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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商標その他

令和2(ネ)10017  商標権侵害差止等本訴,虚偽事実告知・流布行為差止反訴請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和4年11月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 本件商標は「守半」です。被告は「守半總本舗」などを使用していました。原審は、差止などは権利濫用と判断しましたが、知財高裁は、一部の使用形態についての使用は、黙認したものと同一ではないとして、それらに関する権利行使を認めました。

(2) 前記(1)の事実を前提として検討するに、当裁判所は、控訴人が、被控訴人 標章2、5、9、10、12の使用に対して、本件商標権を行使することは権利の 濫用に当たるものの、「守半總本舗」の文字からなる被控訴人標章1、3、4、6 〜8、11の使用に対して本件商標権を行使することについては、権利濫用に当た らないものと判断する。その理由は以下のとおりである。
・・・
イ 被控訴人標章1、3、4、6〜8、11の使用について
(ア) 前記(1)エ(エ)のとおり、被控訴人は、平成18年から新たに「守半總本舗」 という商号及び標章を使用するようになったものであるが、「總本舗」とは、「ある 特定の商品を製造・販売するおおもとの店」を意味する語であり(甲73)、その ような語を「守半」に結合させた「守半總本舗」は、従前、Eや被控訴人がしてい た「守半」の商号や標章の使用とはその意味合いを異にする。 すなわち、前記(1)ア、ウ〜オからすると、従前、控訴人ら及び被控訴人の三者 間では、守半本店(補助参加人)が「本店」という中心的な地位を占める屋号、商 号を一貫して用いており、控訴人及び被控訴人もそれを是認してきたということが できる。しかし、被控訴人が上記のような意味合いを持つ「總本舗」を「守半」に 結合させた「守半總本舗」の商号や標章を用いた場合、取引者、需要者に対し、あ たかも被控訴人が三者の中で新たに「本店」としての地位を獲得したかのような印 象を与えることとなり、平成18年以前に長年にわたって構築されていた三者の関係性を変質させるものといえる。\nそうすると、被控訴人によって平成18年以降、開始された「守半總本舗」の商 号・標章の使用は、本件商標権の取得以前から、長年にわたってEや被控訴人によ って行われてきた「守半」標章の使用とは、社会通念上、同一に考えることはでき ない。
(イ) 被控訴人は、「守半總本舗」という商号や標章の使用について、「本店」であ る補助参加人の当時の代表者であるAから承諾を得たと主張するが、Aはその事実を否定しており、また、被控訴人代表\者は、原審において上記主張に沿う供述をしたものの、Aから承諾を得た時期という重要な点について供述内で変遷しており、 直ちに信用することができない。また、補助参加人が異議を述べなかったというこ とから直ちに承諾があったと認めることはできない。そうすると、被控訴人の上記 主張は採用できない。 そして、仮に「守半總本舗」の使用について補助参加人の承諾があったとしても、 そのことから直ちに、被控訴人による「守半總本舗」の使用に対する本件商標権の 行使が権利濫用になるということはできない。
すなわち、「守半」の標章は守屋半助の開業した守半本店の事業に起源を持つも のであり、補助参加人は、守半本店の事業を承継したものであるが、「守半」標章 の知名度や信用が、需要者や取引者から見て、守屋半助の開業以来、三者の中で終 始、守半本店(補助参加人)にのみ集中的に帰属するような状況にあったのかは証 拠上必ずしも明らかではない。むしろ、前記(1)ク及び前記ア(ア)のとおり、控訴人 や被控訴人が、独自の立場で営業を行い、それによっても「守半」標章の知名度や 信用が蓄積されてきたと考えられることからすると、補助参加人が、控訴人ら及び 被控訴人の三者内において「守半」標章の使用許諾をする法的権限を、守半本店の 事業を承継したとか、代表者と守屋半助との間に血縁関係があるといった理由のみによって永続的に保持すると解するのは相当ではなく、平成18年当時、三者の中\nで補助参加人がそのような特別な権限を持っていたというためには、その時点にお いて、「守半」標章の知名度や信用が、需要者や取引者から見て、補助参加人にの み集中的に帰属するような状況にあったか、三者間で補助参加人がそのような権限 を持つことが明示又は黙示に合意されていたか、控訴人及び被控訴人が、補助参加 人が「守半」標章の使用を第三者に許諾することに同意していたなどの事情を要す るものと解されるところ、上記当時、これらの事情があったと認めるに足りる証拠 はない。
そして、前記(1)エ、オ、ク及び前記ア(ア)のとおり、三者がそれぞれの立場から 営業活動を行って「守半」標章の知名度と信用の獲得に貢献しているという客観的 状況があり、かつ、控訴人が昭和55年に本件商標権を取得しており、被控訴人が 遅くとも平成18年11月頃までには控訴人が本件商標権を取得していることを認 識していたこと、その頃、控訴人が被控訴人に対し、「守半總本舗」の使用に関し て異議を述べていたことからすると、被控訴人が「守半總本舗」の使用について、 本件請求における不法行為期間(対象期間)の始期である平成20年以降も継続す るためには、補助参加人の承諾のみでは足りず、商標権者たる控訴人の承諾も得る べきであったと解すべきである。しかし、前記(1)エ(エ)のとおり、被控訴人は、控 訴人の承諾を得ることなく、「守半總本舗」の使用を継続したものであった。

◆判決本文

原審はこちら。

◆平成30(ワ)11046等

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令和4(ネ)10067等  損害賠償請求控訴事件,同附帯控訴事件  商標権  民事訴訟 令和4年11月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審は 商標権移転手続につて、元代表取締役の被告がかってに行った手続によって生じた損害として、百貨店のカタログに掲載ができなかったことによる売上減少が相当因果関係ありと認定され、約960万円の損害を認めました。知財高裁は、約590万円に変更しました。

「ウ もっとも、前記1(3)オ並びに証拠(甲69、原審証人B・5頁及び6頁) 及び弁論の全趣旨を総合すると、櫻山及び被控訴人は、平成29年1月15日に代 表取締役を退任した控訴人からの引継ぎが十\分でなかったことなど、「商標登録の 問題」とは別の理由で、同年の御歳暮に係る商品を始め平成30年の御中元の前の 時期までの商品につき、これらをカタログ等に掲載してもらうことができず、「商 標登録の問題」を理由としてカタログ等への掲載が拒否された商品は、同年の御中 元以降のものであると認められる。そうすると、三越伊勢丹が被控訴人の商品をカ タログ等に掲載しなかったことによる被控訴人の逸失利益の計算上の始期は、同年 5月1日とするのが相当である。 被控訴人は、上記逸失利益の計算上の始期は平成30年1月1日であると主張す るが、上記のとおりであるから、これを採用することはできない。
エ 以上のとおりであるから、控訴人及びAが共同して本件申請をした結果として三越伊勢丹が被控訴人の商品をカタログ等に掲載しなかったことにより被控訴人\nに生じた損害(逸失利益)の額は、合計448万円(平成30年5月1日から令和 元年8月31日まで月額28万円)であると認められる。」
・・・
また、控訴人は、上記2)のとおり主張するが、上記のとおり、一般に、百貨店の カタログを利用した販売や百貨店のインターネット販売サイトを利用した販売にお いては、販売費及び一般管理費が低廉なものに抑えられると考えられ、また、証拠 (甲67、乙イ44)及び弁論の全趣旨によると、櫻山の売上げのうちの9割以上 が三越伊勢丹に係る売上げによって占められるところ、三越伊勢丹に係る櫻山の売 上げのうちカタログ等に掲載された商品に係る売上げが占める割合は、わずか数% であると認められ、これらの事情に照らすと、仮に、カタログ等に掲載された商品 に係る櫻山の営業利益率が決算報告書(乙イ33)から算定される櫻山の全体の営 業利益率を上回るとしても、直ちに不合理であるとはいえない。 以上のとおりであるから、カタログ等に掲載される商品について被控訴人に生じ た営業上の損害(逸失利益)の額を算定するに当たっては、その基礎収入の額を甲 65に記載された額に基づいて算定するのが相当である。
(6) 控訴人は、前掲最高裁令和2年4月7日第三小法廷判決は本件の控訴人の ような立場の者にも当てはまるとして、本件訴訟において、被控訴人が別件訴訟に おける費用(印紙、郵券及び仮処分登録免許税に係る費用。以下「別件費用」とい う。)を損害として主張することは許されないと主張する。 しかしながら、控訴人は、Aと連帯して、控訴人及びAの共同不法行為(本件申請)により被控訴人に生じた損害を賠償する責任を負うところ、補正して引用する\n原判決第4の3(2)イにおいて説示したとおり、被控訴人は、別件訴訟の当事者で ない控訴人を相手方として、別件費用を訴訟費用等の確定処分を経て取り立てるこ とができないのであるから、上記最高裁判決が別件訴訟の当事者でない控訴人にも 当てはまると解するのは相当でない。
控訴人は、控訴人があずかり知らない別件訴訟において発生した別件費用を控訴 人が負担するとなると、控訴人に予測できない負担が発生するとも主張するが、控訴人は、Aと共同して本件申\請をし、これにより、本件各商標権について櫻山からAに対する商標権移転登録がされたのであるから、その結果、被控訴人が、本件各 商標権に係る処分禁止の仮処分命令の申立て及び執行や、本件各商標権に係る商標権移転登録抹消登録手続請求訴訟の提起等を余儀なくされるのは当然のことである。\nしたがって、別件費用に係る被控訴人の損害は、控訴人及びAの共同不法行為(本 件申請)と相当因果関係のある損害であって、控訴人に別件費用の支払義務を負担させることは、控訴人に予\測できない負担を負わせるものではない。また、控訴人は、控訴人が本件訴訟において別件費用を負担するとなると、Aも 本件訴訟において別件費用を負担することになり、上記最高裁判決を潜脱すること になると主張するが、控訴人が本件訴訟において別件費用を負担することは、Aも 本件訴訟において別件費用を負担することを意味しない。 さらに、控訴人は、被控訴人はAにつき別件訴訟に係る訴訟費用等の確定処分を 経て別件費用に係る債務名義を取得することができるのであるから、控訴人につい てまで別件費用に係る債務名義を取得できるとなると、被控訴人が債務名義を二重 に取得することになって不当であるとも主張するが、共同不法行為に基づいて不真 正連帯債務を負う複数の者について、同一の損害に係る複数の債務名義が存在する ことは、何ら不当なことではない。

◆判決本文
1審はこちら。

◆令和2(ワ)14627

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平成31(ワ)2614  商標使用料等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年10月25日  東京地方裁判所

 使用許諾契約書が真正に成立したとは認められないとして、商標権行使が権利濫用と判断されました。

前記前提事実(6)のとおり、本件においては、原告代表取締役の肩書が付さ\nれたAの記名押印及び被告代表取締役の肩書が付されたDの記名押印のある\n本件商標使用許諾契約書が存在するところ、同契約書の印影が被告代表取締\n役印により顕出されたものであることについては、当事者間に争いはないも のの、被告は、同印影がDの意思に基づいて顕出されたことを否認し、Aが Dの承諾なく押印したものであると主張する。 本件において、Aが被告の代表取締役に就任した当初からB及びDの代表\ 取締役印をAが保管していたことについては、当事者間に争いがない。加え て、証拠(乙100及び112)及び弁論の全趣旨によれば、平成11年1 2月1日にAが被告の代表取締役に就任した頃から、被告の業務に実質的に\n関与していたのはAのみであり、他の代表取締役らが業務に関する意思決定\nを行うことはなかったものと認められる。そうすると、Aは、被告の他の取 締役らの同意を得ずに本件商標使用許諾契約書を作成することが可能かつ容\n易な状況にあったといえる。
また、前記1(1)ないし(3)のとおり、本件各物件は、被告所有に係る物件で あり、かつ、いずれの名称も被告内部においてか又は被告と自治体の協議に よって決定されたものであるにもかかわらず、本件各物件に係る事業の委託 を受けたにすぎない原告が、本件各物件の名称そのものである原告各商標の 登録出願をすることは不自然であるといわざるを得ない。 さらに、被告内部においてか又は被告と自治体の協議によって決定された 本件各物件の名称と同一の原告各商標の使用の対価を、その決定に何ら関与 していない原告に支払うことを被告が承諾するとは考え難く、本件全証拠に よっても、被告がこのような内容の本件商標使用許諾契約を締結することに 合理的な理由があったことを示す事実は認められない。
一方、原告は、本件商標使用許諾契約の締結により、被告から原告各商標 の使用料を得られるから、原告の代表取締役であるAにおいて、同契約に異\n議を述べることが予想されるDやBに諮ることなく、本件商標使用許諾契約\n書を作成する動機があるといえる。 そうすると、Aが本件商標使用許諾契約書にDの承諾なく同人の代表取締\n役印を押してこれを作成した可能性が認められるというべきであって、本件\n商標使用許諾契約書の被告作成部分が真正に成立したと推定することはでき ず、他に本件商標使用許諾契約書が真正に成立したことを認めるに足りる証 拠はない。 よって、本件商標使用許諾契約書が真正に成立したと認めることはできず、 同契約書によって本件商標使用許諾契約が成立したと認めることもできない。
・・・
商標権の行使も、商標の取得の経過やその意図、標章の利用の態様、その 行使の態様等諸般の事情を考慮し、権利の濫用に当たり許されない場合があ る。
本件においては、前記1(1)のとおり、原告各商標は、被告が被告の事業名 又は被告が所有する本件各物件の名称として決定したものであり、周辺住民 に対して本件各物件の名称として周知されていったものである上、前記1(3) の認定事実及び証拠(甲A210並びに乙37、38、40及び103)に よれば、本件各物件の貸与業務については、これまで、被告を事業主として、 又は原告と被告の名称が併記された上で、広告が出され、宣伝されていたと 認められることからすると、原告各商標によって表示される本件各物件の貸\n与業務の主体、すなわち、当該役務の出所は、被告であるか又は被告及び原 告であるといえる。
他方で、原告は、被告との関係において、本件各物件を利用した事業及び 本件各物件の管理の委託を受けた受託者にすぎないものであり、原告が原告 各商標の周知に貢献したことがあるとしても、それは受託業務の一環として 位置付けられるものにすぎない。このような立場にあるにすぎない原告が業 務の委託者である被告に対して原告各商標に係る排他的かつ独占的な権利を 主張できるとする正当な理由は認め難い。 また、原告が被告に対して原告各商標権を行使するに至った経緯は、前記 1(5)アないしエのとおりであるところ、かかる経緯に加え、同オの他の訴訟 の状況も併せ考慮すれば、原告の被告に対する原告各商標権の権利行使は、 原告の代表取締役であるAが被告の取締役を解任され、それに伴って被告の\n口座名義が変更されたことにより、本件各業務委託契約に基づく管理報酬が 支払われなくなったことに対する対抗手段としてされたものであって、今後 も原告及びその関連会社が本件各物件の事業及び管理業務を続けることを被 告に承諾させる目的に基づくものと推認することができる。 他方で、被告による被告ウェブサイトの開設及び同ウェブサイト上での被 告標章4ないし6の使用は、前記1(4)の経緯によるものであって、被告にと って必要かつ正当なものであるといえること、原告各商標は、本件各物件の 名称として周辺住民に周知されている上(弁論の全趣旨)、前記前提事実(1) オ(ア)のとおり、一部地方自治体の施設として利用されていることなどを考 慮すると、原告商標権を侵害することのないよう、被告に本件各物件の名称 を変更し、又は同名称を表示せずに、被告ウェブサイトにおいて本件各物件\nの貸館又は貸室に係る申込みの誘引をすることは、通常期待できないという\nべきであって、被告が被告ウェブサイトにおいて被告標章4ないし6を使用 することには、正当な理由があると認められる。
しかも、本件各物件の管理業務は、依然として全般的に原告又はその関連 会社が行っており、被告が被告ウェブサイト上で本件各物件の賃借等の申込\nみを受け付けていることはうかがわれず、被告は、事実上これらの物件の管 理ができない状態に陥っているといえるから、当該役務の出所の混同が生じ ることにより、原告が、現に損害を被っているとは認め難く、かつ、将来的 にも損害を被るおそれがあるとも認め難い。 以上のような事情を総合考慮すると、原告の被告に対する不法行為に基づ く損害賠償請求を認めることは、公正な競争秩序を害するといえ、権利の濫 用として許されないものと解するのが相当である。
(2) これに対し、原告は、被告において、原告が原告各商標の商標登録を行う ことを被告が認めていたこと、原告と被告との間で原告各商標に関して本件 商標使用許諾契約が締結されていること、被告は原告に対して長年にわたり 商標使用料を支払ってきたことに基づき、Aが被告の取締役を解任されたこ ととは関連がなく、原告は従前から原告各商標に係る権利行使をしたもので ある旨主張する。
しかし、前記2で認定したとおり、本件においては、本件商標使用許諾 契約の存在を認めるに足りず、また、Aが原告の名義で原告各商標を取得 すること及び本件各商標の使用料を被告が原告に支払うことにつき他の取 締役又は株主の承諾を受けたとの事実を認めるに足りないから、原告の主 張は、その前提を欠くものであって、採用することができない。
(3) したがって、原告の被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求は、権利 の濫用(民法1条3項)であるといえるから、原告は、被告に対し、同損害 賠償請求に係る権利を行使することができない。

◆判決本文

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令和3(ワ)2722  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年8月30日  東京地方裁判所

 相続において、一部の相続人が商標を出願し、他の相続人に対して、権利行使をしました。裁判所は、権利濫用として商標権の行使を認めませんでした。

以上のとおり、漢字の「忠」を丸で囲んだもの、又は、これと、「山田石 材店」、「山田」、「つなぎ館」、「つなぎや」などの表示を組み合わせたものは、山田石材店及び被告において、長年にわたり、多磨霊園の近隣にお\nいて、墓石の販売、設置等その業務について使用されてきて(前記(1)ア)、 被告による使用によって同所においては関係する役務等について一定の信用 が蓄積されてきたものといえ、上記各表示を含む各被告標章もその中で使用されるようになったものである(同前)。被告は、山田石材店として創業以\n来、c及びその子孫によって運営されてきた(同イ)ところ、cの孫である aは、父であるdから被告の持分を相続し、平成7年頃に、被告を解散して 新たな組織により石材店を営むことを企図するなどしたことがあり(同ウ)、 被告に関係する者といえ、また、被告の使用する標章やその使用状況を知っ ていたと認められる。このような状況のもとで、aが設立した原告は、従前 被告の店舗が所在した土地の明渡しを受けて同所に原告店舗を構え、「c、dと続く「丸忠事業」を承継するために原告を設立した」のであるから「a\nすなわち原告が「丸忠ブランド」に関わる商標を商標登録出願するのは当然 のことである」と主張するなどして(前記2(8)(原告の主張))、被告が、 長年にわたり、「マルチュウ」との称呼が生じ「丸忠」とも表記され得る漢字の「忠」を丸で囲んだもの、「つなぎ舘」等を使用してきた中で、平成8\n年、上記の各標章に類似する本件商標1(漢字の「忠」を丸で囲んだもの) 及び原告商標(つなぎ館/指定役務・飲食物の提供等)を商標登録出願し、 被告が「有限会社つ ぎ館丸忠山田石材店」に商号変更した後の平成18年 に、同商号に含まれる文字列である本件商標2(丸忠山田)、本件商標3 (つなぎ館/指定役務・葬儀並びに法事のための施設の提供等)を商標登録 出願した(同ア、ウ)。
そうすると、原告の被告に対する本件各商標権に基づく各請求は、被告に 関係する者であるaが設立した原告が、被告の創業者であるcから続く事業 すなわち被告の事業を承継するためと主張して、被告が長年にわたり事業に 使用してきたことにより一定の信用が蓄積された標章に類似する商標につい て商標登録出願をして(なお、原告が、当時、これらの商標を各指定商品又 は各指定役務について使用していたことは認めるに足りない。)、被告に対 し、被告が上記の標章の使用の一環として使用するようになった各被告標章 を使用しないこと等を求めるものであって、このような被告による標章の使 用の状況、原告と被告との関係、原告の商標登録出願に至る経緯等に照らせ ば、仮に被告が本件各商標の指定役務に類似する役務に本件各商標に類似す る各被告標章を使用するものであったとしても(争点1)〜3))、権利の濫用 に当たると認められる。 したがって、原告の被告に対する本件各商標権に基づく各請求は、権利濫 用であって認められない。

◆判決本文

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令和4(ネ)10027等  損害賠償等請求控訴事件,同附帯控訴事件  その他  民事訴訟 令和4年8月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 情報提供サイトにおけるメタタグの使用は、商標的使用ではない(商26条1項6号)と判断されました。平成30(ネ)10064等は、メタタグの使用も不競法における商品等表示に該当するとしましたが、今回のように情報提供サイトにおける使用ではありませんでした。被告は、「葬儀」サービスは行っていませんが、「葬儀に関する情報の提供」には該当しそうです。なお、本事件の原告は本人訴訟です。\n

 前記認定によると、本件サービスサイトは、その構成において、需要者であ\nる葬儀希望者に対し、その条件に見合った葬儀社等の情報提供を行い、また希望者 には葬儀の依頼や相談、一括見積を行うことなどを通して、葬儀希望者と葬儀社等 とのマッチング支援を行うサービス(被告役務)を提供するものであることが容易 に看取できる。 そして、本件ウェブページは、これを単独でみても、そのドメインや本件ウェブ ページのタイトル部分や末尾の「安心葬儀」等の表示、競合し得る近隣の斎場等の\n情報も表示されることに加え、本件葬儀場の情報については、ホールの外観、特徴\nや所在地、アクセス方法、設備情報等の客観的な情報が記載されているにとどまり、 これを超えて本件葬儀場の利用を誘引するような記載はみられないこと等の事情か らすると、本件ウェブページに接した需要者は、「セレモニートーリン」を、葬儀 場を紹介するという本件サービスサイトにおいて紹介される一葬儀社(場)として 認識するものであり、原告が本件葬儀場において提供する商品ないし役務に関し、 被告がその主体であると認識することはないものというべきである(本件ウェブペー ジを含め、本件サービスサイトの運営者が原告であると認識することがないことも 同様である。)。
さらに、原告が問題とする本件ウェブページの html ファイル中のタイトルタグ及 び記述メタタグに記載された内容は、検索サイトYahoo!において「セレモニー トーリン」をキーワードとして検索した際の検索結果において基本的に各タグに記 載されたとおり表示されると認めることができるが、その内容は、いずれも本件サー\nビスサイトの名称が明記された見出し及び説明文と相まって、原告の運営するウェ ブサイトとは異なることが容易に分かるものと評価できる上、一般に、検索サイト の利用者、とりわけ現に葬儀の依頼を検討するような需要者は、検索結果だけを参 照するのではなく、検索結果の見出しに貼られたリンクを辿って目的の情報に到達\nするのが通常であると考えられるところ、需要者がそのように本件ウェブページに 遷移した場合には、前記のとおり、被告が運営する本件サービスサイトの一部とし て本件ウェブページを理解するのであって、やはり、被告標章を本件ウェブページ の各タグ内で使用することによって、原告と被告の提供する商品または役務に関し 出所の混同が生じることはないというべきである。 したがって、被告による被告標章の使用は、商標法26条1項6号の規定により、 本件商標権の効力が及ばないというべきである。
(3) 原告は、被告は、本件ウェブページの見出しやその説明文において被告標章 を表示させ、需要者をして本件ウェブページにアクセスするよう誘引し、本件ウェ\nブページにおいて本件葬儀場の建物の写真や情報を表示させることで、需要者をし\nて、本件ウェブページが原告(セレモニートーリン)のウェブページであると誤認 させ、出所の混同を生じさせている旨を主張する。 しかし、本件ウェブページの見出し、説明文及び本件ウェブページ自体の表示内\n容を踏まえると、見出し及び説明文に被告標章の表示があるからといって、出所の\n混同を生じさせることにはならないことは前述したとおりである。原告の主張は、 要するに、原告を紹介する本件ウェブページに被告の電話番号等が表示されること\nにより、原告が、その潜在的需要を失う不利益を被っていることをいうものと解さ れるが、そのような結果が仮に生じているとしても、前記認定に係る本件サービス サイトの性質及び本件ウェブページの記載(なお、反対にこれを参照して原告に依 頼する需要者も在り得ると考えられる。)からすると、自由競争の範囲内のものと いうべきである。原告の前記主張は採用の限りでない。  

◆判決本文

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令和1(行ケ)10157  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年9月12日  知的財産高等裁判所

 商標法53-2の取消審判の審決取消訴訟です。代理人である、正当理由無しとした審決が維持されました(登録取り消し)。

 イ 商標法53条の2は、輸入者が権利者との間に存在する信頼関係に違背 して、正当な理由がなく外国商標を勝手に出願して競争上有利に立とうと する弊害を除去し、商標の国際的保護を図る規定というべきであり、この 観点からすると、ここにいう「代理人」に該当するか否かは、輸入者が「代 理人」、「代理店」等の名称を有していたか否かという形式的な観点のみ から判断するのではなく、商標法53条の2の適用の基礎となるべき取引 上の密接な信頼関係が形成されていたかどうかという観点も含めて検討す るのが相当である。
この点、原告は、被告商品を輸入して、日本国内でこれを販売するため に被告との取引関係に入ったものというべきところ、前記1(3)のとおり、 本件期間内の被告商品の納入は合計5回、1261万円に上り、決して少 ないものとはいえず、さらに、本件期間後の平成29年3月14日まで継 続している。そうすると、原告と被告の関係は、単発の商品購入にとどま るものではなく、継続的な取引関係の構築を前提とするものであり、この\nことは、原告がわが国におけるエスタッチ社商標の使用権を取得しようと したこと、さらには、本件商標の登録出願をしたこと自体からも裏付けら れるものである。以上の事情を総合考慮すると、原告と被告の間には、本 件期間内に既に、代理人ないし代理店と同様の取引上の密接な信頼関係が 形成されたものと認めるのが相当であり、代理店契約の存否等にかかわら ず、原告は、同条の2にいう「代理人」に該当するというべきである。
・・・
(1) 原告は、前記第3の2(1)のとおり、被告は、本件商標の登録出願がなされ た平成28年9月5日の時点において、エスタッチ社商標に代わる商標の権 利取得を放棄していたのに等しく、他方、原告には、顧客に納入した被告製 品に付された商標に関する問題が生じることを回避する必要があったため、 原告が本件商標の登録出願をするについて正当な理由を有する旨主張する。 しかし、被告が、同年7月5日の時点でエスタッチ社商標の出願が登録料 未納付により却下されたことを把握していたとしても、原告による本件商標 の登録出願まではわずか2か月にすぎず、これをもって「長期間」放置した とか、原告のみならず任意の第三者においてエスタッチ社商標に代わる商標 を登録することが可能な状態を許容していたなどと評価できないことは明ら\nかである。なお、白岩物産は、前記1(4)のとおり、同日付けメールで、被告 が同月15日までに引用商標の商標登録出願をする予定であることを原告に\n告げているけれども、同日までに引用商標の商標登録出願がされなかったか らといって、被告が出願の意思を失ったと推認されるものでもない。 さらに、前記2(1)ウのとおり、原告は、エスタッチ社商標ないし将来被告 が日本において出願する予定の引用商標と同一の商標は、本来被告及びエス\nタッチ社が韓国において共有する商標に由来すること、また、被告が独占的 通常使用権の許諾には簡単には応じられないという意向であったことを知り ながら、独占的通常使用権をめぐる交渉中に本件商標の登録出願をしたもの であるから、原告が当該出願について正当な理由があるなどといえないこと も明白である。なお、原告のいう「被告製品に付された商標に関する問題」 とは、引用商標を付した商品が出回り値崩れを起こしているという趣旨と解 されるが(甲20の1・2、甲21の1ないし8)、これは、本来、独占的 通常使用権をめぐる交渉において解決されるべき問題であり、本件商標の登 録出願を正当化するものではない。

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令和3(行ウ)381    その他  行政訴訟 令和4年6月28日  東京地方裁判所

 「八丁味噌」について愛知の組合が地理的表示として申\請をして認められました。岡崎の業者が、これに不服申立を行いましたが、出訴期間を徒過していました。岡崎の会社は、自分たちの製法こそ、「八丁味噌」と主張しているようですので、発展的解消は難しいのかもしれません。\n

前提事実によれば、原告は、平成29年12月16日頃、本件処分があった ことを知ったところ、原告は、令和3年9月17日、本件処分の取消しを求め る本件訴えを提起したことが認められる。そうすると、本件訴えの提起は、本 件処分があったことを知った日から6か月を経過してされたものであるから、 行訴法14条1項本文所定の出訴期間を徒過しているものと認められる。 したがって、本件訴えは、出訴期間を経過したものとして、同項ただし書に いう「正当な理由」がない限り、不適法である。 これに対し、原告は、本件処分について八丁組合が本件審査請求をしている ところ、八丁組合がした本件審査請求は、実質的には原告が行ったものと同視 することができるから、原告は行訴法14条3項本文に規定する「審査請求を した者」に当たり、本件訴えはその出訴期間を遵守するものである旨主張する。 しかしながら、前提事実によれば、本件審査請求をした者は八丁組合であり、 原告と八丁組合の法人格は異なるものであるから、原告が上記にいう「審査請 求をした者」に該当しないことは明らかである。そもそも、原告は、八丁組合 が本件審査請求をした場合であっても、行訴法14条1項にいう出訴期間経過 前に本件処分に係る取消訴訟を提起することができたのであるから、下記2に おいて検討するとおり、同項にいう「正当な理由」がある場合に限り、原告は 本件訴えを提起することができるものと解するのが相当である。そうすると、 原告の主張は、上記判断を左右するに至らない。

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令和3(ネ)10096  競業行為差止等請求本訴・損害賠償請求反訴控訴事件、同附帯控訴事件  商標権  民事訴訟 令和4年6月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審と同様に、商標権の行使が権利濫用と認定されました。原告Aと被告Bが婚姻していたなど特殊事情があります。

これに対し1審原告は、1審被告YとA間の「ギャラリーアートポイント」 の名称等に係る紛争に至る経緯や、1審原告が、1審被告Yとの婚姻中から、 個人事業主として、「ギャラリーアートポイント」の名称を自らの事業の表示\nとして使用してきたものであり、1審被告Yが主、1審原告が従であるよう な関係にもなく、双方が対等な立場にあったこと、1審原告の事業は、1審 原告と1審被告Yが別居した以降、1審被告Yと完全に独立していることか らすると、原告商標に1審原告独自の信用が化体しており、本件商号及び被 告ら標章1が正当に帰属すべきは1審被告Yであったものとはいえないから、 1審原告による1審被告らに対する原告商標権に基づく権利行使は、権利の 濫用に当たらない旨主張する。
しかしながら、前記(1)で説示したとおり、1)1審原告と1審被告Yは、1 審原告及び1審被告Yの両名が賃借人として契約した本件賃貸借契約が存続 する限りにおいては、別居後の合意に基づいて、1審原告及び1審被告Yが、 本件事務所において、それぞれ本件商号及び被告ら標章1あるいは原告商標 を使用した貸画廊(本件画廊)の営業を行うことを妨げてはならない旨の義 務を相互に負っていること、2)1審原告による原告商標に係る商標登録出願 は、1審原告が1審被告Yとの別居後の交渉を自己に有利に進める手段を得 るために行われたものとうかがわれ、1審被告Yとの関係では、正当なもの とはいえないことに照らすと、1審原告の上記主張は、原告商標に1審原告 独自の信用が化体しているかどうかを検討するまでもなく、採用することが できない。
(3) 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、1審原告の1審 被告らに対する原告商標権に基づく差止請求及び1審被告Yに対する原告商 標権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求は、いずれも理由がない。

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◆令和1(ワ)15716等

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令和2(ワ)14627 損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年5月27日  東京地方裁判所

 商標権移転手続につて、元代表取締役の被告がかってに行った手続によって生じた損害として、百貨店のカタログに掲載ができなかったことによる売上減少が相当因果関係ありと認定されました。\n

 原告は、三越伊勢丹から、原告の商標登録の問題を指摘され、商標登録に問題があるとカタログ等を作り直さなければならないとして、平成30年の御中元のカタログ等の掲載はできないことなどを告げられ、当該カタログ等の掲載による売上げを計上すること ができなかったことが認められる。 そうすると、少なくとも、原告がB商標2及び3に係る無効審決を得た 令和2年5月まで、原告の商品を当該カタログに掲載し得なかったことに よる損害は、被告による本件各商標権の移転に係る不法行為と相当因果関 係がある損害と認めるのが相当である。
これに対し、被告は、原告が、三越伊勢丹の実店舗での販売を継続し得 ていることからすれば、商標登録が問題であったとは考えられず、また、 原告が、原告の商品を当該カタログに掲載し得なかったのは、原告が、経 営陣を被告から交代するに当たり、三越伊勢丹の信頼を失ったことが主た る原因であるなどと主張する。しかし、被告も主張するとおり、原告は、 以後も実店舗での販売は継続し得ているのであるから、三越伊勢丹にカタ ログ等の掲載を拒否された理由が、原告がそもそも三越伊勢丹の信頼を失 ったことによるものとは、直ちに認め難い。そして、実店舗は、原告の従 業員が、原告専用のブースで販売するものであるのに対し(原告代表者・\n14頁)、カタログ等は、他の店舗の商品と一緒に掲載され、問題があれ ば全体を作り直さなければならないものであると認められることからする と(C・14頁から15頁)、商標登録に問題があるためにカタログ等の 掲載を拒否されたとするCの証言は、その内容に照らして信用することが できる。そうすると、上記拒否により生じた損害は、本件各商標権の移転 に係る不法行為と相当因果関係がある損害というべきである。 したがって、被告の主張は、採用することができない

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令和3(ネ)2608 商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和4年5月13日  大阪高等裁判所

 納入された際の原告標章を使用せずに商品販売したことが商標権侵害となるかについて、1審は契約の問題であり侵害は成立しないと判断しました。高裁も同様に判断しました。

 控訴人は、商標権者である控訴人が控訴人標章を付した本件商品につい て、その譲渡を受けた卸売業者等である被控訴人らが、梱包箱に被控訴人ら シールを貼付し、本件商品とともに梱包されていた控訴人説明書を被控訴人\nら説明書に差し替えた行為は、本件商標の出所表示機能\及び品質保証機能を\n積極的に毀損するものとして、商標の剥離抹消行為と評価し得る本件商標権 侵害に当たる旨主張するとともに、上記譲渡によって本件商標権が消尽する とみるべきではないとして原審の判断を非難する(前記第2の5(1))。
(2) 商標法の目的は、信用化体の対象となる商標が登録された場合に、その 登録商標を使用できる権利を商標権者に排他的に与え、商品又は役務の出所 の誤認ないし混同を抑止することにあり、商標権侵害は、指定商品又は指定 役務の同一類似の範囲内で、商標権者以外の者が、登録商標と同一又は類似 の商標を使用する場合に成立することが基本である(商標法25条、37 条)。すなわち、商標法は、登録商標の付された商品又は役務の出所が当該 商標権者であると特定できる関係を確立することによって当該商標の保護を 図っているということができる。 商標権者が指定商品に付した登録商標を、商標権者から譲渡を受けた卸売 業者等が流通過程で剥離抹消し、さらには異なる自己の標章を付して流通さ せる行為は、登録商標の付された商品に接した取引者や需要者がその商品の 出所を誤認混同するおそれを生ぜしめるものではなく、上記行為を抑止する ことは商標法の予定する保護の態様とは異なるといわざるを得ない。した\nがって、上記のような登録商標の剥離抹消行為等が、それ自体で商標権侵害 を構成するとは認められないというべきである。\n
(3) また、その点を措くとしても、後半期間における被控訴人らの行為(被 控訴人らの行為2)及び3)に関する。)は、以下のとおり、控訴人標章の剥離 抹消行為と評価し得る行為には当たらないと解される。
ア 前記第2の2で補正した上で引用した前提事実によれば、控訴人が被控 訴人らに納入した本件商品の梱包箱の外側にはそもそも控訴人標章は表示\nされていないから、被控訴人らが仕入れ後に貼付した被控訴人らシールに\nよって控訴人標章が覆い隠されたという事実はない。控訴人が被控訴人ら シール1)によって覆い隠されたのを問題としているのは、控訴人の屋号で あって、控訴人標章ではない。また、被控訴人らの行為によって、本件商 品本体に英文字で印字された「Roller Sticker」という標章(称呼及び観 念において控訴人標章と同一のもの)に何らかの変更が加えられたという 事実もない(本件商品の品質にも変更はない。)。
イ そうすると、控訴人標章の剥離抹消行為として問題となり得る行為は、 被控訴人フジホームが、控訴人から本件商品を仕入れた際に梱包箱に同梱 されていた控訴人説明書を被控訴人説明書に差し替えた行為のみ(被控訴 人ら行為2)に関する。)であるが、控訴人説明書は、取引によって納入さ れた本件商品の梱包箱の中に、本件商品の使用方法を説明する書面として、 本件商品に貼付等されずに単に同梱されていたものにすぎないから、本件\n商品に標章を付した(商標法2条3項1号)とはいえず、控訴人説明書が 取引書類(同項8号)に当たると認めるに足りる事情も窺われない。した がって、控訴人説明書に「ローラーステッカー使用説明書」との記載があ るのは、控訴人標章を商標として使用したものとは認められず、控訴人説 明書を差し替えたことが控訴人標章の剥離抹消行為と評価すべきものとは 認められない。
ウ 以上のとおり、後半期間における被控訴人らの行為は、そもそも控訴人 標章の剥離抹消行為と評価される行為には当たらないから、その余の点を 判断するまでもなく、商標の剥離抹消を理由として商標権侵害をいう控訴 人の主張は採用できない。 なお、被控訴人らの行為2)及び3)における本件商品について、控訴人が 本件商品本体に付した標章(称呼及び観念において控訴人標章と同一の もの)と、被控訴人らが梱包箱に付した被控訴人ら標章とが併存してい るとしても、控訴人から適法に本件商品を仕入れた被控訴人らが、再販 売業者としての出所を明らかにするため本件商品に併存して自らの標章 を付すことが一般的に禁止される理由もない。

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1審はこちら。

◆令和2(ワ)3646

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令和1(ワ)34096  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年3月18日  東京地方裁判所

 「ぼてぢゅう総本家」は登録商標「ぼてぢゅう」に類似するとして、原告らに対して約1000万円の損害賠償が認められました。

そこで、前記1(結合商標の類否の判断基準)に基づき本件商標1と被告 標章I)の類否を検討するに、被告標章I)は、暖簾を模した図案の上に2段書 きされた文字を記載しており、図案と文字との結合商標であるといえる。そ して、図案部分についてみると、現実の暖簾には文字が記載されることも少 なくないという実情を踏まえると、単なる背景や文字枠として認識されるも のであり、図案部分自体には、出所を識別する機能があるとはいえない。\n他方、被告標章I)の文字部分についてみると、2段書きされており、各段 の文字を結合したものであるといえるところ、全体的に見て、上段の「宗右 衛門町趣味のお好み焼」が下段の「ぼてぢゅう総本家」に対し、小さい文字 で付されたものであることからすれば、その内容に照らしても、需要者は、 上段部分が、下段部分の説明書きであると理解するといえるから、上段部分 には出所を識別する機能があるとはいえない。\nそして、被告標章I)の下段の文字部分についてみると、「ぼてぢゅう」と 「総本家」とを結合したものであるといえるところ、前者は、お好み焼き店 のために創作された極めて特徴的な造語であるのに対し、後者は、「おおも との本家」を意味する一般的な日本語であって(甲28)、その前後に接続 する語句がある場合には、その語句に関連する「総本家」であると理解され るのが通常であるから、下段の文字部分中「総本家」の文字部分から出所識 別標識としての称呼、観念が生ずるものとはいえない。そうすると、「ぼて ぢゅう」の文字部分が、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として 強く支配的な印象を与えるものと認めるのが相当である。
(3) したがって、被告標章I)は、その構成中の「ぼてぢゅう」の文字部分を抽\n出し、この部分だけを本件商標1と比較して商標そのものの類否を判断する ことが許されるというべきである。そして、被告標章I)は、筆書きによる平 仮名「ぼてぢゅう」を同大同間隔に左横書きした外観を有するのに対し、本 件商標1は、別紙商標目録記載1のとおり、筆書きの「ぼてぢゅう」の文字 を同大同間隔で左横書きにした外観を有するのであるから、両者は、その外 観において類似するものであり、両者の称呼及び観念が同一であることも明 らかである。以上によれば、本件商標1と被告標章I)とは、類似するものと認めるのが 相当である。
(4) これに対し、被告は、「宗右衛門町」が著名であり、「趣味」が特徴的な 言葉であることを理由として、出所識別機能を有すると主張するが、「宗右\n衛門町趣味のお好み焼」という部分は、地理的名称、商品の性質、商品の種 類を示すものと理解されるのであるから、「ぼてぢゅう」が強く支配的な印 象を与えるという上記認定を左右するものとはいえない。 また、被告は、「総本家」が出所識別機能を有しないとする根拠は存在せ\nず、被告標章I)の2段の文字部分の1段に記載され、まとまりのある「ぼて ぢゅう総本家」という9音を分離観察する理由もないなどと主張する。しか し、「総本家」の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生ずるものと はいえないことは、上記において説示したとおりである。のみならず、「ぼ てぢゅう」の5字は、「総本家」の3字に比し、大きく書かれ、視覚的にも それ自体十分区別し得る上、前者の文言は、後者の文言に対し、強く支配的\nな印象を与えるものといえる。これらの事情を踏まえると、「ぼてぢゅう」 と「総本家」とを分離して観察することが、取引上不自然であると思われる ほど不可分的に結合しているものともいえないのであるから、被告の主張は、 上記結論を左右するものとはいえない。
・・・
商標法38条2項は、民法の原則の下では、商標権侵害によって商標権者 が被った損害の賠償を求めるためには、商標権者において、損害の発生及び 額、これと商標権侵害行為との間の因果関係を主張、立証しなければならな いところ、その立証等には困難が伴い、その結果、妥当な損害の填補がされ ないという不都合が生じ得ることに照らして、侵害者が侵害行為によって利 益を受けているときは、その利益の額を商標権者の損害額と推定するとして、 立証の困難性の軽減を図った規定である。そして、商標権者に侵害者による 商標権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在 する場合には、商標法38条2項の適用が認められると解すべきである。 これを本件についてみると、証拠(甲81ないし83)及び弁論の全趣旨 によれば、原告らの店舗は、外食市場が伸び悩む現状を踏まえ、コンビニや スーパーの弁当や惣菜を中心として着実に成長しているいわゆる中食市場に 進出することとし、平成29年11月又は12月以降、焼きそばやお好み焼 き等のテイクアウト販売及びデリバリー販売の事業を展開していることが認 められる。そうすると、原告らの事業に係る焼きそばやお好み焼き等の商品 が被告商品1)及び4)と同じ種類の商品であることを踏まえると、被告商品1) 及び4)が一定の調理を要することを考慮しても、少なくとも中食市場におけ る原告らの事業は、被告商品1)及び4)を販売等する被告事業と競業関係にあ るものといえる。 したがって、原告らに、被告による商標権侵害行為がなかったならば利益 が得られたであろうという事情が存在することが認められ、商標法38条2 項の適用が認められる。
・・・
商標法38条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額は、侵害 者の侵害品の売上高から、侵害者において侵害品を製造販売することにより その製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益 の額であり、その主張立証責任は商標権者側にあるものと解すべきである。 そして、原告が、被告商品1)及び4)の限界利益の額を売上高の3割である と主張するのに対し、当該商品を実際に製造する被告は、その割合は24% であると主張するにとどまり、これを裏付ける証拠を何ら提出していない事 情を踏まえると、限界利益の額は、原告らの主張する上記3割を下回らない と認めるのが相当である。 そうすると、商標法38条2項の損害額と推定される侵害品の限界利益の 額は、原告東京フードについては、前記10(2)で認定した売上高2億482 0万8219円の3割に相当する7446万2465円であると認めるのが 相当であり、原告BGHDについては、前記10(2)で認定した売上高654 6万8493円の3割に相当する1964万0547円であると認めるのが 相当である。
(2) 商標法38条2項における推定の覆滅については、侵害者が主張立証責任 を負うものであり、侵害者が得た利益と商標権者が受けた損害との相当因果 関係を阻害する事情がこれに当たるものと解される。
これを本件についてみると、前記10(2)のとおり、原告らは、「ぼてぢゅ う」の名を付した店舗を出店し、主としてお好み焼きや焼きそばなどを提供 する事業を行っているところ、平成29年11月又は12月以降テイクアウ ト販売及びデリバリー販売の事業を展開しているものの、その事業規模は明 らかではなく、原告の業務態様は、基本的にはスーパーマーケットなどで商 品を販売するという被告の業務態様とは、大きく異なるものであること、他 方、前記前提事実、証拠(乙1、2、4)及び弁論の全趣旨によれば、被告 は、平成23年3月19日、最初に「ぼてぢゅう」のお好み焼き店を開業し た者が設立した株式会社ぼてぢゆう総本家から、被告保有商標1の譲渡を受 けてこれを使用し、被告保有商標1が失効した後も、被告保有商標2及び3 を保有して、お好み焼きや焼そば等を販売してきたことが認められ、被告は、 元祖「ぼてぢゅう」の信用をも引き継ぎつつ、相応の営業努力をして商品を 販売等してきたことが認められること、以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば、原告らと被告の業務態様等には大きな相違が存在 する上、被告も通常の範囲を超える格別の営業努力をして商品を販売等して きたことが認められ、その他に本件に現れた事情を総合考慮すると、原告ら に生じた損害については、商標38条2項による推定を覆滅する事情がある というべきであり、その推定の覆滅の割合は、上記諸事情を踏まえ、9割と 認めるのが相当である。
(3)これに対し、原告らは、「ぼてぢゅう監修」などと表記した商品(甲18\nないし25、62)を販売しており、被告による商標権侵害行為により、当 該商品の売上げも減少し、原告らに損害が生じた旨主張する。 しかし、証拠(甲18ないし25、62)及び弁論の全趣旨によれば、上 記商品の販売減による原告らの利益の減少は、ライセンス収入の減少に相当 するものにすぎず、しかも、原告らは、上記減少に係る具体的な額について 何ら主張立証していないことからすれば、原告らの主張は、上記判断を左右 するものとはいえない。したがって、原告らの主張は、採用することができない。
(4) 以上によれば、原告東京フードに生じた商標法38条3項で推定される損 害額は、前記(1)の限界利益の額7446万2465円の1割である744万 6246円と算定され、当該事案の内容、難易度、審理経過及び認容額等に 鑑み、これと相当因果関係あると認められる弁護士費用相当損害74万46 24円との合計819万0870円となり、原告BGHDに生じた商標法3 8条3項による損害額は、前記(1)の限界利益の額1964万0547円の1 割である196万4054円と算定され、当該事案の内容、難易度、審理経 過及び認容額等に鑑み、これと相当因果関係あると認められる弁護士費用相 当損害19万6405円との合計額は216万0459円となる。

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令和2(行ケ)10114    商標権  行政訴訟 令和4年2月10日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判の請求自体が信義則に反するとして、不使用とした審決が取り消されました。なお被告は欠席裁判です。

原告らとブランデッドボースト社が平成27年(2015年)11月4日 に締結した本件和解契約には,1)原告らは,「BOAST」の商号で「BO AST」商標を付した商品を米国外で自由に販売することができることを確 認する旨の条項(12項),2)ブランデッドボースト社は,世界中でボース ト社又は原告によるその他の登録により保護される原告らの商号権及び商標 権を妨害しない旨の条項(14項)が存在することは,前記1(4)認定のとお りである。
前記1認定の本件和解契約締結に至る経緯,本件和解条項12項及び14 項の文言に鑑みると,本件和解条項14項の「世界中でボースト社又は原告 によるその他の登録により保護される原告らの商号権及び商標権を妨害しな い」にいう「妨害しない」との文言は,ブランデッドボースト社が,原告ら が有する米国外で商標登録された「BOAST」ブランドに係る商号権及び 商標権の有効性を争わない義務(いわゆる不争義務)を負うことを定めた趣 旨を含むものと解される。 そうすると,ブランデッドボースト社は,本件和解契約に基づき,原告に 対し,本件商標の商標権について不争義務を負うものと認められる。 そして,前記1(5)認定のとおり,被告は,平成29年(2017年)10 月3日,ブランデッドボースト社から,米国内の「BOAST」ブランドに 係る事業を買収し,同社が保有する「BOAST」ブランドに係る米国登録 商標の移転を受け,これに伴い,ブランデッドボースト社の本件和解契約に 基づく契約上の地位を承継したのであるから,被告は,原告に対し,本件和 解契約に基づいて,本件商標の商標権について不争義務を負うものと認めら れる。
(2) 商標法50条1項が,「何人も」,同項所定の商標登録取消審判を請求す ることができる旨を規定し,請求人適格について制限を設けていないのは, 不使用商標の累積により他人の商標選択の幅を狭くする事態を抑制するとと もに,請求人を「利害関係人」に限ると定めた場合に必要とされる利害関係 の有無の審理のための時間を削減し,審理の迅速を図るという公益的観点に よるものと解される。 一方で,商標権に関する紛争の解決を目的として和解契約が締結され,そ の和解契約において当事者の一方が他方(商標権者)に対して当該商標権に ついて不争義務を負うことが合意された場合には,そのような当事者間の合意の効力を尊重することは,当該商標権の利用を促進するという効果をもた らすものである。また,このように当事者間の合意の効力を尊重するとして も,第三者が当該商標権に係る商標登録について同項所定の商標登録取消審 判を請求することは可能であるから,上記公益的観点による利益を損なうも\nのとはいえない。 したがって,和解契約に基づいて商標権について不争義務を負う者が,当 該商標権に係る商標登録について同項所定の商標登録取消審判を請求するこ とは,信義則に反し許されないと解するのが相当である。 しかるところ,前記(1)認定のとおり,被告は,原告に対し,本件和解契約 に基づいて,本件商標の商標権について不争義務を負うものであるから,被 告による本件審判の請求は,信義則に反し,許されないというべきである。 これと異なる本件審決の判断は誤りであある。

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令和2(ワ)1160  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年1月31日  東京地方裁判所

 商標権侵害事件です。3段併記の商標「KENT/MARINE SPIRIT/BROS.」、2段併記の商標「KENT/BROS.」、が、原告商標「Kent」に類似すると判断されました。被告は、2段併記の登録商標「KENT BROS/ケントブロス」を保有していましたが専用権の範囲外の使用と判断されています。

 ア 被告標章1の分離観察の可否
 被告標章1の外観は別紙被告標章目録記載1のとおりである。すなわち, 上段に横書きの「KENT」,中段に横書きの「MARINE SPIR IT」,下段に横書きの「BROS.」を,いずれもほぼ同じ列幅で,か つ,上段と中段との行間及び中段と下段との行間をほとんど空けること なく三段に配して成る結合商標であって,全体としてまとまりよく構成\nされている。 もっとも,欧文字は左から右に順次目線を移して読解するものであるか ら,二段以上にまたがって欧文字が配された場合には,横一列に配され た場合と比較して結合の度合いは相当弱くなるといえる。特に,上段と 下段でそれぞれ独立した単語となり得る場合には,なおさらである。さ らに,上段と下段を構成する欧文字はいずれもおおむね同じ大きさであ\nる上,黒地に白抜きで記載されている点及び手書き風の字体である点に おいても共通するのに対し,中段を構成する欧文字の大きさは上段及び\n下段の欧文字より相当小さく,その行の高さは上段及び下段の行の高さ の3分の1程度にすぎない上,白地に黒い字で記載されている。しかも, 中段を構成する欧文字は,水平方向に平行に延びる2本の直線と垂直方\n向の弦を有する2つの半円とを組み合わせた横長の角丸長方形様の図形 によって囲まれ,当該図形部分は白く着色されており(そのため,中段 を構成する欧文字は,上段及び下段とは異なり,黒字で記載されてい\nる。),中段の全体が一本の白い横棒のような外観を呈している。このよ うに,中段の外観は上段及び下段と大きく異なる上,横棒のような外観 を有しているから,中段を境に,上段と下段が分離されたような外観を 有しているということができる。
そして,前記(2)アのとおり,イトーヨーカドーは,平成21年度以降, 約10年という相当長期間にわたって,168回もの多数回,チラシに 「Kent」ブランドのシャツ,パーカー,パンツ,靴下,コート,セ ーター,下着,手袋等の広告を掲載しており,前記(2)ウのとおり,「K ent」ブランドの商品については,イトーヨーカドーにおいて,平成 21年度から平成30年度までの間に●(省略)●もの売上げがあった もので,年によって増減はあるものの,平均すれば年間約50億円を売 り上げてきたこと,前記(2)イのとおり,限られた期間及び回数ながら, 著名人を起用した「Kent」ブランドのテレビCMが全国に放映され たことに照らせば,「Kent」ブランドは,令和元年当時,被服の分野 において,相応の周知性を有しており,取引者及び需要者に対し,商品 の出所識別標識として相当強い印象を与えていたものと認めるのが相当 である。そうすると,被告標章1の上段の「KENT」は,上記「Ke nt」の二文字目以降を大文字で記載したほかは,つづりが同一である ことから,「KENT」の標章が被服に用いられた場合には,取引者及び 需要者において「Kent」ブランドを想起するものと認めることがで きる。
他方,「BROS.」についてみれば,25類・被服を指定商品とする 「BROS ブロス」との登録商標が存在すると認められるものの(乙 3),本件全証拠によっても,被服に関する「BROS」の実際の使用例 としては,男性用下着のサブブランドとしてのものが認められるのみで あって,「BROS」がどの程度の周知性を有するのかは明らかではない。 そうすると,上記の登録商標の存在を根拠に「BROS.」から出所識別 標識としての称呼,観念が生ずると認めることはできず,その点につい ては,本件証拠上,明らかではないというべきである。以上の事情を総 合すれば,被告標章1の構成部分のうち,「BROS.」から出所識別標\n識としての称呼,観念が生じないとまでは認められないものの,上段の 「KENT」と下段の「BROS.」は,二段以上にまたがって配され, かつ,それぞれが独立した単語となり得ることにより,横一列に配され た場合と比較して結合の度合いは相当弱くなることに加え,一本の白い 横棒のような外観を有する中段の「MARINE SPIRIT」によ り上下に分離されている上,「KENT」に対応する「Kent」ブラン ドが,被服の分野において,相応の周知性を有しており,取引者及び需 要者に対し,商品の出所識別標識として相当強い印象を与え得ることか らすれば,上段の「KENT」と下段の「BROS.」とを分離して観察 することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合している とまではいえない。したがって,被告標章1については,上段の「KE NT」のみを分離して観察することができると認めるのが相当である。 その結果,被告標章1については,「ケント」との称呼が生じ,かつ,原 告が使用権を設定し,イトーヨーカドーが使用する「Kent」ブラン ドの商品であるとの観念が生じるものと認められる。
イ 被告標章2の分離観察の可否
被告標章2の外観は別紙被告標章目録記載2のとおりである。すなわち, 上段に横書きの「KENT」,下段に横書きの「BROS.」を,いずれ もほぼ同じ列幅で,かつ,上段と下段との行間をほとんど空けることな く二段に配して成る結合商標であって,全体としてまとまりよく構成さ\nれている。 もっとも,欧文字は左から右に順次目線を移して読解するものであるか ら,上記の「KENT」と「BROS.」のように,二段以上にまたがっ て欧文字が配された場合には,横一列に配された場合と比較して結合の 度合いは弱くなり,上段と下段でそれぞれ独立した単語となり得る場合, その結合の度合いがより弱くなることは,被告標章1の場合と同様であ る。
そして,前記アのとおり,「BROS.」から出所識別標識としての称呼, 観念が生じないとは認められないものの,他方で,「Kent」は商品の 出所識別標識として取引者及び需要者に相当強い印象を与えていたもの と認められ,かつ,「KENT」の標章が被服に用いられた場合には,取 引者及び需要者において「Kent」ブランドを想起するものと認めら れる。 そうすると,被告標章2においては,被告標章1の中段に相当する部分 が存在しないものの,そもそも「KENT」と「BROS.」の結合の度 合いが弱い上,「KENT」に対応する「Kent」ブランドが商品の出 所識別標識として相当強い印象を与え得ることからして,被告標章2の 各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思わ\nれるほど不可分的に結合しているものとは認められないというべきであ り,上段の「KENT」を分離観察することができるというべきである。 その結果,被告標章2についても,被告標章1と同様,「ケント」との称 呼及び「Kent」ブランドの商品の観念が生じるものと認められる。

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令和2(行ケ)10113  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和4年1月19日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判の請求が権利濫用かが争われました。知財高裁は、権利濫用とまではいえないとした審決を取り消しました。

 上記各事実によれば,被告は,ブランデッドボースト社を買収した後,本 件審判請求に及ぶ直前まで,原告との間で,原告が保有する本件商標を含む 日本及びその他の国のBOASTブランドに係る登録商標の買取りについて 協議をしていたが,協議中断の数か月後に本件審判請求に及んだものである。 こうした経緯に加え,被告は,本件審判請求における手続において,原告 が,「2017年10月3日,請求人は,ブランドボースト社(当審注:ブ ランデッドボースト社のこと)より,同社の「BOAST」ブランド事業を 買収し,同社が保有する米国「BOAST」登録商標の移転を受けた(乙1)。 したがって,請求人は,被請求人が保有する日本「BOAST」登録商標に 干渉しない義務を含む,本件和解契約に基づく義務を履行する責任を負う」, 「また,請求人は,本件和解契約に基づき,日本「BOAST」登録商標に 係る被請求人の権利に対する干渉を行ってはならない義務を負う」旨主張し たのに対して,具体的に弁駁していないことは記録上明らかであり,また, 本訴における原告による同旨の主張についても反論していないことからする と,被告は,ブランデッドボースト社から米国内における「BOAST」事 業を買収するに際して,原告らと同社との間では,同社が,世界中でボース ト社又は原告によるその他の登録により保護される原告らの商号権及び商標 権を妨害しない旨の本件和解契約に基づく義務を負担しており,上記買収に より被告も同義務を履行する責任を負うことを認識しながら,これを前提と して,原告との間で,原告が保有する本件商標を含む日本及びその他の国の BOASTブランドに係る登録商標の買取り交渉をしていたものと認められ る。
そうすると,被告は,原告との間で,原告が保有する本件商標を含む日本 及びその他の国のBOASTブランドに係る登録商標の買取り交渉が頓挫す るや否や,原告が保有する商標権を妨害してはならない旨の上記義務に反す ることを知りながら,本件商標の取消しを求めて本件審判請求に及んだもの と認めるのが相当である。したがって,本件審判請求は,金銭的負担をすることなく本件商標を使用することを企図し,取消審判制度が何人も申し立てることができることに藉\n口して,専ら原告を害する目的でしたものと認められるから,権利の濫用に 当たるものというべきである。

◆判決本文

審決(取消2018−300722)は、下記のように、権利濫用とまではいえないとして、不使用であるので登録を取り消すと判断していました。
 イ 判断
上記事実によれば、被請求人らとブランドボースト社との間で、互いの商号及び商標に係る権利について妨害しないことを含む本件和解契約が結ばれていたことは窺えるものの、そのような当事者間の合意が、本件商標に対する不使用取消審判の請求までも禁止するものであるかは、証拠上明らかでなく、当該契約違反か否かは措くとしても、請求人による本件審判の請求が専ら被請求人を害することを目的としていると認められる事情を見いだすこともできない。また、前記(1)の不使用取消制度の趣旨からすれば、登録商標は使用をしているからこそ、保護を受けられるのであって、一定期間登録商標が使用されていない場合には、保護すべき信用が存しないのであるから、取り消されてもやむを得ないものである。
そして、後述するとおり、被請求人は本件商標の使用について、何らの主張、立証もしていないものである。なお、請求人と被請求人との登録商標買取り交渉が合意に至らなかった状況において、本件商標の不使用を理由として、請求人が本件審判請求を行ったとしても、そのこと自体は格別不自然とはいえない。その他、請求人による本件審判の請求が専ら被請求人を害することを目的としていると認められる場合などの特段の事情は見いだせず、本件審判請求が権利の濫用であるとはいえないし、信義則違反であるとして本件審判請求が成り立たないとすべきともいえない。   

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令和1(ワ)15716等  競業行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年10月29日  東京地方裁判所

 商標権の行使が権利濫用と認定されました。原告Aと被告Bが婚姻していたなど特殊事情があります。

 証拠(乙4,75)及び弁論の全趣旨によれば,原告商標は被告ら標章1 と同一であること,Bは,遅くとも,母であるDが亡くなった平成19年以 降,本件商号を用いて貸画廊を運営しており,平成21年以降は,被告ら標 章1を使用していたこと,原告において本件営業譲渡契約が締結されたと主 張する平成27年2月当時,本件商号及び被告ら標章1には原告独自の信用 が化体しておらず,むしろ,それらが正当に帰属すべきはBであったと認め られる。
これに対し,原告は,本件営業譲渡によって,Bから本件商号を含め本件 画廊に関する全ての権利を譲り受けていると主張するが,前記1のとおり, 本件営業譲渡契約の成立は認められないから,平成30年1月30日の原告 商標の登録出願がされた時点においても,本件商号及び被告ら標章1に原告 独自の信用が化体していたとは認められず,これらが正当に帰属すべきはB であったと認めるのが相当である。 そうすると,原告が,Bに対して,原告商標権に基づく差止及び廃棄請求 並びに商標権侵害による損害賠償請求を行うことは,権利の濫用に該当して 許されないというべきである。また,弁論の全趣旨によれば,被告会社は, Bが代表者を務め,Bと一体になって被告ら標章1を使用しているものと認\nめられるから,原告が,被告会社に対して,原告商標権に基づく差止及び廃 棄請求を行うことも,同様に権利の濫用に該当するというべきである。

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令和1(ワ)30282  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年11月29日  東京地方裁判所

 本件登録商標を使用していたとする虚偽の主張を行い,原告に対し本件連絡書を送付して損害賠償を請求し,本件仮処分命令申立てをしたという,IBEX社による一連の行為は,原告に対する故意による不法行為を構\成するとして、IBEX社の代表取締役に、約1600万円の損害賠償が認められました。

前記1(1)イ(ア)のとおり,原告は,従前から使用していたブランド である「Attractions」に係る原告標章を商標登録しよう と考え,本件弁理士に対し相談したところ,本件登録商標の存在が判 明したため,その取消請求をすることとした。こうした経緯に照らす と,原告は,今後「Attractions」のブランドを事業展開 するに当たり,原告標章の使用が本件商標権を侵害するおそれがあっ たことから,それを避けることを目的として上記取消請求をすること としたものと認められる。
また,証拠(原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,I\nBEX社との和解交渉が難航していたことや,原告代理人から,IB EX社が原告に対し保全命令を申し立て,原告の商品が差し押さえら\nれるなどする可能性があるとの説明を受けたことなどを契機として,\n平成29年7月末頃から「Attractions」のブランドの使 用を取り止めることを選択肢の一つとして検討し始めたこと,同年8 月8日頃にIBEX社から本件連絡書の送付を受けたため,「Att ractions」のブランドの使用を取り止め,別ブランドに変更 することを決定したこと,さらに,同年9月1日以降,実際に「At tractions」の商標を切り替える対応を採り,商標を切り替 えることができない本件在庫商品については販売の停止を決定したこ とが認められる。
さらに,前記(1)ア(ア)のとおり,平成28年9月1日から平成29 年8月31日までの会計年度における原告の売上高は1億0794万 2353円であると認められるのに対し,前記(1)ア(イ)のとおり,平 成29年8月31日の時点において原告が保有していた本件在庫商品 の販売価額は合計2875万7760円であると認められるから,こ れらの数値を基礎とすれば,本件在庫商品が原告の総売上高に占める 割合は26%余りであることになる。 以上のように,原告は,そもそも本件商標権を侵害するリスクを避 けるために本件審判請求事件に係る請求をしたところ,IBEX社が これを争い,同社の主張に沿う外観の証拠が提出され,その一方でI BEX社との手続外での和解交渉が難航していたことからすると,遅 くとも平成29年7月頃には,本件在庫商品を販売することにより本 件商標権を侵害し,原告の商品が差し押さえられるなどするリスクを 相当程度具体的に認識していたと認められる。そして,本件在庫商品 が原告の総売上高に占める割合が26%余りであったことからすると, これが差し押さえられた場合には原告の経営に大きな影響を及ぼす可 能性があったと認められる。こうした中で,本件連絡書を送付され,\nIBEX社から同年8月18日までの回答を迫られたという経緯に照 らせば,原告において,同年9月1日以降に「Attraction s」のブランドの使用を取り止めるという判断をするのはやむを得な いものであったというべきである。
以上によれば,IBEX社の前記1(2)の不法行為と原告の損害と の間に相当因果関係が認められることはもとより,被告に認められる 善管注意義務違反が,IBEX社の代表取締役としての権限を行使す\nることなく,Bらに業務を任せきりにし,IBEX社による上記不法 行為を惹起したというものであることに照らすと,被告の任務懈怠と 原告の損害との間にも相当因果関係があると認めるのが相当である。 b これに対し,被告は,原告が商標を切り替える対応を採り,本件在 庫商品の販売を取り止めるという行為に及んだのは,原告自身の経営 判断によるものであるとして,被告の任務懈怠と原告の損害との相当 因果関係は認められないと主張する。 しかし,原告の上記行為が経営判断に基づくものであるとしても, 前記 a で説示したとおり,それはやむを得ないものであったというこ とができ,むしろ,経営判断として合理的かつ自然なものであるとい うべきであるから,原告の経営判断が介在したことをもって,被告の 任務懈怠と原告の損害との間の相当因果関係を否定することはできな い。したがって,被告の上記主張を採用することはできない。 c また,被告は,IBEX社の経営を実質的に支配していたのはBで あり,被告がBの判断を翻意させることはできなかったから,被告の 任務懈怠と原告の損害との間には相当因果関係は認められないと主張 する。 しかし,前記1(1)アのとおり,被告は,Bの大学の同級生であり, IBEX社の経営会議やBとF弁護士との打ち合わせに同席するなど, 代表取締役として一応の役割を果たしていた。また,被告は同社の代\n表取締役であり,被告の他に同社には役員が選任されていなかったの\nであるから,法的には同社の業務に関する一切の権限を被告のみが有 しており,同社の代表取締役として,主体的に行動することは可能\で あったというべきである。したがって,被告は,IBEX社の一連の 不法行為により原告が損害を被ることについても,これを阻止するこ とができなかったとまではいえない。
以上によれば,被告が代表取締役としての任務を懈怠することなく,\n原告に不法行為による損害を与えないようにする善管注意義務を果た し,本件審判請求事件や本件仮処分命令申立て等について適切に対処\nしていれば,原告が主張する損害が発生していなかったということが できる。 してみると,IBEX社の経営をBが実質的に支配していたことか ら直ちに被告の任務懈怠と原告の損害との間の相当因果関係が否定さ れるものではなく,被告の上記主張は採用することができない。

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平成27(ワ)547  不正競争行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成29年1月19日  大阪地方裁判所

 漏れていたのでアップします。メタタグが商標的使用になるかについて、ディスクリプションメタタグないしタイトルタグは該当、キーワードメタタグについては、該当せずと判断されました。

 被告のウェブサイトの html ファイル上の前記前提事実(4)ウ記載のコードのう ち,「<meta name=″keywords″content=″バイクリフター″>」との記載は,い わゆるキーワードメタタグであり,ユーザーが,ヤフー等の検索サイトにおいて, 検索ワードとして「バイクリフター」を入力して検索を実行した際に,被告のウェ ブサイトを検索結果としてヒットさせて,上記(1)のディスクリプションメタタグ 及びキーワードタグの内容を検索結果画面に表示させる機能\を有するものであると 認められる。このようにキーワードメタタグは,被告のウェブサイトを検索結果と してヒットさせる機能を有するにすぎず,ブラウザの表\示からソース機能\をクリッ クするなど,需要者が意識的に所定の操作をして初めて視認されるものであり,こ れら操作がない場合には,検索結果の表示画面の被告のウェブサイトの欄にそのキ\nーワードが表示されることはない。(弁論の全趣旨)\n
ところで,商標法は,商標の出所識別機能に基づき,その保護により商標の使用\nをする者の業務上の信用の維持を図ることを目的の一つとしている(商標法1条) ところ,商標による出所識別は,需要者が当該商標を知覚によって認識することを 通じて行われるものである。したがって,その保護・禁止の対象とする商標法2条 3項所定の「使用」も,このような知覚による認識が行われる態様での使用行為を 規定したものと解するのが相当であり,同項8号所定の「商品…に関する広告…を 内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」というのも,同号 の「広告…に標章を付して展示し,若しくは頒布し」と同様に,広告の内容自体に おいてその標章が知覚により認識し得ることを要すると解するのが相当である。 そうすると,本件でのキーワードメタタグにおける原告商標の使用は,表示され\nる検索結果たる被告のウェブサイトの広告の内容自体において,原告商標が知覚に より認識される態様で使用されているものではないから,商標法2条3項8号所定 の使用行為に当たらないというべきである。
これに対し,原告は,インターネットの検索サイトの利用者がサーチエンジンに キーワードとして原告商標を入力した際にサーチエンジンを通じて被告ホームペー ジでのメタタグ表記を視認しているといえることから,被告による原告商標のメタ\nタグ使用は,商標的使用に当たると主張する。しかし,検索サイトにおける検索キ ーワードと検索結果との関係にさまざまな濃淡があることは周知のことであること からすると,検索結果画面に接した需要者において,検索キーワードをもって,検 索結果として表示された各ウェブサイトの広告の内容となっていると認識するとは\n認め難いから,検索キーワードの入力や表示をもって,キーワードメタタグが,被\n告のウェブサイトの広告の内容として知覚により認識される態様で使用されている と認めることはできない。
(3) よって,被告標章1のディスクリプションメタタグないしタイトルタグへの 記載は商標的使用に当たり,侵害行為であると認められるが,原告商標のキーワー ドメタタグへの使用については,これを商標的使用に当たると認めることはできな いから,侵害行為であるとは認められない。

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令和2(ワ)3646  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年11月9日  大阪地方裁判所

 納入された際の原告標章を使用せずに商品販売したことが商標権侵害となるかについて、裁判所は契約の問題であり侵害は成立しないと判断しました。

原告は,原告標章(標準文字)が商標登録され,これに係る公報が発行された後 は,原告標章を使用せず,被告ら標章により本件商品を販売した行為は,登録商標 の出所表示機能\を毀損するものとして,商標権侵害が成立する旨を主張する。
しかしながら,商標権侵害は,指定商品又は指定役務の同一類似の範囲内で,商 標権者以外の者が,登録商標を同一又は類似の商標を使用する場合に成立すること がその基本であり(商標法25条,37条),原告が原告標章を付した本件商標を 被告らに譲渡した際に,原告標章と同一又は類似の商標を使用する競業者が存在し なかったことをもって,本件商標権はその役割を終えたと見ることができるのであ り,原告から本件商品を譲り受けた被告らが,これを原告標章以外の商品名で販売 することができるかは,商標権の問題ではなく,前記検討したとおり,原告と被告 らとの合意の存否の問題と考えざるを得ない。 したがって,後半期間において,被告フジホームが本件商品を被告ら標章により, また取扱説明書を差し替えて自社のオンラインストアで販売したこと(被告ら行為 2)),あるいは被告サンリビングが,原告より直接入手した本件商品を,被告ら標 章によりダイワに譲渡したことは(被告ら行為3)),いずれも商標権侵害にはあた らないといわざるを得ない。

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