知財みちしるべロゴマーク
知財みちしるべトップページへ

更新メール
購読申し込み
購読中止

知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

営業秘密

令和4(ネ)574  損害賠償請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和4年9月30日  大阪高等裁判所

 営業秘密であるとの控訴人(1審原告)は主張しましたが、1審と同じく「営業秘密」に該当しないと判断しました。

控訴人において、上記コンピューターにログインできる従業員を被控訴人P1 のみに限るとの規制はなく、上記ログインパスワードは、西脇支社の従業員 には周知のものであり、被控訴人P1を除く西脇支社の従業員もこれを知って いた。
・・・
控訴人の就業規則第31条(12)(甲16)には、控訴人の「内外を問わず、 在職中または退職後においても、」控訴人、「取引先等の機密、機密性のあ る情報、企画案、ノウハウ、データ、ID、パスワード、および会社の不利 益となる事項を他に開示、漏洩、提供しないこと、またコピー等をして社外 に持ち出さないこと。」と規定する服務心得があり、控訴人は、被控訴人P1 の入社時に同被控訴人から誓約書(甲17)を徴求しているものの、その内 容は上記就業規則を遵守する旨の内容にとどまるものである。そして、控訴 人において、被控訴人P1に対し、見積書記載の本件顧客情報及び本件価格情 報が、上記規定の対象になることはもとより、これら情報を含む見積書記載 の情報が営業秘密であることに関する注意喚起がされたことはなく、また取 引案件ごとに作成される見積書の取扱いに関する研修等の教育措置が行われ たこともない。
・・・
控訴人本社が直接発注業者に見積書を送付 する場合は、西脇支社に見積書がファックスで参考送信されることもあった が、そうした見積書の紙媒体の取扱いについては、控訴人において保管場所 や廃棄方法が定められていたとの事実はない。
・・・
「控訴人本社から本件見積書のデータが送信され、保存される西脇支社のコン ピューターにはログインパスワードが設定されていたが、控訴人において、 上記コンピューターにログインできる従業員を被控訴人P1のみに限るとの規 制はなく、被控訴人P1を除く西脇支社の従業員も上記ログインパスワードを 知っていた。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 営業秘密
 >> ピックアップ対象

▲ go to TOP

令和2(ワ)3481  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 令和4年1月20日  大阪地方裁判所

 顧客情報および見積書の価格情報について、秘密管理性無しとして営業秘密に該当しないと判断されました。

ア 「営業秘密」(法2条6項)といえるためには,当該情報が秘密として管理 されていることを要するところ,秘密として管理されているといえるためには,秘 密としての管理方法が適切であって,管理の意思が客観的に認識可能であることを\n要すると解される。 これを本件見積書記載の情報について見るに,前記各認定事実のとおり,本件見 積書には営業秘密である旨の表示がなく,そのデータにはパスワード等のアクセス\n制限措置が施されていなかった。また,原告において,業務上の秘密保持に関する 就業規則の規定はなく,被告P1との間で見積書の内容に関する秘密保持契約等も 締結等していなかった。原告は,発注者との間においても見積書の内容に関する秘 密保持契約を締結していなかった。さらに,原告は,見積書記載の情報が営業秘密 であることなどの注意喚起も,その取扱いに関する研修等の教育的措置も行ってい なかった。本件見積書のデータ管理の点でも,原告は,見積書の使用後にデータを 西脇支社のコンピュータから削除するよう指示しなかった。 このような本件顧客情報及び本件価格情報その他本件見積書記載の情報の管理状 況に鑑みると,当該情報は,原告の企業規模等の具体的状況を考慮しても,原告に おいて,特別な費用を要さずに容易に採り得る最低限の秘密管理措置すら採られて おらず,適切に秘密として管理されていたとはいえず,また,秘密として管理され ていると客観的に認識可能な状態にあったとはいえない。\nしたがって,本件見積書記載の情報は秘密として管理されていたとはいえない。
イ 原告は,本件見積書記載の情報につき,原告代表者が一元的に管理し,その\n了承がなければ従業員や外部業者に対して明らかにされないから,秘密として管理 されていたと主張する。 しかし,前記認定のとおり,本件見積書の各データは,パスワードによる保護等 の措置のないままに,発注者に交付されるべきもの又は参考として被告P1にメー ルにより送信されたものであり,その使用後も,情報漏洩を防止する何らの措置も 採られなかったことなどに鑑みると,これらの情報は,いずれも秘密として適切に 管理されているとはいえず,秘密として管理されていると客観的に認識可能な状態\nであったともいえない。 その他原告が縷々指摘する事情を考慮しても,この点に関する原告の主張は採用 できない。
ウ そうすると,その余の点について検討するまでもなく,本件顧客情報及び本 件価格情報は,「営業秘密」に該当しない。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 営業秘密
 >> ピックアップ対象

▲ go to TOP

平成30(ワ)35263  損害賠償等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和3年9月29日  東京地方裁判所

原告のデータは、営業秘密であるとは認定されましたが、被告がそれを用いたとの事実を認める証拠がないと判断されました。

(1) 秘密管理性
ア 本件データは,気圧の上限・下限,加圧(減圧)に要する時間,チャン バー内を一定の気圧に保っている時間,排気時間及び動作の繰返しの回数 等を内容とし,これらの数値に基づいて酸素チャンバー内の気圧を昇降さ せるためのものであり,本件酸素チャンバーの制御装置内に設置された媒 体に記録されているものであると認められる(原告代表者〔10,11頁〕),\n弁論の全趣旨)。
イ 本件データの上記内容に照らすと,同データは酸素チャンバーの作動を 制御する上で中核をなすものであり,その秘密性は高いと考えられるとこ ろ,証拠(甲2,3,9,11,15,原告代表者〔2,6,23頁〕)\nによれば,1)原告製の酸素チャンバーは,その出荷前に,制御装置内の特 定の箇所をジャンパー線で接続し導通させることにより,本件データ等を 読み出せないようロックがかけられており,それ以降,原告社内でこれに アクセスできるのは,原告代表者のほか限られた人数の役員等であったこ\nと,2)原告の従業員には就業規則第5条(5)により守秘義務を課せられて いたこと,3)原告は,本件データを含む制御装置一式の製作を委託してい た協立電機との間で機密保持契約を締結しており,本件データは同契約第 1条の「秘密情報」に該当すると考えられること,4)原告製の酸素チャン バーの販売代理店であった被告会社も本件データの変更は自由にできな かったこと,5)原告製の酸素チャンバーを購入した顧客も本件データにア クセスすることはできなかったことの各事実が認められ,これを覆すに足 りる証拠はない。 このように,原告社内においても本件データにアクセスすることのでき る者は限られており,取引先等についても秘密保持義務が課せられ,ある いは本件データへのアクセスができない状態とされていたことに照らす と,本件データは原告において秘密として管理されていたというべきであ る。
ウ(ア) これに対し,被告らは,原告が主張するロックの内容は明らかではな く,また,全国的に販売されている原告製の酸素チャンバーの納品や修 理の作業を支障なく行うには本件データの内容を原告の従業員等が知っ ていることが必要であったと主張する。 しかし,原告の主張するロックの内容は上記イ1)のとおり十分に具体\n的であり,かかる措置を講じてもなお本件データへのアクセスが可能で\nあることをうかがわせる証拠はない。また,原告の従業員が,原告製の 酸素チャンバーの納品を行い,あるいは同製品の修理を行うために本件 データにアクセスすることが必要な事例が日常的に生じていたことをう かがわせる証拠はなく,原告製の酸素チャンバーが全国に販売されてい たとしても,そのことから,原告従業員が本件データにアクセスするこ とができたとの事実を推認することはできない。
(イ) また,被告らは,原告との間で,本件データを対象とする秘密保持契 約を締結したことはなく,本件販売代理店契約の契約書(甲3)をみて も,原告製の酸素チャンバー全てについて原告又は原告が委託した者が 修理をする旨の規定はないと主張する。 しかし,上記イ4)のとおり,被告会社が本件データを自由にアクセス し,これを変更し得たことを示す証拠はないことに照らすと,被告会社 との間で本件データは秘密として保護されていたというべきである。ま た,被告会社又は原告の委託者が原告製酸素チャンバーを修理すること があったとしても,これらの業者が本件データにアクセスすることがで きたことをうかがわせる証拠はない。 そうすると,本件データは,被告会社及び原告製酸素チャンバーの修 理を行う業者との間においても,秘密として管理されていたというべき である。
(ウ) さらに,被告らは,本件クラブに納品された本件酸素チャンバーには 本件データのロックがかけられていなかったので,本件データは秘密と して管理されていなかったと主張する。 しかし,本件クラブに納品された本件酸素チャンバーに本件データの ロックがかけられなかったのは,前記前提事実(3)イのとおり例外的な 措置であって,このことは,本件データが秘密として管理されていたと の上記判断を左右しないというべきである。
・・・
本件においては,以下のとおり,被告らが本件データを実際に読 み出して取得し,また,被告会社が取得した本件データを使用して酸素チャ ンバーを製造したことを客観的に示す証拠は存在しない。 ア 被告らが本件制御装置等を保管していた間,本件制御装置に対していか なる作業又は操作を行ったかは証拠上明らかではない。
原告は,本件制御装置等の持ち出し前と返還後とでは,同装置等の側面 にテープ付けしていた鍵の位置が異なっており,明らかに鍵を使用した痕 跡があったことや,原告が本件酸素チャンバーの復旧作業を行った際,本 件制御装置に対する原告のPC以外のPCからのアクセスを確認したこ となどを指摘するが,これを裏付ける客観的な証拠は何ら提出されていな い。 また,原告代表者は,本件クラブには本件データを読み出し,パラメー\nタの設定や変更を行い得る設備や人材等を有していたため,ロックの解除 の方法を伝えたものであり,本件クラブにおいて同ロックを解除したかど うか,また,パラメータ等の変更後のロックをかけたかどうかは承知して いない旨の供述をしているところ(原告代表者〔24,28〜29頁〕),\n同供述を前提にすると,仮に被告らが持ち出した本件制御装置等を使用し て本件データへのアクセスを試みたとしても,奏功したかどうかは明らか ではない。
さらに,原告は,制御装置等の取外しや取付けをしたのみでは酸素チャ ンバーの機能が動作しなくなることはないので,本件制御装置等の返還後\nに本件酸素チャンバーの低圧モードに支障が生じたのは,本件データの複 製等が行われた現れであると主張するが,低圧モードに支障が生じたこと から,直ちに本件データの複製等が行われたと推認することはできない。 そして,他に,被告らが本件制御装置等を保管していた間に本件制御装 置に対して行った具体的な操作や作業の内容を特定し得る証拠はない。 イ 原告は,被告会社が本件データを使用して,酸素チャンバーを製造した と主張するが,被告会社製の酸素チャンバーの開発・製造に当たり,本件 データが使用されたことを客観的に示す証拠はない。
かえって,被告会社の製造した酸素チャンバーの制御装置マニュアル(乙 8)及びW証言〔1,2頁〕によれば,被告会社製の酸素チャンバーにお いては,制御装置のモード選択画面に表示される圧力や運転時間について,\n納品時に所定の設定はされているものの,顧客がこれを変更することも可 能な仕様となっており,顧客がこれらの数値を自由に変更することができ\nない原告製の酸素チャンバーとは仕様が異なるものであると認められる。 なお,原告は,本件酸素チャンバーのラダープログラムと被告会社製の 酸素チャンバーのラダープログラムを対比することにより,被告会社によ る本件データの使用の有無を解析できると主張し,被告らに対し,同プロ グラムの任意提出を求めていたが,その後,被告らが同プログラムを改ざ んしているおそれが高いとして,被告会社の保有するラダープログラムの 提出を求めない旨の意思を表明した(原告第6準備書面)。原告は,被告\nらがラダープログラムを証拠として任意提出しないことから本件データ の使用を推認し得ると主張するが,ラダープログラムを実際に対比するこ となく,そのような推認をすることはできない。
ウ 以上によれば,被告らが本件データを取得し,また,被告会社が取得し た本件データを使用して酸素チャンバーを製造したとの事実を認めるに 足りる証拠はないので,本件持出し行為が不競法2条1項4号の不正競争 行為に該当するとの原告主張は理由がない。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 営業秘密
 >> ピックアップ対象

▲ go to TOP