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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

不正競争(その他)

平成21(ワ)40515等 各不正競争行為差止等請求,承継参加申立事件 不正競争 民事訴訟 平成25年07月09日 東京地方裁判所

 DS用マジコンの複数販売業者に対して、合計1億円弱の損害賠償が認められました。
 原告任天堂は,DS用マジコンの販売業者がDS用マジコンを譲渡したことにより,原告任天堂がDSカードを販売する機会を確定的に失ったところ,多数のDSカードを購入する者も少なくないから,ウェブサイトからダウンロードされたDSプログラムのうち,原告任天堂が販売するDSカードに対応するものの数は,DS用マジコンが譲渡されなければ原告任天堂が販売することができたDSカードの数に相当すると主張する。しかしながら,DS用マジコンが譲渡されなければ販売する機会があったDSカードの数は,その後に販売することができるDSカードの数とその後も販売することができないDSカードの数を含んでいるから,DS用マジコンが譲渡されなければ販売することができたDSカードの数を超えるものになることは明らかである。しかも,前記(4)認定の事実によれば,「ROMサイト」等と呼ばれるウェブサイトから「コピーゲーム」等と呼ばれるDSプログラムを無料でダウンロードしてこれを入手することができるところ,証拠(甲169の1,173)によれば,原告任天堂が販売するDSカードの販売価格は,おおむね約4600円であることが認められるから,無料でダウンロードすることができるコピーゲームと約4600円を支払って購入するDSカードとでは,その容易さに大きな違いがある。そうであるから,ウェブサイトからダウンロードされたDSプログラムのうち,原告任天堂が販売するDSカードに対応するものの数が,DS用マジコンが譲渡されなければ原告任天堂が販売することができたDSカードの数に相当するということはできない。
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イ 年間タイレシオから推計する方法について
(ア) DSカード1本当たりの利益の額について
証拠(甲169の1,173,鑑定の結果)によれば,原告任天堂におけるDSカード1本当たりの利益の額は,別紙逸失利益額一覧表記載のとおり,12表\題が●(省略)●円を下らず,92表題が●(省略)●円を下らないことが認められるから,その平均額は,次の計算式のとおり,●(省略)●円を下らない。(計算式)( ●(省略)●円×12表題+●(省略)●円×92表題)÷(12表題+92表題)=●(省略)●円 (1円未満切捨て)
(イ) DS用マジコンの譲渡がなかった場合の年間タイレシオについて a 証拠(甲177,190の1ないし5,195の4及び5,230ないし232,233の1ないし4)によれば,1)国内におけるDS本体1台当たりのDSカードの年間販売数を示す年間タイレシオ(DSカードの年間販売数÷DS本体の累積販売数)と国内におけるDS本体1台当たりのDSカードの累積販売数を示す累積タイレシオ(DSカードの累積販売数÷DS本体の累積販売数)は,次の表のとおりであり,年間タイレシオは,平成16年12月から平成17年12月までが3.246本,平成18年が3.236本とほぼ一定であったのに対し,平成19年が1.997本,平成20年が1.312本,平成21年が0.975本と毎年大きく減少していること,2)ゲーム業界は,平成18年以降,拡大し続けていて,平成20年後半に始まった不況下においても,単価が他のレジャーに比べて安いこと等から,むしろ売上げが増加していたこと,3)DS用マジコンは,平成17年4月ころから販売されていたが,R4がその使いやすさゆえに平成18年12月ころから爆発的に販売されるようになったこと,4)原告任天堂は,平成19年以降,ゲーム機「Wii」向けのゲームソフトの製作,販売に注力するようになり,DS本体向けのゲームソ\フトでヒットする作品が出なかった一方で,平成20年にはソニーの販売する携帯型ゲーム機「プレイステーション・ポータブル」向けのゲームソ\フトで,平成21年には原告株式会社スクウェア・エニックスの販売するDS本体向けのゲームソフトで,それぞれヒットする作品が出たことが認められる。前記認定の事実に,年間タイレシオは漸減していくのが通常であることを併せ考慮すると,平成16年12月から平成18年12月までの平均年間タイレシオ3.241本は,DS用マジコンの譲渡がなければ,平成19年から平成21年までの間,少なくとも平均2.5本を限度として維持されたものと認めるのが相当である。
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b 前記認定の事実によれば,インターネットやゲーム雑誌,テレビ,新聞等は,遅くとも平成19年1月から,DS用マジコンを用いれば,DSカードを購入しなくても,無償で,DS本体においてゲーム等をすることができるようになることを多数紹介し,広く知られていた上,証拠(甲33の1及び2,34の3,150)によれば,DS用マジコンを取得した者は,実際にDSカードを購入しなくなったことが認められるから,これらの事実を総合すれば,DS用マジコンの譲渡により,DSカードの販売業者は,販売することができたはずのDSカードを販売することが事実上できなくなったものと認められる(なお,社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会が平成22年9月に実施したアンケート調査の結果によれば,DS本体とDS用マジコンを保有している者のうち,DS用マジコンの利用によってDSカードを購入する頻度が減ったのは約42.6%にとどまっているが(甲192),これは,自己に不利益な回答を差し控えたことによるものというべきである。)。証拠(甲184)によれば,DSカードの国内販売数における原告任天堂の市場占有率は●(省略)●%であると認められるから,原告任天堂は,被告マジカル,同AI,同メディア及び同Mediaが平成19年1月から平成21年9月までに本件DS用マジコンを譲渡したことによって,DS本体1台について販売することができたはずのDSカード約●(省略)●本(2.5本×33月/12月×●(省略)●)を販売することが事実上できなくなったものと認められる。
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(c) そうすると,CIは,平成19年1月1日から平成20年2月12日までにR4を3万5266台販売し,被告マジカル及び同AIは,次の計算式のとおり,同月13日から平成21年9月30日までにR4を6万9898台,DSTTを8万5600台,R4iを1万7287台,合計17万2785台販売したものである。
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(c) そうすると,被告メディア及び同Mediaは,次の計算式のとおり,平成19年2月7日から平成20年5月24日までにR4を1万2961台,平成19年12月28日から平成20年6月3日までにDSTTを1万1371台,平成20年5月30日から平成21年9月30日までにM3さくらを3万8196台,合計6万2528台販売したものである。
(エ) 損害額について
したがって,原告任天堂は,逸失利益と8%相当額の弁護士費用として,次の計算式のとおり,CIによるR4の譲渡により●(省略)●円の損害を,被告マジカル及び同AIによる別紙物件目録記載1の各DS用マジコンの譲渡により●(省略)●円の損害を,被告メディア及び同Mediaによる別紙物件目録記載2の各DS用マジコンの譲渡により●(省略)●円の損害をそれぞれ受けた。(計算式) ●(省略)●円×●(省略)●本=●(省略)●円●(省略)●円×3万5266台×1.08=●(省略)●円●(省略)●円×17万2785台×1.08=●(省略)●円●(省略)●円×6万2528台×1.08=●(省略)●円

◆判決本文

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