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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

営業秘密

平成24(ネ)10005 プログラム差止等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成24年10月17日 知的財産高等裁判所

 営業秘密を用いてプログラムが作成されたとして、不競法に基づいて、差止、損害賠償を求めましたが、控訴審も一審と同じく、請求が棄却されました。
 上記認定事実によれば,本件各技術情報のうち,原判決別紙技術情報目録記載1の「多段階モード合成法と並列処理の技術資料」と題する文書,及び,同目録記載2の大規模メモリーの動的管理(プログラムの処理過程での大規模メモリーを動的に再配置する手法)を用いた多段階モード合成法による大規模固有値解析のための「ネクストNVHソルバープログラム」(初期版)は,被控訴人会社による成果物であって,控訴人が,これを保持すべき権原を有するとは認めることができない。控訴人は,「多段階モード合成法と並列処理の技術資料」と題する平成18年7月付けの書面を甲1として提出するが,乙16によれば,控訴人代表\者自身,別件訴訟(乙33がその判決)の本人尋問において,平成18年7月当時,甲1は作成されていなかった趣旨の供述をしていることが認められるから,甲1に基づいて,控訴人が,甲1に記載の技術情報を,その作成日と記載してある時点で作成していたものと認めることはできない。控訴人は,甲33にはAdvance/NextNVHの開発元として控訴人が記載されていると主張するが,被控訴人会社も開発販売元と記載されているから,控訴人のみが同プログラムの開発者であることの根拠にはならない。控訴人は,「多段階モード合成法」こそが控訴人において名称統一し考案した独自のアルゴリズムであり(甲1),乙14の確認書などにおける「多重モード合成法」はそれと異なると主張するが,そもそもそのよって立つ甲1自体作成日付のものと認められないことは前記のとおりであるし,被控訴人会社と控訴人との間で取り交わされた業務委託契約確認書やソフトウェアモジュール開発確認書であり,その成立自体特段の争いのない乙6及び乙14には,控訴人の成果物とされる固有値モジュール・固有値ソ\ルバーについて触れられていない。控訴人が,Advance/NextNVHの開発作業中に,別の固有値計算アルゴリズムを独立に作成したとすれば,これを被控訴人らに対し他用を禁じて引き渡し,かつ,権利範囲を確定することを含めて乙6及び乙14に記載しないものとは考え難い。控訴人の上記主張は,採用できない。
 (2) 上記認定事実によれば,原判決別紙技術情報目録記載4の「Hybrid NextNVH実行ログファイル:PARMCMS.log トヨタ自動車160万自由度車両シェルモデル(理論解との比較検証)」と題する文書(甲6)の内容は,多重モード合成法固有値モジュール・固有値ソルバーの動作をトヨタ自動車の貸与した検証用データに基づいて検証したものと認められ,被控訴人会社の成果物であって,控訴人は,これを保持すべき権原を有するものとは認められない。原判決別紙技術情報目録記載3の「モード合成法固有値ソ\ルバーの固有値精度検証1万自由度ベンチマーク問題(1)」と題する文書(甲5)の内容は,多重モード合成法固有値モジュール・固有値ソルバーの動作を小規模な検証用データに基づいて検証したものと認められ,被控訴人会社の成果物であって,控訴人は,これを保持すべき権原を有するものとは認められない。他に,原判決別紙技術情報目録記載の本件各技術情報が,控訴人の営業秘密であると認めるに足りる証拠はない。\n

◆判決本文

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平成23(ネ)10084等 損害賠償請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成24年07月04日 知的財産高等裁判所

 本件顧客情報が営業秘密であるとした原審が維持されました。
 以上を総合すれば,1審原告らは,本件顧客情報に接し得る者を制限し,本件顧客情報に接した者に本件顧客情報が秘密であると認識し得るようにしていたといえるから,本件顧客情報は,1審原告らの秘密として管理されていたということができる。
 (エ) 以上に対して,1審被告らは,本件顧客情報について,関係書類が机上に放置されていたり,写しが上司等に配布されたり,上司の指導で休日等における営業のために自宅に持ち帰られたり,手帳等で管理されて成約後も破棄されなかったり,本件就業規則が周知されていなかったりするなど,ずさんな方法で管理されていたことから,本件顧客情報は秘密管理性を欠く旨主張する。しかしながら,上記関係書類が上司等に配布されたり自宅に持ち帰られたり手帳等で管理されて成約後も破棄されなかったりしていたとしても,それは営業上の必要性に基づくものである上,1審原告らの営業関係部署に所属する従業員以外の者が上記関係書類や手帳等に接し得たことを窺わせる事情も見当たらず,1審原告らがその従業員に本件顧客情報を秘密であると容易に認識し得るようにしていたことは前記(イ)に認定のとおりである。また,本件顧客情報の関係書類が机上に放置されていたことは,これを認めるに足りる証拠がない。したがって,本件顧客情報が秘密管理性を欠くとの1審被告らの上記主張は,採用することができない。
 (オ) また,1審被告らは,1審原告ネクストの顧客情報である氏名,連絡先又は住所等が単独でも営業秘密として明示されている必要があるのに,そのような明示がされていないとして,当該顧客情報には秘密管理性が認められない旨を主張する。しかしながら,1審原告ネクストは,前記(1)ア(ウ)及び(エ)に認定のとおり,本件顧客情報について厳格に管理を行い,かつ,前記(1)ア(オ)及びイに認定のとおり,従業員に対して,本件顧客情報が秘密であると容易に認識し得るようにしていたから,本件顧客情報の個別の情報について秘密であることを明示するまでもなく,優に秘密管理性を認めることができる。

◆判決本文

◆原審はこちら。H21年(ワ)24860

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平成21(ワ)16761等 損害賠償請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年06月01日 東京地方裁判所

 不競法2条6項の営業秘密には当たらないと判断されました。
 原告が主張する本件情報1〜3は,いかにして電気通信事業法9条所定の電気通信事業の登録申請及び電波法27条の5に基づく特定無線局の包括免許申\請の各要件を満たすかに関する,いわば許認可申請のノウハウであり,原告が,「電気通信事業者の登録申\請手続は原告が長年の衛星通信業界における経験と研究により原告が独自に考案した手続であるので不正競争防止法の営業秘密といえる」(平成23年1月31日付け原告準備書面(18)5頁8〜10行目),「上記資格(判決注:電気通信事業者としての資格)取得の手続き,包括免許(判決注:無線局の包括免許)取得手続きは原告の重要な営業秘密である」(平成24年2月29日付け原告準備書面(27)13頁19〜20行目)などと主張していることからしても,原告の主張する営業秘密は,行政における許認可基準及びその手続に関する情報を指すものと解される。
 しかし,行政における許認可基準は,広く国民に開示されるべきものであり,行政庁がこれを公開せずに秘匿できる性質のものではない。そして,本件情報1,2は,いずれも登録電気通信事業者の資格取得要件に関する情報であり,その基準及び手続の概要は,総務省平成18年12月発行の「電気通信事業参入マニュアル」(乙3)に記載されて公開されており,記載されていない部分についても総務省に照会することにより取得することができた情報であると認められる。本件情報3は,電波法による特定無線局の包括免許申請の要件の一つである特定無線局に係る通信の制御に関する事項(無線局免許手続規則20条の8第2項3号)について,第3世代衛星サービスに関しては,インマルサット社からPSA資格の付与を受けることにより,第4世代衛星サービスに関しては,ストラトス社との間でサービスプロバイダ契約を締結することによりインターネット回線を通じて上記要件を満たすことができるとの情報であるが,これらの情報が衛星通信業界において非公知であったことを認めるに足りる的確な証拠はない(原告は,これらの情報が非公知であったことの根拠として,総務省が原告から説明〔甲62,109〕を受けるまでこれらの情報を知らなかったこと,原告とストラトス社(ザンティック社)との間のサービスプロバイダ契約〔甲82〕に秘密保持の定めがあり,他社においてこれを知ることができなかったことを主張する。しかし,たとえこれを総務省が知らなかったとしても,それだけで非公知の情報になるわけではなく,それゆえに総務省が申\請内容について秘匿すべき義務を負うものではない。また,原告とストラトス社(ザンティック社)との間のサービスプロバイダ契約に守秘義務の定めがあったとしても,同契約の内容にとどまらず,ストラトス社(ザンティック社)との間で同様の契約を締結することによりインターネット回線を通じて上記要件を満たすことができるという点〔この点は,上記包括免許申請の要件に係る情報であり,非公開とすべきものではない。〕についてまで守秘義務が及ぶものと解することはできず,非公知であったということはできない。したがって,原告の主張を前提にしても,これらの情報が非公知であったと認めることはできず,ほかにそのように認めるべき的確な証拠はない。)。また,本件情報4は,原告とストラトス社との間のサービスプロバイダ契約におけるサービス料金が従量制であるとの情報であるが,同情報も,衛星通信業界では一般的に知られていた情報であったと認められる(乙41〜43,弁論の全趣旨)。したがって,本件情報1〜4は,非公知性を認めることができず,その余の点について検討するまでもなく,不競法2条6項の営業秘密には当たらない。 \n

◆判決本文

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平成21(ワ)38953 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年02月21日 東京地方裁判所

 本件情報は公知であるとして、営業秘密に該当しないと判断されました。
 株式会社の取締役は,当該株式会社からその保有する不正競争防止法2条6項所定の営業秘密を示された場合において,信義則上,取締役を退任した後も,不正の競業その他の不正の利益を得る目的で,又は当該株式会社に損害を加える目的で,当該営業秘密を使用し,又は開示しないという秘密保持義務を負うものと解される。そして,この秘密保持義務にいう「秘密」とは,同項の規定に照らし,公然と知られていないこと,すなわち,不特定の者が公然と知り得る状態にないことを要し,本件誓約書にいう「秘密」も,本件誓約書の規定に照らし,これと同様に解するのが相当である。本件誓約書上の営業秘密は公知事実を含むという原告の主張は,「隠して人に知らせないこと。公開しないこと。また,その内容。」という「秘密」の意味に明らかに反するものであって(乙13),採用することができない。
 (2) 証拠(甲22,23,27,28,乙11,18)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品においては,画面上,マウスで「編集」ボタンと属性設定タブ上の「光線変更」ボタンを順次クリックし,現在の光源の方向から照らされた球体が表示されているダイアログウインドウを開いた上で,上記球体をクリックしたままマウスをドラッグし,初期状態である正面以外の光源の方向でマウスボタンを放すと,光源の方向が変更され,程度の差はあれ,画像上,光源の反対方向で陰となるべき部分が明るく描出される現象が現れることが認められる。このため,本件情報は,マウスで3回のクリック操作と1回のドラッグ操作のみで容易に知り得るものであり,不特定の者が公然と知り得る状態にないとはいえないから,原告の取締役であった被告が信義則上保持すべき「秘密」や本件誓約書上の「秘密」に当たる余地はない。この点につき,原告は,原告製品において画像上,陰となるべき部分が明るく描出される現象につき,顧客からの指摘がなかった旨主張するとともに,原告の被用者において,通常,光源の方向を変更する必要がなく,仮に変更する必要があれば,操作がより簡単な画像を回転させる方法によるのが通常であるから,顧客が公然と知り得る状態になかった旨陳述する書面(甲27)を提出する。しかしながら,証拠(甲22,25)によれば,上記現象には,画像の輪郭を明確にする効果もあり,そのために顧客から指摘がなかったとも考えられ,顧客から指摘がなかったことをもって,不特定の者が公然と知り得る状態にないことを根拠付けるものではない。また,証拠(乙18,被告本人)によれば,画像の凹凸を観察するためには,光源の方向を変更する必要が生じることもあること,その場合には,画像を回転させずに観察する必要が生じることもあること,原告製品の取扱説明書には,光源の方向を変更する方法が記載されていることが認められるから,顧客が上記現象を公然と知り得る状態になかったという上記陳述は,採用することができない。
 (3) 以上の点をおくとしても,原告が本件情報を秘密として管理していたことを認めるに足りる証拠はないから,本件情報は,原告の取締役であった被告が信義則上保持すべき不正競争防止法2条6項所定の「営業秘密」や本件誓約書1条所定の「秘密として管理している」情報に当たる余地もない。したがって,本件情報は,原告の取締役であった被告が信義則上保持すべき営業秘密や本件誓約書上の営業秘密に該当しないというべきである。

◆判決本文

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