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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

不正競争(その他)

平成27(ワ)2504  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成28年10月13日  大阪地方裁判所

 図形商標については非類似と認定しましたが、不競法に基づく損害賠償として売り上げの1%が認定されました。
 原告は,原告標章1の上下に2本の直線を追加すると,「Z」との文字が浮かび 上がり,被告標章1も,原告標章1を構成する2つの三角形状の図形にそれぞれ3本の白線を追加したものにすぎず,同様に「Z」の文字が浮かび上がるもので,両 者は類似する旨主張する。 しかし,標章の上下に2本の直線を追加すると「Z」の文字が浮かび上がるとい ったことは,需要者が容易に認識し得るものではないことからすれば,この点が類 否に影響を及ぼすものではない。 原告標章1は,一辺を曲面の凹面で切り取られた赤色の鈍角三角形2つが上下に 凹面が来るように点対称に配置された旗のようなマークであり,被告標章1は,原 告標章1に,対置する底面に平行な3本の白い線を各鈍角三角形部分に入れたもの であるので,確かに,外周の形態及び色は類似しているといえるが,本体である鈍 角三角形に縞模様が入っているか否かは需要者が容易に区別し得るものであり,相 当異なる印象を与えるものであるから,原告標章1と被告標章1を全体として見比 べると,相当異なるものであることは一見して明らかである。 したがって,被告標章1は,原告標章1とは類似しないというべきである。
3 争点3(被告は被告各標章及び本件ドメインを使用しているか)について
 被告が運営する被告2店舗は,原告標章2,7を外壁に掲げた原告店舗の近隣に あって競業関係にあり,しかも周知商品等表示である原告各標章5ないし7に類似する被告標章11,12を店舗の出入口に掲げていたというのであり,またその店\n舗名に「ゼンシン」という原告及び「全秦グループ」を他から識別する部分を含ん でいたというのであるから,その開業当初は,需要者である遊戯客に原告店舗ない し原告との関係につき一定の誤認混同を生じさせたことは優に認められるといえる (上記ア(オ)dのとおり,取引業者であるが,現に誤認混同していた実例も認められ ている。)。 しかし,上記ア(エ)によれば,そもそもパチンコ店等の需要者である遊戯客による 店舗選択は,当該パチンコ店等の経営主体がどこであるとか,どのパチンコ店グル ープの店舗であるかということを重視するのではなく,パチンコやパチスロの台の 機能や機種,出玉感,交換率等の個別店舗の具体的営業内容そのものを主要な選択要素として決せられることが認められ,これからすると当該店舗の営業主体の誤認\n混同が当該店舗の選択,ひいてはその売上げあるいは損害に結び付く関係は薄弱で あるということができる。 なお上記ア(エ)からは,需要者である遊戯客には,店員の接客態度や店舗が清潔に 清掃されているか等のサービスについても選択時に考慮する要素としている者がい ることも認められるから,それらの需要者であれば,店舗の営業主体を指し示す営 業表示を手掛かりに当該店舗で受けられるサービスを期待して店舗選択をする可能\ 性があることは否定できない。しかし,需要者であるパチンコ店等の遊戯客は,パ チンコ店を極めて頻回に利用するのが一般的であるというのであるから(週1日の 利用でも年間72日の利用になる。),仮に被告2店舗の需要者の利用が,被告標 章の使用によりもたらされた被告店舗が原告と関係する店舗であるとの誤認混同か ら始まったとしても,当該店舗のサービスを実際に経験している以上,その後の継 続的利用が原告と被告2店舗との関係についての誤認混同の影響によりもたらされ ているとは考え難いところである。 そして,そもそも原告店舗及び被告2店舗とも隠岐の島という需要者が限られた 市場の中で他の4店舗とも競合している店舗であるが,被告2店舗のうち,ゼンシ ン隠岐がもともとあったパーラー隠岐という別店舗の営業実態を実質上承継してい る関係にあることからすると,被告2店舗の営業が原告店舗の顧客の誤認混同によ り生じた需要によって継続的に成り立っているとはおよそ考えられず,むしろその 影響は極めて小さいと見る方が合理的である。 なお,本件において被告が被告標章を使用して営業を営んでいるのは隠岐の島の 被告2店舗だけであり,不正競争防止法5条2項で推定されるべき原告の損害は, 被告2店舗の営業の影響を受ける範囲,すなわち,その競合店となる原告店舗にお いて生じた損害だけが問題となるというべきであるから,被告による被告各標章の 使用態様のうち,隠岐の島の住民において認識されないような岡山県津山市所在の 本件建物の外壁に掲げられた被告標章2,6による標章の使用は原告店舗の営業に 損害を全くもたらさないことは明らかである。 したがって,このような事情を総合考慮すると,本件における被告の得た利益と 原告の受けた損害の関係に不正競争防止法5条2項の推定規定の適用があるとして も,その推定は99%の限度で覆滅されるというべきである。 なお,原告は,原告店舗と被告2店舗の営業方法の類似性,さらには原告代表者としてのP1の競業避止義務違反さえ問題としているが,そこで問題とされる損害\nは,結局のところ,営業表示の誤認混同に由来する損害ではなく,単に原告店舗の近隣に競合店である被告2店舗が出店されたことから生じる原告店舗の売上減少の\n問題にすぎないから,不正競争防止法2条1項1号の不正競争により生じる損害の 議論としては失当であり,上記認定を左右するものではない。
(4) 上記(1)アのとおり,被告が,被告2店舗で得た利益は合計6億6654万1 348円であるから,原告において損害と推定される額は,666万5413円で あると認められる。
(5) 不正競争防止法5条3項の適用による損害について
本件で問題とする原告各標章は周知商品等表示であり,これに類似する被告標章7ないし9及び11ないし13の使用の結果,現実的な誤認混同が生じた事実も認\nめられるから,顧客吸引力が全くない商標権の場合と同様の意味での損害不発生を いう被告の主張は直ちには採用できない。 しかし,上記(2)で検討したとおり,パチンコ店等では,需要者は,主に営業表示以外の営業内容そのものの要素を選択肢として店舗を選択するというのであるか\nら,営業表示により誤認混同が生じたとしても,そのことが店舗選択に与える影響は極めて小さく,しかも,その需要者は店舗を頻回に利用するというのであり,そ\nのような需要者を顧客としてつなぎとめるためには,出玉であるとか交換率である などのパチンコそのものの営業内容によって他店と競争しなければならないといえ るから,原告各標章の営業表示に顧客吸引力があるとしても,営業の場面で,これを発揮する余地は限りなく少ないというべきである。\nしたがって,本件において認定できる被告の不正競争に対して原告が受けるべき 金銭の額は極めて少額にとどまるのが相当であり,これを認めるとしても,被告が 不正競争により受けた利益に基づき認定される不正競争防止法5条2項にいう原告 の損害の額を上回ることはないというべきである。

◆判決本文

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平成26(ワ)10534  契約金返還等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成28年5月27日  東京地方裁判所

 差止および損害賠償請求を有しないことの確認訴訟について、訴えの利益なしと判断されました。その他の不当利得返還請求の棄却されました。
1 争点1(原告サーナアルファが,被告に対し,被告が同原告に対して不正競 争防止法2条1項7号及び同法3条1項に基づく差止請求権並びに同法2条1項7 号及び同法4条に基づく損害賠償請求権を有しないことの確認を請求することにつ いて,確認の利益が認められるか)について 原告サーナアルファは,同原告によるVRC法の実施は,被告が同原告に提供し た不正競争防止法2条1項7号所定の営業秘密の不正使用又は不正開示に当たらな いとして,同原告のVRC法の実施行為について,被告が同原告に対して同法3条 1項に基づく差止請求権及び同法4条に基づく損害賠償請求権を有しないことの確 認を求めている。 一般に,確認の訴えは,即時確定の利益がある場合,換言すれば,現に,原告の 有する権利又は法律的地位に危険又は不安が存在し,これを除去するため被告に対 し確認判決を得ることが紛争の解決のために必要かつ適切な場合に限り,許される と解すべきである。 証拠(甲12,33)によれば,被告は,原告サーナアルファに対し,弁護士を 通じ,内容証明郵便により,平成25年7月19日付け本件警告状及び同年8月2 9日付け通告書(以下「本件通告書」という。)を送付し,被告の「知的財産権 等に対する一切の侵害行為及び妨害行為を停止」するよう求めたことが認められる。 しかし,上記証拠によれば,本件警告状及び本件通告書には,被告が原告サーナ アルファに提供したとされる営業秘密に関する記載は何ら存在せず,同原告による VRC法の実施が不正競争防止法2条1項7号所定の営業秘密の不正使用又は不正 開示に当たる旨の記載も存在しないのであって,被告が,本件警告状又は本件通告 書により,同原告に同法2条1項7号及び3条1項に基づく差止請求権や同法2条 1項7号及び4条に基づく損害賠償請求権を主張したとみることは,困難であり, ほかに,被告が,同原告に対して,同法2条1項7号及び同法3条1項に基づく差 止請求権並びに同法2条1項7号及び同法4条に基づく損害賠償請求権を主張する おそれが,現に存在していると認めるべき事情は見当たらない。 そうすると,現に,同原告の有する権利又は法律的地位に危険又は不安が存在し, これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが紛争の解決のために必要かつ 適切であるということはできないから,確認の利益は,これを肯定することができ ない。 したがって,被告が同原告に対して不正競争防止法2条1項7号及び同法3条1 項に基づく差止請求権並びに同法2条1項7号及び同法4条に基づく損害賠償請求 権を有しないことの確認請求に係る同原告の訴えは,不適法である。

◆判決本文

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平成27(ネ)10119  損害賠償請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成28年2月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ネット上の誹謗中傷削除サービスにおける広告活動が品質誤認(不競法2条1項13号)に該当しないとした1審の判断が維持されました。
 原告らは,被告ウェブサイト(広告)では,まさしく削除請求を代行するとうた っており,非弁活動の広告がなされているものであるから,適法に任意削除請求が できないにもかかわらず,これが適法に可能であるように表\示しており,「役務の質, 内容」について消費者を誤認させる表示に当たる旨主張する。\n確かに,被告ウェブサイトには,原告らの主張する「削除代行サービス」「誹謗中 傷サイトを削除してきました」「専門スタッフが最速で誹謗中傷を完全消去いたしま す」「一括して削除代行を承ります」(甲1の1),「削除代行」「ネット削除の費用」 「掲示板の削除の料金」「スレッド(板)またはレス(書き込み)単位で削除いたし ます」「格安で掲示板を削除」との記載があり,その部分のみを取り出せば,被告が 顧客に代わって削除請求を代理するかのような表現がある。しかし,被告ウェブサ\nイトの表示を正確に理解するためには,原告らも認めるとおり,当該ウェブサイト\nの特定の文言のみならず,その他前後の文脈等も見る必要があるところ,トップペ ージにおける「ブログの削除」欄には,「当社では,ブログの削除代行も行っていま す。」との記載に引き続いて,「削除依頼をITの面からサポートし,解決いたしま す。」との記載(甲1の1),削除ページには,「ネット削除(削除依頼)のITサポ ート」との見出しや,「ネット削除申請サービス(技術サポート)」,との見出しがあ\nり,「ITやWEBの専門技術を生かし,削除依頼の手続きを最後までお手伝いしま す。」,「当社では,これまでの数千件以上の削除実績と経験をふまえ,最も効果的な 削除要請ができるよう,技術面からサポートいたします。」との記載(甲1の2), 相談ページには,「ITの知識も必要」「ネットの削除養成については法律知識だけ でなく,ITの知識や技術も必要になります。当社では,ITの面から削除要請を サポートしています。削除の方法が技術的に分からないようなときは,当社にご相 談下さい。」との記載(甲1の3)もある。これらによれば,原判決が述べるように, 被告が,顧客と顧客が削除を求める相手との関係でどのように関わるのかについて 明確でなく,技術的サポートの内容も具体的ではないものの,被告が顧客に代わっ て削除依頼を直接行ったり,法的助言を行ったりするものと理解することはできな い。そうすると,被告ウェブサイトが,本来,被告が適法に行うことができない法 律的な業務について,これを行うことが適法に可能であるように表\示したとまでは いうことができず,したがって,「役務の質,内容」について消費者を誤認させたと いうことはできない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成26(ワ)31864

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