訴人は,入社時合意について,被控訴人が,退職後2年間,国分寺市 内でアイリスト業務に従事することを禁止したものであると主張するか ら,入社時合意の効力が問題となる。
イ 入社時誓約書には,1)被控訴人は,退職後2年間は,在職中に知り得た 秘密情報を利用して,国分寺市内において競業行為は行わないこと(13 項),2)秘密情報とは,在籍中に従事した業務において知り得た控訴人 が秘密として管理している経営上重要な情報(経営に関する情報,営業 に関する情報,技術に関する情報…顧客に関する情報等で会社が指定し た情報)であること(10 項),3)被控訴人は,秘密情報が控訴人に帰属 することを確認し,控訴人に対して秘密情報が被控訴人に帰属する旨の 主張をしないこと(12 項)が記載されている(甲3)。 そこで,「秘密情報」の意義が問題となるが,上記入社時誓約書の記 載によれば,入社時合意における「秘密情報」とは「秘密として管理」 された情報であることを要することが理解できる。また,入社時誓約書 の秘密情報に関連する規定は,その内容に照らし,不正競争防止法と同 様に営業秘密の保護を目的とするものと解される。そして,入社時誓約 書には「秘密として管理」の定義規定は存在せず,「秘密として管理」 について同法の「秘密として管理」(2条6項)と異なる解釈をとるべ き根拠も見当たらない。そうすると,入社時誓約書の「秘密として管理」 は,同法の「秘密として管理」と同義であると解するのが相当である。 また,「競業行為」とは,控訴人に在籍中の被控訴人が提供していた 役務の性質に照らせば,他のまつげエクステサロンの経営及び他のまつ げエクステサロンにおけるアイリスト業務への従事を意味すると解され る。 以上によれば,入社時合意は,被控訴人が,退職後2年間は,在職中 に知り得た「秘密情報」を利用して,国分寺市内において他のまつげエ クステサロンの経営をせず,他のまつげエクステサロンにおけるアイリ スト業務に従事しない旨の合意であり,ここにいう「秘密情報」とは秘 密管理性を有する情報であることを要するものと解される。
ウ 被控訴人は,入社時合意は被控訴人の職業選択の自由及び営業の自由を 不当に制限するものであって無効であると主張する。 しかし,上記イのとおり,入社時合意は,2年という期間と国分寺市 内という場所に限定した上で,秘密管理性を有する情報を利用した競業 行為のみを制限するものと解されるから,職業選択の自由及び営業の自 由を不当に制限するものではなく,その制限が合理性を欠くものである ということはできない。

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平成29(ワ)7764  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成31年4月11日  大阪地方裁判所

「被告がランキング1位であるとの表示(本件ランキング表\示)」が品質誤認表示(不競法2条1項14号)と認められました。なお、認められた損害額は直接かかった弁護士費用のうち、発信者情報開示にかかった費用のみです。

(4) 本件サイトにおける被告がランキング1位であるとの表示(本件ランキン\nグ表示)の品質誤認表\示該当性

ア 上記のような本件サイトを閲覧する者の認識からすると,本件ランキン グ表示は,掲載業者の中での,投稿された口コミの件数及び内容に基づく評価との\n間にかい離がないのであれば,品質誤認表示に該当するとはいえない。\nそこでまず,被告への口コミの件数についてみると,本件サイトの表示上,他の\n業者への口コミ件数よりも絶えず多くなっている(甲5の3,甲6の1ないし3, 甲21の1ないし4)。また,被告への口コミの内容についてみると,本件サイト の表示からうかがうことができるものについて,別紙「被告への口コミ内容一覧\n表」記載のとおりの口コミが投稿されている。\nこのように本件サイトの表示からうかがうことができる範囲に限ってみると,被\n告への合計32件の口コミは,一部を除いて基本的に,工事の質や接客態度といっ た被告の提供するサービスの質,内容を高く評価するものであるところ,このこと に,原告も被告への口コミが高評価のものばかりであると主張しているという弁論 の全趣旨を併せ考えると,被告への口コミは,証拠上本件サイトの表示からうかが\nうことができない範囲のものについても,被告の提供するサービスの質,内容を高 く評価するものであると推認される。 このように被告への口コミは,その件数が最も多いだけでなく,その内容も軒並 み高評価のものであることからすると,本件ランキング表示(本件サイトにおける\n被告がランキング1位であるとの表示)と,被告への口コミの件数及び内容に基づ\nく評価との間にかい離はないと認められる。
イ もっとも,そもそも被告への口コミが虚偽のものである場合,例えば, 被告が自ら投稿したものであったり,形式的には施主又は元施主(以下「施主等」 という。)からの投稿であったとしても,その意思を反映したものではなかったり などする場合は,本件サイトの表示上の被告への口コミの件数及び内容をそのまま\nのものとして受け取ることが許されなくなり,その結果,本件ランキング表示との\nかい離があるということとなる。そこで,次にこの点を検討する。
・・・・
以上からすると,本件サイト公開前の日付となっている5件の投稿は,被告の関 与の下にヒューゴにおいて投稿作業をした架空の投稿であると認められる。そして, 確かに,同様の日付の投稿は他の業者についても存在するが,それらの投稿はいず れも各4件である(甲21の2ないし4。甲21の5でも同様である。)から,被 告については,これらにより,本件サイトの公開時点から,既にランキング1位と 表示されていたと推認され,その表\示は虚偽であったといえる。
・・・
また,乙10によれば,被告は,平成24年6月当時,コメントを書いた施主等 にプレゼントを進呈していたと認められ,また,甲15によれば,被告は,平成2 9年9月頃,本件サイトに関する新聞社の取材に対し,「顧客の感想を社員が聞き 取って(自社の口コミとして)投稿したことはあったが虚偽は書いていない」と回 答したと認められ,このように被告が施主等から聞き取った内容を自ら口コミとし て投稿したことがあることは,当事者間に争いがないところ,この対応からすると, 何とかして被告への口コミ件数を増やそうとする姿勢が見て取れる。そしてまた, 乙10によれば,被告の担当者は,平成24年6月28日にヒューゴとの間で本件 サイトの改修を打ち合わせるメールの中で,「過去コメント分の編集(入力日時) の変更はできないでしょうか?」と述べていたと認められるところ,このメールか らは,施主等から投稿される口コミをそのまま反映させようとしない作為的な態度 が見て取れる。
以上のような重大な疑問と被告の態度に加え,前記(ア)のとおり,被告は,その関 与の下に本件サイトの公開時点で架空の投稿が表示されるようにしていたことを考\n慮すると,上記の「地域」が表示された投稿も架空のものと認めるのが相当である。\n
・・・・
ウ 以上からすると,本件サイトにおける被告がランキング1位であるとい う本件ランキング表示は,実際の口コミ件数及び内容に基づくものとの間にかい離\nがあると認められる。 そして,本件サイトが表示するようないわゆる口コミランキングは,投稿者の主\n観に基づくものではあるが,実際にサービスの提供を受けた不特定多数の施主等の 意見が集積されるものである点で,需要者の業者選択に一定の影響を及ぼすもので ある。したがって,本件サイトにおけるランキングで1位と表示することは,需要\n者に対し,そのような不特定多数の施主等の意見を集約した結果として,その提供 するサービスの質,内容が掲載業者の中で最も優良であると評価されたことを表示\nする点で,役務の質,内容の表示に当たる。そして,その表\示が投稿の実態とかい 離があるのであるから,本件ランキング表示は,被告の提供する「役務の質,内容\n・・・について誤認させるような表示」に当たると認めるのが相当である。\n

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平成29(ワ)27298  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成31年3月19日  東京地方裁判所

 機器を持ち出した人は特定できないが、持ち出されたことは認定できるとして、 当該機器の販売額が損害として認められました。グンマジとは、解錠するための特殊工具です。

 前記オの事実に,本件元従業員らが,平成26年10月以降,原告を順 次退職し,被告会社に転職したこと(前記1)を総合すると,株式会社ジョ ーエイ製機製の製造番号555番及び597番のキーマシン(計2台)は, 本件元従業員らのうちの誰かが,原告内に置かれていたものを持ち出したか, 又は,仕事等のために持ち出し,そのまま返却せずに被告会社に移して,業 務に使用したものと認められる。
イ もっとも,本件元従業員らのうちの誰かが上記キーマシン(2台)を持ち 出したことは認められるものの,その中の誰が上記キーマシン(2台)を持 ち出したかは不明であり,被告B又は被告Cが上記キーマシン(2台)を持 ち出したと認めるに足りる証拠はない。
・・・・
  以上のとおり,原告が主張する各不法行為のうち,本件元従業員らのうちの誰 かがキーマシン及びグンマジを持ち出した行為(前記2(2),(3))は,原告に対す る不法行為を構成するというべきである。また,これらの行為は,遅くとも,本\n件元従業員らのうち,最も遅く原告を退職した被告Cの退職日である平成27年 3月31日までに行われたと認められる。 もっとも,被告B又は被告Cが上記不法行為をしたと認めるに足りず,また, 被告B,被告C及び被告Aが上記不法行為に共謀等によりその不法行為に加担し たとも認めるに足りないから,被告B,被告C及び被告Aが不法行為責任を負う とは認められない。
他方,上記キーマシンやグンマジが原告から持ち出された時期は不明であるも のの,これらの工具等は,原告から持ち出された後,いずれかの時期に,被告所 有の車両や本件倉庫に移され,また,被告会社従業員が使用しているのであるか ら,持ち出した者がその時点で既に被告会社の従業員であったか,又は,少なく とも,持ち出した者と意を通じて,被告会社の管理下に移すことに協力した被告 会社の従業員がいたと推認することができる。 そして,上記工具等は,被告会社が行う開錠業務で使用するために持ち出され たものであると認められるから,工具等を持ち出した者,又は,その協力者は, 被告会社での業務のために,工具等を持ち出し,原告に損害を加えているのであ り,使用者である被告会社は,原告に対し,使用者責任に基づく損害賠償責任を 負うというべきである。 これに対し,被告会社は,本件元従業員らの行動を把握していなかったことな どから使用者責任を負うことはないと主張するが,被告会社が被用者の選定やそ の事業の監督について相当な注意をしたとも,相当な注意をしても損害が生ずべ きであったとも認められず,被告会社は使用者責任に基づく損害賠償責任を免れ ないというべきである。
・・・・
キーマシンを持ち出したことによる損害について 証拠(甲16〜19)及び弁論の全趣旨によれば,被告会社の車両及び本件 倉庫に置かれていた原告所有の株式会社ジョーエイ製機製の製造番号555 番及び597番のキーマシンの販売価格は32万円であると認められ,2台の 販売価格合計64万円が損害額となる。
グンマジを持ち出したことによる損害について
原告は,本件元従業員らがグンマジを持ち出したことによって,原告がグン マジの開錠方法を独占的に使用することで得られていた市場による優位性を 喪失し,得べかりし利益を喪失したと主張する。 しかし,原告は,本件講座において,原告従業員ではなく,また,原告従業 員になるとは限らない本件講座の受講生にもグンマジの解錠技術を教え,原告 に入社せずに,鍵師として自らで開錠業務を行うことを考えている元受講生に 対してもグンマジを販売していたといえるから,原告がグンマジの開錠方法を 市場において独占的に使用していたとは認められない。また,グンマジによっ て開錠することができるというスイッチサムターンの一般家庭における普及 率は明らかではなく,スイッチサムターンでない鍵はグンマジを使用しなくて も開錠することができるのであり,原告においても,開錠依頼があった案件の 全てでグンマジが使用されていたわけではない。また,被告会社が開錠業務を 行っていた規模が原告の業務に影響を及ぼす程度であったことを認めるに足 りる証拠はない。(甲36,K〔18-20頁〕,被告B〔18-19頁〕,前記 4)。
以上によれば,本件元従業員らがグンマジを持ち出したことによって,原告 が市場による優位性を喪失したことによる損害が生じたとは認められない。も っとも,本件倉庫にあった構成部品と併せて,F及び本件元従業員らのうちの\n誰かが,合計少なくとも2台のグンマジを持ち出したと認められ,被告会社は この行為について使用者責任に基づく損害賠償責任を負うところ,グンマジの 販売価格は1台29万8000円であったから,2台の販売価格相当額の合計 59万6000円が損害となるといえる。

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平成29(ワ)7764  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成31年4月11日  大阪地方裁判所

 競合会社から、被告の宣伝行為は、全国の外壁塗装業者の中で最も優良であると誤解されるような表示であるとして、不正競争行為に該当するかが争われました。大阪地裁(26部)は、役務の質,内容について誤認させるような表示であると、認定しました。ただ、損害額は8万円です。

 本件サイトを閲覧する者がまず目にすることになる本件サイトのトッ プページ(本件トップページ)の上部には,本件共通表示のタイトルとして「みん\nなのおすすめ,塗装屋さん」の文字が他の文字よりも大きく表示されている(甲5\nの1等)上,その右部には,本件ランキング表が表\示されている。前記のとおり, 本件サイトを訪問する需要者が,サービスの質,内容に言及した口コミを基にした 評価が掲載されているという先入観を持っており,そのような需要者が,「みんな のおすすめ」のタイトルの下でのランキングに接することからすると,本件トップ ページを閲覧した者は,投稿された口コミを基にして外壁塗装業者やリフォーム業 者の提供するサービスの質,内容に関するランキングが作成されており,そのラン キングにおいて1位にランク付けられている業者の提供するサービスの質,内容は, 掲載業者の中で最も「おすすめ」,つまり最も「優良」であると評価されていると 基本的には認識すると考えられる。そして,本件トップページに表示されている\n「みんなのおすすめ,塗装屋さん」という表示及び本件ランキング表\は,本件サイ トのいずれのページにおいても表示されていることに照らせば,本件サイトの閲覧\nを続けていく限り,上記認識は補強されていくものと考えられる。 これに対し,被告は,本件サイトでのランキングは口コミ件数のみに基づくもの であり,閲覧者もそのように認識すると主張し,1)本件サイト説明ページには, 「ランキングは今の所口コミ件数で で決定されているとは通常想定されないことである。 この観点から見ると,前記のうちの2)の本件口コミランキングページの記載につ いては,その直後に「口コミの内容については,投稿後に一定時間を経過してから ランキングへと自動反映される仕組みになっています。」と,口コミ内容を基にし てランキングを作成しているように理解される内容の表示がされており,口コミ件\n数を基にしてランキングを作成しているという内容の表示を文字通りのものとして\n受け取って良いのかに疑問を抱かせてしまう表示になっている。\nまた,前記のうちの1)の本件サイト説明ページの記載については,文字自体は赤 字という比較的目立つものではあるが,その記載場所は同ページの下部にある「管 理人のつぶやき」欄の末尾という目立ちにくい場所にあり,かえって同ページの上 部にある説明本文欄では,その冒頭で本件サイトを「利用者からの投稿によりおす すめ業者をランク付けしたサイト(口コミサイト)」と説明しており,より目立つ 上部の本文欄の記載によって,口コミを基にして業者をサービスの内容,質により ランク付けをしているとの認識を補強することとなっている。 さらに,前記のうちの3)については,確かに本件サイトにはランキング評価上考 えられる諸要素をどのように考慮してランキングを作成したのかについては,全く 記載されていないが,本件サイトのランキングが「おすすめ」の口コミランキング とされている以上,それに接した需要者は,何らかのやり方で口コミに基づいて業 者が提供するサービスの良・不良を評価していると認識するのが通常であると考え られるから,点数等の表示がないからといって,本件サイトのランキングが,投稿\nされた口コミの件数だけを基にして作成されたものであるとの認識が生じるとは認 められない。 したがって,上記の点によっては,口コミを基にして業者をサービスの内容,質 によりランク付けがされているとの上記認識が払拭されるとは認め難く,被告の上 記主張は採用できない。そうすると,結局のところ,本件サイトを閲覧した者は, 本件ランキング表を始めとする本件サイトにおけるランキングは,外壁塗装業者や\nリフォーム業者の提供するサービスの質,内容に関して,投稿された口コミの件数 だけでなく,その内容をも基にして作成されたものであり,本件ランキング表示に\nついては,そのランキングにおいて1位にランク付けられている被告の提供するサ ービスの質,内容が,掲載業者の中で最も優良であると評価されていると認識する と認められる。
(イ) 他方,本件サイトを閲覧した者は,本件サイトが口コミサイトである と認識している以上,本件サイトのランキングも,所詮は口コミという主観的な評 価を集積したものにすぎないということは当然認識しているはずであるから,本件 サイトのランキングにおいて問題とされているサービスの質,内容に関する評価が, それらの客観的な優劣を問題にするものではないことも認識していると認められる。 そして,前記のとおり,本件サイトにはランキング評価上考えられる諸要素をどの ように考慮してランキングを作成したのかについて全く記載されていないことから すると,本件サイトを閲覧した需要者は,結局のところ,そこに記載されている口 コミの中で,高評価の件数が多く,低評価の件数が少なければ上位にランキングさ れ,逆であれば下位にランキングされるといった程度の認識を生じるにすぎないと 認めるのが相当である。 この点について,原告は,本件サイトを閲覧した者が,本件サイトのランキング を見て,外壁塗装業者やリフォーム業者の提供するサービスの質,内容に関する客 観的な優劣がランク付けされたものであり,そのランキングにおいて1位にランク 付けられている被告の提供するサービスの質,内容が客観的に最も優良であると認 識するかのような主張をする。しかし,上記のとおり,本件サイトを閲覧した者は, 口コミランキングである本件サイトのランキングが,口コミという主観的な評価を 集積したものにすぎないということは当然認識しているはずである。また,外壁塗 装業者やリフォーム業者の提供するサービスの質,内容において重要視される諸要 素は,個々人の価値観によって異なるものであるため,これらに関する客観的な優 劣をランク付けすることなどそもそも不可能であることは,誰にでも容易に認識で\nきることである。以上の諸点に照らせば,本件サイトを閲覧した者は,本件サイト のランキングを見ても,外壁塗装業者やリフォーム業者の提供するサービスの質, 内容に関する客観的な優劣がランク付けされたものであるとは認識せず,口コミを 投稿した者の主観的な評価を基にランク付けしたものであると認識すると認められ るから,原告の主張は採用できない。
(ウ) 次に,原告は,本件サイト説明ページでは,本件サイトが「日本全国 で営業している外壁塗装業者を対象に…おすすめの業者をランク付けしたサイト」 であると説明されていること(甲5の2)から,本件サイトを閲覧した者は,本件 ランキングが全国のあらゆる外壁塗装業者の中でのランキングであって,こうした ランキングにおいて被告が1位とされていることから,被告が全国のあらゆる外壁 塗装業者の中で最も優良な業者であるとの認識が生じると主張する。 しかし,本件掲載業者一覧ページを見れば,本件ランキングの対象とされる掲載 業者の範囲が,一覧表示することが可能\な程度のものにすぎないこと(甲5の4 等)は容易に認識できるから,本件サイトの閲覧者において,本件サイトのランキ ングが全国に存在するありとあらゆる外壁塗装業者やリフォーム業者を対象にする ものであるとの認識が生じるとは認められない。そして,本件掲載業者一覧ページ に掲載されている業者の本店所在地が,関西地方の「大阪府」及び「兵庫県」,関 東地方の「東京都」及び「神奈川県」,中部地方の「愛知県」及び「石川県」並び に九州地方の「福岡県」というように各地方にまたがっており,店舗数も7店舗の ものから155店舗のものが掲載されていること(甲5の4,甲17の1及び2, 甲26の1及び2)に照らせば,「日本全国で営業している外壁塗装業者を対象」 というのは,全国的に営業活動を行う事業者を全国各地からピックアップして対象 としたという程度の意味にすぎず,本件ランキングも,そうしてピックアップした 掲載業者の中でのランキングであると理解すると考えられる。したがって,原告の 主張は採用できない。
(エ) 以上のとおりの本件サイトを閲覧する者の認識を前提とすれば,本件 サイトのランキングは,投稿された口コミの件数及び内容を基に作成された,本件 掲載業者一覧ページに掲載されている業者の提供するサービスの質,内容に関する 評価のランク付けを表示したものであって,被告がランキング1位であることは,\n投稿された口コミの件数及び内容に基づき,被告の提供するサービスの質,内容が, 本件掲載業者一覧ページに掲載されている業者の中で投稿者の主観的評価として最 も優良であると評価されていると表示したものである。\n
(4) 本件サイトにおける被告がランキング1位であるとの表示(本件ランキン\nグ表示)の品質誤認表\示該当性
ア 上記のような本件サイトを閲覧する者の認識からすると,本件ランキン グ表示は,掲載業者の中での,投稿された口コミの件数及び内容に基づく評価との\n間にかい離がないのであれば,品質誤認表示に該当するとはいえない。\nそこでまず,被告への口コミの件数についてみると,本件サイトの表示上,他の\n業者への口コミ件数よりも絶えず多くなっている(甲5の3,甲6の1ないし3, 甲21の1ないし4)。また,被告への口コミの内容についてみると,本件サイト の表示からうかがうことができるものについて,別紙「被告への口コミ内容一覧\n表」記載のとおりの口コミが投稿されている。\nこのように本件サイトの表示からうかがうことができる範囲に限ってみると,被\n告への合計32件の口コミは,一部を除いて基本的に,工事の質や接客態度といっ た被告の提供するサービスの質,内容を高く評価するものであるところ,このこと に,原告も被告への口コミが高評価のものばかりであると主張しているという弁論 の全趣旨を併せ考えると,被告への口コミは,証拠上本件サイトの表示からうかが\nうことができない範囲のものについても,被告の提供するサービスの質,内容を高 く評価するものであると推認される。 このように被告への口コミは,その件数が最も多いだけでなく,その内容も軒並 み高評価のものであることからすると,本件ランキング表示(本件サイトにおける\n被告がランキング1位であるとの表示)と,被告へのく評価との間にかい離はないと認められる。\n
イ もっとも,そもそも被告への口コミが虚偽のものである場合,例えば, 被告が自ら投稿したものであったり,形式的には施主又は元施主(以下「施主等」 という。)からの投稿であったとしても,その意思を反映したものではなかったり などする場合は,本件サイトの表示上の被告への口コミの件数及び内容をそのまま\nのものとして受け取ることが許されなくなり,その結果,本件ランキング表示との\nかい離があるということとなる。そこで,次にこの点を検討する。 (ア) まず,本件サイトの公開日は平成24年3月5日であるところ,被告 への口コミとして表示されている口コミのうち5件の口コミについては,口コミ内\n容とともに表示されている日付が,同日より前のもの(同年2月2日,同月11日,\n同月13日,同月21日及び同月25日付け)になっている(同年6月11日時点 の表示として甲21の1)。このような事態は,それらの投稿が真に施主等による\nものであれば,考え難いものである。 この点について,被告は,サイト公開前にヒューゴが入力したテスト投稿の消し 忘れの可能性を指摘する。しかし,被告が,これら5件の口コミが既に投稿されて\nいたと認められる平成24年6月11日(甲21の1)よりも後の同月28日に, ヒューゴに対してバックデイト機能を要求したり,その要求の際に投稿された口コ\nミが直ぐに反映されずにタイムラグが生じるという問題点も併せて指摘したりして いること(乙10)からすると,被告は,それ以前に本件サイトに投稿された口コ ミを確認していたと考えられ,その場合に公開日前の日付が投稿日として表示され\nている口コミがテスト投稿の消し忘れであれば,これを放置するとは考え難いから, そのまま残されている上記5件の口コミが,ヒューゴによるテスト投稿の消し忘れ であるとは考え難い。
また,被告は,1)平成24年2月14日よりも後になって初めて口コミが投稿で きるようになったと思われるにもかかわらず,上記5件の口コミのうち3件はそれ 以前の日付が投稿日となっていること,2)被告の施主等から本件サイトの公開前に 返送されてきたアンケートの存在(乙14)に照らせば,上記5件の口コミについ てはヒューゴが本件サイトの公開後に施主等の投稿をバックデイトしたものである 可能性が高いと主張する。しかし,ヒューゴは被告からの依頼を受けて本件サイト\nを制作したにすぎず,本件サイトの公開後にヒューゴが被告の依頼を受けて注力し ていたのも各種キーワードによる検索順位の向上にすぎない(乙6ないし12)か ら,そのようなヒューゴが,本件サイトの歴史を少しでも長く見せようなどとして, 本件サイトの公開後に投稿された口コミを独断でバックデイトしようとする動機が そもそも見いだし難い(なお,被告が平成24年6月28日にヒューゴにバックデ イト機能を要求していることからすると,それ以前に表\示されていた上記5件の投 稿が,被告がバックデイトを指示したものであるとも考え難い。)。そして,上記 1)の主張は,本件口コミ投稿フォームが完成するまでの間については,ヒューゴで あっても口コミを投稿できないことを前提とするものであるが,本件サイトの仕組 みに照らせば,制作者であるヒューゴであれば,本件口コミ投稿フォームが完成す る前でも口コミの投稿作業をすることは不可能ではなかったと認められる(甲5,\n28,29,弁論の全趣旨)。また,上記2)の主張については,本件サイトの公開 前に返送されたアンケートは,飽くまで本件サイト外でのアンケートにすぎないか ら,仮に上記5件の投稿内容がアンケート結果に即したものであったとしても,上 記5件の投稿が本件サイトの公開後にされたものをバックデイトしたものであると 推認されるわけではない。また,この点はおくとしても,被告以外の業者に関する 口コミについても,口コミ内容とともに表示されている日付が本件サイトの公開日\nである平成24年3月5日より前になっているものがあること(甲21の2ないし 4。なお,甲21の5については時期が明らかでない。)に照らせば,被告に対す るアンケートの存在から,口コミ内容とともに表示されている日付が本件サイトの\n公開日である平成24年3月5日より前になっている理由を説明できるものではな い。したがって,被告の上記主張は採用できない。 以上からすると,本件サイト公開前の日付となっている5件の投稿は,被告の関 与の下にヒューゴにおいて投稿作業をした架空の投稿であると認められる。そして, 確かに,同様の日付の投稿は他の業者についても存在するが,それらの投稿はいず れも各4件である(甲21の2ないし4。甲21の5でも同様である。)から,被 告については,これらにより,本件サイトの公開時点から,既にランキング1位と 表示されていたと推認され,その表\示は虚偽であったといえる。
(イ) 次に,本件サイト公開後の投稿を見ると,1)掲載業者に対する投稿フ ォームは,(a)平成24年6月11日時点では,「地域」と「口コミ内容」を入力す るものであった(甲33の1)のが,(b)同年12月16日までには,「名前」, 「メールアドレス」,「ウェブサイト」及び「コメント」を入力するものに変更さ れ(甲33の2),その後,(c)セキュリティのための計算式の回答の入力が加わり (甲6),その状態が平成27年5月25日時点でも維持されていた(甲28の 1)こと,2)掲載業者以外の業者に対する投稿フォームは,平成27年5月25日 時点でも(a)と同じであったこと(甲27の1)が認められる。 これによれば,掲載業者に対する投稿については,少なくとも平成24年12月 16日以降は「地域」を入力することがないはずであるが,その後の被告及び他の 1社の情報の掲載ページでは,氏名が表示されるべき欄に地域が表\示されているも のが見られる(被告についての甲6の1では3件,他社についての甲6の3では2 件)。しかも,乙10によれば,本件サイトでの掲載業者への投稿は,平成24年 6月28日以降は投稿内容が即時に反映させる仕様になっていたと認められるから, 上記の投稿もそれによるもののはずである。そうすると,上記の投稿は不可解とい うほかなく,この点について被告から合理的な説明はないから,それらの投稿が真 に施主等がした真正なものであるかについては重大な疑問を抱かざるを得ない。 また,乙10によれば,被告は,平成24年6月当時,コメントを書いた施主等 にプレゼントを進呈していたと認められ,また,甲15によれば,被告は,平成2 9年9月頃,本件サイトに関する新聞社の取材に対し,「顧客の感想を社員が聞き 取って(自社の口コミとして)投稿したことはあったが虚偽は書いていない」と回 答したと認められ,このように被告が施主等から聞き取った内容を自ら口コミとし て投稿したことがあることは,当事者間に争いがないところ,この対応からすると, 何とかして被告への口コミ件数を増やそうとする姿勢が見て取れる。そしてまた, 乙10によれば,被告の担当者は,平成24年6月28日にヒューゴとの間で本件 サイトの改修を打ち合わせるメールの中で,「過去コメント分の編集(入力日時) の変更はできないでしょうか?」と述べていたと認められるところ,このメールか らは,施主等から投稿される口コミをそのまま反映させようとしない作為的な態度 が見て取れる。
以上のような重大な疑問と被告の態度に加え,前記(ア)のとおり,被告は,その関 与の下に本件サイトの公開時点で架空の投稿が表示されるようにしていたことを考\n慮すると,上記の「地域」が表示された投稿も架空のものと認めるのが相当である。\n (ウ) もっとも,上記(ア),(イ)で述べた投稿を除いても,被告への投稿件数 が1位であることに変わりはない。そして,乙10によれば,被告の担当者は,平 成24年6月28日,ヒューゴとの間で本件サイトの改修を打ち合わせるメールの 中で,「あと技術的な部分の確認なのですが,コメント入力後の即反映に変更する ことはできないでしょうか?プレゼントを差し上げるため,お客様に入力確認の連 絡を頂いているのですが,タイムラグが発生してしまい上手く進んでいません。」 と述べていたと認められるところ,このメールからすると,施主等自身が実際に投 稿をすることがあったと認められるから,被告への口コミとして表示されている口\nコミのうち,投稿日が本件サイトの公開日以降となっているもの全てが虚偽のもの であるといえないことは明らかである。しかし,上記のとおり平成24年3月5日 の時点で被告は架空の投稿を表示し,同年12月16日以降も架空の投稿をしてい\nるのであって,施主等への通常の投稿の勧誘により被告への高評価の投稿数が1位 になるのであれば,そのような架空の投稿までする必要はないはずである。このこ とに加え,前記のとおり上記の間の同年6月28日の時点でも被告は施主等からの 投稿日を変更しようとする作為的な態度を示していたことからすると,被告は,架 空の投稿を相当数行うことによって,ランキング1位の表示を作出していたと推認\nするのが相当である。
ウ 以上からすると,本件サイトにおける被告がランキング1位であるとい う本件ランキング表示は,実際の口コミ件数及び内容に基づくものとの間にかい離\nがあると認められる。 そして,本件サイトが表示するようないわゆる口コミランキングは,投稿者の主\n観に基づくものではあるが,実際にサービスの提供を受けた不特定多数の施主等の 意見が集積されるものである点で,需要者の業者選択に一定の影響を及ぼすもので ある。したがって,本件サイトにおけるランキングで1位と表示することは,需要\n者に対し,そのような不特定多数の施主等の意見を集約した結果として,その提供 するサービスの質,内容が掲載業者の中で最も優良であると評価されたことを表示\nする点で,役務の質,内容の表示に当たる。そして,その表\示が投稿の実態とかい 離があるのであるから,本件ランキング表示は,被告の提供する「役務の質,内容\n・・・について誤認させるような表示」に当たると認めるのが相当である。\n

◆判決本文

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