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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

不正競争(その他)

平成20(ワ)7756等 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成22年06月08日 大阪地方裁判所

 コンピュータで管理している情報について、秘密管理性は満たしていると認定されましたが、共謀しての持ち出しまでは否定されました。
 上記認定のとおり,原告は,ウラデンと称する顧客情報管理ソフトを導入し,「電話番号」,「氏名」,「フリガナ」,「住所」,「何を見て」,「転送区分」,「DM区分」,「コレクト区分」,「備考区分」,「入力担当」,「更新担当」,「入力日時」,「更新日時」等の欄を設けて顧客に関する情報を入力してデータとして保管していたところ,営業時間中はウラデンを起動させた状態にしており,スタッフが顧客情報を閲覧すること自体は制限されていなかった。しかし,ウラデンを起動させるために必要なパスワードについては,勤務年数の長いスタッフにしか知らされていなかった上,F及びH以外のスタッフが使用する原告事務所2階に設置されているパソ\コンは顧客情報のデータのコピー及びプリントアウトができないような設定がされており,スタッフが顧客情報を持ち出すことを困難にする措置が講じられていた。また,原告では,ウラデンで管理されている顧客情報を用いてタックシールを作成し,これを貼付してダイレクトメールを送付していたが,顧客の住所,氏名が記載されるタックシールは,スタッフが使用するパソ\コンでは作成することができず,FあるいはHだけが使用していたマスターパソコンで同人らだけが作成していた上,貼\付前のタックシールについては,事務所2階に設置していた鍵付き引出しのある棚で施錠した上で保管し,鍵については一部のスタッフが管理するとともに,タックシールの枚数についてもノートに記載して管理していたというのである。そして,原告においては,スタッフ及び占い師と契約を締結する際,原告の顧客情報を外部に流出させるなどした場合に,損害賠償金として50万円や100万円といった高額の違約金を支払わせる内容の業務請負契約を締結していたものであり,以上の事情に照らせば,原告のスタッフあるいは占い師としては,原告が顧客情報を他の情報とは区別して,秘密として管理していたことを十分に認識することができたといえる。以上のような原告における管理態様からすれば,原告が営業秘密と主張する本件顧客情報は,これに接した者において,原告が秘密として管理していることを十\分に認識することができる措置が取られていたというべきであり,本件顧客情報にアクセスすることができるスタッフが6名程度であったという原告の規模等も考慮すれば,秘密として管理されているものと認めるのが相当である。・・・上記で認定した事実,とりわけ,Eが,土曜日や日曜日には原告事務所に1人で出勤してダイレクトメールの作成作業に従事しており,顧客の氏名,住所が印刷されたタックシールを持ち出すことが容易な状況にあったこと,Eが原告を退職してオブジェに勤務を開始した直後,オブジェにおいて原告と同様の電話占い業の開業準備が始められたこと,オブジェがハーバースを開業した当時にオブジェと業務請負契約を締結した占い師は,いずれも原告と契約を締結していた被告ら4名だけであること(ただし,被告Aについては,この時点では原告との契約が継続していた。),オブジェがハーバースを開業してからわずか3か月後には,EがHER−BER−SUを設立してその代表者となり,オブジェからハーバースの事業を譲り受けたこと,ハーバースが開業した平成19年5月ころから,原告の顧客のもとにハーバースからダイレクトメールが届くようになったこと,平成19年8月10日(HER−BER−SU設立直後)から同年11月14日までの期間でみると,89名中61名,すなわちHER−BER−SUの利用者の実に約68.5%もの利用者が,原告がウラデンで管理していた顧客名簿に記載されている顧客の氏名と一致することなどの事実を総合すれば,Eにおいて,原告と競業する電話占い業を自ら立ち上げることを企て,原告がダイレクトメール送付用に作成したタックシールを印刷するなどして原告の本件顧客情報を持ち出し,連絡先を把握していた被告らに自らあるいは第三者を通じて接触してオブジェと契約を締結させ,本件顧客情報をオブジェに開示し,オブジェ及びHER−BER−SUが,占い事業を営むに当たり,本件顧客情報を利用して原告の顧客のもとへダイレクトメールを送付するなどしたことが推認されるというべきである。以上のEの行為は,不正の競業をする目的で,営業秘密である本件顧客情報をオブジェ(後のHER−BER−SU)に開示したものであるから,不正競争防止法2条1項7号所定の不正競争に該当し,Eから開示された本件顧客情報を用いて原告の顧客にダイレクトメールを送付して勧誘等をするHER−BER−SUの行為は,同項8号所定の不正競争行為に該当するというべきである。\n

◆判決本文

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平成18(ワ)29160 損害賠償等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成22年04月28日 東京地方裁判所

 コエンザイムQ10の培養液及び生産菌を持ち出し,これらを被告会社に提供し、被告会社が,悪意でこれらを取得したことが、不競法2条1項4号,同項5号に該当する行為であると認定されました。
 以上によれば,原告が,被告らによる不正競争行為であるとして主張する行為のうち,その事実を認めることができるのは,次の行為に限られ,その余の行為については,これを認めることができない。(ア) 被告Cが,平成16年10月ころ,自己の利益を図るために利用する目的を持って,原告社内から,原告が保有する営業秘密であるコード番号「M15−204」の本件生産菌Aの種菌,コエンザイムQ10の生産菌(コード番号が明らかではないもの)の培養液及び本件生産菌Bを原告に無断で持ち出し,その後,これらを被告会社に提供したこと。(イ) 被告会社が,被告Cが持ち出し上記(ア)の各生産菌が被告Cによって原告に無断で原告社内から持ち出されたものであることを知りながら,被告Cから上記各生産菌を取得したこと。イ被告Cの上記ア(ア)の行為は,前記(2)ウ及び(3)のとおり不正競争防止法2条1項4号の不正競争行為に該当し,また,被告会社の上記ア(イ)の行為は,前記(3)のとおり同項5号の不正競争行為に該当する。

◆判決本文

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平成21(受)609 発信者情報開示等請求事件 平成22年04月13日 最高裁第三小法廷

 最高裁は、プロバイダ制限責任法の適用について、「侵害情報の流通による開示請求者の権利侵害が明白であることなど当該開示請求が同条1項各号所定の要件のいずれにも該当することを認識し,又は上記要件のいずれにも該当することが一見明白であり,その旨認識することができなかったことにつき重大な過失がある場合にのみ,損害賠償責任を負うものと解するのが相当である」と判断しました。
 「これを本件について検討するに,本件書き込みは,その文言からすると,本件スレッドにおける議論はまともなものであって,異常な行動をしているのはどのように判断しても被上告人であるとの意見ないし感想を,異常な行動をする者を「気違い」という表現を用いて表\\\\し,記述したものと解される。このような記述は,「気違い」といった侮辱的な表現を含むとはいえ,被上告人の人格的価値に関し,具体的事実を摘示してその社会的評価を低下させるものではなく,被上告人の名誉感情を侵害するにとどまるものであって,これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められる場合に初めて被上告人の人格的利益の侵害が認められ得るにすぎない。そして,本件書き込み中,被上告人を侮辱する文言は上記の「気違い」という表\\\\現の一語のみであり,特段の根拠を示すこともなく,本件書き込みをした者の意見ないし感想としてこれが述べられていることも考慮すれば,本件書き込みの文言それ自体から,これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見明白であるということはできず,本件スレッドの他の書き込みの内容,本件書き込みがされた経緯等を考慮しなければ,被上告人の権利侵害の明白性の有無を判断することはできないものというべきである。そのような判断は,裁判外において本件発信者情報の開示請求を受けた上告人にとって,必ずしも容易なものではないといわなければならない。そうすると,上告人が,本件書き込みによって被上告人の権利が侵害されたことが明らかであるとは認められないとして,裁判外における被上告人からの本件発信者情報の開示請求に応じなかったことについては,上告人に重大な過失があったということはできないというべきである。5 以上と異なる見解の下に,上告人に重大な過失があるとして被上告人の損害賠償請求を一部認容した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。この点をいう論旨は理由があり,原判決中,被上告人の損害賠償請求を認容した部分は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,第1審判決中,上記請求を棄却した部分は正当であるから,同部分に対する被上告人の控訴を棄却すべきである。なお,発信者情報の開示請求に関する上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする。」\n

◆判決本文

原審の判決文が見つかりませんでした。 平成20(ネ)3598 平成20年12月10日 東京高裁

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平成19(ワ)4916等 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成22年03月30日 東京地方裁判所

 不競法の秘密管理性が認定され、営業秘密として保護されると判断しました。
 以上を総合すれば,本件情報は,平成15年ないし平成16年当時の出光石油化学千葉工場において,従業員以外の者はそもそもアクセスすることができず,また,従業員であっても,特定の関係者以外はアクセスが制限され,さらに,アクセスした従業員においても,それが秘密情報であることが認識し得るような状況の下で管理されていたものと認められるから,本件情報は,その当時,「秘密として管理されている」情報であったことが認められる。(イ) これに対し被告P商事及び被告Bは,本件情報の管理について,PS・PC計器室の建物出入口に「関係者以外立入禁止」の表示があったとしても,特別の監視装置があるわけではないので,PS,PCの部署以外の従業員が立ち入らないということはできず,鍵のかけられていないロッカーから容易にケースごと本件情報が記録されたフロッピーディスクを持ち去られる危険がある,上記フロッピーディスクから所要の情報を画面上に出し,これを印刷する操作を許容されている従業員の範囲及び暗証番号等の規定が不明である,PS,PCの部署の従業員が必要箇所を含む書類1冊を持ち出して工場現場まで持ち込む際のチェック及び工場内に持ち込んで必要箇所をコピーし,その書類を返還する場合の手続が不明である,退職者,転勤者らの訪問の際の取扱い如何によっては本件営業秘密の社外への流出は十\分防止できないなどの問題点があり,本件情報は,秘密管理性の要件を満たしているとはいえない旨主張する。しかし,前記(ア)認定のとおり,本件情報は,平成15年ないし平成16年当時の出光石油化学千葉工場において,従業員以外の者はそもそもアクセスすることができず,従業員であっても,特定の関係者以外はアクセスが制限され,アクセスした従業員においても,それが秘密情報であることが認識し得るような状況で管理されていたものであり,被告P商事及び被告Bが指摘する上記問題点を勘案しても,上記認定を左右するものではない。したがって,本件情報は秘密管理性の要件を満たしているとはいえないとの被告P商事及び被告Bの主張は,採用することができない。

◆判決本文

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平成21(受)1049 発信者情報開示請求事件 平成22年04月08日 最高裁判所第一小法廷 判決

いわゆる経由プロバイダがプロバイダ責任制限法の発信者に該当するとの高裁の判断が維持されました。
 法4条の趣旨は,特定電気通信(法2条1号)による情報の流通には,これにより他人の権利の侵害が容易に行われ,その高度の伝ぱ性ゆえに被害が際限なく拡大し,匿名で情報の発信がされた場合には加害者の特定すらできず被害回復も困難になるという,他の情報流通手段とは異なる特徴があることを踏まえ,特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害を受けた者が,情報の発信者のプライバシー,表現の自由,通信の秘密に配慮した厳格な要件の下で,当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対して発信者情報の開示を請求することができるものとすることにより,加害者の特定を可能\\\\にして被害者の権利の救済を図ることにあると解される。本件のようなインターネットを通じた情報の発信は,経由プロバイダを利用して行われるのが通常であること,経由プロバイダは,課金の都合上,発信者の住所,氏名等を把握していることが多いこと,反面,経由プロバイダ以外はこれを把握していないことが少なくないことは,いずれも公知であるところ,このような事情にかんがみると,電子掲示板への書き込みのように,最終的に不特定の者に受信されることを目的として特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録するためにする発信者とコンテンツプロバイダとの間の通信を媒介する経由プロバイダが法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当せず,したがって法4条1項にいう「開示関係役務提供者」に該当しないとすると,法4条の趣旨が没却されることになるというべきである。そして,上記のような経由プロバイダが法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当するとの解釈が,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限について定めた法3条や通信の検閲の禁止を定めた電気通信事業法3条等の規定の趣旨に反するものでないことは明らかである。以上によれば,最終的に不特定の者に受信されることを目的として特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録するためにする発信者とコンテンツプロバイダとの間の通信を媒介する経由プロバイダは,法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当すると解するのが相当である。これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。

◆判決本文

原審の判決文が見つかりませんでした。 平成20(ネ)5138 平成21年03月12日 東京高裁

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平成20(ワ)15238  不正競争 民事訴訟 平成22年03月04日 東京地方裁判所

コンピュータによる管理した情報について、秘密管理性・有用性が認められました。
上記データベースのシステムは,原告の情報戦略推進部で一元的に管理されていた。データベース内の本件情報にアクセスするためには,アカウントの付与を前提としたアクセス権限の付与を受けている必要があった。申請が必要となるアカウントは,Windowsアカウント,メール,Notesアカウント,DigiSheet,使用するPC機器等であった。アカウント申請書(甲8添付資料1)による申\請があると,その申請者の所属する部門の部門長及び情報戦略推進部が妥当性を判断して当該アカウント申\請を承認するかどうかを判断し,承認されると申請者に上記アカウントが付与される。なお,原告の従業員が社外に送信するメールは,必ず上司に対してもbccとして送信されることとなっていた。アクセス権限も申\請により付与されるものであり,申請書(甲8添付資料2及び3)には,アクセス権限を申\請する対象のデータベースの名称,アクセスの理由等を記載するものとされていた。その申請について,申\請者の所属する部門の個人情報保護部門管理者がその部門における個人情報保護の観点から,同部門の部門長が申請者の業務遂行においてそのデータベースへのアクセスが必要かどうかという観点から,個人情報保護管理者が全社的な個人情報保護の観点から,順次,それぞれ妥当性を判断して承認を行うこととされていた。その上で,情報戦略推進部において,上記各承認を経ているかを確認し,更に申\請内容の妥当性を確認して承認の決裁をする。すべての手続完了後,情報戦略推進部においてアクセス権限の付与がされるものとされていた。・・・ 原告は,その就業規則の第45条1項14号及び15号において,業務上知り得た個人情報や原告及び関係取引先の重大な秘密及びその他の情報の漏洩等をしたときは懲戒解雇とすると定めていた(甲10)。また,秘密情報の保持に関する誓約書を従業員に提出させ(甲11),研修などで個人情報保護テキスト等(個人情報,営業秘密の保護の重要性,どのような情報が秘密情報に当たるのか,秘密管理のルール等について具体的な記載がされていた。)を使用して講義を行っていた(甲12,13)。 以上の認定事実によれば,原告は,本件情報を電子データとしてデータベース内に保有するとともに,書類として保有していたものであり,データベースについてはアクセス権限を制限し,権限を与える際には多くの決裁者による慎重な決裁を必要としていたこと,書類については施錠することができる倉庫又はキャビネットに保管し,その鍵を責任者により管理台帳を用いるなどして管理していたことが認められ,これらのことからすれば,本件情報は,原告により秘密として管理されていたと認めることができる。そして,本件情報は,派遣エンジニアの氏名や連絡先,分野,派遣先,給与データ等の情報や,派遣先企業の名称,派遣個別契約の満了日等の情報を含んでいるところ,これらの情報は,原告にどのような派遣エンジニアが所属し,どのような条件で企業に派遣されているのかを知ることができるものであるから,労働者派遣事業において有益な営業上の情報であるということができる。さらに,本件情報は,原告が事業を継続する中で集積した原告の従業員の個人情報及び派遣先企業の情報であると認められるから,公然と知られていないものであるといえる。以上から,本件情報は,原告の営業秘密(不正競争防止法2条1項7号,6項)に該当するものと認められる。

◆判決本文

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平成21(ネ)1456 損害賠償,情報使用禁止等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成22年02月24日 大阪高等裁判所 

 1審判決は眉山の位置決めの仕方については保護されると判断しましたが、大阪高裁はこれを取り消しました。
 以上より,被控訴人技術を構成する, i)3点決め作業,ii)描く作業(眉型にアナスタシアのものを使用することを除く),iii)ワックス脱毛作業及びiv)仕上げ作業のいずれも,既存の技術ないし平成18年時点において眉の手入れに関するサービスを提供する美容施術者であれば容易に取得ないし習得できる事柄であり,かつ,各作業の全体の流れも,平成18年時点において眉の手入れに関するサービスを提供する美容施術者であれば容易に取得ないし習得できる事柄であったと認められる。エ「アナスタシアアイブロウトリートメント技術」の範囲についてのまとめ被控訴人の主張及び被控訴人がアナスタシア社との関係で日本ないしアジアにおいて「アナスタシア技術サービス」ないし「アナスタシアブランド名の下でアナスタシア製品を正しく競争的に販売するのに必要な技術サービス」を使用等する権利を独占的に有していること(甲2,4)も踏まえると,被控訴人技術は,アナスタシアステンシル(眉型)を日本人顧客の骨格に合わせて美しく施術することも要素としていることになる。被控訴人技術においては「アナスタシアステンシル」を用いて施術するとされているのに対し,当然のことながら既存技術においてはそのように表現される技術は存在しない。他方で,上記に認定したところからすると,3点決め作業と,描く技術のうち4種類のアナスタシアステンシル(眉型)の中から顧客の骨格に適したものを選択し,3点決め作業で設定した眉頭,眉山及び眉尻の各位置を基準としてステンシルを設置することによって構\\\成される作業の流れは,平成18年時点において眉の手入れに関するサービスを提供する美容施術者であれば容易に取得ないし習得できる事柄であったと認められる。そうだとすると,前記(4)ウ−1で示した理解での甲5誓約書の趣旨における「アナスタシアアイブロウトリートメント技術」(被控訴人技術),すなわち甲5誓約書により控訴人らが制約される技術は,アナスタシアステンシル(眉型)を日本人顧客の骨格に合わせて美しく施術することに焦点を当てて理解すべき一連の技術であると解するのが相当である。・・・控訴人Aら3名は甲7誓約書に基づき,控訴人Dら5名は甲5誓約書に基づき,被控訴人に対し,被控訴人技術であって,アナスタシア眉型を日本人の骨格に合わせて美しく施術することに焦点が当てられるべき一連の技術である,アナスタシアアイブロウトリートメント技術を使用しない義務を負う。しかしながら,控訴人らが控訴人サロンで用いている技術は,前記4(3)で認定した被控訴人技術の構成要素と多くを共通するが,眉尻の位置決めの仕方,使用する眉型がアナスタシアのものではなく控訴人サロン独自のものであること,眉のワックス脱毛に先立ちワックスを塗布するところにファンデーションを塗布すること,眉のワックス脱毛に用いるワックス器内のワックスの温度は67℃前後であることの点で異なるものと認めることができる(乙40,弁論の全趣旨)。なお,上記の「アナスタシアアイブロウトリートメント技術」を個々の構\\\成技術に分解して甲5誓約書で約定された禁止範囲を画するのは相当でない。被控訴人は,その技術についてワックス脱毛の目的からみて一般のワックス脱毛の構成とは違うことを強調して主張するが,被控訴人技術のうちのワックス脱毛作業が既存のアイディアと技術の組合せに過ぎないことは前記4(4)ウ−4における説示のとおりであり,その特定の構成部分が控訴人サロンのものと共通しているとしても,その部分のみをとらえて甲5誓約書によって使用が禁止されるものとすることはできない。また,被控訴人技術,すなわち「アナスタシアアイブロウトリートメント技術」は,アナスタシア眉型を日本人の骨格に合わせて美しく施術することに焦点が当てられるべきところ,上にみたように,控訴人サロンの技術ではアナスタシア眉型を用いないのであるから,その主要な部分において控訴人サロンの技術はアナスタシアアイブロウトリートメント技術と異なるものといわざるを得ない。したがって,控訴人らはアナスタシアアイブロウトリートメント技術を用いていないものであり,被控訴人主張に係る債務不履行又は不法行為の責めを負うものではない。\n

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