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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商標その他

平成28(行ケ)10254  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年12月25日  知的財産高等裁判所(1部)

 共謀して原告の権利を害する目的をもって原審決を確定させたとして、再審請求が認められました。事案としては、原告は、被告に対して商標権を譲渡しましたが、その後、譲渡を解除したとして移転登録の抹消手続きを求める訴えを提起しました。その際、被告らは共謀して本件商標権は不使用であるので登録を取り消したというものです。
 (1) 原告は,平成29年5月31日,被告Yの本人尋問の申立てをしたところ,\n尋問事項に関する原告の主張は,被告らが共謀して原告の利益を害する目的をもっ て原審決をさせたことである(第3回口頭弁論調書参照)。
(2) 当裁判所は,同年6月14日,第2回口頭弁論期日において,被告らの共 謀の存否を明らかにするには,当審において被告Yの本人尋問を行う必要があると して,上記(1)の申立てを採用するとともに,本人尋問期日を同年10月11日に指\n定した。なお,被告Yは,同年8月31日までに陳述書を提出することとされた。 (第2回口頭弁論調書参照)
(3) 被告Yは,同年8月25日付けで,被告Shapesの代表者や関係者と\n共謀したことはない旨を記載した陳述書を提出した(乙ア34)。
(4) 被告Yは,適式の呼出しを受けたにもかかわらず,当裁判所に対し事前の 連絡なく,本人尋問期日に出頭しなかった。なお,被告Yは,当裁判所に対し,診 断書その他出頭できない理由を証明する書類を一切提出していない。
(5) 被告Yの代理人は,本人尋問期日において,被告Yには民訴法208条の 不出頭の効果を説明して出頭しないと不利益になる旨を告げて出頭を促したものの, 本人からはそのことを承知の上で出頭しないと告げられた旨述べた(第3回口頭弁 論調書)。
(6) 当裁判所は,上記の経過を踏まえ,弁論を終結した。なお,被告Shap es及び被告Yの各代理人は,弁論を終結することにつき,異議を述べなかった。 2 民訴法208条該当性
上記認定事実によれば,被告Yが当事者本人の尋問期日に正当な理由なく出頭し なかったものと認められるから,民訴法208条に基づき,被告らが共謀して本件 商標権を害する目的をもって本件商標に係る登録商標を取り消す旨の原審決をさせ たという原告の主張は,真実と認めることができる。 したがって,被告らが共謀して原告の権利を害する目的をもって原審決をさせた とは認められないとした審決の判断には誤りがあるから,原告の取消事由は理由が ある。

◆判決本文

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平成29(ネ)245  商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成29年9月21日  大阪高等裁判所

 高級絨毯の並行輸入品について、国内商標権を持っている代理店が商標権侵害で訴えた事件です。大阪高裁は、1審と同じく、商標権侵害としての実質的違法性を欠くと判断しました。
 イ 商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品に つき,その登録商標と同一の商標を付したものを輸入する行為は,許諾を 受けない限り,商標権を侵害するが,そのような商品の輸入であっても, 1) 当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受 けた者により適法に付されたものであり,2) 当該外国における商標権者 と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一 人と同視し得るような関係があることにより,当該商標が我が国の登録商 標と同一の出所を表示するものであって,3) 我が国の商標権者が直接的 に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該 商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証 する品質において実質的に差異がないと評価される場合には,いわゆる真 正商品の並行輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠くものと 解される(フレッドペリー事件最高裁判決)。
(2) 被控訴人標章1が付された被控訴人商品の販売等について
ア 前記2のとおり,被控訴人標章1が記載された被控訴人タグは,ゾ社に よって被控訴人商品に付されたと認められる。 他方,証拠(甲53)及び弁論の全趣旨によれば,ゾ社は,イランにお いて,「ZOLLANVARI」をペルシア文字で表記した商標の登録を出願し\nたが拒絶され,「ZOLLANVARI」に関する商標について商標権を取得し ていないことが認められる。しかし,証拠(甲33)によれば,ゾ社は世 界各地に直営店を設けている中で,日本においては,控訴人が,ゾ社の総 代理店として,直営店と同じ扱いと待遇を受けていると認められる。それ に加えて,控訴人は,前記第2の2(3)のとおり,ゾ社から権限を授与さ れて初めて控訴人商標の登録を受けることができたのであるから,ゾ社が イランにおいて商標権を有している場合と実質的には変わるところがない といえる。 そうすると,被控訴人が,被控訴人標章1が付された被控訴人商品を輸 入した上,これを販売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した 行為は,控訴人商標の出所表示機能\を害することがないといえる。
イ 本件の証拠上,ゾ社と控訴人との間の総代理店契約において,控訴人が 控訴人商品の品質管理に直接関与していることを示すものはなく,控訴人 商品の品質管理は,基本的にはゾ社において行われているものと認められ る。 これに対し,被控訴人商品については,前記2のとおり,ゾ社から,被 控訴人が日本国内で販売することを前提として販売されたものであると認 められるから,被控訴人商品の品質については,これが日本において販売 されることを前提としてゾ社において管理しているものと認められる。 そうすると,ゾ社が外国における商標権者でなくても,控訴人商品につ き,控訴人商標の保証する品質は,控訴人がゾ社を通じて間接的に管理を していて,そのゾ社が,控訴人商品と同じく日本に輸出して日本において 販売される商品として被控訴人商品の品質を管理しているのであるから, 被控訴人商品と控訴人商品とは,控訴人商標の保証する品質において実質 的に差異がないといえる(本件は,被控訴人商品と控訴人商品のいずれも, ゾ社の下で製造されているという点において,フレッドペリー事件最高裁 判決の事案と異なるということがいえる。)。 この点に関し,控訴人は,被控訴人商品がゾ社の製品であるとしても, それはイラン国内のバザールで販売していた製品であり,ゾ社が日本輸出 向けとして選別し控訴人タグを付した控訴人商品とは品質の点で異なる旨 主張し,A及びBの説明(甲34,52)には,被控訴人商品に付されて いる別紙3のタグ(前記1(9))は,国内市場でのみ使用し,輸出向け商 品には使用しないとの趣旨の部分がある。 証拠(乙22の3)及び弁論の全趣旨によれば,ゾ社の取り扱うじゅう たんは,工場で生産されるものではなく,イラン国内において複数の織子 から仕入れる手織りのものをゾ社において仕上げていると認められる。そ うすると,製品ごとにその品質には相当のばらつきがあることが推認され るから,控訴人が主張するように,輸出向けと国内販売向けの製品を選別 するという取扱いも十分考えられるところである。\nまた,証拠(甲48の1,甲49の1,甲50の1,乙27の2,乙2 9の1,乙30の1,乙34の1,乙35の1,乙36の4)によれば, 控訴人商品のゾ社からの購入代金は1m2当たり224ないし715米ドル であるのに対し,被控訴人商品のゾ社からの購入代金は1m2当たり40な いし70米ドルであると認められ,明らかに控訴人商品の方が高いといえ る。 しかし,被控訴人代表者及びCが作成した,CとBとの間の会話を反訳\n及び翻訳した文書(乙49)の注記には,控訴人が取り扱っている商品が 主にルリバフなどの高級品であるのに対し,被控訴人はギャッベなどの比 較的安価な商品を取り扱っており,控訴人と被控訴人とでは同じゾ社の製 品でも取り扱っている商品が違う,顧客層が違うとの記載があるが,直ち に,両者の品質が異なるということにはならない。 また,証拠(乙25)によれば,別紙3のタグが付された被控訴人商品 の中には,当該タグを収納しているビニール袋の内側に,当該タグに記載 されたのと同じ寸法及び控訴人代表者の姓である「D」との文字が,おそ らく意図せずに転写されているものが複数あったことが認められる。この ことは,ゾ社において,控訴人向けとなる商品と,被控訴人向けとなる商 品とが重なり合っていることを示すものといえる。 そして,上記のとおり,控訴人商品についても,その品質管理を実質的 に行っていると認められるゾ社自身が,控訴人商品と同じく日本に輸出し て日本において販売される商品として被控訴人商品を被控訴人に販売して いる以上は,被控訴人商品と控訴人商品とは,控訴人商標の保証する品質 において実質的に差異がないとの評価は左右されず,被控訴人商品と控訴 人商品の品質が同一とまではいえなくても,控訴人商標の品質保証機能を\n害することはないというべきである。 そうすると,被控訴人が,被控訴人標章1が付された被控訴人商品を販 売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した行為は,控訴人商標 の品質保証機能を害することがないといえる。
ウ 前記ア及びイのとおり,被控訴人が,被控訴人標章1が付された被控訴 人商品を販売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した行為(前 記(1)ア2)の行為)は,控訴人商標の出所表示機能\及び品質保証機能を害\nすることがなく,また,以上に述べたところによれば,商標を使用する者 の業務上の信用及び需要者の利益を損なうものでもないから,商標権侵害 としての実質的違法性を欠くというべきである。
(3) 被控訴人ウェブサイトにおける被控訴人各標章の使用について
ア 被控訴人商品の広告に被控訴人各標章を付して被控訴人ウェブサイトに 掲載する行為(前記(1)ア3)の行為)については,これまでの認定及び判 断に基づくと,次のとおり指摘することができる。 まず,被控訴人各標章が付された広告において宣伝された被控訴人商品 は,被控訴人が,控訴人商標の外国における商標権者と同視できるゾ社か ら,日本国内で販売することを前提として,購入して輸入したものである。 そして,控訴人は,ゾ社の日本における総代理店であって,ゾ社の直営店 と同じ扱いと待遇を受けており,控訴人商標の出所表示機能\を検討する際 には,控訴人とゾ社とは同視することができる。そうであれば,被控訴人 商品の広告に,控訴人商標と類似する被控訴人各標章を付して被控訴人 ウェブサイトに掲載しても,控訴人商標の出所表示機能\を害することがな いといえる。 また,被控訴人商品と控訴人商品とは,控訴人商標の保証する品質にお いて実質的に差異がないといえるから,被控訴人商品の広告に,控訴人商 標と類似する被控訴人各標章を付して被控訴人ウェブサイトに掲載しても, 控訴人商標の品質保証機能を害することがないといえる。
イ そうすると,被控訴人商品の広告に被控訴人各標章を付して被控訴人 ウェブサイトに掲載する行為は,控訴人商標の出所表示機能\及び品質保証 機能を害することがなく,また,以上に述べたところによれば,商標の使\n用をする者の業務上の信用及び需要者の利益を損なうこともないから,商 標権侵害行為としての実質的違法性を欠くというべきである。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成27(ワ)5578

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平成29(行ケ)10030  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年7月27日  知的財産高等裁判所

 商標「オルガノサイエンス」が商標「オルガノ」と類似する(11号違反)and混同する(15号違反)と判断されました。、争点は、商標「オルガノ」が著名かです。特許庁・裁判所とも著名であると判断しました。
 以上によると,1)被告は,我が国における総合水処理エンジニアリング分野にお ける最大手企業の一つであり,その設立以来,「オルガノ」及びその英語表記である\n「ORGANO」をハウスマークとして使用していること,2)被告の事業の主力は 水処理装置事業であるが,薬品事業を含む機能商品事業の規模も大きく,被告の主\nな商品の市場占有率は高いこと,3)被告の薬品事業は,水処理薬品を中心にするも ので,水処理装置事業とは密接な関連性を有するということができること,4)被告 は20社以上からなるグループ企業を構成し,その子会社の多くは「オルガノ」の\n文字を冠する社名を用いているほか,幅広い分野で事業を営み,国際的な事業展開 も行っていること,5)被告は,たびたびメディアに取り上げられ,その事業内容が 一般に広く紹介されていること,6)被告は,新聞や雑誌において,「オルガノ」の文 字や使用商標1を使用して継続的に宣伝広告を行い,特に,新聞広告については, 長期間にわたり全国紙に題字広告を掲載するという目立つ態様のものであったこと, 以上の各事実を認めることができる。 これらの事実によると,「オルガノ」及びその英語表記である「ORGANO」の\n表示は,被告の略称又はハウスマークを表\示するものとして,本件商標の登録出願 日前から,取引者,需要者に広く知られるようになっており,それに伴い,「オルガ ノ」又はその英語表記である「ORGANO」を含む使用商標についても,同時点\nまでの間に,取引者,需要者に広く知られて周知,著名となっていたと認めるのが 相当である。 そして,使用商標は,ほぼ同大の図形部分及び「ORGANO」又は「オルガノ」 の文字部分から構成されているところ,このうち図形部分からは特段の観念や称呼\nが生じないのに対し,「ORGANO」及び「オルガノ」という文字部分は,その称 呼が被告の略称及びハウスマークと同一であり,商品及び役務の出所を取引者,需 要者に強く印象付ける部分であると考えられる。そうすると,使用商標のうち,「O RGANO」又は「オルガノ」の文字部分は,図形部分とは独立して出所識別標識 としての機能を果たすものということができる。\nしたがって,使用商標の文字部分からなる被告商標についても,被告の水処理装 置事業及びこれと密接に関係する薬品事業を表示するものとして,本件商標の登録\n出願日前から,周知,著名であり,本件商標の登録査定日においても同様であった と認められる。 原告の告の主張について これに対し,原告は,1)被告商標は,水処理装置事業の分野では周知であるとし ても,薬品の分野においては,周知,著名ではない,2)被告が行ってきた宣伝広告 は一般的な企業活動の一環にすぎず,新聞紙上に掲載した題字広告には「ORGA NO」の表示はなく,被告の取り扱う薬品類を表\示しているものもない,3)取引者, 需要者は,使用商標の「ORGANO」又は「オルガノ」の文字部分よりも水玉模 様の図形に注意をひかれる,4)被告商標は,特許情報プラットフォームの「日本国 周知,著名商標」に掲載されておらず,「ORGANO」又は「オルガノ」について の登録防護標章も存在しないなどと主張し,被告商標が周知,著名であることを争 う。
ア しかし,上記1)については,前記認定のとおり,薬品事業を含む機能商\n品事業は,その事業規模が大きく,水処理装置事業と並ぶ被告の主力事業であると いうことができる上,被告の水処理装置事業と薬品事業は密接な関連性を有してい るのであるから,被告の水処理エンジニアリング事業が広告宣伝等により取引者, 需要者に広く知られるようになるとともに,薬品事業についても,本件商標の登録 出願日前から広く取引者,需要者に知られるようになっていたと認めるのが相当で ある。
イ 上記2)については,一般的に,長期間にわたり継続的に行われる宣伝広 告は,商標が一般に広く知られる上で効果的な方法であり,特に,新聞広告は,全 国紙に題字広告を掲載するという目立つ態様の広告が長期間にわたり行われたもの であって,その間に「ORGANO」又は「オルガノ」という被告商標の表示も一\n般に広く知られるようになったものと認めるのが相当である。 原告は,上記の題字広告には「ORGANO」の表示はなく,薬品類も表\示され ていないと主張するが,前記認定のとおり,被告は,新聞広告に加えて,雑誌にお いて,「ORGANO」の文字を含む使用商標1を表示して広告宣伝を行うとともに,\nその事業内容はメディアにたびたび取り上げられて一般に広く紹介されているので あるから,題字広告に係る「オルガノ」という表示のみならず,「ORGANO」と\nいう表示についても一般に広く知られるようになったと認めるのが相当である。ま\nた,薬品事業については,上記ア判示のとおりであって,題字広告に薬品類の表示\nがないからといってこの認定が左右されることはない。
ウ 上記3)については,前記判示のとおり,使用商標のうち「ORGANO」 又は「オルガノ」の文字は,図形部分とは独立して出所識別標識としての機能を果\nたすものと認めるのが相当である。
エ 上記4)については,特許情報プラットフォームの「日本国周知,著名商 標」に被告商標が掲載されていないこと,及び,「ORGANO」又は「オルガノ」 が防護標章登録されていないことのみをもって,被告商標の周知著名性を認定する 妨げとはなるものではない。

◆判決本文

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◆平成28(行ケ)10181

◆平成26(行ケ)10268

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平成29(行ケ)10017  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年7月24日  知的財産高等裁判所

 8区分の指定商品・役務の商標権について、9件の不使用取消審判を請求するのは取消権の濫用だと主張しましたが、裁判所は認めませんでした。
 以上指摘した点も踏まえて検討すると,まず,原告が依拠する法50 条2項及び56条の規定は,複数の指定商品等を対象とした1つの不使 用取消審判請求がされた場合,その対象となった指定商品等のいずれか について使用事実の立証がされれば,当該請求全部について不使用取消 しを免れることと,1つの不使用取消審判請求の一部について請求を取 り下げることはできないことを定めるにとどまり,不使用取消審判請求 をする場合に,審判請求の仕方に制約があるのかどうか(すなわち,原 告が主張するとおり,審判請求をする場合には,1つにまとめて請求を しなければならないのかどうか)については,何ら触れていない。そも そも,仮に請求の仕方(すなわち審判請求権の行使の仕方)に制約があ るのであれば,その旨が明示的に定められるべきであることを考慮する と,そのような明示的な定めがされているわけではない以上,上記各規 定により,原告主張のような制約が課されたと解することは困難である。 実質論として考えてみても,前記のとおり,3年以上使用されていない 商標登録は取り消されるべきであり,また,不使用取消審判手続におい ては,商標の使用について一番よく知り得る立場にある被請求人が商標 使用の事実について証明責任を負うべきであるというのが不使用取消審 判制度に関する法の趣旨である以上,多数の指定商品等について商標登 録を得た商標権者は,不使用取消審判請求を受けた場合に相応の立証の 負担等を負うことを予期すべきものである。これに対し,原告の主張を\n敷衍すると,不使用取消審判請求をされた被請求人の立証の負担や経済 的負担への配慮を優先し,多数の指定商品等のうち1つでも使用の事実 を立証すれば,全ての指定商品等について不使用取消しを免れるという のが法の趣旨であることになるが,そのような解釈は本末転倒であって, 到底成り立たないものであるといわざるを得ない。

◆判決本文

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◆平成29(行ケ)10016等

◆平成29(行ケ)10027

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平成29(行ケ)10033  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年6月8日  知的財産高等裁判所

 不使用であるとして審決が取消されました。多機能物品(十\徳ナイフ)について、一部の機能の商品に関しても使用がなされていたと判断されました。また、使用形態として別の文字とともに使用していましたが、社会通念上同一の商標と判断されました。\n
 前記1(5)のとおり,本件商品1〜3は,革製のケースであって,スイスアーミー ナイフに適合するものとして販売されているものの,その形状は略直方体であって スイスアーミーナイフ以外の物を収納することも可能であること,その販売形態は,\n収納物を伴うことなく本件商品1〜3のみで購入することが可能であること,スイ\nスアーミーナイフには,刃物であるナイフ等以外に,栓抜きやつまようじなど,他 の物も組み込まれていることからすると,第18類「small persona l leather goods」(革製の小さな身の回りの物)に該当するという ことができる。
・・・・
(2) 被告は,ビクトリノックス日本支社が使用していた標章には,いずれも「W ENGER」の文字の右上にRマークが付されているから,同標章は図形単体では なく,図形と文字を組み合わせた一体の標章として使用していたものであり,本件 商標と社会的同一性はない,と主張する。 しかし,前記1(2)(5)のとおり,本件商標と「WENGER」の欧文字とは左右 に配されており分離可能であること,ビクトリノックス日本支社のウェブサイトに\n表示されたものは,本件商標が赤で「WENGER」の欧文字は黒であることから\nすると,本件商標と「WENGER」の欧文字とは分離して観察することができる。 また,Rマークについても,登録商標を示すものとして分離して観察する ことができる。これらのことからすると,本件商標と社会通念上同一の商標が使用 されていたと認めることができる。したがって,被告の主張は,採用することがで きない。

◆判決本文

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平成28(行ケ)10089  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年5月15日  知的財産高等裁判所

 商標法4条1項11号違反ではなく、商標法8条1項違反が争われた事例です。知財高裁は登録無効とした審決を維持しました。優先権を使った国際登録が同時期くらいになされると、このようなことはが起きるんですね。
  複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構\成部分が それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的 に結合しているものと認められる場合には,その構成部分の一部を抽出し,\nこの部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは, 原則として許されないが,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商\n品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ 13 る場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じない と認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較\nして商標そのものの類否を判断することも許されるものと解される(最一小 判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁,最二小判平成5年9 月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8日集民22 8号561頁参照)。
(2) これを本件についてみるに,本件商標は,「FINESSENCE」とい うアルファベット10文字を横文字にして成る文字部分(本件文字部分)と, アヤメの花のような図が白抜きされた円形の図形(本件図形)を,上下二段 に組み合わせて構成されるものであるところ,その構\成態様からして,各構\n成部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分 的に結合しているものとは認められない。また,上記のとおり,本件文字部 分はアルファベット10文字を横書きにして成るのに対し,本件図形部分の 横幅は本件文字の3文字分(左から2文字目ないし4文字目)程度しかなく, その大きさの比からして,本件文字部分が本件商標の中心的構成部分に当た\nることは明らかである。加えて,原告も認めるとおり,本件文字部分は,そ れ自体造語であって一般的な用語ではないから,出所識別標識として強く支 配的な印象を与える部分であると認められる。 そうすると,本件商標のうち本件文字部分を要部として抽出し,同部分の みを引用商標と比較して商標の類否を判断することは許されるというべきで あり,この点において,本件審決の認定に誤りがあるとは認められない。

◆判決本文

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平成28(ネ)10076  商標権侵害差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成29年5月17日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審と同様に、極真などの複数の商標について、子供である相続人は極真会館の事業を承継した者ではないと判断されました。なお、極真関連については、商標だけでもかなりの関連する事件があります。
 「(2)ア 前記事実関係によれば,被控訴人の代表取締役を務めるBは,昭和51\n年,極真会館に入門し,平成4年5月,極真会館浅草道場を開設してその支部長に 就任し,極真会館の許可を得て極真会館を示す被控訴人各標章を継続的に使用して いたのであり,Aが平成6年4月26日に死亡した後も,平成6年5月,その後継 者であると自称して極真会館の館長に就任し,同年10月3日,被控訴人を設立し, 被控訴人各標章の使用を継続したことが認められる。その後,極真会館は極真空手 を教授する複数の団体に分裂するに至ったものの,極真会館を示す被控訴人各標章 は,本件各商標の商標登録出願当時はもとより,Aの死亡後にあっては,極真会館 又はその活動を表すものとして広く一般に知られていたことが認められる。\n他方,控訴人Xは,Aの子であり,相続により同人の権利義務を単独で承継した ものの,A死亡当時,極真会館の事業活動に全く関与せず,Aが後継者を公式に指 定せず又は極真会館において世襲制が採用されていなかったことからすると,極真 会館の事業を承継した者ではないことが認められる。 そうすると,控訴人Xは,平成11年2月17日に成立した裁判上の和解に基づ き,同年3月31日,Bらから極真会館総本部の建物の引渡しを受け,その後当該 建物を利用して極真空手に関する事業を行うようになったものの,控訴人らの活動 は,A死亡後に分裂して発生した極真会館の複数団体のうちの一つにとどまるもの と認められる。
これらの事情の下においては,本件各商標は,Bも相当な寄与をして形成された 極真会館という団体の著名性を無償で利用しているものに外ならないというべきで あり,客観的に公正な競業秩序を維持することが商標法の法目的の一つとなってい ることに照らすと,控訴人らが,極真会館の許諾を得て被控訴人各標章を使用して 極真会館としての活動を継続する者に対して本件各商標権侵害を主張するのは,客 観的に公正な競業秩序を乱すものとして,権利の濫用であると認めるのが相当であ る(最高裁昭和60年(オ)第1576号平成2年7月20日第二小法廷判決・民集 44巻5号876頁参照)。 現に,Bは,平成6年ないし平成7年までの間,複数の極真関連標章について商 標登録出願をし,自己名義の商標登録を受けたものの,Aの生前に極真会館に属し ていた者らが,平成14年,Bを被告として,空手の教授等に際して極真関連標章 を使用することにつき,Bの商標権に基づく差止請求権が存在しないことの確認等 を求める訴訟を大阪地方裁判所に提起し(同庁同年(ワ)第1018号),同裁判所は, 平成15年9月30日,極真関連標章はAの死亡後も極真会館を表すものとして需\n要者の間に広く知られており,極真会館内部の構成員に対する関係では,Bが極真\n関連標章の商標登録を取得して商標権者として行動できる正当な根拠はないなどと して,Bの上記商標権の行使が権利濫用であるとして上記不存在確認請求を認容し, その控訴審である大阪高等裁判所(同庁同年(ネ)第3283号)も,平成16年9 月29日,極真関連標章に関し自己名義で商標登録を受けたとしても,極真会館の 外部の者に対する関係ではともかく,極真関連標章の周知性・著名性の形成に共に 寄与してきた団体内部の者に対する関係では,少なくとも極真関連標章の使用に関 する従来の規制の範囲を超えて権限を行使することは不当であるというべきであり, Bによる上記商標登録に係る商標権の行使は権利の濫用に当たり許されないなどと して,Bの控訴を棄却している。上記の理は,本件についても当てはまるものとい える。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成27(ワ)20338

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平成27(ワ)7787  損害賠償等請求事件  商標権  民事訴訟 平成29年4月10日  大阪地方裁判所(26民)

 商標権侵害があれば過失が推定されますが、過失無しと判断されました。学校法人間の事業譲渡という、特殊な事情です。
 ところで,商標権侵害について過失が推定されることとされた趣旨は,商標権の 内容については,商標公報,商標登録原簿等によって公示されており,何人もその 存在及び内容について調査を行うことが可能であること等の事情を考慮したものと\n解される。このことに鑑みると,侵害行為をした者において,商標権者による当該 商標の使用許諾を信じ,そう信じるにつき正当な理由がある場合には,過失がない と認めるのが相当である。 (イ) 本件では,前記のとおり,被告が,原告代表者や原告の理事に対して,\n本件事業を承継するとの意向を伝えたとは認められず,原被告間の本件事業の承継 に関する具体的な協議は,P1,P2及び双方の事務職員の間で行われたにとどま る。
a しかし,まず,そもそも原告は,財政難のために原告大学の募集停 止を決定したことから,本件事業の継続が困難な状況に陥り,本件事業の承継先を 探す必要に迫られていたのであり,そのような状況の中で,原告代表者及びP4は,\n平成26年4月4日に被告を訪問した際に,学生の受入れ及び学科の承継に加えて, 本件事業の承継先が見つかるとよいと考えている旨を伝えていたのであるから,被 告としては,本件事業の承継が原告の意向に沿うものであると考えてしかるべき状 況があったと認められる。
b そして,被告は,上記に近接する同月末の原告のP1からの申入れ\nを契機として検討を進め,同年5月23日にはP1が事務局のP3とともに被告の 施設を視察しているのであって,P1が原告における本件事業の中心人物であった ことからすると,上記のような原告の状況とあいまって,被告においては,P1の 上記申入れが原告の上層部の意向に基づくものであり,原告側の担当者がP1とさ\nれたと信じてしかるべき状況にあったというべきである。 また,被告が同年6月4日の執行部会において本件事業を承継する意向を固め, その旨をP2がP1に対して連絡した後,被告大学が第7回大会の共催校となるこ とを想定して,P2及び被告の事務職員がP1から同年7月11日に原告大学で開 催された第6回大会の選考委員会に招かれたことについても,同様のことがいえる。
c そして,同年8月24日,第6回大会終了後に原告大学で開催され た大会組織委員会及び大会実行委員会においては,地方公共団体,企業等の委員の ほか,原告の理事でもあるP10や原告の事務局担当者が出席する場で,被告大学 が共催校となることが承認されている。この場は,原告の大学組織内の会議でない とはいえ,原案の作成等全て原告の差配の下に執り行われるものであり,しかも, 原告の学長も出席する,大会としての最高の意思決定の場であって,それまでの単 なるP1との間のやり取りとは次元が異なるものである。したがって,そのような 場で被告大学が共催校となることが原告のP1から正式に発議され,承認されたの であるから,被告において,その方針が原告の組織内での了解を得たものであると 考えることは,極めて自然なことというべきである。 また,その後,原告の事務局が作成した文書により,被告大学が共催校となるこ とが,本件事業の後援者等の関係者や文部科学省に,対外的に報告されている。こ れらの文書は,大会組織委員会等の名義で作成されているものではあるが,実質的 には本件事業を執り行ってきた原告が発出するに等しい性質のものであるというべ きところ,特に,原告が,大学行政を所管する文部科学省に対して正式の報告文書 を作成,提出するに当たっては,通常は,しかるべき組織的決裁を経ているはずの ものであるから,被告において,そこに記載された内容が原告の組織としての方針 でもあると考えることは,極めて自然なことというべきである。
d さらに,第6回大会の直後から,第7回大会に向けた引継ぎ,準備 が始まり,引継ぎの当初から本件商標の移転登録の必要性が協議され,平成26年 10月には事務局が発足し,本件商標のロゴのデータを含め,大会の資料,データ がP3を通じて被告に引き渡されているのであって,このような事態は,少なくと も原告の事務局内部での組織的な了解を経た上でなければ通常は考え難いことであ る。 また,被告としても,原告の理事会の承認を要する前提で,既に同月に本件商標 の移転登録のための承諾書及び委任状をP3に送付した後,平成27年2月に見込 みを問い合わせたところ,P3からは,同年3月の理事会で予算が承認されれば,\nその後の手続を進めるとの回答を得ている。被告が執行部会や常任理事会等を経て 意思決定をしていることに鑑みれば,原告も同様に,事務局内で本件事業の承継に 関する情報が共有され,同月の理事会に向けて各種の会議を経て準備が進められて いるものと期待する状況があったというべきであり,よもや,P3が3,4か月に わたって,承諾書及び委任状を1人で手元に持ち続け,上司に全く報告していない とは思いもよらないところであったといえる。
e 以上からすると,原告が本件事業を継続することが困難となった中 で,原告側の種々の行動の積み重ねにより,被告において,原告が組織として被告 を共催校とすることを了解していると考え,被告が第7回大会を行うために必要な 事項については原告内部でしかるべき手続が執られ,又は執られることになると信 じることは極めて自然なことであったというべきであり,このことに疑いを生じさ せるような事情が存したとは何ら認められない。 そして,第7回大会のためには,平成27年4月の募集開始に合わせて,同年3 月にはホームページに募集要項を掲載する必要があり,その前提の下,同年1月に は第7回大会の準備を本格的に開始し,関係者に後援や役員への就任を依頼し,同 年2月には,大会組織委員会及び大会実行委員会において募集要項が確定している 段階にあったから,同年2月25日の時点で,同年3月の理事会決議を待たずに本 件商標を使用する必要が生じていたと認められ,このような事情を原告側が理解し ていると被告側が考えることにも,また理由があったというべきである。そして, 通常,登録商標の使用を許諾しない相手方に対して当該商標のロゴのデータを送付 するとは考え難い上,本件商標の使用に至るまで,本件事業の承継について原告が 異議を述べることがなかったため,被告においては,P3から本件商標のロゴのデ ータを送付されることによって,本件商標権の移転に関する原告の理事会決議に先 行して原告から本件商標を使用することがあらかじめ許諾されていたと受け止める のも無理はなかったというべきである。
(ウ) この点について,原告代表者は,被告側から原告代表\者等に対し,本 件事業の承継や本件商標の使用について,正式の申入れがなかったと供述する(7\n頁)。しかし,前記のように,原告側での本件事業の中心人物であったP1が被告と の協議に当たり,大会組織委員会で正式に承認されるなど原告の組織的な方針と理 解される種々の行動が積み重ねられた本件において,被告側から原告代表者や原告\nの理事に対して直接の申入れがされず,また,被告側において原告代表\者や原告の 理事の意思を直接確認しなかったからといって,それをもって被告の過失というこ とはできない。 また,原告代表者は,商標権のような重要な財産を譲り渡すときは,対価や譲渡\n時期について決定するものであると述べる(甲21)。しかし,本件商標は本件事業 と一体の関係にあるところ,本件事業はそれ自体としては経費の負担だけが必要な 事業であり,そのために神戸山手学園のように本件事業を承継しない判断を下す学 校法人もあったのであるから,被告として,大会の開催に必要となる経費の負担に 加えて,本件商標権の譲受けに対価の支払を要するとか,本件商標の使用料を支払 わなければならないものと予想せず,そのための協議をしなかったとしても,その\nことをもって被告の過失ということはできない。
(エ) 以上からすると,被告には,原告から平成27年5月に本件商標の使 用を指摘されて,その買取りを求められるまでの間,ホームページに本件商標を使 用するに当たり,本件商標権の移転に関する原告の理事会決議に先行して本件商標 を使用することを原告からあらかじめ許諾されており,必要な事項については原告 内部でしかるべき手続が執られ,又は執られることになると信じ,また,そう信じ るにつき正当な理由があったというべきであるから,被告による本件商標の使用に は過失がなかったものと認めるのが相当である。

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平成28(ワ)12829  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年3月30日  東京地方裁判所(47部)

 正規代理店がネット上で並行輸入業者に対して中傷するような行為を行いました。並行輸入業者は、不正競争防止法2条1項15号の「「虚偽」の事実の告知・流布」だと主張しましたが、真正商品ではないと判断され、虚偽には該当しないと判断されました。弁論の再開申し出についても認められませんでした。
 ア 商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品に つき,その登録商標と同一の商標を付したものを輸入する行為は,許諾を 受けない限り,商標権を侵害するが(商標法2条3項,25条),そのよ うな商品の輸入であっても,1)当該商標が外国における商標権者又は当該 商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり(第1 要件),2)当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが,同一人で あるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係がある ことにより,当該商標が,我が国の登録商標と同一の出所を表示するもの\nであって(第2要件),3)我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該 商品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該商品と我が国の商標 権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実 質的に差異がないと評価される場合(第3要件)には,いわゆる真正商品 の並行輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠くものと解する のが相当である(最高裁判所平成15年2月27日第一小法廷判決・民集 57巻2号125頁)。
イ 原告は,NIC社製のセラコート塗料を購入した米国協力業者から国際 航空貨物運送業者を介して同塗料の送付を受けた国内協力業者から購入し ており,このことは証拠(甲23ないし28,37ないし40)から明ら かであるから,原告の輸入行為は第1要件を充足する旨主張するので,検 討する。 なお,本件発言等3は平成27年11月18日頃にされたものであるか ら,ここで第1要件を充足することが立証されるべき原告の輸入行為は, 上記時点より前のものであることは当然であり,かかる観点から検討を行 うこととする。 まず,上記各証拠は作成時期が1年以上異なるものも含まれているから, これらを一体として一連の輸出入等に関する証拠であると解することはで きない。 そして,証拠(甲23,24)及び弁論の全趣旨によれば,米国に所在 する氏名不詳の者(以下「A」という。)が,平成28年4月,NIC社 に同社製のセラコート塗料を注文してこれを購入したこと,及び,米国に 所在する氏名不詳の者が,同年5月5日,品名「PAINTS.VARN ISHES & SOLUTIONS,N.E.S」について,日本に所 在する氏名不詳の者に対する輸入許可を受けたことが認められる。しかし ながら,これらは,そもそもいずれも本件発言等3より約4月以上も後の 事実であるから,本件発言等3の内容が虚偽であるか否かの点に直接関係 を有しない上,輸入許可を受けた主体がAであるかは不明であり(甲24 は公正証書〔甲39〕の確認対象になっていない。),輸入許可に係る貨 物がNIC社製のセラコート塗料であるかも不明であり,原告が上記の日 本に所在する氏名不詳の者から上記荷物を受領したと認めるに足りる証拠 もない。 次に,証拠(甲25ないし28,39)及び弁論の全趣旨によれば,A が,平成27年7月25日付けで,日本に所在する氏名不詳の者(以下 「B」という。)に対し,品名「塗料」,総個数「3」を内容とする国際 航空貨物(運送状番号808486953648)を発送して同月27日 に輸出し,同月30日付けで,品名「液体入りプラスチック容器 Cer akote」「0.8kg H−168×1pce」とする内容点検確認 を受けたことが認められる。しかしながら,上記輸出入に係る荷物がNI C社製のセラコート塗料であるかは不明であり,原告がBから上記荷物を 受領したと認めるに足りる証拠もない。 さらに,証拠(甲39,40)によれば,原告が,平成28年5月25 日付けで,Bから品名を「セラコート」とする代金の請求を受けたことは 認められるが,これは本件発言等3より約6月も後の事実であり,上記代 金の対象が本件発言等3より前の取引に係るものであることも認めるに足 りないから,本件発言等3の内容が虚偽であるか否かの点に直接関係を有 しないし,そもそも,当該「セラコート」がNIC社製のセラコート塗料 であるか自体も不明である。 そうすると,原告の提出する上記各証拠をもって,原告が,本件各発言 等の前から,米国協力業者及び国内協力業者を介して,NIC社製のセラ コート塗料を継続的に輸入したと認めることはできず,他に当該事実を認 めるに足りる証拠はない。加えて,本件全証拠を検討しても,日本国内に おいて流通するセラコート塗料にNIC社製ではない非真正品が存在しな いと認めるに足りる証拠もない。 以上によれば,原告の輸入行為が第1要件を充足すると認めることはで きない。
・・・
 (なお,原告は,平成29年2月28日付及び同年3月13日付で弁論再開 を求める上申書を当裁判所に提出したところ,その中には,前記第1要件について「追加証明は十\分可能,かつ,容易であると考えている」とか「この点に\nついて,さらに的確な立証活動を予定している」との記載がある。しかしながら,攻撃防御方法について適時提出主義が採られていることはいうまでもない\nところ(民訴法156条),原告は,自らの行為がいわゆる真正商品の並行輸 入として適法である旨主張して,平成28年4月20日に本件訴訟を自ら提起 したものであり,かつ,訴訟の当初から上記主張の成否は重要な争点となって いたのであるから,原告は早期に必要な立証活動を十分に行うことが当然できたはずである(原告が上申\書で述べるように,この点の証明が容易であるならば,尚更である。)。しかも,原告は,同年10月4日の第3回弁論準備手続 期日において「次回までに主張及び立証を尽くす」と述べ,同年12月1日の 第4回弁論準備手続期日において「並行輸入の第1要件について,他に主張及 び立証はない」と述べている。さらに,上記各上申書の内容を見ても,本判決の結論を左右するに足りるような記載はない。これらの事情に照らして,当裁\n判所は,本件口頭弁論を再開しないこととしたものである。)

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平成27(受)1876  不正競争防止法による差止等請求本訴,商標権侵害行為差止等請求反訴事件 平成29年2月28日  最高裁判所第三小法廷  判決  その他  福岡高等裁判所

 商標権に関する部分が興味深いです。周知商標に基づく無効審判請求(4条1項10号)は、5年の除斥期間があります(商47条)。よって、侵害訴訟において5年経過すると、無効抗弁(特104条の3)ができないかが論点となります。 最高裁は、原則、無効主張できないが、周知にした本人は除かれると判断しました。ただ、本件の場合、不正競争防止法における周知認定を誤っていると判断されていますので、そもそも、周知でないとの判断となるかもしれません。
 そして,商標法39条において準用される特許法104条の3第1項の規定(以下「本件規定」という。)によれば,商標権侵害訴訟において,商標登録が無効審判により無効にされるべきものと認められるときは,商標権者は相手方に対しその権利を行使することができないとされているところ,上記のとおり商標権の設定登録の日から5年を経過した後は商標法47条1項の規定により同法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判を請求することができないのであるから,この無効審判が請求されないまま上記の期間を経過した後に商標権侵害訴訟の相手方が商標登録の無効理由の存在を主張しても,同訴訟において商標登録が無効審判により無効にされるべきものと認める余地はない。また,上記の期間経過後であっても商標権侵害訴訟において商標法4条1項10号該当を理由として本件規定に係る抗弁を主張し得ることとすると,商標権者は,商標権侵害訴訟を提起しても,相手方からそのような抗弁を主張されることによって自らの権利を行使することができなくなり,商標登録がされたことによる既存の継続的な状態を保護するものとした同法47条1項の上記趣旨が没却されることとなる。 そうすると,商標法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後においては,当該商標登録が不正競争の目的で受けたものである場合を除き,商標権侵害訴訟の相手方は,その登録商標が同号に該当することによる商標登録の無効理由の存在をもって,本件規定に係る抗弁を主張することが許されないと解するのが相当である。
・・・・
そこで,商標権侵害訴訟の相手方は,自己の業務に係る商品等を表示するものとして認識されている商標との関係で登録商標が商標法4条1項10号に該当することを理由として,自己に対する商標権の行使が権利の濫用に当たることを抗弁として主張することができるものと解されるところ,かかる抗弁については,商標権の設定登録の日から5年を経過したために本件規定に係る抗弁を主張し得なくなった後においても主張することができるものとしても,同法47条1項の上記(ア)の趣旨を没却するものとはいえない。 したがって,商標法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求 されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後であっても,当該商標登 録が不正競争の目的で受けたものであるか否かにかかわらず,商標権侵害訴訟の相 手方は,その登録商標が自己の業務に係る商品等を表示するものとして当該商標登\n録の出願時において需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標 であるために同号に該当することを理由として,自己に対する商標権の行使が権利 の濫用に当たることを抗弁として主張することが許されると解するのが相当であ る。そして,本件における被上告人の主張は,本件各登録商標が被上告人の業務に 係る商品を表示するものとして商標登録の出願時において需要者の間に広く認識さ\nれている商標又はこれに類似する商標であるために商標法4条1項10号に該当す ることを理由として,被上告人に対する本件各商標権の行使が許されない旨をいう ものであるから,上記のような権利濫用の抗弁の主張を含むものと解される。

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◆関連判決(商標登録無効審判の取消訴訟)はこちらです。平成27年(行ケ)第10083号

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平成28(ワ)3234  求償金請求事件  商標権  民事訴訟 平成28年12月21日  東京地方裁判所(29部)

 不正使用取り消し審判および審取訴訟の費用を使用権者に求めましたが、請求棄却されました。
 1 争点1(被告は,本件ライセンス契約に基づき,被告の費用と責任において, 必要に応じて原告から委任状を取得するなどして弁護士を選任し,審判手続及び審 決取消訴訟手続において防御させるべき義務を負っていたか)について
(1) 原告は,双日GMCによる本件各審判請求及びこれに引き続く本件審決取消 訴訟の提起は,本件契約書7条2項にいう「甲(判決注:被告)の販売方法に起因 してクレームを受けた」場合に当たるから,被告は,本件ライセンス契約に基づき, これらをすべて被告の責任と負担において解決すべき義務,具体的には,被告の費 用と責任をもって弁護士を選任し,必要に応じて原告から同弁護士宛の委任状を取 得して,審判手続及び審決取消訴訟手続において防御させる義務を負っていたと主 張する。
(2) 双日GMCが行った本件各審判請求は,商標法53条1項に基づくものであ るところ,同条項に基づく審判請求が可能となるのは,法文上,「専用使用権者又\nは通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役 務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であって商品の品質若しくは 役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをした とき」(判決注:下線を付した。)である。 しかるところ,本件契約書7条は,1項において,「本契約に基づく本件商標の 使用に関し,第三者よりクレームまたは訴訟の提起を受けた場合,あるいは第三者 による本件商標の侵害行為を発見した場合,甲乙丙は直ちにその旨をそれぞれに連 絡し,当該クレームまたは訴訟に対する防御あるいは第三者による侵害行為の排除 を共同して行うものとし,これに要した費用負担については,甲乙丙が協議の上定 めるものとする。」(判決注:下線を付した。)と規定しているのであるから,双 日GMCが行った本件各審判請求及びこれに引き続く本件審決取消訴訟については, 「本契約に基づく本件商標の使用に関し,第三者よりクレームまたは訴訟の提起を 受けた場合」に当たる(少なくともこれに準ずる)ものとして,本件契約書7条1 項が適用されるものと解するのが相当である。
(3) これに対し,原告は,本件契約書7条2項の文言上,クレームをする者が一 般消費者であるか,クレームを受けた者が被告であるかなどについて限定はないか ら,同クレームが被告の販売方法に起因したものであれば,本件契約書7条2項が 適用されるべきであって,双日GMCによる本件各審判請求は,被告の販売方法に 起因するクレームであるから,同条項が適用されるべき旨主張する。 そこで検討するに,本件契約書7条は,まず1項において,「本契約に基づく本 件商標の使用に関し,第三者よりクレームまたは訴訟の提起を受けた場合,あるい は第三者による本件商標の侵害行為を発見した場合,甲乙丙は直ちにその旨をそれ ぞれに連絡し,当該クレームまたは訴訟に対する防御あるいは第三者による侵害行 為の排除を共同して行うものとし,これに要した費用負担については,甲乙丙が協 議の上定めるものとする。」と規定し,商標の使用に関して生じた紛争については, 原則として1項により規律されるべき旨を明らかにしている。ここで,本件ライセ ンス契約上,被告は,原告から許諾を受けて本件各商標を使用する(本件各商標の 付された指定商品を販売する)立場にあるから,1項にいう「本契約に基づく商標 の使用」の主体が被告となることは,本件ライセンス契約が当然に想定しているこ とである。もっとも,商標の使用といっても,当該商標が使用された商品の品質に 欠陥があり,又は商品を販売する際の販売方法に問題があって,このために顧客等 に損害を及ぼすなどしたというような紛争が発生した場合には,かかる紛争は,形 式的には商標の使用行為によって生じたものではあるが,実質的には商標に関する 紛争とはいい難く,当然に,商品を実際に製造し,又は販売した者(被告)が責任 を負担してしかるべき性質のものということができる。本件契約書7条2項に「本 件商標を付した指定商品の品質上の欠陥及び甲の販売方法に起因してクレームを受 けた場合は,全て甲の責任と負担において処理解決をすることとする。」とあるの は,このような認識に立って,被告が販売する商品の品質に欠陥があり,又は商品 を販売する際の販売方法に問題があったために顧客等から苦情を受けた場合など, 実質的にみて商標に関する紛争とはいえない場合には,被告がその責任において同 紛争を処理解決すべき旨を規定したものと解するのが相当である。 双日GMCによる本件各審判請求は,原告の主張によっても,1)被告商品が,双 日GMC商品と酷似していること,2)両商品において付された商標の位置や種類が ほぼ同じであること,3)両商品とも,被告の店舗において紛らわしい売り方をされ ていたことなどを理由にしてされたというのであり,上記3)のように,「被告の販 売方法」に着目してされた主張も存在するものの,本件各商標を付した被告商品の 販売が,双日GMCの業務に係る商品(双日GMC商品)と混同を生ずるものであ るかが問題とされているのであり,実質的に見て商標に関する紛争でないとはいい 難い。むしろ,前記前提事実及び証拠(甲1,4,6)によれば,双日GMCの保 有する関連各商標権は,平成20年10月29日に(分割前の)本件各商標権から 指定商品を「履物(「サンダル靴,サンダルげた,スリッパを除く」)」とする商 標権が分割移転されたものであり,関連商標1ないし同5と本件商標1ないし同5 とは,それぞれ同一の商標であって,関連各商標登録の指定商品である「履物・・ ・但し,履物(サンダル靴,サンダルげた,スリッパを除く)を除く」と本件各商 とは,形式的には重複しないものの,相互に類似する関係にあると認められるから, 本件各審判請求は,商標に関する紛争そのものというべきであって,本件契約書7 条1項にいう「本契約に基づく本件商標の使用に関し,第三者よりクレームまたは 訴訟の提起を受けた場合」として,同項により規律されるべき性質のものというべ きである。 また,前記前提事実及び証拠(甲3,7,乙9)によれば,原告は,本件各審判 請求を受けた後,双日GMCの審判請求の理由を認識した上で,本件覚書に調印し, 本件各商標登録を取り消す旨の審決が確定したときは,既払ミニマムロイヤリティ の一部を被告に返還することや,被告が販売することができなくなった在庫商品に つき一定の補償をすることを約したことが認められ,他方,原告が,上記調印当時, 被告に対し,審判手続への参加その他の協力を求めたり,原告が同手続のために支 出し又は支出することとなる弁護士費用の負担を求めたりした形跡がないことから すれば,原告は,本件覚書を調印した平成25年10月1日当時,被告ではなく, 本件各商標権の商標権者であって,本件各審判請求における被請求人である原告こ そが,本件各商標権を維持できるよう努め,本件ライセンス契約に基づく被告の利 益を擁護すべき立場にあった旨認識していたことは,明らかである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。

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◆審取訴訟はこちらです。平成26(行ケ)10170等

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平成24(行ケ)10019  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成24年5月31日  知的財産高等裁判所

 だいぶ前の事件ですが、アップできていませんでしたので、アップします。3条1項柱書違反ではないとした審決を取り消しました。理由は、短期間に多数の出願をして、使用をしていない場合、商標を収集しているにすぎないというものです。
 商標法3条1項柱書は,商標登録要件として,「自己の業務に係る商品又は 役務について使用をする商標」であることを規定するところ,「自己の業務に係る商 品又は役務について使用をする商標」とは,少なくとも登録査定時において,現に 自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標,あるいは将来自己の業務に 係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される。 これを本件についてみるに,上記認定事実によれば,1)原告は,平成21年9月 17日ころから,ウェブサイトにおける情報掲載,パンフレットの配布,プレスリ リース等を行い,東京都を中心に,原告使用商標を使用して本件店舗の宣伝,広告 を行っていたこと,2)原告は,同年10月1日,東京都千代田区丸の内に,原告使 用商標を使用し,飲食物の提供を業とする本件店舗を開店したこと,3)被告は,同 月24日,本件商標の登録出願をし,平成22年3月26日にその登録を受けたが, 現在に至るまで本件商標を指定役務である「飲食物の提供」やその他の業務に使用 したことはないこと,4)本件商標と原告使用商標(1)は,類似すること,5)原告使用 商標は,原告が経営する飲食店「ローズ&クラウン」(Rose & Crown) の頭文字である「RC」(アールシー)と,英語で居酒屋や酒場を意味する「Tav ern」(タバーン)を組み合わせた造語で,特徴的なものである上,本件店舗の宣 伝,広告及び開店と本件商標の登録出願日が近接していることからすれば,被告は, 原告使用商標を認識した上で,原告使用商標(1)と類似する本件商標を出願したもの と考え得ること,6)被告は,平成20年6月27日から平成21年12月10日ま での短期間に,本件商標以外にも44件もの商標登録出願をし,その登録を受けて いるところ,現在に至るまでこれらの商標についても指定役務やその他の業務に使 用したとはうかがわれない上,その指定役務は広い範囲に及び,一貫性もなく,こ のうち30件の商標については,被告とは無関係に類似の商標や商号を使用してい る店舗ないし会社が存在し,確認できているだけでも,そのうち10件については, 被告の商標登録出願が類似する他者の商標ないし商号の使用に後れるものであるこ とが認められる。
上記事情を総合すると,被告は,他者の使用する商標ないし商号について,別紙 2のとおり多岐にわたる指定役務について商標登録出願をし,登録された商標を収 集しているにすぎないというべきであって,本件商標は,登録査定時において,被 告が現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標に当たらない上,被 告に将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思があったとも認め難い。
これに対し,被告は,平成20年から,いわゆるシニア起業を協力者1名ととも に計画し,予定業務について前広に商標の出願登録を行うとともに,飲食店の開業\nを目指し,神奈川県西部を中心に,いわゆる居抜きの店舗を探していたが,円高不 況,大震災等により開業リスクが高まったため,一時開業を見合わせており,経済 情勢の好転を待って小規模でも開業する予定であるなどとあいまいな主張をするの\nみで,これを裏付ける証拠を一切提出しておらず,その主張は,にわかに措信し難 い。 したがって,本件商標は,その登録査定時において,被告が現に自己の業務に係 る商品又は役務に使用をしている商標にも,将来自己の業務に係る商品又は役務に 使用する意思のある商標にも当たらず,本件商標登録は,「自己の業務に係る商品又 は役務について使用をする商標」に関して行われたものとは認められず,商標法3 条1項柱書に違反するというべきである。
(2) この点について,審決は,上記事情をもってしても,被告の本件商標に係る 使用の意思について合理的な疑義があるとはいえないと認定,判断する。しかし, 登録商標が,その登録査定時において「自己の業務に係る商品又は役務について使 用をする商標」に当たることについては,権利者側において立証すべきところ,本 件商標についてこれを認めるに足りる証拠はなく,むしろ,上記認定事実によれば, 本件商標登録は,被告が現に自己の業務に係る商品又は役務に使用していない商標 について,将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思もなく行われたもの というべきであって,上記審決の認定,判断は失当である。 以上のとおり,本件商標は「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする 商標」に該当しないというべきであり,本件商標登録が商標法3条1項柱書に違反 しないとした審決の判断には誤りがある。
付言するに,上記認定の事実関係に照らすと,本件商標は,原告使用商標を剽窃 するという不正な目的をもって登録出願されたものとして,商標法4条1項7号(公 序良俗に反するおそれのある商標)に該当する余地もあるが,本件においては,同 法3条1項柱書該当性の判断で足りるものと解する。

◆判決本文

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平成27(ワ)36667  商標権侵害行為差止(等請求事件  商標権  民事訴訟 平成28年12月21日  東京地方裁判所(40部)

 飲食業の店舗名について商標権を保有していましたが、営業譲渡とともに譲渡対象となっていたので、民法1条3項所定の権利濫用に該当すると判断されました。
 前記1の各事実によれば,原告は,被告に対し,本件店舗の設備のみなら ず,第三者との関係における契約上の地位や権利義務なども含めて店舗の営 業一切を譲渡していること,本件同意書において,原告と被告の発起人であ るB及びCとの間で,「のれん」や「新高揚」との店名が記載された外看板 も含めて本件店舗を譲渡する旨合意していること,ここでいう「のれん」に は「新高揚」の店名が含まれると考えられること,原告は,家紋を使用しな いことについては,被告に本件念書を差入れさせ,違約金についてまで約束 をさせたにもかかわらず,本件店舗の名称の使用については何ら文書を作成 し又は作成させていないことが認められ,これらを総合考慮すると,本件営 業譲渡契約は,被告が「新高揚」の名称を使用することを前提として締結さ れたものであると認めるのが相当である。
(2) この点に関して原告は,本件営業譲渡の交渉時に,「新高揚」の名称を使 用しないことを条件に減額に応じたとか,本件同意書の原案について,Cに 対し,「のれん」を削除するようにいったところ,Cから契約書のときに書 き換えればよいといわれて削除されなかったなどと主張し,それに沿う供述 をしている。 しかし,上記各主張を認めるべき客観的証拠はないばかりか,前記1(2) エのとおり,Cは,本件同意書について,原告の要望を受けて複数の修正に 応じていたのであるから,被告が「新高揚」の名称を使用しないことを前提 として本件営業譲渡に係る交渉がされていたとすれば,Cが「のれん」につ いてのみ本件同意書の記載の修正に応じないとはおよそ考えられない。また, 原告は,原告本人尋問において,本件営業譲渡契約書には「のれん」の記載 がなかったのでよろしいと思っていたなどとも供述するが,本件営業譲渡契 約締結時には,本件営業譲渡契約書には「引き継ぐ財産」が記載された別紙 が添付されておらず,本件営業譲渡契約書をみても「のれん」が譲渡対象と なっているか否かが明らかとなるものではないし,さらに,本件店舗の引渡 時に作成された本件営業譲渡契約書の別紙(甲6)には,本件店舗内に存在 していた物品である「商品,貯蔵品,店舗造作,器具備品,その他営業物品」 について「一式」と記載されているにすぎず,現に本件営業譲渡により引き 継がれた契約上の地位や債権債務は記載されていないから,上記別紙の記載 をもっても,本件営業譲渡の対象に「新高揚」の名称ないし「のれん」が含 まれていないということはできない。 また,本件同意書において譲渡される営業権の内容として「外看板」が記 載されていることについて,原告は,原告本人尋問において,外看板は本件 店舗が所在する部屋の賃貸借契約の貸主である大家のものであり,壊すこと もできないから気にしなかったなどと供述するが,前記1(2)クのとおり, 原告は大家に対し,被告が店舗の名称を変更する予定であり外看板の変更が\n必要である旨を告げたこともなく,被告代表者らとの間で被告がどのような\n名称を使用するかについて話をしたこともないというのであり,さらには, 原告本人尋問によれば,Cから「名称をおいおい変更する」と言われたもの のそれが具体的にいつなのかの確認もしていないというのであるから,原告 が,C又はBとの間で,「新高揚」の名称を使用しないことを条件として本 件営業譲渡に係る交渉をしていたと認めることはできない。 (3) そして,原告は,当初,Bに対し,原告の跡を継ぎ本件店舗を購入するよ う持ちかけ,「新高揚」という店名も含めて本件店舗を売却する意向を示し, 平成24年10月中旬以降,B及びCと本件店舗の譲渡に関し交渉を始めた にもかかわらず,その直前である同年9月24日に原告自ら個人として原告 商標権の商標登録出願をしていた事実をB及びCに一切告げないまま,同人 らがその事実を知らない状況で,本件営業譲渡契約を締結して1700万円 もの譲渡代金を受領した後,自らは原告商標を全く使用しておらず,将来に おいてこれを使用するための店舗の営業等の具体的な計画を有しているわ けでもないのに,被告に対し,被告標章の使用の差止めと損害賠償を求め ていることが認められる。 そうすると,「新高揚」の名称を使用できるものと信頼して本件営業譲渡 契約を締結した被告に対し,本件営業譲渡の当事者である訴外会社の代表者\nであった原告が原告商標権を行使することは,民法1条3項所定の権利濫用 に当たり許されないと認めるのが相当である。

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