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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

不正競争(その他)

令和4(ワ)2551  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年11月10日  東京地方裁判所

被告の行為は、不競法の品質誤認表示に該当するとして、約9200万円(損害額自体は約1億4000万円と認定)の損害賠償が認められました。

(1) 不正競争防止法2条1項20号の誤認惹起行為が不正競争に該当し違法と されるのは、事業者が商品等の品質、内容などを偽り、又は誤認を与えるよ うな表示を行って、需要者の需要を不当に喚起した場合、このような事業者\nは適正な表示を行う事業者より競争上優位に立つことになる一方、適正な表\ 示を行う事業者は顧客を奪われ、公正な競争秩序を阻害することになるから である。 このような趣旨に照らすと、「品質」について「誤認させるような表示」に\n該当するか否かを判断するに当たっては、需要者を基準として、商品の品質 についての誤認を生ぜしめることにより、商品を購入するか否かの合理的な 判断を誤らせる可能性の有無を検討するのが相当である。\n
(2) 被告表示が「品質」について「誤認させるような表\示」に該当するかにつ いて
ア 令和元年5月8日から令和3年8月30日までの表示について\n
前提事実(5)ア4)の「全国導入実績2,500台以上」との表示は、被告\nが販売している業務用生ごみ処理機、すなわち被告商品は、全国で250 0台以上が販売されているとの事実を、「ゴミサー/ゴミサポーターはその 処理方法・性能が多くの企業・施設で認められ、おかげ様で現在、全国で\n2,300台以上が稼働しています。」との表示は、被告商品は、その処理\n方法及び性能が多くの企業や施設で認められたため、全国で2300台以\n上が販売されたとの事実を、「全国・海外での導入実績は3,500台以 上。」との表示は、被告商品は、全国及び海外で3500台以上が販売され\nたとの事実を需要者に対し認識させるものであると認められる。 他方で、前提事実(5)エによれば、被告が令和元年5月8日以降販売して いる被告商品の過去の累計販売数は2300台に達するものではないこと が認められ、少なくとも、上記「全国導入実績2,500台以上」、「ゴミ サー/ゴミサポーターはその処理方法・性能が多くの企業・施設で認めら\nれ、おかげ様で現在、全国で2,300台以上が稼働しています。」及び 「全国・海外での導入実績は3,500台以上。」の表示(以下、これらを\n併せて「本件誤認惹起表示1)」という。)は、いずれも、実際の販売実績と は異なるにもかかわらず、多数の被告商品が販売されており、このような 販売実績は、被告商品のごみ処理方法及びその性能が他の同種商品に比べ\nて優れたものであることに起因することを強調するものであって、その結 果、需要者に対し、被告商品がその品質において優れた商品であるとの権 威付けがされ、また、他の需要者も購入しているという安心感を与えるこ とになるため、需要者が商品を購入するか否かの合理的な判断を誤らせる 可能性があるというべきである。そうすると、本件誤認惹起表\示1)は、「品 質」について「誤認させるような表示」に該当すると認められる。\n
この点について、被告は、本件誤認惹起表示1)は、原告と被告との間の 取引が終了した後、一時的かつ短期的に残存していたものにすぎず、かつ、 被告が販売した原告商品の販売実績を記載したものであるから、虚偽では なく真実そのものであると主張する。しかし、前記のとおり、需要者は、 本件誤認惹起表示1)が被告が過去に販売していた製品についての記載であ ると認識することはなく、現在(被告ウェブページ掲載時)販売している 被告商品についての記載であると認識するといえるから、その表示の残存\nが一時的かつ短期的であったとしても、需要者が購入するか否かを決断す る時点において、その合理的な判断を誤らせる可能性は否定できない。し\nたがって、被告の上記主張は採用することができない。
・・・
(3) 被告の主張について
被告は、販売実績の違いは、商品の品質の違いを推認するものにすぎず、 原告商品及び被告商品の間に、性能及び機能\における違いがない本件におい ては、原告商品と被告商品の品質の違いが推認されるものではないと主張す る。 しかし、前記(1)で説示した不正競争防止法2条1項20号の誤認惹起行為 が不正競争に該当し違法とされる趣旨に照らすと、客観的な性能及び機能\に おける違いがないとしても、前記(2)のとおり、本件誤認惹起表示1)ないし3) は、いずれも、販売実績について事実と異なる表示をするとともに、同販売\n実績が品質の優位性に起因するものであるとの表示をすることによって、そ\nのような販売実績をもたらす「品質」であるとの誤解を需要者に与え、その 結果、公正な競争秩序を阻害するものである以上、同号の「品質」について 「誤認させるような表示」に該当すると認めるのが相当である。\n

◆判決本文

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令和5(ネ)10041  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和5年11月16日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 本件商品の輸入が本件特許権を侵害すると主張して税関に輸入差止の申立てをしたことが不法行為に該当するとして、約4000万円の損害賠償請求がなされました。知財高裁は1審と同じく、無効理由がないとして請求を棄却しました。

原告は、甲7公報に記載されたバー10が独立した運動器具の発明である といえるかに関し、1)甲7公報記載の発明は、従来技術であるバーベル装置(バー 部分と重り部分からなるもの)における問題(バーが長いことによってバランスを とることが困難であるとの問題)を解消するため、バー部分を短く改良した三頭筋 運動器具であるところ、バーベル装置においては、重りを着けずにバー部分のみで 運動を行うことが想定されているのであるから、バーベル装置を改良した甲7公報 記載の発明においても、バー10単独での使用が可能である、2)甲7公報には、発 明の目的及び別の目的に係る記載があるところ、前者の記載にある「中央に位置す る重り支持セクションを有する」との文言が後者の記載からあえて削除されている から、甲7公報記載の発明は、重り支持プラットフォーム及び重りを備えない状態 で使用することを当然の前提にしている、3)甲7公報記載の発明は、バー10を単 独で使用することによっても一定の作用効果を奏する、4)バー10は、三頭筋運動 において非常に重要な役割を果たしているとして、甲7公報記載の発明においては、 バー10を独立して捉えることが可能であり、それ自体が独立した運動器具の発明\nであると主張する。
そこで検討するに、1)甲7公報には、「比較的長いバーを有しバランスをとるこ とが困難であるなどの従来のバーベル装置が有していた問題を解消するため、本件 各発明は、両側にあるハンドルを備える中央の重り支持セクションを有し、各ハン ドルが複数の握持位置を有する」旨の記載があるが、補正して引用した原判決第4 の1(4)アにおいて説示したところに照らすと、仮に、従来のバーベル装置が重り を着けない状態で使用されることがあるとしても、そのことは、甲7公報記載の発 明においても、バー10のみの状態(重りのみならず支持クランプ組立体をも取り 外した状態)での使用が想定されていることの根拠となるものではない。
また、2)甲7公報には、「本発明の目的は、中央に位置する重り支持セクション を有する、三頭筋をエクササイズするための改善されたウエイトリフティング装置 を提供することである。本発明の別の目的は、複数の握持位置を備える両側にある ハンドルを有する、三頭筋をエクササイズするための改善されたウエイトリフティ ング装置を提供することである。本発明の別の目的は、end to endの手 の配置を可能にする、三頭筋をエクササイズするための改善されたウエイトリフテ\nィング装置を提供することである。最後に、本発明の全体的な目的は、安価であり、 高い信頼性を有し、その意図される目的を達成するのに高い有効性を有する、説明 した目的のための装置内にある改善された要素及び機材を提供することである。」 との記載があるが、これらの記載は、甲7公報記載の発明の目的について述べるも のであり、その具体的な構成について詳述するものではなく、補正して引用した原\n判決第4の1(2)イ(オ)のとおりの甲7公報記載の発明の具体的な構成に係る記載に\nも照らすと、「本発明の別の目的」及び「本発明の全体的な目的」に係る各記載中 に「本発明の目的」に係る記載中の「中央に位置する重り支持セクションを有する …ウエイトリフティング装置」などの記載がないことをもって、甲7公報記載の発 明において、バー10のみの状態での使用が想定されているということはできない。 さらに、3)前記1)において説示したのと同様、補正して引用した原判決第4の1
(4)アにおいて説示したところに照らすと、仮に、重りを取り外した状態で使用す ることによっても甲7公報記載の発明の効果を奏する場合があるとしても、そのこ とは、甲7公報記載の発明において、バー10のみの状態(重りのみならず支持ク ランプ組立体をも取り外した状態)での使用が想定されていることの根拠となるも のではない。なお、4)甲7公報記載の発明においてバー10が重要な役割を果たしているとしても、そのことは、原告の主張を直ちに根拠付けるものではない。以上のとおりであるから、原告の主張を採用することはできない。
(2) 原告は、相違点1)に係る本件各発明の構成の容易想到性に関し、リング状\nの器具をトレーニング器具として用いることは慣用技術であるから、リング状のバ ー10をトレーニング器具とすることは、単にスポーツ器具用部品であるバー10 に慣用技術を適用するだけのことであり、当業者にとって極めて容易な事柄である と主張する。しかしながら、これまで説示したとおり、本件においては、バー10のみ(甲7発明)が独立した引用発明であると認定することはできず、バー10のみならず重 り支持部分をも備えた甲7発明(被告)が引用発明であると認定するのが相当であ るから、甲7公報記載の発明を引用発明とする本件各発明の進歩性の判断(相違点 1)に係るもの)に当たっては、そのような甲7発明(被告)から重り支持部分を取 り除くことについての容易想到性が問題となるところ、甲7発明(被告)における バー10は、甲7発明(被告)を構成する部材の一部であり、重り支持部分と不可\n分の部材であるから、バー10のみをもって、原告が主張するリング状の器具であ るとみることはできない(なお、原告の主張も、リング状の器具として、甲8公報 記載のトレーニング用器具、甲9公報記載の体育器具のほか、ラタンリング、ピラ ティスリング、ヨガリング、フープ等を念頭に置いている。)。 以上によると、原告が慣用技術であると主張する技術の適用により当業者が相違 点1)に係る本件各発明の構成に容易に想到することができたとは認められない。\n

◆判決本文

1審はこちら。

◆令和4(ワ)3847

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令和4(ワ)14148  不正競争行為差止請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年4月27日  東京地方裁判所

比較広告が品質誤認表示(不競法2条1項20号)かが争われました。原告はダイソン、被告はパナソ\ニックです。裁判所は該当しないと判断しました。

1 被告表示 2 の品質誤認表示該当性について\n
(1) 被告表示 2 について
被告表示 2 は、別紙被告表示目録記載のとおり、「水分発生量従来の 18 倍」とす る表示(被告表\示 2-1)及び被告表示 2-2 のとおりのものである。被告表示 2-2 中に は、「高浸透ナノイーとは、髪への浸透性を高めたナノイーのことです。発生方式を 変えることで、ナノイーの水分発生量が従来の 18 倍になりました。」との記載があ る。「18 倍」とは、「ナノイーと高浸透ナノイーとの比較(当社調べ)」とされている (甲 2)。 これらの記載から、被告表示 2 においては、「高浸透ナノイー」と従来の「ナノイ ー」の各「水分発生量」が比較対象とされていることが理解される。
(2) 原告実験 2 について
原告実験 2 に係る報告書「水分量測定試験に関する報告」(甲 4。以下「原告実験 2 報告書」という。)によれば、その測定試験は、「送風口とイオン口を備えるドラ イヤーA 及び B について、イオン口から発せられる水分量を比較すること」を目的 として、ドライヤーA と B について、イオン口から放出される水分子による絶乾シ リカゲルの吸水変化を閉鎖系において測定し、その測定結果を比較したものである。 ドライヤーA 及び B は原告代理人から提供されたものであるが、その製品名等は原 告実験 2 報告書では特定されていない。 実験の具体的な方法は、「105゜C)で一晩静置した乾燥シリカゲルをデシケータに入 れ、閉鎖系でドライヤーA および B のイオン口から送風し(HOT モード、TURBO。 ナノイーのランプが付いている状態)、シリカゲルの吸水量の変化を観察した。」、 「チャンバー内の風速は 2.6±0.3m/s に統一した。各時間(0〜4 時間)にイオン口か らの風を吹かせた後、シリカゲルの重量変化を測定し、シリカゲル中に給水された 水分量変化として換算した。」とされている。また、「Fig.1」では、原告実験 2 で使 用した実験装置の構成及び配置等が示されている。\n原告実験 2 報告書では、原告実験 2 の結論として、「ドライヤーA 及び B のイオ ン口からの水粒子によるシリカゲルの吸水率は、コントロールと比較して明確な違 いが見られた。また、ドライヤーA とドライヤーB を比較すると、その吸水率の差 は 1.21〜1.36 倍であることが判明した。つまり、ドライヤーA のイオン口から発せ られる水分量は、ドライヤーB のイオン口から発せられる水分量の約 1.21 倍〜1.36 倍であると推察される。」(裁判所注:「コントロール」とは、「デシケータ内に風を 送り込んでいないシリカゲル」である。)とされている。
(3) 原告実験 2 報告書について
原告実験 2 報告書において、閉鎖系を実現する構成については、Fig.1 に画像とし て示されるにとどまり、具体的かつ詳細な説明はない。もっとも、同図を子細に見 ると、ドライヤーA 及び B のいずれについても、その送風口を除き、その上部にあ るイオン口が包まれるようにラップフィルム状のものでドライヤーの中央部外周を 覆い、かつ、そのラップフィルム状のものにより当該部分からデシケーター入り口 までを覆い、覆った上記ラップフィルム状のものの端部を固定・固着して塞いでい ることが看取される。
しかし、この方法による場合、各ドライヤーのイオン口から放出される水分の全 てが、ラップフィルム状のもの等に吸着されることなくデシケーター内に送られ、 デシケーター内のシリカゲルに吸着するといえるのかは不明である。また、各ドラ イヤーのイオン口から放出される水分の系外への流出及び空気中の水分の系内への 流入が防止されているのか、又は、上記吸着ないし流出・流入がいずれの系におい ても一定に保たれているのかも、不明である。このため、原告実験 2 において測定 されたシリカゲルの吸水量が、各ドライヤーのイオン口から発せられる水分量すな わち水分発生量を正しく反映していると見ることについては疑義がある。 さらに、シリカゲルを用いる方法によることについて、原告実験 2 報告書によれ ば、懸念材料として「秤量時の大気中水分の影響です。シリカゲルをデシケーター から取り出して精密天秤で測定する場合…、大気中水分の吸着の影響を最小限に抑 える工夫が必要となります。」との指摘がされたのに対し、同報告書作成者は、「確 かに厳密に数値を計測する場合には当該指摘のとおりであるが、本測定はドライヤ ーA におけるシリカゲルの重量変化とドライヤーB におけるシリカゲルの重量変化 を比較する目的で実施されたもので、いずれも秤量中に大気中の水蒸気の影響を受 けること、また秤量時間は 30 秒程度と送風時間と比べて短時間であることから、本 測定においては、秤量中の水蒸気が結果に影響を与えることはないといってよいだ ろう。」との見解を示している。しかし、いずれのシリカゲルも秤量中に大気中の水 蒸気の影響を受けるといっても、その影響が同じであるとは必ずしもいえないので あって(そもそも、使用されたシリカゲルの状態及び性能等が同一ないし同等であ\nったかも、同報告書上明らかでない。)、秤量時間が 30 秒程度と短時間であるとして も、原告実験 2 の精度が問題ないといえる程度に高いといえるのかについては疑問 を抱かざるを得ない。 「高浸透ナノイー」と従来の「ナノイー」との「水分発生量」の比較に当たって は、各ドライヤーのイオン口から発せられる水分量の正確な測定値が必要とされる ところ、原告実験 2 は、上記の各点で、その正確性が担保されていることにつき疑 義がある。
(4) 原告の主張について
原告は、その主張に係る本件規範を前提としつつ、原告実験 2 に基づき、被告表\n示 2 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものである旨を主張する。 しかし、品質等誤認表示の不正競争に関しては、法 2 条 1 項 号の趣旨に鑑み、 広告等の表示内容の解釈に当たっては一般消費者の視点に基づき判断するのが相当\nであるとしても、その表示中に示されたデータ等については、客観的かつ科学的に\n実証されたものであることを要し、かつ、それで足りると考えられる。そのデータ 等の取得に当たって設定されるべき試験条件等についても、法 2 条 1 項 号の解 釈として何らかの規律が設けられているとは考えられない。 また、原告実験 2 の結果について、「コントロール」の存在を考慮しても、なお上 記(3)の疑義はいずれも解消されない。 その他原告が縷々指摘する点を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用で きない。
(5) 小括
以上のとおり、原告実験 2 報告書は、被告表示 2 が被告商品の品質につき誤認を 生じさせるものであることを裏付けるに足りるものとはいえない。その他被告表示\n2 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りる証 拠もない。 したがって、被告表示 2 は、被告商品の品質につき誤認を生じさせるものとは認 められない。
・・・
ウ 原告実験 1-1 においては、実験に使用した二組の 束の髪の毛につき、同一 の毛束の、水道水浸漬・乾燥処理前後の水分量が測定されている。その点では、原 告実験 1-1 においては、被告表示 1 の検証・確認実験として適切な対象の測定が行 われたものといえる。また、その結果、被告商品の場合には、水道水に浸漬・乾燥 後の毛束の水分量は未処理の毛束の水分量よりも増加しているのに対し、EH-NA9E の場合、処理の前後で髪の水分含有量に著しい変化がない可能性があるとされてい\nる。 他方、原告実験 1-2 においては、「濡らし/乾し処理前後の髪の水分含有量を定量 する」とされているものの、具体的には、同じ毛束から採取された別の毛髪を水道 水浸漬・乾燥処理前に水分量を測定する毛髪と処理後に測定する毛髪として使用し ている。しかし、同じ毛束に属していたといっても、毛髪が異なればその水分量は 当然異なるといえることから、原告実験 1-2 においては、同一の毛束(毛髪)にお ける髪を乾かした際の水分増加量に関する被告表示 1 の検証・確認実験として適切 な対象が測定されているとはいえない。 また、原告実験 1 報告書においては、FT-NIR 法は定性的、又はせいぜい半定量的 な測定方法であるなどとされている。しかし、証拠(乙 7、8)によれば、FT-NIR 法 は、定性分析や定量分析に利用されるものであること、従来の分析法に匹敵する正 確さと精度で多成分分析を行うことができる素早くシンプルな非破壊の分析手法で あり、初期より、農業から食品業界まで幅広い測定に応用できる非破壊の迅速な分 析手法として広く用いられるようになったものとの評価を受けているものであるこ とが認められる。 これらの事情を踏まえると、被告表示 1 の検証・確認実験における測定法として は、非破壊的に毛髪中の水分を定量でき、同一の毛髪につき、水道水浸漬・乾燥処 理前後の水分量を測定し得る FT-NIR 法の方が、KF 法よりも適切な方法と考えられ る。にもかかわらず、原告実験 1 においては、FT-NIR 法については定量的な測定方 法とは位置付けられておらず、また、KF 法の結果は同一の毛髪で水道水浸漬・乾燥 処理前後の水分量を測定していないこと、そのような不適切な方法を被告表示 1 の 検証・確認実験として採用したことから、原告実験 1 の結果が十分に信頼し得るも\nのであるかについては疑義があるというべきである。これに反する原告の主張は採 用できない。
(3) 小括
以上のとおり、原告実験 1 報告書は、被告表示 1 が被告商品の品質につき誤認を 生じさせるものであることを裏付けるに足りるものとはいえない。その他被告表示\n1 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りる証 拠もない。
・・・
以上より、被告各表示は、いずれも被告商品の品質につき誤認を生じさせるもの\nとは認められない。したがって、原告は、被告に対し、法 3 条に基づき、被告各表\n示の差止請求権(同条 1 項)及び抹消請求権(同条 2 項)をいずれも有しない。
なお、事案に鑑み付言すると、原告は、被告各表示に関する裏付けとなるデータ\n等を被告が開示しないことにつき、具体的態様の明示義務(法 6 条)及び積極否認 の際の理由明示義務(民訴規則 79 条)に違反するものと指摘する。 しかし、「具体的態様」とは、侵害判断のための対比検討が可能な程度に具体的に\n記載された物の構成又は方法の内容等を意味すると解されるところ、本件において\nは、被告商品の品質につき誤認を生じさせるものとされる被告各表示に記載された\n表示内容は、その記載から明確であるといってよく、その基礎となる被告が保有す\nるはずのデータそれ自体及びこれを導く試験条件等につき、被告各表示において開\n示されたもののほかは開示されていないというに過ぎない。 このため、現に原告が各実験により試みているように、本件において主張立証すべき対象は、侵害判断のための対比検討が可能な程度に、被告各表\示において既に具体的に示されているといえる。そうすると、本件においては、「侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様」(法 6 条)が明らかでないとは必ずしもいえない。また、その点を措くとしても、具体的態様の明示義務に基づき相手方に対して具体的態様 の明示を求め得るためには、濫用的・探索的な提訴等を抑止する観点から、当該事 案の性質・内容等を踏まえつつ、提訴等を一応合理的といい得る程度の裏付けを要 すると解される。しかるに、本件においては、上記のとおり対比検討すべき表示内\n容は明確である上、原告実験 1〜は、その実験方法が被告各表示の検証・確認実験\nとして不適切であり、また、その結果にはそれぞれ疑義があることを踏まえると、 上記の程度の裏付けがされているとはいいがたい。そうである以上、被告の対応を もって具体的態様の明示義務等に違反するものとまではいえない。

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令和3(ワ)11152  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年3月16日  大阪地方裁判所

 被告は、「口コミ掲示板」に、「匿名さん」として、「アイメシアとか名乗る会社の超迷惑営業電話下調べもなしにかけてくるとはぬるい営業ですね」との内容の投稿しました。かかる行為が、不競法2条1項21号の不正競争行為に該当するとして、約50万円の損害賠償が認められました。

ア 競争関係の有無(争点1−ア)
(ア) 前記前提事実(1)及び認定事実(1)によれば、原告と被告会社は、いずれも ウェブサイトの作成(企画・開発)、運営及び保守業務、並びにインターネット上 の検索エンジンの最適化サービス(SEO対策)等の同種の事業を行っている。し たがって、両社は営業活動上需要者や取引先を共通にする可能性があるといえるこ\nとから、競争関係にあると認められる。また、被告P1は、被告会社の代表取締役\nであるから、その職務に関して原告と競争関係にあるといえる。
(イ) 被告らは、原告の事業と被告会社の事業が全く異なり競争関係に立たない 旨主張する。しかし、不競法2条1項21号における競争関係は、需要者又は供給 者を共通にする可能性があるなど、将来現実化し得る潜在的な競争関係であれば足\nりると解されるところ、前記(ア)のとおり、被告会社の登記事項証明書及びウェブ サイトに記載された被告会社の事業内容(甲5)と原告の事業内容とが重複してい ることから、当該主張は採用できない。
イ 摘示事実の虚偽性(争点1−イ)
(ア) 本件投稿1の内容は、「アイメシア 特定商取引法に関する知識はなく、 コンプライアンス担当者はおらず…何度も何度も電話してくる…さらに電話の人間 は嘘丸出し営業トーク」と記載し、原告について、特商法に関する知識がなく、コ ンプライアンス担当者がおらず、営業対象先に対し何度も電話をかけ、電話をした 従業員が事実に反した話をするという事実を指摘するものである。当該記載を閲覧 した本件ページの閲覧者は、原告が、法令を遵守せず営業対象先に何度も電話をか け、かつ営業担当者が事実に反する話をする営業活動を行う会社であると読み取る ものといえる。
被告P1による令和3年1月14日の投稿、本件各投稿及び本件書面等の各内容 等(前記前提事実(2)(3)及び認定事実(3)(4))を踏まえると、原告が、営業対象先 に係るインターネット上の口コミサイトの記事を印刷し、SEO対策の重要性や原 告の業務を紹介する文書と共に営業対象先に送付し、同じ頃に営業対象先に電話を した上で当該文書等に言及して原告への依頼を促す等の営業活動を行っていること、 被告会社に対し、同月及び7月に営業目的で2回電話をし、本件書面等を送付した ことが認められるものの、原告が法令を遵守せずに営業の電話をし、また原告の従 業員が事実に反する話をして営業活動を行ったとはいえず、本件投稿1の前記記載 は事実に反するといえることから、その虚偽性が認められる。
(イ) 本件投稿2の内容は、「自分でネットに企業の誹謗中傷を書いて、それをネ タにネットの誹謗中傷対策しますというマッチポンプ詐欺の会社」と記載し、原告\nについて、営業対象先を誹謗中傷する内容の記事を予めインターネット上に書き込\nむ等した上で、当該企業に対し、当該書き込みを契機としてその対策業務を行う原 告への依頼を促す旨の営業活動を行っているという事実を指摘するものである。当 該記載を閲覧した本件ページの閲覧者は、原告がこのような詐欺的な営業活動を行\nう会社であると読み取るものといえる。 しかし、本件証拠に照らし、原告が、自ら営業対象先を誹謗中傷する書き込み等 をし、その対策等を理由に営業活動を行ったとはいえず、本件投稿2の前記記載は 事実に反するといえるから、その虚偽性が認められる。
(ウ) 本件投稿3の内容は、「自前で悪評判を立てた上で対策しますという…営 業を行う詐欺会社」と記載し、原告について、自ら相手方の悪評判を立てた上で、\n当該評判を契機としてその対策業務を行う原告への依頼を促す旨の営業活動を行う という事実を指摘するものであり、本件投稿2と同様に当該記載は事実に反する。
(エ) したがって、本件各投稿に記載された事実は、いずれも事実に反し虚偽で あると認められる。
(オ) 被告らの主張について
被告らは、被告P1が本件各投稿をした目的は、原告の営業が悪質であることか ら、原告に警告を発したり、他の業者が原告の営業に引っかからないようにするた めであるなどと主張する。 しかし、本件資料に係る口コミサイトの記載について、書き込みの時期(平成2 8年及び平成29年)と、原告の被告会社に対する架電の時期(令和3年1月及び 7月)が相当程度離れていること(前記認定事実(3)(4)及び(6)ウ)等を踏まえる と、原告が営業手段として自ら当該口コミサイトの記載を行ったとは認められない。 前記(ア)の原告の営業手法及び被告会社に対する営業行為を前提としても、本件各 投稿の前記内容が全体として事実に反することに変わりはなく、被告らが主張する 目的により本件各投稿行為が正当化されるものではない。このことは、被告会社が そのウェブサイトにおいて営業目的の電話を固く断り、迷惑であると判断した場合 には本件サイト等にその旨を登録すること等を記載していた(前記認定事実(6) ア)としても、同様である。
・・・
(3) 損害の発生及びその額(争点3)
ア 無形損害
前記2(1)イのとおり、本件各投稿は、原告が法令を遵守せず営業対象先に架電 し、かつ営業担当者が事実に反する話をする営業活動を行う会社であるとの印象や、 営業対象先を誹謗中傷する内容の記事を予めインターネット上に書き込む等した上\nで、当該企業に対し、当該書き込みを契機としてその対策業務を行う原告への依頼 を促す旨の営業活動を行う会社であるとの印象を与えるものであり、原告の社会的 評価が一定程度低下したと認められること、本件各投稿が、一定数の不特定多数の 者に閲覧されたと推認されること、一方で、本件各投稿が掲載された期間は令和3 年7月2日又は3日から同年8月7日までの一か月余りであり比較的短期間である といえること、本件サイトの口コミの投稿は、氏名やメールアドレスの記載が任意 とされ、投稿者が特定されない形で書き込むことが可能であることから、本件サイ\nトの口コミ掲示板に記載された情報に接した閲覧者が当該情報について信頼性が高 い情報として受け取るとまではいえないこと等を考慮すると、被告P1の本件各投 稿行為による原告の無形損害は50万円と認めるのが相当である。 なお、本件ページにおいて、被告P1による投稿以外の投稿がされたことが認め られないことは前記認定事実(4)ウのとおりである。

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令和3(ワ)4439  損害賠償等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年2月21日  大阪地方裁判所

不競法2条1項7号の不正開示行為として、損害賠償を求めましたが、秘密管理性なしとして、請求棄却されました。

原告は、本件早見表及び本件情報につき、被告P1が小堀鐸二研究所との契\n約上、本件早見表の利用許諾の対象を原告のみとしようとしたこと、原告が小堀鐸\n二研究所との契約上、秘密保持義務を負っていること、本件早見表のデータを保有\nしていたのは限られた人間だけであったこと、外部への持出しが禁止されていたこ と、被告P1が原告代表者として、原告内部で本件情報を共有するにあたり、取扱\nいを十分注意するよう呼び掛けていたこと、個別の現場において本件早見表\を用い るにあたって必要箇所以外はマスキングしていたこと、富士ネット工業において秘 密として管理されていたことから、原告において秘密として管理されていたと主張 する。
しかしながら、証拠(甲9、10)によれば、原告と小堀鐸二研究所との契約は 非独占的利用許諾の形式がとられている上、本件早見表の利用許諾の対象が、当初\n「原告及び原告の登録会員」であったものが、「原告及び原告の協力会社」と修正 されたにすぎないから、この変更が何ら原告や被告P1が本件情報を秘密として管 理していたことを示すものとはいえない。また、小堀鐸二研究所との契約上、原告 が秘密保持義務を負っているとしても、原告が現実に本件情報を秘密として管理し ていたかどうかには直接の関連性がない。前記(1)ア及びエ認定のとおり、本件早 見表を保有していたのは13名ないし14名の原告の従業員のうち、主に営業を行\nう5名ほどの者であったことが認められるものの、業務上必要のある者が保有して いたというにすぎず、他の従業員のアクセスが制限されていたとは認められない。 また、本件早見表の外部への持出しが禁じられていたこと、被告P1が原告におい\nて本件情報の取扱いを十分注意するよう呼び掛けていたことについては、いずれも\n被告P1が否定しているところ、原告の主張を裏付ける客観的な証拠は全くない。
さらに、個別の現場において本件早見表を取引先等に示す場合に必要箇所以外がマ\nスキングされていたからといって、本件情報の一部を担当者の判断で第三者に自由 に開示していることに変わりはなく、これをもって原告が本件情報を秘密として管 理していたとはいえない。加えて、富士ネット工業における本件早見表や本件情報\nの管理体制は、原告において秘密として管理されていたかどうかとは関連性がな く、被告P1が富士ネット工業在籍時に、本件情報の取扱いを注意するよう求める メールを他の従業員に送信していたとしても、富士ネット工業退職後、原告を設立 してからも同様の行動をしたことが推認されるわけではないし、前記(1)エ認定の とおり、被告P1が富士工業ネット工業在籍中に、本件早見表のデータにつき、そ\nの取扱いや電磁的記録媒体の紛失に注意を促す以外に、アクセス制限や拡散防止の 措置を講じていたものとも認められない。 本件情報の内容についても、天井部材落下防止ネットを張る際のいくつかの仕様 の組合せにより各支持部にかかる想定荷重について構造計算をした結果が一覧でき\nるため、便利ではあるが、仕様が異なればそのまま利用することはできないもので あるし、第三者が一級建築士等に依頼して独自に同種の早見表を作成することが困\n難とまではいえないから、本件情報を営業秘密として管理すべき必要性が客観的に 高いとは解されない。 そして、前記認定のとおり、本件早見表のデータは、営業秘密であることの表\示 等の措置のないままに、原告の従業員らの使用するコンピュータや持ち運び可能な\n電磁的記録媒体に保存されていたものであり、その使用後も、情報漏洩を防止する 何らの措置も採られなかったことなどに鑑みると、これらの情報は、いずれも秘密 として適切に管理されているとはいえず、秘密として管理されていると客観的に認 識可能な状態であったともいえない。\nその他原告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用 できない。
ウ そうすると、その余の点について検討するまでもなく、本件情報は、秘密管 理性が認められず、不正競争防止法上の「営業秘密」に該当しない。

◆判決本文

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令和2(ワ)32931  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和4年10月25日  東京地方裁判所

 空気圧制御機器において、被告製品の流量特性を表す有効断面積及び Cv 値についての不正確な表示が、被告製品の品質を誤認させるような表\示に当たるかが争われました。裁判所は、該当するとしたものの、損害額としては因果関係のある弁護士費用15万円を認めました。 。

ア 被告は、被告サイトに掲載された被告製品に係るカタログの記載を訂正前数 値から訂正後数値に訂正するなどしたところ、訂正前数値が誤りであり、訂正後数 値が正確な数値であった。(争いのない事実)
イ 被告製品は空気圧制御機器の一種であり、その主な用途は、生産工場等の空 気圧システムを用いたオートメーション設備で使用されるエアシリンダに組み合わ せてエアシリンダの空気の流れを制御することにある。このため、被告製品の一般 的な需要者としては、上記オートメーション設備の製造者や同設備を導入する工場 経営者等(以下「工場経営者等」という。)が想定される。(争いのない事実)
ウ 空気圧制御機器は、それ自体が空気圧システムの回路を通過する空気の流れに対する抵抗となり、空気の流れに影響を与える。もっとも、空気の圧力条件が同じであっても、空気圧制御機器によって、機器を通過できる空気の流量は異なる。このような圧力条件と流量の関係は、空気圧制御機器の性質という観点から、空気圧制御機器の流量特性として把握される。空気圧システムに用いる空気圧制御機器を選定するにあたり、当該空気圧制御機器の流量特性を適切に把握することは必要かつ重要である。流量特性が適合しない空気圧制御機器を誤って選定すると、所定の出力が得られず、さらに、空気圧制御系が不安定になることも起こり得る。(以上につき、甲 12、13、18)
(2) 前提事実及び前記各認定事実によれば、被告製品は、空気圧システムを用い たオートメーション設備で使用されるエアシリンダの空気の流れを制御することを 主な用途とする空気圧制御機器であるところ、空気圧制御機器にとって、流量特性 とは、それを適切に把握しなければ空気圧システムにおいて所定の出力が得られな くなるなどの不具合を生じかねない重要な意味を持つ要素である。そうすると、空 気圧制御機器において、その流量特性は、機器の品質に関係する要素の 1 つといえ る。 したがって、被告製品の流量特性を表す有効断面積及び Cv 値についての不正確 な表示は、被告製品の品質を誤認させるような表\示に当たる。 本件では、被告は、被告製品の流量特性を表す有効断面積及び Cv 値について不 正確な数値を記載した本件カタログを配布すると共に、これを被告サイト上に掲載 したのであるから、被告製品の品質について誤認させるような表示をしたと認めら\nれる。
(3) これに対し、被告は、工場経営者等が電磁弁を購入する際に重視するのはシ リンダとの適合性や価格等であって、有効断面積や Cv 値ではないなどとして、本 件表示は品質誤認表\示に当たらない旨を主張する。 しかし、前記のとおり、空気圧制御機器の流量特性は、それを適切に把握しなけ れば空気圧システムにおいて所定の出力が得られなくなるなどの不具合を生じさせ かねない重要な要素であり、シリンダとの適合性もこれに基づいて定まるものとい える。そうである以上、空気圧制御機器の一般的な需要者である工場経営者等は、 当該機器の選定にあたり、流量特性を空気圧制御機器の品質に関係する要素と認識 し、評価要素の 1 つとしていることが強く推認される。このことは、本件カタログ で、少なくとも一部の被告製品について「優れたバルブの内部構造により、有効断\n面積を増大させ、流量をアップさせることができます」と記載し、被告自身が有効 断面積の増大をアピールしていること(甲 1)からもうかがわれる(なお、被告の カタログでは、有効断面積等の数値訂正後も同じ記載が維持されている。乙 3)。ま た、流量特性を評価要素の 1 つとすることは、工場経営者等が機器の価格等を重視 することと矛盾するものではなく、これと両立し得る。被告製品の通販サイト上の レビューで有効断面積について言及したものがないとしても、被告指摘に係るレビ ューはわずか 4 件に過ぎず、これらが言及した要素をもって被告製品の品質を網羅 したものとはいえないし、これらのレビューが有効断面積を空気圧制御機器の品質 に関係する数値と考えていないことをうかがわせるものともいえない。 エアシリンダの機種選定手順に関する原告の資料(乙 15)が有効断面積に言及し ていない点も、電磁弁はエアシリンダに組み合わせて用いる機器であってエアシリ ンダそのものではないこと、原告の自社製品カタログ(甲 3)には電磁弁の Cv 値及 び有効断面積に換算可能な C 値が掲載されていることなどに鑑みると、上記判断を 左右する事情とはいえない。
・・・
ア 本件カタログは、AirTAC グループの中国における拠点の一つである寧波エ アタックが作成したものであり、本件カタログに掲載された各製品の性能等に関す\nる数値は全て、寧波エアタックが運営する研究開発センターにおいて測定・算出さ れたものである。(乙 13、弁論の全趣旨)
イ 被告は、AirTAC グループの唯一の日本における拠点であり、同グループにお いて製造した被告製品を日本国内で自社製品又は自社グループ製品として販売して いる。(甲 1)
ウ 被告は、寧波エアタックから本件カタログの提供を受け、これを顧客に配布 すると共に被告サイトに掲載したが、その際、本件カタログに記載された数値の正 確性につき、改めて自ら測定し、又は研究開発センターに照会するなどして確認す ることはしなかった。(弁論の全趣旨)
(2) 前記各認定事実によれば、被告は、その取扱製品である被告製品を掲載した カタログ等の宣伝広告物を配布等するに当たり、被告製品の品質に係る数値として 正確な数値をカタログ等に記載すべき義務を負っていたにもかかわらず、これを怠 り、本件表示に係る数値の正確性を確認することなく本件カタログを配布等したと\nいうのである。したがって、被告には、被告製品の品質を誤認させるような表示を\nしたことについて少なくとも過失が認められる。
(3) これに対し、被告は、本件カタログに掲載された数値の正確性を検証できる設備を有していないため研究開発センターの測定結果を信頼するしかないなどと指摘して、自己に過失はない旨を主張する。しかし、販売業者が自己の取扱製品の宣伝広告物としてカタログ等を配布等する場合、取引先に対して示すカタログ等の記載内容の正確性を確保すべき義務を販売業者が負うのはむしろ当然とも思われる。まして、被告製品は被告も属する AirTACグループ内で製造され、本件カタログ等に記載されたデータも同グループ内の企業による計測結果に基づくものである。これらの事情を踏まえると、少なくとも本件において、被告は、取引先等に対し本件カタログ等の記載内容の正確性を確保すべき義務を負うというべきである。被告自身は当該数値の正確性を検証できる自社設備を有しておらず、また、訂正前数値に特段不審な点がなかったとしても、それらの事情は、上記義務を免れることを基礎付けるものではなく、また、これを履行したことを示すものでもない。その他被告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する被告の主張は採用できない。
4 損害の有無及び損害額について
(1) 本件は、被告の不正競争に係る訴訟であり、専門的・技術的側面を有するこ と、被告が本件の訴状副本の送達を受けて間もなく訂正前数値の不正確さを認め、 その訂正及び本件カタログの廃棄等を実施したこと(前記第 2 の 1(5)、第 3 の 2(1))、本件カタログは被告製品全てを掲載したものであること(前記第 2 の 1(2))、原告が弁護士費用相当額以外の損害について一切主張立証していないこと、その他諸般の 事情を総合的に考慮すると、被告の不正競争と相当因果関係のある弁護士費用に相 当する損害額は、15万円とするのが相当である。

◆判決本文

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