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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商標その他

令和1(ワ)11874    商標権  民事訴訟 令和3年6月23日  東京地方裁判所

 漏れていたのでアップします。商標権侵害事件です。38条3項のライセンス相当額が0.15%と判断されました。総額では1億円を超えています。判決文中では2項侵害の主張はされていません。

ア 証拠(乙112,113)によれば,平成22年10月1日から平成3 1年4月30日までの期間における本件各店舗の総売上高は,652億5 439万2382円であると認められる。
イ 使用料率について
(ア) 商標法38条3項による損害は,原則として,侵害に係る役務の売上 高を基準とし,これに実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきで あり,実施に対し受けるべき料率は,1)実際の実施許諾契約における実 施料率や,業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ,2)当該商標 権の顧客吸引力,3)当該商標を使用した場合の売上げ及び利益への貢献 や侵害の態様,4)商標権者と侵害者との競業関係や商標権者の営業方針 等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきであ る(知財高裁特別部平成30年(ネ)第10063号・令和元年6月7日 判決(最高裁HP)参照)。
(イ) 被告らは,パチンコホールの売上げを計上する場合,貸玉の対価をも って売上高とするグロス方式と,貸玉の対価から客に提供した景品原価 を控除した金額をもって売上高とするネット方式があるところ,パチン コ店について商標法38条3項の損害額を算定するに当たっては,ネッ ト方式により貸玉の対価から景品原価を控除した金額を基に計算するべ きであると主張する。 しかし,本件において,損害を算定する基準となる売上高は,当該役 務によって得られる収入,すなわち,貸玉の対価と解するのが自然であ り,店舗運営に係る諸費用のうち景品原価のみを控除した額を売上げと みなすべき合理的な理由はない。被告らが主張するような,パチンコ業 界における利益率は使用料率の算定において考慮すれば足りるというべ きである。
(ウ) そこで,原告各商標についての相当な使用料率について以下検討する。
a 本件においては,原告が実際に原告各商標の使用を許諾したことを うかがわせる証拠はなく,業界における実施料の一般的な相場等も明 らかではない。
b 原告各商標は,上記(1)イで摘示した事情,すなわち,パチンコ業界 における店舗数ランキング,「ベガスベガス」という名称の需要者へ の訴求力,原告の店舗情報に関するウェブサイトへのアクセス状況, 原告の会員数などを考慮すると,相応の顧客吸引力を有するものと認 められる。
他方で,全日本遊技事業協同組合連合会が実施したアンケート結果 (乙40・15頁)によると,パチンコホールを選ぶ上でのポイント として需要者が重視するのは,1)遊戯機種,2)アクセスの容易さ,3) 出玉感,4)ホールの雰囲気,5)店員の接客態度などであり,店舗の名 称が売上げ又は利益に貢献する程度は限定的であるというべきである。
c さらに,原告と被告らはその事業分野で競合しているが,営業地域 をみると,原告の店舗は,北海道,東北地方及び関東地方が中心であ り,本件各店舗の所在する広島県及び山口県においては店舗展開及び 営業活動をしていない。他方,被告らは,原告各商標の出願前から本 件各店舗を同地域に出店し,地元の需要者に対して,新聞の折込みチ ラシ(乙55,56,78,85〜87,90,91,96,97), 新聞紙面広告(乙53,54,77),テレビCM(乙57,59〜 66,86〜88,91〜93,97〜101)などによる宣伝広告 活動を継続してきたものと認められ,被告らによるかかる営業活動が その売上げに貢献する割合は大きかったと推察される。
d 本件各店舗の月当たりの営業利益をみると,売上高の概ね●(省略) ●前後で推移しているものと認められ(乙112,113),売上高 に対する営業利益の比率は必ずしも高くないことからすると,通常想 定される使用料率は上記の割合より相当程度低くなると考えられるが, 本件においては,さらに,店舗の名称が売上げに貢献する程度は限定 的であり,原告と被告らは本件各店舗の所在地で競合していないこと, 被告の営業努力の寄与が大きいなどの事情が認められる。
e 以上の事情も含め,本件に現れた事情を総合考慮すると,原告各商 標に関する使用料率は0.15%であると認めるのが相当である。

◆判決本文

関連事件です。不使用であるとした審決の取消請求事件です。

◆平成29(行ケ)10126

◆令和2(行ケ)10091

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令和2(ワ)8061  商標権侵害差止請求  商標権  民事訴訟 令和3年9月27日  大阪地方裁判所

 被告はメルカリの販売サイトにて「♯シャルマントサック」のハッシュタグを使用して、ハンドメイド品の巾着袋を販売していました。 大阪地裁は、「♯シャルマントサック」は商標的使用として、差し止めを認めました。

 被告は,被告標章1につき,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であるこ とを認識することができる態様により使用されていない,すなわち商標的使用がさ れていない旨を主張する。 しかし,前記のとおり,オンラインフリーマーケットサービスであるメルカリに おける具体的な取引状況をも考慮すると,記号部分「#」は,商品等に係る情報の検 索の便に供する目的で,当該記号に引き続く文字列等に関する情報の所在場所であ ることを示す記号として理解される。このため,被告サイトにおける被告標章1の 表示行為は,メルカリ利用者がメルカリに出品される商品等の中から「シャルマン\nトサック」なる商品名ないしブランド名の商品等に係る情報を検索する便に供する ことにより,被告サイトへ当該利用者を誘導し,当該サイトに掲載された商品等の 販売を促進する目的で行われるものといえる。このことは,メルカリにおけるハッ シュタグの利用につき,「より広範囲なメルカリユーザーへ検索ヒットさせること ができる」,「ハッシュタグ機能をメルカリ上で使うと使わないでは,商品閲覧数\nや売り上げに大きく差が出ます」などとされていること(いずれも甲7)からもう かがわれる。
また,被告サイトにおける被告標章1の表示は,メルカリ利用者が検索等を通じ\nて被告サイトの閲覧に至った段階で,当該利用者に認識されるものである。そうす ると,当該利用者にとって,被告標章1の表示は,それが表\示される被告サイト中 に「シャルマントサック」なる商品名ないしブランド名の商品等に関する情報が所 在することを認識することとなる。これには,「被告サイトに掲載されている商品 が「シャルマントサック」なる商品名又はブランド名のものである」との認識も当 然に含まれ得る。
他方,被告サイトにおいては,掲載商品がハンドメイド品であることが示されて いる。また,被告標章1が同じくハッシュタグによりタグ付けされた「ドットバッ グ」等の文字列と並列的に上下に並べられ,かつ,一連のハッシュタグ付き表示の\n末尾に「好きの方にも・・・」などと付されて表示されている。これらの表\示は,掲載 商品が被告自ら製造するものであること,「シャルマントサック」,「ドットバッ グ」等のタグ付けされた文字列により示される商品そのものではなくとも,これに 関心を持つ利用者に推奨される商品であることを示すものとも理解し得る。しかし, これらの表示は,それ自体として被告標章1の表\示により生じ得る「被告サイトに 掲載されている商品が「シャルマントサック」なる商品名又はブランド名である」 との認識を失わせるに足りるものではなく,これと両立し得る。 これらの事情を踏まえると,被告サイトにおける被告標章1の表示は,需要者に\nとって,出所識別標識及び自他商品識別標識としての機能を果たしているものと見\nられる。すなわち,被告標章1は,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であ ることを認識することができる態様による使用すなわち商標的使用がされているも のと認められる。これに反する被告の主張は採用できない。

◆判決本文

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令和2(行ケ)10126  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年8月30日  知的財産高等裁判所

 音商標「マツモトキヨシ」について、商標法4条1項8号に該当するとした拒絶審決が取り消されました。

 本願商標の商標法4条1項8号該当性について
原告は,1)本願商標の出願当時,本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」\nという言語的要素からなる音から,通常,容易に連想,想起するのは,ドラ ッグストアの店名としての「マツモトキヨシ」又は企業名としての株式会社 マツモトキヨシ,株式会社マツモトキヨシホールディングス(原告)であっ て,「マツモトキヨシ」と読まれる人の氏名であるとはいえないから,本願 商標を構成する「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音は,「マツ\nモトキヨシ」を読みとする人の氏名として客観的に把握されるものではない, 2)したがって,本願商標は,「他人の氏名」を含む商標であるとはいえない から,本願商標が商標法4条1項8号に該当するとした本件審決の判断は誤 りである旨主張するので,以下において判断する。
(1)商標法4条1項8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称 等を含む商標は,その承諾を得ているものを除き,商標登録を受けること ができないと規定した趣旨は,人は,自らの承諾なしに,その氏名,名称 等を商標に使われることがないという人格的利益を保護することにある ものと解される(最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日 第三小法廷判決・裁判集民事214号373頁,最高裁平成16年(行ヒ) 第343号同17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号59 5頁参照)。 このような同号の趣旨に照らせば,音商標を構成する音が,一般に人の\n氏名を指し示すものとして認識される場合には,当該音商標は,「他人の 氏名」を含む商標として,その承諾を得ているものを除き,同号により商 標登録を受けることができないと解される。 また,同号は,出願人の商標登録を受ける利益と他人の氏名,名称等に 係る人格的利益の調整を図る趣旨の規定であり,音商標を構成する音と同\n一の称呼の氏名の者が存在するとしても,当該音が一般に人の氏名を指し 示すものとして認識されない場合にまで,他人の氏名に係る人格的利益を 常に優先させることを規定したものと解することはできない。 そうすると,音商標を構成する音と同一の称呼の氏名の者が存在すると\nしても,取引の実情に照らし,商標登録出願時において,音商標に接した 者が,普通は,音商標を構成する音から人の氏名を連想,想起するものと\n認められないときは,当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識 されるものといえないから,当該音商標は,同号の「他人の氏名」を含む 商標に当たるものと認めることはできないというべきである。
(2)ア これを本願商標についてみるに,前記2の認定事実によれば,1)株式 会社マツモトキヨシが昭和62年にドラッグストア「マツモトキヨシ」 の店舗展開を開始した後,平成29年1月30日に本願の出願がされる までの約30年以上にわたり,株式会社マツモトキヨシ,原告及び原告 のグループ会社が,「マツモトキヨシ」の表示をドラッグストアの店名\n又は自己の企業名として継続して使用したこと,2)同年3月31日現在 で,ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店舗数は,全国45都道府県 で1555店舗,原告のグループ会社のメンバーズカード(ポイントカ ード)の会員数は約2440万人に達しており,また,「マツモトキヨ シ」のブランドは,インターブランド社による2016年度及び201 7年度のブランド価値評価ランキングでドラッグストアとして日本で ナンバーワンブランドの評価を獲得したこと,3)平成8年から開始され たドラッグストア「マツモトキヨシ」のテレビコマーシャルでは,女性 又は男性の声の音色,複数の声の斉唱で本願商標と同一又は類似の音を フレーズに含むコマーシャルソングが相当数使用され,テレビコマーシ\nャルが放映された以降においても,本願商標と同一又は類似の音がドラ ッグストア「マツモトキヨシ」の各小売店の店舗内において使用されて いたことが認められる。 これらの認定事実によれば,本願商標に関する取引の実情として,「マ ツモトキヨシ」の表示は,本願商標の出願当時(出願日平成29年1月\n30日),ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店名や株式会社マツモ トキヨシ,原告又は原告のグループ会社を示すものとして全国的に著名 であったこと,「マツモトキヨシ」という言語的要素を含む本願商標と 同一又は類似の音は,テレビコマーシャル及びドラッグストア「マツモ トキヨシ」の各小売店の店舗内において使用された結果,ドラッグスト ア「マツモトキヨシ」の広告宣伝(CMソングのフレーズ)として広く\n知られていたことが認められる。
イ 前記アの取引の実情の下においては,本願商標の登録出願当時(出願 日平成29年1月30日),本願商標に接した者が,本願商標の構成中\nの「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音から,通常,容易に 連想,想起するのは,ドラッグストアの店名としての「マツモトキヨシ」, 企業名としての株式会社マツモトキヨシ,原告又は原告のグループ会社 であって,普通は,「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」,「松本 潔」,「松本清司」等の人の氏名を連想,想起するものと認められない から,当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものと はいえない。 したがって,本願商標は,商標法4条1項8号の「他人の氏名」を含 む商標に当たるものと認めることはできないというべきである。
(3)ア これに対し被告は,1)ウェブサイト(乙4ないし7)には,原告とは 他人の「松本清」,「松本潔」,「松本清司」等の氏名表示のひとつと\nして,「マツモトキヨシ」の片仮名が表記されており,かつ,これらの\n者は,現存していると推認できること,各地域のハローページ(乙8な いし19)には,「マツモトキヨシ」と読まれる人の氏名として,原告 とは他人の「松本清」,「松本潔」等が掲載されており,かつ,これら の者は,いずれも本願商標の登録出願時から現在まで存在している者で あると推認できること,氏名を片仮名表記することは,各種の商取引に\nおいて,社会一般に行われていること(乙20ないし28)からすると, 本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音は,\n「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」,「松本潔」,「松本清司」 等の人の氏名を容易に連想,想起させるものであり,「マツモトキヨシ」 と読まれる人の氏名として客観的に把握されるものである,2)原告の提 出に係るテレビコマーシャルに関する証拠からは,当該テレビコマーシ ャルの規模が明らかでなく,平成19年以降の放映も確認できないから, 当該テレビコマーシャルが本願商標の音を聞いた者の認識に与える影 響は限定的であること,当該テレビコマーシャルを視聴した者は,視覚 的要素とともに「マツモトキヨシ」の言語的要素からなる音を聴取,把 握し,記憶するものといえるので,当該テレビコマーシャルは,本願商 標に接した者が,「マツモトキヨシ」の言語的要素からなる音を,マツ モトを姓とし,キヨシを名とする人の氏名であると認識することなく, 店舗名又は企業名としてのみ認識することの根拠たり得ないこと,原告 の挙げるブランド価値ランキングは,本願商標の音を聞いた者の認識を 直接反映したものとはいい難く,このほか,「マツモトキヨシ」という 言語的要素からなる音がドラッグストアの店名又は企業名としてのみ 認識されることを裏付ける証拠はないことからすると,1)のとおり,上 記言語的要素からなる音が,「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」, 「松本潔」,「松本清司」等の人の氏名として客観的に把握されること を否定することはできないとして,本願商標は,商標法4条1項8号の 「他人の氏名」を含む商標に当たる旨主張する。 しかしながら,前記(2)ア認定のとおり,「マツモトキヨシ」の表\n示は,本願商標の出願当時,ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店名 や株式会社マツモトキヨシ,原告又は原告のグループ会社を示すものと して全国的に著名であり,「マツモトキヨシ」という言語的要素を含む 本願商標と同一又は類似の音は,テレビコマーシャル及びドラッグスト ア「マツモトキヨシ」の各小売店の店舗内において使用された結果,ド ラッグストア「マツモトキヨシ」の広告宣伝(CMソングのフレーズ)\nとして広く知られていたという取引の実情を踏まえると,本願商標に接 した者が,本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」という言語的要素か\nらなる音から,通常,容易に連想,想起するのは,ドラッグストアの店 名としての「マツモトキヨシ」,企業名としての株式会社マツモトキヨ シ又は原告のグループ企業であって,普通は,「マツモトキヨシ」と読 まれる「松本清」,「松本潔」,「松本清司」等の人の氏名を連想,想 起するものと認められない。
また,甲43によれば,上記テレビコマーシャルの規模は首都圏を中心 にドラッグストア「マツモトキヨシ」の出店のある全国の地域に及んでい たことが認められる上,上記テレビコマーシャルの放映後も,上記テレビ コマーシャルで使用された本願商標と同一又は類似の音がドラッグスト ア「マツモトキヨシ」の各小売店の店舗内で使用されていたものと認めら れるから,当該テレビコマーシャルが本願商標を聞いた者の認識に与える 影響が限定的であるということはできないし,上記テレビコマーシャルが 視覚的要素を伴うことも,上記認定を左右するものではない。 さらに,前記(1)で説示したとおり,同号は,出願人の商標登録を受 ける利益と他人の氏名,名称等に係る人格的利益の調整を図る趣旨の規定 であり,当該音が一般に人の氏名を指し示すものとして認識されない場合 にまで,他人の氏名に係る人格的利益を常に優先させることを規定したも のと解することはできないことに鑑みると,本願商標に接した者が,「マツ モトキヨシ」の言語的要素からなる音をドラッグストアの店名又は企業名 としてのみ認識することがない以上は,本願商標が同号の「他人の氏名」 を含む商標に該当するとの解釈は妥当とはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。
イ 次に,被告は,本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」という言語的要\n素からなる音が,「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」,「松本潔」,「松 本清司」等の人の氏名として客観的に把握され,本願商標は「他人の氏名」 を含む商標である以上,商標法4条1項8号の趣旨に照らせば,上記言語 的要素からなる音が,原告又は株式会社マツモトキヨシが経営するドラッ グストアを指し示すものとして一定程度知られていることや,特定の者の 略称として一定の著名性を有することは,本願商標の同号該当性を左右す るものではない旨主張する。 しかしながら,前記アで説示したとおり,本願商標は「他人の氏名」を 含む商標であるとはいえないから,被告の上記主張は,その前提を欠くも のであり,採用することができない。

◆判決本文

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平成31(ワ)11130  商標権侵害差止請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年6月17日  東京地方裁判所

 東京地裁46部は、富富富」という標章,「ふふふ」という読み仮名を付した「富富富」という標章は、登録商標「ふふふ」と非類似として、侵害を否定しました。

 被告標章2と本件商標を比較すると,これらは外観において明らかに異 なる。他方,被告標章2と本件商標は,「フフフ」の称呼を共通にする場 合がある。もっとも,被告標章2は特定の観念を生じないのに対し,本件 商標は軽く笑う声等の観念を生じ,これらは観念において異なる。
そうすると,被告標章2と本件商標は,称呼において類似する場合があ るとしても,外観,観念において相違しており,その出所について誤認混 同を生じさせるような取引の実情があるとは認められず,同一又は類似の 商品等に使用された場合に,商品等の出所につき誤認混同を生ずるおそれ があるとは認められない。
したがって,被告標章2は本件商標と同一又は類似のものではない。 なお,「富富富」は,被告富山県によって育成された本件米の品種名で あり(前記1(1),(6)),被告富山県は,特に,平成30年秋頃以降,本 件米について積極的に広告,宣伝しており(同(5)),「富富富」が米の 品種名であることは相当程度知られていたと認められる。被告標章2は, この品種名を普通に用いられる方法で表示したものである。\n

◆判決本文

関連事件です。

◆令和2(行ケ)10014

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平成31(ワ)8117  損害賠償等請求(商標権侵害)事件  商標権  民事訴訟 令和3年6月28日  東京地方裁判所

 「日本酒」に商標「夢」の使用が、商標権侵害としてラベルの廃棄および、売上げの2%の損害賠償が認められました。特許法105条の3(裁判所が口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づく、相当な損害額の認定)の適用は不要と判断されています。

(1) 法38条2項に基づく請求について
原告は,原告商標を自ら使用していないものの,市島酒造社らに対して原 告商標の通常使用権を許諾し,市島酒造社らが原告商標を継続して使用して いるから,法38条2項に基づく請求が認められると主張する。 この点,前記2(1)ア(ア)のとおり,原告は,原告商標を自ら使用したこと はないところ,商標権者が当該商標を使用していることは,法38条2項を 適用するための要件とはいえず,商標権者において,侵害者による商標権侵 害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合 には,同項の適用が認められると解すべきである。 しかし,前記2(1)ア(オ)のとおり,原告は,日本酒を生産等する市島酒造 社らに対して原告商標の通常使用権を許諾したにすぎず,自らは日本酒の生 産等を行っていないから,被告が被告各標章を付した被告商品を販売するこ とがなかったならば,原告が日本酒の販売等によって利益を得たであろうと は直ちには認められない。また,本件全証拠によっても,被告による被告商 品の販売が,原告が上記許諾の対価として受ける原告商標を付する商品の容 器に貼付するラベルその他の関連印刷物の注文に影響を与えるといった事情\nは認められず,他に,被告による商標権侵害行為がなければ,原告が利益を 得たであろうという事情を認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告に法38条2項に基づく請求は認められない。
(2) 法38条3項に基づく請求について
ア 法38条3項による損害は,原則として,侵害品の売上高を基準とし, そこに,実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。 そして,実施に対し受けるべき料率については,当該商標の実際の実施 許諾契約における実施料率,業界における実施料の相場,当該商標を当該 製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様等訴訟に現れた 諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきである。
イ 前記5のとおり,被告は,平成31年4月19日以降,被告標章1が印 刷されたラベルを瓶に貼付せず,被告標章2が印刷されていない外箱に入\nれた被告商品を販売するようになったから,原告が被告に対して原告商標 権侵害に基づく損害賠償を請求することができるのは,被告が設立された 平成20年5月21日から平成31年4月18日までの間のものと認める のが相当である。 そして,証拠(甲21,乙10)及び弁論の全趣旨によれば,被告は, 上記期間に,被告商品のうち,720ml瓶入りのものを1万5456本, 1800ml瓶入りのものを2171本,それぞれ販売し,これにより, 2783万0092円と905万7659円の各売上げ(合計3688万 7751円)があったと認められる。
ウ 以上を前提に,まず,原告がこれまでに原告商標の通常使用権を許諾し たことにより得られた利益について検討する。
(ア) 前記2(1)ア(オ)のとおり,原告は,市島酒造社らに対して原告商標の 通常使用権を許諾し,その対価として,市島酒造社らから原告商標を付 する商品の容器に貼付するラベルその他の関連印刷物を受注する契約を\n締結していた。 上記受注による原告の利益には,原告が印刷を受注したことそのもの による利益も含まれているといえるから,原告商標の使用の対価に相当 する金額は,上記受注による利益の額から,原告が印刷を受注したこと そのものによる利益の額を控除した額と考えるべきである。
(イ) 証拠(甲24ないし26)及び弁論の全趣旨によれば,原告の事業全 体における平成29年から令和元年までの平均の粗利率は約27.5% であり,原告の市島酒造社からの受注に係る平均の粗利率は約45. 7%,原告の大関社からの受注に係る平均の粗利率は約47.8%であ ると認められる。 そうすると,原告商標の使用の対価に相当する金額の割合は,市島酒 造社らからの受注に係る代金額の算定方法や販売費及び一般管理費の取 扱い等について更に厳密な検討をする余地はあるものの,原告の市島酒 造社らからの受注に係る平均の粗利率から原告の事業全体における平均 の粗利率を控除することによって,約18.2%ないし20.3%と一 応計算することができる。
(ウ) 被告商品の容器に貼付するラベルその他の関連印刷物の発注額につい\nては,以下のとおり認定することができる。 被告商品の容器に貼付するラベルその他の関連印刷物の発注額の単価\nについて,証拠(乙9)及び弁論の全趣旨によれば,1) 720ml瓶入 りのもの1本当たりの単価の合計は99.5円(本件ラベル:5円,商 品名等ラベル:18円,本件瓶の背面のラベル:2.5円,本件外箱: 74円),2) 1800ml瓶入りのもの1本当たりの単価の合計は36 1.5円(本件ラベル:5円,商品名等ラベル:45円,本件瓶の背面 のラベル:21.5円,本件外箱:290円)と認められる。
前記イのとおり,原告が被告に対して損害賠償を請求することができ る平成20年5月21日から平成31年4月18日までの間に販売され た被告商品のうち720ml瓶入りのものは1万5456本,1800 ml瓶入りのものは2171本であるから,被告商品の容器に貼付する\nラベルその他の関連印刷物の発注額は,720ml瓶入りのものについ て153万7872円(99.5円×1万5456本),1800ml 瓶入りのものについて78万4817円(361.5円×2171本) と認められ,合計で232万2689円となる。
(エ) 前記(イ)のとおり,原告商標の使用の対価に相当する金額の割合が受注 額の約18.2%ないし20.3%であるとすると,被告商品における 原告商標の使用の対価に相当する金額は,42万2729円(232万 2689円×0.182)ないし47万1506円(232万2689 円×0.203)と一応計算することができる。 そして,この金額は,平成20年5月21日から平成31年4月18 日までの間の被告商品の売上げの合計3688万7751円の約1.1 5%ないし1.28%に相当する。
エ 次に,原告商標を被告商品に用いた場合の売上げ等への貢献について検 討する。
原告商標は,「夢」の標準文字からなり,これ自体は,比較的頻繁に目 にする文字であるから,本来的に高い顧客吸引力があるとまではいえない。 また,前記前提事実(3)のとおり,被告商品の商品名は「夢とまぼろしの物 語」であり,被告各標章はこの商品名の一部を切り出したものであること, 本件瓶の正面には本件ラベルよりも大きい商品名等ラベルが貼付され,本\n件外箱の正面には特徴的な武者の絵が大きく描かれていることからすると, 被告各標章が独自に有する顧客吸引力は限定的というべきであり,被告商 品の売上げに対する貢献もそこまで大きなものであったとは認め難い。
オ 以上の諸事情に加え,前記ウのとおり,原告が原告商標の通常使用権を 許諾したことにより得られた利益の実績を基に,被告商品について計算し た原告商標の使用の対価に相当する金額の割合や,広告業等における商標 権のロイヤルティ料率の相場は概ね3ないし6%であり,1%未満の例も あると認められること(甲23)を考慮すると,原告商標の使用に対し受 けるべき金銭の額に相当する額は,被告商品の売上げの2%に相当する額 と認めるのが相当である。
したがって,原告の損害は,73万7755円(3688万7751円 ×0.02)と認められる。
カ 原告は,市島酒造社らから原告商標のラベルその他の印刷物を受注して おり,これによる利益が原告商標のライセンス料に相当するところ,原告 にはこの受注により1社当たり年232万2514円の売上げがあり,原 告における粗利率25%を乗ずると,年58万0628円がライセンス料 相当額となり,被告は原告商標権を11年間にわたり侵害したので,ライ センス料相当額の損害は638万円となると主張する。 しかし,前記ウ(ア)のとおり,原告商標の使用の対価に相当する金額は, 市島酒造社らからの受注による利益の額から,原告が印刷を受注したこと そのものによる利益の額を控除した額と考えるべきであるから,原告にお ける粗利率をそのまま採用することは相当ではない。 また,前記2(1)ア(オ)のとおり,原告は,原告商標の通常使用権を許諾 する対価として,原告商標を付する商品の容器に貼付するラベルその他の\n関連印刷物を受注する旨の契約を締結していたところ,このような契約内 容からすると,原告の受注額は原告商標を付する商品の数量に比例するこ とになり,その数量は市島酒造社らと被告とでは異なるものと考えられる から,市島酒造社らからの平均の受注額は直ちに被告に当てはまるもので はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 さらに,原告は,原告商標のライセンス料率は,少なくとも5%と認め るべきであるとも主張するが,前記イないしオで説示したとおり,上記ラ イセンス料率は2%と認めるのが相当であるから,同主張も採用すること ができない。
キ なお,前記2(1)ア(ウ),(エ)のとおり,原告は,旧原告商標権を侵害する 標章を使用した酒造会社との間で,年150万円以上の印刷物の受注又は 300万円の損害賠償金の支払を合意している。 しかし,いかなる標章が付された日本酒が,どのくらいの期間に,何本 販売され,どのくらいの売上げがあったのかなど,上記酒造会社が旧原告 商標権を侵害した態様が明らかではないから,本件と比較することは困難 である。 また,上記合意は,原告商標に関するものではない上,比較的古いもの であり,原告商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額を算定す るに当たっては,原告商標に関する直近の許諾契約である原告と市島酒造 社らとの間の契約(前記2(1)ア(オ))を参考にするのが相当である。 したがって,原告が上記の合意をしていたことは,前記オの認定判断を 左右するものではない。
(3) 小括
以上のとおり,原告は,被告による原告商標権の侵害により,原告商標の 使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額として,73万7755円の損 害を被ったと認められる(法38条3項)。 また,原告が本件訴訟を遂行するのに要した弁護士費用相当額の損害は, 本件に現れた一切の事情を考慮すると,10万円と認めるのが相当である。 したがって,原告は,被告に対し,83万7755円の損害賠償を請求す ることができる。 なお,原告は,法39条,特許法105条の3に基づき相当な損害額を認 定すべきであると主張するが,本件においては,原告に生じた損害額は上記 のとおり算定することができるので,「損害額を立証するために必要な事実 を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるとき」に該当せず,同 主張についての判断は要しない。

◆判決本文

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令和3(行ケ)10022  商標登録維持決定取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年4月28日  知的財産高等裁判所

 「X」型十字の図形商標の侵害について、1審は約1300万円の支払いを命じましたが、知財高裁は約200万に減額しました。理由は「被告商品の限界利益の額に対する原告各商標の寄与割合は,8割と認め」というものです。判決分の最後に当事者の商標があります。\n

 一審原告の商品と被告商品との価格差及び限界利益額の差,需要者 層の相違,販売態様の相違について 一審被告は,1)被告商品の価格は,一審原告の商品の価格の約2倍 から4倍であり,一審原告の商品と被告商品とでは大きな価格差があ り,安価のスニーカーを求める一審原告の需要者と高級志向のスニー カーを求める被告商品の需要者とでは,需要者層が異なること,一審 原告の商品はインターネット上で販売されるのに対し,被告商品は高 級デパートの店頭で販売され,販売態様においても差があることに照 らすと,被告商品が販売されなかったとしても,被告商品の需要者が, 安価で大衆向けの一審原告の商品を購入することはあり得ないこと, 2)仮に一審被告による被告商品の販売に係る限界利益率を一審原告が 訴状で主張していた販売価格の10パーセントとすると,一審原告の 商品の1足当たりの限界利益は300円となるのに対し,被告商品の 1足当たりの限界利益は,560円から1155円となり,限界利益 の額に差があることから,これらの事情は本件推定を覆す事情に該当 する旨主張する。
(ア) そこで検討するに,証拠(甲68ないし77,183ないし18 6)及び弁論の全趣旨によれば,一審原告は,自社の商品を,主に 靴の量販店やインターネット上の通信販売サイトを通じて販売し, その小売価格は2000円から6000円程度の商品が中心であ り,一審原告が対象期間中に原告各商標と類似する商標を付したス ニーカーを販売した際の販売価格は1足当たり3000円程度で あったことが認められる。
一方で,証拠(乙19)及び弁論の全趣旨によれば,被告商品は 主に百貨店等の店頭で販売されたものであり,原判決別紙3被告商 品販売一覧表記載のとおり,その小売価格は1万5000円から2\n万1000円,被告が百貨店等に販売する際の卸売価格は5600 円から1万1550円であったことが認められる。 上記認定事実によれば,一審原告の商品と被告商品の販売価格は, 1足当たりの小売価格で5倍から7倍程度の差があり,被告商品が 高額であることが認められる。
そして,商標権が,特許権等の他の工業所有権とは異なり,それ 自体に創作的価値があるものではなく,商品又は役務の出所である 事業者の営業上の信用等と結びつくことによってはじめて一定の 価値が生ずるという性質を有するため,商標権が侵害された場合に, 侵害者の得た利益が当該商標権に係る登録商標の顧客誘引力のみ によって得られたものとはいえない場合が多く,スニーカーにおい ても,価格,全体のデザイン,アッパー及びソールの素材,履き心\n地等も考慮されて購買動機が形成されることに照らすと,一審原告 の商品と被告商品との販売価格の上記違いは,原告各商標と類似す る被告各標章が購買動機の形成に寄与した程度を低く評価すべき 事情に当たるものと認めるのが相当である。 したがって,一審原告の商品と被告商品との販売価格の上記違い は,本件推定を覆す事情に該当するものと認められる。 一方で,一審被告が主張する一審原告の商品と被告商品との1足 当たりの限界利益の額の差については,一般に,需要者が限界利益 の額を認識し得るものではなく,限界利益の額の差が購買動機の形 成に直接影響するものとはいえなから,本件推定を覆す事情に該当 するものと認めることはできない。また,一審被告が主張する一審 原告の商品と被告商品との販売態様の差についても,被告商品がデ パート等でのみ限定販売されていたとする事情は認められないか ら,本件推定を覆す事情に該当するものと認めることはできない。
(イ) これに対し一審原告は,スニーカーなどのファッションアイテ ムにおいては,需要者は,価格帯が多少異なっても気に入ったもの を購入するものであり,例えば,同じブランドでも1500円〜1 万7280円という10倍以上の幅広い価格の商品が販売されて いる例(甲195)があるように,この程度の価格差をもって需要 者層が異なるとはいえないこと,一審原告が被告商品の価格帯であ る1万5000円〜2万1000円のスニーカーを現実には販売 していないとしても,このようなスニーカーを販売する潜在的な能\n力を保有していることからすると,一審原告の商品と被告商品との 販売価格の違いは,本件推定を覆滅すべき事情に該当しない旨主張 する。 しかしながら,一審原告の上記主張は,前記(ア)で説示したとこ ろに照らし,採用することができない。
イ 一審原告が原告各商標を使用しない商品を販売していたことにつ いて
一審被告は,原告が販売していた商品の多くに,原告各商標と同一 又は類似の標章が付されていなかったから,被告商品の販売によって 一審原告の売上げが減少したという関係にないことは,本件推定を覆 す事情に該当する旨主張する。 しかしながら,一審被告による被告商品の輸入販売行為がなかった ならば利益が得られたであろうという事情が一審原告に認められる ことは,前記(1)イ認定のとおりであり,一審原告が原告各商標と類似 する標章が付されていないスニーカーも販売していたことを指摘す るのみでは,本件推定を覆滅すべき事情があるものということはでき ない。 したがって,一審被告の上記主張は,採用することができない。
ウ 競合品の存在について
一審被告は,側面に「X」型十字が付された大人用スニーカーは,\n被告商品の他にも市場に多数存在していることは,本件推定を覆す事 情に該当する旨主張する。 しかしながら,乙1によれば,一審被告が他のスニーカーに付され ていると指摘する「X」型十字は,その形状が被告各標章や原告各商\n標とは大きく異なるものであり,このほか,原告各商標と同一又は類 似の標章が付された他社のスニーカーの存在及びそのシェアについて の具体的な主張立証はされていないから,一審被告の上記主張は採用 することができない。
エ 一審被告の営業努力,ブランド力の差等について
一審被告は,被告商品を販売するための営業努力,一審原告と一審 被告とのブランド力の差,原告各商標の訴求力の程度等からすれば, 原告各商標の被告商品の売上げへの寄与は著しく低いから,かかる事 情は本件推定を覆す事情に該当する旨主張する。 しかしながら,一審被告が作成した展示会の資料においてミュニッ ク社商品については「2014年日本デビュー」との記載がされ,一 審被告が広告宣伝活動を行ったこと(前記(2)イ(キ))を考慮しても, 対象期間中の日本国内におけるミュニック社商品に係るブランドの知 名度の程度を裏付ける証拠はない。 他方で,証拠(甲170ないし176,180ないし182)及び 弁論の全趣旨によれば,原告各商標に関する販売,広告宣伝状況につ いては,平成14年頃から原告各商標と類似の標章が付されたスニー カーが,原告が許諾した業者によって販売されており,歌手のBがこ れを着用した雑誌広告が掲載されたこともあったとの事情も認められ, これらの点からすれば,一審被告の主張する上記各点をもって,本件 推定を覆滅すべき事情に該当するものと認めることはできない。 したがって,一審被告の上記主張は,採用することができない。
オ まとめ
以上を前提に検討するに,1)前記ア(ア)認定の本件推定を覆す事情 の内容,2)前記ア(ア)認定のとおり,商標権が侵害された場合に,侵 害者の得た利益が当該商標権に係る登録商標の顧客誘引力のみによっ て得られたものとはいえない場合が多く,スニーカーにおいても,価 格,全体のデザイン,アッパー及びソールの素材,履き心地等も考慮\nされて購買動機が形成されること等を総合考慮すると,被告商品の限 界利益の額に対する原告各商標の寄与割合は,8割と認めるのが相当 であり,上記寄与割合を超える部分については被告商品の限界利益の 額と一審原告の受けた損害額との間に相当因果関係がないものと認め られる。
したがって,本件推定は上記限度で覆滅されるから,商標法38条 2項に基づく一審原告の損害額は,被告商品の限界利益の額(前記(2) ウ(ウ)の244万5001円)の8割に相当する195万6000円 と認められる。」

◆判決本文

1審はこちら。

◆平成29(ワ)11462

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令和2(ネ)10062  商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和3年5月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 本件輸入行為は並行輸入の要件を満たしているとした1審判決を維持しました。

 最高裁平成15年判決について
 同判決は,いわゆる真正商品の並行輸入について,それが1)当該商標が外 国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に 付されたものであり(以下「第1要件」という。),2)当該外国における商 標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に 同一人と同視し得るような関係にあることにより,当該商標が我が国の登録 商標と同一の出所を表示するものであって(以下「第2要件」という。),\n3)我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る 立場にあることから,当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品 とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される 場合(以下「第3要件」という。)には,商標権侵害としての実質的違法性 を欠くと判断した。
この判決は,商標権者から商標の使用許諾を受けた上で,当該商標を付し た商品を製造販売した者から,当該事件の被告が商品を輸入したという事案 に関するものであった。これに対し,本件の事案は,商標権者が自ら商品を 製造してこれを販売代理店に売却し,その販売代理店から被控訴人ブライト が商品を輸入したという事案であり,製品が商標権者自らの手によって製造 されていたかどうかという点において,重大な違いがある。このため,後述 のとおり,上記の3要件を事案の違いに応じて変容させる必要がないのかと いう点が問題になり得るものの,基本的には,上記の3要件をベースとして 被控訴人ブライトによる輸入行為が実質的に違法性を欠くものであるかどう かを判断すべきであると解されるので,以下,各要件について判断する。
(3) 第1要件について
ア 上記のとおり,第1要件は,当該商標が当該商標権者等によって適法に 付されたものであるかどうかを問題とするのに止まるから,この要件をそ のまま適用する限り,商標権者が製造した本件商品の輸入が問題になって いる本件においては(控訴人らは,本件商品の全てが,ランピョン社がM ゴルフ社に販売した商品であることは立証されていない旨主張するが,既 に認定したとおり,Mゴルフ社は,かつてはランピョン社の販売代理店で あり,同社から正規の2UNDR商品を購入し,保有していたことが認め られ,また,被控訴人ブライトがMゴルフ社から輸入した商品の点数(2 387点)は,Mゴルフ社が,ランピョン社から購入し,上記輸入直前の 時点において保有していたとしてもおかしくない商品の点数(2448 点)の範囲内であるのに対し,被控訴人ブライトが輸入した商品が,上記 とは他のルートで入手されたものであったことを疑わせるような証拠は全 くないのであるから,本件商品が真正商品であることを否定することはで きないものというべきである。),第1要件が満たされることは明らかで あるし,本件代理店契約の解除や,地域制限条項の存在などといった控訴 人ら主張の事情は,この判断に何ら影響を及ぼすものではないということ になる。そして,これが被控訴人らの主張するところでもある。
イ これに対し,控訴人らは,本件事案においては,第1要件は,単に適法 に商標が付されたことだけではなく,適法に商標が付された商品が,商標 権者の意思に基づいて流通に置かれたことまで要求するものとして理解す べきであると主張する。 たしかに,最高裁平成15年判決の事案は,商標が,商標権者自身では なく,商標権者から使用許諾を受けた者によって付された事案であったた め,使用許諾権者がその権原に基づいて商標を付したのかどうかという意 味において,商標が適法に付されたのかどうかが問題となる余地があった のに対し,本件事案のように,商標権者自身が商品を製造販売している事 案では,この要件が問題になることはほとんど考えられず,果たして,商 標が適法に付されたかどうかのみを単独の要件とする意味があるのかとい う点が問題となり得る。この点や,最高裁平成15年判決以前には,本件 事案のような事案に関し,「商標権者が当該商標を適法に付して流通に置 いたこと」を要件とする見解が有力であり,このように「適法に流通に置 いたこと」を要件とすることは,非正規のルートで入手された商品が並行 輸入された場合を排除するという意味を持ち得るものであることを併せ考 えると,最高裁平成15年判決とは事案が異なる本件においては,商標が 適法に付されたかどうかだけではなく,それが適法に流通に置かれた(あ るいは,商標権者の意思に基づいて流通に置かれた。以下,同じ。)かど うかも問題とする必要があるという見解もあり得るものと考えられる。そ の意味で,控訴人らの主張にはもっともなところがあるといえる。 しかし,仮にそのように考えるとしても,本件において,Mゴルフ社は, ランピョン社から正規に本件商品を購入したのであるから,この時点にお いて,本件商品が「適法に流通に置かれた」ことは明らかである。そして, 本件代理店契約の解除や地域制限条項の存在といった控訴人ら主張の事情 は,上記の判断を左右するに足りるものではないと考えられる。その理由 は,次のとおりである。
ウ すなわち,まず,本件代理店契約解除との関係について検討すると,前 認定のとおり,Mゴルフ社は,上記解除によって本件商品を販売してはな らない義務を負うと解する余地はある。しかし,このような条項があるか らといって,Mゴルフ社が本件商品の処分権限を失うわけではない(本件 代理店契約解除によって,直ちにMゴルフ社の本件商品に対する所有権が 失われるものではないことは控訴人ら自身が自認しているところであるし, ランピョン社が買戻権を行使した事実が存在しないことも既に指摘したと おりである。)。そうであるとすると,Mゴルフ社が,本件代理店契約解 除後に本件商品を売却したとしても,それは,ランピョン社との間で債務 不履行という問題を生じさせるだけで,本件商品が「適法に流通に置かれ た」という評価を覆すまでのものではないというべきである。実質的に見 ても,Mゴルフ社が正規に購入した商品を,本件代理店契約解除後に他に 売却したからといって,直ちに商標の出所表示機能\が害されるとはいえな いのであって,この点からしても,第1要件該当性を否定する理由はない。 この点は,地域制限条項との関係についても同様であり,地域制限条項 は,あくまでも債権的な効力を有するにすぎず,Mゴルフ社による本件商 品の処分権限を奪うものではないのであるから,これに違反した処分がさ れたからといって直ちに,本件商品が「適法に流通に置かれた」という評 価が覆るものではないというべきである。実質的にみても,Mゴルフ社が 正規に購入した商品を制限地域外で販売したからといって直ちに商標の出 所表示機能\が害されるとはいえないのであって,この点からしても,第1 要件該当性を否定する理由はない(なお,最高裁平成15年判決は,地域 制限条項違反を理由の一つとして第1要件該当性を否定しているので,こ の判断との関係についても念のため触れておく。同判決の事案は,商標の 使用許諾契約において地域制限がされていたという事案であったため,使 用権者は,そもそも,制限地域外において商品に商標を付す権限を有して いなかった。このため,制限地域外で商標を付したとしても,それは「適 法に」商標を付したことにならないとの評価を免れなかった。これに対し, 本件事案において,Mゴルフ社の商品処分権限は何ら制約されていないこ とは既に説示したとおりであり,この点において,本件と最高裁平成15 年判決の事案とは事案を異にするというべきである。)。
エ 以上の次第で,第1要件の内容を最高裁平成15年判決の判断どおりと みた場合でも,それに「適法に流通に置かれたこと」との要件を加えたも のとして理解したとしても,いずれにせよ,同要件は満たされているとい うべきである。
(4) 第2要件について
本件においては,控訴人ハリスが我が国における商標権者であると同時に 外国における商標権者でもあるから,本件商品に付された商標と我が国の登 録商標(原告商標)とが同一の出所を表示するものであることは明らかであ\nる。 なお,被控訴人ブライトは,我が国において被告各標章を利用した宣伝広 告活動を行っているが,これは本件商品の輸入後の行為であることからする と,そもそも,かかる事情が第2要件該当性の判断に影響を及ぼすものであ るのかは疑問である。また仮に,これらの事情を考慮に入れる必要があると しても,原告商標と被告各標章が類似のものであることは上記1で原判決を 引用して説示したとおりであるから,出所表示の同一性に影響を及ぼすもの\nではなく,いずれにせよ第2要件該当性は肯定されるべきである。
(5) 第3要件について
ア 最高裁平成15年判決における第3要件は,「我が国の商標権者が直接 的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから,当 該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保 証する品質において実質的に差異がないと評価される場合」であることと いうものである。 ところで,最高裁平成15年判決の事案は,商標権者自身ではなく,商 標の使用許諾権者が商品を製造したという事案であった。そこで,商標に 係る商品の品質保証のため,商標権者が,商標使用許諾権者(あるいは, その下請等の立場にあった者)の行為に対して,直接的に又は間接的に品 質管理を行い得る立場にあったかどうかが重要な問題になり得たものであ る。これに対し,本件のように,商標権者自身が商品を製造している場合 には,商品の品質は,商標権者自身が商品を製造したという事実によって 保証されており,後は,その品質が維持されていれば品質保持機能に欠け\nるところはないといえる。そして,本件商品は男性用下着であって,常識 的な期間内で流通している限り,その過程で経年劣化等をきたす恐れはな いし,商標権者自身が品質管理のために施した工夫(商品のパッケージ 等)がそのまま維持されていれば,商品そのものに対する汚損等が生じる おそれもないといえる。 そうであるとすると,少なくとも,本件のように商標権者自身が商品を 製造している事案であって,その商品自体の性質からして,経年劣化のお それ等,品質管理に特段の配慮をしなければ商標の品質保証機能に疑念が\n生じるおそれもないような場合には,商標権者自身が品質管理のために施 した工夫(商品のパッケージ等)がそのまま維持されていれば,商標権者 による直接的又は間接的な品質管理が及んでいると解するのが相当である。
イ そこで,以上の観点から,第3要件が満たされているかどうかを検討す るに,本件商品と2UNDR商品の日本における販売代理店が販売する商 品とが,登録商標の保証する品質において実質的に差異がないといえるこ とは,原判決「事実及び理由」第3,2⑷オ(原判決31頁24行目から 32頁17行目まで)に記載のとおりである。そして,商品のパッケージ 等はそのまま維持されていたものと推認できるから,「我が国の商標権者 が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあること」 との要件も,満たされているものといってよい。
ウ 控訴人らは,地域制限条項は,商品が最終消費者に販売されるまでの間 の品質を商標権者がコントロールするために重要な条項であるから,同条 項の違反は商標の品質保証機能を害する旨主張するが,販売地域の制限に\n係る取決めは,通常,商標権者の販売政策上の理由でされるにすぎず,商 品に対する品質を管理して品質を保持する目的と何らかの関係があるとは 解されないから,上記主張は失当である(なお,最高裁平成15年判決の 事案における地域制限条項は,商品を製造する地域を制限する条項という 意味も持っていたため,どこで商品を製造するかは品質の保持に影響する と解する余地があった。これに対し,本件事案においては,商品自体は商 標権者によって製造済みであり,それをどの地域で販売するかが問題にな るのにすぎないのであるから,両者が全く事情を異にすることは明らかで ある。)。また,本件代理店契約が解除されたという事実も,第3要件の 充足性に影響を及ぼす事情とはいい難い。
エ 控訴人らは,本件商品の包装箱にシールを剥がした跡があることや,広 告に「訳あり/パッケージ汚れ」との記載があることは,商標の品質保証 機能を害する旨主張する。\nしかし,包装箱(パッケージ)の汚れ等の不具合は,商品(男性用下 着)自体の品質とは直接の関係がなく(パッケージの汚れが,単に表面に\nとどまらず,内部にまで影響を及ぼしていたことを認めるに足りる証拠は ない。),本件商品の品質が控訴人らの扱う2UNDR商品の品質よりも 実際に劣っていたことをうかがわせる証拠もない。また,「訳あり/パッ ケージ汚れ」との記載は,商品そのものではなく,そのパッケージに汚れ があることを「訳あり」と称しているのにすぎないものと理解できるから, これによって,2UNDR商品そのものの品質に疑念が生じるおそれはな いものといえる。 したがって,この点に関する控訴人らの主張は失当である。
オ さらに,控訴人らは,控訴人ハリスは,正規代理店を経由して日本に輸 入された商品については交換に応じる等の保証をしており,品質について 独自の信用を構築しているところ,本件商品は保証の対象外であり,本件\n商品の購入者は,商品に欠陥があった場合も交換等を受けられないのであ るから,控訴人ハリスの保証を受けられないことは,品質保証機能を害す\nるとも主張する。 しかし,控訴人ハリスが,顧客からの要請に基づいて,商品の交換に応 じることがあるというだけで,独自の品質管理体制が構築されていたとま\nでいうことはできないし,そのほかに,控訴人らが,商品の品質について, 並行輸入を排除するのに足りるような独自の信用を構築していることを認\nめるに足りる証拠はない。 したがって,この点に関する控訴人らの主張も失当である。
(6)まとめ
以上の次第で,本件において,第1要件ないし第3要件は,いずれも満た されているというべきであるから,被控訴人ブライトによる本件商品の輸入 行為は,実質的な違法性を欠くというべきである。
3 並行輸入の違法性阻却と販売行為の態様との関係について
控訴人らは,被控訴人ブライトの輸入行為が違法性を阻却されるとしても, 商標権者が許容しない方法で広告宣伝及び販売をする行為は違法性を阻却され ない旨主張する。 しかしながら,その理由として控訴人らが挙げる事情は,いずれも並行輸入 の違法性阻却の場面で検討ずみのものであって,むしろ,上記2のとおり,商 標の品質保証機能が害されていないことの理由ともなり得るものである。また,\n被控訴人ブライトは,被告各標章を利用して本件商品の宣伝,広告を行ってい るところ,被告各標章の中には,本件商標と完全に同一であるとはいい難いも のも含まれているが,本件商標と類似するものであることは上記1で原判決を 引用して説示したとおりであり,このような標章を使用することによって本件 商標の機能を害しているとまではいえないから,この点も違法性阻却を否定す\nるに足りる事情であるとはいい難い。

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1審はこちら。

◆平成30(ワ)35053

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令和1(ワ)23033  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年5月21日  東京地方裁判所

 商標権侵害の損害論の審理に入ってから約半年が経過後の被告側の限界利益算出のための調査の申し出は、時期に後れた攻撃防御として却下されました。\n

 (a) 以上に対し,被告は,1)前記(1)イの売上高には,被告が楽天に 支払うべき楽天市場の出店手数料及び広告料が含まれているから, 限界利益を算定する上では,上記の売上高から上記出店手数料や広 告料を差し引くべきである旨を主張し,2)上記1)の主張に関連して, 平成18年8月11日から令和元年8月27日までの間の売上高に 関して被告が楽天に支払った月ごと又は年ごとの金額を調査の趣旨 とする令和2年2月28日付けの調査嘱託を申し立て(以下「本件\n調査嘱託の申立て」という。),さらに,3)楽天市場に出店する際の 月額固定費,売上げに応じた変動費等が支払われており,これらを 差し引くべきであるとの主張を記載した令和3年3月11日付け準 備書面(以下「本件被告準備書面」という。)及び同日作成の書証 (「楽天市場への出店方法の流れと費用,体験談から見るメリッ ト・デメリットを解説」と題するウェブページをプリントアウトし たもの。以下「本件被告書証」という。)を提出した。 これに対し,原告は,前記第2の4(5)(原告の主張)ウのとお り,上記2)及び3)は時機に後れた防御方法に当たるから,民事訴訟 法157条1項により却下されるべきであるとの意見を述べた。
(b) そこで検討すると,本件の審理が以下の経過をたどったことは, 当裁判所に顕著である。
i 本件の訴状は令和元年9月19日に被告に送達された。
ii 本件は,令和元年10月30日の第1回口頭弁論期日の後, 弁論準備手続に付され,令和2年8月28日の第7回弁論準備 手続期日まで,主として,被告による原告各商標権侵害の成否 (いわゆる侵害論)についての争点整理が行われた。
iii 原告は,令和2年8月28日,平成18年8月11日から令 和元年8月27日までの間における本件被告販売商品1−1及 び1−2の売上高等に関する楽天に対する調査嘱託を申し立て\nたところ,同年10月29日,楽天は,上記調査嘱託の回答書 (甲35)を提出した。
なお,上記提出に先立つ同月5日の第8回弁論準備手続期日 において,被告は,調査嘱託の回答があったときには,次回期 日までに,調査嘱託の回答を踏まえて,主張立証の方針につい て検討する旨を陳述した。
iV 被告は,令和2年12月14日の第9回弁論準備手続期日に おいて,前記iiiの回答書(甲35)に関し,月ごとの売上高等 を調査事項とする調査嘱託を申し立てる意向を示すとともに,\n損害論に関する事実調査を尽くす旨を陳述した。 そして,被告は,同月21日,楽天に対する上記調査嘱託を 申し立て,楽天は,令和3年1月21日,同調査嘱託に対する\n回答書(甲36)を提出した。
V 被告は,令和3年1月28日の第10回弁論準備手続期日に おいて,同年3月1日までに,損害論についての認否反論を尽 くす旨を陳述した。
Vi 被告は,前記(a)2)のとおり,令和3年2月28日付けで本件 調査嘱託の申立てをした。これに対し,原告は,本件調査嘱託\nの申立ては,必要性がなく,かつ不適法であるとの意見を記載\nした同年3月5日付け意見書を提出した。
Vii 被告は,前記(a)1)の主張を記載した本件被告準備書面を提出 し,令和3年3月11日の第11回弁論準備手続期日において 同準備書面を陳述した。 また,被告は,前記(a)3)の主張を記載した準備書面(同月1 1日付け)を提出するとともに,本件被告書証を乙第1号証と して提出した。
(c) 本件では,訴状において,商標法38条2項により推定される逸 失利益の額に関する主張が記載されていたから,被告においても, 限界利益の算定に当たって控除すべき経費の項目及び額が争点とな り得ることについては,同訴状送達日である令和元年9月19日の 時点で認識することができたといえる。 そして,前記(b)iiのとおり,本件の審理において,侵害論の争 点整理は令和2年8月28日までにおおむね終了し,同日からは損 害の発生及び額(いわゆる損害論)に関する争点整理に進み,その 後の4回の弁論準備手続期日の中で,被告には,前記iV及びVのと おり,損害論に関する事実調査及び主張立証を尽くす機会が与えら れたというべきである。
以上のような審理経過に加え,被告が楽天に支払った手数料の額 に関する情報は,通常,被告において管理されていてしかるべきも のであって,仮にその情報が被告の元に存在しなかったとしても, そのような事情はさほど期間を要せずとも把握することが可能な性\n質のものであることを考慮すれば,被告は,遅くとも令和2年12 月21日付けの調査嘱託を申し立てた時点において,それと同時に\n本件調査嘱託の申立てをすることが十\分に可能であったというべき\nであるし,そのころ,本件被告準備書面及び本件被告書証を提出す ることも十分に可能\であったというべきである。しかるに,訴状が 送達された日から約1年3か月が経過し,損害論の審理に入ってか らも約半年が経過して,損害論について主張立証を尽くす旨を陳述 した第10回弁論準備手続期日の後,その期限である同年3月1日 の直前になって,本件調査嘱託の申立てがされ,同期限後に作成さ\nれた本件被告準備書面及び本件被告書証が提出されたものであるか ら,これらはいずれも時機に後れた防御方法の提出であり,かつ, このことについて被告に重大な過失があると認めざるを得ない。 そして,本件調査嘱託の申立てを採用すれば,楽天から回答を受\nけるのに相当期間を要した後,その回答を踏まえた主張立証がされ ることとなるから,訴訟の完結を遅延させることとなるのは明らか である。
また,本件被告準備書面を陳述させ,本件被告書証を取り調べる と,これらに対する原告の反論の機会を設ける必要があるほか,損 害論に関する被告の主張の整理に相応の期間を要することとなり, 訴訟の完結を遅延させることとなるのは明らかである。
(d) 以上のとおり,本件調査嘱託の申立て,本件被告準備書面及び本\n件被告書証は,いずれも,被告が重大な過失により時機に後れて提 出した防御の方法に該当し,かつ,訴訟の完結を遅延させることと なるものと認められる。よって,本件調査嘱託の申立て,本件被告\n準備書面及び本件被告書証の提出は,いずれも時機に後れた防御方 法として,却下する(民事訴訟法157条1項)。

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平成31(ワ)784  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年4月26日  大阪地方裁判所

  商標「蛸焼工房」について先使用権を主張しましたが、認められませんでした。権利濫用の主張も認められませんでした。

 「需要者の間に広く認識されている」(商標法32条1項)といえるため には,全国的に知られている必要はないものの,商品又は役務の性質等を踏まえつ つ,取引の実情を考慮して,一定の地理的範囲において広く知られているものとい えることを要すると解される。本件においては,たこ焼きの需要者はたこ焼きを購 入しようとする一般の消費者であると見られること,たこ焼きは,通常,加熱調理 されて温かい状態で食べられる食品であることなどを考慮すると,被告標章が「需 要者の間に広く認識されている」といえるためには,被告店舗が多数存在する愛知 県及びその近隣県の需要者の多くに認識されていることを要するといえる。
(イ) 前記認定事実((1)ア)によれば,被告は,本件商標の登録出願まで15年 以上にわたって被告標章を使用し,店舗を展開してきたものであり,また,被告の 売上,愛知県内の店舗数,各店舗の総来店者数のいずれも,決して少ないとはいえ ない。 しかし,本件商標の登録出願当時における愛知県を除く隣接県の店舗数は,各県 とも数店舗にとどまる(前記(1)ア)。愛知県においても,本件商標の登録出願後 の数ではあるものの愛知県内に500店舗を超えるたこ焼き店が存在すること(前 記(1)ア)に鑑みれば,被告店舗数は,それ自体をもって被告標章が需要者の多く に認識されていることを裏付けるに足りるほど多数であるとまではいえない。しか も,基本的には SC 内,しかも多くは地域密着型の総合スーパーマーケットに出店 し,単独で又は他のファーストフード店その他の飲食店と共に,専門店として1階 に位置し,店舗出入り口付近又はフードコートに配置され,たこ焼き,お好み焼 き,たい焼き,焼きそば,フライドポテト,杵つき団子,ソフトクリーム等を主要\nな取扱商品とするという被告店舗の出店態様等(前記(1)イ)を考慮すると,その 来店客は,基本的にはスーパーマーケットを中心とする SC 内の他店での買い物を 目的とする買い物客のうち,買い物の合間の食事や持ち帰りの軽食として手軽に食 べられる飲食物を購入するために来店する者が多数を占め,被告店舗での購入を主 要な目的として来店する者は必ずしも多くないものと推察される。さらに,被告店 舗において,被告標章は来店客により容易に認識され得る態様で表示されていると\nいえるものの,こうした来店客が被告標章に払う注意の程度は必ずしも高くないと 思われる。
また,上記出店態様等に鑑みると,出店先の SC がその商圏内で配布する広告宣 伝用の折込チラシ等に被告店舗の広告も掲載される例が多いことが推察され,現に その例も認められるものの(前記(1)ウ(オ)),そのような折込チラシの性質上,被 告の店舗に関する広告は,SC 内に出店する専門店の1つとして掲載されるにとど まり,その掲載スペースも大きくはないものと推察される(乙23添付の資料3及 び4では,被告店舗に割り当てられているスペースは全体の 1/16 程度である。)。 求人広告においても被告標章が表示されていることが認められるものの,これに触\nれる者は求職中の者に自ずと限定されることに鑑みると,これをもって需要者に広 く認識されていることを裏付ける事情としては必ずしも考慮し得ない。広告宣伝費 としての支出額(前記(1)ウ(ア))も,売上及び店舗数を踏まえると,被告と同じ業 種ないし業態の事業者に比して顕著な額を投下していることが明らかとまではいい 難い。
本件商標の登録出願までに被告店舗がマスコミ等に取り上げられた状況(前記 (1)ウ(イ)〜(エ))を見ても,その回数はむしろ少なく,かつ,その影響が及ぶ範囲も 限定的である。他方,上記時期に限らず,その後も含めた被告のウェブサイトの総 閲覧者数,口コミサイトや第三者のブログ等での掲載状況(前記(1)ウ(カ),エ(ア)) を見ても,その掲載数等が多いとはいえない。 これらの事情を総合的に考慮すると,被告標章は,本件商標の登録出願の際,被 告の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,愛知県及びその隣接県の需要\n者の多くに認識されていた,すなわち「需要者の間に広く認識されて」いたとは認 められない。これに反する被告の主張は採用できない。
・・・
被告は,本件訴訟における原告の本件商標権の行使につき,原告は,被告 に対し損害賠償請求をするという不当な目的で本件商標の登録出願を行い,本件訴 訟を提起したものであるから,原告の被告に対する本件商標権の行使は権利濫用に 当たると主張する。 確かに,本件商標の登録出願は,被告が売上額及び店舗数とも大きく伸ばした段 階でされたものであり(前記1(1)ア),また,被告による被告標章の使用を理由 として本件商標の登録出願に関する早期審査を求めながら,その商標登録後被告に 対する最初の警告書送付まで1年半近くの期間を要した(前記(1)エ,オ)といっ た経緯は認められる。
しかし,前記(1)ア〜ウのとおり,原告は,「たこ焼工房」に「43」,「Sea & Sun」等を結合させた標章をその屋号として主に使用しているところ,「たこ焼工 房」と組み合わせる表示が複数存在することに鑑みると,原告としては,「たこ焼\n工房」の表示それ自体も自己を示すものとして使用しているものとうかがわれる。\nまた,原告は,「たこ焼工房/Sea & Sun/ シーアンドサン」の商標につき登録 出願し,商標登録を得ている。原告によるこうした営業表示の使用状況等を踏まえ\nると,原告が,既に商標登録を受けた商標「たこ焼工房/Sea & Sun/シーアンド サン」の一部である「たこ焼工房」につき商標権として権利化を図ったこと自体を 不当ということはできない。このことは,原告が被告ないし被告標章の存在等を知 って本件商標権を取得したといった事情があったとしても異ならない。さらに,本 件商標の登録から最初の警告書送付までの期間,更には本件訴訟提起までの期間の 点も,原告が賠償請求し得る損害額をより多額とする意図を有していたと認めるべ き具体的な事情はない。 その他被告が縷々指摘する事情を考慮しても,本件における原告の被告に対する 本件商標権の行使をもって権利の濫用というべき事情があるとはいえない。

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平成30(ワ)16422等  商標使用差止等請求事件 損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和3年4月23日  東京地方裁判所

 登録商標「舞豚」があり、このアルファベット表記「maiton」の使用は商標権侵害と判断されました。本件は、「舞豚」はブランド豚肉で、使用許諾契約終了後の標章の使用という特殊事情があります。損害論では38条2項による算定は地理的に離れているということで否定されましたが、飲食物の提供の通常のライセンス料の約2倍の8%が認められました。

 ア 商標法38条2項は,商標権者は,故意又は過失により自己の商標権を 侵害した者に対してその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場 合において,その者がその侵害の行為により利益を受けているときは,そ の利益の額は,商標権者が受けた損害の額と推定すると規定しているとこ ろ,同項が損害額の立証の困難性を軽減する趣旨で設けられた規定である ことに照らせば,商標権者に,侵害者による商標権侵害行為がなかったな らば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,商標法38 条2項の適用が認められると解すべきである。
イ 本件において,被告は,本件商標1と類似する被告各使用標章を本件商 標1と同一の指定役務である飲食物の提供に使用している。しかしながら, 原告が本件商標1を用いて経営する原告店舗は長崎県島原市に所在してい るところ,しゃぶしゃぶ料理の提供という原告の業務に係る顧客は,飲食 店の一般的な顧客の範囲からすると,同市及びその周辺に在住の者である と推認され,本件において,これと異なる事実を認めるに足りる証拠はな い。他方,被告が経営していた本件店舗は東京都台東区に所在しており, 本件店舗の業務に係る顧客は,東京都内及びその周辺に在住の者であると 推認され,本件において,これと異なる事実を認めるに足りる証拠はない。 原告店舗における事業との関係で被告による商標権侵害行為がなければ原 告が利益を得られたといえるためには,それらが競合関係にある必要があ ると解されるところ,原告店舗及び本件店舗の事業の性質から,原告店舗 に対する需要者と本件店舗に対する需要者とは重ならず,原告店舗と本件 店舗が競合関係にあるとは認められない。
ウ 原告は,本件に商標法38条2項が適用されると主張するに当たり,オ ンラインショップや東京都中央区所在のアンテナショップ(以下,これら を併せて「原告オンラインショップ等」という。)において,本件各商標 を付して本件豚肉等を販売しているところ,被告が本件店舗において被告 各標章を使用して飲食物を提供しなければ,豚肉舞豚を食べたいという顧 客の需要は,原告オンラインショップ等に向かうというべきであり,これ により原告は利益を得られたなどと主張する。 ここで,被告による商標権侵害行為がなければ,原告オンラインショッ プ等において原告が利益を得られたというためには,少なくとも本件店舗 における業務と原告オンラインショップ等における業務が競合関係にある といえる必要があるとするのが相当である。そして,原告オンラインショ ップ等においては,本件豚肉等が販売されているのに対し,本件店舗では 豚肉のしゃぶしゃぶ料理が提供されており,これらの事業の形態は大きく 異なる。また,顧客についてみても,本件店舗においては,店舗において 豚肉舞豚を用いたしゃぶしゃぶ料理の提供を受けたいという顧客が主であ るのに対し,原告オンラインショップ等においては,本件豚肉等を購入し 自宅で食べたいという顧客が主である。本件店舗における業務と原告オン ラインショップ等における業務にはこのような相違があるところ,本件に おいて,店舗において豚肉舞豚を用いた料理を食べたいと考える顧客の需 要が原告オンラインショップ等に向かうことを裏付ける的確な証拠はない。 そうすると,本件店舗と原告オンラインショップ等とでは,類型的に事業 の形態が相違しており,本件でその顧客等が重なる事情も認められず,本 件店舗における業務と原告オンラインショップ等における業務が競合関係 にあるとはいえないと認めるのが相当である。原告の上記主張を採用する ことはできない。
なお,原告は,被告が本件店舗を閉店したと主張する平成30年8月を 基準に,閉店後の平成30年9月から平成31年2月までとその前年同期 (平成29年9月から平成30年2月まで)の原告オンラインショップ等 の売上げを比較し,本件店舗閉店後の前者の売上げが閉店前年同期の後者 の売上げから約125%増額しており,被告による商標権侵害行為により 原告は得られる利益を逸していたなどと主張する。しかしながら,証拠 (甲38,39)及び弁論の全趣旨によれば,原告オンラインショッピン グ等の平成30年9月から平成31年2月までの売上げが974万074 3円(内訳:ふるさと納税に係る売上げ964万6895円,それ以外の 売上げ9万3848円)であり,平成29年9月から平成30年2月まで の売上げが776万8833円(内訳:ふるさと納税に係る売上げ757 万6000円,それ以外の売上げ19万2833円)であることが認めら れ,本件店舗の閉店前と閉店後の同時期の売上げを比較すると,本件店舗 の閉店後の期間の売上げが増加しているとはいえるものの,それはふるさ と納税による売上げが増加したことに伴うものといえる。そして,ふるさ と納税制度を利用して商品を購入する動機は,ふるさとへの貢献や返礼品 を受領することなど多種多様であることに鑑みれば,上記の売上額の増加 をもって,原告の主張を裏付けるものということはできず,他に原告の上 記主張を認めるに足りる証拠もない。
エ 以上によれば,原告の業務と被告各使用標章の使用に係る被告の業務と の間で市場における競合関係があるとはいえず,被告による商標権侵害行 為がなかったならば,原告が利益を得られたであろうと認めることはでき ない。したがって,原告の本件商標権1の侵害による損害額の算定に当た って,商標法38条2項を適用する前提を欠き,同項の適用は認められな い。
(2)商標法38条3項の損害額について
ア 本件店舗は,「舞豚」というブランドの豚肉のしゃぶしゃぶ料理を提供 することを特徴とする飲食店であるところ,被告は,被告各使用標章を本 件店舗の名称,店舗の外観や料理のメニュー表などに広く用いていたこと(前記前提事実(3)アイ)からすれば,商標法38条3項による損害額の算 定に当たっては,本件店舗の売上げに対して,本件商標1の使用に対し受 けるべき料率を乗じて算定するのが相当である。
イ 次に,本件商標1の使用に対し受けるべき金銭の料率について検討する。 証拠(甲36)によれば,株式会社帝国データバンク作成の「知的財産 の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査報告書」におい て,「商標権に関する分類別ロイヤルティ料率の平均値」について全体 (205件)では2.6%であり,「商標の分類」が「第43類 飲食物 の提供及び宿泊施設の提供」については3件の例があり,最大値5.5%, 最小値1.5%,平均値3.8%であるとの記載が認められ,飲食物の提 供についての商標権のロイヤルティ料率は,全体の平均値より相当程度高 いといえる。 また,証拠(後掲)及び弁論の全趣旨によれば,豚肉舞豚は平成7年1 0月19日の第39回長崎県種豚共進会において農林水産大臣賞を受賞し たこと(甲37),本件店舗の開店時に長崎新聞には「島原産ブランド豚 提供「舞豚」」という見出しの記事が,島原新聞には「「舞豚」が東京進出」 という見出しの記事がそれぞれ掲載されたこと(乙4)が認められる。こ れらの事実に照らせば,豚肉舞豚に対して一定の評価が与えられていたこ とがうかがえる。 そして,本件店舗は,豚肉舞豚をしゃぶしゃぶ料理として提供すること を大きな特徴とする店舗であるところ,被告は,店舗の名称や看板,メニ ュー表等に被告各使用標章を使用していた。他方,本件店舗には,他に顧客を特に引き付けるような標章等が使用されていたともいえない。そうす\nると,被告は,一定の評価が与えられていた豚肉舞豚と同じ呼称等を有す る被告各使用標章を,店舗の名称も含めて積極的に活用して本件店舗を営 業していたといえ,被告各使用標章の使用は被告の売上げにも貢献するも のであったといえる。
これらの事情に加えて,被告は,本件各商標の使用許諾契約が被告によ る信頼関係を破壊する行為により解除された後も,被告各使用標章の使用 を継続していたなど本件訴訟に現れた一切の事情を併せて考えれば,商標 権を侵害した者に対して事後的に定められるべき商標の使用に対し受ける べき料率は,8%と認めるのが相当である。
ウ 以上によれば,被告による商標権侵害について,商標法38条3項によ り算定される損害額は,本件店舗の売上高(平成29年12月から平成3 0年8月)1189万7246円(争いのない事実)に8%を乗じた金額 である95万1779円となる。
(3) 損害不発生の抗弁について
被告は,原告に使用料相当額の損害は発生しておらず,商標法38条3項 は適用されないと主張する。 しかし,被告は,店舗の名称や看板,メニュー表等に被告各使用標章を使用した一方,本件店舗において他に強く顧客を誘引する標章等が使用されて\nいたものではない。被告各使用標章の使用が被告の売上げに貢献していたと いえることは前記(2)のとおりであるから,被告が被告各使用標章を使用した ことにより原告に使用料相当額の損害が生じないとは認められない。被告の 損害不発生の抗弁についての主張は理由がない。

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令和2(ネ)10060 商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和3年4月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ビクトリノックスの黒字に白十字を二重の外枠で囲った登録商標についての、商標権侵害訴訟です。侵害被疑者は赤十\字が登録できない(商標法4条)ので、十字部分は要部ではないと争いましたが、知財高裁は侵害とした東京地裁の判決を維持しました。\n

(1) 十字部分の色彩等に基づく類否の主張について\n
控訴人は,標章において色彩が類否に大きく影響すること,十字部分を有\nする標章は特に十字部分の色彩が類否に大きく影響することを前提として,\n被控訴人商標と控訴人標章1,3は外観,称呼,観念が異なり,類似しない と主張するが,控訴人の主張を採用することはできない。以下,詳述する。
ア 標章において色彩が類否に大きく影響するという控訴人の主張について 控訴人は,例えば,国旗において色彩が重要な要素であるように,標章 は,同一の文字や図形の結合等であっても,色彩の相違によって印象が異 なるものであり,現に,商標法70条1項は,色彩を登録商標と同一にす れば登録商標と同一の商標となる場合であっても,色彩が異なれば登録商 標に類似しない商標があることを前提としており,このことは,色彩以外 が同一であり色彩だけが異なっている商標が非類似になることを示して いるとし,そのため,商標の類否判断に色彩が大きく影響すると主張する。 しかし,国旗において色彩が重要な要素であるとしても,国旗の例が直 ちに商標に当てはまるものではない。また,標章において,文字や図形は 色彩に劣らず重要な要素であり,商標法70条1項が,色彩を登録商標と 同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるもの を,登録商標に類似の商標にとどまるとするのではなく,登録商標に含ま れるとしていることからすれば,文字や図形が同一であって色彩のみが異 なる商標は,登録商標と同一の商標と認められる場合が多いといえる。そ のため,控訴人の上記条項の理解は不適切であり,同条項に基づき,標章 において色彩のみが類否に大きく影響するということはできない。なお, 色彩が識別性等の観点から大きな意味を有しており,色彩のみが異なるこ とにより全く違う商標となってしまうような例外的な場合について商標 法70条1項が適用されないとする余地があるとしても,上記の認定は左 右されない。したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。
イ 十字部分を有する標章は特に十\字部分の色彩が類否に大きく影響すると いう控訴人の主張について 控訴人は,商標法4条1項4号は,赤十字の標章と同一又は類似の商標\nについて商標登録を受けることができないと定めており,赤十字の標章及\nび名称等の使用の制限に関する法律1条は,白地に赤十字の標章若しくは\n赤十字の名称又はこれらに類似する記章若しくは名称をみだりに用いる\nことを禁じていること,緑と白で構成された十\字の標章は,安全標識とし て定められていることから,十字部分を有する標章においては特に十\字部 分の色彩が類否に大きく影響すると主張する。 しかし,赤十字の標章や安全標識について上記の事実があるとしても,\n赤十字の標章と同一又は類似の商標でなければ,十\字部分を含む商標の登 録は認められる余地があり,十字部分を含む商標において十\字部分の色彩 が識別性等の観点からどのような意味を有するかは,その商標の具体的な 構成等に照らして判断されるべき事柄であって,一概に,十\字部分を有す る標章において特に十字部分の色彩が類否に大きく影響するということ\nはできず,控訴人の上記主張は,採用することができない。
ウ 被控訴人商標と控訴人標章1,3の類否について 控訴人は,被控訴人商標と控訴人標章1,3は,外観,称呼,観念が異 なり,類似しないと主張する。 しかし,原判決の説示するとおり(原判決9頁6行目ないし10頁10 行目),被控訴人商標と控訴人標章1は,外観が類似しており,いずれも 「ジュウジ」「クロス」などの同一の称呼及び「十字」「クロス」などの\n同一の観念が生じ,取引の実情を踏まえると,被控訴人商標と控訴人標章 1は,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあり,両者は類似する と認められる。また,原判決の説示するとおり(原判決11頁5行目ない し12頁14行目),被控訴人商標と控訴人標章3は,外観が類似してお り,同一の称呼及び観念が生じ,取引の実情を踏まえると,被控訴人商標 と控訴人標章3は,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあり,両 者は類似すると認められる。したがって,控訴人の上記主張は採用するこ とができない。
(2) 十字以外の部分等に基づく類否の主張について\n
控訴人は,商標法4条1項1号が,国旗と同一又は類似の商標は商標登録 を受けることができないと定めていることからすると,被控訴人商標が登録 されているのは,スイス国旗と類似していないからであり,そうであるとす ると,被控訴人商標のうち,スイス国旗と似ている十字部分は要部ではなく,\n円弧からなるループ状図形が要部であるとした上で,被控訴人商標の円弧か らなるループ状図形の外周と控訴人各標章の正方形部分の外周は,形状,色 彩,観念が異なるとし,被控訴人商標の指定商品と同一又は類似の商品に使 用された控訴人各標章が外観,観念等によって取引者,需要者に与える印象, 記憶,連想等は,被控訴人商標とは全く異なるものであるから,被控訴人商 標と控訴人各標章は類似しないと主張する。 しかしながら,被控訴人商標が登録されているのは,スイス国旗と類似し ていないからであるとしても,そのことから直ちに,被控訴人商標のうち, 十字部分以外の円弧からなるループ状図形が要部であるとして,その部分の\n比較に基づいて商標の類否を判断すべきであるとはいえない。商標の類否は, 外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を 総合して,その商品に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきもの であるところ,被控訴人商標と控訴人各標章は,いずれも十字部分と外周部\n分からなり,十字部分は被控訴人商標及び控訴人各標章の中心にあって目立\nつ位置にあるから,類否判断に当たっては,十字部分も含めて被控訴人商標\nと控訴人各標章のそれぞれの全体を比較考察すべきである。そのため,十字\n部分以外の周囲の部分の比較により被控訴人商標と控訴人各標章は非類似で あるとする控訴人の上記主張を採用することはできない。

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1審は東京地裁ですがなぜかアップされていません。 こちらは同商標権に対する不使用審決取消訴訟です。審決は不使用と認定しましたが、知財高裁はこれを取り消しています。

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