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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

営業秘密

平成29(ワ)1443  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年4月24日  大阪地方裁判所

 秘密管理のための工場見学の制限としては不十分として、不競法の営業秘密には該当しないと判断されました。
 原告が主張する営業秘密は,訴訟提起段階から変遷しているが,最終的に確 定したところよると,生春巻きを大量に安定的に生産するために,ライン上で全工 程を行うとともに,通常は水で戻すライスペーパーを,状況に応じた適切な温度の 湯で戻すという生春巻きの製造方法であり,ラインの長さ,作業時間,ライスペー パーの質,ラインを流す速度,工場の状況などを踏まえて,温度を管理するもので あって,ライスペーパーを戻す湯の温度は,製造する本数に応じて,ラインの速度 を変え,それに応じて40度から80度までの幅で変えることに特徴があり,具体 的には,温度を40度から50度程度に設定する場合は,ラインの人数を10名程 度にし,一つのラインでの1時間の製造本数を400本から500本程度とし,温 度を60度から80度に設定する場合は,ラインの人数を12名程度に増やし,一 つのラインでの1時間の製造本数を600本から800本程度とするというもので ある。
(2)ア そこで,まず上記主張に係る製造方法が「秘密として管理されている」(不 正競争防止法2条6項)といえるか検討するに,原告は,1)原告工場の立ち入りを 厳重に管理し,食品関係者の工場見学は,紹介により協力工場となる会社の場合な どに限られていること,2)従業員は競業他社の関係者が入社しないよう注意し,退 社時に秘密保持誓約書を作成させ徴求していることを主張している。
イ しかし,前者については,原告の主張する第三者の出入りの管理は,それ自 体は,証拠(乙8,乙9)により認められる食品工場の場合における衛生管理のた めにする人の出入りの管理と何ら変わらないものであるし,食品関係者の工場見学 は紹介により協力工場となる会社に限られるとの点も,現に被告の場合は,前日か 当日かの争いはあるとしても,短い電話による依頼だけで工場見学を許されており, 原告主張のような厳格な扱いがされていたとは認められない。 この点,原告は,被告が協力工場となることを見学の条件とし,被告がこれを承 諾したように主張するが,協力工場となる以上,事業者間で継続的契約が締結され る必要があるから,短時間の電話のやり取りだけで取引条件の詳細を詰めずに確定 的な合意に至ったとはおよそ考えられず,むしろ原告代表者の陳述書(甲6)は,\n工場見学前に協力工場になることの条件を承諾した旨の記載がないだけでなく,か えって工場見学後の被告代表者の話し振りから「私はもうすっかり協力工場になっ\nてくれるものと信じていました。」との記載があり,結局,協力工場になることが 確定的でない状態で原告工場の見学をさせたことを自認する内容になっている。な お,その後,原告担当者が被告の九州工場を視察していることからすると,被告代 表者は,協力工場となることに対して積極的方向で回答をしたことは優に認められ\nるが,そうであったとしても,それをもって事業者間での法的拘束力のある合意と 評価できないことはいうまでもない。 したがって,原告主張の工場見学の条件は,結局,その実質は,当面の競業会社 ではなく協力関係となることが十分期待できるということと変わりがないことにな\nるのであって,秘密管理のための工場見学の制限としては不十分といわなければな\nらない。
ウ また後者の従業員に対する管理の点についても,入社時の選別を実際になし ている点の証拠はないし,退職時の秘密保持誓約書(甲5)が実際に用いられてい るか否かをさておき,少なくとも,入社時に同趣旨の誓約書が徴求されているわけ ではなく,また在職中の守秘義務について定めたものは認められないから,これで は従業員に対する関係でも秘密管理が十分なされていたとはいえない。\nそのほか,証拠(甲6,乙10,乙19)及び弁論の全趣旨によれば,1)被告代 表者は,平成25年7月3日,原告工場を原告代表\者の案内で見学するとともに, 工場内施設の撮影もし,また原告代表者からは,生春巻きの製造方法の説明も受け\nたが,それに先立ち,見学で得られる技術情報について秘密管理に関する合意は原 告と被告間でなされなかったばかりか,原告代表者からその旨の求めもなされなか\nったこと,2)原告のウェブサイトには,原告工場内で商品を生産している状況を説 明している写真が掲載されており,その中には生春巻きをラインで製造している様 子が分かる写真も含まれていることが認められ,これらの事実からも,原告におい て,その主張に係る営業秘密の管理が十分なされていなかったことが推認できる。\n
エ したがって,原告主張の製造方法は,不正競争防止法2条6項の要件にいう 「秘密として管理」されていたとは認められないから,原告主張の製造方法をもっ て同法の「営業秘密」として認められず,「営業秘密」であることを前提とする損 害賠償請求は,その余の点の判断に及ぶまでもなく理由がない。 なお,原告は,被告代表者が工場訪問のお礼のメールに「ノウハウ」を教えても\nらったことを感謝する記載があることを指摘するが,そのメールをした真意はさて おき,ここで問題にしているのは,原告自身が営業秘密の要件を満たす秘密管理を していたか否かであって,被告代表者が「ノウハウ」としての価値を認め,すなわ\nち非公知で有用なノウハウであると評価していたからといって,秘密管理性の欠如 が補えるわけではない。

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平成27(ワ)6555等  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年3月15日  大阪地方裁判所

 秘密管理性がなしとして、営業秘密としては認められませんでした。
 原告は,上記のうち秘密管理性の点につき,本件技術情報は,電子データと 電子データを印刷した紙ベースで保管され,それらの情報にアクセスできる者を福 島工場の従業員18人と役員ほかの限られた原告の従業員に限り,また就業規則に 従業員の秘密保持義務を定めるほか,秘密保持の誓約書の提出を受けていた旨主張 するとともに,それらの従業員は,それらの本件技術情報が原告にとって重要な技 術情報であり,持ち出したり,漏洩したりしてはいけない秘密の情報であることは 十分に認識できていたから,営業秘密として管理されていたと主張する。\nこの点,証拠(甲31の1ないし18,甲32,甲33,甲36)によれば,原 告主張の情報の管理状況や,就業規則の定めや,従業員から誓約書を徴求している 事実が認められ,またその対象の情報が,原告において重要な技術情報であると認 識できるとの点も,そのとおりということができる。
(3) しかしながら,原告の取締役であったP1及び原告の代理店としてその販売 のみならず海外でのメンテナンスを担当していた被告銀座吉田は,原告が,何ら秘 密保持義務を負わせることなく,また後日の返還を求めることもなく,原告製品の 図面等,製品に関わる情報を,取引先,製造下請業者,メンテナンスを担当する業 者にも交付していたことを主張しているところ,ゴミ貯溜機の設計図面等の管理に 関して以下のような事実が認められる。 ア 原告が営業秘密と主張する図面の中には,発行者を「日本クリーンシステム (株)福島工場」として,日付け入りの「発行」とするスタンプと「製作用」とのス タンプが押されているもの(別紙営業秘密目録記載1の機械図面中,2の八角部分 の図面に含まれる甲24の2,4のドラム内の分割羽根部分の図面に含まれる甲2 6の1ないし11,甲27の2ないし4,5の蓋ジョイント部分の図面に含まれる 甲28の3,4,5,7)が存し,これら図面が部品を製造する業者に交付されて いたことがうかがわれる。
イ 被告らが本件製品1の製造に関わっていたことを示すものとして原告が証拠 として提出したメール(甲73)の記載内容によれば,原告製品のメンテナンスの ためには,メンテナンス業者において,必要な部品を図面で第三者に請け負わせて 作成させる場合もあることが認められる。そうすると原告は,過去に被告銀座吉田 に対して海外での原告製品の設置やメンテナンスをさせていたというのであるか ら,メンテナンスを担当していた被告銀座吉田に対し,それらの作業に必要な図面 等を交付していたはずと考えられる(なお,被告銀座吉田は,第11回弁論準備手 続期日において陳述した被告銀座吉田準備書面(8)において,本件製品1,2の 製造に関与したことを推認させる事情となり得る過去販売した原告製品の図面等を 保有していることを自認している。)。また,同メールによれば,中国成都におけるゴミ貯溜機の購入設置者は,メンテナンス業者を競争入札により選ぼうとしていることがうかがえるが,このことからは,ゴミ貯溜機を購入した者は,業者を任意に選んで,上記内容のメンテナンスを実施することが可能であるということ,すなわち,ゴミ貯溜機を購入した者は,メンテナンスに必要な図面類等を原告から交付されていたことを推認することができる。
ウ 原告は,過去に被告サン・ブリッドに対して原告製品の部品の一部を供給さ せていた(甲21)というのであるから,それに伴い被告サン・ブリッドに対し, 少なくとも当該部品を製造するに必要な設計図を交付していたことが認められる。
(4) このように,原告が本件において営業秘密として主張する本件技術情報と同 種の技術情報であると考えられる原告製品の図面等が被告銀座吉田はもとより,原 告製品購入者,あるいは部品製造委託先に交付されていた事実が認められることに 加え,そもそも原告は,P1及び被告銀座吉田による秘密管理性を否定する事実関 係の主張について全く沈黙しており,その指摘に係る図面等の技術情報の外部提供 について,営業秘密の管理上,いかなる配慮をしていたか一切明らかにしていない ことも併せ考慮すると,原告のゴミ貯溜機を製造するに必要な設計図面等の多くは, P1及び被告銀座吉田が主張するように,特段の留保もなく購入者はもとより取引 関係者に交付されていたことを認めるのが相当である。 そうすると,別紙営業秘密目録記載1,3の技術情報そのものが,上記図面等に 含まれていると的確に認めるに足りる証拠はないものの,かといって,これら技術 情報についてのみ他の同種技術情報と異なる特別の管理がされていたと認めるに足 りる証拠もない以上,同様の管理状況であったと推認するほかなく,したがって, これでは,上記技術情報が不競法にいう「秘密として管理されていた」ということ はできないということになる。

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平成29(ネ)10007  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成30年3月26日  知的財産高等裁判所(4部) 東京地方裁判所  立川支部

 原告の営業秘密を基にしてできたソフトウェアであるとして、差止および170万円の損害賠償が認められました。原告は、被告のソースコードを別会社経由で入手していました。1審はアップされていません。
   原告製品1のPCソースコード(甲19),原告製品2のPCソ\ースコード (甲21),原告製品3及び4のPCソースコード(甲23)を,それぞれ,被控訴\n人が被告製品1のPCソースコードの一部として提出するもの(甲20),被告製品\n2のPCソースコードの一部として提出するもの(甲22),被告製品3及び4 の PCソースコードの一部として提出するもの(甲24)と対比すると,一致する表\ 現が多数認められる。 そして,被告製品1ないし4のPCソースコードには,以下のとおり,原告製品\n1ないし4のPCソースコードに依拠して作成されたことをうかがわせる記載がある。
1) 原告製品1と被告製品1の対比
a 甲19の1頁3行ないし6行の冒頭には,いずれも,「Private」との 記載があるところ,甲20の1頁3行ないし6行の冒頭は,いずれも「'」を付した 「'Private」との記載であり,甲19の命令文を非実行化するものである。
b 甲19の1頁59行には,「lblCh.Caption=txtRecCh.Text&“ch" '20101016 Ver2.2.3」との記載があるところ,甲20の2頁4行には,「'」を付した「'lblCh.Caption=txtRecCh.Text&“ch" '20101016 Ver2.2.3」との記載であり,甲19の命令文を非実行化するものである。
c 甲19の3頁24行から25行に,「'2010/03/11 メールにて変 更要求−−−−−'『測定停止』の例外処理追加'D」との記載があるところ, 同記載は,2010年3月11日にDが修正を行ったことを示すものである。甲2 0の3頁36行から37行には,これと全く同一の記載があり,Dが被告製品1の PCソフト作成を依頼された日以前に行われた修正の記載が残っている。\n
a 甲23の1頁10行に,「Dim flgExceotion1 As Boolean 'PICバグ対策フラグ 一時使用 2012/10/16追加」との記載があるところ,同記載は,2012年10月16日に追加修正を行ったことを示すものである。甲24の1頁10行には,これと全く同一の記載があり,Dが被告製品3及び4のPCソフト作成を依頼された日以前に行われた修正の記載が残っている。\n
b 甲23の1頁13行に,「'2012/3/6追加」との記載があり,同記載 は,2012年3月6日に追加修正を行ったことを示すものである。甲24の1頁 13行には,これと全く同一の記載があり,Dが被告製品3及び4のPCソフト作\n成を依頼された日以前に行われた修正の記載が残っている。
c 甲23の1頁32行に,「'MRS-23RWTLのPICバグがありPIC 修正まで一時的に補正する2012/10/16」との記載があるところ,同記 載は,2012年10月16日に「MRS-23RWTL」,すなわち原告製品3の バグの一時的補正を行ったことを示すものである。甲24の1頁32行には,これ と全く同一の記載があり,Dが被告製品3及び4のPCソフト作成を依頼された日\n以前に,原告製品3の修正をしたとの記載が残っている。
d このほか,甲23の1頁37行の「'−−−−−64QAM用アプリにする場 合−−−−−'2012/12/26」との記載は,甲24の1頁33行と,甲23 の1頁41行の「'コマンドライン引数を取得しデバッグモード確認 2012/ 3/7追加」との記載は,甲24の1頁38行と,甲23の2頁44行の「'64 QAMで10H Endlessに変更する 2013/1/23」との記載は, 甲24の2頁39行と,甲23の3頁10行の「'64QAMモードのみ〔外部接 点制御〕インジケータを表示する 2013/1/23」との記載は,甲24の3 頁1行と,甲23の3頁56行の「pid=1 'ポート番号は1に固定する 2013/2/14」との記載は,甲24の3頁37行と,それぞれ同一の記載であ り,甲23において,Dが被告製品3及び4のPCソフト作成を依頼された日以前\nに行われた修正等の記載が,そのまま甲24に記載されている。 以上によれば,Dは,被告製品1ないし4のPCソースコードを作成するに当た\nって,原告製品1ないし4のPCソースコードに依拠したことが推認される。\n
1)原告製品1と被告製品1の対比
a 甲19の1頁3行ないし6行の冒頭には,いずれも,「Private」との 記載があるところ,甲20の1頁3行ないし6行の冒頭は,いずれも「'」を付した 「'Private」との記載であり,甲19の命令文を非実行化するものである。

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平成27(ワ)7855  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年1月26日  東京地方裁判所

 非公知性を満たさないとして営業秘密でないと判断されました。
 原告は,本件原告製品の1)胴板の板厚,2)内鏡板の形状,3)入口チューブ の直径,4)入口チューブの長さ,5)入口チューブの穴の配置,6)入口チュー ブの穴径,7)入口チューブの穴の個数,8)出口チューブの直径,9出口チュ ーブの穴径,10)出口チューブの穴の個数,11)本体と鏡板の接合部,12)出口チ ューブの穴の配置方法,13)出口チューブの長さ,14)出口チューブの穴の配置 及びこれらの組合せ並びにこれに基づく減音量,圧力損失及び製造コストに 係る本件情報が,原告の営業秘密であると主張する。 (2) しかし,証拠(乙25〜27)によれば,本件原告製品に係る本件情報のう ち上記1)ないし14)は,本件原告製品を構成する部品等の形状,寸法,個数又はその相互の配置に関する情報であり,いずれも本件原告製品の寸法等を測定\nすることにより市場で同製品を購入した者が容易に知り得る情報であるから, 公然と知られていない情報であるということはできない。 また,本件原告製品の減音量及び圧力損失は,本件原告製品が備えるべき 性能として被告が指定し(甲6の2,20の2〜5),そのような性能\を有す るものとして被告の顧客に販売されるものであるから,原告の保有する営業 秘密ということはできず,また,原告製品が注文されたとおりの減音量及び 圧力損失を備えているかどうかは容易に測定し得るものである(甲31の2, 乙33)。 さらに,原告が営業秘密として主張する「製造コスト」(甲35の1の@以 下の数字,甲40の1の「見積金額」,甲41の1〜3)は,製造原価等に関 する情報ではなく,被告に提示される本件原告製品の見積金額又は販売価格 であり,非公知の情報であるということはできない。
上記の点について,原告は,1)本件原告製品は不特定多数の購入者が存在 する市場で販売される最終製品とは異なる特注品である,2)本件原告製品は 被告のブロワに組み込まれるので,被告の顧客はその内部構造等を知り得ない,3)本件原告製品の減音量,圧力損失及び製造コストは製品自体から直接 感得される情報ではない等と主張する。 しかし,被告のブロワが不特定多数の消費者に広く販売されるものではな いとしても,ブロワに関する市場において不特定の需要者を対象とし,国内 外の顧客に販売されているものであり(乙5,23),その需要者が特定少数 者に限定されると認めるに足る証拠はない。また,本件原告製品が被告の製 品に組み込まれているとしても,被告のブロワの購入者がリバースエンジニ アリングにより本件原告製品に係る本件情報を取得することが困難であると 認めるに足りる証拠もない。さらに,本件原告製品の減音量,圧力損失及び製 造コストが非公知といえないことは前記判示のとおりである。
(3) 原告は,本件情報に関し,被告との間において黙示の秘密保持契約を締結 し,又は,本件原告製品の性質上,被告は当然に秘密保持義務を負うと主張 する。 しかし,原告と被告との間で黙示の秘密保持契約が締結されたことをうか がわせる事情は認められない。また,本件情報は,いずれも本件原告製品の寸 法等を測定することにより同製品の購入者等が容易に知り得る情報又は本件 原告製品が備えるべき性能として被告が指定した情報であり,かつ,本件原告製品は被告のブロワに組み込んで第三者であるユーザに売却することを前\n提としたものであるから,その性質上当然に被告及びその顧客が秘密保持義 務を負うべきものということもできない。

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